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1966-10-20 第52回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年十月二十日(木曜日)    午前十時十一分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    大橋 武夫君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    正示啓次郎君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    西村 直己君       保科善四郎君    松浦周太郎君       三原 朝雄君    大原  亨君       加藤 清二君    勝間田清一君       角屋堅次郎君    多賀谷真稔君       高田 富之君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    八木  昇君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       竹本 孫一君    吉田 賢一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 松野 頼三君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 藤枝 泉介君         郵 政 大 臣 新谷寅三郎君         労 働 大 臣 山手 滿男君        建 設 大 臣 橋本登美三郎君         自 治 大 臣 塩見 俊二君         国 務 大 臣 愛知 揆一君         国 務 大 臣 有田 喜一君         国 務 大 臣 田中 茂穂君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 前尾繁三郎君         国 務 大 臣 森   清君  委員外出席者         内閣法制局長官 高辻 正已君         人事院総裁   佐藤 達夫君         防衛政務次官  長谷川 仁君         防衛庁参事官         (長官官房長) 海原  治君         外務政次官   田中 榮一君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         通商産業事務官         (企業局参事         官)      橋本 徳男君         参  考  人         (東京大学教         授)      高木  昇君         参  考  人         (東京大学教         授)      糸川 英夫君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 七月二十一日  委員中澤茂一辞任につき、その補欠として野  口忠夫君が議長指名委員選任された。 同日  委員野口忠夫辞任につき、その補欠として中  澤茂一君が議長指名委員選任された。 同月二十六日  委員久野忠治君、倉成正君及び多賀谷真稔君辞  任につき、その補欠として川崎秀二君、江崎真  澄君及び五島虎雄君が議長指名委員選任  された。 同日  委員五島虎雄辞任につき、その補欠として多  賀谷真稔君が議長指名委員選任された。 同月二十八日  委員中澤茂一辞任につき、その補欠として山  本幸一君が議長指名委員選任された。 同日  委員山本幸一辞任につき、その補欠として中  澤茂一君が議長指名委員選任された。 八月一日  委員愛知揆一君荒舩清十郎君及び上林山榮吉  君辞任につき、その補欠として坂田英一君、竹  下登君及び中村寅太君が議長指名委員に選  任された。 同月二日  委員坂田英一君、竹下登君及び中村寅太辞任  につき、その補欠として仮谷忠男君、正示啓次  郎君及び久野忠治君が議長指名委員選任  された。 同月三日  委員橋本龍太郎辞任につき、その補欠として  中野四郎君が議長指名委員選任された。 十月二十日  委員田中伊三次君及び今澄勇辞任につき、そ  の補欠として保科善四郎君及び吉田賢一君が議  長の指名委員選任された。 同日  委員保科善四郎君及び吉田賢一辞任につき、  その補欠として田中伊三次君及び今澄勇君が議  長の指名委員選任された。 同日  理事久野忠治君七月二十六日委員辞任につき、  その補欠として久野忠治君が理事に当選した。     ————————————— 七月二十九日  一、予算実施状況に関する件  二、予算委員会運営の改善に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員の異動によりまして、現在理事が一名欠員となっております。つきましては、この際、その補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして委員長において指名することに御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長久野忠治君を理事指名いたします。      ————◇—————
  4. 福田一

    福田委員長 これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  先般、本件の調査のため委員を派遣して、実情を調査いたしたのでありますが、その調査報告書委員長に提出されております。  つきましては、その報告を聴取することは省略し、これを会議録に掲載することにいたしたいと思いますので、御了承願います。   〔報告書本号末尾に掲載〕      ————◇—————
  5. 福田一

    福田委員長 この際、参考人より意見聴取の件についておはかりいたします。  ただいま申し上げました先般の委員派遣の際、東京大学鹿児島宇宙空間観測所を視察したのでありますが、この際、宇宙開発の問題について、ここにおいでを願っております東京大学教授宇宙航空研究所長高木昇君、同じく東京大学教授糸川英夫君の御両人から、参考人として御意見を承ることにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  7. 福田一

    福田委員長 参考人各位には、御多忙中にもかかわらず御出席をいただき、ありがとうございました。  これより宇宙開発の問題につきまして御意見を承るのでありますが、その順序は、まず高木参考人、続いて糸川参考人の順で、約二十分間ずつ御意見を述べていただき、その後、政府並びに参考人に対して委員から質疑を願うことといたします。  それでは、まず高木参考人
  8. 高木昇

    高木参考人 ただいま、宇宙開発の最近の現状について説明をせよということでございますので、私から簡単に現状を申し上げたいと思います。  御承知のように、東京大学中心といたしまして観測ロケット研究を開始いたしましたのは、昭和三十二年から三十三年の国際地球観測年が契機でございます。そのときに、学術会議及び国際学術連合からの委嘱もございまして、日本がこれに参加することに相なりました。当時まだ観測ロケットでどういうものが研究あるいは発見されるか未知ではございましたが、日本といたしまして多数の科学あるいは工学者がおりましたので、東京大学の、当時生産技術研究所がこの役目を引き受けまして、なお、宇宙科学観測につきましては、京都とか方々大学地球物理学者が参画いたしました。それが過ぎましてから、昭和三十九年から四十年に再び太陽が静穏な年、ここで国際共同観測ということが行なわれることになりました。  地球を取り巻いてどういう観測対象があるかと申しますと、高さで分けまして、高度百キロメートルから数百キロメートルぐらいに科学的観測の価値のある分野がございます。その次には、アメリカ科学衛星が発見いたしました、地球を取り巻いて放射能帯が二つございまして、内側のものが高度千キロメートル以上、外側が高度一万キロメートル以上でございます。そういう科学的探求成果の多い分野が三つございますので、それを目標宇宙科学者のほうからそれに適したロケットをつくってもらいたいということで、当時東大生産技術研究所グループは引き受けたわけでございまして、その結果、カッパー型というのが第一の、高度千キロメートル以下のいろいろな諸観測、それからラムダがその放射能帯に入って観測する、それからミュー外側放射能帯を探索する、こういう三つのロケットの組み合わせがごく最近までにできたところでございます。その間いろいろな成果がございましたが、その成果については、後ほど糸川教授から詳しく御説明をお願いする予定にしております。  このように、わが国として観測ロケット研究が過去十年間にたいへん進歩いたしましたが、一つには、観測ロケット日本の十倍以上も上げておりますアメリカソ連は、その観測実験場が大体北側に寄っております。高緯度地方に、北極に近いほうにございます。日本秋田海岸から鹿児島実験場を移しましたが、これから南のほうに観測ロケットを上げますと、大体赤道地帯研究かできますので、私たち研究もまた世界の学界に寄与をしておる。そういう意味ではアメリカでもはかれないような地点に幸い日本が位置しておるということで、これらの学問的の成果は毎年国際会議に提出しておりまして、いろいろと批判なりおほめのことばをいただいておるのが現状でございます。  さて、東京大学は、昭和三十九年から宇宙航空研究所というものを学術会議勧告——これは昭和三十七年に出たのでございますが、それに基づきまして新たに設立いたしまして、私がその初代の所長を仰せつかりました。そのときには、在来ありました航空研究所生産技術研究所観測ロケットに従事しておりました教授助教授が一緒になりまして新たにつくりました。完成の暁には三十九講座になる予定のものでございます。現在、約四百名の研究員を擁しております。もともと共同利用研究所という名称になっておりまして、全国大学がこれを共同利用できるという形態にしております。と申しますのは、宇宙科学研究は非常に多額の費用を要しますので、大学研究所として幾つもつくるわけにはいかない。中心東大に付置しておきまして、そして各大学が自由に研究、協力できるように、こういう趣旨でございます。  実は、生産技術研究所時代からもこういう機構はございまして、ロケット観測協議会というものを、これは所長諮問機関としてつくり、全国科学者工学者で宇科学に寄与しようという方はだれでも入れるような組織になっておりました。  私たち研究所では、今度は宇宙観測協議会という名前に改めまして、やはり東大の人が多いのでございますけれども、全国大学、私立を入れ、また国立研究所の方もお入りになっていますか、現在百七名の教授助教授クラスの人がこの宇宙観測協議会に属しておりまして、年に何回かの総会をやって、その年その年の新しい研究テーマをお互いに提案し、所長諮問に答えるというかっこうにしております。  ここでちょっと宇宙研究やり方組織を簡単に御紹介させていただきたいと思いますが、教授会は、私たちのほうは大体月二回やっておりまして、これが最高の機関でございますが、宇宙のように非常に激しい進歩のものでは、これではなかなか追従できませんので、教授会代表とそれから宇宙科学工学研究しております教授約二十人をもって常任委員会というのをつくりまして、ここで先ほどの外部の人の集合体である委員会いろいろ諮問を受けて、この常任委員会が実際に計画の立案、それの実施、あるいは予算をどういうふうに要求するか、あるいは実施するかという責任に当たってもらっておりますが、この委員会は毎月のようにやっております。  その下に四つの専門委員会をつくりまして、科学衛星専門委員会観測ロケット専門委員会、また大気球を上げての探索も今年度から始めましたが、これの専門委員会、あるいは実験場設備専門委員会、こういうのがございますし、その下に約数個から十数個の研究班をつくっております。こういう組織で、内外の研究者がこれに入りまして、最後実施までやることになっております。また、その間の連絡のために、これこれの代表の方が集まった企画委員会が毎週必ず集まりまして、その週その週のわれわれの研究の進みを連絡並びに進める方向に働いております。なお、いまあげました専門委員会の中の研究班というのは何十となくやられておりまして、一つロケットが上げられますと、それに対する反省あるいはデータの紹介、それから次の号機にはこれをどういうふうに変えていこうか、こういうこまごましたこともやっておる次第でございます。ただ、東大だけでなく、全国的にこれが利用されておるのと、そのロケットに載せますいろいろな科学観測器は各大学から持ち寄って、そして一基一基それぞれ目的を持ったやり方をしておるというのが現状でございます。  いまこの科学成果については省略いたしますが、われわれの実験一つの派生といたしまして、小型気象ロケットかなりいいものができまして、これはすでに何十回かの経験がございますので、来年早々になると思いますが、アメリカとの交渉、要請もございまして、アメリカにおいて日本気象ロケットアメリカ気象ロケットとを相互に上げながら、ほんとうに正しく上層の気象——データとしては風向、風速と温度でございますが、両方相互比較をしておかないといけない。日本かなり上げておりますが、アメリカは広い国ですので、気象ロケットを千基から二千基上げておりますので、両方ロケットがいつでも同じような温度をはからなくちゃいけない、こういう比較試験を行ないたいという要望があり、日本もこれにこたえまして、来年早々にこの実験をする予定になっております。  そのほか、日本へは、宇宙科学成果に基づきまして、外国から三カ月あるいは二カ月程度研究員を派遣しまして、フランスとかインドあたりからは来ておりますが、それなども若干私たち成果が認められたことではないかと考えております。  以上は宇宙科学関係した分野でございましたが、私は、昭和三十九年から科学技術庁宇宙開発推進本部のほうもお預かりしておりますので、そのほうについて一言触れさせていただきたいと思います。  こちらのほうでは、実用のほうを主といたしまして研究を進めてまいりましたが、私が本部長になりまして、両方計画にダブリがないかということがいろいろ批判されましたので、約一年半かかりましたが、だんだんとこれを整理してまいりました。そのためには、まず推進本部技術懇談会をつくりまして、そこには東大方々などをお招きいたしまして、推進本部計画の立て方などにいろいろ御相談に乗っていただきました。また実験場ロケットあるいは電波追跡というような分野につきましても懇談会をつくっていただきました。これにも東大ばかりでなく、広く各省庁の人にもお入りいただきまして、どういうふうに進めたらいいか、それによって本部予算を要求する、そういうことの足しになりますようにつとめてきたつもりでございます。  さらに、宇宙開発審議会のほうにおきましても、四十年度には、そのうちの技術部会が非常に多数開催されまして、各省庁からのいろいろな計画につきましてたいへん回数を重ねて審議をしていただきました。その結果、推進本部のほうといたしましては、実用実験衛星を将来上げる、そのための基礎になるロケット技術開発をいまからやる、そのためには、東京大学開発してきました技術利用いたしまして、それより大きなものを考える、また、ほんとう実用衛星は、たとえば郵政省とかあるいは運輸省などでいろいろ御計画もございますが、そういう一歩手前で実験をするような衛星を上げるべきである、こういうことにいま進みつつございます。  そこで、今後の宇宙開発計画のようなものを、両者、東大のほうと科学技術庁のほうとあわせて申し上げたいと思います。  外側放射能帯観測ができるミューロケットは、高さが一万キロ以上になります関係上、これで人工衛星が上げられるはずである。先ほど申しましたように、観測ロケットの貴重な経験が約十年間たまりまして、観測ロケットによって地球に対して縦断面的な現象をはかると同時に、今度は地球に沿っての横断面的なデータがほしい、これは宇宙科学のほうの切なる要望でございまして、日本でできれば科学衛星が自力で上げられないか、しかも、それが赤道に近いところではかることによって、観測ロケット人工衛星両方成果が相補ってりっぱな成果になると考えられるので、そういうことが三年前から要望されてまいりまして、それを受けまして、工学のほうのグループ人工衛星計画を立案いたしまして、それが ミューロケットを使った科学衛星でございます。その予定といたしましては、四十二年度にミューロケットをできれば完成いたしまして、それを使って科学衛星を上げる。この科学衛星は、重さも約七十キログラムであり、高さも五百キロメートルでございますので、世界的なレベルのものと考えております。そういう一号衛星研究計画がすでに昨年から進んでおりまして、その人工衛星自体も、すでに本年度には原型となるものができ上がり、続いて細部の設計、改良というところに進んでおるのでございます。  一方、このミューロケットは非常に大型でございますし、これによって何回か軌道に乗せるのに不成功であった場合は非常に研究費が高くなりますので、幸いラムダロケットを使ってその予備練習をこれから何回か行なう、そして人工衛星を正しく軌道に入れるということをこれから何回か行なう、こういう計画でございます。  そこで、四十二年度以降に第一号の科学衛星を上げる運びになると思いますが、その中に載せられる観測項目がわずか四種類でございまして、現在日本宇宙科学者が非常に数が多くなりまして、それぞれこういう観測をしたいという希望が多数ございまして、第二号、第三号の衛星がもし可能ならば、どういう観測項目をやるかということを、いまからすでにこれを研究中でございます。   〔委員長退席赤澤委員長代理着席〕  基礎研究から始まりまして科学衛星にまでいまつながっておりますが、一方、宇宙開発推進本部のほうにおきましては、実用衛星最後目標としております。実用衛星は、現在通信衛星が最も世界的に注目されておりまして、現在はアメリカが世界的な通信網をこの通信衛星によって行なおうとしておりますし、ソ連ソ連で独自に、ソ連の国内での通信がうまくいくような特別な軌道通信衛星を、現在もう一、二年になると思いますが、回し続けておる状態でございます。ヨーロッパも同様に、ヨーロッパの連合体によりまして、ヨーロッパ関係通信衛星をつくりたいという希望で、実用衛星のほうに非常に各国とも力が入っているのが現状でございます。日本も当然それだけの技術がある。またそれが可能ならば、ぜひ通信衛星を上げたいという希望が最近そのほうの関係者から出てまいりました。ついては推進本部でやっておりますロケットの能力はどういう程度かというような御質問も多々ございました。これは一足飛びに大きなものをつくって一ぺんに成功するということは、研究の段階上非常に困難であり、かつまた、かえって研究費を浪費するものだろうと私は思います。推進本部でいま考えておりますのは、比較的小さな、実用の前の試験衛星というものを考えております。ただし、これですと、たとえば高度が千キロメートルとか、重さも百キロとか二百キロという程度でございまして、ほんとう意味での、今後五年たった以降における通信衛星としてそれが間に合うかどうかということになりますと、非常に激しい宇宙開発進歩に比べまして適切であるかどうかについては若干御議論がございます。しかし、東大中心としたミューロケットでは、そういう実用実験衛星なり、ほんとう実用衛星を上げる力がございませんので、どうしてもミューよりも大きなロケット開発しておく必要がございます。それは東京大学のほうとしては、宇宙科学用としては大体ミューロケットで、またこれを今後も続けて性能を向上していけば科学用には十分間に合う。むしろミューロケットより大きなものは科学技術庁のほうでできるだけ早く開発していただく。そのためにはミューロケット成果もとにいたしまして、それから一段大きいものをやる。いまどのくらい大きいものをやるかということは、ここ一年間慎重に審議してきめませんと、あとで後悔するようなことがあってはいかぬと思いますので、いたします。その間にミューロケット成果も出ますので、そうしたらば、それをもとにして、できるだけ早く開発したいものである、こういうふうに私は希望を持っておるのでございます。したがいまして、年度的にもいまダブってはおりませんで、四十二年度以降にミューロケットができ上がりますと、それを受けて、それより一回り大きいものを同じような手法で四十五年度までに完成していただければ、おそらく実験衛星としてはかなり実験ができるのではないかと思います。それで通信とかあるいは航海とか、いろいろな利用が考えられておりますが、まず実験衛星で十分な地上設備もそれに伴ってたくさん要りますので、そういうものを踏み台にいたしまして、将来の大きな実用衛星に移るのが技術としての順序ではないか、こういうふうに私は考えております。  なお、各省庁におきましても、科学技術庁のほうの進歩を見ながら、いまのうちからそろそろいろいろな準備を始められておるように私は承っております。  さて、宇宙開発のように、非常に広範ないろいろな種類科学者技術者の協力によって初めてできるこういういわゆるビッグサイエンスというようなものにつきましては、私たち十年間いろいろ苦労いたしまして、できるだけ優秀な方々に参加願うように委員会組織をつくってみたりしてやってまいりました。幸い、宇宙科学のほうには、わが国には優秀な方が大ぜいおり、過去においてアメリカで勉強しておられた方がほとんど日本へも帰ってきておりますし、そういう方々が国産のロケットを使いまして、だんだんと成果をあげてまいりました。このロケットを使った共同研究という非常にいい手段で、全国のこの専門科学者が凝集と申しますか、だんだんとかたまってまいりまして、この気風はたいへん私は日本のために——この宇宙開という研究によって学者の間の障壁を除き、また、従来一人ではなかなかできないような研究が、大ぜいの手によって簡単に、また早くできるようになったこと、それから宇宙科学に関する限りは、地上では空気層のために絶対にはかれない、ロケットで上空に上がって初めてそういう観測ができる。したがって、一基上げるごとに少なくとも新しい観測はして帰ってくるわけでございまして、したがって、宇宙科学要望によってロケット設計とか研究が進められると同時にそれではかった宇宙科学成果が今度宇宙科学者に戻る。つまり科学者工学者が非常に密接に縦糸と横糸で編まれた織物のような感じでございます。また、ロケット工学も、あるいはそれに必要な電子工学も、すべてが最新のものでなければいかぬし、またそれが国産できるということによって初めて可能でございます。特殊材料にしろ、あるいは超小型の電子部品にしろ、そういうことが広く工業界にたいへんな刺激になると同時に、当然それは地上の機器にもすべて応用されることになりますので、最先端の科学技術が、宇宙科学なり開発によりまして、それが戻ってくる、研究投資が広く潤って戻ってくる。こういう点におきまして、ちょうど原子力とかあるいは海洋研究とか、そういうものと全く同様に、まず研究そのものが将来の実り多い成果になると私は信じておるのでございます。  そういうふうな意味合いにおきまして、ぜひ先生方にもわれわれのこのビッグサイエンスというものを御理解いただきまして、また先ほど各省庁との連絡でも申し上げましたとおり、時限的には少しずれてはおりますが、それぞれかたい目標を設定いたしまして、そこに邁進しておりますので、その点も御賢察の中、今後ともできるだけの御援助をいただきたい、こう考えまして、最近の現状について簡単に御報告申し上げた次第でございます。(拍手)
  9. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 ありがとうございました。  次に、糸川参考人にお願いします。
  10. 糸川英夫

    糸川参考人 ただいま高木教授から、東大宇宙航空研究所長並びに科学技術庁宇宙開発推進本部長としての日本宇宙開発全般の御報告がございましたが、私は鹿児島県の内之浦にあります東京大学鹿児島宇宙空間観測所で今日までどんな成果が得られましたか、つまりそのアチーブメントのダイジェストを聞いていただきたいと思います。  三つございまして、第一は宇宙観測でどんな発見が宇宙で行なわれたかということなんであります。よくいままでに何発ロケットを上げたかという質問を受けますが、私どもは、上げたロケットの個数や上げた高さを誇るわけにはいきせんので、どれだけ宇宙で新しい発見を行なったか、宇宙の秘密をどれだけわれわれは獲得したかということが評価の主目的だと考えているのであります。非常にたくさんございますが、きょうは、そのハイライトみたいなものを七つ選びましてお聞きいただきたいと思います。  一番目が、いわゆるエックス線星の発見でございまして、一部新聞にも伝えられましたとおり、星の中にはエックス線しか出さない星があるのではないかという、非常に一部の科学者が数年前からそういう妄想を持っておりましたが、こういう星はかりに宇宙に存在していたとしましても、エックス線が全部空気層で吸収されますから、地上では絶対に見ることができない。つまり見えない星なんでありますが、これがもし存在するとすれば、ロケットの上にエックス線カメラを載せましてこれを上層に打ち上げて、空気のないところでエックス線撮影をすれば、その星の姿がとらえられるはずではないかということで、東大の内之浦で何個かのロケットがエックス線カメラを積んで打ち上げられました。ほとんど時期を同じゅういたしましてアメリカのホワイトサンズでエックス線カメラを積んだロケットが打ち上げられましたが、両方のエックス線カメラは、いずれも日本科学者開発したものでございます。そこでかなり方向が正確にわかりましたので、岡山の東大天文台が特殊なフィルターを使って、エックス線星を非常に長い時間かかって露出しまして、撮影に成功いたしました。続いてアメリカのパロマの天文台がやはりこの星のエックス線撮影に成功いたしまして、日米科学者と四つの実験所の共同で初めてエックス線星が発見されたのであります。この正体はいまだにわかっておりませんので、いままで星が生まれて死ぬ、いわゆる星の輪廻ということがいわれておりますけれども、そのいままでの理論で知られている限り、どうもエックス線星というのは理屈に合わないのでありまして、そういうものが宇宙に存在しているということは、われわれがいままで、星がなぜ生まれて死ぬかというプロセスの理論的根拠を根底からあるいは変えなければならないようなものであるかもしれない、今日宇宙科学で最も大きな課題を投げかけたわけでございます。きわめて最近の話であります。  二番目は、夜、空をごらんになりますと、星も月もないのにかかわらず空が明るく見えます。あれは大気上層にあります酸素が光を発するのですが、赤い色の光を発します。これは一定の高さの非常に薄い層にだけ発光層があるのじゃないかということがいわれておりましたが、その層の高さがいままで明確にわかっておりませんでしたのを、日本観測ロケットで初めてこの高さを明確に観測いたしました。二百八十キロメートルの高さであることがわかったのであります。  三番目は、電気には流れる電気と、とまっている電気がございまして、流れる電気を電流といい、とまっている電気を静電というのでありまして、地球のまわりの宇宙空間には、静かな電気のたまりみたいなものがあるということはわかっておりましたが、実は理論的に考えますと、静かであり得るはずがない。静かなものには必ず波が立つのではないかということがいわれておりまして、波があるのではないかということが理論的に予見されておりましたのを、やはり内之浦からの観測ロケットで初めてこの波を発見いたしました。ことしありました国際会議日本代表からこれを発表されまして、たいへんな反響を呼んだ発見でございます。  それから四番目には、短波通信に使います電離層でありますが、この電離層もいままでスタティック、つまり静的で、非常に静かな層のように考えられていたのですが、その中に非常な擾乱があるということをやはり発見いたしました。  五番目には、内之浦から上空を観測いたしますと、高さ千四百キロメートルのところからプロトロンとデュートロンの数が非常にふえるという現象が発見されました。これは、つまりバンアレン放射能帯の一番下側のところが、鹿児島の上空では千四百キロメートルの高さから始まるということが初めて確認されたわけでございます。  六番目には、黄道光——黄道面と申しますのは、地球が太陽のまわりを自転運動しているのは一つの平面に乗っておりますが、その表面上に非常にたくさんの粒子があって光を出しております。この観測に、やはり日本科学者が初めて日本観測ロケットを使って成功いたしました。  七番目は、まだ済んでおりませんのですが、テレビカメラを使って非常に高い上層の風をはかろうということであります。これは、従来外国が、地上に置いたカメラで上の風の観測をやっておりましたのを、地上のカメラですと、曇ったときに雲で遮断されて上空が写せないものですから、テレビカメラをロケットの上に載せまして、雲の上に出てしまって、それで上層の風をはかろうという非常に野心的な計画でございます。これは各国からいま日本が注目されている技術一つでございまして、これが成功しますと、世界中がこの技術を使うことになると思います。  以上のような実例を申し上げましたのですが、非常にたくさんの発見が外国においても行なわれておりまして、秋どもは、こういうものが総合されて新しい宇宙観というものが生まれることを最終的に願っております。今日すでに私どもが持っております材料を積み重ねましても、かつてニュートン、アインシュタインが持っておりましたところの宇宙観とは全く違った宇宙観をわれわれは持っておりますが、決してまだ完全な宇宙観ではない。たとえば、エックス線星の発見によって宇宙の理論が根底からくずされようとしているようなこともございまして、もっともっと完全な宇宙観というものを持ちたいというのが最終的な任務でございます。  こういう観測あるいは発見をいたしますのに二つの調査方法がございまして、地球を東京の都心と考えますと、放射状に出まして、放射状の道路に沿って観測をするやり方と、環状道路に沿って環状にぐるぐる回りながら観測するやり方と二つがございます。放射状道路のほうを観測ロケットといい、環状道路に回しますものを人工衛星と呼ぶわけであります。したがって、宇宙空間に放射状道路の観測ロケットの線と人工衛星の環状ルートの網の目を張りまして、宇宙の中のいかなる秘密も余さずに探りたいというのがわれわれの意図するところなのでございます。したがって、人工衛星が決してオールマイティではございませんので、放射状道路、環状道路が組み合わさって初めて宇宙のいろいろな秘密がわかるものなのであります。  そこで、前者の放射状道路をはかります観測ロケットですが、これはまっすぐに地球から出まして、またまっすぐに放射状道路に沿って戻ってまいりますので、もちろんできるだけ遠くにまでいくものがほしいわけであります。それからたくさんの計測器を積むものがほしいわけであります。そのために、いま日本が持っております一番優秀な観測ロケットラムダ3H型という、通称L3Hと称するロケットでございますが、これは高さにしまして千八百キロメートル、それから計測器の搭載量が二百三十キログラムございます。これに匹敵する外国の観測ロケットを、ことし出ました日本物理学会の会誌の表の中から探ってみますと、アメリカにアストロビー一五〇〇という観測ロケットがございますが、これた高さが千九百キロメートルで、計器搭載量が七十キログラムでございますので、ラムダ3H型に比べてやや性能が劣るのではないかと思います。それからソ連のはわかりませんのですが、フランスが、表に載っております範囲では、高さの最高が五百キロメートルでございますが、この九月に高木所長と私とヨーロッパへ参りましたときに、フランスの学者から直接聞いたところでは、ごく最近千キロメートルの高さまで上げて調査をやったということでございます。ただし計測器の重量が二十キログラムしかなくて、とても日本ラムダ3Hにはかないませんでしたという報告でございましたから、ラムダ3Hは、あえて世界第一位とは申しませんけれども、世界で最上部にランクされる観測ロケットであるという自信を持っております。  それから、あと残るのは人工衛星でございまして、網の目を完成するための環状道路をこれから建設する工事のプランを立てているわけでございます。先ほど高木先生の御説明にありましたとおり、そのためにミューロケットという大型のロケットを使用する計画を立てて、その地上設備がすでに鹿児島に完成いたしておりますが、ミューロケットはいままでの観測ロケットに比べて何ぶん値段がたいへん高いのであります。こういうものを上げて、つまり軌道に入れようとして失敗しますとたいへん大きな国費の損失になりますので、いままで開発したカッパー、ラムダという小型ロケットを使いまして、できるだけ完全な軌道に入れる技術の練習をしておきたい。そしてミューロケットを使いますときには一発目から軌道に入れたい。そういう考えから昨年、今年度二カ年にわたりましてカッパー10型ロケット二個、ラムダ4型ロケット三個、合計五基をこの技術開発に投入いたすことにいたしました。すでにカッパー10型二個は発射されて所期の目的を達しましたが、本年度この技術開発のために投入されるラムダ4型Sのうち第一号機がこの九月に打ち上げられたわけでございます。  御承知のように、日本人工衛星を上げますのに外国から技術を導入したり、あるいは習いに行ったりすることをしておりませんので、全く日本科学者の自分の頭脳でその技術を考えて、手探りでございますけれども見つけ出そうとする努力を続けております。したがって、非常にたくさんの地上試験や何回かの予備試験の後にでなければ、人工衛星軌道に乗せる技術は完成できないものと思っております。九月に打ち上げましたラムダ4型S一号機は九つの目的をもって上げられましたのですが、その中には人工衛星軌道に入れるということ自体は含まれておりません。これは直接の目的ではございませんが、九つの目的のうち六つが完成されまして、所期の目的が得られましたのですが、残る三つについては資料が得られておりませんので、この十二月にもう一度同じ型のものを上げまして、残った三つの検討を行なうわけでございます。さらに、来年の三月にそれらを集積いたしましたもので実験を行ない、でき得ればここらで小型の人工衛星を実際に入れてみまして、人工衛星軌道に入れる技術を完成し、一九六八年、つまり昭和四十三年の春に、四十二年度予算の末期でございますが、来年度予算最後に打ち上げを予定されておりますミューロケット打ち上げまでには、このカッパー、ラムダを使いまして軌道へ入れる技術を全部完成いたしたいと考えておるのでございます。  以上、御報告を終わります。(拍手)
  11. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 これにて、両参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  12. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。登坂重次郎君。
  13. 登坂重次郎

    ○登坂委員 ただいまは東京大学高木先生並びに糸川先生から、いろいろ専門的に宇宙科学に関する御説明をいただきまして、まことにありがとうございました。  私どもは、去る八月の初旬、予算委員長以下社会党の野原先生、中澤先生、加藤先生、それから小平先生等と内之浦の実験場を視察いたしまして、ただいま御報告、御説明いただいたことが幾ぶんでもわかるような気がいたしたのであります。そこで、この宇宙科学ということは、われわれしろうとにはまことに縁の遠いようなものでありまするが、今日世界各国が宇宙に向かって数多くの問題を投げかけております。その中で、日本宇宙科学の現在の位置というものはどういうものであろうかということは、われわれ国民として知りたいところであったのであります。幸い、東京大学中心とし、科学技術庁がこれに指導的役割りをとりまして、今日の非常な成果をあげておるということを私は初めて知らされて、まことに喜びにたえないところであります。  そこで、まずこの日本科学技術に対する経過並びに今後の見通しというものについて、宇宙開発推進本部長でありまするところの高木先生の御意見は先ほど承ったのでありまするが、さしあたり今日の段階において、これから一番先にどういうことをおやりになりたいか、またわれわれ政治をあずかる者に対しまして何か御希望がありましたなら承ってまいりたいと思うのでありますが、高木先生の御所見を承りたいと思います。
  14. 高木昇

    高木参考人 ただいま御質問がございまして、今後どういうふうに進め、またどういうふうに重点を置くかというお話と承りました。  八月の三日に宇宙開発審議会が「人工衛星の打上げおよびその利用に関する長期計画について」という建議を総理大臣に提出してございます。それは、さしあたって四十五年度までにおいてどういう分担でどういう事項を進めるかということについての建議でございます。私たちは、それに沿って進める予定にしておりますが、この建議の最後のほうにございますように、科学衛星計画については、とりあえず東京大学中心となりまして、できるだけ早く科学衛星計画を推進するように、また、実用実験衛星計画については推進本部が推進するように、しかし、ここでお互いに連絡がなくてはいけませんので、特に三番目に大事なこととしては、両者が緊密な連携を保っていかなければいけない、こういうことまでつけ加えられておりまして、これについては、先ほど私も御説明申し上げましたように、研究者の交流とかあるいは併任とかいうようなかっこうで進める予定にしておるわけでございます。それから、関係政府機関は、その所掌に従って、人工衛星利用あるいはその研究開発、これは東大及び科学技術庁以外の省庁も密接な連携を保ってこの両計画に協力する、こういうようなことがうたわれておるわけでございます。  そこで、再び申し上げますと、ミューロケットによります科学衛星をできるだけ早く完成したいというのが私たちの切なる希望でございまして、それの見通しがつきますと、実験衛星のほうも非常に楽になると考えます。したがって、四十二年までが科学衛星を主体としておりますが、それに重点を置いていただき、その成果があがれば、すぐそれを受けて、実験衛星のほうが四十五年度までに完成する、それができれば、今度は各省庁実用衛星もそれにつながって進展していく、そういうふうに考えておりますので、一応この年度計画はタイムリーにしたい。たいへん外国におくれてもどうか。人工衛星が上がりましたのは、ソ連が第一号を上げたのが一九五七年でございますので、もうそろそろ十年になろうとしておるのでございますが、あまり時間がかかっても陳腐なものでは意味がございませんし、私たちあとから追いかけていくものが、いつも上げるものについては、アップ・ツー・デートでなくちゃならぬのと、それが日本の役割りとして世界に少しでも寄与するものでなくてはならない、こういうことを常に反省してやっておりますが、いまのような時間割りで進めておりますので、この点御賢察いただきたいと思います。
  15. 登坂重次郎

    ○登坂委員 それでは科学技術庁にお尋ねいたします。  科学技術庁人工衛星について研究を進めておるとのことでありまするが、東京大学との連携において現在どういうような手段で実用的な人工衛星ロケット開発の状態にあるのか。また、最終目的は、やはりこれも学者人工衛星観測という学理的ばかりでなく、科学技術庁としては、これを実用的に考えておるということを聞いておるりでありまするが、その両者間の均衡とか今後の研究の態度というものはどういうふうに技術庁においては考えておられるか、承りたいと思います。
  16. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほど両参考人説明しましたように、大学でやっておる宇宙航空研究所はあくまでも科学衛星ということを目標研究を重ねておる。わが科学技術庁におきましては、先ほども言われますように、実用実験ということを目標人工衛星のことを考えております。もちろん大学研究の上に乗ってこの科学技術庁実用実験というものが進むのでございますが、しかし、やはり並行的にいかないと、大学研究が済んだ上に乗っかるといいながらも、それまでじっと待っておっては実用衛星のほうがおくれますので、そこでいまから種子島に射場の位置をきめまして、そしていま建設途上にありますが、その内容につきましては、両者の関係を一そう密にしなければならぬ、しかも、多額の経費がかかりますから、少しでもむだを省かなければならぬというので、高木教授科学技術庁宇宙開発推進本部長をお願いしまして、高木教授東大研究所長という立場とそれから科学技術庁推進本部長という立場の二つを兼任されまして、そして両者を密にしながら研究を進めつつあるということでございます。なお、私も文部大臣と科学技術庁長官を兼任しておりまして、大所高所からの両者の調節は私も微力ながらいろいろと指導もいたします。技術田のことは高木教授に一任すると言ってはどうかと思いますが、ほとんどまかせ、そして両方研究が両々相まって共存共栄でこの宇宙開発を大いに推進するように、かように考えていま推し進めておるところでございます。
  17. 登坂重次郎

