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1966-07-27 第52回国会 衆議院 社会労働委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十一年七月十一日)(月曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 田中 正巳君    理事 小沢 辰男君 理事 藏内 修治君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 竹内 黎一君 理事 伊藤よし子君    理事 河野  正君 理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    大坪 保雄君       大橋 武夫君    亀山 孝一君       熊谷 義雄君    倉石 忠雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       西岡 武夫君    西村 英一君       橋本龍太郎君    濱地 文平君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       粟山  秀君    山村新治郎君       赤松  勇君    足鹿  覺君       淡谷 悠藏君    石橋 政嗣君       滝井 義高君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    長谷川 保君       八木 一男君    柳田 秀一君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君 ――――――――――――――――――――― 昭和四十一年七月二十七日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 小沢 辰男君 理事 藏内 修治君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 竹内 黎一君 理事 伊藤よし子君    理事 河野  正君 理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    大坪 保雄君       大橋 武夫君    熊谷 義雄君       西村 英一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       粟山  秀君    淡谷 悠藏君       五島 虎雄君    滝井 義高君       辻原 弘市君    八木 一男君       本島百合子君    吉川 兼光君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小平 久雄君  出席政府委員         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         通商産業事務官         (企業局長)  熊谷 典文君         運輸政務次官  福井  勇君         運 輸 技 官         (港湾局長)  佐藤  肇君         労働政務次官  天野 光晴君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         警備課長)   後藤 信義君         法務事務官         (人権擁護局         長)      堀内 恒雄君         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      広瀬 治郎君         厚生事務官         (医務局次長) 渥美 節夫君         厚生事務官         (社会保険庁長         官官房総務課         長)      北川 力夫君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      赤沢 璋一君         労働事務官         (婦人少年局         長)      高橋 展子君         自治事務官         (行政局公務員         課長)     森   清君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 七月十九日  委員谷口善太郎辞任につき、その補欠として  林百郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員粟山秀君及び林百郎君辞任につき、その補  欠として池田正之輔君及び谷口善太郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員池田正之輔君辞任につき、その補欠として  粟山秀君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員石橋政嗣君辞任につき、その補欠として五  島虎雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員五島虎雄辞任につき、その補欠として石  橋政嗣君議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十一日  中高年齢者雇用促進法案吉川兼光君外一名提  出、第五十一回国会衆法第一三号)  最低賃金法の一部を改正する法律案吉川兼光  君外一名提出、第五十一回国会衆法第一七号)  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規定に関する法律を廃止する法律案吉川兼  光君外一名提出、第五十一回国会衆法第一八  号)  最低賃金法案横路節雄君外十五名提出、第五  十一回国会衆法第二七号)  労働基準法の一部を改正する法律案横路節雄  君外十四名提出、第五十一回国会衆法第二八  号)  家内労働法案横路節雄君外十五名提出、第五  十一回国会衆法第三三号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案大原亨君外四十四名提出、第五十一  回国会衆法第五一号)  原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部を  改正する法律案山田耻目君外四十名提出、第  五十一回国会衆法第五二号) 同月二十二日  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  の一部改正に関する請願小渕恵三紹介)(  第七号)  身体障害者福祉法の一部改正に関する請願(田  中武夫君紹介)(第八号)  臨時医療保険審議会設置反対等に関する請願  (原茂紹介)(第九号)  戦没者遺骨収集促進に関する請願村上勇君  紹介)(第四二号)  母子保健対策強化に関する請願松山千惠子  君紹介)(第五四号)  ソ連長期抑留者補償に関する請願赤澤正道  君紹介)(第六二号)  栄養士法第五条の二改正に関する請願外一件  (池田清志紹介)(第八〇号)  戦没者遺族処遇改善に関する請願池田清志  君紹介)(第八一号) 同月二十三日  日雇労働者健康保険改悪反対等に関する請願外  一件(伊藤よし子紹介)(第九三号)  同(淡谷悠藏紹介)(第一三〇号)  同(石橋政嗣君紹介)(第一三一号)  同外一件(滝井義高紹介)(第一三二号)  同(八木一男紹介)(第一三三号)  臨時医療保険審議会設置反対等に関する請願(  和田博雄紹介)(第一一八号)  戦没者遺骨収集促進に関する請願今松治郎  君紹介)(第一一九号)  同(臼井莊一君紹介)(第一二〇号)  同(大久保武雄紹介)(第一二一号)  同(亀山孝一紹介)(第一二二号)  同(小泉純也君紹介)(第一二三号)  同(小坂善太郎紹介)(第一二四号)  同(床次徳二紹介)(第一二五号)  同(保科善四郎紹介)(第一二六号)  臨時医療保険審議会設置反対等に関する請願  (河野正紹介)(第一二七号)  同(松井政吉紹介)(第一二八号)  同(吉村吉雄紹介)(第一二九号)  国民健康保険税軽減等に関する請願湊徹郎  君紹介)(第一四七号) 同月二十五日  深夜興行禁止に関する請願外三件(栗山礼行君  紹介)(第一七〇号)  老齢福祉年金増額に関する請願外一件(櫻内義  雄君紹介)(第一七一号)  ソ連長期抑留者補償に関する請願竹本孫一  君紹介)(第一七二号)  戦没者遺骨収集促進に関する請願大坪保雄  君紹介)(第一七三号)  同(大橋武夫紹介)(第一七四号)  同(小沢辰男紹介)(第一七五号)  同(倉石忠雄紹介)(第一七六号)  同(小泉純也君紹介)(第一七七号)  同(齋藤邦吉紹介)(第一七八号)  同(田中正巳紹介)(第一七九号)  同(永末英一紹介)(第一八〇号)  同(西村英一紹介)(第一八一号)  同(長谷川峻紹介)(第一八二号)  同(前田正男紹介)(第一八三号)  同(松山千惠子紹介)(第一八四号)  同(吉村吉雄紹介)(第一八五号)  栄養士法第五条の二改正に関する請願臼井莊  一君紹介)(第一八六号)  同(笹山茂太郎紹介)(第一八七号)  同(始関伊平紹介)(第一八八号)  同(地崎宇三郎紹介)(第一八九号)  同外一件(根本龍太郎紹介)(第一九〇号)  同(吉川兼光紹介)(第一九一号)  日雇労働者健康保険制度改善及び老後保障に  関する請願伊藤よし子紹介)(第一九二  号)  臨時医療保険審議会設置反対等に関する請願  (江田三郎紹介)(第一九三号)  日雇労働者健康保険改悪反対等に関する請願(  辻原弘市君紹介)(第一九四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月二十五日  家内労働制度確立に関する陳情書  (第三一号)  性病予防対策に関する陳情書  (第三  二号)  血液事業推進に関する陳情書  (第三三号)  生活保護基準引上げに関する陳情書  (第三四号)  国民健康保険事業に対する財政措置に関する陳  情書  (第三五号)  臨時医療保険審議会に関する陳情書外一件  (第  三六号)  原爆被爆者援護法早期制定に関する陳情書  (第三七号)  原爆被爆者援護法早期制定等に関する陳情書  (第三八号)  戦災死没者遺族及び戦災傷病者援護に関する  陳情書(第三九  号)  生活保護法収入認定に関する陳情書  (第四〇号)  コールド・パーマ液の取扱いに関する陳情書外  一件  (第  四一号)  日雇労働者健康保険改善に関する陳情書  (第五五  号)  山梨県に国立重症心身障害児(者)施設設置に  関する陳情書(第  九六号)  身体障害者更生援護施設収容者訓練手当支給  に関する陳情書(  第九七号)  東北地区国立重症心身障害児(者)施設設置  に関する陳情書  (第九八号)  東北地区国立心身障害者コロニー設置に関す  る陳情書  (第九九号)  国民健康保険財政確立に関する陳情書  (第一〇  〇号)  足摺国定公園国立昇格等に関する陳情書  (第  一〇一号)  国民年金制度運営円滑化等に関する陳情書  (第一二七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  閉会審査に関する件  労働関係基本施策に関する件  請 願   一 環境衛生関係営業運営適正化に関す     る法律の一部改正に関する請願小渕恵     三君紹介)(第七号)   二 身体障害者福祉法の一部改正に関する請     願(田中武夫君紹介)(第八号)   三 臨時医療保険審議会設置反対等に関す     る請願原茂紹介)(第九号)   四 戦没者遺骨収集促進に関する請願(村     上勇紹介)(第四二号)   五 母子保健対策強化に関する請願松山     千惠子紹介)(第五四号)   六 ソ連長期抑留者補償に関する請願(赤     澤正道紹介)(第六二号)   七 栄養士法第五条の二改正に関する請願外     一件(池田清志紹介)(第八〇号)   八 戦没者遺族処遇改善に関する請願(池     田清志紹介)(第八一号)   九 日雇労働者健康保険改悪反対等に関する     請願外一件(伊藤よし子紹介)(第九     三号)  一〇 同(淡谷悠藏紹介)(第一三〇号)  一一 同(石橋政嗣君紹介)(第一三一号)  一二 同外一件(滝井義高紹介)(第一三二     号)  一三 同(八木一男紹介)(第一三三号)  一四 臨時医療保険審議会設置反対等に関する     請願和田博雄紹介)(第一一八号)  一五 戦没者遺骨収集促進に関する請願(今     松治郎紹介)(第一一九号)  一六 同(臼井莊一君紹介)(第一二〇号)  一七 同(大久保武雄紹介)(第一二一号)  一八 同(亀山孝一紹介)(第一二二号)  一九 同(小泉純也君紹介)(第一二三号)  二〇 同(小坂善太郎紹介)(第一二四号)  二一 同(床次徳二紹介)(第一二五号)  二二 同(保科善四郎紹介)(第一二六号)  二三 臨時医療保険審議会設置反対等に関す     る請願河野正紹介)(第一二七号)  二四 同(松井政吉紹介)(第一二八号)  二五 同(吉村吉雄紹介)(第一二九号)  二六 国民健康保険税軽減等に関する請願(     湊徹郎紹介)(第一四七号)  二七 深夜興行禁止に関する請願外三件(栗山     礼行紹介)(第一七〇号)  二八 老齢福祉年金増額に関する請願外一件     (櫻内義雄紹介)(第一七一号)  二九 ソ連長期抑留者補償に関する請願(竹     本孫一紹介)(第一七二号)  三〇 戦没者遺骨収集促進に関する請願(大     坪保雄紹介)(第一七三号)  三一 同(大橋武夫紹介)(第一七四号)  三二 同(小沢辰男紹介)(第一七五号)  三三 同(倉石忠雄紹介)(第一七六号)  三四 同(小泉純也君紹介)(一七七号)  三五 同(齋藤邦吉紹介)(第一七八号)  三六 同(田中正巳紹介)(第一七九号)  三七 同(永末英一紹介)(第一八〇号)  三八 同(西村英一紹介)(第一八一号)  三九 同(長谷川峻紹介)(第一八二号)  四〇 同(前田正男紹介)(第一八三号)  四一 同(松山千惠子紹介)(第一八四号)  四二 同(吉村吉雄紹介)(第一八五号)  四三 栄養士法第五条の二改正に関する請願     (臼井莊一君紹介)(第一八六号)  四四 同(笹山茂太郎紹介)(第一八七号)  四五 同(始関伊平紹介)(第一八八号)  四六 同(地崎宇三郎紹介)(第一八九号)  四七 同外一件(根本龍太郎紹介)(第一九     〇号)  四八 同(吉川兼光紹介)(第一九一号)  四九 日雇労働者健康保険制度改善及び老後の     保障に関する請願伊藤よし子紹介)     (第一九二号)  五〇 臨時医療保険審議会設置反対等に関す     る請願江田三郎紹介)(第一九三     号)  五一 日雇労働者健康保険改悪反対等に関する     請願辻原弘市君紹介)(第一九四号)      ――――◇―――――
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  一、厚生関係及び労働関係基本施策に関する事項  二、社会保障制度医療公衆衛生社会福祉及び人口問題に関する事項  三、労使関係労働基準及び雇用失業対策に関する事項以上各事項についてその実情を調査し、対策を樹立するため、小委員会設置関係各方面よりの説明の聴取及び資料の要求等方法により、本会期調査を進めたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により議長の承報を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 田中正巳

    田中委員長 次に、本日公報に掲載いたしました請願五十一件を一括して議題とし、審査に入ります。  まず、請願審査方法についておはかりいたします。  その趣旨につきましては、すでに文書表によって御承知のところであり、また、先刻理事会において毛協議いたしましたので、その結果に基づき直ちに採否の決定に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  それでは、本日の請願日程中、第一、第二、第四ないし第一三第一五ないし第二二、第二六ないし第四九及び第五一、以上の各請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  8. 田中正巳

    田中委員長 なお、本委員会に参考のため送付せられました陳情書は、家内労働制度確立に関する陳情書外十八件であります。  以上、念のため御報告いたしておきます。      ————◇—————
  9. 田中正巳

    田中委員長 この際、閉会審査申し出の件につきましておはかりいたします。  本委員会といたしましては、閉会中もなお審査をするため、吉川兼光君外一名提出中高年齢者雇用促進法案、同じく最低賃金法の一部を改正する法律案、同じく電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法の規制に関する法律を廃止する法律案横路節雄君外十四名提出労働基準法の一部を改正する法律案横路節雄君外十五名提出最低賃金法案、同じく家内労働法案大原亨君外四十名提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、及び山田耻目君外四十名提出原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部を改正する法律案、並びに、厚生関係及び労働関係基本施策に関する件、社会保障制度医療公衆衛生社会福祉及び人口問題に関する件、労使関係労働基準及び雇用失業対策に関する件につきまして、議長閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  11. 田中正巳

    田中委員長 次に、委員派遣の件についておはかりいたします。  閉会審査案件が付託になり、委員派遣を行なう必要が生じました場合には、承認申請等に関しましてはあらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  13. 田中正巳

    田中委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。五島虎雄君。
  14. 五島虎雄

    五島委員 きょうは、質問者が多くて時間がないらしいので、できるだけ要点だけを質問しますから、ごまかさないように、はっきりわかるように答弁をしてください。  私の質問したいことは、七月一日から完全に実施されました港湾労働法の施行の状況について、その後、大臣もあるいは職安局長基準局長運輸関係もよく御承知だろうと思いますけれども、私たちは、この前の通常国会において長年の懸案であった港湾労働法が制定され、七月一日から港湾労働者手帳支給とともに雇用調整手当等支給があり、そして港湾労働法目的であるところの港湾運送に必要な労働力を確保するということと、それから港湾労働者雇用の安定その他港湾労働者福祉を増進させる、そうして港湾労働者雇用調整を行なって国民経済の発展に寄与するという目的がこれによって達せられるものだとひそかに期待をしておる。そうして関係の官庁もこれについて一生懸命港の明朗化のために努力しようとされている。港に働く労働者諸君は、港湾労働法が施行された去る七月一日になると、非常に港が明朗化されて、そして待遇その他が非常によくなる、こういうように期待しておった。関係者がすべて期待をしていたところが、七月一日から実施してみると、案に相違して期待どころじゃない、港湾労働法ざる法ではないか、こういうようなことで、この七月一日実施以来、いろいろ各港で問題が起きている。問題が起きていることをいろいろ考えてみると、行政上の欠陥であるか、あるいは故意にこの港湾労働法をまげて解釈して、そして行政の円滑なる運営を阻害しておるかというような問題があるのではないかと思います。  そこでまず第一に、朝日新聞やあるいは地元神戸新聞は、神戸港と大阪の問題について取り上げまして、私たちはその新聞を通じて、これはたいへんなことになる、こういうように考えました。そこで、七月十二日ですか、問題があまりに大きくなって、そうして就労禁止就労拒否というような状態が出ている、そして警官が出動してこれを取り静める、ところが警官がなぐられる、こういうようなことが神戸港で起きているという新聞情報に基づいて、七月の十二日に、地元ですから、私がいろいろの関係者と一緒に調査をしました。  ところがそこでわかったのは、第一点としては、港湾労働法が施行される以前よりも賃金が下がっていることが明らかになった。その中では、前は十時間半の労働時間で、紹介をするときは八時間単位として紹介をする。それで、かつて六月の三十日までは一日の賃金が、いろいろ仕事の種類はありますけれども、千七、八百円もらっていたものが、職安窓口による求人として、その条件としてつけ出されるときは千三百円としてつけ出される。したがって、全体で五十円から二百円の賃下げが行なわれた、こういうことです。それが事実ならば、この港湾労働法目的である雇用調整雇用の安定というものは一体どこにいったかと疑わざるを得ないわけです。労働者そのものは日雇いですから、その日その日の賃金によって生活をしなければなりません。そうすると、こんなあほらしいことはないのではないか。法によってわれわれは守られると思っていたのにかかわらず、逆に賃金が少なくなってしまう、こういう法律ざる法である、こういうことです。当時各党が賛成をしてこの港湾労働法を通した。そうして法律になったにもかかわらずざる法といわれることははなはだもって残念の至りです。そういうように賃金が下がったから、こんなあほらしいことはない、賃金は上げてくれ、前に戻せ、こういう要求、意見が各労働者の口から行動となってあらわれる。そうすると、今度は港ではいろいろせっぱ詰まった仕事、荷役がありますから、それで労働者が集まらぬ。労働者が集まらぬから法十六条のただし書きを適用して、直接雇用を頼みたい、こういうことです。職種によっては生鮮食料品のごとく時間を争う仕事もあるわけです。そこで直接雇用職安が認可するにあたって、これはいよいよざる法であると騒がれた。しかし、現地に行ってみて、そういうことは非常に緊急な場合でいたしかたがなかったけれども、もうそれは復元をいたしました、こう言う。ところが業者に言わせると、港湾労働法が施行されたら職安窓口を通じてのみ労働者を雇うということは協定をした。ところが直接雇用を認可してしまうものだから、これでは協定違反ではないか、おれたちも直接雇用をしよう、こういう状況になったのだと新聞は報じた。そこで私は、港湾労働法は円滑に施行されて、そうして港の非近代的な、前近代的な状況を近代化しなければならないという一つの大きな目標に向かってこれは画期的な法律であると自負しておる。にもかかわらず、実際の行政の運用というものはそうでなしに逆行をしておるということならば、これはたいへんだと思う。しかも雇用の安定というものは労働条件が具備されなければ、雇用の安定といって人員だけを確保されてもこれは実を伴わないのではないか。これでは雇用を確保することはとうていむずかしい、こういうように思うのです。ですから、そこらあたりのことについて、この問題をすみやかに解決しなければ、これは港湾に働く労働者の安定にもならないし、あるいは労務拒否とかあほらしいとかいうことになれば、円滑な国民経済の発展に寄与することにはならないと思うのですが、大臣はどういうようにお考えになりますか。
  15. 小平久雄

    ○小平国務大臣 先生から港湾労働法施行後の実情につきましてるるお話を承ったわけでございます。本件につきましてはただいま先生が御指摘のような事態が確かに発生をいたしておるわけでございまして、この点ははなはだ申しわけもございませんし、また残念に思っております。その間の事情の詳細につきましては、引き続いて職業安定局長から御説明申し上げさせますが、実は私もいまお話しのような事態にあることを聞きましたので、これは本法の制定の趣旨にもかんがみまして、このままで置くことはとうていできないし、またそうすべきではもちろんない、こういう考え方から、また一部と申しますか各方面からいろいろ御批判等の出ておることも承知いたしておりますので、実は昨日の閣議に港湾労働法施行後の状況の概略を報告いたしまして、今後当局側で——というのはもちろん労働省側でございますが、いままでの経験にかんがみまして改めなければならない点、あるいは紹介業務等の強化もはからなければならない、そういう点は十分これが改善に全力を尽くす所存でございます。同時にまた関係の業者等にもこれは法の趣旨をさらに十分理解してもらわなければなりませんからそういう努力も払いますし、さらには運輸省をはじめとする関係各省にも従来から御協力を願ってきておるところでございますが、この事態にかんがみますとさらにまた一そう協力を願わなければなりませんので、それぞれの所管大臣にもその協力をお願いした、こういうことで、労働省としては先生御指摘のような事態のあることはほんとうに残念なことでございますので、改むべきは改め、一そうの努力をして法本来のねらいとするところが一日も早く実現するように私はベストを尽くす決意でございまして、事務当局ももちろんさようなつむりでいま進んでおるところでございます。
  16. 五島虎雄

    五島委員 職安局長の説明はあとにしていただきます。  それで、すみやかにやると言っておられますけれども、賃金問題を労働者が納得しなければ今日のような状況が続くのではないか。そうすると、仕事をしていないから日雇港湾労働者手帳を持っておる日雇いの港湾労働者は、今度は雇用調整手当の支給ということになります。そうすると、その中で労務を拒否した者、あるいはその他適格性を欠く者には港湾労働者手帳を取り消す、港湾労働者であるということを取り消すという条項も法の中にはあります。しかし現実に平均して五百円ずつ支給をしている。これは神戸港の状況ですけれども、ほかの港もそうだと思うのです。そういうような措置が行なわれているだろうと思います。そうすると、雇用調整手当を支給をするということは、二月を通じて二十八日間仕事をしている者でなければこの雇用調整手当は出さない、こういうような条項にもなっておるわけです。そうすると、七月から始まって二月というような事例というものをどこで判定をするかということは、八月になりますと、七月の労働日を根拠として支給されるわけですね。そうすると、七月というのはこういうような混乱の中に日がもうすでに二十七日間も過ぎておるわけですから、これは前例としてはまことに不適格な前例になるのです。そういうような行政上の措置などについては一体どういうようなことになるのか。だから、賃金が解決され理解されざる限りにおいてこういうような問題が続くということは、やはり作業の能力にもいろいろ大きな影響が出てくるのじゃなかろうかと思いますから、その点については職安局長有馬さんのほうではどういうように考えておられますか。これは善処していただかなければならないのじゃないか。私はこの際、円滑なる今後のために善処をお願いしておきたいと思うのですが、その点についての考え方はどうですか。
  17. 有馬元治

    ○有馬政府委員 先生御指摘のように、神戸港と大阪湾につきまして、登録以前の賃金を若干下回るというふうな事例が出てまいりました。私どもは、これは非常にゆゆしい問題でございますので、さっそく関係業者を呼びまして、この是正方を指導したわけでございますが、大体中旬までに全部登録前の水準に戻りました。業者の言い分ももっともなところがございまして、輪番制をとりますので、技能の程度がわからないというふうなこともございまして若干低目に求人申し込みをした、こういう経過があるわけです。これは過渡的にはある程度やむを得ない点もございますが、とにかく登録前の賃金水準に戻すということを指導いたしまして、その状態には戻ったわけでございます。  そこで問題は、七月一月間の過渡的な期間を経過した後の八月から完全に軌道に乗るわけでございますが、この場合に、七月が、トラブルがあったために若干賃金も低かったし、それから就労実績もトラブルのために若干少なかった、こういうような事例に対処して、八月の完全実施について、完全実施といいますか、手当が八百二十円を最高とする完全実施になるわけでございますが、この過渡的な措置をどうするかという点を御心配だと思います。私どもは、十日から十五日、中旬にかけて、全港湾その他の組合の方々にもお話を申し上げまして、七月一月の実績計算についてはそういった事情をもちろん考慮に入れて八月に移行するという考え方だから、早く正常の姿に戻ってもらいたい、こういうことを再三申し入れておるのでございます。したがいまして、点数制による賃金日額区分の評価のしかたも中旬以降は正常化しておりますので、大部分は八月については大体正常へ復してくる、こういうふうに私どもは情勢判断をいたしております。そこで、賃金の水準と、それから七月実績をもとにした八月切りかえの問題は大体正常に戻るのではないか、かように考えております。なお、神戸港等については当初トラブルがあった実績もございますので、私ども県を通じて具体的に善処してまいりたい。ただ、神戸港の事例がすぐほかの港に大きく影響するというふうな場面もございますので、私どももその点を十分計算に入れて県当局を指導し、八月以降に万全を期してまいりたい、かように考えております。五島委員 八月には七月のことを考慮して措置をしたいという気持ちはわかりますが、そうすると、十四日というようなことについては拘泥をせずに、いろいろその間の措置をしたい、こういうようなことですか。というのは、現地に行っていろいろ労働者と話もしたのです。いまのような輪番制であって賃金の状態であれば、とうてい十四日の労働日を確保することは個人ではむずかしいのではないか、おそらく八日間くらいになるのじゃないか、こういうように言っております。それはおかしいではないか。というのは、法に設けられたところの中央港湾審議会、地方港湾審議会が労働者の定数なるものを労働省令として発表をされて、神戸の港、大阪の港、横浜の港それぞれ六大港を指定港にして、常用労働者は幾ら、それから日雇いの労働者は何人と定数がきめられておって、その範囲内において港湾労働者の申請が行なわれているはずです。そうして八日間の作業量しか確保できないというような心配をするということは、どこかに何かが欠如しているのじゃないか、こういうように思います。  特に、神戸の港を調べましたところが、労働省のほうの資料もいただいて、現地においていろいろ話をしましたところが、神戸港だけが常用労働者の数を定数以上、三千名ばかりオーバーしていました。その限りにおいては、私たち港湾労働法を制定するときにあたって、日雇いの人員をできるだけ少なくして常用化してしまうように、こういうようなこと。ですから時の労働大臣も、そういうように今後努力はするけれども、一ぺんにそれを常用化することは困難であるから、したがって、当面は日雇いの数も大体四割程度にとどめて、暫定的に日雇いの労働者を少なくして常用労働者を多くしょう、こういうことです。ところが、おかしいというのじゃなしに感心なことには、神戸港だけが九千六百六十名の常用の定数の決定にあたって、一万二千名の常用労働者が業者のほうから職安に申請され登録されているのです。そうして逆に日雇いは七千七百名要るという定数が決定されたにもかかわらず、日雇い労働者は二千数百名にとどまっておる。だから、日雇い労働者は五千名ばかり足りない。常用労働者が二千五百名ばかり多い。それで、総体的に港の労働者は審議会が決定をしたところの定数よりもなお三千五百名足りない。足りないのに八日か十日しか労働日数が確保できないと労働者が心配しているということは、もしもあぶれたら十四日の規定と基準に到達しないから、したがって、千三百円が八百二十円になるでしょうから、八百二十円をさらに切られて六百五十円とか五百円とかいうようなことになるのじゃないか、これでは一度御飯を食べたらもうおしまいじゃないか、おれたち生活は確保できないじゃないか、こういうような心配をしているのです。そうすると、これは何かに原因がある。こういうような原因についてはどういうようにお考えでしょうか。
  18. 有馬元治

