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1966-10-17 第52回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年八月十二日(金曜日)委員長指名 で、次の通り小委員及び小委員長選任した。  産炭地域振興に関する小委員       大坪 保雄君    加藤 高藏君       倉成  正君    藏内 修治君       壽原 正一君    田中 六助君       西岡 武夫君    野見山清造君       三原 朝雄君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    中村 重光君       細谷 治嘉君    八木  昇君       伊藤卯四郎君  産炭地域振興に関する小委員長 加藤 高藏君 ————————————————————— 昭和四十一年十月十七日(月曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 進藤 一馬君 理事 壽原 正一君    理事 多賀谷真稔君 理事 八木  昇君       安藤  覺君    神田  博君       小山 省二君    田中 六助君       竹内 黎一君    野見山清造君       滝井 義高君    細谷 治嘉君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  三木 武夫君         労 働 大 臣 山手 滿男君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局次長) 相澤 英之君         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    藤繩 正勝君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  中村  博君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君     ————————————— 八月二十五日  委員天野光晴辞任につき、その補欠として大  石武一君が議長指名委員選任された。 九月二十六日  委員伊藤卯四郎辞任につき、その補欠として  小平忠君が議長指名委員選任された。 十月十一日  委員小平忠辞任につき、その補欠として伊藤  卯四郎君が議長指名委員選任された。 同月十七日  委員大石武一君、篠田弘作君及び西岡武夫君辞  任につき、その補欠として小山省二君、安藤覺  君及び竹内黎一君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員安藤覺君、小山省二君及び竹内黎一君辞任  につき、その補欠として篠田弘作君、大石武一  君及び西岡武夫君が議長指名委員選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  石炭対策基本施策について質疑を行ないます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 労働大臣に二点ばかり御質問したいのですが、第一点は、五十一国会最終日に、参議院のほうで炭鉱災害による一酸化炭素中毒立法を一年以内につくる、こういう決議があったわけであります。それに基づいてごく最近労働大臣から労働災害審議会にこの点を諮問された、こういうふうに伺っておるのでありますが、その経過、どういう内容の諮問をしたのか、これをまずお尋ねしたいと思います。
  4. 山手滿男

    山手国務大臣 一酸化炭素中毒患者に対しましてどういうふうな処置をとったらよろしいかということについては、いまお話しのように労災保険審議会答申を求めております。目下答申をつくるためにいろいろ御協議を願っておるところでございまして、まだその結論は出ておりませんが、結論を拝見をいたしましてから立法措置をする決意でございます。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 結論を待って立法措置をするということでありますが、その場合に問題点として、参議院では、当面は石炭産業のみに限った中毒立法をつくるという意味決議なんでありますが、そういう対象範囲なり、あるいは現在労働省措置としてやっておる内容になお問題点があり、不備があるわけであります。そういう点を改善しなければならぬのでありますから、要するにどういう範囲にするのか、それから立法内容というのはどういう内容になるのか、これがきわめて重要な問題でありますけれども、その問題については全くお触れになっておらぬようであります。あるいはその内容について労働省としての考えというのもまとまっておらぬようでありますけれども、この点いかがですか。
  6. 山手滿男

    山手国務大臣 先ほどお話しになりました一酸化炭素中毒問題、これは非常に重要でございまして、この問題を処理しようということが非常に重要な眼目でございます。しかし同時に同様な中毒症状を起こします二硫化炭素等いろいろの問題もございまして、ただ一酸化炭素だけを見て、ほかのものは全然見なくてもよろしいかというような議論が起きますと、政府といたしましてはなかなかやっかいな問題になりますので、そういうことを含めていろいろ御検討を願い、結論を出していただこう、こういうことにいたしております。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 そういたしますと、いまのところ法律をつくるその適用範囲という問題については、単に一酸化炭素でない、しかもそれは炭鉱ばかりじゃない。参議院決議は、いろいろ問題点はあるが、当面石炭産業に起こった一酸化炭素中毒対象にしようということであるわけですね。それが全産業、端的に言いますと、どうも公害といわれておる自動車等一酸化炭素中毒あるいはその他の一酸化炭素中毒、こういうものも考えよう、あるいは二硫化炭素の問題も考えよう、こういうことになりますと、これは簡単に私は結論が出ないんじゃないか、こういうふうな気がするのであります。参議院決議は諸般の情勢考え石炭産業にしぼったわけでありますけれども、そういう考えにもまとまっておらぬようでございますし、また立法具体的内容、そういう問題についてはまだいまお触れいただかなかったのであります。たとえば三十八年の十一月九日に三池炭鉱の大爆発が起こりまして、一瞬にして四百五十八名の死亡者が出たし、現在なお六百名ないし七百名程度の人が病院に呻吟しておる。あるいはリハビリテーションを受けている。こういうことなんで、もうそれは満三年になるわけだし、非常に焦眉の急を要する問題なんでありますけれども、そういう点についてはどうも全く白紙というよりも、むしろ労働省は諮問したけれども、おざなりのきわめて消極的な態度でこれに臨んでおるのじゃないかという印象を受けるのでありますが、いかがですか。
  8. 山手滿男

    山手国務大臣 三池に起きました事故が非常に重大な事故であったことはもちろんでございますし、あの事故による一酸化炭素中毒患者に対してどうするかということが立法しようという決意をした発端ではございますが、いろいろな労働災害各地に相当重大なものが起きておりまして、単に三池の問題だけに限って立法すればそれでよろしいのかどうか。やはりほかの二硫化炭素による災害のようないろんな問題も考えなければいかぬのじゃないか。いわゆる均衡の問題でもございますので、立法措置をわざわざいたします以上は、十分政府としては手を尽くして、いろんな角度からお話がございましても、それにお答えができるような万全の措置をとる必要があろうかと思います。ただいろいろやっておったのでは間に合わぬのじゃないか。いろいろお話がございますけれども、これらにつきましても督励をいたしまして、一年以内には必ず立法措置をとる、こういうことを決意いたしておる次第であります。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 せんだって、十三日にこの石炭特別委員会ではいろんな当面の問題についての打ち合わせ会があったわけです。その節労働省のほうから、この問題について現在諮問しただけであって、労働省として、こういう範囲でこういう内容のものだというような具体的な腹案は持たないずくで白紙で詰問をしておるのだが、近く労働省自体としてはかくあるべきだという具体的な方針を打ち立てて、これを審議会に示すつもりだ、こういう労働省考え方を承ったのでありますが、その範囲なりあるいは適用する内容についての、労働省の具体的な考え方というものはいつごろできる段取りになっておるのか、お聞かせいただきたい。
  10. 山手滿男

    山手国務大臣 範囲につきましては、先ほど来お話を申しておりますように、三池事故だけについて立法措置を講ずるという考えではございませんので、いろいろ均衡をとって、こういういろいろな事故が起きますから、そういうようなものも含めて範囲の中へ入れて御検討をお願いするということでございまして、その内容等についてはいろいろなことになろうと思いますが、答申を待ってすみやかに立法する所存でございます。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員 ことばじりを取るわけじゃないわけですけれども、私は三池事故だけを申し上げておるんじゃなくて、石炭産業にのみ限るという参議院決議方針に沿うてやるのか、あるいは均衡論という形で二硫化炭素等にも及ぶのか、こういう問題についても労働省はまだどうも考えが固まっておらぬようであります。さらにその立法の具体的な内容、どういう補償措置を講ずるのか、そういう問題なりあるいはどういう治療対策を講ずるのか、こういう問題等については全くいまのところはノータッチ、白紙状態のようであります。これでは非常に心細いと私は思うのでありますが、せんだってのお話では、いま白紙検討いただいておるけれども、労働省自体検討してどういう範囲に適用するのか、その内容はこうだという労働省としての案はつくって審議会に示すつもりだ、こういうお話を承ったのです。もう一度この点について……。
  12. 山手滿男

    山手国務大臣 いまお話しでございますが、私は、そういう範囲や何かを限定をしてこうするのだというような御答弁を申し上げたということはちょっと聞いておりませんけれども、しかしいろいろなことでせっかくお話でございますから、事務的にさらにこうしたほうがいいというようなことがあれば、それについては十分検討をしたいと思います。要は委員の各位に御審議をいただいておりまして、結論をお出しをいただいてそれを見るという根本的な方針にはいま変わりはございません。
  13. 細谷治嘉

    細谷委員 これ以上この問題についてお尋ねしても何ですが、ただ問題がいまのところはぱあっとしておりまして、ただ立法措置をするという考え方である、その法律対象ということもまだ白紙だ、内容についても白紙だ、こういうことのようでありまして、私も非常にどうも消極的じゃないか、こう思うのであります。せんだって、衆議院の石炭特別委員会現地視察をいたしたわけですが、その節、一酸化炭素中毒患者治療をやっておる、大牟田にあります労災療養所を見に行ったわけであります。その際の所長の話によりますと非常に楽観的、ある意味では政治的と思われるような発言があったわけです。端的に申し上げますと、病院に入院しておったほうが収入が高いんだから、病院に入院したがっているんだ。これは囲者の発言なんですよ。これは現実に、たとえば私どもが見ますと、しろうとでありますが、とても仕事につけそうな状態ではない。もう手はがたがたふるえておるという人もおるわけで、事態はかなり深刻なものを持っておると私は思うのです。そこで大臣就任後十分御承知かと思うのでありますけれども、百聞一見にしかずということわざがありますように、やはり大臣実態をごらんになっておりませんので、ペーパーの上だけではいま御判断はできないんじゃないかと思うのです。したがっていま労働省としては、諮問した以上は、非常に重要な段階でありますから、やはり現地——熊本大学あるいは久留米大学、九州大学に重症の患者が入院しておりますし、あるいは大牟田労災療養所にも症度の高い人が入院しておるし、あるいはリハビリテーション荒尾訓練をしておる人があるわけであります。その、実態をすみやかにごらんいただくことが適正な、実情に即した立法措置ができる非常に重要なファクターになるんじゃないかと私は思うのでありますが、そういう御計画なりあるいはお考えがあるかどうか承っておきたい。
  14. 山手滿男

    山手国務大臣 労災病院院長さんからいろいろお話があったとのことでございますが、私は、こういう関係は単に政治的な判断だけでそれがどうだとかこうだとかいうことでなしに、やはり技術的なといいますか医療者立場、いろいろな経験等が非常に重要なことであろうと思いまするし、私たちが政治的にとやかく言うというようなことは必ずしも妥当ではないので、そういう医師そのほかからきちっとしたいろいろな経験なり判断に基づいて結論が出ますならば、われわれは十二分に尊重するという立場でやってまいりたい。私自身病院へ行ってみたらどうかというお話でございますが、就任早々でございまするので、いま一生懸命勉強をいたして寧日ないところでございます。したがって、できればそういうことも考えてみたいとも思いますが、目下のところそういう予定を組んでおりません。
  15. 細谷治嘉

    細谷委員 予定は組んでいらっしゃらないということでありますが、臨時国会がいつになるか何ですけれども、ぜひ現地をごらんいただくことが最高の責任者である大臣として、この問題に対する対処を誤らないゆえんではないかと私は思うのです。そういう意味で、行きたいという意思は持っておるけれどもいまのところ全くめどがない、ことばをかえて言いますと、行かないのだというようにお伺いできたのでありますが、この臨時国会が開かれる前にぜひ一度現地をごらんいただきたいと思うのであります。もう一度この点について大臣のひとつ率直な御答弁をいただきたいと思います。
  16. 山手滿男

    山手国務大臣 正直に言いまして、今週の終わりには岡山で全国の安全大会があって、一万近い人が集まるのでおまえ出てこい、こういうようなお話がありますが、いろいろな関係もあるので、実は私お断わりをいたしまして、出席をしないで代理に行ってもらうことにいたしたような次第でございます。そのほか各地から、いろんな関係があって、一度見に来いというような話やらいろんなことがありますが、国会がこういう状態でございまするし、いまそういう予定は全然立てておりませんが、またいろんな将来のことでございまするから、場合によりまして向こうのほうに出かけていくチャンスがあれば相談してもよろしいと考えております。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 関連して。この問題は、いま労災の問題にしてはきわめて大きい問題です。しかも人命の問題です。しかも、あとから質問いたしますが、三万人も整理が出ようとしておるときです。とにかく、福永さんが労働大臣になられたときに、国会開会中、しかも予算委員会開会中に労働大臣は筑豊に飛んだのですよ。それから、見られて直ちに、大蔵大臣通産大臣自治大臣が一緒に飛行機で行かれた。きわめて問題は深刻ですから、大臣、まだ臨時国会までかなり時間もあるし、いつ開かれるともわからぬので、いまから予定に組んでないという答弁をされる必要はない。ぜひひとつ予定に組んでいただいて、早急に見ていただきたいと思うのですよ。それから離職者の問題だって、事情はきわめて変わっているのです。ですから私は、こういう重大な問題を大臣が放置しておるという——山手労働大臣は個人としては行きたいだろうけれども、何か周囲がとめているのですか。大臣行かないほうがいいですよ、あとからたいへんな荷物を背負ってきますよととめているのですか。とめているなら、ここではっきり答弁されたらどうですか。
  18. 山手滿男

