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1966-03-25 第51回国会 参議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十五日(金曜日)    午前十時三十二分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      小山邦太郎君     宮崎 正雄君      土屋 義彦君     田村 賢作君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石原幹市郎君     理 事                 小沢久太郎君                 大谷藤之助君                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 赤間 文三君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 北畠 教真君                 草葉 隆圓君                 古池 信三君                 西郷吉之助君                 櫻井 志郎君                 田村 賢作君                 内藤誉三郎君                 平島 敏夫君                 藤田 正明君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 松野 孝一君                 宮崎 正雄君                 吉武 恵市君                 稲葉 誠一君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 林  虎雄君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 鬼木 勝利君                 黒柳  明君                 中沢伊登子君                 春日 正一君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        農 林 大 臣  坂田 英一君        通商産業大臣   三木 武夫君        運 輸 大 臣  中村 寅太君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        労 働 大 臣  小平 久雄君        建 設 大 臣  瀬戸山三男君        自 治 大 臣  永山 忠則君        国 務 大 臣  藤山愛一郎君        国 務 大 臣  松野 頼三君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第二        部長       真田 秀夫君        内閣総理大臣官        房公報室長    三井 芳文君        総理府賞勲局長  岩倉 規夫君        公正取引委員会        委員長      北島 武雄君        公正取引委員会        事務局長     竹中喜満太君        警察庁長官    新井  裕君        警察庁保安局長  今竹 義一君        警察庁交通局長  内海  倫君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁教育局長  宍戸 基男君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        防衛庁装備局長  國井  眞君        防衛施設庁長官  小幡 久男君        防衛施設庁総務        部会計課長    大浜 用正君        防衛施設庁施設        部長       財満  功君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省中南米・        移住局長     廣田しげる君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       星  文七君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局長  谷村  裕君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君        大蔵省国際金融        局長       鈴木 秀雄君        国税庁長官    泉 美之松君        文部政務次官   中野 文門君        文部省初等中等        教育局長     齋藤  正君        文部省社会教育        局長       宮地  茂君        文部省調査局長  蒲生 芳郎君        文部省管理局長  天城  勲君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        農林大臣官房長  大口 駿一君        農林省蚕糸局長  丸山 文雄君        林野庁長官    田中 重五君        水産庁長官    丹羽雅次郎君        水産庁次長    石田  朗君        通商産業省通商        局長       渡邊彌榮司君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        通商産業省企業        局長       島田 喜仁君        通商産業省重工        業局長      川出 千速君        通商産業省軽工        業局長      伊藤 三郎君        通商産業省鉱山        保安局長     森  五郎君        中小企業庁長官  山本 重信君        運輸大臣官房長  深草 克巳君        運輸省鉄道監督        局長       堀  武夫君        運輸省自動車局        長        坪井 為次君        郵政大臣官房長  鶴岡  寛君        電気通信監理官  畠山 一郎君        郵政省郵務局長  長田 裕二君        郵政省電波監理        局長       上田 弘之君        郵政省経理局長  淺野 賢澄君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        建設省計画局長  志村 清一君        建設省道路局長 尾之内由紀夫君        建設省住宅局長  尚   明君     ―――――――――――――        会計検査院長   小峰 保栄君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君    説明員        法務省入国管理        局次長      中村 正夫君        外務省アジア局        外務参事官    広瀬 達夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、小山邦太郎君、土屋義彦君が辞任され、その補欠として宮崎正雄君、田村賢作君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、  以上三案を一括して議題といたします。  まず、委員長及び理事打合会協議事項について御報告いたします。  二十二日報告いたしました一般質疑順位につきまして、その後の順位を昨日の打合会において協議いたしました結果、お手元に配付いたしました質疑通告表の順序に従いまして取り運ぶこととなりましたので、御了承願います。  なお、本日は、矢山君の質疑の前に、文部大臣の都合によりまして、小柳君の質疑を若干行ないます。  それではこれより質疑を行ないます。小柳勇君。
  4. 小柳勇

    小柳勇君 私は、午前中、性病対策にしぼって質問をいたします。  最近、性病が急激に蔓延いたしまして、特に二十四歳以下に患者増加が見えておると新聞その他発表いたしておるところであります。厚生大臣にお伺いいたしますが、国内の現状について御説明をお願いいたします。
  5. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 性病蔓延状況につきましてお尋ねがありましたが、わが国性病状況は、昭和二十三年ころ最高の数字を示しておったのでありますが、急激にこれが減少をいたしまして、昭和三十九年には一万人程度罹病者があるのではないかというぐあいに、非常に少なくなってまいったのでありますが、昭和四十年に至りまして、前年度比一六%程度ぐらい患者がふえておる、こういう傾向になってきておるのであります。特に私ども性病につきまして憂慮いたしておりますことは、昭和三十四、五年ころから、梅毒、特に早期顕症梅毒蔓延をしてまいっておるもようでございまして、特にいま小柳さんが御指摘のように、二十四、五歳から二十代の青年、最近は十代の若年層にまで、そういう早期顕症梅毒蔓延の徴候を示しておる、こういうことで、非常に心配をいたしておるのであります。これに対しまして、政府といたしましても、性疾予防法改正等、真剣にその対策を進めておるのであります。
  6. 小柳勇

    小柳勇君 ただいま概要についてお話がありましたが、もう少し詳しく数字をあげて、たとえば二十四歳以下、あるいは十歳代など、数字をあげて御説明を願います。
  7. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 政府委員から。
  8. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お答えをいたします。  性病患者の実際の数を確実に把握するということは非常に困難でございまして、各種のいろいろな調査の結果から推測をいたしていくわけでございます。梅毒蔓延度につきましては、学者によりまして多少意見は異なっておりますけれども、一例といたしましては、千葉大学竹内教授によりますと、昭和三十三年までに千葉県を中心にして関東地方におきまして約三十万人の人を調べた。その陽性率ということになりますと、約四%、それからその検査の際漏れた者を検査しますと、なお陽性率は高くなる。それで、四%プラス・アルファというようなことから全国民推計いたしますと、大体五百万人程度に及ぶだろうというような推計をいたしているわけでございます。また一方、比較的多く健康診断が実施されている妊婦につきまして血清反応陽性率を見ますと、大体一・一%から二%近くを示している。これをいわゆる全国民ということでひとつ類推をしていきますと、まあ少なくとも百万人以上はおるであろうというような数字が出てくるわけでございます。で、届け出患者につきましては、先ほど大庭からお話がございましたけれども、順次減ってはまいっておりますけれども、これは実際の患者数の何分の一かということになると思います。しかし、その中で若年者梅毒増加が見られるということにつきましての一例といたしましては、二十四歳以下で見ますと、昭和三十六年に梅毒患者の中で二十四歳以下の者が占める割合が一五・一%でありましたものが、三十九年になりますと二三・二%というふうにふえているわけでございます。それからなお、昭和四十年の五月に金沢で皮膚科学会の総会が催されまして、その際に学者から報告がありました。それで見ますと、昭和三十七年、三十八年、三十九年の三カ年につきまして、顕症梅毒、いわゆる症状の出ている梅毒、これの患者動きにつきまして報告がございました。いわゆる皮膚科学会の会員が取り扱った患者から見ますと、顕症梅毒患者昭和三十七年には千二百五十五人、三十八年には千八百二十人、それから三十九年になりますと、これが二千七百六十三人、三十七年に比べまして倍になっております。それから大学病院で調べますと、三十七年には百四十四人、三十八年には百九十四人、三十九年には三百三十九人、こういうふうに増加しているわけでございます。また、非行少年あたりのいわゆる罹患率というものも、これも非常に高くなりまして、一例としてあげますと、堺の少年鑑別所あたりでは、三十九年に二百六十四名を検診いたしましたところ、そのうち梅毒が二十六名で九・八%、それから淋病は三十六名で二二・六%と、普通の者に比較いたしまして非常な同率を示しているという状況でございます。
  9. 小柳勇

    小柳勇君 ただいま政府委員から数字をあげて詳しく説明がありましたが、厚生大臣はこのどの数字基礎性病対策を立てようとされておるか、お聞きいたします。
  10. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま御説明を申し上げましたように、性病、そのうちでも早期顕症梅毒蔓延状況を私ども憂慮いたしておるのでありまして、大体、千葉大の竹内教授は五百万人と、こう言っておるのでありますが、私どもいろんな数字から総合的に推計をいたしますと、二百万人前後ではなかろうか。大体そういうところにめどを置きましてこれに対する諸般の対策を進めておる次第でございます。
  11. 小柳勇

    小柳勇君 新聞、雑誌その他報道機関によりまして、性病患者五百万人説などが流れておりまして、国民も非常に憂慮いたしておりますし、不安もあるのでありますが、ただいま大臣は二百万人を基礎対策を立てようとされております。したがって、私も二百万人を基礎にこれから政府見解を聞いてまいろうと思います。  次に、海外からの侵入についてはどのように把握されておるか。
  12. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 性病が特殊な病気であります関係もありまして、なかなかそのことを把握することが困難であるわけでありますが、この早期顕症梅毒日本だけの傾向でなしに、世界的にもこの四、五年の間に相当蔓延をしておるという情報を私どもキャッチいたしておるのであります。そういう関係で、私ははっきり把握はできませんけれども、この病気は国際的な傾向があるということだけは言えると思います。
  13. 小柳勇

    小柳勇君 国際的な傾向だということは、もうしばしば言われておるところでありまするが、海外から入ってまいったその病源日本国民を滅ぼしつつあるという報道がなされておりますが、もう少し詳しいことをお聞きしたいわけです。重ねてお聞きいたします。
  14. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 重ねてのお尋ねでありますが、的確な資料等把握いたしかねておるわけでございます。
  15. 小柳勇

    小柳勇君 国内的な問題についてはあとでお聞きいたしますが、国外から渡航者など入ってまいりまして、これが国内の一番悪い病原をばらまく根源だということは言われておるのでありますが、国際的に問題にされたことはないのか。また、将来これに対してどういうふうな対策を立てようとされておるか、お聞きいたします。
  16. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 性病に対する国際的な取りきめといたしましては、ブラッセル協定というのがございますわけですが、これは船員が各国を航海いたします際に、そのブラッセル協定に加盟しておる国におきましては公費で治療ができると、こういう協定でございます。その他、一般人々を対象とした国際的な取りきめはいまのところございません。また、先ほど来お話がありますが、日本に渡航してまいります外国人血液検査等を、これを強制をするというようなことにまいりません関係がありまして、的確な把握が困難である、こういうことであります。
  17. 小柳勇

    小柳勇君 国際的であるということがわかっておって、将来、日本として国際的にどのような働きをされようとするか、見解をお聞きいたします。
  18. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これはやはり国民に対し、特に若年層人々に対しまして、性病に対する正しい知識性病のおそろしさというものを十分啓蒙し、教える必要があるのではないか。そうしてやはり生活を正しくしていく、こういうことが根本ではなかろうかと思うわけであります。また、今回の性病予防法で御審議をお願いするわけでありますが、婚姻時における梅毒血清反応の義務づけでありますとか、また妊産婦等血液検査でありますとか、そういう面を強化をいたしまして、そういう面からの予防措置、また早期発見、そういうことを強化いたしますと同時に、何といっても根本国民全体、特に若い人たち性病予防に対する知識を十分普及徹底するということが大切である、かように考えます。
  19. 小柳勇

    小柳勇君 大臣には質問通告をいたしておりませんので、事務当局からその問題をお聞きいたします。
  20. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お答えを申し上げます。性病の問題につきまして、国際的な問題ということにつきましては、各国各自がひとつ性病の問題につきまして思想普及をし、それから性病患者早期発見あるいはそれの治療という問題につきまして、たとえばWHO等性病部会等でお互いに情報の交換をし、そうして意見を戦わし、そうして各自がそれにつとめていくというような状況に現在なっております。で、日本といたしましてもその面でつとめていきたい、こう考えております。
  21. 小柳勇

    小柳勇君 国内がいま非常に急激に蔓延を始めているようですが、その原因は何でしょうか、厚生大臣
  22. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これはいろんな面から検討をされなければならぬと思うのでありますが、一つ病気の性質上、これをどうしても進んで医師なりあるいは病院等に行って治療を受けるということをやらない、そういう自家治療というか、そういうこそく治療をやっておりますことが、治癒がおくれる、また、性病に対する知識がないためにそれがまたもとになって他に感染していく、こういう問題がやはりあろうかと思うのでございます。さらにまた、一時、ペニシリン等によりまして自家療法的なことでも相当性病がなおったということでありますが、最近はペニシリンショック等が起こりましたことで、ペニシリンの使用についても非常に警戒をするようになった。あるいはまたペニシリンそのものに対する病源体抵抗力、抗体というものもだいぶ進んできた。そういう薬の面からの影響がいままでよりも非常に効果が低下をしたというような点もあるのではないか。また最近の青少年非行化というようなそういう面、そういう生活のあり方ということ等もこの性病蔓延傾向を助長しているのではないか。あらゆる観点から原因が考えられるわけでございまするが、したがいまして、今後の対策も総合的に各方面からこれに対する対策をやってまいる必要がある、かように考えております。
  23. 小柳勇

    小柳勇君 青少年非行化性病を結びつけることは私は反対です。もう少し事務当局から詳しく説明を求めます。
  24. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お答えをいたします。蔓延性病に最近の早期梅毒がふ上えてきた原因はどこにあるのかというような問題がいろいろ各方面で論議されておりますけれども、一番の私は問題点は、性病に対する正しい知識を持たない人が多くなったということが一番の原因ではないかと思います。その理由といたしましては、終戦後しばらくは性病患者が非常に多くて、いろいろの思想普及もやりましたけれども、その後、顕著に梅毒が減ってまいりました。そして一時は大学臨床講義の材料にも困るというぐらいになったものですから、自然に性病に対する関心というものが薄れてきた。したがって、まして一般人の間にもっと薄れるのは当然でございますから、先ほど大臣が申し上げたとおり、非常に思想普及という問題が重要であろう、こういうふうに考えております。
  25. 小林武

    小林武君 関連。厚生大臣お尋ねいたしますが、新聞によると、昨年十二月から二千八百人休養米軍兵隊座間キャンプに入っている。それからこれは横須賀とか、それから佐世保等には前線の休養のために兵隊が入っている。この休養というのはどんな休養なんですか、私はこれはいわゆるわれわれの休養なのか。端的にお尋ねすると、これは売春関係がないのか、この点は私ははっきりしておく必要があると思うのです。この問題と性病関係というのはいろいろあなたのほうできれいなことをおっしゃるけれども外国からくる病源菌の問題になると、まさか検疫をやっているわけでもないでしょう、一々。だから、そういう点から考えればその問題があると思う。これとそれから関連してどんな休養日本法律を守るということは条件に入っているそうだが、一体その事態という事態一つも起きていないのかどうか。ほんとうに骨休めにきているのかどうかということ、それから、それといまの性病関係についてあなたの御答弁をお願いいたします。
  26. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 米軍休養のためにわが国に寄港する、相当数米軍が来ておると思います。これらの人々がどういう休養をやっておるかということにつきましては、厚生省としては的確な調査を実はいたしておりません。おりませんが、私は大部分の者はやはり健全なレクリエーション、その他の休養をいたしておると思うのであります。しかし、いまお話がありましたように、たくさんの兵隊のことでございますから、その点、私は全部がゼントルマンとして折り口正しい生活のみをしておるとははっきりここで申し上げられないし、また一々血液検査等検疫をやっておるわけではございませんから、その点は的確に把握することが困難であります。したがいまして、先ほど来、私申し上げておりますように、この国際的なその病気傾向、また日本もその傾向の中にあるわけでありますが、決して否定もいたしておりません、また肯定もいたしておりませんが、要するに、そういう検疫をやっていない、血液検査をやっていないという事柄からいたしまして、的確に把握がされていないということを率直にお答えいたします。
  27. 小林武

    小林武君 もう一点だけ。まあ長くは申しませんけれども、この問題は、やっぱりもっとまじめに考えるべきだと思うのです。日本休養を求めるようになったということは、いままでほかで休養をしておったのが、いろいろな、いまわれわれが心配しているような問題があるために、これを拒否されたというところから日本にやって来ている。私はきれいごとでなしに、戦場から帰った者の休養というのはどういうことを意味するかということを考えますと、日本売春禁止法という法律ざる法でさっぱりだめだという声もある、さらにそれに対して改正をやろうという動きもある、さらには、いま小柳委員が取り上げているような日本性病の問題、青少年不良化の問題がある。これらと一体関連してその問題をおろそかにするということはこれはたいへんなことだと思う。これに対して、一体青少年を教化するとか、あるいは性病の問題が大問題とか言っている人たちは、どんな一体対策を立てようとするのか、これを明らかにしてもらいたい。
  28. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど来お答えをいたしておりまするように、性病に対する対策、また蔓延してまいりましたいろんな経過等から、いろんな原因がそこにあると思いますので、その対策は総合的にあらゆる角度から手が打たれなければならぬと思うのであります。厚生省といたしましては、今回、性病予防法の内容を強化をする、改善を加えるということで、国会に法案の御審議をわずらわしておるところでございます。また、青少年非行化の問題や、さらにまた性病に対する正しい知識国民各層に与える、啓蒙するということは、何と言っても性病予防根本でございますので、そういう面につきましては、文部省でありますとか、あるいは総理府、その他と十分緊密な連絡をとって、総合的に対策を進めてまいる所存でございます。
  29. 小柳勇

    小柳勇君 ただいまの小林君の質問のような不安が国民全部にあるのですが、外国から帰りましたその兵隊が、もしそういう心配があると考えた場合は、この本法の十二条が適用できるかどうか、性病予防法の十二条が適用できるかどうか、見解をお聞きいたします。
  30. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) この十二条の問題につきましては、基地内における問題、実はアメリカの兵隊というものにつきましては、もう少し法制局と検討してみませんとわかりません。それで、一般的には、国内的には現在まで十二条というものの発動は現在までございませんで、ただ、これのいわゆる発動の趣旨として当時考えられましたことは、これをたとえば温泉場等で子供が多数淋疾にかかったというような状況がございましたが、そういうときということを一応想定をしておったように思います。しかし、この場合も、そういう事例はございましたけれども、話し合いのもとにいろいろやっておったような実情でございます。そして軍人につきましてどうするかということにつきましては、もう少し検討させていただきたいと思います。
  31. 小柳勇

    小柳勇君 国内的なことはあとで聞きますよ。
  32. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。全然そういうものを適用したこともないし、第一、法律の解釈が、質問が出て初めて考えているようなことで、それはそういう答弁じゃだめですよ。それで、したがって、非常に多いということが先ほどから答弁の中にあるわけですから、十二条の適用の問題というものについてはもっと真剣に考えてもらわぬといかぬ。おそらく、何でしょう、横須賀とか佐世保とか、そういうところは一般よりも多いじゃないですか。そこまで調べてないのですか。当然、そうすれば、この十二条というものが発動されてしかるべきなんです。しかも、十二条が、ずっと見ますると、その十二条の指定に基づく健康診断等を拒む場合には、その罰則まで設けて、そうしてきっちり折り目をつけていこう、こういう立場の法規なんですね。で、性病で困っておるというのであれば、なぜそういうことをもっと真剣に考えないのですか。昨日は稲葉君の質問で、税金のほうが素通りしておるということが明らかになりました。きょうはその税金よりももっと重大な問題ではないですか。これはいまのような答弁じゃだめですよ。こういうことがあるから、安保はいかぬと言う。
  33. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 重ねて、問題点をもう一ぺん追及してもらったらどうですか。
  34. 小柳勇

    小柳勇君 時間がないのだ。大事な問題だから、いま検討している。
  35. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) こちらのほうの、当方のあれでございますと、たとえば基地の周辺において特別に非常に蔓延しているというふうには、全体から考えて、多少そういうようないろいろ昔でいいますと何といいますか、街娼といいますか、あるいはオンリーといいますか、そういう者が多少はございますけれども、特に非常に蔓延しているというようないままでの報告はございません。
  36. 亀田得治

    ○亀田得治君 だめですよ。そんな、あるようなないようなあいまいなことを言われますが、きちんと調べたことがあるのですか。しかも、最近の横須賀とかあるいは佐世保には、ベトナム戦争が起きてからたくさん出入りしているわけですね。現実に調べてそういうような答弁をされたんですか。単なる推定ですか。はっきりしてください。
  37. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 現実の問題といたしまして、性病患者が何名いるかというような問題は、全体から見ますと届け出の問題で、届け出でしかわかる方法が現在ございません。それで見ましても、全体的に見ますと、全国から見て届け出の数そのものが非常に減少しておりますので、全体として見ますと特にそこに急激にふえたというふうには考えられないわけでございます。
  38. 小柳勇

    小柳勇君 そのいまの問題は研究しておいてください。あとでまた追及いたしますが、いまこの十二条の問題で、性病予防法改正のところで、重要地域をあなた方指定しているはずだが、考えているはずだが、それによって予算を組んでおるが、その指定地域を御明示願います。
  39. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 性病予防の重要地域といたしまして、そこに重点的にPRをしたりなんかするような地区でございまして、正確な場所等につきましては、あとで御報告申し上げたいと思います。
  40. 小柳勇

    小柳勇君 いまできないというのはおかしいじゃないか。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 小柳さん、ちょっと関連していいですか。  いまの十二条は、安保条約によりますと、国内の特例法というものが国会で通っていないと、これは米軍に特別扱いできないわけですね。ですから、実施する場合は、これは米軍には当然適用されるものと、こう理解すべきではないかと思うんですが、その点いかがですか。ほかのいろいろな問題については、地位協定に基づいて特別措置がみんなできているわけですね。これについては特別措置ができていないのですから、米軍にも出然これは適用されなければならない法律であると思いますが、その点いかがですか。
  42. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) お答え申し上げます。  性病予防法第十二条との適用関係でございますが、第十二条は、条文にございますように、対人的な行政処分でございますので、施設区域というような特別の制約がない以上は、対人的には適用していい条文であるというふうに考えられます。  ただ、十二条の規定をよく読みますと、中に二つございまして、健康診断を受けるべきことを命ずるという下命行為と、それから当該吏員をして健康診断をさせることができるという事実行為と、二つございまして、前段のほうの下命行為は、先ほど申し上げましたように、対人的な処分として十分適用がある。ただ、後段の事実行為のほうは、施設区域というような中にまで入っていくというようなことは、これは特別の協定に基づかなければできないというふうに解するわけでございます。
  43. 小柳勇

    小柳勇君 それは矛盾するんじゃないの。そんなことでごまかしたってつまらぬ。時間がもったいないですよ。  法制局長官から、いまの意見もう一ぺん聞きましょう。
  44. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) いま私のほうの第二部長が申したとおりで間違いございません。要するに、対人的な下命行為としてできないことはございませんが、同時に、事実行為として当該吏員が検査に行くと。これは性病予防法だけに限りませんが、当該施設区域の内部において、施設区域について権利を持っておるアメリカ合衆国の意思を無視して、そこに強権的な作用を及ぼすことはできないということに相なるわけでございます。
  45. 小柳勇

    小柳勇君 長官、それでは、そのキャンプの中には入らぬけれども兵隊がキャンプから出たら、そこでは検診してよろしいということですか。
  46. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) おっしゃいますように、ただいま申し上げたのは、施設区域の内部について申しておるわけでございまして、これはひとり当該吏員が健康診断を受けさせるということだけにとどまらないで、いろいろな国内法上の一定の権限を持っておる者がそこにおもむいて一定の行為をするということについて、全部共通の問題でございます。この場合だけができないというわけではございません。むろん、それについては施設区域に立ち入って一定の事実行為をやるわけでございますから、むろんその意思を無視してはできない、施設区域については当該施設区域について権限を持っている者についての意向を無視してはできないというだけであって、それがそうでなければむろんできるわけでございます。そのほかの場合については仰せのとおりでございます。
  47. 田中寿美子

    田中寿美子君 売春防止法との関連なんですけれども性病蔓延するというのは、非常に大量にベトナム関係から米軍が入ってくるということが大いに関係があると思うのですけれども売春防止法で町で勧誘する行為では女性がつかまって処罰されるわけなんですけれども、そのときに一応相手方の男性も調べられるわけなんですね。で、街路上でそのような行為が米軍兵隊とあったときにつかまえているという事実がありますかどうか。それで、そのことは安保条約行政協定第十四条にはやはり米軍の軍人は国内法の適用を受けるということになっておりますので、やはりそういう措置がとられなければならないはずだと思うのです。その辺はいかがですか。
  48. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいまの御質問、事実については私はつまびらかでございませんので申し上げられませんが、法律関係から申せば、むろんわが国における、わが領域における外国人に対してはむろんこれはわが国権の発現としての法律が適用になることは、これはもう当然でございます。ただ、他国との間に条約等を結んでそれを制限するということがあるわけでございまして、その部数に属するものは、むろんたとえば特例を設けるとかいうようなものについては、むろんそこにいかないのもこれまたおわかりだと思いますが、事実の問題につきましては、所管の当局から御返答させていただきます。
  49. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 売春の街娼勧誘の関係につきましては、男は参考として呼ぶのでございます。これは何人であろうが呼びます。(「どれぐらい調べたか、件数だ」と呼ぶ者あり)参考人でございますから、これを統計にとったものはございません。警察といたしましては、性病予防法の第十一条によりまして法律上の義務はないのでございますけれども、事実上これを都道府県の衛生局に通報をいたしております。昭和三十九年の通報数は二千四百十名でございます。これは売春常習容疑者でございますので、売春婦でございますから、軍人はおりません。女の軍人もおりません。(笑声)
  50. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと、議事進行。
  51. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) なるべく質疑者にまとめて進行さしてもらいたいと思うのです、関連がだいぶふえていますから。
  52. 亀田得治

    ○亀田得治君 議事進行です。  それで、いろいろ、まあ答えられる方も十分な用意もなかったようで、混乱があるようですが、ただ法制局長官のほうではっきりしといてほしいのは、十二条ですね、これはアメリカの軍人にも適用があるんだという点をはっきりしてもらいたい、結論だけを。というのは、先ほど半分は適用があるが、どうも事実行為を強制する点は適用があるのかないのか、はっきりせぬような答弁があった。これは私は間違いだと思う、そんなことは。それは日本人の場合だってね、検診を命じても、それに承諾しない人は強制はできないわけですね。そうですよ。したがって、拒んだ人に対しては、あとのほうに罰則がついているわけなんです。だから、アメリカの軍人でも、これによって命令をして、拒んだ場合にはやはりあとのほうの罰則が適用になるんでしょう。そういう意味においては、この十二条は完全に、あなた、適用になっているんですよ。だから、十二条並びにそれに付随した罰則、これはアメリカの軍人にも適用があるんだと、命令が出た場合には。これをはっきりしてください。それで終わります。答弁がはっきりしなかったら、なかなか終わらぬ。
  53. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私が申し上げた趣旨は、もう前の答弁でおわかりかと思うんですが、性病予防法の十二条の規定は、特に条約あるいは法律において特例を設けたものでない限りは、これはいわゆる治外法権に該当するのは別でございますが、いま言いましたものに該当しない限りは、わが国法が当然に及ぶということが言えます。むろん、これにつきまして、私は施設区域との関係においてさっき申し上げたわけで、それを抜きにして言えば、仰せのとおりでございます。
  54. 小柳勇

    小柳勇君 次に進みます。  厚生大臣、いままでで性病の実態はわかりましたが、これに対する対策、撲滅対策について厚生省のとられている方策をお聞きいたします。
  55. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この性病対策につきましては、性病予防法を中心にいたしまして実施をいたしておるところでございます。この病性にかかっておるとはっきりその理由が明らかになっております者に対しましては、これに診断及び治療の措置を、法的にこれをやらせるというようなこともいたしておりますし、また、特別地区等を指定をいたしまして、そこに対しましては診断、予防の対策を特に重点的に実施をするというような措置も講じておるのであります。  また、今回の法律改正にあたりましては、妊産婦につきましては梅毒血清反応のための血液検査並びに婚姻時に同様の血液検査をやる、これを公費でもって実施をするということを義務づけるようにいたしまして、性病対策をさらに前進をさせよう、強化しよう、こういう対策を講じておる次第でございます。
  56. 小柳勇

    小柳勇君 第二点の、婚姻時の血清反応検査を義務づけることを確認してよろしゅうございますか。
  57. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのとおりでございます。
  58. 小柳勇

    小柳勇君 法務大臣質問いたしますが、この婚姻時の血清反応検査を義務づけることは憲法違反であるということが法務省などで言われたということでありましたが、そのような事実がございますか。
  59. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答え申し上げます。  結婚しようとする者に梅毒血清反応について医者の検査を行なうということを義務づけるという問題は憲法違反であると法務省が言ったのだというようなことがうわさされたようでございますが、そういうことはないのでございます。
  60. 小柳勇

    小柳勇君 その対策について、性病予防法改正するということを厚生大臣が言われました。ところが、さっき私がこの蔓延する原因は何かと言いましたところが、第一は自己治療、第二はペニシリン・ショックなどで、またペニシリン病気に対する抵抗力が弱まった、それから青少年非行化ということをおっしゃいましたが、その他、性病予防法改正のそのほかに対策が何かありますか。
  61. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど来申し上げますように、性病予防法に規定されておりまするそれぞれの予防対策あるいは検査、そういうようなことを励行してまいりますと同時に、売春対策というものにつきましても、これを強化をしてまいる必要があると思うのであります。また、先ほど来申し上げておりますように、何といっても根本性病に対する正しい知識、これを国民に広く周知徹底きせることが必要である、かように考えておるのであります。また、小柳さんは先ほど、青少年非行化の問題と性病を結びつけるのはおかしいという御指摘があったのでありますが、少年の拘置所におけるいろいろ血液検査等調査の結果を見ておりますと、一般よりも相当顕著に数学的にそれが出ておるのでありまして、やはり非行青少年というものの生活が風紀が乱れておるというようなことが、やはり性病とは関係があるということが言えると思います。
  62. 小柳勇

    小柳勇君 青少年がいかに非行でありましょうとも、病源がなければ感染せぬのでありますから、私は青少年非行化とこの性病増加を結びつけるということは反対であります。あとでまたそれは別の委員会で論議したいと思います。  次に、いま性病改正の問題を言われまして、これが一番大きな柱のようでありますが、婚姻時の血液の検査並びに妊産婦の検査は、全体の何割を見込んでおられますか。
  63. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お答えいたします。  四十一年度後半から始めるわけでございますが、両方をまぜまして、対象の約三〇%を見込んでおります。
  64. 小柳勇

    小柳勇君 冒頭、大臣は二百万人ぐらい予想して対策を立てるとおっしゃいまするが、両方とも三割しか考えておられぬのです。その数字を言ってください。
  65. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私はいろんな推定の数字がいろいろありまするが、これを総合的に検討いたしました結果、二百万人ぐらいと推定することが妥当ではないかということを申し上げてあったのでありますが、今回この梅毒血清反応を義務づけて、また、これに対する公費負担の予算的措置を講じていますのは、御説明申し上げましたように、妊産婦とそれから婚姻時の人々、こういうことに範囲を限定しております。で、先ほど申し上げました推定は、これはそういう人々のみでなしに、広く蔓延傾向にあるのではないか、こう思うわけでありまして、おのずから数字的には違うということになるわけであります。
  66. 小柳勇

    小柳勇君 そのことは私もわかっておりますので、妊産婦並びに婚姻時の青年男女の数を御報告願います。
  67. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) これは人口動態の数から対象を把握をしたのでございまして、妊婦の対象といたしましては年間で約百六十五万七千四百名、それから婚姻をする場合の対象といたしましては、婚姻をする組の倍数になるものですから、合計いたしまして百八十八万六千人を対象として、それの十月からの実施の三〇%、こういう形でございます。
  68. 小柳勇

    小柳勇君 いま報告がありましたように、厚生省性病に対して取り組んでおられる姿はそれだけの数字であります。これでは二百万というこの対策としてはあまりにもお粗末だと思いまするが、三割と考えられた根拠、義務づけて、婚姻するものは全部血清検査しなければならぬと法律改正しながら、なぜ三割と見込んでおられるのですか。
  69. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お答えいたします。私ども三割と見込みましたのは、これは初年度になりますので、特に婚姻をしようとするものがどの程度くるかということが実は心配でございます。一生懸命に思想普及をして、そういうものを勧誘をしなければならぬ。またすべきでありますけれども、とりあえずどれくらいの対象をつかんだらいいかということで、それの三割をひとまず初年度の数といたしたわけであります。
  70. 小柳勇

    小柳勇君 おかしいじゃないですか。初年度ということばは六カ月ということばで表現してあるわけです。半年しか計上していないわけですよ。全部義務づけて、妊産婦もそれから婚姻時の青年も血液検査を義務づけるといいながら、なぜ三割しか計上しないかということを聞いているわけです。
  71. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お答えをいたします。これは実際に受けるであろうという人数を想定した上で、こういうふうにきめたわけでございます。
  72. 小柳勇

    小柳勇君 妊娠を厚生省でとめるわけにもいきませんし、結婚も厚生省でとめるわけにいかぬのだが、結婚の概数、それから妊産婦の概数がわかっておって、なぜ三割しか予算に計上しないかと聞いているんです。
  73. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 先ほど申し上げましたとおり、できるだけやりたいのでございますけれども、どのくらいの数が実際に受けるかということが問題になるわけでございます。そしてこの費用につきましては、一つの問題といたしましては、任意に――もちろん自発的にほかへいって受ける人もおるでございましょうし、それでいわゆる公費で負担していく分ということで、どのくらい受けにくるかということを、予算上のいわゆるとりあえずの実施率といいますか、そういう形で見積もったわけでございます。
  74. 小柳勇

