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1966-08-11 第52回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年八月十一日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 大坪 保雄君 理事 加藤 高藏君    理事 藏内 修治君 理事 進藤 一馬君    理事 壽原 正一君 理事 多賀谷真稔君    理事 松井 政吉君 理事 八木  昇君       神田  博君    田中 六助君       中村 幸八君    西岡 武夫君       野見山清造君    三原 朝雄君       岡田 春夫君    滝井 義高君       細谷 治嘉君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  三木 武夫君         労 働 大 臣 山手 滿男君         自 治 大 臣 塩見 俊二君  委員外出席者         大蔵政務次官  小沢 辰男君         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業政務次         官       金丸 冨夫君         通商産業事務官         (鉱山局長)  両角 良彦君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         労働政務次官  海部 俊樹君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     麻生太賀吉君         参  考  人         (井宝鉱業株式         会社社長)   籾井  糺君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合委員長)  山本 忠義君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合委員         長)      重枝 琢巳君         参  考  人         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         議長)     松葉 幸生君     ————————————— 八月一日  委員有田喜一君及び上林山榮吉君辞任につき、  その補欠として進藤一馬君及び篠田弘作君が議  長の指名委員に選任された。 同月二日  委員始関伊平辞任につき、その補欠として天  野光晴君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  理事有田喜一君同月一日委員辞任につき、その  補欠として大坪保雄君が理事に当選した。 同日  理事始関伊平君同月二日委員辞任につき、その  補欠として進藤一馬君が理事に当選した。 七月二十九日     —————————————  一、石炭対策に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  この際、宇野通商産業政務次官及び金丸通商産業政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。宇野通商産業政務次官
  3. 宇野宗佑

    宇野説明員 一言ごあいさつ申し上げます。  このたび通産政務次官を拝命いたしました宇野であります。浅学ではございますが、どうぞ今後よろしく皆さん方の御指導、御鞭撻にあずかりますよう衷心よりお願い申し上げまして、簡単ではございますが、ごあいさつにかえさしていただきます。(拍手
  4. 野田武夫

  5. 金丸冨夫

    金丸説明員 私、このたび通商産業政務次官に仕命せられました。今後何とぞよろしくお願いを申し上げます。簡単でございまするが、ごあいさつを申し上げます。(拍手
  6. 野田武夫

    野田委員長 石炭対策に関する件について調査を進めます。  石炭鉱業審議会答申中心石炭対策基本政策について質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。壽原正一君。
  7. 壽原正一

    壽原委員 通商産業大臣にお伺いいたしますが、この石炭答申をめぐって、北海道は北海道庁を中心にし、道議会中心にして、非常にこの問題を大きく取り上げておるのでございます。また九州九州でこの答申の問題をめぐって非常に大きくこの問題を取り上げて、石炭位置づけは一体どうなるのかという心配をしておるのでございます。そこで石炭答申では、将来の生産規模が五千万トン程度となっておるのでございまするが、過般、当委員会において五千二百万程度需要確保するように決議をしたのでございますが、その関連通産大臣としていかにお考えになっておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 石炭鉱業審議会答申は五千万トン程度という、程度というものは弾力性を持っているわけでありますから、五千二百万トンという決議のことも承知いたしておりますが、今後政府が最終的に政府態度をきめますときには、いろいろなそういう経過等も尊重しながら最終的にはきめたい。ただ、しかし、やはり長期的な需要確保という問題も石炭にはありますから、ただ数量だけを、出炭目標だけをふやすということだけでも問題は解決できないということを御承知置き願いたいのであります。
  9. 壽原正一

    壽原委員 だいぶ幅のあるお答えで、満足いたしたいのでございますが、この程度という程度が二百万トンという幅がある。これだけの幅をその程度の中に織り込んでいいかどうかという問題も考えてみなければならない。また五千万トンという答申が出たために、非常に山元各地では出炭の意欲をなくするような労働者階級の非常な萎縮を見ておることも事実でございます。そこで、当委員会決議に基づいて、政府では五千二百万程度需要確保することというふうになっておる問題に対して、重要にこの問題を考えていただきたいと思います。特に、現在、石炭鉱業労使及び地域住民の間では、石炭鉱業の将来について五千万トン程度ではとうてい希望を持ってこれに携わるという空気が出ないということで、たいへん心配しております。この際、政府方針決定にあたっては、この点を十分配慮して位置づけの点をよく納得のいくような政策をとってもらいたい、これをお願いしたいと思います。それから当委員会決議になりました件については、大臣もよくおわかりのことでございましょうから、当委員会決議も十分尊重して、閣議等の場合には、当委員会に重点を置いた閣議決定を見られんことを私は望むわけでございます。  石炭鉱業審議会最終答申決定する際に この間、炭労出身委員さんが退場したと聞いておるのですが、政府肩がわり対策なり安定補給金私企業の限界を越えた対策を講じようとしている現在のような状態の中で、今後の石炭鉱業長期安定を期していく場合、非常に困難を来たすと考えるが、政府はどういうふうにこれをお考えになっておるか。炭労出身委員さん方皆さんがいない間にこういう問題をきめたということに対して、新聞紙上を見ると、労組の各代表を大臣がお呼びになって、いろいろと御懇談されたやに承っておりますが、こういう騒動の中の労使話し合い、あるいは政府労使話し合いというものは、一体どういうふうな状態で行なわれているか、お聞かせ願って差しつかえなければお答え願いたいと思います。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 御指摘のように、最終答申を出す場合に、炭労委員が退場したことは事実でございます。しかし、どうしても石炭問題を根本的に解決しようというならば、労使の協力というものがやはり出発点になるわけでありますから、昨日は各組合と二時間ばかり時間をかけて懇談をいたしたのであります。いずれも建設的な意見を開陳をされて、非常に私どもにも参考になったわけであります。その後組合態度というものは、何かこの機会に石炭問題を根本的に解決したいという誠意、熱意を十分にくみ取ることができますので、そういう退場したというような対立感情は、昨日は全然見られませんでした。
  11. 壽原正一

    壽原委員 大臣お話で私も納得がいきましたが、どうか石炭産業だけは十分ひとつ皆さん納得のいくような閣議決定を見られんことを望んでおきます。  次に、大蔵大臣にちょっとお伺いいたしますが、これは、石炭鉱業特別会計制度の問題についてでございます。  今回の石炭鉱業抜本的対策を実施していくために、原重油関税財源とする特別会計制度を創設することにしておりますが、現在、予想されておる五百億円程度では、石炭対策のほか、鉱害対策なり、産炭地振興対策等特別会計でやることになっておるようでございますが、財源的には相当不足するのではないかと心配されております。政府としては、原重油関税で不足する場合、さらに一般会計資金対策を考慮いたさなければならぬと思うのでございますが、大臣のほうではこの点についてどうお考えになっておられるか、その見解をお伺いしておきたいと思います。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 御承知のとおり、今回は特別会計を設けまして、鉱害はもとより、こういう石炭問題に関連した諸施設に対する費用を、これを全部この会計でまかなう、こういうふうにしております。この五年間の大体の見当をつけ、特に、四十二年度を、どうなるか、そういうことにつきましても、大ざっぱではありまするが、いろいろ検討しております。検討しておりますが、大体、この特別会計の収入でやっていける、こういうふうに見ておるわけであります。もっとも、多少年度によりましてでこぼこが出てくるようなことがあるかもしらぬ。これは私ども長期的な観点をとっておるわけでありまするから、この年度間の調整調整としてとっていく、こういう考えです。大体この特別会計できめられる財源でやっていける、こういう見通しを持っておるわけでありまして、ただいまそうでない場合はどうかというところまで検討はいたしておりません。
  13. 壽原正一

    壽原委員 五百億程度では、関係者各位考えてみても、どうしてもこれではやっていけないのじゃないかという不安が非常に高まっておるように伺っております。そこで、将来のことでございますが、一般会計からこちらに出資する、しないという問題は、さらにひとつ大臣のほうの考慮を入れていただいて、ぜひ石炭問題についての抜本策を、政府全体としてお考えいただくよう、お願い申し上げて質問を終わります。
  14. 野田武夫

  15. 岡田春夫

    岡田委員 二、三の点を伺ってまいりたいと思いますが、まず、答申を拝見いたしまして、ただいまも質問がありましたように、私たち社会党としては、この答申では抜本的な対策には絶対にならない、こういう感をきわめて深くいたしておるわけであります。先日当委員会審議会会長植村さんをはじめ審議委員の人が出席をされましたが、その中で植村会長は、今度の五千万トンという数字をはじき出すにあたって、総合エネルギー調査会の中においても、他のエネルギーとの関連において十分具体的な数字をはじき出して、そういう中で五千万トンの数字というものは今後二十年くらいの間、大体その安定的な見通しとして立てたのだ、こういうようなことを答弁をしておられますが、通産大臣に伺いたいことは、二十年後において、この石炭出炭確保目標を五十万トンに置くというようなことを答弁されておるその根拠について、少し通産省としての見解を伺いたいと思います。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 私、その席上にいませんでしたから、二十年といったらこれはたいへんな——二十年、このごろの二十年というのはたいへんな期間でありますので、植村さん二十年と言われたのかどうかしりませんが、とにかく、この抜本策相当長期にわたって石炭鉱業を安定さそうという目標のもとに出された答申であることは間違いない。それが二十年であるか、あるいは十年、二十年、三十年ということは、われわれとしては相当長期ということで、数年の間にこのことが、非常に大きな見通しが変わってくるというふうには考えてないのでございます。それは総合エネルギー調査会等意見も徴したわけでありますが、今後原子力発電ども相当日本ではスピードが早く行なわれる可能性もあるわけであります。そういうエネルギー源の変遷ということを考えても、まあ、五千万トン程度は、日本石炭埋蔵量からも、あるいは石炭というものがコストの面ばかりではなくして——コスト主義からいえば石炭というものは問題があるが、やはり国内の数少ないエネルギー源である。このことがまた地域経済にも非常に影響を持っておる。雇用問題とも結びついておる。こういうことを考えてみると、ただ、合理主義というだけでは割り切れぬ問題がありますので、国民経済全体の調和ということを考えて、五千万トン程度出炭は、相当長期にわたって確保しようということで、こういう結論が出たものと考えております。
  17. 岡田春夫

    岡田委員 いまの答弁によりますと、二十年ということではない。しかし、相当長期だ。それじゃ政府としては相当長期というのは、大体具体的にどれくらいをお考えなんですか。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ、長期ということばは十年以上くらいのときに使えることばだと思っております。何年ということを、これは十何年でございますというようなこともいかがかと思いますが、まあ、十年をこえるぐらいの、それくらいの期間をやはり長期、数年ではちょっと長期というのはどうか思います。そう考えております。
  19. 岡田春夫

    岡田委員 十年以上というと、最低十年ということなんですが、十年間は五千万トン程度は保証できる、こういう意味ですね。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のようにいろんな具体的な対策は五年ごとにしておるのですけれども、われわれとしての一応の見通しを立てなければならぬですから、それはやはり十年ぐらいを単位と考えておるということでございます。
  21. 岡田春夫

    岡田委員 そこらへんのことを突き詰めて伺うと、十年ぐらいといってだんだん——こういう言い方は悪いけれども、バナナのたたき売りみたいに、二十円でだめなら、十円、十円でだめなら五円、しまいに三円ぐらいになるというような、そういう感じがいたしますけれども、これはあとでもう少し具体的に伺ってまいりたいと思います。  先ほども質問がありましたけれども、近々中に閣議決定を行なわれるという話ですが、閣議決定は大体いつごろの御予定でございますか。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 来週の金曜日ぐらいの閣議ということをいま予定しておるわけでございます。
  23. 岡田春夫

    岡田委員 金曜日の閣議ということは、大体答申の線に沿っていかれるということですか。その点はどうですか。
  24. 三木武夫

    三木国務大臣 こまかい点まで閣議決定をしようとは考えてないわけであります。今後いろいろ大蔵省との折衝もございますし、大体の荒筋というものは閣議決定をしたい。それで、やはり答申を尊重したいという立場ですから、答申の線によりますが、各方面意見を、きのうも労働組合相当長時間にわたっていろいろ意見を聞いたわけであります。各方面意見も徴して、そういうことも盛り込んだ閣議決定にいたしたいと考えておる次第でございます。
  25. 岡田春夫

    岡田委員 私たちは、あの答申基礎にして閣議決定されるのは反対です。あのような金融資本独占資本を擁護するだけで、中小企業炭鉱並びに労働者に対しては、全く犠牲を押しつけている。商業新聞などによると、中小企業やあるいは労働者安楽死を与えるということばが書いてありますが、安楽死じゃありません。あれは自殺を強要する案です。自殺といってもこれは企業の経営を主としての自殺じゃありません。労働者の場合に、実際に自殺をせざるを得ないという状態がきっとあらわれてくるだろうと思う。そういう点では、あの答申の骨子に沿ってということではなくて、この際関係者意見を十分取り入れて、やはり抜本的な方針というものを閣議決定としておきめ願うように、特にわれわれは要求いたしておきます。その点についてまず伺っておきたいと思います。
  26. 三木武夫

    三木国務大臣 岡田君、独占資本とかいろいろ言いますが、実際問題として、われわれは石炭企業国有でやるわけではない、国有、国営という方式はやらぬ、私企業としてこれをやろうということが原則でありますから、企業がつぶれても山は残るわという考えはとらない。やはり企業自体が健全に経営していけるということでなければ私企業ではやっていけないわけでありますから、企業が安定的に経営できるような基礎も築くと同時に、いま御指摘になったような労働者立場、あるいは中小炭鉱立場、これは当然に政府態度決定の中には、そういうことを十分に頭に入れたものでなくてはならぬことには私も同感でございます。
  27. 岡田春夫

    岡田委員 ことばじりをつかまえてあれこれ言ってもしかたがないのですけれども、われわれは独占資本と思っているが、あなたのことばで言えば大手炭鉱といってもいいわけです。しかし、そこら辺のことはともかくとして、あのような形では抜本策として中小炭鉱労働者を救うことにはならない。こういう点については、あとでもう少し詳しく伺ってまいります。  そこで、石油の問題について少し伺いたいのですが、鉱山局長お見えだと思いますけれども大臣よりも専門的に局長から伺ってまいりたいと思います。  日本エネルギーの中で、石油比重が非常に大きくなっておることはもう言うまでもない。そこで、現状は石油石炭と比べてどういうウェートを占めているのか。大体の比率関係。  もう一つは、先ほど通産大臣は、大体十年くらいの展望でというお話ですから、十年後における石油比重がどういうものになるのか、こういう点をまず伺いたいと思います。
  28. 両角良彦

    両角説明員 お答えいたします。一次エネルギー供給構成の中で、現在石油の占めます比率は約五七%強でございます。それに対しまして約十年後の想定は、大体七〇%をやや上回るという推定をいたしております。
  29. 岡田春夫

    岡田委員 十年後ということになると昭和五十年ですが、その根拠は何を基礎にされておりますか、中期経済計画ですか。われわれは中期経済計画については非常に意見があるんだけれども政府としては一応中期経済計画をとっておるわけでしょうが、それの数字と折り合ったものですか。どういうものが根拠になりますか。
  30. 両角良彦

    両角説明員 現在改定作業中の中期経済計画数字と対応して検討した数字でございます。
  31. 岡田春夫

    岡田委員 それではそういう見合いの中で五千万トンという数字をはじき出した、こういうことになりますか。
  32. 井上亮

    井上説明員 石炭位置づけにつきましては、先生も御承知のように、通産省エネルギー調査会というものがございます。同時に石炭鉱業審議会がございます。位置づけ決定するにあたりましては、石炭鉱業審議会におきましては、まず石炭の今後の供給力観点、それから需要確保観点、それから同時に地域社会影響等を配慮しながら、一つ考え方を出した。これに対してエネルギー調査会におきましては、この石炭鉱業審議会意見を受けまして、さらにただいま鉱山局長説明のような、将来の一次エネルギー推移等参考にされまして検討されたというふうに考えております。
  33. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、一次エネルギー石油七〇%というものは、当然見合いになっておる、こういうことですね。
  34. 井上亮

    井上説明員 見合いと申しますよりも、むしろ今後の総合エネルギー推移というものをやはり参考にされて決定されたというふうに考えております。
  35. 岡田春夫

    岡田委員 その場合における国際価格と、日本石油価格との問題を少し伺いたいのですが、石油国際価格フランス、ドイツ、EEC諸国、これと日本における価格、こういう点については現在どういうようになっておるのか。原油でも石油全体でもいいのですが、そこら辺ちょっと局長から伺いたい。
  36. 両角良彦

    両角説明員 石炭関係の深いC重油価格をとってみますと、わが国におきまするC重油価格は、たとえば西欧におきまするオランダあたり価格よりは割り高でございます。またイタリー、西独等諸国におきまする価格と大体同一の程度価格水準にある。言いかえますと、小売り価格納六千二百円ないし六千百円といった水準でございまして、国際的に見ましてかような諸国と比較しますときには、やや西欧諸国並み水準にあるということが申せると思います。
  37. 岡田春夫

    岡田委員 それでは具体的にお伺いいたしましょう。石油輸入価格CIF、これの場合は私が調べておる限りでは、だいぶヨーロッパの価格と違うわけですが、大体見合っておるという御答弁ならば、数字でひとつ出していただきたいと思うのです。私のほうで見ているのは、一九六二年の資料しか、残念ながらちょっと新しい資料がないのですけれども、たとえばフランスの場合には、原油一トン十九ドル、あるいはオランダは二十ドル、西ドイツは十七ドル、ところが日本の場合にはCIF価格は大体十ドル見当相当の値開きが実はあるわけです。それが大体同じくらいだ、こういうお話ならば、そころ辺数字をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  38. 両角良彦

    両角説明員 C重油国内販売価格という面で申しますと、わが国におきましては、先ほど申しましたように、キロリットル当たり六千百円ないし六千二百円、オランダが大体四千円、イタリア、西独はやはり六千円台、これに対しまして、イギリス等におきましては、税引きで約一万円というような数字が出ております。
  39. 岡田春夫

    岡田委員 小売り価格基準にしてお出しになるということも一つの統計として出されたのでしょうけれども、これは小売り価格ということになると、輸入したあとにおける企業利潤その他というものは当然見込まれるわけです。そうなってくると、その間において企業というものが独占企業になっておった場合には、利潤というものは非常に過大になってくるということも計算できる。私がさっきから申し上げておるのは、日本の国に入ってくるときには幾らになっているか。そういう面から石炭政策の面を考えませんと、独占企業がもうけただけの値段、それを含んで、それと比べてどうかということだけでは、日本産業を守るという点では必ずしも適当な数字だとは私は考えておらない。こういう点から言って、たとえば私が申し上げた原油輸入価格CIF価格日本の場合との違い、そのあとにあなたのおっしゃる小売り価格でいろいろな価格操作が行なわれる、そういう以前の段階は一体どうなのか、この点をもう少し伺いたいと思うのです。
  40. 両角良彦

    両角説明員 原油CIF価格は、大体国際的に見まして大きな差はないと思いますが、C重油輸入CIF価格というもので申し上げますと、わが国の場合は、キロリットル当たり約五千円でございます。これに対しまして、フランス等におきますCIF価格というものは、大体八千円前後と聞いております。
  41. 岡田春夫

    岡田委員 だんだんはっきりしてまいりましたが、フランスの場合と日本の場合比べて三千円違う、こういうわけですね。これは明らかに、あとで詳しく聞いてまいりますけれども日本ダンピング市場になっているということは明らかだと思うのです。そこで五千円に対して関税というものは大体どれくらいかかるのですか。
  42. 両角良彦

    両角説明員 現在原重油関税率は一二%かかるわけです。
  43. 岡田春夫

    岡田委員 それから日本石油会社の中で外資提携をやっている会社が非常に多いわけです。外国資本が入って外資との提携会社というのは非常に大きな割合を占めている、それが一体どういうようになっているか、あるいはまた、外国資本株式をどういうように取得しているのか、その比率が大体どういうようになっているのか、まあこまかい問題ですから要点だけでけっこうです。その比率だけをお伺いしたいと思います。
  44. 両角良彦

    両角説明員 現在、石油精製会社におきます外資が一〇〇%の会社は三社でございます。これに対しまして多少なりとも外国資本資本参加をいたしております会社は七社でございまして、全体の総払い込み資本に対する外国資本比率は、これら提携会社におきましては、四八%という数字になっております。
  45. 岡田春夫

    岡田委員 いまの点でも大臣おわかりのように、石油の面では外国資本に半分押えられておる。これはもうおわかりのように、これは株のぱくり屋ではないけれども会社の中で三割以上の資本を握られたのでは、その会社は握られてしまうわけですね。そういう点からいって、原油が非常に安く入ってくる。そしてさっき答弁の中でもお話のあったように、小売り価格までのマージンで非常に大きな利益を収奪する、そのことのために石炭産業が非常に苦しい状態になっている。  特にもう一点伺っておきたいのは、外資が四割八分も入っている石油会社の中で、これは自由に入れられないわけです。ひもつきで、そのワクで原油を入れてこなければならない。石油会社が自由にこの石油を輸入したいと思って輸入できる範囲というものは非常に狭いです。いま鉱山局長耳打ちをしておられますが、その自由選択度というのは大体どれくらいありますか。
  46. 両角良彦

    両角説明員 原油の自由購入の比率はおおむね二割というふうに承知しております。
  47. 岡田春夫

    岡田委員 これで大臣もおわかりでしょうが、石油会社の半分は外国の資本に握られている。石油日本会社が買いたくても自由に買えるのは二割だ。あとは全部外国資本で割り当ててくるのです。それによって、しかも先ほどから鉱山局長答弁されているように、原油では日本の国は三千円も安い、ダンピング市場として、フランスが八千円で日本が五千円ですから、鉱山局長首を横に振っておられますが、そういう点で三千円も違う。こういう外国資本の脅威のもとに日本石炭産業が壊滅させられていっているというこの実情をはっきり認識されなければならない。ところがこの答申にはこういう点は全然書いてないじゃないですか。この答申に書いてないで、日本産業はつぶれてもいい、そういう答申植村会長以下審議会の諸君はやったわけなんです。こんな案に賛成できるわけはないじゃないですか。それを通産大臣は来週の金曜日に閣議決定します、こんな案を日本産業のためにやったというなら、日本通産大臣というものは外国のために奉仕しているのですよ。日本産業のためにやっているのではないのですよ。これに対する対策閣議決定でどういう対策を新たにお出しになるのか、この点を伺いたい。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 いま鉱山局長から答弁いたしましたように、大部分は外国のひもつきな原油を輸入している。そういうことで、われわれとしても海外の油田開発などはこれからも非常に力を入れていきたい。共同石油ども育成したい。できるだけ日本が自由に買えるような割合を多くしていきたいという政策をとっていることは御承知のとおりでございます。  石炭のほうは、これはいろいろ言われましたけれども政府答申の中に盛られておる石炭の根本対策というものは、私企業としてこれを維持していこうという場合においては全くもう限界である。これを抜本策と言わなければほかに何があるか、私企業としての上に立ってこれ以上のことはできない。そういう点でいろいろ個々の問題については今後各方面意見も聞きながら、できるだけそういう意見も取り入れたいと思っておりますが、答申に盛られたその一つ石炭抜本策というものは、まさに抜本策だと私は思っている。これ以上のことは、何をやるか、これはなかなかやっぱりできない、こういうふうに考えております。
  49. 岡田春夫

    岡田委員 いや、あなたは閣議決定の中で外国石油資本に対する対策がないのをどうされるのですかと私は伺ったのです。これについて何だかちょっと御答弁が漏れておりますが、通産大臣は自民党の中では最も良識派の方なのだから、日本産業のためにそういう点は勇断的な政策をおとりになるのだろうと思うけれども、その点の明快な答弁を私は期待している。たとえば関税の問題にしても一二%、これは大体六百円前後、そういうものだ。ところが西ドイツの場合には六四年から廃止になっているけれども関税ではトン当たり九千五百円。そのかわりに六四年に廃止になった九千五百円の西ドイツの関税は今度は消費税で取りかえている。消費税の場合にもやはりそれ相当の金額の税で外国の石油が入ってこないように押えている。それによってそれぞれの石炭産業を守らなければならないと考えている。あなたがさっきからお話しになっているのは、つぶれるのはしかたがないのだから、これだけ安楽死のためにいろいろな金を出しているのだから、これ以上方法はないのじゃないか、こうおっしゃるけれども、外国の石油が入ってくるための具体的な政策を、関税はガットの関係やいろいろな関係でできないのだとするならば、消費税その他において日本の弱い産業である石炭産業を守るための対策通産省がやるのはあたりまえだと思う。こういう点について閣議決定で具体的なことを何かお考えになっているのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 今度石炭対策特別会計というものができるわけです。これは原油関税財源としてできるわけです。これはやはり石炭の問題を大きな総合エネルギーの見地から処理しようという考え方がこういう中にあらわれておるわけであります。したがって、このひもつきの原油などは一ぺんにということはできない。やはり年限をかけて、できるだけ自由市場から日本原油が買えるような処置をとらなければならない。これはやはり時間がかかる。いまこの石炭問題を解決するときに、この問題に根本的にメスを入れろといってもそれはできるものではない。やはり年限をかけてやらなければならない。石炭問題についてはいま言ったような全体のエネルギーという中において処理しようという考え特別会計という考えであります。しかもつぶれてもいいといって相当長期にわたって五千万トンという石炭確保しようというのですから、そういう意味から、国際競争からいってもエネルギーコストは安くつくようにということは、経済原則からいったら当然でしょう。しかし石炭産業に対してはいろいろな措置を講じながら長期にわたって五千万トン程度出炭確保しようということは、つぶれてもいいという考え方からはこういう政策が生まれてこないことは明らかであります。
  51. 岡田春夫

    岡田委員 何か通産大臣はお勘違いをしているのかどうか知りませんけれども石炭特別会計ができるから石油がどんどん減ってくるのだ、これは逆なんですね。そうでしょう。石炭特別会計ができて五百億なら五百億のワクができる。それだけでは石炭の場合に足りないから、その次は六百五十億にする。そのことは何を意味するか。重油をふやせばふやすほど、輸入をふやせばふやすほど石炭特別会計はふえるのですよ。あなたはそれによって減ってくるとおっしゃるけれども、それは逆なんですよ。しかもこれによって非常に明らかなことは——われわれ社会党も特別会計の案に必ずしも反対するわけではありませんけれども、先ほど御質問もありましたが、この特別会計財源が重油の関税基礎にしている限り、それだけである限りにおいて、当然重油をふやせばふやすだけ、それに見合って石炭のいわゆる経費が出てくる。ということは、あくまでも重油に従属して、石油に従属をして石炭政策考えていくということです。これは石油に対しての対策を講ずるのではなくて、石炭を押えつけて重油を伸ばすための政策ですよ、こういう形では。だからわれわれは一般会計の中からも入れなければいけないと言っておる。あとでいろいろ御質問いたしますが、現実に閉山の交付金とかあるいは一千億円の肩がわりの問題とか、こういう予算上の措置をとるなら、特別会計ではほとんど五百億をこえて新鉱開発とかビルドの関係に対する予算というものはないはずです。それでは重油をどんどん入れてそれだけの関税をよけいにしていままでの肩がわりとかその他の炭鉱あと処理をして、いわゆるあなた方の言う安楽死といいますか、そういう処理のためにだけ重油の処理の金を使って、ビルドの関係に対しては金はない、こういう関係になるのです。だから石炭特別会計がいまのような政府の発想でやっておる限りにおいては、石炭産業を守るものではない。これは明らかに重油並びに石油を守る政策である。石油をもっと輸入しろという政策ですよ、あなたのおっしゃるのはさかさまですよ。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 私は全然あなたと考えを異にする、違う。それは、ここで、これだけのエネルギーの非常な革命といってもいい変遷の中にあって、相当長期にわたって五千万トン程度出炭確保しようという、これは棒ぐいを立てたわけですから、いろいろな変遷があっても、これだけは、やはり低廉なエネルギー源を供給するということは、国際競争の上からいってもこれは当然に一つのプリンシプルであることは間違いない。そればかりではいかぬ。石炭産業をある程度維持していかなければいかぬということで、国民経済全体の考え方の中でエネルギーコストだけではいけないのだということで、長期にわたって五千万トン確保しよう。これはやはり石炭を守っていこうという考え方からいろいろな財政の肩がわりとか特別会計が出てきたのであって、それは石油から出た発想法ではない、石炭から出発したものである、こういうふうに考えております。
  53. 岡田春夫

    岡田委員 それではあなた、五千万トンの棒ぐいを立てて何年守れますか。あなたと政治責任をかけてはっきり約束し合おうじゃありませんか。三年守れますか。五年あるいは十年とおっしゃるけれども、私は三年守れるかどうか心配しておるのですよ。五千万トン守れますか、確信がありますか。おそらくこのあと状態では、閣議決定で閉山の交付金というものは二千円になる。そうすると閉山の希望がどんどん出てくる。そうすると半分以上の中小炭鉱あるいは大手の炭鉱でもつぶれる。五千万トンなんか確保できないですよ。炭鉱においては閉山ムードというものが出てくる。三千万トンか四千万トンのような状態に、一時的には壊滅状態になってきますよ。そういう非常に危険な状態だから、われわれはこの答申について心配をし、伺っておるのです。あなたは五千万トンの棒ぐいを立てたのだから五千万トン守れる、さっきあなたは十年間は大体守れるとおっしゃいましたが、ほんとうに守れますか。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ審議会では五年ということでやっておるわけであります。しかしわれわれは、いろいろな情勢の変化もありましょう、しかし政府政策的な意図としては、長期にわたってそれくらいの石炭確保することがやはり地域経済、いろいろな雇用問題から考えて好ましいものだと考えておるわけであります。だからこれはやはり五千万トン程度出炭というものは長期にわたって確保したいというのが政府政策的意図であることは申し上げてよかろうと思います。     —————————————
  55. 野田武夫

    野田委員長 この際、山手労働大臣、塩見自治大臣及び海部労働政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので順次これを許します。山手労働大臣
  56. 山手滿男

    ○山手国務大臣 今度労働大臣を拝命をいたしました。いろいろ皆さん方の御協力をいただいてうまくやっていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  57. 野田武夫

    野田委員長 塩見自治大臣
  58. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 今回自治大臣を仰せつかりました塩見俊二でございます。参議院出身でございますので、皆さん方に直接に御指導いただく機会がいままでわりあいに少なかったわけでございますが、今後は委員公等を通じましてそういう機会がきわめて多いことでございますし、特によろしく御指導を賜わるようにお願い申し上げたいと思います。  この産炭地の問題につきましては、地方財政のたてまえ上、また産炭地のまことにお気の毒な状況等から考えまして、非常に強い関心を持っておるわけでありまして、国のほうとも御相談申し上げまして、できるだけ国のほうでめんどうを見ていただき、また地方団体として、地方財政として関与する問題につきましては、あるいは起債、交付税その他あらゆる手段を通じましてできるだけ地方団体の負担にならないように、産炭地がうまく振興されていくように努力をいたしたいと思いますので、この点もあわせてよろしくお願いを申し上げたいと思います。  一言ごあいさつを申し上げる次第であります。(拍手
  59. 野田武夫

  60. 海部俊樹

    ○海部説明員 労働政務次官に任命されました海部俊樹であります。一生懸命勉強いたしますから、よろしくお願いします。(拍手)     —————————————
  61. 野田武夫

    野田委員長 引き続き質疑を続行いたします。岡田君。
  62. 岡田春夫

    岡田委員 大蔵大臣お急ぎのようですから、大臣ちょっと伺っておきたいと思うのですが、近いうちに閣議決定で閉山関係閣議決定はとりあえず年内にやる。それに基ずく予算措置というものが当然必要になってくる。こういう点について大体われわれが聞いている限りでは、閉山関係の所要経費は一千五百億くらい、もちろん予算措置の問題と金融の措置の問題と、いろいろあるでしょう。こういう点についてどういうようになっておりますのか、これはいま交渉中であろうと思いますので、まずそういう点についてもひとつ経過をお話しいただきたい。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 答申が出ましたので、この答申政府としては検討いたしておるわけです。この答申をどういうふうに扱うかにつきましては、ただいま通産大臣からお話がありましたように近く閣議においてこれを決定する。政府方針がきまりますれば、一つ一つの山につきましてその再建計画が立てられるわけであります。その再建計画には答申をどういうふうに扱うかという閣議決定、これが一つ一つ織り込まれてまいる、こういうことになる。それを取りまとめて、予算化する、こういうことになるんですが、まあ大体四十二年度予算においてこれを実行する。それ以降引き続いてやる、かようなことに心得ております。
  64. 岡田春夫

