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1966-07-25 第52回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月二十五日(月曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    砂田 重民君       谷川 和穗君    西岡 武夫君       三原 朝雄君    村山 達雄君       毛利 松平君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       有馬 輝武君    小林  進君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       平岡忠次郎君    春日 一幸君       永末 英一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局長         事務代理)   滝川 正久君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (国際金融局長         事務代理)   村井 七郎君         通商産業事務官         (重工業局長) 高島 節男君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 七月二十五日  委員田澤吉郎辞任につき、その補欠として三  原朝雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員三原朝雄辞任につき、その補欠として田  澤吉郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月二十二日  都市近郊農地相続税軽減に関する請願外八件  (小山省二紹介)(第一号)  同外七件(福田篤泰紹介)(第三六号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第四一号)  同外六件(中村高一君紹介)(第七一号)  バナナ輸入関税率引下げに関する請願小渕  恵三紹介)(第五号)  同(草野一郎平紹介)(第五九号)  公衆浴場業に対する所得税及び法人税減免に  関する請願小渕恵三紹介)(第二七号)  東京都狛江町の畦畔所有権に関する請願福田  篤泰君紹介)(第六〇号)  国民金融公庫環境衛生部融資による公衆浴場業  者の借入金利子減免に関する請願(船田中君紹  介)(第六六号) 同月二十三日  公衆浴場業に対する所得税及び法人税減免に  関する請願中曽根康弘紹介)(第九二号)  バナナ輸入関税率引下げに関する請願(水田三  喜男君紹介)(第一一七号)  揮発油税等地方税移譲に関する請願湊徹郎  君紹介)(第一四六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(第五十一回国会閣法第四〇号)(参議院送付)  アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法  律案(第五十一回国会閣法第七六号)(参議院送  付)      ————◇—————
  2. 三池信

    三池委員長 これより会議を開きます。  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 三池信

    三池委員長 両案につきましては、さきの第五十一回国会におきまして本院において議決され、参議院において継続審査となり、去る二十一日参議院より送付されたものでありますので、この際、提案理由の説明は省略し、直ちに質疑に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 三池信

    三池委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 三池信

    三池委員長 それでは、これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  6. 只松祐治

    只松委員 いま委員長からお話がありましたように、すでに前国会でたいへん多くの質問がなされている。ある点においては重複する点もあるかと思います。わが党は反対でございますから、私は主としていままで反対立場からの質疑、意見を述べておったのであります。きょうは、若干これが施行後の問題等についてお尋ねをいたしたい。  その前に、何と申しましても私たち理解がいかないのは、アジ銀の問題についていままでいろいろ書かれたり述べられたものをひもといてみましても、当初、日本アメリカは、ほとんどこのアジ銀の問題について関心が薄いと申しますか、冷淡と申しますか、消極的であったわけです。したがって、それを当初構想したエカフェ側からは、日本のその冷淡についていろいろ苦情が出ておる。当時の日本状態を評して、日本工業化が進むにつれてアジア人種ではなくなってきた、こういうことさえ述べられておるわけでございます。ところが、今日この臨時国会をも開いて急遽押し通さなければならない、こういう状態にあらわれてきておりますように、いまの日米の、特に日本の熱の入れ方というようなものは異常なものがあるわけです。どうしてもその点について納得がいきませんが、ひとつ、その間の事情について大臣のほうからお答えをいただきたい。
  7. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア開発銀行構想に対しまして、わが国アメリカが初めは消極的であったんだが、あとでえらい熱意を上げる、こういうふうになってきた、こういうことを言う人があるわけです。これは何らかの誤解じゃないか、こういうふうに思うのであります。  わが国といたしましては、従来とも海外後進国援助に対しまして非常に慎重なかまえをとっておるのであります。つまり、後進国からは、最近の後進国援助ムード、そういうものを背景といたしまして、先進国と目するわが日本に対してずいぶんいろいろな協力の要請をしてくる。それに対して一々わが日本がいい返事のできるような状態じゃない。これはわが国財政経済状況を御承知の只松さんにおかれましても十分御了知のことと思いますが、そういうようなことで、アジア開発銀行に対しましても、これはいいことには違いない。しかし、わが国がこれを背負って立つというような立場にはなかなか踏ん切れないわけでありまして、そういう意味合いから、いいことではあるけれども、わが国負担が過重にならないようにという配慮のもとに慎重なかまえをする、これは当然のことでありまして、初めは消極的であったが、あとになっては逆転して積極的になったというのではなくて、初めから慎重である、わが国負担能力等も考慮し、また、外国がどのくらいの援助をするかという形勢もよく見なければならぬ、こういうようなことから、そうおいそれと返事はできなかった、こういうふうに御理解を願いたいのであります。
  8. 只松祐治

    只松委員 時間がありませんから、日にちを追って、エカフェを中心にしてアジア開銀構想をされ、そしていろいろ準備が進められてきた、その過程における日本側発言等の資料もここにございますけれども、これは一々ここで甲論乙駁するいとまがございません。しかし、とにかく、大臣は慎重ということばをお使いになりましたけれども、きわめて消極的であったことは事実でございます。ところが、現在は、消極的どころか、きわめて積極的であることもまた事実でございます。  そこで、これまでわが党がいろいろ反対立場で申し述べましたように、私たちのほうから見るならば、いわゆるベトナム戦争がたいへん困難な状態になってきた、単に困難、危険という状態だけではなくて、その解決の見通し、これがなかなか容易でなくなってきたということがここに出てくるわけです。それと佐藤さんの訪米、ジョンソンのいろいろな発言等から、急速にこの必要性というものが痛感されてくる、こういうことが一連の発言の中からほぼ推察ができるわけです。今日、この段階政府側は、そのとおりだ、こういうことはおっしゃりにくいかと思いますけれども、ただ、私たちとしては、やはりその出発点が万事非常に重要な問題で、どうしても納得がいかない点があるので聞いておるわけですが、ずばり言うならば、ベトナム戦争とのそういう関連性というもの、あるいはベトナム戦争後のいろいろな極東の処理問題、そういうものと重大な関係があることは申すまでもございませんが、そういう点は一つもないとおっしゃいますか。ただ慎重であったのか、機が熟したからした、こういうふうに単純にお考えになっておりますか。いかがでございますか。
  9. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア開発銀行構想は、ベトナムの事態とは何らの関係もございません。これはしばしば申し上げておるのですが、国連の場で発想されまして構想が持ち上げられ、エカフェを舞台といたしまして今日ここまで進められてきた、こういう因縁のあるものでございまして、これは数年前からの構想なのです。それが機が熟して非常に具体的なものとなってきたのが昨年の春ごろである。たまたまその時期にアメリカにおきましていわゆるジョンソン構想というものが発表されたわけであります。その構想はその後何か立ち消えになったようなかっこうで発展がありませんが、そういうジョンソン構想アジア開銀あたりを混同されて見るような見方があるようでごさいまするが、ただいま申し上げましたように、これはもうアジアになくてはならない、当然つくらなきゃならないアジア開発銀行である。もう米州には一つ機構ができている。アフリカにもできている。ないのはわがアジアだけです。それがゆえにまた、アジアに対する国際的援助、これが他の地域に比しましておくれておる、こういうことでございます。そういうことに着目して、国際連合がその国際連合自主的立場において構想をしたものである。何らベトナムアメリカの利益と関係を持つものではない、これは非常にはっきり申し上げることができます。
  10. 只松祐治

    只松委員 そうだとするならば、これもたびたび申し上げてきておりますように、エカフェを強化するというのが一つの問題としてあるわけです。この問題についてはほとんどいま日本側は触れられておりません。  さらに、それはおくといたしましても、このアジ銀に対して多くの未加盟国がございます。したがって、この未加盟国に対して——いまちょうどソ連のグロムイコさんもお見えになっておりますけれども、まああとでお聞きしたいと思います。総理からもそのことばをお聞きしたいと思っておりますけれども、国連構想によるならば、国連発想によるならば、そういう未加盟国家に対して積極的に働きかけがなされなければならない。ところが、そういう働きかけというものはきわめて消極的であります。むしろないと言ってもあるいは言い過ぎではないような状態でございます。そういたしますと、お答えとしてはしごくごもっともなお答えでございますけれども、われわれ側から見るならば、それは全く大臣答弁にすぎなくて、本質はそういうものではない。やはり、急遽急がれておるというのは、ベトナム戦争関係があるし、いわば第二のマーシャルプラン、あるいはもっとそれを進めた極東における反共経済機構確立である、こういうことが社会主義陣営側なり未加盟国側からいろいろ指摘をされておりますけれども、こういうことが全然理由なきにしもあらず、こういうことになると思いますが、この未加盟国問題等について、いかなるお考えを持ち、あるいはいかなる努力を払われてきたか、あるいは今後いかなる努力をされようとしておりますか、お聞かせをいただきたい。
  11. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 未加盟国がごく一部あることは事実であります。しかし、それはそれぞれの事情によって加盟していない。たとえば、ソビエトロシアに対しましても話し合いが行なわれまして、非常に好意的、協力的ではあるけれども、この際参加はしない、あるいはフランスにおきましても何か政治的な事情もあって参加しないというようなことでありますが、おおむね入っているのです。これはしかし、国際的になるべく広い参加国があったほうがいいのでありまして、今後もこれらの未加盟国に対しましては加盟を慫慂心すべきものである、そういうふうに考えます。
  12. 只松祐治

    只松委員 いまたいへん楽観的に、きわめて好意的であるとか、今後慫慂するというようなお話がありました。いまの御答弁の中からも私たち熱意というものはほとんど感じないわけですね。エカフェでいくならば地域代表としてやるけれども、中華人民共和国、朝鮮、モンゴル等が入っておりません。こういうことは、いまの段階では論外でしょう。こういう諸国家だけではなくて、フランスやあるいはソビエト等々も入っておらない。これに対して何か好意的であると言うけれども、しかし、ソビエトなりフランス等は、政府正式態度というよりも、新聞等で報じておる、あるいはそこいらの経済学者が論評しておるもの、あるいは政府機関紙等が論評しておるものは、ここにもありますけれども、きわめて好意的ではなくて、いま言ったように、極東における新反共経済機構確立である、こういう多くの論評を下しております。だから、いま大臣お答えになったように、何かきわめて好意的で、一時的にちょっと入らないで、もう少ししたら何かもやもやっと入ってきそうだ、こういうこととは私は本質的に違うと思う。そこで私はさっきから急遽急がれておる原因というものをただしておるわけでございますけれども、そういうきわめて熱意のない答弁ではなくて、少なくとも、現状においてやむを得ないならば、将来こういうふうな努力をする、こういう具体的な御答弁があってしかるべきである。当面、グロムイコ氏もお見えになっておりますから、総理も直接会われるでしょうが、大蔵大臣も何ならそのために会ってやはり努力する、こういうことぐらい今後の問題について熱意ある御答弁がいただけるのが、国連発想によるその趣旨を貫くことだと思う。ところが、発想はそうですけれども、途中からこれがすりかえられて、反共経済機構、しかもめどの立たないベトナム戦の収拾とあわせて構想されているということは常識的に明らかなわけです。そういうことの疑いを晴らすためにも、日本ほんとうアジアの低開発国開発を望む、こういうことならば、もっとそういう問題について真剣に取り組むべきだと思います。重ねてお答えをいただきたいと思います。
  13. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一応この一年間関係国が話し合いまして加盟国がきまったわけです。この段階で直ちに加盟国を広げるということはむずかしいのではないかと思います。やはり、この銀行が健全にアジア開発のためにその使命を尽くす、実績が一番大事だと私は思う。そういうものと並行いたしまして、いま加盟してない国にも大いに働きかけるべきものである、こういうふうに考えます。ただ、これはわが日本だけではどうにもならない。これは、できますれば、国際機関でありますから、その国際機関がそういう活動をする、われわれはそれを外部から支援する、こういうことかと思います。
  14. 只松祐治

    只松委員 そういうふうに逃げないで、日本が指導的な役割り、任務を持っておることは申すまでもないことでしょう。これは私たちが言わなくても大臣自身そういうふうに自負を持っておられると思います。出資額にしても、アメリカ日本が計四億ドルですか、十分の四を占める。これだけではなくて、いろいろな面において日本が非常に大きなウエートを占めておるわけですから、他国頼みでなくて、やはり日本として、特にここは日本国会ですから、日本政府を代表しての福田大蔵大臣がそういう点についてどうお考えになっておるか、こういうことを聞いておるわけですから、ひとつ、日本政府として諸外国だよりでなくてこういうふうにするという日本立場を明確にお答えいただきたいと思います。
  15. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日本立場とすれば、もちろん、申し上げるまでもなく加盟国がなるべく多いほうがよろしい。特に域外国でここへ入りてくる国が多いほうがいいのです。わが日本だけでは、先ほどから申し上げておりますとおり、とても背負い切れるものではない。なるべく援助を与え得る力のあるものが多数参加する、これこそが望ましいことでありまして、今後も最善の努力を尽くしたい、かように考えます。
  16. 只松祐治

    只松委員 次に、これは計算のしかた、基礎の置き方によってたいへん数字が異なってきますが、大体アジア開発国をどこまで開発していくかということもたいへん問題になります。常識的に判断されて、低開発国開発するのに幾らくらい費用を要するか、あるいはお感じでもけっこうでありますから、ひとつお聞かせをいただきたい。
  17. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これだけおくれており、また荒れておるアジア復興開発をする、どのくらいかかるかということは、私もまだ見当をつけたことはないのでありますが、これはたいへんなものだろうと思います。まあしかし、漸進的に一歩一歩手の届くところからやっていかなければならない、その手の届くところの最初のものは農業開発だろう、私はこういうふうに思うのでありまして、さしあたりこの銀行が取り組む重点の一つは、やはり農業開発問題になっていくのではないか、私はそういうふうに考えるわけでありますが、どういうプロジェクト開発途上国々から出されてくるか、これを見ないと的確な長期展望というようなものは申し上げにくいかと思います。
  18. 只松祐治

    只松委員 アメリカは現在行なっておるベトナム戦争に毎月二十億ドル使っておる、こういうことがいわれております。このアジ銀の総出資額が十億ドルであります。私たちは、すみやかにベトナム戦争が終わって、同じアメリカ資金海外に投ずるにも、兵器としてでなくて、平和経済を復興するのにこの二十億ドルが使われることを望んでやまないわけであります。  それはそれといたしまして、この十億ドルで当面大体どういうことができるか。いまアジア全体の開発幾ら要るかということがなかなか言えないという話でございます。よく計算される一つ基礎に、年間一人十ドルくらいは要るという。そうすると、インドネシアを含めて低開発国の人口が約二億人といわれております。インドネシアを除くと一億人程度になります。二億といたしまして二十億ドル、インドネシアを除いても毎年十億ドル要る、大体こういうことになるわけであります。しかし、アジ銀としては全体として十億ドルでございます。そういう出資額。いまのアジアの未開発国状況、そういうことを想定してこの十億ドルで大体どういうことができるか。特に、急逝こういうふうに進められておりますので、ほんとう各国プロジェクトができてから、あるいはそれと並行してアジ銀が進められるべきものだと思うのですが、むしろこの機構だけが先行して、各国プロジェクトというものはまだなされておらない状況にあると思っております。そういうことも関連して、ひとつこの十億ドルを日本側としてどういうことに大体使おうとしておるか、日本側計画をお知らせいただきたいと思います。
  19. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま、開発途上の国を援助する方式は、いわゆる国際的な援助方式と、それからもう一つは二国間の方式と、こういうものがあるわけでありまして、これが相並行して後進国開発を助ける、こういうことになっております。それで、その多角的な国際的ベースやり方といたしましても、コンソーシアムを結成してこれに当たる、こういうような行き方もありますれば、また、今度新たにできたアジア開発銀行を使うというような仕組みもあるし、また、以前から同様の仕組みである世界銀行もある、あるいは第二世界銀行もある、こういうようなことでありまして、この援助の窓口はひとりアジア開発銀行だけじゃないのです。これは、いろいろな道筋からの援助が総合されまして、そしてアジア開発というものが行なわれる。インドをとってみると、年間十数億ドル、コンソーシアムの形で援助をする。それでもなかなかインドの満足するような状態にいかぬ。パキスタンもそうだ。あるいはインドネシアも近く債権国会議が開かれる。そういうようなことで、そのほかに、あるいは日本とこれこれの国、あるいはアメリカとこれこれの国、オランダ、ドイツあるいはフランスとこれこれの特定のアジアの国、こういうような二国間のものがあるわけでありまして、それらが結集されてのアジア開発でございます。でありまするから、アジア開銀だけをとってその効果いかんということを論ずるのはきわめてどうも不自然なやり方考え方というふうに思うのでありますが、アジア開発銀行といたしましては、アジア開発途上国々から長期計画としてどういうことをやりたいというプロジェクトをとりまして、それを審査の上、この国の経済状況はどうだろう、また、この国の経済に対しまして他の方法でどういう援助が行なわれておる、それと組み合わしてアジア開発銀行はどういう働きをすることになるかというようなことを総合検討してやっていくというようなことになると思いますので、アジア開銀の十億ドル、これは額にすれば、あなたのおっしゃるとおり、ベトナム戦費の一カ月分である、そのとおりなんです。そうたいしたものではございませんけれども、総合いたしました場合に、上積みとしてのアジア開発銀行の働き、これは相当大きな力を発揮する、かように見ておるわけであります。
  20. 只松祐治

    只松委員 そういうお答えをなさるならば、結論的に大きなウェートを持つとおっしゃいましたけれども、アジア開銀だけじゃないわけですから、したがって、未加盟国等の問題を含んで、それほど急いでしなくても、もっとほんとうアジアの平和的な発展開発、全アジアにおけるアジア人銀行、こういう国連で当初構想されましたように考えるならば、もっとこの問題について慎重を期すべきである、今日こうやって急がなくてもいいのではないか、こういう、私が一番最初申しましたような議論の蒸し返しにまたなるわけです。アジア開発銀行だけがアジア開発機構ではないわけです。ほかの機構を通じてまだ何かすることだって幾らもあるわけです。あるいは日本独自で相手国と折衝して二億ドルだろうが三億ドルだろうが出す方法もあるわけです。近ごろ経済援助がふえて、昨年度だけでも純増が四億一千万ドルにもなっているでしょう。だから、日本だって独自にふやす方法はあるんですよ。それをなぜ今日こうやって急いでしなければならないか。それには十分なお答えをしないでおいて、じゃ十億ドルをどういうことに使うのか、計画を示さないで、いや各国いろいろなところがあるのだ、こういうお答えでは、幾ら何でも私は福田さんらしいお答えとは思わないのです。もう少し筋道の通ったお答えをきょうはいただけるものだと思っておりますが、ひとつ具体的にお答えをいただきたい。  たとえば、さっき農業開発ということをおっしゃいましたけれども、米州開発銀行の場合でも、いままでに申し込みは二十四億ドルからあるが、しかし貸し出しは九億ドル、こういうふうに、必ず今後申し込みが多くなってくると思います。どれを優先的にとっていくか、どういう開発を行なっていくか、これはたいへんな問題だろうと思うのです。多額の出資国である日本もそういうものに無関心であってはならないし、無関心であっては、これはたいへんなことになる。それこそアメリカに一方的に引きずられる、こういう形にもなっていく。当然日本が、やはりそのアジア開発構想あるいは各国の要望を聞いてこの問題を取り上げていく、いわばそういう善意の意味の親切な指導国家になっていかなければならぬ。そう遠いアメリカが年から年じゅう来てちょっかいを出すわけにはいかぬでしょうし、アジアの情勢というのは、アジアのいろいろな産業、立地条件は日本が一番よく知っておるわけですから、当然日本がそういう役目を果たしていかなければならぬ。そういうことがまた一般的にも要望されておる。とするならば、まず日本としては、一例をあげますと、日本にはたくさんのコンサルティングを業としておる人、あるいはそういうものが発達をいたしております。したがって、もっと日本独自に、あるいは各国あるいはアジア開銀の一部分にでもそういうコンサルティングを活用する、こういうものをまず日本側から申し込んで、そこで活用をしてもらう、そうすると、それが日本の人的資源の供出にもなりますし、技術の開発援助にもなるし、いろいろな面にこれはつながっていくわけです。これはほんの一例でございますが、そういう意味で、日本のコンサルティングをとにかく活用する意思があるかどうか。あるいは学校教育の技術教育の問題にいたしましても、そういう問題が当然に出てくるわけです。それはあとでおいおい聞いていきますが、そういうコンサルティングを活用していくようなことを考えておられるかどうか、お聞きしたいと思う。
  21. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア開銀ができますれば、その職員が整備されるわけです。その職員には、金融の専門家はもちろん入るわけですが、同時に、これは開発の知識を持った、あなたのおことばのコンサルティングエンジニアというような性格の人も相当参加すると思う。ただ、これはわが日本だけというわけにいかないのです。これは参加国おのおのがそういう人を出します。やはりこれは参加各国それぞれの知識、技術というものを持っておるわけでありまして、そういう最高の技術、知識というものをこの銀行に対して動員をする、こういうことになってくると思いますが、当然、わが日本も、その中の一人といたしまして、すぐれた進んだ知識と技術を持っておるわけですから、それが活用される、そういうことになることはもうお説のとおりであります。
  22. 只松祐治

    只松委員 それから、米州なりアフリカなり、多少こういう開発の勉強をしましても、未開発国家が先進国家に追いつこうとして、やはり工業開発に非常に重点を置いておる。ところが、さっき大臣もおっしゃいましたように、当然に後進国家は農業開発を完成して、あるいはそれとともに工業開発を行なっていかないと、基本的な国の開発を怠って、サルまねと言ってはたいへん失礼でございますけれども、こういう技術教育もない、あるいは工業的な基盤もないというところに工業的な設備だけを持っていく、日本側も工業製品が売れたほうがすぐ金になるものですから勢いそういうものに力を入れていく、こういうことになっていって、真の未開発国家、低開発国開発というものになっていかない、こういうおそれが多分にあるわけです。そういたしますと、そういう面についてもやはり十分に各国の立案、計画を参照し、見せていただく、あるいはこちらもそういうものに対してやはりいろいろ支援といいますか、指導、相談にあずかっていく、こういうことが必要になってくるわけです。将来この金も十億ドルじゃ足らなくなっていろいろ規模も拡大していくでしょう。おそらく皆さん方そうされると思いますけれども、そういうアジ銀の強大化というものを考えれば考えるほど、そういうものは大切になってくるわけです。したがって、ただ単に出資する、アジ銀を急いでつくる、そういうことだけではなくて、真のアジアの平和的な開発発展というものを希求する日本の側としては、やはり親切にそういう面まで相談に乗る、そういう立案をしていく、突っ込んだものの考え方をしていく、こういうことが必要だと思うのです。ところが、まあ私たちが主として反対立場から意見を申し述べた関係もありますけれども、政府側のそういうお答えというのは残念ながら一向にあまり聞くことができなかった。ひとつここでそういう点について明確な日本側立場というもの、方針というものを明らかにしておいていただきたい。
  23. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア銀行の任務は、融資でありますとか、あるいは保証でありますとか、そういう金融業務ばかりじゃないのです。つまり、この相手国経済開発、これもまた重要なる任務なんです。その開発のための技術援助、これも協定にはっきりうたわれておるわけです。この銀行の任務であると、こういうふうにされておるわけです。これはただ単なる国内の銀行とは違いまして、開発のための有効な援助をしていこう、こういうので、銀行業務と経済開発、技術指導、こういうものを一体として進められる、こういうふうに御理解願いたいのであります。その任務遂行のためにわが日本もこれは強力に参加していく、そういう方針であります。
  24. 只松祐治

    只松委員 まあ、いま強力に参加するということばがありましたけれども、アメリカは特に米州やあるいはアフリカの開銀等ですでにもう経験済みでございます。そういうところから見ても、非常に積極的にそういうことをしているわけです。積極的にすると、おのずから今後のアジ銀のイニシアチブというのはそこに移っていくわけですから、日本においても、さっき言いましたコンサルティング、あるいはその次に問題になってくるのは、どうしてもやはり、工業技術だけじゃない、農業も含んでの技術指導、技術開発というものが非常に重要になってくる。特にアジアにおける技術指導の場合には、日本の技術というものは、共通点が多いといいますか、非常に親近感を持っている。たとえば、中国に行って自動車工場を見ましても、数年前の自動車工場ですと、ソビエトからそのままの工作機械がきて、そのままのトラックができる。したがって、トラックも非常に大型ですし、ハンドルも重い。中国人の体格にはなかなか合わないわけなんです。どうしてもやはり日本からの工作機械がほしい。日本程度の自動車、トラックというものがほしい。ところが、そういう技術というものがない。これは同じことで、やはり、アメリカのいろんな機械なりそういうものを持ってくるとアジア人の体格その他に合わない、日本の工作機械あるいは日本のいろいろな農業技術ならそのまま適用できるけれども、アメリカや何かのものではできない、こういう面がたくさんあるわけです。こういうことは私があえて申す必要もないと思います。したがって、日本の積極的なるそういう技術指導等というものは向こうでは非常に親近感を持って迎えられる。したがって、これをあまり、何か他国と一緒にやるのだとか、あるいはそういう場なれたアメリカ等の一方的な指導にまかせないで、積極的にわが国がそういう面に立ち入ってほんとうの平和的な開発を行なっていく、こういうことに留意すべきであるし、力を入れるべきだと思います。重ねてその点についてお答えをいただきたい。
  25. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大体そのとおりと思います。ただ一点御注意願いたいと思いますのは、アジア開発銀行というものはわが日本銀行じゃないのです。わが日本銀行だというような色彩になればまたそっぽを向かれるというようなことになりますので、その辺はよほど気をつけながら、しかも後進国のために親切にわが日本の技術、知識というものをお貸しする、こういうことにしなければならぬ。どこまでもアジア開発銀行の自主性というものを踏んまえてのお話、さような意味合いにおいて、私はお話には全く同感であります。
  26. 只松祐治

    只松委員 こうやってほんとうの意味の開発銀行ということになりますと、あるいはそうでなくても、他の開発銀行に見られますように多くの申し込みが出てまいります。資金需要が出てくる。それから、一つのものにつぎ込むと、その開発した地域が次から次に拡大していき、計画も大きくなっていって、どうしてもさらに資金というものが必要になってくる。おそらくこの十億ドルでは間もなく足りなくなってくると思いますが、この資金にどういう見通しをお持ちになっておるか。あるいは、その増大に対して無定見に増大を受け入れるということは、わが国の財政事情からもできないわけです。したがって、そういう点に対してどういう歯どめというものをお考えになっておられますか、伺いたい。
  27. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この銀行はいま資本金が十億ドルです。その半分を現金で出資するということになっておりますが、まあプロジェクトがこれからだんだんと出てくる、それに対して融資計画をきめるわけです。この融資計画が実施されると五億ドルの資金が逐次落ちていく、こういうことになりますが、それが足りなくなりまする段階になりますると、残りの請求払いの五億ドルの資本金を調達する、こういう問題になってくると思います。それも足らなくなるということになりまると、また新たに出資しようということになってくるわけでございまするが、まあ、そこまでいくのには相当の時間がかかるのではないか、そういうふうに思います。この銀行自体としても五年後にはまた資金計画を再検討しょうということで、五年という先の年限を見ておりますのは、そういうようにこれは時間がまだかかるんだという展望に基づくものと存じます。
  28. 只松祐治

