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1966-10-11 第52回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年十月十一日(火曜日)    午前十時二十分開議  出席委員    委員長 井手 以誠君    理事 奥野 誠亮君 理事 丹羽 兵助君    理事 保科善四郎君 理事 重盛 寿治君    理事 中井徳次郎君 理事 野間千代三君       川野 芳滿君    高橋 禎一君       地崎宇三郎君    村山 達雄君       山本 幸雄君    和爾俊二郎君       肥田 次郎君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君  委員外出席者         外務政務次官  田中 榮一君         農林事務官         (農政局長)  森本  修君         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         運輸事務官         (大臣官房審議         官)      鈴木 珊吉君         参  考  人         (産業構造審議         会産業公害部会         会長)    進藤武左ヱ門君         参  考  人         (産業構造審議         会産業立地部会         会長代理)   石原 周夫君         参  考  人         (公害審議会会         長)      和達 清夫君         参  考  人         (公害審議会公         害部会会長)  長野 国助君     ————————————— 八月二日  委員浦野幸男辞任につき、その補欠として藤  井勝志君が議長指名委員に選任された。 九月十三日  委員藤井勝志辞任につき、その補欠として高  橋禎一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月二十九日  一、公害対策基本法案中井徳次郎君外二十二   名提出、第五十一回国会衆法第一四号)  二、公害対策基本法案吉川兼光君外一名提   出、第五十一回国会衆法第八号)  三、産業公害対策に関する件 の閉会審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  産業公害対策に関する件      ————◇—————
  2. 井手以誠

    井手委員長 これより会議を開きます。  産業公害対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  本日は御多用のところ、本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。  本委員会におきましては、閉会中もなお産業公害対策樹立のために調査を進めております。  本日は、公害対策基本施薬並びに商業構造審議会及び公害審議会における審議経過等につきまして、参考人各位にはそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。  なお、参考人の御意見の開陳は、おおむねお一人約十五分程度といたしまして、あとはまた委員質疑の際お答えくださるようお願い申し上げます。  進藤参考人には御都合がございますので、産業構造審議会のほうから先に御意見を伺い、質疑があればいたしたいと存じます。  まず最初産業構造審議会公害部会長進藤参考人にお願いいたします。
  3. 進藤武左ヱ門

    進藤参考人 ただいま御指名をいただきました産業構造審議会産業公害部会長を仰せつかっております進藤でございます。  最初に、産業公害部会経過概要申し上げまして、あと私の所見等を取りまぜてお話し申し上げたいと思います。  産業公害部会は三十九年の十一月に発足いたしましたが、通商産業大臣から産業公害を防除するための施策はどうあるべきかという諮問がございまして、この問題を中心審議を重ねたわけでございますが、ただいままでに十一回審議をいたしました。本月の終わりごろには施策結論を出したいといま努力中でございます。  なお、十一月の審議中に、従来から産業公害現状はどうであるか、あるいは政府がおとりになりました従来の対策はどうであるか、また現在の日本産業公害に対する技術はどんな状況であるかというふうな問題につきまして御当局その他から御説明を承りましたし、また、ときには工業技術院産業公害研究機関を視察いたす等のこともございました。  本年の七月に、従来のいろいろ委員の間で意見交換しましたことを取りまとめたものがございます。それは産業公害部会のこれまでの検討経過についてというものでございますが、これで大体各委員方々のお話し合いの問題が出ておりますから、トピックだけを申し上げますと、公害対策についての基本的な考え方を、いろいろ意見交換あるいは討議をいたしました。その次には、責任の所在及び範囲がどうであるかというふうな問題が取り上げられております。三番目には、被害者の迅速な救済をどうするか、産業公害で迷惑をこうむっておる方々救済をどうするかという問題についての意見交換、また公害規制措置の改善をどうすべきかというふうな問題、それからこれに関連いたしまして、どうするかという問題のうちに環境基準を設定しなくちゃいかぬじゃないかというふうな問題も取り上げておるわけでございます。また、企業数の増加に伴いまして、一つ企業がたとえば大気汚染排気ガス排出基準を守っておりましても、多数の工場ができますと、個々工場で守っておりましても、全体としては公害を発生する、そういう場合がございますから、これに対してはどうしたらいいだろうかというふうな問題も取り上げております。  それから立地の面から公害をどういうふうにやるべきかというふうなことも取り上げております。これはあとから立地部会会長さんの御説明があると思いますが、産業立地部会十分連絡をいたしながら、工場立地をいたす場合に公害に対してはどういう考え方を行なうべきかというふうな問題が論議されたわけであります。  それからその次は公害防止促進策、これはすでに御承知のように、大工業地帯はほとんど公害に悩まされておるわけでありますから、これをできるだけ早く公害対策を講ずるにはどうしたらいいかという問題を取り上げられております。  それからもう一つは、これは各省でお取り上げになっております公害基本法の問題、基本法に対する考え方等について意見交換された。  大体以上申し上げましたようなことを取り上げまして、意見交換を行なっておりますが、そのほか技術的にむずかしい問題でございますが、公害のうち騒音に対する対策はどうしたらいいかという問題は、技術的な問題を含んでおりますので、これは小委員会をつくりまして、ただいまいろいろ議論を進めておるわけであります。また、そのほか保険制度についてもどうしたらいいかというふうな問題がございまして、これも小委員会検討されておるわけでございます。  でございますからして、産業公害部会におきましては、部会を十一回いたしまして、以上申し上げましたような点について意見交換をし、あるいは現状を一緒になって皆さんで勉強していただくというふうなことで今日まで過ごしてまいったわけでございますが、今月中ぐらいには、ぜひ結論を出して大臣答申いたしたいと考えております。なお、小委員会につきましては、引き続き検討中でございます。これも近く結論が得られるだろうと考えておるわけでございます。  以上のような経過を通りまして、産業公害部会がいままでいろいろの問題を取り上げておるわけでございますが、これは私見も入ると思いますけれども産業公害問題と申しますのは、これは一般公害との関連がございますが、実は実態をつかむこと、あるいは責任者をどうするかということ、あるいは被害範囲というふうな問題がなかなかむずかしゅうございまして、実は公害とは何ぞやという問題までいろいろ議論されたわけでございますが、法律規制の対象となるべき公害というものをまずきめなくちゃならぬのであります。これについてもいろいろ議論をされておりまして、結論を近く出したい。あるいは公害の種類は何であるかというふうな問題につきましても議論を戦わしておりますが、これも公害の、つまり規制さるべき公害はどういうものであるかということ、あるいは公害定義はどういうことになるかというふうな問題が取り上げられております。  それから大きな問題といたしましては、現在ある公害に対する処置と将来起こるべき公害防止対策、この二つの問題につきまして大筋で議論されたわけでありますが、現在ある公害に対しましては、すでにいろいろの法律で、あるいは大気汚染に対しましては排出ガス規制法律がありますとか、あるいは河川の汚濁に対しましては工場排水取り締まりあるいは水質基準の問題というふうに、それぞれの取り締まりの規則はございますが、これも実は完全に行なわれておるとは申しかねるわけでございます。すでに長いのは五年、六年前に法律は施行されておりますけれども現状は必ずしも満足すべきものではないわけでありますから、今後、現在ある公害を早急にひとつ排除、防除するための処置をどうすべきかというふうな点につきまして議論を進め、ただいま答申を出そうということで勉強いたしておるわけでありますが、これもなかなか早急にやることはむずかしいのでございます。  ことに産業家にとりましては、公害問題も経営の大きな考え方一つでございますけれども産業を振興するという問題との関連を十分考えていたしませんと、角をためて牛を殺すというふうなことになりがちでございますし、また現在までのところ、大体発生源に対する取り締まりとか規制が一番簡単でございますからして、どうも従来の公害対策発生源対策中心になったような感がいたしますけれども公害は、発生者とこれを受ける者との相関関係があって初めて公害が発生するわけでございますから、発生源とともにこれを受けるほうの処置、さらに都市対策あるいは産業立地対策等におきましては、国あるいは公共団体がこの公害問題に対していろいろの施設を講じなければ、個々発生源だけではどうしてもできない問題がありますのと、率直に申しまして、現在の公害一つの原因として、公共投資のおくれというふうなことが考えられておりますので、現在ある公害対策といたしましても、発生源に対する対策とともに、発生源被害者との関係をどういうふうに処理していくか、また、国、公共団体公害防止対策に対してどういう処置をとるか、そしてその結果が産業の振興に支障を来たさずに、しかも公害を防除する、国民生活を豊かにしていくという結論にならなくちゃならないのでありますから、非常にむずかしい問題でございますが、こういう方向で、できるだけ総花でなくて効果のあるものから、あるいは効果のある地点から適宜順次これを取り上げていくということに結論はなるのじゃないかと思います。  それから、これから先の公害に対しましては、現在全国で十四でありますか、新産都市の指定もございます。いろいろ日本国土開発計画あるいは工場立地計画は行なわれておりますが、この計画の中に公害防止の問題をぜひ一つの条件として織り込まなくちゃならぬというふうに考えておるわけでございまして、これは産業構造審議会産業立地部会十分連絡をとりまして、将来の工場立地公害防止するための対策はどうするのかという問題は御検討を願いまして、すでに政府のほうへ答申がなされたと聞いておるわけでございます。  以上申し上げましたように、現在ある公害に対する対策、将来に対する公害に対する対策、それに対しまして産業家はどういうことをすべきか、あるいは工場公害を受ける側との関係はいかにすべきか、国あるいは公共団体はどういう処置をとるべきかというふうに、各それぞれの分野における責任をはっきりいたすつもりでございますが、しかし、いずれにいたしましても定義さえなかなかむずかしい。しかもその実態をつかむことも、これは正確につかむことは困難である。また、責任——被害を受ける方ははっきりしておりますけれども責任者をどうすべきかというふうな問題等多々不明確の点がございます。こういう問題に対しましては、国あるいは公共団体が積極的に乗り出して、少なくとも現在ある公害に対しましては、国、公共団体施策がこの公害対策として非常に重要な問題であるというふうに考えておるわけであります。  なお、今後の問題につきましては、これから先の問題でございますから、秩序ある国土計画あるいは秩序ある産業立地計画都市計画をぜひ立てていただいて、再び公害を繰り返すことのないようにあらかじめ手を打つことが肝心のことと思うわけでございます。  以上、産業公害部会が取り上げました問題、あるいは従来の経過概要並びに私見も入っておりますけれども、われわれが現在どうすべきかというふうな問題につきまして対策のごく概要を申し上げ、いずれ部会結論が出ましたら大臣のほうへ答申をいたすつもりでございます。  以上でございます。
  4. 井手以誠

  5. 石原周夫

    石原参考人 産業構造審議会立地部会といたしましては、通産大臣諮問を受けまして、ことしの五月から八月にわたります期間におきまして前後八回、小委員会も含めまして審議を重ねたわけであります。  本年の八月の十六日でありますか、中間答申といたしまして「産業立地適正化対策」というものの答申をいたしたわけであります。以下、この答申をいたしますに至ります経緯、答申において書かれております構想並びにその具体的対策という三点に分からまして、簡単に御説明申し上げます。  通産大臣からいただきました諮問は、産業立地適正化のための施策はいかにあるべきかというものであります。これは御承知のように非常に広範な問題を含んでおるわけでありますので、私ども部会といたしましては、当面焦点をしぼりまして対策を論議いたすことにいたしたわけであります。すなわち、当面一番緊急に取り上げなければならない問題は何であるかということでありますが、これはやはり過密問題、公害問題、その両者を解決をするために産業立地施策をどうするのかというところにポイントがあったというふうに考えられます。その理由は、既成工業地帯周辺あるいは新規工業地帯におきます工業の集中、無秩序な立地、いわゆるスプロールという形であらわれておるわけでありまして、こういうふうな関係は相互に密接に関連をいたしておりますので、どうしても基本的に工業立地のあり方というものから適正化をしていく必要があるのじゃないか、こういう判断をいたしたわけであります。  御承知のように、すでに拠点開発構想というもので地域開発を進めて相当の年月がたっておるわけでありますが、いわゆる地域開発におきまする拠点開発によりまして過密地帯に対する圧力を減らしてまいる、そういう間接的効果も確かに重要であるのでありますが、私どもの見ますところでは、そればかりではなくて、直接に過密地域あるいはこれに近接いたします地域、そこにおきます立地対策というものを明らかにいたしませんことには、問題は解決をしないのじゃないかということであります。したがって、私どもはそういう過密問題、公害問題というものを含めました立地対策というものを検討いたすことにいたしたわけであります。  公害対策といたしましては、個々発生源技術的に、先ほど進藤公害部会長からお話がありましたように、可能な努力を行ないましても、やはり公害が発生する場合がある。それは立地が不適正であるということであります。あるいは住宅工場が無秩序に入り乱れる、こういうようなケースが非常に多いわけでありまして、こういう問題はやはり工場立地をどうするかという問題から解決しなければならない。  これを解決する方法といたしましては二つの問題のつかまえ方があるわけでありまして、一つ土地そのものから解決をしてまいる。たとえば都市計画であるとかあるいは土地利用計画であるとかいう問題であります。もう一つは、その上にできます工場そのものをどうするかという問題であります。前者の問題、すなわち土地方面からいたします規制は、もちろんこれは非常に重要な問題でありまして、現在建設省でございますとか、首都圏近畿圏でありますとか、そういう官庁方面におきましても、また別の審議会においても御検討いただいておるわけでありまして、これまた御承知のように非常にむずかしい法律問題を含んでおるわけであります。私どもといたしましては、この問題については当然そういうような議論もいたしたわけでありまするけれども、むしろ、その上にできている工場をどうするかというところからこの問題に対する解決の糸口を考えてみたらどうだ、こういうことであります。つまり、公害については、一定地域の中でありましても、具体的な立地場所公害防止施設設置状況使用燃料、そういうような非常にこまかい点から公害というものは出てまいるわけでありまするから、工場立地という段階におきまして、工場設立そのもの調整いたしますることによって問題を解決したらどうだろうか、こういうような結論に到達したわけであります。また、もう一つ産業自身立場から見まして、工業立地規制をいたしまする場合に、産業実態を無視した画一的規制であっては必要以上に産業競争力を弱める結果に相なりまするし、また規制を受けます企業が安心して生産活動ができる場所がなければならない。工場をつくってみたらすぐに住宅が隣に来てしまったというような事態を避けるということが必要であるということであります。以上のところから、以下第二番に申しておりまするところの構想を考えたわけであります。  まず第一に過密公害弊害が現に著しく、工場立地動向から見まして将来公害問題が発生するおそれの非常に強い地域、これを緊急的に取り上げなければならない地域といたしまして調整地域ということで指定をいたします。具体的に申しますると、現在といたしましては東京あるいは大阪の周辺、御承知のように現在の密集地域そのものは、現在工場制限法でありますか、新しい工場をつくりますことが禁止をせられておるわけでございまするから、その周辺部におきまする地域調整地域ということにいたしまして、その地域内での工場立地に対しましては必要な規制を加える。すなわち一定の規模、一定の業種というものに属しまする工場許可がなければ立地ができないということであります。それを裏から申しますると、その地域内におきましては、その地域につくることがどうしても必要だ、あるいはその地域工場をつくりましても弊害がない、こういう積極、消極の画要件をそろえたもののみの立地を認める、それ以外の立地は認めない。こういうような意味におきまする調整地域というものをつくります点が第一点であります。  そこで、調整地域立地をいたしまする公害型の企業というものもこれまたあるわけであります。これはある特定の地区にまとめて立地をさせまして、それ以外の地域は原則として立地を認めない。これを答申では誘導地区と呼んでおるわけでございまするが、誘導地区におきましては、あらかじめ共同排水施設その他の必要な公害防止施設を十分に準備しておいて、工場がそこに来ても問題がないというような環境をつくりました上でそういった公害を発生するおそれのある企業に来てもらうということにいたしたらどうか。これらの土地地方公共団体があらかじめ買収しておくとか、あるいは現在工業専用地区という指定方法がございまするが、工業専用地区という指定をいたしまして、その中に住宅が入る、その近くに住宅ができて問題を起こすというような事態が生じないような処置をいたしておく、これが第二点であります。  その誘導地区におきましては、いま申し上げたような先行的な防護施設公害が起こらないような環境をつくっておくのでありますけれども、さらに公害防止に万全を期しまするために、具体的な各工場立地地点公害防止施設使用燃料その他のこまかい立地計画につきまして通産省審査を受けられるようにいたしまして、その現実の運用の面から公害が生ずることのないようにいたしたい、こういうことであります。  そこで、いま申し上げました誘導地区あるいは調整地域関係でありまするが、誘導地区というものは、いま申し上げたところでは調整地域内にできるような印象をお受けになったと思うのでありまするか、調整地域内におきまして産業立地施設をしなければならない具体的な要請もございまするから、調整地域、すなわち簡単に申しますれば京浜とかあるいは阪神とか、そういう大密集地区周辺地域にそういうような誘導地区というあるあらじめ予定をせられた、ある準備をせられた地区をつくることも考えるわけでありまするが、同時にまた、現在全国にわたりまする地域開発計画が進行中であります。また首都圏近畿圏等におきましても、都市開発地域でありまするとか、近郊整備地域でありまするとか、各地域の実情に即しました立地分区の関係など、そういうような計画にのっとりましていま申し上げた誘導地区というものはつくってまいりたい。すなわち調整地域外、すなわち京浜阪神地区以外、あるいは御承知のような新産業都市もございまするし、工業特別地域もございまするし、先ほど申し上げました首都圏近畿圏におきまする都市開発区域というものもございまするが、そういうような現在すでに拠点開発地区として考えておられまする地点、あるいは密集地域におきまする全体的な整備計画、そういうような計画に即しました指定をしてまいりたい。また地元の意向というものも十分反映させる必要がございまするので、地元府県知事の申請を待って処理をいたすということにいたしたいというふうに考えておるわけであります。  第五点と申しまするか、もう一つ問題は、すでに過密になっておりまする地域、先ほど申し上げましたように東京都の区部でありまするとか、そういうような現在すでに工場をつくることが禁止をせられておりまする地域、そういう地域におきましても現在の密集状態過密状態というものを解消する必要があるわけであります。そこで、そういうような地域の中におきましても分散促進地区というものを指定をいたしまして、できるだけそういう地域から工場は外へ出ていってもらう。たとえて申しますれば、東京近郊で申しますると江東の近所でありまするとか、そういうような現在すでに公害相当に発生し、すでに過密弊害がきわめて顕著であるという地域は、これを分散促進地域ということに指定をいたしまして、そこから出ていってもらうことについてのいろいろな助成策を講じまして、そういうような過密の緩和ということにできるだけ資してまいりたい、こういうことであります。  以上が大体の構想でございまするが、そのために必要な施策というものはどういたすかということについてごく簡単に申し上げます。  以上のような立地規制誘導分散促進というものを一括いたしまして、答申におきましてはこれを立地許可制その他の方法による立地面調整のための工業立地適正化法というような法律が必要ではないかということを申しておるわけであります。また、その法律によりまする措置のほかに具体的な助成策、たとえて申しますれば金融の問題あるいは税制の問題、そういう点につきましての相当思い切った助成か必要ではないかということを申しておるわけであります。  以上のような答申に基づきまして、現在通産省としては、四十二年度の予算要求財政投融資要求あるいは税制改正要求、そういうものにつきまして具体的な要求をしていられるように承知をいたしておるわけであります。  以上をもちまして、簡単でありますが御報告といたします。
  6. 井手以誠