    山手国務大臣 いま申し上げましたように、最近いろんなことが積んでおりまして、岡山行きも行く約束をしておって急によしたようなかっこうになり、いろいろ用件が山積をしておりますので、現在のところは九州に出張する日程をつくっておらない、こういうことでございまするが、先ほど来お話がございまするような事態でございまするので、一度そういうチャンスをつくりたいと思います。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は確約をしなければ——プライべートの問題は別として、公の日程表を出してごらんなさい。まだだいぶ時間があるのですからね。そして、いま、率直に言って、各省こう見て、労働大臣が特別忙しくてこれはたいへんだという客観的情勢はないですよ。ですから、政府としては、きまるものはぼつぼつきめておるのだし、しかも石炭政策に関する労働問題というのは、今度の臨時国会あるいは通常国会一つの大きな山場でしょう。おそらく、あとから質問しますが、炭鉱離職者臨時措置法だって改正しなければならぬでしょう。それなのに大臣は、いや実情にうといなんという答弁をされるとはとんでもない。ですから、もう行きますと、こうお約束なさったらどうですか。まだ時間ありますよ。予定に組めますよ。飛行機で行けばわけないです。
  20. 山手滿男

    山手国務大臣 多賀谷さんのせっかくのお話でございまするから、よく考慮いたします。
  21. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと大臣、お尋ねしておきたいのですが、それはいまの大牟田療養所のことですが、安河内所長さんから幾、ぶん専門的なことを聞かしてもらったわけです。その見解によりますと、入所している患者さんは自覚症というのはある、しかし他覚的な症状というものは非常に少なくなっているという御意見なんです。ここを出ていっていただいて、ある程度いろいろ連動その他もやったほうがいいと思うがというようなニュアンスなんですね。そこで療養所から次の段階は、荒尾リハビリテーションセンターがあるわけですね。もしそういう認識であれば、療養所からリハビリテーションセンターに移してもいいことになるわけです。ところがそれに一つ隘路があるのです。何かというと、手当その他が少なくなる。これは五千円とか二万円とか少なくなる。そこで私は、やはり一酸化炭素中毒になって長い間療養所におれば、人間お互いに非常にノイローゼになるのですよね。いま内閣の姿を見ておっても、悪いことをしてもあまりたいしたことはない、ないということになると、大臣大臣専用の便所まで自分の省につくるようになる。それでも悪いことでもないと思いがちなんですよ。それと同じなんだ。だから、やはりこういう患者を長く拘禁状態に置いていると拘禁性の精神病みたいになる。これは外から見れば、なるほどこれは何でもないのだと医者が幾ら言ったって、本人が、いや私はどうも外へ出たら目まいがしていけません、こうなるといけないわけです。それをもし積極的な施策をとって、療養所から今度はリハビリテーションにやろうとすれば、やはりそこに手当が減らないような施策をとってやる必要がある。それがなされていないのです。これをおやりになったらどうかと思うのです。もしいまのように、細谷さんも指摘しておりましたが、所長さんがどうも客観的に見たらもうたいしたことはありませんと言っておっても、患者はそうでない、私はどうもいかんと言っているのですからね。そこに医者患者との間に幾、ぶん食い違いが出てきているわけです。それを直してやろうとすれば、もし積極的にいって、あなたは運動してもよろしいというならば、やはり連動できるような裏づけをしてやる必要があるわけです。これをどうしてやらないのだろうか、下から意見が出てきていないの礎ろうかと思うけれども、これはまさかあそこから意見が出てきていないはずはない。出てきていると思う。だから、そういう点をお知りになっておるかどうか。お知りになっておれば、それを積極的に、月に五千円か一万円くらいの手当なら、政府は出そうと患えば出せるわけです。それはどうですか。
  22. 山手滿男

    山手国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、専門家院長先生や何かの意見は私は十分に聞いて拘束もするし、いろいろ善処していきたいということで、いろいろな大局は判断をいたしております。  いまのような荒尾に行きましてからどうこうというようなことについては、まだ具体的に話は私自身は聞いておりません。事務的には聞いているかと思いますが、聞いておりませんが、いろいろなことをよく見きわめた上で対処していきたい、こう考えます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 院長としては、何とかしたい、こう言っている。そこで私は、隘路は結局手当差額を出せばそういうことはスムーズにいくのではないでしょうか、こう言ったら、まさにそのとおりですと院長は言っている。だから、そういうことがまだあなたのほうに——わかっておらぬはずはないと思うのですよ。だれかいないですか。来ておらぬですか。
  24. 中村博

    中村説明員 滝井先生の御質問のように、確かに労災病院から荒尾回復指導所へ参りますと退院扱いでございまして、したがいまして、会社から支給されております見舞い金は減ることは事実でございます。しかし荒尾回復指導所に入りますと、別に三百円の手当が出ておるわけであります。病状がよくなられた方で職場復帰に連なる方でございますので、したがいまして、その間は通院扱いとして、同時に会社から三百円差し上げておる、そういうかっこうになっておるわけでございます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 私が言うのは、療養所におるときと、今度荒尾訓練所に行ったときとの差額が非常に大きくなるわけです。これは本人にしてみれば、まだおれは病気だ、いわばあと保護を受けている時期だ、こういう認識があるわけですよ。あなたのほうは、病気がよくなった、退院したんだ、こういうものの考え方です。そこが間違いなんですよ。きわめて精神的に不安定な、脳細胞をおかされてしまっているんだから、いまの医学ではなかなかきわめにくいところがたくさんあるんですね。だから、患者に言わせてみてごらんなさい。われわれにこんなアリナミンばかり飲ましている。三池炭住に行って座談会やってごらんなさい、言われるのだから。ところが、いまの医学では、それ以外に方法がないから、やむを得ないやっている。初期のうちに高圧酸素をやってやれば、栃木県のようにわりあい早くなおるんです。ところが、あのときはそれがなかったでしょう。そういう状態があるわけだから、医学的にも手落ちがあるわけです。だから、いまの段階ではこれは思い切って、会社が出せなければ国が何らかの施策を講じてやって、訓練所においてもやはり患者の皆さんがほんとうに思い切ってあと保護ができるという形を私はつくってやるべきだと思うのです。それは何もいまの立法の問題とは無関係です。いまの現実政策として、療養所所長も、どうも私としてはこれ以上やりようがございませんと、科学者が言っている。そして、退院をしてもらってやりたいと思っているんだけれども、賃金の格差があって、私としてもそれはほんとうに心苦しくてやれません、こうおっしゃっておるんですよ。だから、もうそこに政策というか、医学的な対策について行き詰まりがきているわけです。だから私は、その点は政策が、政治がやはりあたたかい手を差し伸べて、そういう科学者悩みを解決してやることが必要だと思うのです。そうして訓練所に行く。訓練所に行っても療養所と同じ待遇がもらえるということになれば、行きますよ。それだけ今度は患者が回復することが早くなる。精神的悩みが抜けるんですよ。次の段階はやはり職場に行ったときの状態をつくってやらなくてはいかぬ。こういう一連の政策があるのですよ。そこらがどうもあなた方は現地所長悩みというものを精神的に解決してやっていないのです。いまの御答弁の三百円やるからそれでいいんだということでは、これは百年河清を待つにひとしいと思うんです。こういう点現地の安河内さんのところに行って、ひざ詰め談判部長さん聞いてごらんなさい。その悩みも出てくるのです。私それを専門的に聞いてみた。だから、行って安河内さんの悩みを聞いてごらんなさいよ。そこにポイントがしぼられてくる。そうしますと、上安河内さんのところにいらっしゃる患者さんも、そういう手当も何もみな同じだということになれば、ずいぶん精神的に楽になって、スムーズに荒尾のほうに行けることになるのです。それがないからやはり滞留することになるし、精神的にも憂うつになってくる。同じところに長く人間がおることは、われわれだって拘禁性精神病になりますよ。悪いことをして逮捕されて、拘置所に入れられてごらんなさいよ。大体ものを言わなくても、三日目から四日目にはものを言い始めます。どんな偉い者もいい始めるのです。人間は一つのところに長く拘置されておると、異常な状態になる。だから私は、そういう点は早く解除してあげて手当を出させるべきだと思うのです。会社が出せなければ国が何か処置したらいいんじゃないですか、そうでしょう。どうですか。その辺はわれわれは現実に行ってそれを聞いてきたんだ。それをやる以外にないというのが院長意見です。それを三百円も出すからいいんですよと言ってそのままほうっておけば、安河内所長のほうにだんだん荷がかかってきて、患者はますます憂うつになります。どうですか、それは思い切ってやれる政策をとりますか。立法以前の問題です。
  26. 中村博

    中村説明員 確かに先生のおっしゃるとおり、そのようなかっこうがあるかもしれませんが、私どもとしましては、ずっと会社と組合とも話し合って、そのような形でやってきておるわけでございます。  なお、差額につきましては、滝井先生十分御承知のように、特別看護料その他も出ておるわけでございまして、確かにその間に段階はございますけれども、これは重傷の方と軽傷の方との間に段階もあるわけであります。そのようなかっこうでいままでやってまいったわけであります。このような実績があるわけであります。
  27. 滝井義高

    滝井委員 その実績はわかっておるのです。その実績だけでは、いまの療養所の苦難を乗り切ることができないという現実が出てきているわけですよ。その現実を何とか直してやる必要がある、所長はその悩みを切々と訴えているのですから……。そうでしょう。もう私のところはいかんともしがとうございますとおっしゃっておる。それではこれをどうしたらいいか、どうスムーズに荒尾のほうにやらしたらいいか、それは賃金の差をなくしてやる以外に、手当の差をなくしてやる以外に方法がありません、こうおっしゃっている。だから、これは組合側と会社とがいろいろお話し合いになったかもしれぬけれども、そのあとにそういう問題が現実に起こってきているわけです。そうすると、あとそれを打開する以外ないでしょう。そうして、組合側と会社との話し合いでうまくいかなければ、政府が政治の手で患者を何とか楽にしてあげる以外にないと思うのですよ。だから、そういうことでは私は話にならぬと思うのですよ。どうですか、それを再検討する意思がありまずか。うまくリハビリテーションの施設の中に行ってその恩恵に浴させるためには、手当が低くてしようがない。あなたの言うように退院の処置をとれば、そうなるのです。ところが、実際はそれは退院じゃないわけです。患者にしてみれば連続しておるもの、続いておるものなんです。だから、そこらをもう少し検討する必要がある。非常に精神的に不安定な状態になっている人間に対して、そうしゃくし定木にものというものはいかないですよ。やはりそこには病院に入っていると同じような手当その他もやってあげるということによって、初めてそれらの精神的な苦難を乗り切ることができるのですよ。どうですか、検討する意思は全然ないですか。
  28. 山手滿男

    山手国務大臣 いままでの経緯もいろいろあろうと思います。いままでの流用のほうに退院をしていった人々の処遇の関係等もいろいろ関係があろうと思いますが、いまお話しでございますので、よく調査をいたしたいと思います。
  29. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ調査をして、もし専門の院長その他がそういう意見であれば、ひとつ差別のないように訓練所にもやはりそんな手当を出して、そしてそこに賃金の格差がぐっといかないようにする必要があると思うのです。ぜひひとつお願いしておきます。
  30. 野田武夫

  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私ども石炭特別委員の諸士が、九州、北海道と現地を視察いたしました。その結果私が感じましたのは、北海道はいまや新鉱開発が軌道に乗ってきた。そこで、需要規模の問題が非常に大きな問題になっておる。ですから、五千五百万トンが五千万トンか、あるいはまた五千二百万トンかということが山の運命を決定する問題になってきておる、こういうように感じたわけです。さらに、いわゆる企業内ではいかんともしがたい大きなネックがある。それは一つは輸送の問題である、流通機構の問題である、鉱区問題である。でありますから、これは炭鉱産業全体の問題として、また他の産業との関連において、解決しなければならない問題があると思います。九州で感じましたのは、これは鉱害の問題、それから隣接鉱区の終閉山による水の著しい湧出の問題、これがコストに及ぼす影響、そのほかに、離島は別といたしまして、大体九州の内陸では、退職金の問題、未払い賃金の問題がきわめて大きな問題になっているわけです。  そこで、私は、これらの問題についていろいろ質問をしたいわけですが、きょうは実は各大臣とも時間の関係で十分質問ができないようでありますから、とりあえず退席を先にされます労働大臣から質問をしたいと思います。  まず、今度の答申並びに閣議決定によって大体どのくらい離職者が出るとあなたのほうでは考えておりますか、それに対する予算はどういうようにしようとしているのか、これをお伺いいたしたい。
  32. 山手滿男

    山手国務大臣 どのくらい離職者が出るかという問題でございまするが、正直言いましてまだ通産省のほうでいろいろな討議が終わっておらないようでございまして、三万人ともいわれ、もっと多いとも、そうじゃないともいろいろいわれておりまするが、相当多くの者が出ることが予想されておるわけでございまして、私どものほうとしてもそういう場合に対処する体制を十分に整えておきたい、こういうことでございます。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は臨時国会に向けての問題をます第一に聞きたい。臨時国会に向かって政府はどういう法案の提出をせんとするのか。率直に言いますと、炭鉱離職者臨時措置法というのはきわめて現状に合わない状態になっておる。すなわち第一は、昭和三十七年三月三十一日現在炭鉱労働者であった者にしかいわゆる黒い手帳というのは渡されないわけですね。その後炭鉱に入ってきた者に対しては全然適用がない。以来法律は四年も経過しておるのですよ。四年も経過をしておるのに、いまから解雇をされる場合に、その昭和三十七年三月三十一日以降に入った者についてはその恩恵を受けないというような法律の仕組みになっておる。これは私はきわめて役所は怠慢だと思う。なるほどこれは時限立法であることは御存じのとおりでありますが、時限立法にしても、その後新しく雇用者を入れておるわけですから、これがまた合理化によって閉山をされたり解雇をされたりすることはあり得るわけですが、それについては全然黒い手帳の適用がない。昭和三十七年三月三十一日現在おった者しかもらえないというような法律が依然として存続しておるというのはおかしいじゃないか、これはまず改正をすべきではないか、こういうように私は考えるのです。  それからもう一つは、黒い手帳が切れた場合、要するに離職をして三年後についてはこの労働者についてはいまだ何ら法的な援護の方法がない。援護の方法がないどころか、一年間は一般失対には入れてはならぬという規則をつくっておる。これは国会ではそういう答弁なんか全然しなかったわけですよ。ただ規則に一年間はとにかく一般失対には紹介しないのだということを入れておるわけです。私は、役人としては言語道断だと思う。こんなものを規則に入れて制限をする、要するに制限だけの法律があるわけです。ですから、黒い手帳がすでに現実に切れて相当困っているわけですから、この対策についても当然措置をしておくべきであったにかかわらず、いまだ措置をされていない。でありますから、これらは、いろいろありますけれども、すみやかに法律改正を要する問題である、あるいは規則の改正を要する問題である。ですから臨時国会炭鉱離職者臨時措置法の一部改正を出すかどうか、これらを含めて御答弁を願いたい。
  34. 山手滿男