    ○登坂委員 財政当局にお伺いします。  本年度の宇宙開発に関する総合予算要求が出ておると思うのでありまするが、これに対しては、文部省、科学技術庁、郵政省、運輸省並びに通産省の各総合的な予算要求がただいま提出されておると聞いております。今日まで、この宇宙開発に関する予算措置及びその成果について、また今後の財政措置について、財政当局はいかなる見解を持っておりますか、大蔵省の見解をお願いしたいと思います。
  18. 谷村裕

    ○谷村説明員 宇宙開発関係のことにつきましては、もちろん従来とも、ただいまお話のありましたように、それぞれ所要の予算措置を講じてまいってきておるわけでありますが、今後の問題といたしましては、いろいろさらにこれを進めていかなければならない点において、ただいまお話を承ったとおりでございます。しかしながら、許された財政の範囲の中で、単に宇宙開発ということのみならず、広く科学技術全般、あるいは、さらにはその他いろいろ文教、社会保障、公共事業等々、さまざまな需要に応じていかなければなりませんので、私どもといたしましては、全体のバランスを考えながら、その中でできるだけ効果をあげてまいられるように予算を措置してまいりたいと考えております。
  19. 登坂重次郎

    ○登坂委員 ただいままでは、聞くところによりますと、科学技術庁、文部省、あるいは郵政省あるいはその他運輸省というような各省庁が、自己の立場においていろいろ予算措置をしておったので、財政当局としては非常にふくそうした点もありまするから、その点を非常に気にして、予算措置にあたっては相当削減したり、あるいはその重複点を指摘したりする、そういうことを聞いておるのでありまするが、本年度、承るところによりますと、科学技術庁中心となって、科学技術庁予算の責任において各省庁のふくそうの点を是正した、こういうふうにいわれておるのでありまするから、その点、ひとつ特に留意を払ってもらえばけっこうだと思うのであります。  そこで、専門ではないので間違っておるかもしれませんが、東京大学のほうでは、カッパー、ラムダミューこういう三種類を上げて、大体一段、二段というような推進ロケット研究中である。科学技術庁は三段、四段目からこれを研究課程としておる。しかも、その推進用の燃料は、片や固体である、片や液体である、こういう研究課程をおとりになっておると聞いておりまするが、この点において宇宙科学は、できるだけすみやかに、しかも、予算措置もできるだけ有効に、総合的に使ってもらいたいと思うのであります。そのほうが、われわれしろうとは、非常にすみやかに所期の目的、宇宙研究成果があげられるのじゃないかと思うのでありまするが、その点、学術的な立場から、あるいは何かそこに共通点、総合点は見出し得ないものかどうか。しろうとでありまするが、ひとつ両者から、あるいは高木先生が推進本部長と所長というお立場であると承っておりまするから、その点をひとつ御説明いただければありがたいと思います。
  20. 高木昇

    高木参考人 お説のとおり、推進本部のほうで計画しております四段ロケットは、一段目、二段目はミューロケットより大型にしたものでございますので、これは技術の延長として早急に開発できるだろうと、こう考えておりますが、三段目、四段目に液体燃料ロケット、あるいはプラスチックの筒を持ったロケットを載せよう、こういう計画と、東京大学のほうは、大きさは違いますが、三段目、四段目も全部固体である。その辺がどちらか一緒にならないかという御質問かと考えております。  東京大学のほうでは、全部、三段も四段も固体で、人工衛星に必要な速度を的確に出すこと、あるいは方向を曲げることなどもできると信じてやっておりますし、科学技術庁のほうは、数年来液体燃料ロケット開発しておりまして、現在もその三段目、四段目に載るようなロケットを続けて研究しております。したがいまして、それを三段、四段に載せるということについてはそれほど経費が重複しないと思っておりますのと、いままでに研究投資をしております。ただ、実際に三段目、四段目にどちらを採用するか、推進本部のほうで行ないます大型ロケットがどちらを採用するか。これは今後一、二年の研究開発を進めて、いいほうをとろう、そういう考え方でございますが、この点は、もしも四十五年を目標にとか、目標を切りますと、どうしても研究としては、四十五年度までやって失敗しちゃった、うまくいかなかった、それじゃ、ほかの方法を取り入れようとなりますと、それからまた三年ぐらいおくれてしまいますので、現時点では、その二つの考え方を並行に進めて、どちらかいいほうを採用する。そうすると、採用されなかったほうは、あるいはむだになるというおしかりもあるかもわかりませんが、しかし、それはまたそれでいろいろな技術の習得が得られますので、また次の時点にはそのほうが進むかもわかりませんので、基礎技術としては、液体燃料ロケットは元来非常に高価である、非常に費用がかかるといわれておりますが、幸い三段、四段くらいの小型のものでありましたら、それほど費用がかかりませんのと、こういう技術も培養しておいて、将来は固体燃料にまさる液体燃料——ちょっと夢のようなことを考えておりますが、アメリカがようやく実用化しました液体水素、液体酸素の組み合わせなどは、今後の宇宙開発として当然ねらわなくちゃならないのじゃないか、こういう遠い考えもございますので、二つの研究手段をここしばらく並行して進めさしていただきたい、こう考えております。
  21. 登坂重次郎

    ○登坂委員 宇宙開発という大きな高遠な理想に向かって、これからわが国もその第一歩を進めてまいるのでありますから、諸先生方の御努力というものには、またわれわれも感謝せねばならぬのでありまするが、今日、世界はいろいろな面において宇宙利用するものが多くなりました。原爆といい、あるいは通信衛星といい、あるいはその他の諸現象のすべてをとらえようとする世界的な競争場裏の中に立っておるのでありまするから、われわれといたしましても、できるだけ予算措置なり、そういう学者のいわゆる研究に対しましてはあまり御不自由をかけないようにせねばならぬと思うのであります。諸先生方におかれましては、ひとつ十分御研究成果をあげられまして、一日も早く所期の目的を達成せられて、宇宙開発がわれわれ国民生活の平和利用に役立つよう特段の御努力をお願い申し上げまして、質問にかえさせていただく次第でございます。  委員長、ありがとうございました。(拍手)
  22. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 加藤清二君。
  23. 加藤清二

    加藤(清)委員 両先生に感謝申し上げると同時に、私は、この際、委員長のお許しを得て、国民が素朴に考えている、素朴に疑問を持っているという点について、二、三御解明を願いたいと思います。  第一番は、日本人工衛星は一体何を目途としているかということは、先ほどの御説明でわかりましたのですが、はたして平和利用だけであるのか、それとも軍事目的が加味されるのではないかという点でございます。  具体的にお尋ねしますが、防衛庁よりの共同研究の申し入れないしは資料要求等々がございましたか、ございませんか。
  24. 高木昇

    高木参考人 まず第一に、宇宙開発審議会が発足いたしましたときから、大原則といたしまして、平和利用研究の公開、国際協力、こういうふうにうたわれておりまして、私たち科学者は、もちろんそのことを正しく思い、そういうつもりで研究してまいりましたので、人工衛星の時代になりましても、たとえば科学衛星実用衛星のように完全に平和目的でございますので、この辺は御信頼をいただきたいものと考えております。  第二点は、防衛庁からの要求という御質問でございましたが、絶対にございませんでございます。私たちの平和利用技術というものは、防衛庁とは全然無関係でございますことを申し上げたいと思います。
  25. 加藤清二

    加藤(清)委員 お説のとおり、宇宙開発審議会の会長兼重さんの答申ですね、それによれば、大原則が平和利用であるということは確かにうたわれておるわけでございます。ところが、これが共同研究研究の公開等々から、アメリカをはじめとする他の国に軍事目的に利用されるおそれがあるのではないかという素朴な疑問があるわけでございます。この点について、所管大臣でありまする文部大臣にお尋ねいたします。
  26. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほども参考人が申しましたように、わが国宇宙開発ということは、あくまで平和利用ということに徹しておるわけです。したがいまして、兼重さんがやっておる宇宙開発審議会、これが宇宙開発の最高的な審議会でございますが、これも平和的に進むのだということをはっきりしております。私どもとしましても、あくまで平和利用のためにやる、こういう原則を掲げて、防衛庁からは何らのそういうことに対する希望も承っておらなければ、相談に乗ったことも絶対ないのでありまして、今後も平和利用のために、あくまで宇宙開発をやっていきたい、かように考えております。
  27. 加藤清二

    加藤(清)委員 私の質問は、アメリカをはじめとする諸外国に、日本技術が軍事目的に使われるおそれはないかとお尋ねしておるのです。
  28. 有田喜一

    ○有田国務大臣 アメリカ人がどういう観測をしているかは私は知りませんけれども、私は、そういうようなことに利用されないように進めていきたい、こういう考えでおります。
  29. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではもう一つ日本開発されましたロケットその他が諸外国に輸出された場合、それが軍事目的に利用されるおそれなきにしもあらずという考え方がございます。そういう場合、それをチェックする方法がありやいなや。大臣のおっしゃるとおり、平和目的以外には使わせないというその目的を達成させるための具体的方策いかんということでございます。
  30. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私は、そういうようなことにならないと思うのです。チェックする方法はどうかといいますと、たとえば鉄でも、平和利用のために鉄の輸出をやりますが、それが軍事目的に使われるかどうかそこまで洗いよると際限ないのです。したがいまして、私は、日本宇宙開発技術というものは、そういうものには使われない、こういう考えであくまで進んでいく。専門的なことがありましょうから、ひとつ糸川教授なりその辺から、多少平和利用のものと軍事利用のものと違ってくると私は思うのですが、そういうことをひとつ技術的な立場から、参考人から答弁させていただきたい、かように思います。
  31. 高木昇

    高木参考人 いまの大臣の御説明にちょっと補足させていただきます。  観測ロケットは、コスパルという宇宙空間研究委員会という国際会議がございまして、それに登録されておりますので、たとえば前回ユーゴに輸出したような場合、あるいはインドネシアに輸出した場合には、何基そちらに行っているということが明らかになっておりまして、それが一基打ち上げるごとに報告が出されますので、インドネシアの場合は、三基打って七基がいま残っているということを私たちも知らされておるようでございます。三基実験報告が出た。もともとそういうものは前回の国会でも御議論がございましたとおり、平和利用につくったもので、転用するということが困難である、できない、そういうようなことが御了承がいただけたかと考えておるのでございます。軍用の場合には、推薬も、非常に速度の早いものが必要である。私たちのほうは、空気抵抗をなるたけ少なくする意味において、速度のおそくて長続きするような燃料を使うなど、いろいろそこに目的によってロケット設計が全然違うんだ、こういうことでございます。  それから、先ほど諸外国に漏れないかというお話でございますが、ロケットのようなものは、寸法は写真が出ますのでわかりますけれども、このほうは設計の上でそうむずかしい問題じゃございませんで、むしろあらゆる部分に特殊材料を使って——特殊材料が国産でできないと、何と申しますか、高く上がらないような事情もございまして、そういう意味で、全部国産でできるということには、バックに非常に平等に育った産業が必要でございます。日本は幸いその基盤に恵まれたためにできたと、こう考えていいかと思います。ただ、写真なりあるいは寸法なりあるいは推薬の成分も、いまほとんど世界周知でございまして、要は、やはりそういう国産技術レベルということになるかと思います。この点が十分気をつけられておれば、私は心配ないんじゃないかと思うのですが、あまりこういうことをよく知りませんので……。
  32. 加藤清二

    加藤(清)委員 実は、軍事目的にそのものが使われる場合は、国際法に規定されておりまするとおり、紛争国へは輸出ができないようにちゃんと国際法でできているのです。同時に、日本の貿易管理令によって、これもまたチェックすることができるようになっておるのでございます。したがって文部大臣としては、大原則、平和利用、これをほんとうに実行に移す、他に流用しないというためには、行政的にもそのチェックする具体的方策を考えておいていただかないと、黒い疑いが持たれるようになる。これはもうすでにそういう実例があるのですから、ここをひとつ十分御研究の結果、あなたの目的が達成できるよう、国民が安心してこのロケットなり人工衛星研究開発するに協力できるような行政措置をしっかりととっていただきたい、こう思うわけでございます。それをやれますか。
  33. 有田喜一

    ○有田国務大臣 もとより平和利用という見地から進んでおりますから、そういうことに対しては、そういう問題が起こらないように善処していきたい、かように考えております。
  34. 加藤清二

    加藤(清)委員 二番目にお尋ねしたいことは、先般行なわれておりました四段ロケットの初実験についてでございます。第一号衛星というので、国民はこれの成功を心から期待し、小学校の子供までこれに対してたいへんな希望をかけておったわけでございます。ところが、新聞その他の報道によりますると、失敗という字のほうが大きく国民にアピールしたようでございます。そこで、はたして失敗であるかないかは、ただいま糸川教授から御説明がございまして、九つの目的のうちの六つは達成したのだということでございました。これはけっこうなことだったとしみじみ思ったわけでございまするけれども、その九つの目的のうち六つ達成されたといううちの、一つ、二つを国民にわかりやすく御説明願えればけっこうだと思います。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  35. 糸川英夫

    糸川参考人 九つ全部申し上げたいと思います。  第一が、四段式ロケット日本で初めてやりましたので、四つのエンジンの点火並びに燃焼が正常にいくかどうかであります。  二番目は、第四段ロケットに将来人工衛星に必要な姿勢制御をします、姿勢を変える装置がついておりますが、そのテスト。  三番目が、電離層の中の電子温度、これは電子の運動の速度でありますが、それの水平方向分布、つまり完全な環状道路にはいかなくとも、ハワイの上ぐらいまでの水平方向の分布であります。つまり半分環状道路くらいの観測ができないか。  四番目が、将来、人工衛星軌道観測しますのに、日本は植民地があるわけではありませんので、外国にステーションを置くことが非常に困難です。できるだけ国内だけで軌道観測できる技術開発したい。それが開発されましたので、そのテストであります。  五番目が、風が吹いていても、吹いていなくてもロケット軌道が全然変わらないようにする技術ができないかどうかという検討。  それから六番目が、新しい時限装置、時計装置であります。  七番目が、ロケットにスピン、回転を与えたり、それをとめたりする技術。  八番目が、電波を下から送りましてエンジンの火をつけるしかけであります。  九番目が、搭載しました計測器に黒と白の塗料をだんだらに塗りまして、太陽から来る温度の調節をする技術。  この九つでございまして、そのうち、資料が得られましたのは、一番の四段式ロケットが済みました。それから三番目の電子温度の水平方各分布は、ハワイが最終的に電波をキャッチいたしまして送ってきましたので、ほぼ太平洋半分、三分の二くらいの水平方向分布がはかられました。それから四番目の人工衛星軌道を追跡する新技術でありますが、これも確認されました。五番目の風があってもなくても軌道が変わらないという修正法は、たいへん優秀な成果をおさめました。それから六番目の新型タイマーも済みました。それから搭載計器の温度制御法、これは残りました。  以上六つが済みまして、三つが残りましたが、残りました理由は、意外なところで意外な事件が起こりまして、四段式のロケットでございましたが、二段目が三段目と切り離されるときに、その切り離し機構が不完全でうまくすぽっと抜けなかったらしいのであります。同じような技術は、過去六回ラムダロケットでテストされて成功しておりますのに、七回目に初めて事故を起こしました。まことにわれわれとしては意外でございましたのですが、六回やってだいじょうぶですからと思っておりましたが、七回目でどうも落ちました。それで、今度この切り離し機構を完全無欠にするために検討を続けております。  それからもう一つは、回転、スピンをとめたり、またスピンさせたりという技術がうまくまいりませんでした。これもその理由を検討しておりまして、残る三項目が十二月の実験に組み入れられるわけでございます。
  36. 加藤清二

    加藤(清)委員 ありがとうございました。失敗は成功の基でございますから、かりに失敗であったとしても、私ども国民としては、一回や二回の実験の失敗で成果を批判するというようなことは遠慮しなければならぬと思います。しかし九つのうち六つも目的が達成されたということでございますので、まことにけっこうだと存じます。特に赤道に近い基地という地理的環境、この特別な地理的環境が世界じゅうから期待が寄せられている原因だと思います。したがって、この有利な地理的環境を有効に利用なさると同時に、やがて軌道に乗せる人工衛星の根回しにしていただければけっこうだと存じます。  ここで、私予算書をちょっと見まして一つふしぎに思う点がございます。それは、人工衛星がもし軌道に乗った場合あるいは乗る前でもそうでしょうが、追跡するところの設備が必要なんですね。いわゆるトラッキング、これを先般の第一号のときにはどのように準備なさったのでございますか。これがないということは第一号は軌道に乗るという目的ではなかったではないか、こう考えられるわけでございます。もし軌道に乗せるというそれが主目的であるとするならば、それをキャッチする追跡の設備なり何なりは当然前から準備されてしかるべきだと思いますが、この点は、一体予算技術上いかように相なっておったのでございましょうか。
  37. 高木昇

    高木参考人 まことに御明察のとおりでございまして、ラムダのこの間の一号のときには、まだ正確な電波追跡の施設を持たずにやりました。と申しますのは、その施設——ただいま糸川教授が九つのうちの一つと申しましたが、いわゆるドップラー方式を使ったものの基礎実験ラムダロケットを使ってやった現状でございまして、電波追跡を本格的に行なうには、将来のミューロケット科学衛星に備えて、ただいま宇宙開発推進本部のほうから電波追跡予算の概算要求を提出しておる状況でございます。これにつきましては郵政省の電波研究所がかねがね深い研究成果を持っておりますので、基礎開発は郵政省のほうにも御協力をいただき、また東大のほうもそれに援助をするということで、推進本部のほうから、主局、副局、三局必要でございますので、三局の予算請求を四十二年度でやっておる次第でございます。  なおその前に、この方式で日本電波追跡ができるかどうかを早急にやらなくちゃいけませんので、科学技術庁の調整局の調整費と申しましょうか、それから特に研究費を出していただきまして、この秋じゅう、年度内じゅうに上を飛んでおります米国の衛星をつかまえて、それで正しくこの三カ所から軌道が出るかどうかという実験を十分いたしまして、その上で四十二年度の概算要求で本格的な設備をつくっていただく、それが完成いたしますと、初めて先生のおっしゃったように今度は衛星の追跡を自分でやれるところまでやる、こういうことになるわけでございます。そういう順序でございます。
  38. 加藤清二

    加藤(清)委員 糸川先生にお尋ねしたいのでございますが、一七、八%の確率でなくして、少なくともアメリカの先例に見るように、七、八〇%から一〇〇%の確率を予定しつつも、なおアメリカでは歩どまりを三分の一に見ておるようでございますが、それほどの予算はとれないにしても、第三号の人工衛星は時期として、どのころをめどに研究が進められておりますかということと、ほんとうに乗せようというその時期に見合って追跡をはじめとするその他のあまたの設備が、アメリカに依頼せずに日本独自の設備で完備できるというそのめど、それをひとつ伺いたい。
  39. 糸川英夫

    糸川参考人 最初の御質問の時期の問題でありますが、いわゆる科学衛星は四十三年の三月から四月を目標といたしまして、このことはすでに国際会議で外国にもたびたび通告してあることでございます。したがって、追跡装置が完成いたします時期は、来年度中、四十二年の末までに、人工衛星追跡装置を、科学技術庁宇宙開発推進本部のほうでやっていただかなければならないわけでございます。  補足的な説明でございますが、本格的な科学衛星であるM人工衛星の時期より前に、ラムダロケットを使いました。これは飛行機でいえば練習機みたいなものでありすが、それの試験飛行みたいなものが来年度中に行なわれる予定でございます。今年度中に、先ほど申しました根回しと申しますか、環状道路工事で申しますと、基礎工事をやりまして、来年中には開通式を一ぺんやって、少ない自動車でも一ぺん通してみる、そして四十三年の初めに本格的な人工衛星をやる。  それから追跡装置でございますが、アメリカの追跡局に依頼することを全然考えておりません。それは、アメリカが追跡装置をつくりましたのは、いまから十年前でございまして、技術としてはそう新しい技術ではございませんので、私どもは、日本で私どもが開発している技術のほうが新型だと思っております。その新型の装置によりますと、世界じゅうに追跡基地を置く必要がなくなるのでございます。アメリカが十年前に考えた追跡装置ですと、世界じゅうに追跡ステーションを置かなければ軌道が得られなかったのでございますが、その後十年間にたいへんな技術進歩がございまして、ことに先ほど高木教授からもちょっと御説明がありましたドップラー方式という新しい方式を日本開発いたしましたが、これによりますと、日本列島の中に三カ所ステーションがあれば、それでいわゆる楕円の六要素、軌道要素が全部観測できますので、外国が好意でやってくださる分には、私どもはそれまでもノーサンキューと言うつもりはございませんけれども、こちらからお願いするというようなことは考えておりません。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 東大研究所で行なわれまする人工衛星の打ち上げにもかかわりませず、その整備されなければならぬ設備科学技術庁のほうで行なわれるということでございまするので、特に両所を監督していらっしゃる大臣に、ここらあたり重複なり予算のむだづかいのないような措置をよほどお願いしたいと思います。その追跡装置の四十二年度予算が四十九億何がしになっておるようでございますけれども、これがつかないと、いまの人工衛星打ち上げに支障を来たすと思いますが、これについて大蔵大臣はどうお考えでございますか。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ昭和四十二年度の予算につきましては検討はいたしておりません。きょうも少し勉強させてもらいましたから、よく検討いたすことにいたします。
  42. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは過去の予算でお尋ねいたしまするけれども、世界の花形の人工衛星についての予算に対して、大蔵省としてはどういう態度をとっておられまするか。予算要求額を満たしてやろうとしていらっしゃるのか。やはりほかの予算と同じように大なたをふるって削ろうとしていらっしゃるのか。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 宇宙開発につきましては、御承知のように宇宙開発審議会があります。それから答申も得ておるし、長期構想というものが打ち出されておるわけであります。四十二年を目標にいたしまして科学衛星の打ち上げをやろう、また、四十五年を目標にして実験衛星の打ち上げをやろう、こういうことになっておるのです。四十五年の先々までのことはまだ大蔵省としてもそう深く検討はいたしておりませんけれども、さしあたり四十二年という問題があります。これは相当進んできておるわけでありまして、技術的にもかなり確信が持てるという段階にきておるというふうに承知をしておりまして、大蔵省としてもこれには協力をしなければならぬ。科学技術、特に宇宙開発は、今後の世界の一つの傾向として各国ともその開発に力を入れなければならぬ問題です。わが国におきましても国力に応じた協力をしなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  44. 加藤清二

    加藤(清)委員 国力に応じた協力をするということは、これは当然なことなので、私が承りたいのは、そのことばの協力はわかりまするが、はたして要求された額が水増しであれば別として、水増しでない場合には、予算少なきがゆえに研究成果がおくれる、ロスが多くなるということがあるわけでございまするが、一体水増しがあると見てやってみえるのですか、それとも、ないと見てやってみえるのですか。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 各省大臣が責任をもって要求される予算でございますから、水増しがあろうなどとは考えません。しかし、総合的に検討いたしまして、これは四十二年で実行するのがいいのかどうか、そういう問題もあります。また、これは効率的にやろうとすれば、こういう方法もあるのじゃないかというような意見の交換も、当然これは行なわれるわけでございまして、それらの総合的検討の結果、適正な予算を盛り上げる、かように考えております。
  46. 加藤清二

    加藤(清)委員 適正な予算というのは、念を押すようでございまするが、要求額の何%くらいが適当でございますか。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 一〇〇%ということもあります、あるいはもっとずっと低いということもありまするが、とにかく国家予算でありまするから、最もむだなく効率を上げるにはどういうことか、こういう見地から最終的な金額を科学技術庁との間できめていく、それを閣議にはかる、かようなことであります。
  48. 加藤清二

    加藤(清)委員 閣議のことではなくて、あなたの腹を聞いておるのだ。適当に効率を上げるための予算、それが過去を調べてみますると、要求額の六〇%前後です。これでほんとう研究ができるでございましょうか。ほかはいざ知らず、水増し要求のあるところがあるかもしれませんが、少なくとも学者の出したのに水増しがあるとは私は思わない。思えない。その結果どうなるかといったら、頭脳は非常によい。ところが、その頭脳がアメリカに行ってしまう。技術はある。留学生までが来ている。よそへ製品が売れるほどの高い評価を受けている。にもかかわらず、ないもの、足りないものがある。それは予算だ。その結果、研究がおくれる、ロスが出てくる。有効に使わせるということは必ずしも削るということだけではないと思うのです。六〇%程度が適当でございましょうか、それを大臣……。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 要求額に対しまして最終の決定のパーセンテージ、これは私は事案によりましていろいろあると思うのです。ひどいのになればゼロというやつもあるし、また場合によれば一〇〇%をこえるというものも出てくる。要はその内容にある。内容は先ほど申し上げましたような精神で関係省との間で協議をする、こういうことでございます。
  50. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではもう一つ両方の長兼ねていらっしゃる高木さんにお尋ねしますが、ことしも、また去年おととしのように六〇%に削られた場合、いま糸川先生のおっしゃられました四十三年三月を目途に、はたして人工衛星を打ち上げて、そしてこれを完全に追跡キャッチすることができるのか、できないのか、この点をお尋ねいたします。
  51. 高木昇

    高木参考人 たいへんむずかしい御質問をちょうだいいたしました。本年度推進本部のほうからは、四十二年度に完成すべく電波追跡のもの、これはトータルで四億でございましたが、出してございます。それから東大のほうではミュー科学衛星が四十二年度中に上がるための予算、こういうことで出してございますので、できれば、ぜひ要求額をいただきたいとは思っておりますが、そういう準備で進んでおるということでございます。
  52. 加藤清二

    加藤(清)委員 最後に、この実験衛星段階になりますというと、建議によれば通信、放送、気象、航行、測地、電離層観測と、それぞれの衛星を打ち上げなければならぬようでございます。それがいまいう東大研究所、それから科学技術庁、通産省、運輸省、郵政省、建設省、こういうふうに広範にまたがっておるようでございます。こうなってまいりますと、素朴に考えまして、予算をふやすことはいいけれども、どこかにロスがあるような気がする、どこかに重複したものがあるような気がする。異質のものならば別ですけれども、同じものを各省にまたがって投資するというようなことは、過重投資のそしりを免れないことになるではないかという意見が巷間に伝えられているわけでございます。したがって、この五つの省にまたがっておりまするものを総合して統一する。研究までがビッグサイエンスという段階になっておるようでございますので、行政的にもビッグ行政をしなければならないではないかと考えられまするが、この点大蔵大臣としては予算上どうお考えでございますか。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 予算を査定するにあたりましては、各省間の重複がないようにということを旨としてやっておること、これはもちろんなんです。ただ各省のやっている仕事にはそれぞれ特色があります。特にこの問題で重要なのは科学技術庁と文部省、つまり東大でございますが、これは東大のほうは基礎的な研究だ、科学技術庁はその技術化の問題を担当するというような、それぞれの役割りがありますので、分かれ分かれて予算の要求がくる。これはまたそれなりに意義のあることだ、こういうふうに思います。しかし、これがばらばらになってはいかぬ。予算の編成にあたりましても、重複がないようにというので、この五つの機関の総合検討をいたすわけでございますが、特に重要な東大宇宙開発推進本部ですね、これとの間の調整、これには気をつけなければならぬというので、先年来両方を同一の高木先生でお願いをする、こういうふうにして、あなたの御指摘のような問題が最も効率的に実行されるようにということをいま行なっておるわけであります。その結果もまことに円滑に行なわれておる、かように私は認識をしております。
  54. 加藤清二

    加藤(清)委員 最後に、その予算の効率をあげるというたてまえから、削るべからざるものを削っては相ならぬ、六〇%ではやりきれないだろうということが一つと、それから、各省にまたがるものを総合するということが一つ、それからもう一つ問題は、予算の編成の方法が単年度予算ですね。ところが、この研究というものは、こま切れで毎年ごっきりにいくというわけにはいかないだろうと思います。大学の講義なら毎年ごっきりでいいでしょうけれども、研究はあくまで継続前進のはずです。したがって、予算もこれに見合わせるために必要なものは継続予算とさせる。すでにその前例は防衛庁の中にちゃんとあるはずでございますから、継続予算にする、こういう配慮が最も親切なやり方ではないかと思いますが、これについて大蔵大臣はどうお考えですか。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま継続費という制度は制度的には存在します。しかし、これは非常に例外的に扱っているのです。御承知のように、防衛庁の艦船整備に適用しているわけですが、この艦船整備、これは計画ができて、もう末端までの設計までできるのです。それを注文に出す。これは三、四年かかる一つのものをこま切れでというわけにはなかなかまいらない。そういうようなことで、例外的にこの分だけを継続費にしておりますが、宇宙開発のほうはどうだ、こういうことを考えてみますと、これは技術開発の結果が、また計画の変更を呼んでいくというような性格のものでありまして、これは継続費とするには適当でない、こういうふうに考えておるのですが、事態が円滑に推進されるためには、あるいは債務負担行為、そういうものを適用いたしますとか、あるいは計画の内々の各省間のプログラムをきめていくとか、いろいろなそういう手段も用いまして計画が年次的にうまく運営される、実行される、こういうことを期していきたい、かように考えます。
  56. 福田一

    福田委員長 川俣清音君。
  57. 川俣清音

    ○川俣委員 この際、一問だけお尋ねをいたしたいと思います。  主として大蔵大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、私は糸川さんの研究所へ行ってみまして、一番感心をいたしまして深く反省もいたしましたのは何かというと、糸川さんが、あるいは全部の研究員が、非常な大きな夢を持って研究をされておるというところに非常な感激を覚えたのです。ところが、大蔵省というところは元来夢を持たないところです。政治家に夢がなくなってまいりますと、今日のような問題が発生してくると思います。今日のような事態が発生したということは、大蔵省流が横行しておる結果出てきたのではないかと思うのです。効率的だとか、経済的だとか、おそらく一番効率的に利用しようと思って問題になった点がたくさんあると思うのです。いま問題になっておる点はみなそうでしょう。経済的だとか、効率的だとか、この風潮は大蔵省が生んだ欠陥だ、私はそう思うのです。夢を持たせないところにこういう問題が起こると思います。政治家に夢を持たせないから、今日のような問題が起きているのです。あなた方が子供を育てる場合でも、夢を持たせなければどうなるかということは痛切にお感じになっておるところだと思います。ところが大蔵省は、効率的だとか、能率的だとか経済的だとか、それだけにとらわれておりますというと、こういう研究はむだに見える。私は、こういう研究は失敗をしたところでむだではないと思う。研究というものはそういうものだ。その夢をいつか実現しようとする努力が初めて人間の進歩になってあらわれると私は確信をいたします。世の中はかくあるべきだとさえ思う。どうせ飛行機で行くのだからみんな乗せていこう、選挙民も乗せていこうなんというところに、効率的なつもりがあるでしょうけれども、これが大きな欠陥を生んだのじゃないですか。したがって、大蔵省の役人が一番汚職やなんかの相手になっておるじゃないですか。全体の公務員の汚職の実績を調べてごらんなさい、大蔵省の職員じゃないですか。一番経済的で効率的なんて考えるから、こういう結果が生まれてきた。あなたは首を振るけれども、あなたがいいところは、夢を持っておって、何か実現しようというところに私は期待を持つのです。党風刷新なんかやったのは、あれは夢でしょう。私は、そこにあなたの値打ちがあると思うが、大蔵省へ再び入るというと、夢を忘れたところに問題が起きている。そういう意味で、ことにこういう科学については、私非常に期待をいたしておるのは、この結果、私は農業の大きな改革ができると期待をいたしておる。太陽と太陽熱がなければならない、水がなければならないという農業から一歩前進できるような農業が生まれるのじゃないかという大きな期待を持っておる。そういう夢を持っておる。それを大蔵省は、国民の金だから査定をしなければならぬ。もちろんのことです。だが、国民に夢を持たせるような予算を組んでなぜ悪いのです。あまりに現実化し過ぎておる。そこに退廃が生まれてくるのじゃないですか。そういう意味で、私が非常な感激を持ってきたこの夢を何らかの形で実現させることが、私は政治家の任務だと考えてまいりましたが、これに対する御意見を伺っておきたい。やはり夢を実現させるということも大蔵省の大きな任務だということをお考えになっているかいないか。おれば、それを現実にあらわしていただきたい。こういうことであります。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 国家が夢を持たなければならぬ、これは私はそのとおりだと思います。また、国家の運命を推進していく政治が夢を持つ、これももう当然であります。しかし、夢というのは一つじゃない、たくさんあるのですから、これを一度に実現しよう、これはから夢になってしまう。私どもは、この夢を着実に実現していくというために努力をいたしておるわけであります。この努力しようとする精神はぜひとも御理解を願いたい。
  59. 川俣清音

    ○川俣委員 幾つも夢を持つ、たくさん持っているほどいいじゃないですか。幾つも夢があるからだめだなんというのは大蔵省流なんですよ。夢がたくさんあるほど好ましいじゃないですか。それをどう実現をしてやるかということが大蔵省の任務だ、私はそう思う。夢を実現できないような大蔵省なんというものは、汚職の巣だというふうに私は理解いたします。文部省もそうなんです。夢を実現させることができなければ、文部省の使命というのはないですよ。したがって、文部省の予算を見るというと、いつもあれだこれだといって削減されるのは、夢を実現しようとする努力がないからなんです。子供に、学生に夢を持たせるような教育をしてごらんなさい、青少年教育なんというのはそれで終わりですよ。そんな内閣であればやめてしまったほうがいい。国民に夢を与えないような内閣なんというものは、存在の理由はないですよ。そういう意味で、せっかくあなた党風刷新なんかやって実現できなかったのは何かというと、夢があなたに少し足りなかったからなんですよ。これでは失敗をするであろう、あれじゃどうだろうなんてあんまり考え過ぎるから、夢なんというものは実現できない。夢というものは、実現できるかどうかわからないところが夢というのですよ。できないかもしらぬけれども努力してみようというところが夢じゃないですか、あなた。大蔵省がもう一ぺん考え直さなければならぬのはそこなんです。今日の問題もそこに発生しておると私は理解をして、あえて大蔵大臣にこの点を指摘し、糸川さんが夢を実現されるために、私は努力をしたいと思っておるのです。糸川さん、あまり現実にとらわれないで、大いにあの夢を実現するために努力をしていただきたい。それに報いるのがわれわれの任務だと考えておりますから。そこへいくと、やはり高木さんは少し行政官になり過ぎておるのです。大蔵省に少し災いされ過ぎておる点があると思う。私はそういう意味——いや、高木さんの技術を私は疑っているのじゃない、少し行政官になり過ぎている傾きがあるのじゃないかと見るのでございまして、それが調整の役としては当然かもしれませんけれども、もう少しやはり所長となるというと、所員の夢を実現させるという方向に行かなければならないのじゃないかという、参考人にまことに失礼な言い分でございますけれども、私の見た感じをそのまま申し上げて、答弁は要りませんけれども、文部省に対する苦言といたしておきたいと思います。  大蔵大臣はぜひこれを実現するように——あまりにも現実的過ぎますよ。こういう研究というものは夢なくして研究なんかできぬ。効果が上がるか上がらないかという研究なんというものは、そんなものは価値のないものです。それはちょうど商売人がやっておると同じです。大蔵省はあまり商売人になり過ぎておる。もう少し人間の基本的な問題に取り組む姿勢もなければならぬ。それだからルーズになっていいとは言いませんけれども、やはりそのくらいな姿勢が必要じゃないかということを、意見として申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  60. 福田一

