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1966-08-12 第52回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年八月十二日(金曜日)    午前十一時三分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 大坪 保雄君 理事 藏内 修治君    理事 進藤 一馬君 理事 壽原 正一君    理事 多賀谷真稔君 理事 松井 政吉君    理事 八木  昇君       野見山清造君    岡田 春男君       滝井 義高君    細谷 治嘉君       伊藤卯四郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     麻生太賀吉君         参  考  人         (井宝鉱業株式         会社社長)   籾井  糺君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合委員長)  山本 忠義君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合委員         長)      重枝 琢巳君         参  考  人         (全国炭鉱職員         組合協議会議         長)      松葉 幸生君         参  考  人         (日本石炭協会         副会長)    佐久  洋君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  まず、小委員会設置の件についておはかりいたします。  本委員会に、産炭地域に関する諸問題を検討し、その推進をはかるため、小委員十五名よりなる産炭地域振興に関する小委員会を設置するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長選任につきましては、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  次に、ただいま設置いたしました小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じました場合の人選等、また、小委員の辞任の許可並びに補欠選任手続等につきましては、すべて委員長に御一任願、いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 野田武夫

    野田委員長 石炭対策に関する件について調査を進めます。  石炭鉱業審議会答申中心石炭対策基本施策について昨日御意見をお聞きしました参考人日本石炭協会会長麻生太賀吉君、井宝鉱業株式会社社長籾井糺君、日本炭鉱労働組合委員、長山本忠義君、全国石炭鉱業労働組合委員長重枝琢巳君及び全国炭鉱職員労働組合協議会議長松葉幸生君の御出席をいただいております。  参考人各位には、御多用中のところ、連日本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。  それでは、昨日の御意見に対し質疑の通告がありますので、順次これを許します。細谷治嘉君。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 昨日、きょうと引き続いて参考人の方たいへん御苦労さまでございますが、昨日述べられたことについて、時間の関係もありますから、まとめて御質問申し上げますので、お答えいただきたいと思うのであります。  最初に炭労山本委員長にお尋ねいたしたいのでありますが、昨日、三十七年、三十九年の答申の経過、こういうものからいって、今度の答申というのも全く期待できないのだ、むしろだまされてきたんだ、こういう観点で絶対反対という意思表示をなさったのでありますが、質問いたしたい第一点は、五千万トン程度という石炭位置づけ総合エネルギーの中でなされたわけでありますが、この問題は非常に重要な柱でございます。労働組合としては、石炭位置づけというのはどうあるべきか、昨日は主として答申中心として述べられたのでありますが、労働組合としてお考えになっておる点を率直にお間かせいただきたい、こう思うのであります。  それから第二の問題点は、保安問題。数次の大爆発等が起こっておるわけでありまして、今度の答申でもほとんど保安問題というものについては触れられておらないと言ってもよろしいわけでありますが、昨日のおことばの中で、むしろ保安問題だけでも国家管理をしてもらいたいのだ、こういうことばがあったわけであります。これについて、具体的にはどういう御構想なのか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。  第三点は、今度年金制度というものが答申の中に書かれてあるわけでありますが、これは厚生年金に若干プラスアルファをつける程度と、私ども質疑を通じて言われておるわけでありますが、そのこと自体きわめて不十分であり、しかも財源は、国で出してもらわなければならぬのに、私企業に出させる、しかも少ない退職金から相殺される心配があるのだ、こういう御心配を述べられたわけでありますが、これについてどういうふうにお考えになっておるのか、炭労としてのお考えを聞かしていただきたい。  第四点は、現在三万人程度離職者がおる、今度の答申ではやはり三万人以上の離職者が出るだろう、こういうおことばがありました ところで、現在離職者に対しては緊急就労事業というのをやっておるわけでありますが、この緊急就労事業というのは、ワクが毎年毎年減ってまいりまして、十分に離職者に対応できるようなワクじゃないということが一つ。もう一つは、単価が安くて、地方団体では相当の手出しが起こっておる。形式的には八割の国庫負担だといっておりますけれども現実には五割以下の負担になるところも多々あるわけであります。今度三万人新たに出てくるといいますと、こういう緊急就労事業というようなことについてどういうふうにお考えになっているのか、この点をひとつお聞かせいただきたいのであります。第五点、これは最後の点でありますが、せんだって参議院石炭特別委員会で北海道に参りました際に、子供ですらも炭鉱の将来というものについて悲観をしております。新聞によりますと、おとうさんは、もう陳情したってつまらぬのや、政府にものを言ったってつまらぬのやということを子供に聞かしたようでありますけれども、それでも子供さんは心配で、何とかしてほしいという総理に直訴の手紙を参議院石炭特別委員長に託されたということを聞いております。私はこの深刻さを思うのでありますが、これに関連いたしまして、炭鉱児童生徒不良化問題というものが非常な大きな問題になっておりまして、炭鉱に働く人、親として、きわめて深刻な問題であろうと思うのであります。この炭鉱教育の陥没、あるいは児童生徒不良化ということは、ゆゆしい社会問題になっておるのでありますが、今日ほとんど何もなされておらないというのが実情でございます。そこで、文教対策も含めた不良化対策という問題について、直接労働組合がタッチした問題ではございませんけれども、やはりこれは炭鉱中心とした地域社会の重大な問題でありますから、組合責任者としてのお考えを聞かしていただきたいと思うのであります。  それから、中小炭鉱を代表された籾井さんにお尋ねしたいのでありますが、昨日、この答申は画期的だが抜本的でないと、非常に意味深長なことばが述べられたわけでありますが、新しい点が幾つかあるという点でそれは画期的だ、しかし、これでは炭鉱は救われないのだ、こういう意味であろうと思うのでありますが、特に中小炭鉱で具体的な心配されておるは、いわゆる補給金というのが百円程度となっておるわけでありますが、これではだめなんだ、これはやはり三百円程度にしてほしいのだ、こういう切なるお訴えがございました。同町に、買い上げについては五千円ほしいのだけれども最低三千円にしてもらわなければならぬのだ、こういうふうな御意見がございました。詳しいことをお聞きするわけじゃありませんけれども、その三百円なり、あるいは最低三千円にしてもらわなきゃならぬという中小炭鉱実情、こういうものをもう少し具体的にお聞かせいただきたい、こう思います。  以上、まとめて御質問申し上げましたが、ひとつそれぞれからまとめてお答えいただきたいと思います。
  8. 山本忠義

    山本参考人 山本でございます。お答えをいたしたいと思うわけです。  五千万トンの関係のことでございますが、私どもは、抜本対策ということになれば、政策需要を含めてその総需要量についてしっかりした位置をはっきりしておく、このことの中からいろいろな派生的な諸問題について検討を加えて樹立をしていく、いわゆる総合エネルギーの中における石炭位置というのをきちっときめてもらう、このことが動揺することであっては抜本対策にはなり得ない、こういうふうに考えておるわけです。だから、その抜本対策の場合の位置づけについては、縮小生産方向ではなしに、いま炭鉱労働者は少ない人員で能率を四十トンもあげて、今日では五千百万トンの出炭実績があるわけでありますから、将来の希望と展望が持てる、もう少しおまえたち労使協力をしてがんばっていきなさいというなら、石炭を出したら出したで、また生産制限だとか、買い手がなくてもう困るからあまり出さぬでくれとか、もう少し首を切ってくれとか、山をつぶしてしまえとか、こういうことの二度とないようにしてもらいたい。それには多少政府の金に無理がかかったり、あるいは世論のひんしゅくなり、重油なりそういう石油業者のほうからの圧力はあるでしょうけれども、この際、十年間も五年間もいわゆる安全保障見地から国内の重要資源を確保するというのであれば、思い切った措置として公約したことなんだから実行をしてくれ、こう言っておるわけです。われわれはかつて、六千万トンと、こういうふうに言いましたけれども、あの際に、五千五百万トンでおまえたちはしんぼうしなさい、そのかわり肉づけと裏づけはきちっとしてやりますよ、十二万人の百を切っても、離職者対策もきちっとしてあげます、こう言ったのは、いまの総理大臣の佐藤さんが通産大臣のときでございますから、特に炭鉱労働者産炭地の住民をあげて五千五百万トンに固執をするゆえんについては、十分おわかりをいただいておると思うわけでございまして、そういう面について、スクラップというような政策ではなしに、もうスクラップ・アンド・ビルドというのはずいぶんやってきて、ずいぶんあっちこっちに犠牲者が出て今日のような現状になってしまったのだから、この際はスクラップ・アンド・ビルド政策は放てきをして、そうではなしに、五千五百万トンという多少幅のある需要総合エネルギーの中における石炭位置をしっかりときめてもらって、その中で労使は死活を賭してがんばれとか、あるいは協力をしてやりなさいとか、ここういうことでなければ、これは必ず縮小生産方向になってしまって、かりに能率があがっても、離職者がどんどんふえる、能率をあげればあげるほどなま首が飛んでいってしまって、山がつぶれてしまう。企業本位スクラップ・アンド・ビルド政策というのは必ず破綻を来たす、こういうふうに主張をしておったところでございます。したがって、五千五百万トンはぜひ確保を願いたい。しかし、いまそう言いましても、いろいろな意味で長い年月をかけて、七年間も炭鉱の問題について手がけた政策懇談会メンバー人たち努力をした結果でありますから、そういう面については不満はありますけれども現状の世論なり、あるいは現状のみんなの考えている考え方というのもあるでしょうから、私どもは必ずしもいますぐ五千五百万トンをきめてくれとは言っておりません。五千五百万トンを目標にして、われわれが、働いてしがみついて残ってきたやつが幸福になれるように、いまのところは五千二百万トンでございますか、国会で決議なさった線を最低にしてひとつ目標希望を与えて、もう二度と炭鉱の場合、重油圧力流体エネルギーの構造の変化、こういうことでまた首を切られるのだとか、山がつぶれるのだとか、こういうことのない、ほんとう意味抜本策樹立願いたい、こういうふうに心からお願いを申し上げている次第でございます。  第二点目の保安の問題でありますが、これはいまさら声を大にして言う必要がないと思うくらい、再三、事実においても明らかでありますし、私どもも要望をしておるところです。その事実というのは、あのスクラップ・アンド・ビルド政策というのを強行した過程の中で、石炭産業の場合は、何といいましても石炭を掘らなければコストが安くなりません。したがって、どうしても増産体制ということでコストを安くし、企業経理というものについて検討を加えていく、こういうことになるわけですから、ある程度出炭をセーブしてどうのこうのということにならぬわけですから、非常に無理が伴う。そういう意味で、なおかつ人間の構造的なものが、非常に労働密度といいますか、そういうものが、集中生産でありますから、非常に固まってきている。無理が伴う面について固まってきている。それからもう一つは、炭鉱年齢が非常に年をとってきている。いま一級先山なり大先山といわれる人たちは、ほとんどが四十二歳、四十五歳以上の人たちが大先山であります。ピックマンといわれるのは、ほとんど年齢の多い者が、かつてよりももっと多くなりましたノルマの中で、たとえば昔は四メートルとりきりで掘ればよかったものが、四メートル半からカッペ四列柱で五メートルも掘らなければならない。汗びっしょりかいても、なかなか上がるときの時間までにはノルマが果たせない。疲労が蓄積されてきている。こういうことになるわけですから、そういう面から非常にこの保安問題というのは重視をされるわけです。これは、松葉参考人のほうから申し上げましたように、毎日落盤事故なりその他の事故で死人が多くなってきているのは、そういう実情を物語っている、こう思うわけです。したがって、私どもは、かつて、国会でございますか、あるいは通産当局の要請でございますか、保安調査団というのがそれぞれ地方に参りました際に、強く申し上げたわけです。炭鉱保安教育というのは、経営者自身リーフレットパンフレット幻灯写真進発所に入坑するときにいろいろやったって、それは意味がない。やはり日常時間中に、坑内から坑外にあげて、半日間か、あるいは二時間か三時間、ぴっちり実物に即した教育をやらなければ、ほんとうに実にならぬ。疲れた人間リーフレットや。パンフレット幻灯写真を見せてもらったって、ノルマノルマで追いまくられるわけですから、どうしても保安がおろそかになる。こういうことを主張しておったところです。だから、そういう面で、保安費を大幅に、こういいましても、なかなか経理事情の苦しい経営者でございますから、そういう面では手抜かりになってしまう。そういう面をひとつ国の国家管理の中で、保安は、費用と、それから実情的にも吸い上げて、これから私企業について一千億から補助をするわけですから、一回爆発がどかんと起きてしまえば、何千億のたな上げをしておった炭鉱といえども、それ自体でもう経理面が悪化をしてつぶれなければならぬ。ことに中小炭鉱の場合に大事故でも発生をしたならば、それだけによって炭鉱がつぶれなければならぬ、こういう実情になるわけですから、国家的な見地からも保安対策について積極的な面を打ち出すべきである、こういうふうに主張しているわけです。なお、具体的には、炭鉱ガス量の多い山あるいは崩落、落盤事故の多い山というのがわかるわけですから、保安監督官常駐制度、こういうようなものでもやったり、パトロールの強化、こういうことを十分に補ってやっていくことによって、当面の保安事故というものについてもある程度予防の面でできることがあるのではないのか。そういう保安監督行政強化という面についても、ぜひひとつ行政面から積極的にやってもらいたい、こういうことを始終訴えておった次第でございます。  次に、第三点目の年金制度の問題でございますが、昨日も申し上げましたように、私どもはやはり年金はつくってもらいたい、これは三カ年間のことでございますから、どうしても今度はひとつ実行をしていただきたい。しかし、いろいろな関連がございまして、そう大幅なことを言ったってそれはむちゃだ、こういうことになると思いますので、厚生年金の中から一部出すとかなんとかいうくふう、その他技術的なことについてはとやかくは申し上げません。しかし、年金制度である限り、炭鉱夫が長年つとめて老後を養っていくに値するだけのやはり金額ということでなければならない。それには、やはり私企業ではさかさに振ったってこれは出せない、こう言って、期末手当にしたって、その他にしたって、管理炭鉱は二万六千円、大手炭鉱でも四万一千八百円、こんなことで涙をのんでいる実情なんですから、経営肴責任でやりなさいということは、やらなくてもいいということに通ずる。それから、炭鉱で災害が起きて死んだ人間は、われわれの協定書ではわずか八十万円です。全日空でなくなった方々は、これは高いとは申し上げません、しかし、三百万も補償をしてもらう。こういう実情から考えてみても、いかにわれわれは劣悪な条件の中にあるかということがおわかりをいただけるわけですから、そういう面から、経理面を非常に検討された結果、一千億の肩がわり安定補給金をしてやらなければならないほど、炭鉱経理面の病人になっているということを認識された政策懇談会メンバーの方であるのならば、勇敢に政府のほうに向かって、炭鉱年金財源国庫によってめんどうを見てやりなさい、こういうのが当然でないか、こういうふうに申し上げたわけでございます。  次に、年金の場合どうしても実施をしていただきたい内容がございます。それは、あの答申案の中で、私どもの折衝の中でははっきりしてないのですけれども、過去通算が全然考えられておりません。したがって、現町点から出発をして四十年、五十年つとめなければ年金恩恵を受けない、こういうことは、今日の炭鉱実情に全くそぐわないし、炭鉱の現在働いている人間からいわせると、こんなものはくそにもならぬ、こういうことになります。したがって、苦労してきた炭鉱夫や、これからもなおかつ努力をしなさいというのなら、いままでしがみついて一先懸命になって能率をあげて四十年、五十年つとめた者について、いますぐ定年になっても年金制度恩恵を受けられるようにする措置をとらなければ、有名無実にひとしい、こういうことをきわめて高く主張しておるわけでございまして、その点だけは、ぜひひとつ国会の諸先生方の御見識の中で、実情に即した制度として樹立をされるようにお力添えを賜わりたい、こう考えておる次第でございます。  それから、第四点目の緊急就労の件でございますが、これは私どもも非常に切実な要求でございます。今度それぞれ山でも回っていただきますと、特に福岡の筑豊地帯においでをいただきませば非常によくおわかりをいただけると思うのですけれども現実に仕事をしたい、どこかに就職をしたいといいましても、四十歳を過ぎた炭鉱夫、家族も多いわけでございますから、なかなか住宅がない、あるいは給料も見合わない、こういうことで非常な制約を受けているのは今日明らかであります。特に、これから繊維産業に見られるように、一般的な不況というのが横ばいになる、こういうことになってまいりますと、なおかつ三万人の首切りという過程では、炭鉱年齢が四十歳、四十一歳という平均年齢でございますから、非常に高年齢者失業にほうり出されてしまう、こういう実情になります。だから、従来よりももっと緊急就労ワク拡大の問題なり、あるいはまた、この離職者対策というものは、相当の予算や、あるいは必ず生業につけてやる、そのつけない間は、炭鉱離職者臨時措置法だけでは足りないわけでありますから、大幅な財源をもってこれらのことについてめんどうを見るという施策をとらなければ、ほとんどスラム街というものの解消にならない、こういうふうに私ども現実の面から見て——ずいぶんいろんな理想論をおっしゃる方がございますけれども、それは現実に即さない考え方である。現実には緊急就労ワク拡大もできないで、筑豊地帯その他では離職者というのは非常に困っている。こういう現実にあるし、地方自治体というものについても、離職者失業者の面で自治体の財政というものについて非常に圧迫をしているというのが現実でございますから、そういう面について、多少なりとも、終掘閉山あるいは保安上危険な山についての閉山については、私ども反対をいたしておりませんから、そういう面から出てくる離職者については、そういう措置を完全にとって、社会の中に受け入れてやるという方策をあわせてとっていただかなければ、非常にたいへんな社会不安が起きるのではないか、こういうふうに考えておるところでございますので、この点もよろしくひとつ御検討のほどをお願いいたしたいと思います。  次に、これは諸先生方はもう非常に見聞が広いわけでございますから十分おわかりをいただけると思いますが、最近まではあまりマスコミに乗らなかったのですけれども、ついこの間もテレビの中で、筑豊地帯の小学校生徒のことを学校先生がいろいろ説明をされておりました。あるいはまた、土門拳写真の中でも、へそを出して、すっぱだかになって、栄養不良で腹ばかりふくれている子供が、炭鉱地帯筑豊地帯にはたくさんおるわけでございますから、これを見て義憤を感じない人はいないと思うわけです。今度の一千万トンなりあるいは三万人の首切りということは、この上にそういう事態をもっと重ねる、こういうことになりますから、口で、人道主義であるとか人命尊重だとか、あるいは何とかかんとかいいましても、現実には、この炭鉱の周辺のスラム街から不良化の問題が起きてくるし、炭鉱労働者だけでなしに、学校先生もあるいは地方自治体人たちほんとうに頭を悩ますような現実が出てくる、いわゆる政治の救いの手の届かないところで多数の国民が泣きの涙を見なければならぬ、こういう実情になることは明らかであります。これは現実がそうなっておるわけでございまして、私どもも何とかしたいとは思いましても、ここまで落ち込んだものについては、金を持ち出したり何だりをしなければ、実際の救済になりません。行ってあいさつをしたり、お気の毒です、どこかに就職をお世話いたしますと、こういいましても、なかなかそのことは現実に即しません。やはりどうしても政府予算をつぎ込んでそういうスラム街解消する、あるいはそういうものについては緊急就労ワクの中にとけ込ましていく、こういう援護措置というのを完ぺきにやらなければ、スラム街解消にはならない、こういうふうに考えておる次第でございます。  以上でございます。
  9. 籾井糺

