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1966-07-28 第52回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年七月二十八日(木曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 有田 喜一君 理事 加藤 高藏君    理事 藏内 修治君 理事 始関 伊平君    理事 壽原 正一君 理事 多賀谷真稔君    理事 松井 政吉君 理事 八木  昇君       大坪 保雄君    上林山榮吉君       神田  博君    倉成  正君       篠田 弘作君    田中 六助君       中村 幸八君    西岡 武夫君       野見山清造君    三原 朝雄君       岡田 春夫君    滝井 義高君       細谷 治嘉君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  三木 武夫君         労 働 大 臣 小平 久雄君         自 治 大 臣 永山 忠則君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  澄田  智君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         自治事務官         (財政局長)  細郷 道一君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   吉瀬 維哉君         厚生事務官         (年金局長)  伊部 英夫君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君     ————————————— 七月二十八日  委員倉成正辞任につき、その補欠として篠田  弘作君が議長指名委員に選任された。 同日  委員篠田弘作辞任につき、その補欠として倉  成正君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。石炭鉱業審議会答申を中心に、石炭対策基本政策について質疑を行ないます。  質疑者に申し上げますが、理事会の申し合わせの時間を守っていただくよう、特に御協力をお願いいたします。  それでは、質疑の通告がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 石炭に対する中間答申を含めまして四回目の答申が出たわけですが、時間の関係がございますから、私は問題点を端的に総理大臣にお聞きしたいと思います。  総理大臣は長い間通産大臣をやられて、第一次調査団を出すときには所管大臣でありました。でありますから、私は、石炭については十分承知をされておるし、非常に関心を持っておられるし、答申内容についても逐一お知りであろう、こういう前提質問をいたしたいと思います。  政治の要諦は国民に公平でなければならぬと思います。率直に言いますと、今度の答申関係中小企業者労働者さらに産炭地住民にとっては非常に大きな打撃になってあらわれておると思うのです。肩がわり資金というのは、残念ながら中小炭鉱にはあまり恩恵に浴しないのであります。御存じのごとく、中小炭鉱借金を負う能力がない、借金を負うた炭鉱はほとんどつぶれていっておる、こういう情勢です。ですから公平に扱うためには、問題の本質は千二百円引きから始まっておるわけですから、いわば国内エネルギーとさらに輸入エネルギーとの価格の調整という面から見て、どうしてもここに補給金制度というものを考えて、その補給金制度を活用し、そして補給金を上げる以外には公平にならないと思うわけです。これについて総理は、かねてから中小企業政策について常に党の政策として公約されておる。一体かような不平等答申が出されておる場合に、総理はこの問題についてどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、今日までちょうど四回になるとただいまの多賀谷君のお話ですが、中間報告をも含めて四回の答申、そのいずれにも実は関係しておるのであります。石炭産業の苦しんできたその道は、同時に私の政治家として歩んできた道でもある。苦しみをともにしております。そしてただいま第三次の答申を得て、これからの国策樹立、同時にまた財政的措置等々についてくふうしよう、かように考えておりますが、ただいまお話しになりましたように、これがいかにも中小企業者に報いるものがないとか、あるいは労働者、また産炭地域住民等に十分の考慮が払われてない、こういうことがまんべんなく考慮が払われなければ、政策として完全だとは言えないじゃないか、こういう御批判のようであります。そういう立場でものごとをごらんになりますが、政府の見るところ、また私の見るところは、ややその趣を異にしております。私は、何としてもこのエネルギー革命の際に生じた石炭産業あり方、これをひとつ立て直すこと、長期見通しを与えること、そして希望を持たすことだと思う。そのことが同時に、ただいま御指摘になりました、大企業といわず、中小企業といわず、資本家といわず、労働者といわず、産炭地住民に対しても幸いするものだと、かように実は考えております。もとを正さないで、全体の生きる道を考えないで、ただ個々対策はどうだ、こう言われるだけでは、その実態をつかんでおるとは言えない、かように私は思っておるのです。そういう意味石炭産業あり方、しかも今後五年くらいたてば希望が持てる、そうしてまた、その五年間大体五千万トン程度需要は確保できる、そういうところに立って初めてこの石炭政策が生まれておる、かように私は考えております。もちろん骨子は、ただいま申し上げるように、末端の現象にとらわれることはない、本筋を考える。しかし、同時にそれの遂行に当たっては現象的な各個々のものについて十分あたたかい思いやりの施設がなされなければならないこと、これは当然でありますから、そういう意味政策遂行に当たっては万遺漏なきを期してまいります。中小企業に対しても労働者に対しても、また産炭地住民に対しても十分その福祉を考え、またその利益を考えて、そうしてただいまの政策遂行に当る、その決意でございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、時間の関係できわめて問題点指摘いたして質問をしたわけですが、大臣は表からお答えになりました。しかし政治の公正の面から見ると、この点は非常に大きな不平等を生、じておる。将来のことをいわないで、過去だけいっておるという感じの答申ですよ。産業政策ではなくて、企業政策だと言いたい。ですから、企業政策なら企業政策のように、企業を平等に扱う必要があるでしょう。産業政策なら産業政策のように、個別企業にとらわれずに大きな政策をやる必要があるのですよ。ですから、これは産業政策に名をかる個別企業政策だ。それならば、私はあえて中小企業問題を問題にしたいと思うのです。実際、この対策効果で、肩がわり資金恩恵を受ける、その具体的な数字を見ればわかるでしょう。大手は四百四十円くらいですよ、トン当たり。純中小は百五十円くらい、系列中小が二十円くらい、平均して大体九十八円だといわれておる。これだけ不平等政策現実に行なわれておる、自由競争の世の中ですが、私は政府政策によって優勝劣敗の順序を変えちゃいかぬと思うのですよ。これは非常に重大だと思うわけです。  そこで、いまからの問題に向かっては、現実に銅の輸入に際して、国内銅鉱山に対して輸入地金並びに輸入鉱石の関税児合い分として交付金を出しておる、こういう制度もあるわけですから、少なくとも将来の問題としては、補給金ということで公平な政派をやってもらいたい、これが一点です。これをもう一度質問をいたしたい。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この種の問題は、御指摘になりますように、現状あるいは過去、それに対する対策も大事でありますが、同時に長期にわたる産業見通し、これが大事だ。そういう意味で四十五年を目標にして、まず赤字もなくなり、五千万トンの需給、これはできるだろう、 ここをねらってただいまの答申がなされておると思います。だからそういう意味でお考えをいただきたいと思いますし、またこの生産確保についての施策、これも答申に盛られておりますから、そういう点でただいまの御意見に沿うものだ、私はかように考えておる。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 答申は私の意味に沿わないのですよ。ですから、基本的なことはあとから聞きますが、こういう政治における不平等というものをなくしてもらいたい。大臣は私の質問に真正面からお答えにならぬで、基本的な話をされておる。私も基本的な話はあとからします。しかし、まずわれわれは公正な政流をしなければならぬでしょう。あなたは内容十分御存じのはずですよ。答申は公正な政治に沿うてない。だから公正な、平等な施策を行なってもらいたいというわけです。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その安定補給金というものが出ておる。これはやはり中小炭鉱に最も幸いしておる、私はかように考えております。この金はトン当たり百円になっておりますが、その金が少いとかいう御批判はあるようですけれども、私はこういう制度がいいのだと思っております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 少ないという意見総理の耳に入っておれば、これは制度として是認をしておるわけですから、ひとつその増額をしてもらう、あるいは政治の面において十分考える、こう理解してよろしいですか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま具体的な答申としては石灰鉱業審議会から出ておるのでございます。しかしこれを具体化する上におきまして、さらに各方面意見等十分調整をとって、政府の案といいますか、対策を立てるのでございますから、さらに十分検討するつもりでございます。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次にもう一つ問題点としては、率直に言って、一体店じまいをせよというのか、続けていけというのか、この答申ははっきりしない。閉山をするなら閉山をするような閉山対策というものがあってしかるべきでしょう。閉山もできない、継続もできないという仕組みですよ。ですから私はもう少しはっきりしてもらいたいと思うのですね。すなわち、いま芸での炭鉱異常債務、過去に閉山合理化費用がばく大になったから処置をしようというわけでしょう。そうすると、今後閉山をする炭鉱だって同じくらい当然負担になるわけです。今後のものについては何ら回答してない。大臣存じのように、大臣が非常に苦労された大正炭鉱は、二年目になってまだ金銭債務労働者に渡らないのですよ。しかもその金額は、わずかに自分が持っております未払い賃金退職金の一三、四%です。八十万円の退職金がたった十一万円しかもらう予定になっていない。全額もまだもらってないのです。こういう状態ですよ。ですから閉山をするなら私は安楽死をさせてもらいたいと思う。残る企業だけを優遇することも必要でしょうが、残る企業だけじゃないですよ。労働者はわずかしかもらえないで、野たれ死にをしていかなければならぬ状態ですよ。ですから過去の分と将来の分とやはり同じですよ。将来における処理を講じなければ、これもまた非常な不平等になる。なかんずく銀行財政肩がわりによって返還をしてもらうでしょう。その炭鉱がつぶれても残余の分については半分税度補償されるでしょう。しかも銀行は担保を持っておるのですよ。結局、閉山、存続にかかわらず、銀行は完全に回収できるのです。ところが、労働者売り掛け代金を持っておる中小商工業者はほとんどもらえないでしょう。売り掛け商工業者は三%しかもらってないのですよ。大正の場合でもほかの閉山の場合でも、三〇%ではないですよ、三%なんですよ。こういう不公平な政策がありますか。閉山をするなら閉山をするように安楽死をする政策考えるべきでしょう。これは地域経済だってたいへんですよ。それをひとつ政治の姿勢として御答弁願いたい。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろのお話がございますが、自由経済のもとにおいて一つの聖業を失敗する、またそういうのが倒れる、こういう場合の処置、これには炭鉱の場合もまたその他の産業の場合も、これは私特別に変わったことはない、かように思います。しかし石炭については特に政府もこれに関与している。そういう意味で、他に比べれば私はだいぶん手厚い処置がとられておると思います。ただいま多賀谷君はなお不十分だ、かように言われますが、私どもあるいは鉱害復旧においてあるいは労務者の退職金において、本来優先的に支払われるべきもの、そういうものがまだ現実には優先的に取り扱われておらない、こういうところも見受けるのでございます。したがいまして、ただいまの安楽死ときめてかかるわけにもまいりませんが、しかしこういう閉山——これはまた終山とは違う、閉山するのだ、特別な政府施策でやるのだ、こういう場合においては何かめんどうの見方もあるのじゃないか。だからもう少し地域社会のことも考えて、またその働く場所の労働者のことも考えて、十分の金額とはいわないが、それが効果があるようにいくような処置がさらに現在よりとれないか。その点はくふうすべきものだ、かように私も思っております。そういう意味で今後の問題は、いまの労働者退職金あるいは給料の未払いの分だとか、こういうものは優先的に払わるべきでしょう。また鉱害復旧等についても要求される。地方自治体が、地域産業が壊滅した、そういう意味のさびれ方もございますので、そういう地域社会についても特別な交付金制度等考えてみる等々のことで、できるだけのあたたかい思いやりのある政治をすべきだ、かように思います。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 答申は遺徳ながら、若干配慮をしてあっても、事実上は大手閉山費用が七千円要るというのに二千円程度しか組んでいない。そうして既往の分を見るという。じゃいまからの分は二千円でやっていけるかというと、やっていけないでしょう。そういう矛盾は幾つもありますから、これはひとつ御考慮を願いたい。  そこで最後に、衆議院では出炭目標五千五百万トン、昭和四十五年度においては五千二百万トン程度を確保するということをきめました。自民党の石炭部会は五千二百万トンときめたわけです。われわれはそれについては異論はありましたけれども、多数党、与党でありますから、五千二百万トンということで話をつけたわけです。しかし総理大臣お話しになったように目標、旗をここでおろす必要はない。日本のいまからのエネルギー国民所得とともに増大するわけですから、やはり五千五百万トンという旗を置いて、しかし実効ある政策として四十五年度においては五千二百万トン程度、こういうように衆議院においても参議院においても決議したわけです。残念ながら、この答申とは意見を異にしております。しかし私はここが政策だと思うわけです。これは政策需要をつけてやればできるわけです。私がなぜそのことを言うかといいますと、この与える影響、ことに労働者関係業者に与える影響が非常に大きい。かつて御存じのように、五千五百万トンということを言って、現実はどうかといいましたら、三十八年度に閉山が集中して五千百万トンを割った苦い経験をわれわれは持っているわけです。ですからここで現時点における政策は今後非常に影響がある。もし、もう炭鉱はだめだと見たらそれは大手炭鉱は残るでしょうけれども、ほとんど閉山方向にいけば、あるいは大手炭鉱における労働者も流出すれば五千万トンを割るわけです。せっかく需要をつけてくれても応じ切れない、こういう心配があるわけです。そこで私は、やはり五千二百万トンという需要を確保して、国の政策としては五千五百万トンの旗をおろすことなく労働者関係者安心をさせてやる必要がある、かように考えるわけです。そこで衆議院参議院決議答申に対して総理一体これをどういうふうに扱われるか、御所見を承りたい。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん今日の議会政治のもとにおいては国会決議、これを尊重しなければ、政府政治はやっていけません。ここではもう間違いなしに政府国会決議を尊重している。ここは何ら疑いを差しはさんでいただきたくないのでございます。そういう意味決議前提とされ、政府がこれに縛られておる。しかし総合エネルギー部会においての石炭の位置づけ、どうも遺憾ながらそのとおりにはならなかった。今日出してきておるのが五千万トンという数字でございます。あるいは石炭だけで考えた場合、非常に安いエネルギー源、そういう意味では石炭が必ずしもその目的に沿うとは思わない。しかし安定供給という、そういう意味国内エネルギー源でありますからこれなら安心ができる、これは、占えると思います。そこでこの石炭の位置づけをする場合に十分そこらをくふうして、国会決議もあることだし、十分勘案して五千万トン程度が適当じゃないか、こういうふうに決定されたものと私は想像します。  しこうしてこの五千万トン、これが与える影響はただいまのようにいろいろの見方があると思います。昨日あたりこの総合エネルギー部会委員の方が国会で証言をしておる。それを読んでみると、これはカロリー計算すれば五千三百万トン程度になるのだ、こういう言い方をしておる。したがって表面に出ておるものとは実質は違います、こういう言い方をしておるようです。しかし少なくとも私どもも、やはり掲げたらこれは目標である、だからその目標だけ看板はおろすな、こう言われることもわからないではありませんが、やはり政治は実際に合うように処理していくことが必要だと思う。たいへん専門家である多賀谷君に私がかような議論をして申しわけございませんけれども国内エネルギー源石炭を五千万トンとする、そこにも審議会の人がまだずいぶん無理を言っておるのではないかな、こういう批判をする人も一部にはあるように私は聞いております。だからもっと低いのが実情においては合うのではないか。また将来の見通しをすれば、重油などがどんどん下がるような、その形から見るならば五千万トンはたいへん商い目標じゃないか、かようなことを言われておる人もあるようであります。しかし私はそういう意見にはいま耳をかすつもりはございません。十分国会決議を尊重し、同時にまたこの審議会において五千万トンにきめた点、この点も考えて、与える影響、その悪影響をいかにして防ぐか、これを除去するか、と申しますならば、五千万トンにすれば廃山、終山がだんだんふえるのではないか、そこで離職者が非常に出やしないか、だからそんなものを急速に縮小されては困る、もしも短期間にやるならばおそらく先を見越して思い切ってやめる山がふえはしないかそうしたらたいへん混乱するという多賀谷君の御心配もよくわかりますから、その影響をできるだけ小さくするように、避けるように最善を尽くす。そして私どもは、ただいま五千万トンときまりましてもそれが五千百万トンあるいは二百万トン、こういうように需給関係需要があるならそれに越したことはないのでありますから、需要喚起についてもさらに努力をする。ただいまは需要喚起というよりも需要確保、そこに問題があるように思いますので、需要確保について十分努力する。したがってただいま御指摘になりましたように、悪い影響を与えないように最善を尽くす決意でございます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、この答申政策需要もつけておられますけれども、しかし、やはり経済ベースでものを考えられておる。そこで、政府は高い角度であらゆる諸般の問題を考えて、この国会決議を尊重して、ぜひ国会決議方向で努力してもらいたい、このことを希望いたしまして、質問を終わります。
  16. 野田武夫

  17. 滝井義高

    滝井委員 時間がございませんから、単刀直入にお尋ねをいたしますが、昨年六月の十六日に、通産大臣から石炭鉱業の抜本的な安定策について諮問を受けて以来、ようやくここに答申が出てきたわけです。そこで、一年有余かかった非常に重要な答申でございますが、内閣責任者として、総理はこれを政治的にどういうスケジュールで具体化していくつもりなのか。こまかいところは、まだ出たばかりで御検討になっていないかとも思いますけれども、やはり自分としては瀕死の重体にある石炭産業について当面こういう政治的スケジュール実施していきたい、こういうものがなくちゃならぬと思うのです。これをまずひとつお答え願いたい。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答申が出たのでございますし、また先ほどもいろいろお尋ねがございましたから、私の率直な意見を申しました。政府考え方をきめるについてはさらに慎重を期する、こういう意味で、各方面意見を聞きまして、その上で政府最終意思を決定をするつもりでございます。この中には立法事項もございますし、また大体計画されたものが来年度以降においてこれを実施するようなつもりで考えられておるようでご いますから、予算編成また立法等とあわせて、来年度以降においてこれを実施に移す、こういう考え方でございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 実は昨日稻葉委員から、われわれはこれを政府答申した、しかし事態は非常に窮迫をしておるので、四十一年度にできれば全面的にひとつ実施をしてもらいたい、そのためには、政府においては早期に臨時国会を開いてやってもらいたい、こういう御意見があったのです。そこで、いまの委員皆さん方日本石炭現状を見るところでは、やはり四十二年度の予算編成をする段階で、立法予算措置をやって、そしてそれが通常国会なるということになれば、これは御存じのとおり、四十二年四月以降しか動かぬわけです。それでは、いまでさえ一千万トンの貯炭があるんですよ。そうしてどうにもならぬというときに、いまの佐藤総理のような政治的スケジュールでは、これはたいへんなことになるのです。だから、これはたとえば千二百円を二十円に整理促進交付金を引き上げるわけです。こんなものを四十二年の四月から実施するということになれば、これはたいへんなことになるわけです。あるいは電発火力発電を特に今年度繰り上げて二基づくります。予算はついていないのですよ。稻葉さんに幾ら金が要りますかと言ったら、百五十億要りますと、こう言う。そうすると、そういう金をここで予備費なら予備費を出すと言明できれば、それも一つの方法です。しかし、やはりその政治的スケジュールは、答申が出た、緊急なものは緊急な対策をとる、これはわれわれのようなやぶ医者だって、重体な慰者を見たら応急処置をすぱっとやります、それから恒久的なことをやるのですから、いわんや長期安定政権をねらう名医の佐藤さんが、こういうものをいますぐやることさえもはっきりしないということじゃだめです。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま滝井君も特別な緊急処置はとるべきときにおいてとるのだ、こういうことを言われました。政府も、もちろん緊急処置が必要ならばそれをとるのにちゅうちょはいたしませんし、また、進んでそういうことをいたします。しかし、この前の中間報告答申を得ておりますので、緊急なものは大体この中間答申で処理できる、かように私ども考えておりますので、ただいまのようなスケジュールではどうかと言われると、先ほど申したような考え方でございます。しかし、緊急な要請が出ればこれに対処していく。これはもちろんでございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 したがって、いま臨時国会が開かれておるときに臨時国会を開きますなどということは、総理はこんりんざい言えないと思うのです。しかし、当然、事態が緊急になれば、緊急な政治的な処置総理としてやるのだ、こういう言明はできますね。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 できます。しかし、どうもただいまあまりそういう問題はなさそうでございます。ありがとうございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 緊急な措置をとることだけでけっこうです。あとは耳に入らなかったことにしておきます。  そこで、そうなりますと、この答申を読んでみますと、これはなかなか容易ならざるものがあるわけです。昨日、平田さんと稻葉さんに来てもらった。そして私だいぶおこったのですが、はっきりした点は、四十一年度の石炭対策予算は二百四十億ありますが、二百四十億のほかに、新しくこの答申によって、一体四十二年度にどの程度の金が必要なのかという質問をいたしました。そうしましたら、肩がわりのために大体百二十億から百三十億の金が必要でしょう、それから安定補給金として二十五億から三十億必要です、そうなったんです。そうしますと佐藤さん、二百四十億ことしプロパーのものがあるんです。新たなものとして百三十億と三十億を見ますと四百億になってしまう。四百億要るんですよ。そうしますと、あとまだ何が残るかというと、今度は鉄鋼と電力に相当石炭を食ってもらうことになる。だから、そこに負担増の対策が要るわけです。いまだって三十億から四十億程度要っておるんですから、もっと要ります。これからまた二千三百万トンも電力に食ってもらうんですから要るわけです。それから鉱害に要るわけです。鉱害は五年間にやってしまいますと書いておる。いま八百億あるんですよ。八百億鉱害が残っております。そうすると、一年に百四、五十億やらなければならぬということになる。これは全く算術計算です。それから閉山対策費として、いま多賀谷さんも言っておったが、千二百円を二千円にするというだけでも何十億という金が新たに要るんです。そうでしょう。そうして今度、いま言ったような火力発電を二基にすると百五十億です。そうすると、これはいま四百億にそんなものを足すと、算術では六百億以上になってしまうんです。  そこで、私は佐藤さんに言いたいのは、きのうここで全くしぶしぶとあの発言をしただけで、もう四百億要っておるんですよ。あとのその他のいまからやる新しい石炭以外の政策については黙して語らず、黙秘権を行使したんです。そうしますと、これは佐藤さん御存じのとおり、特別会計をつくることになっておるんです。そうしてその特別会計は、石炭対策の財源、支出の内容と他の会計を区別して明確に整理する、こうなっておるわけです。そこで、石炭の支出と特別会計とはきちっと連結されておることになるんです。その場合に、ここでひとつ総理に言明をしてもらいたいのは、御存じのとおり、特別会計は重油関税の一割ですね。これは四十二年度で五百億ぐらいしかないんです。そうすると、石炭政策は五百億のワクの中ですべて四十二年度はきめてしまって、それ以上はびた一文も出ないということにするのか、それとも情勢次第によっては五百億にプラスアルファというものがつくと考えていいのかどうかということです。私はこまかいことは言いません。そこだけ政治的な判断としてどうするのか、あなたの腹をきめてもらいたいと思う。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんあぶら身だけつかまえてその答えを出せとおっしゃるのですが、いまの段階ではやや無理なんです。きのう皆さん方審議会委員、この答申をつくられた専門家を呼んで直接お聞きになった。政府におきましては、ただいま答申を得たばかりです。大事な問題でございますから、大蔵当局や通産当局は十分検討はしておると思います。しかしながら、まだ総合的に結論を出す段階ではありません。いま滝井君、たいへん事柄が緊急だし、大事な仕事だから早く結論を出せ、こういう意味でお急ぎだと思いますが、いましばらく政府にも検討する時間を与えていただきたいと思うのです。先ほども申しましたように、政府のこれからの結論を出しますためには、各方面意見もさらに伺いまして政府の最終的案をつくります、こういうことを申しました。また、緊急なものが出てくれば、それに対する対策も、これに対応するだけに誠意を持って取り組みます、こういう答えをいたしましたが、いまの数字がどうなるか、こういう問題はもっと研究さしてもらわないと、ことしの予算あたりで一応予定いたしました閉山だって、なかなか予定どおり進んでおらない、これがいまの実情ではないかと思うのです。これは石炭産業、業界に与える影響も非常に大きいのでございますし、その動向も十分見きわめなければなりませんし、各方面と渡り合って、政府は確信のある数字を取りまとめたい、かように思いますので、しばらく時間をかしていただきたい。
  25. 滝井義高

    滝井委員 時間はかします。しかし、御存じのとおり、この答申は重油関税の関税率は一割二分、これは三十八年四月に課された暫定分については本年度限りで期限が切れてしまうわけです。期限が切れてしまうのですよ、今年限りで。そこで、政府としてはこの支出のほうの施策はきめました。これは肩がわりを千億してやるとか、百円の安定補給金をやるとか、千二百円の交付金を二千円に引き上げるとかきめました。しかし、財源のほうは確立していないのですよ。しかもきわめてあいまいに、来年度以降においてもこれを延長することを要請するという程度なんです。何年延長するのか、どういう形でこの一割程度を出すんだか、それが不足した場合にどうするのか、何も書いてないのです。財源は不安定そのものなんですよ。そんな不安定な財源で、瀕死の病人のところに往診カバンを持たぬで行ったと同じです。往診カバンを持たぬで重病人のところに行ったって何の役にも立たぬ。だから、この一割という特別会計をおつくりになったら、それでまかなえない場合においては、政府政治的な配慮をするくらいは言っておいてもらわぬと、その財源はどこから出してもかまわぬですよ。しかし、重油関税の一割というのはきまっているのですから、それを、たとえば方法としては先食いする方法だってあるのですよ。先になれば油はどんどん伸びていくのです。だから、そういう政治的な配慮、油を先食いせよなんというような言明を取ろうとはしません。しかし、財源が足りない場合には政治的な配慮をしようというようなことを言わなければ、政治家同士の質疑応答は何の役にも立たぬのですよ。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも滝井君もいまさら特別会計のつくり方、これを御存じないわけもない。ただいまのように、将来非常に伸びる財源を骨子にする特別会計でございますから、これは何をか言わん。問題は、どうしても足りないときにどんなくふうをするだろうか、それを御心配のようですが、やはり要るものは要るのですから、また、いまの目的がどこにあるかという、それを十分考え政府処置をしますので、そういう点について言質を取られることはあまり意味をなさない。これは会計のあり方そのものを私この席で説明するようなことになりますから、これはひとつ御理解のある滝井君だから、私も答弁はいたさない、これは預からしていただきたい。
  27. 滝井義高