    只松委員 そう言ってしまえばそのとおりでございましょうが、何しろ出発でございますから、新たになる設立でございますから、やはり、一会社を設立するにしたって、この会社を当面どの程度の会社にしようということはだれでも考える。そうでなくて、必要があったというようなことでは相済まない。そこで私はアジア開発資金幾ら要るかというようなことをちょっとお聞きしたわけでございますが、それもお答えがないようなわけでございます。少なくとも出発にあたって、多くの国家と言っておりますけれども、日本参加しなければできないことは事実明らかですし、その指導国家日本として、やはり大体の構想を明らかにしておく必要があると思います。したがって、こんなに大きくなったならばこういうふうな歯どめをする、こういうこともこれは当然必要になってくる。重ねてそういう点についてお答えを願いたいと思います。
  29. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 当面の見通しといたしましては、五年間は今日の資金計画でだいじょうぶだ、こういうふうに見ておるわけです。五年たったらあらためて資金計画を見直そう、こういうふうに協定でもうたっておる次第でございまして、まあそのとき日本がどういう受け答えをしますか、その時点における日本経済力、また国民生活の状況、対外経済援助力というものを測定いたしまして、このアジア銀行の第二次資金計画の問題に臨む、かようなことになろうかと思います。
  30. 只松祐治

    只松委員 そうすると、いかなる事態が起こっても五年間は十億ドルをふやすことはない、ふえることはない、このことは逆に明らかですか。
  31. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大体の見通しといたしましては、この五年間はこれで間に合う、こういうふうに考えております。しかし、非常な環境の変化等がありますると、銀行の総務会におきましてまた新たなる提議をするというようなことがあるかもしれません。そういうたてまえになっておる。しかし、見通しといたしましては、さようなこともあるまい、大体この資金で五年間はやっていけるんだ、こういう見通しを持っておるわけであります。
  32. 三池信

    三池委員長 堀昌雄君。
  33. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいま議題になっております外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案について、最初に少しお伺いをいたします。  この法律案によって、かねて資金としてたくわえられておりましたインベントリーファイナンスは今度ゼロになることになります。そうして、四十一年度の一般財源のために百七億円を繰り入れる、こういうことになってまいったわけでありますが、私ども、最近の財政の状態を見ておりますと、大体あっちこっちにいろいろとありましたものは全部本年度をもって使い切った、こういうふうな感じがいたしておるわけでございます。この点について、本年度が国債の発行を行なったとともに、これまでの貯金を全部食いつぶして借金をする段階になった、これは私は財政の面で見て非常に大きな転機にいま差しかかってきた、こう考えておるわけであります。ですから、本年度の財政関係のいろんな問題は、昨年度とはだいぶ角度が変わった形で今後動いていくのではないか、こう考えるわけでありますけれども、最初に、現在の時点における予備費の使用額は一体幾らで、残額は幾らになっておるのか、これは事務当局でけっこうですから、御答弁をいただきたいと思います。
  34. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 本年度の予備費でございますが、御承知のように、六百五十億円でございます。このうち六月末までに使用いたしましたのが四十五億円でございまして、残額は六百四億円でございます。
  35. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいまの御答弁で、六月末で六百四億円、何かこの間米の生産者米価に関連をして五十億円ほどの金が出されるというふうに承っておりますが、これもおそらく予備費を充当することになるのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは予備費を使う考えはありません。もしそういう事態になれば、これは予算の補正でお願いをいたしたい、かように考えております。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 何か生産者米価に関連しての五十億円というのは補正になる、こういうお話ですね。わかりました。  そこで、その次に、これは私ちょっとよくわからないのですが、食糧管理特別会計の調整勘定へ繰り入れるという問題が毎年起こるわけでありますが、これは予備費を使用できるのか、やはりこれも補正になるのか、その点について大臣の御見解をちょっと承っておきたい。
  38. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 食管の赤字でございますが、これは年度末までに実際上生じました赤字について調整をすればよいということになっておりますので、したがいまして、実際上は、予算に予見をしなかった経費の不足でございますから、いつ入れてもかまわないわけでございますけれども、予備費よりも補正予算のチャンスのほうが多いわけでございます。あとでもよろしいわけでございますから、普通は補正予算で調整するということになっております。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、法律的には食管の調整勘定への繰り入れば最終的には予備費の充当ができる、こういうことでありますね。——わかりました。  そこで、実は現状の時点で私どもが一番いま関心を持っておりますのは物価の問題であります。この物価の問題は、政府でも物価問題懇談会等設けられて非常に熱心におやりになっておりますが、私は、やはり物価の一番のスタートというのは消費者米価ではないのか、こういうふうに考えておるわけでありますが、その点について企画庁長官はどうお考えですか。物価の一番のスタート、それは鶏と卵の議論は当然ありますが、私は、日本の場合はやはり消費者米価というものが一番最初のスタートになるのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  40. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 消費者米価の占めるウエートというものは必ずしも現在大きくはございません。しかし、過去の日本のいろいろな状況から見まして、長い間米価がやはり一つの物価の基準になっているという観念が相当広く一般的には考えられておる。したがって、消費者米価が上がるということは何か物価の高騰をもたらすのではないかという考え方が非常に私強いと思います。また、同時に、消費者米価を上げることによって波及的な影響が相当にいろいろなものに出てくるチャンスがございますので、やはりこの点は相当注意をしなければならぬ、こう思っております。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 この間からこの問題はしばしば本会議等でも論議され、各委員会で論議されたことだと思いますが、私は、現在の財政状況の中で、抽象論ではなくて少し詰めた議論をしてみて、はたしてどうなるのかということを少し具体的にお伺いしてみたいと思います。  そこで、まずこれまでの補正予算というものの分析を少しやってみました。  昭和三十八年における補正予算では、給与改善費、食糧管理特別会計への繰り入れ金、それから農業共済再保険特別会計への繰り入れ、災害復旧事業費、この年はだいぶ税収が多かったと見えて、地方交付税交付金その他産投会計なりいろいろありますが、大きいもののもう一つは、義務的経費の不足補てんというようなことが昭和三十八年度の補正の主要なる柱でございました。三十九年に参りましても、給与改善費、災害復旧費及び食管への繰り入れ、これはこの年はあまり大きくはないのでありますが、義務的経費の不足補てん、それから地方交付税の交付金、こうなっております。四十年になりますと、外国関係のものがありますが、これは例外的なものでありますから、依然として給与改善費、災害対策費、食管への繰り入れ、義務的経費の不足補てんというものが主要な問題になっておると思います。  そこで、ちょっとお伺いをいたしたいのでありますが、八月の中旬に人事院から公務員のベースアップの勧告が出るだろうと思います。大体、現在一般的に予測されておるように、公労委の仲裁裁定によって三公社五現業のベースアップというものがすでにありましたから、おそらく国家公務員のベースアップもほぼこれに見合うのではないか、こういうように考えてみますと、幾ら内輪に見積もりましても、やはり三百八十億円くらいは本年度も給与改善費を見込まなけばならないのではないのか。ここは不確定でありますから大体の見当でよろしゅうございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  42. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだどの程度の勧告に相なりますか、また、勧告を受けました場合にいつからこれを実施するかという問題もあるわけでございまして、そういうようなことを考えますと、幾らかかるんだというふうにはお答えはできません。これは御想像にまかせるほかはございません。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 実は昨年の経費が、九月からにさかのぼっておりますけれども、三百五十三億円でございますかになっております。昨年やはり基準内で六・四%アップしております。ですから、ことしはかりに六・五%アップというようにしますと約三百八十億円くらいになるわけであります。これは大臣から幾らといって伺う必要はないわけです、大体の数を腰だめをしていくためのあれですから。大体三百八十億円くらいだろうと思います。  その次に、いまのままで消費者米価を上げないと、食管の国内調整勘定に繰り入れるものが予想されておるわけですが、これは基礎が出ましたから、大体幾らになるのでございましょうか。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 七百億円ちょっと出るかと思います。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 これが約七百億円余り。  その次に、義務的経費の不足補てんでございますけれども、これは毎年の状況が、非常に多い年もありますし、多少少ない年もあります。しかし、義務教育の負担金その他は、当然これはどうしても公務員の給与改定に伴って出てくるものでありますし、あと国民健康保険助成費も、現実には医療費が相当ふえて、おまけに今度は四割の負担になっておりますから、これの精算分等も相当にあると思います。精算はきちんとできていないとは思いますが、大きなラウンドナンバーで、かりに三百億円くらいとか二百億円くらいだとか四百億円くらいだとかというような感触で、大体現状だったらどのくらいでございましょうか。
  46. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 四十年度予算の不足の見込みでございますが、いま先生おっしゃいましたように、七月末に大体決算をいたしますので、しっかりした数字はつかめておりません。  それから、本来四十一年度予算を編成いたします場合に、本年はなるべく補正予算を組まないでいけるようにしようということで、できるだけ四十年度の不足となる見込みのものにつきましては四十一年度予算に計上するという措置を講じておりますので、先ほどおっしゃいましたような、たとえば四十年度でございますとか、三十九年度におきますような義務的経費の不足の大きな補てんを必要とするという段階ではございません。私らは、大体の見当でまず五十億円を出ないのではないかというふうに考えております。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に一つの大きな項目は、御承知のように、災害復旧等事業費でございます。これは大体最近の状態を当初予算、補正及び予備費使用の総計で見ますと、三十八年度が九百七十七億円余り、三十九年度が一千六十二億円、四十年度が一千六十七億円の支出になっておりますから、大体例年並みくらいの災害ということであれば千百億円くらいということになるのではないかという感じでございます。ところが、今度は当初予算が、いまのお話のように、これは国債を発行したものですから、だいぶあちこちおおばんぶるまいになっておって、四十年は六百六十九億円くらいしか当初予算に組まれておらなかったのが、実は九百十一億円当初予算に組んである。ですから、災害の問題というのは過去における予備費の使用程度で処置ができるというふうな感じでありますけれども、大臣、災害はこれからのことですからわかりませんが、かりに例年並みの災害とすれば、これまでの慣例からいえば補正に組まなくてもいけそうだ、こう感じますが、いかがでございましょうか。
  48. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはお天気いかんによるわけでございますが、ある程度の災害復旧費というものは要る、こういうふうに見ておりますが、額はどういうふうになるか、これは全くお天気次第であります。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 私もそんな額は幾らと伺っておるわけではないのです。かりに例年並み程度の災害であったとすれば、これは差額は百九十億円くらい。私がさっき申し上げたように、公共事業のその年度に使った分は、当初予算、予備費、補正予算、これで全部だろうと思うのですがね。過去のものが繰り越してきたり、何年度災害とか、いろいろありますが、大ざっぱな議論をしておるわけです。そうしてみると、百九十億円くらいというと、三十八年の災害に対する予備費九十三億円、三十九年二百四十七億円、四十年三百三十二億円ということですから、そういう経緯から見ると、百九十億円くらいは、今度六百億円くらいからあるのですから、予備費の充当でできるのではないか、補正を組まなくてもこの点はいけそうだな、こういうわけですが、例年並みの前提で、やはりそういう場合でも補正を組む、こういうお気持ちであるかどうか、ちょっと伺っておきたい。
  50. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 災害がありました場合に、予備費で支出するものももちろんあるわけであります。しかし、補正時になったというと、予備費を落としてそれを財源として補正に組むという行き方もあるわけで、従来もそうしておるケースが多いのであります。そういうようなことでありますが、とにかく六百五十億円の予備費を組んでおるわけであります。普通ならば、優にそれで対処し得るというふうに考えております。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 私がこういう議論をいましてまいりましたのは、要するに、そうやってずっと中身を調べてみると、さっきの義務的経費の不足補てん問題の五十億円、食管の七百億円、給与改善費が約三百八十億円と、かってに計算しますが、それを入れまして千百四十五億円くらいというのが、現実には消費者米価を上げなければ補正を必要とする総ワクではないのか、こう考えるわけですが、その点は仮定のことでけっこうですが、そういうことになりましょうか。
  52. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 こういうふうにお考え願ったほうがいいのじゃないでしょうか。食糧関係で繰り入れがふえる、これは七百億円ですね。それから給与改善費、これが幾らになりますか、合わせますと、どうしても千億円をこえるようなことになるのではないかと思います。それに義務的経費、これは些少だと思いますが、それと、それから災害が幾らになるか。そのトータルに対して財源はどうだ、これは予備費が六百億円残っております。こういう状態でございます。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 主税局入っておりますか。至急入れてください。  そこで主税局が入ってないようでありますから、企画庁長官にちょっとお伺いをいたしますが、実は、ことしの経済見通しというのは、鉱工業生産の伸び率が大体八%ということで組まれておりました。そして、企画庁からお出しをいただいたのが一月二十七日でありますが、この「昭和四十一年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」で、四十年度の鉱工業生産の実績見込みは一七三・九、こうなっておりましたけれども、現在の実績は、これが一七六・五、実は実績が少し上に上がってまいりました。これはことし一月以来生産が予想したよりも非常によくなったということの一つのあらわれだと思います。そこで、前年比が、初めは三十九年、四十年は二・四%増だと見たのが、実は三・八%増と、予想よりもちょっと高くなってまいりました。さらに、この六月までの最近の傾向というのは、ここのところずっと鉱工業生産はじりじりと上がってまいりまして、大体四十一年と四十年の上期の比較で六・五%、それから四十年下期と四十一年の上期とで七・三%と、かなりこう上昇がはっきりしてまいりました。特にこれが一月から上昇してきておりますし、この情勢でいくと、まあ最近新聞にも出ておりますけれども、八%を少し上回るのではないだろうか、私もそう感じます。過去における日本の景気の回復状況というのは、特に今度は在庫調整が非常に進んでおりますので、在庫補充がかなりなスピードで行なわれる可能性がある。それから、昨年の暮れの予算委員会で皆さんに申し上げておりました春闘は、私が期待した程度の成果があがったものですから、要するに個人消費については心配がないと大体私はいま考えております。在庫補充は、いまの見通しでは実は八千億円程度に見ておられるようでありますけれども、私はどうもこれはこういう情勢から見ると八千億円をだいぶ上回るのではないだろうか、こういう感じがいたしますが、本年度の現在時点における、要するに生産その他の見通しでございますね、そこについてちょっと企画庁長官からもお答えをいただきたいと思います。
  54. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いままでの傾向はお示しのとおりでございます。そして、将来の見通しを数字的に申し上げることはまだ困難でございますけれども、諸般の情勢から見まして、こうした趨勢が減退していくという状況ではないように思います。したがって、どれほど伸びるかということはまだはっきり申し上げかねますけれども、この趨勢がありますから、成長率七・五%と見ましたものが若干上回るのじゃないだろうかというふうには考えております。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、私がいまこの問題に触れておりますのは税収の問題でございますが、実は本年度の法人税収はたいへん調子がようございまして、法人税収を五月末の累計で見ますと、本年の五月末累計が二千五百三億五千万円、昨年の六月末累計が二千五百七十億七千三百万円でありますから、一カ月ぐらいのズレがあるほど実は法人税収はいま伸びておるわけであります。で、主税局長が間もなく入ると思いますけれども、ことしの法人税収の見積もりの基礎はどうしてこうなっておるかわかりませんが、生産が四・七%の伸びで、物価が一・七%の伸びで、相乗で六・五%法人税収の伸びと、こういうふうに推定しておるわけですが、私は、どうもいまの生産の状況、伸び率、そういうものから勘案をしてみまして、さらに、現実に起きておるこの法人税収の伸び、これについては、この前も大臣から御答弁がありましたように、金利が安くなったので、延滞利子を払うより借り入れをするという問題もあるかもしれませんが、しかし、やはり三月期決算以降じりじりと少しずつよくなりつつあるのではないか、最終的には九月決算の結果を待たなければわかりませんが、財源のほうは、補正財源の一千億円程度のものは十分これは問題がないような感じがいたしますが、大蔵大臣いかがでございましょうか。
  56. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ年度途中でございまして、早々でございまして、的確なことはもとより申し上げられないのです。四月、五月だけの実績をとってみますと、徴収率は幾らか予定よりもよろしゅうございます。よろしゅうございますが、御指摘のように、低金利状態下でございまするものですから、延滞よりは納税をというような風潮もあるようでございまして、はたしてこれがほんとうの景気上昇を反映している増収であるかどうかということは的確な判断ができない。ただ、大観いたしまして、予定を食い込むというような状態ではないように思う。プラスアルファが一体どのくらいいくか、こういうことになりますると、九月期の決算、これが勝負どころではないかと思います。これを見ないとまだわからない。千億円出るというふうに申し上げることは非常に大胆な推測と思いますが、まあともかく幾らかは残りそうだ、そういうふうなことになってくればいいかなあといって、ひたすら念願をいたしておるわけであります。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 これは先へいってまたわれわれ大蔵委員会をときどき開いていただきますから、点検をしてくればわかることと思いますが、やはり今日の諸情勢の動きですね。日本の場合は、一応底が入った場合にはかなり生産その他が上がりぎみだ。そんなに急激に上がるかどうかは別としても、上がりぎみになって、ベースがかなりいまのところ高いのです。要するに、ことしの四月の鉱工業生産の原指数が一八六・一、五月が一八六・九、六月が一九一・五、原指数がかなりベースがもうすでに高うございますから、これでいくと、前年比で見るとかなりな伸び率が生ずるのではないかという感じがいましているわけです。  私がいま長々とこうやって議論をしてまいりましたのは、要するに、現在の時点で六百億円の予備費が残っておる、かりに千億円自然増収として財源が見込めるならば、千六百億円の金が一応ここにある。その千六百億円の金があって、さっき私が申し上げたように、平年度並みの災害ならば二百億円くらいで済む、それから、さっきの食管への繰り入れと給与改定費で百億円を少し上回る、あと五十億円くらいが義務的経費、そうすると、それを全部合わせまして千三百億円くらい、まだ三百億円くらいは本年度財政にゆとりがあるとするならば、私は、物価の観点からして、消費者米価を上げなくてもことしは処理ができるのではないのか、こういうふうに考えるわけでございますが、大蔵大臣のその点についてのお考えですね。これまで総理は、上げるような上げないようなわけのわからぬ方向で、検討する、こうおっしゃっています。私は、少しいま議論をこまかくして財源等の見通しその他から勘案すれば、もしかりに税収が千億円あるという見通しが立ったら、災害も平年度並みだという前提に立ったならば、あえて消費者米価を値上げしないということが、これが物価の基準のスタートになる意味で非常に重要だと思いますので、計数的に見ても消費者米価を上げないでいけるのではないか、こうお伺いをしたいわけであります。
  58. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 非常にデリケートなお尋ねでございますが、消費者米価問題は、一つは財政の問題があります。しかし、一方において物価の問題、国民の生計費の問題、こういう二つの問題があるわけなんです。その三つの要素を総合的に観察して判断をしなければならぬ、こういうふうに私は考えておるわけです。物価問題、非常にまあデリケートな段階であり、かつ国民生活もそう楽じゃない今日でございまするから、なるべくなら消費者米価を据え置きたいのです。据え置きたいですが、しかし、財政の状況、これの推移をよく見なければならぬ。これはことしの財政状況ばかりじゃありません。来年のことも考えなければならぬ。総合的に検討いたしまして、そういう気持ちで対処していきたい、かように今日はお答えするほかないのであります。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの御答弁で来年の財政の問題までお触れになったのですが、私は、確かに来年の財政というのはたいへんむずかしい問題があると承知をいたしております。これは過ぐる予算委員会において総理大臣との間にお約束がかなりしてございまして、国債の発行についてはワクをきめさせていただいておるわけですから、そういう中での財政というのはなかなか問題があろうかと思いますが、しかし、これは、いま大蔵大臣もおっしゃったように、企画庁長官もさっきおっしゃったように、いまの日本の政治の中で何が一番大事かといえば、やっぱり物価を上げないようにするというのが一番大事な問題ではないのか。その物価を上げないようにするために、財政的には本年度でも処置ができるということが明らかになっていて、しかし、来年度の財政の問題も含めて考えるとすれば消費者米価を上げるのだなということは、これは国民感情としてはなかなか納得のできない問題だ、こう思いますので、ちょっとここのところをもう一ぺんだけ、たいへんしつこいようですが詰めて伺います。もちろん、本年度の自然増収その他景気の状況によりますからわかりませんので、もっと先で議論させていただきますが、要するに、財政的には処置が可能であるという限界が明らかになった場合には、私はやはり、消費者米価は上げないでいきたいということが政府の基本方針であってもらいたい、こう国民の立場から思うのでありますが、その点、大蔵大臣いかがでございましょうか。
  60. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 堀さんの御意見はよくわかります。消費者米価は先ほど申し上げましたような原則できめてまいりますから、きめる場合の貴重な資料にさしていただきたい、さようにお答えを申し上げます。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 だいぶ不確定要因も多いことでありますから、いまの御答弁で、もう少しいろんな情勢が明らかになってからまたもう一回やらしていただくこととして、問題を次に移します。  主税局長が入りましたからちょっと伺っておきますが、あなたのほうの今年度の法人税収の見積もり九千三百二十二億九千九百万円、減税前の見積もりでありますが、これの基礎になった生産一〇四・七%というのは、これは大体本年度の鉱工業生産の伸びをどのぐらいに見て計算をされたのか、ちょっとそれだけ伺っておきたいと思います。
  62. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 ただいま資料を見てお答えいたしたいと思いますが、例の経済計画に見ました生産見込み、生産指数を基礎といたして計算いたしております。具体的には年度の時期的なズレもございますので、これを何%か、いま資料を差し上げて御説明をしたいと思います。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 これは非常に長い期間に関係がありますから、局長が見える前にちょっと私触れたんですが、この四十一年の上期一−六月の鉱工業生産というのは予想より非常に順調に回復をしつつあるということでありますから、私はさっきも申し上げたんですが、おそらく今年度内に自然増収一千億円くらいはいまの調子なら出そうだ、いかがですか。
  64. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 先ほどの数字について御説明申し上げます。  先ほども申し上げましたように、経済計画をもとといたしまして計算しておりますが、税収べースでは、生産は四・七%、物価は一・七%、これは通常国会の際に御説明したとおりでございます。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 生産が上がってくれば、当然これは改定されてふえるだろう。ですから、もしかりに、本年度の鉱工業生産八%増となっているのが一〇%ぐらいに上がったら、それがこの法人税収にはね返るはね返り方というのはどのぐらいですか。
  66. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 御指摘のように、確かに、生産が上がりますれば、現在の操業度のもとでは利益が上がるということが想定されるわけであります。しかし、決算にはいろんな要素がございますので、先生御存じのように、必ずしも法人税収がどの程度上がるかどうかわからないのでございますが、いままでの私どもの調査では、三月決算は前期に対しまして二%ぐらいよくなるんではないかと見ておりましたけれども、大法人の調査では六%程度。実はその点がおそらく堀先生の言われました生産が上昇した結果がその原因の一部になっておろうかと思います。しかしながら、九月期の見通しを最近でも私どもは大法人につきまして伺ってみますと、必ずしも生産の上昇があらわれてない。大体前期三月期とそんなに変わらないというのが見通しでございます。  私どもの現在の法人税収の内容は、これも大臣がたびたび言われておりますように、延納率が減り、即納率が上がってきた、その見積もりの違いの結果現在のところ法人税の税収がいいように見えておる、これが今後の推移によってどう変わりますかは、私どもこれからもまた調査してまいりたい、かように考えております。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 いずれも将来のことでありますから、これはここまでにいたしますけれども、さっき申し上げましたように、私は、物価の問題については、財政が許せばひとつ消費者米価は据え置きにしてもらいたい。かつて昭和三十九年でありましたか、三十八年でありましたか、池田前総理が、消費者米価は当然上げるべき段階がありましたが、公共料金は一年ストップということで一年延ばしたという経緯もあるわけでございますので、その点は十分御勘案を願いたいと思います。  その次に、今度はちょっと通産大臣、おそれ入りますが、前のほうにおいで願いしたいと思います。公正取引委員会委員長も、ちょっとおそれ入りますが前のほうにお願いいたします。  実は、国債の対象となります公共事業の問題でありますが、本年度の公共事業は、失対、特別失対等を含めまして約八千八百億円、こういうふうになっていると思います。これは通産省でも大蔵省でもどちらでもいいのですが、この八千八百億円の公共事業に対して、鋼材についてはどのくらいの費用が入っているのか、ちょっと答えられるところで答えてもらいたい。
  68. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 あとで資料でどうでしょうか。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 いまちょっと準備がないようでありますから、これは一ぺん御調査の上資料でお願いをしたいのですが、実は、最近の異常な鋼材価格の値上がりの問題というものが日本の公共投資に非常に大きな影響を及ぼす、現状では政府が非常に大きなユーザーの一人になっているのではないのか、こういうふうに考えているわけです。現状では、さっきもお話が出ておりましたように、財源としては非常に苦しいわけでありますから、鋼材価格があまり高くなることは、これは市中一般のユーザーにも関係をいたしますけれども、日本の財政にも関係がある、こういうふうに私は考えますが、大蔵大臣いかがでございますか。
  70. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公共事業の中で鋼材は相当使うのではないか。その他でも鋼材はとにかく経済的に見て相当のウェートのある物財でございます。ですから、その価格がどうなるか、これは甚大なる影響があるわけであります。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大蔵大臣も、財政担当者として、鋼材の値上がりが公共事業その他に非常にはね返る点については、これはもう御心配のある点だろうと思います。  そこで、実は通産大臣にお伺いをしたいのでありますけれども、私、ことしの二月二十八日の予算委員会の分科会で通産大臣にこの粗鋼減産の勧告指導と申しますかについてお伺いをいたしましたときに、通産大臣はこういうふうに私の質問にお答えいただいているのです。ちょっと部分で恐縮ですが、「全部が協調の精神でがまんをしたんですよ。みなが満足でないのです。そういうことでああいうコストを割ってきた。それで平炉メーカーなんかはばたばたと倒れたでしょう。こういう状態が続いていけば、緊急避難といいますか、異常な事態であるということで不況カルテルをつくればいいのですけれども、平炉メーカーは百軒もあるのですね。なかなかまとまらない。そんなら通産省はまとまらないからといってこのような不況産業を黙っておっていいかというと、私はそうは思わない。」「しかし、だれもみなが満足するようなことはできないのですから、設備を十分持っておるものに対して生産を制限するわけですから、できるだけ短期間にああいう事態は終わらすべきである。長期にああいう行政指導による勧告操短のようなことを恒常化することはいけない。できるだけ短期に終わらすべきものである。」、こういうふうにお答えになっている。ここではっきりしておりますことは、これは要するに、平炉メーカーが百軒もあるから、不況カルテルができないから、緊急避難として粗鋼減産という行政指導を行なったのだ、こういうふうにお答えをいただいておるわけでありますが、その点をちょっと確認をしたいと思います。
  72. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そのとおり堀さんにお答えしたような心境で粗鋼減産をやっておったわけでございます。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実はきょうは少し詰めた議論をさしていただいて、はたしていまの通産省がやっておられる行政指導なるものが国民のためかどうかという点を少し明らかにしていきたいと思います。  そこで、実は私の手元に、四十一年七月八日、重工業局の「粗鋼生産調整の必要性について」という資料をちょうだいしておるのですが、その中で「全体として鉄鋼業は未だ不況状態から脱却しておらない。(1) 鋼材需要は公共事業用材を中心として本年初頭から増勢に転じたが、最近のテンポは鈍化し、四十年ベース一期内需五百三十万トンの一〇%増、五百八十万トン程度の横ばいで推移しており、底固い状況にはない。」——「最近のテンポは鈍化し」、こういうふうに当時七月八日現在お答えになっておるのです。これは最近鈍化しておるでしょうか。
  74. 三木武夫