    ○有馬政府委員 神戸港特有の問題としまして、御指摘のように日雇いの定数はうんと下回っておりますが、常用化が予想以上に促進されまして、定数を三千名上回った常用化がなされた、こういう現象が出てまいったわけであります。これは主として船内の荷役労働者がほとんど大多数常用化した、こういう現象に相なっております。この間の業者の考え方がどういうところにあったのか、私どももつかみかねておる点もございますが、やはり港湾労働法が施行になって、登録制を実施されるということになれば、いい労働者を確保しておきたいという気持ちがこういうあらわれになって出てきておるのだろうと思います。そこはすなおに私どもも一応受け取っておるのでございますが、さらにせんさくすれば、この常用届け出数は擬装常用だ、こういうような御非難もございますので、この点は実態を今後調査してまいりたいと思います。  そこで、先生御指摘のように、日雇いの登録労働者については、いろいろ発足当初にトラブルがあったにしても、七月の就労日数が八日間程度しかないというふうなお話でございますが、私は中旬以降の就労状態を見てみますと、もっと就労日数は上がっておると思います。そこで、この基準に示しておりまする一カ月十四日以上の就労日数がないと、八月になって八百二十円という最高の調整日額が受けられない。七月実績を八月に延ばすわけでございます。そういう懸念が一部にあるわけでございます。この点について私ども就労傾向をずっと見ておるのですが、大部分の有技能労働者については最低要件を満たして、最高額の八百二十円の日額に移行するのじゃないか、こういうふうに私どもいま大勢を判断いたしております。  なお、神戸港特有の問題として、どうしてもそうはいかないのだというふうな事態がありますれば、私どももここは多少現地の実情を参酌したいとは思いますが、私いまの情勢判断では、この原則でいって無理はないのじゃないか、こういうふうに考えております。  なお、常用化の促進によって月間の稼働率が非常に向上してきておるというふうな傾向もございますので、一応私どもが想定をいたしました定数と登録人員との間のギャップは、今後必要に応じて修正してまいりたいと思います。ただ、今後考えなければなりませんのは、倉庫業の適用の問題がまだ残っておりまして、これが約七、八千の労働者を必要といたしますので、この適用問題を解決すれば、大体定数と登録人員とがそう大きなギャップがなくなって、だんだんと完全に軌道に乗っていくのじゃないか、かように推定をいたしております。五島議員 賃金の問題には、それでは有馬局長が言われるようにそれは解決するものであるという期待を持っておきましょう。  それから定数の問題については、この間「全倉庫」というような何か機関誌を配付されたのでそれを見ましたら、労働省では雇用調整課長のほうから、倉庫業もこれに適用するというような政令が制定されるまでというようなことで運輸省の港湾局のほうからも通達が来たんだ、こういうように言っておりましたので、それができると定数の問題は大体とんとんになるのじゃないか、こういうようにいわれるわけですが、それはそれなりにしまして、さいぜん有馬局長から言われたように、神戸港の特異状況として、船内荷役の労働者を確保するために、技能のいい労働者を確保するために、定数九千六百六十名を一万二千人登録をした、こういうようなことですが、そこに擬装常用というものがあると騒がれているのです。そうして常用になった労働者自体が、その雇用に対するところの条件はわからないという労働者が非常に多いというのですね。それからもう一つは、常用化されたら、常用化された労働者に対しては社会保険等々の制度がとられなければならない、そういうようなものは一体ないのではないか。それからこの港湾労働法の中の大きな問題であるところの労働福祉の問題については一体何だ。この法が制定されてから一年になります。そうしてその中に退職金共済制度等々もあります。ところがまだそれは発足されておりません。これからの問題でしょうけれども。そういうような事柄についてはまだまだほんとうに大きな抜かりがあると思うのです。こういうことについては一体いつごろから労働福祉の問題として取り上げられ、そうして労働者港湾労働法が制定されてよかったなと認識されるのは、そういうところから認識されなければならないのじゃないか、こういうように思いますけれども、そんな点はどうでしょうか。
  19. 有馬元治

    ○有馬政府委員 神戸港の常用登録の問題でございますが、私は必ずしも擬装常用であるというふうに判断は現在のところできないのでございます。しかし、そういう御非難もございますので、私どもも雇用の実態をさらに把握いたしまして、把握する場合に、御指摘のように社会保険の適用の問題、それから基準法の完全適用の問題こういった角度からはたして常用が擬装であるかどうかという点を判断してまいりたいと思います。この点はもうしばらく実態を把握する余裕を与えていただきたいと思います。  それから、退職金の共済制度その他の適用の問題でございますが、これも現在港ごとに準備を進めておりますので、近いうちにぜひ各港ごとに退職金制度を発足させていきたいと考えております。
  20. 五島虎雄

    五島委員 常用労働者が擬装されているかどうかということについては、職安の領分以外になるのじゃないかと思うのです。職安にも関係があると思いますけれども、基準行政の監督の問題についてはどうか——そこで地元でいろいろ問題になっておりますのは、一万二千名登録をしたということについてはいろいろ業者の作戦があるのではないか。これは憶測にすぎないかもしれませんけれども、作戦があって、港湾労働法を業者がざる法化して、そして港の労働者を使嗾するのではないか、そそのかすのではないか。だから昔の制度がよかったのではないか、おれたちのところへ来い、こういうようなことで常用化が非常に多く登録をされたのだと巷間いわれておるわけですよ。そうしてそれとともに、さいぜんの状況のように、七月一日以降賃金は下がる、そうして仕事はつきたくない、こういうような状況ならば、労働者の中には、期待していたにもかかわらず、昔の手配師関係仕事を求めると技能の高い人は毎日仕事があった、それに紹介制度が輪番制であるがゆえに、技能の落ちた人も技能のいい人も順番にやられるから、技能の高い人はあぶれるというような状況が出る、これでは直接雇用のほうがよかった、あるいは手配師関係で組をつくっていたほうがよかったということで、旧制度に対してノスタルジアを感じている者さえもある。こういうようなことならば、両々相まって、業者から労働者からこの港湾労働法ざる法であるというようなことで、現地の職安あるいは県の労働部等々がやっきになって、この港湾労働法によって新体制をつくるのだ、明るい港をつくるのだというように一生懸命やっても、なかなかその実があがらないのではないか、こういうように思うのです。そうすると、もしも擬装等々が行なわれるということは、いかにして監督するか。いかにして把握するか。そういうような法に違反するような考え方を持っているところは、行政上ぐんぐん締め上げて——何もたたきつぶせと私は言っているのじゃない。ずっと従来からそういうような考え方ですけれども、新しい企業家になってもらいたいがために よくこの港湾労働法の精神というものを業者自体が理解をし、協力をし、そうして業者の力、労働者の力、あるいは行政官庁の総体的な力、総合的な力によって港の状態というものを明るくしていかなければ、なかなかこれは困難である、こういうように思いますと、基準監督の監督業務というのはそういうようなところに手を尽くしてやれるかどうかという問題です。いままで基準局長にはこんな質問する機会がございませんでしたけれども、従前から、基準監督の人員の不足というものを私たちは主張し、もっともっとあらゆる方面に基準監督の手を伸べなければならない、それが官僚主義的な考え方で手を伸べるのじゃなしに、行政明朗化のために監督をし、指導しなければならない、こういうように言い言いしてきたところですし、今度は特にそういうようなことが必要として国民の間から要望されているのですけれども、基準監督行政としていかにこれに対処されるかということです。
  21. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 内容が三つぐらいあるかと存じます。  まず第一に、擬装常用の問題でございますが、先生御承知のように、日雇いと常用という考え方、港湾労働法に出ておりますが、労働基準法との関連を申し上げますと、日雇いか常用かという問題が労働基準法上問題になりますのは、第二十条の解雇予告の場合に、解雇予告の例外とされるものが二十一条で定められております。港湾労働法の常用と申しますのは、二カ月以上の期間を定めて使用される者でありますから、労働基準法の二十条の解雇予告の適用がある、こういうことになりまして初めて労働基準法上の問題が生じてまいります。そこで、常用化しました場合には、労働基準法二十条の解雇予告の規定の適用を受けるわけでありますから、その限りにおきましては労働者保護と申しますか解雇の場合の法的な保護を受ける、こういうことになりまして、それ自体は望ましいものであるというふうに考えるわけであります。そこで、擬装か擬装でないかという問題につきまして、労働基準監督機関としましては、実態判断として、はたして二カ月以上であるかという判断をして労働基準法の二十条の適用があるかどうかという判断がなされるわけであります。このことは日雇いにつきましても同様でありまして、日雇いでありましても労働関係が一月以上継続した場合には労働基準法二十条の適用を受けるわけであります。いずれにしても、監督機関としては、雇用の継続していることを実態的に把握して解雇予告の適用があるかどうかというふうな判断を下すということになるわけでありまして、擬装といわれる面が、紹介上の擬装の問題と労働基準法適用上の擬装の問題と一応実質的に分けて考えられますが、実態を的確に把握すべく今後も努力したいと思います。  また、第二の問題として、賃金の引き下げその他労働条件の問題でございますが、御指摘の点につきましては、労働時間と賃金との関係が明確でなくて、どうもオールナイトであると幾ら、ワンデーであると幾らというような考え方で賃金がつかみで払われておる。しかも、それが手取りが幾ら幾らというので手取りの額が先にきまったあとで差し引きを適当にする。どの部分が超過勤務手当であるか、割り増し賃金であるかという部分が不明確である。ところが、職業安定所で紹介しました場合には、その労働時間と賃金の見合いをできるだけきちっとしたい、いわば労働条件の明確化という考え方のもとに紹介に努力します。その結果、労働時間が低くなりますれば賃金も低くなるという当然のことがあらわれてくる。その面だけをとらえまして、賃金が低くなる、こういうような評価を受けるのでは非常に問題があります。そこで、すでに神戸港などにおきましては、免許を受けております事業場が三百六十一というふうに把握いたしておりますが、そういった労働時間と賃金との関係、これなどももっと明確にいたしまして、労働条件の明確化を通じまして、真にいずれが有利であるかという点について労働者も会社も納得のいくようなふうにさらに監督指導を徹底してまいりたいと思います。  それにつけましても、第三の問題として、はたして監督機構がそれにふさわしいものになっているかどうかということでございます。現在は職業安定機関との連携を従来より一そう密にしてやるように指示はいたしておりますが、来年度以降におきましては、港湾関係の監督機構をもっと強化いたしまして、もっと特別な仕組み、たとえば職業安定所と真に地理的にも一体に活動できるように分室を設けるなどいろいろな方法が考えられないかという観点から、目下検討いたしているような次第でございます。
  22. 五島虎雄

    五島委員 いま基準局長から説明のありました、労働条件の問題について、単に賃金引き下げではなかったのではないか。それで、従来千八百円なら千八百円を十時間半として計算をしておったところ、窓口紹介するのは八時間の労働の原則でもって千三百円になった。これを受けて、労働者は四百円下がったとか二百円下がったとかいって騒ぐのです。窓口には、ただ薄っぺらな一枚の札で、何々の作業千三百円とこう書いてあるのじゃないですか。それならば、一時間居残りをしたら二五%とかなんとかで十時間半それぞれ労働者が計算したら、ああ従前どおり十時間半の仕事をしたらとれぐらいになるのだということを納得させなければならぬですね、問題は。だから、やはり雇用条件の内容をもっと具体的に労働者に示す必要がある。ところが現実の問題はそういうところまでいけないのです。職安の連中は朝の六時から特別出勤をして整備にかかっておるのですよ。そうして一日じゅう働いている。港湾労働手帳の整備とかなんとか。港湾労働法が七月一日に施行されるまでは二十八名の人員でやっておった。ところが港湾労働法が施行されてから三十名になった。そうして県の労働部から五名の応援を求めた。もちろん仕事の整理が終わればそういう忙しいとともまあまあないですけれども、港の労働者は気が荒いのですから、朝から酒を飲んできて、そうして賃金が下ったといっては事務所の中にどなり込んで、その応対が悪いといってなぐりつける。私が行ったときも酔っぱらって賃金が安いから三千円にせいとかなんとかいろいろ言っていた労働者諸君もありましたけれども、あの中は戦争みたいになっていて、職安の連中が二十八名とか三十名ではとうていやれるものではないというふうに思います。しかし職安の連中は歯を食い縛って、そんなことは言っておりません。ところが労働者のほうからこれじゃ少ないじゃないか、こう言っております。だからいまの基準局の監督行政とともに職安の数もやはり——神戸ばかりを私は言っているのじゃなしに、神戸を見たから神戸を言っているのですけれども、六大港の問題についてもよく配慮することによって、これは消費的な人事だ、こういうように政府自体も考えないで、やはりこういうところには十分の人員を配置しなければならぬ。単に原則的に国家公務員の採用、増員は認めないといって、そうしてやさしいところもあるだろうと思いますけれども、こんな戦争みたいにしょっちゅうして、病気で倒れるというような人もあるんですが、こういうところについては、次にはすみやかに配慮を必要とするんじゃないかと思うのです。もちろん職安局長は非常に頭を痛めておられるだろうということは想像つきますけれども、これは労働大臣のお声がかりがあるならばこういうような人員配置等もすぐできるんじゃないかと思いますけれども、どうですか大臣
  23. 小平久雄

    ○小平国務大臣 その点につきましても、実は先般来職安局長といろいろ協議をいたしておるところでございまして、仕事の内容、状況等からいたしまして、やはりどうしても二交替制ができるような体制をとる必要があるんじゃないか。それにはもちろん人員の強化ということが必要でございましょうが、いずれにしてもできるだけ早くそういう体制を整えよう、こういうことで、よりより検討いたしておる段階でございます。
  24. 五島虎雄

    五島委員 この港湾労働法が円滑な運営が行なわれ、近代化をしていくにあたって大きな役割りを果たさなければならないものに港湾運送事業法の確立ということがあると思うのです。港湾運送業務をどうするかということです。その港湾運送事業法は、この五十一通常国会で一部の改正が行なわれて、そうして清掃関係等とか若干の追加が行なわれた。ところが港湾運送事業者が六大港においては非常に多い、多過ぎるんじゃないか。過当競争である。ところが東京の港の港湾運送事業者の中小の業者からはこういう投書が来ました。私たちはまじめな中小企業者である。ところが港湾運送事業法によってこれが整理統合される傾向にある。資本力というものは非常に弱いけれども、まじめにその港の近代化等々に寄与している私たちが整理統合されるならば、これは時代逆行である、こういうように言ってきました。しかしながら総体的に過当競争であるということになると、中間搾取の排除は港湾運送事業法で行なわれておるわけですけれども、今に至るまで依然として中間搾取が行なわれている現実があるかどうかということです。  それから神戸港のことばかり言いますけれども、神戸港は中央紙にも書かれましたようにいま暴力排除の問題がある。兵庫県警によって徹底的に行なう。しかしいまだそれが完全ではないわけです。それがどんどん進行するにしたがって、組関係は解散をし、全港振というのですか神戸港の振興会の幹部はすべて辞任をして、表面的には明るくなっているようですけれども、なおそういうような息のかかった港湾運送事業者がおるわけです。新聞の報ずるところですからわからないのですけれども、三十幾つの船内荷役の業者の中でその三五%が組関係である、こういうのです。しかしそれもいまや崩壊しつつある。そういうようなことから港の明るい体制というものができていくのではないかと思うのですけれども、しかし過当競争がある。その過当競争の中に業者そのものが、企業が、困難になっていく。企業が困難になっていけば、その中から労働条件の劣悪化が行なわれる、こういうことです。だから七、八年前に港湾労働法を制定するためにまず港湾運送事業法の改正をしなければならぬだろうということで港湾送事業法を運輸委員会改正されて、中間搾取が排除されたのです。法では中間搾取が排除されたのです。そうして元請も下請も対等の地位になった。ところが現実にそれがあるわけです。しかも神戸新聞には、各関係者の弁として、運輸省の神戸海運局長坂本勁介氏がこういうことを言っておられました。「ところが、神戸港の現実は、業者の乱立による過当競争から、認可料率より低い料金で仕事を請け負い、また請け負わせるというダンピングの商慣習が横行、ある意味で腐り切っているといえる。この面の是正は、単に行政官庁の指導によっては不可能で、本質的に港の構造上の問題にメスを入れる必要がある。」こういうことを言っている。港湾運送事業法を監督実施するのはだれかというと運輸省ですね。ところが海運局長が、くさり切っている、こう言っているのです。そうすると、現実に中間搾取が行なわれているんじゃないかと言わざるを得ないわけです。そうしたら運輸省はそれを認めているじゃないか。認めているところにその労働者の擬装常用とかいうような問題ができて、そうして何か確保しなければやられてしまう、こういうことになるのです。そうすると、ずっと前からわれわれは言ってきたんだけれども、過当競争で机一つに電話一本で仕事をするというようなところはすみやかに企業を合同しなければならぬ、暴力支配の企業は認可を取りやめろ、こういうように言ってきた。松浦運輸大臣の当時ですが、暴力が支配するなら認可は取り消します。この社労で港湾労働法を制定するにあたってそういうように言明された。大臣はわかっておっても精神は同じじゃないかと思う。私は神戸海運局長が悪いと言っているのではなしに、これが現実の姿であり、それが横行してくさり切っているというのならば、まことに神戸港はこの新聞の中で見る限りくさり切って暗黒の港であるといわなければならない。それだからすみやかに明朗化しなければならないというところの大きな責任があるのではないか。神戸港だけかというとそうじゃなしに、これは大阪も名古屋も横浜も六大港全部ひとしいのではないかと思うのです。しかし当時言われたのは中間搾取にかわって事務費程度のものは認められるのではないか、こういうようなことが言われておったわけです。しかし、これを神戸海運局長が、くさり切って処置なし、行政指導ではできない、神戸の構造を改革しなければならない、こう言ったその説は非常に強くていいと思うのですが、一体、神戸の構造をどういうように改革すればこういうのがなくなるかという問題ですね。それはやはり港湾運送事業法の正確なる実施をしなければならない。ところが、この十月まで待ってくれ、こういうことですね。何かそういうような状況じゃないのですか。整理統合はすみやかにやりますと、本委員会において港湾局長は何か答弁をされたと思います。議事録にあると思うのですが、まだそれが整備されていないように思います。だから、それが整備されていなければ、いつもこんなことで過当競争になる。過当競争は一体どこからくるかというと、大きい意味で言うならば、公示料金がダンピングされているというのですね。そうでしょう。公示料金というものは安過ぎるのではないかと、この予算委員会などでも追及されてきたところです。公示料金を上げれば業者の企業というものも非常に実力がつくのではないか。公示料金を上げ、業者に実力がつき、業者の整理統合が行なわれ、そこに働くところの労働者雇用している労働条件というものはいまよりもよくなるのではないかと思うのです。そういうようなことについて、私は運輸大臣の中村さんに聞きたかったのですけれども、おられませんから、運輸当局に聞いておきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  25. 佐藤肇

    ○佐藤(肇)政府委員 港湾運送事業の実態が、非常に中小の企業が乱立しておる、こういうことにつきましては、昭和三十九年の三月三日の港湾労働対策審議会の答申にもうたわれているところでございます。港湾運送事業を近代化するということがいわれているわけです。近代化という趣旨は、一貫作業が行なわれるように集約をしていけということと、企業規模を大きくしろということだったと思います。したがいまして、このたびの法改正におきましては、従来の免許にあたりましては、他人の企画を受けて、その仕事を遂行するに足る能力があればいいということでございましたが、さらに、一定規模以上の労働者並びに施設というものを持っていなければ安定した仕事ができないわけでございますし、また、労働者に対して安定した職場を確保することもできないわけでございますので、企業規模を大きくするために免許のための基準を上げたということが一点でございます。  その次に、たくさんの企業が乱立しておりまして、競争した結果、認可料金の順守というものができてないということも事実でございまして、そういうことをなくするために直営率というものを高めて、再下請を禁止した。直営率というものを、七〇%以上自分でやらなければいかぬというふうにしたわけでございます。御承知のように、一種から四種までの業種に分かれておりまして、その間には元請それ自身がはしけを基盤にするとか、そういうような一つの基盤のものについてはある程度直営力を持っているわけでございますが、それ以外は下請にゆだねるというのが通例の姿であったわけでございます。それを全部一度に統合するということは、現実の問題として困難なものでございますから、元請との間にお互いに株を持ち合うというような形で、責任と利益とを分け合うというような集約をしていきたい、こういう方向を打ち出したわけでございます。  もう一つは、これは答申の中にもうたわれているのでございますが、港湾運送事業の企業会計方式というものが大福帳式であって、非常に古いやり方をしている。したがいまして、いま御指摘のようないろいろな問題につきまして、われわれが監査をいたしましても、明確に把握できない点がございますので、省令に定める近代的な企業会計方式というものをとらす、こういうことを主にいたしまして、今回の法律改正をいたしたわけでございます。ただ、系列化による集約というものは一朝一夕にはでき得ませんし、また、港ごとに性質も違っておりますので、これを具体的に実施していくためには、港湾審議会の中に港湾運送部会というものを今回設けまして、これは業界、利用者、労働組合、さらに学識経験者、関係各省の代表を集めて委員にいたしまして、これの意見を聞いて集約合併をやっていきたい、こういう趣旨に持っていったわけでございます。いろいろ御指摘のようなことがあるわけでございます。  ただ、私、神戸海運局長が話したことは具体的には聞いていないわけでございますが、いま申し上げましたような方向で、港湾運送業界というものをすっきりした姿に持っていく、それが私どもの考えでございますが、一方、先ほどいろいろなお話がございました船内ならば船内の、全港振というような組織がございましたが、こういうような組織を打って一丸として、全部の業者が入る日本港運協会というものをつくりまして、これの中におのおの部会がございまして、業界自身も、近代化に対してどういうようにやっていくかということで、自分自身でも現在非常に方策を練っているというのがいまの段階でございまして、先生御指摘のような弊害をなくするように現在われわれも努力しておりますし、業界自身も前向きで自分たちで再建計画というものを立てつつある段階でございます。
  26. 五島虎雄

    五島委員 いまのそれはすみやかにやらなければならぬ。  そこで、また神戸に返りますけれども、神戸では、時間が足りませんでしたから海運局長とは会いませんでした。それで、一体、これを円滑にやるのに問題が起きたことは、体制が変わった瞬間においてはいろいろ混乱するだろう、だから、労働者の意見、要望というのはそのまま直截に職安も聞いてくれ、そうして職安が中心になって各関係業者と話し合ってくれ、そして組合も入れ、業者も入れ、そして運輸省や労働省や、それから地元も——この港湾労働法の中にも、県や市の関係地方団体は協力すべしと書いてある。きまっている。だから、神戸や兵庫県もすべて打って一丸として、どうすれば明るくなるかというようなことについて真剣に話し合え、こういうように要請したところ、直ちにそれをやりましょう、こういうようなことでした。だから、運輸省も労働省も、それを地元に示唆していただきたいと思うのです。そうして賃金の問題は、有馬局長の言によれば、大体もとに戻ったと言われるから喜びにたえません。あるいはその中から雇用が安定し、そして港の作業が確保されていくということならば、これにこしたことはないわけですけれども、今度は名古屋へいきます。  名古屋では、これが、門前雇用じゃなくて、職安窓口から輪番制雇用として行なわれていないということを聞いたわけです。私は調査していないからわかりませんけれども、旧態依然として、名古屋では、組関係が組をつくって、労働者を確保して、そして、その組の労働者雇用したものを間接に職安窓口を通す、窓口はそれを認めている。法の規定というものは、形式的にはすべて業者から職安窓口を通じて何名ほしい、条件はどうだというようなことで、職安窓口がその会社に対して紹介しなければならないのに、紹介の事務はその組関係で一括して行なわれている。名古屋においてはあまり問題が起きていないというように言われているわけですけれども、こういうようなことならば、これは紹介業の法違反ではないか、こういうように考えられますけれども、これはどうでしょう。  そうしてまた関門を聞いたら、関門では昔から慣習があって、非常にうまくいっている。このうまくいっているところはいいのですけれども、近くの洞海湾のほうは全くめちゃめちゃだ、こういうようなことを聞いたのです。それで、いま新聞等々で騒がれているのは神戸、大阪を中心として騒がれておるけれども、六大港のうち五大港ぐらいにはすべて問題があると想定をしなければならないわけです。私は、法の施行にあたって、まだ一月以内ですから、これらの総合的な円滑化のためには労働省は苦労されるだろうと思う。運輸省も苦労されるだろうと思うのですけれども、その中に気の荒い人——気が荒くなければやっていけないのですから気が荒くなる、そうしてその中では暴力が支配する、こういうような社会をいかにして改革していくか、革新していくかというようなことを、総合の力によってやってもらいたいと思うのです。私たち神戸などでは出先の官庁等とも協力します。あるいは労働者などともよく話します。だから労働者に、これはざる法ではないかと言われているけれども、ざる法ではないと言っております。あるいはその他政党関係では、ある政党はこれを管理反動立法であると言っておる。私はそうは思わないと言っておる。ある政党はこんなざる法をつくって、とこう言っておる。私はざる法ではないと言っておる。すべての力が総合し、総合の力によってこれを改革しなければならない。法十六条のただし書きは直接雇用が認められているけれども、これは緊急やむを得ざるときのみこれが行なわれるというのであって、常用の労働者がここにわんさとおるのにほかの労働者を雇うということは、法十六条のただし書きの適用ではない、これは法違反だと言っておる、というようなことを言っております。  もう時間がちょうど一時間ですから終わりますけれども、その他いろいろ問題があればまた職安局長等にもお話をお願いし、そうして協力してもらわなければならないと思います。きょうはこれで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  27. 田中正巳

  28. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 私は前の国会で、雇用対策法の審議の中で婦人の労働問題について全般的に御質問申し上げたいと思っていたのですが、時間がなくてできませんでしたし、きょうもまたたいへん短い時間でございますので、ごく焦点をしぼりまして御質問を申し上げたいと思います。  まず基本的な問題といたしまして、労働大臣にお伺いしたいのでございますけれども、労働省のいろいろな御調査によりましても、最近婦人の労働力というのが、雇用労働者が年々ふえてきているようでございます。若年の労働力なんかが不足で、全体として労働力が不足していくだろうという中で、婦人の労働力というものがどのように雇用対策の中で位置づけられていくか。そうしてまた、特に私がその中で御指摘申し上げたいのは、労働省の御調査にも明らかでございますように、婦人の雇用労働者の中で既婚婦人の雇用者がふえている率が多いようでございます。まあ、こういう点にきょうの御質問は焦点をしぼりたいと思うのでございますけれども、そういう婦人の労働力を全体の雇用の中でどのようにとらえ、位置づけ、対策をとっておいでになるか。特に中高年の既婚の婦人が多くなっている実情に対して、労働大臣がどのような基本的なお考えでおいでになりますか、まず伺いたいと思います。
  29. 小平久雄

