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1966-03-23 第51回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十三日(水曜日)    午前十一時四十二分開会     —————————————    委員の異動  三月二十三日     辞任         補欠選任      豊田 雅孝君     小山邦太郎君      梶原 茂嘉君     古池 信三君      佐多 忠隆君     加瀬  完君      宮崎 正義君     鬼木 勝利君      多田 省吾君     黒柳  明君      春日 正一君     岩間 正男君   出席者は左のとおり     委員長         石原幹市郎君     理 事                 小沢久太郎君                 大谷藤之助君                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 赤間 文三君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 北畠 教真君                 草葉 隆圓君                 小山邦太郎君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 西郷吉之助君                 櫻井 志郎君                 内藤誉三郎君                 平泉  渉君                 平島 敏夫君                 増原 恵吉君                 松野 孝一君                 吉武 恵市君                 稲葉 誠一君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 林  虎雄君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 鬼木 勝利君                 黒柳  明君                 小平 芳平君                 中沢伊登子君                 岩間 正男君                 山高しげり君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        農 林 大 臣  坂田 英一君        通商産業大臣   三木 武夫君        運 輸 大 臣  中村 寅太君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        労 働 大 臣  小平 久雄君        建 設 大 臣  瀬戸山三男君        自 治 大 臣  永山 忠則君        国 務 大 臣  藤山愛一郎君        国 務 大 臣  松野 頼三君    政府委員        防衛庁防衛局長  島田  豊君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     向坂 正男君        経済企画庁総合        開発局長     鹿野 義夫君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省中近東ア        フリカ局長    力石健次郎君        外務省経済局長  加藤 匡夫君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合  星  文七君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局長  谷村  裕君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省国有財産        局長       松永  勇君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君        大蔵省国際金融        局長       鈴木 秀雄君        国税庁長官    泉 美之松君        文部省調査局長  蒲生 芳郎君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省保険局長  熊崎 正夫君        厚生省年金局長  伊部 英男君        農林省農林経済        局長       森本  修君        水産庁長官    丹羽雅次郎君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        運輸省自動車局        長        坪井 為次君        海上保安庁次長  岡田京四郎君        気象庁長官    柴田 淑次君        郵政大臣官房長  鶴岡  寛君        郵政省電波監理        局長       上田 弘之君        郵政省電波監理        局放送部長    館野  繁君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        建設省計画局長  志村 清一君        建設省都市局長  竹内 藤男君        建設省道路局長 尾之内由紀夫君        自治省財政局長  柴田  護君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十一年度一般会計予算内閣提出衆議 院送付) ○昭和四十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の移動について御報告いたします。  本日、春日正一君、豊田雅孝君、梶原茂嘉君が辞任され、その補欠として、岩間正男君、小山邦太郎君、古池信三君が選任されました。     —————————————
  3. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、  以上三案を一括して議題といたします。  昨日に続いて質疑を行ないます。羽生三七君。
  4. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは主として外交問題を中心にお尋ねをいたしますが、安保条約期限満了の時点でどう扱うかということはまだ先のことでありますので、その取り扱いについては触れません。ただ、これを外交上、政策上の問題としてお尋ねをいたします。  まず、本予算委員会で、今日まで明確になったことは、安保期限満了の際、それがあらためて一定期間の再取りきめをするか、あるいは自動延長かということで、とにかく政府安保を継続する意思のあることは明らかになったわけです。いま一つ明確になったことは、日本核攻撃を受けるような事態が起こった場合は、米国による防御にゆだねると。そのことばの意味は、非常に核のかさとかということであいまいでありますけれども、いずれにしても、一般的には米国の核のかさのもとに入る、この二点が明らかになったと思います。  そこでお尋ねいたしたいことは、日本自身核兵器を持たぬ、あるいはまた、持ち込みを認めない、このことは、それなりに重要な意味なり、重要な要素を持っております。それは確実であります。しかし、終局的には米国核防御下日本を置くということになれば、直接的にはとにかくとして、集団安全保障という立場では、みずからが持たぬということに特別の意味はなくなるんではないですか。これいかがですか。
  5. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どうもちょっと御質問の要点がよく了解しかねますので、私の答弁の次第によっては、また再質問をちょうだいしたいと思いますが、とにかく、唯一原子爆弾被爆国として日本は、かようなものを国際的に見て、みな競ってこういう開発をするということは、世界平和のためにもおもしろくない、そういう信念の上に立って、自分としてはこれを開発しない、こういう決意をしておるのでございまして、意味がないことは私はないと考えます。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 いや、アメリカ防衛下に入るなら同じじゃないかということです。
  7. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いや、核を持とうと持つまいと、とにかく、今日においては、一国で自分の国の安全を保持するということが非常にむずかしい情勢に置かれておるというわけでございまして、集団安全保障がここに必要になってくる。もちろん、国連世界平和維持唯一機関として、さらに徹底的にその機能を発揮するということになりますれば、集団安全保障もあるいは要らなくなるかもしれません。現状においては、とにかく、自分の国の安全を唯一考えなければならない。それが脅威されるという状況においては、私は日米安保体制というものは非常に重要な意味を持っておると、こう考えます。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 日本自身が持たないということ、これは非常に意味があると思います。しかし、結局、集団的にはアメリカ核防備下に入るということになると、今後の核拡散防止条約等の討議の際に、私は相当に大きな影響が出てくると思いますが、これはあとから触れます。   そこで、日本自身核兵器を持たない、また持ち込みを認めない、この基本的な方針に変わりはないとして、また同時に、防衛庁の第三次防衛計画あるいは第四次になっても、一般的な防御力は増強しても、核兵器に関する限りは、それに越すことのできない明確な一線があるはずであります。政府としては、それをカバーするものが日米安保条約であり、さらには、アメリカによる核の保護下日本を置くという、いまお話しになった集団安全保障政策であると、こういうものだと思います。しかし、そうだとするならば、結局、日本は理論的にも実際的にも安保条約から離脱できることはないという結論になるのじゃないですか、実際問題として。保安は半永久的なものと、こうお考えになっているのではございませんか。いかがですか。
  9. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 永久か半永久か、それはしばらく論外に置いて、少なくとも現状においては、また、予想される近い将来においては、これを離脱するということは不可能であると考えております。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 防衛庁長官、いかがですか。
  11. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 核兵器というものの発達によって、核を防ぐにはどうするか、これは世界じゅうの問題です。したがって、核を持たない国々が、どうやって、これを条約で防げるものなのか、外交で防げるものなのか。しかし、強い国は——強いと、言うと語弊がありますか、要するに、工業力国民力の強いのは、核に対する力は、核とその被害の大きさをお互い知っておりますから使わないんだということが抑止力となって、核には核を持つべきだという方針をとっておる国もあります。したがって、核に対してどう防ぐかということは、一つは、力と対等の力を持つことによって抑止される。しからずんばどうやって防ぐか。これは世界じゅうの国の安全を考えるものの今日の焦点だと私は思います。まだ明快なものは出ておりません。ある者は、核を持たない国同士条約を結ぼうじゃないかという意見、これは拡散防止思想はそこから私は出てくると思います。しかし、これもまだ完全じゃないんだ。したがって、国連安全機構における完全な力が発揮されない今日、個々に自分の国の安全をどうして守ろうかということは容易なものじゃないと私は思います。これは理想と思想はありますが、現実には容易なものじゃない。これが今日、わが第三次防においても、非常な大きな問題の焦点だと私は思います。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 核は抑止力であるかもしれないが、同時に強大なる破壊力であることをまず銘記していただきたい。  そこで、では日本がどのような条件のもとで日米安保から離脱することができますか、具体的に。
  13. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国の安全を脅威されない、そういう状態になれば、離脱できると思います。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 中国核開発と関連をして、この核、核兵器に対する日本態度が非常に微妙なものになっておると思います。それはとにかくとして、中国が核を持てば、それに相応する日本防衛力ということで、日本みずからか、あるいはアメリカに依存するかという選択の問題は別としまして、勢いそういう方向に発展していくことは、これは決定的だと思います。したがって、そうである限り、安保からは脱却できないし、際限のない力の均衡拡大になっていくと思う。これでは問題の解決にならぬと思う。これはもら水久に、国際的に何らかの安全の体制ができるまでは、永久に、安保から脱却できない、こういうことになる。そうではなしに、日本を取り巻くアジア緊張を緩和する政策をとることによって、核戦争に巻き込まれたり、あるいは無限安保を続けるというような客観的な条件を変革することが、何よりもまず要請されるのではないかと思う。ところが、現実日本外交は、ベトナム戦争では米国立場を支援しておる。また、中国問題では、先般また重ねて重要事項指定方式を表明しておる。一方、日韓国会の際私が、ある種の国々との不可侵条約の締結を求めましたが、これにも賛成されない。また、非核武装宣言を提起いたしましたが、これも拒否された。さらにまた、先般の当委員会で、日本が核非武装を耳管するとともに、相手国、つまり、核保有国日本攻撃しないという相互保障を考慮してはどうか、この提案にも反対された。おそらく政府の意図は、一片の条約にどれほどの信憑性を託し得るか、こういうことだろうと思いますが、しかし、そういう具体的な外交政策一つ一つ積み重ねながら、同時に、世界的な軍縮を実現させ、終局的には核兵器全面禁止に持っていく、そうでない限り、これは際限のない力の均衡拡大安保無限の継続になると思います。あるいは日本みずからが核保有をするということに発展するかもしれない。理の当然でしょう。なぜ、少しでも緊張緩和に役立つことを具体的に取り上げようとしないのです。全部廃止でしょう、反対でしょう。それで、ただ一方の防衛力の強化とか、核に対抗する手段とか、それだけを問題にされておる。これが今日の事態における安全保障唯一の道でございますか。お尋ねいたします。
  15. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 結局、国際情勢が客観的にどうなっているかということのとらえ方ではないかと思います。日本のただいま置かれておる情勢は、ただ日本の対国際情勢に対するかまえ方、考え方、そういうものだけで解決するものではない、こういうふうに考えるからであります。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 時間が私は制約されておるので、余分なことを言うあれがないのですが、私はここで、なまいきなようでありますけれども、高度な政治論をやっておるつもりです。そういう意味で、本質的なひとつ見解をお述べいただきたい。そんな技術的な問題じゃございません。  そこで具体的にお尋ねいたしますが、この拡散防止条約大国核保有既得権利を確認するだけのものであるならば、われわれも無条件では賛成をいたしません。しかし、拡散防止とともに、同時に、終局的には、一定期間の間に漸次核保有国の核を漸減して、終局的にはこれを全面核停、完全廃止に持っていくという、こういう種類のものであるならば、熱意を持って検討に値すると私は思う。これについて、政府は、いまジュネーブの十八カ国軍縮委員会で問題になっておりますが、基本的には、どういうお考えを持っておいでになりますか。
  17. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 核拡散防止条約というものが、ただ従来の核開発した大国をそのままにしておいて、まだ未開発の国に対して、これを開発してはいかぬ、持ってはいかぬ、こういうようなことは、これは不公平である。能力を持ちながらこれをみずから抑止しておるという犠牲とマッチして、核保有国核軍縮の趣旨に沿うてそれ相応の姿勢を示すということが、この条約の私は成功の一つ基本線である、こう考えます。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 まあ、その幕本線は漸次解明するとして、日本が核非武装を宣言するとともに、これは先般も申し上げましたが、相手国日本攻撃しないという相互保障を、二国間協定あるいは共同宣言の形で実現させて、そして他方、完全な世界的な軍縮、完全な核禁国際協定条約を成功させることが大事なんじゃないですか。それができるまでは何にもやらぬというような考え方は、私はおかしいと思う。緊張緩和に役立つことがあるならば、どんなことでも一つずつその努力を積み重ねていく。そうでない限り、先ほども申し上げたように、安保無限拡大につながるわけです。そういうことに努力する御意思はございませんか。私はソ連提案を必ずしもうのみしているわけじゃございませんよ。全然違います。独自の立場です。
  19. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ非武装宣言の御質問は、しばしば私も御質問を受けておることでありますが、日本はもうすでに唯一被爆国として、その体験からこういうものを日本開発しない、持ち込みも許さない、こういう態度をとっておるのでありますから、いま日本が非武装宣言をするというようなことは、何ら意味をなさない、プラスに一つもならない、そういうことでありまして、いままでの日本の実績から見て、それは当然のことでありまして、少しも世界の平和への前進に対して何ら害与するものではない、こう考えます。でありますから、この問題は意味がない、こういうことで従来御答弁申し上げておったのでございます。  それから、いろいろな核軍縮その他、とにかく、いわゆる世界平和のためのアイデアというのはたくさんあります。たくさんありますが、やはり現在の現実に即して、そして一歩一歩これは前進して初めて意義があるのではないか。ただ、ばく然と空ばくたる一つアイデアを乱発しても、私は意味がない、現実に即してやはり一歩一歩進んでいかなければならない、こう考えます。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 私の質問は具体的なんです。核非武装宣言のことだけ言っているのじゃないんです。そうして相手国の、核保有国攻撃日本には行なわないという保障を求めながら、そういう相互保障条約を二カ国間で締結するなり、共同宣言をして、さらに進んで軍縮核兵器全面禁止他方で同時に行なっていく、それを言っているわけです。私の言うことが、なぜ非現実的で、空想的でありますか。あなたのほうがよっぽど現実追随主義で、こんなことで日本外交ができると思いますか。全然それは問題じゃありませんよ。  そこで、それじゃもっとだんだん具体的に伺いますが、中国核開発と関連して、日本防御力の増強が問題になっていることは、先ほど申したとおりです。問題は、中国との外交交渉も持たず、国連加盟を阻止しておる、こういう条件のもとで、どうして日本安全保障が実現できますか。国連の場で世界的な軍縮を実現させようとしても、中国国連に入っておらないのですから、また、中国もフランスも部分的核停条約にも参加しておらないのですから、したがって、世界的な軍縮が実現できるはずはない。ただ、しかし、この場合、政府は、中国世界軍縮会議参加には異論はないわけであります。これはこの前、当委員会でその意向を表明されました。それならば、その実現のために何らかの努力を払うべきではありませんか。中共参加するかしないかは別の問題であります。その努力はどうしておやりになりませんか。
  21. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中国とはただいま国交を正常化しておりませんので、政治的な直接の折衝はいま閉ざされております。しかしながら、世界軍縮会議中共参加すべきであり、参加を期待するという政府意見としては、これは明らかにしておるのでありますから、具体的な介入とか折衝とかというようなことはしばらくおくとして、日本中共に対する期待、世界軍縮会議に対する日本態度、こういうものはもうすでに明らかになっておる次第でございます。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 どういうことで実現するか。中国立場なり、国連の場なり何なりでどうして実現するか。どういう働きかけをやるか。
  23. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中国がまずそういう世界軍縮会議というものに対して賛意を表するということが必要であろうと思います。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 いや、そんなことではだめなんですよ。賛意を表する意向を確かめる前に、世界関係各国に強力に働きかけて、中国が応ずるような条件をどうしてつくるか、が問題なんであります。  そこで、ジュネーブ十八カ国軍縮委員会日本参加を希望しておるんですか、どうですか。
  25. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本はかつて十八カ国軍縮会議参加意思を表明して、かなりその方向に行動を起こしたことがあるのでありますが、これは成功しなかったのであります。今後何らか適当な機会においてわれわれの宿願を果たしたい、こう考えております。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 もう一つは、一九六七年までに、世界軍縮会議を開くために設けられる準備会議、この参加を希望しておるようです。希望するどころか、本年の二月十四日の朝日新聞座談会で、橋本官房長官は、佐藤総理が、クズネツォフソ連外務次官チャルフオント英軍縮相ハンフリー米大統領等に、日本参加協力を要請しておると、こう官房長官は語っておりますが、この世界軍縮会議準備会議参加は、官房長官談話どおり日本も希望して積極的にやっておると考えてよろしゅうございますか。
  27. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 準備会議を開くそのまた前提としてのいろいろな国際的な動きがあるのでありますが、それもまだ十分に実っていないというのが現状でございます。日本としてはもちろん準備会議にも参加をしたいという希望は持っておりますけれども、実際の運びは遅々としておる、こういうのが現状でございます。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 もし、先ほど来の外務省の、世界軍縮会議は望ましい、中国を加えての会議は望ましいというならば、積極的にこれを進めるべきであります。  それからもう一つは、日本は近くスエーデン等数カ国とともに核探知クラブ創設会議参加技術面国際協力をする意向と言われておりますが、このクラブヘの参加は決定しておるのでありますか。
  29. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) スエーデンが提唱しておる核探知クラブ、これは会議を起こそうというだけでございますが、五月に大体開催される運びでございます。日本からは専門家を派遣したいと、こう考えております。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 専門家ですが、もちろんこの会議には参加するということですね、これは。  そこで、こういう会議日本から参加を求めることも重要でありますが、しかし参加すること自体に特別の意味があるわけじゃない。その限りで、真の世界平和のために、どのような寄与をするか、どのような貢献をするかが問題なんです。そういう意味で、日本自身参加が実現した場合、どういう姿勢でこの会議に臨むか、この一連の会議——これが決定的に問題だと思う。各種の会議参加を希望する以上、日本としての基本的な軍縮構想というものはあってしかるべきだ。これはコンクリートになったものは、いまにわかにここで私がお尋ねしても無理でありますが、およそこういう方向だというものがなしに、ただむやみやたらに会議への参加だけを希望しても、これは始まらぬと思う。何を日本は指向しておるのか、具体的にお答えをいただきたい。
  31. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御承知のとおり、いま部分的実験停止条約が成立しておりますが、ただ一つ地下実験についてこれは漏れておる。でありますから、全面実験停止というところに進んで、これ以上核の開発というものはもう積極的にはやらないんだと、こういうことがまず必要であると考えますが、御案内のとおり、ソ連は、核地下実験というものに対する監査、そのために自国の領土内にそういう監査機関が入ることをがえんじない。それでまあこの問題が行きつかえておるのでありますが、スエーデンの提唱するのは、必ずしもその場所に近づく必要はない、精密な地震探知器というようなものであろうかと思いますが、そういう学問が相当進んでおる。であるからして、やはり地震国である日本でもそういう地震探知の技術が非常にすぐれておる。そういうようなことで、必ずしも領土内に入る必要はない、どこにおっても探知ができるんだということになれば、全面実験停止条約というものは成立するはずである。そういうことで、日本に対する呼びかけもあるのでありまして、日本といたしましては、世界平和のためになることでありますから、日本の従来の技術をもってこれにあくまで協力して、そうして一日も早く全面実験停止条約というものが成り立ち得るようにしたい、そういう気持ちを持って、これに参加したい、こう考えております。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 外務省国連局に軍縮室を新設すると聞いておりますが、その構想なり規模を承りたい。
  33. 星文七