    福田委員長 次に、小平忠君。
  61. 小平忠

    ○小平(忠)委員 時間の都合もありますので、簡単に高木糸川参考人並びに大蔵大臣に、二、三点お伺いしたいと思うのであります。  宇宙開発につきましては、世界各国が近代科学の粋を尽くしまして、その優位を競っておりまする今日、わが国におきましても、東大中心になりまして、特に高木所長糸川教授のなみなみならぬお骨折りによりまして、非常に画期的な実験研究成果をあげておられることについて、敬意を表する次第であります。  実は、先般当委員会におきましても、福田委員長を団長に、われわれ各党の理事も現地に伺いまして、つぶさに実情を見せていただいたのであります。さらに、本日両先生が参考人として本委員会においでいただいて述べられた内容につきましても、全国民がこの宇宙開発について理解を持つということにおいても、私は重大な意義があると思うのであります。そこで、いま前委員がいろいろ質問されましたことと重複しないために、私二、三点お伺いしたいと思いますのは、第一点は、現在の鹿児島の内之浦におきまする宇宙空間観測所において研究実験を進められておりまするもので、現在の実験段階、すなわち実験衛星でありますが、ミューロケットで四十五年度に大体実験衛星を完成いたしましたというように述べておられるのでありますが、そのミューロケットの性能について、もう少し詳しく、どういった性能で、この一発の打ち上げにどのぐらいの予算が伴うかというようなことが、きわめて国民の関心事でもありますので、そういう点ちょっとお尋ねしたいのであります。
  62. 糸川英夫

    糸川参考人 ミューロケットは、実験衛星のために開発されるのでございませんので、いまのところ、科学研究用のものに考えておりまして、四十五年から始まります実用実験衛星のほうは、新しく別のロケットの構想が始まると考えております。四十二年の終わり、つまり、暦年で申しまして、昭和四十三年の初旬から始まりますミューロケット実験あるいはそれによる人工衛星でありますが、ミューロケットを、先ほど申しました放射状道路の観測、つまり観測ロケットとして使いますと、地球の半径の約三倍ぐらいのところの宇宙まで調査ができます。これはまだいまの科学者の要求からは少し足りないのでございます。地球の半径の四倍から五倍ぐらいのところに実は太陽のガスが押し寄せてまいります、それを地球が防ぎとめている壁があるといま理論的に想像されておりますので、それを観測するために、できれば実はミューよりはもう少し性能を上げなければいけないのでありますが、とにかく地球の半径のほぼ三倍の高さにまっすぐ上げます。上がりましてから環状道路のほう。人工衛星の打ち上げ用として使いますと、初期のものは七十キログラムの人工衛星でございまして、これは科学衛星としてはかなり大型、と言ってはおかしいですか、少なくとも小さいものではございませんので、アメリカ、フランス、英国などが計画している人工衛星とほぼ同じ、もしくはそれより少し大きいくらいの性能を持っておりますが、それからあと二、三年たちますと、つまり四十二年、四十三年、四十四年、四十五年と、この三カ年ないしは四カ年間に性能がだんだん向上されまして、二百キログラムぐらいの人工衛星から、最終的には四百キログラムぐらいの人工衛星を五百キロメートルの高さの円軌道に入れる能力がございます。アメリカの例で申しますと、アメリカにスカウトという名前の人工衛星打ち上げロケットがございますが、これよりは約倍ぐらい性能がよろしいわけでございます。それからさらに性能を向上すれば、四十五年以降でございますから、これは五年より先の話でございますが、地球の引力を脱出する速度を持ち得るかもしれないのであります。ということは、月あたりの宇宙空間の調査までに使えそうだということでございます。ミューロケットは、一発の打ち上げ費約三億三千万円、それに比べまして、ラムダロケットのほうは、人工衛星を入れますと、約一億円前後でございますから、三分の一ぐらいの費用になります。
  63. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ありがとうございました。そこで、ただいまの実験が、実験衛星として四十五年度目標に完成されるというのでありますが、その後にやはりこれを実用衛星として、人工衛星を、さらに人間衛星といいますか、人間を乗せて軌道に乗せるというようなところまで進めるために、ただいまの東大の先生方が研究されておる段階においては、こういった面は、実用面は役所がかわるのでございましょうが、しかし、いま研究されておる段階において、さらにこのミュー型から大型になった人間衛星ということになりますと、伺いますれば、現在のミュー型、いわゆるM型ですね、これよりもN型、いわゆるニュー型と聞いておるのですが、こういったロケット開発を進めていくのに何年ぐらいかかるのか。実際に人間を乗せて軌道に乗せる人工衛星日本が打ち上げるというようなことをこれから進めていった場合に、どのぐらいの年月あるいは予算を必要とされるのか、そういうようなことを、でき得ましたらお聞かせいただきたいと思うのであります。
  64. 糸川英夫

    糸川参考人 いまのところ、日本で、あるいは宇宙開発審議会で議論されておりますのは、実用衛星どまり、つまり通信衛星ですとか放送衛星ですとか航海、測地などの衛星でございまして、人間を乗せる人工衛星計画はいまのところ全然ございませんのですが、なくても、かりに日本の国家がこういうものを必要とするから、人間衛星を考えるとすれはどれぐらいの年数とどれぐらいのお金がかかるかという御質問と解釈しまして申し上げますと、まず、年間どんなに安く見積もっても数千億から一兆円ぐらいかかるだろうと思われます。年数から申しまして十年間はかかると思いますので、いまのところ、私どもは、しろうとながら、日本の国力を考えまして、人間衛星は少なくともここ五年以内の間ではわれわれの議論の対象にならないと考えて、全然考えておらないのでございます。
  65. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ありがとうございました。  時間がありませんからこの辺で参考人の両先生に対する質問を終わりたいと思いますが、先刻の御意見の開陳なりあるいは同僚議員の質問などを通じて明らかになったように、世界の宇宙開発について、人間衛星一つ取り上げてみても、なかなかたいへんなことであります。しかし、これは人間を打ち上げて宇宙軌道に乗せて回せるとかいう問題だけでなく、やはりこの宇宙開発という面においては、現在研究を進められている面においては、将来日本宇宙科学の平和利用という面において非常に重大な役割りを果たしておると私は思うのであります。そういう観点から、大蔵省で、現在各省庁がこの宇宙開発について予算要求をしている、これを総合的に扱わねばならぬ、審議会もいろいろ検討しておる、同感であります。そこで、ただいま各省庁が独自に出しておる予算要求の実態はどうなっておられるのか。これに対して、先ほど加藤委員の質問に対して大蔵大臣も述べられましたけれども、もう少しく各省が要求している実態をお聞かせいただければ幸いと思うのであります。
  66. 谷村裕

    ○谷村説明員 科学技術庁、文部省はじめ運輸省あるいは郵政省等々からの要求も参っておりますが、ただいま私の手元にその各省要求の具体的な数字を書いたものを持っておりませんので、必要とあらばすぐ取り寄せますが、いかがでございましょうか。
  67. 小平忠

    ○小平(忠)委員 主計局長の手元になければよろしゅうございます。  そこで、私は大蔵大臣あるいは文部大臣に希望意見を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  私は、先般福田委員長におともをして現地に参ったときも、東大の若い科学者は情熱を込めて、大きな夢を抱いて一生懸命にやっております。この実態は、国民全体が理解を持って、この実験実用に移し、宇宙開発が平和利用のために役立つということは、国家的な意義もありますので、来年度の予算の編成にあたっては、これを最も重点的に、実用的に、そして国民が納得するという段階において、この予算の編成については最大の配慮をしていただきたい。そのことに私は本日のこの委員会の意義があると思うのです。このことを両大臣にも強く要請いたしまして、私の質問を終わる次第であります。
  68. 福田一

    福田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  参考人各位には、御多忙中のところ長時間にわたり御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞ御退席になってけっこうでございます。(拍手)      ————◇—————
  69. 福田一

    福田委員長 引き続き、これより万国博覧会の問題について質疑を行ないます。野原覺君。
  70. 野原覺

    ○野原(覺)委員 時間の関係もございますから、私は簡明率直に担当の三木大臣はじめ大蔵大臣、厚生大臣、自治大臣等に万博についてお尋ねしたいと思うのです。実は、この問題は、もとより予算委員会で取り上げなくても、他の委員会でも論議されるべき筋合いのものでありますが、予算委員会は総括の常任委員会であります。したがって、単に通産行政の上からだけではなくて、昭和四十五年の三月十五日から九月十三日まで六カ月間行なわれる万国博覧会についての今後の計画並びに実施というものについて、私どもは大きな関心を抱いておりますから、福田予算委員長を先頭に、実は八月五日に大阪に行って、現地を詳細に視察したのであります。視察をいたしまして、左藤大阪府知事、中馬市長あるいは市川商工会議所会頭等とも十分な懇談も遂げた上での私の質問でございますから、これは単に社会党の質問と聞き流してもらっては、実ははなはだ迷惑であります。午後一時半になりますと、きょうは総理大臣がここに出られて、政局をゆるがすような論戦がここで展開されますからして、午前中の質問はたいしたことはないのだとお考えでもしあったら、これはたいへんなことになるということを申し上げて、私はこれから質問をいたします。  まず、担当大臣の三木さんにお尋ねいたしますが、万国博覧会というのは、名前のとおり万国博覧会です、国際的な博覧会にすべきです。これについて万国がことごとく参加できるように、たとえば中共、北ベトナム、北朝鮮、日本が承認していない共産主義の国々も、この博覧会には参加せしむべきです。特にアジアで最初の博覧会でございますから、私の見解としては、アジア・アフリカの平和を昭和四十五年のこの日本における博覧会において招来するのだ、そういう意気込みで日本政府は当たるべきです。その辺の御所見をまず承っておきたい。どう考えておりますか。
  71. 三木武夫

    ○三木国務大臣 参議院の委員会出席をいたしておりまして、いま委員長から御質問の要旨を承ったのでありますが、AA会議のアジア、アフリカの発展途上国の国々も多数万博には招請すべきであるという御意見、われわれもさように考えて、国交を回復しておる国々全部、これはアジア・アフリカ諸国ほとんど大部分と申してもいいわけでありますが、百二十数カ国に対して招請状を発送いたして、これからは政府代表の手によって、招請状ばかりじゃなしに、出向いていって積極的に参加を勧誘する考えでおる次第でございます。
  72. 野原覺

    ○野原(覺)委員 三木さん、私が尋ねたことは、あなたが実はここに遅参をされてきわめて遺憾なことですけれども、国交を回復していない国、たとえば中共、北ベトナム、北朝鮮、こういうような日本がまだその国を承認していない、そういう国々の参加をも求めなければ、実は今度の博覧会のテーマになっておる「人類の進歩と調和」とは言えない。だからして、未承認国についても参加が求められるように日本政府としては考えるべきだ。いかがですか。
  73. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは各国の例でも、みなやはり外交のルートを通じて招請状を出しておりますから、国交回復国だけがいままでの例を見ても参加しておるようでございます。カナダでも、私先般モントリオールへ行ったのですが、国交未回復国に対してはカナダも招請をしていないわけです。これがやはりいままでの例になっております。どうしても招請状を出すときには外交官通じて出すわけですから、第一段としては国交回復国に招請状を出すということは、これはそれ以外にはないのですが、しかし、この万博の一九七〇年という時代、これはわれわれもそのときにおける世界の平和——今日のような事態が改善をされて、アジアにも平和がくることを期待もいたしておりますので、これはいまとりあえずとしては国交回復国に招請状を出したのですが、将来の課題として、第二段的に検討は加えたいと思っております。
  74. 野原覺

    ○野原(覺)委員 非常に重大な答弁をあなたはなさっておる。お尋ねいたしますが、万国博覧会に参加できる国の条件としては、国際連合に加盟しておるということが、そのどこかの条章にでもございますか、ございませんか、いかがです。
  75. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国際連合というのじゃなしに、万国博覧会条約に加盟をしておる国が中心になるわけで、むろん加入しておる国々は世界の半分にも満たないわけでありますから、したがって、加入以外の国も招待をしておるわけでありますが、これはやはり政府の外交機関を通じて招待状を出しますから、諸外国の慣例は、国交を回復しておる国々だけを招請しておるのが今日までの慣例である。日本も、われわれとしては第一段階としての招請状は国交回復国だけに出したのだ、いまの段階においては直ちに国交未回復国にも第一段階と一緒に出すというふうには考えていない、これはやはり将来の課題として検討をいたしたい、いまは国交回復国に限って招請状を出しておる、これが政府の考え方でございます。
  76. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、いまのところは国交回復国にだけ招請状を出す。それが慣例だから日本政府としてもそうするけれども、将来の課題として、一九七〇年、少なくともアジアにおける最初の万国博覧会でもあるから、アジア・アフリカのすべての国を日本が集めよという意気込みから考えてみても、あるいは条約に加入していない国にも招請状を出すし、国際連合に加盟しておるかどうかということが条件にもなっていない今日からいって——特に中共は日本で現実に見本市を開いておる。芝浦で開いておる、あるいは北九州で開いておる。日本国交回復、日中貿易振興は、これは三木さんの国会において約束したことなんです。そういう点から見ても、これはやはり日本政府としては、慣例としては国交回復した国に招請状を出す、こういうことになって、カナダもあるいはフランスもベルギーもやってきておるけれども、日本としては一九七〇年には何とかして招請できるように努力をしたい、こういう意味に受け取ってよろしゅうございますか。あなたのおっしゃることが、どうもその点が明確でない。出すというのか、出さぬというのか、どうなんです。
  77. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ここで出す、出さぬと、こう言っておるのではない。国交回復国には出しました。これから未回復の国に対しての問題はいろいろな国際情勢等も関連がございますので、だから将来の課題にしたい。しかし、できる限り多数の国々がこの万国博覧会——しかもアジアにおいて最初に開く博覧会でありますから、多数の国々が参加することが好ましいという考え方を持っておる。ただ、この問題は将来の課題として検討いたしたい。いたすその場合においても、いまのような心がけで検討いたしたいと考えておるということを申し上げたのでございます。
  78. 野原覺

    ○野原(覺)委員 未承認国といえどもぜひとも参加できるようにしてもらいたい。人類の進歩と調和が泣きます。やはり共産主義というのは人類社会における一つのイデオロギーなんだ。それが今日世界の人口の三分の一を占めておる。この現実を無視するわけにはいかない。しかも中共は七億だ。そういうテーマからいっても、これがパリにおけるところの事務局あたりで議論をされれば、私は反対する国は少ないのではないか。むしろこの際国際平和の上からいっても招請すべきではないかと思うので、これはひとつぜひそのように招請できるような努力をされるように担当大臣としては御努力願いたいのであります。  そこで次にお尋ねしたいのは、建設資金と運営資金でございますが、これは新聞発表でありますけれども、会場建設資金に五百五十五億円要る、運営資金に百六十八億円要る、合計七百二十三億円要る、この資金の負担率について、三木通産大臣はカナダの閣僚会議に行ってモントリオールかどこかで記者談を出しておる。あれはどういうことなのか、もう一度この場所でひとつあのときの談話の中身をお述べいただきたい。
  79. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、カナダのモントリオールは、国が半分——最後の負担区分については、国が半分で州が三七・五%、それからモントリオール市が一二・五%、したがってカナダの例からいえば、地方の州・市と国との負担の区分が半々ということになるわけですね。モントリオールで記者がそこに来ておりまして、そして私が質問を受けたので、半々というのが一番理想的かもしらぬが、日本の府というものは、カナダの州というものとはよほど財政負担の上においても力が違う、だから半々ということは日本は無理だろう、まあやはり三分の二くらいは国で持たなければなるまい、カナダの例を通じて質問を受けましたので、カナダの例をそのまま踏襲することは無理だろうという談話が、モントリオールの私の談話でございます。
  80. 野原覺

    ○野原(覺)委員 大蔵大臣、担当大臣が会場費、運営費七百数十億円の三分の二は国が負担するのが妥当だ、こう言っておる。大蔵大臣としてはどういう御所見ですか。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ、御質問の万博予算につきましては、通産省から概算の要求にも接しておりません。そういう段階でありますので、まだ検討は始まってもおらぬ。基本的な考え方をどうするかこうするかということをあらかじめ考えておるということでございますが、負担率につきましては、とにかくあの施設はあとに残るものでもありまするし、またあの万博の今回のいろいろな施設、行事、それらが地域に裨益するところは甚大である、こういうふうに考えますと、やはり地方にも相当額の御負担は願わなければならぬか、かように考えています。その率をどうするか、これはいろいろむずかしい問題かあります。そういうものを総合して最終的な結論を得る、こういうことかと存じます。
  82. 野原覺

    ○野原(覺)委員 自治大臣にお尋ねをしたい。三分の二は国が負担をする、残りの三分の一はだれに負担をさせるのか、三木担当大臣は明確にしていないのだが、まず自治大臣にお聞きする前に、三木さん、三分の一はだれが持つのですか、それ、あなたの考え……。
  83. 三木武夫

    ○三木国務大臣 どうしても中心はやはり大阪府、大阪市、これにやはり地元も——実際問題としては大阪府知事が中心になって、そして単に大阪府・市だけに限らぬのかもしれない。これはやはり地元に広く協力を要請するほうが好ましいのかもしれませんが、中心は大阪府・市である。しかし、それに地方も——それは大阪で開くといっても大阪だけでもないのでありますから、地元の隣接の県などもやはりある程度負担ができるような形で、単に大阪府と市だけでなしに、もっと広い地元ということでこの負担が分担されることが好ましいのかもしれません。これはわれわれの態度が——いまここで私が言ったのも、これは大蔵省と話をしたわけでない、通産大臣として記者会見をどんなつもりでしたのかということでお答えをしたわけであります。今後の課題として、この問題は大阪府ともよく相談をしてみたいと考えております。
  84. 野原覺

    ○野原(覺)委員 今後の課題として問題があるから、私は要望も含めてお尋ねをしておるのです。自治大臣、残りの三分の一は主として大阪府と大阪市だ。つまり地元だ。しかもその地元の定義は、三木さんはおっしゃらないのです。そこら辺、こう言っておる。京都も入るのだろう。外人が百万人来る皮算用を政府はしておりますから、おそらくこれは京都に泊まる。宝塚に泊まる、兵庫県です。そうして奈良も、これは古都ですから奈良に行く。スモッグの、ばい煙の、あの自動車の混雑した、だれが大阪に泊まりますか。大阪には金は一文もおりっこない。外人の金というものはおりっこない。そうして地元の負担は、たまたま大阪府の地域にあるから——大阪市じゃないのですよ。あれは吹田市なんですよ。大阪府の府下だ。しかも大阪市の隣の地域だから、地元は大阪府だ、大阪市だと言いますが、自治大臣、あなたは地方行財政の責任者として、数百億円のこの会場費と運営費の分担が、今日の大阪市の財政で、大阪府の財政で、できると判断しておるのか。これはあなたは自治大臣ですからね、そのくらいのことはもうお知りだろうと思う。塩見さんいかがですか。
  85. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 お答え申し上げます。  この万国博は、もちろん国の事業としてやる企てでございます。したがって国のほうで、ただいまお話のありました建設費あるいは運営費等につきましては積極的な財政措置を願いたいと考えておるわけでありますが、先ほどお話のありましたとおり、主管の通産省また大蔵省で具体的な話し合いの段階にもまだ至っていないわけであります。また自治省といたしましても、一体地方がどういうふうな負担をするかということにつきましては、まだ詰めて結論を出す段階に至っていないわけであります。しかしながら、私も、大阪府の財政なり市の財政等につきましても若干承知をいたしておりますし、また地元のほうにおきましては、できるだけ国のほうで負担をしてもらいたい、ことに関連事業等につきましても、相当巨額の資金が一時に必要であるというような状況等を考え、また地方財政の現状からいたしましても、できるだけこういった直接的な経費につきましては国のめんどうをお願いをしたい、特にこれは野原先生も御承知のとおり、大阪府等地元におきましては、四分の三程度の負担をしてもらいたいという希望もあるやに承っておるわけでありまして、これは今後の問題として、こういった地方財政の状況等もお考えいただきまして、できるだけ——もちろん地方としても応分の負担はしなければならぬと思いますが、ただいまの事情等を考慮の上に、できるだけ国のほうで財政措置を講じていただくというふうに、自治省としては各省とも協議を進めてまいりたいと思います。
  86. 野原覺

    ○野原(覺)委員 どうもあいまいもこで、できるだけ国のほうで出してもらいたい。私は、一体大阪府と市に、その財政の負担能力ありやなしやと聞いたんです。ところが、あなたの御答弁によれば、どうもないようです。これは担当大臣の三木通産大臣、それから財政の責任者の福田大蔵大臣よくお聞き願いたいと思う。会場費と運営費、これについては全額国が出すべきです。国の責任でやるんですよ、これは。万国博覧会協会というものが設けられて、それがやることになっている。たとえばオリンピックにしても、東京都が招待者にはなっておるけれども、その責任は国がやる、外国に対するPRも国がやらなければならぬ、招待も国がやらなければならぬ。国の責任ということにこの万博の条約はなっておるんだから、会場費と運営費の七百数十億円については全額国が出すべきです。大阪府が今日金を出していますよ。自治大臣、大阪府は土地買収費に幾ら今日金を使っておるか。自治大臣、あなたに聞きましょう。どれだけ使ったのですか、土地買収費に。
  87. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 最近ようやく土地買収の計画も進みまして、ほとんど妥結の状況に至っておるやに承っておるわけでありますが、この買収費の総額は百七十億程度と承知をいたしております。
  88. 野原覺

    ○野原(覺)委員 百七十億円大阪府は出しておるわけです。その百七十億円は、あと地利用として、かりに科学博物館ができるとか二十世紀の文化の遺産と称されるものが建てられる、あるいは明治百年祭の大森林公園にあの百万坪のあと地が使われるという場合には、自治大臣、その百七十億円という大阪府の出した金は、これは国に当然支払ってもらえるもの、こう思うんだが、自治大臣の見解はいかがですか。
  89. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 万国博覧会のあと地の利用計画等につきましては、いろいろの御意見が各方面から出されておることを承知いたしておる次第でありますが、しかし、まだ決定的な段階にまいっておるようには私も伺っていないわけでありまして、あと地をどうするかというようなことは、むしろ今後の問題だと考えるわけでありまして、そういったような推移とともに、やはり各般の事情を考慮して、財政措置の今後の収受のしかたにつきましても検討していかなければならぬと考えておるわけでございます。
  90. 野原覺

    ○野原(覺)委員 三木大臣に申し上げますが、八月五日、大阪の現地における懇談会の席上で、福田予算委員長から、あと地の利用については早急に話をまとめてもらいたい、これは、自民党も含めて私ども社会党も同調いたしまして、実はそのときに申したわけであります。会場を設計するにあたっては、次のあと地について、どういうあと地にするかということを頭に置いて会場設計をしないと、国費のむだ使いになるじゃないか、だから、あと地の利用計画決定は早急にやるべきだ。三木さん、いつこれは立つのですか。
  91. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは大阪府がやり、財産として残るわけですから、そういうことで大阪府の意見というものを中心に考える必要があるわけであります。その中で、国自身が使うということになれば、むろん国として買い上げの必要も起こってくるでしょうが、いま各国の陳列館ですね、これはあと地利用としていろいろ考える地域ではないのです。あと地利用として、あるいは森林公園にしたらどうか、あるいは文化的な施設として永久に残るものをしたらどうかということで、みな知恵を出し合って、こういう問題は永久に残るのですから、あまり拙速ということもいかぬということで、いろいろなアイデアがたくさん出てきます。しかし、いつまでもこの問題を延ばすことはできない。モントリオールなんか見てみますと、まだやはりなかなかきまってないようです。あそこは来年開会になるわけです。しかし、あと地利用は、日本の場合はモントリオールの例にならわないで、来年は具体的な工事に入るのですから、その前に、むろん年内にはこれをきめなければならぬ。しかし、永久に残るものをあまり拙速主義はいけない。これは永久に民族の資本として残るようなものであれかしと願っておりますので、できるだけ迅速にきめたいと思いますが、その間できるだけ衆知を集めたい。だから、そういう手続はやはりとっていきたいと考えております。しかし、できるだけ早くきめよという御意見には、私もさように考えております。
  92. 野原覺

    ○野原(覺)委員 時間がないので、私ははしょってお尋ねしております。簡単に、皆さんに御迷惑がかかりますから急いで終わりますが、先ほど申し上げましたように、建設資金が五百五十五億、運営資金は百六十八億、計七百二十三億、これが直接博覧会運営のために入り用の予算になるわけです。ところが、これだけで万国博覧会ができるかというと、そうではない。三木通産大臣御承知のように、関連公共事業費をかなり計上して、あの博覧会の会場周辺の土地の整備、下水あるいは厚生対策——外国から百万人もおよびになる御予定のようでもありますし、日本の国民が三千万人六カ月間に観覧するという政府の計画等を見ると、あるいは下水にしても、あるいは現地にどうして人を運ぶのかという交通の問題にしても、これは相当私は問題があると思う。特に今日の大阪市は、あの博覧会場に近寄った北側の大阪市は、大阪のばい煙地帯なんです。大阪は天王寺のところから南のほうが住宅地帯になっておる。もうスモッグにおおわれておる地帯です。まあ千里山にニュータウンができて、若干吹田市の近郊には緑の地帯ができて、そこで博覧会がやられますけれども、そばは全くの工業地帯、工場地帯なんです。下水もろくすっぽできていない。関連公共事業費をこれはどれだけに予定しておるのか。関連公共事業費ということになれば、博覧会はあと三年ですよ。一年に一ぺんきり出せっこないです。これは福田さん御承知のとおりです。おそらく四一十二年度、四十三年度、四十四年度、この予算で、三年の継続費でこの公共事業費はまかなわれるものと思うから、もう試算ができておるはず。新聞によれば二兆数千億円ともいわれておる。一体その公共事業費の事業の範囲をどこでとどめるか、その総額を幾らにするのか、四十二年度の予算要求をどれだけにするのか、担当大臣からまずお聞きします。それで、その担当大臣の御答弁に対して、大蔵大臣、御賛成なら賛成と、私はもう時間の関係であなたに二度と聞きませんから。まず三木さん、どう考えていますか。
  93. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはなかなか関連ということばが、おわかりのとおりに非常にむずかしい。どこまでが直接に万博に関連するものと——考えようによったらならば、その周辺の観光的なルートなどもやはり関連といわれるかもしれぬ。ここで押えて、これだけのものでございますということをこの席上で申し上げることは非常に困難ですが、閣僚会議などを通じて、この万博の機会に地域開発という目的も達しようではないか、公共事業も相当大阪に力を入れていこうではないか、いろんな道路計画の中においても、少し重点を置いて開発しようではないかということで検討を加えておるのですが、いまここで、これだけが関連ということを数字的に申し上げるということは、非常に困難がある事情はおわかりのとおりでございましょう。しかし、できるだけこの機会に、東京がオリンピックで相当開発されましたから、今度は大阪の付近の番だ、これくらいの考えで推進をしていきたいという心境でございます。
  94. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ちょっと大蔵大臣、先ほど、私はあなたにあとでと言いましたが、三木さんの答弁に重大な点が落とされております。関連事業の範囲は、あなたは考えておるでしょう。そして、来年度の予算には若干要求するんでしょう。そうすれば、担当大臣として、関連事業の範囲はこの辺だ、瀬戸内海の夢のかけ橋は入れない、奈良の平城宮は入れない、もうそういったような時期ですよ。それはあなた、もう予算はきめるときじゃないですか。そうして、大体三年間の総額の予算がきまって、四十二年度の予算要求をしなくちゃならぬじゃないですか。ですから、事業の範囲とはどういうことだと、抽象的でけっこう、大体の総額は試算をしてみてどのくらいになる。それがいまできないなんて言うたら、あなた、博覧会をやる資格はない。おっしゃってください。
  95. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま申し上げたように、なかなかこの関連の範囲というものはむずかしいが、一応のいままでのそれを政府委員から申し上げることにいたします。
  96. 橋本徳男

    橋本説明員 御答弁いたします。  御承知のように、関連公共事業の範囲というのは、その線を引くのは非常に困難でございます。ただしかし、これを何らかの形においてある程度明確化させなければならないということもまた必要だろうと思うのでございます。それで、現在におきましては、会場並びに会場周辺、それから主要宿泊都市、こういったものが大体この関連事業として取り上げるべき範囲ではなかろうか。その中におきまする道路、それから河川の改修、それから環境整備、それから土地改造、こういったものにつきまして、現在関係各省と、その範囲内においてどういうものを取り上げるかということにつきまして検討中でございまして、確定的な数字は、今後各省と相談して煮詰めてまいるつもりでございます。
  97. 野原覺

    ○野原(覺)委員 大臣が大臣なら、事務当局も事務当局だね。四十二年度の予算要求のときじゃないですか。もう十月ですよ。あなた方に概算の数字が出ていないとは言わせませんよ。新聞ではすでに発表しているじゃありませんか。大蔵大臣は当面の担当じゃないから、御承知ないとおっしゃるかもわからぬが、三木さんの手元で、関連公共事業費の総額は二兆数千億円という近畿圏の要求であるけれども、大体これを何割程度に押えるという総額は出ておるじゃありませんか、出てないのですか。この十一月か十二月には四十二年度の予算が少なくとももう折衝されるのじゃありませんか。それじゃ、来年度は一体博覧会の予算にどれだけ要求するつもりですか。あえて、やはり責任者ですから、三木さん、あらためて御答弁願いたい。そんないいかげんなごまかしじゃ困りますよ。
  98. 橋本徳男

    橋本説明員 現在の段階におきましては、御承知のように、その範囲が非常に困難でございまして、ここまでを取り上げるか、あるいはどこまでかという点につきまして最終的に固まってはおりませんが、おおよそ概算といたしましては、四十二年度で二千数百億程度に及ぶのではなかろうかというふうに考えております。
  99. 野原覺

    ○野原(覺)委員 四十二年度で二千数百億、この二千数百億という予算要求は、総額がきまって、四十二年度の割り当てになっておるはずです、これは継続費として要求するのだから。では四十三年、四十四年は幾ら要求するのか、関連公共事業費の総額を幾らと押えておるのか、そのくらいの数字は予算委員会だから発表しなさい。予算委員会を軽視しちゃいけませんよ。その数字を発表しなさい。
  100. 橋本徳男

    橋本説明員 この点につきましては、たとえば環境整備のように、全体としてワクがきまって、それから毎年度分けるというふうなものもございますので、全部の公共事業につきましての四十五年までの数字は出ていないのでございます。ただしかし、非常に中心になるようなもの、たとえば道路のようなものにつきましては四十二年度で大体八、九百億程度であろうというふうに踏んでおりますが、これが四十五年までの量といたしましては大体三千数百億というふうに、そういった個別のものにつきましてはある程度の見通しはついてございます。
  101. 野原覺

    ○野原(覺)委員 時間がありませんから、これで終わります。それで私は、午後の一般質問に勝間田委員が質問するのが、急遽勝間田委員の都合によって、委員長の了解を得て私に差しかえていただきましたから、これは一時間いただけますので、その中でさらに、予算と関連がございますから、万博についても触れます。  ついでですから申し上げますが、地元の中に財界を入れないのは、三木さん、たいへんな間違いです。大阪府、大阪市、それだけじゃない。大阪府と大阪市には金は落ちません。財界は非常にもうかるのです、今度のこの万博で。これを地元に入れるべきなんです。それから近畿圏、京都や兵庫県や奈良県や和歌山県にはそれほどの影響はないかもしれませんけれども、そこらの負担割合というのものも考えるべきです。そうして会場費と運営費は全額国が持つ。関連公共事業費についての補助率は大幅に国が持って、この万国博覧会を成功させるくらいの熱意と決意がなければ、私は三木さんは万博の担当大臣をやめるべきだと思う。それを大蔵大臣が聞かぬならば、それを総理大臣が認めぬならば、おれにはできぬと、このくらい開き直ってもらわなければ、予算委員として八月五日に現地を視察したわれわれとしては納得できない。これは午後重ねてお尋ねしますから、地元の定義だけはひとつ明確に考えておっていただきたい。  以上で終わります。
  102. 福田一

    福田委員長 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後は一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後一時三十三分開議
  103. 福田一

    福田委員長 午前中に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、内閣総理大臣より発言を求められております。これを許します。佐藤内閣総理大臣
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 予算委員会審議に先立ちまして、私の所信を明らかにいたしたいと存じます。  私は、先般、病のためにやむを得ず入院治療するということになりました。しかし、幸いに順調に回復いたしまして、早期に退院することができました。しかし、その間短い期間ではありましたが、政治の空白を生じ、国民の皆さまに御迷惑をおかけしたこと、深くおわびいたします。  私は、政権担当以来、国民の信頼を得ることを政治の要諦であると信じ、国民とともに歩む清潔な政治を政治の基本としてまいりました。しかるに、最近政界の一部に、公党の道義と綱紀の問題について国民の不信と疑惑を招くような事態を生じたことは、まことに遺憾にたえません。国民諸君に対し申しわけないことであります。政局を担当する者としてその責任を痛感しております。私は、現在このような事態を直視し、世論の批判に謙虚に耳を傾け、反省しております。国民の間に政治不信の念が高まることはゆゆしきことでございます。私は、今後一大決心を持って、積年の病弊を根絶するため、積極的かつ具体的な措置を講じていく決意であります。これが、いま私に与えられた国家国民に対する義務であると信じております。  すでに自由民主党内では、党の組織調査会において、党の体質改善についての具体策が昨日決定され、また、党内には、清瀬一郎君を委員長とする粛党に関する特別委員会も発足いたされました。私は、これらを基盤として、今日ただいまの問題及び長期的視野に立っての改善等、全力をあげて政界刷新の実をあげていく決意であります。  また、政党のみならず、官界の一部にも最近綱紀のゆるみが見られますが、政党及び政治家が厳正に身を持することによって、官界の規律はおのずから正されていくであろうことを信じて疑いません。私は、穏健で中正な、そして進歩的な政治こそ国民の大多数が望んでいるところであると思います。そのにない手であるわが自由民主党の責任は重大であり、国民のわが党に対する期待は大きいのであります。国民の期待にこたえ、政治への信頼を回復するため、全党一致協力して政治徳義を高めなければなりません。そのためには、まず現在の政治のあり力を根本的に再検討する必要があります。責任政党である自由民主党の体質改善をはかっていくこと、金のかからない選挙のあり方を検討すること、当面、この二点に重点を置いて考えております。選挙のあり方については、選挙制度審議会においてすでに長期にわたって御審議いただいておりますが、結論を得次第、国民世論の動向を見きわめ、勇断を持ってこれに取り組む決意であります。  ひるがえって、わが国を取り巻く諸情勢は依然きびしいものがあり、アジアの一角においては、いまなお戦火が絶えません。このような中にあってわが国が平和と繁栄を維持しているのは、わが国が自由主義国家の一員として、また民主主義国家として健全な発展を遂げているからにほかなりません。私は、激動する内外の諸情勢に対応して、適切な諸施策を実行し、国民生活向上のため一段と努力する決意でありますが、議会民主主義発展のため、党派を越えた御協力をお願いするものであります。(拍手)
  105. 福田一