    ○三木国務大臣 最近の需給状態を事務当局から答えさせます。
  75. 高島節男

    ○高島政府委員 需給状態という観点からとらえてまいりますのは非常に判断のむずかしいところでございますが、公共投資の操り上げがございまして、一般の需要が第一、第二四半期に比較的表面化してまいりました部分について、これが最近のところの足取りはやや頭打ちではないかというように推定をいたしております。(「公取に聞け」と呼ぶ者あり)
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ、ぼつぼつやりますから……。  テンポは鈍化したということは、やっぱり鈍化ということになったようでありますが、鈍化かどうか、次に行きます。  「市中相場でみると厚板、薄板は上昇してきたが、最近では頭打ちに転じている。鉄鋼流通の約八〇%は需要家と直結(形式的に商社が入るが)しており、この価格は市中相場を相当下廻っている。」ひもつきの需要家の価格は、確かに市中相場を下回っていることは私も認めます。しかし、「厚板、薄板は上昇してきたが、最近では頭打ちに転じている。」こうなっているわけです。私は先にちょっと公取から伺う前に、ことしの七月二十日の「日本経済」にこういうふうに出ているのです。「鋼材一段と上げる」、「冷延薄板は六万円台へ」、「冷延薄板のベースは高値で五百円方上げ、ついに六万円相場に突入、三十八年九月以来の高値となった。一ミリ、一・二ミリなど品切れサイズはひと足先に六万円台に乗せ、現在では六万四、五千円でも入手困難といわれているが、比較的潤沢とされていたベース物も六万円台に顔をそろえ、公販届け出価格を一割強も上回る結果となった。大手メーカーが打ち出した緊急出荷による高値抑制策も、「現実に品物が出るまでは問題にならない。出てくるのは早くて八月下旬」と足元をみられているため、圧迫材料とはなりにくいようだ。また一千トンの放出を予定しているメーカーに対し、七千トンの申し込みがあったともいわれ、八月には一段高があろうといわれている。熱延薄板も前日の高値に一本化した。厚中板は六ミリを中心に軒並み五百−千円方ハネ上がり、六ミリなどは届け出価格を一万円(二割二分)も上回って、なお一段高が見込まれている。市中では「メーカーは冷延薄板を過熱の元凶のように見て手を打っているようだが、最も深刻なのは六ミリだ。六ミリにも品物を回すべきだ」といった意見も出ている。このまま放置すれば六万円近い高値にまでハネ上がるとの見方もされている。」あとこまかいのがありますが、「軽量形鋼は現物の入手難で千円方急騰して五万三千円以下の売り物が姿を消す一方一部では五万五千円以上の高唱えも散見。厚中板は品薄から東京にサヤ寄せする」——大阪の市況であります。「サヤ寄せする傾向が強く、軒並み五百−千円上げた。」これが実は七月二十日の大体の状態です。  そこで、先にちょっとお伺いをしておきたいのは、鋼材の価格というのは、一体何を基準として鋼材は価格をいうのか、それをちょっとお答えを願いたい。
  77. 高島節男

    ○高島政府委員 鋼材の価格は、結局、行なわれております取引の実態に応じてその品種ごとに非常なバラエティーがございまして、とらえどころが非常にむずかしいことは御承知のとおりでございます。ただいまおあげいただきました厚中板あるいは薄板といった品種につきましては、市中相場は、大体において市中価格の取引に依存しておりますのはきわめて少ないパーセンテージになると思います。大まかに申しまして、直売りのほうが八割、市中価格に依存する取引のほうが二割くらいでございますが、その二割の中でも相当のものがひもつきになっておりまして、取引の実態が動いておるようでございます。したがって、これも実態調査は非常にむずかしゅうはございますが、やはり直売りを中心にしてどういう価格形成になっているかということが、実態の非常に大きなウエートを占めると思います。したがって、市中相場というものは、これは一つの参考にはなってまいる材料とは思いますけれども、そのウエートはきわめて低い、こういう感じがいたすわけでございます。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 通産省の「普通鋼々材用途部門別受注高」というのがございます。それで見ますと、昨・年度の第四四半期で普通鋼鋼材六百七十六万七千トンの中で、販売業者にいっておりますのが百二十六万トン、約五分の一、二〇%いっております。そうして私は、いまあなたの話でこの市中相場のものはたいして影響がないと言われるけれども、一体この直取り関係にあるのはどういうのかといえば、これは建設業、産業機械、電気機械、あるいは家庭用事務用機器、船舶、自動車、鉄道車輌、容器、こういうところはあるいはそういう直接の取引になっているかもしれませんが、その他の中小企業、数多くの中小企業は一体市中から買わなくてどこから買うのですか。あなた方の頭の中には大きなメーカーのことはあっても、通産省というのは、私は、中小企業というのはめんどう見ないところかという感じがしてしかたがないのですが、中小企業は直接に直物で買えますか、買えないでしょう、どうですか。これは当然市中価格で買うから値段が上がるのだろうと思うのですが、その点どうでしょう。大臣、どうぞひとつ。
  79. 三木武夫

    ○三木国務大臣 むろん中小企業というものに対しては、通産省として、非常に重点を置いておる行政であることは間違いないわけであります。したがって、鉄鋼の市況の状態というものにわれわれ注目をしておるわけです。いま堀んさのおあげになった薄板なども六万円ということは、これはどういうことからそういう数字になったのか、非常な思惑でそういうことがあるかもしれませんが、そういうようなふうには考えていないのでございます。しかし、どうしても中小企業は、大企業のようなものでなしに、市中価格に依存するわけですから、今後この動向に対しては注目をせなければならぬというふうに考えております。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 公正取引委員会にお伺いをいたします。  ただいまこれから申し上げる品種についての四十年六月末と最近時における価格をひとつお答えいただきたいわけです。棒鋼十九ミリ、それから等辺山形鋼、要するに中形形鋼でありますが、それから厚板、中板、熱延薄板、冷延薄板、それから軽量形鋼、ガス管、亜鉛鉄板、以上について六月末と最近時の価格をちょっとお答えをいただきたいのです。
  81. 北島武雄

    ○北島政府委員 私ども、鉄鋼を直接主管いたしておりませんので、はたしてこの調査が確実かどうかわからないのではございますが、一応鉄鋼連盟その他のとかろから出した資料によりまして申し上げるわけでございますが、まず小棒十九ミリは、昨年の六月末が二万九千五百円でございましたのが、ことしの七月二十二日の調べでは三万一千九百円、この土曜日の二十三日は三万二千二百五十円と相なっております。それから等辺山形鋼でありますが、これが昨年の六月末三万二百五十円、これがことしの七月二十二日二万四千二百五十円、厚板十九ミリ、昨年の六月末三万六千円、ことしの七月二十二日四万五千七百五十円、中板三・二ミリものでございますが、これが昨年の六月末三万七千円、これがことしの七月二十二日五万六千五百円、二十三日の土曜日は五万七千二百五十円、それから熱延薄板一・六ミリ、これは昨年の六月末三万八千二百五十円、ことしの七月二十二日五万四千七百五十円、二十三日の土曜日は五万五千二百五十円、次に冷延薄板一・六ミリ、昨年六月末四万四千五百円、ことしの七月二十二日五万九千五百円、二十三日の土曜日は六万五百円、軽量形鋼、リップ形と言うんだそうでございますが、それが昨年の六月末三万五千五百円、ことしの七月二十二日五万三千二百五十円、二十三日の土曜日は五万三千五百円、それからガス管は、昨年の六月末五万七百円、これがことしの七月二十二日五万七百円、それから亜鉛鉄板一枚当たり、昨年の六月末二百三十円、ことしの七月二十二日二百四十円、以上のような数字でございます。
  82. 堀昌雄

    ○堀委員 通産省、異議があったら言ってください。
  83. 高島節男

    ○高島政府委員 ただいまのお答えで、市中相場の動きとしましてはそういうトレンドをとっていると思います。ちょっと全部をチェックいたし切っておりませんが、おそらく市中の唱え値をおとりになったものでありまして、そういう材料によっているんではないかと思いますが、ただ月央と月末とで一応きちんととってくるのが、むしろ市中相場としてもまた基準でございます。それから、一日一日は非常に変動、思惑等もこれは入っているかと思います。それからガス管の数字は、四十年の六月は四万八千七百円、現在のベースは七月で四万八千円という形に相なっております。  それから全般について一言申し上げておきたいことは、六月は結局底値といいますか、一番生産調整をしなければならぬところへ落ち込んだ状態の相場でございます。それに対して現在の価格というものがこういう推移をとっておりますが、これは国際価格等と比較いたしました場合には、いろいろ問題があると思います。
  84. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ、通産省は自分のほうでやっておられることだからいろいろなことが言いたいと思うのです。国際価格がどうだとか直物の価格はどうだとか、いろいろあると思うのです。それから、さっきの六月末日というのは一番落ち込んだところだ、緊急避難ですから、一番落ち込んだところをスタンダードとして比較するのはあたりまえですよね。そこで、いまの数字を、私ちょっと簡単に引き算してみたのですが、棒鋼——あとのものを平均してないから、七力二十二日と言われた分で計算してみると、棒鋼二千四百円値上がり、それから中形形鋼四千円、厚板九千七百五十円、中板一万九千五百円、熱延薄板一万六千五百円、それから冷麺薄板一万五千円、それから軽量形鋼一万七千七百五十円、ガス管と亜鉛鉄板がその当時と持ち合い、こういう事実ですね。  藤山さんにひとつ伺いたいのは、あなた、この異常な鉄鋼の値上がり、これは関連産業に全部影響します。いま二割が市中に出て八割は直取り関係だ、こうありました。しかし、フリーマーケットの価格があとの価格を規定する以外に、いまの資本主義社会で価格のきめようがあると私は思わないのです。だから、たとえそれが二割でもフリーマッケートの価格が上がればあとの直取り価格は当然上がってくる。せっかくみなが生産をやろうとしている最中にどんどん価格が上がってくるということは、鉄鋼はいいかもしれないけれども、その他の全産業に影響を与える、こう私は考えるのですが、この異常な値上がりが通産省の行政指導による勧告の結果起きているわけですね。これをひとつ、藤山経済企画庁長官、物価という側面からどうお考えになるか、お答えいただきたい。
  85. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今日、卸売り物価の高騰というものを、われわれは、やはり消費者物価だけでなしに、十分注意してまいらなければならぬところでございまして、卸売り物価そのものが四・四%上がった中で、非鉄金属を除きますと一・八%、しかし、上がり傾向にあることは事実でございますから、これは十分関心を持ってまいりませんと、物価政策の上からいって非常に困ると思います。したがいまして、鋼材の値上がり等が起こりますことは、異常な高騰をもし続けるとすれば、私どもも十分物価問題の見地から関心をいたさなければならぬところでございます。ただ、現状までのところ、通産省の御説明のとおり、私どもも緊急避難的なものをもう一ぺんぐらいやっていかないと安定しないのではないか、そうして、生産を増強していく道を開いていくことによってこれ以上の値上がりをとめていくという作用が起こってくると思いますので、その点、いま様子を見ておるところでございます。
  86. 堀昌雄

    ○堀委員 企画庁長官も通産大臣にちょっと遠慮をしておられるのか、たいへんどうも奥歯に物のはさまったような御答弁で、私は日ごろの藤山さんらしくないと思うのですけれども、あなたは財界の御出身者だから、財界全般として、鉄さえよければあとは要するに万骨枯れてもいいとは、私はおそらく財界といえども考えていないと思うのです。  そこで、もう一つちょっとこの資料について言わせていただくと、「すなわち価格上昇をみたのは、厚板、薄板等一部品種にすぎず、この割合は大手六社でみて二四%程度にすぎず、平電炉メーカーの割合は更に少ない。」こういうふうになって、そこで「値上りの実質的影響は全出荷量でならせば、減産前と比べて極く僅かであり、収益面は依然として苦しい。」これは鉄鋼会社のことでしょうが、政府も通産省も、鉄鋼メーカーだけは、その点ではいやに同情が深くて、ほかのやつ全部いま苦しいんでしょうね、三木さん。鉄鋼だけが苦しいんじゃないと私は思うのですが、通産省は鉄鋼だけは特にここへ取り上げて、収益面は苦しいと、こうある。  これはまあこういうことですが、その次に、今度の粗鋼減産と前回の粗鋼減産とは非常に相違があるわけです。前回の粗鋼減産というのは、三十六年の第三クォーターに対して最初二〇%、それから三〇%という粗鋼減産をやって、そして三十八年の第三クォーターのときでも一七%減という非常に制限をした状態だったですね。ところが、今度はどうかというと、この間皆さんのほうで指示をなすった一千三十八万六千トンというワクは、史上始まって以来最高のワクなんですね。減産をお始めになったときとは非常に違う。高炉十社だけで見ましても、四十年の一クォーター、このときが減産に入ったときですが、四十一年の二クォーターで六・二九%増になっておるのです。もしこれを三十九年の下期に比べれば一四%ふえておる。情勢は非常に違うわけです。さらにここにはこう書いてあるのです。設備余力が一千万トンある、第二四半期は、いろいろ修理中のもの等もあるから年率五百六十万トンだ、こうなっておるのです。年率五百六十万トンということは、このクォーター百四十万トンということですね。ところが、第二クォーターでは七十万トン増ワクしているのです。設備余力七十万トンになったわけですね。設備余力七十万トンというのは、いまの一千三十八万トンに対しては七%弱しかないのですね。七%弱くらい設備能力が余っておるから、それでともかくもこれを手放しにしたら、あとここへまたずっと、いろいろなことが起きますよと親切丁寧に書いてあるのですが、私は、ここらの認識は、前回の粗鋼減産と現在の粗鋼減産というものは本質的な相違がある、こう考えますけれども、三木さんどうでしょうか。
  87. 三木武夫

    ○三木国務大臣 前回の場合とは、本質的と言えるかどうか、非常に環境は違っておると思います。したがって、今度の粗鋼減産の場合には非常に慎重に検討を加えたわけでありますが、まだ諸般の情勢が手放しにはできないという、アフターケアといいますか、鉄鋼のような重要な基幹産業については、どうしても通産行政というのは用心深くならざるを得ない。(堀委員「特別扱いですね」と呼ぶ)七・九は特別ではありません。特別に扱いをするわけはないけれども、鉄鋼のような基幹産業で混乱が起こるというようなことがあればこれはたいへんなことになるということで、用心深く、通産省としては、七・九についてはこの粗鋼減産を続けようという方針をきめたわけでございます。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 実はどうも三木さんも、日ごろの三木さんと違ってあまり説得力ないですね。私も、説得力のある御答弁をいただけば、いつまでもこんなことを言ってないのですがね。まことにどうも説得力がない。  そこで、この資料に基づきますと、もし生産調整をやめたらどういうことになるのかというので、ここにこういうことが書かれております。「能力等の規模において大きな隔たりがない各社が、一様に設備圧力に悩んでいる。」一様に設備圧力に悩んでおるものが実はどういう設備投資をやっておるのか。産構審の「昭和四十一年度設備投資計画の調整について」というのを拝見をいたしますと、「昭和四十一年度における鉄鋼業の設備投資計画は二、〇九七億円」、これは現在の設備投資計画の中で、ともかく業種別に一番大きな設備投資計画です。それで「普通鋼部門は四十年度に比し二七三億円一七・二%の増加……となっておる。このように、昭和四十一年度における投資計画の増加は、主として普通鋼部門における大幅な増加によるものであり、これは一部四十年度からの支払のずれ込みにもよるが、大部分は新規工事の増加によるものである。」設備能力があり余るから調整をしなければいかぬと言っておる鉄鋼が、ともかくこの中で一番ウエ−トの高い設備投資を要請をして、そうしてここにはこういうふうに書かれております。「高炉の新設工事については、需給上問題がないのでその着工を認める。また、転炉および電気炉の新設工事についても、高炉の建設に伴い必要となるものあるいは平炉とのリプレイスを目的とするものであるので、その着工を認める。」こうなっておる。よろしゅうございますか。高炉が一つできれば、現在は百五十万トンとか非常に大きな高炉をこれから建てるのだろうと思うのですが、その高炉に見合う転炉をそれとのセットで認めるというほどにやって、片方では設備の余力があるから、通産省は緊急避難を依然として継続をして、生産調整をやるというようなことが論理的に考えられるでしょうか。三木さん、どうでしょう。
  89. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、鉄鋼も各国とも非常に設備が大型化してきておるし、日本は、設備余力があるといっても、新しい新鋭の設備を全然やめるというわけにはいかないわけであります。したがって、そういう意味において古い設備を新しい設備に取りかえていくということは、これはどの産業においても当然あり得ることであります。しかし、鉄鋼を非常に用心深くわれわれは考えて、そして、このことから日本の産業界に混乱を起こさないようにという配慮からいたしたわけでありますが、これはその間において市況の状態等もにらみ合わせて、粗鋼減産をやっておる時期においても、このことが需要者に対してやはり非常に価格のつり上げを来たさないような配慮、これは十分にやる責任があると思っております。したがって、七−九の間はこの粗鋼減産を続けていく、しかし、その間需要者に対して非常な価格のつり上げのような事態に対しては、やはり適当な処置をとらなければならぬ。それは生産をふやすとか、そういうことで需要家に迷惑をかけないような処置は、われわれとして考えなければならぬと考えております。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話ですけれども、この資料にも、「需要家に対しては絶対に迷惑をかけないこととしている。」というのですが、現在迷惑がかかっておると思うのです、こんなに上がっちゃったということは。第一、品薄で手に入らない品種もあるわけですね。おまけに、現在の問屋在庫というのは六十万トンしかないのですね。これが大体ことしの四月です。いま、もうちょっと問屋在庫は減っているのじゃないかと思うのです。これも通産省の資料ですからね。六十万トンの在庫というのは、これまでで見ると三十七年くらいのときにしかそういう状態はないのですよ。一九六二年の二月に五十六万三千トン、しかし、そのときの生産というのは百七十三万トンなんですね。いまは二百五十九万トン生産していて、問屋在庫が六十万トンなんというのは異常な状態なんですね。ですから、私はここで申し上げたいのは、何か三クォーターやめるのだという話がちらほら出ているようですが、そういう問題ではなくて、ここまで回復をして、要するに、市況が強くなってきておるのなら、これは期中であろうとも適当な時期に打ち切るのが、私は、中小企業のためでもあるし、それから財政に対する国のためでもあると思う。じゃ、それを打ち切ったから一斉に増産に転ずるといっても、これはいまの一千三十八万トンというようなものをこれから何割も増産できっこないのです、いまの情勢から見て。だから、私がここでちょっとこの議論を申し上げているのは、やはり私は、物価という側面からこの問題については通産省も少し真剣に考えていただかないと——いま私がここでるる申し上げたことは、これは絶対に緊急避難の対象ではないですよ。この点について、期中においてもさらに過熱するような状態があるならば、これはすみやかにひとつ指導を取りやめてもらいたい、こう思ってお伺いしたのですが、通産大臣いかがでしょう。
  91. 三木武夫

    ○三木国務大臣 行政指導というものは、 できるだけそういう必要がなくて、経済が秩序ある運営をされることが望ましいのですから、これがきめたからといってどうしてもせんならぬというものではないが、いまのところは、七−九はやはりこれを続けていこうという考えでございます。しかし、市況の状態等もにらみ合わせておりますが、一方において、こういう間に鉄鋼業界自体が真剣に将来のあり方について検討を始めておることは、堀さん御承知のとおりであります。これはやはり、こういう状態をいつまでもだらだら続けていくわけにはいかぬということは、われわれとしてもしばしば述べておるわけでありますから、次に鉄鋼業界はどうあるべきかということに真剣に検討が始まっておるということは、非常に私はいい傾向である、そういうことで、業界が自主的に、鉄鋼のような基礎産業が秩序のある運営がされることが望ましいので、行政指導のごときは、一日も早くこういうものをやめていくべきが本質のものだという考えでございます。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの御答弁で、私は再検討をひとつしていただくことだろうと思います。このことは、日本経済にとっても非常に大きな比重があることでありますし、来年度予算に関係があることでございますから、特にひとつ慎重に願いたいと思います。  それから、外為会計の問題にもう一ぺん返りまして、現在の国際収支の今後の見通しの問題でありますけれども、実は、経済企画庁で今度経済白書をお出しいただいておりますが、そこで、私が国際収支の面でちょっと気にかかりますのは、やや国際収支に対しては楽な見方がされておるような感じがいたします。  実は私はさっきからかなり生産のことを申し上げておりますけれども、現在非常に原材料在庫というのは底をついておりますから、もし生産が徐徐に上がってきますと、輸入というものはかなりふえてくるのではないだろうか。輸出は、いまのベトナムの戦争が続いておる限りはあまり落ち込まないのではないかという感じがいたしますが、輸入のほうはふえる可能性が相当にあるのではないか。ここでグラフその他が出してありますが、私は、この点は少し慎重に考えておく必要のある問題ではないのかと思いますが、企画庁長官はこれについてどうお考えですか。
  93. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御指摘のように、輸出は比較的順調にいっておるように思います。ただ、昨年末の見通しを立てましたときより輸入のほうは若干ふえる傾向でございます。いま御指摘のような在庫関係その他もございまして、やはり輸出はふえるけれども、輸入のほうも同時にふえていくというような状況じゃないかと思います。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、そこで実は私、この二月に、大蔵大臣アメリカの金利問題に関連をして国際収支の問題を少し議論をさせていただいたことがございます。私、あのときに、やがてはアメリカも公定歩合を引き上げるだろう、こう申しておりましたが、公定歩合こそ引き上げませんけれども、プライムレートもBAレートも全部一ぺん上がってしまって、公定歩合が上がらないというだけで、実質金利というものはアメリカも非常な高いところに来ましたし、イギリスも七%に上がりましたし、西欧、アメリカ、全部いま金利が高くなっています。これをずっと突き詰めてみると、あのときに申し上げた労働力という点に壁があるものですから、そういう面から見て、なかなか簡単にこの高金利状態はおさまらないのではないか。私、新聞でちょっと拝見したのですけれども、何か大蔵大臣は、内外金利をひとつ遮断をしたいというような向きのお話が出ておったような感触があるのですが、私は、開放体制下でなかなか内外金利遮断なんというものはできっこない、だから、長期資本収支、短期資本収支を含めて、資本収支はなかなか今後問題があるのではないかという感じがいたします。貿易外取引もやはり問題がある。もし輸入がふえてくることによって、経常取引の黒字幅が減ってくると、なかなかゆゆしき問題になるのではないか。実はイギリスがいま非常に問題になっておりますけれども、この前いただいた一九六五年末の資料で見ると、輸入に対する金外貨準備は、アメリカが六六%、イギリスが一八%、西ドイツ四〇%、フランス五九%、イタリア五九、日本はその当時二十一億ドル余りで二五・八、二六%、よその国の半分以下というのがいまの日本の実情でございますが、私は、この点は、やはり景気のいろいろの問題の中で非常に微妙な段階に来ておる、円シフトなんというような愛国心だけで片づかぬ問題になるのじゃないか、こういうような感じがいたしますが、そういう国際収支についての大蔵大臣の御見解をひとつ承っておきたい。
  95. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済問題を論ずる場合に、国際収支が最終最大の問題である、これはこの前から堀さんが話をされ、私もその説には敬意を表しておるわけなんです。ただ、今日の日本の国際収支ですね、これは数年前と比べますと全く型が違ってきた、昭和三十六、七、八、九、この四カ年間は経常収支が赤字なんです。それを資本収支でまかなっておるわけであります。実にこの三十九年の中ごろまで、これは二十六億ドルの経常収支の赤字、同じ額を借り入れをしておる、こういう状態です。その後国際収支の形が、輸出の増進と同時に一転してまいりまして、その後の今日まで二年間にその改善を実現してきておるわけです。大体十五億ドルぐらいな経常収支の黒字でありまして、それに見合って、今度は資本収支がほぼ同額の赤字になってきておる。つまり、外貨保有高は二十億ドルで、ずっとここ数年間動きません。動きませんが、その内容というものは、非常に改善をされてきておるわけであります。今年度以降の状況は、お説のとおり輸入がどうなるか、こういう問題だろうと思う。まあしかし、私はそうえらい急激な輸入の増という状態はないのじゃないかというふうに思っておりますが、輸入の増があるということは、国内がブーム状態になる、こういうことを反映するわけであります。そういう状態にはなるとは思いませんが、しかし、景気の回復と同時に、また遊休設備が稼働化するに従いまして輸入がふえてくる、こういう趨勢にはなってくるだろう、こういうふうに見ておるわけでありまして、そういう変化等も考えまするときに、国際収支政策、これはほんとう経済運営のかなめとして重要視していかなければならぬ、かように考えております。  それで、いま御指摘の国外が高金利になってきておる。これは一つは、世界のキーカレンシーといわれるポンドが、その防衛政策のために高金利政策をとっておる。これは非常に高い金利、七%の公定歩合まで上げてきておる状態でございます。それからアメリカ経済ベトナム状況等の影響を受けて過熱調整政策というものをとるというようなことで、まあ一般金利水準が高くなってきておる、こういうようなこと、キーカレンシー二つが——特にイギリスなんですが、高いものですから、その影響を受けまして各国とも高い傾向になってきておりますが、ただその影響として、わが日本の短期資本が、あるいは輸入ユーザンスが影響を受ける。ユーロダラーだとかが海外へ移る傾向を生ずる、あるいはユーザンスを国内資金を使うというふうなことになる傾向がございますが、これはいなめません。いなめませんが、とにかく、外国資金日本に入ってきておる、しかも短期の資金が入ってきておるという状態は、私はそう好ましい状態ではない、こういうふうに見ておるわけです。また、国際収支の面から言いましても利払いを必要とする、そういうことになるのでありまして、私は、外貨保有高の著増を犠牲にいたしましても、短期資本等が減るということは、かえって国際収支を健全化するゆえんである。一部の人が非常に騒ぎますが、騒ぐほどの心配も実はしておらないのです。海外金利高でそういう影響がありますが、それを額にしてどのくらいになるか、そうたいした額にもならない問題で、日本が低金利政策をとっていく上において支障があるというような状態ではない、こういうことを申し上げているのです。日本は、いま基準の国際金利をとってみますると、上がった上がったという、特に著しいイギリスなんかは別でありまするが、その他の国に比べますると、上がったという外国に比べましてもまだ日本の金利は高いのでありまして、私は、金融機関が合理化、近代化を推進して、日本はその金利低下、産業の負担を軽減して、自由経済下の世界貿易で有利な地位を獲得する基礎固めを急がなければならぬ、こういうことを申し上げているわけなんです。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、比較的楽観的にいまの海外金利高を見ていらっしゃる。ものの考え方としては、私どもも、ホットマネーのようなものがないほうが安定をいたしまするし、借り入れ金が少ないほうが望ましい、これは当然でございますけれども、現実は、やはりそれによってかなりささえられているということもいなめないわけでございますね。要するに、輸入ユーザンスの残高が、ほぼいまの日本の外貨準備に見合うほどあるということも、これはわれわれゆるがせにできない大きな問題であります。それやこれやを考えてみますると、私は、よほど慎重な対策が常に講じられていないと、これはやはり問題があろう。特に最近、日本の外貨準備というのは、二十億ドルというところをほぼ横ばいでずっといっているわけですね。しかし、日本は生産力といい、あるいは貿易量といい、最近顕著に伸びてきたわけですね。そのことは、相対的にいえば、外貨準備は減りつつあるというふうに見てもいいわけだと私は思うのです。ですから、その点について現在のゴールドトラッシュを引いた残りを見ますと、かつてかなり騒いだころの水準くらいにあるような感じがいたしますので、それはいよいよ困れば、IMFからの協力を求めるとか、いろいろあるでありましょうけれども、やはり私は、今後の海外の金利高というものに対して、日本の場合、どうしても国債をここ二、三年は最低発行していかなければ財政は持ちませんね、現実の問題として持たない。それほど、国債を発行しなくても全部自然増収でまかなえるようになるなどと私ども考えておりませんから、そういう情勢の中では、はたしていまのような程度のことだけでいけるのかどうか、非常に疑問があるわけでありますが、その点は具体的に、それではいまどうしたらいいかという問題もそう簡単にはないわけでありましょうから、私ちょっと何かで、海外金利と国内金利の遮断というような雰囲気の御発言を新聞で見たように思ったものですから、これはそう簡単にいかない。ですから、それがいかないとするならば、それに対する対策というものがなければならないのではないか、こういう感じがしましたのでお伺いをしたのですが、結論的に、これに対する現状における政府の対策というのは、どういう指導というか、方針でおやりになるのか、それだけを伺って質問を終わりたいと思います。
  97. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 やはり国際収支におきまして、経常収支ですね、これを相当良好な状態に置くということかと思います。昨年は、輸出は二十億ドルの輸出超過である。貿易外を差し引いても十億ドル近くの黒を残す、経常収支はそういう状態だったわけです。ことしもほぼそれに近い状態を実現しよう、こういうふうに見ておりますが、何としても経常収支、これを相当額の黒字に置きたい、そのために国内の産業、経済の施策もそういう方向の施策、これをやっていかなければならぬ、さように考えておる次第であります。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、要するに三つの点を議論さしていただいたわけですが、三木さんにはお疲れだと思ってお帰りをいただきましたけれども、企画庁長官及び大蔵大臣、消費者米価の問題あるいは粗鋼減産の指導の問題、これはいずれも国民生活に非常にかかわりのある問題でございますから、この二点については、ひとつ経済閣僚会議等でも十分私どもの意のあるところについて御検討いただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  99. 三池信

