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1966-11-08 第52回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年十一月八日(火曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       伊東 正義君    臼井 莊一君       大泉 寛三君    奥野 誠亮君       押谷 富三君    鴨田 宗一君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    砂田 重民君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       羽田武嗣郎君    毛利 松平君       渡辺 栄一君    有馬 輝武君       小林  進君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    日野 吉夫君       平岡忠次郎君    藤田 高敏君       山田 耻目君    横山 利秋君       春日 一幸君    永末 英一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会取引部長)  柿沼幸一郎君         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵政務次官  丸茂 重貞君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    結城 義人君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  澄田  智君         大蔵事務官         (銀行局保険部         長)      上林 英男君         国税庁長官   泉 美之松君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      今泉 一郎君         食糧庁長官   大口 駿一君         自治事務官         (選挙局管理課         長)      鈴木  博君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制及び金融に関する件      ————◇—————    午前十時四十六分開議
  2. 三池信

    三池委員長 これより会議を開きます。  この際、丸茂大蔵政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。
  3. 丸茂重貞

    丸茂説明員 今回大蔵政務次官に任命されました丸茂重貞でございます。  浅学非才、かつ若輩でございまするが、誠心誠意努力いたしまして何とかやってまいりたいと思いますので、皆さま方の格段の御後援、御指導を心からお願いいたしまして、就任のごあいさつといたします。  どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  4. 三池信

    三池委員長 税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 きょうは酒の問題についていろいろ質問したいと思うのです。  先日、大蔵委員会で四国の各地を回りまして国政調査でいろいろ聞いたのでありますが、酒の減税の問題についていろいろな意見がありまして、特に二級酒の問題についてあげられましたが、その問題について、泉さんは先回、三年おきくらいに減税したいと言っておりますが、現在においてどういうお考えでおられますか。   〔委員長退席吉田(重)委員長代理着席
  6. 泉美之松

    泉説明員 減税の問題は主税局長から御答弁申し上げたほうがよろしいかと存じますが、先般私が申し上げましたのは、前の税制調査会答申がありました当時の税制調査会考え方といたしましては、間接税につきましては毎年毎年減税というわけにいかない、まあ数年に一ぺん減税をして、末端価格にまで引き下げが及ぶような減税をやるべきだ、こういうような答申でありまして、その際には数年に一度というようなことであったわけであります。数年に一度といいますと、三、四年ないし四、五年に一度というような考え方があったわけでございますが、三十七年に酒税減税が行なわれまして以来今日まで酒税減税は行なわれておりません。ただ、これにつきましては、御承知のとおり、酒税従量税率になっておりますので、その間小売り価格値上げが行なわれますと、小売り価格に対する酒税負担率はだんだんと下がってまいる、こういうことになりますので、そういう点からいたしますと、物品税のように従価税率のものと違って、従価税率のものは、小売り価格が上がれば、したがってまたメーカー価格も上がりますわけで、それに応じて、税負担小売り価格に対して下がらないで上がっていくという関係が生じておりますので、そこでは、物品税酒税とは違うということが言えたわけであります。  今回、御承知だと思いますが、税制調査会長期税制のあり方についての中間報告を出しました。  その税制調査会考え方によりますと、間接税のうちの定額税率のもの、あるいは従量税率のものにつきましては、物価の動向を考慮して負担が適正になるように考えていくべきだということを言っております。それによりますと、従量税率酒税につきましては、減税というよりも、むしろ小売り価格の変動につれて負担の均衡をはかるために、場合によっては増税も必要とするというような考え方に変わってきておるのでございます。  したがいまして、私、現在税制上どういうふうにすべきだというようなことは申し上げる地位にございませんので私の意見は省略させていただきますが、いま申し上げましたように、現在のようにだんだん税制調査会考え方が変わってきておるのでございます。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 調査官がおられるそうですから、答弁してもらいましょう。
  8. 結城義人

    結城説明員 お酒の減税につきましては、ただいま国税庁長官のほうからお答え申し上げましたように、主税局といたしましても、現在の段階では考えておらないわけでございます。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点、非常に問題になっているのですが、それは二級酒が非常に売れないという現象が出てきて、まあいろんな意見の中で、汽車と同じように、二級をやめて、一級それから特一級、超特級というような形にしたら相当あれできるのではないかというような意見もあったのでございます。こういう点はどういうふうに考えておられますか。
  10. 結城義人

    結城説明員 そういう点に関しましては、実は目下検討中でございますので、この場で具体的にお答えするだけの材料が現在ございませんので御了承をお願いしたいと思います。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、最近中小企業が非常に倒れていきまして、まあ史上空前だといわれております。やはり酒造業もそういうあおりを食って、相当倒産やあるいは統合、廃合というようなことが行なわれておるのですが、こういう点について、一体当局はこれを救うだけの対策を持っておられるかどうか。これは泉長官にお尋ねいたします。
  12. 泉美之松

    泉説明員 お話のように、清酒業の場合におきましても、最近経営上困難を感じまして、企業合同を行なうといった事例が出ております。私どもは、御承知のように、清酒業につきまして近代化五カ年計画というのを立てまして、その線に沿って企業合同をやっていきます場合におきましては、資金のあっせんなり、酒造用米の加配、こういった制度によりましてそういった近代化を促進するようにいたしておりまして、現に本年におきましてもそういった企業合併がかなり行なわれてまいっております。その際に、円滑な合併ができるようにこの上とも配意してまいりたい、このように考えております。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 酒造業近代化というのは、結局企業合同をしたり、統合するというような問題になって、実質的には中小企業酒屋を救うという道にならぬと思うのです。  そこで、私が前から言っているように、そういうような近代化をやるのには、酒類公団のような、金融公庫のようなものをつくらないと根本的にはできないと思う。現在の状態ではそういう資金関係でなかなかできないと思うのですが、この点は泉さんどういうふうに考えておられますか。
  14. 泉美之松

    泉説明員 私ども近代化計画におきましては、必ずしも企業合同だけではなしに、共同製造であるとかあるいは共同びん詰め、あるいは生産工程の一部の共同ということで、できるだけこの製造コスト合理化引き下げをはかっていく、それによって販売条件においてできるだけ有利な立場に持っていく、こういうことを考えておるのでございます。したがいまして、企業合同よりも、むしろ共同製造であるとかあるいは共同びん詰めのほうの事例が多く見受けられるような現状でございます。  お話のように、酒類公団をつくる、それによって資金の供給をはかる、これは一つ考え方だと思いますけれども、しかし、業種別にそういう金融機関をつくるということにつきましては、なかなかむずかしい問題がございまして、なかなか実現しにくい状況であります。むしろ、現在のいろいろな融資条件の中でそういった企業合同なり共同びん詰めといったような場合に融資ができる措置を講じておいたほうがけっこうではないか、現在のそういった中小企業向け合理化資金を、通産省のほうといろいろ打ち合わせまして、できるだけ豊富に獲得するようにつとめていきたい、こう考えておるのでございます。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 中小メーカーの非常に倒れていくのに比例して大メーカーがだんだん進出している。ある大きな、これは名前をはっきり言いませんが、月桂冠などでは三十六万石からつくっているという現象が出てきておる。こういうような大きなのはどんどん大きくなる、小さなのは捨てておくという、これは資本主義やり方だと思うのですが、こういうことについては、酒というのは、御承知のように政府のある規制があるわけなんですが、こういう点についてどういう指導をしておられるのか、伺いたいと思います。
  16. 泉美之松

    泉説明員 お話のように、酒の製造は概して中小企業が多いわけでございますが、いまお話月桂冠のごときは最大のメーカーでございますが、これも、自分のところで製造する酒はそれほどでございませんで、他からおけ買いをいたしまして二十数万石を移出しておるという状況でございます。  私どもといたしましては、現在の消費状況からいたしますと、現在のように酒の銘柄があまり多くては、なかなか売れ行きがむずかしい、したがって、銘柄はできるだけ少なくなるのが望ましい、そうかといって、中小企業であるところの清酒製造業者を倒産させてしまうということは好ましくございませんので、できるだけ中小企業として生きていく、そのためには、場合によって、共同製造あるいは共同びん詰めをして、生産はするけれども自分のところのマークでなしに統一さ  れたマークで売っていく、こういうような形でもっていくのが清酒業近代化のためにいいのではないかという考え方を抱いておるのでございます。  ただ、だんだんと酒類市場も自由化されてまいりました関係上、売れ行きのいいものがますます伸びていく、そのために売れ行きの悪いところが伸び方が少ない、場合によっては伸びない、こういった状況が出ておる点につきましては、十分注意いたしまして、そういった企業間の格差が出てくるのは、ある意味においては自由競争でありますからやむを得ない面がございますが、そのために中小企業が悲惨な目に落ち込むことのないように十分な配意はしてまいらなければならない、このように考えておるのでございます。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ただいまおけ売りの話が出たのですが、酒屋自分の酒をつくるというのは根本だと思います。そこで、いま大メーカーからおけ売り問題でいろいろ問題を投げておりますけれども小売り販売リベートを出したり、あるいは招待券を出したりということで、いろいろ販売の中で混乱を来たしておりますが、この事実を認めますか。
  18. 泉美之松

    泉説明員 お話のように、酒類取引につきましていろいろリベートが出ておる状況にございます。  そこで、私どもは昨年末以来取引正常化を取り上げまして、業者の協力を得て、ぜひそういったリベートを少なくするようにやっていかないと、業界リベート競争で共倒れになるおそれがあるから、その点を注意してもらいたいということを申し上げたのであります。もう一つは、現在のリベートが、消費者に対してリベートになって消費者価格が下げられていくのでなしに、取引業者の間で、酒類生産、卸、小売り段階だけでそういったリベート取引されておって、消費者リベート恩典が反映していない、そういう形ではいまのリベートは好ましくないではないかということを申し上げておるわけであります。  その結果、最近におきましては、種類によって違いがございますけれども合成清酒、しょうちゅうにつきましては相当リベートの額が減ってまいりました。ただ清酒につきましては、リベートの額が減ってまいりましたけれども、まだかなりのリベートが出ておる状況にございます。  こういった点からいたしまして、私どもといたしましては、酒類の、特に清酒取引につきまして、今後ともそういったリベート——これは結局、強い銘柄の方がリベートを出すと下のほうはもっとリベートを出さざるを得ないことになるので、強い銘柄の方がリベートを出さないでやっていただくというような方法で指導してまいりたい、このように考えておるのでございます。
  19. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 関連質問を許します。小林進君。
  20. 小林進

    小林委員 いまの国税庁長官の御答弁によりますと、消費者にその恩典がいくならばリベートはよろしい、そういう意味お話があったが、私は、これはあなた方のところへしばしば抗議を申し込んでいる問題で、小売り業者は、自分販売する酒を自分計算において消費者に出す、特に私どものほうは労働組合その他のめんどうを見ておるのでありまするけれども組合なんか、自分共済組合において盆暮れの酒等組合員に安く売るために、小売り業者から市販の一般の値段よりは安くそれを買って組合員に配付しよう、そういうことをやっているときに、あなた方はそれを妨害しているじゃないか。それをみな妨害している。もちろん組合に売るのでありまするから、それは一本とか二本の小売り用じゃない。売る小売り業者のほうは、いまあなたのおっしゃるいわゆるリベートも要らない、広告料も要らない、運搬料も要らない、組合組合員にまとめて小売りで売るんだから、相当安く売っても、売るほうの側からは損失にならないわけだから、そこで、市販せられている小売り値段よりも思い切って安く売っている。そうすると、必ずそこへ故障を申し込んでくるのは国税庁じゃないか、税務署じゃないか。安く売っちゃいけないといって、消費者が喜んで買うその値段に対して、あたかも統制価格があって、それに違反しているかのような、そういうかまえでもって干渉してくるじゃないか。いま酒は自由販売になって、小売り価格も自由なんだ。小売り商人自分ふところ勘定で売っているんだから、普通の商人だって、大売り出しをやるときには自腹を切っても売り出す場合もある。商売ですから、自由販売に基づいて自分計算で売っている品物を、安く売っちゃいけないとか、やれ何だとか、いつも文句を言ってくるじゃないか。商売の妨害をしているのは税務署じゃないか。  だから、私はそういう小売り商人に言った。一体国税庁税務官吏がそういうことに干渉してくる法的根拠はどこにあるのか、法的根拠をあなた聞いてきなさい。税務署に行って聞いてきなさい。国税庁に行って聞いてきなさい。それで、小売り商人が安く売っていかぬという法的根拠規制根拠は一体どこにあるかと言っても、あなた方出さぬじゃないか。出さないで、かってに弱い者をいじめている。それは官僚の法規に基づかざる独裁行為だ。この問題はどうです。例がないとおっしゃるなら、私はそういう問題を出しますよ。悪いやつだ、ほんとうに。
  21. 泉美之松

    泉説明員 小林委員のお尋ねは私も承知いたしておりますが、結局、長岡市の小売り業者川崎市の工場の労組の購買部で年末の臨時販売免許をほしい、こういうことで販売免許申請が出てまいったのでございますが、その販売価格を見ますと——私、先ほど消費者リベートのいかないような小売りは適当でないと申しましたけれども、もちろん、消費者リベートがいくことは好ましいことでありますけれども、しかし、その売り方が非常に法外の安値で売るということになりますと、他の小売り業者との間で好ましくない結果を生じますので、その申請に添付されているような価格では、そういう安いことは消費者としては喜ぶかもわからぬけれども小売り価格としては適当でない、こういうふうな考えのもとに臨時免許は許可しない、こういうことを言っておるのでございます。結局、妥当な、ある程度消費者に安い値段はけっこうだと思いますけれども、あまり著しく値下げして、そのために小売り業者の収益もない、結局メーカーのほうに泣きついていくというような形になるのは好ましくないということでございまして、結局、販売価格がどの程度ならば望ましいか、こういうことに帰すると思います。
  22. 小林進

    小林委員 酒が自由販売になれば、商人自分計算において、あるいはたたき売りするときもあるだろうし、ほかの面でもうけるときもある。それは酒だけじゃない。自由販売品物は全部一律にそれがある。それを酒だけ——自由販売にするときに、そういうことになるから価格統制を続けていきなさいということを、私どもやかましく言っておる。あなた方、今日自由販売を問題にするならば、そういう価格を支持することも、統制をすることも、上の幅も下の幅もきめておく必要はない。名実とも自由販売にしますと言うならば、そのあなた方の規定どおり商人が下の幅を幾らにしようが上の幅を幾らにしようが、自分計算でやることは自由なはずだ。それが自由販売だ。それが統制価格をはずしたゆえんなんだ。一体あなたが言われた販売免許というのは何だ。自由販売にした品物販売免許にするなどという、あなた方が特に干渉してくるその法的根拠はどこにあるか。われわれが国会で審議した法律の中にはなかった。どこに一体その根拠があるか。そういう表面だけが自由だからあなた方が言うような結果になるからと言って、われわれがあくまでも自由販売に反対したときには、何にも干渉しないで、それぞれの思惑で自由に売れるような自由販売にしますとあなた方答弁しておきながら、ここへきて、免許を出します、酒販の許可を出します、最低の価格で売っちゃいけませんからこれは統制しますと言う。それは自由販売の名において行なう官僚の最も悪い統制だと思う。責任を持っておやめなさい。一体どうなんです。
  23. 泉美之松

    泉説明員 小林委員のおっしゃる小売り業者の方は長岡市に小売り店があるのでございます。長岡市に小売り店がございまして、神奈川県の川崎市の工場で売りたい、こういうことでございまして、小売り免許は御承知のとおり販売所ごとに与えることになっております。したがいまして、川崎市の工場で売られるのであれば、そこに小売り免許が要るわけでございます。ただ、年末のごく短期間のときだけ臨時に売るということでございますので、臨時免許という形で、これは税法に規定がございますが、臨時免許申請が出ておるのでございます。  そこで、いま申し上げましたように、その臨時免許を付与するかどうかという点につきましては、あまり著しい小売り価格引き下げでは長続きしないだろうし、他の小売り業者がひどく迷惑をこうむることになるから、そういういき方でなしに、もう少し妥当な価格でやられるべきであろうということで、申請書にチェックされた条件では免許しにくい、こういうことを申し上げております。
  24. 小林進