    山手国務大臣 炭鉱離職者臨時措置法につきましては、お話しのように時限立法でもございまするし、今度新しい五ヵ年計画で離職者が出まするのは、新しく以前の計画とは違った面もございまするし、いろいろなことを勘案をいたしまして、多賀谷さんのお話しのように改正案を臨時国会に提出いたしたいと思います。  それから第二番目の問題でございますが、黒い手帳は三年間たってしまったらもう何もしていないじゃないか、こういうお話でございまするが、実は三年間相当手厚くいろいろ就職促進について配慮をいたすわけでございまして、大体三年間でその目的を達成する、こういうめどのもとにやっております。また事実九五%くらいの者は再就職をするなり自営をするなりいろいろ目安をつけておるわけでございますので、いまお話しのように、これが冷酷に扱われたということでは全然ないと私は思っております。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 臨時国会法律改正をされるそうでありますから、その内容については今後われわれの要望を出したい、こういうように思います。  そこで、いまお話しの黒い手帳が切れたあとについては、規則で一般失対については入ってはならぬということだけは書いてある。ですから手当てがしてあるというならば制限的に手当てがしてあるだけですね。一体現実にどのくらい黒い手帳の切れた者があるのか。これはあとからお示しを願いたいと思うのですが、私が福岡県において調べた調査によりますと、三十七年から四十年の四月までに発給いたしましたのが三万四千八百七十五、就職が二万四千百二十六、それから未出頭が千六百七十四、手帳切れの者、期間満了をして手帳切れの者が千三百四十六で、これらについては八十一名しか公共事業に現在いっていない、こういう状態にあるわけです。それからさらに明年三月までに相当出るわけです。でありますから、要対策者というのが相当あるのじゃないか。ですからこれも含めて今度の法律改正はおやりになるかどうか、質問したいと思います。
  36. 山手滿男

    山手国務大臣 いまの御質問でございまするが、いろいろ数字にもわたりますので、事務当局のほうから答弁させていただきます。
  37. 有馬元治

    ○有馬説明員 この問題は多賀谷先生と三月においていろいろと意見交換をいたしたのでございますが、手帳切れの実態といたしましては、四十年度に千四百四十六名、それから四十一年度に約千五百名、こういう状態で期間満了者が出てくることが予想されております。特に筑豊に集中的にこういった該当者が多いわけでございまして、現在福岡県だけで千二百六十七名手帳切れの該当者が出ております。これを御指摘のようにいますぐ失対事業に吸収すべしというふうな御意見が非常に強いわけでございますが、私どもは失対事業の性格上、まずは民間の雇用に振り向けて、それでも地元ではどうしても解決しない場合に公共事業に吸収をする、こういうふうな原則で現在失対事業を運営しておりますので、できるだけ公共事業、鉱害復旧事業、産炭地振興事業、こういった一連の諸事業にこれらの期間満了者を優先的に吸収をするという基本線を出しまして、現在福岡県当局を中心にこの方向で実施をいたしておるのでございます。御指摘のように、吸収されておる数字が非常に少ないというふうなことでございますが、そもそも手帳切れになった方々が再度再就職をしなければならないという比率は二〇%から、多く見てもせいぜい三〇%どまりだというふうに私ども推定をいたしておるわけでございます。したがいまして、千二百名の該当者が全部再就職を欲するということではないのでございます。現在八十一名、公共事業に吸収いたしておりますが、これをさらに拡大をいたしまして、現在期間が満了して再就職を希望する方々にはぜひ、公共事業あるいは鉱害復旧事業、産炭地振興事業、この三つの事業を中心に積極的に吸収をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  38. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは産炭地振興政策とも関連するのですが、地元並びにわれわれ現地におる者が考えますと、産炭地事業で中高年齢者を雇用せよと言いましても、なかなか中核企業には無理ですね。年寄りばかり雇うような中核企業というのはないわけですから、中核企業はやはり若い労働力というものが必要です。そうするとそれに関連をする企業に幾ら使ってくれるか、あるいは中核企業でもさらに中高年齢者が雇える部分というようにものを考えてまいりますと、どうしてもはみ出る層が出てくる。現実予定をいたしましたときは、確かに三年いけば何とかなるだろう、それも産炭地振興もかなり進んでの話だった。産炭地振興はほとんど進んでいないですよ。雇用量が増大しても、これはほとんど女子、青年の雇用が伸びているだけです。ですから炭鉱離職者そのものの雇用を吸収するような産炭地事業は非常に少ない。そこでそのはみ出た層はどうするかというと、これは地元で言っておるように緊急就労を制度として復活する以外にない。ですから緊就問題というものをもう一回法律に復活させて検討をする必要がどうしてもあるのじゃないか、かように考えるわけです。私は一般失対へどんどん追い込めと言うのじゃないのです。ただ一般失対だけは制限をするようにしておるじゃないかということを言っておるので、一般失対をどんどんふやせと言っておるのじゃないのですが、どうしても緊就を制度的に復活するという必要がある。幾ら産炭地振興をやりましても、どうしても中高年齢者は残っていくということになる。そんな中高年齢者ばかり雇うような産炭地振興ばかりやっておったのでは、とても産業としてはうまくいかないのです。それは通産大臣でもあなたでも御存じのとおりですよ。ですから相当青年を雇ってきて、そこに中高年齢者を雇うというのならいいけれども、中高年齢者ばかり雇うような産業は、少なくとも非常に成長する産業ではない。そういう意味においては残っていく層があるわけです。残っていく層には緊急就労というものがどうしても必要ではないか。どんなに産炭地振興が進んだとしてもそういうことが必要ではないか、こういうように考えるのですが、労働大臣立場から、緊就を、この際法律改正をするならば、ぜひ復活してもらいたい。
  39. 山手滿男

    山手国務大臣 先ほど事務当局のほうからお話を申し上げましたように、大部分の諸君は再就職をしたりいろいろやっておりますが、なお相当な数が中高年齢層、特に高年齢層においてあるわけでございます。それが全部再就職をほんとうに希望しておるか。いろいろな理由もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、安易にそれではすぐこうというわけにもいかないかと考えますので、公共事業、産炭地振興事業との見合い等もいろいろあろうと思いますので、私どものほうでもよく検討をしてみたいと思います。
  40. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 緊就という制度を復活する以外には手がない。現実に緊就はだんだん人数が減らされておるのですが、緊就の希望者は非常に多いし、市町村も非常に喜んでおるのです。それは高率の補助ということもあるでしょうけれども、市町村の仕事としては最も適当な仕事だ、こう考えて、労働者のほうも市町村も自治体もみんな喜んでいるのですよ。ですから、これはいろいろ問題があるでしょうけれども、私はぜひひとつ推進をしてもらいたい。こういうふうに要望しておきます。  通産大臣、あなたのほうが産炭地振興をしても、どうしてもその網に乗ってこないものがあるのですから、ぜひ緊就を復活するように通産大臣にも骨を折ってもらいたいと思います。
  41. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御趣旨の点もよくわかりますので、十分検討いたすことにいたします。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がありませんから、次に問題の提起だけをしておきたいと思いますが、退職金未払い金ですね。この確保ができるかどうかということは、実に現在おる労働者が雇用に対する安定感を持つかどうかということにかかっておるのです。名前は言いませんけれども、私はある炭鉱に行きました。これは役所も当然四十五年度にも相当の規模の出炭を予定しておるし、経営者も、ぜひ残したい、こう言っておる。そこで私は、この炭鉱政府もぜひ残すようにやっておるし、経営者のほうも残すように政府に言っておるから諸君は安心して働け、こう言った。ところが、社会党の代議士のくせにけしからぬことを言う、経営者と同じようなことを言う、こういうことを言うのですよ。いろいろ聞いてみますと、とにかくいつまでおっても退職金をくれるかどうか、最後になったらわからぬ。だから、いまのうちにやめておったほうがりこうだ、と言う。ですから私に、君はきわめて親切心がない、あぶないならあぶないと言ってくれ、そうすると、おれらはやめるのだ、と言う。そこで私は、それは君だけやめてほかの者が残ると思うから、そう言うのだろうけれども、みんなやめると言ったらどうなるのだということで反論をしてきたわけですけれども、そういう空気は相当強いのです。ですから、退職金を確保するということを法律制度において保証してやれば、いまおる労働者は何も好んで他に転職したくないのですから、安定をするわけですよ。  いまの炭鉱実情を言いますと、九州のほうでは、もう出る者は出てしようがない。どんどんよその炭鉱から引き抜いて入れておるでしょう。引き抜いて入れても出る者は防ぎようがないから、出て行っておる。何をやっているのかわからないというのが現況です。ですから、自分がやめても退職金だけは絶対くれるのだという制度が確立しておれば、一応炭鉱に対する安心感が出てくるのです。これは私は、いま少なくとも離山ムードが起こっている中で、安定をさせる一つの方法ではないか、かように考える。  そこで、この前も退職金について質問をしたわけですが、一体退職金の確保について通産大臣並びに労働大臣はどういうようにお考えになっておるか。
  43. 山手滿男

    山手国務大臣 お話しのように、賃金、そのほか退職金の不払いは相当額がございましたが、その後、関係者の非常な努力によりまして、順次減少いたしまして、本年の八月末では一億七、八千万円程度にまで減少しておることを確認いたしております。ただ経過的に解決不可能というものがさらに十億ばかりあるということも承知をいたしておるものでございまするけれども、今後に対処いたしましてはそういうような事態ではいけませんので、先般の閣議決定におきましても、閉山交付金の単価を引き上げまするし、増額分につきましては、離職者の退職金あるいは未払い賃金等の支払いに優先的に充当をしてもらう、こういうことで閣議決定をいたしております。その線に沿いましていろいろ粗漏のないように今後われわれも研究をし、いまお話しのような線に沿うてまいりたい、こう考えております。
  44. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そんな一億八千万くらいかね。
  45. 山手滿男

    山手国務大臣 いや、それは解決不能な分は落としたのだから……。
  46. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この退職金あるいは未払い賃金の問題というのは、石炭産業の基礎を安定強固にしないと、実際問題としてなかなか思うようにいかないわけですから、今度の石炭の相当思い切った対策を講じたわけであります。閉山する炭鉱については、閉山交付金特別加算などを含めて二千四百円程度の交付金を出し、この配分については未払い賃金、退職金を優先をするということに考えておりますから、よほど閉山炭鉱についてもいままでよりも改善をされるし、また改善されなければならぬと考えておる次第であります。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働大臣の一億八千万というのは、基準法にひっかかる金品の返還のことでしょう。その基準法の適用を受けるような、法違反のような退職金の話をしておるのでしょう。そんなことを聞いておるのじゃないのですよ。刑事罰にでもしようか、送検でもしようかという退職金の一億八千万円を出してわれわれは政策を論ずるわけにはいかない。一体あなたのほうは幾ら把握しているのですか。石炭局長は一体退職金の未払いは幾らあると思うんですか。
  48. 井上亮

    ○井上説明員 未払い退職金と退職者の社内預かり金、二つに分かれるかと思いますが、これは炭鉱整備に関連しますもので調べてみますと、未払い退職金は四億五千万円くらいでございます。退職者のむしろ社内の預かり金が非常に多くて、社内の預かり金は、全社でいまのところ大体百三十億程度あるのではないかというふうに見ております。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その社内預かり金の百二十億のうち退職金の分は幾らですか。はっきり言いますとこういうことになっているのです。第二会社になった。当然退職金を支払わなければならない。金かないのです。そこで退職金のかわりに通帳をやっているわけです。それを社内預金と言うのです。年々もらう給料から預金をしておるのもあるでしょう。しかし大部分の要素は、退職金を払えぬものだから預金通帳をやっておるわけだ。じゃその預金通帳を払ってくれるかというと、今度高等学校に入学するからひとつ一万円、こういうようにして支払っておるのです。特別の理由がなければ払ってくれませんよ。そういう仕組みになっておるのです。ですから、社内預金のうち本来の退職金を社内預金として入れたのがどのくらいあるのか。あるいはまた未払い退職金が四億五千万円なんということはないでしょう。これは対象炭鉱だけでも九億ある。そのうち一億六千万円しかもらってないのですよ。ですからこんな状態じゃないですよ。われわれがずっと遊説に行ったら、鹿児島でも態本でもみな宿屋にたずねてきて、やめた連中がみんな退職金をもらってくれと言うのですよ。あなたのほうは一体どういう調査をしておるのですか。
  50. 藤繩正勝