    政府委員(星文七君) 実は軍縮課というものをわれわれは希望しておったのでございますけれども、それができませんために、まあ国連局の政治課に属して数名からなる軍縮室という一つのチームをつくりたい、そういう構想であります。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 これは数年前から当委員会で、佐藤尚武氏、あるいはわれわれ同僚、そういうことの必要性は今日まで述べてきたわけですが、ただ問題は、これは単なる技術問題ではなしに、高度の政治的な裏づけが必要だと思う。そういう配慮なしに、単に技術的な小手先で何か草案をつくってみただけじゃだめなんです。そういう配慮は十分できておりますか。
  35. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もちろんそういう配慮のもとに、とりあえずそういう資料を備えつけたり、あるいはいろんな世界じゅう軍縮に関する動きをつかまえて、そしてこれを整理するというような、そういう機構を一つつくりまして、そして高度の判断をこれに対し加えると、こういうしかたでまいりたいと、こう考えております。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 今度日本はいよいよ、安保体制下で、核政策について随時アメリカと協議をすると、このようにきまったようですが、日米の核戦略の協議も行なわれるのかどうか。全く、拡散防止とかあるいは全面軍縮とかいう、そういう軍縮面の協議が中心になるのか、その辺はどうですか。
  37. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 全面的に軍縮の問題を掘り下げていきたい。その一つの重要な項目として、核軍縮ももちろん入るわけであります。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 核戦略はやらないんですか。
  39. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) みずから日本が核戦略に対して主体性を持つという気持ちはいまのところございません。ただ、世界の核戦略がどうなっているかということは、これはあるいは核軍縮を追求する上においては、これは必要なことだと思います。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 外務省はですね、同時に安保条約の運用にあたって、アメリカによる日本の防衛体制を明確にするとともに、原子力空母のエンタープライズの立ち寄りを認める方向に進んでおると言われますが、この点はどうですか。これは防衛長官から……。
  41. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) エンタープライズの寄港の申し出もまだ受けておりませんし、どういう状況か、一切そのことについては聞いておりません。しかし、われわれは基本的には、原子力潜水艦以来、安保条約というもののワク内、規定内のことは安保条約の精神によって守るべきである。ただし、エンタープライズの入港予定あるいは通告はまだ私は一切受けておりません。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 来たときはどうする、通告が来たとき。
  43. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) これは外務大臣がお答えになるほうがいいかもしれませんが、私に聞かれれば、その時点においで、諸般の日本の規定があります。規定に違反していなければ、拒否をするという理由はない。規定は御承知のごとくすでにございますから、その規定に照らして、その時点において判断する、私はこう思います。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 外務大臣は……。
  45. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは拒絶する理由はないと思います。しかし、実際問題として、向こうから寄港の申し出がございません。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 この論議をやっておると時間なくなりますので、これはまた分科会かなんかで……。  安保期限満了まであとなお数年あります。しかし、今日の世界情勢は流動が激しい。したがって、この間、安保を必要としなくなるような国際情勢をつくり上げることに全力を注ぐべきではないかと思う。それなのに、そういう緊張緩和の手段は何らとらない。とらないどころか、力の均衡拡大政策ばっかりでしょう、先ほど来の御答弁は。そうすると、今日から数年先の安保の長期同定化を云々するのは筋違いじゃありませんか。おかしいじゃありませんか。いかがですか。なぜそういう努力をしませんか。
  47. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 平和共存ということばがございますが、東西の関係がいわゆる平和共存というような時代がいつ来るかという問題だと思いますが、しからざる限り、われわれはやはり国の安全を絶えず脅威されるというような状況に置かれておる、こう考えなければならぬと思うのであります。日本のこの考え方あるいはかまえ方、そういうものによってこの極東の緊張あるいはアジア緊張が緩和されるというならば、これはもう率先してそういう方面に努力すべきである、こう考えますが、これは客観的な情勢によってきまる問題でございますから、日本ひとりがいろいろなかまえ方をしてみたところが、どうにもならぬ。でありますから、現実の問題としては、やはりこの情勢下においていかにして日本の安全を確保するかと、こういうことにあると思います。
  48. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと関連。  さっきから外務大臣のお話を承っておってちょっとわからぬのは、羽生委員が具体的に提案をいたしております非核武装宣言ですね、こういったものについて、必要ないと、こうおっしゃる。その理由としては、日本核兵器を持たないし、またアメリカ持ち込みを許さない、だからそういうことはないのだと、こうおっしゃるのだが、さっきの防衛長官の発言の中でもわかりますように、中共核兵器を保有するようになってきた、したがって、これに対する脅威を日本は受けておる、これに対しては、やはり力には力、核にはやはり核をもって抑止力を生み出していく、こういうお話ですね。こうなりますと、日本核兵器を持たないわけですから、したがって、アメリカの核の中に入っていく、かさの中に。そうなりますと、勢い日本に核を持ち込むことについて日本がこれを拒否できない現実に具体的にはなるのじゃないでしょうか。現に、いまのエンタープライズの問題でも、この潜水艦が核兵器を持ち込むか持ち込まないか、これはわかりません。わかりませんが、もしかりに持っておったとしても、これを日本に事前に通告をするということになっておるけれども、これはなかなか信憑性がない。そうなりますと、そのことも問題があると同時に、もっと常々と日本が核の中に入っていくという政策をとっていけば、持ち込みを拒否できないのじゃないですか。そういうところに、私は羽生委員のさっきからの具体的、建設的な提案があったと思うのです。そういうものを全然外務大臣は拒否しておるんだが、その理屈がわからない。もう一回ひとつよく説明してもらいたい。
  49. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま核拡散防止条約一つとらえても、なかなかまとまりにくい。みんな世界じゅう——日本のような国がありまして、核は絶対に開発しない、核の持ち込みも許さない、こういったような国が多ければ、もう文句なしに、核の軍縮問題等についても、よほど明るい日もさしてくると思うのでありますが、日本がみずから核を開発しない、持ち込みも許さない、私はこういう態度というものは世界の平和にとって非常に大きな力になっておるものと考えております。でありますから、そういうことに非常に大きな意味がある。ただ、自分の国の安全ということにはこれはかえられない。そこで集団安全保障条約を結んでおるのでありますが、これは核の攻撃であろうと、しからざる兵器の攻撃であろうと、とにかく日本アメリカの強大な戦争抑止力というものによって国の安全をはかっていこうと、こういうかまえ方は、これは決して日本の核に対する政策と矛属するものじゃない。ただしかし、あくまで国内には持ち込みを許さないという立場をとっておるのであります。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、終局的には、たとえばベトナム戦争が終結するとか、中国国連に加盟するとか、そういうアジアにおける特殊的な情勢でなしに、世界的な軍縮ができるまでは安保は継続すると、こう了解してよろしいのですか。
  51. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先ほども申し上げたように、日本立場から、日本の安全は決してもはや脅威されておらぬ、そういう認識に立つ場合においては、安保条約は不要であると、こう考えます。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 これは短い時間の中で論議するには、あまりにも大きな問題ですから、今度は純粋に技術的な問題を二、三お尋ねいたします。これはおよそわかり切ったことのようでありますが、念のため、お尋ねします。  安保の期限延長という場合、正常な議決を経て再延長するという場合は、これは明確であります。また廃棄の場合も明確であります。これは通告後一年で終了。今度は一方、自動延長論というのが、しばしば言われておりますが、この場合、一年前の廃棄予告を行なわない限り、無期限に条約は効力を延長されると解する向きもあります。しかしそれ、は同時に、期限後は締約国の一方が廃棄の意思を表示しさえすれば、相手国の了解を得るまでもなしに廃棄になるんではないかと思います。これはわかったことのようでありますが、はっきりさしてほしいと思います。自動延長論は無期限と解されているが、これは廃棄を通告するまでのことではありませんか。これは全く技術的なことです。
  53. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおりであります。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 その次にもう一つ。この存続の場合、一方法として共同声明論もあるわけです。その共同声明の中に期限をつけるという、こういうやり方を考えておる向きもあるようでありますが、これに国際法上、有効なのかどうか。共同声明の中に期限をつける問題。
  55. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約はそのままにして、共同声明をするということが、どの程度の効力を持つか、こういうお尋ねでありますね。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 共同声明の中で、期限をつけた場合ですね、何年とか、五年とか十年とか。そういうことは国際法上有効かどうか、条約でなしに……。
  57. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは共同声明をあとからつけ足したわけでございますが、それは多分に政治的な意味しか持たないと思いますが、なお、その点は条約局長から法律論的にお答えいたさせます。
  58. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 共同声明というものは、一般に法的な拘束力のないような文書に使われる呼び名であると思いますが、そういう通常の意味の共同声明でございましたら、法的拘束力はございません。したがってまた、それに期限をつけるというようなことも、その例がないというふうに考えます。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 安保の問題はこの程度にいたしておきます。実はもっと本質的な問題でたくさんお尋ねしたいんですが、時間の制約がありますので、次に、昨日当委員会で問題になった日韓の漁業関係、海洋丸事件に関連して二、三のお尋ねをいたします。  それは、きょう衆議院の外務委員会が午前中あったようですから、そこで問題になったかどうかわかりませんが、この乗り組み員の釈放について、韓国政府に強力に交渉するように佐藤総理が外相に指示した、これはもちろんけっこうなことであります。当然だと思います。しかし、この問題を岸元総理の訪韓の際の交渉に期待をかける、こういう意向も表明されておりますが、これはどうでしょうか。私はこの種のことは通常の外交ルートを通じて厳格な交渉と要求にすべきで、政治的な会談に期待するのは、これは筋違い、だと思います。この点はいかがですか。
  60. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 岸元総理の一行の訪韓は、純然たる親善訪問でございまして、特に外交上の権限を持って向こうに行かれるということはございません。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 しかし、その問題に触れるんでしょう。
  62. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いや、それは向こうから話しかけられた場合に、話題として出る場合には、それは話題になるかもしれませんが、そういう問題をこの一行に依頼するということはあり得ません。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 なぜ私がこの問題を特にここで問題にしたかといいますと、政府は日韓友好ということで、あまりこの問題をこじらせたくない、こういうことだと思います。しかし明確なルールを確立して、けじめをはっきりさせなければ、この種のことは今後も相次いで起こります。その意味で問題をあいまいにすべきではない。つまり漁民の釈放ということが、韓国側の専管水域を侵したということを認めた上で、政治的妥協の産物として今回は釈放してやろうという、そういう決着をつけることは、私はまずいと思う、絶対まずいと思う。つまり岸さんが行かれるか、行かれた場合かどうかは別として、日韓友好ムードで今回だけは釈放してくれと、あの事件はしかしどうなったかはっきりわからぬという形で決着をつけるべきではない、あくまでもこれは外交上のルールに従って処置すべきである。あとからこれは必ずこの種の問題が続発する可能性がなしとしませんから、この点は重ねてもう一回明確に、正常な外交ルールでやるということを明らかにしていただきたい。
  64. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日韓漁業協定は、漁業に関する新しい秩序を十分に論議し合ってつくったものでございまして、この秩序を守るか守らぬかということが、結局肝心なところでございます。そういう意味において今回の紛争は、この新しい秩序に従って厳格にこれをやはり分析して、そうして将来再びかようなことが起こらぬようにしなければならぬ、こう考えております。それと漁船漁民の釈放の問題は、これはまた別に考えなければならぬ。問題がはっきりするまで、船も人も一カ所に閉じ込めておくという必要は、私はないと思います。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 それはわかりました。  そこで警備艇の問題ですが、これは昨日、北村委員、亀田委員の関連質問等で問題にされましたが、これはあとからおそらくきのうの亀田委員から政府に対する要求に基づいての御答弁があることと思いますが、この場合、韓国の警備艇のレーダーなどの位置測定装置が全く不十分だ、これが問題なわけです。紛争の焦点となる漁船の位置をどうして確認するかが今後の最大の課題になると思います。その意味で今後は現場位置を相互に確認するルール、これを早急に確立する、それがない限り、これは絶対いつまでたっても政治論で終始することになる。そうではなしに、現場の位置を確認するルールをどうしてつくるか、それができない限り問題の解決にはなりません。追跡権のことはその次の問題です。いかがですか、そのルールを確立する何らかの方途をお考えになっておりますか。
  66. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ルールはちゃんとできております。どこからどこまでが専管水域、どこから共同規制区域ということは、きちんとできております。ただ自分がはたして……
  67. 羽生三七

    羽生三七君 確認するルールです。
  68. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どこにあるかということは、これはもう精密な計器類を備えておれば、それで確認ができるのでありますから、これは漁船はもとよりのこと、いやしくも巡視船あるいは警備艇という以上は、最も正確な計器類を備えていなければならない。その問題はきわめて大事な問題であると考えております。
  69. 羽生三七

    羽生三七君 大事な問題であるだけでなしに、それを今後の基準にするような努力をするかどうか。一般的なルールはきまっているにきまっております。現場位置を確認する、そういう装置なり計器なりを相手側も必ず持つ、相互でそれを確認し合って現場位賢を確認する唯一の基準にするというその問題です。
  70. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今回、向こうの警備艇が備えていないということを、はっきりまだ言うわけにはまいりませんけれども、備えておるのやらおらぬのやら、きわめてあいまいな点がございますので、それではいかぬ。でありますから、いま御指摘のとおり、いやしくも警備艇である以上は、必ずこれこれ以上の規格のものを備えつけなければならぬということは、これは漁業協定の趣旨に沿うてさらに申し合わせをするなり何なりしなければならぬ、こう考えております。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 韓囲外務省筋は、この海洋丸事件と関連して、漁業専管水域から公海へのこの追跡権を確認するための日韓漁業協定の改正を日本側に交渉する必要があるということ、こういう見解を表明されておりますね。しかし、これはいま申し上げたこの追跡権そのものが問題の本質ではなしに、現場位置の確認ルールが先行すべきだ。したがってそれを度外視した追跡権交渉、追跡権のための漁業協定の改正なんということはあり得ないことだと思いますが、その点はいかがですか
  72. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今回の事件に関する限りは、向こうは日本の漁船に接触したその場所が前から変更されない、初めからその場所で向こうが発見し、その場所でつかまった、こういうわけでありまして、追跡の問題は今度は起こっておりません。そしてその場所は、わがほうの計器によって観測するところによると、専管水域外四マイル半の地点であるということがはっきりしているわけであります。追跡権の問題については、これは領海から出発して追跡権を認めるという国際法規があるそうでございますが、専管水域からの追跡権というものは何らきまっていないので、きまっていないことは、すべて国際法によるという解釈をわがほうでとっておりますので、今回の問題は、追跡権の問題は起こらないわけであります。
  73. 羽生三七

    羽生三七君 だから、その漁業協定の改正を、それにからめて申し込んできた場合にどうするか。
  74. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その問題についても、現状で差しつかえないのではないかと思いますが、なお条約局長からその点は御答弁申し上げます。
  75. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 御趣旨の点は、ごもっともと存じます。
  76. 亀田得治

    ○亀田得治君 昨日外務省の事務当局に対して、二点についてこの事実関係の確認を求める努力をぜひやってくれと、こう要求しておきました。一つはこの計器が問題になっておる巡視船にあったかどうか、これが一つ。それからもう一つは、伝えられるような調書というものが、船長によってつくられたのかどうか、これは私は確認しようと思えばすぐできることだと思います。それができたかどうか、この点をはっきりひとつお答えを願いたい。  それからもう一点。昨日は外務大臣並びに局長も、韓国の漁業資源保護法につきまして、日韓条約の審議がなされた国会における答弁とは、はなはだ消極的な態度でお答えになりました。前の日韓国会においては、条約が成立すれば当然これは眠ってしまうと、こういう意味で終始答えておられた。昨日の答弁はそうじゃないんだ、共同規制水域のところだけはへこまされるが、あとはちゃんと国内法として残るのだ、こういうことをお答えになっておる。私は、これは今後のこの問題に関する日本と韓国との間の交渉の上において、非常な私は不利なことを、みずからおっしゃっているような気がしてならないわけであります。そこで、私もああいう乱暴な答弁があるとは思わなかったので、再度漁業資源保護法を詳しく見直しました。これによりますと、たとえばこの第四条の三項を見ますると、第二条違反の嫌疑があると認めるときは——これはつまり李ラインに入ったと認める嫌疑があるときは、単なる通過船舶であっても、これを停止させ、臨検、捜索その他必要な処分をすることができる、こういう規定がちゃんと置かれておるわけなんですね。あなたの昨日の答弁によりますると、この第四条というものはちゃんと生きておるわけなんです。へこまされたのは、第一条のこの李ラインの範囲だけなんです。一体そんなことを認めていいんですか。協定や合意議事録等には、ちゃんと無害通航の権利も明記されておるわけですね。しかるに第四条にはこういう規定がある。それをそのまま見過ごして、そうしてこういう広範な捜索権というものを日本自身が認めるというようなものは、これは一体どこから出てくるのですか、この点をはっきりしてもらいたい。  それからもう一つは、この資源保護法に関連して、韓国側にあるところの捕獲審判令ですね。これは現実にそういう違反事項があった場合に、それを調べ裁判をする手続を規定したものであります。ところがこの審判令を見ますると、所長があって、その下に審判官、検事もちゃんと同じ場所に配置されておるわけであります。普通民主的な裁判機構であれば、少なくともその検察官と裁判官というものは、きちんと機構的にも分離されなければならない。そうしてまたその弁護の関係を見ましても、外国人の弁護人はつけることができない、こういう渉外的な関係が出てくる問題について、一体外国人の弁護士をどうして排除するのですか。こういう資源保護法にしても、捕獲審判令にしましても、これは李ライン時代の一九五三年当時にできたものなんです。そういうものがいまでも生きているんでしょうというようなことは、一体これは外務大臣、どういうことなんです。私は昨日のああいう答弁は、取り消すなり訂正してもらいたい。とにかく私はこの点については強く韓国側に対して、これらの法令の改廃等について交渉すべきだと思うのです。向こうは追跡権について何か交渉したいと言うておるそうですが、こちらはもっと根本的なそういう姿勢について交渉する必要があると思います。だからその点についても、ひとつはっきりとこの際態度を明らかにしてほしい。
  77. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 最初の二点についてお答えいたします。  計器の点でございますが、わがほうの積んでおりますようなレーダーとかロランとかいうようなものを装備していなかったことは、現地で確認しております。船でございますから、ある程度の計器は持っておるわけでございまして、たとえば交差方位法というような方法で測定しておるようでございますが、釈放の交渉の過程におきまして、わがほうはこういう計器でこういうふうに測定しておるんだということを申しておりまして、したがって、計器の正確度において非常に違うということは明瞭になっておると思います。  第二点の船長の自供の点でございますが、韓国側は船長は韓国の漁業侵犯、専管水域を侵犯したということを自供し、かつ調書に捺印しておると言っておりますが、わがほうの現地に参りましたものが船長と話をした点では、その点は明確でございません。これは船長の立場として、あるいはその後の運び方に対する配慮として、はっきりしたことは言えなかったのじゃないかと思いますので、わがほうとしては、韓国側に提出した船長の自供書の中に、侵犯をしたという事実があるかどうかはわからない次第でございます。
  78. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 昨日、もし専管水域を侵犯した場合に、どういう向こうが処理をするだろうかというようなたしか御質問に対して、これは向こうの国内法であり、国内法の問題を外部からとやかく言えない、おそらく漁業資源保護法というものが、日韓漁業協定に違反しない範囲において、あるいは残っているかもしれません、ということを私は答えたのでありまして、問題の要点は、向こうの領海はもちろんのこと、漁業に関する専管水域内のことについては、向こうの国内法で定めた法律の規制を受ける、こういうたてまえは、これは認めざるを得ないと思います。
  79. 亀田得治

    ○亀田得治君 どうもその答えが、何回やってもはっきりしません。最初の事実関係に関する二点ですね、昨日の答えと中身はたいして変わりません。私が指摘した二つのことは、交渉の上においてもこれは非常に大事なんです、それがどうなっているかということは。そういうことは、ほんとうにわからそうと思えば、私はできることだと思います。だから再度これは要求しておきます。そんなことはどうしてもできぬと言うなら、責任を果たせませんよ、そういうことでは。  それから第二の法律の関係ですね、外務大臣は、私が法律関係のことで第二に聞いたこれらの改廃という問題について、向こうの政府に要求すべきではないかという点については答えておられませんが、はなはだこれは残念であります。総じてまあきのうよりは少しぼやかしましたが、条約、協定に反しないものは残っておるように思われるというような青い方で、多少まあぼやかされておりますが、もっとたとえば具体的に聞きたいのは、この資源保護法では、第三条で罰則を書いておるわけですね。これは三年以下の懲役、五十万以下の罰金、それから漁船とか、そういう各種の品物の没収、分ければその三つです。たとえばこういう罰則の問題にいたしましても、一方的に李ライン当時に設定するものと、そうでなしに、日本政府が言うような立場での、この両者間の協定ができたという立場考えるのと非常にこれは違ってこなければならないですね、だれが考えても。協定ができても、たとえば専管水域なり、あるいは領海なり、まあ領海と専管水域、これまた、こまかい議論になると違ってくるはずですが、いずれにしても、韓国独自でやれるというところがあるにしても、一体李ライン当時の罰則をそのまま適用するということは、正当なんでしょうか。正当ではないでしょう、そんなものは。だから、そういう意味から見て、こんなものをいつまでも、あるかもしれませんというようなことを言っているということは、はなはだ私は心外だと思うのです。その点、さっきお答えになっておらぬのですが、はっきり向こうの政府に対して、これらの関連法律を改廃しろということを、あなた外交交渉としてやるべきではないですか、関係があるのですから。ベトナムに派遣するのをちょっとやめろというのとは違う。これはそうじゃない。これは直接関係がある。再度その点について、外務大臣のひとつ強い考え方を聞きたい。  それからこの捕獲審判令ですね。これは資料としてひとつ出してもらいたいと思います。それから資源保護法、まあこれは私のほうにはありますが、委員の皆さんほしいと言いますから、資料二つ、どうですか、はっきりしてください。
  80. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私は、その国内法に関してどの程度まで一体ものが言えるものやら、国内法の問題でありますから、外部からとやかく干渉がましいことを言うべきでないと思いますが、しかし、従来の沿革が沿革でございますから、どの程度まで言えるのか。そういうまず法律上の見解をひとつ事務当局から申し上げたいと思います。
  81. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 日韓諸条約の国会審議の際に御答弁申し上げました趣旨は、やはりこの漁業協定を矛盾するような国内法は、その限りにおいて効力を持ち得ない、そういう趣旨でございまして、あるいはそれほど明確に答えてない場合もあったかもしれませんが、法理論としては、そうなると思います。  それから協定の規定で韓国に専管水域におきましては排他的管轄権を認めておるわけでございますので、これが一般国際法に反するとか、たとえば無害航行を禁止するとか、そういうようなむちゃなことがない限り、漁業に関します限りは向こうの法律に従わなくちゃならない、そういうことは原則的に明確な点なのでございます。
  82. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 資料要求についてはよろしゅうございますか。出せますか。
  83. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 資源保護法については、直ちに提出できますが、捕獲審検法は極力至急に入手いたしまして提出いたします。
  84. 亀田得治

