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1966-03-08 第51回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月八日(火曜日)    午前十時四十三分開会     —————————————    委員の異動  三月八日     辞任         補欠選任      浅井  亨君     小平 芳平君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石原幹市郎君     理 事                 小沢久太郎君                 大谷藤之助君                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 赤間 文三君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 大谷 贇雄君                 梶原 茂嘉君                 北畠 教真君                 草葉 隆圓君                 小山邦太郎君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 西郷吉之助君                 櫻井 志郎君                 塩見 俊二君                 杉原 荒太君                 増原 恵吉君                 松野 孝一君                 吉武 恵市君                 稲葉 誠一君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 佐多 忠隆君                 鈴木  強君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 林  虎雄君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 浅井  亨君                 小平 芳平君                 多田 省吾君                 宮崎 正義君                 向井 長年君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        農 林 大 臣  坂田 英一君        通商産業大臣   三木 武夫君        運 輸 大 臣  中村 寅太君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        労 働 大 臣  小平 久雄君        建 設 大 臣  瀬戸山三男君        自 治 大 臣  永山 忠則君        国 務 大 臣  上原 正吉君        国 務 大 臣  福田 篤泰君        国 務 大 臣  藤山愛一郎君        国 務 大 臣  松野 頼三君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        総理府総務副長        官        細田 吉藏君        総理府統計局長  野田  章君        公正取引委員会        委員長      北島 武雄君        公正取引委員会        事務局長     竹中喜満太君        行政管理庁行政        監察局長     稲木  進君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁教育局長  宍戸 基男君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        防衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛庁装備局長  國井  眞君        経済企画庁調整        局長       官沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        開発局長     鹿野 義夫君        経済企画庁調査        局長       眞島 毅夫君        科学技術庁研究        調整局長     高橋 正春君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        公安調査庁長官  吉河 光貞君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省中南米・        移住局長     廣田しげる君        外務省経済局長  加藤 匡夫君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       星  文七君        外務省情報文化        局長       新関 欽哉君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局長  谷村  裕君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        大蔵省関税局長  谷川  宏君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君        大蔵省国際金融        局長事務代理   村井 七郎君        文部省調査局長  蒲生 芳郎君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省保険局長  熊崎 正夫君        厚生省援護局長  実本 博次君        農林大臣官房長  大口 駿一君        農林省農林経済        局長       森本  修君        農林省畜産局長  桧垣徳太郎君        農林省園芸局長  小林 誠一君        水産庁長官    丹羽雅次郎君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        通商産業省企業        局長       島田 喜仁君        通商産業省石炭        局長       井上  亮君        通商産業省公益        事業局長     熊谷 典文君        中小企業庁長官  山本 重信君        運輸省鉄道監督        局長       堀  武夫君        運輸省自動車局        長        坪井 為次君        運輸省航空局長  佐藤 光夫君        建設省計画局長  志村 清一君        自治省行政局長  佐久間 彊君        自治省財政局長  柴田  護君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君    説明員        通商産業省公益        事業局次長    金井多喜男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、  以上三案を一括して議題といたします。  昨日に続き、質疑を行ないます。西田信一君。
  3. 西田信一

    西田信一君 人間が乗り込んだ、長時間の宇宙飛行さえ無事故に遂行されておる今日、二月四日の全日空事故に続き、カナダ機BOAC機遭難惨事は、多数の人命を失い、表現すべきことばのないほど、痛ましいできごとでございます。今回の事故は国際的なものであるだけに、一切の感情を交えず、事故原因徹底的究明をはかり、将来の航空行政に万全を期すべきであろうと考えます。特に、昨日のこの問題に関する羽生提案に対しまして、佐藤総理は、安全第一の立場から、日本が進んで国際会議に提議を約されましたことは、まことに同感であり、すみやかな実行を期待してやみません。  今度の三大事故は、空港整備安全運航等について、多くの問題点を露呈したものと思います。運輸大臣並びに科学技術庁長官のこれに対する御決意のほどをお伺いいたしたいのでございます。  また、遺族弔慰につきましては、十分丁重であるべきであり、ことに各国間に大きな差異のないことを望むものでありますが、この点についてどのようなお考えでありますか、あわせてお伺いいたしたいと思います。
  4. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 西田委員の御質問にお答えいたします。  空港整備の点でございますが、これは、日本の国内にあります飛行場整備につきましては、今日まで、安全を確保するという点においてできるだけの処置をとってまいったのでございまして、一応、安全運航確保するための水準的な施設は整えておるのでございますが、しかし、安全の確保施設というものは、よりよくしていくということが大切なことでございますので、今後もできるだけこれの整備を急ぎたいと考えまして、実は昨日も、現地の飛行場で働いております航空管制の中堅の人たちを十数名集めまして、実務に携わっている人たちから見ました、一つ設備等に対する希望といいますか、要求というような点を率直に聞きましたし、さらにきょうは、パイロットを集めまして、操縦者立場から見た、いろいろ安全施設というものに対する考え方響をよく聞きまして、そうして、航空局で持っております案とあわせまして、よりいい案をつくり上げて、これは早急にひとつ実行に移してまいりたい、かように考えているものでございます。  それから運航の安全につきましては、今日、各航空企業でも、これは企業会社の経営の基本方針は安全第一で、全力をあげて努力をいたしておりますが、過当競争等あるいはサービスの行き過ぎ等の点によって、いわゆる安全度が薄らぐというようなことがないように、各企業にもそれぞれ注意をいたしておりますが、政府といたしましても、日本航空企業あり方等、全般に配慮をいたしまして、安全運航確保全力をあげるよう、企業の全体の人たちと一緒に、政府もこれを指導いたしまして、その方向で進めてまいりたい、かように考えております。  それから、弔慰金の統一の問題でございますが、現在、各会社弔慰金等がまだ決定いたしておりませんので、その決定いたしました後に、できるだけ、あたたかい処置をそれぞれの会社がとってくれるように、それから各会社との間の相違等につきましては、結果が出まして善処してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  5. 上原正吉

    国務大臣上原正吉君) お答えいたします。  科学技術庁といたしましては、相次ぐ航空事故に対しまして、また、その遺族に対し、心からお悔やみ申し上げる次第でございまして、何とも残念しごくに存じている次第でございます。  そうして、昨日も、科学技術庁関係航空技術審議会のメンバーの方々並びに航空宇宙技術研究所技術員方々、並びに防災科学技術センター方々、並びに各省庁の航空技術に関する係員の方々などにお集まりいただきまして、こういう事故を防止するくふうはないか、こういう御懇談を願ったわけでございます。その際いろいろとお話が出ましたが、現在の航空技術では、高度が二百フィート以下になりますると、もはや計器が役に立たない。目測と勘で着陸する以外に方法はない、こういうことなのでございます。それはどうも全日空機が海底に突っ込んでしまったり、あるいはカナダ航空防潮堤に衝突してしまったり、そういうことに関係があるやにも考えられまするので、何とかその二百フィート以下になりましても計器で自働的に着陸できるようなくふうは立たないものか、こういう話が出まして、英国などでは十分にそれが実用化される近くまできておる、こういう話も出ましたので、わが国ではそれを開発するだけの学問、技術見込みはないかということになりましたら、やれるだろうと、こういうことでございましたので、それならば科学技術庁は、実は航空宇宙技術研究所という研究所を持っておりまして、ここが唯一の航空技術の工場を備えた研究所なのでございます。そこでさっそくそれができるという見込みがあれば始めてくれと、一刻も早く始めてくれということで、きのう始めてもらうことにいたしました。  それからまたこれも、BOACが墜落しましたのは富士山周辺の、何と申しますか、悪気流、非常に激しい悪気流、これに巻き込まれたせいではないか、こういう話がありました。その悪気流はレーダーではつかまらないといりことでございましたが、何とかそれをつかまえるくふうはないかということを御相談いたしましたところが、できるかもしれない、空中電気を捕捉できれば、それによって悪気流をつかまえることができるかもしれない、そうすれば、ここは危険だぞという警報を発することもできる。そういう見込みがあるなら、それもさっそく始めてくれと、こういうことで、これに着手することにいたしたわけでございます。  そのほか、先ほど申し上げました航空技術審議会と申しますのは、科学技術庁長官諮問機関でございまして、航空技術に関しまする審議をいたしておる会なのでございまするが、その会の会長さんが、実は全日空機沈没事故に対しまする調査団の団長さんを願っておるわけでございます。この審議会諮問をいたしまして、そのほかにもいろいろと研究開発しなければならないことがあるだろう、また研究開発できるものがあるだろう、こういうことで、実はきのう諮問を発しまして、そうして御検討いただいて、テーマをさがしていただいて、安全運航航空安全性について研さんを重ねてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  たいへん、おくればせで申しわけないと思うのでございますが、このおくればせになりましたにつきましても、実はわが国航空機産業というものが、なかったと申し上げて過言でないことなのでございまして、あらゆる飛行機が全部舶来のもの、外国からのものを買って使っておる、こういうことなのでございます、日本で使っておりますものが。したがって思うような実験ができない。つまり模型をつくって実験するということすらなかなか困難である。こういうことでおくれておりますのでございまするが、しかし、それはそれなりにして、できるだけのことをやらなければならない。こういうことになってくると、捨てておいたわれわれの怠慢ではないか、こういうことになりまして、おくればせながら、ひとつ熱心に研究して、こういう災害が幾らかでも少なくなりますような努力を重ねてまいりたい、かように覚悟を新たにした次第でございます。
  6. 西田信一

    西田信一君 御熱意のある御態度で、満足いたしますが、どうか科学陣を総動員しても、ぜひこの問題は真剣に取り組んでいただきたいことを希望いたしておきます。  次に、最近国会正常化の問題について非常に真剣な努力が払われておりますることは、たいへん私は喜ぶべきことであると思うのであります。国会正常化は、政治の正しい姿勢に通ずるものでございまして、国民の切実な希望でもあると思うのでございます。このことに関しまして、衆議院事務当局が、要請にこたえて、かなり具体的な内容を持った、九項目あるようでありますが、この三月三日にこれが発表されております。その中には、政府としてなすべきことも、また議会側としてなすべきことも、いろいろ問題点を抱いているようでありますが、これも内閣首班としての、また自民党総裁としての佐藤総理の率直なお考えをお伺いいたしたいと思います。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国会正常化、これは政府といたしましても、もちろん積極的に協力すべき、たいへん重大な意義を持つ問題でございます。衆参両院各党におきましても、国会正常化をしようと、そういう機運がだんだん出てまいりまして、そして、ことに衆議院においては正副議長からそういう要請が出、事務当局においていろいろ案も立案しておるようであります。私が申すまでもなく、議会政治あり方、それによって民主政治があるいは成功するかしないか、このかぎでもあるのでございます。そういう意味で、民主政治を守る私どもとしては、ぜひとも国会正常化をはかりたいし、これによりまして、政治国民に対する責任も果たしていき、同時にまた国民の信頼もつなぎとめる、こういうことでありたいと思うのであります。この点では政府自身国会審議に御協力を申し上げますことは、過日の本会議でも私はお答えしたとおりでありまして、また私も総裁といたしまして、この点については各党十分協議を遂げる、そしてりっぱに正常化の実を上げるよう、この上とも努力をしてまいるつもりであります。
  8. 西田信一

    西田信一君 次に外交、国防に関する国際関係につきましては、いろいろな問題点が多いのでありますが、私はごく焦点をしぼりまして、政府の御所信を伺いたいと思います。  日米安全保障条約は、ことしで条約期間の半分を経過したわけでございますが、現条約満期となる暁、日本としてどのような態度をとるべきかは、真剣に考慮すべき時期になってきたのではないかと、こう思うのであります。この点では政府も十分お考えになっておるようでありますが、むしろ野党の側が、一九七〇年は安保闘争の年であると、非常に意識的であり、国民の間にも、一九七〇年は安保の危機の年であると、こういう心配をする向きが非常に多いのであります。  そこで具体的に数点伺っておきたいと思うのでありますが、まず伺いたいことは、安保条約が締結されて以来、アジアにおいて国際情勢の大きく変化をしたものをあげてみますと、日韓国交正常化、あるいは中共の核実験ベトナム戦争の激化などがあげられると思うのであります。かかる事態について、日米安全保障条約の存在は、日本にどのような安全感を与えたのかという点であります。  次には、非武装あるいは非同盟、あるいは日本を中心とする核非武装の地域の設定などの構想は、現時点の国際情勢に照らして現実的であるかどうかということであります。  次は、集団安全保障を認める立場をとりながらも、米軍有事駐留に切りかえるべきであるという見解も一部にあるようでありますが、これで共同防衛の実を上げ得ると考えるかどうか。  次の質問は、政府満期後の安保条約の存続を必要と考えておられるかどうか、また存続させる立場をとる場合、その内容について、現条約はわがほうにとり、日本にとって全く満足すべきものだと考えておられるのかどうか。  次は、事前協議の条件、協議方法などについて、五カ年間の経験に照らしてどのように考えておられるか。  いずれにいたしましても、日本方向を確定する安保条約満期に備えて、政府の、いな日本の進むべき大勢を明らかにして、宣明することと、国民に対するPRに万全を期すべきではないかと思うのでありますが、これらの諸点についてお考えを伺いたいと思います。
  9. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 安保条約は、御指摘のとおり、一九七〇年に期限が満了するわけでございます。しかし、これが無条約状態に直ちになるのではないのでありまして、一年前の通告によってこの条約から脱退するということができる、こういう状況に以後なるわけであります。でありますから、政府において、日米安保条約というものは、十年以後においてもなお日本にとって必要であるという場合には、そのまま、通告をせずにその状態を持ち続けることができるということになるのでありまして、安保条約が、無条約に、日米の間において安全に関する無条約状態になるのではない。しかし、一年の予告によって廃棄できるという状況と、十年間はこのまま存続するという状況とは、その意味なり内容なりというものが違ってまいります。そういう場合に処して、いかに考えたらいいかというようなことにつきましては、かなりこれはいろいろな角度から考究すべき問題であり、それからまた、現在の条約そのものが、このままの内容でよろしいかどうかという問題もあると思います。いま御指摘の、事前協議の問題その他いろいろな問題について、情勢変化に応じて、これがはたして万全であるか、あるいはまた、改善すべきものであるかというような点も多々あると考えるのでございます。まだ相当ときの余裕もあることでありますから、十分に慎重に各角度から研究をしたい、かように考えております。
  10. 西田信一

    西田信一君 お考えはわかるのでありますが、かなり国民の間に、その時点におけるいろいろな問題を心配をいたしておる向きが非常に多いわけでありまするし、そこで私は、もうすでに、国民に対しまして、政府考え方針を十分に宣明して、そのPRに、国民の理解を深めることに努力すべきじゃないかという意味においてお尋ねをしたのでありまするし、それからもう一つは、もうすでに安保条約締結相当期間を経過しまして、相当私はこれに対する体験上のお考えも、いまお尋ねしたわけでありますが、こういう点についてできるならもう少しこれが実際に安保条約がどういう効果をあらわしたか、あるいはどういう不都合があったか、あるいはまた、有事駐留という考えに対してこれが十分なのかという点について、できますならば、もう少しお考えをいただきたいと思うのです。
  11. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 安保条約が過去五年において、どういうふうに発動されたかという点については、御承知のとおり、その安保条約の条項が発動されたということは、非常に少ないわけであります。まあ随時協議というようなことは行なわれておりますが、事前協議というような事態もなければ、きわめて具体的にこれが施行されたという事例は少ない。少ないが、しかし、それでは無用な規定であるかということになりますが、絶対にさようなものではなくて、いわゆる安保条約体制というものが存在することによって、それが発動しなくても、無言のうちに相当効果をおさめておるということが、これはいえるわけでありまして、日本国民が全く国の安全という点に対して、何らの危惧を抱かないで、ひたすら経済の復興その他に専心することができた、そしてここまで国力を回復することができたということは、私は、一にかかってとは言いませんけれども、きわめて重要なこれは基礎をなしておるものであるということを認めざるを得ないと思うのであります。  ただ、これに関して、御指摘有事駐留——常時駐留することよりも、むしろそういう駐留することによって、いろいろな国内的なトラブルを起こすよりも、有事の場合に進駐する、そして平生の場合にはもうほとんど駐留というものはなくてもいいじゃないかというような意見がございますけれども、これはいわば伝家宝刀である。伝家宝刀というものはやっぱりどこか蔵の中にしまっておくべきものではなくて、やっぱり抜けばいつでも抜けるという状況に置かなければいかぬのではないか。そういうことによって、初めて抑止力というものが実効をおさめるものである、こう考えるのでございまして、なおまた、条約の双務的な関係からいっても、それじゃあ日本はもう何もしないで、ただ有事の場合に来てもらって、いろいろな障害を排除してくれるのだというようなことでは、双務的な条約とはいえないのでありまして、まあ問題は、要するに常時駐留有事駐留かという点からいうと、どうしても戦争抑止力というものはやはり常時備えがあるということが大切な事柄ではないか、こうまあ考えているのであります。
  12. 西田信一

    西田信一君 いままで経過した経験に照らしまして、特にこの期限が切れた際に、内容的な改定をするという問題をいま持っておらないというふうにも伺うわけでありまして、要するに、この満期後さらにこういう体制を持続すベきかどうかということが、今後の検討課題であるというふうに考えるわけでありますが、しかりとするならば、何か一九七〇年には重大な内容の改定が行なわれるのではないかというような国民の間に、一つの何といいますか、疑心暗鬼といいますか、そういう不安と申しますか、そういうことから国内に非常に大きな何か問題と申してはあれですが、いわゆる安保闘争というものが惹起するのではないかというような気持ちがあるように思うのでありまして、むしろ現在の体制をさらに持続することを宣明することが必要である、そういうことを国民に徹底させることが私はこの際大切ではないか、かように考えるのでございますが、総理のお考えをひとつ。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日米安保条約、これが締結されまして、確かにわが国の安全は、このもとに確保されておる、私はかように思っております。また、わが国経済的繁栄も、これあって初めてできたと、かように思っております。  わが国の防衛力そのものは、自衛隊を持っておりますけれども、いわゆる憲法のもとにおいて、国力、国情に相応した防衛力でございます。今日の進んだ国際情勢に対応するのには、わが国だけの力では安全確保に非常な困難である、かように思いますけれども、ただいまのような戦争抑止力を持つアメリカとの間の安保条約、これがたいへん効果をあげておる、かように思っております。この安保条約については、安保条約があるから戦争に巻き込まれると、かようなことを言う向きもありましたが、今日までのところ、私どもは戦争に巻き込まれないで、そしてわが国の繁栄を来たした、こういうことでありますので、国民の多数はこの点をよく、高く評価しておると私は信じております。そこで今日、締結の当時から、国際情勢は変わってきた、確かに変わっております。また、流動的でもあります。また、よほど軍事力も、片一方で軍縮会議等は行なわれておりますけれども、軍事力もよほど進んできておる。そういう際のわが国の安全を考えてみますると、この十年たちましたそのときにおいて、また情勢が非常に変わって、この種の条約は必要でない、こういうような結論にはならないと、かように私は思います。そういう事態がほんとうに望ましいことでありますが、ただいまの状況から見ますると、今後この四、五年の間におきましてこの条約が必要でないと、こういうような状態は現出しないのではないか、まことに残念だが、さように思います。  もう一つの問題は、この日米安保条約が、そういう意味で存続せざるを得ないような状況にあるだろうと思いますが、同時に一国の安全を確保する場合の防衛体制といいますか、こういうものはやはり長期の計画の上に乗らなければならないのでございます。いわゆる安全保障条約、この条文では、期間が満了した後にそれぞれの国がもう不要だということを申し出をしない限り続くと、かように申しておりますが、これは一年一年のことだろうと思いますので、ただいま申すような防衛計画の長期性というか、そういうものはどうしてもこの期間が満了した際にもう一度考えてみて、そうして適当に処理しなければならない、かように私は思います。  でありますから、ただいま端的なお尋ねがございました、満期になったときにやっぱり重ねて締結する必要ありやいなや、こういうような端的なお尋ねでございましたが、私は、もちろんまだ先のことでありますから、いろいろ研究はいたしますけれども、今日どうだと、こう言われると、情勢変化がない限り、ただいまの防衛の長期性という、そういうものを考えて、私どもは日米安全保障条約、それの存続について考うべきではないかと、かように私は思うのでございます。
  14. 西田信一