    岡田委員 大体四十二年度に本格的な問題がありますけれども、閉山の関係は年内にやりたいというのが、この間委員会での質問に対する答弁で次第に明らかになっているわけです。そういう関係の予算は当然お組みにならなければならないわけです。そういう点についてはどうなっているのか伺いたい。
  65. 井上亮

    井上説明員 今後の閉山の見通しにつきましては、私ども実は本年度の予算を組みますときには、大体本年度二百万トン程度の閉山があるであろうという想定のもとに本年度の予算を組んでおるわけでございますが、実際にふたをあけてみますと、四月以降閉山の申し込みがほとんどございません。これはおそらく、昨年年末に出ました中間答申におきまして、今後の閉山に際しましては、従来閉山に伴いましての退職金も十分出ないとかいろんなことのために円滑な閉山ができない、したがって、円滑な閉山ができるような措置を講ずべきだという中間答申が出ておりますので、おそらく本答申におきましてはその閉山交付金の引き上げ等が行なわれるだろうというような想定があったためだろうと思いますが、今日まで申し込みがほとんどございません。したがいまして、私どもとしましては近く政府部内でいろいろ打ち合わせしまして、閉山交付金をどの程度に引き上げるかというような点を明らかにいたしまして、その前提のもとにまあ大手、中小を問わず、閉山の申し込みといいますか、希望といいますかが、どの程度、どういうような姿になるかというような調査をいたしたい。目下のところ、閉山をしたいという希望も私ども一部聞いておりますけれども、全般的にはそう大きな閉山はいまのところ考えられていない。しかし、交付金を引き上げました場合に、本年度になりまして予想をくつがえしてほとんどないという姿がどうなるかという点についてさらに検討したいというふうに考えております。
  66. 岡田春夫

    岡田委員 いまちょっと伺っておったら最後にわからないことが出てきたんだが、どの程度引き上げるかということを何度も何度も繰り返されたのだが、それでは答申の中の八百円引き上げではなくて、六百円引き上げとか、五百円引き上げぐらいに政府はしようという腹なんですか。そこら辺をはっきりしておいてください。
  67. 井上亮

    井上説明員 答申におきましては、現在交付金の単価が平均的に見まして千二百円程度でございますが、これを二千円程度に引き上げるというふうに書いてあります。なお、それだけではなしに、いわゆる加算交付金といいますか、これをやはり配慮すべきである。加算交付金につきましては、答申には金額はうたわれておりません。したがいまして、そういった点を明確にいたしたいというふうに考えております。
  68. 岡田春夫

    岡田委員 局長、わかっていることは言わなくてもわかっているんですよ。八百円というのは二千円から千二百円引いたら八百円なんで、——私はさっきからどの程度、どの程度とあなたがおっしゃるから、八百円も引き上げないのじゃないかという意味であなたは言っているんじゃないかと言っているんですよ。千二百円を千五百円ぐらいでごまかそうという腹じゃないかということを聞いているんですよ。あなたがどの程度どの程度と何度も言うから答申よりもっと格下げでやるのではないかということを聞いているのです。格下げ——二千円以上になるのですか、以下になるのですか。これだけはひとつ伺っておきたい。
  69. 井上亮

    井上説明員 正式には今後大蔵省と打ち合わせをするわけでございますが、少なくとも答申を作成する過程で、最終的ではありませんが、私どもこれはいわゆる審議会の事務局の立場でなくて、政府立場でもいろいろ側面的に一応大蔵省と打ち合わせておるわけでございます。とりあえずトン当たり現行の千二百円は二千円には引き上げたい、それにプラス、加算交付金を加えたいというふうに考えております。
  70. 岡田春夫

    岡田委員 大蔵大臣行かれるのにそっちに話が飛んじゃったらいけないから戻りますけれども、財政措置の前に金融の措置というものを非常に積極的にやりませんと、ビルド関係のあれもストップしてしまうわけですね。ところが今月の初め、先月の末ですか、全国銀行協会連合会、ここが石炭企業再建の抜本策といっている答申について、理事会を開いて対策を講じた。ところが、こういうようなあぶない企業状態ならば体制金融はできるだけやめてしまおう、構造金融でいこう、選別融資というものをできるだけ強化していこう、こういう方針を金融機関が大体理事会できめたわけです。そうすると答申の趣旨と全く反することになってくるわけです。答申では、こういう点は融資懇談会でもつくって、その中でできるだけ市中銀行の金融を緩和するように努力しようといっているんだが、その当事者である全国銀行協会連合会では、むしろ締めつけていこうという態度をとっている、こういことについては、指導官庁である大蔵省としては、何らかの措置をおとりにならないと、通産省がどういうことを言っておりましても、実際問題として金融は非常に逼迫してくると考えざるを得ないわけです。大蔵大臣が先にお帰りになるから、この点だけは私一つ伺っておきたい、率直な御意見をひとつお漏らしいただきたいと思います。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度の石炭鉱業審議会、これの経過については率直に申し上げまして、一々金融団体と連絡がとれていなかった。そういうようなことで金融団体側の本件に対する理解というものが十分でないということは、私は率直にそう申し上げられると思うのです。しかし答申が出て、これをよく御理解願うようにつとめております。先ほど申し上げましたが、これを実行するにあたりましては、一つ一つの山につきまして再建計画を立てる。その中にその再建の重要な要素として今後のビルドをどうやっていくかという問題ももちろん含まれているわけであります。この方面は、政府金融ももちろん参加します。しかし市中金融もこれまた参加するわけでありまして、いま御指摘のように懇談会も設けまして、この一つ一つの山の再建に金融機関がどういうふうに協力していくか、これは一々詰めた上で再建計画は決定したい、こういうふうに考えておるわけであります。大蔵省としても、事がきまりました以上は、全力をあげてそういう方向に運営をやっていきたい、かような考えであります。
  72. 岡田春夫

    岡田委員 私まだほかの質問がずっとありますけれども関連質問がありますので、しばらくかわります。
  73. 野田武夫

    野田委員長 滝井義高君から関連質問の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  74. 滝井義高

    ○滝井委員 三、四点、大蔵大臣だけにしぼって関連さしていただきたいのですが、まず第一にいまの金融の問題についてであります。  御存じのとおり、答申の具体化の過程で、融資にあたっては銀行とそれから石炭業者との間に懇談会をつくることになっておるわけですね。ところが、これは銀行側から言わせると、いま岡田さんも指摘しておりましたが、商業ベースでやることになるわけです。そうしますと、現在ばく大な貯炭をかかえて、あらゆるものが担保に入る。しかし千億の肩がわりをしたものは担保を抜いてくれるかと思ったら、抜いてくれずにそのまま銀行が持つ、こういうことになっているわけです。そうしますと、千億の肩がわりをとって銀行が食い逃げをするという形が出てくるわけです。最近の融資の状態をごらんになると、政府資金がだんだん比重が多くなって、市中銀行の炭鉱に貸す金は非常に比重が少なくなってきつつあるわけです。そういう中で、千億の肩がわりをやってもらって、担保は抜かずにそのままになりますと、これは金融がつかなくなるわけです。これを一体具体的にどうつけるかということをここでやはり説明をしてもらわないと、どうにもならぬわけです。千万トンをこえる貯炭が現在あるわけでしょう。そうして盆にあたって中小炭鉱なんかは資金繰りに四苦八苦しているというこういう客観情勢もあるわけです。だからもう少し具体的にやってもらいたいと思う。というのは、千億の肩がわりをもらおうとすれば、これは十年以上採炭するだけの石炭がなければいかぬわけです。同時に再建整備計画をつくらなければならぬ。再建整備計画をつくるときには、鉱区の総合調整やそれから資産の処分、同時に銀行との話し合いをした資金計画というものを持ってこないと、ケース・バイ・ケースで個別の山を調査する。銀行と一緒に話がついたということを石炭山が持ってこないと、いわゆる肩がわりの経営基盤安定の方向には乗らないわけですよ。それを乗せるについては何かこれは大蔵省の銀行局なりがてこ入れをする、石炭局が銀行にてこ入れをしないと食い逃げになる可能性がある。この点をもう少し具体的にここでまず指摘をしてもらいたいと思うのです。大蔵省としてどう一体それに対策をとっていくのか。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 本件も答申のようにやっていくということになりますれば、いままで銀行は石炭融資につきましてはずいぶん頭が痛かったと思う。これで石炭鉱業は一体どうなるのだろうか、こういうことでありますから、その債権の確保につきましてもずいぶん心配しておったと思う。ところが今回、とにかく一千億円の肩がわりが行なわれる、また安定補給金も山によっては出る、こういうことになり、一般論として将来の石炭企業に対する見通しというものが非常に明るくなり、銀行としては金融の立場から非常に楽な気持ちになってくるということは御想像にかたくないところであろうと思うんです。  さて、それじゃ一つ一つの山について一体どういうふうに当てはめるか、こういう問題になりますると、これは一つ一つの山の再建計画を立てるその過程におきまして、将来の融資計画をどういうふうにするかという数字が出てきます。それに応じまして銀行にも相談をする。銀行は、ただいま申し上げましたような楽な気持ちになりましたから、融資に応ずる体制というものが整っておる、こういうふうに見ておるんです。まあ一つ一つ十分うまくやっていきたい、かように考えております。
  76. 滝井義高

    ○滝井委員 この答申の中で、市中銀行に対する歯どめらしきものが何かあるかということをさがしてみますと、いまの肩がわり資金千億をもらう場合に再建整備計画を立てる。その再建整備計画の中に、銀行と相談をしてこいという、これだけなんですよ、歯どめらしいものは。それ以外にないですよ。そうすると、この政策は、石炭山と銀行とどちらが一体手厚い保護を受けるかというと、石炭山よりか銀行のほうが手厚い保護を受けておるわけです。しかもその歯どめは、いま言ったように、この再建整備計画をつくってくるときに銀行と相談をしてこいという、たったこれだけの細々とした歯どめというか——大臣の言うように七千三百億の国債を出す、その国債は建設国債だ、市中消化だというような、こういう歯どめよりかもっとこの歯どめは弱いですよ。だから、もう少し政府としてここらあたりをきちっとしておいてもらわないと困る。  じゃ、ちょっとその前に一つ聞いてみますが、井上さん、一体いま石炭山がことし返さなければならぬ金は幾らありますか。ことし銀行に返さなければならぬ金は幾らで、ことし借り入れられる可能性のある金は一体幾らですか。それをやってみたらわかる。石炭山が返す金というのはすぐわかるでしょう。
  77. 井上亮

    井上説明員 いま手元に正確な資料がありませんけれども、大体五年間に借入金の返済金額は千八百億円ぐらい。ですから五で割りますと大体三百億以上くらいになろうかと思います。それで借りる金は、大体毎年三百億ないし四百億程度、運転資金含めまして……。大体そういう状況でございます。
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 大手十七社で今年に返済する金は四百億ですよ。そうして開発銀行や合理化事業団の政府関係から借り入れられる金は百七十億です。そうしますと、四百億返して百七十億借りるのですから、そこに二百億以上の金が不足するわけです。この金を今年四十一年度にすぐ目鼻をつけてやらなければいかぬわけです。ところが一千万トンも貯炭があって見通しがまだついてないでしょう。これを一体どう見通しをつけるかということが、四十二年度政策が円滑にいくかいかぬかという境目になるのですよ。これはまだ見通しついていないのです。これを一体どうつけるかということですよ。四十一年度のいま言った二百四、五十億の不足の財源——これは運転資金なり設備資金がこれだけ必要なんです。これを一体どうつけていくかということが問題なんです。これはまだ何も明らかにされていないのですよ。まずことしからかためていってはじめて来年のことが言えるわけで、そうしないと、ことしをかためずに来年のことを言えば鬼から笑われる。鬼から笑われないためにはことしかためる必要があると思うのです。それは一体どうするのですか。
  79. 井上亮

    井上説明員 ただいま滝井先生から御指摘がありましたように、本年度石炭鉱業の不足資金は、私どもいま調査している段階でございまして、まだ正確には見通しを立てておりませんが、一応の中間的なデータによりますと、大体不足資金は二百億程度というふうに考えております。それで、これをどうするかということでございますが、この二百億というのは年度末までの資金の総合計でございます。マクロ的な不足資金でございますので、さらに私ども、現在調査を続行しておりますが、九月末程度では一体どの程度の不足資金が、緊急充足を必要とするか、さらには年末にどの程度の資金の充足を必要とするか、あるいは年度末にどうかというような調査を現在引き続いて行なっております。マクロ的に見ますと大体二百億余りというふうに考えております。  この対策につきましては、ただいま申しましたように、現在鋭意精力的な調査をやっておりますので、これとともに、まあこれは八月中になろうと思いますが、実は全銀協等におきましても、私どものほうへ向こうから積極的に連絡がありまして、石炭関係につきましては、ぜひ懇談会を持ちたい、常時意思の疎通と懇談の場を持たしてもらいたいと、逆に全銀協からそういう申し出もございますので、私どもとしてはぜひ、これは私どもも希望することでございますので、そういった場を通じまして、今後下期の金融につきまして万全を期す努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 御存じのとおり、石炭山は担保物件というのがもうないですね。優良炭鉱以外は。結局、担保物件がないとすれば、設備資金その他の繰り延べをやる以外にないわけです、もし資金が入らなければ。それか債務の繰り延べをやるか、それからスクラップを繰り上げるか、それ以外に方法がないわけです。だから、いまのような二百億の資金の不足については、やはり大蔵大臣としても、銀行局をして通産省相当協力をさしてやらないと、いま政府関係の金融が六割で、市中銀行が四割になっているのです。これを市中銀行が千億の肩がわりをどんどんもらって、逃げ始めたらもう処置なしです。全部政府でまかなわなければならぬことになる。そうすると、それは他の財政投融資に影響を及ぼしてきてどうにもならなくなるわけですから、この点は大臣、明確に、協力するかどうか言明をひとついただいておきたい。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま御指摘の問題につきましては、通産省でいま非常に苦心をいたしておる点でございます。大蔵省としてもできる限りこれに協力して遺憾なきを期していきたい、かように考えております。
  82. 滝井義高

    ○滝井委員 次は、岡田さんの質問にやはり関連しますが、これは関税の、いわゆる特別会計の問題です。この答申をごらんになると、この特別会計というものの財源が明確でないですよ。どう書いているかというと、答申の、この印刷の六ページをごらんになると、「現行原重油関税率(一二%)のうち、昭和三十八年四月に新たに課された暫定分については、本年度限りの措置とされているが、総合エネルギー政策のなかにおける石炭対策の重要性にかんがみ、われわれは、来年度以降においても、これを延長することを要請する。」と書いておるだけなんです。いま岡田さんと三木大臣の間に五年論、十年論がありました。一体何年、大蔵省としては延長するのですか。
  83. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは石炭鉱業特別会計、この特別会計が四十二年度から発足するわけですが、その収入、支出、その額を突きとめてみないことにはわからない問題なんです。いまこれからいろいろ作業が始まり、一つ一つの山の処理がきまっていくわけでありますが、それらを集計して、それに対する財政措置、それから従来のいろいろな石炭対策、こういうものを総合いたしまして、どれだけ必要であるか、こういうことになってくるわけであります。それに対して一〇%で足りるのか足りないのか、こういうような問題が起こってくるわけでありまして、ただいままだきめておらない、かように御了承願います。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 それは了承できないです。来週に閣議決定しようというので、きょうになれば数字が詰まるであろうというので、きょう開いたわけです。そうしたら、その特別会計財源を、重油関税の一二%のうち暫定分でまかなっていきます、それは一割ですということをここで言っている。一割というのはどのくらいだ、四十二年度は五百億あります、こういう言明が石炭局長からなされておるわけです。そうしますと、一体これからだんだん油はよけいに入ってきますから、さいぜんの総合エネルギー政策の中に七割とか七割五分を占めるわけですから、この四十二年度の五百億は先に行けば行くほど太ってくるわけです。六百億とか七百億とかになってくるのです。一体そうすると、何年これを延長するかということによって——一割というものがコンスタントであるならば、それから先は掛け算をするほうの油の輸入量がふえれば財源はふくらんでいくわけですから、おおよその見通し財源の総和が出るわけなんです。その総和があって、初めて具体的な石炭政策というものがきまってくるわけです。一年だけじゃきまらないのです。一年だけの見通しでは、これはわれわれは不安定だから了承できない。だからここでこれを来年度以降において延長するということが要請され、三日には関税審議会を開いておるわけです。そこで議論をされたはずです。だからこれをどのくらいやるか。三木さんなり大蔵大臣、ここで言明できなければ——来週になって閣議決定しますその財源の総ワクは、少なくとも、長期と言えば十年ぐらいだと言ったから、十年の総ワクはどの程度でありますと言ってくれなければ、産炭地は薄氷を踏む思いですよ。これをひとつ言ってください。こんなことをきょうのいまの段階になって言えないというようなことはない。昨年の暮れに中間答申を出しておって、その方向を示して、そしてしかも今度は閣議決定をする段階になって、それさえ言えないなんというばかなことはない。これは財源特別会計をつくることははっきりしておるけれども、その袋の中に重油関税の一割というものを何年間入れるかということがはっきりしてもらわぬことには話にならぬ。明らかにしてくださいよ。
  85. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは滝井さんのせっかくのお話ですが、ちょっと無理な御注文で、予算はこれから年末までに逐次積み上げていくのです。そんなこまかい三%だ、何だという、どうするかというところまでいまはきめておらないのです。それをどうするか。今日の段階では、その点については答申の線を尊重していくというほかはないのでありまして、今後適当な機会にこれを明らかにする、こういうことで御了承を願います。
  86. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば、一体五百億というのは、どうやって言うのですか。一割の五百億です、とこういうこと、それを持っていきます、こういうことだったでしょう。この前の審議会委員皆さんもそういう趣旨の答弁だった。したがって、これを何年延長するかを明らかにしなくて石炭対策を論ずることは、これはナンセンスですよ。われわれはまるっきり群盲象をなでる形ですよ。暗中にほうり出されたようなかっこうです。そんなばかなことはないですよ。だからこの前私はここを詰めなければならぬのだったけれども数字が固まらぬだろうというので遠慮をしておったわけです。しかし来週閣議決定をするとき、この原重油関税の暫定案を何年延長するかということさえきまらぬようでは、これは話にならぬですよ。これをひとつ言明してくださいよ。まず三木さんがはっきりしなければいかぬですよ。三木さん、あなたとしては、何年やるのですか。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 これは適当な機会にはっきりしますよ。いま滝井さんは、これは十年、どのくらいになるのだというお話で、やはり原油の輸入がわかるからこれは自然に出るわけです、今年度特別会計の規模というものは。政府はあれを尊重するというたてまえですから、特別会計をつくることになると思うのですが、やはりそういうところからあの答申が出たということで、答申を一体政府がどう取り扱うかということは、今後の閣議決定に待たなければならぬ。われわれもあれを尊重しようと思っておりますが、適当な機会には数字が出てきますから、いまここで十年、長期にわたってどうだと言うことは、適当な機会だとは私は思わない。これは閣議決定でも済んで、そしていろいろ予算編成ともにらみ合わせて、それで金額は、これは当然出ますよ。何も隠れたものはない。原油の輸入とかければそれが特別会計財源になるわけです。
  88. 滝井義高

    ○滝井委員 三木さん、簡単にあなたはそうおっしゃるけれども、これが一番扇のかなめなんですよ。かなめがなかったら、扇にはならないのだから、そこをこれはとりあえず五年延ばすか十年延ばすか三年延ばすか、それさえ言えなくて、石炭政策長期のものをやるんだと、長期とは岡田君、それはもう十年をこえるものだと、こう言明しておって、じゃ一体油のほうの関税は何年延長しますかと言ったら、それはまだ君わからぬというのでは、何のためにいままで質問しておったかわからぬじゃないですか、それじゃ。この答申にはちゃんと延長しなさいと書いておる。だから政府がそれを何年延長するかを明確にしなかったら話にならぬ。井上石炭局長はここで来年度は五百億になりますと、こう言っておる。しかもそれは一割二分の中の一割をこれに持っていきます、石炭対策に持っていきます、こうでしょう。二人どっちも実力者でしょう。次の総裁背負う人がこんなことわからぬでどうしますか。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 滝井さん、これは手続として関税審議会等にもはからにゃいかぬですよ。われわれとしては。これはむろん一応答申も五年という期間で出ておるわけですよ、これはいま岡田君には少なくとも十年くらいはと、こういうことで考えていますが、とりあえずは五年ということでいっているのですから、われわれとしては、通産省立場としてはそれくらいの、やはり一つの暫定期間というものはそれくらいの期間考えておるのだ、関税審議会にかけなければならぬ、政府閣議決定も要るし、そういうことでこれは隠す必要は何もないわけです。
  90. 滝井義高

    ○滝井委員 通産省としては十年にしたいところたけれどもまあまあ五年ぐらいだ、こういうことです。そうしますと、御存じのとおりケネディラウンドですね、関税の一括引き下げの問題が出てきているわけです。これはもしたとえば五年とした場合にはこういうものに影響されずに、この重油関税についてはやはり一割だけはずっと政府確保していくという腹がまえはありますね。これは非常に国際問題が出てくるのですよね。この点ひとつはっきりしておいていただきたい。これは財源を使うほうになりますと、ここのもとの入ってくるところが不安定ではどうにもならぬ。日本の外交国際的にちょっと弱いところがあるから、ケネディラウンドなんというアメリカの名前が出てくるとよろめくおそれがあるから、ここはきちっとひとつそういうものが出てきてもだいじょうぶという、いわゆる井上石炭局長が言ったように四十二年度は五百億、それから四十五年度になると六百五十億になるそうです、いまの状態をずっといくと、大体大まかな数字でいくと。だから、したがってそれが関税の一括引き下げその他によって国際的な石油資本が日本ダンピング市場としてどっとどっとやってくる、そして政治的な圧力をかけて関税下げいなんといってよろめいたら困る。だからそうでない、それはそういう場合があってもこれはいまの一割は維持していく、こういうひとつ腹がまえだけは明らかにしておいてもらわなければいかぬ。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 国際的にもこれはケネディラウンドの今後の交渉によるわけですが、国際的にも日本石炭鉱業の直面しておる困難な状態、これを理解をしてもらうことに努力をして、これを確保したいという考えでございます。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 これで大体およその腹づもりはわかった。福田さん黙して語らずだけれども、沈黙は金よりとうとい場合があるから、一応三木さんの五年というものについては暗黙の了解みたいたものができたとこう思って、以心伝心でですね。  そこで、問題は、ほんとうはきょう聞きたいのは、この前ここで産炭地の公共事業はこの会計でまかなわないということを言われたのですよ。その公共事業ということの中に鉱害は入るのですか。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 公共事業の中には石炭関係に特に関係の深い鉱害関係は入りませんです。
  94. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、鉱害関係もその一割の特別会計の中でまかなっていく。そうすると自民党のほうで党議か何か知らぬが決定したものの中によると、産炭地振興と鉱害と、それからことし電発の二基、それからやがて先に三基つくりますね、こういうものはこの石炭特別会計以外にせい、こう言っているのですよ。この自民党の党議と内閣の方針はちょっと違うようですね。そうすると産炭地振興といまの電発の二基、将来つくるであろう三基分入るのですか、これは。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 それらはこれからだんだんと固めていく問題なんです。いまの電発の問題なんというのはボーダーラインにおるデリケートな問題でありまして、これからだんだんと年末までにきめていく、こういう考えであります。
  96. 滝井義高

    ○滝井委員 それから井上石炭局長は一割というのは五百億程度だという、そうすると、ことしずっと当てはめてみますと五百億を上回るのですよ、この前審議会委員答弁したのを私書いていますがね。たとえばことしの予算の石炭対策関係、非常に広義のものもひっくるめて、利子補給まで入れて二百四十億ですね、ことしの予算は。そうすると、抜本策の肩がわりが百二十億ないし百三十億というのが審議会の平田委員答弁です。それから安定補給金が百円としたら二十五億ないし三十億、だからこれは五千万トンにみな全部出すとすれは、五十億になるの、だけれども、二十五億ないし三十億を百円出すとすると二千五百万トンか三千万トンしか出さないということになるわけです。これはこの数字で逆に出てくる。そうするとあと鉱害とそれから整理促進交付金、千二百円を二千円に引き上げる、あるいはプラス二百円ないし四百円というものが出てくるわけです。それから電力と鉄鋼に負担増対策としてやるわけですね、これはことし五十四億を出しております。来年は五十四億よりもっとふえますよ。そういうものをずっとことしのベースで加えていくと五百億をこえて五百二、三十億になる、ところが鉱害なんかは四十二年から四十六年までに、いまの安定鉱害の六百七十億全部やるというと百三、四十億平均やらないとできない。ところが実際ことしはそれだけの予算要求をしていない、八十五、六億しかしていない、これではとても産炭地はがまんできない。だから、こういうことになりますと、いま言った四十二年度の五百億のワクではまかなえないので、外に出せ外に出せというのが出てくるのです。この中におると窒息してしまうぞとこうなる。だからそういう外に出してだんだんいっておると、事がややこしくなって、石炭政策というものが乱れるおそれがあるから、そこで先になると、四十五年になると、いま言ったように財源が六百五十億になる、いまの計算でいっても六百五十億になる。これを繰り上げるということが一つの方法だし、あるいは足らぬものは一般会計から入れてくることも一つの方法です。しかし一般会計から入れることは特別会計をつくった意味がなくなるから、繰り上げて使うということが一つの方法なんですね、繰り上げて使わずにいい方法があればなおいいのですが、そういう弾力的なものの考え方を佐藤総理はやりますという言明をしたのだが、大蔵大臣はだいじょうぶでしょうな、その点は。
  97. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは予算は単年度主義でありますから、これを基本的に変えるわけにいかぬ、しかしこの対策は五カ年間を見通しての対策になると思います。ですから五カ年間の大体の外貌というものをつかんで初年度をきめていかなければならぬ、こういうことになると思うのです。ですから、そういう運営上の問題としてはやはりこの年度間の彼此調整というような配慮も当然加えられていくべきものだろう、こういうふうに思っておるわけです。五百億こえるという話ですが、五百億こえますかこえませんか、これはもう少し積み上げてみなければわからない。しかし理論的にはただいま申し上げたような方向で処置したい、こういう考えでございます。
  98. 滝井義高

    ○滝井委員 それでは弾力的にある程度やれるそうですから、これを一つ最後で終わりますが、あの石炭山の離職者を雇用した事業主に住宅確保奨励金というものを出したのです。そしてその住宅確保奨励金をもらった事業主は、住宅確保奨励金に税金がかかってきたのです。そこでびっくりしてきて、このころからそれは税金がかからないようにたぶんしてもらったはずです。  そこでお尋ねしたいのは、そういう過去にあやまちがあったので、今度出す安定補給金あるいは千億の肩がわりを一年百二、三十隠してきます。そうすると、それだけ企業は金をもらうことになるわけです。すなわち帳簿面においては収入がふえてくるわけです。この安定補給金や肩がわり資金に税金をとることになるのかどうか。最近田中彰治問題なんかやかましい問題が出ております。だからきちっとしておかぬと、あとになって石炭山が脱税しておったなんといわれては困る。これは一体税金をかけるのかかけないのか、明らかにしておいてもらいたい。これは住宅確保奨励金に税金を国税庁がとってしまったのです。そこで、これは詐欺だ、炭鉱労働者を雇わして税金をとるとは何事だ、国はわれわれをだましたといって、逆に国が詐欺呼ばわりされたのですよ。だから今度は安定補給金なり千億の肩がわりをしてやれば、それだけ収入が石炭山には出る。ところがこれが税金をとられた日には石炭山はたいへんなことになる。税金をとるかとらぬか。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 なかなかむずかしい問題ですが、これは現実の問題とすると、赤字の山に対しまして国家が助成する、こういうことになりまして、したがって、助成を受けてもなお赤字だという状態のものが多かろう、こういうふうに思います。したがいまして、法人税の問題というものは起こらないのが通則だろう、大手の山は大かたそうだろうと思うのですが、ただ中小の場合に多少黒字になるものが出てくる、こういうことになると思いますが、その辺はまたよく検討いたしまして、支障のないようにいたしたい、かように考えます。
  100. 滝井義高

    ○滝井委員 あとになって間違いのないようにしていただきたい。
  101. 野田武夫

    野田委員長 多賀谷君。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がないそうですから、金融それから財源についてはすでに質問がありましたから重複を避けて、一点だけ質問したいと思います。  今度の肩がわり方式というものについて、肩がわりを受けました企業は、その肩がわりのいわば元本返済の分については、一体企業は債務として残るのですか、残らないのですか、大蔵大臣はどういうように御理解になっているのですか。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 一応これは補給でありますから債務としては残らない、しかしながら、あとでこの山がりっぱに立ち行くということになった場合に出世払いという形でお返し願う、かように心得えております。
  104. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 自民党は炭鉱私企業でおやりになるわけでしょう。私企業というのは、永遠に配当をしないような企業私企業として成り立たぬわけです。私企業ですから当然将来に向かっては配当をすることを予想しておるわけです。ですから私企業としておやりになる以上、出世払いといっても債務として残るわけでしょう。それは大蔵省は、金を一応支出したから当然公債の場合のように返済を予定しないかもしれないけれども企業としては将来やはり配当をしなければならぬ。企業を続けて益金を出すためには、これは債務として残るわけでしょう。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 債務としては残らないのですが、いわゆる出世払い——補給をしてそれで打ち切りになるわけですね、しかしながら、出世をいたした場合にこれを返済するという債務があとで新たに生じてくる、こういうふうに御理解願います。
  106. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはむしろ大蔵省が、現在大体トン当たり五百円の赤字だ、こういわれたときに、公債肩がわりで借金として残せば二百円程度、一応元本返済の肩がわり方式をとり、債務として見ないということになれば四百円程度の赤字が解消するという理論を立てて補給金のほうを削ろうとして作った理論ではないのですか。日本政策で出世払いなどという政策がありますかね。これは全く私はごまかしだと思うのですよ。ですから大蔵省としては、あなたのほうはその会計から出されますから、なるほどそれを将来財源に充てていろいろ予算を組むということはないかもしれない、しかし企業として、それはもう支払いの済んだものとしてどんどん企業会計をやっていいかどうか。企業会計はやはり債務として残るでしょう。債務として残ったならば、結局トン当たり四百円の赤が消えるということにならないのですよ。ですから、通産大臣にはあとから質問をいたしますが、大蔵大臣は時間がないそうですから、大蔵大臣はどういうように判断をされているか。これは全く数字の魔術ですよ。
  107. 福田赳夫

    福田国務大臣 債務としてこれが残るということになりますれば、これはその山が赤字になろうがあるいは行き詰まろうが、債務は債務で残っておって、政府はその取り分を主張しなければならぬ。しかしこれはそういうことはしないのです。そういう意味合いにおいてこれは国の債権ではない。しかし、将来この山が立ち直って活発に動ける、収益状態がよくなったという状態になりますれば、そこで政府に対して出世払いとしてこれを返済する、こういう債務を生ずる、こういう状態なんです。これは非常に異例な状態でありますが、さように御了承を願います。
  108. 岡田春夫

    岡田委員 関連して。大蔵大臣、それじゃ法的関係はどうなるのです。あなたは出世払いの権利義務をいまからどういうようにしてきめておくのですか、それをちょっと聞かしてください。
  109. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは法的に整理をいたしまして、いずれお答えをする機会を得たいと思います。
  110. 岡田春夫