    籾井参考人 お答えいたします。  第一番に、画期的ではあるけれども抜本的ではないということをきのうの意見で申し上げましたが、この裏づけは、きのういろいろ具体的なことを申し上げました中に含んでおるわけで、要は、いろいろな施策の、項目が出ておりますけれども石炭産業政策は、やはりその炭鉱を生かす——きのうも申し上げましたけれども、根本的にやはり炭鉱が経済的にいかれる方法をとらなければ、いかにいろいろなことを並べられても、この不安定は払拭できないという考えに立っておるわけです。地域の皆さんが非常に心配されておることは、この施策では炭鉱は生きぬということをもう見抜いておるわけです。自由経済の中でもうからないときの炭鉱というもののしわは、やはり労務者の未払いに起こったり、あるいは出入り商人の未払いにしわが寄ってくるわけですから、そういうものをノーマルな状態に置いてやらずに、いかにいろいろなことを、千億の肩がわりをおやりになっても、それは銀行救済以外にはないのであって——それは完全にないとは言えませんけれども、やはりほんとう答申のねらいとする抜本的な目的を達するのには、ほんとう炭鉱がもうかって、私企業的な形態を持続できる内容をつけてやらなければ、本質をつけてやらなければ、いかに大きな金をばらまかれたって成功しない。簡単です。ほんとう地域の方たちは、炭鉱が非常にもうかるようになったげなというようなことだけで、もう全体はきちっと静まっているのです。  それがもう私どもが伝えなくても、東京から帰らぬうちにぱっと動揺しているという姿は、あの程度では炭鉱はだめだという印象が非常に強いわけですね。五千万トンにしてもしかりです。やはりわずかな時期に五百万トンも後退するということ——経済的に見て石炭ほんとうに、五千万トンでいいかもわかりません。しかしこのムードの中で炭鉱を正常な姿に戻して、政府考えておられる期間波乱のないように維持さしていくというためには、多少オーバーぎみにいろいろなものは打ち出しておかないと、そういうものを低目に打ち出してムードを悪くして、いかにそれ以外の対策をお立てになったって、それはもう負けいくさのときに歯どめができないのと同じで、私はどんどん混乱が起こるだけだと思います。われわれが好んでそういう不安を醸成しているということはとんでもない話で、私どもほんとうに日夜従業員の人心を静めて、こういうムードであるけれども、実はそうじゃないのだ、国のためになっているのだぞということを日々話し合いの中で出して、そして盛り立てていっておるのが実情でございます。それなくして、今日のこの悪い環境の中で、石炭産業が生きていくということはとてもできないわけです。ですから私どもが、いかにも素朴な言い方ですけれども、五百円くらい、もうずばり安定補給金一本で、これが一番世話がないのだと言うゆえんはそこにあるわけです。非常に簡単ですけれども、経済合理性をきわめて有効にとらえて出される施策は、私は安定補給金一本にしぼるべきだ、それならば成功する。そして炭鉱はドラスチックにもうからして、税金で召し上げればいいわけですから、そういう姿に置いていったほうが石炭産業というものは非常に世話がないので、一人歩きができて、地域にも、あるいは従業員の生活の向上にもなるわけです。それが非常に国の税金を使うから、お前たちこれはできないのだというようなムードの中で、きわめて形だけ整えればいいというような施策ではないかという感じがするわけです。私どもの経営の実感として、そういうことでなければ成功しないというのが私の率直な意見でございます。  それからいま話もしましたように、百円のものは三百円でなければいかぬということは、きのうも申し上げましたけれども、非常に景気も復興しておりますし、一次答申が出まして石炭が思うように出なかった、非常に労務者は流失したというようなことは、やはりあの景気が非常に災いして、他の産業から労務者の要求があって流れていったということが実情なのです。今度もやはり経済の復興に伴って、炭鉱はこういうムードの中では、とてもいまの待遇では、炭鉱の従業員におってくれというようなことをかりに言ってみたところで、国家論を打ち出してみたところで、やはり一人一人の炭鉱の従業員は、自分の生活がささえられなければおれるわけじゃないですから、いかに組合と話ができても、結局は一人一人の労務者であって、職業の自由選択はおのおの労務者一人一人にあるわけですから、労働組合の幹部と話ができたって、そんなものはへにもならぬ。やはり一人一人を満足させられるような待遇と要素があるというようなことが、私は最大の要点であろうと思う。組合幹部と話し合いができて、いかにやってみたって、そんなものはへにも突っぱりにもならぬ。やはりいよいよぎりぎりの線は、労務者一人一人に満足を与えておるかどうか、そのかたまりが、全体が満足しておるかということでなければ、いかに大臣が満足したって、国民が満足してなければ騒動が起こるのと一緒なんです。やはり一人一人の労務者を満足せしめるというような話し合いができるというのは、こういう安定補給金が百円ではできません。ですから、いまの百円そこらでは、負担増もありましょうし、いろいろな経費の増加は、もう年々増しておるわけですから、それはもう過去の実績をごらんいただければ十分了察していただけると思います。  買い上げにしましても、いままでが五千円ついておるのですが、買い上げの金というものは、ほとんど地域、従業員その他に行っておるわけです。これを、いかに二千円を三千円にしたからといったって、いわゆる上がった分が経営者のふところにいくようなことを考えておられるととんでもない話で、今後かりにやめるとするならば、いまの従業員の年齢層も非常に高くなりましたし、この人たちはおそらく他の職場につけません。やはり現在の退職規定の倍なり、いろいろなものをやって、直ちに路頭に迷わないようなことをしてやらなければ、ほんとうにやめるのにやめられないというのが私どもの心情でございます。  それがためにはどうしてもいまの二千円というようなことでは安いし、借金が残るだけでとてもやめられない。しかも、特に中小炭鉱では、その地域に生まれた者で、遠くから来て炭鉱をやっている者はおりません。ですから、自分がそういう事業をやめるときには、非常にきれいな姿でやめていかなければ、その地域で生活もできないというようなことでございますから、やはりその地域にとどまって余生が送れるようなことくらいは、ひとつ国で認めていただきたいというのが私の心情でございます。  以上でございます。
  10. 細谷治嘉

    細谷委員 最後に一点だけ山本さんにお聞きしたいのですが、この答申が来週金曜日ごろ閣議決定されるというのでありますが、とにかく一千万トンくらいの閉山、三万人以上の失業者が出るだろうといわれておるのですけれども、三十七年の答申では、予想以上のスピードで、なだれのごとく離職者が出ちゃったわけです。炭鉱には希望がない、保安も不十分、労働条件も悪いということでありますから、またぞろ政策が追いつかぬような、なだれのように炭鉱が崩壊していくのじゃないかということを心配しておるわけでありますが、それについてどうお考えなんでしょうか。一言これについてお答えいただきたいと思います。
  11. 山本忠義

    山本参考人 御指摘の点を私どもも実例の中で非常に心配をしております。というのは、かつてのときにはああいう答申でございましたものですから、企業がそれぞれ相争って早く合理化をやらないとおれのほうは生き残れない、こういうことで、第一次調査団のときには五カ年間でやりなさいというものが二年間でやってしまった。二年間で十二万人の首を切ってしまった。だからもう自産炭損益以外のいまの異常な負債というものがあるわけですけれども、いわば自業自得みたいなところも私どもから言わせるとあるわけです。何も大急ぎで首を切らなくてもよさそうなものですけれどもああいうことになってしまったわけで、これは必ずしも石炭経営者だけを責めるわけにはいかないんで、ああいうふうに、早くやらぬと生き残れぬぞということを示唆した方向に最も重要な誤りがある。だから今度の場合も、おそらく異常なことでございますから、何としても生き残って早く実績をあげなければならぬ、こういうことは、この答申案をめぐって石炭経営者の頭の中にもこびりついている、こう思うわけです。なおまた石炭当局にいたしましても、それぞれこれらの施策を受けて立つ企業の生産計画なり、あるいはまた施業案の方向なり、こういうものについては厳密に検討する。そうしないと石炭鉱業審議会の中にございます経理審査会、そいう関門をくぐらなければなかなか金も貸してくれぬ、こういう仕組みになっておるわけですから、当然そういう面では、早くこの合理化計画というのを出して一日も早く首切りをして——首切りというようなことばは語弊がございますけれども、立ち行く無理な計画というものを出すんじゃないのか。そうなると四十二年度までに集中的に企業の合理化がなされて、一切のしわ寄せば炭鉱労働者にだけくる、こういうきびしい現実があるんじゃないのか、こういうふうに私どもは予測をしているところです。あの文句の中にある死活を賭してやれということは、とにかく一生懸命やれということ以上に強い意味であるわけですから、合理化あるいは首切りというのを叱咤激励している、こういうふうにとれないわけでもないわけでございまして、そういう悪弊害というのが必ず起きるのではないのか、こう思っております。  それで、私ども答申にももちろん反対でございましたけれども、どうしても中小炭鉱その他について終掘をし、炭量が枯渇をして閉山をする場合には、スムーズに撤退することについてはやぶさかではありません。十分に労使で協議をして離職者の行くえなり何なりについてもめんどうを見ながらトラブルの起きないようにその過程には持っていくつもりです。  それからもう一つは人命を守らなければなりませんから、保安上注意をされて閉山をしなさい、こういうふうに言われた山までも絶対反対だというわけではございません。したがってそういう面については認めますけれども、それ以上、労使協力をしてやっていけば細々でもやっていけるものを政策スクラップ過程で、いわゆる金を貸さないという締めつけの中で——事業主にしてみればあまりつぶしたくない、何とか規模を縮小して、会社の課長の給料の高いようなのも首を切るかわりに、ある程度あなた方のほうも犠牲になってくれ、賃金もがまんしてくれ、しかし地域経済上やっていこうじゃないか、こういう意図がかりにあったにしても、おまえのところの合理化案を出してくれ、こんなことでやっていけるのか、これじゃ金を貸さぬぞ、こういう政策面からくる、机上のプランの上からくる締めつけというのが事業主のほうを圧迫して閉山に追い込むという過程が必ずしもなきにしもあらずだという仕組みになっている。そういう面では、石炭当局のほうには温情のある行政措置の面で、生かしていくということを前提にしていろいろな面で検討をしてもらいたいというふうに陳情を申し上げているわけでございまして、かりに終掘閉山以外の閉山政策スクラップのような閉山という場合には、私どもは徹底的にやはり抵抗しなければならぬ、こういうふうに覚悟と腹をきめている次第でございます。
  12. 細谷治嘉

    細谷委員 終わります。     —————————————
  13. 野田武夫

    野田委員長 この際、参考人の追加選任の件についておはかりいたします。  本日御出席参考人に追加いたしまして、日本石炭協会会長佐久洋君を参考人とするに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、佐久洋君を参考人とするに決しました。     —————————————
  15. 野田武夫

