運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-11-09 第52回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年十一月九日(水曜日)    午前十時二十三分開議   出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 大坪 保雄君 理事 齋藤 邦吉君    理事 佐々木義武君 理事 竹内 黎一君    理事 伊藤よし子君 理事 河野  正君    理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    熊谷 義雄君       坂村 吉正君    西岡 武夫君       橋本龍太郎君    淡谷 悠藏君       石橋 政嗣君    滝井 義高君       辻原 弘市君    長谷川 保君       柳田 秀一君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         労 働 大 臣 山手 滿男君  委員外出席者         厚生事務官        (大臣官房会計         課長)     高木  玄君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚生事務官         (年金局長)  伊部 英男君         厚生事務官         (社会保険庁年         金保険部長)  網野  智君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 九月十三日  委員田中彰治君が退職された。 同月十七日  委員小宮山重四郎君及び西岡武夫辞任につ  き、その補欠として一萬田尚登君及び石田博英  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員石田博英君及び一萬田尚登辞任につき、  その補欠として西岡武夫君及び小宮山重四郎君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 きょうは、医療保険抜本改正のその後の状態について、三、四十分の間、要約をして御質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、九月でございましたか、当委員会大臣に、私は医療保険抜本改正について御質問を申し上げました。当時大臣は、まず第一に、四十二年度の予算を審議する通常国会の冒頭に医療保険抜本改正の提案をしたい。そのためには、まず事務当局に命じて、いわゆる牛丸委員会ですね、ここで調査研究を一年くらいかかってやっておるから、大体目鼻がつくつもりだ。そうすれば、その資料十分自分検討して、足らないところはさらに追加の検討を命ずる。そして厚生省としての具体案をまとめた上で、自民党医療基本問題調査会、いわゆる灘尾委員会相談をして、政府与党一体の案をつくって、その後に諮問機関にかける。そして諮問機関の議を経て国会提出するという、きわめていままでと違った政党主体の、政党がその主導権を握った手続をわれわれに明示したわけです。当時私は、これはわが党が非常に主張しておったことを大臣がそのままやっていただけるということになったので、敬意を表したわけです。その後、いろいろ各界の御意見をお聞きになったようでございますが、まず第一にお尋ねをいたしたいのは、各界意見をお聞きになって、そして大臣としては、どういう点が厚生省の案と違っており、どういう点をひとつ厚生省の案に付加をしてやろうというお気持ちになったのか。もう各界の御意見というのは、それぞれ非常にニュアンスの違ったものが出てきたわけです。私はきょうは、各界意見をどれをどうだということを一々聞くのではないのです。各界の御意見を聞いて、一体厚生省のおつくりになりつつある案につけ足すべきものはどういう点があったのかということ、それをまず御説明願いたいと思います。
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま滝井さんからお話がありましたように、医療保険制度抜本的改正の問題につきましては、牛丸委員会問題点につきましての調査検討を進めてまいりました。その最終的な厚生省試案取りまとめるにあたりまして、私としては、広く関係各界の御意見も聞いた上で、最終的な試案取りまとめに当たりたい、こういうことで健保連、三医師会、総評、日経連、同盟あるいは船員組合等々の関係方面の御意見あるいは御要望等も聞いたわけであります。これらの関係団体各界の御意見というものは、必ずしも意見一致点というものはございませんでしたけれども、それぞれの御意見というものは、私が最終的な取りまとめをするにあたりまして非常に参考になる貴重な御意見であるということで、このことをやったことは非常によかったと、私はこのようにいまも考えておるわけでございます。  一方におきまして、政府与党である自民党におきましても、医療基本問題調査会におきまして、私と同様に各方面関係団体意見聴取をされますと同時に、問題点についての検討をされております。私と灘尾調査会長の連絡におきましては、党の基本問題調査会のほうで相当問題点についての検討を進めた適当な時期に、厚生省のほうから必要に応じて試案提出を願う、そういうものをたたき台にして政府と党の意見調整しようではないか、こういうことになっておるわけでございます。  しかるところ、党のほうにおきましては、いろいろな御事情等がございまして、先ほどから滝井さんからお話があり、また前回私からも申し上げましたとおり、おおむね十月中には政府と党の意見調整を完了し、十一月早々にも社会保障制度審議会なり社会保険審議会諮問をいたしたい、こういう目途のもとに進めてまいったのでありますが、党のほうのいろいろな御事情等もありまして、全般の審議日程がだいぶずれておるわけであります。   〔委員長退席佐々木(義)委員長代理着席〕 いまだ厚生省に対しまして試案提出も求められておりません。したがって、それらを中心にして政府と党の最終的な意見調整という段階まで入っておらない、こういう事情でございます。全般的に、私が前回委員会滝井さんにお答えをいたしました予定が、そういうような事情でだいぶずれてきておる、こういうのが現状でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、私の御質問をした点についてはお答えにならずに、先のほうまでお答えになったわけですが、私がお答えを願っておるのは、各界の御意見をお聞きになったわけですね。それからいま党のほうでも何かお聞きになって検討されておる。しかし党内の事情で必ずしも意のごとく進まず、したがって厚生省試案提示もまだない、こういうことはいいのです。党のことはいいです。党のことは、まあ社会党自民党関係で、また自民党のほうに聞かしてもらいます。内閣のほうとして、各界の御意見をお聞きになって、一体どういう点を厚生省のおつくりになっている案につけ加えられるべきものとしてお考えになったのか、こういうことをお聞きしているのです。たくさん意見が出たでしょう。そのたくさんなもの全部取り入れられるというわけにはいかぬと思う。木に竹をついだようなことにもなるのですから。だから、やはり木は木で整理し、竹は竹で整理をしなければならぬ。その場合に厚生省は、木をとるのか竹をとるのかわからないけれども、ともかく牛丸委員会一つの案はおつくりになっておったはずなんです。なっておって、やはり聞きながら今度それを補正をし、改定をし、そして案をつくっていくことになると思います。各界意見をいろいろお聞きになった、そういう中で特に大臣が感銘をして、これは取り入れなければならぬ、こういうものがおありになったと思うのです。というのは、非常に参考になったとおっしゃったんですから。そういうものは一体どういう点がありましたかということです。どこからその意見が出たという出所は、ニュースソースは明らかにする必要はないのです。こういう点は非常に参考になった、こういう点はぜひ採用してやりたいと思うというものがあれば、ひとつお聞かせ願っておきたい、こういうことです。
  6. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、個々の具体的な御意見について、これは参考になったとかどうとかいうことは申し上げなかったのでございます。全体として、私が案の取りまとめにあたるについて、非常に参考になった貴重な御意見がたくさんあったということでお答えを申し上げたつもりでございます。もともと、厚生省牛丸委員会で固まった案というものを、私は提出を求めていないのであります。問題点について整理をし、それについていろいろな資料を整え、私が判断をする材料をつくるように命じておるのであります。私はそれをまとめるにあたりまして、牛丸委員会のそういう長い時間をかけての調査研究資料、これはきわめて貴重なものでありますが、それと同じように重要な取りまとめ参考として関係各界の御意見を聞いておる。だから、牛丸委員会にある一つの案があって、それにプラスするとかマイナスするとかいうような、そういう取り扱い方は私はやっておりません。牛丸委員会問題点についての調査研究資料、これも私の判断材料でございます。また関係各界からお聞きした御意見も私の判断材料でございます。そういうものを私が総合的に検討いたしまして案を取りまとめたい。そして党のほうからの要求があれば、それを試みの案として提出をして、そしてそれをたたき台として政府と党の意見調整をしたい、こういうことで運んでおるのでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 各界意見参考にして、そうして牛丸君のところで検討した案と合わせて、そうして少なくとも試案というものをおつくりになるわけですよね。その試案というのは五つも六つもあるわけじゃないと思うのです。やはり出すときには、今度厚生省として一本の案で出すことになるのでしょう。二つも三つも出すのですか。一本の案でお出しになるのでしょう。その点はどうですか。
  8. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それにつきましては、今後党側からの要求、また党側の求められる御趣旨に沿うたものを私は提出をせにゃいかぬ、こう考えております。たとえば各種医療保険制度統合という一つの行き方もございます。また総合調整というような行き方も具体的にはある。また薬の取り扱いにつきましても、いろいろな考え方がそこにあるわけでございまして、これらにつきまして党側からどういう御要求がありますか、それに沿うて私の考え整理をして提出をしたい、こう考えております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、いままでの大臣答弁とだいぶん違ってきた。今度はわれわれのほうで一つの案をつくり、党のほうも聞いてもらって、そして一体になっていくという案だった。そういうことをいままで説明しておった。いまの御説明のように、党の要求に沿うて案をつくっていくということならば、党の下請厚生省がやっているということになるのです。そういうことなんですか。いままでとだいぶん違ってきた。いままでは、わがほうも牛丸委員会中心として案をつくっていく、同時にその過程で各界意見を聞く、そして一つの案をまとめて党と話し合う、こういうことだったのです。いまのようなお話だと、統合の問題は一体どうしたらいいのか、総合調整はどうしたらいいのか、薬はどうしたらいいか。党の意向に沿うて案をまとめるということになれば、これは厚生省自民党下請機関となってくる。政党政治ならそれでもいい。私はそれでもいいと思うのだけれども、いままで大臣はそういう言い方をしていなかった。きょうはこの前の言い方と少し違ってきたんですよ。
  10. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そう違っておりません。党のほうにおきましても、総合調整をする場合においての厚生大臣考え方はどうか、あるいはさらに前進して統合というような案でいく場合にはどういう形にするかというような、総合調整方向統合方向と、そういう方向についての党側からの一つ方向が出て、それに沿う厚生大臣の案を出してもらいたい、こういうことであればそういう案も出さにゃいかぬ。しかしそうでなしに、たたき台としてひとつ厚生省が、一番現時点において抜本策として実現性もあり、最も国民各界が納得するであろう案を、最善と考えるものを出してほしい、こういう要求であれば、私は一本の案としてこれを党のほうに提出をする、こういうことになるわけであります。そういうことを申し上げておるのであって、党のほうが、総合調整案統合案、これは一つの例示でございますけれども、そういうものを求められた場合に、やはり私としては、両方の考え方があるわけでございますから、そういう場合はそう出します。しかしそうでなしに、厚生大臣現時点考えている、一番これがいい、こういうまとまった案があればそれを出してほしい、こういう党側からの要求があれば一本の案を私は出すということでございます。でありますから、党のほうからどういうような御要求が出てくるか、それに応じて私としても試みの案を用意をしたい、こういうことを申し上げておる次第でございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうしますと、厚生省としては、臨機応変、党から総合調整については厚生省はどう考えておるかと言うてくれば、総合調整についてはこう考えております。しからば一歩進んだ統合案についてはどう考えておるか、こう考えております。しからば歳入の面と歳出の面とを合わせた一本の抜本策ならばどういう試案が一番理想的かと言われれば、これでございます、こういう形で出し得る態勢を整えておる、こういうことなんですね。
  12. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そういう党側の御要求があれば、いつでもそれに応じ得るような段階まで私は問題を煮詰めてきておるということでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、現在もうすでにこれは煮詰まっておる、こういうことで了解して差しつかえないですね。
  14. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 党側に出します段階において最終的な私の腹がきまるわけでございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、前に私に御答弁をいただいた、十月中に党と政府とがお互いに意見調整を完了をする予定であったというのが、まあいろいろの事情でおくれておる。それから十一月に社会保険審議会なり社会保障制度審議会諮問をする、こういう点も党の事情で全般的になかなかその運びに至っていない、こういうことですが、それならば、これは一体いつの時点になったら党と完了する見通しがつくことになるのか、それから審議会にはいつかけることになるのか、こういう点を明らかにしておきたいと思います。というのは、社会保障制度審議会委員の差しかえを行なわなければならぬ時期がきている。任期がきている。そこでわれわれとしても、そういう重要な問題ならやはり優秀ないい委員にまた出てもらわなければならぬし、そういう点もあるのです。これは明らかにしておいていただかぬと人事問題とも関連する。社会保障制度審議会委員任期が切れるのがある。これは大臣のほうがじんぜん日を送っておって、もういつの日かわからぬ、地方選挙あとくらいならやれるということなら、それはそれなりに対処しなければならぬことになるわけです。  まず、いまの十月、十一月というのがどういうようにおくれていくことになるのか、この見通しはやはり立ててもらわぬと一やはり政治家初心貫徹ということが非常に重要です。何も汚職腐敗が起こってごたごたしておるからといって、政策は一日といえどもおくれちゃいかぬと思うのですよ。これはもう社会開発を唱えておるのですから。何か政治が流動的で、腐敗汚職が起こったからといって、厚生省の仕事ができぬわけじゃない。厚生省腐敗汚職があるわけじゃありません。鈴木さんの身辺は実に清潔そのもの金色に輝いておるのです。金環食のように中はまっ黒というわけじゃない。金色に輝いておるわけですから、何もおそれることはないわけですよ。金色栄光に輝いておるわけだから、ちっとも心配はいらないわけですよ。どうです、日程はいつごろ見通しがつきますか。
  16. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたように、厚生省側諸般準備は、最終的な取りまとめがいつでもできるような段階まできておる。したがって、滝井さんにこの前当委員会で、このころにはこういたしたいと考えておりますという、厚生省に関する限りはその日程方向とおおむね変わらないような準備が進んでおるわけでございますが、党のほうで諸般事情からおくれておる、そのために政府党一体の案が予定どおりに十月中にまとまることができなかった、十一月上旬にこれを審議会にかけることができなかったということを、先ほど御報告を申し上げたのであります。私は、滝井さんがおっしゃるように、できるだけ早くこれをまとめなければいけない、そうして四十二年度中にはこれを実施をする、抜本的な制度改革をやるんだ、こういう政府考え方というものは変わっておりません。そこで党に対しまして、私は昨日も灘尾調査会長にお目にかかりまして、その促進方をお願い申し上げておるわけであります。灘尾さんにも私の気持ちを了承いただきまして、来週の十六日、十八日の二日間にわたりまして問題点についての検討を急ごう、こういうことをお約束いただいておるわけでありまして、できるだけ私どももこの問題を早く結論を得るように努力をいたしたい、こう考えております。
  17. 滝井義高

    滝井委員 九月のときとそんなに客観情勢というものは違っていないと思うのです。九月でも早期解散の論はあったし、それからやはり政界の黒い霧というものは出てきておったわけですよ。そう大きな情勢変化はないと思うんですよ。そうしますと、いまのように、あのころは十月、十一月と明確に期限を切って提示をしたのに、いまになったら急に十月、十一月が消えてしまったということは納得ができないわけです。しかも、わが方の準備、すなわち厚生省準備は、もういつでも万端整え得る態勢にある、しかし党のほうがどうもそうもいかぬ、こういうことです。  私はこういうことをここで言いたくないですけれども、巷間私たちの耳にこういうことが入ってくるのです。医療保険問題というのは、へまをすると内閣はたいへんなやけどをする問題だ。だから、大臣に非常に気の毒だけれども、池田派鈴木さん、石井派灘尾さんでそういうぼたをかぶらせるということはよくない、人事刷新で今度は佐藤がみずから厚生大臣になってやるべきだ、そうしないとこの問題は解決しないということが、巷間伝えられ始めたんですよ。これはたいへんなことだと思うんです。こういう医療保険の大事な問題を派閥の関係で云々されるというのはたいへんなことだと思うんですよ。そう言われておるのです。だからもう今度はできない。新聞記者に聞いてごらんなさい。みなそう言っておる。もう鈴木さんの手ではこの抜本改正はできないと言っておる。だから、いま言ったように、金色栄光に輝いているまじめなあなたの手でこれができないなんということになったら、これはたいへんなことになるのです。せっかく名厚生大臣として二回にわたって大臣に就任をしておられる、その大臣の手でいまのような形になったら、これはもうたいへんですよ。もうここはあなたは背水の陣をしいて、私は政治家として、何が何でも、政局の混乱があっても、あの案だけはつくってこういう方針でいきますという方針を出すことのほうがほんとうですよ。きょうの新聞なんかを見るとこういうことも書いてある。医療保険問題で社会党が対決するというならば、佐藤内閣としても対決をしてもいいじゃないか、慎重にやれ、こう佐藤総理あたりが言ったと新聞に書いてある。こんな問題で対決する必要も何もない。あなた方が案を出してくれば、批判すべきところは批判するし、賛成すべきところは賛成しますよ。あなたがみずから十月、十一月と約束をしておって、たいして客観情勢変化もないのに、うやむやと幽霊みたいに、枯れ尾花に似ていつの間にか消えてしまうということはよくないです。佐藤総理は、人事刷新が先で解散なんて考えていない、こうおっしゃるのだから、あなたもひとつ、人事刷新なんか考えていない、私は医療保険にまっしぐらに進む、政治家としてはこう言うことがほんとうですよ。そうでしょう。それをいまのように、厚生省準備万端整っておるけれども党がいつのことかわからぬ、しかし十一月の十六日と十八日は問題点について話してみようというようなことでは話にならぬ。十六日、十八日と話したら、いつごろになってその案がまとまるか。私たち野党にも、こういう抜本的な問題については、固まっておれば少なくとも案を見せてもらわなければいかぬ。こういう社会保障の問題というのは共同の土俵の上でやるべきものなんです。それを何か秘密に役人がこそこそとやって、自民党だけとこそこそと話して、ぱっと青天のへきれきのごとく案を出す。この前の総報酬制と薬価の二分の一は、それだから失敗したのです。十分意思の疎通ができていないから失敗したのです。だからそういう根回しというものが政治には大事だということはおわかりでしょう。それもやらずにするということはよくない。だから野党に当然目標は示さなければならぬ。どうですか。全然その目算は立たぬとおっしゃるなら、それも一つ答弁でけっこうでございます。どうですか、全然目算は立ちませんか。
  18. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま申し上げたとおり、党のほうの医療基本問題調査会審議諸般事情で若干おくれておる、こういう事情でございまして、この医療保険制度の抜本的な改正は、どうしても四十二年度中に実施に移さなければならない、実現しなければならない、こういう客観的な要請というものはちっとも変わっていない。また、私が総理に今日までの経過を御報告いたしました際に、総理も、ぜひこれは実現をしなくてはいけない、それだけに重大な問題であるから十分党政府意見の完全な調整一致を見るように慎重にはかってもらいたい、こういう御指示があったわけでございます。そこで私は、まず政府与党意見調整をいたしまして、そうして成案を得たものにつきまして、審議会諮問をする段階において、また滝井さんその他の専門的な御見識を持っておる方々の御意見も伺う、御相談をするということも、これはやってしかるべきものであるというぐあいに考えております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、いまの段階では、この前御言明になったような、十月に成案を得て十一月には審議会にかけるというような時期は明示ができない、こう理解して差しつかえないですね。
  20. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 党の審議がいろいろな事情でおくれておりますことは、さっき申し上げたとおりでございます。したがって、前の委員会で私が、大体こういう日程、段取りでいつごろまでにはこうしたい、こう申し上げたことと時間的にズレを生じておるということは、いま申し上げたとおりでございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうすると、結局抜本改正に対する手順というものを前に御説明いただいたけれども、いまや政界こんとんとして、鈴木厚生大臣としては、一体いつ成案つくり、いつ審議会等諮問機関にかけるかということは暗中模索である、こういう結論になりました。  そうしますと、今度はもう一つ私のこの前の質問に答えていただかなければならぬ。あと吉村さんつかえていますから、あと一、二問で終わります。そうすると、この前私は、それならば一体現実に問題になっておる診療報酬緊急是正医療経済実態調査というものをどうするのだという質問をしたのです。そのときには、いまや抜本策を全力を傾注して鋭意検討中であるので、それをお答えする段階ではない、こういう言明をされたわけです。そしてその終着駅というものを私があなたにお答えできるのは、十一月の下旬か十二月のいわゆる最終的な段階判断をしてお答えをいたしますという御答弁であった。ちゃんと私は書いてある。ところがいまや、もはや抜本対策については暗中模索、見通しがつかなくなった。そうしますと、この応急対策というものをはっきりしておかないと、もう来年度予算に間に合わなくなっちゃう。いま私たちは石炭対策をやっていますが、石炭局長なり三木通産大臣は、もうこの辺で抜本的な石炭対策を固めて大蔵と折衝せざるを得ないということで、今年度の補正予算について、いわゆる長期的な政策になる坑道掘進費の補助の確保、それから山をつぶす場合の整理促進交付金としてトン当たり千二百円出すのを二千四百円にする案の要求、それから石炭の需要を確保するための火力発電所を二基つくるという、こういういわば長期的な視野に立つ四十二年度予算との継続的なものを緊急措置として要求し始めているわけです。これができると四十二年度にすぐその上積みをしていく。こういうように、予算がなくなるというので非常に大車輪をかけて要求し始めたわけです。そうすると、当然あなたのほうも緊急是正なりあるいは医療経済調査、薬価調査というようなものは、何らかの形で措置をして政治の軌道に乗せておかないと、抜本対策というものがこれに続いてこないのですね。だからこの段階でもう判断する時期が来たわけです。いまの御答弁ではっきりした。抜本対策については、もはや十一月とか十二月には結論が出ない。いまの情勢では、十二月一日に総裁選挙をやって、人事刷新内閣改造、党の三役まで人事が及ぼうかという段階ですから、とてもその段階にはならぬわけです。へまするとあなた自身の位置の問題にも関係する可能性が出てくるわけです。そうなりますと、抜本対策というものはとにかくとして、やはり応急対策については、鈴木厚生大臣としての現在の立場から事務的な処理はやって、あと大臣に残さなければいかぬ問題があると思うのです。これについては一体どうされるつもりなのか、その問題が出てくるのです。
  22. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 滝井さんから、診療報酬体系の適正化の問題と、それに関連して緊急是正の問題をどうするか、こういうお尋ねでございますが、この点につきましては、中医協において東畑会長及び公益委員の皆さんが、一号側委員、二号側委員とねばり強い話し合いをずっと続けてまいりました。そしてその両側の話がだいぶ明るい方向に進んでおるということを私は伺っておるわけでありますが、来たる十一日に総会開会の運びになったようでございます。この総会におきまして、この医業経営実態調査の問題、それから診療報酬体系の適正化、合理化の方向で、そういう方向に乗ったところの緊急是正の問題をどう扱うか、こういう問題が総会で討議をされる、こういう運びになっておるということを私は事務当局から報告を受けておるわけでございます。私はその結果を見まして、いまお話しのような点につきまして判断をしていきたい、こう考えております。
  23. 滝井義高

    滝井委員 この診療報酬の適正化の問題と抜本改正とは不可分な関係にあるわけです。なぜならば、診療報酬の適正化というのは、やはり抜本改正の中の一つの重要なポイントになってくるわけです。これは歳入歳出に関係してくる。そこで、診療報酬をどうきめるかによって医療費全体に重大な影響を及ぼすわけですから、したがってこれは全く無縁のものじゃないわけです。この改められた基礎の上に今度将来の展望が出てくるわけですから、少なくとも将来の展望を持った改正を今度の改正でやらなければ意味がないわけです。だからそういう点で、何か大臣は、よその馬がそこでころげているようなことをおっしゃるけれども、それじゃいかぬわけです。やはり自分の馬がそこでいま苦悶をしているという形でものを見ていかなければならぬ。東畑さんのほうにみんなまかしておるからおれはその意見を聞いてしたい、事務当局がそう言っている、こういうことじゃだめだと思うのですが、まさかそうじゃないと思うのです。ここで少し苦しいからそういう言い方をしていると思うが、それじゃいかぬ。やはりあなたとしては、いまの段階でどう考えるかという判断をするものさしを自分の胸のうちに秘めておかなければ、向こうから出てきたものがいいか悪いかわからない。大臣御存じのとおり、医療経済実態調査をやってまとめるのに、いままでの過去の前例から言うと二年くらいかかるのですよ。そうすると、それはやると言ったってすぐにはできるものじゃない。二年先にしかならない。抜本改正とは、結論がはるかかなたにおくれてくるわけです。そういう問題を含んでいるのですから、もう少しそこらあたりをはっきりきちんと、あなたとしてはこの段階でどうしたいというおよそのアウトラインは考えておかなければいかぬと思うのです。諮問機関その他に懸念をして——諮問機関諮問機関でやるのだから、あなたがどういう意見を言おうとやるのですから、やはり国会ではもう少し明らかな方向を出す必要があるのです。あつものにこりてなますを吹くで何も言わぬということでは、国会は何のためにあるかと言いたいのです。やはり国会ではあなたの気持ちを言わなければいかぬ、私としてはこうやりたいという。この前、たとえば医療経済実態調査というものは日本医師会がおやりになっておるから、それを参考にして持ってきたい、そしてそれに不足するところはひとつ十分相談してやりたいということまでお言いになっているわけでしょう。そうすると、いまの緊急是正の問題というようなものは、一体、そういう形の実態調査をおやりになるならば、緊急是正としては厚生省はどういうふうに考えておるか。予算を要求しなければならぬでしょう。予算はこの八月三十一日でもう締め切っておる。この前のあなたの答弁では、四十二年度予算で抜本策というものについてはいま概算要求をペンディングにしておる、こういうことを御答弁になった。そして一般予算と財政対策を切り離して、国庫負担の百五十億円は一応きめてもらっておるというような答弁があった。しかしこれは緊急是正ということになると、やはり何らかの措置を予算的にしなければいかぬでしょう。そうでしょう。その上に抜本策が今度乗ってくることになる、予算的に言うと。だから、当然予算要求の態度としては、どの程度のものをわれわれはやる。それがたとえば点数になったときにどうなるとかこうなるとかいうことは技術的な問題だから、政治家としては専門家にまかしていいのです。しかし、抜本策の大ワクとしては大体どの程度のものがいまの段階では数字的に見て必要だということは、厚生省検討しておるわけです。全然緊急是正をやる必要がないのかあるのか。あるとすれば、およそいまの日本の経済情勢なり国民大衆の負担力なり医療機関の現状から考えてどうだということが出てこなければいかぬと思うのです。それがいま何にもやられていないのだ、出てきてからやるのだというならば、これは問題にならぬわけですよ。そうでしょう。その点は一体どうなっておりますか。
  24. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 診療報酬体系の適正化をはかる、これは基本的な方向であるわけであります。また世論もこの診療報酬体系の合理化なり適正化ということを強く要望しておる。そこで、その診療報酬体系の適正化、合理化をはかるためには、何といっても医業経営の実態調査、そういう科学的な基礎の上に立った体系の整備ということでなくちゃいかぬ、これはそうだと思います。そこで私は、その方法といたしまして、医師会も多大の経費を使って、そして相当学問的また客観的な調査等もやっておることであるから、そういうものも活用したらどうか、そして足らざるところをさらに調査するということになれば、二年も三年もかかるというようなことも——これはある程度時間的に早くその調査結論を得られる、こういうことにもなるのであるから、そういうことも大所高所からひとつ話し合ってみたらどうか、こういうことも私ここで確かに滝井さんにお話をし、滝井さんも、それはけっこうだ、こういう御意見の開陳がありました。と同時に、医師会のほうから緊急是正の要望がこれまた中医協を通じて出ております。私は、かりに緊急是正をするにいたしましても、それは今後においてなされるところの診療報酬体系の合理化のレールに乗っていくものでなくちゃいけない、こう思うわけでございます。そこで、これはどうしても今後行なわれる医業経営の実態調査というものについて支払い側、診療側の基本的な話し合いがついていきませんと、医業経営実態調査はもう絶対反対、そういうものは始めても二年も三年も先のことだから、とにかくそんなものは将来の問題として緊急是正だけを早くやれというようなことでは、支払い側もなかなかそこは納得がいくまい。そういう基本的な問題について合理化、適正化をはかるには実態調査が必要であるということを確認し、それは今後こういう段取りでこういう方向でやろうではないか、しかしそれには相当の時間もかかることであるから、当面緊急是正として最小限度のことをひとつやってほしい、これはもとより合理化の方向に乗ったものであるというようなことが大局的に話し合いがついて初めて事柄が円満に前進をしていくのではないか。そういう話し合いを願っておるわけであります。そういうことを無視いたしまして、私がここで、医業経営実態調査はどうであろうと、とにかく緊急是正はやらなければいかぬというようなことでは、事態を円満に解決するゆえんではない、私はこう考えておるわけであります。
  25. 滝井義高

    滝井委員 よくわかりました。それを早く言ってくれればいいのです。医療経済実態調査の方法その他やり方について支払い側、診療側に十分な意思の一致を見れば、その上で緊急是正という問題が出てくれば、大臣としても責任を持ってそれを推進するにやぶさかでない、こういう考え方ですね。わかりました。ひとつ抜本改正も暗中模索じゃなくて明確な方針を早く出してもらって、そしてそれができないとすれば、いまのような長期展望に立った応急の策はやはり講じていく、そして医療における膨大な赤字の解消に突き進んでいく体制をすみやかに勇気を持ってやってもらいたいことを一応要望して、これで質問を終わります。
  26. 佐々木義武

    佐々木(義)委員長代理 吉村君。
  27. 吉村吉雄

    吉村委員 私は、きょう、明年度の社会保障の政策、これを裏づけるところの予算、こういった問題について、現在予算折衝中のようでございますから、厚生省がどういう基本的な考え方を持って明年の社会保障の政策というものを進めていこうとするのか、それは将来のわが国の社会保障政策の展望にどういう位置を占めているのかというようなことを中心にして、骨格的な事柄を二、三お尋ねをしておきたいと思うのです。  初めにお尋ねしたいのは、事務当局からでけっこうでございますが、厚生省が概算要求として出しておりますところの要求額は、総額幾らになって、しかもその重点的な施策というものは一体どういうものに置いているのか、その費額等についてまず明らかにしていただきたいと思います。
  28. 高木玄