    小林委員 私は関連質問ですから、いまの答弁は納得できませんが、やめます。やめますが、小売り商人が酒を売るときに一定の地域でしか売れぬという規定があるかどうか。それもごまかしだし、妥当であるか妥当でないかというのは売る人のかってです。そんなことは役人が判断するような問題ではない。行き過ぎです。自分品物自分の判断で自由に売る。妥当であるか妥当でないかは本人が一番よくわかっておる。それは行き過ぎですから、私は大蔵官僚やり方に了承できないが、これはまた今度やります。いまは関連ですからこれでやめますが、そういうでたらめな答弁には絶対承服できないということを強く申し添えておきます。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今泉間税部長にお尋ねいたします。  あなたは最近仙台の国税局長をやり、いろいろ知っておられると思うが、いま価格の問題でいろいろ紛糾しておるのですけれども、そういう点について、あなたは間税部長になったから、どういう考えを持っておるか伺いたいと思います。
  26. 今泉一郎

    今泉説明員 ただいまお名ざしにあずかりました今泉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  御承知のとおり、昨年並びに本年ともお酒の原料となるべき米が大体それぞれ八分強見当値上がりいたしました。これは先生方承知のとおりと思いますが、お酒につきましては、何と申しましても、酒米が主たる原料と相なっております関係上、大体一升につきまして、米の価格にいたしますると、十二、三円の原価高ということに相なったわけであります。去年すでに米が上がりました際、清酒業者の方々からはやはり何とかこれを打開してほしいという要望もございましたのでございまするが、もう少し待ってほしいというふうなこともございまして今日に至りました。また今回米も上がりましたので、どうもわれわれのいろいろ聞いておりますところによりますと、お酒屋さんとしては、できるだけの企業努力合理化もいたしておるが、このような値上がりではなかなかこれを合理化で全部吸収し尽くすということはむずかしい、ことに昨今労賃等値上がりも、どこの企業でも同じでございますが、労務の形の近代化が伝統的な酒造業界におきましてもしんしんと押し寄せてまいりまして、労賃等も相当値上がりした、そういう関係もありますので、何とか値を上げたい、また上げるべきじゃないか、こういうふうな御希望をそれぞれの酒屋さんが持っておられるようでございます。  私どもとしましても、これはいつまでもこういうふうな状態のままで値段が据え置かれるということは必ずしも適当ではないかもしらぬ、何とかしなければいかぬのじゃないかという考えは持っておりまするが、一方、消費者あってのお酒でございます。飲む方のお立場考えなければならぬと思います。広く申しますれば、物価政策というふうなこともございまして、いろいろと私どもこれを慎重に検討しておる、こういう段階でございます。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大口食糧庁長官にお伺いしますが、今年度の酒米について九月二十八日に値上げをされたと聞いておりますが、どういう根拠値上げをされたのか、原料米値上げのことについての説明をお願いしたいと思います。
  28. 大口駿一

    大口説明員 酒米価格につきましては、従来とも、政府買い入れ価格コストを加算をいたしまして価格決定いたしておるわけでございまするが、今年産米の生産者米価が先般決定をされましたことに伴いまして、おおむね従来と同様の考え方のもとに、酒米実情等を織り込んだコスト計算いたしまして、国税庁と協議をいたしました結果、今年産米の酒米価格硬質一等玄米百五十キロ当たりの価格を先般一万九千二百五十円ということに決定をいたしたのでございますが、この価格は前年の価格であります一万七千七百十五円に対しまして千五百三十五円の値上がりになった価格として決定をされた次第でございます。
  29. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 政府物価を上げないという方針を立てておりながら、そういうようにすでにみずから政府の持っている米の価格を上げるということが今日の物価値上げの大きな原因をなしておると思うのです。そこで、いま今泉間税部長が言いましたように、原料米を上げて、酒を上げることはできないという矛盾が出てくるわけであります。これは、いま消費者米価が問題になってきておりますが、おそらく解散でもあって、選挙が終わったら政府は上げるだろうと思いますが、少なくとも食管の赤字の問題は、これはいろいろ問題もありますし、そういう問題をやっておると切りがありませんからここでは申し上げませんが、いま食糧庁長官が時間がないからあまり長く引っぱっておけませんから申し上げます。  この酒米の割り当ての問題について去年より増額されておるのかどうか、また、酒米の割り当てについてはいろいろ異論があるわけですが、この点についてはどのような方策をとっておられるのか、あらためて伺いたい。
  30. 大口駿一

    大口説明員 ただいまの御質問は、本酒造年度の酒米の数量の割り当てについてのお尋ねだと存じますが、酒米の当該酒造年度における売却数量の決定は、大体国内産米が政府にどれくらい集まるだろうかという見通し等がある程度めどがつきまする今月の下旬もしくは十二月の上旬に最終的な決定をいたすのが従来のならわしでございます。  本年は、御案内のように、国内産米の作柄は昨年よりは若干良好になっておりますが、本年の需給事情等を勘案いたしまして、国税庁と十分御協議をいたしまして最終的に近く決定をいたす運びになろうかと思いますが、現在私どものほうで国税庁のほうから希望数量等は承っておりますので、その数量を基礎といたしまして私どものほうと国税庁と十分御相談をして最終的に決定をいたしたい、かように考えております。
  31. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この酒米の問題ですが、これはほんとうは政治的にわたるから大臣に聞きたいけれども、大臣があとから来られるそうでありますが、この買い上げ値段については、酒で税金をたくさん取るのだから、消費者価格でなくて買い入れ価格でやったらどうかという意見を私は前から持っておるのですけれども、あなた方はこの点について、率直にどういう意見を持っておられるか、これは泉さんからでも大口さんからでもいいから御答弁願いたい。
  32. 大口駿一

    大口説明員 酒が税の重大なる財源であるということは、食糧庁におります私どもも十分承知をいたしておるわけでございますが、現在の食糧管理制度のもとにおきまして、主食配給用の米価、いわゆる消費者米価は家計の安定を旨として決定をいたすというたてまえになっておるわけでございます。酒が国税の財源として非常に重要な部門を占めておることは承知しておりますが、しかし、私ども考えておりますところでは、他面、酒はやはり嗜好品的な性格を持っておるわけでありまして、家計との結びつきという点におきましては、消費者米価のごとく財政負担をして政府が管理すべきものではないという考え方に基づいて、従来ともコスト価格主義をとっておるわけであります。ただ、コスト主義をとっておるからと申しまして、きわめてむだなコストをかけるとか、あるいは酒米の管理の実情を十分織り込んだコスト価格ということは十分配慮してまいっておりますけれども、基本的な考え方はそのような考え方で毎年決定されておるわけでございます。本年も実はそのような考え方に基づいて価格決定をいたすつもりでおります。
  33. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから酒米の割り当て基準の問題についていろいろ意見があるのですが、政府当局はどういうような基準でやっておられるのか、これをひとつ伺いたいと思います。
  34. 泉美之松

    泉説明員 佐藤委員よく御承知だと思いますが、酒米の各酒造業者別の割り当てにつきましては、実は昭和十一年の実績を基礎にいたしました基準指数というのがございまして、長らくそれで配分されておったのでございますが、いかにも過去のものでございますし、最近の情勢にマッチしておりませんので、基準指数の分をできるだけ少なくして、最近の販売情勢に応じた姿で配分を行なうということを基本的な考え方にいたしまして、基準指数割りと移出数量割りを加え、さらに希望加配と申しますかを加え、さらにそのほかに、先ほど申し上げました企業合同共同びん詰め共同製造等の場合の特別の奨励的な加配を加える、こういうことを基本としてやっておりまして、最近の酒類の移出数量を加味した割り当てということになっておるわけでございます。
  35. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これはいろいろやっていけば切りはないのですが、この酒造業者の中にも大メーカー中小メーカーの比率が非常にひどくなって、へたをすると、ビール会社はいま五大メーカーで独占されておるようでありますが、酒もこういうような情勢になると、大手八社に独占をされるような傾向になるんじゃないかということが心配されておるのです。  泉さんも間税部長をやっておられたからよく御存じだと思うのですが、この間新潟の佐渡に行ったときにも、あそこに酒造メーカーが六十七軒あるというような現実があるわけです。非常に小さい酒屋がたくさんあるのですが、こういうものに対してどういう救済策をとられるのか。泉さんはそのとき冷たいことを言っておられましたけれども、やはり私は、そういうような日本の長い間の伝統的な酒造業者に対して、弱いものに対して何らかの方策をとる必要があるのではないかと思うのですが、この点はどのように考えておられるのか。これは泉さんでも今泉さんでもよろしいですが、ひとつ伺いたい。
  36. 泉美之松

    泉説明員 御承知のとおり、全国では清酒製造業者は三千七百軒ほどございまして、そのうち比較的数量の少ない中小メーカーが圧倒的に多いわけでございます。そういった点からいたしますと、昔のように交通事情の不便であった当時はともかくといたしまして、今日のように交通事情が便利になりますと、もうトラックでどこへでも持っていけるというようなことになりまして、いままでのように三千七百——もちろん一軒の家で銘柄をそれ以上持っておりますから、銘柄数にいたしますと四千をはるかにこえるような数字になるわけでございます。そういう状況ではなかなかやっていきにくい、したがって、先ほど申し上げましたように、銘柄数を減らすことが第一だ、そのためには共同びん詰めなどをいたしまして、メーカーとしてはそれぞれつくるけれどもマーク一つマークにしていくというような努力によって販売単位を引き上げていく、それによって販売の宣伝費も出てくれば、経営上の利益も出てくる、こういう姿に持っていく必要があろうということで、先ほど申し上げましたような清酒業近代化計画というのを進めるように努力いたしておるわけでございますが、何ぶんにもこれは業者の自覚がないといけないわけであります。  もちろん、この三千七百軒の業者の中には、従来どおり、もういなかで自分の近回りにだけ販売しておればいい、それでけっこうやっていけるというような方もおられます。こういう方は別段そうする必要はないわけでありまして、従来どおり自分の近回りに売れる範囲の数量をつくっていけばそれでやっていけるということになるわけでありますが、消費市場へ出てくる業者ということになりますと、どうしても販売単位を引き上げて、それによって宣伝費なりを出さないと、なかなか現在の販売競争に打ち勝っていくことはできない、したがって、そういった状況に応じたように業者のほうが自分の経営を持っていっていただく、こういうふうにやっていただきたいということを申しておるのでございます。
  37. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 銘柄を減らすというのは、つぶすということですよ。いいですか。それは、あなたは国税庁長官だから、このことを簡単に言うと、弱いものは倒れて死んでいけということですね。銘柄を減らすということ、数を減らすということは、つぶせということですよ。こういう考え方を持っておられては、中小企業はだんだんつぶれていく。かつての池田さんの中小企業の三軒くらい倒れてもいいという思想と同じ思想です。それは私はおかしいと思うのですがね。その点はどういうように考えておられますか。
  38. 泉美之松

    泉説明員 銘柄数を減らすということは、業者をつぶすという意味ではないわけでありまして、従来どおり自分のところで製造するわけであります。ただ、自分のところのいままでのマークでは売れる限度というものがありますから、数軒の酒屋さんがお集まりになって、共同マーク販売する、それによって販売単位を上げていく、これが共同びん詰め考え方でございます。それがうまくいけば、製造としては従来どおり自分でつくっていく、一部を場合によっておけ売りをする、そうして自分で売るものは共同マークで売っていく、こういうことになるわけでございます。
  39. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そうすると、三十万石くらい大きくつくっているところはそれなり捨てておいて、小さいものだけは企業合同をやれということになる。いやしくも国税庁長官の地位にある人が、そういう弱いものは倒れていけという思想——これは一人でも殺してはならぬというのが政治家の真髄だと思うのです。酒屋の死活権を握っておる泉長官が、小さいものはどうでもいい、大きいのは野放しだという考え方でやっているからいろいろ混乱が起きておるのじゃないかと思うのですが、この点、一体あなたはどう思っておられるか、伺いたい。
  40. 泉美之松

    泉説明員 どうも私の申し上げておることばが足らないせいか、と思いますが、小さいのはつぶれろということを言っているのでは毛頭ございません。小さい業者の方が生き残っていくためには、自分製造したものを自分銘柄で売ることはなかなかむずかしいから、自分でつくったものを持ち寄って、共同マーク販売する、それによって販売力をつけていくのが望ましい、こういうことを申し上げておるのでございまして、自分銘柄がなくなったからといって、清酒製造業者としてなくなるということではないのでございます。どうか誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  41. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 その考え方が違うんですがね。それはあなた、自分でつくっている酒屋さん、泉という酒屋さんで泉という名前がなくなれば、どんなにさびしいものかということがわかってもらえないのか。そういう点、小さいのは合同してやっていけばいいじゃないかという考え方は、あなたの監督の立場としては理屈として通るかもしれぬけれども、現実はそんななまやさしいものではないと思うのですよ。  そこで、私がいま言っておるように、三百年もやっておる酒屋さんもおるのだが、こういう人々のために、そのメーカーの名前を残すような、何らかの公団の金を出すとか、あるいは近代化資金の金を出すとかいうような救済の道があるかないかという問題が起こると思うのです。ところが、実際は政府はどんどん間接税酒屋に取らして、現実的には何らの施策もやっていないと思う。ただ表向きの机上プランのようなものはどんどん出しておるけれども、現実的には何もそれをやっていないのじゃないかと思うのです。それが混乱の問題となり、あるいは多額のリベートを出すとかいう問題となり、あるいは大きなやつはどんどん——たとえば、伏見の月桂冠は、聞いてみると三十万石が三十六万石になるといわれております。白雪は十七万石といわれておりますが、こういうものがどんどんふえてくると、それは資本主義だから、弱いものは倒れていっても大きいものだけ残ればいいというのかもしれないけれども、私は、そういう思想がいま酒造界に非常に混乱を起こしておるのじゃないかと思う。あなたは実際に間税部長もやられたからそういう現実の問題を知っておられると思うのですが、そういう点についてのもう少し思いやりのある方法をとる必要があるのじゃないか。そういう点について、私は泉さんにただしたいと思うのです。
  42. 泉美之松

    泉説明員 お話のように、清酒製造業者はほとんどが中小企業でございますので、できるだけその中小企業立場を保存していくようなことが望ましいわけでございまして、私どもも、もちろん大企業が大きくなるばかりを歓迎しているのではございません、中小企業がうまくやっていただくことを望んでおるわけでございますが、だんだんと自由化してまいり、自由競争が進んでまいりますと、どうしても販売条件で劣る企業が出てきます。そこで、そういう企業がつぶれては困りますので、何とかして共同びん詰めでもいたしまして、自分マークはなくなりましても、共同マークで、その共同マーク自分マークと心得てやっていただくことが望ましいというふうに考えておるのでございます。  なお、私どもとしましては、従来合理化資金は、通産省との話し合いで、企業合同とか共同びん詰めのときだけでないと出せないということになっておりましたが、本年からはその点を改めまして、一企業合理化を行なう、たとえば機械を導入してその製造コストを下げていく、こういうような場合にも合理化資金を供給できるように改めまして、企業合同とか共同びん詰めでなくても合理化資金は供給するのだ、こういう方向でやっております。
  43. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それからもう一つ伺いたいのですが、いまの酒米の基準は、基準指数に応じて正確にやっておられるのですか、この点を伺いたい。
  44. 泉美之松