    滝井委員 お互いに以心伝心ということがありますから、よくわかりました。  次は、こういうように多賀谷さんも指摘をいたしておりましたが、過去の債務の肩がわりその他はやってもらえるわけですね。しかし、問題は、これから五年間に石炭産業が生きていくためには、この答申はどういうことを言っておるかというと、自己資金の調達をやりなさい、それから市中銀行の融資の協力を受けなさい、それから財政資金もある程度出しましょう、こういうことになってはおるのですが、なっておるのだけれども、まず前提としてお尋ねをいたしたいのは、銀行筋その他は、一体炭価というものはこれからずっと五年間はいまの炭価で据え置くのかどうかということが一つ問題点。これは一体炭価は五年間据え置くつもりですか。
  28. 三木武夫

    ○三木国務大臣 単価は現在の炭価で据え置きたいという考えです。
  29. 滝井義高

    滝井委員 炭価は据え置くことはわかりました。そうしますと、まあこれは私が大体ちょっとやってみたのですが、あるいは他のものも読んでみましたが、今後石炭産業が立ち直っていくためには近代化をやらなければなりません。相当の設備資金と運転資金が要るわけです。それから四十五年までの五カ年間に過去の荷物というものについては、政府がなしくずし的にこれは軽くしてくれます。しかし前に向かって飛んでいくエネルギーの蓄積をやらなければならぬわけです。それが自己資金であり、設備資金であり、近代化資金です。そこでこれを銀行なり、財政資金から出してもらわなければならぬことになるわけです。いま炭価を据え置くと言った。そうすると、一体出せるのかどうかということなんです。この政治的な配慮というものを佐藤さんはどうお考えになっておるかということです。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのこの対策、これは抜本的のものだ、また将来に希望が持てるのだ、今回の対策をかように私は思っておるのです。したがいまして、これは金融筋もそのとおり考えてくれる。将来安定している産業、見込みのある産業、これに金を貸すのはあたりまえであります。また政府はビルド政策については、積極的に援助政策をさらに充実さすつもりでございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 ぜひいまの言を実行してもらいたいと思うのです。というのは、金融筋では、御存じのとおり最近は構造金融ということばが言われ始めたわけです。弱いところは金融の面から切り落としてしまう。たとえば繊維、あるいは粗鋼生産、あるいは普通の商社、もう公々然と言われているわけです。そういう金融構造体制になっていきますと、石炭企業における少し弱いところについては全部金融がつかずに、金融で切り落とされてしまうわけです。そうしますと、これはなだれを打って四十一年、二年にくずれることになるわけです。そのことは、なだれを打ってくずれるということは、すでに第一次答申、第二次答申において私たちが見たように、離山ムードを促進して、政府の所期の計画というのがうまくいかなくなります。だから、これは過去の荷物をある程度軽減をしていただくか、将来に向かってのやはりエネルギーの補給だけはひとつ忘れず、いまのことばどおりひとつ実施していただきたいと思うのです。  そうしますと、最後にこれで終わるわけですが、いまのように石炭政策プロパーに相当の金が要るということになり、政治的に一割の重油関税を配慮してもらっても、問題になってくるのは鉱害対策と、それから市町村財政のてこ入れと、それから産炭地振興です。御存じのとおり鉱害対策は遅々として進んでおりません。これはあとでもう少し専門的に三木さんに質問しますが、進んでいない。これは佐藤さんが田川市の野上炭鉱の荒れ果てた炭住にやってきて、筑豊には一体政治家がおるか、あれは私自身も実にこれを恥ずかしいと思った、これは日本政治家の恥部がここにあるのだといみじくも言ってくれた。私はあのときそばにおって涙が流れた、ほんとうにそうなんです。そうすると、鉱害は放置されて遅々として進まない。インフレーションと物価の値上がり、労務費の値上がりのために、いつ調べても八百億あるのです。毎年五、六十億やっているのだけれども、いつ調べても八百億あるのです。そうすると、市町村の財政というものが、これが行なわれて、一千万トンの閉山が、しかも一、二年のうちに行なわれると、三万人、しかもいま残っている中小炭鉱と第二会社というものは軒並みやられるでしょう。それは新聞報道では二百社のうち百社はだめだ、こうなっているのです。そうすると、市町村は壊滅的な打撃を受ける。いまも四苦八苦ですから……。それに産炭地振興が遅々として進まない、非常におくれている。だから石炭プロパーの政策を抜本的におやりになるとともに、その背後における問題というものを見落とさずに、これについても相当これは金を入れる決心でないと、これは非常な社会不安が起こってくるわけです。この具体的な個々の問題についてはいずれお聞きをいたしますが、これらの三つの問題については、佐藤総理、十分勇断をもってやっていただけるのかどうか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 膨大な鉱害、また鉱害復旧がおくれておる。ただいま八百億八百億と言われるけれども政府は六百七十億程度に見ております。必ずしもこれは百億違うからといってそれを責めるわけじゃございません。ただいま膨大な鉱害のあること、これはそのとおりであります。しかもこの鉱害の復旧の責任者一体だれなのか、これがしばしば、炭鉱経営者、企業家そのものの責任である、こういうようにいわれておりますが、終山あるいは廃山していく場合、企業者がこういうことについて十分の責任がとれるような状態でないと、また地方自治体にいたしましても、これが地域産業の中心のものがなくなるということでありますから、財政状態もたいへん疲弊している、こういう状況であります。したがって、今日までの行き方だけでこの鉱害復旧が可能だとは私も考えません。国土保全のために政府はもっと積極的な処置をとるべきだ、かように思うのでございます。財政その他の窮迫しておるおりからでありますので、一般災害復旧並みのように政府がやるというわけにもなかなかいかないかもわかりません。しかしながら、何かそこらの点をも勘案して、どうしたら鉱害復旧が実を結ぶか、さらに私ども検討してみたい、かように私は思っております。
  33. 滝井義高

    滝井委員 これで終わります。  もうくどくどと申しませんが、近く内閣も改造されるそうですからほんとうに重厚清新な内閣をおつくりになって、まず、社会開発のモデルをこの産炭地の振興なり石炭の立て直しのために置いていただきたいと思うのです。それがやはりあなたの内閣がほんとうに社会開発をやり、民生安定をやる内閣であるかどうかというテストケースになるのですよ。これが、長期政権の運命を決定すると思うのです。それだけのひとつ御忠告というか要望を申し上げて、私の質問を終わります。
  34. 野田武夫

  35. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間がきわめて限られておりますから、二点だけお伺いしたいと思っております。  政府は当然国会の議決を尊重して、これを忠実に責任を持って実施するということ等については、先ほど答弁をされておいででありますけれども、非常にはっきり私が信ずるというような点において、どうも何か少しかすみがかかったような気がしますから、ということと、いま一つは、過去の例から見て、どうも政府は、審議会答申というものを十分尊重する尊重するといって、それに重点を置いて、国会議決というものをとかく軽んずる傾向があります。これは国会軽視の上にきわめて重大でありますから、この点について、答申答申、しかしながら、それは政府の参考資料、政府が忠実に責任を持って実行しなければならないのはあくまでも国会議決によるものであるという点について、ひとつはっきりしてお聞かせ願いたい。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど多賀谷君にお答えいたしましたように、筑豊でただいま質問されましたお三方も非常に苦労されたと思いますが、私もどういう因果か皆さんとともに石炭問題の解決に取り組まなければならない運命である。そういう意味でともに知恵をしぼってきたと思います。しかし、エネルギー革命が私ども予想した以上に大きな波でありますので、よほど思い切った対策をこれにとらない限り、いまの変革には応じかねる、かように思います。今回の答申でも、一千億の私企業の負担を財政的に切りかえるという、これはおそらくいまだかってない思い切った考え方だと思うし、また、こういうことがはたして在来の考え方だけで納得がいくかどうか、私は実はたいへん心配をしておるのであります。しかし、ただいままでのところ、大蔵当局や通産当局も、この思い切った処置以外にはないのじゃないか、かように言っておりますので、事務的にもそういうことを考えなければならない。この点は私が申し上げるまでもなく、国産エネルギー源はまことに大事だ。過去においても石炭産業については、国が特別にこれの援助あるいは協力をしてきました。しかし、この段階になれば、国がほんとうに積極的に取り組まなければならない、こう思って、これは画期的な処置がとられるのだ、かように私も思っております。この点はおそらく先ほど来お尋ねになりましたお三方にしても私同様の考え方をされるだろう。こんな画期的な対策というものはないように思います。だから、これが十分成果があがるよう、そのことはどうしてもやらなければならない。国民全体の負担において特殊な地域の石炭産業を再建するのだ、このことを特に考えていただきたいと思うのです。  私は、経営者も、またその産業を職場にする人も、また地域社会においても、十分の国家的な援助、これについての理解がなければならないと思います。いまたいへんおそい批判ではありますが、私は、石炭産業というものは少し過去においては政府の援助になれ過ぎたようなところがあるのじゃないのか、こういうことはやはり企業者、労働者、また地域産業、そうして自治体が十分産業あり方、それに対する政府施策に協力する深い理解がないとうまくいかぬのじゃないかと思うのです。今度はそういう意味で、これからの石炭産業あり方政府も思い切った処置をとるから、ひとつ関係の方もどうか十分の理解を持って協力をしてくださいとお願いをしたいと思います。これが、ただいま政府がこれから政府の案をつくろうとするその際に申し上げ得るお願いでございます。  そういう意味で、ぼけているとかあるいははっきりしないというおしかりはあるかわかりませんが、私は、この問題は今度根本的対策として成果をあげないと、あと一体どうなるのかというたいへんな心配を持つものでありますから、そういう意味で重大な意義を考え対策を立てるつもりであります。  また、先ほどもお答えしたのでありますが、国会の議決、これは一番大事でございますから、これは何をか申しません。これは尊重する。また、それによって私ども政治方向がきまるのでありまして、それ以外に申し上げることはございません。各種の審議会どもこの基本的な方向を裏づけをする、サポートする、そういう意味決議だ、かように政府考えております。
  37. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 最後に一点ですが、別にいま総理か答弁されたことを反駁する意味じゃありません。けれども、事実を事実として一言申しておきたいのですが、画期的な石炭政策政府は今後やるんだとおっしゃっております。それからさらに今日まで政府石炭産業に非常に援助、協力をし過ぎたというような意味のことを言われましたが、これは私は総理考え方というものをひとつ直してもらわないと、画期的な石炭対策というものは立たないんじゃないかと思うのは、政府が今度画期的といわれておることは、過去にあやまちを犯した、そのあやまちを、悪うございましたといってあやまる一つのあやまり状をここに出したわけでございます。というのは、昭和三十四年から八年まで五年間に千二百円強制的に石炭単価を下げさせたでしょう。物価は御存じのように、どんどんどんどん上がってきておるでしょう。その埋め合わせを何とかしないと申しわけないというので、今度はこの埋め合わせですよ。画期的でも援助でも何でもありません。このことをひとつ総理、よくよく肝に銘じてもらいたい。  それから先ほど、佐藤総理が答弁の中に、石炭問題はもとを正さずして解決はできない、こう言われておる。私も全く同感でございます。ところがこのもとを正すというのは、一体どういうものであるか、私ちょっと理解ができないので、もとを正すということをお聞きかせを願いたいと思っております。私のたぶんこうであろうと一人で解釈をしますことは、総合エネルギー云々ということをよく政府もいわれておりますが、政府が総合エネルギー政策を確立して解決をするという国策は、実はいままでになかったのです。なかったという証拠には、国会で三回にわたって同じようなことを議決をしておる。なぜ国会が三回にわたって同じようなことを議決をしてきておるかというに、国会議決を政府が尊重して、これを実行しておらぬから議決をしなければならぬ。まことに国会としても政府に対してにらみがきかなかった、実行させ得なかったということを、われわれもこれは大いに、はなはだ遺憾に考えていますが、政府もこの点、私は同じことを国会に三回も議決させなければならぬということについては、ひとつ深く考えてもらいたい。さらにはまた、石炭問題の答申について、四回も同じような答申をさしています。同じような問題を四回も答申さしておるということ、こういうことを総合して考えてみると、政府石炭国策というものがなかった、これを実行しなかった、ゼロだといっても、私はこれは言い過ぎでなかろうと思っております。ついては、この石炭問題を解決するためには、やはりどうしても総合エネルギーの強力な国家機構を構成しまして、この機関において、たとえば輸入油を幾らにする、石炭あるいは水力あるいはガスと、それぞれのエネルギーの数量、価格、こういうものを国としてどういうようにきめていくか、これをまたきめられ得るような国家機構をつくって、ここでどんどんこなしていくということにすれば、国会で三回も議決をした、答申を四回もしてなおまだいまのような状態では、また同じようなことを繰り返さなければなりません。この点について、ひとつそういう総合エネルギーを強力に解決する、こういう機構をやはり持つべきである。さきの池田総理も、やると言明されましたけれども調査程度で終わっております。佐藤総理石炭になかなか熱心でありますから、私この点信頼、敬意を払っております。したがって、信頼、敬意を払うためには、こういうことをおやりくださいということを、これは要請というか、ひとつ御意見をお聞かせ願いたい。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府の反省が足らなかった、過去の石炭政策を誤った、十分反省しろというおしかりを受けましたが、ただいま御意見を御意見として謹聴したような次第であります。ときに、総合エネルギー対策、これをひとつ樹立しろ、こういうお話であります。この必要なことは、国会決議等もしばしば申しておりますし、政府におきましてももちろんその必要なことを感じております。ただいまの石炭の位置づけをいかにするか、こういう場合におきましても、総合エネルギー対策として石炭一体どうなるのか、ただいまエネルギー源として二八%石炭が占めておる、これは電力の場合でしょうが、しかしこれが将来ともいまのまま率を保持ができるか、さらにまたこれがどういうように推移していくか、最近新しいものとして、今後五年あるいは十年のうちに新しく加わるものに原子力発電というものがございます。そうなってきますと、やはりまた模様が変わると思います。そういう場合に、やはり安価なもの、低廉なものという、これも一つの要素ではありますが、安定的供給、国内エネルギー源、こういうところに一つの魅力もあるのでありますから、一定のパーセンテージ、持ち分は必ず石炭の場合においてもある、かように私ども考えております。しかしただいま十分それを幾ら確保するということが言えないような状況ですから、もう少し総合エネルギー対策、これを樹立し、しかもこれは長期にわたるものを樹立し、そしてその場合における各エネルギー源、ことに石炭エネルギー源一体どの程度目標を置くか、これは大事なことだと思います。そういう意味で、通産省では各界の経験者あるいは有識者を集めて検討願っております。これを審議会あるいは調査会の程度でなしに、さらに一歩を進めて動力省くらいの構想を持てというただいまの伊藤君のお話かと思いますが、ただいま政府自身は、そこまで現状において必要かどうかと言われると、現状においてはまだそこまでの必要はない、かように私は思っております。したがいまして、特殊な行政機構を考える、こういう段階ではございません。しかし今後のあり方といたしまして、このままで済まし得るかどうか、これもひとつ大いに検討しなければならぬ問題だ、かように思いますので、せっかくただいまヒントを与えられた、かように私も考えますので、エネルギー政策樹立の場合に、ただいまの担当機構をもあわせ考え検討する、こういうことにいたしてまいります。
  39. 野田武夫

  40. 篠田弘作

    篠田委員 前もってちょっとお断わりいたしておきますが、私は明後日外国に参り、またいま与えられた時間は十分しかありません。したがいまして、総理の御都合もあって、最後まで御答弁を願うということはむずかしいと思いますので、まず最初に私の質問を全部申し上げまして、時間があったら総理その他の閣僚に答弁をいただきたいと思います。  まず、私の一番最初に申し上げたいことは、国の基幹産業である石炭問題の解決といったような問題については、これは政府国会が責任を持ってやるべきものであって、そういう政治的の責任を持たない審議会に依頼をして漫然と日を送る。しかも出た答申は、全くヘビのなま殺しであって、こんなものではとうてい今日瀕死の状態にある石炭業界を救うことはできない、これが私の結論であります。  さきに有沢調査団は、第一回の調査におきまして千二百円のコストダウン・スクラップ・アンド・ビルド、こういった面について答申をし、政府もまた業界も多大の犠牲を払って今日まで石炭対策をやってきた。しかるにその第一回の調査団答申は、数年を出ずしてまた第二次の調査団答申を求めざるを得なくなる。しかもいま申しましたように第二次の答申というものは、全く不徹底きわまるものであって、いかに与党といえどもこういう答申には賛成いたしかねるというのが結論でございます。  総理並びに政府関係として、一体調査団のこの答申というものが非常に尊重すべきものであって、しかもそれが国会決議や自民党の石炭調査会のそういう答申よりももっともっと重いものである、こういうふうに考えておられるのかどうか、それが第一点であります。  第二点は、石炭の位置づけであります。いろいろ五千五百万トンとか五千二百万トン、五千万トンという説があります。私は、石炭の位置づけそのものも必要でありますけれども、より大切なことは、需要の確保であると考えております。五千万トンでもけっこうでありましょう。ただし五千万トンを全部掘ったものは需要が確保されるという、そういう前提でなければなりません。五千万トンという数字をきめれば五千万トンは出ません。これはもう石炭のイロハを知っている者はだれでもそういうことはわかっておる。しかも一たん減らした石炭は二度とふやすことはできません。労働者は離職し、坑道は荒廃し、技術は低下し、そして再び何らかの必要に応じて石炭の再生産をやろうというときには、もはやその再生産は不可能になるということは、これは常識であります。しかも五千万トン全部を必ず需要を確保するかという問題になってきますと、最近電力業界に二千三百万トン、鉄鉱に一千百万トン、その他いろいろな数字が示されておりますけれども、これは努力目標であって、義務的な目標ではないということをそれぞれの業界において言っておるということは、政府御存じであろうと考えます。  その次にお尋ねしたいことは、いわゆる異常債務の千億円の肩がわり、いわゆる出世払いであります。政府は、まずここにありますように、市中銀行に対して五%ずつの助成をしていって、最後に市中銀行が、たとえば七%、八%貸しているものは切り捨てるということを言っております。これは答申内容であります。毎年五%の金利しか助成しない、その差は免除する。市中銀行に金を預けている者は国民大衆であります。審議会が五%であとを打ち切るといったって、国民大衆の金を預っている市中銀行がそれほど簡単に承知するものであるかどうか、また承知させてあるのであるかどうか、これが一つの問題であります。  その次に、千億円の肩がわりの問題で一番問題になるのは、中小大手の不公平であります。いろいろ計算をしてみますと、これによって大手は四百円ぐらいの助成になるそうでありますし、中小は百円ぐらい、石炭局長の話を聞いても二百円ぐらいと言いますから、大手の半分しか助成されない。これはわれわれが佐藤総理の御命令によってつくった自民党の中小石炭の小委員会、私が委員長をやりました。そして非常に長い間時間をかけてやった答申とも全然反対である。そのとき石炭局長は、大手中小とは絶対に区別をしない、これは公平にする。なぜかならば、日本石炭の三分の二は大手が掘っており、三分の一は中小が掘っておる、そういう見地から見ても絶対に不公平はしないと言ったにもかかわらず、明らかにこれは不公平である。  その次に、千億円の肩がわりは、これは私は悪いとは言いません。けっこうであります。しかし過去の異常債務肩がわりをしただけで、一体明日の再生産ができるのかどうか。金融の道は一つもこの答申の中にはうたっていない。しかも政府肩がわりをしたにもかかわらず、担保は依然として残されておる、こういうおかしな話はないと私は思います。政府が一千億の肩がわりをした以上は、担保を解除して、そして翌日からの金融をつけて再生産をさせるということが当然であって、政府が保証しても担保を解除しないということは、政府の保証なんていうものは、金融機関から見れば何らの権威に値しないものだということを裏書きしているものである。そんなばかな話を政府がそのままのみ込んで、これは非常にけっこうな答申であるなどと考えたとしたならば、私は政府というものはおかしいと思います。  それから次は安定補給金の問題だ。これは自民党の石炭対策委員会におきましても、また中小の小委員会におきましても、あるいは石炭鉱業審議会におきましても、最初は三百円ということをうたっておりました。われわれは公平にと言ったのでありますが、審議会委員と懇談した結果は、それを産地から港までの距離に比例してABCぐらいに分けて、中小大手も区別なく渡すということで、われわれは審議会の諸君との話し合いについても賛意を表したのであります。しかるにここに出てきたものはたった百円である。その理由を私は審議会にただした。そうすると、答えは、国民の税金でやることであるから、他産業とのバランスも考えなければならぬ、こういう返事でありました。私は、審議会というものは、政府から諮問されて、いわゆる石炭という、瀕死の患者を、審議会という医者がどうしたら健康にし、立ち直らせることができるかということだけを考えればいいのであって、言いかえればこの病人をなおすのにはどういう療法、どういう処方せんを書けばいいというだけのものであって、よその患者に遠慮したり、金が少し高いからといって削ったり、それで一体病人がなおりますか。それはわれわれ政治家国会並びに政府考えればいいことであって、そういうような右顧左べんをした、自分の権限以外のことまで頭の中で考えてやったという結果が、病人に対する正当なる治療もできず、正当なる処方せんも書けず、学者であるのか政治家であるのか、それとも諮問機関であるのかわけがわからないような不徹底な答申となってあらわれたと思います。したがいまして、先ほど申しましたように、政府がこの不徹底なる答申を最大のものとして尊重してやられるということになるならば、もう二、三年を出ずして石炭産業はまた今日と同じ状態になるということを申し上げておきたいのであります。  最後に、石油関税をもって特別会計をおつくりになったということはまことにけっこうです。しかし従来、特別会計もなく、あるいは石炭鉱業審議会も発生しておらない以前においても、産炭地の問題であるとかあるいは鉱害の問題は一般会計によってこれをまかなっておったのであります。しかるに、瀕死の重傷を負っておる石炭業界を立ち直らせるというための特別会計の中から、なぜ一般会計によって従来まかなっておったところのものまでもまかなわなければならないか、これは私は政治の筋としては非常に違う、こういうふうに考えておるものであります。  以上、私の質問でございますが、時間がありましたら、総理から順次御答弁を願いたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  まず、冒頭におきまして、たいへん見識のある、権威のある御意見を述べられた、国会こそこういう際にこういう重大なる経済問題、政治問題、それと取り組む場所じゃないか、こういうお話でございます。私もさように考えております。その見識、権威に対して心から敬意を表します。  次に、五千万トンの問題につきましていろいろお話がございましたが、五千万トンだろうが五千五百万トンだろうが、需要が確保されていなければ何にもならないじゃないか、こういうことであります。これは、もうそのとおりでありまして、私ども需要の確保、さらにまた需要の喚起等について一そう努力して、石炭産業一つ希望を持たすようにいたしたいものだと思っております。これは先ほど多賀谷君にお答えしたとおりであります。  また、一千億の肩がわりについていろいろの御意見が出ております。私は、この一千億の肩がわりは、政府自身が市中銀行に対しては五分の金利まで認める、こういうことをいっておりますが、御指摘になりましたように、市中銀行の金利は五分以上の七分あるいは八分、そういうようなものじゃないか。あるいはもっと高いものがあるかもしれません。しかし、いわゆるこれで損をするというような状況ではなくて、とにかく一応補給されるということで市中銀行もひとつがまんしていただきたい、これが政府考え方であります。ここは、やや政府、少しかってだ、こういうおしかりを受けましたが、これは実際どういうことになりますか、いまの答申そのものの案が五%というようなことをいっておりますが、ここが問題であろうと思いますので、十分関係方面と協議して、そうして無理のないような方法で処理したいと、かように思います。  また、中小大手との間に不公平があっては、これはならないと思います。特に篠田君は、中小炭鉱の専門部会のほうも担当された、こういうことで十分検討されたということであります。この石炭産業における中小炭鉱、これが果たしてきたいままでの役割りを考えますと、この石炭対策の場合に、中小企業に対して特に力を入れるべきだと、かように考えますので、篠田君がこれを担当されました際に、私も中小炭鉱について十分めんどうの見れるようなひとつくふうをしてください、こういうお願いをしたようにいま思い起こすのであります。したがいまして、この処置については十分成果をあげるようにいたしたいものだと思います。したがいまして、債務の肩がわりという場合には、大手筋に対するよりも中小企業の場合は、その条件の緩和等についてさらに政府はくふうすべきだと、かように考えますので、この機会に政府中小企業の債務の肩がわりでは条件をさらに緩和する、そういう方向で検討する、こういうことをお答えをいたしますから、一応御了承いただきたいと思います。  また安定補給金、これは百円——先ほど安定補給金金額が少ないというような御批判もありましたが、これはなかなか思い切った処置を実はとったのでありますけれども、この安定補給金中小炭鉱が実はその中心をなすものでありますし、大手の非常に弱い方面に対しても安定補給金効果をあげると思いますが、そういうものでございますので、なお中小炭鉱についての援護措置等については万全を期する、成果をあげるようにその他にもいろいろくふうしてまいるつもりでございます。  最後に特別会計についての御意見を述べられました。たいへん特別会計を設定したことについて、政府の勇断をほめられたのでございますが、同時にまた会計のあり方、これはただいまも、過去において一般財源でまかなっていた、そういうものがあるんだから、今後の会計の運営については十分注意しろという御注意でございます。これはありがたくその御忠告を承りまして、政府においても御期待に沿うように努力していくつもりでございます。
  42. 篠田弘作

    篠田委員 総理の御意見、大体満足いたしましたが、ただ一つ千億の肩がわりはしたけれども、担保を全然抜かないためにあとあとの金融ができにくい、いわゆる再生産がしにくいという点について、担保を抜くか抜かないか。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはお答えをいたさなくて失礼いたしましたが、その辺は行政当局、事務当局であっせんして融資に万全を期する、かように考えております。先ほど来申しましたように、産業自身が将来の見通しが立てば、これは必ず金融はつくのでありますが、なお行政的なあっせんの必要なことは申すまでもないことであります。失礼をいたしました。
  44. 野田武夫