    ○高木説明員 昭和四十二年度の概算要求総額は七千五百四十三億でございます。明年度の概算要求にあたりましては、従来から厚生省の重点施策として取り上げられてまいっております、たとえばガン対策でありますとか重症心身障害児の対策、あるいは精神衛生対策、生活保護制度の改善、社会福祉施設の整備、あるいは母子保健の向上、保健所の充実、こういったようないろいろの問題を引き続いてその充実強化をはかりますとともに、特に来年度の重点施策といたしまして生活環境施設の整備をはかりたい。これは新たに昭和四十二年度を初年度といたしまして新五カ年計画を策定いたしまして、この新五カ年計画に基づきまする初年度の予算として要求いたしておりまして、これが百九十三億円でございます。それから公害対策を一そう推進したいということで、これが七億二千万円の予算要求になっております。それから救急医療体制を確立するということで、十億三千万円の要求をいたしております。それから僻地の医療対策をさらに拡充したいということで五億二千万円要求いたしております。それから保育所を緊急整備するということで、これも五カ年計画を立てまして、この関係について約十九億円要求いたしております。それから老人福祉対策を一そう充実強化するということで、老人福祉対策関係で百二億円の予算を要求しております。それから血液対策を強化推進するということで四億七千万円の予算要求をいたしております。それから遺族援護の充実ということで一億八千六百万円の予算要求をいたしております。  以上がおもなる予算要求の事項でございます。
  29. 吉村吉雄

    吉村委員 この七千五百四十三億円ですか、これは本年度予算対比で、割合としてはどのくらいでございますか。
  30. 高木玄

    ○高木説明員 本年度の厚生省の一般会計予算は五千八百二億円でございまして、これに対しまして三割増しでございます。
  31. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣にちょっとお尋ねしますけれども、だいぶ盛りだくさんの予算費目で、これもやりたい、あれもやりたいということで予算を計上されておるということでございますが、この予算の中で、特に四十二年度は厚生省としてどれに重点的に力点を置いてやっていくというものがなくてはならないだろうと思う。それは一体何かということであります。
  32. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど会計課長から申し上げましたのが来年度の厚生省の重点施策でございます。私は、その中身につきましてお話をする前に、予算に対する私の考え方をまず申し上げておきたいと思うのです。  先般、佐藤総理大臣社会保障制度審議会との懇談会を持たれました。その際に、社会保障制度審議会の大内会長から、社会保障の充実のために、立ちおくれを早く解消するために、四十二年度においては社会保障関係の経費として一兆円程度の予算を計上すべきである、こういう提案がございました。私は、西欧等の社会保障の非常に進んでおります国等に比較いたしまして、この立ちおくれをできるだけ早く解消するためにという御趣旨で、端的に一兆円の社会保障予算を計上せよ、こういう提案をされました御趣旨につきましては、全く同感でございます。私は、厚生行政を預かる責任の者として、この御鞭撻に対して非常な感謝をし、敬意を払っておるのであります。私は、来年度一兆円ということは、単年度でそこまで一挙に追いつくということは困難とは考えておりますけれども、そういう方向で西欧に比較しての立ちおくれを早く解消すべきであるという趣旨、そういうお気持ちにつきましては、私も同じような考えを持っておりまして、そういう努力をしていきたい。そのために、先般も申し上げましたように、新しい経済計画に見合って新しい長期の社会保障計画を立てる、昭和四十六年度までの五カ年計画においてできるだけ西欧水準に近づけるように計画的に努力をしたい、こういう考えで予算に取っ組んでおる次第でございます。  さらにその重点施策の内容につきましていろいろございます。ただここで私が一つ考えておりますことは、国民健康保険なり、政府管掌健康保険なり、そういう医療保険の面に対するところの比重が非常に大きいということでございます。厚生省予算の中におきまして、医療保険関係の予算の比重が四〇%になっておるというようなこと、それだけに他の社会福祉施策等がどうしてもやはり予算的な圧迫を受ける、こういうことはできるだけ早く解消しなければならない、是正をしなければならない、こう私は考えております。予算についての私の基本的な考え方というものを率直にお話しをしたわけでありますが、そういう心組みで今後予算の編成に当たっていきたい、まずこれを申し上げておきたいと思います。  それから重点施策といたしましては、いま会計課長から申し上げましたように、私が就任いたしましてから重点政策に取り上げてまいりましたガン対策、これは四十一年度には二十億円程度でございましたが、これを倍額の四十億円程度に伸ばしていく。さらにこれに財政投融資等を加えますれば、ガン対策費は七十億円をこえる、こう考えておりますが、私は引き続きこれを拡大強化していきたいと考えております。それからさらにガン対策と並んで重点施策に取り上げましたところの重症心身障害児に対する対策、これも四十二年度は四十一年度を基盤といたしまして、五カ年計画の第二年度としてこれを拡充してまいる。今年度は五百二十床の国の収容施設をつくるということにいたしたのでありますが、来年度はこれを八百四十床に広げていく、さらに民間の施設も五百床ふやすというぐあいにいたしまして、昭和四十五年度、終局において八千床の重症心身障害児の収容施設をつくる。その計画の中の第二年度としての整備をやっていく。こういうぐあいに、四十一年度からの重点政策は、さらにこれを計画に基づいて拡充をしてまいる。同時に新しく今度は最近の交通災害等に対処いたしまして救急医療体制を整備をするという問題。それから深刻な社会問題に発展しておりますところの公害対策に対する施策を強化をしていきたい。さらに最近婦人の就労が非常に多くなってきた。それに伴う児童の保育の問題が大切になってまいりましたから、四十二年度を第一年度としまして、今後年次計画で保育所の整備をしていきたい。約四千個所を今後整備をする、三十万人の要保育児童を対象として急速に整備をしたい、こういうことも考えておるわけでございます。その他、環境施設の整備、都市に対する人口の集中、特に太平洋ベルト地帯に相当人口の流動が顕著に出てきておりまして、それに伴うところの環境施設の整備というようなことが急がれております。そういう面からいたしまして、上下水道あるいはし尿処理、ごみ処理等々の施設を、四十二年度を第一年度として新しく五カ年計画を出発させたい、こういうような点。それから古くて新しい問題でありますが、僻地医療対策を強化するというような問題等につきまして、私は予算を重点的に考えていきたい、こう思っておるわけであります。
  33. 吉村吉雄

    吉村委員 大体、社会保障の政策を推進をしていくのにあたりまして常に問題になっておりまするのは、救貧対策になっているのか、あるいは救貧対策になっているのかということであります。いま大臣が述べられました内容を検討いたしますると、大体明年度の予算編成にあたって重点を置かれているものは、一般に言われるところの社会福祉というところに重点を置いて、個々の政策というものを充実をしていこう、こういうことになっているように私は感じます。その意味では私はたいへんけっこうなことだと思うのです。ただ、これを具体的に予算の各費目の構成面から見ますると、大臣がいま述べられましたように、医療保険に充当しなければならない費用というものが厚生省予算の中で四〇%をこえるという状態は、これはたいへん問題だということ、しかしこれまた今日の状態の中ではこれで十分だということになっていないで、先ほど来問題になっておりまするように、医療保険の問題については、もっと公費等を投じて、そうして充実をしていかなければならない、こういう角度から見てまいりますと、これを少なくしようということは現実に不可能に近い問題だと思うのであります。  いま一つは、これまたたいへんわが国の社会保障の中で立ちおくれていると言われてます所得保障関係の問題、この問題についてはいまのところ何ら触れられておらないわけでありますけれども、こういうやっていかなければならない問題がたくさんある中で、特に明年度限られた予算の中で重点的に施行しようというのが、総括的に表現をすれば、社会福祉ということになっておるように見受けられます。ただ、それが総花的になっておりまして、あれもやらなければならぬ、これもやらなければならぬ、こういうことです。そのやらなければならぬということを、いまの大臣言明というものを現実の問題にするために、まず前提としてなされなければならないのは、私どもにとってはまだまだ不満ではありますけれども、要求をしておるところの七千五百四十三億円という予算が、現実のものとして大蔵省のほうでこれを承認をするというか、政府方針としてきまらなければ、これはどうにもならないということになるのだろうと思うのです。この七千五百四十三億円というのは、四十一年度予算に対比をしますると三割増しである。この三割増しの予算要求のしかた自体については、この委員会でもずいぶん議論をされておりまするし、大臣もまたこの前の委員会においても、三割という問題に拘泥はしたくない、総理大臣も大蔵大臣も重点的な施策については必ずしも三割ということに拘泥をしないということに賛意を表しておる、こういう言明をなされております。いずれにしましても、この七千五百四十三億円という、私どもから見れば非常に少ない数字でございますけれども、前提はこれが確保されなければならないということになるわけです。この七千五百四十三億円というものを確保される見通しはあるのかないのかということ。社会開発ということを看板にしているところの佐藤内閣のもとで、厚生省がこれだけはやらなければならないということで、しかもいま羅列されましたものは、ほとんどもう必要やむを得ざるものばかりだ、こういうことで重点施策としてあげておるわけですから、したがって、この七千五百四十三億円というものは、佐藤内閣としてこれは実現をし得る、こういう見通しに立っていいのかどうかをまず承っておきたい。
  34. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 吉村さんから御指摘がございましたように、社会保障の充実のために七千五百億円の要求は必要最小限度である、これはぜひ確保すべきであるということにつきまして、私どもも、こういうように窮屈な財政事情の中におきまして、できるだけ重点をしぼりたい、しぼった以上はそれはぜひ実現しなければならない、こういう観点で先ほど来申し上げたような重点施策に特に意を用いまして、予算の編成をやっておるわけでございます。来年度の予算編成は、財政収入その他の関係からいたしまして、相当苦しい事情にあるわけでございますけれども、私は、いまの七千五百億円というものがほんとうに重点であり、ぜひ必要な、これだけはぜひやりたいというものにしぼっただけに、この七千五百億円の予算をぜひ獲得したい。私は最善を尽くす決意でございます。
  35. 吉村吉雄

    吉村委員 鈴木厚生大臣が一生懸命努力をするということは、たいへん私は敬意を感じておるのですが、いまの問題も、大蔵省との折衝の過程では、いまの政府の姿勢からしますると、厚生大臣が真剣に努力をしても、なおかつ多くの困難が伴うであろうというふうに私は予測をいたします。そういう状態の中でなお大臣が、重点施策としてあげたものであるからして、これだけは確保しなければならない、こういうことをここで言明をされましたので、これは私はきわめて重要な言明になる、こういうふうに考えます。ですから、最低限この七千五百億円というものは実現をしてもらわないとするならば、これは大臣の責任問題にまで発展をし、追及をしていかなければならない、こういうふうに私は思いますが、その前に、そういうような考え方社会保障の充実ということを真剣に考えておるとしまするならば、先ほど大臣が言われましたけれども、社会保障制度審議会との懇談会の席上で、大内会長のほうから、四十二年度は一兆円の予算を計上をする必要があるという要望が、あなたも出席をされておった懇談会の中で強く出された、こういうふうに新聞も伝え、またあなたもいま言明をされたわけですけれども、そういうふうに強く要望をされ、しかもその要望については私は全面的に賛成であって敬意をすら感じておるというふうに言われましたその翌日に、厚生省の予算要求というものは七千五百四十三億ということになっておるのです。こういうようなことでは、大臣が、真剣に努力をする、あるいは社会保障制度審議会のその要望というものについては敬意を感じ、これを実現をするように努力をしていきたい、こう幾ら言明をされておっても、言っていることとやることというものは全く違っているという印象を受けるのは、私は当然ではないかと思うのです。ですから、こういうようなことについては、その懇談会に出席をした厚生大臣として、どのように考えて、それをまたどう受けとめて来年度の予算要求というものをなされておるのかということについての関連を、ひとつ正直にお聞かせを願いたいと思います。
  36. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点につきましては、先ほども私から進んで申し上げましたように、西欧諸国の社会保障のすでに充実完備しておる国、その水準に早く近づける、そういう御趣旨から端的に、来年度は一兆円の予算を計上せよ、こういうお話であったわけでありますが、その基本的な、西欧水準に早く近づけたい、そうすべきだという点につきましては、私も同感であり、それに近づけるために、私は単年度でこれが実現するとは考えておりません。したがって、新長期経済計画に見合った新しい社会保障樹立計画というものをいま厚生省としても策定を急いでおります。   〔佐々木(義)委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことで、四十二年度、さらに四十三年度、四十四年度、こういうぐあいに、ねばり強くこの社会保障予算の増額、社会保障制度の整備ということに私は努力をしてまいる考えでございまして、来年度一挙にこれを四割以上の、五割近い増というようなぐあいのことは、賢明な皆さんもその実現性についてよく御了察ができることだと思うのでありまして、私はそういう方向で、単年度でできないにしても、これを積み重ねてその方向に持っていこう、こういうことで努力をいたしておる、こういうことであります。
  37. 吉村吉雄

    吉村委員 社会保障制度審議会で要望をされたという点は、別にこの八月二十五日に初めて突如として一兆円という数字が出てきたものではないわけなのです。それは大臣も御存じのとおりです。制度審議会のほうでは、すでに三十七年にあの勧告と答申をした際に、わが国の社会保障費というものが昭和四十五年度にどのくらいにしなければならないのかということについては、きわめて具体的に詳細に勧告をしておる。政府自体もこの勧告と答申については、これを尊重をするということは再三にわたって言明をしてきたはずです。ですから、いま急に突如としてこの四十二年度一兆円という数字が出たのではないのでありまして、いままでの政府社会保障に対する施策というものは、制度審議会等の答申と勧告の線からするならば、きわめてそれの実現にほど遠いような経費しか充当されておらなかったということに対する不満の表明もあわせて、この懇談会における強い要望となっているというふうに私は思うのです。ところがいまの大臣答弁を聞いておりますると、急に一兆円という数字が出てきて、これは急にはとてもできません、ですから明年、明後年というぐあいにやっていきたい、こういうことでございますけれども、それでは三十七年度のあの勧告と答申の精神というものを尊重するという自民党政府の態度とは一貫しない、こういうことになるのではないか。一貫しない態度を裏書きしていると言ってもいいのではないかと思うのです。急に出てきた問題ではないのですから。一兆円に急にできないかもしれませんけれども、当然そこに近づける努力をするという、そういう姿があってしかるべきだと思うのです。ところが、その話を聞いた翌日に、あなた方のほうは七千五百四十三億円の概算要求を発表しておるということは、単に社会保障制度審議会意見を形式的に聞いたというだけであって、それは尊重するという先ほど言明とは違った、うらはらな行動をしておると言われてもやむを得ないのではないか、こういうふうに思うのです。そういうところの関連というものを、あなたのお考えというものをひとつ明らかにしてもらいたいというふうに思うのです。
  38. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 昭和三十七年に出されましたところの社会保障制度審議会の御意見、また建議等に対しましても、政府社会保障を進めてまいります重要な指針として、これを尊重し、その趣旨に沿うた施策をやってまいっておるわけであります。たとえば昭和四十一年度の予算編成にあたりましても、一般の予算の平均が一八%程度の伸びであるのに対しまして、社会保障諸経費は二〇%をこえておるというようなこと等も、そういうことで社会保障政府が一貫して力を入れてきておるという証左にほかならないわけであります。私がいま申し上げたのは、四十一年度の現在の時点で五千億余りになっておる、そういう現状を踏まえた場合に、大内先生の四十二年度一兆円も、こういう現実の面からいたしまして、単年度で一兆円予算を実現することはどうしても困難だ、この点については吉村さんも御理解できるであろう、こういうことを私は申し上げておるのでありまして、したがって、そういう御発言の御趣旨は十分私も理解をし、むしろ全く同じような考え方を持っておるわけでございますので、今後新五カ年計画におきましてはぜひそういう御趣旨が生かされるように努力をしていきたい、こういうことを申し上げておるのであります。
  39. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣、私は、総理を含めてこの社会保障制度審議会の各委員と懇談会をやったということは、世間からたいへん好評をもって迎えられたと思うのです。そしてまた社会保障制度審議会委員の人たちも、政府が熱意を持って社会保障制度の問題と取り組むという姿勢を示したことに対して、好意を持って迎えたということが報じられておるのです。ただ、それはポーズだけであってはいけないと思うのです。やはりそういう熱意があるとするならば、その熱意というものを現実のものにしていく。そういう権力というものを政府は持っておるはずですから。たとえばその際に、一兆円の予算を計上しなければいけない、三十七年度の勧告と答申の線から見てもそのくらいのものは計上すべきである、そういう強い要望があったわけですから、その要望に基づいて、何日かの考慮を払って検討を加えた上でその予算要求というものがなされるならば、そのやっておることと現実の答えというものは一致をしてくるけれども、そういう懇談会でいろいろな要望を聞いて、たいへん感心をいたしました、敬服をしましたと言ったその翌日に七千何百億という予算の概算要求というものを発表するという、そういう態度はあまりにも人を食った話ではないかということを私は言いたいのです。この関連を出席をされておった厚生大臣一体どうお考えになっておるかということをお尋ねをしておるわけです。
  40. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 吉村さんもよくその間の事情はお知りになっておられると思うのでありますが、予算編成というのは、ずっと詳細なデータあるいは実績等々を基礎にいたしまして、積み重ねて長い時間をかけてやっておるわけでございます。一面、財政当局である大蔵省は、八月の末日までに予算の概算要求をしてもらいたい、こういう日限の制約もあるわけでございます。そういうようなこと等から、今年度の予算の三割増の予算に相当いたします七千五百幾らの予算要求をいたしたわけでございますが、私は、大内先生の御発言の趣旨というものは、三十七年の答申にも出ておる御趣旨の線にも沿っておるわけでありまして、先ほども申し上げましたとおり、私ども、社会保障の政策を進める最も重要な指針として、これを常に頭に置いてやっておるわけでありますので、根本的に予算の編成がえをせにゃいかぬというようなぐあいに私は受け取っておりません。ただ、今後さらに御鞭撻の趣旨をよく体しまして、四十三年度以降五カ年計画の中にその趣旨を十分生かしていきたい。単年度に一挙にそのことをやることは困難でございますけれども、年次を重ねてその趣旨を生かすようにしたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  41. 吉村吉雄

    吉村委員 これは私どうも納得しかねますけれども、単にやりとりになると思いますから……。ただ、私が言いたいのは、この一兆円の数字というものは、あなたは一挙に一挙にと言われますけれども、これには歴史もあって、三十七年度の答申というものの線から見ても、四十二年度は一兆円くらいの経費は計上してしかるべきであるという、そういう数字になっておることは大臣御存じのとおりなんです。ですから急に出てきた数字ではない。それをあなたのほうでは、一挙にでき得ないということで、明後年あたりからやらざるを得ないというようなことで逃げようとしておる。こういう状態では、社会保障制度審議会でいろいろ苦心をして答申をしたり勧告をしたりし、あるいは政府がこれを尊重するといって幾ら言明をしても、政府自体の言明というものは、そういう審議に携わっておられる方々からも信頼をされないということになってしまうであろう、そういうことでは社会保障政策の全般というものは前進をしないという結果を招来しかねない、こういうふうに思うので、私は強くこの点は強調をしたところです。まあ、大臣が一挙にでき得ないのでということで、いまの段階としてはどうにもしようがない問題であるかもしれませんけれども、最低限いまでき得る努力というものは、先ほども申し上げましたように、少なくとも七千五百四十三億という要求をしておるわけですから、これだけはやはり生かしてもらわなければいけない。生かすように努力するということでありますが、これはぜひとも生かしてもらわなければ、あなたのいままでの言明とか、あるいはお答えというものは、実際に生きてこないというふうになると思いますから、この点は強く御努力を要望しておきたいと思うのです。  その際、この懇談会でいま一つの問題として、年金積み立て金の原資等については社会開発のための原資として特別勘定を設けて使うようにせよという、そういう要望もあわせて行なわれたはずであります。さらには社会保障の給付額については物価にスライドをするような制度を設けるべきであるということが、これまた強い要望としてなされたはずでありますけれども、この二点についての厚生大臣考え方一体どうですか。
  42. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この年金積み立て金の還元融資につきましては、御承知のように、二五%を社会保障中心に国民生活の福祉の向上になるような面に重点的に還元融資をする、こういうことになっておるのであります。しかし私は、この二五%だけでなしに、あとの七五%につきましても、できるだけ国民の福祉の向上に沿うように使われるべきものだというぐあいに考えておりまして、常に厚生省としては、この資金運用にあたりまして、大蔵当局等に対してそういう方向で折衝をいたしておるわけであります。しかし何といっても、やはり二五%を増ワクしたいという要望が各地方団体等においても強いわけでございますので、四十二年度におきましては、この二五%ワクを増ワクすることにつきまして大蔵当局と折衝をしてまいる所存でございます。  なおまた、この年金積み立て金の運用全体の面につきまして、大蔵大臣だけがこれを専管しておりましたものにつきまして、厚生大臣にこれを協議をする、こういうようなことにつきましても私ども要求をしておりました。これは資金運用審議会においてただいまこの点を御審議を願っておる、こういうことに御理解をいただきたい、こう思うわけでございます。
  43. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣、スライド制の問題についてはどうですか。
  44. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは前国会におきまして、国民年金の法案の御審議の際にも、重要な問題点としていろいろ吉村委員その他から御意見の開陳がありましたが、これはその当時もお答えを申し上げましたように、拠出制年金の給付は二十五年、三十年後にこれが現実には行なわれる、こういうような制度の実態からいたしまして、貨幣価値であるとか、あるいは国民生活の向上の度合いであるとか、あるいは賃金、物価の関係、そういうようなものとの関連において実質的な給付が低下するようなことであっては年金の使命は達成できない、こういうことでございまして、私どもは、そのときの物価なり、生活水準なり、賃金の水準なり、そういうものにスライドして実質的な給付が確保されるように、こうあるべきだという基本的な考え方を持っておるのでありまして、ただいま関係審議会にこのスライド制の問題はそういう方向で御検討を願っておる、こういうことであります。
  45. 吉村吉雄

    吉村委員 時間の関係で要約をしますけれども、大体質疑応答の過程で明らかになってまいりますのは、厚生省あるいは厚生大臣社会保障の問題について非常に積極的に努力をしているという、そのことばだけは聞かれるのでありますけれども、なかなかこれが政府全体のものにならないというところに最大の問題があるのではないかと思うのです。ですから、予算の要求のしかたの問題につきましても、たとえば社会保障の問題につきましては、三割に限定をしないで、五割なりあるいは七割なりの、そういう立場で要求をすべきではないかというような事柄についても、再三委員会で議論をされ、大臣もそれについては賛意を表せられ、そうして努力していくということが言われてまいりました。しかし現実にはやはり三割の概算要求でとどまっておる。あるいは年金の積み立て金の運用等の問題につきましても、社会保障制度審議会のほうからの要望が出るまでもなく、本委員会等においても再三にわたって議論をされ、そうして大臣もいまと同じような答弁を繰り返しておる。ただこれが現実のものにならない。あるいはまたスライド制の問題につきましても、ようやくにして各年金制度については精神規定的なものが入っておるということにとどまっておりまして、これを現実のものにするための検討がいまようやくにしてなされている。十分努力をしておる、努力をしておるということに尽きておるわけです。これを現実のものに政治の上で具体化していくというものがないところにたいへん大きい問題がある、こういうふうに言わねばなりません。これは厚生大臣の努力云々の問題ではなくして、佐藤内閣全体が社会保障社会開発ということを看板にしているのだとするならば、それに裏づけられたような予算編成というものがなされなければならない、こういうふうに私は思うのです。ですから、各省ばらばらに予算ぶんどりみたいなそういう事柄が現に行なわれている、こういう状態では、いつまでたっても、一番大切だといわれているところの社会保障政策というものは、充実もしないだろうし、西欧諸国の水準に追いつくというわけにもいかないであろう、こういうふうに考えますので、この点は政府全体としての方針をきちっと固めていくという努力をやはり厚生大臣としては続けてもらわなければいけない、こういうふうに思いますので、同じようなことを繰り返して恐縮ですけれども、今度の予算の編成の過程でもありますので、なお一そうの努力を強く要望しておきたいと思うのです。  なお、先ほど、私どもにとってはたいへん不満ではありますけれども、厚生省としての要求額である七千五百億円については、これは大臣が責任を持って実現をするという言明がありましたから、この点はひとつ確実にそれが実現をするようにしてもらいたい。これはうなずいておるわけですから、そのように私は理解をしておきたいと思います。  それから続いて別な問題に入りますけれども、ちょっと年金局長にお尋ねしたいのです。この前の委員会で伊藤委員からも指摘をされましたけれども、今回、本年度の国民年金法の改正によって所得制限が緩和をされて、八十一万円かになったわけです。これは所得制限の額が上がったわけですから、当然にして受給資格というものは減るようなことはないであろう、ふえるのではないかという予測をしておった。ところが、あにはからんや減っているという数字がこの前の委員会で東京都の場合について明らかにされたのですけれども、これは全国的には一体どういうようになっておりますか。
  46. 網野智

    ○網野説明員 本年度の福祉年金の所得状況の届けにつきましては、まだ全国集計が全部集まっておるという状況ではございませんが、とりあえず本年の九月末までに県から出されました報告を取りまとめてみますと、新たに老齢福祉年金で扶養義務者の所得制限を受けた者が六万六千人でありまして、所得制限の解除を受けた者が六万五千人です。差し引きいたしまして千人ばかりの人が結局受けられなくなった、こういうかっこうになるわけであります。この状況を前年度の場合と比較してみますと、前年度の場合におきましては、新たに所得制限を受けた者は八万五千三百人で、所得制限の解除をされた者が四万六千人で、差し引きいたしますと三万九千三百人の者が所得制限を受けてだめになった、こういうことになっておりまして、本年度の場合にはその差し引きの数が一千人というぐあいに改善されてきておる状況でございます。
  47. 吉村吉雄

    吉村委員 四十年度と四十一年度の比較をしますると、所得制限の緩和の恩恵を受けた人数というのは、今度の場合は多くなったということになりますね。これは三十九年度と四十年度の比較から見まするならば、非常に前進をしたということが言えるわけです。それにしましても、とにかく所得制限を緩和しながらも、なおかつ受給資格者というものは減っているという事実については変わりはないわけです。これは幾らにすれば全然ゼロになるかということについてはたいへん問題がある点だろうと思うのですけれども、これを根本的に解決するためには、どうしても所得制限というものを撤廃をする以外に方法はないんじゃないか、こういう気がしてならないのです。それは、どうして主張するかといいますと、いままでもらっておったものが、自分のむすこさんなり、むすこさんのお嫁さんなり、あるいは何なりが働いて所得がふえたというために、今度は福祉年金がもらえないという人の心情を考えてみまするならば、これはたいへん大きな問題だと思うのですよ。ところが、四十二年度厚生省方針を見ますると、この所得制限の緩和の問題については百二万円かにするらしいのですけれども、まあだいぶ大幅に引き上げをしようということについてはわかりますが、これでもなおかついま私が申し上げたような事例は残るのではないか、残る可能性というも  のはある、こういうふうに思いますので、この点、この所得制限の緩和という問題は、むしろ撤廃をするという方向へ行っても、現実にあなた方のほうは資金上その他については問題は起こってこないのじゃないか、こういうふうに考えられますけれども、どうでしょうか。
  48. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま吉村先生御指摘のように、従前年金を受けておった方々が、扶養義務者の所得がふえたために停止されるということは、非常にお気の毒なわけでございます。したがいまして、厚生省といたしましても、従前からその都度引き上げをはかっておりますし、昨年度の引き上げは一四%にのぼるのでございますが、ただいま年金保険部長から御説明申し上げたような状況になっておるのでございます。明年度におきましては、現在の約八十二万円を百二万円に引き上げますと、引き上げ率としましては二五%程度になりますので、これが実現をいたしますれば、御指摘のような問題はきわめて少なくなるのじゃないかと考えられるのでございます。  なお、所得制限の完全な撤廃という点につきましては、いろいろ御要望も強いのでございますが、これに要ります資金量も実は相当の額にのぼるのでございまして、福祉年金に関係いたしましても、いろいろ御要望が強い情勢でございますので、所得制限の緩和につきましては、所得の状況とも見合わせて今後とも努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  49. 吉村吉雄

    吉村委員 これは私のほうが勘違いしておりましたけれども、所得制限を撤廃すれば相当資金のあれはよけいになりますね。ただ問題は、福祉年金制度という考え方からいえば、政策問題として議論をすれば、これは制限というものを置くべきではない、こういうふうに思います。資金上の問題ばかりではありません。これは明年度の予算の中ではそれの実現をされていない。しかし百二万円かになることによってどういうことになるのか、私もわかりませんけれども、今後の賃金の動向なりその他を検討していかなければいけません。しかし、これは政策上の問題からしまするならば、当然所得制限というものは撤廃をすべきではないか、こういうふうに考えます。これも大臣に聞けば、またそういう趣旨に沿って努力しますという答えしか出ないでしょうから、それで将来の問題としてこのことは根本的に検討してもらわなければいけない、こういうふうに思います。  それからいま一つ年金の問題でお尋ねしたいのは、今度の予算要求の中で何か新高齢任意加入制度というものを設けるということになっておるようです。これは一体どういうものなのか、ちょっとお聞かせを願いたい。
  50. 伊部英男

    ○伊部説明員 国民年金の拠出制が発足をいたしましたのは、昭和三十六年四月一日でございます。拠出制でございますので、ある一定の拠出期間が必要であるわけでありますが、したがいまして、その際、相当の年齢の方につきましては、適用除外あるいは任意適用という措置を講じてあるのでございます。三十六年四月一日現在におきまして五十歳をこえ五十五歳以下であった方は任意に加入ができる。加入しない方も相当あったわけでございますが、しかしながら、国民年金が、前国会で御審議をいただきました国民年金改正法案によりまして、相当の改善が行なわれまして、この当時任意加入できた者が加入されなかったという方々からも、もう一度加入したいという御要望が市町村あるいは社会保険事務所等に参っておりますので、これらの状況を見まして、もう一回任意加入を認める措置を講じたい、こういう趣旨でございます。
  51. 吉村吉雄