    泉説明員 先ほど申し上げましたように、酒米は、基準指数割りと、それから移出数量割り、それから小醸家加配といって、製造数量のきわめて少ない人にはある程度その単価を引き下げるために小醸家加配というものがございます。そのほかに希望加配がございます。これは一定の生産数量ができるように希望によって加配を認める、それから、先ほど申し上げましたような企業合同共同びん詰めなどの場合の奨励的な加配、こういうのがあるわけでございます。
  45. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 どうも泉さんの言うことにはお役所式な考え方が非常にあると思うのですよ。そういう点で私は十分に検討してもらいたいと思うのですが、大臣が来られましたから同僚委員からいろいろ質問が出ると思いますが、二、三点だけ大臣に伺いたいと思います。  第一点は、酒類の公団の金融公庫の問題について、前から私は意見を言っておるのですが、中小の酒屋さんを救うのには特別なあれが必要じゃないか。これは間接税を非常にたくさん納めているというばかりでなくて、そういう性質のものじゃないかと思うのですが、この点はどのように考えておられるかというのが第一点。  それから、酒米を上げれば当然酒が上がるという結果が出てくるのですが、こういうものについて何らか大臣は調整する必要があるのじゃないか。あなたは昔主計局長をやっておられたのだから、そういう点についての理解があると思うのですが、そういう点についてどういうような考えを持っておられるか。  それから、四十二年度の消費煮米価が問題になっておりますが、そういう点について米価を上げられるかどうか。これは酒の問題と関連をしていろいろ問題があると思うのですが、きょう私は酒の問題だけで質問したのでございますが、その三点だけ御答弁願いたいと思います。
  46. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 御承知のように、酒米価格が上がったわけです。さなきだに醸造家の中には非常に経理の困難を訴えている向きもある、そこで、この酒の価格を上げたい、こういう気分が業界にあるわけであります。ただ、私どもといたしますと、いま物価問題が非常に機微な段階にありますので、酒の価格の引き上げが与える物価面への影響等を考慮いたしますと、何とか業界においてこの私どもの気持ちに協力してもらいたい、こういうことに相なるわけであります。そういうことを業界にも申し上げておるのであります。業界のほうでも私どもの意のあるところをくみ取られまして、できる限りの協力をいたしましょう、こういうことになっておるわけです。そういう状態においていま御指摘の金融問題というようなものも当然持ち上がってくるように思いますが、そういうお話がありますれば、私どもといたしましてもできるだけ善処をしていく、こういう考えでございます。  なお、米の価格の問題につきましては、ずいぶん前からお尋ねを受けておるわけでございますが、米の消費者価格をどうするか、これはいま物価問題が機微な段階であります。そういう際において特に重大な問題である、こういうふうな考え方をいたしておるわけであります。まだ結論を出しておりませんが、物価問題という角度は十分に考えていきたい、ただ、同時にこの問題は、国民の生計の状況、また財政の状況、こういうものとも非常に深い関連のあることは御承知のとおりであります。そういうあらゆる要素を考えまして妥当な結論を得たい、予算編成ともからめて最終的な結論を出していきたい、かような考えでございます。
  47. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点だけ伺いたい。  各地を回ってみますと、酒の減税、特に二級酒の減税というのは非常に大きな声になっているのですが、その点について、大臣はどういうお考えを持っておられるのか、説明をしていただきたい。
  48. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま税制のいろいろな問題を検討しておりますが、二級酒につきまして減税を行なう、こういう考え方は、ただいまは持っておりません。
  49. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 山田耻目君。
  50. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私は、本日は政治姿勢につきまして、最近特に政界の黒い霧のうわさの問題なり、あるいは公私を混同する綱紀紊乱の問題など、いろいろと国民各位から政治不信の今日ほど強まっておる時期はない。佐藤総理もまさに綱紀粛正について有言実行したいということをしばしば申されておりますけれども、しかし、現実には  なおほど遠い感がしみじみといたしておるのは、私たち院を構成しておる者だけでございません。国民各位が大きな不信感を抱きながらながめておるのが現状と言わざるを得ません。そういう意味でありまして、きょうは特にこの委員会で、関係者小沢政務次官がいらっしゃいますので、特に私は綱紀の粛正、政治家として正すべき政治の姿勢という立場から若干御質問をいたしたいと考えております。  まず先立ちまして、ひとつこれを見ていただきたいのです。——いまお手元にごらんになっていただいておるもの、もう一枚ここにございますが、これを見ますと、一千万円の札が模造されております。しかも、なぜ私が大蔵委員会でこれを取り上げてお伺いしようといたしておるかといいますと、聖徳太子が消えて、そこに背広姿の小沢政務次官が入れかわっておるというふうに私はこの写真でながめておるのでございますが、小沢さん、このことを御存じでございましょうか、お伺いいたします。
  51. 小沢辰男

    ○小沢説明員 私は、昨夜友人の新聞記者の人から、十時半ころでしたか、電話をいただきまして、きょうこの問題が出ると聞きまして、私自身、一体印刷なり製造がどこでやられたのか、その点わかりませんが、ただ、私の選挙区ではありませんけれども、私の同窓の一人で、近藤さんという人がおられます。これは新潟県の三条というところで商売をやっておりますが、この方がよく自分の店の宣伝その他でいろいろなものをおつくりになっておられるようでございまして、その人が同窓会の席上でこの現物をみんなに配ったということを、私あとで聞きました。実は、かつて同じ人が何か別の人の写真を入れまして、三年前か、つくったことがあるそうでございますので、それを知っておりますから、私はあとで近藤さんには、そういうことは自分として、ことに私は大蔵省に行きましたので、はなはだ迷惑になるからひとつ至急やめてもらいたいということをお願いいたしました。以来、近藤さんは、もうどこにも出していないから、どうも済みませんでした、こういうお話を聞いております。それ以上のことは全然私わかりません。
  52. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 そういたしますと、小沢さんは、あなたの写真が入った一千万円の模造紙幣が近藤与助さんという工業会社の社長さんの手によってつくられて、それが同窓会の席上で配られたということはまず御承知であるということがいまの御答弁で伺えました。  二番目には、三年くらい前、いま自民党の幹事長である田中角榮さんが同じようなものを発行されて、昨年の五月三十一日の予算委員会で陳謝をして取り消したという故事がございますが、そういう三年前の故事がいまの発言の中に含められておるものだと私は思うのです。まあ、新潟というところは、田中彰治さん、塚田十一郎さん、田中現幹事長、あなたと、こういう問題で非常に話題を提供なさる選挙区だと、私はいましみじみと感じておるのでございますが、しかし、いずれにいたしましても、あなたとしては、よくない、そういう例もあったことだからすみやかにやめてもらうようにと言った、そうしたら、近藤さんのほうから、もうやってないというお話だというのがいままでの答弁のようです。  そこで私は、一体何の目的でこういうものをおやりになったんだろうか。これはやはりかなり重要な意味を持っていると私は思うのです。三年前に田中角榮さんが写真入りで出たときには、この裏に金物屋の値段とか、品物の品目がずっと出ておったように伺っております。しかし、この場合、近藤与助工業株式会社という横刷りの印刷がちょっと入っておるだけで、これ自身が商売目的に使われたものだとは私は思いません。どこにもないのです。ここに入っておるだけです。しかも、このお札を専門家に見てもらいますと、一万円札を写真で写しまして、写真版でこれをつくり上げておる。一万円札というのは一に零が四つでございます。これは一に零を七つつけておる。これを裏側から見ると、一に零が四つかすかに影をとどめておる。ところが、外側のワクにある一万というのはそのまま残って、そうしてこのお札を形づくっておる。今日の一万円札は、縦が八・五センチ、横が十二・五センチの大きさのように私は思いますが、このお札は、横が二十六・五センチの縦が十七・五センチ、倍より少し大きい札でございます。しかもこの札は写真製版で非常によくできておる。これをもう少し小さな型に刷っていたら、偽造紙幣として通用をする危険すらある。それほどなかなか巧みにできておる。しかも、そこに金融財政の大元締めの本山である大蔵省副大臣である政務次官の写真が載っておるということになりますと、これはやはり政治家として決して好ましくない。  この点について、あなたは取り消したとおっしゃるけれども、実は、なおそれ以後配られておりまして、先月、十月十七日に新潟県警本部から模造紙幣等取締法違反として警告を受けておる。しかもカッコ書きをして、次期選挙に立候補の予定者カッコ閉じ、この人の写真を入れてこのお札を配っておるというのは、選挙事前運動としての警告も含めるものである。そうなると、あなたは模造紙幣取締法違反の罪と選挙事前運動の罪と二重の警告を受けておるわけです。私は、新潟の県民の皆さんは、それほど政治道義なり政治感覚が低下しておるとは思いませんよ。しかし、それでもなおそのようにしてありがたがっておるのかどうしておるのかわかりませんが、しかし、日本の全体の国民がこれを見たときに、何と日本の政治は堕落したものかよ、こういう気持ちを私は持つと思うのですけれども、これは一ぺん大蔵大臣からお聞きしたいと思います。
  53. 小沢辰男

    ○小沢説明員 ただいま山田さんの御質問の中に、三年前に田中幹事長がつくったという表現をされた質問がございました。これは速記録をひとつお調べいただきまして——田中幹事長がつくったものではございません。私のこの件につきましても、私がもちろんつくったものではございません。ただ、私が先ほど言いましたのは、このものをつくりました人と同一の人、近藤与助さんという方がかつてそういうことをおやりになったことがある。そこで、それが問題になったことを私は当該委員会に出ておりませんから知りませんけれども、何かそんなうわさを聞いたことがありまして、それが頭に残っておるものですから、そこで、私は、自分が現職の政務次官であるがゆえに、ひとつ近藤さんに注意をいたしまして、私に対する好意といいますか、フアンの気持ちから、選挙区は違いましても、おつくりになったのだと思いますから、そのときに語気鋭く言わなかったのは確かに私は間違いだったと思いますけれども、ただ、そういう気持ちがありまして、私としては丁寧には申し上げましたが、ぜひ気をつけて、ひとつ一切やめていただきたいということをお願いしたわけでございます。私は全く関知いたしませんけれども、おっしゃるように、私が現職の政務次官でもあり、非常に精巧にできたこういうようなものが若干でも外へ出るということは、確かにこれはよくないことだと思いますので、この点は私の不徳としておわびを申し上げますが、しかしながら、これをつくりましたことにつきまして、また配布につきまして、何ら私は関与いたしておりません。その点だけは、はっきり申し上げておきたいと思います。
  54. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 このような通貨類似の構想によりまして印刷が行なわれることは、私は大蔵大臣としての立場から非常に残念に思います。  ただ、ただいま政務次官からるるお話がありましたように、この問題は小沢政務次官の発意じゃないと、私はかたくそれを信じております。私は自由民主党の中から政務次官を選考する、そういう際に、とにかく人格識見ともにすぐれておる小沢さんにぜひお願いしたい、こういうことで御就任も願っておるわけでありまして、ただいまお話のように、小沢さんの友人が、小沢さんが今度政務次官になられた喜びのあまりこういう印刷なんかをしてやったというようなことかとも思いますが、思慮の足らない方もあるものだなという感じは持ちますが、小沢さんについては、私は一点の疑義を持つものではございません。ただ、こういう事例が今後繰り返されるということがありますことは、私も非常に残念に思いますので、今後十分気をつけてまいりたい、かように考えます。
  55. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私も、小沢さんは社労で長く下積みの層のめんどうを見てこられた政治家だと思っておりましたし、社会保障制度などを非常に熱心に研究なさっていた方ですし、りっぱな方だと私は信じておりましたけれども、やはりこういう行為というものは断じて許すことができない、それを大蔵大臣としても御同意いただいたものだと私は思っております。  こういうことは、特に日銀法二十五条にいっている信用保持の通貨に関する条項からも照らし合わしてみまして、よくない。こういうものが、インフレが起こることを非常に心配している国民に対して警戒心を弱めてしまう。一千万円でございますからね。インフレの警戒心を弱めてしまうということになりかねないですよ。こういう点は、私は政治の姿勢として厳格にこの際改めていただき、特に小沢さんにはすみやかにひとつこれは回収をしていただきたい。そうして、新潟におけるいろいろな政治不信の源にもつながるこうした問題の根絶にすみやかに手を打っていただきたい、私はこのことを強く要望しておきたいと思います。  それから、近藤与助さんの関係でございますが、あなたと学校の先輩後輩の関係にあると伺っております。あなたの後援会に沢竜会というのがあることも伺っております。その後援会のお世話を近藤さんがなさっておることも伺っております。このように並べてみますと、私は、一点では政治の姿勢を正す、悪いことだったということが結論づけられたのでけっこうでございますが、そのことと同時に、その根源に対して手当てをしなければなるまい、根源に対して具体的な手だてを講じなければならないという気がしてなりません。その意味で、あなたの沢竜会という後援会がこの問題をかなり扱っておるという証拠がございますし、そういう点を通して一体どれくらい発行されておるか。あなたの写真が使ってあるのでございますから、あなたはそう逃げるわけにいきません。そういう立場から、あなたの推定でけっこうでございますから、一応お述べいただきたいという気がいたします。
  56. 小沢辰男

    ○小沢説明員 まず、近藤与助さんが私の後援会の世話をしていると言われますが、実は、私の選挙区の後援会には全然関係はございません。私の選挙区外で、三条というところに——私の実父が三条出のものでございますから、そこで三条のお世話をいろいろ私前からやったこともございますので、三条で私の後援会というものを近藤さんがおつくりになりまして、そこの世話をしておられるわけでございます。念のため、この点は明確にいたしておきたいと思います。  なお、この枚数につきまして、お前はどれぐらい推定しているかということを言われますが、私は八月の同窓会のときにというふうに、知っておるのはその点でございますから、同窓会の出席者はたしか三百人ないし三百五十人ぐらいだったと思います。その後やはり同じ同窓会の近藤さんの知っている人が残ったものを約二百枚近く持っていったということを聞いたことがございますが、山田さん、いかなるお調べをしておられるかわかりませんが、私もはなはだ迷惑でございますので、この点はひとつ正確なところをそちらのほうでお調べ願いたいと思います。私も調べます。印刷屋で調べればわかることでございますから、それをどこへどういうふうにしたかということはわかります。私は今日まで、もう八月で中止をしていただくようにお願いをいたしましたので、九月以降について配布をされている事実を、私は少なくとも耳にいたしておりません。
  57. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 あなたのおっしゃっているように、同窓会に約五百枚ばかり近藤与助さんが持ち込んだということは私も伺っております。ただ、その後かなりの枚数が配られておる。かなりの枚数というのは、新潟県警本部から警告が出ておりますから、新潟県警本部にはかなりの正確な数字が入手されているものと私は思います。  問題は、私はこれを官憲の手によって摘発をし、調査をし、その数字の正確さをこの委員会で誇ろうとは思いません。そういうことを目的としておりはいたしません。ただ、ここでかなり多量のものが配布をされておるように見受けられるし、そのことが——あなたは私の選挙区じゃないとおっしゃっているけれども、後援会というものは必ずしも選挙区だけじゃございません。総理の後援会も東京にできております。選挙区は私と同じ山口第二区です。選挙区と後援会とは直接関係ございませんが、後援会と本人とは関係がございます。私も後援会を持っております。しかし、後援会と代議士自身というものとは決して無関係でないと、私はいつも自粛自戒をいたしております。だから、あなたが近藤与助さんのやったことは、私は知らぬ、ようわからぬとおっしゃっておることだけでは、政治姿勢を正し、えりを正すという前提の確認からながめてまいりますと、どうも私は、だんだん先に行くほど薄らいで、時間がたてば消えていく、こういうふうな受け取り方をなさってこの問題の根元の処理に当たられるような気がしてなりません。その点を私は重要視しておるわけであります。だから、どうかひとつ、あなたの選挙区であるなしにかかわらず、近藤与助さんという者があなたの沢竜会のお世話をなさっている方ですから、やはりその点についてあなたは厳重な警告——そういうことを再びしてもらわないように、大蔵政務次官ですから、特に一千万円というお札なんか印刷してもらわないように、十分私は警告を発して措置をしてほしい。これをひとつ御答弁いただきたい。  時間がございませんから、大臣に重ねて聞いておきますけれども、これは、一万円札は現在日本銀行から発行しておるお札でございます。この一万円札を写真製版をしてやっておることは間違いございません。そこから零をよけいつけて模造しておるのです。これは一体特許違反ということになりますか、どういうことになりますか。これを一ぺん監督主管大臣として明確に答えていただいて、その立場から一体どういう指導をしたらいいか、今度はこの行為自身についてあなたの見解を述べていただきたいと思います。
  58. 小沢辰男

    ○小沢説明員 最初に私から御質問に答えたいと思いますが、山田さんおっしゃるように、こういうものが、私が大蔵省の立場にありながら、政務次官の立場にありながら、私が利用されたということにつきましては、これは、しかもその発行人が私の選挙区外であっても、後援会の世話役の一人であるという点を考えますと、政治家としてはなはだ私遺憾に存じます。したがいまして、その点の枚数等よく調べなければ、与えた影響がどの程度であるかということはよくわかりませんけれども、この点をよく調べまして、私もおっしゃるように、政治家の姿勢を正すということについては人後に落ちない考えを持っております。したがいまして、私がこのことにつきまして、何らかの措置をとったほうがいい、その点は、そうすることが政界のためにいいんだ、あるいはまた政治家としてそうすべきだと判断いたしましたら、私はその判断を自分自分の処置をとりたいと思っております。  しかしながら、いま私の聞いているところでは、同窓会の席上に持ち込んで、その残りが二百枚ばかりあった。同窓会の出席は三百五十人程度だと聞いておりますから、それ以上多量に出たようないまの印象のお話がありましたが、私は、全然、そういう点について、その後土曜、日曜——必ず土曜日の午後からは帰っておりますけれども、ほとんど私の耳に入った事実はございませんが、しかし、私はほとんど郷里におらぬことでもございますので、よく調べまして、枚数等確認いたしたいと思いますけれども、私は、そんなに多量に出ておるような——おそらく同窓会に配りました以外に若干残りを、そういう先ほど申し上げましたような友人関係で何か持っていった人があるということも聞いておりますので、その程度じゃないかと思いますけれども、この点を私よく調べた上で、自分自身のことでございますので、自分自身として善処をいたしたいと思います。
  59. 中尾博之