    野田委員長 質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕
  16. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 主として経営者の方にお尋ねいたしたいと思いますが、中小炭鉱といいますか日本石炭鉱業連合会の公述はきわめてはっきりしている。要するに五百円の補給金一本でいいからくれという。これはきわめて明快である。  そこで麻生参考人、昨日お話をしていただいたわけですけれども、一体石炭協会としてはどうすれば自信があるのか。少なくともこの程度いけば自信があるという最低基準を、ひとつこの際具体的にお話しを願いたい。  それから、時間の関係がありますから少し集約してお尋ねいたしたいと思いますが、いま国会でも五千二百万トン程度四十五年度において確保したい、五千五百万トンという出炭目標は旗をおろしたくない、こういうのがいわば国会の意思です。ところが今度の答申は五千万トン程度ということになって、この与える影響が、先ほど来お話がありましたように離山ムードをさらに再発するのではないか、こういうように言われておるわけです。そこで経営者のほうでは、いわば政策需要以外の需要の喚起ができないのかどうかですね。少なくともこの減少を防ぐことができないかどうか。昭和三十九年と四十年度の産業別の需要状況を見ましても、麻生さん関係されておるセメントでも、一年間に三六%も減っているのです。それから繊維化学工業でも三五%も減っているのですね。そういたしますと、このたびの答申が述べておりますのは、二千三百万トン、九電力の引き取りをいわば要請をしておる。それから電発五基を要請をしておりますから、少なくとも一基が六十五万トン程度といたしましても三百二十五万トン、それで電力関係で低品位炭等を別にいたしましても二千六百二十五万トンが大体一般炭で政策需要になっておる。それから原料炭が鉄鋼だけこれに書いておりますが千百万トン、その他ガス、コークスありますけれども、これらを入れますと政策需要だけでも三千七百二十五万トン程度が確保されておるわけです。そこであと千二百万トン程度、しかもガス、コークスを入れてどうしてできないか。これは五千万トンとすれば、五千万トンのところですが、ですから千四百万トン程度がんばれば私は五千二百万トンというのは不可能でないと思うのですよ。そこで、特に政府にたよるだけでなくて、政策需要以外の減少を食いとめる方法を業界として手が打てないのかどうか。あるいは、こういう方法を政府がやってくれればそれがとまるのだ——いま論争になっておるのは五千五百万トンの目標でありますけれども現実は四十五年五千二百万トンという数字ですから、そうするとこの程度の数字は私は減少を防ぎ得ないことはないと思うわけです。これはいまよりもよけい使ってくれというわけじゃないのですから、いまの想定しておる減少を何とかとどめてくれというのですから、これは何とか方法がないかどうか。麻生さん自身が関係されております電力会社でも、ずっと前から、電気自動車に深夜蓄電しておけば昼は動く、深夜の電力は安いのだと宣伝しておる。いろいろな器具を宣伝した。ガス会社も電気会社に負けないように需要喚起をやっているわけですね。これは一社ではできないでしょうけれども、日本のどこの協会にいっても、個々の会社を別とすれば、石炭をこうしてたけば非常にいいんですなんという広告をしているところは一つもない。ですから、この政策需要以外の減少を防ぐ方法がないかどうか。それには、私は、政府も補助をしてもいいと思うのです。このことをどうお考えになっておるか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。  それから、先ほどありましたが、離山ムードと関連をいたしまして、幾ら閉山になるかわかりませんけれども、この閉山が四十二年度に集中してまいりますと、昭和三十七年、八年度にすでに苦い経験をなめましたように、せっかく五千五百万トンの需要の確保を約束してもらっても、実際は五千百万トン程度しか出炭を果たすことができなかった。そこで百五十万トンもの豪州からの弱粘を十カ年契約ということで入れざるを得なくなった。この百五十万トンが現在非常な大きなウエートを占めて、ネックになっておるわけなんです。ですから、そういうことが再び起こる可能性が十分ありますが、これに対して業界のほうはどういうような態度でいかれるのか。業界としては手がないとおっしゃるのか。これらをあわせてお聞かせ願いたいと思います。  さらに流通機構の問題について、今後における産炭地構造が変わります。関西の市場にかなり北海道炭を入れなきゃならぬ情勢になるかもしらぬ。あるいは、いままで九州炭が関東に来ておるのをチェックしなければならぬかもしれない。一体業界自体でできるかどうか。関東のほうは、どちらかといえば手取りが高い、関西のほうは手取りが低い、こういう問題もある。山の勢いはどちらかといえば九州が悪い。こういう問題。さらに最近の鉄鋼の進出状態を見ると、瀬戸内に集中をしておる。こういう状態の中で、流通機構についてはどういう考え方を持っておられるか。これらをお尋ねいたしたいと思います。麻生さんでも、あるいは佐久さんでもよろしいですからお答え願いたい。
  17. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 いまの御質問にお答えをいたしますが、一体どのくらい来たらいいか、ずばり言えというお話でございますが、きのうもお話し申し上げましたように、この千億の分割で肩がわりをした。あるいは利子補給という問題とからんでおりますが、きのうも申し上げましたように、今度の案は、何と申しますか、抜本策の骨格だということでございます。そこで、骨格ができまして、これにどういうふうに肉づけできるかということは、いま具体的に私どもはっきりよくわかっておらないわけでございますが、これから政府なり、また国会の皆さま方でこの肉づけについていろいろとお考えいただけるんだと思います。私どもとしては、千億の過去のものは返すということになりますと、帳面上は一応黒字になった形をとりますが、その金は返すことになりますから、元本を返す分くらいまた拝借しなければ経営はやれないという形でございます。  私ども考えておりますのは、ずばり申し上げますと、約二百円程度の金額を、補給金とは申しません、どういう形式か存じませんが、前向きの姿勢における肉づけの中に入れていただきましたら、マクロの話でございますが、大体にやれていくんではないか、こういうふうに考えております。  それからさっきの五千万トンのお話。政策需要が三千七百万トン程度あるので、あとは皆さんの努力でやったらいいじゃないかというお話でございますが、この政策需要というものができましたときから、コマーシャルベースでの商売ということは大部分離れている形でございます。これで残りました千万トン程度のものというのは、北海道のハウスコール、北陸方面のハウスコール、あとは北海道、九州、地元でたく石炭の残っている形だと思います。九州でもこの前まではよかったのでございますが、昨年の値を戻しました関係から申しますと、九州電力でも場所によっては油がいいというようなことでございます。そういう政策需要のところにはバックペイがあって、幾らか石炭代は安くなっておるわけでございます。残りました千百万トンについては、高いままの値段で買っていただくわけでございますので、いまのままでこれを維持する、もっとふやすというわけにはまいりません。年々二百万トンくらい減ってまいると思いますが、こういうものを食いとめるということは、油の価格が現状におかれてはなかなかむずかしいのではないか、こういうふうに思います。先ほど、何か打つ手はないかとおっしゃいましたが、油との値差の問題さえ片づけばある程度需要はつなげていけるのではないか、こういうふうに思っております。  それから、この前の第一次調査団後の離山ムードというようなもので、非常に大きなマイナス、出炭減を来たした、今度もそういうことが起こりはしないかというお話でございますが、これも先ほどの第一の御質問と関連しておると思います。経営がみんな何とかやれるのだということになれば、みんなそう一生懸命スクラップすることはないわけでございますから、これとの関連によって、これがまずくいけばやはり御心配の点が起こりはしないかという心配はいたしますが、そういうことのないように、御質問になりました点を皆さまで十分お考えいただけるものだという前提をおきますと、こういうことは起こらないで済むのではないか、こういうふうに思っております。  それから流通機構の問題、これは非常にむずかしい問題でございます。もう昔から——昔からと申しますか、私も三十何年やっておりますが、すべてのビルドは北海道にやってまいりまして、戦争中資材の足りないときも北海道にウエートを置くということでずっとまいりまして、いま、筑豊と北海道のウェートは戦争前とは逆に変わっております。ところが、先ほど多賀谷委員おっしゃるとおり、需要地は西のほうにだんだんふえてきている形でございます。これは、大きな問題は原料炭にあると思います。原料炭のほうもやはり多く増産していくのは北海道でございますから、これを九州に持ってこざるを得ない。こういうふうに、九州というか、瀬戸内に持ってこざるを得ないということは御指摘のとおりでございます。これをいますぐどうするという案を私は持っておるわけではございません。業界としては、やはりわれわれみんなで話し合って交錯輸送をやめるという形、場合によっては、さっきお話しの場所に持ってくれば手取りが悪くなるという問題がございますが、こういうものについても、ただ各社各様でなくて、われわれでグループをつくってでも、円満に流れるように、お互いの、どこに売ったから、ここに売ったからという、損得のないようなやり方をしていかなければいけないのだというふうに考えております。
  18. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 御答弁の中で、とにかく前向き資金として二百円、これは補給金という形だけにとらわれることはないとおっしゃいましたから、われわれ政策を立てる上でわりあいはっきりしてまいりました。そこで、政策需要以外の減少についてはもう手がないのだとおっしゃるけれども、原料炭千百万トンのほかにガス、コークスで三百万トンといたしますと千四百万トン、あとは暖房用炭を四百五十万トン程度と見ると、運輸、一般産業その他を入れて、わずか四百五十万トン程度ですよ。それを二百万トン伸ばして六百万トンにすれば五千二百万トンになるわけですからね。ですから、これは業界も考えなければならぬですが、石炭会社は、やはり現実に油を使ってセメントをやったりしているわけです。立地条件で、石炭会社だからどうしても石炭をたけというわけにもいかないでしょうけれども、北海道でも九州でももう少し石炭を守る運動を起こせば——炭鉱の社宅でも実際プロパンを使ったりしておる。それは現実ですけれども、しかし、私は、運動を起こせば、二百万トン程度の喚起というものはできるのではないか。そのことがまた労働者や一般の経営者、あるいは中小企業の人々に与える影響が非常に大きいとするならば、このぐらい私は何とかしてやる気魄を持ってやれないことはないんじゃないか。ただ、そのことを全部電力と鉄鋼にたよると、なかなか限度がありますから、経営者みずから、あるいは地域あるいは自治体、さらに政府も応援をしてやる必要があるのではないか、こういうように考えるわけです。  そこで、続いて質問いたしますけれども、いまの労働条件を率直に見まして、経営者として一体どういうようにお考えになっておるかという点。それから次に資金繰りの点ですが、本年度の資金繰りはどういうふうになっており、一体どういうふうにして盆を越そうとしておるのですか。それから市中銀行はどういうようにこの答申を見ておるでしょうか。これはひとつ中小炭鉱のほうにも答えていただきたいと思います。  さらに、今後のコストアップが予想されるものは、一体どういうものがあるか、それはどの程度のものであるか。たとえば運賃問題であるとか、あるいはいま政府が特別年金経営者が持てというならば、一体それはどうなのか、あるいは事業団における納付金の増額、その他ベースアップがあるでしょう。一体どのくらいアップになるか。それを生産を上げて吸収するということは別にして、一体いまの現状でどのくらいアップになるか。  それから、鉱害復旧には一体自信があるのかどうか、率直に。筑豊炭鉱で六百数十億すでに既成鉱害がある。四十五年度までには八百数十億になると言われておる。これは全国の数字ですが、一体自信があるかどうか。  それから、中小炭鉱の代表者の籾井さんにお尋ねしたいのですが、一体今度の肩がわり一千億は、中小にとってどの程度の利益になるのですか、これを具体的にお示し願いたいと思います。
  19. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 現在の労働条件をどう考えているかということ、これはある程度御了解いただきたいのですが、私個人としてでよろしゅうございますか、協会長としては非常に言いにことでございますので……。  私は決していい状態とは思っておりません。きのうもお話が出ましたように、各国のあれを見ましても、最上位にあるのが坑内夫の賃金でございます。きのうのお話ですと、坑外夫も坑内夫も一緒のようでございますが、私は、坑内夫だけを考えますと、坑内夫の賃金は、決して現在いい賃金とは思っておりません。何としてもこれは諸外国並みに、最優地位に坑内夫というものはあるべきだ、こういうふうに思っておるのが私の考えでございます。  それから、お盆をどう越すかというお話でございましたが、なかなかみなたいへんな金繰りでございますが、これは各社各様いろいろあると思います。しかし、大手十七社の中でいま一番悪いのは私のところかもしれません。私のところも全額払えませんし、よそ並みのボーナスはとうとう払えないで、組合に了解を得ましたが、その金額は何とか払いたい、こういうふうにして、いま資金繰りをいたしております。私のところがそういうふうになりますから、よそさまもいろいろな無理はあるかと思いますが、大体何とかおやれになるんじゃないかと考えております。  それから、今度の見方を金融筋はどう見るかということでございます。これもいろいろ見方はあるかもしれないのでございますが、私どもの聞いている範囲では、きのうも申し上げましたが、一つの金が二重に使ってあるということで、将来これが終わったときに、今後やれていくという見通しは決してない。この補給金と利子補給のなくなったときには、やはり四、五百円の穴があくということでございますので、平常状態の経営がやれぬいまの状態でございます。先ほど申し上げたようなファクターが入らない、いま数字が出ているだけのもので銀行は見ております。このことは、やはりコマーシャル・ベースでなかなか貸していける相手ではない、こういう考え方でいるのではないか、こういうふうに思います。  それから、コストアップの要因、鉱害復旧についての問題につきましては、佐久参考人にお願いしたいと思います。
  20. 佐久洋

    ○佐久参考人 鉱害の問題ですが、お話しのように、現在の鉱害復旧制度というものは、有資力炭鉱の場合と無資力炭鉱の場合では、扱いが変わっております。無資力炭鉱はほとんどと申しますか、全額が国と地方公共団体で負担している。有資力炭鉱の場合には、そうはまいりませんので、やはり石炭側の負担というものは相当ございます。しかも、この鉱害復旧費用というものは年々金額が非常に多くなりまして、それに対して政府の資金による補助というものはございますが、要る全額に対する何%という補助のしかたをいたしておりません。ある一定限度の金額の頭打ちがございます。その頭打ちの何%という補助をしておりますから、残る費用というものは結局炭鉱負担しなくちゃならないということになりまして、お話のように、見方によっては四百数十億あるいは六百数十億、あるいは被害者側から言わせるならば、一千億に近い鉱害の量が現在残存している。これを早急に復旧するということは、端的に申しまして、経営者だけの力ではとうていできない、私はこういうふうに思います。一面土地の造成なりあるいは民生の安定という点から申しまして、これを放任するわけにまいりませんから、やはりこの点については国が相当の力を貸しませんと、鉱害の復旧は進まないのじゃないか、こういうふうに思います。  それから、今後コストアップの要因というものは非常にむずかしい問題でございまして、一般資材の値上がりがどの程度になるのか、あるいは鉄道運賃——現在過去の値上がり分は延納という制度で国鉄に対する借金という形で残っておりますが、これから先国鉄が経営するためにいつどの程度の運賃値上げを考えなくちゃならないのか、そういう点も私よく知りません。ただ、この答申検討過程で、労賃の値上がり——労賃と申しますか、要するに、所得のベースアップというものを大体七%というふうに想定して、いろいろの政策が組まれておる。その政策が実現されれば、企業は安定するであろう、こういう見通しであります。それ以上にこれは労使関係できまる問題でございますけれども、ベースアップというものが激しくなれば、それだけまた企業が苦しくなる、こういう結果になろうと思います。  なお、先ほど御質問がございました一般炭の需要が年々減っていく、それを増さないにしても、防ぐ方法は、何か知慮をしぼったらどうか。これはまことにごもっともなお話で、私どもも、工場で使う一般炭についてはなかなか防ぎにくい。というのは、目の前に安い油というものがぶら下がっておりますので、それと価格競争ができない立場にある石炭が、消費を維持するというのはきわめてむずかしいのですが、せめて暖房炭だけでも消費を減らさないようにしたい。それには結局値段の差は、産炭地であれば、そう大きな違いはないのでありますから、そのほかのデメリットを解消すればいいわけです。つまり燃した場合に、非常に黒い煙が出るとか、あるいは燃した灰がらを始末するのに困るとか、あるいは燃す場合に、部屋の中がよごれるとか、そういった問題をどう解決したらいいかという研究をいろいろこれは燃す器具の製造者とも相談いたしまして、煙はもうほとんどまっ白で黒い煙など出ない、燃し方についても二段の燃焼装置をやって、完全燃焼をするというような器具をいろいろ研究いたして、昨年、一昨年、これは東京でもいたしましたが、東北、北海道方面で展示会などを催して、せめて暖房炭だけでも消費が減らないようにという努力をいたしております。もちろんこれで十分というわけにはまいりませんので、今度は何かそういう常時宣伝に当たるようなセンターをひとつつくろうかということを考えております。機構としては北海道に一つそういうものをつくりましたが、これをもっと積極化していきたいというふうに考えております。
  21. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 さっき御質問のございました資金繰りが今年度はどうかということでございますが、今度の策が四十二年度からいろいろ予算化しますので、そのときにいろいろ問題がございますが、それにまいりますまでが御承知のように一番たいへんでございます。ことしの資金繰りは、私どもの計算で約三百億ぐらいのショートをいまいたしておりますが、これをいろいろ考えましてやりくりをいたします。やりくりいたすということは、来年に押しやるということではございますが、それをやりましてもやはり二百億近く足りません。これをこれから準備しなければいけないわけでございますが、これのできるできないの見通し、先ほど銀行がどう見ているかというお話もございましたが、第一の御質問になった、どうしたらいいかということとやはり関連いたします。今後政府なり国会でお考えいただくこの肉づけというものがどうなるかという具体的なものがある程度銀行筋にわからないと非常にむずかしいことになるのじゃないか。現在私どもが、こうなるだろう、ああなるだろうと言ったのでは信用ないわけでございますので、それはこういうふうに大体するのだということが政府のほうなり何なりから銀行筋にわかれば、私は安心して、来年からはもちろんでありますが、来年までつなぐということをしてくれるだろうと思いますが、先ほど申し上げますように、現在出ております数字だけを見たのでは、銀行としては、非常にあぶない企業だ、こういうふうに思っているので、ことしの資金繰りも非常にやりにくい、むずかしい、こういうふうにすべて第一の御質問の問題とからんでくる問題だ。しかし、私どもとしてはこれを政府なり皆さんにお願いをいたして何とかつないでいくようにこれから努力しなくちゃいかぬ、こういうふうに思っております。
  22. 籾井糺