    ○亀田得治君 審判令です。
  85. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) はい。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 この問題は、まだ亀田委員質問と関連して私としても問題があるのでありますが、時間の関係上、次にもう一つこの点だけをお尋ねしておきたいと思います。  この日韓漁業協定第六条では、共同資源調査等を任務とする日韓漁業共同委員会が設置されることになっております。この第一回委員会の前期は、去る二月十五、六両日ソウルで開かれた。それから後期は、五月ソウルで開かれると聞いております。今後この委員会では共同資源調査等が取りきめられることになると思いますが、この問題は、日韓交渉当時、韓国側は李ライン水域を専管水域、その外側に共同規制水域、及びさらに外側の資源調査水域で埋めることによって、実質上李ラインの形式的な残置をはかろうとした、そういう経緯のものであります。しかし、結局協定第五条で、共同規制水域の外側に共同資源調査水域が設置される、こう規定するにとどまって、この水域の範囲は、共同委員会の勧告にゆだねることになったわけであります。韓国は、今後この委員会で調査水域の範囲について、日韓交渉当時の従来のその主張を再び持ち出すかもしれませんが、日本としては、李ライン復活につながるような内容の資源調査水域の設定には反対すると言った従来の態度をくずすべきではないと思います。これは第一回の会議は打ち合わせ会みたいで終わっておるようでありますが、第二回は五月に開かれる。この問題が持ち出された場合にどう答えるか。日韓国会当時の態度を堅持してもらいたいと思う。
  87. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 李ラインは当初から認めておりません。向こうがこういうものを名前を変えて想定して、そしてこれを侵した場合に強制力を用いるようなことは絶対にそれは認めるわけにはまいりません。  なお、漁業の問題でありますから、その他の点につきましては、農林省のほうからお答え申し上げたほうが適当であろうと思います。
  88. 羽生三七

    羽生三七君 こまかい技術的なことは要りません。そういう提案があった場合に、従来の態度を堅持するかどうか、それだけでいいです。
  89. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま申し上げたように、従来の態度を堅持いたします。
  90. 羽生三七

    羽生三七君 違ったことがあったら、農林省言ってください。
  91. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 外務大臣がお答えしたとおりでございます。
  92. 羽生三七

    羽生三七君 これは重要なことでありますから、必ずその方向で進んでもらいたいと思います。  それからもう一つ、これはちょっとした質問ですが、船員が抑留されているというこの済州島は、現在米国の管理下にあって手がつかない、そのために調査も十分できなかったという説もありますが、これはいかがですか。
  93. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) そういう事実は全く聞いておりません。
  94. 羽生三七

    羽生三七君 なければけっこうです。  そこで、その後、竹島問題はどうですか、外相。何か進展があるんですか、進展ありませんか。
  95. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ踏み出したばかりでございまして、もう少し両国の友好ムードが熟するのを待ってこの問題の解決に乗り出したい、こう考えております。
  96. 羽生三七

    羽生三七君 実はこれは専管水域等と関連して非常に重要な意味を持っておると思いますけれども、これも時間の関係で、次に進むことといたします。  日本は、韓国政府が提唱しておるアジア九カ国外相会議への参加に踏み切ったと聞いております。今日まで同会議への参加にちゅうちょしておった日本が急に踏み切った理由は何でありますか、お尋ねいたします。
  97. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ明確に外相会議参加するという決定はしておりません。ただ、準備会議がそのうち開かれるということでございますが、はたしてどういう議題、どういう方針のもとにこういう会議が運営されるかということがきわめて重要な問題でございますので、場合によっては、準備会議のオブザーバー程度のことは、これは考えざるを得ないのではないか、そういうことのほうがむしろ日本のこれに対する態度を決定する上においてきわめて必要なことではないか、こう考えております。
  98. 羽生三七

    羽生三七君 これはあとからも触れますが、日本主宰のもとに近く開かれる東南アジア閣僚会議、これに参加する国々もほとんど反共自由陣営の国家群であります。それから韓国の場合は、そうであるとともに、その半数近くはベトナム戦争に派兵をしている国々であります。こういう国々との会議に、相次いで日本がみずから開いたり、参加をするということになれば、結局、先ほど来指摘した力の均衡拡大以外にはない。また、いままで日本が伸びてきた重要な日本外交の柱としておるところのアジア外交というものを、かえって傷つける結果になると思う。したがって、準備委員会にオバザーバーとして参加するかもしれないが、本会議はまだ態度を決定しておらぬと言いますけれども、そうであるならば、私がいま申し上げた理由によって、私は、いまからでもおそくはないから、この種の会議には参加しないほうがいいのではないか、これを私は要求といっては語弊がありますが、これを外相に求めたいと思います。というのは、これはいま申し上げたように、アジア日本外交の非常なマイナスにつながると私は思う。それぞれ体制の異なった国々あるいは主張が異なった国々、それでもアジアの中にはそれぞれそういう国は存在しておるのでありますから、それとともに友好関係を続けていかなければならない中で、特に選んで反共陣営の国々だけか集まる——私はここで政治論議をしようとは思いません。これはやれば、一種のイデオロギー論争みたいなことになりますから、これはやろうとは思いませんが、事実問題として、この種の会議日本参加をしないほうがいいのじゃないか。ぜひこれは再考を求めたいと思いますが、いかがでありますか。
  99. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 十分にこの問題を見きわめた上で賛否を決定したいと思います。
  100. 羽生三七

    羽生三七君 これは何でもないようなことでありますが、今後のアジア外交に私は重要な影響を与えると思います。強くいまの考え方についての外相の再考を求めておきます。  これと関連をして、東南アジア閣僚会議は、来月早々開かれることになっております。これも受諾して参加する国々ほとんどが、いわゆる自由国家群であります。まあその論議はここではいたしません。しかし、すでに政府は、十七日の外交関係閣僚協議会でその基本方針を検討し七、外相は、これまで事務当局が検討したこの基本方針を説明して、協議会の了解を求めているといわれますが、もう来月早々ですから間もないことであります。おおよそ具体的にはどのようなことが議題になり、何を中心として討議をしようとするのか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  101. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 純粋に経済問題に限定いたしまして、そして東南アジアの九カ国がお互い連帯感のもとに、いかにすれば東南アジアの経済開発が可能であるか、いま障害になっておるものは何か、これを除去する、あるいはこれを克服していく方法いかんといったような問題に対しまして、自由なる討議をいたしたいと、こう考えております。でありまして、議題等につきましては、ただいま外交ルートを通じて、参加国にこれを配付してその意見を求めておるような状況でございますが、まだどの国からも、これに対する具体的な意見の提出はありません。そのうちぼつぼつ集まってくるものと考えます。その上で正式の議題をきめまして、そして自由な討議をしてみたい、こう考えております。
  102. 羽生三七

    羽生三七君 純粋に経済的なもので、政治的性質のものではないと了解しておいてよろしゅうございますか。
  103. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もちろん厳格に経済問題に限定して、政治的な色彩のない会合にするつもりでございます。
  104. 羽生三七

    羽生三七君 これはアジア開発銀行と関連して、これは十億ドルのジョンソン構想が出ておりますから、いろいろな意味がありますが、これも時間の関係で割愛いたしますが、この機会に、大蔵大臣、このアジア外交の重要性はよくわかりますけれども、あるいは低開発国の援助の緊要性もわかります。わかりますが、日本経済の現状からして、はたして実際にどの程度の援助が可能かどうか。これは先般本会議でも論議されたことであります。外務省の三カ年計画、これに対して、大蔵省は、これは五カ年計画といっております。その場合に、新聞報道では、世銀で低開発国援助向けの借款利子を引き上げるようになっておりますね。そういう条件のもとで、はたして三分五厘とか、あるいは二十年というような条件引き下げが可能なのかどうか。できますか、外務当局と同じように。
  105. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 今日の世界では、世界の自由貿易、自由交流、こういう傾向があると同時に、もう一つは、地域的なブロック化の傾向もあるわけであります。つまり地域連帯感ということで経済の開発をしていく、EECとかあるいはコメコンとか、そういう動きも活発であります。わが国としては、何といってもアジア近隣の諸国とともに繁栄をはかる、これはどうしても必要だと思います。そういう見地から、わが国としては、先進国としてアジアの諸国に対する経済の協力、これは積極的に考えていかなければならぬ、こういうふうに考えているわけであります。ところが、DACの会合で要請をされておりまする条件の緩和、並びに国民所得に対する一%目標達成、こういう問題につきましては、わが国のいまの財政上の見地からいいまして、どうしてもその多くを民間の経済協力に依存しなければならぬ、こういうことになるわけであります。さようなことから考えますときに、量的の問題は、私はまあ二、三年のうちには達成できる、こういうふうに思います。しかし、条件の問題になりますと、そう簡単にいかぬような状況があります。つまり日本の財政状況と見合うわけであります。そういうような状態でありますが、とにかくアジア諸国に対する経済協力は、日本としてきわめて重大な問題であるというふうに考えますので、できるだけの努力をいたしていきたい、かように考えます。
  106. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、外務省の三カ年八億七千万ドルということは、量的には実行するというのですか。
  107. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 量的には、あれはまだ外務省が発表している数字じゃないのです。今後なお関係各省の間で検討しなければならぬ問題であります。しかし、できる限りDAC諸国の要請、こういうものには、量的の面では、ひとつこれを研究していく方向努力をしていきたい、かように考えます。
  108. 羽生三七

    羽生三七君 こんどこの会議日本が多くの国を招待して、しかも、かなり疑惑の目をもって見られている。これは事実であります。そういう中で政治的中立性を保ちながら、純粋に経済問題でアジア各国に寄与するということは、非常に私は難事中の難事だと思います。やり方を間違えれば、私は結局マイナスになると思う。さっきの韓国のアジア外相会議と同じようなことになると思う。だから、その点はあくまで純粋に経済的要求に限定をして、しかも、それに何ら特定の要素を結びつけないように、文字どおりアジアの諸国の共感が得られるような政策こそ必要だと思いますが、そういう方針でお進みになりますか。
  109. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおりでございます。決して特殊の政治的の目的を達成しようというものではございません。あくまでアジア、東南アジア諸国の共感を得られるという確信のもとに、この会議を運営してまいりたいと考えます。
  110. 羽生三七

    羽生三七君 このほか、日ソ漁業問題、OECDの問題等、きょうはお尋ねしたいことは実はいっぱいあるわけでありますが、時間もだいぶたってきましたので、この日ソ漁業問題だけ農林大臣に。これは最近、交渉の過程でモイセーエフ提案というものが出てきて、B区域ですね。この問題に対して、非常なきびしい九割減船という、そのほかたくさんの条件がありますが、時間がないから詳細申し上げませんが、こういう条件が出てきて、これは日本漁業としても非常に重要な問題であると思いますが、どう対処しようとしているか。それからサケ、マスの漁獲量なんかは前回と比べてどうなるのか。およその見通しや決意をひとつお伺いしたい。
  111. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えいたします。ごく最近まで技術小委員会をやっておりました。御了承のとおりでございますが、技術小委員会の両国間の話し合いは、大体資源関係でございますので、これらについては両方とも大体話がついたわけでございます、ついたというのは、資源状態についての認識の問題でございます。そうして、これからいわゆるサケ、マス、カニその他の漁獲についての話し合いに入る、いわゆる本会議に入るわけでございますが、その際において、もちろん今年はマスの非常な不漁の年回りに相なっておりますことは言うまでもございませんが、B地域においての九割漁船の削減というような問題は、別に正式な問題としてではなしに、昨年からそういうような問題をソ連の側で、これは非公式でございますが、構想と申しますか、話と申すか、そういうことが伝わっておったわけでございます。いま正式にどうこれが議題になってまいりますかという点については、まだ私らのところではわかっておりませんのでございますが、こういうことに相なりますと、非常にこれは中小漁業、いわゆる特に小漁業家の非常な影響の大きい問題であることは言うまでもございませんので、かような削減ということは、かりにそういう議題が出ましても、わがほうといたしましては、さような削減には応ずることはもちろんできませんので、これらに対しては十分対策を考慮しているような次第でございます。
  112. 羽生三七

    羽生三七君 外交問題はまだたくさん残っているのでありますが、せっかく大蔵大臣もそこにおっていただくので、最後に経済のことで一点だけお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。  アメリカ、カナダが相次いで金利の引き上げをしている。また、世銀も〇・二五から〇・五の引き上げをやるという。これは先進国に対する借款金利引き上げも計画している。こういうふうにいわれております。こういう国際的な金利高に対して、日本はこれに追随するのかどうか。一方国内的には、国債発行下の新しい金融政策というものが問題になっているし、また景気動向とも関連して金融政策が問題になっております。こういう内外両面の条件を勘案して、現下の金利体系というものがどうあるべきか、金融政策あるいは長期金利引き下げということもいわれておりますが、どう考えておりますか、この点。
  113. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 結論的に申し上げますと、わが国のただいまの金融政策、特に金利水準ですね、これは変更する方針はとりません。この上とも金融緩和基調を堅持し、金利の安定に努めていきたい、かように考えております。お話のように、アメリカ、カナダで金利引き上げの傾何があるわけであります。これは特にアメリカでは景気の見方、これが最近非常に変わってきているようであります。この際抑制的な措置をとるべきであるという意見に統一されつつある、そのあらわれかと思うのでありまするが、いままでのところは、わが国の資本収支に対しましてさしたる影響はありません。長期資金の導入が窮屈になっております。それから短期資本のほうは、これは多少輸入ユーザンスがドルから円へというような動きもあるようでありまするが、これも心配する程度ではございませんです。ただ今後どういうふうな動きになりますか、これは十分注意していかなければならぬ問題である。それに対しましては、わが国としてもとるべき手段はとらなければならぬ、こういうふうに考えております。ただ申し上げておきたいと存じますことは、一昨年の中ごろまでは輸入超過であり、それを短期、長期の外資によってカバーしておったという状態でありましたが、一昨年の中ごろから形勢一転いたしまして輸出超過、そして輸出超過が今度は逆に資本収支の赤字を補うというような形になってきておる。昨年、四十年度、この間IMF方式による外貨収支の状況を発表いたしましたが、それによりましても、経常収支のほうは九億ドルの黒字である、資本収支が八億ドルの赤字であって、一億ドルが残ってくると、こういうような状態であります。それを受けまして、わが国の国際貸借のほう、資本負債のバランスのほうですがこれも同じ程度の改善をみているわけであります。債務が非常に超過しておりましたわが国の国際貸借の体質が非常に改善をされておるわけであります。今後多少短期外資が流出をする、こういうようなことがありましても、そう本質的に心配することではない、こういうふうに考えておるわけであります。今後ともひとつ情勢の推移に応じて即応した対策をとっていきたい。
  114. 羽生三七

    羽生三七君 しばらくは現状を見ていくと、こういうことですか。
  115. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そうでございます。
  116. 羽生三七

    羽生三七君 最後にもう一点。この国債発行という新しい条件のもとでですね、国債発行に伴う日銀の国債管理政策が問題になっております。これについて何か日銀法改正等を検討されておりますかどうか。これはきのうの木村委員質問にある程度関連を持つわけです。
  117. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日銀法の改正につきましては、一昨年の暮に政府においては一案が出まして、これを国会に御審議を願おうかというところまでいったんですが、国会の運営の都合でその提出が見送られたのであります。しかし今日になってみまするときには、情勢が非常に変わってきておる。ことに戦後初めて本格的に公債を発行する、そういう状態下において金融政策をどういうふうに持っていくか、またそれに伴いまして中央銀行初め金融機関のあり方というものがどういうところにあるべきかという局面に当面するわけであります。そういうようなことで、国債発行下の金融がどう動くかということを少し見てみたいと思います。そういう動きに即応した金融制度ということを今後の課題として検討してみたい、ただいまはさように考えておる次第でございます。
  118. 羽生三七

    羽生三七君 最後に、これで最後です。中国向けの輸銀活用について、西独には追随しないと昨日衆議院で御答弁があったようですが、私はここで吉田書簡の効力あるいは政治論議はいたしません。もっと積極的な態度をおとりになるべきじゃないかと思いますが、通産大臣の所見を伺いたいと思います。
  119. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま中国の輸銀は使うことはとまりまして、その後新しく輸銀使用の申請はないわけであります。出ていない。
  120. 羽生三七

    羽生三七君 起こったときに……。
  121. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この問題は解決をしなければならぬ課題でありましょう。そういうことで、そういう問題が具体的に提起されたときに、政府は諸般の事情を勘案して十分慎重に検討いたすことにいたしたい。
  122. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 羽生君の質疑は終了いたしました。  午後二時再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時十六分休憩      —————・—————    午後二時十九分開会
  123. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  先刻、佐多忠隆君、宮崎正義君、多田省吾君が辞任され、その補欠として、加瀬完君、鬼木勝利君、黒柳明君が選任されました。     —————————————
  124. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 午前に引き続き、昭和四十一年度一般会計予算外二案を議題とし、質疑を行ないます。平泉渉君。
  125. 平泉渉

    ○平泉渉君 主として外交問題についてお伺いをいたしたいと思うのでございます。  わが国の国際的地位は、最近きわ立って向上してきたと思うのでございます。国際社会において、わが国の立場、またわが国の主張するところが広く理解され、共感され、尊重されておるということでございます。このような広く厚味のある国際的地位を確保いたしますことは、特にわが国の場合、国際社会におけるわが国の安全を保障し、これを強化するために最も重要なことと存ずるのであります。戦前において、わが国は強大な軍事力を持っておったのでございますが、その場合に比しましても、私は、現在のわが国の国際的地位のほうが高いのではないかという感じを持っておるのでございます。このような意味におきまして、ことに軍備が限られておりますわが国におきまして、国民の外交活動への期待は非常に大きなものがある、かように考えるのでございますが、わが国の国際的地位を今後さらに向上させていくために、わが外交活動の重点を今後どこに置いていく必要があるというふうに思われるか、外務大臣の御所見を承りたいと思うのでございます。
  126. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御案内のとおり、日本は戦後、国際紛争に対して武力を用いて国の目的を貫徹するという道をみずから、ふさいだことは御承知のとおりであります。今後やはりこの方針を堅持していくべきものと考えるのでありますが、同時に、国際的地位を高めていくことも必要であると同時に、いかなる方法によってやることが適当であるかということになりますと、やはり私は、経済、文化力、そういう平和建設の面において日本ができるだけその権威と力をたくわえまして、そして国際的発言力を高めると同時に、平和建設のために大いに力を尽くす、こういう方面をになっていくべきものであると、かように考えております。
  127. 平泉渉

    ○平泉渉君 防衛費が一国の予算の中に占めております比率を見ました場合に、わが国の比率はきわめて少ない。イギリス、フランスというような国は、アメリカは例外といたしましても、二〇%から三〇%というような膨大な軍事費を使っておりますが、わが国の場合はこの負担が少ないわけでございますから、その意味におきましても、外交活動というものをさらに強化していくということにつきまして、われわれといたしまして大いにその方面で努力したいという考えでございますが、ただいまの大臣の御意見を伺いまして、非常に意を強うするものでございます。その意味におきましても、去る二月におきまして、わが松井国連常駐代表が安全保障理事会の議長といたしましてベトナム紛争の討議を主宰され、重要な活躍をせられたのでありますが、この松井議長の活躍はどういう方針でなされたものであるか、また、その成果についてどういうふうにお考えになっておられるか、承っておきたいのでございます。
  128. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御案内のとおり、議長の職は大体一カ月ごとに輪番制で交代することになっておりますが、その二月におきまして、あたかもこの安保理事会に対して、アメリカから、ベトナム戦争収拾の問題について議題としてほしいという要望がございました。これが構成各国の合意に達しまして、議題としてこれを採択されたのであります。  松井議長といたしましては、この問題を取り扱う上において、問題が問題だけに、きわめて複雑多岐な内容を持っておる問題でございますので、まずもって各国の意見会議において徴した。しかるに、この各国の意見が相当開いており、簡単にこれの結論を得るということがむずかしい。のみならず、公開の場においてこれが論議を進めることによっては対立を先鋭化せしめるおそれがありましたので、一応会議を休会にいたしまして、そうして構成員である各国の代表者に個別に面談をいたしまして、この収拾の方途をさがしたのでありますが、容易にこの結論を得ることができない。しかしながら、大多数の国の意向というものは、ほぼこれを把握することができましたので、ごく少数の反対はございましたけれども、議長報告の書簡の形でこの問題の処理をすることができた、こういう経過になっております。  この間において、本国政府といたしましては、問題の複雑性にかんがみまして、これを先鋭化するということなしに問題の終局的な目標に幾らかでも近づく、そうして問題の解決に貢献するという趣旨において訓令を発し、複雑性にかんがみて自由裁量の範囲を相当広くして、そうして松井議長の手腕力量におまかせをした、こういう次第でございます。  今回の成果は、松井議長の働きがきわめて高く評価されておると私は承知しております。日本外交が今後いろいろな場面において積極的な貢献をする上において非常な収穫であったと、かように考える次第であります。
  129. 平泉渉