    ○藤縄説明員 賃金不払い、社内預金に関連いたしましての御質問でございますので、いま把握しております数字を御説明申し上げたいと思います。  先般当委員会で把握が非常に不十分ではないかというおしかりをちょうだいいたしまして、私どもあらためましてもう一回全部各監督署を督励いたしまして調査のやり直しをやりました。その結果、最近の数字といたしまして、とにかく一番賃金不払いが多かった時点のものを全部集計いたしますと、五十二億五千万円ございます。しかしその後会社が払う、あるいは交付金等の交付による支払いが進みまして、そのうち三十五億七千万円支払われております。それから、ただいま大臣から申し上げましたように、解決不能とした金額が、いま御指摘の対象鉱業を含めまして、全部で十四億四千万円ございます。もちろん、その解決不能としたものの中でも、またあとになりまして交付金等によって解決されたものも三億程度ございます。現在まで残存しておるものは、解決不能となっておりますもの約十億七千万円でございます。そこで私どものほうとして基準法違反として処理しなければならぬと考えております現在の未払い金額が一億八千七百万円、こういう数字でございます。  片方、社内預金でございますが、これは現在百六十億ばかりの社内預金がございます。そのうち、すでに退職した者の預金として四十八億八千万円、約五十億のものが退職者の社内預金となっておりますので、これが大部分は退職金ではなかろうかというふうに推定をされます。先般、このうちで三井と北炭が非常に多額でございましたので、関係者を呼びましてその事情を聞いておりますが、つまりもらいたいのだけれども、いろいろな都合で社内預金という形で残存しておるのか、それとも社内預金は御承知のように相当有利な面もありますので、その辺の面について事情を聞いておるわけでございますが、いずれにしましても、退職者の社内預金という問題についてはいろいろ法律上の問題もございますので、各会社に漸次話を進めてまいりたいというふうに考えております。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 炭鉱は五千万トンないし五千五百万トンとして続くでしょうけれども、企業からいいますと、その炭鉱は閉山をする、あるいは企業もなくなるという企業もかなりある。そこで私は、炭鉱というものがなくなるときの時点を考えますと、資産はゼロですよ。資産というのは他の工場と違ってほとんど坑道でしょう。坑道が一番大きな資産だ。それから鉱区です。いま幸いに買い上げという制度があるけれども、これは臨時立法である。あるいは事実上永久に残るかもしれないけれども、制度としては臨時立法だ。そうすると退職金の出すところはないですよ。これはそういう宿命にあるのですよ。そして山を閉山するという前は、数年前から赤字を続けておる場合が多いですから、ほかの工場と非常に違うのですね。長崎の離島だっていま隆々としておるけれども、その伊王、香焼炭鉱なんか閉山というようなことが起こる。それは買い上げ資金をもらったからいいけれども、交付金がないと仮定すると退職金だって払えぬでしょう。どんなりっぱなアパートを融資を受けてつくったって、離島にあるアパートは無価値にひとしいですよ。ですから退職金制度というものは、既往の分も含めて炭鉱の場合は、終山の場合を考えれば、鉱害というものがもしないとしても、私はいまから制度として——いま中小企業の退職共済事業団というものがありまして、それは退職金を保障してやっておりますが、ああいう制度でも産業別につくっておく必要があるのではないか。ですから、社内に幾ら退職金の留保金を持たしておったって、これは炭鉱がつぶれるということになればどうにもならぬですよ。みな一社一山と考えてごらんなさい。いま一社で何炭鉱か持っておるから、二山をつぶすとき三炭鉱でしょわして退職金を引き出しておるけれども、これは一社一山と考えれば、炭鉱が終山をするときには、退職金を払える財源がないのです。別な他の産業に転換して、相当他の産業をやっておれば、別ですよ。炭鉱一本で来ておった場合にはない。そういう運命にあるのです。炭鉱だけでなくて、鉱山、メタルマインだってある。メタルマインは精練を多くやっていますから、その点はわりあいに弾力性があるけれども、いわゆる鉱山だけをやっておるならばそういう問題が起こる。ですから、炭鉱については、制度として退職金共済団体でもつくって、そうしてそれを政府が管理して払う、こういうような制度の確立をしておかないと、どんな優秀な炭鉱だって、水が入るとか、いつどういう危険性がなきにしもあらず、あるいは火が入るということだってあるでしょう。そういう不慮の事態が相当予想されるということ、それからそういうことがもしないとしても、炭鉱の終山のときには、地上物件その他がほとんど無価値であるということ。ですから私は制度として確立する必要があるのではないか、そうしてそのことはひとつ早急に既往の分を含めて、——いま特別年金で既往の在籍年数をどうするかという問題が起こっておりますけれども、既往の分を含めて検討する必要があるのではないか、こういうように思うわけですが、大臣から御答弁願いたい。
  52. 三木武夫

    ○三木国務大臣 閉山の場合、多賀谷君の御指摘のように一番問題で、こういうことで閉山交付金の問題を考えたわけですが、これでも退職金、未払い賃金が全部支払えるとは思われない。こういう点から将来年金制度というものには非常に力を入れていかなければならぬ。退職金と年金制度をひっくるめてこの問題は十分に検討をいたす課題だと思っております。検討を加えたいと思っております。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 企業間に非常に差がありますからね。その点が非常にむずかしいのですけれども、いまの中小企業退職共済団体は、企業間に差があってもよろしいのです。Aという労働者には幾ら。Bという労働者には幾らということで積み立てていく。ですから、率直にいって、三井鉱山におる場合は高い積み立てがあるかもしれない。あるいは中小へ行ったら低いかもしれない。しかも、それは本人が希望するならば、通算すれば通算してもいい。私は知恵はあると思うのです。そういうところでは政府がある一定の補助をするということも考えられるでしょう。一人ずつ厚生年金のように、ずっと手帳が回るわけですから、高くもらえる期間、少なくもらえる期間はおのおのあるでしょう。しかしこのままでおいておけば、退職金なんかとても確保できないという不安が、労働者の中に現実に相当横溢しておるし、北海道に飛び火して北海道の労働者もその気になったらたいへんですよ。労務から総くずれになる。そこで私は現時点の労働者を含めて制度的に考える必要があると思う。大臣どうですか。
  54. 山手滿男

    山手国務大臣 現在の時点で炭鉱は非常に苦しいわけでございますから、問題はいろいろあろうと思いますけれども、退職金の不払いの事例等を生ずるということはきわめて悲しいことでございますので、いまお話しのようなことをよく研究をしてみたいと思います。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは重大な問題ですが、また実は緊急を要する問題なんです。先ほど私は一例をあげましたけれども、それは単に一つ炭鉱に起こった問題ではないのです。これは労働者個々の家庭に入ってみると、賃金はどうだ、退職金はもらえるだろうかという問題、これは相当毎日の話題になっておるわけですよ。毎晩そのことばかり議論しておる。いつ踏み切って飛び出すかということを言っておるわけです。ですからこれは制度としてはなかなかむずかしいでしょうけれども、しかしゆうちょうしておって検討しておる時間的余裕がない。すみやかに臨時国会で出してもらいたい。やはり離職者法と一緒に出しておく必要がある。これはすぐ制度の出発はなかなかむずかしいですから、既往の分については遡及するなら遡及をどの程度するということも考慮しなければならぬから、ひとつ大車輪で検討してもらいたいと思う。これなくして幾ら論じても、労働者がいなくなれば需要がどうだとか言ってもしょうがないでしょう。ですからこのことを強く要望しておきたいと思う。  続いて通産大臣に質問がありますが、労働大臣が退席されるそうですから、労働大臣に関連しての質問をしていただきたいと思います。
  56. 野田武夫

  57. 滝井義高

    滝井委員 いまの退職金の問題なんですが、三木さん御存じのとおり労働者の立場と銀行の立場というものは違いますけれども、とにかく銀行も労働者も、炭鉱が炭を掘ることについて貢献をしたという点についてはひとしい、と言うよりむしろ銀行より労働者のほうがよけい貢献しておる。ところが千四、五百億の整備合理化のために使った銀行の借り入れ金については千億だけ肩がわりしてくれることになっておる。ところがいま石炭局長なり監督課長の御答弁でもおわかりのように、その数字で正確だとすれば、いま未払いが五十二億くらいあったうち、三十五億払っておるからここに十六、七億残っておるわけですね。それから百六十億のうち四十八億八千万円が退職者分であろう。合わせても六十億くらいしかないわけです。そこで千億銀行に肩がわりするのですから、やはりこういう緊急なものについては、その肩がわり分から労働者にも肩がわりをしてやる必要があると私は思うのです。この思想が一体どうして出てこないのかということです。金を貸した銀行には肩がわりをしてやる。それから鉱害については無資力としてあとから見てやる。けれどもその炭鉱で汗水たらして命を的にして一番働いた労働者の退職金の借金についてはどうして肩がわりという理論が出てこないのかということです。
  58. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは御承知のように何も銀行救済というわけではない。石炭産業というものの経営を長期的に安定さそうということですから、そうなれば余裕も出てくるわけです。当然未払い賃金とか退職金というものについては優先をすべきものだ。企業にそれだけのやはりゆとりも出てくるわけでありますから、今後においてはこういう事態というものをなくしていきたいということが根本対策の、またねらいでもあるわけであります。また新たに閉山するものに対しては閉山交付金というものを倍以上にすることによって、未払い賃金とか退職金の支払いというものを容易にしようということで、そういう点も頭に入れながら石炭の根本的な解決策というものが出されたものと御了解を願いたいのであります。
  59. 滝井義高

    滝井委員 たとえば九州の御三家といわれる貝島炭鉱ですね。これをごらんになっても現実にいま半分しか払えないでしょう。あとの半分は四年か五年、四年間くらいに払いますということです。しかし四年で払えるかどうかということは、これからの山の経営の状態を見なければわからぬわけです。そうすると半分はいつもらえるかわからぬわけですよ。そういう不安定な状態におくわけです。そして会社が第二会社になって一万円くらいがたんと賃金が下がっていく、こういう実態です。働いても賃金はいままでよりもらえない。退職金は半分だということになりますと、これはどういうことになるのかというと、労働者は人質を取られているようなものです。とらの子の自分の退職金を人質に取られて、そしてどこかほかに行きたいのだけれどもあの退職金があるからここで働かなければならぬ、こういう形ですよ。これは目に見えざる手かせ足かせをはめられているのと同じです。だから、私はそういうことであれば、いまわずかに六十億かそこらで問題が解決するなら、これはたとえば三年なら三年でひとつ肩がわりしてあげましょう。そして肩がわりした分は会社から払ってもらえばいいと思うのです。そうでしょう。ここらが私は人間の機微をつかむ石炭政策の非常に労働政策のポイントだと思うのです。銀行はそのうち五十億、六十億をもらえなくたっていまの日本の銀行はつぶれることはない。しかし労働者はこれがもらえなければどうにもならぬ。引っ越しもできない。非常に憂うつになるわけです。だからここらあたりはちょっとした三木さんの決断のしかたで非常に明るい状態が山に出てくるかどうかというその転換点だと思うのです。これは私は千億もあればこんなことは言いません。しかし百億以下の金でしかもそれを一ぺんにくれと言いません。少なくとも三年くらいで分割をして肩がわりして支払おう。こうなると山は実に明るくなる。だから私はこのくらいのものは三木さんと山手さんが相談をして大蔵省に言えばできないことはないと思うのです。そうでしょう。山手さんそうでしょう。いま説明は未払い分を合わせても六十億くらいです。そうすると六十億を肩がわりしましょう。三年で払います。これはあとから炭鉱から返してもらう。炭鉱は社内預金をどうせ返さなければならぬから、銀行には十年とか十二年で利子をつけて返すわけです。市中銀行が四百億、それから政府関係機関六百億、こういう政府関係機関なんか百億延ばしたっていいじゃないか、開発銀行やなんか百億ぐらい延ばしたってつぶれることはないでしょう。だからそこらあたりがちょっとした政策のさじかげんです。働く者を中心にものを考えるか、それとも銀行金融資本を中心にものを考えるか、ここが社会党と自民党の違いかもしれないけれども、山手さんにしても三木さんにしても同じ三木派の進歩的なグループじゃないか。私の言うことはわかると思う。やはりここらのところはちょっとしたことが佐藤内閣の人気が上がるか上がらないか、わずか六十億くらいで解決するなら、そのかわり開発銀行ちょっと延ばしてくれ、これはいいでしょう。どうですか。ここらあたりは佐藤さんに相談しなくたって三木さんやら二人いらっしゃるのだからやってもらっていいと思うのですが、どうでしょう。
  60. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これから再建整備計画を立てればこういう事態はなくなっていく、そういうことの再建計画でなければ意味がないわけで、そういうことでこういう問題、滝井さんの言われることまことにごもっともな点もあるわけですから、そういうことも頭に入れながら今後の再建計画を立てる、そういう退職金とかあるいはまた未払い賃金というような事態なしに、そういうことは処理できる石炭産業の経営状態に戻すために再建計画を立てていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  61. 滝井義高

    滝井委員 閉山交付金が千二百円から二千円になった。その差額の八百円の大部分は労働者のほうにいく。四百円についてもいい考えがあるということらしいのですが、しかしそれだけではいま言ったように退職金全部は何ともしがたいわけですね。現実に第一会社から第二会社に今度移った労働者の皆さんは社内預金という形で預けているのです。しかしこれが確実に取れるかどうかという見通しはないのです。そうなりますとやはり不安定があるので、それらのものが六十億かそこらならひとつ検討してもらう。そして私は開発銀行は十二年が十五年になったっていいと思うのです。そうでしょう。これは開発銀行だったら五十億、百億の金がすぐいま返ってこなくても、五年ぐらい延びたってつぶれることはないのだから、その点は、痛痒さは開発銀行が痛痒さが切実であるか、労働者が切実であるかといったら、切実なところに政治が手を伸ばしてやる、これは当然だと思うのです。だからそういう点をひとつ山手さんあなたのほうから三木さんと協力して大蔵省に当たる必要があると思うのですが、どうですか。
  62. 山手滿男