    福田委員長 質疑の通告があります。順次これを許します。山花秀雄君。
  106. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま佐藤総理から決意の表明がございました。私は、予算案に関していろいろ質問したいと存じておりましたが、総理みずから決意を表明されましたので、その決意に関連いたしまして若干の質問をいたしたいと思います。  佐藤総理は、たびたび反省ということばを使われております。私は、ここで古傷を求めようとは考えておりません。造船疑獄問題につきましても、私はたびたび質問をいたしました。そのつど反省する反省する、こう言われて、今日まで来ておられたのであります。そこで、私は、前回、前々国会におきまして、この予算委員会で当時問題になりました新潟県知事選挙で塚田十一郎君が、現職知事でありながら、二十万円という金額の四十数名にわたる、俗に金品贈与の問題がございました。また、御承知のように、参議院選挙におきましては、小林章君の前古未曾有といわれるような悪質選挙違反がございました。これについて質疑を再三重ねましたときに、佐藤総理はそのときも、政治のえりを正すと言明されたのであります。何回となくこれを言明されました。いま、決意の表明の中にも、その意味の言明がございました。しかるに、過日岐阜県知事選挙に、同じように、多くの方々に金円十万円ずつを配ったという問題がございました。あれだけ反省する反省すると言っておる佐藤総理の率いる自由民主党は、これを公認候補として選挙に臨みました。結果は、岐阜県民の良識によって、自民党公認候補は落選したことはあなたも御承知のとおりであります。何回言明されましても、一つも実績があがらないのが佐藤内閣の今日の事情でございます。今回決算委員会等々におきまして、たとえば荒舩運輸相、上林山防衛長官等々のいろいろな問題が提起されております。早晩総選挙があろうと思いますが、こういう党員に対して公認をしないという、そういう政治姿勢をここで表明できるかどうか承りたいのであります。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 選挙における公認問題は、これはたいへん重大な問題であります。もちろん、慎重に私どももこれと取り組んでまいるつもりであります。いずれにいたしましても、ただいま具体的にあげられた事件、人々について、ただいまこの席で私は明言いたしません。公認問題は慎重に取り組む、これでお答えと、かようにお聞き取りいただきたい。
  108. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま、きわめて短時間でございましたが、切々として決意を表明されました。この決意は、わが所信に対しても、挙党一致で政界粛正の実をあげるために野党のわれわれに対して助力してもらいたいというような意味もございました。ただいまの答弁では協力できません。ただいまの答弁は、まだあなたの反省が足りないことを如実にあらわしておると私は考えております。  さらに申し上げたいことは、今回の内閣改造に当たりまして、あなたが多くの閣僚を任命されました。閣僚は、御承知のように、佐藤内閣が一体になって日本の政治を指導する指導体であります。慎重を期さなくちゃなりません。政治のえりを正し、政治姿勢を高めるというのであったならば、派閥均衡人事は除外すべきであると私は考えしおります。けれども、内閣改造に当たり各閣僚の任命は、残念ながら、われわれがながめておりますと、派閥均衡人事になっております。一派閥でも、優秀な人物がたくさんおる派閥もあるでありましょう。また、派閥によりましては、ぐうたらな人物が多くいる派閥もございましょう。そのぐうたらの一人がせんだってあなたを悩ませるというような状態になりました。そこであなたは罷免されました。私はここで言いたいことは、荒舩運輸相よりも決算委員会でいろいろ論議されました問題は、上林山防衛長官のほうがはるかに数等まさるくらい国民に対して裏切った行為をしておると思いますが、これを罷免する決意があるかどうか。政治のえりを正すために、そうしたはっきりした具体的事実を示して、野党のわれわれに協力を求めてもらいたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 上林山防衛庁長官はただいまアメリカに行っております。近く帰ってくることになっております。もちろん、ただいまのような重大な御発言がございますが、上林山君に一言の弁明の機会も与えない、そういうわけにはいかない、かように私は思っております。
  110. 山花秀雄

    ○山花委員 帰ってきて、そうして決算委員会等々で論議になりましたことが具体的にこれが事実ということになりますと、あなたはこれを罷免する決意がありますかどうか。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの仮定的なお尋ねに対しては、私はお答えをいたしません。
  112. 山花秀雄

    ○山花委員 ここは国会の論議ですよ。与党、野党があげ足とりの論議をやっているのじゃございません。お互いに誠意を持って国会の権威を国民の間に高めたい、こういう心がまえで論議をやっておるのであります。にべもなくつっぱねて、それで快しとするような、その心情がまだ反省が足りないのだと私は申し上げたい。私は批判いたしましょう。あなたの内閣改造の今度の組閣は、わかりやすいことばで申し上げますと、みそくそ一緒にした内閣であります。大臣という名においては変わりございません。各省大臣みな大臣であります。みそも、色が違っておってもみそには変わりはございません。中には藤山さんのように、上等の府中の白みそもございましょう。また、仙台みそや八丁みそのように赤いみそもございましょう。赤くても白くても黄色くてもみそはみそです。みその混合でございましたならば、みそ汁としておいしく食べられるのであります。同じ黄色い色をしておりましても、ちょっとくそがまじりますと、これはいただけません。ちょうどそういうような内閣じゃございませんか。そういうくそを取り除いて、色が違っても同じみそでひとつりっぱな内閣をつくってもらいたいというのがわれわれの大体の考え方であります。われわれは、残念ながらいま組閣する力がございません。組閣は自民党でございます。したがって、あなたに要求することは、ただいまのようなりっぱな決意をされたのでございますから、この際、みそくそ混合内閣を一てきして総辞職をする、そうしてやり直す、さもなければ解散をしてやり直す、こういう決意があるかないか。ただいまの決意表明と同時に、それを裏づけるような明快な答弁を願いたいのであります。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山花君の御希望は、また御意見は伺っておきます。  なお、私ただいま総辞職する考えがあるかというお尋ねでございますが、その考えはございません。私が果たすべき責任、これは冒頭に申し上げましたように、政治を立て直し、政局を安定さし、そうして内外の諸情勢にこたえて国民生活を向上・充実さすこと、これが私の責任であり、また当然なすべき義務だ、かように考えております。ただいま総辞職して責任をとれという、これも一つの御意見だと思います。私は、ただいま申し上げるように、積極的にりっぱな政治をすること、これが私の責任をとるゆえんだ、かように考えております。
  114. 山花秀雄

    ○山花委員 いみじくもあなたは、私は満身の勇をふるってりっぱな政治の確立に努力する、その言は私はよしといたします。けれども、国民の信頼がなければそれはできません。せんだって、毎日新聞の世論調査でございますが、五月ごろの調査では、あなたの内閣、佐藤内閣を支持するというそういう考え方が二八%ほどあったそうであります。これは、当時戦後最低の支持票だということが言われておりました。ちょうど荒舩大臣のときに、例の急行停車問題の時期に再調査いたしましたときには、これが二六%台に下がったということを言っております。二八%が戦後最低であります。二六%になると新記録であります。あなたは優秀なきょうだいで、にいさんも総理大臣をやられる、あなたも総理大臣をやられる。ところがにいさんの時代に、岸内閣がいみじくも最低の支持票でレコードをつくりました。弟さんのあなたはさらに新機軸を出されたのであります。こういうように国民がそっぽを向いておるのに、それであなたがひとり力み返っておるというのは、漫画にひとしい心がまえであります。解散しなさい。解散して、国民の総意によって、主権者の総意によっていい人は残してもらって、悪い人はふるってもらって、新しい人を加えてりっぱな国会づくりをすることがこれからの姿勢を正す一つの道であろうと考える。(拍手)いかがですか。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 解散をしろという御意見でございます。私は、先ほど総辞職について政府の考えておるその責任のあり方を申しました。ただいま私は解散について考えておりません。これは明確に申し上げておきます。ただいま佐藤内閣に対する毎日新聞の世論調査を御指摘になりました。しかし、政党支持、自由民主党に対する支持も下がりましたが、社会党も下がっておることをお忘れにならないように願います。
  116. 山花秀雄

    ○山花委員 あなたはいま言を大きくして大みえを切られました。だれのために政党が不信になっておるのですか。政治不信が一波万波を呼ぶような形態を呈しておる。だから私は解散せい、こう言っておるのですよ。おのれの非をたなに上げて人をののしるだけの、あなたはそういうりっぱな業績を残しておるのですか。あなたが残しておるのは、日本の政治史に汚点をつけただけじゃありませんか。あなたがほんとうに確信があるならば、いまりっぱに堂々としたその声量で演説をやっておられるこの予算委員会、これを全部つとめなさい。一時間で逃げようというのは確信がないからじゃないですか。あなたは最高の政治責任者ですよ。からだが倒れてもおのれの所信を発揮するような、そういう態度で本予算委員会に臨んでもらいたい。それがせんだっては、三十分だったら出るとかなんとか言って、きょうは一時間、私は幾らでも質問があります。けれども、時間がきておりますから、私の質問はこれでやめますが、しかし、ほんとうに確信があるならば、時間を値切るような、そういうへっぴり腰でこういう委員会出席すべきでない、この一言だけを申し上げまして、時間を守って私は次に席を譲りたいと思います。(拍手)
  117. 福田一

  118. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ただいまの佐藤総理の所信表明に関連しまして、社会党を代表して、佐藤内閣の政治姿勢についての質問をいたしたいと思います。  佐藤総理は、先ほどわが山花議員の質問に反論を加えました。社会党に対する支持率をもって、彼はみずからの非を隠蔽しようといたしました。私は、この心がまえの中に佐藤内閣の責任を果たそうという謙虚な気持ちのないことを、きわめて遺憾にたえないと思うのであります。今日、あなたがあげられた世論調査の中で、佐藤内閣として一番注目をすべきことは、佐藤内閣みずからがわずか二六%に支持率が転落していることであります。歴代内閣の中で最低の支持率に低下いたしておることであります。これは、佐藤内閣を国民が支持していないことを端的にあらわしておることだと思うのであります。もう一つ明らかな事実は、四九%をこえるような、いわば政治に対する無関心層が今日生まれてまいったということであります。これは、佐藤内閣のもとにおいて政治を信頼することができないという、きわめて憂うべき事態が国民の中に生まれておることを意味するものだと思うのであります。政治家として、佐藤内閣としてこの二つの問題に注目せずして、私は今日の政治を扱うことは一日もできないのではないだろうか、かように考えてまいりますと、その原因について佐藤総理がいかに反省をしているかということが今日最大の問題であります。しかし、ただいま所信表明において述べられたことを見ると、責任についてはきわめてこれを軽く扱い、逆にみずからの、いわばこれからの役割りを過大にうぬぼれて、むしろ政権を維持するような方向にこれを転化していこうという傾向がはっきりあらわれていることは、まことに遺憾しごくだと思うのであります。私が今日この事態を冷静に判断するならば、私はまず第一に大切なことは、佐藤内閣の政策のもとで、政策に対する国民のやるせない不満、これは戦後最大の中小企業の倒産にもあらわれておるでありましょうし、解体に瀕しておる農村の実情にもあらわれておるでありましょう。とまることを知らない今日の物価騰貴の状態にもあらわれておるでありましょう。こういう政策に対する国民の不満が今日累積している中で、田中彰治事件以来、あるいは小林章事件以来、わずか七十日前にあなたの任命した重要閣僚が、荒舩といい、上林山といい、松野といい、国民を愚弄したまことに驚くべき不祥事件を起こして、そうして、なおかつ、私はなぜこんなに追及されるのかわからないとか、私はそんな大きなあやまちを犯したつもりはないとか、こういう不謹慎な態度で今日おるという、そういうだらけ切った今日の政治の姿というものが一そう国民の不満をあおり立てているというところが、私は今日の最大の佐藤内閣不信、政治不信を招いた基本であると思うのであります。  同時に、今日、国民は苦しい税金を納めている。だが、佐藤総理の昨年の所得は六百三十四万円、そうして二千万円の党に対する献金をしている。これは一体何だろうか。また、今日、運転手が交通事故を一つ犯せば、十カ月や一年の懲役になる。だが、上林山があれだけのことをして、なぜ首を切られないのか。こういうことも私は国民の非常な不満であると思う。また、今日、中小企業の倒産は月々五百二十七件と報道されております。だが、共和製糖は二重、三重に多額の融資を受けている。なぜ一部にこんな大きな金が動くのだろうか。こういう事態に、今日国民が疑惑を抱かなければならぬということは当然ではないか。また、今日、盛んに伝えられていることを聞けば、あなたが今日某代表を東欧に送った。送ったその代表は宝石商を同伴しているとか、あなたの重要閣僚で、法律を守る人が、数千人を動員して、百円の弁当で今日福岡で大宴会やっているとか、というような情報がどんどん流れてくる中で、どうして国民が法律を守ることができようか。  こういう事態が重なれば重なるほど、佐藤内閣は信用が失墜し、政治が下って不信を招いていることは当然ではないか。その事態をあなたが認識せずして、今日の民主政治を救うことはできない。それに対する反省が出ておらぬじゃないか、それをどうするのか。えりを正すだの、忍耐をもってやるだの、そういうことばはもはや漫画以外にはないのである。  ここで具体的に聞きたいのは、これらの閣僚の首を切るのか切らないのか。どうするのですか。あなたは、口をきわめて、私の任務の重大というようなことを言われる。そうじゃない。佐藤総理はそうした閣僚を呼び起こし、そうした事態を引き起こした政治的責任を負うのか負わないのか。これをどうするのか。国民の声が、今日解散ということにあることに対してあなたはどうするのか。これをあなたは端的に答えるべきではないか。それを回避して他を言うなどに至っては、言語道断である。はっきりここで、この三点についてあなたの政治責任を明らかにしてほしい。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろわが自由民主党のことについて勝間田君の御心配をいただいておるようであります。私は、先ほど来謙虚に御批判を伺っておるつもりであります。自由民主党員全党をあげまして反省をいたしておるのであります。したがいまして、これは、先ほど私が私の所信として冒頭に声明したとおりでございます。内閣自身、また自由民主党自身が、新聞その他において指摘しておるように、その曲がりかどに来ておるということ、そういう意味の問題は、これは十分私どもが反省しておるところであります。そうして、これに積極的に、具体的に対策を立てるということを皆さま方に申し上げたつもりであります。  また、ただいま人事異動、内閣改造についての御意見が出ております。しかし、私は、内閣改造によって責任を糊塗するようなことをいたすつもりはございません。  また、解散についてのお尋ねが重ねてございますが、先ほど山花君にお答えしたとおりであります。  政治家の責任、内閣の責任、これは解散というような、あるいは総辞職というようなことで国民に対する責任が果たされる、かように私は考えておらないのであります。私が積極的に政治を遂行して、りっぱな政治をすること、これが私の責任を果たすゆえん、国家国民に対するその責任である、その義務だ、かように私は先ほど申したとおりであります。重ねてお答えしておきます。
  120. 勝間田清一

    ○勝間田委員 総理、あなたは荒舩運輸大臣の罷免をいたしました。どういう理由で罷免したのですか。そうして上林山をどうして罷免できないのですか。その区別を明確にしてほしい。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 荒舩君が、これは国民に対していろいろ誤解を受けておるから、自分は責任をとってやめたい、かように申しましたので、これを私はやめさしたのであります。  そのやめさす前に、一体どうして彼を任命したかというお尋ねがあるだろうと思いますが、私は、政党政治家としてりっぱな働きを国会にしております。その意味におきまして、これは政党政治家としての資質は持っておるりっぱな政治家である、かように私は思いまして、これを大臣に任命いたしました。しかし、大臣はやはり事柄が違っておりました。ほんとうに彼には不適当な職であった、かように私は思っております。   〔発言する者あり〕
  122. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  123. 勝間田清一

    ○勝間田委員 荒舩氏が辞意を申し出たから、自分はやめてもらったんだ。これは形式論である。荒舩氏の行なった公私混同のまことにおそるべき事態というものは、あなたもよく知っておるはずである。私は形式を問うておるのではない。今日いかなることが世間から糾弾されておるのか、また総理として荒舩の行動に対してどう考えるのか、その点をお尋ねいたしたい。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまは閣僚でございません。そうして、これは辞職した、こういう形でございますから、これより以上責めないようにお願いいたします。
  125. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これ以上責めるなと言う。私は荒舩氏を責めるつもりはない。あなたが上林山あるいは松野あるいは小林章等々の一連の人事をどうするかということが、今日徹底的にわれわれの追及したいところである。なぜ上林山の首を切れないのか、理由をはっきり言ってください。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、まだ上林山君に直接私話を聞いておりません。したがいまして、その責任とか、ただ、いま報道されておるだけでこれをやめさすということは、私は、これは行き過ぎだ、かように考えております。
  127. 勝間田清一

    ○勝間田委員 上林山について、帰ったら直ちに真相究明をわれわれは当然やる。その結果によっては善処するか。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、政局を担当しておるものでございますから、国民に対しまして当然私がとるべきこと、私が当然なすべきこと、これは、私言われるまでもなくいたします。
  129. 勝間田清一

    ○勝間田委員 松野農林大臣はここにいらっしゃいます。あなたはいつでも真相を究明することができる。どう処置されますか。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今日、国会においていろいろ究明されておるようですが、私は、松野君はりっぱに仕事を果たしておる、かように考えております。
  131. 勝間田清一

    ○勝間田委員 あなたは松野氏の責任がないと言うのですか。国民に対して責任はないと言うのですか。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どういう責任をいま問おうとしておられるのか、それが私は問題だと思います。国務大臣である以上、すべての行為につきまして、国民に対して責任のあるのは当然であります。私は、その責任が直ちにこれをやめさすことになるのか、あるいはならないのか、また他の方法があるのか、ここに問題があるのでありまして、私は、勝間田君の御意見どおりには賛成いたしておりません。
  133. 勝間田清一

    ○勝間田委員 あなたは、この国会を通じて、小林章の復党問題について、あれやこれやの陳弁をやってまいりました。しかし、その後において、重大な証言があらわれてまいりました。まことにこの復党は誤ったものであることが今日明白になってまいりました。小林章を除名しないのか。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま除名する考えはございません。
  135. 勝間田清一

    ○勝間田委員 一説に、佐藤内閣は、内閣改造や、あるいは閣僚の処分というものは、総裁公選の十二月一日まではやらないでおいて、そしてもっぱら総裁公選に集中して、総裁に就任した後に内閣改造をやって、そして世間の目をごまかして、国会解散に向かおうという考え方であるやに伝えられている。十二月一日まではやらない、総裁公選後内閣改造をやる、こういう考え方についてあなたはどう思っているか。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまいろいろ先の問題についてお尋ねでございますが、ただいま私、この機会にまだ考え方がまとまっておりませんから、お答えだけは差し控えさせていただきます。
  137. 勝間田清一

    ○勝間田委員 まだまとまっていないということは、今後の情勢いかんによって閣僚の罷免あるいは内閣改造をやるかやらないかということも、また、それを十二月一日以前にやるかやらないかということも、以後にやるかやらないかということも、まだきまっておらない、こういうように考えてよろしゅうございますか。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま考え方がまとまっていないということは、無でございます。
  139. 勝間田清一

    ○勝間田委員 十二月一日の総裁公選はやるのですか。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 党の総裁公選は、予定したとおり十二月一日、こういう予定がきまっておりまして、その日にやることになっております。
  141. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は、この際に責任者の処罰を明らかにすること、これが政治責任を明らかにするまず第一歩だと思います。同時に、私はそれだからといって、今日佐藤総理がみずからの責任をのがれたというわけにはまいらぬと思うのでありまして、佐藤総理は当然総辞職すべきだと思うのであります。佐藤総理は、みずからの将来のうぬぼれた自分の責任を主張するよりも、いま今回のこの政治的な責任を負うべきだと私は思うのでありまして、この意味において、私はあなたに総辞職すべきことを強く要求するものであります。  同時に、今日国民は国会の解散を強く要求いたしております。これは、私ども国民が今日の政策を転換を求めたい、政策を変えたい、こういう強い要望というものが一つある。もう一つ重大な問題は、今日の腐り切った政治を改めたいということだと私は思うのであります。これが早期国会解散要求となってあらわれていると私は思うのであります。したがって、国会の解散というものは、政治を腐敗させた佐藤総理が、自分のかってで、党利党略で国会解散をきめべき権利は私はないと思うのであります。すなわち、国民の声を率直に受けて、あなたは早期に国会を解散をして、そして国民の審判を受けるという態度が、今日当然とるべき処置だと私は思うのであります。したがって、この際私は、佐藤総理はみずからの責任を明らかにすると同時に、国会解散の手続をとって、ここに政治一新の道を開くべきだ。そうして政策の転換、政治の生まれ変わった姿の中で、補正予算も、来たるべき四十二年度の通常予算も組んでいくという態度をとっていかない限り、今日の民主政治の危機というものは私は救うことはできない。その意味において、佐藤総理の見解をもう一度あらためてお聞きいたします。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 解散についていろいろ私見を交えてのお尋ねがございました。私は、先ほど山花君にお答えしたとおりでございまして、ただいま解散は考えておりません。しかし、いま謙虚に勝間田君の御意見は伺いましたから、さように御了承をいただきます。
  143. 勝間田清一

    ○勝間田委員 では、時間でありますから終わりにいたします。(拍手)
  144. 福田一

  145. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 総理に御依頼しておきますが、時間が制約がありますので、ひとつ直截簡明に御答弁願います。  第一点は、荒舩運輸相の辞職理由は何です。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、率直に申しまして、急行停車事件、これは荒舩君の勇み足があったと思います。その後、いろいろ自分の知っている業者を韓国へ連れていった、こういうようなところでいろいろ国民に疑惑を受けた。これは、やはり荒舩君が、国民に対して相済まない、かように感じたゆえんだ、かように思っております。荒舩君から辞職の申し出がありましたのでこれを許した、かようなことでございます。
  147. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 閣僚の辞任ということはまことに重要な国事であります。したがいまして、この問題は相当重視してあなたもお考えになったと思いますが、その感想はいかがでございましたか。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 吉田君の言われるとおりであります。私も重大な問題だということで十分考えました。そうして、その結論が、荒舩君の考えもありますのでその結論が出た、かような状態であります。
  149. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 閣僚の任命は総理大臣の専権であることは申すまでもございません。もし不適材、不行跡等、理由があれば罷免の権限もございます。したがいまして、かりにも閣僚が辞職するという場合は、相当重要な事由がなければなるまいと、こう考えるのであります。  そこで伺うのは、一体総理大臣は閣僚の任免について全責任を負うべきお立場ではないか。しからば、七十二日間で大臣をやめねばならぬ、少なくともこれは、もう率直に申して——野党なるがゆえにいやなことばを使うとお聞きとりにならぬようにしてもらいたい。率直に申して、七十二日でやめた大臣、しかも急行停車をやったのは軽率であった、商売人を外国へ帯同していったというようなことで世の非難を受けたというようなことで戦後閣僚を辞任した例はございますか。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま吉田君が言われるように、任命権あるいは同時に罷免権があるということであります。私は、世論の動向その他も十分検討いたしたつもりであります。私が責任がある、また先ほども冒頭に申しましたように、私は責任を痛感しておるということを申しました。かるがゆえに私は、責任を果たすためにも一そう積極的に政界の浄化をはかり、そうしてりっぱな政治をすることだ、これが私の責任を果たすゆえんだ、こういうことを申したつもりでございます。御了承をいただきたいと思います。
  151. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 総理大臣が大臣の任免に関して責任を負うということはきわめてまた重大なことでございます。そこで、進んで積極的に政策を行ない、使命を果たしていこうというかまえ、これはまた一責任のあり方かと思います。同時にこれは、事態いかんによっては責めを国民に負うということは、職を辞するということもあり得るのでございます。しかし、一大臣の辞任ぐらいで一々総理大臣がやめなければならぬことでは、幾ら総理があっても足りないというような俗論もあるかもしれません。しかし、ここはきわめて高度な政治の原則、もしくは内閣の首班としての政治モラル、この観点に立ちまして、任免はいやしくもすべからず、そこいらの番頭、社員の出入りの問題じゃございません。一課長、重役の出入りの問題ではございません。少なくとも日本の運輸行政については、一億の国民は、その行政の首長として運輸大臣を見ておるのであります。この出処進退についてとかくの非難が集中されたということについては、私は反面仕事をなさるという責任感もわかりますけれども、これは、あるいは自分が辞して国民に謝さなければならぬのでないか、こういうような御心境にはなりませなんだか。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来私の考え方をるる申し上げましたから、重ねて申し上げません。吉田君のただいまのような御意見もあろうかと思います。しかし私は、私の考え方で先ほど来お答えしたとおりでございます。
  153. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 上林山防衛庁長官の問題は、これはまだ終局的には本人の弁明がありませんので、御説のとおりの意見も出るのでございます。しかし、すでに決算委員会において明らかになった事実によりますると、九月二日東京から鹿児島へ秘書六名を帯同してYS11号軍用機に乗せて、そうして行ったそのうちの一人は、昨年東京地裁で懲役三年の判決を受け、目下保釈中というのが、防衛庁の説明によって、また法務省当局の説明によって明らかになったのであります。こういうような事実がございまするので、これはきわめて遺憾とすべきまことに不祥事な、世界中に恥をさらした事件でございます。こんなことも戦後例はおそらくありますまい。日本の憲政始まって以来例もございますまい。不幸にして佐藤内閣だけこの例が出ました。これについての感想はいかがです。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 保釈中の久保それがしを連れていったという問題でございますが、私は、上林山君がそういう事実を知りながらこれを帯同したといえば、これはたいへんなことだと思います。しかし、知らないものは私はどうもこれはやむを得ないのじゃないか、かように思っております。そういう点は十分あとで話を聞いてみたい、取り調べたい、かように私は思っておるのであります。
  155. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし、国会で明らかになったところによれば、搭乗者の氏名、その申請の書類等、上林山君みずからが出しておるのでございます。かってに事務が扱った、かってに秘書が扱ったということで逃げることは、これは三百代言でございます。少なくとも佐藤総理みずから責任を持って選んだ閣僚のうちに三百代言がおろうとは国民は思いません。しかし、すでに国会で明らかになった以上は——空前の不祥事であります。これこそ明治以来全くありません。世界じゅうの憲政史、議会史をさがしてみてもこの例はないかもわかりません。いかに公私混同、官紀無視、公のものを私に使うというような、そのような気持ちにすきがあったかということの顕著な例証でございます。まことに政治道徳から考えても、世道人心から考えても、どこから考えても弁護の余地はありません。本人のべらべらした何か説明を聞かねば欠席判決できないかのような、そんなことは、これは申すべきではありません。国会ですでに法務省の代表者も、防衛庁の当局も事実を明らかに認めておるのであります。でありまするので、私は、厳とした態度をもって臨むことをここではっきりとお約束しなければ、あなたが、清潔な政治をやるとか、一大勇猛心をもって積弊を改めていくとかいうことを何ぼおっしゃっても、これはほんとうのから念仏に終わります。あなただけならばよろしい。佐藤内閣の運命のいかんよりも、一億の国民はそんな政治をやられて一体どうします。私はそれを思うて切実にあなたに訴えたいのであります。いかがです。
  156. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 吉田君の御意見を私はただいまじっと伺っておりました。先ほども申し上げましたように、こういう重大な問題でございますから、本人に一言半句の話し合いもできないような、そういう状態で態度を決するということは、私は今日の事態によろしくない、かように考えております。
  157. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この松野農相の問題でありますが、これは事案は若干違います。あるいは見方によりましたならば、それは幾らか事情は軽いです。しかしながら、いずれにいたしましても、先月の二十七日、参議院決算委員会におきまして、農林省に関する融資を中心に共和製糖の問題で相当深刻な論議が重ねられたのであります。農相ももちろん出席しておりました。こういうことをあとに見ながら、かなりずさんな日程を組んだ、そして民間人を、商人を帯同した、これまたアメリカ行きというものができておりまして、会計等々につきましても、決算委員会でいろいろと問題になったのであります。これも綱紀粛正の面から考えますると、実に遺憾なことであります。少々のことはいいじゃないか、大臣だから少々のことはいいじゃないかという風が、佐藤内閣に満ちておるのではないだろうか。一体政府というのはそんなもんであろうか。権力の座にあるものはそんなもんであろうかということが、いまの率直な偽らざる国民の気持ちでございます。これにこたえるということが、あなたの責任なのでございます。農相問題は前二者とは違います。違いますけれども、これはこれなりにやはり問題として十分に論議する価値があるのでありますが、所見はいかがですか。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 農相問題については、国会におきましてもずいぶん審議されておると思います。私は、今日までのところ、松野農林大臣をやめさす考え方は持っておりません。それだけは明確に申し上げておきます。
  159. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 前にはいわゆる田中彰治君の事件が、まことにこれは希代の不祥事として世に喧伝されて、まだ未解決でございます。続いて三閣僚のこのような不祥事件が論議の対象になったのでございますが、一体総理は、このような不祥事が次々起こってくるということについて、相当深刻にお考えにならねばいけません。はたして今後もう出ません、もうあとはきれいさっぱりとなって、汚職的な、疑獄的な、あるいは辞職をさせねばならぬような、このような個人的エラーも含んで、こんな事件はもう起こりませんということを、あなたは確言できましょうか。あるいはまた、起こってきたらどうするということについて、今日責任のあるおことばが出ましょうか。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、私が冒頭に申し上げましたように、たいへん積弊久しきにわたっておりますし、また各方面にその病魔がございます。一朝一夕になかなか直ちにこの効果をあげるということは困難にいたしましても、申し上げましたとおり、私自身の政治信念から、これをぜひとも正していかなきゃならない。そうして政治路線を革新していかなきゃならない、かように私考えておりまするので、その意味の御鞭撻を心からお願いしてやまない次第であります。  私が冒頭に申し上げましたこと、ただいま別にことばじりをとるわけではございませんが、相当重大ではございません、まことに重大にこの問題と取り組んでおる、それをひとつ御了承をいただきたいと思います。
  161. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一体このような不祥な事件が続出した、三閣僚につきまして、世の指弾を浴びるということは、戦後不幸にしてあなたの内閣だけであります。戦前の日本の憲政史をひもといてみましても、この実例は出てきません。実にこれは遺憾しごくでございます。  そこで、一体国民としましても、われわれ議員といたしましても、なぜこんな事件が起こるのであろうかということをほんとうに胸に手を当てて考えてみにゃならぬ秋が私は来ていると思うのです。これは私の私見ですけれども、少し日本の政治は安易過ぎるのではないであろうか。明治、大正、昭和にかけまして、政治はもっと深刻重大な問題と取り組んでき続けました。言うならば、今日は外交におきまして、国防におきまして、アメリカたよりでしょう。だから、独立といい、平和というけれども、しかし明治、大正当時日本の政府は、日本の国民は、命がけで、国を守ろうというような、命がけで平和をかちとろうというような、そんな努力をしておりました。言うならば真剣勝負の継続です。いま一億の国民が死ぬか生きるかの真剣勝負の場がないわけですね。そこで安易な政治になる。安易な政治とは何ぞや。極端なことばで言いますると、政界は利益争奪の場になるのではないだろうか。利益争奪の場が、まことにこれはあなたのほうに向かって失礼なことばか知りませんけれども、派閥政治になるのでないだろうか。人選適切に行ない得ない、適材適所に選ぶことができない、やっぱり派閥の押し出しということになるのじゃないだろうか。これは公知の事実であります。だから、安易な政治をやるというこれが原因ではないであろうか。こういうことを考えてみますると、私はやはりこの際政党の体質改善ということ、体質を根本的に改革するという秋が到来しておるのではないであろうか。抜本的にこの原因を削除していくということが、全政治家の使命でないか、命がけでやらなければならない、こういうように思うのですが、どうですか。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま吉田君の御意見、私もさように考えます。長く自由民主党に対する批判が新聞紙その他で伝わっておりますが、どこか心のすきがあったと、かように私も反省しております。ただいまのお話もそういう点に触れておるのではないかと思いますし、いまにして政党の体質を改善しなければ、責任政党、民主主義あるいは議会政治、そういうものはほんとに国民の信をつなぐゆえんでない、かように私考えております。これは、何を申しましても政権を担当しておる自由民主党が率先してこれをやらなければならない、かように思っておりますので、これこそ挙党で自由民主党が真剣に取り組んでおる今日の姿であります。この点を御了承いただきたいと思います。
  163. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、この政党体質の改革という問題は、二つあると思うのです。一つは、やっぱりいまのような、起こった連続する不祥事件に対して、政党みずからがあげて責任を感じ、責任をとるということであります。責任をとるということは何ぞやということであるならば、それはやはり責任議会政治の今日の制度といたしまして、閣僚の首長であるあなたの辞職が一番いいのじゃないだろうか。辞職によって範を垂れる。しかし、さっきから聞いておれば、辞職の意思なしということであります。辞職の意思なしと言う。しかし、国民は、辞職して責任を明らかにしなさい、それでなければ明らかにする方法がないじゃないか、明らかにすることは辞職である、こういう。しかし、辞職はがえんぜない。それならば、それが是か非かということを国民に問いなさい。問う道は、これまた議会政治の鉄則であります。このどれも選ばない。選ぶ意思がないということは、何もせずにほおかぶりしていく、依然として泥沼のような様相を継続するということになるのじゃないかとさえ思うのであります。(拍手)最後にその点についてあなたの確信のある確言を求めまして、質疑を終わりたいと思います。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点では先ほど来私がるる説明をいたしました。私は責任を痛感する。痛感するがゆえに、国民に対して責任を果たすゆえんの道は、私が先ほど来申し上げたとおり、今日総辞職はいたしません。また解散は考えておりません。この語で尽きるのであります。私は、私の考え方においてただいまのような処置をとるつもりでありまして、吉田君の御意見を頭から無視したと、こういうものではございません。その点は誤解のないように願っておきます。
  165. 福田一