    籾井参考人 肩がわりの効果について中小はどうかというお尋ねでございますが、私どもも非常にこの問題については業界内でいろいろ検討を加えておりますけれども政府の条件が示されませんのでわかりませんが、そういう条件を入れずに考えた場合に大体概略とらえたものがあります。きのうも百円と申し上げましたが、大体その程度、それは第二会社を含めまして百円程度となります。準中小だけでいきますと百五十円程度じゃないかというような気がいたしておるわけです。  そこで私どもが一番心配しておるのは、肩がわりについて鉱業権一本であればこれは処分、換価するというようなことはできませんので、しかもそれは非常に経営が悪ければ、金融機関としても肩がわりについてはいかに条件が悪くても非常に好んで肩がわりをするでありましょう。しかし、中小の場合はやはりいろいろな二重、三重の担保を入れ、それが非常に換金性の早いものだけで貸し付けがなされておりまして、たとえそれを強行しても、たとえば個人のもの、親戚のもの、その他の連帯保証のものまで開放するということでなくして、そういうものはやはり銀行が強行して取り立てする法律上の権利はあるわけですから、そういうものを一体どうするのか。しかも一切そういうものにかかわりなく肩がわりしなければいかぬというような強い措置が出れば、これはもう何をかいわんやでございますけれども、どうも特別委員会の大臣とのやりとりのニュアンスから受けた感じは、これは中小にはほとんど一銭も来ないんじゃないかというような感じを深くしております。  なお、金融機関からこのことについては答申が出まして直ちに新聞に出ておりますが、その一部を読み上げますと、つまり、金融機関がこれまで石炭企業に貸していた金を政府肩がわりして返してくれるから、これ幸いとばかり石炭企業への融資はストップということになるわけだということを銀行の頭取が言っているのです。それからつぶれる山に融資をする市中金融機関はないですよということを言っておりますし、特にそういうずばりとしたことをもう率直に言っております。これは大手のことを言っているのでなくして、中小のいわゆる肩がわりについての態度であるわけです。ですから、そういうことは今後私どもが非常に心配をしておる大きな重要問題でございますが、政府からそういう具体的な案が出ましたならばまたはっきりした効果の計算もできると思います。  それからこれに関連してでございますけれども、中小としては、先ほども申し上げましたように、これは第二会社までは話し合いは進めておりませんけれども、準中小だけは五百円の安定補給金をしていただければ、買い上げの条件だけを残してあとは一切返上してもけっこうだという態度を持っておるのであります。  以上でございます。
  23. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほどのコストアップの要因ですが、賃金のお話しかなかったわけですけれども、延納分をやはりこれは国鉄は取るつもりですね。ですからそれが来年度どうなるのか。それから今度は事業団の納付金も上がるわけでしょう。それからいま特別年金経営者負担だ。われわれに何を言っているんだ、それは政府が持つべきものじゃないかと言っているのですけれども、それは一体どのぐらいを言っているのか。これらをわかりましたらお聞かせ願いたい。
  24. 佐久洋

    ○佐久参考人 先ほど申し落としましてまことに恐縮でございますが、鉄道の運賃の延納分は、石炭局が鉱業審議会の審査をするにあたって各会社から将来の見通しをとる場合に、その延納分は支払うという前提で収支計算をいたしております。それからただいまの特別年金あるいは合理化事業団の負担増、これは合理化事業団のほうはトン当たり二十円、三十円、いろいろありますが、大体二十円見当を見ておるようであります。それから特別年金の掛け金ですか、これもトン当たり三十八円ぐらいを計算しまして、そういうものを負担した場合に収支がどう変更されるかという計算をして、四十二年以降四十五年度までにトン当たり五百円ぐらいの赤字が出るであろうという計算をされておると聞いております。したがってその場合にそれは入っておるわけです。
  25. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 滝井義高君。
  26. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっとわかりやすいように一つ一つ聞いていきたいのですが、さいぜん麻生さんから多賀谷君に、いわゆる安定をするためには二百円程度あれば安定をするというお話があったのですが、この答申で千億の肩がわり安定補給金百円出しているのですが、そのほかに二百円程度上積みをしてもらえば大手としては大体安定をする、こういう意味なんでしょうか。
  27. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 いまの滝井委員の御質問のとおりの考え方でございます。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。  それではちょっとお尋ねするわけですが、この答申を実施する場合に、肩がわりの千億と百円の安定補給金とがどういうように各山にいくかというと、まず千億の肩がわり分だけしかいかないグループが一つできますね。それから千億の肩がわり分と百円の安定補給金が組みになっていく分が一つできますね。それからいま一つのグループは百円だけしかいかない、こういう三つのグループに分かれるような感じがするわけです。これはまだ政府も詰めておるわけじゃないが、これを読んだり、いろいろいままでの質疑応答の過程からどうもそういう感じがするわけです。そうしますと、これは麻生さんのほうであれだったら佐久さんでもかまいませんが、大手としては、そういう三つのグループを分けたら、この答申から見て、もしわかっておれば御説明願いたいのですが、一体どういう程度の分布になるだろうか。千億の肩がわりだけいく炭鉱というものの数はどの程度で、千億と百円をもらう分がどの程度で、百円の安定だけがいくのが一体どのグループか。こうやってみると、大体炭鉱の運命がわかってくるのですがね。
  29. 佐久洋

    ○佐久参考人 たいへん申しわけないのですが、私どものほうでまだその点はよくわかっておりません。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 実は巷間、新聞等にも出ておるように、千億の金は九割が大手にいくだろう、そのうち五割は三井、三菱、住友、北炭等がとってしまうだろうということは、もう経済新聞その他に書かれている。だからおそらく石炭協会としては、やはり千億というものが相当炭鉱の運命を決定するの、だから、とらぬタヌキの皮算用というわけでもない、だろうけれども、ある程度やはり山別にお考えになっておると思うのです。というのが、たとえば石炭鉱業審議会で、千億の肩がわり資金というものは、百二十億ないし百三十億くらいは四十二年度に要りますということは討議されておるわけですね。その討議するについては各山から再建計画というものをお出しになった。その資料に基づいて討議していると思うのです。そうしますと、千億のいく山というのはおよそわからなければいかぬと思うのです。そうして千億がいってもなお生きられない山に百円がいくわけですから、これはおよそのところでけっこうなんですが、大ざっぱに言ったら、この程度の山が千億だけをもらう、この程度の山は補給金、千億プラス補給金がくる山ではないかということは全然わからないですか。
  31. 佐久洋

    ○佐久参考人 そういう資料というのは石炭局がとった資料でございまして、したがいまして詳細なことは私どもわかりませんし、現在その資料も持っておりませんので、はっきりしたことはわかりません。それから、一千億の肩がわりと申しましても、その一千億というものは一体何をとるかということで変わってくるわけです。たとえば新聞で書いてあるというのは、おそらく整理炭鉱閉山に要した整理資金ですね。それだけを見て、それが各社別にはっきりします。それのたな上げをするという場合には、これは各社から出た数字がそのままいくわけですから……。しかしその一千億というものは、整理資金だけをとるかどうかということもきまっていないわけです。これからきめられる問題なんです。したがいまして、一千億のうち一体どれだけのものがどういう会社にいくかと言われましてもちょっと私どもいまお答えがしにくい次第でございます。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 結局政府というのは、こういう答申をおつくりになるときには、あなた方から出された計画を基礎にしておつくりになっておると思うのです。それからあなた方の代表も石炭鉱業審議会委員にはお入りになっておると思うのです。そういう委員にもそういう資料を全然示さずに、何人かの人だけが出した答申ということになるのですか。
  33. 佐久洋

    ○佐久参考人 もちろん石炭側から石炭鉱業審議会委員というものがございますが、どういう詳細な資料が出されてどういう議論がされたかということは、これはもっぱら政策懇談会というところで行なわれまして、最後に石炭鉱業審議会で文章に示された答申というものを審議したわけでございます。その文章をつくる過程では政策懇談会がもっぱら論議をしておる。その中には石炭経営者は入っておりません。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも世にもふしぎなことが行なわれるもので、その審議会の答申が出たら、審議会の委員石炭協会から出られた方は、当然自分のほうの協会の山から出た再建計画その他を見て、そして一体こういう政策が出ればどの程度の山が生きどの程度の山が死ぬかということの検算がわかってないと、委員としての資格を果たしたことにはならぬわけですね。実は私この前も言ったのです。この答申というものの本質はどうも、審議会というベールをかぶっておるけれども、実質的には通産省と大蔵省と何人かの人たちがつくってしまって、あとの者はみんなつんぼさじきに置かれておったのじゃないか、したがって、この答申というものは普通の諮問機関から出る答申とは違う感じがするということをわれわれは指摘したのですが、いまのおことばでそれがますますはっきりしてきたわけです。いわば関係者というものがたな上げされておって、そしてどこかでだれかがつくっておる。どこかで、だれかがつくったということになると、この答申というものはいわば偏愛の答申とどこかで書いておったのですが、偏愛はどこをしたかというと銀行だけを偏愛した。籾井さんも言われておったけれども石炭企業の意向というものが十分反映されてないということがいまのおことばからもわかったのですが、そうすると、いま参考人の方に来ていただいても、いまのようなこまかい質問をしても、いやどうもわしらはつんぼさじきでということではしかたがないと思うのです。これは私は、協会なり組合もそうですか、やはり審議会のあり方を改めてもらう必要があるのじゃないかという感じがするんですよ。そうしないと、これは何人かの人がどこかでつくったということでは、ベールはかぶっておるけれども、実質は権威あるものにはならないわけですね。  それから籾井さんにお尋ねするのですが、いま私が申し上げましたように、肩がわり肩がわりプラス補給金補給金だけ、こういうことになるわけです。昨日籾井さんのおことばの中にあったと思うのですが、中小は六十億くらいしかこぬのじゃないかというような御答弁があったのです。千億のうちの六%そこそこしかこないことになるわけですね。中小の中で肩がわり補給金とをもらえそうな山というのはどの程度あるかというのを御検討になったことはありますか。というのは、肩がわりというのは十年以上の寿命がなければならぬという一つの大前提があるわけです。しかし補給金については、きのう質問をしてみたけれども、条件はまだはっきりしない。しかし肩がわりをもらえぬ山には一応補給金がくるという前提に立って肩がわりの六十億、あなたの言われる六十億をもらえる中小の山というのは一体どの程度あるだろうか。
  35. 籾井糺

    籾井参考人 いまのお尋ねについてですが、私ども、いろいろアウトサイダーの問題もありますので、正確なものはわかりませんが、要はやはりさっきのほんとうに受け取れるものがあるのかどうかということは、さっき申し上げたようなことで、ではどの炭鉱にどれだけというようなことになりますと、中小六十億といってもほとんど大型中小に限られて炭鉱数もきわめて少ないということであります。安定補給金については赤字炭鉱でなければやらぬというようなことでございますと、これはちょっと中小では問題がありますが、中小に限ってはその面は配慮するというお含みがあるということで私どもは受け取っておるわけですが、それのほかに安定補給金についてはやはり負担増がかかってくるわけですね。年金だとかあるいは買い上げの負担金二十円とかいっておられますが、利益があっても一銭ももらえぬということになりますと、負担だけふやしてそれはやらぬのだということにはならぬのじゃないか、私は安定補給金についてはそう理解しておるわけです。きわめて不明確ですが……。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 肩がわりなり、安定補給金のところについては、審議会等でも何人かの人だけで、他の人はどうもやられていないようですから、いずれわれわれのほうで少し掘り下げてまとめなければいかぬと思います。いま麻生さんの害われた二百円、それから籾井さんの言われた五百円。これは麻生さんのほうの二百円を百円に足しますと三百円になるわけですが、なお籾井さんのほうは二百円不足することになるわけです。そうしますと、この答申に見る限りにおいては、別に大手と中小との間に政策の鮮明な区別が出ていないわけです。しかし、いまはしなくても御両氏のお答えの中から、大手としては現在のこの政策にもう二百円程度何らかの名義で加えてもらえれば安定をする。籾井さんのほうはそれよりかなおもう二百円ですね。いわば四百円になるわけで、その違いがあるわけです。もし中小と大手とにそういう政策上の違いをやっても大手、中小の下位の門にトラブルが起こることはありませんか。たとえば二百円中小にふやしたから、当然同じ石炭を掘っておるのだから大手も二百円もらわなければいかぬというようなことで、内輪がもめるようなことはないのですか。大手と中小との間にそこに政策上の格差があっても、そういうことはお互いに山が生きていくの、だからやむを得ぬ、こういう形で融和的に推進できるものであるかどうか。
  37. 籾井糺

    籾井参考人 その点につきましては私どもはこう理解しております。中小では、安定補給金は別としまして坑道掘進費の助成とか、もろもろの助成が現実にわたりにくいということでありまして、いままでがそうでありましたし、一通りのものが政策の中にうたわれておりましても、それを受け取るだけの体質がないわけでして、それが非常に大きなハンディをつけられて、政策には一つも中小の差別はないとおっしゃるけれども、その実何もない。しかも大手ではどんどんそういう助成がされておって、しかも非常に急速にりっぱな設備がなされておるのです。それは結局今日になりますと、全部政府がただやるという金につながっておるのじゃないかということをも含めて、今後いかにいろんなものが出されても私どもの手にはなかなか渡りにくいので、そういうものよりももう五百円の安定補給金一本で、中小の体質に合った助成のしかたをしていただくことが、きわめて私は妥当な措置だと思いますし、それは大手の支障になるようなことはないと私は思います。以上でございます。
  38. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 私どもといたしましては、中小炭鉱がお困りになっておるならば、いかに補給がふえ、あれしょうとも、大手としては何も文句を言うと申しますか、うらやましがるということはないわけでございまして、私どもの申し上げた点を知っていただければ、私どもとしては自前でやっていける、こういうふうに思っております。
  39. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、肩がわり肩がわりプラス補給金補給金の三段階の政策がある。その三段階の政策の中で、さいぜん麻生さんは御自分の山のことを言われたが、他の山はともかくとして、おれのところはなかなか払えないのだ、そういうことになりますと、その山が十年以上の採炭能力があり、経理が悪ければ、その山の再建計画を見て、特別の政策というものを個々の山に対して出さなければならない場合が出てくるわけですね。大手には大手を救う政策を出さなければならないだろうし、こういう普遍的な答申のほかに特別の政策を必要とする場合が出てくると思います。中小には中小の特別の政策を出さなければならないかもしれないし、大手の苦しいところ、たとえば世にいう管理炭鉱には特別のてこ入れが、この答申以外に必要になってくる場合が出てくると思います。そういう政策でいまのような格差をおやりになるということについては別に異存はないわけですね。いわゆる個別政策というのですか……。
  40. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 今度の抜本策の趣旨から申しますと、できるだけそういう個別政策なしでやれるということが一番よいのじゃないか、全社がいけるとはまいりませんまでも、大部分の会社がいけるという策にしたほうがよいと思いますが、いろいろ財源その他の問題もあると伺っておりますので、いま滝井委員のおっしゃるような個別的なものも政府としてお考えになるということもやはり一つの行き方であり、業界としても第一の方法がない場合にはそういう方法も必要になるのじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  41. 滝井義高