    三池委員長 永末英一君。
  100. 永末英一

    ○永末委員 経済企画庁長官に対してお伺いをいたしますが、中期経済計画はいま御破算になってない、こういうことですが、中期経済計画には、海外経済協力に対する規模が一応組み入れられて計画を立てられておったと拝聴しております。ところで、いま中期経済計画はございませんから、新しい長期経済計画を策定中であると伝えられておりますが、この新しい経済計画は、いつからいつまでを目途としていま策定中であるか、伺いたい。
  101. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 明年度を初年度といたしまして五カ年、大体そういうことで進めております。
  102. 永末英一

    ○永末委員 この新しい経済計画には、海外経済協力に対する考え方を盛って立てられる、こういう御方針であるかどうか、伺いたい。
  103. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回の経済計画の重点としてわれわれ考えておりますものは、物価の安定あるいは国民生活の充実、それから産業基盤の育成、特に中小企業、農業等に対する構造改革、こういうことが重点でございますが、経済計画でございますから、海外経済協力の問題につきましても、その中にある程度織り込んでいくことは当然だと思います。
  104. 永末英一

    ○永末委員 政府は、大体一九六四年以来、海外経済協力に対しては国民所得の一%を盛るように努力をしたい、こういう御趣旨を中外に宣明してこられたと思うのです。したがって、この新しい経済計画におきましては、いまのような国民所得の一%を盛る、こういう御方針で立てられるかどうか、伺いたい。
  105. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 政府はたびたび、国際会議等で一%、あるいはソフトローンについても申しております。したがいまして、それらのものをできるだけ早い時期に達成できるようなことに考えてまいりますけれども、必ずしも五年間に達成できるかどうかというところまでについてはまだ決定をいたしておりません。
  106. 永末英一

    ○永末委員 中期経済計画におきましては、一九六八年度に大体〇・九二%ぐらい海外経済協力に使おう、こういう一応の見通しを立てておられる。新しい経済計画は六七年度から始まるわけでございますが、六七年度から始まるとしまして、現段階では〇・六三%程度である。そうしますと、開きは相当ある。過般の大蔵委員会大蔵大臣は、四十二年度、四十三年度の財政状態考えると、大きく経済協力の費用を出すわけにはまいらぬ、こういうお話がございました。そこで、これらを踏んまえて、もしわれわれ日本国が経済協力に対してはっきりした方針を出そうとするならば、この新しい経済計画の中にやはり海外協力に対するかまえというものを明示すべきであると思います。この点について、経企庁長官のお答えをいただきたい。
  107. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 新しい計画の中で、御指摘のように海外経済協力、ことに東南アジアに対しては十分われわれも介意してまいらなければなりませんから、そういうかまえを持って経済計画をつくるということはわれわれ考えておるのでございますが、ただ、まだ国民所得の計算もどの程度に伸びていくかわかりませんし、それに対する一%が必ずしも五年間に十分できるかどうか、できるだけそれに近づけていくということには持ってまいりますけれども、いま作業中でございますから、確定的に申し上げるわけにいかないと思います。
  108. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣は、昨年の七月、パリのOECDのDAC会議におきまして、国民所得の一%を目途として日本国も海外経済協力を行なう、そういう御趣旨の発言をされ、その会議の勧告が採択される場合に、同様の内容について同意をされておると聞いております。  そこで外務大臣、あなたは一体どの程度の年限を考えて、わが日本国の国民経済の中から国民所得の一%を協力する用意がある、こういう御発言をされたのか、伺いたい。
  109. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本アジアの唯一の先進国として、アジアに多数低開発国をかかえておる関係上、応分の責任を分担しなければならぬ立場にあることは申すまでもございません。それで、国民所得の一%の経済協力をいつ果たし得るかということを考え返事をするという立場でなくて、とにかく、先進国の一国として当然その責任を分担しなければならない立場を十分に自覚しながら、その目標に向かってできるだけ早くこれを達成するようにしたいという気持ちを持って、日本の代表からこの問題を述べたと考えております。  さて、現状に即していつごろからその公約を果たすことができるかということにつきましては、十分にこれは関係各省とも相談をした上で、その目標を定めていかなければならぬ問題だと考えております。
  110. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣も時期等については明言を避けておられる、経企庁長官はいま作業中である、必ずしもその五カ年の計画に盛るか盛らぬかまだわからぬ、こういうことでございますが、日本が特に東南アジア等の新興諸国から望まれておることは、あの大きな経済力をわれわれのためにどの程度の犠牲を払ってくれるんだろう、こういうことでないか。そこで、この段階で作業中であるから答えられないというのは、行政官庁の責任者としてはさもありなんと思いますが、経企庁長官、あなたが日本の国の責任を海外経済協力について果たそうという立場にお立ちになるのなら、せめてこの長期計画の中にその程度の目標を明示することは必要だとお考えになりませんか、お答え願いたい。
  111. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これはただいま外務大臣も言われましたように、国際会議等で外務大臣もできるだけ早い時期に一%に達するように努力したいと言われておるのでありまして、われわれも日本アジアにおける立場、またアジア以外の先進国としても、先進国立場からして今日南北問題が非常に重要な問題なときに、五カ年と言わず、できるだけ早い時期に可能ならばやっていきたいということはわれわれ考えております。また同時に、ソフトローンとの組み合わせとの問題も考えていかなければならぬと思いますので、いまそういう希望を持ちながら作業をいたしておる、こういうことでございます。
  112. 永末英一

    ○永末委員 経企庁長官、その新しい計画は、いつ策定を完了するというお見込みで作業を進めておられるか、伺いたい。
  113. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体十一月末までに新しい計画をつくり上げる、こういうことで作業いたしております。
  114. 永末英一

    ○永末委員 海外経済協力につきましては、一%ということを政府の一応意思として中外に明示しながら、最後の詰めばなかなかできていない。  ところが、国内においては、同じように国民所得のある部分を食おうとする計画が進んでおる、すなわち第三次防であります。第三次防は国民所得の二%程度を使いたい、こういうことで作業が進められ、最初は、五、六月ごろこれを完成したいというような方針を防衛庁長官から国会委員会において明示がございました。目下それはまだきまっておりません。しかしながら、いま経企庁長官が言われたように、新しい長期計画は十一月を目途としてこれを完成しよう、こういうことでございますが、それまでにこの防衛計画なるものが、国民所得の二%を食おうというような防衛計画がつくられては、言うならば新しい経済計画の先取りを許す、こういうことになる。そこで、新しい防衛計画とこの経済計画とは時期を同じゅうしておつくりになる方針か、あなたは国防会議の議員ですから決定権があるわけだ、お答え願いたい。
  115. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 わが国の自衛力を漸増していくという立場に立ちまして、防衛庁長官が新しい計画をつくられる、そして防衛庁長官としては、一応国民所得の二%くらいを目標にして問題の成案の検討をしておられるということはわれわれも承知しておりますし、また、防衛庁長官の立場からすれば、そのくらいでやってもらいたい、こういうことだと思います。ただ、日本経済計画を立てます上におきまして、はたして国民所得の二%が可能であろうかどうかということは、いま直ちに私ども言明はできません。これは海外経済協力の問題の一%と同じように、すべての他の事情等も勘案しながらやってまいらなければならぬと思います。ですから、防衛庁がいろいろそういうような指示によって計画を立てられていきますこと自体は、防衛庁自身の仕事でありまして、またそれは熱心にやられることが適当だと思いますけれども、それを総合して最終的に結論を出し、考えるというのは、防衛庁以外のいわゆる国防会議その他が決定をすることになりましょうし、また、そういう決定に対して経済企画庁としてどういうふうにそういうものを織り込んでいくか、また、織り込む場合に企画庁長官としての国防会議における発言もできるわけでございますから、そういうことを勘案してやってまいりたい、こういうことでございます。
  116. 永末英一

    ○永末委員 それでは、第三次防衛計画なるものが国防会議で承認になる時期は、片一方、経企庁において長期経済計画の一応のブループリントが完成する、それと見合わなければならぬ、こういうお考えでございますか、もう一度伺いたい。
  117. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本経済、財政事情を考慮して防衛計画というものは考えていくことがいいわけでございます。ただ、防衛計画そのものがかりに立てられても、その年度に対するやりくり等もございますから、必ずしも五カ年そのものを全部否定するのか、あるいはその年度別のものを勘案するのか、そこいらは問題はございます。ですから、そこいらを考えながら私どもとしてはやってまいりたい、こういうことでございまして、いま直ちに二%を承認するという立場に立ってはおりません。
  118. 永末英一

    ○永末委員 新聞の伝えるところによりますと、防衛庁と大蔵省とがこの問題で折衝しております場合に、大蔵省側の意見として出されましたのは、まさしく経企庁長官の言われた点、すなわち国民所得の二%というような額を先取りするような形で一体支払い能力があるかどうかということについて大蔵省は難点を示しておられると伝えられております。この点について大蔵大臣の見解を伺いたい。
  119. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 第三次防衛計画につきましては、防衛庁の試案というようなものが大蔵省にまいっております。それに対して大蔵省も勉強いたしておるわけなんです。その過程でいろいろと意見の交換をしておるのですが、この第三次防というのは非常に重要な防衛計画でございますので、これは国防会議にかけなければならぬ、そういうものです。まだ国防会議にかける議案としての段階まではきておらないわけであります。まだそれ以前の段階でやりとりをしておる、こういうふうに御了承願います。
  120. 永末英一

    ○永末委員 本年度の国の財政は、公債というものを含んで出発をいたしました。そこで、いよいよ新しい経済計画を立てる場合に、これは日本経済の成長率等の勘案を別にしながら、公債をどうするかということを片一方考えませんと、第三次防衛計画がもし公債に見合って立てられるということになりますと、われわれには、いわゆる公債で軍事費をまかなった苦い思い出があります。その公債の見通しと防衛計画に要する費用の見通しについて、いまのところ経企庁長官はどういうお考えを持っておいでになるか、伺いたい。
  121. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 防衛費の問題は、御指摘のとおり、私どもも財政事情を勘案してまいらなければならぬ。財政を危殆に瀕するような状況に防衛費を持ってまいるわけにはまいりません。やはり健全な財政があって初めて防衛そのものも充実していくわけでございます。したがって、公債発行下における財政のあり方というものについては、これは大蔵省でも十分検討されて、われわれの計画策定に御意見が出てまいると思いますが、そういうものを考えながら、他方では減税その他の問題もございますから、そういう問題もあわせて考え計画に織り込んでいく、こういうことになろうと思います。
  122. 永末英一

    ○永末委員 現在の防衛計画は、先ほど大蔵大臣が言われたように、防衛庁長官が試案のごときものをつくって、これを国防会議に提示をし、きめる。これは第一次防衛計画も第二次防衛計画も同じような手続でございます。ところが、実際の問題としましては、これは各省に影響のあることである。特に三次防のように全然他国からの援助なしに自力でやる、こういうことをたてまえとする以上、これが波及効果、日本経済に及ぼす効果はきわめて重大であると見なければならぬ。その場合に、国防会議にいまのような姿で防衛庁長官が出してくる、いわば兵器量の積算をやるだけの防衛計画というものであってはならぬとわれわれは考えておりますが、この点については、いまそこにおられるお三方すべて国防会議の議員でございますから、防衛計画の立て方についてはひとつ慎重に御検討願いたい。いずれわが党も成案をもってまみえたいと存じます。  そこで、外務大臣に伺いたいのでございますが、今回のアジア開銀にわれわれ日本国が参加をしていきます場合に、やはりわれわれ日本国の基本的な態度というものについて、このアジア開銀加盟する諸国あるいはエカフェ参加しながら加盟しない諸国も深甚な注視の眼をもって見ておると思います。私はこの点について過般の大蔵委員会で質問をいたそうと準備いたしたのでございますが、外務大臣は残念ながら時間切れでその場におられませんので、外務大臣からお答えを願うことができなかったのでこの機会に伺っておきたいと思います。  つまり、われわれがちょうど四月に東京において東南アジア経済開発閣僚会議を開きました場合には、まさしく軍事的にコミットをしておる諸国と軍事的にコミットをしてない非同盟諸国と、これを東京に集めて会議をお開きになる、それには一つ日本政府、外務省の方針があらわれておったとわれわれは判断をいたしました。ところが、六月にソウルで行なわれたアジア太平洋外相会議、これに参加をいたしました諸国は、全部が軍事的にいわゆる自由陣営にコミットをしておる諸国ばかりである。この会議日本国が参加するということを、いわゆる非同盟諸国、エカフェなりアジア開銀参加をしておる諸国から見た場合に、一体日本の基本的な方針はどっちだろうかということを、非常に困惑の情を持ってながめたに遭いないと思います。私は、ソウルにおける日本外務省の働きはそれぞれ評価さるべきものがあったと考えております。しかしながら、この機会に、このアジア開銀において、うたい文句のように、いわゆるこれら東南アジア地域における新興諸国の経済開発、それに協力をする立場として、われわれ日本国が軍事的にコミットしょうと、しておるまいと、やはり一律平等の立場において立ち向かうのだ、こういう御意思があるかどうかを、外務大臣からこの際明らかにしていただきたいと存じます。
  123. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 四月の、狭い意味の東南アジア開発閣僚会議については、私が申し上げるまでもなく、十分に理解をいただいておるようでございます。  問題は、ソウルの会議でございますが、これとどういう関係があるか。これは、成り立ちから申し上げますと、もともと韓国によって提唱された国際会議であります。もう三年越しの問題でありまして、当時はまだ日韓正常化ができておらない、そういうことで、しかも当初は日本に呼びかけなかった。ただ、その後加盟を予定されておった国々から、日本参加しないアジア会議というものは意味がないんだというような意見が出たとかいうことを聞きましたが、それで、そういったようなことに刺激されて、韓国から非常に丁重な招請、勧誘があったのであります。これは日韓正常化が根本であって、それができるかできないか、まだ確たる見通しがつかないうちにそういう国際会議に出るということはどうも適当でないように考えて、これを断わっておった。そのうちに日韓関係の正常化がだんだん進行いたしまして、韓国としても他を顧みるいとまがないというので、しばらくの間はこの問題は立ち消えになっておったのでありますが、いよいよ正常化ができた今年になりましてこの問題を再び提起してまいった。そこで、集まる国々から見て、どうもいろいろな批判があるということは当然のことのように思われる。そこでわれわれとしては、せっかくの勧誘でありましたけれども、準備会議だけはひとつ出ましょう、そして準備会議においてこの会議の性格というのがはっきりするはずであるから、その性格を見きわめた上で日本がこれに正式に参加するかしないかということを決定する、こういうことで、バンコクにおける準備会議に出先の大使をして出席させまして、日本考え方を率直に述べたのであります。  すなわち、ただいたずらに反共とか、あるいはそれに類した政治的なスローガンを掲げて気勢を上げるというような会議は、第二回AA会議が流れた前例にもかんがみて、もういまはあまり意味がないんだ、そういうものはかえっていたずらに新しい対立を生むというようなことにならぬとも限らない、そういうものであってはいかぬ、ともかくアジア太平洋諸国がお互いに連帯感を持って、そしてお互いの国をりっぱに育て上げるということのためにお互いに協力するというような態勢なりあるいは空気を盛り上げるということならば意味があるかもしらぬというようなことで、その点十分に日本の意のあるところを力説をいたしました。ところが、予期に反して非常にこれが各国の共鳴を得たのであります。  そういうことでございますので、特別に積極的にその必要を当初からわれわれは提唱したわけじゃない。勧誘されて、まあお仲間として、とにかく一応何がしか意義のあることであるならばおつき合いしなければならないという考え方のもとにソウルの会議に正式に参加するということに踏み切ったわけであります。  そういうわけでございまして、ソウルの会議は特に具体的に共通点を認識して、その共通の問題を実際上推進して具体的な効果をあげようというようなものではない。いわば四月の開発閣僚会議が各論であるならば、ソウルの会議は、連帯感を広く固めて、そしてお互いにりっぱな国をつくり上げるように協力をしよう、そういったようなごく概括的なアイデアを打ち出した、こういうことになると思う。これはいわば各論が先に出て、総論があとから出てきたようなかっこうにも解釈されるのでございます。さようないきさつでございますので御了承を願います。
  124. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣、各論の場合には非同盟諸国は加わっておって、いろいろ相談された。ところが、その総論的部分とでもいうべき、あなたのことばをかりますと、いわば連帯感をつくるという目的で行なわれたソウルの会議には西側の軍事同盟国ばかり、これでは総論と各論とがはみ出ているでしょう。われわれが心配しているのは、あなたはソウルの会議はおつき合い程度だ、こう言われたけれども、われわれは、総論をつくるとするならば、まさしくこのアジア開銀のいろいろな加盟国にあるように、軍事同盟国も非同盟国も、やはり日本としてはアジアの平和のためには全部入れてやるのだ、こういうかまえがはっきりと出てこなければならぬ。そこで、ソウル会議は、東京会議の総論にもならなければ、前提にもならぬ、こういうことをはっきり言っていただかなければ、ソウルのほうが総論で、各論が東京だ、こういうことになりますと、各論のほうではみ出ている国は一体どうなるのか、こういうことになろうかと思うのですが、伺いたい。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 申し落としました。われわれはそういう意味で、ソウルの会議には広く非同盟の国々にも呼びかけてその出席を求めるべきであるということを主張したわけであります。私はそのラインに沿うて、当然幹事国である韓国がそういう手続をとったものと実は考えておったのでありますが、わずかにその後ラオスがこれに参加をした。ということは、ラオスはお誘いがあれば出席するという意思がほの見えたのだそうであります。せっかくラオスに力を得てはかの非同盟の国にも誘いをかけてみて断わられるということになると、非常に何となく失態であるというような、そういう配慮があったのかもしれませんけれども、結果においては、さようなぐあいで中途はんぱになってしまった。そこでわれわれとしては、ソウルにおきましてこの会議の性格をはっきりさせるために、今後はアジアの他の諸国、非同盟の諸国にも案内状を出して、そして広く第二回目の会議参加するように努力すべきであるということを提唱しまして、さようなことに決定しておる次第であります。
  126. 永末英一

    ○永末委員 ラオスは形式的には非同盟国ではございますが、現在のプーマ政府というものは、軍事的には西側に組み入れられた形でしか政治が行なえない、そういう状態になっていることは外務大臣も御承知のとおりだと思います。ただ、ソウル会議で、今後非同盟諸国にも呼びかけよということを日本政府が言明された。これは初めて伺ったが、なかなかいいことだと思うのです。しかし、そのいいことをもう少しあとづけるために、私は、現在のアジアの政治の中で、ベトナム戦争を一体どう見ておるかということが、それぞれ各国政府の外交方針をきめる一番有力な手がかりになると思います。  そこで、そういう関連で一言外務大臣に伺っておきたいのでございますが、過般来北ベトナム政府の手中に落ちたアメリカの飛行士、これが一体どういう待遇を受けるか、北ベトナム政府の方針がどうきまるかということをめぐりつつ、非常に緊迫した情勢が続きました。ところが、昨日の北ベトナム政府の発表によりますと、この米人飛行士は、従来北ベトナム政府が言っておったような戦犯ではない、しかしながら捕虜でもない、これはベトナム国民に対する犯罪人だ、こういう判定を下して、この線に従ってこれらの飛行士の処置をしよう、こういう声明を発表いたしました。その二十三日に先立つ一日前に、これに対する調査委員会を設置するということを発表し、これを動かしておるという事実を表明をいたしました。日本政府は、いま北ベトナム政府にいわば抑留されておるこれら北ベトナムに攻撃をかけたアメリカ軍飛行士、これが一体どういう国際法的地位にあるとお考えか、伺いたい。
  127. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 条約局長から答弁させます。
  128. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 北ベトナム当局の発表につきましては、実は私もどうもよくわけがわかりません。法律的にはどういう考えでいるのかということはわからないと申し上げたほうが正直なのでございまして、ただ、新聞等の解説によりますと、これはとにかく裁判を延期するということが眼目だというように報ぜられておりますが、それだとすれば、従来から日本政府といたしましても希望していた線に沿った処置であろう、かように考えます。
  129. 永末英一

    ○永末委員 いま外務大臣条約局長答弁を譲られて、条約局長はよくわからぬ、こういうお話でございますが、もう少しこれを詰めておきたいと思います。  すなわち、北ベトナム政府は、従来これらの飛行士は戦争犯罪人である、しかも、北ベトナム政府は捕虜に関する一九四九年の条約に一九五七年に参加をいたしておりますが、その場合、ニュールンベルグ裁判を援用して、これに該当する者はこの捕虜ではないのだ、そういう取り扱いをするという留保条項をつけてこの捕虜に関する条約に参加をいたしておる。これらを通じて流れておる思想は、今回の一応の結論とあわせて考えると、国内法によって処断できるものだ、こういうことを北ベトナム政府は明らかにしたのではないか、このように私は思います。だといたしますと、これはいわゆる正式の宣戦布告のない戦闘状態ではあるが、この捕虜条約に照らして捕虜として取り扱わるべきである、こういうアメリカ政府の見解に対して、これはまっこうからそうではないのだ、こういう一つの意思表示を北ベトナム政府はやったと受け取るのが至当であると考えますが、この点について日本政府はどうお考えか、伺いたい。
  130. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 法律論としましては、いま仰せのような解釈も可能であろうと思います。
  131. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣法律論としてそういうことが外務省の見解であるとした場合、国内法でこれらの飛行士が処断をされるという時期がきた場合に、どんなことが起こると外務大臣はお考えになりますか。
  132. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 戦時国際法の予想しておる問題からそれた取り扱いが行なわれるわけでありますが、法律論はしばらくおくとして、もし俘虜に国内法の裁判で処刑が行なわれるということになりますと——もちろんその処刑にも程度はございますが、相当重い処刑が行わなれる、場合によっては死刑というようなこともあるわけでありますが、そういうようなことがもし行なわれると仮定しますれば、かなりこれに対するアメリカ国民の憤激ということから、米国としてもある種の報復的な処置に出ざるを得ないというようなことになりかねないのでありまして、戦争を拡大せず、しかもできるだけ早くこれを収拾しようという世論と非常に違った事柄が起きてまいるのではないか、そういうことを考えまして、日本政府としてはまことにその点は憂慮にたえない、かように考えております。
  133. 永末英一