    野田委員長 始関伊平君。  〔委員長退席、加藤(高)委員長代理着席〕
  45. 始関伊平

    始関委員 三木通産大臣に対して、若干の御質問をいたしたいと思います。  石炭の抜本対策というものを考えるにあたりまして、政府が諸般の政策を講ずることによって助かるものは助けていく、それからどうしてもだめなものについてはその閉山の処理が円滑にいくように従前同様の施策を講じていく、あるいはこれを強めていく、そういう考え方になることはやむを得ないと思うのでありますが、ただ問題は、鉱山の状況あるいはコストの点などから見まして、どの点までを助けていくかということが私は大事な点だろうと思うのでございます。この点につきましては、今回の答申はかなりきつい線が出ているように思うのでございますが、そういう事柄と関連をして、いわゆる生産目標というものがやかましく議論されるわけだと思うのでございます。五千万トンか五千二百万トンかということは、その程度ということで、精炭ベースでやるとどうだというふうなこともございますから、それほど議論することもないかと思いますが、要するに従前は五千五百万トンであったものが、そのまま政府が採用されるかどうかは存じませんが、今度は五千万トンになったんだ。将来需要の確保ができるのか、さらにこの生産目標がまた切り下げられるようなおそれがあるのではないかというふうな感じがあるといたしますと、これは石炭関係労使双方その他に非常な悪影響があるわけでございますが、いま千万トンにも及ぶ貯炭があるという状況等考えまして、五千万トンなり五千二百万トンなり、その点は私はたいした違いはないと思いますが、この需要というものはあくまで確保できるのか、したがってこの目標というものは将来さらに切り下げられる懸念というものはないのかという点、それらの点と関連をいたしまして、先般のこの委員会の決議にあるのでございますが、電発火力発電をさらに三基程度増加したらどうかということを決議の中に入れてあるのでございますが、こういった点についての御所見を最初に伺いたいと存じます。
  46. 三木武夫

    ○三木国務大臣 五千万トン程度というこの程度には多少の弾力性があるわけですね。これは長期にわたって確保したい、この程度をまたさらに減らすということは考えていない。この程度のものはエネルギー源安定供給とかあるいは雇用、地域社会に与える影響等も勘案して確保することが必要であるということで、これをさらに引き下げていくということは当面考えてはいないわけでございます。  それから閉山などは、これは全体として赤字を消そうというわけですから、その中で個別的にいろいろきめこまかく今後やってみなければならぬわけであります。そういうことで今後これがどういう結果になるかということは、今後計画的に閉山していくのでないのですから、自発的なものですから——しかしわれわれとしても見通しを持っていきたいと考えております。
  47. 始関伊平

    始関委員 需要確保のために必要ならば電発火力をさらに追加する用意があるかどうかという点も、重大な点ですからちょっと御答弁願います。
  48. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは、今度も二基追加をして、今年度から着工のできるようにしたいと考えております。やはりどうしても需要確保のためには、電発石炭火力というものは相当長期需要確保一つの基礎になるわけでありますから、これは実行に移してまいりたいと考えております。その将来のことについてもできるだけふやしていくという方向考えていきたい、当面は二基をふやすということでございます。
  49. 始関伊平

    始関委員 石炭対策におきまして、需要の確保ということが非常に重要であることはもう申し上げるまでもないのでございますが、今日北海道、九州などの産炭地でも、どうも重油のほうが割り安である、あるいは割り安になる傾向にあることはもう御承知のとおりでございます。そこで、一方エネルギーについては消費者が自分の好きなエネルギー、安いエネルギーを使っていい、消費者が自由に選択していいという原則があるわけでございますから、私は、需要の確保ということについては、石炭の価格と重油の価格との関係が非常に大きな問題になるのであって、もしこれをうっちゃっておきますと、たとえば前にはセメントは石炭の相当いいお得意さんであったのでありますが、大部分重油に転換をして、近い将来にはもうこの方面需要はゼロになる、こういう状況であることは明らかであると思うのでございます。でありますから、私は、需要確保というものについて石炭会社は幾ら、電力会社は幾ら、鉄鋼は幾らということはいいのですが、その背景になる考え方としてどういう考え方をとるか、簡単に言いますと、エネルギー源選択自由の原則というものをそのままにしておいたのではこのエネルギー対策というものは成り立たない、私はこう思うのであります。この点につきまして外国でもいろいろ苦心をしておりまして、いまでもやっていると思いますが、西独では重油に対して相当な消費税を取るというふうなことをいたしておりますのも、価格というものを考えないと、どの面に幾らを消費させるということを考えましても、結局絵にかいたもちになるということを意味していると思います。この点、政府あるいは石炭鉱業審議会では、政策需要というようなことばを使っておるわけですが、この政策需要という意味はどうもはっきりしない。これは結局、私の前からの持論ですが、安い消費目的——使用価値は同じで、しかしコストは違う。たとえば重油と石炭ですね、こういうものはどこかでプール計算するようなシステムがないとうまくいかない。これが私の持論なんですが、それについて、日本では最大の石炭の消費者として考えておられる電力業者というものが、そういう役割りを果たすのに最も適当な立場におるし、現在果たしておるじゃないか。料金計算の場合には、石炭は高く、重油は安いものとして燃料費を計算して、それを基礎に電力料金が決定されておるわけでございます。のみならず、電力産業というのは地域独占を認められた特殊な立場にあるわけですから、私は、電力産業に対しては選択自由の原則というものは認める必要がないのではないかと思うのでございまして、いまでは石炭の価格と重油の価格とは、競争させないと申しますか比較しないということを申しておりますけれども、一方において需要増に伴う、引き取り増に伴う負担増対策というふうなものも言うておる。これは長い間の経緯があるそうですから、きょう、ここで大臣の御答弁を求めようとは思いませんが、石炭の消費が伸びますね、それと、消費割合であるいはそれ以上に重油の消費割合がふえるなら、負担増という観念は出てこないだろうと思うのです。  まあ、その点はよろしゅうございますが、要するに政府が電力会社等に対して引き取りを要請する場合に、ただ頼むとか懇請するということであるのか、あるいはもっと取れ、価格のことは文句言うなというふうな、そういう指導といいますか監督の立場から要請できるということであるのか。実はこの間のこの委員会の決議の中には、いま私が申し上げたような立場が取り入れられておるのでございますが、この点もきわめて重要な問題だと思いますので、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  50. 三木武夫

    ○三木国務大臣 エネルギーに対しては、いま始関さんも言われておるように原則があると思うのです。安定供給、あるいは低廉である、あるいは国民経済全体との調和をはかる、こういうような一つの原則の上に立って考えざるを得ない。そうなってきたらコスト主義ばかりではいけない。五千万トン程度石炭というのはかなり長期にわたって確保していきたい。そうなってくると需要が問題になってくるのですが、これは消費者の自由選択という面は当然にあるわけですから、政策需要と申しますか。石炭とか鉄綱とかガスとか、大口需要でもあるし公共性も相当持っておるこういうものに対しては、政策的な需要としてなるべくある程度石炭需要を確保してもらう。それ以外は大体自由の原則によってやることよりほかにはない。その場合に、電力等に対しては法的な根拠はありませんから、まあどういうことばが適当ですか、指導的要請、ただお願いしますという上にちょっと行政指導的なニュアンスを加えたものでこの石炭需要を確保していきたいという考えでございます。
  51. 始関伊平

    始関委員 まあその程度でひとつ先へ進みますが、先ほどもお話が出たのですけれども石炭政策の中にはプロパーのと申しますか、固有の石炭政策、これはスクラップ・アンド・ビルドを進めるとか、石炭企業の経理の安定をはかるとか、そういう固有の石炭政策というべきものがございますが、そのほかに鉱害処理や産炭地振興、その他石炭の不況ということから起こる市町村財政の問題だとか、あるいは学校の問題、文教対策の問題、そういったふうに今日石炭政策というものを広義にいいますと、その中に入ってくるものが非常に多いわけでございます。  そこで私が伺いたいのは、私は今度の特別会計から支出すべきものとしては、何といっても石炭産業の再建ということが一番根本問題なんだから、プロパーな意味石炭政策に優先的といいますか、重点を置いて経費を支出すべきではなかろうかと思います。もちろんそれ以外のものも別個の観点から重要であるのでございますが、これは広義の石炭政策に属するからということで、あまり豊かでない石炭特別会計から奪い合いをするということでは、あっちもこっちも不十分になると思うのでございます。したがいまして、きょうここで具体的に私はお返事をいただこうとは思いませんが、たとえば産炭地振興の中の主要な部分あるいは発電火力設置の出資金、その他いろいろあろうかと思いますが、こういったようなものはこの特別会計以外のところから出すようにすることが当然でもあるし、適当なのではなかろうかと思いますが、きわめて抽象的でけっこうでございますが、お答えをいただきたいと思います。
  52. 三木武夫

    ○三木国務大臣 重油といいますか、原油の輸入は年々ふえてくるわけですから、この特別会計の財源というものも将来先になればゆとりが出てくるわけであります。しかし、ここ当分は言われるように相当窮屈でありますので、こういう点は予算編成の場合に十分に検討をいたしたいと考えております。
  53. 始関伊平

    始関委員 新聞などの今回の答申に対する解説のようなものを見ますと、あれだけの対策を講ずれば、あとは今度の答申では民間の市中銀行からのコマーシャルベースによる融資を主体にして金融の疎通ができるだろう、また、そのために政府も世話しろというふうな趣旨のことが書いてあると思うのでございますが、今回の抜本対策というものが一応軌道に乗った場合には、コマーシャルベースによる金融の疎通というものはつくお見通しでございますかどうか、それを伺いたい。  もう一つ、これに関連いたしまして、今回のいわゆる抜本対策では、現在の時点においては借金の重圧からのがれられるということでありますけれども、将来はさらに借り入れ金がふえますから、その利子負担も出てまいります。それから何のかんのといっても終閉山に伴う経理上の圧迫も出てまいります。そういう新しい要素があるわけですが、要するにそういう経理上に圧迫を加える要素に対しては、これからビルド政策とスクラップ政策を進めることによって、これに対処していこうというのが答申の趣旨だろうと思うのでございます。つまり簡単に申しますと、今後といえども、やり方によってはさらにコスト引き下げの余地があるということが石炭鉱業審議会の私は一つの判断だろうと思いますけれども、先ほど大臣がお述べになりましたように、現在の価格というものは据え輝くのだ、これが窮屈であることは、百円という額でございますけれども安定補給金というものを出さねばいかぬということによってもわかると思いますし、今日では出炭能力というものも相当高まっておるということからいたしますと、私の前段の解釈が間違っておれば別ですけれども、過去の負担による重圧は一応取り除いたが、今後もさらに新しく借金をする、あるいは終閉山に伴う国の負担、そういうものを合理化、近代化を進めることによってのプラス面というか、コストの低下面で補っていこうという趣旨のものであると思いますが、そうだとすれば、それが可能であるというお見通しでありますのか、ひとつこの二点をお伺いいたしたい。
  54. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この答申に盛られてあるのはきわめて抜本的な対策——私企業として石炭鉱業を維持していくとするならば、これ以上の抜本策はちょっと考えられないくらいの抜本策だと私は思っておるのでございます。これを基礎にしながら、政府政府の最終的な態度をきめて、政府もこの答申の線に沿うて、大体昭和四十五年にはいい山には黒字が出てくるような状態になると考えておるわけでございます。しかしその間の金融面、これはやはり大事な点で、金融機関との間に懇談会のようなものを設けて、金融の円滑化というものに相当努力をする必要がある、それから合理化によりコスト面を下げていく必要もございます。しかし、これによってまた数年のうちにこの答申の骨子、これに政府が肉づけをするわけですから、そういうことで、これは十分に石炭の立て直り対策になり得るもの、また不足な点はこれに補って、根本的に立て直りのできるような政府案にせなければならぬ、とこう考えておるわけでございます。
  55. 始関伊平

    始関委員 どうも私の質問の核心にちょっと触れないような感じがいたしますけれども、大体了承いたしまして、もう一点だけ伺いたいと思います。  今回の石炭鉱業審議会答申の根本の着眼は、石炭対策に必要な財源を原重油の関税に求める、つまり石油に求める。それから需要の大本を鉄鋼並びに電力に求めるということでございまして、これはエネルギーの問題はエネルギーの中の問題として、つまり各種エネルギー相互の関係調整の中で処理していこうということであると思うのでございまして、私どもの平素の主張にも合っておりますし、きわめて適切で、政府の負担も大きいということにおいてのみならず、そういうところに着眼されて出てきたという意味においても画期的なものと思うのでございまして、私は、総合エネルギー対策というのは、こういったように石炭と電力と石油と、この三者の間に大きな意味での価格のプールが行なわれるというふうなことが非常に大事な要点であって、それが今日まで見落とされておったと思うのでございますが、この点は一歩前進としてたいへんけっこうなことだと思っております。  それでこういう線で石炭対策もいわゆる総合エネルギー政策的な立場で今後進められると思うのでございますが、これに関連をいたしまして、どうも石炭局と鉱山局と公益事業局とばらばらであるということは、いま申し上げましたように、需要供給の関係、つまり数量をどうするという関係のみならず、価格の方面でもプール的な関係を進めていこうという密着不離の立場において政策を進めていこうというわけですから、これらのエネルギーに関する政策担当の部局を一緒にして、たとえば動力庁というような構想でやるべき必要があるのではないか。さらに、今日国内エネルギーの供給の比率がだんだん下がっていくというのですが、原子力発電というものは、ウラン鉱あるいは濃縮ウランをかりに海外から求めましても、これは国内での貯蔵がきわめて容易であるという意味で、石油に比すべきものではなくて、むしろ石炭に比すべきものだと思うのでございまして、安定供給源としては、私は国内産の石炭と同じような意味を持つと思うのでございます。そういった意味を含めてできるだけすみやかに原子力発電の行政もまとめて、そして一カ所で担当するということが望ましいと思うのでございますが、この点もあわせて御所見を伺っておきたいと思います。
  56. 三木武夫

    ○三木国務大臣 各部局においては緊密に連絡して、公益事業局、鉱山局、石炭局、しょっちゅう連絡をとってやっておりますが、こういうエネルギー問題の重要性にかんがみて、総合行政というものの必要は私も認めるわけでございます。これは将来の課題として検討いたしたいと思っております。
  57. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      ————◇—————    午後二時十六分開議
  58. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭対策基本施策について質疑を続行いたします。八木昇君。
  59. 八木昇

    ○八木(昇)委員 私は、おもに炭鉱に働く労働者の問題を中心に若干この際質疑をいたしたいと思うのでございます。  午前中の質疑でも出ておりましたが、ここ数年の間に、中間答申をも含めますというと、四回にもわたって石炭鉱業問題について答申がなされるというような事態というものは、ほんとうに私どもとしてきわめて遺憾に思うのでございます。たびたびの答申、それを受けての政府施策にもかかわらず、一向に石炭鉱業の安定の見通しが立たないという状態でございますが、特に一番最初の第一次答申ですが、これが結果で明らかなように、大きな失敗となった。その第一次答申の失敗の根本的な理由を、一体どういうふうに考えたらいいかということでございますが、一つは重油の価格と合わ迂る意味において、トン当たり千二百円の引き下げをやった。このことが予想以上に、さらに重油が大幅に植下がりをしたということで、たいへんな誤算をしていたということが一つの大きな理由であることは明らかでございますが、もう一つの大きな理由は、物価高と労働者の労働条件、これについての認識が甘過ぎたのではないか。この二つが大きな第一次答申の根本的な誤りではないかというふうに考えておるわけでございます。そこら辺の点について、労働大臣としてはどういう認識をしておられるか。結局、どういう石炭対策を立てるにしましても、労働問題ということについて抜本策がない限りにおいては、その政策は必ず失敗するというふうに私は認識をしておるのですが、そこら辺についての労働大臣の御見解をまず承りたいと思います。
  60. 小平久雄

    ○小平国務大臣 石炭鉱業の再建と申しますか、建て直しに関して、労働問題がきわめて重要であるということは御説のとおりだと思います。労働省の立場から申しますならば、第一回の答申以来相当数の閉山等があって、その縮小に対しては、御承知のように諸種の対策を行ないまして今日に至っておるわけでございますが、一方におきましては、また炭鉱労働者を確保するということが非常に重要な問題であります。最近においては、特に若い人が炭鉱にはなかなか就職したがらない、労働者の平均年齢も逐次上がってまいっておる、こういうことが非常に問題になってまいっておる、こういう実情でございますので、若い労働者の諸君が進んで炭鉱にも職を求めることができるような石炭業界にしていただくということが一番私は望ましい。そうでないと、いかにこれは進みましても、現在の就職というものが、もちろん強制力を伴うものではございませんから、本人の希望を相当程度満たすという労働環境、労働条件、こういうものが整うということが、何と申しましても第一前提ですから、そういうことができるような業界にぜひなってほしい、こういうことをわれわれは希望をいたしておるわけでございます。
  61. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そこで、炭鉱労働者の労働条件が非常に劣悪であるということは認識をしておられるところだと思うのでございますが、すべての産業について石炭労働者の賃金との比較を御説明願うのはなにでございますが、主としてエネルギー産業、たとえば電力、石油、それから重要産業で、たとえば鉄鋼とか、私鉄とかあるいは造船、こういったふうなところの賃金と、それから坑内外夫を含めての炭鉱労働者の賃金との比較、最近五年間分ぐらいについて大体どういうことになっておりましょうか。特にそれらの産業の最近数年間のベースアップの状況、これと炭鉱労働者のベースアップの状況、どういうふうにつかんでおられるでしょうか、簡単でけっこうでございます。
  62. 小平久雄

    ○小平国務大臣 大体の傾向から申しますと、炭鉱労働者の賃金の水準というものは、基幹産業の中にあって以前は大体トップクラスでありましたが、今日では比較的に低い水準になってまいっておる。したがって、毎年のベースアップの率等も比較的低い、こういう傾向に相なっておりますが、詳細につきましては基準局長から御説明申し上げます。
  63. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 三十三年当時の石炭鉱業と他産業との賃金の比較を見ますと、石炭鉱業が二万四千五百三十五円といった平均に相なっておりまして、これをこえる産業としては、鉄鋼業二万九千五百二十二円といったものでございまして、大かたは石炭鉱業より低かったという情勢にございましたが、先生御指摘のように、石炭産業における賃金の上昇は他の産業に比べて鈍化してまいりまして、石炭鉱業に一番類似する労働の態様として考えられます金属工業を見ましても、昭和三十三年当時におきましては二万二千三百二十一円というふうに石炭より低うございましたが、昭和四十年の平均を見ますと、石炭鉱業の四万一千二百二十四円に対しまして、金属工業は四万六千百七十一円というふうに、金属工業のほうが石炭鉱業を上回った、こういうような姿になっております。なお、鉄鋼業についてのお話もございましたが、鉄鋼業は、昭和四十年について見ますと、四万九千二百八十一円と、石炭鉱業の賃金をかなり引き離しておる、こういう姿に相なっております。
  64. 八木昇

    ○八木(昇)委員 いまのものは基準外労働賃金、時間外労働賃金や何かを含めての実際収入の総額ではないかというふうに感じるのですが、基準賃金という点でいきますと、これは断然問題にならないほど格差が開いておる、こういうふうに考えるのです。たとえば通産省調べによりますと、坑内外の全国平均は石炭産業労働者の場合、現在二万四、五千円ぐらいにしかなっていないのではないかと思うのですが、大体そうでしょうか。
  65. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 毎月勤労統計調査によりまして、規模三十人以上のものについて調べたものを見ますと、四十年平均で石炭鉱業の男子坑内夫についてきまって支給する給与という類別から見ますと、坑内は三万五千四百二円、こういう数字になっておりまして、ことばでいわゆる基本給というものに該当いたしますかどうか、これは問題はございますけれども、特別に支払われるような臨時のものとか、そういうものを除きまして、きまって支給されるという給与の面から見ましても、先ほど申しました平均数字よりはかなり低いということに相なっております。
  66. 八木昇

    ○八木(昇)委員 ただいま局長から答弁がありましたように、石炭労働者の労働条件というものは、最近数年の間に非常な低下を来たしておるわけでございます。ところで、今後の炭鉱労働者の賃金のあるべき姿を一体労働大臣としてはどういうふうにお考えになっておられるか。たとえば今度の鉱業審議会答申考え方によりますと、七%程度の年平均のベースアップを予想し、さらに管理方式炭鉱については三%程度のベースアップを予想する。その上に立って今度の答申がなされておるというふうに仄聞をするのですが、一体そういうことで炭鉱労働者が今後とも企業にとどまり得るというふうにお考えであるかどうか、もしそう考えておられないとすれば、一体どういうお考えであるのか、そして労働省としてどういう策があるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  67. 小平久雄

    ○小平国務大臣 先ほども炭鉱労働者の賃金等について望ましい姿というものを申し上げたわけでございますが、元来、言うまでもなく賃金は、その業界の実情なりあるいは個々企業の力なり、そういうものにどうしても支配せられざるを得ない、こういう面があるわけでございますが、炭鉱の場合には、その労働の環境なり、特に地下労働といったような特殊な労働環境にあるわけでございますし、また労働の量から考えましても、相当多いというか重いというかそういう性質の労働である。かように考えますので、私は、先ほど申し上げますとおり、このような炭鉱労働の性質に合った適正なる賃金が支払われるような体質に業界なり企業なりがなってもらうということを心から望んでおるわけでございます。しかしながら、今日の状況は、先ほど来お話のありますように、私は、他の基幹産業などと比べて、炭鉱労働者の賃金というものは必ずしも満足すべき状態にはない、むしろ相当改善されてしかるべきものだ、かように思っております。  いま労働省の考えなり施策なりと、こういう御質問でございますが、これはいまも申しますとおり、労働省が直接賃金を幾ら、こうきめる権限があるわけでもございません。したがいまして、労働省としては、もっぱら産業政策として炭鉱がそれにふさわしい賃金を払えるような姿になってくださることを希望し、また、われわれのほうで通産当局等にそういった面も十分考慮して施策をやっていただくことをお願いする、こういう立場にあると思うわけであります。
  68. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それは御答弁のように、労働省が直接賃金をきめる権限があるわけでもありませんし、それはわかるのでございますけれども、ただ、今回の鉱業審議会答申の中に、国の指導監督体制の強化ということがうたわれておるわけです。国が一千億円からの肩がわり資金を出したりなどするということになった以上は、これの見返りとして相当の指導監督体制の強化の必要がある、こういう考え方のようでございますが、この考え方それ自体を少なくとも否定はいたしませんが、労働賃金に関する限りは、少なくとも他の重要産業の平均のベースアップ程度ぐらいのベースアップ率は保障さるべきものである。すでに重要産業の中で石炭産業の賃金がほとんど最低位に位しておるという状況から考えますと、少なくとも他の重要産業のベースアップの平均ぐらいの割合というものは石炭鉱業においてもべースアップをしなければ、もうこの面から石炭対策はくずれてしまう。これは火を見るより明らかだと私ども考える。そうしますと、過去六カ年間の重要産業の平均ベースアップ率は一〇・八%になっておる。ところが炭鉱の場合は、大手でも大体六%ないし七%というところでございます。こうなりますと、これが今後数年間も続くということだというと問題にならないと思う。そこで、もっと具体的に他の重要産業のベースアップ率ぐらいは炭鉱労働者もベースアップをすべきものであるというふうに考えられるかどうか。そして国の指導監督というものは、少なくともそういう常識的になるほどと思える程度の労働条件については干渉がましいことをやるべきでない、こういうふうにお考えになるかどうか。これは労働大臣からお答えを願い、さらに通産大臣からも御見解を承りたいと思っております。
  69. 小平久雄

    ○小平国務大臣 炭鉱労働者のベースアップの率が他の基幹産業の少なくとも平均のベースアップ率ぐらいになるべきではないか、こういう御質問と思いますが、私も、先ほど来申しますように、炭鉱労働、特にその坑内労働の質なり量なりということを考えますならば、少なくともいま先生のお示しの程度のベースアップと申しますか、要するに賃上げというものが望ましい、そう考えます。そうしていただかないと、いかに労働者を確保すべきだ、こういう御主張がありましても、実際問題としてこれは至難のわざにならざるを得ない。したがって、先生お示しの程度の、少なくとも他産業並みの賃金の上昇ということは、私は望ましいことである、かように考えております。  なお、監督指導の点ですが、賃金それ自体についての監督指導ということは、ただいまのたてまえ、すなわち、賃金が原則として労使間の交渉によってきまるべきものである、こういうたてまえからいいますならば、賃金それ自体について労働省が指導するとか監督するとかいうことはできない、また、すべき性格のものでもなかろうと思います。しかし、労働環境をよくする、あるいは労働条件をよくする、こういう点、たとえば労働時間等については、御承知のとおり坑内夫については一日二時間以上の時間外労働は禁ぜられておるところです。しかるに、実態から見ると、これが相当制限を越した労働等も従来あった。こういうものを極力指導監督して、制限内でやるように今日までも進めてまいっておりますが、そういうことによって、つまり、労働条件の改善のために指導監督を行なうということは、十分今後も努力をいたしていくつもりでおるわけであります。
  70. 八木昇