    小柳勇君 予算上の話はわかりますが、さっき大臣は、今度の法改正は義務的に改正するとおっしゃいましたが、その点いまの予算と食い違いますが、いかがですか。
  75. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この今回の法改正は、先ほど申し上げますように、十分性病に対する国民の正しい知識、認識、そういうことを啓蒙しながらこの性病予防法の実効の上がるように、両々相まって成果をおさめていかなければならぬと、こう考えるわけであります。したがいまして、今回の血清反応検査を義務づけるということにいたしてはおりますけれども、そういう点が十分周知徹底をされませんと、十分な成果を上げることができない、こう考えるのでありまして、初年度はあの程度の予算措置を講じた次第でありますが、今後はますます努力をいたしまして全体にこれが行き渡るように、また、予算措置につきましても十分の措置を今後講じてまいりたいと考えております。
  76. 小柳勇

    小柳勇君 ただいまの答弁では私納得いきませんが、問題を先に進めます。  法改正につきましては、日本医師会などは賛成いたしておりますか。
  77. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日本医師会におきましては賛成をいたしております。当初、医師の届け出が二十四時間、こういうことに相なっておったのでありますが、その点につきまして医師会から改正の強い要望がございました。今回の法改正におきまして、その届け出の期間を一カ月と、こういうぐあいに実情に合うように訂正をいたしました関係もありまして、医師会は全面的に賛成でございます。
  78. 小柳勇

    小柳勇君 もう一回確認しておきますが、一月の二十五日に日本医師会常任理事会から大臣宛てに書面が参っておりまして、この法改正に反対であるという決議をいたしておりますが、御存じありませんか。
  79. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いろいろ今度の法改正につきまして、医師会側にも説明もいたし、理解も求めましたところ、結論的に全面的に賛成でございます。
  80. 小柳勇

    小柳勇君 その問題もまたあとで論議いたしますが、文部大臣質問いたします。対策がいろいろございますが、私はたとえば青年団やその他のグループが自発的に血清反応検査をやるように、そういう梅毒に対する脅威を青年みずから、あるいは国民みずからが自覚しなければこの撲滅はできないと思うのです。したがって、青年団など、あるいは成人式などの日にグループとして申し出ていくような文部省としてのそういう啓蒙などお聞きいたします。  なお、現在、中学校、高等学校で性病に対する教科、どういう程度になされておるかお聞きいたします。
  81. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御承知のとおり、学習指揮要領にも保健教科の中で、小学校の六年、中学校の三年及び高等学校等で性病問題を含む純潔教育をいたすことにいたしておりまして、その教化資料あるいは録音教材というようなものは極力作成して、近来特に活発に関係方面に周知徹底を期しておるわけであります。なお、都道府県の保健主管課長会議とか、あるいは学校のそういう保健関係を担当しております養護教員の講習会等においてその趣旨の徹底をはかっておる次第でございます。また、青年学級等においてはやはり性病を含むこの純潔教育の問題を一つの課題にしておるわけでありますが、なお、この家庭の環境というものも大事でありますから、近来家庭学級あるいは婦人学級、先ほど申し上げた青年学級、こういうようなところでもその趣旨の徹底を期しておるわけでございます。ただ、御指摘のございました青年に集団的に検診、検血といいますか、血液を検査する、こういうことをもっとしっかりやったらどうだ、こういう御指摘がございました。この点はいままでまだ着手をいたしておりませんが、今後青年学級あるいは家庭学級等においても、また、その他の青年団運動、青年運動その他の機会にできるだけそういうことの徹底を期するように、御指摘のようにひとつ今後善処して努力をしていきたいと思います。
  82. 小柳勇

    小柳勇君 自治大臣、いまの点いかがでしょうか。地方自治体などに行政指導していただきたいと思いますが、いかがですか。
  83. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 市町村を通じて純潔教育、性道徳の高揚等に対しましては、将来大いにやるべきであると考え、指導いたしたいと考えております。
  84. 小柳勇

    小柳勇君 大臣は問題を違えておられるようですが、成人式の日などに青年が自発的にその検査を受ける、自分の血液の検査を受けるような運動を盛り上げるべきであろう、そういうときには国が責任を持ってただで検査をやって、秘密に治療してやるような対策を立てるべきであるが、成人式などは地方自治体がやっておりますから、そういうのに行政指導をされるお考えがあるかどうかということを聞いているわけです。
  85. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) お説の点は非常に重要であると思いますので、そういうような方向に指導いたしたいと存じます。
  86. 小柳勇

    小柳勇君 大蔵大臣、いまの問題ですが、青年が成人になりますと、百五十万人おります、これが集団で献血連動をやりますと、厚生省のほうは六割です。これでは献血連動も進みませんから、全額国庫負担にして、そうして秘密に治療してやるような態勢をとらなければならぬと思いますが、大蔵大臣見解をお聞きいたします。
  87. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 先ほどから厚化大臣が申しておりますように、これは個人の秘密とも関係しますし、相当デリケートな問題かと考えます。しかし、これを放置しておくわけにはいかない、そういうむずかしい問題であるということは頭に置きながら最善の努力をしなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございますが、ただいまもお話しのように、自然に盛り上がってくる、そういう方向に教育をする、これは私は非常にけっこうな考え方だと思います。財政当局としてもそういう機運になりますれば積極的に協力をする、かようなふうに考えております。
  88. 小柳勇

    小柳勇君 予算を組むか……。
  89. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ですから、財政当局として積極的に協力をいたします。こういうことであります。
  90. 小柳勇

    小柳勇君 労働大臣、時間がありませんので質問いたしますが、私もこの売春性病と面接結びつけることはこれまた反対です。売春にはやはり婦人の生活の問題もありますから、まず政府が、売春行為をやらないでも生活ができるようにしなければならぬと思うのですが、青年、婦女子に対する労働省の取り組みをお尋ねいたします。
  91. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 売春との関連でのお尋ねでございますが、どういう職業に従事しておるものからそういう行為をする者が多いかということは、これはなかなか判定がむずかしいと思いますが、私のほうといたしましては、実は昨年の暮れに、いわゆる一口に申すと、風俗営業と申しますか、そういう面に働く婦女子がどういう労働条件でおるかということにつきまして、また、その間基準法違反等はないか、こういうことで監督署のほうを督励いたしまして重点的な調査を、監督を行なったのであります。また、一方、本年の一月に婦人少年局を通じましてやはり六十一ほどの、いわゆるミス・トルコ嬢について実態の調査を行ないました。その結果を若干御参考までに申し上げますというと、いわゆる遊興的サービス職業に従事いたしておりまする婦人は約百万人でございます。これが三十五年の国勢調査の結果でございますが、この百万人のうち給仕人あるいは接客女中といわゆるホステスも含むわけでございますが、これが五十一万人、それから娯楽場等の接客員が九万三千人、それから芸者、ダンサー等が二万七千人、それから浴場従事者、これにはいわゆるミス・トルコも含むわけでございますが、これが三万三千人、大体こういうことに相なっております。  そこで、まず、この監督署の行ないました監督でございますが、これは全体で監督を実施しました事業数が百でございましたが、そのうちトルコ風呂が五十九、それからバー、キャバレー等が四十一、この事業場について監督を実施いたしたわけであります。監督実施の事項は、休憩時間であるとか、割り増し金の関係であるとか、あるいは健康診断関係、労働時間の関係、休日の関係、それから特に女子の関係、年少者の関係等を含めて調査をいたしたわけであります。それから年少者の深夜作業の関係、それから就業制限の関係、それから年齢証明の関係、それから就業規則ができておるかどうか、こういうことについての監督をいたしました。それぞれの事項によって違反率が違いますが、全体として見まするというと、ただいま申しますとおり百の事業場を監督いたしまして、違反のある事業場は非常に多いわけでありまして九十四、つまり九四%は違反があったと、こういうことになるわけでございますが、先ほど申しました個々の監督事項につきましては、いろいろな場合があるわけでございまして、ただし、その間、重大なしからば特にこの際は年少労働者の違反がないか、こういうことを調べたのでございますが、この年少労働者の違反というのは、実はこの監督におきましてはあまりありませんでした。バー、キャバレーの場合におきまして年少者が一名フロントの係をいたしておりましたので、これは法の六十三条違反であったというだけでございます。その他二、三のものが年少者でございましたが、これらは、いわゆる接客の関係ではない仕事をいたしておりましたので、その点では違反とはならなかったわけでございます。さらに、婦人少年局が調査いたしました結果によりまするというと、労働時間の面では、大体時差勤務が行なわれておるようでありまして、拘束時間は八時間ないし九時間のものが比較的多くございます。そのうち、接客の時間というものは大体二時間ないし四時間のものが多い。また、賃金の面では、賃金収入だけのもの、それから、客からの収入のみ、つまりチップだけのもの、その両者によるもの、大体この三つの形態があることがわかりました。このうち、賃金収入とチップと、この両者を合わせるものが大体半数以上を占めております。しこうして、一カ月の総収入額は五万円ないし六万円のものが比較的多いと、こういうことでございますが、その詳細は、目下調査の結果をとりまとめ中でございます。いずれにいたしましても、賃金形態を初め、その他の労働条件等も、製造業従事者などと違いまして、非常に複雑でございますが、労働省としましては、この方面に対する監督も再三行ないまして、労働条件の確保を通じて、これらの場で働く、特に大体女子従業員でございますが、それらの生活の安定にも寄与してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  92. 小柳勇

    小柳勇君 ただいま貴重な意見聞きましたが、私の真意は、現在婦人の職場が減りましたので、成年婦女子に対する職場開拓の問題などを中心にお聞きしたわけです。  最後に、警察庁に、公安委員長保安局長見えておると思いますから質問いたしますが、法の十一条に「売淫常習者」ということばがございます。売淫というと売春防止法とも関連がありますが、この法律にいう「売淫常習者」と売春防止法との接点で問題があります。たとえば売春婦の取り締まりもあるようでありますが、それが即、性病予防法とつながっていくんじゃないかという危惧がありますが、こういう点について事情をお聞きいたします。
  93. 今竹義一

    政府委員(今竹義一君) お答えいたします。  売淫常習容疑者につきましては、性病予防法の十一条によりまして、都道府県知事は健康診断を命ずることができることになっております。警察で売春関係事犯を取り締まった際、売春常習容疑者としまして警察から直接都道府県の衛生部局に通報しました数は、昭和三十九年の場合が二千四百十、昭和四十年の上半期が千二百七十、こういうことになっております。
  94. 小柳勇

    小柳勇君 問題がまだ残っておりますが、時間がまいりましたから、これで一応あとの問題を保留いたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  95. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 小柳君の残余の質疑は午後行ないます。     ―――――――――――――
  96. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) それでは、次に、矢山有作君。(拍手)
  97. 矢山有作

    矢山有作君 私は、日韓条約発効後の問題について一、二お伺いしたいと思います。  まず、最初に、一つお伺いしたいのですが、日本人の存外子弟の教育はいまどういうふうに扱われておるか、おそらくこれは外務省だろうと思いますが、ひとつ御説明願います。
  98. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) お答え申し上げます。  在外に働いておられる方の子弟が最近非常にふえまして、外務省といたしまして、従来からこれの子弟の教育につきまして努力をいたしております。現在御審議を願っておる新年度予算におきまして各方面に相当の増額をいたしまして、この子弟教育のために十全を期しておる次第であります。アジア地域におきましては、現在まで中華民国、タイ、ビルマ、インド、パキスタンにございましたが、新年度におきましては香港、シンガポール、マレーシア、インド、このインドはカルカッタとボンベイの二つでございます。それからセイロンのコロンボというところに文部省から教官を派遣いたしまして、それから庁舎を借りる等いたしまして、約三千万円の増額をいたしまして、これらの子弟教育に当たらせることにいたしました。それから、アフリカにおきましても、プレトリアに新しく講師を派遣し、それ以外のヨーロッパ、中南米、アメリカ等におきましては、現地におきます日本人を講師といたしまして、これに謝金を与えてそれで子弟教育に当たらせる、そういうことに相なっておる次第でございます。
  99. 矢山有作

    矢山有作君 その場合、教育施設の設立はどういうふうな形になっているのですか。たとえば当該国政府の認可を得ているのかどうか、その辺をひとつ御説明願いたいのですが。
  100. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 各国におきまして、いろいろ制度は違いますが、東南アジアにつきましては、大体当該政府の許可を得ましてやる。しかし、ヨーロッパ、中南米におきましては一種の私塾的なもので、向こうの学校制度には従わずにやっております。そういうかっこうになっております。
  101. 矢山有作

    矢山有作君 それでは、当該国の政府から正式の学校の認可を受けてやっておる、こういうことですね。
  102. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) いま御説明申し上げましたとおり、ヨーロッパ、中南米におきましては私塾的なものでございまして、向こうの学校制度の正式認可――許可と申しますか、認可を受けたものでない。東南アジアにおきましては、向こうの学校制度の、正式の国内法の学校制度の正式の学校ということでなくて、こういうことをやるからということで、向こうの同意のもとにやっております。
  103. 矢山有作

    矢山有作君 だから、当該国の政府の正式の学校としての認可を受けて開設しておるものがあるかということなんですよ。これは何も東南アジアに限らぬ。
  104. 天城勲

    政府委員(天城勲君) ですから、それはこういうものをやるということで、向こうの学校制度上の学校ではないということを申し上げたのです。
  105. 矢山有作

    矢山有作君 学校制度上の学校の許可を受けたものがあるでしょう。私のほうから申し上げますと、たとえば集団移住をやっておる。パラグァイ、ボリビア、アルゼンチン、ブラジル、こういうところで正式に当該国の学校法人としての認可を受けて学校を設立している。それはもちろん特別な協定を結んでいるようですが、そういう例があるんじゃないですか。
  106. 廣田しげる

    政府委員廣田しげる君) お答え申し上げます。  中南米につきまして、いわゆる、たとえばパラグァイとの移住協定の九条によりまして、向こうから認可を受けている学校がございます。その条文は、「パラグァイ共和国の教育制度を遵守し、かつ、可能なときからスペイン語で教育を行なうことを条件として、私立日本人学校を設けることができる。」これに基づきまして、現在パラグァイにおきましては、四移住地に合計十の小学校ができております。ただ、これはただいま申しましたとおり、向こうの教育制度によりまして向こうの教育を受ける。そして現在ではすでにスペイン語で教育しております。先生も向こうのパラグァイ人の先生がやっております。
  107. 矢山有作

    矢山有作君 じゃ、これらの学校は全くスペイン語の教授しか許さない。完全に向こうの教科に従って教育をすることしか許さぬ、こういうことになっているのですか。
  108. 廣田しげる

    政府委員廣田しげる君) この集団移住地におきますあれは、向こうの永住権なり市民権を持っている者の子弟でございますので、先ほど官房長からお話のあった、一時的に外地に在勤したりする在外邦人の子弟の教育とやや異なるものがございます。
  109. 矢山有作

    矢山有作君 だから、いま言ったように、教科内容まで向こうの政府のとおりの教科内容で、全部スペイン語で教えているのかというのです。日本語の教育は全然やってない、日本人としての教育も全然やっていないのかというのです。
  110. 廣田しげる

    政府委員廣田しげる君) この学校に関する限り、正課としては向こうの教育制度によるものであります。ただし、課外に日本語の補習をやっていることがございます。
  111. 矢山有作

    矢山有作君 現在、国内における在日外国人の学校設置の状況をひとつ御説明願いたい。
  112. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 国内における外国人の学校としましては、韓国人及び朝鮮人を含めまして、公立小学校、中学校の分校が十六校、私立の小中高等学校が四校、それから、各種学校が五十五校でございます。そのほかに、各種学校その他の、日本の行政機関の認可を受けないで教育事業を行なっているものが、これは推定でございますが、大体そういう施設が四十カ所くらいあるように承知いたしております。
  113. 矢山有作

    矢山有作君 それぞれの外国人によって、学校の数なり、あるいは設置認可したり認可しない、これがわかれば教えていただきたい。
  114. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) ちょっと御趣旨が……。
  115. 矢山有作

    矢山有作君 アメリカ人ならアメリカ人、イギリス人ならイギリス人、在日朝鮮人なら在日朝鮮人、それ別に学校の数、認可の状況、認可してないもの、さらに在日朝鮮人なら、韓国系のもの、北朝鮮系のもの、それで認可したもの、認可しないもの、これを。
  116. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) それでは、政府委員から具体的にお答えいたします。
  117. 天城勲

    政府委員(天城勲君) ただいまの御質問お答え申し上げます。  在日朝鮮人の学校の問題はいま大臣が申し上げましたので、それ以外の国の状況でございますが、国別に必ずしも申し上げられない点もございます。と申しますのは、インターナショナルの形でやっているものもございますので、現在東京都で東京都知事の認可を受けております朝鮮人子弟以外の子弟を対象とした各種学校は十二校ございます。それから、神奈川県で五校、大阪で一校、兵庫で四校ございます。これが各種学校としての認可を受けた学校でございます。
  118. 矢山有作

    矢山有作君 いまのは中華学校……。
  119. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いえ、例を申し上げますと、東京でございますと、アメリカのスクール・イン・ジャパンとか、東京独逸学園、ドイツ系の学校とか、あるいは清泉インターナショナル学園、神奈川県で申しますと中華学校、あるいは兵庫県では牛革あるいはカナディアン・アカデミーというような、いろいろな国の……。
  120. 矢山有作

    矢山有作君 だから、簡単に、アメリカ系のアメリカ人の設立の学校が何校、イギリス人のが何校、フランス人のが何校、在日挑戦人なら、韓国系のが何校、北鮮系のが何校、その中で政府の認可したもの、しないもの、それの数をずっと言ってくれたらいいのです。
  121. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いま朝鮮以外の問題でございますけれども、何系とはっきり言えないものが入っておりますから県所管の数を申し上げたので、その中には、例示として幾つか申し上げたわけですけれども、何系とはっきり申しかねます。インターナショナル・スクールなんか、いろいろな国が入りますから。  それから、韓国人を含めての朝鮮人の学校でございますが、先ほど大臣も申し上げましたとおり、公立の小中学校の分校が十六校、私立の小中高等学校、一条学校が四校、各種学校が五十五校。それから。無認可施設はよくわかりませんが、推計四十数カ所ございます。
  122. 矢山有作

    矢山有作君 いま言うのは韓国系ですか。
  123. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いえ、韓国系であるかそうでないかという系統も、これも私たち最終的には推定以外にはないので、これが韓国系であるかそうでないかということははっきり申し上げかねるわけであります。ただ、ここで一条学校になっております四校は、一般に韓国系といわれておりますけれども、これも判断のしかたで、どっちだということにわれわれなかなかきめかねているわけであります。概要そういうことであります。
  124. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃいまの分は、できるだけ詳細な資料で、わかるような資料を提出していただきたい。いいですか。
  125. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 資料よろしいか。
  126. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) それでは、いまの政府委員の申し上げた数字は、資料で後刻提出いたします。
  127. 矢山有作

    矢山有作君 それから、ちょっと先ほど外務省に聞くのを落としたのですが、移住協定によって中南米等には学校設立をなさるわけですが、その移住協定の内容というのをちょっと御説明願いたいのですが。
  128. 廣田しげる

    政府委員廣田しげる君) ただいま移住協定を結んでおります国はブラジル、アルゼンチン、ボリビア及び。パラグァイでございますが、大体内容は大同小異でございます。たとえばパラグァイの移住協定について申し上げますと、何年間に何人くらい入れるというような、その人数ワクの規定がしてございますし、それから、混合委員会をつくりまして移住の問題について協議するというような規定もございます。
  129. 矢山有作

    矢山有作君 何の問題を協議……。
  130. 廣田しげる

    政府委員廣田しげる君) 両国の混合委員会をつくりまして、移住の問題について両国で協議をする。
  131. 矢山有作

    矢山有作君 教官関係だけですか。
  132. 廣田しげる

    政府委員廣田しげる君) はい。それから、こちらから向こうに行きますについて、いろいろな携行品等もありますが、どういうものについてはこれを免除するというような、向こうの義務を書いたような規定、それから先ほど申し上げましたような教育の問題、それから、最後に、何と申しますか、この協定の効力の期間等の規定がございます。
  133. 矢山有作

    矢山有作君 教育の点をちょっと言ってください。
  134. 廣田しげる

    政府委員廣田しげる君) 教育の点につきまして、パラグァイとのやつは、先ほど申し上げましたとおり、第九条全文を読みますと、「この協定に基く移住により形成された日本人農業移住地は、現行の規則に従って。パラグァイ共和国の教育制度を遵守し、かつ、可能なときからスペイン語で教育を行うことを条件として、私立日本人学校を設けることができる。パラグァイ共和国政府は、前記の学校に対し、教員の派遣その他の可能な援助を与えるものとする。」、ブラジルとの協定につきましては、その三十三条に、「教育、医療及び厚生に関する援助は、ブラジル合衆国の権限のある当局が行なう。両締約国が正当に認める団体は、日本人植民者が入植した各植民地において、植民者に対して医療に関する援助を行なうことができ、また、教師がブラジル合衆国の国籍及び法律に基づく正規の資格を有することを条件として、初等教育に関する援助を例外的に行なうことができる。」、ボリビアとの移住協定の第九条は、「ボリヴィア政府は、移住者のための医療施設を設置し、及び維持し、並びに移住者の子弟のための教育施設を提供する。」、アルゼンチンについては特に教育の条項はございません。
  135. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃそのパラグァイ、ボリビア、アルゼンチン、ブラジル等の移住協定をひとつ参考資料に提出してください。  それから、アジア等でいろいろ学校がつくられるのですが、今度香港にたしか学校をつくるはずですね、これはどういう形でつくられるわけですか。
  136. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) お答えいたします。  香港は、来年度からは設立と申しますか、子弟教育を行ないたいと思っております。これは向こうに校舎を借りまして、こちらから先生を送りまして、いわゆる向こうの学校法上の学校ではなくて、これも一種の塾的な関係の、日本語だけを教える、そういうようなことになるわけであります。
  137. 矢山有作

    矢山有作君 これは私が聞いたところでは、香港における学校は各種学校の認可を受けて設立するというふうに聞いているのですが、全く私塾的なものですか。
  138. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 私塾的なものと考えおります。
  139. 小林武

    小林武君 関連して。教師を派遣するというが、これはだれを派遣する、どのような人を派遣するのですか。これについて日本の国の教師を派遣するのですか。
  140. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 国立学校の教官を一名派遣するということでございます。
  141. 小林武

    小林武君 文部大臣お尋ねしますが、私塾に国立学校の教員を派遣するという、これはどういう法的手続で……。
  142. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 法的の点はあとで政府委員から御答弁をさせますが、在外日本人の教育につきましては、先ほど来、外務省から御説明がありましたように、外国ではなかなか厳重で、各種学校的なことを認可いたさない。そこで、外務省は、その駐在国の内諾を得て、そうして私塾的な、私的な学校組織をつくり、日本人の在留民の子弟を教育しているわけでございます。そこで、文部省といたしましては、同じ日本人の在外子弟でございますから、できるだけこれに協力するというたてまえで国立学校の付属小学校の教官を最小限度で派遣をします。そのほかの先生は、大体外務省で努力されて、現地で教育者としての資格のあるような人を、篤志家といいますか、現地で調達してやっているようでございます。われわれとしましては、日本人が在外邦人としておられると、その子弟があるわけですから、この子弟にやはり日本語の教育をし、日本に帰っても支障のないように、日本の内地の学校と同じ教科の内容で、また、同じ教科書を使って教育を施す必要がありますので、そのたてまえで文部省としては協力いたしている次第でございます。
  143. 小林武

    小林武君 法的な点については。
  144. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) お答えいたします。  ただいま文部大臣が申しましたように、国立学校の付属小学校の教官、つまり文部教官を外務事務官に併任いたしまして、そうして形式は外国出張という形をとりまして派遣いたしております。
  145. 矢山有作

    矢山有作君 それでは、現在海外に設けられている日本人学校で、先方の当該政府の認可を受けてやっている学校というものは全然ないということですか。
  146. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) お答えいたします。  向こうの外国のその国の法律制度のもとにおいて認可されている学校はございません。
  147. 矢山有作

    矢山有作君 前に戻りましてお伺いしますが、現在、在日朝鮮人の学校に行っている生徒の数ですね、生徒児童の。これがわかればひとつお教えいただきたいと思います。
  148. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 大体先ほども申し上げたように、韓国か北鮮か、よくその仕分けは推定で十分につきませんが、総体として韓国及び朝鮮系の学校に在留しておる生徒の数は、昭和四十年五月の調査によりますと二万四千人余りと相なっております。その後若干の移動があるかもしれませんが、昨年五月の調査ではそういう数字になっております。
  149. 矢山有作

    矢山有作君 いまある在日朝鮮人学校、これは北鮮系なんですか。認可されておるものは若干ありますし、認可されてないものもかなり多い。各種学校の形態をとっております。それから、同時に、日本の公立の小中学校で課外で特別の教育をやる、朝鮮人の民族的な教育というか、こういうことを認めている例はありませんか。
  150. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 公立の学校の状況について申し上げます。在日朝鮮人の子弟の大部分の方は、すなわち八万八千八百八十八人は、これは日本人の子弟と同様に、公立の小中学校に分散して教育を受けております。特別の取り扱いはいたしておりません。先ほど大臣お答えいたしましたように、公立分校がございまして、これが二千七百人程度の子弟を擁しております。この教育内容につきましては、文部省で定めておりますところの学習指導要領の規定によらないことが多く行なわれておりますので、文部省としては、その是正力を教育委員会に申し入れておる次第であります。
  151. 矢山有作

    矢山有作君 公立学校の分校は幾らですか。
  152. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 公立分校は十六校です。
  153. 矢山有作

    矢山有作君 それ以外で在日朝鮮人の特殊教育を認めておるものはないかというのです。課外でも何でもいいですよ。
  154. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 文部省としましては、公立分校の実態は先ほど申したとおりでございますが、その他一般の公立学校で教育を受けております子弟につきましては特別のものをいたしておりません。ただ、これが篤志家によりまして、学校教育の形態以外で、場所を変えて行なうということはあり得ると思いますが、全体としてはきわめてそういう状況は少なくて、日本人の子弟と同様の教育を受けておる、こういうことであります。
  155. 矢山有作

    矢山有作君 ただいまのお話を伺うと、韓国系の学校等で日本政府の認可を受けた一条校等があるということですが、まあ法的地位協定が発足して、政府の方針としては、なるべく日本の国立学校に入れようという方針のようですが、やはり韓国側の学校に行きたいという人も相当おるわけだろうと思いますが、それについてどういう取り扱いをするか、特に学校等についてどういう取り扱いをするかということで何か話し合いができておりますか。
  156. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 韓国系といわれておる学校教育法一条による一条校として認可されております四つの学校は、これは終戦前にそういう財団ができまして認可した学校でございます。そのまま今日に引き続いておるというのが現状でございます。そのほかは、法的地位の協定では、御承知のとおり、できるだけ日本人の学校に入学をしていただくのが望ましいのでございますから、そういう意味で日本人と同じ義務教育を受けられるような措置を協定しておるわけであります。そこで、その他の分についてはどうするかということにつきましては、特殊の事情もございますから、目下その対策について検討中でございまして、確たる結論は現在のところ出ておりません。
  157. 矢山有作

    矢山有作君 向こうからの話としては、そういう一条校と、政府の認可した韓国系と称せられる学校の扱いをどうしてくれと言ってきているんですか。
  158. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) はっきりした正式の申し入れではございませんが、私ども聞いておりますところによりますと、韓国としては、韓国系の学校を日本人の学校として、日本の学校教育法による学校として認可をしてもらいたいという要望があるようであります。しかし、この点につきましては、私どもとしましては、日本の学校教育法にはそれぞれの制限がございますから、どうもそれは認可しがたいことではないかというように考えております。
  159. 矢山有作

    矢山有作君 認可しがたいということになると、この学校はもう日本の教育制度に従わぬからつぶすということなんですか。
  160. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お答えします。  つぶすという趣旨ではございません。これは韓国系にかかわらず、北鮮系にかかわらず、直ちに認可していないものをつぶすという考えはありませんが、しかし、日本には各種学校という制度もありますし、正規の一条校でございませんても、他の制度もございますから、この各種学校のような関係において制度上研究を進めておる段階でございます。
  161. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、一条校は一条校のままとしてはつぶさないけれども、認めるわけにいかないということなんですね。
  162. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) さようでございます。
  163. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、その一条校というのは、さっきのお話で考えると、これはもう各種学校のような取り扱いをして今後認めていこう、こういう方針が大体出かけている、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  164. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) すでに各種学校として認可しておるものは先ほど申し上げたようにあるわけであります。その他の部分もございますし、それから、各種学校として認可しておるものにつきましても、この段階で再検討をする必要があるだろうという考え方に立ちまして、今後の処理方法について、目下慎重に検討を加えておる段階でございます。
  165. 矢山有作

    矢山有作君 一条校でいま認めておるんでしょう。だからそれはつぶさないとすれば、それはそのまま残すか、あるいは各種学校に持っていくのか。
  166. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 現在戦前から一条校として認可しておる学校は、これは特に日本の学校教育法の内容と変わったことをやれば別でございますが、現状を見ておりますと、現在も日本の学習指導要領に従い、また、日本の教科書を使い、日本語で教育をいたしておるようでありますから、そういうふうに特に支障を生じない限りは、この学校は、いわゆる既得権といいますか、現状日本人の一条校の学校と何ら内容的に異なっておりません。したがって、これについては変更を加える意図は目下のところございません。
  167. 矢山有作

    矢山有作君 じゃ次に進みまして、四十年の十二月二十八日に文部次官の通達が都道府県教育委員会と知事宛てに出ておるようです、二つ。この内容というものをちょっと御説明願いたいのですが、要点でよろしいです。
  168. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) お答えいたします。  昭和四十年十二月二十八日、次官通達の一つは、「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定における教育関係事項の実施について」という通達が一つございます。これは協定の実施に伴います公立の小学校及び中学校の入学の関係と、それから高等学校への入学資格関係のことを書いております。それからさらに、それに関連いたしまして、授業料あるいは就学援助等の措置、あるいは特殊教育の関係の学校に対する取り扱いの措置ということと、それから永住を許可された者以外の朝鮮人の教育の取り扱いに関する事項につきましては、これはわが国の公立の小中学校の教育を受けることを希望する場合には、永住を許可されたものと同様に、以上の諸点を取り扱うということが骨子でございます。  第二の通達は、「朝鮮人のみを収容する教育施設の取扱いについて」ということでございまして、この中には公立分校の実態というものが、教職員の任命、構成、教育課程の編成、実施、学校管理等において法令の規定に違反し、正常な状態にないので、適切な処置を講じてもらいたいということを教育委員会に指導しておるわけでございます。  それから第二は、朝鮮人のみを収容する私立の教育施設の取り扱いについて、先ほど来大臣が御答弁いたしておりますように、朝鮮人学校については、学校教育法第一条に規定する学校の目的にかんがみまして、第一条の学校としては認可すべきではないということ。それから次に、朝鮮人としての国民教育を計的とするところの鮮朝人学校は、これは各種学校として認可すべきものでないということを通達いたしております。  なお最後に、この鮮朝人を含めまして一般わが国に在住する外国人をもっぱら収容する教育施設の取り扱いについては、国際親善等の見地から新しい制度を検討し、外国人学校の統一的取り扱いをはかりたいということを申しているわけでございます。
  169. 矢山有作

    矢山有作君 この通達の内容について少し聞きたいのですが、その通達の中の四百六十四号通達というのに、「学校教育法第一条に規定する学校に在籍する」云々で、「朝鮮人の教育については、日本人子弟と同様に取り扱うものとし、教育課程の編成・実施について特別の取り扱いをすべきではないこと。」、こういうふうにありますが、現在特別の扱いをしておるような日本人公立の小中学校というのがありますか。
  170. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 先ほどお答えいたしましたように、十六校ございます公立の分校のうち一校を除きまして、岡山県の連島分校を除きまして、この教育課程の編成は全く学習指導要領に定められたところと異なっております。
  171. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、この学校については、今後どういうふうに具体的に処置しようというのですか。
  172. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 先ほど申し上げました四十年十二月二十八日の通達の中にその点を入れておるわけでございまして、第一点は、これらの朝鮮人のみを収容する公立の小学校分校について、法令に違反する状態がある、それの是正をして正常化に必要な措置を講ずる、それからこれらの分校が正常化されると認められない場合には、これらの分校の存廃について検討をするということ、そういう内容でございまして、その他について教育委員会を指導しておるということであります。
  173. 矢山有作

    矢山有作君 いまのは公立小学校分校についてのお話なんですが、私が聞いておるところでは、日本の公立小中学校の中で、その正式の教育は教育として、別に課外かどうかは知りませんが、民族学級というふうに称して、いわゆる独立国民である朝鮮人としての教育をやっておるところが多少あるんじゃないかということを聞いておるのですが、その点はどうなんですか。
  174. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 独立した分校以外の学校におきましても、過去におきましてはそういう経緯もございましたことは承知しておりますが、現在学校の正規の教育課程といたしましては、特殊なことをしていないように私どもは承知しております。
  175. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、政府の考え方は、要するに、どういう形であれ、在日朝鮮人の独立の国民としての、いわゆる自主的な民族としての教育というものは一切認めないのだ、こういうことなんですか。
  176. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 公立学校の問題につきましては、これは在日朝鮮人の方々が日本の教育を受けるということを希望する場合に、積極的に便宜を供与してその取り扱いについて日本人の子弟と同様にし、授業料を徴収しない、あるいは教科書無償も加え、就学援助等の必要なものは日本人の子弟と同様に加え、入学時にあたっての学校の取り扱いについても、できるだけその居住地との関係で便宜をはかる、あるいは入学の際における健康診断その他につきましても同様の措置をとるということが趣旨でありまして、公立学校におきまして、他国民が他国民のための教育ということを実施できるようにする考え方はございません。
  177. 矢山有作