    福田委員長 加藤進君。
  166. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、日本共産党を代表して、佐藤総理に質問をしたいと思います。  周知のように、佐藤内閣に対する国民の支持は低落の一途です。ついに今日は、世論調査によっても二六%になった。これは、歴代自民党内閣の中でも、佐藤内閣ほど国民から見放された内閣はないということを証明していると思います。もし佐藤総理にして一片の正すべきえりがあるとするならば、直ちに総辞職をすべきだと私は考えます。ところが、佐藤総理は荒舩、上林山、松野など、総理みずから選任した閣僚の相次ぐ不正、腐敗事件の頻発にもかかわらず、てんとして恥じることもなく、その責任さえとろうとしておらないのであります。これほど国民と国会を愚弄することはないです。戦前の天皇制の政府でさえ、シーメンス事件、帝人事件を引き起こしたときには、当時の内閣はどうでしょう、総辞職をして国民にその罪を謝しているではないでしょうか。わが党は、佐藤総理に対して直ちに総辞職を行ない、国会を解散して、国民の厳正な審判を受けるように強く要求いたします。佐藤総理の明確な答弁をまず求めます。私は、時間の都合上、質問を一括して行ないますから、答弁を最後にお願いしたいと思います。  佐藤内閣と自民党の相次ぐ不正汚職事件について、国民はこう言っております。ちょうどそれはごみだめからウジ虫がはい出るようだと言っているのです。まことに底の知れないものがあります。これは、佐藤内閣と自民党そのものが腐り切っているという証拠にすぎないと思います。現に自民党の屋台骨を背負っておる幹事長の田中角榮氏にからまる多数の疑惑があります。これはすでに明らかになったようないろいろな、たとえば国際空港問題、光明池問題、虎の門公園問題だけではありません。さらに多数の事実があります。その一つ田中角榮氏の地元である新潟県長岡市に起こった問題があります。新潟県長岡市の信濃川の河川敷をめぐってきわめて奇怪な事実があります。それは遊水地、すなわち増水したときには水の底に沈んでしまう土地を三十万坪、すなわち羽田空港の三分の一に値する土地を買い占めたという不動産会社があります。これが奇怪千万な第一です。この不動産会社は、東京にある室町産業株式会社であります。ところが、この会社は、確かに表札はありますけれども、専任の社員もいないという状態であり、その会社は、電話帳には載っておらないのであります。いまその河川敷の川沿いに、霞堤と称して約一千メートルの堤防がつくられております。実はこれは霞堤ではなく、本堤となるものであることは明らかです。ところが、水をかぶるはずだったこの土地が、いまやこの本堤をつくることによって堤防によって守られる用地に変わろうとしておるのです。これもまた奇怪千万な事実です。さらに奇怪千万なのは、この河川敷に信濃川中央大橋が架橋される計画がちゃんとできております。さて私は、ここにいろいろな資料を持っております。しかし、その中の一つとして、この土地台帳によりますと、室町産業が農民をだましとって買い上げた土地の価格は、何と坪五百円であります。国有地の耕作権を取得するためには、坪平均百円でその耕作権を取得したのである。ところが、この霞堤が本堤になったとしただけでも、地価は数倍にはね上がるであろうし、ましてやそこに橋がかかるとなれば、われわれの計算したところでも、ざっと二十倍にはね上がることは確実であります。いいですか、佐藤さん、この土地を室町産業が買い占めたときには、あなたの幹事長の田中さんは、当時大蔵大臣であったのです。こういうもし増水のときに水の底にはまり込んでしまうような土地を三十万坪も買い上げるなどということは、一営利会社の事業としては全く常識では考え得られないところです。こうしてみると、この土地を買った室町産業は、三十九年にはすでに本堤ができ、しかも橋がかかって、その土地はばく大な利権につながることを十分に承知した上で買ったと推定して誤りないのです。それなら、この室町産業なるものの実体は何でしよう。まず、この会社の代表取締役になっている入内島という人は、田中角榮氏が取締役をしている品川の東元工業の社長であります。取締役の関藤栄さんは、田中角榮氏の越後交通の専務取締役、同じ取締役の佐藤昭氏は、田中角榮氏の後援会である越山会の会計責任者であります。また、その他取締役の榎本敏夫氏、早坂茂三氏、監査役の田中利男、この三氏は、いずれも田中角榮氏の秘書でございます。ところが、これまた奇怪なことに、参議院決算委員会において重政代議士の元秘書連が共和グループで暗躍していることが暴露されたその直後、田中角榮氏の秘書である榎本、早坂、田中の三氏、それに越山会の佐藤氏は、突如として十月三日と七日、室町産業の役員を急速退いたのであります。しかもそのかわりに、越後交通の取締役であり、田中角榮氏の腹心とも言うべき庭山康徳氏、片岡甚松氏が取締役に、風祭康彦氏が監査役に就任したのであります。つまり、この室町産業という会社は、田中角榮氏の側近だけでつくられた会社であり、実質的には田中角榮氏自身の会社であります。しかも、繰り返しますが、この時期の田中角榮氏は、大蔵大臣という政府の要職にあった時期であるということをお忘れないようにしていただきたいと思います。重大なことは、かくのごとき不正に自民党の大番頭にもひとしい田中角榮氏みずからが関係しているということであります。しかも、あげようとすれば、こんな事実は幾らでもあります。今後私も、これを引き続いて追及したいと思います。このようなことを許しておいて、一体何が自粛というのでしょう。何が粛党というのでございましょうか。佐藤総理は、このような田中幹事長を処断する決意があるかどうか、お聞きしたい。また、佐藤総理みずから罪を天下にわびて、内閣総辞職を行なう用意があるかをお聞きしたい。国会を解散して信を国民に問うだけの勇断があるかどうか、このことをお聞きしたい。佐藤総理の明確な答弁を要求いたします。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共産党の加藤君からも同じお尋ねがございますが、先ほど来、総辞職あるいは解散等については、私がるる説明をいたしましたから、もう重ねてお答えをいたしません。あの答弁でお聞き取りいただいた、かように私は了承しております。  ただいままた、田中幹事長についてのいろいろのお話がございましたが、これは、私は全然まだ知らないことであります。まさかこの席が幾ら国会の席ではありましても、人の名前が出ているのでありますから、そう無責任なことは言われないだろうと思います。十分注意していただきたいと思います。
  168. 加藤進

    加藤(進)委員 ただいまの御答弁については、私は全く納得いきません。誠意を持った答弁とは考えられません。私は、佐藤総理が内閣の責任者として、また自民党の総裁として、今後真に国民が納得できるような姿勢を直ちに確立されるよう、そのためにとるべき責任はとられるように心から期待いたしまして、質問を終わります。
  169. 福田一

    福田委員長 引き続き資疑を続行いたします。山花秀雄君。
  170. 山花秀雄

    ○山花委員 総理が退席されましたので、残余の閣僚の方々にいろいろ、お伺いしたいと思いますが、いまわが日本におきましては、御承知のように、不幸の連続というような調子で、台風、水害、冷害が日本全国を襲ってばく大なる被害をこうむったことは、御承知のとおりであります。これに対して急速に復興の処置を政府としてはやらなくてはならぬと思いますが、これらについての予算措置のために、急速に臨時国会を開いて補正予算の処置をとられるかどうか、お伺いしたいのであります。
  171. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府といたしましては、補正予算案のでき上がりを待ちまして臨時国会を召集する、こういう予定であります。そういう性格の臨時国会でございますから、災害その他緊急必要な案件を具備いたしました補正予算を御審議していただく、かようなことに相なります。
  172. 山花秀雄

    ○山花委員 総理が退席されましたので、だいぶざわめいておりますが、ひとつ委員長のほうから静粛の声を上げていただきたいと思います。
  173. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  174. 山花秀雄

    ○山花委員 いま国民が一番関心を持っておるのは、これは各閣僚ともよく御存じと思いますが、物価がどんどん上がるということであります。去年は、予算の上においては四・五上がると言っておりましたが、結論から七・四上がったということで、総理大臣みずから、本会議の席上で見通しのあやまちを率直に認められました。ことしの予算は、五・五上がるという予算の内容になっておりますが、だんだん上がってまいりまして、ただいまのところ一体どの程度の上昇を示しておるか、お調べになっておると思いますので、お聞かせ願いたいと思います。
  175. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価問題は重要な問題でございまして、われわれも非常な注意をしてやってまいっております。現在のところ、かりに九月の水準を横ばいにしてまいりますと、もう九月から同じレベルで回っていくということでございましたら、四・二くらいで済む。しかし、今後冬野菜の時期がございますし、いろいろな問題がございますから、われわれ五・五という努力目標にできるだけ押え込めるように最善の努力をしてまりたい、こういうことであります。
  176. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま少し安心めいた御答弁がございましたが、何かいろいろ政府は上げるような気配がございます。それはあとで質問いたしますが、企画庁長官といたしましては、年度内は、本年度の締め切りまでは政府の考えていた五・五でおさまる、こういうような確信をお持ちになっておられるのですか。それとも、まだいまの段階では少し不安だというようなお考えを持っておられるのですか、これを聞かしていただきたいです。
  177. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今後、いろいろな問題が言われております、こういう問題について、政府が物価問題、消費者物価の問題について手をゆるめていったらばいけないと私は思います。どうしても手をゆるめないで諸般の問題に対処していくことによって、どうやら所期の目的を達成するように持っていきたいというのが、いまの私の考え方でございます。
  178. 山花秀雄

    ○山花委員 ぐっと引き締めれば何とかなる。少し気を許せば見通しがくずれるというようなお話かございましたが、ぐっと引き締めるということになりますと、公共的な料金、それから、国民生活に一番必要な米価等々をぐっと押えるというふうに承っていいのでございましょうか、どうですか。
  179. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 問題は、できるだけ値上げするものはなるべく値上げしないように、また、かりにやむを得ず値上げするようなものについても、その時期等について勘案をしていく。そうして、年度内はなるべく立てました目標にいけるようにやってまいりたい。しかも、その他の日常の業務については、生鮮食料品の問題その他についてはいろいろ対策が考えられておりますから、それらの対策というものを強力に各省が推進していただくことによってそういう方向に進める。何と申しても手をゆるめてはいかぬということでございます。
  180. 山花秀雄

    ○山花委員 いま決意のほどを承りましたが、国民が何としても心配になっておりますのは米価の問題であります。俗にいう消費者米価の問題であります。せんだって大蔵大臣のほうでは、財源その他で上げなくちゃならぬという意向を漏らしていたそうであります。総理大臣のほうは、まあこれは、選挙対策もたぶんからまっておると思いますが、当分控えろというようなことを言ったといわれておりますが、これは、大蔵大臣に率直にお尋ねしたほうがいいと思いますが、米価というのは、これは私が説明するまでもなく、明治以来物価指数の中核的役割りをやっておりまして、米価が上がると必ず物価が上がる。米価が下がると必ず物価が下がる。この政府は物価安定を一つの大きな政策としておられますので、私は、消費者米価は、物価対策の上から考えても上げないと、こう考えておりますけれども、ちらほら値上げの意向が伝わってまいりまして、国民の各位はたいへん心配をしておられるのであります。この際、米価問題、消費者米価はどうお取り扱いになるのか。上げないなら上げないと、こうはっきり言っていただければ国民はたいへん安心すると思うのでありますが、一体意向を、はっきりしたところを聞かせ願いたいと思います。
  181. 福田赳夫

    福田国務大臣 米価についきましては、政府といたしましては、これは非常に慎重に考えておるのでありまして、これはまだ上げるとも、上げないとも決定をいたしておらない。補正予算の編成があります。また、おくれても、四十二年度の予算編成があるわけであります、その際に最終的な結論を出す。考え方といたしては、やはりいま非常に物価問題の大事な時期でありまするから、その角度からの考え方、それからもう一つは、国民のふところぐあい、これをどう見るか、こういう問題があります。それからもう一つは、財政上の立場、これもあるわけです。いま生産者米価の引き上げの結果、食管会計の赤字が二千億を上回るというようなことがある。これをそのまま放置していいか悪いか、こういう問題もあります。主としてその三つの角度から慎重に検討いたしまして、ぎりぎりのところで最終的な判断をしてみたい。いま総理がどうの、あるいは大蔵大臣がどうのというお話がありますが、私は、財政上の見地から見ると、なかなか財政のやりくりがむずかしいということは常々申しておりますが、総理も、まあお正月に上げるのはどうかというようなことも申しておりますが、まだ政府といたしましては、最終的な結論は出していない。非常に慎重な、重大な問題でありますので、検討の上にも検討を重ねまして、誤りなき結論を出していきたい、かように考えているわけであります。
  182. 山花秀雄

    ○山花委員 いまの大蔵大臣の説明は、過去のいろいろないきさつから見て、どうも信用されない面が国民の間にあるということをひとつ知っていただきたいと思います。それは、佐藤内閣が発足以来御承知のように、中期経済安定五カ年計画をやっておられました。そのときに、こういうやり方では当然国債を発行しなければならぬだろうと、たびたび本予算委員会でも私質問いたしましたが、佐藤総理も、当時は田中角榮大蔵大臣でございましたが、絶対いたしません、これは五カ年計画の間は絶対いたしません、何回も何回もこう言っておられたのであります。そうすると、財政の雲行きが少しおかしくなったとも思うのでありますけれども、内閣改造を行ないました。そして、田中さんから新たにバトンタッチをされたことは御承知のとおりであります。そうなりますと、あなたの口からちらほら国債を発行するというようなことが言い出されてきたのであります。そうして、去年はいつの間にか赤字だから二千七百億円出す、ことしは七千三百億円出すということで、完全に中期五カ年安定経済計画がくずれたということは御承知のとおりでございます。四・五上がるといった物価も最終的には七・四上がった。そこでこの米価問題につきましては、財政問題とかなんとか言っておられましたが、政府がはっきり消費者米価を上げないと決意をいたしますと、財政上の措置はとれるのです。いまの御答弁を聞いておりますと、これは一つは選挙対策もあると私は思うのです。選挙前に上げるとまずいから。また国民もそう思っておると思うのです。選挙が終わったらぱっと上げるのだろう、その選挙の時期がいつかということで、もし年内選挙ということになると、正月のお年玉のような形でくる。あるいは来年休会あけの解散というようなことになると、四月の予算でくるというように国民は考えております。それがもやもやしておるのですが、もう少しはっきり、たとえば補正予算ではその問題はもう上げないことにきめた、次の本予算でも努力する、このぐらいの御答弁を願わないと、何か伏線があるのではないか、福田大蔵大臣は考えようによると少しずるいのではないかと、そういう気持ちを国民は持っておりますので、この際明快に、上げるのだったら上げる、上げないのだったら上げない、国民にひとつはっきりした所存のほどを知らしていただきたいと思います。重ねてお伺いしたいと思います。
  183. 福田赳夫

    福田国務大臣 率直に申しまして、まだ上げるか上げないか、そういう結論を出していないのです。これは非常に重大な問題でありますので、そう急いで結論を出す必要はない、誤りなきを期したほうがいい、補正予算あるいは四十二年度予算の段階において最後的な結論を出したいと、かように考えておるのであります。
  184. 山花秀雄

    ○山花委員 この問題については、大蔵当局と藤山さんのほうでだいぶん対立があるというふうに伝えられておりますが、農林大臣や経済企画庁のほうではどういうお考えを持っておられるのでしょうか。
  185. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価問題の見地から申しますと、当然消費者米価が上がりますことはかなり波及的な影響がありはしないかという私ども心配をいたしております。したがいまして、消費者米価をなるべく上げないようにしたい、こういう考え方でおります。ただ、私も経済閣僚でございますから、財政事情等も考えなければなりませんし、同時にそれらの財政事情についてできるだけ消費者米価を——ことしは物価問題につきましては異常な年だと思います。普通の、物価が上昇していないで安定しておるような年でございますれば問題は簡単でございますが、そういうような異常な年で、五・五%の目標も達成できるかできないかという年でございますから、何か特段の財政的な措置が考えていただけないものだろうかどうだろうかというようなことで、大蔵大臣にも意見を申し上げているところでございます。
  186. 松野頼三

    ○松野国務大臣 食管の内容から申しますと、生産者米価を大幅に引き上げましたために、食管会計としては相当大きな苦労をいたします。しかし生産者米価の関連とは別に、消費者米価につきましては、家計、経済、物価を勘案して決定するということが骨子でありますので、その方向で、上げるか上げないかという結論にはまだ至っておりません。
  187. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまお三氏のいろいろの意見を聞いておりますと、率直に申し上げまして相当伏線を持っておると思います。そこで、米価がかりに上がったといたしますと、これは、お値段が上がったからめしを食わないというわけにはまいらないのであります。考えようによれば、これは税金と同じような性格を持っております。国鉄運賃、あれと別に変わりない性格を持っております。そうなりますと、これは増税という形になります。大蔵大臣は、よく減税をして庶民の生活に喜んでもらうのだということを口ぐせのように言われておりますが、結論として増税になると思いますが、このことについてどうお考えになっておるか、ひとつお考えをお知らせ願いたいと思います。
  188. 福田赳夫

    福田国務大臣 端的に申し上げますと、米価の逆ざやがふえるということは間接税がふえるような形になります。社会党なんかの非常に排斥するところの間接税がふえるのです。いま生産者米価が上がりましたので、食管会計をとんとんで維持しようと思うと、二百十九円で売らなければならない計算です。それを、消費者米価を据え置くということになりますと、百七十三円で売る。二百十九円で売るべきものを百七十三円で売る。これは一升です。そうしますと四十六円の差額を政府が補給しておる。皆さんに一律に補給しているのです。補給する財源は何だというと、国民の税であります。同じ税を使って、上はあなた方国会議員から下は生活保護者に至るまで、一律同じ食事を保障するという行き方がはたしていいのか、これは根本的な問題です。そうじゃなくて、それだけの財源、四十六円を全国民に直しますと九百億円近くになりますが、米価を上げてそれだけの財源を端的に社会保障費あるいは住宅費、そういうほうに回したのがいいか、これは税を使う効率の問題として非常に私は重要な問題だと思うのです。どうも消費者米価を引き上げるというと税がかかるとか、こうおっしゃいますが、米価の逆ざやは、私はそういう意味を持つと思いまするが、非常に皆さんの排撃されておる間接税がふえるのだという点をよく御理解願いたいと存じます。
  189. 山花秀雄

    ○山花委員 大蔵大臣ですから税論議になってまいりましたが、いま一番大切なことは、政策にもうたっております物価安定ということ、これは庶民生活にとって一番大切なことだと思うのであります。税金の問題についてはあとからまたいろいろ質問を続けてまいりたいと思います。  農林大臣にちょっとお伺いしたいのですが、九月二十九日に岡山で新聞記者会見をされまして、食管法の手直しによって米穀通帳廃止を含む配給制度の改善を検討するということを語ったそうでありますが、食管法のどこを手直しするのか、配給制度をどう改善するのか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  190. 松野頼三

    ○松野国務大臣 そういうふうな構想を私は就任以来持っております。と申しますのは、現状が、はたして配給手帳あるいは登録という制度が実行されておるかどうか、この現実を見ますると、必ずしも完全に実行されておりません。また実行されないままに今日の流通が確立しております。したがって、はたしてそういうものを今後存続していかなければならないかという疑問を私は持ちまして、できるならもう少し豊かな、自由な、食糧の国民に対する安定感を与えたい。やはり登録とかあるいは配給手帳というのは、窮屈な時代における一つの残存であることは、これは間違いありません。そういうことで、幸い本年は国内産米が豊作である、食糧の不安はない。また今後食糧増産もある程度進むならば、私は、もう少し国民が豊かな気持ちで食糧の配給を受けられるということから、実はその構想をいまでも持っております。はたしてこれが実行してどういう影響があるか、まだその勘案が、ただいま検討中でありますので結論は出ませんが、私の気持ちは、そういう配給制度というものがもうぼつぼつ変わっていいのじゃなかろうか、こういう気持を持っておることは事実であります。まだ結論を出すには、諸般の影響を今日検討しておりますので、しばらく結論は待たしていただきたいと思います。
  191. 山花秀雄

    ○山花委員 農林大臣の考え方だけは一応わかりました。これに賛成とか反対とかという意見は私は申し上げません。いずれこれは農林水産委員会あたりでも、またその他の委員会で十分論議を進めてもらって、一番いい結論の出るようにひとつ努力をしてまいりたいと思います。  政府は外米の自由販売を進める意向があるとかないとか、こう伝えられております。   〔委員長退席赤澤委員長代理着席〕 これを足がかりにして、米の統制を、あるいは直接統制から間接統制に移行をするという考え方が政府にあるのかどうか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  192. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私は、食管の基本を変更するという気持ちはございません。外米問題は、今日でも数量制限をいたしておりません。今日でも配給というものを、数量制限を外米はいたしておりません。ただ今日は、いままでの流通ルートの、米屋の配給所においてのみこれを取得することができるという制限がありました。これをもう少し広く、食糧関係を扱うものが外米を扱って、消費拡大あるいは食糧改善の資料にしたいという一つの構想が外米でありまして、自由という意味は、いま少しいままでのようなルートよりもルートを拡大するという実は現実であって、自由には、まだそこまでは考えておりませんが、配給ルートを拡大したい、こういう気持ちでおります。
  193. 山花秀雄

    ○山花委員 いまの農林大臣の説を承っておりますと、これは将来の問題になると思いますが、将来は百貨店の食糧販売店でも外米をきれいな包み紙あるいは袋に入れて自由に売れるようにしたいというような意味でありますか、どうですか。
  194. 松野頼三

    ○松野国務大臣 外米の高度利用と申しますか、加工利用というものを考えたいと思っております。今日でも業務用米には、外米があられとかおせんべいとかいうものには利用されております。これを食糧として何らかの方法で消費拡大ができないかということで、まだその第一段階で、先般テストとして外米だけの、米としての外米のある意味の商品テストをしてみました。予想外と申しますか、案外国民には受けられる、食べられるという印象を、私は一つの統計として得ております。ただ、いまの外米だけでははたして嗜好に合うかどうか、もう少し加工できるならば加工をした米としての販売を研究したい、こういうことを実は念頭に置きまして外米の利用、あるいは外米は今日人気が必ずしもよくありません、しかし外米というものを一つの食糧の中に入れたい、こう実は考えております。
  195. 山花秀雄

    ○山花委員 国民の主食はパンに移行したとかなんとかいわれておりますけれども、日本人にとっては何としても米が主食であることは御承知のとおりであります。国の直接管理のもとに安定した供給をはかるのが一番いいとわれわれは考えておりますが、この点について、先ほどいろいろ議論がございましたが、ひとつ基本的なお考えをお聞かせ願いたいのです。
  196. 松野頼三

    ○松野国務大臣 あくまで食糧でございますから、食糧庁において全量輸入、全量保持という原則は変える気持ちはございません。これを一般商品のように自由輸入をやろう、そんなことは念頭にはございません。食糧庁に持っている中で利用を拡大したい、この構想でありまして、自由ということばはその範囲内においてのことばであって、要するに一般商品並みにしようという考えは毛頭ございません。
  197. 山花秀雄

    ○山花委員 政府が、ただいま言われましたように国民に主食を安定配給するためには、米の管理を行なう以上は、御案内のように米の集荷あるいは保管の経費、運賃、事業費、それに伴う金利、四十一年度予算は七百四十八億円を占めておりますが、政府管理経費は当然これは行政費であって、これを食管会計のほうに入れますから赤字とかなんとかという点で行き詰まってしまうのであって、これを行政費に回せば、消費者米価を値上げしなくても私は済むと思うのです。物価安定の基礎になる消費者米価でありますから、そういう決断をひとつ示していただきたいと思いますが、農林大臣や大蔵大臣はそこまでお考えが至っておりますかどうかという点をお伺いしたいのです。
  198. 福田赳夫

    福田国務大臣 食糧を集荷し配給する、まあ米穀の管理費ですね、それからそれを貯蔵するための金利だとか倉敷あるいは輸送費、そういうようなものです。これは米価じゃないのだ、行政費だというふうな説をおっしゃる方があるのですが、政府といたしましては、食糧関係のもので行政費と認定されるものは、もうすでに一般会計のほうで負担することにしております。食糧庁の人件費の一部とか、そういうものであります。その他の、いま私があげましたような問題は、これは米の販売コストに当然経済通念上入るものなのです。それで、私どもはそれを加味して食管の赤字というものを計算する、これは適当な行き方であるというふうに考えております。しかし、どこまでが行政費でどこまでが管理費であるかという点になりますると、ややぼやけた点もなきにしもあらず、そういう点は十分に洗って世の誤解のないようにいたしたい、かように考えております。
  199. 山花秀雄

    ○山花委員 意見だけ申し上げておきますが、とにかく消費者米価の値上げということは、もう国民としては耐えられない段階に来ておるのです。大蔵大臣は国民生活の安定度を見てというようなことを言われておりますが、高度に経済が成長し、ことしもたいへん予定以上の経済成長をやったというように承っておりますけれども、あとに来るものが非常に不安定な要素がございますので、この点はひとつ国民生活安定、物価安定という意味から、政治的にこの問題を解決するように閣内においても御尽力を願いたい。これは、私意見だけ申し上げておきます。  次に、何か税金の値上げが次から次に来るようなことが伝えられておるのでありますが、ちょっときょう新聞によりますと、八十三万円程度の標準世帯の源泉課税の免税点ですか、これが答申案として政府に伝えられたということが新聞記事に出ておりますが、まことにけっこうな答申案だと思うのです。われわれは、標準世帯は百万円まで免税をと、こう主張しておりますが、そこまでいかなくても、これが実行されればというふうにも一面考えておりますが、大蔵当局はこの答申案をどうお取り扱いになるか、御意向をひとつ聞かしていただきたいのです。
  200. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま御指摘の所得税免税点八十三万円は、これはいま税制調査会のほうで御論議いただいておりますが、長期減税の構想というたてまえで、さしあたって来年度をどうのこうのという問題ではないのであります。私どもも所得税の最低限を何とかして引き上げたい、かねがねそう思っておるところであります。目標としてはそのくらいまではぜひいきたい、こういうふうに思っておりまして、答申が出ますれば、その答申を体しまして、ここ数年間にはぜひこれを実現いたしたい、かように存じます。
  201. 山花秀雄

    ○山花委員 せんだって大蔵省から発表されたのじゃないかと思いますが、長期ということになりますと、当面百万円を限度に努力したいというふうに新聞発表されたようにちょっと私は伺っておるのでありますが、社会党が百万円と言っておるから、自民党の政府も、お株をを取るように短期の長期のと、これはなかなか国民にはわかりませんから、見出しだけは百万円と、こう出ておりますから、なかなかうまいことやっておるなと、そういうふうに見ておりましたが、税制調査会は八十三万円、長期といっても年度の関係がございますが、どのくらいの期間でああいう答申案が出たというふうに大蔵当局は受け取っておられるのですか。
  202. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだその辺は、答申が出たのじゃございませんので、答申者である調査会の意向も伺わなければならぬわけでありますが、私といたしましては、答申が出ますれば、何とかしてこれは数年間——数年間というと、常識的には三年から五年という間かと思いますが、その辺を目途にいたしまして実現いたしたい、かような考えであります。
  203. 山花秀雄

    ○山花委員 いま大蔵大臣の話、八十三万円が三年から五年などという、そんなゆうちょうなことでは私は済まぬと思うのです。もっと保守的な内閣ができても、もっと速い速度で解決しなければならぬほど、経済の速度のほうがずっと進んでおると思います。これはひとつ御検討願って、一円でも早く安くなるような減税案を出していただきたいと思います。減税案でありますならば、われわれが納得できれば、野党でございましても協力、賛成していきたいと考えております。納得のいかない点は、これはあくまで反対してまいりたいと思いますが、事減税ということになりますと、ないよりあったほうがよいという感じを持っておりますので、ひとつ努力願いたいと思います。ところが、最近大蔵当局でいろいろたばこの税金を上げるとか、酒の税金を上げるとか、ガソリンの税金を上げるとかということが、ちらほら来年度の予算の内容に織り込むというように伝えられておりますけれども、これは一体どういうようにいま大蔵当局としては考えられておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  204. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ具体的な考え方という程度に申し上げることはできないのでございますが、酒につきましては、先般酒の原料である酒米の値段が上がったのです。その結果、醸造業者の経営が非常に困難になる、こういうことで、酒の小売り値段の引き上げをいたしたい、かような話が、酒の値段の引き上げを行ないたいという意向が表明されております。この酒の値段というものは、そもそもこれは政府の統制価格じゃないのでありまして、業者の自由にまかされておるわけで、政府、大蔵省といたしましてこれに介入する立場にはないのでございますが、そういう業界の意向の表明に対しまして、政府はいま物価問題が非常にデリケートな段階だ、そういう段階においてぜひとも物価の安定に協力願いたいといって、業者にいまお願いをいたしておるわけでありまして、業者もおそらくこれに協力をしてくださる、かように考えておる次第でございます。  それからたばこにつきましては、これは税制調査会の場において、たばこの引き上げを考えたらどうかという意見がちらほら出ておるのだということを私は報告として承っておるのでありますが、まだ大蔵省自体といたしまして、これをどうするという固まった意見はございません。ただ、たばこは、たとえばピースを例にとってみますと、昭和二十六年に今日の四十円というものがきまった。自来ずっと今日まで据え置きになっておる。一方コストのほうはどんどん上がっていくものですから、たばこの収益率というものは激減をいたしておるわけであります。つまり、裏から言いますると、たばこ消費税の減税が毎年毎年行なわれておる、こういう状況でございます。財政的な立場から言うと、値上げをするということも考えられないわけではないのでありますが、今日の物価の情勢、そういうものを考えまするときに、これも慎重な扱いをしなければならない、こういうふうに考えております。  それからガソリン税につきましては、これが道路財源になっております関係からいたしまして、道路財源を充実するためにガソリン税を上げてはどうかという意向が、道路関係の方面にあるわけであります。これも、ガソリン税が消費者に転嫁されるということを考えますときに、物価政策上きわめてデリケートな問題である。そういうような角度から慎重に対処しておるのでありまするが、道路整備ということがわが国としては非常に重大であります。これが財源をどういうふうに満たしていくか、これは長期的な立場からいいまするとガソリン税値上げということが問題になってくると思うのですが、物価情勢というようなものを考えまして、当面の施策といたしまして、私は慎重に対処していきたい、こういう心がまえでおります。
  205. 山花秀雄

    ○山花委員 酒のほうは、酒造米の値上がりの負担で業者のほうが云々しておる。たばこのほうも、やはり原料が高くなっておるから、定価の据え置きは逆に回り回って税金を少し安くしておるような形になっておる、こういうような御説明でございましたが、業者の意向を極力押えて努力をする、たばこのほうは、いま言ったように税金を上げるようなことは大蔵当局としては考えていない。こう聞いておりますと、それなら両方とも上がらないというような感じがするのでありますけれども、総理大臣が反省する反省すると言ってもなかなか反省の実が上がらないように、大蔵大臣が考えるとか慎重に検討すると言っても、最後になってくるとその線がくずれるのでありますが、いまは日本の経済再建の非常に重要なときでございまして、一般の庶民の生活の安定をさすということが経済成長の一つの基本的な要素になっておりますので、これは当分上げないというようにきっぱり本委員会で言明をしていただきたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
  206. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ昭和四十二年度の予算につきましては、私といたしましては検討も始めておらない、こういうような情勢下におきまして、ここできっぱり上げないというような表明をすることができないのは、まことに残念でございますが、私もあなたと同様物価のこと、国民生活のことは非常に重大なことだというふうに考えております。しかし、財政の問題もあるわけでありまして、これも、誤りますとインフレにつながる、こういう性格である、これも御了知願いたい、かように思います。
  207. 山花秀雄

    ○山花委員 去年は四・五が七・四になったということを言っておられますが、これは平均の物価指数であります。われわれがやはり論議してまいりたいのは人間生活に必要な物価、言いかえれば衣食住、着るもの、食べるもの、あるいは住まい、それから乗りもの、また学校の授業料というようなものは、私の知るところでは、去年こういう必要生活物資は一一%ほど上がったということが伝えられておるのであります。何か授業料を上げるというような話がちらほら出ておりますが、これはいかがでしょうか。文部大臣、ひとつ。
  208. 有田喜一

    ○有田国務大臣 学校の授業料につきましては、私はいま上げようというような考えはございません。
  209. 山花秀雄

    ○山花委員 はっきりした御答弁で、まあ、いまということばでございましたが、そうなりますと、いつという裏のことばが出てまいりますが、まあしかし、だいぶ確信めいた答弁でありましたから、それをそのまま私は信用をして努力していただきたいと思います。  なお、ここで大蔵大臣にひとつお尋ねしたいと思いますが、ガソリン税の問題であります。これは何か値上げしないようなおことばでございましたが、これはなるべく上げないように、そうでないと、日本は世界一ガソリンの高い国だと言われておることは御承知のとおりであります。税金を目的税に使っておる。ところが、この徴税方法について非常に困った傾向が出てきておるということをいろいろ承っておりますが、大蔵大臣おわかりでしょうか、どういう徴税をしておるというようなこと。ちょっとわかった人にひとつ説明をしていただきたいと思います。
  210. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 ガソリン税及び地方道路税は国税といたしまして、いわゆる間接消費税といたしまして、製造場から蔵出しの数量に応じまして徴収しております。普通ならば一カ月の納期限でございますが、代金の徴収状況等に応じては延納を認められる。この代金の徴収状況について問題がときどき起こることは聞いておりますが、それ以外は、全般的に酒税あるいは砂糖消費税、同じような徴税方法でございまして、私は現在のところそんなに不合理があるというふうには聞いておりません。
  211. 福田赳夫

    福田国務大臣 ちょっと、いま山花さんのおことばの中に、ガソリン税引き上げが必至であるという印象を私が与えたごときお話でございますが、私はそういう印象を与えたというふうには考えておりません。道路財源整備のためには、長期的にはこれは何とかしなければならぬ問題かもしらぬとは存じますが、ただいまの物価の状況、そういうものを考慮するときは、なかなかこれは簡単な問題じゃないぞ、こういうことを申し上げたのでありまして、積極的に引き上げる意図を表明したわけではございませんから、御了承願います。
  212. 山花秀雄

    ○山花委員 いま徴税方法について、酒やそれに類似した方法——私の承っておるのは、最終小売り業者が最終お得意先に売り渡したときに、税金分としてそれが一カ月ぐらいの延納は認められておるけれども、そういう徴収をしておるというふうに聞いておるのですが、これはどうでしょうか。俗にいうガソリンスタンドですね。
  213. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 ただいま御説明申し上げましたように、普通は一カ月の納期限でございますが、代金が消費者からどの程度徴収されて製造者の手元に入るかという点を考慮に入れまして、一カ月の延納を見ておる。その点につきまして、私どもはまずいまの延納制度で代金の回収状況と見合っているのではないか、かように見ております。
  214. 山花秀雄

    ○山花委員 これは、ほんとうは大蔵委員会で小さい議論をしたらいいと思うのですが、たとえばガソリンスタンドでお得意先にかりに五千円のものを売った。いま貸し売りがずいぶんはやっておりますが、そのときには、もう税金がかかっておる。ただ代金が徴収されなかった場合に、税金を返してくれといってもなかなか返してくれない、そういう議論が業者の間からずいぶん出てきておるのですが、この場合、税金返還の要請があった場合、すみやかに返すような、そういう形がとれないものだろうかということです。そうでなければ、たださえ薄利多売をやっている小売り業者が、このごろ多売もできずして、税金の取り次ぎだけで日を追うておるというような気の毒な状態にあると思うのです。これをもう少し明細に知らしていただきたいと思います。
  215. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 山花先生の御質問は、ガソリン税よりもむしろ今年度から実施されました石油ガス税のことではないかと思うのでございます。経過的な措置は置いておりますが、そういった代金不徴収の場合につきまして、特例は現在の法律の中に入っております。ただ、貸し倒れの認定等につきまして、行政上と申しますか、実際上トラブルが起こったということをお聞きになって言っておられるのかどうかわかりませんが、法律上は、代金が取れない場合には石油ガス税を免除するという規定は入っております。その運用につきましては、実情に即しまして私どもも十分検討してまいりたい、かように考えております。
  216. 山花秀雄

    ○山花委員 時間の関係で、この問題はまた同僚議員かだれかに大蔵委員会あたりで論議を続けていただきたいと思います。  租税特別措置法がもう期限切れになるやに承っておりますが、これはいつでございましょうか。
  217. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十一年度で期限切れになるものがたくさんあります。
  218. 山花秀雄

