○
山本参考人 山本でございます。お答えをいたしたいと思うわけです。
五千万トンの
関係のことでございますが、私
どもは、
抜本対策ということになれば、
政策需要を含めてその総
需要量についてしっかりした
位置をはっきりしておく、このことの中からいろいろな派生的な諸問題について
検討を加えて
樹立をしていく、いわゆる
総合エネルギーの中における
石炭の
位置というのをきちっときめてもらう、このことが動揺することであっては
抜本対策にはなり得ない、こういうふうに
考えておるわけです。だから、その
抜本対策の場合の
位置づけについては、
縮小生産の
方向ではなしに、いま
炭鉱の
労働者は少ない人員で
能率を四十トンもあげて、今日では五千百万トンの
出炭実績があるわけでありますから、将来の
希望と展望が持てる、もう少しおまえ
たち労使協力をしてがんばっていきなさいというなら、
石炭を出したら出したで、また
生産制限だとか、買い手がなくてもう困るからあまり出さぬでくれとか、もう少し首を切ってくれとか、山をつぶしてしまえとか、こういうことの二度とないようにしてもらいたい。それには多少
政府の金に無理がかかったり、あるいは世論のひんしゅくなり、
重油なりそういう
石油業者のほうからの
圧力はあるでしょうけれ
ども、この際、十年間も五年間もいわゆる
安全保障の
見地から国内の
重要資源を確保するというのであれば、思い切った
措置として公約したことなんだから
実行をしてくれ、こう言っておるわけです。われわれはかつて、六千万トンと、こういうふうに言いましたけれ
ども、あの際に、五千五百万トンでおまえ
たちはしんぼうしなさい、そのかわり肉づけと
裏づけはきちっとしてやりますよ、十二万人の百を切っても、
離職者対策もきちっとしてあげます、こう言ったのは、いまの
総理大臣の佐藤さんが
通産大臣のときでございますから、特に
炭鉱の
労働者や
産炭地の住民をあげて五千五百万トンに固執をするゆえんについては、十分おわかりをいただいておると思うわけでございまして、そういう面について、
スクラップというような
政策ではなしに、もう
スクラップ・アンド・ビルドというのはずいぶんやってきて、ずいぶんあっちこっちに
犠牲者が出て今日のような
現状になってしまったのだから、この際は
スクラップ・アンド・ビルドの
政策は放てきをして、そうではなしに、五千五百万トンという多少幅のある
需要に
総合エネルギーの中における
石炭の
位置をしっかりときめてもらって、その中で
労使は死活を賭してがんばれとか、あるいは
協力をしてやりなさいとか、ここういうことでなければ、これは必ず
縮小生産の
方向になってしまって、かりに
能率があがっても、
離職者がどんどんふえる、
能率をあげればあげるほどなま首が飛んでいってしまって、山がつぶれてしまう。
企業本位の
スクラップ・アンド・ビルド政策というのは必ず破綻を来たす、こういうふうに主張をしておったところでございます。したがって、五千五百万トンはぜひ確保を願いたい。しかし、いまそう言いましても、いろいろな
意味で長い年月をかけて、七年間も
炭鉱の問題について手がけた
政策懇談会の
メンバーの
人たちが
努力をした結果でありますから、そういう面については不満はありますけれ
ども、
現状の世論なり、あるいは
現状のみんなの
考えている
考え方というのもあるでしょうから、私
どもは必ずしもいますぐ五千五百万トンをきめてくれとは言っておりません。五千五百万トンを
目標にして、われわれが、働いてしがみついて残ってきたやつが幸福になれるように、いまのところは五千二百万トンでございますか、
国会で決議なさった線を
最低にしてひとつ
目標と
希望を与えて、もう二度と
炭鉱の場合、
重油の
圧力、
流体エネルギーの構造の変化、こういうことでまた首を切られるのだとか、山がつぶれるのだとか、こういうことのない、
ほんとうの
意味の
抜本策を
樹立願いたい、こういうふうに心からお願いを申し上げている次第でございます。
第二点目の
保安の問題でありますが、これはいまさら声を大にして言う必要がないと思うくらい、再三、事実においても明らかでありますし、私
どもも要望をしておるところです。その事実というのは、あの
スクラップ・アンド・ビルド政策というのを強行した
過程の中で、
石炭産業の場合は、何といいましても
石炭を掘らなければ
コストが安くなりません。したがって、どうしても
増産体制ということで
コストを安くし、
企業経理というものについて
検討を加えていく、こういうことになるわけですから、ある
程度出炭をセーブしてどうのこうのということにならぬわけですから、非常に無理が伴う。そういう
意味で、なおかつ
人間の構造的なものが、非常に
労働密度といいますか、そういうものが、
集中生産でありますから、非常に固まってきている。無理が伴う面について固まってきている。それからもう
一つは、
炭鉱の
年齢が非常に年をとってきている。いま一級