    ○滝井委員 それから予算のことですが、今度重油関税の一割二分の中で一割を石炭政策に持っていく、そのワクは四十二年度五百億である。協会のほうではこの五百億というものについて、それに見合う支出というものは、大体常識的にいって、産炭地の公共事業以外は、大蔵大臣の言によれば、全部この五百億でまかなえます、こういうことになるわけですね。そうしますと、重油等を使わないために鉄鋼、電力等に相当の負担増対策も要る。ことしも五十四億要っている。来年はもっとやらなければならぬ。公害もふえるということになると、石炭プロパーの政策にしわがくるか、あるいはどちらかにしわがいくということで、内部の争いというものは厳に慎んで、石炭そのものを前進させる形をやらなければならないことになる。そうしますと五百億を内部で争わないとすると、五百億のワクをある程度拡大する以外にないわけです。この問題について何かよい方法を石炭協会としてお考えになったことがあるかどうか。
  42. 佐久洋

    ○佐久参考人 五百億をどういう、項目に使うかということはまだ未確定でありますから、具体的にどういう項目に幾らということはわかりませんが、お話しのように、いろいろな項目を石炭対策と称して五百億の財源の中に突っ込めば当然お互いに縮んでしまうか、あるいはある項目が満足されればそのほかの項目はまるで小さくなる、こういうことになります。私どもはやはり石炭企業再建というものに重点を置いて五百億の財源というものを使ってほしい、こういうことを考えております。  それでなお財源が足りない場合にどうするかというのですが、直接石炭再建と関係のないものについて一般会計の応援を求めるというようなことも一つでありましょうし、それから将来この原重油関税の収入というものがふえるといわれておりますから、それを五年なら五年の、平均で使うというような何か技術的な方法はないだろうか、もちろん私にはこうやればいいんだという知恵がございません。そういった方法はないだろうかという程度のところでとまっておるわけです。
  43. 滝井義高

    ○滝井委員 それから今度労働者側の委員にお尋ねしたいのですが、昨日山本さんも、それから重枝さんも松葉さんもみんな、特別年金退職金関係についてお話があったわけです。実は私も今度ある山に行きましたら、実はいま退職金の交渉を会社とやっておるんだけれども、特別年金制度が出たためにどうしても会社が退職金の話をまとめようとしない、こういうわけで、どうも困っております。特別年金というのは一体どういうことになるのですかという質問を受けたのです。私もそれちょっと気にかかっておりましたら、昨日お三人ともそういう退職金と特別年金との関係が出てきたわけです。しかもその特別年金が出れば事業主が全部その保険料を負担するんだから、当然これは退職金に影響する、あるいは退職金がなくなるんだ、減るんだというようなお話があったのですが、現実に具体的に経営者側から、すでにそういう交渉が、炭労においても全炭鉱においてもあるいは職員組合のほうにおいてもあるのでしょうか。
  44. 山本忠義

    山本参考人 現実にはございません。私どもの組織では、ことしの四月に退職金は一応協定しました。しかしこれはきわめて少ない金額ですから、またすぐこれは交渉しなければいかぬわけです。そういう場合に、言ったことは、非常に問題になるだろう、それから経営者のほうだってそういう考えがなきにしもあらずだ、こういう面を指摘したつもりでございます。
  45. 重枝琢巳

    重枝参考人 私たち年金については退職金との相殺については考えておりません。昨日そういうことを私申し述べなかったわけですが、これは純然たる特別の年金として設定をしてもらいたい、こういうことを言っているわけです。ただ坑内外を通して特別の年金制をつくる場合に、厚生年金との関連において、いわゆる調整年金というような方式をすることがいいという結論になるならば、ある程度労働者側の掛け金における負担というものは十分考慮してよろしい、こういう基本的な態度で臨んでおるわけです。現実にもまたそういうようなケースはありません。
  46. 松葉幸生

    松葉参考人 私の関係でも、現在具体的に提案されておるというのはございません。ただ私、昨日申し上げましたのは、収支改善という中心課題自体が不十分だという状態で、今後不安定経営を続けていくという状態の中では、考えられる現象としては、まず一つ退職金と振りかえるという意図を当然経営者としては持たざるを得ないかっこうに追い込まれるのじゃないかという問題が出てくる。それから強制加入というかっこうを提起しておりますけれども、特に中小の場合には、はなはだしいところは退職金協定がないというところすらもあるわけですね。あるところにおきましては、年金に関する負担自体が納付できないという状態すら、それこそ末期症状の場合には出てくると思うのです。現在、事業団の納付金すら出せない、未納という状態のところがたくさんあるわけですから、いままでは事業団の納付金は閉山交付金の中から先取りされて、結局残ったやつがあの三、二、五というような形で配分される、こういうかっこうになりますから、断末魔の企業では未払い賃金もある、しかもそういうやつが差っ引かれるというかっこうになりますと、年金では非常に恩典を受けるようなかっこうになりながら、究極的には賃金債権からカットをされるという状態すら出かねないのであります。そうならないという保証は一体どこにあるのかという点から、これは当然国の負担という形にしてやっていただかないと、そういう矛盾が出てくる。それから強制的な統制ということも、事実問題としてできなくなるのじゃないか。そういう点から、退職金との関連なり納付金との関係を申し上げたわけであります。
  47. 滝井義高

    ○滝井委員 これは麻生さんなり籾井さんに御質問するわけですが、われわれの理解では、この特別年金制度というのは、いまの厚生年金とは全く別に、大手、中小の経営者が集まってそこに特別年金の基金というものをつくって、そうしてその基金には事業主が保険料を払い込む、しかしその保険料については百円の中から出るのかどうかわかりませんけれども、まだ確めておりませんが、この前の答弁では、トン当たり三十円程度というものは、これはあくまでも事業主負担という形をとる、それを事業主負担にしておかないと、他の産業に同じような影響が及んできて、どこもここもみんな国が出せということではたいへんだ、いま厚生年金の定額部分とそれから報酬比例部分については調整年金をつくっていいことになっておりますが、これは調整年金とは全く別のものになるわけで、したがって、当然これは事業主が出す形をとるけれども、その分は政策費として出すと私は理解しているわけです。したがって、それが出るから今度それが退職金と結合するということになれば、炭鉱に働く労働者の皆さんには魅力にならぬわけですね。何だ、これは退職金肩がわりでこんなものをしてもろうたんでは、こうなるわけです。それはやはり経営者側からも周知をしていただかぬと、この政策の中でいま労働者を足どめしようという魅力はこれ一つしかない。実は案外こういうものはすみやかに末端の働いている坑内の労働者に浸透するなと思ったのは、私は今度くにに帰ってみました。そうしたら、一人の労働者が私のところにたずねてきたんです。先生、私は十二年何カ月働いた、何か特別加算がついて十二年何カ月で私は坑内夫の年金をもらうのだ、ところが今度新聞を見たら特別年金がつくというから、私はもう少し坑内で働こうと思う、先生、一体もう何年働いたらわしその特別年金がもらえるのだと言って、私をわざわざたずねてきたんですよ。なるほど、やはりこういう政策というのはこんなに早く坑内に働いている労働者の皆さんに浸透するかなと思って実は驚いたんです。したがって、いま言うように、今度経営者側のほうでこれは退職金とかね合いになって退職金を減らすのだということになると、魅力は全くなくなると思うのです。当然われわれも事業主の負担でないという方向努力するし、麻生さんなり籾井さんのほうもそれで努力をしていただく。ただしこれは退職金とはかね合いとしない、こういう理解をしていただきたいと私は思うのですが、その点はどうですか。もしその部分を政府が見るということになれば、そういうことをやらないのだという御言明ができるでしょうか。
  48. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 この年金保険というのは、いまの滝井委員のおっしゃったとおりの趣旨でできたものでございます。山本さんなりが心配されたのは、経営者がいま出ている数字だけの範囲内においては経営が苦しいんじゃないか、そうするとこれを退職金とすりかえるのじゃないか、こういう一つの御心配でああいう御発言があったのだと思いますが、先ほど佐久さんが申し上げましたように、今度の審議会でのコスト計算その他の中には全部これが入ってやれるのだというふうな計算になっておるようでございます。先ほど申し上げた今後の肉づけというものができますならば、経営者としては何も退職金とすりかえようというようなことは考えておりません。
  49. 籾井糺

    籾井参考人 いまの年金制度のことについて中小炭鉱としてお答えいたしますが、私ども退職金のかわりにそういうものが新しく設けられたということには理解しておりません。   〔藏内委員長代理退席、大坪委員長代理着席〕 あくまでもそれは別個の、いわゆる労働者の老後の安定をはかるために設けられたものであるし、それは別個に考えなければならぬということに理解しております。いまお話しの中で、何か退職金と差っ引くのだというような声が出ておるということを私も初めて聞くわけですが、私どもも山元に帰りましたところが、組合の幹部から盛んに矢つぎばやにこの年金制度のことについて問われたわけですが、それほどにこの問題は非常に労働者の利益になると、具体的なものはわかっておりませんけれども考えますし、従業員も期待しておりますので、できるだけ早くこの内容についてお示しをいただければ非常に従業員の安定に寄与するのじゃないかと思います。  それから負担金の問題については、私どもも、非常な大きな負担金を課せられるということは、これはいまより利益が上がるような措置があって初めて負担ができるので、赤字ではあくまでも、皆さんが御心配になっているように払えないわけですから、いまの社会保険料にしても結局は赤字になればそういうところにしわが寄っているわけで、やはり未納になるということですから、基本的にはやはり利益を認めていただかないと、そういうものの負担能力はございません。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 あと二点で終わりますが、一つは、この炭鉱閉山する場合に新方式、いわゆる新しい整理交付金を交付する方式では、鉱区を抹消すればそれでいいことになるわけですね。きのう多賀谷君も言っておりましたが、鉱区を抹消したら今度はそのあとに粘土の採掘が出てどうもならぬようになった、こう言っておりますが、鉱区を抹消すればいいわけです。ところが前の旧方式では、鉱区を合理化事業団が買い上げて、同時に土地も建物も巻きも、坑外設備も、みんな一緒に買い上げたわけです。そのほうが労働者の未払い賃金を処理する上においても、あるいは鉱害を処理する上においても、債権者も、全部一括して買い上げてもらうから、鉱業権者のほうもそう損はないと思うのです。最近は新方式をとっておりますが、旧方式は生きているわけです、旧方式もやるということに通産大臣なり石炭局長は言明をしているわけです。今後山を閉山する場合にこの旧方式をとることの可否について御検討になったことがあるか。
  51. 佐久洋

    ○佐久参考人 経営者側として旧方式がいいか新方式がいいかという議論を直接取り上げて検討したことはございません。ただ旧方式の場合には、私合理化事業団の実は監事もさせられておりますが、そのあとの処理に、手続あるいは買い上げた物件の管理そういう点に非常な繁雑さがございまして、これを改めるために新方式に移った。新方式のために特に悪いという点があるようにも私いま感じておりません。
  52. 滝井義高

    ○滝井委員 それではその問題はそれでけっこうです。そうしますと、新方式になりますと、御存じのとおりあとに炭住も残れば、炭鉱の広い土地も残ってしまう、それから炭住には現実に働いていらっしゃった方が住むことになるわけです。そこで山がつぶれた場合に、いまの政府の雇用政策というのは、できるだけもとおった炭鉱を追っぱらって、そして空気の悪い、物価の高い、過密の、東京とか大阪とか名古屋とかにみんな移住させるわけですね。そういう政策をとっているわけです。この政策というのは、結局結論的にいうと間違っておった。うまくいかなかったわけです。極端な言い方をすれば五十点ぐらいだったと思うのです。及第点をあげられない政策だったわけです。今度こういう答申をやって、またそれをやれば、なおたいへんなことになる。同時にもう炭鉱労働者年齢が四十をこえておりますから前みたいにはいかないことになるわけです。麻生さんのそばの飯塚の総合職業訓練所をごらんになっても、職業訓練所に入っていらっしゃる方は、去年までは三十五、六歳、ことしはもう四十四歳とか五歳です。非常に老齢化してきた。そうしますと、いま産炭地振興で政府が中核企業を誘致するとかなんとかいろいろおっしゃって、ばく大な金を入れておりますけれども、結局くる企業というのは、さいぜん福岡県の横田さんから御陳情がありましたが、百十社ぐらいきて七千人ぐらい来たけれども炭鉱離職者は千人かそこらだ。しかも雇用されておるのはほとんど全部が女子で、賃金が一万か一万二千円だ、家計補助的なもので、一家の支柱をささえる賃金はもらっていない。そこで炭鉱の住宅があり、広い土地があり、そこに働き手がいらっしゃるのだから、今度は麻生さんなら麻生さんが炭鉱をやめられるときには、政府が今度は麻生さんに金を出して、その土地と建物と労働者を使う企業をその炭鉱でやらせる政策をとらしたらどうだ。そうしますと地域経済が陥没することもないし、離職者も麻生さんのところへ来て、麻生さんあなたの山はつぶれるからと文句も言わない。ただそのときに有資力だというので負担が重いというならば、その分の負担の軽減をして、麻生さんは逃げも隠れもせぬ、ここにおるぞ、飯塚に厳然とかまえておるぞ、ここに別な工場もやっておるぞ、心配要らぬぞと、こうなると地域の鉱害被害者も安定をするし、労働者も安定するし、全部安定するんですね。どうせ政府は金を出さなければならぬ。いまのままならば生活保護費を出し、それから離職金を出して、ばく大な金が要って、その金が一〇〇%有効でないわけです。それをもっと建設的な方向に、麻生さんにそこで事業をやっていただくという形に持っていくべきじゃないか、あるいは籾井さんでもかまわぬ、井宝炭鉱閉山するときには、籾井さんのところに金を出して、そして工場を建てたりいろいろやれる形にしてやる、どこもここも全部そうはいかないにしても、立地条件その他を考えていけるものはそういう形にしてやったほうがいいではないかという感じがするのです。いまのようにペンペン草をはやして長いこと炭住をそのまま放置して、最後は鶏小屋にしてしまうということではいかぬのじゃないか。筑豊の将来等を考えると、そういう方向に持っていくべきでないかという感じがするのですが、そういう点について、一体石炭協会なり中小の皆さんは考えたことがあるかどうかということですね。
  53. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 いまのお話、たいへんに私ども参考になりますし、興味のあることでございます。一つの、自分のところの例を申し上げますが、昨年やめました飯塚市の炭鉱、これは従業員も私と同じ二代目か三代目というもので離れたくないという。いま百五十軒ぐらいは全部従業員がそこへ住んでおります。それも内輪が苦しいからでございますが、それをみな買ってくれました。土地も買いますし、家も買ってくれました。そうしてそこに住んでおります。そういう状態でおりますので、いまのようなお話で、そこでひとつ仕事を興すということができれば、これは、私は飯塚生まれでございますが、飯塚のためにも人間が散らないということでよろしゅうございますし、それから従業員もそこで生まれて、小学校もそこで通い、そこで育った者たちでございますから、よそに動いていくよりか、そこで何か仕事があるということがあればたいへんけっこうだ、こういうふうに思います。残念ながら現在のところ炭鉱が苦しいためにそこで新しい仕事をするだけの資金余裕がないものですから、——土地は確かにまだまだございます。何か一つ誘い水があって融資の制度もできれば、仕事をし、その人たちの家族ぐるみで働ける、あまりむずかしくない仕事を考えたら、これは一つ産炭地振興、産炭地振興というのはほんとうを言うと旧産炭地振興、昔の炭鉱を掘ったところの振興だと思いますが、これには非常に役立つのじゃないか、こういうふうに思っております。
  54. 籾井糺