    ○中尾説明員 ただいま一万円札の件につきまして、これの本物を写真で製版することにつきまして、これが特許権の関係はどうかということでございます。技術的なことでございますからお答えさせていただきます。  具体的に申し上げまして、この特許という関係は兌換券にはございませんので、特許権の侵害とか、そういうような問題はございません。  問題は、ただいま御質問にもございましたように、模造という点でございます。この模造という点につきましては、これは偽造ではないわけでございますけれども、なおまぎらわしい外観を有するものであるかいなかということが問題になります。この際に、これは一応写真で製版をして、それを拡大した、そうしてそれを部分的に変造するわけでございます。相当まぎらわしいものがあるわけではありますが、全体といたしまして、本物に比べて貨幣としてまぎらわしいかどうかということがおそらく問題になろうかと思います。  ただいま御質問にございました、きょうの日経新聞にも出ておりますが、地元新潟県警から注意もあったということでございますといたしまするならば、私、直接その内容を打ち合わせたりあるいは伺ったりしておりませんから、その限りにおいて私の推測で申し上げますが、これらの点につきまして、少なくとも、こういうような模造であるかないかということはともかくといたしまして、それにつながるごとき何らかの心配を与えておったのではないか、こういうふうに考えます。これは私の想像でございます。それが模造という関係、法律上の関係は以上でございます。
  60. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 時間がございませんからやめたいんですけれども、何かぼそぼそ言っていてよくわかりませんが、これははっきりしておるわけですよ。私は模造紙幣取締法違反と言いましたが、正式な法律の名前は通貨及証券模造取締法となっております。これは刑法の中にあるのです。第一条に「貨幣、政府発行紙幣、銀行紙幣、兌換銀行券、国債証券及地方債証券ニ紛ハシキ外観ヲ有スルモノヲ製造シ又ハ販売スルコトヲ得ス」この法律に違犯したら一月から三年の重禁錮に処する、こうなっておるのですね。その一万円札を写真製版したのだからまぎらわしいことは間違いございませんよ。そこにその実物を持っていってあるにもかかわらず、あなたは何ということを言っておるのです。まぎらわしいどころではないのです。本物ですよ。本物を拡大して、一万円の零四つを七つにした。下に零四つが残っておるでしょうが。だから、新潟県警が取締法違反として警告を発したというのは当然です。それをあなたが何かよその話をされたような答弁をしておったのでは、私は心外きわまる。私はここで模造であるかないかという議論を長くしようとは思いません。ただ、政治家として正すべき姿勢として十分腹に入れて処置していただかないと、国民に失いつつある政治信頼を取り返すことはできぬぞという立場から、当人の釈明を求め、当人の処置をすべき決意を求めておるのですから、あなたみたいな答弁は私は全く心外です。国会ですから、気をつけて答弁してください。  最後に、大蔵大臣のそれに対するお気持ちを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 かようなことが行なわれますことは、先ほども申し上げたとおり、まことに遺憾千万に存じます。山田さんの御指摘のお気持ちは私も十分わかります。こういうことが反復されないように最善の処置を講じます。さように御了承願います。
  62. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 最後に、小沢さんたいへんお気の毒ですけれども、ここまできたものですから、一体発行はどれくらいされておったか、どういう頒布状態にあるか一応御調査なさって、また次期の委員会ででもお話していただければいいと思いますから、きょうはこの程度だけ求めまして、留保しておきたいと思います。どうかひとつよろしく。
  63. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 武藤山治君。
  64. 武藤山治

    ○武藤委員 前回の十月十九日の日に、当委員会におきまして、佐藤榮作氏の二千万円の自民党への献金をめぐっていろいろうわさ、黒い霧や疑惑というものをとにかく明白にする、こういう約束を実はいたしたわけであります。その約束の中には、泉国税庁長官がはっきり答弁の中で約束をした問題、あるいは大蔵大臣として約束をした問題、いろいろございます。  そこできょう私は、理事会において、佐藤総理大臣自身をもぜひ大蔵委員会に出席を願って、本人からもはっきりひとつ聞きたいと実はお願いをいたしております。まだ総理はお見えになっておりませんから、まず最初に、泉長官に、あなたはきょうの委員会までに調査をして報告ができるようにしたい、こういう答弁をしておりますので、まず、いつ、どこで、だれが調査をしたか、この点を最初に明らかにしていただきたい。
  65. 泉美之松

    泉説明員 先般大蔵委員会がございましたあと、私が総理の秘書官をしておられます大津秘書官と田中秘書官を通じまして総理にお聞きいたしましたところ、武藤委員のお尋ねの件が調査終了いたしましたので、これから申し上げたいと存じますが……。
  66. 武藤山治

    ○武藤委員 私はまだその調査の結果を尋ねている段階ではないのです。いつ、何月何日、どこで総理大臣の所得をどう調査したか、その調査やり方、経過を聞いておるのであります。中身は、結果についてはこれからだんだんお尋ねいたしますから、いつ、どこで、だれが、どんな方法か調査したか、これをまず最初に明らかにしていただきたい。
  67. 泉美之松

    泉説明員 前回の大蔵委員会のとき、十月十九日のときに申し上げましたように、調査は総理の所得全体ということではございませんで、とりあえず佐藤榮作氏の名前で寄付をされておる二千万円の件について調査いたしたのでございます。  その調査は、十月十九日の大蔵委員会が終わりましたあと、二十日と、それからその後さらに十月の二十八日と、両日にわたって調査をいたしたのでございます。
  68. 武藤山治

    ○武藤委員 調査はどこで、だれがおやりになりましたか。
  69. 泉美之松

    泉説明員 最初私から田中秘書官に電話をいたしまして、国税庁の所得税課長が参りまして調査をいたしたのでございます。
  70. 武藤山治

    ○武藤委員 所得税課長が参ったのは、総理の自宅ですか、官邸ですか、それとも大蔵省へ総理を呼んだのですか。
  71. 泉美之松

    泉説明員 総理官邸に秘書官をたずねまして、秘書官を通じてお聞きしたのでございます。
  72. 武藤山治

    ○武藤委員 それでは、佐藤榮作氏とは一度も国税庁の担当官並びに長官はこの問題については話し合ってない、こういうことですか。秘書官と話し合っただけですか。
  73. 泉美之松

    泉説明員 秘書官に申し上げて、秘書官から総理の御答弁をいただいたのでございまして、総理には直接お会いいたしておりません。
  74. 武藤山治

    ○武藤委員 私は、通常の所得税課税の問題、調査の問題をちょっとお尋ねします。  Aという個人なり業者が二千万円、とにかく所得では出せないような金をぽんと出したという情報が税務署に入った、あるいは投書があった、直接税務署長に進言をするだれか国民がいた。その場合、本人に会わずに、所得者に会わずに、名ざしで出されている人にも会わずに、その使いの者の代理で調査は打ち切る、しかもそれを国会に報告をする。通常の場合、納税者にそんなに国税局や税務署は寛大なんでしょうか。通常の場合いかがでしょう。
  75. 泉美之松

    泉説明員 通常の場合は、もちろん所得者に会うわけでありまして、私どもも総理だから調査をしなかったというのではございません。ただ、秘書官を通じてお聞きした事柄がきわめて明瞭でありまして、御本人にお聞きするまでもないと判断いたしましたので、御本人について調査することは省略したのでございます。
  76. 武藤山治

    ○武藤委員 明瞭に説明がつけば、しかも、その調査官の恣意にまかせた判断でこれは明瞭な答弁だなと思えば、税務署調査というのはそう簡単にやめますか。通常の場合どうでしょう、長官。
  77. 泉美之松

    泉説明員 所得調査やり方にはいろいろございますが、その調査の過程で事柄が明らかであれば、直接御本人に当たらなくて調査を省略する場合もございます。それは、総理のようにお忙しい方でありますと、特にそういうことのためにわずらわすことを避けるという趣旨もございまして、そのようにいたしたわけでございます。
  78. 武藤山治

    ○武藤委員 総理大臣はからだが忙しいから、徴税上あるいは税金賦課上、そういう調査については寛大に取り扱うことがある、そういう意味答弁ですね。やはり一般国民と違う態度で国税庁は臨む、こういうふうにいまの答弁では受け取られますね。いいですか、そう受け取って。
  79. 泉美之松

    泉説明員 総理ももちろん納税者の一人でございますから、そういうふうに納税者の一人として処遇するわけでございますが、事柄によりまして、御本人にお聞きしなくても事柄がはっきりいたしますれば、御本人にお聞きしないことは、これは総理以外の方の場合にもあるわけでございます。したがって、総理だけ別に扱っているというのではございません。
  80. 武藤山治

    ○武藤委員 長官、これはどうも前回の十九日の質問と関連させて考えてみるとおかしいですね。十九日は、大臣も長官も、個人の財産の内容はわからぬ、あるいはたんすの中に金があったのかもしれぬ、あるいは貯金がずっと前からあったのかもしれない、あるいはだれかから借りてきたのかもしれない、こういう推測の前提でこの前は答弁をしていた。どうも一国の総理大臣が脱税したということになると、それはたいへんだということで、何とか脱税という疑惑だけはのがれよう、晴らそう、こういう一心から、政治資金だ、政治献金だという形だから個人の税金に関係がないように、ひとつこの問題をうまく答弁をしてすりかえていこう、こういう意図が長官の気持ちの中にも働いている。だから私は、本人に会わずに、しかも秘書官に話を聞いただけで、しごく内容が明瞭でありますからなんと言って、貯金も調べない、所得も調べない——しかし、ここで議論をしてもこれはしかたがないが、長官はこの前の委員会でこう答えているのです。「いまの二千万円の件だけでございますと、数日でできます。しかし、二千万円だけで調査を終了していいかどうか、いろいろ問題がございますので、私どもとしては、いろいろ多方面に調査をしなければならぬ、こう思っておるのでございます。」多方面にわたって調査しなければならぬとあなたははっきり答えている。それには佐藤さんの所得、収入、預金、財産、その財産も過去五年以内に取得した財産が幾ら——五年間税務署はさかのぼって取るのですからね。五年間内に税務署申告以外にこんなにばく大な金が手に入るはずがないと思えば、普通の場合税務署はとことんまで多方面にわたって調査しますよ。それを秘書官を通じて説明を聞いただけで引き下がるという国税庁の態度、通常の場合とまるで違いますね。中小企業や個人の脱税あるいは節税でも、中小企業などでは奥さんが月給二万円もらっていても、女房の給料が多過ぎると言って否認をする。同族会社だから賞与は出しちゃいかぬといって、十万円か十五万円のものも否認をして課税をする。総理大臣の場合には、秘書官に聞いただけで国税庁が引き下がるというのは、国民から見たら、国税庁は公平ではないという非難を受けますよ。私は今回のこの調査の過程、方法も納得いきません。  しかし、きょうは時間が制限されておりますから、中身をちょっとお尋ねします。
  81. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 関連質問を許します。横山利秋君。
  82. 横山利秋

    ○横山委員 ちょうど長官が総理大臣の調査に所得税課長をして官邸に行かしめておったころの話です。  名古屋市中区向田町のクリーニング屋さんについて、調査に三人入りまして、調査の過程で気分が悪くなって横になった。そしてその日の調査が済んで、その次に二人残り、そして一人残った。最後に涙を流した。おかあさんが頼んで、気の小さい養子だから、ひとつ調査のほうを穏便に頼む、こう言った。その翌々日から家出をいたしまして、二週間後に揖斐川というところで自殺をいたしました。名古屋ではたいへんな話題の中心になっている。  それから、本委員会で先般平岡委員が取り上げたのでありますが、合資会社白金というのがありますね。これは本委員会で取り上げたのでありますから御存じのとおりであります。国税局において五日間連続調査をいたしました結果、国税局の中で毒薬を飲んで自殺をいたしました。これは泉長官がよく御存じのとおりであります。私は、後刻この調査の問題について取り上げようといたしておるわけでありますが、しかし、それとこれと相対比してみますときに、あなたは、口では総理大臣だから調査の方法を容赦することはないと言っていますけれども、まことに驚くべき対比ですね。  この白金の問題やあるいは名古屋のクリーニング屋さんの問題の調査の方法及びいろいろなことはありますけれども、結果として、片一方は調査を受けて二人の人が自殺をし、片一方はおそるおそる所得税課長が秘書官に会って、そうしてしかも秘書官の話を聞いただけで理非明白であるといって帰ってくる、こういうことを世間が納得すると思いますか。これは明らかに、武藤君の申しますように、とにかく国会を切り抜けるために理屈をこしらえに行ったという感じしかしないのであります。あなたはこの前、二千万円の問題でしたら三、四日たてば話がわかりますと言いました。けれども、われわれの要求はそれだけではなかったわけです。ひとつ総理大臣の全体の所得をこの際、かつてニクソンがやったように明白にしろと言いました。この際疑いをさっぱりすることが納税者の心理にこたえるゆえんであるとも申したわけです。たった二回総理大臣官邸へ行って、そしておそるおそる秘書官に話を聞いただけで、国会のこれだけの雰囲気の中でこれだけを説明するということが責任のある国税庁長官のとるべき態度ですか。どうなんですか。
  83. 泉美之松

    泉説明員 横山委員のあげられました白金事件の場合の査察調査中の自殺につきましては、先般の委員会のときにも申し上げましたように、私ども非常に遺憾に存じております。  ただ、名古屋のクリーニング業者の方の場合は、調査に入りました初日に、御気分が悪いということで別室でお休みになられました。その後は、御本人は御養子さんで、むしろ奥さんのほうが事業の内容をよく御存じだということで、奥さんについて御調査いたしたのでありまして、本人については調査をいたしておらないのであります。調査を十九日に打ち切りまして、御本人が家出をされましたのは二十四日と聞いておるのでございます。その後、税務署のほうから個人的に御遺族にお見舞いを申し上げたところ、御遺族の方は、調査に別段不当なところがあったとは思わないということのお返事がございまして、私どもは、御当人が自殺なさったことにつきましては非常にお気の毒に存じておりますけれども、それが税務調査のせいであるとは考えておらないのであります。  なお、総理の所得の調査につきましては、十月十九日のときに申し上げましたように、とりあえず二千万円寄付の一件については次の大蔵委員会までに調査をして御報告申し上げる、こういうことを申したのであります。二千万円以外のその他の点につきましては、他の一般の納税者と同様に、資料などに基づいて調査をいたすことにいたしてございます。本日はまだその調査の結果を御報告するまでに至っておらないのでございます。
  84. 武藤山治

    ○武藤委員 いま長官は重大な発言をしました。二千万円以外の問題について調査をすることにいたしておりますのでございます——今度はほんとうにやるのですね。いままでは秘書官二人に聞いただけで、今度はほかの部面についてまで調査をする。これはしかし、五月十一日に小林進議員の要求で調査しろと要求されたわけです。だいぶ日がたっておるのです。六、七、八、九、十月と、五カ月たってまだ調査が済まない。  そこで、私が確認をしておきたいのは、佐藤さんの所得について、多方面にわたっていつごろまでに調査をしますか。ひとつ、日を大体切ろうじゃありませんか。五月の十一日にもそういう答弁をしているわけですから。
  85. 泉美之松

    泉説明員 五月の十一日に申し上げましたように、私どもといたしましては、いやしくも一国の総理大臣であられますから、正しい所得税の申告をしておられるはずだと信じておるのでございます。ただ、いろいろ御質問がございますので、この点につきまして私ども明らかにしたい、こういう意味で、総理の所得について資料等を収集して調査する、こういうことを申し上げておるのでございます。  調査の日にちにつきましては、目下のところ、進行状況もまだ私把握いたしておりませんが、調査の指令を発しまして相当の日にちもございます。そのうちに調査を取りまとめてまいりたい、かように考えております。
  86. 武藤山治