    ○八木(昇)委員 通産大臣にいまの点をお答えいただきたいと思いますが、その前にちょっと申し上げておきたいと思うのです。御承知のように、昨年来西ドイツにおきましても石炭危機が非常に鋭く表面化しておりまして、ベルギーにおきましても、これはたいへんな大騒動が起こっておる。それで、大きな炭鉱がつぶれたことを契機といたしまして、石炭労働者の大闘争が起こる。一方、日本とよく似ておりまして、医療制度というのが非常に問題になって、今度は炭鉱労働者の立ち上がりに符節を合わせて医者が一斉蜂起をするというようなことで、内閣が倒れるというような騒ぎにまでなっておるわけです。そこで、ベルギーはさておきまして、西ドイツにおきましても、ことしの国会で非常に石炭問題がやかましく論議をされたということを聞いております。このパンフレットは中小炭鉱の方々が出されたものでございますが、これによりましても、昨年、一連の石炭保護政策が行なわれまして、石油の自主規制、石炭発電所建設に対する優遇措置等が行なわれたが、それでも事態が解決しないということで、今度の国会では、さらに石炭対策というものが非常な論議をされまして、そうして経済大臣から、さらに数々の提案が国会になされて通過成立をしておるということは御承知だと思いますが、その内容は大体七項目に分かれておる。これに書いてございますが、その七項目の冒頭第一項に、炭鉱労働者の社会保障措置の改善ということがトップになっておるわけです。ですから、やはりこの点、炭鉱政策というものは、特に労働力を非常に豊富に必要とするものであるがゆえに、炭鉱政策の第一条件として労働者の問題ということが西ドイツでは大きくうたわれておるわけなんです。そういう認識をやはり通産大臣としてもお持ちいただかなければならぬのじゃないか、こういうふうに思っております。  それから第二の点は、この国会での論議を通じて、西ドイツの経済大臣の答弁の中で非常に注目すべき点がある。それは、連邦政府は、このエネルギー構造の変化を炭鉱労働者、従業員の負担によって、この事態の切り抜けを行なうというようなことは絶対によろしくない、こういうき然たる態度を示しておるわけでございます。こういう点からもあわせ考えて、先ほどの労働大臣の御答弁のあの問題についての御答弁をいただきたいと思います。  なお、このドイツの経済大臣の答弁の中に、さらにもう一つ言っておりますことは、政府石炭鉱業に対して援助は与えるけれども企業や組合の権限には絶対に介入しません。これはもう信頼します、こういう実にりっぱな態度をとっておられるのであります。日本で、この西ドイツほどりっぱにいけるのかどうか。特に過去における石炭企業における経営者側の態度が必ずしも社会的責任を十分自覚した行ないばかりをやっておりませんから、日本でこんなにりっぱにいくとは思いませんけれども、しかし、やはり基本的にはこういう姿勢があってしかるべきだと思いますので、これらもからめてひとつ御答弁いただきたい。
  71. 三木武夫

    ○三木国務大臣 炭鉱労働者の労働賃金が他の基幹産業に比べて低い水準にあることは御指摘のとおりですが、このためにはやはり経営を改善することが必要である。炭鉱の経営を改善しないと、労働賃金をそういうものと無関係に他産業並みというわけにはいかない。今度の抜本策も石炭産業の経営を改善したいということから出発しておるわけであります。この改善と相まって労働賃金の水準は考えていかなければならぬ問題だと思います。  それから西独、特に西独に限らず、イギリスも最近の石炭白書というものはやはり非常な大改革をまたやろうとしておるわけで、どこでも政府として石炭政策というものは非常な悩みの種になっておるわけです。そのためには、御指摘のように、経営者というお話でしたが、労働者も同じである。これはやはり経営者だけが悪くて労働者がよかったというわけではない、労使ともに社会的責任に対する自覚というものは同じでなければならぬ。どうしても今後は、政府といっても全部これは国営という形式でありませんし、私企業という経営形態を残しながらできるだけのことを国家がやろうというのですから、これだけの——これは私企業としての限界にきておるような対策をこれから講じようとするのですから、経営者も労働者もこれに呼応して、社会的な責任というものを強く自覚してもらって、やはりこういうどこでもむずかしい問題ですから、政府だけの力でどうというのはできるわけじゃないし、むしろ労使——民間が主体になって、政府がやはりこれに対してどうしても財政的な援助などをしなければならぬですから、政府自体もそういう財政的な面などにおいてできるだけのことをするというのがたてまえである。それについて炭鉱労働者に対する社会保障の面というものは、これはやはり拡充していかなければならぬ。特別年金制度ども、ぜひこれは——関係の三大臣ここにそろっていますから、これを実施したいと考えておるわけであります。そういう点は私も同様に考えております。
  72. 八木昇

    ○八木(昇)委員 賃金問題につきましてはその程度にいたしまして、それでもいまの石炭鉱業が私企業としてやっておる以上は、資本主義のワク内でございますから、私どもがこう申しましても、なかなかそう理想的に炭鉱労働者の賃金が確保をされがたいであろうということは、われわれだって多少は認識しておるわけであります。そうなりますというと、それにもかかわらず炭鉱労働者を確保しなければなりませんし、特に新しい労働力というものを今後も導入しなければならぬということになれば、いわゆる炭鉱特別年金というような制度が単なる間に合わせ的なものでなくて、ほんとうに炭鉱労働者のためになるようなものとしてこれが確立されなければならないということを痛切に感じるわけです。そこで、こまかくは申しませんが、この炭鉱特別年金は来年の通常国会には提案をするということになっておりますので、現在のところどういう基本的な構想を持っておられるか、ひとつ厚生大臣から御答弁願います。
  73. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 石炭鉱業で働いておられる労務者の方、特に坑内夫の労働条件が特殊な事情にございますために、その雇用の安定、特に若い労働力の確保、こういうような面から厚生年金制度の中におきましても、他の産業に従事する労働者に比べまして特別な優遇措置を講じておりますことは、八木さんすでに御承知のとおりでございます。しかし、これだけをもってしてはなお不十分である、こういうような観点から、先年来この厚生年金のほかにあるいは上積みといいますか、プラスアルファの制度として特別年金制度というものが要望され、また政府におきましても、通産、労働、厚生、大蔵等で検討を進めてまいったのであります。今回の答申におきましては、これが小委員会を設けていろいろ検討をされました結果の結論として、答申にこの点が明らかに提起されておるわけであります。したがいまして、政府といたしましては、この答申を尊重をいたしまして、次の通常国会を目途に、関係各省間でこの小委員会の御意見及び労使の御要望等を十分聞きながら、勘案しながら、この特別年金制度というものを確立をしていきたい、このように考えておるわけであります。その基本的な考え方はどうか、こういうことでございますが、それは答申にもございますように、事業主の負担によりまして、坑内夫に対しまして厚生年金のほかに特別な老後の生活の保障をさらに厚くするための制度、そういう方向で私ども内容を固めていきたい。そこで政府といたしましては、この制度がうまくできまするために、確立いたしますために、必要に応じて強制加入の制度あるいは給付の保障、そういう面を法制的、制度的に確立をするというようなことも実は考えておる次第であります。給付の内容を、水準をどうするかというような問題につきましては、今後審議会の御意見や、あるいはまた労使の御要望、御意見等を十分聞きながら適正にこれをきめていきたい、このように考えております。
  74. 八木昇

    ○八木(昇)委員 炭鉱特別年金につきましては、具体的な内容になりますと幾つかの問題がありますので、時間の関係もあり、詳しくお尋ねすることができないのでございますけれども、ただ、三つくらいの問題にしぼってお聞きしたいと思う。  坑内夫だけに限るということでは、ほんとうはこれは効果が半減すると実は思うのです。それだけではこの炭鉱の労働問題の片はつかない。なぜかといいますと、いま炭鉱の将来そのものについて非常な不安感があるということが炭鉱労働問題の一つの大きな根源ですね。それから坑内、坑外を問わず、また鉱員たると職員たるとを問わず、労働条件が非常に悪いということ、これがまたいまの炭鉱労働者の足がとまらない、のみならず、とうてい新しくこれに入ってこようとする人がいないというやはり根源ですね。滝井博士ではないけれども、病気の根源がわかっておるのに、その根源に対する対症療法をせずに、何かまわりのほうをやりましても、その意義が半減というよりは、極論すればほとんど失われる、こういうふうに考えるわけです。そこで、やはりこの給付の内容とかその他についてはいろいろ御検討をいただくにしても、これを坑内夫のみに限るということについては、どうかすると、そんな年金なら炭鉱労働者は返上いたしますと言いかねません。そして、しかもへたをすると、その年金の掛け金は資本家に全部負わせるものであるがゆえに、今度は資本家側のほうがそれを理由にして、退職金制度とこれを相殺するという傾向が出てくるおそれもあるわけで、そういうこととかね合ってきますると、ほとんど意義が失われる、私はそう考えています。その点厚生大臣一体どう認識しておられますか。
  75. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 炭鉱で働きます坑内夫の労働事七 これは労働力の消耗度も非常にきつい、非常に特殊な坑内の作業でありますために、厚生年金制度を検討いたしました際におきましても、坑内夫に限りまして特別な優遇措置を講じた。政府におきましても、補助金の率も一般に対しましては二〇%でありますものを二五%の補助率を適用しておる。それにもかかわらず、一般労働者のほうの負担の分野にまで食い込んでおるということが実情である、こう考えるわけであります。そういったような状況下でございますので、これを坑外の運搬の業務であるとか、あるいは電気工であるとか、雑役であるとか、そういうような一般の産業で働きます労働者と同じような仕事をやっております坑外の労務者にまでこれを広げるということになりますと、他産業に働く労働者との均衡の問題とこれは問題があるのではないか、こう思うわけでございます。私どもは、この石炭産業が今回の一千億の肩がわりの問題や、あるいは安定補助金等の措置、再建策の総合的な推進等によって、石炭産業が立ち直ってまいりまして、そうして坑外で働きます労働者は他産業労働者の待遇と同じような待遇が受けられるように、これが基本的な問題でありまして、そうなりますれば、私は、やはり石炭産業の坑内で働くという特殊な事情にあります坑内労務者だけについての特別な年金、こういうことでいいのではないか、こう考えるわけであります。坑外の労務者にこれを広げますと、さらに事務系統の職員にもこれを広げにゃいかぬということになるわけでありますので、私は、その際の一つ考え方といたしましては、坑内夫だけは切り離しまして、石炭鉱業で働きます坑外の労務者あるいは事務系統の職員、そういうもの全体をもちまして厚生年金の上積みの制度でありますところの調整年金の制度、そういうものを活用されてやることも一案ではなかろうか、このように考えておる次第であります。
  76. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これにつきましては、やはりこれは相当今後とも問題になると思いますので、まあきょうはその程度にいたします。政府としてもいろいろな点をくふうされて、炭鉱労働者の納得のいくような方策というものをひとつ御研究願いたいと思う。  そこで第二は、この特別年金の給付の種別といいますか、これについてお伺いしたいと思うのですが、老齢年金だけを考えておられるのでしょうか。といいますのは、私はやはり傷害を受けた場合、あるいはなくなられた遺族に対する問題の場合、それから炭鉱の坑内夫の場合は、若いうちはいいけれども、年とってから坑内に入れないというからだの状態の人は、年とってからは坑外に出るということになる。また坑内におきましてもいろいろな配置転換という問題が起こります。こういうような問題をもひっくるめてこの給付の対象にすべきだ、老齢年金以外は、もうほかの厚生年金やあるいは労災保険の一般の適用と同じだということでは、やはりこれはいかぬと私は思います。というのは、炭鉱の場合には、私が申し上げるまでもないのですが、これはたいへんな近ごろの災害の発生状態であります。でございますから、もともとその災害の状態をおそれて初めから炭鉱へ行こうとしないわけなんでしょう。ですから、やはり同じ災害であっても炭鉱の場合には特に優遇をされている、こういう状態がないと、これはだめだ。私あたりは電力会社につとめておったのですけれども、昔は電気屋というと非常に危険な職業だった。しかし、今日では電柱登りをする電工さんになることの希望者は、これはたいへん多いのです。そんなに危険だとは思っていない。しかし、炭鉱に行こうとはしないでしょう。父兄も絶対にやろうとしない。しかもこの災害の原因が、たとえば電気で労働者が感電死亡するという場合の、十の事故のうち大体八つくらいは、遺憾ながらこれは労働者側の自己責任です。ですけれども炭鉱の場合には何ら労働者に責任がない。場合によっては全く不可抗力の爆発事故やその他で死亡するというのが大部分なんですね。そういう危険をおかしてあえて炭鉱へ就職していこうという、そういう立場の人のことを考えれば、これは給付の種別についても考えなければならぬ。これは当然のことだと思いますが、その点どうでしょうか。
  77. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 給付の種別の問題についてでありますが、今回の答申におきましても、老齢年金の給付という点に中心があるわけでございまして、私どもこの厚生年金の制度の中における坑内夫の優遇措置だけでは不十分である、その上に老後の生活の保障をもっと手厚くすることによって長期安定雇用を確保しよう、こういう趣旨の答申である、こういうぐあいに理解をいたしております。いま八木さんから御指摘になりましたような、傷害でありますとか、あるいは事故等によるところの死亡というような問題につきましては、やはりこれは労災保険の制度の中で石炭産業の労務者の実情に合うように、そういう制度のほうで検討すべき問題ではなかろうか。また、配置転換等によりますところの坑内から坑外に出るというような問題につきましては、これは離職者対策というような考え方でこれに対するところの措置を講ずべきものだ、このように考えておるわけであります。
  78. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それじゃあと二、三点だけ一括して質問いたします。  やはり一番問題は、これからその炭鉱に今後十何年間つとめた人が年金をもらうということでは、これは問題にならぬわけですね。もう十何年先、一体どうなっているか、ほんとうに心もとないいまの石炭鉱業状態です。そこで少なくとも現在炭鉱に働いておる人は全部何とか適用の対象に実際してもらえるように。結局現在炭鉱におる人が、過去炭鉱につとめた期間というもの、それは企業を移っておっても、やはりこれを通算してこの給付をする。答申の中にもそういう趣旨がうたわれておりますが、これは絶対にそうしてもらわなければ、もうほんとうに無価値になってしまうと考えますので、その点についての御答弁をいただきたい。  それから、これはやはり厚生年金と合わせるという意味で、昭和十七年の一月までさかのぼるというくらいのところまで、思い切ってひとつ通算期間の遡及を考えてもらいたいと思うのですが、その点どうお考えであるか。  それから、ほんとうにわずかばかりの涙金の給付金額ではこれまた意味をなしませんから、一体この抗内夫の場合、たとえば十五年勤務したというような人の場合、幾ばくぐらいの給付金額をいまのところ構想しておられるか。  それからもう一つはやはりこの財源措置で、一切を使用者側負担ということにすることについては、これはいま石炭経営者ももう四苦八苦しておる状態でございますので、現在ある既得権である退職金にこれが影響してくる。今後有形無形にそういうおそれがありますので、これはやはり石炭政策の一環として、財源措置についても政府は相当特別の配慮を払うべきではないか、こういうふうに考えますが、これらを一括してひとつ端的にお答えいただきたい。
  79. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 特別年金制度に対する政府の直接的な助成を考えたらどうかという点につきましては、私は、石炭鉱業が雇用の安定と若い労働力の確保ということを特にこの年金制度によって実現しよう、こういうことでございますから、事業主の人たちがお互いに協力し合って、そして事業主の手によってそういう目的が達成されるようにすることが基本的に必要だ、こう考えるわけでありますが、ただ八木さんが御指摘のように、現在の石炭鉱業では企業がはたしてそれだけの力があるかどうかという点につきましては、私どもも十分認識をいたしておるわけでありまして、そのためにこそ今回一千億の負債の肩がわりでありますとか、あるいは再建対策の総合的な推進であるとか、安定補助金であるとか、そういうような政府がいろいろな助成の措置を講ずるわけでございますから、私は、この特別年金に対するところの事業主の負担ということも、直接ではないにしても、間接的にはやはり政府の協力によって、助成によってこの制度がはじめて実現できるもの、こう考えておるわけでありまして、政府は今回の答申をぜひ実現いたしますために、直接の援助は別としても、間接的にこれができますようにあらゆる協力をいたす考えでございます。  そこで給付水準をどうするかという問題は、いま申し上げたようなこと等とも関連をいたしまして給付水準がきまってくる、こういうことになるわけでありますが、この点につきましては、審議会の御意見やまた労使の御要望あるいは御意見等を十分私どもお聞きいたしまして、そうしてこれが形式的なものでなしに、厚生年金のプラスアルファとして、十分この制度を創設する目的が達成できますような給付水準が確保されるようにしたい、こう考えるわけでございます。  なお、在籍年限の通算等の問題につきましては、これは今後五年とか七年とがいうような、この特別年金制度に入っていただきますれば給付ができるように、決して十五年とか二十年とかというような、この基準に合致しなければこれを給付をしないというのではなしに、答申にもありますように、経過措置といたしまして、十分実情に合うように、御要望を聞きながらこれを措置してまいる、こういう考えでございます。
  80. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっと関連して厚生大臣に、時間の節約の意味から集中的にお尋ねいたしたいのですが、先ほど八木委員質問いたしました在職年限の通算の問題です。私は、これは非常に重要な問題だと思うのです。ILOで条約の中に、十八歳未満は坑内に入ってはならぬと書いてある。この条約をきめる場合に一番反対したのは英国の労働組合なんですよ。すなわち、英国の労働組合は、十八にもなったらとても坑内になんか入りっこない、だから後継者はできないぞ、だからこれは反対だ、こういった奇妙な経過があるわけですけれども、私は、いまの炭鉱労働者を何とかして継続的にその炭鉱に使う以外には手がないと思うのですよ。労働大臣、雇用構造は漸次変わってきておるわけです。若い労働者は非常に不足です。ですから機械とか電気とかいう特殊な技術の要るものはとにかく何とかして引っぱってこなければならぬけれども、大多数はいまおる炭鉱労働者をいかにして継続的に仕事をさすかということが問題です。そこで、過去の年限を通算をしなければ、いま残っておる炭鉱労働者には何も魅力はない。じゃ外部からくるかというと、それほど若い者は来ません。この特別年金がいかにいいものであっても、そのくらいの魅力では炭鉱の坑内に入らない。だから、少なくともいま炭鉱におって、それがある山が閉山をすれば、その労働者の多くの部分がまた他の炭鉱に行くというような状態でなければ、私は全体的な確保はできないと思う。  そこで、この特別年金の制度に対する答申の中にもあるのですが、これがきわめて微妙に書いてありますので、どちらに判断をしていいかわからないのですが、「現在すでに相当期間坑内労働に従事している者に対する経過措置および特殊な場合における資格年限の不足に対する救済措置について検討すべきであろう。」ということを書いております。ですから、少なくとも前段の経過措置は過去の在職年数を見るということだと思うのです。それは全部見るかどうかわかりませんが、見るということだと思う。すでに厚生年金の手帳に坑内夫として扱われておる期間が明白にあるわけですから、どこの企業に移ろうと、この計算はできるわけです。ですから、これをひとつぜひ考慮をしていただきたい。そうしなければこの年金は死んでしまう、こういうように考えるわけです。
  81. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 ただいま八木さんから、また重ねて多賀谷さんから御指摘になりました経過措置につきましては、私どもも十分考慮すべきものである、こういう考えでございまして、この答申の精神を十分尊重をいたしまして、また、労使並びに審議会の御意見等も十分聞きまして、そしてこの経過措置が適正に生かされるように十分努力をいたしたい、かように考えております。
  82. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そこで、先ほどの財源措置の問題ですが、やはりまだたくさん中小炭鉱もあるということは御承知のとおりで、それから、現在管理方式炭鉱になっておるけれども、年々非常な量の石炭を出炭しており、今後も何とかしてそれを続けていこうと努力をしておる大手筋の炭鉱もあるという実情で、特に石炭企業におきましては、企業によってアンバランスが相当ひどい実情でありますから、この点につきましてもひとつ十分御検討をいただきたいと考えます。  だんだん時間がまいりますから、あと一つ二つの問題についてお伺いをして終わりたいと思うのです。  これは労働大臣にお伺いいたしますが、今度の鉱業審議会答申、これをそっくりそのまま政府が実行するというのでは私どもは大いに不満だという考えを持っておりますが、それはさておくといたしまして、かりに鉱業審議会答申どおりに行なわれると仮定いたしますと、一体今後昭和四十五年度までの間にどの程度炭鉱閉山があって、そうして炭鉱離職者が出るというふうにお考えでございましょうか。
  83. 小平久雄

    ○小平国務大臣 その点につきましては、新聞紙上その他で、約三万人からの離職者が推測をされるという報道がございますが、これはまだ私のほうでさような推定をしたわけでもないのでありまして、ただ、いま先生からもお話しのとおり、答申はありましたが、これを政府がどう受けてやるかということはまた今後の問題だと思います。労働省としてもまだ正確に、この程度離職者が出るであろうという数字をはっきりはつかみ得ない状態である、こういうことでございます。
  84. 八木昇

    ○八木(昇)委員 同じ問題を、これは通産大臣にお伺いしたいと思うのですが、いまの鉱業審議会答申の線に政府がそのまま沿ったとして、今後昭和四十五年までの間にいかほどの炭鉱離職者が出る予想であるか。現在十万から十一万くらいの炭鉱労働者の数ではないかと思うのですが、一体今後どのくらいの離職者が出るのか。この答申によってそれぞれの炭鉱は、一体今後うちの炭鉱はどうしようかということを近い将来にやはり見きわめをつけると思うのです。しかもこの審議会答申によりますと、今後一定期間は特別に炭鉱をやめるところについては、買い上げ代金をプラスアルファして高く買ってやる閉山奨励という感じの答申部門もございます。そこで、いまから昭和四十五年までに向けて時期的におおよそ見通しを立てて、しかもトータルで一体どのくらいの離職者が出ると予想しておられるか、お伺いしたい。
  85. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この審議会答申の中には、むろんある程度離職者が出ることは計算に入れているものだと思うのですが、政府は最終的にこの答申の骨格は尊重したいと考えておる。これ以上のことはできないですから……。しかし、これに対して、最終的にはいろいろ各方面意見も聞いて政府の態度をきめたいと思っておりますので、そういう段階においては政府自身も見通しを持ちたい。いまのところでは、われわれまだどういう案でやるかという最終決定もいたしてないわけでありますから、見通しを持ってないのであります。政府が態度をきめるときには見通しを持ちたいと思います。
  86. 八木昇

    ○八木(昇)委員 まあ公式的にはそういう御答弁になろうかと思いますが、大体労働大臣が答弁をされましたように、やはり三万人くらいの離職者が出ることはまず不可避であろう、常識的にそう予想されるわけですね。そうなりますと、これはやはり従来閉山炭鉱で問題になっておりました未払い賃金退職金の確保の問題、これは今度はぴっしゃりした措置をどうしてもとってもらわなければならぬ、こういうふうに考えるのでございますが、現在までにつぶれました炭鉱労働者は、ほとんど退職金がもらえないで離職しているわけですね。長年つとめて、ほんとうに裸のままほうり出されるというところに最大の悲劇があるわけなんです。炭鉱労働者は、炭鉱というものの本質上、また資本主義である以上、もう炭がなくなり、しかも会社が成り立たぬというのならば、つぶれるのもある程度いたし方がないと考える場合も出ますけれども、しかし、一銭の退職金ももらえずにほうり出されるということは、どう考えても許されがたい問題である、こう考えますので、一体退職金問題についてどう対処されるつもりか。特に一つは、現在までのところでは、これは石炭局長でけっこうですが、二十万円まで退職金のもらえない者に限って政府が十万円の退職金を保障する、しかもこれは二十年炭鉱へ勤務した人の場合ですか、こういう措置があるだけだと考えておりますが、そうでしょうか。それから、今後そんなことで一体いいとお考えになっておるか。あとのほうはひとつ大臣からお答えいただきたいと思う。
  87. 三木武夫

    ○三木国務大臣 あとで局長から詳しくは申し上げますが、実際に退職金ももらえずに離職していくこと、これは非常にお気の毒なことだ。そういうことで、これから閉山交付金、これも単価を上げよということでございますが、優先して退職金に引き当てられるように使用し、大手に対しては退職金のための融資も考えていきたい。なるべくそういう事態のないように、今後は改善をしていきたいと考えております。
  88. 井上亮

    ○井上政府委員 ただいま大臣が御答弁されましたように、今後閉山も予想されると思うわけでございまして、そういうようにやむなく予想されます閉山に対しましては、政府といたしましても、ただいま大臣の御答弁がありましたように、大手が多山を持ちまして、そのうちの一山が閉山するというような場合でしたら、いわゆる整備資金の融資制度もございますので、今後ともそういった融資制度を活用して、できるだけ退職金の支払いが円滑に行なわれるように努力したい。それから一山一社のような場合に、これはもう会社が倒産するわけですから、この場合の退職金の確保、これは非常な問題でございます。こういうような事情もありますので、今回石炭鉱業審議会答申におきましては、従来買い上げの交付金閉山交付金といっておりますが、この交付金を、トン当たり千二百円でありましたものを、トン当たり二千円程度に引き上げることが妥当だろう。それからなお一定期間、この一定期間というのが何年になるか、これは政府部内で今後検討することになりましょうけれども、今後の閉山見通しが実は皆目わからない、そういうような状況をもにらみ合わせて判断いたしたいと思いますけれども、少なくとも二千円プラスアルファ程度のものは審議会答申において示唆されておるわけでございまして、その中に、この国会で先般決議されました、できるだけ交付金の引き上げに際しては、その引き上げ分は退職金とか、未払い賃金とか、社内預金とかいうようなものに優先的に充当するように配慮しろというような国会の御決議もあるわけでございまして、審議会答申もまた同様趣旨の意見が付されておりますので、この引き上げに際しましては、できるだけ先生ただいまおっしゃいましたように、退職金等に優先的に充当するように、政府としても配慮していきたい。  それから最後に現行制度でございますが、現行制度は、これはたしか数年前につくったわけでございますが、特別加算金という名前で十万円を頭打ち限度にして、いわゆる交付金のほかに、離職者に対しまして、これは勤続年限に応じまして計算をいたしまして、最高十万円で加算離職金というものを交付しております。たしか平均的には一人当たり三方か四万の見舞い金になろうかと思いますが、これは一種の離職者に対する見舞い金でございます。これは主として中小炭鉱に適用するという方針に相なっております。この実態は、先生も御承知のように中小炭鉱退職金というのは非常に安いわけです。多いところでも二十万円程度、平均しますと十万円程度、数年前には退職金ももらえないというようなところが非常に多かったために、現行制度にありますように、その程度の国からの一極の見舞い金、こういう制度をつくっておるわけでございます。
  89. 八木昇