    ○小平国務大臣 伊藤先生御指摘のように、婦人労働力の問題は近年非常に重要に相なってまいっておる、かように存じます。すでに御承知のように、大体のことを申しますと、全雇用労働者の大体三分の一程度を今日では婦人が占めておる。さらにまた、御指摘のように、既婚の婦人労働者というものが最近は特に多くなってまいっておりまして、婦人労働者のこれまた約三分の一程度が既婚の婦人の労働者である、こういうことに大体相なっておる、かように承知をいたしております。すなわち、職場において責任を持ち、と同時に家庭においても責任を持たなければならない、こういう婦人労働者というものが非常に多くなってまいっておる。したがって、婦人労働力に対する考え方というものも、これはよほど慎重に、また従来のように単に男子の代替物と申しますか、そういうような考え方ではなくして、婦人の労働力それ自体がもう欠くことのできない立場に今日では置かれておることである、基本的にこういう認識をいたさなければならないと思いますし、ましてや、既婚の婦人につきましては、職場の責任、家庭の責任、両者をになっておるわけでございまして、特に家庭における婦人の責任ということを考えますと、これは単なる労働の面ばかりではなくして社会的な関係、社会的な影響というものもきわめて重要に考えなければならない、こういう時代に相なってまいっておる、かように私は考えるわけであります。したがいまして、労働省の担当しておる仕事というものも、従来からのいわゆる職業安定法なりあるいは労働基準法の順守なり、そういったことももちろん重要でございますが、これらの婦人が家庭に責任を持ちながらも、しかしそれにそう心配をしないでも、職業につくことができるといったような、社会環境、社会の条件というものを整えていくという方面にも今後は十分力をいたさなければならないであろう、かように考えておるわけであります。
  30. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 いま非常に抽象的な御答弁がございましたけれども、婦人の労働力というものは単に婦人の労働力というような狭い考え方ではなくて、やはりただいま申し上げましたように、既婚婦人の雇用労働者がふえているという実態の中で、母性である婦人労働者を保護していくということを、特に労働省としてはお考えをいただかなければならないと思うのでございますけれども、その点につきましてお触れでなかったようでございます。この点は婦人局長からでもけっこうでございますが、そういう母性である婦人労働者の保護という点についての基本的なお考え方をひとつ伺っておきたいと思います。
  31. 高橋展子

    ○高橋説明員 婦人労働者といいますものは、現在すでに母親としての立場を持っておりますといなとを問わず、広く母性というものを持った特殊な労働力として考えるべきではないかということを基本的な前提といたしまして、たとえば労働基準法におきましても特別な規定が設けられまして、将来母親となるべき者も含めましてその母性を保護するべく格段の配慮が行なわれておる、このように解釈いたしておるわけでございます。また法律の保護ということはもちろんでございますが、それ以外にも社会の制度や慣行の中におきましても、この母性を持つ婦人労働者というものへの大きな関心が払われなければならない、このような考え方を持っておりまして、私ども婦人少年局といたしましては、婦人労働者を保護する労働基準法上の規定につきましての労働基準局との連携によりその実施の万全を期するという点と、それからさらにその最低基準のみでなく、母性を具体的に保護していくための格段の施策を行なってまいっているわけでございます。  具体的に申しますと、婦人の就労条件についての幾つかの調査によりまして、たとえば例年女子保護実施状況調査というのを行なっておりまして、これは特に基準法に規定されております格段の保護措置が具体的にどのような形でとられているか、どのような形で実施されているかということを、たとえば生理休暇につきましては何日くらいとっているか、産前産後の休暇は何日くらいとっているかというようなことにつきまして、全国的な調査を年次的に毎年行なって基本的なデータにいたしております。また、さらに特殊な問題につきまして、たとえば婦人の母性的な生理機能に対して障害を及ぼすおそれのある作業、たとえば冷えというような問題でございますが、これなどにつきましても特定の調査を行ないまして、作業環境が冷えをどのような形で招来するかということにつきましての労働衛生的な点からの調査を行なう、このようなことなどを重ねてまいっております。  またもちろんいわゆる啓発活動を通じましては、使用者の方々、また組合の方々、さらに社会一般に対しましても、初めに申し上げましたような基本的な考え方というものを十分承知していただきますような格段のキャンペーンのようなものも行なっておりますし、また、常時そのような態度で御協力を願っておる、このようなことでございます。
  32. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 私は、婦人局がいつも婦人労働者の実態の調査について貴重なデータをいろいろ出しておいでになることは、たいへん敬服もして喜んでおるわけでございますけれども、私は、いま特に労働大臣と婦人局長に御質問を申し上げた趣旨は、最初に申し上げましたように、雇用労働者の中に婦人の労働者が非常にふえている、その中で、しかも好むと好まざるにかかわらず、既婚の婦人の、結婚しても働く婦人の数が未婚の婦人のふえる率よりも非常に多くふえているという実態に対して、従来と違ってもっと積極的な対策を、特に雇用対策法なんかができたこの際におやりになっていくべきじゃないか。そういう点について今後具体的にどうやっていくかということを伺いたいと思ったわけでございますけれども、時間もございませんので、私は労働省としてはそういう積極的な対策をおとりにならなければいかないだろうという一つの例といたしまして、きょう問題にいたしたいのは、七月七日の朝日新聞「退職を迫られる婦人職員」という大きな見出しでもって、これは新潟県の鹿瀬町の問題でございますけれども、たいへん大きな記事が出ましたことは、御承知のとおりだと思います。この件につきましては、かねて参議院におきましては、私どもの同僚田中寿美議員あるいはまた占部議員などから詳細いろいろ御質疑がございましたようで、私もその会議録を拝見をしているわけでございますけれども、時間がございませんので、重複を避けましてこの問題を簡単に申し上げますと、鹿瀬町という小さな町なのでございますが、ここで数年の間にいろいろ町の事情から四千人近くも人口が減ってしまって、町の財政がやっていけなくなった。そのために町の職員の人員整理をしなければならぬということに当面しました。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 問題なのは、その際に、特に有天の女子職員十四人を対象にして文書などで退職をすすめたということがこの事件の一番の発端でございます。発端でございますけれども、その点についていま申し上げましたように、すでに参議院等でいろいろ同僚職員から質疑応答が行なわれております。私もその点につきまして、そのときの福田行政管理庁長官の御答弁の中などで、憲法と地公法に定められた男女の平等の取り扱いの原則からいってとうていそういうようなことは考えられないところである、もしあるとすれば、きわめて不適当なことであるから、調査の上善処したいという御答弁がありましたし、また四月十二日の参議院の地方行政委員会などで、占部議員の質問に対しましても、自治省の佐久間行政局長がこの点についてはさらに詳しく状況調査したい、また一般的な原則として勧奨退職の場合においても格別の理由のない限り、男女について差をつけるのは好ましくないと考えるということも言っておられ、勧奨の場合も当局側と職員団体がよく話し合ってやっていくべきだとか、これは佐久間行政局長がおっしゃっていることなんですけれども、るる御指摘をいただいた点については、原則的には男女差をつけないという方向で努力すべきことだと考えるので、今後指導上努力していきたいというような御答弁になっておりますし、田中さんの御質問に対しても、同様の御答弁があるわけでございます。  そこで、この七月七日の新聞記事なんでございますけれども、その後、きょうは自治省の方もおいでになっていると思いますが、鹿瀬町の問題は氷山の一角のように、ときたまこういう特殊な事情の町に出た事件ではございますけれども、私どもの立場から申しますと、特に婦人に差別をつけて退職の勧奨をしたということ、特に有夫の婦人に特別勧奨をして退職を強制したというような問題は非常に重大な問題だと思いますので、その後この鹿瀬町の問題はどういうことになりましたか、御調査になってどのような善処をなすったか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  33. 森清

    ○森説明員 三月三十一日に四名の分限処分が行なわれたわけでございますが、それにつきましては法律的な問題といたしましては、公平委員会に提訴あるいは地裁に対する取り消しの訴え、あるいは効力停止の申し立てというようなものが行なわれております。その後、いわゆる職員団体側と町長、単にその町の職員団体のみならず新潟県の本部、あるいは自治労の東京の本部でございますが、そういうところとそれぞれ交渉が数回持たれておりまして、私も実は自治労の責任者とこの問題につきましては数回話し合いをいたしました。私からも新潟県を通じ、あるいは直接に町当局に対しましていろいろな示唆を与えて、円満な解決をはかるように努力をいたしたのでございます。  経過を申し上げますと、その後五月二日でございますが、一応町長のほうも四名の分限処分は撤回をする、そして、その後二年間雇用をいたしますということを約束して、事態は円満に解決するかに見えたのでございますが、そういう行政処分をする前提といたしまして、町の条例の改正を必要とするわけでございます。その町の条例の改正を提案いたしましたところ、五月三十日、そのようなことで復職をさせ、あるいはさらに二年間雇用するということはよろしくないという意見のもとに全員一致でこの条例が否決になったのでございます。したがいまして行政的には、一応そのときの約束も定数条例の改正ができればという条件つきでございました。これは当然でございますが、そういうことでございますので、いま条例がないままに行政処分ではできがたい問題になっておるわけでございます。しかし、先生も御指摘のように、重大な問題でございますので、私も再度町当局にも何か道がないかということで相談をいたしておりますし、また、最近ある種の動きが出まして、さらに進んだ話し合いが行なわれつつあるとき、ちょうど新潟県の水害等がありましたので一時中断をいたしておりますが、誠意を持ってこの問題の解決には努力をしていきたい、こう思っております。
  34. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 この鹿瀬町の問題というのは特殊な町の、ただいま申し上げたように人口が減ったから起きた問題なんでございますけれども、私がこれを重要視いたしますのは、ただいまも申し上げましたように、最初に有夫の、結婚しているから、その婦人に対して退職を勧奨したという事態が非常に重要なんでございまして、このことはかねてここの委員会などでも問題になりまするように、民間におきましてはすでに電力あるいはセメントなどにも既婚の婦人を職場から追い出すというような全般的な傾向がございまして、そういう中においてこういう問題が出てきたわけなんですけれども、自治労の場合などにおきますと、いろいろ私宅手元に実情を調査いたしたものを持っておりますけれども、またいままでの参議院の質疑応答の中にそういう実態も出てきておりますけれども、このような形ではっきりあらわれないにいたしましても、ごく最近におきましても、名古屋市などにおきまして女子の採用を制限するような、今後は三対一の割合で女子を採用するとかいうようなことを公示した事実もございますし、またあるいは奈良県でございますか、全然女子を採用しないというような問題もあるようでございます。そうしてまた中には、これは愛媛県の八幡浜市の実例でございますけれども、夫が三万八千円以上の給料をとっている共働きの婦人には退職を上司が夫に対して勧奨するというような実例も出ておりますし、またその他の地方におきましても、私どもの愛知県などにおきましても、特に自治労関係、市町村などにおきましては、結婚をすると何らかの形で職場をやめるような約束をさせられたり、また勧奨されていにくくなるというような実態、また職場において特に婦人の職員に対しては差別をつけまして、昇給とか、あるいは上級に進むための試験などもその機会を与えないとか、そういう差別的な問題が出ているわけでございます。そういう中でこの鹿瀬町の問題が一つ氷山の一角のようにあらわれたわけなんでございますけれども、単にいまお話がございましたように、最終的には四人の方にしぼられてきたようでございますが、最初とにかく有夫の婦人全体に退職を勧奨したというような問題は、これはあくまでも一鹿瀬町の問題としないで、全体的に影響するところが非常に大きいのでございますので、婦人の職員、婦人労働者に対して、また特に有夫の者、結婚した婦人の労働者に対して、職場から追われるというようなことがないように、私は今後とも格段の御指導をしていただかなければならないと思うのでございますけれども、特に自治省の場合、全国的にどういう対策をおとりになっているか、伺っておきたいと思います。
  35. 森清

    ○森説明員 地方公務員の場合でございますが、その県なり市町村で公務員を採用するにつきましては、定数条例というものがございまして、その定数条例の範囲内で雇用する権能が住民、議会から市町村長に与えられるわけでございます。さらに地方公務員法の場合定年制がございませんので、形式的にいえば幾らたってもやめなくてもいい、こういうことになっております。そうしますと、やはり一定の百人なら百人の職員がある時点である、そうして幾ら年とってもやめない、こういう事態になりますと、新しい職員は全然採用されない、そういうことでは将来にわたっての地方行政がうまくやっていけない、こういうことになりますと、何らかの形で、だれかにやめていっていただかなければならないということは、これは現実でございます。その必要性があるわけでございます。それじゃやめさせないでどんどん定数をふやしていったらいいじゃないかといっても、仕事もないのに定数をふやすわけにいかない。ふやせば住民の税金が上がるばかりであります。そういたしますと、一定限度以上の人は雇えないわけであります。したがいまして、その次にはどういう人にやめてもらうかということになるわけでございますが、そのときにいろいろな要素を考えるわけであります。たとえば、その一つとして、退職してもその人あるいはその家族全体が比較的に他の人に比べて困窮度が少ない、何とかやっていけるいうというふうな人も一つの選ぶ基準に持っておるとことも事実でございます。そういうことからいま御指摘のような人が具体的に選ばれるという事例も間々あるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし、原則論といたしましてあるいは法律論といたしまして、男女差別をつけるというようなことはいけないので、また憲法あるいは地方公務員法の禁止しているところでありますので、そのようなことはやっておらぬ。また行政の運用の実態において、生活が楽であるとかあるいは勤務成績が上がらないとかいうふうな基準をつくってそういう基準で当てはめていってみると、たまたま御婦人が当たったというようなことがある場合があろうかと思います。そういう問題として、私のほうでは男女差別をつけずに公平に取り扱えということは、これは指導するまでもなく法律に明示されておることでありますので、特に女子職員に対してどういう取り扱いをしろとかあるいは勧奨退職のときにはどういう基準でやれというようなことを、現在まで一般的な指導はいたしておりません。ただ、あげられましたような点につきましては、それぞれその事態に応じまして個別にその府県当局あるいは市町村当局からよく事情を聞き、不適当な行政をやっておればその是正を求めている。こういうことでやっておる次第でございます。
  36. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 いま伺っておりますと、一応もっとものような御答弁なんですけれども、私はやはりそれは形式的な御答弁だと思うのです。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 なぜならば、実態は人員整理のときにいろいろな条件を調べてやむを得ず女の人が当たるというような御答弁だったのですけれども、これはそうじゃないのです。やはりそういう問題はいつも婦人の労働者の上に、婦人の職員のほうにしわ寄せが来ているという事実があるのです。これはもうこの鹿瀬の場合でも、残った四人の人が必ずしも夫があるから生活がゆとりがあるということでなくて、これは後ほど婦人少年局長にも御質問申し上げたいと思っているのですけれども、労働省の婦人少年局の御調査によりましても、むしろ家庭に責任を持たなくて未婚の婦人のほうが働く理由というものが少ないのでございますけれども、これは有夫の結婚をしている婦人のほうが生計のために、生活費のために積極的に働かなければならないという理由が非常に多いのでございます。そして積極的に働く意思を持っている人が多いのでございます。また継続して労働したいという意欲を持っているわけなんです。むしろ既婚の婦人のほうが、特にいまの物価高の中で子供をかかえていながら働かなければならない背景があるわけなんでございますので、決して女の人だからといって困らないだろうとか、そういうところに人員整理の対象が向いていったということではないでしょうし、そういうことにしてはならないし、実態はそうじゃないんですから。ですから、私はこういう点について何かといえば、夫があるんだからいいだろうとか、単純なそういうことから整理の対象にされがちだということに問題があるんだと思うので、自治省などにおきましても、官公労とか特に地方自治体などの中で、一般の民間の営利を目的とした会社などにおきましては、これはたとえば当然そのときに問題になるのが結婚すると能率が下がるとか、女の人は仕事にあまり意欲を持たないとか、そういうような点がよくあげられてくるわけなんでございますけれども、とかく営利会社などでは、そういう点から結婚をいたしました婦人が整理や合理化の対象になりやすいんでございますけれども、いま申し上げたような労働省の調査によっても、積極的に働く意欲を持ち、その必要がある人たちなんですから、そういう人に対しましては、官公労とか地方の自治体等においては、こういう人を守っていくような立場に、むしろ弱い立場にある人を守っていくような指導をしなければいけないのじゃないかと思うのです。ときたま婦人のほうにそういう整理の対象がいったんだということではない実情が全国的にあるわけなんですから、そういう点についてもう少し婦人の労働者を守るという積極的な立場をおとりいただかなければ困ると思うのでございますけれども、今後そういう指導をぜひ自治省あたりでやっていっていただきたいと思いますが、その点あなたに御質問を申し上げてそういう御答弁をいただいても、簡単に片づくことではないかもしれませんけれども、いかがでございましょうか。
  37. 森清

    ○森説明員 婦人の労働者の問題につきましての基本的な考え方につきましては、ただいま伊藤先生言われましたことと全く同感でございます。ただわれわれは、そのように各地方団体とも守っているものだ、このように思っている次第でございまして、たまたま例外的にこのような問題が起こりますと、その例外的に起こった問題につきまして、それぞれの職員団体なりあるいは市町村なり県の当局と具体的に話し合いをして解決をしていきたい、このように考えている次第でございます。
  38. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 たいへんくどいようですけれども、私はこれは例外的じゃないというところに問題があるんだということを申し上げているわけなんです。全国的にそういうケースが多くなっております。婦人の既婚の労働者がふえていくにもかかわらず、一方地方の市町村などにおいては結婚した婦人を職場から追い出すというような傾向がふえているというところに、私は自治省あたり積極的にそれを防ぐような御指導、対策をとられるべきであって、事態が例外的に起きたということではないというところに問題があるということを申し上げているわけなんですが、いかがですか。
  39. 森清

    ○森説明員 私のほうでは、そのようなことが全国的な傾向であろうとは思っておらないわけでございます。そういう非常に極端な事例がございますならばそれを是正していきたい、このように思っている次第でございます。もちろん営利会社じゃございませんが、国家でも地方公共団体でも住民の税金をもってまかなわれておりますので、最も能率を発揮してもらわなければならない、そういう意味においては営利会社と同じであります。あるいはむしろ国民の税金を使わしていただいているという立場からいえば、もっと厳格な考えを持ってもいいのじゃないか。能率の悪い人はやめてもらう、能率のいい人によく働いてもらうということは、これは原則でございまして、その中でどのような人をどのように採用し昇進さしていくかということは、地方団体が最も重要な問題として考えなければならぬ問題だと思います。しかしながら、いま申されましたように、男性と婦人と比べまして、婦人がたとえばいろいろな休みが法律的にもとれるのが多い、したがって能率が落ちるんだというふうな理由でやめさせるということは、これはやっちゃいかぬと思います。それはそれなりに婦人として当然保護さるべき権利があるわけでございます。しかし、それを差し引いて、それ以上の問題で現実に男女比べて婦人のほうが能率が悪い、どうしても仕事にならないというふうなことになりますならば、その人を選んでできるだけ早くやめてもらう、ほかの人をやめさせるよりか、その人に最初にやめてもらうということがあったといたしましても、これは地方団体としては当然の責務を果たす上でしようがないのではないか、また、むしろそのほうがいいんじゃないか、このように思っております。しかし、いま申しましたように、婦人だからという理由でやめさせるということはいけない、このように思います。
  40. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 あなたとここで論争しようとは思いませんけれども、あなた、例外的な問題であって全般じゃないという御認識は、私はいろいろなデータを持っておりますけれども、少し認識不足だと思うのです。それで、全体として確かに能率の点については女の人が劣る場合がたまたまございます。しかし女だからといって特別な扱いをしてその差別をつけるということは、それはもう憲法上からいっても問題にならぬということが一つと、そういう実態があるということは少し認識を改めていただきまして、全体の機構の中で、ひとつ能率が悪ければ能率の悪い人から切るよりしかたがない、これは特に国民の税金でやっておるからというおことばなんですけれども、私は反対に、やはり官公労なり地方の自治体というものは、率先して範をたれて、そうして既婚の婦人でも働きやすいように民間に示していくことのほうが大切ではないかと思うのですけれども、時間もございませんから、たいへん不満なんですけれどもその程度にとどめまして、特に婦人少年局長のほうに御質問を申し上げたいと思います。  ただいまの質疑応答の中でも婦人少年局長おわかりのように、これは全体といたしまして民間の婦人労働者の中にもあることでございまして、とかく結婚をいたしますと、これは労働組合の中にすらそういう傾向があるんですけれども、婦人を職場から追い出すような傾向が見れらております。既婚の婦人がなぜ働くかという、その理由の御調査は、婦人少年局でいろいろお調べになりましたデータによりましても、私が先ほど申し上げましたように、自分の生活と家計を維持していくために働くというのが圧倒的に多いようでございまして、決して単にぜいたくをしたいとかそういうことではなくて必要に迫られて働く方が非常に多いわけでございますので、そういう際に私は婦人少年局としては特に既婚の婦人の労働を守るという立場から、今後もこのような問題につきましてもむしろ自治省あたりに働きかけて、婦人だから、特に既婚の婦人だからといって整理の対象などにされないようになさるべきだと考えるわけですが、この点についていかがでしょうか。
  41. 高橋展子

    ○高橋説明員 先生のおっしゃいますとおりに、近年の既婚婦人労働者の増勢というものは、私どもで知り得た限りにおきましても、働く意欲が十分あり、かつまた働かなくてはならない理由があって職場に出ておる者が多いと思います。また、それのみでなくて、日本の産業社会というものがそれらの労働力要求しているということもあると思います。それらが相まって先ほど大臣が申し上げましたように、近時既婚婦人の雇用労働者として働く者が非常に多くなっているのであると思います。しかし必ずしも社会の受け入れ体制がこれらの現実にしっかりとした認識を持っているとも限らないことがありますことは先生が御指摘のとおりだと思います。それと申しますのも、やはり一つには婦人労働者のこのような増勢、特に既婚婦人の増加というものの速度が急速でございまして、過去約十年の間に、特に最近五年の間に非常な勢いでふえているというふうなことで、従来とかく婦人労働力を若年の未婚の、また不熟練の労働としてだけとらえるような慣行が強い日本の社会の中で、これらの中高年齢かつ家庭を持ち、また高度の責任を持った仕事をしようとするそれらの婦人労働者をどのように扱うかというところに多少の混乱や摩擦が起きているということは否定できないのではないかと思います。そのような混乱あるいは摩擦現象の一つとして、これらの者たちに対して若年で定年をしいてしまえというふうな考え方が出てきたり、あるいは結婚によって勧奨退職を求めることが出てきているというふうな見方もできるのではないかと思います。いずれにいたしましても、そのような事態はたいへん残念でございますので、私どもといたしましては、従来から女子なるがゆえに男子と違う定年を設けるとか、あるいは結婚によって退職を求めることにつきましては、地方の婦人少年室を通じましてかなり強く行政指導を行なって、民間産業に対しましてはそのような取りきめを改善するように指導しております。また地方公務員等に対しましては自治省にそのような趣旨をお願いいたしまして、またそのように取り計らっていただいているところでございますが、今後におきましてはそのようないわば弊害の排除という点にとどまりませず、既婚婦人が無理なく働けるような職場の制度や慣行というものを育ててまいりますように一そう積極的に努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  42. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 ぜひそのようにお願いしたいのでございます。それで、自治省の方にも聞いていただきたいのですけれども、ことしの四月二日に第十一回の働く婦人の中央集会というものがございましたけれども、女子の若年定年の問題とか結婚について退職を勧奨される、そういう結婚退職反対の決議というものがそのときされているのですけれども、いま婦人局長のお話にもございましたように、一方で既婚婦人の働く人たちがたいへんふえている。そういう中で、また一方でこういう問題が全国的に出ているということが訴えられておりまして、決議の中でも特にされているわけなんです。ですから、この問題は決してときたま偶発的に出てきた問題ではないんだということの御認識のもとに、私はぜひ官公労なり自治省とかいう公的な機関においては積極的に既婚の婦人の労働者を守るという、そういう対策をおとりいただきたいと思うわけでございます。婦人少年局長はいま御決意を申されましたので、ぜひそのようにお願いしたいのですけれども、とかく職場におきましては女子は能率があがらないということが一般的にいわれております。そういう事実もあると思うのですけれども、私はやはり女である、母性であるというために、子供を持った場合あるいは家庭に責任を持っているためにやむを得ず能率を下げざるを得ないような条件もあるわけでありますから、労働省の婦人少年局としてはそういう条件をなくするような側面、背面と申しましょうか、そういう対策もぜひ積極的におとりいただくように——これは婦人労働者としての自覚を高めることはもちろんでございますけれども、同時にたとえばいま働く婦人の中で一番問題になっておりますし、働く婦人の集会でいつも要求として出てまいりますのは、保育所の増設に関する問題でございます。昨日もこの衆議院の第一議員会館で総評関係の保育所の問題の御婦人たちがお集まりになっていろいろ要求を出しておいでになりまして、私はあとでその陳情書を拝見したのでございます。日ごろ私はこの保育所の問題については働く婦人の一番大きな悩みとしていつも毎国会でお願いをしているわけでございますけれども、これは単に保育所問題は厚生省の管轄だからという問題ではないと思うのです。特に労働省の婦人少年局としては、既婚の婦人の労働を守る立場から積極的にこの数の多い託児所、保育所を設けるように、これはいろいろ厚生省とも連携のもとにそういう努力をしていただかなければならないと考えるわけです。その他働く婦人の保護についての問題がいろいろあると思いますけれども、特にいうも一番問題になりますのは、乳児保育所が数が少ないということです。また、いまの保育所が全体として数が少ないために、特に働く婦人の場合は距離が離れておりましては、預けて働くということはなかなか困難ですから、少数でもいいから近くの手近なところに保育所ができるだけたくさんできることがみんなの非常な希望でございます。そういう点について婦人少年局では積極的にどういうようなお考えを持ち、また対策をしておいでになるか、その点伺っておきたいと思います。
  43. 高橋展子

    ○高橋説明員 働く婦人にとりまして一番問題になっておりますことは、先生おっしゃいますとおり家庭の責任と職場の責任の両立の問題であるかと思います。特にその中でも育児ということをどのように処理していくかということがたいへんな問題になっているわけでございます。しかもこの家庭責任の遂行あるいは育児責任の遂行は、その人、婦人労働者個人の問題であるばかりでなく、社会的な問題でもあるということの認識に立ちまして、私どもといたしましては、現在の婦人労働問題の大きな重点の一つといたしまして、いかにして家庭責任を持ちながら婦人が働けるかというととの対策を鋭意研究いたしております。その具体的な方策というお尋ねでございますが、一つには私ども、婦人少年問題審議会におはかりいたしておりまして、特に家庭責任を持つ婦人がその能力を十分に生かし、しかも無理なく働けるように、どのような方策が必要であるかということをただいま御検討いただいておりまして、近く結論が出ることになりますので、それに基づいて各般の政策を進めたいと思いますし、また、事務当局といたしましても、先生がいま御指摘のような保育所問題等をきめこまかく、ほんとうに婦人労働者が家庭の責任というものを果たしながら働けるための、何と申しますか、ただ保育所の数だけがあればいいというのではなくて、ほんとうに生活に緊に結びついたサービスというものを具体的に進めたい。どのようなプランがいいかをいま鋭意研究いたしているところでございます。
  44. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 あまりこまかい内容に触れる時間がございませんので、これでとどめますが、特に最後に御要望申し上げたいのは、私はきょうの質問の一番要点というものは、既婚の婦人の雇用労働者というのがふえている、それについていろいろ条件が悪い中で働くわけなんですから、労働省の婦人少年局としては積極的な熱意を持って、たとえば先ほどの若年定年の問題とか、あるいは結婚退職の問題等につきましても、民間に対しても単に好ましくないからというような程度の指導じゃなくて、積極的に既婚の婦人の労働を保護するという立場の御指導をいただき、またいまお話がございましたようなその背景になる育児の問題、家庭に責任を持ちながら働いていけるような条件を整えることに、愛情のある積極的な、特に婦人少年局長の御施策を今後とも進めていただきますように強く御要望を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  45. 田中正巳