    ○山花委員 そういたしますと、当然来年度問題になると思いますけれども、この期限切れになったのをそのまま延長するというような態度に出られるのか、取捨選択をされるのかどうかということと、それから、この問題につきましては、われわれはずいぶん異論を持っておる税種がたくさんあるのであります。そういう点につきまして、一応ずっとこのまま再び継続されるのか、取捨選択をされるのか、あるいはもういいかげんに保護をしたから全廃をするのかというような点で、大蔵大臣の意向をお示し願いたい。
  219. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十一年度で期限の到来する租税特別措置が無数にあるわけでございますが、これらにつきましては、一々今後継続する必要があるかどうかを検討いたします。なお、税制調査会にも意見をお聞きいたします。その上で結論を得たい、かように存じておりますが、その中で金目の多いのは利子と配当所得の特別措置であります。この二つにつきましては、特に慎重に検討しなければならぬわけでありますが、いま貯蓄、蓄積という問題が非常に重要な段階で、これを手直しないし撤廃をすべきかどうかということは、よほど慎重に考えていかなければならぬ問題だ、こういうふうに考えておるわけでありまして、十分検討いたしましてまた御審議をわずらわしたい、かように考えております。
  220. 山花秀雄

    ○山花委員 前回の予算委員会で、例の事業団体の交際費に対する課税が非常に甘い、もっと取れ、そうしないといけないじゃないかという議論が出たことを大蔵大臣もよく御存じだろうと思いますが、三十九年度はたしか五千四百億円か六百億円かの交際費を使っておると思うのでありますが、四十年度は一体どのぐらい交際費が計上されておるか、それに対して課税の率を変更されたかどうかということを承りたい。また、将来どういう方針でこれに対処するかということを承りたいのです。
  221. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十年度における交際費の額は、これは大ざっぱでございますが、たぶん五千億ぐらいだったかと思います。それに対する課税につきましては、四十年度に課税を強化いたしておるわけであります。なお、国会の論議等の状況もあります。よく承知しております。そういう御意見等も参酌いたしまして、なおこれをどうするかということは検討をいたしてみたい、かように考えております。
  222. 山花秀雄

    ○山花委員 予算編成期になりますので、私どもといたしましては、俗にいう社用族、公用族という形で相当むだに使っておる点があると思うのです。だから、これは相当きびしい税の取り立てを行なって、むしろ零細な税金を安くする、こういう形の処置をこの際政治の運用としてとっていただきたいことを希望してまいりたいと思います。  なお、これは大蔵大臣または政府の各位にも聞いていただきたいと思いますが、最近新聞の投書欄でいろいろ閣僚諸君の不始末が出ていて、言いかえれば税金のむだ使い、公私混同というようなことで、税金を納めるのがもういやになった、税金を返してくれ、こういう投書記事あるいは論説が新聞に掲載されておることは御存じだろうと思います。これがだんだん大きくなってまいりますと、税金に対し、政府に対し、相当不信な状態が蔓延してまいりますので、この際ひとつ取り立てるべき税金ははっきり取る、そのかわり下げるべき税金は下げる、こういう点を明らかにやってもらいたい。まあこれは総理大臣が幾ら年収があって、幾ら税金を納めたとかいうような、大蔵大臣、あなたも当事者の一人として新聞紙上のやり玉にあがっておりますけれども、田中彰治の問題についてはもう国民は非常に憤激して、それからまた権威を利用して公私混同をやっておることについて、納税がだんだんいやになったという、そういう国民感情が高まりつつあるということをひとつ十分配慮に入れて、補正予算なり四十二年度の予算の編成、あるいは税制の改革をやっていただきたいことを申し上げまして、一応税に対する大蔵大臣への質問は終わりたいと思います。  なお、御承知だろうと思いますが、明二十一日政府も御存じのように全国的に大衆行動が労働組合、民主団体を中心に行なわれることは御案内のとおりであります。この統一闘争の中に、公務員及び地方公務員、公企労法関係の各労働者が多数参加して、統一闘争は四つの目標を掲げてやっておることは御承知のとおりであります。その一つは、人事院の勧告の完全実施、すなわち賃金値上げの要求、労働者を犠牲にする合理化反対、全国一律最低賃金法の制定、いずれも生活に密着した要求を掲げております。なおいま一つは、全国民が念願しておりますところのベトナム戦争反対、世界平和を念願するきわめて適切な四つの要求で行なわれる統一闘争であります。しかるに政府は、関係各省をして、不法なるスト行為、こういう行動は不法行為であるという、そういう断定をして、処罰をほのめかすような通達なり指示を行なっておるというふうに聞いておるのであります。事ここに至った原因を政府は私は反省せねばならぬと思いますが、人事院の勧告を完全に実施しておれば、政府がこの勧告を守っておれば、何を好んで公務員の諸君が立ち上がるでありましょうかと言いたいのであります。人事院の勧告問題に関して政府のとった処置をこの際お伺いしたいと思います。
  223. 森清

    ○森国務大臣 去る八月に人事院から国会並びに政府に対してことしの勧告がなされました。われわれは鋭意これを尊重すべく、完全実施をすべく努力をしたのでございますが、御承知のとおり非常に景気はいいというそういううわさも飛んでおりますし、そういう声を耳にしないではございませんけれども、しさいに大蔵当局も自然増、財源等につきまして検討いたしました結果、意外にまだその景気のはね返りというものが九月決算に出ておりません。したがって、まことにこんとんとした状況でありますし、かてて加えて、ことしは緊急な政策上の問題もたくさんございまして、そうした問題もあわせ考えましたときに、財源難、同時に財政経済に及ぼす影響等を考えまして、昨年と同じように九月一日から実施すると、こういうことに決定したわけでございます。
  224. 山花秀雄

    ○山花委員 これはまたたいへん異なることを政府当局から承るのであります。そもそも人事院制度はスト権や団交権を奪った一つの代償機関としてできたことは、各位御了承のところだと私は思うのであります。昨年来朝されたILOのドライヤーの報告にも政府の怠慢を責めておることは、これは御承知のとおりであります。早急にILO条約の内容を実施すべきであると指摘しております。口を開けば工業先進国、こう皆さんもわれわれも言っておるのです。日本はもうたくましい工業先進国になった。ところが、国内の労働者の内容をいろいろ検討してまいりますと、後進国家よりも劣ったような労働条件で多くの労働者を使っておるということが、これは実情であります。国際的には、これは大きな恥、いわゆる日本の国の工業先進国家としてのたてまえから言うと、一つの恥部がここにあるという、これを改正しないで公務員の大衆闘争を責めるというのは、私は、これは無理じゃないかと思いますが、政府当局はいかがお考えになっておりますか。
  225. 森清

    ○森国務大臣 山花さんのおっしゃるとおりに、確かに人事院勧告、人事院は民間給与ベースとの差をわれわれに勧告したわけでございますから、われわれはあくまでもこれを順法することが、尊重することがたてまえでございます。しかし、ただいま申し上げましたように、財源難あるいは財政経済に及ぼす影響等から考えまして、ことしは万やむを得ず九月一日実施にしたのでございますが、しかし、私は、それと公務員がストライキをやるということは、これはまた別問題であろうと思います。これは明らかに法律でも規制してございますように、私は、公務員としては多くの国民にも迷惑を及ぼすことでもありますし、法律にも明瞭に定められておることでございますから、これは断じてやってはならない、こう考えます。
  226. 山花秀雄

    ○山花委員 政府は、二言目には財源がない、予算がないから、完全実施したいのだけれども、どうもないそでは振れないと、こういままでたびたび言っておられるのであります。じゃ、金があったときやったかどうかという一点であります。金があったときにやったかどうか。神武景気から岩戸景気といわれました三十四年、五年の経済上昇期、これは相当税の自然増収がこの当時あった。金があったときもやっていないじゃありませんか。金がないからやれないという理屈は私は通らないと思う。やっておればこういう不祥事件は起きないですよ。一体、いままで、人事院制度ができて、何回勧告を行なって、何回完全実施したか、ひとつお答え願いたいと思います。
  227. 森清

    ○森国務大臣 人事院の勧告がなされましたのが十八回でございます。しかし、その間完全実施——最初のうちは、これは時期が明示してございませんでしたけれども、完全実施は私はないと記憶しております。
  228. 山花秀雄

    ○山花委員 最初のうちは実施期日が明示してないからない。それでは、最近七回ほどずっと五月から実施という実施期日が明示されておりますが、明示されてもやっていないじゃありませんか。最近どうですか、やりましたか。
  229. 森清

    ○森国務大臣 ございません。
  230. 山花秀雄

    ○山花委員 みずからつとめるものをつとめずして、かわいい子供が騒いだら頭をぶんなぐるという、そういう親心がありますか。古今東西、人情の機微に照らしても、そういう親は私はないと思うのです。いかがお考えになりますか。かわいい子供ですよ。
  231. 森清

    ○森国務大臣 人事院勧告を完全に実施しよう、これを尊重しようということで、毎年非常な努力が関係者においてなされるのでございますが、しかし、いつでも財源の問題あるいは財政の問題等におきましてああした実施がなされている現状でございます。
  232. 山花秀雄

    ○山花委員 労働問題に直接関連なさる労働大臣は、何か閣内において、もう少し努力をせねばだめだという発言をしたというようなことが伝えられておるのでありますが、労働大臣は、今度の問題についてどうお考えになりますか。
  233. 山手滿男

    ○山手国務大臣 私も総務長官の答弁のように、できるならば少しでも前進をしてまいりたい、こういうように考えておりましたが、大局的な見地に立ちまして、経済に及ぼす影響あるいは税収の問題等が必ずしも十分でないというような判断でございまして、閣議でああいう決定をいたした次第でございます。
  234. 山花秀雄

    ○山花委員 あなたはかつて工場の労務担当をされていた前歴を持っておる。労働行政には相当明るい人だと私はかねがね尊敬をしておる者でありますが、こういう公の席上に出られますと、腹にもないことを言っておられるのじゃないかというふうにも考えられますが、人事院制度ができたということは、もう万々あなたも御承知のとおりだと思うのであります。政府みずからが公務員賃金の勧告を完全に実施することによって、公労協あるいは民間との均衡を保とうとするのが国家公務員法第二十八条、第六十四条の精神であることは、万々御承知のとおりだと思うのであります。さきに申し上げましたように、この制度以来これをじゅうりんして全然顧みない。十八回の勧告で一回も完全実施したことがない。こういう政府の態度が改められない限り、また人事院の勧告と仲裁裁定は法的では同じでございますけれども、裁定のほうはやっておられる。勧告のほうはやらないということになりますと、同じ公共的な、あるいは公企労法、あるいは公務員法、地方公務員法という関係でしばられている労働者に、だんだんだんだん格差がついておるじゃありませんか。そういう差別待遇をしていいのですか。これはひとつ政府の態度をはっきりしていただきたいと思います。
  235. 森清

    ○森国務大臣 公社現業は、確かに仰せのごとくこれは完全実施をしておりますので、このままの状態でいきますと、確かにこれらの問題との格差も出てまいりますので、これは深刻な問題として私どもも善処していかなければならないという考え方でおります。
  236. 山花秀雄

    ○山花委員 給与担当大臣のほうも格差があるということを認められておられるのです。仲裁裁定はやる、人事院の勧告はやらない。同じ政府機関あるいは公共的なもとに働いておる労働者が、だんだんだんだん格差が出てくる。こういう不合理が許されていいですか。どうですか。直接労働行政に携わる労働大臣、いかがですか。
  237. 山手滿男

    ○山手国務大臣 できるだけ順次改善をいたしてまいりたいと思います。  人事院勧告につきましては、相当月日がたちましてから勧告をされるというような事例もございまするし、いろいろ当初予算に組まれないというような事情もございまするので、できるならば勧告のやり方等についても改善する方法はないかというようなことを、給与担当大臣等ともよく相談をしよう、こういうことでいろいろ考えておりますが、できるならば改善をしてまいりたい、こう考えております。
  238. 山花秀雄

    ○山花委員 私は、お並びになっている閣僚諸君によく聞いていただきたいと思うのです。三十五年以降、池田内閣の高度経済成長政策によって毎年経済が上昇してまいったことは御承知のとおりであります。また物価が大体五%くらい上がると人事院の勧告があるという制度も御承知のとおりであります。それから毎年勧告が続けてあるのです。しかもこれは期限つきの、期日をはっきりした勧告であります。それを全然行なわなくて、十月からこれを実施したり、九月から実施したり、その差額、労働者にとっては損した差額、これが一人当たり約十万円近い差額を今日生じておるのであります。正確に申し上げますと、九万五千七百二十八円の損害を公務員諸君に与えておるのであります。これで黙っておれるかどうかであります。幾らお前は公務員だから、公共の公僕だから黙って働けといったって、これは、黙って働くようなやつだったら仕事はできないですよ。たまにはあばれますよ。あばれたときには、かわいいせがれですから、よしやってやる、こう言ってごらんなさい。ちゃんと言うことを聞きますよ。あばれるからぶんなぐったら、ますます不良になります。それくらいのことがわからない閣僚諸君ではないと思う。政府のものの考え方、労働政策、大衆尊重、そういう精神が欠除しておるという点をこの際強く訴えてまいりたい。  もう一つ申し上げたい点は、いま四つの柱の一つといわれておりますのが、全国一律最低賃金の法律の制定であります。前に大橋労働大臣時代に、これを深く考えようといってそれっきりになっており。無理な要求をやっておるわけではございません。全国一律一万五千円の要求をしておるのであります。  そこで、人事院の四月の生計調査にどういう調査統計があらわれておりますか。一人の生計費が一万五千五百九十円です。それで、全国一律一万五千円を要求しておる。これでもまだ足りないくらいです。この法律制定がどうしてできないのですか。工業先進国家です。りっぱな、世界に大手を振ってのし歩く工業国家です。これが一律最低賃金ができないというのはおかしいじゃありませんか。すみやかにやりなさいと言いたい。どうですか、やる意思はありますか。どうですか。
  239. 山手滿男

    ○山手国務大臣 最低賃金に関しましては、先般最低賃金審議会に諮問をいたしまして、いろいろ現行制度には問題点もあるわけでございますから、どういうふうに改正をすべきかということで答申を求めております。すみやかに御答申をいただきたいと思っておりまするが、この答申があり次第処置をいたす決意でございます。
  240. 山花秀雄

    ○山花委員 予定の時間が参りましたから、私は時間を守って質問を終わりたいと思います。  なお、二、三重要な質問がございますが、これは、後日まで質問を留保して私はやめたいと思いますが、最後に一言だけ、これは申し上げるだけで終わりたいと思います。  あすの統一闘争に、私は、むだなとはっきり言いたい、権力利用はやめていただきたい。十八回の勧告で一回も完全実施しない。それにふんまんしてはかない抵抗をやっておるのです。黙って冷静に見る雅量を政府はひとつ示していただくことを申し上げまして、私の質問を終える次第であります。(拍手)
  241. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 野原覺君。
  242. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、午前の万国博覧会についての質問について、若干の実は残った件がございましたから、まずその問題をお尋ねしたいと思います。それが済みましたならば、当面の政局に対する二、三の国務大臣の御所見を承りたいと思う。佐藤総理の御所見は先ほど来私ども承ったのでありますが、その他の国務大臣の皆さん方のお考えもお聞かせいただきたいのであります。それが終わりましたら、補正予算及び四十二年度の予算編成、それから景気の上昇とか物価安定とか、たいへんな御宣伝だけはされておられますが、一向にどうも私ども感服できるような政治の実績に直面しておりませんから、これは私が不敏にしてそのことをつかんでいないのであろうと思いますから、お教えを願いたいと思うのです。佐藤内閣は、一体経済、政治、外交はどういう方向へ進むのか、進んでおるのか。出されてきておるものは、外国に行って大臣が遊んでおるとか、あるいは保釈中の罪人が自衛隊機で防衛庁長官に同行して、いまや、制服のある幹部の話でございますが、われわれは憤慨にたえない、といったようなことばかりでございますから、実態はそうでないでございましょうから、これはひとつ総理大臣がいなくても、次の総裁を目ざしておられる藤山さん、それから同じくそのライバルといわれる福田大蔵大臣、ここにいらっしゃるわけでございますから、相当な経綸をひとつ私どもにお示し願いたいのであります。  そこで、まず第一に、万国博覧会についての関連としてここではっきりしておきたいことは、先ほど申し上げましたように、大阪という町は、これは人口五百万の大阪商人によってつくられてきた町なのです。私は大阪が選挙区だから申すのではありませんが、東京は日本の首府、あれは大阪商人の実力によってあそこまで築き上げてきた町、それだけに不備なところもたくさんあるのです。しかも日本の商工業都市でございますから、そこで万国博覧会が行なわれるということになりますと、道路の問題、下水の問題、あるいは上水の問題、電気その他あらゆる面において関連した相当の公共事業費というものが計上されて、そういう事業が完遂されないことには、これは私はどうしてもできないと思う。この点私どもは非常に心配しておる。これは私だけじゃない、与党の諸君も含めてこのことは問題にしておるのであります。  そこで、担当大臣の三木さんにお聞きしたいことは、この関連公共事業の範囲というものは、瀬戸内海の夢のかけ橋は含まないということでございましたが、いつきめるのか、そしてその総額はいつきめるのか、それをきめるにあたっては、少なくとも近畿整備圏、大阪府を含めて兵庫、京都あるいは奈良、和歌山、滋賀、福井、こういった近畿整備圏なり関西の財界その他の有識者の皆さん方の御意見をも私はしんしゃくしてきめられるべきであると思うが、一体その用意があるのかないのか、問題はいつ範囲を、総額をきめるのか、明確にひとつ示していただきたい。
  243. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは来年度、四十二年度予算決定の場合に、初年度の予算はきめられるわけであります。これは、御承知のように厚生省の上下水道とか環境衛生に関するものは全国一本にまとめておるわけでありますから、こういうものに対しての万博の直接関係ということに対しては、この予算をきめる段階において少し計算をしなければならぬわけでありますが、いままでのところで直接に関係する予算としては、約三千億円の予算が来年度要求されておるということであります。  建設省の道路予算などについては、年度的に考えておるわけでありますが、ほかのものでここでわかっておることは、来年度の予算要求として道路九百億あるいは空港三十五億、港湾百三十一億、公園四億、観光二十七億、環境、これは建設省の環境、上下水道等百八十六億、それから鉄軌道千三百億、こういうもので約二千六百億程度、これは厚生省関係を除いての万博に関連する公共事業費であります。
  244. 野原覺

    ○野原(覺)委員 通産大臣、その場合に近畿整備圏の意見をどの程度尊重されるのか。これは政府が一方的に公共事業費としてきめてしまわないで、当然地元側の負担も伴うことでございますから、話し合いがあることだろうと思うが、そのきめる手続というものはどうなっておるのか。
  245. 三木武夫

    ○三木国務大臣 各関係府県の公共事業の推進協議会というものがあるわけであります。しかも近畿圏整備の委員会もその中に入って、そして全体としての計画がなされ、そこで、これによって政府が予算決定の場合にこれをやろうということに最後はきめるわけですが、そのきめる段階においては、そういうふうな地元の意向も決定に至るまでの過程には十分に参酌されるということになっておるわけであります。
  246. 野原覺

    ○野原(覺)委員 厚生大臣にお尋ねしますが、厚生大臣所管の範囲が不明だということですけれども、あなたのほうは、万国博覧会を実施するためにどの程度予算があればいいと考えておるか。
  247. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 万国博に関連いたしましての厚生省関係の準備でございますが、まず第一に、大阪国際空港、ここの検疫の体制を整備する必要がある。現在検疫官その他七名を置いておるだけでありますが、これを昭和四十五年度までに六十六名に増強をする、こういう年次計画を立てまして、それまでに十分整備ができるように進めてまいりたい、かように考えております。  それから、もう一つの問題は、環境施設の整備、終末処理施設でありますとか、あるいはごみ処理の施設でありますとか、あるいは上水道でありますとか、そういうような環境施設の整備でありますが、これは万国博関連事業推進協議会から要望が出ております。私ども、その計画につきましては最優先的にこれを尊重し、取り上げて実施をしてまいる、こういう考えでございます。昭和四十二年度から環境施設整備五カ年計画というものを立てておりますが、その中には、十分この万国博に関連した環境施設を整備する、優先的に取り上げるということを考慮しつつこれに対処していきたい、かように考えております。
  248. 野原覺

    ○野原(覺)委員 通産大臣にお尋ねしますが、その関連公共事業に要する費用ですが、これは相当思い切った政府の補助金によらなければとうていできないと思うのです。一体その補助率はどの程度のことを担当大臣としては考えておられるのか承りたい。
  249. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、清算払いということになると思いますから、この年度計画を立てなければならないので、いまは特別な補助率というものを考えておりませんが、地方財政の状態ともにらみ合わして検討をいたさなければならぬと思っております。
  250. 野原覺

    ○野原(覺)委員 今日の地方財政の危機の状態は、自治大臣御承知のとおり、これは、ほとんど国が全額を持って出してやらなければ不可能ではないかと思われるくらいに、相当多額の金を計上しなければこれらの公共事業は推進できない。自治大臣の御所見を承っておきたい。
  251. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 お説のとおり、この問題は地方財政としても非常に重要な問題と考えておるわけであります。特に昭和四十五年度という限定された期間に集中いたしまして、相当の大規模な、また巨大な関連事業が行なわれるわけでございまして、地方財政の現況等から見ましても、これが円満な消化ということにつきましては、特にただいまお話がありましたような適切な補助の問題、あるいは起債を効果的に運用していくといったようないろいろの角度から考慮いたしまして、また、各省とも連絡をいたしまして、現在の地方行政の水準をさらに低下せしめる、あるいは福祉事業その他の事業に差しつかえるというような事態の起こらないようにくふうをして善処してまいらなければならぬと考えておる次第であります。
  252. 野原覺

    ○野原(覺)委員 質問が質問ですから、あなたのほうでは、補助率が幾らでけっこうだなどという答弁は、それはあなたの政治責任にもなりますから、なかなかできないでしょう。だから私はあえて追及いたしませんが、大蔵大臣にお尋ねしたいことは、これは、何としても万国博覧会は成功させなければならぬのです。東京のオリンピックは実にみごとな大成功を納めて、オリンピック以後の日本の国際的な評価というものはすばらしいものがある。一体、日本の産業、しかも、この経済成長を見ておる今日の軍国主義ではない日本の平和産業、この実態を天下に示すためには、大蔵大臣としては思い切った——三木担当大臣、あるいは厚生大臣、自治大臣からただいま御所見がございましたが、大蔵省としては相当思い切った協力をしてもらわなければ、この事業は私はとても成功できないと思う。あなたの御熱意のほどを、これはお尋ねするまでもないと思いますけれども、御所見があれば承っておきたいのです。
  253. 福田赳夫

    福田国務大臣 万国博を成功裏に終わらせなければならぬ、このことについては全く野原委員と同感であります。まあそういうことでございますが、これは、国の力ということもある。力の範囲内においてできる限りの協力をしていく、こういう考えでございます。
  254. 野原覺

    ○野原(覺)委員 三木大臣にお尋ねします。万国博覧会協会というのがこの万博の推進に当たっておる。責任は国だけれども、表向きの推進は万国博覧会協会、こうなっておるようですね。一体博覧会協会の役員構成その他はどうなっておりますか、お聞かせ願いたい。
  255. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、石坂会長のもとに最近に専任の副会長を置きました。(野原委員「この人は金持ちの財界の人でしょう」と呼ぶ)金持ちかどうか知りませんが、会長が経団連の会長の石坂泰三、副会長は住友銀行の堀田庄三、関電の芦原義重、それから中部電力の井上五郎、富士製鉄の永野重雄で、それから専任副会長として菅野義丸がおります。このもとに常任の理事がおる。これが中心組織であります。常任の理事は左藤義詮、中馬馨、市川忍、足立正、新井眞一、里井達三郎、これが常任理事で中核をなしておるわけであります。
  256. 野原覺

    ○野原(覺)委員 万国博覧会協会の役員は、会長は経団連の石坂さん、副会長は住友銀行の、住友のいま総支配人といってもいい堀田さん、関西電力の芦原さん、こうなってきますと、万国博覧会協会の役員は財界で占めておるじゃありませんか。そして大阪府知事の左藤義詮と大阪市長の中馬馨がちょっとした理事か何かにちょこんと加わっておるだけじゃありませんか。そうして会場費五百五十五億ですか、一般運営費百何十億、計七百数十億円というものは、三分の二程度は国が出して、残りの三分の一は大阪府と大阪市だ、役員は財界でみな占めておいて、しかもその会場費の五百五十億なり百六十何億というようなこの計画はだれがきめたのですか。これは大阪の府会議員がきめたのか市会議員がきめたのか、それとも万国博覧会の協会を構成しておる経団連の石坂会長のもとに集まった財界人がきめたのか、だれがきめたのか、私の知るところでは、当時大阪府市の計画は三百億に満たなかったのです。しかし、それではいけないというので、七百数十億にふくらまして、三分の二は国が出さざるを得ないが、三分の一は大阪府と市だ、財界は一銭も要りません。そんなやり方というものは私はないと思う。私は地元という定義を明確にせよということを先ほど通産大臣に要求いたしました。あなたの地元というのは大阪府と大阪市だ、こういうことでございましたが、何か含みのあるところはその他まあというようなこともあって、近畿圏整備圏に属する各県ということも考えられておるでございましょうが、いずれにしても、残り三分の一になるか四分の一になるかはこれからの論議ですからわかりませんけれども、地元の負担する割合はこれから論議するとしても、地元を大阪府と大阪市に限定することは、私は大反対であります。当然財界を入れるべきです。財界の発展のためにこの博覧会がどれだけ役立つかわからぬ。そういう点について通産大臣は、地元は大阪府と大阪市に限定するつもりはない、これは今後十分検討してまいりたいということが真意であろうと思います。この点を明確にしていただきたい。
  257. 三木武夫

    ○三木国務大臣 石坂会長その他民間は、好きこのんで名のりを上げたものではない。初め大阪府、大阪市、地元において、民間人を起用して、民間の創意くふうというものを取り入れる運営の方式が非常に好ましい、こういう地元の意向から松下幸之助君に会長に何とか就任してもらいたいということで極力説いて、それがうまくいかなくて石坂泰三氏に出馬を願ったわけでありまして、名のりを上げて財界人がこれに加わろうというものとは本質的に違う。国のためにひとつやってもらいたいということで、こちらのほうから、地元大阪市も府もみんな一体になって、これは要請をしたものであります。何か自分で好きこのんでなったものではない。石坂さんのごときは、あの老齢で、何とかして成功さしたいということで、ほかの副会長も非常に献身的に努力をしておるのでありますから、その点は、選考のいきさつを誤解のないように願っておきたいのであります。私は敬意を表しておるのであります。  それから財界も寄与をさすべきではないかというお話でありますが、これは、財界としても陳列館なども民間として相当大規模なものを出さなければならぬ。これもやはり相当な負担が要りますし、あるいはいろいろな施設についても、財界のコントリビューションというものは私は非常に好ましいと思います。たとえばいろいろなテーマ館などに対しても、財界が寄付をしてそういうものができるということも好ましいことでありますので、財界がこういう万博に対して寄与をするということは、今後も努力をしてみたいと思うのであります。そういうことができれば、これは建設費の一部が削減される結果になることは明らかでございます。
  258. 野原覺

    ○野原(覺)委員 したがって、地元とは大阪府、大阪市に限定するものではない、これは十分ひとつ御検討願いたいと思います。博覧会において相当の潤いを得る府県もやはりあるわけだし、この点はやはり実際的に検討してもらわなければ、大阪府民、大阪市民としては不満だ、こういう意向の表明が私ども自民、社会の国会議員に実は正式にきておるわけです。自民党の知事左藤義詮氏からきておるわけです。これは、三木通産大臣としても考えてもらいたい。これは、府民を代表しての意見でありますから考えてもらいたい。  そこで、私は次に議論を進めたいと思いますが、経済企画庁長官の藤山さんにお伺いいたします。こういう場所で自民党の党務について触れることはいかがかと思いますが、先ほど来、やはりお互い私ども、政治の信頼というものは政党ということが基本になっておるわけで、佐藤総理大臣も、自民党としては綱紀の粛正云々という発言もございましたから、あえて私はお尋ねをいたしますが、新聞の報ずるところによれば、藤山経済企画庁長官は今日内閣構成の一メンバーであられますけれども、来たるべき自民党の総裁選挙には立候補されるやに承るのでありますが、御所見のほどをお聞かせ願いたい。
  259. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まだ党大会におきまして立候補するとかしないとかいうことを考えたことはございません。
  260. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いまのところ考えていないけれども立候補することもある、あなたも過去何回か立候補されておるわけですからね。立候補されることもある、立候補しないとは断言できない、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  261. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いまお答え申したとおりでございます。
  262. 野原覺

    ○野原(覺)委員 なかなか微妙な含みのある御答弁であります。私は、社会党としても自民党としても、委員長選挙、総裁選挙、これは民主的政党でございますから、だれが立とうと、いつ立とうとそのことにとやかくのことを申しておるわけではございませんけれども、やはり今日の政権を担当しておるのは自民党でございますから、これには国民が相当大きな関心を持っておりますので、実は参考までにお尋ねをいたしたのであります。  そこで、藤山さんに重ねてお聞きいたしますが、あなたの国務大臣藤山愛一郎としての御所見を私はこれから承りたい。ということは、先ほど来佐藤総理大臣は私どもに対して、責任を痛感しておる、謙虚に反省をしておる、こう実はお述べになったのであります。そのことに対してわが党の山花議員、勝間田議員から具体性がないではないか、一体どう反省して、その責任をあなたはどうおとりになろうとするのかという質問もなされたわけであります。これは、藤山さんが御承知のように、今日の日本憲法というものは内閣統一の原則になっておりますから、大臣を任命することのできる総理大臣が気に食わなければ、その大臣を罷免することができます。またその総理大臣が不適格者であれば、これもやめさせることができます。これは日本の憲法上可能であります。しかしながら、自分が一たん任命した者がわずか二カ月を出るか出ないかでやめなければならない、これをやめさせなければならぬ、こういう政治責任を国民はいろいろ議論をしておるわけです。この点について、あなたは藤山愛一郎個人としてどうお考えになるのか、この際やはり責任を明確にするためには——こうやって次から次へ大臣が国会において問題になる、現実にやめられたのは荒舩君でございますけれども、やはり総理大臣の責任というものは厳としてあるわけです。総理大臣も認めておられる。そうなれば、近い機会に何らかの形で具体的にその責任の内容というものを明らかにすべきが至当ではなかろうかと思う。国務大臣藤山愛一郎としてはどういうお考えでございますか、お聞かせ願いたい。
  263. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 任命した大臣がよされる、その理由いかんによっては総理が責任をとる場合もありましょうし、とらない場合もあり得ると思います。いずれにいたしましても、その責任の判断は総理みずからがされることになろうと思います。
  264. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたが総理大臣であったらどうなさる。
  265. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 残念ながらまだ総理大臣でございませんので……。
  266. 野原覺

    ○野原(覺)委員 なかなかその点も言えないかもわかりませんが……。  それでは、官房長官は参りましたか。——官房長官が参っていなければ総務長官、森さんにお尋ねいたします。  森総務長官、昭和四十年の八月十九日、昨年の夏といえば、佐藤総理大臣が沖繩に行かれまして、施政権返還要求運動で沖繩の人々が猛烈なデモをやって、佐藤総理は沖繩のあのホテルに帰ることができなくて、アメリカのゲートに宿泊した事件、これが昨年の八月十九日であります。この総理の沖繩訪問に同行された顧問、随員の方々のお名前及びそれは何名の人が総理大臣について行かれたのか。ということは、実は昭和四十年の八月十九日といえば、これから一カ月出るか出ないかで、いま裁判移送問題が起こっておるところの立法院選挙があったわけなんです。それと関連がございますから、何名の自民党の議員が、どなたが顧問となって、どなたが随員となって沖繩に行かれたのか。その経費はどこから出されておるのか。総経費は総額幾らになったか。これはひとつ御発表願いたい。
  267. 森清

    ○森国務大臣 昨年の夏に佐藤総理大臣が沖繩に行きました、その人名簿については、もうすでに印刷で当時から広く配付がしてございますので、私の手元に一部持っておりますから申し上げたいと思います。総理大臣佐藤榮作、秘書官は大津正、勝田俊男、本野盛幸の三人です。警護は広川泰康、鎌田太稗の二人、文部大臣の中村梅吉、それから秘書の中村靖、文部省調査局長蒲生芳郎、厚生大臣鈴木善幸に秘書官の山下真臣、厚生大臣官房長梅本純正、総理府総務長官の安井謙、秘書官の山田忠義、総理府特別地域連絡局長の山野幸吉、総理府の特連局総務課長の林忠雄、それから内閣総理大臣官房広報室長三井芳文と参事官の吉岡邦夫、総理府人事局参事官の川村皓章、内閣官房長官橋本登美三郎、秘書官の鬼沢俊一郎、朝比奈仙三、最高顧問の田中角榮、秘書の麓邦明、特別顧問の大浜信泉、南方同胞援護会事務局長吉田嗣延、顧問の倉石忠雄、上林山榮吉、高瀬傳、山中貞則、原田憲、伊東隆治、古池信三、農林省事務次官斎藤誠、食糧庁業務第二部長岡田覚夫、大蔵省主計局次長岩尾一、それから外務省北米局参事官吉岡章、報道課事務官仙石敬、北米課事務官有馬竜夫、いま申し上げたとおりでございまして、経費は大体……。
  268. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総勢何名……。
  269. 森清

    ○森国務大臣 何名になりますか、数えてみます。ちょっと調べさしておきます。
  270. 野原覺

    ○野原(覺)委員 経費は……。
  271. 森清

    ○森国務大臣 経費は、ほとんど中心は庁費になっていると思います。しかもその内容は、飛行機のチャーター料ということでございます。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  272. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理大臣は日本の最高の政治権力者でございますし、日本の領土である沖繩をおたずねするのですから、たくさんの人が行かなければならぬかもわかりませんけれども、ただいま森総務長官が発表されたとおり、自民党の代議士が顧問、随員として実にたくさんの人が同行されている。その経費は庁費からということですが、総務長官、これは一体総計幾ら要りましたか。
  273. 森清

    ○森国務大臣 同行者は全部で三十九名になりまして、経費は千百万円くらいです。
  274. 野原覺

    ○野原(覺)委員 三十九名の方を同行さして、自民党の代議士が十数名も沖繩に行かれて何をしたんですか。何のためにこのようなデモを沖繩にされたのですか。それとも、これだけ行かなければワトソンに対する圧力がきかないと判断されてしたのか、何をされたのか。
  275. 森清

    ○森国務大臣 私は、いま人名を申し上げておわかりのとおり、それぞれ沖繩関係には非常に造詣深い方々でありまして、これは総理が適当と認めた者をピックアップして行ったわけでございます。
  276. 野原覺