    井手委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。中井徳次郎君。
  7. 中井徳次郎

    中井委員 お忙しいようでございますので、途中で失礼でございますが、進藤さん、石原さんに一点ずつ、将来の審議の参考にいたしまするためにお尋ねを申し上げたいと思います。  いま承りますと、たいへん御熱心かつ精力的な御審議を続けられまして、深く敬意を表する次第でございます。私ども国会といたしましても、特別委員会が昨年から設けられまして、いま御説明のありましたような内容について、専門的ではございませんけれども、過去一年間熱心に討議を続けてまいりました。  そこでお尋ねをいたしますが、進藤さんの含蓄のある御説明一々ごもっとものように承りましたが、一点だけ、発生源が非常にたくさんあったり、あるいは古いもの新しいものごちゃごちゃとありまするために、どうも正確に公害発生源をつかむことは困難であるというふうなお話がございました。この点につきましては、私どもも実は当初この問題にぶち当たりましたときにはそういう感じでございました。たとえば公害の原因になるばい煙ならばい煙にいたしましても、その原因の一割を出す煙突が二十本あれば二十割になるというようなことで、それはどちらがどう出すかというふうなことから、初めは非常にわかりにくいというようなことでおりました。ところが、国だけでなくてだんだん府県、市町村等の専門家なり各省の機関に当たってみますると、たとえば隅田川のあの汚水というふうなことでも、隅田川の両岸で、東京都内で工場は何千何百何十何ぼある。そうしてこれはこういう汚物を出し、これはこういう毒物を出しておる。それか途中で化合をしたりなんかして、中和をされる場合もあるし、さらに激しくなる場合もあるということはあり得ましょうけれども、正確に見ますと、発生源がわからないということは、まだ調査が不十分ではないのか、こういうことに実はだんだん委員会では話が進んできておるのでございます。まあこれは例が当たるか当たらないか知りませんけれども、中国の国民は七億といい、八億といい、まあはっきりとはわからぬ。しかし、日本では大体一億だというふうなことが国勢調査その他でかなり正確に——これは正確と言っていいと思います。そういう意味で、この公害発生源も、各種の原因もありましょうけれども、チェックをしてまいりますると、必ずしもわからぬわけではない、、実はわかっている。わかっておるんだけれども、時間的にその工場は八時から十時まで、他の工場は十一時から十二時まで、また一緒に出すとか、いろいろなことがありまして、いいかげん言いのがれなども、極端に言えばないわけではないというふうなことでありまするので、私は、その発生源がわからないということについては、進藤さんの御説明では、各委員がどの程度の御認識でいらっしゃるのか、ちょっとその辺気にかかりまするので、さらにその点につきましてお話を願えれば幸甚だと存ずる次第でございます。
  8. 進藤武左ヱ門

    進藤参考人 ただいまお話がございましたように、現在ある公害をどの程度にするかということは、実は非常に各個々としてもむずかしい問題でございますし、特に集積公害と申しますか、各個個の工場で守っておりましても、多くの工場ができますと、それが集積されて公害が大きくなる。あるいは一般家庭から出る排気ガスでありますとか、あるいは汚水であるというふうな問題との関連をどうするかということで、非常にむずかしい問題でございますけれども、これをどの程度までやるかということは、どうしても押えなくちゃならぬ。そこで、これは厚生省のほうでもお考えになっておりますが、われわれのほうの委員会でも、環境基準というものをつくりまして、そしてこの程度のものでなければもう人体に支障があるとか、あるいはわれわれの生活環境を非常に不愉快にするとかいうふうな問題になりますから、その環境基準をまず各地区といいますか、適当な場所ごとにつくりまして、それの基準を守るようにあらゆる努力をしていくということに結論はなると思います。でありますから、各発生源に対する取り締まりは、これはもうはっきりこれから規制されると思いますが、そのほかの集積問題につきましても対策を講じなくちゃならぬ。そこで、さっき申し上げましたように、たとえば汚水問題につきましては、各個々の問題としてはたいした汚水の排水じゃないかもしれませんけれども、都市の生活みたいな問題になりますと、非常に集積が大きくなる。そこで国あるいは公共団体が公共下水をつくって、それで一括してやるということも、これは国家経済上から当然考えられなくちゃならぬ。われわれから申しますと、現存の公害対策としては、やはりできるだけ国、公共団体が積極的にこれの解決に御努力願いたい、こういうことでございます。
  9. 中井徳次郎

    中井委員 お考えのほど大体わかりました。国が積極的にやるということにつきましては、国会におきましてはもう各党を問わず熱心に取り上げていきたい、こういうふうに考えております。まだ最後のおまとめがないようでございますので、今後とも御検討をお願いする次第であります。  次に、石原さんに一点だけお伺いするのでございますが、先ほどいろいろ御説明がございました。実はちょっと問題が離れるかもしれませんが、あなたはかつて大蔵省にいらっしゃって予算のほうの御専門でもありまするので、そういうものとの関連でお尋ねをいたしたいと思います。  公害問題がやかましくいわれまして、いまの日本では交通難とともに、二つ日本の社会問題になっておると思うのであります。したがいまして、政府政府で熱心にやっておられまするし、私ども社会党もこれに負けず、これのしりをたたいて今日まで、たとえば企業公害責任ありというふうな問題についても、国会の本会議並びに各委員会を通じまして、私どもはここまで持ってきた実は自負心も多少持っておるのでございますが、その中で、何か公害公害というけれども財源なしにそんなこと考えてもだめじゃないかというふうな意見が巷間ある。そういう質問をされると私は黙っておるのです。といいますることは、現実の問題として公害を防ぐために国及び府県、市町村が取り組んでいくその形を考えてまいりますると、現在は、はっきり言いますと、ほとんど行なわれておりません。公団なんかつくったりなんかいたしております。これは投融資の関係でございましょう。したがいまして、積極的に国が公害の問題に取り組むという事態になりましても、金額の総額といたしましては、一国の一般財政全般から見ますると、きわめて微細なものである。ことしの予算が四兆数千億といわれる。その一%でも四百数十億あるわけですが、いま話にのぼっておりまするものをいよいよやるといたしましても、初年度からそんな大金が要るようなことではありませんし、またそういうことは必要でないようにさえ私は思うのであります。一例をいいますると、どっかの都市が移転をする、そのためには五百億かかるなんという発表をいたしておりますが、それとてもとうてい一年でやれる問題ではない。十年でやるとすれば年額五十億程度のことでございますし、その中で国が何ぼ持つかということになると、また金額が減ってくるということであります。したがいまして、公害に関する限りは、財源がないからあるからということが第一義的な問題にはなり得ない。これはやはり責任体制なり法制化がまず先行をいたしまして、それに基づいて予算措置をする。その予算措置は、そう大蔵省の主計局の諸君は心配していないと思います。心配していないと思いますが、一般的にそういうことを言う人がございまするので、かつてそういう経験者であり、かついま産業構造審議会産業立地部会会長代理としてこの問題に取り組んでおられる石原さんの率直な御意見を伺っておきたい。もちろん金はかかると思います。かかると思いますが、それは投融資の中でどれくらいであるのか、あるいは公害排除施設をした場合の減税の措置、あるいは助成金も場合によっては必要でございましょう。しかしながら、いずれにいたしましても、総体というものを考えてみますと、初めからそう大金が要るものでもないし、また産業界自体の負うべきものももちろんございますし、きょうは理論闘争をするつもりではございませんけれども、財源がないからというふうなことがもし原因であるとすれば、それはとんでもない、しろうとと言っては悪いけれども、そういう人たちの考えではなかろうか。もちろん財源は要りますけれども、総体の中においてはそんな感じがいたすわけでございます。その辺のところを石原さんの御意見を、ちょうどいい機会ですからこの際伺っておきたいと思います。
  10. 石原周夫

    石原参考人 私がこの席でお答えできますこととできませんこととのお尋ねでございますので、私のお答えできますことを申し上げます。  御承知のようにいままでの公害対策のやり方というのは、先ほど進藤参考人もおっしゃいましたように、なかなか実態がつかみにくいということもございまして、一つは直接あらわれておりまする公害防止施設に対する投融資関係——先ほどおっしゃいました公害防止事業団が設立をせられまして、今年度はたしか四十億でありましたかの事業費を用意しておられるように承知いたしております。実は私たまたま現在やっております仕事にも関係がございますが、開発銀行でありますとか、東北公庫でありますとか、あるいは中小公庫あたりにおきましても、おのおの産業公害防止施設に対する融資をいたしておるわけであります。したがいまして、そういう融資によりまする、たとえばばい煙の中のすすの関係、あるいは鉄その他の有害成分一の関係、そういうものを除去することでありますとか、あるいは水質の汚濁をきれいにする施設に対する投融資の関係、これは現在まで財政投融資の面が多いわけでありますが、処置をしてこられたわけであります。  もう一つは、何と申しましても、実態をきわめることも問題でありますと同時に、いかなる対策を講ずるかということに対する技術開発の面があろうかと思います。たとえば一番大きい問題の一つであります発電所の亜硫酸ガスというような問題がありまして、これはたしか通産省予算であると思いますが、本年度からいわゆる大型プロジェクトの一つとなりまして脱硫の関係、これは三年の計画でありますか何年の計画でありますか、やや長期の計画をもちましてスタートしておられるように開いております。なお、これに限りませず、公害全体につきまして各国立試験研究機関あるいは大学あたりにおきまして、相当な経費をもって真相の究明なり対策を樹立する検討をしておられるように承知いたしております。  今後におきましても、やはりそういうような、−公害実態を明らかにし、この対策をどうするかということを明らかにするのと関連をいたしまして、先ほど私も申し上げました立地部会関係におきましても、たとえて申しますれば公害防止事業団が先行投資的なものをやっていただく必要があるのじゃないか。応急対策だけではなくて、先ほども申し上げました調整地域の中においても、誘導地区というものをつくる場合に、公害防止の、たとえば排水関係でありますとか、そういうような施設を先立って準備をしておく、こういう問題も出てまいると思いますので、私ども実は答申でもその点に触れておるわけであります。あるいは公共団体あたりがあらかじめそういうところで土地を造成しておくということが誘導地区の設一定にたいへん便利であろうということを申し上げたわけでありますが、それに伴う工業用地の造成に関連します政府の財政の助成なり、あるいは先ほど申し上げました密集地域から移転をいたします分散指定地、ここから出ていきますときに、これは本年度も予算化せられておるわけでありますが、都市開発資金というものをつくりまして、それによってあと地買い上げをいたす。これは現にそのほかにも住宅公団におきましてもいわゆる面開発ということを申しまして、こういう密集地域工場を買いまして、そこに住宅公団の新しい見地における施設をしてまいる、こういうような対策がすでに講ぜられておるわけであります。それを大いに拡充し強化いたしまして、分散地区から分散をし、公害の見地からしましても、あるいは産業立地全体の見地からしましても、 より健全で、より能率的なところに工場を移してまいる。そういう面はすべて助成が要るわけであります。今日まだ公害審議会においても御議論されておる最中だというふうに承知いたしておりますし、先ほど進藤参考人も申されましたように、産業構造審議会におきましても現在論議の最中でありますが、そういうようなところで結論を得ましたら、またそれに基づきます財政の措置の問題が出てまいると思います。私がとりあえず申しましたのは、私ども立地部会におきましては若干の財政上の措置を勧告をいたしておるものでありますから、それについてのお話を申し上げたわけであります。
  11. 中井徳次郎

    中井委員 いまの石原さんの立場から私の質問に対してはお答えしにくいと思いますが、どうも公害の問題で財源が問題になるということが、二、三カ月前に、テレビだとか新聞だとかそういう広報関係の座談会の中で大きく取り上げられておりましたので、実はびっくりいたしまして、公害公害というけれども、少し具体的にお考えをいただくとそう大きな金でないということをまだお考えになっておらぬのだ。これは皮肉に言いますと、そんなことをやったら大金がかかるからできやせぬのだという俗説がまだ相当横行しておるのじゃないか。実は国の財政からいたしましても、そんなたいした影響力はないし、特にそのことのために財源を別に見つけなければならぬというようなことは絶対にないというふうに私自身が思っておるものですから、ついお尋ねをいたしたわけですが、まあお立場もありましょうから、この程度にいたしましょう。特に厚生関係のものはやかましくいわれますけれども、予算化したらごくわずかで、億以下の金だとか、少なくとも十億まではいかないというふうなものがほとんどであります。念のためにそういう意味でお尋ねをいたしましたので、ひとつ御了承願いたいと思います。
  12. 井手以誠

    井手委員長 高橋頑一君。
  13. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 進藤参考人は非常にお急ぎのようですから、きょうは簡単に一、二お伺いしてお答えを願いたいと思います。  先ほどお述べになりました中に、公害防止に関する基本法の問題もいろいろ検討なさった、そういうふうに承りました。そしてなお、この公害発生源関連しての問題として、たとえば工場立地問題等もいろいろ御検討になったようでありますし、そしてなお、石原参考人のお述べになりました中にもこの立地の問題が取り上げられ、特に工場立地適正化に関する法制という問題も論議された。そういうお話でありましたので、その問題について、いわゆる公害対策というものと土地の問題に関連して、なお詳しくお話が出たであろうと思うのですが、どういうお話があったかということをお伺いしたいと思うのであります。  公害対策の問題を考えますときに、やはり工場立地の問題であるとか、あるいはまた対策遂行上土地の問題が非常にやかましい関係を持つと思うのであります。すなわち、土地に関する所有権とか地上権、借地権というような私権というものに関しての制度は、現在のままでいいのか、あるいはまた、それに対して公共の福祉との関係において若干の制限を加える必要があるというふうなお考えのもとに意見があったのかどうか。要約して申しますと、公害防止対策上、土地に関する私権に、現在よりは若干の制限を加える必要があるかどうか、あるとすればどういうふうな具体的な御意見が出たか、それをお伺いいたしたいのであります。これは進藤参考人にお尋ねするのですけれども、やはり石原参考人工場立地適正化に関する問題としても大きな関連を持つと思うのでありますから、もしいまお尋ねしたような御意見が出たといたしますと、一応この際承っておけば幸いだと思うわけであります。  以上お尋ねをいたします。
  14. 進藤武左ヱ門

    進藤参考人 先ほど申し上げたように、まだ委員会結論は出ておりませんから、多分に私見が入ると思いますが、いまお話しのように、工場の敷地の問題等、あるいは工場発生源被害者との関連から、土地規制をしなくちゃならぬかというふうな問題につきましては、われわれの委員会でも議論があったわけであります。しかし、これは所有権の問題と私法上との関係が非常にむずかしい問題がございまして、工場ができまして、あとで近所へどんどん住宅が来まして、工場が先にできておって、あとから近所へ住宅が来た場合に、公害が発生する、それは困るからひとつ工場の近所へは住宅を建てないようにしようじゃないかというふうなことを規制しましても、これは法律でやれば別でございますが、そうでなければやはり工場がある程度土地を確保するというふうなことにもなりかねないような状態でございまして、その点は実は非常にむずかしい問題だと思っております。そこでケース・バイ・ケースとして、われわれから申しますと、産業の発展と、われわれの国民生活を守るという意味と、どちらが大切かということの判断の上で、工場をどうしてもここへ置かなければ工場が成り立たないというような、非常に適正な立地工場が建っておって、あとから被害住宅が来たという場合には、いま四日市で行なわれておるような住宅の移転もあり得ると思うわけであります。しかし、工場をつくる場合に、あらかじめこの中へは住宅をつくってはいけない、つまり被害者の建造物をつくってはいけないというふうな問題になりますと、これはやはり相当強力な規制法律か何かないと、現状ではできないと思います。いま議論をやっておる最中でございますけれども
  15. 石原周夫