    岡田委員 というのは、いまではわからないというわけですか。
  111. 福田赳夫

    福田国務大臣 つまりいまお尋ねが、出世払いというのは法的にどういうふうに理解するのかというから、その出世払いの法的理論につきましては、後ほどお答えする、こういうふうに申し上げたわけであります。
  112. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっと念を押しておきますが、あなたは債務じゃないと言ったのです。債権はないと言ったのでしょう。債権債務がないのに何年かして出世払いでどうやって権利の発生があるのですか。権利義務がどうやってできるのですか。そんなものは何ぼ整理したってできないですよ。
  113. 福田赳夫

    福田国務大臣 かりにこの措置の対象となった山が行き詰まる、こういう際にもし債務が残っておるとすれば、その山の処置について国は債権の主張をしなければならぬわけであります。しかしそういうことはしない。つまりそういう意味合いにおいて債権ではない、こういうことです。しかしこれが将来生き返りまして、収益状態がよくしなったという際には、新たにこれを返済する債務を生ずる、こういうたてまえにしたい、かようなことを申し上げておるのであります。
  114. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっとおかしい。新たに債務が発生するという権利義務関係はないじゃないですか。どうやって出てくるのですか。それは債務じゃないというのでしょう。そうしたら債務は出てこないじゃないですか。じゃ急に取り立てるのですか、おまえのところは出せといって。法律上そんなことを言ってはいかぬですよ。
  115. 福田赳夫

    福田国務大臣 だからそういうふうな考え方で法制を考える、こういうことになると思うのです。つまり今回のは補給金で、これは補給してしまいますが、しかし別に新たに条項が加わって、収益状況がよくなったというものにつきましては、国に返済をする義務を負う、こういうふうなことになるのだろう、かように考えます。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 自民党及び政府政策が、私企業としてやっていけるんだとおっしゃるから、やっていけるなら、やはり私企業としてやっていく以上は自分で将来金融をつけ、株の配当もするのだろう、こういうわけですよ、私企業として将来とてもやっていけぬ、もう十年もたてば社会党政権かくるから、そのときはそのときでやってくれというのなら別だけれども、一応私企業でやっていけるのだという前提に立つなら、やはりこれは、いまの元本を政府が肩がわりして返済する分については利子は全然つけないとか、あるいは停止するとかなんとか方法はあるでしょうけれども、その債務が一たん消えるということになると、私はどうもその主張は——結局企業会計からはもう債務としてなくなっていくわけですから、そこであなたのほうはそれだけ赤字が減ったじゃないか、こうおっしゃる、その赤字が減るという理由にこれがどうも使われておるようなんです。しからば、いよいよ配当するときには急に債務がふえていくわけですからね。どうもはっきりしない。これは大蔵省の発案だとおっしゃるから、私は大蔵大臣にお聞きしたわけです。時間が来たようですけれども、これは私はもう少し明確にお答え願いたいと思う。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはどこまでも出世払いという問題なんですが、これを法的にどういうふうに表現するか。普通の場合はこれは補給金で、一応補給のしっばなしです。しかし別に条項を設けまして、将来こういう状態になったならば返済をする義務を負う、こういうふうなことになる、両建てになるわけです。おそらく今回もそういうふうな法的構成になるのじゃないかと思いますが、すんなりと出世払いだというふうに御了承を願いたいと思います。
  118. 野田武夫

  119. 岡田春夫

    岡田委員 先ほどの質問を継続してまいりますか、少しテンポを上げて質問しますので、答弁のほうもあまりわかり切った答弁はなさらないで、ポイントだけをひとつ答弁していただきたいと思います。  先ほどの石油価格の問題ですが、国際的に石油価格の趨勢は今後どういう状態になりますか。私は大体ずっと下がっていくのじゃないかと思うのですが……。
  120. 両角良彦

    両角説明員 石油価格の国際的な推移見通してございますが、御承知のように産油各国、特に改進国を中心とします産油国は、OPECと称する組織を設けまして、みずからの石油利権の国際的な擁護のためにきわめて活発に動いておりまして、そのような影響関係から、原油価格が将来安易に下げられる可能性はきわめて乏しいというかうに考えております。
  121. 岡田春夫

    岡田委員 これはきわめて乏しいとあなたはおっしゃるけれども、過去十年間の石油価格の趨勢を調べてみると、大体半分ぐらいに下がってきておるわけですね。このあと、そういうカルテルなりトラストをつくって、企業独占の形で維持するといいましても、むしろ下がるという趨勢で、上がるという趨勢はないが、政府方針としては上がりもしないし下がりもしない、今後十年間はこのままの状態でいくというお考えですか。
  122. 両角良彦

    両角説明員 わが国といたしましては、エネルギー政策観点からは、できるだけ安い原油長期的に安定的な確保をいたすということが政策課題でございますので、われわれとしましても、原油の購入価格につきましては、合理的な国際的な競争価格において購入するように努力をいたしておる次第でございますが、そのような価格は、過去における推移から見ますと、ここ数年来バーレル当たり五セント以上の低落を来たしておることは事実でございます。しかしながら、今後このような低落がさらに期待できるかどうかという点に関しましては、先ほど申しましたように、産油諸国の抵抗が漸次強まっておりますので、過去におけるような低落は期待できないというふうに考えております。
  123. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、総合エネルギー政策の中では価格はどういう形になっておるのですか。十年後におけるエネルギー政策の場合における石油価格というものは下がるように考えているのですか、下がらないように考えているのですか。
  124. 両角良彦

    両角説明員 ただいま申しましたような国際的な条件の中で、可能な限り低廉にして安定的な原油の供給を確保いたしたいというのがエネルギー政策の課題でございます。
  125. 岡田春夫

    岡田委員 だから十年後に五千万トンという数字がはじき出される基礎には、石油というものはさっきの話で七.五%だ、そういう場合に、価格というものはそのころ大体幾らになるかという一応のめどがなければならない。その場合に、あなたは十年後においてはできるだけ低廉なもの、こういうことならいまより下がる、こういうことでしょう。
  126. 両角良彦

    両角説明員 現在原油の平均輸入価格がバーレル当たり一ドル四十セントから五十セント程度でございますが、これを下げるように努力はいたしたいということと、国際情勢の中で具体的にいかなる価格で購入できるかという見通しとはおのずから別個でございまして、われわれとしては努力はいたしたい、かように考えております。
  127. 岡田春夫

    岡田委員 それから、この答申の中で、五千万トンの基礎になっているその大きな要素ですが、物価はどういうように見ているのですか。私は、物価は一%の上昇というように聞いているのですが……。
  128. 井上亮

    井上説明員 石炭鉱業審議会答申をつくるに際しまして、いろいろ個別企業についての今後の長期見通しを検討したわけでございますが、その際審議会とされましては、一応物価は一%程度、ただし、この物価は、要するに石炭コスト影響する物価という意味でございます。
  129. 岡田春夫

    岡田委員 コスト影響する物価かどうか知らないが、通産大臣、ここら辺に政府の非常に矛盾した問題が出ているということはおわかりだろうと思う。経済企画庁の藤山さんのほうでは大体七%と見ているのですね。それを石炭のほうでは一%の値上がり、こういう点に第一矛盾が出ている。  もう一つは、時間がないからどんどんやりますけれども石油価格については、これは聞かなかったけれども、今後十年間は大体持ち合い状態という前提に立って、石油の値段は下がらない、そういう前提に立って赤字四百五十円という平均を出しているわけですよ。ところが、一方あなたの通産省の中の鉱山局の関係では、石油はできるだけ下げたい、こう言っているわけです。石炭の部面では、それだけ赤字が累積するわけだ。物価は今度は一%だ、ところが実際は七%上がるのだと言っている。それだけ赤字がまたふえるわけです。そうなると、四百五十円の赤字で五千万トンを維持して、五年後には五千万トンを出してほとんど炭鉱は黒字になるでしょうなどという答申をわれわれは信用するわけにはいかないわけだ。なぜならば、四百五十円という平均赤字をはじき出した基礎算定が違うからだ。これはもう五年間で黒字なんかになりっこはありませんよ。したがって五千万トン掘れませんよ。通産大臣はそこら辺は一体どういうようにお考えになっているのか。あなたはさっき、これで五千万トンの棒を立てたのだ、十年間だいじょうぶなんだ、こうおっしゃったけれども、その棒は根元が腐っておりますな。いつでも倒れますわ。通産大臣をいつまでおやりになるか知らないが、任期中にくずれないことを私も期待するけれども、この棒はもう腐っておりますから、初めから注意して棒をお立てになったほうがいいですよ。どうですか。
  130. 三木武夫

    三木国務大臣 これは将来の予測に関係することですが、やはり石炭はある程度出炭を維持していくことが、国民経済全体として好ましいことは言うまでもないのです。したがって、答申が出て、政府がこれからやろうというときに、岡田君のようにもう非常に悲観論をぶちまくるのではなくして、これはみな党派を越えて石炭を守っていく。そうでないと、急激な変化というものは、地域にも労務者にも非常な影響を与えるわけですから、そういうふうな悲観論は私はとらない。何とかしてそれくらいの出炭は維持していきたい、維持できるような施策を今後続けることによって守っていきたいということで、将来のことについては、悲観的に考えればきりがないことで、そういう点ではこれを何とか維持したい。それは私の希望的観測とあなたは言われるかもしらぬけれども通産大臣としてはそういう希望の上に立たなければ、そんなにもう何もかもだめだ、だめだというのでは、通産行政にならないと考えております。
  131. 岡田春夫

    岡田委員 大臣お話しのとおり、あなたの希望的観測で、何にも中身のないものに協力しろ、しろといったって、それはわれわれ協力できません。だから、さっきから具体的な数字をあげて私申し上げている。あなたもさっきお認めになったように、外国の石油独占資本に完全に押え込まれている。この事実だってさっきから申し上げているとおりですよ。これに対して何らの対策をあなたは講じていないじゃないですか。そして希望的な観測だけを振りまいて、いかにも幻想をつくって、政府方針で救われるかのごとき態度をとるなんというのは、これは大臣のとるべき態度でないですよ。しかも、先ほど申し上げたように、石油の中で八〇%はアメリカの石油なんですよ。だから、われわれ社会党はいつも言っている。アメリカの石油に従属して、通産省がその政策に従属しながら日本石炭産業をつぶしているんだ。この事実がさっきの答弁を通じて明らかになったじゃないですか。こういう点に対して抜本的な対策を講じていただきたいことを希望して、さっきから自民党の理事さんが早くやれやれと言っているから協力いたしまして進めます。  ともかくも、しかしいま申し上げたような事実ですから……。
  132. 野田武夫

    野田委員長 ちょっと申し上げます。自治大臣が急がれるようだから……。
  133. 岡田春夫

    岡田委員 もうちょっと待ってください、話が進まないから。  今度は答申の中で再建計画の問題、肩がわりの問題ですね。これはいま多賀谷君から質問がございましたが、一千億円の肩がわりの問題がある。ただし、この肩がわりをするために条件がついている。その条件は、今後十年間の安定生産が保証される。十年間という場合に、さっきの特別会計は五年間ですからここに食い違いがありますけれども、私はこれはあえて言いません。少なくとも十年間の安定生産と適切な再建計画を有する企業と、このようになっていますね。肩がわりの対象になるこの適切な再建計画とは一体何ですか。井上さんに答えてもらったほうがいいですよ、技術的な問題ですから。「適切」とはどういうものですか。
  134. 井上亮

    井上説明員 政府が今回助成策の大きな一環といたしまして元利均等償還方式による肩がわりをやるわけでございますが、これ自体経済政策としてはきわめて異常な手厚い措置でございます。これだけ国が手厚い助成をやるに際しましては、基本的にはまず企業が、石炭鉱業みずからが、これは大手といわず中小といわず、やはり姿勢を正してこの助成を有意義に生かして使わなければいかぬというふうに考えております。そのためにやはり企業としましてはできる限りの再建方策といいますか、再建の努力あるいは合理化、こういうことをやることが国民に対して必要ではないかというような考え方から再建整備計画をつくっていただくというのが基本的な考え方でございまして、具体的な条件としましては、炭量につきましては少なくとも今後十年程度、これはきっちり十年ということは必ずしも申しておりませんが、原則として十年以上。これは、なぜこれだけの助成策をやるかといえば、やはりエネルギー産業としまして、将来国産資源によってできるだけエネルギーの安全供給という点をになってもらわなければいかぬというような角度がございますので、二、三年先に炭量も尽きてしまうというようなところはちょっと対象にしがたいのじゃないかというような意味で、やはり長期に国の政策的要請をになってもらうだけの客観的基盤のある、つまり炭量、こういうようなところを対象にしていきたい。  それからもう一つは、先ほども言いましたように企業として姿勢を正して、残された合理化はやっていく。たとえば鉱区調整等につきましても、従来私企業の利益を主張しましてこの鉱区調整がなかなか進まなかったというような点も、これだけ国が思い切った施策をやるに関連いたしまして、やはり合理的な体制はつくってもらうというようなことを特に要請したいというような意味が、この「適切な」という意味でございます。
  135. 岡田春夫

    岡田委員 わかりました。  その適切という判断は、それじゃ通産省がするわけですね。
  136. 井上亮

    井上説明員 これはおそらく石炭鉱業再建整備法というものがつくられると思いますけれども、その際、最終的にはもちろん通産省が判断するわけですが、やはり中立的な審議機構をつくりまして、衆知を集めまして厳正な目で見て、最終的には通産省が認定するということにいたしたいというふうにただいまは考えております。
  137. 岡田春夫

    岡田委員 そこで伺いますが、そうすると適切なものをつくる場合に、中立的な委員会をつくってということですと、労使関係は入らないのですか。
  138. 井上亮

    井上説明員 これは再建整備法をどういう形でつくるかまだ政府としてきめておりませんから的確なお答えはできませんが、ただ審議会が再建整備計画をつくってという議論をいたしました際には、これは何といいますか、経営の機密に関する問題でもあるしいたしますので、やはり中立的な立場の方々の検討、それをもとにいたしまして最終的に通産大臣が判断するというようなことにしたらどうか。これは私の考え方でございます。今後、具体的にはさらに検討いたしたいと思います。
  139. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、肩がわり企業というものは適切なものであり、十年間の安定生産がやれるもの、そういうことになると、こういうような該当企業というのは現在大体何%くらいになるのでしょうか。
  140. 井上亮

    井上説明員 これは私は、大手につきましては、炭量の点から申しますと、ほとんど大部分のものが入るのじゃないか。中小につきましては、答申にもうたわれておりますように、これを厳密に中小について適用いたしますと、中小としては、一部の中小炭鉱については炭量十年以上のものも相当ありますからこれは当然入りますが、相当程度落ちるというふうに思いますので、答申におきましては、中小炭鉱についてこの肩がわり措置をやりますときには、これらの条件について若干の緩和、弾力的配慮をいたしたいという考え方でおるわけでございます。
  141. 岡田春夫

    岡田委員 テンポを急いでまいりますが、再建計画というものを出す。それじゃその再建計画というものの内容のあらかたはどういうものですか。  それから、先ほど特別な中立の委員会を設けて審査するとおっしゃったが、しかしこの答申の中に、再建計画の審査は通産省がやる、国がやる、こういうことになっているように書いてあります。——ちょっと私、文章をいまさがしていますが、どこかにありました。再建計画の審査というのは、審議会ではなくて通産省、国がやる、こういうことになっているはずです。そういう点は一体どうなのか。まず第一、再建計画の内容とそういう関係をお答え願いたいと思います。
  142. 井上亮

    井上説明員 再建計画の内容につきましては、こまかくは今後、閣議決定を行ないました以後、秋にかけまして詳細に検討してまいるわけでございまして、まだ明確にはきめておりません。しかし、これはまあ私の個人的な考え方でございますが、一応再建計画につきましては、先ほど申しましたように、企業ができる限りの合理化措置を持っていくというようなこと、それからやはりその中の一環としまして企業みずからの体制整備といいますか、鉱区調整その他を含めました、あるいは会社内部の経営体制というような合理化も含まれましょう。そういうようなものを織り込みましたそういう前提に立って、今後長期にわたって生産構造をどう企業考えていくか、あるいはそれを前提にいたしましたときに大体どの程度出炭が可能であり、かつまた、それを条件にいたしましたときに経理の状態が一体どうかというような内容、それから同時に、流通面に対する合理化計画、これを企業としてどう考えていくかというような、生産、流通、経理というようなものにわたりましたそういった体制を内容といたしたい、これはまあ私個人の考え方でございます。なお詳細には今後十分検討していきたいと思います。
  143. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、生産ということになりますと、たとえば労働者の人員、出炭能率、稼働日数、賃金、こういうものも当然入るのじゃありませんか。
  144. 井上亮

    井上説明員 稼働日数というようなものまで私どもうるさく言うつもりはございません。これはむしろ企業の計画としてはあるかもしれません。企業労使関係でどうあるべきだというお互いの計画はあるかもしれません。私どもとして、どうあるべきだ、稼働日数は八五%以上なければならぬというようなことは、これは実情によって判断しなければなりませんから、言うつもりは私個人としてはございません。しかし当然能率だとかいうような点は問題になろうかと思います。
  145. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、いま現実にあります審議会管理炭鉱といいますか、あそこで出している再建計画、業務計画、それと大体同じものですね。
  146. 井上亮

    井上説明員 これまた今後の検討ですから正確には申せませんけれども、私の感じとしては、あれとは少し変わった形ではないかというふうに考えております。
  147. 岡田春夫

    岡田委員 少し変わったというのはどういう点が変わっているのですか。
  148. 井上亮

    井上説明員 いま御指摘のいわゆる再建企業、これはまあ今後は、ああいった企業につきましては特別再建企業と呼んだほうが適当だろうと思います。というのはほとんど大手の全部が——全部でもありませんが、相当配当会社等もありますから、必ずしも再建計画をつくらない企業も中にはございますが、しかし大多数の企業が再建整備計画をつくっていくということになろうと思いますから、御指摘の点はいわば特別再建企業、これにつきましては、これはほっておけばもう崩壊に瀕する、三年ももたない、一年もたないというような企業について、これはかつて特に国会の御要望もございまして、やはり特に炭量等の点から見て、あるいは地域社会影響等から見て、崩壊させることは適当でないという企業について、政府が特別にてこ入れしているという体制ですから、これとは私はそういう意味で少し違うというふうに考えます。
  149. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃもう少し具体的に伺いますが、先ほど稼働日数は入ってないとおっしゃったが、人員とか生産能率とかあるいは賃金、こういう問題については今度は入れる、管理炭鉱の場合にも当然これは入っていなければならぬ問題だが、そういう点では同じような意味があるのじゃありませんか。
  150. 井上亮

    井上説明員 稼働日数につきましては、これは先ほどちょっとお答えいたしましたが、政府としてどうあるべきだということは申しませんけれども、おそらく計画の中には稼働日数等も、これは企業としては当然計画として提出されるものと思います。したがってこれを除く意思はございません。ただ、政府がものさしをつくるという考え方はございません。そのほかの点につきましても、再建計画はこれは政府がやるのじゃなくして、まず企業みずからが労使よく話し合って、そして自分の会社は今後はこう生きていくのだ、自立していくのだというかまえの計画を御提出いただくわけですから、それを見て、それが妥当であるかどうか判断したい、こういう意味でございます。
  151. 岡田春夫

    岡田委員 いまの再建計画あるいは業務計画、こういうものは、御答弁を伺っておりますと大体同一趣旨のものである、まあこういうことになろうと思います。違うというようにお考えなんですか。それはその考え方が違うだけであって内容は同じでしょう。たとえば賃金の総額は大体どれくらいにするというワクはつくるのでしょう。つくらないのですか。それじゃ具体的に伺います。
  152. 井上亮

    井上説明員 現在の再建企業は、先生も御承知のように企業としてきわめて存立の危うい、異常事態にある企業を、政府が雇用問題とか地域社会への影響の問題とかいう点を配慮して、再建のきっかけを与えるために特別に保護し援助しているということですから、したがって、その内容は、会社内部の合理化の面とか努力の面等につきましても相当の協力を願っているのでございます。今度の再建整備法に基づきます再建整備計画は、似ているといえば似てますけれども、やはりできるだけ今後の経営の安定といいますか、あるいは雇用の確保とかいろいろな角度もございましょうから、そういった点を見て妥当なる計画——これはまあ岡田先生ここでいまそれ以上お問い詰めになりましても、さらに内容的には今後検討しなければならぬ点が多いわけですし、それからまた、この計画はあくまでも企業が責任を持ってやる、かつまた、やれる内容でなければなりませんので、そういうものをもとに検討したいという意味でございます。
  153. 岡田春夫

    岡田委員 いまの答弁では私まだ納得いたしませんけれども、どんどん進めます。  少なくとも私が非常に懸念しているのは、管理炭鉱と同じ方式に一千億円の肩がわり炭鉱を持っていこうという方向があらわれている。たとえば賃金の問題にしても、まあ私が言わなくても釈迦に説法だが、管理炭鉱の場合には、ことしの春闘の場合大手は大体七十四円のアップ、これに対して管理炭鉱は三十三円、半分だ。期末の手当にしましても、あなたも御存じのとおり大手の場合には四万一千円ですか、これに対して管理炭鉱は二万六千円、中小炭鉱より悪いわけです。こういう形で賃金総額全体を再建計画の中で押えていくと、いろいろな面で——これは意見になりますが、国家の指導監督を強化するということを盛んに答申の中で書いておりますから、そうなりますと賃金総額のワクをきめていく、そういうことになると、賃金についてもある一定の制限を加える、現在よりも少なくとも制限は加わる。当然賃金のアップに対しても一定の拘束を受ける、こういう形で管理炭鉱並みの状態になってくる。今日の大手の炭鉱に対する賃上げというものが今日よりもこの再建計画によって拘束される、賃金の総額がきまるのですから。当然そういう傾向になってくると考えざるを得ない。最も極端な場合には再建炭鉱と同じように賃金に対するいろいろな拘束が加えられるような結果になってくると考えざるを得ないわけです。私たちはそういう点でこの再建計画というものを通じての国の監督というものを、こういう形でそのままのがさしていいのかどうかという点に非常に疑問がある。特に再建計画を審査する場合においては中立の公平なる委員によってやらす、こういうお話ですが、そうすると労使関係、特に労働組合関係の発言権はそこにないわけです。賃金は総ワクとして押えられながら労働組合の発言権はそこに認められない、そういう形で、これは通産大臣に伺いたいのだが、私は、こういう形では官僚統制が非常に強化されるだけだ。こういう官僚統制の形の再建案に——まさか自民党も官僚統制に賛成されるわけではないだろうと思うけれども、どうですか。官僚統制の体制を強化する方向に通産大臣が持っていかれるということに対しては、通産大臣、そういう方針でおやりになるのですか。
  154. 三木武夫

    三木国務大臣 国の財政資金を使うわけですから、国民に対しても、ある程度の監督をすることは当然でありますが、それを官僚統制に持っていこうというような考え方は毛頭ありません。私はそういう傾向は排除する強い考えの持ち主であります。
  155. 岡田春夫

    岡田委員 そうだろうと思うのですが、あなたに念を押しておきたいと思うのだけれども、あなたが昭和二十二年に初めて閣僚になられたときに、与党の代表として臨時石炭鉱業管理法、これをつくられた。あなたもこれに賛成した。あの中では官僚統制をやっちゃいけないということで、労使の代表が入って、その中で生産計画なり全体の管理計画をつくった。これにあなた賛成したのですよ。官僚統制になっちゃいけないということでこういうものをつくった。今度の場合にはそういうものは何にもないじゃないですか。労働者の発言の余地なんて全然ないとさっきからずっと言っていますよ。こういう点についてはたして答申が適切であるかどうか、その当時大臣であって、今日も大臣である通産大臣としてこの点はどういうようにお考えになりますか。
  156. 三木武夫

    三木国務大臣 それはこの場合、どうしても経営者、労働組合の協力態勢がなければいかぬわけでありますから、あらゆる今後の石炭産業の再建のためにはできるだけ経営者と懇談会もつくったらいいと思う。話し合う場をつくることが必要であって、そういうことは今後の企業として苦心をしていろいろくふうをしていったらいいと思うのであります。しかし全体としてはいろいろ発言する場というものはあるわけですが、機構の中にこれを取り入れるといっても、それはいまの肩がわり資金の場合に取り入れるということが適当だとは私は思わない。
  157. 岡田春夫

    岡田委員 これは非常に見解が違うのです。機構の中に前は入れておったのです。諮問機関という形であっても、管理協議会、生産協議会というものをつくってあった。それにあなたは賛成したのです。今度の場合には賛成できないという根拠は私にはわからない。国が一千億出すから、それはできないとおっしゃるけれども、あのときの傾斜生産においても国があんなに援助したじゃありませんか。しかも労使意見をできるだけ反映さしてということになってやっているのじゃないですか。そういう点は前と状況は変わりありませんよ。その点はどうですか。
  158. 三木武夫

    三木国務大臣 三党連立の内閣に私も参加したことは事実ですが、あのときはたてまえはやはり石炭の国家管理であります。今度の場合は私企業ということを前提にしてやろうというわけでありますから、たてまえが根本的に違っておるわけであります。たてまえが違えばその中の機構も違ってくるのは当然だと思います。
  159. 岡田春夫

    岡田委員 これは意見にわたりますから言いませんが、三党連立内閣でわれわれ社会党は国家管理を言ったのです。国民協同党の委員長であったあなたは国家管理に反対をしたじゃないですか、民主党と一緒に。そのときに私おったんですよ。そしてあれは国家管理でなくなったじゃないですか。国家管理じゃなくなったんですよ。私企業を存立することになったんですよ。あの当時のことを御存じの方はこの中にあまり多くないかもしれないけれど、三木さんと私は議員だったから知っているのだ。石炭局長はそのころ何をやっていたか、私は知らぬけれども、そういうごまかしを言っちゃいかぬですよ、私は知っているのだが、そういう点は意見にわたりますから私は言いません。  続いて次の問題に入っていきますけれども、さっき閉山交付金の話がありましたね。これは大体八百円上げることになる。八百円という根拠は何なんですか。一千円という根拠も出るだろうし、いろいろ根拠はあるだろうけれども、どういうところで八百円という根拠は出たのですか。
  160. 井上亮

    井上説明員 これは現在大体平均的に見まして千二百円というふうにきめられておるのですが、そのきめにいろいろな諸元があります。その諸元に照らして、最近いろいろその諸元の単位が上がっておりますので、そういうのを勘案して大体二千円程度というようなきめ方を審議会では一応やっておるということでございます。
  161. 岡田春夫

    岡田委員 その諸元ということの中には賃金の未払い、退職金の未払い、こういうものも当然入るわけですね。
  162. 井上亮

    井上説明員 そういうことではございません。これはいわばホスコルド方式でございますので、そういった意味でなくて一般のあれですね。むしろ何といいますか、これは非常に苦心して、本来ならホスコルド方式でいきますと、企業の収益がないわけですから、そんなものはただでもいいということも言えるわけですが、そこを苦心惨たんしていろいろあとう限り諸元を引き上げて——とにかく引き上げませんと、いずれにしても現実問題としては退職金の支払い等が困るわけですから、苦心して引き上げたというのが実情でございます。
  163. 岡田春夫

    岡田委員 私はこの答申全体を見て、炭鉱労働者に対する熱意というものはほとんどない。雇用対策の問題を見ても第二次答申とほとんど変わりがない。そんなことを言ったら、きっと大臣局長は、いやそんなことはありません、特別年金制度をつくりましたと言うでしょうが、特別年金はあとで聞きますが、中身はからですよ。それ以外に何にもないのです。たとえば、具体的に言いますが、いまの話でも賃金の未払い分、これについてもいまどうなっているか。いままで合理化によって整理をされた者の賃金の未払い分というのは相当な額にのぼっておるはずです。これはせっかく労働大臣長くお待ちですから、賃金の未払い分はいままでどうなっておるか、退職金はどうなっておるか、あるいは社内預金をしたり何かして社内に労働者が持っているお金というのはいまだに払われていない、こういう金額は一体どうなっておるのか、いままでの経過をちょっと労働大臣答弁をひとつ願いたいと思います。
  164. 山手滿男

    ○山手国務大臣 当初は相当多額のものが残っておりましたけれども、いろいろ努力をいたしまして最近は非常に少なくなっておる。未払い賃金等も二億余ぐらいになっておると私は思っておりますが、詳細は局長から答弁させます。
  165. 岡田春夫

    岡田委員 一億という数字はちょっと違うのです。まあ初めてなられたから……。この間四億ともうすでに言っていますから。局長ひとつ。
  166. 村上茂利

    ○村上説明員 石炭関係のいわゆる賃金未払いの内容でございますが、大部分は退職金という形の未払いということになっております。その金額は、昭和三十九年十二月末ごろは二十億という非常に多額な金額でございました。昨年に入りましてからこれが漸減いたしまして、三月末、六月末はそれぞれ八億台でございましたが、九月末四億四千万、十二月末二億八千万、本年の三月末の数字では、賃金不払い件数として二十四件、金額として二億七千六百万円という数字に相なっております。内容的には退職金という形になっておりますが、いわゆる社内預金的なものに……(「それはけたが違うよ。一つ会社だって二億以上ある。冗談じゃない。」と呼ぶ者あり)内容的に見ますると、いわゆる賃金不払いとして私どもが扱っておりますのは、以上申しましたような数字でございます。ただ、労働者が請求しましていわゆる賃金不払い状態になっておりますものと、まあ一般に言われておりますものと、とり方はいろいろあろうかと思いますが、これは労働省としていわゆる監督を通じまして把握いたしておるものであります。なお、大正鉱業など大口のものがございます。未処理でかなり長くなっておりますものは一応この数字から除いております。したがいまして、いわゆる送検をしまして司法処分をしたものにつきましては統計上は一応はずしてありますが、金額的には大正鉱業の八億、これがほとんどでございまして、それ以外につきましては金額的には非常にわずかである。現にいま賃金不払い事件といたしまして支払いの勧告をいたしておりますものが二億七千六百万円、こういう数字でございます。
  167. 岡田春夫

    岡田委員 数字については、いま局長答弁でも大正だけで八億ある、合わせると十億だ、こういうことになるわけですが、まだほかにもたくさんあるのです。  そこで新大臣に伺いたいのは、こういうように前の合理化で、たとえば十億でも二億でも、こういうものはそのまま残っておるわけだ。ところが今度の答申によると、累積赤字という企業の赤字には一千億、しかもさっき大蔵大臣との質疑応答をあなたお聞きでしょうが、出世払いで債務ではない。金をやるわけだ。ところが労働者の未払いの賃金については何も勧告してないのです。労働大臣、これでいいと思いますか。二億だろうが十億だろうが、少なくとも大きな企業には一千億円も金を出すのに、労働者に対しては、こんなに困っているのに二億であろうが十億であろうが金が出せないという話はないはずですよ。こういう点は、労働大臣は今度の閣議決定のときにがんばってもらわなければならない。三木通産大臣は何と言おうと、派閥の関係は私は知らぬけれども、あなたはがんばって、だめだ、通産省のやっているのは大手の資本家だけのことしか考えていない、労働者のことを考えろと、労働大臣はそれを言うのが仕事なんだから、あなたはがんばって閣議決定でそれを直させてくださいよ。あなた、そういう決心がありますか。
  168. 山手滿男

    ○山手国務大臣 ただいま局長から御答弁を申し上げましたように、一応三億六、七千万円程度のものになって圧縮されておる、こういうふうに私は了解をいたしておりますが、いろいろよく事情を調べてみなければわかりませんが、いろいろな問題もあるようでございます。今度の計画が実行される段階において、こういうような賃金の不払いとか、労働者にとって非常に苦しい思いをするような事態が起きることは、労働省としてもまことに遺憾でございますので、発足にあたりましては、御趣旨のように私としてはできるだけ努力をするつもりでございます。
  169. 岡田春夫

    岡田委員 もう一度大臣に念を押しておきますが、今度一千億出すのは累積赤字でいままでの赤字なんですよ。企業のほうにはいままでの赤字一千億をやるのですよ、政府は。あなたはいま二億だとおっしゃったが、一応二億でもいいですよ。二億の分ぐらい払えないという話はないじゃないですか。一千億も出すのですもの。閣議決定のときに、三木通産大臣だってこういう点は大いに御協力いただけるでしょう。そういう点は、二億ぐらいの金額をここへ出せないという話はないですよ。通産大臣、これは御努力されますか、どうですか。
  170. 三木武夫