    ○平泉渉君 ただいま大臣がおっしゃいましたとおり、わが国の外交官が、国連安全保障理事会というような非常に重要な機関の議事を主宰された、しかも、議題が、現在の世界における非常に危機の迫っております地域における問題でありまして、国民がこの問題については非常に注目をしておった次第でございまして、今後とも、このような意味において、わが国の国連活動が活発化されるということは、政府が常々言っておられます国連中心外交というものを、ほんとうに実りのあるものにするためにも必要なことであると感ずる次第でございます。  次に、先ほど、東南アジア開発閣僚会議につきまして羽生委員から御質問があったのでございますが、その際に、純粋に経済的な問題を討議したいということでお答えがございました。また、羽生委員質問の中には、この会議が政治的なものであってはならないというようなことが繰り返し述べられておるわけでございますが、東南アジアにおける最大の政治問題は、とりも直さず、経済問題ではないかということでございまして、私どもが感じますところにおきまして、そもそも日本政府がこの会議を企画されたという際に、どのような国々を招待しておられるのかという点から見ますと、その性格がはっきりするのではないかということを感じますので、ひとつ、その点につきまして、またさらに詳しく、この会議に対します政府の基本的な御方針を承りたいと思うのでございます。
  130. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この閣僚会議の目的とするところは、これまでに経済開発が十分でなかった東南アジア諸国の開発問題に関する責任ある指導者が、相互の協力体制を維持しながら、自発的にそれぞれの国の開発を進める基盤をつくり上げるために、自由かつ率直な意見交換を行なおうということに概略の目標が置かれておるのであります。この東南アジアに対する域外からのいろいろな援助の考え方もあるのでございますけれども、問題は、まず、各国がみずから自分の国を開発しようという意欲を高めるべきではないか、そうして、その開発問題に関連するいろいろな事実、あるいは関連するいろいろな各種の事項について正確な認識をまず持つということが必要なのでございまして、今回は、これらの国が集まって、そして東南アジアという一定の地域の共通性を認め、そうして連帯感を強くいたしまして、自由に開発問題に対して討議を行なうということが、まずもって大切である、こう考えた次第でございまして、農業、工業あるいは、医療、教育、運輸、通信というように基本的な問題から出発して、そうして今後いろいろ各国の協力組織をどうするかというような点まで入って大いに討議をしてみたい、こういうふうに考えるわけでありまして、日本といたしましては、アジアにおける唯一の先進国といわれてはおりますけれども、しかし、東南アジアの経済開発ということは、ひいて日本の経済にも至大の関係を有するものでございます。その点に関しましては、相互依存の関係にある日本の経済を今後もっと高めていくためにも、東南アジアというものの開発というものが非常に大きなかぎになっておるという点から、相ともにこの問題を討議していこう、こういう考え方で、かような企てをいたしたような次第でございます。
  131. 平泉渉

    ○平泉渉君 非常に懇切に御説明をいただきまして明らかになってまいったのでございますが、当初におきまして、わが国がこの会議に招待をいたしておる国々の名前をお教えいただきたい。
  132. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) インドシナ三国、それからタイ、ビルマ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、シンガポール、それだけでございます。
  133. 平泉渉

    ○平泉渉君 この国々のそれぞれの内政上の性格、また外交上の立場を見ましても、この会議は、純粋にこれらの地域の共通な連帯感を深めるという御趣旨で考えておられるということがはっきりすると思われるのであります。その意味におきまして、現在、たとえばインドネシアとマレーシアの間にある対立、また、外交政策において、タイとビルマ、あるいはラオスというような国々が非常に異っておる。それにもかかわらず、同じテーブルについて相ともに経済開発の問題を議していくという構想に出ておられるということが、ほんとうに大臣がただいまおっしゃったような連帯感を深める、ことにわが国を含める連帯感を深めるという意味になるのではないかと思うわけでございまして、この会議の成功を期待するものでございます。  次に、この委員会におきまして、また衆議院の予算委員会におきましても、安保条約の問題につきまして非常に多くの議論があったわけでございますが、現在の、昭和三十五年に締結されました日米相互協力及び安全保障条約というのは、昭和二十ハ年の旧条約とは非常に性格を異にしておる条約であると思うのでございます。旧条約は単なる軍事的な取りきめでございますが、新条約は、広範な日米間の協力関係というものの上に立っての安全保障の取りきめを含んでおる条約でございまして、単にこれを軍事上の体制として把握することは必ずしも当を得たものではないと考えるのでございます。  そのような意味におきましても、また戦後二十年の間、日米関係は非常に大きく変化はしてまいりましたけれども、まだまだ、友好関係という意味におきましては、わりあいに新しい歴史のものであるということを感ずるのでございます。わが国におきまして、日米関係というものが、どうも当然なことのように受け取られる議論が多いのでございますが、私はやはり、東アジア、また西太平洋におけるわが国の安定した勢力としての確立、そうしてまた、そのような存在によって世界における、平和と安全の増進のための責任を分担していくという上におきましても、日米間のほんとうの友好関係というものが長きにわたって確立されることが非常に必要であると考えるのでございます。  そのような意味におきまして、日米関係は軍事上の関係ということだけで割り切れるものではない。むしろ、これを包む広範な協力友好関係というものをさらに深めていくことが必要ではないかと思うのでございます。そのような意味におきまして、大臣のひとつ御所見を承りたいと思うのでございます。
  134. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおり、改定をされまして、単に用事的な関係のみならず、両国のもっと広い面における協力というものがうたわれたのでございますから、面目を一新したものと私は考えておりますし、また、その新条約の精神に沿うて、軍事上のみならず、確立された、安定した基盤の上に、経済その他の平和的方面の両国の協力関係というものを力強く築いていくということが最も望ましいことであると、さように考えております。、実際の実績に徴しましても、この安保条約というものが確立されて、その後の日米間というものの関係は、きわめて友好裏に進展をしており、これは日本の繁栄の、まさに正しい基礎であったということを、われわれは事実に徴して理解することができると思います。
  135. 平泉渉

    ○平泉渉君 日韓関係でございますが、最近、韓国との間に漁業上の問題が生じまして、非常に遺憾な事態でございます。この事件そのものにつきましては、すでに当委員会におきましてもいろいろに論議がなされておりまして、政府の御方針も承っておるのでございますが、この日韓関係というものは非常に特殊な関係である。日韓関係の長期的な展望に立ちました場合におきまして、困難な交渉がようやくにして妥結して、そうしてこれから新しい国交を開こうという時期におきましての問題でございますから、長い意味でのわが国の対韓関係、隣国としての関係、そうしてまた過去における長い歴史的な紛争の事態というものを回顧いたしまして、そのような視野の中でやはり処理されていかなければならないのではないか。ことに韓国の国内におきましては、まだまだ経済的にもきわめて悲惨な状況でございますので、そのような中で、われわれの今後の対韓外交の重点というものは、やはりはっきり確立されておらなければならないのではないか。いろいろな困難がありましょうが、全体における対韓外交の重点というものを、どこに置いていかれるか、ひとつ承りたいと思うのでございます。
  136. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 過去において、両国の関係が不幸な一時期を経たのでありますけれども、考えてみると、両国の関係は歴史的に非常に古いものである。そうしてまた、民族の血液の関係もかなり濃いものがあり、したがって、文化的な関係においても、いろいろ密接なものがあったのでありまして、やはり、こういう過去の歴史的因縁というものが、またもとへ戻ってきたのではないか、そういう親近感を、お互いに、有意識的に、あるいは無意識的に感じているのではないかと思う。ただしかし、ただいまの状況では、韓国は経済的に非常に疲弊しているのではないか、まずもって、韓国の経済復興と申しますか、経済建設の面に相当な協力をしてまいらなければならぬ。そうすることが、日韓両者にとっての共存共栄の道であると、こう考えるのであります。幸い、アジアにおいては日本に次いで教育の水準の高いところであり、近代産業の興隆の基礎は教育にありとすら言われておるのであります。こういう点に着目すれば、韓国の経済的な興隆というものは期して待つべきものがあるというふうに考えております。
  137. 平泉渉

    ○平泉渉君 わが国と韓国との関係は、わが国の、開発途上の国々に対します外交としては最も重要なものであり、ともすれば、大国中心主義であるという批評が従来いろいろなされておりましたが、やはりこういうところで、ただいま大臣のおっしゃったような対韓外交という、非常にあたたかい、韓国の発展ということを中心にお考えになる御方針というもので進んでいただきたいと思うのでございます。  次に、時間がございませんので……。中共の問題でございますが、ベトナム紛争が長期化してまいりますに伴いまして、アメリカにおける中共に対する認識というものが変わってくる徴候があるようでございます。最近におきます米国の上院外交委員会におきますさまざまな動きを見ておりましても、うかがえるのでございますが、従来、ともすれば、中共に対する感情的な考え方があったのでございますが、これが次第に冷静な検討を許すような状況に変わりつつあるような印象を受けるのでございます。一方におきまして、中共の核武装の進展、またアジア、アフリカ諸国との中共政府外交の全面的な後退の現象がございます。また、中ソ関係がさらに悪化しておるようでございます。このような中共外交の実態がだんだんに明らかになるにつれまして、わが国の一部にございました観念的な中共に対する親近感というものが、より現実的な認識に変わりつつあるという印象を受けるのでございます。このような事態、これは、わが国の対中共外交政策方針というものを立てるにあたりまして、従来よりも好ましい条件ではないかと考えるのでありますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  138. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 総理大臣も常に言っておるとおり、日本外交の基本的態度というものは、どの国とも仲よくする、こういうことにある、こういうことをしばしば言われております。政治体制がどうであろうと、とにかく、お互いに立場を尊重し、自分考えを他国に押しつけようということでなしに、立場を尊重して、内政干渉的なことはしない、立場なり政治的な方針が異っても、いわゆる共存の関係が維持される限りにおいては、どの国とも仲よくしよう、こういう考え方をしばしば述べておるのでございます。中共に対する日本立場も、全くそういう基本線から割り出されておるのでございます。もし一定の限界があって、それ以上進まないということであるならば、何かいま申し上げたような、お互いの立場を尊重し、内政干渉的なことをしない、そしてもっぱら共存共栄をはかる、こういう両者の関係にどこか食い違う点があるのでありまして、そういったような障害はできるだけ克服する、取り除くということに力を用いなければならぬと思うのであります。中共との関係においては、これらの点についてまだ十分に改善する余地がある、こう考えております。最近の中共の置かれておる国際的な関係、環境等がはたしてこういう点に幸いしているのか、マイナスになっているのか、それはまあここで一がいに論ずることはできないと思うのでありますが、われわれの基本的な態度を申し上げまして御了解を得たいと、こう思っております。
  139. 平泉渉

    ○平泉渉君 中共の問題は、現在、世界全体におきまして最も大きな問題の一つでございます。ことにわが国におきましては、きわめて歴史的な関係もございますのみならず、現実に地理的位置が近いのでございますので、今後とも中共を取り巻く国際情勢の進展につきまして、外務当局におかれましても深い注意をもって処理していただきたいと考えるのでございます。  ちょっと問題を変えまして、文化外交問題でございますが、わが国の対外活動の中で非常に重視しなければならないのは、わが国の頭脳を輸出すると申しますか、わが国の学問や技術を輸出するということではないかと思うのでございます。わが国の条件から考えまして、究極するところ、将来の世界において、やはり日本の頭脳の輸出ということによって生きていかなければならないということを考えるのでございます。現在、各国、ことに東南アジアからの留学生は八千名ほどわが国に参っておりまして、いろいろな意味におきまして、これはわが国の海外活動、国際的地位という意味におきまして重要なことでございますが、実際上の大きな困難としては、日本語の修得の困難という問題があるようでございます。この場合、たとえばフランスなどの例をとりますと、自国の学術の海外における普及ということに非常に長年にわたって努力をしてまいった国柄でございまして、その成果はフランスの学問、技術の普及のみならず、さらに各国におきまして、フランスに対して理解を有し、敬愛の念を抱く幅広い層ができ上がっておりまして、目に見えるものも目に見えないものも含めまして、フランスの国際的地位の強化に非常に大きな貢献をしておるということが考えられるのでございます。ところがその意味におきまして、わが国のこういう意味の支出というものがまだ非常に少ないのではないかという印象を・受けておるのでございます。私の概算しましたところで、これは計数の整理が非常にむずかしいのでございまして、はっきりしたことはわかりませんが、総予算の〇・〇一八%ぐらいの予算、文部、外務両者合わせましてその程度、もしそうだといたしますと、これがフランスの数字の約四十分の  一という低さでございますので、こういう点を、特に今後とも日本で学びたい、日本の学問というものを学びたいという気持ちをまず起こさせ、そして日本でこれを学んでいく、そして自国に帰って一つの知日層というものをつくり上げるということは非常に大事なことだと思いますが、担当の大臣の御所見を承りたいと思うのでございます。
  140. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御指摘の点は非常に大事であると思います。また、大事であるにかかわらず、まだまことに微々たる状態で、御承知のとおり国費の大学留学生は八千幾らという程度であります。しかも、それにはいろいろことばの問題、宿舎の問題、いろいろございます。現在では大阪外語大学、東京外語大学、千葉大学、この三カ所が、留学生の最初一年間の日本語教育を担当しておりまして、この一年の日本語教育が終わりましてから、それぞれ希望する大学に移ってまいりますわけで、また宿舎等につきましても、私、就任前からなかなかそういうことがうまくいってないような話を聞きましたので、就任後、いろいろ関係当局を督励しまして、改善につとめておるわけでございます。ただ、いろいろ国民性が違いますし、特に東南アジアの諸国では、非常な慣習の違いで、豚は食わないという人がいるかと思えば、牛は食わないというのがいたりしまして、なかなか最初のうちはトラブルが起こりやすいのだそうです。まあしかし、これを極力改善すると同時に、現在三カ所の宿舎が東京、大阪、千葉にございますが、今年度の予算では、札幌、仙台、大阪にもう一カ所、三カ所新しく宿舎を新設しまして、できるだけそういうような、日本にせっかく留学をした以上は、将来の日本との親善関係を強化していく上に一そうの関心を持っていただけるように措置を講じてまいりたいというようなことで、せっかく努力中でございますが、予算額としましては、文部省が五億何千万円、外務省の経費を入れて七億か八億という程度じゃないかと思います。今後も改善をしていく必要があることは十分承知いたしておりますので、努力をいたしたいと思います。
  141. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外務省といたしましては、技術教育というような観点で研修生の受け入れをやっておりますが、非常に、希望者が年々多いのであります。これらの実績にかんがみまして、将来十分にその方面に力を尽くしてまいりたいと、こう考えております。
  142. 平泉渉

    ○平泉渉君 わが国の予算が非常に乏しいということは、ただいま大臣もよく御認識いただいているようでございます。これはフランスのみならず、イギリスにおきましても、またソビエト連邦におきましても、こういう自国のことばを普及し、そうしてことばを通じて学問や技術を普及させるような努力は非常に大がかりになされておるようでございます。今後ともこの線におきましての御努力をお願いいたしたいと思うのでございます。  時間が非常に限られてまいりましたが、最後に一つ。先般、川島特使が中近東諸国に派遣せられまして、UARをはじめとする各国において、かなりトップレベルにおいての会談をなさってこられたのでございますが、中近東は非常に重要な地域であるにもかかわらず、従来わが国のかかる大がかりなミッションがおもむいた、しかも非常にハイレベルであるという点で注目すべきであると思うのでありますが、この川島特使一行の成果というものにつきまして、お話しいただきたいと思うのでございます。
  143. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事の起こりは、昨年の第二AA会議にさかのぼるのでございますが、その際、AA会議に臨むにあたっては、やはり非同盟の指導者であるアラブ連合のナセル大統領に会って、そして十分に意見の交換をした上でAA会議に臨むべきであるという方針を、このAA会議の特派大使として当時選任された川島副総裁が考えたのでありまして、その申し出をいたしました。ところが、AA会議はとうとうアルジェリアのクーデター等の関係で実現を見ることができなかった。したがって、ナセル大統領との会談も実現をしなかったのであります。これが一つのきっかけになりまして、先般、ナセル大統領のほうから招待がございました。今後AA会議の開催の有無にかかわらず、ナセル大統領と日本の首脳者との会談はいろいろな意味において有意義である、こう考えて、川島特派大使一行が出かけることになったのでありますが、これが一つのきっかけとなりまして、イラン、パキスタン等から、ぜひその途中に寄ってもらいたいというような招待があり、そしてサウジアラビア、クエート等も訪問するということに相なったわけであります。ナセル大統領との会談はきわめて友好でございました。ここしばらくの間、高碕達之助氏が六、七年前になりますか、ナセル大統領と会った以後は、特に日本から要人が向こうを訪問しておりません。そういう関係もあり、今回の川島特派大使の一向が出かけてまいりましたことは、アラブ連合と日本とを結びつける上においてきわめて有効な成果を上げたわけであります。今後、いろいろな国際問題等を取り扱う上において非常な有力な要因を見出したといっても差しつかえないような状況であったように思われます。  それから、この訪問において新しく経済協力の問題についても取りきめを行なってまいったのでございまして、有形無形きわめて大きな足跡を残して今度帰られたのであります。パキスタンにおきましては、アユブ・カーン大統領と、これまた隔意なき意見の交換をいたしました。これまたきわめて大きな収穫があったと考えます。イラン、サウジアラビア、クエート、いずれも日本との友好親善を高める上において有意義であったと考えます。特にサウジアラビアのファイサル国王ですか、日本に来訪せられたいという申し出をしましたところが、もともとそれは日本を訪問したいということを考えておったので、喜んでお招きに応ずるという返事があったようでございます。ナセル大統領に対しても総理からの招請の親書を持ってまいりましたし、その他いろいろ他国訪問の懸案が重なっておって、まだこれを実現することができないのであるが、これらの先順位の国の訪問を終えて、しかる後に日本を訪問したいというようなことでございまして、いろいろな意味において、こういう方面はどっちかと申しますと、多少疎遠になっておった国々でございます。そういう意味において、今後、外交の施策を進める上において大なる成果をおさめた。こういうふうなことでございます。
  144. 平泉渉

    ○平泉渉君 中近東諸国は欧米におきまして最も重視しておる対象の一つでございます。わが国の外交が従来この方面においてどことなく疎遠であったと大里もおっしゃるのでございますが、その意味におきまして、今後とも非常に重要な資源を持っておるところであり、また、軍事的な要衝でもありますので、このような地点の関係というものは今後ともわれわれとして大いに注意をしていかなければならないところだと考えるのでございます。  時間がまだ少しございますので、最後に、一般に国内におきまして最近言われておるのでございますが、日本の対外活動を強化する上で非常に必要なことは、国内で日本の長期にわたる国家的な利益というものについて広範な意見の一致がなければならない。そうして内政上の争いを越えた一つの対外的な自国の利益というものについての観念が確立しておらなければならないということが言われておるのでございます。ことにわが国の場合は、非常にイデオロギーに基づいた外交をしておる国々がまわりにおる状態でございますので、その意味におきましても、このような必要、内政上の政争を越えた長期的な国家の利益を確立するについての観念を確立するということが必要である、非常に切実な必要があると思うのでございますが、この点につきまして、外務大臣の御所見を承りたいと思うわけでございます。
  145. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 何が国家的利益であるかということに関する認識において、非常に極端と極端と対立しておるというようことは、これは外交を進める上において最も考えなければならぬ問題でございまして、御指摘のごとく、事外交に関する限り、あるいはまた、事国の安全というような問題に関する限り、どこの国でも大体において超党派的に一致をしておるのが世界の状態ではないかと思うのであります。そういう点につきまして、日本としてもよほどまだお互いにこれは考えなければならぬことが多々あるよう考えております。
  146. 平泉渉