    石原参考人 いま高橋委員のお話のございました点は、私ども審議の過程でだいぶ議論いたしました点であります。先ほども申し上げましたように、工場立地適正化していきまするのに、土地の面から接近をしてまいります方法と、工場そのものをどうするかという二つ方法があるというようなことを申し上げました。前段の都市計画あるいは土地利用計画ということに相なりますと、まさに高橋委員のおっしゃいました問題と正面からぶつかってまいるかという感じがいたすわけであります。たとえば土地利用計画と申しますと、ただ図面をこうつくって色を塗るということではなくて、その効果を実効あらしめるということになりますと、その議論が出てまいると思いまするが、これは実は役所の所管におきましても、通産省以外のほかの役所のほうが多いと思いますし、そのほうでまた御審議の点もございます。法律問題もなかなかむずかしい問題があるということでございまして、私どもは、その土地利用計画をどの程度までいわゆる私権の問題と関連をさせながら実施をしていくかということについては、実は結論を得るに至らなかったわけであります。ただ工場のほうから規制をしてまいる点については、私どものほうのやり方につきましては一応の議論をし、一応の結論に基づきまして答申をいたしておるわけであります。  いろいろな問題かございますが、たとえば先ほど申し上げました調整地域という問題もあります。調整地域というものを指定をいたしますと、その範囲内においては、工場を設置いたしますときに許可を要するわけであります。この点は御承知のようにいま非常な密集地域におきましては工場制限そのものがあるわけでありますから、それより一段と緩和せられた措置でございますが、それにいたしましても、地域をほんとうに弊害が非常に緊迫をしておるという地域に限定をいたし、業種もできるだけ画一的に禁止するという方法を避けまして、こうこういう業種は公害、あるいは非常な過密、スプロール化という点から見ましてやむを得ない。しかしこういうようなものはいけないという境目があると思います。そういう業種別にも必要最小限のものに限定をいたし、それからまた地域的にも限定をいたし、同時にまた適正化法そのものよりは、あるいはその下の分類かと思うのでありまするが、どういう基準でその制約、規制をいたすかという基準を明らかにする必要もあると思います。そういうような方法をもちましてやります場合には、いま高橋委員のおっしゃいまするような私権との抵触関係、それは大体よろしいのではないかというのが、私ども調整地域というものをつくります関係におきます考え方であります。  なお、いま進藤参考人からもお話のございました、せっかく私どもの申しまする誘導地区というものをつくりましても、その隣に家かできてしまっては困るじゃないかという問題もあるわけでございます。これにつきましては、先ほども申し上げましたように、たとえば地方公共団体があるまとめた土地を造成をいたしまして、その中で具体的な工場の設置配分を考えるという問題、あるいは現在工業専用地区という指定がございます。その指定をいたしてあるところが若干のケースございます。そういうようなやり方によりまして、せっかく工場ができてもすぐ隣に住宅ができてしまったというような事態にならないように、先ほど出しました工場が安心して生産活動ができるというような事態をつくってまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  16. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 次に進藤参考人にお尋ねをいたしたいのです。やはりこれは基本法の問題に関連をしてのことですが、いま御承知のように公害対策ということに関しての責任ある官庁といいますと、たしか十省か十一省かにまたがっておるわけでありまして、各省各省でいろいろの対策を立ててその遂行に当たっておられるわけですけれども基本法をつくるというような意見の出ましたときに、そういう公害対策に関する責任省とでもいいましょうか、所管の官庁をどうするか、そういう機構に関する御意見等が出たものかどうか、出たとすればどういう内容であったか承りたいと思います。
  17. 進藤武左ヱ門

    進藤参考人 これは実は私、厚生省のほうの公害審議会委員もやっておるわけですが、いまのお話は、厚生省の答申の中に実は行政機構をどうするかという問題がございます。われわれのほうで行政機構をどうするかという問題、一応話になりましたけれども、われわれは通産省のつまり産業公害部会でございますから、日本産業の面から見て公害をいかにすべきかというふうな考え方が強くて、行政の面に対しては実はあまり深い掘り下げはいまやっておらぬわけであります。しかし私、水質源開発公団におりますけれども、どうも新しい事態が出てきますと、つまり従来の行政機構でやれないような新しい事態が出てきて初めてその行政機構をどうするかという問題になるわけでございますが、私、過去いろいろの経験をさせられたのでありますが、新しい機構ができまして、その機構が全責任——全責任と言ってはおかしいのですか、ある責任を持って新しい事態に対処するという機構よりも、どうも二重機構になりまして、観念論というか、理論としては新しい機構でやることでありますけれども、やはり前の行政組織と新しい組織との関係検討しておりませんと、えて二重機構になる可能性が非常に多いと思います。ことに今度の公害のように非常に実態をつかむのに複雑である。それから発生源も非常にバラエティーが多い。それから被害者のほうも非常に複雑な関係を持っているというふうな問題で、しかも行政組織としては、国と公共団体との関係をはっきりさせて、国はどういうことをやるのか、公共団体はどうするのだというふうな問題に関連してきますと、行政機構を一元化して強力にやるという観念的な問題は、これはちっとも異見はないわけでございます。しかし、強力にして実行できる行政組織はどういうものだという問題については、私はよほど慎重な検討が必要ではないかと思います。ただ、いまお話しのように、産業の問題に対しては通産省、あるいは国民生活に関しては厚生省、あるいは自治省も御関係になっているというふうないまの状態は、これをきっぱり行政組織でやるか、あるいはいまの組織を生かしてもっと緊密な連絡をとって、そして一元化していくかという二つのやり方があるわけでございますが、もし新しい組織をつくるなら、過去の行政機構との関係を十分整理して、そして新しい機関が全責任を持って動けるような組織にしなくちゃいかぬと思います。また、もしそうでなければ、現在ある組織、ことにいま連絡会議みたいなものがございますから、そういうものを十分強化して、各省が力を合わせて一つの自的へぶつかっていくというふうな形も考えられると思います。これはまあわれわれ行政のことについてはあまり知識はございませんが、私の考えとしてはそういうことでございます。
  18. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 もう一つ。第三点ですが、公害というのは、先ほど進藤参考人からお話のありましたように非常にむずかしい。公害の観念といいましょうか、その概念というものはどういうものかという公害の意義ということは、私は説明するのになかなかむずかしいと思うのでありますか、しかし、公害というつかまえどころのない事柄によっていわゆる被害を受けておる国民は非常に多いと思うのです。健康を害され、あるいは文化生活をそこなわれて非常に不愉快な生活をしておる者が非常に多いと思うのです。ただ、公害被害というものをどういうふうにしてつかまえるかという問題、これが私は大切だと思うのです。そして、それはやはり会議でいろいろ検討される中に出てきた問題じゃないかと思うのでお尋ねするのですが、被害を受けておる国民の中からその公害というものについての被害をどういうふうにしてつかまえていくかという問題、たとえば個人個人で申告をするのか、あるいはまた、国なり公共団体施策によってそれを調査してつかまえていくというのか、いろいろ考え方はあると思うのです。そうしてそれは併用していかなければならぬという考えも私どもいいと思うのですが、そういうことについてのお話があったらひとつ伺いたいと思うのです。
  19. 進藤武左ヱ門

    進藤参考人 ただいま御質問のありましたように、公害実態をつかむことは非常にむずかしいのだと思います。しかし、結局、公害と称する問題に対して被害を受ける人ですね、この人の生活が脅威を受けるとかあるいは幸福を乱すということがあってはいかぬわけです。私は、どうしてもここがスタートにならなければいかぬ。発生源をつかまえるということも必要でありますけれども、われわれ国民の生活の幸福を乱し、国民の福祉の町上を妨げられるような現実の問題は何かということをまずつかまなくちゃいかぬと思います。それをつかむのに、これは観念的な面もありますけれども、やはりいま技術が非常におくれておりますから、公害技術をひとつ検討しまして、そして、たとえば大気汚染はいま東京都等でいろいろ測定はやっておりますけれども、ああいう問題、それから水質保全の問題というものの測定に対する技術ももっと開発していかなければならぬと思いますが、そういう技術をしっかり握った上で、さっき申し上げましたように、環境基準、つまりわれわれの生活に対してこういうことになっては困る、空気はこういうことになっては困る、水質はこれじゃ困るという環境基準をまずつくりまして、それを守っていくということになるわけでありますが、それを汚しているものは一体何かという原因を今度はだんだん突きとめていかなければならぬ。そうすると、われわれの家庭生活に対しても出てくるだろう、それから工場からも出てくるだろう、あるいは農薬で農業排水からも出てまいるのでありますから、そういう問題を個別的に原因をつかんでいくことが必要だと思います。そして、それの対策としては、たとえば家庭生活に対する排水あたりを各個々の人がやろうといってもなかなかこれは国家経済上もむずかしいわけであります。ですから、原因をしっかりつかみまして、そのもとを断つ、あるいは環境基準に合わせるようにするのには一体どうやるのが国家経済から見て一番能率的かというふうなことが検討される、べきじゃなかろうかと思います。  それからもう一つは、現在いわゆる公害といわれているのは、大気汚染、水質汚濁あるいは振動だとか、ありますけれども、これは世の中の変化によりまして公害というものも非常に内容が変わってまいるわけであります。騒音なんというのは飛行機ができましてからできたような状況でありますから、われわれの国民生活というか、社会生活の進歩に従いまして、やっぱり公害の内容も変わってまいりますから、しょっちゅう公害の問題をトレースしていかなければならぬ。技術的なトレースも必要でありますし、法律の改正も必要であろうと思う。いままでほっておいたものですから、いろいろ公害問題かクローズアップされましたが、ここで一応秩序をつけましたら、今後はそういう問題をやっぱりトレースして、そうしてわれわれの環境基準を守り抜くという態勢をどうしてもとるべきじゃないかと私は思います。
  20. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 進藤参考人が非常にお急ぎのようですから、きょうはこれで打ち切っておきます。
  21. 井手以誠

    井手委員長 進藤参考人並びに石原参考人にはどうもありがとうございました。     —————————————
  22. 井手以誠

  23. 和達清夫

    和達参考人 私は、ただいま御紹介いただきました、公害審議会会長を仰せつかっております和達でございます。公害審議会のこれまでの審議状況について御説明申し上げます。  公害議会は、委員の全員が公害部会に属することになっております。  昨年九月二十七日付で厚生大臣から「公害に関する基本施策について」の諮問がありました。これまで、公害部会といたしましては六回、小委員会につきましては十四回にわたって審議を行なってまいりました。  さて、公害審議会としての公害問題についての基本的な考え方公害問題に取り組む基本的姿勢につきましては、去る八月四日に厚生大臣に中間報告として提出いたしました。私どもは、中間報告において明らかにいたしました基本的認識のもとに、引き続き、政府のとるべき基本的施策について鋭意審議してまいりましたが、その結果は、先日十月七日の公害審議会の決定により答申を厚生大臣にいたした次第であります。  その答申の内容となる事項のうち、おもな考え方について御説明申し上げます。  まず、私どもといたしまして、今後の公害対策を進める場合、個別の排出基準規制するというだけでなく、地域全体についての一定の目標を明らかにしたところの総合的な対策を基礎としなければならないということを強調いたしたいと思います。そのため、各種の公害対策の目標となるべき環境基準を設定し、国民の健康と生活環境を守る見地から総合的な公害対策を推進することが重要であります。  環境基準の設定につきましては、いろいろむずかしい問題もございますが、大気汚染、水質汚濁、騒音の三種については、これを設定することが可能であり、公害審議会としても大気汚染その他につきましても専門委員会を設け、具体的な検討を加える予定でおります。  環境基準の維持確保のためには、どうしても地域的な公害防止計画のような方策をとる必要がございます。現に汚染が著しい地域については、汚染を環境基準まで引き下げ、これから公害が発生することが予想される地域については、汚染が進行しないよう措置するための計画でありまして、これには強力な財政措置を必要といたします。  また、今後の公害対策のあり方につきましては、予防的な対策の重視ということとも関連して、土地利用計画の面から対策を講じていく必要があります。  企業その他の発生源と住居とが混在していましたり、新しい産業都市工場や道路などの整備が公害防止の観点から十分計画されていないということが、今日の公害問題の原因の一つでありますが、これを事前に防止するという見地から、都市計画その他の土地利用計画を改善強化して発生源立地の制限なども含めて効果的な公害防止計画をぜひとも制度化すべきと考えております。  そのほか、公害審議会として答申いたしました事項は、原因者の責任とか、国及び地方公共団体の責務とか、公害基本法の制定に関することや未規制公害対策に関することなど、十数項目にわたっておりまして、いずれも公害防止対策にとり重要なことと思われますが、後に長野公害部会長から御説明があると存じますので、そちらよりお聞き願いたいと存じます。  ここに私として言及させていただきたいことは、科学技術研究の振興についてであります。公害対策として、その基礎となる学術研究や防除技術の開発がきわめて重要であることは申すまでもないことでありますが、将来とも公害問題解決に大きな役目を果たすであろうこの部面につきましては、国としてその推進に特別の考慮を払われますことをお願いいたしたく存じます。  最後に、私どもといたしましても、国民の期待にこたえるに足る国の総合的な公害対策が確立され、推進されますよう強く要望いたす次第でございます。ありがとうございました。
  24. 井手以誠

  25. 長野国助

    ○長野参考人 ただいま公害審議会会長から、基本的な主要な点について御説明がございましたので、私はその他のことについて説明をさせていただきたいと存じます。しかし、若干重複するようなことがございましたら、どうかお許しを願います。  最初に、私は国民の基本的人権と公害という問題について、ちょっとおしゃべりをさせていただきたい。それは、私がなぜ公害審議会委員に選定されたかということについて、私自身の考えを申し上げます。  私は、法務省関係によって設置されております人権擁護委員という制度がありまして、これは全国的な組織といたしましては、全国人権擁護委員連合会と申すのであります。その会長を約十年つとめております。また、東京都人権擁護委員連合会ないし協議会というものがありまして、いずれもその会長を約十年間つとめておるのでございますが、その人権擁護委員にあらわれてくる問題の中に、約十年前からすでに公害問題が基本的人権の侵害という形であらわれ、取り上げられておりまして、また決議もされておる。その決議は、すでに数年前に内閣はじめ厚生省、建設省、あらゆる関係の官庁に提出いたしておりまして、善処をお願いいたしておる。そればかりではなく、自民党、社会党あたりにはやはりその書面を提出して御協力を願っておる次第なんであります。  その基本的人権と公害というものがどういう関係にあるかということについては、非常に長くなりますし、それを目的でいま私が意見を申しておるわけではございませんから、詳しいことは申し上げませんけれども、たとえば隅田川の水質が非常に汚濁しておる。夏などは西国橋のあの辺からメタンガスがぶくぶく上がっておる。見た目にきたないばかりでなく、非常な悪臭を伴っておる。これがちょうどオリンピックの開催を控えておりまして、何としても日本の首都でこのざまは国辱であるし、非常に日本の文化の水準の低いことをあらわしておる。国民が忍耐するのはよろしいけれども、それをがまんしてやっておるということは、何としても日本の国民の政府に対する要請が弱いと申しますか、いくじがないと申しますか、これは何としてもきれいにしなくちゃいかぬというのでいろいろ尽力したのでございます。その結果、主として予算関係では東京都が出してくれたと思いますが、それから警視庁、水上警察などの非常な御協力を得て、われわれ委員もたびたび隅田川へまいった。その結果といたしましては、ある程度まで発生源を突きとめました。突きとめることができたればこそ、幸いに今日はそれほどひどい悪臭ではない。それから汚濁の点も、もちろん完全とはいっておりませんけれども、ひところから見ますと非常によくなった。現に付近の子供がある程度まで魚の泳いでおるのを見ましたというように非常に驚異的に喜んでおるようなこともある。その当時はさような水質の汚濁、悪臭の結果どういうぐあいであったかと申しますと、付近の料亭が一番先に悲鳴をあげた。それまでは、夏などの——春先でもそうですが、あけ放しておるときには、昔は非常によかったのでありますが、非常な悪臭を発するためにお客さんが少なくなっちゃった。夏などは店を閉じなければならぬ。それから個々の家庭でいいますというと、これはぜんそくかどうか存じませんけれども、非常に咽喉の弱い子供がのどを痛める。おばあさんや腺病質の人もやはり非常に咽喉をおかされる。それから金属などにつきましても、やはり変色したりさびついたりして非常に困る。結局、人体に対する健康、財産に対する非常な侵害、さような点から申しましても、人間の生活に最も重要である健康という点からいってもほっておけないんじゃないかということで非常に努力いたしました。その結果、とにかく日本のほんの一部であるけれども、偶田川の例をとっただけでもある程度の公害が除かれた。でございますから、やはり人間の一生懸命な努力によればある程度の効果があるということを認識できましたので、私どもも今後ますます努力しなくちゃならぬと感じたわけなんであります。これは国民の人権と公害ということについて、われわれ全国に散在する人権擁護委員がどんなことをしたか、その結果どういう効果を生じたかということの一端を申し上げた次第でございます。  次に本論めいたことについて申し上げますが、まず公害についての原因者、ひところは加害者なんと言ったものでありますが、近ごろは加害者ということばは非常によくないからというので一応原因者と言っておるのでありますが、原因者ということばが適当であるかどうか、これはどうせ国会の皆さんや法制局あたりの皆さんが適当なことばをおきめになると思いますが、一応原因者とか発生者と言っておりますが、その原因者の責任の明確化ということでございますが、これは法律的にはいわゆる無過失責任という立場をとっておるのであります。これは御承知のとおり、それを責任追及する段になれば、やはり原因者のやる産業経営などに、はたして故意があるか過失があるかというような問題が起こりますが、故意、過失という観念だけではとうてい規制できませんので、一応は無過失責任であるという考えに立っておるわけであります。もっとも、公害による被害につきましては、その原因者がはっきりしなかったり、被害がいわゆる受忍限度を越えるものであるかどうかの判断が非常に困難でございます。受忍限度ということばは、ときどきいまごろ世上にいろいろ論議されておりますから私が説明するまでもないと思いますが、だんだん国民の生活が複雑になり、文化が進むようになると、特に都市の生活におきましてはいろいろな公害現象が生ずるのであります。これはお互いのことだからある程度われわれはがまんするよりしかたがない。しかしながら、その限界というものが、どれほど人間あるいはその他の生物、植物などに害をなすかという程度にもよりますけれども、とにかくお互いでいろいろな社会をこさえておる、そのうちには産業に従事する人もありますし、また一般の文化事業に従事する人もありますが、とにかく産業というものはそれ自身の副産物として好ましくない現象も生ずるけれども、大部分としては国民の生活に大いに寄与しておる、だからある程度まではがまんせざるを得ないのではなかろうか。その程度がどの点かというのでありますが、それを学術用語か法律用語か十分存じませんが、受忍限度とか忍容限度とかいっておりますが、そういうような一つの何といいますか、がまんしなくてはならぬ社会の一つの慣習があるのでございましょう。さようなものを判断することもなかなか容易でございません。  それから、私どもといたしましては公害救済措置を整備するという見地から、公害紛争の処理やその賠償の支払いなどについて、公正な解決がはかれるよう何らかの方策を検討するように強く要請しておる次第であります。  公害責任ということに関連いたしまして緩衝地帯の設置。この緩衝地帯の設置の方法は、私は専門家じゃないから存じませんが、とにかく幾つかの緩衝地帯の設置の方法があるのでございましょう。その緩衝地帯の設置。  それから住居の集団移転、これは四日市あたりでもすでにやっておるし、またやる必要を感じておるらしゅうございますが、集団移転という問題が起こります。  それから、公害防止事業の実施になりますと、これはどのくらい金がかかるか私はわかりませんが、少なくとも少なからぬ膨大な費用を要するのじゃないかと思っておるのであります。そうすると、一体それはだれが負担するか。むろん因果関係から申しましても発生源者たる産業企業の経営者にも私は責任があると思いますけれども、それならといって、それらの企業家にことごとく全部の負担を強要するわけにはいかないと思う。そういう点について非常な問題がありますが、しかし、少なくともその費用の一部については企業家に負担していただかざるを得ないと考えておる次第であります。  それから、その負担の割合やその決定手続、そういういろいろむずかしい問題をどういうふうに決定するか。それらの公害防止事業につきましては、これは個人たる企業家、発生源者だけでは無理だということは先ほど申し上げましたが、これについてはどうしても国、地方公共団体が財政措置を講ずる責任があると私どもは考えております。どういう性質の責務であるか別といたしまして、広い国家の政治といたしましては、やはりそこまで考えなければならぬと考えておる次第であります。同時にまた、原因者もその責務と受益の限度に応じまして費用の負担を行なうという考え方を明確にする必要があると考えておるのであります。  そのほか、先ほど会長も言われました、われわれが取り上げておる公害の中で、大気汚染、水質汚濁、それから騒音、いろいろあるのでありますが、下水道の問題といたしましても、その他いろいろございまして、生活環境施設等については国や地方公共団体による公共投資のことが必要なのでありますが、現在の日本の状態からいいますと、これらのことが非常に立ちおくれておると存ずるのであります。さようなことが今日の公害問題の大きな原因でありますので、これについて思い切った財政措置を必要とすること、それから発生源公害防止施設についての金融上、税制上の助成措置の拡充、公害防止事業団の拡大強化についても、審議会としてみんなでこれは必要であるということが一致した意見でございます。  次に、公害防止行政の推進をはかるための行政機構の措置でございます。公害問題は、各省庁にわたる行政を最大限に推進して対処する必要がありますが、各省の施策調査研究の総合調整と、公害行政の基本方策とを策定する国の機関を設置することを提案したいと考えておる次第でございます。  このほか公害防止行政について、国と地方公共団体の事務の配分の明確化や測定監視体制の強化、科学技術研究の振興、公害問題についての普及啓蒙その他についても、審議会として答申を提出する予定でございます。  最後に、公害基本法の制定につきましてでございますが、私どもといたしましては、かかる基本法の制定がぜひ必要であるという見地に立っておる次第でございます。しかし、もちろん、基本法が制定されましたからといって、公害対策がすべて解決すると考えておる次第ではございません。これが今後の総合的な公害対策の推進のため出発点となるものであるという考え方のもとに、関係当局で御検討願いたいと考えておる次第でございます。  以上、はなはだ簡単でございますが、これをもって私の意見といたします。ありがとうございました。
  26. 井手以誠