    吉村委員 そうすると、この場合は、当時の状況を考えてみますと、任意加入であった人ばかりではなしに、厚生省その他で十分この制度の徹底が浸透しないために、強制適用年齢の方々でも加入されていないという人、こういうものも含むということですか。
  52. 伊部英男

    ○伊部説明員 強制適用の方々につきましては、言うまでもなく法律どおり強制適用される筋合いでございます。したかいまして、現在なお未加入の方があるわけでございますが、これらにつきましては、十分適用を強化し、さような適用漏れがないようにいたしたい、かように考える次第でございます。
  53. 吉村吉雄

    吉村委員 そうしますと、昭和三十六年この制度の発足当時に五十歳から五十五歳までの方は任意加入ということであった、こういう方については新規加入の道を開いた、しかしそれ以外の方についてもこの際加入の道を開くという意味ですかというお尋ねをしておる。
  54. 伊部英男

    ○伊部説明員 加入の道が開かれておるわけでございませんで、本来強制適用でございますから、この法律どおり今後強制適用していくという趣旨でございます。
  55. 吉村吉雄

    吉村委員 そうすると、この場合に、加入手続をした者については、そのときからということになるのですか。
  56. 伊部英男

    ○伊部説明員 そのときからということでございます。
  57. 吉村吉雄

    吉村委員 これはいろいろ問題があるだろうと思うのですけれども、年金局長も詳細な事情は御存じだろうと思うのですけれども、いろいろの事情によって、本来加入をしなければならない年齢該当者という方々でも、加入手続をしなかった、あるいはその制度が十分徹底をしなかった、こういう者もあるわけです。それでいまに至っておるという人もあるだろうと思う。こういう方々に対しては、ことし新たに加入したかちそのときからというのではなしに、三十六年当時に加入をしたものという仮定に立っての救済策というものは考えられてはいないのですか。
  58. 網野智

    ○網野説明員 ただいま年金局長が説明いたしましたように、制度発足当時、二十五年かけ得ないというような者につきましては、十年から二十四年というように資格期間を短縮した読みかえ規定があったわけでございます。こういう方々につきましては、昨年の誕生日から保険料を納めていただければ、その読みかえ規定の期間を十分満たすことができる、こういうことで、昨年度、今年度、来年度にかけまして、私ども適用促進と保険料の納入促進ということをやってまいりたい、その場合に保険料は二年前にさかのぼって納めることができる、こういうことになっておりますので、十分そういう点は皆さま方に徹底して、これから急いで入っていただくように努力してまいりたいと思います。
  59. 吉村吉雄

    吉村委員 これも新しいやり方のようですから、その際に詳細にわたっては意見を申し上げるということにして、きょうはこれでやめたいと思います。  その次に、大臣がいる間にお尋ねをしておきたいのは、児童手当の問題です。児童手当の問題については、現在の政府方針では、四十三年度から実施に踏み切りたいということで準備を進めているというのが、いままでの政府のここ二年来の公の態度であった、こういうふうに私は理解をしているわけです。今度の四十二年度の予算概算要求の中でも、児童手当準備室とかというようなものを設けて本格的に取り組んでいくという姿勢を示しておるのですけれども、これは早急にやってもらわなければならない問題ですが、どうもいまの自民党政府のもとでは、またまたこの約束がほごにされるのではないか、選挙も近いということでこんな問題がまた表面に出てきたのじゃないかというふうに疑わざるを得ない幾つかの事例があるわけです。この前の三十八年の総選挙の当時に、自民党の公約あるいは政府言明の中では、児童手当については四十一年度から実施ということを表面に押し立ててあの選挙戦が行なわれたということを、私は自分で体験をして知っておるわけです。しかしその後の様子を見てまいりますと、まあ調査費とか準備費とかというもので六百万円ぐらいの金を毎年毎年計上して今日に至っている。その内容はどうなっているのだということを聞いてみますと、西欧諸国の事例等を調査をしてわが国の児童手当制度はどうあるべきかという検討を行なっているのですというのが政府筋の答弁であったわけです。今度のこの四十三年度から実施というのは、ほんとうにそれをやる気があって、そしてこの準備室というものがつくられたのか。単に準備室をつくったということで、まだ準備不十分だということで何年か先に延ばされるのか、こういう点に私は非常に不安を持つと同時に、いままでのやり方からすると疑わざるを得ない、こういうふうに思います。ですから、この点については一体どのくらいの考え方で——厚生省の単なるアイデア的なものとしてそういうことがいわれているのか。あるいは自民党内閣全体として、四十三年度から実施、こういう方針でいこうとするのか。これは内容の問題についてはあとからお尋ねをすることにしまして、どのくらい固まっているのか明らかにしてもらいたいと思うのです。と申し上げますのは、実は経済審議会のほうでも、児童手当の問題については検討をし、これを実施をすべきである、こういうことが中間報告の中で政府になされておるはずです。そういう問題等から考えてみましても、一体本気にやる気があるのかないのか。本気にできないならば、こんな看板はおろしてしまったらいいのじゃないか、こういうふうに思いますので、そこのところを、責任者であるところの厚生大臣から、一体どのくらいの状態に固まっておって、自民党内閣としてこの四十三年度からの実施というものは具体的に固まっているのかどうかということを、まず明確に示してもらいたいと思うのであります。
  60. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 吉村さんは、児童手当制度を四十三年度から実施をする、こういうことが何か選挙含みの政局で突然登場してきたような御発言があるわけでありますが、決してさようではございません。私は佐藤内閣厚生大臣をお引き受けいたしました昨年の六月以来、この問題は四十三年度を目途に諸般準備を進める、こういうことをあの当時から申し上げておるのでございます。これはただいまお話もありましたように、政府の新しい長期経済計画を立てます際におきましても、所得保障の中でこれを実施いたします場合には、相当の原資を必要とし、今後における大きな児童福祉の政策の柱になる問題でありますので、ただに厚生省だけでなしに、総理大臣諮問機関である経済審議会におきましてもこの問題を取り上げておる、こういうことでも、厚生省だけでなしに政府全体としてこの問題を取り上げておるということが御理解いけると思うわけでございます。  私は、この児童手当制度につきましては、基本的には、児童福祉政策の大きな柱として実施をすべきである、このように考えておるのでありますが、最近におけるところの人口構造の推移、特に出生率の低下、再生産力の低下というような日本の人口動態の現況から見まして、どうしてもこの第三子あるいは低所得家庭等に対する児童手当は最小限度早く実施に移さなければならない、こういうようなことも痛感いたしておるわけでありまして、四十三年度を目途にぜひ実現をしたい、こういうことで、児童手当準備室につきましても、今度は相当の人員の配置をいたしまして、具体的な実施準備を進める所存でございます。
  61. 吉村吉雄

    吉村委員 私はこれを早く実施をしてもらいたいという立場から申し上げておるのですけれども、ただ経緯を考えてみますと、児童手当制度の問題については、本格的な児童手当制度を実施をすべきである、制度化すべきであるという議論はずっと前から行なわれておって、そして政府のほうとしては四十一年度から実施ということを大々的に言明をされておった経過があるのですよ。しかしそれも諸般事情でということで延びておる。鈴木厚生大臣が就任以来四十三年度ということを言っておることは、私も承知をしています。ただ、明年度の予算要求の中で準備室というものを特につくって準備に当たる、こういうのが目新しい準備になっているわけですけれども、これらの問題を考えてみて、四十三年度から実施ということが現実のものになるのかならないのかということについて、私は疑いを持たざるを得ないということです。たとえば今度の四十二年度の予算の面を見ましただけでも、社会保障制度審議会のほうの一兆円くらいのものは出さなければならないということに対して、あなた方のほうとしては七千五百億円くらいしか出さない、こういう状態でしょう。この政府の姿勢というもの全体を考えてみまして、一体ばく大な費用というものが必要とされるというふうに考えられる児童手当制度というものを四十三年度から実施をするのだとするならば、相当思い切ったところの姿勢の転換というものがなければ実現不可能であろう。いままでのように、やります、やりますということで終わってしまうであろう。私はそういうことをさせたくないから、ここで明確にあなたのほうから責任ある答弁をいただきたいと思いますのは、この四十三年度からの実施するための準備室というものをつくったということについては、必ず四十三年度から本格的な児童手当制度というものを自民党内閣として実施をする、こういうふうに受け取ってよろしいかどうかをお尋ねをしておきます。
  62. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのとおりでございます。
  63. 吉村吉雄

    吉村委員 中身の問題については、これまた児童扶養手当みたいなものになって、また児童手当でございますなどと言わないように、先ほど私が申し上げました西欧諸国並みのという前提がありますから、それも忘れないようにひとつお願いをしたいと思うのです。われわれとしましては、政府のほうがそういう決意でいるとするならば、これをもっと促進をさせるという立場で、この問題については、本格的な児童手当制度の実現のために努力をしていきたい、こういうふうに考えていることを、この際つけ加えておきたいと思うのです。  最後に、簡単にお尋ねをしますけれども、予算項目の中では明らかになっていないのですけれども、ハンセン氏病の患者に対する処遇の問題です。これは聞くところによりますと、十月の何日かですか、このハンセン氏病患者の団体であるところの全患協との間に、厚生大臣を含めて話し合いが行なわれた。この話し合いの結論というものについて、全患協の指導者の方々は、厚生大臣が熱意を持ってやろうとする態度に対してたいへん敬意を表していました。心配な事柄は、いままでもそうであったということなのです。いままでも、努力します、努力しますということで年じゅう実現しないでおったということが心配なのだ。鈴木厚生大臣はそういうことでないだろうと思うけれどもという話ではありましたけれども。そこで私は、こまかいことは幾つかありますけれども、総括的にお尋ねをしておきたいのは、この際、全患協との間に話し合いが行なわれて約束がなされたという事柄については、これは実現をするというふうに考えてよろしいのかどうか。これを実施をすることを大臣あるいは関係者が約束をされたそうですから、これを期待をしていいのかどうか、そこらの点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  64. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、わが国のハンセン氏病対策というものが、官民の努力によりまして非常に前進をし、特に最近の医学、医術等の進歩によりまして多大の成果をおさめておる、現在一万七百人ほどに患者が減ってきておる、こういうようなことを大局的に私は非常に喜んでおるところであります。私はしかしハンセン氏病に対しましては、何とかこの病気を撲滅をするということにつきまして特別な関心を払っております。先般、多摩の全生園を国会が終了と同時にたずねまして、患者の療養所内における生活の実態にも触れ、また収容されておる患者諸君の要望も直接お聞きをいたしました。その際に、特に病気によって盲目になった人たちから、テープコーダーが何とかひとつほしいのだというような話もありました。帰りましてすぐ事務当局に命じまして、来年度予算にその要求もするということにいたしております。こういうぐあいに、私はできることから一つ一つ誠意を持って実現をしたいという気持ちでやっているわけでありますが、先般この代表の諸君が厚生省に参りまして、いろいろ担当の局、次長等と話し合いをし、陳情等もあったわけでありますが、最後に締めくくりといたしまして、私、十数名の代表の諸君と親しくお会いをいたしました。そして要望のうち実現可能なものにつきまして私からお答えをしたのであります。そうして最後に、いま申し上げたことにつきまして必ず御期待に沿うように最善を尽くすというお約束もしているわけでありまして、私は、ただそのときの陳情や何かを適当に処理するというような軽い気持ちで言っているのではなしに、このハンセン氏病の患者の諸君のお気の毒な生活の実態等に対して十分理解と同情を持っておる、何とかしてあげたい、こういう真情から申し上げていることでありまして、最善を尽くしているのであります。
  65. 吉村吉雄

    吉村委員 ただいま大臣からきわめて誠意のある答弁がありましたので、重複は避けますけれども、これらの方々は、いま大臣が言われましたように、全く気の毒な方々だと思うのですよ。こういう方々の要求というものは、あなた方に示されたもの以上にもっとこうしてもらいたいというものがある。あるけれども、現在厚生省としてこれだけはしなければならないといって、そしてその計上されている予算あるいはその具体的な措置、こういうものだけはぜひともこの四十二年度の中で実現をしてもらいたいという、いわば一歩も二歩も後退をした中での最低限度の要望だというふうに私は受け取っているわけです。大臣もまたそのような考え方であろうと思いますから、この点は、全患協の代表者等の方々との間でお約束された事柄につきましては、大臣言明のとおり、ひとつ全力をあげてこのお気の毒な方々の気持ちを少しでもやわらげる、あるいはその援護措置を講ずる、こういう姿勢を示していただくように強く要望して、私の質問を終わります。
  66. 田中正巳

    田中委員長 午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十分休憩      ————◇—————    午後一時二十一分開議
  67. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。河野正君。
  68. 河野正

    ○河野(正)委員 きょうは三池の大変災が起こりましてまる三年目という記念すべき、意義深い委員会でございます。そこで私どもも定刻一時からということで予定をいたしておったわけでございますが、責任追及をおそれてかどうかわかりませんけれども、大臣以下政府委員の皆さん方が定刻二十分も過ぎなければ出席できない。こういう熱意では、私どもこの委員会審議に携わる一人としては非常に困ると思うのです。私どもは、やはりこの問題が社会問題化してまいりましたし、また非常に大きな政治問題として発展してきておるわけですから、そういう熱意にこたえる意味においても、私は定刻一時ということならやはり大臣以下一時にそれぞれ着席をして、そして国政審議に携わるだけの熱意というものがなければならぬと思うのです。そういう意味で、どうも大臣以下このようにおくれて着席されたことについては、私は非常に不満でございます。これはひとつぜひ委員長からとくとまずもって御注意願うことを要望いたします。
  69. 田中正巳

    田中委員長 委員長から申し上げますが、きょうは一時ということは前からきまっておりまして、開会放送をいたしたのであります。二十分おくれましたが、今後もあることですから、ひとつ定刻には政府委員各位は出席なさるよう特段と要望いたします。
  70. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、私どもはそういう要望をなぜやるかと申しますと、それはやはり昨日も石炭対策特別委員会あるいはまた参議院の社会労働委員会においてこの三池大変災をめぐります事後処理の問題についていろいろ激しい追及が行なわれてまいった。そういうように、この問題が今日非常に大きな社会問題として、また政治問題として取り上げられておるわけですから、私どもはやはりそういう情勢にこたえるこの委員会結論というものを出していかなければならぬ。そういう意味で取り上げてまいったわけですから、以下私どもの気持ちを十分尊重してひとつ答弁に当たっていただきたい。こういうことを前もって要望いたしておきます。  いま御指摘申し上げましたように、きょうは一瞬にして四百五十八名のとうとい人命を奪い、そうしてなお多数の罹病者を出した三池大変災が起こってまる三年目の意義深い日でございます。そこで、もうすでに石炭対策特別委員会においても、あるいは参議院の社会労働委員会においても、この問題が激しく論議されておりますから、私はそれらの論議の中から特に重要な点について、きょうは若干お尋ねをして、大臣以下の御所見を承っておきたい、こういうふうに考えます。  そこでまず第一にお伺いしたいと思います点は、いま問題となっておりますのは、この七百三十八名の患者の諸君に対して回復認定が行なわれた。このことをめぐって、この問題が激しく論議されておるわけでございます。そこで、この七百三十八名の患者に対して突如として労働省が回復認定を行ないました根拠についてひとつお伺いを申し上げたい、かように思います。
  71. 山手滿男

    ○山手国務大臣 症状が固定をし、あるいは労働能力がすでに回復をしている、職場復帰が可能だと考えられるような七百三十八名の皆さま方に対しましては、そうした療養や休業補償等は今後障害補償給付に切りかえるということでございますが、労働省といたしましては、決して突然行なったわけではございませんので、いままでもいろいろ何回かに分けて退院の通知をいたしましたり、いろいろな話し合いを関係者といたしておったわけでございまして、決して突然抜き打ち的にそういう通告をした、処置をしたということではないわけでございます。
  72. 河野正

    ○河野(正)委員 突然やったということではないというお答えでございますけれども、物理的には突然七百三十八名の諸君に対して回復認定を行なわれたということは、これは否定することができない事実だと思う。  それからもう一つは、私は何を根拠に七百三十八名の患者諸君に対して回復認定を行なったのか、その根拠についてお伺いをしているわけですから、ひとつその根拠について明快なお答えを伺いたい。
  73. 山手滿男

    ○山手国務大臣 河野さんよく御承知のように、三十八年当時のあの事故が起こりました直後に、わが国の医学界の権威者の方々を動員いたしまして三池医療委員会を結成いたしました。そうして鋭意治療をいたしてまいったわけでございますが、自来まる三年になるわけでございますけれども、常時九州大学とか、久留米大学、熊本医大とか、ああいう各大学等の病院で先生方が治療を熱心にやってこられました。その結果、すでに早くから退院をしてもよろしいというような通知を、何回かに分けてそのつど何人かの人に通告をしてまいっておりました。しかし、いろいろな事情もあったのでございましょう。その方々は病院にずっと——退院の通告をいたしましたけれども、残っておられるというようなことでございまして、労働省といたしましても、あまりごり押しといいますか、無理押しはしないということで、今日まで、退院の勧告はいたしながら、そのままずっとおられたわけでございますが、今回三池医療委員会のほうから報告書も出されましたし、そういう処置をすることが適当である、こう判断をいたしまして、治癒の認定をいたしたわけでございます。
  74. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣は当時大臣でございませんから、そういう点はあるいはやむを得ぬ点があるかと思います。しかし、これは責任政治でございますから、自分が当時大臣に就任しておらぬということでそういうふうな責任が回避されるものではございません。私は、労働省の考え方が常に正しいという前提でこの問題を進めておられるところに非常に大きな問題があると思う。  そこで、私はここで具体的な事例を取り上げて申し上げます。  いま大臣は、この三池大災害が起こった当時、直ちにそれぞれ学界の権威者を派遣をして診療に携わられた、こういうふうにお答えを願ったわけですが、しかし、それは事実認識というものが非常に誤っていると思うのです。この大変災が起こりました当時、私、現地に参りました。特に私は、神経のほうが私個人も専門でございますが、現地に参りました。当時できておりましたのは、通産省をはじめとして、労働災害に関係のある各省関係者というものが集まって、災害防止のための委員会というものを設定をされておったということです。しかしながら、この三十八年の三池の災害というものは非常に特異なケースでございます。ですから、われわれは、やはり医療についても各界関係者の衆知というものを集めて、そしてこの患者に対する対策を立てる必要がある、こういうふうなアドバイスといいますか、勧告といいますか、そういうことを現地で行なって初めて医療委員会が設定をされた、こういういきさつがあるわけです。ですから、いま大臣は、当時大臣ではないわけでございますけれども、直ちに医療委員会ができたのだ。そこで、労働省のやっておることは手落ちはないというふうな御見解に立っておられますけれども、私は、それは事実認識を非常に誤っておると思うのです。そういう意味で私は今後論議を進めてまいりたいと思いますが、それならば一般的にいって、この労働災害にあった患者の回復認定というものは一体だれがやるのですか。
  75. 村上茂利

    ○村上説明員 治癒認定、それを前提としました補償費の支給、不支給の決定処分、これは監督署長が行なうわけでございます。しかしその場合に、医学的な問題でございますから、専門の医師の方々に症状につきまして意見を聞きまして、それによって処置するというふうなのが一般的な方法でございます。  それから、いま大臣からお答え申し上げました点について、河野先生から反駁があったわけでございます。その当時の経過につきましては、三池医療委員会の報告書の中にもその間の事情を指摘しておりますが、事故後直ちに臨時三池災害対策本部が設置されましたことは御承知のとおりでございます。その中に、医療保険委員会と指導部会が設けられまして、そしてこれが医療対策とその指導に当たったのでありますが、さらに、労働、厚生両大臣の要請によりまして、一酸化炭素中毒症に関する今後の医療対策樹立のため、内村東大名誉教授を団長とする三井三池医療調査団による現地調査がなされ、その報告に基づいて、長期的な医療対策機関として昭和三十八年十二月二十八日に現地に、三池災害一酸化炭素中毒患者医療委員会、これを略称して三池医療委員会と称しておりますが、これが設置されたわけでございまして、その構成員としては、九州大学、久留米大学、熊本大学の教授、助教授等十三名の方々がその構成員をなしておるわけでございまして、九大の勝木教授が委員長、それから東大名誉教授の内村先生、沖中先生が顧問ということで、この医療委員会の運営に参画してきたわけでございます。  そういう事情にありますことを御了承いただきたいと思います。
  76. 河野正

    ○河野(正)委員 そういうふうな詭弁を弄されるから、私は、あえていまの問題を取り上げておるわけです。  そこでお尋ねをいたしますが、それならば、この災害に対する委員会はいつ設定をされて、医療委員会はいつ設定をされたというふうに御理解でございますか、その日時を明らかにしていただきたいと思います。
  77. 村上茂利

    ○村上説明員 災害発生直後、これは私どもも現地に急行いたしました。その際に、政府は、臨時三池災害対策本部を設置したわけであります。その中に、医療保険委員会と指導部会が設けられた、これは先生御承知のとおりであります。それから、医療委員会が設置されましたのは十二月二十八日のことでございます。その後、この医療委員会が患者の治療の指導、治療指針の作成、それから経過観察の客観的基準、あるいはメンタルリハビリテーションの実施方法に関する指針の作成といったようなことをやってまいっております。これは医療委員会の報告書の中に指摘されておるとおりであるわけでございます。
  78. 河野正

    ○河野(正)委員 それで私はいま御指摘を申し上げておるのは、その災害直後、災害対策特別委員会ができた。その中で治療委員会があるかのようなおことばでございますけれども、それは医者ではなくて、全然医療に関係のない人がそういう委員会をつくっただけの話で、決して患者の対策委員会ではないことはもう御承知のとおりだと思うのです。そこで私は現地に行って、それではいかぬのだ。特に当時の状況を申し上げますると、これは名前を出していいかどうかわかりませんけれども、九大の某教授が参りまして、そしてこの患者というものは生命を確保できれば時間の推移とともに治癒軽快をしていく、こういうふうな判断がなされておったわけです。ところが、私どもは、それはいままでの日本の一酸化中毒に対しまする経験なり研究から言いますると、これは一過性の場合ですからそのとおりだと思うわけですけれども、しかしこの三池の災害の場合は、一酸化炭素という一つの汚染された空気の中で非常に長い間放置をされておった、そういう特殊の事情ですから、したがって、いままでの経験なり体験なり実績なりそういうことでは今後の対策というものの万全を期していくわけにはまいらぬ、そういうことで私どもは強く意見を開陳をして、そしてそれぞれ学界の協力をいただこう、こういうことになって、もう少し申し上げまするならば、実は久留米大学の教授にいたしましても熊本大学の教授にいたしましても全部私が、そういう委員会を設定すべきだ、こういう助言をした。ところが、当時、現地の皆さん方は何とおっしゃったかというと、いや、大学にはそれぞれ大学教授の格式があって、なかなかそれぞれの教授が協力し合うということは不可能だ、こういうことでむしろちゅうちょされた経緯があるわけなんですよ。しかし私は、いや、学閥だとかなんとかでちゅうちょすべきような事態ではない、非常に特異な事態だから、この際こそ各学閥を超越して学界の権威者というものが集まって、そうしてこの患者に対して対処してもらわなければならぬ、それが学問のための進歩であるし、学問の向上にもなるし、また患者の皆さん方に対しても十二分な治療が行なわれるということになるということを力説して初めて、医療委員会というものをつくろうというふうな空気になったというのが実情なんですよ。あなたは災害直後、災害特別委員会の中にそういう治療に対する委員会ができたとおっしゃるけれども、それは事務屋が集まってやっただけの話であって、ほんとうに医療を中心とする委員会というものは、私どもが非常に強い意見を出して初めて、そういう委員会ができたという経緯があるわけですよ。あなたはそういうことを全くほおかむりして、たな上げをして、そうして自分たちの進めたことが正しいんだ、こういうことは私は非常に大きな問題があるし、また、患者の皆さん方にも非常に大きな不満があると思うのです。こういう点についてあなた方は反省をしませんか。依然として自分たちは万全を期したというふうに御理解になっておるわけですか。もしそういう御理解ならば、私は、現地ではいろいろ御助力を申し上げたといういきさつがありますから、まだまだ具体的な事実をあげて追及いたしますよ。この点いかがですか。
  79. 村上茂利

    ○村上説明員 当時先生方にもいろいろ御配慮いただきましたことは、私どもも承知いたして、また感謝をいたしておるところでございます。いま私が申し上げましたのは、災害対策本部を設けまして、そして医療保険委員会とか指導部会というものをつくった。しかし手薄であろう、これではまだまだ十分でないだろうというので、どの程度のことをするのかということで労働大臣厚生大臣調査団派遣についていろいろ相談をしまして、内村先生に団長になっていただき、そうして沖中先生であるとか、あるいは斎藤公衆衛生院長とか、九大の勝木教授、労働衛生研究所長の山口さん、慶応大学教授の原島先生といったような方方が調査団員として現地に参りました。そうして今後の医療対策の万全を期するために医療委員会の設置を勧告したわけでありまして、いま私が申し上げております医療委員会というのは、災害対策本部に設けられたものを申しておるのではございませんし、大臣が申し上げたのも調査団の報告に基づいて十二月二十八日に設置されました医療委員会を申し上げておるわけであります。その間におきまして、未曽有の大災害でございますし、爆発直後現地においても非常な混乱がございました。先生御指摘のとおり、いろいろな問題があったわけでありますが、労働省といたしましては、北九州にございます労災病院の医師を派遣するなど、それぞれ応急の措置をしたわけであります。しかもなおかつ手厚くしなければならないということで、十二月二十八日に医療委員会が設置された、こういういきさつでございます。そのように私ども理解しておるわけであります。当初の対策が完ぺきであって最初からなめらかにスタートしたかどうかという点については、当時の状態を顧みますとかなりの混乱があった、先生方にたいへんな御心配をいただいたというのが当時の実情であるというふうに申し上げておるわけであります。
  80. 河野正

    ○河野(正)委員 私どもが心配するのは人道上の立場から当然のことですから、何もここでとやかく言うわけではございません。要は、膨大な患者が出てきた。それらの患者に対して、すみやかに迅速に適切な処置をとるということがきわめて重大な問題でございますし、もしそのことが今日患者の回復をおくらせ、また非常に多くの後遺症状を残させたといたしますならば、その責任というものは当然労働省がとらなければならぬ。そこで私が再々言っておりますのは、そういうたくさんな患者が発生をした、その際迅速で適切な処置がとられたかどうかという点についていろいろ論議をいたしておるわけであります。なるほど十二月二十八日には医療委員会ができたということでございましょうけれども、十一月九日に災害が発生をして、十二月二十八日に医療委員会ができて治療方針その他を決定した。そういうことがはたして適切な処置であるのかどうか。そういうふうな処置というものが非常におくれた。そのためになおるべき患者もなおらなかった。あるいは後遺症が残らぬでもよかったのが後遺症が残ってきたということになるならば、当然労働省の責任じゃないですか。そこで災害直後、なるほど対策委員会ができて、私ども対策委員会を訪れて、そこでいろいろな意見を交換しておるわけです。ところが、そこでできた治療委員会というものは、ほんとうにその方面の権威者が集まって、そうして患者に対して適切な処置を行なっていこうという委員会でないわけですね。もしそれがそうだとおっしゃるならば、そう言ってください、私は論破いたしますから。いかがですか。
  81. 村上茂利

    ○村上説明員 災害直後の医療体制としましては、非常に多くの犠牲者が出たわけでございますから、十分であったかどうかという点については混乱がありまして、それは行き届かない点があったかと思います。ただ労働省がとりました措置は、九州労災病院、筑豊労災病院、山口労災病院等の専門の医師を現地に急派した。それからまた、九大の教授の黒岩、桜井先生などにもおいで願った。災害直後のことでございまして、費用はどこが負担するか、そういったようなごたごたした議論がございまして、私どもも迅速に措置をしなければたいへんなことになるというので現地に参りまして、費用負担は労働省でやるからとにかく現地に行って治療に当たってほしいということを、私どもも現地でいろいろお願いをしたような次第でございます。そこで臨時にそういう体制でやっておりましたけれども、しかし一酸化炭素中毒患者の治療なり今後の問題についてはいろいろ医学的に問題があるから、ひとつ医療面の対策組織として三池医療委員会をつくろう、こういうことになったわけであります。  そこでこの医療委員会としてどういうことをしたかというのは、委員会の報告に記載されておりますが、先ほど申し上げましたように、メンバーが研究、討議し、意見交換して治療指針を作成する。それから症状判断の判定基準を検討し、定める。あるいはメンタルリハビリテーションの実施時期と実施方法についての指針を作成する。それから、患者の症状経過の医学的記録とその収集、整備を行なう。さらに、委託研究の依頼を受けまして、医学的ないろいろな面における研究を進めるといったようなことをやってきたわけであります。  そこで、先生御承知のとおり、幾つかの病院に分かれて患者が収容されたわけでありますけれども、病院ごとにまちまちな治療であっては好ましくないから、少なくとも現在の医療水準から見てこの程度のものはやらなくてはいけないという観点から、治療指針などにつきましてもこれを整え、それに従って、患者の方々は分散されておりますけれども、医療の内容に間違いがないようにといったことでいろいろつとめてこられたわけでございます。したがいまして、いろいろ御意見もあろうかと存じますけれども、当時の状況から見ましてできるだけのことはいたしてまいったわけでございます。それが十二分であるかどうかという点についてはいろいろ御議論もあろうかと思いますが、できるだけの措置を講じた。御承知のように、二月には療養所をつくる等、労働省が支払いました金額から見ましても総計二十億に達しておるわけでございまして、できるだけのことをした、私どもはさように考えておるわけでございます。
  82. 河野正