    ○八木(昇)委員 その見舞い金についてはまたあとでちょっと聞くとしまして、いまの整理交付金でございますが、現行制度ではトン当たり千二百円の整理交付金でございます。その千二百円を一体どういうふうに処置するかといえば、御本知のように賃金、退職金については、そのうちの二〇%しか充てられていない。それから五〇%分は残存鉱害と賃金、退職金未払い金額、その両舌の比率によって、案分して割り当てられる。ところが残存鉱害という額が、つぶれた山の場合にはどこも非常に膨大でございますので、退職金にはほとんど回らない。残りの三〇%が一般債務に充てられる。こういうことになっておるわけですが、この二〇%、五〇%、三〇%という比率そのものをお変えになるつもりがあるのか、それが一つ。  第二の点は、今度引き上げになった分、すなわち二千円から千二百円を引いた差額の八百円分、この八百円分は優先的に未払い賃金退職金に充てるというのですが、その優先的にという意味は、八百円はまるまる未払い賃金退職金に充てる、こういう意味なのか、この八百円分についてもいまの二〇%、五〇%、三〇%の比率を、二〇%のものをもう少しふやすという意味なのか、その  それから最後に、いまの十万円という特別加算金は、数年前にきまった額でもありますし、あまりにも零細に過ぎると思うので、この際相当大幅に改定の意思があるのか。  この三点、これは大臣でも局長でもけっこうでございますから、お答えいただきたいと思います。
  90. 井上亮

    ○井上政府委員 先ほど答弁を落としたわけでございますが、最後にお話のありました十万円、この限度を引き上げるかどうかというお話ですが、石炭鉱業審議会でも、閉山対策について相当熱心な討議が行なわれたわけでございますが、その際にはむしろ加算離職金についてはあまり触れられておりません。しかし、これは政府としても全体の問題として今後検討してまいりたいと思いますが、審議会では、むしろそれよりも、同じく御質問のありました千二百円から二千円に引き上げた、その引き上げ分をできるだけ退職者の退職金とか未払い賃金とか、そういうものに優先的に引き当てるようなことをすべきであろう、閉山交付金は単に大手だけではなくて、中小炭鉱にもみんな潤うわけでございます。ですから特にそういう必要はないだろう、この中で見るべきである、こういう見解が多数であったわけでございます。   〔加藤(高)委員長代理退席、藏内委員長理着席〕  それからなお、千二百円から二千円に引き上げたこの引き上げに際しまして、八百円をどのように配分するかというお話でございますが、これにつきましては、私どもこの答申を受けまして、今後いろいろ各方面意見も聞きまして、政府部内でも慎重に検討いたしまして配分をきめていきたい。ただ、この配分をいじりますということは非常に大きな問題でして、これにつきましては十分慎重に検討していきたいと思います。ただ、考え方としましては、この引き上げ分につきましては、やはり何と申しましても退職者の処遇というようなものに力点を置きたい。しかしこれで全部かといわれますと、全部ではありませんで、やはり鉱害と金融機関の債務、これは私見で申し上げれば、現行程度でいいのではないか、むしろ引き上げ分は退職者を優先的に見て、一部やはり中小関連商工業者、これも非常に気の毒でございますので、この関係の引き上げというようなことが適切ではないか、これは私見でございますが、こんな線で今後なお各方面意見を聞いて検討してま  いりたいと思っております。
  91. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これにつきましては、私はまた別の見解を持っております。鉱害などについて整理交付金の中から出すべきものではない、どうせこれは政府の金なんでございますから、そういうふうに思いますし、それから従来の千二百円をこえての二〇%、五〇%、三〇%の比率は、これをやはり変更すべきである、こういうふうに思いますし、もともと二千円が少な過ぎるという意見を持っておりますが、これは一応省きたいと思います。それからなお、やはりいまの十万円の特別加算金につきましても、並行的にこれも修正をすべきものであるという意見を持っているということをつけ加えておきたいと思います。  最後に労働大臣に伺いたいと思いますが、先ほどの御答弁のように、今後なお相当多数の離職者が短期間の間にまた相次ぐということが予想される、非常に不幸なことでございますが。そこでこの離職者対策をどうするのか、これが非常な今後の重大問題になりますが、一体どういう構想をお持ちであるか。なお、これは当然のことだと思いますが、従来ありますところの炭鉱離職者に対する時限立法、たとえば炭鉱離職者臨時措置法あるいは緊急就労対策事業、こういうものは期限が昭和四十三年で切れるということになりますが、当然のこととしてこれらは今後とも存続させるものと考えておりますが、そうであるかどうか。そうして緊急就労対策事業の内容というものについても、もっと抜本的な変革が加えられるべきである、こういうふうに考えますが、そういった点どういうふうにお考えであるか、御答弁いただきたいと思います。
  92. 小平久雄

    ○小平国務大臣 今回の答申を受けて政府がどういう施策をやるか、どういうテンポでやるかといったようなことは、これからの問題でございますので、今日の時点におきましては、今度の答申があったからどうするという、まだ特別の労働省としての離職者対策というものは考えておりません。しかし、いずれにしても離職者が相当出ることは間違いないのだと思います。でありますので、当面の問題としては、やはり従来やってまいったような離職者対策というものを一そう力を入れて、幾ぶんでも離職者を救済できる、こういう方向で努力をいたすというはかなかろうといま考えております。また、御指摘の特に炭鉱離職者の時臨措置法であるとか緊就事業の関係であるとか、こういうものは御承知のように、たぶん四十二年度末まで、こういうことになっておるかと思いますが、これらにつきましては、もちろんその時点における状況というものを勘案してこれを継続するかどうかという問題は決定さるべきであろう、理論的にはそうであろうと思いますが、しかし今日の情勢から察しますならば、大体これは当然継続しなければならぬ、私はさように想像いたしております。これはその時点にならなければ結論的なことはわからぬと思いますが、当然これは継続されることになるだろう、かように考えておるわけでございます。
  93. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それでは、あと専門家のお二方が質問をされますので、私はこれで終わりたいと思いますが、いまの離職者対策問題、CO中毒法の問題あるいは炭鉱災害の問題、これらについても触れたかったのでございますが、省略をいたしたいと思います。  これで終わります。
  94. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 滝井義高君。
  95. 滝井義高

    滝井委員 労働大臣と厚生大臣だけに限ってちょっと質問しますが、厚生年金のことについてでございます。重要な点は八木さんが大体触れられたようでございますが、少し大臣の答弁の中に気にかかるところがございますので、もう少し詰めておきたいと思います。  それは御存じのとおり、昨年の六月に厚生年金法が改正をされまして、いま社会保険審議会企業年金、特に調整年金についてはこれをいかに運営をするかということが討議をされているのでございます。その場合に、今度この答申が出て炭鉱労働者1これは坑内、坑外をひっくるめて、炭鉱労働者に厚生年金の上で事業主が共同をしてプラス・アルファの年金をつくるという場合に、炭鉱労働者にも調整年金はお認めになるのですか。
  96. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 今回審議会から答申がありました特別年金制度は、滝井さんすでに御承知のとおり坑内夫を対象としての特別な借地であるわけであります。したがいまして、先ほど八木さんからの御質問に関連して申し上げたのでありますが、坑外の労働者あるいは事務系統の職員、そういう方々について厚生年金の上に上積みの年金制度というものを考える場合には、調整年金という制度を活用するというようなことも一案ではなかろうか、こういうことを申し上げた次第であります。特別年金制度は坑内夫を対象として今後答申の線に沿うてやってまいる、こういう考えであります。
  97. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、御存じのとおり、全くいま試案として出ているのが、あるいは厚生省が国会において答弁したのが、千人以上の従業員を有する場合になっているわけです。したがって、坑内夫を除いてしまいますと、千人切れる場合ができてくるわけです。そうしますと、これは事務系統と坑外夫で調整年金をつくりたいと思っても、坑内夫を除いたためにできなくなってしまうわけです。こういう場合が出てくるわけです。そこで、これは全く私案ですが、この際何も炭鉱調整年金をつくらせないという構想でなくて、大臣のいまのような構想で、坑内夫も坑外夫もひっくるめて調整年金は調整年金でつくってもよろしい、そのほかに今度は坑内夫だけに限ってプラスアルファのものをつくってよろしい、こういうようにすると制度がスムーズにいくのです。そうしないと、この制度で大上段に振りかぶって坑内夫だけをつくります、坑外夫はだめです、こうやりますと、坑内から坑外、坑外から坑内に移る人があるわけです。いよいよ人間が足らなくなれば坑内に入って働かなければならぬことになるかもしれないのですから。多賀谷さんがさいぜん言うように、ヨーロッパでは坑内に入って働く人がいない、若いうちから働かしてもらわなければ困るといって、あの労働党が天下をとったイギリスでさえそんなあれが出たのです。だから、そこらあたりをあんまり金を出し惜しんで、そして一枚の紙の裏表をはぐような政策をとると、机上プランとしてはいいですよ。しかし、これは現場に適用したときにうまくいかなくなるものなんです。だから、むしろこれをやるならば、坑内、坑外というように炭鉱の中にみぞをつくってはいかぬのですよ。坑内、坑外が一体になって石炭産業というものは生きていっているのですから、坑外夫はどうでもいい、坑内夫だけ優遇して坑外夫を放置しておいたら、坑内夫にどんな悪い影響があるかわからないですよ。これはおやりになるなら、調整年金を坑内、坑外一体にしてつくる。そしてそのほかに坑内夫については特別年金プラスアルファならプラスアルファの上積みをする。そういうことでないと、坑内夫だけは調整年金からのけます、そして今度は坑外と事務系統は調整年金をつくります。そうすると基金が二つできてしまうのですね。事業主がたいへんですよ。事業主は、そうなりますと絶対千人をこえてもプラスアルファを出す調整年金をつくらないですよ。そうでしょう、三割以上よけいに出さなければならぬから。しかもその保険料というものは事業主がよけいに負担しなければならぬ。そうして一方、今度は共同してつくるところの坑内夫だけの年金にまた出さなければならぬ。とてもいまの石炭企業は多々ますます弁ずるという状態ではないですよ。だから、そこらあたりの制度の確立についてはひとつ明快な態度を表明してもらわなければいかぬと思うのですよ。
  98. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 滝井さんからただいま御所見がありました調整年金を坑内、坑外あるいは事務系統の職員全部でもってつくられる。これは私は、労使の間でそういう話し合いができましてやりますれば、それもたいへんけっこうなことである。そのほかに坑内夫対象の今回の特別年金制度、こういうものがあってちっとも支障がない。この点は滝井さんと同意見でございます。ただ、この坑内夫について特別年金制度ができた。そこで坑外及び事務系統の職員についてはないではないかという点になりました際に、一つの試案として、坑外夫と事務系統の職員、社員でもって調整年金をつくる。これは千人未満という問題はございますが、それをカバーいたしますために石炭鉱業全体でもってそういうことをおやりになる、調整年金をおやりになる、こういうこともできるわけでございますから、そういう趣旨で私申し上げたのでありますが、もとより滝井さんのいま御提案になりましたように、坑内、坑外及び社員全体で調整年金をおやりになって、そのほかに坑内夫に対しましては特別に特別年金制度をつくる、こういうことにつきまして私は全然異論は持っておりません。むしろそういう制度が手厚くなされることが望ましい、こう考えておる次第であります。
  99. 滝井義高

    滝井委員 制度的にいいますと、こういう石炭鉱業審議会答申が出て、石炭企業者が共同で特別のプラスアルファの年金をつくりなさい、こうきておれば、私は、ここの審議会委員を誹謗してはなはだ申しわけないけれども、これは少し取り扱いとしては政治感覚に欠けていると思います。あるいはいまの石炭産業現状認識において幾ぶん欠けるところがあるのではないかという感じがするのです。やはりやるのなら、これは坑内、坑外、事務系統、炭鉱だけは全部してやるほうがいいのです。そして厚生年金のほうはしばらくいまのままにして足踏みをしておく。とにかく包括的に炭鉱労働者全体にプラスアルファの年金、いわゆる調整年金でないこの石炭鉱業審議会のものをつくっていく、こういうことのほうがいいと思うのです。それは当面そういう方向で、石炭政策が労使が一体になってこの苦難を乗り切ろうというときに、内部的にこの坑内と坑外を分けるというような政策というものはとるべきでないと思うのですよ。  そうすると、今度問題になりますのは、この案でいくと事業主が負担をする。しかし事業主が負担をするけれども、それは特別のこの特別会計で見ることになるわけです。これは三木大臣、見るでしょうね。
  100. 三木武夫

    ○三木国務大臣 しばらく検討をさしてもらいたいと思います。
  101. 滝井義高

    滝井委員 それは負担増の政策ですからね。この大事なところを研究さしてくれということで、今度鈴木さんのほうでこれはもう張り切って、私のほうは坑内夫はやりますやりますといって、八木さんのいまの質問では、通算のことまで考えますといってやっておるのですよ。これは一億や二億でできる問題ではないですからね。そうすると、鈴木さんのほうはどこからその財源はとってくるのですか。三木さんのほうはこれから検討さしてくれといって、海のものとも山のものともわからぬ。鈴木さんのほうは張り切ってこれからやるという。じゃ、閣内不統一じゃないですか。
  102. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 その点につきましては、先ほど八木さんの御質問の際にお答えいたしましたように、この特別年金制度のために国が直接の補助をするというようなことは、ただいまのところ、いま通産大臣お答えになったように検討さるべき問題だと思いますが、石炭鉱業全体の再建策として、今回の答申の線に沿うて政府はあらゆる総合的な施策をやるわけであります。したがって、答申にあります特別年金制度について、事業主がこれを負担できるようなそういう状態を再建対策によって確立していく、こういうことでございますから、間接的には政府の助成のもとに石炭鉱業の再建、また特別年金制度というものも実施されるようにということを私ども考えていきたい、こう思うのであります。
  103. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは鐘が鳴るか撞木が鳴るかということになるのです。あなたのほうは、当然石炭の事業主が負担できる政策を三木さんのほうがとってくれるだろうと期待をする。幾らとるかおわかりですか。それでは一体幾らとって、どういう制度をおやりになるのです。いま構想は述べた。しかし、制度の具体的な——一万円年金というのを掲げるときには、予算をとらないうちから一万円年金というものを掲げた。予算を決定しないうちに一万円年金というものを掲げた。そうすると、このプラスアルファというのは幾らになるのか。厚生年金は一万円年金を掲げた。しかし、一万円年金はすぐ実現しないですね。一万円年金を掲げた。しかし、それは標準報酬が平均二万五千円になって、そうしてそれが二十年つとめたときに初めて一万円の年金をもらえるのです。だから、そういう構想でいいです。モデルケースとして、いまの一万円年金と同じように、二十年つとめて給料が二万五千円になったときに一万円もらうと同じように、一体炭鉱労働者というのは、どのくらいしたら、どのくらいプラスアルファとしてもらうのか、その構想だけは掲げてもらわなければいかぬ。それから先の具体的なものはいいです。いままでの審議会委員の答弁でもミクロは言った。たとえばトン当たり利子補給は二百円しますとか二百何十円しますとか、そう言った。しかし、マクロはわかりません、こういうわけだ。だからミクロの点だけでいいです。一人に一体どの程度のものをあなた方は厚生省のヒューマニズムの見地に立ってお考えになっているのか。坑内労働を持続させて、新しい若い労働力が坑内に魅力を持って働きに来るためには、厚生大臣のヒューマニズムのものさしではかったら一体どの程度のものを必要とするか、これだけは言ってもらっていいと思うのです。
  104. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 ただいま二十五日に答申をちょうだいしたばかりでございます。そこで、私どもこれから政府部内におきましても十分検討をいたしますし、また、審議会のこの答申をなさったその内容答申の趣旨、そういうものも十分拝聴し、さらにまた労使の御意見、要望等も十分聞きながら、給付水準をどういう点にきめるか、こういうことがこれからの検討の課題でございます。  いま滝井さんもお話しになりましたように、これが単なる厚生年金のプラスアルファのわずかの形式的なものであっては意味をなさぬじゃないか、もっと魅力のあるものにしなければ効果が上がらない、こういう御趣旨は、私ども十分その御趣旨に沿うように努力をいたしたいと考えております。
  105. 滝井義高

    滝井委員 私、何もかもみんな知って質問しているのですからね。鈴木さん御存じのとおり、ことしの予算で二百三十万円の特別厚生年金をつくるという予算が計上されているのです。調査費が通産省に計上されているんですよ。私はそのとき質問をしたのです。いま鋭意検討中ですと言った。何もこんなものとは関係がない。こんなものできなくたって、これをつくるということは三木さんが言明しているし、あなたも言明しているはずです。こんなものが出る出ないにかかわらずこんなものと言っては失礼だけれども、出る出ないにかかわらずつくるということを約束しているんです、ことしの予算のときに。予算衆議院を通ったのはいつですか、三月の初めに通っているじゃないか。四月二日には成立しているのです。四月、五月、六月、七月と四カ月たっているのです。この答申が出る出ないにかかわらず、もう構想はできておらなければならぬはずです。構想ができて、そしてじゃ財源はどこに求めるかということがいま問題なんです。内容が出ておらなければならぬ。いまごろになって、まだ全然わかりません。しかも三木さんのいまの答弁に至っては、財源はどこから出るのかまだこれから検討するというのでは、これはもう話にならぬですよ。しかも鈴木さんも鈴木さんですよ。まるきり人のふんどしで相撲を取るようなことでは困るのです。主管官庁はあなたですからね。だから、おれは厚生大臣として炭鉱労働者の労働力を確保をし、しかも順当な再生産をはかるためには、老後の安定をはかるためにはこれだけは厚生大臣として必要ですよということが、厚生大臣としてのヒューマニズムからものさしができてこなかったら、それは話にならぬですよ。そしてその上で、財源折衝の結果、五千円要求しておったのだけれども二千円になりましたとか、こういうことでないと、まるきり三木さんのほうから財源がこなければ私のほうは何ともしがたいということでは、これは話にならぬと思いますよ。それじゃ、もうこの話を聞いただけで全国の炭鉱労働者はがっかりですよ。やっぱりこういう政策を出したら、ふるい立たせるぐらいの魅力のある答弁をしてもらわなければ困るのですよ。どっちなんですか。いまのようにお互いに顔を見合わせて、金の出どころがわからぬで、一生懸命構想を述べたって話にならぬと思うのですがね。
  106. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 滝井さんは十分事情を御承知の上で、しかもその答申を十分お読みの上でおっしゃっておるのでありますが、その答申には事業主の負担でこの制度をやる、こういう答申でございます。ただ現在のところ、事業主の負担ということが、この企業の実態からいって相当苦しいであろうということは私どもも承知をいたしておるのでありまして、そういう観点から、石炭鉱業全体の再建策を政府としても今後この答申の線に沿うて強力に進めてまいりまして、そうしてこの年金制度に対して直接の補助はいたしませんけれども、間接的に、この答申の中に盛られた特別年金制度というものが事業主の負担で実施できるようにというのが、私ども考え方であるわけであります。
  107. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうすると、お尋ねしますが、これは財源としては四つの場合が考えられるのです。一つは炭価で見るかです。しかし、これは午前中に御質問申し上げたとおり、炭価というものは据え貫くのだ、こうなるから炭価で見るわけにはいかぬ。そうすると、あとは国が一般会計で見るか、ところが、これはもう一般会計で見る筋合いじゃない、これは断然事業主の負担だ。こういうことになっているから、これは一般会計から見るということにならぬ。そうすると、事業主に金がいくのは特別会計か、百円の補給金か、どっちかしかないのです。特別会計で石炭対策として見てやるかどうかです。一般会計から出すということはできないのですよ。一体この二つ、どちらをやるのです。はっきりしてくださいよ。そこらあたりまではっきりしなかったら、まるきり答申をもらったって何にも役に立たない。あなた方がわからぬのに、われわれがわかるはずはない。はっきりしてください。
  108. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは基本的には企業者の負担である。政府の助成というものは、一般助成の中で考えるとすれば考えるということで、基本的には企業者の負担ということが原則でございます。
  109. 滝井義高

    滝井委員 それはわかるのですよ。それじゃ、一般助成というのはどこから金が出ることになるのかということなんです、石炭政策として。石炭政策として金が出るのはもう特別会計以外にない。この答申ではどこにも書いてない。いまの百円の補給金も、これは特別会計から出るのですからね。おそらくそうだと思うのです。そうすると、特別会計から出してくれるなら出してくれると、こういうことを言明してもらわぬことには話にならぬですよ。
  110. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは出す場合には特別会計よりほかにないのです。しかし、直結ということではないけれども特別会計から出す。一般の助成においてこれは出すことを検討したいと考えておるわけです。
  111. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、特別会計から出ていく項目というものは、そんなに何もかにも出ていかぬでしょう。一体特別会計から出ていく項目はどういうものが出ていくのですか、井上さん、言ってみてください。大きな項目だけでいいですよ、あんまりこまかい項目でなくていいんですから……。
  112. 井上亮

    ○井上政府委員 まだ答申を受けたばかりでして、特別会計の中からどういう項目を支出するかということについては、まだ政府としてきめていないわけでございます。ただ、ただいまの厚生年金の問題につきましては、ただいま両大胆からお答えがありましたように、これは原則といたしまして企業者負担ということは明らかでございます。ただ、企業者負担ということになりました場合に、滝井先生も御指摘になりましたように、いまの炭鉱の実態からいたしまして、負担がはたしてできるかどうかということだと思いますけれども、これは今回の審議会答申に見られますような程度の助成策、これも厚生年金はやはりやるんだ、特別年金はやるんだという前提で、あの程度の画期的な助成策が盛られておるわけでございますので、全体としてのこういった政府の助成の中で企業に支払い能力をつけるというような、その中から負担してもらおう、こういう考え方になっていると思います。
  113. 滝井義高

    滝井委員 特別会計から出るということだけは、はっきりしました。その場合に、トン当たり幾らぐらい大体出るような感触がありますか、感触でいいです。
  114. 井上亮

    ○井上政府委員 企業者の負担ということになるわけでございまして、トン当たりどの程度かということにつきましては、これは私ども通産省厚生省、労働省、三省の間はもとよりでございますが、関係の業界等とも御相談申し上げているわけでございますが、いまのところ、トン当たりどの程度の規模の老齢年金が妥当かというようなことにつきましては、結論が出ておりません。一説には三十円という説もございますが、まだ正式にはきまっておりません。
  115. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、一説に三十円という説があるのですが、三十円とするとどの程度の金が出ることになるのですか、マクロが。
  116. 井上亮

    ○井上政府委員 内容につきましては、勤務年限とかいろいろな関係がございますので、どの程度かということはまだ明確でありません。しかし、少なくとも二万円に近い程度のものは出るんじゃないかというふうに考えております。
  117. 滝井義高

    滝井委員 一万円というのは、一年に一万円ですか、月に一万円ですか。二万円年金というのは月を言うわけです。そうすると月に千円とか、こういう意味ですか、いまの一万円。
  118. 井上亮

    ○井上政府委員 ただいま申しましたのは有沢小委員会でいろいろ検討している内容を申し上げたわけでございまして、政府としましてはまだ具体的に出ておりません。もちろん二万円に近いという——近いというと九千円になるのか八千円になるのか、その辺よくわかりませんが、月だと思います。
  119. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうしますと、こういうことになるわけですね。二万円の厚生年金がある、これは坑内夫ならば十五年、それから坑外夫ならば二十年、いま政府案では坑外夫は切り捨てているから、坑内夫だけ。十五年つとめた坑内夫がいまの制度でいくと一万円年金をもらう、そのほかに月に約一万円近くのものをくっつける。あとはその年限、たとえば十五年の有資格の坑内夫が十年勤務したら月に一万円つきます、こういうふうに組み合わせができてくるわけですね。これは内容は問いません、きょうは。したがって大体わかりました。とにかく一万円年金にもう一万円くらいのものが、いま有沢小委員会でやっているところのものではつく可能性がある。しかもそれはトン当たり三十円程度の事業主の負担がある、それは特別会計から出ていく、これは大体アウトラインができましたから、これだけあれば大体絵がかけそうです。そこで、この上にいま言ったように坑外夫を網をかぶせてもらう制度にするほうがなおいいんじゃないか。厚生年金をいじらぬでそのままにしておいて、網をかぶせる制度をもう少しひとつ検討してもらいたい。この二つをみぞをつけるということは、お互いの間に風が吹いて入るのでよくない。  次に、事業主が共同して制度をつくるわけです。そうすると、共同をしてつくる制度というものは、中小大手も一本になるのか、それとも中小中小グループ、大手大手でつくることになるのか、そこらの構想はあるはずだと思うのですね。だから十一万人の炭鉱労働者のうちの、坑内夫がいま何人おるかちょっと忘れましたけれども、坑内夫だけが全国的に横断して、そしてプラスアルファの特別の年金基金をつくる、そうして移動があってもそれから出していく、こういう形になるのですね。調整年金は頭がこんがらかるからしばらくたな上げして、共同の事業主負担の年金だけについて構想を述べていただきたい。
  120. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 これはただいま滝井さんからお話がございましたように、大きな企業中小企業も全部一本にいたしましてこの制度を活用していきたい、こう考えるわけでありまして、そのために組織法といたしまして強制加入あるいは受給権の保護の措置、そういうようなものも必要に応じて検討する必要があるのではないか、こういうことを考えております。
  121. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうするとこれは強制加入の制度になって、そして受給権の保護をするということで、結局いま厚生年金の法律にある調整年金の変形みたいな形でもう一つできるわけですね、炭鉱の坑内夫だけについて、政府の構想では。大体構想はわかりました、これで、大体厚生年金の概要は、内容以外は——。
  122. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっと関連して。いまの特別年金に関連しまして、一体組夫はどうするわけですか。
  123. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 組夫は正規の坑内職員でございませんので、この中には考えておりません。
  124. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現行の厚生年金は組夫を入れておるでしょう。どうですか。
  125. 伊部英夫