    ○武藤委員 そのうちというのは、この年内くらいですか、佐藤さんが総理をやめたころですか。そのうちというのは、大体のめどはいつごろをさすのですか。
  87. 泉美之松

    泉説明員 私どもとしては、最善の努力を尽くして、できれば年内中に取りまとめたい、このように考えております。
  88. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 関連質問を許します。小林進君。
  89. 小林進

    小林委員 同じ関連質問になりますけれども、私が五月十一日にこの六百三十四万円の所得についてあなたに質問をしたときに、あなたは、まだ事後調整の最中であるから、やがてその調査の結果を御報告いたします、五月十一日の席でそう言っておる。そう言っておきながら、今度は十月まで何にも返事をしないから、十月十九日にまたその問題を出して、あなたのほうは五月十一日に事後調整の作業中であると言っておるのだから、でき上がっておるだろうから報告しなさいと言ったら、そこでどう言っておるか。まだ調査をしてみないと何とも申し上げかねる事情でございます、こう言っておるから、私がそこで非常に憤慨をしたわけです。五月十一日からもう五カ月と八日たっておる、あのときには事後調整中だと言っておきながら、何だ、しかもまだこういう答弁をしておることは相ならぬから、直ちにその結果を報告しなさいと言ったら、次の委員会くらいには何とか御報告ができると思っております、こう言っておる。それをいまのお話のように、今度は今年中とか来年中とか言う。これは一体あなた方の怠慢にあらずして何ですか。怠慢ではないですか。それほど国税庁は忙しいのですか。それが理由になると考えているのですか。そういう答弁で国会を軽視してはいけませんよ。われわれに対する侮辱ではないですか。そんなふうで答弁になると思っておるのですか。いま少し明確に言いなさい。そう私も仏の顔をしておるわけにはいかない。前二回はしんぼうもできようが、三回もだまされて黙っておられますか。
  90. 泉美之松

    泉説明員 私のことばが足りませんでしたために小林委員のおしかりを受けまして、まことに恐縮でございますが、五月十一日に私が申した趣旨は、三月十五日までに所得税の申告が出ておりますけれども、それにつきましては、配当資料であるとか、そのほかの給与の支払いの資料であるとかいったいろいろな資料が集まってまいります。その資料を総合いたしまして、申告に漏れておるものがあれば、その資料総合の結果、申告を修正していただく、こういう過程がございますということを申し上げまして、総理についても、そういう資料が出ておりますれば、当然その資料に基づいて修正申告をしていただくことになります、こういうことを申し上げたのであります。ただ、五月十一日に申し上げましたそういった配当の資料、それから給与の資料等につきましては申告書どおりでございますので、そのときに修正申告を慫慂しておらないわけでございます。  それからその後、もちろん総理の所得については調査をいたしてございますが、先般の十月十九日の大蔵委員会のときには、とりあえず二千万円の件についてこの次の大蔵委員会までに報告をせよ、こういうことでございましたので、二千万円の件について本日御報告するようにしておるのでございます。その他の総理の所得全体につきましては、先ほど申し上げましたように、一国の総理大臣でございますから、正しい申告をしておられると思いますけれども、なお念のために調査をするということで、その調査をできるだけ本年一ぱいじゅうに行ないたい、こう申しておるのでございます。別にうそを申しておるわけではございませんことを御了承願いたいと思います。
  91. 武藤山治

    ○武藤委員 大体国税庁長官答弁で、これから私が聞く内容というものは根拠薄弱である。本人の調査ではない、秘書官の言い分をそのまま聞いた国税庁調査結果につきましては、承服はいたしません。承服はいたしませんが、そういう希薄な根拠によって明白な内容がわかったというならば、その内容を聞かしてもらいましょう。
  92. 泉美之松

    泉説明員 秘書官の話だけではないのでありまして、秘書官を通じて総理にお伺いしたら、総理はこういうふうにお話をされました、そういうことばで私どもはお聞きしたのでございます。  その結果は、佐藤栄作氏の名前で自民党に二千万円寄付したことになっておるが、自分自分のふところから二千万円を自民党へ寄付したという事実はないということでございました。
  93. 武藤山治

    ○武藤委員 佐藤榮作という名前を使って二千万円出してあるけれども、これは自分のふところから出たものではない一それでもう明白なんですか。委員会の質問は、その二千万円の出所、出場所はどこだ、何だ、そういう疑惑があり、黒い霧がかかっているので、これを晴らそうという議論だったんでしょう。それを秘書官が総理大臣に会って聞いて、また聞きで、その伝聞証拠を国税庁は明白なものなりとして国会に報告しているんですか。そんな態度は噴飯ものですよ。  そうすると、自分のふところから出たものではないというだけで、それ以後どこから出たか追及しない。普通の納税者だったらどうですか。貯金通帳を出せ、取引銀行はどこだ、貸しはないか、借りはないか、証文をみんな見せろ、相手の住所、氏名を全部発表させて調べるでしょう。それが通常の税務署国税庁のやる調査じゃありませんか。本人の言い分だけ聞いて、たとえばAという納税者のうちへ行って、女房かせがれかが、おとうちゃんに聞いたら、おとうちゃんはこれこれこう言いました、ああそうですが、それは明白な事実だ、こう言って引き下がるんですか。そんな税務署は全国どこにもありませんよ。それがあるのは、国会における国税庁長官くらいのものだ。これで何がわかったんですか。あなたの感じをひとつ聞かしてください。
  94. 泉美之松

    泉説明員 総理からそういうお話がございまして、自分はそういうことで寄付をした事実はない、自民党のほうに確かめてもらいたいということでございましたので、自由民主党の経理担当者のほうに参りまして調査をいたしたわけでございますが、それによりますと、確かに総理から二千万円の寄付を受けた事実はないということが判明したのでございます。  それでは、その二千万円は、どういう経過で、どういうふうにして自民党に入ったかということにつきましては、私のほうでは調査はいたしましたが、この場で私から答弁すべきことではなくて、当然自民党の経理のしかるべき人から御質問にお答えすることになると思います。
  95. 武藤山治

    ○武藤委員 これでは質問はできませんね。私は、ここで答弁ができないと言うから、これはもう自民党の経理担当者か、本人の総理大臣に来てもらわぬことには質問できませんよ。一応これだけの疑惑を晴らすのにその程度の調査で一では泉さん、自民党の経理担当者は一体だれで、だれが行って、いつ調査されたのですか。
  96. 泉美之松

    泉説明員 自民党の経理局長の西村英一代議士でございます。その日にちは、先ほど申しました、たしか十月の二十八日と記憶いたしております。
  97. 武藤山治

    ○武藤委員 党本部で……。
  98. 泉美之松

    泉説明員 総理官邸でございます。所得税課長が調査いたしたのでございます。
  99. 武藤山治

    ○武藤委員 委員長、けさ理事会でお願いをしておいた総理大臣の出席の件は、どのようにいま進んでおりますか。ちょっと中間報告を願いたいと思います。
  100. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 三池委員長が実はそのことで交渉に参っております。直接委員長みずから交渉を続けておるわけでございますが、まだこの間の中間報告が参っておりません。催促をしてみたいと思っております。
  101. 武藤山治

    ○武藤委員 これは本人のことで、総理が来ないと、しかも、また聞きで、国税庁はこれで手を引いてしまったかっこうですから、これ以上追及しても真実は発見されないわけです。しかも、福田大蔵大臣は、前回の十九日に、国税庁調査をいたしますので、いずれ明白にいたします一これは黒い霧が相変わらず晴れませんという明白な事実がわかっただけです。これ以上質問しても、総理が来ないことには、これは真相はつかめない、霧は晴れない、こう思いますので、ひとつ委員長、お取り計らいを願いたいと思いますが、ちょっと相談してみてください。
  102. 横山利秋

    ○横山委員 関連して。  泉長官一つだけお聞きしたいのですが、あなたは、最初の二千万円の話は秘書官に聞いてきわめて明白だとおっしゃった。明白な論拠は一体どういうことかよくわかりませんが、いまお話を聞いて感ぜられることは、だれかがうそを言った。つまり、総理が自分で銭を出したけれども、おれは出さぬと言っておる場合が一つある。一つは、経理担当者である西村英一氏が、ほんとうは総理からもらったけれども、総理からもらっていないと言ってうそをついている場合が一つある。それからもう一つは、総理も西村さんもほんとうのことを言っておるが、二千万円の出所は言いたくないという問題が三つ目だ。そのいずれをもあなたは確かめなかったわけですね。念査する方法がないのか、やる気がないのか。  その一方の人はおれはもらわぬ、総理もそれを出さぬ——それなら、そのことばが確実であり、間違いのない証拠というのをあなたはどうして得たんですか。いまあなたが堂々と二千万円のことはきわめて明白であるということは、どういう意味でおっしゃるんですか。まさにこれはもう何が何だかわけがわからない。あなたは二人のところに行って、それでもうおしまいです。普通だったらそんなことは許されませんよ。武藤君が言うように、一般の税務調査では、そんなことでとうてい税務署がほこをおさめるとは考えられない。何が一体事理明白なんだ。どういう証拠でもってあなたは事理明白だと言ったのですか。
  103. 泉美之松

    泉説明員 先ほど申し上げましたように、秘書官を通じて総理に質問いたしました。また、西村英一代議士に質問いたしました結果、官報には佐藤榮作名義で自民党に二千万円寄付したようになっておるけれども佐藤総理自身が二千万円を寄付した事実はない。そして、その二千万円が自民党に出てきたことにつきましては、私のほうは調査はもちろんいたしておりますから、その概要を申し上げてもよろしゅうございますけれども、私からこの席で言うべきことではないのではないかと申し上げているのでございます。自民党の経理の方から申し上げるのが筋ではなかろうかと申し上げておるのでございます。
  104. 武藤山治

    ○武藤委員 これは長官は、自民党の経理担当者に答弁してもらわなければ、私としてはと、ちゅうちょしておるわけです。したがって、これは本人、総理大臣に出席をしてもらって追及をしたいと思います。もし脱税でなければ、政治資金規正法違反、三年以下の禁錮もしくは五万円以下の罰金だ、こうなるでしょう。経理責任者は政治資金規正法に違反して虚偽の申告をして、実際の寄付をした人の名前を出さずに、かってに佐藤さんの名前を出せば、自民党の経理担当者は虚偽の申告をしたということで、政治資金規正法の問題となる。西尾個人のわずか二十万円とはけたが違う。これはたいへんな問題だ。私は総理の出席を求め、質問を保留して、次の人に交代いたします。
  105. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 春日一幸君。
  106. 春日一幸

    ○春日委員 佐藤総理に対しまする脱税被疑事件の国政調査は、武藤君によって辛らつな調査が進められておりますが、いまその質疑応答を承っておりまする限界では、とてもとても国民の疑惑が晴れないのみならず、一つのうそをつけば次々と余儀なくうそを誘発してまいりまして、事態はいよいよ悪化するばかりであると思うのでございます。  冒頭に、私は福田大蔵大臣にお伺いをするのでありますが、貴殿は、何といっても佐藤内閣の実質上の副総理、全く佐藤内閣をささえる一大支柱であると目されております。蔵相は一体現在のこの政局を何と見るかということでございます。田中彰治事件に発端をいたしまして、自乗政府の要人にして次々と職権乱用、公私混淆、黒い霧の中から次々と疑惑に満ちた事件がそこから浮かび上がってまいります。また、次々と被疑者がその黒い霧の中からさまよい出てくるという状態でございます。私は、言うならば、いまわが国国会の現状はフェーン現象と申しますか、ちょっとしたことでも発火する。だから、この時点においては、言うならば、空気をベンチレートする必要がありはしないか。総入れかえをしなければならぬのではないか。すなわち、解散、総選挙を行なうべきであると私は思うが、副総理として現佐藤内閣に対する大いなる発言権をお持ちになり、また政治責任もお持ちになっておられると目される福田大蔵大臣の御所見をこの際冒頭に伺っておきたい。
  107. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいまは今日の政治情勢が一種のフェーン現象になっておる、こういう御表現でございますが、私もそんなような感じがするのです。つまり、今日の政界の現状は、その根ざすところは非常に深い。いろいろな現象が出てきておりますが、これはもうよく言われておりますが、積年の宿弊というものがあるのだ、こういうふうに思います。私は、そういう事態に対しましてどうするか、まあ、とにかく一国の運命、政治をあずかっておる総理大臣は、このフェーン現象というものに対して根本的なメスを入れる、根本的に政界の立て直しと取り組む、これが私は総理としてのあるべき正しい姿勢であるというふうに考えております。  いま解散をどうするというようなお話でございますが、解散して代議士が入れかわったというだけで私はこの問題は解決されない、まずやるべき任務というものは、政界の立て直しであり、フェーン現象の解消である、こういうふうに考えております。
  108. 春日一幸

    ○春日委員 このフェーン現象を何とか改善するというか、解消するというか、するためにはさまざまな手段があるであろうと述べられておるが、私はその所見を伺っておるのでございます。  私は、具体的に想定できるところでは、まずその責任をとって内閣が総辞職をする、あるいはまた、信を国民に問うために解散、総選挙の手段に訴える、この二つしか道はないのではないかと思う。具体的にこの空気を入れかえるということでありまするならば、当面しておりまするわが国政界において、手段はこの二つしかないではないかと思うのでございます。  先般、ある新聞の読者欄にある投書がなされておりました。その中には、世論には、佐藤内閣よ、即時退陣せよという声はあるけれども——その投書者は言っております。けれども佐藤内閣はもっと居すわって、その醜い姿を長らえていけ、次々とその黒い霧の中からさまざまな事件が出てくるけれども、しかし、国民はその黒い霧の中にあるものの実体をいまだつまびらかに知らされていないのである、国民はそれを知りたいと思う、知るためには、佐藤内閣よ、もっと長らえろ、そうして、次から次へその醜い実体を、国民の前に五臓六腑をさらけ出して、その腐敗の全貌を明らかにして、しかる後くたばるものならばくたばり去れ、こういう投書が新聞の読者欄にありました。これは春田一幸の毒舌ではなくして、その投書欄にある読者から投書された文言そのままでございます。だから私は、その三つのうちいずれを選ぶか、すなわち、総辞職をしてその責任の所在を明らかにするか、あるいは信を国民に問うて、その手段によってこの空気を入れかえるか、あるいはこのまま居すわって、投書者が指摘したような、いわゆるその腐敗、堕落、汚職、疑獄の実体がありとするならば、そのある姿をそのまま次々と明らかにしていくか、私は三つに一つしかないと思う。他に手段方法があるとすればどういうものがあり得るか、この際、福田大蔵大臣からその御所見をお伺いいたしたい。
  109. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、いまの政局を担当し、今日のような政治に当面した責任者としての態度は、ただいま御指摘の三つの問題、そのいずれでもないと思います。まあ、しいてどれに近いかといえば、第三の御指摘のものでございますが、これはみずから姿勢を正し、そうして政界の刷新を断行する、それが私は佐藤総理に与えられた唯一の道である、こういうふうに考えております。おそらくそういう決意を持って今後の政局に臨んでいく、かように考えております。その後の事態に対しましては、いろいろ御指摘の御意見もありましたが、その後の情勢によってこれを判断する、こういうことかと存じます。
  110. 春日一幸

    ○春日委員 端的に表現するならば、総辞職もいたさない、解散、総選挙にも訴えない、このままずっと権力の座に居すわる、こういうことでございますか。
  111. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まず何よりも最初に取り組むべき問題は政界の立て直しである、こういうことでございます。
  112. 春日一幸