    ○河野(正)委員 私がお尋ねしているのはそういう事務的なことじゃないのです。たとえば記録をとるとかあるいは判定基準をどうするとかそういうことじゃなくて、要は、患者に対する対策というものをいかに迅速に適切に行なったか、そういうことを私は取り上げておるわけです。ですから、いまの事後のアフターケアのための施設をつくったとかなんとかいうことは、私どもがいろいろ申し上げておる論議の焦点ではない。要するに、幾らりっぱな施設をつくってもらっても、災害直後の処置が適切でなかった、そういうことであれば、何ぼ障害が残った後にそういうりっぱな施設をつくってもらっても、患者さんないしその家族とっては無意味な存在でしょう。ですから、どこでもう一度あなたにお尋ねをするし、あなたに率直にお答え願いたいと思いますが、それならば、災害が起こりました当時、この一酸化炭素中毒患者に対する見通しというものはどういうふうに判断されましたか。
  83. 村上茂利

    ○村上説明員 医学的な判断ということになりますれば、私、専門家ではございませんので的確にお答えいたしかねるのでございますけれども、回復が非常に困難だ。脳神経関係の疾病でありますから非常にむずかしいし、いろいろな多角的な処置をしなければならない、医療面における問題もある、回復訓練についても問題がある、施設の整備その他いろいろな問題があるということを、災害直後私ども感じておった次第でございます。
  84. 河野正

    ○河野(正)委員 そういううそを言ってはだめですよ。あなたが専門家であろうとなかろうと、あなたが直接の最高責任者ですから、そこで専門家を使って、そして一酸化炭素中毒患者についてはどういう見通しだ、そういう見通しであるならば医療対策としてはどういう対策というものを確立していこう、こういう方針というものを見通しに立って立てなければならぬということは、これは当然なことだと思う。ですから、いまあなたがこの段階では専門家であろうとなかろうと、当時の事情というものを十分承知を願っておらなければならぬわけですから、専門家であろうとなかろうとそういうことは理由にならぬと思います。   〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕  それからあなたはこれは脳神経がおかされるからたいへんなことだとおっしゃるけれども、当時私どもが現地に参りますときの一酸化炭素中毒患者に対する見通しとしては、これは厚生省からおいで願っておりますから、厚生省から所見を聞きたいと思いますけれども、いままで日本の医学的経験からいいますと、一過性の一酸化炭素中毒、こういうケースというものが大部分であったわけですね。ですから三池で起こりました大変災のような、一酸化炭素中毒というようなケースで起こったことは日本ではほとんど経験がなかった。ですから、大学においても全く五里霧中だったというのがその当時の実態だったと思うのです。それにあなたが、いやこれはたいへんなことだ、脳神経がおかされるのであとは云々というようなお話もございましたけれども、最初はそういう見通しじゃなかったわけなんですよ。それをあなたが結果論で、いまは脳神経がおかされて非常に後遺症が残ったということからあなたはそういうことをおっしゃっておるけれども、当時の見通しとしては、非常に一酸化炭素中毒患者に対する見通しというものが甘かった。それは日本における学問的な実績も少ないし、研究実績もなかったために、一酸化炭素中毒に対する見通しというものが非常に甘かった。こういう経緯であったと思うのです。それで私どもが強く勧告をして、これは専門家に集まってもらって、衆知を集めて対策を立てぬことにはたいへんなことになるぞというところからだんだん医療委員会に発展していったと思うのです、歴史的経過をたどりますと。そこであなたは責任を追及されるからそういうことをおっしゃっておるのかもわかりませんけれども、私ども今日の一酸化炭素中毒患者の処理を行なうためには、どうしてもやはり当時の労働省の処置に手落ちがあったかなかったかということは非常に大きな問題だと思うのです。あなたのようないまの答弁では、これはいつまでたってもわれわれは納得するわけにはまいりませんから、話が発展せぬと思うのです。少なくとも私がいま指摘をいたしました事情というものは、これはもう実際問題ですから、これはあなた方が否定をなさればなさるだけいろいろ論破しなければならぬと思うのです。そういう災害が起こった当初、患者についての手落ちがあったかなかったかということは非常に疑問の存在するところなのです。ところが、それは適切な方法をやったのだ。だから三年にもなるから、この際回復認定もやむを得ぬというようなことでは私ども納得できぬ。やはりあなた方も事実は事実として認めていただかなければならぬのですよ。これは否定されますればいつまでたっても論議は尽きぬということですから、やはりそういう事情があったということはあなた方も十分認識願って、その上に立ってこの問題の処理というものが行なわれなければならぬということを私は強く指摘をいたしておきたいと思うのです。この点、大臣からひとつ所見をお聞かせいただきたい。
  85. 山手滿男

    ○山手国務大臣 私は当時労働大臣ではございませんでしたからという理由で、何も責任を回避したりなどする意図は毛頭ございません。労働省が一貫してやってまいっておりますことについては、私ども当然責任を感じ、大いにその考え方に立って対処しているつもりでございます。事故の発生直後に完全な対策は立てられたかどうか、手落ちがあったかどうかというようなことは事実問題でございまして、私が断定的なことを申し上げるわけにはまいりませんが、いろいろ資料を見てみましても、その当時これだけの大事故が起きたあとでございまするから、労働省は当時応急の対策としてできるだけの、あらゆる機能を動員をしてベストを尽くしてこれに当たろう、こういう態勢を整えてかかったことは事実でございます。ただ結果からしてああもすればよかった、こうもすればよかったということは、あるいはあろうかと思いますけれども、当時といたしましては、労働省のほうでもあらゆる機能を動員してベストを尽くした、非常に緊急のことでございますから、いろいろ悔やまれることもあろうかと思いますが、当時としてはよく努力をしたものと考えております。
  86. 河野正

    ○河野(正)委員 あなたが当時努力をした、そして手落ちがなかったという前提に立ってお話になるならば、私はいろいろ申し上げなければならぬ。自分ではやったとは思うけれども、しかし、いま指摘されるようなことがあったとするならば、労働省としても若干至らぬ点があった、こういう反省に立ってお話し願えるならけっこうでございますけれども、その当時あなたが労働大臣の職にあるわけではございませんから、いろいろ局長のほうから適当な、ていさいのいいような話を聞いて、その代弁をなさっておるのかどうかわかりませんけれども、しかしいま申し上げまするように、私どもこれは演説をしているのではないですよ。現地に行ってそういう勧告をして、そうして医療委員会その他を設定したといういきさつがあるわけですよ。ですから問題は、この一酸化炭素中毒の特異性からいって、当初の処置というものが適切であったならば、今日のような多数の後遺症患者というものを残さぬでも済んだのではないか、また後遺症が残ったといたしましても、今日のような健忘症が起こってみたり、あるいは知能が非常に低下してみたり、そういう事態にまで追い込まぬでもよかったのではないか、こういう感じを強くするわけです。  そういう意味で私どもはやはりこの問題は——これはガンでも同じことですよ。とにかく早期発見をして早期治療をすればガンだってかなりなおる。手おくれになりますから、結局とうとい命を失わなければならぬ。この一酸化中毒の場合でも、やはり当初の治療なり対策というものが適切な方法をとられておったならば、私は患者に対しても、かなり効果をあげ得たのではないか、こういうことを感ずるがゆえに、私はあえて災害当時の問題を取り上げて御指摘を申し上げておるのです。何もここで抗議するために申し上げておるのではない。そういう事実が明らかになれば、やはり患者の対策についても、労働省がもっと温情ある処置というものをとらなければならなかったのではないかと思うのです。ところが、どうもいまいろいろ局長にも大臣にも御所見を承ってまいりますると、何でもかんでも労働省のやり方は完ぺきであったという印象を受けるようなお答えでは私どもは納得するわけにはまいりません。これは私どもが人づてに聞いて言っているのではない。うしろに滝井委員もおられますけれども、一緒に参って、特に私は脳神経が専門でありますから、特にいま申し上げましたようなことを指摘をして、万全を期してもらいたい、こういう勧告をした経緯がございますから、私はあえて申し上げておるのです。ところがそれらに対して、大臣もそうですけれども、局長も何ら反省の色がないですね。そこで大臣も、単に局長から適当な話を聞いて、ここで代弁するのではなくて、私どもが率直にここで申し上げておるわけですから、そういう意見も聞きながら、大臣大臣としての態度というものをやはりはっきりと明示してもらいたいと思うのです。この点いかがですか。
  87. 山手滿男

    ○山手国務大臣 ただいま申し上げましたように、あれだけの大事故を起こしたわけでございます。ああいう大事故があらかじめ予見をされたわけではございませんから、その救助そのほかに対しまして万全を期したことは当然だと思いますが、ただそれはあとからああもすればよかった、こうもすればよかった、こういうようなことが考えられるのであろうかと思いますが、しかし当時としては、労働省なり当時の地元が持っておりまする全機能を動員してベストを尽くしたということは、私は言えるのではないか、こう思います。
  88. 河野正

    ○河野(正)委員 それでは話を蒸し返しますが、私は結果論で申し上げておるのではないのです。当時私どもはそういう意見の具申をやりました。それらに対しても、現地ではやはりそれぞれ学校には学閥の関係もございます。そこでそれぞれ学界の権威者を一つ委員会に結集するということは非常にむずかしい事情がございます。こういう話をやっておるわけです。そこで、これだけの大災害でございますから、そういう学閥というものを超越してもらわなければならぬ。そして、学問の発展とさらに患者の対策に万全を期してもらわなければならぬ。そういうことで、私どもそれぞれ大学の教授にも当たってそして御協力を申し上げてまいったといういきさつがあるわけです。ですから、あなたのように万全、万全とおっしゃれば、私ども言いたいことがたくさんあるわけです。結果を見て私どもはあのときああであればよかった、こうであればよかったということを申し上げているんじゃない。その当時から、私どもはもっと適切な方法がないかということを御指摘申し上げてまいった。ところが、結果的には御承知のようにたくさんな後遺症患者というものが残ってきた、こういうことになったわけです。そういう後遺症患者というものがたくさん出てきたが、それがもっと災害直後に適切な処置というものが行なわれれば、そういう結果というものは生じなかったのではないか、こういう議論が出てくるのは当然のことだと私どもは思うのです。ですから、やはり労働省が至らなかった点については至らなかった、こういう態度を示してもらわなければならぬ。何もかも万全を期した、最善の努力をしたいということでは、話は発展しないと思うのです。労働大臣ももう少し謙虚な気持ちになって答えてください。
  89. 村上茂利

    ○村上説明員 措置の程度につきましては、いろいろ御議論があろうかと思います。ただ私どもとしては、私自身も災害直後に現地に急行いたしましたが、医療体制が非常な混乱状態にありまして、その一つの原因が経費をどこで出すか、お金の問題がありましたりいろいろあったわけでありますが。現地で、費用は労働省が負担する。部屋割りもごたごたいたしておりまして、病院の部屋割りを早くやってもらいたい。それから、バード式循環蘇生器の使用につきましても十分でない。それじゃ費用は労働省が出すから、こことここにあるはずだから急送してもらいたいというように、私は現地で指揮をいたした記憶があるわけであります。  私どもの気持ちといたしましては、とにかく非常な大災害で、迅速に事を処理しなければいかぬ。それを、だれが責任を負ってどうするか議論をしておったんじゃたいへんなことになるというので、いま申しましたように、私どもみずから参りまして、いろいろ現地指揮をしたという経験があるわけでございます。いまから考えますれば、たとえばこの間の奔別の爆発のように、すぐ高圧酸素タンクを急送するとかいったような措置が——当時そういう高圧酸素タンクなどがございますれば、もちろんそのような措置も講ぜられたかと存じます。しかしそういうものが整備されておらなかったという段階であのような経緯をたどったわけであります。その点、今日の一酸化炭素中毒に対する措置の程度から見まするとはなはだ残念でございますが、当時使用し得る医療機械等につきましては、私ども可能な範囲で努力をいたしたという気持ちを持っておるわけであります。先生に抗弁する気持ちはさらさらございません。しかし私どもも東京から指揮したのではなくて、現地に行きましてできるだけの手を尽くした、誠意を持って当たったっもりでございます。その点は御了承を願いたいと思います。
  90. 河野正

    ○河野(正)委員 いまお答えになったようなことを私はお尋ねをしておるわけではない。部屋割りがどうだとか金の問題がどうだとかということでなくて、一酸化炭素中毒患者に対する適切な処置というものが迅速に行なわれたかどうか。単に部屋割りをして、早くその部屋に収容しなさいということじゃなくて、一酸化炭素中毒という特異な患者がたくさん出たわけですから、それらの患者に対する適切な処置というものが迅速に行なわれたかどうか、こういうことを私は指摘しておるわけなんです。それをあなたはどうも話の的をはずしてお答えになっておるけれども、私が再三再四言っておるのは、一酸化炭素中毒患者に対する適切な処置というものをとられたかどうか、こういうことなんですよ。
  91. 村上茂利

    ○村上説明員 当時一酸化炭素中毒に対する措置として、たとえばバード式循環蘇生器の使用といったような措置を至急講ずる必要がある。したがって、いわば本格的な一酸化炭素中毒治療指針といったようなものが当時あったかどうかということになりますれば、先ほど申し上げておりますように、医療委員会が発足してから一つの統一的な治療指針ができたという経過をたどっておりますけれども、当時一酸化炭素中毒患者に対する措置として、私どもはできるだけのことをした、こういうことを申し上げておるわけでございます。純医学的な問題につきましては先生の御専門でごさいますから、私はとやかく申し上げません。そういう経緯にありますことを御了承いただきたいと思います。
  92. 河野正

    ○河野(正)委員 そこでお尋ねをいたしますが、回復認定を医療委員会が行ないましたね。これはなぜ一方的に医療委員会だけが回復認定を行なったのであるか、この点のひとつ御見解をお聞かせ願いたい。
  93. 村上茂利

    ○村上説明員 この医療委員会委員の方々の多くは直接患者を見ておられます主治医でもあられるわけでございます。長い間にわたりまして患者の経過を観察してきたということでありますが、この先生方が昨年の暮れに健康診断を行なった。しかしその後さらに本年になりまして、八月に二十数項目にわたります精密な健康診断を行なったわけでございます。そうして、健康診断を行ないました当時の患者の状態を申し上げますと、問題になっております七百三十八名について申し上げますと、入院していた方が百五十八名、通院しておりました方が二百八十五名、職場復帰などをいたしておりました方が二百九十五名、こういう状態であったわけであります。したがいまして一斉に非常に急激かつ画一的な措置をとったものだというような判断をあるいはされるかと存じますけれども、実はその中には、もう職場に復帰しておった人もあるわけであります。それで、健康診断の精密なものを行ないましたのは、こういったもうすでに職場に復帰しておる方、回復訓練所に入っておる方、通院されておる方、入院患者、これを全部ひっくるめまして、同じ基準に従いまして精密な検査をいたしたのであります。その結果出ました判断が労働大臣に対する医学的見解という形をとってあらわれてきたのであります。しかも担当の主治医だけではなくて、医療委員会の責任ある先生方がそれぞれのデータにつきましてさらに目を通し、検討するというような慎重な手続をとられまして報告書をまとめ、そうして顧問でありますところの東大名誉教授内村先生、沖中先生にさらに御確認いただいて、そうして正式に文書として労働大臣提出されたものであります。その医療委員会の区分によりますと、長期にわたって療養継続の必要が認められる者二十六人、それから労働能力が回復して職場復帰することについて支障がないと認められる者七百三十八人、さしあたり療養を必要とし、さらに観察の結果によって職場復帰し得る可能性のある者五十八人という区分をされたわけでありまして、この報告書の内容に従いまして——この報告書におきましても、これらの意見に基づいて、所定の措置に万全を期せということ、さらに上記の医学的意見に基づき労災保険法の趣旨にのっとって適切な処置を講ずることを期待するという要望があったわけでございます。そこで、そのような長年にわたっての御努力の結果であり、かつ、二十数項目にわたります健康診断の結果として、裏づけを持った意見書が出されたわけでございます。それを尊重いたしまして処置を講じた、こういうことでございます。
  94. 河野正

    ○河野(正)委員 その三池医療委員会が非常に権威あるものというふうにいわれておるのですが、それは内村先生あるいは沖中先生が所属されておるということだろうと思うのです。それならば、この内村先生、沖中先生は実際にどの程度患者に接触されておりますか、その間の事情をひとつお答えいただきたい。
  95. 村上茂利

    ○村上説明員 内村先生などは、現地に行かれました際に、症状の型に応じまして——もちろん八百二十二名全員内村先生がごらんになったわけではございません。型に類別いたしまして、その型ごとにいわばモデル的な患者の状態を診断せられた、こういうふうな事実はございます。
  96. 河野正

    ○河野(正)委員 少なくとも、結局回復認定を行なわれました七百三十八名の方々については、内村先生、沖中先生は当然接触をして、そして判定を願っておられたと私は理解するわけですけれども、それに間違いございませんか。
  97. 村上茂利

    ○村上説明員 直接患者を見られたのは先ほど申し上げたとおりであります。
  98. 河野正

    ○河野(正)委員 何人ですか。
  99. 村上茂利

    ○村上説明員 いま人数は承知しておりませんが、その患者の症状の型に応じましてピックアップして診察されたということであります。それから、医療委員会では、患者一人一人の検診結果の資料を御検討になりまして、かなり慎重な検討をされたようであります。もちろん検査に当たりましたのは主治医でございます。その判断が適切であるかどうかというのを主治医だけにまかせず、いろいろ各先生方が御検討されたようであります。そして、その検討の結果につきましてリコピーをとられた。そして、その症状判断について適当であるかどうかという検討をさらにされた。実は私どももそのリコピーにつきましてかなりのものを資料として拝見したような次第でございます。内村先生、沖中先生、それらのものにつきましていろいろごらんいただきまして、そういった意味で、医学的にどの程度見たならば正確かどうかという問題はあろうかと思いますが、沖中、内村両先生はかなりしさいに御検討に相なりました。そして、その結果を携えまして二十一日に大臣に会われまして、その結果についての考え方をお述べになった、そういう経過をたどっておるわけであります。
  100. 河野正

    ○河野(正)委員 物でございますと型に応じて診察をするというようなこともあり得るかもしれません。しかし病気は、いま周囲でも声がございますように非常に千変万化、そういう病気を型にはめて、そして、しかも今日これほど政治問題化、社会問題化しておる患者の判定を行なうということは、私はまさしく軽率だと思う。これは大学のプロフェッサーといえども、患者を退院させるかさせぬかという場合には、主治医から状況を聞くだけでなくて、教授自身が最後の診察を行なってはじめて退院するかせぬかという判定を行なっていることはもう皆さま方御承知のとおりだと思うのです。そこで、やはりこれほど重大な深刻な問題であるにもかかわりませず、単にペーパーの上だけで判断をして労働大臣に報告するというようなことは、私は軽率のそしりを免れぬと思うのです。ですから、こういうペーパーの上で判断をして、そして今日患者の皆さん方、家族の皆さん方が非常に深刻な思いをなさっておるわけですけれども、そういう深刻な思いをなさっております問題を処理するということは、これは大臣、軽率だというふうにお考えになりませんか。
  101. 山手滿男

    ○山手国務大臣 御承知のように沖中先生や内村先生は、最高の顧問といいますか、うしろ立てのような立場にお立ちになったわけでございますが、何と申しましても現地では最高のスタッフと思われる大学病院の先生方が三年近くにわたってずっと見てきておられます。そして医者としての非常な御苦労を願っておるわけでございますから、河野先生はよく御存じのように第一線の現地のそうした最高のお医者さんたちの見立てそのものが私は狂っておるとは思いませんし、その上にいまの沖中先生や内村先生が念を入れてこういうことである、あるいはこういうことであるというようなことについてさらに念を押されたというように私は考えてよろしいのじゃないか、こう考えます。
  102. 河野正

    ○河野(正)委員 この一酸化炭素中毒、特に三池の場合は非常に特異なケースなんですね。これはまた厚生省からどうせお答えをいただきたいと思うけれども、いままでにそういう経験をしたことはないわけなんです。これは大学のほうでも研究所のほうでも、そういう経験がなかった。そこで、一般のありふれた病気ならばそれはまかしておけばよかろうという結論も出てくるかもしれません。この一酸化炭素中毒というものは一般にはございます。たとえばこたつで中毒したとかあるいは炭火で中毒したとか、そういう一過性はございます。ところが、三池のような特異な一酸化炭素中毒というものは、今日までわが日本では経験のなかったところでございます。そこで、これは学問的に新しい分野なんです。そこで、やはりこの問題に対する処置というものは非常に慎重を期さなければならぬということは、これはいまの学問的な点からの特異性から見てまいりましても当然私は言えることだと思うのです。そういう意味で、私たちはこの問題について慎重を期さなければならぬ、こういうことを言っておるわけですね。ですから、舘林先生せっかく御出席でございますから、現在日本の一酸化炭素中毒に対する研究実績というか、業績というのか、そういう現況についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  103. 舘林宣夫

    舘林説明員 ごく短期な一過性の一酸化炭素中毒につきましては従来からある程度ございましたし、研究も進んでおったのでございますが、お尋ねの三池のような非常な大災害の際の深刻な一酸化炭素中毒というものは、従来あまり経験がございませんでしたので、以前は必ずしもわが国のその方面の治療の研究あるいは症例というものが進んだ状態とは言いがたかったわけでございます。三池の症例をはじめといたしまして最近の事例もございまして、近年はだいぶそのほうが進んでまいった、こういう状況であります。
  104. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣、いまお聞き及びのとおり、少なくとも三池の大変災が起こるまでは、三池で起こったような一酸化炭素中毒の実態というものはなかなか学問的にも珍しいケースで、解剖所見がない。外国でもそうです。日本でもほとんどなかったということで、当時ぜひ解剖して今後の学問の発展のために、向上のために協力してもらえぬだろうかという声も実は深刻にあったわけであります。それほど当時は、一酸化炭素中毒、特に器質的な変化ですね、この当時九大の専門の某教授も現地に参りまして、そしてその教授は、専門であったけれども、一過性の中毒に対する経験がおもでしたから、そこで三池の場合も、生命さえ取りとめたならば、時間がたてばだんだんと軽快するだろう、こういうふうな従来の経験から所見を述べたということは、私は十分承知いたしておるわけであります。ところが三池の場合は、私どもが想像いたしますに、非常に長い時間一酸化炭素の汚染した空気のもとにさらされておる、そういう条件がございますから、おそらく今度の場合は脳の器質的な変化というものが伴ってくるだろう、そうするとこれはかなり後遺症を残すぞというようなことを、私どもは実は専門的立場から指摘をいたしました。ところがその当時は、意見のいろいろ分かれるところがあって、結果的には私の言っておりましたことが、残念でございます、不幸でございますけれども的中した、こういうことなんです。そういうように、今日までの学問的な経験というものが日本では非常に薄かった、そういう研究の分野というものが非常に浅かった、こういう事情であるので、やはりその後三カ年間たっていろいろ観察なり研究はしてもらったわけですけれども、やはりいままで学問的に歴史が浅いということが非常に大きな問題点でございますから、したがって、やはりこの問題の処理については慎重を期さなければならぬということは当然のことだと私は思う。たとえば私どもは内村先生、沖中先生が神経方面で日本では権威者であることは承知いたしております。ですけれども、それならばこの一酸化炭素中毒についても非常に大きな権威者であったかどうかということについては別問題なんです、経験がないわけですから。ですから、何か問題が起こると、権威ある医療委員会でございます、こういうことがいわれておるわけですけれども、それはなるほど、沖中先生なり内村先生が権威者であることを私どもは否定いたしませんけれども、しかしこの一酸化炭素中毒に関しては特異なケースですから、やはりそういう権威者がおられても、その処理は慎重を期さなければならぬということは、これはもう当然のことだと思うのです。そういう意味で、この委員会が非常に権威あるものだから、ここで回復認定すればそれは当然のことだというふうな見解に立っておられることは、いささか軽率といいますか、慎重を欠いた処置ではなかろうか、こういうような考え方に立つわけです。これは一般の労災の場合は何も医療委員会があるわけではございませんから、それぞれ労災保険医が治癒したとかあるいは障害を残したという認定をすればいいわけですけれども、この三池の一酸化炭素中毒に限っては、医療委員会の判定というものは絶対的なものであるというふうな見解、そういう見解で進められるならば、いまのこの労災保険そのものの制度というものを根本的に改めなければならぬと私は思うのです。いまの労災保険のたてまえからいえば、私だって労災保険の指定医ですから、私が認定してもいいはずです。この三池の一酸化炭素中毒に限ってなぜこの医療委員会だけにこの認定権があるのか、この点私は非常に疑問に思うのです。この点は大臣、どのように考えておられますか。
  105. 山手滿男

    ○山手国務大臣 河野先生の御指摘、私もよくわかります。それで、そういうことであったために、今度の報告にもございますように、さらに長期にわたって療養さすべきものが相当ある、あるいは今後さらに観察をしていっていろいろ所見を出していかなければいかぬものが五十数人もある、こういうふうな結果をお出しになったわけでございます。それは今日のような、設備もあり、いろいろな経験を十二分に積んでおられましたならば、さらにこの委員会の先生方が長期にわたって二十数人の人は療養させなければいかぬというようなことには、あるいはならなかったのかもしれませんが、そういう報告をされましたのも、そのことに基づいておるものと考えております。
  106. 河野正

    ○河野(正)委員 私は、大臣ももう少し多くの意見を聞く必要があると思うのです。単に局長の適当な報告だけを受けて、そしてここでお答えになることについては問題があると思うのだ。七百三十八名に回復認定が行なわれたということでございますけれども、私どもは、いろいろな個々のケースを調査いたしてまいりますと、必ずしもその回復認定というものが適当であるかどうか、これは疑問を持たざるを得ぬと思うのです。これはもう新聞でもその点については非常に疑問を持っておるようでございます。私ども仄聞するところによりますと、患者の家族は、とうちゃんの頭は、現在小学校の子供より悪い、ずっと神経細胞がおかされて、能力が低下をして、とうちゃんの頭は、小学校の子供の頭よりも悪い、これでほんとうに働けるだろうかといって家族は心配をいたしております。家族が小学校の子供よりも記憶力が悪いと言うのに、それでもやはり大臣は、回復認定をすべきケースだというふうにお考えになりますか。
  107. 山手滿男

    ○山手国務大臣 先ほども申し上げましたように、私は局長以下の事務当局の話だけを聞いて申し上げておるものではございません。内村先生や沖中先生あるいは勝木先生等にも私自身が直接お会いをいたしまして、こういう最終的な決定になったことについて専門医としての御所見を直接私が伺って、決心をいたしておるわけでございまして、決して局長の事務的な判断だけに基づいて私がやっておるわけではございません。  それから先ほど症状が固定をし、職場復帰もできるような状態の人、そういう人たちが七百三十八人あると申し上げましたけれども、御指摘のように、神経系統の病気でございますから、周囲の環境によりましては、いろいろ御指摘のような問題が起こり得ることもあろうかと私は想像をいたします。これはしろうとの想像でございますが、そういうことでございますから、そういう人たちに対しましては、この症状が固定をした、職場復帰可能だというような方については、障害補償給付に移行をいたしますが、同時にそういう現実に困る事態が起きて、さらに特別の処置をする必要があるということになれば、御本人なり家族の方々の異議の申し立てといいますか、申し出によりまして、さらに検討をする道も開かれております。したがって、ただここで一切がっさい全部終わりということではないわけでございまして、お医者さんのそうした処置に対してさらにいろいろ道が開けておる、こういうことで私はよろしかろうと考えております。
  108. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣はよろしかろうとおっしゃるけれども、私どもが一歩下がって、たとえば異議があるものは異議申請をしなさい、再審する意思があるならば再審申請をしなさい、それならばそういう異議申請をしたり、再審申請をしたりして、どのくらいかかって結論が出ると考えておられますか。二年ぐらいかかるのです。そうなれば、その間は一体どうするかという問題になってくるでしょう。だからあなたは簡単にそれでよろしかろうとおっしゃるが、これは患者の身なり、家族の身になったらたまったものではない。異議の申請をしたり、再審の申請をしたりしましても、その結論というものはかなり時間がかかるわけです。その間かすみを食って生活をするわけにまいらぬでしょう。だからあなたが考えておられるように、そういう簡単なものではないのです。そこであなたはもう少し認識を改める必要があると思うのです。   〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、職場復帰が可能だとおっしゃるが、多少専門的にわたりますけれども、先ほども申し上げましたように、とうちゃんの頭はうちの小学校の子供よりも悪い、ほんとうにこれで働けるだろうかという問題があります。これは新聞が報ずるところでございますけれども、記者の皆さん方が見て報道しておるわけでございますけれども、退院患者が療養所を出る場合に足がふらついておる、これでほんとうに職場復帰が可能だろうかという心配をしたというような新聞記事も出ております。それぞれ権威ある方々が判断をされて決定をされたわけでしょうけれども、個々のケースを見てまいりますると、非常に問題点がございます。あるいはきのうの石炭対策特別委員会あるいは参議院の社会労働委員会でお聞きになったかどうかわかりませんけれども、退院後てんかんを起こしたとか、あるいはふろに入った患者さんが一ぺんふろに入ったのを忘れてしまって、またふろに入ったというようなケースがあるということ、あるいはお聞き及びになったかもわかりませんが、そういうような今度の一酸化炭素中毒の非常に特異なケースというゆえんのものは、脳神経、要するに脳そのものに器質的な変化を及ぼしておる、これが非常に特異なケースなんですね。したがって、脳器質そのものに変化を起こしておるわけですから、これは後遺症が残るのは当然のことなんです。そういう特異なケースですから、したがっていろいろそれに伴います随伴症状というものが起こってくるということが当然考えられるわけですが、そういうことも十分承知の上でこの職場復帰が可能だというふうにお考えになっておるのかどうか。そういうことをお考えになっておるとするならば、私は大臣はもう一ぺん現地に行ってよく患者をつぶさに見ていただいたらけっこうだと思うのです。どうしても私の言うことが正しいというふうに御判断願えなければ、ひとつこの際現地に行って、患者の実態をつぶさに勉強願いたいと思うのです。この点いかがですか。
  109. 山手滿男