    ○平泉渉君 ただいまのお話のとおりでございます。私どももこの点につきまして、ますます努力をしていかなければならないと思うのでございますが、この際、もう時間も終わりますので、最後に、これは質問ではございませんが、特に外務大臣にお願いをいたしたいことがございます。  それは、わが国の対外活動の第一線におきまして活躍をしておりますわが在外公館の職員の生活の問題でございますが、ことにアジア、アフリカの諸国におきましてのわが在外公館の勤務というものは、非常に困難な条件が多いのでございます。生活条件が信じがたいほどに困難な任地が少なくないのでございまして、これからますますこういう国々との腰を落ちつけての外交活動というものを強化していかなければならない現在におきまして、在外公館の職員が安んじてその職務を執行できないということでは、なかなか問題があるのではないか。欧米諸国の同様の制度と比べますと、いささかまだわが国の制度においては問題が少なくないという感じをいたすのでございますが、対外活動に関しましては、国や国民の期待が非常に大きいのでございますので、一そうこういう点につきまして在外公館のほんとうの腰を落ちつけた活動というものを確保できるような御処置をお願いいたしたいと思うのでございます。
  147. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 全くお説のとおりでございます。この子弟の教育の問題、それからまた在外手当等の問題特にこの二点に関しましては、日本といたしましては大いに考えなければならぬ、まあかようなことで、四十一年の予算におきましては、この点を、もちろん十分というわけにはいきませんけれども、従来よりもよほど程度を進めていけるのではないかという一つの案を国会の御審議をお願いしておるような次第でございまして、これが通りますれば、従来よりもよほど改善される、こう考えております。
  148. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 平泉君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  149. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、小平芳平君。
  150. 小平芳平

    小平芳平君 私は、おもに経済問題についてお尋ねをしたいと思います。  初めに、国債について大蔵大臣に若干お尋ねをしたいと思いますが、国債については、衆参両院の予算委員会においてもいろいろ論議がかわされてきておりますので、重複点は結論的にお答え願えればけっこうだと思いますので、よろしくお願いいたします。  初めに、大蔵大臣は本会議で答弁なさったときに、政府が借金しても国民に資産をお持ち願う、国債というものは政府が借金して国民に資産を持ってもらうことだ、このように答弁されておられましたが、これはどういう趣旨ですか。
  151. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 戦後、わが国の社会面あるいは政治面から考えまして、企業でも家庭でも蓄積が非常に乏しい、これが大きな問題である。経済の安定という問題は、二面からこれをとらえてみると、企業や家庭で蓄積があり、安定した経営、安定した生活ができる、こういうことであるというふうに考えるわけです。ところが、企業やあるいは個人の家庭と非常に密接な関係のある国の財政、この財政はずっと収支均衡方針でやってきたわけです。で、まあつじつまを合わせてきたわけでありますが、一方に国をささえる企業と家庭が赤字である。これがはたして安定した経済状態であろうかということを考えてみまするときに、もう考え方を変えなければならぬ。終戦直後は何としても国が再建、再発足をするわけであります。そういう際ですから、国が赤字であると、これは国に対する信用ということを考えなければならぬ時期でありましたが、もう国が幾らかの借金をいたしましても信用にかかわるというような状態ではない。この際、まあ国はいろいろ仕事をしなければならぬ問題があります。それを税でやるよりは、公債によってまかなう。公債はつまり企業や個々の国民が国に対して債権を持ったわけであります。つまり、資産を持ったわけであります。そういう形でしばらく蓄積政策をとるべき時期に来ておる、こういうふうに考えるんだということを申し上げたわけであります。
  152. 小平芳平

    小平芳平君 その点は、なぜ国債を発行するかという点については重々御説明を伺っているわけですが、要するに国債を発行する場合に、この国債発行というもの、か国民生活に利益をもたらす、しあわせをもたらす、そういう政策としての国債発行でなくてはならないと思うのです。ところが、大蔵大臣の説明は、いかにも国民の皆さんは利益があるのですよ、豊かな家庭になるのですよと、政府が借金していても皆さんは生活が豊かになるのですよと言っているように見えますけれども、実際問題としては、日本経済の現状としてそういう安易な考えでいけるかどうか。日本経済の現状としては、そういうような国債政策、国債を発行する場合でも、よほどの決心と、まあ大蔵大臣は歯どめということをよくおっしゃっておられましたが、よほどのそういう対策がないことには、ただ手放しで、国民は財産を持てたんだ、昭和四十一年度からは七千三百億の国民は財産を持てたんだと、こんなことを言って喜んでおれる現状ではないじゃありませんか。
  153. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私もそう安易に考えているわけではないのであります。私が、企業には蓄積を、あるいは家庭にはたくわえをと申しておるのは、これは私の財政を運営いたしていく上の理想を申しているわけです。現実はなかなかきびしいわけです。しかし、七千三百億とにかく公債を出す。もしかりに財政を昭和四十一年度のようなスケールで維持しょうと思えば、これは増税をそれだけしなければならぬ。増税をせぬで、とにかく公債でまかなうということは、これはもう明らかに企業や国民の蓄積に大きな影響がある、こういうふうにまあ考えておるわけであります。  しかし、公債政策を運営する、これは尋常な努力、じゃやっていけません。これは万全の、細大細心の注意を払ってこれを成功に持っていきたい、かように考えております。
  154. 小平芳平

    小平芳平君 そこで、具体的にお尋ねをしてまいりますが、細大細心の注意を払い、万全の対策でこの問題に取り組むという、大蔵大臣としては、政府が借金、国民が財産という表現はいかにも安易過ぎるような感じを与えませんですか。
  155. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 決して私は安易過ぎるとは思いません。ただいま申し上げましたとおり、これはもうすぐそういう状態が実現するとは思っておりません。しかし、時間をかければ必ず企業の基礎も安定し、家庭も豊かになる、こういう理想を表明しておるわけなんです。時間をかけてそれに向かって着実な努力をしていく、その第一歩が昭和四十一年度である、こういうことであります。
  156. 小平芳平

    小平芳平君 そこで、「政府の窓」という、この巻頭のことばに、「景気の悪い時は国債を発行し、借金をしてでも、財政支出をふやして景気を刺激し、景気のよいときは、国債の発行額を減らしたり、とりやめたりして、財政をじょうずに弾力的に運営していく機敏さが必要なわけです。」、これはこのとおりでよろしゅうございますか。
  157. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのとおり心得ております。
  158. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、大蔵大臣の財政演説でも、「年度の途中においても、経済情勢の推移に応じて、予算の弾力的執行をはかるとともに、公債の発行を調節していくことが必要であります。」という、ように言っておられます。ところで、年度の途中においても公債発行を調節していくということは、昭和四十年度のことですか、四十一年度のことですか、両方ですか。
  159. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十年度でもそうですし、四十一年度でも、またそのあとにおきましても、そういうふうにやっていくつもりであります。
  160. 小平芳平

    小平芳平君 そうしますと、四十年度においては、税の自然増収があれば、それだけせんだってきまった赤字公債は減らすと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  161. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういうふうに考えております。
  162. 小平芳平

    小平芳平君 そうしますと、四十一年度においてはいかがでし上うか、七千三百億については。
  163. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま四十一年度予算で見積もっております税収入が見積もり以上にあがってくると、こういうことでありますると、それだけ公債の発行は取りやめていきたいと思います。
  164. 小平芳平

    小平芳平君 そうしますと、大蔵大臣の考えといたしまして——まあ大蔵大臣といいますか、政府の国債に対する根本的な政策として、なるべく国債は少なく発行していこうと。それは財政規模との関係もありますが、できる限り国の借金政策は少なくしていくんだと。国民の財産だから多いほどいいんだというような考えじゃなくて、なるべく少ないのが理想なんだと、こういうふうな考えでよろしゅうございますか。
  165. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そこは一言にそうも考えていないんです。ただ、四十年度、四十一年度に租税収入が予定よりふえたらどうするかというお尋ねでありまするから、もう予算のワクがきまっている、歳出のほうの。そこへ税のほうがよりよけい入ったというならば、自然に公債は減らしていく、こういうことになるわけであります。  しかし、それと問題が違って、公債政策、財政政策としてですね、公債の多寡を一体どういうふうに考えるかという問題になりますると、私は、経済界が非常に沈滞しているというときには公債がよけいに出て、そうして財政の規模が拡大される、これはやらなくてはならぬことであるし、またやって差しつかえないことである、こういうふうにまあ考えておるわけです。逆に、景気が非常によろしい、場合によれば過熱するかもしらぬというような際におきましては、自然増収、税増収があります、そういうような状態でもありますので、公債は減ってくるわけです。また、財政規模全体といたしましても、民間活動を過熱に導かないように、これを消極的に運営すると、こういうことが必要になってくると、こういうふうに考えております。
  166. 小平芳平

    小平芳平君 そうしますと、四十一年度は七千三百億よりふえることはないけれども、減ることはあると。実際の大蔵大臣の見通しとしてはいかがでしょうか。
  167. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま、ともかく予算を御審議願っておる段階でございます。私どもが税収入として見積もっておるその額は、まずまず適切な額であると、こういうふうに考えておりますので、年度の途中においてこれが増額することも、減額することもまずまずなしと、こういうふうな見通しを持っておるわけです。
  168. 小平芳平

    小平芳平君 まあそれは予算案を出しておきながらですね、これは減りそうだとか、ふえそうだとかと言うことは、それはもう無理だと思います。ただ、先ほど来、大蔵大臣の御説明は、要するに景気との関係なんだ、景気と関連しての公債発行なんだということを、ずっと御説明なさっていらっしゃるわけですから、そこで、景気の見通しと関連しての見通しはいかがですかということをお尋ねしておるわけであります。
  169. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 来年度の、昭和四十一年度の経済は、経済企画庁で見通しておりまするように、大体七・五%の成長を遂げるであろう、こういうふうに考えております。年間通じて平均七・五%の成長といいますとですね、下半期あたりに景気がよくなったというのじゃこれは達成できないのです。これはもう新年度、四月の時点で、すでに昭和四十年度に対しまして相当の高さを持っていなきゃならぬ、こういう状態で初めて七・五%の年間成長、これが達成できると思います。  そういう理屈になるわけでありまするが、には一体どうであるかというと、昨年の暮れごろから景気諸指標は上昇に伝じてきておるのであります。これは私は、まあ四十年度の財政がですね、上半期に非常に低調でありました。下半期、ことに十二月からその支出が盛んに行なわれるようになってきている、これが響いておると見ておるのです。一月までの指標は大体出ておるわけですが、鉱工業生産、これが十一月からもうずっと続騰をいたしておるわけです。それから出荷指数、これは十二月からよくなってきておるわけであります。あるいは在庫指数、これも非常な改善を見てきておるわけであります。そういうようなことで、今日この時点でどういうふうになっておりますか、私はまた指標は一段と変化をしてきておるのじゃないか、そういうふうにまあ見ております。これが昭和四十一年度、しかも四十一年度は上半期に支出を繰り上げて強化してやろう、こういうふうに考えております。これに乗っていくというふうに見ております。そうしてなだらかに成長を続けて、年平均七・五%程度の成長は達成できる、まあそういうふうな見通し並びに大体確信を持ちながら、ただいま諸施策を進めておる、こういう段階でございます。
  170. 小平芳平

    小平芳平君 その景気の問題その他について、物価の問題については、またあとからお尋ねしたいと思うのですが、いま私がお尋ねしたいことは、国債発行という新しい政策に対しての国民の心配といいますか、これで将来どうなるんだろうかという点を、特にはっきりとお聞きしたいと思ってお尋ねしているわけです。まあそれは将来の経済見通しですから、そうきっぱりいかない面があるのは当然だとは思いますが、大蔵大臣がわざわざ財政演説で、年度の途中においても、経済情勢の推移に応じて、公債の発行を調節していく、というふうに大蔵大臣がおっしゃるという意味はですね、国民はこれに対して七千三百億という、この年度の途中において財政の景気との関連において減ることを期待できるのか、それとも大蔵大臣が年度の途中において云々というのは、ふえることを見込んでの御意見なのかということをお尋ねしているのです。
  171. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 年度の途中において経済上の変化があれば公債の発行額を調節するというのは、ただいまのところでは、私は、四十一年度予算で見通しておる税収が減りもしないし、ふえもしない、大体あの程度になろう、こういうふうに見ておるわけでございますが、万一これが、税の自然増収がふえたという際には公債は減らす、こういうことを申し上げておるわけであります。
  172. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 関連。国債問題につきましては非常に論議がされておるところでございますが、大蔵大臣にお尋ねしますが、第一回の市中消化は楽観的なムードのうちになるほど進んでおると思うのでありますが、こういう意味から最初の国債募集が好調であったということは喜ぶべきことでございますが、四十一年度から国債発行はいよいよ本格化して大量募集が長期にわたって私は続くのだと思いますが、この場合市中消化が順調に運ぶと、大蔵大臣はかたい確信がございますか、その点をお伺いします。
  173. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 四十年度は大体もう発行済みでございます。これは非常に順調裏に消化をされたわけであります。それから四十一年度につきましては、これが問題というか私が非常に大事をとったところなんです。これはもう大体どのくらいの額が市中消化できるであろうかということを、半年くらいかけてつぶさに検討してきたわけです。その間、まあ国家資金の全体の状況はどうなるだろうか、あるいはこれを引き受ける金融機関、これの引き受け力はどうであろうか、また、金融機関等の意向は一体どうであろうか、こういうようなことを検討いたしまして、大体七千億程度は消化間違いなし、こういうふうに考え、見当をつけ予算の編成に取りかかったわけです。それでいよいよ予算が近く成立する、そうしますとこれに基づいてシンジケートとの間に引き受けて交渉をしなければならぬわけです。その予備的な打ち合わせをすでに始めております。その予備的な打ち合わせの経過等を見ましても、七千億円の公債の消化、これは絶対間違いなく順調に実現できる、これは確信を持っておる次第であります。
  174. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 大蔵大臣はたいへん確信が強いようでございますが、国民はその点をひとしく憂慮しておるところでありまして、なるほどそれは今後大量に公債が発行されるということにおきましては予測はむずかしいかもしれない。あるいは金融情勢とか社会情勢にどういう影響を与えるか、あらゆる観点から十分あなたは考慮されて、そういう自信のもとにやっておるのだ、こうおっしゃっておりますが、赤字国債のラッシュでいわゆるこの市中消化が食傷してしまって、日銀引き受けというような、こういう事態がもし起こるということになりまするというと、これは日銀の増発から必然的にインフレの助長ということは、これは不可避であると私は思うのでありますが、それを全部国民はひとしく聞きたがっておると思うのです。ただ、確信がある確信があると大蔵大臣はおっしゃるけれども、あなたとても神さまではないので、そう簡単に予測ができるはずがない。その点を、あなたの確信をもう少し具体的に、将来インフレを招くようなことは断じてないのだと、はっきり国民が安心するように的確な具体的な説明を願いたいと思います。
  175. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国債は租税と違いまして、これはわりあいに安易に調達できる財源手段であります。そういうようなことで、ややもすると税で財政を運営する場合よりも公債を増発しまして財政を運営する、つまり財政の規模が膨大化する傾向を持つわけであります。そこが非常に問題なんであります。で、私は、財政の規模、これが国債政策を運営していく場合の最大のかなめをなすものである、こういうふうに考えております。その規模というものは一体どういうふうにきめていったらいいのだ、今日のように民間が不況である、経済活動が停滞しておる、そういう際には財政が拡大していい、そのためには公債は増発してよろしい、そういうふうに考えております。また好況になった際には公債はこれは引っ込める、そうして財政の規模も消極的にこれをやっていく、そしてつまり民間と政府のこの経済活動、これの総和が毎年毎年そう大きなでこぼこなしに日本の経済全体が成長発展していく、こういう状態でありますれば非常に私は国の財政、経済運営上いい状態であると、こういうふうに考えております。心配しなければならぬことは、そういう方式をはずれて財政が運営され、民間活動等の見合いにおいてバランスを失する。国は最大の消費者でありますが、この最大の消費者である国が物を、あるいは労働力を、あるいは資金をひとりで使い過ぎる。そうすると民間のほうで需給の逼迫が起こるわけです。そうすると、労働の需給が逼迫すれば賃金高になる。また、金の需給が逼迫いたしますればこれは金利高になるわけです。物の需給が逼迫いたしますれば物価高になるわけです。そこで、そのインフレの要因をかもし出すということになるのでありまするが、最大の消費者である国がそういうアンバランスを起こさない程度に運営されるという限りにおいては、インフレになるようなおそれというものは絶対にないと、こういうふうに確信をいたしております。
  176. 小平芳平

    小平芳平君 そこでインフレになるおそれが絶対にないという結論さえ出れば、それで私も、もうそれで質問は終わりなんですが、なかなかそうはいかない。  そこで、次にお尋ねしたい点は、いま御答弁なさいましたが、昭和四十年の発行したそれは個人に何%、銀行に何%ということがわかりましたらそれを、それから四十一年、七千三百億の見通しについて何%ということがわかりましたら、それをお伺いしたい。
  177. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 大体、都市銀行におきまして五〇%であります。それから地方銀行におきまして二〇%、それから一般個人におきまして一〇%、それから相互銀行、信用金庫、それから生命保険会社、信託会社、それらにおきまして三・六%ずつおのおの引き受ける、それで一〇〇%、  こういうことになります。
  178. 小平芳平

    小平芳平君 だいぶ足りないですね。
  179. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いや、いま相互銀行、信用金庫、生命保険、信託おのおの三・六%であります。
  180. 小平芳平

    小平芳平君 それは四十一年度の発行分の見通しでありますか。
  181. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 四十年度はただいま申し上げましたように消化されたわけですが、四十一年度につきましては、この予算案が議決をされました上におきまして正式に取りきめる、こういうことになります。しかし、大体見通しといたしましては、四十年度のような比率で引き受けが行なわれるんじゃないか、そんなふうな感じを持っております。
  182. 小平芳平

    小平芳平君 そこで次は、財政規模についていま非常に問題だということを御説明しておられましたが、過去にも財政規模についての議論もいろいろございましたが、で、今後の財政規模の見通しと、また、国債発行の見通しと、それから国民総生産とのパーセントの関係についてお尋ねしたい。
  183. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まずそういう見通しを立てる場合において、一番基本になりますのは国民総生産かと思います。これにつきましては、いまのところ、まあおおよその見当といたしまして、今後七、八%の成長を遂げていくということが一番いいのじゃないかというふうに考えておるのです。しかし、これはすでに申し上げておりますとおり、長期経済計画というものを策定するようになります。それにどういうふうな結論が出てまいりますか。まあ大体私は、長期計画を立ててもその辺に落ちつくのじゃないかというふうに思います。そういう際における財政規模は一体どういうふうになっているかという問題につきましては、これは内容を二つに分けてお考え願いたいと思うのです。一つは、これは行政費、社会福祉費、文教費というような一般経費であります。これが一一体どういう傾向をたどるであろうか。それからもう一つは、公債と非常に関係のある公共投資的なものが一体どうなるか。これは今後の見通しを立てる場合において動きが違うのです。で、いまの一般の行政費は、これは社会保障費だ、文教費だ、あるいは一般官吏の人件費だというようなものがおもでございまするが、これはそう伸び縮みをさせるわけにいかないのです。やはり社会保障は大いに進めなければならぬ、文教は充実しなければならぬ、一般公務員もこれをある程度は維持していかなければならぬ、こういうふうに思いますので、これはそう景気と関連して縮めてみたり伸ばしてみたりというわけにはまいりません。そこで、これはある速度で伸びていくと思う。伸びていく場合にまた問題があります。それは何かというと、これは物価なんです。いま、ことしの予算は一八%四十年度に比べると伸びますが、物価的な要因というものがある。われわれはいま物価安定策というものに懸命に取り組んでおり、今後物価を安定させていくという考えでありまするが、物価を安定さした上におきましては、いままでのような伸び率で一般行政費が伸びていくというふうなようには考えておりません。しかし、ある程度は伸ばしていかなければならぬ。それから、公共事業費につきましては、これも社会資本の取り戻しという問題がありますので、これは伸ばしていきたいと思うのです。しかし、民間が非常に好況である、そこへまた政府が一緒になって事業を並行してやるというようなことになると、過熱に持っていくおそれがある。そういうことで、この公共事業費等につきましては、経済の動向とにらみ合わせながら、適切にこれを調整していく、こういう考え方をとるわけであります。したがいまして、この両者を通じて財政、がいかなる伸び方をするか、これは計数的に申し上げるのは非常にむずかしいのですが、まあ大体の傾向としてはただいま申し上げたような情勢になろうかと、かように考えております。
  184. 小平芳平

    小平芳平君 これは傾向としてはそのとおり、一般行政費はそう云々と、公共事業費はこういうふうにというふうにおっしゃった、その傾向はよくわかりますが、問題は、この国債を発行していって、将来どこまで発行していくか。まあ昭和四十一年度、年度内にさえもできることなら減らすというお考えのように先ほど承りましたが、ましてや四十二年、四十三年、ふやしていくという、ふやさざるを得ないという見通しか。それとも四十一年度すら七千三百億は減らす可能性もできるん、だと、四十二年以降はどうというふうなことについてはいかがでしょう。
  185. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そこで、ただいま申し上げましたような一般的傾向ですね。ごく近い将来について見まする場合に、私は、昭和四十二年度、三年度は多少、七千億という四十一年度の公債の額よりは増発されるのではないかと、こういうふうに考えております。つまりこの三年間ぐらいの間はいわゆる低圧経済、民間の経済活動が非常に微弱である、こう見通しておるわけであります。したがいまして、そういう期間には、公債を出しても政府の財政が積極化し、民間の経済活動を補わなければならぬ、そういうふうに考えておる。その結果が若干公債がふえていくのではあるまいか、こんな見通しをいたしておるわけであります。  さて、そうすると昭和四十二、三の、そのあとの四、五はどうなるか、こういうと、この辺が私は境になる。で、経済が回復する、過剰設備も埋められる、そういうことになると、収益力が非常に企業の方面においてよくなるわけです。そうすると租税収入がふえてくる。その租税収入が公債と置きかわっていく。こういう今度は傾向を持つのではあるまいか。昭和四十四年、五年というところはそれがどっちの傾向をいくかの山になると思う。非常に順調に国民総生産も伸び、それからそれに伴って租税収入もよく、それからさらに行政費なんかもそうふくらまぬで済むという際には、七年後、つまり昭和四十一年度公債が償還されるそのころになりますると、まあ公債にそう頼る必要がないような状態になるのではなかろうか、かように考えております。
  186. 小平芳平