    矢山有作君 だから、要するに、一言で言えば、いわゆる日本人としての教育をやる、いわゆる同化教育をやる、こういうふうに理解したらいいわけですね、公立学校においては。
  178. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) これは在日の外国人の方々が、日本の教育というものを受けることを希望をして、そうしてその場合に積極的に便宜を講じようという趣旨でございますから、日本の公立学校において外国人外国人のための教育を行なうということを受け入れる考え方はないのでございます。それはそれぞれの国民のなさる事柄であるので、公立の学校においてそういうことをする考えはない。これは大体常識としても各国の間にも通用することであろうと思います。
  179. 矢山有作

    矢山有作君 まあ要するに、全体の政府の考え方から見れば、当然地位協定の発足に伴って希望する者はできるだけ日本人の学校に入れる、そうして日本人と同じような教育をやろう、こういうことだと思うのです。そのことはやはり日本政府の中心的な考え方じゃないかと思うのです。というのは、ここに「日韓協定と教育」というので石川二郎という人が「文部時報」に書いていますが、それを見ても、やはり在日朝鮮人の教育というのは、日本人としての教育をやったほうがいいんだという思想が流れていますね、お読みになったかどうかわかりませんが。だから、私はいま言ったように、日本政府の中心の考え方は、いわゆる同化教育というか、日本人としての教育をやるのがあり方だというふうに考えておるのかと、こう言ったわけですよ。ところが、私はそういうような教育がはたしていいのか悪いのかで実は疑問を持っているわけなんです。日本が朝鮮を支配した三十六年間の植民地時代において、御存じのように、徹底した同化教育をやったわけですよ。内鮮一体だとか、あるいは皇国臣民化だとか、一視同仁だとか、いろいろなことを言ってやりましたが、その教育の結果というのがはたしてどういうふうに反省されておるのか。私はそういうふうないわゆる同化教育、日本人としての教育を受けさせるという、そういう方針で臨んだ場合でも、なおかつ、日本の意図するところとは反対に、かえって朝鮮人に対するべつ視感をあふり、日本人と朝鮮人の対立を深め、皇国臣民化、一体化どころじゃない、むしろお互いに不信感を抱くような情勢がいままでの教育の中では見られたんじゃないか。したがって、この点をどういうふうに考えておられるかということをちょっと御意見を伺いたいのです。
  180. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 同化教育を考えておるというようなことは毛頭ごいません。要するに、ことに韓国との協定におきましては、韓国人で永住権を持った者について云々ということでありまして、希望をすれば、こういうふうに善処いたします、処置いたします、こういうことで、本人が希望しないものを勧誘してまで日本の公立学校に入れて、日本人と同じ義務教育を受けさせようというような意図は持っておらないわけです。それにはその印刷物に解説がどういうふうに出ておるか知りませんが、考え方はいま申し上げたように考えておる次第でございます。
  181. 矢山有作

    矢山有作君 参考のために、私は同化教育に非常に力を入れているのじゃないかと言ったのは、  こういうことを言っておるわけですね。「今回の協定によって今後百年以上にわたる韓国人の日本での永住が約束されるわけで、これら韓国人がわが国の社会によく適応した調和的存在となるかどうかは、わが国社会の安定、進歩のために問題となるが、韓国人自身にとっても、その生活の安定充実が得られ、幸福な日々を送れるかどうかのわかれ道である。彼らがわが国社会に調和した存在となるか否かの基礎は教育によって培かわれるので、彼らとしては進んでわが国の学校に入るようにし、日本側としては彼らを日本の学校に喜んで迎え入れるようにして、幼少の時より両国子弟が化活や学習をともにし自然に親和的関係を結ぶようにすることがたいせつであると考える。」、こう言っているわけです。したがって、私はこのことからあるいはさらにほかにもいろいろ言っておりますが、そういうことを総合して考えて、やはり希望するとか、希望せぬということよりも、そのことと離れて、日本の在日朝鮮人教育に臨む態度というのは、いわゆる同化という点が一つの考え方の中心になっているのじゃないかということが一つと、その点については答弁がありました。ところが、そういうふうに日本人学校で学ばせることがはたしていい結果をもたらすのかもたらさないのか。これまでの経験からいえば、これは逆の効果だけもたらしている。現在日本人学校で就学している朝鮮人児童の状態を見ても、あるいは朝鮮人児童と日本人の子供との関係を見ても、前の植民地時代の教育のいわゆる悪い点が何ら是正されていないのじゃないか。そういう点でやはりこういうような教育の方向に対して一つの反省はないかと言っているわけです。
  182. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 戦前のことにつきましては、いろいろ日本としては、全体的にもまたそういう面についても反省すべき点が多々あろうと思います。ただ、いまのお話は、要するに、韓国人で永住権の登録をした者は永住する意思があるのですから、永住する意思がある以上は、それはできるだけ日本人と協調していただくことが好ましいので、そういう趣旨からならば私どももよく理解できます。しかし、永住権を持っているからといって、ぜひどうしても日本人と同じように、小中学校の教育を義務化するというようなことはいたしておりませんので、本人の意思によって日本人の学校で日本人と同様の取り扱いをいたしますと、こういうことに相なっておると思うのであります。
  183. 矢山有作

    矢山有作君 ところが、義務化しないと、強制するのではないとおっしゃるけれども、通達の二百十ですか何かから見ても考えられるように、いわゆる朝鮮人としての学校の設立はできるだけ認めないと、こういうことが出ておるのですよ。そうなってくると、一方においては、朝鮮人が独立の民族としての自主的な教育をしようとするのに対して、なるべく学校設立を認可しないと、こういう方針を打ち出し、一方ではできるだけ日本の公立学校に入るようにさせる。こういうことはやはりあなたがいまおっしゃったこととは矛盾するのじゃないかと言っているわけですよ。幾ら永住するといっても、それは日本の国籍を取得するのではないのですから、これはあくまでも独立の朝鮮の、独立した国の国民なんですからね。だからその点で私はいまあなたがおっしゃることは、私は、同化教育と言っているのですが、その方針が誤っておりはせぬかと言っているわけです。
  184. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 次官通達は二色になっていると思います。日韓協定ができましたときに、韓国人の子弟についてはこういう協定になったから、その趣旨を各地方団体ものみ込んで、入学を希望する者に対してはこれこれの処置をとるようにというのが一つあったと思います。もう一つは、各地で各種学校の申請があるわけです。各種学校の認可をするのは、第一線では都道府県知事が責任を負っているわけですが、文部省としては、その指導、助言の立場にある。そこで日本の場合には、外国ではなかなか――先ほども御議論が出ましたように、日本人の在留民が相当かたまっていて、そこに子弟がおりましても、どこの国でも、たとえ各種学校としても認可をしてくれないわけで、その国の学校として認可をする場合には、先ほどパラグァイについてお話がありましたように、校長も職員も全部自分の国の人間を使え、ことばはスペイン語でやれ、こういうように非常な強度の条件をつけて、その条件に合わなければ学校の許可はないわけであります。しかしながら、日本の場合にいたしますると、韓国にしても北鮮にしても、朝鮮は、かっての民族は日本人であった時代があるわけですから、こういう経過をたどっておるので、さてこれをどう扱うべきかということについて、実はわれわれいま慎重に検討中で、確たる結論はいま出ておりませんが、そういう検討中でございます。したがって、そういう検討中に属しますから、目下いままでの制度で各種学校をばらばらに許可されることは今後の政策上思わしくないから、各種学校の認可は見合わせてもらいたいという趣旨の次官通達が一本あったと思うのです。それはそういうような趣旨で出したもので、また戻りますが、決して無理に日本の制度の学校に収容して同化教育をやろうというような意図ではないということを繰り返して申し上げておきます。
  185. 矢山有作

    矢山有作君 それでしたらね、大臣、私は在日朝鮮人のいわゆる歴史的な背景を考えた場合に、しかも先ほど言ったように、あくまでも独立の国民なんですから、そういった場合に、やはり日本において独自の教育を認める、そのことのほうが正しいあり方なんじゃないですか。私はどうして朝鮮の人に自主的な民族教育を認めることが悪いのかということがわからない。よくこの通達の中でも出ているのですがね。朝鮮人学校の施設の教育がわが国の社会に有害なものでない限りとか、あるいは石川さんが言っていることの中には、朝鮮人学校の教育は、「時にその国の行政権を無視し、」というようなことばを使ったり、また、その教育がわが国の主権にかかわる事憲までも起こしておるというような、こういう意味のことばを使ったりしているのですが、在日朝鮮人の教育について、どうしてそういう見方をしているわけですか。具体的に何かそういうことをこういう「文部時報」なんかに書いたり、あるいはこの通達の中に書かにゃならぬような具体的な例というものがあるのですか。
  186. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) その執筆者はどういう考え方で書いておるかわかりませんが、私どもとしましては、日本法律による日本の制度で保護する以上は、やはり日本の国益を害しないもんである。日本の安全と利益を害しないものであるということが、これは観念論でございますが、必要だと思うのです。さもなければ、日本の制度、法律で保護する必要はない。保護はしないけれども、それは黙認していくかどうかということは、ちょうど日本人の海外在留民が完全な日本教育を、私塾のような形ではありますが、了解を得てつくって、そうして教育をしておる。何らその滞在国に迷惑はかけてない。要するに日本人だから、やっぱり日本に帰ったときの用意のために、日本人の教育を、日本人の教育課程で受ける。これと同じであるならば、さほどこれをしいて弾圧する必要はむろんないかと思いますが、そういうようなことで、まあいろいろ考えますと、問題点が多いわけですから、今後の処置について、先ほど来繰り返し申し上げておるように、慎重に検討を続けておるというのが現段階でございます。
  187. 矢山有作

    矢山有作君 しかし在日朝鮮人は、日本に帰化したのじゃないですから、日本の国籍を持っておるわけじゃないのだから、あくまでも独立国の国民です、永住権を持ってもね。これはいつ帰っていくかわからない。日本の移民とはまた違うわけです。そういう人たちが、やはり独立国の民族としての教育を受けるということが、何か具体的に日本の社会に有害な点があるのですか。抽象論で、これを有害なおそれがあるからどうとかこうとか言っても、これは片づかぬ問題なんですね。やはりこういう公式の通達文書にこういうことばを使う以上は、それ相応の根拠がなければ使えないと思うのですがね。あなたがおっしゃったように、在外の日本人子弟が日本の教科で、日本語で、日本人としての教育を受ける。これはよその国だってやっぱり認めておるわけですよね。日本の国で在日朝鮮人に対して、朝鮮語で朝鮮の歴史を教え、朝鮮人としての教育をする。そのことをなぜ危険視するような文言が、公式の通達に出たり、あるいは文部省の役人の論文に出たりするのですか。そういう見方をしていることじゃないですか。
  188. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 通達には、別段危険視したような文言はなかったように私思うのですが……。
  189. 矢山有作

    矢山有作君 ありますよ。
  190. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 要するに、各種学校の認可は、現状においてはしないでおくようにという趣旨であったように思うのです。問題はそれよりも、根本論としましては、御指摘のありましたように、他の独立国の民族が日本におられて、そして自分の国の国語なり歴史なり、そういうものを教育すること自体、これを称して民族教育と言っておるようでありますが、そういう民族教育は、私はしいてそれがゆえにだけで排斥をする必要はないと思うのです。ただ懸念されておりますことは、一部に北鮮系の学校の中には、反日教育をやっているというようなうわさもあります。しかし私どもは、実悪調査を中へ入ってしたわけじゃありませんから、明確には承知いたしておりませんが、そういう説をなす者も相当世間にはございますから、こういう点も今後あわせて検討の材料にしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  191. 矢山有作

    矢山有作君 あなたは通達の中に、在日朝鮮人の教育を危険視しているようなことはないとおっしゃるけれども、これ読んでみてくださいよ。確かに危険視してなきゃこんなことばは使えないですよ。「このことは、当該施設の教育がわが国の社会に有害なものでない限り、」、こういうことばを使ったり、あるいは「さしあたり、報告、届出等の義務の励行等法令を遵守した適正な運営がなされるよう留意するとともに実態の把握につとめること。」、こういうことばを使っているということはね、何かその在日朝鮮人の教育を危険視しているということがなければ、こういうことばは出てこぬと思う。  それからあなた、いま反日教育をやっているうわさがあるとかどうとかということをおっしゃったんですがね。具体的にどういうことがあるのか、つかんでないのですか。つかんでないとするならばですね、国会の公式の場で、いわゆる巷間に伝えられておるような誹謗、中傷、そういったことばをとらえてきてね、在日朝鮮人の教育のあり方を論議しておる場で持ち出すというのは、少し不謹慎じゃありませんか。
  192. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私はそういう批評なり、うわさなりは聞いておりますが、私どもは承知していないということを申し上げたわけで、したがって、かるがゆえにどうであるということでは、現在のところございません。しかし、これだけ日本には韓国並びに北鮮系の、要するに外国人がたくさんおるわけですから、この教育問題について、日本の学校に入りたい希望の人には、日本人と同様の就学奨励も、その他の保護もやってまいりますが、その他のものに対して今後どうすべきかということを、目下研究しておる段階でございまして、まだ結論を得ておる時期には至っておらないのであります。
  193. 小林武

    小林武君 関連してちょっとお尋ねしておきますが、先ほど私塾とおっしゃいましたが、この私塾でやっておる日本人教育というのは、まあことばをかえて言えば、日本民族の教育ということですね。日本語を教え、日本の歴史を勉強させ、ね、そういうことですね。だから、これはまあどこの国の人間でもそういう教育をしたいという希望はみな持っておると思う。このことは認めますね。それが正しいことだと、一つの国の、独立している国の国民として正しい主張だと、このことはお認めになりますね。  それからもう一つあれしますが、私塾私塾とおっしゃるが、これは、具体的にお尋ねしますと、その私塾からです。日本の小学校、中学校とか高校に進学する場合には、これはあれですか、学校教育法のたてまえからいって、これとつながるような仕組みになっておるかどうかということですね。それから、もしも、今度は香港なら香港にある学校、ただし、これは何の学校かよくわかりませんけれども、香港の学校に入りたいという場合、日本政府はこれに対して、資格があると認めるのか認めないのか、こういうことが一つお尋ねしたい。というのはですね、たとえば、今度韓国から、韓国は、皆さんはいろいろと御便宜をはかられるおつもりのようですから、韓国人が日本の教育は受けたくないと、そこで日本にひとつ私塾を設けて、そこで民族教育を大いにやりますと、これはまあ反対する理由はない。日本が香港でやっておるんですから。そしてその場合、韓国の学校の今度は中学なり高校なり、大学なりに入れる資格を与えると、こうした場合にですね、これはどうですか。今度に逆にそういう資格が認可された場合には、日本大学に入りたい、日本の専門学校に入りたいという場合には、これは許されることになるのかどうか、この点をひとつ御答弁願いたい。
  194. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) お答えいたします。御質問の最初にございました在外の日本人の子弟の問題でございますが、これはその子弟が、外国においてどういう教育を受けておろうが、義務教育の段階でありますならば、これは相当年齢の学年に入ってくるわけでございます。ただその際、実際上の取り扱いとして、父兄等の希望等を見て、たとえば、国語等について、学力が劣っているので、一年おくれた学年に編入をするという措置はとっておりますが、これは日本人の場合には、他国においていかなる状態にあったかということに関係なく、義務教育の段階においては相当の年齢のところへ入ってくるわけでございます。  第二に、たとえば中学校までの実質的な課程を持った日本の教育施設がありますれば、外国における相当の学年、教育年の教育というものを受けたということの規定によりまして、高等学校の人学資格を取得するわけでございます。
  195. 小林武

    小林武君 もう一つ、韓国の場合、日本の場合はわかった。韓国の場合、韓国が日本に各種学校をつくった場合。
  196. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 高等学校の入学資格の関係につきましては、もちろん日本の中学校を卒業いたしました者は、これは……。
  197. 小林武

    小林武君 いや、日本の中学校はいいんだ。そうじゃないんだ。韓国が日本にとにかく私塾をつくった、そこで勉強した、これは韓国に帰れば、いまあなたがおっしゃったように、義務教育であればそこに入れる。それから相当のあれを認めれば高校にも入れる、あるいは高等学校のあれがあれば大学にも入れますという、そういうあれであるならば、日本大学とか、そういう点については、外国の学校のあれを認めて入れるかどうか、日本の学校のように。
  198. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 御質問は、日本の地域内において、まあ各種学校なり私塾なりの形で、制度上は私塾の形で、ただ韓国にとっては、韓国の制度では、実質上中学校程度だというふうな場合でありましても、これは各種学校を卒業したことによって高等学校の入学資格は認めておりません。
  199. 小林武

    小林武君 ちょっと待って。
  200. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 小林さん、もう一回はっきり言ってください。
  201. 小林武

    小林武君 あまりどうも長く時間をとれないので、説明がうまくいかないのだけれども、それはちょっとおかしいじゃないかと思うのですね。たとえば、日本の私塾というのは、これはあれでしょう、香港の学校にあなた入れると、こう言ったでしょう、香港の学校に、どうなるというのですか。
  202. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 私の説明が不足しておりました。私は日本人の在外に、たとえば、いまお話しの香港におってどのような教育を受けておろうとも、日本に帰ってきた場合にはということを申しておるのでございまして、それともう一つお答えいたしましたのは、それでは日本の地において、韓国なら韓国の方が教育施設を持っておった場合に、――それは各種学校であろうと、私塾であろうと、たとえ教育内容がどういうふうな段階でありましょうとも、それを卒業したことによって高等学校の入学資格は得られないということをお答えしたわけです。
  203. 小林武

    小林武君 ちょっともう一ぺんやってください。
  204. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 簡単にそれじゃ……。
  205. 小林武

    小林武君 簡単にしましょう。どうもあなたのやつが一つ抜けておるのだ。香港の私塾でどういう学校なのか、ぼくはよくわからないが、しかしもし香港の私塾というものがあって、中学を卒業する程度のところまでとにかく勉強をさしている。その場合に、日本の高校の試験を受けられることは、これは認めるのかどうかということですね。それを認めるということになれば――よく聞いてください。いいですか、そういうことになったら、日本の国の学校の制度の中で、十分に高校にも入れる、中学にも入れるという場合には、これはどうなんですか、よその国へ行った場合に認めないのですか。日本の高等学校、日本の中学を卒業したという者が、外国の学校へ入るという場合に、日本の学校制度の中の学校教育を受けた者は入られないのか、入れるのか。これはどうなのか。私は入れると思うのです。そうなった場合に、今度は逆に、今度は、韓国の場合はどうなるかと、こう聞いているのです。わりあいにはっきりしていると思うのだけれども
  206. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 現在の学校教育法施行規則の六十三条によりまして、高等学校の入学資格に関しまして、「外国において、学校教育における九年の課程を修了した者」というのがございますから、これを、たとえば韓国で、韓国の学校制度において九年の教育を受けておれば、そこで資格としては認定される。そのことと国内の問題とは別でございます。  それから、日本の小中学校の卒業者が外国の学校制度でどういう処遇を受けるかというのは、それぞれの国の学校制度の問題でございまして、その国できめることでございます。
  207. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃ、大臣、前のことで、えらいことばじりをとらえるようですけれども、私はやっぱり一番気にかかるのは、反日教育だとか何だとかいうことばがいろいろと出ることによって、そのことが日本の在日朝鮮人の教育に対する考え方に非常な大きな影響を持っておるのじゃないか、こういうことを痛感するのです。それでこの問題をしつこく言うのですがね、たとえば、内閣調査室から出ておる「調査月報」という雑誌があるのですが、これはおそらく調査関係の人が書いた論文だと思うのですが、これを見ると、朝鮮人のいわゆる教育問題は、文教問題として取り上げるより、閉鎖の実力行使をどうするかという、治安問題としてこれは処理を考えねばならぬ、こういうことを言っておるわけですよ。そうすると、日本政府の一貫した考え方というのは、根も葉もないのに、反日教育をやっておるのだとかいう、いわゆる巷間のつまらないうわさ、それを受けて、朝鮮人教育というものを治安の立場からとらえようとしているのじゃないかと、このことが私は問題だと思うのです。私は、あなたが、たとえば、かりそめにもうわさだとは言いながら、反日教育云々ということばが使われる以上は、じゃ、たとえば、北鮮系の在日朝鮮人の人が、それぞれの各種学校その他において、どういう教育理念でその子弟の教育をやっておるのか、あるいはどういう教科内容でやっておるのかということを御存じですか。
  208. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 直接文部者の監督に属しておりませんから、詳しいことはわかりませんが、たぶん先ほど申し上げた大阪及び神戸にございまする一条校として認可を正式に前から受けて、日本の学校と同じ教科書で同じ学習指導要領に基づいてやっておるところ以外は、おそらくいろいろな態様があると思うのであります。中には、ですから、たとえば朝鮮語の勉強だけ、そして、朝鮮の歴史とか文化とか、そういうことだけを教えておる、日本に関する教育はしていないというところもあると思います。非常におそらく実態はいろいろだろうと思うのです。多様的だと思うのです。しかし、これらの学校施設に対して今後どうするかということは、今日、日本としては一つの大きな課題でございまして、これを私どもは何とか制度的にもはっきりさしてまいりたいという考え方に立ちまして、現在あらゆる角度から研究を続けておるというのが、先ほど来申し上げておる状態でございます。
  209. 矢山有作

    矢山有作君 たとえば、あなたが反日教育というのは、具体的に言ってどういう教育が反日教育と思われますか。
  210. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) まあ、反日教育というのは、いろいろ人によって考え方はあると思いますが、たとえば日本の政治制度を非難するとか、あるいは日本社会の、いわゆる法律用語で言えば、公序良俗に反するようなことがあれば、これは反日教育だと思います。
  211. 矢山有作

    矢山有作君 そういうような教育を朝鮮人学校でやっておるということを、実態を知っておるんですか、あなたは。
  212. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) よく存じておりませんが、私どもも注意をしていろいろな関係の人に聞きますと、大体、小学校、中学校のような課程を教えている各種学校等では、そういうことは大体ないように承知をいたしております。ただ、よく世間で問題にされ、私どもにも一部から訴えのありますのは、朝鮮大学というのが反日教育をやっていると言う人がありますが、しかし、これは実際がやっているのかやっていないのか、私どもも中身を調査したわけではありませんから、そういう程度にとどまっておるわけであります。
  213. 矢山有作

    矢山有作君 だから、中身の実態を御存じない、どういう教科内容のもとに教育をしておるかということも御存じない。どういう教育理念で教育をしておるかということも御存じない。ただ、つまらない巷間のうわさだけ、これだけを信じて反日教育云々というようなことをこういう公式の国会の論議の場で言うべきではない、そういうことを言うということは、すでに在日朝鮮人の教育というものを頭から危険視しておる、反目視して、反日教育のごとく見ておるということになる、だから、そういう考え方はやめてもらわなければいかぬと思う。私が言いますと、在日朝鮮人の方の教育理念というものは、いわゆる自分たちは独立国の国民だ、したがって独立国の国民として母国語で母国の歴史を教え、その他の教育をやるんだ、そうして、その理念は、祖国の発展に責任を負い、日本の社会でりっぱに生活するとともに、祖国に帰れば、祖国の建設に役立つような人間になる、世界の人々を愛し、祖国の人4を愛する、そういう教育をやるんだということでやっているわけです。だから、これに反するようなあなたが言う反日教育があるというなら、その実態を的確にあなた自身がつかんででなければそういうことばを使ってはいかぬということですよ。これからそういうことをやりませんか。
  214. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私はあると言っておりません。
  215. 矢山有作

    矢山有作君 うわさをどういうふうに……。
  216. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) うわさは、しかし、事実世の中にありますから、私どもの耳にも入ります。私はあるとは断定いたしておりません。それから、そこで問題は、これからそういうような外国人の学校について制度をつくるとすれば、抽象的な、観念的なきめ方は、私は必要だと思うのです。外国で、日本人が、在留民がおりましても、その国の制度や政府を非難したりするようなことは、おそらく許されておりませんしいたしますが、日本においても、日本の国の安全なり利益を害するようなことがもしあれば、これは困るんです。そういうことのないようにははっきり明記しなければならぬことだと思っております。
  217. 矢山有作

    矢山有作君 わかりました。  そうすると、あなたは、在日朝鮮人が独立国の国民として自主的な民族教育をやる、そのことが、具体的に、事実として日本の政治制度を批判したり社会制度を批判したりする教育でなければ、そういう自主的な教育は認めるということですね。
  218. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) もちろん、この点は衆議院の予算委員会でもお答えを申し上げましたが、いわゆる民族教育といわれておりますが、よその国の外国人日本に滞在しておって、そうして自分の国の国語で、あるいは自分の国の歴史、文化等の教育をすること自体は、何ら排斥すべきことではないと私は思っております。
  219. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、文部大臣、一歩進んで私は、いままでの長い間の朝鮮と日本との歴史的な問題を考えるならば、その在日朝鮮人の人たちが民族的な誇りを持ち、独立国の国民としての誇りを持ち、日本の社会と日本人と仲よくしてやっていこうという理念に立って教育をするのであるならば、私はむしろ、この在日朝鮮人の人たちがつくろうとする学校、各種学校その他を政府としては認めてやるのが、これはいままでの不幸な関係を清算をする上に大切なことではないかと思うのですがね。どうですかね。
  220. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 日本との親善関係を維持し、あるいは発展させようという考え方の教育ならば、まことにけっこうでございます。したがって、制度的にこれをどう処理するか、実は私ども否定する考えをきめておるわけではありませんので、どう処理するかを研究しておるというのが現段階でございます。
  221. 矢山有作

    矢山有作君 最後に私は、民族的な誇りのない人間が正しい人間になるとは考えられないのです。自分の出身の民族を自分自身でさげすまなければならないような人間が正しい人間になれるわけはないのだから、そうすれば、私は、独立国の国民として、独立した民族としての正しいいわゆる教育は認めてやる、この方針で進まれて、しかも、過去の歴史を顧みるならば、そうした人たち日本につくる各種学校その他については、これは私は好意的な、積極的な取り扱いをしてほしいと思う。そういうふうな方針で検討してもらえますか。これは笑いごとではない。たいへんな問題ですよ。今後の日朝のほんとうの親善関係日本と朝鮮のほんとうの民族の友好親善をやろうというふうな、たいへん重大な問題ですからね。前向きで検討してくださいますか。
  222. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御承知のとおり、すでに各種学校等として認可されたものも、先ほど申し上げましたように、何十校にわたっておるわけでありますから、その他のものにつきましても、私どもといたしましては、日本の独立国としての立場は堅持しなければなりませんが、そうした教育機関について、否定でない、前向きの考え方でどう処理するかということを考えてまいりたいと思っております。
  223. 矢山有作

    矢山有作君 それでは質問を移します。  次の質問に入りたいのですが、昨年から最近までのいわゆる外国人登録の国籍欄の書きかえの申請ですね。朝鮮籍から韓国籍へ、あるいは韓国から朝鮮へと、これの実情はどうですか。
  224. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えいたします。国籍の変更の問題、昨年の四月以降本年の一月まで見ますると、韓国から朝鮮への申し立て受理件数が一万五百十一件でございます。それから、朝鮮から韓国へという申し立てが六千八百三十へ件でございます。
  225. 矢山有作

    矢山有作君 その具体的な処理はどうなっておりますか。具体的にどう処理していますか。いわゆる書きかえを認めたのがどれくらいあるのか。
  226. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) いやいや、それは認めたのじゃございません。  内容を申し上げます。韓国から朝鮮への申し立ての受理ということでございますが、これは原則的には認めないのでございます。それから朝鮮から韓国へという問題は、これは韓国の国籍を証明するものを持ってくれば、それはそのまま認めておるわけでございます。  もう少しはっきり申し上げておきたいのは、統一見解を昨年出しましてから、韓国から朝鮮へ書きかえたものが三十六件あるのでございます。   〔委員長退席、理事大谷藤之助君着席〕 これは三十六件そのとおり認めたのでございますが、それは、書きかえたのは新規登録または切りかえのときにおいて誤った記録をしたというためでございます。
  227. 矢山有作

    矢山有作君 朝鮮から韓国籍への受理は。
  228. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 朝鮮から韓国への数は、それが証明書を、はっきり国籍証明をするものを持っておればそれは認めているという……。
  229. 矢山有作

    矢山有作君 どの程度認めているか。
  230. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 数でございますか。数はひとつ事務局から申し上げます。
  231. 中村正夫

    説明員中村正夫君) 朝鮮から韓国への書きかえ数は、いま申し立て件数が全部書きかえられております。
  232. 矢山有作

    矢山有作君 国籍の問題についてはいろいろわれわれも議論があるんですが、きょうは時間の関係でやりませんけれども、いまおっしゃったやつを資料として御提出ください。
  233. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君) よろしゅうございますか。
  234. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 承知しました。
  235. 矢山有作

    矢山有作君 次に、法的地位協定発効後の永住権の申請並びにそれの処理状況は。
  236. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 三月の十九日までに受け付けた数が二千八百九十件でございます。月別に申しましょうか、よろしゅうございますか。
  237. 矢山有作

    矢山有作君 それで処理は。
  238. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 二千八百九十件。
  239. 矢山有作

    矢山有作君 全部これを受け入れたわけですね。
  240. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これは受け付けた件数でございます。まだこれの処理は終わっておりません。
  241. 矢山有作

    矢山有作君 この永住権申請の受け付けの状況ですね。いまおっしゃった三月十九日現在で各県別に出してください。
  242. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君) よろしゅうございますか、資料として。
  243. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 資料がありますから、すぐに差し出します。
  244. 矢山有作

    矢山有作君 いまの数字で見ると、政府は最初おそらく、法的地位協定が発足して永住権の申請も相当あり、またそれに伴う朝鮮から韓国への国籍欄の書きかえも相当あると、こう考えておっただろうと思うんですがね。まあ、われわれの見方からすると非常に少ないようですが、この書きかえ永住権申請が少ないというのは何かこれ原因があるんですか。最近は特に二月の二十六日の毎日新聞によりますと、韓国政府のほうで法的地位協定を幾つかの点で改定をせぬとその効果的な実施は不可能である、こういう理由で日本政府に再度交渉するんだと、こういうことを言っておるようですが、それから見ても、私は永住権の許可申請というのは期待どおりに進んでないんじゃないかと、こういうふうな感じを受けるわけですが、その理由なんです、それをひとつどうお考えになっていますか、御説明願いたい。
  245. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 一月から始まっておるようなわけでございますが、大体数字を見ますと、一月の総計が九十一名で、二月が千三百九十五名で、三月は一日から十九日までで千四百四名というふうになっておりまして、二月の全部の数より、この三月の十九日の問の数が多いという、こういうような数でございます。だんだん増していくんじゃないかと思っておるんであります。まあ、御承知のように、五年間の間にやればいいわけでございますから、まああわてることはないという心持ちだろうと思うんです。いろいろ手続等がめんどうくさいと、なかなかいま急いでやるにはうるさいから、そのうちにというようなことぐらいのところじゃないかと私ども思っておるんです。なるべくそういうことでいやな思いをさせないようにらやんと用意をしてやりたいと思うんでありますが、またあまり親切にし過ぎると、無理やたらにすすめたとかなんとかということで非難を受けるおそれがありますから、ほどほどにやらなくちゃならぬと思って気をつけております。
  246. 矢山有作

    矢山有作君 しかし、先ほど言いましたように、韓国側としてはこの法的地位協定の何か改定をせぬと効果的な実施は不可能だと、こう言って、日本政府に交渉をすると言っておるのだしね、それから、韓国居留民団の関係の中でも、この法的地位に関する協定の改定というんですか、改善というんですか、そういう運動を強力にやらにゃいかぬということを言っているようなんですが、これは具体的にはどういうことなんですか。
  247. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 政府説明員から申し上げます。
  248. 中村正夫

    説明員中村正夫君) 想像でございますが、この手続関係で申し上げますと、居住経歴の詳細を書くことになっています。そういたしますと、二十年以後二十年間の居住経歴を書くということになりますと、本人たちがなかなか、自分は数回移転したというような人たちは、いつどこに移転したというようなことを記憶を喚起して書かなければならぬのでたいへんだというようなこと、それからもう一つは、家族関係も詳細に書かなければなりませんので、まあ字のあまり書けない人もいるのではないかと思うのですが、そういうことで非常に書くのがたいへんである。だから、もっと簡単に書いて済ますようにしてくれないかというような話が非公式に民団あたりから出ておりますけれども、私どもとしては、これは協定永住というものは非常に有利なものがあるのに、そんなインチキなことで、もし居住経歴や家族関係をごまかされることがあってはたいへんでございますので、さようなことはさせないつもりでおります。   〔理事大谷藤之助君退席、委員長着席〕
  249. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、この理由についてはですね、そういう形式的な問題よりも、私は法的地位協定に伴う実体の内容についていろいろ問題があると思うんです、これは。しかし、こいつは私時間の関係がありますので、きょうは取り上げません。  で、次に問題は、これまでも司法官憲その他の強要で国籍欄の記入を朝鮮から韓国へ書きかえたというようなことで問題になった例がたくさんある。これは皆さんも御存じだろうと思う。ところが、法的地位協定の発効の後に、永住権の申請をめぐってやはり警察官憲による強要その他で問題を起こしておる。ところが、最近また新たな問題が起きてきたと私は思うのは、刑務所で永住権許可申請をやれということで、その許可申請書を配っているということが出ておりますが、これは現実にやっておりますか。
  250. 中村正夫

    説明員中村正夫君) 協定永住の許可を申請いたしますのは、市町村の窓口に出て申請しなければならないようになっておりますが、病院とか、収容施設等に入っておる人たちは出頭することができませんので、そういう人たちについては、やりたい場合には、刑務所の場合には本人の申請書を刑務所を通じて市町村に送るというやり方でやるということを考えておりますので、矯正施設におきましては、もしそういう希望者がある場合には世話してやるということでやっていただくということになっております。
  251. 矢山有作