    ○山手国務大臣 いろいろこの神経系統の病気につきましては、問題があとに残るというようなことも私もよくわかります。でございまするから、われわれといたしましては、会社そのほか現地にも指令を出しまして、復帰をされてしまってからあとも健康の管理に十分御助言を申し上げる、健康管理に注意をする、そしてそういう事態が起こらないように積極的な指導をし、あるいはそれに必要に応じては投薬等もするというような手厚い方途に出なければいかぬ、こういうようなことも考えておりまするし、今後も引き続いて、三池医療委員会の先生方には、いろいろ御配慮をいただきたいというようなこともこの間私はお伝えをし、申し上げておいたようなことでございます。これは専門家の河野先生にはおこられるかもしれませんが、先年私も病気をして入院をしたこともありますが、どうも一月も二月も長く入っておりますと、何とはなしに病院の中の雰囲気に押しつぶされるようなかっこうになりまして、ノイローゼぎみになるということが私自身もありました。そういう私のつたない経験からいたしましても、やはりある程度、もう三年もたったことでございまするし、専門医の方が職場復帰も可能だとか、症状が固定したとかおっしゃるような方々でございまするから、私はこうしたことを機会に、環境もある程度転換をしていただくというようなことも一つの方法であろうか、これは私だけのしろうとの考えでございますが、そういうことも考えます。どうも専門医の皆さん方の確信に満ちた所見をお伺いをいたしまして、私はそれに従うについてはそんなこと等も考え、同意をし決意をいたした次第でございます。
  110. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣が入院をしたらノイローゼになった、入院をしてノイローゼになるのはあなたの脳が弱いのです。だれでも入院してノイローゼになるものではない。今度の三池の場合は、脳に器質的な変化が起こっているからいろいろな後遺症状が出てきているのですね。あなたのノイローゼと三池の皆さん方の神経症状と本質的に違うのですよ。あなたが入院をしてノイローゼになったということで、三池の皆さん方を一律に、入院しておるからノイローゼになったということは、それでは三池の皆さん方は立つ瀬がないです。そういうことは不謹慎ですよ。だからそういうことはひとつ御訂正になったほうがいいと思うのです。それから、今度の特異性というのは、器質に変化があるということですね。脳の器質に変化があるということですから、いま大臣がおっしゃるように、入院しておればその空気に左右される、そういうなまやさしいことではないのです。器質的に変化がなくて起こってくるのは一般のノイローゼです。この場合は、そういうような精神的に起こってくるのではなくて、要するに脳の器質に変化があって起こってくるわけですから、本質的に違うということ、この点は認識を改めてもらわなければいかぬと思うのです。そういう認識でこの問題を処理していただくことについては、私どもは納得するわけにまいりません。  そこで、新聞でも、これでほんとうに現場復帰、職場復帰ができるのだろうかというような心配もされておるようでございますが、私少し専門的にわたりますけれども、一言お尋ねしておきたいと思いまする点は、労働省は外傷性神経症というものについてどういう御見解を持っておられますか。これは一酸化炭素中毒と関係ないことではございませんので、ひとつその点についての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  111. 村上茂利

    ○村上説明員 実は御質問のポイントに合致しません場合にはお許しを賜わりたいのですが、ちょっと御質問の意味がよくわからないのですけれども、外傷性神経症の場合、労災医療上の取り扱いとしては、これは先生御承知のように、神経科において処理するわけですが、ただアクシデントに基づいた神経症と、そうじゃなくて有毒物を吸入して、たとえばベンゾールなどもございますし二硫化炭素もあるわけですが、そういうものが体内に入りまして脳神経をおかすという場合につきましては、外傷性神経症の場合には、これは労災保険上の扱いとしては、非常に災害原因が明確でございますから扱い方がわりあいに簡単である。しかし有毒物を吸入することによって神経がおかされたという場合には、それがアクシデントによるものでない場合には、その判断についてかなり精密かつ慎重な診断をしなければいかぬというようなことでございます。先生の御指摘が治療その他の面でございますか、ちょっとわかりかねるものでございますから、さらにお話がございますればお答え申し上げます。
  112. 河野正

    ○河野(正)委員 これは別に意地悪く質問しているわけではないのです。もちろん今度の三池災害の場合には、一酸化炭素に汚染されたということもありましょう。それから爆風その他で外傷という問題もございましょう。そういうものが一切含んで三池災害ですから、したがって私どもはこの問題を処理する場合に外傷性神経症の評価を無視して最終判断をすることは不可能だ点思うのです。ですから、あなたが専門じゃないからわからぬとおっしゃるかもしれぬけれども、それがわかろうがわかるまいがこういう重大な問題を処理する場合に、外傷性神経症の存在について御検討も十分めぐらされた上でそういう判断というものをなされなければならないと私は思うのです。ですから、専門だから、専門じゃないからという問題ではなくて、当然こういう結論が出る際には外傷性神経症の問題についてはどうだということが考慮の中に加えられておらなければならぬと私は思うのです。この点いかがですか。
  113. 村上茂利

    ○村上説明員 外傷によるものと、それから有毒物を吸入することによって生ずるものと、いわば両因が競合するという場合はもちろんあり得るわけでございます。ただその結果の症状判断につきましてどういうふうな判断を下すか、こういう問題であろうかと存じます。  そこで、三池医療委員会から大臣あてに出されました報告書では次のように申しているわけであります。「精神症候については、全般的に客観的にみて症状度が軽快してきてから、いらいら、刺激的、心気的傾向、神経症的傾向、偽痴呆的態度などが新しく、あるいは強く出現する傾向がみられた。このことは自覚症状の動揺、それに対する患者の態度などにも認められ、そのすべてを器質的障害によるものとは考えられない。患者自身の疾患に対する不安、予後、補償に対する危惧あるいは患者をとりまく社会的背景の推移からうける刺激など種々の要素による心因的影響を直接、間接に推定する必要があろう。現在の患者の状態は、多彩かつ重篤な大脳病理学的症候を示す一部の入院重症者を除いて、大多数のものは他覚的所見が殆んど認められないし、また認められてもごく軽い障害を残すにすぎない。そのほかに全く正常とみられるものも少なくない。かような指摘をされておるわけであります。  そこで、症状固定と申しましても軽い障害が残っておる人もありますし、全く正常の人もあるというように症状が一様ではございません。したがいまして、先ほど御指摘のようにそれを一律に扱うのかどうか、職場復帰と申しましてもほとんどの人については回復訓練を八週間行なう。それから職場に復帰するその職場がどういうものであるか、原職復帰であるか、そうでなくて軽い障害を残しておる方についてはより適切な職場に配置転換させる必要があるとかいろいろの問題がございます。その点につきましては実は私どももその対策の内容を発表いたしたのでございますが、あるいはごらんいただけないかとも存じますけれども、そういった職場復帰者の会社に対しては職場復帰訓練の充実、原職復帰が困難な者の配置転換等受け入れ態勢について万全の措置を講ぜしめるように指導する、こういった考え方も明らかにいたしてございます。回復訓練等につきましては、すでに新労、旧労ともほぼ同じ条件のものを会社との間に労働協約を締結いたしております。七月二十日のことであります。そういった条件を整備されてきておるわけでございます。なおったら一様に扱うといったことではなくして、そういった回復後の状態に応じまして処理していただきたい、会社にこういうふうに強く要望しておるわけでございます。  一方、アフターケアの問題が非常に重要だということが医療委員会からも指摘されております。  そこで労災保険制度の一つの制度といたしまして、外科後の処置といったようなアフターケア措置をとる保険施設がございます。そういった制度に基づきまして健康管理のための健康診断、それから必要な薬剤の支給といったようなアフターケア上必要な措置も、これは政府みずからの手で行なう、こういう趣旨でございます。そのように会社に講ぜしめる処置と、アフターケアのために労災保険で特別な施設を講ずる、こういった幾つかの手段、方法を用いまして、復帰者の処置につきましてはできるだけの措置を講じたいということでございます。
  114. 河野正

    ○河野(正)委員 いまいみじくも、あなたがお答えになったわけですけれども、その大臣に対する報告書の中にもございますように、いろいろな神経症状がある、その神経症状のよって起こってくるところは、器質的な点から起こってくるのか、さもなければ心因的な点から起こってきたのか、その二つの論に分かれるところだ、こういうふうに大臣あての報告は出されております。そこで私の言っているのは器質的な点から起こってくるいろいろな症状なり障害というものが一つあるし、それから先ほど二度、三度申し上げましたが、私が申し上げておりますいわゆる外傷性神経症ですね、外傷を受けた、そのために起こってくる神経症ですね、こういう二つの面があるわけなんです。ですから、この二つの面がそれぞれ考えられながら、この問題の処理というものが当然加えられなければならぬ。ところが、どうも実はあなたのほうもその外傷性神経症が何ものかということもよく御存じないままにお答えになっていると思うのです。もしよく承知をしてお答えになっておるとするならば、ここで論争してもけっこうですけれども、(「論争はやめようじゃないか」と呼ぶ者あり)要はそういう基礎的な認識の上に立って、すべての問題というものが処理されなければならぬということを私はお訴え申し上げたいわけです。あまり予備知識がなくて結論だけをお出しになることについては私どもはどうも納得いかぬ、こういうことを言っておるわけです。そういう意味で私はいま専門的なことをいろいろ取り上げてまいったわけです。  そこで、それらの点については論争はやめようじゃないかという声もございますし、私ども幾ら申し上げてもこれは論議の尽きるところではございません。ですから少し委員会の立場に戻ってひとつ最後の話を進めてまいりたいと思います。  そこで申し上げたいのは、御承知のように、この一酸化炭素中毒に関します処理というものが、前国会の中で雇用対策法の成立をめぐっていろいろな話しが進められてまいったことは、これはもう局長御存じのとおりだと思うのです。それはことしの十一月の九日になりますとまる三年になるわけですから、そうすればいまの労災の適用を受けられぬということはわれわれは百も承知しておるわけです。そこで、それまでに何とかしてもらわなければならぬ、だから最も近い時期に特別立法を成立させようじゃないか、あるいはまたもしそういう期限が来て、そして患者なり家族が路頭に迷わせられるということでは困るのだという前提でいろいろ話し合いが進められてまいったことは御承知のとおりだと思うのです。それが、この委員会におきます議決となってまいっておりますことは、これは否定できない事実だと思うのです。もしこれを否定すれば、もう委員会何をか言わんやです。もう私どもは一切話し合いに応じません。ですからそういう前提があって、この問題の処理というものがはかられたわけですから、当然一方的に回復認定が行なわれるということについては政治的に非常に大きな問題があることは、これはもう自民党の皆さん方といえども否定することができぬと思うのです。それをあえてあなたのほうが一方的に回復認定をやられたことについては、私はこの委員会審議にも反する行為だというふうに指摘せざるを得ぬと思うのです。この点について大臣いかがお考えでございますか。率直な御意見を伺いたいと思います。
  115. 山手滿男

    ○山手国務大臣 先ほど来るる御説明を申し上げておりますように、この問題につきましては現地の、あるいは中央のその道の権威者の皆さん方にお願いをいたしまして、その所見に基づいてこういう判断をいたしたわけでございまして、決して事務関係の者が独断的に処理をしたというものでは私はないと思います。  また、いまお話がございました国会における附帯決議等につきましても、私はあの附帯決議を尊重しなければいけない、附帯決議の線に沿うて対処をしていくべきである、こういうふうにいろいろ申し、いろいろ検討もいたしました。しかし、あの附帯決議そのものは決して治癒した人たちに対して、退院を勧告をしたような人たちについて、さらにいつまでも現状のような形でおってよろしいということを書いておるわけではないと思います。なおった人は別であって、なおらない人については現状どおりあくまでも手厚く対処をしていく、治療をしていく、こういうことが書き示されているわけでございまして、これは当然のことであるし、労働省もその線を曲げるようなことは絶対してはいけない、こういうことでやったわけでございます。
  116. 河野正

    ○河野(正)委員 非常に大臣答弁には詭弁があると思うのです。一つはそういう前提条件で、実はあの決議が行なわれたわけじゃないのですね。  もう十一月九日には三年が来るわけですから、私どもはそういうことも配慮に入れながら実は早急にその立法化をやっていこうじゃないか、あるいは法律の改正をやろうじゃないか。そうして少なくとも三年目の期限が来た場合にいろいろ問題が起こらぬようにという配慮で実は話し合いを進めてまいりましたことは、与党の諸君も十分御承知のとおりだと思うのです。そういうことを前提にして、いろいろ私どもは問題をかかえておりました雇用対策法の成立についても成立が行なわれたという経緯があるわけです。それが一つです。  これはもう審議の上からも非常に問題があると思います。  それからもう一つは、なおった者にはもうその処置というものは考える必要はないのだ、こういうお話ですけれども、そのなおったか、なおらぬかというところにいまの論議が分かれているわけです。ですから、私どもはなおってないという前提に立っておるし、あなた方はなおったということですから、なおってないとすれば今後の処置というものが講じられなければならぬということは当然のことだと思うのです。ですから、その第二点はさておくといたしましても、私が前段に申し上げましたこの三池災害のあと始末というものが、三年目の時点というものが十一月九日に来るということはわれわれ十二分に承知をいたしておったわけでございますから、そういう点も考慮に入れながらいろいろ話し合いを進めてまいったということは、よもや局長は御否定なさらぬだろうと思うのです。そうすると、今度の一方的な処置というものはまさしく国会の院議を無視する一方的な行為だというふうに私どもは断定をしてもこれは何もはばかるところはないと思うのです。そうでしょう。国会相談いたしましたか、あなたは。
  117. 村上茂利

    ○村上説明員 決議の内容は、第一は立法問題でありまして、これは労災保険審議会にも諮問いたしまして御検討願ったわけでございます。  第二の条項でございますが、被災労働者に対する療養その他の援護措置云々ということでございますが、私どもはこの決議がなされる前の段階におきましても、療養を必要とする方にはもう十分手厚く処置をしなければならないというふうに考えております。しかし療養の必要のない人は別ですよ、というような点につきまして私も申し上げましたし、そういうことはこの文章を見れば、療養の処置と申しましても療養の処置の必要のない人に療養させようという趣旨ではない。これは事理の当然であるというふうに私どもは理解しておるわけでございまして、問題が病気のことでございますから、もう療養の必要を認めないというような方に対してまで療養する趣旨ではない、こういうふうに私どもは考えておる次第でございます。
  118. 河野正

    ○河野(正)委員 その療養の必要のない者に療養させると言っているわけではないのです。私どもは療養の必要があるから、なぜ回復認定をやったですか、こういう取り上げ方をしておるわけですから、ひとつ誤解のないように願いたいと思うのです。  そこで、私どもだって病気になれば、その医師の診断が納得のいくか納得のいかぬかぐらいのことは、それは患者に与えられた権限ですから、納得のいくまで医師に見てもらうだけの権限があると私は思うのです。ですから、Aという医師が不安でございますれば、Bという医師の治療を受けてもよろしいし、そういう選択の自由は患者側にあると思うのです。今度の場合、小学校の子供じゃあるまいし、何もあなたからそういうわかり切ったようなことをお教えいただく必要はないと思うのです。何もなおった者に対して治療してください、そういうことを私どもが言っておらぬことは当然のことなんです。あえてあなた方がそういうことをおっしゃること自身が、私は非常な問題があると思うのです。私どもはそれはもう明らかなことですからあえて申し上げませんが、要は、なおった、なおらぬというところに見解の相違があるわけですから、少なくともなおっておらぬとするならば、そういう人々が納得のいく方法を講じられるということがまず必要じゃないかということが一つ。  それからもう一つは、附帯決議というものは御承知のように長々書いておりましても、与野党の話し合いで簡潔にということで非常に短縮するということは従来の慣例なんです。ですから、その文字の中に盛り込まれている精神というものは非常に幅が広いわけなんですね。くどく書けば自民党のほうからもう少し短縮してくれという申し入れがあるから、いつの場合でも短縮するのです。ですからややもいたしますと抽象的におちいるような結果になることもございます。少なくとも雇用対策法にはいろいろな問題点がございました。しかし与野党の話し合いの結果何とか取りまとめようということで話し合いが進められて、その一環としてこのCOの措置の問題がいろいろ論議されたということは、もう局長も十分御承知のとおりだと思うのです。これは与党の皆さんも十分承知のとおりだと思うのです。その中には少なくとも三年後にはこういう問題が起こってくるということはわれわれは予想されたわけですから、そこでその問題についてはひとつ納得のいくような方法で処理しようじゃないかということが前提でいまのような附帯決議がつけられたということは、もう委員会の皆さん方はみんな御承知の上だと私は思うのです。それをいまさら、その文章が短いからといってそれをかってに労働省が解釈されるようなら、私どもは今後考え方があります。委員会審議においても協力できませんよ、そんなことでは。院議を尊重されぬということでは、私ども今後十二分な協力をすることはできません。むしろ私は文章は短いけれども、その文章の中に盛り込まれておる精神というものは非常に広いんだという前提に立ってお答えを願わないと、文章がこれこれだからといって機械的にお答えになるようでは、私どもは今後委員会審議についても協力するということは不可能です。ひとつそういうことも含んで、これは非常に政治的な面でございますから、大臣から率直に御見解をお聞かせいただきたい。
  119. 山手滿男

    ○山手国務大臣 ただいま先生からお話がございましたように、なおった者は当然療養の必要はない。これは私どもしろうとにもそう思われますし、常識でございます。この文章を直率に読んでみまして、私もそういうふうに考えた次第でございます。しかるところ、ああした現在の医学界の最高権威の皆さま方から、退院してもよろしい、なおったんだ、こういうような報告書が正式に文書で出されてきておりまするし、本人のほうにもじかにそういう勧告がされておるわけであります。これらのことを一応ずっと考えあわせてみまして、私どもは当然こういう結論にならざるを得なかったわけであります。ただ、しかし先ほど来申し上げておりますように、これは神経系統の病気でございますから、いろいろな状況によっては思わぬことも起きるかわからない、そういう人については個々のケースを見てさらに救済の手を伸べようじゃないか、そういう道も開いておこうということでございまして、私は筋道としてはちょっともおかしいことはない、こういうふうに考えております。
  120. 河野正

    ○河野(正)委員 筋道がおかしゅうないということになれば、私ども実はもうこれで結論にしようかというふうに考えておりましたけれども、結論にするわけにまいりません。私どもはやはり筋の通らぬことを言っているわけではなくて、私どもは私どもの筋があるわけです。だから大臣よくお聞き取り願いたいというのは、単に一部の意見だけではなくて、私どもは私どもなりに、ずっと三池大災害が起こって以後この問題に重大な関心を持ってきておるわけです。それは私どもはただ意見を聞いただけではない。現地に行って患者を見てまいりました。滝井さんも一緒に見てまいりました。あなたと違って、私どもは現地の患者についても触れてまいったわけです。そしてそういういろいろな立場から私どもは私どもなりに結論を設けてここで意見を申し上げておるわけですから、私どものそういう意見なり立場というものを御尊重願えばけっこうですけれども、いやそうじゃない、沖中さんやら内村さんがいられる医療委員会というものが非常に権威のあるものだから、もう国会で何と言おうと問答無用じゃということならば、私どもはさかのぼって委員会の決議というものは一体どうなんだということを指摘せざるを得ぬと思うのです。その院議というものは、この雇用対策法その他と非常に重大な関連を持っておるわけですよ。あれはただ単なるCO中毒に対する決議ではございますけれども、これは当時重要法案と言われてまいりました雇用対策法の成立と関連をして、非常に重要な経緯というものをたどってまいっておる点でございます。ですから、あなたがもう筋が通っておるのだ、なんぼ国会で言おうと、もう権威のある学者が言うこっちゃから、国会の言うことは問答無用じゃというなら、私どもは開き直らざるを得ぬと思うのです。
  121. 村上茂利

    ○村上説明員 ちょっと事実の問題がございますから私からお答えさせていただきたいのですが、八百二十二名の方について全部一律な扱いということではなかろうかと思うのでありまして、現に出勤しておるような人もいるわけであります。そういう方とか、回復訓練過程にありまして相当体力も回復された方も、いろいろあるわけでございます。問題になりますのは、入院している方の処置が中心になるだろうと思うわけでございます。その入院している方につきましても、二月、四月、七月、九月といったような段階でお医者さんが退院してよろしいという通告をした方も相当あるわけであります。そのような医療の実態、患者の実態に即応しまして、私どもはきめこまかく判断をいたしたいということであるわけでございまして、しかもこの被災労働者のうち半分以上の方々はその処置に服しておるという事実があるわけでございまして、これは一括してどうこうというわけにはまいらないのじゃないだろうか。具体的にこれは対処していかなくちゃならぬというふうに私ども考えておるわけでございます。しかも問題がございますれば、先ほど大臣から答弁いたしましたような形で問題があれば受け入れるという態勢もあるわけでございます。そういうことで処理させていただきたいと考えておるわけでございます。
  122. 河野正

    ○河野(正)委員 私どもは数の問題を言っているわけじゃないのです。基本的な労働省の考え方に対してわれわれいろいろ論議をしているわけです。院議にいたしましても、院議が最終的に取りまとめられるまでの経過というのがあるわけですね。これは御承知のように、いま私がいろいろ取り上げてまいったような経過があるわけです。もう時間がございませんから多くは申し上げません。そういうふうに院議が尊重されぬということであるならば、われわれもこれは開き直らざるを得ぬということが一つ。それからもう一つは、これはきのうの石炭対策特別委員会あるいは参議院の社会労働委員会でいろいろ取り上げておるわけですけれども、一月二十七日の総評、炭労に対します了解事項、これらについても完全に履行されておらぬということは、これはあなた御承知のとおりです。私は結論だけ申し上げます。ほかの方にも迷惑をかけますから結論だけ申し上げますならば、もしあなた方が院議を無視され、軽視をされるということでございますならば、私どもは私どもで今後考え直さなければならぬ、こういうことです。大臣、ひとつあなたの立場で院議を尊重されるかされぬか、この点についてだけお答えを願いたいと思います。
  123. 山手滿男

    ○山手国務大臣 私たちは院議を尊重をいたします。ただ河野先生と見解の違いますところは、なおったかとかなおらぬかとかいう医学的な所見について、私たちは先生と考え方を異にしております。私たちはああした先生方の権威のある報告に基づいてこれを処理していこう、こういう立場を持っておるだけであって、先ほどお話がございましたように、なおったものはもう別だということは、私も河野先生と同感でございまするし、院議を尊重するたてまえに変わりはございません。
  124. 河野正

    ○河野(正)委員 要はなおったかなおらぬかというところに論議の分かれ目があるわけですね。それをあなたが、結局最高の責任者が参加されておる医療委員会結論だから、これは万やむを得ぬのだ、こういう独断的なお答えをされるところに私どもは問題があるので、結果的にはそうなっても、やはり納得いく方法でこの問題が処理されぬというところに私どもは問題があると思うのです。だから、そういう点について納得いくような方法を講じていかなければならぬというのが院議のたてまえだったと思うのですよ。これはことばの上で盛り込まれていると思うのです。委員長からさっきちょっと電報がまいりまして、そういうことが触れられておりますけれども、しかし短かい文章ができるまでの過程の中では、いろいろなことが論議されているわけですけれども、それは当時私が窓口をやったわけですが、いろいろなことが論議をされておる。そういう点も含んで尊重されなければ、私ども今後いろいろ話し合いで委員会審議というものを進めていくことはもうできぬと思うのです。ですから、今後の委員会審議を円滑にしていくためにも、私はやはり院議というものは尊重されなければならぬし、単に文字の上だけでなくて、文字に含まれておる精神というものが尊重されなければならぬということを私は強くお訴えをしたいと思うのです。いま大臣はその医療委員会の回答を金科玉条のごとく考えていろいろ答弁なさっておりますけれども、それについても人間のやっていることですから、必ずしもあやふやでないということは私は言えぬと思うのですよ。ですからやはりその他の意見が出てきたならば、それはやはりそうしたその他の意見というものについても耳を傾けるだけの襟度というか、度量というものが私は必要だと思うのです。それがなければ私は長い時間をかけて委員会で論議する必要がないと思うのです。少なくともいま国会でこのような意見が出ておる、これはやはり一考に値するというような気持ちで今後対処してもらえるかどうか、その辺についての御見解を最後に承っておきたいと思います。
  125. 山手滿男

    ○山手国務大臣 繰り返して申し上げますが、私たちはあくまで院議は尊重をいたします。それと同時にああいう先生方が長年月にわたって診察に診察を重ね、いろいろ御検討をいただいて御報告になりましたあの結論に対しても、これは尊重をいたしたいと思います。ただ、現実の問題として人間はなま身でございまするから、状況によってはいろいろなことが起きることが必ずしも絶無ではないかとも私は想像をいたします。したがって河野先生と同じように、そういう方々に対しましては労働省といたしましてもできるだけ手厚い方法を考える、こういうことを考えておるわけでございます。
  126. 田中正巳

  127. 吉村吉雄

    吉村委員 基準局長、きょうは十一月九日です。くしくもまさに三池三井の不幸な災害が起こってから、きょう三年目ということになります。この当時のことをどう国民が受け取ったかを私が思い出すために、いま当時の新聞の報道を見ましたところが、三年前のきょう、この日は三池のほかにさらに鶴見の大事故が起こった日であります。しかも総選挙が行なわれておるという状況であります。こういう状況でこの大事故が起こったわけです。私はきのう来参議院におけるところの社会労働委員会あるいは衆議院の石炭対策特別委員会における基準局長あるいは労働大臣答弁なるものを、新聞報道を通じて見てまいりまして、人間の気持ちというものはこういうふうに変わっていいのだろうかという感を深くせざるを得なかったわけであります。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 あの当時国民がこの悲惨な災害に対してどういう感じを持ったか、当の責任官庁であるところの通産省、労働省等は、どういう態度をとっておったか、全力をあげてその救済に立ち上がらなければならない。同時にその後開かれた国会の本会議においては緊急質問に対して総理みずからが、もうこういうことの起こらないようにということを、しかも犠牲者やあるいは遺族の救済については、政府は全力をあげてこれに当たりますという態度表明をされた。それから三年たってまさにくしくもきょうあなた方の答弁を聞いていると、一体あの三年前の政府の態度、あの当時の国民が受けた衝撃に対して、ほんとうにこたえる態度であるかどうかということを私は疑わざるを得ない。まさに官僚的といえばこれ以上官僚的なやり方はない、こういうふうにすら私は考えるわけであります。労働大臣は、当時労働大臣ではなかったわけですけれども、そういう三年前のあの当時の状況を考えてみて、いまのあなた方の答弁というものは、一体そういうことで、あの人たちに対するところの救済なり、社会に対して何とかこの種の災害は起こさないようにしていかねばならないという一貫した政府の態度だというふうに受け取ることができますか。私は全く義憤なきを得ない。しかも、いままでの話を聞いておると、いま河野先生は、きわめて専門的な立場から、患者の方々がいまどういう状態になっているかということを切々として訴えておる。労働大臣は別に患者の人たちに接したということでもない。ただ権威ある先生方の、いわゆる医療委員会のその判定に基づいてということしか述べられていない。しかしこの問題については、との医療委員会に参画をした先生方のほかに、日本の医学界が非常に深い関心を持って今後のこの種の医療はどうあるべきであろうかということについて検討をされ、しかも今度の医療委員会の出された意見については、きわめて危険であるということを明瞭にしておる権威を持ったところの先生方もいることは御存じのとおりだと思うのです。こういうふうな状態の中で、いま労働大臣や基準局長がとっている態度というものは、私はきわめて遺憾だ。人間尊重というようなことを口にしておったって、何にも現実の問題としてやっていない。すべての社会保障の政策の問題についても、私どもはそういう主張をしてまいりましたけれども、現実にこうやって起こっておる問題についても、まさにあなた方の態度というのは、口でだけ人間尊重を言っておって、現実には、いま困っておる者を病院からほうり出そうとする。それも法律上やむを得ません。そういうことであるとするならば、何も国会におけるところの決議や何かは必要なかったと思うのです。総体的に私はいまそういう感じを持ったのですけれども、私のこの最初の所見に対して、大臣一体どう考えますか。
  128. 山手滿男

    ○山手国務大臣 こうした重大な災害が起きまして、多数の犠牲者を出しましたことについて、私も非常に残念に思いまするし、労働省といたしましてもお気の毒な皆さん方にベストを尽くして手当てをしていかなければいかぬということは、先ほど来申し上げておるとおりでございます。何か今度突如としてどうこうというお話がございましたが、決して突如としてやっておるわけではございません。ことしになりましてからも、正月過ぎから二月でございましたか、退院の通知も出し、さらに続いて何回も退院をしたらよろしい。三池の主治医の皆さん方がこういう診断をされておるのだからというようなことを重ねていたしてまいりました。したがってそれに対しましてすなおにといいますか、早速退院をされた方もございますが、そうでなくそのまま入院を続けておられた方々があるわけであります。しかしそういうように、先ほど来河野先生もお話がございましたように、なおった者は別にそれはきまっておるというようなお話がございましたが、私たちも治癒をしたという専門医の認定が出ました以上は、もうずいぶん長くそのまま入院を続けていただいておりましたけれども、やはり法律に基づいて処置すべきものは処置をすべきである、こういうふうに考えて処置をしたわけでございます。いま突然こういうことを抜き打ち的にやったとかなんとかいうことではございません。
  129. 吉村吉雄