    籾井参考人 いまの炭鉱の買い上げ方式でございますが、旧方式で今度は買いたいというような希望があるというように受け取りましたが、これはそれが悪いというのではございませんけれども、旧方式になりますと、いまの二千円という評価が全然変わってくるわけですね。二千円に引き上げたから旧方式だとおっしゃるならば、これは買い上げ単価が上がったことにならぬわけですね。ですから私どもは、もしそれを考えておられるというならば、それは買い上げが上がったのではなくして、むしろ評価は、どうとるかわかりませんけれども、これは初めて聞くことですが、もし旧方式で買い上げるということになれば、これはもう評価基準というものは全然変えていただかなければ、私どもは賛成しがたいわけです。  それから新方式のいまの制度で、私どももかねがね、もし炭鉱をやめたときには産炭地振興に寄与したい。しかも、いま残っておる炭鉱というものは、その地域にはかなりの信用と経営能力というものの評価はわかっておるわけです。したがって、産炭地振興を他の地域から経営者を誘致してきて、その信用度とか経営能力というものも十分わからぬままやらせるよりも、いまの炭鉱経営者に仕事を与える、いまの労務者との間の信頼感も確立されておりますし、そういう者に仕事を与えて、それから生産するものは、自由経済の中のあのきびしい産業を一気にやるということでは、炭鉱から他の企業に移る場合には非常に成功率が低いのでして、生産したものは必ず国の需要につながるようなものをまずやらしていく、需要だけは国が何とか援助するというような形ならば、私どもはいろいろやることも考えております。けれども、経済の動きがこれほど激しい中で、いまの時点では多少利益は見られるけれども、将来の展望として、新しい企業に対する理解度なり認識が薄いだけに、非常に不安があるので、なかなか手が出しにくいということでございますので、やはりそれらの私どもの経営能力なり労使の信頼度なりを評価されて、この炭鉱地域にはこの企業を持ってきてやらそうというようなことであれば、非常に私は成功率は高いのじゃないかというような気を持っております。そういうことでございます。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 閉山をするときには、大体一年か一年半くらい前にはおおよそわかるわけです。その段階では、たとえば麻生さんなら麻生さんのところで、新しい企業をここに持ってきたほうがいいとすれば、その労働者を、もう一年か一年半前から職業訓練その他を受けさして、きちっとした体制を整えながらやる。そうしてそれには経営者としてのえてふえてもありますから、政府がこれならばいけるというものがあればやる。そうすれば、山はつぶれても非常に安定し、安心感があるわけです。そういう意味で御質問したわけです。  それからもう一つ、旧方式は、籾井さんのほうはちょっと誤解があるようですが、いまの二千円とかあるいはそれに二百円ないし四百円の特別加算をつけるというのは、これは鉱区についてつける。そのほかに土地、家屋、炭住というようなものは、これは鉱区が買い上げられてしまってから処分をすると二束三文になってしまうわけです。一棟が二万円とかそこらに……。ところが、これをまだ炭鉱のあるうちに合理化事業団に買い上げてもらうということになれば、その分だけはプラスアルファとして時価でついてくるわけです。土地の評価その他は少し安いですけれどもついてくる。その分だけは経営者によけいに入る。経営者に入るということは、未払い賃金その他あるいは債権者にもよけいにいく、こういう形になると思うのですよ。その方式はいままだ生きているのです。これは政策として新方式をとっておるだけで、旧方式は法律的に生きているわけです。このごろから、どうしても未払い賃金が多いとか、鉱害が多い山は旧方式でやってもよろしいという言明を政府はしているわけです。ただ、いま言ったように手続がめんどうくさい。また、これはあと合理化事業団が連帯責任を持たなければならないところに、佐久さんが言うように政府は逃げ腰です。しかし、いまほとんどの中小の山は、いよいよ最後になれば無資力になってしまうわけです。無資力になれば、これは合理化事業団がやろうと国がやろうと、全部どうせ国の金でいくのですから、結論は同じです。だから事務をある程度簡素化すればいいのじゃないかという感じもするわけです。そういう旧方式でやるということもあるということなんですよ。  これで終わります。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いまの問題に関連しまして。実はドイツでことしになって、閉山後の炭鉱の土地と建物を買い上げる会社をつくった。これは経営者が出資をしまして、要するに協同組合的にやっている。政府は、その社債については保証をしておる。政府から監事が行っている。いまの日本の状態では、私はそれは無理だろうと思いますが、むしろ現実には、産炭地事業団に土地を買ってくれと経営者から言ってこられている。それは相当あるわけです。しかし、きわめて個別的なものもすね。その点滝井君は、かつて旧方式があり、いま法律もあるのだから、そうやったらどうかという問題を提起しているわけです。むしろ第一には、債務をいかに弁済をしていくかという問題が一つある。ことに、今度の肩がわり資金と関連をして、担保を銀行は放さぬ、こういうわけでしょう。銀行は、率直に言ってまるまる入るという形になるわけですね。そういうことと関連をすれば、やはり土地、建物も一緒に閉山をするときに売る。しかし鉱区及び坑道は合理化事業団に、合理化事業団にあまり大きな負担をかけるわけにいきませんから、この土地、建物はひとつ産炭地事業団に、これは不離一体のものとして行なう。そうして産業転換をやらせる。こういうようにしないと、私は全体的な円滑な解決はできないと思うのです。ですから、筑豊炭田だけでなくて、佐賀でもそうですか、あるいは北海道でも将来そうなるでしょうけれども、そういう場合には、第一整理するには資金が足らぬ。しかし、土地、建物はあるけれども、それはほとんど担保だ。ですから労働者にはどうにも分けようがない、こういうことになる。あるいは関連の中小企業者はほとんど泣き寝入りである。ですから、この財産を総合して債務の弁済をやる。一方においては、土地、建物をきわめて有利に活用する。そうすると各炭鉱の従業員も、ある炭鉱の社宅はそのまま残して、他の従業員を全部その社宅に入れる、最も適当な工場団地に必要なところは社宅を取り除く、こういうふうに総合的にできるわけです。どこもここも社宅は残しているわけですね。ですから立ちのきも容易でない。これはルールでことしから行なわれたわけですが、こういうようにひとつ総合的にやる必要があるのではないか。これはむしろ政府政策でしょうけれども、滝井君の質問につけ加えてもう一度お聞きしたいと思います。
  57. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 いまのドイツのやっている例も、私も知っておるわけでございますが、これは始まったばかりということでございます。いま、日本の現状では無理だろうということですが、現在は、ほんとう経営者でプールしてやるという能力は、いまの経営者ではございません。しかし、政府なり何なりのお手伝いをいただいてそういうことをやるということは、私は一つのアイデアとしては非常にいいアイデアではないか、こういうふうに思っております。
  58. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 藏内修治君。
  59. 藏内修治

    ○藏内委員 参考人の方も、相当長時間にわたりましてお疲れだろうと思いますから、ごく簡単に質問をいたしたいと思います。  実は、昨日二時からの予定が四時以降に下がったものですから、私、参考人の方々の御意見を聞いてないのです。聞いておりませんけれども、いろいろな時点で伺いました御意見を基礎にして、若干伺ってみたいと思っております。  最初に、今度の答申に関連する位置づけの問題から、ちょっと関連して伺ってみたいと思いますが、この答申の中には、今後さらに新鉱開発を大いにやれということが書いてあるわけです。この新鉱開発は主として大手でございましょうが、この答申の限度である四十五年の時点までに、石炭協会のほうでは大体どの程度の新鉱開発をトン数でいって計画しておられるのか、この点をまず最初に、質問の都合がありますので伺っておきたいと思います。
  60. 佐久洋

    ○佐久参考人 いまの私の伺っておるところでは、北海道に二カ所、それから九州有明に一カ所、こういうふうに聞いておりますが、トン数にいたしまして四十五年までに幾らかというのは、私はっきりいたしませんが、九州有明がたしか最終目標としては二百万トンですか。それから北海道のほうは、ちょっと正確な数字は私覚えておりません。
  61. 藏内修治

    ○藏内委員 これを伺いました理由は、要するに新鉱開発計画が、かりに経営者あるいは政府の見通しどおり進行していくといたしますと、要するに政策需要——位置づけが五千万トンということにいたしますと、その分だけさらにスクラップが出てくるということを当然予想しなければならない。ですから、この新鉱開発による石炭の増産というものは、今度のスクラップの数量の中に当初から見込まれておるものであるかどうか。この点は、ちょっと関連がありますので、石炭局長に伺っておきたいと思います。
  62. 井上亮

    ○井上説明員 新鉱開発の問題につきましては、ただいま佐久さんからもお話がありましたように、現在大手で計画しておりますのは、北海道で二、三カ所、それから九州では、御承知の日鉄の有明が、これは新鉱開発というよりは、すでにもう新鉱開発に着手いたしておるわけでありますが、そういうのが目ぼしい大きな問題でございます。ただ、新鉱開発につきましては、ただいま申しましたのは大規模な開発を申し上げましたわけで、ほかに小さいものがないわけではございません。  需要との関係でございますが、私ども、ただいま申しましたような北海道の大規模開発、これは主として原料炭の山が多いわけでございますが、九州の有明も原料炭でございます。有明もそうでございますが、大体において、出炭現実に始まりますのが昭和四十五年度以降になるわけでございますので、当面、今後四、五年の間は、いわゆる供給力の中に加わらないわけでございますので、その点は、新鉱開発したから直ちに需給に悪影響があるとかいうような関係にはならない。私どもむしろ新鉱開発を積極的に推進したいと思っておりますのは、やはり石炭産業を長期に、エネルギー政策の一環をになってもらう意味で維持していくためには、新鉱開発ということが最も大事なことではないか。スクラップ・アンド・スクラップでは、これは長期にエネルギー政策の一翼をになわせるという政策になりませんので、そういった意味からも、新鉱開発に力点を置いて進めさせていきたいと考えております。
  63. 藏内修治

    ○藏内委員 次に移りますが、佐久さんからでも麻生参考人からでもけっこうでございますが、今回の元利均等償還方式と呼ばれる肩がわり方式、この肩がわり方式では、累積赤字を消していった帳簿上の収支改善効果、これをコスト効果の中に直ちに見るところにいろいろ議論がややこしくなってきて、皆さん方の安定補給金三百円という主張もまたここに根拠があるだろう、こう私は理解しておるわけです。そこで、それでは四十五年までに、もちろんこれと関係があるのですが、能率で大体何トンぐらい上昇させようという御計画なのか、これをちょっと承っておきたいと思います。そして、それと関連しますから承っておきますが、それにはどのくらいの設備投資がかかるか。
  64. 佐久洋

    ○佐久参考人 いまちょっと私はうろ覚えですから、若干数字が違うかもしれませんが、四十五年度の大手の目標としては、たしか五十五トンを目標にしていると思います。もちろんその設備投資が相当行なわれた結果、そういう能率もあがるのですが、設備投資の総額として、四十五年度までの累計は、たしか千六百億かと記憶しております。
  65. 藏内修治

    ○藏内委員 そうなりますと、ここで千億の肩がわり——千億が全部大手というわけではございませんで、中小もごく若干この中に入っておるわけですが、この肩がわりをやっても、四十五年まで能率を約十トンないし十トン以上上昇させるための設備投資、こういうもののための資金需要というものを考慮しますと、大体千億もらって千億帳消し、しかも、これも実際のコスト効果のない帳消しをやって、その上にさらに千五百億あるいは千六百億という資金需要が要る、この収支のバランスは一体どうなるでしょう。これが消してみたものの、さらにこれだけ大きな資金需要というものがついてくるということになると、大手のほうの側にしてみれば、資金の回転は現在よりは多少よくなるかもしれませんけれども現状をさらに上回るような大きな債務を背負っていく。こういう形は、どうも常識的には必ずしも健全なかっこうでないような気がする。はたしてこれで実効があがるかということが、ごく素朴に考えると出てくるのですが、その点に関して麻生さんの御見解をひとつ聞いておきたい。
  66. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 いまの藏内さんのおっしゃったとおりのことになる。そこで、最初に申上げましたような心配を、私ども心配いたしておるところでございます。約五年間に千億全部というわけではないのでございますが、五年間に、投資とそれとを比較いたしますと、借り入れ金の残がふえるという形にもなります。よく見て横すべりでいるということでございます。最初申し上げましたように、千億が消えて今後よくなるというのではなくて、千億が残ってしまっていくということが、私どもの一番心配いたしておるところで、いまの藏内委員のおっしゃったとおりが私ども心配しておるところであります。
  67. 藏内修治

    ○藏内委員 こういうようにいろいろ政府が手をつけてはみるけれども、実際の効果がはたしてどうであるかという大きな疑問があるし、さらにそれに加えて、あるいは政府直接ではないかもしれないけれども政府一つの機関としての鉱業審議会であるとか、あるいは金融機関であるとか、こういうものからする経理規制というものはますます強化されていく。経理規制の行き過ぎという点ですね。現在もまだ経営者の立場からすれば、不自由を感ぜられておる面があるかもしれない。将来この答申が、いま予想されておるような形で行なわれていった場合に、こういう点だけはやめてもらいたいという経理規制に関する御要望があれば承りたい。
  68. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 いまの経理規制の問題ですが、現在ございますものですぐ何か不自由、こういうふうに申し上げるものは具体的にはないわけでございますが、これからより以上政府のお世話になると、この経理規制というのが強まることは当然だと私は思います。ただ、そのやり方が、具体的にどうなるということをまだ伺っておるわけではないのでございますが、お考えいただきたいのは、これは私企業でやっておりますので、企業意欲をそこなわないようなやり方をしていただきたい、こう思います。私どの申し上げておりますのは、いままでマクロのお話をしておりますが、これはミクロに分けますと、相当いい炭鉱もございます。こういうものが、あるところの利益率を出せば配当制限がある。程度問題はございますが、それがあまり低くなりますと、企業意欲というものをなくしてしまうと、かえって、これは経営者としてよくないことではございますけれども人間である以上、そういう気持ちはなかなか払拭し切れないと思いますので、企業意欲をそこなわないような程度——しかし政府の資金をこれだけ拝借し、また、場合によってはいただくのでございますから、相当の経理規制があることはやむを得ない。やり方について、いまみたいなことを——企業意欲を失わないようなものをお考えいただきたいというのが希望でございます。
  69. 藏内修治

    ○藏内委員 籾井さんに伺っておきたいと思います。きのうの大臣に対する質疑をお聞きになったと思いますが、今度の肩がわり措置のいわゆる出世払いというものに関する法律論、債権債務に関する法律論というものが、どうもまだはっきり固まっていないようです。これはいずれ法律論として整備された形を政府のほうでお考えになるのだと思いますが、この肩がわり措置は、いままでも同僚議員がいろいろ御質問の過程で申し上げておるように、どうも金融機関を救済するに終わるのじゃないかという見方が強いわけです。ところが中小にとってみれば、現実経営者が相当な担保を出しておるわけです。この担保をとったほうが政府の保証よりも金融機関にとってはさらに有利じゃないか。中小に融資をしておる金融機関の立場から見て、一体この肩がわり措置をどう見ているのか、もし率直な御意見があれば承りたいと思います。
  70. 籾井糺