    矢山有作君 これは、希望者があるから世話をしているという形でなしにですね、刑務所にその永住許可申請書を、国籍欄に韓国と記入してあろうが、同じく朝鮮と記入してあろうが、そのいかんを問わず、全部永住許可申請書を配っている。それで永住許可申請をしなさいと言っている例があるんではありませんか。
  252. 中村正夫

    説明員中村正夫君) 私どもとしてはさようなことを承知しておりません。
  253. 矢山有作

    矢山有作君 私どもとして承知しておらぬというような、そんな無責任なことはないですよ。この永住許可申請というような重大なその本人の身分に関係のあるものについてその実態を把握していないというばかなことがあるですか。大体刑務所におる人間に永住許可申請をしなさいと言ってだれかれなしに全部在日朝鮮人に対して永住許可申請書を渡せばどういうことが起こると思うんですか。
  254. 中村正夫

    説明員中村正夫君) さようなことはやっておりませんですが、何か事実があると仰せられましたので、実は一般的にさようなことはないので、承知しておらぬと申し上げたのでございます。
  255. 矢山有作

    矢山有作君 現実に千葉の刑務所でやっております。さらに京都でやっております。このことは全国的にやっておるということじゃないですか。
  256. 中村正夫

    説明員中村正夫君) さっそく調査いたしまして御返答申します。
  257. 矢山有作

    矢山有作君 その処理をどうするのですか。
  258. 中村正夫

    説明員中村正夫君) もしさようなことがございましたら、今後さようなことのないように、刑務所のほうを指導いたしたいと思います。
  259. 矢山有作

    矢山有作君 そうするとあなたは、刑務所に収容されておる者に対して、永住許可申請をやれといって申請書を渡すことは、これは悪いことだということを認められますね。
  260. 中村正夫

    説明員中村正夫君) 積極的に懲悪することはまずいことであろうと思います。
  261. 矢山有作

    矢山有作君 あなたもそういうことがまずいと認められたんだから、直らに実態を調査して、そういうことはやめていただきたい。そして希望が特にあればそれはいい。しかしながら、何としても五年間という猶予があるのですから、身柄を拘束されて自分の自主的な判断のできないようなしごく弱い立場に置かれておる者に対して永住権許可申請をやりなさいということをやるということは、これは明かな強要ですよ。絶対にこれはやめてもらいたい。いいですね。さように念を押しておきます。いいですな。
  262. 中村正夫

    説明員中村正夫君) 善処いたすつもりでございます。
  263. 矢山有作

    矢山有作君 次に、法的地位協定が発効した後に、最近在日朝鮮人の身辺調査について特別これを強化するような指示をやっておりますか。
  264. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これは特別なものをやっておるはずがないと思っております。と申しますのは、協定永住者等が、制度ができましても、そうでない人たちはいままでどおりの利益と申しますか、扱いを受けることには違いないのであります。永住者ができましても悪く取り扱われるというようなことにはならぬように特に注意しなければならぬのでございます。そういうことは考えておりません。またやってないはずだと思います。
  265. 矢山有作

    矢山有作君 法務大臣、ないと言われますが、現実に尼崎の中央警察署で外国人――朝鮮人、中国人、この世帯に対する実態把握のためという名目で署長名で特別の指示をやって、しかも、実施期間を定めて特別巡回連絡を実施した事実があります。これ、どうですか、御存じないですか。
  266. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私は承知いたしておりません。
  267. 矢山有作

    矢山有作君 警察庁は。
  268. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 詳細については承知いたしておりません。
  269. 矢山有作

    矢山有作君 詳細について御存じないということは、幾らか知っているんでしょう。知っていることを言ってください。
  270. 新井裕

    政府委員(新井裕君) あらましのことは聞いております。
  271. 矢山有作

    矢山有作君 あらましを言ってください。言ってくれなければだめですよ。聞いておるのだから、どういうことをやったか、質問だよ、これは。
  272. 新井裕

    政府委員(新井裕君) お尋ねのように、今度の地位協定の発効に伴ってやったとは聞いておりません。聞いておりますことはたいへん概略でございますので、矢山委員のほうが詳しいのかもしれませんが、私の聞いたものは、北鮮の工作員その他が入ってまいりますので、そういうことで署限りでそういう措置をいたしたというふうに聞いております。
  273. 矢山有作

    矢山有作君 いまのことでは詳細がわからぬので、資料を上げますから、ちょっとここで読んでください。
  274. 新井裕

    政府委員(新井裕君) ただいまお尋ねのことを拝見いたしまして、まだ、たいへん長いものですから全部は読んでおりませんけれども、これで見る限りは、ここに書いてありますように、対日工作の手先として働きかけられるから、その不審な工作員を発見するようにつとめろ、こういう趣旨のように承りました。
  275. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長、これは矢山君、時間の関係もあるし、読んでくれ言うてもなかなか読もうとせぬ。それで質疑を具体化させるために、関連して私のほうで問題点をはっきりしたいと思います。  これは、「目的」、「尼崎地域における不審外国人の実態を把握するとともに、これらの絞り込みによる工作員の発見と工作活動実態を究明する。」、こういう出だし、「実施期間」は一月十五日から二月二十八日と、「対象」としては「部内居住の外国人」、それから「実施要領」、ここが非常な問題になるわけです。その(1)は、「巡回連絡の実施にあたってはつぎの事項に該当するものの発見ということに着眼して実施すること。」、「ア生活実態」、ひとつ聞いておってください。こんなことが一体、確実な犯罪も何もないのに、一つの疑いといったような態度でやっていいかどうか。「生活実態」、一つは、「急に成人の人数が増加した家庭」、それから次は、「日本人と自称するも朝鮮人の容疑あるもの」、疑ってみようと思えば幾らでも見れます。それから「職業収入賃金の程度から推察して分不相応の生活をしているもの」、これも全くいいかげんなことになります。それから「近隣との交際をことさら避けるもの」、これは内気なあまり交際きらいな人は……。
  276. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 亀田君、なるべく時間をつづめて読んでください。
  277. 亀田得治

    ○亀田得治君 簡単にやります。  それから大事な点だけをやります。「日本語・中国語・英語または朝鮮語を解しながら知らぬふりをするもの」、これも非常にたくさん……、「服装などに変化が多く、また言動に特別な噂が多いもの」云々と。それから、これは尼崎の地区でありますが、「居住関係」は簡単にするために省略します。「職業関係」と、たとえば「大阪方面に勤務先を有する朝鮮人」、「その他」、「ことさらに反共主義を装う外国人」といったような三十数項目のことが並べてあるわけです。さらにたとえば、「本籍が、北鮮、或いは中共大陸にあるもの。」、それからさらに「北鮮或いは中共大陸に家族がいるもの。」、こういうふうなことが三十幾つ並べ立てておるわけです。私はまあ法律家の経験からいいましても、こういうことを並べ立てて、そうしてしろうとの、末端の警察官にこういう基準でひとつ検討してみろ、こんなことをやらしたら私はたいへんなことが起こる。何だってはっきりした基準のないことなんですから、私は、これは生活全体を恐怖におとしいれるものだと思うのです、実際問題として。長官は概略知っておると言われますが、おそらく現在ではきちんとみんな知っておられるのだろうと思うのです。こういうことが出ているわけです。長官御存じでしょう。これはあとからかもしれません。こんなことを長官の指示によって尼崎警察――兵庫県警が動いて、尼崎警察がやった、こういうふうなことであれば、これはもちろんたいへんなことだ。どうなんですか、これは非常にもう各方面においては問題になっているわけなんです。われわれもやむを得ず、そういう立場でこれは取り上げておる。知っておるはずなんです。知らぬと言うなら、もっと詳しく申し上げなければいかぬ。
  278. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 先ほど申し上げなかったかもしれませんが、私のほうで指示をしてやらせておることではございません。
  279. 亀田得治

    ○亀田得治君 新井さんは現在は知っているのでしょう、非常な話題になっているのですから。
  280. 新井裕

    政府委員(新井裕君) ただいま資料を拝見いたしまして承知いたしました。
  281. 矢山有作

    矢山有作君 いま亀田さんが読まれたようなことなんですが、さらにまだとんでもないものがあるのです。「不審外国人発見表」というのがあって、巡回連絡立ち入り調査に際してはどういうことでやれというので、「海岸付近を徘徊するもの」、「歩行中ときどき後ろを振り返るもの」、「携帯ラジオを所持しているもの」、「大阪方面に勤務先を有するもの」、こういうことで身辺調査、立ち入り調査をやられたら、一体これはどういうことになるのですか、あなたはこれをいいと考えますか。
  282. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 先ほど申し上げましたとおり、私どもの理解しかねるような理由でわざわざ命をかけて海津から日本に工作員を忍び込ませる事例がたくさんございますので、われわれは、そういうものに対しては厳重な警戒をしなければならないと思っておりますが、ただいま拝見した限りにおきましては、われわれの技術的にいいましても、やや拙劣なものがあるように思いますけれども、これはあくまでも内部のものであり、これによって知り得た知識を外に出そうというものでもありませんし、相手方に強制するものでもありません。ただ、やり方自体についていろいろもっと検討をして、やる以上は、相手方にかける迷惑を最小限度にするということがすべてのわれわれの活動に必要でありますから、そういう点については再検討をするものがあるように思います。
  283. 矢山有作

    矢山有作君 あなたこういう指示を出しておいて、迷惑をかけないでこれが実行できますか。これやったら、これは確かに人権侵害になる場合がたくさんあるのです。「海岸付近を俳回する」といったって、海岸を散歩もできぬじゃないか。いま交通事故が多い。自動車が通るか、通らないか、うしろを見なければならない、うしろも向けないじゃないか。携帯ラジオをかけて、ラジオを聞きながら歩いている人が多い。それもできない。こういうようなことを末端の警官に指示したら、実際にどういう事態が起こるかということをあなたは認識していますか。悪いと思っていないようですから。
  284. 新井裕

    政府委員(新井裕君) これは第一線でどういう経過で考え出されたことか、私も詳細は承知いたしておりませんけれども、いままで検挙された人員を検討した上で出したものだと思います。ただいま申し上げましたように、これは内々のことでありまして、相手方にこういうことを宣伝してもらっているものではもとよりございませんし、ただいま申し上げましたように、こういうことによって知り得た知識を外に振り回そうというような趣旨のもとにやったものとは、私は思っておりません。大なり小なり、そういうことについて過去の経験をもとにしてやるというのがわれわれの仕事のやり方でございますので、おそらくそういうことから割り出して書いたものだと思います。
  285. 矢山有作

    矢山有作君 あなた、過去の経験を言われるのは、前からのことばから考えて、工作活動のために工作員が入ってくるから云々ということがあるんだろうと思うんですが、一体工作活動というのは何ですか。
  286. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 工作員が日本に密入国をいたしまして検挙せられた件数はそう多くはありませんけれども、われわれのほうでも数十件発見したものがございますが、この人たちは相当多額な金円を持ち込み、それから短波の発信器及び乱数表による暗号表、あるいはまたその調査すべきいろいろな項目を詳細に並べたものを持ってきたものを発見したものも相当多いわけであります。そういうものを北鮮の工作員というふうにわれわれは呼んでおります。
  287. 矢山有作

    矢山有作君 その工作の事実については、いろいろ議論はあとでやりますが、だから工作活動というのはどんなことをするんですか、日本で、具体的に。
  288. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 先方がどういうことをやるか詳細はなかなかつかみにくいのでありますけれども、要するに、日本国内の社会的なあるいは政治的な動向というものをいろいろな角度から調査をして、それを一定の時間打ち合わせをした上で乱数表によって暗号電報を打ちなさいという指示を受けておるわけであります。
  289. 矢山有作

    矢山有作君 それは何に当たるんですか、そういうことをやったことは。
  290. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 密入国をいたしますから出入国管理令にまず違反いたしますし、電波を発することによっては電波法の違反でございます。
  291. 矢山有作

    矢山有作君 じゃあ実際問題として、いままであなたはスパイ活動があったとおっしゃるんですが、その具体的な処理はどういうふうになっていますか。
  292. 新井裕

    政府委員(新井裕君) ただいま申し上げましたような、日本国内の秘密を守るという法制は、特別、直接的なものはございませんので、電波法違反あるいは出入国管理令違反ということで処断をされております。
  293. 矢山有作

    矢山有作君 いまの日本に格別秘密を守らなければならぬ、そんな秘密というようなものがあるんですか。
  294. 新井裕

    政府委員(新井裕君) およそ国としてやっております以上、たとえば条約の交渉をすれば、それを相手方に出すまでは秘密であろうと思いますし、それから、何をやろうかとすることを前提として先方と交渉しようと思えば、これは秘密であろうと思います。先ほど申し上げましたように、日本はたいへん自由な開放的な国でありますから、私自身も何のために命を賭してまであのゴムボートにまで乗って日本にやってくるのか、その点についてはむしろ私自身も疑問に思うんでありますけれども、ともかく、そういう意図を持ってやってきておることは間違いございません。
  295. 矢山有作

    矢山有作君 条約問題を持ち出されましたが、条約なんというのは、この国会でもあなた方秘密にしてしゃべらないでしょう。われわれ国会議員だって知らないんですよ、国政に参与していても。そんなものを、海岸からのこのこゴムボートで上がってきたか何か知らぬが、それで秘密を探られるような、そんな問題じゃないでしょう。それから第一、いままでのスパイ事件、スパイ事件と言っておられますが、このスパイ事件というのはいろいろの問題点を含んでいるんじゃないんですか。たとえば、日本海で起こった事件にしても、その他いろいろな事件をいろいろといままで人権擁護委員会なり、あるいは在日朝鮮人の人権を守る会なりで調査した結果で相当な抗議があなたのほうに行っているはずですよ、いろいろな問題について。これを頭からスパイ活動のために入ってきたんだと言えるんですか。私はこの問題について詳しく論じているひまはありませんが、あなた方は北鮮がスパイだ、スパイだ、スパイ活動をやろうとしてくるんだということを盛んに言おうとして、いわゆる在日朝鮮人弾圧の道具に使っているんじゃないですか。
  296. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 事柄をすなおにながめていただけばおわかりいただくと思うのですけれども日本で禁止されておるような形でまた何を秘密にする必要があるかとおっしゃいますけれども、乱数表まで持ち込んで一定時間打ち合わせをして無線で連絡をするということであれば、私はこういうものこそスパイだと思います。また、日本には全然秘密がないということはありません。軍事的な秘密ももちろんあるわけであります。そういうものを探ろうとしておるのだと思います。
  297. 矢山有作

    矢山有作君 だから、そのあなた方がスパイ事件だと言っているものではっきりしているものはないじゃないですかと言うのです。いろいろな問題点がいままで提起されておるでしょう。そういうスパイ事件だスパイ事件だということを宣伝しながら、在日朝鮮人を弾圧しているのだと私は言っているわけです。それから、その問題は具体的な例があるのです。ありますが、それをここで論議しておったのではもう一分しかない。したがって次に移りますが、いまこうような実態調査をやるための行動を警官がとることは、警職法なり警察法の精神からして許されるのですか、これは。規定がありますね、警察法、警職法に。
  298. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 巡回連絡につきましては警職法には規定はございません。警察法に基づいてやっておることでございます。
  299. 矢山有作

    矢山有作君 だから、私は警職法あるいは警察法に規定しておるあの規定とこれとの関係はどうなのかと言っているのですよ。明らかに警察法なり警職法を逸脱した行為になるのじゃないかと言っているわけですよ。
  300. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 先ほど御説明いたしましたとおり、相手方に強制的な権限を加えてやることではございませんで、事実上相手方の協力を得てあるいは納得を得てやること、あるいは相手方に知らせないで自分たちだけの検分でやることが巡回連絡でありますから、それは別に警職法に触れ、逸脱したものだとは思っておりません。
  301. 矢山有作

    矢山有作君 これを実際に実施した場合にですね、実施した場合に、ただそういうふうに警職法に触れないのだという自信があるのですか、これ。海岸を俳回しておる、携帯ラジオをかけておる、そのことが一々端緒になってどうだこうだと言って聞かれたりあるいは立ち入り調査をやられたりするようなことになったら、これは明らかに人権侵害じゃないですか。警職法、警察法の精神から許されぬでしょう、これは。
  302. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 巡回連絡のことだけを申し上げましたので御理解いただけなかったのかもしれません。職務質問をいたしますれば警職法の規定に従ってやるわけでありまして、いま引例をなさいました一項だけを拾って、それだから怪しいというようなことでやるべきことではございません。そこに書いてあります数、項目あるいは数十項目を総合判断した上でやるべきことであります。したがいまして、いま御引例のように携帯ラジオをやっておるからあぶないというような判断をする、そういう前提でやっているものだとは私は思っておりません。
  303. 矢山有作

    矢山有作君 しかしね長官、これは一つの端緒になるのですよ。携帯ラジオを持っておるということに、これがきっかけになってですね、これはもう調査やれるのでしょう。何も、全体を総合してやるか、これだけをとらえてやるか、第一線の警官がやっておるのですよ。それだけの警官に節度を心得て、警職法なり警察法の範囲から逸脱しないという自信がありますか、これ。現実にいままで警察官による在日朝鮮人に対する暴行事件等たくさん出ているじゃありませんか、ここに。それについては先般在日朝鮮人と私の秘書が抗議に行ったときにこういう事実をあなた方は全く否定はされておらぬじゃありませんか。
  304. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 警察官、いま御指摘のようでありますけれども、十分教養を受け――一年間の教養を受けた上で第一線へ出しておりますし、それからふだんの仕事においても教養、訓練を施しておりますから、ただいまの御引例のことだけでやるということは私はないと確信をいたしておりますが、なお、すべての警察活動につきましては、すべてそういうような行き過ぎのないように全般的には教養をいたしておりまするので、おそらく間違いなくやれると思って出したものだと思っております。
  305. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 矢山君、念のために申し上げます。時間が切れておりますから御承知の上で……。
  306. 矢山有作

    矢山有作君 長官、じゃ、あなたは、これはいいものだからこれを大いに使ってやりなさいと言って今後やるつもりですか。
  307. 新井裕

    政府委員(新井裕君) これがわれわれのほうの模範例になるかどうかよく研究いたさなければわかりませんけれども、そういう意味で申し上げておるわけではございません。一般論としてそういう必要があればやるべきものであり、またやるのがわれわれの責務であろうと思っております。
  308. 矢山有作

    矢山有作君 しかもこれは外国人の中で特に朝鮮、中国とあげて、同じ外国人でありながら在日朝鮮人と中国人に対する極端な差別感情むき出しの断圧方策じゃないですか、これは。こういうことは警察法あるいは警職法の精神から許されるわけがない。あなたはこれが逸脱しないようにこれはむしろこういうとこをやってはならぬという指導をすべきじゃないですか、あなたとしては。  で、時間が切れましたから最後にお願いしたいと思いますが、先ほどスパイ事件の問題で五十件ほどあるとか言われましたが、これの詳細な資料を提出してほしい。
  309. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) これはいかがですか……。
  310. 矢山有作

    矢山有作君 出さないことはないよ。あると言った以上出せ。
  311. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 出すそうです。
  312. 矢山有作

    矢山有作君 ほかの大臣の方に来ていただいておったわけですが、まことに時間も超過いたしましたので申しわけないことになりました。この問題については、なおいろいろと究明しなければならぬ問題があります。したがって、また場所をかえてこの問題については究明さしていただきます。
  313. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 矢山君の質疑は終了いたしました。  午後二時四十分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時五十六分休憩      ―――――・―――――    午後三時二分開会
  314. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和四十一年度一般会計予算外二案を議題とし、質疑を行ないます。藤田正明君
  315. 藤田正明

    ○藤田正明君 私はまず、経済の見通し、次に国際収支について、第三に物価問題、特に消費者保護の立場から政府見解をお伺いし、最後に住宅問題に関し、質問をいたしたいと考えております。  第一の質問の経済の見通しについてでありますが、政府・日銀は今月初め、長い鍋底不況にもやっと薄日がさし始めたと言っております。私も、政府の不況対策がようやく実を結び、諸種の経済指標にもそのきざしが見えてきたことを御同慶の至りと考えております。しかしながら、まだ依然として、高水準にある企業の倒産や、民間の投資意欲の衰退、四兆円とも言われる現在までのデフレギャップの未解決等を考慮すれば、経済指標の明るさが、はたして好況突入の黎明期の明るさであるのか、あるいはただ単なる白夜の明るさであるのか、その点を懸念するものであります。過去何回となく景気底入れ説があらわれ、そのつど期待をむなしくしてきたのでありますが、今回の底入れ説は、不況脱出が本物であるのかどうか、これがまず質問の第一点であります。  それから、私は端的に言いまして、民間の設備投資意欲が盛んになったとき、初めて本格的な景気回復であると理解しておりますが、今回の景気回復の足取りは、これまでの不況回復に見られないゆっくりとしたものであると考えております。ところが過日の政府発表によりますと、景気の回復は予想外に早まり、夏ごろからだと言われておりますが、その根拠をお尋ねいたしたいと思います。これが第二点であります。  第三点といたしまして、佐藤内閣におかれましては、一貫して安定成長を唱えられております。私もこれに賛同する一員でありますが、現在の経済体制下においては大小の差こそあれ、好、不況の波は避けられないものと考えております。政府は、次の好況の波が何年くらい続くものか、そしてどれくらいを予想されておるか、また、好、不況の波の深さをどの程度に考えておられるか。好、不況の振幅とその深浅でありますが、それをどの程度に考えられておるか。以上三点を大蔵大臣質問いたします。
  316. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 景気が夏ごろからということを申し上げたことはないのであります。昭和四十一年度という年は年間を通じて七・五%の成長ということを申し上げておるのです。それで、その七・五%を達成するにつきましては、夏だとか、秋だとからの景気回復成長カーブの変化、そういうことではできない。やっぱり今日から始まらなきゃならぬわけです。それでいろいろな指数、これはまあ時期的にでこぼこがありますが、指数を見ましてももうそういう傾向が出てきておる。鉱工業生産の指数を見ますと、これは昨年の十一月から増勢に転じております。二月の指数はまだ発表になっておりませんけれども、これは一月に比べると多少落ちるような傾向があるのですが、一月は非常に高いのです。三・六%前月に比べてふえた。これは異常なことなんですね。それに比べれば修正の数字が出てくるような傾向にもなろうと思いますけれども、とにかく、この四カ月を通じて見ますると、相当の上昇カーブに転じているわけです。  それから物価指数、これも同じようなカーブになってきております。  それから製品の在庫ですが、これは一昨年の十一月のところまで落ちてきている、こういうようなことを総合してみますると、毎月々々――これには多少のでこぼこはあるかもしれませんけれども、これは上昇カーブに転じている、こう見るわけです。その原因は何かというと、やはり設備投資の低調今日におきましては、財政が相当影響している。財政の支出の状況を見ますると、四十年度は上期が停滞しておりまして、十二月ころから活発化している、それが相当の響きを持っている、こういうふうに考えるわけです。この暮れからの動き、そのカーブが同じ勢いで四十一年度中は歩み続けるであろう。そういうために四十一年度の膨大化された予算の支出は、これを上半期にウエートを置いてやっていこう、こういうふうに考えておるわけでございます。私は、今日の趨勢というものは景気回復基調に向かっておる、かように考えているわけでございます。  それから景気循環は免れない、こういうお話でございますが、私もそう思います。しかし過去においては、その山と谷に非常に開きが大きいわけでございます。それを調節するという考えをもちまして、今回は公債政策というものを採用した、つまり民間の経済が非常に好調であるという際には、公債政策の弾力的な運営によりまして、政府財政をやや消極化する、また民間が落ち込んでいるという際には、公債政策の運用によりまして財政は積極化する。そうして民間と政府を合わせた経済活動、それから金融と財政、この二つを合わせて見ますと、大体日本の経済の規模がでこぼこなしに推移していく――成長していく、そういうことをねらっているわけでございます。多少の景気変動ということはありましょうが、過去におけるような、はなはだしい山と谷との開差というものは避け得るのではないか、そういうふうに考えているわけでございます。ただ景気変動のほかに、国際的な要因とか、そういうようないろいろな事情がございます。こういうことは、ある程度わが国にも影響してくると思いますが、過去のようなことは今後ない、かように御承知願いたい。
  317. 藤田正明

    ○藤田正明君 振幅も、深浅も過去のようなことはない。そうしてまた、景気の回復も本格的な基調をもってきておる、はなはだ御同慶の至りでございます。  続きまして、国際収支について質問いたしますが、まず最初に、わが国の貿易の現状と将来についてであります。  先般の大蔵省の発表によれば、昨年の輸出額は八十四億五千万ドル余りで、前年度比二六・八%の増加であります。地域別では米国の二九・五、東南アジアの二五・六%、共産欄の五・五%等でありますが、これは三十九年度に比べ、米国、アフリカの上昇、欧州、中南米、東南アジアの下降が目立っております。わが国の輸出特徴の一つは、世界経済をリードするアメリカと、後進国の多い東南アジアに対する比重がともに高いことでありまして、これは他の先進諸国ではあまり見られない形であります。また、わが国の貿易の三割を占めておるアメリカの景気動向を無視することはできないと思うのでありますが、その額は昨年において二十四億八千万ドルにも達しております。特にその中で鉄鋼、重機械の上昇は目ざましいものがございます。ところが最近に至り、アメリカ経済の五年にも及ぶ上昇も、景気過熱と金利上昇により、設備投資の減少傾向が見られるようになってきております。特に、資本財輸出の多いわが国の対米輸出は、ダイレクトにアメリカの景気動向に左右されるわけでありますが、政府は当面のアメリカ経済をどのように理解されておるか、これが質問の第一点であります。この点は経済企画庁長官にお願いいたします。  それから、アメリカの対日輸入に関するトラブルは、残念ながら年中行事のような感がございまして、通商拡大法関係のエスケープ・クローズ、関税法関係のASP、独立法関係のアンチ・ダンピング法等でありますが、これらの輸入制限法がアメリカの経済の下降に伴い、対米輸出の大きな障害となることは予測されるのであります。これに対処すべき施策について、通産大臣はおられませんが、政府委員の方にお願いいたしたいと思います。
  318. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカの経済は徐々にと申しますか、相当な活況を呈しつつある。ある意味から言えばインフレ傾向――したがって、公定歩合を引き上げるか、あるいは増税をしてこれを調節するかというようなところでありまして、ベトナム問題その他も加わってアメリカ経済というものは非常に活気を呈しておる。したがって、その意味においては対米輸出というものは相当に過去の実績を維持していけるのではないか。ただ、世界貿易そのものは昨年からみますと、来たるべき四十一年度は、若干世界貿易の拡大というものは縮まるのではないかというふうにみられております。したがって、全体としての日本の貿易というものも若干昨年度よりも低目に見るのが適当じゃないかとは思っておりますけれども、しかし、日本の輸出能力というものは相当力強いものがありますから、悲観するには当たらないような実績が得られるのではないか、こう思っております。
  319. 渡邊彌榮司

    政府委員(渡邊彌榮司君) アメリカの関係でございますが、御指摘のようにバイ・アメリカン、あるいはアンチ・ダンピング、また各商品ごとにいろいろな問題が起こっておることは事実でございます。ただ、この点につきましては、昨年も、日米貿易経済合同委員会がございました際も、各閣僚からこの点は強い要望がありました。アメリカ側もできるだけ善処をするということを言っておるわけでございます。対米輸出はいろいろ問題はございますけれども、今後の努力によりまして順調に伸びていくということを期待して、その線でできるだけの努力をしている次第でございます。
  320. 藤田正明

    ○藤田正明君 具体的に……。
  321. 渡邊彌榮司

    政府委員(渡邊彌榮司君) ただいま鉄鋼輸出の関係も、日本の輸出が非常に伸びましたために、アメリカである程度の摩擦を起こしまして、いろいろ心配しておったんでございますが、これも両業界の話し合いがただいま順調に進みつつあります。また繊維等につきましても綿製品の協定等が先般妥結をいたしました。大きい問題がそういうふうに逐次解決しつつございます。またアンチ・ダンピングにつきましても、毎年のように法案の内容の強化という問題が出てまいりますが、アメリカの中でやはり日本との貿易関係を改善していきたいという意見も非常に強くございます。また先ほど申し上げました合同委員会で日本、アメリカ両方の閣僚ベースで相当突っ込んだ本件についての改善の話し合いがございました。そういうことがいろいろ功を奏しまして、アメリカの輸入制限問題というのは、今後も問題はございますけれども、両方の努力によりまして何とか拡大のラインで解決していけるのではないか、せっかく努力しております。
  322. 藤田正明

    ○藤田正明君 通産大臣がおられませんので、貿易関係を少し飛ばしまして、次に大蔵大臣にお伺いしたいと思うんでありますが、内外金利差の縮小による資本収支に与える影響について政府見解お尋ねしたいわけであります。  四十年度の国際収支の実績の特徴の一つに資本収支の悪化が指摘されると思うんでありますが、資本収支じりが赤字を示しましたのは、私の資料によりますと、昭和三十三年以降初めての経験ではないかと思うんであります。従来のわが国の国際収支の姿では、経常収支の動向いかんにかかわらず、資本収支は一貫して黒字であったと思います。昭和四十一年度の政府の見通しによれば、長期資本主億ドル、短期資本一億ドルの合計五億ドルの資本収支の赤字を予想しておりますが、私は次の点からもっと大きな赤字幅が生ずるのではないかと懸念するものであります。すなわち、それはアメリカにおける市中金利の昨年秋からの続騰であります。いままで日本の金利よりも外国、特にアメリカでありますが、アメリカの金利が低かったために、わが国に流入しておった資金が、昨今のアメリカ金利の上昇により、わが国に流入される資金が激減し、すでに導入されておった資金がまた持ち出されております。  ユーロダラーをはじめとするホットマネーも、もっと有利なところを求めて、流出していくおそれが多分にあり、その上ユーザンスも輸出の増加に伴い、さらに大きな資本流出になろうかと思われます。以上の理由により、私は資本収支じりが五億ドルの赤字では済まないんではないかという懸念を有するものでありますが、この点についてお伺いしたいわけであります。
  323. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国際収支につきましては、私どもは経済政策運営上の最大の機軸としてこれを重要視しておるわけですが、しかし、ただいまの御指摘のような心配は私は持っておりませんです。非常に注意はしておりますけれども、今日現実の問題とすると、心配しておらぬ。それは過去数年間、特に三十六年から三十九年の中ごろまで、これは資本が流入する時期だったんですが、しかし経常収支、特に貿易収支ですね、これが赤字である、その赤字を資本収支でまかなう、つまり国全体の貸借が借金収支であった、こういう時期であります。まあ昭和三十五年ごろからずっと二十億ドルという外貨を持ってきて、今日は二十一億ドルになっていますが、しかしその内容は悪化しておったわけです。ところが三十九年の中ごろから、このパターンといいますか、国際収支の内容、性格が一変をいたしまして、経常収支は大幅な黒字になる。しかし、それかといって、外貨はふえてこない。なぜかというと、資本が流出したわけです。ことしは大体六億ドルぐらい流出というか、マイナスになろう、こういうふうに見るわけでありますが、それだけ日本の国際収支は内容がいい、その国際収支の内容のいいのを受けまして、今日、日本の国際貸借のほう、これも非常に改善をされてきておるわけであります。同じ程度の外貨保有高でありまするけれども、中身が一変している。いま御指摘のように、アメリカの金利高の問題があります。これは私ども注目をしておりますが、この影響というものは、いま日本にはほとんど見られておりません。いま、資本収支が赤字になる、その最大の原因は輸出が伸びる関係です。輸出ユーザンスの関係でございます。向こうの金利高で外資が逃げる、それは輸入ユーザンスの問題が端的にあらわれてきますが、そういう傾向はない、今日は。しかし、この間もプライムレートが上がるというような傾向がありまして、今後どういうように作用しますか、これは注目をいたしております。また、その状況いかんによっては、必要な手は打たなきゃならぬ、こういうふうに考えておるんですが、多少の短資がそういう関係で流出するような傾向がありましても、経常収支が非常に健在である。ことに四十一年度のごときは、相当控え目に、かたく見ているんですが、貿易収支は十八億ドルの伸びが見込めるのでございます。貿易外収支を差し引いても、なお九億ドルぐらい余りそうだ、五億ドルの資本の赤と見ても四億ドルは残る、こういうことでございますので、私は、当面、国際収支の関係については心配するような事態はないと思っております。しかし、大事な問題でありまするから、どこまでも注意をしてまいります。
  324. 藤田正明