    山手国務大臣 いまの滝井先生お話、なるほどごもっともだと思うわけでございます。今度の合理化計画につきましてはいろいろ問題もあったようでございますが、やはり総合的に判断をしなければいかぬことだと思いますので、通産大臣かり御答弁を申し上げましたように、総合的に今後私どももよく研究してみたいと思います。
  63. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ総合的に研究してもらいにいと思います。これは銀行はある程度助かる、鉱害も無資力分は国がある程度見てくれる、こうなったわけです。そうすると労働者だけは、いま言ったように、なるほど閉山交付金はよけいにいくという形は出てくるけれども、やはりぴしっと全部終わるというわけにいかぬじゃないか、だからある程度考えて、これは私はあとで総合的に考えてもらいたいと思います。  あと二点質問しますが、その一つは、今度の七月二十五日の答申、それから八月二十六日の閣議決定を見ても、離職者対策というのは現行諸施策を延長することだけしか書いてない。もちろん配置転換をやるとか援護対策をやるというようなことは書いておるけれども、具体的な内容がないわけです。  今度、第三次答申で出る離職者の特徴的な姿は、まず第一に、この政策を文字どおりこのままやっていくと、ここ一、二年の間に集中的に離職者が出るということです。これはこの前あなたも三万人くらい出るらしいということをおっしゃっておる。しかもその四百円の加算金等がつけば閉山も早くなることは明らかです。しかもこれは当分の間しかつかないのですから。これが一つです。それからいま一つは、この離職者がやはり福岡県に集中してくるということです。それから離職者の年齢が第一次から第二次のころには三十六歳から三十七歳ということだったが、今度は四十歳をこえます。これが第三の特徴です。そうして第四の特徴は、第二次あたりまでは大手が多かったのですが、今度は一山一社の中小に集中してくるわけです。一山一社の会社とか中小に集中してくる。一山一社ということになるといま言ったような退職金の問題は山で自分が解決しなければならぬという問題が出てくるわけです。大まかに言ってこういう四つの特徴を持っておるわけです。そうするとそれに対して労働省がいままでの政策を延長するだけだというのでは芸がなさ過ぎるのではないかと思う。たとえばいままでの政策は広域職業紹介でしょう。それから住宅確保の奨励金をやる、移住資金を出す、雇用奨励金を出すとかいうことくらいで、弱年労働者はビルド鉱にやるのである。まあ配置転換ですね。一体それだけでうまくやれるのかどうかということです。いま多賀谷さんの御指摘になりましたように、すでに黒い手帳が切れて滞留しておる人もいる。現在筑豊には滞留者は相当おります。だからこういう実態の中で山手さんのほうとしては一体具体的政策を出そうとするのかということが一つ。  それから二番目は、あなたのほうはこの四十一年度の石炭対策の中で労働関係の経費が四十七億ですね。四十七億のうち二十六億六千万円は緊就ですから、半分以上は緊就の経費が占めているわけです。そうするとこの会計というものはあなたはやはり重油の関税の中から財源をもらうことになるのか、一般会計でこの財源をまかなうことにするつもりか。この二点を伺いたい。
  64. 山手滿男

    山手国務大臣 今度の計画によりまして相当数の離職者が出ることは予想をされておりまして、従来やってまいりましたいまお話しのようないろいろな労働省施策につきましては、一そう活発にやる決意でございます。しかしそれだけではどうも不十分なような気がいたします。特に中小炭鉱等におきましてはまるまる仕事がなくなるわけでございますから、いろいろ問題もあろうかと思いまして、実は先般来いろいろな経済団体等にも呼びかけておりまして、積極的にこの程度の離職者については雇用をしてもらおうということで申し出を私からいたしております。その結果経済団体のほうにおきましても積極的に雇用の機会を与えるように協力しようというようなことでございまして、私は特定の地区に集中的に出る、あるいはまた一時的にだあっとたくさんのものが出ますとちょっと困るわけでございまするが、それを少しいろいろな角度から検討をしてもらいますれば、必ずしも非常に不満な結果におちいるとは考えておりません。比較的何とかしようという空気がみなぎってまいっておりまして、うまくいくことを確信をいたしております。  それから予算のことでございまするけれども、私どものほうは資金がどちらから流れてまいりましても、資金さえ確保できればけっこうでございまして、必ず確保する決意でございます。
  65. 滝井義高

    滝井委員 資金はどこからでもいい、流れてきさえすればいいと言うけれども、やはり積極的にパイの分け前をはっきりつかんでもらわぬと、かんじんかんじんの歌じゃないけれども、天からのもらい水だけじゃどうもぐあいが悪いと思うのです。やはりどこか積極的に労働省として、離職者対策としてこの金は取りたいというものがなければいかぬと思うのです。どこからでもいい、分けてもらえればいい、そういう自然な姿で待っておったのでは、これは金は取れないと思うのですよ。  それから、いまの離職者対策についても、経済団体等に呼びかけて雇用してもらうことになっておる、こうおっしゃるけれども、それだけではなかなか納得ができないのです。先日、十四日でございましたか、国土開発の審議会を開いた。三十七年に国土の総合開発計画をつくった。ところが、これが失敗だったということをみんな認めた。どうして失敗だったかというと、過密をなくして地方に拠点的な都市をつくるということが国土開発の重点だったわけです。ところが、過密がますます激しくなって、いわゆる首都圏、近畿圏、それから東海圏に集中をして、過密がますます激しくなって、そして一方過疎が生じた、非常に疎なる地が生じてしまった。拠点的な都市ができなかったのです。そしてこの間にうんと格差ができた。だから過密と過疎と格差という問題が今後の国土総合開発の最重点にならなければいかぬ。しかも、その地方にたまたま都市ができても、その都市は地方自治体にうんと迷惑をかけた。その地方自治体に事業税をまけさせ、固定資産税をまけさせる。そして今度わずかな交付税でお茶を濁してきた。こういう地方自治体の犠牲において全く私企業の恣意によって地方に新産都市ができてしまったのだ、こういうことになったわけです。いままでのあなた方労働省政策を見てみると、土地があって、住宅があって、労働力がある炭鉱が閉山をしたら、それを今度みんな廃城にしてしまって、その人間を過密のところに持っていったのですよ。いわばあなた方の政策というのは、国土総合開発審議会の内閣のつくった方針政府が逆行してみずからくずしたことになる、労働省その他が。こういう形になってしまったのですよ。だから、いまのように財界が雇ってくれるからなんというなら、財界は名古屋やら神戸やらで雇ってくれますよ。しかし、そこへ行ったら、これは子供はもとの炭住に置いておる、そのおとうさんだけが行く、こういう形になるのですよ。いま調べてごらんなさい。福岡県が一番無籍者が多いのです。戸籍がない子供がおるのです。そして学校に上がるころになってから、あら戸籍を入れておらぬだったということになる。いつが多いか。三十六年、三十七年の閉山ごろに生まれた子供が一番多い。その子供がいま学齢期に達しておる。六つくらいになるのです。こういう状態です。だから、父親と子供なり母親を全部分離して、なま木を裂くような状態政府の過密を抑制する政策に逆行する政策労働省はとってきたわけです。また、いまの御説明によっても、財界その他が雇ってくれるからというので、今度はおとうさんだけを連れていくことになるのですよ。住宅その他はうまくいっておらぬでしょう。三百万戸以上の住宅が不足をして、政府は六百七十万戸の住宅を建てると言うけれども、土地がどんどん上がって建てられないのです。佐藤さんの言葉をかりれば、最近は木材が上がったから卸売り物価が上がった、こう言う。木材が上がったら住宅は建ちませんよ。こういうように、全部でたらめになっておる。それならば、もとの炭鉱には土地もあるし、社宅もあるし、住宅もある。そこにみんなおるのですから、そこに金を入れて何か考えてくれたらいいのです。私はこの前もそれを主張して、それはいい考えだからやりましょうというけれども、一向やらない。したがって、いまのような財源は一体どこから取るのか。この集中的に一時的にあらわれる離職者というものを、一体どうあなた方が——いままでのような政策ではだめですよ。これは何かいままでの政策に転換をやってもらって、新しいくふうと創意の中に政策を出してもらわなければいかぬと思うのですよ。もう少ししっかり答えていただきたいと思うのです。おれはいまなったばかりで、まだ前の大臣が言うこと以外にできないというなら、もう少し勉強するまで待ってもかまわぬです。どうですか、一体その財源をどこから持ってくるか。
  66. 山手滿男

    山手国務大臣 財源の問題ですが、いろいろ予算編成の過程で紆余曲折はあるわけでございますが、要は財源を確保するということが問題であろうと思いますので、労働省としては特にこういう流れの財源でなければいかぬとかなんとかいうことを特に強く固執をするということでもないわけであります。  それから、いまお話しの問題は、国土開発の問題とからみまして、非常に重要なことであると私も考えております。したがって、従来からずっと産炭地振興のためのいろいろな施策をしよう、事業を起こそうということで政府もやってまいっておりますけれども、どうも炭鉱地帯がおおむね山間等にある関係で、交通や水の問題、いろいろな関係からうまくいっておらないことは、確かに事実だと思います。しかし、それにもかかわらず、なお、ごく少数ではございますけれども、新興事業が起きておることも事実でございますので、私どものほうとしては、中高年層に対する対策と合わせて、そういうようなことに関連をして知恵を出したい、こういうふうに考えております。
  67. 滝井義高

    滝井委員 その財源の問題は、どこでもいい、もらいさえすればいいとおっしゃるけれども、八月二十六日の石炭対策の閣議決定のときには、労働大臣は御出席になっておったわけでしょう。そうすると、その閣議決定では、「画期的な石炭対策の実施に伴い、原重油関税収入を財源とする特別会計を新設する。」こうなっておるわけです。そうすると、あなたのほうは、この特別会計にお入りになるのか、それとも一般会計のほうでいままでのとおり財源を取ることになるのか、そこはやっぱり労働省として腹をきめておかなければ、どこでもいい、おれは天から雨が降ったらそれをもらい水するというのでは、芸がなさ過ぎますよ。だから、やっぱりそこらまで腹をきめておってもらわなければいかぬと思うのですよ。
  68. 山手滿男

    山手国務大臣 確かにお話しのように資金をひもつきで取るということは、取るほうの側では、ひもをつけるわけですからたいへん確実になるし、多く取れれば、何か石油税のようなものでも取れば、非常にいいと思うのでございますが、いろいろ財政上そのほかの理由で、そうひもをつけること等には問題もあろうと思いますし、私どものほうは、でございますから、要は資金を確保しようということで、がんばっておるわけでございます。
  69. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、労働省としては、特別会計に入るのか、一般会計でもらおうとするのか、まだそういうことをきめてない、そういうことなんですね。それでは私はどうもたよりにならぬと思うのですよ。こういうものが閣議決定をされたら、間髪を入れずに、四十七億——これはもう離職者対策をもっとうまくやろうとするなら、六十億ぐらいの金は要るわけです。六十億、七十億要るわけです。それだけのものを一体特別会計に入って取ることのほうが有利なのか、一般会計から取るほうが有利なのかという、その利害得失というものは、検討しておかなければならぬわけですよ。それをいまになってもまだどこからでもいいからもらい水したらいいのだ、財源さえもらえばいいのだということでは、政策に対する主体性がないですよ。やはり主体性を確立してないという省の政策というものなら、前進しないと思います。だから、きょう御答弁ができなければ、ひとつすみやかに検討して労働省の態度をきめてもらいたいと思います。それは非常に重大な影響を他に及ぼすんですよ。いま言ったように政策というものはもうたくさんあるのですから、そしてワクは五百億ときまっておるんですよ。昭和四十二年は油の関税というものは五百億しかないんですよ。その五百億の中でどうするかという問題になったときに、重要な労働省における離職者対策というのが、一体どこから財源を確保するかという方針労働省としての腹もまだ何もきまっておらぬということでは残念だと思うんですよ。
  70. 山手滿男

    山手国務大臣 よく検討したいと思います。
  71. 野田武夫

  72. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 労働大臣に二つの問題についてだけちょっとお伺いしたい。  一つは、炭鉱労働者の特別年金法の提出について。さきの小平労働大臣は、できるだけ早くこの法案は提出いたします、こういうことを言っておられます。私は、来たるべき臨時国会に出されて、そして予算も伴うことであるから継続審議を十分さすというようなことでお出しになったらどうかという意見を述べましたところ、ぜひそういうようななにで早くしたいということを言っておられましたが、山手労働大臣はこの特別年金法を臨時国会にでも早く継続審議予定で出されるという用意と準備をされておるかどうかということが一つ。  それから、われわれは坑内外一本にして年金制は制定すべきだということを主張してきていたのでありますが、聞くところによりますと、坑内と坑外とは別個にしたい、たとえば坑内は特別年金、それから純然たる坑外あるいは事務職員、そういうものは厚生年金の上積みとして調整をしたい、この二本立てにしたいという話し合いが進められて準備をされつつあるといいますが、それはそのとおりでありますかどうですかということと、それからこの年金の資金、原資はどこから大体出そうとしておられるか、この点についてひとつお聞かせ願いたい。
  73. 山手滿男