    ○永末委員 私どももまことに憂慮にたえない気持ちでこれを見守っております。しかし、ただ憂慮しておってもらったのでは政府としての責任は果たされないのでございまして、北ベトナム政府が裁判を延期するというその延期の間には、あるいはこれらの事件を終結に導くある政治交渉の場があるかもしれないし、あるいはまた、中共軍が北ベトナムに対して何らかのコミットをする時期を待っているのかもしれないし、私ども日本としては、もし中共軍が北ベトナムにあるコミットをするとすれば、これは重大な問題を日本国内に引き起こす問題だと考えます。  そこで、外務大臣に伺いたいのは、過般のハノイ、ハイフォン近辺の爆撃以後、七月九日、周恩来中共首相は、AA作家緊急会議において演説をいたしました。また七月十八日、人民日報が中共のとるべき態度に対して社説を発表いたしました。七月二十二日には北京におけるベトナム人民支援百万人集会において、劉少奇国家主席が、中共人民は最も大きな民族の犠牲を払う用意があるという声明を行ない、また陶鋳副首相は、ジュネーブ協定はもはや存在していない。これはいままでの周恩来並びに人民日報の社説をもう一ぺんはっきりと明言したものであり、さらにまた陶鋳副首相はいわく、中共人民がいかなる行動をとってベトナム人民を支援しようとも、もはやいかなる制限も受けなくなった、こういうことを言っておるのであります。しかも、先ほど申し上げました劉少奇国家主席のその声明にこたえて、いわゆる朝鮮戦争時代の人民解放軍をつくっていくべきだ、こういうような一種の世論操作が行なわれていると聞いております。これはゆゆしき重大事である。日本政府はこのハノイ、ハイフォン爆撃以来、中共の中に行なわれてきた一連の事態、これを、中共が北ベトナムに対して軍事的に介入をする判断と相まって、現在一体どういう判断をしておられるか、伺いたい。
  134. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これをまっ正直に、中共の百万人集会における劉少奇の明言を文字どおり受け取るということになると、これはゆゆしい問題だと思います。しかし、私は必ずしもこれが直ちに実行に移されるものではないと考える。問題の収拾を真にこいねがうならば、やはり北ベトナムの南越の破壊分子に対する援助工作というものをやめて、そして両方とも武器を置いて和平のテーブルに着く、そういう点を目標にして努力すべきである、こう考えております。
  135. 永末英一

    ○永末委員 憂慮をされておる結論が、北ベトナムなり中共が南ベトナムに対するいろいろな支援をやめるのが先決だ、こう言われるが、いまの問題は、アメリカの北爆の範囲並びにこれの拡大、こういうことによってこれらが触発をされてくる、北ベトナム政府もこれらアメリカ国飛行士の裁判の延期を発表した、その時期というのはおそらくは非常に重要な意味を持っておると思うわけであるが、その場合に、日本政府は憂慮をしたり、いままで千編一律のごとく繰り返してきたことばを繰り返すのではなく、何らか打つ手があればやるべきだと思いますが、あなたはそう思われませんか。
  136. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その点についてはいまさらの問題じゃない、この新しいハノイ、ハイフォン近郊の施設の爆撃であるとか、あるいはまた捕虜の待遇問題というようなことが起こる以前から、すでに戦争は一日も早くこれは収拾すべきものである、そういう考えのもとに日本としてできる限りのことはしてまいったつもりでございます。その点は、今回の問題の有無にかかわらず、一貫した日本政府の方針でございます。
  137. 永末英一

    ○永末委員 私は、その一貫した御方針を伺っているのはでなくて、一貫した方針を現実の転変する政治舞台で一つ一つ対応していく、これをやらなければ国際政治じゃございませんでしょう。たとえば、イギリスのウィルソン首相が二回にわたってソビエトを訪問し、この間またインドのガンジー首相が訪問をいたしました。これはわれわれの見解によりますと、中共の北ベトナム介入があった場合に一体ソ連がどう出るであろうか、どう出さぬほうがいいかということをはらみつつ、いろいろの交渉のあった事件だとわれわれは判断するわけである。おりしも、ソ連の外務大臣が訪日をされました。私は、日本政府は、単に北方漁業の問題あるいはその他の日ソ間だけの懸案事項にとどまらず、ベトナム戦争についても十分ひとつ腹を断ち割って話されることが必要だと考えますが、そういう御用意があるかどうか、伺いたい。
  138. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 きょう第一回の会談を終了いたしました。きょうは二国間の諸懸案の問題、その他二国間の将来の起こり得べき問題等につきまして、会談を遂げたわけであります。第二回目、すなわち明日は国際問題、両国の関心が払われておる国際問題について、忌憚のない意見の交換をすることになっております。
  139. 永末英一

    ○永末委員 四月の東京会議に示されたように、日本アジアの軍事的同盟国あるいは非同盟国全部を包みつつ、アジア全部の平和と安全の問題について非常に大きな関心を持ち、責任を持つ、こういう立場でかまえられるならば、あした行なわれるべきあなたとソ連のグロムイコ外相との話に、アメリカの代弁者という立場であってはならぬとわれわれは考える。別個の日本立場というものがあって初めてソ連もまたその話に乗ってき、乗ってきた場合に初めてベトナムにおける現在の交緩状態というものが切り開かれ得る道もあろうかと思います。あなたに御方針があればもう一度伺いたい。
  140. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もちろん、自国のいわゆる国益というものを中心にして外交が行われるべきものでありまして、他の国がどう言った、こう言ったということにかかわらない問題でございます。これはいまさらの問題じゃありませんが、さような独自の立場において日本考え方を申し述べたい、こう考えております。
  141. 永末英一

    ○永末委員 私どもは、日本総理大臣が直接ソ連にもはせ飛んで、ベトナムの解決について努力をすべきだと主張してまいりました。いまや、あちらのほうから責任者が来られた。この機会をとらえて、日本政府も全力を尽くしてベトナム和平をかちとるために努力していきたいと強く注文をいたしまして、質問を終わります。
  142. 三池信

    三池委員長 永末委員の質問に条約局長が補足説明したいそうでありますから……。
  143. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 北ベトナムの捕虜の取り扱いの問題に関しましての御質問で、北ベトナム側がこれを戦犯ともあるいは捕虜ともしないというのは、これは国際法の問題としてでなく、国内法上の犯罪者として取り扱おうという意図じゃなかろうかという御趣旨の御質疑がありました。これに対しまして、法律的見地からはなるほどそういうふうに北ベトナム側の意向をそんたくすることも可能であろう、こういう趣旨で申したわけでございまして、日本政府としてそういう立場をとることに国際法上から評価を加えたわけではございませんので、その点誤解のないようにお願いいたします。
  144. 永末英一

    ○永末委員 いま奇妙な答弁をされました。最初の答弁はそのままよかったわけだけれども、それならば、日本政府は、北ベトナム政府がいま手中に握っている——アメリカ軍が北ベトナムを爆撃して、そうして捕えられておるこの人々の法律的地位を何と考えておるか、明確にお答え願いたい。
  145. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いまの紛争について、宣戦が行なわれていないから俘虜の待遇に関するジュネーブ条約は適用がない、こういうことも間違いでございますし、また、したがって撃ち落とした飛行士をすべて捕虜としては取り扱わないということは、この条約の違反になるわけでございます。そういうのが日本政府法律上の見解でございます。
  146. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、北ベトナム政府がこの条約に加入いたしましたときにつけた留保条項というものは、北ベトナム政府自体としては生きておると彼らは考えておる。したがって、これを援用してこようという場合には、いまのあなたが、日本政府がこの留保条項を抜きにして捕虜条約の該当者ではないかと考えておられることは違った一つの範囲が開けておると思います。この点についてどうお考えか、伺いたい。
  147. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 北ベトナム側の留保は、戦争裁判にかけて有罪の判決を受けた戦争犯罪人の取り扱いについて、これはもう捕虜としての待遇を与えないという点の留保でございまして、これは、この条約によりますと、戦争犯罪人になっても捕虜の待遇を与え続けなくちゃいけないということになっておりますが、それを自分たちは与えたくないというのが北ベトナムの留保でございます。しかし、いま飛行士はまだ戦争犯罪の裁判を受けて有罪の判決を受けたわけでも何でもございませんので、戦争犯罪人じゃございませんから、留保の問題は直接いまの問題とは関係がないかと存じます。
  148. 永末英一

    ○永末委員 戦争犯罪というのは、われわれ日本国もドイツ国もいろいろ妙な形で行なわれたことは事実であります。しかも、ここに援用されておるのは、ドイツ国に関係するニュールンベルグ裁判の諸原則を援用している。しかし、だれが一体どういう形で戦犯裁判にかけ、そうして決定を下すかということは、それぞれのケースに応じなければわからぬ問題である。あなたは、すでに戦犯裁判にかけられて決定のある者は北ベトナム政府は除外するのだ、このようにお読み取りになりましたが、私は、この北ベトナム政府の留保条項を読む場合には、それらを含みつつ、すなわち、北ベトナム政府参加をしたある形の戦犯裁判にかけようという、そうしてかけた場合にはこれが除外されるのだと北ベトナム政府が言うてくるに違いないと思いますが、あなたはそう思われませんか。
  149. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 すべての飛行士を全部戦犯扱いに裁判にかける前からやるということまでもかりに留保する趣旨でございましたら、これはもう条約の基本的目的に対しての留保でございまして、もしかりにそういう意思だとすれば、一般国際法の条約論の上から言いましても、条約の目的に反する留保は無効だということになっております。やはり先ほど私が申し上げたような趣旨に、その留保自身も解するのが文理上も正しい、かように考えております。
  150. 永末英一

    ○永末委員 重要なところですから、ちょっと詰めておきます。つまり、あなたの御見解をもう少し集約いたしますと、現状の状態においては捕虜である。しかし、そのうちの、あなた、いま全部と言われたが、全部でなく一部ですね。たとえば、その飛行士が水利施設を破壊したとかいうようなことが調査の結果明らかになった場合に、戦犯にかけてきて、——これはとういう構成になるかわかりません、これからの話だから。いわゆる戦犯裁判にかけて、戦争犯罪者であると決定した場合には、この留保条項は動く、こういう御見解か、伺いたい。
  151. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 北ベトナム政府が行なっている留保はそのように解釈すべきものと思います。
  152. 永末英一

    ○永末委員 これは条約の話でございますから、条約局長日本政府の見解を代表して言われたので、それはそのとおり受け取っておきます。  以上で終わります。
  153. 三池信

    三池委員長 午後二時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十六分休憩      ————◇—————    午後二時十六分開議
  154. 三池信

    三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤観次郎君。
  155. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 総理にお尋ねしますが、三日くらい前に、御承知のように経済白書が発表されて、それには大体景気の落ちつきというものが見られるといっておりますが、しかしこういう安易な楽観論は、私らはなかなか承知ができないと思うのです。  御承知のように、現在鉄鋼の合同問題、協定問題、石炭五千万トンの制限問題、不況の砂糖をどうするかという問題、セメントの操短の問題、繊維界の長い間の不況、それから、最近中小企業の倒産の率が非常にふえたという問題などを考えると、なかなか政府がいま——今度資金を散布したから景気が立ち直ってくるだろうといわれております。これは佐藤さんばかりの責任じゃありませんけれども、池田内閣の経済政策の失敗からこういう問題が起きておるわけですが、しかし、いまどうにかベトナムの特需と福田さんが得意になっておられる公債の発行で現状をごまかしておるというようなことだとわれわれは心配しておるのですが、一体総理はいまの、これからの景気をどのように解釈されておりますか、最初に伺いたいと思います。
  156. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう大蔵大臣その他からもしばしばお答えしたことだと思います。私も、いま経済は、この前の所信表明で申しましたように、不況を脱却して上昇のきざしが見えている、そういう意味で明るいきざしがある、かように思っております。しかし、ただいまもお話がありましたように、経済は生きものと、かように申しておりますから、油断は禁物でございます。そういう意味で楽観はしておりません。絶えず注意をしております。  ただいま御指摘になりました鉄鋼、これがまだ本格的でない、こういうことです。けれども、一面やはり鉄鋼についてはもう本格的だ、だから生産調整をやるな、こういうような御意見も皆さんの仲間にあるのです。でありますが、とにかく鉄鋼はまだ生産調整をやっているという現状だし、また、砂糖自身は過剰設備に対して国際糖価が非常に安くなった、こういうところで、これも構造的なものです。また石炭自身がやはり構造的なものだ。これは近く石炭対策を本格的に御審議いただく段階だと思います。エネルギー革命といわれているもの、いわゆる不況と直接関係はない、こう見てよろしいのだ。また、繊維もただいま御指摘になりましたようになかなか脱却しない、なかなか倒産が多い、こういう状況です。これらのことを考えますと、かつて繊維が輸出産業としての大宗をなした、それから見ると、やはり構造改善、構造の強化をはからないといけない、国際競争力を絶えず念頭に置いて負けないように経済そのものの改善をはかっていかないといけないように思います。しかし、これらの事柄は——セメントもあるようですが、セメントはもうすでに最近の需要は非常に増加しておりますから、設備過剰ではございますけれども、もう大体見通しはついたように思います。  そういうことを考えると、経済そのものは上向いておる、こういうことに言えるだろう。ただ特殊の産業は、いま申しますように構造上からきている状況でございますから、これは不況そのものと直ちに結びつけるわけにはいかない。構造上の欠陥がある上に一般が不況だ、こういう意味でなかなか立ち直りにくい、こういうようなことはあると思いますが、しかし、これは別に考えるべきだ、かように私は思っております。
  157. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 不況の状態というのは、いろいろ見解を異にしておりますけれども、御承知のようになかなかまだまだ下には浸透してないということは、これは事実であります。どうかそういう点で、ひとつ甘い楽観をしないようにお願いをしたいと思いますが、それにつきまして今度のアジア開発銀行のことについての前に、先日総理インドネシア総理と会談されまして、そのときに三千万ドルの借款を供与するようにお話がございました。しかし、御承知のようにインドネシア日本がいままでしばしば焦げつきの債権をもらっておって問題になっておるわけでございますが、現在も御承知のように債権国会議がありましてなかなか容易でないという現状であるわけでございます。三千万ドルと一口に言いますと簡単でございますけれども、先日米価問題で問題になった農村振興費として五十億円ですらやっと福田さんがお出しになったようなわけでございますが、三千万ドルという金は相当な金である。なるほどインドネシアの救済のためにおやりになるのはけっこうだけれども、こういう金についてはもう少し慎重にやるべきじゃないか、こう思っておりますが、どのようにお考えになっておられますか、伺いたいと思います。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 インドネシアに三千万ドルの緊急借款、これがただいま問題だと言って御指摘になりました。東南アジアの諸国が安定し、そして繁栄への道をたどることは望ましい、これはもう申すまでもないのです。そういう意味で、先進工業国である日本がやはり一役買ってこういう意味の援助をすべきである、かように私は思っております。ただいま三千万ドル、これも長期の借款でございますから、そういう意味でその効果が十分上がってくるということを期待しますと、経済そのものが立ち直れば、ただいまのように過去の経験だけから非常に危険だ、こう言ってしまうことはできない、かように私思います。その条件その他は大蔵大臣から答えたと思いますので省略させていただきます。
  159. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣のあれは他日にしまして、御承知のように、イギリスのポンドの危機が騒がれております。イギリスはポンドの危機のために金利の引き下げと、それから国民の賃金統制令をしいてどうにかポンドの下落を防いでおります。しかし、直接日本とはそれは関係がございませんけれども、金利の問題についても、御承知のように、イギリスをはじめ西ドイツ、アメリカ等は金利を引き上げることをしておりますが、ひとり日本だけが金利の引き下げの政策をとっておるわけでございます。しかし、これがいつまでもこういうような状態に置かれるかどうか、ポンドの危機と関連して、日本の金利の問題について総理はどのようにお考えになっておられますか、簡単でけっこうでございますが伺いたいと思います。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本の金利が、最近外国が金利引き上げをした、そのために、ものによっては日本のほうが安いようなものもできたようです。私はしばしば申し上げたと思いますが、金利を国際的にさや寄せする、こういう表現をして・いわゆる高金利をもっと安くしろ、こういうことがいままでも言われてまいったのであります。最近の経済そのものを見ますと、これは確かに国際的な視野に立って経済活動をし、そういう意味からまたその経済条件もだんだん同じようになっていく、こういうことが言えるのだと思います。しかして、私はそういうことを考えると、金利が国際水準にさや寄せする、これは望ましいことだと思う。それでは、わが国の金利そのものは一体どうなのか。私は、今日は心配するような状況ではないと思う。なお、日本経済の産業、これは金利が非常に重いといってその負担にあえいでおる、経済の再建がいま必要だ、こういう際でございますから、国際金利にさや寄せすることは一つの原則だが、わが国の置かれておる産業の実情から見まして、いまのままでこれを上げるような考え方は、私どもただいますぐは持っておりません。
  161. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 金利問題は、他日大蔵大臣からまた伺いたいと思うのですが、今度、開発銀行の本店が実は東京に持たれるだろうという予測がございました。ところが、あにはからんやマニラにその銀行の本店をとられたのですが、福田さんからも伺っておりますが、今度の渡辺武君の総裁は必ずだいじょうぶだろうということでありますけれども、総理はこの問題をどのように考えておられるかということが第一点。  それから、このアジア開発銀行は、御承知のようにアメリカが二億ドル、日本が二億ドルということで、出資者としては大きな国でありますが、この点われわれが非常に心配をしておるのは、日本が独特の立場で東南アジアの人に尽くすのはいいけれども、どうもアメリカの使嗾を受けてやるんじゃないかというようなことが危惧されておるわけです。これがせっかく金を出してもアジアの国民に喜ばれない。その結果本店を東京でなくてマニラにとられたということはその一つの反証ではないかとまで言われております。少なくとも、そういう点でもう少し日本の自主性というものがこういう金融機関や——東南アジアを首相が訪問されるということでありますが、こういう点についてはどんな所見を持っておられますか、これも伺っておきたいと思います。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アジア開発銀行の本店がマニラに決定されました。私ども東京に本店を置かれることを期待していただけにたいへん失望したものであります。また総裁、これはただいま渡辺君が有力なる候補だ、かように言われております。私は、渡辺君が世銀やIMF等の理事もしていましたし、そういう意味ではたいへん適任だ、かように考えて、最適任だからきっときまるだろう、かように思います。  また、この開発銀行の構成がアメリカ追随だ、こういうように御非難をされますが、私はさようには思っておりませんし、また、日本人はどうして独自の考え方を進めてもアメリカを引き合いに出さなきゃならないのか。これはむしろ逆にコンプレックスを感じている結果そういうことになるのじゃないのか。そこで、もっと堂々と、日本は独自の考え方でやっているんだ、アメリカ日本に追随しているとどうして考えてくれないのか。そこらをもう少し、佐藤君にしてもやや私は驚いた見方をしておる。ただ、これは域外のエカフェ関係開発途上にある国々に対する開発銀行、こういう構想でスタートをいたしたので、域外を一体どうするか、ずいぶん考えたのでありますが、域外からもこれに積極的に参加してもらったらどうか、こういうことでアメリカ参加するようになったのです。その際にソビエトにも勧誘をし、多数の国が参加することを望んだものでございますから勧誘はいたしたのであります。最近ソ連はやや弾力的な考え方を持ったかのような情報がございますが、まだ積極的にはこれに参加しておらない。この辺はたいへん私は残念に思っておる。多数の国がこういう国際開発機構には参加することが望ましい。私はそういう意味で積極的にさらに入らない国へは勧誘するつもりです。
  163. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 佐藤首相はなかなか自主性のあるようなことを言われておりますが、ちょうどまだ在野におられたときに、中共貿易が盛んな声があって、大臣もたしか晴海埠頭までわざわざ中共貿易のためにおいでになったことがあると思うのです。ところが、さて内閣をつくってみると、先輩の吉田さんが吉田書簡というものを出して、そのために佐藤さんも非常に中国からよく思われていない。私なども香港へ行って佐藤さんと間違えられて非常に痛い目にあったことがあるのです。どれほど憎しみを持っておるわけです。それから、先日、御承知のように河野謙三さんが中共へ行かれて、北京のときにも、どうも佐藤榮作君は人気がないじゃないかと言われたということも、あなたのほうの参議院の副議長の河野さんに聞いたのです。あなたもお聞きになったと思うのです。それは、なお、中共で悪口言われたっていいじゃないかといえばそれまでだけれども、佐藤さんがやっぱり党内では素心会に突き上げられ、また兄貴の岸さんにも突き上げられて、どうもせっかく総理大臣になっても自主性がないじゃないかという非難があるわけです。そこで、そういう点で私は、佐藤さんが、中共貿易の問題についてもやはり自分の信念でやってもらえば、佐藤榮ちゃんと言われぬでも、人気が出ると思うのです。ぼくは観ちゃんと言われていますけれども、同じ佐藤でも。私は人間が抜けているから言われていると思うのでございますが、佐藤さんが榮ちゃんと言われないところにどこか欠陥があるのじゃないか、そういうように思うのですが、中共貿易についてはどのようにお考えになっておられますか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 佐藤榮作に佐藤観次郎君が間違えられたという、たいへん御迷惑なことだと思います。  そういう冗談は抜きにいたしまして、ただいまの貿易の問題ですが、私はいつも絶えず申しておりますことは、いずれの国とも仲よくする、これが私の立っておる一つの原則であります。また、いずれの国とも仲よくする、それかと申しまして、いままで特に親交を重ねた国、それらの国の感情を害してまで仲よくするという、そこに無理があるのじゃないのかと、かように私は思っております。しかし、十分理解していただきたいことは、私はいずれの国とも仲よくするのだ、この点を理解していただくと、いままでのつき合いとまた別なつき合いが出てくるのじゃないか、かように思います。
  165. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そういう姿勢だと、そうよそにきらわれないと思うのですが、御承知のように、昨日ソ連のグロムイコ外務大臣が来まして、私も昨年モスクワへ行っておりましたが、非常に日本人に対しては積極的であるし、日本への好意を持っておるということだけは、これは現場へ行ってみればわかるわけでございます。先ほども椎名さんにもちょっと伺ったのですが、ソ連は積極的に日本と協力していこうという形があるわけです。そこで、日本は中共貿易でも相当な芽が出て、ちょうどいいころになってから吉田書簡にたたられて、せっかくの芽がだいぶんつままれたような形でありますが、一番日本で好意を持たれ、また将来発展性のあるのはソ連の貿易だと思うのです。そこで、二十七日に総理は会われるそうでありますが、漁業問題やその他いろいろな問題がありますけれども、とりあえず実行できる問題は日ソ友好の貿易関係だと思うのです。そういう点について、もっと積極的にひとつこの際ソ連と手を携えて、日本の不況を打開するためにも、日ソ貿易というものをもっとがんばられる必要があるのじゃないかと思うのですが、その点についてはどのような所見を持っておられますか、お答え願いたい。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日ソ貿易を拡大しろというこの御説には私も賛成であります。また、ことに民間の産業界の交流もたいへん盛んでございます。そういう意味で、いま問題になっておるシベリア開発、これには積極的に日本も協力する、すでにその意向を示しております。ただ、ああいう国柄でありますが、わが国経済力とソ連の経済力を比べた場合に、私どもややふに落ちないのは、大国ソ連が日本に対して非常な長期の延べ払いなど要望している。これあたりはむしろ逆なんで、もう少し同じような立場で積極的に拡大する方法はないものだろうか、こういうように思っております。しかし、いずれにいたしましても、胸襟を開いてお互いに話し合えば、適当な貿易をする——向こうから買い入れる原材料もありますし、こちらからさらに積極的に進めるものもあるだろう、もっと拡大してしかるべきだと思っております。
  167. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 同僚議員もありますから最後にしたいと思うのですが、御承知のように、佐藤内閣ができてから一年有半になります。しかし、この間佐藤さんが自主的におやりになったということがあるかないかということは、あなたのほうは成果を盛んに唱えられますけれども、日韓会談がうまくいったといっても、御承知のように北朝鮮の技術者問題で商社が弾圧を受けたり、現場を見ておりませんからわかりませんけれども、いろいろな文句がつくというようなことがあるわけでございます。こういうことを考えると、何もそのためにこちらがゆるんだわけではございませんけれども、今度のアジア開発銀行でも、日本がせっかくいい目的を持っていながら、その成果の期待することが少ない場合があるのじゃないかということが心配されます。  そこで、佐藤さんが内閣をつくってから一年半でございますが、普通ならば当然選挙をやって——いまのところは、口の悪いことを言うと、私生児みたいな内閣で、国民の審判を得ていない内閣だということで、われわれは非常にその点は一度は選挙——私は個人的に選挙なんかやりたくないですけれども、しかし、国民全体の立場からすれば、当然選挙をやるべきじゃないかと思うのです。その点について佐藤さんはたびたびいろいろなことを言われておりますが、この席で、一体どういうような方針でおやりになるかということと同時に、日本経済の立て直しのためにもつと積極的なことをとる必要があるのじゃないかと思うのですが、その点の二つの回答をお伺いして、私の質疑を終わります。
  168. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本経済を進める意味において、さらに本格的というか、さらに力を入れろという、これは半分激励を受けたような感じでただいまの御意見を伺ったのであります。私は、この内閣に課せられた使命が、ことしの課題が、経済の立て直し並びに物価問題、これが課題だ、かように申しておりますから、さらに積極的にやれという、そのとおり真剣に取り組んでやるつもりです。  また、解散の問題をしばしばお尋ねでございます。これはいままでもたびたびお答えしたと思いますが、ただいま私解散についてこれというものを考えておりません。
  169. 三池信

  170. 只松祐治

    只松委員 ベトナム戦争が、御承知のようにエスカレート戦略に基づいて、エスカレート戦争といわれておる。ところが、米国の北爆、あるいは中国、ソ連の強硬な声明、こういうことで、たいへんに残念というよりも危険な状態になってまいりましたが、総理は、このベトナム戦争はいかなる段階にエスカレートした、こういうふうにお考えになるか、エスカレーション戦略がいかなる段階にあるか、総理のお考えをお聞きしたいと思う。
  171. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ハノイ付近の石油貯蔵庫を爆撃した、これが非常な拡大だ、こういうように一部で言われておりますが、私は質的にはいままでの爆撃と同じだと思います。質的と申しますのは、いわゆる南ベトナムにおける破壊活動を北側から支援しておる、その支援の力を弱める、こういう意味で爆撃を行なっている、かように私は思っておりますので、質的に変化があったとは思わない。しかしながら、こういう事柄がどんどん行なわれていいのかというと、これは好ましいことではない、一日も早く紛争自身が平静に帰すること、これが何よりも大事なことだ、かように実は申してまいりました。個々の戦闘行為も、それについて許されるとか許されないとか、そういうものじゃなくて、そういう戦闘行為を引き起こしておる紛争自身、その戦争自身、それがやまない限り、こういう事柄は困るのだ、かように思うものですから、直接の関係国が話し合いにお入りなさい、こういうことを絶えず言ってきておるのであります。ただいま只松君はさらに、中共やソ連の強硬声明、こういうことを言われますが、ソ連や中共、さらにまた北ベトナム自身、非常に強硬な意見を出しておる。とにかく徹底抗戦を叫んでおる。けれども、私は、徹底抗戦を叫ぶ政府はそれでよろしいかもわかりません。これはおそらく当事者とすればそういうような考え方なんだろうが、私どものように、戦争そのものを憎む、戦争が行なわれる限り平和な生活はないのだ、塗炭の苦しみを人民そのもの、国民そのものが受けるのだ、こういうように考えるほうから申せば、これはどうか冷静に、また平静にものごとを考えていただいて、どうしたら戦争をやめることができるか、そういう道を求めるべきだ、かように私は思うのでありまして、そういう意味でしばしばいままでも発言もし、実は大蔵委員会では初めて私の考え方を申し上げますが、これはもう予算委員会あるいは外務委員会等々で変わらない説明をしておりますから、御了承をいただきたいと思います。
  172. 只松祐治