    西田信一君 次に、景気浮揚政策、安定成長の問題に関連してお尋ねいたしますが、この問題は、昨日来もいろいろ質疑がかわされた問題であります。明年度の最大の課題でもあります。昨年の七月以来、政府の真剣な取り組みがなされまして、四十一年度の最大眼目としての積極政策は、私は心から賛意を表するものでありますが、国会の論議も、この問題と物価の問題に集中しておるかの感がございます。若干重複する点もあると思いますが、私の考えを一部まぜましてお尋ねしたいと思うのであります。  政府は、現在二・七%の落ち込みから脱却して、四十一年度の実質成長率を七・五%に引き上げ、安定成長路線に乗せていくと説明されておるわけであります。しかし、これまでの政府経済見通しは、大体において大きな誤差はないと思います。しかしながら、率直に申してやや甘い点もないとは言えないのでございますが、そこでお尋ねしたいのは、本年度の二%台から年率七・五%に引き上げるといたしますと、五・五%の上昇ということになるわけであります。他面、今日存在しておるこの三億ないし四億円と言われておるデフレ・ギャップ、これを埋め尽くすためにはなお二、三年要する、こういうように大蔵大臣はお話しになっておられます。といたしますならば、今年度はデフレ・ギャップの二分の一か三分の一回復するということになるわけであります。逆に言いまするならば、四十二年度以降になおデフレ・ギャップは二分の一、三分の二残っておる、こういうことになろうかと思うのであります。こういう姿の中で、年率七・五%の経済成長が実現するといたしますならば、この成長回復の速度、二%台から七%への速度の上昇線、これで進んでいきますならば、四十二年、四十三年にはかなりのそれを上回る高い成長になる理屈であると思うのであります。大蔵大臣も藤山長官も言明されておりますように、今後の安定成長の姿を七%、八%に置きたい、こういうことであるならば、むしろ四十一年度の成長率は私は現在の二倍以上あるいは六%をこえるというような程度で十分なのではないか。政府の景気回復に対する意欲、国民に自信を持たせたいというお気持ちは十分理解できるのでございますが、私の考えをもってしますならば、四十一年度の積極予算をもっていたしましても六%程度の回復は実現したとするならば、これは佐藤内閣の景気挽回政策の成功である、決して何ら非難に値しないと思うのであります。むしろそのことが健全な安定成長の道程であるとも考えるのでございますが、きのう、福田大蔵大臣は、四十一年は堅実に日本経済が歩み出す年である、こういうふうにも述ベられておったのでございまして、私はそのことばのとおりに同感をしておるわけでありますが、こういう点について、ひとつ大蔵大臣、経済企画庁長官から、もう一度御所見を伺いたいと思います。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 本年度の二・六%は、大体顧みてみますと、上半期はほとんどゼロ、下半期から今日になって二・六%ないしもうちょっといくかもしれませんが、その平均が二・六%、次第に上昇カーブになってまいりまして、来年の四月以降は相当な財政投資が行なわれます。需要が喚起されます。したがって、相当な伸びで、七・五%は少し目標として大きいじゃないか、策定した目標としては。ただ非常な不況の中から回復させるためには、ある程度の初動力としては相当なウエートがかからぬといかぬところがございます。ですから初年度はそのくらいなウエートをすべてのものでかけていきまして初めてほんとうの不況から立ち直るようになってくる、結果において若干それが低い面になるかもしれませんけれども、初動力としてはやはり相当な力をかけなければならぬ、こう考えております。
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 成長率は輸出入の実勢と非常に関係があると思うのであります。諸外国では大体六・七%、貿易量の増加の実勢であります。また、今後もそういうレートに達するだろうと思います。わが国はそれに反して非常に高い。四十一年度は低目に見ましても一〇%ぐらいはと考えます。そういう情勢下において先進諸国の成長率を見ますと、ドイツが七%ぐらい、イタリアが六%、フランスが五%、アメリカが四%です。わが日本は輸出の状況から見ましても、また同時に、日本の一人一人の国民所得が非常に低い。まだ先進諸国を追っかけなければいかぬ、先進諸国と同じ成長率だったのではいつまでたっても国際間の日本の格差というものは縮まらないです。幾らか努力をしていかなければならない。そういうことを考えますと、多少諸外国より一%程度上目でございますれば……、まあ七、八%の成長はぜひしたいという念願もこめている次第でございます。
  17. 西田信一

    西田信一君 非常に落ち込んでいるこの不況から抜け切るためには、ひとつここで何と言いますか、自動車が最初走り出すときの力は大きく必要なんでありますから、そういう意味におきまして、私は政府のお考えは理解できるわけです。しかしながら、どうも少しく数字が大き目に見られているのではないかという感じがいたしまして、お尋ねをしているわけでございますが、しかしながら、私は政府努力国民協力によりまして、この不況から脱却し、そうして最も理想的な安定路線に早く乗るようにということを希望しておりますので、政府の善処を期待いたしまして、この問題はそれにとどめておきます。  そこで、いま大蔵大臣から貿易と非常に重大な関係があるというお話でございます。わが国の貿易収支が三十九年、四十年と非常な伸び方を示している。ことに四十一年におきましては、貿易だけで申しますれば十八億ドルぐらいの黒字になるのではないかと予想されておるようでございます。こういう不況の時代にもかかわらず、飛躍的に輸出が伸びておるということは、過去におきまする高い設備投資と技術革新の所産であるということは間違いないと思うわけです。  そこで、今日安定成長また低圧経済というようなことが言われるわけでございますが、この設備投資を押えぎみにしているのではないか。実際には四兆五千億からあるいは平行線か水平線を描くか、あるいは多少下降線というようなことが言われているわけでございますが、また、他面において操業度の立ち直り、引き上げということによって景気回復の近道である、こういうふうにも言われておるわけでございますが、ただここで私若干懸念いたします点は、ここ二、三年間こういう設備投資に対する力を抜くといいますか、そういうようなことが続きますと、数年先にまいりまして日本産業の国際競争力が非常に弱化しやしないか、そういう心配はないのかということをおそれるわけであります。ことにアメリカでもあるいはEEC諸国におきましても、日本工業の海外進出ということに非常に対抗して、設備の改良であるとかあるいは増強であるとかいうような面におきまして投資が非常に強化されておるわけです。安定成長期におきますところの設備投資という問題、これをどうして誘導するのかという点について、ひとつ政府のお考えを伺いたいと思うわけであります。  なおもし、事務当局からでもけっこうでありますが、伺えますならば鉄鋼、これは通産当局にお尋ねしていいかと思いますが、鉄鋼業の設備投資と生産について、主要国、英、米、仏、伊、日本等の最近の数字はどうなっておる、あるいは日本の主要産業のトップ会社が世界の企業規模の順位にどんな地位を占めておるのかというような点、あるいはまた、最近におきまする民間の技術開発の投資額というものがどんなふうに動いておるかというふうなこともひとつ伺えればお伺いしたい。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 民間設備投資が、本年は大体横ばいを示している、ちょっと四十一年度は伸びておるわけでありますが、いまの御質問は、そういう状況が長く続いたら、日本の輸出に対して、技術的進歩やなんかがあるのだから相当な設備投資をもっとしなければいかぬのじゃないかということ、これはおそらく景気が回復してくれば、日本経済陣の意欲からいいましても、相当な設備投資に力が入ってくると思います。ただ、その場合に、御指摘のように、単なるシェア競争に終始しないで、持っておりまする内容の改善、技術的進歩というものにこれが向けられていくことが国際競争の上に一番大事なことだと思います。ですから、設備投資をしいて押えることも必要ないわけで、景気が出てくれば財政投資を押えるわけですから、その間の指導はいまのような形で指導していきたい、こう考えておるわけであります。
  19. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 設備投資の問題ですが、景気の不況から設備投資の意欲というものけ沈滞をしておるわけですが、景気回復とともに、やはり設備投資も、これは新鋭の設備にかえて国際競争力というものは技術革新の時代ですから、絶えずつけていかなければならぬ、こういう景気が回復すれば設備投資の意欲も起こってくる。ただし、従来のようなシェア競争のために設備投資をむやみにやるというような、こういう態度というものはよほど改まってこなければならぬし、改まるものと考えております。  それから鉄鋼の日本及び主要生産国の鉄鋼生産は資料として出したいと思います。  なお、日本の主要企業と欧米の主要企業との規模はどういうふうになっているか、これも鉄鋼生産とともに資料で出しますが、言えることは、大体欧米に比べれば日本の大企業と言われるものも中小企業である、自動車工業でも生産台数から言ったらまあ約三十分の一、日産とゼネラルモーターズを比べると約三十分の一と、日本より三十倍も向こうが多い。化学工業においても住友化学とデュポンを比べると、住化が約十四分の一、自動車工業でも大きいのに比べて三十分の一、だから総じて言えばまだやはり中小企業の規模である、欧米流から言えば。そういう点で、今後日本企業の体制整備の上には、こういう非常に経営の規模が小さいという点も構造政策の上で考えなければならぬ一面を持っておると思います。
  20. 西田信一

    西田信一君 次に、物価の問題について伺うのでありますが、佐藤内閣は消費物価の上昇抑制に非常に意欲的である、本年度の七・五%から五・五%に下げることを目標にされておるようでございます。  そこで、まず企画庁長官にお伺いしたいのですが、かりに五・五%に押えるといたしまして、その中にいろいろ要因があると思います。大ざっぱに申しまして、公共料金の引き上げによってトータルどのくらいそのうち比率を占めるか、その他の要因のもの、残りはどのくらいになるかということをちょっと……。
  21. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体国鉄は〇・三でございまして、米が〇・七というようなくらいな影響が出てくるわけであります。で、そういうものを考えてはおりますけれども、五・五%と申し上げたのは、要するに、従来説明したげたと、それから一%の増加分、こういうことでございます。
  22. 西田信一

    西田信一君 公共料金もかなり実は引き上げがあるわけでありますけれども、そういうことによって上がるよりも、その他の要因によって上がるほうが多いということに伺ったわけであります。私もそのとおりだと思うのでありますが、また物価が上昇する、その計算の基礎も資料でいただいておるわけであります。ただ、私ちょっと、これは率直な考えもまぜて失礼ですが、申し上げてみたいのでありますけれども、この物価の問題に対する国会の論議を聞いておりましても、野党側の御指摘なさるところは、公共料金の引き上げが行なわれる、公債政策の導入によって非常に物価の上昇勢力が強くなってくる、とても藤山長官の言われることではおさまらない、こういう御指摘をなさっておるようであります。これに対する政府の御答弁を伺っておりますと、五・五%で確実に押えるのじゃなくて、それに努力する、こういうふうに若干受け太刀のような感じもするわけであります。で、日本のこの物価上昇の現象というのは、通貨価値の信頼の動揺からくるものじゃない。要するにインフレーションではない。経済の成長発展期に伴う構造的なものであるということはしばしば御説明になっておるとおりだと思う。そこで中小企業とか、農業、あるいはサービス部門等の賃金格差是正、こういうことが生産性向上のほうで十分吸収し切れないというようなことがかなり大きな主因をなしておる。ところが、これらの格差水平化がすでに私はある程度一巡したのじゃないかと、こう思うのです。で、コストの面から物価を押し上げる力というものはかなり弱まってきておるというふうに実は思うわけでありまして、また、今後不況からの脱却、生産水準がかりに若干上向くといたしましても、労働力の需給がかつてのように非常に逼迫するという心配はまずないのではないか。こういうことを考えてまいりますと、いまやもう最悪の事態は過ぎ去っていると、こう見ていいのではないか。わが国の消費者物価の上昇にもようやく転機が訪れつつあるというふうに判断するわけでございまして、きのうも日銀の宇佐美総裁も、物価上昇のテンポは鈍りつつある、鈍ってきておる、こういう御見解を述べられておるわけであります。最近の物価論争は、かえって、何か上がるんだ、上がるんだという声ばかり多くて、物価上昇のムードをつくっておるようなものだというふうな感じさえするわけでございます。逆効果になりはせぬかというふうなことを心配するわけでありまして、私はこういう観点から、政府は自信を持って、物価上昇の要因というものが昔のようになくなってきておる、減退しておるのだ。これはあまり物価に神経質にならないで、むしろそういう点を国民に訴えて、国民協力のもとに物価抑制に強い手を打つべきじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。ことに佐藤総理も、物価の問題は非常に重要であるので、国民協力によって物価上昇を防止したい、こういうふうに申しておられるわけでございますが、ひとつ私はそういう考えを持っておるのでありますが、私の考えは間違いかどうか。ひとつそんなに物価上昇ということにあまり神経質になるよりは、むしろ、そんなに物価は上がらない、その要因はだんだんなくなっておるということを国民によく知ってもらうということが必要であると思うのでありまして、私は五・五%、あるいはそんなに上がらないのじゃないかということも言い得るのじゃないかと思いますが、もう一度お考えをお伺いしたい。
  23. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現実におきまして、いまの、たとえば平準化運動といったようなものは、こういうような景気後退がありまして、若干後退しておることは事実だと思います。したがって、その速度が非常に速いとは思いません。お話のように、失業と申しますか、既就職が少なくて、そして希望するほうが多いんですから、ですからそういう点も、初任給の関係においてもそういう影響があると思います。ですから、そういう意味において、ただ、物価の問題は、私は景気をある程度刺激して回復させていかなければなりませんから、相当国民の皆さんとともに関心を持っていきませんと、安易な考え方ではいけませんので、政府もその点はしっかりした考え方を持っていきたいと思います。しかし、われわれはそれに努力をしてまいりまして、五・五%というのは私は努力目標ですけれども、必ずしも不可能な数字ではないと思っておりますが、確実にこういう状況だからいけるのだという特殊の根拠を持っておりませんから、努力目標として定めておるわけでございます。
  24. 西田信一

    西田信一君 この問題、ちょっと総理からも伺いたいと思いますが、総理は、物価の問題については特に国民協力ということに非常にウエートを置いてお話がございましたが、具体的にどういうことを国民に求めておられるかということを伺いたいのでありますが、私は大いに国民協力も必要だと思いますが、私はここに一つの例を申し上げたいのでありますが、北海道の町村知事が今度の予算で、物価の問題について特別な予算を組んで、これは四億あまりでありますが、これを銀行に預託します。そして銀行の協力を得てさらにそれを二倍かにいたしまして、それをほんとうに物価抑制に役立つような各種の企業に長期融資をして、そうして道民の協力を求め、台所に直結するようなものにする、そういう手を打っておるようであります。そういうことは一つの北海道の問題でありますけれども、私はそういうことは国民協力一つのあらわれだと思うのでありますが、具体的にどのような協力国民に求めておられますか。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま企画庁長官からお答えいたしましたので、物価問題に政府が真剣に取り組んでおる、これはおわかりがいくだろうと思います。申すまでもなく、国民生活を圧迫するといいますか、そういうような物価のあり方、これはたいへんだと思います。もちろん私どもは国民生活を向上さす、これが政府の眼目でありますから、そういう意味で物価問題も、圧迫をしておるとかあるいは非常な苦しみを与えておる、こういうことがあってはならないと思います。一つの例で申しましても、公共料金一つとりまして、これを上げる場合も、まずその企業体自身の企業努力、創意くふう、これによりまして上げないで済むようなそういうものがないかと、あらゆる努力をさす。そして、もうやむを得ない、上げざるを得ない、こういう場合でも、その上げる率だとか上げる時期等につきまして、特に政府は考慮してまいったのであります。ことに、また最近の消費者物価の中で、台所用品、そういうものが安くならないという、そういうところで、たとえば野菜も指定生産さすとか、あるいは貯蔵のきくものは貯蔵さして、これが不足を来たさないように、北海道からの御出身ですからよくわかっておりますが、このバレイショなんかもそういう意味で貯蔵さして、そうして本土のほうでそういうものを必要とする、そうして長期の供給に不足のないようにするとか、また、魚介類等につきましても冷蔵庫をつくって、そうして漁獲の非常に多いときにこれを貯蔵して、そうして、消費地に持っていくとか、これが同時に価格安定にも役立つんだ、かようないろいろなくふうをいたしております。しかし、まだまだそういう意味では不十分であります。今日は、物価の問題は総合的な施策をとらない限り十分効果をあげないと思います。しかし、またこまかな注意で初めて物価を安定さすことができると、かように私は思います。でありますから、それぞれの部門でそれぞれの対策を立てていく、ただいまのような流通過程の改善もはかりまして、そうして需給の調節をはかる。まあそのために国内の生産性を向上さしていく。そういう意味で栽培地の指定をつくるとか、同時にまた、その上足らなければ、貿易、緊急輸入をする、そのための関税措置、特別措置等を考慮していく、こういうくふうもいたします。それぞれの効果がそれぞれ出てきつつある、かように思っております。  先ほど来、五・五%というものをことしの目標にしておる——目標ということで、いかにも弱いじゃないかというおしかりを受けましたが、私どもはこれ以下にするように最善の努力をするわけであります。それが目標だと思います。また、協力を求める、かように申しておりますが、これは基本的にぜひ考えてもらいたいことは、いわゆるお互いの所得をふやす、こういう意味で、ある生産産業に従事しておる者、これがうんと生産を上げる、それによって自分の所得もふえる、賃金の高騰を来たす、これでいかにも祝福すべき状況のように思えますが、しかしながら、賃金は上昇したけれども、自分たちのつくっておるものを今度は高く売る、こういうことになれば、生産者はまた同時に最終消費者である、それが自分のほうにはね返ってくるのであります。だから、収入はふえた、だが同時に高いものを消費せざるを得ないような状態になる。これでは一体何かわからない。ここがまず第一の根本の問題だと思います。でありますから、生産性を向上した、その向上した利益を賃金や配当だけに還元するのじゃなくて、やっぱり最終消費者の価格としてその効果をあげていくようにしないと、これは十分でないと思う。私は、生産者も経営者も最終には消費者なんだ、この考え方がまず第一に十分徹しないと、金欲ばかりで賃金ばかり上げる、あるいは配当ばかりふやす、こういうことであってはならない。ここが協力のまず第一の根本的な問題だと思います。また、それから後におきましても、お互いに消費する場合において、やっぱり嗜好の問題等がありますから、どうもお互いに品不足のもの、そういうものが実はほしいのであります。これは嗜好上から、またお互いの性格からもそういうものが出てくる。そういう不足のものに集中すれば、ますますそのものが高くなる、かような状況にもなりますから、お互いが協力する場合において、ここはひとつしんぼうしてみよう、もっとそれと同じような需要を満たしてくれるようなもの、その代替物等もお互いにひとつくふうして考えていく。そういうことになれば、品不足にもならず、また、みずからが売り上げる、これがいわゆる首を絞めるような、みずからの首を絞めるような物価のあり方でなくて済むわけであります。そういう意味協力が望ましいのであります。お互いの生活の向上は、もちろん政府自身これが向上するように努力してまいりますけれども、ただいまの物価問題、相互に重なり合うといいますか、お互いに関連を持つ今日の状況のもとにおいては、総合的な対策をやらなければならない。政府も熱心にこの問題と取り組むが、同時に、国民全体が、各般におきましてやっぱり物価を上げたら自分たちが苦しいのだ、こういうことでこれに協力する、そのことが必要だ、かように私は思います。
  26. 西田信一