    田中委員長 午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ————◇—————    午後一時五十五分開議
  46. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。吉村吉雄君。
  47. 吉村吉雄

    吉村委員 まず初めに、たいへん世間をびっくりさせましたところの栃木県黒磯町の木野俣用水隧道内に起こったところの事故について、その遺族に対する救済あるいは補償、並びに現在入院加療中の気の毒な農民の方々に対する国としての援護策等についてお尋ねをしたいと思います。  初めに、お尋ねしたいのは、きのうの夕刊あるいはきょうの朝刊によりますと、この黒磯の惨事について、政府のほうとしましては、労災補償保険法の適用は非常にむずかしいので、特別措置を考える、こういうことで、新聞の報道によりますると、労働省、農林省あるいは自治省等で協議をした結果、労災補償ではないけれども、それに見合う程度の補償を見舞い金として遺族の方々に差し上げたい、こういうことを大筋決定をして、二十九日の閣議で正式な決定に持ち込みたい、こういうことが報道されておるのでありますけれども、この報道は正しく事実を報道しておるのかどうか、これをまず初めにお伺いをしておきたいと思うのです。
  48. 小平久雄

    ○小平国務大臣 黒磯の今回の事故につきましては、はなはだ遺憾にたえないところでございますし、もちろん死亡なされた方々に対しまして心から弔意を表しておるわけでございます。  そこで、これをどう国として補償なり見舞いなりするかということについては、事故発生以来衆参両院の本会議なりあるいは各委員会なりにおきまして十分御質疑、御要望等を承ったわけでございますが、労働省の立場からいたしますと、何とか労災保険でできないものか、こういうむしろいわゆる前向きというか積極的というか、そういう気持ちで、災害の実情、特にまた谷黒組と罹災された農民との労働関係雇用関係というものがどういう事実であったのであろうかということに重点を置いて、詳細に慎重に調べてまいったのであります。ところが、いままでの調査の結果によりますと、はなはだ残念ではありますが、雇用関係があったのだ、こう積極的に証明できるような事実というものが遺憾ながらほとんどないのでございます。したがって、まだ結論を得たわけではございませんが、どうも労災保険で補償するということは無理なのではなかろうか、大体、目下のところの結論はそういうことなのであります。  そこで、各方面の御要望は、労災保険でいけないか、あるいはいくべきだ、こういったような御意見が確かに多いのでありますが、いま申したような事情でございますので、しからば、最終的に保険ではいけないんだという結論にかりに達してから後に、ではどういう方法をとるかということでは、あまりに一般の人あるいは御遺族の方々のお気持ちあるいは御期待にも添い得ないのじゃないか、こう考えましたので、いま申したような労働省の調査と並んで、これがどうしても保険でいけないという場合には、国としてはこういう方法で大体この保険に準じたお見舞いなりをすることにいたしたいと、こういうことをやはりきめておく必要がある、こういう考え方からいたしまして、農林省、それから自治省ともいろいろ話し合いをいたしまして、大体いま新聞に出ておるような方法で見舞をしたい、こういう方向でいま検討をいたしておるという段階なのでありまして、その大筋が決定した、何かそう確かに一部の新聞にはあったようでありますが、大筋が決定したというよりも、そういう大筋を決定したいということでいま折衝をしておる。しかも、こういう問題でありますから、いつまでも最終的な政府の態度がきまらぬということはどうかと思いますので、でき得れば明後日の閣議でその方法というものをひとつ了解を取りつけたい、こういう方針でいまやっておるわけでございます。
  49. 吉村吉雄

    吉村委員 大体この新聞の報道を肯定された答弁でございますが、そこで、なお具体的にお尋ねをしたいのですけれども、このいわゆる見舞金なるものの算定基礎として、労働基準法七十九条の遺族補償に準じて日給の千日分相当額、こういうことで現在作業を進めているかのごとき報道をされています。この中で、男子の方々に対しては八十万円、女子の犠牲者に対しましては五十万円、こういうことでございますけれども、この八十万円と五十万円というものを労働基準法の七十九条を基準として出したといたしますならば、これは男子の労働賃金を一日八百円、女子を五百円というふうに計算をされた結果と見なければなりません。そういたしますと、この八百円と五百円というものは一体どうして算出された数字なのかという疑問を私は当然にして持ったわけでございますが、あくまでもこれは新聞の報道でありますから、大筋として労災適用ではないという方向で何らかの措置としての特別扱い、こういうことでやっていきたいということのようでありますので、かりにそうするにしましても、政府としての基準というものが必要ということから、この新聞報道の男子八十万円、女子五十万円というものが算出をされたもの、このように理解をいたします。その前提に立って、だとしまならば、男子の一日の賃金は八百円、女子の賃金は五百円と、こういうことになるようでありますけれども、大体この私が申し上げているような考え方、そういう基準に従って作業が進められているのかどうか、これもあわせてお伺いをしておきたい。
  50. 小平久雄

    ○小平国務大臣 大体は先生のおっしゃるとおりなのでありますが、これも別段最終的にそうきまったというわけではもちろんないのであります。ただ、何らかの処置をとります以上は、それが金で差し上げることになる以上、やはり何らかの目安がなければ相談になりません。そこで、かりに賃金を得ることになっておったといたしますならばどうであろうかと、こういう立場から考えまして、地元におきましては、どうもこの点もはっきりいたさないのでありますが、男子には八百円、女子には五百円払うことになっておったとか、あるいは谷黒組が常用している者の大体の基準もその辺であるというようなこともありますので、一応それを基準にとって、御指摘のように基準法による千日分の補償としたならばこのくらいになるんだが、こういうことで、それを目安として各省間で打ち合わせをいたしておる、こういうことでございます。
  51. 吉村吉雄

    吉村委員 そういたしますと、谷黒組の雇用されている人たちの男子の賃金が八百円、女子五百円くらいであろう、こういうことから、八百円と五百円という数字が基準として現在の作業の俎上にのっている、こういうふうに理解していいんですか。
  52. 小平久雄

    ○小平国務大臣 ですから、それは表現を、基準としてと言うのがいいのかどうか、私も厳格にわかりませんが、一応の目安として見舞金——大体見舞金ということになると思います。ですから、元来は正確なものではないかもしれませんが、そうかといって、一応の目安がなければ、これもどうも具体的な話も進みませんので、それを一応の目安として相談をしておる、こういうふうに御理解願ったらよろしいと思います。
  53. 吉村吉雄

    吉村委員 ですから、その目安を八百円、五百円というふうに置いたという、その置いた基礎は一体何かということを聞いている。
  54. 小平久雄

    ○小平国務大臣 基礎は、先ほども申しますとおり、男子の場合は八百円、女子の場合が五百円何か払われるはずであったとか、これもどの程度確定的なものかほんとうはわからないが、一応そういう話もありますし、それから、谷黒組の常用しておる者の賃金も、男子の場合は八百円、女子の場合は五百円と、大体そうなっておる。こういう事実もありますので、それをとって目安にしたということであります。
  55. 吉村吉雄

    吉村委員 まだ確定をしていないので、仮定の上に立った議論ですから、これ以上の追及は私もしません。ただ、これは将来問題になるであろうということだけは申し上げておかなければなりません。とにかく、ああいう隧道の中で仕事をする男子の賃金が八百円、女子の賃金が五百円、こういうことで一体よかったのか悪かったのか、それが妥当なのかどうか、国としてそれを算定する基礎にする場合に、一体妥当性を持つのかどうかということについては、私は疑問なしとしない。しかし、これはまだ確定をしていないというお話ですから、それが確定をされた段階において問題にせざるを得ないというふうに思います。  いま一つは、いまの大臣の答弁の中にちらりと出てまいりましたけれども、谷黒組が農民の労働に対して男子八百円、女子五百円を払うという、そういううわさであったというようなお話がありましたけれども、もしそのうわさなるものが事実だとしまするならば、これは当然にして谷黒組と農民との間に雇用関係的なものが生じておったというふうに理解せざるを得ない、あるいは個々の農民とそういう雇用関係が成立をしていないとしても、この改良区のほうに対する工事契約といいますか、そういうものの中でその点は明瞭にされていなければならない問題である、こういうふうにも思いますので、この点はあとから少し議論をしておきたい、こういうふうに思います。  その次にお尋ねしたいのは、政府がこういうようなことで特別な措置を考慮せざるを得なくなったという原因は一体どこにあるのかといいますると、大臣からも答弁がありましたように、谷黒組と農民との間に雇用関係が成立をしておったという明確な証拠がない、こういうことが一番大きな原因であるというふうに言わねばなりません。  そこで、私は農林省の農地局長にお尋ねをしたいのですけれども、この工事は、災害が起こって土砂がトンネルの中で崩壊した、それを改良区のほうで復旧工事をやった、その復旧工事のやり方として谷黒組との間に復旧工事の契約なり何なり行なった上で始められたもの、こういうふうに私は理解をいたしますけれども、その工事の着工に至るまでの間、改良区と谷黒組との関係はどういう契約に基づいてなされたのか、あるいは県の農政部等ではそういう指導を行なってこの復旧工事に当たったのか、これは本省のほうでも当然に報告を受けているもの、こう思いますので、その間の経緯を要点だけ御説明を願いたいと思うのであります。
  56. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 木野俣隧道の災害復旧工事につきましては、土地改良区が県の指導を受けまして災害復旧事業の計画の概要書をつくりまして、七月九日に県庁と関東の農政局とで相談をして、できるだけ早い機会に、というのは七月十日か十一日ということであったようでありますけれども、査定前に復旧工事に本格的にかかるという計画であったわけでございます。これは、災害がございましてから農林省として復旧事業の計画ができましたものを査定をするわけでございますが、災害復旧事業の性格から言って、災害の査定をするまで待っていると仕事が間に合わないということがございますから、ある場合は応急工事を認めて、後になってそれを補助対象事業にするということもございますし、査定の前に本工事に着手させるということもございます。いずれも現場の写真等証拠書類を十分残しておいて事業をやらせるわけでございます。それで、この事件につきましては、七月の九日に栃木県庁と関東の農政局と計画書について相談をする予定でございましたけれども、本格的な工事に入る前に、土地改良区としては、組合員を動員して隧道の中のどろを掃き出す、いわば応急工事を始めたわけでございます。この応急工事自体につきましては、私どもが調査した限りでは、どうも県なりあるいは那須の土地改良事務所と十分な連絡がなかったように聞いております。また、谷黒組という土建会社は、この隧道が実は三十八年に災害が起こりまして、三十九年度において災害復旧事業をいたしたわけでございますが、そのときの請負会社でございまして、今回もおそらく同じように谷黒組に頼むつもりであったろうと思います。  ただ、応急工事をするのについて、谷黒組に請負の契約をしたかどうか。本工事になりますと、当然谷黒組に請負を頼みませんと、事業が進みませんから、これは間違いなく請負に出したと思いますけれども、応急工事の段階において谷黒組に請負に出したかどうかということについては、私どもずいぶん調査をいたしましたが、関係者が死亡したということもございまして、請負に出したという証拠が十分ないわけでございます。見方によりますと、本工事を谷黒組が請け負うまでに、応急工事として土地改良区の事業として、いわば賦役の形で応急工事をやったというふうにも受け取れるわけでございますし、また、当時の関係者の言い分によりますと、とにかく谷黒組に頼むということを言ったという話もあるわけですが、これも十分証拠が残っておらない。したがいまして、応急工事で隧道の中のどろを掃き出す段階において谷黒組に仕事を請け負わしたという証拠は、どうも残念ながらしかとはつかめないという現状でございます。
  57. 吉村吉雄

    吉村委員 農地局長はあの事故が起こってから現地を見られましたか。
  58. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私は七月十日に農林大臣とお見舞いかたがた現地を視察いたしました。
  59. 吉村吉雄

    吉村委員 労働省はだれが現地のほうへ行って調査に当たられましたか。
  60. 小平久雄

    ○小平国務大臣 労働省からは、事故が起きましたという知らせを受けた直後に、石黒労災部長外専門官数名を本省から派遣しておりますし、もちろん地元の栃木労働基準局長以下局のほうの専門の者、それから監督署の署長以下署員、こういうぐあいに専門の者をそれぞれ派遣して調査に当たらしたわけであります。
  61. 吉村吉雄

    吉村委員 実は私もあそこの現地を見舞いと同時に調査をしてきたのです。  農地局長にちょっとお尋ねをしますけれども、あそこのトンネルの事故というのは、今度が初めてではない。いまも局長から答弁のとおり、三十八年にも大体同じ個所で同じような事故があった、こういう実情です。あそこは、実際問題として人が入って仕事をするという、そういうところだというふうに私は考えるわけにはいかない。ちょうど私がこのくらいになって背をかがめて入っていかなければ入りようもない、せいぜいこのくらいの大きさでしょう。しかも手掘りで一千メートルの隧道だというのです。そこで中間の四百メートルくらいのところで土砂崩壊が起こった。中に入っておった農民の人数は六十一人だ。発電機を持ち込む持ち込まないは別にして、私は、あの中へとにかく老人なりあるいは婦人なり、そういう方々がじゅずつなぎになって五十人も六十人も入って仕事をやっておるということ自体は、まさに前時代的なことだと言わなければならぬ。しかし、それは今度初めて起こったという問題じゃないというところに大きな義憤を感じておるわけです。昭和三十八年に同じような事故があった。聞くところによりますと、あの隧道は単なる農耕用の用水だけではなしに、飲料水にも使われる水だというふうに聞きました。農民の立場からしまするならば、飲み水は来ない、しかも、この状態でいいまするならば、たんぼを耕すのに水が来ない、こういう状況ですから、一刻でも早くそれは復旧をして、水が来るようにしなければならないという気持ちにかられるのは当然だと思います。しかし、そこに危険がある。ですから、私は、あの状態を見て、もう少し農政というものについて、ああいう山村僻地の農民の立場というものを考えて農業行政というものが行なわれておるとするならば、この犠牲者というものは出さなくて済んだはずだというふうに言わざるを得ない。  ですから、私は、労災の問題はあとの問題として、遺族の救済なりその他について労働省が真剣に考えられた点については敬意を表する。同時にまた、入院をされていろいろ治療されている方々に対する労働省のとった措置については、私は非常に機敏なものがあったと思うのです。問題は、農業行政のあり方として、ああいう危険な状態を放置しておいたということが一番根本的な問題だというように言わざるを得ないと思います。しかも、あなたも御存じだと思うのですけれども、この二十五名のとうとい犠牲者が出た翌日から、県の農政部では緊急に復旧工事をやったはずです。仮の工事ではありましたけれども、その四百メートルのところまで迂回して、別な用水路工事を緊急に着工して、四日間でこれは完成したはずです。これは問題だと思う。ですから、問題は、ああいうやっと人の入れるような中に、老人や女の人たちが入って仕事をしなければならない、そういうせっぱ詰まった状態に農民を追いやっている今日の農政に根本的な問題がある。やる気があればできるということを明瞭に示しておるのは、あの事故が起こってからわずか四日間であれだけの工事をやってのけた。私は、あの現場を見て、実際いまの農業行政というものに憤慨した。もっと広く言えば今日の日本の政治ということになるでしょう。何か問題が起こらなければやらないということなのです。しかも、三十八年に同じような事故が起こって、すでに県の農政部の方々やあるいは本省のほうでもそういう実情については知っておったと思うのです。人が入って仕事をやれるという場所ではないはずだ。あそこに入って仕事をやっておったのでは、どんな事故が起こるかわかりませんよ。そういうことをやるのを認めているというそういう状態というものは、私は許せないと思うのです。ですから、この点については、栃木県のああいった用水路が全国的にあるのかどうかわかりませんが、私が実態調査に行ったときの県の説明によりますると、栃木県ではああいうような手掘りの用水路というものがまだまだたくさんあるというお話でした。いつ何どき同じような事故を起こさないとも限らない、こう私は思って戻ってきたわけです。  ですから、これらの問題については、金がかかるとかなんとかいう以前の問題として、山村僻地の農民に対していまの日本の政治はどうあらねばならないのかという立場から、もっとほんとうにあたたかみのある農業行政というものが行なわれてしかるべきである。そうしなければ、こういう事故はあと何回でも起こる危険性を持っておる、こういうふうに私は考えますので、この点について、農林省当局として、ああいったところをそのまま放置をして、そうして小さい改良区の管理のままにまかせておくということが許されるのかどうか、もっと本腰を入れて、人間の命というものを大事にする、農民を大事にする、そういう農業行政というものをやっていかなければならぬのではないか、こういうふうに思いますけれども、あなたの考え方は一体どうですか。
  62. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 あの木俣川の隧道関係の地帯は、現在国営の那須野原の総合パイロット事業の計画地域でございまして、それで、もう相当長い間地区の調査をいたしておりますが、ようやく今年度から実施設計の段階に入りまして、おそくとも四十三年度、できればもう少し早くと考えておりますが、工事にかかる予定のところでございます。したがいまして、その総合パイロット事業は国営で総工事費九十億くらいの膨大な工事でございますが、この工事の内容として、木俣川の隧道をコンクリートで巻くという計画がございまして、したがって、そういう国営事業の工事が間近に迫っておるものでございますから、地元としては、災害復旧工事を三十九年度にやりましたときには、できるだけ費用を少なくということで、あまりコンクリートを巻かないことにいたしたわけでございます。  それで、確かに、御意見のように国営事業をもっと早期にやって、あの地帯の隧道をコンクリートで巻いておけば、今回のような事件はなかったわけでございますが、三十九年度に災害復旧事業をやりましたときも、隧道の場所としては入り口に近いところでございますが、落盤をしまして、そのどろをかき出したわけでございますが、そのときはカンテラを使ってどろをかき出したのでございます。カンテラを使います限りでは別にそういう災害は起こらなかったわけでございますが、今回は、はなはだ不幸なことでございますけれども、カンテラでは十分あかりがとれないというような事情もあったのでしょう、発電機を持ち込んで、一酸化炭素の中毒を起こしたという。私は、関係者の不注意ということは今回の事件に相当大きく働いておるわけでございますから、国としてはあの地帯における土地改良事業を進めると同時に、全国的には土地改良十カ年計画というものを本年の三月に相当大規模に進めて、用水の確保、排水の改良等につとめるわけでございますが、同時に、関係者に、不注意によって命を粗末にしないように、十分の注意を促しておるわけでございます。
  63. 吉村吉雄

    吉村委員 私は、いまの農地局長の答弁は納得できない。なるほど今度の事故の直接の原因は発電機を持ち込んだというところにある。しかし、あなたはあの中へ十メートルはいれますか、二十メートルはいれますか、そこで仕事ができますか。正直言って、私は、これが一回目の事故ならばこれまでのことは言いませんよ。三十八年に同じような事故があって、農民の方々が同じように何百メートルも入って、バケツでどろをリレー式にみなで送り出した。そういう仕事をしたというところなんですよ。あの中で仕事をやりましたのは、せっぱ詰まらない限りは私はできないと思いますよ。そういうところだと私は思うのです。もう水が胸くらいのところを、びしゃびしゃ入る。そういう中でこのくらいの高さの中に六十人も五十人もが五百メートルも六百メートルも入って仕事をして、不注意だからこういう事故が起こったというだけで済む問題ではない。そういう用水路をそのままにしておいたというところに問題がある。そう考えてもらわなければ、ほんとうに山村僻地に対するところのあたたかみのある農業行政にならぬではないか。もちろん、お互いに作業をする者が注意をし合うということは必要です。必要ですけれども、あの中で仕事をしろということ自体が私は無理だと思う。おそらくこれは基準法から申し上げますならばいろいろな問題が出るわけです。雇用関係も明らかでない、基準法の適用もない、こういう状態なんです。あとで触れますけれども、土地改良法に基づけば、改良区の組合員というものは夫役に応じなければならないと法定されている。自分たちのたんぽを耕す水が必要である、飲み水が必要である。しかも、法律上は、改良区がきめたととろの人夫としてぜひ出しなさいと言われれば、それに応じなければならないときめてあるのです。ですから、雇用関係とかそういう問題でなしに、自分たち生活の問題として入らざるを得なかったというのが、この方々の当時の気持ちであったろう。ですから、どこかの家庭が出なければあとからとやかくと言われるから、したがって、年寄りも若い者も、婦人も全部入るという形態になっておる。全部で仕事をするという形態になる。そういうことを考えてみますると、山村僻地にあるところの農家の方々がどういう窮状に置かれているかということがおわかりになってもらわなければいけない。発電機を持ち込んだのが直接の原因だからそれに注意してもらわなければいけないという、それだけで片づく問題ではない。もっと日本の農業行政というものについて根本的に考えられて、人間を尊重する、農民を大切にする、そういう立場に立った農業行政という方向、それをやってもらわなければ、本質的な解決にならないのではないかということを私は申し上げておる。聞けば、この栃木県にはあのような手掘りの用水路というものが他にもあるというようなことを聞きますから、あのような事故、こんなたくさんの方々がなくなるような事故は起きないにしても、そういう危険性を持っておることは明らかじゃないですか。だとすると、そういうような仕事をしなくてもいいような、そういう指導と、そのために必要な施策というものを早急にやる、こういう決意を明らかにしてもらうということでなければ、安心して実際農業に従事することもできないということになる、こういうふうに思いますけれども、この点は、農地局長、あの犠牲になった人たちの当時の心境、いまだんなさんや奥さんをなくして残された遺族の方々の気持ち、これを考えたら、いまのあなたの答弁は、私はあまりにも事務的だと思う。もう少し温情味のある政治の方向というものを政府としては差し示さなければならないはずだ、こう思いますけれども、どうですか。
  64. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私が申し上げましたことは、関係者の不注意だけで今回の事件が起こったというふうに申し上げたのではございません。私どもとしては、土地改良を大規模に押し進めるためにずいぶん努力もいたしております。土地改良を進めることによって危険な隧道がどんどんコンクリート巻きその他に改良されるわけでございますから、私は、そういうことがやっぱり根本的な対策というべきであろうと思います。  それから、もう一つは、御指摘にもありましたが、土地改良法によって現在夫役の徴収が土地改良区はできるようになっておりますけれども、これは長い間の農村の慣行で、金を払うよりは自分が仕事に出るということが農家にとって受け入れやすいということが背景になっておるわけです。しかし、最近の農村の労働力の移動その他によって、夫役で出る機会というのはだんだんに減ってまいっております。ごく最近の調査によりましても、土地改良区の七%程度しか夫役というものはございません。また、その夫役の内容も、危険な仕事ではございませんで、用水の掃除でありますとか、あるいは水草をとるという程度のものが大体の仕事でございます。しかし、労災補償の対象になるかどうかということはまだ最終的な結論は出ておらないわけでございますが、今回の事件のように、雇用関係が明らかでない、労災補償の対象になるかどうかわからぬということが起きないように、私ども、夫役の問題はできるだけなくすように指導いたしますと同時に、やむを得ず土地改良区の夫役によって出ます場合にも、もっと労災補償関係では明確に事が処理できますように、労働省とも検討を進めていって根本的な対策をとりたいというふうに考えております。
  65. 吉村吉雄

    吉村委員 この黒磯の事故の問題につきましては、根本的にはいま国営の改良事業を進めておるということでございますけれども、これが完成するまでには、あなたがいまお認めになっておるように、相当の日時もかかるわけです。その間にいつ何どきこの種の事故が発生しないとも限らない、こういう事態なんです。ですから、そういう場合においては、事故が起こってから労災の補償をするというのは、これはあと始末なんですよ。起こらないようにするということのほうが、それが政治の方向なのです。ですから、そういう点では、十分農林省としては根本的な対策をこの機会に積極的に進めていく、こういう姿勢を打ち出してもらわなければいけない、こう私は強く要望しておるわけです。  その次に、土地改良法の関係ですけれども、いまも農地局長からお話がありましたように、土地改良法の三十六条によりますと、組合員に対しては、「金銭、夫役又は現品を賦課徴収することができる。」云々という、こういう条項があります。これに基づいて、一般の農村におけるところの農道の工事とかあるいはその他の改良区の事業とかいうものは、ほとんどと言っていいくらい夫役という形で行なわれておる。こういうふうなのがいままでの慣行だろうと思います。これもいまの局長の答弁によりますとだんだん少なくなりつつあるというお話でありますけれども、あなたのほうで把握できない工事その他がたくさん農村にはある。私も農村の実情をいささか知っておりますけれども、そういうのが実情であると思うのです。これは、この改良法に基づかなくとも、そういう昔ながらの慣行的なものになって、それで部落全体で何かの仕事をする、こういうことが非常に多いのがいまの農村の事業の実態だろうと思うのです。  そこで、私は、今度の問題はきわめて気の毒な遺憾な問題でございますけれども、この数多くの犠牲者の方々に報いるためにと言っては言い方が妥当性を欠きますけれども、これらの人々の霊を少しでも慰めるためには、こういう事故というものを絶滅するような具体的な方策というものを進めていかなければならない。しかし、この土地改良法に基づけば、夫役を課することができる。あるいは慣行的に農業土木というものは夫役によって行なわれることが往々にして多い。だとしまするならば、これは雇用関係というものは今度と同じように成立をしないままで工事が行なわれるという例が多いということになる。ですから、事故が起こらないほうがいいのですけれども、事故が起こった場合の救済、補償の措置についても万全の策を講じていくということでなければならないはずだと思うのです。その障害になるのが、どうしてもこの三十六条の夫役という関係だろう、こう私は思います。もしこの夫役というものが今日の農村土木工事をやっていくにあたって農民自体もそれをむしろ歓迎をしておるという実情であるとしまするならば、それはその長い慣行の中で農民の感情がそうなったというだけであって、もし正しく賃金が支払われ、そうして改良区の組合のほうに必要な負担金を納めることが慣行化されれば、何もいま農民が夫役のほうがいいのだなんていうような気持ちを起こさないでいいはずだと思うのです。ですから、夫役を課することができるということが非常に問題だというふうに私は考えられてならない。これは徳川時代からの遺物的慣行をそのまま認めた、そういうものだと思うのですよ。ですから、この条項を十分検討された上で、労働をする者に対しては賃金をもって報酬が与えられる、こういうような慣行、正しい感情というものを農民自体にも植えつけていくという、そういう姿勢が法律の中に新たに入ってこなければならないのではないか、こういうふうに思います。ですから、そういう点についてどのようにお考えになられるか、検討される用意があるかどうかということが一点。  それから、いま一つは、今度のような事故が起こって、そうして労災の適用をするかしないかといって大騒ぎをして、内閣が特別の措置を講ぜざるを得ない、こういうことですけれども、これは二十五人という方々がなくなったという事態だからこれだけのものになったと思うのです。おそらく、これが一人や二人、あるいはけがをした程度のことであったら、そのまま、ほとんど自分が損をしたのだくらいのことで、簡単な改良区のお互いの見舞金程度で済んでいたかもしれない。そういう事例は全国に相当あると私は思う。あるいはこれからもそういうことが予測される。ですから、このような農村土木工事というものを始めるにあたっては、労働雇用関係というものを明確にして、労働災害補償保険法なり何なりの適用あるいは労働関係法の適用、こういうものを全部受けられるような状態にしてから工事にかかる、こういうことが次善の策ではないかというふうに思いますので、この点は農林省のほうで十分検討されて早急に結論を出していただかなければならないと思いますけれども、その用意があるかどうか。
  66. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 先ほども御説明いたしましたように、夫役という事実はだんだん減っております。私どもも、災害復旧事業のようにあとになって国庫補助の対象にいたしますものにつきましては、事業が的確に行なわれることと、それから経理が十分明らかでなければなりませんので、極力請負でやるようにという指導をいたしておるわけであります。また、今後の問題として、金銭にかえて夫役のほうがよろしいということがまだまだ多少残っておりましょうから、私は、いまの段階で夫役を全部廃止するということが適当かどうかについては疑いを持つものでございますけれども、夫役という制度はできるだけとらないように、もしやるにいたしましても、施設の維持管理といいますか、施設の掃除その他の日常のことだけに限って、何か危険が伴うような工事については夫役という関係をとらないようにという指導は厳重にいたすつもりでございます。また、万一、土地改良区で夫役ということが残って、そこで事故がありましたような場合につきましては、今回のように労災補償の対象になるかならないかという争いがなくて済むような措置を労働省とも早急に検討いたしたいというふうに考えております。
  67. 吉村吉雄