    山手国務大臣 特別年金につきましては、先般御承知のように早く決定をしようということで、政府部内でも鋭意努力をいたしておるのでございますが、これは私のほうの所管ではなくて厚生省の所管でございまするので、厚生省のほうでいろいろ検討をいま進めておるようであります。もちろん労働大臣といたしましては、所管の労働者福祉のためにもいろいろ発言をし、鋭意遺漏ないように対処をしてまいりたい、こういうことでございまして、いまの坑内外の事務員そのほかの問題等につきましては、私からいま御答弁申し上げることはいかがかと思うわけでございまして、御了承を願います。
  74. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 保険の問題になりますと当然厚生省の所管になりますが、炭鉱労働者の年金ということになりますと、それを労働大臣は一般の保険と同じような扱いとしてこれを見るというお考えですか。われわれはそうでないと思っておるのです。炭鉱労働者の特別年金でございますから……。したがって、その扱い方はあるいは厚生管が扱うか労働省が扱うかは別といたしましても、その責任の主管相は労働大臣である。これは労働対策の上からきわめて当然なことであります。これは保険制に属するものでありますから厚生省でございますということになりますならば、労働者特別年金制ということはそれなら当然保険制ということにさるべきものであるが、われわれはそのように解釈しておりません。今日までの進め方はいま大臣答弁されるようなことでこの問題は扱われてきているのじゃございません。でございますから、その辺のこの年金の問題というのは単なる保険の問題であるか、労働対策上これはきわめて重要であるから、当然労働省が主管省として責任を持ってやらなければならぬというお考えであるかどうか。それからさらに私が言った資金原資の問題について御答弁がなかったが、その点いかがですか。そういう点をひとつもっとはっきりしてください。
  75. 山手滿男

    山手国務大臣 この特別年金につきまして労働省が重大な関心を持っており、できるだけ完全なものにしたいということでいろいろ考えておることは当然でございます。ただ従来からいろいろ行以上の仕組みがございまして、年金につきましては厚生省所管、こういうことになっておる関係がございまするので、厚生省に対しましては労働省がいまいったような態度で十二分に連携をとって対処していくわけでございまするけれども、実際の所管はそういうことであることを御了承いただきたいと思います。  それから原資のことにつきましては、例の勧告にも書いてありまするように、これは事業主の負担ということでございます。
  76. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 どうも原資の問題は私はっきり聞き取りができなかったのですが、 いま大臣がおっしゃるように厚生省で一つの保険として扱うものでありますならば、当然これは国と被保険者の問題になります、原資の問題、そのようにお考えになっておられるのですか、どうですか。その辺をひとつはっきりお聞かせ願っておきたい。これは今後にとってきわめて重要なことでございますから……。
  77. 山手滿男

    山手国務大臣 伊藤さん御承知のように、答申の中にこういう文句が使われております。「本制度の主旨が雇用の安定と労働力の確保に資する点も考慮すれば、その費用は石炭企業の事業主の負担とすべきである。」こういうことが明記をされておりまして、資金につきましては事業主の負担になるものと考えております。
  78. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 事業主のみが負担する年金を、しかもそれを保険と名づけられるならば、そういう保険というものが世界じゅうにありましょうかね。保険制にして、しかも事業主だけが負担をしてこれを取り扱うというそういう保険の扱い方が世界に例がありましょうか。私の知る限りにおいてはそのような保険制というものはないと思っております。およそ保険というものは被保険者と国もしくは事業主、そのように三者がそれぞれ分担するというところに一つの保険制度というものがあるということが世界の通例になっておりますが、いま大臣のおっしゃったようになりますと、事業主のみが負担をするということになるなら、それは私は保険制じゃないと解釈をしますが、その点について大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  79. 山手滿男

    山手国務大臣 伊藤さんのお話のように、これは広義で言えば保険とも言えるかもわかりませんけれども、保険ではなくて、いわゆる年金であるということでございまして、いまのようなことになっておるわけです。ただ労災保険等についても事業主が負担する、同じような例があるわけであります。
  80. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 労災の問題と、いまあなたがおっしゃるように厚生省が扱うという問題とになってまいりますと、おのずからその点は違いますけれども、いまあなたのほうが時間を急いでおられることでございますから、その点で私はあなたと論議をして大臣をそう困らしてしまうのもどうかと思いますから、まだなられたばかりでございますから、その辺は大いにひとつ同情を申し上げて、いずれこれは議論をすることになりましょう。  いま一点お伺いしたいのは、さっきから多賀谷滝井委員から相当突っ込んで質問をしておりました、それに対して通産、労働両大臣もごもっともであるというような答弁のほうが多かったように思いますが、私もさらにそれを、政府の責任であるという問題について明確にしてお伺いを一点しておきたいのは、いまの合理化にかけて買い取る、あるいは保安上命令によって中止を命ずる。いずれにしてもこれは炭鉱のスクラップとそれからビルドとの間の炭鉱国策としてこの事業団の事業というものは進められてきておるわけであります。そういう点から買い取り価格というものも国がきめておるわけでございます。ところがこの買い取り価格では、炭鉱労働者への未払い賃金、退職金等も支払いさすことができない、あるいは鉱害の問題も負担さすことができないというところから、今度は買い取り価格を倍に引き上げるわけでございます。この引き上げるということは、今日までの間においての買い取り価格が安かったために未払い賃金と未払いの退職金が膨大なものができてしまっております。ところが鉱害の場合には、その鉱害資金を買い取り価格の中から引き去ることができなくとも、後日これを無資格無権者鉱害として国が鉱害復旧をするということをやっております。ところが未払い賃金と未払い退職金というものは、これはもう永久にとれないものと見なければなりません。鉱害のほうは無資格無権者として国がやる。一番重大である、買い取りの場合に最優先する労働賃金、退職金というものが永久に受け取ることができないということは、これは私はまことに国の無責任きわまることではないかと思うのです。これはやはり国の国策としてそういう離職者、その結果未払い賃金、未払い退職金というのができておるのでありますから、したがって鉱害を国が国費で負担すると同じように、当然この終閉山によって国の国策から出てきたこの離職者に対しては、未払い賃金、未払い退職金というのを国が責任を持って支払いをしてやるべきではないか。その支払いをせなければならぬということが、買い取り価格が安かったから今度倍額に引き上げることになったのであるから、さかのぼって鉱害復旧と同じようにこの未払いの賃金と未払いの退職金というのは国が責任を持って解決をすべきであると思いますが、この点について労働大臣でも通産大臣でも、これは両方にまたがると思いますが、私のこの意見というものは、国の責任において当然の処置と思いますが、どうお考えですか。これをひとつ明確にお答えを願いたい。
  81. 山手滿男

    山手国務大臣 伊藤さんのお話でございまするが、退職金あるいは未払い賃金というようなものにつきましては、今度の交付金の中で最優先的に支払わすつもりで、いろいろそこら辺のところはうまくいくように指導をしてまいりたいと思う次第でございます。  ただ、鉱害の復旧は国がやっているではないかというお話でございまするが、石炭鉱業そのものは私企業のたてまえで経営をしておるわけでございまして、その私企業の中で起きましたそういう賃金等の問題を全部鉱害復旧と同じように政府がめんどうを見るということについては、いろいろ問題があろうかと思いまするけれども、しかし今度のような場合、交付金等を出しますときには、できるだけあとに問題を残さないように配慮をしてまいりたい、こう考えております。
  82. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 それはさかのぼって、現在未払い賃金、未払い退職金のあるものを、これを国の責任において解決をしてやるというお考えですか、この点明確にしておいてください。
  83. 山手滿男

    山手国務大臣 いまのところはさかのぼって解決をするというところまではいっておりません。
  84. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 これ以上なにしますと、時間の関係があるようですから、いずれこの問題は後日解決をするように論争いたします。
  85. 野田武夫

  86. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず、閣議決定と当衆議院の委員会並びに参議院石炭特別委員会とでされた決議との、いわば食い違いについて、質問いたしたいと思います。  どうも石炭対策が出ますると急に閉山が行なわれる、これは労働者としては実に耐えがたい奇妙な現象になっておる。本来対策が出ると安定するかと思ったら、答申が行なわれるごとに首切りが出る、そういう現象に事実上はなっておるのです。今度も石炭の答申が出、さらに閣議決定が出ますると、宇部興産が御存じのように明年に閉山をするという発表をした。宇部鉱区には二千人からの従業員がいる。これは宇部地区としてはたいへんなものである。しかも三億トンも埋蔵量を持っておる。さらに三菱でも茶志内、崎戸炭鉱の閉山、貝島炭礦の大手術、さらに北拓の炭鉱の閉山と、いろいろある。中小炭鉱においては相当閉山が考慮されておるという状態だ。ですから、労働者側としては、石炭答申というのが、石炭労働者あるいは企業を安定さすために答申がなされると期待をしておるのに、出されるたびに、逆に閉山を促進をする、現実にそういう状態になっておる。これについて一体大臣はどういうようにお考えですか。これは私は政治としては非常に重要な問題であると思います。よくなるならばいいけれども、悪くなるという印象しか与えないという政治ですね。これは政治の立場としてどういうようにお考えですか、御答弁を願いたい。
  87. 三木武夫

    ○三木国務大臣 宇部興産の責任者が参って、答申が出たから閉山をしたということではない、いかにも関連があるようなことを関連があるわけではないという話をしておりました。いままで閉山交付金の問題もあったりして、そういうのが多少時期的にみな少し延ばしておった面もあると思うのですが、しかし、答申が出たことが閉山を促進するというふうには私は考えていない。これはやはり今回の答申案というものは、まあこれ以上のことはできぬ。これを非常に形態を変えて、国有、国営とかいうような形に持っていくならば別として、私企業の範囲内においてはこれはもう限界を示すものである。したがって、私どもも地方に参るたびに、もうこれ以上のことはできないのだから、経営者も労働者もひとつここで一大奮起してもらって、石炭産業を長期的に安定してもらいたいという勇気づけをしておるわけでございます。そういうことで、これはわれわれのこういう意図が、少し趣旨の徹底も足りないと思うのですが、予算等も編成され、いろいろな法律も整備してきますならば、そういう点が正確に理解されると思うのでありまして、これは今後この石炭の対策というものが長期に安定に役立つものであるということを、実施を通じて証明をしてまいりたい。多賀谷君におかれましても、これはよく御存じでありますから、これ以上のことをやれといっても無理なことは百も御承知でありますから、どうか意気消沈さすようなことなく、勇気づけるような点に御協力を願いたいと思うのであります。
  88. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現実の問題として、答申が出、閣議決定が行なわれると閉山が集中的に出るという姿です。宇部興産にしても、それと無関係だとこう言うけれども、私は率直にいって、宇部興産はぜいたくだと思うのですよ、もうかる企業をやっているから。これが炭鉱会社だけなら、あれだけの鉱区をやめるなんて言いません。宇部興産のように、化学とか、その他セメントとか、非常に有利な企業があるから、石炭の投資から見ると、それをほかのほうに投資したらいい、こういう考え方があるから、ちょっとほかには想像できないように、ばさっと閉山を通告してくる。それならほかの炭鉱にやらしたらいい、宇部興産がやらぬのなら、買い上げなんてやらないで。いま中小炭鉱で閉山をして何とかやりたいが、炭鉱以外どうも手が出ないというのが一方におる。それならば、それを共同会社にして、宇部興産の鉱区を開発させたらいい。東部開発だって、政府がボーリングをしてやろうと言ってもなかなかうんと言わない。私は、いまはそういう石炭企業のぜいたくを許すべきときではないと思う。宇部興産よりも悪い鉱区は幾らでもありますよ。現実はみな一生懸命やっている。それなのに、ほかに非常に有利な企業を持っているから、そちらのほうに投資を集中したほうがいい、それは企業としては私はわかる。しかし、これだけ政府が恩恵を与えてやろうというのならば、そのくらいのことをやってもいいのですよ。これはもう買い上げられぬといえば、宇部興産はやりますよ。整理交付金も出ないといえば、宇部興産はやりますよ。やらざるを得ないでしょう。ですから、そういったところに私は政策のちぐはぐがあると思う。一社一山の炭鉱なら、まだまだやるのですよ。あるいは二つしか山がないのならまだまだやるのですよ。努力してやりますよ。それを、ちっともいまの政府のような政策では見通しがないいな、自分のところの会社は恩恵にあずからない、要するに宇部興産は配当会社だから恩恵にあずからないから、もう石炭を捨てたということになったと思います。これについてどういうお考えですか。
  89. 三木武夫

    ○三木国務大臣 宇部興産は保安上のいろいろな問題があったということが主たる理由になっておるようでありますが、通産省としてどういうふうに考えておるかということは、石炭局長から答弁いたさせることにいたします。
  90. 井上亮