    井手委員長 ありがとうございました。  以上で参考意見の聴取を終わりました。  質疑の通告がありますので、これを許します。高橋禎一君。
  27. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 長野参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、先ほど基本的人権と公害の問題についていろいろお話がございまして、非常に感銘を深くしたわけであります。それに関連しまして私どもの考えますのは、公害という、ある意味においてはつかみどころのないような非常に範囲の広い、いわば近代的な産業病とでもいいますか、一つの国全体が病気にかかっておるような印象を与える、国民の健康なり文化生活を、少しぎょうさんな表現になりますが、脅かすような問題は、これはやはり国家が、国民全体の健康にして文化的な生活を保障するという政治的責任において、人権を守るという立場に立って解決をつけなければならぬ問題だと思います。ただお話にも出ましたように、社会がだんだん発展していき、特に産業の繁栄につれて、こういう問題はやはり次から次に起こってくる問題だと思うのであります。  そこで受忍限度ということばがございましたが、やはり国民もある程度のものは忍ばなければならぬでありましょう。そこで、その限界がまたはっきりしない問題ですから、国民の中には、やはりこれは公害として当然救済さるべき問題だと思っているにもかかわらず、しかし、それはおっしゃった受忍限度以下のものであるから、やはりがまんしなければならぬのだ、こういうふうなところに、いろいろ国民と国家との間にと申しましょうか、国民とその問題を解決していかなければならぬ責任あるものの間において、必ずしも意見が一致しないものですから、そこに非常な不平なり不満なりが起こってくる危険があるわけであります。これが政治上非常に大きな問題でありまして、そしてまた、国民としても非常に不愉快な問題ですから、そこのところを解決していく一つの線とでもいいましょうか、それを確定していかなければならぬと思うのであります。それには私は、公害を取り上げて、その標準を明らかにして、国民もこの程度はがまんをしなければならない、それからお話に出ました原因者もこれだけの責任を負わなければならないということ、及び国なり公共団体は適当な施策を講じなければならぬという、その線を明確にしていく機関が必要のように思えるわけであります。と申しますのは、国民全体すなわち被害者側を納得させておかなければなりませんし、原因者のほうも責任として、故意、過失でなくして、無過失責任を負わせるということになりますと、これもまた納得をさす必要があるわけであります。そういうふうにこの両者を納得づくで、しかもそこに不平のないようにして公害問題を解決していかなければならぬわけですから、ただ場当たりにそれは公害である、公害でない、原因者に責任がある、責任がないといったようなことで、その明確な線が出ないということになりますと、私は公害による直接の被害だけでなくして、公害あるがゆえにその問題をめぐっていろいろ政治上やかましい問題が起こってくる危険があると思うのであります。  そこで私のお尋ねいたしますのは、そういうふうな問題をすっきりさすために、公害があると信じた国民は、国なり公共団体なりあるいはまた特殊の機関なりに申し出まして、そうして、それは個人対個人の問題も中にはあるでしょうし、あるいは真に公害といわれるような問題もあるでありましょうが、それらを一定の機関によって調査研究をして、そうして受忍限度に達するかいなか、そしてまた、その責任者はだれであるかというようなこと、そしてその対策はこうして被害者救済していくんだという、そういう公害受付機関とでも申しましょうか、当初の問題を受理して、調査研究して、それからそれに対する対策を進めるべきか、あるいはそこは受忍限度の問題として国民はがますんべき問題であるか、というようなことの結末をつけていく一つの制度が必要のように思うのですが、公害対策基本法制定なり、その他の問題について論議なさった際に、そういうふうなことが一体いろいろ御意見として出たかどうか。出ておるのじゃないかと思うのでありますが、先ほども進藤参考人にもお尋ねした点でありますが、重ねてひとつそういう問題についてはいわば専門的な知識をお持ちになり、権威者である長野参考人に特にお尋ねをしておくわけであります。よろしくお答えを願います。
  28. 長野国助

    ○長野参考人 ただいまの御質問は非常にむずかしい問題でございますが、しかしまた非常に適切な御質問と思っております。私は、実はあまり専門家でございませんけれども、いま高橋先生から御質問のあったようなことはたびたび話題にもなるし、議論もされたわけでございます。そのあらましは、厚生大臣の御質問に応じて十月七日付で提出をいたした公害審議会答申、これにも若干触れてはおります。おりますが、しかし、かりに公害基本法なりその種の法律ができましたといたしましても、事の円満解決をはかるためには、やはり一応話し合いが必要であろう、それに関する機関も必要じゃないかということが、これにも簡単ながら書いてあるつもりでありますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、少し例が飛躍するかもしれませんが、いま非常に日当たりが悪い、あるいはジェット機でやかましいからというので裁判所へ訴訟を起こしております。いままではひなたぼっこができて、干しものが非常によくかわくし、特に暖房がなくても天然のお日さまによって日当たりが楽しめたのでありますが、急に東南のほうへ大きい建物ができてしまって、風通しも悪くなるし、非常に、暗くなるし、完全に日当たりが悪くなったというので、裁判所へ、すでに建築中にそれを差しとめる仮処分を申請し、あるいは完成した後には、それを取り除けという訴訟を起こしておりますが、私の知っておる範囲では、まだ積極的にこれを支持した判例がございません。やはり受忍限度のものである、その範囲内のものであるから、これはお互いさまだ。たとえば、その非常にやかましく言っておる日当たりの悪い小さい家でも、将来また自分のほうでもそういう建物を建てる必要があるんじゃないか、そういう時分に同じようなことになる、お互いさまじゃないかというような考え方が裁判官にあるせいじゃないかと思いますが、すでに新聞にも二、三例が出ましたけれども、裁判所ではやはり原告の請求をいれてくれてない。原告の請求は棄却されておる。それはやはり受忍限度の問題に関連すると思うのでありますが、これは非常に必要でありまして、その限界をどういうところにきめるかということについては、同じく日本国民であっても利害関係が違うと、やはり議論もみな違うのです。非常にむずかしい問題でございますけれども、これをどういうところできめるか、この問題を、国民一般にこれまではいい、これまではいけないのだというようなことが、早晩きまると私は信じております。これについては、やはり各階層から選ばれた有識者が委員会をつくったり、政府にもいろんな委員会、国会もおつくりくださったりして、みなで総合的に気長く考えてやるよりしかたがないと私は考えております。はなはだばくとした考えであります。  ただ、こういうことは考えております。私は法律家ですが、なるほどある地域でいろんな公害が発生しておるが、しかし、一つ工場からだけの排気ガスでそういう害が生ずるのではなくて、大ぜいの工場の共同作用、共同現象によって、あるいは限界以上のそういう現象が免じる。その時分に、一人としての問題を取り上げた時分にはそうまではならぬが、しかし、その地域における大ぜいの企業家の事業によってそれを総合するとけっこう大きな現象になる。それは私が考えると、民法にたしか共同不法行為というのがあります。原因を与えておるが、しかし、だれが実際具体的に原因を与えたかはっきりしない共同不法行為というのがあります。これは十分研究しておりませんけれども、何かそういうふうな理論でも考えて、はっきりはしないけれども、しかしその大きな原因を与えておる一人には違いないという時分には、やはり連帯観念でもって処理していただくとか、何かそういう法律面、社会常識、いろんな点から考えていけば何とかできるの、じゃないかと私は考えております。私は専門家でございませんから、はなはだ御期待に沿うような答弁はできませんが、御了承願います。
  29. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 大体先ほどお尋ねしたと同じことのお尋ねになるわけですが、これについては、和達参考人のほうからももし御意見ありましたら伺いたいと思いますが、公害といわれるものの中に、いわゆる被害者、加害者がはっきりわかっておる。それは振動とか、音響であるとか、いわゆる公害と思えるようなことであって、はたしてそれが公害の中に入るのかどうか知りませんが、加害者と被害者がはっきりわかっている問題は、これはお話のように裁判等によってその責任を明らかにし、救済を受けることができるわけです。そうしてまた、共同責任論が出ましたが、加害者がだれと、だれとだれと共同してやっておるのだということが明確になれば、それも調停なり裁判によって救済できると思うのですが、いわゆる公害、それはむしろ純粋の公害じゃないかと思うのですけれども、しかしそこはよくわかりませんが、いわゆる原因者というのが、共同ではあるけれどもその限界がわからないというような問題が、すなわち共同者というものが明確にし得ないようなものであって、大気汚染とか、水質の汚濁とか、音響とか、振動とかいろいろあると思うのです。そういうふうなものから受ける国民の被害というものも、これはもちろん救済しなければならない。その公害防止しなければならぬわけですから、むしろこの辺に公害対策のほんとうのむずかしさと、また一面非常な重大な意義があると私は思うのですが、そういうふうな種々雑多な、いわゆる国民のほうから考えますと、これは公害だと思えるようなことで救済を求めたいというときに、やはりその被害者の言い分を聞いて、被害者を一応納得させるなり、いわゆる受忍限度が問題になるのでしょうが、納得させるとか、あるいはまた、それは責任者はこういうものであるということの指示を与えてやるとか、あるいは公共団体なり国なりの力によってその問題は解決していくのであるということによって納得させるとか、いろいろ公害そのものが定義を明確にすることがきわめてむずかしい問題であると同様に、その対策も実に複雑なものだと思うのであります。しかしながら、それなるがゆえに、国民が公害によって被害を受けておる、こう考えておるときに、これはかりに間違いであっても、それをそのまま放置しておくというようなことは、私はよろしくないと思うのです。ですから、公害対策一つとして、私はこういうことが基本法制定等に関連して意見がいろいろ出たものと思いまするし、答申の中にも若干それについてお述べになっておるのでありますが、ここのところが公害対策のやはり基本中の基本になるのではないかと思うのです。この問題はだれが解決をつける責任者である、国であるか、公共団体であるか、共同責任者であるか、また一事業家であるか、そういうことを明確にしていく。しかしながら、それは裁判じゃないのですから、やはり行政的に一応その公害被害者が納得をし、あるいはこの問題は将来解決していくんだという希望が持てるような、そういう制度が私は必要のように思うものですから、それについてお伺いをいたしたわけでありまして、もし御意見がありましたら、ひとつお述べを願いたいと思うのであります。
  30. 長野国助

    ○長野参考人 十分なお答えができぬで申しわけございませんが、私が必ず方法があり、でき得ると思うのは、産業公害というものはやはり自然現象ではなく、人間のやったことであるということと、その被害者側が非常に広範囲地域にわたる、多数であるということ、さような点から考えましても、必ず私はある法ができると思う。これはもうはや七、八年前でしょうか、ある少年が親と一緒に歩いていたところが、自動車で突然親が殺されて、子供が追っかけたけれども、とうとうひき逃げされてわからなかった。たまたま国会に取り上げられまして、すぐ法律ができて助けてやった。その時分の損害が三十万でしたが、被害者もわかって親が殺されておるけれども、だれが加害したのか行くえ不明で逃亡しておるからわからない。ですから、だれを目標にして損害賠償をしていいかわからぬけれども、その時分は、とにかく加害者がわからなくてもどうかせぬといかぬというので、結局最低三十万円、いまは百五十万くらいになっておりましょうが、そういうふうに全然加害者がわからぬ場合でも、国家の力、国家の行政により、もちろん立法府の力でありますけれども、そういうことができたのでありますから、少なくともその加害者がわかっておるような場合、唯一の加害者じゃなくても、共同作用してそういう発生源ができたと認められるような場合には、何か方法が、いまの自動車保険のことから考えましても、私はでき得るものだと考えておるわけであります。この点につきましても、社会でもすでに公害問題を大きく取り上げて、前向きの姿勢で打ち出さなければならぬといっておる際でございますから、どうか国会の皆さんの非常な御尽力によりまして、この法律ができることをお願いしておる次第であります。
  31. 和達清夫

    和達参考人 先ほどのお話の、公害は原因によっていろいろあるということでございますが、騒音などは近いところに限定されておりますので、ほぼ発生源がわかっておる。ところが大気汚染、水質汚濁になりますと、ほぼ見当のつく場合から、非常にたくさんの発生源があって十分定めにくい場合がある。そのためにこそ、環境基準という住民の立場から一つの基準を考えることが必要である。ただいま恕限度というようなことばも出ましたけれども、恕限度と環境基準が全く一緒のものであるかどうかはなお十分検討を要しますが、ほぼ似た性質のものである。もちろんこの環境基準は、健康その他人間の生活によってきめるものでありますから、現在の科学で厳密な線をそこに引けと言われれば、一部まだ厳密さが十分でない点もあると思いますが、しかし、少なくとも現在の科学でわかるところの範囲において、この際に一応環境基準というものをきめ、それを目標として、もし現在それ以上に汚染されておる場所がありますれば、もちろん皆さんも、かなりひどく汚染されておるところがあることも御承知のとおりでありますが、そういう場所はできるだけ早くその基準を下回るように、また将来の計画においても、この基準をこすようなおそれのあることに対しては、十分前もって立地計画等を立てるということは、前に申し上げたとおりであります。  しかし、ここで大事なことは、基準をきめたからといって、その基準すれすれまで許されるのかというような考えが起こることでありまして、恕限度ということばもあまり好ましくないのは、ここまでは当然がまんしていいのだというのでなくして、こういう問題は汚濁が少なければ少ないほど人はしあわせなのでありますから、これはもうぎりぎりの線であり、できるだけそれより下にするというような努力が必要だということは、申し上げるまでもないと思います。  なお、そういうようにして一般的の汚濁、汚染を押え、そうして個々の排出の基準につきましては、この環境基準をもとにして、その地域によってまた定められるというようにして一般には押えましても、特別の場合あるいは時間的の問題その他によってどのような公害が起こらないとも限らない。そのために、先ほどからお話しのように、いろいろ問題が起こったときにどこで苦情を一体処理するかという問題でございますが、この答申にも、国と地方公共団体の事務の配分ということが書いてあります。地方公共団体におきましては、その地域においていろいろな施設をして、こういう苦情に対しても処理しなくちゃいけない。もちろんそれは地方公共団体のでき得る範囲内でありますけれども、また始終公害実態を測定し、またどういうもので公害が行なわれているか監視するという任務も、そこに地方公共団体が持つべきであるということを答申されております。そういうようにして、もちろん中央におきましては、先ほどからお話しの公害に関する新しいしっかりした組織というものができなければならないという答申があり、そこで国全体のことについては行なわれると思いますが、それぞれの地域においては地方公共団体が行なうということになっております。
  32. 井手以誠

  33. 中井徳次郎

    中井委員 時間もだいぶ経過いたしましたので、簡単に二点だけお尋ねをいたします。  最初和達さんに。いろいろ御説明ございましたが、その中で科学技術の面で防除技術を大いに進めていかなければならぬということであります。先生の御専門でもございまするから、この点でお伺いをいたしたいのでありまするが、特にいま日本公害中心になって論じられておりますのは、石油化学による亜硫酸ガスの問題であります。これは幸か不幸か日本資本でやっておりまするアラビア石油が特に硫黄分が多いということ、これを持ってこなくちゃならぬという、資本の面からも、国民的な面からも、国家的な見地からもそういう要請がある。しかし、それを持ってくると公害になるというふうな、まことに矛盾をして、しかもなおそれを片づけていかなければならぬ問題があろうと思うのであります。そこで結局のところ、重油からSO2を出すこの技術につきましては、重油をたいたときの煙からとるものとか、あるいは重油そのものからとるというようなことで、科学的には一応の結論が出ておる。しかし、それは商業ベースに合うかといえば合わないというふうなことなんでございます。せめてこのことだけでも、むずかしいかもしれませんが、私は科学技術のしろうとでございますが、国家的要請にこたえて、日本の学界の総力をあげて早急に解決さるべき緊要事でなかろうか、そういうふうな感じを私は持っておるものでございますが、この点についての和達さんの御見解を伺っておきたいと思います。
  34. 和達清夫