    三木国務大臣 この財政資金の肩がわり、これは福田大臣答弁したように法律が要りますからね。法律でやはりいろいろな義務を課することになると思うのですが、しかしこのことはやはり企業というものが安定しないと賃金といってもなかなか金繰りの都合もありますから、全体としてはそう分けて考えられない。企業全体が安定するような状態に持っていくということが賃金問題の解決の出発点になるものであることはやはり明らかですから、今後、やはり労働者に対してもできるだけ——答申の中にも、労働者が希望を持って働けるようなことにする必要があるということで、われわれとして労働組合等とも話をしておるわけでありますから、いまここで閣議決定前に、これは入れるか、これは入れぬかということを直接にお答えすることはできませんが、できるだけそういう労働者の面ということも考え閣議決定にしたいと私は思っております。
  171. 岡田春夫

    岡田委員 そういう努力をされるということはけっこうですが、あなたはちょっとこんがらがってお考えじゃないかと思うのですよ。一千億円の中でそれを払えと私は言っているんじゃないのですよ。あなたも御存じのように一千億円というのは、現在ある企業の累積の赤字をなしくずしにしていくわけでしょう。ところが二億円というような数字が出てきているのは、現在の企業の中での未払いの分もあるとは思うけれども、大部分はもう企業はなくなっちゃったんだ、そうして退職金はもらえないでいるという人がずいぶんあるわけですよ。これに対してどうするんだと言っているんですよ。一千億円も会社に出すのなら、こういう人に対して、二億円だろうが十億円であろうが、それこそ出世払いでそれぐらい出してあげたらいいじゃないですか。債務じゃないんだと言うんだから、その点なぜ出世払いをお考えにならないか。それを一緒にこんがらがってお考えになっているから、そこに問題があるので、そこの点、もう一度はっきり言明していただきたい。
  172. 三木武夫

    三木国務大臣 こんがらかってはいないのでありますが、いま岡田君は企業だけにやったやったというふうに言うのですが、しかし、それはやはり企業が安定しなければどうにもならないですからね。そういう点で、やったやったと言われるが、これはやはり過去の急激な合理化の途上においてできた異常債務でありますから、ただもう企業だけに金をやるんだというふうな受け取り方は国民に誤解も与えると思います。これはやはり企業も安定しないと、石炭の五千万トンといってもなかなかそれを確保できるものではないわけです。ただ、山が全然つぶれてしまったものに対しての未払い賃金、これはなかなかむずかしいと思いますよ。しかしこれは企業の社内預金で留保されておるような形もあるだろうし、こういう実態なども政府が案をきめるときにはいろいろ検討してみたいと思っております。
  173. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、私は十分御検討願いたいと思います。つぶれてしまったから、社会政策においても問題があるのですよ。もらいようがないじゃありませんか。そういうところは国が世話をしてやらなきゃならぬ。これは労働大臣、そういう趣旨に立っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  174. 山手滿男

    ○山手国務大臣 今度出します交付金につきましては、退職金とかそうした賃金の未払い分等については、優先的にこれを見るようにということの答申になっておるかと思いますが、いまお話しのような点につきましては、労働省としては十分検討して善処をしたいと思います。
  175. 岡田春夫

    岡田委員 大臣は、なったばかりだからまだはっきりおわかりにならないのですが、優先的に見るということは、これから閉山する山の問題です。しかもそれは、優先的と言うけれども、私はあとでもっと質問したいのだが時間がないからきょうは省略しますけれども、二千円の中で配分方法できっと全部は払えないと思うのです。だからこれからつぶれる山でもきっと未払いがまた残ると思うのです。しかしそれよりも前に、現在未払いのものをどうするかという問題ですが、答申の中にそんなことは全然書いてないです。これに対して現在どうするのだ、それが一点。  もう一つは、いままでの離職者の中で、離職した期間の間いわゆる黒い手帳をもらって、未就職の人に対して離職のための補償をしているわけですね。ところが、これは期限が切れてしまった。こういう人が全国に非常にたくさんいます。北海道の私の出身の美唄だけでも百数十名いる。全国的には相当の数ですよ。こういう人に対しての特別の措置を閣議決定のときに入れるべきだと思うのですが、措置を講ずるための閣議決定をさせるべきだと思うのですが、こういう点についても、ひとつ新労働大臣として思い切ってやってくださいよ。その点と、二つ合わせて御意見を伺っておきたいと思います。
  176. 山手滿男

    ○山手国務大臣 約千五百人ばかり手帳の期限が切れる人が出るかと思いますが、そういう者に対しまして、労働省はさらに熱意を込めて職業のあっせんをする、あるいは積極的に技術の習得等をする意思があれば、十分指導をしてまいりまして、できるだけきめのこまかい、あたたかい配慮をいたしたいと思います。
  177. 岡田春夫

    岡田委員 もっと具体的に、そういうきめのこまかいということは、金を伴っているのかどうかという問題も聞きたいのだけれども、きょうは大臣就任早々だから少しあれしますが、局長、何か答弁されるならしてください。
  178. 村上茂利

    ○村上説明員 賃金不払いにつきましては、私ども監督上最も重視しておることでございまして、個別に何会社幾らというのは全部把握しております。それで、先ほど申し上げましたもので、過去の未払いの焦げつきで大口は大正鉱業でございますが、八億二千四百万円、このうち一割相当の八千百三十八万円は昨年の十二月に支払いましたが、それ以外の未払いのものにつきましては、極力私のほうでも指導いたしておりますし、交付金の処理につきましても、この未払い代金に充てるように、たとえば佐賀の向山鉱業所は三千百七十七万円の未払いがございましたが、これは全額支払わしておりますし、あるいはまた同じころ発生いたしました長崎の峰鉱業では、五千五十六万円の未払いがございましたが、これは全額はまだ払っておりませんが、三千八百九十九万円払わせたというようなことで、わかっておりますものにつきましても極力努力はいたしておりますし、特に事業団からの交付金の使用につきましては、私ども関係方面と十分連絡して、この未払い分に充てるように努力しておるわけでございます。ただ、何と申しましても大口の大正鉱業をどうするかというのが、過去の未払い問題の処理のガンになっておるようなわけでございます。  そこで、いま大臣からお答えございましたように、過去にありましたものと今後における問題と二つに分けまして、今後における問題につきましては、交付金単価の引き上げ等によりまして解決が期待されると思います。従前の未払いの焦げつき分につきましては、大正鉱業だけがガンと申しますか、非常な困難を感じておりますが、その他のものにつきましては、逐次返済いたさせますように努力いたしておるような次第でございます。
  179. 岡田春夫

    岡田委員 われわれ知らないと思って、そういう答弁をされて納得すると思ってるのかどうか知らないけれども、そんなことでわれわれは納得できない。実態をわれわれ毎日見せつけられているのですから。私がこう言っているのは、むしろ労働省に対してハッパをかけて、労働省よがんばれと言っているのですよ。金はもうあまり心配ありません、指導によってやりますと言ったって、つぶれた会社がどうやって金を出せるのですか。だからこういうときに、三木さんきらいかもしれないけれども、資本家に一千億円も出すようなときには、つぶれた会社労働者の未払い金を払うために労働省は努力したらいいじゃないですか。中小炭鉱だって未払い金はたくさんありますよ。管理炭鉱だって、貝島だって明治だって、未払い金はたくさんありますよ。資本家に対して一千億円出せるなら、労働者に対してわずかな額がなぜ出せないのかと言っているのですよ。こういうときになぜ整理してあげられないのかと言っているのですよ。こういう点は、労働大臣としてこまかい数字がわからないことは、就任早々だからいいとしても、そこの決意のほどをはっきりしてくださいよ。何だか局長の話を聞いていると、額は少ないし、大正だけはもう少しだから、指導で何とかうまくなりますというような、そんなことを言わないで、この際やはり出すべきものは出したらいいですよ。大臣の決意をはっきり聞いておきたいと思うのです。
  180. 山手滿男

    ○山手国務大臣 私も就任早々で、いろいろな炭鉱の個別の未払い分がどれだけあるかということをよく知りませんでしたが、総体的には二億六、七千万円程度のものがあって、これは何とかしなければいかぬというように議論をいたしております。しかし、いまお話のようなことはごもっともでございまして、こういう大きな変革期にきておるわけでございますから、労働省としては労働省の立場でこれを実行に移す段階で善処をして、努力をしてまいりたいと思います。
  181. 野田武夫

    野田委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。多賀谷君。
  182. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、労働省があまりにも勉強が足らぬ、調査が不足だと思うのです。義憤を感じますよ。この買い上げ代金のいわゆる旧方式時代は、典型的なものをあげますと、たとえば筑豊の加茂炭鉱のごときは、千九百万の金銭債権、すなわち未払い賃金並びに退職金があったけれども、交付金からはわずかに五十五万円しかもらえなかった。旧方式時代は賃金等の確保の方法がなかったものですから、新方式に改めた際に七〇%を鉱害並びに賃金のワクにして、その二〇%を賃金優先にしたわけです。それでも大正鉱業の場合は、第二次配分で労働者と被害者の間で対立がありました。労働省は一回だって大正問題にタッチしていないでしょう。われわれ政治家で先般徹夜をして解決したわけです。そうしてそれでも賃金債権の二〇%いかないのです。しかも、この二億という未払いの残というのは何ですか。一体どういう計算なんですか。私が頭に描いただけでも、貝島だって四億あるのですよ。明治だってあるのです。こういう大きいところでも残っているのですよ。大手でいま閉山をして、退職金のすぐ払える炭鉱ってほとんどないですよ。ましてや中小炭鉱で閉山をした炭鉱は、ほとんど未払い賃金は残っている。それは北海道のように比較的鉱害の少ない場合は何とか払ったでしょう。しかし、未払い賃金が残っているとき、監督署から一回でも来ましたか。来ないのです。労働省は全然タッチしないじゃないですか。そうしていまのようなデータを出して、一体そのデータは何ですか。三億や三億じゃないですよ。一けた違っている。いな、私は二十億では済まないと思うのですよ。それを二億という数字は一社にも及ばない。一体それで労働行政がやれるというのか。局長並びに大臣から御答弁を願いたい。
  183. 村上茂利

    ○村上説明員 私が先ほど来申し上げております数字は、基準審議会等でおはかりをいたしまして、その後発表しておる数字でございますけれども、この数字の中には、送検いたしたものといたさないものというふうに分類して扱っておるわけでありまして、先ほどもちょっと申し上げましたように、大正鉱業等につきましては送検した。これは起訴猶予になりましたけれども、こういった案件につきまして、監督上司法処分に付したものは一応統計上別扱いにしておりますので、金額的に二億じゃ少ないというような印象を受けておられるかもしれませんが、司法処分に付したものとしからざるものというふうにお受け取りいただきたいと思います。つまり、二億七千六百万円というのは、まだ司法処分に付しておらないで、いま支払いを督促中のものであるということでございます。不払い事件が起きましたならば、第一線の監督署では、当然当該事業場に参りまして、こういった金額の詳細を確かめまして、これを支払わせるように是正勧告をするとか、あるいは送検をするとかといった手続をとりますので、先ほど先生のおしかりがございましたけれども、私どもといたしましては、いやしくも事司法処分に付しますような案件でございますので、確実に当該企業に出向きまして処理に当たっておるわけであります。ただ内容的に、たとえば大正鉱業その他非常に多額の負債をかかえておるという場合に、金融機関その他の問題もございますから、一監督署の力をもってして支払わせることができるかどうかという点については、残念ながら力の至らない点が多々あろうかと存じます。しかし、具体的に調査をしてないとか、そういったことではないのでありまして、司法処分に付するという手続を頭に描きまして、金額の把握その他いろいろな努力をいたしておるわけであります。ただ、こういう問題についてよく御承知の多賀谷先生から、ただいまのようなおしかり、御指摘を受けたわけでありますので、私ども今後十分注意いたしまして、この問題の処理に当たってまいりたい、かように考える次第でございます。
  184. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は司法処分のことを言っておるんじゃないですよ。それは司法処分しても起訴猶予になるんです。金がないんだから。悪意で払わないんじゃないですから、金がないのだから、起訴猶予になるのはあたりまえです。そのことを言っているのじゃなくて、未払いの実態を調査してないでしょう、こう言っておるのです。整備資金という制度ができる前の退職金はほとんど未払いになっているんですよ。古い順から払っているんじゃない。整備資金という制度ができて、政府から金を借りるようになってからはわりあいに払っている。その前のがほとんど残っている。さらにそのあとも、政府は五〇%ないし六〇%しか貸さないのですから、あとの残額はみな残っている。ですから、たった二億なんというものを頭に描いて行政をやっておったら行政が間違う。審議会に報告しておるなら、審議会にうそを報告したことになる。一体いま、会社の社内預金と称するものは幾らあるか。その社内預金は半分は退職金なんです。払っていないのです。ただAという会社が第二会社をつくってBになった。鉱員は、第二会社に行った者は、あるいは他の鉱業所に行った者は、みんな社内預金になっておるのですよ。私はそのことは言いません。それでも金額は百億をこえるでしょう。金があって社内預金になっておるんじゃないのです。通帳だけもらっておる。会社が倒れたら絶対保証がないのです。その社内預金というのをのけても未払い賃金があると言っておる。退職金があると言っておるのです。その実態を把握しないで労働行政ができますか。十倍以上ですよ。その社内預金だってかってに出せやしないんですよ。特別に、高校に入学するからといって、入学をするときに、じゃ一万五千円とかいって出しておる。自分の社内預金だからいつでも出せるかというと、たいへんなことですよ。手続が要るんだ。それにたった二億しか未払い賃金や退職金はないという、そういうでたらめな資料大臣に報告したら、大臣は迷いますよ。少なくとも百億をこえる金額がある。だから私は、十分実態を調査してもらいたい、こう言うんですよ。司法処分に付するとか、監督行政で特に行って監督権を発動するとか言っているのじゃない。少なくとも数字ぐらいははっきりしたらどうですか。
  185. 山手滿男

    ○山手国務大臣 私も就任早々でございますので、詳細掘り下げて調査をいたしておりませんでしたが、いま多賀谷先生からお話しのような点、非常に重要だと思いますので、労働省といたしましても、あらためていろいろなデータを検討しまして、この計画を新たにつくりますときに、十分労力をいたしたいと思います。
  186. 岡田春夫

    岡田委員 もう私長くなりましたから、重要な点を三点だけ項目的に並べて御答弁を願って、それで不満足の場合には留保いたします。  第一点は、雇用対策についてはほとんど方針がない。三木さん御存じでしょうが、第一次答申あとに、当時の池田総理大臣が完全雇用という方針を打ち出した。この答申の中に完全雇用なんか全然書いてないじゃないですか。今度首切られるのは切られっぱなしですよ。そういう点でも、三次答申というのは労働者を見殺しにしているのです。人殺しの政策ですよ。はっきりしていますよ。何と書いてあるか。企業の中の合理化で、配置転換その他で考えよと書いてあるだけじゃないですか。合理化をどんどん進めたら、配置転換どころじゃない、首切りがどんどん出るじゃありませんか。どこに吸収する余地がありますか。こんな無責任な答申なんかだれも本気で、これはけっこうです、野党も一体になって協力してください、そんなことにどうして協力できますか。こんな答申に対してはわれわれ協力できません。こういう点が第一点。完全雇用について一体どうするんだ、離職者対策はどうするんだ、この具体的なはっきりした方針を、やはり閣議決定前に出してもらいたい。これが第一点。  第二点は、鈴木さん、たいへん長い間お待たせして恐縮でしたが私の伺いたい点はたくさんあるのですけれども、今度設けられる特別年金制度の中で経過措置の問題があります。これだけ見ていると、炭鉱労働者はこれから年金をつくられて、これから五年なり十年なりつとめなければ年金がもらえない。経過措置はある程度考慮しようということにはなっている。いままで働いておった人に対しては、たてまえとしては経過措置として一定の考慮をするという程度なんです。私はこれは間違いだと思う。今日政府のやり方で合理化がどんどん進んで、今日の山においては中高年齢層しかいないのです。こういう人たちはほかに出るところがないから、いままでの政策によって働かざるを得ない。そういう形で炭鉱で働いている。いままでの働いてきた年限については当然加算すべきだと思います。こういう点を、経過措置などということで考慮するということであいまいにさしてはいけないと思う。年金のほんとうのねらいはそこにある。いままで働いた人を救っていく、今後も働いてもらう、そして老齢年金で払うというようになっていかなければならない。ここの点は、この前も質疑がちょっと出ておりますけれども答弁があまり明確でありません。こういう点を、何年までどういうように見るのか、はっきり御答弁を願いたい。これが第二点。  第三点は、自治大臣もたいへんお待たせして恐縮でしたが、産炭地域振興審議会をいまやっているわけです。そこで今度のこの第三次答申が実施されるとするならば、産炭地問題ではまた非常な大きな問題が起こってくる。地方財政の問題でも欠陥がどんどん出てくる。そういう面から、産炭地振興についての今後の対策と、今後起こるであろう地方財政の財政欠陥、こういう問題についての対策を実は伺いたい。これが第三点。   〔委員長退席、加藤(高)委員長代理着席〕  第四点、もう一点追加します。保安対策についても、答申の中でほとんど方針がないじゃありませんか。三木さんが諮問されたのは、山野の事故が起こったから保安上の完備をしろというのがきっかけで、第三次答申が始まったんでしょう。保安問題に対する対策が何もないじゃありませんか。しかも、出炭能率をどんどんあげたら災害が累増することは、だれでもわかり切ったことですよ。五十三トンにするなどと言っているのですから。この保安対策は一体どうするのか。少なくとも通産大臣に伺っておきたいのは、大臣いいですか、あなたのほうに保安協議会から保安上の具体的な答申があったはずだ。これを閣議決定の中にどういうように織り込むのか。たとえば保安センターをつくるとか、大きな保安機械というものは共同で使えるような措置を講ずるとか、こういうことが保安協議会のほうから出ているはずだ。こういう点を今度の閣議決定の中へ盛り込まれるのかどうなのか、こういう点が第四点。  四つの点だけを並べて御質問しておきまして、時間の制約もありますので、この程度にいたしておきますけれども、あまり不明確な答弁なら再質問しますから、納得のいくようにひとつ答弁してください。
  187. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、第一点と第四点をお答えいたします。  完全雇用とうたってないじゃないか。岡田君も御承知のように、五千万トン程度出炭確保するということは、審議会の中でも多過ぎやしないかという議論がずいぶんあった。しかし、いろいろエネルギー調査会等の意見も徴して五千万トン程度になった。何としてもある程度出炭確保しなければ、雇用問題といっても雇用は維持できないわけです。そういう意味で、われわれとしてはやはりできるだけ雇用を維持していきたい。しかも、年齢がやはり四十一歳くらいの平均年齢になるのでしょう。そういうことで、再就職というのはなかなか困難ですから、確保していきたいということで、今後の出炭目標考えていきたいと思うのです。しかし、これで閉山をする山が全然ないとは言えないわけですから、そういう場合には、年齢が相当いっておるし、実際気の毒な人たちですから、労働省、通産省とも再就職に対する計画を立てて、できるだけこういう離職者に対しての対策は強化していきたい。これはわれわれとしても当然なすべきことだと思っております。  それから第四点の保安は、出てないとおっしゃいますけれども答申の中でもやはり保安の問題にも触れておるわけでございます。保安協議会等でも、いま岡田君の御指摘のようにいろいろな答申が出ていますから、政府閣議決定をする場合に、こまごまとするような閣議決定でなしに、基本的な考え方というものを述べるような閣議決定にしたいと私は思っておりますが、保安協議会等の答申なんかも尊重して、できるだけ保安というものには力を入れる。これはもう当然のことであって、人命にも影響することでありますから、今後は保安体制というものに対しては一段と気をつける処置を講じていきたいと思っております。
  188. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 特別年金制度につきましては、答申にもございますように、坑内労務者の確保をはかる、また長期の雇用の安定をはかる、こういうような目的からいたしまして、現在厚生年金制度の中で、坑内夫につきましては他の労働者よりも特別な配慮がなされておりますけれども、さらにその上積みといたしまして今回の特別年金制度というものを考えるべきである、こういう趣旨の答申でございます。そこで、私ども今後におきましては、審議会の特別年金の小委員会の御意見、さらに労使の御意見等も十分お聞きいたしまして、具体的な案を昭和四十二年度実施を目途に急いで進めたい、こう考えております。  なお、現在長年にわたってつとめております人々に対する経過措置につきましては、これは今回の制度の趣旨からいたしまして、一〇〇%その勤務年限を計策に入れるかどうか、対象にするかどうかということにつきましては、いろいろ検討すべき余地があると思います。しかし、これらにつきましては、経過措置等の答申の御趣旨を十分体しまして、できるだけのことを私ども考えていきたい、かように考えております。
  189. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいまの第三点につきましてお答え申し上げたいと思います。  産炭地の財政はもちろんでありまするが、すでに地方財政全体が非常に困難な状況にあることは御承知のとおりであります。今回の答申におきましても、たとえば鉱害復旧事業につきましては、「適切な措置を講じその軽減に努める。」というようなことばでありますとか、「あるいは市町村の財政の窮状を考慮し、」というふうな、地方財政につきましても非常にあたたかい認識のもとにこの答申ができておるように思うわけであります。しかしながら、御承知のとおりの地方財政の現状でもありますので、産炭地の鉱害復旧あるいは振興の諸問題につきましては、できるだけ政府において国の事業として、国の金でもってやっていただきたい、こういうふうな努力をし、いやしくも負担超過といったような目に見えないしわ寄せが地方財政にくることも、極力ひとつ抑止をしていきたいと思っております。また、それにいたしましても地方の負担が当然起こってまいるわけでありまして、その点につきましては、地方交付祝、あるいは特別交付税、あるいは起債、起債に対する元利償還の政府の肩がわりといったような点につきまして、従前もやっておりましたが、今後ともこの点を十分に検討して、いやしくも産炭地の地方財政にさらに困窮な状況をしわ寄せしたり、あるいは事業の進行が不可能になるといったようなことは、絶対に抑止しなければならぬと思いますし、地方財政の運営を確保するというたてまえで努力してまいりたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  190. 岡田春夫

    岡田委員 まだ私は質問することはありますけれども皆さん質問が待っておりますので留保いたします。ただ一点だけ、保安協議会からの答申の中で、床安センターをつくるというのが出ているわけですが、これはおやりになる考えなのかどうなのか。あなたは保安についてもせっかく諮問をしたのに、そういう点について大臣がはっきりお答えになれないということはないはずなんで、通産大臣方針をはっきりひとつお答えをいただきたい。この保安センターは全国幾つくらいつくるりか、どういうようにするのか、その点について簡単でけっこうですから、御答弁を願いたいと思います。
  191. 三木武夫

    三木国務大臣 保安協議会からのことは、今度の答申の中にも取り入れられておりますから、この趣旨を尊重する意味においてつくりたいと考えております。幾つということは、今後少し検討してみたいと思います。
  192. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、もっとありますけれどもやめます。
  193. 滝井義高

    ○滝井委員 自治大臣は何かあと会議一つあるそうですから、自治大臣にだけ関連一つお尋ねして終わりたい。あと細谷さんも一問あるそうですから……。  それは、きわめて具体的な問題です。もう産炭地は抽象論では生きられなくなりつつあるのです。私の質問というのはいつも具体的な質問になるわけです。現地に行って現場の状態を十分聞いて、上がってきて質問をしておるわけですから、自治大臣も具体的にひとつお答えを願いたいのです。  それは、前の福田通産大臣の時代に炭鉱がつぶれまして、その炭鉱の持っておった水道を、その炭鉱の所在する市町村に移管した場合に、これを閉山水道として、移管と同時にこの水道を全部やりかえる。というのは、厚生省の基準炭鉱の水道では合わないわけで全部やりかえる。これは起債でやりかえるわけです、当時普通の水道にはつかないけれども、産炭地の水道には二割五分の補助金を特別につけた。それが今度の改正でその補助金が三分の一になったわけです。そういうようにして炭鉱の水道を市町村に移管をした場合には起債で見て、そして補助金が三分の一出て、三分の二は起債、起債の分については、後に全部元利償還を特別交付税なり普通交付税でやったわけです。ところが、もう一つ同じような水道が産炭地にある。それは、戦争中に炭を掘りまして、水が出なくなります。そこでこれを特別鉱害でやった。その当時は九割を国が見て、鉱業権者は一割見ればよかった。これは戦時中に乱掘をやったので、やむを得ずそういう特別鉱害方式で復旧をやったわけです。その当時、水道も同じく特別鉱害でできたわけですが、一体この特別鉱害でできておる水道を、閉山炭鉱方式に見習ってやるかやらぬかという問題です。通産省は閉山方式でやりたいと言っております。大蔵省もやりたいと言っている。これは鳩山主計局次長が、当時ここで言明をしておるわけです。この閉山水道と特別鉱害水道の違いはどこにあるかというと、すでに特別鉱害の水道というのは補助金をもらっておるわけです。幾らもらっておるかというと、水に換算をして六十リットルもらっておるのです。ところが文化が進みまして、現在水について言えば、一人当たり百五十リットルの補助金を出すわけです。そこで、六十リットルの補助金をもらっており、いま百五十リットルの補助金を出すわけですから、九十リットルだけ特別鉱害は補助金をもらっていないことになるわけです。そこで、閉山水道と同じような取り扱いを特別鉱害の水道にすることになれば、六十リットルすでにもらっておるから、九十リットルだけの補助金をやればいいことになり、そういう形でやることになったわけです。そこであとの九十リットル分について起債で認めて、その起債分をあと元利補給をしてやる、そのときには特別交付税、普通交付税でやるかやらぬかという問題なんです。すでに昨年の終わりごろから特別鉱害の水道を市町村に移管をして、そしてこれは工事が始まりつつあるわけです。ところが、大蔵、通産は閉山方式でいくという方針をきめておるが、自治省はきめていない。なぜ自治省がきめないかというと、そう何もかにも特別交付税とか普通交付税に持ってこられたんでは困るというのが自治省の言い分です。その自治省の言い分というのは、私は非常によくわかるのです。そこで、先日以来ここで、塩見さんの前の永山自治大臣福田大蔵大臣から言質をいただきました。これは産炭地の財政が、そういうように鉱害のために非常に自治体にしわが寄っているということについては、大蔵省もひとつ積極的に自治体の負担を軽減する方向でやりますという言明を得たし、それから自治大臣も、そういう方向で前向きにやります、こうなっておるわけです。ところが、いまの特鉱水道については、これはもう自治体がどんどん計画を出している。しかし、これは閉山水道のように数多くありません。ことし一つか二つくらいしか出てこないと思うのです。しかしだんだん出てきて、全部で三、四十くらいあるかと思います。そう大きな金にはならないと思いますけれども、これは自治省がいまのような閉山方式にのっとって起債で見てやって、その起債分の元利補給を普通交付税なり特別交付税でしてもらわないとどうにもならぬわけです。それについてはある程度大蔵省の了解もとらなければいかぬと思いますが、大蔵省は、鳩山主計局次長がオーケーをしている。オーケーをしたからこれは軌道に乗っておるわけです。だから、そこの最後の詰めを自治省が財源措置をして、自治体の負担をカバーしてやらぬとぐあいが悪いのですが、これは一体どうやるのか。現実にこれはもう工専が始まっておるわけです。
  194. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 お話しのとおり、閉山水道につきましては起債で見て、特別交付税で元利償還を見ておるのでありますが、この特別鉱害水道につきまして、これと同様の措置をするかどうかということにつきましては、いまの滝井先生のお話では、大蔵省、通産省みなオーケーだというように承ったわけでありまするが、私もまだ就任問もないので、そこまでは確かめておりませんが、まだこれを煮詰めて結論を出すのには、各省間の調整で若干時間をおかし願わなければならないように事務報告を受けておるわけであります。しかしながら、問題の性質がそういった産炭地の閉山水道との関係ももちろん考慮はしなくちゃなりませんし、お話しのような趣旨の方向、前向きの方向で、ひとつしばらく時間をかしていただきまして、検討さしていただきたいと思います。
  195. 滝井義高