    ○伊部説明員 厚生年金保険法におきましては、五人以上の一定の業種に適用いたしております。したがいまして、五人以上の事業主であって、当該事業に当たる者は厚生年金は適用されますし、さらにその場合、日々雇い入れられる方々は適用除外になっておりますが、一月以上をこえた場合、あるいは二カ月以内の期間を定めた方は除外されますが、それをこえた方はやはり適用されます。したがいまして、厚生年金の適用と同一に考えるべきであるというぐあいに考えております。
  126. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから大臣、組夫も当然特別年金には入る、こういう形になるのです。組夫だって日々雇用ではありません。
  127. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 厚生年金で坑内夫としての優遇措置、それを適用されておる者はこの特別年金制度も当然対象になる、こう考えております。
  128. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで石炭局長、もう日本の統計も当然切りかえる時期がきているわけですよ。統計にも、二万数干の組夫がいま現実にいるわけです。しかも、そのほかに潜在した組夫もいるのですよ。ですから能率を五十五トンだ、五十三トンだと言っておるけれども現実に相当多数の組夫がいるわけです。これは先ほどの退職金の優先支払いの恩恵も受けないのですよ。あらゆる恩恵を少なくとも通産省の関係では受けない。労働者や厚生省の関係では受けておるのですよ。こんなばかなことをいつまでもしておくということは人道的にも許されぬと思う。ですから特別年金制度をつくることを契機に顕在化さすべきですよ。そうして少なくとも顕在化したものは能率の点についても検討すべきです。またああいう能率のしかたがいいかどうかということも検討すべ言である。工数でいくかどうか。ただ在籍人員だけで割って、実際仕事をしている者は除外しているというようなこと自体も問題でしょうね。また能率のことばかり考えて金融をつけるということも問題でしょう。能率だけ考えれば二倍以上あがっておるのですから、各会社ともみんな黒字になっておるですよ。それを雑給で払っておるから経理は赤字、こんなばかな能率を依然として残しておるところに日本炭鉱の非近代的なところがあるわけですよ。だから、一方労働省や厚生省のほうは坑内夫として扱っておる、通産省だけは全然扱わぬ、こういう点はこの際はっきりさすべきじゃないか、かように私は考えますが、ひとつ通産大臣の御所見を承りたい。
  129. 井上亮

    ○井上政府委員 先生におことばを返すようでございますが、私ども炭鉱の労働政策につきましては、組夫の問題は先生のいままでの御示唆もありますように、できるだけ常用雇用として、組夫という形態でない形で炭鉱労働の正常化をはかってまいりたいということを念願といたしておるわけでございます。ただ現実は、先生も御承知のように、経営者が組夫に対しまして常用雇用になるような勧奨もいたしておるわけでございますが、なかなか応じない例もあり、安易な生活を享受したいというような希望もあって、組夫の常用雇用化がなかなか困難な実情であります。かつはまた炭鉱労務の確保がむずかしいというような観点から、どうしても組夫に依存する面も中にあるというのが実態でございます。私どもとしましては、できるだけ組夫依存からの脱却ということを政策の基本的な方針としていきたいというふうに考えております。   〔藏内委員長代理退席、有田委員長代理着席〕  なお、組夫についても特別年金制度の恩典を与えたらどうかというような御意見でございますが、組夫についてもできますならばそういうことが必要だと、私ども石炭行政を担当している面からは思いますけれども、これが強制年金ということになりますと、これは私どもいま有澤委員会でこの年金問題を検討している立場から申しますと、いまはむしろ常用雇用の労務者に一応限定して、特に企業者負担強制年金ということになりますと相当な問題でございますので、炭鉱経営者を中心にいま検討しているというのが実情でございます。
  130. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それならそれでいいわけですよ。常用化をはかるために特別年金についていわゆる在籍だけを認める、こういうことになりますと労働条件に非常に差がつきますから、当然常用化の方向に動くわけです。ですから潜在化した者がいなくなる。従来のように必ずしも労働条件について差がないという場合には、これは現状を維持する。ところが特別年金で差をつけるというならば潜在化しない、むしろ顕在化する。ですから、あなたのほうはその場合に能率をやかましく言っちゃいけませんよ。能率をやかましく言うとまた潜在化するわけです。君のところはなぜ能率があがらないか。組夫を常用化したために能率が下がったということは、現実に幾らでも起こるのです。石炭局長、そのことを十分考慮しておればよろしい。しかし五十五トンにしょうなんてほらを吹いておるから、私は能率のことは言いなさるなと言った。現実に特別年金は組夫にはやらぬということにすれば、組夫は常用にします。常用にすれば能率が下がるのです。ですからそのことをよく心得て政策をやってください。これを希望しておきます。
  131. 滝井義高

    滝井委員 もうちょっと厚生省に質問があるんですがね。医療体制の充実をはかるということがこの答申にあるわけです。御存じのとおり、いま炭鉱の健康保険というのは四苦八苦なんですね。そして同時に、第二会社になった炭鉱は全部病院を閉鎖しました。したがって、私はそれを炭鉱の経営者に注意したのですが、もし三池のようなガスの爆発があったときに、あなた方は一体負傷者をどこに入れるのですか。第二会社も、御存じのとおり大きいところでは八百人くらいおりますし、小さいのでも三百人から五、六百人おるわけですが、全部病院が維持できないのです。健康保険はもう火の車だ。したがって、ここにはこういう炭鉱における社会保障の中核である「医療体制の充実」ということになっておるのだけれども、この経費は、いままで全部炭鉱主が自分の経営費から出している、あるいは健康保険組合というもので維持管理をしていく事業主病院か健康保険組合の病院だ。ところが、それも、いま筑豊地帯の大手閉山して第二会社になったところはほとんど全部つぶしました。私のところの三井、田川のような第二会社の相当大きなところでも全部つぶしちゃったのです。最近赤池炭鉱が第二会社になってつぶしました。もう方城なんかもあとかたもなくなってしまった、こういう形になってきたわけです。したがってそこには、炭住に人が住んでいないんじゃなくて人は住んでいらっしゃる。そうすると、いざ鎌倉というときには医療の受け入れ態勢がない。市立の病院、町立の病院は満員でベッドがあいていない。こういう事態のときにガスでも爆発したらもうどうにもならぬという状態が出てきておるわけです。そこで、共同の年金というような制度があるように、やはり山が幾ぶんでもこれから残っていこうというならば、残った山だけで共同でそういうものをつくらして医療設備をやらせるとかなんとか助成策をやる、あるいは特別に市の病院なら市の病院に炭鉱用の十なら十、二十なら二十の一定のベッドを確保する、そしていざというときにはそれを救急医療にも準用ができるとかなんとか頭をしぼった対策を立てておかないと、災害は忘れたころになってやってくるので、起こってからわれわれが鈴木厚生大臣なり三木通産大臣を責めてもこれはあとの祭なんですね。ここにわざわざ「炭鉱住宅の整備、医療体制の充実」と二つ並べて書いてくれているのですが、これを一体どうお考えになっているのかということです。
  132. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 この閉山等によりまして、従来、企業なりあるいは石炭山の健保組合なりが経営をしておりました病院、診療所というものにつきましては、これを当該市町村、自治体で継承ができますように、起債その他の面でできるだけのめんどうを見ていきたい、こう考えております。また、滝井さんからただいま御提案がありましたように、残ったところの石炭企業体でそういうものを受け入れて、そうして運営したらどうか。これも一つ考え方でございまして、そういう面につきましても早急に対策を確立をいたしまして、必要なる措置を講じていきたい、こう考えております。
  133. 滝井義高

    滝井委員 これはぜひそういうような政策に見落としのないように——「医療体制の充実」とたった七字しか書いていませんけれども、これは非常に重要なポイントですから、見落としのないように鈴木さんのほうで通産省と連絡をとって対策を立てておいていただきたいと思うのです。それで、あと離職者対策と生活保護関係がありますから、もうちょっと鈴木さんにいていただきたいと思います。それは、さいぜん小平労働大臣は八木さんの質問に答えて、新聞等で三万人ぐらいが出るというようなことを書いていると他人ごとのようなことを害われましたけれども、今度の答申を読んでみますと、やはりいままでの第一次答申と同じように、へまをすると離山ムードが一年のうちに集中するおそれがあるんですね。そこで、この閉山が四十二年とか四十三年に集中をしないようにこの政策を実現をしていく必要があるわけです。三万人ぐらい出るらしいと新聞に書いておるけれども、おれのほうはまだやっておらぬ。やっていなくて幸いなことだと思うのです。三万人が四十二年度に出るということで対策をしてもらっていたらたいへんなことです。そこで、やっていないのが幸いだから、四十二年とか四十三年とかに集中して出ないように歯どめをかけて、徐々に閉山が起こってくる、それはいわば自然死、掘って炭がなくなったという形にしてもらわなきゃならぬわけです。一体、そういう歯どめをあなたのほうは考えておるのかどうかということなんです。このことは自治省にも言えるわけです。一挙に三万人も出てきますと、三万人は、半年か一年して失業保険が切れますと、だあっと生活保護に転落してくるわけです。御存じのとおり、全国の生活保護の保護世帯の平均が千人について十七人かそこらです。ところが福岡県というのは六十人にも七十人にもなる。はなはだしい町村は過渡的には百六十人とか百七十人とかになる。そういう形が出るわけです。そこで、一挙に出ないという保証はどこにもない。むしろ一挙に出てくるという答申がこれにあるわけです。たとえばこの九ページの「石炭企業の経営基盤の確立」という項をごらんになるとどう書いておるかというと、「財政資金による肩代わり措置」の「対象企業」というものは条件があるわけです。千億の肩がわりを受けるためには、炭量は原則として十年以上安定出炭が可能なものということになるわけです。そうすると、十年以上安定出炭が可能なものというと、私のふるさとの田川でいま中小や第二会社を合わせるとおそらく十七、八万トンぐらい出ておりはせんかと思いますよ。そうして中小から第二会社まで全部合わせますと、いま労働者が六、七千人ぐらいおると思います。そうすると、炭量が十年以上安定して出炭が可能というものは、おそらくない。そうすると一挙に出てしまう。労働省が重要なところはここなんですね。しかも、もう一つの条件として、十年以上安定出炭ができる炭量があって、適切な再建整備計画を有しておらなければだめなんです。そういうところにしか肩がわり資金は出てこないのです。そうしますと、小平労働大臣、一挙に出てくる可能性が出てくるわけです。そこで、労働省としてはこんなものは受け付けられませんということになるのか、それは植村経団連副会長を中心とする権威ある人たちがやったんだから、私も涙をのんで一挙に三万人受け入れざるを得ませんということになるのか、ここらあたりがいわば政治が左せんか右せんかを決定する関頭に立たされておるわけです。はなはだ失礼な言い分だけれども、鳥のまさに死せんとするやその声悲し、人のまさに死せんとするときにはその言は善なりということがある。いま内閣改造を間近に控えて、小平労働大臣、こういう三万人の人がいま生死の関頭に立っておるわけです。それを政治家として救うか救わぬかということは、やはりあなた自身も関頭に立っておるということですよ。そういう意味で、これは三木さんのほうの政策を幾ぶんチェックすることになるかもしれぬけれども、この条項があるからには、さいぜん八木さんが指摘したように、これは一挙に出てくるのです。あなたも新聞で読んだように一挙に出てくるのです。どうですか、そこは。
  134. 小平久雄

    ○小平国務大臣 基本的には、先ほど来通産大臣あるいは厚生大臣からも申しておりまするように、まだこの答申が出たばかりでありまして、これを政府としてどういうぐあいに受け入れて実施に移すかということがまだきまっておらぬというのですから、そういう状況のもとで、一体離職者がどういう状況で出てくるかということを判断することは、これは非常に困難なことといわなければならぬと思うのであります。もちろん、いま滝井先生がおっしゃるように、われわれ労働省の立場からいたしますならば、一挙に多数の離職者が出る、こういうことは、これは社会不安と申しますか、そういう事態すら場合によっては起こるわけですから、極力そういう事態は避けられるように、同じ数の離職者が出るにいたしましても、それが逐次出てもらうということのほうが、これは再就職の点から考えても、あらゆる点から考えて最も望ましいことである、私はこういわざるを得ないのであります。したがって、今後政府がこの答申を検討するにあたっては、いま申したような点も労働省側としては十分要望をいたし、極力そういう姿で、要するに逐次減少、逐次離職、こういう姿でいくように政府全体としての施策が行なわれる、こういう方向にいくようにこれは当然努力すべきものだ、かように考えております。
  135. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この前、三十七年答申が出ましたときに、法律を改正したわけですよ。それは労働大臣の権限を入れたわけです。石炭鉱業審議会で計画をつくっても、雇用情勢が著しく不安を与えるというような情勢の場合には、その実施計画の変更を労働大臣は申請することができる、それをわざわざ法律の条文の中へ入れたわけですよ。ところが、この前は、残念ながら労働省はしりぬぐいだけしたのですが、そのことがただ労働省だけでなかったのです。労働省がなまけたことが、この出炭そのものにも影響したのです。そうして、ついに出炭計画を大きく割って、結局外国炭を入れざるを得なくなった。今日、この悲劇を見ておるのは、そういう状態からなんです。ですから、せっかく法律の中で——これはたいへんな議論のあったところなんです。要するに、実施計画について労働大臣は異議があったときには変更さすことができるということになっておる。ですから、今度の場合も、労働省が雇用情勢を見ながら、しかもこれは優良炭鉱の若い良質な鉱員が出ていくわけですから、それを見ながら労働省としては十分意見を述べて調整をする必要がある。これは、単に通産大臣だけの責任でなくて、労働大臣の責任も共同責任ですから、ひとつ十分注意してやってもらいたい。
  136. 小平久雄

    ○小平国務大臣 多賀谷先生のいま御指摘のような点は、十分心得まして善処いたしてまいる所存でございます。
  137. 滝井義高

    滝井委員 多賀谷先生の言われたことは十分心していかれると言うけれども、問題は、さいぜん私が御指摘申し上げたように、十年以上安定出炭が可能な炭鉱でないと肩がわり資金をもらえないわけです。これは厳然とこれに書いてある。肩がわり資金をもらえないということは、つぶれるということになっちゃうのです。炭価も上げない、現状据え置き、そうして借金は返さなければならぬ、利子は払わなければならぬ、こうなりますと、これはつぶれちゃう。したがって、一挙に出ないためには、ここをある程度変える以外にないのですよ。閉山をある程度スローするためには、いまの石炭企業肩がわり措置の対象企業としての基準を変えざるを得ない。ここは一体三木さんのほうはどうですか。どうしてもこれはこういう答申が出たからわが道を行くということになるのか。それとも、これはなかなか重大な事態なので、そこらは政治的に配慮をして、ある程度小平労働大臣のほうに事務的な準備体制を与えることになるのか。  御存じのとおり、今度出てくる炭鉱離職者の年齢は四十歳をこえておるのですよ。四十歳をこえると、もう雇用はがたっと落ちるのです。三十七、八歳までは八割ぐらいまでの就職率があります。しかし、四十歳をこえたら、今度は就職できないほうが八割になる。逆になる。だからここの肩がわり措置の対象の基準というものをもう少し調子を落としてもらうということでないと、これはたいへんなことになると思うのです。これはどうですか。
  138. 三木武夫

    ○三木国務大臣 大手のほうは十年間の出炭確保をできるということで、大部分入る。問題は中小炭鉱であります。これには少し調子を落とさなければなるまい、条件を緩和したいと考えております。
  139. 滝井義高

    滝井委員 いまのような通産大臣の非常にあたたかいヒューマニズムに富んだ発言がありました。三木さんは何か残られるほうだそうだけれども、残られる方があれだけの温情をするのだから、あなたのほうも、ひとつしっかりした、今度はこの法律に書いてあることを間違いのないように事務当局を督励をして体制を整えていただきた  いと思うのです。  それから、八木さんがだんだん質問しておりましたが、千二百円から二千円にアップをされた閉山交付金にさらに閉山処理費用として特別加算交付金を一定期間についてつけますね。この額は、いつか井上さんは、二百円になるか三百円になるか四百円になるかというてつぶやいておった。つぶやいておったのだから耳に自然に入ってきたから覚えておるわけですが、まあそういうところだろうと思うのです。このつぶやいておった金は、配分をするときには、あなたは、千二百円と二千円の差の八百円については、大部分未払い賃金とか退職金とか社内預金等の支払いに充てよう。しかし一部は中小商工業者等の関係もあるという御発言があったので、非常に温情のあることばで、いいことばだったと思うのです。そうすると三百円から四百円の関係はどうなるのですか。
  140. 井上亮

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの閉山交付金にプラスします加算交付金、これにつきましては、答申では、一応、一定期間内に閉山するものに対しまして二千円だけでなしに特別加算金を交付すべきだ、こういうふうに書いてございまして、この内容につきましては、今後政府部内で慎重に情勢を把握しまして検討したいというふうに考えております。  私がつぶやいておったというお話がありましたが、これは答申を出されます審議会で検討されました際にいろいろ御議論がありました。その議論の中で一番大きい意見が四百円であったということを申し上げたわけでございまして、二百円、三百円、四百円、どうするか、こういった点につきましては、今後政府部内で慎重に検討してきめてまいりたい。  これを何に使うかということになりますが、この使い方は答申では一応閉山処理費用に充当するためと書いてありますが、これらにつきましても具体的にはなお事務的に検討してまいりたいというふうに考えております。
  141. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは未払い賃金や何かにいくということはさいぜんみたいに明確な答弁はできぬ、これはまだもうちょっと残しておってくれ、こういうことですね。
  142. 井上亮

    ○井上政府委員 一応答申そのままでやりますれば閉山処理費用ということになっておりますので、主としてこれは残務費だとか、閉山に際しましていろいろ費用がかかるわけでございますから、それに充当するというふうに解釈するのが普通だと思います。しかし、これはあとそれを得ました経営者がどうこの金を利用するかということもありましょうから、その場合に、退職金未払いが千二百円から二千円に引き上げてもなお非常に大きく残る、それについてやはり大きな社会問題が残るというようなふうに経営者が判断されれば、それに使われることもありましょう。しかし一応この答申で書いてありますのは、過去の実績からしますと、閉山費用にやはり四百円程度かかった実績がございますので、そういったことを参考にして答申は出されたものでございます。
  143. 滝井義高

    滝井委員 この配分は一つの楽しみに残しておきましょう。  そうしますと、楽しみに四百円ばかり残ったことになるのですが、これはみんなに楽しみですよ。労働者も楽しみだし、鉱害も楽しみだし、債権者も楽しみです。ところが、楽しみだけれども肩がわり資金をもらった炭鉱がつぶれた。そうしますと、肩がわり資金はもうそれでもらわなくなるかと思っておったら、つぶれても一定の肩がわり資金をもらうんです。もらって、そのつぶれた炭鉱が売りに出ると、今度は債権者、銀行は、鉱区、建物、土地を担保にとっていますから、つぶれても一定の肩がわり資金をもらう上に、さらに、もしA銀行ならA銀行滝井銀行なら滝井銀行が差し押えをしたら、滝井銀行はまた三割とってしまう、そういうことを許すことになっておりますか、そういうことになるのですか。
  144. 井上亮

    ○井上政府委員 そういうことではございませんで、そこに書いてありますのは、たとえばある炭鉱が、これは計算上ちょっと簡単に申しますと、百億なら百億の肩がわりを受けたといたしました場合に、五年たってその会社が倒産した、あるいは生産をやめたという事態になりますと、当然元利均等償還はそこで一応打ち切りになるわけでございます。したがいまして、金融機関は、本来その会社が継続されるとすれば、十年間元利均等償還を受け得るわけでございますが、つぶれましたとき以後は受けられないということに、たてまえはなるわけでございます。しかしそれでは、今後金融機関が、この困難な石炭産業になかなか融資についても協力もしづらかろうというような配慮から、その残りの、つまり未償還になります残りの半額を限度といたしまして、国が債務について保証する。ただし滝井先生ただいま御指摘のように、会社がつぶれますと、金融機関は担保を持っておりますから、当然担保権を行使いたします。その担保権を行使して、残りの半額をこえて銀行が債権を回収する場合には、その保証はしないということになります。かりに残りの担保格——担保権といいましても、炭鉱は価値のない担保を持っておる方も多いことでございますので、その場合に一割くらいしか、あるいは二割くらいしか担保権行使で債権の回収ができなかったという場合には、残りの五割と二割なら二割の差額だけ国は債務を保証する、そういう内容でございます。
  145. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは銀行があまりよ過ぎますよ。倒れて、なおまた元利均等償還を五十億しておった。あと五十億残っておる。その半分の二十五億やる。その上に今度は合理化の買い上げの三割は銀行が持っておったとすれば、三口全部とってしまうということになったら、銀行は万万歳ですよ。他の債権者というのは一体どうすればいいかということです。だから、こういう肩がわりをしている炭鉱がつぶれたときには、二分の一やるのが限度である。あとの三割については、未払い賃金とか鉱害へ持っていくんだということにしておかぬといかぬ。これは主張すればできないことはない。というのは、債権者のほうは鉱害が多かったらゼロにすることができるんだから。政令でそうなっておる。鉱害が非常に多かったら債権者に一文もやる必要はない。佐成さんのところでよけいに留保すればいいんだから。
  146. 井上亮

    ○井上政府委員 ちょっと滝井先生誤解しておられると思いますが、ただいま私が答弁いたしましたのは、要するに交付金の二千円とか、また交付金の問題ではございません。これと関係はないわけです。私がいま答弁しましたのは、これの配分にあたっては、私は、金融機関については、引き上げに際しまして配慮する必要はない、現行程度でよろしい、こういうふうに考えているわけであります。ですから、いま私答弁しましたのは交付金と全然無関係でございます。これはそうじゃなくて、別途の制度的なものとしてそういう配慮をする。残った半分だけを限度として、いま滝井先生のおっしゃったとおり、国は債務保証する。したがって、むしろ担保権を行使してその半額以上に債権を回収すれば、それは国は何も見ない、こういう立場でございます。だから最高限度は残りの五割だという意味であります。だから二千円とは関係ございません。
  147. 滝井義高

    滝井委員 肩がわりを五年した。ところがその炭鉱が五年でつぶれて、なおあとに、いまあなたのことばをかりれば五十億残っておったとすると、担保をみんな持っておるわけですから、担保を、肩がわりすれば解除してくれるわけじゃないから、その残った半分の二十五億をおそらく年賦払いで五年なら五年で払うのでしょう。そうすると、炭鉱がつぶれたとたんに、今度は鉱区の抹消をするわけです。売りに出す。交付金を申請して、必ずやります。そしてその鉱区が二十億あった。そうすると、二十億のうちから銀行は六億を吸い上げていってしまう。銀行は吸い上げる権利がある。その吸い上げを私はやらせる必要はないというのです。この答申では吸い上げることになっておる。その交付金には残りの二分の一を、「未回収元本の一定割合を直接金融機関に対して補給する。」こうなっておるわけですから、だから二十五億を補給する。そのほかに、今度は合理化をして交付金というものが出れば、その中から三割を銀行が、一人しか債権者がいなかったときにはとれるわけです。そういう二重の手厚い制度をする必要はない。もしあなたがそれをする意思がないなら、意思がないと言っておってもらったら、佐成さんのほうは非常に得することになる。
  148. 井上亮

    ○井上政府委員 二千円の配分の問題につきましては、先ほど答弁いたしましたように、私どももう少し慎重に検討したい。千二百円から二千円に引き上げしましたものにつきましては、いずれにいたしましても、これは賃金債務なり退職金債務なりをできるだけ優先的にやりたいという配慮もいたします。ただそれにあわせて、やはり地元の関連中小企業に対する配慮もこの引き上げの中でいたしたいということを申し上げたわけでございます。  鉱害銀行につきましては従来程度の、千二百円のときの割合程度のものを確保すれば一応よろしいのではないか。金融機関については——なお先ほど半分と申しましたが、誤解のないように申し上げておきますが、現在大手炭鉱の残高は二千億以上あるわけでございます。そのうち、中小と合わせまして大体一千億程度異常債務肩がわりするということですから、その肩がわりする分についての残りの半分、こういう意味でございまして、なお千億の債務はそのままでございます。したがいまして、これをこのままにすれば今後——特に今度の答申では、昨日の植村さんが御指摘になりましたように、制度の骨格、助成策の骨格はできましても、特にことしから来年にかけての金融問題が非常に問題になる。金融問題については答申ではしっかりやれということだけうたわれておりまして、あと全部政府の責任のようになっておるわけでございます。まことに容易ならぬ事態でございます。特に今後石炭鉱業が安定した経営を続けますために1金融機関はみんな炭鉱融資を逃げたがっております。これを再建整備計画やなんかつくりますときに肩がわりをいたすわけですが、肩がわりするときは必ず再建整備計画をつくらせる。その過程で金融機関に一定の融資を条件づけて肩がわりする、こういうやり方をやろうといたしておるわけでございますので、その程度のことをしないと、金融の確保ができないというふうに考えておるわけでございます。
  149. 滝井義高

    滝井委員 未回収元本の一定割合を金融機関に、つぶれた炭鉱の分をやるのは差しつかえないというのです。しかしその金融機関がさらに閉山交付金の三割を持っていくことは、二重にもなってあまりよ過ぎるじゃないか、こういうことなんです。だからそういう場合には、鉱区を抹消して閉山交付金をもらう場合には、その三割を遠慮してくれ、こういうことなんです。遠慮しなければ、政令で遠慮させるようにしますぞ、こういうことなんです。
  150. 井上亮

    ○井上政府委員 よ過ぎるかどうか、これは私どもももう少し検討したいと思いますし、先生方にもひとつ御検討いただきたいと思いますが、いずれにしましても私個人のいまの考え方では、閉山交付金の中の三割といいましても、今度は二千円の三割というふうには考えておりません。ですから、少なくとも現在千二百円の幅の中程度のものはやはりなお必要ではないか、こういうことを申し上げたわけでして、ただそれがどうかという点につきましてはさらに今後私ども検討してまいりたい、そういうふうにきめてかかっているわけではもちろんございません。しかしやはり相当そういった配慮がありませんと、これから特に石炭鉱業が市中の融資を受けるということがきわめて困難な事態がございますので、私どもとしてはこの肩がわりとかいうようなものをやる機会に、整備計画の条件として、金融機関に肩がわりすると同時に、またできるだけ借り得るというような体制をつくりたいと思っておりますので、それらとの関連で検討させていただきたいというふうに考えております。
  151. 滝井義高