    和達参考人 ただいまお話しの防除技術の開発でございますが、これは世界各国におきましても、また日本におきましても、相当に開発されております。お話のように、これが経済的にどういう関係にあるかということは、もちろん問題でありますけれども、できるだけ現在のものでもそれを適用するように、そして技術開発をますます盛んにして、さらによいものを将来のためにつくっていくということのために、研究者も十分にその点については認識し、研究を進めておると思っております。国としても十分なる推進方をお願いしたいと思っております。  なおこの際、公害対策の学術面は三つありまして、ただいまの面が一つであります。もう一つは、公害といういわゆる大気汚染とかその他が、人体その他に対してどういう影響を及ぼすかという研究であります。この点につきましても、基本的の問題でありますからやはり十分なる研究が必要である。もう一つは、公害現象は気象、海洋あるいは地下水とか水の流れというものに関連しております。そういう地球科学的の学問、これとの関連を十分に研究する。この三つの部面が学術的に進まなければ、公害対策の科学技術は十分でないと考える次第であります。
  35. 中井徳次郎

    中井委員 承りましたが、いまお尋ねをいたしました重油からSO2をとるという具体的なことにつきましては、今後採算ベースといいますか、そういうものに乗りますのにはどれくらいの時日を要するか、お見通し等承ることができれば非常に幸甚だと思います。
  36. 和達清夫

    和達参考人 私、地球物理専門でございまして、そちらのほうはそちらの専門家から伺っていただきたいと思います。
  37. 中井徳次郎

    中井委員 それでは次に、長野先生に一点だけお尋ねいたします。  公害というのは、不特定多数のものが不特定多数に害を及ぼすというのがこれまでの一般的な定義でございましたが、私はそうじゃないと思う。公害というのは特定多数で、先ほども通産省関係審議会の方の御答弁がありました中で、私一点お尋ねしましたが、公害の原因はわかっているのです。これは、わからないというほど非科学的なものはない。ただ、それは錯綜したり、あるいはたくさん集まったり、先ほどおっしゃいました共同不法行為ですか、そういうものであったりするだけでありまして、原因がみなわかっておる。ただ、それの調査並びに解剖が済んでおらぬだけであるというふうに考えていきたいと思います。そうでないと問題にならぬと実は考えておるのであります。皆さんも正式にはおっしゃいませんけれども、そんな同じようなお気持ちでなかろうかと実は拝察するわけでございますが、そういう面からいいまして、これの解決方法は、先ほどから高橋さんからもいろいろ御質問がありまして、私も同じような気持ちでお尋ねするわけでありますが、現在のところはどういうふうに片づけておるかといいますと、まあ個人の負担で被害を受けた者が泣き寝入をする、また加害者とおぼしき者に話し合いをいたしまして、幾ばくかの補償金を取ったり、賠償金を取ったりする。あるいはそういうものの中で市長や市会議員等が中に入りまして問題を片づけていく。それからさらに進みますると、町内会の役員だとか何とかいうものがありまして、最近に至りましては、こういう公害問題の解決には、交通問題の解決にときどき出てまいりますような、示談屋的なものさえ発生をいたしておるのじゃないかと私は推察するのであります。したがいまして、その段階にまできまするとはなはだ不明朗でありまして、あの問題は一応片がついたなどと言いながら、一年たちますと、またむくむくと問題が起こってくるということで、その辺のところの基準をどうするか、しかも長野先生の御専門のほうの司法の領域にこれを持ち込みますというと非常に年月がかかる。年月がかかりまして、そうして一個人が裁判にかけるなんていうことになりますると、その裁判の経費でとてもこんなものを片づけるわけにはいかない。したがいまして、何かこれは司法と行政の途中でございまするか、どう言いまするか、簡易裁判のような形、あるいはまたいま軽犯罪法で即決をやっております。警察が自動車のスピード違反等に対してやっておりますような形、あるいはまた長野先生が会長をしておられます人権擁護委員の権限をもっと大きくして権限を持たして、行政的なものを多少持たしまして——私ども社会党はそういうものの考え方を実はいたしておるのですが、府県、市町村にそういうものを置いて片づけていく。しかしながら立法、司法、行政、この領域との間がどうなるかということになりますと、はなはだ困難なんです。御意見にもありましたような事態等がございますが、私どもの頭にありますのは、一応何らか行政委員会か行政機構の中でそれを片づけて、それに不服、不満の者は司法のほうに持っていけるというふうな、二段がまえか何かで損害賠償その他の問題を片づけていったらどうだろうかという気持ちをいま持っておるのでありますが、その辺のことにつきまして、審議会相当突っ込んだ御意見もあったと私は承っておりますが、現在の先生のお考え等、さらにこの点だけにしぼられましてお答えをいただけばたいへん幸甚と思います。
  38. 長野国助

    ○長野参考人 先ほど私、不特定ということばは使わなかったつもりであります。被害者が多数であると申し上げたのです。不特定というのは少しいけないと思いますが、それは非常に多数である。  それから解決方法は、答申にも若干書いてあるが、何らかの方法によって救済したい。その機関を、やはり行政的なことがいいだろうということを書いてありますが、こういう問題を、なるほど中井先生のおっしゃたように、司法解決ということは非常に長時間を要し、費用も要するだけでなく、具体的に証拠がどうだということになるとますます困難でありますから、できることならば司法機関以外の方法解決するほうが望ましいと思います。これについてはいろいろ方法があるのじゃないかと思っております。やはりなるべく制度的な——個々の事件一つをどうするかというような問題は、結局話がつかなければそこにいくかもしれませんが、それは別として、一つの制度によって解決がされる、あるいは委員会みたいなものがあって、そこの手段によって解決できるという方向にいきたいと思っております。はなはだ簡単でありますが……。
  39. 中井徳次郎

    中井委員 どうもありがとうございました。
  40. 井手以誠

  41. 野間千代三

    ○野間委員 時間もありませんので……。  特に私も、実は公害が発生をして、それに対して、環境基準、受忍限度といいますか、そういう基準ができて、それをどこで判断をするのか。ある一定地域が、たとえば臭気なりそういうものを発生した場合に、それが受忍限度をこえるということをどこで判断するのかということを、実は非常に興味を持ってこの答申を拝見したのでありますが、その機関について、いま中井先生なり高橋先生から御質問がありまして、お答えをいただいて、多少釈然とはしない部分がありますけれども、私の意見としては、お答えは、地方の場合に地方行政機関、それから全体として国というふうにお答えのようですが、やはりもう少し第三者的な機関というものを新しく設定をすべきじゃないかというふうに考えるのでございますが、これはいま中井先生からの御質問でお答えがありましたけれども、そういう意見だけちょっと申し上げておきます。  それから公害の種類の問題なんですが、今日まで委員会でもいろいろ審議をしてまいりまして、その過程では、御指定になっていらっしゃいます五つの種類が主として論議をされておりました。これは今日まで産業の発達なりで起きてきている特徴的な問題として、大気汚染あるいは水質の汚濁、騒音、振動、そういうものが主として今日まで起きてきておりましたから、とりあえずの問題として取り扱ってまいりましたけれども、実はこの答申の中でも多少触れておられますが、新しい技術、たとえばこの答申にある放射能問題あるいは都市というものが非常に異常な発達をしてきておりますが、これはなおもっと大きな都市問題として起きてくる可能性があると思いますが、そういう都市という構造上からくる日照りの問題、あるいは交通上の問題とか、あるいはふくそうした道路上に起きてくる夜間の、この答申でも人工光線というのは、夜間交通における光線のようなものだと思いますが、そういうふうに交通あるいは都市というものが異常な発達をしてくることが今後予想される。これも当然新しい公害という範疇で考えるべきじゃないかというふうに思うのでありますが、これは今日までの水質、大気等を救済するというところに重点があると思います。しかし、答申もいわれておりますように、公害というものはやはり予防をするところに今後重点があるべきだという観点からまいりますと、新しい都市、新しい交通、あるいは新しい産業、そういうものが想定をされますので、そういうものを防止をするという意味から、公害というものの種類を、やはりもう少し予想をして指定をして、それに対する防止策というものに相当重点を置いた施策が必要じゃないかというふうに私は考えるのであります。この答申も触れていらっしゃいますが、私は、公害基本法というものがつくられる場合に、今日までの公害を排除する、規制をするという問題と、基本法としては今後の防止という面、あるいは新しく発生することが予想される公害、そういうものを防止をするという点にむしろ重点を置くべきじゃないかというような気がするのでありますが、そういう面について会長さん方御苦労をされていらっしゃると思いますが、そういう方面についてのお考えをいただきたいというふうに存じます。  それからもう一つ防止という方面に重点を置いた場合に、国なり地方行政機関は防止措置を、たとえば立地条件であるとか、立地指定するとか書いてありますが、そういうふうに防止を重点としたところに重点を置いて、中央・地方の行政の公害に対する態度とすることに重点を置いていただきたい。そうして予防措置あるいは判断を加える機関は、いま中井先生が言われた行政と司法の中間といいますか、そういう起きてきたものを今度は判断をし、それに規制を加えるという機関でありますから、やや法的な規制力を持った権限のある機関ということになろうと思いますが、そういう点では私は地方行政機関には多少不足がある、不十分な点があるという気がいたしますので、やはり法的な規制力を持った機関を新しく設置すべきじゃないか。これが起きてきた公害規制をし、公害を排除をする機関となるという構想でいかないと、いよいよ発達をしてくる産業技術あるいは都市、そういうものの既存の公害の除去、あるいは予想される公害防止という点では不十分になりはしないかという気がしますので、その点についてのみお考えを伺わしていただきたい。
  42. 和達清夫

    和達参考人 公害の現在における状況防止するということと、将来にこういうような公害が起きないように長期的立地計画を立てるということは、まさにただいまおっしゃいましたとおりでありまして、この公害審議会答申も全くその線で出ておるわけでございます。そういうような計画をいたしますにつきましても、現在いろいろな省等にまたがっておりますところの公害に関する行政といいますか、そういうような問題は、新しく相当の権限のある組織あるいは機関が必要であろうということも、この答申にも書いてございます。ただ、新しいという意味が、全く新しいのであるか、従来のものを強力にする、あるいはそれとの関連においてつくられるかということは、政府部内において十分御検討願いたいと思います。
  43. 長野国助

    ○長野参考人 公害の種類の問題ですが、御質問ごもっともです。私ども人権擁護委員に訴えてきた問題でも、いま五つの公害の代表的な問題以外にいろいろ言ってきておるわけです。たとえば、先ほどちょっと判決なんかありました日照権の問題、日当たりの問題、それから農薬の問題、地方では農薬のために魚が死んだり、アヒルが死んだり、子供が飲んでどうだというようなぐあいに、農薬のために非常な害があるというような問題、それから、これは主として都会の問題でありますが、地下水を吸い上げたあと地盤が沈下して、それがために大きい建物が、ところによると三尺ぐらいほど下がっておる。現に内幸町の関東配電、あそこなんかも非常に下がっておる。私どもの事務所のある幸ビルなどもこう傾いておる。それなども、地下水を吸うものですから土地がやせるのですかどうですか、そういうことに対しても問題がある。現に先月ですか、これは都のほうからのなんですか、下町の一部については井戸を使ってはいけない、そのかわり従来その井戸で使った水は水道で補給するから使わぬようにしてくれという要請か命令かありましたが、そういう点から考えましても種類というものも非常に多い。しかし、われわれの審議会では、法律でこしらえるが、今後もどんどんそういうものが出てきたときに、それを法律に追加すればいいのだから、将来そういうものは予想されるけれども、これで制限するわけではないのだ、さしあたり代表的なものをあげておるが、将来そういう新しい種類の公害が生じた時分には、立法をするときでもやはり追加して、時世の要請に応ずるようにしなくてはならぬ、こういうふうな意見を出したわけであります。簡単でございますけれども……。
  44. 井手以誠

    井手委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところを本委員会に御出席をいただきまして貴重な御意見をお述べいただき、たいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申しあげます。      ————◇—————
  45. 井手以誠

    井手委員長 委員各位並びに政府当局関係者にお願いいたしますが、すでに昼を回っておりますが、いろいろな事情がございますので、引き続き審議を進めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  次に、第五十一国会における本委員会の油による海水汚濁防止、亜硫酸ガス排出防止、自動車排気ガス規制及び立地規制の四決議、及び農薬規制等に対する政府施策の進捗状況並びに公害対策の基本施策等について、関係各省から順次説明を求めます。  それではただいま申し上げました四つの決議について、最初に宇野通商産業政務次官。
  46. 宇野宗佑

    ○宇野説明員 通産省が本委員会の決議に基づきまして、今日までとってまいりました施策に関して御報告をいたしたいと思います。  一番最初の海水汚濁でございますが、これはわが省にも関係はございますが、ただいま直接関係省の運輸省におきまして国内法を制定すべく準備中でございます。いずれ通産省にもその話し合いがあるだろうと思いますので、そのとき決議の御趣旨に沿いまして、十二分に検討いたしたいと存ずる次第でございます。  第二番目の自動車の排気ガスでございますが、これに関しましては、すでに本年九月に運輸省が規制をいたしましたので、通産省といたしましても、運輸省の規制に従いまして、今後は型式等の承認においてその措置をとっていきたいと思うのであります。なお、工業技術院の傘下に幾つもの試験所がございますが、この試験所におきましても、排気ガス技術的な開発をただいま鋭意研究中でございますので、これまたその効果につきましては御発表する機会があろうかと存ぜられます。なお、そうしたことをも含めまして、実は明年度にはぜひとも自動車の安全交通並びに公害防止ということを重点施策として専門的にそれを研究するセンターをつくりたいと思っておるわけであります。つまり自動車安全公害センターでございますが、このことは機械試験所並びに資源技術試験所がございますから、この両試験所を母体といたしまして、いま申し述べましたセンターを設置いたしたい。これは明年度のことでございますが、ただいま関係当局と折衝中でございます。  なおかつ、すでにアメリカにおきましては、この自動車の排気ガス規制法が制定されたわけでございますので、当然わが国といたしましても、輸出の面から考えましてもそのことを十二分に承知しておく必要がございますし、また国内的にもこの問題を取り上げなくてはなりませんので、一応この六月に、自動車工業界と小型自動車工業会、この両者から専門委員を派遣いたしまして、すでにこれはもう帰国いたしておりますが、ただいまその結果報告を待っておるというような段階でございます。  なおかつ、自動車の排気ガス規制をいたしますにつきましては、当然その製造面におきましても、一つ措置をとらなくてはなりませんので、通産省といたしましては、機械工業振興臨時措置法によりまして、その中に自動車部品製造振興計画というものかございますが、その対象にこの排気ガスの清浄装置を取り入れたということもこの際御報告いたしておきます。  また、民間の技術開発促進のためには、鉱工業試験研究補助金というのがございますが、これを三件交付いたしまして、いま申し上げましたようなことと並行いたしまして、政府施策と同時に、民間側におきましても決議の御趣旨が生かされますように、ただいま検討いたしてもらっておる最中でございます。  次に、重油の脱硫でございますが、このことに関しましては、石油業界の調整機関といたしまして、石油連盟の中に硫黄部会というのと公害対策特別委員会という委員会をつくっていただきまして、いま、もっぱらいかにして重油から脱硫をせしむるかという問題に取り組んでいただいております。したがいまして、そうした石油連盟の努力の結果でございましょうか、石油業界の中で、一業者が何としてもまずその先べんをつけたいという申し入れがございましたので、このことに関しましては、当然技術をわが国に導入しなくてはなりませんので、先般も政府の外資審議会幹事会におきまして、そうした技術導入に関する承認を得たようなわけであります。ただいまこれは申請をいたしている最中でございます。  また、重油脱硫に関しましては、当然企業の負担も非常にかかるわけでございますから、政府といたしましてもそれだけの税、財政の優遇措置も並行いたしまして考えておかなくてはなりませんので、明年度の対策といたしましては、税制面におきましては固定資産税を免除するとか、あるいはまた特別償却制度を設けるとか、そういうようなこともただいま当局と折衝中でございます。  また、金融面におきましては特別融資、特に開銀の中に特別ワクを設けることが必要である、かように存じておりますので、これまた関係当局とただいま交渉中でございます。もちろん、こうした民間の努力もさることながら、当然政府といたしましても、こうした問題に関しましては相当技術開発をこれからやっていかなくてはなりませんので、将来この重油脱硫装置に関しましては、安全性の高い国産品をつくり上げようということを考えておりますので、これは工業技術院の大型プロジェクトの中の一環といたしましてそれを開発するような措置を今日とっているようなわけであります。  続いて、排煙のガスでございますが、このガスに関しましては、本年度よりもちろん大型プロジェクトの中に入れておりまして、同時に二つのグループにそれぞれその技術の開発を委嘱いたしております。二つのグループを個別的に申しますと、中電と東電でございますが、このグループによりましてただいま鋭意この技術の開発につとめておりまして、予想を申し上げますと、この決議の趣旨にのっとりまして、中部電力におきましては四十三年に完成、東電は一年おくれるわけでありますが、四十四年に完成をしたい、かような立場におきましてただいまその実施を進めておるようなわけであります。もちろんこれに関しましては、そうした装置なり技術が完成いたしました場合には、すべての電力会社あるいはそれに関係する幾多の企業に対しましても普及徹底せしめますように、ただいまも指導を行なっているような最中であります。  以上が大体本委員会におきまする決議をしていただきましたことに対し、通産省が今日までとってまいりました措置でございます。御報告申し上げます。
  47. 井手以誠