    ○野原(覺)委員 李下の冠、瓜田のくつということばがある。当時は立法院選挙の直前であります。立法院選挙の直前に、総理が最高顧問田中角榮以下随員、顧問、自民党の代議士を十数名引き連れて沖繩に乗り込む。そうして、それならば施政権の返還について、みんなが寄って、沖繩の施政権返還でワトソンに強力な交渉でもするかといえば、そのような事実はさらさらない。そうなると、国民が疑問に思うのは、立法院選挙を、保守党を有利にするために乗り込んだのではないか。しかも、国民の血税から金を出したのではないか。自民党の党員が沖繩に行かれるならば、自民党の党費でまかなったらいかがですか。政府からこのような金を出すべきではない。私は沖繩問題が重大であるから行きました、沖繩に関心を持っておる代議士を顧問にしました、随員にしました、こういうふうなお考えがあるならば、国会にはかりなさい。これはあなたが総務長官でなかったときのことですから、あなたの責任を私は云々するわけではないけれども、佐藤内閣の政治姿勢の一環として、これは私は申し上げておる。かつ、昭和四十年の九月であったと思う。川島副総裁がインドネシアに行かれたのです。そのときに、私どもは国会でこれを問題にして、せっかくインドネシアに行くならば、インドネシアはアジアの重要な国であるから、これは国会議員からも顧問を出そうじゃないかということで、わが党の勝間田溝一と民社党の佐々木良作君が顧問に加わっておるのです。ところが、沖繩の立法院選挙の直前に行かれたのは、自民党の代議士ばかりじゃありませんか。これは何をしたのですか。そうして、実は一千百万円の国民の血税を使っておるじゃありませんか。あげくの果ては、デモにあって、アメリカンゲートに逃げ込んで、ほうほうのていで帰ってきただけじゃありませんか。こういうことをやはり国民は強く批判をしておるわけであります。この点、私はここに総理がいないから、官房長官がいないから、残急ながら佐藤内閣には副総理がおりませんから、私は副総理は藤山さんかなと思って聞くけれども、どうもそうでもないらしい。だから、これ以上は申し上げませんけれども、この点も国民が問題にしておることなんです。一年前のことではございますが、これはえりを正して謙虚に反省するというならば、私ども、こういう点も考え直してもらいたい。沖繩の人々はこれを問題にしておる。私は沖繩に行ってきたのだが、問題にしておる。立法院選挙に関係して、しかも、日本の国家は、日本の国会は何をしておるんですか、国民の税金で自民党の代議士が立法院選挙の応援に来るんですよ、社会党は何をしておるんですかと言って私どもに抗議しておるじゃありませんか。また、それは何と抗議されても事実じゃございませんか。私は、この点は十分ひとつ考えてもらいたい。これはあらためてまた総理大臣に質問する機会があれば、ぜひ取り上げたいと実は考えておるわけであります。  そこで、総務長官にお尋ねをしたついででございますから、恐縮ですが、あなたは総務長官に御就任になられて、非常な前向きの姿勢で沖繩問題に取り組まれた。私は、さすがはなくなった河野さんが目をかけた人物だなと思って敬意を表しておりました。そうして、あなたが一生懸命にやられた第一の仕事は、沖繩の教育権であったと思う。これはその後どうなったのですか。
  277. 森清

    ○森国務大臣 私は、総務長官就任直後に沖繩に参りまして、先ほど野原さんの御質問の中にありました総理の昨年の沖繩訪問、この意義を、正直内地におりますときにはそれほど感じませんでしたけれども、行ってみまして、歴代の内閣総理大臣のうちで佐藤さんだけが沖繩に来てくれた、そしてその歓迎ぶり、さらにはその成果というものはばく大なものがあったと私は信じております。それだけに、確かに三十九名という数は多いと御指摘なさればそれまででございますが、それぞれのベテランの方々が参りまして、それぞれの立場において十分な審議を尽くし、十分な調査を尽くして得た結果が、翌年の、つまりことしの沖繩に対する援助の増額というような結果にあらわれておりまして、これは沖繩の島々の人たちが、こぞってこうした総理一行の来島というものを感謝しているという事実をまのあたり見てまいりました。私は、実はそのあとを受けてことし参ったわけでございますが、総理の善政よろしきを得て、相当な改革がなされておりましたことをこの目で見てまいりました。ただ私が考えまして、沖繩の九十四万の人々が口をそろえて言いますことは、施政権の返還であります。何とかして日本へ帰りたいということであります。その次にくるものは、いわゆる内地との格差の是正であります。この格差の是正につきましては、私は強くワトソン高等弁務官に話し合いましたし、さらに施政権の返還という問題につきましても、私は民族の帰属本能というものがこうした状態であるということは、もちろん安全保障条約あるいは平和条約というものを是認する者の一人として当然なことだと私は思いますけれども、その中から一歩でも二歩でも前進する方法はないかと、こう思って、従来からいわゆる地域別の返還、機能別の返還といろいろありました中で、私は私なりに、その中でも特に機能別のうちで、たとえば国籍の問題、社会保障の問題、いろいろありますけれども、その中でも精神的に沖繩の人々を一番安心させ一番喜んでくれる問題は教育権の返還だ、こう確信いたしまして、ワトソン高等弁務官と会見の際に、私は勇気を持ってこれを率直に話し合いました。その後におきましても、機会あるごとにアメリカ関係者には話し続けてまいりますけれども、しかしこの問題は、私が言ったからといって簡単にできるものじゃございません。特に平和条約第三条の壁というものはなかなかかたく、そしてこれは非常にきびしくはばむものであることを私は承知しておりますので、そこでこれには十分な準備期間が要る、こういうことで、私の諮問機関という形で、大浜前早大総長以下の方々に沖繩問題に対する懇談会をつくっていただきまして、こうしたべテランの方々に国際法等について非常に詳しい方々に御意見を聞きながら、いま各項について逐次検討を進めているところでございまして、こうした問題が一応研究が済みましたときには、そうした結果を持って、いま座長格をやっております大浜信泉先生に渡米をしていただきたいと思っておりますし、さらに、最近ライシャワー大使がジョンソン大使にかわりましたので、この赴任を契機に、私は私の立場から強く要請を続けていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。なかなか道は遠くて険しいことを私は承知しておりますが、何とかしてこの問題だけは沖繩九十四万の島々の人たちの願望と見てとりまして、私は努力を続けていきたい、こう思っておるわけであります。
  278. 野原覺

    ○野原(覺)委員 率直に申し上げまして、森総務長官の御努力と御熱意には敬意を表します。しかしながら、施政権の返還を抜きにした教育権の返還というものが理論的にあり得るかあり得ないのか。教育権を返還するといっても、施政権がアメリカにある以上は、教育権の返還はできない。教育権とかその他のいろいろな行政権が集積されて施政権ができ上がったものじゃない。混合体ではない。これは施政権という有機的な一体の権利なんだ、平和条約第三条によれば。その中から教育権だけを分離して返還させるということが理論的に可能なのかどうなのか、私はこの点に非常に疑いを持っておる。まあ、しかし、せっかくあなたが努力をして、それから大浜さんを中心にした方々にも御相談をして、アメリカに働きかけておられることですから、私は前向きのあなたの御努力に水をさそうとは思いませんけれども、この点は十分ひとつ御検討願いたいのです。施政権の返還なしに教育権の返還は理論的にあり得ない。実はそういう考えを持っておるから、あえて私は申し上げたわけです。これは、しかし十分検討していただきたいのであります。  そこで、次にお尋ねをいたしたいことは、大蔵大臣、補正予算についてつその前に官房長官がお見えでしたか、まだですか。
  279. 福田一

    福田委員長 まだです。
  280. 野原覺

    ○野原(覺)委員 官房長官は、一度出ることを認めると帰ってこないね、この時間には帰る約束をしておったのに……。  それでは大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、補正予算関係でどうせ臨時国会を召集する。きょうは勝間田議員から、補正も一般もくそもない、とにかく解散をしろ、これが率直にいって社会党の私どもの態度です。しかしながら、権力を持っておるのは自民党でございまするから、なかなか解散をしない。私はここで、簡単ではありますが、補正予算に若干触れてお尋ねをしておきたい。補正要因は何なのか、その金額及び財源、まとめてお述べ願いたい。
  281. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず補正予算を編成し、これを審議するために臨時国会をお願いしたい、私はそう考えております。補正予算の歳出要因といたしましては、まず第一に給与です。公務員給与、これは九月実施ということにいたしまして、それに必要な金額、これはおおよそ三百五十億くらいになりましょうか、それが計上される。それから第二は、災害であります。災害はまだ的確な金額をつかんでおりませんが、まあ大体三百五十億前後になろうか、こういうふうに考えるわけであります。それからさきの国会におきまして、固定資産税の問題に関し地方に補てんするという額があるのです。これは約五十億円です。それから本年度の生産者米価の決定に伴いまして、稲作の生産性を向上するというために五十億円を支出する、こういうことにいたしておるのですが、これが五十億円あります。それから例年のように過年度の義務費、それから当年度の義務費の不足補てん、こういう費目があるのですが、これがどのくらいになりますかまだ、三、四百億にはなるのではないかと思いますが、まあその辺はまだ詰まっておりません。それから最後に重要な問題は、消費者米価を据え置きとした場合には約八百五十億円の繰り入れをしなければならぬ、こういうことになるわけです。そういうような状態でございますが、これに対する財源、これは一つは……(野原覺)委員「合計幾らですか」と呼ぶ)合計はいましておりませんが、——約二千億でございます。  それに対しまして財源といたしましては、まず本年度の税収の見積もり増、こういう自然増収という問題です。これが一体どのくらいになりますか、まだ見当がつきません。結局、これは九月期決算を見ておおよその見当をつける、こういうほかはない。それから予備費が今日のところは五百億残っております。これは多少それまでには減ると思いますが、それがまず大体使える、こういうふうになっております。その他、とにかく二千億の需要でございまするからとてもそれじゃ追っつかない。そこで歳出の節約をやるとか、あるいはその他こまごました財源あさりをするとか、それからなお消費者米価問題、これをどうするか、こういう問題が残されておる、かように御了承願います。
  282. 野原覺

    ○野原(覺)委員 今年度の国債を、たしか、私のこれは記憶違いかどうかわかりませんが、七千六百五十億円が今年度の対象ワク、そして計上予算額は七千三百億円とすれば、残り三百五十億円あるから、もしまかなえられないときには、赤字国債でもって補正予算をまかなおう、こういうことも一部新聞で報道されておるのです。これはどうなっておりますか。
  283. 福田赳夫

    福田国務大臣 財政法のたてまえといたしまして、三百五十億ばかりのまだ公債発行余力というものがあるわけです、これは法的な意味において。しかし実際問題とすると、七千三百億円の公債発行の予算を組んでおる。これを増額するということは私はいかがか、こういうふうに思いまして、補正予算の編成にあたりましては、できる限り公債は発行しない、こういうたてまえでいこう。つまり国会の承認を得れば三百五十億円公債を発行できるたてまえでございまするが、それによらない、こういう考えでいきたい、かように考えております。
  284. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これはできるという考えではなしに、この公債は発行されると、あなたの政治生命に影響する。私の尊敬する福田赳夫さんの政治生命に影響するわけです。あなたは、昨年、たしか私が本会議で質問に立ちましたが、赤字国債の発行、予算財源穴埋めのための赤字国債という——建設国債は別だ。赤字国債というものは今回限りですといって特別措置法の提案説明をしたのですから、それをあなたが、対象ワクが三百五十億あるから、足らぬ場合はこれで埋めるのだということになると、あなたの政治生命は、佐藤さんの前にあなたが消えてなくなるということになる。これは、社会党は非常に重要に考えておりますよ。だから、私はここでインフレ論争をしようとは思いませんけれども、これはひとつ十分お考え願いたい。私どもは反対です。  それから次は、先ほど山花議員がお尋ねしましたが、公務員の給与でございますが、九月実施とすれば三百五十億円と、こう仰せられた。これは国家公務員だと思う。しかし、五月から実施するというのが人事院の勧告です。総裁の佐藤さんは、わざわざ政府に対して要望書を文書で送っておる。今度で十人回やっておられぬのだから、じゃやれ、こう言って——人事院は給与の中立機関として、スト権の剥奪代償機関として設けられたのだから、勧告は完全に尊重しろというので送っておられるが、五月実施とすればどれだけ要るのですか。五月から実施すればどれだけですか。
  285. 福田赳夫

    福田国務大臣 約二百億くらいよけいに要ります。
  286. 野原覺

    ○野原(覺)委員 昨年は非常に不景気でしたが、税の自然増収は九月決算期においてどれだけでしたか。
  287. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 お答え申し上げます。  昨年度は、御承知のように自然減収の二千五百九十億円を補正予算で見積もったのでございます。しかし、実際は二百六億円ばかり自然減収が減った、こんなような状況でございました。
  288. 野原覺

    ○野原(覺)委員 大蔵大臣、あなたなかなか老獪ですね。税の自然増収が見当がつかないと、こうお逃げになられましたね。もう十月ですよ。大体つくでしょう。補正予算は、これはもう十一月には臨時国会を召集して、本来ならば十月にでもこの補正予算をやるべきだ、急ぐべきだ。だから、自然増収は大体見当がつくのでしょう。大体どのくらいだと踏んでおりますか。
  289. 福田赳夫

    福田国務大臣 まずお答えする前に、いま、昨年私が赤字公債は発行しないと言ったということをあなたが申されましたが、これはあなたの勘違いで、歳入補てん公債は、これは絶対に発行しません、こういうことを申し上げているのです。これは、そのとおり守ります。守り抜きます。ただ、いま現実の問題になっておるのは歳入補てん公債でなくて建設公債、建設公債のワクがまだ三百五十億ある、こういう問題なんです。ですから、そういうふうにひとつ御了承願います。あなたの言われる赤字公債、私の言う歳入補てん公債は発行する考えは断じてない。  それからことしの税の見積もりでございますが、ことしは非常に経済の変動期であります。特に法人税につきましては、九月期の決算を見ないというと見当がつかない。各企業会社で決算報告を出してくる。これが十月の末になろうかと思うのです。それらを整理してみると、どうしてもその見当は十月の上旬になる。あるいは中旬になるかもしらぬ。その辺で最終的な見当はつこう、こういう状態です。いまちょっと見当がつきにくい。大ざっぱにいえば、法人税が数百億円かと、こういう程度でございます。
  290. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は数百億ではきかないと思う。あなた方は景気は上昇、景気は完全に回復したと宣伝しておるじゃありませんか。九月末の決算期は一千億円を上回る税の自然増収というものが必ずある。しかも昨年は非常な赤字だ。そのときに人事院の勧告は九月一日から実施をしたのです。これは何とかしなくちゃならない、赤字でもやらなくちゃならないといって去年はやった。ことしは昨年の赤字を穴埋めをして、なおさらに一千億円以上の自然増収だということになれば、なぜ一体人事院の勧告を完全に守らぬのか。五月一日ができないならば、もう少し前進できる措置がとれるじゃないか。五月一日実施にすればたった二百億でしょう。九月からやれば三百億、五月からやれば五百億ですよ。二百億の違いです。二百億の違いを、憲法で、あるいは法律でスト権の代償として——実はILOからもドライヤーが来てわざわざ問題点があると指摘されてきておるものを、また違反をするわけです。それで片一方では、文部大臣はじめ労働大臣あるいは関係自治大臣等々が、おまえたちは職場集会をすることまかりならぬ、やるならやってみろ、首だ、こういったどうかつをしておるような政府に、どうして公務員がほんとうにまじめに政府の言うことを聞こうという気になりますか。これは考えてみていただきたい。  文部大臣にここでお尋ねをする。文部大臣、有田さん、あなたに初めて私は尋ねる。やがてこれから……(「いないよ」と呼ぶ者あり)いない(「了解を得ている」と呼ぶ者あり)いや、了解していない。そんなことをしておったら、おれはやめないよ。  じゃ、自治大臣、これはどうですか。あなたとしてはどれだけの努力をしたのですか。五月一日完全実施について、あなたは関係大臣の一人としてどれだけの努力をしたのか。地方公務員ということになれば、主要財源の手当てもしなければなりませんが、その自信はあなたにはおありなのか、おありでないのか、大蔵大臣とはどういう折衝をしておるのか。  それから労働大臣、労働行政の責任者としてあなたはどう考えるか。森総務長官は、先ほど来山花議員に詳細な答弁がありましたから、まあこれ以上私は蒸し返したくはありませんが、特に自治大臣と労働大臣の、この給与勧告の完全実施に対する御所見だけはお聞きしておきたいと思います。
  291. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 公務員の人事院の勧告につきましては、これはその内容とともに、期限をも含めして完全に実施したいということは、私ども閣僚の一致した意見であるわけでございますが、先ほど大蔵大臣からもお話がありましたとおり、現在の財政事情あるいは今後の経済界に及ぼす影響、その他の点を考慮いたしまして、やむなく九月実施ということに踏み切ったわけであります。  なお、地方財政、地方公務員の財源の手当てについてどうか、それの自信があるかというお尋ねでございまするが、この問題、一体今後どれだけの歳入の増があるかということは、先ほどもお話が出ました。何と申しましても、自然増収が幾らになるか、ことに法人税関係につきましては、地方税収入としても現年度の収入になるわけでございますので、こういった自然増収の状況を見まして、そうしてどれだけの欠陥が生ずるか等の問題が明らかになって処理をしなければならぬわけでありまするが、そういった場合におきまして、地方財政に欠陥を生ずるというような場合も一応考えられるわけでありまして、その点につきましては、閣議の決定ですでにはっきりいたしておりますとおり、地方財源につきましては関係当局で特別の措置を講ずるという話し合いのもとにこの閣議決定がせられた次第であります。  以上、お答え申し上げます。
  292. 野原覺

    ○野原(覺)委員 税の自然増収が一千億以上あって、昨年は赤字で、赤字国債によってまかなわなければ補正予算が組めない、それでなおかつ九月一日実施、これでは断じて承服できない。二十一日には徹底した——あなた方はストライキと考えるかどうか御自由でございますけれども、公務員の諸君は職場集会その他を持って、これは政府に反省を求めるでしょう。これは政府に対する反省を求める。これは業務の放棄ではない、政府に対する反省を求めることだ。われわれ社会党は、この公務員の行動を絶対に支持いたします。政府は反省すべきです。私は、自然増収がそれだけあるならば、もう少し誠意のあるやり方をもってすれば、公務員の諸君だって考えないわけはなかろうと思うのであります。  最後に、労働大臣がいまお見えでございませんから、運輸大臣、藤枝さん、あなたは初答弁であろうと思います。私があなたにお尋ねしたいことは、佐藤内閣の前の運輸大臣中村さんの私どもに約束したことは、あなたは守りますか、守りませんか。藤枝運輸大臣としては、それは運輸大臣がかわったんだから、おれは一から出直すんだというのか。それとも、佐藤内閣のもとにおいて中村運輸大臣がいろんな点で私どもと約束をしてきた——速記に載っておるのであります。そのことについて、あなたは忠実にこれを履行するかしないか、お聞かせ願いたい。
  293. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 前大臣が国会においてお約束をいたしましたことにつきましては、誠意をもって実行するつもりでございます。
  294. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういうことでございますから、私もあえて中身には触れたくありませんけれども、実は、自民党の某君と申しておきます。これは個人の名誉に関するから名前は申し上げません。参議院においてわが党の山本君が中村運輸大臣に、実は零細企業者のタクシーの問題を取り上げて質問をしたのです。そしたら中村運輸大臣は、まことに気の毒だ、佐藤内閣は中小企業育成の方針をとりますから、かりに増車があった場合には、優先的に小さいところに重点を置きます、大きいところ、三百台も五百台もある大企業は少なくして、中小企業に重点を置くということを言ったのです。私はその方針を聞きましたから、時の官房長官、いまの建設大臣橋本さんに直接面会をして、間違いないかと言ったら、間違いない。中村運輸大臣はわざわざ私に面会を求めて、野原さん、この約束は絶対守る、佐藤内閣は零細業者の立場を保護するんだ、こう言っておったのです。ところが、自民党の某君が大阪の数百台の業者の集会に数日前に行って、中村が何と言おうと、おれがおる限りそんなことはさせないと、胸をたたいて演説をしたために、大阪の業界では非常な波紋を描いておるのだ。だからして、きのう私に電話があった。この点は、佐藤内閣にただしてもらいたい、われわれ零細業者としてはがまんができない、そういう言動を自民党の代議士にやらしておくことは承知できない、こういうわけで、私はあえて質問をしたわけです。そのことの問題等もたくさん実はあるわけですけれども、これ以上は申し上げません。しかし、運輸大臣が前大臣の約束を履行するということでございますから、この点を実は期待いたしまして、質問は山ほどあるのにかかわらず残念ながら終わります。
  295. 福田一

    福田委員長 竹本孫一君。
  296. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は民社党を代表いたしまして、政治姿勢の問題についての論議がまだ非常に不十分であると思いますので、その点を中心に、二、三付帯的な問題についても論議をしてまいりたいと思います。  もちろん、私は政策論議をやりたいと思っておりましたけれども、今日のこの情勢の中で経済政策、金融政策を幾ら論議いたしてみましても、たいして意味がないというような判断に立ちまして、最初に少し政治姿勢の問題について官房長官以下二、三の方に御質問をしたいと思います。  私が一番不満に思います点は、今日総理大臣もお見えになりまして、またいろいろと各大臣からも御答弁がありましたけれども、何だかきわめて事務的なお話し合いが多くて、ほんとう意味で今度の問題の責任を痛感しておられるのかどうか、さらに前向きにこの危機を乗り切っていくということについて、現在の危機をどの程度に分析しておられるかということについて、非常な疑問があるわけであります。  私は、数年前にある一冊の書物を読みました。これはイギリスの議会政治を批判した書物でございますけれども、イギリスの議会政治十年の歴史を——腐敗したときの歴史でございますが、調べた結果、その著者は最初にこういうことばを書いておるのであります。それは、何という無能と不正直の陰惨なる記録であるか、無能と不正直のディズマル・レコードであることか、こういうことを書いております。私は、いま日本の戦後の政治を振り返ってみまして、どうもこのことばがそっくりそのままいまの日本の政治に当たっておる、無能と不正直そのものではないかということを痛感いたしておるわけであります。しかも、その無能と不正直の問題につきまして、先ほど来いろいろと総理のお話もありましたけれども、具体的なものがないということは、同僚議員から追及のありましたとおりでありまして、私は、今日のままこの危機が推移するならば、これは佐藤内閣だけの危機の問題ではないと思うのであります。自民党の、あるいは保守党の政治の命取りになりはしないか、このことも大きな問題であると思います。さらにもっと突っ込んで言うならば、自民党もわれわれ野党も含めて、議会制民主主義そのものの危機がいま来ているのではないか、ここまで問題を非常に深く掘り下げて私は心配をいたしておるわけであります。これに対しまして、先ほど来の御答弁を聞いておりますと、何だかただ普通の事件が一つ起こって、責任を痛感しておるとか、あるいは反省をしておるとかいうことのお話だけであったように思うのであります。特に、先ほどやじもだいぶ出ましたけれども、内閣としての反省ということについてはほとんど触れられませんでした。自民党に調査会ができたとか、あるいは粛党の委員会ができたとかいうお話はありましたけれども、内閣としての責任のとり方について、政治のあり方を再検討するということばだけでございまして、どういう方向に向いて再検討しようとしておるのか、いまの危機をどこまで掘り下げておるのか、佐藤内閣の危機である、さらに、それが大きくなりまして、自民党の危機である、保守党内閣の危機である、さらに、深刻に考えてみれば議会制民主主義の危機である、この認識が一体どこまであるのかということについて私どもは非常な心配をいたすのであります。  申し上げるまでもありませんが、今回のいろいろのスキャンダルにつきましては、単に検事局が動いて、それが一つの問題になったというような問題ではありません。それもあるでしょうけれども、それ以上に私どもが物情騒然となったなあと感じますのは、小さな問題、たとえば何とか大臣が石を持ってきたとか持ってこないとかいう問題でも、あれほど大きな問題になり、新聞記事をにぎわしておる。これは決して石の問題だけではない。その大臣だけの問題ではない。もっと大きな歴史のうねりというものがここにきておるのだ。こういうふうに考えなければならぬ。大臣が家を一軒つくりましても大きな問題になる。石を一つ拾ってきてもたいへんな問題になる。どうしてそれがそんなに大きな問題になるか。いままで記事にならなかった問題が今度は記事になり、国会論議の大きな問題になるというところに問題がある。かような点から考えてみますと、これは非常に深刻な問題である。しかもその深刻さが端的に申しますけれども、今回のいろいろなスキャンダルにつきましては、御承知のように自民党の中からお互いに情報が出ているじゃないか。官僚機構の中からもいろいろな情報を流しておるじゃないか。そこまで問題は発展して矛盾が拡大をしております。そういうような深刻な議会制民主主義の危機に臨んで、私は先ほど来の御答弁では非常に不満であります。  そこで、まず官房長官をはじめ、内閣の非常な政治的な力を持っておられる藤山さん、三木さん、福田さんに、ひとつこの危機を議会制民主主義の危機としてはたしてとらえておられるのかどうか、その点についての認識と、また、それに対する決意のほどを承りたいと思います。
  297. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本日は佐藤総理も出まして、政治の姿勢について信念を吐露したわけでございます。私もその佐藤総理の考え方を体しまして、やるべきことについて十二分の努力を払ってまいりたいと思っております。議会制民主主義の危機として認識するかどうか、これは人によって多少の相違や受け取り方は違うかとも思いますけれども、私も細心の注意をもって事態の推移を見ていかなければならぬと思います。同時に、冷静さを失なうことは禁物であると思います。こういう際におきましては、冷静に、落ち着いて、この事態の、先ほどの総理のことばでいえば積弊というわけでございましょうか、その起こってきたるところを真剣に、冷静に取り上げていかなければならない、こういう認識でおるつもりでございます。  なお、一言申し添えておきたいと思いますが、こういったような状態でございますので、政府部内におきましても自粛自戒、これは平素では考えられなかったような点に及んでまで神経質過ぎるくらいの配慮を、従来のいろいろの事件を貴重なる経験といたしまして、今後においてはさような心がまえで万般の処理に当たってまいりたいと思っております。
  298. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今日の問題になっておりますことは、国民の各層が素朴な感じにおいて受け取っておる限りにおいて、私はまことに遺憾な事態だと思っております。お話のように、われわれとしては議会制民主主義を守る立場におるのでございまして、したがって全体主義国家になろうとも、あるいは強権国家になろうとも思っておりません。したがって、議会制民主主義がもし軌道をはずれるようなことになれば、これは私は信頼を失えばたいへんなことじゃないか、こう思っております。そこでやはり素朴な国民のこういう問題に対する声こそわれわれは聞いていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  299. 三木武夫

    ○三木国務大臣 議会制民主主義、これは国民の信頼の上に成り立っておるわけでありますから、国民の不信を買うようなことが続きますれば、これは危機に通ずるものであります。これはやはり大事をとってわれわれが大切に育て上げていかなければ——まだまだ日本は西欧諸国のような長い歴史の中に試練を経てきておるわけではない。お互いに国会におる者として、今日の動向に対して深く関心を持って解決するものは解決しなければならぬと考えております。
  300. 福田赳夫

    福田国務大臣 重複いたしますが、私も今日のこの事態を誤りますと、これは議会民主政治そのものにも大きな問題が出てくると非常に心配をいたしております。ただ、そのよってきたるところの根源、これは私は根が深いと思う。ですから、当面の問題も、これはもう大事です。しかし、この機会に、もう根源にさかのぼって政界の刷新をしなければならぬ。そうして今回のこの災いを転じて幸いとなす、その実をあげなければならぬ、かよう考えております。
  301. 竹本孫一

    ○竹本委員 各大臣の御決意と申しますか、御所見を承りました。  具体的に入ってまいりたいと思いますが、ちょうど文部大臣が帰られておるので、文部大臣もされました官房長官にひとつあわせてお尋ねをしたいと思います。  私は、学校教育に若干の関係も持っておりますが、今回の事件を見たときに、私どもが一番悩みました問題は、これが青年、学生にどういう影響を与えるであろうかということであります。日教組の問題がよくいろいろ議論されておりますけれども、教師として、日教組の人であるかどうかは別として、先生方の立場において一番大きな悩みは何かといえば、教室のガラス窓一つを隔てて、教室の内と外とでは指導原理がまるきり逆になっておる。このギャップをどう埋め合わせるかということだろうと思います。たとえば、教室の中では責任を持てと言う、あるいは正直であれと言う。しかし、窓を一つ出て、社会の実態、特に政治の現実の姿は、決して正直でもないし、責任を貫いてもいない。この矛盾が先生としては一番の悩みだと思います。そういう意味から今回の事件を反省してみますと、これが学生、児童あるいは青年、婦人、こういう者に与えた影響というものはきわめて深刻であって、やはりそれこそ議会政治の、いまも三木さんの御答弁にありましたけれども、政治家に対する信頼、議会政治に対する信頼なんていうものは、だんだん学生の中からも根本的になくなってしまう、こういう危険を私は感じております。  そこで、文部大臣をされた経験もおありの官房長官にあわせて伺いますが、一体この事態について、生諸君あるいは青年、婦人に対してどういう影響を与えたであろうと御判断であるか。また、それに対して政府としては何らかの手を考えておられるのであるか。ただ積年の病弊で根が深い、これだけでは決して学生やなんかに説明にはなりません。ひとつ御所見を承りたいと思います。
  302. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も竹本君と憂いをともにする心境でございます。こういったようなことが、学生あるいは生徒諸君、婦人層にどういうふうに受け取られているであろうかということについては、深甚の注意を払い、またこれに対処していかなければならぬと思いますが、結局根本は、お互い政治に当たっております者が、清潔な態度、誠実で事に当たっていかなければならない。結局、帰するところはその心がまえの問題ではなかろうか。その上に立って、先ほど来いろいろ御意見が出ておりますが、たとえば政界の刷新については、政治資金規正法の問題もございましょう、あるいはよき政党法をつくるということもございましょう。しかし、根本はやはり各人の心がまえ、態度あるいは考え方というところに帰するのではないかと思いますので、これらは一朝一夕にクリアカットで態度にあるいはそのほかの方法で示すこともなかなかむずかしいと思いますけれども、これはひとつ根気強く改めていくように心がけてまいらなければならない、かように考えておる次第であります。
  303. 竹本孫一

    ○竹本委員 法務大臣に一つお伺いをいたします。  私は、いま官房長官から政党法、政治資金規正法の問題の御説明がございましたけれども、最近において国民の政党に対する信頼、政治資金に対する信頼を一番大きく裏切ったものの一つに、指揮権の発動というものがあると思います。詳しいことは時間がありませんので申しませんけれども、結論だけを伺いたいと思います。私は日本の政治、これに対する信頼を一番大きく破壊したものの一つに、指揮権の発動——犬養さんがやったものでございますが、あると思います。法務大臣、これから政界をほんとうに立て直して浄化していこう、国民とともに清潔な政治を打ち立てようという場合に、しかも、いま黒い霧が国会を包み、政党を包み、日本の政治におおいかぶさっておりますが、次々に問題が——きょうもまた新しい事実が一つ出てまいりました。そういうようなことで次々に疑獄、スキャンダルの問題が発展しておる。そこで私は、指揮権の発動というものがこれらの一つの禍根ではなかったかと、いま痛切に思うわけでございます。この前の話でございますが、政界の浄化といったような場合に、指揮権の発動といったようなものは最も忌まわしき事件であり、あれが最近における議会政治を破壊した第一歩であったと私は認識しております。古い話で恐縮でございますが、時局に関係がありますので、犬養さんがやったときのあの指揮権発動といったようなものが、政党に対しての信頼をどれだけこわしたかわからないと思いますが、法務大臣の御所見を伺いたい。
  304. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 指揮権の発動は、そういう制度があるのでございますから、非常な場合において指揮権の発動をするということもあり得ると思うのであります。しかし、政治の問題で、特に今日の場合に当てはめて考えますると、私は非常にこれは慎重に考えておるわけでございますが、この際、どういう問題が起こりましても、私は検察当局の厳正なる態度に全面的な信頼をしておるということをいつも申すのでありまするが、指揮権を発動して、こうしろとも言わない、こうするなとも言わないという方針をいままでもとってまいりました。いろいろな場合に、こうしたらどうですか、このくらいなことをあなたが指揮権発動して言うてもいいじゃないですかというようなことを言われたことも、この国会内であるのであります。しかし、私はそういうものをやらぬと言いました。今後といえども、私はそういうことをこの政治上の問題においてやっていくつもりはございません。厳正な態度でやる検察権の発動に、全面的な信頼を置いております。
  305. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいま法務大臣から非常に明確な、しかも厳正なる御答弁をいただきまして、満足いたしました。  もう一つ念を押してお尋ねをいたしますが実は巷間には、今回の相次ぐスキャンダルが出てまいりました。その中で私が考えるところでは、共和製糖事件というものが一番深刻に発展するだろうと見ております。これは私の観測です。そこで町の一部、あるいは役所の一部、あるいは政界の一部でも、これは場合によっては共和製糖事件は佐藤内閣の命取りになるのではないかという見方があります。それに関連をいたしまして、そうなればまた指揮権の発動をやるのではないか、あるいは石井法務大臣は厳正な人だから、いまも御答弁かありましたように、世間でも期待をいたしております、そういうことはやらないだろうという人もおります。しかし問題が、先ほども申しましたように、内閣の命取りにまで発展をする——まあ公の席でございますから無責任なことは言えませんが、われわれが聞いておるところにおきましては、共和製糖事件は、これが発展してまいりますならば、あるいはこれが一、二カ月の今後の事件の発展によりますならば、相当な大物が問題の中心に浮かび上がってくる。そうなれば、当然これは自民党にとっても命取りになる、あるいはほかの党にも影響が大きい。そこで指揮権の発動を必ずやるのではないかという、前にそういう事実の例がありましたので、国民は非常な不安を持っております。  そこで、ただいまの御答弁をより具体的に伺いますが、法律的には指揮権の発動というものは、制度の上においてやればやり得る問題である。ただし、現実の政治に即して考えるならば、そういうものはきわめて慎重にやらなければならぬのであって、厳正に、公平にやっておる検察当局を全曲的に信頼しておる、こういう一般的な場合についての方針の御答弁でございました。私は、いま問題になっておるさまざまの事件、さらに次に発展するであろういろいろな事件につきましても、この基本的な原則、態度を法務大臣は維持する御決意であるかどうか、もう一度念を押してお尋ねをいたしたいと思います。
  306. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 いろいろなスキャンダルがあるとおっしゃいましたが、それがどういうもので、どういうふうに発展するか、これから先どう出てくるかは私知りませんが、どういうものがどう出てまいりましても、いま私が言ったことばには変わりございません。
  307. 竹本孫一

    ○竹本委員 法務大臣のそうした御決意を最後まで貫かれるようにひとつ強く要望をいたして、次の問題に入ります。  私は、これから各大臣について具体的な問題に入りたいと思うのでございますが、最初に防衛庁に、例のお国入りの問題について非常に議論が出ておりますけれども、実は、いままであまりつかれていないような問題について、一つ二つ伺ってみたいと思うのであります。それは、長谷川次官の国会における御答弁でございますが、一部に批判を受けるような点はあったかもしれないが、全体としては誤っていないという答弁を、あのお国入りのパレードの問題について御答弁になっておる。その意味は一体どういう意味であるか。全体として誤っていないというのは、何を根拠に誤っていないということであるか。これは私の解釈では、自衛隊法その他に照らしてみて誤っていないという意味であるか。また一部に批判を受ける点はあったかもしれないがというのは、どういう点の批判を受けるという点であったか。この二つの点について伺いたいと思います。
  308. 長谷川仁

    ○長谷川説明員 お答え申し上げます。  私が委員会で申し上げました点は、今回のお国入りの点が全部正しいとは、私は申し上げない。局部的には、あるいは御批判を受ける点があったかもしれない。たとえば、パレードの場合におきましても、従来なかった。しかし、それが今回は行なわれたということにつきましては、われわれは反省しなければならない。また、お国入りにつきましていろいろの問題が提起されたのでございますけれども、たとえそれが前例があっても、その前例というものが誤っているとしているならば改めるべきだ、こういう御注意がございました。そのときに私は、やはり前例があっても改めるべきところは改めるにやぶさかでないというふうにお答え申し上げたわけでございます。また、今回のお国入りがどういうふうに扱われてきたか、一番私どもが注目しなければならぬのは、やはりマスコミの扱いがどうであったかという点につきまして、地元紙は毒較的問題にしていなかった。また全国紙もこれをほとんど取り扱っていなかった。ところが、一部の週刊誌がこれを非常に大きく扱って以来、この問題が非常に大々的な発展をしたのだ、こういうふうにお話いたしたわけでございます。
  309. 竹本孫一