    西田信一君 政府の御熱意もまた国民協力も必要でありますが、私は国民協力という範疇の中に、国と大体同規模ぐらいの予算を持っている地方公共団体の協力というようなことが必要であろうと考えますので、ひとつ御善処を希望いたします。  次に、これに若干関連いたしまして、環境衛生関係施設に対する融資が、ことしから新たに別ワク二百億で始められるわけであります。しかも、お話を伺いますと、一般業種より若干条件をよくしていくというお考えのようでありますが、この特別融資を実行するにあたりまして政府がお考えになっておる政策目標、ねらい、それからまた政策効果をどんなふうに期待されておるのか。また、これが環境衛生の近代化と合理化にどんなふうに役立つのであるかということ。それから、これがやはり物価問題に関係するわけでありまして、こういうようなサービス料金の上昇が非常に物価上昇の注目を集めておりますが、こういう融資効果がサービス料金等の値上げの抑制にどの程度役立つかというような点についてひとつ厚生大臣からお伺いしたい。
  27. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 環境衛生関係の問題につきましては、政府は従来環適法を制定いたしまして、そうして零細な環境衛生関係営業の経営の安定、経営の健全性を確保いたしますために過当競争をできるだけ防止しよう、こういうことで指導してまいったのであります。しかしながら、この環境衛生営業の大部分はサービス業でございまして、国民生活に非常に密着した大切な営業でございます。そこで消費者物価の問題、あるいはサービス料金の問題が相当最近重要な課題になってきておりますので、消費者擁護の立場から適正な価格維持に努力しなければならないという要請が強まってきておるのであります。そういう情勢に即応いたしまして、政府としては政策を前進させる、展開させる必要があるということで、今回その近代化、協業化のために長期低利の資金を融通をいたしまして設備の近代化や経営の合理化をはかろう、こういうのが政策の目標でございます。で、今回国民金融公庫に別ワクで二百億円のワクを設定をいたしたのでございますが、これはあくまで別ワクでございまして、運転資金等は従前どおり国民金融公庫のワクから融資をいたすわけであります。この別ワクは、指定をいたしますところの設備の近代化のために基準を設けまして融資をいたすわけでございます。その融資の条件を御説明を申し上げますと、償還期限は従来七カ年でございましたが、これを十ヵ年まで償還期限を延長することができます。また、据え置き期間は従来一カ年でございましたが、一カ年のものもまた二カ年のものもこれを認める。それから貸し付けの限度は従来三百万円でございましたが、これを環境衛生関係につきましては六百万円までこれを引き上げる。また、担保につきましては、従来百万円以下を原則として無担保ということでございましたが、これを二百万円まで原則として無担保にする。貸し付けの対象も従来は個々の業種のみでございましたが、今度は同業組合にも貸し付けすることができる、こういうことにいたしたわけでございます。私は、この今回の特別な金融措置によりまして、設備の近代化のために長期低利の資金が供給されることによって、料金あるいは価格の適正な維持ができると考えておる次第であります。
  28. 西田信一

    西田信一君 次に、国債発行下におきまする金融の問題について少しお伺いいたします。本格的な国債政策が登場いたしまして、四十一年度以降の金融政策は、国債発行に非常に影響されることになると思います。で、財政政策と金融政策の結びつきは従来よりも一そう緊密といいますか、深まるというふうに思うわけでございます。国債発行は即インフレではないということもよくわかるのであります。こういう疑念を払拭して、そうして国債政策の健全な運営をはかるということのためには、この金融の機能、役割りが大事でありますのでありますが、国債の消化形式は市中公募を原則としておられるわけでありますが、実際は金融機関等がその大部分を引き受けるわけでございます。そこで、国債を真に国民経済の安定成長に役立たせるためには、中央銀行の適正なる金融調節作用と申しますか、こういうことが非常に大事だと思いますが、これ等に対しまする総理大臣なり、あるいは大蔵大臣のひとつ御所信をまず伺いたいと思います。
  29. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国債発行下におきましては、財政と金融がまさに一体として運営されていかなきゃならぬと思います。いままででありますと、財政投融資、そういう面の接触があったわけでございますが、今度は一般会計の本体と金融が緊密に結びつくと、こういうことに相なるわけでございます。公債が発行されますと、一般の市中金融が圧迫されるんじゃないかというようなことがよく言われるのであります。しかし、公債を発行して資金を調達いたしましても、あるいは租税によりまして資金を調達いたしましても、理屈は同じでありまして、市中、民間に流れる資金を政府が使うということです。ただ問題は、急に予算が大きくなる、そういう状態下におきましては、吸い上げた金をまあ政府が使うことになります。その使う間のズレが三、四カ月はあるかと思うんです。その間は、吸い上げて、まだ金は使わないんですから、市中の金が少なくなる。その辺はよほど政府は金融政策上配慮しなけりゃならない。これがつまり日本銀行のオペレーションでありますとか、あるいは貸し出し政策というものになってあらわれますが、しかし、それでもなお不十分だという際には、政府はまず大蔵省証券を発行して、それで得た金をまず使うわけです。その使った金が市中に出回わる。その出回わりの状況を見て公債にこれをかえていく、こういう手段をとって、公債発行政策下におきましては、金融が常に緩慢な状態にあるということはこれを堅持してまいる、かようなことで、まあ基本的にそういう方針がとられておる限りにおいて金融界に異変はない、かように考えております。
  30. 西田信一

    西田信一君 続いてお尋ねしたいのは、金融機関の収支とそれから資金が片寄りゃしないか、偏在しないか、こういう問題についてであります。国債の発行による公共投資の増大は、減税など財政面での非常な意欲的な対策がとられておるわけです。この場合、大企業では資金需要が徐々に活発化してくるであろう、こういうことが考えられます。しかし、中小企業への景気の浸透はなかなかそんなに急にいかない、こういうふうに思うわけでございます。この意味におきまして、中小企業は有効需要の沈滞化がやはり大企業よりもおくれて長く続くのではないか、こういうふうに思うわけです。そこで、この中小企業の経営の基盤の弱体ということは、地場産業や中小企業を対象とする地銀あるいは相銀あるいは信金あるいは農林関係の系統機関、こういうところが受け持つわけでありますが、こういう経済情勢下におきます資金需要の飛躍的増大は望めない。しかも、いろいろ金利水準の低下とか、いろいろコール金利の低下等によりまして非常に減益してきておるという状況だと思うのです。そこで、これらの金融機関が公債消化に応ずるということには相当困難性があると思うわけであります。したがって、勢い都市銀行のほうに非常に——しかも都市銀行は外部負債が多いわけでありますが、このほうに非常に割合が多くなっていくということが考えられるわけでありますが、この資金偏在を直すという点からいえば、逆な作用、結果になりはせぬかということを思うわけでございますが、こういうことに対しましてはどういうふうにひとつ対策をお講じになるか。私どもは、そういういろいろ銀行の合併であるとかあるいはまたいろいろな資金運用のくふうであるとか、積極的な指導が必要であると思うのでありますが、大蔵大臣の御見解を伺います。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 金融機関全体をこう見てみますと、やはりお話しのように、都市銀行におきましては、経営能率がいいものですから、いわゆるコスト割れというような問題は起こりません。しかし、地方銀行の一部、あるいは相互、信金等の大部分においていわゆるコスト割れというような問題が起こるわけです。しかし、昭和四十年度債に見られるように、コスト割れになるような地方銀行あるいは相互、信金等におきましても、公債の消化につきましては非常に積極的でございます。おそらく昭和四十一年度債につきましても同じ態度で臨んでくるのではあるまいか、そういうふうに考えておるわけであります。しかし、一番小さい金融、地方金融単位である信用金庫をとりましても、コストが六分なんていう非常に能率のいいところも相当あります、六分台というのが。これは私どもは信用金庫等におきましても、くふうをこらせばそこまで行き得る、こういう確信を持っておりますので、今後は相互、信金等につきましても、合理化、近代化を大いに進めまして、都市銀行あるいは地方銀行に、コストの点におきましても接近するように指導努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございますが、また、相互、信金等につきましては、これから国債に対する態度が非常に積極的である、そういうようなことにもかんがみまして、日本銀行とのつながりを緊密化するような施策もかたがた進めていきたい、かように考えておるわけであります。御指摘の偏在問題については、当局といたしましては、さして苦慮はいたしておりません。
  32. 西田信一

    西田信一君 時間がありませんので、きわめて簡潔にお尋ねいたします。お答えもそれでけっこうだと思いますが、金利政策の問題ですけれども、現在は日銀の公定歩合というものが金利の中心的な立場を果たしておると思うのでございますが、こういう公債発行によりまして、国債金利というようなものがあるいは公定歩合にとってかわるというようなことになるのかならないのかわかりませんが、私はこういう立場から、金利の自由化の実現に近づくような努力が必要である、こう考えておるわけでございますけれども、この点はどのようにお考えでありますか。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公債政策を運用する、そういう意味合いから申しますと、理論的には金利の自由化ということも必要かと思うのでありますが、これはなかなか容易ならざる問題で、漸を追うていくほかはない。まあ公債の金利は今後の金利体系の中心をなすものですから、これをまず公債を市場に上場するという辺からその問題に入っていく、かように御了承願いたいのであります。
  34. 西田信一

    西田信一君 時間の関係ではしょりますが、通産大臣に、石炭対策の問題です。昨年の十二月に石炭鉱業会から答申が出されて、その内容はここで申し上げませんが、異常負債に対する対策を立てよということであります。そこで、ことしの予算は二百四十億でございますが、これはつなぎ的性格だと思うのです。政府はこの石炭事情に対しまして、慎重を期せられまして、総合エネルギー調査会の検討にまかせる、そうして石炭のエネルギー全体に占める位置づけの結果を見守っておられると思うのでありますが、その作業はどのように進行しておるか。それから調査会から具体的な結論が出ましたならば、私は、相当時間をかけてきている問題でありますし、事の重要性にかんがみまして、四十二年度の予算を待つまでもたく、財政措置をとるべきである、こう考えるのでございますが、これに対しまする通産大臣、大蔵大臣の御見解を伺いたい。と同時に、中小炭鉱に対しましても十分な思いやりのある配慮が必要だと思いますが、これらに対するお考えはいかがでございますか。
  35. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御指摘のごとく、石炭鉱業の抜本的対策について、現在石炭鉱業審議会と総合エネルギー調査会で検討を加えて、大体六、七月ごろには両方の答申が出ることを期待しておるわけでございます。この答申が出ましたときに、政府は抜本的な対策を講じたいと言っておりますから、どういう方法でいつからやるかということも引っくるめて、すみやかに抜本対策を難ずるという線において検討を加えたいと考えております。
  36. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま通産大臣からお答えしたとおりでございます。
  37. 西田信一