    ○春日委員 お互いに党利党略もあるし、人間だれしも、みずからの立場を弁護、保とうとせざる者はないと思う。けれども、いまあなたが指摘されたようなこのようなフェーン現象は、一個の国士として客観的に判断すれば、国家国民のために最も憂わしき事態である。これはすみやかに何らかの対策が立てられなければならないが、それは最善の道を選ばなければならぬであろう。さすれば、そのためには、いま非難ごうごうたる、しかも攻撃の対象にされておりまする佐藤内閣が、そのまま権力の座に居すわることによってその大目的が達し得るものとお考えでありましょうか。あなた自体は、少なくとも佐藤内閣に対して大きな政治責任をお持ちでありまするのみならず、佐藤さんの心境に対して大きな影響力をお持ちであられる方と思う。そういうようなあなたがみずからこのフェーン現象を何とかしてベンチレートする必要ありと全体的に痛感されながら、それでは一体どこに空気の入れかえがあるのでありますか。一体どういうような手段によって、攻撃の対象とされておる、言うならば被告席に着いておる者が、いまその被告の座から原告の諸君に向かって一体何をどうしてその大目的を達していこうとするのか、それは思うべくしてあたわぬことではありませんか。私は、やはり、このような国政の大事に対処しては、おのれをむなしくして国家と国民のために善処するところがなければならぬと思う。だから、そういうような場合は、ほんとうにかけ引きではなくして、最もすみやかに解散、総選挙に訴えるか、あるいはみずからその責任を痛感して、責任をとって野に下るか、私は、この二つの中の一つでなければならぬと思うし、それ以外に道はあり得ないと思うのだけれども、国士福田赳夫氏として、ほんとうに、その党利党略とか、当面ここでことばを濁していくというのではなくして、あなたの政治家的信条の上に立ってその信念をお述べ願いたい。
  113. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 非常な事態であるという認識は、私も春日さんと全く同じでございます。  ただ、こういう事態に臨んで、辞職すればそれで政治家としての責任が免れるか、解散すればそれでいいのかというと、私はそうじゃないと思う。やはり、自由民主党の総裁としてこういう局面に臨みましては、まずこの局面が出てきたゆえんというものを反省して、また正しい認識を持って、そしてこの局面をどういうふうに打開するかということ、これをやってのけなければならぬ、こういうふうに私は考えています。まず何よりもそれが先だ、こういうふうな方法論をとるべきものだ、かように考えております。
  114. 春日一幸

    ○春日委員 やはり、わが国の国民の運命をになっておりまする内閣、しかもその総理たる者は、このような客観情勢の中においていかにみずから対処すべきであるか、これはきわめて重要な問題であると思うんです。いずれもなま身の人間でありまするから、顧みれば身にかげりがないというわけではない。けれども、国民の総非難の中にさらされ、全国民は政治家、国会に対して大きな疑惑を抱いておる。ただいま武藤君と国税庁長官との質疑応答でも明らかになりますように、一体、税の問題一つ取り上げてみても、これはなかなか解明がつきがたい。ほんとうに国民が、なるほどそうであったのかと、その疑心を晴らすような御答弁は、これはしょせんは得がたいものと思われる。  一体、諸外国においてこういうような状態が政権並びに政界に起きたときにはどういうふうな事態が起きておりますか。韓国の李承晩大統領は韓国建国の父であられた。けれども、汚職、疑獄が続いて国民の憤激を受けて、捨てておいたらクーデターであります。朴政権、ああいうふうな軍部のクーデターが起きて、建国の父李承晩は、その韓国に住むことができずして、飛行機でああいうふうに国外に脱出された。ゴ・ジン・ジェム大統領は長い間権力の座におられた。そうしてグエン・カオ・キのあのクーデターが起きて、これらゴ・ジン・ジェム兄弟は国民の前において殺害をされて、そうしてその責任の所在を明らかにいたしているのである。イギリス政界においても、御承知のとおりでございます。あのプロフューモでありますか、陸軍大臣と例のキラー女史とのいちゃつき、この問題が問題になれば、すぐ陸軍大臣は責任をとって退く、そうして解散、総選挙。私はやはり、その政治責任をみずから明らかにするか、明らかにせざれば主権国民によって明らかにされるか、その帰趨というものは諸外国の事例において明らかであると思う。  で、私は、このようなときにおいて、なお権力の座にすがりついて、次々と解明でき得ないことを、三百代言のようなばかげたことを言いふらして、それで当面を糊塗しておればそれでいいというようなことでは、わが国政治、政界の前途おそるべきものがあると思うのですね。  私は、この際、ほんとうにみんなが心を洗って、このような事態をどう解決をしていくか、ほんとうに国民の疑惑をどのような手段を尽くして晴らしていくかということについては、その権力の座にある者あるいはそれに近い者、これがまず大いに努力するところがなければならぬと思う。私は、こういう意味において、福田さんがこの際大いに決意されるところがあってしかるべきであると思うが、いま依然として党利党略的な、総理が解散はしないと言っているからとか、いま解散すれば自由民主党に有利、不利とかいう判断に立っていまのような答弁をされているということは、前途春秋に富まれるあなたにとってほんとうに惜しいと思う。私は、この際、もう少し日本国の財政、これを背負って立たれているあなたであるから、どうかひとつ、どういうふうにしたらいいのか、もう一ぺん真情を吐露願いたい。
  115. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、この際、政界の立て直し、これはほんとうに真剣に取り組むべきものである、こういうふうに考えております。そのことをどういうふうに果たしていくかということかと思いますが、私は、佐藤総理も非常に決意しており、佐藤総理の手によってこの政界の刷新、立て直し、これを実現をする、これが今日残されている唯一の道である、こういうふうに考えるのです。いま春日先生は、早期解散、これを非常に御主張のようですが、ただ解散してどうなる。この積年の弊というものは解散後もまた残る。何らの変わりはない。だれかがしなければならぬ。私は、とにかく国会において信任をされている——佐藤総理は不信任案で負けたことはまだないわけです。この佐藤総理がこの重大な使命を達成する、これは佐藤総理に与えられた最大の任務であり、当然佐藤総理がそれをやってのけなければならぬ、こういうことかと思います。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 春日一幸

    ○春日委員 ただ、問題は、佐藤内閣はいまだ主権者国民によって直接の審判を受けたことのない内閣であるということを、よく銘記願いたいと思うのですよ。だから、私がいま申し上げているのは、自由民主党、社会党、民社党、政党がさまざまございますね。そのような政党が、いまこの際、党としてやってきた政策、党としてやってきたさまざまな汚職、疑獄を含めての諸業績、こういうものについてやはり信を問う、審判を受ける、そして、あらためて自由民主党がいまのような多数党となり得られるならば、その確信の上に立って、その手によって政界の立て直しをされるのも、これは私は差しつかえないことだと思う。主権者国民の審判の結果ならば何をか言わんやである。けれども、いま佐藤さんは、国民の意思と何らのつながりなくしてできた政権でございますね。しかも、その人がさまざまなことを言われておる。その人の閣僚について疑惑がある、職権乱用、公私混淆はなはだしいと言われておる。そして、御自身のことについて、いま武藤君から指摘されたような疑惑すらなかなかこれはすっきりと客観的に解明される見込みがないと思う。そのようなときに、その汚れた手と言っては言い過ぎかもしれませんけれども、汚れた手でつくった料理を国民は食べたいとは思わないだろうと思うのです。まずい料理でもいいから、きれいな手でつくってもらいたい、これは一つの願望であろうと思う。私は、そのような意味合いを込めて、佐藤さん以外にこの政界を立て直す者が他にないというようなことは、これは天を無視し、人をおそれざる独断もはなはだしいものであると思うのです。私は、だからこの際、佐藤さんがみずからのそのありのままの姿を国民の前に露呈して、私の抱負経綸はこれであるということを国民に訴えて、そして自民党が第一党をとられて、総裁の選挙に再び選任をされれば、総理・宰相として、そのような国民主権者によってオーソライズされて、そして自分がその衝に当られるということが、これは論理としても筋が通ると思うのですよ。いま非難ごうごうたる中に、解散もしない、総辞職もしない、けれども、政界立て直しの唯一者はおれである、こんなことを言ったって、そんなものは通らない。説得力を持たないではございませんか。私はあえてこのことをくどく申し上げておるのだが、どうかひとつ、そういうような意味で、この際、とにかく総辞職をするか、解散をするか、国民世論にこたえるそういう措置をとってもらいたいと思う。どうですか、この点。
  117. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 せっかくの春日先生のお話ですが、気持ちは私は同じです。しかし、方法論といたしまして、私は、いま国の政治の責任者が取り組むべき問題は、何をおいても——これは時間の問題です。何をおいても政界の立て直しの問題である、こういう考え方は、先ほどからるる申し上げておるとおりであります。  しかし、御熱心なるお話は傾聴いたしましたから、なおよく考えさせていただくことにいたします。
  118. 春日一幸

    ○春日委員 それじゃ、この問題は強く要請をいたしまして、良心ある行動を佐藤内閣の実力者であられますあなたに御期待をいたしまして、あと政策論議に入りたいと思います。  私は、いまこの際政府が最も力を注がなければならない問題は、何といっても物価安定の問題だと思うのです。できるものならば、まず物価引き下げをやっていく、政府の手でなし得るものならば、これを政府がまず手がけていくという、このことがなければならぬと思うのでございます。  そこで、私は、いま物価引き下げ政策を推進するために、この際、一種の管理価格とも目すべき、許可認可価格であります例の生命保険料、それから損害保険料、これのあり方について質問をいたしたいと思う。  いろいろ調査をしてみますると、戦後、この生命保険会社、損害保険会社は新勘定で発足したと思うのでありまするが、この二十年にして、本日の時点でこの生命保険会社の事業収益の集積がどのくらいあるか、これを調べてみました。そういたしますると、生命保険会社においては、四十年末現在において、資産総額が二兆二千四百三十一億円、それから責任準備金の項目が一兆九千二百五十一億円、ここにその合計四兆一千六百八十二億円という、こういう事業収益がここに集積されておると思うのでございます。なお、損害保険会社につきましても、正味資産が二十社で四千七百六十七億円、責任準備金が二千五百十一億円、合して七千二百七十八億円という、これまた膨大な蓄積がなされておるのでございます。私は、こういう蓄積があるということは、すなわち、保険契約者からもらった保険料と保険契約者に払ったところの保険金、この差額の累積であると思うのでございまするが、これは私は膨大利潤と言っても過言ではないと思う。私は、この際、この保険料率というものの引き下げについて何らかの措置をとられてしかるべきものであると思うし、その可能性があり得ると思う。これについて大臣の所見はいかがでありますか。
  119. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 保険会社の料率につきましては、これは重大なる関心を持っているわけです。  終戦直後、保険会社は、生命保険会社におきましても、あるいは損害保険会社につきましても、壊滅的というか、そういう非常な打撃を受けたわけでありまするが、とにかくこれが立ち直り、今日では世界的な保険業界を日本保険界としては形成するというところまできておるわけであります。正味資産、積み立て金、御承知のような状況でございまするが、私は、この保険業界というものが今日国民の信頼を得て、そしてその業績も、つまり保険契約がどんどんとふえている、こういうことは、この保険業界に対する国民の信頼感、こういうものに基づくものだというふうに思っております。ですから、この資産が充実された、あるいは準備金が十分ととのっておる、こういうことをとがむべき問題ではないと思うが、しかし、同時に、保険料率は低いほうがいい、これは企業合理化近代化から生まれ出るものでなければならぬ、こういう認識を持っているわけです。  さあ、そうすると、その実績はどうなっているかというと、これは保険契約の伸展とともに業績も改善されてまいりまして、料率は、損害保険会社におきましても生命保険会社におきましても、逐次下がってきておるのであります。この間昭和四十一年度保険業大会というものがあって、保険経営の関係者が一堂に会しましたから、私もその際申し上げたのです。皆さんにお願いすることはいろいろある——これはいろいろ申し上げたわけですが、その一つとして、保険料率の引き下げという問題にも今後とも努力してもらいたい、力強くそういう点を申し上げたわけでございますが、今後とも、企業経営の合理化、また基盤強化、そういうものともにらみ合わせまして、配当率の引き上げ、あるいは保険料率の引き下げ、こういう方面にはそういう姿勢をもって臨んでいきたい、かような考え方であります。
  120. 春日一幸

    ○春日委員 この保険料率の算定の基礎となりまするものは、予定死亡率、予定利率及び予定事業費率、こういうようなものが算定の基礎となって保険料率が定められておると思うのでありまするが、私の調査いたしましたところでは、この予定死亡率なるものは、現在、第十回生命表、昭和三十年の国勢調査の結果に基づくもの、これが普通養老保険に採用されておる。したがいまして、これは実際死亡率と大きな乖離をいま来たしておるとは明らかである。その後、三十五年の国勢調査に基づくもの、すなわち第十一回の生命表というものがあるわけでありまして、この第十一回の生命表ということになりますると、予定死亡率ははるかに減少してまいってきておる。だから、危険率は少ないのだから、したがって、少なくなった分だけ保険料は低めてよろしい、こういうことになり得ると思う。それを調整するのにいろいろな給付金や配当金等によって調整されるようではありまするけれども、そういうような調整のやり方は適当ではないと思う。私は、その後において第十一回の生命表があって、そこには予定死亡率というものが前回の三十年の第十回の生命表に比ぶればはるかによくなってまいっているのでありますから、したがって、そのいいものをなぜバロメータに使わしめないかということが第一点であります。  それから、予定利率についても同様でございますが、現在は大体年四%になっておる。この保険料率算定の基礎となるこの予定利率ですね、資産の運用利回りといいますか。ところが、その実際の決算書を見ますと、総資産利回り八%をあげておる現状ですね。八%をあげておるのに四%というようなこの予定利率によって算定しておるということも、言うならば、これはけしからぬやり方だと思う。結果として、もうかってきたらもうかった分を配当で出すというあり方も、これは適当ではない。  だから、予定死亡率の基準となる生命表、これは私は第十一回の生命表を用うるように指導できないのか。それから、予定利率も、現実に八分なのに、その半分ということで算出せしめておるということも、よってもってこのような膨大な四兆一千六百八十二億円という利益を二十社に独占せしめておることの大きな要因となっておると私は思う。これはいかがですか。
  121. 上林英男

    ○上林説明員 まず第一の、十一回の生命表を使うべきじゃないかという問題でございますが、第十一回の生命表が発表されまして以後、新しくつくっております保険におきましては、これは第十一回の生命表を使っております。ただ、大部分はいままでの種類の保険を発売いたしておるわけでございますが、これにつきましては、御指摘のとおり、第十回の生命表をそのまま変更しておらないわけでございまして、もちろん、これにつきまして、過去のものにつきましても直すべきであるという御議論はもっともでございますが、第十一回の生命表は、第十回の生命表と比べまして非常に改善をされております部分は、主として非常に幼い子供の死亡率が改善されております。むしろ高年齢の部分につきましては十回の生命表よりも悪くなっておるということでございます。したがいまして、これを保険料率にはじき直してみますと、第十回の生命表と第十一回の生命表とではほとんど差がない。千円につきまして四十銭程度の差が見込まれる程度でございます。したがいまして、第十一回の生命表を過去にさかのぼって全部やりかえます事務費と申しますか、そういうものに比べますと、あまりにも効果が少ない上に、先ほど春日先生御指摘のございましたように、現実には、この一定の死亡率、予定利率で計算をいたしまして出ました保険料でございますが、これに基づき剰余が出ますときには、これを四十年度におきましては九八%契約者にお返しして、実質の負担保険料を低減させているわけでございまして、結果的には死亡率が下がってまいります死差益としてこれを実質的な契約保険料の低減に充てておるわけでございますので、非常に大きな効果が出るほどの改善でありますと、その間に要します事務費を顧みず過去にさかのぼって適用していくことが正しいかと思いますけれども、いま申しましたような実情でございますので、過去のものにつきましては、いま申しましたような死差益の配当ということによって調整をしていく、今後つくってまいりまする新種の保険につきましては十一回生命表を適用していく、さらに、今後事務費の合理化その他によりまして、あわせて保険料の実質的な相当の低減がはかられるという場合におきましては、それらの事情を勘案いたしまして、できるだけ新しい死亡表を適用して過去のものにつきましても直していきたい、こういう心がまえでいるわけでございます。  それから、第二の予定利率の問題でございますが、おっしゃいますように、ただいまの生命保険料率の基礎になっております予定利率はおおむね四分でございます。これは、生命保険が、御存じのように、二十年、三十年という長い期間の契約でございまするので、その間の経済変動というものにもたえる意味におきまして低目にきめておりますることは、世界各国とも同様でございます。もちろん、御指摘のように、これによりまして現実に利差が出ておるわけでございますが、これにつきましては、お話のように、大体四分、四分三厘程度の利差配当というものをいたしております。実質的に保険料の低減に充てておる、こういうことでございます。
  122. 春日一幸