    ○井上説明員 宇部興産におきましては、先生ただいま御指摘がありましたように、来年度に宇部鉱区を閉山したいという希望を持っておるわけでございますが、これは御承知だと思いますけれども、宇部鉱区は七十年の歴史を持ちまして、非常な老朽炭鉱になって、炭量につきましては先生も御指摘のように、単なる炭量としてはなおあると思いますが、しかし昨年出水事故を起こしまして、それからその前年にも出水事故を起こしまして、近年に二回出水事故を続けて起こしておるわけであります。宇部興産といたしましては、従来、もう少しがんばりたいという希望も数年前はあったわけでございますが、この二回の出水事故を機会に、将来に対する保安の確保の見地から展望を全く失って閉山する以外に手はないというような結論になったようでございまして、なお具体的には労使間で今後の方途について検討しておるようでございます。私どもにおきましても、宇部興産のそういう意見に対しまして、実情調査をやっておるというような段階でございます。
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 宇部興産の出炭を当てにして宇部火力というのができた。これは低品位炭を使うからですね。ところが宇部には宇部鉱区のほかに山陽無煙というのがあるけれども、これは無煙炭ですから、発電所には使えない。そういったところに石炭の不信感が電力会社から出るわけです。せっかくその石炭を引き取るために低品位炭の火力発電所をつくったわけでしょう。そうすると、石炭企業のほうは、いや今度はスクラップだと言い切れば、電力会社がおこるのはあたりまえでしょう。ですから、そういった勝手なことを許しておるところに問題があるわけですよ。それは保安というようなことをいえばいろいろあるです。しかしいままでの炭鉱の技術上の問題をたてにとっていろいろいっているけれども、必ずしもそれが、閉山の真意であるかどうか疑問です。せっかく発電所までつくってやっておるのに、その発電所に送る石炭がないというような状態にすることは、私は非常に問題だと思うのです。これは個別問題としてあとからぜひ追及していきたいと思いますが、これは政府としては、単に石炭側だけじゃなくて、電力会社としても困るわけですから、慎重に配慮し、検討してもらいたいと思います。それは宇部興産の企業としては確かにやめることが得策なのでしょう。しかし、私は日本経済全体、あるいは中国地域の開発全体として見ると、はたして妥当かどうか。今後電源開発に幾ら発電所をつくれつくれと言っても、こういう例が出ればつくったって炭鉱側は供給責任を果たさないのですから電発はつくりませんよ。私は、そのことを強く要望しておきます。  次に、この閣議決定で「石炭の需要確保については長期的観点に立って五千万トン以上となるよう積極的に努力する。」その前に「総合エネルギー政策の中における石炭の位置づけは、五千万トン程度とする。」これは苦心はわかりますけれども、私の言いましたあとのほう「長期的観点に立って五千万トン以上となるよう積極的に努力する。」ということはどういう意味ですか。
  92. 三木武夫

    ○三木国務大臣 多賀谷君御指摘のように苦心の存するところであります。非常に苦心の存するところです。それは石炭特別委員会においても強い御要望がございます。ただエネルギーの位置づけとして、これはやはり総合エネルギー調査会などにおいても五千万トン程度が適当である。このことをわれわれが政治的に動かすということは適当ではない。だから位置づけとしては五千万トン程度ということで、われわれもその答申を閣議において認めたわけでありますが、しかしながら、地域経済、炭鉱労務者、そういうふうなことを考えれば、長期的に見て五千万トンをこえる炭量が確保できるならば、できるだけこれの需要を確保していくことが国民経済全体の摩擦を少なくするゆえんであるということで、積極的に努力をしたい。そうして位置づけはそうであるけれども、それをこえるような出炭を確保できるように需要の拡大をはかっていきたいという、前は非常に科学的なことを言っているわけです、うしろは政府の積極的な努力を約束しておるので、その苦心はお察しを願いたいと思います。
  93. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、政策としてはやはり長期的視点に立って五千万トン以上になるように努力する。政策としてはこう理解していいわけですね。
  94. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政府政策としてはそのように御理解を願ってけっこうであります。
  95. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで私は長期的視点というよりも当面の問題がきわめて重大ではないかと思うのです。そこで、この四十五年における五千二百万トン確保ということを本委員会で議決したのですか、私ども、北海道とかあるいは九州の離島に参りますと、このことがきわめて重大だということを感ずるわけです。これは私だけでなくて自民党の委員の諸君も感じられたと思うのです。いま立て坑ができたばかりというのが幾らでもあるのです。そうして、いよいよ稼働するという状態でしょう。ここで出炭の制限というものを感ずるような政策をやることは、これは労働者にとっても経営者にとっても非常に重大だと思うのです。ですからこの需要確保について、いままでいろいろきまっておりますけれども、さらに出炭と見合った需要確保というものを強力に進めてもらいたいと思うのですね。これは具体的にもう少し聞きたいのですけれども、一体北海道の石炭は運賃が高いでしょう。しかもいま開発されつつあるのは、どちらかというとみな北部ですよ。北部というのは運賃が相当かかる。その運賃のかかる北部をどんどん開発して、すでにみな立て坑を掘っておる。この輸送費のかかるものを一体どうして本土の需要地まで持っていくか、これは容易ならぬことだと思うのです。ですから、そういう意味においてはこれを軌道に乗せるためには相当政府が腹をきめて需要確保に努力するし、業者もそのことが必要ではなかろうか。業者のほうは自分の企業のことだけ考えますからね。たとえばふろたき炭なんかで、あるいは家庭用炭で一袋二十キロのを売っておるわけです。それが二百五十円しておる。二百五十円で二十キロといいますと、一トン一万二千五百円ですよ。そういう状態ですね。ですから、こんな高い石炭を一体国民がほんとうに信頼して買うだろうか、そういう気持ちがしてなりません。ですから、政府もそういう点についてはもう少し努力するし、業者にも努力するように言う必要がある。この石炭が非常に安いので困ると言っておる。千二百円だと言っているときに暖房用炭だけが上がっていくというようなばかなことはないでしょう。それは自分の会社はいいかもしれません。しかし、石炭の信頼というものは非常に低下しておる、これをどうするか、それから少なくとも五千二百万トン程度の需要をとにかくつくることですよ。これはあと二百万トンなんてわけないでしょう。わけないと言ってはあれですが、いま千二百万トンくらいの一般工場の需要があるのを五百万トン程度と見るわけですからね。これは少しカーブをゆるやかにすればできる。私は政策でできると思う。業界の努力でできると思う。とにかくいまきわめて重大な段階ですから、まずそのことを指摘しておきたい、かように思います。  そこで、現実貯炭はどのくらいあるか。この貯炭の処理をどういうようにしようとしておるのか。四十一年度末から四十二年度にかけての展望を承りたい。三池炭鉱だけでも約百三十五万トンの貯炭がある。一体あの貯炭をどうするつもりであるか。
  96. 井上亮

    ○井上説明員 石炭の出炭状況は、本年度は比較的好調でございまして、先生の御指摘になりましたように本年度の出炭は大体、五千万トンを少しこえるのではないかというふうに考えております。その反面、貯炭が最近非常にふえておりまして、おそらく年度末には千三百万トン程度に、このまま推移してまいりますればいくのではないかというように考えております。それからさらにその後の状況について私ども需要確保との関連において考慮しておりますが、まあ千三百万トンというのは非常にピークでございまして、それ以上にはならない。むしろ逐次減っていく。しかし今日の見通しでは千二百万トン程度の貯炭はやはりここ二、三年続くのではないか、そういうふうに考えております。したがいまして、これらに対する対策といたしましては短期的には貯炭融資の確保、これが大事だと思います。それから長期的に見ますと——長期的といいましてもやはりこれはことしから努力していかなければ長期対策も実現しないわけでありますが、御承知のような電発火力二基繰り上げ着工というようなことにいま全力をあげて、関係方面の話し合いを進めておるわけであります。これができますと既存の三基の建設、来年くらいからこの三基の建設が完工されますので、それと繰り上げ着工二基、これができますれば、長期的な観点に立ってみますと五千万トン程度の出炭に対する需要確保としては遺憾ないような対策がとれるのではないかというふうに考えておるわけであります。特に短期対策につきましては現在金融懇談会というものをつくりまして、これは大手、中小、二つつくっております。中小のほうは御承知のように地方的な金融機関が主体でございます。別につくっております。大手は全銀協系統の金融機関が主体になりましてこの懇談会をやっております。特にこれは全銀協等も全体の金融懇談会のほかに個別金融懇談会を持ちたいというような希望がありまして、全体の金融懇談会だけでなしに、個別企業についての金融懇談会を過般来連日のようにやってまいりまして、最近一巡したわけでございます。その間金融機関におかれましても、この貯炭対策についてはやはり相当な問題でありますので、できるだけ市中銀行としてもこれに協力してまいりたいというような趣旨を述べております。ただ、御承知のように、石炭の金融問題は単に貯炭問題だけでなしに相当な不足資金がほかにございます。いわゆる赤字金融もありましょう、その他の建設工事の支払い代金等の金融対策もありましょう。いろいろたくさんあるわけですが、これら全体としてまず市中銀行にできるだけの協力をお願いし、その後特に設備関係の資金については政府においても不足資金を補てんするような努力を今後やってまいりたい。貯炭につきましては、主として——主としてというよりも、これは市中にお願いする以外にないわけでございます。市中にお願いしたいという態度で、いま個別的にそういった会合を持ちながら対策を進めております。
  97. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国会決議の中に、貯炭融資を市中銀行に求めるとしてもなかなか困難である、しかし、現実には貯炭の山になっておるから電力用炭株式会社にその貯炭を持たしてはどうか。これは御存じのように、帳簿だけですね、品物を動かすわけではありません。帳簿だけでやるわけです。ですから、このことが国会決議になっておりますし、いま打つ手としては最も有効な手ではないかと思うのです。ですから政府は、結局普通の会計からは利子補給だけでいいわけですから、財投をお借りして、そうして電源開発株式会社の業務として、おのおのの企業の貯炭と、それから企業が将来納める電力用炭というのはわかっておるわけですから、それを一時買い上げを早くして、そして事実上の貯炭融資をする、こういうようにしてやらないとどうにもならないのじゃないか。ですから資力のあるところは貯炭融資を受けられるけれども、資力のないところはかえって受けられない、経営の悪いところほど困る、こういう逆の面が出てくるわけですね。ですからこの面においては早急に国会決議どおりにやってもらいたいと思うのですが、どうですか。
  98. 井上亮

    ○井上説明員 御指摘のありましたように、電力用炭販売会社を活用しての貯炭融資でございますが、財政資金は使っておりませんけれども、現在、電力用炭販売会社から石炭業者に対する前払いのような形、そういう形を通じて電力用炭販売会社が市中銀行からの協調融資を受けまして金融しておる、こういう貯炭対策、これは一種の電力用炭販売会社を使っての貯炭対策でございますが、そういう貯炭対策としての市中からの協調融資が今日大体四十億くらいになっております。おそらく年末までには五十億をこえるのではないか。電力用炭販売会社を通じての貯炭対策、これについて先般来の金融懇談会では市中銀行も協調してまいりたいということを申しております。
  99. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、経営のいいところは協調融資できると思うのですよ。問題は経営の悪いところを救ってやる必要があるのに、そういう市中にたよっておってはそういう状態にならないのですよ。ですから財投を電力用炭株式会社でお借りして、そしてそこでこの一時買い上げをやる、そこで貯炭をやる、これは現物は動かさなくてもいい、帳簿だけでいいのですから。そしてその利子については今度できる特別会計で補う。これは利子ですから、金額としてもわずかです。二百万トンを買っても電力用炭ですから三千五百円くらいで買えば七十億、六分五厘ですれば五億足らずで済むわけです。ですからそういう制度をしてやらないと、私はうまくいかないのではないかと思うのです。ですからこれだけ余っておる貯炭、それから出炭制限をさせますと、労働意欲も落ちていくでしょうし、なかなかコストが高くなりますから、これもできない。そうすると、いまの貯炭をどうするかという問題もあるでしょう。電発も繰り上げ工事をしましてもすぐは間に合わないでしょう。私は制度的にやる必要があるのではないか。むしろ電力用炭株式会社法の業務内容を改正する法律を次の臨時国会に出して、そうして一時買い上げの制度ができるようにすれば、これはわけないのです。そのくらい手を打たなければ、こんな千三百万トンも千二百万トンも貯炭をかかえてどうにもならぬでしょう。そんな小手先でできるくらいなら困らぬでしょう。三池炭鉱だって、  一炭鉱で百三十五万トンの貯炭をかかえておる。どうしますか。ですから、局長はあれもこれもというわけでたいへんでしょうから、ひとつ大臣、そういうことは制度的にぴしっときめてもらいたい。
  100. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはなかなか多賀谷君、むずかしい問題であることは御承知のとおりですが、しかし、検討してみましょう。これは非常な貯炭、これだけの貯炭を持って、市中の融資を受けられぬところは非常に困るでしょうから、これは検討をいたすことにいたします。
  101. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がありませんから何ですが、補給金について金額を明示しなかった理由はどういうわけですか。
  102. 三木武夫

    ○三木国務大臣 答申は百円ということになっております。これは全体の予算折衝の場合などを通じて少し考えてみたいということで明示しなかったわけでございます。
  103. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 考えてみるというのは、これは上げる意思がある、こう判断していいのですね。
  104. 三木武夫

    ○三木国務大臣 まあ、こういう答申も出ておりますから、答申も尊重したいと思っておるのですが、まあ、答申どおりにして抜き差しならぬようにするのもいかがかという多少の政治的判断を加えて金額を出さなかったのでございます。これは下げるようには考えてない、何かもう少し方法はないかということで検討の余地を残したわけでございます。
  105. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 特別会計の問題ですけれども、一体四十二年度、いままでの試算ではどのくらいに考えられるのか。
  106. 井上亮