    只松委員 強く平和を望むお話がございました。けっこうなことであります。そういう立場に立たれる総理として、いま、現段階からこのベトナム戦争というのはどのようにエスカレートしていくか、発展していくか、なかなか怪々しく予想も立たないと思いますけれども、平和を望まれる総理として、その展望と申しますか、ひとつベトナム戦争に対する見通しについてお考えを聞きたいと思います。
  173. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ベトナム紛争についての見通しをひとつ述べろ、こういうお話でございます。私は、しばしば申しましたように、日本自身が直接の当事者じゃないのだ、これだけははっきりしておきたいのです。とかく社会党の方とお話をしていると、何だか政府自身が直接関係者であるかのようにしばしば錯覚を生ずるのですけれども、そういうものではない。しかし、これはまた、こういう紛争が拡大する、そこにまた直接関係者ではないといってのんきにかまえるわけにもいかないんじゃないか、こういうようなお話もありますし、私、そういう意味で、できるだけ早く話し合いがつくようにと、あるいはあらゆる機会に、横山君も派遣してみましたし、あるいはまた椎名君がソ連に出かけてもこの話で持ち切りでありますし、また昨年の暮れから、アメリカの副大統領が日本を訪問する、あるいはハリマン特使が来る等々、また最近はラスク長官をはじめ一行が来ている、そういう機会に、何とかして平和をもたらすようにということを積極的に説いておるわけであります。しかし、ただいままでアメリカは、それは望むところだと、かように申してはおりますが、しかし、相手のあることですし、相手方もやはり話し合いに入るという、そういう態度を示さない限り、どうもこういう問題は平和への道を歩むというわけにいかない。ただいままでのところ、どうも残念ながらそういう機運が生じておりません。この機運を生じておらないことは、まあ私ども、いままでまだチャンスが到来しないのだ、かように申してはおりますが、しかし、これは何といっても努力しない限りそういう機運が醸成されるとは思わない。そういう意味で、その努力をやはりあらゆる機会に述べることを——ちょうどグロムイコ外務大臣が来たとき、これはたいへんいいチャンスだと思いますので、こういう際も、ソ連の考え方——どういうように思うか、ソ連、アメリカというような国はただいままで国際的にも非常な実力者だといわれておるのだ、そういう国が積極的にひとつ平和に話をしよう、こういう機運になれば、それこそ話ができるのじゃないか。最近はまた、実力者中共そのものも積極的にそういうことに入ってきて、世界の平和、国際の平和、そのためにはお互いにひとつつまらない戦いはやめよう、こう出てきて、しかしそれについては民族的な要望、宿願もあるのだから、そういう意味でそれぞれひとつ忌憚のない意見を戦わせてみよう、こうなればしめたものだと思うのです。ところが、なかなかそうならない。先ほど来言われますように、非常に強い表現をしておる。その強い表現をするのは、これはやはり当事者そのものが冷静になれないのだ、平静になれないのだ、かように私考えますので、私ども第三者が冷静なる判断をして、そうして最も好ましい方法−ジュネーブの会議でもいいし、またどこで会議を開いてもけっこうだ、日本などがお役に立つならどういうことでもしよう、これが私のいまの考え方であります。
  174. 只松祐治

    只松委員 そういたしますと、楽観と言ってはなんでございますけれども、きわめて前途に希望を持つような総理お話でございます。一方、現実には、中国は自国の領土を提供する、あるいは義勇軍は編成済みだ、こういう新聞報道がなされております。総理のお考えどおりにいけばけっこうでございますが、こういう状態において、中華人民共和国が参戦するというようなことは、少なくとも現段階において絶対にあり得ない、こういうふうにお考えになりますか。そのように考えてよろしゅうございますか。
  175. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、アメリカ自身が先ほど来言っている攻撃の立場だ、かように思っておりますが、これが中国本土を攻撃するという考えがあるか、そんなものはないと言っておりますし、また中共自身は、アメリカの攻撃を受けない限り自分たちは武器を持って立ち上がらない、かようにも言っております。だから、一部でいわれる米中戦争が、そのとおりなら起こるわけがないはずなんですね。なおそこに不安があるかどうか。とにかく、アメリカも攻めていかないし、また攻められない限り自分のほうも攻撃しないと言っている。これらをそのままとって、そしてその発言をひとつ金縛りにして、戦争をしないようにお互いが努力することが、本来の姿、必要なことじゃないかと思うのであります。私は、そういう意味では、日本の憲法、これはもう社会党の方も非常に支持なさるいわゆる平和憲法、国際紛争は絶対に武力には訴えないという、これこそ日本だけの問題じゃなしに、どうしてこの崇高な理想を各国に説くことができないのか、かように思うのですよ。だから、あぶない、あぶないとか、いまに危険があるとか、こう言って国民をかり立てるまでもなく、われわれの一つの信念、りっぱな信念を持っているのだ、もう絶対に国際紛争は武力に訴えないのだ、これをひとつ十分徹底さす、これがお互いに必要なんじゃないだろうかと思います。  また、もう一つ大事なことは、やはり共存ということが必要だ。平和共存とでも申しますか、共存共栄というか、この共存の原則がちゃんと認められることが各国では必要なんじゃないか。私はそれをわかりやすく、いずれの国とも仲よくする、しかし、お互いにそれぞれの国の独立を尊重して内政に不干渉でいこうじゃないか、こういうことを言っているのですが、これが守られれば共存は可能なのだ。そうして、ただいま言うわれわれの一つの実に崇高なる理想、それを守って政治活動をすれば何らの心配はない、かように思います。
  176. 只松祐治

    只松委員 共存あるいは平和、いろいろ理想をおっしゃいましたけれども、現実のベトナム戦争のあり方、処理のしかたを見ておりますと、確かに総理もたびたびおっしゃっておりますし、アメリカも、平和のために戦っているのだ、こういうことを言っております。そういたしますと、もっとこれは国際連合の舞台に乗せてこの問題を論議すべきではないか。私は、先ほど大蔵大臣自身は——何なら時間があれば総理大臣にも質問したいと思いますけれども、このアジア開銀の問題についてもしかりであって、特定国家だけが集まってアジア開銀をつくる、これはたいへんに私は遺憾だと思うんです。このベトナム戦争も、国際連合では、まだいわば朝鮮戦争のときみたいな形に一これはわが陣営としていろいろ問題はありますけれども、朝鮮戦争のときみたいに、一方が国連憲章に違反しているとか、あるいは悪い、こういうきめつけ方もしておらない。ひとりアメリカが与国を誘って、ベトコンあるいは北ベトナムがけしからぬ、こういう形でやっておる。これはいまおっしゃったことばにも事実として反するし、あるいは国連組織を何かアメリカが近ごろないがしろにして、別個に自分の力でもって問題を処理していこう、特に極東においてそういう行き方というものが強く見受けられるわけですが、いまのお話から矛盾すると思いますが、ひとつその点いかがですか。  それから、アメリカがこういうふうに国連組織を破壊するような行き方をしておることに対して、もっと国連の中において問題を処理する——ただ単に現実の現場の極東地域においてだけでなくて問題を処理するように、国連中心主義を唱える総理としては御努力をなさるべきではないかと思いますが、ひとつ、国連組織の問題と関連してお尋ねをいたしたいと思います。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、現在の行為を、いずれがいいとか、いずれが悪いとか、かようには申しません。先ほど申しますように、個々の戦闘行為についていろいろ議論が立つであろうと思います。それぞれの立場でそれぞれの議論がある。しかし、少なくとも戦争行為そのものがとまらなければいけない、そうして紛争自身をとめなければ、いかようなことを申しましても、これは現在の不幸は続く、かように思っておるのです。だからこそ、話し合いにお入りなさい、そうして同一民族、その民族がこれから先どうするかということ、それはその会議の場で十分話をしたらどうですかということを申しておるのです。しばしばジュネーブ会議が問題になりますが、ジュネーブ会議では、十七度線を境にして同じベトナム人がつくっておる国が二つある、権威が二つある、こういうことにただいまなっておるわけなんです。北と南とそれは二つある。そうして各国とも、南を承認しておるものもおれば、北を承認しておる国もあるというのがいまの状況でございます。ただいま国際連合でこういうことを取り上げろとか云々にされますが、一度国際連合でこれらのサーベイをしようと言ったら、北はそのとき参加しなかった、こういう経験もございます。しかし、だから北が悪いというわけじゃないんだ、とにかくもう撃ち方やめ、そうして話し合いに入れ、これが私のいまの主張でありまして、これが最小限度の主張だ。おそらくだれも戦争を肯定する人はないだろう。戦争をみんな憎んでいるだろう。また、せんだっても写真を見れば、百姓自身が、農夫自身がカービン銃か何かを肩にしながら除草をしておる、そういう写真がある。これが敵の飛行機あるいはヘリコプターが飛んでくれば直ちに民兵になる。これは実に惨たんたるものだと思うんですね。これがかもし出されているのは、やはり戦争、戦闘が随所に行なわれているということだと思うんです。だから、お互いに平和を望むんだ、こういう意味で話し合いをすれば、必ず道は開けるのだ。幸いにしてアメリカ自身それを否定していない。徹底的に私のほうで戦うんだ、かようには言っておらない。そうすると、やはり第三者が平静に冷静にものごとが見れるんだと思います。そういう場合に、あるいはすぐ話がきまらなければ国連にまかすとか、あるいは現状をどういうようにするとか、いろいろな話し合いのしかたはあると思うのですよ。だから、その辺のことを、同一のテーブルに着かなければ、どうもそれから先何とも言えないんだ、まず第一は同じテーブルに着くことだ、かように私は思うのです。
  178. 只松祐治

    只松委員 きょう時間があれば、安保条約の第五条関係についてひとつ論議をしたかった。時間がございませんので、それはいたしませんが、前の予算委員会でも多少論議になりました六条との関係について、いわゆる極東の安全問題について、簡単なお尋ねをしたいと思います。  これは椎名外務大臣もおっしゃっておりますように、日米安保条約の第六条によりまして、日本は基地の提供その他をいたしております。したがいまして、日本は純粋な意味での中立ではなくなってきている。ということは、敵性をわが国は北ベトナム等において持つ、こういうことになっております。また反対に、中国、ソ連は支援をいたしておりますから、南ベトナムに対してやはり敵性を帯びてきておる。したがって、戦時国際法上は、北ベトナムに対して日本は純粋な中立ではなくなってきておる。無関係でもなくなってきておる。椎名外相もそういう類似の答弁をしておりますし、憲法学者もそういうことを言っておりますが、これについて一々お答えをいただきたいと思いますが、時間がございませんので、そういう前提にいたしまして、そういうことであるならば、戦争放棄をいたしております日本の平和憲法、先ほどから平和憲法を守るということをおっしゃいましたけれども、この平和憲法と、戦争に対して、ベトナムに対していわゆる敵性を帯びてきておる、こういう関係からいたしますと、日米安保条約は防衛を主たる任務とするわけですが、こういう防衛で——第五条が日本直接の防衛ですが、極東の安全の問題からすでに違憲問題がここで生じてきておるのではないか、私はこういうふうに思います。あるいは、端的に違憲ということじゃなくて、憲法上大きな疑義がここで生じてくる、こういうふうに思われるわけですが、総理は、そういうことは憲法と全然関係ない、憲法は憲法で、平和憲法で戦争放棄しているけれども、ベトナム問題はベトナム問題で別個の問題だ、こういうふうに割り切って何かお考えになっておられるのか。なかなか私は理解に苦しみますから、ひとつ明快な御答弁をいただきたい。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国の憲法は、先ほど来申し上げているように、国際紛争を武力に訴えない、これはもうはっきりしている。そうして日米安全保障条約、これはわが国の防衛のため、安全確保のために必要だ。しばしば説明いたしましたように、攻撃的な要素は持っていない。これは自衛のためだ。だから自衛権は認められる。そういう意味で安全保障条約を締結している。ベトナム紛争のためにこれをつくったわけじゃない。だから、これは日本の防衛、安全確保のため、自衛権だ。それで、ただいま御指摘になりますように、施設あるいは日本に基地を持つ、それがベトナム関係を持つ、これは間接的に関係——これは全然関係ないとは私申しません。しかし、これが関係をして、もしも万一日本自身がその紛争の中へ入るというようなときがあれば、そのときこそ憲法の条章が発動してくる、かように私は思いますので、別に矛盾はないし、これは明快に私どものこの立場がおわかりがいただけるのではないかと思います。
  180. 只松祐治

    只松委員 そうすると、現段階では憲法上何ら抵触はない、こういうふうにお答えになっておるわけですが、そういたしますと、時間がございませんからあれですが、当然に自国の攻撃の五条の問題と関連してきて、いかなる場合に憲法と抵触して宣言をするか、こういうことにもなってきます。時間がございませんので、私はこれはやめますけれども、この六条の問題においても、私は、全然憲法に抵触しない、こういうふうに思わないわけです。いかなる段階になって——この前、沖縄攻撃論争というものが一つの理論上の問題として論争されましたけれども、そういう例を引いてでもけっこうでございます。いかなる場合に憲法上の問題が出てくるか、お聞きをしたいと思います。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 考えられる場合は、日本が武力攻撃を受けた場合、こういうときに理論上考えられると思います。しかし、武力攻撃を受けるということが理論的には考えられるが、現実にはそういうことがあるかというと、私は全然ないと思う。だから、御心配要りませんといつも申し上げております。だから、日本自身が武力攻撃を受けるという、そういう実際上の問題はございません。だから御心配は要りません。
  182. 只松祐治

    只松委員 そういう議論になりますと、たとえば昨日の新聞でも、二十三日、日本向けモスクワ放送は「戦火、欧州へ飛ぶおそれ」と、こういうことで、この状況いかんによっては欧州へ問題が発展しないとも限らない。これはモスクワ放送ですが、言っておるわけです。だからこれを全然ナッシングというわけにはいかない。ただ、現実論になりますと、いろいろ論議を進めていかなければなりませんからかみ合いませんけれども、仮定でもけっこうですから、どういう場合において憲法上の問題が生じてくるか、こういうことを聞いておるわけです。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 只松君も、いま、仮定の問題でもけっこうだからどういう場合に問題ですか、こうたいへん穏やかな聞き方をしたわけです。実は私、ただいま仮定の事情、これはどうもお答えする筋じゃないように思います。先ほど私申しましたように、実際問題としては日本が攻撃を受けるようなことはない、ここに安全保障条約が持つ戦争抑止力、これを私は信頼している、かような状態でございます。
  184. 只松祐治

    只松委員 最後に、アジア開銀の問題についてお聞きする時間がなくなったのですが、先ほど申しましたように、当初は、エカフェによってアジア地域アジア人銀行ができ上がる、つくる、こういう構想である。現実にはそうじゃなくて、まあいろいろ言っておられますけれども、フランス、ソ連等も抜けて、いわば純粋反共国家というような形でのこのアジ銀が開設になろうとしているわけです。しかし、これでは当初の目的にも違いますし、先ほどから総理がお述べになりました趣旨とも、現実のアジ銀というのは大いに違ってくるわけです。これは当然に、あなたとジョンソン氏がお会いになった後に、あまり積極的じゃなかった両国が、急速にベトナム戦の処理と相まってこれが具体化してきたのだ、こう言われてもやむを得ない節も出てくるわけです、そういうことになれば。したがって、ぜひそういうことがないようにこれは努力していく、今後の加盟の問題、これは午前中大蔵大臣に対して運営の問題その他をお尋ねしたわけですけれども、そういう問題等について、いわば実績の問題として、今後、そういう反共国家群の、特に軍事的な目的やそういうものに使うのではなくて、あくまでもおくれたアジア諸国の農業問題等に優先的に使っていく、こういうことにひとつぜひ——国内問題でも一ぺんきまりますと、なかなか政府の監視が薄くなるわけですが、こうやって諸外国との合弁みたいな形になりますと、よけいに日本の監視というものがなくなってくる。あげくの果てが、日本だけの責任じゃありません、こういう形になるわけでございます。出発にあたって、ぜひ、きょう総理が繰り返しお述べになったような趣旨の銀行になることにひとつ一そうの御努力を願います。ちょうどソ連の外相もお見えになっておることでございますから、明日か明後日お会いになる予定のようでございますが、ひとつぜひ重ねてて、ソ連も入って、総理がお述べになったような趣旨のアジ銀になるように、努力をされますようにお願い申し上げたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま只松君の言われますとおり、多数の国が参加することが望ましい。同時にまた、この運営方法については、銀行がスタートして初めてきまることでございますが、協定等にもその骨子、方針はちゃんときまっております。しかし具体的には、さらに理事会等において詳細を尽くす必要があるだろうと思います。ただいまの御趣旨同様に、今後一そう監視もし、またみずからが積極的にその中心にもなる、こういう意味で努力したいと思います。
  186. 三池信

    三池委員長 武藤山治君。
  187. 武藤山治

    ○武藤委員 アジア開発銀行加盟に関する一切の法案が本日大蔵委員会で上がるという運びになっておりますが、このアジア開発銀行と直接関接今日のアジアの情勢というものは非常に関係が深いわけであります。  そこで私は、特にいま只松君からも御質問がありましたが、ベトナム戦争が今日世界情勢の軸となっている、そういう中で、すでに百万をこえる軍隊がお互いしのぎを削って戦闘をベトナムで行なっている、しかもその背後には、南政府にはアメリカ、韓国、台湾、フィリピン、豪州などが軍事援助をして、これを支援をしている。また北側を見ると、北側も、中国、北朝鮮、ソ連、これらが支援をしている、こういう事実からいろいろ判断をいたしますと、これはただ単に南ベトナム、北ベトナムの問題ではなく、すでに現実には国際戦の様相を呈している、国家集団間の対立と見なければならない、私はそういう認識のしかたをしておるのであります。もうすでに国際間の対立だ、国際戦の様相をこのベトナム戦争は持っているのだ、こういう認識は間違いであるかどうか、総理大臣の見解もあわせてお尋ねをいたします。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ベトナム紛争は、ただいま武藤君が御指摘のとおりでございます。
  189. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう国際的な何カ国かの集団が、互いに冷静さを失い、話し合いの場を持てないでいるために、和平がなかなか進捗しないのだ。先ほど総理大臣答弁の中で、お互いの国が冷静さを欠いているために、同じテーブルに着くことができない、和平の機運が生まれてこないのだ、こういう答弁をされたわけでありますが、その昭平の機運をつくる世界で一番適任な国は、私は日本だろうと実は考えておったわけであります。日本は、御承知のように非武装中立を憲法制定の当時は国是として出発をいたしたわけであります。武力の行使はしない、日本は戦争というものを否定するのだという国になった。したがって、私は、お互い国家集団間の国際戦の様相を呈しているベトナム問題というものを、早く和平のテーブルに着かせる最善の努力をし、使命感を世界に示すのは、やはり日本総理大臣でなければいけないと思うのであります。しかるに、総理大臣は、そういう積極的な構想や可能性の探求にあまり熱意を示していないと私は言わざるを得ません。  そこで、大臣に具体的にお尋ねをいたしますが、和平の条件というのは、考えられる可能性というものは、一体どういうものがあるか。何点かあると思うのであります。こういう条件ができれば和平は可能なんだが、その条件をつくるのがむずかしいのだ、私自身は三つか四つの条件を私なりに考えておりますが、総理大臣は、和平の条件は、こういう条件ができればうまく何とか話し合いがつくかもしらぬ、そういう構想、可能性を探求したことがございますか。ございましたら、その可能性をひとつお示しを願いたいと思います。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカ側の十原則、あるいは北側の四原則、あるいはベトコンの五原則等々がございますが、私は、いずれもその話し合いの中身をなす事柄のように実は思うので、ただいまその話し合いをする条件というものは実は考えておらないのであります。私は、むしろ積極的に話し合いに入りなさい、そうして自分たちのそれぞれの条件、それぞれの希望、それぞれのことはその席で十分述べたらどうか、こういうことを申しておるのであります。
  191. 武藤山治

    ○武藤委員 総理も御承知のように、社会党は与党自民党と、ベトナム戦争を終結させるような国際世論をつくるために国会で決議をしようではないか、こういう話し合いを再三いたしてきたのでありますが、なかなか総理、総裁の最高指示を得られなくて、これは暗礁に乗り上げている。私は、いまこそこの重大なベトナム戦局を転換させるためには、日本国会は使命感に徹してここで決議をして、全世界に日本国会の意思と総理大臣の意思を伝うべきである、こう考えるのでありますが、そういうお考えはございませんか。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それも一案かと思います。
  193. 武藤山治

    ○武藤委員 いまここで私はおもしろい数字を見たのでありますが、佐藤内閣が誕生して以来どうもじり貧的に世論調査の人気は落ちてきている。それと同様な傾向がジョンソン大統領についても言えるわけであります。  アメリカの世論調査によると、ジョンソン大統領が就任をした際、一九六四年には八三%の支持率があった。本年の一月には六三%、二月には五九%、五月には五四%、六月四六%、ハイフォンとハノイを爆撃した直後における国民の支持率は四二%と報ぜられております。日本の国民が佐藤さんに対する支持率を減らしていくのと同じように、やはりジョンソンがこのベトナム戦争の終結の見通しが持てないで、暗中模索でこの戦乱を拡大している、これがまかり間違うと、アメリカとソ連の間における平和共存という一応コンクリートされた国際情勢の軸がこわれはせぬかという不安をアメリカ人も持っていると思います。そういう意味で、ジョンソンの人気が次第に低下しているのではないか。したがって、アメリカほんとうに真剣に和平交渉を考え段階は、ジョンソンの人気が四二%からさらに三〇%程度に落ち込んだときには、いよいよ中間選挙も目前にあり、大統領を民主的に選ぶ国柄でありますから、和平を真剣に考えざるを得ないのではないか。こういう点も和平の一つのバロメーターとして、私たちアメリカの政治動向を十分見ておらなければいけないと乱は思います。  やはり今日イニシアを持っているのは、私はアメリカ側だと思うのです。爆撃をしておきながら和平をしようといっても、これは相手は応じてまいりません。何といっても私は、和平の最低の最初の条件というのは、北爆を直ちにやめて、そしてベトコンを主たる交渉相手とすることをアメリカ側が世界にはっきりすることだと思います。そういうことを日本政府としてアメリカ側に率直にもっと強く要求をするのが総理の使命ではないかと思いますが、総理の見解いかがですか。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は先ほど、どうしたら戦争がストップになるか、紛争がストップになるか、こういうことでいろいろ考えていることを申し上げました。  ただいま武藤君から、さらにこれはどうだというお話でございますが、ただいま一方的だけにこれをアメリカに言いましてもそれは話にならない、かように私は思います。少なくとも、アメリカに対して北爆をやめろ、これはよろしいですよ。しかし、やめるという場合に、北からの浸透もやめます、これはどういう形においてしゃんと実現します、こういうことを言わないと、それはアメリカもおいそれとは話に乗らないと思う。
  195. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで私が考えるのは、いまはアメリカに向かってそういうことを提唱したらどうだ、もちろんそれ以外に北ベトナムが米軍の即時撤退という要求をおろす——テーブルの場所に着いたときには、第一要件として要求をするかもしらぬが、和平交渉に乗る条件としては、北ベトナムも米兵の即時撤退ということは要求をしない、あるいは第三には、英国とソ連が共同議長国で一緒になってジュネーブ会議を即刻開け、あるいは非同盟諸国が真剣にベトナム戦争をやめさせるための世界連帯の世論をつくる。そういうような数々の和平への条件を探求をし、それを世界にさきがけて訴える、そういう国がなければいけない。それを私は日本佐藤総理に期待をし、日本の憲法の精神からいくならば、そういうことをやることが、佐藤内閣の命脈をつなぐ道であり、あなたの人気を起こす道であると私は考えるのです。そういう積極的な和平への可能性の問題の幾つかを取り上げて、それを同時に国会で決議をし、北にも南にも、あるいは一方の国家集団にも他方の国家集団にも、日本が決議をしたものを大いに世論化するということはできる道ではありませんか。あなたがやろうと思えばできるのじゃありませんか。あなたのやる意思を私はもう一回確認をいたしたいのであります。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私に期待されることはたいへんありがとうございますが、私がやるからといって、それが直ちにできるものでもないように私は思います。ただいまのいろいろのお話、これは一つの行き方かと思いますが、私はやっぱり話し合い、同じテーブルに着く、これが一番先だと思うのですよ。そして、その席で十分話し合ってもらうのです。ただいまのように、話し合いの場に着いたら、さらに今度はこうするのだとか、ああするのだということになると、これはどうも仲裁者としては非常に立ち入り過ぎるのじゃないですか。さては、さようなことを考えたからおれを引っぱり込んだ、こういうようにとられる筋もあるだろうと思います。私は、そうではなくて、とにかく話し合いの場に着く、そして、その席で十分話し合いをなさい——私とも、直接の当事者じゃないのです。そこは間違いはないと思う。  ただ、私が先ほど来言っておるように、崇高な理想を持っているのですから、この崇高な理想は各国とも必ず賛成するだろう、また賛成させなければおかないのだ、これはひとつお互いにやるべきことだと思っております。
  197. 武藤山治

    ○武藤委員 新聞などでは、ベトナム戦争は完全勝利なし、あるいは、決戦なき戦争、勝利なき戦争ともいわれております。これは何を意味するかというと、このベトコンとの戦いというものは二十年戦争に匹敵する、どろ沼に足を踏み込んだということを意味すると思うのであります。  一体総理大臣の見通しとしては、勝利なき戦争か、あるいは勝利があるまで断固やるべき戦争なのか、そこらはあなたはどう認識されておるわけですか。  私は、今回のアジア開発銀行も、アメリカアジアを軍事的に支配をし、中国を一応封じ込めておる、それだけでは完全に国内に浸透できないから、もっと国内に浸透するインクブロット作戦とでもいうような、そういう経済的にまで内陸に深く食い込んだアメリカの支配力というものがいまアジアに根をおろそうとする、アメリカアジア政策の重大な転換期にここ二、三年がかかっているような気がいたすわけであります。したがって、いまここで議論されるアジア開発銀行の問題も、将来を展望しますと、私はやはり国家集団間の大きな対立相克、しかも、その国家間にいつかどこかで大きな力の激突がなければ解決ができないような、お互い不幸な事態を招く方向に両集団が今日結ばれていくような非常な危険を予見するのであります。総理大臣は、第三次世界戦争というようなものは絶対起こらないという見通しでこういうものに日本がどんどん協力をしていくのか、世界は話し合いで必ず第三次世界戦争は回避しながら共存、繁栄ができる、こう考えるのか。総理の率直な、国民が不安に思っておる今日の事態に対するあなたの見解をひとつ明らかにしてもらいたいのであります。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 平和共存可能だ、すでに米ソの間でそういうことを言っております。私は、平和共存可能だ、またそういう道があるのだ、それをひとつ進めるべきだ、かように思っておりますし、また、ベトナム問題そのものについて、これは一体いつ終わるのか、これは、確かにただいまの状況のもとにおいては長期化する危険、これは多分にある、かように私思います。こういう事柄が長期化されちゃたまらないのだ、だからこそ、一日も早く和平をもたらせ、これが私どもの叫びなんです。こういうものを長くやられると、それは幾ら局部的なものにしろ局地的なものにしろ、その局地の者の惨状、これは人道的にたいへんなものだと思う。だから早くやめろという、最善の努力をするわけです。  また、これはアジア開発銀行関係はないわけなんです。ことにベトナム自身も開発地域の国でございますが、その他の諸国、これらが開発銀行の設立を心から望んでいる。戦争も、そんなものに血道を上げないで、平和的な繁栄への道をお互いに協力しようじゃないか、これがその他の国々のしんからの願いなんです。私は、日本あたりはそういうところへりっぱな模範を示したらいい、かように思っておる。だから、これはぜひ早く成立さして、そうして活動さすように御協力願います。
  199. 武藤山治