    ○竹本委員 具体的に入ってまいります。パレードの目的、性格は一体どういうものであったか、それから参加者はいかなる資格で参加したか。もう一つ、それはだれの命令で行なったものであるか。その三つを伺いたいと思います。
  310. 海原治

    ○海原説明員 今回の音楽隊につきましては当該委員会でも御説明いたしましたが、西部方面音楽隊と第八師団の音楽隊と国分陸上自衛隊の音楽隊とこの三つの音楽隊でございます。この三つが全部参加いたしましたのは九月二日の鹿児島市内におきますところのパレード——いわゆるパレードでございます。この音楽隊の出動につきましては、地元の関係父兄会等三団体からの要請に基づきまして、地連を経由しました要請がそれぞれの部隊に参りまして、それぞれの部隊長の判断におきましてこれを出しております。そのほか、各地におきましていろいろな音楽隊の演奏あるいは十分程度のいわゆる音楽隊の市中行進等が行なわれておりますが、これもいずれも地元の父兄からの要請でございまして、それに基づいてそれぞれの所属部隊長が派遣いたしております。  音楽隊のこういう場合の派遣につきましては、防衛庁内の訓令がございまして、広報業務的な効果を主とする場合、あるいは公の行事に花を添えると申しますか、行を盛んにする場合と、こまごまと例が書いてございまして、それらのために出動する場合には、それぞれの音楽隊を持っておりますところの部隊長の判断で出せるようになっております。これが今回の音楽隊の派遣の手続と実施の状況でございます。
  311. 竹本孫一

    ○竹本委員 私の伺ったのは三点ともお答えがなかったのですけれども、パレードはどういう目的と性格のものであるか、参加者はいかなる資格で参加したのか、それは命令であったのか何であったのか、この三つであります。
  312. 海原治

    ○海原説明員 いかなる目的であったかという御質問につきまして、いまそれぞれの場合を御説明したつもりでございますが、最初の九月二日の場合は、先ほど申しました地元の後援会からの要請に基づきまして、当日行なわれました県、市、商工会議所共催の上林山大臣祝賀会に至ります間の行進に色を添える、これが目的でございます。その他の、それぞれの場所におきますところの音楽隊の開催の目的は、市民、関係者に、自衛隊の音楽隊の演奏を通じまして自衛隊と国民とのつながりを深くする、こういういわゆる広報業務的なものが目的となっております。  性格につきましては、いま申しましたようなことでございますので、関係者というおことばでございますが、これは先ほど申しました要請者が父兄会等になっております。この父兄会の方々、一般市民等がこれと行をともにし、あるいは観覧し、参加いたした次第でございます。  音楽隊の派遣は、先ほど申しましたように、それぞれの所属部隊長の命令で出動いたしております。
  313. 竹本孫一

    ○竹本委員 まだ核心に触れないので、それでは具体的に言います。幕僚長は参加したそうでありますけれども、それぞれの幕僚長は、いかなる資格で、いかなる目的で、いかなる任務を持って、だれの命令で参加しましたか。
  314. 海原治

    ○海原説明員 幕僚長は、いわゆるパレードには参加していないと私どもは判断をしております。  各幕僚長が長官に随行しました目的は、長官の部隊視察に随行する、こういうことでございまして、統幕議長、各幕僚長等の出張命令は、部内規定によりましてそれぞれの責任において出張命令を発付いたします。命令につきましては長官に報告をする、こういうたてまえになっております。
  315. 竹本孫一

    ○竹本委員 だいぶ回りくどくなっておるようですから、ひとつ具体的に伺います。  自衛隊法の第九条によれば、幕僚長の職務というのはきわめて明確に、しかも限定的に書いてあります。三つしかありません。すなわち、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長、いずれの場合にも、それぞれ自衛隊の隊務及び所部の隊員の服務を監督する、それぞれの問題について専門的な助言者として長官を補佐する、もう一つは、幕僚長は、それぞれ部隊等に対する長官の命令を執行する、この三つであります。この三つのどれに該当しておるのでありますか。
  316. 海原治

    ○海原説明員 自衛隊法にございます幕僚長は、長官の最高の専門的補助者としての職務がございます。最高の専門的補助者ということは、それぞれの幕僚長は、それぞれの部隊の運営、教育訓練等の万般の事柄につきまして大臣を補佐する責任がございます。それに基づきまして、大臣の部隊視察には随行した、こういうことでございます。
  317. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣のパレードに随行する、専門的助言者としてのどういう面を補佐しましたか。
  318. 海原治

    ○海原説明員 再度お断わり申しまして恐縮でございますが、幕僚長は長官の部隊視察に随行したわけでございます。具体的に申しますと、今回鹿児島県におきましては陸上自衛隊の国分の部隊と海上自衛隊の鹿屋の部隊、この二つの部隊を大臣が御視察になりますのに統幕議長及び各幕僚長が随行した、こういうことでございます。  なお、到着時間が鹿児島空港午後の五時十五分と記憶しておりますが、それから先ほど申しました県、市、商工会議所、この共同の大臣祝賀パーティーには随行者の統幕議長、幕僚長も招待を受けておりますので、その一行の車がパレードとともに会場におもむいた、こういうことでございます。したがいまして、見方によりましてはパレードに幕僚長が同行したような御印象を受ける向きもございますが、この点につきましては地方の団体の主催します行事と、それから先ほど申しておりますその晩のパーティーに参ります大臣以下の車の列、これとが混同されましていろいろと御批判を承っている次第でございます。
  319. 竹本孫一

    ○竹本委員 具体的な事実に即してほんとうは言わなければならぬが、時間がありませんから、私が問題にいたしております点のポイントを一つ申し上げます。私は、幕僚長は長官といえどもかってに随行を命じたり、いろいろなところへ引っぱり回すということはできない。普通の局長ならばまだ普通の関係でございますから問題はないと思います。もちろんそれでも不当であるとかあるいは政治的な選挙運動に応援をしたとか、いろいろまた公務員法上の問題もありますが、私がいま特に問題にいたしておりますのは、幕僚長のような、昔で言うなら統帥権の独立だ、この統帥部の人に長官が、身分の問題やあるいは作戦行動の問題以外の問題に命令し得るのかどうかということのポイントでありますが、その点についてひとつ御答弁を願いたい。
  320. 海原治

    ○海原説明員 御質問の趣旨を的確に理解しているかどうかわかりませんですが、長官は防衛庁全般の最高のお立場にございます。所部の職員を指揮、監督、統督する権限、責任がございます。したがいまして、この指揮、監督権全般は、単にいわゆる統帥関係のことだけに限るものでございません。したがいまして、その部隊行動に関する限りでしか大臣の指揮命令権がないというふうには私どもは考えておりません。  なお、今回の各幕僚長の随行は、先ほど来御説明しておりますように、長官の部隊視察に随行するということでございまして、長官からの命令によって、その命令に従って行をともにしたということじゃございません。この点は、先般の衆議院の決算委員会等におきまして、大臣御就任以来東京周辺の陸海空の部隊を御視察いただきましたときの例も政務次官からつぶさに御説明いたしまして、統幕議長関係幕僚長が大臣に随行することを行なっておられますことを御説明してございます。したがいまして、鹿児島に参りましたのが、各幕僚長が大臣に随行したその最初ということではございません点をひとつ御了察願いたいと思います。
  321. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの官房長のお答えのように、前例があるとかいうようなことは、私はあまり問題にならぬと思う。それから、全般を指揮、監督しておるということも、その指揮、監督が正しく行なわれているかどうかということを問題にしておるのだから、それだけでは問題になりません。私が言っているのは、本質的な問題は、昔でいう統帥部ということばを使いますが、統帥部にあるものは、人事権において長官がいろいろな命令あるいは指令を出す、そういうことはある。それから作戦行動については、作戦行動という一つの行政権の発動については、これは法律上ちゃんと権限がある。しかし、それ以外のものは、いまここに書いてある、第九条に書いてあること以外はできないのだ。幕僚長もしてはならないし、長官は命令してはならないのだ。長官は全般の最高の指揮監督権を持っておるのだから、自分の部下には何でも命令してよろしいなんて、そんなばかなことはありません。その点について、法制局長官いますか。——法制局の御見解をひとつ承りたい。
  322. 高辻正已

    ○高辻説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がありましたように、統帥権の独立というのが、昔の憲法では、これは一つの考え方としてございました。いまの憲法なり自衛隊法なりのもとからいいますと、そういうことは実はございませんが、しかし、おっしゃる意味は、やはり自衛隊の活動にも両面の活動があるだろうということでございまして、その面の区別というものがあるのじゃないかというお話でございます。  ところで、九条については、ただいま防衛庁のほうからお話がありましたように、なるほど、ここにはいろいろ事項は分けてございますけれども、やはりこの幕僚長の職務というのは、それぞれの隊務に関して最高の専門的助言者として長官を補佐するというのがございます。部隊を視察するというのも、実は幕僚長としては当然できることでございますし、またその視察について、長官を補佐していろいろそこで説明をするとか、いろいろな要務があり得ると思います。そういうことがこの自衛隊法の九条で禁止されているというふうにまで見るのは、法律の文言からいっても適当ではないのじゃないか、したがって、防衛庁のほうで御説明があったのが法律上非常におかしい、法律違反であるというようなことにはならないというふうに考えております。
  323. 竹本孫一

    ○竹本委員 法制局長官の御答弁はいつ聞いても御用学者的で、どうも話になりません。  もう少し突っ込んで伺いますが、そうすると、昔の概念で申しますが、統帥権の独立といったような考え方は、私は、政治的に見れば、昔のように軍人が満州事変を起こしたり何かするようなことは一切やってはいかぬ、政治優先であり、シビリアンコントロールであるから、そういうものがあってはならぬと思うのです。しかし行政の中でも、行政の独立というのは、行政権の独立にあるわけです。特に軍人について、あるいは自衛隊については、そういった機能の独立というものがなければならぬ。古いことばでいう統帥権の独立というものは、あなたの説明では、今日はなくなったような説明に聞こえますが、はたしてなくなったのであるか。  それから第二、もしなくなったとするならば、第九条というものは、ほとんど意味をなさなくなってしまう。あなたの、あるいは防衛庁の先ほど来の説明によれば、専門的助言者として長官を補佐する、そのために必要だと言うたら何でもできるじゃないか。何のためにまたこの制限規定を書くのか。専門的な助言者として長官を補佐するという名前においてやれないことがあるなら、そのやれない例をあげてもらいたい。  それから、特に軍人あるいは自衛隊員の行動については、これは非常に厳正にやらなければ、ファッショが起こったり、暴動が起こったり、暴力革命が起こったりするという心配があるので、やはりこの九条というものは制限列挙で、制限的な禁止的なものである。それ以外のものは適当にやれなんというばかなことじゃない。これは非常に狭く解釈しなければならぬが、あなたの説明でいえば非常に広くなる可能性がある。その点はどうか、この三つを伺います。
  324. 高辻正已

    ○高辻説明員 特に御用学者的に弁護するつもりで言っておるつもりはございませんが、一つは、統帥権の独立ということについてのお尋ねでございました。これは旧憲法で、いわゆる天皇は陸海軍を統帥するという規定がございましたが、この規定の解釈として、要するに統帥事務については、国務大臣も、またその関係から国民の代表機関である国会もそこには容喙し得ないものがあるのではないかというような学説がございました。それが支配的であったこともございます。しかし、私がいまの憲法でそういうことはないということを申し上げたのは、全くそのとおりだと私は確信しております。これは内閣が行政権の主体であるという意味からいって、立法、司法を除かれる他の作用がおよそ内閣からはずれる、あるいは国会からはずれるというようなことはあり得ないことであります。したがって、統帥権の独立というものが、今日の憲法の上からいって何か現在の事象に関係があるかといえば、これはないと断言するのが正しいと思います。しこうして、この実際の作用として、それでは統帥事務とそうでない事務というものがファンクションとして考えられるかといえば、これは事柄の性質上あり得ると思いますが、これは言うまでもなく、統帥権の独立というようなものでなしに、現在ではいわゆるシビリアンコントロールのもとに内閣があり、内閣総理大臣があり、防衛庁長官がありというわけで、そこにれっきと統制をされておるというのが現在の法制上のたてまえでございます。  ところで、前の統帥権の独立という問題につきましても、編成はどっちに入るのかというようないろいろな問題がございまして、統帥とその他の作用ということを口で言うのはやさしゅうございますが、現実にはなかなか区別のつきかねるものがございます。ところで、幕僚長あるいはその他の隊員というものには、職務上の分界があることは確かでございますけれども、部隊の指揮、監督というような面についても、これは幕僚長が当然そこには一定の範囲で関係を持つことは明らかでございまして、そういう意味からいって、幕僚長が部隊を視察をするということもあるし、また同時に、長官が視察をするについて、これに随行し、必要な助言をしたりあるいは説明をしたりということは、当然認められるわけであると思います。したがって、先生のおっしゃるとおりに、一定の官職について職務の区分があるときには、それはかってに曲げられないということは、これは確かにそうでございますが、だからといって、今度の場合が、まるでその職掌として与えられたものと無関係であるということは言えないであろうというのが私の先ほど申し上げた御説明でございます。ただいまもそれを繰り返すわけでございますが、少なくも、事実を存じませんけれども、ただいまの説明の範囲では、自衛隊法の九条の中に入るということを申し上げて差しつかえない、良心をもってそう思います。
  325. 竹本孫一

    ○竹本委員 法制局長官も、ファンクションの独立、これは行政の分野についても全く同じでございますが、これは当然でなければならぬということを言っておられる。私もその点を強く言っておるわけでありますし、特にそれが防衛庁の関係においては厳密に考えなければならぬということをいま力説をしておるわけであります。  しかし、時間の関係もありますので、端的なお伺いをしますが、第九条について、これは制限されたものとして、ここに書いてあること以外にはできないんだというふうに狭く解釈しなければならぬということについての答弁はなかったようでございますが、その点をひとつ伺いたい。  それからもう一つ専門的助言者として長官を補佐するということを、先ほど来のような解釈でいかれるならば、それでできないことは何があるか。やりたいことはみなそれでできるじゃないか。助言者として長官を補佐するという立場からいけば、そういうようなことは、出張から始まって、パレードから、あらゆる問題について何でもできることになる。私が解釈を伺いたいのは、いまのこの長官の解釈でできないことの例を言ってください。これは専門的助言者として、長官を補佐するということのうちには入らないというあなたの解釈でそういうものがあるなら、例をあげてごらんなさい。それが二番目。  それから第三番目には、政務次官に、一体今度行かれた方は、はたして助言者として何を補佐したか、具体的な点を伺いたい。
  326. 高辻正已

    ○高辻説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げたように、一定の官職について一定の職務が与えられておることは、どの官職についてもそうでございますが、その官職の与えられている職務、これは何でもできるというようなものでないことは明らかなことでありまして、その与えられた職務自体、あるいはそれに密着する関係のもの、そういうものに限られる、そういう意味で限定的であるということは言って差しつかえないと思います。それじゃ、できないものが何があるか、これは幾らもございます。たとえば防衛庁の中で、幕僚長が一般のいわゆる内局に入って、そうして内局の事務をみずからやるというようなものが、当然にはこの職掌の中には入ってこないというようなこともありましょう。いろいろ例を考えればあると思いますが、そういう一例をあげてお答えといたします。
  327. 長谷川仁

    ○長谷川説明員 お答えいたします。長官は部隊に参りましてまず栄誉礼を受け、そして行進等を通じまして教育訓練等の練度をよく視察し、かつまた部隊長の状況報告、あるいは質疑応答を通じまして、その部隊の状況というものを視察する、またあるいはそれに対して意見を具申するということでございます。
  328. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんが、私の聞いたのは、助言者として何を長官に補佐をしたか、それからもう一つは、何人もの幕僚長を連れていかれたようだけれども、その助言者として視察をする場合にもそれだけのものが必要であったか。選挙運動としてのパレードには必要であったかもしれぬ、あるいは新聞記事をにぎわすためには必要であったかもしれぬが、具体的に第九条の精神から解釈した場合に、一体どこにそれだけの必要性があるか。少なくとも、これは自衛隊法の精神を踏み破っておるということにおいてきわめて不当なものであると思うが、その点について、これは前例としても恥ずかしくない、きわめて合法的であり妥当なものであると解釈をしておられるのか、あるいはこれは非常に失敗した、申しわけがなかったというふうに考えておられるのか。政治的な回答だけではありません。第九条はきわめて厳格に解釈しなければいけないのに、今回はむしろ第九条に違反しておる。私は時間がありませんから申し上げませんが、この第二項によって、あなた方が苦心してこれで何とかジャスティファイしようという努力をしておられるようだけれども、これではとてもだめだと思うのでございます。時間がありませんから、この点はこれ以上申し上げませんが、最後に、今回幕僚長を何人も連れて行ったということが、助言者としての補佐を必要とした範囲であるかどうか、妥当であったかどうか、適正であったかどうか、法の精神を踏み破っていないかどうか、これについてのひとつ責任者の責任ある御答弁を願いたいと思います。
  329. 海原治

    ○海原説明員 統幕議長、各幕僚長がどのような専門的な補佐をしたか、こういうお尋ねでございますので、同行いたしました私から御説明いたしたいと思います。  先ほど申しましたように、鹿児島県には海の部隊の鹿屋の航空隊がございます。この部隊は九月三日、土曜日の八時五十分から九時五十分まで、約一時間の視察でございます。次は、陸上自衛隊は国分の部隊がございまして、これには十一時三十分から十三時まで、一時間半でございます。このような視察をされます場合には、あらかじめ、羽田から鹿児島空港までのYS11の航空機の中で、所管の幕僚長が、鹿屋航空隊というものはどのような部隊であり、その上級部隊はどのような部隊であるというようなことを事こまかにあらためて御説明をするわけでございます。部隊に参りましてからは、それぞれ先ほど政務次官から御説明いたしましたような教育訓練の成果というものが、部隊の行進であるとかあるいは行事であるとかによって、これは経験者によりましては、直ちに体得できるわけでございます。この際に、この部隊の練度はどのようなものであり、どういう点に問題があるかということを、それぞれ担当の幕僚長から、これは長官に意見具申をいたしております。さらに、当該部隊長からは種々部隊の今後の育成のために要望事項が出されるのが例でございます。これにつきまして、どのようなことになっておるかということが大臣から幕僚長等に御下問になり、今後の方針を一応お話しになる。このようなことの繰り返しがございますので、先ほど申しましたような専門的な補佐官、しかもその最高の者が大臣に随行いたしますことは、私どもといたしましては当然のことと考えております。  なお、繰り返して恐縮でございますが、各幕僚長は部隊視察に同行したわけでございまして、パレードはたまたま全般的な行事の一部分である、このようにひとつ御了解願いたいと思います。
  330. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間が参りましたのでこの辺で終わりますが、最後に強く要望を申し上げておきたい。  防衛庁並びに法制局長の説明は、これが第何条の法的な基礎においてやったのかと突っ込まれた場合に、あるいはそれを想定して、非常に苦労されてやっとたどりついたのが、ばく然たる長官を補佐するといったようなところで何とかのがれよう、こういう説明をいま努力されておると私は思います。しかしながら、先ほど来申しますように、自衛隊を動かすとか、動くとかいうことにつきましては、きわめて厳格に考えなければならぬ。第九条についてもきわめて厳格に解釈しなければならぬ。今後はこういうことの再びないように要望しておきたい。  それから、先ほどの音楽隊の問題につきましても、これは便宜供与ということでありますけれども、われわれもいま十分調べておりませんが、聞くところによれば、あとからその便宜供与の書類をつくってかっこうをつけたといううわさも流れております。事実かどうか私はまだ十分確かめておりません。しかし、これが問題になって、連れて行ったあとからその起案をしたのだというのが、もっぱらのわれわれの聞くうわさであります。これはうわさでありまするから、これ以上申し上げませんが、そういううわさがかりにうわさにしろ流れるようなところに政治不信の大きな問題がある。この辺はひとつ厳格に解釈をしてもらいたい。これを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  331. 川俣清音

    ○川俣委員 山花委員の質問に関連をして、私があえてここで米価の問題を質問したいというのは、山花委員の質問に対して大蔵大臣は非常にごまかした答弁をしておるという点からして、関連して質問をしなければならない。特にいまの質問を聞いておりますると、一般の予算についてはなかなかきびしく予算査定をしておりながら、防衛庁の予算だというとたいていのことができることを見のがすような予算編成をしておるのじゃないか。たいてい何でもできるという観念でいま説明されております。そんな膨大な権限を行使する予算を与えておくことが私はやはり問題だと思うのです。パレードをやるにしても、予算を節約してやるならいいでしょう。一般の自衛隊員に対してはどうですか。飯あるいは食料を節減してまでやっておるときにパレードをやって、長官だからお国入りのパレードができるのだなんという予算があるというのは、これは摩訶不思議ですよ。大蔵省の査定が厳格でないということを物語っておる。官房長は何と言ったのです。やれるのだと言った。予算がなければやれないはずじゃないか。何でもやれるような予算になっておると言ったじゃないか。寛大であるといいますか、ルーズである。防衛庁の予算について、これから私ども厳格にそういうパレードもやれないように、あるいは幕僚長がたくさんついていけるような、そういう経費の捻出のできないような査定をしなければならない。これが前提にならなければならぬ。反省するというならば、そういうところに大蔵大臣は反省しなければならぬ点があるだろうと思います。そういう意味で米価の問題、これは国民全体の問題ですからね。上林山とか大臣の問題じゃないのです。国民全体の食糧に関する問題だから、もう少し誠実な答弁がしてほしいと思います。  先ほどの山花質問に対して、昨年は一万六千三百七十五円で買ったから、消費者米価はしたがって上げなければならないと言う。去年ほんとうにそれで買ったのですか。買ったのを見てごらんなさい。七月の決算で買ったのは一万六千二百六十四円で買ったじゃないですか。百円安く買っておるじゃないですか。安く買って消費者に高く売らなければならぬというのはどういうことです。計算するときは一万六千三百七十五円で買ったと言って、買わないじゃないですか、買ったのは百円下がりの一万六千二百六十四円で買った。なぜこういうことが出てきたか。おそらく食糧庁に説明させればよろしいのですが、時間がないから私から説明しますよ。これは価格の問題ばかりじゃないですよ。買い入れた米が、昨年は作柄が悪かったために、三等、四等という安い米を買い入れておるのです。安い米というのは、大体悪い米といわれる米なんです。悪い米を値上げしなければならないなんという根拠はどこにあるのです。どうして悪い米を高く売らなければならないのか。高い米の値段を言って、安い米を実際は買っていながら、その米の値段を上げなければならないという根拠はどこにあるのですか。大臣、まず答弁してもらいたい。
  332. 福田赳夫

    福田国務大臣 昨年はお話しのような状況があったわけです。これは実行上そうなったのです。しかし、ことしあらためて生産者米価の単価が引き上げられる。したがいまして、これをほっておくと八百五十億円くらい食管会計に繰り入れを行なわないと収支が合わぬ、そういう状況になるわけなんです。そこで値上げ論というものが起きるのです。しかしまだ値上げをするしない、これはきめておりませんです。
  333. 川俣清音

    ○川俣委員 私は値上げをしないということが実行できるかどうかということをあやしむのです。あなたのような計算の基礎でいくと、できるだけ上げるという計算をしておるのじゃないか。ことしの米も、総理は農業団体及び自民党に対して一万八千円台に載せるという約束をしておるようですけれども、一万八千円台に上げるには、おそらく二百円以上二百五十円くらいの幅で買い上げなければ一万八千円にはならないと思います。なぜかというと、去年の実績、従来の実績から見ましても、ことしの作柄は、やはり私どもの見るところでは気象障害が起きておりまして、検査場に行きまして調べてみましても、非常に等級が低いようでございます。ほんとうにこういう値段で買うならば、等級を上げて買えばこれは別問題です。買うという約束をしたからにはそれに満つるような米価であるなら別ですが、実際は約束した以下に買い求めていながら上げなければならないという根拠がないのです。どうして自衛隊ならば寛大にして、農民のような者に対しては厳重でなければならないのですか、そこがわからない。私の疑問をひとつ農林大臣が解いてもいいし、大蔵大臣から説明があってもいいと思う。ことしの米価は障害型です。障害型というのは、結実が十分じゃないのです。したがっていい米が取れない、いい米が取れないというと等級が下がります。等級が下がるというと安い買い入れ価格になる。安い買い入れ価格で買って、計算は高い価格で買った計算では赤字になるでしょう。実際は安い価格で買うとそれほど赤字にならない。主計局長、答弁してもいいよ。
  334. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は米のできがことしは非常にいいとう話は伺っているのですが、その内容が一体どういう等級別の数量になるか、これはまだ伺っておりません。等級別にしまして、どうも悪い米が多いということになれば、それだけ買い入れ価格は平均価格よりは低くなる、これは当然でございます。
  335. 川俣清音

    ○川俣委員 当然だとわかっていながら、赤字がこれだけ出るということはうそじゃないですか。赤字の計算はそうじゃないでしょう。安く買わされるということではなしに、等級が下がった結果安く買うということになるのです。計算上の米価じゃないのです。
  336. 松野頼三

    ○松野国務大臣 川俣委員の御指摘のように、昨年の決算を見ますと、石当たり百円くらい等級差が予算よりも下回りました。本年まだ十月途中でわかりませんが、いまのところはまだ東日本が主に出ております。必ずしも昨年よりもよくはなっておりません。西日本が今後出れば、これはわかりませんが、東日本現状は昨年よりも等級がいいという結果はまだ出ておりません。
  337. 川俣清音

    ○川俣委員 以上のごとしで、全国の生産量から見て、東北、新潟、北陸が政府買い入れ米としては約半分を占めるわけです。一体農林省の統計というのは、大臣、よほど気をつけなければならない。前科者の集まりですよ。私、この前農林省に行って前科者だと言ったら非常におこられた。なぜ私が前科者と言うか。北海道の作柄は平年作だと発表したじゃないですか。いま冷害じゃないですか。これを私は前科者だと言う。調査の前科者ですよ。前科者というのは、これはやはり犯罪の前科です。非常に作柄が悪いものを、凶作なものを、それを平年作だといって恥じないということになると、これは調査の前科者です。私の言うのはそういう意味ですよ。作柄がいい、いいと言うけれども、農林省は国民に安心を与えるために、ちょうど相場師が相場を張ったときと同じような発表になっている。相場師がかつてそういう発表をした。米価が高くなりかけているときには、作柄が、作況がいいのだ、それで米の値が散った場合がございます。これは米取引上の非常に大きな欠陥として、いまでもなお残っておるところです。ほんとうは作柄が悪かったのだけれども、米価引き下げの手段として作柄を発表した、こういうことがあります。しかし、いまでは国の会計でこれを買い入れているのですから、株屋のような、あるいは相場師のようなことがないことを私は期待をしている。そういう意味からいって、何か大蔵大臣は、米価の問題になると上げることだけ考えているんじゃないか。私どもは、これは国民全体のために、しかもまずい米、悪い米を高く売るなんという考え方は、私は厳に戒めていかなければならぬ。ごまかしてはならないと思う。こういう点こそ、ごまかしてはならない。自衛隊のように何でもできるなんということでごまかされるように、国民をごまかしてはならないと思う。自衛隊では、大蔵省をごまかすくらいのことは何でもないですよ。しかし、大蔵省が国民をごまかしてはならない。こういう意味で、いまの物価高の中にさらに刺激を与えるような消費米価の引き上げは厳に慎まなければならぬ。しかも、計算をごまかして引き上げるというようなことは厳に戒めなければならぬということで、あえて私は質問しました。  もう一つ、ついでですから、もう一問で終わりますが、大臣が約束してもどうも実行しないと思われますのは、先般の大蔵委員会で、農業用ガソリン税の見返り財源として完全還元をするという約束しておられる。政務次官が来て、決議に対して、これを実行しますと約束した。大蔵大臣もそういう約束をしておられるはずですが、ほんとうにことしも完全還元をされるのかどうか。この一問で終わります。
  338. 福田赳夫

    福田国務大臣 大蔵小委員会の結論に沿って実行いたします。  それから特に申し添えますが、先般の当委員会において川俣委員より御提言のありましたガソリン税の算出方法、これは馬力数も考えなければいかぬじゃないか。これはそのとおり実行したいと存じます。
  339. 福田一

    福田委員長 次に加藤進君。
  340. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、先ほど佐藤総理に対して質問をいたしましたが、この問題に関連して、一問だけ建設大臣にお尋ねをしたいと思います。  いま信濃川の左岸に進められておる堤防の工事がございますが、あの工事の性格は、いわゆる霞堤といって治水上これをつくる、護岸対策としてつくられる、こういう考え方と、もう一つは、これは霞堤とはいうけれども、本来本堤としてのものである。こういう二つの見解が出てくると思うのですが、これについての建設省の基本的な見解をお伺いしたいと思います。
  341. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 この機会に、私当委員会で初めて建設大臣としてごあいさつを申し上げます。  今後皆さんにたいへんいろいろお世話になることと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  なお、御承知のように、二十四号及び二十六号台風で多数の方々が災難をされ、たいへんな損害を受けられましたことにつきましては、心から御同情申し上げております。なお、内容につきましては、衆議院の建設委員会並びに災害対策特別委員会等で御報告を申し上げましたので、この際ひとつそれは省略さしていただきます。  ただいま加藤さんの御質問の件でありますが、いま長岡市周辺で信濃川に架橋しておる橋は、御承知のように長生橋と蔵王橋があります。そこで、今度つくろうという橋は、非常に利用価値の高い両者の中間で、かつ長岡市の中心部の交通量を一つは緩和するという目的で架橋計画を決定したわけであります。御承知のように、この地区は都市計画の決定地区でありまして、架橋に入ります街路はすでに都市計画街路として約三十メートルの道路が途中まで完成されております。それから延長して橋をつくる。この橋をつくるに関連しまして、ただいまお話のあった霞堤、建設省ではいわゆる導流堤といっておりますが、霞堤というのは、見えるか見えないかというところで、霞のごとくということで霞堤という名であります。その導流堤、霞堤ともいっておりますけれども、要するに見えるか見えないかという程度の低い堤防をつくることになっております。したがって、いま御質問のありました、これが本堤になるのかどうかという御質問に対しましては、その意思はない、霞堤として、いわゆる流れの調整をはかる導流堤である、かように御承知置きを願いたと思います。
  342. 加藤進

    加藤(進)委員 その見解だけはお聞きしておきますけれども、しかし疑問は解けないのです。先ほど答弁の中に、低い堤防だから霞堤だ、こうおっしゃいました。この霞堤が低いなどというはずはないのです。これは本堤より一メートル高いのですよ。本堤よりも一メートル高い堤防で、しかも本堤並みの非常ながんこな、強固な堤防がつくられている。しかも流量は、もうこの堤防を完成してみた暁においては、信濃川の流量は一万立米程度では十分に耐え得る、こういう計算もちゃんとできて、しかも対岸においては、そのための堤防の補強工事までやられておる。地域の人たちは、これはもう本堤だ、工事を担当している方たちも、霞堤とはいうけれども、これは本堤です、出張事務所もこう言っているのですよ。私は、そういういわば従来の計画昭和三十九年に室町産業のやはり知るところとなって、当時の大蔵大臣を通じて、この本堤といわゆる霞堤との間の三十万坪を占有する。こういう計画があるということを私たちははっきり強調しなければいかぬと思う。——橋本さん、それでけっこうです。  次に官房長官にお尋ねいたします。官房長官は、すでに世評に出ておるような田中角榮氏にからまるさまざまな疑惑、不正事件については十分御存じいただいておると思いますけれども、大体どんな事件が田中角榮氏に関連して出てきておるのか、ちょっと御説明を願いたいと思います。
  343. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は何にも承知しておりません。
  344. 加藤進

    加藤(進)委員 おそらく知らぬ存ぜぬと言われるであろうと思いました。しかし、世間でこれほど騒がれているようなことを、しかも綱紀の粛正をやる、粛党をやると言われるあなたたちが、この問題についてすべてこれをほおかむりして国民の目をかすめる、こういう態度ではほんとうに粛党、粛正ができるのでしょうか。私は全くこれについてはあなたの答弁に承服しかねます。  そこで、それならそれで、私はなお新しい事実をここに明らかにしたいと思います。時間がありませんから簡潔に概要を申し上げますけれども、私の調べるところによりますと、田中角榮氏自身、今日問題になっておるいわゆる共和グループ、さらに共和グループの七社、八社の社長だといわれる菅貞人なる方、日本人ではないといわれておりますが、この菅貞人氏ときわめて密接な関係がある、こういう事実があります。この点については御存じはございませんでしょうか。
  345. 愛知揆一

    愛知国務大臣 存じません。
  346. 加藤進

    加藤(進)委員 それでは次の事実を申し上げます。  田中角榮氏の朝めし会に、この菅貞人氏が毎回十万円ずつ持って出席しておるという事実を私は聞いております。また、そればかりではありません。たとえば田中角榮氏の後援会である越山会は、共和グループの政治団体である新友会から、三十八年には百万円、三十九年には五十万円の献金を受けております。さらに越山会は、菅貞人氏が日本ぶどう糖工業会の会長をしていたその時期に、この工業会から三十八年と三十九年に各五十万円ずつ、計百万円を受け取っておられます。額はきわめて少ないといわれるかもしれません。しかし、これはもちろん表面に出ただけの数字であります。しかもこの越山会は、昭和四十年になってから自治省に届け出る収支報告の収入の部については、明細は一行も書いてはおりませんし、総額だけが、報告されておるのにすぎないのです。したがって、四十年以降越山会の巨額の資金源については、全くベールに包まれたままであるという点についても私はよく存じております。しかも田中角榮氏のこの越山会は、毎年国税庁に欠損の申告をして脱税をしておる共和グループの政治団体新友会から、政治資金を引き出しておるという事実があります。いいですか。国税庁には欠損申告、脱税をしておるその政治団体から、政治資金が引き出されておるのです。これらのことに自民党の大番頭役である田中角榮氏が事実関係しておることは明らかです。しかもこれはほんの一例です。私はもっと十分な材料は持っております。きょうは時間がありませんから、これには関連してお話しはできませんが、こういう人物が自民党の大番頭です。自民党をささえておる。  そうして、しかもどうでしょう。先ほど佐藤総理はどう言われたか。積年の病弊を根絶する、こう大言壮語されました。積年の病弊をと言われる以上は、何らかその病弊については御存じのはずです。その中には、自分の最も屋台骨をささえるべき田中角榮氏についてのさまざまないまわしい疑惑や不正についても御存じのはずだと私は確信している。しかも、そのことをすべて隠して、口先だけで積年の病弊を根絶するなどといっても、国民も国会も承服できません。私たちは、この点についても今後強く追及する、こういうことを申し上げまして、私の質問を終わります。
  347. 愛知揆一

    愛知国務大臣 承りました。
  348. 福田一

    福田委員長 以上をもって質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十五分散会