    井手委員長 油による海水汚濁防止条約の批准について、田中外務政務次官
  48. 田中榮一

    ○田中説明員 油による海水の汚濁の防止のための国際条約につきましては、御承知のように一九五四年、昭和二十九年の五月十二日にロンドンで作成されました油による海水の汚濁の防止のための国際条約、それから昭和三十七年、一九六二年四月十三日に同条約がある程度、特に公害防止する趣旨からこれが強化されまして、条約が一部改正に相なっております。現在発効しております条約は前の一九五四年の条約でございまして、改正条約は明年の五月十八日にこれが発効する予定に相なっております。  そこで条約の内容につきましてはもう御存じでございますから、詳しく申し上げる必要はないと思いますが、一、二申し上げますと、タンカーは原則として、陸岸から五十海里以内のすべての海域で油または油性混合物を捨ててはならない。それからタンカー以外の船舶は油性バラスト水のようなもの、あるいはまたタンカーを洗浄いたしました水の投棄、海に捨てる場合は、できるだけ陸岸から離れたところで捨てなくてはならぬ。ただし、条約が発効してから三年目からは、タンカー並みにやはり五十海里以内では捨ててはならぬというような規定でございまして、そのほか船舶内の油が漏る防止施設を船舶内に新たに装備せねばならぬ、あるいはまた、油と水とを分離しまして、油かすを収容するだけの施設を港において設置せねばならない、こういうような規定の内容でございまして、その後外務省としましては主として運輸省、海上保安庁あるいは通産省関係方面と折衝いたしまして、特に本年の通常国会におきまして早く批准をするようにという御決議の次第もございますし、また国際協力の関係から申しましても早く批准する必要に迫られておりますので、鋭意関係各省と国内法の制定、またこれに要する船舶の内部の模様がえあるいは港湾における施設の設置というようなことにつきまして、いろいろ打ち合わせをいたしております。ただ、何ぶんにも非常な資力と申しますか、資本が必要でございまして、船舶の内部改造あるいは港湾の施設を改造するにいたしましても、地元公共団体あるいは船舶会社あるいはまた石油会社等の協力によってこれをやらなくてはなりません。また同時に、船舶内部の装備改造につきましても相当な経費もかかることでもございますし、金融関係その他もございますので、そうした点をいろいろ考えまして、ただいま鋭意体制の整備に努力をいたしているような次第でございまして、御決議の精神を十分生かしまして、できるだけ早く批准の手続をはかるようにいたしたいとただいま努力いたしておる次第でございます。  以上御報告申し上げます。
  49. 井手以誠

    井手委員長 油による海水汚濁防止及び自動車排気ガス規制に関し説明を求めます。運輸省鈴木審議官。
  50. 鈴木珊吉

    鈴木説明員 運輸省といたしましては、前国会の当委員会の決議もございますので、来たる通常国会に船舶の油によります海水汚濁防止につきましての国内法を制定いたすべく鋭意準備中でございます。またこれが裏づけとなりまする必要な予算措置につきましても関係各省と目下折衝中でございます。  特に、規制の趣旨でございますが、条約できめておりまする水準に合わせまして、わが国におきましても海岸から五十海里以内の海域におきましてのこれからの油類の投棄を禁止する、それから規制の対象になる船舶にはそういった油類が漏出することを防ぎまする油流出防止装置というものを装置するように義務づけるということでございます。また、そういった油類を捨てる場合の受け入れ施設全国主要港に施設するように計画いたしております。  以上がおもな点でございまして、これがために所要の予算措置といたしまして、たとえば港につきましては、地方の湾港管理者が港湾の施設の一環としてこれを施設いたしまして、それに対しまして国庫から所要の助成を加えたいと考えておりますし、また民間の廃油処理事業者がありまする場合には、これに対しまして所要の財政融資を行ないたい、あるいはまた船舶が義務づけられまする油の流出防止装置を船主がつけまする場合にも、財政資金を融資するというような点につきまして関係者とも予算につきまして鋭意折衝中でございます。来たる通常国会におきまして御審議をお願いいたしたいと思っております。  それから自動車の排気ガスでございまするが、これも第五十一回国会の本委員会におきまして本年九月から規制を実施するということ、また技術指導体制を強化するという御決議がございまして、それに基づきまして当省といたしましては、本年九月一日より新型車に対しまして排気ガス中の一酸化炭素濃度が三%以下であるということで、これに適合しないものにつきましては型式の承認をしないという措置をとっております。それからまた一年おきまして来年の九月からは、新車につきましても同様な基準に適合するような規制措置をとっていきたいということで、ただいま所要の予算措置その他につきまして関係省庁と折衝しております。特にこのような排気ガスの積極的な規制に乗り出すために、この裏づけといたしまして必要な調査なり開発なりあるいは検査というようなことにつきましての検討を急ぐ必要がございますので、それらの体制を強化するために排油ガスの防止等につきましての研究体制を運輸省内で整備いたしまして、これに所要の予算等につきましても関係各省と現在折衝しております。  以上でございます。
  51. 井手以誠

    井手委員長 次に、水銀糸農薬の規制については決議はいたしておりませんが、四十三年度からは原則的に使用を禁止するという言明がありましたので、その後の指導方針について農林省の方針を伺います。森本農政局長
  52. 森本修

    ○森本説明員 水銀農薬から非水銀糸農薬への切りかえについての措置でございますが、本甲の五月に、先ほど委員長からお話がございましたような基本的な考え方によりまして各関係機関に通達をいたしまして、できるだけすみやかに切りかえをするという方針を明らかにいたしますとともに、新しい非水銀糸の農薬についての使用方法等を農家に適切に普及するということで講習会その他知識の普及をはかるというふうなこと、それから新農薬につきましてできるだけ本年度の穂いもちの防除を中心にして円滑に防除事業が末端で行なわれるようにといったような内容につきまして、五月に事務次官通達を出しました。さらに具体的には農薬の製造業者並びにそれを扱っております全購連に対しまして、本年の新農薬の供給は穂いもち病の防除面積の四〇%を努力目標としてやるように要請をいたしております。  なお、御案内のように新農薬の生産体制がいまだ十分ではございませんので、それの生産体制を整備するという意味におきまして、新規の製造設備に対しまして融資のあっせんを行なう、あるいは新規設備についての税法上の特別償却の措置をとるというふうなことを進めてきておりまして、すでに新農薬設備に対しましては、開銀あるいは農林中金から漸次融資が行なわれつつある状況でございます。  本年度の農薬の散布あるいは防除の実績でございますが、目下、今月末まで詳細な調査を集めるように手配をいたしておりまして、最終的な実績はまだ実は出ておりませんが、途中の段階で把握いたしましたところでは、いもち病の防除面積のほぼ四〇%程度が新しい農薬によって防除が行なわれておるというふうなことのようでございます。なお、北海道におきましては、新農薬の使用状況は、ただいま申し上げました面積に対しまして約三分の二程度に達しておるというふうな中間的な報告を得ております。  以上のようなことで、できるだけ早急に非水銀糸農薬に切りかえをするよう努力をいたしておるところであります。
  53. 井手以誠

    井手委員長 最後に、以上の諸決議並びに公害対策基本法の提出等について、厚生大臣の決意を承りたいと存じます。鈴木厚生大臣
  54. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まず最初に、油による海水の汚濁防止についてでありますが、この問題につきましては、関係各省からただいま御報告がありましたように、政府といたしましては、この国際条約の早期批准をやりますために、いろいろな準備を整えておるわけであります。また早期批准に関連いたしまして、関係国内法を整備する必要がありますので、この点につきましても、ただいま運輸省等におきまして御検討を願っておるわけであります。厚生省といたしましては、この油によるところの海水の汚染度、そういうものの実態調査いたしますために、来年度予算におきまして必要な予算の要求をただいまいたしておるところであります。  次に、自動車排ガス規制の問題につきましても、その他の当委員会で御指摘されました問題と関連いたしまして、公害審議会に逐一報告をし、当委員会でお取り上げになりました問題点の御審議を願っておるのであります。また、厚生省といたしましては、その環境基準を設定するための予算措置を講ずるようにただいま大蔵当局と折衝をいたしておる次第でございます。  また亜硫酸ガスの排出防止の問題につきましても、昭和四十二年度予算におきまして、ばい煙等影響調査費、大気汚染測定網整備費、自動車排ガス環境基準設定費、開発整備地域調査指導費、公害調査研究委託費、地域指定基礎調査費、ばい煙規制法施行費、地方公害防止監視強化費等公害関係予算要求をいたしておる次第であります。私どもこの予算をぜひ獲得をいたしまして、公害防止につきましてできるだけの対策を実施いたしたいと考えておる次第であります。  また、今後の公害対策は、工場立地規制等を含めた総合的な対策が必要であると考えられますので、公害審議会答申にもございますように、公害防止地域指定によるところの公害防止計画の策定の必要性が強調されておるのでありますが、この答申の趣旨に基づきまして今後産業立地計画を策定をし、そして公害防止を未然にはかってまいる、そういう対策を講じたいと考えておるわけでございます。  なお、委員長からこの際公害基本法の問題につきましてお尋ねがあったのでございますが、きょう実は私、閣議におきまして、公害審議会からの答申説明をしますと同時に、この公害防止対策を総合的かつ強力に進めてまいりますために、公害基本法制定の必要がある旨を閣議で説明をいたし、この公害基本法制定には公害問題に対する行政機関が多岐に分かれておりますので、関係各省の積極的な前向きな協力を要請いたしますと同時に、総理府総務長官のもとにありますところの連絡会議中心になって、次の通常国会に提案することを目途にこれの準備を進めてほしいということを閣議において提案をいたし、了承を得ておるのであります。したがいまして、公害基本法の内容につきましては、今後関係各省の協議によって具体的な内容がだんだん固まってくるわけでございますが、ただいま厚生省の立場において、つまり国民の健康を守り、われわれの生活環境を守っていく、こういう観点に立って基本法につきましての一応の考え方を私持っておるわけでありますので、それにつきまして御参考までに御説明を申し上げ、当委員会の御批判と御指導をいただきたい、こう思うわけであります。  まず第一は、公害とは何ぞや、公害定義を明確にする、範囲を明確にするということが必要であろうと思います。現在規制をされておりますところのばい煙、水質あるいは工場排水、こういうすでに規制をされております公害のほかに、騒音であるとか、あるいは臭気であるとか、あるいは振動であるとか、そういうようなものを含めて、われわれの国民の健康と生活環境を守るためにどの程度のものを公害範囲としてこれを規定をし、公害の性格を明確にするか、この点がまず第一に必要であろう、こう思うわけであります。  第二は、この基本法にうたわれましたところの公害につきまして、それぞれの環境基準を設定をする必要がある、環境基準の設定でございます。  第三の点は、公害防止地域指定、それから公害防止計画の策定でございます。特に公害が著しく環境基準を上回るような、そういう状態になりますことは、国民の保健衛生上からも絶対に避けなければならぬのでございますから、そういうおそれのある地域はこれを公害防止地域として指定をする。また、その指定地域につきましては公害防止のための計画を策定をする、こういうことにいたしたらいかがか、こう考えておるわけであります。  第四の点といたしましては、公害には発生源があるわけでございますから、公害責任の明確化をはかり、また公害防除のための費用負担を明確にする、こういうことが必要であると思います。また、これに関連いたしまして国及び地方公共団体の行政責任というものを明らかにする必要があると考えておるのであります。  第五の点といたしまして、公害防除施設をいたしますためには、企業に対しまして財政上、税制上あるいは金融上の助成、援助を行なう必要がある。そして企業経営の負担をできるだけ軽くしながら公害防除施設の整備をはかるようにしてまいりたい、このように考えておるわけであります。  さらに第六点といたしましては、公害に関する行政がたくさんの省に分かれており、そこに総合性、一貫性がないということで、当委員会からも御指摘をいただいておるところでございますので、この際公害防止に関するところの行政機構、はっきりとした行政機関をつくる必要がある、このように考えております。その具体的な内容は今後各省によって協議をいたしたい、そうしてこの行政機関におきましては、先ほど問題にもなりましたところの、発生したところの公害の認定あるいは損害賠償の裁定というようなこともやれるような機構が望ましい、つまり公害の補償その他苦情処理の機能をも持った機関にすべきではなかろうか、このように考えておるわけであります。  それから第七の点といたしまして、地方、県等に委任いたしますところの公害に関する条例の委任の範囲、そういうものをやはり明確にしておく必要があろうか、こう思うわけでございます。  私は、この基本法を通じまして、まず第一に、公害が今後起こらないように、必要なるところの産業立地計画政府として地方公共団体の協力を得て策定をする、そしてさらに環境基準等の調査、設定を中心といたしまして今後公害防除の対策を総合的に実施をしてまいる、こういうことのために公害基本法がせひ必要である、このように考えておるわけでございます。  この公害基本法関連をいたしまして個々公害規制をどうするか、こういう問題があるわけでございますが、私は、現在ございますところの、ばい煙規制法、水質保全法あるいは工場排水規制法、こういう既存の法律につきましても新しい毎度から、最近公害の問題が相当深刻な社会問題にもなってきておるわけでありますから、もう一ぺん既存のこれらの規制法を再検討して、所要の改正を加える等の必要があるのではないか、また、その他の未規制公害につきましては、この基本法の精神に基づきましてそれぞれの必要なる規制法を新たに設ける等の措置を講ずべきである、このように考えておる次第であります。  これは、私のただいま頭の中でいろいろ考えております基本法に対する考え方等でございますが、いずれ今回ちょうだいをいたしましたところの公害審議会からの答申関係各省でも御検討をいただきまして、政府全体として公害基本法に対する方針を決定をいたしたい。私は厚生省の立場、国民の健康を守り、われわれの生活環境を守るという観点に立ちまして、ぜひ来たるべき通常国会には公害基本法を国会におはかりをしたい、こういう決意でおる次第であります。
  55. 井手以誠