    ○武藤委員 アジア開発銀行をせっかくつくって低開発国援助しよう、開発しよう、貿易量をふやそうという、その趣旨はいいんでありますよ。しかし、片方建設よりも破壊が今日続いている。このアジア開発銀行ベトナム援助のためにかなり融資をするという計画も含まれている。しかし、片方戦争で、戦乱で国土を荒らされ、殺し合いをしている。そういうときに、あわててこういうものをつくってやっても効果は半減する。破壊のほうが大きいんでありますから、まずまっ先に破壊をストップし、戦争による窮乏と殺傷をストップするというところに私は今日最大の政治家の任務があると思うのであります。それについて、佐藤さんはもう少し真剣に憲法の精神をひっさげて世界に訴えるという姿勢が足りない。どうも、口先ではアジアの一員である、あるいは日本は黄色人種であるから、大いにアジア国々援助し、これらの国と提携をしていくと口では言うのでありますが、ほんとうベトナム戦争をやめさせるためには、国交を回復していない中国へでも総理大臣みずかが飛んでいくくらいの勇気があって私はしかるべきだと思うのであります。政治家の必要なものは、単なる英知ではなくて、私はその勇気と決断が必要だと思うのであります。総理大臣、どうですか、北京に行って、中国にもっと冷静になりなさい、どうしてもアジアの問題はアジア人でこういうぐあいに片づけようじゃないか、そのくらいなやはり平和に徹するあなたの態度がほしいのでありますが、中国へ行ってくるような勇気はありませんか。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん鞭縫を受けまして、ありがとうございます。
  201. 武藤山治

    ○武藤委員 時間が二十分という割り当てでありますから、こまかい議論ができないことは残念でありますが、農村を歩いてみますと、佐藤内閣は、国内の政治には、どうも、物価はどんどん上げるし、農民の要求は通さぬ、しかるに外国へは気前よく二億ドルもぽんと金を出す、けしからぬ、ほんとうの国際性を知らない素朴な住民は、佐藤内閣の姿勢について非常な不安を持っているわけであります。私は、こういうアジア開発銀行の二値ドルの出資というものは、逆にアジア人同士が、将来五年後、十年後に対立を深め、どこかで一回衝突をしなければ解決できぬような事態を引き起こすのではないかという非常な心配を持つものであります。  総理大臣として、永久に総理大臣をやるわけではありませんけれども、あなたの就任している間は、ほんとうに、口で言う平和に徹する、アジア人の古貝であるということを実践をしてもらいたいという強い要望をして、私の質問を終わりたいと思います。
  202. 三池信

    三池委員長 有馬輝武君。
  203. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は、本日は物価問題と、それからただいま只松君、武藤君からお話のありましたベトナム和平の問題と、それからアジア開銀に未加盟の諸国の問題、それと、日ごろから伝えられております総理の東南アジア訪問と低開発国援助の関連、この四点にしぼってお伺いをいたしたいと思います。私もできるだけ簡単に質問をいたす予定でありますから、総理も、抽象論でなくて、具体的に、簡明に御答弁をいただきたいと存じます。  まず第一に物価問題でありますが、七月十二日の所信表明で、特にわずか十分間足らずの所信表明の中でも消費者物価問題に触れられておったわけであります。ところが、けさも堀委員から大蔵大臣や企画庁長官、通産大臣に対しまして、卸売り物価の騰貴問題について具体的に数字をあげての御議論がありました。特に銅、 アルミ地金なり、あるいはこれらを原材料とした舶用モーターなり電磁開閉器、電気製品、自動車部品、こういったものが一−三割も値上がりを示しておるのであります。そして日銀の最近の調べによりますと、六月の卸売り物価指数が総平均指数で一〇六・○と、三十五年の一〇〇に対しまして年初来の上昇が二・八%となっております。これは三十一年のいわゆる神武景気にわきましたときの上半期の三・五%に次ぐ大きな高騰ぶりであります。一方、衆議院におきます物価問題等に関する特別委員会では、六月二十二日、十項目にわたる物価の安定に関する決議を行なっております。また、中山伊知郎さんを会長とする企画庁の諮問機関である物価問題懇談会でも、二十一日に、食パンなり、しょうゆなり、とうふなりについての具体的な提案をいたしております。  そこで私がここでお伺いをしたいと思いますことは、英国の総理ウィルソンが、これはもちろん事情は違いまして、ポンド防衛という立場もありますけれども、半年間にわたる賃金、物価の凍結というようなことを意欲的にやっております。私は、総理がこの衆議院の決議なりあるいは物価問題懇談会の勧告なり、あるいは総理みずからが所信表明の中でうたわれた意欲というものを具体的にどのように措置してこられたか、自信を持ってお示しになる分野がありましたならば、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  204. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 所信表明でも、今日までの対策そのものは効果があった、かように申しておりますが、その対策は一体何か、こういうお尋ねでございます。  財政的な問題として非常に画期的な処置をとったこと、これはもう私が申し上げるまでもなく、御承知のとおりであります。また、この政府の財政的な処置、予算的な措置に対して民間の協力も得ることができた。幸いにして私のほうは、そういう意味で、いま、まず経済の不況を克服することができた、かように思っております。ウィルソン総理就任以来ポンド危機が訴えられ、いろいろこれに対策を立ててきました。ウィルソンの前半においては、まず成功したかのようにも見られた、ポンド危機に対する各国の協力、これが相当実を結んだ、成果をあげた、かように見ていましたが、ことしになりまして、またたいへん心配する状況、それには長期にわたる海員ストあたりも影響しただろうと思います。しかして今度は、物価、賃金の半年間のストップ令、これはずいぶんドラスチックな処置をとられた。これは片一方で効果もありましょうが、同時にこの弊害もたいへんだと思います。したがいまして、私どもはかようなドラスチックな処置をとらないで、まず今日のような経済の不況の克服ができたことを実は喜んでおるのでございます。  私は、それにつきましても、日本の産業界の力、また国民の協力、これをしんから感謝したい気持ちで一ぱいです。
  205. 有馬輝武

    ○有馬委員 総理は国民に感謝したい気持ちで一ぱいだと言われるけれども、国民はあなたに協力するどころか、恨んでおる筋が一ぱいなんです。あなたが財政的な措置を講じたと言われる、それが逆にはね返って銅地金の値上がりを示して、これがさらに国民の消費者物価にはね返ってくることはきわめて明らかであります。  私は、こういう傾向をどのようにしてとどめようとしたのか、結果はまだわからないとしても、どのような措置を講じられたのか、それを伺っておるのです。抽象的なことを伺っておるのじゃありません。これならさっきの堀君の質問で終わっておるわけです。具体的に何をしようとしておるのか。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 銅地金並びにアルミ等について、これを御指摘になりました。これらを材料として使うあらゆる機械や家庭用品までそれが非常に上がった。一割ないし三割上がった。これは確かに私もそのとおり上がったと思います。しかし、この銅地金の高値を呼びましたのは、これは申すまでもなく需給の関係からこうなった。これは国際的に銅はいま非常に不円滑な状況にございますから、これはやむを得ないと思うのです。でありますから、これだとか、あるいは特別な木材等の値上がりを別にして、その他一般の動きとすれば、これは期間にもよりますが、私どもの見方では、まず大体卸売りの値上がりは一・一%程度、これは過去においても、景気が上昇する際に物価が強含みである、その大体の数字と同じようだ、かように私ども思いますので、これは別に責める筋でもないだろう。ただいま言われる銅地金、特別な地金を確保する、あるいは銅を使わないで他に代替する等々を考える以外に方法はないのだ、そういう意味のくふうもいろいろされております。
  207. 有馬輝武

    ○有馬委員 衆議院の物価問題等に関する特別委員会で取り上げたような十項目の中で、一つでも総理として指示されたことがありますか。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは衆議院並びに参議院、その程度は違いますが、政府の取り組んでおる問題、それぞれみなこれが主であります。
  209. 有馬輝武

    ○有馬委員 弱点をついたときには、総理はもう少しおこらなければいかぬです。何もやっておられないのだ。  次に、ベトナム和平の問題について、いま高邁な、意欲的な御答弁がありました。その具体化としてお伺いをしたいと思うのでありますが、総理参議院の予算委員会でこの問題について東京会議開催の予定もあると言明をいたしました。外務省の諸君があとぼやかすような発言をしたやに新聞は伝えておりますが、その意欲的な点はまことにりっぱでありますので、これに関連して、ただ抽象的に会議を招集しただけでは、さっきの総理答弁のように、これでは何もならないのでありますから、当然総理としては北ベトナムの和平に関する四原則、あるいはアメリカの十原則、これを具体的に消化して、このように日本は提案したいという腹案があっての発言であったと私は理解しております。これはどのような構想であったのか、これが第一点。  いま一つあります。昨日三木通産大臣がOECD、DACの会議から帰られましたが、ハンフリー米副大統領、ラスク国務長官と個別に会談して、中共、ベトナムの問題について話し合ったと新聞は報じておりますが、ただその新聞報道を見まして、アメリカ考え方はこうであるということは一応伝えられておりますし、三木通産相の帰国談にも出ておりますけれども、それに対して日本政府はかく思うというようなことは一ぺんも伝えられていない。だから、総理の東京会議招集なり何なり、当然三木さんとしてもアメリカ側にその意向の表明があったと思うので、それに対するアメリカ側の回答はどのようなものであったのか、こういった点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  210. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第一段の問題は、有馬君にそこまで期待をかけさせたとしたら、それは私の表現がややまずかった。非常に具体的に話が進んでおるわけではございません。私は、先ほど来お話がありましたように、何としてもベトナム紛争についてお役に立つことができれば、それだけたいへんしあわせだ、何でもしよう、こういう気持ちでございます。だから、東京で会議を開いたらどうだ、こういうようなお話がありましたが、それについても、たいへんけっこうだから、それはやぶさかでない。東京で開くことに私も反対しない、こういうような意味でございます。まだこれが具体的に進んでおるわけではございません。  第二の、三木通産大臣がハンフリー副大統領と何を話したか、まだ私知りません。きょう五時に三木君から報告を受ける、こういう話になっておりますが、ただいまの段階ではまだどんな話をしたか存じません。
  211. 有馬輝武

    ○有馬委員 けさ三木さんが本委員会に出てきておられましたので、私の質問までに報告しておいてほしいと要望しようと思ったけれども、当然こういった重要な問題についてはもうその晩に報告があったものだろうと思ってそれを省いたのですが、きわめて残念であります。  次にお伺いをしたいと思いますが、与党の小坂さんなりが中共を訪問される計画があり、また木村剛輔さんなんか、元気な方々が中共から北ベトナムまで入りたいというような意向もあるやに新聞は伝えております。わが党からも楯君ほかの諸君が出かけます。私は、先ほどの総理の言明からするならば、このような与党の方々の動きというものを激励し、努力してこいと言われるのが筋だろうと思いますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  212. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 筋かどうかわかりませんが、私まだそういう具体的な話を聞いておりません。
  213. 有馬輝武

    ○有馬委員 もう計画を持っておられるそうでありますから、出かけられるときどうされます。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それはそのときに話をよくいたします。(発言する者あり)
  215. 有馬輝武

    ○有馬委員 時間がないから、そのいまの答弁でけっこうですと言おうと思ったけれども、ああいうやじが飛ぶと、どのように話し合いますかということを聞かざるを得ません。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだどんな話も持ってきておりませんので、私のほうへ持ってきたらよく話をする。それはそのときの話なんで、話は、賛成のできることと、また賛成のできないことがありますし、また激励することと、それはちょっと困るという話もありましょうから、それはよく話し合ってみるというのです。
  217. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は、ベトナム和平問題について総理の東京会談開催の意欲がある、それをほめて、そういう一連の中で木村君の訪中問題、北ベトナム問題を言っておるのですから、私の質問の趣旨はわかっておるはずです。そのような動きをするために、これはもう平和に対する意欲というものは与野党越えてあるものだと私は信じておるからそういう質問をしておるわけです。そのような動きに対してどうされるかということを聞いておるのです。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 よくそのときに話を聞いて、私の態度をきめます。
  219. 有馬輝武

    ○有馬委員 あなたは、東京会談にしてもいまの問題にしても、肝心かなめなところにいくとぼかされる。国民が期待しておるのはそれから先なんですよ。あなたの抽象論ではない。佐藤さんは何をやってくれるのだということを聞きたがっているのです。高邁な憲法論を聞いているのでもない。  それでは、次にお伺いをいたします。  先ほども触れられましたが、とにかく、今度のアジア開銀に域内ではビルマ、モンゴル、それからインドネシア、準加盟国では香港、ブルネイ、域外国ではフランス、ソ連、これが加盟してない。これは全部が加盟することが望ましいという先ほどの御答弁でありましたが、これに関連して、二十七日アジア開銀問題についてもグロムイコ外相に話される用意があるかどうか。ある、なしでけっこうです。  それといま一つは、少なくとも、エカフェの中でこの問題が提起され、進められてきた事情についてはわかりますが、本委員会における前の国会からの論議を聞いておりますと、福田大蔵大臣、椎名外務大臣、藤山経済企画庁長官の答弁は、エカフェで進められてきたのだから加盟国に限ることはやむを得ない。要約すればそういう答弁であります。がしかし、私は、中共の国連加盟問題が御承知のような形でとんざしておる時期にこそむしろこういった純粋な経済問題の分野からもこの未加盟国にも加盟する道を講じさせる、そういう主張をこの準備の段階において日本政府がなすべきではなかったか、またなし得る一番適当な地位にある国ではなかったか、そういう点について何ら前向きの姿勢を示されなかった理由について伺いたいと思います。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 グロムイコさんと会ったときにさらにこの問題を出します。また、私は多数の国が参加することを心から望んでおります。ただ、いま中共にまでその案内をするか、こういうようなお話ですが、それは現状においてはそこまではいたしません。
  221. 有馬輝武

    ○有馬委員 やはりそこら辺から進めていかないと、いかに日本政府がとっております国連における中共問題に関する重要事項方式というものがアメリカ追随の域を一歩も出てないかということの具体的な証左になるだろうと思うのです。その裏づけがいまの総理答弁としか受け取れないわけであります。やはりこういった問題からむしろ前向きになるべきだ。これはまた本日も水かけ論に終わりそうでありますからこれぐらいにとどめますが、ぜひそういう方向に構想を進めていただきたいと思います。  次に、総理はしばしばソ連訪問と同時に東南アジア諸国の訪問を検討しておるということが伝えられまして、まあ最近は外遊よりも内遊だということらしいのでありますが、いずれ総理はこれらの国々を訪問されると思うのであります。東南アジアを訪問されるとするならば、どういった国々を予定されておるのか。当然、表面的には親善というようなことが話題になるでありましょうけれども、これらの国々を訪問される主たる目的は何か、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 主たる目的は親善、友好です。国によりまして、すでに私を招待しておる国もあります。これは儀礼的に私が訪問しなければならないというか、日本を訪問された国がある、そういうところもありますし、またアジア開発会議に出てこられていろいろ相談をした国もございます。東南アジア地域には国の数は非常に多いのでありますから、これを一ぺんに全部を回るといいますか、全部に出かけるということはまず困難ではないか、かように思っております。東南アジアの訪問がしばしばいわれておりますが、私自身まだきめたということで発表したことは一度もございません。その辺は誤解のないように願っておきます。
  223. 有馬輝武

    ○有馬委員 私がこのことをお尋ねしましたのは、少なくとも、本年ソウルでアジア太平洋外相会議が開かれましたし、その前には東南アジア開発閣僚会議が開かれた、そしてそのあとを受けたかのように日米合同委が開かれた。その共同コミュニケも私ずっとたんねんに拝見いたしました。  ただ、そこから私伺いたいと思いますことは、日本の外交の自主性というもの、特にアジアにおける自主性——まあ、パンティ国務次官補は東南アジア開発閣僚会議を高く評価して、日本のイニシアチブとリーダーシップがアジアにとって不可欠なものであることを示したというように、べらぼうにほめ上げておるのでありますけれども、リーダーシップとイニシアチブというものは自主性でなければならぬはずです。自主的なものでなければならぬ。このことについては先ほど総理答弁もありました。がしかし、一般に受け取られておるのは、結局は、何といいますか、ジョンソン構想の下請を日本が引き受けたというぐらいにしかとられてないのであります。この点について、東南アジア訪問の目的をお伺いしたのも、そういう発想に基づきまして、日本は自主的にこれらの国々総理の抱負としてどのようなものを持っていこうとするのか、このジョンソン構想の下請といわれることに対して、こういう点に自主性があるのだということがあるならば、それを具体的にお示しをいただきたい。これは、三つの会議を通じて、総理がよく対等にものを言ったというようなことを言われる、そういう点があるならば具体的にお示しをいただきたい。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 このマイクを通じて国民にみんな聞いていただきたいと思う。  戦後の日本は、これはもうりっぱな国です。これはもうアメリカに追随するような必要のない国です。みんなもっと誇りを持ったらどうかと思う。ほんとうにもうりっぱな工業先進国一つだ、だから、もうどこへ出ていっても——前の池田総理は、しばしば、もう大国だ、こう言っておられましたが、ただいまはなお、有馬君別に日本の国の力を過小評価しておられるとは私思いませんが、これは国民全体がりっぱにひとつ誇りを持って、そしてわれわれの持つ力を十分自信を持っていただきたいと思うのです。この自信と誇りがあれば、ただいま言われるようなアメリカに追随するというような考え方はございませんし、また、アメリカと対等にも話ができる。そういう国柄だ。少なくともアジアの問題題については、日本を無視しては何もできないのだ、かように各国がただいま目をみはっておる、そういう際です。だからこれは、私は十分ひとつ自信を持って、そして力に相応した働きをしてもらいたいと思います。  そこで、私が東南アジアへ行こうというのは何だ——先ほど私は、簡単に、これは親善ですということを申しました。ただいまみずからの力を信用しない向きもありますが、同時にまた、日本の行き方について、過去の行き方をすっかり清算した新しい新生日本と、こういうことがまだ理解されていないという、そういううらみも多分にあります。かつての軍国主義的な膨張主義、そういうものがあったんじゃないか、軍備こそ持たないけれども、ただいまの経済侵略をやる国じゃないか、こういうような疑念がまだまだあったと思います。しかし、東京で開いた経済開発閣僚会議、これなどは日本の真意を十分説明することができたと思う。私はいま、各国政府とも、日本ほんとうに平和に徹しておるその行き方、そしていわゆる侵略的な考え方は持たない、いわゆる経済侵略の危険もない、そういうようなことがたいへんわかっていただいて、私は非常にうれしいのです。アジア開発銀行もその一つ構想なんです。もしも日本がかつてのような膨張主義をとっておるということだったら、日本の出資をめぐり、このアジア開発銀行構想などは簡単にはできなかったろうと思う。また、最近の貿易拡大にいたしましても、経済侵略というような形で行なわれるなら、どこの国が貿易拡大について協力しますか。そうじゃなくて、私は、ほんとう日本の行き方、これはしんに心から、心を許すアジアの先進工業国日本、こういう意味で各国がこの国と仲よくしょうとしている。だから、私どもは、資金的にあるいは技術的にこれらのものが協力できるなら喜んで協力する。また、出かけた際に十分日本のそういう真意を知っていただいて、そうして、ほんとうの隣邦として仲よく繁栄への道をたどる、こういうことで走りたいと思う。そういう努力をします。
  225. 有馬輝武

    ○有馬委員 だから、私がお尋ねしておるのは、国民の勤労意欲によりまして、また、私、西ドイツと日本の国民がそういった面では世界の各国の中で一番すぐれておると自負しておるのでありますが、それによって、歴代の自民党内閣の施策のまずさにもかかわらず、異常な発展を遂げた、その発展の過程においてひずみもあるけれども、いま言われるように、確かに発展をしておることは事実です。問題は、その発展した日本が自主的にどのような外交を展開していくか、これに対してアジア国々アジア日本として信頼しているかどうか、それを具体的な行動の中に示していくことが私は先決ではなかろうかと思うのであります。そういうことをお尋ねしておる。  具体的にいま一つお尋ねをいたしますが、昨年の日米合同委の前に三木通産相が東南アジア開発基金構想を発表されて、これを外務省で修正発展された形で今度の日米合同委でも農業開発基金構想として出すということが伝えられておりましたが、それはどのような形で提案され、それは具体的にどのように進められておるのか、これをお伺いしたいと思います。
  226. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この秋農業開発会議を開く、その席で十分審議するつもりです。私は、基金もさることですが、もっと技術的援助を必要とするだろう、また、そういう意味で農業の成績を上げるような、成果をあらしめる技術援助なり物資、機械、機械化等々を話し合う、これが必要です。
  227. 有馬輝武

    ○有馬委員 それに関連して、今度のDACでも、結局農業を重視しなければならぬということがコミュニケとして発表されたようです。問題は、東南アジア国々は第一次産業によってささえられておる。この際に、これらの国々との提携を深めていく中で、今度も米価問題に見られるように、農業政策についてのウイークポイントといいますか、脆弱性をさらけ出した佐藤内閣として、国内の農業との調和というものをどこら辺に見出していくのか。この農業政策の基本と東南アジア開発地域援助という問題と関連して総理の見解を伺わしてもらって、私の質問を終わりたいと思います。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 東南アジア地域農業開発、これは有馬君も御承知のとおり、自給自足のできている国はきわめて少ない。ビルマ、タイ、その他は、ベトナムにしても、インドネシアにしても全部輸入国です。この食糧の自給体制ができない。そこらに、本来の国際収支もまずければ、どの点からもまずいのだ。産業がうまく伸びない。しかも、ここらの地域は、どんなに考えても、二度作あるいは三度作のできるところだ、もしも勤労に徹底すれば三度作もできるのだ、そういうところであるにかかわらず食糧が足らない。それは、農業土木も非常におくれているとか、これも一つの問題だし、あるいは肥料あるいは農薬等々、非常に技術的に困っている。したがって、これらの国が食糧について自給体制ができるようになれば、今度は、資源に恵まれた諸地域でございますから、さらに経済的に発展することも容易だろう、ここに目をつけていまの農業が大事だということを実は言っておるのであります。日本の農産物、食糧、これもただいまは米については大体九六%の自給度がある。しかし、いわゆる食糧として飼料まで考えますと、自給度は八〇%を前後しておる、これが現状でございます。だから、あるいは説をなす者は、ただいまの東南アジア地域で農業を開発する、それはわが国の輸入を東南アジア地域によるのではないか、そのねらいでこういうことをやるのだろう、こういうことを言う人がございます。しかし、私どものいまの農業開発はさようなけちな考え方ではない。それぞれの東南アジア諸国が自立すること、少なくとも食糧については自給体制をつくること、そうして、余力をもって他の産業を興すようにすること、地下資源にも恵まれておるのですから、これは必ず発展することができる、かように思います。  また、私が申し上げるまでもなく有馬君は御承知のことだと思いますが、わが国の食糧の不足、これはただいま飼料の点については、東南アジア地域からも一部入ってきております。しかし、何といいましてもアメリカ自身から飼料が入ってきている。だから、農産物におきましては、アメリカ一つ日本に対する供給源だ。東南アジアで今度農産物を興せば、その競争相手はおそらくアメリカになるだろう、かように私は思います。これは、いずれにしても、日本自身がりっぱな大豆やあるいはトウモロコシができる、そうして飼料を遠いアメリカに仰がなくっとも、東南アジアでもっと良質で、もっと安いものが手に入るというなら、このくらい日本に幸いすることはありません。しかし、ただいま申しますように、食糧自身これを東南アジア地域にたよるつもりはございません。日本の米はこれまた特別な味がございますから、準内地米といわれるものでも、どうも国民に明らかにすればこれを喜ばない、こういう状況でございますから、ましてや、いまの現状においては東南アジア地域で生産される米などに私どもは依存するようなことは絶対にございませんから、その御心配はないように願いたいと思います。
  229. 有馬輝武

    ○有馬委員 与えられた時間があと一分残っておりますから、最後にいやみを言って終わりたいと思います。  実は、三池委員長あるいは与党の理事諸君、また国対の毛利君までが真剣そうな顔をして、二、三日前から時間が時間がと言うものですから、私は、佐藤総理が大蔵委員会に十時間も二十時間も出て、意欲的に、アジア開銀を通すための国会だからおれは出るというので、時間をセーブするのに苦労しておられるのかと思ったら、よく聞いてみると、話は逆であります。とんでもない話でありまして、今次臨時国会というものはこの法案のために開かれたんで、総理がそういう姿勢であっちゃ困る。今後そういうことのないように十分戒心せられんことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  230. 三池信