    ○藤田正明君 ただいま大蔵大臣のおっしゃいました外貨準備高についてでありますが、二月末の外貨準備高は二十一億九百ドルと計算されて、これは過去最大の保有為ではないかと思うのであります。外貨準備高は国際収支の一つの目安にはなると思うんです。しかしながら、私は、ほんとうの意味での国際収支の分析は、基礎収支じりの動向と、これをいかにファイナンスしたかという二点に分けて分析してみる必要があると思うのです。四十一年度で資本収支が五億ドルのマイナスと申されましたが、私は、もう少しマイナスになるんではないかと悪い予想を幾らか持っておりますが、しかし、それはそれといたしまして、外貨準備高という表にあらわれたものは氷山の一角ではないか、その底に隠されております、と申すとおかしいですが、その底にあります国際貸借、これをあわせて考えないと、準備ということは言い得ないんじゃないかと思うのですが、私は、そのようなことで、長期的でなくても、四十一年度は総合的な国際貸借関係をどのように見られているか、こういうことをお伺いしたいわけであります。
  325. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 四十一年度の国際収支は、ただいま申し上げましたように、相当かたく見ているんですが、経常収支で九億ドルぐらいの黒字になる、資本収支で五億ドルの赤、したがって、純黒字、これが四億ドルぐらいになるだろう、いま御指摘のように、資本収支の面において五億ドル見たのが多少ふえるようなことがありましても、まあとにかく三、四億ドルのネットの黒が残ると、こう見ているのです。これは、このまま外貨保有高の増となってあらわれてくるわけです。私は、今日の二十億、二十一億という外貨保有高は、今日の日本の貿易量に比べて少ない、これを何とかしてふやしていきたい、そういうふうに考えておりますが、しかし、その内容が問題なんです。つまりこれが、借金でふえた、こういうのじゃ、利息を払うだけでも、外貨で払うんですから、損です。やはり、借金なしで外貨がふえなければならぬ、こういうふうに思うんですが、それには、貿易を主軸とした経常収支をよくしなければならぬ、そういうふうにつながっているわけなんです。いま、日本の貸借、つまりバランスシートですね。これは、昨年とにかく九億ドルの経常収支の黒字である。それだけ改善をされているんです。昭和三十五年ごろは大体とんとんだった。それが経常収支の赤に伴いましてバランスも赤になってきちゃうんですが、今日なお、率直に申しまして、赤字です。赤字でありますが、赤字の幅は非常に減少して、貸借勘定は改善をされている。もう心配の必要は今日ない。昭和四十一年度においては、これがまたさらに改善されるだろう、さように考えている次第であります。
  326. 藤田正明

    ○藤田正明君 次に大蔵大国にお願いいたします。年々ふえ続けているのでありますが、貿易外収支の赤字を軽減するために、政府は具体的にどのようなことをお考えになり、どのようなことをなさっているだろうか、この点についてお尋ねするわけであります。
  327. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 貿易外収支が赤字になりますのは、一番大きな原因は、輸出輸入のスケールが大きくなる、こういう関係から、貿易関係者の在外の費用でありますとか、あるいは貿易に従事する船の支払いがふえるとか、そういうようなことです。それからもう一つの問題は、船運賃の問題です。今日、積み取り比率が非常に悪化している。その関係で、運賃の支払い超過、そういうものであります。それからもう一つは、観光収入が一体これはどういうふうな状態になっておりますか、これはどうもはっきりつかみにくい。これも、そういう状況じゃないんじゃないかと思います。  そういう事態に当面いたしまして、貿易の手数料の節減、そういうものも努力しなければならぬ。さらに過当競争とか、そういう面にまで努力をしなければならぬわけでありまするが、同時に、次いで大きな問題は、船運賃の問題です。これにはやはり外航船の充実ということをしなければならぬ。私は、少しその面が、輸出造船に力を入れ過ぎたあまり、おろそかにされてきたのじゃないか、そういうようなこともあって、この二、三年は外航船の建造に非常に力を入れてきているわけであります。今後も外航船を充実いたしまして、その積み取り比率の改善、したがって船運賃の赤字を減らしていくという方向でつとめていかなければならぬ。また、観光につきましては、これも、その観光という面からあらゆる努力をして、とにかく、経常的に八億ドルも九億ドルも貿易外で赤字を出す、これは決して健全な姿じゃないと思います。だんだんではありますが、それを減していきたい、かように考えております。
  328. 藤田正明

    ○藤田正明君 通産大臣がお見えになりませんので、物価問題に移らしていただきたいと思います。  藤山経済企画庁長官にお願いいたします。  政府の物価対策の努力にもかかわらず、昨年は消費者物価の上昇率が七・六と、不況下の物価高というような異常な状態を迎えたのでありますが、私は、いままでのような消費者不在の物価対策ではなく、消費者もみずから物価との戦いに参加すべきものであると考えるものであります。政府、消費者、生産者、流通業者が一致団結して、国民運動的な盛り上がりをもって物価上昇を阻止するという、消費者の積極的な態度を期待するものでありますが、故ケネディ大統領が、いみじくも、消費者は最大の集団でありながら団結しない集団である、みずからを防衛保護することのできない集団である、それゆえに政府の保護が必要である、ということを指摘しておりますが、日本の場合も全くそのとおりではないかと思う次第であります。わが国における消費者団体が、消費者協会とか、生活科学協会、あるいは消費者生活協同組合、主婦連等がありますが、それぞれ独自の立場で化活の合理化を考え、物価問題に取り組んではおられると思いますが、その力には、はなはだ限界がございます。私は、いまこそ政府が、消費者の一人一人が、欧米並みの、物価に対するきびしい態度を持つように指導される必要があるとともに、消費者を中心とした物価戦争の陣頭に立つべきではないか、かように考えるものであります。この点に関しまして――私の私見ではありますが、私の私見に対して、経済企画庁長官はどのようにお考えになるか、お伺いしたいのであります。
  329. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価問題の解決にあたりまして、消費者の方々の御協力と申しますか、あるいは消費者の方々が先頭に立っていただくということは、これはたいへん大事なことだと思います。そこで、消費者団体あるいは消費者の方々との連絡協調ということは、われわれとしてやらなければならぬ。したがって、昨年六月に企画庁に国民生活局ができまして以来、各種消費者団体と連絡をできるだけ保って、その御意見も伺いますし、われわれも、その方々にいろいろな調査等も御依頼して、そうして消費者の方々とともに、ものを考えていくというようなことでやってまいりたいと、こう思っております。ただ、消費者団体を官製化するというような形であるとまずいので、やはり消費者みずから中から包まれ出た力というものが大事だと思います。したがって、われわれ役所におります者が、上から何かそういう団体をつくらしたり、あるいは何かそういうことをするということ自体は、あまり適当なことじゃない、消費者みずからがそういう団体をおつくりになって活動するという状況に持っていくということが望ましいことだと思います。同時に、消費者のいろいろな教育と申しますか、消費者の商品に対する判断力、あるいは今日のような状況で言えば、消費者みずからが自分で、配達を要求しないで、物を取りにいくとか、買い物に出るとかいうような状況に、消費者みずからも考えていただくというのが、労働賃金が上がってきております場合には、必要です。つまり、要するに、欧米式な生活態度に日本生活もだんだんなってまいりますから、態度としては、そういう態度をとっていただかなければならない、そういう意味において、消費者教育というようなことは大事であって、これを消費者団体の方々にもお願いを申し上げまして、消費者教育のための展覧会を開いたり、そういうことをやって指導していく、こういうことをやっておるわけであります。
  330. 藤田正明

    ○藤田正明君 この問題は通産大臣お尋ねしたほうがいいのかと思いますが、続きまして企画庁長官にお伺いします。  消費者物価上昇の一原因であると思いますカルテルについてでありますが、各種のカルテルによって、下がるべき価格が下げられないというような点が多分にございます。公取委の調査によっても、中小企業組合法によるものが千百九十四件もあります。そのほかに、独禁法の除外例として認められた不況カルテル、合理化カルテル等は、昨年の暮れまでに千五十二件に達していると思います。まさに、カルテルまかり通るというふうな観があるわけでありますが、問題は、これまでのカルテルが、そのほとんどが生産者側の観点からできたものであって、消費者側の意思はほとんど無視されているのではないかと思う点であります。去年の暮れに、国民生活審議会が総理大臣あてに答申した「消費者物価の安定に関する意見」というものがございますが、これは同様なことを申していると思います。この答申に対して政府はどのようなことをされたか、ただいま多少のことを企画庁長官にお伺いしたわけでございますが、もう少し、この答申に対してどのような施策を計画し、実行されようとされるのか、そういうことをお伺いしたいのです。  それからもう一つ、今後カルテルをお認めになる際に、消費者の意向を反映するような方法をお考えになっておるかどうか、この点もあわせてひとつお尋ねしたい。
  331. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 通産大臣おいでになりましたが、国民生活審議会からの答申の問題もありましたから、私からも一言申し添えておきます。  その中小企業関係の合理化カルテル、あるいは不況カルテルといわれる種類のものは、御指摘のとおり、非常に長く続いているものが多いわけです。これは、本来から申せば、合理化が二、三年のうちに完成して、そしてそういうカルテル行為をやめるというのが本来の姿でなければならぬと思います。中小企業のことですから、合理化をするのに若干の時間はかかりますが、しかし、二、三年でやめるのがほんとうで、それが十年も続いているところに問題があるわけでございまして、この点については、われわれも通産大臣お話を申し上げまして、そうして今後、これらの中小企業がいわゆる合理化カルテルをつくった以上は、その目的を達するように、通産行政の上で指導していただく、またそれに必要な予算等の措置が要れば、近代化資金その他を活用していただくということを通産大臣にお願いしております。通産省も、この意向で今日やっておられると私は考えております。
  332. 藤田正明

    ○藤田正明君 ついでに物価のほうを片づけたいと思いますので、もう一問お願いしたいと思いますが、賃上げと物価の関係についてであります。  ことしの春闘の最も大きな争点の一つは、消費者物価の上昇であると思います。賃金と物価の悪循環に関して、いろいろな説がございますけれども、私は、現在の経済情勢下では、低位生産性部門はもちろんのことでありますが、いわゆる高い生産性の企業においても、コストにまで影響を及ぼしておるというふうに思うのであります。過日の総評の物価メーデーの共闘参加を呼びかけられた主婦連が、この事実を認識して、現在の状況下では賃上げをストップすることを提案する人々こそ勇気ある指導者であると、共闘を拒否しております。全国民は、政府の物価対策に万全の施策を期待しておるわけでございまして、名目的な賃金の上昇よりも、実質的な、物価の値下げによる豊かな家計を望んでおると思うのでありますが、私は、ここで賃上げと物価の関係につきまして長官の御意見を伺いたい。
  333. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日、国民生活を非常に向上させていかなければならぬ、そして翌日の再生産を十分やれるだけのことになっていかなければならぬ、これは経済を運営する上において必要だと思います。したがって、賃金を上げるということは必ずしも悪いことではない。ただし、それができるだけ生産性の範囲内で行なわれることが望ましいことなんです。ですから、今日までの実情を見てまいりますと、大きな企業等における生産性が上がっておりますものについては、その範囲内で大体賃金が上がっております。したがって、大企業の耐久消費財のようなものは、それが労働者に分配されると同時に消費者にも分配されて、そしてかなり価格が下がってきておりますものがございます。こういう状態が望ましい。ところが、中小企業になりますと、賃金の平準化――これは、地方と都会との平準化も行なわれておりますし、あるいは、企業間における同種企業の賃金の平準化というのが大小にかかわらず行なわれつつあります。ところが、中小企業とか地方の産業になりますと、必ずしも合理化というようなことが、近代化ということが進んでおりませんので、したがって、平準化の波をこうむりまして、その、面において問題があるものはございます。そこで、やはり中小企業の近代化とか基礎産業の育成とかいうものが非常に大事であって、先ほど御指摘のありましたようなつまり中小企業のカルテルというようなものも、そのために合理化をやらせる。その岡はある程度価格を維持してよろしいんだ、合理化をやったら価格が自由な競争の中で下がっていくという状態を現出する。で、その合理化がおくれておりますから、中小企業のほうに大きくそういう負担が、賃金の圧力がかかってくるというところに問題があると思います。ですから、一方では、中小企業の合理化ということ、あるいは近代化ということ、そういうことは過去においては大企業が進んだように進んでおりませんし、したがって、今後の景気回復の過程においてはやはりその面に非常な力を入れてまいらなければならぬと思います。ただ、一点、サービス業だけは、これはやむを得ないところがございます。ですから、外国の例を見ましても、たとえば一年に対前年度二%なり付たり上がるというのは、合理化のできないサービス業、そういうものが上がるのだけは、経済が拡大し、あるいは生活が向上してくる上においてやむを得ないんじゃないだろうかというのが大体通念になっております。ですから、物価問題も、理想から言えば、その辺まで持っていければ、まず物価問題を解決したと、こう言えると思いますが、なかなかそこまで持っていく過渡期は困難だと思います。今日のような状況においては、したがって、経営者も、労働組合の方々も、それらの問題を考えられまして、不況の際における賃金水準のあり方等についてはお互いに良識をもって判断をしていただくのが望ましいことであって、政府が直ちに賃金について干渉をするというようなことは、私は望ましいことだとは思っておりません。
  334. 藤田正明

    ○藤田正明君 通産大臣お尋ねしたいのでありますが、先ほど通産大臣お留守のときに、日本の貿易が、アメリカに約三〇%、そしてまた東南アに対して二五。六%、非常な片寄りを見せておるということを申し上げたのでありますが、この東南アジア貿易に関してお尋ねしたいわけでございます。四十年度の東南アジアヘの輸出が三十九年より一%減少しておりますが、東南アジア貿易は、政局の不安定とか、相手方のドル不足とか、あるいは一方通行的片貿易とか、多くの解決しなければならない問題があると思いますが、政府は、これらをどのようにお考えになって、今後どのように伸長なさろうとしておるか、この点が一点でございます。  それからもう一つは、近年、EECとかEFTAとか、あるいはアフリカや中南米諸岡においても、地域内貿易の形成が一段と目につくわけでありますが、この分野からも、わが国の貿易というものがなかなか――輸出でございますが、楽観を許さないものがあるかと存じます。こういうふうな地域内貿易についての対策をあわせてお伺いしたいわけでございます。
  335. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 東南アジアでありますが、これは、御承知のように、東南アジア全体が外貨不足に悩んでおる。しかも、その原因をなしておるのは、第一次産品が世界的に値下がりしている。こういうことで、貿易を拡大するためには、どうしてもやっぱり第一次産品というものを、これを買い付けをふやすということでありましょう。しかし、それについては、ただもう何でも第一次産品を多く買えばいいということは、やはり日本国内の産業との競合もありますから、やはり開発輸入――日本がほしいと思うものを現地で開発をしてこれを輸入する、そういう形で東南アジアからの輸入を拡大するということが望ましい。それだけの親切さを持たなければ、なかなか貿易が拡大しない。現に、たとえばトウモロコシなんか、タイなんかである程度やっぱり成功していますから、飼料作物などに対しては積極的に開発輸入をやったらいい。そういう形で貿易を拡大する。しかし、それと同時に、経済協力、あるいは円借款であるとか、あるいはまた直接の投資であるとか、あるいは長期な延べ払い、もう非常に、五年というようなものではなしに、もっとやっぱり長いような延べ払い、こういうことで、やはり一方においては東南アジア諸地域の経済的な開発を協力する、そういうことによって、東南アジア全体がよい市場として、いますぐの間には乗らないにしても、国策的にやはり考えて、長い将来というのは、大きな、やっぱり人口の多いところですからね、購買力を持っているわけです。そういう国策的に考えて経済協力をやる、こういうことだと思います。  それから、地域の、EFTAとかEECとか、南米なんかにも、欧州ではないようだけれども、多少リージョナルないろんなセクションができているわけです。これは悪い面ばかりでもないんですね。EECならEECというものの中の経済は非常にやっぱり発展していくですから、いろんな国の国境を境にしておるのより、欧州全体のEEC諸国がいろんな点で調整しますから、経済がやはり発展していくと、そういう点でやはり貿易を伸ばしていく。経済が発展すれば、それだけよそから物を買う輸入の力はふえてくるでしょうから、長い目で見ると、こういう地域的な経済の連合体というものは、これは全部日本のためにマイナスだとは言えない。そういうことで経済が発展していくということは、将来好ましい面もあると思います。しかし、当分は、域内はやっぱり関税をほとんど撤廃していって、どうしても排他的になりやすい面があるですから、こういう点はやはり外交交渉を通じて、たとえばEECの場合でも、ケネディラウンドの場面であるとか、あるいはその他OECDの場面も使えるでしょう、あるいは個々の外交交渉を通じて、できるだけ、域内だけを関税をかけないようにして外へ向かって関税の障壁を設けるということは、貿易の自由の原則にも反するわけでありますから、これは外交交渉やあらゆる国際会議の席上を通じてそういう点は是正していかなきゃならない。だから、全体から見れば、そういう形で世界経済が発展していくということは、非常に日本のためにマイナスだと、よくないことだと見るべきではないのではないか。その中で、日本に対する差別待遇だけをしっかり外交交渉や国際会議を通じてそれを是正する努力を一段とするべきである、そういうふうに地域的な経済連合体をわれわれは見ておるのでございます。
  336. 藤田正明

    ○藤田正明君 通産大臣にもう一つお伺いしたいのでありますが、共産圏との貿易の問題でありますが、共産圏との貿易の場合に、相手先はおもに政府であり、わがほうは民間でございますから、その点にも政治的にも経済的にも特に考慮を払う必要があるかと思いますが、わが国の共産圏貿易を振り返ってみますと、一九五五年の二%から、十年後の今日では五・五%、非常な伸長をしておるわけでありますが、特に中共とは、一九六二年の四千七百万ドルから昨年は二億四千五百万ドルに達しております。これは、ソ連を抜いて現在では第一位ではないかと思うのであります。それからまた、中共は、本年から始まる第三次五カ年計画の初年度を迎へておりまして、今後、現在のきびしい中ソの関係から見まするならば、特に資本主義諸国との貿易をますます増加させていくという方向に向かっておると思うのであります。昨今の西独を中心とした鉄鋼プラントの輸出なんかもその傾向があらわれておると思うのでありますが、わが国が昨年の上半期におきまして前年の八四%の増を対中貿易で示しておりますが、同じ期間に、西独は三・五倍、イタリヤは三・二倍の驚異的とも言える上昇率を示しておるわけであります。まあこのような状態にあるさなかに、中共との貿易では、御存じのとおりに、LT貿易と、友好商社による取引がございますが、現在では友好商社取引が非常に増加しておるという状況もございますが、そうしてまた、別に、先般、廖承志会長が、日中貿易の将来を六十五億にも伸ばしたいというふうなことも言っておるわけであります。現在の政府の御方針である政経分離下において、このような中央との貿易をどのようにお考えになりましょうか、これが第一点であります。  第二点は、ソ連貿易でありますが、ソ連貿易は、昨年には一億六千八百万ドルに達しておって、過去は徐々に上がってきておるわけでございますが、このところ、この間も長期計画の会議がありましたように、非常に拡大の方向に向かっておるわけでございますが、特にシベリア開発でございます。このソ連のシベリア開発をどのように評価され、お考えになっておるか、この二点をお伺いしたいと思います。
  337. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 共産圏貿易の中では、中共貿易が一番伸びております。過去五カ年で五倍ぐらいになったですからね。そういうことで、これはやはり将来日中貿易は伸びていくものでしょう、これは人口から言ったってたいへんな市場ですから。ただ、いまは、国交回復をしていませんから、それだけにいろいろな障害がある。国交回復をしていないですから、貿易協定のようなものを結べないですから。その障害の中にあってもこんなに伸びていく日中貿易の将来というものは、これは日本は軽視するわけにはいかない。したがって、今後は、国交回復をしていないですから、貿易の形態も、言われるように、LT貿易とか、友好商社とか、プラント輸出の輸銀の問題もまあいろいろ未解決であると、こういうことで、できるだけこういう貿易にも秩序を与えつつ、そして将来はこれは拡大していくべき性質のものである。日中の貿易の将来というものは、非常に大きな将来を持っておると、こういうふうに政府も現在の条件のもとでできるだけ拡大をしていきたいという努力をしたいと思います。  ソ連に対しては、ソ連は中共貿易に比べるとちょっと停滞しておるわけです。これはまあ七カ年計画が去年で終わったですからね。ことしから五カ年計画が始まっていくので、これもやっぱり拡大していくと思います。ちょうどネステロフ団長以下第一回の日ソの合同委員会が開かれ、相互の立場を理解する上において非常な成果があがったようです。だから、日ソの貿易も拡大していく、将来に向かって。シベリア開発は、まだ具体的な問題としては出ていないです。しかし、将来これはソ連のほうとしても非常にシベリアの開発というものに熱意を持っておるようでありますから、もしこれが本格的に開発されるというならば、地理的な条件からいって、日本はもう一番近い工業国ですから、これもまた大きなやはり日本の貿易の拡大といいますか、日ソの経済交流というものに非常にやっぱり将来大きなものになっていく可能性がある。  まあこういうふうに、ソ連も中共も、まあいまいろんな紆余曲折はあるけれども、長い目で見れば、これは将来日本が大事にしなければならぬ市場であると、そういう点において政府もできるだけの努力をしていきたいと考えております。
  338. 藤田正明

    ○藤田正明君 時間がなくなりますので、最後に建設大臣に対してお聞きしたいと思うのでありますが、政府昭和四十一年度の予算編成方針の中において、住宅政策を重点施策の第一にあげられましたが、これはわが意を得たものと思っておりますが、この中で、二十八年より四十年まで住宅対策費は公共事業費とは別ワクに設けておられたと思うのですが、四十一年度にあえて四百八十六億ですか、住宅対策費を公共事業費のワクの中に繰り入れられた理由であります。これは社会保障的観点からか、あるいは不況対策に対する景気刺激的観点からか、あるいはまた、国債発行との関連によるものか、この点についてお伺いしたいのであります。
  339. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) お答えいたします。  いまお話しのように、昭和二十七年度までですか、やはり公共事業費として扱っておりました。その後、住宅対策費ということに予算構成上やっておったわけであります。今回、さらにまた公共事業費として予算総則にその費目を決定する場合に、住宅も公共事業費ということにいたしたわけであります。これは、財政法の四条にいう公共事業費ということはございますから、特に法律上公共事業費の定義をきめておることはございません。そこで、今回公債を発行いたしますについて、財源構成で、財政法の四条一項ただし書きによりまして、公共事業費はやはり国会で予算総則に議決をする必要がある、こうなっておりますので、さて公共事業費をどう見るかということが問題であります。そこで、まあ投資の効果が将来残る、投資の見合いが将来の国民の財産として残る、したがって、それが国民の将来の利益になるんだ、こういう意味のものを拾い上げまして公共事業費の費目を計上いたしたわけであります。まあ住宅は、いわゆる生活環境として長い目で見て投資に見合って長く残るものである、下水道その他と同じような立場でこれは公共事業費のものとして取り扱う必要がある、こういうことで、ずっと前に扱っておりましたようなことにいたしたと、こういう事情でありまして、景気刺激対策とかたんとかいう趣旨ではございません。
  340. 藤田正明

    ○藤田正明君 続いてお尋ねしたいのでありますが、住宅行政の一元化という点でございますが、わが国の住宅行政は建設省を中心として行なわれておることは、御承知のとおりであります。しかしながら、四十一年度におきまして、建設省中心の住宅の建設戸数が三十万三千八百三十でありますか、そのほか、大蔵省の公務員住宅とか、農林省の入植者住宅、厚生省の厚生年金住宅、労働省の移転就職者用宿舎、労働者住宅というふうなものを総計しますと、十万幾らというものが建設省以外から計画され、発注されるわけでありますが、佐藤内閣におきまして最重点政策といわれる住宅政策をもっと能率的に合理的におやりになるために、アメリカでは、たしか昨年の十月でありますが、住宅都市開発省というものを設けました。これはケネディのとき否決され、ジョンソンのとき承認されたものであります。それから西独では国土計画、都市計画、住宅省というものが独立しておりますが、そのようなことを考えてみました場合に、住宅行政を一元化して、より能率的にはかるべきだと私は考えるんですが、その点の大臣の御意見をお伺いしたいのであります。
  341. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) お説のとおり、現在の住宅行政は、主として建設省が担当いたしております。そのほかに、厚生省の年金還元融資住宅、あるいは労働省の事業団による住宅、あるいは公務員住宅、いろいろあります。これは、私どもは必ずしも適当なあり方であると思いません。望むらくは、あるいは住宅省なり、これを統合するのが望ましいと思っております。しかし、なかなか従来のいきさつもありますし、簡単ではございません。また、資金源というようなものから窮屈になっているわけでございますが、そこでしかし、これは統合した企画というものはそう簡単じゃございませんので、しかも住宅はいまお話のとおり、総合的に計画的にやるということが好ましいことでございますから、従来もいろいろ話し合いをしておりましたけれども、今回はそれをもっと積極的に今度の五カ年計画を立てますについて、積極的に計画を統合しなければならない。こういう意味で今回提案いたしておりますように、住宅建設計画法というものを立てまして、政府資金あるいは政府施策の各種のものを全部統合した計画に入れる、出資は違いますけれども、計画は全部統合した計画で進める、こういうことで今回は進むということにいたしているわけでございます。
  342. 藤田正明

    ○藤田正明君 いよいよ時間もなくなりましたので、最後に建設大臣に一問したいのでございますが、私は広島出身の議員でありますが、国家的立場から率直に御意見を伺いたいわけでございます。御承知のとおり、広島市は史上初の原子爆弾が投下され、全市が壊滅的な打撃を受けたものであります。昭和二十四年に広島平和記念都市建設法が制定され、平和の象徴にふさわしい国際平和都市の実現が着々と遂行されておりますが、河岸、緑地等の未整備地域に現在六千戸の不法建築がございます。これがスラム化しております。このうちの被爆者住宅が約二、三千戸と言われておのますが、昨年の実態調査によれば、三千十六戸と言われております。この不法建築六千戸が広島の平和記念都市建設法の事業促進を妨げているのが現況でございます。これを聞きますれば、政府は五カ年計画の六行七十万戸の中に、このような計画をスラム化の解消という計画をお入れいただいているということは聞いておりますけれども、次に被爆者は原爆症に対する不安をたえずしょって苦悩しているわけでございます。被爆者であるがゆえに、結婚、就職についても、一般人々に比し、不利な状況に置かれ、程度の差こそあれ放射能障害が内在し、精神的、肉体的に劣りますがゆえに、生活態度も消極的にならざるを得ない、まことに同情すべき社会的弱者であります。これら社会的弱者に愛情ある政治の手を差し伸べていただきたいわけでございます。母子世帯、炭鉱離職者、引き揚げ者等のための特定目的公営住宅の建設について、行政上特別の配慮がなされておりますが、環境衛生上、平和都市建設促進上及び原爆被災者の社会的弱者であるという立場を御認識の上で、公営住宅法の特例として国庫補助を行ない、特に新住宅五カ年計画に吸収されると思いますけれども、第六期公営住宅三ヵ年計画にのせる計画がおありでしょうかどうか。この点を一言、最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思う。
  343. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) お話のとおり、広島は原爆を受けまして以来、都市は地元皆さんの御協力によりましてりっぱになりました。ところが、まだ広島市内だけでも約六千戸のスラムというとおかしゅうございますが、不適当住宅地帯が残っております。その中でお話のように、河川敷、河岸あるいは公園地域、こういうところに、法律的にいいますと、不法占拠住宅というものが約三千戸内外残っております。今日までも鋭意どけておるわけでございますが、いまお話のように、原爆被災者の方がたくさんおられる。それが約三千戸、ところが、私どもはこれらを今度の五カ年計画で全部解消する方針でもちろん進むつもりでございますが、なかなろいろいろな事情の方があるようでありまして、地元の市当局でもこれをどう措置したらいいかということが、まだ明確な計画が立たないようであります。毎年できるだけの解消をしたいということで、予算的措置を講ずることは、私どもは積極的にやりたいと思っておりますけれども、必ずしも予算措置に応じた計画を進められないという事情があるわけであります。藤田さんよく御承知だと思いますが、そういうこともありますし、県や市ともよく相談いたしまして、そこにおられる方もお気の毒でありますし、いろいろ事情もありましょうけれども、もう戦後二十年もたちまして、ああいう状態というものはできるだけ早く解消したい、こういうふうに思っております。いま申し上げましたように、しかし、必ずしもまだ明確な地元の計画が進んでおりません。私どもも今後よく相談いたしまして、できるだけ早く解消して、このお気の毒な皆さんの生活環境を改めたい、かように思っておるわけであります。ただ、その中で原爆被災者は非常にお気の毒であります。お気の毒でありますから、公営住宅等について特別な、この部分だけ特別な高率の助成をしたらどうかという御意見でありますが、必ずしもいわゆる公園地域とかあるいは河岸におられる方ばかりでなく、まだ市街地内にも原爆被災者の方がおられるわけでありまして、その不法占拠といいますか、そこだけの方に特別の措置を講ずるというわけにも、なかなかそう簡単にまいらないのでありますから、住宅の補助というよりも何か別途の考え方で、そういう方々がいろいろな弱者という立場でおられますから、厚生省あるいは大蔵省とも相談いたしまして、地元の考え方も入れて、そういう方々が将来もうちっとよい方法で住宅の移転もできる、悪い生活態度を改善できる方法を考えなければならないのではないか、こういう観点で検討を進めていきたいと、かように考えておるわけであります。
  344. 藤田正明

    ○藤田正明君 それじゃこれをもって私の質問を終わらしていただきます。
  345. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 藤田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  346. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に鈴木強君。(拍手)
  347. 鈴木強

    鈴木強君 私は、外交、防衛を中心にお尋ねをいたします。  総理府総務長官が何か御都合があるそうでございますから、最初にお尋ねしますが、褒賞製造費三億というのは、これはどういう内容ですか。
  348. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) これは三億でございますか。二億九千……。
  349. 鈴木強

    鈴木強君 それは新生活運動助成金です。褒賞品製造費。
  350. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 褒賞品製造費、あれは憲法の七条によりまする栄典の授与という項につきまして、これをやりますための勲章の製造費、それから褒賞状の製造費、これでございます。
  351. 鈴木強

    鈴木強君 それから広報委託費四億五千万、これはどういうのですか。
  352. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 広報委託費でありますか、広報委託費と申しますのは、ラジオ、テレビ及び新聞等を通じまして、政府の施策を広報する費用でございまして、大体におきまして四十一年度はラジオが六千五百万円、テレビが二億四千八百万円、そのほか新聞が七千八百万円、大体そういう内訳になっております。
  353. 鈴木強

    鈴木強君 テレビの二億四千八百万円というのは、これはどのテレビも委託するわけですか。
  354. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) テレビにつきましては、ほとんど全国のテレビ局を網羅しておりますが、主として系列局としてはTBS、NTVを通じて全国の放送局へやっております。また、ラジオ局もほとんど全国のラジオ局を網羅しております。
  355. 鈴木強

    鈴木強君 有線放送電話のほうはないんですか。
  356. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 有線放送電話のほうは、これも非常に有効だと思いまして、約三千カ所を指定しておりまして、これにはソノシートという例のレコードあるいは放送原稿というものを配付して、それで放送をやっていただいておりますが、その放送のあり方は、それぞれの個所の自主性におまかせをしております。
  357. 鈴木強

    鈴木強君 新生活運動助成金、これは二億九千万円ですね。これはどうですか。
  358. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 新生活運動の予算といたしまして二億九千万円を計上いたしておりますが、これは各地方の支部へ配付してその運動を助成いたしますのが一億一千二百万円、中央におきまして直接いろんな行事をやりあるいは宣伝をやる、またその人件費をまかないますのが八千九百万円、それから健康づくりの協会に委託事業として出しておりますのが三千万円、その他小さい親切運動、それに二千万円、その他あとは協会で中央大会をやる、そういったような費用を見込んでおります。
  359. 鈴木強

    鈴木強君 これは新生活運動協会に対して助成するわけでしょう。ですから、新生活協会というのは一体どういうことを計画しているんですか。
  360. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 新生活運動は、御承知かと存じますが、昭和三十年度に発足いたしまして、三十一年度に財団法人になりました生活向上を民間の方が自主的に向上をやる、そういったものを推進をする純粋の民間の全国的な組織機関でございます。もしあれでしたら会長以下申し上げましょうか。
  361. 鈴木強

    鈴木強君 いや、会長じゃなくて、ことし一年間やろうとする……。
  362. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) ことしの目標といたしましては、まあいまの新しい村づくり、町づくり、あるいは工場、職場における明るい運動、また環境の浄化あるいは国土美化あるいは家庭生活の合理化、それからさらに健康推進、あるいは小さな親切運動の展開、そういったものを総合的にそれぞれ推進をいたしていきたいと思っております。
  363. 鈴木強

    鈴木強君 私は意見はありますけれども、時間の関係で、これは小委員会、分科会のほうに譲ります。  そこで外交問題でお尋ねしますが、きのう福田蔵相は、ベトナム特需に対して免税措置をとっておるのは、安保条約第六条とこれに伴う地位協定によってである、こうおっしゃいましたが、そのとおり間違いないですか。
  364. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 間違いございません。
  365. 鈴木強

    鈴木強君 外務大臣お尋ねいたしますが、あなたは、ベトナムは極東の一応区域外である。これはお認めになりました。しかしながら、そこに起こっている事態が極東の平和と安全に関係ある場合には、これに準じて取り扱う。要するに、極東の区域と見る。こういうふうにおっしゃったんですが、この見解は間違いないですか。
  366. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この極東の範囲に関して、昭和三十五年の安保国会においてかなりの論議が出まして、その結果これに関する統一見解というものが出たのでありますが、その骨子をいま申し上げてみたいと思います。  安保条約に言う極東とは、日米両国が共通の関心を有する地域で、大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域である。この区域に対し武力攻撃が行なわれあるいはこの区域の安全が、その周辺の地域に起こった事態のために脅威されるような場合、こういう場合は、米軍の行動範囲は必ずしも前記の区域、すなわちフィリピン以北ですね――区域に局限されない。こういう趣旨の統一見解が出されておるのでございます。でありますから、ベトナムが極東の地域というものに入ってないが、しかし、その周辺の地域であって、そこに起こった事態のために極東が脅威を受ける、こういう場合には、米軍の行動は必ずしも極東の区域に限定される必要はない。それがすなわち今日のベトナムであります。こういう意味で私は申し上げたわけであります。
  367. 鈴木強