    吉村委員 それで問題を早く進めていくために、先ほど河野先生からも質問がありましたけれども、一酸化炭素中毒症対策に関する決議、この決議が生まれるまでの経緯等については先ほど述べられましたので、私はその経緯については深く触れません。ただ参議院においてはこの決議がなされていることは明らかです。これは先ほど大臣附帯決議ということばを使いましたが、私の理解では附帯決議ではないと思う。これは単独の決議です。そういうことはちょっとしたことのようであっても、これは重要な問題だと思うのですよ。経緯としては確かに雇用対策法の審議の過程からそういうものが生まれてきた。それは否定はしません。しかし、当時わが党から一酸化炭素中毒症に対するところの特別援護法の提案を参議院においてなされておって、その審議の過程の中でこの決議が生まれてきたというのが本筋の経過だろうと思うのです。この決議を見ますると、二つの項目からなっています。「一、一酸化炭素中毒被災者援護措置について、差当り炭鉱労働者に限り、今後一カ年以内に、立法措置を講ずるよう努力すること。二、右の立法措置が成立する迄被災者に対する療養その他の援護措置は現在の状態と変らざるよう措置すること。」これが六月二十七日の参議院の社会労働委員会における一酸化炭素中毒症対策に関する決議です。間違いないですね、これは。
  130. 村上茂利

    ○村上説明員 決議の内容は御指摘のとおりでございます。
  131. 吉村吉雄

    吉村委員 そこでお尋ねをしたいのは、この決議が生まれてきたということは、いろいろの法案との関係がありました。しかし、この第一項の中に盛られておりまするものは、一酸化炭素中毒症という問題になりますと、必ずしも炭じん爆発による被災者だけではない、いろいろなものが含まれるということで、政府のほうとしては、立法までに相当時間がかかるということを強調したはずです。ですから一項の中では、そういうことであるとするならば、さしあたり炭鉱労働者に限るということを明瞭にしているのです。他の一酸化炭素中毒から切り離しても炭鉱労働者の問題については一カ年以内、こういうふうにいっておるのです、この一項の精神は。そこで、これは一カ年の間に立法措置を講じなければならないということになるわけです。それまでの間に一体、いまあの三井三池の被災者の方々にどうするかということが問題になって、そうして立法措置が講じられるまでの間については現状のままでいこうというのがこの決議の精神です。そういうふうに理解されませんか、基準局長。
  132. 村上茂利

    ○村上説明員 御指摘のように、療養の必要のある方につきましては、そのように存じます。ただ、療養の必要のなくなった方にまで療養を継続するという趣旨ではないと思います。
  133. 吉村吉雄

    吉村委員 私の質問の内容にだけ答弁してください、よけいなことを聞いていませんから。療養の必要のある者についてということは当然の理屈でしょう。問題は、この決議が生まれる決議の精神の問題なんですよ。法律どおりにやるんでしたならば、こんな特別決議は必要ないでしょう。あなた方は法律どおりにやったということを言っているのですよ。法律どおりにやるとすれば問題が起こる、こういうことが予見されたから、二項の決議が必要になってきているのですよ。私は医者の専門家ではないけれども、当時の経緯と、それからこの決議の生まれ出るまでの関係とを考慮してみますると、この決議の精神というものは、とにかく一年の間に炭鉱の被災者についての援護立法をつくろうじゃないか、それまでの間一体どうしようかというのが議論になって、それで二項が起こってきているわけですよ。ですからその当時、いまと同じ労災法があったことは御存じのとおりでしょう。だから労災法が三年目の十月ですか、十月末で切れるということを想定をしておって、そのときにいろいろ問題が起こるであろうから何らか特別の措置をしなければならないであろう、こういうことがこの決議の趣旨なんですよ。あなた方は、法律どおりやったということを言っているわけですが、法律どおりやるので、それで事済むんだったら、この決議の必要ないですよ。そう思いませんか、大臣
  134. 山手滿男

    ○山手国務大臣 先ほど来しばしば申し上げておりますように、この決議の趣旨を尊重をしてまいりまするし、この決議はただ単にほっておきますと、いまのような状態でございますると、なお行き届かないケースも起きてこようというようなことで、さらに念を入れるという意味で、特別にこういう決議がなされたものと私は解釈をいたしております。
  135. 吉村吉雄

    吉村委員 そうなりますと、この決議の作成に携わった人たち意見を聞かなければならぬということになります。大臣がそういう逃げ口上を言うのであるならば、この問題は公の委員会の中でこの決議の作成に当たったわが党の関係者並びに与党関係者にも出てもらってもきちっとしなければなりません。しかもあなた方も御存じのように、この決議ができる以前に、与党野党の国対委員長との間に覚え書きまで締結されているんですよ。その事実は御存じありますか。
  136. 山手滿男

    ○山手国務大臣 昨日も参議院の社会労働委員会でこれが問題になりまして、いまのような趣旨を私が、あるいは事務当局から申し上げまして、いろいろ論議を重ねたところでございます。また国対委員長同士でも、大体同趣旨のことが話し合われて決定をされたことは事実でございます。
  137. 吉村吉雄

    吉村委員 そうしますると、自民党社会党の参議院の国会対策委員長との間にも、いま私が申し上げましたような決議の趣旨の覚え書きがなされておるということも、大臣は認められておるわけです。そうなりますると、これは私は見解の違いの問題をここで何度も議論してもしようありませんから、その当時の関係者に来ていただいて、そうして明らかにしなければ、この決議の内容、精神、こういうものは明瞭にならない、明瞭にならないと自後の対策といいますか、審議というものは進んでいかない、こういうふうに思います。こういう点については私どもの理解は明確にしておきますけれども、とにかく立法措置のできるまでの間は現状のままで、そうして療養その他の援護措置をしていく、こういう必要があってこの二項が生まれたわけですから、そういうふうに私どもは理解をしておるのです。あなた方は、そういう理解をしていないということになるわけですけれども、この理解の違いだけはまず明瞭にしてもらいたいと思うのです。
  138. 山手滿男

    ○山手国務大臣 先ほど来からも申し上げておりまするように、さらに長期療養を要する人たちあるいはさらにしばらく観察を必要とするような人たちについては、あなたと全く同様に考えております。しかしすでに治癒したと認定をされております者については、先ほど河野先生がおっしゃったように、なおった者についてさらに入院してどうこうということにはならないと考えております。
  139. 吉村吉雄

    吉村委員 少し問題の本質をぼかさないで答弁をしてもらいたいのです。先ほど河野先生が、なおった者についての療養の必要は当然ないでしょうと言ったことに大臣はしがみついたようにして、そればかり言っておるようですけれども、形式論としてはそうだということですよ。形式論的に言えば、なおった者の療養を見る必要ないというのはあたりまえの理屈でしょう。そんなことは、議論の対象にも何もならない問題だと思うんですよ。ただ私はそういう状態の中で、なぜこの決議が必要になったのかという当時の状況を考えてみなければならぬということです。そうでしょう。医療委員会が判定をしてなおったということは、それはもう労災補償の適用から除外されるということは、法律上きまっている当然のことでしょう。そういうことがあっても、そういう法律というものがあった中で、なぜこういう決議が生まれたんだということを考えてみなければならぬということですよ。あなたは、事務当局意見を聞くのはいいけれども、こういう決議やなんか生まれるというのには何か理由があったんだろうくらいのことどうして考えつかないのですか。そういう点ではあなたの態度というのはあまりにも真実を追求しようとしないで、そうして事務的に形式的にだけ問題を処理しようとする、そういう態度にしか聞こえない。この前の最賃法の問題のときもそうですよ。なぜ最賃法というものがこういうふうにもめているのかということが——これほど労働問題の中で大きい問題になっているのに、従来事務当局が繰り返してきた答弁、それをそのまま言っているというだけでは、本来最高責任者としての、政治家としての責任ある態度というわけにはいかぬじゃないですか。私は最賃法の問題については触れませんけれども、同じように今度の問題についてももっと深刻な気持ちになって考えてみるくらいの配慮があってしかるべきだ。特に三年前のあの状態を振り返ってみたならば、そのくらいの配慮がなくて一体どうするんだと言いたいのですよ。いまもあなたはおっしゃいましたし、先ほど河野さんの質問の際にも答弁をしておりますけれども、重要だと思いまするのは、われわれとしてはその医療委員会判断に従って今回の措置をしました、だけれども、人間のからだは生きものなので今後どういうふうになるかわかりません、そういう方々については何らかの特別な措置をも決して考えていないわけではない、こういう趣旨の答弁をしましたけれども、これは具体的にはどういうことになるのですか。法律上、行政上、一体どういうことになるのですか。
  140. 村上茂利

    ○村上説明員 法的に申し上げますと、労災保険法上の措置、つまり補償費不支給決定に対する異議申し立て、こういうことになりますので、労災保険の審査請求という形が法律上の制度としてあるわけでございます。
  141. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣、それは特別の方法ですか。
  142. 山手滿男

    ○山手国務大臣 特別というよりか、これは所定の、当然の方法でございます。
  143. 吉村吉雄

    吉村委員 そういうことは、法律行為として法律上きまっていることは、何も大臣からここであらためて答弁をしてもらわなくたって、そういう権利というものは国民に与えられているのですよ。その権利に基づいてやるということくらいは、こういう道が残されていますよという指導、徹底さえすれば、それで事は済むのですよ。問題は、ことさらにこの委員会の中で特に、いろんな問題が起こって、そうして自後にからだのぐあいが悪くなったとかなんとかという人については何らかの道を考えますという答弁をあなたがするということは、現在の法律以上、行政行為以上に何らかの道というものを考えていくというそういう配慮があって答弁をしていると私は理解しておったのです。ところがそうでない。そうでないとすれば、何も特別なやり方も何もないじゃないですか。さっきのあなたの答弁というのは一体何なんですか。
  144. 山手滿男

    ○山手国務大臣 いまのような方法が、救済の道があることはよく徹底いたしたいと思いますが、先ほど来申し上げておりまするように、さらに会社等とも連絡をいたしまして、健康管理とかあるいは指導を十二分にするとかあるいは薬剤を投与していろいろな手厚い方法を講じるというようなことを方針として打ち出しておりまして、ほかに全然何もしない、こういうわけではございません。
  145. 吉村吉雄

    吉村委員 だから、それはたとえば、今回の措置をあなた方は医療委員会の決定の線に従ってやりました、やりましたけれども、あとでなま身のからだのことでございますから、いろいろと問題が起こるかもしれぬ、そういう方については何かの特別措置をとるという、そういう意思があるのかということを私はお尋ねした。ところが基準局長は、それは療養費払いについての不服申請という道がございますという答弁なんですよ。それだけならば何もここで事あらたまって答弁してもらう筋合いのものじゃないじゃないかというのですよ。きまっておるのですよ。国民の権利ですよ。そんなことあなた方から恩着せがましく言われる筋合いのものではないのです。大事な事柄は、今回の措置が正しいか正しくないかという問題についてはいろいろな見方がある。われわれのような見方もあります。あなた方としてはやむを得ないという立場でやったかしらぬ。しかし事は医学界にとっても一番新しい問題として十分研究していかなければならぬ問題として論じられてきたことなんですよ。だからそれだけに慎重に、しかも本人たちの生活なりあるいは本人たちの健康なり将来の問題というものを考慮しながらやっていくというのが特別の措置じゃないのですか。いままできまっておる法律の中だけでやるのであったら何も特別の措置じゃないですよ。そこらの区分けをはっきりしてください。
  146. 村上茂利

    ○村上説明員 私は法律的にどうかという点の御指摘に対してお答えしたわけであります。しかし大臣からお話しのように、健康管理の過程におけるいろいろな扱い方、その他あるわけです。それから審査請求を受理するとか処理をするといった場合、他の案件と同じように処理していいのか、そうじゃなくてもっとあたたかい気持ち大臣が御答弁なされたような精神でやる方法はないか、いろいろあるわけでございます。その点につきまして法制的なたてまえだけを申し上げたわけでございますが、健康管理の過程における、つまりアフターケアの状態における問題、それから審査請求、法律的にいえばそうかしらぬ。あるいは普通の方と同じでいいか、あたたかい気持ちでやるべきじゃないか、いろいろとあろうかと思うわけでございます。そういった点、今後の問題処理といたしまして一般の場合と違うのだ、患者の個々の状況をよく見まして、あたたかい気持ちで処理していきたい、こういうことでございます。現段階におきまして私からそのような気持ちをここであらためて申し上げまして、今後いろいろ進めてまいりたいと考えております。
  147. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣、それだけのことをやっていこうといういまの局長の補足答弁によりますと、健康管理その他についてほかの問題と違ってあたたかい目で見てやりたい、こういう趣旨だというお話ですね。それだけのあたたかい気持ちがあるならば、ちゃんと参議院でこういう決議までしてくれているのですから、この決議をよりどころにしてどうして立法化されるまでの間、家族の方々や本人たちが困っておるということを知りながら、なぜああいうことをきわめて事務的にやらなければならないのですか。それだけの気持ちがあるならば、私はこの決議をよりどころにして幾らでも行政官庁としてこういう特別な措置をとりましたということは言えるはずだ、こう思うのですけれども……。
  148. 村上茂利

    ○村上説明員 私、この三年間この問題に携わってまいりまして、災害発生当初から、できるだけの気持ちで処理したい、たとえば特別看護料の問題にしましても、できるだけ考えてみてやってきたつもりでございます。ところが労災医療の基本は、やはり専門のお医者さんの見解に従う、合理的な医学的な見解に従うというのが基本でございまして、労災医療の一般に通ずる原則であるわけでございます。したがって今日に至るまで退院問題がしばしばあったわけであります。その際に、お医者さんの判断としては、もう退院してよろしい、二月の時点でも、四月の時点でも、七月の時点でも勧告しておるわけであります。そして退院された方が多いわけであります。しかしその問題につきまして、それじゃ医者の言うとおりですよと退院を強制したかどうかということでありますが、その点につきましては、私どもそのまま黙認をした、容認をしたという形でございまして、ことさらにトラブルを起こしたり、どうこうするということではなくて、できるだけあたたかく見てあげたいという気持ちは、そういった事実からもお考えいただけるかと思います。ただ医学的な判断は一回じゃございませんで、昨年の暮れに健康診断を行ないました際にも、実は内容的には症状固定の人が相当あるという、ある程度のまとまった意見が出ておったのでございます。  しかしそれでもなおかつ、私のほうは、その点についてさらに慎重に御検討いただきたい、こういうことで、医者が退院してもよろしいと言う者につきまして、さらにもう半年以上でございますが、経過観察もずっとしていただいた。そうして八月にまた再び健康診断をやりまして、そうしてすでに実施した健康診断とその後の経過観察をいたし、それからさらに健康診断をやった。その結果まとめられた意見でございまして、医療委員会としては、できる、たけのことをいたした、こういう結論であるということで大臣に報告されたわけであります。  そこで、私どもこの三年間三井三池の問題に携わった者としていろいろ苦慮もし、できるだけのことをいたしたいということで経過いたしましたけれども、そのような慎重な手続を経て科学的、医学的な判断を下されたのでありますから、これを尊重して措置せざるを得ない、このようなことでやっているわけでございます。
  149. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの基準局長の答弁は、あなた方の今日とっておる態度についての経過説明として聞いておきます。納得するという意味ではないのです。  次にお尋ねしたいのは、ことしの一月二十七日、総評と炭労と労働省の間に三井三池CO患者対策に関する覚え書きというものを結ばれているというふうに聞いているのですが、これは結ばれておりますか。
  150. 村上茂利

    ○村上説明員 了解事項として意見の合致を見たものでございます。
  151. 吉村吉雄

    吉村委員 その内容の中で一番問題になると考えられますのは、入退院をする場合にどういう措置をするか、その手続の問題で担当医師の診断ということがこの中に書かれております。この医師をだれにするか、先生をだれにするかということについては、何らかの取りきめはなされておりますか。労働組合側の意見はどういうふうにするとかなんとかということは何もなされていませんか。
  152. 村上茂利

    ○村上説明員 その結論的なお答えの前にちょっと申し上げたいのでございますが、この入退院のこういう了解事項の精神でございまして、本来患者と医師との関係というものは相互信頼の関係であるのが一般であろう。そこで担当の医師の診断の結果を尊重するということは基本でありましょう。しかしながら争いがあった場合どうするかということで御指摘のような了解事項をまとめたわけであります。  そこで、これがなされたのは一月二十七日でございます。その後了解事項に該当するような事案が二月十四日、四月五日、四月十五日、七月十六日というように、この条項によって処理すべき具体的なケースが何回も生じてまいったわけであります。その間におきまして退院される方はされましたが、退院されない方はそのまま退院拒否ということでずっと今日に至っております。その間、話し合いの中におきまして二人の医師の方を推薦されてきた。これが公式なものであるか非公式なものであるかということは別でありますが、そういった二人のお医者さんについて話があった。それについていろいろ話の末、さらに適任者がいないだろうか、それについて、さらに上部団体である旧炭労などのお考えがいただけないだろうかといったような話し合いになった。その後それっきりになって話がないままに今日に至ったという経過でございます。
  153. 吉村吉雄

    吉村委員 その組合側で推薦をした医師というのは、私の聞いている範囲では、政府の側では適任者をということで拒否をされたというお話ですが、そういう事実はありますか。
  154. 村上茂利

    ○村上説明員 拒否ということばになりますと、非常に強いわけなんですが、もっと適任者がおられないか相談してみようじゃないかという経過をたどったわけであります。それは組合のほうから御推薦になるわけでありますから、労働省でかれこれ言いましても、拒否するということ自体がなんですけれども、もっと適任者がいないだろうか、相談してみようじゃないか、それでは将来の問題もあるから、上部団体に一枚加わってもらって相談してみようじゃないかというような話になって、それきりになってしまったということでございます。
  155. 吉村吉雄

    吉村委員 その限りでは、もっと適任者がという意味ですから、組合側で推薦した方については認めることはできなかったということでしょう、結論的に。拒否ということばは妥当かどうかは別として、そういう経緯を経て、そしてそのままになったというお話です。しかし、この了解事項の精神からしまするならば、今度のように入院患者について退院を求めるという場合には、当然了解事項の精神を尊重するとするならば、この入退院の問題についても、組合側が推薦をした医師の、それが労働省側が認めなかったという経緯はあるにしましても、そのままになっておるということからするならば、当然組合側と事前の話し合いなり何なりをして、そうしてあなた方の三十一日の措置というものがなされてしかるべきじゃないかというふうに思うのですけれども、全くこういう問題についてはそのままになってしまったので、それで全然考慮することなしに判定委員会だけの判定でやったということは、この了解事項の結ばれた意義というものがなくなるのじゃないか。どういうふうに考えておりますか。
  156. 村上茂利

    ○村上説明員 経過としましては、私どもの期待いたしておりましたのは、個々の患者さんにつきまして、自分はこういうわけで問題があると思うというように問題を提起されまして、そしてそれをさらにお医者さんが判断をして、話し合いがまとまらなければさらに上に上げるといったような問題提起のしかたを私どもは期待いたしておったわけであります。それが一括して退院拒否、こういうことで、退院するかしないかという問題が個別的な医学的処理というよりも、むしろ一括退院拒否かどうか、こういうような形で推移しましたことを私は非常に残念に思っておりますが、ただこの了解事項そのものは、お医者さんが医学的な医療行為として、入院さすか退院さすか、こういった問題につきまして患者とお医者さんとの争いを調整するための一つの手だてとして考えた了解事項であるわけであります。実は今度の措置は、直接入退院の問題ではなくして、第一線の権限ある機関が行政処分をした、こういう性質のものであるわけであります。したがいまして、この条項とは遺憾ながらちょっと条件が違う。行政処分の問題でございまして、違うわけでございます。だからかってにやっていいということじゃございません。先ほど申しましたように医療委員会の先生のお話も十分聞きまして、長い間の経過、観察の結果も聞きまして行政処分をした、こういうことでございます。
  157. 吉村吉雄

    吉村委員 あなた方のいままでの話を聞いてみると、今度の措置は急に突如としてやったのではない、それは退院に該当するような人は退院をしていった人もいる、いろいろなケースがあって、そうしてやっているので、別に変わった措置ではないのです、というのがいままでのあなた方の態度であったわけでしょう。ですから、そういう入退院の場合の混乱を少なくしようということで、あるいは意思の疎通をし合おうという中でこの了解事項はできていると思うのですよ。それが、選定をされるべき医師の問題で意見一致をしないでずるずるときておる、こういう先ほど答弁ですが、今度の場合は、行政措置だとはいうものの、現実に起こっている問題は、おれはまだなおっていないという患者の立場となおりましたというお医者さんの立場との紛争と見なければならぬと思うのです。それが一括であるか個人であるかということは、全くそんなものは問題になるべき性格のものじゃないと思うのですよ。個人個人がとにかく今度のやり方に対して、私はまだなおっていない、こういう理解をしてやっていて、それがたくさんの人数になったということかもしれませんけれども、そのこと自体は本質の問題とは何ら関係がないと思うのであります。ですから私は、そういう入退院の場合に、患者と行政機関との間あるいは会社側との間に紛争が起こらないようにという配慮のもとでこのような了解事項というものが取りかわされているのだというふうに理解せざるを得ないのです。ところが医師の選定の問題で行き詰まってしまってたな上げになってしまっている、こういう状況のようですから、だとするならば、今度退院を求めざるを得ないということになった場合に、当然にして組合側と話をした上で、そして組合側が推薦をする医師の意見、そういうものを聞いた上でやるということがあってしかるべきじゃないか、そうすることがこの了解事項の趣旨に沿ったあなた方の行政措置ではないか、こういうふうに私は考えるのです。そうじゃありませんか。
  158. 村上茂利

    ○村上説明員 まあ今回の行政処分の問題につきましてはこの了解事項の条件とは違うということを申し上げたのですけれども、そのことと別に、先生の御質問は組合のほうにも連絡して話をしたかといったような点に重点があろうかと思います。私どもは、個々の病院の入退院問題とは別に、一つの認定処分と申しますか、行政処分としてやります行為でございますから、役所の責任でやるべきことでございます。しかしながら基本的な考え方につきましては、やはり適当な方法によりましてお話申し上げておくほうがいいのじゃないかという考えで連絡はいたしまして、具体的な内容は二十五日さらにお示ししたという経過をたどっております。ただこれについてはその程度、度合いの問題がどうこうとか、いろいろまた御議論もあろうかと思います。ですから私は深くそれについては申し上げませんけれども、今回の行政官庁の責任でやります行政処分につきましても、基本的な点につきましては私どもとしてはまあ不十分かもしれませんけれども、考え方はできるだけ事前にお話しし、あるいはまた通知の前にいわゆる正式に御連絡申し上げるといったような形のものも考えまして、御連絡はいたしたわけであります。
  159. 吉村吉雄

    吉村委員 私は医学的には全くのしろうとですから比較的そういう点については常識的、一般的な議論をせざるを得ないのですけれども、何といいましてもCOガスによるところの後遺症という問題は、わが国の医学界としても新しい問題としてその対策を検討していかなければならないという、そういうところに分類をされている問題だと思うのです。そうだとしまするならば、できるだけこれは各関係の先生方の、あるいはその学界の納得のできるような医療対策というものを打ち出していかないと、将来たいへんな結果になりかねない、そういうふうに思うのです。  そこで、私の入手した資料によりますと、組合側であるところの総評と炭労、三池労組医療調査団というお医者さん方が、長年にわたって軽症患者の検診をずっと続けてきたという報告書があるのです。これは労働省ではこういうものが出ておることは知っておりますか。
  160. 村上茂利

    ○村上説明員 私が承知いたしましたのはごく最近、労働省のクラブで発表がございました際に、その資料を事実上ちょうだいいたしまして拝見したということでございます。ごく最近でございます。
  161. 吉村吉雄

    吉村委員 この内容を通読いたしますと、要約して、とにかくこのCO患者の扱いというものは非常にむずかしい、長期にわたっていろいろの角度からやっていかなければならないということが述べられております。そうして今回の医療委員会が出したところの結論というものは、きわめて遺憾であるということばをもって結ばれております。私はまさに専門家ではありませんからわかりませんが、先ほど申し上げましたように、こういう新しい分野に属する問題については、現在の労災保険法にも盛られていない内容の問題なんですから、これは十分慎重にやっていかなければならないということは、先ほど河野さんからも指摘をされたとおりだろうと思うのです。ところが全く別な見解を学者が示しておる、医療委員会はこうだということだけであなた方がやるということは、これはやはり問題にせざるを得ないと思うのです。  話は前に戻りますけれども、そういうようなことを考慮すればこそ、予測をすればこそ、あの参議院におけるところの単独決議というものもなされているわけですから、どうですかこれは大臣、あなた方が一回とった行政的な措置というものは現行法律に基づいてそうせざるを得なかったということでとってきたと思うのですが、それによって問題の本質は一つも解決してないということは御存じのとおりでしょう。あるいは専門的な医学界の中でもすでに問題になっておるのですよ。だから一回やったからそれを何でもかでもそのまま推し進めなければならないという、そういう性格の問題ではないと私は思うのです。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 経験と体験がきわめて少ないという新しい問題なんですから、これをやっていくにあたって、一度とったことはもうがんとしてそれだけやるのだというそういうのがりっぱな政治方向や正しい行政のあり方でもないと私は思うのです。ですから、現に起こっている事態というものを考えられまして、あるいは大臣も現地の実情なども見るという必要もあるかもしれません。しかし、きわめて深刻な問題であることには変わりはないと思うのですから、ひとつ将来に悔いを残さないためにもいま一度今回の措置については再検討をする、各学界の意見等を考慮しながら再検討をしてもらう、こういうふうにすべきではないかというふうに私は考えるのですけれども、そうでないとどうしてもこの参議院におけるところの単独決議の問題を私どもは問題の俎上にのせざるを得ない。労働省が院議を全く軽視をするという態度をとっているというふうに理解をせざるを得ない、こういうふうになってまいりまするので、この点はたいへん大きな問題として私は発展をすると思うのです。これは附帯決議であるならば、あなた方のいままでの態度というものは附帯決議をそのまま実施したとかなんとかいう態度ではないですから、私はそれはそれなりに理解をします。しかしこれは附帯決議ではありません。明らかに一酸化炭素中毒症対策に関する決議として単独決議がなされている。その決議の精神というものを歪曲するようなそういう理解でやられたのでは、私どもとしては納得するわけにはいかない。大きな別の問題として議論せざるを得ないということにもなってくると思うのです。したがって、どうかひとつこの点はあまりメンツにこだわらないで、十分現状を把握をされた上で再検討をするということが、この種の問題を解決するのにあたって、これは新しい道を開くのですから、慎重の上にも慎重であっていいはずだと思いまするので、そういう方向で考慮をしてもらいたいと思いますが、どうですか。
  162. 山手滿男

    ○山手国務大臣 私たちのとっております考え方なりやろうとしておりますことは、先ほど来るる申し上げておるとおりでございまするが、先生御指摘のように、今後のことにつきましてはできるだけ手厚く、できるだけ慎重に対処をして個々の皆さん方に対していきたい、こういうふうに考えておりまして、いま、先ほどお話しの慎重にといいますか、手厚くあたたかみを出せというようなお話については、十分出先のほうにも指示をいたしまして勘考させたい、こう考えております。
  163. 吉村吉雄

    吉村委員 今後できるだけということでは現実の問題は解決しないでしょう。現実の問題が起こっているんですから、それを具体的にこういう特別な措置をとりますとか、そういうことならば私はいまの答弁も生きてくると思うのですよ。単に行政措置に対する不服申請をするというようなことだけでやっていくというならば、二年も三年も先でなければ結論が出ないのですから、それまで待っていられるような事態でもないでしょう、こういった問題については。ですから、先ほどもあなたが言われましたけれども、健康管理に重点を置いたようなことで十分配慮をしていきたい、こうおっしゃいますから、だとするならばその考え方をもう少し具体的に広げるような形で、そうして患者の方々や家族の方々が安心できるようなそういう道をとっていく、こういう方向でなくてはいかぬじゃないですか。
  164. 山手滿男

    ○山手国務大臣 幅を広げてというお話がございましたが、やはり個々の患者の実際の状態に応じて、そのケース・バイ・ケースで手厚く慎重に対処していくということが私は必要じゃないかと思います。
  165. 吉村吉雄

    吉村委員 個々の患者の実情に応じて慎重に対処をするということは、新たに何らかの措置をとって、その個々の患者の実態というもの、実情というものを見るということなんですか。私は、そういうようなことならば、それであなたの言うところのあたたかい配慮というものも生きてくるかもしらぬと思っているのです。ところが基準局長の言っていることはそういうことじゃないのです。行政措置に対する不服申請をするというそのことしか言ってないわけです。ですから、何か特別な措置を講じられるというならば、私はそれも一つの方法であろうということで了解をしようと思っているのです。何かなされる気ですかということを聞いておるのです。
  166. 山手滿男

    ○山手国務大臣 重ねて申し上げますが、職場に復帰をいたしたような方でも、いろいろ、御指摘のような問題が起きました場合には、たいへんお気の毒でございまするから、十二分に現場で健康管理あるいは医学的な専門家の皆さん方に相談に応じてもらいまして、個々の人が安心できるようにつとめて努力していく、薬剤等についても配慮をしていく、そういうことでございます。
  167. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの大臣言明の内容は、解釈のしようによっては非常に重要な中身が含まれていると思います。健康管理といいましても、個々の患者の実態に応じてやっていこうということであるならば、どうしても私はもう入院しなければこのままの状態ではどうにもならないという人もおるかもしらぬ、あるいはあなた方の措置にやむを得ないといって泣く泣く従う人もいるかもしらぬ。そういうような方々について、その判断なり何なりということをする道を開かなければ、あなたの言明は生きてこないということになるのです。だから、そういう措置をとられるならばとられるで、私としましては、一つの方法として、次善、三善の策として、了解もできる。ですから、そういう意味のものとして理解していいのですかと言うのです。
  168. 山手滿男