    ○滝井委員 検討するのはよろしいのですけれども、実を言うと、もう工事が始まっておるんですよ。そこで、その財源の最後の締めくくりです。起債はもらっている、仕事は始まっておる、しかしあとの始末を一体どうしてくれるかということをはっきりしないと、非常に自治体は不安なんですよ。いま言ったように、百五十リットルになったわけです。昔は一人について一日六十リットルしか補助金を出さなかった。これが百五十リットルになったのですから、六十リットルでもらった補助金は差し引いても、九十リットル閉山水道とは差別をつけておる。そうすると、九十については閉山方式をとってやるのが私は理の当然だと思うのです。同じように疲弊をした炭鉱地帯の自治体ですからね。だからこの点は、大蔵省はその九十リットルをのんだわけです。のんで閉山方式でいく、通産省もそれでいく、厚生省もそれでいきます、こうなっておるのです。ただあなたのほうだけが最後の締めくくりをしてくれないから自治体が困り果てておる、こういうことなんですよ。だから、われわれも他の補助金の面については当然要求します。大蔵省にも要求するし、通産省にも協力を願わなければならぬと思う。しかし、ただわずかな二十か三十の市町村が、たまたま特鉱の水道を持っておったということで、それがじんぜん日を送り、工事にかかっておるにもかかわらず最後の締めくくりの財源措置が見通しがつかない、しかもそれは自治省だけが言を左右にするということでは困ると思うんですよ。だから、そこはひとつ大臣責任を持って、やはりそれは処置いたしますということをはっきりしておいてください。まあ初めて大臣になったときには、一番初めからクリーンヒットを飛ばすことが一番いい。
  196. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 地元の市町村のほうで、いまおっしゃるとおり不安が確かにおありになろうと思いますので、また地方団体からの要望もございますし、これは早急に結論を出したいと思います。御了承いただきたいと思います。
  197. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 細谷治嘉君。
  198. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最初に厚生大臣にお聞きしたいのですが、せんだってこの答申を受けまして、この答申では雇用対策がないのだ、それで非常に生活保護者が激増してくる、ですから生活保護よりも雇用対策をという形で厚生省は各省に申し入れした、こういうふうに新聞等で書いているのを読んだわけでありますけれども、今日産炭地六条指定、百十ばかりの市町村がありますけれども、たいへんな生活保護費をかかえておるわけです。税金は減るわ、生活保護の二割負担だという形で、これはもう生活保護費に全部をつぎ込む、あるいは失業対策事業につぎ込んでおるというような現況でございます。  そこで、大臣に率直にお尋ねしたいのは、非常に高率の失対事業をやっておるところでは、労働省は数年前からたいへんな努力をしまして、そういうところには地元の負担に対して高率補助というのをやっておるわけです。たとえば、一般には労務費に対して三分の二という補助率でありますけれども、全国水準を非常に上回ったところに対しては五分の四、八割の補助になるようにやっておるわけです。これは私は、今度のこの答申を受けて地方財政の問題も出ておるわけでありますから、生活保護が異常に多いところ、厚生省の見通しでは、まあ現在六条指定は七十という保護率だそうでありますが、数年後には百二十をこえる、こう言っておるわけですから、たいへんな負担であります。そこで、生活保護について異常に多いところに対しては高率の国庫負担、いわゆる八割の国庫負担でありますけれども、それをたとえば九割とか、あるいは九割五分とか、非常な高率の負担を労働省の失対事業と同じようにやるべきだと思うのでありますが、厚生大臣のお考えをまずお聞きしておきたい。
  199. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 ただいまお話がございましたように、産炭地における最近の生活保護世帯の激増、こういうことがきわめて顕著に出ております。昭和四十一年の三月末におきましては全国で百六十万人、千人に対しまして十六人程度と、こういうことでありますが、北海道はじめ福岡等産炭県の実情を見ますと、千人に対しまして三十人、福岡県のごときは千人に対して五十九人、こういうような割合になっておりまして、私は、産炭地の生活の困窮の状態というものが端的にこれに出ておると思います。またそういうことでございますので、市町村——町村の場合は県が見ておるわけでありますが、市の場合におきまして、市の財政負担も非常にふえてきておるという実情もよく私ども承知をいたしております。この市の財政負担の面の補完的な財政手当て、措置というものにつきましては、自治省と十分話し合いをいたしておりまして、特別交付税でこれを見てやる、こういう方向でいま検討をいたしておる次第であります。
  200. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いまの答弁では私は納得できないのです。何でも特別交付税、特別交付税ということでしりぬぐいするところに問題があります。現在生活保護というのは八割でありまして、残り二割の負担については、大体人口一人当たり幾らという形でくるのであります。つまり密度補正でいくわけです。ですからどんどんどんどん負担というのが多くなってくるわけです。密度補正というのは八〇%しか見ていないのですから、残りの二割というのはたくさん——それは福岡県の市では、先ほど五十九とか言っておりましたけれども、二百をこしておるところもあるのですから、たいへんなことなんです。そういうことでありますから、やはり労働省が数年前からやったように、特別交付税なんてそういうえたいの知れないものではなくて、失業対策事業に対して高率補助をやっていると同様に、非常な保護率の高いところに対しては、厚生省独自でそういうものを考えるべきではないか、こう思っておりますから、自治省と話し合ってじゃなくて、厚生大臣自体で、労働省と同様な形でひとつ御検討をいただきたいということを強く要望しておきたい。  次に、自治大臣にお尋ねしたいのですが、先ほどのごあいさつなり、岡田委員の御質問に対する答弁を聞きますと、国では十分やってやろう、また自治省としては、起債なり交付税なりでできるだけめんどうを見たいというのでありますが、ちょっと聞いておりますと、他人ごとでこの産炭地の問題を見ているような感を受けたわけです。そこで、私は具体的にお聞きしたいのでありますけれども、この答申の一番最後に、「公共事業の実施について、その援助措置の促進を図る」と、こういうふうに書いてございます。現在は産炭地域振興臨時措置法に基づいて、昨年からちょうど新産都、工特、あるいはことしできました首都圏、近畿圏と同様に、一定の率以上の負担が伴ったものについては、その部分について財政の援助をする、むずかしい方式を使ってやるという、いわゆる地域開発、工業開発に対する方式をそのまま持ってきまして、産炭地への財政援助と名づけております。ところが、現実に四十年の実績を見ますと、これは一つも役に立っておらぬと私は思う。役に立っておらぬというのは、少し言い過ぎだと思うのだが、さか立ちをしておる。一番困っておる六条指定のところには、そういう財政援助はほとんどいかないで、二条指定、その産炭地の近傍の、わりあいに財政力もあって公共事業をやっておるところにいっておるというさか立ちをしておる。こういう措置で、産炭地の財政というものに対する援助が現実になされておると自治大臣はお考えなのかどうか、一体産炭地域振興臨時措置法のような方式の財政援助のやり方が適当しておるものかどうか、これをひとつ自治大臣にお聞きしたい。
  201. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 いまの産炭地の問題につきまして、新産、工特式の処理がいいのかどうか。新産、工特の地域というのは、これはおおむねこれから産業経済が発展をしていく、こういうふうな基盤のもとに国の援助促進方式がとられておると思うわけでありますが、産炭地域は、いわば逆に沈んでいくような傾向のある地域であると私は理解しておるわけでありまして、したがって、新産、工特方式がいいのかどうか、もっと別に産炭地に対して適応した方策があるのではないかというような点は、いま検討もいたしておりまするが、やはり産炭地に適応したそういった振興対策というものを早急に検討して、これも前向きでもって結論を出したい、かように考えておる次第であります。
  202. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最後に通産大臣にお尋ねをしたいのですが、いま自治大臣は、産炭地の財政事情からいって、公共事業を推進するには、上産炭地域振興臨時措置法のいわゆる工業開発地域のやり方ではだめだ、検討するのだ、こう率直な意見を聞かしていただいたのですが、これは通産省の所管の法律なんですが、大臣、その工業開発のように、ある程度の財政力を持っておって、そして一割以上を所定のものでやった場合には、その上積みに対して補助をするという新産、工特方式ではだめだと私は思うのです。やはりこれは奄美大島の振興にとられておるような、あるいは離島振興にとられておるような、個々の事業に対する高率補助、そういう補助方式をとらなければならぬのではないか。ですから、いまの臨時措置法のあの財政援助のやり方を抜本的に改めるかどうか、これが一点。  もう一つは、実施計画を再検討し直すわけでありますから、それに対する道路とかいろいろな事業があげられてまいります。その通産大臣が認めた実施計画の個々の事業は、これはやはり道路の五カ年計画に入っておらぬとか、何々港湾計画に入っておらぬという形で補助を除かれては困るわけでありますが、実施計画を認めた事業というのは、これは公共事業と全く同様な扱いをして、それに高率補助を適用する、この二点が重要な問題だと思うのでありますが、そういう点で現在のやり方を抜本的に変えていく御意思があるかどうか、これをひとつお尋ねをしておきたい。
  203. 三木武夫

    三木国務大臣 私も産炭地を見て歩いたことがあるのですが、どうもやはりふるわないですね。景気の悪かった時期でもあったわけですが、しかし、それにしてもやはりいま御指摘のように、産炭地振興には何か特別な配慮が要るのかもしれぬという気が私はするのです。新虚業都市などとは条件が違うのです。新産業都市なんかは、いまはあまり工場、企業がこなくても、将来やはり発展していくいろいろな条件がありますからね。これはよく研究させてもらいたい。やはりいままでのような式だけでは、事情も各地によって違うけれども、なかなか産炭地振興の実はあがらないのではないかという疑問を私も持っている。これは検討をいたしたいと思います。  それからもう一つは、通産省が認めている公共事業は、これは当然に道路計画などにも入れて、通産省のその計画が、途中で建設省の計画などに入らずに立ち消えになるようなことにしないようにいたしたいと思っております。
  204. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 伊藤卯四郎君。
  205. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 関連して通産大臣に一点だけお伺いしておきたいと思います。  同僚各委員からかなり詳しく突っ込んで質疑等が行なわれておりますが、私が一点お尋ねしようとしておりますのは、赤字補給金の問題についてです。炭鉱の坑内条件が悪くて、技術的な生産計画あるいは労使協力体制が確立されてやっても、やはり何カ月か、あるいは半年とか一年とか赤字にならざるを得ないというところは、当然赤字補給の対象山になることは、これは議論の余地はありません。ところが、山の条件はあまりよくないけれども、坑内の生産技術計画が非常によくて、労使協力体制が非常にうまくいっておるために、そこは黒字になっておるけれども、山の条件はそれよりずっといいのにもかかわらず、やはり技術、生産計画とか労使協力体制がうまくいっていないために赤字になっておるという場合に、そういういい山に、赤字であるからといって赤字補給金を出して、そしてそれより条件が悪いけれども、いま述べましたようなことで黒字になっておる山もある。こういうことで、赤字であるから何でも補給するということになってくると、これは不合理というか、悪平等になることは当然です。そういう場合に、政府としてはこういう赤字の山を、あるいはまた黒字の山を監督、監査というか、そういう上に立ってどのようにこの赤字補給金を出そうとしておられるのか。この点は、今後へたをするとかえって悪平等のために不平不満が出てくる、あるいは労使協力体制がうまくいかぬ、がんばってやったってやっただけ損じゃないかというような点等も出てくると思いますから、こういう点に対して、この赤字補給金の基準というか、査定というか、そういうものはどういうような監督、監査をもってやろうとしておられるのか、この点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  206. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろな施策があるわけですが、それでもなおかつやはり赤字が出るような場合に、安定補給金の問題で、伊藤さんのお話では、安定補給金は、まじめにやった者が熱意を失うようなことにならないようにせよというお話だと思うのですが、この安定補給金は、大体中小炭鉱中心考えたいと思っているのです。大手の悪いのと中小企業中心ですが、この安定補給金に対しては、どういうふうな基準で渡すかということは、いま御指摘のようなことも頭に入れて検討いたすことにいたしたいと思います。
  207. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま大臣答弁されましたような、そういう不平等、不合理にならないようにやると言うことは、口では簡単でありますけれども、さてこれを査定するというか、監督、監査するというか、これはなかなか役所のほうでも私は勇気が要ると思うのです。中小炭鉱ばかりではありません。私の知る限りにおいて、大手炭鉱でも、坑内条件がいいと思ってあけてみたら、どうもなかなか炭層が思うように安定していない。しかしながらやらなければならぬというので、相当労使協力体制でがんばってやっておりますけれども、さてやり切れるかどうかということが疑問になっておる山もあります。中小は、もちろんそういう山がかなりあります。さてそれを、いい山で出せるのにうまくいかぬために出せないでおる、悪い山だけれども、がんばっておってうまくいっておる、そういう点等を監督、監査、査定するのには、やはり相当な、役所に強力な断固としてそれをやるという、また、やはり納得もさすことができるというようなものをそろえなければ、私はこれはなかなか安定補給金というか、そういう赤字の補給金をやるということは、非常に困難じゃないかと思うから、この点について、別途にそういう強力な体制をもってやるようなことについては、何かそういう構想というか、そういうものはお考えがございますか。これはもう当然起こってくることですし、やらなければならぬことですから。
  208. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、いま具体的にここでお答えできるような段階ではないですけれども、これは十分に検討をいたすことにいたしたいと思います。
  209. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 よろしゅうございます。
  210. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 それでは午後三時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十九分休憩      ————◇—————    午後三時二十六分開議
  211. 野田武夫

    野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  理事補欠選任の件についておはかりいたします。  理事有田喜一君及び同始関伊平君が過日委員辞任されましたので、理事が二名欠員となっております。この際、理事補欠選任を行ないたいと存じますが、先例によりまして委員長より指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  212. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。それでは理事大坪保雄君及び進藤一馬君を指名いたします。      ————◇—————
  213. 野田武夫

    野田委員長 次に、石炭対策基本施策について質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  214. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 通産大臣が来られる前に、答申関連をしてきわめて個別的な問題でありますが、技術的な問題を質問いたしたいと思います。  廃止業者が放棄した鉱区に新たに粘土等の出願の許可が出ておる。これは筑豊では大問題になっておるわけです。単に一つではなくて、先般石炭鉱業合理化臨時措置法の改正によって、要するに放棄した鉱区を、さらに事業団で鉱業権を設定して、それを活用しようという場合に、ほとんどの鉱区に全部粘土の出願が出ておる。旧方式で合理化事業団が買い上げた、すなわち鉱業権の移転のあったものについては、もう問題ないわけですけれども、要するに放棄して封鎖した鉱区には、炭以外の新たなる鉱業権の出願があって、現実にそれがありますと、新しい改正法案に基ずくせっかくの石炭の鉱区の活用ができない。これは一体どういうように対処せられるつもりであるか、お聞かせ願いたい。
  215. 井上亮

    井上説明員 ただいまおっしゃいましたような事例があるという話を、私も現地の者から聞いております。しかし、私どもが先般法律の改正をいたしまして、要するに消滅鉱区あるいは事業団が買い上げた鉱区につきまして、隣接の鉱業権者が、その消滅鉱区を再活用しようという道を開いたわけでございます。これはそういう意図で、先生がいま御指摘のあったような事例で、粘土というような意味でやったわけではありませんで、やはり石炭産業そのものの、石炭の合理的な採掘のため、あるいはそのことが同時に隣接鉱業権者の——鉱業権者といいますのは石炭鉱業権者の経営上にも稗益する、あわせて石炭資源の活用にもなるという意味でやったわけでございまして、それが実際の事例では、ただいま仰せのようなことが非常に多いと聞いているわけでございまして、これについては私どもの法体系ではなしに、これは鉱業法の運用ともからみますので、そういう事例に対してどうするかということを、ただいま通産省内部、関係部局とも打ち合わせ中でございます。  とりあえずお答えいたします。
  216. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 局長は事態を認識していないですね。私の質問とは違うことを答弁している。そうではないんですよ。その隣接鉱区の鉱業権者が、消滅された鉱区を活用しようとしても活用できないことになっている、こういうのです。すなわち、すでに放棄し、封鎖をした鉱区に耐火粘土の鉱業権の出願が出ておるのですよ。そこでせっかく通常国会で通過した法律で隣接鉱区、放棄された鉱区ですね、放棄された鉱区に事業団が鉱業権を設定しようとしても、もうすでに先願として粘土の鉱業権が設定をされようとしておるのですよ。そこでいままで放棄した鉱区はほとんど全部耐火粘土の鉱業権の設定出願が出ておる。先願主義でいくと、耐火粘土のほうに先願権があるのですよ。そうすると、せっかく有沢第二次答申以来、その答申にのっとり、さらに法律まで改正して活用しようとするのに、活用できないことになっておる、こういう意味ですよ。法律が全面的に施行できないのだ。一つや二つじゃない、全部だ。
  217. 井上亮

    井上説明員 実はこの問題は鉱山局長の所管の問題にまたがりますので、これはむしろ鉱山局から来てもらいまして、またあと鉱山局長からお答えいただきますが、とりあえず私ども石炭局の立場での考え方といたしましては、要するに石炭の採掘を主目的としていると思われるような耐火粘土の出願につきましては、合理化法の趣旨から考えまして、できるだけ許可したくないというような行政指導をいたしたいというふうに考えております。
  218. 両角良彦

    両角説明員 放棄をいたしました鉱区につきまして耐火粘土の鉱業権の出願がなされました場合、現在の鉱業法のたてまえからこれを拒否するわけにはいかないかと存じます。しかしながら、耐火粘土を採掘することを目的とする鉱業権者が石炭の採掘を行なうということは当然制限さるべき筋合いのものでございますので、施業案の認可等につきまして、運用面でさような点について特段の配慮を加えてやってまいりたいと考えております。
  219. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 問題は二つある。一つは耐火粘土を出願をした業者が石炭も掘るという場合と、そうでなくて耐火粘土の出願許可によって隣接からの石炭の鉱区の活用ができない場合とがある。こういう場合があるわけです。そこで三十五条の六の、石炭鉱業合理化臨時措置法の中における鉱業権の設定の出願の不許可という鉱業権とは一体どういうものをさすのか。すなわち、新たなる鉱業権の場合、一体石炭の鉱業権だけをさすのか、すでに設定されている二重鉱区の場合はいいのですよ、あとに書いてありますから。新たに設定する場合ですね。
  220. 井上亮

    井上説明員 ただいま御指摘の三十五条の六に「鉱業権の設定の出願の不許可等」という条項があるわけでございますが、この中の鉱業権とは何かという御質問でございますが、合理化法の鉱業権の定義によりますと、これは第二条に定義がうたわれておりますが、「石炭を目的とする鉱業権」ということでございますから、あくまでもそういう解釈でまいりたいと思っております。
  221. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで現実には、隣接の鉱業権者が放棄された石炭を活用しょうとして手続きをとりましても、いわば先に耐火粘土の鉱業権が設定されておれば、その話し合いをしなければならぬでしょう。実際にその話し合いがつかなければとれないのです。事実問題として、石炭が今日のような状態において活用できないじゃないか、こういうのです。
  222. 両角良彦

    両角説明員 現在の鉱業法のたてまえでは、当該鉱区におきまする鉱物の採掘は、それと同種の鉱物の採掘をも一応認めるたてまえになっております。したがいまして、耐火粘土の鉱業権者が、それに付随いたしまして石炭を採掘することを禁止するわけにはまいらないたてまえになっておると存じます。
  223. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、耐火粘土というのは何も地上だけにあるのじゃないですよ。石炭石炭の間にあるわけですよ。政府が金を出して買い上げて封鎖をしておるのに、石炭は付随するからというのでどんどん掘られたとするならば、意味がないでしょう。ですから私は、これは権利を剥奪するわけにはいかないから、少なくとも合理化法によって封鎖をしておる期間は許可を停止するとか、そういう臨時立法によって制限すべきではないだろうか、そのかわりその封鎖が解ければそれは先願権があるでしょう。ところが、法律によって、一方において政府が買い上げまでして整理交付金まで出して停止しておるのに、石炭は付随的に出るから掘ってもよろしいということになれば、一体何のために法律の改正をしたり、それから合理化法によってわざわざ三十五条の六をつけ加えたのか。これは早急に手を打たないと、全部放棄鉱区には耐火粘土の出願がなされますよ。ほとんどもうなされつつあると聞いておる。ですから、わざわざ法律を国会で改正して、それを活用しょうとしても活用できないじゃないですか、隣接鉱区から。
  224. 両角良彦

    両角説明員 ただいま御指摘のございましたような問題も起こり得るわけでありますが、実際の運用面におきましては、鉱業権の認可にあたりまして、耐火粘土だけで当該鉱区の採掘価値があるかどうかという点については、厳重な審査をいたすようにいたしております。すなわち、施業案で、耐火粘土のみを採掘するのではとうてい経営上成り立たないというような見通しが立ちまする鉱業権の出願につきましては、その鉱床につきまして鉱業権の認可をいたさないというような運用をいたしておる次第でございます。また、耐火粘土の鉱業権者にとっては、石炭取得の目的での採掘はこれを認めないということによりまして、運用上さような御指摘のような問題が起こらないように措置をいたしておる次第でございます。かような点につきましては、昨年の夏にその旨の通牒を出しまして、現地におきまする指導の遺憾なきを期しておる次第でございます。
  225. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから、現地の新聞には「閉山鉱区の粘土試掘、石炭採取もできる、臨時措置法空文化の心配」と書いてある。そういう通達を出しておるから「空文化の心配」ということで大きく出ているでしょう。そうして、今度新福岡通産局長になられた黒部さんの談話まで出ている。そうして、この石炭が売られておるのかどうかはっきりしないけれども通産省の炭業課長名で、「副産物として出てきた石炭の採取は仕方がない」という見解を示す文書が出されておる。こういうふうに新聞は報じておる。一体そういうことになれば、合理化法における放棄した鉱業権というものは、これは全然別の角度から空文化されるし、また、先般改正しました法律も全く役に立たないことになるではありませんか。大体役人が放棄なんという小細工を弄するからいかぬのですよ。従来、合理化事業団に鉱業権が移転をしておったわけでしょう。それを鉱害被害をかぶっちゃいかぬというので、連帯責任になるというので、そこで放棄という案を出した。放棄という案を出したから、結局無資力ということになって、実際は政府が金を出しておるのですよ。ですから、こういう鉱業法に関する大問題を、次にいろいろなことを予定しないで、放棄だとか、そういうようなサル知恵を出すから、まだ頭のいい男がおって裏をかかれるわけでしょう。ですから、少なくとも政府が整理交付金を出して放棄したところの区域については新たなる鉱業権は認めないとするか——それは暫定的でもいいですよ、こちらは合理化法が臨時立法ですから、あるいはまたもとに返して、鉱業権の譲渡を全部やる。いま放棄したものは全部、全国ともあらためて石炭鉱業合理化事業団で設定し直す。こうしなければ対抗できないですよ。そうして、主たる目的であるかないかというような判断はわからない。わかっておっても、またその把握ができない。そのうちに炭層の事情、鉱床の事情が変わるから、そのときは表面だけで、石炭がなくても、どんどん石炭のある地域に行くかもしれない、あるいはそれが目的であるかもしれない。そんなことは全然わかりませんよ。ですから、これに対して法的対策を講じなければ意味をなさないじゃないですか。
  226. 井上亮

    井上説明員 先ほどもお答えいたしましたように、ただいま私どもは行政指導といたしまして、石炭の採掘を主目的とするような耐火粘土の採掘につきましては、これは合理化法の趣旨から認めるわけにまいらないということで、行政指導の形でただいまやらしておるわけでございますが、先生御指摘のように、単なる行政指導だけでなしに、法的にも完備する必要もあるかと思いますので、さらに実態を調査いたしまして、法律改正等についても、要すればやりたいと考えております。現にそういう方向でいま調査も行ない、検討も行なっておる次第でございます。
  227. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは先願主義でしょう。ですから、私は行政指導でやるというようなことではいけないと思うのです。相手は権利できているわけですよ。権利を行政指導で制約できるならば、何も法律は要らぬですよ。行政指導の域を越しているんです。これは権利と権利が衝突しているわけですよ。ですから、その権利を一時制限をするならば、法律をもってしなければできないでしょう。法律論でもいろいろ議論がある。いや鉱業法は基本法だから、臨時立法では制限できないという法律議論もあるわけです。法律でもなかなか困難なのが、行政指導でできますか。行政訴訟を起されたらどうしますか。権利関係が衝突して競合しているわけですから、それが一々役人の行政指導でできるようだったら困りませんよ。現実に全部放棄された鉱区に鉱業権の取得が、耐火粘土の取得が出ているんですよ。しかも炭業課長が言ったかどうか知りませんが、新聞によれば、炭業課長は、出た石炭はやむを得ない、こう言ったという文書を示されて、石炭事務所は手を焼いているわけですよ。ですから、この問題は早急に解決しないと、最近改正しました法律の活用が全然できないじゃないですか、こういうふうに思うのです。  そこで鉱山局長にお聞きしますが、これは鉱業権の問題ですからあなたの所管ですけれども、これは現実問題として臨時立法かなんかで制限せざるを得ないでしょう。
  228. 両角良彦

    両角説明員 現行法のたてまえでは、同種の鉱物の採掘につきましては、これを認めざるを得ないたてまえになっておりまするが、御指摘のような問題が起こりますので、放棄した鉱業権の存在しました鉱区につきましては、先ほど申しましたような施業案の認可における認可方針というもので、問題の起こらないように処置いたしておるわけでございまするが、法律的に申しますと、同種鉱物の採掘はこれを認めない、つまり鉱業権は一鉱種に限るというような法律的体制をとることが好ましいという意見もございまして、新しい鉱業法の改正案におきましては、さような案も採択されておるような次第でございまするが、目下の問題につきまして、これを法的に整備しなければならないと仮定いたしますならば、その場合には臨時立法で法的措置を講ずることが妥当ではあるまいかと考えております。
  229. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、同一鉱物というように鉱業法の根本改正をするというには時間が足りない、余裕がない、急がなければならぬ。だから、この前の法律の活用によって、一応放棄した鉱業権に対して合理化事業団の鉱業権の設定を全面的にするか、しからずんば臨時立法によって、別の鉱物の採掘についての鉱業権を一時先願を停止する、こういう便法をとらなければ、権利を剥奪するわけにいかぬでしょうから、どちらかをしなければせっかくの法律が死んでしまう。だから、これは買い上げとも関係がありますけれども、私は、今度千二百円を二千円、プラス二百円ないし四百円をするときに、もとに返して鉱業権の譲渡をしたらどうかと思うのです。どっちみち無資力で、政府は金を払っておるのです、鉱害の賠償を。ですから、鉱業権の譲渡を一応して、放棄なんという空白をこういう権利関係に置かないように、譲渡をするという方式をとって改むべきではないか、こういうように考えます。そうして合理化法というものを全面的に廃止する時期に今後どうするかという問題を検討する。そうしなければ全く意味をなさない状態になっておるのです。しかも、これは急速を要するわけなんです。現実に隣接鉱区から合理化事業団が新しく鉱区を再び設定して掘れと言われても、耐火粘土の鉱業権者に了解を求めなくては掘れないですよ。掘ろうとすると、今度は権利関係が衝突するのですから、当然耐火粘土の鉱業権者にある程度の金を与えなければオーケーをしないでしょう。ですから、こういう大きな権利関係の問題が放棄されておるところに問題があると思うのです。もう一度石炭局長から答弁を願って、通産大臣答申についての質問をいたしたいと思います。
  230. 井上亮

    井上説明員 ただいまの耐火粘土の申請問題につきましては、先生御指摘のとおり最近とみに消滅鉱区について申請がふえておるわけでございますから、これにつきましては、まだ通産省といたしまして認可をしている件数はごくまれでございまして、ほとんど全部といっていいくらいまだそのままに認可しない姿でおるわけでございまして、私どもとしましては、できるだけ早い機会に法律改正、これはまあ鉱業法の問題でもありますけれども石炭関連いたします臨時措置でございますので、臨時非常措置といたしまして、合理化法の改正によりまして、こういう弊害のないような措置を早急に検討してまいりたいというふうに考えております。
  231. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 答申について通産大臣質問いたしますが、総理大臣は、石炭鉱業の再建対策確立に関する件という衆議院並びに参議院の決議も、当然最高の決議機関でありますから尊重するとおっしゃった。そこで、石炭鉱業審議会答申と国会の決議との差のある部分は一体どういうようにされるのか、具体的に聞きますからお答えを願いたい。  まず、われわれは四十五年度五千二百万トン程度需要確保すること、こう言っておる。さらに出炭規模五千五百万トンを目標とすると言っておる。しかるに鉱業審議会答申は五千万トン前後と言っておる。これは一体どちらを採択されるつもりであるか。さらに石炭鉱業審議会は、電発火力について昭和四十五年度までに五基を建設したい、国会は八基を建設すること、こう言っておる。これもいずれを採用されるつもりであるか。あるいはその間をどう調整されるつもりであるか、これらをお答えを願いたいと思うのです。
  232. 三木武夫

    三木国務大臣 最高機関としての国会の決議、これは尊重しなければならぬわけですが、しかし国会できめたとおり、そのとおりやるということは、これはやっぱり、行政としていろんな角度から、その精神は尊重しなければならぬけれども、実際にそうなら行政もみな国会がやるということになるわけですから、それはやっぱり行政は行政として、その精神を尊重しながら、行政の責任において決定をすることはごうも国会を尊重しないということにはならない、こういうふうに考えておるわけでございます。したがって、政府政府の案をきめるときには十分に頭に入れて、そうしてたとえば五千二百万トン、五千万トン程度という、こういうことも、政府がどういう態度をきめるかというときには十分頭に入れますが、しかし、答申でも程度という弾力性のあることばを使っていますから、やはり相当五千万トンを上回る場合もある、こういうことも頭に入れて程度ということばを使ったのでしょうから、そう大きな、もう西と東と違うというふうには考えない。まあ表現に多少の違いはあるという程度で、真正面から衝突しておるとは思わない。  それからまた石炭火力の電源開発の問題にしても、これは石炭の一番安定した需要になるわけですから、そういう点で、できるだけ多く石炭火力をつくって安定した需要確保せよという、これはまた国会の決議の精神でもあるし、答申もまたそういうことで、建設の基数は違うけれども、方向としては、これもまた西と東と違ったようなことではない。こういう答申も尊重するというたてまえですし、国会の決議も尊重する。両方方向が違っておるときには困りますけれども、大体方向は同じ方向をねらっておるのですから、最終的にはそういうことを頭に入れながら政府態度をきめたいと思っております。
  233. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三木通産大臣ことばが巧みですから、弾力的だとかあるいはそう違わないとか言われるけれども、事実問題としては五千二百万トンというのと五千万トンという二百万トンの差は、炭鉱の閉山を考えた場合には非常な大きな問題があるんですね。ですからその影響がきわめて大きな問題がある。この炭鉱を具体的に一つ一つ精査をする場合には非常に大きな問題がある。まさにボーダーラインにある炭鉱としては、二百万トンの差は、その炭鉱が入るかどうかという、地域的に見れば、まず社会的な影響も非常に大きなものがあるんですね。ですから大臣がおっしゃるように、きわめて弾力的にやるとおっしゃるならば、われわれが五千二百万トンと主張したこの主張は大体生かされる、こう考えていいのですか。いまわれわれの頭の中に想定される幾つかの山の場合、これは大体無理のないような方向で問題を扱う、こういうように理解をしてよろしいですか。
  234. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうふうに御理解願っては、あとで話が違うということになっても困りますので、御理解願わないようにお願いをしておきたい。われわれとしてはぴったりと何千万トンというような政府決定をしないつもりです。やっぱり答申にあるような程度ということばを使って、多少の弾力性を持たしたいと考えております。しかし、この点についてはもう国会の決議のとおりになるんだなあと言ったら、それでいいんだなあと言ったら、ノーと答えておきたいと思います。
  235. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほどは、国会は最高の決議機関ですから十分その精神は尊重すると言いながら、きわめて微妙な問題ですね。しかもきわめて重大な問題は否定されるでしょう。それでは国会の決議を尊重するということにならないじゃないですか。この五千三百万トンか五千二百万トンかというのは与野党で大議論があったわけですよ。このトン数をきめるためにはほとんど精力を費やしたといってもいいわけです。自局党のほうで五千二百万トンだと、こうおっしゃるから、与党が言うのだから責任を持つだろうというので五千二百万トンにした。われわれの主張じゃないのです。われわれの主張は曲げて与党の主張にわれわれは賛成したのですよ。同調したのですよ。それをさらに値切るということは、これはちょっと政党政治の立場からおかしいでしょう。ですから、大臣弾力性があるとおっしゃるから、私たち弾力性があるような方向で問題を扱われるのだろうと、こう理解してよろしいかと言えば、いやそれではない。それなら国会の決議は全然無視するということじゃないですか。いま五百万トンとか一千万トンの話をしているのじゃないのですよ。二百万トンの差があるかどうかというのが、地域的に見ても、山別に見てもきわめて深刻だと言っているわけですね。ですから、弾力性ということばを使われましたから、地域経済に及ぼす影響その他を見れば、当然われわれは弾力的に判断をしていただける、こう考えるわけですがね。もう一度さっきの答弁を取り消して、国会の決議どおりひとつ考慮してやってもらいたい。
  236. 三木武夫

    三木国務大臣 申し上げておきたいのは、われわれも好んで山をつぶそうとは考えていないのです。これはやはり地域経済等に与える影響も非常に大きなものがありますので、むろん救える山は救っていきたいということが原則ですが、いまのお話は五千二百万トンと政府がきめるかという端的なお話ですから、これはやはりそういうことを御返事しておいて、そういうことにならなければ非常に食言問題になりますから、それはそういうふうに御理解願わないように願いたいと言ったので、私はやはりこの運用については弾力的に運用したいと思っています。しかし、やはりこの五千万トン程度という答申の線は尊重したいと考えているのです。私はその程度というところに意味を持たせますよ、程度ということにね。しかし、これを五千二百万トンというふうにしないで、やはり五千万トンというこの答申は尊重したいなという気持ちがあるものですから、いまそういうふうにお答えしたわけです。しかし、それにはぴしゃりと五千万トンというようないき方ではなくて、程度ということで弾力性は持たすことは、そのようにいたしたいと思っています。
  237. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし五千万トンという字は書かれるわけですか、閣議決定に書かれないわけですか。程度というところに非常に弾力性を持たせたいとおっしゃるから、われわれそれに期待をするのですが、五千万トンというのは書かれないのでしょう、閣議決定に。五千二百万トンを書かないということはわかりました。五千万トンは書かれるわけですか、書かれないわけですか。
  238. 三木武夫

    三木国務大臣 いま閣議決定の案はまだできていないのです。きょうもいまお許しを得て中小炭鉱その他に私会ってきたばかりですから、いろんな意見も取り入れて最終的な態度をきめようということで、その出炭目標というものを入れるか入れぬかということについてはまだきめていないわけです。しかしある程度やはりそういう目標を入れておいたほうがいいのではないかということで、まだその原案というものをつくっていないので、きょう意見を聞く会をやっているものですから、それを聞き終わったところで、できるだけそういう意見も取り入れられるものなら取り入れて政府の最終的な態度をきめたいということで、まだその内容については、こういう政府の最終態度にしようという原案はできていないので、その点はまだきめていないのでございます。
  239. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国会の決議の中で、この点とこの点は採用するが、この点は保留する、この点は将来の問題として検討する。あるいは答申の中で、この点は実施するがこの点については保留する、この点についてはさらに検討する。こういう点を、わかりましたら御答弁願いたい。
  240. 三木武夫

    三木国務大臣 これはどうせ来週にやりますから、そのあとでまたこういう委員会をお開きになることと思いますので、そのときのほうがお答えするのに適当だと思います。まだ原案をつくっておりませんから。
  241. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それでは弾力的に運用するというのを一応期待をして、まだわれわれは五千万トン程度というのには承服しかねるということだけを申し上げて、次に進みたいと思います。  閉山を一体どのくらい見ているのですか。
  242. 三木武夫