    ○井上説明員 四十二年度の予算につきましては、すでに石炭関係といたしまして大蔵省に石炭局関係として二百三十五億程度の予算要求を出しております。御承知のように鉱害につきましては通産省の関係はこの二百三十五億の中に入っておりますが、そのほか農林省関係等ございますので、他省関係は他省で出しておるわけです。ほかに保安局関係、これが二百三十五億の中に一部入っておりますけれども、そのほかに五、六億程度の要求を保安関係として別に出しております。しかし、いままで出しました予算の内容は、どっちかといいますと、既定経費的な内容が主体でございまして、いわゆる石炭鉱審議会答申あるいは閣議決定に盛られました新しい政策の問題につきましては、十分にまだ要求をしていない。特に肩がわりの措置の問題、あるいは負担増の対策の問題、それから安定補給金の問題、再建資金の問題等々、まだ残された問題があるわけでございます。しかし、これはタイミングがございますので、ただいま部内で検討を進めておりますが、ごく近々に通産省としての結論をまとめまして、大蔵省にいま申しましたような閣議決定に基づく、まだ抜けております予算のお願いを持ち出そうということでございます。金額的にはいま検討中でございますので、明確なことはいまここでちょっとお答えしかねる次第でございます。
  107. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働大臣は先ほどの滝井さんの質問に対して、とにかく資金だけ確保できればいいということで、あえて特別会計の中に入りたいというような希望の表明はなかった。将来は別として、何にしてもここ二、三年は資金が非常に窮屈なわけです。ですから、何らかやりくりをしなければならぬという状態。そこで、国会決議でもありますし、また大蔵大臣もあるいは総理大臣も御答弁になりましたが、長期的視野に立って弾力的に運用する。これはきわめて名文句ですが、それは総理大臣もそう答弁になりました。特別会計という性格からいえば当然出てくるんですとこう言う。ですから、やっぱり長期的視野に立って弾力的に運用するということばどおりやってもらいたい。私はこまかいことはいま聞きません。聞きませんが、その決意通産大臣にあるかどうか。
  108. 三木武夫

    ○三木国務大臣 われわれも弾力的に運用をしたいということで、今後の予算折衝をやりたいと思っております。将来になれば相当余裕ができるのですが、この一、二年は非常に窮屈でありますので、何かもう少し弾力性を持たすようなことはできないか、こういう見地に立って予算の折衝をいたしたいと思っておるのであります。内容はおそらく多賀谷君御承知のとおりだと思うのですが、多少弾力性を持たしたいと思っております。
  109. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 弾力だけでなく、長期的視野に立ってということがあるのですよ。ですから、率直に言いますと、今後五年とか六年という展望を持ってやってくれということを言っておる。ですから、この四十二年度予算の編成については、ただことしはこの項目については減らす、来年はふやすということではなくて、財源についてもきわめて長期的視野に立って、ひとつ十分に考慮したて、通産省としての態度をきめてもらいたい、かように思うわけです。それから最後に、貝島問題ですけれども、大臣御存じのように、貝島炭価でいま整備資金並びに再建資金をぜひ出してもらって、ひとつ大きな手術をしようということになっておるわけでございます。役所のほうは労使ひとつ話し合ってこいということでして、それも当然でしょうけれども、問題は金が幾ら出るかということが労使の話し合いにやっぱり関係があるのです。退職を認めるか、整理を認めるかということは、一体退職金を幾らくれますかということと関係がある。なるほど、労使間で話し合って幾ら要るんだ、持ってこいと言いましても、あまり実行性のないことを会社は約束してもあとでたいへんでしょう。ですから、これは一体役所というか、あるいは合理化事業団というか、そこの整備資金は幾ら出るんだ、あるいは再建資金はどのくらい出るんだということが再建ができるかどうかという逆にかぎになるわけですから、これはやっぱり同時に解決をする必要があるのです。石炭局長は、お前たち労使の問題じゃないかということで、労使ひとつ協定書を持ってこいとおっしゃいますけれども、会社のほうも実は困っているわけです、はっきり約束できないわけです。自分は金がないですから、結局退職金は政府から貸してもらわなければ出せぬわけです。ですから、いわば残念ながら当事者能力を失っておるわけです、ことばは悪いわけですけれども——これは大臣のもとで石炭局長を入れず、そうして大蔵省と一緒になって、この問題を労使と一緒になって解決してもらいたい。そうしないと、どちらが先かというので、お前のほうで協定書を持ってこなければ動かぬぞ。協定をしよりにも、政府のほうではっきりしてもらわなければ、私のほうは決定ができません。こんなことを言っておったんでは、いつまでたってもどうにもならぬ。ですから、政府が中に入って、問題を一度に片づける、こういう姿勢が必要ではないだろうかと思うのです。それから、ほんとうに再建をさすためには、やはり労働者を残さなければならぬ。それは経営者も非常に努力して、労働組合も努力をするでしょうけれども、労働条件が非常に低くて、生活保護よりも低いとか、緊急就労よりも低いということで、残れ残れといっても、なかなか残り得ないという問題もある。それから、すでに過去と違いまして、炭鉱が閉山をした状態、あるいは第二会社になった状態はみな労働者は知っておるわけです。ですから、私はそういう点を考えて、この問題については積極的に対処してもらいたい。局長はいいですから、大臣から決意をお聞きいたしたい。
  110. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私はやはりイニシアチブは労使がとるべきだという意見です。これは初めから介入して、これだけ出せるからというような、そういう介入のしかたはよくない。これに対していろいろ相談に乗ることはいいですけれども、やはり労使が自主的に解決しようというイニシアチブは尊重しないと、あまり政府が早く介入して、これだけの資金しか出せないというような行き方はよくない。労使間の関係はみなそうです。イニシアチブは労使がとって、その間においていろいろな相談に乗るという形はいいと思いますけれども、初めから一緒になってやれという考え方には賛成いたしかねると思います。
  111. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 もう初めじゃないんです、終わりにきたんです。話がいまから出発するんなら、そのとおりですけれども、もう話は終わりにきているんですよ。終わりにきているんですけれども、最終のところできまらぬということで、金が幾らくるかということがきまらぬ、幾らくれるかということがきまらなければ、できないですよ。大臣のおっしゃるのは、たてまえとしてはそのとおりやってきておるわけです。しかし、最後の段階にきつつあるので、とにかく協定書を持ってこい、そうしなければ金は出ぬぞ。一方の政府ほんとうに幾らくれるのかはっきりしなければ、協定書は書きようがない。もっともですが、政府がいま入るのは介入であるとか、不当な干渉であるとか受け取りません。政府が入って片づけてやるという姿勢がけっこうだと思うのです。ですから大臣、そういう原則論でなく、技術上の処理は政府と一緒になって問題を解決するということが必要でないだろうか、こういうように思うのです。
  112. 三木武夫

    ○三木国務大臣 だんだんまとまるような最初段階にきていることは事実です。それはわれわれ相談に乗っていこうと考えています。
  113. 野田武夫

  114. 滝井義高

    滝井委員 簡単に終わります。貯炭の問題もあったのですが、これはやめます。水の問題だけです。  実は新井さんが石炭局長の時代に、伊藤先生も質問したことがあるし、私も質問したのです。いま万国博覧会の事務局長になっております。実は山野炭鉱で、非常に付近の炭鉱がやめたために坑内水が多くなってきたわけです。三十五年当時三・三三立方メートル一分間に出ておったのが、第二会社になってから七・二立方メートルというように非常に増加をしてきた、これは一体どういうようにあなたは見るかという質問をした。当時新井局長は、これは鉱害である、付近の山がやめてその水がその炭鉱に入ってくるのだから、これは鉱害だ、こういう鉱害論を展開したわけです。当時私はその鉱害論については異論がありましたけれども、しかし政府当局がそういう鉱害論に立ってやるということになれば、これはやむを得なかろう。しかし、鉱害だけれども、この水の処理というものは、付近の炭鉱に金を出せといっても無理でしょう、したがって北九州に工業用水がないのだから、これはひとつ北九州の、工業用水として政府が使うようにさせたい、こういうことでそのとき、質問は終わったわけです。ところが白来、何か検査してみたらその水が工業用水に適しない、適するためにはトン当たり二十円以上もかかるというようなことで、ずるずるとそのままになってきている。ところがいまのように合理化が非常に急激に進みますと、そういう山野鉱と同じような事態が常磐にも起こっております。それから大辻炭鉱にも起こっております。それから三井田川にも起こってきたわけです。私案は炭鉱に資料もらって調べてみましたが、山野鉱では三十五年当時三・三三立米あげておったものが、三十八年閉山の当時になりますと七・二立米になるわけです。四十年になりますと八・三九になる。四十二年になると一六・六七、こういうように非常に飛躍的に増加してくるわけです。これはもう大臣御存じのとおり、筑豊の山は非常に古いですから、付近の山がやめて空洞に水のたまるまでには一年とか一年半かかる。そして空洞に水が満水してしまうと、今度はそれが操業している炭鉱に重圧になってかかってくるわけです。そこで山野では三十五年当時四千二百万円程度であったものが、四十年では一億一千三百万円の揚水費がかかるようになりました。それから今度は三井炭鉱を見てみますと、三十二年に第二会社になったときは毎分三・八立方メートルであったのが、四十年では六・八、四十二年になると毎分十七立方メートルになるわけです。そうして揚水費もトン当たり三十九年百四十四円が、四十一年になりますと百八十八円、四十二年が二百八十九円、四十三年が三百七十六円と、こういうように設備をやってもずっと上がってくるわけですね。どこの炭鉱でもそうなるかと思うと、どこの炭鉱でもそうならないのです。非常にふけを掘っておる、その地域の支柱的な炭鉱に全部重圧がかかってくるという形になるわけです。そこで揚水費が多くなるというので、その支柱的な炭鉱がやめれば、その上層を掘っているすべての炭鉱がだめになる、こういう事実がはっきりしてきたわけです。そうしますと、ことしの閣議決定その他見ますと、政府のほうにおいて石炭鉱業の安定をはかるために炭鉱の近代化、機械化を一そう促進するほか、炭層探査及び坑道掘進に対する助成制度を拡充強化するというのがあるのです。それから通産省の予算要求などを見てみますと、近代化、合理化を促進し、あわせて保安対策を強化するための坑道掘進の積極化が必要である、これが保安確保及び安定出炭の基準となる、だから坑道掘進費等を出さなければいかぬというようなことを言っているわけです。そこで私はこの際提案をしたいのは、——大蔵省も来ておられますか。閣議で坑道掘進費というものをきめておるわけですね。それは予算を何とかしなければいかぬ、こう閣議決定をしている。通産省もその気持ちであることははっきりしておるわけです。そうしますとまず大臣のほうで、これは保安上水がだあっと来たらたいへんですから、やはり水を絶えずあげなければいかぬ、あげればたくさんな揚水費、電力料かかかるということになると、それでつぶれちゃうわけです、山は。もちろんこういう第二会社になった山は、支柱的な山でもこれは肩がわりをしてもらえるわけではないわけです。今度幾らプラスアルファしてもらっても百円かそのくらいしかもらえない。そうすると揚水費がいままでよりか二倍、三倍かかってきますとたいへんなことになるわけです。そこでこの際坑道掘進費に坑道掘進費等の補助という、等を入れてもらえば保安対策上水も入ると思うのです。保安局長のほうもそれならばやっていけるのじゃないかと思うのです。こういうことをぜひほんとうはやってもらわなければいかぬ。鉱害論は展開したけれども、鉱害論では、その山はやめてしまったのだから、そこに金をとりに行ったって、これは自分の山がつぶれておるのに、金を払ってくれといったって無理じゃないか。そこで、前の局長がそうおっしゃっておりますけれども、この際前のは前のとして、何かそういう坑道掘進費等の補助として、等を入れてやってもらえぬかどうかということです。こういう実態が大体われわれの調査で明白になりました。こういうことはどこの山ででもないのです。やはりその地域で残っている支柱的な炭鉱ということに私は限定してもいいと思うのです。しかもその山がやめれば他の中小の山もがたっとやめざるを得ない。しかもその山は支柱的な山ですから地域経済に非常に重要な影響を及ぼすというので残しておる山です。そういうような山に限定をしてもいいですから、これはひとつぜひ予算要求に入れていただきたいということ。大蔵省もその点はぜひ了承してもらいたい。ひとつ大臣から……。
  115. 三木武夫

    ○三木国務大臣 揚水施設の増強、これは御指摘のようにしなければならぬ炭鉱が特殊な炭鉱にあるわけですから、揚水施設の増強については財政資金で融資の道を講ずるようにやりたいと考えておるわけでございます。
  116. 滝井義高

    滝井委員 揚水の設備が、たとえば三井田川に例をとりますと、電力と管理費等の設備費四千八十三万が、今度四十一年には八千十九万、四十二年になると一億三千三百五十万、こういうふうに要るわけです。それで設備をしますと今度水がざあっと早くやってくるために、設備をしたポンプを上に上げざるを得ない事態が起こってくるわけです。そのポンプは大きな能力にしていないわけです。初めから大きくすれば二倍も三倍もかかるということで、していないわけです。小さいポンプでは水の押し寄せ方が早いので上に上げなければいかぬ、こういう点がかかってくるわけです。こういう点をぜひ検討していただいて、ぜひ坑道掘進等の範疇の中に入れるかどうかして、設備費は融資をしていただくにしても、電力料金がよけいかかるということについては何か対策を講じていただきたいと思います。これは大臣からもう一ぺん御答弁いただいて、大蔵省の見解もひとつお伺いしておきたいと思います。
  117. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いまお答えしたように、融資の道は、設備ですね、揚水の設備に対しては融資の道を講じたいと思いますが、電力料金の問題は検討さしてもらうことにいたします。
  118. 相澤英之

    ○相澤説明員 ただいま御指摘のありましたこの問題につきましては、私どももまだ具体的に通産省のほうからもお話を聞いておりませんので、通産省の検討の結果お話がございましたら、私どものほうでも検討いたしたいと思っております。
  119. 滝井義高

    滝井委員 これでけっこうです。ありがとうございました。
  120. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十一分散会