    ○春日委員 その死差益も利差益も現実の問題として変わっておるとするならば、現実に即したその率によって算定するのは正しいじゃございませんか。間違った尺度でやっておいて、利益がたくさんあがったから契約者に対して配当金を出すことによって調整するなんというようなものでなしに、何でも公正にやったらいいと思うのだ。ぼくは、政治というものは、行政指導などというものは、とにかくかくのごとき業者、事業擁護が先行して、大衆の立場というものの利益擁護が列後に置かれていることが、いろいろと政治疑惑を発生する原因になっておることを行政府の諸君は注目すべきであると思うのですね。  あなたに伺いますけれども、では、この第十回の生命表と第十一回の生命表によっては、死亡率の減少は幼児だけであって高年齢層については死亡率が悪化しておると言っておるけれども、われわれの常識では、とにかくこの十カ年間に国民の平均寿命は男も女もふえておるのだ、こういうふうに聞いておるのだけれども、これは事実は違うのですか。最近において寿命が伸びた、社会保障制度の拡充と医療制度の高度化、発展によりましてそういうような死亡率は減っておる、平均寿命は伸びておると言っておるのだが、逆に縮まっておるというのは事実ですか。
  123. 上林英男

    ○上林説明員 平均の寿命というものは伸びておるわけでございます。それに及ぼしまする影響といいまするのは、幼児の死亡率が減少をしたということになるわけでございます。したがいまして、これをこの死亡率に基づきまして、もし保険料をどの程度下げることができるかという計算をいたしますと、先ほど申し上げましたように、千円につき四十銭程度の下げ幅になるであろう、この程度の下げ幅であるならば、過去のものにさかのぼって適用するというよりも、むしろ今後のそういう死差益の配当で調整ができるのであるから、それに見合う事務費の負担その他を考えたならば、この程度のものではなく、もっといろいろな合理化その他の結果を集積した後に考えたらいかがであろうか、こういう考え方であることを申し上げておきます。
  124. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、予定利率を四%と見ておるけれども、実質の利回りは八%である。この問題は、実際の利益が八分あるとして、実際の景気の変動によって六分になるというような場合があるかもしれないが、過去の平均値を見れば、そんなにひどく安くなっておることはないわけなんですね。だから、八分の利益があるものをなぜ四分の利益でその尺度を立てることを認めておるのですか。その理由をちょっと説明してください。
  125. 上林英男

    ○上林説明員 先ほども申しましたように、生命保険の長期性というものに立脚をいたしまして、いまの八分なり何なりの利率が二十年間、三十年間にわたって継続し得るということはなかなか言いがたいのではなかろうかと思います。したがいまして、保険料率の算定におきましては、予定利率は大体四分でございますが、低目に押えております。そして、その運用によりました利差というものを配当することによりまして、実質的な保険料を返していく、こういうたてまえをとっておるわけでございます。これは各国とも同じように、生命保険料率の算定におきましては、予定利率というものは相当コンサーバティブに、控え目に計算をしておるものでございます。生命保険契約は長期のものでございまするし、それによって見込みが違ったからといって保険料を追徴するというわけにもまいらないのでございます。
  126. 春日一幸

    ○春日委員 わかった。あなた方、いつも会社側の立場に有利になるようにのみ判断し、決定して措置をされておるからいつも問題が起きるのですよ。たとえば、生命保険会社の利益、収支差額をずっと昭和二十二年から四十年までの足取りを見てみますると、あなたの言われるような、この二十年間にそんな変動なんかありゃしませんよ。でたらめ言いなさんな。二十二年は二億一千五百万円であったものが、翌年は八億七千七百万円、ずっと伸びてきて、一ぺんも下がったことはないのである。二割、三割、四割、いまでは一千十二億六千二百万円という利益を一年間にあげておる。実際問題としてどこに変動があるんだ。二億円のものが、次は八億円になり、その次は、三、四年すれば四十六億円になり、三十年には九十一億円になり、ずっと上昇テンポばかりなんですよ。そんなものは、変動があって利益が減ったりふえたりするものではないんです。経済の高度成長とその事業の安定度の高まりによって事業収益はふえていくのですよ。だから、運用利回りというものが過去の実績を見て八%下回っておるようなことは少ない。それを半分に見ておいて、高い保険料をとって、会社にうんともうけさして、その蓄積がいまなんと四兆一千六百八十二億円もあるじゃないですか。四兆一千六百八十二億円というのは、保険契約者から必要以上に高い保険料を徴収したその蓄積じゃありませんか。余分にぶんどっておるんだ。そんなものは、現実の問題として、生命表なんかも、新しいものができたらなぜ新しいものでやらないのか。それから、利差益だって、現実に八分の利差益があるものならば八分の利差益で計算せしめたら、それでいいじゃありませんか。その結果もうかったらその分を契約者に配当するというやり方でなくして、とるべからざる、とる必要のないものをとらしめるというようなことは、これは行政府として、行政指導として適当ではないと思う。この点どうですか、大臣。こんなものは、現在脆弱な状態なら大いに心配せなければならぬけれども、損害保険会社においては、とにかく七千二百七十八億円も戦後二十社でもうけているのですよ。生命保険会社については四兆一千億円ももうけているんだ。だから、この際これを低めろという議論について、反論をするとは何事か。現に、火災共済協同組合においては一般火災保険会社よりもはるかに安い保険料をもってその事業は成り立っておるではないですか。そういうものは、いま物価を安くしなければならぬという、これはわが国政に対する至上命令ではないか。だから、政府指導によって下げ得るものがあるならば、一つでも下げたらどうか。事業が各種の準備金やあるいは正味資産が薄弱であって、保険事業としてなおその基礎を固めるのは政策的必要ありとすることならば、これは別個の問題だと思う。けれども、現実にこんな膨大利潤を、天文学的、マンモス的利潤を蓄積して、しかもその基礎が何であるかということをいろいろ調べてみれば、不実なバロメーターを基礎にして、そうしてその高額な保険料徴収を可能ならしめておる。これは各種保険財閥と政府とのやみ結託によるところの不正料率だと言っても私は過言ではないと思う。そんなものは、四分の利回りなんということはないのだから、八分の利回りだったら八分で計算さして、余分なものをとらしめる必要はないじゃありませんか。そんなことは自由にやってもらいたい。事実に即した処理をして、蓄積が乏しいときならば、政策的に資本蓄積の必要ありとか、あるいは保険事業の政策的基盤を固める必要があるというようなこともあり得るであろうが、いまやその必要のない段階である。現に、中小企業者等のやっておる火災共済でははるかに安い料率でその事業が成り立っておる、つじつまが合っておるのです。それにもかかわらず、大会社の保険財閥だけに高い料率徴収を可能ならしめておる。しかも、これは二十社以外はやれないのでございましょう。資本主義経済だ、自由主義経済だといったって、これは戦後二十社以上ふやさない独占事業である。独占事業であって、独占価格である。それをこのような論理に合わない不当な料率の徴収を可能ならしめている。これを見過ごしておくというようなことは、私は、さまざまな疑惑が実際問題としてこういうような点から発生してくると思う。この点どうです。安くするように指導するのがあなたのほうの責任じゃないか。
  127. 上林英男

    ○上林説明員 お話、ごもっともでございます。ただ、一言申し上げますと、保険料率につきましては、かねてから申し上げておりますような、高料率、高配当というような思想と、低料率、低配当というような思想とがございまして、いろいろ議論がございます。と申しますのは、生命保険は、早く死ねばもうかるという妙な考え方がございます。したがって、早く死なれる方は、保険金がもらえるけれども、表定の保険料はある程度高めの保険料を払っておる。しかし、長生きをされた方は、その後年々配当をもらうことによって、実質的な保険料が安くなる。したがって、早く死ぬ方と、おそくまで生きて満期保険金をもらう方との調整をしたほうがいいのだという考え方も実はあるわけでございます。先ほど配当と申しましたが、これはおおむね三年程度たちますと配当がついてまいるわけでございまして、その配当は、責任準備金が多く積まれるに従ってふえてまいるわけでございます。しかも、その配当は保険料を払い込みますときに差し引いて払われますので、実質的に契約者の負担は毎年減ってまいるわけでございます。  たとえて申しますと、三十九年度の契約の数字が私の手元にあるわけでございますが、これの表定保険料は十万円に対しまして二千八百九十円でございます。したがいまして、表定保険料としては毎年二千八百九十円を払っていただくということになるわけでございますが、たとえて申しますと、十年目でございますと、配当が九百九十円つきますので、実質の保険料は千九百円で済む、そういうことで、さらに、たとえば二十四年目におきましては、二千八百七十円の配当がつきますので、実質の保険料は二十円になる、二十五年以降はもう配当だけをもらう、こういうかっこうで、実質的な保険料はプラスになるというようなことにもなるわけでございます。そういうようなことで、そういう調整の面もこの保険料方式においては含まれておるということでございます。
  128. 春日一幸

    ○春日委員 保険契約者は、契約者配当金をもらうために保険に入るわけじゃないのでございますね。やっぱり自分が死んだときに保険金をもらうために入るのだから、その原始的な性格を間違ってもらってはいかぬと思う。そんなものは、配当をたくさんもらうために入るのじゃありませんよ。死んだときに保険金をもらうという、そのことなんだから、保険の契約をするときに契約者が負担すべき保険料、これをできるだけ低く押える、事業が成り立つ必要なる最小限度に押えていくというのが、このような許可認可の、独占的性格を持つ事業に対する行政指導のあり方じゃないですか。できるだけとっておけ、そしてもうかってみたら配当してやればいいじゃないか、そういうところにあなた方の行政指導のウェートがあるのでございますか。
  129. 上林英男

    ○上林説明員 おっしゃいますことは、そのとおりでございます。この生命保険料につきましても、おっしゃいますように、できるだけ国民大衆に負担のかからないように低い料率で提供するということは当然でございます。ただ、その保険におきまして、いま申しましたように、現在やっておりますることにつきましての御説明を申し上げたわけでございますけれども、これも先ほどから申し上げておりますように、生命保険の長期的な性格というような考え方に立ちまして、ある意味ではコンサーバティブな料率計算をしておるという点も事実でございます。そういうものにつきましては、いま申し上げたような配当によって実質的な保険料を相殺するというような考え方でやっておるわけであります。基本といたしましては、いまもおっしゃいましたように、できるだけ生命保険料率も、長期的な経済変動その他にもたえるように、しかも、安全で健全な経営ができるようにという観念も入れなければなりませんけれども、できる限りそういう範囲におきまして低く定めて、安い保険を提供していくということは、私どもの常に心がけているところでございます。
  130. 春日一幸

    ○春日委員 実際問題として、こう言えばああ言う、ああ言えばこう言うということで、いままでやってきたことを正当化する答弁のみなされておりまするけれども、そういうことは適当ではないと思うのです。実際、どろぼうだって三分の理屈があるのだから、いわんや、政策マンに政策上の解明の不自由があろうとは思わないけれども、現実の問題でも、こんな膨大利潤をあげられて、確保されておる現段階において、特にまた火災共済なんかにおいてははるかに低い料率でもって火災保険事業、共済事業が成り立っておるのだからして、大会社はすでにそういうような大きな準備金や正味資産が蓄積されておるんだから、安くてもやれるんだ。安くてもやれる、ペイできるとすれば、安くするように指導したらどうなのですか。実際、物価を安定せしめる、あるいは物価引き下げる、これはいま政界の至上命令ではありませんか。そういうようなときに、可能な限界をいずこに求めるか。いまこうやって分析をしてみれば、さまざまその基礎となるバロメーターが不実なものである。そうならば、もうかり過ぎた分を配当で返せばいいじゃないかというような論理じゃなしに、初めからできるだけ大衆負担を軽からしめていくような保険料率の算定へとこれを切りかえる、そういう方向へ指導していくというようなことは当然あってしかるべき問題じゃないか。ああだこうだと言っておるべき筋合いの問題じゃないのじゃないか。この点どうですか。  それでは、私はそういういやらしいことを聞くのはきらいなんだけれども、実際、損害保険協会、こういうようなところから政治献金が過去五カ年間に一体政界へどういうぐあいになされておるか、一ぺん委員長を通じて資料提出を願いたい。資料提出を求めます。  私のいまの考え方について大臣の御所見はいかがですか。保険料率算定のあり方について再検討を要するやいなや。
  131. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 御意見でございますので、私どもとしてはよく利害得失というものを再検討してみます。いずれの方法をとるか、これは考え方の問題だと思いますので、再検討した上でお答え申します。
  132. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、今度は例の歩積み・両建ての第二ラウンドの問題についてお伺いをするのでありますが、まず公取にお伺いをいたしたいと思います。  公取さんが本年五月末現在第五回目のアンケートを、調査をおやりになりました。その結果によりますると、改善されたとするものが四六・一%、大蔵省がさまざまなことをやっておるけれども、前と全然変わらぬとするものが五二・四%、それから、前よりもむしろ悪くなったとするものが一・五%というようなことがアンケートによって明らかになったわけであります。これに対して公取では、「なお問題となる歩積み・両建て預金が存在することも事実であり、特に最近の傾向として、これらの拘束預金が潜在化すると同時に、その内容も一そう悪質化さえしているといえよう。」 とこれは述べられておる。  そこで、お伺いをしたいのは、この間澄田君の手によっていわゆる第二ラウンドの自粛措置が講ぜられた。この措置がとられれば、大体公取としては、一般指定の第十号ですか、みずからの優位な立場を利用して相手方に云々というあれと、それから独禁法第十九条ですか、この違反行為、こういうものが、第二ラウンドが完全に行なわれればなくなるものと判断されておりますか、いかがですか。
  133. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 公正取引委員会が金融機関取引先を通ずるアンケートで調査いたしたところによりますと、金融の緩和状況も作用しておると思うのでありますが、逐次改良する方向に向いておることは事実でございます。ただ、歩積み・両建ての方法につきましては、従来なかった新たな方法がとられるという面もございまして、それらの成り行きは、銀行局の指導状況を見ながら、なお引き続き注目をしていく必要があるのではないかというふうに考えております。第二ラウンドの進行によりまして事態は改善される方向に向いていくと思いますが、その結果が特殊指定を必要としない事態になるかどうかということについては、第二ラウンドの進行状況をなお注視していかなければ公正取引委員会としての結論は出ないというふうに考えております。
  134. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、第二ラウンドの澄田通達では、あなたのほうがこの間指摘されました一から七までですか、これは全部そこの中にとらえられておるとは思えないのですね。たとえば、あなたのほうで、潜在化し、そして質的に悪化を来たしたというその歩積み・両建ての傾向ですね。すなわち、「いままで金融機関が預かっていた預金証書は返してくれたが、口頭で引き出さないように言われた。」というような事柄だとか、あるいは、「口約束や念書よる拘束預金がなくなったかわりに、事実上引き出せない暗黙の拘束預金が増加した。」、「新規貸し出しに際しては拘束せず、時期をずらして預金を拘束するようになった。」とか、四の「当座預金の残高をやかましくいうようになった。」、五の「債務者名義でない個人名あるいは無記名の預金を要求されるようになった。」 あるいは六の「歩積み預金の廃止のかわりに、(イ) 定期積み金または積み立て定期預金をさせられるようになった。(ロ) 手形の審査がきびしくなり、いままでと同じ条件の手形でも割り引いてくれなくなったり、信用保証協会の保証を要求されるようになった。」 とか、七の「拘束預金に見合う分についての借り入れ金利または割引料は引き下げられたが、そのかわりにその他の部分についてはいままでより金利を引き上げられた。」とか、要するに、しゃくしで当てがったようなやり方ですね。こういうような問題は澄田第二ラウンド通達ではことごとくこれが捕捉されておるとは思わないが、この点いかがですか、公取の見解。
  135. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 個々の問題になるような歩積み・両建て行為につきましては、やはり引き続き問題は残り得る可能性があると思うのでございますが、ただ、第二ラウンドの指導によりまして、全体として現状よりもさらに改善の方向に向かうような指導がなされるわけでございます。金融機関においてもこれを改善する方向に自粛措置が強化されていきますれば、やはり方向としてはいい方向にいくのじゃないかというふうに考えております。
  136. 春日一幸