    ○山手国務大臣 基本的な考え方についてはしばしばここで申し上げたとおりでございますが、先ほど先生から御指摘になりましたように、突然思わざる症状が、なま身でございますから、出てくるというようなこともあろうかと思いまするので、そういう場合には、ずっと健康管理に万全を期しておりまして、それに十分に親切に慎重に対処をして、お気の毒な結果にならないようにしようということでございます。
  169. 吉村吉雄

    吉村委員 最後に一つだけお伺いしておきたい。  これも私が得た情報なんですけれども、十月の二十八日ころ、労働省と三池の新労との間に、了解事項の覚え書きが交換された事実はありますか。
  170. 山手滿男

    ○山手国務大臣 覚え書きを交換したり何かしたいというようなことはございません。
  171. 吉村吉雄

    吉村委員 それでは交換をしていないとすれば、口頭でお互いに了解し合っているというそういう交渉の経緯はありましたか。
  172. 山手滿男

    ○山手国務大臣 新労の幹部の皆さまが労働省においでになりまして、私はお会いをいたしました。その場合に、その中の幹部の一人の方が、書いておいでになりましたことをいろいろ読み上げられまして、説明を加えられました。そのことについて、労働省としては善処してもらいたいというような、個々に御説明があって、御要請がございました。私は、それらのことをお聞きをいたしまして、いろいろ配慮をすべきである、こう考えて、努力をいたしましょう、こういうお答えをいたしました。
  173. 吉村吉雄

    吉村委員 その中で、伝えられますところによりますと、CO患者の問題に対して今回労働省がとった措置というものは、絶対に変更とか拡大解釈とかそういうようなものはない、絶対ないのだ、こういうようなことをあなた方が言明をしたとかいうお話があるのですけれども、事実かどうか。
  174. 山手滿男

    ○山手国務大臣 先ほど来御説明を申し上げておりますように、三年間たいへん複雑な経緯を経ておりますけれども、今回治癒の認定をいたしました。その治癒の認定をいたしたことは現地の監督局長の権限でやったことでもございますし、また、医療委員会のほうのああした権威のある報告書も出ておることでございます。そのほかいろいろなことを私は検討もしておりましたので、そういう治癒の認定をしたりなにかをしたことについて変更を加えるというようなことはいたさない、いたすべきでない、こういうことを申したわけでございます。
  175. 吉村吉雄

    吉村委員 先ほど大臣答弁には、人間のからだでございますからというお話がありましたね。そうすると、治癒認定をした、その後その方のからだが悪くなったとか、いろいろな容体の変化があったという者は、いまあなたが答弁をした内容とは反しない、こういうことに理解をすべきですね。
  176. 山手滿男

    ○山手国務大臣 そうお考えいただいてけっこうでございます。そういう救済の道は当然あるという前提に立っておるわけでございます。
  177. 吉村吉雄

    吉村委員 私は、先ほど問題にいたしました本年一月二十何日かに、総評、炭労との間に基準局長が了解事項を交換しでいる、こういった経緯等から考えてみまして、医師の選定等について両者の意見一致しなかったという経緯も明らかになりました。しかし、今回の措置をとるのにあたって、その了解事項というのは、患者の問題について微に入り細にわたって十分きめているわけですから、そういうような相手側の代表との間に十分意思疎通をした上で、そうして納得ずくで事が運ばれてしかるべきだと思うのですけれども、そういう努力がなされない。医療委員会の決定だということだけで、それを強引に押しつけようとするというようなことを一方でやっておりながら、他の一方では、今度は何か知らぬけれども、もう今回の措置は一定不変のものにしますということを別な労働組合とまた話し合いをする、こういうようなやり方が正しい意味での労働行政と見ることができるのか。私は、今度の問題については、どうも労働省のやり方というのは、何か一方的に片寄った目で見た上で、そういう先入観の上で今回の措置がとられているような気がしてならない。総体的に見ると、そういう気持ちをまた患者や家族の方々に与えているかもしらぬ、そういうところに問題があると思うのです。  ですから、ひとつこの問題については、大臣も最後に、とにかく健康管理の問題ということばの中でいろいろあたたかい配慮を加えていこうということを言われましたので、これをどういうふうに現実のものにしていくかというそのやり方によってもたいへん違った結果が出てくると思うのです。そういう点について、私どもは、いままでの総評やあるいは炭労と労働省の間で十分話し合われた了解事項、あるいはもっと大事な事柄は、参議院におけるところの社労委員会の特別な単独決議、こういう趣旨等から考えてみて、まずあなた方がなさなければならないのは、今回の措置はこれを撤回をして、新しい角度から全日本の、学界も納得するような方向で今度の問題に対処をしてもらうということがまず一番大事な点であると思うのであります。どうしてもそれがあなた方のほうでできないとするならば、先ほど大臣が再々言われている健康管理の問題の解釈等について、あたたかい配慮をやっていくという方向を次善、三善の策として考えてもらわなければいけない、こういうふうに思います。  今回の措置をとられた背景や何かについてはいろいろ問題がありますが、時間がございませんからこれで終わることにしますけれども、とにかく初めに申し上げましたように、三年前のきょうの情景というものを思い浮かべた上で、そうして人間尊重ということばに恥じないような政治というものを実際にやってもらわなければいけない、こういうふうに思いますので、最後に私はそれを強調して、質問を終わります。
  178. 滝井義高

    滝井委員 関連してちょっと三、四問お尋ねをしたいのですが、まず第一に、資料として御提出をお願いいたしたいのは、三池医療委員会の報告書をひとつ資料として全委員に配付をしていただきたいと思います。  次は、昨日以来内村さんなり沖中さんの名前が非常に出てくるわけです。さいぜん河野さんの質問にも、三池医療委員会一つ方向を出したら、最終的には内村さんなり沖中さんに患者を一つの型ごとにピックアップして最終的に見ていただいた、こういうことから、この症状の固定、広い意味の治癒の認定をしたのだというお話があったわけです。そこで、今後これはわれわれ論争をする上に必要ですから、内村さんと沖中さんが八百二十二人のCO中毒患者の何人を見たのか、見た日にちは何日か、これをひとつ御説明をしておいていただきたい。
  179. 村上茂利

    ○村上説明員 第一の医療委員会の報告書につきましては、資料として提出させていただきます。それから、内村先生などが現地で患者を見た日でございますが、同行した課長がおりますけれども、日付はちょっといま承知しておりません。
  180. 滝井義高

    滝井委員 およそでいいです。
  181. 村上茂利

    ○村上説明員 昨年課長が同行いたしまして、診察されましたとき随行したそうでございまして……。
  182. 滝井義高

    滝井委員 われわれ医者の常識からいうと、ことしの十月の二十六日に認定をするのに、世界的な権威であろうと、去年見たものでもって最後の締めくくりをしたなんということはナンセンスですよ。そういうことでは了承できません。われわれどんなにやぶ医者だといったって、そんなばかげたことはないわけです。しかも課長がついていって……。  それぞれの型に応じてピックアップをしたというが、類型は幾つ、どういうものがあったか、その類型を御説明願いたい。
  183. 村上茂利

    ○村上説明員 型と申しますか、医療委員会で第一症度、第二症度、第三症度といった区分を一応いたしております。そういった区分を中心にいたしまして見られたようでございます。なお、この医療委員会は過去十三回開かれておりまして、いろいろ討議されたことは内村先生にも御報告があったようでございます。したがって、先生が全部見られたわけではもちろんありませんから、主治医の所見を中心にいたしまして医療委員会検討し、判断した、こういうことであるわけであります。しかもそれが、先ほどお答え申し上げましたように、昨年の暮れに実施いたしましたときに意見というものが、ある程度出てまいったのでありますけれども、さらに慎重にするようにというので、その後の経過観察もいたしまして、そして八月にさらに八百二十二名について精密な健康診断をした、それによって判断をしたということでございますから、個別的な点だけをとらえて御判断いただくよりも、そういった全体の手続を踏んでまいりました過程を総合的にとらえて御判断を賜わりたいと思います。
  184. 滝井義高

    滝井委員 総合的なことで判断をしますけれども、さいぜんあなた方は河野さんにるる答弁をした。それから昨日も、私は私の質問の番でなく関連質問であったから、そのこまかいところはつけませんでしたけれども、きょうはあなた方が、型に応じてピックアップをやった、医療委員会が患者を一人一人検討した、この医療委員会というのは主治医でございます、しかも内村、沖中両先生に見てもらって、二十一日に大臣にその結果を報告をいたしました、こう明白におっしゃるものだから、しかもそれは内村、沖中先生のような偉大なる権威が見た、こう大臣もおっしゃるものですから、私は、内村先生が行って、少なくとも一人一人の患者を見たのだ、こう理解しておったわけです。ところが、いまのお話では昨年見たということですが、医者のイロハでは無診投薬というのは医師法違反ですよ。患者を見もせずに処置をするのは違反ですよ。見もしない先生が、ただ報告書だけを見て、そしてこれは治癒した、そんなものは医師法違反ですよ。そんなことは労働基準局長はわかっておるでしょう。あなたが安全衛生の一番の大元締めじゃないですか。そんなことさえわからぬでこういうことをやるからこそ、三池のガス爆発その他についてもきちんとした結論が出ないことになっちゃうのですよ。  次は、型に応じてピックアップしたというのは、一症度から五症度までのその型だそうですからわかりました。  そうすると、その型をどういうような類型で出したのか、その資料を出してもらいたい。固定したという結論を出すについては、これは全部が五症度ではないはずですよ。一症度、二症度、三症度、四症度、五症度とあるわけですから、したがって、たとえばその一症度と思われておる中から治癒の認定を受けた人もおるかもしれない。まさかそういうことはないと思うんだけれども、類型を型に応じてピックアップをしてみてこういう結論を出しましたとおっしゃるのだから、二十六日現在におけるその類型を出してもらって、そしてそれの。ピックアップのしかたを、あとでいいからひとつ資料で出してもらいたい。それは資料でけっこうです。いいですね。
  185. 村上茂利

    ○村上説明員 先ほどの内村先生、沖中先生のお話でございますが、患者を一人一人見たということは申し上げてないわけでございまして、その点ひとつ御了承いただきたいと思います。  それから、治療する場合の症度云々といたしまして、第一症度、第二症度、第三症度、第四症度といったような区分をいたしております。健康診断につきましてはさらに精密な区分をいたしておりまして、概括的に三つさらにそれを細分化して区分いたして調べております。これは資料提出の御要求がございましたから、後日資料提出という形でごらんいただきたいと思います。  それから、先ほどの内村先生、沖中先生云々の問題につきましては、これはあとで報告書をごらんいただきますと、どういう形で参与をされているかということがおわかりいただけるかと思いますから、これも資料によってごらんいただきたいと思います。
  186. 滝井義高

    滝井委員 次は、この病状が固定をしたという認定を受けて、それに不服な人の再審査請求というのは、労働者災害補償保険法の三十五条でやることになるのですか。
  187. 村上茂利

    ○村上説明員 根拠規定は御指摘の条文でございますが、手続的には労働保険審査官及び労働保険審査会法という法律がございます。その二つの関連でございます。
  188. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、不服の審査をした人はケース・バイ・ケースで十分あたたかい手で審査をいたします、こういう御答弁になっておるわけですが、この人が不服の審査をするときには障害補償給付の決定で異議を申し立てることになるのですか、それとも、いままでもらっている療養補償給付あるいは休業補償給付の不当打ち切りとして異議の申し立てをすることになるのか、どっちでするのですか。
  189. 村上茂利

    ○村上説明員 不支給決定に対する異議の申し立てでございます。ただ、形としてはそうでございますが、お申し出くだされば事務的に処理いたしますから、口頭でお申し込みいただいてもけっこうなわけでございます。処分としては不支給決定に対する異議の申し立て、かように相なります。
  190. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、不支給決定の異議の申し立て——私はまだ病気がなおっておりません、頭が痛うございます、関節が痛うございます、もの忘れが激しいです、根本はこういうことなんですよ。そうすると、その決定は労働保険審査官がやりますよね。しかし、医学的な決定だから審査官は決定できません。だれがやるとなったら、医者がやるのです。そうでしょう。
  191. 村上茂利

    ○村上説明員 御承知のように、鑑定人という制度がございます。そういう段階で十分また手だてを尽くしてやることになると思います。
  192. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、いままでここで大臣たちは何と言ったかというと、いわば日本における権威ある三池医療委員会、そしてその上に日本の精神医学界の泰斗である内村さん、日本の内科学界の泰斗である沖中さん、こういう方が決定をしたのですから、今度あとの者が幾ら言ったって、いやいや、それは労働省の決定が正しいと言われたら、もうそれまでです。そうでしょう。これはそうなるんですよ。だから、あたたかい手で再審査をしますなどと言うけれども、その審査の決定をぴしゃっと下す前にやはり納得をさせなきゃいかぬわけですよ。それは昨日から私が言うように、この一酸化炭素の患者というものはメンタル・リハビリテーションというものが非常に重要であることはあなた御存じのとおりです。しかも、過去において、あなたが二月、四月、七月と、幾度か打ち切ります、打ち切りますといって、そして患者さん退院してくださいと言ったけれども、しかし、そのときにはわれわれはがまんをして、そのままにしておった。いわゆる退院をしなさい、打ち切りますと言ったときの患者の精神的な動揺はどういうものであったかということは、ぴしゃっと安河内氏が統計をとっています。非常に激しい精神的な動揺を来たしているのです。頭が痛い、目まいがする、こういうことになっておるのです。それで、けさの福岡のラジオでございましたか、四人の主婦が出て座談会か何かやっています。その中で、主人にうどんをうがいてくださいと言ったら、うどんをうがくときには水を入れてうがくのが当然ですが、水も何も入れぬでうがいたというのです。非常に心配です、こう言っているのです。そういう者が出てくるんですよ。それは脳波はちっとも変化がない。だから、これは他覚的な症状は何もないですからだいじょうぶです。頭が痛いという自覚症状だけです。いまのあれではこういう認定です。しかし、心臓の心電図を大家がとってみて、もう君はだいじょうぶだと言ったのに、その人は翌日ぽこっと死んだのです。だから、機械というものは万能ではないわけですよ。この生々発展をしている人体の動きというものはまだ知られざるものがあるわけでしょう。だからこそガンのごときはいかんともしがたいのです。ガンが一体何によってできるか、刺激説があるし、迷芽説があり、ビールス説があって、いろいろですよ。だから、こんなに政治的になり、こんなに問題のあるものを、沖中さんといえども内村さんといえども、一刀両断にやっておって、そしてあとから出せといっても、御存じのように、日本の医学界というものは学閥その他があって、最高権威が出したものをほかの医者がくつがえそうというときには非常な決意が要ります。そうすると、審査をしなさいといったって、内村さんや沖中さんが見たものを滝井義高がこれはなおっていないと出して、一体あなた方ひっくり返せますか。ひっくり返せないでしょう。もしそれがひっくり返せるというのなら、私が行って、全部診断して、なおっておらぬという診断書を書きますよ。いまから河野さんと二人で行って書きますよ。書く資格があるのだから。私と河野さんが行って、三池の組合とも折衝して、当初の治療方針が立たなかった場合には、早く解剖をやって、大脳の器質状態を見る必要があるぞと、ずいぶん言いました。しかし、なかなかそううまくいかなかった。当時の医務局長なり石炭局長は実に当初は周章ろうばいしておった。労働省は医学の問題について何もやっていなかった。ぼくら現地に行って知っている。選挙の開票があった日に、まだ当選も何もきまらないときに三池に乗り込んで行ったのです。だから全部知っている。いまのように不服申し立てをしたうて、最高の権威が決断を下したものをひっくり返すことができますか。何だったら、われわれいまから行って、患者さんを一人一人見て、なおっていないという認定で診断を出しますよ。みんなが頭が痛いことを訴えているのだから、症状があることは確実なんだ。そうすると、あなた方はこっちが権威があると必ず言う。その例はもう検察庁にあるじゃないですか。検察庁が不起訴と決定したら、検察審査会がいかに言ったって、もう既成の事実になってしまう。もう時効が来る。こういうことでしょう。これだってそうです。六十日したらだめなんです。六十日以内に不服を申し立てなければ法律的にだめなんです。だから、そういうように既成事実をつくっちゃってやるということは、いまのように非常に問題があります。  大臣、この点はひとつよく——あなたはいままで最高の権威、最高の権威と言っていたけれども、最高の権威が下したものはいかんともしがたい。佐藤総理があなたを首だと言ったらどうにもしょうがないでしょう。最高の権威が首にしたら、幾ら首にしないでくれと言ったって、もうだめでしょう。それと同じものが日本の医学界にはある。そういうものがあるのですから簡単にはいかぬ。だからあなた方は、若い医者を今度われわれが出したら、これはもうちょっと権威のあるところと変えてきてくださいと言う。そのことばで裏書きしておるのです、私に言わせれば。それをよく記憶にとどめておいてください。  もう一つ。もしこのままでいった場合に、七百三十八人の人たちは障害補償費の等級認定をしたらどれに該当しますか。
  193. 村上茂利

    ○村上説明員 いまどれに該当するかということを申し上げるのは困難でございまして、個別にまた症状判断などをしまして、その等級を示すということになると思います。
  194. 滝井義高

    滝井委員 そんなはずはないでしょう。固定をして、治癒をしたといっても、他覚的な症状は何もないのですよ。自覚症状だけしかないのですよ。それはさいぜんあなた方と河野さんとの質疑応答の中にもあった。これは心因的なものであって、器質的なものは非常に少ないということを言ったじゃないですか。器質的なものが非常に少ないとしたら、いまの労働基準法上から見たならば、あなたそれをここで言えなくて、またこれからやらなければならぬなんてばかなことはない。言えるはずです。言ってごらんなさい。
  195. 村上茂利

    ○村上説明員 これは類型的には申すことができますが、個別的に監督署長が処分する事項でございますので、私がいまここで申し上げるのはいかがかと思いますから、遠慮させていただきたいと思います。
  196. 滝井義高

    滝井委員 それはひきょうですよ。いままでのあなた方の答弁を見たら、よくなっておるという答弁を一貫してしてきたでしょう。よくなっているとしたら、こういう一酸化炭素中毒というものは等級のどこに当たるかということを言えるはずです。これは常識論でけっこうです。
  197. 村上茂利

    ○村上説明員 どなたが何等級に該当するか、これは先ほど申しましたように、署長が決定するわけでございますが、該当します等級としては、七級、十二級、十四級、その三段階がございます。
  198. 滝井義高

    滝井委員 大臣、七級というのは五百六十日分です。それから十二級というと百四十日分、十四級というのは五十日分です。われわれの医学的な常識からいうと、十四級か十三級ですよ。これはわれわれだって知っていますからね。そうすると、五十日か九十日分ですよ。いままで三年間も療養をして、もの忘れがあって、いま言ったように、うどんをゆがきなさいと言ったら、水を入れずにうどんをそのまま火にかけるというこういう人、これが五十日か九十日です。現地でもそう言っています。十四級か十三級だ、こう言っている。  それならば大臣にお尋ねいたしますが、この人たちは、いま言ったように器質的なものが全然ないとは言えない。あるわけですから、それは心理的な情緒不定が非常に強くて心因性の状態が非常に濃厚で、器質的なものは少ししかないといっても、少しでもあれば問題が起こってくる。起こった場合に、まさか大臣、あたたかい手を差し伸べるというのだから、事業主にこれを解雇させるようなことはないでしょうね。
  199. 村上茂利

    ○村上説明員 先ほどの等級表はその後改正しております。先生の言われました日額が年金額に変わっているわけでございますから、これは御了承いただきたいと思います。  それから解雇云々の問題でございますが、これは労使関係の場の問題でございますから、労働省自身が解雇させないとかどうとかいうのは、筋道としては私どもから申し上げるのは適当でないと思います。ただ、労使の間に協定もできていることであり、解雇事由がそれぞれきまっておるわけであります。そういったものをどのように運用するかという問題はあろうかと思います。したがいまして、治癒という認定を受けまして職場に戻った者が解雇されるかどうかという問題につきましては、これが解雇事由のどれに該当する状態でありますか、それとも関連がございますが、私どもは気持ちとしてはできるだけあたたかく取り扱ってもらいたい。したがって、どういう場合のことを先生御指摘になっているのか、その条件によるわけでございますが、とにかくあたたかい気持ちで取り扱ってもらいたいということは、会社にも要望いたしておる次第でございます。
  200. 滝井義高

    滝井委員 患者さんが頭が痛い。ぼくらは患者さんだと思っている。あなたのほうはなおった人だと思っているわけです。あなた方がなおったという認定をすれば、事業主はなおったという認定をしてくる、これは当然です。そうしますと、職場に来て、うどんに水を入れてゆがかなければならぬのに、もしうどんをそのままゆがいたというような間違いを起こすような人だったら、会社は坑内のような、あるいは坑外の危険な場所には使えない、こう言われた場合にはどうするか、簡単に言えばそういうことです。その場合、あなた方は事業主に対して雇用責任というものをこの際政治的にきちっと指導して、その言明をとり得るかどうかということが一つ。それからいま一つは、そうなりますと、御存じのとおり、私は昨日から、賃金問題が非常に重要なこの背景をなしているということを説明しましたが、今度は仕事場に帰っていくと、長年仕事をしていないのですから、もとのようには能率があがらないわけです。どういうことになるかというと、前収補償の問題が出てくる。これは大牟田療養所でわれわれが行ったときに出した資料です。現在入院中の人で前収以上の金銭給付を受けている人たちが非常に多いのです。そうしますと、これは退院をすると前収以下にこれががたっと下がってくるわけです。それはあなた方は手厚い方法で四週間・四週間、八週間ぐらいは訓練をしてやります、こう言うけれども、問題はこの前収補償の問題が出てくるわけです。私はこの前石炭の委員会でもこの点を指摘したわけです。そして大牟田の療養所から荒尾の回復指導所に移す。一挙に打ち切りでなくて、一挙に固定したということでなくて、まず療養所から回復指導所に移す。移す場合に、それは六千円から九千円の手当その他の差額が出てくるんだから、それを国が何らかの処置をやる。そしてその次の段階で、固定、治癒、こういうことに段階を踏むべきだ、こう主張したら、あなたのほうで検討するという答弁をしておったのだけれども、何もやらなかったのです。もし今度のいまの段階で、すぽっと固定をした、広い意味の治癒をしたという認定をする。われわれは患者さんだと思っておるが、あなた方は健康な人間だと思っておる。その人たちが前より賃金が少なくなった場合にその前収補償というものをどうするかということが最大の問題です。それをあなた方が責任をもってやってくれるかどうか。これは労使間の問題です、私たちは知りません、こういうふうにすべて逃げてしまえば、われわれは労働省に何も言う必要はないです。どうですか、いまの二点について明らかにしてもらいたい。
  201. 村上茂利

    ○村上説明員 昨日の石炭対策特別委員会でも私ちょっと触れたのでございますが、今回治癒認定をされまして、その後どうなるか。これは回復訓練のコースに入るわけでございます。そして四週間・四週間、八週間の回復訓練を行なう、いきなり職場につけるということにはなっておりません。そして回復訓練のコースに入りますと、坑外の回復訓練の場合には、平均賃金の八〇%を支給する。それから、坑内の作業訓練に入った場合には、本人給の一〇〇%を支給する。そして坑内訓練開始のときには立ち上がり資金として一万円支給する、原職に復帰したときには一万円支給する。その後引き続き六カ月間原職にとどまったときには一万円を支給するというような事項が、七月二十日に労働協約として、新労も旧労もともに会社との間に協定がなされておるわけでございます。したがいまして、これは労働協約として組合と会社の間にもう意思の合致を見た事項でございまして、このような協定がございますから、従来のごとく回復訓練を四週間・四週間やりまして、それから職場に復帰する、こういうような条件がすでに整っておるわけであります。したがいまして先生の御質問の第一点の回復訓練云々は行なわれる。それから前職賃金の補償といいますか、坑内作業訓練の段階に入りましたときの本人本来の本人給一〇〇%を支給する、立ち上がり資金として一万円支給するということが、これは私の説明をまつまでもなく労働協約で定められておるわけでございます。
  202. 滝井義高

    滝井委員 事業主の雇用責任について……。
  203. 村上茂利

    ○村上説明員 雇用責任と申しますか、解雇の問題ではなかろうかと思います。長期傷病補償に移行した方々に対しては、解雇をどうするかという問題がございます。しかし、これはいま団体交渉のいわば進行過程にある問題でございまして、これは留保されておる問題でございます。したがいまして、団体交渉の今後の経過をひとつ十分注意していきたいと考えております。
  204. 滝井義高

    滝井委員 団体交渉でそんなものをまかすのではなくて、御存じのとおり石災産業に千億円の肩がわりを国がしておるのですよ、しかも経理も全部経理審査会にかけて、いわばセミ国家管理ですよ。半国家管理的な状態です。当然、こういう悲惨な状態にある労働者を、事業主が一自分の都合でそれをしておったのでは利潤が少ないからといって解雇をする状態をつくらしてはいかぬわけですよ。そのくらいのことの指導ができなくて、労働者側についてやるときには一刀両断、勇気を持ってやるけれども、経営者側については、いやいやそれは労使関係でということはいけないと思うのですよ。当然これはやるべきです。解雇してはいかぬ。それは身体障害者になったら身体障害者雇用促進法で、少なくとも官庁その他で使うというようなああいう立法があるでしょう。こういう事態のときには、あなた方その指導をすることが当然ですよ。そういうところになると、どうも村上さんは勇気がなくなってしまって、歯切れが悪くなる。しかもその打ち切ったことについてはなかなか強硬で、高姿勢で歯切れがいい。そんなもの間違いです。どうですか、これはもう少し三井鉱山に言えるでしょう、そのくらいのこと言いなさい。
  205. 村上茂利

    ○村上説明員 冷たい取り扱いをしてくれるなということは、私ども要請しておるわけでございます。  ただ制度の問題として、長期傷病補償に移行した者について解雇してはならぬかどうかという点については、これと同様な問題は、外国の労災補償法制、それとの関連における解雇制限の問題、そういった例から見まして、本来の労働能力を一〇〇%喪失したと同じような状態にあるわけです、労働不能の状態でございますから、そういう方々に対してどういうふうに考えるべきか。それを補償の問題として考えるのか、労働関係の継続の問題として考えるのか、考え方の基本に非常に大きな問題があるわけであります。むしろ諸外国の法制を見ましたならば、それは補償の問題だ、労働能力一〇〇%喪失の場合には、補償の問題として、補償を手厚くする、こういう形になっておりまして、労働能力一〇〇%喪失の者を労働関係があるものとして扱うという例はむしろ少ないわけであります。だから、これは制度の問題としていろいろ議論のあるところでございます。したがって、それを論理を越えまして、会社にどうこう言うかということにつきましては、私ども問題があろうかと思います。ただ、機械的に事を処理して、社会的に見ましても問題になるようなことは避けてもらいたいということは私ども強く要望しておるわけでありますが、制度の問題としてはどうかということになると、問題があるということを申し上げたいのと、もう一つは、解雇の問題に関連しまして、特に炭鉱の労働者は社宅の利用その他福利厚生の施設をどうするかという問題が、もう賃金と同じように重大な問題であるわけであります。したがって、解雇の問題とは別に、そういった気の毒な方々に対しまして、社宅の利用その他福利施設の問題がありますので、それを従来どおり確保さすかどうかという問題がございます。この点については、私ども従来と変わらぬような扱いをしてもらいたいということを会社に強く申し入れ、その問題についてはすでに団体交渉の議題にもなったことでありますから、これは保留ということで今後さらに団体交渉が継続されると考えております。
  206. 滝井義高

    滝井委員 いまの二十六人とか五十八人、こういう人については、これはまだ療養中ですから、当然私は会社もそう過酷なことはやれないと思うのです。しかし、七百三十八人の固定してよくなったという人が、さて行ってみたら能率があがらない、訓練中も能率があがらぬということになったときに、これは私の炭鉱では使えませんという事態が起こってくるのですよ。そのことを言っているのです。その場合に、もし解雇をするということがあったらいかぬということなんです。たとえば、それでは半年ぐらいは労働省がやかましいから使うかと使って、七カ月目になったらもうぽんと追い出すなんということ、これはよく資本家のやることなんです。だから、それはいけませんぞと、こう言っておる。長期療養の二十六人とか、いま療養を必要とし、しばらく観察をしなければならぬというような人は、これはやらないですよ。幾ら冷酷無情な会社だってやらないです。しかし、労働省がよくなったと太鼓判を押した七百三十八人については、いま言ったようにまだ頭が痛いなんという人がずいぶんおるわけですから、四週間・四週間の回復訓練の過程から、さて坑外なり坑内にやってみた場合に能率があがらぬ、失敗をするということになると解雇になる可能性がある、このことについて十分配慮をしろ、こう言っているのですが、その配慮はできるでしょう。
  207. 村上茂利

    ○村上説明員 大臣も御答弁申し上げましたが、健康管理の問題があるわけです。アフターケアの問題がありまして、これは十分注意して扱わなくてはいかぬということは医療委員会の報告の中にもあるわけであります。したがいまして、回復訓練の期間を四週間・四週間を置きますけれども、そのあとの問題としてやはりアフターケアとしての健康管理の問題があろうかと思います。そこで先生御指摘のように、ことさらに事をかまえるような形で解雇するようなことがあってはいろいろ問題が生ずるわけであります。したがいまして、いま会社側にどうこうしろということを——これは筋道としましても団体交渉事項に関連することでございますから、気持ちは幾らございましても、どうするという断定的なことは申し上げられませんが、しかしそういう性質の方々であるから十分注意をして処理していただきたいということは、当然私どもは要請したいと思っているのであります。したがって、そういう過程におきましてどういう事柄が起きるかどうか、これを私ども十分注意深く見守ってまいりたいと存じております。
  208. 田中正巳