    小平芳平君 それで、償還の期日がくるころには公債政策に頼らなくてもいいようになるかもしれないと、それは一つの見通しだと思いますが、そのころの発行額の累計はどのくらいにお考えでしょうか。
  187. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そうですね、七年後の累計となると、ちょっと私もここで無責任なことを申し上げてはならぬと思いますが、まあ五兆か六兆、その辺になるのではないか、そんな感じを持っております。
  188. 小平芳平

    小平芳平君 それはまあ見通しですから、はっきりしたことは言えないかもしれないし、また、無責任でも困るわけですが、前には、委員会で大蔵大臣は、四兆くらいだろうというような見通しも答弁なさったんじゃありませんか。
  189. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これはそう申し上げましたが、五年後はどうなるかという御質問に答えまして四兆円くらいでありましょうと、かように申し上げたわけであります。
  190. 小平芳平

    小平芳平君 そこで、結局この七年後に五兆、六兆でおさまるかどうか。それは財政規模が拡大するという点では、いま四兆三千億がどこまで拡大していくか、また、国民総生産がどこまで伸びていくか、そういう点が問題になると思いますが、先ほどの大蔵大臣の御答弁で、一般行政費はそうふえるわけはないと言うけれども、一般行政費ですらなかなか減らない、規模が縮小するということは考えられない。ましてや公共事業も拡大していく、したがって、元利償還というものは、財政規模が拡大して初めて元利償還ができるんだと、とてもいまの現状で経済見通しを立てても、七千三百億の、また四十二年、三年とふえていく国債を元利償還できる見通しは立たないんだと、こういうことじゃありませんか。
  191. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 四十年度の公債につきましては二千五百九十億円、これは七年後の四十六年に現金償還を考えております。そのための準備をしたいと思っております。それから、四十年度に発行します七千三百億円につきましては、これもなるべく現金償還を努力します。しかし、なかなかそういうわけにはまいらぬだろうと思います。私はそれでいいと思うのです。つまり私どもが今度七年ものの公債を発行するわけです。償還期限七年、これを発行するわけです。ところが、私どもが発行しようとする公債は、公共施設、あるいは文教施設、そういう耐久年数からいいますと三十年あるいは五十年というようなもので、それを見合いにしてやっておるわけなんです。したがいまして、私は、金融情勢がこれを許せば、七年ものじゃない十五年もの、二十年もの、そういうもので実は出したかったのです。ところが、金融界が、それはどうも困難である、つまり消化困難である、それでは。そこで七年ものにせざるを得なかったわけでありますことを考えますると、七年後に償還期の到達した際には、その相当部分を借りかえによってやっていくと、こういうことをいたして一向私は差しつかえない。そのときあらためて新しい購買力を追加するわけじゃないんです。七年という公債を発行しますが、そのとき二十年、こういうふうにやっておけば、三回借りかえたというのとちっとも変わらないわけです。借りかえも相当部分やっていきたい、かように思っております。
  192. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、そこで問題は、借り得になっちゃうわけですね、借り得に。借りたほうが得しちゃう。どうしてもこれから財政規模が拡大する。またこれから引き就いていろんな面からお尋ねをいたしますが、物価が上がる、ですから、いまお金を握っているほうが得しちゃう。国民が財産どころか、国債を持っている国民は、お金は政府に預けてある、それが政府は確かに事業を興こすけれども、これから財政は膨張するからいいんだと、また、物価も、四十一年度でさえ五・五%上がっちゃうんだと、だから、いま金を借りておいたほうが得なんだ、政府としては。そういう結果になりませんか。
  193. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 財政をやって、国民の犠牲において政府が得をしようというようなことは、ゆめゆめ考えておるわけじゃございません。物価のほうにつきましても、先ほどから申し上げておりまするように、何とかしてもう一刻も早くこれを安定基調に持っていきたいということに全力を尽くして、国債を保有した人に迷惑のかからないようにいたしたいと、そういう一念でございます。
  194. 小平芳平

    小平芳平君 それは初めから、皆さんお金を預けなさい、政府は皆さんを犠牲にして事業を興こしますなんて、そうは言いませんよ。しかし、結果はそうなるんじゃありませんか、結果としては。
  195. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 結果も、物価が安定いたしました場合におきましてはそうはならぬと思うのです。ともかく利回り六分七厘九毛五糸と、こういう利息もつくわけでございまするし、それで、物価が安定する、そういうことになりますれば、決してこの保有者に御迷惑をかけることはない。ないという見通しであればこそ、またこれが広く国民の間にも消化されていく、こういうことだと考えます。
  196. 小平芳平

    小平芳平君 そこで、ないという見通しがなかなかわれわれとしては確信が持てないからいろいろと心配する点が出てくるわけです。で、とにかく以上通じて考えた場合に、その国債発行はこの不況下を脱出するためのやむを得ない方策なんだと、で、できることなら減らしたいし、また、いま四十一年度で発行した国債も、七年後に元利償還する——返す見通しもはっきり立たないから、それは借りかえの方法も考えているのだが、六、七年後には、要するにその償還する七年後ごろには発行しないでも済むようになるかもしれないと、要するに、できるだけ国債政策にたよらない財政の運用が現状として望ましいのだと、こういう点はいかがでしょう。
  197. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は国債政策が悪いというふうに考えていないのです。国債政策をむしろとるべきである。つまり、これからの国の役割りというものを考えてみまする場合に、なるほど民間では設備投資、まあ過剰な状態になるまで設備が充実されたわけです。しかし、それに伴って国のなすべき仕事はどうだろうというと、道路を見てみましても上下水道を見てみましても、あるいは住宅政策を見てみましても、非常な立ちおくれです。百何十年というくらい私は先進諸国に比べればおくれているのじゃないか、それをやらなければいかぬ、そういうことを考えると政府は財源が要る。その財源を一体増税でやるかということになると、増税は私はなかなかこれはむずかしい。いまの日本は、国全体としての経済力は大きうございますが、国民一人一人当たりの、あるいは企業一つ一つの力というものは、これは非常に乏しいわけです。国民一人一人の所得などは、実に世界の中で二十一位に位するというくらいなみじめさなんです。それを増税でやっていくかというと、なかなかそれはできない。やはり国力がここまでついてきたわが日本の国としては、国が借金をする、そうしてこの仕事をやっていく、これが私は今日とるべき政策じゃないか。  それから、もう一つは、過去の動きを反省してみまするときに、先ほど申し上げましたが、景気がいいと租税収入が集まる、ですから国の財政も膨脹するわけです。国と民間の設備活動とが一緒になって景気を過熱さしちゃう。逆に、景気が悪いときには租税収入が集まらないものですから、政府財政は縮小する。今度は国と民間の設備投資活動が一緒になって景気を不当に深刻にしちゃう。つまり景気循環の山と谷が、財政政策の運営の影響にもよりまして、非常にこの開きが大きくなる。そうであってはならない。で、公債政策を使う。そうしますと、先ほども申し上げましたように、今後の財政は景気の状況において伸び縮みができる、こういうことになりまして、国の経済が正常に発展する上において大いに裨益するところがある。私は積極的に公債政策というものは取り上げていくべきである、こういう考えを持っております。
  198. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、ある条件があれば、ある種の公債を発行することは、これは全部何でもかんでも公債発行反対と言ってるわけじゃないのです。ただ、現在の経済界、日本現状として、いま四十一年度で七千三百億の国債が発行されるにあたっての考えというものを言っているわけです。ですから、何といっても、いままでもこれは何回も論議されたことだからと思って言わなかったけれども、大蔵大臣は歯どめがしてあるんだというふうに言われますが、やはり国債を発行することによって予算が膨張する、財政が膨張する、あるいは、また、場合によっては民間資金が圧迫されるというような、そういうおそれというものは依然として去らないわけでしょう。
  199. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 公債政策を運営する場合におきまして最大の歯どめ、機軸をなすものは、これは財政の規模なんです。これは財政の規模を適切にしてまいります限りにおきましてはインフレにもデフレにもならない、非常に正常な経済運営ができる、こういうふうに思っております。財政の規模を決定いたすにつきましては、科学的に、合理的にこれをきめてまいりまして、いやしくも政治的にこれを決定するというようなことがないように政府として万全を期していく、こういう方針でございます。
  200. 小平芳平

    小平芳平君 そこで、財政規模が、先ほどお尋ねすることによって、相当拡大していく、また、過去の実績から見ても、財政規模は五年たてば倍くらいになってるわけです。ですから、いま七千億の借金しても、これから五年たてば半分の感じにしかなりませんじゃないですか、償還するときには。
  201. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは物価の見通しによるんです。私どもは、物価はこれを安定基調に持っていくために最善を尽くすと、こうしばしば申し上げているわけです。物価が安定いたしまする限りにおきましては、公債の価値が減価をするというようなことはないわけなんで、国民に御心配をかけないように、物価政策には最善を尽くしていきたいと、かように考えております。
  202. 小平芳平

    小平芳平君 どうも物価政策が最善じゃないように思うことは、これはあとでまた申し上げますが、要は、国債を発行するにあたっては、ただ安易に考えてやっているんじゃないとおっしゃいますけれども、それでは政府は安易の考えではないぞと、たとえばこれこれしかじかの冗費を節約してるんだとか、あるいは政府としてもこれだけの財政上の努力をしているんだとか、そういうものはそれではありませんか。
  203. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十一年度の予算におきましては、何としても景気回復ということを実現する一助にこれをさせなければならぬ、一助どころじゃない、これに最大の役割りを与えなきゃならぬというふうに考えまして、公共事業費、これは一般会計、あるいは政府関係機関、あるいは特別会計、地方財政等を通じまして、特に拡大をいたしたわけであります。しかし、その反面におきまして一般の行政費が乱に流れるということがあってはならぬ、これは特に意を用いたわけであります。これはもう御承知のように、今回は政府中央部局におきまして、局の新設、機構の新設は一切いたさない、それから、公社、公団等の外郭機関は、これも一切つくらない、これはもう戦後初めてであります。新しく外郭団体等、あるいは部局を設けない、これは初めてのことであります。あるいは公務員の定員につきましても、警察官のような現業職員は別でありますが、一般の職員につきましては、できる限り定員の中でやっていく、こういう配慮をいたしまして、実に増員は、外務省だとか、まあそういうところはありまするが、百六十三人しかふやしておりません。そういうふうに、いま厳重な規制をいたしたわけであります。また、補助金は新しくふえたものもあります。ありますが、これもできる限り整理いたしました。整理したものも相当あります。あるいは額を減らしたものも相当あります。そういうふうに、一面においては、必要な公共事業費、社会事業費、文教費、これはふやしました。しかし、一般の行政費はそういう厳粛な態度をもってこれに臨んでいる、こういうことも御承知おき願いたいと思います。
  204. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、その景気回復のための公債発行となるからインフレの心配が出てくると思うのですよ。それから、また、いまの新しい機関は一切四十一年度は認めなかった、新しい機関の新設は認めなかったと言われますが、たとえば昭和三十九年度決算が参議院本会議に出されましたときに、公明党の二宮議員から質問しているのですが、このとき大蔵大臣はほかの用件でおられなかったのですが、非常に不当事項がふえる一方だ。昭和三十五年からの会計検査院の指摘した事項を見ても、件数といい金額といい、ふえる一方じゃありませんか。特に三十九年では、不当事項では補助金、租税に関するもの、改善の処置または意見を付された事項では、国有財産の管理、処分に関するものが毎年の通例となっていて、三十九年はもうワナギ登りにふえている。こういう点についてはどうなんですか。
  205. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) どうも旧年度決算でいろいろと御指摘をいただいたことはまことに遺憾と思います。過去においても、ずいぶん会計検査院から指摘を受けておりますが、今後そういうことは絶無というのはまあなかなかむずかしいわけなんです。わけなんですけれども、なるべく少なくするように努力をいたしたい。今度予算が拡大された、また、それを早期支出する、こういう状態です。しかし、拡大予算、それがまた早期支出されるといっても、決して政府の会計を乱にするという趣旨じゃない。そういう際にこそ政府の会計を厳粛にしなければならぬという心がまえを持ちまして、各行、また、各省の出先、皆にそういう注意を喚起しております。だんだんとそういうことは少なくなるように努力していきたいと考えます。
  206. 小平芳平

    小平芳平君 それは国債発行と不当事項と直接関係があるわけではありませんけれども、やはり政治に対する政府姿勢というものがあると思うのです。ここでもって政策をこういうふうに踏み切ったからには、四十一年、あるいは四十一年度と言わずに、今後すぐにでもこういうように綱紀を粛正していくとか、そういうような不当事項は必ず減らしていくのだとか、そういうようなものはありませんですか。それから、また、予算編成にあたっても、それは新しいものは認めなかったと言いますけれども、これこれこういうような冗費はこういうように節約していくのだ、そういうようなものは何もないじゃありませんか。
  207. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま申し上げましたように、用途が済みました補助金のごときは、これは相当の整理節約をいたしております。それから、定員ですね、いつもの年だとずいぶんふえるのです。今度は百六十三人しかふやさない、これはたいへんな努力だったわけです。それから、さらに庁費、物件費、つまり役所のルーティンに使う費用ですね、これも何百億という節約をいたしております。きめこまかく節約をいたしまして、金は有効に必要な方面には使うけれども、不要不急な方面におきましてはできる限り整理節約をする、こういう実を予算案に示している、こういうふうに考えております。
  208. 小平芳平

    小平芳平君 それでは、もう少しきめこまかいものをこまかくおっしゃってくださいませんか。
  209. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それじゃ政府委員からお答えいたします。
  210. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 少しこまかい点になりますが、たとえば先般衆議院の予算委員会におきまして、春日委員から質問趣意書の形でもって文書で提出を求められましたので、それに対して出しました資料で御説明申し上げますと、補助金の整理、合理化等につきましては、廃止したものが五十四件、その廃止額が二十五億円余り、それから前年度より減額したものとして、補助金の数八十件、その金額は六十九億円余りといったような数字が出ております。また、ただいまの行政費の関係につきましては、昭和三十九年の九月閣議決定に基づきます欠員不補充の措置の継続によりまして、人件費の節減をいたしました金額は、概算約四十億円というような数字を出しております。また旅費予算額——各官庁の旅費でございますが、これなどを一割節約することによりまして、節減いたしました金額約十八億円、これなどは、各省各庁非常にその活動いたします際に、何としてもほしいところの金額でございますが、今回またそれを特に節減するようにお願いしまして得た金額でございます。たとえば事務の合理化等を見込むことにより、その他物件費等の節減額として、概算約三十二億円といったような数字もその際提出いたしております。金額は個々に非常に小さなものを集めましてこの程度になっておりますので、全体の経費から見れば少ないとごらんになるかもしれませんけれども、事務的、行政費的なものの節減といたしましては、大臣言われましたとおり、かなり各省各庁に御協力をお願いいたしたつもりでおります。
  211. 小平芳平

    小平芳平君 いまそこでこんなに努力して浮かせたとおっしゃった金額を合計すると百三十四億。ところで、先ほど申し上げました決算報告によって、大蔵省所管の普通財産について見た場合、その件数について三千二百八十四件、その台帳価格が百五十五億円にものぼるものが管理不十分として是正改善の措置が要求されている、こういう問題があるわけですよ。ですから、もろん国の行政に必要なお金を減らしていたんじゃこれはたまらないわけですが、とにかく、政府の政治姿勢として、公債発行するからこうしろということは直接関連がないにしても、庁費の節約、また財政を、それこそ大蔵大臣がいつも言われる乱に流れない、そういう意味の決意と施策がより一そう要求されるんじゃないかと思います。いかがですか。
  212. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 全くそのとおりでありまして、そのようにいたしたいと存じております。ただいまお話しの国有財産につきましても、新たなる覚悟でその行政に当たっていきたい、こういうふうに考えておりますが、まず処分の相手方ですね。これにつきましては、公共団体あるいは公的な機関、それ以外につきましては原則として競争入札制度をとる。いままでのような弊害がこれで相当整理されるんじゃないか、かように考えます。  それから、国有財産でありまするから、たとえ公共的な相手方でありましても、あるいは一般の方でありましても、その用途の指定というものをいたしたい。用途の指定はいままでもやっているケースが多いのですが、これがどうも守られていないというケースがあります。そこで、今度は不動産につきましては、その登記面にこういう用途指定がついているのだということを表示する。第三者がそれを買う場合に、登記所に行ってみると、そうすると政府からこういう用途指定がついているということが一目りう然とわかるようにいたしていきたいと、こう考えております。  それから値段の評価につきましては、これは競争入札をとりますから、これも適正にいくだろうと思いますが、そのほか予定価格を見積るにいたしましても、民間の識者の意見をより幅広く取り入れていくというような方向考えていきたいと思います。で、検査院から指摘されておるような案件ができる限り少なくなるように、その実をあげていきたいと、こういうふうに考える次第であります。
  213. 小平芳平

    小平芳平君 そこで、次は、やはり大蔵大臣の財政演説で、国民総生産に対する政府の財貨サービス購入の割合が二三・二%と見込まれ、戦後における最高となっておるというふうにおっしゃっておられますが、ところで、国は長大の消費者と先ほど言われましたが、やはりこれにも限度があるのでありまして、現在のように、毎年心々急増していくこの姿、これは今後なお拡大していく見込みか、それとも、わが国の現状としては、どれくらいが適当とお考えでしょうか。
  214. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 四十一年度の経済計画におきましては、財貨サービス二三%となっているわけです。これは戦後最大のパーセンテージです。数年前までは一八%とか、そういう数字であったわけです。大体国民経済をこう大きく見た場合に、半分よりちょっと上ぐらいのパーセンテージが国民消費に当たっているわけですが、あと二〇%が政府、二〇%が設備投資というような累計の国民経済計画の実績、これが多かったわけです。ところが設備投資が一六%まで転落する。これをほうっておいたら日本経済は引っ込んじゃうというので、ことさらに二三%という高い位置づけをいたしたわけなんであります。  今後どうなるかというようなことにつきましては、先ほど申し上げましたように、民間の経済が引っ込むという際には、これは政府の財貨サービスの需要が高くなるわけでありまするが、この二、三年は民間の経済活動が微弱な状態だと思います。ですから大体その程度の水準が続くのではないか、そういうふうに考えておりますが、民間の経済が活発化するという、三、四年後以降におきましては、この高さはもう少し低くなるのではないか、そのような感じでございます。
  215. 小平芳平

    小平芳平君 もっと安定しなければならないというように感じます。  次は、地方債計画についてお尋ねをいたします。国の国債については、いまいろいろとここで論議されたような次第なんですが、地方債計画についてまず自治大臣から総括的な御説明をお願いします。
  216. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 昭和四十一年度の地方財政計画におきましては、一般会計分の地方債の発行予定額は二千八百九十五億円でございまして、うち、一般会計債が千四百四十五億で、特別地方債のうち一般会計分が二戸五十億円、新設の特別事業債が千二百億円、これで二千八百九十五億円になるのでありますが、歳入合計四兆一千三百四十八億円の中に占める比率は七・八%となっておるのでございます。
  217. 小平芳平

    小平芳平君 それで、七・八%というものは、自治大臣としては、まあ地方公共団体のいろんな実情もありますけれども、大体よろしいというふうなお考えでしょうか。それとも、これではちょっと多過ぎるというふうなお考えですか。
  218. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) ちょっと間違いましたが、七%でございます。七・八%でなく、七%でございます。これは景気の回復をはかるために、公共事業の大幅な増額を行ないまして、そうして地方のほうの経済もよくいたしまして、そして地域間の格差を是正し、行政水準の均衡化をはかるという意味におきまして、国と一体の立場で進むことが好ましいと考えておる次第でございます。
  219. 小平芳平