    三木国務大臣 計画的に山をつぶしていこうという考えではない、やはりできるだけやっていける炭鉱は残したいということですから、いまどれだけつぶそうとしておるのかという計画は、まだ持っていないのでございます。
  243. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすれば予算も組めぬわけです。先ほどから特別会計の話が出ておりますけれども、買い入れ代金の金額はきまるかもしれない。ところが、一体どの程度かということもきまらぬようでは予算だって組めないでしょう。大体どの程度だということはわかるはずじゃないですか。
  244. 井上亮

    井上説明員 今後の閉山の程度につきましては、ただいま大臣がお答えいたしましたように、実は今度この画期的な石炭対策が出ますと、助成の幅が従来に比べまして相当大幅に拡大されます。大手につきましても中小につきましても相当な施策が行なわれると思います。同時に、ただいまお話がありましたような閉山の交付金の引き上げ問題もあるわけでございまして、こういった政策的な諸前提が整いますと、その前提のもとで企業が今後どういう経営をやっていくか、あるいは閉山するかどうするかというような企業の判断があろうと思います。本年度につきましては、先生も御承知のように大体二百万トン程度というような閉山を予想いたしまして、それに対する予算措置を講じたわけでございますが、御承知のように四月以降ほとんど閉山の申し込みがないというような実態でございますので、閣議決定が出ました後におきまして、早急に各社に対しまして今後の再建計画——各社がこの助成策を前提にしてどのように長期にわたって自立する態勢をつくるかという問題、同時に、その過程で閉山をしたいという問題もあろうかと思います。そういう調査を、秋にかけまして精緻に調査をしたいというふうに考えております。したがいまして、それらの状況を把握いたしまして四十二年度以降の——もちろん閉山につきましては四十一年度のものも入ると思いますけれども、本年度下期並びに今後の長期見通しを立てたいというふうに考えております。
  245. 野田武夫

    野田委員長 滝井君から関連質問の申し出がありますから、これを許します。滝井君。
  246. 滝井義高

    ○滝井委員 さいぜんの五千万トンのところについて、通産大臣の御答弁の中でちょっと私わかりかねるところがあるので、もう一回確認をしておきたいのですが、「石炭の位置付けは、五千万トン程度とする」こうなっておるわけですね。この五千万トンというのは実生産量ですか。
  247. 井上亮

    井上説明員 これはいわゆる精炭ベースといいますか、カロリーでいいますと五千九百七十カロリー、いわゆる商品炭ではありません。そういう性質のものでございます。商品炭にいたしますと、これはカロリーにいたしますと、五千八百カロリーをちょっと割るかどうかという程度のものでございますが、いわゆる私どもが五千万トンといいます場合には、商品炭に採算しますと五千百万から五千二百万トンに近い数字になろうかと思います。
  248. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと五千九百七十カロリーに計算すると五千万トン、これをあなたのほうの合理化計画等の書類に書いている換算生産量というのにすると、五千百五十万トンになる、こういうことですね。そのとき換算生産量というのは原料炭と無煙炭と煽石は実生産量でいく。それから一般炭については五千九百カロリーで見る。そうなったときに五千百五十万トンになる。これは稲葉さんのその答弁のとおりでいいんですね。五千百五十万トンでしょう。
  249. 井上亮

    井上説明員 商品炭の換算は五千九百ではなくて五千八百ぐらいでございます。大体おっしゃるとおりでございます。
  250. 滝井義高

    ○滝井委員 あなたのほうの四十一年度の合理化計画においては五千九百カロリーになっているんですよ。四十一年度の合理化計画においては実生産量五千九十七万トン、換算生産量は五千百四十九万トンです。このときの一般炭については五千九百カロリーですよ。こうなっているんですよ、あなたのところの四十一年度の合理化計画では。
  251. 井上亮

    井上説明員 正確には五千九百七十カロリーです。私どもがいわゆる能力ベースでいいます場合には五千九百七十カロリー、それから商品炭ベースで考えますときには大体五千八百ないしちょっと割る場合もございますが、その程度で換算いたしております。
  252. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、その場合には一体能率はどの程度になるのですか。この五千万トン程度出炭をやる、そのときの平均生産能率というものは一体幾らになるのか。それから、その能率というものは大手で幾らで中小で一体幾らになるのか。
  253. 井上亮

    井上説明員 先生は四十一年度で御質問かと思いますが、四十一年度、本年度数字で申しますと、大手の能率は四十二・八トン、中小は三十六・七トン、大手、中少合計しまして平均的に見ますと四十トンというのが本年度の能率でございます。それからこれはいわゆる商品炭ベースではございません。能力ベースで考えております。
  254. 滝井義高

    ○滝井委員 それは四十一年度、そうすると五千万トンというのは四十二年度からいくわけですね。その四十二年度の五千万トンになったときに、いまの大手の四十二・八トン、中小の三十六・七トンが、四十二年度の五千万トンベースのときには一体幾らになるか。そこから新しい答申が発足していくわけですから……。
  255. 井上亮

    井上説明員 厳密な意味で来年度以降四十五年度までの長期の計画につきましては、先ほども多賀谷先生の質問に答えましたように、さらに今回政府決定しょうとしております石炭の抜本対策、これに基づきましてもう一ぺん各社にこの助成策を前提にした長期の計画を立ててもらいたいというふうに考えております。したがいまして、それによりまして若干の変更が今後あろうかと思いますけれども、一応石炭鉱業審議会答申を作成する過程で検討しました数字によりますと、四十二年度は大手が四十六トン、中小は三十九トン、平均的に見まして大体四十四トン程度というふうに考えております。これは五千万トンベースでございます。
  256. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、四十一年から四十二年にかけて四トンの差が出てくるわけですよ。ことしがやはり五千万トンベースでいっているわけですね。そうすると、一人の能率が四トンだけあがるということは、頭が五千万トンと頭打ちになっているのだから、その四十一年の五千万トンを出すときには労働者は十万四千四百二十人、そうすると、それで閉山規模がきまってくるわけでしょう。四十一年度は十万四千四百二十人でしょう。そうすると、今度あなた方が四十四トンにしたときには一体労働者の数は幾らになるかということです。
  257. 井上亮

    井上説明員 ただいまお答えは申し上げておりますけれども、これはまだ審議会の段階で一つ参考資料としてつくりましたもの、助成策をつくります場合の一つの目安としての資料を申し上げておりますので、その点を誤解のないようにお願いいたしたい。政府としましては、先ほども言いましたように、今後きまります助成策を前提にして、もう一ぺん精緻な実行計画を立てたいと思っておりますので、誤解のないようにお願いしたいと思いますが、審議会が一応参考としてつくりました資料によりますと、四十一年度の人間の数ですが、常用雇用で、常用実働労務者数で見ますと、四十一年度、本年度は十万四千四百人でございます。これが来年度は九万四千人でございます。ただこれは、必ずしもこの十万四千から九万四千の差がすぐ閉山につながるわけではございません。これは先生も御承知のように、大手炭鉱につきましても、中小炭鉱につきましても、やはり自然減耗、自然退職等の方もおられますから、そういった方々ももちろんこの中に入っている、そういう意味でございます。これは単に出炭が幾らで、生産量が幾らで、人員がどの程度、能率がどの程度というだけのことですから、この計画からは直ちに閉山計画は出てこないわけでございます。
  258. 滝井義高

    ○滝井委員 四十一年度の閉山規模というのは二百八万トンですよ。これは予算にある。そのときの離職者が一万一千百人、そうすると、ここのあなたの十万四千四百人の四十一年度の常用労働者か四十二年度に九万四千人になった場合に、この一万というものは、二百八万トンの一万一千百人、すなわち四十一年度の分は含まれていないでしょう、これは。この関係をちょっと聞いておかぬと、あと出炭全体との関係がありますから。
  259. 井上亮

    井上説明員 含まれておりません。
  260. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 特別年金制度ができれば能率は下がることはないでしょうからね。いまの計算方式は変えなければならぬ。いな、いまの計算方式をもってすれば、あなたが期待するような能率にならぬかもしれない。しかし、それは経理に影響するわけではないですよ。それは労務費として払っていなくて、結局組夫として使っているから。ですから特別年金制度ができれば、特別年金制度の恩恵を今後は受けるということになれば当然常用化されるから、そうすると人間は、常用労働者はふえるわけですから、能率というものは、あまり拘泥すると、これはせっかく石炭局はあれだけ能率が上がっているというけれども、案外あがっていないじゃないかという非難を受ける可能性がある。それはやはり注意をしておかなければならぬ、こういうように思うわけです。  そこで商品炭の問題も、これはだんだんいい山だけ残していきますから、カロリーが高くなるんですよ。ですから実数トンがまた変わってくるんです。いま五千八百であっても、今度残っておる山はだんだん高カロリーの山になるということになれば、これまた違うわけです。ですからそういう点も十分把握して、固定をしておくと、問題はあと非常にいろいろな問題をかもし出す。ことに銀行関係、能率が上がらぬじゃないか、だからつぶせなんて言われると困っちゃうわけです。  しかし、大体閉山規模程度がわからぬと、労働省だって政策が立たぬでしょう。一体幾らぐらい労働者が失業するのかわからぬというのでは。労働省のほうは、やはりすぐ対策を練らなければならぬでしょう。そのうちに厚生省は、やがて生活保護に転落する連中だっているわけです。それから関連企業も当然影響を受けるでしょう。ですから、もちろん正確にはいきませんけれども、大体概数というものがわからないと政策の立てようがないでしょう。そこで聞いておるわけです。これをもう一度お答え願いたい。  それから、総理大臣通産大臣もかつての労働大臣も、閉山はスムーズに行なう、昭和三十七年の答申のように急激に行なわないのだということを再三再四御答弁になった。これは一体そういう保証があるのかどうか。スムーズに行なうという保証があるのか。そうした場合に、一体貯炭増をどうするのか。国会では、貯炭については「電力用炭販売株式会社を拡充強化して需給調整並びに貯炭業務を加え、これにより当面の過剰貯炭の処理をも行なわせること。」と決議しておる。ところが、答申はそれについて何ら触れていないですね。少なくとも調整機関というものが絶対必要ですよ。もう貯炭融資なんてどこだって簡単にしてくれませんよ。電力会社だって限度があるでしょう。ですから、この閉山規模の問題と、閉山を円滑に行なう問題と、さらに貯炭増の問題を一体どういうように解決するか、これを御答弁願いたい。
  261. 井上亮

    井上説明員 閉山規模の問題につきましては、私も過去五年間いろいろ計画作成に携わってまいりましたが、大体において私どもが計画というか、見通し計画、これは指名閉山じゃございませんから、見通し閉山になるわけですが、その見通しにつきまして、ほとんど正確さを誇ってまいったわけでございますが、率直なところ、私は今後の閉山の見通しが今日の現状におきましてはかいもくわかりません。これが偽らざるところでございます。したがいまして、閣議決定がありましたら、直ちに各現地におきまして、今後のそういった鉱山の見通し等につきましてヒアリング等も行ないまして、さらには今後、秋にかけまして、この助成策を前提にした企業としての計画の立案をお願いしたいと思っておりますので、そういった過程でまた再び正確な見通しをつかみたいというふうに考えております。したがいまして、これもできるだけ急ぎたいと思っておりますので、来年度の計画立案等には支障のないテンポで見通しを立てたい。なお、閉山につきましては、閉山交付金が引き上げられますと、本年度の閉山の見通しいかんによりましては、本年度用意いたしております予算で足りるか足りないかという問題もございますので、場合によれば、少なければ現在の予算で足りるわけでございますし、足りない場合には補正をお願いするというような態度でおるわけでございます。
  262. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 かいもく局長がわからぬというならば、われわれ政策を立案するほうは、基礎資料がわからぬというのですからなおわからぬ。そこでこれは、わからぬという実情は、確かにいまの経営者もわからぬでしょう。あなたのほうがぱっとしたものをまだ出さないですね。政府は一体どういう方針を立てるか、まだきまっていない。だから経営者もわからぬ。  では、買い上げは四十一年度から実施するのですか、買い上げの交付金の増額。
  263. 井上亮

    井上説明員 その点につきましては、先日も当委員会通産大臣の御希望とされまして——これは希望意見でございます。まだ大蔵当局とも打ち合わせば済んでおりませんが、通産省としての希望意見としましては、本年度からできるだけ引き上げを適用さしたいという希望を持っておりまして、今後そういった線で政府部内で打ち合わせをしていきたいと思っております。
  264. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 本年度からというのは、四十二年度前だということはわかるけれども、四十一年度分全部買い上げの増額はやるわけでしょう。そう理解していいのですか。
  265. 井上亮

    井上説明員 すでに交付金決定の終わったものは、これはいかんともしがたいわけでございますが、しかし、先般申し上げておりますように、本年度に予定しておりました予算上閉山の申し込みがほとんど皆無でございます。したがいまして、今後閉山の申し込みのありましたものにつきましては、できるだけその分から交付金の引き上げに浴させたい、これが私どもの希望でございます。
  266. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いや、ほとんどないといっても、ゼロじゃないですな。だから今後買い上げの申請をした分からというのと、四十一年度からというのと、大事なところでちょっと違うのですよ。ですから四十一年度分として申請をしている分については、これは代金は上げるのでしょうと聞いているのです。
  267. 井上亮

    井上説明員 若干は申請があるわけでございまして、十以内だろうと思いますが、小さい規模のもの、その中ですでに交付決定を四月、五月ぐらいに終わっているものも一、二あるようでございます。したがって、それはいかんともいたしがたいが、できるだけ今後の分については、その辺は、これから閣議決定や何かに際しては、もうちょっと方針を明らかにいたしたい。いずれにし.ましてもその方針を明らかにしませんと、先ほど申しました秋にかけて、早急にやはり見通しをつける調査を、あるいは各企業の今後の経営方針を明らかにしてもらう、そういった調査はできませんので、そういった方針はできるだけ閣議決定前後に明らかにいたしたいというふうに考えております。
  268. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、今後交付決定をする分については増額したいという意向だ、こう了解してよろしいですか。
  269. 井上亮

    井上説明員 私は石炭局長でございますから、できるだけ閉山山に有利になるようにしたいわけでございます。理由のつく限りできるだけ好意的に考えていきたい。しかし、去年の分とか、すでに交付決定が終わった分とか——いや、去年もあるのです。去年のもずれ込みがあるわけです。ですから、そういうものはちょっと困難だと思いますが、できるだけ好意的に考えていきたいと思っております。
  270. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大体四十一年度分として申請した分の中で、交付決定の終わっていない分については増額を適用したい、こういうように集約して局長の気持ちを了解してよろしいですか。
  271. 井上亮

    井上説明員 これは私の気持ちでございまして、これからそういう方針で予算当局とも打ち合わせて、最終的にきめたいというふうに考えております。
  272. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 参考人見えておられるのですが、今度の政府の肩がわり処置で、一体トン当たりどのくらい経営としては赤字が解消するというか、楽になるわけですか。
  273. 井上亮

    井上説明員 厳密には、先ほども答弁さしていただきましたように、今後閣議決定の終わりましたあとで、再び企業政府の助成策を織り込みました今後の自立計画の作成をお願いしたいと思っております。それを見ませんと、正確なことは今日言えないわけでございますが、少なくとも石炭鉱業審議会がこの答申を作成する過程で、各社の今後の経理の見通し等について相当詳細に個別企業にわたって検討されたわけでございます。それで考えてまいりますと、まだ政策を必ずしも十分織り込んでいない面もあるわけでございますが、少なくとも赤字、黒字の関係で申しますと、まず大手につきましては、過半の企業は一応収支面では黒字たり得る。(多賀谷委員「そんなことでだめだ、トン当たり幾らぐらいだ。」と呼ぶ)大手全体平均的に見まして、四、五十円程度の黒字にはなり得る。ただし、個別的にそれを見ますと、やはり先生も御承知のようにいわゆる再建企業等につきましては、これは黒字——黒字というと語弊がありますが、相当収支が好転する面もありますが、なお苦しい企業もございます。それから大手の中でも、超大手の中に若干苦しい企業が収支面上は残る面もあります。ありますが、今後政府政策は、単に肩がわりと安定補給金——皆さん、先生ばかりじゃありませんが、経営者の方もあるいは労働組合の方も、今度の助成策は肩がわりと安定補給金だけを考えておられますが、私ども考えております助成策はそんなものではございませんで、もう少し前向きのビルド対策も入るわけでございます。したがいまして、そういうものを考慮いたしますと、まあまあ大多数の企業は、一応少なくとも五年程度特別会計制度のもとでやれるのじゃないかというふうに考えております。
  274. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そんな答弁では、一体われわれは一千億が多いのか少ないのか見当つかぬでしょう。百円が多いか少ないか、その討議の資料にもならぬでしょう、そんな答弁では。ほんとうは平均値を聞いてもあまり意味がないのです。やはり限界炭鉱における状態を聞かなければ意味がないのですけれども、平均値でもけっこうです。平均値一体幾らぐらいで経営が楽になるのか、あるいはさらにそれによってどの程度の経理がよくなるのかということを聞かなければ、われわれ全く審議する資料がないわけでしょう。いや、これはちょっと秘密ですから別の懇談会かなんかにしてやってくださいというならまた別です。しかし、これはいずれ国会へ出るわけでしょう。ですから、平均一体どれくらいコストが下がるのか、そういうことをおっしゃっていただかないと、質疑のしょうがないでしょう。
  275. 井上亮

    井上説明員 概括的に申しますと、平均的にお答えいたしますと、平均的にはやはり四、五十円の黒字にはなる。(多賀谷委員コストはどれだけ楽になる。」と呼ぶ)コスト的に見まして、平均的に見まして四、五十円程度の黒字になる。御承知のように石炭鉱業は格差が相当あります。きわめて優秀であって、今度の肩がわり措置も安定補給金も必要としないというような企業も中にはございます。それから、少なくともこの答申のおもてに出ております金額の載っているような政策、これだけではとてもやれないというような、安定補給金を百円、二百円追加しても計数上は無理だという企業もございます。しかし、私どもは、そういう企業につきましても、なお今後やはり相当な炭量があり、資源政策的にもあるいは地域社会関係考えましても、そう簡単に崩壊を見るわけにまいらない。そういう企業につきましては、やはり特別の対策を講じてまいりたいと考えておりますので、そういったきめのこまかい対策も織り込んで考えまして、まあ大多数の企業はやっていけるというふうに考えているわけでございます。
  276. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 池田総理でないから、おれにまかしておけというわけにいかぬわけですよ。一体現在も純益の出ている炭鉱を平均してみても意味がない。これはよその企業に分けてやるわけにいかないのですからね。少なくともいま損失の出ている企業の平均は一体どのくらいなのか、それが今度の改善策でどの程度赤字が解消されるのか、こういう程度ぐらいはお示しにならないと政策のなにがないでしょう、ただ四、五十円黒字になるんだなんといっても……。それを聞いているわけです。  それから時間がありませんから、いまからコストに及ぼす影響、たとえば運賃だっていつまでも延納というわけにいかないでしょう。ですから運賃問題、あるいは今度合理化事業団の納付金の引き上げ、さらに特別年金制度の財源、将来のベースアップ、あるいは消費者物価が上がる、こういったものを一体どういうように消化をしていくのか、一体それらのコストがどのくらい上がるのか、いまの能率をそのままにして一体どのくらい上がるのか。そういう点をどういうように考えておるのか、お聞かせ願いたい。
  277. 井上亮

    井上説明員 平均的なお答えを申し上げておりますのも失礼でございますので、できますれば懇談会等におきまして、少し個別企業の姿等についてもお答えさしていただいたらいかがかと思います。
  278. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今後コストの上がる要因がありましょうね。過去の分は一応別として、いまからコストの上がる要因についてはどういうように判断をされておるか。現実に上がっていくものがあるでしょう。運賃も延納をいつまでもしておるわけにいかないでしょう。それからいまの納付金の問題だってそうです。
  279. 井上亮

    井上説明員 来年から、従来の運賃値上げ二回分の延納が来年、再来年と、今後三年間にわたりまして延納の支払いが始まるわけでございますが、これらの点につきましては、私ども、特にこの審議会におきまして、今後の経理の見通し、資金の需要等を考えますときに、当然これは織り込んで考えております。したがいまして、そういうものも織り込みまして、これは大手につきましても中小についても同様ですが、やはり運賃は来年からそういうものは支払うのだという前提の計画にいたしております。  それから、ただいまお話の合理化事業団の納付金、それから特別年金制度、これは企業者の負担ということになろうかと思いますので、これも大体三十円なら三十円程度という、これは幾らになるかまだ程度はわかりませんけれども、大蔵省あたりの説によりますと、私どもが三十円かかるというのは二十円程度ではないかというような計算もあります。まだこの辺は正確にはわかりません。わかりませんが、程度は同じ内容で、この辺はさらに厚生省を中心にして検討願わないといかぬ未定の点でございますが、しかし、それもやはりこの計画の中には一応織り込んで収支をはじいております。私ども平均的に見まして、大手炭鉱の今後の五カ年の赤字の平均は四百六十円程度というふうに考えておりますけれども、それにさらにただいまの納付金のアップとか、あるいは特別年金の特別負担分というようなものを加えまして、大体五百円程度の赤字を前提にいたしまして対策を組まなければいかぬというのが審議会態度であったわけです。
  280. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうもばく然としているのですね。四百六十円プラスいろいろの負担を加えて五百円程度なんだ。しかし、今度の処置についてはこの場では言えない。そこで現実問題として、先ほどぼくが読みました電力用炭販売会社による買い上げ、貯炭融資制度ですな。これはもう制度化しておかなきゃ間に合わぬのじゃないですか。いまでも間に合わないし、また将来も、貯炭が余ったといって法律改正をいっても、そう簡単にはいきませんよ。ですから、もう制度化しておく必要がある。それを発動するのは、それは政府が発動すればいいですよ。法律としてはその必要があるのじゃないですか、次の臨時国会で……。
  281. 井上亮

    井上説明員 貯炭融資の問題につきましては、先生の御指摘のように、これは当面焦眉の問題でございまして、現に電力用炭販売会社を通じまして、一部市中から融資を受けまして滞貨融資をいたしておりますが、さらに今後の貯炭状況と見合って、やはり電力用炭販売会社を活用する等の処置を通じまして、貯炭融資に遺憾のないようにやっていきたい。かつて国会の決議もありましたけれども、ああいった政策につきましても、いろいろ政府部内で検討いたしておるわけでございますが、目下のところ、やはり電力用炭販売会社中心として、何か貯炭融資を考えることが緊急ではないかというふうに考えております。
  282. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は法改正の用意が必要ではないかと言っておるのですよ。こういったものは制度として確立をしておく必要があるのじゃないか。ただ、電力会社から早く金をもらってそれを交付するというようなことでなくて、電力用炭販売会社自体で、政府の財投から貯炭融資をする、こういう制度が必要ではないか、こう言っておるのです。それがためには、私は、次にいろいろ法律を出される予定の臨時国会で、もうすでにこの法律の改正をおやりになったらどうですか、これを聞いておるのですよ。あなたのほうでただ行政処置でできるくらいなら、こんなにだれも困ったりせぬですよ。
  283. 井上亮

    井上説明員 多賀谷先生の、法律改正によりまして貯炭融資を考え考え方につきましては、私も個人的には非常に興味を持って考えておるわけですが、なかなかこれにはいろいろ政府部内にも意見がありまして、率直に言いまして、もう少し検討さしていただきたいと思っております。
  284. 野田武夫

    野田委員長 多賀谷委員に申しますが、参考人もおいででございますから……。
  285. 滝井義高

    ○滝井委員 一つだけ、関連です。  私、労働問題を少しやろうと思ったけれども、時間がないようですから、安定補給金についてだけ、ひとつお尋ねしておきたいのですが、この肩がわりの千億については、十年以上の採炭が可能な炭鉱とか、再建整備計画を出せとかという基準があるわけです。トン当たり百円の安定補給金交付の基準というのがないのですよね。これは一体どういう基準でおやりになるのですか。これを読んでも、「上述の財政資金による肩代わり措置によっても、なお安定を期し難い企業もあるので、これらの企業に対しては、当分の間一定額の安定補給金の交付を行なうこととすべきである。」こうなっておるのですね。当分の間ですよね。当分の間、一定期間を限って二百円から四百円の特別加算をやろうというようなものと同じような表現なのです。非常に不安定なのです。だから、不安定な安定補給金を支出する基準というものはどういうものだ。というのは、五千万トンに全部百円やるのじゃない。これはこの前平田さんに質問したら、二十五億ないし三十億というから、二千五百万トンないし三千万トンにしかやらないことになるわけです。その基準というものをひとつ説明してください。どういうところにあるのか。
  286. 井上亮

    井上説明員 この安定補給金の交付の基準と申しますか、しかたにつきましては、審議会の討論の中でも一番議論が多かった点でございまして、率直にいいまして審議会答申を出すまでの過程におきましては、この安定補給金交付の、先生おっしゃいましたようなこまかい基準考え方、これがまだ統一されたものになっていない。したがいまして、答申にありますように、とにかく石炭鉱業の大多数の企業安定補給金以外の施策では十分やっていけないだろう。多数の企業がこれでやっていけるという体制にはならない。つまり赤字が残る、また今後の負担もかかる。とにかくそういうものにつきまして安定補給金を出すべきだというのが答申の趣旨でございます。したがいまして、今後この答申を受けまして、政府が実際に安定補給金を交付しますときには、もう少しその辺の論理を整えまして実施していきたいというふうに考えております。ただ、概括的に申しますれば、大臣もしばしばお話になっておられますように、大手の、どっちかというとなお弱い企業、それから中小炭鉱に主眼を置いて交付していきたいというふうに考えております。
  287. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、第二会社というのは一体どうなるかということです。第二会社というのは、御存じのとおり、たとえば滝井財閥の滝井鉱山があったとする。そうして債務は全部その滝井鉱山の本社で肩がわりしてしまう。そうすると第二会社は、もとの坑道とか巻きとかいう機械設備をそのままその滝井鉱山から滝井第二会社は借り受けておるわけです。そこで滝井第二会社は、今度はそこに十億の負債を持っておる、こういうことになるわけです。そうすると、一体この第二会社は、肩がわりの千億をもらえることになるのか、安定補給金だけでいくことになるのかということなんです。こういう場合は、一体どういうことになるのですか。実はここらあたりをはっきりしておかないと、もう山には動揺が起こりつつあるわけです。おれのほうは第二会社だ、もうつぶれるぞ、こうなるわけです。百円の安定補給金ではとてもやっていけぬ。これをひとつ滝井さん、三百円にしてくれ、そうするならベースアップその他福祉施設も何とかやっていける。百円ではとてもだめだ。そうでなければその十億のもとの親会社から借りて借金になっておるこれを肩がわりしてくれ、こういうものが出てきておるわけです。だから、そこらあたりをひとつ動揺しないように明らかにしておいてください。
  288. 井上亮

    井上説明員 肩がわりのしかたにつきましても、答申では、肩がわりのほうはややこまかく事務的な内容まで触れておりました。安定補給金よりもわりあいに明快に書いてあるわけでございますが、だからといって具体的の適用に際して、ただいまおっしゃいましたような第二会社のようなケース、これは金融機関からの借り入れというよりも、親会社から借りておるというケースでございます。その親会社は肩がわりを受ける。しかし、第二会社の分はどうかというような問題がまだ問題として残るわけです。それを親会社についてやるのか、子会社についてやるのかという点については、今後よく検討してまいりたい。概括的に申しますれば、この肩がわりにつきましては、なおそういった具体的な問題についてはもう少し微に入り細をうがったこまかい検討をしませんと、いま直ちに結論は出ておりません。わりあいにこまかく書いてありますが、そういった点は抜けておる点です。ただ、審議会の空気をお伝えいたしますると、審議会相当やはりこまかく検討、議論が行なわれたわけでございますが、審議会意見としましては、やはり第二会社の場合、親会社から借りておる負債、それの肩がわりは無理だろうという空気が多数でございました。しかし、第二会社につきましては、これは中小炭鉱扱いにいたしまして、安定補給金については、わりあいに、何と言いますか、あまりうるさい条件をつけないで、できるだけ優遇して出したい、こういうふうに考えております。
  289. 滝井義高

    ○滝井委員 まあ、これでいいでしょう。
  290. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 残余の質問は保留しておきます。      ————◇—————
  291. 野田武夫

    野田委員長 次に、本日、石炭鉱業審議会答申中心石炭対策基本施策関連して御意見をお述べいただくために、参考人として日本石炭協会会長麻生太賀吉君、井宝鉱業株式会社社長籾井糺君、日本炭鉱労働組合委員長山本忠義君、全国石炭鉱業労働組合委員長重枝琢巳君、全国炭鉱職員労働組合協議会議長松葉幸生君に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらずわざわざ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございました。あつくお礼を申し上げます。  御承知のごとく、去る七月二十五日に石炭鉱業審議会答申が出たのでありますが、石炭をめぐる諸情勢はきわめてきびしいものがありまして、石炭鉱業再建の前途、必ずしも楽観を許さないのが現状でございます。したがいまして、石炭鉱業に直接関係いたしておられます参考人各位に、答申も含めまして、石炭抜本策について忌揮のない御意見をお述べいただき、石炭対策基本施策についての参考にいたしたいと存じます。  参考人各位には、それぞれお一人十分程度意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは、最初に麻生太賀吉君からお願いいたします。麻生参考人。
  292. 麻生太賀吉