  209. 谷口善太郎

    ○谷口委員 新しい大臣ができたので、政府の労下働政策の基本的態度、これについて、短い時間ですから非常に簡単に大ざっぱな質問になりますが、お尋ねしておきたいと思うのです。  問題は、政府はことばの上では盛んに、労働者の福祉とか、あるいは災害防止を強化するとか、あるいは雇用については万全を期すとか、いろいろなことを言っておりますけれども、実際の基本的な態度というのは、やはり労働運動に対する弾圧にあるのじゃないか。最近の事態を見でおりますと、その点が非常に顕著でありまして、至るところで、労働組合の活動の自由あるいは団結権に対する侵害になるようなことをやっておる。これはもう争うことのできない事実であります。そこで私は新任の労働大臣に伺うのですが、政府の労働政策の基本は弾圧をやるということにあるのじゃないかと思うのですが、その点いかがでしょう。
  210. 山手滿男

    ○山手国務大臣 お答えをいたします。  憲法二十八条は、御承知のように、労働者の団結権、交渉権あるいは行動権を保障いたしておるわけでございます。したがって、正当な労働組合の行動の範囲におきましてそういう行動があった場合に、政府はごうまつもこれを弾圧するとかどうこうしようというような考えは持っておりません。
  211. 谷口善太郎

    ○谷口委員 正当な労働運動に対する弾圧の事例が非常に多い。私はたくさんの事実を見ておるのでありますが、特にいまの時期でありますから、当面非常に問題になっておりますこの間の一〇・二一ストにおきます日教組の運動に対して、その事後に行なっておる弾圧、これはやはり私ども見のがすことのできない重大な問題だと思うのであります。警察権力によって、一都三県、しかも件数にして二百四十一件を調査しておる。これに対する強制捜査をやっている。このやり方にはしかも非常に違法な行為が出ておる。たとえば東京都の練馬支部では、立ち会い人が正規におったにもかかわらず、これを排除して金庫をドリルで破るというようなことを警察がやっている。また墨田分会では警察は現金をどろぼうしてきています。しかしこれは抗議をした結果返しておるようであります。それから立ち会い人を拒否するというやりかをやっておる。しかも佐賀県などにおきましては、捜査令状に違った番地が書かれておるので、したがってそこの管理者は捜査を拒否するということを言っておる。これに対して暴力を行使して——名前はわかっております。小笠原マサコさんという先生でありますが、これに負傷をさせるような暴力を使ってでも強引に捜査するということもやっております。それから出頭命令とか、あるいは校長に対する非常に不法な調査依頼、こういうことをやっております。これはやはり正当な運動に対する警察権力の不当な弾圧だと私どもは解釈しますが、いかがですか。
  212. 山手滿男

    ○山手国務大臣 憲法二十八条が行動権を認めておりますことはいま申し上げたとおりでありますが、労働組合であるから何をやってもよろしい、合法的であるということではございません。公務員につきましては、公務員は全体の奉仕者でございまして、公務員であるがゆえの法律に基づいた制約がございます。法律が規制をいたしております。それらの法令に違反をしたようなことがありました場合に、当然警察権がそこに介入をしていくことになるわけでございます。いまお話がございましたような個々のケースについては、一々私はその報告を受けておりませんけれども、警察当局といたしましては、そういう事例があったということでやったのであろうと思うのでありまして、御指摘になりましたように、労働組合の行動であるからということで、頭から弾圧しようとか、これについて特別にきびしく取り締まっていこうとか、そういうことでは決してございません。繰り返して申し上げますならば、労働組合の行為だからといって何でも自由だというわけではないわけであります。
  213. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうしますと、この一〇・二一闘争に対する、日教組に対するこういう警察の強制捜査等々の弾圧、これは一体どういう法的手続で彼らはやっているのですか。
  214. 山手滿男

    ○山手国務大臣 その警察の強制捜査の法的な手続のこと等につきましては、警察当局からお聞き取りをいただきたいと思います。私は、どういう手続を警察がやったか、それは詳細に承知をいたしておりません。
  215. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大臣、それはとんでもないことをおっしゃいますね。労働組合とか労働運動に対する責任はあなたが持っているのでしょう。この正当な運動に対して警察がああいう不当な弾圧をやるについて、どういう法的手続でやったかということは御承知でなくてはならぬ。それも知らないということになりますと、野放しじゃないですか。あなたは労働運動に対する責任者じゃないですか。内閣の中で最高責任者でしょう。ところが、警察がどんな法律でやっておるか私は知らぬ、警察に聞いてくれ、そんな無責任なことはない。それはあなたははっきり知らなければならぬし、知っているはずですね。それはやはりここで答えてもらわなければならぬ。
  216. 山手滿男

    ○山手国務大臣 この間、一〇・二一ストの前におきましては、各省大臣が、行き過ぎのないように、逸脱した行動がないように再三にわたって警告を発しております。いわゆる政治ストをやってはいけないということで貫かれておると思うのでございますが、公務員の諸君がそうした行動に出たゆえをもって、警察が捜査をし、あるいは取り調べておるわけでございまして、具体的にどういう規定に基づいたかは、警察のほうから申し上げたほうが間違いなかろうと思います。
  217. 谷口善太郎

    ○谷口委員 警察の関係者、だれかいますか。——いないですね。
  218. 田中正巳

    田中委員長 出席要求がございませんので……。
  219. 谷口善太郎

    ○谷口委員 これは出席要求するまでもなく、警察の人が出席しなくても、労働大臣がこんなことを知らないことはないと思って私はやっているわけなんですが、警察が来なければわかりませんか。
  220. 山手滿男

    ○山手国務大臣 私が答弁をする限りではございません。
  221. 谷口善太郎

    ○谷口委員 つまらぬことでありますけれども、これはつまり刑事罰の対象として刑事的な捜査をやるのであって、したがって刑訴法に基づいてそういう手続でやっているわけなのです。つまり日教組の運動なりあるいは一〇・二一ストに対して、彼らはこれを犯罪と認めてやっておる。労働運動に対して犯罪という立場で彼らは捜査を進めている。あなたがおっしゃった違法なことをやっておる場合は、それはそういうことがあるかもしれません。しかしわれわれは、あとから申しますが、あれは正当な運動であると確信している。一体、労働組合に対してこれを犯罪視するというような考え方それ自体が大きな間違いじゃないですか。昔はそうでしたよ。私なんか労働運動をやりましたころ、大正時代は、これは犯罪だった。しかし労働運動を犯罪というような考え方は間違いであるということをはっきりしたのは日本憲法じゃないですか。どろぼうや殺人と違うのだ。しかし政府のいまの考え方だったら、初めから犯罪視してやるという立場をとっておる。労働運動を犯罪視するという立場は、これは時代逆行じゃないですか。その点はどうですか。
  222. 山手滿男

    ○山手国務大臣 警察がこの間そういう行動に出ましたのは、御承知のように、この間の統一行動というものが、ベトナムの戦争に反対するとか、全国全産業一律最低賃金を要求するとかというような政治目的を掲げて、しかも労働組合の行なう限度を越してやったという警察の認識に基づいて、警察が捜査をしたわけでございます。
  223. 谷口善太郎

    ○谷口委員 一体どういう法律に基づいてあの弾圧が行なわれたかということを労働大臣が御存じないとしますと、これは話にならぬわけなんですな。教員は地方公務員でありますが、これに対して、あの行動が犯罪だというなら、法的根拠がなければならぬでしょう。それをあなたは御存じないということになると、ちょっと困るのですよ。犯罪なら犯罪でよろしい。それじゃどういう法律に基づいてやっていますか。
  224. 山手滿男

    ○山手国務大臣 重ねて申し上げますが、この捜査をいたしましたのは警察が行なったわけでございまして、一々労働省がそれの相談にあずかったわけではございませんから、私がこういうようにやったのだということを御答弁申し上げることは適当ではないわけでございますが、いま申し上げましたような事例でございまして、これは明らかに地方公務員に認められた二十八条の労働組合の権利を逸脱しているものであるということで、地方公務員がその地方の全体に奉仕をするというワクを越えているということで捜査をいたしたものと考えます。
  225. 谷口善太郎

    ○谷口委員 その一般論を言ってはだめなんで、地方公務員法に基づく何かの犯罪があるというような考え方を持っておるのは、地方公務員法の何条によってということがあるでしょう。そんなことをあなたは知らないわけじゃないでしょう。そういうことをはっきり知らないわけじゃなくて、労働運動に対する弾圧の状況になっている問題をわしは知らぬということは、それはいかぬですよ。
  226. 三治重信

    ○三治説明員 地方公務員法には争議行為等の禁止として三十七条にあるわけであります。その三十七条の規定を受けて、六十一条の第四号に、「何人たるを問わず、第三十七条第一項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者」となっておりまして、そういう者については「三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」こういう規定があるわけですが、われわれのほうも、大臣先ほど申し上げましたように、警察からこういう特別な法違反についての捜査があった、何条によりこういうようなことをやるということで相談を受けているわけでもないのですが、先生が重ねて地方公務員法のどういう条項だ、こうおっしゃいますと、おそらくこれに該当するのではないか、こう考える次第でございます。
  227. 谷口善太郎

    ○谷口委員 労働大臣、覚えておいてください。地方公務員法の三十七条に地方公務員の争議行為禁止規定がある。あなたは知らぬことはないでしょう。それに対する罰則として、いまおっしゃった六十一条の四号に書いている。ところが、三十七条の実行行為をやった全体に対して、これは何も罰則の対象にならぬですよ。刑事罰の対象にならぬですよ。ところが実行行為をやった全体に対する捜査をやっているじゃないですか。家宅捜査は先ほど申しましたが、ここに警察が東京都でやっております調査依頼書というのがあります。これは各学校の校長に出しておる。ここで何を言っていますか。ここではこういうことを言っている。これは調査依頼書の写しです。日教組に入っている全組合員を対象にして調べてくれという調査依頼書です。どういうことの調査を頼んでいるかといいますと、一人一人の氏名をあげまして、その人がどういう身分で、どういう組を担任して、生徒数は何人おって、第一校時、第二校時、その教育内容がどうであって、当日はどういう変更があってということも全部調べて、そして当日休暇届けを出しているかどうか、休暇届けに対して承認を与えたかどうか、その承認の有無、それを全部書けと言っている。これは組合員全体に対する、つまり実行行為をやった全体に対する捜査じゃないですか。それを刑事訴訟法に基づいて刑事罰としてやっている。刑事罰の規定がありますか。大臣、あなたの管掌する労働組合に対して警察はそういうことをやっている。あなたは黙っているのですか。これは警察のおそろしい弾圧、違法行為ですよ。そうじゃないですか。  それだけじゃありません。任意出頭といいまして、いろいろな先生方に出てこい。同時にまた警察官が学校へ出張しまして、校長室へ先生を引っぱって、そこで調べている。これは佐賀と東京だけでも、きょうの調べたところによりますと、二千六百八十七件です。これは犯罪行為ですか。実行した人たちを全部やっている。しかも刑事訴訟法でやっている。刑事罰の対象としてやっている。これは不法行為じゃないのですか。そういうことを労働大臣知らぬのですか。労働運動に対してこういうことを警察がやっている。あなた、この内容を見たらどうなります。先生が第一校時に平生はどこの組でどういう授業をやって、それがどう変わったか、あるいは第二校時にどこでどういう仕事をやるのだということを調査せいと言っている。これは教育内容に警察権が介入することじゃないですか。こんなことが許されたら、たとえば公務員の場合、労働省の場合を考えましょうか。労働大臣の配下の職員諸君がやっていることに対して、警察が、おまえのところの職員は最初朝のうちに何をやるか、どういうことになっておるのか、きのうは何の仕事をやったのだということを調査せいと言ったら、あなた、これは行政権に対する介入じゃないですか。そういうことを警察はやっているのです。それも刑事犯として、刑事罰の対象としてやっている。そういうことを労働組合に対して警察がやっているのを、労働大臣が私は知らぬと言ってたかをくくっているというのはいかぬです。あなた、新任されてから時間がないかもしれませんが、こんなことはみな知っているはずです。そうでないと労働大臣はできないですから。これはどうです。これでも違法行為じゃないですか。
  228. 山手滿男

    ○山手国務大臣 先ほど局長からお話を申し上げましたように、公務員が憲法の規定あるいは法令の規定のワク内で行動をいたしておりまする場合には、違法ではございません。しかし労働組合なるがゆえに何をやってもいいということではございません。したがって、いまのような場合、この間の佐賀の学校の先生のような場合どうあったかは、警察から直接お聞きをいただかなければ、私からとやかく言う筋合いのものではありませんけれども、あるいはあおり、そそのかしたというようなケースに当たるものもあろうかというようないろいろなことで、その前後の状況なり、いろいろなことを詳しく知りたいということで、おそらくそういうような調査書を依頼をしたものと思うわけでございます。警察からその点につきましてはいろいろお聞き取りをいただきたいと思います。
  229. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大臣、私は抽象的に言っているのじゃないです。一般的に言っているのじゃないです。この警察がやったことは、地公法の規定に基づいてもやってはならない。刑事罰の対象として手続をとって、刑事罰の対象にならない組合員全体に対してこういう強制捜査をやったりいろいろなことをやっている、これは弾圧になるということを言っている。こういうことは許されぬということを言っている。その点どうなんです。あなた一般的に言っておりますけれども、刑事罰の対象にしてはならぬのです。できぬのです。法律的な規定がないのです。それをやっているわけです。こんなむちゃをやっている。どうです。あおり、そそのかすという指導者諸君のことはあとに聞きます。一般の組合員に対してこういうことをやることは、一体どういうことになります。組合の破壊じゃないですか。組合活動の自由に対する極端な弾圧じゃないですか。どうですか。
  230. 三治重信

    ○三治説明員 いま具体的な事例をあげられましたので、私から若干大臣の御答弁に補足的に御説明させていただきたいと思いますが、私たち事務当局も、この警察のやられたことの具体的な、先生の御指摘の事例については存じておりません。ただ、先生のそういう具体的な警察の捜査の事例の御説明から判断をいたす限りにおきましては、おそらくこの違法行為の問題からは、「何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」こういう抽象的な規定についてのいろいろの裏づけとして、その裏づけのためのいろいろな捜査ということだろうと思います。ただ、それがやはり刑事訴訟法あるいはその捜査の手続を越えた問題かどうかという問題につきましては、大臣から御答弁のように、その具体的な問題のことについてはやはり警察当局からお聞き願わないと、われわれが直接自分の労働省の職員を使ってやったことじゃございませんので、正確な御答弁はできかねるわけでございます。ただ一般的に、労働三権をきちんと享有している民間労組、あるいはそういう問題として違法な行為が刑事訴追を受けるような事例でないような問題について警察が行なわれるというような場合には、われわれ事務当局としては、当然大臣まで上げて警察にいろいろ意見を言うこともございましょうが、今度の一〇・二一ストの関係につきましては、やはり政府としても、日教組、自治労その他に対し、違法な行為をやらぬように再三注意をした上でストライキがあったわけでございますので、その点を警察が捜査をするということについては、あるいはその刑事訴追の事例もあろうかと思ってやむを得ないことだというふうに判断をしているわけでございます。
  231. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それじゃ伺いますが、一〇・二一闘争の中で日教組が違法な行為をあおり、そそのかしたという事実がありますか。
  232. 三治重信

    ○三治説明員 これは一〇・二一ストそのものが、やはり一般的にベトナム戦争反対を中心として、まあ、そのほか人事院勧告完全実施を地方の組合では主張したところもあるようでございますが、日教組全体としては、やはりこの一〇・二一ストに対しては、ベトナム戦争反対のためのストということが高く一般的に掲げられている。それがために、政府としてもいろいろ各責任者が勧告をし、そういう違法な行為はやめるようにという事前の手続もとっておったという客観的な事実があるということは、否定しがたい問題だと思います。
  233. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ストライキを扇動したとかなんとかいうことを言っていますけれども、日教組のやったのは——私どもは日教組といえども、つまり教育公務員といえども、あるいは一般公務員といえども、憲法に保障された団結権、ストライキ権を持っているという立場から問題を考えますけれども、一歩譲って現行法も前提といたしましても、日教組のやったことは、これはストライキというよりも、ストライキができないのはこれは不当だと思うけれども、そういう法文がありますから、したがって休暇をとるということをやったのです。年次有給休暇をとるということをやったのです。年次有給休暇をとるということについて、日教組がいろいろな戦術を考え、これは合法的な手段ですから、いろいろなことを相談し、いろいろな戦術をきめ、これを組合員に流すということがなぜ共謀であったり教唆扇動になりますか。教育公務員は労働基準法にいう年次有給休暇をとる権利は持っていないのですか。
  234. 三治重信

    ○三治説明員 もちろん年次有給休暇をとる権利があることは事実です。ただ、その年次有給休暇というものは、やはりそれがストの手段として許される性質のものではないことは、先生も御承知だと思います。したがって、ストをやるという、そのストのやり方として年次有給休暇をとるやり方その他があるということですが、そういうためにいろいろそこに疑いが出て、違法の問題として取り上げた。最終的にはこれは裁判の結果を見なければわからぬわけですが、あくまでこの一〇・二一ストが政治ストとしてたくらまれ、そしてそれがいかなる手段がとられるにしろ、現実に相当広範に行なわれたということは、これは事実であるわけです。ただそのやり方、方法について、それがはたして刑事訴追の条項にはまるかどうかという問題についてはやはり今後のさばきを見なければわからぬが、ただ労働省といたしましては、そういうことまで、それは警察がその権限を越えた行為であるということまで意見を言うような状態ではなくて、やはり一応警察当局の捜査というものを待たなければやむを得ない、こういう判断に立っているわけであります。
  235. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと谷口君に申し上げますが、二十分になったのですけれども、どうですか。
  236. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それでは労働大臣に帰ってもらいます。あと私は汽車の時間を延ばします。こういうふうになりますと、大臣がおらないと非常に困りますけれども、ひとつあなたを相手にゆっくりやります。  政治スト、政治ストと言いますけれども、ベトナム戦争に反対するということ、これは公務員であろうとだれであろうと、そういうことについての闘争をやり、その意思表示をするということは日本国民の権利です。しかも、いやな法律だけれども、承認できない法律だけれども、法律があるので、やむを得ないから年次有給休暇というこの手段を利用して、そしてやる。あなたは、休暇をとる権利はあるけれども、休暇の目的によってはこれを許さぬようなことを言っていましたね。どこにそんなことが書いてありますか。年次有給休暇をどういう目的でとるかというようなことは何の関係もないことです。これははっきり判決も出ております。どういう目的で使うかということを——休暇をとるのはかってです。どういう目的に使うかということによって休暇を許すとか許さぬというような問題ではありません。少なくともこの問題については、一般的に労働学者全部が目的いかんを問わぬということに意見一致しております。したがってこの場合日教組がとった手段は非常に合法的である。現行法を肯定するとしても合法的である。  それだけじゃないですよ。あなたも御承知でしょう。ついこの間、全逓の問題で最高裁の労働組合のスト権、団結権についての判決が出ています。あれは判例があるのですよ。あれにどう書いてありますか。これも御承知でしょう。あれにはっきりこう書いてあるじゃないですか。労働者の労働基本権、これは憲法自体も保障している。労働基本権、すなわち団結権、団体交渉権、争議権等は、あの判決はこう言っております。「公共企業体の職員はもとよりのこと、国家公務員や地方公務員も、憲法二八条にいう勤労者にほかならない以上、原則的には、その保障を受けるべきものと解される。」しかも、さらに続けて、「憲法一五条を根拠として、公務員に対して右の労働基本権をすべて否定するようなことは許されない。ただ、公務員またはこれに準ずる者については、後に述べるように、その担当する職務の内容に応じて、私企業における労働者と異なる制約を内包しているにとどまると解すべきである。」しかもこの制約は、「労働基本権が勤労者の生存権に直結し、それを保障するための重要な手段である点を考慮すれば、その制限は、合理性の認められる必要最小限度のものにとどめなければならない。」全逓の場合は、地方公務員法に規定があるような、ああいう特別な法律でやっているのではなくて、あれはいわば事業法みたいなものでやっているわけですね。それですら最高裁はああいう結論を出している。ましてそれを法の中へ入れて、そしてこの重大な基本権を制限するようなやり方は、これは違憲だ。そういう判決は地裁では幾つか出ておりますが、こういうことをたとえ制限しても最小限にしなければならぬということを言っている。だから、政治ストであろうと、あるいは経済ストであろうと、本来はストライキ権を教員一の諸君は持っている。公務員の諸君は持っている。地方公務員は持っている。だけれども、その基本的な権利を不当にも法律によって制限しているから、現行法で許される労基法に基づく休暇をとってやるというやり方をやった。どこに不当性がありますか。どこに不法性がありますか。しかも、これを何か労働組合の内部の幹部諸君が不法行為を共謀して、そしてこれを大衆に訴えたりあおったりする、そういう行為をとったというふうに解釈してやったのでしょう。しかもあなたは、さっき大臣も言いましたが、そういう幹部諸君なり中心になった人たちの教唆扇動というものを調べるために、一般組合員全部まで刑事罰の対象にするような手続をもって捜査をしたり、出頭を命じたり、あるいは勤務中に校長室へ呼んで、そして警察が脅迫してやっている。一般の事業会社とあの教育の場は違うんです。あるいはまた、一般の犯罪と労働組合という一つの団結を持ち組織を持っているその内部での問題とは違うのです。強盗、殺人の場合なら、これははたして強盗、殺人をやったかどうか、証拠はどうだということで、いろいろな人を調べるでしょう。それは私はいいことだと思う。客観的ないろいろな証拠を調べてきて、そしてこれは犯人だということを断定するために警察が努力することはいいと思うのです。しかし組織体を持っている労働組合にそれをやったらどうなりますか。組合員を引っぱっていって校長室でどんどん、ぎゅうぎゅう警察官がやる。あるいは何千人の人に出頭命令を出して警察に連れていく。これは組織破壊になるじゃないですか。科学的な捜査をやるという名前でもってこういうことをやったら、これは労働運動に対する大きな警察権の介入じゃないですか。労働組合の活動の自由に対する大きな干渉じゃないですか。私どもは、そこのところをやはり労働大臣がはっきり認識して、警察の不当なやり方、行き過ぎに対しては抗議すべきだと思う。知らぬと言うんですよ。しかも今度の場合は、日教組だってどこだってみなそうです。初めからこう言っているでしょう、三割休暇闘争をやるのだと。だれがどこに謀略をやったやら、だれがどういうふうにしてそれに参加したやらということは、何もいまさら調べる必要はないことなんです。労働組合があって、執行機関があって、何をやるかということははっきりしている。それは合法的なことをやることはあたりまえです。それを調べるといって、それを犯罪として、その犯人がやったかやらぬか調べると言って、一般組合員のところまでこういうことをやる。そうすれば組織体である労働組合はどうなるか、あなたはわかりませんか。これが警察の介入なんです。権力による労働運動に対する弾圧なんです。そういうことに対して、労働大臣は私は知らぬと言う。調べてみてからとかなんとか言っている。あなたも言っているでしょう。ばかばかしいことですよ。この点どうですか。
  237. 三治重信

    ○三治説明員 一般的に申し上げまして、労働運動に対して警察権が介入するということは、弾圧になる場合もあるだろうし、また組合の行動、組織というものに非常に悪影響を及ぼすということはあるわけでございますが、しかし、いまの日本の警察が、そういう一般的な労働運動に対して、組織の妨害、あるいは弾圧のために警察権をいたずらに使うという現象があるというふうには、われわれとしては考えておらないわけでございます。今度の日教組の捜査の問題につきましても、やはり日教組の企てた今度の一〇・二一ストというものは、労働省としても、また労働大臣としても、これはどうも政治ストのにおいがあるということについては、ほかの関係大臣意見一致しておったところでございますので、そこにやはり法を逸脱した行為がある疑いが持たれても、基本的にやむを得ないじゃないか、こういう考えでいるということを申し上げているにすぎないわけでございます。したがって、具体的なその捜査のやり方、具体的なやったことについて先生があげられたことについても、われわれのほうとしてまだ判断材料もないし、またそういう問題については、大臣が申し上げましたように、かなり警察当局と御議論いただかぬと、やはりほんとうの介入かどうかわからぬのじゃないか。私がここでとやかく申し上げても、どうもそういう実際の捜査、あるいはどういう事実が行なわれたかということについて私は知らぬわけですから。しかし、一般的に申し上げまして、私たちは、何でも労働組合の運動について警察が不当に介入するという事例は、またそういう心配があるというふうにまで警察権が組合運動に介入しているというふうには、一般的にはいま考え段階ではないということを申し上げておきたいと思います。
  238. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと谷口君……。
  239. 谷口善太郎

    ○谷口委員 もう一問で終わります。
  240. 田中正巳

    田中委員長 それでは一問だけ。
  241. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ベトナムの戦争に反対するという要求、これは、日本憲法のたてまえからいいましても、またわれわれ国民全体の感情から申しましても、利害からいいましても、当然なことであって、あなた方は何かここに違法なようなことを盛んに言っていますけれども、これを意思表示することは当然のことである。戦争に賛成するということを言ったら、これこそたいへんだ。これこそ憲法違反だ。また今度の統一要求の中には、あなたも言いましたとおりに、最賃の問題がありますね。最低賃金の問題を要求する、これも当然じゃないですか。公務員給与の問題だってそうでしょう。人事院勧告を完全実施せいというのです。スト権を取ったという代償として人事院がある。しかしあれはかつて政府が実際に実行したことはないのですよ。だから、これを完全実施せいというのは、これはあたりまえのことであって、それに対して行動を起こすのはあたりまえですよ。だから、どちらから見ましても、今度の闘争の目的から見ましても、その目的を達成するために行なった行為から見ましても——行為の問題につきましてはいままでにはっきりしました。いずれから見ましても、憲法に全く適合した、しかも現行法には不当な法律がございますが、その法律にすら反しない行動をとっている。しかも初めから全国的に国民の前に明らかにして、新聞にも発表したそういう行動をとったのです。ところが、その中の中心人物をさがすとか、教唆扇動をやったのはだれだといってさがすとか、組合全体に対して警察がこういう形で直接に権力をもって介入してきている。それは労働組合に対するおそろしい弾圧であるばかりでなく、おそろしい憲法違反だと私たちは思っている。それを、労働組合や労働運動に対して責任を持っている労働省が、わしは知らぬというふうな態度でやっていたら、これはどうなりますか。冒頭に申しましたとおりに、労働者の福祉だとか、あるいは災害防止だとか、あるいは雇用の一そうの発展だとかいうような問題は、労働者の団結権あるいはこういう組合活動の自由が保障されなかったら、何にもならぬですよ。これは基本の問題です。ましていま自民党政府のやっております軍国主義復活の政策に対して、国民全体がおそろしい被害とまた非常な危険を感じている。ベトナム戦争はその中心の問題でしょう。これに反対するのは当然なことであって、これは憲法を守る運動だとわれわれは考える。だから、憲法に書いてありますとおり、総理大臣以下公務員は憲法を守るという責任を持っている。義務を持っている。そういう運動として日教組の問題をわれわれとしては見ているわけであります。かつてあの第二次世界戦争で日本は破滅になりましたが、人民にこういうことをやる権利はないし、そういう闘争をやらなかったことでああいう結果になっている。だから今度は労働者は決意を持っていますよ。戦争に反対する、民主的な権利を守る、不当な憲法違反の法律に対してこれを撤廃させる、自分の権利を要求するという点では、これは相当決意を持っている。戦争の問題なんかだったら、おそらく労働者はゼネストもあえて辞せぬという決意を持っていると思う。これに対して警察がまっこうから、今度の事件では武力を持った権力として介入してきている。暴力をふるっているのです。何でもやっているのです。金庫を破ったのです。立ち会い人がおっても立ち会いさせず現金を盗んでいったのです。そして何千の教員諸君を対象にこういう暴行をあえてやっている。不当行為をあえてやっている。これは許されることじゃないと思う。私はきょう労働大臣に聞きたかったのは、こういうことに対して労働大臣が黙っておるべきじゃなかろう。もっとも労働大臣も閣僚の一人ですから、政府の一員ですから、政府のこういう政策を実際は実行する先頭に立つ人であると思う。だから、弾圧するということが現在政府の基本的な政策になっているのじゃないか、われわれはそう感ぜざるを得ない。  この点をはっきりしておいて、私は質問を終わりますが、委員長に申し上げますけれども、実際きょうは労働大臣がおくれてきているでしょう。そしてもっといろいろ時間があるはずなんです。三十分くらいの時間はないことはないのです。それが常に私の場合になるとこういうことになる。これはどうもうまくないと思う。だから今後はやはり政府の責任者はおってもらって、最後まで質問を聞いてもらうようにしてもらいたいと思います。  以上です。
  242. 田中正巳

    田中委員長 委員長から申し上げます。  谷口君については、三十分という御要請でありましたが、実は五十分やっておるわけでございます。大臣についても、二十分おくれて参りましたから二十分おったわけでありまして、御要請の時間まで私どもの裁量でやったはずでございますので、だんだんおくれおくれになって、たいへん落ちつかないお気持ちであったことはわかりますが、あえて谷口委員に御不便をかけるような意図は毛頭なかったことを申し上げておきたいと思います。      ————◇—————
  243. 田中正巳

    田中委員長 先般、医療、公衆衛生及び社会福祉事業並びに労使関係、労働基準及び雇用・失業対策等の実情調査のため長崎県に委員を派遣いたしましたが、その報告書を本日の会議録に参照として掲載いたしたいと存じます。  これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十分散会