先山なり大
先山といわれる
人たちは、ほとんどが四十二歳、四十五歳以上の
人たちが大
先山であります。
ピックマンといわれるのは、ほとんど
年齢の多い者が、かつてよりももっと多くなりました
ノルマの中で、たとえば昔は四メートルとりきりで掘ればよかったものが、四メートル半からカッペ四列柱で五メートルも掘らなければならない。汗びっしょりかいても、なかなか上がるときの時間までには
ノルマが果たせない。疲労が蓄積されてきている。こういうことになるわけですから、そういう面から非常にこの
保安問題というのは重視をされるわけです。これは、
松葉参考人のほうから申し上げましたように、
毎日落盤事故なりその他の
事故で死人が多くなってきているのは、そういう
実情を物語っている、こう思うわけです。したがって、私
どもは、かつて、
国会でございますか、あるいは
通産当局の要請でございますか、
保安調査団というのがそれぞれ
地方に参りました際に、強く申し上げたわけです。
炭鉱の
保安教育というのは、
経営者自身が
リーフレットや
パンフレットや
幻灯写真で
進発所に入坑するときにいろいろやったって、それは
意味がない。やはり日常時間中に、坑内から
坑外にあげて、半日間か、あるいは二時間か三時間、ぴっちり実物に即した
教育をやらなければ、
ほんとうに実にならぬ。疲れた
人間が
リーフレットや。
パンフレットや
幻灯写真を見せてもらったって、
ノルマノルマで追いまくられるわけですから、どうしても
保安がおろそかになる。こういうことを主張しておったところです。だから、そういう面で、
保安費を大幅に、こういいましても、なかなか
経理事情の苦しい
経営者でございますから、そういう面では手抜かりになってしまう。そういう面をひとつ国の
国家管理の中で、
保安は、費用と、それから
実情的にも吸い上げて、これから
私企業について一千億から補助をするわけですから、一回
爆発がどかんと起きてしまえば、何千億のたな上げをしておった
炭鉱といえ
ども、それ
自体でもう
経理面が悪化をしてつぶれなければならぬ。ことに
中小炭鉱の場合に大
事故でも発生をしたならば、それだけによって
炭鉱がつぶれなければならぬ、こういう
実情になるわけですから、国家的な
見地からも
保安対策について積極的な面を打ち出すべきである、こういうふうに主張しているわけです。なお、具体的には、
炭鉱の
ガス量の多い山あるいは崩落、
落盤事故の多い山というのがわかるわけですから、
保安監督官の
常駐制度、こういうようなものでもやったり、パトロールの
強化、こういうことを十分に補ってやっていくことによって、当面の
保安の
事故というものについてもある
程度予防の面でできることがあるのではないのか。そういう
保安監督行政の
強化という面についても、ぜひひとつ
行政面から積極的にやってもらいたい、こういうことを始終訴えておった次第でございます。
次に、第三点目の
年金制度の問題でございますが、昨日も申し上げましたように、私
どもはやはり
年金はつくってもらいたい、これは三カ年間のことでございますから、どうしても今度はひとつ
実行をしていただきたい。しかし、いろいろな関連がございまして、そう大幅なことを言ったってそれはむちゃだ、こういうことになると思いますので、
厚生年金の中から一部出すとかなんとかいうくふう、その他技術的なことについてはとやかくは申し上げません。しかし、
年金制度である限り、
炭鉱夫が長年つとめて老後を養っていくに値するだけのやはり金額ということでなければならない。それには、やはり
私企業ではさかさに振ったってこれは出せない、こう言って、
期末手当にしたって、その他にしたって、
管理炭鉱は二万六千円、
大手炭鉱でも四万一千八百円、こんなことで涙をのんでいる
実情なんですから、
経営肴の
責任でやりなさいということは、やらなくてもいいということに通ずる。それから、
炭鉱で災害が起きて死んだ
人間は、われわれの
協定書ではわずか八十万円です。全日空でなくなった方々は、これは高いとは申し上げません、しかし、三百万も補償をしてもらう。こういう
実情から
考えてみても、いかにわれわれは劣悪な条件の中にあるかということがおわかりをいただけるわけですから、そういう面から、
経理面を非常に
検討された結果、一千億の
肩がわりや
安定補給金をしてやらなければならないほど、
炭鉱の
経理面の病人になっているということを認識された
政策懇談会の
メンバーの方であるのならば、勇敢に
政府のほうに向かって、
炭鉱の
年金の
財源は
国庫によって
めんどうを見てやりなさい、こういうのが当然でないか、こういうふうに申し上げたわけでございます。
次に、
年金の場合どうしても実施をしていただきたい内容がございます。それは、あの
答申案の中で、私
どもの折衝の中でははっきりしてないのですけれ
ども、過去通算が全然
考えられておりません。したがって、現
町点から出発をして四十年、五十年つとめなければ