    小平芳平君 いま自治大臣がおっしゃった、国と一体の立場で公共事業を興して、格差是正をしていくというふうに言われますが、実際問題としては、格差がかえって拡大していくということは、国で公共事業を興そうという、その佐藤内閣の政策に従って公共事業を興せる地方団体はいいけれども、弱い団体は、ますます公共事業を興す力がなくて、格差が拡大していくということは、結局いつまでたっても後進といいますか、開発が進まないと、こういうような結果になっておりませんか。
  220. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) この公共事業では、やはり国の補助が、いわゆる国の負担分が相当ございますので、その他の裏づけの資金は、国も減税をいたし、地方も減税をしておるときでございますので、やはり、そして公債を発行してやるときでございますから、裏づけは公債をもってやっていくということでまいりませば、この消化は、公共事業の消化は困難ではございません。さらにその公債の関係につきましても、今年度にございます千二百億円の特別事業債につきましては、将来やはり地方負担にならざる方途等も、いま検討いたしまして、地方財政の圧迫にならないような方途において、地方の経済をよくしていくというように考えておるのでございます。
  221. 小平芳平

    小平芳平君 それは地方財政の圧迫にならないどころか、いま大臣がおっしゃるように、公共事業を計画すると、金がなければ公債を発行すると、それではたいへんなことになりませんか。地方財政が、現在でもすでに相当の赤字をかかえ、あるいは相当の元利償還に追われている団体があるときに、いまここでまた新しく公共事業を興す、金がなければ公債発行というふうに、なかなか簡単にはいかないんじゃありませんか。そこで一体その地方団体としては何%くらい、一般財源に対してどのくらいの公債発行が可能とお考えか。あるいはまた、公債費として、元利償還のための公債費としてはどのくらい、何%くらいが、まあ大体適当な水準というふうにお考えか、それについてはいかがですか。
  222. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 公債費の一般財源に対する比率の関係でございますが、一〇%以上になることはやはり好ましくないというように考えておるのでございますが、しかし、その公債の性質等いろいろございますけれども、現段階におきましては、やはり一般財源に対する公債の比率は六%でございます。これか四十二年度以降もまあ現在のように三千億の公債を引き続いて発行をいたす。そうして一般財源の伸び率が一〇%、こういうように考えていきますときには、やはり公債の比率は七%程度のものになりますので、この程度におきましては、地方財政を圧迫するものではない。中にはお説のように一〇%も、災害等の場合の貧弱町村にございますときには、交付税等でこれを措置するというような方途を講じてまいりますので、現在の状態では、それよりも何よりも地方の経済をよくして、格差を是正して、そして立地条件をよくして、工場誘致もできる、地方産業を開発していくということが、将来の地方財政をよくする一番もとになる、税源の基礎になるのではないかというように感じておる次第でございます。
  223. 小平芳平

    小平芳平君 まあ六%であると、それが一〇%になってもいいと思うということは、まだ相当拡大する可能性もあるんだというふうにもとれるんですが、地方団体の場合は、国以上にすでにもう相当の公債費もかかえている場合も多いわけですが、大蔵大臣としてはどのようにお考えですか。
  224. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は国あっての地方であり、地方あっての国である、これは一体だと、こういうふうに考えております。しかも、地方団体は数、か多いわけです。つまり単位が小さいわけです。ですからこれを、基礎を固めることにつきましては、国以上に力を注いでいかなければならぬ、こういうふうに考えます。ただいま自治大臣が申し上げましたように、昭和四十一年度の公債の、地方債の発行率は、一般会計で、二千九百億、三千億近くでございますが、これはまあ財政の規模に比べますると七%に当たるわけです。国のほうは一体どうだというと、これは一七%の公債を発行するわけです。しかも三十九年までは公債は出さなかった。急に一七%を公債に依存をする、こういう状態になったんでありまするが、その影響が地方団体にはなるべくいかないように、いろいろな財政、財源措置を講じまして、地方債は七%で済むようにと、こういうふうにいたしたわけなんです。地方団体も昔から公債がずいぶん使っております。戦前のごときは大体一七%ぐらいを公債に依存しておったわけです。それが今度はとにかく七%で済む、こういう状態でありますので、まあこの程度はやむを得ないんじゃないか、かように考えておる次第でございます。
  225. 小平芳平

    小平芳平君 ここで私が申し上げたいことは、地方債の発行については地方団体は相当無理していると思うのです。しかし、少々無理し、また財政が硬直するのは目に見えているわけですが、しかし、いま自治大臣も言われた、いわゆる格差是正のためには工場誘致もしなければならないし、また、地方の繁栄のためにも相当の事業を興さなければならないというところに非常に困難があると思うのです。ところで、企画庁長官から経済審議会の地域部会の報告についてひとつ簡単に御説明願いたい。
  226. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 審議会の地域部会の報告は、大体賃金格差はやや縮小しつつある、しかし、所得格差は引き続き拡大しておる、あまり縮小の傾向が見られない、それから、社会保障その他の関係は、やはり縮小しておらぬ、こういうようなことが大筋の報告でございます。なお、こまかいことは事務当局から御説明いたします。
  227. 小平芳平

    小平芳平君 そこで企画庁長官、賃金格差の縮小は、これはどのように分析していらっしゃいますか。むしろ、その地方の開発が進んだから賃金格差が減ったのだという面よりも、やはりこれは国全体の若年労働者の不足、あるいは求人難、そういう点のほうが多いのじゃないでしょうか。したがって、佐藤内閣がひずみ是正ということを非常に叫んでやっていらっしゃるわけですが、どうも現状としてはひずみ是正になっておらない。かえって大都市集中の傾向が、あるいは格差が、場合によっては所得格差の拡大も依然としてはなはだしい、このようにお考えになりませんか。
  228. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話しのとおり、賃金水準というものは、大体いま若年労働者の賃金向上、いわゆる平準化の作用が企業別ばかりでなく、地域別にも行なわれておりますから、当然接近してくることになると思います。その他の面については、たとえば先般国勢調査で発表されました人口の状態を見ても、後進地域といいますか、太平洋ベルト地帯に集中してきて、他の地帯には非常に減ってきたような状況があらわれておりますし、いまの所得格差が開いたということは、明らかにやはり地方の産業活動が活発でないというような点がございまして、地域格差というものは現状において必ずしも非常に縮小しているというわけではございません。したがって、われわれとしても、今後地域格差の縮小ということには非常に努力をしてまいらなければなりませんし、それには、やはり先行投資としての道路、交通機関、輸送網というようなものは一番大切な問題じゃないか、こう考えております。
  229. 小平芳平

    小平芳平君 その格差の問題ですけれども、そういうように格差が依然として解消しないという、この問題についてはいかがでしょうか。国も国債を発行し、地方もまた地方債を発行し、そこでともに繁栄できるように、相当一生懸命やっているのですが、いまだに格差解消できないというような報告がなされるということは、政治の貧困とでもいいますか、どこへ解決を求めたらよろしいでしょうか。
  230. 藤山愛一郎

    ○国務大差(藤山愛一郎君) 今日地域格差が依然として縮小しない。むろんその現実のレベルは上がっていることは上がっておりますけれども、しかし、地域格差としては、都会、特に太平洋ベルト地帯といわれている東京、中京、大阪、瀬戸内沿岸、そういうところがどんどん進んでいるわけです。したがって、それについていけないというのが現状だと思います。ですから、私はやはり新産業都市をつくり、あるいは低開発地の工業開発計画をやり、同時にまた、地方の都市によっては文化的な都市をつくっていくというような、特色ある地方を、それぞれの過去の特殊性を生かしてつくり上げていかなければならぬと思います。それには、何といっても、やはり今日交通機関の隘路ということが一番問題になるわけでありまして、たとえば、文化都市を地方に、関東地方の一部につくろうと思いましても、やはり学者の方々からすれば、交通機関が十分でなければ新刊図書も買えないというようなこともございます。あるいは学会等に出るのも困るという点もございます。ですから、やはり交通機関を充実するということが地域開発の一番の私は先決条件、いわゆる先行投資ということでなければならぬ。その点において、先ほど大蔵大臣が言われましたように、やはりある程度公債を発行して、そうして、それを税金だけでなしに、そういうような社会投資の関係を充実させる、それが高度成長の際におくれていたということを私は痛感をいたすのでございまして、今後そういう面に力を入れながらやってまいる。また同時に、地元においては、やはり地元産業の育成ということが大事だと思います。大きな工業を誘致する前提としては、やはり地元産業が育成されなければならない。ですから、地元における中小企業がそれぞれ堅実な立場に立って仕事ができるように、そうして大きな工場が来たときには、協力して協力工場として立っていけるようなところまでに質的改善が行なわれなければならない、こういうふうに思っております。そういうことと相まって地方開発というものが促進されれば、地域格差というものはだんだんに是正されていくのではないかと、こういうふうに考えております。
  231. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  232. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 速記を始めて。
  233. 小平芳平

    小平芳平君 それで、企画庁長官から御説明がありました、いかにして格差を縮小していくかという点が非常にいま大事な点であります。で、前前から高度成長時代からそのひずみ是正が大事だというふうにも企画庁長官は言われておられましたので、今後いかにしてこのひずみを縮小し、日本の国全体が繁栄していくかという点について、その点で私がちょっと次にお尋ねしたいことは、中期経済計画と、それから今度は道路についてですが、やはりいま長官がおっしゃるように、道路計画というものが非常に大事だと思うんです。交通網が渋滞していたんではなかなか発展というものもむずかしい。ところで、中期経済計画と、建設省のほうでは新しく道路計画を四十二年から新五カ年計画を立てるというようなお考えも新聞で拝見したんですが、この間の関係についてまずお尋ねしたい。
  234. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 中期経済計画は一応これをやめまして、新しい経済計画を四月以降新推計をもとにして立てることになっております。そのときに、道路計画等につきましては、ただいまお話しの建設大臣のいわゆる幹線道路の計画、こういうものを新たに織り込んでまいる、あるいは住宅計画その他も新たな構想が各省でそれぞれ出ておりますから、そういうものを加えて考えましてやってまいりたい、こう思っております。
  235. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 道路計画につきましては、昭和三十九年度を起点といたしまして、御承知のとおり、四兆一千億の五カ年計画をやっております。これを中期経済計画の中の社会資本投資十七兆八千億という一応のめどの中で計画を立てております。ところが、先ほど来いろいろ御議論がありますように、道路の交通輸送の非常な立ちおくれが今日日本の諸問題の根本原因になっておる。そこで、私どもはどうしてもこれを現行五カ年計画を改定しなければならない。先ほど経済企画庁長官も言われましたが、時間が非常に切迫しておるそうでありますから中身を申し上げませんけれども、どうしてもこれを改定して、この地域格差の問題解消にいろいろ総合的にやらなければならぬところがありますけれども、日本の地形が大きく関係しておる。現在利用しておりますところは自然条件のいいところに集中しておる。生産基盤と申しますか、いわゆる生産手段、所得の源泉をなす生産手段が片寄っておる。農業にいたしましても、あるいは工業、商業、そういうものがやはり道路交通に大きな関係がある。自然条件を改善しませんと、所得格差の是正の基本が改良されない、こういう観点から道路政策を進めていくために道路計画をさらに改正して、もうちょっと大幅に先行投資をしなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  236. 小平芳平

    小平芳平君 建設大臣にお尋ねしますが、やはり道路計画は五カ年計画を立てても、五カ年やったためしはほとんどないと思います。大体まあ二年か三年たてばそろそろ改定しようということになるわけです。ところで、今度のやはり四十二年度から新五カ年計画を開始しようというその計画について、概要でけっこうですから、もう少し具体的にお示し願いたいですが。
  237. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 御承知のとおりに、現行五カ年計画も四十一年度で三年目になります。当初三十九年度を起点としてやりますときに、この五カ年計画で現在の経済進歩にマッチするということは考えていなかった。やはり経済の発展と国民総生産力というものがなかなか明確につかめない、そういうものの動きにおいて途中で改定することあるべし、こういう考え方で進めたものでございます。今後の道路計画をどうするか。今度、自動車高速道路に着手する段階に入っております。既定の、既存の国道あるいは地方道、あるいは今年度——四十一年度から、毛細血管と申しますか、国民が日常朝晩使います市町村道にも相当の力を入れる計画、予算実施をしておりますが、やはりそういうものも含めまして、さらに、現在累増しております交通災害等の問題の解決もしなければならない、こういう新たな要素を含めましてどうしても改定をしなければならない。まあ規模の問題は、今後の経済成長、国民生産力の発展、こういうものと勘案しなければなりませんから、今後各省と検討いたしますが、大体私どものめどといたしましては、今度第五次になりますけれども、五回目でありますが、できれば七兆ないし八兆の五カ年計画をしたい、かように考えております。
  238. 小平芳平

    小平芳平君 その七兆ないし八兆の、そうこまかい計算の上でおっしゃっていらっしゃるのじゃないかもしれませんが、あるいは高速道路にこのくらいとか、あるいは国道の舗装にこのくらいとか、あるいは地方道の改良舗装にこのくらいとか、そういうような点についての御見当はいかがですか。
  239. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 時間がありますれば、できるだけこまかく申し上げたいと思いますけれども……。
  240. 小平芳平

    小平芳平君 時間はありますから、だいじょうぶ。(笑声)
  241. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ああ、そうですが。——現在の私どもがおおよそ想定しておりますのは、昭和五十五年、今後十五年目をあらまし想定いたしております。そうしてまた、今度の国道、高速道路と合わせまして大体二十三、四兆要るであろう。これは現在の見通しでありますから、もちろんそれは縮むことはなくても、金額ととして伸びると思います。まあそういう想定でやっておるわけでございます。いまのもとの一級国道、一万キロ余、一万二千キロぐらいでありますけれども、これは今年度と四十一年度で全部完了——岩手の三陸海岸の道路がやや残ります。そのほかの、もと二級国道、これが一万五千キロ余であります。これをいまのベースでいきまして昭和四十七、八年にはおおむね完成する。それから小地方道あるい一般地方道、いわゆる府県道でありますが、これはなかなかそうはいきませんので、まあ昭和五十五年ごろまでには概成をする。これは全部舗装もできませんが。その間において、問題の奥地産業道路とかあるいは農村振興とか、先ほど申し上げました市町村道——市町村道は八十一万キロもありますから、これはそう簡単にまいりませんが、そういうところに意を用いていかなければならない。まあこういう大まかな考え方で計画を進めておると御了承願いたいと思います。
  242. 小平芳平

    小平芳平君 いや、私が、お尋ねしておることは、結局、国債を発行し、また地方債を発行してやっていくけれども、いまだにひずみ是正かできない。かえってインフレになっちゃったという結果になるのを私はおそれるから、そこで企画庁長官にお尋ねしたら、ひみず是正はまだできてないと、非常に交通が大事だとおっしゃるから、そこで道路についてお尋ねをしておるのです。  したがって、道路計画というものが説明なされたら、そこで、企画庁長官にも、大蔵大臣にも、その資金計画について、あるいはそれによってひずみ是正が達成できるかどうか、経済の総合発展が達成できるかどうか、このようにお尋ねをしたいのです。したがいまして、いま建設大臣からるる御説明がありましたが、そこで、もしできましたならば、高速道路をどの程度お考えか、これがまた非常に地方開発との関連があるわけですが、お尋ねしたい。
  243. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 現在の道路計画の中で、四兆一千億の中で一兆一千億というのは高速道路ということで自動車道にしたい。これは、もちろん今度の計画をいたしますいわゆる幹線高速道というものだけではございません。先ほど一般道路について申し上げましたが、それはおおむね今後十年、昭和五十年ということになりますけれども、先ほど申し上げましたように、相当程度の進捗をいたしますから、これを全国的な何と申しますか統一をはかる、こういう意味で、いわゆる問題の縦貫自動車道を昭和五十年ぐらいまでに貫通したい、十年以内で貫通したいと、そういうちょうどタイムをはかってやろうということでございますが、もちろん高速自動車道はこれだけではありません。ほかにまだその間にやらなければならぬ必要性がありますから、そのいわゆる縦貫自動車道だけでも全部四車線というわけにはまいりませんが、すみやかに完成する、貫通させるという計画からいきますと、部分的には二車線にさしあたりいたしまして、それでやはり四兆円前後のものがかかる。これは十カ年にしてかりに二分の一にいたしますと、二兆円前後で五カ年計画に入る。そのほかに、これ以外の高速道路も入れなければならぬ。そういうこまかい積算は今後検討すると、こういうことにいたしておるわけでございます。
  244. 小平芳平

    小平芳平君 それで、したがって、この道路建設にはですね、新聞で拝見しただけですが、この債券も道路債券というようなものになるか、とにかく国債発行の中にも道路の建設は考えてもらわなけりゃならぬ。あるいは九千億というような見通しも出ておりましたが、この点についてはいかがでしょう。
  245. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) まあ九千億とかなんとかというのは、事務的に事務段階でいろいろ考えておるといいますが、私はまだ承知をいたしておりません。そういうものではとてもまかない切れないのでありまして、私どもは、まあいわゆる道路公債という特定銘柄の公債の話もありますけれども、こういう問題はまた財政当局とよく相談して、必ずしも特定銘柄でなきゃならぬと限定する必要もないので、いわゆる今度発行しようとしております一般国債でどのくらい道路に投資をするか、先ほど小平先生も言われておりますような問題を解決するためにこの点にどのくらい投資をするか、これが今後私ども政府部内で検討すべき事項であると思っております。
  246. 小平芳平

    小平芳平君 したがって、大蔵大臣と企画庁長官、にお尋ねしますが、いまの七、八兆円の道路計画につき、また、公債は九千億くらいじゃてんで話にならないというこの御意見についてのお考えお尋ねします。また、それによってどの程度経済的効果ができるかということもお尋ねします。
  247. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 地方と中央とのいわゆる格差解消という点を考えまするときに、道路計画というものは非常に重要だと思います。ですから、私どもも財政当局としてできるだけこれには協力していきたいと思います。ただ、これにも限度があることでありまして、国の全体の財政計画、資金計画のワクの中にはまらないわけにはいかないわけであります。そのワクの中においてこなし得る最大の努力をしたいと、こういうふうに考えておるわけであります。その経済効果は非常に大きなものがあろうと思います。こう期待をしているわけであります。
  248. 小平芳平

    小平芳平君 金額については。
  249. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 金額は、いまここで申し上げるわけにはまいりませんです。
  250. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私も、道路をつくるというような問題については公債を発行するのが一番まあ適当ではないかと思います。今日のような現状になりましたのを顧みてみますと、私は、ドッジ・ラインのときにあのインフレが収束して後ですね、むしろ超健全財政のあの時期から道路に限っては公債を発行してつくっていったほうが、他方減税等もやりますから、よかったんじゃないかというふうに思っているくらいでございまして、将来道路は国民経済の上で採算がとれるものでございますから、公債を発行してやる。しかし、その公債発行も、むろんそのときの経済界の事情、消化能力等によって考えてまいらなければ、不消化のものを出すわけにもまいりませんから、そういうことで大蔵大臣と大体同じ考え方でおります。
  251. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、いまの建設省の計画に対していかがでしょうかということをお尋ねしているわけです。
  252. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 建設省の計画は、まだ最終的に決定はいたしておりませんけれども、まあ相当膨大な計画でございます。したがって、これを五年なら五年でもって公債でまかなうというようなことはなかなかむずかしいのじゃないか。したがって、そのときの状況によってですね、ある程度ふえる場合もあるでしょうし、ある程度減らさなきゃならぬ場合もありましょうし、もう少し十分検討してみないと、いまの段階における建設大臣のお話だけでは、それがすぐに全部を何年間に公債でまかなうかということは、計画としてはまだ立ち得ないと思っております。
  253. 小平芳平

    小平芳平君 それから次に、道路の問題についてはもう少しあとでお尋ねすることにしまして、生活保護世帯の現状につきまして、各県によって生活保護の現状を見れば格差が大きいということを非常に私は驚くわけですが、それについてまず御説明を願いたい。
  254. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 生活保護を受けております人々、被保護人員、これが地方によってだいぶ大きな開きがありますことは、御指摘のとおりでございます。全国平均の被保護人員は、千人に対しまして一六・三七人、こういうことになっておるのであります、か、千人に対しまして五十人をこえておりますところは福岡県で、これが県全体で五七・四人、北九州市におきましては六一・三人、こういうことになっておりますし、一番少ないところは、千人に対しまして六人ないし七人、これは、埼玉県でありますとか、千葉県でありますとか、静岡県、こういうぐあいに開きのありますことは、御指摘のとおりでございます。
  255. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 暫時休憩いたします。    午後五時二分休憩      —————・—————    午後五時四十九分開会
  256. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き小平君の質疑を行ないます。小平君。
  257. 小平芳平