    吉村委員 基準局長、これは現行法のもとでやり得る余地があるのではないか。現行の労災法の改正をしなくても、運用なりあるいは農林省の今後の出方いかんによっては十分労災法を適用してやっていける余地があるように考えられますけれども、一体この点はいかがですか。
  68. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 昨年労災保険法の大幅な改正をいたしまして、その際に特別加入という制度が新設されました。すなわち、労働者類似の者であるが労働関係はない者、あるいは労働者でないが状態としてかなりの危険が予想されるといった作業につきまして保険事務組合を結成して労災保険に加入するという制度が設けられたわけであります。労災保険法の第三十四条の十一という条文で規定されておりますが、その第五号において、「労働省令で定める種類の作業に従事する者」について特別加入を認めております。農業関係におきましては、たとえばトラクターのような、労働省令で定めました一定の機械を使用して農耕に従事する場合につきましては特別加入の方式を認めておるわけであります。したがいまして、土地改良区の行なう作業等につきまして危険が予測されるという場合には、そういったものも考慮すべきではないかという問題が当面の問題として出てきたようなわけでございます。労働省といたしましては、先ほど農地局長が答弁されましたように、こういった制度の上に立ちまして早急な検討を加えたいと考えておる次第でございます。
  69. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの基準局長のお話を聞きますと、現行法の運用の中でこの種の災害が起こった場合の補償措置等も十分とり得る、こういうことになっておるわけですから、したがって、これは農林省がどういう態度をとるかにかかってくるというふうに思います。災いを転じて福となすということでは済まないくらい大きな犠牲ではございますけれども、とにかくこれからはそういう犠牲はないのにこしたことはありません。しかし、起こるかもしれない。起こった場合に年じゅう政府が特別措置みたいなことをしなければならないような法体系ではいけないと思うのです。ですから、栃木県出身の大臣でもありますし、聞くところによると在職期間はどうもあまりないようなことなんで、たいへんあれですけれども、しかし、小平労働大臣はきわめてりっぱな業績を残していますから、おそらく留任をされるであろう、こういうふうにも思いますので、留任やその他は別にしましても、とにかく、この機会に労働省がむしろ農林省を指導、説得をして、そして農民がこういった工事に従事をした場合に不幸にして起こった事故については労災の適用がすぐ受けられる、こういうふうな運用をするようにしてもらわなければいけないと思います。これを早急に実施をしてもらわなければならないと思いますが、大臣の所見をお聞きしたいと思う。
  70. 小平久雄

    ○小平国務大臣 結論から申しますと、私は先生の考えに賛成なのであります。そのことは、実はもう事故が発生いたしました直後からいろいろ事務当局とも打ち合わせをいたしておりますし、特に事務当局から農林省の事務当局とも現によく打ち合わせをいたしておるわけであります。御指摘のように、ただいまの労災法のみならず、その他のいろいろな補償の法制もあるようですが、どうも農民の今回の場合のような事故にそのものずばりと適用される、何らの疑いもなく適用できる法体系には実際いまなっておらぬわけですね。これは私は非常に遺憾なことだと思うわけでありますので、農民の方が、日常の仕事もしかりでありますが、この種の仕事も特に安心してできるような、そういう法的な体系を整備するということがこの際どうしても必要だろう、これを極力進めるように、私は事務当局を督励いたしておる現状であります。
  71. 吉村吉雄

    吉村委員 黒磯の事故の問題につきましては、再言いたしますように、私は、これは根本的には農業行政の重大な失政、山村僻地に対するところの農民を軽視する、そういう農業行政に根本的な原因があるというふうに考えてまいりました。また、現地に行ってみて、非常にお気の毒な方々に対して、政治そのものに対する憤りを私は正直に言って感じてきた。やればわずか四日間でできるようなことを放置しておいて、ああいう犠牲者を出すようなことはもってのほかだ、こう思います。ですけれども、いまそれを言ってみてもしようがありませんから、今後はああいった事故が起きなくて済むようないろいろの施策を農業行政の中で直ちに確立をするようにしてもらう、同時に、やむを得ず仕事に従事をして不幸にして事故にあった場合には、いま大臣から答弁のように、だれでも労災なら労災が適用でき得るように、そういう策をあわせて早急に確立をして、そして犠牲者の霊にこたえられるように、強くこの点を要望して、この点に対する質問は終わります。  次に、私は、いま通産省が進めておりますところの各企業の合併促進、こういう問題について、そのことによって派生的にあるいは必然的に起こってまいりますところの労使間の問題、あるいは労働組合間の問題あるいは被合併企業と過去において契約をされておりましたところの下請企業の問題、こういった問題について政府の考えている点をお尋ねをしていきたいと思います。具体的には日産自動車とプリンスとの合併の問題を中心にいたしますので、関係者の方々の明確な御答弁をお願いをしたいというふうに思います。  まず初めに通産省の企業局長にお尋ねをいたしますけれども、通産省は、通産行政の中で、企業間の合併を促進するような行政指導、こういうものを行なっていると思うのでありますけれども、そのような理解に立ってよろしいかどうか。
  72. 熊谷典文

    熊谷政府委員 お答えいたします。  御承知のように、最近の国際経済の動向から申しまして、欧州等の先進諸国におきましては相当大規模な合理化投資を行なっております。日本の産業といたしましても、従来関係方面の御努力によりまして、幸いにして相当輸出も伸びておりますが、相当長い期間にわたっての長期見通しをいたしますと、決して楽観は許されない、こういう状況であります。そういう意味合いからいたしまして、私ども通産省といたしましても、今後国際競争力を急速につけなくては世界の経済から見て負けるという業種につきましては、御承知のように、通産省に産業構造審議会という組織があります。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 その中にそういう業種別の分科会等をつくりまして、こういう業種は今後どういうようにしたらそういう世界情勢の中に伍して負けないでいけるかということを研究いたしております。その中の一つといたしまして、業種によりましては、相当規模を大きくいたしていきますために合併が必要であろう、あるいは共同投資が必要であろう、あるいは業務提携が必要だろうというような面の施策が出ておるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、通産省としましても、業種によってはそういうことを希望しておるわけでございます。ただ、これは御承知のように実行はあくまでも民間でございますし、特に合併等の問題になりますと、AとBを合併しなさいというわけにも、生きた企業でまいりません。どことどこが合併される、あるいは一つの手段として共同投資をされる、あるいは業務提携をされるということは民間の自主性にまかしておく、こういうことでございますが、御指摘のように、ある業種については規模を大にすることが望ましいということは申し上げている次第でございます。
  73. 吉村吉雄

    吉村委員 通産省が企業の合併を行政指導の中で行なっているというその理由については、国際競争力を強めなければならない企業については、そうしなければ国際競争に太刀打ちできない、したがって行なっているということでございますが、この行政指導を行なう法的な根拠は何ですか。
  74. 熊谷典文

    熊谷政府委員 先ほども簡単に申し上げましたように、特にこういうところとこういうところと合併していただきたいという行政指導はいたしておりません。先ほど申し上げましたように、産業構造審議会というのが通産省の組織でつくられております。そこの一つの分科会におきましてそういう業種別の問題を取り上げております。その答申として一つのビジョンが出まして、それを受けまして業界にお話を申し上げておるということでございまして、直接的な法律はございません。行政指導でやることになっております。
  75. 吉村吉雄

    吉村委員 通産省の設置法の第三条の「通商産業省の任務」の中の二項に、「輸出品の生産の振興その他鉱産物及び工業品の生産、流通及び消費の増進、改善及び調整並びに検査」、こういったことが書いてあって、三項には、「商鉱工業の合理化を促進するため必要な指導、あつ旋及び助成に関する事務」、こういうものがありますから、直接的な法的な根拠はないにしましても、この設置法の趣旨からしますならば、国際競争力をつけなければならないという企業については、そういうような措置を指導していけるということになるだろうということだと私は理解をいたします。その点はいまの局長の答弁で大体納得をします。  次にお尋ねをしたいのは、企業の合併というものを行政指導の中で行なっていくということによって起こり得べきいろいろの問題、たとえば、企業の合併というのは、それは資本の合併だけではない、施設、設備の合併だけではない、当然にして労働力の合併ということになりましょうか、そういうものが当然にして起こってくる。あるいは、この合併の目的自体は、国際競争にうちかつためには合理化ということもあわせてやっていかなければならない。これには当然にして経営の合理化というものも行なわれる。さすれば人の問題にも及んでくる。こういう問題は合併と同時に付随的に必然的に起こってくる問題と見なければならない。こういう問題について通産省としてはどう対処をしてこの合併を行政指導をしているのかということについてお尋ねをします。
  76. 熊谷典文

    熊谷政府委員 御指摘のように、今後の企業が業界全体として体質を強化していくという問題につきましては、これは一資本家の問題ではございません。御指摘のように、やはり労働者、それからもう一つ広く言いますと、やはりそれに関係する中小企業が今後どういう地位を占めていくかという非常に広範な問題に関連するわけであります。そういう意味合いにおきまして、通産省といたしましては、個々の企業が合併いたしました場合にその労務者をどうするかという、個々の問題にはやはり限度がございますので入れないわけでございますが、産業界なりあるいは各業種に対しましては、合併する、いろいろの業務提携をする、まあ業務提携の場合はあまり問題はないと思いますが、合併等の問題につきましては、その下請企業を今後どうするか、あるいは労務者をどういうような形で吸収していくかというような問題について事前に十分両当事者で話し合って、そこの辺からほぐして摩擦なくいけるように配慮願いたいということは、くどく特に注意をいたしておるわけでございます。不幸にしてそういう面からいろいろな問題が起こっておる例もあるようでございますが、私どもの基本的な考え方といたしましては、そういう中小企業問題、労務問題というものに十分配慮しながら、合併をするならばしてもらいたいということを強く希望しておるのが現段階でございます。
  77. 吉村吉雄

    吉村委員 それは、合併は行政指導をしていくけれども それによって起こり得るであろうところの企業の下請関係との問題、あるいは労働関係の問題、こういった事柄については摩擦のないようにということをまた十分指導している、こういうお話でございますけれども、私は、合併それ自体の目的というものは、当然国際競争に打ち勝っていかなければならない、こういうことであるが、二つの企業が一つになるということは、具体的には、たとえば管理部門に関係をしておる人たちというのは、いままでそれぞれ総務部長というものが二人おったものは、二人要らないで、一人半になるか一人になるかは別として、そういう管理部門の人たちというのは当然人数の面で合理化されていく、こういう問題が必然的に起こり得ると見なければならぬと思うわけです。ですから、そういう問題はあまり摩擦が起こらないようにというだけで解決し得る問題ではない、必然的に起こり得るのだということを予測しないわけにはいかないはずだと思うのです。あるいは下請企業の問題等についてもそうです。二つの企業がそれぞれの下請企業を持っていた。今度は一つになったとするならば、その企業は当然二つをかかえる必要はないわけですから、当然、下請企業、その中小企業の経営の面に波及してくる。これは通産行政の中で当然に予測し得る必然性を持った問題だと思うのです。単にそういうことのないようにということばで済む問題ではない、私はこう思うのです。ですから、いままでのあなたの答弁によりますと、合併というものは国際競争に打ち勝つために必要なものであるとして、通産省としては行政指導の中でこれを進めて、現に私の調査をした範囲におきましても、資本金一億以上のものだけでも非常に数多い合併が行なわれた、こういう実情にあるわけです。しかも、いまうわさされているものだけでも、これまたたいへんな数にのぼっておる、こういう状態なんですけれども、通産行政としては、そういうようなことで付随的に必然的に起こってくる問題について十分の配慮をしないで、企業が国際競争に打ち勝つようになればいいという、それだけで進められたのではたいへん迷惑な話だ、こう私は思うのです。翻そういった問題の中で特にあなたのほうにお尋ねをしたいのは、下請企業である中小企業の問題です。中小企業の倒産というものは、ここ二年ぐらい、いまだかつてないほどの倒産が起こったということは、大きな政治問題にもなりました。これと企業の合併の問題というのは決して無関係ではない、このように私は思います。通産省の設置法によりますと、先ほどのようなことをやっていいという、やらなければならないという任務も与えられております。同時に、中小企業の助成、育成、こういうものについても、この設置法は明確にあなた方に任務を与えているはずだ。だとしますならば、一方の合併というものを進めていく、これもあなたのほうの任務としてやるべきであろうけれども、付随的に起こってくるところの中小企業の問題については、単にその摩擦などが起きないようにしてもらわなければいけないということだけで済ましておったのでは、現実の問題として倒壊が非常に多くなっているのではないか。一方を立てて一方をつぶす、いわゆる大企業中心の通産行政といわれるゆえんはそこにある、こう私は思うのですが、この点をあなたはどのようにお考えですか。
  78. 熊谷典文

    熊谷政府委員 先ほども申し上げましたように、今後の業界の構造改善という問題は、一、二の大企業の問題ではございませんで、やはり中小企業を含め、さらに労働者を含め、全体の問題でございます。そういう意味で、私が申し上げましたのは、ことばが足らなくて恐縮でございますが、たとえば、合併の指導をしておると申しましても、Aという会社とBという会社が合併しなさいというようなことを役所が個々に申し上げておるわけではないのであります。しかしながら、合併は今後の方向としてはあり得る方向だということは言っておるわけであります。その場合に、御指摘のように、われわれが考えなくてはならない問題は、やはりその産業の再編成と申しますか、構造の改善をやっていきます過程におきまして、中小企業をどうするか、あるいはその下請をどうするかという問題は当然起きてまいります。したがいまして、通産省といたしましては、合併とか、いろいろな方法による業界の構造改善事業を考えます場合において、そういう中小企業面についても対策を用意しなければならぬ。これがやはり問題でございます。したがいまして、われわれとしては、今後中小企業を含めて国際競争力に打ち勝てるように、中小企業サイドからも、これは通産省でいいますと、中小企業庁と各原局の関係になるわけでございますが、緊密な連絡をとって、そこがそごを来たさないような対策を立てるというように心がけておるつもりでございます。今後そういう点は、ますますわれわれとして注意をしていかなければならない、決して大企業だけの問題ではない、かように理解しておるわけでございます。
  79. 吉村吉雄

    吉村委員 とにかく通産省がこの企業の合併について非常に本腰を入れて、いろいろな調査なりあるいは指導なりをやっておるということは、この通商産業省企業局編によるところの「企業合併の効果と問題点」、いわゆる企業合併白書なるものを発行した一事によっても、なみなみならぬ熱意を持ってやっておるということが理解されます。それはそれで、あなたのほうの立場として進められるのはけっこうだけれども、私は特にあなた方に強く申し上げたいのは、それによっていろいろな問題が起こっておる。もう起こることが予測されるその事態についての対策を不十分なままで、この企業合併というものを促進していくという態度は、十分考え直してもらわなければいけない。どれとどれの企業を合併しなさいという指導をしたことはございません、こういうお話でございますけれども、私は通産行政のことはよくわかりません。わかりませんけれども、常識的に考えてみて、国際競争に打ち勝つためにはどうしなければならないのかということは、業者あるいは企業それ自体が、どれとどれを一つにしたほうがいいかぐらいのことは、当然答えは出るべき問題ですよ。通産省がAとBと合併しなさいということは言いませんとは言うものの、AとBが合併したほうが国際場裏に進出ができるのだということを裏で言っておるのと同じ問題なんです。これはことばの問題ではないのですよ。だから、通産省はそういう経済政策を進めていこうという官庁ですから、それはそれなりでいいかもしれぬ。しかし、それによって起こるところのいろいろな問題、どういうふうに犠牲が及ばないようにしていくかということは、政府全体の問題として考えなければならない。  特に、この種の問題の中で、私はこの前にもこの委員会で強調いたしたのですけれども、一番問題なのは労働問題なんですよ。あるいは中小企業の倒壊の問題ですよ。中小企業が倒壊すれば、そこでまた労働者の首切りが起こってくるという問題ですよ。結局のところ、弱い者に全部しわ寄せされるというこの企業合併のあり方を、通産省がそのまま推進していくということについては、どうしても私は納得するわけにいかぬ。労働大臣は、通産省は通産省の立場でこういう方針をとっておるというのですけれども、この方針が必然的に、労働問題、あるいはいま申し上げましたように、中小企業に働いている労働者の解雇の問題、整理の問題、労働条件の低下につながっている問題労働組合間の紛争の問題、こういった問題がいま起こっている。これらについて、一体通産行政というものがそのままそういう方向を進めてきていることに対して、労働省としては、労働省としてこれにどう対処をするかという方針が明確に出されなければならない。もっと正しく言いますならば、政府全体としてその弊害が及ばないような方針というものを打ち出した上で、初めて企業合併というものが進められてしかるべきものだ。それを労働省のほうがさっぱり何もしないで、失業者が出れば失業保険を適用させます、そういうようなことでは、これは政治でないと言ってもいいと思うのです。雇用対策法の審議の過程で私どもが問題にしたのはこのことなんです。いまの日本の政治というものは経済政策先行だ、したがって、雇用問題、労働問題というのは従の従になっている、だから、雇用対策法というものを今後運用するにあたって、十分この点は雇用優先、労働優先の立場でやってもらわなければいけませんよ、こういうふうに念を押したところが、労働大臣は、もちろんそのとおりやりますということを、再三あなたはここで答弁をしました。しかし、現実にはあなたの答弁を全く信用するわけにいかないような事態が起こっている。同じ政府部内で、通産行政がそういうことをどんどん進めている、こういう事態に対して、労働省はどういう対策をとり、これからどういう対処をしていこうとするのかをひとつお伺いをしておきたい。
  80. 小平久雄

    ○小平国務大臣 企業の合併を中心としたいわゆる産業界の再編成的な動き、それに対する通産省当局における指導と申しましょうか、そういった行政のあり方、これにつきましては先ほど企業局長がお話しになったところでありまするが、実は御承知のように、最近こういった傾向が相当強くなってまいっておることは、万々承知をいたしております。そこで、従来の考え方からいたしまするならば、先生が御指摘のように、再編成の結果、かりに失業者が出れば失業保険で一時救済するとか、あるいはさらに再就職のあっせんをするとか、こういったことに終始するというとちょっと大げさかもしれませんが、大体そういうことを労働省はやってきたと思うのです。しかし、それだけでは労働省としての任務は果たせない、こういう考えのもとに、一体、今後基本的には産業の再編成というものが、それぞれの業種においてどういう方向に進められていくものであるか。これは通産省の専門でございましょうが、そういうことについて労働省もよく事情を知っておく必要があるし、また逆に申せば、通産省には、この労働事情というもの、あるいは組合の動きというようなもの、一言にして申せば労働界の事情と申しますか、そういうものについて、これまたよく理解をふだんからいただいておかなければならない。こういうことで、通産省と労働省との、要するに行政がより密着してどうしても行なわれる必要がある、こういう考えのもとに、三木通産大臣とも実は話をいたしまして、私はこういう考えなので、両当局周でお互いに情報を交換し、将来のいわば産業界のビジョン等についてもお互いに話をし合う、こういう機会をぜひ密接にひとつ持つことにお願いをしたい、こういうことを申し上げましたところが、三木通産大臣も、全く同感だ、労働問題を無視して産業再編成などは考えられぬから、ぜひそうしようじゃないかと、快く同意をしてくださいましたので、すでに両事務当局間で会合も持ちまして、今後定期的に、いま申しましたような趣旨においての打ち合わせと申しますか、それをやってまいることにすでにきまっておるのであります。  もちろん、この産業の再編成ということを、先ほど企業局長から説明されたような趣旨において、日本の経済全体としてやはり進めていくことが必要であることは、私どももこれはうなずけるのであります。しかし、いわゆる労働者の犠牲のもとにしゃにむにこれを推し進めるというようなことは、これは結局長い目で見ればやはり産業界のためでもなかろうと思います。したがって、私は、そういう際においても、やはり通産省の指導の面なり、あるいは産業界の経営者の方々なりに、より長期的な視野に立って、労働者の立場というものを十分尊重しながら、そういう方向を実現をしていってもらいたい、こういうふうに考えておるのであります。  その間、もちろん今度の雇用対策法等においても御承知のとおり、雇用対策の基本計画等も策定することに相なっておりますから、それらの策定にあたっては、関係各省とももちろん十分連絡をとって、あの際も申し上げましたように、従来の、単に産業界の立場、経営者の立場 あるいは資本家の立場、そればかりでなく、この労働者の立場というものも十分考えに入れた方向において、関係各省が十分打ち合わして基本対策等も立ててもらいたい、このように私は考えておるわけでございます。
  81. 吉村吉雄

    吉村委員 時間がありませんからはしょりますけれども、大臣の答弁や意見は、それ自体については、そういう考え方でやってもらうということは、大いにやってもらわなければならない。ただ、それが労働行政なり政府の施策の中に具体的に実現をしないのでは、あなたの願望だけで終わってしまう。そこが問題なんですよ。いままでの日本の政治というのは、再三ここでも問題になっておりまするように、経済政策というものが先行して、人に対する問題というのが置いてきぼりにされている、従に扱われている。ですから、企業と労働関係から申し上げますると、それは企業の優先的なそういう政策が先行していって、あとから雇用の問題とか労働の問題とかというものがついて回る。労働行政や厚生行政というのは政治のしりぬぐいの役割りをしている、こういうあんばいだから問題だというのです。ですから、雇用対策法の審議の中でも、私どもはその点をたいへん問題にいたしました。これはとにかく通産省のほうでも、社会労働委員会でずいぶんいまの通産行政のあり方については問題になった点ですから、心にとめておいていただきたいと思うのです。  その次に、労働省の事務当局にお尋ねをしたいのは、この通産省が発表しておるいわゆる企業合併白書なるものの中で、企業合併をやったそれぞれの企業に対してアンケ−トをとってあるのです。その中で「合併後における合理化(合併後貴社が行なったことはどれですか)」というものの中で、どれが一番多かったかということが出ているのです。それを見ますと、一番多いのは従業員の配置転換、営業組織の変更、あるいは下請企業の整理、こういうことがやはり出ております。そこで、これはアンケートに全部答えを出したというものではないようでございますから、全部ではないかもしれませんが、その割合等を見てまいりますると、いま私が申し上げた事柄が比率的には多くを占めておる、こういう状態です。通産省は、この合併の問題について非常に熱心に推進をし、その結果がどうあらわれているかということまで調査をされております。労働省はその点は、起こった問題のあと始末をすればいいみたいなつもりでおるかどうかわからぬけれども、さっぱり事前の対策がなされない、こういうことが一番問題になっていると私は思うのです。そこで労働省のほうにお尋ねをしたいのは、この企業合併ということがどんどん進められるようになってから、大体、労働者の整理とか、あるいは労働条件の低下だとか、そういった問題がどういうふうに変貌を来たしているかということを調査されたことがあるかどうか、これをお尋ねしたい。
  82. 有馬元治

    ○有馬政府委員 合併に伴う人員の合理化の問題については、私どもも通産省と事前に連絡をとりながら対処しておりますが、現実に各企業が合併に伴ってどういうふうな人員整理をやるかということにつきましては、具体的に企業から情報の連絡も受けておりますし、今回雇用対策法によって制度化されまする大量変動の場合の届け出制度という制度によりまして、必ず整理の場合には安定機関に届け出をするという仕組みに相なりましたので、従前以上にこれらの動きが的確に把握できると思います。いままでも、事実上はそういう動向に対して把握をいたしておりましたけれども、今後は、さらに的確に、しかも早期に把握をでき、そしてその情報のもとに再就職対策を積極的に展開をしていこう、こういう体制ができ上がってまいっておりますので、どうしても合併に伴って人員の整理をしなければならぬという事態に対しては、十分対処できる体制ができ上がったものと考えております。
  83. 吉村吉雄

    吉村委員 私の調べた調査では、独禁法の関係上、合併は事後に公取のほうに届け出ることになっているようですが、その数だけでもきわめて数多いものがあるのですよ。これはもうこの前この委員会で問題にしました日産とかプリンスは一つの例だけであって、企業の合併というのは、通産省が積極的に進めているために、数多くの企業合併が行なわれている。企業の合併ということは、当然にして労働の問題とかいろいろな問題が起こるということは、これはだれだってわかることなんです。ですから、いままでの間に、企業合併というものがどういう影響を労働行政の上に与えたか、どういうことを結果したかということは、調べられておってしかるべきなんですよ。そういうものが全然ないで、これからはできると思います、こういうことだから、日本の政治というのは経済先行の政治だ、人は年じゅうあと回しにされている、こう言われてもぐうの音も出ないでしょう。ですから、この合併なら合併という、いわゆる産業再編成というようなことばが使われるくらい大きな、革新的な、いわば革命と言ってもいいくらいの大きなことをやっていくわけですから、それによってどういう事態が起こるか、労働者がどういう影響を受けるか、中小企業がどういう影響を受けるか。困らないようにしてやるのが労働省の立場じゃないですか。あるいは通産省の中小企業局の立場でしょう。そういうものを放置したままで、企業合併ばかりどんどん進めていくという、これはもう政治の名に値しないことがいま行なわれているのですよ。これはたいへん私は遺憾だと思います。今後はひとつ、これを進めていくことに変わりはないと思いますから、労働者や中小企業が困らないような事前の対策というものを確定をし、樹立をした上でこれを進めてもらう、こういうふうにしていただかなければならない。この点については、大臣も先ほどの答弁で、そういうふうに考えているという趣旨の答弁がありましたから、それを現実に具現をしてもらわなければいけない、こういうふうに思います。  その次にお尋ねをしたいのは、例のプリンスと日産の合併の問題に伴って、労働省のほうで承知をされているかどうかなんですけれども、プリンスの下請会社というのは大体三百社くらいあったそうです。この三百社の下請会社というのは、第一グループ、第二グループに分類をされておって、現在まで残っているのは第一グループに所属をする会社で、あとはほとんどつぶれてしまった、こういうふうに私は聞いておるんです。そこで通産省は、この倒壊をしたというところの中小企業、いわゆる下請会社が幾つくらいあるのかということについて、知っておったならばお示しを願いたい。労働省のほうでは、この倒壊に伴って、当然にして、賃金の不払い問題、あるいは退職金の不払い問題、こういった問題が起こったであろう、こう予測ができますので、この点の御調査が行なわれておるとするならば、その結果をひとつお示しを願いたい。これは具体的な問題ですからおわかりだろうと思いますから、お尋ねをしておきたいと思うのです。
  84. 赤沢璋一