    籾井参考人 お答えいたします。  金融機関の態度としましては、中小の場合は、たとえば非常に換金性の早い土地建物、それから日常の商業手形の割引に対しての預貸率というものが、現在その炭鉱会社の信用にかかわらず大体きまっておりまして、現金預金というものも入っておるわけですね。それはすべて根担保で入っておりますから、政府の十年のたな上げで金利の安いものの指示があっても、それ以前にまず、そういう預貸率をくずしても預金から先に回収するとか、あるいは不動産の処分を先にさして、そうしてあとに残ったものを強行するのではないかというようなことが心配されますし、そういう措置に出られますと、そのこと自体をやることによっておそらく正常の銀行取引というものがもうできなくなるわけですね。ですから中小としては、よほど強い措置がない限り、それを強行すればまず金を貸すという預金制度とかいろいろなものの正常の取引の貸し付けの条件というものをくずしてまいりますから、そのほうがまずくずれていく。一方が立っても、そのほうがくずれていくというようなことになるのじゃないかという心配を深く持っておるわけです。
  71. 藏内修治

    ○藏内委員 最後に、労働組合の代表の方にちょっと承っておきたいと思いますが、いろいろ年金制度の議論が先ほどから出ておりますが、はたしてこの年金制度が、あの炭鉱の地下労働という過酷な労働条件のもとで働いている人たちにとって今後魅力となり得るか。要するに、賃金水準そのものが相当にアップされた形のものが考えられているのでなければ——いま働いている人たちにとっては確かに年金もいいし、けっこうだと思いますけれども、今後新しく炭鉱に働こうという人間にとっては、全体の給与体系自体が改善されていかなければ決して魅力にもならないだろうし、労働環境自体がもっと画期的に改善されていかないと、労務不足ということは必然的な運命になってくるのではないか。単に年金だけに若干色をつけてみたところで、私は、労働者の魅力ある職場というものにはなり得ないのじゃないかという気がいたします。こういう点は、われわれも石炭委員会関係し、そうして郷里を産炭地に持っておる者にとっては、率直にいって、これは社会党の方々とおそらく感情的にはあまり変わらぬものを持っておるわけです。そういう意味ではできるだけ改善し得る限りの改善を今後もしていきたいと思いますが、これら今後の労務確保のためには一体どうすればいいか、もちろんそれは全体の給与水準が上がるということでしょうが、もしそういうことについてこれをひとつやれというものがほかに何か皆さん方の構想の中におありだったら、教えていただきたいと思います。
  72. 山本忠義

    山本参考人 たとえばいま各会社で鉱業学校をつくっております。これを統合して、北海道でいえば空知炭田のどまん中に国の補助で鉱業学校をつくる。新制中学を卒業した者を三年間そこで教育をして、ある程度の義務勤続年限を与えて炭鉱に再び戻してやる。こういう措置をとれば北海道の人間がこの東京のほう、あるいは名古屋のほうに来てまで就職をしなくても——坑内の安全とも関係してまいりますが、そういう面からは解消することができるのではないか、こういうふうに私どもは主張しております。  それから年金なんですが、支給の方法によると思います。したがって十年なら十年つとめて、若いうちに炭鉱で働いておりさえすれば、ある程度年金がつくから、それからどこかへ転職をしてもいい、こういうふうな措置さえとれるならば、若手労働者にある程度の魅力を持たせることができるのではないか、労働力の移入についても貢献するところがあるのではないか、それから現在いる者にとにかく何とか魅力のあるものにしてもらいたい。これは過去通算について、きっちりいまいる人間について支給できるような方法にあわせてしてもらいたい、こう思っております。
  73. 松葉幸生

    松葉参考人 年金の問題が出ましたから、坑内だけに限っておる問題についても、もう一ぺん触れてみたいと思うのですが、ぼくらが坑内外と申し上げましたのは、まず一つ炭鉱における労働環境というものは、やはり不離一体なものだという点がポイントになるわけですけれども、そのほかに、現在の炭鉱における非常に低い賃金水準の中でなりに坑内外の賃金序列というものが長い歴史の中に一応できているわけですね。   〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 これは退職金についても同じです。坑内加算的なものが退職金にもされている。ですから、低いなりにもできている炭鉱の賃金秩序というものが、坑外年金が適用されないということによって大きくくずれる。そうしますと、今後の賃金の配分にしましても、退職金のつくり方にしましても、これは坑外から問題が出なければおかしいくらいな話と思います。  それからやはりさっきの新規労働力の確保という問題にも若干関連するのですが、現在盛んに坑外から坑内への配転というものをやっているわけです。それから坑内から坑外へという問題もあるわけです。これは量的にはそう多くはないとしましても、本質的にはやはり問題がある。そうしますと、期間が中断をされるという問題がからんできますと、配置転換そのものが非常に不円滑になる。そういう問題がいろいろからみまして、坑内外の心理的な結び合いというものが大きくくずれるという点も、特にわれわれ職員の立場から心配するわけです。ですから、やはりある程度の落差をつけましても、坑内外とも適用するという問題をひとつお願いしておきたいと思います。  それからもう一つは支給のあり方なんですが、これまでわれわれが通産省のメンバーから聞きましたあれでは、過去通算についても全然見ないというわけではない。しかし、それは段階的に支給金額率について格差をつけてやるという問題が一つあります。  それから五十歳で勤続年数として頭打ちをする。これは早々とやめられると困るという面でやむを得ない面もあるのですが、途中での災害死亡あるいは退職後についての老齢年金も本人だけ、本人が死んだら打ち切る、こうなっているわけですね。そうしますと、家族ぐるみという形で考えますと、単に本人だけの定年退職後の老齢年金ということだけで、中身を知った場合にほんとうの魅力になり得るかどうかという点も心配しております。ですから、どうせやっていただけるならば、そう金額的に大きな開きが出てくるわけではありませんから、そういうこまかな配慮というものが、やはり労働力確保という面では特に重要ではないかという点も考えております。  それからいま一つは、先ほど先生もおっしゃいましたように、賃金との関係なんですが、私は、現在おる、そして過去通算等がありまして、四、五年先にもらえるという人たちには、これは直線的な魅力になると思います。その点も含めまして非常に大きな労働力確保の魅力になるという点は否定はいたしませんけれども、新規労働力の確保という面から考えますと、賃金を非常に低く押えて——これは賃金の面で申し上げましたけれども、低く押えておいて、年金だけで若年労働者を確保しようなどと思っても、これは全く効力がないというふうに考えざるを得ませんので、やはり労働力確保という面につきましては、すべての問題を包括的にその方向に向かって施策をお考えいただく。たとえば収支改善にしても、ある程度はやはり利益が出せる、今後は経営が安定する、石炭産業はだいじょうぶだという安心感、それから、災害の問題にしましても、非常にむずかしい問題だけに、一日も早く思い切った施策をやって、むしろ漸減傾向という傾向なりとせめて出していただきたい。ところが、昨日申し上げましたけれども、瀕発災害はことしに入りましてから逆にふえておるわけです。そういうような問題がからんで、賃金、年金というものが有機的に結びつきませんと、文字どおりやはり労務倒産という問題を想定せざるを得ない、こういうふうに考えております。
  74. 重枝琢巳

    重枝参考人 大体前二者で尽きておると思いますけれども年金制度は非常にいいのですけれども、これに全部たよるということは間違いだと思います。私は、昨日も申しましたように、やはり魅力ある炭鉱というのは、まず石炭産業が安定をしておるということ、それから第二はその作業が安全に行なわれるということ、それから第三は、そこで働いて毎日の生活が十分であるし、同時に老後の保障が十分あるということ、この三位一体にならなければならないと思うのです。そういう意味での年金位置づけというものを考えなければいけない。これに全部たよるということではいけないと思います。  さらに、住宅の問題も答申の中には出ておりますが、住宅の問題も、先ほど滝井委員から、住宅を大いに利用するということがありました。たいへんけっこうですけれども、今日ある古い住宅は、実はあまりそういう利用価値のないような、鶏小屋にしかならないような程度のものであります。もう少し文化的な色彩を加えた住宅というもの、それから医療につきましても、私、昨日申し上げましたけれども、そういうものが必要である。こういう幾つかのものが一体になって初めて魅力ある炭鉱というものができる。  それからもう一つは、先ほど山本参考人から鉱業学校の問題が出ました。たいへんいいことだと思いますが、もう一つは、これは西ドイツのルール炭田の中のボーホムに炭鉱博物館というのがあります。たいへんりっぱな博物館であります。炭鉱の各種の作業が全部模型でありますし、また過去の歴史的なものも出ております。地下は実際の坑内をかたどって、いろいろな作業方法等もある。ルール炭田の小学校、中学校人たちのいわゆる修学旅行の一つのコースになっておる。そこでそういう炭鉱というものを見て、その役割り、それから実態というものを青少年がよくつかんで、そして自分はドイツをささえておる石炭産業に将来働こうというような気持ちを起こすという意味では、非常に大きな役割りを果たしておる。いまから日本でやるのは非常におそいわけでありますけれども、しかし、いいことはおそくてもいいわけであります。そういうような形で、青少年の炭鉱に対する知識を普及し、また炭鉱に働こうという意欲を燃やすというようなものも、先ほど申しました現実的な諸条件とからみ合わせて十分考えるべきことではないだろうか、こういうふうに考えます。
  75. 藏内修治

    ○藏内委員 終わります。
  76. 野田武夫

  77. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 参考人の方々には忙しいところを二日間も御出席いただきまして、非常に感謝をいたしております。  二日間にわたる陳述を大体伺い、きょうまた同僚委員からの相当突っ込んだ質問に対してお答えをいただいておりますから、もう大体私がわざわざ意見を伺わなければならぬほどのこともないような気もいたしますけれども、しかし時間的に考えてみて、非常に重要であると思いますから、むしろ私の質問にお答えを願うということよりかも、あるいは経営者側、労働組合側としても、積極的に具体的な案を提示して行動を起こされる必要があるんじゃないかということを実は感じておりますので、それを申し上げようと思うわけでございます。  御存じのように、来週政府は、石炭対策に対する案を発表しようとしておるようでございます。もちろん佐藤総理関係大臣とも、答申案を尊重するか、国会決議を尊重するかという点については、これは当然なことながら、国会決議を尊重いたしますということは言っておりますけれども、しかし政府側の意図するところは、どうも審議会の答申のほうを尊重した石炭対策案を閣議決定するのじゃなかろうかという、これは私の想像ですが、どうもそういう気がしております。  そこで、一千億円の借金の肩がわりは、これはしばしば議論をされておりますように、銀行救済になってしまうんだということを言われています。私もそう思っています。そうすると、あと安定補給金政府側は大体トン当たり百円ということを検討しておるんじゃないかと思いますが、この百円の安定補給金ではたして石炭産業が健全化するかということを考えてみますと、これは私は全く不可能であるということを、ずいぶん政府側にも強く主張してきておるわけでございます。結局、この点について、これを百円にするか、二百円にするか、あるいはより以上にするか、この点は政府が来週閣議決定する前に、私は、相当業者側なり労働組合側等のほうで要請をされなければならぬように差し迫っておるのじゃないかと思っておるわけでございます。大体炭鉱の膨大な借金というものは、返し得ないから今日膨大な借金が累積してきておるわけでございますから、したがって、政府が一千億円肩がわりをしたら、一千億円新たに財政投融資資金なり市中銀行が、肩がわりした分だけは十年間に貸すかというと、私はこれは貸さぬと思っております。そうすると結局、炭鉱の経営が健全化するかどうかは、この百円の安定補給金——安定ということばを使えるかどうか、私、はなはだ疑問に——疑問というよりもむしろ安定ということばを使う資格がないのじゃないかと思っておりますが、その補給金を引き上げること以外には、この炭鉱の安定化、健全化はあり得ないと思っておるのです。この点について、もうお伺いしなくても、大体おまえの言うとおりだということを、麻生さんにしても佐久さんにしてもお答えになるだろうと私は思っております。それからまた、銀行からの一千億円を肩がわりしてもらったからといって、財政投融資資金、市中銀行からの借り入れのめどが立つか、これもおそらく立たぬということをおっしゃるだろうと思いますけれども、なおこの二つの点について念のために伺っておくことが、私ども政府に対していろいろ対決をしていく上に貴重な意見となるわけでございますから、お聞かせを願いたいと思います。
  78. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 全く伊藤委員のおっしゃるとおりで、さすがに過去に経営をおやりになっただけに、銀行の感じなり経営のあり方というものをおわかりになっておるので、全くおっしゃるとおりで、その点が私どもの一番心配いたしておるところでございます。
  79. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それからいま一点は、この安定と称する補給金を、これを百円を二百円、あるいはより以上にいたしたとしましても、一体この公平なる処理というか、これをどうしてするかという点について、実はきのうも三木通産大臣に私相当話をしましたが、この点については非常に重要だから十分検討する。考えてなにしなければならぬ。こういうことを言っておりました。というのは、たとえば炭鉱の、技術的にも設備の上においても、労使協力体制においても非常によくやっていても、炭層条件が悪いためにどんなにがんばってもこれを黒字にすることはできぬ、依然として赤字であるという、こういうところに補給金のいくことは、これは当然でございます。ところがそれ以外に、たとえば山の条件が悪い、しかし技術、設備、労使関係がうまくいっておるために、やや黒字とまではいかなくても、かつかつやっているところがある。一方山の条件は非常にいいのにかかわらず、技術、設備、その指導上の点がうまくいっていない、労使関係はもちろんうまくいっていない、そのために赤字になっておる。しかし、この山はビルド山、だから、やはりこの安定補給金を支給して、そして健全経営にさしてやらなければならぬというところがある。そういうことで補給金をやるということになりますと、がんばったほうはかつかつだから補給金がもらえぬ、がんばらなかったほうはビルド山に数えられてある山、だから補給金をやるということになってくると、これは悪平等になるし、非常に不平等不合理になる。そういう結果は、正直者が、がんばった者がばかをみるというようなこと等も起こってくるから、こういう点は、安定補給金を出す場合に政府はあらかじめそういう場合にどのような処置を、監督監査というか、そういうことを厳格にしてやる用意と準備をしておるのかと言ったら、まだそれは実はしておりません、今後のことで、その問題は非常に重大な問題だからということを三木通産大臣は言っておりました。  そこで、やはり石炭協会としても、あるいは中小炭鉱の連合会としても、政府でどのようにこれをさばくかという問題のみにまかせずして、こういうものの公平を期することについての対処するものをおつくりになっておく必要がある、こう思いますが、こういう点について、麻生さんでもいいし佐久さんでもいいし、まあ麻生さんのほうでしょう、会長ですから。それから中小炭鉱籾井さん、こういう点について、政府だけに依存しておっていいのだというお考えか、いやそうでない、われわれのほうでも自主的な調整の上から、そういう点はやはり公平を期する意味において政府にも強く要請をし、また懇談もしながら解決していかなければならぬというお考えであるかどうか、その点ひとつお聞かせを願いたい。
  80. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 いまの伊藤委員のお話のとおり、配分その他についての公平化というのは非常にむずかしい問題だと思います。審議会でも今度の案をつくられるときに一番御苦心になったのはそこじゃないかと思いますし、これからこれを実施される政府においても非常にここに御苦心のあるところだろう、こういうふうに思います。いま御注意と申しますか、お教えいただいたように、私ども石炭協会といたしましてもいろいろ考えは持っております。これを政府——具体的に申しますと石炭局の方々に十分御理解いただいていけるように現在もやっておりますし、今後もそういう線において私ども考えるところは政府に十分お伝えしてお願いをしていく、こういうやり方をしていきたいというふうに考えております。
  81. 籾井糺

