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国務大臣(
藤山愛一郎君) 御指摘の点、御質問の点は、関連あるように思いますので、個々でなしに、総括的に申し上げたいと思います。
不況対策と
物価対策でございますけれ
ども、元来、今日の
物価上昇が引き続き起こってきたということについては、これは私はもう
経済の成長発展過程におけるゆがみ、ひずみの問題がそこにあるから起こってきたんだ、単に需給問題から起こってきたものではない、こういう前提に立ってこの問題を認識いたしているわけであります。したがって、
物価対策の根本的な
対策というのは、ことに長期にわたってこれを安定さしていかなければならぬ。引き下げて安定さしていかなければならぬとすれば、それぞれ構造上の問題を
解決してまいらなければ、一時何か足りない物資に対する緊急輸入をやったからといって、それで
物価問題全部が片づくものではない、こういうような
考え方でいるわけでございます。
そこで、そういう認識の上に立ちまして今日の
物価問題を扱ってまいりますれば、不足物資に対する緊急輸入というような点は、これは当面の急速な
対策としてこれはやってまいらなければならぬことでございますけれ
ども、それを除いては、私は一服の薬をもってそうして
物価全体を安定させるというような頓服薬は、これはないと思っております。ですから、若干気長と申してはおかしいのですが、これをいつまでもこういう状態に放置しておくわけにいかぬとなれば、二、三年のうちに、いまの構造上の
関係をすべて個々に
解決しつつ、
経済政策全体をそこに持っていかなければならぬ。ですから、今後、
経済政策において、私
どもが
安定成長、少なくも七・五%前後の成長で当分の間続けていきたいというのも、
物価問題というものが
経済政策の結局の終局の問題でございますから、そういう点に力を入れているわけでございます。
そこで、
不況対策と
物価の問題でございますが、今日
不況で昨年来あることは、これはもうどなたにもおわかりいただいているとおりです。したがって、この状態を
解決してまいりませんければ、
物価問題も
解決できないことは当然でございます。と申しますのは、今日の
不況というのは、御承知のとおり、設備投資の過剰によりましてその稼働率が非常に悪くなっている、そうしてそれぞれの事業主体が影響をこうむっているところに問題があるのでございますから、そういう
意味で、景気をつけまして、そうして設備投資によって過大な設備が出ていたものを、できるだけ稼働さしていくことによって景気の回復をはかっていくということだと思います。そこで、
不況対策をやってまいります場合に、民間でもって今日のような状態で民間の設備投資を民間の資金によって刺激してまいりますということは私は適当だとは思いません。それでございますから、やはり
政府がこの際、財政支出によってこれらの刺激をやっていく。しかも
政府の財政支出というものが
公共事業その他今日までのゆがみ、ひずみが起きておりますところに集中して出てまいることによりまして、私は
不況対策と
物価問題との基本的
解決の線が一致してまいると思っております。私は、この前の
委員会でも申し上げましたように、いわゆる所得倍増計画を
最初にスタートいたしましたときに十三兆六千億の
国民総出産、それが三十兆にも名目なろうという今日でも、それだけの大きな生産が行なわれているにもかかわらず、それでは社会投資としての道路であるとか、港湾であるとか、輸送
関係であるとか、流通機構の改善というようなものに十分なそれに対応するような私はものになっていなかったところに
一つは大きな根があると思っております。ですから、今回の景気刺激の
対策をその面に集中してまいりますことによって景気刺激にもなりますし、同時にまた、一方では
物価対策の基本的な問題である構造上のゆがみ、ひずみの改善ということにも役立ってまいりますので、
不況対策と
物価対策とは並行して行なわれて今日の場合差しつかえないし、また、今日の
政府のとっております
政策そのものがその線に沿ってやっておりますので、私は矛盾することなく、これが将来
安定成長の線に乗せてまいりまして、まあ進んでまいりますれば
物価の安定と
経済の活況を呈する。むろん活況を呈すると申しましても、一九%も実質にあるいは名目に
拡大したというような
状況になることは私は必ずしも好ましいことだとは思いません。したがって、やはり七・五%を前後にしたような線でもって安定的に成長していくことが一番望ましいと思っておりますので、そういう線に沿って今後の
経済政策が運営されてまいりますれば、
不況対策と
物価対策というものは並行して行なわれて、両々相まってその結果をあげてまいると思います。ただ問題は、
不況対策によってある程度、七・五%程度の景気が回復するような
状況になりました以後のやはり
政府の
政策というものが過熱におちいらないように、あるいはその民間設備投資が従来のような
状況に質的においてなっていかないように注意していくということは、これはもう非常に大事なことでございまして、それは将来半年なり一年先のわれわれの大きな課題だ、こう
考えております。
そこで、私
どもとしては、
物価政策というものは、いま申し上げたように、
経済政策の基本の上に立ってゆがみ、ひずみを面しながら、当面起こっております事態を
考えてみますと、三十五年から平均六・二%の
上昇のうち、多くの部分が野菜の、
生鮮食料品の
値上がり、あるいは中小
企業の製品の
値上がり、あるいはサービスの
関係の