    ○赤沢説明員 ただいまお話しの、日産自動車とプリンス自動車の合併の問題でございますが、御承知のように昨年の春合併の調印をいたしました。調印の際の覚え書きによりますると、その中に、従業員についてはもちろん差別待遇をしないということが書いてありますが、そのほかに、下請の企業、あるいは販売業者、代理店、協力工場といったものでございますが、代理店、協力工場の商権は尊重し、合併に伴う混乱を生じないよう配慮するという条項が、合併調印条項の中に入っております。私どもで調べましたところによりますと、いま先生からもお話がございましたように、日産関係の下請企業、これが約二百社、プリンス自動車関係の下請企業が約三百二十社あるわけでございます。特にプリンス関係の下請企業につきましては、中小あるいは零細と言ってもいいかもしれませんが、たとえば資本金で申しますると二百万円未満というようなものが相当多数ここに入っております。これらの下請企業につきましては、それぞれあるいは協力会のようなものないしは協同組合をつぐっておりまして、昨年の調印以来、こういったものの進行に伴いまして脱落者が出ないように、いろいろな形で措置しておるわけであります。たとえばプリンスの場合には、各部門別に分けましてグループ化の推進ということで、これは工作機械業界等でも現に行なわれておるわけでございますが、グループ化をいまやっておるわけであります。そしてそのグループごとでそれぞれ代表者をきめ、あるいは部品生産の調整を行ないということで、現に脱落者が出ないようにというかっこうにやっておるわけでございます。総体的に申しまして、私ども聞いておるところでは、この合併によってこういった下請企業が整理をされたという事態はまだ生じていないというふうに承知いたしておるのであります。
  85. 吉村吉雄

    吉村委員 といたしますると、労働省も、したがって、合併に伴っての整理とか、解雇とか、あるいは不払いとかいう問題はないという答弁になるでしょうから、労働省のほうはいいです。  それでは、具体的にお尋ねしますけれども、これは重工業局次長ですか、プリンスの下請企業の中で興民社という会社がありますけれども、これは合併後受注量がどんどんと減ってきてしまってどうしてもやっていけない、こういう状態に立ち至ったということが私の調査で明らかなんですけれども、これは間違っていますか。
  86. 赤沢璋一

    ○赤沢説明員 興民社の件、私どもも承知をいたしております。ただ、興民社につきましては、従来からプリンス自動車関係のクラッチ・ハウジング、これの製造と申しますか、加工をいたしておる工場でございます。資本金は百万円でございまして、現状では従業員は約三十名と承知いたしております。この会社は従来から、プリンス自動車が材料を持ち込みまして、これの加工をしておるということでございまして、いわゆる継続売買契約、こういったものをプリンス自動車との間に結んでおった会社でございまして、親会社からこの会社に六台ばかり機械を貸与しておる、そして加工しておる、こういう形と承知をいたしております。この会社につきましては、昨年の三月、労働問題が発生をいたしまして、そしてプリンス自動車といたしましては、従来から継続いたしております部品の納入が一時とだえるという状況にあったためと思われますが、従来発注いたしましたもののうちの乗用車の関係、これは自分の会社で内製をする、引き続きトラック分については発注するという体制を、昨年の春以来とっておるようであります。ところが、その後さらに本年に入りまして、この会社につきましては、債務が相当累増いたしまして、その未払いの債務が焦げつき状態で支払いができない、こういう状態のときに、さらに金融機関からの融資の打ち切り等があり、そして会社としても、組合側からも労働問題が起こりということで、現在ここに発注ができていない、こういう状態に立ち至っておるというふうに承知をいたしております。
  87. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの興民社の問題は、私は一つの例として申し上げました。あなたは、合併に伴って倒壊とか倒産とかいう例は全然ありませんというお話でしたから、私は一つの例として申し上げたのです。これはもう少しあなたのほうでしさいに調査をしてごらんなさい。プリンスのもとの請負業者というのは、もう相当数倒壊に瀕しているはずです。興民社の場合は、私の知る限りでは四つ目かになっていると思うのですよ。ですから、あなたのほうでも、合併というものが中小企業にどういう影響を与えるかということは、先ほど企業局長が話されたとおり、これはいろいろな影響を与えることは必然なんです。また与えなかったら合併の効果はないのです。ですから、いろいろな影響を与えていくに違いない。そういう点で、私はいま興民社の問題を申しましたけれども、負債が起こったからということであなたは答弁をなさいました。負債が起こった原因は一体何ですか。それはプリンスからの従来の受注形態というものが変わったというところに問題があるんですよ。ですから、これは合併が中小企業にもたらしたところの一つの形態としてとらえるべきである。そういう例は幾つもあると見なければならない。そういうことに対して、もっと真剣な倒産防止の対策をあわせてとっていくということでなければ、重工業局でありますから私のほうは知りません、あるいは企業局ですから私のほうは知りません、それは中小企業庁のほうの所管でございます。これではとてもそこで働いておる労働者や中小企業の企業者は救われようがないですよ。だから、私は一つの例として申し上げたわけですけれども、いまこの興民社は、聞くところによりますと山中シャフトとかいう会社が工場ぐるみ買収する、そういうことになっておるそうですよ。しかし、それすらも——今度は、労働関係ですよ。労働組合と興民社との間に結ばれておる労働協約というものは、それを破棄をしなければその工場は買えません、買収しません、こういうことを言っておるということですよ。ですから、そうなりますと、労働組合の運動に対して、今度は買収しようという人たちが介入をしてくるという結果になる。これはいろいろな問題を派生するということですよ。だから労働省のほうでも、こういう問題については、合併というものがどういう影響を中小企業なりあるいはそこで働いておる労働者に与えておるのかということをもっと綿密に調査をして、労働保護の立場に立ったところの行政措置というものをとってもらわなければいけない、こういうふうに私は思います。ですから、この点につきましては、通産省のほうでも、プリンスと日産の合併に伴って、かつての下請業者がどういう事態にいまあるのか、労働省のほうとしては、それによって労働者自体がどういう状態にいまあるのかということについて実態を調査をしてもらって、そうして労働省は労働者保護の見地に立って、これらの問題について対処をしてもらわなければいけない、こう思います。私も何の資料もなくして申し上げておるのじゃないのです。そういうことで苦しんでおる労働者の声をそのままここであなた方に伝えておるのですよ。ですから、現実の問題は、そういうふうにきわめて深刻になっておるわけですから、これは労働省が直接労使の問題に介入するということになりかねないわけですけれども、そういう労働者を保護するという立場からしますならば、もっと積極的にこれらの問題については調査をしていただいて、そして不幸な状態に労働者が立ち至らなくて済むような措置をしてもらいたいということを、この機会に大臣に要望しておきたいのですけれども、この点はいかがですか。
  88. 小平久雄

    ○小平国務大臣 まことにごもっともな御注意でございますので、労働省といたしましても、御要望の線に沿うて実情をよく調査いたしたいと思います。
  89. 吉村吉雄

    吉村委員 これは通産省のほうでは、具体的な例として、プリンスと日産の合併に伴っての中小企業に対する影響というものについて、あなた方も完全に把握をしていない、こういうふうに思いますので、これは当然予測される問題でもあったはずなんですから、今日でもおそくはない、どういう状態になっておるのかということを、このアンケートをやると同じように、実態をもう少し把握をされる努力をしてもらいたいと思いますけれども、この点はいかがですか。
  90. 赤沢璋一

    ○赤沢説明員 私どもも、この合併の問題に伴う下請企業の状態ということにつきましては、深い関心を持っておりまして、その意味合いから、先般も自動車関係で、これは全部でございますが、下請関係企業の調査も実はいたしたのであります。ただ、いまお示しのような御意見もございますので、さらに具体的な問題としての日産、プリンス合併に伴う下請企業問題につきましては、なお注意をいたしまして、今後十分調査もし、また必要があれば中小企業庁あるいは労働省とも連絡をいたしまして、適切な措置をとってまいりたいと考えております。
  91. 吉村吉雄

    吉村委員 次にお伺いしたいのは、労働省の労政局になりますか、これは前にこの委員会でだいぶ議論をした問題ですけれども、日産とプリンスとの合併に伴って、組合間における確執があった、組合の主導権をめぐる問題等があって、労働行政上これをどうするかということについては、企業合併をいま通産省が進めているだけに、当然、労働行政の中でこれらに対してどう対処をするかということを明確にしておかないと混乱が生じますということを、私はこの委員会で指摘をしておきました。その後プリンス自動車工業支部、これは正しくは全国金属労働組合プリンス自動車工業支部、こういうのですね。それが団体交渉の申し入れを会社側にしておりましたところが、会社側のほうでは、全金プリンス自動車工業支部という組合はもうなくなっているので、団体交渉に応ずるわけにはいかないという態度を固執してまいったわけです。組合の側としましては、東京都労働委員会に提訴をして、団体交渉をすべきであるという救済申請をした。ところが、七月の二十一日になりまして、東京都労働委員会のほうから、団体交渉をすべきであるという命令が出されたこの実情と、それから、これに対して会社側のほうでは、いまだにその命令が出たのにもかかわらず団体交渉に応じようとしない、こういう問題について労働省としては当然に事情を把握していると思いますけれども、この間の事情をひとつ説明を願いたい。
  92. 三治重信

    ○三治政府委員 東京都の労働委員会で裁定が出まして、それが二十一日に労使双方に渡された。その後の事情につきまして、日産自動車とプリンス——日産のほうにつきましては、まだこれについて態度が未定であって、どうこうということについてまだ御返事するわけにもいかない、検討中である、こういうような返事だったと思います。まだ日にちがないために、いま討議中であるということではないか。われわれ催促したのですが、まだ態度が保留、こういうことでございます。
  93. 吉村吉雄

    吉村委員 これは都の労働委員会のほうでは団交再開の命令を出しているわけですね。したがって、その限りにおいていえば、使用者側のほうとしては、中労委に再提訴をするという措置をとるか裁判問題にするかしない限りは、その間は当然団体交渉に応ずる義務があるというふうに考えられるのですけれども、全然これはまだ団体交渉に応じていない、こういう状態のようなんです。それは労組法のたてまえから見れば、このような態度は遺憾ではないか。しかも会社側で言っているのは、とにかく全金プリンス工業支部という組合はすでに存在しない、こういうことを理由にして団体交渉を拒否している、こういうことではいけないということで、実は救済命令を申請をしたという経緯から考えてみて、会社ではいろいろ防衛措置はそれぞれの立場であるかもしれません。しかしその間は少なくとも交渉に応ずる、こういう態度であってしかるべきではないか。あるいは労働省としても、こういう場合には、むしろ積極的に正常な労使関係というものを確立をするという立場から見ましても、あるいは先ほど来問題になっておりまするように、この企業合併に伴って労働条件の低下は来たさないということが一つは約束されておるわけですから、団体交渉をしないということは、当然これは差別待遇と見なければならないわけですよ。こういうことはきわめて私はいけないことだというふうに考えますので、この点もひとつもっと積極的に労働省に、正常な労使慣行というものを確立するための指導、こういうものに当たってもらわなければいけない、こう思うのですけれども、労政局長の重ねての御答弁をお願いしたいと思うのです。
  94. 三治重信

    ○三治政府委員 いままでは都の労働委員会のほうでこの問題を取り上げておりましたので、私のほうとしても、行政機関として取り上げている問題であり、二重のかっこうになるということから、従来の態度といたしましても、混乱が起これば労働委員会でやってもらいなさいということを指導、奨励してまいってきておるわけであります。今度そういう裁定が出たわけですから、これについて早く会社側が出さない限りは問題の解決にならないわけであります。法律上は三十日以内に、先生がいまおっしゃったように、中労委かあるいは裁判所へ提訴しなければそれが確定する、確定すればこれは団交の義務が生ずる、こういうことになるわけであります。二十一日に交付になったということでございますから、きょう御質問があるということでございますとともに、地方の出先機関にもその注意を促しておったのでございますが、今日までのところ、まだ会社側としては何分検討中である、こういうことでございますので、いましばらく時間を待ちたい、こう思っております。
  95. 吉村吉雄

    吉村委員 実はこの会社の中で、いわゆるプリンス工業支部に所属する組合員に対して、会社側からものすごい差別と弾圧的な待遇を受けている。この問題については、さらに不当労働行為の問題として、支配、介入その他の問題として提訴をしてありますから、近くこれも結審されると思います。しかし、たくさんの問題がこの中には伏在しておりますから、労働省としましても、とにかく十分実態を調べていただいた上で、そして差別待遇のないように、本来の意味での労働者の権利というものを確立できるように、ひとつ積極的に骨を折ってもらいたい。こういう問題について官庁として骨を折ってくれるのは労働省しかないのですよ、どこもこれはやれないのですから。ですから、労働省がこの種の問題についてはもっと積極的な姿勢をもって、そして労働者の権利というものを確保する。会社が、こういった都の労働委員会から命令が出たのにもかかわらず、なお言を左右にして態度をあいまいにしている、こういうことではほんとうの意味での労使関係というものは確立されていかない、こういうふうに思いますから、この点もひとつ十分配意した上で、なお労政局長のほうから会社に対して積極的な指導をしてもらいたい、こう思いますけれども、よろしいですか。
  96. 三治重信

    ○三治政府委員 われわれのほうも、この合併に伴う労働問題の処理については、先ほど大臣から御言明もありましたように、やはりスムーズにいく、そのあとはごたごたが起きないよう、これは特別の関心を持っていきたい、できる限り労使が話し合い、納得の上で事が運ぶように努力してみたいと思います。その点できるだけ御趣旨に沿うように努力していきたいと思います。
  97. 吉村吉雄

    吉村委員 では、時間もだいぶ経過をしましたので、私の質問を終わることにしますけれども、通産省のほうでは、これは今後企業合併を推進をしていくでしょうから、再三申し上げますけれども、それに付随的に、しかも必然的に起こる中小企業の問題なり労働問題なりというものをあわせ考えながら、ひとつやってもらいたい。労働省のほうでは、これは本来労働省がやらなければならない問題なんですから、そういう点についても、もっと積極的な労働者保護の立場に立ったところの対策というものを樹立をした上で、そして政府としての政策というものを推進をしてもらう、こういうふうに要望をしておきたいと思うのです。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕  それから私は幾つか調査をしてくれという問題を申し上げましたが、この調査をしてくれと言った問題については、責任を持って調査をした結果は提示をしてもらいたい、こう思います。  いまの労政局長が最後に言いましたところの、組合の今度の救済命令の実施の状況等については、会社に対してなお積極的な指導をしてもらう、その結果についても御報告をしてもらいたいということをそれぞれ要望をして、長くなりましたけれども、私の質問は終わります。
  98. 田中正巳

  99. 河野正

    河野(正)委員 吉村委員からもいろいろ労使間の問題についての御指摘があったわけでございますが、私も最近の一つの特徴としてあらわれてまいっておりまする労使問題について、何点かお尋ねを申し上げたいと思います。  その問題となりまする点は、御承知のように、政府が赤字公債を発行する、そういう政府の政策を契機といたしまして、それらの点が逆ざやの問題となり、さらには金融機関の経営というものが非常に困難性を帯びてくる。しかもその金融機関の経営が困難となりますると同時に、経営の合理化という問題が非常に露骨になってあらわれてまいる。具体的には企業の合併あるいはまた金融機関の再編成、こういうような現象が非常に強く出てまいっておるわけですが、そういうような傾向というものが、結果的には、労働組合に対しまするしわ寄せ、ひいては労働組合に対しまする締めつけ、こういう結果というものが次々と出てまいっておりまする現況を、私どもは軽視をするわけにはまいらぬ。そこで、この公債の発行を契機として、いまのような三段論法ではございませんけれども、現象というものがだんだんと強く出てまいっておる。そこでこの問題は、究極的には労使関係というものがだんだんと対立激化するという結果になっておるわけですから、そういう意味で、やはりこれらの政策に基づきまする労使関係というものについては、労働大臣としてもこれは当然真剣に取り組んでもらわなければならぬ問題ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。そこでまずもって、いま申し上げまするような傾向というものが非常に強く出ておる。したがって、それらに対し労働大臣がどういうふうに事情を把握され、また対処し、また行政指導をしよう、こういうふうにお考えになっておりまするか、そういう基本的な姿勢、態度というものについて一言お答えをいただきたい。
  100. 小平久雄

    ○小平国務大臣 労使間の問題につきましては、基本的には、いわゆる労使対等の立場において、またお互いに理解し合ういわゆる相互理解、こういう立場において問題を話し合いによって平和的に処理していきたい、そういう基本的な希望を持っておるわけでありますが、その間やむを得ず紛争に相なりました場合においては、労働委員会等を十分ひとつ活用をしていきたい、その場において問題を解決していきたい、かように考えておるわけでございます。この労使間の問題が、確かに時により相当対立的な傾向が強くなるというようなこともございまするが、私は、全体として日本の労使関係を見ますならば、終戦以来今日までの間、むしろ対立的なあるいは対決的なそういった空気はだんだんやわらぎつつあるのではなかろうか。もちろん、それは部分的にあるいは業種により、いま申しますとおり、そういった現象、つまり対立的な傾向というものが時には強くなったりということもありましょうが、全体としてこれを長期的に見ますならば、われわれが期待しておる方向に向かいつつあるもの、私はかように認識いたしておる次第であります。
  101. 河野正

    河野(正)委員 大臣のお答えになっております御見解、すなわち労使関係に対する現況というものはだんだんと緩和される方向にある。もししかりといたしますならば、今日の金融機関における労使関係というものは、あるいは私は特徴的なものと言えるというふうに言わざるを得ないと思うのです。特に冒頭に指摘いたしましたように、今日の政府の金融政策によってこの合理化というものをしいられていく、そしてそのことが、一部においては弾圧、首切りあるいは組織分断、こういうことになってまいっておるわけですから、したがって私は、それからの労使の問題というものは、単に労働委員会を活用するというようななまやさしいものではなくて、むしろ労働省が労使関係が円滑にうまくいくようにというような積極的な指導というものをとらなければならぬ。特に対立的な現況というものが緩和されておるということになるとするならば、やはり金融機関の労使関係というものは、いま大臣からおっしゃったように、部分的といえば言えぬことはないと思う。しかし、部分的であるとするならば、私は、やはり労働省としても積極的にこの間の労使関係については行政指導を行なっていくべきじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、時間がございませんけれども、私どもは具体的な何点かについて御指摘を申し上げてお尋ねをする予定でございますが、いまこの方向として御指摘を申し上げました金融機関における労使関係の対立状況、こういう点についてどのような実情だというふうに御認識をいただいておりますか、ひとつ重ねてお答えいただきたい。
  102. 三治重信

    ○三治政府委員 金融関係につきましては、大手の市中銀行関係につきましてはほとんど問題はないと存じますが、昨年、一昨年、一部信用金庫で組合の中に第二組合問題が出て、相当組織問題として注目されたことがございます。最近私のほうは、そういうものもやや平静になって、金融機関全体としてと申しますか、中小の相互銀行あるいは地銀以下で、それほど労使関係に全般的に非常な争いの現象が出ている、こういうふうには見ておりません。
  103. 河野正

    河野(正)委員 そういたしますと、たとえばいまから私が申し述べます静岡相互銀行の労使紛争というものは、特徴的な紛争だというふうに御理解願っておるわけですね。
  104. 三治重信

    ○三治政府委員 事件そのもののあり方は、先ほど申し上げましたように、地方の信用金庫なんかで昨年、一昨年来相当争われているものと、中身はそう私は違っていないと思いますが、ただそういうことについての事件が、相互銀行なり地方で一般的に問題になっているかということになると、最近は、こういう事例はそれほど金融機関全体としての注目すべき現象ではない、むしろ二、三年前のいわゆる信用金庫に相当そういうふうな組合の分裂問題というものがあったときのほうが、私たちのほうも注目しておった、こういうふうに申し上げます。
  105. 河野正

    河野(正)委員 いまの答弁では納得できぬ面が非常にあるのですね。というのは、特徴的でない、ありきたりの労使間の紛争だというふうな御認識であれば、以下いろいろ具体的な例を申し述べるわけですが、そういう点から、そういう答弁ではまことに私は心外だと思うのです。それで、労働省ですから、市中銀行でございますので直接関係ないというようなことで、実情についての認識が足らぬなら足らぬで、それはけっこうですよ。ところが、いまのように言い切ってもらうと、非常に問題があると思うのですね。  そこで、具体的な例を取り上げて、そしてひとつ御見解を承ってまいりたいと思うわけです。まず第一に私がお尋ねを申し上げたいと思います点は、この静岡相互銀行における当局側の態度を見てまいりますと、労働者は憲法で労働三権ないし労働者の権利は保障をされておる。ところが、今日までこの労使間の紛争の実態を伺ってまいりますと、たとえば、一例でございますけれども、経営者の見解は、支店長が組合脱退を慫慂する、あるいは第二組合の加入を説得をする。それらに対して組合の追及を受ければ、そういうような、支店長が組合を脱退させたり、脱退することを勧奨したり、あるいは第二組合に入ることを脱得するというようなことが不当労働行為に該当するかどうかは、地労委、地裁が決定することであるから、そこでそういうふうな組合の勧告があっても別に取り上げる必要はない、組合が何と言おうとかんと言おうと、それらの裁定は地労委でやるのだ、あるいは地裁でやるのだ、こういうことで今日まで労使間の運営がなされてまいっておる。そこで、これは行政指導の面から見てみますと、何も腕をこまねいて、地労委で結論が出たから、あるいは地裁で結論が出たからということではないと思うのですね。やはりそういう現象が起こらぬように行政指導をすることも、私はきわめて大事な点だと思う。たとえば、そういうふうな、第二組合に行きなさい、あるいは組合脱退しなさいというような勧奨を管理者がやる。たまたまそういう事例が出てきた当時はそれでいいですけれども、それが正しいか正しくないかということは、地労委が裁定をしたり、あるいは地裁が決定をするということでしょうけれども、そういうことが続いてまいりますと、やはりその間にそういうことが適当でないという指導は行なわれなければならぬ。これは犯罪と並び申し上げるということは恐縮ですけれども、何も罪人をつくることが目的じゃないわけだ。やはり罪人が出ないための運用をやることが大切なことですから、そういう意味では、こういう点についての指導については、当然御検討願わなければならぬ筋のものではなかろうか。ところが、そういうことがしょっちゅう繰り返し繰り返し行なわれておるにかかわらず、それは日常茶飯事の労使間の問題だ、こういうことで見のがしてもらうということについては、私は、いささか労働省としても何か責任感が薄いのじゃないか、そういう感じを持つわけでございます。そういう意味で、どうもこの信用金庫の場合は非常に特徴的であったけれども、静岡相互銀行の場合はたいしたことはないのだというようなことでは、たとえばいまのは基本的な問題ですけれども、そういう基本的な一例を取り上げてまいりましても、私はどうも三治さんの答弁では、はいそうでございますかと引き下がるわけにはまいらぬ。そういう事情は十分御承知の上でいまのような御答弁をなさっておるのかどうかということですね。
  106. 三治重信

    ○三治政府委員 ちょっとことばが足らなかったかとも思いますが、私、申し上げたいと思いましたことは、こういう第二組合ができたための争い、またそのできる前の争いの形態というものについては、いままで中小の金融機関で起きた事例と違うタイプとは思わない、こういう意味でございまして、その点、中小の金融機関だけに第二組合の問題があって、ほかの産業にはこういうものはないかというと、なかなかそうはいかなくて、組合が会社と相当過激な闘争の状態に入る、あるいは中で労務管理問題で争いが深刻になると、中小企業の関係においてはよく第二組合の問題が出てくる。第二組合問題が出てくると相当争いが激化する、こういう点については、先ほど申し上げた地方金融機関においては、信用金庫なんかで各地で起きた事象とそう変わった事象ではない、こういうふうに申し上げたいわけでございます。  それから、こういう問題について労働省はどういう態度をとるか、積極的に指導すべきではないか、こういう御意見を最近再三いただくわけでございますが、労働省の態度といたしましては、労働組合の組織の問題については、そう積極的に、こうすべし、ああすべしというふうな態度はとっておりません。こういうことでございますが、しかし、こういう問題が中小の関係で、金融機関だけでなくて労使の間にたくさん起こるということは、先生御指摘のとおり、決して好ましい現象ではない。こういうものが事前に防止できれば、これに越したことはないわけでございます。そういう手段について労働省は積極的にどういう行政指導をとるか、またとらなくちゃならぬか、こういう問題になるかと思います。そういうふうにいたしますと、われわれは労使関係につきまして、労働者側、使用者側のそれぞれにつきまして、または一緒に、こういう一般的な労使関係の常識、またフェアな労使関係のつくり方、こういうものについて講習会なりあるいは討論会なりを催して、それについて労使それぞれが常識を養ってもらう、こういうことに力を注いでいく、こういうことでございます。
  107. 河野正

    河野(正)委員 どうもすっきりしませんので、さらに事例をあげてひとつ御見解を承りたいと思うわけです。  銀行側の基本的な態度として、いまのような不当労働行為について申し上げたわけですが、さらにもう一つわかりやすく例をあげて申し上げますと、組合員の団結権が労組法で認められておることは、私からあえて申し上げる必要はないと思うのです。ところが、この会社側の指令の中に禁止する争議行為というものがあるわけですね。もしその指令に違反したならば、業務命令違反ないしは就業規則違反として処分を加えるということで、処分をやってきたわけです。  そこで非常に問題となる点が幾つかある。時間の制約もございますからくどくどは申し上げません。端的に申し上げますから、お答えのほうも明快にお答え願いたいと思います。いま指摘いたしますように、経営者が禁止する行為として九つばかりあげておる。その一つは組合旗の施設内掲示、それから組合旗の店外掲示、地域の市民、労働者、取引先への宣伝、四番目がステッカー類の施設内貼付、五番目が職場交渉、六番目が団結権侵害に対する組合員の抗議行動、七番目がスト破りに対する説得行為、八番目が不当処分を受けた者が処分理由を聞く行為、九番目が出勤停止者が組合活動をすること、これらが禁止する争議行為、こういう指令を出しております。そうしますと、これは管理規則その他がございましょうから、その場合に、たとえば組合旗を施設の中に上げたり、あるいは店外に上げたり、それからステッカーを張ったり、こういう点は、管理規則その他は承知いたしませんから別としても、たとえばその中で、職場交渉をする、あるいは組合員が団結権を侵害されたために行なうところの抗議行動だとか、あるいはスト破りに対する説得行為であるとか、不当処分を受けた者が処分理由を聞く行為だとか、あるいは出勤停止者が組合活動をする点とか、こういう点は当然労働者の権利として憲法でも保障されておる権利ですね。これらの権利が抑圧されることは、私は大きく言えば憲法違反だと思う。こういう事実があるような点について、労働省側はどういうふうにお考えになっておるか。いま知らなかったら知らなかったでいいですよ。知っておられたら、どういうふうな指導をなさったか、その点ひとつお答え願いたい。
  108. 三治重信