    鈴木強君 外務大臣は、いまもお話がありましたが、それとちょっと私はきのうの御答弁とに食い違いがあるように思うのですが、まずあなたは、きのう、いま申し上げたような前提に立って、極東というのはフィリピン以北ということになっているが、極東の周辺であっても極東の安全と平和に影響を与えるという問題についてはこの安保の適用範囲である、こういう解釈を明確に下したわけですね。私は、いまあなたがお読み上げになりました統一見解をめぐって昭和三十五年三月二十九日、当委員会において、ここに地図をかけて当時の岸首相にただしたことがあります。そのときに、この議事録にもありますように、極東の区域というのは、「大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域も含まれている。新条約の基本的な考え方は右の通りであるが、この区域に対して武力攻撃が行なわれ、あるいはこの区域の安全が、周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲は、その攻撃または脅威の性質いかんにかかるものであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。」、ここはあなたが言っておるわけですね。この次が大事なんです。「しかしながら、米国の行動には基本的な制約がある。すなわち、米国の行動は、常に国際連合憲章の認める個別的または集団的自衛権の行使として、侵略に抵抗するためにのみとられることとなっているからである。」、ここをよく聞いてくださいよ。「また、その米国の行動が戦闘行為を伴うときは、そのための日本の施設の使用には、当然に日本政府との事前協議が必要となっている。そしてこの点についてはアイゼンハワー大統領が、岸総理大臣に対し、米国は事前協議に際し表明された日本政府の意思に反して行動する」ものでないことを明らかにする、こうなっておりますから、あなたの言うように、あなたの解釈ですと、どこまでも極東の平和と安全ということが脅威を受ける場合には、この条約に言う範囲に入るという解釈です。これは大いに食い違いますよ。これはいかがですか。
  368. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 周辺の区域で起こった事態が前記の極東の範囲内の平和と安全を脅威するという場合には、必ずしも米国の行動は極東の範囲にとどまらず、その周辺に対しても行動ができる、こういうことは賛成されますね。――それで、しかし、米国の行動が戦闘作戦行動を伴うときは、そのための日本の施設を使用することについては当然日本政府との事前協議が必要である、こういうことでございまして、日本政府との事前協議は、今日日本を基地として作戦行動がとられていない限りにおいてはこの事前協議というものは必要がないわけであります。
  369. 鈴木強

    鈴木強君 あなたは一番大事なところを抜かしちゃっているのですよ。これはあなたの統一解釈の中にないかもしれませんね。ですから、これはちょっと時間をとるから、委員長、ここで読んでみてください。一番大事なところをあなたは抜かしちゃっている。そんな大事なところを抜かしちゃいかぬ。
  370. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 「必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。」と。その次、「しかしながら、米国の行動には基本的な制約がある。すなわち、米国の行動は、常に国際連合憲章の認める個別的または集団的自衛権の行使として、侵略に抵抗するためにのみとられることとなっているからである。」、ここですな。
  371. 鈴木強

    鈴木強君 そうです。
  372. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは私も承知しておりまして、ベトナムにおいて米軍がとっておる行動は、南ベトナムの自由、独立と平和が北からの侵略によって侵されておる、そこで、南ベトナムの政府の要請によって米国があそこに軍事行動を起こしておる、こういう「国際連合憲章の認める……集団的自衛権の行使として、侵略に抵抗するためにのみとられることとなっているからである。」、これは該当するわけであります。
  373. 鈴木強

    鈴木強君 そんな子供だましみたいなことを言ったってだめです、それは。大体ベトナムの戦争が国連の憲章が認める戦いですか。
  374. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 南ベトナムが北からの侵略に対して防衛をしている、その協力をしているのが米国の軍事行動だと、こう私どもは解釈しております。
  375. 鈴木強

    鈴木強君 それはあなたの解釈なんだが、ここで言っている――岸総理大臣が国会を通じて明らかにしている解釈というのは、少なくとも「国際連合憲章の認める個別的または集団的自衛権」ということの行使でなければならないと、そうでしょう。今日、国連は何もこのベトナムの問題についてそんなことはきめておりません。わが大使が立ち往生したのはそれじゃないですか。
  376. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 「国連憲章の認める」……国連憲章はそれを認めておるのです。集団安全保障ということに対しては、国連憲章において認められておる。それを、侵略に対して安全保障のために防衛手段としてとっておる行動です。
  377. 鈴木強

    鈴木強君 ベトナムの米軍の行動について、これが国連憲章が認めたというそれじゃ証拠をちゃんと示してください。いつどこでどういうふうにして認めたのです、国連が。集団自衛権として発動を認めていますか、米軍の行為を。
  378. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 法文の解釈でございますから、条約局長から御説明いたさせます。
  379. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国際連合憲章第五十一条に個別的、集団的自衛権が認められておるわけでございます。
  380. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、国連というのはそのためにあるのでしょう。国際連合がこの戦いは確かに憲章に認めてあるところの侵略である、そういう場合に初めて個別的、集団的な自衛行使というものができるのであって、そこに書いてあるから、それをかってに解釈してアメリカが行ってやっているのが国連憲章の解釈というふうに条約局長は言っているでしょう。そんなあなた、とても、この前もそうなんだが、適当な解釈をしているのだが、そんなことはないですよ。いつ国連が集団自衛権として認めた。
  381. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 自衛権というものは緊急の場合に行使されるわけでございまして、したがいまして、国際連合で何かの判定をする前に、やむを得ず各国が実力を行使するというのが自衛権の行使でございます。しかし、自衛権を行使したら、すぐ国際連合に、その安全保障理事会にそのことを報告しなくちゃならないということは、五十一条に書いてございまして、アメリカはこの規定に従いましてトンキン湾事件の直後に安全保障理事会に報告したわけでございますが、安全保障理事会がとの問題を取り上げようとしたところが、北ベトナム側が安保理事会の招請に応じなかったがために、安保理事会はこの問題を正式に取り上げてアメリカあるいは南ベトナムの行動が正しいかどうか、両方の言い分を聞いて判定を下すに至らなかったわけでございます。
  382. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、私の言っているのは、戦闘行為をとって、それを国連に報告したとね。ところが、その報告が認められてない。そうであれば、国際連合がベトナムにおいて憲章に基づく集団自衛権というものを行使しているのじゃない、そのことは明らかでしょう。
  383. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) アメリカは憲章の規定に基づいて集団自衛権の行使としてやっておるという立場をとっておる。それは国際連合で認められておるのかというお話でございましたが、アメリカのほうとしてはそう認めてもらいたいと思って、ちゃんと成規の手続をとったわけだけれども、国際連合安全保障理事会としては両方の言い分を聞く必要があると思って、北ベトナムも招請したところが、そちらが出席してこなかった。そこで、安保理事会としては決定が下せないでいまに至っておる、こういう状況であるわけでございます。
  384. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、これはやはり国際法上、国連憲章上問題があると思うのです、私はね。ですから、外務大臣が御答弁になったように、要するに、きのうの解釈ですと、極東の平和と安全が影響する場合、こういう場合には、極端に言えばどこへでも出ていけるという、そういうふうに解釈できるわけですよ。それは私は問題があると、やっぱりその前提にある国際連合の憲章の認める自衛権ですね、個別であろうと集団であろうと、そういうことをはっきりしておかぬと、今後私は問題があると思うのですね。そういう意味において、この条約の精神というのを十分解して岸総理が当時御答弁になっていると思いますから、ですから、誤りのないようにしていただきたいということから私は申し上げた。だから、非常に解釈が拡大解釈でどうにもなるような態度を外務大臣に示しておられるのじゃないですか。
  385. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 周辺に起こった事態が極東の安全と平和を脅威するという場合、こう限定してありますから、アフリカの端のほうで起こったというような場合には、拡大解釈しようと思ってもできないわけであります。そうして、それは米軍のほうから好んで侵略行為をやるというような場合でもない。他の侵略があって、それを防衛するということであって、しかも、それが極東の周辺に起こる問題で、その問題が極東の平和と安全を脅威すると、こういう二段にも三段にも制約がございますから、これが南米とかあるいはアフリカにまで拡大されるというような心配は一つもない。
  386. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと委員長。  外務大臣はアフリカとか南アメリカとか、そういうことを例に、引き合いに出しますが、そういうことをこちらは心配しているのじゃないのです。たとえば、安保のころには明確にされたのは、フィリピン以北、台湾、韓国と、こういうふうに線が引かれて、そうしてその周辺地域と、こういうふうになっております。この周辺地域というものについて、その事態のいかんによってそこまで安保の効力が広がるのだと、こういう説明でありますから、それが一体どこまで広がるのかという点が私たちの一つの大きな疑問点なんであります。そういう立場から答えてもらいたいわけですが、ベトナムが、このいま申し上げた立場から安保の対象になるという政府説明がありました。そういたしますと、台湾には中国本土はもっと近いわけですから、当然この同じような事態が中国大陸に起きた場合にはそれも周辺地域の中に入ってくる、あるいは韓国と北朝鮮は、これこそもう陸続きで接しておるわけですから、この朝鮮民主主義人民共和国もその事態のいかんによってこの周辺地域の中に入る、あるいはソ連のシベリア地域も入る。この周辺地域というものについての理解として、そういう理解ができる、ベトナムから類推すると。ベトナムのほうがもっと遠いわけですから、台湾からも、フィリピンからも、いま申し上げたところに比較すれば。だから、当然そういうことが類推できるという点、その点についての明確なひとつお答えをまずしてほしいと思います。どうなんです。
  387. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、周辺、これはどこからどこまでと、こういうはっきりした、定木を当てて、ここからは周辺であって、ここからは周辺でないというようなことはこれはなかなかむずかしいと思います。  それから第一に侵略に対する防衛、自衛ということであれば、そうしてもしこれをおろそかにするならば、ひいては極東の安全と平和が脅威されるというような事態がその周辺に起こることがまず必要だと思います。そして、そういう場合に米軍の行動が起こされたにいたしましても、その戦闘、作戦行動の直接の基地として日本が使われるかどうか、使われるという場合には事前協議の対象になる、いろいろな制約がございまして、いま中国の大陸がどうとか、あるいはソ連の極東の領土はどうだとかいったような、簡単にそういう仮定でいま申し上げることは非常に、かえって誤解を生むと存じますので、その点はお答えを差し控えさしていただきます。
  388. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはちょっとぐあいが悪い。具体的に、私まあ三つの地域を指摘したわけですが――まあ四つの地域を。その中でベトナムが一番遠いわけなんですね、距離的に。ことに北朝鮮のごときは、これはもう陸続きなんです。これが一体周辺に入らないで――ということは、当然これは政府の解釈からいって考えられないわけなんです。だから、そこをまずはっきりしてもらいたい。これはそれに対して米軍の戦闘行動が行なわれる場合にどうするのかということは、これはそのあとの問題なんです。あとの問題です。それに対して行なわれる場合には、この日本の基地から直接飛ぶ場合には事前協議の対象になるということでありまして、初めから周辺に入らないということなら、これはもう対象にならないのですから、あとのことは聞く必要がないわけなんです。どうなんですか。当然周辺でしょう、隣だもの、続いているのだもの。
  389. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 周辺で何か騒動が起これば云々というふうに結論を急がれては困ると思って私は申し上げたのでありまして、ひいては極東の安全と平和が脅威されるという事態になることが条件でございます。
  390. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはもちろん……。
  391. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 亀田君、まあこの辺でひとつ……。
  392. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長、何か言いたそうな顔をしていますからこれでやめますが、それは当然外務大臣がいまおっしゃったようなことを言われなくとも、それを前提にして考えているわけです。それはすぐ隣なんですからね、だから、何か起これば当然この極東の範囲という、あなたがちゃんときめておられる範囲内にそれは影響があるにきまっておるわけなんです。ベトナムほど離れていてもこう影響がある、こうおっしゃっているのでしょう。台湾のすぐ向こう、韓国のすぐ隣、これはもう続いておる。こんなことは論議の余地がないと私は思う。だから、当然それはそういう、いわゆる極東の範囲に影響のある事態が、いま私が指摘したような三地区に起きた場合にそれが安保の対象になるのかと、こう聞いておるわけで、もっとはっきり答えてください、逃げないで。何べんでも聞きますよ、それは。
  393. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 周辺ということばはきわめてばく然たる概念でございまして、そういう地域に極東の安全、平和を撹乱するような事態が起こり、そしてそれが積極的に侵略行為でなくて、むしろ侵略に対する防衛であるというような、いろいろな前提条件がそれに入って、それを一体として判断するということになるのでありますから、その周辺といえば、一般の概念としては、あなたのおあげになったようなところは入るのでしょう。入るのでしょうけれども、ただ、周辺であるからといって、そういうふうにいろいろ、二つも三つも前提を越えてここで論議するという私は価値はないと思います。
  394. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 鈴木君。――鈴木君の質疑をちょっとやって。――羽生君、じゃ一言だけ。
  395. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの鈴木委員と亀田委員の提起した問題のほかに、最初に鈴木委員が指摘した個別的または集団的自衛権の行使という場合、この場合、国連が安保理事会で決定を下したかどうかということは別として、この個別的または集団的自衛権の行使がアメリカとの関連でどういうことになるのか、これが問題だと思うのです。ですから、自衛権はもちろんこれは関係ありませんよ。だから、それは集団的を意味するのかどうか、それはどういうことになりますか、南ベトナムの場合、アメリカの自衛権ということはおかしいです。
  396. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 個別的と集団的とを分けて言いますと、アメリカの場合には集団的自衛権の行使ということになると思います。
  397. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 鈴木君、質疑を続行してください。
  398. 鈴木強

    鈴木強君 関連質問を、委員長、あなた許しているでしょう。
  399. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) もうだいぶ関連がありますから。
  400. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 現在、南ベトナムにおいてアメリカがやっておることは集団的自衛権の行使ということになると思います。
  401. 鈴木強

    鈴木強君 どうも、まだ私、いまの問題はこれからやりますけれども、もう一ついまの亀田委員との関係で、日本の周辺というわけですね。外務大臣、歯舞とか色丹とか、択捉・国後、これはやっぱりあなたの解釈でいくと、周辺に入るでしょう。
  402. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ周辺と言えば、どこからどこまでという線を引くということは、どうもあまり適当ではないんで、周辺と言えば、周辺という概念でひとつ御了解を願いたい。
  403. 鈴木強

    鈴木強君 さっき亀田委員が言ったら、入るでしょうということだった。だから、これも入るでしょう。
  404. 亀田得治

    ○亀田得治君 当然出てこなければ……。
  405. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあこういうことを言うと、今度は、カムチャッカ半島はどうなるかということになってまいるでありましょうし、際限のない問題でありますから……。周辺は周辺ということでひとつ了解していただきたい。
  406. 鈴木強

    鈴木強君 方程式を解くようなことを言ってもだめだ。  だから、周辺と言う中には、さっき亀田委員の言ったことが入るというのですから、だから、これは周辺だから入るでしょうということなんです。同じことを言っておる。
  407. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本の周辺ということを言っておりますから、まあ入ることになるだろうと思います。
  408. 鈴木強

    鈴木強君 それで、いま羽生委員の言われた国際連合憲章が認めるか認めないかという、この個別的あるいは集団的自衛権の場合ですね。私は、藤崎条約局長のような解釈ですと、たとえばある国がその状況によって兵を出動させる、自分のかってな解釈でですよ。そうして、今度、それを国連に報告して、安保理事会が開かれる。そのときどきで、とにかく兵を出したんだ。そのことが国連憲章が認めたんだという解釈は、おかしいですよ、これは。逆のことだってあり得るでしょう、これは。そういうかってな解釈をして、これを合法化しようとするところに間違いがある。もし安全保障理事会でそのことが認められなければ、国連としてはこれはいけないということなんだから、兵を出してはいけないんだ。中止しなければならないですね。そういうことが、私は、国連の精神だと解釈しなければいかぬと思う。そんなかってな解釈をすることは、私は納得できないですよ、それは、外務大臣
  409. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連の憲章に違背しないものと考えます。ただ、具体的な問題に関してまたさらに国連の安保理事会としてはいろいろな措置をとるべきものであり、したがって、そういう意味において国連に報告を求める、安保理事会に報告を求めるということになっておる。安保理事会としては、それに対する措置として当事国を呼ぶということになっておるのであって、集団安全保障というものは、一々安保理事会なら理事会の承認を得なければ、それが国連憲章に合致しているものかあるいは反しておるのかわからぬというような状態では私はないと思います。この問題については、なお専門家の条約局長から申し上げます。
  410. 鈴木強

    鈴木強君 条約局長の話はだめです。  たとえば、これは例であるが、北から行ったとか、南から行ったとかということはあるでしょう、これは。しかし、北のほうから逆に来た、そういう場合に、国連憲章に基づいて認めるところの自衛権の発動だということで動いて、それを報告していけばそれで済むのだということであれば、一体、国連というものは何のためにできているのだ。世界平和を守るためにできているのでしょう。ですから、そこに集まっている人たちがいろいろな角度から検討していい、悪いの判定を下すわけですから、あなたたちのような解釈でやられたのじゃ、これはどういう出動でもできるということです。かってな出動をして、報告して、だめになればだめになったでしかたがないのだと、これは集団自衛権を発動したのだという事実をつくっていくということじゃないですか。こんなべらぼうなことはないですよ。
  411. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連の憲章に書いてあることが一々今度は国連機関によってこれに合致する、しないということをいわゆる認証を、確認を得るというものじゃないと私は思います。ただ、そういう具体的な国際紛争がある場合に、それ以上に突き進んで国連としてはなすべき措置がいろいろあるはずでございます。そういうことのために、いまのような手続の問題が規定されておるものと私は考えますが、これは条約局長からなお……。
  412. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 憲章第五十一条には「武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」、こういうふうになっております。したがって、措置をとるまでの間は、各国が適宜、実力行使ができる、それが自衛権の本旨でございまして、国内でも正当防衛が、警察力がこれほど確立しておっても認められるのと同じ理屈でございます。しかし、国際連合がまだそれほどの実力を備えるに至っておらない、また、安全保障理事会としましても、双方の言い分を聞こうと思っても、一方が出てこないというような状況で、その自衛権の行使という状況が長引いておるということは事実でございますけれども、これは国際連合憲章の規定に、それによって反するという結果になるわけじゃないわけでございます。
  413. 鈴木強

    鈴木強君 安保理事会が決定をするまでの間にとった行動、これはわかる。しかし、そこで、これはなるほどといって世界平和のために立たなければならぬということが、これが筋でしょう。そういうふうな解釈は私は、あなたの前段のことはわかるのです、一応、条約上の解釈は。しかし、安保理事会との関係においては、まだこれは明らかに食い違いがある、私はそう思う。ですから、これはなかなか平行線のようですから、時間の関係もあるし、またいずれ場をあらためてやりますが、願わくは、ひとつ、あまり拡大解釈をしていただくことは非常に困るわけです。この過去の審議の経過からいたしまして、十分注意をしていただくとともに、われわれはさらに追及を続けていきます。
  414. 羽生三七

    ○羽生三七君 アメリカが安保理事会に持ち出したのはトンキン湾事件でしょう。それを一般的なベトナム問題全般に類推できるのですか。
  415. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) それ以前の段階におきましては、南ベトナム内で何か治安を乱す者に対して実力行使しておったという状況であったわけでございまして、あのときに初めて北ベトナムの勢力から公海の上で攻撃を受けて、その間に何か砲撃が行なわれたという事態が初めて起こったわけでございます。
  416. 亀田得治

    ○亀田得治君 その後の状態がだいぶ変わってきているわけでしょう。
  417. 鈴木強

    鈴木強君 その後だいぶ変わってきたわけでしょう。
  418. 亀田得治

    ○亀田得治君 答弁になっておらないですよ。トンキン湾事件の前のことではなくて、あとのことを羽化さんは言うておる、あととの比較を。
  419. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 条約局長、補足はありますか。――補足はないそうです。
  420. 羽生三七

    ○羽生三七君 トンキン湾事件の問題は、一応あの時点における問題点は済んでおるわけですね。一般的な条件の中でそれが当てはまるかどうか。
  421. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 羽生君、もう一回言ってください。
  422. 羽生三七

    ○羽生三七君 トンキン湾事件は、一応あの時点における問題点は一応済んでおるわけですね。いや済んでいないと言えばそれまでですが、いまのベトナム問題全体が、やはりあれと同じ――トンキン湾と同じ条件でいまの国連の安保理事会に問題を持ち出すような状態と解釈しておるかどうか。
  423. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) トンキン湾事件の際が、アメリカといたしましては、初めて集団的自衛権を援用して正当化しなければならないような武力行使をした事態であったわけでございます。そのときに北ベトナムが出てこないために、安保理事会としては何らそれ以上の審議を進めることができないという状態がずっと続いておりました。そしてこの間またジョンソン大統領が平和攻勢の一環としまして安保理事会にもう一度問題を持ち出そうとしましたけれども、これまた相手方の――いや、今度はソ連その他の安保理事国の不同意によりまして実際には審議が行なわれ得ないで今日に至っておるわけでございます。
  424. 鈴木強

    鈴木強君 それから外務大臣、グエン・チャンチ第一方面軍団長が解任されてからたいへん南ベトナムの政情は穏当ならぬものがあると思いますね。ユエ、ダナン――ユエでは放送局が占領されて反政府的な運動、放送がどんどんやられている、こういう事態がございますが、外務省はこの真相をつかんでおられますか。
  425. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) よく聞き取れませんで失礼いたしました。ある将軍が解任されいろいろな迫害を受けている。そのことに民衆が憤激して騒ぎを起こしているというのは新聞報道で知っておりますが、まだ正統政権をゆるがすだけの勢力になっておらないようであります。
  426. 鈴木強

    鈴木強君 まああとから伺うような求援物資をお送りになるようなことなのですから、もう少し的確に外務省は現地の実情を把握する必要があるのじゃないですか。新聞で聞いた程度ということでは、私は非常に不満ですね。何のために外務省はあるのですか。
  427. 広瀬達夫

    説明員(広瀬達夫君) 情報は十分的確に入手しておりますし、把握しております。いま大臣が言われましたように、仏教徒の若干の騒ぎというものはございますけれども、いまの軍の集団的な指導体制がゆらぐというようなものではございません。
  428. 鈴木強

    鈴木強君 そう簡単に判断をされているのだが、なかなかむずかしいと思うのですね。これはこの政変がサイゴンのほうに波及すると、そういうことは全然考えられませんか。
  429. 広瀬達夫

    説明員(広瀬達夫君) 現在のところ、そのような情勢は見えません。
  430. 鈴木強

    鈴木強君 もう少し的確な情報大臣にもよく知っていてもらわなければならぬですね。  そこで、きのう南ベトナムに救援物資を送ったようですが、この物資の内容は何ですか。
  431. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 物資の内容についての御質問でございますが、二十万ドルの額に上るもので、繊維製品とそれから医薬品でございます。
  432. 鈴木強

    鈴木強君 富山の薬ともう一つ繊維製品、それは繊維製品は何ですか。
  433. 広瀬達夫

    説明員(広瀬達夫君) いろいろな綿布類とそれから家庭医薬品でございます。
  434. 鈴木強

    鈴木強君 ひとつはっきり教えてもらいたいのですよ。綿製品が何で、それから薬はどういうもので、ちょっとその数量を教えてくださいよ。
  435. 広瀬達夫

    説明員(広瀬達夫君) 後ほど資料を取り寄せて御報告いたします。
  436. 鈴木強

    鈴木強君 金額はいくらですか、外務大臣、二十万ドルというと幾ら……。
  437. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一ドルは三百六十円ですから、七千二百万円になります。
  438. 鈴木強

    鈴木強君 七千二百万円の金はどこから出したのですか。
  439. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 四十年度の予備費から出しております。
  440. 鈴木強

    鈴木強君 これは北ベトナムから申し越しがあったら送るということを大臣おっしゃいましたね、そのことは間違いないですか。
  441. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは人道上の立場に立って送るのでございますから、北ベトナムであるからといって区別すべき理由はない、こう思います。
  442. 鈴木強

    鈴木強君 そこはわかりました。  いま、横山特派大使はどこに行って何をしているのですか。
  443. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ほうぼう歩いておりますが、いまはどの辺におられますか……(笑声)
  444. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 最近はポーランドにおります。
  445. 鈴木強

    鈴木強君 非常に問題を投げかけつつ訪問されているようですが、われわれには、とうとい国費を使っておそらく行っていると思うのですが、旅行日程、訪問国等はさっぱりわかりません。予定はどういうことで日程はどうなっていますか。いつ帰ってきますか。
  446. 広瀬達夫

    説明員(広瀬達夫君) 大体三カ月足らずの予定で、欧州から中近東、アジアを回って帰られる予定で、現在はポーランド、このあとアルジェリアに回られる大体予定でございます。
  447. 鈴木強

    鈴木強君 いつ帰ってくるのですか。
  448. 広瀬達夫

    説明員(広瀬達夫君) はっきりと日にちを覚えておりませんけれども、近く、近日中にアルジェリアを訪問されるのではないかと思っております。
  449. 鈴木強

    鈴木強君 これは外務大臣、ひとつまじめに聞いて答えていただきたいのですが、アメリカでも、ニューヨークのこれは朝日新聞の渡辺特派員のけさの特電によりますと、平和主義宗教団体、これは相当組織が大きいのですが、これが二十三日ベトナムの平和という報告書を発表しておりますが、その内容を見ると、直ちに北爆をやめて南ベトナムでの戦力増強ということもやめて、そして平和的にベトコンも入れてジュネーブ会議みたいなものを開いたらどうであろうか、こういうようなアッピールをしておるのでございますが、またローマ法王パウロ六世もベトナムにおける危機を訴え、今日アジアにおける日本の立場を信頼し、平和的な解決への努力を日本に期待しておる、こういう電報が入っておる。さらにまた、マニラ二十四日発のAFPによりますと、中国の陳毅副首相兼外相は、北京訪問中のフィリピンの新聞記者代表の諸君に語っておりますが、もし、米国がハイフォンを爆撃したその瞬間、ハイフォンが中国本土への門戸であるために、中国のベトナム戦争への介入は正当化されるであろう、こういうことを言っております。そして、中国はまだ北ベトナムへ派兵はしていないが、米国がベトナム戦争を北方に拡大したら直ちに派兵するつもりである、こういうふうな発表をしておるようでございます。そこで私は、いまはベトナムの戦争が非常に最悪の事態となっておりますし、毎日毎日凄惨な戦いが続いておるわけであります。この際、日本が北爆中止、平和解決といったひとつ崇高な立場に立って世界の人たちに訴えるような気持ちを外相は持たれないのでございましょうか。具体的にそういうことを日本の最高外交路線としておきめになって、積極的に動かれる決意はないのでございましょうか。
  450. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題につきましては、佐藤総理もたびたび国会において、まず武器をおいて話し合いに入る、そうしてしかる後に両方の言い分があればしかるべく調整するということに力を入れるということにしたらどうかという趣旨のことは絶えず意見を出しておるのでございまして、こういうことは電波に乗って世界じゅうに知られておるはずでございます。同じようなことを何べん言ってもそれはかまいませんけれども日本の真意は、いま御指摘のとおりであるということは、すでに十分に了解をされておる、かように考えております。
  451. 鈴木強

    鈴木強君 その通俗的な話でなくて、やはり具体的に問題がここまできたんですから、横山さんもそういう立場で歩いておられると思うのですがね。ですから、もう少し積極的に外務大臣がそういう動きをするというようなことはできないですか。ぼくはやってもらいたいと思うのですがね。これは私の提案ですよ、拒否しますか。
  452. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ同様のことでございましても、情勢の変化が絶えずありますので、その情勢によって日本意見というものを出す、声明を出すということは決してむだでないと存じますので、十分御意見はこの際承っておきたいと思います。
  453. 鈴木強

    鈴木強君 私は、願わくば日本がやはり中立的な立場でものを考えませんとこの仕事はできないのでして、いまの国連憲章との問題ではないですが、そういった一方的な解釈に立ってものを考えておれば、これはとても世界は受けつけっこないですよ。だから、そういう点も十分配意をして真剣に取っ組んでもらいたいと思います。  それから非常にくどいようですが、十五日に拿捕されておる五三海洋丸のことについて私は重ねてお聞きしたいと思います。十四日の午後でありますから、もうまる十一日たっております。今日まだ末広船長以下抑留されておりまして、われわれ非常に憤激をしているわけでありますし、また一面漁民の方々にも不安を与えているわけです。そこで外相が二十三日に衆議院外務委員会で、韓国側が日本側の説得にある反応を示したと、こういう御発言をしたように新聞で承っておりますが、そういう裏づけは具体的にあるのでございますか。早期釈放に確信を持ったと、そういうあなたの御発言です。
  454. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 反応が見られるということは確かに申しました。その後これを逆戻りをしている形跡は一つもございませんので、十分になお強く申し入れをいたしまして、ぜひ早期に釈放されるように、そしてかような事件が再び起こらないように、あらゆる今後の措置について両国の間に十分申し合わせたいと、かように考えております。
  455. 鈴木強

    鈴木強君 これは日韓条約の審議の際にもいろいろ論議されたわけですが、そういうわれわれの心配がいま現実にあらわれてきておる。あなたは絶対に操業上安全だということを何回か言っている。これは農林大臣もそうですが、にもかかわらずこういう事態が起きているわけです。ですから、この事態の収拾について、私は率直に感ずる気持ちは、いまの外務省は弱腰ですよ。これは最初から問題を穏便にしようというような、そういう政治的な話に持っていこうとするところに問題があるので、もう少しき然たる態度で私は当たってまいりたいと思う。しかし、相手があることですから、なかなかこれは一方的にはいかぬかもしれません。そこで私は具体的に事実関係については私はなかなかむずかしい点があると思うのですね。ですから、とりあえず抑留されておる末広船長以下四名の方と船だけはこっちに返してもらうと、こういうことはやってもらいたいと思うのですよ。これは出先でたいへん木村大使御苦労になっておるようですが、なかなか出先のことではいかぬと思う。私はこの際あなたが直接韓国に行ったらどうですか。いま飛行機では三時間もかかれば行くでしょう。そういうやはりあなたが乗り出して、朴大統領とも会ってひざ詰め談判でもやるような、そういうことはできませんか。三時間もあったら行きますよ。
  456. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私が行ってすぐ片づくものであれば、もちろん国会にお願いしてあちらに参るということは決してやぶさかではございません。しかし、もう早晩釈放されるのではないかという私どもは期待を持って厳重な申し入れをしている最中でございます。
  457. 鈴木強

    鈴木強君 早晩、早晩と言ったって、早晩がいつかわからぬでしょう。今週中、要するに、あしたくらいには出れるのですか、それなら行く必要はない。
  458. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そう日をきめて、あした出るとか、あさって出るということは、これは相手のある問題でございますから、早期に釈放が実現せられるようにただいま厳重に申し入れております。
  459. 鈴木強

    鈴木強君 健康状態や何かはわかっていますか。
  460. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) つい最近でございますが、ソウルのわが大使館の者が済州島に、現場に行きました。いま海洋丸の中に寝起きをしておるようでございまして、皆きわめて元気であるという報告を受けております。
  461. 鈴木強

    鈴木強君 防衛問題でちょっと私伺いたいんですが、この前防衛庁長官は中共の核武装に対して日本が脅威を覚えておるんだと、これに対して具体的にどういう体制をつくるかということは途中で終わっておりますので、もう一回ひとつ第三次防との関係お尋ねしたい。
  462. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) アジアにおいて唯一の核製造ができる、核兵器が製造される、核装備がされるということは、世界の常識からいって非常な脅威的なものであると、これは理の当然だと思う。そこで、三次防の問題については、その時期、いつごろ開発されるのか、あるいは世界の情勢はどうなるか、そうして日本の防衛はどうなるかという観点から三次防を目下検討中でありますので、その検討が完成したときにはそれに対応する、あるいは、日本として自衛の最大限の防衛計画を立てたいと、こう考えております。
  463. 鈴木強

    鈴木強君 現在の自衛隊の兵力というものは陸海空軍ともどうなっておりますか。
  464. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 重要な点だけ申し上げますと、陸上自衛隊定員十七万一千五百、五方面十三個師団、海上自衛隊三万四千九百、艦艇十四万トン、航空自衛隊F104戦闘機百七十五機、F86戦闘機四面八機、人員三万九千五百五十三人、これは定員の人員を申し上げました。重要な装備は以上のようになっております。
  465. 鈴木強

    鈴木強君 極東に配備されておるソ連ですね、それからアメリカ、これはどうなんです。
  466. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 各国の軍備ですから、必ずしも正確な資料を持ち合わせるわけではありませんけれども、一応推定される資料によれば、中共百四十五個師団約二百二十五万陸軍、海軍が約艦艇九百隻二十万トン、空軍が約二千三百機。極東ソ連、陸軍十七個師団、約二十七万人、海軍八百隻、空軍約二千機、北――北鮮といいますか、北のほうの、北鮮、陸軍十五個約三十二万五千人、海軍約百四十隻、空軍約五百機。フィリピン約陸軍が二万五千、海軍が六十七隻、空軍が約二百機、中国――台湾、陸軍が四十万、海軍が二百十隻、空軍が五、六百機、こういうところであります。
  467. 鈴木強

    鈴木強君 自衛隊の欠員は何ぼあるんですか、いま。
  468. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 空と海についてはほとんど充足が足りております。陸が約欠員二万人そこそこであります。
  469. 鈴木強

    鈴木強君 最近特車というのを戦車と呼ぶようになったんですが、これはどういう、意味があるんですか。
  470. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 各国の軍事資料に戦車と書いてありますから、戦車と申し上げたので、自衛隊のことを申し上げてはおりません。各国の資料に戦車と書いてあるから戦車と申し上げた。
  471. 鈴木強

    鈴木強君 そうでなくて、日本の自衛隊は従来戦車というのを特車と呼んでいたでしょう。この特車を今度自衛隊は戦車と呼ぶようになったでしょう、違いますか。
  472. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) いや別に、呼称は、戦車と特車――まあ通俗的にどちらも呼んでおったと私は思いますが、特車というほうが――あるいは特車、戦車両方呼んでいるんじゃないでしょうか。
  473. 鈴木強