    西田信一君 まだ若干質問がございますけれども、次回の機会に譲りまして、私はきょうの質問はこれで終わります。(拍手)
  38. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 西田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  39. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、羽生三七君。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは主として経済問題をお伺いいたしますが、時間があれば外交問題についてもお伺いしたいと思います。  まず最初に、均衡財政の場合には税の自然増加を越える財政規模の膨張ということは不可能でありますから、そこにおのずから制約があるわけです。そこで、今後公債発行の場合は、何を財政規模の基準にされるかということを前の国会でお尋ねした際に、一応それは経済成長率を基準とされる、こうお答えになったわけであります。そこで、四十一年度の場合は成長率から財政規模を管定したのか、あるいはいろいろ景気刺激ということで予算を積み上げていって、それで逆にそこから成長率を算定したのか、そのどちらでありますか。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 根本的には成長率を基準として財政を編成した、こう申し上げたいのでございます。ただ、その過程におきまして、財政の規模または成長率、両々にらみ合わせながら作業を進めた、こういうことでございます。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、まあ私は必ずしもそう判断しておりませんが、それはとにかくとして、今後財政規模が経済成長率の範囲内といいますか、それを基準にするということは今後守られますか。  それからもう一つは、その成長率は、この安定成長期間は七、八%を想定するわけですね。それが今後の財政規模の基準になる、そう了解してよろしゅうございますか。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいままでの通年では、安定成長率は七、八%ということになっております。しかし、今度新長期計画を策定するということになるのです。多少の修正があるかどうか。まあしかし、大体において七、八%ということが中心になるんじゃないかとは思いますが、正確に言いますと、新長期計画によって策定される成長率ということになりますが……。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 大体そういうことという……。
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ええ。昭和四十二年度以降におきましても、この成長率が財政の規模を決定する主軸をなす、かように考えております。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 そこで四十一年度は実質七五%の成長率を見込んで今後二、三年間は実質七、八%が安定成長のめどと、こういう場合に、四十一年度で、かりに実質七・五%の成長ができれば、その後は公債政策を財政の調整機能として活用して、さらに公債の発行額が累増していくという政府考え方はちょっと理屈に合わないような気がする。これはいろいろな要因がありますから一がいに言えませんが、理屈からいえばそういうことになるような気がするのですが、それからもう一つは、そういうことでいくと、安定成長というものに自信がないことになるのじゃありませんか、いかがですか。
  47. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) こういうふうに申し上げておるのですが、昭和四十二年度、三年度、これが公債のピークであろう。つまり、この二、三年間は低圧型経済が続く。つまり設備投資が低調である。そのギャップを財政が補わなければならぬ。そのためには財政規模を拡大させる。その財源としての公債、これは増発される。私は昭和四十一年は七千三百億円の公債は発行しますが、ただいまの見通しとしては、四十二年、三年はさらに増発されるようになる、しかし四十四年、五年になりますと、この経済政策、財政政策の効果が端的に出てきまして、租税改入がふえる、そうして公債発行額を消していく、かように見通しておるわけであります。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、いま大蔵大臣がお話しのように、今後両三年は公債発行の財政政策をとって、その後、情勢いかんでは公債からの離脱ということも考えておるが、なかなかそれはここ数年間はむずかしい、こういうことですが、しかし私は、実際問題として公債政策からしばらくは脱却できないということを考えておるわけです。それは四十四年度を想定した場合、この歳出規模と通常財源との開きがつまり公債依存度であります。これは最小に見て一兆一千億、やや多く見ると一兆五、六千億に達することが確実と思われます。もちろん、これはいろいろな計算の取り方があると思います。この前提を申し上げますが、これは衆議院の勝間田君の質疑の際に、かなりこの点は明白に言われて、それからその前提条件になるものも、ある程度政府は承認されたものでありますが、この場合は、私がいま計算する場合、GNPは毎年実質八%、名目一〇%の伸びと見て、組税の弾性値は四十二年——四十五年間を丁二とする。したがって、税の自然増収の伸びは毎年一二%、こういうことになるわけです。これをAといたします。それからBの場合は、租税の弾性値は一・二からだんだん年度ごとに〇二ずつ上げていきます。それから税外収入はおおむね千五百億、専売益金は租税収入の中に入っております。この計算でいきますと、歳出規模を各年一五%と見る場合——いろいろ見る場合があります——見る場合に、歳出規模と税収及び公債必要額はどうなるか。この場合——一五%の場合です——この場合、四十二年の歳出規模は四兆九千七百億円、それから税収——これはAの場合です。これが三兆七千八百五十億円、税外収入が毎年千五百億と見ますので千五百億円、公債必要額は一兆三百五十億円、四十三年度は歳出規模五兆七千百億円、税収四兆二千億円、税外収入は同じ、公債必要額は一兆三千二百億円、四十四年度は歳出規模は六兆五千七百億円、税収四兆七千五百億円、公債発行必要額は一兆六千七百億円、四十五年度は、歳出規模が七兆五千五百億円、税収が五兆三千二百億円、公債発行必要額は二兆八百億円、これに四十一年度の内外債合計一兆六千七百二十四億円を累計いたし加えますというと、その総額は七兆七千七百億円の余になります。それからBの場合ですね。租税の弾性値を丁二から〇二ずつ上げていく場合ですね、一・五まで各年〇二ずつ上げていく場合。この場合は、四十二年の税収三兆七千八百五十億円、公債発行必要額一兆三百五十億円、それから四十三年度の税収が四兆二千八百億円、公債発行必要額一兆二千八百億円、四十四年が税収四兆八千八百億円、公債発行必要額一兆五千四百億円、四十五年は税収五兆六千百億円、公債発行必要額一兆七千九百億円、これに四十一年度の内外債累計一兆六千七百二十四億円を足しますというと、公債の累計は四十五年度で七兆三千百七十四億円ということになります。これはもう衆議院で大蔵大臣が答えられた四兆円よりずっと多くなる。今度は、歳出規模を一二%と見た場合。この場合でも、四十五年度の公債発行必要額は、四十一年度の内外債を含めて、累計五兆六千六百億円余となります。したがって、こうなってくると、これは私の計算で、歳出規模の前年度比一五%増、一二%増と見た場合、それから税収の弾性値を一・二でコンスタントに見た場合と、毎年〇・一ずつ上げていく場合と、AとBとあります。ですから、こうなってくるわけですね。この前提条件はある程度大蔵大臣も衆議院でお認めになったと思う。そこで、四十五年のGNPは名目で四十五兆円くらいになるから公債額がその時点で一割ぐらいになったって問題はないと、こう大蔵大臣は言われましたが、必ずしもそんなに楽観する状態ではない。四兆円ではない。これは六兆から七兆になる、こう見て差しつかえないのではないか。私、非常にこれは重大なことだと思いますので、この私のいまの数字に対して大蔵大臣はどうお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、そういう計算、試算ですね、その要素をなすものは、GNPと、それから歳出規模の趨勢ですね、それと歳入、特に税収の趨勢、こういう三点かと思うのです。お話はその三点を中心としてのお話のようでございますが、それだけで簡単に将来の財政をそんたくするわけにはなかなかいかぬと思います。特に、申し上げますが、まず、歳出のほうであります。歳出は一体どうなんだと。これにつきましては、私が常々申し上げておりますように、今後の財政の規模は、これは景気のいかん、特に設備投資の動向によって、あるいは消極的に、あるいは積極的にすると、こういうふうになるわけでありまして、そういうただいま羽生さんのお話しのような考え方を進めていく上におきましては、その伸び縮みをする財政の部門とそれからいわゆる経常的な部門というものを観念的に分けて見なければならぬという問題があるわけであります。  それからもう一つは、租税のほうでありまするが、今後はずっとあなたがただいま言われた間、景気上昇の過程であります。租税弾性値を一体どう見るか。これは相当高い弾性値を示すと思います。過去においては二・〇というようなこともありましたが、そんなことはないにいたしましても、丁三、丁四と、こういうような弾性値は考え得るのではないか。私もいろいろそういう角度から考えてみておるのですが、昭和四十一年度の予算というものは非常な高さであります。ですから、この予算の高さを基準といたしまして過去のこれが増加趨勢値で動くという考え方も、また私は一つ検討を要する問題じゃあるまいかとも考えております。  いろいろな要素を考えまして、私がいま腹づもりとしておるところにおきましては、昭和四十五年、五年後におきましては、国民総生産は四十五兆程度、また、公債は四兆円、まあ多少出ましょうか、そういうところ。財政の規模は六、七兆円と、こういうことで、そう公債の現在額が重い負担というふうには考えておらぬし、また、それだけの負担を負いましても、国の経済力は四十五兆円が示すように相当伸びておる、また、安定してずっとその後も引き続いて伸びるという状態下において、そう不安は持つ必要はない、かように考えておるわけであります。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 いまのお話だと、結局、財政規模と税収の問題できまるようですが、それはこれから、だんだん伺っていくことにいたします。  そこで、予算の硬直性で年々予算規模が拡大していくことは、御承知のとおりであります。しかし、それと税収の伸びは私は必ずしも一致しないと思う。その間に相当ギャップがあると思う。そこで、安定成長のめどは、いま申し上げたように、七、八%ですね。これがコンスタントに維持できれば、それで何年か後には公債政策から脱却できると、そういうことですが、もしそうでなければ、高度成長当時のような年に一〇何%のような伸びがなければ脱却できないと思う。そこで、租税の弾性値の問題もありますが、それより前に、予算の規模の問題からちょっと触れてみたいと思います。たとえば、四十一年度予算は、不況対策ということで大型予算となったわけです。前年対比一七・九%と拡大したわけです。今後名目一〇%の安定経済成長に対応する予算の規模、基準をどの辺をお考えになっておるのか。いま述べましたように、予算規模と税収とは必ずしも一致しない。たとえ景気が回復したといっても、私は予定どおりの税収が確保できるかどうか、大いに疑問を持っております。したがって、予算規模そのものが、その基準が実は非常に問題になると思う。そこで、年に一二%程度に押えるのか、あるいは一五%くらいにするのか、あるいはまた一〇%というようなこともあるのか、あるいは一七%、二〇%ということも起こり得るのか、そういう点はどういうふうにお考えになっておるのか。予算規模、税収と見合うとおっしゃいますから、これは税収のことはあとから申し上げます。どういう程度を想定になっておられますか。
  51. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど申し上げましたように、予算の中には、一般の行政費、それから社会福祉費というような経常費があるわけです。私はこの経常費はなかなか減らすわけにはいかない。過去において見られたような高さは別といたしまして、趨勢は続けさせなければならぬ。行政は国の仕事がふえるに従いましてだんだんと複雑多岐になってまいります。それから社会保障も、これも進めなければならない。産業につきましても、その基幹的な行政費、これも見ていかなければならない。しかし、もう一つの歳出の要因は、いわゆる公共事業費、これが経済の動きに非常に関係があるわけであります。これを、私は先ほどから申し上げましたとおり、民間の経済活動、つまりその最大のものは設備投資でありまするが、設備投資の動向ともにらみ合わせながら伸縮を弾力的にいたしてまいりたいと、こういうふうに考えておるわけです。  それで、過去の趨勢に比べて一体どういうふうになるだろうかという問題を考える場合に、一番大事な問題は、一番その決定的な問題は、物価なんです。物価が上がる、賃金が上がる、そういうようなことで、これは予算のスケールは大きくなりますけれども、そういう物価操作、要因というものを考えますときに、これは非常に予算の実質効果というものは減殺されちゃう。今後物価が安定する、昭和四十二年度、四十三年度、だんだんと安定させることを考えておりますが、そのときにおける歳出の高さというものは、私はそう過去のような状態ではない、そういうふうに考えておるわけであります。いずれにいたしましても、昭和四十二年度、四十三年度の時点におきましてどういう形をとるか。一般行政費はふえるであろう。ふえるであろうが、そのふえる度合いというものは、過去のような状態ではない。相当物価との関連において低くなる。それから公共事業費は、設備投資の動向、すなわち民間経済活動の動きと調子をとりながら、これをやっていく、こういうふうに考えておるわけであります。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。ただいまの羽生委員の御質問に対する大蔵大臣の御答弁に関連して質問しますが、羽生委員の、今後は相当財政規模が拡大していくという議論に対して、大蔵大臣は、そんなに拡大しない、こういう議論で、その理由の一つとして、今後の財政規模をきめていく一つは設備投資ですね。設備投資が問題である。大蔵大臣はよく低圧経済、低圧経済と言われるわけですね。しばらく低圧経済が続くから、そこで財政規模を大きくして、それによって成長率を七、八%に高める、こう言われるわけです。そこで、低圧経済ということは一体どういうものであるのか。私の理解では、低圧経済というのは、設備投資が従来のように活発に行なわれないということがこの低圧経済の一番大きな原因になっていると思う。なぜ設備投資が活発に行なわれないのかという問題です。それは、私の理解によれば、従来のような技術革新投資は、大体一段落した。従来の技術革新投資は二つある。ヨーロッパの水準に追いつくための技術革新と、新しくあらわれてきた石油化学とか、あるいは電子工学とか、あるいは原子力産業とか、そういう世界に新しく出てきた技術に追いつくための投資、これがものすごく大きかったわけです。これが設備投資を大きくしたわけでしょう。これが大体一段落した。そうなると、これには大体循環期があるわけですよ。生命があるから、七年、八年、十年すると、大体投資した設備の更新が始まるわけですよ。大体その期間はあまり設備投資はこれまでのように大きくならないとすれば、大蔵大臣の考え方によれば、やはり公共事業費を中心とする財政規模を大きくしていかなければ、低圧経済を克服して、七、八%の成長率に持っていけないじゃありませんか。そこが非常に問題ですよ。なぜ財政に不況打開の主導的な役割りをさせなければならなくなったか、その根本の原因はそこにあるでしょう。そこで、羽生委員の言われるように、やはり財政規模は、かなり多くならざるを得ない。大蔵大臣の低圧経済ということと財政規模が大きくならぬということとは矛盾すると思うのです。ここが私は一番問題点だと思うのです、ここのところが。なぜ低圧経済になってしまって、これはどのぐらい続くかという認識が問題だと思うのですね。
  53. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村さんは、近代化、合理化、技術革新が行なわれたと。それにとらわれ過ぎておるのじゃないかと思います。それは、私はそのとおりだと思います。しかし、それが結局生産能力を増しておるわけです。その能力に着目してもらいたい。その能力がいま余っておる。それがこの二、三年で消されていくわけです。この二、三年で消されて、そうするとまた、やっぱりあなたのおっしゃる技術革新、そういうようなものも加えての設備投資というものが起こってくるわけであります。そうしなければ、供給不足になる。私はそれを言っているんです。ですから、この二、三年は、昭和四十一年、四十二年、四十三年、これは私は相当決定的に設備投資が低調であろう。しかし、その後におきましては、また新しい設備投資をしなければ、需要に追っつけない状態になる。そういう状態における財政のあり方というものは根本的にまた変えていかなければならない、そういうふうに考えております。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと簡単にもう一言だけ。いま大蔵大臣は、ぼくが設備能力だけにとらわれていると言われましたが、私はもう一つ需要の面から——関連質問ですから、それは言わなかったんです。もう一つ大きな変化があるんです。需要の面にあるんです。それは、いまの所得水準を前提とすれば、物によっては大体普及率が一巡したものが多いんですよ。だから、需要がそう起こってこないんでしょう。たとえば、卓上扇風機をごらんなさい。あるいはテレビとか、そういうものは、いまの所得水準を前提とすれば、大体需要が一巡したんです。それは設備投資と大体見合う。そうでしょう。だから、需要のほうもテレビを二つ買うとか、卓上扇風機を二つ買うというそういう時代にならなければ、従来のような需要は起こってこないのですよ。そこで、いわゆるデフレ・ギャップというのは、大蔵大臣が考えるような小さいものではないと私は思う。ですから、政府が今後の——これは羽生委員かこれから質問されると思いますから、あれしますが、この大型予算で、これで私はデフレ・ギャップが解消されるとは思わない。だから、あなたのほうの前尾さんが一兆円公債発行しろと言った根拠はそういうところにあると思う。それが正しいとは言えませんけれども、根拠はそうなんです。だから、私は単に生産能力がふえただけのことを言っているのじゃないんですよ。需要の面にも大きな変化が生じている。両方の面から見なければいけません。だからデフレ・ギャップが起こる。政府はこれまで経済は自律的に回復すると考えて、そして見通しを誤り景気対策を誤ったのはそこにあるんですよ。それはどうなんですか。
  55. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その点は私もそう思います。つまり、デフレ・ギャップというのは、二兆五千億とか三兆億円とかというふうに言われておりますが、私はそんなものではないと思う。それは四兆あるか五兆あるか、相当なものだろうと思う。それだけに、このギャップを一挙に埋めてしまえという考え方は、私は非常に危険な考え方だ。そういうことはできることでもないし、すること自体が私は非常に危険なやり方であると、そういうふうに思うんです。ですから、これは年限をかけて、二、三年という長期的な考え方で埋めていかなければならぬと、こういうふうに申し上げている。その点だけは一緒であります。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、いまの木村委員指摘の問題は別として、これはまた機会があればということにして、財政規模の点から見ていきたいと思います。たとえば昭和三十五年から対前年度比日本の財政規模がどれだけ伸びたかといいますと、三十五年が一〇・六%、三十六年が二四四%、三十七年が二四・三%、三十八年が一七・四%、それから三十九年が一四・二河、四十年が一二・四%、明年度四十一年度が一七・九%、この七カ年間の二平均は一七・三%であります。そうでありますから、それともう一つは、いま大蔵大臣が、経費の、どうしても削除しがたい、あるいは軽減しがたい必要経費ということを言われましたし、それと物価との関連を言われましたが、物価のことはあとから伺います。この一般会計に占める長期計画、あるいはもう絶対この予算に組まなければならぬというもの、これを一々やると時間がなくなるので、省略いたします。その総計は二兆九千八百五億円、四十一年度の一般会計予算四兆三千百四十二億円に対する割合は六九・一%、約七〇%です。これだけはどうなっても絶対削れないという費用なんです。七〇%は。そうでありますから、片一方で予算規模の七カ年間平均は、対前年度比一七・三%も伸びておる。そうして、一方には予算の硬直性で弾力性がすっかりなくなっちゃった。明年度四十一年度予算ですら、その七割は絶対動かすことのできない費用です。そうでありますから、これは長期計画が一応完成したあとはもちろん減っていくでしょうが、計画期間中はこれは動かせない。こういうように見ていくと、そんなに——先ほど私が申し上げたのは、一二%の伸びで見て、それで何兆円ですか、公債発行、それでいきましても、公債発行が、Aの場合で昭和四十五年には七兆七千七百億余、Bの場合で四兆三千百七十四億、これは弾性値のとり方と、もう一つは、年率一五%の伸びと一二%の拡大と、こう二つ見たわけですね。こうなっていくわけですね。それは税収の伸びることはあとから申しますよ。だから、予算をそんなに縮小できるわけはないんじゃないですか。どうしたって、いま木村委員指摘したように、こういう硬直性を持っておるところへ新規の要求がだんだんふえてくるのですから、これを簡単に切り捨てるということもほとんど不可能。そこへいまの経済の動向が加わるわけですね。でありますから、私はこの予算の硬直性から見て、予算規模はそんなに縮めることは非常に困難だ。これは一〇%以下に伸びを縮めれば別ですが、いかがですか。
  57. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 歳出の趨勢を見ますと、過去十年間大体一二%で伸びてきております。それから昭和四十年度が一二%でありますね。ただ、非常に高い時期は三十六年、七年、八年、九年と、こうなるわけなんです。いわゆる高度成長期なんです。これは非常に例外だろうと思うのです。昭和三十六年、七年のごときは二四%、二四%と、こういうふうに伸びてきております。しかし、それを入れても、十年間の平均というのは一二%です。しかも、高度成長期に物価要因というものが相当加わっておる。私どもは、昭和四十一年度を起点として物価政策に取り組んでいく。四十二年度、四十三年度、相当物価が落ちつきになってくるということを考えますときに、これがそう予算が膨張していくとは考えない。もう一つのそういう根拠としては、昭和四十一年度というものが非常な高さである、こういうふうに考えておるわけであります。そういうようないろんな要因から私どもは検討して、結論は、十幾つというふうないろんな数字が出てきますが、いずれもまぎらわしいもんですから、そういうような数字にはとらわれませんが、四十二年度、三年度、これは非常に財政は窮屈であり、また公債発行額も多額になる、こういうふうに思いますが、四十四、四十五、この辺から逐次公債を減らし得るようになる。非常に条件がよくいきますれば、まあ六、七年後には公債発行なしで予算の編成ができる、こういうふうに見通しているわけであります。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 それは非常に私は楽観的だと思いますが、そこで、いまの税収関係ですね。租税の弾性値の問題をちょっと見てみたいと思います。政府は、今後安定成長で税の自然増収が伸びると。それを根拠にして、いま、漸次数年後には公債発行額を減らしていけるから御心配ないと、こういうことだし、物価問題はあとから私申し上げます。そこで、税の自然増収の弾性値の場合ですね。これは公債政策にもいま蔵相御答弁のとおり重要な関連性があります。これは昭和三十年の前半には、いま御指摘のように、しばしば見られた税の自然増収は、これは非常な異常なものであります。たとえば、二とか、一番高いときには二・四六、こういうときがありました。これは非常に恵まれた条件のときにそういうことが起こったわけです。しかし、その後の比率が次第に下がって、三十六年が一・四五、三十七年が一・九〇、三十八年が一・一五、三十九年が一・一九、四十年は〇・六八、四十一年は一・一一ということで予算書に載っておるわけです。安定成長がとられる以上、この自然増収に従前のような期待をすることは困難ではないか。これは蔵相も承知されておるのじゃないかと思う。安定成長期になって、過去十カ年間の平均よりもさらに多く自然増収が得られるということは、非常に私はおかしいと思う。そこで、名目一〇%程度の経済成長を前提としたときに、しかも租税の改正を行なわない場合、その場合でも、この弾性値がどのようなものが考えられるか、行なわないということを前提としてですよ、これをひとつお聞かせいただきたいと思う。どの程度が財政計画上安全と考えるか。たとえば、四十二年度から四十五年度間を一・二と見る場合——先ほど申し上げました——四十二年度を一・二として、それから毎年〇・一%ずつ上げて一・三、一・四、一・五と漸次弾性値を上げていく。それよりももっと低く押さえるべきなのかどうか。いままで、前田中蔵相も、それから福田蔵相も、正常な値としては、弾性値が一・五ぐらいと、こういうことを言われておる。安定成長期の弾性値としてそれがはたして適当なのかどうか。いま申し上げたように、一・五なんということを平均の弾性値としてとることは、非常に私は過度な見積もりだと思う。そうでないとするならば、先ほど申し上げたように、一・二と見るか、あるいは年々〇・一ずつ四十五年まで上げていっても、先ほど申し上げたような公債発行額になってくる。財政規模は、いま申し上げたような硬直性をうんとふやしていく。しかも、四十一年度予算の七割までは絶対動かすことのできない、削減することのできない経費である。そうなれば、Aの場合、Bの場合を算定していっても、どうしても公債は——しかも利息を別にしてですよ。別にして、六兆とか七兆になるということになるんです、どうしても。それはうんと税収をたくさん見込めば別ですよ。しかし、これよりたくさん見込めますか。どうですか。そんなに私は無理なことを質問しておるとは思いませんが。
  59. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 過去の弾性値を見てみますと、景気上昇期には非常に高い。たとえば、昭和三十一年、二年、一年のごときは一・九五であり、三十二年のごときは二・四六と。ところが、不況になると、非常な落ち込みになるのでありまするが、また高度成長期になりますと、三十五年、六年、七年と非常に高い。三十五年は二・〇四というところまで行くわけです。三十八、九年になりますと、やや衰えてまいります。これは引き締め政策がとられるからであります。そういうようなことでありますが、今後しばらくの間の経済情勢はどういう情勢であるかというと、先ほども申し上げたのですが、四十一年、四十二年、四十三年とデフレ・ギャップを埋めて景気が上昇していく。まさに景気上昇過程なのであります。このデフレ・ギャップが埋められた時点というものは、増収、増益——企業にはそういう形が非常に強くあらわれる時期であります。そういうような当面の経済情勢考えるときには、私はこの弾性値というものは相当高いのじゃないか。まあ二・幾らというようなところが出るかどうか、これはまだ私も予断はできませんけれども、やはり私は一・三あるいは一・五という間を見ておいて差しつかえないのじゃないか、そういうふうに見ておるわけであります。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、蔵相が昭和四十五年に公債発行額累計ほぼ四兆円と言われたのは、財政規模は縮小できるということと、弾性値を丁三から下五に見れるというそういう前提に立っておっしゃっているわけですね。確信をお持ちですか、それ。
  61. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 財政規模が縮小じゃないのです。その伸び率が、あなたのおっしゃるような状態ではないということと、租税の弾性値が相当高いものが期待できるだろう、こういうことを申し上げておるわけであります。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 これは時間がないので、随時触れていくことにしますが、財政規模がこんなにふくらんでいって、しかも通常財源と歳出規模との関係、さらに、いまの税の自然増収の関係、公債依存度、こういうようなものが非常に大きな問題となっておるときに、簡単に私は公債政策から脱却できないと思う。それが、蔵相は、景気のいいときに、高度成長の一番いいときに税収が伸びた、それからだんだん悪くなって税収が減ったと言うのです。しかし、安定成長の七、八%の成長率を見ておるのでしょう。そんなに昔のように、一〇何%なんという伸びができるはずはない。安定成長はそういうものですよ。そこで、そんなにたくさんな自然増収が望めるかどうか、私は非常に疑問だと思う。そうなると、いま申し上げた、蔵相の言う四兆円におさまるか、私が指摘した六、七兆円になるか、これは別として、そういうような膨大な公債発行のそういう事態になったときに、はたして公債政策からいつ脱却できるかということは非常に問題だと思う。蔵相は、まあ七年、四十年度のやつは期限が来たときに返すようにして、新しい四十一年度からのは、二十年あるいは三十年かかっても差しつかえないと言う。しかし、これは総理大臣にお伺いしたいのです。国民にもっと協力を求めんならぬということは、四十一年度予算の減税と公共事業関係費をプラスしたものは、対前年度比の伸びは三千五百億です。七千三百億という公債発行額の半分に満ちません。そうすると、あとの半分は、一般会計の普通の経費に回っておるのですよ、公共事業以外の。だから、これは赤字公債も同じ、たけれども、ここでは赤字論議はいたしません。そうでありますから、こういう点から見て、そう簡単に返済できるわけはないし、また、公共事業費だから、二、三十年の資産の見合いで、いつまでたって返済してもかまわぬとおっしゃっておりますが、それならそうと明確にして——あと、また時間があればお尋ねしますが、償還計画等を明示して、これは今後二、三十年にわたる負債である、国民の負債で、償還にもそれだけの時間がかかるということを、国民に対してもっと協力を求めて、具体的に納得してもらう必要があるのじゃないですか。非常に当面を糊塗して、安定成長になれば簡単に……というようなふうにも受け取られる御答弁でありますが、そんな、なまやさしいものじゃない。数字の取り方にもよりますけれども、私のいま申し上げた数字は、そんなに狂いはないと思う。これは、あらゆる場合を想定して、Aの場合、Bの場合、一二%伸びの場合、一五%の伸びの場合、弾性値の場合、みな、あらゆる角度のものを想定して、それだけになるのですから、総理としては、今後赤字公債——四十一年度か赤字公債であるかどうかという議論は別としても、長期にわたって、二、三十年にわたらなければ返せない。これは国の子々孫々に至るような借金であるということを国民の前に明らかにする必要があるのではないか。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、社会党と私どもの基本的な考え方の相違がだんだん明確になってきております。私は、先ほど大蔵大臣がお答えいたしましたように、この公債に踏み切ったからといって、これが二、三十年も続くだろう、こういうようにきめてしまうことは、これまた、いかがかと思うのです。と申しますのは、「公債政策・これ悪なり」という、そういう考え方だと思いますが、外国の例等を見ましても、やはり必要なる公債政策、こういうものはあるのですね。それが経済をささえるとか、あるいはまた国民負担の軽減を策しておるとか、こういう、この機においてですよ、そういうこともあるわけです。今回の減税をどういうふうに実施しておるか、そうして片一方で公債を発行しておる。しかもその額は、これは借金であることは間違いございませんから、これが野方図に放漫に流れるということは慎しむということを先ほど来申しておるのでありまして、ただいま議論する、十年先までも待たないで五年先をいろいろ議論するにいたしましても、それぞれの条件を入れて議論しなければならない。経済の成長ができれば、また税収がふえれば——こういうような話になり、また、物価が安定すれば、というような、その他幾つもの条件を加味して初めてこの議論が出るわけでございます。  で、私ども、言われますように、借金であることには間違いないですから、国民に借金をしいるなという、こういう御注意は、これは私どもも十分心得ていきたいと思います。ただ、こういう時期、この際においては、国民の負担をより軽減していく、減税もやる、そうして必要な、おくれておる社会資本の充実等をはかっていく、こういう場合に、その所要財源をどこに求めるかというと、やっぱり公債に求めざるを得ないのだと思います。私は、社会党の方も、そういう意味政府が今回の処置をとらざるを得なかったという、そういうことには理解があるのじゃないかと思っておったのでございますが、ただいまのお話を聞いてみますと、たいへん政府が悪いことをしておるようですけれども、また先の問題でございますから、そのときになりましても十分考えなければならない。しかし、スタートする以上、それは容易に脱却はできないのだ、ただいまも大蔵大臣も申しております——四十五年くらいになれば四兆、そういうようなものになるだろう、あるいはもっと多くなるかもわからないというようなことを申しておりますから、長期的な、すぐ一年だけで公債をやめるのだ、こういうものでないことは御承知ができるだろうと思います。同時に私は、基本的な考え方よりも、羽生君がただいま御注意になりましたように、とにかく、みだりにならないようにしろ、国民の負担を増すようなことは考えるな、こういうような御注意は、十分、予算編成、また執行にあたりましても気をつけてまいりたいと思います。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 それはね、総理、私は、すでに公債というものが出ておる、四十一年度に出ておることを前提にして、その後はこうなるじゃないかということを聞いておるので、公債がいい悪いの議論をしているのじゃないのです。社会党に、いますぐそれじゃ四十一年はどうやって編成するかと聞かれたら、はたして公債なしでやれるかどうか……。やり方もあるでしょう。それは、ものすごいショックの起こるようなことをやらなければならない。これは私もよく承知しております。それを前提に私は質問しておるのですから、総理は少し勘違いされておるのです。  それはとにかくとして、そこで、減債基金の問題、これは現行法では実質上空文と同じことになっております。そこで、これを改正して、経常財源の一部を初めから償還財源として積み立てるということを考えておられるようですが、そういう場合でも、積み立て額は、この一般会計の規模とするか、あるいは国債発行の額、量ですか、どちらを基準にするか、あるいはその比率をどの程度にすか、また、そのときの財源に見合って適当にやるか、積み立てるか等々、いろいろ問題があるようです。おそらくこれは財政制度審議会で御検討になったと思いますが、しかし、先日の衆議院の答弁を承っておると、これを一年間に結論を出すと言われる。しかし、大蔵当局としては、審議会の結論を待たなくても、ある程度の腹案——大蔵当局としては、こうして償還計画を立てていきたいという、具体的なものでなくても、およその、めどというものがあってしかるべきじゃないですか。いま総理大臣の言われるように、確信を持って言われるなら——私の数字か間違いたというのなら、これは別ですよ。総理のお考えに間違いがないなら、そういう程度の目測、めどもなしに、こんな膨大な公債を発行するということは無責任じゃないか。だから、審議会の結論がなくとも、大蔵当局としては一応こういうふうにやるのが適当じゃないかとか、こうしたいと思うとか、それは、あってしかるべきだと思う。
  65. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公債政策をとる段階になりますと、従来の減債制度が相当変質してくるわけであります。つまり、公債の累積残高ですね、を基準として万分の百十六を入れると、こういう特別会計のやり方、これは考え方として私はそのまま存立し得ると思うのでありますが、前年度の剰余金を基準にして繰り入れしようという一般会計のやり方ですね、これは相当変質する、こういうふうに見ておる。つまり、公債発行下において、そう剰余金が多額に出るということは予想できない。剰余金が出る趨勢であれば、これはもう公債発行自体を減らすべきである。まあ、これは剰余金は出るには出るでしょう。出るでしょうが、それは整理上の誤差程度のものである。こういうことになってくるのではあるまいかと思っております。そういうことを考えますと、最近の諸外国の債務償還のやり方なんかを考えますと、そのときどきの財政の状況に応じて減債基金に繰り入れるというやり方、あるいはそのときどきの財政力をもって、そのときの公債の減額をはかるというやり方……いわゆる制度的にシンキング・ファンドをつくるとかなんとか、そういうようなやり方、あるいは国債整理基金特別会計というようなやり方、そういうものをとらない傾向が多いわけであります。しかし、私どもとしては、減債の制度があったほうが国民に対しましても安心感を与えるゆえんでもあるのではあるまいか、そういうふうに考えまして、これは各界の意見等も広く求めまして結論を出していきたい。そうして、昭和四十二年の国会におきましては御審議をいただけるようなところまで持っていきたい、そういうふうに考えまして……。
  66. 羽生三七