    滝井委員 それではこの問題は、もう少し具体的な政策が出てからわれわれも検討させていただきます。しかし現在の制度としては政令で留保することは可能になっておるわけです。それは現在の法体系の中で可能になっておる。ただ、しかし、その場合に銀行が鉱区の抹消の判を押さぬことはある。しかしある程度銀行を説得して、他の債権者との関係もある、鉱害未払い賃金関係もあるということで、銀行が温情の心を示せば、それは可能になるという制度的な方法もあるわけですから、ここで、その場合は三割は遠慮させるという井上さんの言質はしばらく留保しておきます。
  152. 有田喜一

    ○有田委員長代理 伊藤卯四郎君。
  153. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 労働大臣に先に一点だけお伺いしたいと思います。  御存じのように、三年前に三井三池炭鉱が爆発をいたしました。三年たっておりますけれども、この間、九大、久留米大学、熊本大学の三つの大学病院をたずねて、それぞれの担当のお医者さんと自己喪失にかかっておる患者の人々の状態を見てまいりましたが、これは永久に戻らないだろうということを病院側でも言っておりました。まことに見ること自身が胸が痛くなって、もうそこにおることに耐えられぬというような感じがしたわけでございます。そこで私が痛感しましたことは、これはもはや手おくれになったな、これは坑内からあげられてすぐ手当てを施せばなおり得たのではないかということを感じました。というのは、夕張炭鉱が爆発をいたしましたときに、私どもはこの石炭対策特別委員会からすぐ実情調査に参りました。   〔有田委員長代理退席、委員長着席〕 そのとき、病院に参りましたところが、あの例の鉄の肺という治療法でございますが、坑内からあげられたときはほとんど意識もない、全く自己喪失というか、息をしているだけであったそうです。私どもが参りましたときは、たしかその鉄の肺の中に入れて一週間くらいたったのでしょうか。ところが、患者は鉄の肺の中に入って外のほうとはマイク連絡で話をしておりました。院長が、気分はどうだと聞くと、しごくいいです、というようなことで、院長と中の患者とが非常にはっきりした応答をしておりました。あと四、五日もたてば、この鉄の肺から出して完全になおると思います、こういうことを院長が言っておりました。それを見ました私が、いまの九州の三病院をたずねて担当のお医者さんたちに、夕張でこいうような治療法を見てきたが、この自己喪失になっている患者の人たちも、すぐあのような鉄の肺の中に入れて酸素のみを吸収させたらなおり得たのじゃなかろうかということを聞いてみました。あるいはそういうことがすぐ施されてあればなおり得たかもしれませんということを言っておりました。もっとも九大で聞いてみますと、あの酸素かんの酸素を一時間に五本も送り込むというほど酸素を使うのだということを言っておりました。だから、ものすごく酸素のみを送り込んでやる治療法だと思いました。  ところが、この鉄の肺というのは日本に三つしかないということを言っておりました。北大に一つ、東大に一つ、九大に一つしかないということでありました。だから、いかんともしようがなかったのですということを久留米大学でも熊本大学でも言っておりました。私、そのとき、こういう貴重な治療方法である鉄の肺を全国で三十くらいでもつくっておったならば、こうした一酸化炭素中毒で自己喪失した人々を相当なおし得るのではないかということを、お医者さんと話しながら痛感をいたしました。聞いてみますと、これを一個つくるのに五百万円とか七百万円とかかかるだろうと言っておりましたが、七百万円かかってみたところで、三十つくって二億一千万円ですか、大したものではございません。こういうことを現に痛感してきたのでありますが、労働省あたりでもこういうことをお考えになったことがあるかどうか。  それから、あに炭鉱ばかりではございません。先般、栃木でございますか、あの水路でも、やはりこういう中毒で倒れた人が死傷者とともにあったようでございます。それからやはり今後排気ガスその他の新しい害毒ということが相当叫ばれておる今日でございます。だから国として三十や四十のこういう鉄の肺をつくって、直ちにそれで応急処置をするということ、これはきわめて重要な使命を持っておるものではないかということを感じましたが、こういう点を調査になったか、またつくろうというお考えがあるか、ぜひこれはつくるべきであると思いますが、どうかという点をひとつ伺いたい。  それからこれに関連しますが、東大に時実利彦という神経脳細胞学者として世界の権威者がおられます。この人が書かれた本がございます。われわれしろうとが読んでも非常によくわかるように書かれてありますので、私、何回か熟読をしてみたことがございます。東大では、そういう関係からつくられたのかどうか知りませんけれども、ノイローゼにかかったりなにかした人、もう手の施しようがないという人でも電気治療で完全にこれをなおして出しております。こういうことを、三池のこの自己喪失になっておる、いまやいかんとも施しようがないという人々に対して、国のほうで予算を見てくれるなら、まだ自分たちとしてはあれもやりたい、これもやりたいという考えがございます。しかしながら労災保険の関係では、このほうをよくしようとすると、ほかの患者の分を持ってこなければなりません、そういうことでいかんともすることができない、まことに残念です、こういうことを言っておりました。でありますから、この東大の時実利彦という世界的な脳神経細胞の権威者の意見などというものもお聞きになったか、あるいはまた、そういう電気治療法などで、現にノイローゼ患者などもなおしておるのでございますが、こういう点においてひとつ相談をしてみて、そして何とかなおるものならなおしてやるというようなことを考える必要があると思いますが、こういう点について、労働大臣はどのようにお考えになられるか。もちろん反対される理由はないと私は思いますけれども、これらをやろうという強いお考えが起こるかどうか、そういう点をひとつお聞かせ願いたい。
  154. 小平久雄

    ○小平国務大臣 まず鉄の肺等の施設の問題でございますが、これは先生がお話しのように、一酸化炭素中毒の治療については非常に効果をあげておるわけでございます。そこで労働省といたしましても、このような施設はぜひなるべく早く数も増すし、またその配置等についても十分考慮いたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。現在どうなっておるかと申しますと、このいわゆる鉄の肺、可搬式の高圧酸素ロックは、現在のところ九州労災病院に一基配置をされておるわけでございますが、この種のロックは、本年中にさらに美唄、釧路、福島、山口、筑豊、長崎、この六つの労災病院にも配置をすることにいたしております。この鉄の肺は御承知のように持ち運びのできるものでございますが、それよりももっと完備いたしたものとして、九州労災病院に生体看視の各種の記録装置を備えました高圧酸素治療室というのが本年の六月に完成をいたしております。現に患者の治療にも当たっておるわけであります。この高圧酸素治療室は、本年中にさらに美唄の労災病院にも完成することとなっております。このほか小型のものは千葉の労災病院に現に設置されておる、こういうことでございまして、今日までもできるだけ努力をいたしてまいりましたが、先生のお説のとおりでございますので、逐次できるだけ早く施設を増加してまいりたい、このようにいま考えておるわけでございます。  それから先生から、東大の先生の行なっておる電気治療の話がございましたが、もちろん治療の方法についても権威者の方々にいろいろ御研究を願っておるわけでございますが、遺憾ながら一酸化炭素中毒の医療ということは、まだ医学的にも非常にむずかしい、こういわれておるようでございまして、労働省の関係におきましては、たとえば三池の問題に関しましては権威者の方々にお集まりいただいて、医療委員会というものをつくって、それらの先生の御指導のもとにいま治療に当たっておる、こういうことでございますが、さらに科学技術庁の御協力をいただきまして、すなわち炭鉱爆発に伴う一酸化炭素中毒対策に関する特別研究費というものを、四十年度の予算で総額二千九百三十万余をちょうだいいたしまして、各地の大学等のそれぞれの専門の先生方に、数項目にわたっての専門的な御研究を現にお願いいたしておる、こういう実情に相なっております。
  155. 滝井義高

    滝井委員 自治大臣は御用があるそうでありますので、懸案の重要な問題点について、大蔵大臣もおられますからよくお聞きになっていただいて、両者で御答弁をいただきたいと思います。  それは四十年度の予算審議の過程で、実は鉱害復旧にあたって、農地とか家屋とか公共事業等の復旧費の中で、鉱業権者がまだ生きておる場合、いわゆる有権者である場合に、県の負担が当時の法律改正でふえたわけです。たとえば農地の復旧で言いますと、改正前は国が五三・九五負担をして、県が一一・〇五を負担して、鉱業権者が三五を負担しておったわけです。ところが法律の改正で、石炭業者の負担を軽減するというので、農地の復旧で、鉱業権者三五を一五に軽減してやったわけです。そこでその軽減分を国と県がそれぞれ負担をすることになりまして、国の五三・九五が七〇・五五になり、県の一一・〇五が一四・四五になる、こういうように増加をしてきたわけです。そこで、産炭地の県から、こういうことをやってもらってはとても協力ができない、われわれ県は被害者である、加害者でなく被害者だ、その被害者が、炭鉱がなくなって財政が非常に窮屈になっているときに、こういう農地の復旧や家屋の復旧に負担の増をするということは困るということが、非常に強く言われたわけです。当時、私はこの問題を取り上げまして、古武自治大臣、櫻内通産大臣等に質問をいたしました。その結果、これは今度はこらえてくれ、そのかわりに県の負担分については、起債と特別交付金等で見ましょう、こういうことになったわけです。しかし、それは自治省の立場からいうと、自治省の特別交付税という財源のワクの中で石炭政策をすることになって非常に困る、しかし、すでにこういう方針が決定をしたので、自治省もことしは泣きましょうということで泣いてもらったわけです。その結果どういうことになったかというと、いまの県の一四・四五の負担分を一〇〇としますと、その一〇〇のうち八〇を起債で見ます、それから残りの二○は自己資金で負担をしてください、こうなった。そして、その起債で見た八〇のうち五七%は普通交付税で——この理論は、鉱害というのは緩慢災である、一般の暴風による災害とは違う緩慢災であるというので、五七は普通交付税で見たわけです。そして、残りの四三は自己負担にしてください、すなわち県が金を出せ、それから八〇を起債で見た残りの二〇の自己負担のうち、八〇を特交で見ましょう、二〇は自己負担にしてください、こういうことになって、結局、総和三八・四だけ県が見ることになったわけです。これは今年限りだというので、当時の自治省の財政局長が涙をのんで、これをのんで帰ったわけです。しかし四十一年度はだめですよ、こういうことだったのです。ところが、四十一年度の予算編成にあたって、自治省が弱かったか、通産省が弱かったかどうか知りませんけれども、また現状のとおり押し切られちゃったわけです。そこで、今度は自治省のほうからわれわれのほうに文句がきたわけです。滝井さん、あのときにはあなた方も、これは櫻内通産大臣なり吉武自治大臣とあれだけ約束をしておったじゃないか、その政治家が約束を破るとは何ごとだと言って、今度は自治省から私たちが突き上げられる状態が出たわけです。  そこで、石炭政策の抜本策をおつくりになるときに、やはりこれは当時の約束があるので、明白に果たしてもらわなければならぬという要求をしました。そうしたら、今度の答申の中で、地方公共団体の財政負担政策の中に、「鉱害復旧事業に伴う地方公共団体の財政負担については、関係地方公共団体の実情に応じ、適切な措置を講じその軽減に努める。」こうなったわけです。そこで、明らかにこれは軽減をすることになったわけですね。一体どの程度軽減をする方針なのか。これは実は昨日来ておった審議会委員皆さん方にも意見を求めておくべきであったのだけれども、どうも委員の方が黙秘権を行使するものだから、こっちも腹が立って言わなかったのですが、しかし、もうきょうはお互いに政治家同士の間ですから、前の約束もあるし、福田さんは、おれはそのとき知らなかったと言われるかもしれないけれども一あのときは田中さんが大臣ですか、もう福田さんですか、とにかくこれはそういうように約束をして、四十一年度からやると言ったのだけれども、四十一年度にできなかった。  そこで、やってもらいたい。それには、これはわれわれの見解としては、かつて戦時中に特別鉱害というのがありました。そのときには、自治体の負担は一割だったのです。そこで、できれば県の負担を一割にしてもらって、そして、その一割分について、いまのような方式で八割は起債、二割は自己負担、こういうようにしてもらいたいと思うのです。そこで、まず自治大臣のほうからその見解を述べて、そして通産大臣の見解を述べて、最後に大蔵大臣がよろしかろうということでのんでもらう、こういう順序で明らかにしておいていただきたい。
  156. 永山忠則

    ○永山国務大臣 お説のようないきさつもございますし、答申の線にも沿ってやるべきだと考えますので、やはり鉱害の復旧事業に関しましては、地方負担を軽減するということに、大蔵大臣とよく相談して努力をいたしていきたい、こう考えております。
  157. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 その点では、答申をよく尊重するという基本的なかまえでございます。自治省とよく相談をいたしまして、善処することにいたします。
  158. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、自治大臣、その一四・四五を一〇〇とすると起債八割、その八割のうち五七%が普通交付税なんですね。これは鉱害を緩慢災害と見たのです。そこで、これもやはり公共災害復旧事業債並みに九割五分とかということに引き上げる必要が出てくるわけですよ。その検討もあわせてやるのかどうかですね。これは五七じゃやはりどうにもならぬわけです。
  159. 永山忠則

    ○永山国務大臣 負担区分の軽減と見合いまして、元利補給の率の問題も、検討を十分、大蔵大臣と相談してやりたいと思います。
  160. 滝井義高

    滝井委員 まあきょうはまだ最終段階ではございませんから、両大臣から非常にいい地方財政前進のための発言をいただきましたから、相当これは前進するものといういまのニュアンスは明白でございます。そこで、これ以上詰めずに、きょうはきれいに下がっておきたいと思います。どうぞよろしく。
  161. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 通産大臣はおられぬようですけれども石炭局長がおられるから、石炭局長意見大臣と同等に受け取ることにして伺います。  炭鉱保安の問題です。これは政府が責任を持って力を入れてやらなければならぬということが大きな問題として取り上げられてきておることはもう申し上げるまでもありません。しかし、いかにガス爆発、炭じん爆発を起こさせないようにしても、これはやっぱり避けがたいものがあります。そこで、一そうこれには注意をし、爆発防止の保安対策の完ぺきを期してもらわなければならないが、ついては、この保安に対する予算、それから石炭特別会計の中に油の輸入関税からの分も入れるわけですが、こういう中から、保安対策に対してどのようにこれを十分目的を達成するためにやるか。やっぱり金がなくちゃやれぬわけですから、そういう点に対して、予算関係あるいは特別会計からどのようにこれを見ようとしておられるか、その点が、同僚各位の中から詳細いろいろ質問されておりますけれども、この点を、まだ明らかになっておらぬようですから、お聞かせを願いたい。
  162. 井上亮

    ○井上政府委員 石炭保安の問題につきましては、ただいま御指摘がありましたように、やはり石炭政策の全く一環でございますので、そういった立場から、予算について、特に保安問題について遺憾なきを期していきたい。ただ、この具体的な予算内容をどういうふうに組むかというふうなことにつきましては、まだこれから予算シーズンに入るわけでございますので、なお政府部内で内容につきまして、特にこの答申でも相当保安に重点を置いてうたわれておりますので、そういった点をさらに政府として十分検討して織り込んでいきたいというふうに考えております。
  163. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この石炭特別会計の中からも、保安対策予算というものは出せるものなりという上に立ってお考えになっておりますか、どうですか。
  164. 井上亮

    ○井上政府委員 石炭関係プロパーの問題については、当然一体として考うべきだというふうに考えております。
  165. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 さらにお伺いしたいのは、御存じのように、炭鉱は合理化買い取りを始めて以来、終閉山というものがものすごく行なわれてきておるわけです。ところが、炭鉱をやっておるときでさえも、今日のように二千億からの大きな借金がある。それをどのようにして再建、健全経営体にしていくかということが、今日大きな問題になっておることは言うまでもありません。したがって、この終閉山になった炭鉱は、やめますというと、一、二の大きな会社は別としまして、それでもなおかつ山をやめてしまいますと、残る鉱害については、もう責任を持ってなかなかやろうとしません。したがって、もうないものは何ともしようがないじゃないかというところから、ないそでは振れぬということばをよく使っておるようですが、もちろん、われわれもそのことはわかっております。また鉱害を受けておる被害者もそれはわかっておるのです。ところが、山が経営されておる間は、やはり炭鉱があるために、自分らのいろいろなことがどうやらやっていけるというので、実は鉱害が起こっていても、被害者はわりあいにしんぼうをしてきておるのです。ところが、山が一たび終閉山になってしまいますと、会社がなくなるわけですから、したがって、今度は、もう遠慮しておったら永久に鉱害を復旧してもらえない。特に田地田畑の問題は、これは明らかにわかっていますし、鉱害復旧事業団がやるわけでございますから、あるいは臨鉱でやるかあるいは無権者鉱害、無資力者鉱害としてやるか、いずれにしてもやってもらえます。ところが、家屋や町全体、こういうところが、会社がある間は遠慮しておりますけれども、会社がなくなりますと、今度は一斉に立ち上がって、何とかしてもらいたいと言いますけれども、会社はなかなかこれに応じてくれない。そういうところから、地方通産局に法律に基づく制度の上から、当然役所は科学的な実態調査をしてもらいたい、また、せなければならなくなっておるわけです。しかし、これも訴えますけれども、なかなかこれをやってくれません。やってくれないということばに私は尽きるのではないかというような気がしております。  というのは、会社は鉱害でないと言う。しかしながら、鉱害であることはもう明らかになっておるんです。だから、見舞い命としてならやるが、鉱害としてとなるとどうとかこうとかということで、水かけ論争いでなかなかおさまりがつかぬ。そこで、見舞い金でもしかたがないからと言っても、この見舞い金もなかなか出してくれない。それならひとつ通産局の法律に基づく鉱害であるということを科学的調査によって認定してもらおうと、この調査をお願いしてもやってくれない。また、役所のほうでは、鉱害であるということをはっきり言うと会社に差しさわりが起こる、鉱害でないと言うと被害者に差しさわりが起こる、両方立てれば身が立たぬというわけで、結論をなかなか出し得ないでおるわけです。しかし、それだけでは役所の信用がなくなりますから、私は、双方立てれば身が立たぬというようなそういう保身の術でなく、やはり法律に基づいて正々堂々と早く調査して、そうして結論を出して、そう膨大な鉱害復旧あるいは賠償資金ではないのですから、そういう点は、役所の権威に基づいて早くやらすべきであると私は思いますが、そういう点については大臣名なりあるいは石炭局長名なり、そういうところから地方に出されれば、これは上意下達はきわめてなりやすいんですから、そういう点が行なわれておりませんが、こういう点は局長も相当耳にしておられるはずですが、どうですか。
  166. 井上亮

    ○井上政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘のありましたように、鉱害の被害者と石炭業界との間でいろいろトラブルがあるわけでございまして、そういった場合に、解決する手段としまして、科学認定というような制度も現在あるわけでございまして、私どもも、そういう場合には、地方の通産局が間に立ちまして、できるだけ双方の関係調査して、適切な指導を大いにいたしておるわけでございますが、ただ、ただいま御指摘がありましたように、必ずしも十分に御期待に沿えないような事例もあるように私も聞いております。したがいまして、ただいま御指摘がありましたとおり、そういう場合にはできるだけ早く科学認定をしてあげる、あるいは一日も早く双方の話が円滑に行なわれるように、私どもは私どもなりの立場から御指導申し上げることを努力してまいりたいという、ふうに考えております。
  167. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大蔵大臣が非常にお急ぎのようでございますから、ごく簡単なことを一つ。  私は、三木通産大臣に先般も質問しまして、多分三木通産大臣から大蔵大臣お話があったことだと思いますけれども、その辺の点についてひとつ明らかにお聞かせ願っておきたいために伺うのですが、この間私が三木通産大臣にお伺いしましたのは、せっかく炭鉱に取ってかわる近代工業を持っていこうというわけで、産炭地域振興事業団が工場団地造成をしておる。この土地が坪当たり四千円も五千円もかかっておるところがある。ところが、私もそういう事業関係にかなり知っている人が多いものですから、あなたのところの関連事業なり、下請工場なりをできるだけあの近くに、炭鉱に取ってかわる近代工業の土地造成をして、せっかく政府も相当力を入れてやろうとしておるようだから、ああいうところにひとつつくらせろという話をいたしますと、坪当たり四千円も五千円もするところには、とてもよう持っていけませんと言う。坪当たり二千円ぐらいなら、それは相当持っていけるということを聞いております。けれども、事業団としては実費主義ですから、やはりかかっただけの価格で売らなければなりませんから、その自由がありませんが、しかし、二千円程度ならかなりまとまった工場でもいくだろうという話もしております。だから、これをひとつ通産大臣、大蔵大臣と御相談になって、せっかく産炭地域振興事業団が土地造成をして、さあいらっしゃいと待っているのだから、ひとつ二千円程度にして、それ以上の分は国家が損失補償をして売却さすというというようにすれば、相当土地が生きてくると思うから、そういうようにひとつ大蔵大臣と御相談願いたいということを、この間の通常国会でも三木通産大臣に非常に強く相談をしておいたわけでございます。おそらく相談になっておると思いますが、そういうことについて大蔵大臣いかがです。事業団は実興主義であるから、かかっただけでなければ売れぬということは、これはしようがないのです、政府の出先機関、監督機関ですから。そういう場合に、損失補償の問題について大蔵大臣として、それはせっかく土地をつくってペンペン草がはえているようなことじゃしようがないから、せっかくつくった土地を生かそうじゃないかということで、その損失補償を見てやるというようなことについてのお考え、いかがです。
  168. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいまの問題につきましては、通産省であれやこれやと頭をいまひねっておるようでございますが、通産省ともよく相談いたしたいと存じます。
  169. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大蔵大臣よろしゅうございます。そこまで言われたんだから、頭をひねっておると言われるのだから、大蔵大臣は非常にまじめな人ですから、これはもう私はこれで全幅、一〇〇%信用するということにして、期待しております。  もう一点、これは通産大臣にお伺いするのですが、これも前々から問題になっておって、なかなか結論が出ないでおる問題です。というのは、御存じのように、炭鉱が終閉山をしてしまいますと、幾つかの炭鉱で相当炭田を持っておって残る山があるわけです。それは常磐にもあります。あるいは九州、将来は北海道にも出てくるということになりましょうが、いま一番起こっておるのは、やはり九州、それから常磐のほうもだんだん起こってきております。というのは何かというと、自分のところの山には、まだ一千万トンも一千五百万トン以上も石炭を掘り出すことができるという将来性ある、今後十五年、二十年というところがある。ところが、あたり近所の山が十も二十もやめてしまいましたために、そこの水がみんな一カ所に押し込んでくるわけでございます。これは、坑内ほとんど貫通していますから、当然そこへ来るわけでございます。現に、たとえば日炭高松炭鉱という非常に問題になった炭鉱がございます。これと、先般閉山してしまいました大正鉱業、それから大辻炭鉱とか九州採炭というような山がございました。この四つの炭鉱は、坑内が貫通しておるものですから、そこでお互いに金を出し合って、共同排水という形で一カ所からものすごい水を上へ揚げて流していたわけです。それが、坑内がいかに貫通しておるかということの論より証拠の一つなんですが、そういう調子ですから、したがって、今度再建さしてやろうという高松炭鉱の二坑あたりだって、これらの四つの炭鉱閉山してしまっておりますから、この水が押し込んでくるから、ここも当然問題になりましょう。それから三井の田川にしましても、三井の山野にしましても、これもあたり近所の山が十も十五もなくなってきていますから、これがまたみんな水を押し込んでくるわけであります。したがって、残る山は、石炭がまだ一千万トンも一千五百万トンもある、またビルド鉱として政府もやらしたいとしておりますけれども、何ぶんにも水が二倍、三倍になってきて揚げなければならぬということになってくると、そのために採算がとれなくなるというところから、これを坑内の鉱害として、押し込んでくる水揚げの分だけはひとつ何とか国で見てくれぬかということが切なる訴えでございます。またわれわれも、これはやはり何とか見てやるべきであるというところから、石炭局長とも何回か話をし、石炭局長も、それはもっともだと同意をされております。しかし、どのようにしてこれを見るかという問題の解決点はなかなか困難である。外にあらわれておる鉱害なら、一回か二回で済みますけれども、坑内の水が増水してくるのでありますから、どのように見るかということについては問題であります。これは私の考えですが、やはり水揚げの電力料金を計算してみるというのが一番計算しやすいと思うのです。でありますから、この何倍かにふえた増水分に対する電力料金を見てやるというようなこと等で計算されるということが一番計算がしやすいのじゃないかと思いますが、こういう点について、かなり検討する検討すると言われていましたが、どのように検討され、結論が出ておるか、それから、いま私が申し上げる問題についてどのようにお考えになっておるか、この点一点だけお聞かせ願いたい。
  170. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いまのような場合はあり得るわけでありまして、水が集まってきて、それをくみ出すのに相当費用がかさむわけであります。これが、いまの鉱害の中にも入ってないわけですからね。実際は、これもいろいろ苦心をしておるわけであります。気の毒だと思うことは、これはわれわれも同じなんですから、一体どういう形でこれを考えたらいいか。安定補給金という問題もありましょうが、これはなかなかむずかしいだけに、いまここで、こういうふうにいたしますということをお答えできないことは残念ですが、今回の石炭安定策ともにらみ合わせてもう少し研究をしてみたいと思っております。
  171. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もう以上で、いろいろ時間の関係等もあり、他の大臣との関係もあるようですからやめますが、この際、三木通産大臣に一言だけ要望申し上げておきたいと思います。  もうこれはかなり長い問題でありますし、だんだん今後起こってくる問題でございますから、ひとつ至急結論を出して、この方針でこの問題を解決していくということをお出しになっていただきたい。どうも役所は検討すると言って、二年も三年も、五年も十年も検討にかかっておるようです。三木通産大臣はまさかそのようなことはされぬと思いますが、至急結論を出して、それで方針を出して、この問題を解決していくということを、少なくとも来たるべき通常国会開会までくらいにはひとつ結論を出してもらいたいということを強く要望して、私の質問を終わります。
  172. 野田武夫