    ○麻生参考人 石炭協会の会長をいたしております麻生でございます。  本日は、今度出ました抜本策につきまして私ども業界の意見を聞いていただくという機会をおつくりいただきまして、まことにどうもおそれ入りました。またこの抜本策ができますにつきましても、皆さま方に陰に陽にいろいろと御助力をいただきましたことを、あわせてお礼を申し上げます。  この案の内容につきましては、もうだいぶ長く御審議が続いておるようでございますので、皆さま十分御承知のことと思います。一つ一つをどうこうというふうには申し上げませんが、私どもといたしまして、この案の内容の中で、過去の累積赤字と申しますか、いろいろな意味のございます千億というものを政府に肩がわりしていただき、また今後特別会計によって石炭対策を立てるという非常な画期的な案をおつくりいただきましたことをたいへんに感謝いたしておるものでございます。そういう内容ではございますが、私どもがこの内容を拝見いたしまして一番心配いたします点を申し上げてみたい、こう思います。  一番問題なのは、この抜本策の内容の中に一番大きな柱としてございますのは、過去の千億の赤字は政府によって肩がわりしていただける、今後大部分の会社は黒字経営になって運営できる、こういうふうに書いてございます。先ほどから伺っておりましたら、御疑問のある委員の方もあるように思ったのでございますが、私どもこの案を拝見すると、今後赤字がなくなるということだけを考えますと、今後過去の千億というのは消えないということになるのじゃないか、過去の千億が消えるということになると、今後赤字経営が続くというようなことになるのじゃないか、こういうふうに思います。ということは、一つの同じ千億の肩がわりという金額、これは帳面上は会社の収入として入るわけでございますから、それを一応収入に立てて、それでもって赤字が消えるという計算になっております。そして今度はその金をもって過去の千億を返すということになっておりますから、同じ金が二重に使ってあるような感じがいたします。そういうことになりますので、帳面上、経理上申しますと、元本、利子というものを補給していただきますと、これは収入に立ちます。だから帳面はそれで一応合ったような形にはなりますが、そのうちの元本はそのまま銀行にいくわけでございます。帳面は消えたような形ではございますが、実際問題はその金は銀行に素通りしていく。金繰りだけでなく、実際の経営面でも私は同じ金が二重に使ってあるような感じでございます。そういう意味におきまして、来年この策が実施されるわけでございますが、あと半年以上あるわけでございまして、この間の金繰りと申しますか、こういうものは非常な大きな問題だと思います。銀行その他お考えになると、いま私の申し上げたような計算をしておられます。といたしますと、一体炭鉱の経営内容は実際よくなるのかということになりますと、石炭代が上がりコストが上がって会社の収入がふえ、赤字が消えるか、場合によってはコストが下がって赤字が消えるということであれば健全なものでございますが、今度の内容は、政府で肩がわりしていただき、利子補給をしていただく、これが収入に立ちまして、経営が成り立つという形がとられております。実際問題として私は経営が成り立つとはなかなか思えない点もあるわけでございますが、先ほどからお話がございますように、いま数字的に出ているものだけではない、その他前向きのものも考えるのだという政府のいろいろお話もございますので、これは数字を拝見しないと私はわかりませんが、いま出ております数字だけでは、なかなか経営がうまくいくのだということにはならないと思います。  そういう意味におきまして、ことしから来年この抜本策が出れば何とかなる、そのまま何とか回るのだということであれば別でございますが、それも非常に危惧があるということでございますから、金融筋としては非常な警戒ぎみだと思います。そういう意味において、来年の抜本策、これは皆さんでいろいろ法律的におつくりいただいて、いろいろされるわけでございますが、それまでの間どうやってつなぐかということがわれわれ経営者としての現在一番大きな問題でございます。これが来年度から何とかやれるのだということであるならば、今年度の金繰りもいろいろまた政府に御協力、皆さまに御協力いただけばやれるかと思いますが、いまのままの状態で来年からやれるということには、数字だけで出ているものではなりません。その他前向きの姿勢のものがいろいろ書いてございます。これがどういうふうに金額的についてくるかということがわからない限り、私どもとしても何とも申し上げかねるものでございますので、私どもの希望といたしましては、そういうものができるだけ早く、まあ予算の問題とからむわけでございますが、こういうふうになるのだということがわからない限り、私どもが今後の経営をどういうふうにやっていくかという見通しを立てるにも非常にやりにくいというのが現状でございます。  また、今度の中で特別会計をつくっていただきまして、この中に、私どもが知っていてはいけないわけでございましょうが、いろいろと予算に使われる内容のことを漏れ承っているのがあるわけでございますが、そういうものが順繰り入ってくると、なかなか炭鉱にプロパーに回ってくる金額は少ないのじゃないかというような気もいたします。そういうこともこれから、きょういらっしゃる国会の方々で予算審議で問題になるのだと思いますが、その際にもひとつ、もちろんいろいろな問題、石炭関連しない問題はないかと思いますが、石炭業界に直接この特別会計をおつくりいただいた内容が潤いが多いように、できるだけのことをしていただきたいというのが私の希望でございます。  また、これは全般的な問題ではないかと思いますが、特に九州筑豊に多い鉱害問題などは、いままで無資力と有資力というふうに分かれて補償、復旧をやっておりますが、われわれの考えから申しますと、少し理屈っぽくなりますが、私どもの責任と申しますか、というのは金銭賠償で終わっておるわけなんでございますが、現在は全部復旧という問題になります。この復旧を、無資力は政府におやりいただけるわけですが、有資力も現在の政府のおとりになる措置範囲ではなかなかこれを完全にやりにくい、やれないというふうにも思いますので、今度の抜本策にははっきりいたしておりませんが、これは今後の問題として鉱害問題については復旧する、農地にするということについての助成はもう少し強めていただいていかないと、特に筑豊炭田、九州が大きなものですが、鉱害の多いところ、全面鉱害の多いところなどはいまのような程度の助成策では経営はやれないという炭鉱がたくさん出てくるのではないか、こういうふうに思っております。  抜本策につきまして端的に申し上げますと、私の考えますのに、あの案の中に過去の千億の過重な赤字は消える、今後大部分の会社は黒字経営でいくというふうに書いてございますので、私どもとしては、あの案が私どものためにたいへんけっこうだ、政府からたいへんな助成をいただき、いろんな案がございますが、申し上げにくいところでございまして、過去の赤字は消える、千億は消える。しかし、今後相当な赤字が残るのだというのであるか、今後の赤字はなくなるが、過去の千億は消えないということでございましたら、たいへんな名案だということで私どもは賛成する案なのでございますが、両方が消えるということに私どもは非常に疑問を持ち、なかなかそうはならないんじゃないかという点、それが先ほどからお話が出ておりますように今後どういう施策をとられるかということが見当がつきませんので、私のきょう申し上げるのは、現在の抜本策の案の中にございます数字の入ったもので計算いたしますと、そうなるということを申し上げているわけでございます。その点誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  二十分時間をいただきましたが、だいぶきょうは長く御審議のようで、お疲れでもいらっしゃいます。私の問題、内容は皆さん承知のことでございます。業界から言って一番大きな問題点だけを申し上げて、私の責めを終わりたいと思います。
  293. 野田武夫

    野田委員長 籾井参考人。
  294. 籾井糺

    ○籾井参考人 私は、筑豊炭田の一角で従業員六百名、年産二十万トンの生産をしておる炭鉱の経営者でございます。籾井糺と申します。  本日は、当委員会にわれわれ中小炭鉱の代表をお呼びいただいて、このたび出されました答申についての意見を述べよという機会をお与えいただきましたことは、まことにしあわせに存じておって、深甚のお礼を申し上げる次第でございます。  私どものこの病人の診断を、長い間かかって御診断をいただいて答申を出されましたそのものに対して、私どもが率直な意見を申し上げることは非常に心苦しいわけでございますけれども、この際やはり病人の私どもが、あの答申をどう受け取っておるかというようなことは、率直に申し上げて御参考に供するほうがいいんではないかというような意味で、批判をするための批判でなくして、ほんとうに審議会が企図されておりますあの答申によって石炭鉱業が安定する、安定せしめるという目的にかなわなければ、いかに千億であろうと、五百億であろうと出されても、これは税金のむだ使いになるというような気持ちがするのでありまして、この際率直に御意見を申し述べさせていただきたいと思います。  さて、この石炭鉱業審議会からこのたび答申を出されるに至りました背景は、御承知のように昨年末大手の炭鉱が、二、三社を除き、非常に予想に反して経営が悪化したということに気づかれまして、このまま放置すれば年末にも崩壊する危険があるというような御配慮から、一時の歯どめの意味をもって急遽中間答申がなされたのであります。しかも一次、二次答申も審議の目ざす方向とはならず、最悪の事態の上に立って経営を安定せしめ正常の姿に戻すという重大な意味を持っていたことは何人も疑う余地がなかったと思います。こうした中で私どもはこのたびこそほんとうに安定する抜本策が打ち出されることを期待し待ち望んでいたのであります。  この間七、八カ月審議会政策委員の方々とも数度にわたり意見の交換もし御意見を伺ってきたのでありますが、この過程の中で受けた印象は、相当思い切った抜本策が打ち出されるというようなことを感じておったのでありますが、発表されたものは、数多くの矛盾と不合理を残しつつ竜頭蛇尾の答申に終わった感じを抱いております。  第一、一番私どもが戸惑っていることは、一とおりの料理の数は多いように見受けられますけれども、一番大切な基礎である位置づけ石炭の存在価値についての強調がきわめて弱く、さらに需要確保についても不明確であります。いままでより一そうバックボーン、ビジョンを失っている感じを深くしておるのであります。したがいまして、このようなことのために答申が発表されますと、直ちに山元従業員の間には動揺が起こりまして、産炭地の皆さんの間にも、答申が出されたにかかわらず危機感を醸成している原因がここにあるものだと私は考えております。このようなことではかえって国民に疑惑を与えまして、石炭産業労使企業意欲を失わしめるばかりだと私は存じております。ただ経済合理性を貫くのあまり、人心に与える心理的な影響等が没却されているからであります。このことは一次、二次答申においてもしかりで、中小炭鉱の私どもは、こんなことでは成功しないということを言い続けてきたのであります。答申には死活を賭して努力せよ、そしてなおかつ赤字の出るところはやめろということが明記してあります。そのことは当然のことで、私ども日夜心身をすり減らして努力をしているのでありますが、しかし産業政策としてバックボーンを与えず、ビジョンのない基礎固めの弱いことでいいものでしょうか。一体何を目標にして死活を賭して努力する意義があるのでありましょうか。答申の中で強く私どもが印象づけられるのは、ただ石炭産業の崩壊によって派生的に惹起する社会的影響の重大性の数々であります。どうもそのことのために石炭を掘らせるのだという感じを強く抱くものであります。そうでなく、ほんとうに石炭産業を安定させる必要と意図がおありなら、もっと積極的に石炭産業そのものの存在価値をなぜ強調して裏打ちができなかったかと言いたいのであります。たとえば国内エネルギーの絶対確保の必要性はもちろん、輸入エネルギーには価格の上では対抗し得ないとしましても、間接的には国内需要市場を、輸入エネルギー一本で独占じゅうりん化を牽制しておると私は思います。さらにまた需要家をしてこの買い手市場の立場を守らしめて、さらに石油価格の一方的高騰を押える等の重大な役目を果たしていると思っておるのでありますが、このようなことが石炭の価値判断の中に織り込まれて積極的にこういうことを求めて打ち出していただけなかったことは、きわめて残念でありますし、石炭産業労使をしていま一度ふるい立たせる刺激、寄りどころを与えてくれなかったことはきわめて遺憾なことで、産業政策上こんなことでいいものであろうかと疑いを持つものであります。石炭産業は御承知のように、ボタン一つ押せば自動的に生産できるような近代的生産体制ではありません。多くの筋肉労働者を擁して、合理化といっても限度のある産業でありますが、この立て直しには金の面もさることながら、しっかりしたバックボーンとビジョンを与えて、人心の安定をはかることこそ重要なことであります。基礎固めをせずに、いかに立て直しを叫んでも、あたかも私は砂上の楼閣であるということが言えると思います。このような基本的な面に大きな欠陥があることを訴え申し上げて、今後の院議の上で、また閣議決定の場で、特段の御配慮をお願いしたい次第であります。  次に、各論の中で主要なものについて、大急ぎ申し上げますと、まず千億の肩がわりはぜひ必要なことでありますが、この荷物を十年、十二年でおろしてやるから、その効果が直ちにえんごしておるこの企業の車を正常に戻せるかのごとき感覚を抱いていられるということは、まことに私どものピントと合わないものがあります。このえんこした企業は荷物をおろしたからとて、自分の力で立ち上がれるような程度のものではないのであります。正常の位置にまで戻すには、強力な牽引着が必要であります。すなわちこれが大幅な安定補給金政府の金融機関による強力な金融措置が必要でありますし、この要素は全く一体のもので不可分であると思います。この肩がわりの中で、中小六十億と推定されておりますのは、大手の債務と貸し付け条件において全く不利に立たされております。大手のものは炭鉱の鉱業権と施設一本でほとんど貸されておりますし、それも非常に経営の悪化しておるところは回収不能というようなことを強く金融機関は抱いておるのでありまして、これの肩がわりは非常に容易であります。金融機関としても干天の慈雨であると私は思います。ところが、中小の場合は換金性の早い担保をがっちり取られておりまして回収に何らの心配がないということでありますから、ために肩がわりに対する中小分の受け取り方は非常に抵抗があるということであります。これを強行しますと、今後の取引に影響がありまして、かえって混乱することになるおそれが多分にあります。このことはただ単に想像だけでなくして、現に金融機関の責任者が新聞発表をしておるのであります。肩がわり金額については、大手に比較しましてきわめて低率ではありますが、ようやくにしてわれわれの主張をお認め願ったことはありがたいことでありますけれども、この最少限度の肩がわりが、取り扱い次第では、一つも受け取れない結果になるおそれが十分にあるということであります。  さらに、この肩がわりによる大手、中小のハンデは他の面で十分補っていただかないと私企業内の競争で、このことのゆえに中小は敗退する結果を招来することになるというわけであります。ちなみに大手中小の肩がわり効果の差を申し上げますと、トン当たり三百五十円にも及ぶのでありまして、これを安定補給金によって補っていただかないと、中小は全滅のおそれがあるからであります。  御高承のように大手中小間の賃金には八千円ないし一万円の格差があります。これを速急に縮めなければならない客観情勢は刻々に迫っているといわなければなりません。すなわち、他産業の景気回復と相まって急激な人手不足が予想されるからであります。このことだけでも中小はたいへんな負担でありますし、危機を包蔵しているという感じであります。したがいまして、負担増その他運賃の支払い等が目前に迫っておりますし、最低これらを含めまして、三百円の補給金の引き上げをぜひお願いしたいと願うものであります。  なお従業員の優遇措置につきましては、一段と手厚くいたさなければなりませんし、答申にうたってあります年金制度も厚く広く実施方をお願いするわけであります。  次に買い上げ交付金の支給金額でありますが、これは答申に示してあります二千円ではどうしても始末がつきません。過去の実績が示している五千円とは申しませんけれども、最低三千円に引き上げていただきたい。過去においても今後においても、閉山は中小一手にそのしわがくるのであります。過去の大手、中小の差別を埋める意味を含めても、三千円までの引き上げをぜひお願いをしておきたいのであります。  要するに今度の答申は制度的には一口に申しますと非常に画期的ではありますけれども、抜本的ではないということを私どもは痛感をいたしております。  以上私の愚見を申し上げました。御清聴ありがとうございました。(拍手
  295. 野田武夫

    野田委員長 山本参考人。
  296. 山本忠義

    ○山本参考人 炭労の山本でございます。いつも先生方にはたいへんお世話になっております。きょうも長時間御審議をなすったあとで、私どもを呼んでいろいろ意見を聞きたい、こういう御熱心な態度に心から敬服を申し上げる次第でございます。  十分御承知だと思いますけれども、私どもは今度の答申案については絶対に反対であります。したがって石炭鉱業審議会答申をされた際にも、私どもはその賛否を議決する際には退場しております。  次にその理由について簡単に、簡潔に申し上げたい、こう思うわけです。第一次調査団の答申あとに急激な変化が今日の石炭産業の中に起きてきたわけです。同じメンバーの方々が今日抜本策と称する答申案をつくっておるわけですから、私どもから見ますと十二万人も首を切られ、その後あっちこっちの山がずいぶん閉山になり、しかも今日炭鉱労働者が全国にそれぞれ家族をかかえ、としをとっておりながら、新しい職場を求めて働きに行っておる。こういうような実情等を十分に知っておるはずであります。なおまた今日三万人に及ぶ四十歳以上の高年齢層の人たちが就職できないでおる現状、あるいはまた筑豊に代表されるようなスラム街、あるいはまた北海道の美唄地区等においてもしかりでありますけれども、産炭地地方自治体それ自体が、多数の離職者をかかえたり何なりして崩壊の寸前にある。こういうようなきびしい現実というものは、自分たちが第一次調査団の答申によって起きた現実である、こう考えるならば、今日の答申案というものはもっときびしい現実の上に立った、気魂のこもった、自分たちのあやまちというものについても、反省を十分に行なった意味においての答申案が出なければならぬ。こういうように私ども考えておる次第です。  したがってただ単なる作文にしか終わっていない、あるいは合理化部会、鉱業審議会の中にあります需給部会あるいはその他のいろいろな部会の中で、石炭の経営者はもちろんでありますが、産炭地の代表なりあるいは私どもなりがそのつど問題をとらえて、現実の問題として答申案を作成した政策懇談会のメンバーの方々にずいぶん実情を訴えてまいったわけでありますから、いまさら知らないというはずはないわけであります。そうするとそういう実情について十分にひとつ今後——ほんとうの意味で五年も十年ももうお世話しないぞ、お前たちは死活をとしてやりなさい。あるいはまた労使協調して石炭産業を発展させなさい、国もこれくらいのお世話をするんですから、こういうふうに言うならば、炭鉱労働者は非常に注目をしておったはずでありますし、産炭地の皆さんも非常に注目をしておったわけでありますから、当然それらがある程度かっさいをしなくても、勇気ずけられ、発憤をして、それじゃふんばろうか、こういうことになるのが、私どもは血の通ったほんとうの意味での抜本対策ではないか、きびしい現実の上に立脚をしたほんとうの意味での政策としての抜本策と言うことができるのではないのか、こういうふうに考えている次第です。  なおまた、あの答申案の内容の中に一番気に食わないことがございます。それは第一次調査団が五千五百万トンということを、いま総理大臣になっておられます佐藤さんが通産大臣の時代ですが、私どもにお約束をし、調査団の結論としてもそのことを述べておったわけです。十二万人の首は切るけれども、五千五百万トンに需要を押えるんだから、おまえたちはもっと働いて能率をあげていけば炭鉱は必ずよくなる、こういうことを明らかに私どもに約束をしたわけでありますが、現実にはそうではなしに、ますます炭鉱は疲弊をしていく、こういう現状になっているわけでありますから、そういう面から考えてみても、私どもはあの時点で十四トンぐらいしか能率があがらないのを、残された少ない人員で十時間労働までもやって、しかも炭鉱の老齢化の問題は、将来もきわめて大きな問題だと思うわけですが、三十九歳あるいは四十歳というような人間が、それぞれ汗水をたらして、切り羽に取り組んで、能率を四十トンまであげてきている、こういう現状からすると、真に抜本策たり得るならば、五千五百万トンの石炭というのは私ども自身の手で必ず確保してみせる、こういうふうにかたい決意を持ったわけでありますが、五千万トン程度ということで、おまえたちの働く職場はだんだん狭くなるんだぞ、あきらめなさい、こういうことを言わぬばかりの骨格になっているということについて、一番私どもは遺憾に思う次第であります。  それから当然そういうことでありますから、三万人の人間について、なおかつ今日高年齢者層が三万人もそれぞれ全国の中にちらばっている、就職もできないでいる、こういう実情の上に立つと、これから三万人のなま首を飛ばすということは、血の通った人間ならできないことではないか、こういうふうに考えておるのですが、相も変わらず、三万人の人員整理を行なわざるを得ない、相当数の閉山についても覚悟をしなさい、こういうことで、いま現実に働いている私どもが勇気と確信が持てるか、こういうことを強く訴えておきたいと思います。したがって、私どもは、むしろ三万人の人間をこれから首を切るというのなら、確かに炭鉱離職者援護措置法というのがございますけれども、いまの三万人の離職者がまだいるという現状の上から比べてみて、どうするのかということをはっきり聞きたい、こう思っているわけです。  しかもあの中に死活を賭してやりなさい、労使協力をしてやりなさい、しかしなおかつ企業の赤字で好転をしないような山についてはしがみついていないでほうり投げてしまいなさい、こういうことを答申案の中に書いているわけです。これは明らかに、赤字でどうにもならなくなったらかまわないから、今度は買い上げの炭価も上げてやるのだからぶっつぶしてしまいなさい、こういうことを明らかに答申案の中で示唆をしている、こういうように私どもはあるいはひねくれて考えるかもしれませんけれども、過去の実績の上から考えてみてどうしても容認ができない、こういうふうに思っている次第でございます。  なお、また私どもは、誇りを持っております。さっきも申し上げましたが、ずいぶん首も切られたし、あっちこっち若手の優秀な連中はそれぞれのほうへ就職に行ったけれども、なおかつしがみついて家族を養っている炭鉱夫は必ず石炭産業にも日を見ることができるのじゃないのか、家族を養うに値する労働条件なり労働環境の整備なりというものが必ずできる時代が来るんじゃないか、こういうことで、毎日けが人が出たり、あるいは死人が出ているような炭鉱の職場であっても、未来を見つめていま一生懸命しがみついているわけでありますから、こういうものについての労働環境の整備——いまだに炭鉱は長屋でございます。六畳間あるいは四畳間というところに家族が六人も七人もいなければならぬ。ある程度ブロック住宅その他はできておりますけれども、まだまだ完全ではありません。こういうような中に一番炭鉱をささえてきている労働力、炭鉱は、炭鉱の実情から言いますと、機械をどんどん購入しても、石炭労働者がピックで石炭を掘らなければ能率と業績はあがっていかない、こういう特殊な産業にあるわけでありますから、これから抜本策をやり、石炭資本のほうに金を貸して立ち直らせようというのなら、一番の労働力である、原動力である炭鉱労働者についてどうするか、経営者の場合といえども機械が古くなったら新しいものを買いたい、こういうわけでありますが、炭鉱夫をいままでのようにそのままにしておいて、はたして経営者に一千億の肩がわりをやったり、安定補給金をやるだけでほんとうの意味で石炭産業というのが抜本的に立ち直ることができるのか、こういうふうにほんとうに考えているんだろうか、こういうことについて私どもは全く信じられぬわけであります。私ども炭鉱労働者の奮起と魅力のある職場ということにしなかったら、何ぼ政府資金をつぎ込んでも石炭産業は本格的に立ち直ってこない。またそれだけに値するくらいかせぐ自信は持っている。だれも炭鉱労働者はさぼろうなんて気持ちは毛頭ない。こういうふうに自負をしている次第でありますから、そういう見地から見ますと、まわり近所のネクタイを締めて公務員で働いている人たち、ビルディングの中で冷房装置があるような人たち、こういう人たちが毎年毎年一〇%以上のベースアップをするのに、炭鉱労働者だけは七%のベースアップであります。しかも杵島あるいは貝島、高松、明治鉱業、こういうふうな政府の管理となっている炭鉱は三%しかベースアップができない。  なお、つい最近期末手当についても妥結をしたのでありますが、大手炭鉱で四万一千円であります。それから管理炭鉱はわずかに二万六千円であります。こういうふうに労働条件を縛りつけておいて、ほんとうの意味で立ち直ることができるのか。機械で掘っているオートメーションの工場ならいざ知らず、大多数、業績をあげるためには炭鉱労働者自身の手でやらなければならないのに、そういうことについてちっとも触れていない。おまえたちはいまのままかせいでおればいいのだ、経営者のほうにだけ金をやって肩がわりをなくしてやれば、そのおこぼれでもいただいておればおまえたちはいいのだ、こう言わぬばかりの答申案の内容である、こういうふうに私ども考えておる次第です。  このことは、労使は協調しなさいというけれども、今日のように物価が上がったり、まわり近所の相場が上がってくる中で、もう私どもはこれ以上がまんができぬわけでありますから、答申案の趣旨とは違って、むしろ私どもはもうがまんの限界にきていますから、労働争議が発生する、やりたくないけれどもストライキでもやって賃金を上げたり、あるいはせめて世間並みの相場のボーナスももらう、こういうことをやらなければならぬようになってくる。こういうことは再三再四、一カ年の長きにわたって政策懇談会のメンバーの方々には訴えてきたところですが、一顧だにもしていない。そのことはとりもなおさず答えとしておまえたちはおまえたちの力で取りなさい、こういうことを示唆しているのではないのか。これではほんとうの意味の労使の安定なり抜本的な対策に基づく石炭産業の本格的立ち直り、こういうことはあり得ないのではないか、こういうふうに考えているところであります。  次に炭鉱の年金について触れております。これは三年越しであります。今度はもっともらしく答申案の内容の中に労働条件のことについて触れているつもりでありましょうけれども、経営者の負担にしなさい、こういうことであります。これはとりもなおさずさかさまに振っても鼻血も出ない、だから二万六千円のボーナスでがまんしてください、あるいは四万一千円のボーナスでがまんしてください、賃金は七%でがまんしてください、こういっている石炭経営者が、炭鉱の年金の特別の原資をどこから出すというのか、こういうように私ども考えるわけです。当然これはいま現行少ない退職手当金と相殺をされる可能性がある。いまよりも少ない退職手当金を減すから、そのかわり年金をつくってやるのだ、こんなようなことになって事実上実現不可能になる可能性が非常に強い。このことも現実の問題として私どもは訴えてきたのですが、ああいう答申の文章になっている。これは明らかに、私どもはその過程の中でも、国庫によって、炭鉱労働者は賃金も低いし、重労働をやって大災害も起きている。そういう意味で魅力ある炭鉱にする施策の一つとして国がめんどうを見てやるからというのが、いままで私どもの聞いてきておったところでありますが、いつの間にか答申案の中でひねくり回してみたらああいう材料になってしまった、このこともきわめて遺憾に思っております。  それからいまどこの炭鉱を回って歩かれても、どこにでも未亡人がおります。大災害の中でなくなった未亡人が、手取りの一万一千円かそこらの金をもらって、高校に行く子供たちを養っている。したがって、遺族年金等については非常に希望しておったわけでありますから、あの五千円の遡及支給の問題等についてもずいぶん声を高くして、無理のない要求なのですから、ぜひお願いします。そうすればかせいでいる者はいつ死ぬかわからぬわけですから、そういう措置ができる、こういうことになれば幾分人心の安定もあるのではないでしょうか、こういうことで訴えてまいったのですが、これらについてもちっとも触れられておりません。  それからなお諸先生方の御理解をいただきまして、どうやら一酸化炭素中毒患者の立法化の問題等については、次の国会かどうか知りませんけれども、何らかの御努力をいただく、こういうことでたいへん喜んでおる次第でありますが、これらの措置等についても、もっともっと実のある中毒患者の措置についてもお願いをしておったわけですが、これらについてもちっとも触れられていない、こういうことについて強く不満を感じているわけであります。  なおまた、炭鉱の災害が、三池あるいは山野、夕張、伊王島というように大災害が起きてくるわけですから、少なくとも保安面についてのみは国家管理というわけにいかないでしょうか。あるいは国家管理ということができないならば、少なくとも行政監督の面で強化をしてもらって、大災害、大爆発が起きるような炭鉱というのは、いまあまり数がないわけでありますから、明らかにわかるわけです。たとえば、北海道の場合には、気圧の関係等その他によって、ガス量の多い山は二月、三月が非常にあぶないわけでありますから、そういう時期に保安監督官をびっしり常駐をしてもらって、人命を守る、そういう意味での監督行政を強化してもらいたい。経営者のほうはどうしても金がないわけですから、保安費にさく金がない。したがって、保安の諸経費等についてもひとつ思い切って国家の中でやってもらいたい、こういうこと等も訴えてまいったのですが、なかなか思うように表現をされておられない。私どもは毎日毎日が命と抱き合わせで坑内に入っておるわけでありますから、そういう面からも十分に、ひとつい長い間かかってやられた答申案であるならば、機微触れた、われわれの胸にすとんと落ちるような、人命を守る保安対策等についても示さるべきものでないか、政府に強い姿勢で迫るというようなものになるべきではないのか、これはもう理屈じゃない。保安の問題だけはどんな立場の者が考えてみたってはっきりすることではないのか。例のないことではない。いろんな意味で大災害が起きて、何千人という人間が死んでいるではないか、こういうことで強く訴えてきておったのですが、それらについてもはっきりされていない。こういうような点についてきわめて遺憾に思っている次第です。  そのほか、こまかなことを申し上げますといろいろございますが、総括的にいって、私どもは今度の答申案というのは、かつて十二万人の首を切り、今日炭鉱を疲弊のどん底におとしいれたその人自身が出された答申案にしては、まことに血も涙もない、現実の視点から目をそらしたきわめて——だれにおもねているか知れないけれども、みずからの見識を捨て去った答申案である、こういうふうに考えておる次第です。  頼むらくはそういうことでございますから、当然さきの国会の中で諸先生方が示されましたように、あの国会決議のような方向で答申案とはかかわりなく、国会の諸先生方の高い見識の上に立つ、炭鉱労働者なり産炭地の実情の上にしっかり根をおろした、ほんとうの意味で抜本策になり得る方策について、政策として皆さん方におきめをいただく、その上で十分私どもに注文するところは注文していただく、こういうふうにぜひお願いをしたいということを心から申し上げまして、簡単でございますが参考意見とする次第でございます。(拍手
  297. 野田武夫