    羽生三七君 各界のはいいですから、蔵相として、こういうほうがいいという、望ましいという……。
  67. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、ただいま申し上げますように、財政運営の方式が変わってきた今日におきましては、そのときの財政事情に応じてできる限り償還を計画的にやっていく、こういうことがいいのではないかと思いますが、かたがた、それじゃ国民が安心を得られぬぞというような空気もありますので、制度的に何か考えておく必要があるのではあるまいかとも考えて、各界の意見を求めよう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  68. 羽生三七

    羽生三七君 こういうふうに時間がなくなってしまうものですから、とっても十分な議論を尽くすことができませんが、次の問題、物価問題に移っていき・ます。  藤山長官は、昨日も、消費者物価が明年度も七、八%以上になるようなことになれば、これはもはやインフレだと、こういう見解を示されました。インフレ論議、本質論は別として、そうなれば、総理も同様にお考えになりますか。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 長く続いて、国際収支にも悪影響を与えておる、こういうような状態は、これはインフレと言わざるを得ないと思います。
  70. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、明年度も、見通しの五・五%を上回って七、八%になれば、もはやインフレと、これは総理もお認めになったわけです。そうなると、いまの蔵相のお話のいろんな計画も、財政規模、税の自然増収、物価と、三つの要素をあげられたが、これはたいへんなことになりますね。これは、貿易をはじめとして、予算の上、国民生活の上、各方面に重大な影響を持ってくる。そういう場合でも、なおデフレ・ギャップが残る場合、依然として景気刺激ということで、やはり明年度も景気刺激政策を優先させますか。あるいは物価対策に重点を置きかえるか。その辺はどうでありますか。それは明年にならなければわからぬということでは困ります。経済は動くものだから来年になってみなければわからぬということでは困ります。もし来年度も七、八%物価が上昇して、それはもはやインフレだと、総理も企画庁長官もお認めになったような状況のもとにおいては、あらゆる問題に重大な波及をしてくる。卸売り物価も上がります。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 別に私、五・五%を越した、これが続いたからどうこう、そういうことは申しておりません。先ほど議論されておるのは、インフレの率というものが、七%以上越した、しかもそれが一年だけでなしに、長期にわたり、国際収支にも悪影響を与える、こういう場合をインフレだと言っておるのでございます。ただいま五・五%ということにこだわっておられるようですから、それは私の言ったことと違いますので、御訂正を願っておきます。
  72. 羽生三七

    羽生三七君 それはおかしいです。それは、いままでずっと非常な物価の値上がりが続いてきて、それを明年度五・五%に押えようというのでしょう。それが、なおおさまらなくて、いままでの継続で七%以上に伸びていくような場合は——明年度から始まるわけじゃないのです。いままでのやつが引き続き来て、ここで遮断できない。こういう状態は、もはやインフレと見ていいのでしょう。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのは、率とかパーセンテージだけにこだわった議論で議論するから、私と羽生さんと違う、かように申したのでありますが、しかし、インフレを判断する材料として、ただいまの状態、これをまずインフレだと言っておられる。そういう立場から、さらにその状態で五五%に押えよう、それができなかった、こういうような議論があると思います。これはもう全体で見ていかなければならない。ただいま国際収支を一つ例にとりましたけれども、あるいは通貨価値の変動が非常に大きいとか、こういうような場合に問題になるのだと思います。ただ形式的に、この率で、あるいはこの期間を経過したというだけでは、インフレだと、かように判断することは、やや無理じゃないかと私は思います。
  74. 羽生三七

    羽生三七君 これを議論したら、たいへんな時間がかかります。しかし、それはおかしいと思うのです。ここまで来て、なお五五%で押えられなくて、七、八%が、この数年来と同様に、明年度も続く場合は、それは本格的なインフレと言うのでしょう。藤山長官、そういうことですね。だんだん論議しているというと、ニュアンスを変えてしまって、おしまいには元も子もなくなってしまいます。はっきりしてください。
  75. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 来年も引き続き八%程度のものができて、そうして、きのう申し上げたのは、本年は、まだデフレとインフレの両要素がある。そうして景気を刺激していますから、デフレ的要素がだんだんなくなっていく。われわれは、それを景気対策でやっているわけです。しかも、そういう状況にありながら、なお八%も続いていくということになれば、やはりこれはインフレとして見ていかなければならない、こう思っております。
  76. 羽生三七

    羽生三七君 だから、その場合に、デフレ・ギャップがなお残った場合、依然として景気刺激政策が優先するのか、物価対策に根本的に置きかえて、公債政策そのものまでも再検討するくらいの重大な決意がなければ……。五・五%におさまらなくても、なんと言って、ニュアンスをだんだん変えられてきましたが、そんな問題じゃないと思う。どうですか。いま、端的にですよ、デフレ・ギャップがまだ残る場合、それでも景気刺激予算を優先するのか、あるいは物価対策に重点を置くのか、どっちに重点を置くのか。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 来年度予算編成は、もちろん、そのときにならなければ十分なことは言えません。しかし、ただいま仮定されるように、デフレ・ギャップがある、そういうものをつぶすような政策もとらざるを得ないだろう。また同時に、片一方で、いままでしばしば言われておりますように、物価の安定等、いわゆるインフレにならないような対策をとるべきものだと思います。デフレ・ギャップをなくする、いわゆる積極性の予算をとるということ、これがいわゆる物価安定に相反するものだと、必ずしも私は思わないのであります。どちらかと申せば、経済の基調が堅調になるといいますか、健全に返る、こういう状況ならば物価は安定するものだと、本来のそういう姿を考えておりますので、ただいま部分的といいますか、あるいは非常に時期的な問題だけで判断するわけにいかないのじゃないか、かように思っております。ことに、インフレの問題になれば、これは何といっても、非常に短期的なインフレというものは考えられないでしょう。これはもう長期的な、本質的なものでしょうから、継続性がある。かように思いますので、ただいまの基本的な問題は、私はデフレ・ギャップがあれば不況克服ということをしなければならない。同時にまた、物価安定は当然考えていかなければならない、かように思っております。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵大臣、どうですか。
  79. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私どもが財政を膨張をさせると——四十二年度、三年度にそういうことを考えておるわけですが、財政の膨張と消費者物価、これは関連して考えること自体が私はおかしいと思う。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 それと切り離して……。
  81. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) つまり消費者物価は、景気のいかんにかかわらず、今日上昇する傾向にある。つまり低生産部門と高生産部門のアンバランスというものが消費者物価に端的にあらわれてきているわけです。これは別問題だと思います。これをひっからめてお考えになっていること自体が、少しどうかしているんじゃないか。そんな感じを、いまお話を承って、受けたわけであります。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 物価対策は、どっちでもいいということですね。
  83. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 物価対策につきましては、景気とは大体において別の問題ではあるけれども、ずいぶん何回も言っているとおり、政府が当面している問題は、景気の回復、と同時に、物価安定を主軸とする安定成長の路線の確立だと、これはもう今日といえども非常に力を入れております。昭和四十二年度、三年度、この物価に取り組むという姿勢におきましては、いささかの変更もないわけであります。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。いま大蔵大臣、物価の問題を考えるときに財政と切り離してということは、どういうことなんですか。これは物価対策は総合的でなければならないと言っている。財政、金融、それから生産あるいは流通ですね、総合的でなければならない。特に財政は、その中でかなり物価の問題に影響があるわけですね。税制の問題もありますし、それが物価へまたはね返りもあります。切り離して考えなければいかぬというのは、どうも納得がいかない、あげ足をとるわけじゃないけれども。
  85. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、そういうこまかいことを言っているわけじゃない。大勢といたしまして、財政の規模が拡大されるということは、これは公共投資が主として拡大される、こういうことを言っている。これが消費者物価にどういう影響がありますか。しかし、あなたが非常にこまかい点に着目されまして、財政は物価に関係がないかというと、これはあるんです。あるのは、たとえば財政で、物価調整的な支出を大いにする、これは物価対策に関係がある問題です。あるいは減税——物品税の減税をやる、これも大いに関係がある。そういうことを言えば関係がある。関係があることには大いに私どもは努力はしているのですが、大勢として財政規模が拡大し、公債が発行される。それが消費者物価と非常に関係のあるごときことを言われますと、これはそういう関係ではない、こういうことを申し上げているわけであります。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 これは、この議論をしていると、ほんとうに長いことかかっちゃうのですが、それでは藤山長官、先ほどの御答弁で——きのうもそうでしたが、物価を下げるには景気を刺激せなければならないというのですが、どうもそこのところが十分私には理解がいかない。
  87. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いまの景気の刺激の方向は、おくれている社会資本の取り戻し、つまり道路、輸送の関係でありますとか、低生産部門の刺激でありますとか、そういう面にいっておりますから、財政的刺激が主としてその部分に注がれていけば、私は、これは物価に好影響を与える。したがって、物価を安定させる方向と景気の回復は、必ずしも一致しないものではない。ただ、それがもし景気の回復といりのが、ただいたずらにシェア競争みたいな、設備拡大に走るような方向にいけば、これはわれわれのいまやっております目的に反してくるわけでございまして、いまここで当面やっております財政支出というものは、そういうものにできるだけ限って、そして集中していこう。こういうことですから、物価に私は好影響を与えてくる、こう私は申しているわけであります。
  88. 羽生三七

    羽生三七君 私は相当長官と意見が違いますよ、その部分では。特に公共料金を軒並み値上げをして、この減税効果を相殺するような膨大な負担が新しくかかって、けさの新聞を見ると、またバス料金を三五%上げる申請をするんでしょう、許可するしないは別にして。もう次々でしょう。ですから、その波及効果は少ないと言っておられる状態ではないと思います。それはとにかく、これをやれば私の時間がなくなっちゃうので、次に、では物価はどうして下げるか。これをしゃベっていると非常に時間がかかっちまうんですが、この要因を一言にして言うことはむずかしいと思います。これは信用膨張の問題、独占やカルテルの問題、あるいは中小企業、農業等の低生産部門の問題、つまり日本経済全体の体質の問題で、この体質変革を促進しなければ私はなかなか解決しないと思うが、その中でも各界、あるいは衆議院でもいやというほど論議されたことを、また私が繰り返すわけですね。特に農業、中小企業、サービス部門等の低生産部門、これに対する予算処置の問題、実は昭和三十八年、池田内閣当時にこの問題を提起しまして、私はここに具体的な速記録を持っておりますが、八項目の提案をいたしました。池田総理は、当時この八項目の提案をみなのんで、新聞等では社説でもこれを支持してくれたことがあります。その直後、衆議院の解散の直前に、表現までそっくりそのままの形で、私が指摘した形で、農業、中小企業に革命的ということばは使いませんでしたが、革新的な大転換を行なうということを声明されて総選挙に臨んだ。ところが、その後、対前年度比は幾らか伸びております。しかし、画期的なものということはできない。私は、ただ前年度比が少し伸びているから、それで物価問題に寄与しているという、そんな問題の把握のしかた、問題意識に問題があると思う。徹底的な変革をやらなければだめだ。しかも当面、これに重点を置けという立場を私はとっておるわけです。それは、私の立場は二つあります。一つは、いま申し上げました徹底的な施策を断行することでありますが、この要因は経済成長という立場からでも私は取り上げてみたいと思う。というのは、設備投資はほぼ横ばいです。今後、しばらくこの趨勢が続くと思います。そして現実にもそういう条件はないし、また大資本中心の設備投資の過剰を繰り返してはならぬ。ほぼ横ばいが続くでしょう。ところが日本経済の勃興期といいますか、技術革新等による成長の時代はほぼ峠を越したんじゃないか。それは、また新しい要素が出てきますよ。出てくるが、過去のようなおそろしいブームというものはもうないんではないか。ああいう時代をもう一度繰り返してはなぬし、また、そういう条件もない。そうなると景気の刺激要因を、大資本の設備投資や——あるいは公共投資として特に大衆に関係のあるものは別ですが、一時待ってもいいような公共投資にまで手を伸ばして、それを景気の刺激材料にするんでなしに、徹底的な農業や中小企業あるいはサービス部門に対する近代化をやらなければ、全然問題は解決しない。もちろん、これは国際競争力の強化ということもあります。しかし、ほぼそれを達成した、またそれを繰り返すときもあるでしょうが、現時点ではこれに徹底的な重点を賢く、これが実は低圧経済下におけるほんとうの意味の景気成長政策ではないかと思う。構造政策を伴わない成長政策は、必ずインフレを惹起します。また、現にあるものを促進いたします。ですから、これは物価対策という問題と共に、当面のこの安定成長を目ざす真の景気対策はこれじゃないか。私はそれを考えています。ですから、前年度比に比べて物価対策費が百五十億円になったとかなんとかいうことでなしに、もっと根本的な変革をとげるような施策をやらなければ——私は、その他の要件もたくさんありますよ、通貨の問題あるいは独占やカルテルの問題等もありますけれども、この問題に特に重点を置いて根本的なこの施策をやらなければ、対前年度比若干の増なんということで解決する性質のものではない。つまり問題の意識のしかたに、この問題がある。これを根本的にやることが、いま現に課せられた物価問題や、あるいは景気問題と関連した安定成長の姿でもあるし、一番要請されている問題ではないかと思う。総理はどうお考えですか。総理の決意を聞いて、それから——長官、ちょっと待ってください。総理がこの問題に決意を述べられてから、それから長官、具体的なことを言ってください。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりだと思いますが、長官からお答えいたします。
  90. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私も、羽生さんの三十八年六月十日の御質問の速記録をここに持ってきておるのですが、この八点というのは、大体、私どもがいまやろうとしておる政策であって、過去におけるこの点が十分にいっていなかったところに私は原因があると思っております。したがって、そういう点につきまして、われわれ今度のやり方についてもそういう点に重点を置いてやっていく。ただ羽生さんの御質問の要旨にもあったのですが、政府の物価対策費というものは百六十億じゃないというような  百五十億あるいは六十億程度、これは当面の、たとえば集団産地の育成でありますとか、肉用牛の集団繁殖センターであるとか、中央卸売市場の整備であるとかいうような、当面緊急にやっていかなければならぬ問題の予算金額でありますけれども、この構造改革の面に触れた、こういう問題につきましては、われわれがいまやっているところでありまして、たとえば、中小零細企業、サービス部門等の生産性を高めるための重点的な配慮が必要ではないか、生産性の高いビッグ・ビジネスの各種の価格を引き下げるように、今後とも一そう努力すべきではないか、土地の価格高騰を押えること、流通機構を改革すること、公共料金の値上げをさらに抑制すること、それから値上げの激しい生鮮食料品等については、価格保証を中心に、計画をさらに一段と高度化すること。こういうことは、羽生さんが三十八年に言われたのですが、われわれも現在、こういう問題が大事だと思いまして、今度の場合には、これにいま集中して——予算等をごらんいただきましても、また、それから政府の行政施策の面でも、そういう面について非常な努力を払っておるのが、今度のわれわれの問題でございまして、そういう面をいま拾い上げていきますと、予算の中で構造に対処するような問題とすれば、二千億の予算が使われているとか、千五百億の予算が使われているとか、あるいは考えようによっては、もっと大きな予算にもなってくるわけでございます。
  91. 羽生三七