年金の
恩恵を受けない、こういうことは、今日の
炭鉱の
実情に全くそぐわないし、
炭鉱の現在働いている
人間からいわせると、こんなものはくそにもならぬ、こういうことになります。したがって、苦労してきた
炭鉱夫や、これからもなおかつ
努力をしなさいというのなら、いままでしがみついて一先懸命になって
能率をあげて四十年、五十年つとめた者について、いますぐ定年になっても
年金制度の
恩恵を受けられるようにする
措置をとらなければ、
有名無実にひとしい、こういうことをきわめて高く主張しておるわけでございまして、その点だけは、ぜひひとつ
国会の諸
先生方の御見識の中で、
実情に即した
制度として
樹立をされるようにお力添えを賜わりたい、こう
考えておる次第でございます。
それから、第四点目の
緊急就労の件でございますが、これは私
どもも非常に切実な要求でございます。今度それぞれ山でも回っていただきますと、特に福岡の
筑豊地帯においでをいただきませば非常によくおわかりをいただけると思うのですけれ
ども、
現実に仕事をしたい、どこかに
就職をしたいといいましても、四十歳を過ぎた
炭鉱夫、家族も多いわけでございますから、なかなか住宅がない、あるいは給料も見合わない、こういうことで非常な制約を受けているのは今日明らかであります。特に、これから
繊維産業に見られるように、一般的な不況というのが横ばいになる、こういうことになってまいりますと、なおかつ三万人の
首切りという
過程では、
炭鉱の
年齢が四十歳、四十一歳という
平均年齢でございますから、非常に高
年齢者が
失業にほうり出されてしまう、こういう
実情になります。だから、従来よりももっと
緊急就労の
ワクの
拡大の問題なり、あるいはまた、この
離職者対策というものは、相当の
予算や、あるいは必ず生業につけてやる、そのつけない間は、
炭鉱離職者臨時措置法だけでは足りないわけでありますから、大幅な
財源をもってこれらのことについて
めんどうを見るという
施策をとらなければ、ほとんど
スラム街というものの
解消にならない、こういうふうに私
どもは
現実の面から見て
——ずいぶんいろんな
理想論をおっしゃる方がございますけれ
ども、それは
現実に即さない
考え方である。
現実には
緊急就労の
ワクの
拡大もできないで、
筑豊地帯その他では
離職者というのは非常に困っている。こういう
現実にあるし、
地方自治体というものについても、
離職者、
失業者の面で自治体の財政というものについて非常に圧迫をしているというのが
現実でございますから、そういう面について、多少なりとも、終掘
閉山あるいは
保安上危険な山についての
閉山については、私
どもは
反対をいたしておりませんから、そういう面から出てくる
離職者については、そういう
措置を完全にとって、
社会の中に受け入れてやるという方策をあわせてとっていただかなければ、非常にたいへんな
社会不安が起きるのではないか、こういうふうに
考えておるところでございますので、この点もよろしくひとつ御
検討のほどをお願いいたしたいと思います。
次に、これは諸
先生方はもう非常に見聞が広いわけでございますから十分おわかりをいただけると思いますが、最近まではあまりマスコミに乗らなかったのですけれ
ども、ついこの間もテレビの中で、
筑豊地帯の小
学校の
生徒のことを
学校の
先生がいろいろ説明をされておりました。あるいはまた、
土門拳の
写真の中でも、へそを出して、すっぱだかになって、栄養不良で腹ばかりふくれている
子供が、
炭鉱地帯の
筑豊地帯にはたくさんおるわけでございますから、これを見て義憤を感じない人はいないと思うわけです。今度の一千万トンなりあるいは三万人の
首切りということは、この上にそういう事態をもっと重ねる、こういうことになりますから、口で、
人道主義であるとか
人命尊重だとか、あるいは何とかかんとかいいましても、
現実には、この
炭鉱の周辺の
スラム街から
不良化の問題が起きてくるし、
炭鉱の
労働者だけでなしに、
学校の
先生もあるいは
地方自治体の
人たちも
ほんとうに頭を悩ますような
現実が出てくる、いわゆる政治の救いの手の届かないところで多数の国民が泣きの涙を見なければならぬ、こういう
実情になることは明らかであります。これは
現実がそうなっておるわけでございまして、私
どもも何とかしたいとは思いましても、ここまで落ち込んだものについては、金を持ち出したり何だりをしなければ、実際の救済になりません。行ってあいさつをしたり、お気の毒です、どこかに
就職をお世話いたしますと、こういいましても、なかなかそのことは
現実に即しません。やはりどうしても
政府予算をつぎ込んでそういう
スラム街を
解消する、あるいはそういうものについては
緊急就労の
ワクの中にとけ込ましていく、こういう
援護措置というのを完ぺきにやらなければ、
スラム街の
解消にはならない、こういうふうに
考えておる次第でございます。
以上でございます。