    井手委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。  なお、厚生大臣は都合があって間もなく退席されますので、質疑なさる方は厚生大臣を先にお願いをいたしたいと思います。丹羽兵助君。
  56. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 本委員会に厚生大臣はじめ各省からそれぞれ特に責任のある方の御出席をいただきまして、先日来私どもの取り上げております公害対策に対して政府がどのように決議等を尊重して施策対策を講じていこうとしておるかという、その具体的の熱意のほどを拝聴いたしまして、きわめて満足ではないけれども、そのとおりいただきつつある配慮に対して敬意を表する次第であります。わけても鈴木厚生大臣から、来たるべき国会において——来たるべきと申しますか、少なくとも今度の通常国会においては公害対策基本法を出そう、そしてその審議をいただくという心がけで閣議等にも報告、考えをお話しになって、寄り寄りそうした方向で進めておるというようなお話を承りまして、前から新聞等では聞いておりましたが、ただ新聞等ではそうしたことを報道されておりますけれども、所管の厚生大里から直接そのようなお考えのあることを聞きまして、私どもか長く時間をかけて、大臣のおっしゃいましたように国民の保健ということから叫んできたことは決して無意味ではなかった。政府も私どもの考えに十分御理解をいただき、特に厚生大臣としてはこれをどういう形であるかにしろ、受けて立ち上がっていただいたことについては敬意を表するものであります。ただ、当時野党からもすでに公害対策基本法という、名前は政府と同じ名になるかどうか存じませんけれども、社会党においても民社においても、本委員会に案なるものを御提出済みになっておる。私ども与党としては、まだ政府大臣のお考えのようには固まっていない、そこで政府と与党との立場が食い違っては、これは感心したものではないということで、そこまでの党としての考え方、また私ども考え方をはっきりしていなかったのでありまするが、政治の責任を持つ内閣としてそのような態度に踏み切っていただき、国民の前に本委員会を通して大臣の考えがこうである、これほど国民の保健に対して関心を持ち考えておる、また心配しておる、対策は立てるのだ。御弁明いただきましたことを重ねて私どもは意を強うするものでございます。いま申し上げましたように、すでに野党では考えて案まで出しておるのでございますから、どうかひとつ、必ず今度の国会にはその考えを法律の形で御提出を願えるように、ぜひとも望むものであります。  そこで私は、大臣お急ぎのようでございますから、いま大臣のアイデアと申しますか、厚生省としての、あるいは鈴木厚生大臣としてのお考え方、とにかくことこまかに御説明をいただいたそのうちの一、二点だけ、きょうどうしてくれとかこうしてくれとかということを要望したり、あるいはまた考えをいれていただくように望むものではございませんが、数点に分けて、問題点をここに置くのだということからお話をいただいたのでありまするからして、ほんとうに一、二点だけ大臣に承りたい。  まず第一は、公害定義ということであります。公害定義についていま大臣から非常にこまかくお話があった。満足したいところでございますけれども、きょう大臣もお触れにならないし、審議会等の御意見にも触れていない、いわゆる航空機産業、これは一言っておるのですけれども、航空機産業から生ずるところの公害というものは取り上げておるようでありますが、さあ、その飛ぶ飛行機、この飛行機によって及ぼす公害、私非常な大きなものだと思うのですが、この飛行機から出るところの騒音というものに対する、これを公害としてはっきり取り上げていないというところに、私は何か大臣も、また政府自身も、また委員会なんかも考えがあるのかどうか。あまりにも公害として取り上げるのに大き過ぎるのか、他に何か他意があって——航空機産業そのものはやはり公害が生ずれば対象としてやらなければならぬが、騒音については逃げ腰であり、これははっきりと公害だ、こういうように言い切られない。しかし、その受ける被害というものは非常に広範囲であり、国民の保健に非常に影響を与えておると私は思うのです。その定義の中の飛行機による公害、騒音公害と申しますか、これについて、自動車やあるいはその他夜間に仕事をするというものについては、これはそれぞれ公害だとしてはっきりしておるのですけれども、重ねて申しますが、いま言ったように飛行機の騒音というものについては、どの審議会も逃げるようにしておる。大臣もお触れにならぬのですが、これは何かほかに考えをお持ちか、あるいはまたあまりにも大き過ぎるのか。しかし、現実は逃げて済むものではないし、放置すべきものではない。こう思っておりますが、その点を公害定義の中になぜ入れなかったのか、また将来勘考していただくなら、これをひとつ検討してみるとかというようなお考えを聞かしていただくことができたらけっこうであり、またもう少し勉強して、研究してということであれば、またそれでもけっこうでございますけれども、承っておきたいと思うのであります。  それからもう一点は、大臣の七つに分けてお話しをいただいた五点目にお触れになった公害対策公害防止のために企業に対しても責任を負わせなくてはならない。また企業の負担をできるだけ軽くして、そして完全な対策を立てるんだ、企業面のことはお考えをいただいておるのですけれども、しかし、その企業のことを考えていただくのはけっこうですが、企業所在の市町村と申しますか、自治体と申しますか、またこれを世話するところの自治省といいますか、結局は、先回以来私は何度も言っておりますが、いまの政治というものの仕組み、機構が悪いのか、選挙制度が悪いのか、何が悪いのかかにが悪いのかは別といたしまして、盛んに地方では、あとのことも考えずに、国民の保健ということも考えずに、ただ市町村長がむちゃくちゃに企業の誘致連動をやるのです。やったあげくは公害だ。結果は住民が迷惑する。そのあとは何か対策を立てなくちゃならぬからというので、自己資本はない、考えにやいかぬので自治省に持ち込む、こういうことなんだ。それで、いま申し上げたように完全なといいますか、公害防止のための方法を講じさせるには企業のことも考え、企業の負担もできるだけ軽減をはかってやるようにしなければならぬとおっしゃることは十分理解できますが、しかし、そのことによって一体あと国のほうが、あるいは自治体がどう考えておるか、残った分のほうは国のほうで考えるのか、あるいは自治体にもう少し考えさせるのか、これは大臣もやはり選挙となれば同じようにおやりになる身で、よくわかっていただけることだろうと思うのですけれども、市町村の長というものはみなそんなことで地方の財政を困難に追い込んでおる。それが一つの売名であり、一つの選挙運動としてやっておる。結果は、そのことが住民の健康にも大きな影響を及ぼして、財政を苦しめておるということでございますから、その自治体との関係、そして中央自治省とのそうした負担の関係等というものも第五点の中において十分御配慮願えるように御構想の中にあるのかどうかという点、この二点を承らせて、いただければけっこうだと思います。
  57. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 丹羽委員から二点につきましての御質問があったわけでありますが、第一点の飛行機による騒音の問題でございます。私は、騒音も公害の範疇に当然入るべきものである、こう考えておるのでありますが、飛行機の騒音につきましては一般の騒音とは五十性質を異にするものではないだろうか。英国等の例によりましても、飛行機による騒音を公害の対象として取り上げておりません。しかし、私といたしましては、この騒音がわれわれの日常生活なりあるいは健康にやはり大きな影響を持っておるということを十分認識をいたしておりますので、飛行機による騒音につきましても全然これを無視することなしに、公害の問題として今後十分その規制等につきましては研究を進めてまいりたい、こう考えております。  それから第三点の、地方公共団体公害に対して対策を進めます場合に、これに対して国が助成等の措置を講ずべきではないか、こういう御提案につきましては、私は、先ほども申し上げましたように、発生源者である企業に第一次的な責任があると思います。したがって、産業立地の適正あるいは公害防除施設の整備という面につきましては十分対策を講じますと同時に、なおかつ、それでも公害が現実に発生をし、いろいろな住宅の移転であるとか、あるいはグリーンベルトを建設する必要があるとか、いろいろな対策を具体的にしなければならぬという実情に対しまして、地方公共団体がとりました措置について国として必要なる援助、助成というものはしなければいけない。これは企業地方公共団体と国が一体になってできるだけの公審対策を講ずべきものである、私はこう考えております。
  58. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 大臣にお尋ねいたしました二点については、たいへん誠意あるお答えをいただきました。私はそうした考えでまた今後公害基本法あるいは行政の中にあるいは閣議等で御発言をいただいて考えていただければ満足するものであります。これ以上の強い要請とか意見を出すものではなく十分な満足をするものであります。ただ、これからお尋ねをしようと思いまするのは、この問題とはちょっとはずれておりまするので、何事もお互い人間ですから、いかに大臣でもそこまで勉強して考えていなかったということで、答弁は後日にするとおっしゃってもやむを得ないことと私は思います。そういう意味で聞きたいのですけれども、いま農林省から農薬のことについてお話がございました。農薬といえば、いまの病虫害の防除事業というのは農業の大きな柱になっております。しかし、その使いまする薬品というものがいつも問題になる。片っ方農業が喜べば水産業のほうから文句が出るといったような問題もありますし、しかもまたこの農薬の取り扱いが——これは公害ではなくしてもっと公害以上のものかもしれませんが、農薬があまりにも大きな効果があるだけに、また非常に危険なものであって、これの取り締まりはもちろん厚生省、保健所なんかもやかましく言われる。時によっては警察に告発なんかもしていただいて、検挙したり罰も科せられますけれども、取り扱い自体が、どうも地方のしろうとの農協のようなところの指導員が、十分な教育も受けずに取り扱ったりなんかする。あるいはまたこれの取り締まりがなかなかもって厳重——それだけのものであれば厳重であるのが当然でありますから、これを使ったことにして、どこかに隠しておいて、今度は取り締まりのない数量以外のものとしてやりますから、そこにまた危険があって、私は数まではよく存じませんけれども、一年にこういうことによって起こす事故というものは非常に多い。中には家庭不和のためにこれが自殺の用にも供される。こういうような、片っ方では非常に大切なものであり、厳重な取り締まりをしなくちゃならぬ。そういうものが、私は厚生大臣を前に置いてずさんであるというような暴言は吐きませんが、どうもぐあいよくいっておりませんがために農村では非常に問題になっておるのですが、もう少しこの点は農林省等ともひとつ十分お話し合いをいただき、御研究をいただきたい。農薬の大切であることはわかる。またそうでなくては増産はできない。しかしまた、これを取り扱うについても十分な教育も与えなくちゃならぬし、指導もしなくちゃならぬ。また保管、取り締まり、いろいろの問題が私はあると思います。いま申し上げましたように、これが不注意のための事故というか、よく理解していないがためにほんとうに大きな被害を生み、悲惨な事実をつくり出しておる。その残った者に自殺行為まであるということですから、何度も申し上げたような意味ですから、ひとつ今後もう少しこれらの取り締まりについて、あるいは保管、まあ取り締まりと言ったほうがいいかもしれませんが、これらの使用については厚生省も本気になってやっていただくようなお考えはないのか、私は大臣から御意見を聞いておきたい。これは問題外のことでございますから、大臣がはっきりこうおっしゃったからこの次からこういうことになることは私はそのまま受け取らなくてもいいけれども、もし御答弁できたらひとつ御答弁を願いたい。
  59. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農薬の取り扱い、特に水銀系のように毒性の強い農薬の取り扱いにつきましては、御承知のように厚生省といたしましては毒物及び劇物取締法というのがございまして、これによって毒性の高い農薬の取り扱いの指導、規制、注意をいたしておるわけであります。また、農薬につきましての特別な法律がございまして、それによって取り扱い上の注意、使用等を規制をしておるということも御承知のことだ、こう思うわけであります。ただ、毒性の高い農薬の使用につきましては、くだものあるいは野菜等の収穫前一定の期間を置いてこれを使用するとか、そういうような人体に及ぼす影響等を考えて指導をいたしておるのでありますが、これが一部の者によって誤った取り扱いのために、農薬でもって死亡する、事故が起こる、あるいはまた農薬による自殺というようなことが現実に起こっております。これは丹羽先化御指摘のとおりでありまして、毎年数十名の農薬によるところの事故あるいは自殺者というようなものが起こっておりますことは御指摘のとおりでございます。この点につきましては、農林省あるいは農業団体、地元の農協その他農民の指導の立場にあります関係方面と今後十分連絡をとりまして、取り扱いを慎重にする、またその保管等についても十分注意を払う。農薬による事故やあるいは自殺のためにそれが使われるということのないように、慎重な扱いをするように、今後とも十分厚生省としても努力をいたしたい、こう考えております。
  60. 井手以誠

  61. 中井徳次郎

    中井委員 厚生大臣お急ぎのようですから、先に大臣に簡単に伺います。  私ども社会党も、御案内のとおり二年前から公害対策基本法を出しておりまして、国会においていまのところ継続審議みたいになっております。これは国会の問題ですが、いま一から七まであなたの御説明を伺い、またきょう閣議に持ち込まれたということであります。私どもはおそきに失するとは思いまするけれども、まあやらぬよりはいいでしょう。だから大いに政府として推進をしていただくことはけっこうだと思います。承りますと、この内容も鈴木さんらしい内容でありますが、私どもが出しました基本法とどういうふうなからみ合いになりますか、正確な案文が出てきませんことには私ども態度をきめるわけにはいきませんから、当然のことでありまするが、社会党といたしましては、政府基本法が出てくるのを待って批判をいたしたいと思うわけであります。  そこで、まず通常国会に必ず出されるかどうか、これが第一点。まあ出されるだろうと思うのですが、もう一ぺん念を押しておきます。それからこの内容の中で六番、行政機構を明確化する、苦情処理等もやる。この点は言うのは非常に楽だが、私ども成案の際に非常にこの点は野党としましても苦慮をいたしました。たくさんのスタッフを持っております政府のことでありまするから、すばらしい行政機構ができると期待はいたしますが、その辺のところの第六の問題、厚生大臣十分な自信があるかどうか。  特にきょうは朝から私は審議会の皆さんの説明を承ると、その中で、はっきり言えば厚生省関係和達さん、長野さんと通産省関係進藤さん、石原さんの説明の中に、やはりニュアンスの相違というものを相当私は感じた次第であります。それとの関連でございますが、そこで、この自信のほどを伺いたいと同時に、この御説明の中で工業立地適正化法というふうなものを審議会としてはこの答申の中に入れたい、こういう御発言もありました。存在の理由はよくわかるのでございますが、それならばそれを基本法との関係はどうなるか。これは水質汚濁に対する法律とか、先ほども説明ありました油による海水汚濁防止に関する条約とか、そういうものであって、公害基本法との関係は縦の関係であって、横の関係ではない。少なくとも縦の関係であるべきであると私は思うのですけれども、往々にいたしまして、こういう特別法ができますると、それが基本法よりも優先するような概念が勢力関係でしばしば出てくるのが日本の現実の政治でありまするから、この辺のところ、工業立地適正化法と今回お出しになる基本法との相関関係はどうであるか、お忙しいようでございまするから、以上三点だけ率直にお尋ねをいたします。
  62. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 中井委員にお答えいたします。  第一点の、公害基本法を必ず次の通常国会に提案をするかどうか、こういう端的なお尋ねでございますが、私といたしましては、公害問題がこのような深刻な状態になっており、社会問題としても各方面から公害防止問題が叫ばれておる、こういう世論にこたえまして、せひ通常国会に出したい、また政府として出すべきである。私はこういう気持ちで、微力でありますけれども、閣内におきまして強力に推進してまいりたい、こう考えております。  第二の、公害関係の行政が各省ばらばらになっておる、そのために総合性と一貫性を欠いておる。これを総合調整をし、公害行政を強力に推進をするための行政の整備が必要である。このことにつきましては、私は何人もそのことを痛感いたしておるものと考えるわけであります。私は、各省の大臣も官庁のなわ張りというような事柄にとらわれずに、大所高所からこの問題について政治的考慮を払うべきものだ、このように考えておりまして、私は厚生省の立場にとらわれないで、これを政府全体としていかような行政機構をつくり、公害対策の総合性、一貫性を保持するような行政を行なうようにするか、こういう観点で今後各閣僚と話し合いをしていきたい、こう考えております。私は、中押さんが御指摘のようになかなかなまやさしい問題ではないということを承知いたしておりますが、努力をいたしたいと考えております。  それから工業立地適正化法公害基本法の中の重要な柱でありますところの公害防止地域指定あるいは防止計画の策定、こういうところに関連を持ってまいりますことは御指摘のとおりでございます。私は、基本法におきまして基本的な基準、方針をきめました場合におきまして、その基本的な方針に沿うて個々の単行法が法律的な役割りを果たすというようなことがあっても差しつかえないのではないか、こう考えるわけであります。要は、公害が発生しましてから事後の対策をいろいろ講ずるということよりも、工場立地ということを十分適正なものにして公害の起こらないようにするということが一番望ましいことだ、こう考えておるわけでありまして、工業立地適正化法というものがほんとうに基本法の精神に即してりっぱな役割りを果たすものでありますれば、私はたいへんけっこうだ、こう考えております。
  63. 中井徳次郎

    中井委員 承りましたが、最後のことですが、これだけ念を押しておきます。私、さっき質問の中の説明が少し足りなかったと思うのです。工業立地適正化法というのは、俗にいえば公害基本法の付属法的性格を持つべきものだ。人間尊重という、あなた方はしょっちゅう口だけそんなことを言うわけですが、それに合わした考えからいって、持つべきである。それから、なぜこういうことを念を押すかといいますと、先ほどもこれは田中外務政務次官の御説明の中に、田中君のお仕事ですからあれでしょうが、油による海水汚濁の批准の問題に関連して、批准するためには非常に金がかかるというふうな認識をやはりお持ちになっておるようですが、同時に、三年まだ猶予期間があるという話もある。これは業界にとりましてはそういう表現はするでございましょうけれども、現実の面としましては非常な金ではない。この点も私は念を押しておきたいと思いますが、これは大臣御退席になってからでもいいと思いますが、通産省の皆さん、特に運輸省の皆さんの御見解等を伺っておきたいと思います。そういう意味の牽制とは申しませんけれども、まあ自分の省がかわいい、自分の立場がかわいいためについ発言するのでございましょうが、今日の公害問題は、それをもう飛躍をして、そういうものを押しのけて前進する事態にきておる。そうしなければならぬという考え方でありまするので、念を押すような意味で、いまの第三のことをもう一度伺っておきたい。付属法的でなければならないと私は思うのでありますが、いかがでありますか。
  64. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 中井先生のおっしゃる御趣旨は十分私は了解できるわけでありますが、法律体系として付属法というような形態がかりになくても、その精神におきましては、やはり公害基本法の趣旨に沿うところの適正化法でなければいけない、こういうぐあいに理解をいたしております。
  65. 井手以誠

    井手委員長 丹羽兵助君。
  66. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 まあ、大臣はお帰り願って、幸いにして各省からそれぞれ御責任のある政務次官等三、四御出席をいただいておりますので、一、二点重ねて質問を続けさせていただきたいので、お許しを願いたいと思います。きょうは幸いにと申しますか、人権擁護局のほうから来ておりませんので、めしも食わずに続いてやることは基本的人権の侵害になるかと考えるわけでありますが、それほどまでにいかぬように簡単にやりますから、お許しをちょうだいいたしたいと思います。  まず、いま中井委員からお尋ねのあったと同じようなことの繰り返しになるかもしれませんが、ちょっと私は、いま大臣お帰りになったが、大臣の答弁で中井さん、あの精神で御承知をなさったか、あるいは今後また質問なさるかもしれませんが、二、三日前のテレビであったかラジオであったか存じませんか、運輸省のどなたであったか、これは言わぬとおっしゃればNHKを取り調べてみたいと思いますけれども、運輸省では、業者が二年とか三年とか余裕期間があると言っておったので、そう問題でなかったのですが、とにかく国会で約束を前大臣がしておるのです。この次の通常国会には必ず海水汚濁防止の、調印はしているが批准は済んでないので、必ず国内法を整備してこれは批准をするんだ、批准を今度の国会には手続をとるということをラジオを通じて国民に言っているのですよ。だから私は、業者の都合によって国内法が整備できないからといって、それはそれでやっていけばいいことであって、こういうことは許されない。あくまで大臣がこの委員会で言っておられますから、どうか運輸省もお帰りになったら、私が放送を聞き違えたのじゃないのですから、必ず大臣がこの委員会でお約束になったように、通常国会には批准の手続をとらなくちゃならない国会に対して、委員会に対して責任がある。こういうことを尋ねて念のために申し上げておきたいと思いますから、どうぞ放送をなさった方、どなたか、よくひとつお調べいただいて——運輸省だと考えております。それをまずひとつ委員長から、私のいま言っていることを役所のほうにお伝え願うようなことにしていただきたいと思っております。  そこで、これからお尋ねすることもやはり中井先生がお尋ねになったことと重複いたしまするが、先ほど参考人意見を聞いておりましても、どうも参考人そのもののニュアンスは、もちろん御指摘のあったように違うのですけれども、大事なところになると、参考人の人も逃げておるのですね。きょうは通産大臣にかわって宇野政務次官に出ていただいておるのですから、そのお立場で御答弁願いたい。  通産省に対して、私は、公害等地方の行財政に大きな影響がある企業立地問題については、自治省をはじめ関係各省ともよく連絡をとり、自分のところだけがやっちゃいかぬですから、いまもみんな委員の人は逃げたけれども、きわめてまじめな鈴木厚生大臣だから、私の質問にああやってまじめに答えていただけたので、わかることはわかりましたけれども、しかし、委員自身が逃げておる。また通産省自身からこれは尋ねておかなくちゃならない。だからこういうようなこと、公害対策というものは地方自治体に非常に大きな財政的な負担を負わせる。四日市なんか行ったって、あの四日市はつぶれてしまうといわれるくらいに大きな負担を負うのでございます。だから、こういうことは各省とよく連絡をとって、その意見を聞いて遺憾のないようにひとつ今後やってほしいということを大臣にお願いした。当時の政務次官にもお願いをして、よろしゅうございます、必ずそのように意見調整をはかる、連絡をとる、公害対策に対しては十分地方自治体との関係、これをやると言っておられまするが、その後どうなつて、どのようにやっておるのか一ぺん、やるというだけの返事で一向その後進んでいないのか、ほんとうにやっておるのか、宇野政務次官から承らせていただきたいと思います。
  67. 井手以誠

    井手委員長 それじゃ委員長から最初に外務省と運輸省に対して、ただいま丹羽委員からも御注意があったように、油による海水汚濁防止についての当委員会の決議に対して、先刻の御説明はやや不十分のような気がいたしますので、この際次の通常国会には必ず批准手続をなさるか、あるいは国内法を提出なさるか、その点について明らかにしていただきたいと思います。
  68. 田中榮一

    ○田中説明員 この問題は、ただに国内問題のみでございません。やはり国際問題でございまするので、日本といたしましても一日も早く批准をすることが最も必要であろうと考えております。さような意味におきまして、先般たいへん効果的な御決議をいただいておりますので、この御決議の趣旨を生かしまして、ただいま次の通常国会に提案かできるように、事務当局が相互に事務的な折衝を重ねておるような次第でございますので、御了承願いたいと存じます。
  69. 鈴木珊吉