    鈴木強君 特車が戦車になったんだ。(「正式の名前」と呼ぶ者あり)
  474. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 戦車という名前が今日の正式用語になっております。
  475. 鈴木強

    鈴木強君 だから、その戦車にしたのはどういうわけだ、特車だったのが。
  476. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) まあ一時特車と呼んだこともあるようですが、これ、わかりいいから戦車というふうに直したんじゃないか、特に、いま聞きましたけれども、意味はなくて、戦車――と呼びいいほうに、呼びいいからしたのじゃないかと思います。
  477. 鈴木強

    鈴木強君 警察予備隊から自衛隊になってきたんだから、そういうふうな解釈でやったんでしょうが、まあそれはそういうふうにしたんですからやむを得ぬでしょう。  そこで、いま海上自衛隊で各国を毎年訪問しておりますね。これは大体どういう規模で、今日までどこへどの程度行きましたか。これひとつ伺いたい。
  478. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 三十二年から遠洋航海として発足しまして、したがって、ことしが九回目になります。その理由は、自衛隊法の「教育訓練」、この項目でやっております。
  479. 鈴木強

    鈴木強君 規模はどうですか。
  480. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 本年は約二百二十人の練習生を乗せまして、艦艇四隻南米に派遣いたしました。
  481. 鈴木強

    鈴木強君 この一番多いときはどのくらい行ったんでしょうか。
  482. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ことしが一番航程から規模から一番大きいわけであります。
  483. 鈴木強

    鈴木強君 乗った方も。
  484. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 乗った人数もことしが一番規模として大きいわけであります。練習生が約二百二十名、まあ二百ちょっとこしておる程度でございます。
  485. 鈴木強

    鈴木強君 それで、これは長官ちょっと考えていただきたいんですが、私は海外派兵との問題で特に言おうとはしませんけれどもね、やはり岸総理の海外派兵の定義というのは、武力行為を持たなくても、目的を持たなくても、部隊が出て行くことは海外派兵だ、こういうふうに言っておりますね。ですから、練習艦隊の編成をしていくような場合もあるかどうか。これはわかりません、自衛隊法上できますからね。ですから、こういう点との関連もあるので、この人たち外国に行って、それぞれ上陸をされて、しかも、これは自衛官ですね、幹部候補生、自衛官ですからね、りっぱな。ですから、そういう人たちが練習に出て行くような場合には、やはり自衛隊法との関係で一考を要するのじゃないだろうか。たとえば、南極に輸送のために行きましたね。あのときは自衛隊法を変えております。百条の四ですね。オリンピックの場合も、これは変えているわけです。ですから、そういう点において考慮の余地があると思うのですが、との点はどうでございましょうか。
  486. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) これは昭和三十二年から実行しておりますので、おそらく岸総理の答弁とは時間的にずれておる、私はそんな答弁聞いたことはありません。したがって、今日何らこの遠洋航海というものに自衛隊法との支障があると、私はちっとも考えておりません。南極の場合は、南極観測という一つの目的、これが既存法になかったために、南極観測の支援という改正をいたしました、一昨年。しかし、今日の遠洋航海について自衛隊法は何らこれは支障は私はないと思います。
  487. 鈴木強

    鈴木強君 そこでさっきの、もとに戻るのですが、核に対して日本はやはり体制をつくらなければならぬと思いますね、そこで、とりあえず核の脅威に対しては日本はアメリカの核のかさの中に入る、かさに入る、これはわかりました。そこで、これは外務大臣とも関連があるのでお尋ねしたいのですが、問題は、いま日本は核兵器を持たない、また、アメリカ軍にも持ち込ませないということをはっきりと宣明しているわけです。そこで、具体的に中共の核の脅威に対してアメリカの核のかさの中に入るということになりますと、どうしても従来の日本の態度というものは弱まってくると思いますね。外務大臣はこの前は、いやそれは問題ないんだ、日本の基地をとにかく使ってアメリカ軍が核をやらぬようにするんだと、こういうことをおっしゃいました。そうであれば、一体どこを使ってその対抗手段をとるのかということが問題になるわけですね、ですから、沖縄とか、小笠原とか、いろいろあるでしょう、沖縄の基地の問題についてはいろいろ解釈があるでしょう。しかし、同胞がおる。こういうことで核の持ち込みの問題についてやはり問題が残っておりますから、この点について明確なひとつ見解を明らかにしてください。
  488. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 申し上げるまでもなく、アメリカの核抑止力と申しますか、戦力と申しますか、これは三つの部分から構成されておりまして、大陸間弾道弾――ICBM、それから第二はポラリス潜水艦、第三は戦略爆撃隊、この三つから構成されておるのでございまして、むしろ日本国内に基地を置くという必要はないばかりか、かえって不適当であるという見方もあるようでございます。そういうわけでございまして、アメリカの核抑止力に依存しておる日本といたしましては、必ずしも国内に核兵器を持ち込む必要はない、こういうことでございます。
  489. 鈴木強

    鈴木強君 防衛庁はどうですか。
  490. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 特に核抑止力を日本国内に基地をつくらなければその目的が達せられないとは私は思いません。
  491. 鈴木強

    鈴木強君 たとえば、エンタープライズの原子力潜水艦ですね、横須賀に入ってくるというような話もあるわけですが、そういうものが実際に核弾頭を、ミサイルを発射できるような核弾頭をつけたものであるかどうかということは、これはわからないでしょう。事前協議になりますね、もし、そういう装備の変更がある場合には。実際にはそれはわからないままに入ってくるということですから、これは保障がないですね。結局、勢いまあ核によって守ってもらうという立場をとれば、従来の立場に変わって、まあまあという気持ちがこれは人間起きてくるんじゃないですか。そういうことがやはり国際的にあるんじゃないですか。だからその点を私は心配するのです。
  492. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) エンタープライズが核装備をしているという私は話を聞いたこともなければ、そういう資料も私は入手しておりません。したがって、日本に入るときには日本の規定どおりのものを守っておる、こういうわけでございます。
  493. 鈴木強

    鈴木強君 それは、長官、確かにそうでしょう。しかし、実際に具体的にそれを日本が確認する方法はないんでしょう。
  494. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 核装備をしているという証拠も実証もないのですから、したがって、核装備はしていないということに結論はなるんじゃないでしょうか。
  495. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、それは水かけ論争になるのであって、いよいよ軍事行動に入る場合、そんなことは容赦ないですよ、時間的に。さっきの出動じゃないけれども、ですから、そういう点の懸念がやはり出てくるんじゃないかと、ですからICBMでもIRBMでも、すでにあと二、三年すれば、中共は射程二千キロくらいの誘導弾を持てるというんですね。ですから、そういうようなものに対して岸総理は、日本が攻撃を受けた場合にはやはり誘導弾で敵の基地を爆撃すると、こういうことまでやっぱり言っております。むしろ飛行機の場合でも追撃していって敵の基地をたたくんだと、こういうことまで言っているんですね。これが海外派兵になるかならないかで論争したことがありますよ。ですから、そういうミサイルの開発等はやっているんじゃないですか。核弾頭をつけるつけないかは、これは別ですよ、核は持てないわけですからね。防衛庁はそういう研究はしないのですか。
  496. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 防衛庁は核の研究はもちろん、乗る能力もありませんから、しておりません。ミサイルといいますか、ロケットといいますか、そういうものは国産で開発に努力をしております。
  497. 鈴木強

    鈴木強君 いろいろまだありますけれども、他に質問がありますのでこの程度にしておきます。  それからこれは各省に関係あるのですが、非常に重大災害が最近発生いたしておりまして、私たち毎日、新聞を見てぞっとするわけなんですが、現在まで陸上、海上、航空において事故がどういう状態に発生しておりますか、この一年間ですね、ひとつ統計的にわかったら知らせてもらいたいのです。
  498. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 産業災害、これは百人未満の事業所で二十八万人、重軽傷者を入れると。死亡者は約四千名、産業災害の死傷者の数であります。
  499. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 陸上の交通事故の状況を昨年一年間の統計で申し上げたい。交通事故の発生件数は五十五万七千五百十九、これによります死亡が一万二千四百七十九人、負傷いたしました者が四十一万一千二名になっております。
  500. 鈴木強

    鈴木強君 空はわかりませんか、運輸省。
  501. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 国鉄が一万八千三百五十八件、私鉄が一万八千七百七十六件、道路交通のほうはいまやったと思います。
  502. 鈴木強

    鈴木強君 人員です。死者と負傷者の人員です。
  503. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 昭和四十年の数字でございますが、国鉄事故で六百六十一人、私鉄が千百八十六人でございます。
  504. 鈴木強

    鈴木強君 それは、死者ですね。
  505. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 死者です。
  506. 鈴木強

    鈴木強君 こういうふうに非常に痛ましい事故が起きておるのですが、これに対して具体的に対策をこれからお尋ねするのですが、まず通産大臣お尋ねします。  北海道の空知炭鉱の空知鉱業所のガス爆発事件ですね。この問題は現地調査をされましたか。されましたら、ひとつその状況をお聞かせいただきたい。
  507. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、去る二十二日の午前九時ごろの事件です。直ちに政務次官を現地に派遣をいたしまして調査をいたしました。ところが、御承知のように、いま大きな岩磐の崩落があって、そうして中へ原因調査に入っていけないわけです。まだ十名……、犠牲者が十二名出ることになるのじゃないか。遺骸の発見は二名した。二十名が入っておった、八名は外へ出たわけです。二名は死亡したわけです。十名は崩落の奥のほうにあって出せないということで、原因というものはおそらくガス爆発によるものであろうと言われておるが、まだ原因調査については多少そういう状態が……、いま奥へ入っていくような、遺骸を引き出すために工事もしておりますから、そういうことと相待って徹底的に原因を究明したいと考えております。
  508. 鈴木強

    鈴木強君 いつも炭鉱爆発の際に、原因を追及して徹底的に対策を立てるとオウム返しのように言っておられるのですけれども、なかなか事故は絶えないのですね。一体ここは山としては、保安状況はどういうふうな程度だったのでしょうか。
  509. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 保安についてもまあ非常に残念に思ったのは、ガス爆発の探知機がもう数日のうちに着くようなそういう時期であったわけです。探知機があった場合にどうだったであろうかということを考えると、まことに残念に思っておるわけであります。特に炭鉱の災害については大きな事故が相次いで起こったものですから、われわれとしても地方の保安局を通じて、炭鉱自体の災害防止に対しての注意を喚起すると同時に、監督も強化するとともに、いろいろな国の補助を出して、この災害の場合に対して、災害の防止の施設というものもするようにいたしておるわけであります。何ぶんにも自然的な条件も爆発しやすいということもあるでしょうが、これはいま御指摘のように、次々にそういうふうな災害が起こって、われわれとしても実にこのことに対しては残念に思い、今後とも何とかこれをそういうふうな災害のないようにできないかと苦心をいたしておる次第でございます。
  510. 鈴木強

    鈴木強君 これは、保安監督は最近では一番新しいやつはいつですか。
  511. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 山ですか。
  512. 鈴木強

    鈴木強君 山の検査したのは。
  513. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 保安局長からお答えいたします。
  514. 森五郎

    政府委員(森五郎君) 一番最近監督いたしましたのは、九月二十一日から九月二十四日でございます。
  515. 鈴木強

    鈴木強君 それで探知機がこわれたということがわからなかったのですか。
  516. 森五郎

    政府委員(森五郎君) 探知機というのはおそらくガスの警報機のことだと思いますが、これはさっき大臣が答弁申し上げましたように、事故の数日前に入荷したということになっております。
  517. 鈴木強

    鈴木強君 これは大蔵大臣にも聞いてもらいたいのですが、私は昨年の補正第3号のときに、既定経費の節約をしました、その中に、まだたくさんありますけれども、特に通産関係で鉱山保安監督旅費というのを、これはわずかですけれども、五万九千円、それから火薬類高圧ガス製造監督旅費それも五万五千円、保安施設保安監督旅費十五万四千円、こういうものを削っているのですよ。私は少なくともこういう人命で、しかもいままで何回か問題になって、やらなければならぬ旅費まで既定経費の節約として一律に切るということは間違いですよ。こういうことをするから問題が起きるのですよ。これはひとつ厳重に注意してもらいたいと思うのですが、どうですか、予算節約の場合に……。解決しなくちゃだめですよ。
  518. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 一般的にいいまして、昨年の経費節約をいたしましたときには、その経費の内容によりまして一律にはやらずに、それぞれその重要性を考えてやっております。鉱山保安の関係におきましても、私の記憶によれば、たしか十分の配慮を加えた上で、なおかつその一般的な旅費でありましたか、あるいは事務的な庁費でありましたか、そういうものについて節約をお願いしたというふうに記憶いたしております。
  519. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっとこれを見てください。
  520. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) ちょっと詳しくは私は覚えておりません。
  521. 鈴木強

    鈴木強君 見てください。
  522. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 見てもわかりません。
  523. 鈴木強

    鈴木強君 いや私はそういうことでなくて、要するに、こういう保安監督の体制については絶えず強化するように言っているわけでしょう。ですから機械的に旅費を何%切るということでやってもだめだということです。だからもう少しこういうものはどんどんとやって、そうして検査を厳重にしなければだめだというのです。
  524. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 経費のこまかい点につきましては、もし何であれば所管のほうから御説明申し上げることができると思います。
  525. 鈴木強

    鈴木強君 通産省はこんなのを切られてだまっているのですか。
  526. 森五郎

    政府委員(森五郎君) 昨年の山野炭鉱の事故に伴います鉱山の監督旅費等につきまして、予備費の要求をいたしました。約二千万円の予算を追加していただいております。
  527. 鈴木強

    鈴木強君 そんなことを聞いているのではない。この通商産業省の――ここへ来て見なさいよ。この中でこういうものは削らないでちゃんと残しておいて検査をしてくださいということを言っているのですよ。昭和四十年度通商産業省所管の一般会計歳出予算、これを見てわかるのです。減額修正しているのですよ、これは。
  528. 森五郎

    政府委員(森五郎君) これは節約をはかったものと思います。
  529. 鈴木強

    鈴木強君 そういうところは注意して、特に人命保全の問題については、私はむしろふやしてやっても減らすべきではない。
  530. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 内容を拝見いたしますと、火薬類及高圧ガス製造監督旅費等、いわゆる監督旅費あるいはそういった施設の関係のための旅費が節約になっておると、そのとおりであります。ただその場合にでも、他のバランスをとりまして、一律にやったということではなしに、配慮をした上で節約をお願いしたと思いますが、お説のようなこともありますので、今後の私どもの仕事の上では注意してまいりたいと思います。
  531. 鈴木強

    鈴木強君 非常に明解に、役人さんだって間違うのだから、間違いをやったら正していくのはこれは謙虚でよろしい。  それからこれは建設大臣にお伺いしたいのですが、労働大臣関係していますが、長野県の東京電力奈川渡ダム工事、これで土砂くずれのために出かせぎ農民が犠牲になっておりますが、この事件の真相をまず伺いたい。
  532. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) お答えいたします。  長野県の梓川の上流地域における東京電力の発電ダム工事現場でございます。そこに鹿島建設の現場建設工事の下請をいたしておりました松井建設が下請工事の擁壁工事をやっております際に、その上のほうの土砂が崩壊してああいう事件が起きております。被災者の方に対して、まことにお気の毒に考えておるわけでございます。
  533. 鈴木強

    鈴木強君 下請会社は何という名前ですか。
  534. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 松井建設という平素やはり鹿島建設の下請をやっておる会社であると思います。
  535. 鈴木強

    鈴木強君 この鹿島建設から請け負って下請をやっているのですが、おろしているのですが、こういう場合には元請けの鹿島建設は何%くらい利益を得て下へやるのですか。
  536. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) これは鹿島建設がダム工事を東京電力から受けまして、その一部の擁壁工事、それをさらに松井建設に契約しておるのでありまして、その内容はどういうようになっておるか現在わかりません。事務当局でわかっておればお答えいたします。
  537. 志村清一

    政府委員(志村清一君) 私どもの調べたところでは、松井建設は、導水路擁壁工事として、金額七百七十三万円で下請契約をいたしております。
  538. 鈴木強

    鈴木強君 これは、私時間があまりないから詳しく伺えないのですけれども、元請と下請との関係については非常に問題があると思います。特に会計検査院からも指摘をされている建設省の工事というのは非常に多いんですね。これはやはり元請のほうが受けたものを下請に流す、そうすると、やはりそこにはマージンがあると思うんですね。そうすると、下請を二つ三つやればやるほど、下にいけば建設単価が低くなっちゃって工事が粗漏になってくる。それで厳重な監督ができるかというと、なかなか監督要員がなくてできない。そういうところに工事の粗漏があると思うんですね。こういう点はひとつ十分に注意していただかないと、しかも、そういうことが結局事故の原因に――安全対策なんか私十分に聞く時間がありませんけれども、あると思うんですね。一体労働省のほうでは、こういう下請会社に働く出かせぎ農民などは――などとと言っては悪いのですけれども、農民の方々は職安を通っているのでしょうかね。直接その下請が調達しているのでしょうか。
  539. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 建設業などに使われておる出かせぎ労働者というものは、労働省としましては、極力安定所を通じて就労するようにと、それがいろいろな問題の処理にあたりまして必要でありますので、そういう努力をいたしておるのでありまするが、現実の問題といたしましては、いまだむしろ安定所を通ずる者が少ない。大体二〇%程度じゃないかと、こういうふうに見ておるわけであります。その他は大体縁故募集で行なっておると、こういう状況でございます。先ほど来お話の出ました長野県の災害では、死亡者十一人のうち、出かせぎ者が五人でございましたが、そのうち安定所を通じました者が三名、それから知人などの紹介による者が二人でございます。  なお、ついででございますので申し上げますが、引き続いて新潟のほうでも事故がございました。その際死亡者が五名でございますが、これは全部出かせぎの者でございます。これも五名ともまた知人の紹介によって就労しておったものと、こういう状況でございます。
  540. 鈴木強

    鈴木強君 新潟のほうも五人死んでおられるわけですが、そうすると、この職安法から見て違反しているわけですか。
  541. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 御承知のとおり、職安法でも緑故募集というものは認められておるわけでございまして、その間、もちろん周旋料その他を取っていることになれば、これは違反でございますが、そうでない限りは、別段違反とは認められておりません。
  542. 鈴木強

    鈴木強君 その点がはっきりわからないからひとつ私伺っているのですね。いまあなたの言われた、違反になるかならないかは、それは私も知っておりますがね、縁故募集の場合ですね。
  543. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) ちょっと私御趣旨がよくわからなかったのですが……。
  544. 鈴木強

    鈴木強君 いや、いまあなたが言われたように、違反であるかないかということは、緑故募集のやり方によるわけでしょう。縁故募集、そのやり方が違反になるやつはないか、実態を調べておりますかというのです。
  545. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 縁故募集でどうもはたして周旋料を取っているのか取っていないのか、かりに取っていることを発見すれば、これは違反ですから摘発いたしますが、そういうもののなかなか発見が実際問題として容易でない。まず、違反は発見せざる限りにおいては、違反ではないという扱いをいたしておるわけでございます。
  546. 鈴木強

    鈴木強君 だから、その実態調査ができないわけでしょう。ですから違反でないということは、そういうふうに考えておるだけであって、具体的なデータはないのですね。
  547. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 私が先ほど申しましたのは、周旋料等を取らない限りは、職安法上も違反でない、こういうことを申し上げたんで、実態が周旋料等を取っておるかどうかということについては、なかなかこの把握が困難である、こういうような実情であります。
  548. 鈴木強

    鈴木強君 厚生大臣に、事故の場合、救急病院などが非常に不足しておるように思いますし、特に脳外科医、こういう先生方はなかなか確保できないということを聞いておりますが、この対策はどういうふうになっていますか。
  549. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 事故の態様によりましていろいろ対策が違うわけでございますが、交通事故等で脳神経系統をやられます場合が非常に多いのでありますが、そういうのに対しましては、救急医療機関を指定をいたしまして、全国で数カ所の脳神経系統の専門医療機関もその中に指定をいたしまして対策を講じておるわけであります。また、炭鉱災害による一酸化炭素その他のガス中毒というようなものに対しましては、いろいろ高圧のタンク等の用意をいたしましたり、事故の態様によって応急の対策を講じておるのであります。
  550. 鈴木強

    鈴木強君 この排気ガス対策というのは、けさの新聞見ますと非常に積極的におやりになるようですが、これは法律案等を出してやるわけですか、それとも実行上各行が協議してやられるんでしょうか。
  551. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 公害対策につきましては、ただいま総興府に公害対策の推進協議会というものをつくりまして、各国関係者庁が緊密な連繋をとって対策を進めておるわけであります。排気ガスの対策につきまして、昨日、総理府において連絡打ち合わせ会をいたしたのでありますが、通産省、運輸省におきましても、この自動車の排気ガス、これに対する対策を強化しよう、ということで自動車のエンジンの完全燃焼に対する研究開発を進める、また、今年の秋ころから、業界に対するそういう面の指導をさらに強化をする、こういう対策を講ずることにいたしておるのであります。また、厚生省におきましては、この排気ガスの人体に及ぼす影響が深刻になってまいっておりますので、その排気ガスの濃度、またその影響、そういう調査をいたしておるのでありますが、東京、大阪等におきましては、相当警戒すべき状態に進んでおります。そこで、関係各省庁に連繋をいたしまして、連絡をとりまして今後対策を急いでいかなければならぬということで、厚生省も、人命の保護という面から、そういう角度から各産業活動に対しましても十分警告をいたしておるわけであります。
  552. 鈴木強

    鈴木強君 警察庁のほうにお尋ねしたいんですが、道交法に違反いたしまして路上駐車をしておる車がかなりあるんですね、夜等に。ああいう取り締まりはどうなっているんですか。
  553. 内海倫

    政府委員(内海倫君) お答え申し上げます。駐車禁止をする地域はだんだんふえてまいりました。これに伴いましてだんだん違反も増加いたしております。警察といたしましては、実情は非常に交通混乱のもとになっておりますので、極力取り締まりを実施いたしておりますが、何しろ警察官の数というものに限度がございますので、なお徹底し得ない点もあると思いますけれども、現在のところ、全力をあげて駐車禁止地域における交通取り締まりを実施いたしております。
  554. 鈴木強

    鈴木強君 人が少ない中で御苦労いただいておると思いますけれども、なかなか思うようにはいかないと思いますが、しかし、われわれが見ておりましても、置きっぱなしのやつが多いんですね。それに対して具体的に措置をしてくれないから、近所の人たちは、火災があったときなんか困って非常に心配しているわけです。だから、もう少し対策をきちっと立てて取り締まりをしていただけませんでしょうか。
  555. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 一番痛切に私どももその点を感じておりますので、今後もいろいろな方策を用いまして、取り締まりをいたしたいと思います。なお、路上駐車したままどうしてもがえんじない、あるいは路上駐車をしたまま運転者もいないような場合におきましては、道路交通法の規定によりまして、警察官または警察署長の命令によりまして、その自動車を強制的にその場所から撤去することもできるようになっておりますので、そういう措置も場所によっては講じなければならぬ、かように考えております。
  556. 鈴木強

    鈴木強君 日ソ漁業交渉の進展を見ておりますと、たいへん難航しているようですが、農林大臣としては、一体これはどういうふうに対処する決意でしょうか。
  557. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 日ソ漁業会議の件は、最近まで技術者のほうでの双方の委員会をやっておりまして、最近終わったわけでございます。今年は資源のいわゆる悪い年に当っておりまするので、ソ連としても相当きびしい規制の点を打ち出しているように思われます。しかし、わがほうといたしましては、先日来も申しましたように、特にB地域に対するいわゆる漁船の制限等につきましては、相当きびしいものを持ち出すやにうかがわれるのでございますが、しかし、こういうことであっては、わが国の漁民の、いわゆる中小漁業者に非常に大きな打撃を与え、影響も非常に大きいのでございまするので、わがほうとしては、科学的の根拠によりまして、そうしてでき得る限り双方の話し合いを十分して妥結して、合意に到達していく。また、かようなきびしい規制に対しては、わがほうとしては、これは受け取ることはできないのであります。その点について、十分強くこれらの問題を、しこうしてまた、科学的に、合理的に進めていきたい。なおまた、資源の保護という問題は、これは両方とも進めていく必要があることは十分心得て進んでいきたい、かように存じているわけでございます。
  558. 鈴木強

    鈴木強君 大臣ね、非常に難航し、見通しもそう明るくないと思います。あなたが報告しているとおりだと思います。そこで、例年農林大臣が現地へ出かけるようなことも起こったのですがね、そういうようなことも時と次第によってはやるような決意を持って交渉を進めてまいっておりますか。
  559. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 現在のところ、まだその予定はいたしておりません。
  560. 鈴木強

    鈴木強君 現在のところはわかったんだが、ぼくの言っているのは、非常に難行し、困難な状態になったとき、あなたみずから出かけて行ってやるような強い決意でやっておりますかということです。
  561. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 先ほど申しましたように、この日ソの関係の漁業法の問題は、従来のようなこととは違いまして、資源調査あるいは資源状態の科学者との間の話し合いは非常にこれは合理的に進みつつあるわけでございまして、今年のごときも、資源状態としては十分合憲をいたしておるようなわけでございます。したがいまして、現在まだ技術者会議の終わったやさきでございまして、これからそのB地区はどうとか、あるいはサケ、マス、カニのなにはどうするといった、いわゆる本格的な会議が始まっていくわけでございまするので、いま農林大臣として、向こうへ出かけるとか、出かけないとかということを現在口にすることはいたしたくないわけであります。ただ、連絡をよく密にとって進んでいきたいと、こう存じておるわけでございます。
  562. 鈴木強

    鈴木強君 郵政大臣お尋ねしますが、国鉄の運賃引き上げに続いて、郵便料金の引き上げも決定し、いま郵便法の改正をやっておりますが、一体なぜ郵便料金は二割八分八厘上げなければならないのですか、その理由を聞きたいと思います。
  563. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 御了承のように、昭和二十六年に値上げをいたしまして以来、その後ごく小幅な改定しかいたしておりません。そのために、昭和四十年度すでに持ち越しの五十六億の赤字が出てまいりました。したがいまして、そうした補てんがこういう大部分を人件費にやっている会計では必要なのであります。それ以上に、これは鈴木さんも御承知のように、一昨年末近代化の答申が出てまいっております。そうした国民へのサービスの向上が何といってもおくれております。機械化でありますとか、ことに送達速度の確保ということ、この独占事業の生命である点をやはりいたさなければいけません。したがいまして、ぜひこの機会にサービスの改善をさしていただきたい、そういうつもりで改定をお願いする次第であります。
  564. 鈴木強

    鈴木強君 郵政会計の場合は、八割までが人件費でございます。したがって、何か値上げが、人件費を埋めるための値上げではないか、郵便の最近のスピードの問題なんかもいろいろ出ておりますが、一体合理化はどうやってするのだという意見もあるわけです。それは具体的な改善計画というものをおやりになるでしょう、その内容を示していただきたい。
  565. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) おっしゃるとおりでございまして、ことに送達速度の確保のために、遠距離については航空機を用いますし、近距離は専用便を増強いたします。それから、ことに大事なことは、利用者のためにも、従業員のためにも、局舎がいかにも不完全であります。したがいまして、局舎の近代化をいたす、それから機械化は、何と申しましても、一どきにはできません。大型局だの、小包専用局をこしらえまして、そうした機械化ができるように、そうしてそれ以外の速達の距離を広げまするとか、いろいろ小さい点ではございますが、利用者の御要望のあります点も、書き損じはがきの取りかえだとか、いろいろな点がございます。そうした点もこの際いたしたいと、ことに大事なことは局舎、機械化、送達速度改善のための機械カの利用、これを計画的に今後進めてまいりたいと思います。
  566. 鈴木強

    鈴木強君 会計検査院に来ていただいているのですが、会計検査のほうはたいへん御苦労いただいておりますが、まだ陣容その他の面で、実際に実施検査をするのは八%くらいしかないわけです。したがって、あとは文書による検査をやっておられるわけですが、会計検査院としては、もう少し陣容を強化して、せめて私は全体の二〇%ないし三〇%ぐらいは実地検査ができるようにしなければいかぬ、こう思うのですが、会計検査院ではどういうお考えを持っておられますか。
  567. 小峰保栄

    会計検査院長(小峰保栄君) お答えいたします。ただいま御指摘のように、実地検査の施行率は、全部込みで計算いたしますと、八%見当でございます。これは全国に一万五千ございますが、特定郵便局、それから国鉄の駅、それから区、こういうものが七千ぐらいございますが、そういうものが、会計職員がおりますから、こういうものも全部検査必要個所としての計算でございます。ところが、そういうところは実際は行けませんし、また行ってもあまりたいした効果がないわけでございます。それで、主要な個所ということになりますと、現在の陣容をもってしても、たとえば中央官庁とか、地方の大きな官庁になりますと、毎年行っております。少なくとも一年おきには行っておるという現状でございます。それで、もちろん、いまの一年おき、あるいは二年おきというところもございますが、そういうようなところは毎年行ったほうがいいところも相当あるわけでございます。現在の陣容で十分だとは決して私ども思っておりません。最近でも徐々に人員は増加しております。たとえば三十九年度には二十名増員をもらいまして、これで公社、公団、事業団、政府関係機関の検査の充実をしておるわけでありますが、検査の人員というものは、その急に一人前になれないものでございまして、増員をいたしましても一人前になるには相当の年月を要するというので、内面充実と申しますか、これをいまのところ心がけておるような次第でございます。それで、先ほど申しましたように、いまの人員でもう十分だということは私ども決して考えておりません。次の機会には相当強く要求して着実に増強していきたい、こう考えております。
  568. 鈴木強

    鈴木強君 最後に、大蔵大臣、現在の税金の滞納額が七十七万件、八百五億円ございますね。そのうちの私が納得できないのは、源泉所得税八十六億一五千万円、これは実際に会社で各個人から徴収しておきながら会社が流用して納めていない、これは一体どういうことですかね。もっときびしい態度で納めさせるような方法をとっているのですか。
  569. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 数字お話のとおりでございますが、それは会社が源泉徴収いたしまして、そうして破産しちゃったとか、そういうような場合なんであります。税務当局としては極力徴収に努力をしておりまするが、何とも破産して資力がない、こういうような事態がおもな要因であります。
  570. 鈴木強

    鈴木強君 これ、あれでしょう、件数は五万五千件ですわね。それで倒産をしてどうにもならないというのは、この中に、そうすると、どのくらいあるのですか。
  571. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府委員から答弁させます。
  572. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のように、源泉徴収の所得税につきましての滞納件数は十二万三千件でございますが、これは個々の滞納件数でございまして、実人員といいますか、法人、個人のあれに直しますと、五万件ぐらいではなかろうかということでございまして、その中の倒産の件数というのはもちろんございますが、それよりも最近の不況で資金の枯渇を来たして納税に困難を来たしているというのが比較的多いようでございます。私どもといたしましては、そういった事情は気の毒な点もありますけれども、源泉徴収して納付すべき税額でありますから、これについて厳重に督促をいたしておる次第でございます。
  573. 鈴木強

    鈴木強君 時間がありませんから、その内容を詳細に聞けませんが、要するに倒産をして実際に滞納になっている分と、いま言ったように、会社が流用して納めない分もあると思うのですね。この内容をあとでひとつ知らしてください。私は、大臣ね、実際まじめに税金納めている人たちは、こういう実態を知りますとおこりますよ、これは。実際個人は払っているのですからね。それを会社がかってに流用して国に納めていないなんということは許せないことです。ですから、もっと厳重に私は取り締まってもらいたいと思います。時間がなくなりましたから、これで終わります。
  574. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  575. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、少柳勇者。
  576. 小柳勇

    小柳勇君 私は、中小企業問題について、具体的に関係大臣質問いたします。  まず、通産大臣質問いたします。  中小企業近代化資金は、五月中旬までに届け出ると、一年後でなければ金が出ない。これでは資金が来たときは四囲の情勢が変わって機動性が少ないのでありますが、この点をいかに解決するか、御見解をお伺いいたします。
  577. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) そんなに長くかかってはいけませんから、二カ月以内に事務を処理するように厳重な指導を行なっていこうと思っております。
  578. 小柳勇

    小柳勇君 現在の規定によりますると、国が四分の一、県が四分の一、自己負担が二分の一で、中小企業の現状から二分の一の負担では法律の効果が少ないし、国の負担をもう少し大幅に上げるように御検討願いたいのでありますが、いかがでございましょう。
  579. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 相当な効果はあげておりますので、いま国の負担率を引き上げるという考えは持っておりません。
  580. 小柳勇

    小柳勇君 二分の一を自己負担でやるというのは、中小企業にとっては相当たいへんなことでありまして、現在せっかくのとの近代化資金が借られないというのが実情でありますが、大蔵大臣いかがでございましょう。
  581. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) とにかく、お貸しする半分ですね、それは無利子なんです。これはまあ非常に金融体系としては破格の扱いであります。ただいま通産大臣が申されたように、これはさらに引き上げるというよりは、そのワクの増額、それを考えて広くお使いになる、こういうほうが適切かと、かように考えます。
  582. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣、ただいま大蔵大臣が言われましたワクの増大につきました、大臣見解をお伺いいたします。
  583. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、ことしは五十五億ですか、これに地方の公共団体の償還の負担分、あるいは償還も入れまして、二百十三億今年度の近代化資金のワクは。昨年度は百七十七億ですから、四十億ほど昨年度からふえておるわけです。しかし、いま小柳さんのお話のようなこともありますから、機械貸与制度というのを今年度からやったわけであります。なるべく、これがなかなかやりにくいという人のために、機械貸与制度なんかも併用していこうということで、新しくそういう制度も設けたと思うのです。ひとつお考えおきを願いたいのであります。
  584. 小柳勇