    羽生三七君 それはよく承知しておるのです、いまおっしゃったことは。そういう程度ではだめだということを申し上げた。特に農業の問題で、私はこれの徹底的な近代化を促進しなければこの日本の物価問題は解決しないと思う、体質改善をやらなければ。ところが、これは非常な抵抗があります。私自身が、もう現地で農民の諸君からものすごい抵抗を食っております。しかしその場合には助成費をふやすとか、あるいは社会保障を一そう推進するとか、あるいはそれによる犠牲をカバーするに足る施策を伴うとか、そういう総合的な施策を行なって——しかし、それにもかかわらず何とかして日本の農業などの体質改善をする糸口を求めなければ絶対に問題は解決しない。これはもういなかに行ってごらんになれば、いかに兼業農家が——いまやこれが農業の姿といえる、かような変質を遂げているのです。しかしこれはたいへんな抵抗を受けますが、それをカバーするに足るだけの施策をやってもらわにゃならぬ。中小企業は、どんどん助成すると同時に、そのかわりそれに見合うやはり価格に対する監督というものも必要でしょう。甘えさしておるだけが能ではないから、それに対してはそれに値する代償も求めんならぬと思います。そういうことを言っておりますが、しかし、いずれにしても、こういうことを申し上げているともう時間があとない。さらに、それでは野菜はどうしたらいいかという問題があります。これは私は案を持っております。申し上げると、これは非常に長い時間がかかる。地価抑制はどうしたらいいか。この際私は、五カ年間の時限立法で遊閑宅地を国家管理しなさい、そういう案を持っております。これは具体的なことを言えといえば、もっと申し上げます。  ですから、そういうように私は、三年前にも具体案を提起したわけですね。なぜもっと徹底的にやってくれなかったか。もし時間があるなら、まだ私は野菜についてはこうしなさい、農畜産物類はこうしなさい、宅地はこうしなさいという案を出します。それは時間もありませんし、また、この総括質問でそんなこまかいことを言っておってもこれは始まりません。いずれにしても、やはりそういう施策をとり、一面において社会保障制度の推進あるいは給与の改善等、いま申し上げたことの総体を含めて、これが総体的にいって真の安定成長の姿ではないか。デフレ・ギャップを埋めるだけの問題ではないと思います。まあ、これで終わりますが、御感想があれば……。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん建設的な御意見を聞かしていただき、ありがとうございました。また、ただいま野菜や地価等について話をするだけの時間がないということですが、また他の機会もありましょうから、ぜひ聞かしていただきたいと思います。
  93. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 羽生君の質疑は終了いたしました。  午後二時四十分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時十七分休憩      —————・—————    午後三時五十七分開会
  94. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  まず、委員の異動についてお報告いたします。  本日、浅井亨君が辞任され、その補欠として小平芳平君が選任されました。     —————————————
  95. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 午前に引き続き、昭和四十一年度一般会計予算外二案を議題とし、質疑を行ないます。  先刻、委員長及び理事打合会を開き、午後の質疑者の順位について協議いたしました結果、鈴木一弘君、大谷贇雄君の順で質疑を行なうことになりましたから御了承願います。  鈴木一弘君。
  96. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は公明党を代表して若干質問をいたしたいと思います。  初めに核拡散防止の問題についてお伺いいたしたいんですが、現在、アメリカ案、それからソ連と、両方の案が核拡散防止問題については出ておりますが、その米ソ両案に共通な問題点というのは、現在の核保有国はそのまま核兵器を持ち続ける、しかし、非核保有国は一切持ってはいけない、こういう点があるわけですが、それについて政府は、十八日、外務大臣が衆議院の外務委員会で発表した態度というのは、核拡散防止条約には基本的には賛成だけれども、保有国がまず核兵器の全面廃棄の方向を出すベきだ、このように発表しているわけでありますが、それに対して、これは核軍縮という問題と核拡散防止という問題と、二つの問題を結びつけてお考えになっているようですが、実際は、軍縮の問題というのと核拡散の防止という問題と、これは二つは切り離して考えるべきではないのか。その点は、この政府の基本的態度というのは、実際には結びつけたままで切り離さないでおくものなのか、切り離した考え方で立っているのか、少し意図を詳しく話していただきたい。
  97. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 核兵器は、結局、人類にとっては非常に、人類の自滅をそのまま意味するようなことであるからして、これはできるだけこれを早く縮減し、最後にはこれを全面廃止というところまで持っていかなきゃいかぬ。もちろんそのためには核以外の軍縮もともに考えていかなきゃならない。お互いに安全の均衡を保ちながら、漸進的にすべての軍縮、全面的な軍縮、軍備廃止、そういうところまで核兵器を含めて持っていくのが理想でございます。そこで、核拡散防止、この問題は、保有国はいま限られておるけれども、だんだんその能力を発揮して、漸次これがふえるという傾向にある。これを放置すれば、そっちもこっちも核兵器を持つことになって、きわめて、世界の平和にとって非常に物騒な世の中になる。そこで、まず、非核保有国は核保有をしない、みずから開発しないということをまず始めよう。ということは、結局、すべての核兵器を含めた軍縮というものを完全に実現しようという方向にこれは進んでいくベきものであって、その一環にすぎないと、こういう考え方でございますから、核拡散防止条約というものは核軍縮の一部であり、あるいはまた核兵器を含めた全面的な軍縮の一環であると、こういうふうに理解するのが正しいかと思います。
  98. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの御発言ですと、核拡散防止というのは核軍縮の一部である、当然、全部の軍備を全面的に撤廃するということは、これはもう申すまでもなく、当然だれもが願っていることだと思いますが、そこで、実際問題として、核軍縮を大国に呼びかけていっても思うようにいかないんではないか。むしろ逆に今度のNATOにおけるMLF、いわゆる多角的核戦力、そういう問題等を結びつけて考えてみると、例のMLFというのは、拡散防止の目的にはずれているんじゃないか、これは拡散防止の目的にかなっているとか、軍縮促進であるとか、平和確保のためというように、こういうふうに言われているのでありますが、西側の放送では。これについては政府としてはどういうふうに考えられますか。
  99. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは北大西洋条約の構成メンバーの間にいま問題になっている事柄でございまして、日本とはこれは関係がありません。直接関係ありませんけれども、しかし、世界の平和問題という点からいうと、もちろん関心を持たざるを得ない問題である。これは、この北大西洋条約の構成メンバーが新たに核開発をしようとか、あるいは新たに譲り受けようとかというのでなしに、大体現状においてアメリカ、英国あるいはフランス‐これはまあ脱退、これに加わらないような状況にありますけれども、とにかくそれ以外は、みんな非核保有国でありますが、それを一種の共同管理といっちゃいけませんけれども、最後に引き金を引くのはかなり限定された核保有国でありますけれども、しかし、持たない国が核の問題に対して一向発言力がないということではおもしろくない。それで、北大西洋条約というのは、もともと北大西洋条約に加盟しておる各国の安全確保というためにつくられた条約でございますから、核を持たない各国が全然つんぼさじきにおるというようなことではどうもうまくない。これに対して何らかの発言力を行使すべきだというような考えでこの問題が持ち上がっておるのでございまして、どっちかというと国の安全保障という、核兵器というものが発達した今日下において、核を持たない国でもつんぼさじきに置かれないで、核というものに対して発言力を獲得していく、そうして一そう国の安全というものの手段に、ある発言力を行使しよう、こういう考え方でいま問題になっておるのでありまして、どっちかというと、国家の安全保障、こういう色彩が強い、しかし、核拡散防止協定というような精神と全然縁の遠いものでは私はないと思います。
  100. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまのは北大西洋条約機構ということであるから、日本とは縁が薄いということを外務大臣はお話しになったんですけれども、私はそれはそう考えられない面がある、それで、あえてそれをお伺いしたわけなんです。その一つは、昨年の暮れの十二月二十日の東京新聞に、アメリカとイギリスと豪州、それからニュージーランドで「核統合軍創設を」ということがウィルソン首相の発言として出ている、その中に、英国がアメリカとの相互依存関係に従って、そうしてそれに基づいて自由陣営を防衛したい、つまり、イギリスだけでは核を持ったからといって防衛ができないということで、いわゆる、いよいよMLFというものを強化するというような考え方になってきている。その中に今度はアジアの問題に対しては特に重要な点は中共及びインドネシア、そういうものの圧力に対抗するためのインド防衛ということから、七十年代のアジアの強力な基地としてインド洋の中にあるチャゴス諸島とか、北豪州に新しい基地をつくる、これがいわゆる中近東から西についてはもうMLFあるいはアメリカとの共同によって安全が保たれるけれども、それより東のほうについて、アジア地域についてはあらためてアンザス条約というものを拡大する方向に持っていきたい。これによっていわゆる自由陣営の安全というものをはかっていこう、こういう考え方があるわけです。ところが、アンザス条約というものを見てみますというと、これは外務大臣も御存じのように、日本には関係なく、いつの間にか日本の国が入っているというような条約である。オーストラリアとニュージーランドとアメリカの軍事同盟であるけれども、その中には日本国との関係というもの、日本駐留している国連軍との関係というものがはっきりと入っております。そうなると、このMLFに対するわが国態度次第では、今度は極東のいわゆる核武装というもの、アジアの核防御というもの、これにアンザス条約というものが拡大されてくれば、わが国は巻きぞえを食わなければならなくなるというおそれがある。そう遠回しに持っていったんではうがち過ぎるじゃないかとお考えになるかもわかりませんけれども、そういう心配がある。そこであらためて伺いたいのは、MLEというような構想、多角的核戦力について政府としては一体これを支持するような態度にいくのか、核拡散防止という意味からもいいと、そういう面もあるということで賛成できるというのか、それとも反対に、アンザス条約等のおそれがあるから、ここは十二分に検討し直さなきゃならぬというのか、その辺のところを考え方を詳しく承りたい。
  101. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは北大西洋条約加盟国の間において特に考えられた多角的戦略体制でございまして、まあ、その中にはイギリスのように核を開発した国もあるけれども、しかし、あまりにも費用がかかるといいますか、非常に負担にたえないというので、共同の機構にそれを して、自分の負担を軽減したいというような国もあり、その他の国はフランスを除いては核戦略や核兵器を開発しようという考え方は持っていない。しかし、さっき申し上げたように、そういうものと全然無縁な関係において自分の国の安全を考えるということはどうも非常に心細い。やはり相当な発言力を持たなきゃならぬという、そういう考え方を総合してこのMLF体制というものをつくろうかどうかということがいま問題になっておる。まだできたわけじゃありません。これはいろいろ複雑な問題がございまして、なかなか簡単にはできないような情勢であります。アンザス条約というものをかなり拡大して、そうしてそれにまた核戦略体制という性格を持たせていくというようなことは何もまだ聞いておりません。日本といたしましては、そういうものがかりにできても、これに加盟する必要はない。日米安保条約体制下において十分に日本の安全というものは保障されておるという状況でございますから、そういうものはできそうもありませんけれども、かりにできたとしたって、日本はこれに加盟するという必要はないと考えております。
  102. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまので心を強くしますけれども、一つだけいまの答弁の中で心配なのは、イギリスのウィルソンが、そのようにアンザス条約の拡張をしたいというような意向が一応示されて、そうなりますと、先ほど申しますように、その前文にも、安保条約が結ばれた後の日本における米軍というものが含まれているわけでありますから、その拡大、いわゆるアンザス条約の拡大、拡張というものについては、これは当然わが国としては意思表示をするなり、反対をもっていくなりということになるだろうと思います。その辺のところはこれは仮定の問題かもしれませんけれども、わずか五、六年のうちには起こってくる問題でもありますので、基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  103. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 豪州、ニュージーランド、アメリカでもって構成する条約で、イギリスはこれには加わっておらぬのであります。これに対してのウィルソン首相の発言というのは私は存じませんが、どの程度の発言をしているか知りませんが、とにかくいまはメンバーではない。それからこういうものが、核戦略を中心にして、さらに内容を強化する必要があるのか、従来の衣までアメリカの核抑止力というものの保障を得ておるのか、その点につきましては私いま正確にお答えできません。後刻調ベてまた申し上げますが、そういうものに日本が入るか入らぬかということは、これは日本の自主的判断によって決定するものでございまして、日本はただいまのところさような多角的核戦略体制というものに参加する必要はないと思っております。
  104. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それは参加する必要ないことはよくわかります、その意志も十分わかりますが、アンザス条約の前文に、はっきりと日本における米軍駐留の問題が上がっておる、だからそういうような動きがあったときには研究するということより、反対をするべきではないか、その辺のことをもう一度お伺いします。
  105. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アンザス条約はアメリカがそれに加わっておりますから、特に条約内容を変更して、核戦力をもってニュージーランド、豪州の安全を保障するということを書き加える必要はないということを申し上げます。  それから日本は国内にアメリカの核基地を許しておりません。また、これを持ち込む場合には半面協議の対象となっている、かつ日本は持ち込みを許さない方針であります。なおかつ日本としては、いかなる攻撃を受けても、アメリカの核兵器による抑止力というものによって国の安全が保障されておるというのでありますから、そのために特別に核攻撃に対する報復力というものをさらにつけ加えるために、日本の国内に核基地を設ける必要もなければ、核の持ち込みを許す必要もない、こういう状況であります。
  106. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それはよくわかります。わかりますが、アンザス条約がそういうようなふうな拡大の傾向にあるということについては十分検討していただきたいと思います。  次に、自国の領土の中に核兵器を持っていない国に対して、核保有国は核兵器を使用しない、そういうような条項をソビエトが提案をしておりますけれども、それに対して二月十八日に外務大臣が総理とお会いになって、わが国をはじめ核兵器開発能力を持つ国々がその開発を思いとどまっていく、そのときに核保有国が核軍縮、核兵器廃棄の努力をしないで、非核保有国に対して一方的恩恵として核攻撃を差し控える、そういう態度をとることは満足できない、こういうことを言って総理も了承された、こういう話なんでございますが、そうなると、核拡散防止ということとその核軍縮というものとがはっきり分かれてこない。先ほどは核拡散防止は軍縮の中であるというのですが、それならば核軍縮ということを強く打ち出していくべきがわが国立場ではないか総理は昨日の御答弁で、核拡散ということは人数共同の敵であるということも言われたわけでありますけれども、その点について政府態度といいますか、総理のお考えを伺いたいと思います。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 核拡散問題につきましては、わが国態度は非常にはっきりしております。わが国などは科学的な力を十分持っておりますが、核兵器は持たない、開発はしない、またわが国にも持ち込まさない、こういうことで、これははっきりした態度をとっております。その態度はともかくとして、ただいまソ連が提案しておることなどについて、これは真意は何を一体ねらっておるか、これは十分検討する必要がありますが、そういう真意がわからないまでも、このこと自身、発言したことは一歩前進だと、かように私は思っております。これが核を含む全面軍縮への一歩前進ではないか、かような意味でこの問題を取り上げたい、かように私は思っております。
  108. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、国連協力法案の問題について伺いたいのですが、二月二十三日の大京新聞によりますと、外務省は内閣法制局、防衛庁、自民党外交調査会、この関係で国連協力法案について調整を得た、今国会にいつでも提出できるように準備を進めているという話であります。これについては総理も了解済みではないかという、閣議決定寸前であったという声も伝わっているのですが、その点はいかがでございましょうか。
  109. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ外務省でも研究中でありまして、いわんや外部に折衝するという段階ではございません。
  110. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 外務大臣が第二十回の国連総会に出席した際、あのときにアメリカで記者会見を行なわれた。その記者会見の席に、平和維持のため国連軍参加の問題について、憲法に抵触するかどうかを研究するということが述べられているわけです。これも新聞で報道されたわけですが、そういうような見解をとられたということは、いわゆる国連協力法というようなものについての考え方がおありになったのか、それとも何に基づいてこういうようなことをおっしゃられたか、また、検討されているということであれば、どういうふうに検討がなされておられるのか伺いたいと思います。
  111. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ国連の中においてすら国連軍という制度が確立されておりません。ただアイデアとしてはそういうことがしきりに喧伝されておった時期もありますし、また、いまだにそういう問題が懸案になって残っておるという状況であります。日本といたしましても国連加盟国の一員である以上は、そうしてまた国連中心の外交政策をとるというたてまえをとっておる関係からいいましても、そういう問題について十分の研究を絶えず怠らない、そうしてできるだけこういう問題に対して明確な意識、考え方を持っておる必要があるというのでございまして、その問題について具体的にまだ研究を進めておる状況ではございません。
  112. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、記者会見で憲法に抵触するかどうか、国連軍参加の問題について十二分に検討したいということを言われたけれども、検討は全然進んでいない、こういうことですか。
  113. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現実の問題として、国連による国境監視というようなことが数次行なわれておりまして、これに対しては、日本に対しても人員の派遣方、監視団を構成するメンバーの派遣方を要請してきたことがございますが、そういうことで軍事要員の派遣といいましても非常に段階がある。監視団の構成員の派遣から、国連軍というものができ上がった際のそれの参加の問題に至るまでいろいろな段階があるのであります。で、これをひっくるめて研究をしておるのでありますが、先般、一再ならず国会において問題になりまして、政府からも答弁をいたしましたが、自衛隊は海外派兵を禁じておる。その国内法のたてまえから、いま実行するという段になるとこれは不可能ではございますけれども、憲法問題として、その程度のものは許される問題であるかどうかという質問がありまして、法制局長官からも、また私からも、それは憲法違反にはならない、こういうことを申し上げておったようなわけでありまして、まあ一部研究は済んでいる、全般的な研究についてはまだ何とも言えない、こういう段階でございます。
  114. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 外務大臣が昨年八月十一日に、稲葉委員質問に答えて、統一見解をつくっておくのが適当であろうかと思う、こういうように統一見解をこの国連軍の問題についてはつくるということを言われたわけですが、部分的にはできているけれども全般的にはまだできていない、こういうお話です。そうすると、大体統一見解というものはいつごろになったら出てくるようになりますか。
  115. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。外務大臣から申し上げましたように、実はレバノンの監察団の参加というものは、実は政治面にあらわれた現実の問題として、われわれそれを当時——すでに八年前のことでございますが、具体的に考えたということがございます。したがって、その点については実はいまもそのことに変わりはないわけでございますが、そのほかに現実の政治面に具体的な問題が生じているわけでもございませんので、いまこれを急いで統一見解をまとめなければならぬという要請がございませんので、十分な検討を遂げて研究を重ねた上でつくってまいりたいと思っております。
  116. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、いつごろに統一見解が出るか見当がつかない、部内で研究をしているけれどもということでありますが、こういう問題は一番国民が関心を持つ問題だと思う。総理としてもその点統一見解を早く出すように研究を急がしてほしいと思うんです。  で、次に、三月四日の衆議院予算委員会条約局長が、国連協力法案には憲章の第四十二条、四十三条の国連軍に対する協力は入らない、こういうような話があった。それでは、憲章の第三十九条についてはどうなんでしょうか。この三十九条の勧告によってつくられる、こういうようなときには入るか入らないか。
  117. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) その同じ日の予算委員会でお答えいたしましたように、四十二条、四十三条以外の第七章の各条が関係してくるかどうかという点については、現在まだその外務省の一部で研究いたしております構想自身が固まってまいっておりませんので、明確にお答えすることが、できないわけでございます。
  118. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それでは、国連軍の問題で伺いますが、日本国における国連軍の地位に関する協定というものがあると思います。その中に示されている国連軍というのは憲章の第何条によってつくられているわけですか。
  119. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 朝鮮動乱の際の国連胴につきましては、国連決議自体には条文の引用はございませんけれども、大体三十九条によるものというふうにいわれております。
  120. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その国連軍というのは現実に日本との非常に関係がある、こういうように国連軍の地位に関する協定ができているくらいでありますから。そこで、この中にいる国連軍というのは、ソビエトが欠席したときに安保理事会の決議でできている。そのような国連軍に対して、日本との関係は一体どういうような関係になっているのか。たとえば、その国連軍の地位協定で認めているということは、ほかの国  朝鮮であるとか、北朝鮮であるとか、中共とか、こういうものについてどういうような関係になりますか。
  121. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 朝鮮の国連軍が設置されました当時は、日本は国連の加盟国でございませんので、直接国連の場で態度を表明する機会はなかったわけでございますが、吉田・アチソン交換公文というのが安保条約の付属文書としてできまして、日本はこれを支持するという態度を明らかにしたわけでございます。
  122. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 問題がはぐらかされたわけですが、この国際連合の軍隊の地位に関する協定ですね、この地位協定の中の国連軍というのは、中国とか北朝鮮とどういう関係にあったわけですか。
  123. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) その軍隊が北朝鮮とか中共とどういう関係にあったかということは、ちょっと実態からそれるように思うのでございますが、とにかくあの国連決議は、北朝鮮から南鮮に対して侵略が行なわれた、それで大韓民国を助けるようにというふうに国連安保理事会から加盟国に呼びかけまして、その呼びかけに応じて加盟国から軍隊を出したわけでございまして、その軍と北朝鮮、中共とは特別に何ら関係はないわけでございます。
  124. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この地位協定の前文並びに第一条のところを見ますというと、総会決議あるいは安全保障理事会の決議云々ということが出ているわけです。それに基づいているということははっきりしておりますから、その中の決議というのが二つとも、一つが、北鮮を平和の破壊者とみなす、片一方は、中国を侵略者とみなすということで、この国連軍は中国あるいは北鮮とは敵対関係にあったということは当時の実態からもわかるわけです。その国と日本とが協力するというのがこの国連の地位協定、国連軍の地位協定だと思うのですが、そういうようになってくると、やはりわが国立場というものははっきり、相手国に対して、いわゆる中共、北鮮に対して、これを敵国というようなかっこうにみなすことになっていた。いまはどうなっているか。
  125. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 敵対関係というと、国連と北鮮、中共とを同列に置くような感じがいたしますが、いずれにいたしましても、国連が北朝鮮に対して強制行動をとったということはこれは事実でございまして、それを敵対とおっしゃるとすれば、その敵対、そういう意味関係は、国連と北朝鮮及びこれを援助した中共との間に生じたということは事実でございます。それで、その戦闘状態は一九五三年の休戦協定の成立によりまして終止しましたけれども、その後その休戦協定でも予見されているような政治解決というのがいまだにできないままになっているというのが現状でございます。
  126. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そこで、前の予算委員会の記録を見ますというと、現在もこの地位協定によっていろいろ基地であるとか、役務であるとか、資材というもので協力しているのではないか、その点についての質問がなされている。特に韓国の空軍機を国連機として日本で修理しているのではないかという質問がなされておりますが、それに対して、稲葉委員からの御指摘に対して、十分に調査をいたしますということになっております。その結果はどのようになられましたか。
  127. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 現在いわゆる国連軍として、米軍は別でございますけれども、米軍以外の国連軍として部隊として日本駐留しているものはございません。したがいまして、そういう国連軍用の施設というようなものは現在ございません。ただ、一部国連軍に加盟しております国の軍隊の連絡将校というものが、座間にございます米軍の司令部の中に、何と申しますか、ごく小規模の国連軍後方部隊というようなものがございまして、そこに米軍の大佐を長にいたしまして、その下に国連軍の加盟国の連絡将校というのが勤務しております。大体人数は四、五十名かと思います。でございますから、現在におきましては、米軍を除きましての国連軍というものの実体はそういうものでございます。
  128. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私が質問したのは、その地位、役務の問題の中に、昨年の八月十一日の質問の中では、韓国機が韓国の飛行機が、国連の飛行機として日本で修理を受けている、こういう話があるけれども事実かという質問がなされた。それに対して、調査の上お答えいたしますということになっているのだけれども、どうなったのかと聞いている。
  129. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 韓国空軍の飛行機が国連軍の航空機という名目のもとで日本で修理を行なっておるという事実は、少なくとも昨年問題のありました当時、それからそれ以後はございません。
  130. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、その前にはかなりあったということですか。
  131. 安川壯