値上がりということになっておりますので、重点はやはりそこに置いて各省の
施策をやっていただかなければならぬと思います。したがいまして、農水産物の
対策等につきましては今回の予算においても相当重点を置いていただいておりますし、また、流通過程の問題、あるいは中小
企業の合理化
対策等について積極的に予算を盛りますと同時に、それに対する通産省の努力が行なわれつつあるのでありまして、そういう面からいって今日まで
物価の
上昇の主たる原因になっている問題に直接手を触れていくことが必要であろうと
考えております。
政府はそういう
意味におきまして非常な決意を持ってやっておりますが、ただいま御指摘の、それではなぜ
公共料金を上げるんだ、こういうことでございますが、私はいま申し上げたように、
物価というものが今日、本年度下がっても来年度再来年度上がっていっては何にもなりません。やはり二、三年先に漸次安定していきまして、私が三%と申したところまでいくように持っていかなければならぬ。それにはやはり
公共事業等につきましても、今日の
現状から申しますと、
公共料金、経営主体、公共団体等の経営あるいはそういうような立場に立っております仕事を見てみますと、非常な大きな経営上の赤字その他無理がございます。したがって、これらのものも合理化していただかなければなりませんし、同時にある程度の料金を上げて、そうして経営の改善ということをやっていただかなければ
物価問題に将来影響ないのでございまして、ただ単にここでストップしたからといって、そのこと自体が将来それではいい結果をもたらすかといえば、必ずしも私はいい結果をもたらすとは思いません。ただいま
木村委員が御指摘のように、三十九年には
公共料金をストップしたからそれで下がったのだ、しかし、ストップがやまればやはり同じような
状況が現出してくる。したがって、今日
公共料金を必ずしもストップしないでも、最小限度の範囲内において、これらについて手当てをしていくということによって、将来二年、三年の後の効果を私
どもは期待してまいらなければなりませんから、したがって、
公共料金等につきましても、むろん内容を精査して最小限の値上げは認めて、そうしてその経営
企業の合理化あるいは生産性の向上というものに従事していかなければ、将来にわたってこれらの公共
企業体のやっております仕事がさらに悪化して
物価問題に悪い影響を持つ。その他社会万般の問題に影響してくると思いますので、やはりそういう面についても、ある程度の処置はせざるを得ないのではないか、こういう立場に立って私は問題を
考えておるのでございます。
消費者物価が高騰しているのは
インフレじゃないかという御
議論がございます。私は、日本の
経済というものを今日までのところ、最近の
状況から申せばデフレ的要素と
インフレ的要素とが併存していると申しておるのでございますが、ただ
インフレということばがはたしてどういうふうに解釈されるかということは問題でございまして、たとえば従来の観念からいえば、円の国際比価の変動ということが、私はやはり
インフレの大きな要因ではないかと思います。そういうものによって代表されるものが
一つの従来の観念からいえば
インフレ。ですから、そういう
意味からいいますと、国際比価というものは保っていながら国内的に
消費者物価が上がっていくということは、いわゆる従来の観念の
インフレとは若干私は違うのじゃないか、こう思います。したがって、そういうことでいま必ずしも私は全面的な日本の
経済が
インフレ状態に入っているとは認めない。ただしかし、将来
物価政策を完全にやってまいらなければ引き続き上がっていけば、あるいは
木村委員の御指摘のような
状況に私は入りはしないか、入ることは危険でありますから、今日それに対する十分な
対策を尽くしてまいって、そうして
不況を克服する、
物価が安定する、そして今日のような輸出
状況が続いてまいりますれば、円の国際比価も保っておりますから、言われておるような
インフレ状態にはおちいらぬのじゃないか。ですから、今日の国内
物価だけ見ておりますと、
インフレ的
状況がありますけれ
ども、日本
経済全体として見れば、私は必ずしも
インフレが、日本の
経済がいま直ちに
インフレの状態にあるという断定はいたしておらぬのでございます。
公債発行等につきましては、私は
大蔵大臣と同じ
考え方で今日おりますので、特別に申し上げることもないと思います。
最後に、
冒頭に言われました
政府の決意について申し上げますが、私は、
企画庁長官として、今日、
物価安定に対して最大の努力をいたさなければならぬ立場におります。それはいままで申し上げましたことで御了承いただきますように、
物価問題というのは、単なる家庭主婦の問題だけではございません。この問題も非常に大きい問題ですが、一歩誤りますと、将来御指摘のような円の国際比価を変動させるような
インフレ状況におちいってはたいへんでございます。そうすれば家庭主婦の上にも大きな影響が出てくることは申すまでもないのでございまして、そういう
意味からいいまして
企画庁長官として、
物価の安定というものに最大の努力をしていきたい。したがって、こういう基本問題につきましては、先般閣議の
物価対策閣僚懇談会もつくっていただきましたし、また、企画庁に学識経験者あるいは各界の代表を集めて、
物価問題の懇談会を
開きまして、そこで根本的な掘り下げた
意見を出していただくようにお願いし、各
委員も非常に熱心にそれらの問題に取り組んでいただいておりますので、私はそれらの点を十分
佐藤内閣の
政策の中に入れながら努力してまいりたいという決意を持っておる次第でございます。