    ○三治政府委員 いまお話しのような通達というものは、うわさでは現地からの報告のときに聞きましたが、どうもその現物が手に入っていない、入らないから報告できない、こういうことでございます。いま先生御指摘のような、経営者側のそういうことについての指令あるいは文書というようなものについて、私のほうは入手した資料が目下のところございません。
  109. 河野正

    河野(正)委員 御存じなかったらけっこうですが、いま指摘するような指令があったといたしますならば、それは法律違反であるのかないのか、適当であるのかないのか、こういうことに対する御見解をお聞かせいただきたい。
  110. 三治重信

    ○三治政府委員 不当労働行為とかそういうものに該当するような通達を管理者側が出しても、通達そのものでは不当労働行為とかなんとかにならない。これは各管理者がそういう法に規定する不当労働行為の行為を実際にした事実がないと、そういう組合側に対する指示だけでその管理者が現実に行なわない場合には、それは不当労働行為にならぬと思います。したがって、どうしても現実に法の規定する不当労働行為に該当するような行為があったかどうか、こういうことが実際問題として問題になる。純粋理論でいけば、そういうことを最高の管理者がしたから下のほうがする、そういうものがなければするわけはない、したがって、するしないにかかわらず、そういう問題は不当労働行為だという一応の理論的な筋は立つかもわかりませんが、しかし、いままで実際やっているところからいきますと、これはまた労働組合のほうにおいても、上部団体が違法行為を指令しても、現実に下がしないと、いざ実際の問題の場合にはたして不法行為があったかどうか、これは組合側についてもなかなか言えない問題であって、特に不当労働行為というものは労働委員会、裁判所にかかる問題でありますので、われわれはやはり現実の行為が法に違反しているかどうかということで判断していかざるを得ない。もちろん、こういう先生のおっしゃったようなことについて、現実にその行為が行なわれた場合はさらにいい証拠になる、こういうことは言えると思います。
  111. 河野正

    河野(正)委員 そういう禁止条項として指令を出して、それに違反した者を就業規則違反、業務命令違反ということで処分を加えておるわけですね。ですから、銀行側がそういう指令を出したけれども、実際にそういう行為があったかどうか、その辺が問題になるというお話であるならば、いま申し上げますように、それらの九項目について違反した者を、業務命令違反だ、就業規則違反だということで処分を加えておるということですから、そういうことが適切な処分なのかどうかということについてひとつお答えを願いたい。  それからもう一つは、単に指令を出すなら、それはもう出しても別にかまわぬのだということを労働省がおっしゃられるのは、私はいささか心外だと思うのです。そういうたとえば不当労働行為違反だというふうな疑惑を招くような指令を出せば、それはもう当然不当労働行為というふうに考えられますよ。それがさっき私が言った予防措置ですよ。それにもかかわらず、いまお答えになったように、指令を出すのは一向にかまわないのだ、要するにそれを適用したかどうかという行為が問題なのだということなら、それはさっき刑法の問題を取り上げましたけれども、それと同じことになってしまうのですから、そういう疑いのあるものはやはりやらぬほうがよろしいという指導というものを当然行なうべきではないか、こういうふうに私は言っているわけです。ですからその点ひとつ分けて言ってください。
  112. 三治重信

    ○三治政府委員 その後段の部面については、先生のおっしゃるとおりでございます。  それから、現実にその業務命令違反ということで処分が行なわれている、その処分が不当労働行為であるかどうかという問題は、先ほど申し上げましたように、個々の管理者が現実にやった行為によって不当労働行為であるかどうかが判断される、こういうことになります。こういうことを申し上げておるわけであります。
  113. 河野正

    河野(正)委員 そういうふうなことでなくて、ひとつ率直にお答えを願いたいと思うのです。たとえば組合旗を施設内に掲示をする問題、それらは ある、は管理運営規定か何かがあれば、それに違反したということになるかもしれない。その場合にはおそらく業務命令違反ということになるかもわかりません。しかし、少なくとも憲法で保障され、労組法で保障されておる権利、たとえば出勤停止者が組合活動をやるということは、国鉄とか全逓とかでみなありますよ。これはもう出勤停止どころではなくて、首切られた人が組合活動をやっておりますよ。それは従業員と組合とは別ですからね。ですからそれらの点。  それから、不当処分を受けて、その処分の事由を聞く行為はいかぬ、それはやり方はいろいろあるでしょう。しかしながら、原則的には、不当処分を受けたから、一体何で処分をやったのかという理由を聞くことが悪いのか。それからスト破りに対する説得行為にいたしましても、説得行為は、これはもうどのストライキでも現実に行なわれておるわけですからね。それから職場交渉。これらの問題は、労働者の基本権利にかかわる問題ですからね。ですから、当然それらは労働者が保護される範囲の問題ですから、それに対して処分されるのが不当であるということはもうはっきりしておると思う。たとえば、不当処分を受けたから、一体処分の理由は何だ——そこで暴力行為が出てきたとかなんとかいうことになれば、これは別でしょう。しかし、原則的には、不当処分を受けた、一体処分の理由は何だという行為が悪いのか。これは当然労働者の権利だと思うのです。ですから、具体的に、たとえば不当処分の理由は何だということで暴力行為が発生してきたというような場合がどうだというようなことは別としても、原則的に、私がいま取り上げたような問題は、労働者に与えられた権利だと思うのです。それらを禁止行為だということが適当じゃないというようなことは、私は労働省として当然おっしゃっていただくべき筋ではなかろうかと思うのです。ただ具体的には、やり方によってあるいは別の行為が伴ってくる、そういう場合は一体どうだ、こういう問題は残された問題としてあろうと思う。しかし原則的には、これらの行為は労働者に与えられた権利だと思うのです。その点はいかがですか。
  114. 三治重信

    ○三治政府委員 出勤停止者が組合運動をやる、これが結局業務命令違反かどうかという争いになる問題は、出勤停止者がほかの一般の組合員が勤務しているところでやるのか、あるいはこの運動を勤務時間外にやるのか、その組合運動をやる場所、時間によって違ってくるのじゃないかというふうに思います。  それから不当処分を受けたと思う被処分者がその理由を処分者に聞く、これは当然なことだと思います。それからスト破りの説得行為、これは労働省の見解といたしましては、平和的説得の範囲内においては組合の行為の範囲内である、こういう行政解釈をしているところでございます。  あと、ステッカーとか掲示というような具体的な問題につきましては、経営者側が、そういう会社側の施設物に対する管理、その規則をどういうふうにしているか、それによって問題が違ってくる。一般的には、これはやはり会社側の了解のもとでないと、ことに会社側が事前に禁止しておるというような場合には、そういうことをやれば会社側に対する管理規則の違反行為、こういうことになるのじゃないかと思います。
  115. 河野正

    河野(正)委員 できるだけ簡潔にお答え願いたいと思うのですが、私は原則的にということでお尋ねしておるわけです。いろいろ波及して言うと、これは裁判も要らなくなってしまう。交通違反だって弁護士を立てる必要もなくなってしまう。だから私は原則的な点でないと言えぬと思うのです。たとえばスト破りに対する説得だって、強要しますと強要罪というのが生まれてくるし、それからいまの出勤停止者の組合活動についても、ある一定の限界があるというようなこともそうでしょう。ですけれども、原則的には、私はいまこの管理に関する面は一応たな上げするにしても、その他の面については、これは労働者に与えられた権利だというふうには労働省としてもお考えになっておるわけでしょうね。それを波及していろいろ言うと、それは際限がありませんよ。不当処分を受けた理由を聞く場合でも、やり方いかんによっては、それが暴力行為となってくれば、それはいかぬでしょう。ですけれども、原則的なことを言う、それをいろいろ波及して考えてくると、裁判は要らなくなってしまう。それは検事が一方的にやればいいということになる。しかし、いろいろな事情があるから、弁護士もついて、裁判官もおってジャッジをするわけでしょう。だから、一応原則的には、いま私が取り上げた点は、当然労働者の権利として与えられておるものである、その点はどうですか、こう言っておるわけですから、原則的にお認めになるかならぬかということをはっきりお答えになればけっこうだと思う。時間もございませんからひとつ簡潔にお願いいたします。
  116. 三治重信

    ○三治政府委員 なかなかそれはむずかしい。先生があげておられる事例が非常に具体的な項目でございます。それについては、先ほど申し上げましたように、ごく簡潔に言って、若干の条件をつけて組合が運動として経営者側に対してやられている、それがそう不当な行為あるいは違反の問題というようなことではないだろうと考えます。
  117. 河野正

    河野(正)委員 これはひとつ大臣にお答え願いたい。委員長はやめてくれというような顔をしているけれども、三治さんの答えでは、これは際限がないと思うのです。原則的に労働者に与えられた権利があるわけですから、職場交渉する権利は当然あると思うのです、やり方は別としても。スト破りに対する説得行為も、これは当然与えられた、権利だと思う。それから、団結侵害に対する組合員の抗議行動も、当然労働者に与えられた権利だと思う。それから、不当処分を受けた者の処分理由を聞く行為、あるいは出勤停止者が組合活動を実施する行為、これらの原則的なものは当然与えられた権利だと思うのですよ。それを拡大解釈していろいろつけ足していえば、それは三治さんの言うとおりでしょう。ですけれども、原則的にはこれらの点は当然労働者の権利として認められている権利だと思うのです。この点はひとつ大臣からお答え願います。
  118. 小平久雄

    ○小平国務大臣 私は河野先生のお話を伺っておりまして、気持らとしては、率直に申して、原則的にその程度のことは組合員の権利として認められてしかるべきものだろう、こういう気持らはするのです。しかし、私もまた御承知のとおり法律の専門家ではありませんし、事務当局として責任を持っておる三治局長が先ほどああいう御答弁を申し上げたわけなので、私は、法の解釈という点からいえば、やはり局長の解釈というものが労働省がとっておる解釈である、こう申さざるを得ない、こういうふうに考えております。
  119. 河野正

    河野(正)委員 たとえば説得行為についても、そのやり方が問題だろうと思う。説得行為が行き過ぎれば、これは経営者が言おうと言うまいと、逆に違法行為になる。ですけれども、原則的には説得行為というものは認められていると思う。あるいは職場交渉だって、やり方は別としても、原則的には認められている。ですから私は、原則論としてそういうことがいかぬとお考えになっておるかどうかということを聞いているわけです。具体的に処分するとかせぬとかいう問題は、その原則に立って、どうやったか、こうやったかということについて判断するということでしょう。原則的にこれを認めてもらわぬと、それを認めるか認めぬかわからないようなことでは、いつまでたっても論議は尽きませんよ。
  120. 三治重信

    ○三治政府委員 労組法で、労働組合をつくる団結権、あるいは団体行動権、団体交渉権といういわゆる労働三権は、基本的に認められているわけであります。先生のいまあげられた部分の問題は、団体交渉あるいは団体行動という二つの範疇に入るわけであります。それが基本的に認められていることは、もう申すまでもないことだと思います。
  121. 河野正

    河野(正)委員 そういうふうに率直にお答え願えれば何でもないのです。それをいろいろあまり考え過ぎておっしゃるから、非常に気苦労されたと思うのですけれども、やはり原則的にはこれは認められた権利だと思うのです。  そこで、いま指摘をいたしました何点かの問題がありましたが、そういう労働者の権利を押えていこう、あるいは抑圧していこうというような姿勢で管理運営が行なわれているから、以下述べるようないろいろな問題点が出てまいっておると思うのです。  そこで、時間がありませんから、私は多くを申し上げませんが、これまた一例ではございまするけれども、本年二月の労使協議会の中で銀行側の幹部が、組合の強い支店はもう支店をつぶす、それから中部相互に売り渡すことを考えている、こういうふうな発言をして、常に組合活動を押えていこう、そういう発言をしておるわけです。そこで重ねて申し上げますが、たとえばいまのような話を裏づけるような行為として、銀行側が人事部長マル秘通達によって、各支店長に対し、組合批判勢力を三分の一まとめなさい、こういうふうな指令等も出しておる。ですから、先ほど私は労働者の権利事項について若干触れたわけですけれども、この権利事項を誤って考えておるために、いまのような人事部長名でマル秘通達で各支店長に一対して、批判勢力を三分の一まとめよというふうな指令を出すような行為も出てきておると思うのです。ですから、それらについて見解を聞きませんが、要するにそういうことも、やはりさっき申し上げたような基本原則をじゅうりんをするからそういう言動ができるというふうにひとつ御理解願って、私が何がゆえにさっき労働基本権の問題について取り上げたかという点についての御理解を深めていただきたい、こういうふうに考えます。  それからいま一つは、銀行が新入行員を採用するに際して、第二組合加入を採用条件にする、こういう事例もございます。ですから、これらはもう御見解を承るまでもなく、そういう事実があれば、当然不当労働行為だということは言えると思うのです。これはもう三治局長も首をたてに振っておられますから、あえて聞きません。  そこで、これは人権問題にも関連をするので、法務省にひとつ承りたいと思うのですが、それは、支店長が組合脱退を勧奨する、そういう意味で、支店長、さもなければ次長、さもなければ支店長代理が中心に立って、早朝、あるいは本人が出ておれば、その本人が銀行に勤務しておる間に家庭に行く。そしてはなはだしいのは、夜中の二時ごろまで家庭に出向いていって、組合脱退を勧奨する、こういう事例が起こっておるわけです。そこで中には、心臓の悪い母親が発作を起こして倒れる、それから父親が脳卒中を起こした、こういう事例があらわれておるわけです。そこで、やはり娘なりむすこがかわいいというようなことで、深夜まで家族の方々がつき合われるけれども、そういう行為は、私はもうおそらく人権が侵害されておると思うのです。これは人権問題だと思うのですよ。これは本来から申しますならば、お帰りください、お聞きください、こういうことになりましょうけれども、やはり自分の娘なりむすこが銀行にお世話になっている、勤務している、そしてむげに断われば、子供たちの将来の身分に関係しようということでしんぼうする。そのためにおかあさんが心臓病で倒れる、あるいはおとうさんが脳卒中で倒れる。こういう行為は、これはまさしく人権が侵害されたと思うのです。もしこういう行為があったとすればどういうふうにお考えになりますか、法務省にひとつお答え願いたい。
  122. 堀内恒雄

    ○堀内説明員 ただいまお話のような、組合員の家庭にまで出向いて脱退を勧誘するというようなことが、非常に極端に深夜にわたって、また非常にしいて説得を続けるというような事態がありますと、やはり人権問題として取り上げてしかるべきものと私ども考えます。
  123. 河野正

    河野(正)委員 人権擁護局長のほうから、それらの行為があれば人権侵害だというような御指摘がございましたように、静岡相互銀行の経営者側の姿勢というものは非常に特徴的ですね。ですから、冒頭どうもありきたりの労使関係というような御見解もあったけれども、その御見解はひとつこの際考え直していただかなければならぬということになったと思うのです。ですからひとつ大臣も局長もそのように御理解いただきたい。  そこで、特徴的だということできょう警察庁もおいで願ったのでありますので、時間もあまりございませんから、一、二承って議事に協力をいたしたい、こう思うわけです。  この静岡相互銀行の特徴としては、いま申し上げますような数々の不当労働行為や法律違反がある。同時にその根端な例は二つある。掛川事件、静岡事件という二つの事件があるわけでございますけれども、どうもこの労使間の紛争に対して警察側が非常に積極的に介入いたしておる、そういうふうな事実があると思うわけでございますけれども、この点いかがですか。
  124. 後藤信義

    ○後藤説明員 私ども、労働運動ないしは労働争議に対しましては、一般的にこれに対しまして介入するとかいうような立場には、もちろんないわけでございます。また、そういうことを厳にいたさないでおるわけでございますが、これらに付随しまして不法行為が行なわれ、それが犯罪になるという場合におきましては、警察の責務上、当然にこれらに対して注意をし、かつ状況によりまして、それぞれの法規に基づきまして所要の措置をとる、こういう態度を堅持しておるのでございます。
  125. 河野正

    河野(正)委員 積極的な介入をした点はないというふうなお話でございますけれども、やはり積極的に介入をしたのではないかという疑惑を受ける点が多々あったと思うのです。そこで、時間もございませんから、それらの一、二の点について指摘をして、ひとつ見解を承ってまいりたいと思う。  その中で一、二極端な例を取り上げますと、相互銀行の紛争についてしばしば警察当局が出動なさっておるわけですね。もちろん、それは紛争も激化すると、必ずしも出動せぬでもいいということでもなかろうと思う。しかしこの静岡の場合は、いろいろ私ども資料を持っておるわけですけれども、非常に警察官の出動というものが多いのですね。それが大体いろいろな交渉等が始まりますと二、三分で警察官が現場に到着する、こういう状況になっておる。そこで、何か静岡相互銀行の問題については、常に警察のほうで待機をしておるというふうな印象を受ける。そういう点が一つ。それから現地に出ておりまする警備課員がマイクを持ったり写真機を持ったり、これはある意味においては、それぞれの任務を遂行するということであろうと思う。ところが、フラッシュをたいて写真をとる、そうすると、同じ組合員の中でも、女の子なんかやっぱり写真に写りたくない、そういう人もおりましょう。それから、目の前でフラッシュをたかれるとまぶしいですよね。手で払いのける、そうすると、公務執行妨害だというようなケースが出てまいっておるわけです。そこで私は、写真機を持っていってよろしいというわけにはいかぬですが、マイクのほうはいささかオーバーな感じがするのですね。それからフラッシュをたいて、フラッシュをはねのけたら公務執行妨害だ、こういうのも、何か警察側があまりにも感情的な、あまりにも先鋭的な行動をとられておるというふうな感じを持ちます。  そういう点について、いろいろ警察庁のほうでも御調査なさっておると思うのです。それらの点についてはいかがですか。
  126. 後藤信義

    ○後藤説明員 まず第一点の、非常に現場に到着する時間が早いではないかというお話でございます。私どものほうで調査をいたしましたところ、先ほど話が出ておりましたが、夜間ステッカーを張ったというような事例がございまして、これは翌朝届けがあって現場に臨んでおるという状況でございますから、これはいま先生の御指摘の場合ではないと存じます。  それから、いわゆる職場交渉という事態が起こって、通常の場合一一〇番で入っておるようでございますが、これに基づいて警察官が現場に出ておるのでございます。これが時間が非常に早いというお話でございますが、私どもの調査いたしましたところでは、いわゆる職場交渉なるものがだいぶ長引いておって、そして銀行側のほうが、もう打ち切って仕事についてくれ、ないしは出ていってくれといったような要求をしても、なかなか立ちのかない。そういう状況で一一〇番をかけておるというようなことのようでございまして、どうも、交渉が始まって二、三分で警察官が現場に到着したというような例は、私どものほうでは報告を受けておりませんし、また、調査の過程にそれが出てまいっておりません。一例を申しますと、店におります一般の客の中で、その客が、取り囲んでおる状況を見て、これはたいへんだというので警察のほうに一一〇番をかけたというような例もあるくらいでありまして、やはりこの状況は、通常平穏の形における集団交渉といったようなものではないようでございます。  それからフラッシュの問題がございました。これはそういうケースがあったようでございます。しかしこれは、先生おっしゃいましたように、まぶしいから額に手をやったというのではなくて、これは室内でございますから、フラッシュをたいて証拠の保全上写真をとる、これに対しまして、そのフラッシュのところに手を伸ばしてこれをもぎ取るようなかっこうになった、それで、そういうことをすると公務執行妨害になるぞということでこれを警告した、こういうような状況なのでございます。  それから携帯マイクでございますが、これはマイクと申しますか、録音機でございますが、これは、警察が出る場合に、やはり一定の犯罪容疑ということで出るわけでございますので、後日問題になりました場合に犯罪の証明ということで、現場の状況を証拠として保全しておくために、写真のほか録音もしておく、この録音は、大体退去しろという要求に対して、退去をしない、いわゆる不退去の場合などは、退去を要求しているその要求ということが、犯罪構成要件上、これは立証が必要でございますので、そういうことを証拠として保全するために持っていくものでございまして、他意はないのでございます。
  127. 河野正

    河野(正)委員 小さい部屋の中でフラッシュをたいて、それを防ごうとすれば、それがさわったり何かするということは常識ですよ。ですから、いまのような御見解では全く一方的と言わなければならぬということが一つ、それの見解は聞きません、これは水かけ論ですから。  もう一つは、時と場合によっては——私は肯定するわけじゃありません。別に肯定するわけじゃありませんけれども、時と場合によっては、労使紛争が激化した場合には、警察官の任務を遂行するためにそういう行為もあるいはあり得るかと思う。しかしながら、それは、それこそやはり私は限界があると思うのですよ。しょっちゅうそういう行為はやるべきじゃない。かえってそれが挑発する行為になりましょう。ですから、それはやっぱり一つの限界があると思うのです。ですけれども、それは見解は聞きません。  そこで、こういう点はどうですか。たとえば、組合旗を組合が上げる、それを経営者がおろす。これはさっき触れたわけなんですけれども、そういう際に、警備課員がやじる点はどうですか。これはやじり屋がやじるならいいですけれども、職務遂行に当たる警察官がやじるという点はどうですか。こういうことは不謹慎と思いませんか。
  128. 後藤信義

    ○後藤説明員 私ども調査いたしました過程では、現場に出ました警察官がやじったというようなことは出ておらぬのでございますが、かりにそうした行為があったといたしますと、これはきわめて不謹慎でございますので、厳重にその点、あったかなかったかを確かめまして、ありました場合においては、将来においてさようなことの二度とないように十分に注意いたしたいと存じます。
  129. 河野正

    河野(正)委員 その点は、おそらく調査しても、やじりましたと言わぬでしょう。それこそ携帯マイクじゃないけれども、録音しておけばよかったが、していない。しかし、それはそう言っておるわけですから、おそらく警察官もハッスルしてそういう行き過ぎもあったと思うのです。それはひとつ謙虚に耳を傾けて、今後そういうことのないように注意してください。  もう時間がございませんので、あと一点だけお尋ねしますが、それは傷害事件がありますね。女の子を手でどうかやって口内出血をやったというのがありますね。その加害者と、それから現地の警備課員とが昼食をともにしておった。これは七月の七日のことですね。これはあながどうお答えになるかわかりませんが、時間がございませんから一緒に言っておきますが、これは、組合から私のところにきているのは、まことに不幸であるけれどもそういう状況を目撃した、こういうことなんですね。ですから、それらについてあなたがどういうお答えになるかわからぬけれども、加害者が組合から追及された、そしたら、その加害者が何と言ったかというと、警察官とめしを食おうがかまったことないじゃないかというて、加害者は肯定しているわけですね。警察官とめしを食ったことを肯定しておる。あなたのほうは肯定するかどうか知らぬけれども、加害者のほうは肯定しておる。こういうことは、熊本の三池闘争のときにもそういうことがありまして調査した事例がありますが、これは次席検事か何かが三井の幹部とゴルフに行ったというケースがある。ふだん平和時代は別ですけれども、こういう紛争のあるさ中に、しかも組合から見られるようなところで警察官が暴力行為を犯した加害者と——これは管理者側のほうですよ——昼食をともにするということは、これはいろいろ誤解を招く非常に大きな原因になると思うのです。こういうところから、警察官はどうも管理者ベースでいろいろ行動しているんじゃないか、組合を弾圧しているのじゃないかという論拠になっていると思うのです。この事実はいかがですか。
  130. 後藤信義

    ○後藤説明員 私どもこの静岡相互銀行の件に関しましては、使用者側のほうが組合の活動に不当に介入しているのじゃないかということと、それから警察のほうが何か銀行側と一緒になって、組合の弾圧と申しますか、そういうことに力をかしておるのじゃないかといったようなお疑いがあるようでございますので、その点につきまして特に念を入れて調べたのでございます。その結果、いま御指摘の件は、私ども部内でそういう者はないかどうかということは全部調べましたが、その該当はない。そこで、やむを得ずこれはその御本人に当たって聞いたわけでございます。そうしますと、なるほど六日の日に傷害事件が起こって、これは被害者であると同時にまた加害者というかっこうになって、いま告訴問題が起こっておるわけでございますが、確かに町のレストランで食事をしたが、その相手はこれこれであるといって、二名の名前を出しております。そのときに、思い当たるが、組合の人たちが四、五名じろじろと見ておった、その後、おまえはこの間どこどこで警察の者と一緒にめしを食っておったじゃないか、こう言われたので、警察の者と一緒にめしを食おうが何だろうがおれのかってだ、こういうことを答えておいたが、さてはそのことであろう、こういう返事でございました。私その二名の名前も聞いておるのでございますが、事柄がやや私的なことでございますからお答えを申し上げませんが、そういうわけでございまして、この件に関しましては、どうも警察官と一緒にめしを食ったということはないようでございます。なお、念のためにちょっと調べましたところが、春ごろに静岡の本店から懇談をしたいというようなことが沼津署に対して申し入れがあったようでございますが、紛争中のことでもあるしということで、これはお断わりしておるということで、十分にその辺は誤解のないように行動をとっておるように私ども承知しておるわけでございます。
  131. 河野正

    河野(正)委員 鶴橋という加害者ですね。いま被害者という話もありましたが、加害者、被害者というものはいろいろ複雑ですけれども、この人がそういう広言をしたということも、誤解といえば誤解の一つでしょうし、それから、すでにあなたがいみじくもおっしゃったが、会社側が警察のほうへ会食しようじゃないか、こういうことを申し入れておることは事実ですね。ですから、いずれにしても、やはりそういう誤解を受ける条件はあるわけです。ですから、私どもは、やはりこういう労使間の紛争が激化しておる状況の中では、ひとつ警察のほうも十二分に注意をされて、そして誤解であればけっこうですけれども、しかし、その誤解ですら起こらないような最善の注意というのはやはり必要だと思うのです。何かすきがあるから、会社側が警察と一緒に宴会しようじゃないか、こういう申し入れをしておるわけです。たまたまあなた方のほうがおけりになったからいいようなものの、行っておられたらたいへんです。  ですから、労使関係についていろいろ論議いたしましたけれども、いずれにしても非常に微妙な状況の中ですから、ひとつ労働省のほうも十二分な配慮のもとに今後行政指導してほしい。特に、警察官のほうも、これらの問題について介入をしたり、あるいは介入をしたかのような印象を受けるような行動は慎んでほしい、そういうことを最後に申し上げて、この問題についての指摘を終わりたい、かように思います。
  132. 田中正巳

  133. 滝井義高

    滝井委員 大臣御存じのとおり、五十二臨時国会は相当日にちがありますので、ひとつゆっくり腰を落ちつけて質問を受けていただきたいと思うのです。朝から私質問をしたいという通知も申し上げておったし、委員長にも先日お会いしたときに、ぜひ質問をしたいからということもお願いをしておったのです。  まずお尋ねをいたしたいのは、行政管理委員会から地方事務官制度の改革に関する意見が出たことは、大臣御存じでしょう。
  134. 小平久雄