    政府委員(安川壯君) その前に韓国軍の航空機が日本に来て——これは商業ベースでやるのでございますから、日本航空会社と契約のもとにやったという事実はあったと思いますが、国連軍の航空機という名目でやったという事実は私はないと承知しております。
  132. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、そういうことを行なおうと思えば、現在この協定が生きているだけに、自由にできるわけです。そこで、やはり外務大臣に伺っておきたいのですが、サンフランシスコ条約の第五条で、日本は国連憲章に従ってとるいかなる行動にもあらゆる援助を与えるということがうたわれておるわけです。そのことをこの国連軍の地位に関する協定の中でも確認しているわけですが、いまのように、この地位協定を見るというと、自由自在に韓国におる国連軍であれば日本の国へ何ぼでも入ってこれる、税関も通らないで済むし、調達するものについての税もかなりの免除がされている。チェックのポイントが全然ない。そこで考えられることは、いまでさえも、国連協力法というものをつくらなくても、国連に協力できているじゃないか。それをあらためてここのところへさらにつくろうというような意図にちょっと聞こえたわけでありますし、先ほども作業しているような答弁が局長からされたわけですが、さらにそれ以上の援助というかというものをやろう、このサンフランシスコ条約の中のいかなる行動にもあらゆる援助を与えるというそれ以上のことをやろう、こういう意図がおありなんでしょうか、その点はっきりしていただきたいと思います。
  133. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 朝鮮戦争に関係する国連軍に対しましては、吉田・アチソン交換公文によって、日本国内においては支持を与えるということを規定しております。この支持というのは兵たん補給という意味でございますが、アメリカ軍以外にこれは適用される。アメリカ軍は、日米安保条約締結によりまして、日米安保条約関係する地位協定によって、別に取り扱われているのであります。アメリカ軍以外の国連軍に対する支持というのは兵たん補給ということだけでございますが、それもただいまでは日本国内では連絡将校がごくわずかいるというだけにすぎないのであります。実際問題としては、この交換公文の規定は実施されておらないという状況であります。  それで、問題になった国連協力法というものは、別の角度研究されておるのでありまして、つまりまだ成文になっておりません。おりませんが、しかし、もしこれを取り進めていくということになると、自衛隊法というものに関連してまいります。自衛隊法がいかなる形でも海外派兵を禁じているというような関係がありまして、監視団の構成員を送るにしましても、憲法上は差しつかえないが、自衛隊法の制約があって、これはできない。でありますから、そういうことをもしやろうとすれば、国内的にいろいろ関係省と相談した上でないと成案がまとまらない。まだ、しかし、そういう段階になっておらない。  そのほかの問題としては、ローデシアの問題に関係して、最近国連の安保理事会のほうから各国に対して、経済断交をして、そして現在のローデシア政権というものが立ち行かないように、経済制裁を加えるというようなことが講ぜられましたが、国連協力法というような法制の国内的整備が整っている国は、その法律に基づいて断固たる措置をしたようであります。日本はそういう国内法を制定しておりませんので、行政指導によって国連の要請にこたえておるという、こういう状況でありますが、ただいまのところは、大体ローデシア問題については行政指導によって何とか国連の要請にこたえたい、こういう現状であります。  でありますから、新たに問題が起こった国連協力法というものはそういったような範囲の問題でございまして、朝鮮戦争に関係のある国連軍の支持、吉田・アチソン交換公文において規定された内容とはいささか違う、こういうことでございます。
  134. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私が心配して申し上げておるのは、いわゆる先ほどの四十二条、四十三条の問題については、それは国連協力法に入らないという話だったのですが、第三十九条はまだわからない。わからないということになると、「平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為の存在を決定し、」云々のところに「並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、」ということがある。先ほどの韓国における国連というのは、この三十九条の勧告によってできておる。その点については、先ほどこれは国連協力法案に入らないということがはっきりしていないわけでありますから、そうなりますと、場合によると、いわゆるサンフランシスコ条約の規定のとおりに、いまの朝鮮戦争のときの国連軍に対する地位協定以上のものができてくるのではないか。そうでないにしても、自衛隊というのがこの国連協力法によって韓国に行くというような事態になる、そういう心配があるわけです。その点のところの歯どめというものをはっきり聞いておきたいということです。
  135. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 三十九条につきましてはっきり申し上げられると先ほど申し上げましたのは、三十九条は四十二条、四十三条と違いまして、軍事関係のことだけではなくて、一般的な規定になっておりますから、何かの平和に対する脅威の事態でもありまして、これに対して経済措置の勧告がなされることもある。そうしますと、そういうものは、一応外務省の一部で研究しております国連協力法といいますか、国連協力問題の一環になっておりますから、それで三十九条を全体としてこう四十二条、四十三条みたいにいまここでオミットしてしまうということは言い過ぎである、かように考えましたから、三十九条についてはっきり申し上げなかった次第でございまして、朝鮮動乱のときの国連軍のように、あれは三十九条に直接基づくものではありましょうけれども、しかし、四十二条に準ずる軍事的な強制措置でございますから、そういう面のものは当然入っておらないわけでございます。
  136. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ここでちょっと、軍事的な色彩を含むことになりましたから、申し上げておきたいと思うのでありますが、防衛庁長官にお伺いしたいのでありますが、日本と韓国と台湾、この三つの共同の防空演習というようなものはお考えになっておるかどうか。
  137. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 考えたことございません。
  138. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 日、韓、台ではなく、日、韓、米でございました。  ないというのでありますけれども、昨年の十二月十六日から十九日まで、これは毎日新聞の十二月二十一日号に出ておりますが、能登半島の沖でアメリカ海軍と韓国の海軍が大規模な対潜水艦攻撃合同演習をやった。だいぶんアメリカの空母であるとか原子力潜水艦、韓国の船等が加わっております。そのあとで佐世保でもってアメリカの第七艦隊の第一対潜攻撃艦隊の司令官オーランドという少将が記者会見をしている。日本の海上自衛隊と合同訓練を計画していたけれども、日本側の都合で今回は中止になったと、こう言っているわけです。これについて、正式な申し入れが向こうからあったわけですか。
  139. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ただいまお示しの新聞は私も拝見いたしましたが、これにも明確に出ておりますように、日米間の訓練計画の予定をしたが、これは実行できなかった、という発表はございますが、日米間というものはこの発表にもまたございませんので、多少事実と相違するのではないかと私は思うのです。
  140. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの問題について、日本側に申し入れたけれども、海上自衛隊側が九日から十一日まで土佐沖で対潜訓練をするというので、自衛隊の参加はなかった、こういうように言っているわけです。だから、向こうははっきり申し入れたと、こう言っているわけです。
  141. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ただいまも明確にいたしましたように、日米間の訓練についての申し出がありましたが、当方の訓練計画の都合でこれは実行いたしませんでした。
  142. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これに対して海上幕僚長は、この演習というようなものについて今後は参加したいというようなことを発表している、こういう話を聞くわけでありますが、これは事実でございますか。
  143. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) そういう発表をしたこともございませんし、そういうことを私は聞いたこともございません。
  144. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういうようにいわれているわけです。いわれているというか、新聞にも出ていたという話でありますが、ないということであれば、私は安心いたします。  そこで、伺いたいのは、バッジシステムについて、だいぶこれがおくれてきている。まあ一年間おくれてくるということでありますけれども、それについての理由、それを伺いたい。
  145. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) バッジシステムの完了は、四十二年度に予定しております。当初は四十一年度までという計画でしたが、その後において多少兵器の発注の中における装備の変更がございましたために、一年間おくれました。装備の変更は、新たなもの、新たな機械、開発されたものをそこへ付属いたしますので、付属することによって一年おくれて、四十二年度には完了するつもりでおります。
  146. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのバッジシステムで、四十二年度に完了すると、当然これは日本の国内だけの訓練、日本の国内だけで十二分にシステムというものが働くのか、あるいは韓国等と合同して演習をしなければならないのか、その点はどうお考えですか。
  147. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) バッジシステムの基本は、現在ございますレーダーサイト、そのレーダーサイトから国内における管制統制を迅速に容易ならしめるものであります。したがって、現在あるレーダーサイト以内のものであります。その内側になるものであります。したがって、外側と関連するという考えもこの制度というものにはありません。レーダーサイトに飛行機を把握したあとで、迅速にこれを処理するという内側のものであります。
  148. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 長官の答弁で、そういうような合同演習というのは考えられないということですから、信用しておきますが、このバッジシステムの問題で、私どものところにふしぎな変な怪文書が入ってきたわけですが、防衛庁の「黒い墓標」というので、ここに一つございますが、その「黒い墓標」で、だいぶでたらめな見積もり書であるとか、手渡された五千万円とか、三兆円をめぐる疑惑とか、こういうようなことが載っておって、かなり防衛庁が腐敗しているという意味のことが相当書かれている。かなり多くのところにばらまかれているという話でありますけれども、政治の姿勢としては、これが事実——そんな怪文書でおまえ質問するのかと言うわれるかもわからないけれども、そういうようなものが出ているということは、政治の姿勢としてははなはだ好ましくない。  そこで、この問題で一、二点はっきりさしておきたいと思うのですが、前提として、こういうようなものが取り上がっている、出ている、ばらまかれているということについて、防衛庁それ自体相当しっかりとした粛軍をしなければならないし、政治姿勢それ自体として心立て直さなければならないと考えるわけですが、総理と防衛庁長官からお願いしたいと思います。
  149. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私のところにも送付してまいりましたので、内容を拝見して、まことに事実に反する事柄が多々ございます。いずれにしても、そういう疑惑があることはまことに防衛庁全部の士気に影響しますので、今日綱紀粛正及び機密保持の委員会をさっそくつくりまして、まず、あらゆる文書、あらゆる非難というものの根源をつき、その真実を突きとめて明快に国民の前にするために、今日、事務次官を長として、つい一カ月前から成立をして、すべてのもの、不明瞭なものは全部ここで調査し、そうして国民の前に明らかにするようにいたします。  なお、その中には、私が見ましても、あまりに事実に反するようなことばかり書いてあります。残念ながらまだ出所を突きとめるまでには至っておりません。
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま防衛庁長官がお答えいたしましたことでおわかりだと思いますが、政府はもちろん、国民の信頼を得、また同時に期待にも沿うように働きをすることが政府のつとめでありますから、だから、公務員についていわゆる疑惑を持たれ、あるいは誤解を持たれる、あるいは不信をかもし出すような、そういう事柄は厳に慎まなければならないと思います。ただいまの出所等につきましても、十分せんさくをするつもりでありますが、部内に対しましては、私も防衛庁長官と同じように、国民が不信を抱く、あるいは疑惑を与える、こういうようなことのないように最善を尽くしております。
  151. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これの内容で一、二点、これだけははっきりしていただきたいと思うのがあるわけなんですけれども、それはM61型戦車四十両の国産化を三菱重工業に独断で発注した、入札もしないでやったということが書かれている。まさかこんなことはなかろうと思うのでありますけれども、そのときの経緯を、こういうものがばらまかれていれば、そういうものを信じている人があると思うので、はっきりと言っていただきたい。
  152. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 第一点の、M61という戦車は、国産したことは実はございません。第一点に、その辺においてこの文書がまず間違っておる。四十両発注するという計画は過去においてございません。三十七年、三十八年に十両、あるいは国産として長期的に七十両——四十両と、もし言うならば、四十一年度予算が通過した暁において、将来四十両計画というのがあります。過去においては四十両発注したとしは一年もございません。  なお、三菱重工業という名前が出ておりますが、戦車については三菱重工業と共同開発をしております。これはM61ではありません。61型戦車という、まず記号が違います。これは三菱重工と防衛庁と共同開発したものであります。したがって、この製作は、三菱重工以外には今日この型はできません。別な型はまた別な会社で製作しております。そういう意味で、随契というよりも、会計検査院の許可を得て、常に原価計算を特にやっているものであります。疑惑というものは、私は一百明快にいたしまして、御賢察をいただきたいと思います。
  153. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま一つの点は、バッジの問題でありますけれども、どうしてヒューズ社に決定したか。これは一番安かったからというけれども、結局追加追加で高くなっているじゃないか。この辺に非常にヒューズと結びつきが強いということで、この「黒い墓標」の中にうるさく書かれているわけでありますけれども、その点については……。
  154. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 当時の記録をたどりますと、ヒューズ社というものがその当時の価格では安かった。しかし、その後において追加値上げをされた。追加値上げが最初の契約の単価値上げにあらずして、実は新たな機械というものが付属されました。それは電波妨害を防ぐという新たな開発された機械が付属されたために、四十何億か、たしかふえております。それを合わせましても、一般的に言う他の競争会社の価格のものと今日計算して私は大差はない、初めのものは非常に安かったから発注をした。そこに追加契約をした。それでもその競争相手の会社のものと大きな隔たりはありませんので、私が過去を振り返ってみて、今日、過去の先輩がやったことはそう間違っていないと私は断定しております。
  155. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この問題についてはこの程度にいたしますけれども、いずれにしてもあとからかなりの追加をしなければならない、あるいは三次防まで持ち越されるかもわからないような状態で、一つのシステムが買われているというところに誤解を招くもとがあるだろう、当然疑われるようなふうに疑いを持つ人もあるだろう、それがこういうことを生んだんだろうと思いますけれども、責任をもって今後かかる不祥なうわさの出ないようにやっていただきたいと思うのです。これは希望しておきます。  次に、ベトナムの特需問題について若干伺いたいのですが、昨年アメリカの「クリスチャン・サイエンス・モニター」、その雑誌の中に、ベトナムのナパーム弾の九〇%が日本の二つの会社から納入されている、こういうふうに報道されている。北ベトナムの機関紙にも同じようなことが報道されておりますけれども、その二つの会社というのはどういう会社なのか、これは通産大臣に伺いたい。また、そういうような報道について総理はどのようにお考えになっているか。
  156. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 鈴木君御承知のように、武器等製造法によって事業許可を受けなきゃなりません、武器を製造する会社は。その許可を受けておる会社は富士車両、石川製作所であります。ところが、この二つの会社は、富士車両は兵器の製造をやめて、それから石川製作所もそういうナパーム弾を製造したような事実はありません、これは届け出を要しますから。武器等製造法ができて、そういうナパーム弾を製造した事実は全然ありません。そういう事実に反しておることが流布されることははなはだ遺憾であると考えます。
  157. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま通産大臣がお答えしたとおりであります。日本がそんなものをつくって、それを送ったというようなことはございません。
  158. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 朝鮮戦争のときの特需というのは非常に盛んだったわけでありますが、それを思い一出してか、大手企業はかなりベトナムの問題について、特需についてかなり力を入れている。課というようなものをつくっているところがかなりあるようでありますけれども、その特需課をつくった会社というのはどことどこですか。
  159. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 商社で特需課をつくったところというお尋ねでございますが、大きなところだけで私の耳にいたしておりますのは、 二物産、伊藤忠と高鶴屋程度ではなかったかと思います。こまかいところ一々各社の分課にわたるほどの材料を持っておりませんが、そういうところで設けていることは事実であります。
  160. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 現在ベトナム特需と言われているものについてですが、その内容がいろいろにわたっておる。私の調べたところでは軍服が、ベトナム用であろうと言うのですが、一月の中旬に二十五万着発注されておる。丸紅であるとか伊藤忠であるとか、あるいは東棉等にあわせて六十数万ドルということであります。また野戦用の発電機も東芝であるとか、久保田であるとか、ダイハツに八十万ドルであるとか、あるいは建材用の鋼材が出ているとか、神戸製鋼からは銅の受注がものすごく多いというふうに言われているのでありますが、その特需についての考え方というものを聞きたい。総理が昨年の十二月でございますか、衆議院予算委員会で、民間の活動は一々私は知りません。政府自身はそのようなことをやっていないし、政府の活動と民間の活動は違うからと、こういうふうに言われているわけでありますけれども、実際にジャングル用のくつであるとか、あるいはそのような砲弾の材料になるような鋼材であるとか、あるいは軍服というものが現実にどんどん出ているということになれば、これは政府として関知しないといって、放置しておいていいのかどうか。これは考えていかなければならない、それについての考えは前のとおりなのか、それとも変わっていらっしゃればその点について……。