    鈴木説明員 運輸省といたしましても、今度の通常国会にぜひ提出できますように極力努力をいたします。
  70. 田中榮一

    ○田中説明員 工場立地調査法によりまして、いま届け出がなされておりまするが、そうしたことに対しましては自治省と通産省との間で十分連絡をするようにというふうになっておりますので、先生の御趣旨に沿えるのではないかと思っております。  なおかつ将来の問題に関しまして、先ほどのお話のとおり、各町村が何か工場誘致ブームに乗り過ぎてしまって、あまりにも無秩序あるいは無計画に誘致をいたしますると、今日起こっておるような諸種の問題が惹起いたしますので、この点に関しましては先ほど中井先生からもお話がありましたが、実は通産省といたしましては工業立地適正化法というものを提出いたしたいと考えておるのであります。もちろんこれは通産だけの考え所では運営できませんので、企画庁であるとかあるいは建設省であるとか厚生省であるとか自治省であるとか、いろいろな関係各省と十二分にただいま事務的な折衝を行ないまして、今後もいま申しましたような事態が起こらないように、いわゆる先手の政治を打っていきたいというような考え方を持っておりますので、この際あわせて御答弁申し上げます。
  71. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 重ねて通産政務次官にお尋ねする前に、まずいま委員長から私の発言によって関係各省に御注意をいただきました。あの決議をするときには、委員長及び野党のほうから非常に強い要請があったのです。そこで私のほうの与党としては、やはり政府の用意ができないとか、あるいは国内法が整備できないので困るというようなことでも政府としての立場もなかろうというので、ずいぶん私自身は窮地に立ってあちらこちら走り回り、そして政府と党とも十分連絡をとり、各省の大臣に直接出てきていただいて十分調整をとり意見を聞いた上に、あの決議をしたのです。そして大臣意見をみんな聞いておるのですよ。やむを得ない一大臣があったかもしれませんけれども、それはかわりにちゃんと政務次官が来て発言している。それは事務当局に進めさせるとかそういう方向じゃなくして、委員長はじめ野党の意見は、次の国会にというのを、譲歩して通常国会にということにした。それでやるということを各大臣が言って、政府の所信というのですか、決議に対する政府の態度は明らかにしておるのですから、これはしっかりとしていただかないと約束が違うわけなのです。私は、いまの運輸省のお答えを聞いておりまして、あのくらいな気持ちでいかないとだめだというように思います。特にそのときに外務大臣は都合が悪くて出てこられなかったので、外務政務次官が出ておいでになった。外務政務次官のお答えは、私の記憶はそう違わないと思います。ことばは違うかもしれませんが、趣旨においては違わない。これはもう国際的に調印したのであって批准は当然なので、国際的信義にもとることであるから一日も早くやってほしい、またやるようにするというので、外務省がほんとうに勇み足で、われわれ以上に熱意を持って各省との連絡をとるような御発言まであったから、この点もひとつ現政務次官お調べいただきまして、やるでありましょうけれども、そんな鋭意何とかというようなことばは、もう今日この委員会においては本件については通じないことばであるということを重ねて私から申し上げておきたい、こう思うのです。どうぞよろしくお取り計らいのほどお願いをいたします。  そこで私がいま通産省に、公害対策公害によって地方財政に及ぼす影響、これについて各省との関係でよく連絡をとってやらなければだめだ、おまえのところだけは一方的に企業家側のことのみ考えて、その結果が一般の人に公害として迷惑を与える、また団体には財政的に大きな負担を与える、いま通産省は一方的にどこも見ずに、目隠しの馬が走るようなやり方ではないかということを言って、それで初めて今後は各省との連絡を十分とりますという反省的な御答弁があったわけなのですよ。だから私はいま聞いている。たぶんあなたは、その後は各省との連絡は十分つけておるというような御答弁をなさるであろうというくらいのことは想像して、実際は私に似合わず調べて原稿を持ってきてやっておる。あなたはきっとこうおっしゃるだろうと思ったら、そのとおりの御答弁なんですね。だから各省の間でよくいろいろ連絡し合うということは、そういう方法でやっておいでになるということは、いままでよりはずっと前進とは言えぬけれども、牛の歩きぐらいでちょっとはいいと思うのです。ちょっとはいいと思うが、地方の財政に、どうするのだというような連絡をとるとか、調整をとるとか言わずに、もう少し国の立場でもっと建設的に指導するというお考え、これをひとつ、大庭もおられぬから相談もできぬということであればやむを得ませんが、もしあなたが、よしやろう、おれが政府責任をとってやらせるのだという御決意があれば、もう少し——連絡をとるとか調整をとるとか話し合っていくのだとかいうのではなくて、もっと国として建設的にその財政に対するところの手当てをしていくのだというお考え、これは自治省と相談してやるのだというくらいなお考えは持ってみえるかどうかということを、この機会に承っておきたいと思いますが、いかがですか。  なお私は、その後よく見ておると、そういう答弁をなさるだろうと思って見ておりますと、新産業都市だとかあるいは工特地域ですか、ああいうもの、それから産炭地域にしても都市開発のようなものにしても、開発の構想というものをだんだん打ち出しておられますけれども、実際においていまあなたのおっしゃったようなこと、はやっていないですよ。国は積極的に進んでやっておるということは言われますけれども、連絡はとったって、ほんとうに金を出して町村を財政的に援助をせなかったら、これはもうだめなんです。そうして厚生大臣の言われる企業の犠牲はできるだけ軽くしなくちゃいかぬ、もう国はめんどうを見ない、地方財政は手を上げちゃっておる、これじゃ全く話にならぬ。こう思うのですが、もう少しいま最後に言いましたように、やるやると言っておられるけれども、こういうような問題、その後何をやってるか、何にもやってない。やってることは一つもない。ですから、もっと建設的な国としての意見をひとつお聞かせを願うことができたらけっこうだと思います。もしできなかったら、ひとつ大臣が近く帰ってくるから、この次の委員会までに相談して返事をしていただきたい。これでけっこうですが、勇断をもってどうです。ぼくらは政務次官のときにずいぶん思い切って言ったつもりなんですがね。それくらいのことなら進みませんかね。
  72. 宇野宗佑

    ○宇野説明員 先輩の丹羽先生の御意見、ごもっともだと存じます。実はさような意味合いにおきまして、先般もこれは政務次官会議でございますが、今日までの行政をいろいろ考えてみますると、各省ありて政府なしというような批判があってもしかるべき点が多々あったわけであります。これであってはいけない。たとえばこれから制定されるであろうところの公害基本法に関しましても、どっかの省が加害者の立場に立つ、どっかの省が被害者立場になる。そういうようなものの言い方であってはいけない。だからただいま通産省として考えております工業立地適正化法に関しましても、ひとつ従来の旧陋を打破して、新しい見地においてりっぱな法律をつくらなくちゃならないということで、実は政務次官会議におきましてもそのことが決議なされております。したがって、今日では各省がそのような立場におきましていろいろと事務を進捗してくれる状態なのであります。  そこで工場誘致と地方財政との関係でございますが、先ほども、この委員会におきまして御決議なされました事柄に対するその後通産省がとってまいりましたいろいろな施策、これを私が御報告いたしました節にも、実は税、財政の特別優遇措置ということを申し上げました。このことに関しましては、丹羽先生も先ほど厚生大臣に御質問されたとおりでございます。たとえば私たちが考えておりますところの固定資産税の免除ということを考えるならば、当然これは地方財政にも大きな影響を与えるところであります。だからわれわれは企業側からいたしまするならば、公害を未然に防がんがためにはそのような優遇措置も当然とるべきである。しかしながら、はたして各自治体の所管省である、自治省の考えはどうであろうか。こうしたことも当然われわれといたしましては、お互いにその立場立場に応じて話し合いを進めていかなくてはならない問題ではないかと思うのであります。現に四日市の例をとりましても、今日排煙ガスを除去するために煙突が立てられておりまするが、この煙突に対しまして、鉄筋コンクリートは一般のものは三十年が二十年になっておるとか、あるいはつい最近十一年のものが七年にその償却期限が短縮されたような問題もございますので、こうした問題に関しましては、当然従来通産省のほうにおきましても、自治省あるいは大蔵省と連絡をとりまして、そこに意見のそごを来たさないような措置をとってまいったわけでございます。だからいま先生の御質問の趣旨に従いまして、今後は高い立場で私たちはひとついろんな法律を運営していきたい、また作成していきたい、そういうような考え方でおりますので、この際に私の所見を明らかにいたしておきます。  なおかつ、先ほどの御質問の中にもありましたとおり、ついこの間の委員会でやかましく自治省等等の連携はどうなったかということを質問をしておったが、どうやらまあ十二分に話し合っておるということだけであるというような御意見でございますが、この点に関しましては、ひとつ事務当局からどういうことがあったかということを具体的に報告させますので、御聴取賜わりたいと存ずる次第であります。
  73. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 いま委員長から時間の制限を受けたわけではないのです。発言の制限を受けたわけではないけれども、紳士的になるたけ早く終わってくれぬかということの御注意ですから、私も委員長からの御注意をよくその意を体して簡単にお聞きいたしたいと思いまするので、せっかくの政務次官のこまかく説明させるという御熱意はわかりますけれども、これはまた後日に聞くことにいたしておきます。  いまのあなたの答弁で、やはり中井先生の言われたように、今後工業立地に関しては、工業立地適正化法ですか、こういうようなものをこしらえて、ちょうど中井先化のお尋ねしたようなことで、今後いろいろな点を解決していくのだということで、逃げ口上になる、だろうと思って——逃げ口上ではないけれども、そう将来は考えなさるであろうということも、答弁はもう私どもはちゃんとわかっておる。こういうものをあとで見せるけれども、実際は私はちゃんとそう書いておりますよ。ところが、なるほどこれはこまかくはこういう交渉をしたとか、こういう連絡をしたとかいう報告はなさるでしょうが、これはし実際においては根本的な対策にならないのです。一つ一つ問題があったときに話をするようなことであって、ほんとうに国と地方公共団体とが一体になり、真に産業を進めて、できるだけ産業の振興をはかっていく、そうしてそのことが公害というような迷惑を国民に及ぼさないようにして、立地適正化なんというようなものをつくろうとでもなさるならば、まず根本的にそういう問題はちゃんと自治省なり関係者と十分連絡をとるんだということを、いまやりにくいことだとは言われたが、大臣自身も言っていられるけれども、これはちゃんと法律の中に入れなかったらなかなかむずかしいことだ、こう思うので、参考までにそれを申し上げておきたいと思うのです。  それで、いまおっしゃいましたように、工業立地適正化法の立案も考慮して、いま私がくどくどお尋ねしておるようなことも解決していこうとはしておいでになる。そのお考えになっていること、また審議会自身もそういう考えでおいでになることは非常にけっこうなことであるが、聞き及ぶところによると、それらも、やれ工場の繊維専門用地をつくろうだとか、地価の問題をどうしようとか、あるいは企業中心とした立地条件というような、まあ企業理想化、そういうところに中心が置かれているように私どもは見受けるわけなんです。ひねくれた言い方か、ひがんだ言い方かもしれませんが、まあそういうように思われておって、あなた方政府当局が考えていらっしゃるような、また政府がまじめに考えているように、国が一つになって取っ組んでいくんだという態度というものはどうも見受けられない、今度の適正化法案の中にはまあ見受けられない、非常に軽く見ておる。こういうことは私は最もおそろしいことだと思うので、もしそういうことを政務次官としてお考えになるならば、これはもう企業を主体としてのそういう適正化法ではなくして、ほんとうに国全体が各省との連絡をとって取っ組んでいくんだというやり方に私はしていただきたい、そういうことを国の方針として積極的に協力して取っ組んでいっていただきたいと思うので、通産省に最後のお尋ねとしてあなたに承っておきたいのは、今後通産省においては、こういう立地条件とか誘導等について特に一番困るのは、どうだこうだと言えば、いやおれの役所、おれのところだ、こういうことになるのですが、まず先にあげたからその役所が一番重いわけではない。まずいい話を順順に言ってきたからということで、自治省だとか、あるいは厚生省だとか、あるいは農林省だとか、経済企画庁だとか、こういうような各省との、関係のある役所の意見を十分調整をとり意見を聞いていくというようなやり方にしていただかなかったならば、工場適地というものはできない、適正化というものにはなっていかない、こう私は考えまするが、いかがですか。それについてひとつ政務次官のお考えを明らかにしておいていただきたい。  重ねて言えば、先言ったものを中心というわけじゃない。何でもいいですけれども、自治省だとか、農林省だとか、厚生省だとか、経済企画庁だとか、各省との連絡を十分とり、十分話し合って、そうした上に工場の適地をきめるとか、あるいは適正化していくというようなことに持っていかないと、これは世間からいろいろの批判を受けたり、企業中心のものになるという考え方が浮かんでまいりますので、通産省は今後こういうことをやっていくならば、私らが指摘いたしましたような方向で十分考えていくということをひとつここで明らかにしていただけたら、それこそ国家のためになると思いますので、政務次官の御意見を聞いておきたいと思っております。  以上をもって、御答弁の次第によって質問を終わることにしてけっこうでございます。答弁を求めます。
  74. 宇野宗佑

    ○宇野説明員 この工業立地適正正法というものを通産省が次の国会に出したいと考えましたゆえんは、御承知のとおり通産省諮問機関として今日存在いたしております産業構造審議会、そのうちの立地部会あるいはまた公害部会、そこらが答申をなされた結果に基づきまして、何としても今後の企業のためにそうした姿がほしいものであるというので準備をいたしておるわけでございます。もちろん私個人も、従来まで新産都市とか、あるいは近畿圏だとか、中部圏だとか、首都圏だとか、そうした地域開発の問題に関する各種の法案作成にも臨んでおりましたので、それらのものが今日までいかに効果を発揮しておるかということになりますと、はなはだ疑問の点が多うございます。しかし半面におきましては、すでに制定以来数年たってしまいますと、たとえばの話でございますが、東北地方等におきましては、新産も必要だけれども、やはりわれわれは民族の食糧の供給基地ということを中心でやっていかなくちゃならない。そしてそこにあるところの過剰労働力をいかに新しい産業に吸収するかというような方法を考えていこう。こういうふうに地域ごとにはいろいろと従来の経緯より新しいものの考え方が生まれておるわけでございます。したがいまして、そうしたものとも並行いたしましてわれわれはここに適正化法案というものを準備いたしまして、ほんとうに日本の再開発、そうしたものができるように望んでおるわけでございます。当然その中には重大な問題といたしまして公害問題等もあわせてここで解決をしなければならないという考え方に立っておるわけでございます。さようないきさつにおきまして通産省考え方、また諮問機関であるところの各部会よりの答申に基づきまして、この法律を準備いたしたわけでございますので、もちろんその内容は、従来の新産あるいは近畿圏整備であるとか、中部圏整備であるとかいうような法案よりも、さらにきめこまかい点にまで、いろいろと工業立地制限等を中心として、それに基づくところの企業の繁栄というもの、並びに地方住民の福祉の向上、これを考えておるわけでございますので、出発は通産省でございます。責任通産省でございます。しかし、やはりこれは先生の御指摘のとおりに国としてやっていかなくちゃならないことでございますので、先般の政務次官会議において、このアイデアは通産省のものでございましても、当然建設にも自治省にも各省にも関係があるのだから、ひとつ高い次元においてこの問題を処理しなくてはいけないということを私自身が発言をいたしまして、明後日の政務次官会議におきましてもこの問題が議題に供せられるわけでございます。そうした形におきまして、おっしゃったとおりに省のなわ張りがどうだこうだというような形ではなく、ほんとうに実るような法律というものを準備していきたいと考えておるのがわれわれの今日の考え方でございますので、その点何とぞ御了解を賜わっておきたいと思います。
  75. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 委員長との約束の時間を一、二分おくれますけれども、ひとつごかんべん願いたいと思います。  宇野さんが一役所の政務次官として役所を代弁する立場の御答弁よりは、あなたの高い政治センス、非常に幅の広い政治感覚からの御答弁で、私はわかるのです。あなたがただ通産省だとか、とにかくそういうからの中にはまり込んじゃって、これは通産省責任であるとか、通産省の言い出しだとか、わかりやすいことばでいうと、そのからの中に閉じこもって何ごとも考えていけば、国の政治は成り立たない。もっと高い次元に立って、いわゆる政府として、国として事を考えていこうということは、ほんとうに敬意を表する。なお一そう私のお願いしておきたいことは、そういう高い次元、政治的な感覚のあなたですから、これをやろうとするならば、どうしたって公害ばかりじゃないのです。いまあなたは東北地方のことをあげて、食糧は東北にまかしてくれ、そのかわりそこの余剰労力は新しい工業のほうに向けてもけっこうだ、そうして相まって栄えていこうというその考え方はとうとい考え方だと思う。であるからして、そういうものを考えなさるときには、ただ審議会がどうだとか、どこへ諮問したというのではなくして、やはりそういうものを諮問し、そういうものを立案するときには、当然積極的に進んで各省との話し合い、意見を聞いてやらねば、こんなものは絵にかいたもちになってしまう。だから私がもう一ぺん高い次元のあなたという人にお願いしておきたいことは、どうかひとつ、せっかく成功なさるために、せっかく日本産業を伸ばすために、今後いろいろと出てくる問題を最小限度に食いとめていくためには、またその効果を伸ばすには、各省との連絡、特に自治省なんかとの連絡を十分とらなければだめだということを強調しておきたいと思いますから、もう一ぺんその点、私の言うのが違うのか、あなたの考え方と私の考え方とは私は全然食い違いはないと思う。そのことによって初めて国民が喜ぶ政治ができると思うし、産業が伸びていくし、その地方の開発はできると思うし、公害も少なくなっていく。こう思いますので、もう一ぺん——野党と違って意見の相違は決してないはずです。あなたと一緒の考えだと思いますから、もう一ぺん、ひとつ重ねてあなたの御答弁を願って、質問を打ち切ることにしたいと思います。御答弁を求めます。
  76. 宇野宗佑

    ○宇野説明員 御趣旨十分に尊重いたしまして、高度の次元で今後やっていきたいと思います。
  77. 井手以誠

    井手委員長 長い時間審議に御協力いただきましてありがとうございました。  本日は、これにて散会いたします。   午後二時二十九分散