    ○小平国務大臣 承知しております。
  135. 滝井義高

    滝井委員 厚生大臣はいらっしゃっておりますか。朝から要求しておるのですが、どうしておるのですか。
  136. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  137. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  138. 滝井義高

    滝井委員 百里の道を歩く人は九十九里をもって半ばとするわけです。まだ国会は、御存じのとおり議運できめておりますのは二十九日まではやることになっておるわけです。しかも、通知もきょうは朝しておるのです。われわれのほうの理事と私との間の意思の疎通がうまくいってなかったからやむを得ぬと思いますけれども、しかし、こうやって質問台に立てば、要求すれば来ていただけるのが普通です。しかもまた、この社会労働委員会があるとすれば、所管大臣がおることもまた当然なのです。絶えず触角を働かしてやるというのが政治家の任務なのです。ぼくらもやはりでたらめのことはやっていないつもりです。少なくとも私についてはまじめにやっておるつもりです、社会労働については。だから、議員としての任務——それは選挙区は荒れつつあります。しかし、議員としては最後のぎりぎりまで議員の任務を果さなきゃならぬ、そういう意味で善意をもって朝言っておるわけで、それは理事会等で、お前が言っておったのだけれどもだめだったと言われれば、それを御通知していただけば納得するわけです。しかし、短くしてやれ、こうおっしゃるから出ていただけるものだと思っておったわけです。私は、これは鈴木さんのために非常に惜しみます。尊敬してきた大臣だけれども、最後のぎりぎりになったこの医療問題が重大なときに出ていただけなかったということは、私は非常に個人的には残念です。  そこでお尋ねをするわけですが、大臣がいなければ、保険局、だれか来ておるのですか。——保険局のほうは、行政管理委員会から地方事務官制度の改革に関する意見が出ておることは知っておるでしょうね。
  139. 広瀬治郎

    ○広瀬説明員 承知しております。
  140. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、先日参議院ではこの問題について御質問があったはずですが、勧告が出れば政府の態度を明らかにいたします、こういうことになっておるわけです。そこで、職業安定行政関係の地方事務官制度について、こういう行政監理委員会の勧告が出ておる。これは普通の諮問に対する答申等とは違うわけです。勧告なんですから。非常に重いわけです。そこで、これについて労働省としては一体どういう方針をおとりになるのか、それから厚生省としてはどういう方針をおとりになるのか。
  141. 小平久雄

    ○小平国務大臣 今回行政監理委員会から出ましたものは、先生御指摘のように、諮問に応じてなされた答申というものではないようでありまして、正式には地方事務官制度の改革に関する意見、こうなっております。勧告と意見とどう違うのか私もあまりよくわかりませんが、とにかく題名としては意見、こういうことで出ていることは事実でございます。それから、この問題につきましては、かねがねこのような問題のあることをもちろん私ともも承知をいたしておりました。  そとで、日時ははっきりいま記憶はございませんが、たぶん約一カ月前、六月の末ごろであったかと思いますが、そのころ行管長官のほうから、この問題について関係大臣、と申しましてもそれは労働大臣と自治大臣と行管の長官、これで内々話を進めたい、検討したい、こういう話がございましたので、以来二回ほど話し合いをいたしました。とにかく、この問題は長年の懸案であるし、またそれだけにいろいろむずかしい問題も含んでおるわけでもあるからして、関係各省間で事務的にももっと詰めるようにさせようじゃないか、こういうことになって、事務当局間でもそれぞれ検討を進めておったのでございます。しかるところ、一昨日であったかと思いますが、先ほど申しました行政監理委員会の意見なるものが発表になった、こういう次第でございます。  そこで、労働省はどういう態度かというお尋ねだと思いますが、労働省といたしましては、地方事務官制度自体をやめてこれを地方吏員にせよということと同時に、この意見は、御承知のとおり職安行政というものを地方に委譲せよ、こういう内容でございますので、そういうことになりますと、わが国の今日の労働市場の情勢、あるいは将来予見せられる労働市場の情勢、こういう点から見ましても、あるいはまた、安定業務といわば一体をなして行なわれなければならない失業保険業務の問題、これの性格等から考えましても、あるいはさらに申しますならば、わが国が批准をいたしておりますILO条約の八十八号でございますか、これの精神等からいたしましても、さらに申せば、今日の世界各国が安定業務等をどういう行政機構のもとにやっておるかということを見まするときに、主要なる国では大体国家機関が直接これをやっておる。ごく新しい例では、アメリカにおいても、従来各州でやっておった業務を連邦政府でやるのが適当だという勧告を、オートメーション委員会というのですか、そこからそういう勧告があって、現にこれをいま検討をしておる。このことは、先般の日米の合同委員会の際にワーッ長官もそういう話をしておりましたが、現にそういう勧告もあったそうでございまして、そういう情勢からしても、やはり国家機関が責任を持ってこれを遂行するということが適当である、労働省としてはそういう見解をとっておるわけでございます。したがって、この種の意見について、もちろん政府として、これも原則としてというか、一般論としては十分これに耳を傾くべきがたてまえではございましょうが、しかし、現にこの職安行政あるいは失業保険業務というものを責任を持ってやっております労働省の立場からいたしますならば、これににわかに賛成はいたしかねる、こういう態度と申しますか、見解を持っておるわけであります。いずれにしても、しかし、この意見なるものは、いわばさきの臨時行政調査会、あのときの勧告に基づいて、今度は委員会のほうの意見、こういうことのようでございますので、私のほうも検討はもちろん十分いたしますが、ただいまのところでは、いま申しますとおり、これをこの線でけっこうでございますということにはまいらない。いずれにしても、政府としては、先ほど来経過を申し上げたとおりでありまして、まだこれが出た後においての検討はいたしておらぬわけでございますので、今後各省間で十分これらの検討をいたしてまいりたい、そういうことにいたしたいと思っております。
  142. 滝井義高

    滝井委員 大臣御存じのとおり、臨時行政調査会は、あの調査会の運営というものは満場一致制をとったわけです。そして佐藤総理も、あれは佐藤喜一郎さんが会長なんですが、特にこの委員会の結論については尊重する、こうおっしゃっておる。それで臨調の結論が満場一致で出て、それを受けて、今度はあなたと同じ内閣を構成しておる福田さんのところの行政監理委員会が、こういう意見というか、とにかく勧告に近い意見を出したわけです。そうしますと、それを同じ閣内におられる福田さんのところで出してきて、今度は労働省が、それはだめです、賛成いたしかねる、こういうことは閣内不統一になるわけです。そういうニュアンスがあるわけですね。そこで私、厚生省は一体それではこれはどういうあれを持っておるのかということです。
  143. 北川力夫

    ○北川説明員 地方事務官制度の問題につきましては、ただいま労働大臣からもお答えがございましたような経過でございまして、私どものほうもほぼ同様の経過をたどりまして今日に至っております。ただいま行政監理委員会の意見というものがございましたが、今後この意見を受けまして、手順といたしましては、行政管理庁がこの意見をどのように処理してまいるかということがまず問題であろうかと思います。最終的には、その結果を待ちまして、私どもは十分これについての態度、今後のやり方を検討してまいりたい、このように考えております。
  144. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、労働大臣と厚生省にお尋ねをしますが、現在都道府県段階における職業安定行政なり社会保険の事務が公務員たる地方事務官によって処理される。そうすると、知事は人事権と予算権を持っていないわけです。持っていないので、業務上の指揮監督というものがやりにくいわけです。その証拠には、たとえば東京都においても何々天皇というものが出てきたわけです。福岡県においても、これは監査をやろうと思ったら、県会議員の監査委員が監査ができない、そこで汚職が起こってきた。こういうことから当委員会でもこれは何とかしなければならぬということになったのです。そうして、厚生省もこれを検討いたします、こういうことだったのですよ。当時は労働省は問題がなかったので、ありませんでしたが、厚生省はそうなったのです。これは何とか検討しなければならぬ。  そうすると、これは労働大臣なり厚生大臣にお聞きいたしたいのは、知事が人事権や予算権というものを職業安定行政なりあるいは社会保険の事務について持っていないために、業務上の指揮監督が非常にやりにくくて、行政上の責任が明らかでないというこの点についてお認めになるのでしょうね。
  145. 小平久雄

    ○小平国務大臣 知事の人事権なり、県の監査委員が監査の対象になし得ないというお話がございました。事実はそのとおりだと思います。しかし、そのうちの監査の関係ですと、これはあるいは表現が適当でないかどうか知りませんが、地方の監査委員——非常に権威のある国の会計検査院が全部現に監査の関係はやっておるわけですから、監査の適否という点からいえば、私は会計検査院のやり方がもっとうまく、常識的により正確な監査をしていかれるものと考えます。予算の面でも、もちろんこれは国会で御審議を願ってやるのですから、そういう点では欠けるところはなかろう、これを信用する以外にない、こう私は思うのです。  ただ、人事権に関しては、これは確かに先生の御指摘のとおりいま知事に人事権がない、こういうのが事実でございまして、この点につきましては、たぶん私が就任後参議院の地方行政委員会ですかでそういう御指摘をやはり受けまして、その際も私は申したのでありますが、どうもわれわれの常識から考えても知事に人事に関与する権限を全然与えておらぬということはやはり職務の遂行上欠くるところがある、こう自分も考えます。したがって、その点については、やはり知事にも人事に関与する権限を付与すべきであるということが適当である、私はそう思います。  しからば、どういう形において、また、どの程度の権限を知事に与えることが適当であるか、こういう点については検討を要することでありますから、直ちに事務当局にそれを検討をさせましょう、こういうことを、私はもうだいぶ前でありますが、その際申し上げたのであります。その結果、事務当局でも検討いたしまして、ただいま自治省当局とその点については内々打ち合わせをいたしておる、いまこういう段階に相なっておるわけでございます。
  146. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、結局、この行政管理委員会が指摘をした地方事務官について、知事が人事権や予算権を持たないために問題があるということはやはり労働省も認めておる。そこで、ある問題について幾分そこに問題があるようであるので、その問題点については何らか改善し、前進をはからなければいかぬということで自治省と相談をしておる、こう理解をしてさしつかえないですね。
  147. 小平久雄

    ○小平国務大臣 いま先生御指摘のうちの予算のことについては触れておりません。単に人事権について、先ほど申し上げましたように自治省と打ち合わせておる、こういうことであります。
  148. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは厚生省のほうは、あなた方二人政府委員かしら——説明員ですね。それではこういう大事なときだからちょっと困るのだ。大臣がいなければ局長もいないというなら、政務次官か官房長が来て、あるいは長官が来るというのでなければ——国会はやせても枯れても国権の最高機関だから、いま言ったように非常に重要なところなんです。統合をすると言っているのです。独立の機関を置く、私はそこを聞きたいのです。というのは、いま大臣のほうは、予算権はとにかくとして、人事権のところは問題があるから何とかしなければいかぬ、こうおっしゃった。あなたのほうはどういうことになるかというと、地方保険局を置くと発表している。それから、一方においては医療庁を置く、こういう構想があるわけです。国立病院その他。そうすると、その医療の抜本的な改正をやろうというときにはこの点が非常に問題になるのですよ。医療制度なり保険制度を改正するときには行政機構というのがこれにつながってやはり解決されなければいかぬ。そうすると、医療の根本的な問題の改定についてはまだ何も構想が出てきていないわけです。ところが、地方保険局を置く、こうきているわけです。  実は私がきょう開きたいのはここなんです。この問題は、いま言ったように、すぐに身分の問題、労働問題に関連してくるわけです。そうでしょう。いま地方公務員、いわゆる事務官だけれども自治労に入っている。そうすると、これは地方保険局になると国家公務員に返ってしまうのです。そうでしょう。こういう問題になってくるんですよ。だから、この点をもう少し明確にするためには、やはりそれは良心的に、まあ滝井義高があとから質問を申し入れたんだからといっても、質問をさせてもらうことになれば、やはり官房長くらい来てもらって、責任ある体制にしてもらわないと、これじゃ踏んだりけったりですよ。大臣はおりません、あるいは、保険局長はけさまで待っておったけれども、あなたの質問がないということでどこかへ出張しました、だからおれらで答えるんだと言っても、じゃ責任ある答弁をやってもらえますかと言うと、私たちは説明員で、政府委員ではないから責任ある答弁はできませんと言う。それじゃ私は進退きわまれりだ。平重盛みたいだ。あなたのほうは地方保険局を出しているのです。そしていまや支払い遅延が起ころうとしている。大阪あたりは支払い遅延が起こってきた。一方においては、今度は社会保険出張所に何か変な監察官とか給付専門官とかいうのを置いておるでしょう。そうすると、こういう人たちの身分というのがやはり非常に問題になってくるんですよ、この行政機構の状態では。だから、そこらが、そういう方向でいこうとするならば一体どういう抜本的な改正になり、そういう行政機構になるのかということをわれわれは知らなければならぬ。一方、支払い遅延が起こってきている。そういう点をちょっと明確にしていただきたいと思うのです。一方で、同じ内閣の中からわれわれにこういう資料が出てきているわけです。それは地方公務員にするのです、こう言っているでしょう。あなたのほうは、逆に、いやおれのほうは国家公務員の地方保険局をつくるんだ。まあ労働省はそこまで言っていない。独立の基準局と同じようにやはり職業安定局をつくるのかもしれないけれども、厚生省と労働省はニュアンスが違うのです。どうですか、説明員しか来ておらなければ、結局説明員に説明してもらうしかしようがない。
  149. 北川力夫

    ○北川説明員 お答え申し上げます。  ただいまの地方事務官問題に関連いたしまして、地方保険局をつくる点についてのお尋ねでございますが、大体私どもは先ほどお答え申し上げたようなことを手順としては考えておりますけれども、しかし、地方事務官の問題、こういう問題を議論いたします前には、まず社会保険行政そのものがどういうあり方であるべきか、こういうことをまず先に議論すべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。滝井先生も御承知のとおり、臨時行政調査会の答申の中には、全国的な規模で行なわれる現業またはこれに類する行政事務は、事務の再配分といたしましては、国の機関に配分すべき事務である、こういうことを答申しておるわけでございまして、それに関連いたします事務配分に関連いたします措置といたしまして地方事務官制度を廃止すべきことを付言いたしておるのであります。  そういう関係から申しましても、私どもは、まず社会保険行政の根本的なあり方、それを処理すべき機構というものをどういう形にするか、こういうことをまず議論いたしまして、その一環としてそのにない手である職員の身分というものも処理していかなければならぬのじゃないだろうか、このように考えております。そういう問題になりますと、確かにただいま滝井委員の御指摘のとおり、現在は国民年金とか厚生年金とか、こういつた全国的な規模で行なわれますこういうものの費用は、もとより全国的な国の直轄事業ということになり得るものでございますことは御明察のとおりでございますけれども、医療部門に関しましては、現在確かに制度の根本改革が議論をされておりますときでございますので、そういう時期に、こういうにない手である職員、行政をになっております職員の身分だけを切り離して結論を出しますことは、これははなはだ問題であろうかと思っておるのであります。  そういう意味合いで今回行政管理委員会から意見が発表されましたけれども、こういう問題をどういうふうに——地方事務官制度の廃止ということ自体、また、それとそのあとの姿をどうするか、さらにまた、それを処理いたします時期の問題、特に先生御指摘のような医療保険行政にとりましてはいっこういう問題に結着をつけるかは、この際非常に問題でございますので、そういう地方事務官制の廃止に関連したあとの処理のしかたと、その時期、こういう問題について、今後十分その検討を続けなければならない。このように私どもは基本的には考えておるのでございます。ただ、前回地方保険局というふうな話が伝わりましたのは、もし行政監理委員会あるいは行政管理庁等におきまして、どうしてもいま直ちに地方事務官制度を廃止すべきである、こういうふうな結論が出て、いますぐに廃止をしろということでございますならば、私どもは社会保険行政の本来の性格に立ち返って、これは厚生事務官が担当する、こういうかっこうで処理をつけざるを得ないのではないか、こういう気持ちに立ってああいうふうな考え方が出てまいったというふうに承知をいたしております。
  150. 滝井義高

    滝井委員 地方保険局構想でいくということになると、これはいまの政府管掌健康保険というのはやはり国家管掌的な形でいくわけです。ところが、地方事務官を地方公務員に切りかえてしまうということになると、府県単位になる可能性が出てくるわけです。ここが社会保険のあり方に問題になる。いわゆるコミュニティを中心とする社会保険体制でいくのか、いまのような国家管理的な健康保険体制でいくのか、こういう問題になってくるわけです。そのことが同時に、今度は医療庁にも関連してくるのですよ。そこで、いまあなたの言うように社会保険のあり方というものをどうするかということについて、これは臨時医療保険審議会をやっておったけれども、これもだめ。このごろ、河野さんも質問しておったんだけれども、健康と医療の懇談会も全然出さぬ。私は実はきょうは鈴木さんに聞きたいのはこういう点もあるわけです。大臣をやめられるといったって、政治家がみずからの構想を天下に高らかに掲げて、そうして海のものとも山のものともわからないうちに淡雪のごとく消えていくということは、非常に残念です。しかも、きょうここに来ていないというのは残念です。最後でしょう。社会労働委員会があす、あさってあるわけじゃないでしょう。締めくくりなんです。会期は三十一日でなくなってしまう。鈴木さんが残ればいいですよ。残れば、いま言ったことは全部取り消します。しかし、残らなかったときには、あれだけ高らかに掲げて、大上段に振りかぶってその実現をしていきたいという大臣が、きょう滝井義高から来てもらいたいというのに、どこへ行っているのかわからない。警視庁に捜査願いを出さなければわからないようなことでは、ぼくは残念だと思うのですよ。日本の医療のために残念だと思うのです。厚生省のために、鈴木さん個人のために残念だ。そうでしょう。しかも朝から言っているのですから。だから、そういう点——これは抜本的なものなんですね、この出た勧告というものは。抜本的なものに関連してくるのですよ。しかも、それはいま言ったように、あなたのほうが地方保険局というのをお出しになったら、労働省が違うこともまたおかしいんですね。だから、鈴木さんが言われるように、これは厚生省、労働省、自治省、行政管理庁、それから陸運事務所があれば運輸大臣、これらの関係閣僚がやはり話し合って、内閣としての統一的なものはこうしよう、こういうことになって地方保険局ができ、あるいはあなたのほうの地方の職業安定局なら安定局ができる、こういう形になるのが私はほんとうだと思うのです。お互いに共通の問題、すなわちこれは地方自治法の附則八条ですか、当分の間ですよね。当分の間というのは、私たちは農地法を審議するときに、当分の間というのはどのくらいかと聞いたら、まあ長くて四、五年、こういうことだった。これは長くて四、五年じゃないでしょう。私がこの問題を取り上げるようになってから八年ぐらいになりますよ。私はこの地方委譲の法律を三回くらい私の名前で出したのです。そういう点で抜本策は一体どういうようになっていったんですか。
  151. 広瀬治郎

    ○広瀬説明員 医療保険の抜本対策につきましては、これは前々から大臣が答弁しておられますように、皆保険の今日ぜひこれはやらなくちゃならぬという前提を持っておるわけであります。それで省内におきましては、事務次官を長といたしまして、関係局長をもって研究会を設けておりまして、月に一回ないし二回ずっと研究を続けておりまして、まだ完全な成案はできておりませんが、数案に詰めまして、それぞれ長所短所を検討している段階でございます。いまのところそういう状況でございます。
  152. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、抜本策については数案に詰めて、いまその長所短所をさらに煮詰めているところだ。だから、何ぼか案ができたわけですね。それははっきりしました、数案できた。その数案をここに出してくれと言っても、なかなか出さぬでしょう。この前、総合調整というのは一体どうするんだといって十時間もがんばったんですが、言わなかった。だから、出さぬと思います。わかりました。数案できたということはわかりました。そうすると、御承知のとおり八月三十一日までに予算を出さなけりゃならぬ。予算は三割を増で出してくれ、こういうことですね、大蔵省は。そうすると、ことし間に合わぬとすれば、ことしは応急策をやらなければならぬのですね。一体応急策はどういうことをおやりになるのですか。抜本策は聞きません。数案ができているというから、それはあとの臨時国会、通常国会の楽しみにして、しかし、応急策はやらなければいかぬでしょう。応急策はどういうことをおやりになるのですか。これは去年も応急策だったんですよ。千分の六十五まで法律で取り得るものを七十まで持っていったというのは、これは応急策だったわけです。ことしはもう八月三十一日までに予算を出さなければならぬ。抜本的なことをやる審議会というところも、いま所期の目的が達成できなかった。健康と医療の懇談会もいまできていないということになると、何か応急策をやらなければいかぬでしょう。というのは、支払い遅延が起こりつつあるわけです。だから、この応急策というものを一体どういうようにやるのかということです。
  153. 広瀬治郎

    ○広瀬説明員 まだ抜本対策——ただいまのような状況でございまして、もう来年は抜本対策はできないんだ、したがって、応急策で来年はやるんだというふうに、まだきめておりません。大臣の気持ちといたしましては、何とか四十二年度から、抜本対策を一挙にできなくても、長期構想のもとに、その一部でもいいから抜本対策として何とかやっていきたいという気持ちでございます。私どものほうもそういう気持ちで、まだ抜本対策に取りかかっている状況でございます。
  154. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、抜本策というものは捨てていないというと、土俵はどこでやることになるんですか。
  155. 広瀬治郎

    ○広瀬説明員 その問題は、先般の通常国会臨時医療保険審議会というものを出したわけでございますが、それが審議未了になったわけでございまして、その土俵をどうするかという問題は今後慎重に検討したいと思います。
  156. 滝井義高

    滝井委員 そういう子供だましみたいなことを言わずに、国会はずっと先までないのです。三十日で終わりでしょう。だから、こういうときははっきり言う必要があるんですよ。お互いに専門家でやりおるから、しろうとじゃないから。それで大臣、いまのように抜本策は出てこない。それから社会保険の赤字というのが、これは政府管掌、日雇い、船員を合わせると千二百億をこえていますね。これはちょっと言ってみてください。千二百億をこえているでしょう。
  157. 北川力夫

    ○北川説明員 私、ちょっと具体的な詳しい数字を覚えておりませんけれども、たしか今年度末には一千億をこえるというふうに承知をいたしております。
  158. 滝井義高

    滝井委員 いまのように、年度末になりますと大体千億をこえるのです。そうすると、大臣、支払い遅延が起こってくるわけです。医療機関の従業員に金が払えなくなるんですよ。一体この賃金の支払いというのはどうするかということです。いま、いいですか、あなたのほうの職業安定行政だけでなくて、類似の社会保険行政というのがある。それで根本的な検討をやろうとしているんだが、機構だけはやろうとしているんだけれども、今度はその機構が動く中身については、いま言ったように何もないわけです。もうぼつぼつ支払いの遅延が起こりつつある。そこでたとえば、河野病院なら河野病院の従業員に金を払おうとすれば、河野さんは金をどこからか借りてこなければならぬわけです。ところが、支払いの保証のないところに銀行は金を出さない。高利貸しから金を借りてこなければならぬ。高い利子を払わなければならぬ。こういう問題が起こるわけです。いま言ったように、抜本的な問題というのは行政機構の根本問題にからまるけれども、こういう社会保険の制度自体の根本問題もからまってきておるわけです。そうすると、その場合に、支払い遅延が起こって賃金が払えなかったときには、あなたのほうは厚生大臣におきゅうをすえなければならぬことになるわけです。そうでしょう。大体いままでは翌々月末までには払うことになるわけです。ところがそれは月を越すと、大体給料は御存じのとおり、二十四、五日に払ってしまうわけです。払わなければならぬ。ところが、それが先に延びてしまうのです。月を越すのです。大阪あたりはもう月末になり始めたのです。大蔵大臣は絶対にそんな支払い遅延は起こさせませんとたんかを切っております。たんかは切っておるけれども、現実にそれが起こり始めているわけです。(発言する者あり)これはいま齋藤さんは、やむを得ない社会党の責任だとおっしゃるけれども、そうではないのです。われわれは国庫負担を入れなさいという要求をしておるのです。この支払い遅延が起こったときには、一体社会保険庁に労働省としてはどうするかということです。いま言ったように、賃金が払えないのです。看護婦さんとか医師とかレントゲン技師とかいうのに賃金が払えなくなる。払うためには、金を借りてこなければならなくなる。そうすると、それについて厚生省は、それでは私のほうから無利子の金を融資しましょうという制度にはなっていないのです。こういうところにも矛盾が出てきているわけです。これは一体労働者としては、そういう場合どうするかということです。
  159. 小平久雄

    ○小平国務大臣 医療機関で支払い遅延の問題が出てきておるということは、私は実はまだ耳にいたしておらないのであります。それは現実には多少あるのかどうか、私もその間の事情をよく知りません。しかし、かりにそういう問題が頻発してくるということになれば、これは当然労働省としては、労働者保護の立場から、厚生大臣なりあるいは大蔵大臣なり、関係大臣と十分協議をして善処をしてもらう、これよりはかなかろうと思います。
  160. 滝井義高

    滝井委員 それは起こってから警告したんでは間に合わない。病気というものは、病気になって治療するというのは下のほうです。やはり政治家というものは大医——偉大な医者です。大医は人の心をなおしてやらなければならぬ。だから起こらぬうちに警告をして、その場合には一体どうするんだということをしてもらっておく必要があるんです。これは重要な労働行政です、重要な労働問題なんです。現実にもう起こりかかろうとしているんです。だから、予防の段階にそれをしてもらわなければいかぬわけです。
  161. 小平久雄

    ○小平国務大臣 滝井先生の御指摘のような危惧が予想されるという事態に今日あるのかどうか。これは先生のおっしゃることですから、そうに間違いないだろうと思うのですが、私はそこのところは、先ほど申すとおり、知らないのです。ですから、よくその間の事情も河野先生から伺って、それが実態であれば、いまからでも善処方を要望いたしたいと思います。
  162. 滝井義高

    滝井委員 それじゃこれはこれくらいにしますが、あなた方保険庁のほうでしょう、だから、実態を言うてもらっておく必要がある。全然支払い遅延の状態でございませんならばございません、あるならあると実態だけを、私はあるというなにをしているんです。
  163. 北川力夫

    ○北川説明員 ただいま御質問がございまして、私もこの席上でそれに対して正確な御答弁ができないことをはなはだ遺憾に存じますけれども、私は現在健保、日雇い健保、船員保険等の執行に直接当たっておりません関係上、実は各県においてどのような状況かということにつきまして詳しく承知いたしておりませんので、はなはだ申しわけございませんが、大体いまのところは先生御指摘のような深刻きわまるという状況ではないというふうには聞いておりますけれども、全体的に具体的なことはあまり存じ上げませんので、この程度でひとつ……。
  164. 滝井義高

    滝井委員 きょうはこれでやめますから、あとで調べて資料を出してください。大阪あたりでは私たちのところには支払いがおくれ始めたということがきておりますから、あとで資料を出してください。  これで終わります。
  165. 田中正巳

    田中委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十五分散会