    野田委員長 重枝参考人。
  298. 重枝琢巳

    ○重枝参考人 全炭鉱委員長の重枝でございます。  全炭鉱としての石炭鉱業の安定化についての基本的な立場、さらに今次出されました答申に対する態度関連する幾つかの問題点、この大きく三つの点について全炭鉱見解を述べまして、今後国会における石炭産業安定のためのりっぱな施策ができますように、その過程で十分取り入れていただくようにお願いいたしたいと思う次第であります。  全炭鉱は基本的な態度といたしましては魅力ある石炭産業をつくるということを考えております。そして具体的には魅力ある炭鉱というものはどういうことをして基本的にできるかという点については、六点考えておるわけであります。  第一は、石炭位置づけということでありますが、これは総合エネルギー政策における国内炭の位置づけとしては、五千五百万トンの需給規模を確立をするということ。第二は、石炭鉱業に対しては今後近代化その他を進めていくわけであります。国民的な立場から抜本的な国家助成とこれに見合う公共的な規制を行なって、ほんとうに国民のものとして石炭産業を安定させるということ。第三は、保安と産業衛生対策というものを確立をして、ほんとうに安心して働ける安全職場ということを実現するということ。第四は、労働条件の向上、あるいは炭鉱労働者年金制の実施、そういうことによって、それを直接的な施策をも含めながら有効に行なって、魅力ある炭鉱の実現をはかっていくということ。第五は、企業の収支を改善をして経営的な基盤を確立をしていくということ。第六番目は、労使の民主的な協力と努力に対して、それを正しく評価するとともに、産業の中で民主主義を実現をするという意味で具体的な施策をはかっていく。この六つを基本的な態度にしておるわけでございます。  そうしてこの六つを中心にして今日まで石炭産業の危機の中で安定化のために努力をしてまいりました。このことは本委員会におきましても何度か全炭鉱見解を述べ、各委員の方々の御理解を得ていることだと思っているわけであります。そのような活動を続けておる時期に石炭産業の危機を抜本的に解決をするという意味での石炭鉱業審議会答申が出されることになったわけであります。  この答申に対する私ども態度は、第一は石炭対策という点についていろいろ検討されておりますが、たとえば過去の異常債務の肩がわり、あるいは安定補給金、あるいは石炭を使う側の負担増対策、あるいはそういうものを総括的にまかなっていく特別会計の設定、あるいは年金、あるいは炭鉱を近代化していくために、あるいはより安全な炭鉱にするための近代化、保安に対する助成、このような各項目を見ますと、一応石炭対策の体系としては抜本的というに足るような基本的な骨格を備えておると、こういうふうに理解をしておるわけであります。そういう意味においてわれわれは骨格、大筋においてはこの答申を了承するという態度をとる。しかしながらそういう政策の体系というものはかなり抜本的なものが出ておりますけれども、内容になると、いささか問題点が多いのではないか。いうならば、下世話にいえば、仏つくって魂を入れずということもございますが、どうも魂のほうが少し足らなくなっておるのではないだろうか。そういう点を考えまして、基本的には対策の骨格としては承認をしながらわれわれは大きく四点にわたってこの抜本策を実施し、運営をしていくという過程で充実をしていただきたい。政府の予算編成あるいは国会の中における論議、そういうような中でこのことを実現してもらいたいという意味で、四つの点について要望を付したわけでございます。  その四点は、第一は石炭位置づけについて、第二は、経営基盤の確立に関して、第三は、特別年金制度について、第四は、労使協力の具体化について、この四点についてわれわれは要望を付したのであります。  第一の石炭位置づけにつきましては、先ほど申しましたように、われわれの基本的な態度におきましては、五千五百万トンというもので石炭位置づけをすべきであるという基本的な立場を持っております。  そこで、わが国における石炭生産規模並びにその消費につきましては、国及び関係者の努力によって将来五千五百万トン程度を実現することとして、そのための具体的な措置をやっていく。今日五千万トン程度ということになっておりまして、先ほどから審議の経過を私たちも傍聴いたしましたけれども、五千万トン程度という程度に非常に問題が集中されておるように思いました。私たちもいろいろな理解の中で各方面意見を聞きましたが、五千万トン程度というその程度にかなり多くのニュアンスがあるということをわれわれ自身も理解をしておるわけであります。現実に今日の石炭産業出炭の能力というものが残念ながらそう大きなものでないというような点もあるわけであります。このことについては、そういう事態を十分勘案をされた当委員会における再建対策に対する決議の中にもそういう点が具体的に認められたという意味で、五千二百万トンというような数字も出てきたのではないか、そういうふうにわれわれ理解をしておるわけであります。しかし、そういうものを今日の段階において固定的に考えるということは適当ではないではないか。やはり五千五百万トンというものを将来の目標にしなければならない。その点については、単に五千五百万トンというものを政府の責任だけに押しつけるということでなくて、石炭産業全体、特に経営者のほうで需要の拡大という点が、まだまだ努力をすれば政策需要以外の点で伸びる点が多々あるではないか、そういうような努力をしながら——国にだけおぶさるというのではなくて、努力をしながら将来にわたって五千五百万トンという規模を実現をするんだ。こういう石炭産業全体に対する励みの目標を掲げておくということはきわめて必要であり、それに一歩一歩近づいていく施策こそが、石炭産業の安定を確立をする方向である、こういうふうに考えて、国あるいは関係者の努力によって将来五千五百万トンを実現すべきである。こういう点を強く要望をしたわけでございます。  第二は、経営基盤確立のための措置でございますが、これは先ほど申しましたように、特別会計の設置によって安定補給金の交付というような点もあります。あるいは累積負債の肩がわりというような措置もとられておるわけであります、しかし、これがどのように行なわれるかということが実は問題になるのであります。そこで、真に経営基盤が確立をするような形にこの制度を生かしていくということが、今後の予算の確立あるいは国会における決議というもののほんとうの役割りではないだろうか、こういうふうに考えまして、これに対して十分経営基盤の確立という目的が達成されるようにやっていただきたいということでございます。同時にその場合に、たとえば累積赤字の肩がわりをするという場合でも、現実に赤字のあるものを対象にしていく、石炭抜本策というものが、将来の再建への大きな筋道を開くということと同時に、今日の石炭産業に対する一つの救済措置であるという点については、これはそういう性格があることはやむを得ないことであると思いますけれども、あまりにも救済のみに走っていくということは問題があるのではないか。過去、石炭労使が大いに努力をして比較的赤字が少なくて済んでおるという炭鉱もある。そういうような努力の結晶によって、今日何とかやっていこうあるいは赤字が比較的少ない、こういうような炭鉱というものを目の前にして、そういう赤字のないところはそれでいいんじゃないか、赤字の少ないところはそれだけ救済も少ないんだ、こういうことでは私はほんとうに将来の石炭はほんとうに将来の石炭産業を安定させるという意味の政治姿勢ではないのではないだろうか。そこで先ほど申しましたように、経営基盤の確立という目的をほんとうに達成をするために具体的な裏づけをしていくという過程におきまして、過去における企業努力や労働者の協力の成果というものを十分配慮しながら、そういうものを再びどんどん今後も一そう続けていって、りっぱな石炭産業、りっぱな企業をつくっていけるんだという励みを与えるような施策でなければならない。こういう点を強調したわけでございます。  第三は特別年金についてでありますが、これはわれわれ多年主張をしておりまして、それが第二次答申に少し顔を出し、昨年の中間答申において少しそれが積極的になり、今度はかなり具体的な形でやるというところまできたわけであります。しかしながら、その内容は残念ながら坑内作業に従事している者についてだけをやっていくということでございます。坑外関係が除外をされておるというところに非常に大きな問題があるわけであります。なるほど坑内作業というものは、これは特殊な作業であります。そこで坑内に特別な年金をつくるという点については、これはたいした説明をせずして、すべての国民の方々に理解を得ていただけるという点は、これは明らかであろうと思います。しかしながら、それではその段階にとどまって坑内だけに年金をつくればいいかということになりますと、決してそうではないと思います。御承知のように、石炭鉱業というものは比較的都市から離れた地域にありまして、むしろ一つ炭鉱社会というものをつくっておる。そういう中で炭鉱の労働力というものはあるいは労務構成というものは、坑内、坑外というものが一体の形になって石炭経営というものが行なわれておる、石炭の生産というものが行なわれておる、こういう実情にあるわけであります。したがって、坑内だけにそういう措置をし、坑外についてこれをやらないということは片手落ちになるわけであります。なるほど坑外の作業は、都市の一般産業の作業と同じようなものがあるではないかということを言われるわけでありますけれども、しかしながら賃金水準というものを考えてみますと、石炭産業全体の高い、低いということは後ほど触れますけれども、坑外員を例にとって考えますと、同じ電工、同じ機械工にしましても、一般よりも低い水準にあるわけです。これは石炭企業というものが、先ほど申しますような一体性の中にあるから、坑内を重点にしながら、そういうがまんをしながらやっているという実情であります。したがって、坑外作業に従事しておる労働者の特殊な事情というものは、この一事をとっても明らかであろうと思うわけであります。したがって、坑内、坑外を通した炭鉱労働者の年金というものをつくってこそ、はじめて労働者に魅力を与えるということになるわけであります。それでは形式的にはどうなるかと申しますと、われわれ仄聞するところによりますと、坑内員に対して、これは坑内の職員も含めまして、一万円程度の年金をつけるということになると、トン当たり大体三十円ないし四十円くらいだといわれております。全体の石炭対策費からいえばきわめて微々たるものであろうと思います。それではこれを坑外に及ぼすという場合にどうなるかと申しますと、もちろん坑内、坑外の均衡ということを考えますと、その支給額も若干低くきめるということになるでありましょう。また人員の関係を今日七〇%対三〇%ぐらいの比率におそらく坑外が少なくなってきておると思います。そういたしますと、大体坑外を新たに適用するという場合に、財源のふくれ方というものは大体二〇%ないし三〇%ということになるであろうと思います。具体的に言えば、わずかトン当たり十円程度で坑外に対する年金制の実施というものが可能になるわけであります。そういう点を考えますならば、坑内、外を含めた炭鉱労に対する特別年金制というものをぜひとも実行していただかなければならない。こういう点を強調をしたわけであります。  第四の労使協力の具体化という点につきましては、今度の抜本策を見ましても、随所に労使協力をしてやれということが出ております。これは石炭の危機を突破する過程においてしばしば言われたことであります。現に石炭産業の中におけるわれわれ全炭鉱労働者もこのことを肝に銘じて、先ほども申しますように大いに協力をする、協力すべき点は協力をするという体制のもとに今日の企業というものを守ってきた、われわれの職場を守ってきた、こういうふうに考えておりますが、しかしながらこの段階になりますならば、労使協力というものの実をあげるためには、やはり労働組合はちゃんと労働組合という主体性があるわけであります。経営者の側に労使協力をすべき、労働組合に対応すべき主体的な組織というものがないのであります。石炭危機の突破のために石炭業界の再編成一本化ということが進められてまいりまして、この過程でわれわれはそういう相手方の主体性ができるのかと期待をいたしておりましたけれども、そういうものができない。むしろありました石炭経営者協議会というようなものを解散をして一本になった日本石炭協会では、労働関係というのは扱わないんだ、労働部はただ調査だけをやるんだ、こういうような形で最終的には逃げられるようになっておる。こういうことになりますならば、幾ら労使協力をやっていけと言われても、これはから念仏に終わりまして、やりようがないということになるわけであります。そこで労使協力の実をあげるためには、経営者側における体制を整備するとともに、労使協議の場を各企業において、あるいは炭田ごと、あるいは地方において、あるいは全国的な規模において経営者と労働者がほんとうに協力し、論議を尽くすべき場をつくっていただかなければならない。体制の整備と同時に、そういう具体的な労使協議の場を確立をしてもらわなければならないということを要望したわけであります。  われわれはこの点に関連をいたしまして、たとえば西ドイツにおけるような労使の共同決定というようなものを法律でつくっていけ、こういうことまでを一挙に主張しようとは思っておりません。しかしながら、労使協力ということを随所にうたうならば、それを具体的に行なう方法というものをやはり示していく、こういうことでなければ、これは全くのから念仏になってしまう、こういうふうに思うわけで、この点を大きく強調をしたわけであります。  以上の点はもちろん私たちの基本的な立場でありますので、当委員会に対する全炭鉱として御協力を要請することになるわけであります。  この四点以外について若干ここで申し上げておきたいと思いますが、その一つは、炭鉱労働者の労働条件の問題でございます。炭鉱の安定化のための政策が出ました場合に、現在御承知のように労働条件といいますか、賃金の上昇は年率七%というものを試算の基礎にいたしております。これは一応経理計算の計数であるということになっております。なるほどそうでありましょう。労働条件というものは具体的に労使話し合いをして決定をするということになるわけであります。しかしながら、現実には非常に幅のない炭鉱の経理でありますから、この七%ということが具体的な交渉をする場合の一つ中心にならざるを得ない状態であります。私たち炭鉱の賃金と他産業の賃金、特にその労働の質からいってきわめて低いと考えております。諸外国におきましては、炭鉱賃金は大体全国の各産業の中で最高の地位を占めております。これは優遇されておるというのではなくて、当然の地位を確保しておるわけであります。しかし、われわれ七%ということで上がっていったのではなかなか追いつけないというふうに考えます。そこで、この七%というものはわれわれは実質賃金七%の上昇であるべきだというふうに考えております。七%であろうと一〇%であろうと、物価がどんどん上がる。昨年のように一四%も上がってくるというようなことになれば、生活というものは崩壊をしていくわけであります。そういたしますならば、やはり実質七%の上昇ということで初めて石炭産業労働者に対する賃金の配慮というものがなされてくることになると思うわけであります。そういたしますならば、そういうようなことが実現できるような配慮を石炭政策の中で、たとえば経理基盤の確立という中でこれをやっていただかなければならないわけであります。そういうものがなければ労働条件というものはちっともよくならない。年金と関連をいたしまして、そういうような施策が直接的になされなければならない。もちろん金には色はついておりませんので、これは年金のために使え、これは賃金のために使えということにはならないと思います。したがって、総合的に経営基盤の確立に応じてそういうものがなされていく。しかしながら、いわゆるどんぶり勘定ということでなくて、ある程度直接的に指示される形でこの労働条件の向上と年金の確立というものが経理基盤の確立に対する助成の中で確立をされなければならない、こういうふうに考えるわけであります。  次には、炭鉱における医療保険の問題であります。これは、石炭危機が続くに従いまして、炭鉱の健康保険組合というものが非常な赤字を生じてまいりました。そこで、国会の皆さんにもお願いをいたしまして、特別の国庫の補助というものを要請をし、ある程度のものはいただいてきておるわけであります。しかしながら、これでは全体的に言って焼け石に水であります。しかも石炭産業の中には、健康保険組合というものを独自につくれるところはまだいいほうでありまして、中小炭鉱やあるいはその他大手の一部におきましても、いわゆる政府管掌の健康保険になっておるわけであります。そうしますと、政府管掌の健康保険よりも条件のいい健康保険組合というものが赤字を出してきた。それに対して国からいろいろな補助をしていくということになりますと、当面応急的な、緊急的な措置としては、私はそれは当然やっていただかなければならないことだと思いますけれども、それでは政府管掌に甘んじておる者との均衡という点につきましては、やはり問題がどんどん出てくると思います。  そこで、健康保険組合というものがだんだん赤字ができて崩壊をしていってしまうという前に、もっと抜本的な対策を立てるべきではないか。それは石炭産業全体を一本にした産業別の健康保険組合というものをつくっていく。そして今日炭鉱には医者が来ない。病院の設備が足らないということでたいへんな問題が起きておりますが、そういうものを石炭産業全体ということでやってまいりますならば、そういう力によって都市に専門の病院をつくるというようなこともできる。そうなりますと、医者の人たちも特定の炭鉱に行ったらもう一生そこにおるということでなくて、あるいは研究も十分できないということでなくて、そういう日本全体という立場から医療に当たり、また研究に当たるということになりますならば、私はりっぱな先生方に来ていただくことができるのではないかと思う。   また、今日健康保険組合の場合には多くの保養所というものを各所に持っております。しかしそれは大体北海道であれば北海道地域九州であれば九州地域にしか持っていないわけであります。これを全国的な規模で経営をし、運営をしていくということになりますならば、北海道の人が九州へ行って十分保養もできるし、あるいは九州の人が北海道に行ってもできる。よくそういう面の社会保障の保養所の確立ができておるところを、例としてソ連をとらえております。御承知のように黒海沿岸のソーテその他のところに労働者の保養設備というものがたくさんあって、労働者がそこに行って保養できるということで非常にうらやましがられております。私も行きましたけれども……。しかし、いま申しましたような形で石炭産業が全体的に、そういう今日あるようなものを中心に運営をいたしましても、優にソ連においてうらやましがられておるような状態というものは今日できるのではないか。そういうものを石炭政策の一環として運営をしていく、あるいは国がそれに助成をしていくということになりますならば、一部の健康保険組合に対する赤字補てんというようなものが、細々とあるいはその場限りで続けられるということとは根本的に違って、りっぱな炭鉱における医療保険の制度というものが確立をされると思うわけであります。こういう点をぜひお考えを願いたいと思うわけであります。  以上、抜本策関連をいたしまして私たちが要望をした四点とさらにつけ加えた二点、こういう点について国会においてぜひとも実現をしていただきたいと思うわけであります。  さらに、私はこの際若干ことばをつけ加えさしていただきたいと思いますのは、経営者の方々もいろいろ御意見を述べられました。ただいま述べられたもののほかに、いろいろな機会に意見を述べられておるものを私たち聞いておりますが、何か非常に抜本策というものが悪いんだ、こういうようなことを盛んに言っておられるように思うのです。なるほど私たちもいま申しましたように、魂を入れるという面では大いに不備な点があるから、これに対して十分なる体系的な骨子の中に入れものを入れていただきたいということを言っております。経営者の方々が不満だとか反対だとか言っておられますが、それはこれが悪いということではなくて、期待したほどいい抜本策が出なかったという不満であろうと私は思います。その気持ちは十分わかるのであります しかしながらそういう気持ちのあまり何かこの抜本策がまずいんだ、あるいは極端に言えば、極論になると、抜本策が出て、これを実施されるから石炭産業はつぶれるんだ、赤字がふえていくんだと言わんばかりのことになりますと、いささか問題があろうかと私は思います。そうしてそういうようなものの態度から石炭産業の中に再び不安ムードというものが出てまいりますならば、これは取り返しのつかないことになると私は思うのであります。そういう意味で、やはり今日のエネルギー革命の中におけるわれわれの置かれておる石炭産業の位置、それに対する国家的助成と公共的な規制の方向というものを十分踏んまえた中でこういうものを充実しながら、りっぱに石炭産業を安定させていくんだ、そういう自主的な決意とそれに伴う、その決意に促される具体的な努力の実践、こういうものがあって初めて石炭産業というものは安定をしていくと思うのであります。したがって、そういう点にこの委員会におきましても思いをいたされて、この問題を十分御検討をいただきたいと思います。われわれは、先ほど申しましたような基本的な立場でこれを皆さんの、あるいは政府あるいは国会の力によって充実させながら、りっぱな魅力ある石炭産業を築いていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。  一応私たち考えを述べまして、皆さんの御参考に供したいと思います。どうもありがとうございました。(拍手
  299. 野田武夫

    野田委員長 松葉参考人。
  300. 松葉幸生

    ○松葉参考人 職員組合代表の松葉でございます。非常に時間が長くなりまして、先生方お疲れと思いますので、これまでの方々の論点とは重複をできるだけ避けまして、簡単に私たち考え方を申し述べてみたいと思います。  まず、先月の二十五日の石炭鉱業審議会で今回の答申案を論議いたしました場合に、私は反対の態度を表明したわけであります。というのは、これまで第一次答申なり第二次答申の場合には、特に職員組合といたしましては、いろいろぜいたくを言っておる段階ではないので受けて立とう、そしてその中でわれわれぎりぎりの努力をしてみよう、そうしてその中から何とか活路を見出して、そしてわれわれの努力が外部から認められるならば、さらに施策の拡充というものはあり得るであろう、こういう態度で認めるという立場でやってまいりました。  そのわれわれ職員組合がなぜ今回について反対をしたかという点でございますが、まず一つは、抜本策最終答申、これが標榜をされておりましたし、それから答申案の内容におきましても、これが国の私企業に与える施策の限界である、これをもって経営が安定をしないところは、あえてみずから退きなさい、こういうことが明言をしてあります。したがいまして、文字どおり今回の答申を今後の石炭産業が生きていく場合の最終施策の背景になるものとして受け取らざるを得ない、それだけに十万の炭鉱労働者はもちろんのこと、息をひそめて本答申を見守っておったわけでありますから、この答申について、少なくとも当事者である石炭労使が真の納得と理解を持って、今後これを背景にして立ち直っていく展望というものを具体的に見きわめられない限り、賛成の態度はとれない、こういう気持らで臨んだわけであります。したがって、当初から反対の意思を持って出たわけではありません。審議会の中において本答申を作成するに当たっての具体的な背景、素材というものが明らかにされて、そして答申を作成した小委員会の方々が、これでもって四十五年度までに大方の石炭産業は自立安定ができるというふうに結論を出された内容というものが、十分われわれに納得をさせられたならば、賛成をする用意はございました。しかしながら、冒頭にわれわれとしては、ある程度マクロであっても、具体的な素材というものを提起をして、少なくとも石炭鉱業審議会委員として本答申案の理解と納得ができる討議の経過というものを求めましたが、これについては全然配慮をされずに、ただ書いてあることを認めろ、こういう態度でありましたので、まずその点において納得ができないという意味で反対をしたわけであります。  それから第二点目といたしましては、これはいま申し上げましたように、具体的な素材を与えられなかったわけでございますから、作成の過程においてわれわれが側面的にキャッチのできた範囲内の素材で判断をしまして、本答申の内容においては、われわれが求めたような安定というものは得られないのではないかという私たちなりの判断をしたから、賛成をできなかったわけであります。  以下、二、三点具体的な数字等も含めながら、その判断について申し上げてみたいと思うのですが、数字については、憶測といいますか、いろいろな断片的な素材を結びつけた点もございますので、信憑性についてはお許しを願いたいと思います。  まず、位置ずけの問題でありますが、これについては、基本的には少なくとも諸先生方が御決議いただいた院内決議の線は、ぜひお守りいただきたいということでございますが、そういう単に五千二百万トンという数字自体にこだわるという問題を離れまして、まず第一点としましては、位置ずけの問題についての歯切れが非常に悪いということであります、簡単なことばで申し上げますと、いろいろな言い方はございましょうけれども。ほんとうの中間答申なりで目標にしておった総合エネルギー政策の中における石炭エネルギーの位置ずけというふうに値する明確な分析、理論ずけというものがない、そういう意味で、非常に不安感を持つわけであります。というのは、先生方も御承知のように、わずか四年間の間に五千五百万トンが、第二次答申においては、当面目標という表現でありましたけれども、五千二百万トンになり、今回は五千万トン前後、こういうふうに、わずか四年の間に一割以上の変更がされてきたという事実経過、こういうものからはたして今後、たとえ五千万トンというふうに結論づけられたにしても、どういう保障があるのか、ほかの施策との関係で流動施策自体が不十分なままに生産態勢が落ち、無際限の縮小再生産の方向に行かないという保障がどこにあるのか、こういう疑問を含めまして、位置づけの問題についてはどうしても納得ができないわけであります。そのことは、少なくとも現行五千九十七万トン−五千百万トン程度の四十一年度の生産計画を立て、今後四割近い能率アップをしなければならぬという状態の中で、現行の出産能力以下の位置づけがされるというそのこと自体が炭鉱労働者の心理に与える影響、こういうものについて、特に労働集約的な産業であります炭鉱企業というものに対する配慮というものがはたしてあるのだろうか。したがいましてこの五千万トン程度という形になりまして、今後大幅なスクラップ、これはいろいろの角度からざっと考えましても、少なくとも一千万トン程度はスクラップという形になるだろう。これが今後の具体的な展開の中でどうあらわれるかという点で一番心配いたしておるわけであります、第一次答申後の経過がありますだけに。これをざっと私の判断で申し上げますと、四十一年度で三百八万トンのスクラップを見込みながら、五千九十七万トンという生産ベースを打ち出しておる。ところが四十一年度需要構造は、私ども漏れ聞くところでは、実消費四千九百万トンないし四千九百五十万トン程度しかないんではないか。そうしますと、五千百万トン出たといたしましたならば、直ちに百五十万トンの差が出てくる。そうして四十一年度年度末においては、少なくとも千二百万トンないし千五百万トン程度の貯炭になるであろう。そしてこの貯炭は、むしろ多い少ないということよりか、貯炭能力の物理的な限界に到達をする。そうして四十二年度に入りますと、大体大手の四十五年度目標の三千九百八十万トン程度の生産目標というものを目標にいたしまして、腰だめで考えますと、年間少なくともある程度のスクラップを消化をしながら、百五十万トン程度の増産をしていくという計算になります。そうしますと、四十二年度においては、四十一年度のスクラップをされた生産ベースの状態推移した場合には、五千二百万トン程度は出る。ところが需要のほうは四十二年度においては、大体四十一年度の横ばいか、へたをするとちょっと下回るかもしれない。そうしますと、少なくともそこに需要と生産との間に三百万トンから三百五十万トン程度の差というものが出てくる。貯炭は物理的な限界に達する。そうしますと、それを収拾する方法は二つしかないわけです。一つは、年産統制をやるかあるいはスクラップを強行するかということしかない。したがって、それがもしスクラップという形で強行されるといたしますと、四十一年度の二百八万トンと、それから四十二年度の需給の落差三百五十万トン、それにその増産体制の中で吸収をされておるスクラップ必要量というものを含めますと、少なくとも四十一年度の下半期から四十二年度にかけまして、六百万トン以上のスクラップという運命に迫られる。これは第一次答申直後において起きた状態を直ちに再現をするということは、常識的に考えられる。したがって、そこには労働不安も起こり、収支の悪化もあり、そしてほかの施策が手厚かったとしても、施策全体をそこからくずしていく、こういうかっこうになりかねないし、最悪の場合には、四十五年度において五千万トンの生産体制すら確立できないという推移になってしまう可能性がある。こういう点が位置づけの問題について非常に懸念をいたしておるところであります。  先ほど本委員会での御論議の中でもございましたように、具体的にどう秩序を持ってスクラップとビルドを計画的に進めていって、混乱を避けるかという点については、十分ひとつお詰め願いまして、何とぞ第一次答申直後のような混乱が起こらないような施策の展開というものを、諸先生方の御努力をいただきたいわけであります。この点につきましては、私は直ちに需要を拡大するということは現実に困難なわけでありますから、どう調整するかという点につきましては、一つは貯炭の問題については電炭販売会社あたりでやはり貯炭機能を持って、私企業の圧迫にならないように対処するということと、それからスクラップを計画的に徐々にやるという面から考えましたならば、やはり生産統制を計画的に行なう、そうしてその生産統制によって出てきた余力というものは、保安、生産の両面から一番問題になっております掘進の停滞、坑内構造のひずみというものを取り戻すために力を振り向ける、それから保安体制というものを整えるという方向に向けまして、将来的に安定供給体制が確立をできる方向でその問題を消化をしていく。そうしますと、当然資金経理面にも圧迫がまいるわけですが、これは当然施策でアフターケアをしていただくという方向でやっていただきませんと、収拾がつかないのではないかというふうに考えるわけであります。  次に、労働条件の問題でありますが、前の参考人もいろいろ申し上げましたが、私は若干具体的な数字でお願いを申し上げてみたいと思います。  まず私たちは、これまで労働条件、賃金の引き上げというものを直線的にとらえることはできない、ということは、その背景になる経営の安定、収支の改善という形の中から、賃金原資というものを生み出すという基本的な体制がない限り、その時点だけで労使が争って解決できる問題ではない、こういう形で主張してまいりましたし、それから労働条件の改善等につきましても、決してぜいたくな気持ちを持っておるわけではございませんで、少なくとも年々の引き上げ金額というものを他産業並み程度にはやってもらえないと、幾ら労使協力、生産協力といってもとてもできる問題じゃないし、現在おる人間すら逃げ出していく、こういうように言っておったわけでありますが、これまで調査団のメンバーといろいろ話してまいりました過程でこういうことを言っております。経営を安定させることが先決だ、それから徐々に上げていくさ、あるいは七%というのはそう低くないではないか、大体これだけ国の施策を受けながらぜいたくだ、他産業並みなんてぜいたくだ、こういうような言い方すらされました。しかしこれは単にいまわれわれが苦しいからということだけで言っているのではなくて、石炭産業長期的に安定させる一番基盤になる労働力、労働生産性という面から、少なくとも現時点における賃金引き上げ金額というものが、よそと、まあまあしょうがないと炭鉱労働者があきらめがっく程度のバランスがとれない状態で、どうして労働者に協力を求め、定着を求めることができるか。特に将来は新規現場労働力の供給源というものは非常に少なくなっていくわけでありますから、そういう点で、むしろほかの施策で幾らいい施策を出しても労務倒産ということは必至である、こういう点から要請をしてまいったわけです。たとえば、他産業との比較をやってまいりますと、四十年度の統計では、十六産業の中で炭鉱賃金の平均は第十位にあるわけです。中間値以下にあります。それは具体的にどうかといいますと、製造業平均で、年齢が三十二歳、勤続が九・八年という人たちで、基準内の時間当たり賃金、これはよく労働省とか通産省あたりは、総賃金で出しておりますから、全然その正鵠を得ないわけですが、それで見まして、時間当たり賃金が百九十円十九銭という数字であります。それに対しまして、鉄鋼の場合には三十三歳の年齢で勤続は十・二年、時間当たり賃金が二百十六円七十六銭という金額でありますが、これに対して石炭の場合には、年齢が三十七・三歳、勤続が十二・七年、時間当たり賃金が百七十七円三十四銭ときわめて大きな開きがあるわけであります。これを基準内賃金で、年齢構成、勤続構成というものを同じレベルに引き直してベース比較をしてみますと、石炭の二万九一千八百円というのに対しまして、金属鉱山が三万二千五百円、鉄鋼が四万四百円、製造業平均では三万五千九百円、こういうような数字になりますし、それから試算係数の中の七%という問題で見てみますと、過去六年間の賃金の上昇率が、石炭の場合には六・六%であります。これに対して金属鉱山は九・九%、電力は一〇・二%、鉄鋼が一〇・六%、これは引き上げ率が低い、それからベースも低いということですから、四十一年度の引き上げ金額を日経連の統計で見てみますと、石炭が二千三百円というふうに、これもちょっと問題があるのですが、出ておるのに対しまして、金属が三千二百七円、電力が三千八十五円、十九産業の平均が三千百九十六円 日経連の調べですらこういうふうになっておるわけであります。したがって、こういう点を国の援助の限界だ云々という逆な側面からスタートをしまして、こういう事実の賃金実態というものを無視して施策を立てたにしても、現在おる労働者に逃げるなということ自体が無理ですし、新しい労働力を入れるということ自体、これはまさに噴飯ものだというふうになぜとらえられないのだろうか、なぜこの問題に石炭政策の重要なテーマとして触れないのだろうか、こういう疑問をどうしても払拭できないわけであります。このことは当然戻りますと、収支改善という問題について、少なくともバランスがとれるという状態に持っていって、そして今後の能率向上なり収益の好転という中で、少しずつでもこういう状態を改善するというような方向なり展望なりすらなぜ与えられないのか。こういう点で労働条件の問題についてはぜひひとつ本国会におきまして明確にとらえていただきたい。これはぜいたくなあれではございませんで、心からなるお願いでございます。  それから、年金の問題は、これは先ほどの方触れましたから詳しく触れませんけれども、一番危惧しますのは、収支改善が不十分だという面から経営者の負担でというのがどういう形で出るかといいますと、私は退職金と振りかえる形かあるいは未納という状態が出る。未納という状態が出た場合には最悪の閉山という場合に交付金の中から差っ引かれる。それは未払い賃金の充当分がカットをされる、こういう悪循環になって、結局スローガンとして非常によかったけれども、一番救われない底辺層の炭鉱労働者には元も子もないという結果にすらなりかねない内容のものであるという点だけを申し添えておきたいと思います。  それから次に保安対策の問題でございますが、これはぜひひとつお願い申し上げたいのですが、具体的に大きなポイントを置いて本国会においては取り上げていただきたい。というのは、これは中央保安協議会から審議会のほうに意見書みたいなものが出まして、項目的にはその中から若干取り上げられております。そして私はその項目自体はきわめて適切な項目はあると思います。しかしこれまでの経過から考えまして実現しないという点が問題なんです、金の問題を含めまして。その点であの答申を見て感じますのは、少なくとも私は今回の答申が発端をもたらした端緒というものはあの重大連続災害であったと思うのです。にもかかわらずそういう視点に立った保安の問題についての迫力というものはあの答申には全然感じられません。きわめて月並みに項目が並べてあるというふうな印象をあえて受けます。といいますのは、大災害というかっこうにおいて非常に天下の耳目を集めますけれども、頻発災害という問題についてはきわめて軽視されておる。事実はどうか、本年に入りましてから二百名の死亡者を出しております。一月から七月までに。大体毎日一人死んでおるということです。一月が四十二名、これはわずか操業日二十日くらいのものに四十二名、一日二人ずつ正月早々から死んでおる。二月が二十四名、三月が三十二名、四月が二十六名、五月が二十四名、六月が二十四名、七月が二十八名、死亡災害だけで合計二百名、他の重軽傷は推して知るべしであります。はたしてこういう現実のきわめて残酷な事実というものに対してどれほどの目を向けただろうか。確かに保安対策は即効薬というものはございません。即効薬はないだけに、対策そのものはよほど思い切った取り組みをしていただきませんと、いつまでたっても悪循環を繰り返す、こういうことになるわけであります。したがいまして、どういう形で取り組もうとするのかという具体的な対策をより明確にすると同時に、財政的な裏づけというものを思い切ってやるということであります。そしてこれは一つの方法としては収支改善にもう少し厚みを加えて経営的な余裕を持たせるということと、いま一つはひもつきの保安対策費を思い切って出す、この二つが相またない限り、私はぎりぎりの経営を進めていく過程の中で、これまでにきわめて拡大された矛盾を克服をして保安の万全を期すということは不可能に近いというふうに考えるわけであります。  非常に時間が長くなりましたが、まだほかにもたくさん申し上げたいことがございますが、最後に包括的に申し上げてみたい点は……。
  301. 野田武夫

    野田委員長 なるべく簡単にお願いいたします、時間もだいぶ過ぎておりますから。
  302. 松葉幸生

    ○松葉参考人 あとしばらくでけっこうでございます。  今回の施策を検討する背景となっております各企業長期再建計画、これは二回、三回と取りざたされましてかなりシビアーに、経営の側から言わせますと、背伸びをして計画がつくられておるわけです。そして目標としては五十三トンという目標があげられておるわけですが、われわれとしては何としてでもこの計画は達成をしたいという気魄は持っております。しかし事実問題として非常にむずかしい。特に人力に依存をした能率上昇というものは大きな壁にぶち当たりつつあるということを率直に申し上げたいと思うのです。そうしますと、当然機械化という形による合理化を進めていかない限り、この目標達成はきわめて至難である。そういう点からいいますと、やはり経営が収支面においても資金面においてもある程度の余裕というものを持たない限りは、機械化なり新技術の導入というものは頭で考えてもとうていできません。結局労働力に依存をして何とか能率達成をしようとする、そこには当然災害という問題もつきまとってまいりますし、悪循環をさらに繰り返す、こういうかっこうになりますので、今回の背景になっておる計画の達成自体が非常にむずかしいということも十分御理解を願っておきたい。しかしこれはやらないというのではなくて、できるだけ計画以上にやりたいという気魄は持ちたいと思いますけれども、事実問題としてむずかしい。ですから、それを背景にして考えられた収支改善というものが、その計画を背景にしてでも黒字になりきれない、資金面では二百円、三百円の穴があく、てめえらが努力したら何とかなるのだというような内容では、いま申し上げましたような、こういう多面的な問題解決ということはあり得ない。だから私は石炭産業サイドとしていいますと、非常にぜいたくに聞こえるかもしれませんけれども、収支改善を考える場合には、ある程度の余裕というものを見てやる、ぎりぎり黒字になるということではなくて、少なくとも自産炭収支面ではある程度の黒字というものをそれぞれの個別企業に余裕を見てやるというような形でスタートして初めて、今回の施策の金というものが十分な成果をおさめるのではないか。それを八合目ないし九合目まで引き上げておきながらあと突っ放す、こういう形ではその九合目まで投入をした資金自体が完全に死んでしまう、こういうふうにむしろここまで瀕死の状態になりました石炭産業の場合はお考え願わないと、われわれの努力にもかかわらず、諸先生方の御努力にも報いられないという形になってしまうということを懸念をいたすわけであります。  非常に散漫になりましたが、意のあるところをおくみ取り願いたいと思います。今後の御協力をお願い申し上げまして終わりたいと思います。
  303. 野田武夫

    野田委員長 これにて参考人各位の御意見は終わりましたが、時間の関係等もありますので、参考人各位に対する質疑を明日に譲りたいと存じますが、参考人各位の御都合はいかがですか。——参考人各位の御都合もよろしいようでございますので、参考人各位に対する質疑は明日引き続き行なうことといたします。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の皆さまには御多用中のところ貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  それでは明日もよろしくお願いいたします。  次会は明十二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十九分散会