    小平芳平君 物価についてお尋ねいたしますが、公共料金がまた軒並み値上がりするんじゃないかということを非常におそれております。まず、政府から今国会に出されている法案の中からいっても、厚生省関係で、国民年金はなるほど一万円年金が実現するということは喜ばしいニュースですが、保険料が百円から二百円に上がる、百五十円の人は二百五十円に上がる、あるいは医療関係の健保三法にしても、あるいは国保にしても相当の値上がりをするんじゃないか、あるいはまた、地方自治団体のいろんな手数料も軒並み値上がりするんじゃないか、あるいはまた、北陸電力の値上げ申請とか、あるいは都内のタクシーが値上げを申請したとか、次から次へと値上げの追い打ちをかけている、こういうような実情についてまず御説明願いたい。
  258. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいまお話のように、このたびの国会に、国民健康保険法の改正、健康保険等保険三法の改正並びに国民年金の改正等の法案を御審議いただくことに相なっておるのでありますが、これらの医療保障なり、あるいは所得保障なりこれらの制度は、一般の公共料金とは本質的に違うのでございます。医療保険の場合は、御承知のように、受診率が上昇しておる。また医学、医術の進歩によって、医療給付の内容が改善をされておる。そういうような内容的な充実、改善の結果、そこに保険財政が極度に悪化をしてまいったのでございます。これに対しまして、政府といたしましても、政府管掌の健康保険につきましては、御承知のように、昭和四十年度に三十億国庫負担をいたしましたものを、五倍の百五十億、大幅に国庫負担を増額をいたしておるのでございます。また、国民健康保険につきましても、従来の補助金、負担金等を整理いたしまして、家族七割給付を達成いたしました市町村に対しましては、従来一割五分の国庫負担でありましたものを大幅にこれを改善いたしまして四割の国庫負担に改める、こういうような改善をいたしまして、被保険者の立場考えました法案の改正を考えておるわけであります。また、国庫におきましては、保護世帯あるいは市町村民税の均等割りしか納めないような低所得の世帯に対しましては、減免の措置等を講じておるのでございます。こういうようなぐあいに、給付の内容の改善、また最近のそれに伴う保険財政の悪化に対しましては、政府も、できるだけの国庫負担をやり、また、被保険者にも応分の御協力を願って、この制度を当面、財政破綻から救っていこう。また、根本的な対策につきましては、引き続き鋭意検討を進めている段階でございます。  また、国民年金につきましては、これはいわば、私どもの貯蓄であります。老後に備える貯蓄でもあるわけでございまして、今回厚生年金が、いわゆる一万円年金になりまして、国民年金が非常に見劣りするようになりましたので、今度、夫婦一万円年金を実現しよう、つまり、給付の内容を大幅に改善しようとするものであります。これに伴いまして、本来であれば、相当の保険料の料率の引き上げということになるのでございますが、最近の経済事情等も勘案いたしまして、限度の百円程度にとどめた次第でございます。これをもし、それ以上に低めることにいたしますと、将来の給付の際に、大幅な保険料の負担をやっていただかなければならぬということで、制度の運用上にも支障を来たす。これらを勘案いたしまして、今国会でこれらの法案の御審議をお願い申し上げておる次第でございます。
  259. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 手数料につきましては、できるだけ値上げしないことが望ましいのでありますが、やはり手数料は、実費弁償の原則に立っております関係において、負担の合理化、適正化をはかるために、地方議会で、やむを得ざるものに対しては、値上げをする情勢があると思うのでございます。ことに、高等学校の授業料の値上げの問題につきましては、税外負担の是正を行なって、父兄負担の軽減の合理化を目途とするというところもあるようでございます。
  260. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) タクシーの運賃の問題は、最近の物価の変動とかあるいは給料の値上がりというような要素が原因で、値上げをしてもらいたいというような申請が出ております。今回の申請の内容は、距離あるいは時間制を併用するようなメーター制を採用すること、そのほか、基本的な賃率制度の点に触れているようでございますし、慎重に検討いたして処理したいと考えております。
  261. 小平芳平

    小平芳平君 ずっといま各大臣から御説明のように、みなそれぞれ理由は申し述べられますが、しかし、国民の負担が増大していくという点で、私はいま問題にしているわけです。一方は、国債を発行する。インフレには絶対ならないと、重々大蔵大臣が言明している、そのあとからあとから、こういうふうに、まず米価から国鉄から私鉄からと、またあと追っかけて次々と値上げされていく。要は、国民のふところぐあいがますますさびしくなるではないか。  そこで、いろいろ内容に入って詳しくお尋ねする時間がないので残念ですが、厚生大臣にお尋ねしたいことは、医療関係で、総報酬制の採用あるいは一部負担制を検討中というふうなお考えがありますかどうか。とにかく、現在の法律改正によっても、引当の保険料価上げになる。その上にまた、あれほど不詳だった総報酬制や一部負担制ということをお考えなのかどうか。  それから、自治大臣の、地方の手数料のほうは、とにかくなるべく上げないようにお願いするよりほかないと思うのですが、それからタクシーはどうでしょうか。もう少しはっきりと、そういうような大幅な値上げ、あるいはそういう料金体系そのものを変えるような申請が出たことに対して、そのことに対してはっきりした態度が示されるならもう少しはっきり御答弁願いたい。
  262. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 健康保険等の財政対策を考えます際に、神田前厚生大臣当時、総報酬制と薬価の一部負担、これを社会保険審議会並びに社会保障制度審議会に諮問をいたしたのでございます。しかるところ、両審議会におきましては、この二つの問題は、制度の根本的な改正の際に検討されるべき事項であって、当面緊急の財政対策としてはこれを見送るべきである、そして標準報酬制の上限の引き上げ、あるいは国庫負担の大幅な引き上げ、保険料率の問題で処理すべきである、こういう答申をちょうだいいたしたのでございます。そこで、暫定的、応急的対策といたしましては、この御趣旨を体しまして、今回の保険三法の改正をいたしたわけであります。しかし、これはあくまで当面の対策でございまして、長期的な安定、発展をはかってまいりますためには、どうしても根本的な制度の改善をする必要があると、こういうことで引き続き検討いたしておるのでありますが、その際におきまして、御承知のように、国民健康保険におきましては総報酬制をとっております。また一部負担もいたしておるわけでございます。今後、制度の、各種医療保険制度の総合調整なりあるいは統合なりという問題も、この根本的制度の改正の際の一つの大きな研究の課題になるわけでございまして、私はこういう面で、いろんないま申し上げた総報酬制の問題もあるいは一部負担の問題も当然研究の課題にはなると思います。ただそれを採用するかどうかは、今後審議会等の御意見を十分お聞きした上で決定したい、かように考えております。
  263. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 今回の東京タクシーの値上げ申請は十八日に出たばかりでございまして、しかもその内容がかなり大幅な値上げの要求申請でございますので、これはタクシーを利用する一般大衆に与える影響等もきわめて大きいものがあると思いますので、そういう点を考えまして慎重に対処したいと考えます。
  264. 小平芳平

    小平芳平君 そのほか関係大臣がいらっしゃらない面もありますので、以上にいたしますが、企画庁長官としまして、はたして五・五%がどうかということについてお尋ねしたい。また、大蔵大臣として、ただインフレにならない、心配ないと言うだけでなくて、それぞれそういうような事情があって値上げになってもこうなんだというものがありましたら、お尋ねしたい。
  265. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 消費者物価三十五年からを基準にいたしますと、四十年まで平均六・二%上がっておるわけです。三〇%近く上がっておるわけです。ですからこれを何とかして押え込んでまいりまして、安定成長の、安定なところへ持っていかなければならぬ。これは当面われわれが全力をあげてやらなければならぬことであります。そこでその内容を、五年間の上がった内容を見ておりますと、平均六・二%以上に上がっておりますものが、やはり農水産物、それからサービス料金、それからほぼ六・二%と同じに上がっておりますものは中小企業の製品でございます。その他のものは、平均よりも、まあ六・二%より下がった上がり方でございます。そこで、やはり重点をこの三つにとりあえず置いて、強力な対策をやってまいりますことが必要だと思う。そこで、農水産物につきましては、価格安定の措置、そうして農村も富んで生産に従事するし、同時に消費者も、安定的な値段でやってもらっていく、こういうことだと思います。またサービス関係につきましては、完全に合理化できないものもございますけれども、しかし、それを、十分に流通過程の問題を解決してまいらなければならぬと考えております。それから中小企業は、これは申すまでもなく、中小企業の近代化、合理化をやる。そして、御承知のように、いわゆる合理化組合というようなものができまして、十年もまあそのままになって価格維持が行なわれているというようなものについては、できるだけ通産行政の中で、合理化、そういうような合理化的組合の価格維持に対して、一日も早く合理化をやって、その行為がなくなっていくような体質改善をやっていかなければならない、こういうことが非常に大事だと思います。  そこで、サービス料金の中で公共料金の占めております割合というのはわりあいに少ないのでございまして、サービス料金が、いま申し上げましたように、八・一%、サービス料金を総括していいますと八・一%、したがって、六年問の平均の六・二%よりもずっと上回った上がり方をしている。しかし、その中で公共料金は三・五%ぐらいな値上げ。もっともこの公共料金は、御承知のように、一ぺん上げますと四、五年そのままになりますから、上がる率から平均して申せば、そういう状態になるわけです。しかし、都市生活者、主として都市生活者は、今日のような状況でございますと、公共料金——この公共料金の中には政府認可の大体範囲のものが入っておりますけれども、そういうものについて、相当な過密化した状態、交通の問題でもなんでも。それを改善していく。あるいは過密化のために水道か、水が足りない、新しい水源を求めなければならない、そういうようなことで、かなり無理した経費をかけてきております。したがって、そういうものに対して、今後の合理化を進めていき、そして一方では、サービスの改善をしながら、安定をさせていかなければならないということは、相当むずかしい問題だと思います。しかし、いまやむを得ず上げたものについても、われわれとしてはそういう見地に立ちまして、できるだけこの上げ幅を少なくする、また、合理的にしていくようにということを考えておるのでございまして、同時に、便衆値上げのようなものが起こってこないように考えておるのでございまして、便乗値上げのようなものが起こってまいりますれば、これは押えていかなければならぬのではないかと、こう考えております。  で、そういう意味で、われわれ物価対策の基本的な考え方を持ちましてやっておりますが、ただその中に、たとえばサービス料金が非常に上がった中に、教育費というものか——分類してみますと、やはり教育費、個人サービス、それから民営の家賃、こういうものが上がっております。ですからこれらの対策は、やはり公営の住宅をたくさんつくって、家賃を牽制していく、また、地価対策をやっていただくということ、それから教育費の値上がりについては、私学振興その他で、私学に十分な資金的措置を講じて、相当高い、まあ一般的な金利の金を使って設備の拡張なり、学生収容能力の増大なり、そういうことに、また先生方の俸給の引き上げというようなことをやっておられるので、そういう面から相当教育費が上がってきております。これらについては、いまのような点から考えまして、設備拡大その他に使っておりますお金を低金利なものにできるだけ置きかえる方法をしてその負担を軽くする、こういうようなことでやってまいりたいという大きな方針を立ててやっております。  ただ、個々の問題になりますと、それは先ほど申したように、やむを得ず上げなければならぬような、上げなければ将来やっていけないというような問題については、これはやはりある程度上げてやらなければなりませんが、しかし、上げるについてはやはり合理化を十分やって、そうして今後の経営が危殆に瀕しないように合理化の努力をしてもらわなければならぬ。また、その上げたものについては、ある時期の間上げないでもらいたいということをわれわれ指浮いたしております。そこで五年間に六・二%毎年上がったと、平均でございますが、毎年上がったと、ことしは七・四、五%上がりましたが、平均上がらないように、その六・二%をこれからの五年間のうちではそういうふうにならぬように全体として考えてまいりたい、こういうことで目標を立てて努力をいたしておるわけでございます。
  266. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま企画庁長官から申されたような物価政策を進めていくわけでありますが、私としてもこれに協力いたしまして、その目標の実現できるようにいたしたいと、かように考えております。
  267. 小平芳平

    小平芳平君 それで長官にお尋ねしますが、特にやむを得ないものはとおっしゃる中に、たとえばいま出ているところの北陸電力とかあるいは東京タクシーとか、こうした値上げについてはいかがお考えでしょうか。
  268. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 北陸電力は申請が出まして、私どもまだ通産省から直接の御折衝を受けておりません。いずれ相談をいたすつもりでございますが、北陸電力は電力料金が一番安い状態でございまして、ことに何と申しますか、火力発電を持っていないでやっておりますから、相当ダム等のあれもございまして困難な状況じゃないかと思いますが、よく検討してみまして考えてまいらなければなりません。また、タクシー等の問題については、これは相当私ども厳重な審査をしていきたい、そうして同時に、料金体系等についても新たな構想を持ってきております、時間待ちの問題やなんか。ですから、その辺の点につきましては便乗値上げの疑いがないように、われわれできるだけ警戒をしながら今後審査をしてみたい、こう思っております。
  269. 小平芳平

    小平芳平君 そこで、もう時間がありませんので、料金問題については以上といたしますが、とにかくインフレになるかならないか、これはもう重々論議の的になっております。しかしながら、現にもう生活費が上がっていく、消費者物価が上がっていく、と同時に、またせっかく発行した国債も、それだけ貨幣価値は下洛していくというような結果にならないことを厳重にわれわれとしては注意していただきたいという願いをもってずっと申し上げてきたわけです。  最後に、道路の問題について建設大臣にお尋ねしますが、道路をせっかく舗装しても、すぐ掘り返すのですね、舗装したら今度は掘り返して下水道をいける。また今度は掘り返してガス工事をする、何回でも掘り返す、こういうむだは何とかなりませんですかね。これは国民も迷惑きわまるし、国家の財政としても大損害だと思いますが、何とかそれを規制する方法はないですか。
  270. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 道路の掘り返しということは、いまおっしゃるように、非常に困る問題であります。したがって、道路整備が進みますにつれて、そういう問題が特に大都市等において、はきわめてひんぱんに行なわれている。昭和三十三年でありましたか、政府は次官会議等開いて、そういうことのないように措置する体制をとり、また、三十七年には特にそういう協議会を別につくりまして、これは御承知のとおり、水道あるいは下水道、電話、電線、いろいろの工事が重なりまして、必ずしもそれが一致した時間、一致したときにやれない。しかも、それは改良を要する。下水道などは非常におくれておりますから、これを道路敷その他につくる。あるいは昔つくった水道管がもう古くなって使えない。都市が膨張いたしますにつれて、水道管の施設がえをしなければならない。こういう事態が起こって、せっかく舗装いたしました道路についてもまた掘り返しをする。まことに交通に不便を感じ、また、その工事の付近の皆さんに御迷感をかける、こういう問題に非常に苦慮いたしまして、各省庁、またそういう仕事をいたしております電力会社、その他の事業所等とよく連絡をとって、同じ時期に協議をしてやる、こういう体制をとって、だいぶん改善されておるわけでありますけれども、必ずしも、あるいは資金計画、財政上の問題、これがほんとうにうまく私どもが期待しておるようにいかぬところがあるわけであります。そういう点について、いまお話のように、現実の問題としてまだまだ迷惑をかけておるところがあるわけでありますので、今後とも十分ひとつ連絡をとって、注意をしてもらいたい、かように考えておるわけでございます。
  271. 小平芳平

    小平芳平君 そうすると、建設大臣、建設大臣がどうも思うとおりにいかなくて困るとおっしゃいますと、どこにも持って行き先がないわけでありますから、大臣としてもう少しこういうふうにやるからこうだぞというようなものはございませんですか。そういうふうな力はありませんですか。
  272. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 力がないかと言われれば力がないとお答えするよりほかに方法がないのであります。これは御承知のとおり、電力会社は電力会社、あるいは電電公社、こういう政府機関の場合には予算等を同時に行なうという態勢がややうまくいくのでありますけれども、民間の電力会社等についてはなかなか同じ時期に同じ予算措置を講ずる、また事業の計画上必ずしも同じところに同じくやれるというわけには簡単にまいらない。そこでいま御承知だと思いますけれども、共同溝の整備の法律をつくりまして、非常にそういう面のふくそうするところは恒久的な共同溝をつくって地下鉄の工事とあわせてつくっておきまして、そこに全部を入れ込むという制度もつくっているわけでありますけれども、これもなかなか私どもが期待しているようには現に率直に言って進んでおりません。ある程度やっておりますけれども、期待するほど進んでおらない、これが実情であります。今後努力をするということでひとつ御了承いただきたいと思います。
  273. 小平芳平

    小平芳平君 次は交通事故についての問題ですが、交通事故でなくなられた方が、去年を各月別にずっと見ていきましても、ほとんど毎月千人、年間合計一万二千四百八十四人の人が交通事故でなくなった。一番多い日は八月十三日で五十九人の人が交通事故でなくなった。こういうようにお聞きいたしましたのですが、何かの事故で何十人という人がいきなりなくなればそれこそたいへんな大騒ぎになるわけですが、交通事故こそそれこそたいへんな死亡者数だということに驚くわけですが、これに対するひとつお考え……。私の考えとしては、非常に現地の警察署長さんや県警本部長さんなどで非常に交通事故問題を、熱心に事故防止をやっていらっしゃる方がいるように私も存じているんですが、もう少し政府もあるいは国民も一体になって、事故防止ということを考えなくちゃならないんじゃないか。  同じように、船の遭難事故をよく新聞で拝見しますが、こうした船の遭難事故についても、何百人という人が年間に死んでいかれる、こういう点を根本的に対策を立てていくという政府のお考えをお聞きしたい。
  274. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) お聞きのように、交通事故はまことに憂慮にたえないところでございますので、これが対策に対しましては、本年度の予算関係では、御存じのように、三カ年で緊急に安全施設をやるという計画を立てまして、建設省とともに国会で提案をいたしたのでございます。その金額は六百四十七億でございまして、本年度の三カ年計画が六百四十七億でございます。うち建設省関係が六百四億、警察が四十四億でございまして、歩道橋あるいは信号機等を整備いたして、施設の面に、これが事故防止に積極的に進めていきたいと考えておるのでございます。本年度の予算は建設省百億、警察がが八億でございます。さらに損保協会から四カ年間二十五億の融資を受けまして、これが整捕を加え拡充をいたしまして、緊急に施設の整備計画を促進をいたしたいと考えておるのであります。また、悪質な運転者、あるいは性格上違反を多くどうしても出すという者がございますので、これらは中央管理をする必要がある。この運転履歴を中央に管理するために電子計算機をもちまして、これが管理計画を、全国の管理を中央でいたしまして、悪質運転者の排除に力を入れるということで、これが予算を本年度認められました三カ年にこれを実行をいたす、その費用は四億でございますが、年々の管理費また四憾要るのでございますが、こういうような点以外には、やはり交通警察官の関係の待遇改善につきましても、やはり手当を、まあわずかではございますけれども六十円を出すことにいたす等、地方財政計画で約一億九千万円を入れておるのでございます。その他各警察に交通関係の主任官を強化いたしまして、その事故のあとの処理等に対しても十分ひとつ連絡をよくとっていくというような関係等でございますが、しかし、中心は何といっても国民の協力を得なければどうしてもいけないと考えておるのであります。交通道徳の関係等も十分ひとつ考えねばなりませんので、交通安全協会の強力なひとつ協力態勢をいまお願いをいたして、補助金は千五百万円でございますが、これを各警察署単位に細胞的に組織化いたしまして、各民間団体と連携をいたしまして、いわゆる職場ぐるみ、町ぐるみの組織強化でこれが防止に全力をあげたいと考えておる次第でございます。なお、詳細は委員会ででも御報告申し上げます。
  275. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 海難防止対策でございますが、これには三つの大きな柱があると思いますけれども、まず第一は、船の構造に改善を加えること、復元性の高いような船艇をつくるとか、あるいはその他近代的な装備を整えるということ、さらに、これに通信施設等も完備いたしまして、同時に救難具等も完備するというような、船自体が救難に対処するかまえをつくるということが一点。わが国の内航のように、航路が非常に繁雑なところでは、航路の整備というようなものにも、やはりこれが配慮をすることが必要であると考えます。  それから、第二点といたしましては、完全な気象情報をつかむということがきわめて必要でございますので、気象庁の中にあらゆる設備を整えまして、そうして完全な気象情報をつかんで、これを船舶、漁船等に十分連絡のできるような装備をするということ等を現在考えておるわけでございます。  それから、第三点といたしましては、海難が起こりました際には、これを即時に救済のできるようないわゆる装備を整えること。大型の巡視艇等も強化いたします。昨年のマリアナ近海における海難のあの悲惨事にかんがみまして、ことしは大型の巡視艇を二千トンのものを一ぱいつくる。さらに、大型のYS11の飛行機も装備いたしまして、そうして、できるだけ早期に海難を救済していく。こういう三つの線にあらゆる努力を加えまして海難を未然に防ぎ、もしもできた場合には、この救済を速急にやるような体制を整えていくことに努力を続けておる次第でございます。
  276. 小平芳平

    小平芳平君 たいへんお待たせいたしました大臣諸公には失礼いたしました。また、別の機会にお願いいたしたいと思います。
  277. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 小平君の質疑は終了いたしました。  次回は明日午前十時開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。     午後六時二十七分散会