    野田委員長 蔵内修治君。
  173. 藏内修治

    ○藏内委員 今度の答申について、大蔵、通産両大臣に少しこまかく御質問を申し上げる予定でおりましたが、いろいろな都合があって時間がだんだん迫ってまいりまして、大臣の御都合もございましょうから、きょうはごく基本的な問題の一、二点だけに、特に大蔵大臣質問をとどめておきたいと思いますが、さらに来月適当な時日に、ひとつ御答弁を願いたいと思います。  石炭の今度の抜本対策、この抜本対策についての答申が出ておるわけでありますが、この答申というものは、その御苦労ははなはだ多といたしますけれども、世評は決して芳しくない。芳しくない理由としては、業界や産炭地域などの関係における期待があまりにも大き過ぎたというようなこともありましょう。そういう期待に沿っていないというようなところもありましょうし、各政党やら衆議院の議決にも必ずしも沿っていないという点もいろいろあると思いますが、基本的には、やはり抜本策と呼号したのにしては要するに自信がない。これだけやれば必ず立ち直れるはずだという自信のほどが、この答申の行間に読み取れない。要するに、石炭企業内部の努力も必要だし、外部からの援助も必要だと、いろんなことがやってあって、一体どっちが重点なんだかはっきりしない。われわれから見れば、業界はとてもこれ以上内部の努力は期待できないという気がするのですが、それにしても業界内部の立ち上がりというか、努力というものをあまりに大きく要求し過ぎておる、そういう気がします。  それらの問題について、いまこまかく申し上げておる時間がございませんので、特に大蔵大臣にしぼって御質問いたしたいと思いますが、これらの石炭対策を今後やっていこうという場合に、特別会計が財源になるわけでございます。この特別会計は、言うまでもなく重油関税一〇%ということでありまして、大体において五百億程度のものであります。だから、抜本策としての資金総ワクとしては、これではちょっと少ないのではないか。貧弱ではないか。これについて大威大臣は、一体この程度あれば十分だとお考えになっておられるのかどうか。  もう一点申し上げておきますが、御承知のとおり、この重油関税の関税収入というものは年を追ってふえていくものであります。これに逆比例というか、反対に石炭に対する対策費というものは、初年度に多くて、対策効果があがってくればおそらく漸減していくであろうと思います。要するに、逆のカーブを描いていくんじゃないかと思います。そういう際に、もし政府あるいは業界が期待するだけの対策が、そのワク内で十分に行ない得ないという場合には、この特別会計には、たとえば不足分、赤字分について、米なら食管特別会計でやっておるような一般会計からの補正ができるのであるか、あるいはもしそれができない場合には、資金運用部資金等を借り入れるというような方法を講ずる意思があるのかないのか。もしそういう措置が講ぜられるとするならば、この運用というものはかなり弾力を持ち得ると思う。しかしながらこの財源のワク内でやるんだ——ぼくらがこの答申を読んでみますと、少ないなら少ないこのワク内でやるんだ、もうそれ以上は出さないのだという気持ちが、どうも今度の答申の中には見えておるのでありますが、一体この辺のところは大蔵大臣はどうお考えになっておられるか、ひとつ御答弁願いたい。
  174. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 最初に、対策についての審議会答申が、どうも不十分じゃないかというようなお話でありますが、これは政府がこれに対して態度をきめる。これは国会の御決議もありますし、また各方面の御意見も聞かなければならぬが、ともかく日本の民間の衆知を集めてこういう知恵がしぼられた、こういう処方せんが出た、こういうのでありますから、この答申につきましては、できる限り私はこれを尊重するたてまえもとりたいし、同時に、そういう答申でございますので、これは石炭企業の今後の再建には最も有効な手段である、こう一応考えざるを得ない非常な画期的な内容を持っておるわけでありまして、一千億円のとにかく債務の肩がわりをする、これはほんとうに画期的な措置だと思います。しかし、そういう画期的な措置でありまするが、政府におきましてはこれを何とかして実現しなければならぬ、こういうふうに思います。  それから、その中に盛られている特別会計、これも私は尊重していきたい、そういうふうに考えまするが、この特別会計は、その性質が、これは一般会計で見るべきものを一応会計の整理のたてまえから特別会計にした、こういう性格のものでございます。でございますので、事業を別にやっておるわけじゃございません。したがって、この会計が借り入れ金もする、もしそういうことがあれば、これは赤字起債というものに相当するような性格のものであります。でありまするから、これは慎重に対処しなければならぬ問題だというふうに考えておりますが、ともかくその原油、重油の関税収入は年を追うてふえていくわけです。相当の伸びを示す、こういうふうに見ておるわけであります。昭和四十二年においても相当額のものが出るであろう、こういうふうに見ておりますので、いまこの答申を実行するということにいたした場合に、その額で大体支弁し得る、あるいは多少余裕を生ずるか、こういうふうな感じもいたします、これはよく詰めてみなければわかりませんが。  将来のことにつきまして、何か対策費が減るのじゃないか、こういうようなお話もありますが、将来の伸びというようなものも考慮しながら、五カ年計画の全体をにらみながら将来のこともやっていかなければならぬが、私は減る、こういうふうには考えておりません。むしろだんだんと増加していくであろう、かような見解でございます。
  175. 藏内修治

    ○藏内委員 今度の答申の骨子というか、重点になっておる肩がわり措置であるとか、あるいは安定補給金の交付というようなことが、従来の石炭政策にしてみれば画期的というか、非常に前進であるという点はわれわれも認めます。しかしながら、こういうものが実際に効果をあげて展開していくだけのその他の条件、そういうものを充足させるというような問題は、今後の予算措置に待つのだということになっておるわけです。それならば全部の問題が予算措置かというと、これらの問題の中で重点的な項目は、すでにがっちりと固めてあるわけです。たとえば、この肩がわり措置にしても、こういう肩がわり措置だという元利均等償還方式という方式をがっちりときめてある。閉山交付金は二千円だと、額まで明示してきめてある。安定補給金にしても、トン当たり百円だときめてある。肝心なところは全部きめてある。あと市中銀行であるとか、政府金融機関であるとか、政府が直接文句を言わなくても、チェックしなくても、ほかからチェックしてくれるようなところは、大体あと予算措置にまかしてある、こういう形が今度の答申の形じゃないかと私は思う。それならば業界やらその他関係者が不安を持つということは、これは当然ではないかという気が私はするのです。そういう点は大臣どうお考えになりますか。
  176. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 この答申自体は、業界の意見もつぶさに伺った上つくられたものというふうに私は聞いております。私も業界の人の意見も聞いておりますが、まずこれでやっていかなければならぬ、やれる、こういう風潮である、こういうふうに思っています。問題は、予算の問題もあります。これはいろいろ答申にも盛られておりますが、当面の金融をどうするか、これであろうと思うのです。これにつきましては最善の努力をしていく、こういうふうな考えでございます。
  177. 藏内修治

    ○藏内委員 大蔵大臣に対する質問は、あと多賀谷委員がもう一人、簡単だそうですがあるので、最後に一点だけ大蔵大臣に伺っておきます。  今度の石炭の特別会計に、入れる費目というよりも、入れない費目はどういうものがあるか。たとえば、一例を申し上げてみますと、電発火カの増設分に対する建設費、あるいは産炭地域振興事業団あるいは合理化事業団、こういうように財投から出資しておった分、それから鉱害、産炭地域振興費、いま申し上げた分は、特別会計の内ワクでありますか、外でありますか、大臣の御見解をひとつお聞かせ願いたい。
  178. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 まだこまかいことは検討しておりませんが、大筋を申し上げますと、産炭地の公共的事業、これはまあ石炭対策と言えば言えないこともございませんけれども、一般のものであるというふうにも考えられますので、これはこの特別会計から除外したい、こういうふうに考えております。そうそう石炭関係で除外するものが多いことにはならぬ、おもなものはそれである、かように御了承願います。
  179. 藏内修治

    ○藏内委員 電発の建設費などどうなりますか。
  180. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 それはどうなりますか……。
  181. 藏内修治

    ○藏内委員 それじゃ、大蔵大臣質疑多賀谷君からあるそうですからかわります。
  182. 野田武夫

    野田委員長 多賀谷真稔君。——多賀谷君に申し上げます。大蔵大臣の時間の関係がありますから、御注意の上御質問願います。
  183. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 通産大臣には、私は産業政策上いろいろ聞かなければなりませんが、大蔵大臣の時間の関係がありますから、大蔵大臣に先に質問いたしたいと思います。  そこで、いま藏内さんから特別会計についてお話がありましたが、この特別会計を設けたゆえんのものは、単に一般会計との区別ということだけではないでしょう。やはりこの重油の輸入の関税を財源とする、しかも、先ほどからお話がありましたように、支出とそれから収入というものが必ずしも並行的にいかない、だから、この五年間なら五年計画の中でやはりこの支出をし、そうしてそれを財源として充てる、こういう、少し一般会計よりも長期的に見ようという考え方があるのじゃありませんか。先ほど佐藤総理から、特別会計について云々議論をする必要はないけれども、大体特別会計の趣旨からいって、単年度に限るべきでないというような趣旨の答弁があったのですよ。ですから、私は、やはり特例会計であり、しかも財源というものがあるものにリンクしておるわけですから、これは五カ年なら五カ年として見るべき性格ではないかと思う。少なくとも総理はそういう気持ちでおっしゃったと思うのですが、大蔵大臣はどうですか。
  184. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私は、これは事業会計じゃないのだ、いわゆる整理会計の典型的なものだ、こういうことを申し上げておるわけです。ただ、五年計画というものがあり、その整理会計の運営方針として、その財源は原油、重油の関税を充てる、こういうことにしておりますので、その五カ年間における原油、重油の収入、こういうものを弾力的に見ていかなければならぬ、これはもうお説のとおりでございます。
  185. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 事務当局にお尋ねしますが、四十一年、四十二年、四十三年、四十四年、四十五年、四十六年と、大体重油関税の伸びはどうなっていますか、数字的にお示し願いたい。
  186. 井上亮

    ○井上政府委員 明確には資料を持っておりませんけれども、来年度は石炭対策財源に回るであろうと思われますのは大体五百億程度、それから四十五年度が、たしか私どものほうの計算ですと、同じような計算で六百五十億程度、こういうことになっております。
  187. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、それは関税の十二分の十ということではないですね。五百億ということになると、一二%のうちの一〇%ということよりも、何か控除したものがある、こういうことなんですね。
  188. 井上亮

    ○井上政府委員 一二%のうちの一〇%で計算しております。それから控除は、要するに電力、鉄鋼の還付は一応特別会計から見るという前提で、したがいまして、それ以外のナフサその他の控除は控除いたしております。こちらに入れないで除いておるわけです。
  189. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 五百億ないし六百五十億という四十二年度並びに四十五年度それぞれの数字は、一〇%よりも少ないでしょう、こう聞いている。
  190. 井上亮

    ○井上政府委員 若干少ないわけですが、それは、やはり関税の還付されるものの額が上がっていくことになりますから、それだけ引かれる分が大きくなる、こういうことになります。
  191. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはさらに数字を詰めていきたいと思いますが、先ほど、金融問題が非常に重大だと大蔵大臣おっしゃったわけです。そこで、現在再建資金融資制度というのがあるわけです。これは、炭鉱としては将来伸びていくけれども現実に困っておるものに対して、現在すでに行なっておるわけです。この答申でもさらにそれを適用する、そうして「無利子化を図る。」とこう書いてある。これは当然存続され、活用されるわけでしょうね。
  192. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 現行の再建資金につきましては、引き続きその存続を考えておる次第でございます。
  193. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その再建資金と再建整備計画との関連は、どうなりますか。
  194. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 実は、今後の炭鉱の再建整備につきましては、一応各会社から再建整備計画をとって、審議会のほうでも相当つぶさに検討したところでございます。しかし、今後どの程度実際の閉山が行なわれるか、また、その閉山の趨勢に伴いまして、真に再建を要する企業はどういうものであるかということは、かかって今後の詰めにかかるわけでございます。再建資金のワクにつきましては、所要の額はぜひ確保するようにつとめたいと思っておりますが、スクラップ計画及び再建計画との関連につきましては、まだお答えする段階になっておらない次第であります。
  195. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 肩がわりをやります企業の再建整備計画を出す、その再建整備計画の策定に基づいて肩がわりを行なうということですが、これと、いわゆる再建資金融資制度との関連はどうかということを聞いておる。ですから、続いてさらにお聞きいたしますと、肩がわり資金というのは、再建整備法という法律をつくってそれに基づいて行なう。ところが、その間残念ながらかなり期間があるわけですね法律を通過させなければならない。そうして、聞くところによると、四十二年度から肩がわりをやるというのです。これは四十二年度では間に合わないのですが、その期間がある。一方、再建委員会を開いて現行の再建資金の融資を受けなければならぬ炭鉱も出るかもしれない。ですから、私はその関連を聞いておるわけです。ですから法律ができて、肩がわり制度ができるまでの間はもちろん、その後も、再建資金の融資方法はとられるかどうか。さらにあらためて聞くと、法律施行前においても、現行制度は行なわれるかどうか。
  196. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 これは石炭局長の守備範囲かと思いますが、先生御存じのとおり、現行の再建資金は、炭鉱会社のうちの特に再建を要するものに重点を置いて貸し出されておるわけでございます。したがいまして、今回の肩がわり措置によりまして、当該再建会社につきましても相当程度の経理内容の改善が行なわれる。しかし、私どもといたしましては、その肩がわり措置のみをもってしてはなかなか救済できないような企業があるのじゃないか。これに対しましては、やはり再建資金を肩がわり後もさらに延長いたしまして、その有効な活用をはかって何とかやっていきたい、こういう感じでおるわけでございます。
  197. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、再建整備法ともいうべき法律の前にもあとにも行なわれる、こういうように考えていいわけですね。いまの答弁は法律ができた施行後の話でありましたが、その前にも行なわれると考えてよろしいですか。
  198. 井上亮

    ○井上政府委員 ただいま吉瀬主計官からお答えしたわけですが、考え方は全く同じでございますが、もう少し補足的にこまかく御説明申し上げたいと思います。  まず肩がわりいたしますときには、肩がわりの条件といたしまして、やはり各企業全部再建整備計画というものをつくっていただきます。その中では企業として残されたあらゆる合理化を織り込んでもらった内容にいたしたい。その内容を見まして適切な計画であるというふうに認めました場合に肩がわり実施する。肩がわりに際しましては、もちろん金融機関が肩がわりするわけですから、金融機関の協力もその中で前提にしたいというふうに考えます。  それからなお再建資金との関係ですが、再建資金につきましては吉瀬主計官答弁されたとおりでございますが、実際の問題としては、大体大手につきましては各社全部、中小につきましてもおそらく、私のいまの想像では、条件緩和をいたしますれば数十社この肩がわりの対象になると思います。そうなりますと、その全部につきまして再建整備計画を組んでもらう、こういうことになります。したがいまして、その中で相当精緻な検討が行なわれると思います。そこでいろいろな企業の実態の把握ができるわけですが、答申で申しております再建資金の交付は、その中でさらに石炭対策上特に存続を必要とする企業というものについて立ち上がり資金として再建資金の融資をする——これは融資でございます。というような制度答申ではうたっております。したがいまして、再建整備計画と再建資金の計画とを区別して考えますならば、まあ検討は一緒になると思いますけれども、区別してやります場合には特別の再建計画といいますか、何かそういうような形のものについて再建資金の融資をやる。その再建資金の融資はそこで「その無利子化を図る。」と書いてありますが、これは特別会計の中からあくまでも融資の形で出していくということでございます。これは当然返済を一定条件で受ける、こういう形でございます。  あと、再建整備法をつくった前とあとの問題ですが、いずれにしましても再建資金制度というのは現在あるわけです。ただ、現在は財投から合理化事業団が資金を受けまして財投資金を融資しているという制度になっておるわけです。したがいまして、その制度はいまあるわけですが、いわゆる無利子化をはかる制度はやはり特別会計ができませんと、答申でいっていますような運用は困難ではないかというふうに考えております。
  199. 野田武夫

    野田委員長 多賀谷委員にちょっと御注意申し上げますが、先ほど御了解を求めたとおり、大蔵大臣は時間の都合がありますから大蔵大臣に対する質問はこの程度にお願いして、いかがですか。
  200. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、来月十一日にさらにわれわれ答申を精査し、さらに内容的にも検討して質問をいたしたいと思いますから、ひとつ大蔵大臣に出ていただくようにお願いをしておきます。  それから通産大臣につきましても、もう時間もきておりますし、いま組閣前で非常にお忙しいようですからきょうはこの程度にして……。私はやはり産業の根本に対する問題としてぜひ質問いたしたいと思います。
  201. 藏内修治

    ○藏内委員 通産大臣もお忙ぎだそうで、またいずれ後日もう少し詳細に伺いますが、おもな点だけ一、二点ひとつ伺っておきます。  実は、今度の対策の中の一番眼目になる措置で、いわゆる肩がわり措置でありますが、この過重負担の肩がわり措置は、相当長期間にわたってわれわれは交付公債案を主張してきて、また審議会もその空気がかなり強かった。通産省の石炭局の事務当局においても、交付公債案のほうが有力であった。そういうことが、審議会意見が終結を見る直前、と言っては語弊がありますが、かなり近い時点でこれが元利均等償還方式にかわった。この元利均等償還方式について、きのう平田開銀総裁の御説明では、石炭ベースに立てばこのほうがいいという理由を御説明になった。しかしその理由を伺ってみても、私どもはどうも納得できないのです。石炭ベースに立てば私は交付公債案のほうがどうもいいように思う。平田さんはこうおっしゃるのです。交付公債によると一千億円の債務というものは、いつまでもついて回る。この債務は交付公債案によろうと、元利均等償還方式によろうと、原則はこれは償還するというたてまえです。償還するというたてまえならば、これは要するに債務がまだ残っておるのだということには変わりはない。ところが交付公債の場合には金利がついていかないのに対して、均等償還方式の場合には金利がついていくわけです。そういうことですから、私はどうも均等方式のほうが国家的に見てもばかばかしい金利負担というものをさらに背負うような気がする。それからさらに均等方式では、特に中小でもその他大手の中にもございますが、非常に困難な金融をつけなければならぬ。この金融がつかなければ企業が倒産する、つぶれるというリスクをおかしながらこの均等方式でやっていかなければならぬ。そういう際になぜ一体、均等方式のほうが石炭ベースに立った場合に有利なのだ、こういう判断が出てくるのか、この点がどうも私には了解がつかないのであります。この点をひとつ御説明を願いたい。
  202. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今度の場合も、これは何というのですか、出世払いというか、これはやはり償還の義務を付したほうがいいと私は思っておる。そうでないと、みなただ渡すのだということになってくると、やっぱりほかのほうの均衡もあってできるだけやっぱり償還をしてもらうということが原則としていいと思う。そこで、交付公債よりもこのほうが金利の負担が軽くなっていきますから、私自身が考えてみても、一つの原重油関税という大きなワクの中で処理するほうか——全然そういうふうな特別会計を設けないで交付公債でやるよりも、このほうがやっぱり国民にも納得してもらいやすい面があるという感じがするわけであります。したがってこれから政府としても方針をきめるのでありますが、この一つの骨格というものは尊重していきたいという考えでございます。
  203. 藏内修治

    ○藏内委員 いまの通産大臣の見解については、私もまだ異議がございますが、詳細な御質疑はまた後日いたしたいと思います。ただ、やはりこの出世払いというけれども一体償還をいつから開始するのか。いつ開始するというその判断は一体だれがするのか。これは企業の自主性にまかしてくださるならともかくも、要するにこの鉱業審議会あたりが帳簿を取り寄せてかってに調べてみて、もうよかろうということで取り立てたんじゃ、企業としてはもう目も当てられないという結果になるわけです。さらに途中でこの企業がつぶれた場合には、要するにもう国としては掛け捨てみたいなものだから、これはもうまる損であります。一体、そういうことを考えると、これは社会的に見てほんとうに均等償還方式というのはどういうものだろうか。私は交付公債案と優劣をつけるという場合には、どうも交付公債案のほうがむしろ安定性があるように思うのです。長期的な安定性があるように思うのですが、この辺はもう少し後日議論をしてみたいと思います。  この肩がわり方式と密接な関連があるのは安定補給金であります。この安定補給金が三百円になるか百円になるかということは、この両方式のいずれかということで、当然計算上の差が出てくる。この両方式によりますと、とにかく収支改善効果においては、元利均等償還方式のほうが改善効果が大きい。したがって安定補給金は百円でいいだろうという結論になるわけであります。なるわけでありまするけれども、これで百円ということでは、とにかく現在でも一トン掘ればまた数百円の赤字が出てくるような状態で、わずか百円くらいの補給金ではとうていいけないということは、もう大手中小を問わずみんな主張しているところであります。この答申によりましても、この安定補給金は必要に応じて出すということになっております。一律に出すということにもなっていないわけです。したがってこの運用についてはかなり弾力がある。だから、弾力性があるというならば、私はこの百円という額はぜひひとつ三百円程度の運用というものを考えていただきたい。もしこれができないならば、年次を追ってでもいいと思うのです。年次を追ってやっていただいてもいい。初年度は三百円の安定補給金、第二年度に入ったならばさらにこれを逓減していくというような方式でも、私は平均して百円という効果は四十五年まで五年間という長期的な見通しに立てば、これは運用し得るものではないかと思う。そういう観点からしてこの安定補給金というのは、特に経営の悪い炭鉱中小炭鉱、これらにとってはもうほんとうに死活の道であろうと思うのです。こういう点については、どうか、ひとつ大臣の賢明なる運用をお願いを申し上げたいと思うのです。この点について大臣の御所信を伺っておきたい。
  204. 三木武夫

    ○三木国務大臣 その審議会でも、大部分の企業が赤字から抜け出すためには補給金を百円でいいということでこういう答申が出されたようであります。そこでこの補給金の運用の面については、中小炭鉱というものを中心に考えていきたいと思っております。しかしいま藏内君の御指摘のように、補給金額がときどき変わるということもかえってやはり混乱を起こすような面があって、そういう点でこういう問題は十分に検討いたしたいと考えております。
  205. 藏内修治

    ○藏内委員 それでは、時間ももうございませんから、あと一問だけ質問をしたいと思いますが、確かに安定補給金が毎年変動するということは好ましいことではありません。好ましいことではありませんけれども、これによって収支の改善、要するに経営改善に資するということは、非常に大きなものがあると私は思う。だから、いまは金融をつけることその他が非常に大きな問題で、これらは通産省の適切な今後の施策をまたなければならぬのですが、いずれにいたしましても、これの施策が軌道に乗るにいたしましても、中小にとってはこの金融というのは非常に容易ではない。この点はもう大臣も重々おわかりだと思います。したがって、この安定補給金の百円、これはもう未来永劫変わらないのだという固定した考え方でいかれると、これはやはり中小炭鉱にとっては非常に経営の意欲をなくすると思う。私は、経営の意欲をなくするということが、石炭産業の将来にとって、やはり一番大きな重大な問題であろうと思います。どうかそういう点を考慮して、この運用についてはひとつ最善の努力をしていただきたい。  最後に一つでありますが、閉山交付金であります。この閉山交付金も、実はこれは今度の大きな問題でございます。これについても、今度の答申では、一体生かそうとするのか殺そうとするのか、生きるにも死ぬにもどうにもならぬという声さえ出ております。そこで、この閉山交付金は、これは二千円という額、三千円という額、いずれも根拠づけはそれぞれの根拠があるわけです。あるわけですが、この主張はいまこまかく申し上げる時間がございませんからやめておきますが、これはぜひ三千円に引き上げる努力をひとつしていただきたいと思います。  それと、もう一つ、この答申後に——もっとも、いま閉山申し込みがない、この整理交付金というものが引き上げになれば申し込みはふえてくると思いますが、閉山交付金の引き上げの額を適用する時点を一体いつからなさるか。要するにこ  の答申が出て閣議決定でもなさった段階で1閣議決定を実は来月の中旬になさるということを私どもは空気として聞いておりますが、もしそうであるならば、閣議決定以後の時点に申し込みをしたものは、この新しい引き上げた価額を適用するか。  それから、現在私ども希望といたしまするならば、現在まだ交付金の完済してないもの、支払いの完済していないものについては、八月中旬の閣議決定の時点において、事業団においてこの完済の手続の終わっていないものから適用していくという御決意があるかどうか、この点についてちょっと伺っておきたい。
  206. 三木武夫

    ○三木国務大臣 閉山交付金は、これはできるだけ今年度からできるように努力をしたい。これを閣議などできめなければならぬわけですけれども、私の考え方としてはそういうふうに考えておるわけであります。
  207. 藏内修治

    ○藏内委員 まだありますけれども質問が全部まとまりませんので、きょうはこの程度にしておきます。      ————◇—————
  208. 野田武夫

    野田委員長 次に、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  石炭対策に関する件につきましては、閉会中も審査をいたす必要がありますので、議長に閉会中審査の申し出をいたすことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、閉会中審査を行なうにあたりまして、参考人から意見を聴取する必要が生じました場合の人選、日時、手続等に関しましては、あらかじめすべて委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  210. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、委員派遣承認の申請についておはかりいたします。  閉会中審査にあたり、委員派遣を行なう必要が生じました場合の手続等に関しましては、あらかじめすべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  211. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  212. 野田武夫

    野田委員長 なお、この際申し上げますが、今国会、本委員会に参考送付になっております陳情書は、豊里炭鉱再建に関する陳情書外二件であります。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時九分散会