    ○春日委員 公取のほうは行政機関であると同時に、検察機関なんですね。したがって、第十九条の違反行為というものは、現実の問題として、行政指導によってこれをため直すというような対象行為ではないのですね。これは検挙して審問処罰をしなければならぬ行為なんですね。そういう問題が現実にあるのだ。あるけれども、その経済のメカニズムから判断をして、角をためて牛を殺してはならぬと思うので、大蔵省の手によってこれをだんだん改善、改革をせしめていこうということで三、四カ年経過したわけなんですよ。ところが、大蔵大臣にお聞き取りを願っておきたいことは、そういう方向で検挙もしないで見のがしてきた。言うなれば、どろぼうか強盗か火つけか知らないけれども、これを見のがしてきた。法律違反の行為を見のがしてきた。そのことは必要悪というような形でこれをともに見のがしてきた。けれども、直さなければならぬので三年間やってきた。ところが、あなたのほうのアンケートでは五二%の者がちっとも直っていないと言っておる。一・五%の者はさらに悪くなったと言っておる。よって、ここにこれを重視して第二ラウンドがなされようとしておるのでございますが、そこにわれわれは期待をしておるのですけれども、適去三カ年努力をしたと同じように、なお三カ年の努力は、五月においてあなたのほうのアンケートでは、これは全然効果がなかったという答えが出ておるのですから、私はこの第二ラウンドの行政指導によっても、なおかつ同じような結果で、すでに悪質な形でこれが内攻、潜行していくという形になれば、もはや法律違反、独禁法第十九条の違反事項、あるいは不公正取引基準の第十項目の適用ですね、これは私はゆるがせにすべきではないと思う。この点の御所見はいかがですか。
  137. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 私どもといたしましては、違反事実があるかないかにつきましては、引き続き十分監視を続けていきたいと考えております。ただ全般といたしましては、やはり改善の方向に向いていることは事実でございまして、そういった方向で指導を進められることが望ましいと考えております。
  138. 春日一幸

    ○春日委員 われわれも経済のメカニズムを重視しないわけのものでもない。だから、私どもは観念的な立法論にのみとらわれて基本的な議論を展開しておるわけのものではない。みんな含蓄あって論じておるわけのものでございますね。それだからといって、何にも実際の効果があがってこないということならば、実際愚かしきさたの限りです、この論議を何回も繰り返していくということは。あなたのほうのアンケートのデータが厳粛に示しておるとおりです。まことに重視をしておるのです。さらに悪くなったという——内攻してしかもそれが潜在しておる。表にあらわれておったものがひそやかに行なわれておる。あなたは改善されればいいと言っておるが、これは改善されればいいということではないですね。現に法律で禁止をしておること、そいつがわが国のあのような公共的性格の強い金融機関によってなされておるということは、非常に重大なことなんですよ。それは釜ケ崎とか山谷のドヤ街でなされておることではないのだから、わが国の指導的経済活動のトップ的な地位にあるものが、しかもその内容は公共的性格を持つ金融機関が法律違反の行為をやっておる。法律違反でなければあなた方は何もものを言う権利はないのですから、ものを言う権利があったり、ものを言っておる以上は、何かそこに法律違反の疑義があるから言っておられるのだ。だから、そういうことが見のがされておって行政指導にゆだねられておるという、その事情を澄田銀行局長は十分痛感され、認識されて、この効果にあやまちなきを期していただきたい。  第二次の効果について、大臣の決意をここに明らかにしてもらいたいと思う。
  139. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話まことにごもっともなことでございますので、第二次計画でも実効の実をあげていくように最善を尽くす決意であります。
  140. 春日一幸

    ○春日委員 ありがとうございました。
  141. 武藤山治

    ○武藤委員 けさほど来、委員長も御承知のように、われわれは総理の出席を求めております。さらに、先ほどの応答の途中で、国税庁長官みずからが、これは自民党の資金局の問題であるから答弁は差し控えたい旨を答えている。そこで、総理の出席がなければ真実はつかめない、黒い霧は晴れない、こういうことで、実は私の質問を中断して春日さんに譲ったわけであります。  その後総理とお会いになった委員長、出席方要請の結果はどうなっておるか、ひとつ御報告を願いたいと思います。
  142. 三池信

    三池委員長 武藤君に申し上げます。  総理は、きょう、あすは日程が詰まっていて、出席ができないという返事がありました。
  143. 武藤山治

    ○武藤委員 総理は日程が詰まっているという理由で出席できない、こういうことでありますか。
  144. 三池信

    三池委員長 そうです。
  145. 武藤山治

    ○武藤委員 それ以外の理由は別にないわけですか。日程というのは、委員長も、おそらく口頭で日程が詰まっておるからだめだと言われて引き下がる委員長ではないと思うのです。当然、委員会の理事会できめられた統一された意思でありますから、どういう予定で出られないかということはつまびらかに調査をしたと思いますが、どういう予定で来れないのですか。予定の内容というのは、大ざっぱに言って、どういう時間繰りになっておるのですか、明らかにしてください。
  146. 三池信

    三池委員長 日程の内容はつまびらかにしておりません。(「そんなばかなことはないよ」と呼ぶ者あり)しかし、ただそういうことで出席できないということ、だったわけです。
  147. 武藤山治

    ○武藤委員 委員長、前回も、前の先月十九日の委員会で、官房長官に特に来月八日に委員会が開かれるということを承知させ、私の質問の中でも官房長官は、総理大臣に大蔵委員会に出席をして、進んでひとつ釈明をしたらどうか、こういう私の提言について、官房長官どうお考えになるかという質問に対して、官房長官は、御趣旨の点はよく承りました。総理にも報告をいたします。——おそらくまじめな愛知官房長官のことだと思いますから、きょう大蔵委員会が開かれることを総理は二十日前に知っておるはずであります。しかるに、本日どうしても出席しないということは国会軽視ですよ。国会審議を無視している態度じゃありませんか。民主主義の国会における総理のとるべき態度ではないと思うのです。委員長はそれでも総理のその時間繰りから見て、やむを得ないといって引き下がったのですか、もう一度ひとつ確認をしたいと思います。
  148. 三池信

    三池委員長 この前の委員会で愛知官房長官がどういうふうなお話をしたか私知りませんが、愛知官房長官は、おそらくきょう委員会があるということはお約束によって総理大臣に話をしたと思いますが、その愛知官房長官も、いま宮中に行っていて午後までかかるということだったから、愛知官房長官と総理との話というものは私にはわからわからなかったわけです。  また、あるいは愛知官署長官がきょう委員会があるということを総理に話をしておっても、総理にきょう出席をしろというようなことを愛知官房長官から総理大臣に話してあったかどうかということも私にはわからないということです。
  149. 武藤山治

    ○武藤委員 愛知官房長官もまことに無責任な大臣です。しかも、日程繰りがどの程度忙しいか、その内容もつまびらかにしないで引き下がる委員長も少し腰がなさ過ぎると思うのであります。これはもう完全に国会軽視ですよ。黒い霧は全然晴れないじゃありませんか。秘書官の話をまた聞きにした長官の答弁を聞いておっても、脱税の疑いはこれは晴れませんよ。さらに政治資金規正法違反だというようなわれわれの疑惑も晴れません。私は、総理大臣の出席のない委員会で審議をしてもこの問題はむだだと思うのです。社会党の態度によって明らかにしたいと思うのです。衆議院軽視ですよ。質問してもこの内容は明白にはなりません、本人が来なかったら。こういう状態では審議はできません。私どもは質問するわけにいきません。もう一回ひとつ総理と交渉してもらいたいと思うのです。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、これまでの経緯について、午前中の理事会では十分私から委員長に申し上げてあります。委員長も十分御了承になっておることだと思うのです。日程が詰まる詰まらぬの問題は、私どもはここへ一時間出てこい、二時間出てこいと言っておるのではありません。総理の口から、自民党の総裁としての責任のある者が、及び総理大臣として、名前を借用されて、それで自分は知らぬで済むなどということは、いまの状態で通るか通らぬかは——政治姿勢を正すという総理としては、ここへ出てくるのが当然じゃないですか。委員長、当然と思われるかどうか、それをお答えいただきたいのです。
  151. 三池信

    三池委員長 きょうの理事会の話、趣旨はよくわかっておりますから、そういう趣旨において、私も総理にお話を申し上げたわけです。しかし、いま申し上げたような総理の御返答で、出席できないということでありましたから……。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 委員長、それでは、日程が詰まっておるということばに名をかりて、総理がここへ出てくるのをおそれておると私は理解をしますよ。国民はみなそう理解をします。疑惑を晴らすのは、総理みずからが粛党の実をあげると言っている以上、みずから自分が先頭に立って疑惑を晴らすのでなければならぬ。総理大臣の責任において、疑惑のあるままで、衆議院の大蔵委員会が要求をしておることについて、委員長もいまおっしゃったように、われわれと同意見だ、当然出てくるべきだという委員長意見に対しても出席をしないということは、これは委員長としても、衆議院の当委員会を軽視していると、こう理解せざるを得ないと思うのですが、どうですか、その点は。
  153. 三池信

    三池委員長 総理大臣が衆議院を軽視している、軽視していないということを私が申し上げるわけにはいきませんし、また、それは私にはわかりません。しかし私は、総理大臣との交渉の結果をそのまま御報告したにすぎないということを御了承願いたいと思います。
  154. 武藤山治

    ○武藤委員 ますます黒い霧は晴れないじゃないか。国民に疑惑を持たすばかりですよ。
  155. 横山利秋

    ○横山委員 一体二千万円はどうなのか。長官の答弁は、政治資金規正法違反の疑いありということを暗示している。このままで審議をやめるつもりですか。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 税金の取り扱いにしたって、国民と総理大臣とは全然違うということが明らかになっておるときに、総理大臣は一体税金の問題についてて責任のある答弁ができないということはおかしいじゃないですか。
  157. 三池信

    三池委員長 横山君のお話にお答えしますと、私はちょっと委員長席にいなかったので、泉長官答弁の内容を聞いておりませんけれども泉長官は、それは佐藤総理は関知されなかったというような答弁で、むしろ党の経理の問題であるというようなことを……。
  158. 横山利秋

    ○横山委員 違う。委員長、あなたはこの問題の審議に偏見を抱いておりますよ。きわめて客観的じゃありません。いいですか、整理しますよ。  泉さんは、総理のところに行ったら、私の金じゃないと言うので、自民党に行った。自民党に行ったら、金は総理大臣の金じゃないということを言う。それを聞いてきた。だから、いま私どもの審議は、その二人の言ったことがほんとうかどうかということなんです。ほんとうかどうか。普通の税務署だったら、それじゃ西村さんの言っていること、どこから金が入ったということは必ず念査するということです。念査がないということは、一体どういうことなんだ。それじゃ、かりにほかの人だったら、明らかに佐藤榮作名義で寄付がされているのだから、それはインチキである。したがって、それは明らかに政治資金規正法違反になる。泉さんはそれを暗示している。だから、このままではいかぬ。総理が一番責任者だから、知るとか知らぬとかは言わせない。自分がほんとうに出してないならば、ここへ来て自分からはっきりおれは出していないと言わせなさいよ。総理として、また総裁として、西村英一氏にちゃんと確かめて、最高責任背としてここへ来て、これはこうだった、私の名前をかたったのは悪かったけれども、私は出していない、政治資金規正法違反であることは認めます、しかし、金はこういうふうですとなぜ言わぬのか。それがちっともはっきりしてないじゃないか。あのままで、泉長官の話だけで終わりでは、明らかに政治資金規正法違反だということを断定しますよ。委員長は偏でやっておっては困ります。
  159. 三池信

    三池委員長 横山君のいまのお話ですが、私は偏見も何も抱いていないのです。ただ、泉長官がそういう返答をしたならばという仮定のもとにお話をしておるのです。
  160. 横山利秋

    ○横山委員 もう一ぺん、委員長と一間一答で恐縮ですが、あなたは泉長官の言ったことを現実問題としてお受け取りになったんですね。そうすると、泉長官は……。
  161. 三池信

    三池委員長 いやいや、私は聞いていない。
  162. 横山利秋

    ○横山委員 総理は出しておらぬということを西村氏も言っておった。だから、届け出された二千万円は、佐藤榮作名義で届け出されたやつは事実に反するということははっきりしたんですよ。そうでしょう。佐藤榮作名義で出したやつが事実に反するということははっきりしたわけだ。そうでしょう。そこだけは認められるのです。そうだとしたならば、これは政治資金規正法違反だということははっきりした。  それならば、その二千万円はどこから出たかということを私は知りたい。そこのところを、理非曲直を明らかにする大蔵委員長としての責任がある。総理のところに行って、わけもわからぬ用事で来られませんといって引き下がったのでは、委員長の職務はつとまらぬじゃありませんか。
  163. 三池信

    三池委員長 横山君にお答えいたしますが、総理大臣の所得のうちから出てないということであって、それが政治資金規正法に違反じゃないかという問題の究明であり審議であるならば、大蔵委員長としては、概問題は大蔵委員会の席で審議すべき問題でないのであって……。   〔「そんなことはない」と呼び、その他発言する者多し〕
  164. 堀昌雄

    ○堀委員 委員長、それはおかしいですよ。二千万円の金がどこから出たかということは、正規に出ているならば政治資金規正法で届け出なければいけないんだ。それが届けてないということは、脱税の金がいっているからで、そんなばかなことはない。当委員会の所管ですよ。もう一回総理のところに行っていらっしゃい。
  165. 三池信

    三池委員長 いま私が申し上げましたのは——大蔵委員会でやることじゃないと言ったのは、二千万円の金が総理大臣の所得の中から出てない。   〔「それがおかしいんだよ」と呼ぶ者あり〕
  166. 武藤山治

    ○武藤委員 委員長、さっきの質疑応答を聞いておらぬからそういう暴論を吐くんですよ。先ほど質問をしてみたら、国税庁は全然総理と会っておらぬのですよ。税務調査のできる権限のある者が、本人に一度も会ってないんですよ。秘書官に会っているだけなんですよ。伝聞証拠なんですよ。そんなものは証拠にならぬというんですよ。われわれの知りたいのは、総理のふところから金は出してないというのも、総理が言ったのではない、総理の秘書から、総理から聞いた話を国税庁長官が聞いた。そんな権威のないことをわれわれは了承できない、本人を呼ばなければ。だから、総理を何が何でも呼んでほしいというわれわれの要求なんです。正当じゃありませんか。それが聞いてもらえぬならば、ここへ出るまではこの審議は留保しますよ。
  167. 堀昌雄

    ○堀委員 委員長、もう一回行っていらっしゃい。
  168. 横山利秋

    ○横山委員 前回の委員会との関連はどうなるのですか。
  169. 武藤山治

    ○武藤委員 黒い霧は晴れないですよ、本人から聞かなければ。また聞きなんですから。
  170. 堀昌雄

    ○堀委員 議事進行。  もう一ぺん総理のところに行っていただく意思はありませんか。
  171. 三池信

    三池委員長 いや、総理のところに私は何べんでも御要望があれば参ります。
  172. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一回行ってください。いまわれわれが言ったことをもとにして、もう一回行ってください。事はきわめて重大ですから……。(「休憩しよう」と呼ぶ者あり)いや、このままで待ちましょう。
  173. 三池信

    三池委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕     …………………………………   〔藤井委員長代理退席、吉田(重)委員長代理   着席〕     …………………………………   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  174. 三池信

    三池委員長 速記を始めて。  どうも長い間お待たせしました。  いま総理に会って、よく理事会の申し合わせなり、またその後の皆さん方の御意向も伝えました。  きょうはもうあとの日程もやめて、悪寒を催しており、いまから医者に行く、きょうはどうもかんべんしてくれ、特に、明日は九時半に宮中に入って、一日じゅう宮中での叙勲の伝達式並びに申達式に立ち合わなければならないので、あしたもそういうわけにはいかないということで、まことに残念ながらここへ総理に出席をしてもらうということができないということでございます。右、御報告をいたします。
  175. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話ですけれども、きょう健康が悪くて、悪寒がして、そうして医者へ行く人間が、あした宮中へ出られるというのが第一おかしいですよ。  悪寒がするというのは、私は医者の立場から言わしてもらうと、これはばい菌が血管の中に入ったときでなければ悪寒というのは起きないですよ。重篤なる症状であるにかかわらず、悪寒がするから医者に行くと称して本日は出席しない、あしたは宮中で叙勲などと、そんなそらぞらしいことをわれわれは了承するわけにはいきません。  本日は、われわれはこれ以上審議をするわけにはいきませんから、これで退場します。   〔退場する者あり〕
  176. 三池信

    三池委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後三時二十五分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