    三池委員長 堀昌雄君。
  231. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの有馬君の話ではありませんが、私は結局二十分しか時間がなくなったんです。一体、国会の論議で二十分で論議をしろなどということは、これはもうきわめて非常識な問題でありまして、この点はやはり私どもひとつ十分お考えおきを願いたいと思います。  そこで、まずアジア開銀の問題について、まあ現状のプログラムでまいりますと、明日はこのアジア開銀の出資の法律も通りましてこれは発足する運びとなりますが、私はひとつ総理に、はたしてこのアジア開銀の問題についてどういう御認識を持っていらっしゃるかという点でちょっと基本的に伺っておきたいのですが、この協定にはこういうふうに実は書かれております。「銀行は、アジア及び極東地域における経済成長及び経済協力を助長し、並びに地域内の開発途上にある加盟国の共同的な又は個別的な経済開発の促進に寄与することを目的とする。」要するに、この中には個別的なものと共同的なものと、こういうふうに加えられておるわけであります。そうして、その第二条の「任務」の中に「地域内の開発途上にある加盟国開発に融資するため、銀行が保有する財源を利用すること。この場合において、地域の全部若しくは一部又は一国を対象とする事業計画及び総合計画であって地域全体としての調和のとれた経済成長に最も効果的に寄与するものを優先させ、」とある。要するに、ここに書かれておる発想というのは、まず地域全体という問題が非常に重要視をされておるわけです。それは共同的であり、一部であっても、一国よりも一部である。要するにだんだん広い広がりから、最終的には一つの国になりますけれども、これの発想のもとは、そういうきわめて共同的なものに発想の土台があります。ところが、現在のアジアというのは、御承知のように、長い間の植民地政策から解放された独立国でありますから当然そこにはきわめてきびしいナショナリズムがおのおのの国にあります。その問題は、たとえばパキスタンとインドにおけるように、あるいは宗教上の問題に関し、あるいはその他のいろいろな国家的利益の問題に関してインドとパキスタンが共同の一つの目的のためにある一つの事業がやれるかどうかというと、必ずしも私はそう簡単ではないのではないかと思う。同様に、インドとセイロンの間においてもしかりだろうと思いますし、アジアの諸国というのは、そういう非常に特殊的ナショナリズムの現状にあるわけですから、私は、このアジア開銀が設けられて、かりに渡辺さんが総裁となったとしても、この運営というものはきわめて困難な問題が実は横たわっておる、こう考えておるわけですが、これらの運営についての佐藤総理の御認識をひとつ伺っておきたいと思います。
  232. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは堀君が指摘するように、なかなか簡単なものではない。すでに本店の所在地の設置についていろんな問題を起こしたこと、これはもう御承知のとおりであります。また、総裁等の人事につきましても私どもの期待どおりにはたしていきますか、これはなかなかむずかしい問題があります。ただいま言われるように、独立した新興国はナショナリズムの非常に強いものがある。しかし、やはり一面に連帯感を持たなければいかぬという、それも一つの要請なんですね。でありますから、開発閣僚会議を東京などで開いて、そしていろいろ話をした。これなどは大成功だった。これはやはり各国が連帯感も必要だということに気がついたと思いますし、また、理論的にもそれは必要なんです。でありますから、これからの運営上の問題について簡単に結論を出さないように、そこらに十分の思いやりがなければならないし、各国理解がなければならない、かように思いますから、そう急いで結論を出すということよりも、一つの理想、目標、これが連帯感も大事だ、こういうところにお互いが協力のできるようなそういう方向に努力すべきものだ、また努力するつもりでございます。
  233. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこれらの地域には、現在アメリカはIFCという機構を持っている。国際金融公社と訳しておりますが、たとえばフィリピンにおきましてはPBCP、マレーシアにはMIDEI、タイにはIFCT、パキスタンにはFICTC、インドにはICICI、こういうような形でIFCはおのおのデパートメントを各国に置いてそれぞれの開発を行なっておるわけであります。ですから、私は、このアジア開銀構想が出てきたときに、アメリカが必ずしも協力的でなかったというのは、やはり特にアメリカなりのアジアの分析に立って、これらの共同的行為というものがそう簡単にはいかない、それよりは各国別の開発をやるほうが合理的ではないかという判断にあったと思うのですが、その後に非常に変わってきたのは、やはり私は、アジアの情勢の変化の中にアメリカ自身として考え方がかなり変わってきたものだ、こういうふうに判断をするわけです。  そこで私は、まずいま一番アジア開発その他において問題なのは、やはりアジアの政情がある程度安定をしないと、これはアジアが現在のようにきわめて流動的に動いておるときに、共同のプロジェクトをつくろうなどといっても、これは言うはやすくして行なうは難し、ちょうどいま佐藤総理がいずれの国とも仲よくしたいとおっしゃることは、これは間違いない一つのテーゼでありますけれども、なかなかこれが実行できないというのが私はいまのアジアの特殊性ではないのか、こう考えるわけです。ですから、やはり私は、そういうアジアの特殊性を考えた上で——特にアメリカアジアに対しては非常に理解が不十分であると思う。だから、そういう意味では、日本こそアジアの一員なんですから、やはり同じ立場考えれば、もう少し理解のあるいろいろな問題提起ができるのではないだろうか、私はそういうふうな気がしてならないわけです。  そこでこの問題は、アジア開銀というのは本来の目的は共同的なものになっておるけれども、これは日本がもしどれかの国だけ個々にやれば、いろいろな賛成の問題を出せば必ずその他から反発が起きてくるであろうし、実は、アジア開銀の問題というのは、できることはできてもなかなか問題の発展が困難で、やはり順序はどうも、先ほどから同僚諸君が取り上げておりますけれども、政治的な諸条件というものの整備というものが先行せざるを得ないのではないか、こう私は考えますが、その点はいかがでございましょうか。
  234. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはなかなか運営については問題があると思います。したがいまして、発足して、理事会その他においていかにするかということを十分協議されるだろう、そこで具体的な処理の方向、それがきまるだろうと思います。過去のものから見ましても、あるいは南アメリカに対する一つ銀行を置く、あるいはアフリカに対する開発銀行を置く、まあそれぞれの実績がございますから、いろいろ考えられるでしょうが、政治的にあまり強く出てもこれは困る、かように私は思いますので、まあ政治の問題とは切り離す、そういう形でいきたいものだと思います。しかし、政治と経済、これは全然分離できませんからそう厳格には言いにくいでしょうが、まあ、どちらが指導するかといえば、政治で指導をされないようにするのが必要だ、かように思います。
  235. 堀昌雄

    ○堀委員 いまおっしゃるように、私もあまり政治的な問題が先へ出ることが望ましいとは思いませんけれども、特にアジアはその点では非常に困難な問題があるだろう。ですから、これはちょっと大蔵大臣も聞いておいていただきたいのでありますけれども、今度のアジア開銀の今後の取り扱いについては、かなりバイ・ローによってきちんとしておかないと、わが国渡辺さんを総裁に出したは、上へ上げられて手も足も出ない状態で、実はアジア開銀はスタートしたけれでも何もできなかったということも私はあり得るのではないかと思う。そうすれば、この運営についてはバイ・ローによってきちんと整理をされて、やはりルールがよほど明らかになってこないと、私は、アジア開銀というものは世界の各種の開発銀行の中で最も扱いにくい、そして非常に問題をかかえ込んだ銀行になるおそれがある、こう考えておりますが、その点についての大蔵大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  236. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その点は私もそのとおりだと思います。非常にこの運営はむずかしい。まあ、総裁は渡辺武さんにすんなりきまるのじゃないかといまのところは想像しておりますが、さあ、今度は副総裁を一体どうするんだということになると、これはなかなかそのこと自身一つでもむずかしい。そういうようなことで、これがなめらかに動き出すにはよほどの苦心が要ると思いますが、まあ総裁にだれがなりますか、渡辺君がなるとすると、これは大いに努力してもらわなければならぬ、かように存じます。
  237. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ、アジア開銀についてはひとつそういうことで、ただ投資さえすればいいという案件ではないということを私はここではっきり申し上げておきたいと思います。  次に、あとは少し国内的な問題でありますが、先ほど総理もちょっとお触れになっておりましたが、実は、イギリスは現在国際収支を含め、ポンドのきわめて危険な状態に置かれて、労働党内閣としては非常にやりにくい、しかし、まあ思い切った政策に踏み切らざるを得ないというところに追い込まれておると思います。しかし、このイギリスの現在の政情というものをやはりよほど私たちも十分に分析をしながら勉強をしておかなければならないのではないのか。実は午前中に消費者米価の問題あるいは粗鋼減産についての鉄の価格の問題を少し詰めた議論をさしていただいたわけですが、私は、やはりいまの日本のこの物価高の悪循環という問題は、どこかでかなり勇気を持って断ち切る処置をしていかないと、これは遠からずしてイギリスが現在置かれておるような状態日本も立たされる可能性が十分にある、円の切り下げという問題が世界の注視の的になる時期がくるのではないかという不安がしてなりません。これは一つは、現在の国際政策に非常に関係がある、こう考えております。  これらについて、イギリスの現在の非常に困難な状況を他山の石としながら、私たちもこの中に学び取るものを学んで、その事態に立ち至らないような処置を考えていかなければならないと思いますので、総理のこれに対する御見解を承っておきたいと思います。
  238. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 イギリスのウイルソン内閣ができて以来、当面している問題は、いかにしてポンドの価値を維持するか、こういうところにあると思います。そこでたいへんな努力を払っておられる。ただいま円が引き合いに出されましたけれども、ポンドの持つ意義は、これは国際通貨な、国際決済通貨だ、かようなことで、とにかく三割近いもの、これはやはりポンド決済だ、そういうところを考えますと、これはたいへんな意義を持ち、価値を持つものだ。ひとりウイルソンばかりでなく、各国ともそのポンドがいかにあるかということはたいへんな問題で心配もする、だからこそ各国も協力をして、そうしてポンド価値の維持に最善の注意を払ってきた、大体まずそれは成功したと思えたとたんに今回の処置をとらざるを得なくなった。これは、私は考えますのに、各国の心配、それにもウイルソン首相がこたえなければならない、同時にまた、当面する経済の問題はたいへん深刻なものがある。そこで非常な思い切った処置がとられたんだと思います。私は先ほどお答えいたしましたように、この物価あるいは賃金、配当、これを据え置くという、これはよしその期間が六カ月にしろ、また六カ月経過後においても特別な規制をするというようなことですから、まず一年はそういう状態をとろうというんだと思います。この種の思い切った措置、これをとるということが、そのねらいとしての効果は必ずあがるだろうと思いますが、一面、経済発展、成長というか、それには非常な悪影響があること、これは認めないわけにはいかない。しかも、そういうような欠陥があるにかかわらずこのドラスティックな措置をとった、これはたいへんな決意だと私は思います。私は、わが国においてさような措置をとらなくて今日まで経過していること、この意味においては、国民の協力、これに感謝するということを先ほど申しましたが、とにかく国民の協力なしにはこの種のことはできないんです。最近のウイルソン首相の決意は、おそらく海員ストからこの決意を実行に移したということになるのじゃないかと思います。海員ストがないならば、こういう構想は持ちながらも、実施はあるいはこの時期ではないかもわからない、私はかように思います。そういたしますと、これは各界、各層の協力、これがいかに必要かということをこの際にあらためて私どもも認識しなければならないと思います。  ただいま御指摘になりましたあるいは消費者米価、あるいは粗鋼等のお話も出ております。これは米の値段——これは生産者米価というわけじゃありませんで、消費者米価がその主体になりましょうが、米の値段、それから賃金は一体幾らかという、標準賃金と申しますか、そういうものがかつては予算編成の場合の基準になった、かように思います。私どもが政界に入ったその当時、来年の米は一体どこになるか、その際に賃金はどういうような動きをするだろうか、そこで初めて予算の組み方ができたように思います。それほど実は大事な問題なんです。だから、政府自身も米の問題については真剣に——また、ただいまは労使双方の話し合いによって賃金などきまりますけれども、力で大体きまっておる、かように思いますが、しかしこのままでも困る。まあ鉄鋼の関係の賃金などは、これは一発回答ということでりっぱな先例ができつつある。これはたいへんけっこうだと思います。そういうことで、順次、いわゆる力によってきめないというか、お互いに話し合いによってきまっていく、しかし、これがまた力によってきめる、いわゆるストライキだ、こういう形でものごとがどんどんきまっていくと、これはたいへんなことで、経済の破綻になる、私はかように思うのであります。だから、私はその労働者の権利を否定するというのじゃございません。しかし、各界、各層の方々の協力を得る、そうしてそれが常識的な範囲にきまる、こういうことならば、経済発展もこれはもう期して待つべきものがあるだろうと思うし、物価などもそのうちに鎮静するだろうと思う、かように思うのであります。  最近の形において私どもがいま当面しておるのは、物価も物価だが、まず経済を正常化すること、そうして成長への方向をたどり、物価があまりお互いの生計を圧迫しないで済む、こういうような状況、そのためには、何といっても経済が成長しなければならぬと思いますので、そういう方向が望ましいと思います。さような意味で、いわゆる消費者米価をどうするか。今回は生産者米価がああいうようにきまった。食管会計の赤字も二千億円にもなる。しかし、これを一体どうするのだ、こういうことをしばしば言われるのでありますが、私はそれについて、当分の間上げないということを答えました。当分とは一体いつまでなんだ。これはしかし、当分は当分だというお話をしておりますが、なぜさようなことを言っているか。これは私が申すまでもなく、食管会計が赤字であれば、食管会計の赤字は食管会計で消すという、これは法的に財政上の原則で非常にはっきりしておると思います。そのとおりがやれない、これは一体何なんだ。諸物価に及ぼす影響なり生計費に与える影響、それを考えたら食管八会計の赤は食管会計で埋めろ、こう簡単には言い切れないのです。だから、私どもそういう点をさらに慎重に考えよう、こういうことで、ただいま当分の間はとにかく上げません、かように申しておりますが、その結論は、いま申すように、一般物価の動向、生計費に対する圧迫のその程度でこの処置はとらなければならない、かように思います。これは、英国の総理が当面している苦しみも、程度の差こそあれ、やはり私にも同じような悩みがあるわけであります。これはやはり経済を一日も早く安定成長の線に乗せて、そうしてお互いの生計もその安定成長の中において行なわれる、したがって、その安定成長を守る物価である、そういうならば、お互いの生計に重大なる圧迫を加えるということはない、かように考えておるのであります。
  239. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの御答弁の感触は、私も、できれば上げないでいきたい。財政の原則だけでは問題は片づかないというふうに理解をいたします。いまウイルソン首相が物価をはじめあらゆるものの凍結を提案しておられます。けれども、なかなか簡単ではありませんが、ことしは非常に公共料金が上がった年であります。最近、ことしほど公共料金が上がった年はないわけでありますから、私はやはり来年は、さっき議論をいたしまして、要するに鉱工業生産の伸びやその他から多少の増収は期待できる、予備費はたっぷりとってある、いろいろな災害に対する費用とかいろいろなものは、実はこれまでに比べて四十一年度予算はかなり組んでありますので、そういう面を勘案していただいて、年初からまた消費者米価を上げるというようなことでなく、ひとつウイルソンのやっておりますことを他山の石として、多少ドラスティックになろうとも、国民の立場に立って処置をしていただきたいということをお願いをしておいて、時間でありますから、私の質問を終わります。
  240. 三池信

    三池委員長 永末英一君。
  241. 永末英一

    ○永末委員 民社党に与えられた時間は五分でございます。答弁もひとつ簡潔にお願いいたします。  先ほど総理は、心を許すアジアの先進工業国としてアジア諸国に遇せられたい、このように言われました。私は、それは、わが国アジアの平和のために責任を果たす、こういう姿勢をはっきりと示されるときに初めて出てくると思います。責任を果たすというのは、たとえば海外経済協力に対しては、われわれはいま国内でも決して福祉国家状態にはなっておりませんが、しかしわれわれ日本国民は、これこれの経済アジアの平和のために、すなわち新興国の経済発展のために尽くす、こういうことを明示されることが必要であり、同時に、日本の安全についてわが国がわれわれの国民の力をあげてこれにやはり責任を果たすのだ、この二つのことが必要だと思います。  そこで、第一点について伺いたいのでございますが、現在の海外経済協力なるものは、たとえば賠償にしろ、技術協力にしろ、長期信用供与にしろ、海外投資あるいはこのアジア開銀に見られるような国際機関投資にしろ、個々別々の案件でこれこれがきまった、そうしてそれを集計してこれこれの国民所得の比率になる、こういうことである。これではアジア諸国が尊敬する立場ではないと思う。そこで、政府が何回か明言されておりますように、少なくとも国民所得の一%を目標として出す、その方針を佐藤内閣としては明確にせられ、大蔵省、外務省、通産省等がこれをどうくずしていくか、こういう政策方針として国民所得の一%を出す、これを明確にされなければならぬと考えます。午前中の質問で、少なくとも十一月の新しい長期経済計画が出されるころにはこれを明示すべきである、このように私は主張いたしましたが、佐藤総理お答えを願いたい。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは私も同じような考え方を持っております。DACで、先進工業国はその国民所得の一%、これを開発途上にある国に支出しろ、支援しろ、こういう決議をされた。日本もこれに賛成していた。賛成していてそれを実際にやらないという、そういうわけにはいかない。したがいまして、私もこの点を踏み切ろう、こういうことで、もうすでにアジア開発会議ではこれが明示されました。今度は一体いつからやるのだ、こういう問題になっている。いま、これはいろいろ計算のしかたにもよりますが、長期延べ払いまで入れて大体〇・六二%くらいまで援助ができている、かようなことです。あと〇・三八%、まず〇・四程度の援助拡大が必要なわけであります。  顧みますと、国内にも幾多の問題があるし、国際的にただいまのような決議に賛成している日本でございますから、いま直ちにということはなかなかできかねますが、国民の理解ある協力を得まして、できるだけ早い日にこれを実現するようにしたい。だから、ただいま御指摘になりました長期経済計画をきめる、その中には織り込むでしょうねというようなことにもなるわけでありまして、いずれそういうものができ上がります際に私は十分考えてみる。
  243. 永末英一

    ○永末委員 第二問に移ります。  防衛計画というのは、現在、五、六月ごろ第三次防をきめるといってきまらずにそのままになっております。したがって、これをめぐって怪しげな風潮がいろいろとうわさになっていることはきわめて日本の防衛のためにならぬとわれわれは考えております。  そこで、佐藤総理は国防会議議長でございますから、一体いつごろに第三次防をきめるのか、伺いたい。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この防衛問題、まとめて説明いたしますが、私はただいま、自衛力、これを整備する、そうして日本の安全を確保する、こういう国でありたいと思っております。  ただいま、日本の安全を確保するためには、自衛力も自衛力でございますが、日米安全保障条約、これを骨子にして日本の安全を確保している。みずからの国の安全を確保するのに外国援助を受けなければならない、これが実情でございます。わが国は、戦後におきまして、日米安全保障条約を一つの防衛の柱にする、いわゆる自衛力増強は、国力、国情に応じてこれをふやしていく、こういうことをきめたのであります。現在の内閣におきましても、国力、国情に応じた自衛力の整備というか、これは変わらないのであります。  そういう点から見まして、少なくとも国力、国情に応じた自衛力というものは一体どの辺がねらいなのか、こういうことでいろいろ検討しておりますが、どうもパーセンテージでこれを出しますことはしばしば間違いを起こしやすいように思うのであります。  第三次防衛計画は近くきめざるを得ない、早くきめないと、来年度予算の編成にも、また長期経済計画樹立にも支障を来たす、こういう状況でございますから、それらとあわしまして第三次防もその全貌を明らかにしたいと思います。  しかし私は、この三次防という長期計画もさることですが、その一部——あるいは一つ描いたもの、その一部を来年度予算にいかに盛り込むか、こういうことのほうが実際的ではないか、こういうので、この第三次防全体のいろいろ意欲的なものはありましょうが、ただいま来年度予算の編成、その際にどうなるかという、そういう意味の検討を十分してくれ、かような実は注文をしておるのであります。しかし、これは、どうも防衛計画全体、長期計画を持たないと困るのだ、そのとおりでございます。しかし、長期経済計画樹立、そういう際にはこの防衛計画の全貌もおそらく明らかにすることができるのではないか、かように思っておるような次第であります。
  245. 永末英一

    ○永末委員 もうこれで最後の質問でございますが、方針はいろいろ伺いました。あとは態度で示すことが必要であろうかと思います。  そこで、ソ連のグロムイコ外相がこちらへ来ておられますから、この機会をとらえてベトナム戦争を平和的に終結するための話し合いを総理としてはされる御意思があると思いますが、いかがですか。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日ソ間の直接の問題もさることですが、ただいま御指摘になりました点は、いま国際的な、またアジアの問題として一番大事な問題、緊要な問題であります。この点については十分忌憚のない意見の交換がしたい、また、これによりまして和平へのきっかけがつかめればこんなしあわせはない、かように思っております。
  247. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  248. 三池信

    三池委員長 両案に対する質疑は、これにて終了いたしました。     —————————————
  249. 三池信

    三池委員長 これより両案を一括して討論に入ります。  討論の通告がありますので、順次これを許します。有馬輝武君。
  250. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されましたアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案及び外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案に対し、強く反対の意思を表明するものであります。  反対の討論を行なうにあたりまして、私はまず反対の基本的な立場を明らかにいたしたいと思うものであります。  すなわち、本二法律案は、アメリカ日本が中軸となり、その出資によってアジア開発銀行を設立し、アジアの反共国家群に資金援助を与え、もって北ベトナム、中国、北朝鮮への封じ込め体制を強化し、あわせてアジアにおける日米の支配権を強めようとするものであります。明らかに、アメリカベトナムにおける侵略戦争に対する国際的非難をかわすための方便にすぎないのであります。日本政府の積極的態度も、失われいく東南アジア経済市場の回復と、アメリカの軍事面、日本経済面という侵略の分業体制といわなければならないのであります。  四月開かれました東南アジア開発閣僚会議、さらに六月に開かれましたアジア太平洋閣僚会議も、さらには七月に開かれました日米合同委員会における会議の進展を見ましても、アメリカアジア開銀にかけている期待はまことに大きなものがあり、表面は反共軍事同盟的色彩を隠しながらも、アジア諸国の反共団結のための経済協力をうたい上げ、事実上のアジア開発銀行構想の推進のための会議であったことは否定し得ないところであります。まさに、アジア開発銀行構想は、アメリカの核戦略体制によるアジアへの進出を経済面において補強しようとする反共軍事、政治、経済戦略の一環であります。   〔発言する者あり〕
  251. 三池信

    三池委員長 御静粛に願います。
  252. 有馬輝武

    ○有馬委員 さらには、東南アジアに対する日本独占の支配権を獲得しようとする意欲のあらわれであります。  日本開発途上にある国々の政治的独立と、経済、文化水準の向上に無私無欲の立場から協力すべきであります。恩恵的な態度でひもつき援助を提供し、それらを通じて開発途上国々を再びみずからの支配下に組み込もうとする態度は、まさに新植民地主義そのものであります。このような立場から、アジア開発銀行の設立に対しては、これを認めることができないのであります。  次に、わが党がアジア開発銀行の設立に反対する具体的な問題点を申し上げたいと思うのであります。  その第一は、今回のアジア開発銀行加盟国はすべてアメリカを中心とする反共国家群であり、中国、北朝鮮はもとより、北ベトナムすら含んでいないのであります。さらにビルマ、カンボジア、インドネシアの諸国も、日本の支配体制に対しては強い危惧の念を表明しておるのであります。この銀行設置のねらいは、まさに南ベトナム軍事政権に対する経済援助であり、政治的、軍事的援助であることは必至であります。しかも、その実体は、過去五年間におけるアメリカの平均五十億ドルにのぼるひもつき援助の批判に対する新たな挑戦であります。日本がみずから進んでこのアメリカの侵略政策に協力を行なうことは、アジアの諸国民に背を向けるばかりではなく、アジアの緊張を激化し、アジアに重大な危機をもたらすことに加担するだけであり、南北両ベトナムの統一を阻害し、分割を固定化させるだけであります。  第二の問題点は、この銀行が東南アジア開発地域への経済援助を名として、事実上の経済支配を確立するための処置しかとられていないことであります。現在出資予定額は、日本の二億ドル、アメリカの二億ドルが中心であり、アメリカはその上に一億ドルの特別信託基金を出すことになっております。業務の決定権における投票権は、払い込み資本金の額によってきまることとされておるのでありまするから、アジア諸国にアメリカ日本による銀行支配の危惧が根強くあるのは当然でありましょう。アジア開銀の本店が巨額の経費を投入しながらマニラにきまった原因もそこにあるのではありませんか。これらの心配は、ジョンソン大統領の発言、あるいは、現にアメリカを中心として進められている米州開発銀行の運営の実態から見てもこのことは否定できない事実であります。現に、アフリカ開銀においては、一外国経済支配の締め出しをはかろうとするなど、その防衛に心を砕いている事実を忘れてはならないのであります。このアジア開銀設立条約にはこれらの危惧に対して何ら歯どめの措置がとられていないのであります。  第三の理由は、アジア外交の確立が叫ばれている今日、どのような援助アジア開発途上国々に提供すべきかという何らの理念も理想も持っていないということであります。むしろ、自民党政府の動きを直視するならば、さきに日韓条約を結び、台湾に円借款を供与し、その他東南アジア諸国に各種の借款を行ない、アジア開発銀行に出資し、また東南アジア閣僚会議を主催し、アジア外相会議参加し、日米貿易経済合同委員会においても、ベトナム戦争の敗退によって世界の批判を浴びているアメリカ極東政策全般を支持し、アメリカアジア侵略政策を固定化するための開発援助計画を話し合っているのであります。これは明らかに中国を敵視し、国民的利益を裏切る対米軍事協力であり、朝鮮特需の再来を待望する危険きわまりない態度と言わなければなりません。このような経済援助は、開発途上にある国々の最も反対しているところであり、アジア諸国民から強い反撃を受けることは明らかであります。  以上の立場から、われわれはアジア開銀の設立に断じて反対であり、承服できない態度をここに明らかにいたしたいと存じます。  以上で終わります。
  253. 三池信

    三池委員長 永末英一君。
  254. 永末英一

    ○永末委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、アジア開銀設立に関する二法案に賛成をいたします。  われわれ日本国は、アメリカ、ソ連、中国の三つの国際政策の激しく相争う中でどのようにアジアの平和と安全とを保っていくか、これを全うするわれわれ日本民族の使命を思います場合に、いたずらに理想に流れて、その理想が一〇〇%達成されないからといって、現在与えられた問題に背を向けてはならない、これが民主社会主義者の考え方であります。  今回のアジア開銀の東南アジア経済開発に対して果たそうとするところは、その分量においては必ずしも大きいとは言えません。しかしながら、わが日本国は、これら国際機関の中に入ってわれわれの立場を明確にしていくならば、必ずやこれら諸国がわれわれ日本人の真意を理解し、やがて動乱のちまたであるこのアジア地域に平和をもたらす一つのきっかけになり得るとわれわれは確信をいたしております。  そのためには、第一に、日本国は、アジアにおきますこのアジア開銀加盟国にある非同盟諸国の要望を十分にくみ取り、それら全部を包む立場においてこのアジア開銀の運営に努力をしていくことが必要であります。  第二に、日本努力目標、すなわち、われわれ日本人がどのような日本経済力をこれにさくか、この目標を明らかにし、そうして全般的ないろいろな経済協力の中で、アジア開銀の中で果たすべき役割りを明示していく、これが必要であろうと思います。  第三には、現在の一番アジアの問題点であるベトナムの平和のためにわれわれ日本国が自分のからだをもってこの平和的解決に突進をしていく、この努力を積み重ねることによって、アジア開銀につきまとういろいろな無用な混乱は私は払拭されるはずだと考えます。  この三つの努力政府が行なうことを期待しつつ、われわれ民社党はこの二法案に賛成をいたします。
  255. 三池信

    三池委員長 これにて討論は終局いたしました。  引き続き採決に入ります。  両案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  256. 三池信

    三池委員長 起立多数。よって、両案はいずれも原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 三池信

    三池委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  258. 三池信

    三池委員長 次会は、明二十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十六分散会