    小柳勇君 大蔵大臣の御発言を私は信じて、先に進みます。  第三は、中小企業信用保険法の改正で、保証体制は前進いたしましたが、金が足りないという声がほうはいと起こっておりますので、商工中金のワクを増加するように御努力願いたいと思いますが、いかがでございましょう。
  585. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは中小企業に対して非常にやはり活用でき得る制度だと思いますので、そういう場合があればワクの拡大に努力いたします。
  586. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣急ぐようでありますから、通産大臣関係だけ先に御質問いたしますので、御了承願います。  次は、第一次下請の企業にはこの法律が適用されますが、第二次、第、二次の下請では、国会の答弁では適用できるように速記録はありまするが、現地ではやっておりません。第二次、第三次の下請に対しても適用するように御考慮を願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  587. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 実際問題として、その必要があればいたします。しかし、第一次をいたしまするから、だからいろいろな債権を持っておる場合には、節二次の下請はそれによって救済できるわけです。播磨鉄鋼の場合でも、日伸建設をやっておるのだから、そういうことで――しかし、必要があれば、第二次、第三次というものも考慮をいたすことにやぶさかではありません。
  588. 小柳勇

    小柳勇君 いまの最後のはうの御答弁を信じておきます。  次は、下請代金支払遅延等防止法という法律がありますが、これは実費的には法の趣旨が生かされておらない、こう言われておるのでありますが、その一番大きな原因は、親会社を申告しなければ子会社に対する下請代金の支払いがなされない、また調査もできない。これは規定を見ますとそうでない、法律上はそうでありませんが、実際の運用はそうなっておりますので、これは公取の人員も足らないということでそういう実態でありますが、この点について特別にこの法律に対して改正しなければならぬと思うのですが、いかがでございましょう。
  589. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま下請代金の支払いは遅延に対して、公取が利子の支払いを勧告できるような法律になっているわけです。そういうことで、この運用面で相当いま言ったような面の改善の余地は私はある。だから、その法律の運用をもっと厳重にやるということで小柳さんの御心配のようなことを改善していきたいと考えております。
  590. 小柳勇

    小柳勇君 法律の運用ではなくて、公取の人数が足りませんし、出動ができないわけです。したがって、結果はおのおのの下請が申し出ないと調査もできないというような実態でありますから、もう少し実情を把握して御勘案願いたいと思います。  次の問題は、下請会社が親会社に対して対等の立場とは言いませんけれども、憎まれないで交渉ができるような体制をつくらなければならぬと思うのでありますが、たとえば労使間における労働関係調整法みたいなものですね、こういうものをつくるが一番いいと、こういうような声があります。この点について大臣見解をお伺いいたします。
  591. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) お話のとおり、下請というのは弱い立場ですから、一人では非常ににらまれるわけです。これはやっぱり組織化する必要があるということで、いま立法的な措置は考えておりませんが、極力下請を組織化する、そうして団体で親会社といろいろ折衝で当たれるような、強力な行政指導をやっていきたいというふうに考えております。
  592. 小柳勇

    小柳勇君 行政指導だけでは、いま私が申し上げましたように、通産局も人数が少ないし、公取も少のうございますから、やはり法制化いたしまして、法律によって行政指導すべきだと思いますが、いかがでございましょう。
  593. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまはこの国会で立法化は考えておりませんが、将来の問題として検討いたします。
  594. 小柳勇

    小柳勇君 下請会社や中小企業はいま倒産しつつあるわけです。将来、二年先、三年先は、またこれは好況が参りましょうか、あるいはうんと倒れてしまいましょうか、現在苦しんでいる中小企業の立場に立って、もう少し誠意ある答弁をいただけるように、もう一回答弁をお願いします。
  595. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま要するに行政指導で、相当強力な行政指導をやることならば、いま一番、小柳さんの場合も、非常に急ぐじゃないかと、こう言われるわけですから、そういうことで行政指導を通じて組織化をしていくということによって、いまの弱い下請の立場というものを対等な立場に持っていくということは、必ずしも法律によらなくても、強力な行政指導によってある目的は達成できるのではないか。しかし、将来それでもいま御指摘のようなことが起これば、これは立法化も考えなければならぬと考えておる次第であります。
  596. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、このように確認してよろしゅうございますか。近い将来に立法化も考えるが、当面は通産大臣並びに通産省は中小企業、下請企業が共同化など組織化して団体交渉的に交渉することを期待し行政指導をする、そのように確信してよろしいですか。
  597. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) よろしゅうございます。
  598. 小柳勇

    小柳勇君 では次に進みます。  次の問題は、先般総括質問でも質問いたしましたが、来年度の上半期に公共企業の大部分の仕事をすると、七割ぐらいは仕事をしたいというようなことでありましたが、この前も質問しましたように、中小企業に対する官公需がどうしても取りにくい。したがって、これも法制化を考えるべきだということであります。通産大臣並びに大蔵大臣、同時に御見解をお聞きいたします。
  599. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この問題については、立法化を何かできないかということで、関係各省との間にいま検討を加えておるわけでございます。これは成案を得られれば、この国会に提出をしたい。まだしかし結論には到達しておらないのでございます。
  600. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいまの点につきましては、一番大きなのは何と言っても建設省の扱う公共事業であります。この面では、建設大臣から相当きびしい通牒を出しております。それからその他の諸問題につきましては、ただいま通産大臣からお話のありましたような検討を進めております。
  601. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣に対してはこの一間をもって質問を終わりますが、それは、いま労働災害が盛んに起こり、さっき鈴木君も質問いたしておりましたが、これで土建業などが事故を起こしておりますが、御存じのように、貝島炭鉱は露天掘りであります。それもやはり土建の作業と同じように、露天でブルドーザーが動いている。ところが、これは鉱山保安法によって、鉱山保安安全規則によって規制されているわけです。労働基準法では詳しく作業の安全基準をきめておりまするが、鉱山保、安法のほうはわずか二行とちょっとしかきめてないわけですが、早急にこれも改正する必要があると思いますが、いかがでございましょうか。
  602. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この点は、政府委員から答弁いたさせます。
  603. 森五郎

    政府委員(森五郎君) 露天掘りの規則のことでございますが、実際の、先生御存じのように、現場に即しまして現在の保安法によって十分監督できるというふうに考えております。
  604. 小柳勇

    小柳勇君 作業が、労働基準法のものも、鉱山保安法のものも、同じ作業をやっておってその規則が雲泥の差だもんですから私は心配して言っておるのでありまして、近い将来に補足改正する意思はございませんか。
  605. 森五郎

    政府委員(森五郎君) 露天掘りの場合に、一番留意すべきことは、いわゆるマイニングレーションといいますか、採掘率の関係、それがすなわち壁の角度の問題、それからそれが結局落盤の問題につながってくるということが一番大きな問題でございまして、こういう点については、地質の状況その他いろいろのことがございますので、実際の問題について具体的な問題で監督していくということがいいことであろうというふうに考えております。
  606. 小柳勇

    小柳勇君 それでは重ねて質問しますが、いま露天掘りの上でブルドーザーなど、土建業者、下請業者がやっておりますが、これはもし事故を起こした場合には、どちらの規則でこれを判断いたしますか。
  607. 森五郎

    政府委員(森五郎君) 鉱山保安法で規制いたします。
  608. 小柳勇

    小柳勇君 大臣いかがでしょうかね、作業は同じ作業をやっているのですよ。普通の労働基準法による土建作業と、鉱山保安法による土建作業と同じ作業をやっておりまして、労働基準法の規則は詳しく書いてあるでしょう、何条も。私もちょっと書いものが……。それでよろしゅうございましょうかね。私は事故が起こりました場合、これを判定のしょうがなかろうと思うので、いまたくさん労働災害が最近起こっておりますから、念を押しているわけです、いかがでしょうか。
  609. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私も詳しくは存じませんが、これは検討をいたしております。
  610. 小柳勇

    小柳勇君 次は、公取の委員長質問いたします。  さっき質問いたしました下請代金支払等遅延防止法がざる法であると、さっき大臣質問したとおり、これで公取の現在の実情を御説明願います。
  611. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 公正取引委員会といたしましては、少数の人員をもって、最も効果的に運営をいたしますように、まず、親事業者につきまして、法律に基づくところの下請事業との間の取引に関するところの報告を徴しまして、その報告を見まして、支払い遅延の疑いあるものにつきまして実地検査をする。その実地検査をするにあたりましては、それに関係ある下請業者に対しまして、書面または実際に参りまして、その意見を参考にしてやっております。こういうふうにして、大体本年度二千五百くらい書類調査をいたしまして、そのうち約三百ぐらい立ち入り検査ということになっております。  なお、もちろん、下請事業者からの申し出を歓迎いたしておりますが、これが必ずしもただいまお話のように多くを期待することができないわけでありまするが、本年度すでに二十一件、下請事業者からの申し出がございます。そういう申し出があるものにつきましては、必ず実地立ち入り検査をいたしております。  それからまた、中小企業庁長官から下請代金支払遅延防止法等違反の疑いでもって、公正取引委員会に対して措置を請求することができるようになっておりまして、これも措置要求がありましたものに対しましても、必ず立ち入り検査をする、この件数は、本年度は三十一件からあるのでございます。  なおこのほか、下請事業者個々からは、なかなかたいへんでございますが、下請事業者の団体を通じまして団体の協力を求めますと、相当効果的でございますので、主として下請業者を中心とする中小企業者の団体十八団体から、協力を求めておりますほか、なお下請取引に非常に熱意を持っておる人々、下請取引改善協力者の制度をつくりまして、実情の報告の聴取等をいたしております。ただし人員が非常に手薄でございまして、法律は私はいいと思うのですが、現在のところ、中央地方を合わせまして二十六名程度の人員でやっております。  それで、書面調査も親事業社約一万をこえますので、本年度二千五百くらいしか書類調査できない、こういうことになっております。来年度はこれが相当強化されますので、この人員をもちまして今後推進いたしてまいりたいと思っております。
  612. 小柳勇

    小柳勇君 いまの問題に関連いたしまして、下請取引改善協力者をきめられて、昨年から五十名おられるようでありますが、たとえば下請協力会などつくりまして、その大将ですね、理事長なり協力会長なりを皆さんのほうから委嘱する、こういう方法で、さっき申し上げました事実上の関係法をつくる、こういうことでいかがでございましょうか。
  613. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) そういう方法は、大いに歓迎いたしておるところでございます。
  614. 小柳勇

    小柳勇君 次に、労働災害について、さっき鈴木君が質問いたしましたあとを受けて質問いたします。  被災者がほとんど第二次、第三次の下請業者の雇用者で災害が発生しておるようでありますが、正規の道を通っておらぬわけです。さっき大臣は、代金を取るか取らぬかによって罰則があるかないかとおっしゃいましたけれども、職安法の三十三条は、代金取らなくても、労働大臣に届け出ないと罰なんです。違反なんです。罰されたことがありますか、いままで。
  615. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) その実績につきましては、事務局からお答えいたします。
  616. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 労働大臣の許可を受けない場合には、罰則がございます。(「罰則で処分されたことがあるかと聞いている。適用されたことがあるかと。」と呼ぶ者あり)職安法違反で検察庁が受理した件数は、三十九年度で千二百八十九件でございます。これは職安法の各条項の内訳がついておりませんので、ちょっとわかりにくいんですが、先ほど御指摘の紹介事業に関する違反件数として、われわれの手によって監査をやった結果、違反と認められた数字は三十九年度が三十六件ございます。
  617. 小柳勇

    小柳勇君 最近起こっておりますあの事故ですね、新聞で見まして、職安法違反というのが相当感じられるんですが、調査されたことはございますか。
  618. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 災害には必ず出かせぎ労働者が加わっておりますし、出かせぎについては就労経路についていろいろ問題がございますので、私どもとしましては、三十九年あるいはことし、この就労経路の正常化について全力をあげておるわけでございますが、委託募集あるいは縁故募集、それから三十三条、三十二条関係の職業紹介事業違反、これを中心に監査を励行いたしております。
  619. 小柳勇

    小柳勇君 監査だけでは、これはいつまででももう同じなんですね。厳重に処分するというこの法律があるのですから、罰則もありますから、処分しなければ、再三再四こういうことが起こると思いますが、この労基法の四十二条の違反も同じですね。使用者は危険をおかしてはならぬ、ああいう事故を起こしてはならぬと書いてありますが、これも四十二条違反として処罰した事例がございますか。
  620. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 件数を申し上げますと、三十八年は送検いたしましたのが二百十九、その中で起訴されましたものが百五十七、そのうちで判決がございましたのが百五十五、これはすべて有罪でございます。なお、不起訴三十四、未済二十八。三十九年につきましては、送検二百六十三、起訴されましたものが百四十九、係属中の七件を除き百四十二件、すべて有罪でございます。なお、不起訴が二十三、未済が九十一ということになっております。
  621. 小柳勇

    小柳勇君 労働大臣、いかがでしょうかね、もう再三再四こういうことが起こりますが、この際に厳重に使用者並びにそのやみの周旋業者を取り締まりませんと、こういう事故はなくならぬと思いますが、大臣見解をお伺いいたします。
  622. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 御指摘のとおり、ことに出かせぎ等において事故が非常に多いと、こういう状況でもございますから、先生の御指摘の線に沿うて善処いたしたいと存じます。
  623. 小柳勇

    小柳勇君 大蔵大臣見解を聞きますが、三月期の決算で公共事業などが来年に越しませんように、仕事がしおおせないように、どんどん流れていくんじゃないか。そのために、もういろいろなほうぼうで労働者を求める、それが大きな事故の原因ではないかと思うが、予算を適当に分配して、うまく均等するように、夏がれがないように、あるいは決算期にかたまらないように予算をならしていくということについて、いままで何か格段の配慮をされましたか。
  624. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 従来、年度末に支出が集中する傾向があったわけです。昭和四十年度もそういう傾向があろうと思います。それは金の使い方としてよろしくない、そういうふうに考えます。お話のようないろいろな問題が起きてくる、こういうふうに考えますので、昭和四十一年度につきましては予算の早期施行、つまり上半期に契約でもう六割以上してしまう。そういたしましても支払いじゃ四割何分だろうと思いますが、そうやってちょうどいいくらいなんですが、今後はそういうふうに気をつけていきたいと思います。
  625. 小柳勇

    小柳勇君 自治大臣にもその点お伺いいたしますが、地方自治体などが同じように三月決算前にどんどん仕事を流す、これがああいうような大きな事故の原因ではないかと思いますが、行政指導としてどのような措置をおとりになりますか。
  626. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) お説のように、年度末に事業が集中することは好ましくないと存じますので、ことに、本年は景気の早期回復が必要であるというようにも考えますし、したがいまして上期に大体七〇%ぐらいの事業が行なわれるように、またできるだけ財政的措置もいたしたいと考えておりますので、各省と協議をいたしまして、予算、法律案等が通りますれば、すみやかに各省の事業の個所づけをしていただきまして、個所づけができますと、公共事業は四月の中旬までに、その他は五月末までに大体起債の予定額の許可を知らせようと、こう思うのです。そうして大蔵省のほうと相談をいたしておりますが、補助金の概算払いを、旧来は事業の補助の三割でございましたが、今度は、事業費の三割はすぐ出すという体制の確立をいたすことになっておるのでございます。また予算と法律案が通りますれば、二、三日のうちに交付税を四分の一は地方にすぐ送りたいと考えておりまして、ことに五月は政府からいく金がございませんでしたのを、今回は四月に四分の一の交付税、そうして五月には臨時地方特別交付金、いわゆるたばこの売り上げ本数で二百四十億配賦するうらの半分を五月にこれを出すことにいたしております。したがいまして、四月、五月、六月、六月は交付税の二期分が参ります。八月は地方道路譲与税がいきます。九月は交付税が参ります。十月にはさらに臨時地方特例交付金をやるというように、十月までの間に大体七二・二%、政府の交付税その他を出していきたいというように、いま鋭意指導をいたし作業を続けておるような次第でございまして、地方が下期に事業を集中しないようにいたしていきたいという考えでやっております。
  627. 小柳勇

    小柳勇君 労働災害の最後でありますが、今回の事故に対する補償が、いろいろまちまちなようであります。事故の種別によって人命に対する補償にそう大きな差別があってはならぬと思いますが、具体的に今後この労災補償についてどのような対策を立てられるか、大臣見解を聞きます。
  628. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 被災者に対しましては、すみやかに労災補償を行なうことに現に取り計らっております。今回の被災者につきましては、全部労災保険にも加入いたしておるようでございますので、死亡者につきましては、もちろん遺族に早急に払うようにいたしております。その間、宿舎におりました者などについては、食費の計算の関係などが若干あるようでございますので、それらにつきましても早急に決定をして、できるだけすみやかに支払いをいたしたい、こういう考えでございます。別段被災者によって区別するというようなことはいたしておらぬと思います。
  629. 小柳勇

    小柳勇君 現在の規定によってはそうでありますが、たとえば自動車事故とか飛行機事故とか鉄道事故とか、あるいは現場の下請企業の労災の補償がいろいろまちまちでありますから、こういうものを全体的に、事故で死ぬという結果は同じでありますから、そう大きな差があってはならぬと思うが、この点の見解を聞いておるわけであります。
  630. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 先ほどは意味を取り違いまして失礼しました。各種の災害によっての補償額が必ずしも同じでない、あるいは制度的にも統一されていないということは、事実であると思います。そういう面につきましても、今後各省間でよく打ち合わせまして、なるべくそういう開きの、差異のないように持っていくことが私は望ましいことだと、かように考えます。
  631. 小柳勇

    小柳勇君 この問題は、早急に関係機関で検討していただきまして、なくなった者に労災あるいは補償が、あるいは遺族補償がうんと差があってはならぬと思いますから、ひとつ内閣でも御検討願いたいと思います。  つぎは、社内預金の問題でありますが、二十三日に基準局長発で行政指導をいたしておられるようであります。昨年の通常国会で前の田中大蔵大臣は、五カ年間ぐらいの間に完全に廃止するように検討したい、こういう話があったのでありまして、われわれも期待しておったのでありますが、今度さらに中央基準審の答申だということで通知を出された、この点についてのいきさつを御説明願います。
  632. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 社内預金につきましては、前の田中大蔵大臣からいまお示しのような御発言があったことも、私も伺っております。ただ現実の問題といたしまして、今日相当額の社内預金がある。御参考までに申し上げますと、現在三十九年十月末でございますが、これを実施しておる事業場は二万九千、その預金総額が六千二百億円と相なっておるわけであります。そういう関係から、一体これはどう扱ったらよろしいかということで御指摘のとおり知恵を、労働基準審議会の御意見を承っておったわけでございます。そこで、去る一月の十八日に同審議会から答申があったわけでございますが、この答申書にもいろいろ御主張があったことがうたわれております。大別いたしますと、組合の側では、むしろこれは廃止すべきであるという御主張であったようでありますし、あるいは使用者側からしますれば、福利厚生施設との関連もあるので、早急に廃止することにはむしろ反対である。こういった主張がそれぞれあったようでございますが、審議会全体といたしましては、とりあえずの策といたしまして、この管理方法等について、かくかくすべきだと、こういうことでこの御答申があったわけでございまして、そこでこれを受けまして、労働省としましては、いま御指摘のとおり、三月の二十三日に労働基準法施行規則の一部を改正する省令を出しまして、使用者側が扱っておりますこの預金の管理について、従来以上にこれを厳重に監督のできるようにいたしたわけでございます。そこでその事項としましては、この預金者の範囲であるとか、預金者一人当たりの預金額の限度であるとか、あるいは預金の利率及び利子の計算方法、預金の受け入れ及び払い戻しの手続、預金の保全の方法等を届け出させることにいたしました。なお、毎年管理状況をも報告させる、こういうことにいたしたのであります。今回の措置によりまして、預金の保全等につきましても、従前以上に完ぺきを期し得る、こういう体制になったわけでございますので、この線に沿うて今後一そう指導、監督を強化してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  633. 小柳勇

    小柳勇君 大臣は、認識が全然違っておるのですよ。いままでも会社更生法、その他基準法などで、団体協約によって預金は労働者のものです。その保護があったわけです。それがあったのに会社が倒れるから、会社の預金がなくなっていくわけですね。なぜ会社に預金するか、それは郵便局に預けますと利子が安い、会社のほうが高いという魅力、それは労働者の賃金が安いから、少しでも高い利子がつくならばという魅力で社内預金している。会社が倒れますとそれがふいになるわけでしょう。それをどうやって保全するか。この点がちっとも保全されておらない。しかも法の以下の――基準局長たちはそういうことが一体信じられますかね。新聞に大々的に社内預金の保護強化なんて書いてありますが、ちっとも保護強化になっていない。もう少し詳しく説明してくださいよ。
  634. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 保全の点につきましては、あるいは質権の設定であるとか銀行による支払い保証であるとか、そういうこともこの労使の話し合いによってはやらせようと、こういうことでございますが、詳しくは局長から御説明を申し上げます。
  635. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先生の御質問の内容は二つ考えられますが、一つは預金したものが、破産とか会社更生とかいったような非常緊急の事態になった場合に、どういうふうにして預金を保全するかということ、それからもう一つは初めからそういう憂いがないように、最初からどうしてきちっとするかということであります。その前段につきましては、御承知のように会社庭先法の適用を受けるという場合には、共益債権として保全される、保護されるわけでありますが、破産の場合にはそういった措置がなされないというので、今後どうするかという問題がございます。この点につきましては、問題は法務省とも関連してきます。特に会社、史上法の関係につきましては、法制審議会に会社更生法関係の特別の部会を設けまして、目下検討されております。私どももその委員になっております。いろいろな意見を開陳いたしました。今後さらに保護強化につとめる線で努力してまいりたいと存じます。  それから、切めから預金としての体制を整備するという点につきまして、従来はほとんど規制がなかった、預金の最低利率だけの規制があったわけでございます。そこで、協定そのものに、先ほど大臣が申し上げましたようなもろもろの内容を明らかにいたしまして、協定の履行という形におきまして、この保全を監視していこう、なかんずく、保全の方法につきましては、質権の設定であるとか、金融機関による保全、あるいは信託といったようないろいろの手段方法が考えられるわけでありまして、その過程におきまして、現実には、従のような社内預金のうまみというものはかなり減殺されるというのが、実際の姿じゃなかろうか。今回の措置のみそは、保全方法を徹底するということにあろうかと思うわけであります。よくこれを具体化いたしまして、協定にそれをはっきりさせないものにつきましては、届け出を受理しないということに扱う。これは労働基準審議会、労・使・公益二者がそういう了解のもとに事務処理をするように、こういう線を明確に出しておるわけであります。局長通達にもそのような趣旨を明確にいたしております。そのような手段を講じまして、当面の措置としては、破産とか会社更生といったような事態になるまでに、そういった保全措置を講ずる、こういう点を今回の労働基準法施行規則の改正、及び、これを受けた局長通達ということで処置したいと考えておる次第でございます。
  636. 小柳勇

    小柳勇君 法的に相当私は問題を持っておりますが、時間が――ここではできませんから、別の機会にいたしまして、大蔵大臣にお伺いしますが、これは労働者のほうでも相当問題にいたしております。昨年、一昨年、大きな会社の破産が問題になったのでございますが、時の大蔵大臣は、廃止の方向で検討するということを約束しておられるわけですが、大蔵大臣見解をお伺いします。
  637. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 方向としては、そのとおりと思います。ただ、これは実際問題とすると、そう急にはできないことであります。漸を追わなければならぬ。労働省ともよく相談して、その方向で努力いたします。
  638. 小柳勇

    小柳勇君 けさ厚生大臣が実は最後のときにおられませんでしたので、三点くらい私は意見を述べて確認しておかなければなりませんが、それは第一は、今回の性防法の改正というものが、私の午前の質問で、賛成の立場で意見を吐いたようにとられてはたいへんでありますから……。そもそも、この性病予防法昭和二十三年にできまして、終戦後の混乱のときに、しかも、薬のないときに、何とかして予防しなければならぬということで、もう町のいわゆる、そのころパンパンと言われておりましたそういう人を摘発することによって、最少限度に食いとめようというような思想でできておるように見受ける。これを結核予防法と比べますと、結核予防法は昭和二十六年にできておりまして、これは親切に予防する、そういう思想でつくってあるように見受けます。このいまの性病予防法改正は、午前中に話がありましたように、医者の届け出を簡素化するということと、あとは婚姻する場合の血液検査をただでやる、これだけがみそなんですね。これだけでは性病の予防はできぬと私は思うわけです。抜本的に改正しなければならぬと思うが、いかがでございましょうか。
  639. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は今回の改正は、現行法よりも数歩前進をした対策である、このように考えておるわけでありまして、御指摘のように、罹病いたしました者を早期に発見をして治療をする、そのことの前に、十分性病に対する正しい理解、啓蒙をいたしますことが、これが根本的な対策である、こう考えるのでありますが、不幸にしてかかりました君は、早期に発見し、早期に治療する、そして、それが他に蔓延しないように早く処置する、こういうことも性病対策として必要であると思うのでございます。また、売春の常習犯的な者につきましては、絶えず監視を怠らずに、そういう者からの伝染、感染というようなものを予防する、また、そういう人たちも、一日も早く病気がなおり、また再びさようなことのないように指導してまいる、こういう考えでやっておるわけであります。
  640. 小柳勇

    小柳勇君 根本的に、医者は届け出なければならぬと義務づけるところに、医者はなるべく届け出したくないわけです。それから病人は、氏名を明らかにすることを嫌う。この二つを何とかして押えつけるという思想でつくってあるわけです。それで、医師会だって、秘密を保持しなければならぬからと言って反対しておられる。また、病人は、性病であるということを明らかにしたくない。そこで、なるべくなら逃げて歩く。だから、性病はいつまでたってもなおらぬ。それが実績じゃないかと思うのですよ。ここにいろいろ、摘発の――届け出の数字がありますけれども大臣は、二百万人おるとおっしゃいましたけれども、ここに医者が届け出て医者が治療した数は、ごくわずかしか出ておりません。千台しか出ておりません。それで、あの法律が生きておると思っておられるのでしょうか。私はそういうような、いまの性病予防法改正する、たった二つを改正するだけでは、根本的にこれは間違いじゃないかと思うのですが、もう一回、ひとつ大臣見解並びに事務当局見解をお伺いいたします。
  641. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御承知のように、現行法では、医師がそういう患者を発見いたしました際には、二十四時間以内に届け出をしなければいかぬ。ここに相当無理があったようであります。物理的にも非常に無理があった。そこで、医師会側の御意見も十分とり入れまして、今回の改正では、一カ月間の余裕を置きまして、その間に届け出をする、こういうことに改正をいたしたような次第であります。  なお、私も、ただいま小柳さんから御指摘になりましたように、名前も全然秘して、また、そういう報告等もなされぬように、つまり、その人の名誉といいますか、そういうことを十分尊重するような方向で、だれにもわからないような形で診断を受け治療する、そういうようなこと等も、今後十分検討してみる必要があるのじゃないか。諸外国においてそういう例もあるようでございますので、今後の課題として研究してまいりたいと思います。
  642. 小柳勇

    小柳勇君 けさ、原因の中に、ペニシリンショックが非常に大きく治療体制を後退させた、また、抗性物質に対する菌の抵抗力が強まったとおっしゃいましたが、私どももそう思います。これに対して、厚生省は、たとえばペニシリンの研究とか、あるいはショックに対する啓蒙とか、どのくらいの費用をかけて今日まで努力してこられたのでしょうか、お聞きいたします。
  643. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この性病、特に梅毒の場合におきましては、早期に発見し、早期に治療するということでありますれば、非常になおりが早い、また完全になおるのでありますが、また、現在の、すでにあります薬で十分治療ができるということになるのでありますが、これには、手おくれになりますと、十分な完治ということができない面があるのであります。そこで、私どもは、現在の薬剤、医薬品に満足せず、今後さらに研究開発を進めていきたいと、このように指導いたしておるのでありますが、具体的な内容につきましては、専務当局から……。
  644. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) お答え申し上げます。  性病治療につきましては、治療方法、これにつきまして、従来、厚生科学研究費その他で研究を学名の方にお願いをいたしまして、で、そういうものをひとつもとにいたしまして治療指針というものを作成して、一つのガイドとして、一般の医師の方々の治療の指針に供しているわけでございます。で、どれだけ、いわゆる経費を使ったかと言われますと、いまその額としては覚えてはおりません。
  645. 小柳勇

    小柳勇君 幾らですか。
  646. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 覚えておりません。
  647. 小柳勇

    小柳勇君 覚えておらぬ。――五年くらい前ですね、五年ぐらい前は、ペニシリンがあるから性病も心配ないと、それから結核のほうも薬ができたから心配ないと、こういうような話でありました。だから、ペニシリンが、ショックがあって死なれたならば、その原因を探求して、その薬でなおるならば、病源日本にないならば、青少年が少し非行がありましょうとも、あるいは売春がありましょうとも、性病というものは蔓延せぬのじゃないでしょうかね。その病源菌を殺すというその処置は、厚生省がやらぬでどこがやるのでしょうか。そのペニシリンショックに対する研究なり、あるいは、その宣伝なり、どのようになされたか、なしておられぬのか、もう一回お聞きいたします。
  648. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 厚生科学研究補助金、医療研究助成補助金、こういうところから助成補助をいたしまして、そうして治療医薬の開発研究を進めておるのでありますが、いま私、不幸にしてその金額等ここへ持っておりませんので……。
  649. 小柳勇

    小柳勇君 大蔵大臣、私いま申し上げますがね、ことしのこの性病予防対策費の査定額は五千二百七十八万円です、わずかに。五千二百七十八万円です。一億にも足りません。そして健康診断費補助金が、今度の新しく法改正によりますこの金額は、二千二百九十万円です。これで総理大臣が言われるように、青少年対策、非行少年対策とか、あるいは性病対策とかおっしゃいますけれども、どうでしょうかね、日本の佐藤内閣、行政のあり方として、いかがでしょうか。大蔵大臣からお聞きいたします。
  650. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 社会保障費はまあ相当多額に出しておる。国の歳出の重要な部分を占めております。これは御承知のとおりであります。その一つ一つは、その一つ一つの仕事の目的に従いましてやるわけであります。ただいま厚生大臣が申されておりますように、性病対策としては、妊産婦の検診、また結婚前の青年の検診、こういうものに対しまして全額公費でやっておると、こういうわけでありまして、これはもう仕事をどういうふうにするかということによって金の額はきまるのであります。決してそう寡少のものではない。それだから、日本の社会保障は恥ずかしいのだというようなものじゃないと思います。
  651. 小柳勇

    小柳勇君 厚生大臣が午前立たれたあと、文部大臣、自治大臣に、私は、成人式に出る青年が毎年百五十万人おられる、その人たちが自発的に、集団的に血清反応検査したいと申し出る。それを無料でやって、もし、その中に疑わしい人があったら、これを秘密で国家が無料でなおしてやる、このような施策をしたらいかがでしょうかと言いました。これに対して厚生大臣見解――費用はわずかしか要らぬ、私、計算してみました。見解をお聞きいたします。
  652. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 非常に具体的なりっぱな御提案であると、こう思うのでありますが、私もそのことを、婚姻前の血清反応検査に踏み切る前に、いろいろ検討いたしたのでありますが、成年式の際におけるそういうことも、あるいは往年の徴兵検査等に結びつけられて、いろいろ社会的に御批判が出るのではないかという御意見も一部ございました。これは全然趣旨が違う、民族の純血のために私はこれは必要なことであると、こう考えておりますが、十分世論の啓蒙ないし御理解を待って、だんだんそういう方向に進めてまいりたいと考えております。  なお、はなはだあれでございますが、けさ午前中に御質問がありまして不明確になっておりました点を、この際明らかにいたしておきたいと思います。それはアメリカの軍人等に対する性病予防法の十二条の適用の問題でございます。性病予防法の十条及び十二条の規定は、日本人、外国人を問わず適用される。しかしながら、第十二条の後段のほうにあります「当該吏員に健康診断をさせること」、こう規定をいたしておるのでありますが、この点は、法権力の行使としての事実行為でありまして、これは日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定、これに基づく施設及び区域の合衆国軍人等については、当該施設及び区域内に立ち入ることができないので、事実上は適用されておりません。そこで、昭和二十七年に米軍との間で話し合いをいたしまして、駐留軍に関する性病問題につきましては、相互の信義に基づいて、できる範囲の協力をお互いにする、こういうことで緊密に連携をとり、連絡通報をやりまして、この性病に対する対策を講じておるということで、決して野放しになっておるわけではございません。特に米軍の場合におきましては、聞くところによりますと、毎月一回ないし二回、定期的な検査も実施をいたしておる。その際に、日本側に情報を提供されたことも実はあるようなわけでございますが、できるだけの連絡をとりまして性病対策を実施いたしておる、このことをつけ加えて御報告をいたします。
  653. 小柳勇

    小柳勇君 最後でありますが、さっきの数字を概算してみますと、百五十万人の青年に対しまして、検査費用単価百五十五円で二億三千二百五十万円、発見率二%といたしまして、おのおの梅毒、淋病、一万五千人、治療費が単価、梅毒一万九百四十四円で一億六千四百十六万円、淋病四百八十一円の単価にして七百二十一万円、両方いたしましても一億七千万であります。一億七千万。これを希望するたとえば青年団、あるいはその他組合の青年部なり、あるいは国民が、倍にいたしましても、約三億でこの治療なり検査ができるということでございまして、そういうことで、ひとつ性病の撲滅のために、なお関係当局の御努力を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  654. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 小柳君の質疑は終了いたしました。  次回は明日午前十時開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後七時五会散会