    籾井参考人 お答えいたします。安定補給金の支給対象については、いま麻生会長からもお話がありましたように非常にむずかしい問題で、これは考えれば考えるほど答えの出されない問題ですから、したがって一律に支給される以外に方法はない、これのほうが公平であるという感じを私どもは抱いております。  それから、数量をどこで確認するかという問題が、これは非常に問題があるわけで、私どももあらあら協議はいたしておりますが、中小炭鉱の全体会議にかけておりませんので、結論ではありませんが、二、三の者との話し合いに出た私どもの私見でございますが、これはやはり業界におまかせいただいたほうが非常にスムーズにいく、役所の考え方からお考えになりますと、業界にまかせるとどうもごまかしをするのじゃないかという心配がおありになるかもわかりませんが、これは逆であります。これはお互い牽制し合って、やはり全体の責任がございますから、業界におまかせを願ったほうが正しい数字があって非常にうまくいくのじゃないか。そういう御意向がもし政府からあれば、私どもは、費用の分担を援助いただければやらなければならぬなというような考えは持っております。  以上でございます。
  82. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 籾井さんにお伺いしますが、先ほどからだんだん籾井さんの意見を伺っておりますと、肩がわりの問題より五百円の炭価引き上げというか、補給金というか、そういうものを出してもらったほうがいいのだ、それが中小の健全化というか、安定化の将来の道であるという五百円論を非常に強調されておりましたが、実はすでに予期されておられると思いますが、一千億円の肩がわりと、あるいは安定補給金の問題をどうするかの問題は今後の問題になってまいりますが、しかし、一千億円の肩がわりをやめて五百円の炭価引き上げの補助金を出すように、閣議決定を政府はおそらくようせぬだろう、これは私の勘でございます。そういたしますと、ただ五百円の問題だけを一つ強調されることでなくして、中小炭鉱の今後の金融の道、たとえば安定補給金の問題もあります。あるいはまた、従来から全体の出炭の約三分の一くらいを中小炭鉱が出しておりますけれども、しかし金融は一割も得ていないというのが具体的に数字で出ております。でありますから、中小の今後の金融措置をどういうように政府にさしたらいいのか、あるいはまた保証の問題など、これにからまる問題もあると思いますが、今後の中小炭鉱の経営の健全安定化への金融措置というものをどういうようにしたらやっていけるかということについて、具体的にお考えになっておる点があると思いますから、何点かお聞かせ願いたいと思います。
  83. 籾井糺

    籾井参考人 お答えいたします。  私ども肩がわりを返納して、これに見合うもので五百円をいただければ、あとはそれに振りかえてもいいという提案をいたしましたが、このほうが金融も非常にスムーズにまいります。大手の場合は金をお貸しになる担保条件が全く違いますので、赤字がいかに出ておっても、やはりその炭鉱をつぶすということには非常に社会問題が大きく取り上げられ、付随しておりますから、政府で鉱業権一本の担保で金が出ておるのがいままでの経過でございます。そのようなことであれば私どもも何も心配はいたしませんけれども、中小の場合は、規模が小さいというだけで、その炭鉱閉山するからといって、直ちにそれを社会問題化して取り上げて、担保がなくても貸してやるという措置はあまりないわけですね。したがって、赤字になれば直ちにつぶれていくというのが中小の実情でございますから、いろんな肩がわり措置だとか、あるいは掘進費の補助だとか、あるいは保安に対しての補助だとか、いろいろなことがありますけれども、それは中小が体質的に受け取る、実質に身についてくるものがないわけで、そういうものをそれぞれ換算をいたしまして五百円のものと振りかえる、私どもはそのほうがいいということを言っているわけでございます。いまの状態のまま、答申に出ている状態のままで中小を取り扱っていただくということになれば、よほど強力なやはり政府機関による運転資金まで見ていただくところの措置がないと、私どもはとうていやっていけないという見方をしておるものでございます。  以上でございます。
  84. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もう一点伺いますが、国の財政投融資資金というものは中小には全くこれは冷淡そのものです。しからば市中銀行はどうかというと、これまた資格、信用がないというので貸してくれません。これらを解決する道は、私は中小に対する信用保証協会というものの強化をして、貸し倒れにならない、最終的には保証協会が引き受けてやるというようなことになれば、市中銀行の貸し出しもわりあいに道が開けてくるのじゃないかということが一つ考えられます。  それから財政投融資資金は、やはり出炭状況に応じて中小にも国の金をやっぱり貸すようにしてくれ。この二つの問題が私は中小の一つの生きる資金対策ではなかろうかと思いますが、この点についてどうですか。まださらに、いや、それよりこのほうがいいのだというなにがあったらひとつお聞かせ願いたい。
  85. 籾井糺

    籾井参考人 お答えいたします。  いまの信用保証協会の問題でございますが、これは実情が少しおわかりになっていないのじゃないかと思いますが、私は今度夏場資金に千万円の金をお借りいたしました。これに対して銀行は信用保証協会の保証をつけろというのです。それはけっこうです。まあ保証協会の保証をつければ金利負担がかかりますので、私どもはあまり賛成はしません、有利じゃございませんけれども、銀行さんのほうでそういう要請があれば抵抗する何ものもないので、承諾をいたしましたけれども、保証協会の保証に担保は要らぬかと思いますと、担保が要るわけです。やはり私どもの個人資産の担保を提供することになるわけです。あるいは鉱業権の担保を保証協会がやはりとっておるわけなんで、その点が解決されない限り、その担保力がなければ金は出てまいりません。やはり窓口銀行が担保力なしで貸すというわけじゃございませんから、担保をとった上に信用保証協会の保証をつけるといういわゆる二重の積み重ねであるということを御理解願いたいと思います。
  86. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もちろん、私がいま中小のために信用保証協会を強化せなければならぬということは、いま籾井さんのおっしゃったような、この非常に窮屈な、また耐えられぬ条件のあることは、これは私も知っております。そういう点等を改正をし、さらに信用保証協会に国の保証金というものを強化し、拡大していくところにその問題の解決というものが出てくることを私ども考えて、私はそういう意味で伺っておるわけでございます。いまおっしゃったような非常に窮屈な困難な点は百も実は知っておりますので、その点は国家資金を強化し、拡大していくところに私はこの問題の解決ができるということを考えて、そういう意味で伺ったわけでございます。それはもうよろしゅうございます。  最後にいま一点。これは経営者側にも関係しますし、労働組合にも関係することでございますが、伺いたいのは、炭鉱労働者に特別年金制を、さきの労働大臣は来たるべき臨時国会にその提案をする、しかし継続審議にしてもらっておいて、予算との関係もあるから四十二年度の通常国会で議決をしてもらうようにしたいということを言っていました。これはもう通産、厚生三省の大臣並びに事務当局関係の間でも話が進んできておりますから、この特別年金制度を法律案として臨時国会に出すか、通常国会に出すか、もうそこへ来ておることは間違いないわけでございます。  それから坑外いわゆる準事務、そういう関係について労働組合側で言っておりました問題を、われわれも強くこれを主張しておりましたけれども、その後厚生省のほうでは厚生年金の上積みの調整年金として坑外の人々に、準事務というか、そういう人々にはそのようにして給付したいということを大臣もこれは公に回答してきております。でありますから、このことで厚生省はおそらくまとめるのじゃなかろうか、こう思っております。  それからこの特別年金の問題について、経営者側が全額を負担するということは、これは全く世界にない例でございまして、法律制度をつくって、そうして経営者側からだけ負担をさすというなら、これは世界に珍無類のことでございます。やはり経営者側が半分出すとか、あるいは被用者が一部出すとか、あるいは国とそういう経営者——そうなればある意味において保険制を意味することになりますけれども、少なくとも国と経営者とが出し合って特別年金制というのをつくるところにはじめて法律制度の権威があるのでありまして、業者からだけ取る金をその国の法律制度にするということは、これは世界の文化国家の笑いものになると私は解釈をしております。しかし、政府のほうではそういう考えがありますから、これは私どもももちろんその筋を通して、そんなばかなことはないじゃないかということは大いにやりますが、やはり経営者側も、労働組合側も、この点に対しては世界的に筋の通った法律制度にしなければ……。経営者側だけが出してやるのなら話し合いの談合資金、いわば労使の問で団交で解決する問題でありますから、何も法律をつくる必要はない。法律制度とする以上は、国がやはり相当の負担をしてやってはじめて法律の権威があるわけでありますから、こういう点もちろん私たちもその点は筋を通しますが、経営者側、労働組合側のほうにおいても、そういう点まだ固められないうちに、政府側のほうに強く申し出をしてもらいたい。これは私の非常に強い要請でございます。  それから坑外の人に、この厚生年金の上積みの調整年金と二段階的な給付制度をつくろうということにいまもうほとんど固まりつつあると言っても私はいいと思っております。そういう点について、労働組合側のほうでは三代表がおられるわけでございますけれども、この二本立ては絶対いかぬということであるか、給付の額によればその二本立てまたやむを得ないというお考えであるか、現実はその後相当進んでおりますから、そういう点においてひとつお聞かせを願っておくことによって、われわれの努力のしかたもまたある、こう思っております。
  87. 松葉幸生

    松葉参考人 経費負担の問題は、先ほどから申し上げておりますから同意見でございますが、調整年金方式の問題につきましては、ちょっと私は勉強不足で疑問の点があるのですが、給付されます点は、たしか調整年金の場合には業者なり労働者側も若干負担をするかっこうになるんじゃないかという気がするわけです。そうしますと、坑内はこれが業者負担になろうとも国の負担になろうとも、負担をしないで年金がもらえる。ところが、坑外の場合には違った形になって、逆に額も低いというかっこうになるんじゃないかという点が、まず一つ問題として残ると思います。  それからいま一つは、基本的な理解という点で、私は今回の答申坑外を分離をしたということが、生きものとしての炭鉱労働というものに対する理解の欠除、これがすべての雇用対策という問題につながるというような気がいたしまして、その点でなかなか納得できない問題が残ります。  それからいま一つは、調整年金となりますと、法的な規制力を持ち得るのかどうかという点が疑問として残ります。特別年金の場合には、先ほど先生がおっしゃいましたように、世界に類例がないのかどうかわかりませんが、業者負担というかっこうになりましても、答申との関連である程度の強制力を持っている。そうしますと、大手、中小を問わず全部やはり加入せねばならぬというかっこうになると思うのですが、調整年金の場合に、特に大手の場合はメンツもございますから一応入ると思いますけれども籾井さんの前で失礼でございますが、中小の中でも特にB、Cクラスになりますと、はたしてそういう制度に応ずるかどうかという疑問も残りますので、これは政治でございますから、最悪の場合にどうなのかということになりますと、絶対だめだという気持ちはございませんけれども、しかし、そういう取り扱い自体の基本的な問題と、それから具体的に起こってくるそういう問題点はどうなのかという点について非常に危惧を持ちますので、現在の段階におきましては、私としては賛成の意を表し得ないという気持ちでございます。
  88. 重枝琢巳

    重枝参考人 年金については昨日も申し上げたんですけれども、坑内に適用する場合に、大体トン当たり三、四十円だというふうにいわれている。坑外を入れた場合にどうなるかといいますと、きのうも申しましたように大体十円ぐらいになるのじゃないか。そうしますと、たいした金額でありませんから一本化をしていくというのが一番いい方法じゃないか。ただその場合に、もちろん経営者側が全額負担をするということですが、実際は国が全部負担をするということにならざるを得ないわけです。そういうふうにわれわれはいろいろな機会に聞かされてきておるわけです。ただそういう場合に、労働者負担をしないから、お仕着せだから、こっちで寸法を合わせて、こっちでつくったレディメードを喜んで着なさいと言われても、それはちょっと困る点があるんじゃないか。やはりせっかく着せてもらうならばオーダーメードにしてもらいたいという点があるわけです。それで、まあ炭鉱経営というのはなかなかわれわれわからないのですよ。赤字だ、もうからぬというようなことを盛んに言われる。しかし、具体的にどういうことになっているかということがなかなか提示されない。そこで、やはりある程度ひもつき的なもので、その年金財源を明らかにするということは、もうどうしても必要ではないかと思います。ただ、伊藤委員の御質問のように、そういうことができないという場合に、一体次善の策としてどういうことが考えられるかという点につきましては、全炭鉱としては、相当調整年金の問題について検討をしてまいりました。ある時期には、坑内、坑外を含めて全産業的に年金基金というものを設定をして、それに国からしかるべき金を出してもらう、それを運営をするという方向でやれば一番無理がないんじゃないかということも考えたわけであります。そういう経過から考えてみますと、坑内だけに特別年金ができて、坑外のほうは除外をされるという事態をもしわれわれが予想するといたしますならば、次善の策としては、坑外労働者に対して全産業的に統一をした年金基金というものを設定をするということで、坑外労働者に対する年金を、二本立てにはなりますけれども、しかしもらう金は同じでありますから、そういうことでできればやっていくべきである。その場合にもちろん負担の問題があります。これも赤字が直らないから、だめだというようなことではだめであります。実際一本立てにしても、先ほど申しますようにトン当たり十円程度の金でありますから、調整年金方式を採用するにしても、これについてはやはり国から特別のものを見てもらう、素通り勘定的なもので見てもらうということにならなければ、実際の運営はできない。そういうことが背景にあれば、金産業的に調整年金をつくるということも可能でありましょうし、また運営も十分いくのではないか、こういうふうに考えております。
  89. 山本忠義

    山本参考人 あまり前二者の方と変わりはございません。どうせやるんなら思わせぶりにけちけちしないでぱちっとやりなさい、そうでないとありがたみが薄れますよ、こういうことでございます。  それからもう一つは、労働団体あるいは経営者のほうから具体的にこういうふうにしたいという案を示してもらって、経営者なり労働団体から個々に意見を聞ける機関なり会なりをつくって、早く煮詰めるようにしてもらいたい。一方的な考え方ばかりをちまたに流布して、一方の意見が聞かれないできまってしまう、こういうことでは意味がないと思いますので、そういう点の指向する方向をおきめいただければ非常にいい、こう思っております。
  90. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私の参考人の方々にお伺いすることは以上で終わりますが、むしろ参考人の方々の意見を伺うということより、冒頭に申し上げましたように、かなり政府側のほうが、この安定補給資金の問題なり、また五百億をどのように案分して使うかという問題なり、あるいはいまの特別年金の問題なり、あるいは厚生年金の上積みの問題なり、そういうことがそれぞれの役所で相当進みつつあります。その上に立って来週閣議決定をしようというなにが相当時間的に動いておりますから、そういう点を十分見通しの上に立って、ひとつ経営者団体、労働組合とも、かくなければならぬということについて積極的に動いてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。どうもありがとうございました。
  91. 野田武夫

    野田委員長 麻生参考人から、さきに述べた意見に少しつけ加えたいという申し出がありますから、これを許します。麻生参考人
  92. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 きのう最初、たいへん皆さまお疲れで、時間も短いようだったので、意を尽くさなかった点があるかと思います。ずっときょうも皆さまからたいへんに御理解ある御質問なり御意見をいただきまして、まことにおそれ入りました。  私ども、代表ではなく、私といたしまして申し上げます。石炭協会の経営者といたしましては、今度の審議会に出ました案は、いままでと違いまして、あれが全部ではない、あれは骨格だというふうなお話でございますので、これからの肉づけに期待して、きのうからきょうにかけて、こういうふうに肉づけをしていただきたいということを皆さま方に申し上げました。いろいろお話なり御意見を伺いまして、皆さま非常に御理解をいただいていると考えます。たいへんに感謝いたしておるわけであります。私ども経営者といたしましては、皆さま方なり、または政府が、この肉づけを今後予算措置その他において十分やっていただけるものと期待を持って、経営者といたしましては、皆さま方、政府からこれだけの援助を受け、国民の皆さまに御迷惑をかけておる現状でございますので、私どもとして、いままでも一生懸命やったつもりでございますが、今後より一そう経営の立て直しに努力いたしたいということを申し上げて、お礼にかえたいと思います。(拍手)
  93. 野田武夫

    野田委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中にもかかわらず二日間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼申します。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時十五分散会