  161. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 鈴木君も御承知のように、米軍との地位協定によって、物資、役務の調達に対し制限を受けないことになっておりますので、だから米軍日本において調達するという物資の調達というものに対して制限を加えることはできないのであります。しかし、特需というものはまあ昭和三十五年四億ドルちょっとこえた程度、三十九年度には三億一千万ドル、昨年四十年で三億二千万ドル——ちょっと端数かついて二千万ドル、この程度で、非常に急激に特需がふえたという傾向はありません。しかもそのふえたものは、木材とか繊維製品、化学工業製品とか、あるいは金属製品、鋼材、こういうものであって、まあ大部分が特需の内容をなすものは、在留米軍の軍人、軍属、家族の日用消費物資である。たとえば三分の二くらいはそれであって、昭和四十年度の一月から十二月まででも三億三千万ドルほどはやはりそういう消費物資である。まあ九千万ドルの物資ということになっておる。武器とか弾薬というものは、これは武器等製造法によって届け出を要するわけであります。そういうものは一切ありません。届け出た、そういうものはない、したがって、武器、弾薬等が特需として出ておることではない。しかし、それがどの程度ベトナムへ行くかということは、御承知のように貿易管理令の特例を受けておりまして、輸出の承認が要らない、だから全体としてわれわれは特需の傾向を把握しておるわけであります。それで急激に特需がふえていない。武器、弾薬がないということで特需の内容については御了承が願えるものだと私は考えております。
  162. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 通産大臣は、武器、弾薬は輸出できないことになっているということでありますけれども、確かにそうなっておっても、地位協定によって先ほどの話のように、自由に通過することはできるわけです。ナパーム弾の話も、本体として、一体として、一つとしてまとまったものではなくて、中に入っておる油脂関係と本体、これがばらばらであるというような話も聞いている。そうなるとはたして、いま大臣は間違いなく兵器は輸出してないと言われたのですけれども、実際問題としたならば、チェックするところがどこにもないわけです。税関の検査もありませんし、税金をかけるわけにもいかぬ。そうなるとそれを保証する、いまの大臣の答弁を保証する何ものもないわけです。その点についてはどういうふうに監視をされていくか。
  163. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それは御承知のように、武器等製造法によって米軍といえども届け出をしなければならぬことになっております。その届け出がないということが、これが保証であります。
  164. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は最初に「クリスチャン・サイエンス・モニター」の話を出したわけでありますけれども、大臣の言うように、現実にはそういうふうにつかまえてないだろう。しかも、武器としてでなくして出ているかもわからない、どういうようにも押えようがないということなんですか、いまの不詳であるということは。わからないということま……。
  165. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私がお答えしておりますように、わからないと答えているのではないのです。やはり武器等の製造法によって届け出をしなければならない。アメリカ軍もそれが、届け出が何にもないということは、これは非常な保証でありまして、そうしてわからぬのではない、わかっておる。武器弾薬等の特需はないということが言い切れるわけです。
  166. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 非常に何となくわかったようなわからない話でありますが、時間的にも多少たっておりますから、アメリカがベトナム援助に現在までにかなり出している。特に経済援助六億ドル出したけれども、これが昨年はうやむやになったということがアメリカの雑誌にはかなり載っております。このところでグエン・カオ・キ首相が来日したいというような意向が伝えられているわけでありますけれども、おそらくそうなれば、あの現在のベトナムの経済状態ということからみますというと、援助問題が必ず起きてくるだろう、そう考えているわけです。そういうような援助の問題が起きたときに、総理としてはどういうように考えられるか。やはりアメリカが、うやむやに使われているということがはっきり報道されているくらいですから……。その点の考え方を。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 経済援助、あるいは医療援助、そういう言葉があるかもわかりません。過去におきましてもお医者さんが出かけて、そうして医療に従事し、非常に感謝されておる、こういうことは考えられるかと思います。けれども、これはどこまでも人道上の問題、その立場に立っての問題であります。いわゆる軍事的援助ということは、私どもは考えておりません。
  168. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 軍事的援助は、それはお考えにならないのは十分わかりますが、では経済援助ということですね。経済にしぼられてきた。医療援助は確かに人道上からも相当考えてやらなければならぬということはよくわかる。また、経済のほうにしてもかなり行き詰っていることは事実ですけれども、そういう話が起きてきたときに、これは軍事援助の肩がわりになるというようなふうに、日本経済援助をやって、それだけアメリカは、六億ドルも昨年は空費されたとほやいているほどでありますから、その肩がわりをさせられるのじゃないか、そういうような心配はないかということなんです。
  169. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) グエン・カオ・キ首相が来日するということは、目下のところ不確定の状態に置かれております。それと何か物資援助の問題とからませてお考えになるとすれば、これは非常な誤解ではないかと考えます。  経済援助の問題は、東南アジア全般に関して、まさに日本アジアにおける唯一の工業国として大きく責任を持っておるわけであります。それを具体的にどういうふうにやるかということについては、今後いろいろ具体的に研究をしてきめる問題でありますから、さしあたり四月上旬に東南アジア諸国の経済開発の担当責任閣僚が東京に集まりますので、その席上において十分に討議をしたいと考えております。(「答えが違うよ」と呼ぶ者あり)  アメリカの負担を日本に切りかえるというような、そういう考え方ではありません。日本として東南アジアを十分に富まして、繁栄さして、そうして経済の交流をするということがもはや日本立場において、非常に緊切な問題になってきておる。このままに放置いたしますと、日本から出るものは多くて、向こうから入るものは少ない、非常な貿易のアンバランスの状態がますます高じてくるということになりまして、ついには経済断交というような忌まわしい事実が発生するかもしれぬ、みずから墓穴を掘るようなことはしたくない。日本としては政治的にも非常な関係がありますが、経済的にも非常な緊切な関係があって、まさに東南アジアに関しましては、日本はいわゆる南北問題について、第一の非常な責任者になっておる。こういうことから、日本自身の立場においてこれを行なうのであります。
  170. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 外務大臣は、私がこれから後にやろうと思う東南アジア貿易の問題、経済協力の問題について先に答えられておりますが、伺ったのはそうじゃないのです。いわゆるグエン・カオ・キ首相が来たときに、おそらく経済援助の話というものがあのような逼迫した状態なら出るだろう、それに対して応ずるということになれば、これはアメリカの軍事援助が、いま経済援助をやっている、昨年度も六億ドルやったけれども、これがうやむやになったというふうに報道されている。そういう状態なのに、それを今度すりかわってやるということになれば、これは日本としては大きな国損じゃないか。その点についての考え方はどうなのかということなんです。そこに問題がしぼられておりまして、東南アジア全般の問題はこれから後に質問しようと思っていたのですが、お答えだけは先にきたわけですが……。
  171. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 首相みずからそういう経済協力の問題について、こまかな提案をするとも考えられません。のみならず、もうすでにそれ以前に、東南アジアの閣僚会議が開かれるのでありますから、おそらくそういう問題を持ってこられないだろうと思います。
  172. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、インドネシアの貿易の問題です。先ほど経済協力に先へ入りましたからそっちへ移りますが、そのインドネシア向けの輸出代金が、向こうから送ってくるのをストップしたために、輸出保険の取り扱いを停止している。それ以後同国向けの輸出をほとんどストップしておりますけれども、この点の事情について話していただきたい。
  173. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 昨年の末に、インドネシア中央銀行の支払い遅延が起こって、そうして日本の為替銀行から輸出代金の支払いができないという通知を受けたので、その輸出保険に対しての停止をせざるを得ない処置になった、日本の為替銀行からそういう通知があった。いまは輸出保険はついていないわけであります。だからインドネシアに対しての貿易は、保険をつけずにやるよりほかにはないという状態にあるわけであります。したがって、いまはそういう正常な貿易というものは順調にはいってないが、しかし、インドネシアは重要な、われわれとして、アジアの一国でもあるし、インドネシア自身にも政情の安定を待って、国の経済の再建計画を立てることになるだろう、また債権国、たとえばオランダ、西独、フランス、イタリア等もインドネシアの経済には関心を持っておるわけでありますから、日本一国だけで、インドネシアの経済の再建をはかるということはなかなかこれは荷に余るものだ。そういうインドネシアの政情の安定、インドネシア自身の経済再建計画、これともにらみ合わせてわれわれとしてもできるだけの経済協力は将来すべきものである、現在はそういう状態に貿易はなっているということでございます。
  174. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのために、現在はまあ大体、綿にしても、綿花にしても、そのような保険がストップしているということで業界にとってはかなりの金利負担がふえている。一日も早く再開をしろということを言われているわけですが、この貿易についての考え方ですが、イギリスであるとか西ドイツ、こういうところと日本の行き方は非常に違う。で、現地の空気を見てみましても、西ドイツにも同じようにインドネシアからの支払いがとまっている。ところが、いわゆる保険契約を、輸出保険をストップするということを二カ月なり半年なりというように日本より長く延ばしているわけです。ストップしない。したがって、金の送金がなくても、支払いが向こうからされなくても変わらずに西ドイツからはインドネシアに輸出されている。日本の国だけが一番関係が濃いのにすぐストップをした。これで非常な、不満といいますか、不安というものがある。現地の公館等についても、この問題についてはかなり頭を悩まして、日本のほうへも、本国へかなり意見を言われているようでありますけれども、その点のいわゆる経済協力のベースの問題、あるいは特に日本関係の強い東南アジアについては輸出保険契約の免責の解除といいますか、そういうような条項というものを強める必要があるのではないか、これは改正する必要があると思のですが、その点について大臣、どう思いますか。
  175. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ほかの国も全部やはり輸出保険はとまっているわけであります、日本だけでない。だからこの問題については、インドネシアからも使節団が日本に来るというような新聞情報もあります。インドネシア自身としても将来の経済再建についていろいろ考えている。国際的にもインドネシアに関心を持つ国が何かやはりしょうという動きもあるわけであります。いまは日本だけがとめているわけではない。全部そういう状態に置かれているわけでございます。
  176. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 じゃ、現実に現在西ドイツはとまっていないのでしょう。
  177. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 西ドイツも現在とまっているという情報をいただいております。日本の時期が早かったということではございますが、これはディフォールトの起こった順にとまってまいります。日本があるいは一番先であったかもしれません。正確な日付は記憶いたしておりません。
  178. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その貿易の問題でだいぶ日本の業者は困っているわけでありますけれども、これについて貿易再開の見通しですね、先ほどは政情が安定したということを一つの条件にされているようでありますけれども、さらにそれを急いでいく必要があるのではないか。日本の国を、先ほどは東南アジアの問題について外務大臣から話がありましたけれども、確かにどこの国もわが国をたよりにしている。一番縁が深いわけであります。日本に対しての期待が西欧諸国に対する期待よりも大きい。口を開くというとアジア日本であるということを、また、アジア外交の中心であるということを言われるわけでありますけれども、その点について努力が不足しているのじゃないか。現実にこの問題が起きてから、通産省としてはだれかやりましたですか、向こうへ。
  179. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 外務省からは直ちに経済局長などがまいりまして、非常に関心を持っておるわけでありますが、どうしても第一番にインドネシア自身が今後どういうような、経済を立て直していくのに対してインドネシア自身がどういう考え方を持っておるかということは、重大なこれは出発点になっております。これは何らかの使節団の派遣などの話もありますから、やがてはそういうことになる。それから、日本だけでインドネシアの経済のてこ入れをするということには、あまりにもインドネシアの経済状態というものは、相当経済協力ということでなければ立ち直りにくいのではないかというふうに見ておる。どうしてもこれはインドネシアに対していろいろな貿易関係、あるいはまた債権関係を持っておる国々の国際協力の面も要るのではないか、こういうことで、ただ漫然と放置しておるのではなくして、非常な関係を持ちながらインドネシアの経済協力に対してできるだけのことをしたいというかまえが政府のかまえであります。しかし、いま、いつからやるのかということは、これはやはり相手もあることで、ここでは申しげ上られない。貿易業者に対しては、困るものに対してはストップするまでの輸出保険は取れるわけですから、そういうことでできるだけ早く、しかし、日にちはいつだとは言えないけれども、できるだけ早くインドネシアとの貿易を正常化するようにしたいということで、われわれとしても努力をしておるわけであります。
  180. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ここで総理に伺いたいのですが、いまの問題は、私は一つの例として取り上げたわけですけれども、アジアの貿易とか経済協力と、こういう問題についての考え方というものは非常にわが国としてはへたではないかと私感じるのです。現実に、行ってみましても、ほしがっているゴム汁受けのあきかんのための薄板、これは量なんかは大したことないのでありますけれども、そういうものについてもストップされていま困っている、あるいはタイについても、農産物についてもっと買ってほしいという声がある。非常な日本からの輸入超過になっている。今度はインドの問題についても、食糧不足がかなりひどい、これに対して今回多少やるようになっておりますが、アメリカがやるからやるというようなかっこうにも見える。そういうようになっていくのではなくて、日本が先に、私はアジアの一員として指導的というとおかしいけれども、そういう立場にあるならば、やるべきではないか。その点についての考え方でありますが、今回も外務大臣がアジアの外交と言っておりながら、まだ一度も回っていない。就任して早々にも回るぐらいの決意というか、熱意というものが必要ではないか。だいぶ長く行っておりませんよ、実際。そういう点についてこのアジア経済協力、その国々との連携についての総理の考え方を伺いたい。
  181. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどほかの大臣もお答えしたと思いますが、この四月にはアジアの諸国の閣僚会議を開こう、こういうことでございます。これなども全然思いつきでこういうことを発案しておるわけではありません。日本アジアの一国であり、先進国として当然果たすべきその役割りを果たしたい、そういう意味から十分話し合ってみよう、こういうことであります。これはもう私が申し上げるまでもなく、いずれの国におきましてもそれぞれの独立した考え方を持っておりますから、他国からいろいろ親切にしてくれましても、ときによけいなお世話だ、こういうような気持ちもございます。こういうような誤解のあるもとでは、なかなか援助も思わしくまいりませんので、そういう意味で話し合いをして、そうして相互理解の上に、お互いに最も望ましい方向、そういう道を見つける、こういうことでございます。いままで大体言われておりますことは、たとえばアジアのハイウエイをつくるとか、あるいはメコン川の開発をするとか、こういうことで、もうすでに数年前からいろいろ手をかけられておりますけれども、そういうものはまだ成果をあげておりません。最近アジア開発銀行の構想が進んで、本店の所在地がきまり、さらにその人選等を続けてまいりますから、そういうような大筋にのっとりまして、そして日本が果たすべき役割りを果たしていきたい、こういうことでありまして、外遊もしていないじゃないか、こういうような御注意もございますが、それらの点につきましては、出先機関を十分使ってまいることでございますが、みずからが出かけるにこしたことはございませんから、そういう意味でもただいまの御注意等も十分参考にいたしたい、かように私は考えております。
  182. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 同じような問題でありますけれども、民間商社の買い付け等を見ましても、たとえばゴムが下がったといえば、いままでマレーシアで買い付けていたのが隣に行ってしまう、まあお互いに敵対になっているようなインドネシアへ行く、インドネシアのほうが上がったといえばマレーシアに安いほうへ民間商社が買い付けに行く。そういうことで両方の国から相互不信というものを日本の国は受けなければならぬ。何もそういう輸入について買い付けの規制をやれというのではございませんけれども、秩序というものはつくる必要があるのじゃないか。その点についてお考えはどうですか。
  183. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまその大所高所に立っての考えは先ほど説明いたしましたそのとおりでございます。そこで、現実の第一次産品の買い付け等の問題にいたしましても、ただいま農産物においては、おそらく一番の競争相手はアメリカだと思います。アメリカよりも品質がよく、そうして価格が安いと、こういうのはなかなか得がたいんじゃないか。ただ、いまお話になりましたゴムというような、これはもう東南アジアの特産でございますから、それはマレーシアからインドネシアに変わる程度のことはございましても、これはアメリカ自身が引き上げるというわけじゃありません。でありますが、ただいま東南アジアに品物を輸出をしていく、同時に、また、第一次産品も買い付けをする、これはまあそれが国益になると、こういう大所高所からの貿易が進行していくわけであります。ことに、また、日本といたしましては、東南アジア諸地域に対しまして多額の賠償も出しておるわけであります。それらの効果が一体どういうようになるかということも十分見きわめをつけなければならないと思います。先ほどのインドネシアの問題にいたしましても、賠償、これがもう実行したもの、同時に、また、賠償を担保にしてのいろいろの輸入計画等でこれなどは一ぱいになっておると思いますが、しかし、これらの効果が十分あがるように、問題は、やはり東南アジアの諸地域が経済的にも独立できるように、そういう援助をすることが必要なんだと思います。先ほど例にとりました農産物にいたしましても、ただいまは競争できないけれども、さらにわれわれが適当な技術を教えるとか、さらにその耕作方法に改善を加えるとか、こういうことをいたしますならば、米自身だって一年に三回もとれるような地域でございますから、これはいまのように米が不足だというようなこともなくなるんじゃないか。こういう点をお互いに話し合ってみて、そうして理解の上でそれらの開発をする。ただいま技術援助をしようとか、あるいは肥料をお使いなさい、あるいは農薬を使え、ただこれだけのことでは相手の国はなかなかよけいなお世話だ、こういう言い方もないわけじゃないと思います。だから、お互いに繁栄の道はどういうようにするかという基本的な話し合いをする、そうしてそれに基づいての必要な技術援助、それが私どもなし得ることではないか、かように思っておるわけであります。でありますから、いまの商社の、右から左に行ったり、そういう事例もございましょうが、そういう抹消的現象にとらわれることなしに政治を遂行していく、それぞれの責任者が大所に立っていかにすべきかということを十分話し合うことが必要ではないか、かように私は思うわけであります。
  184. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、経済問題に移りたいと思いますが、企画庁から出した今月の月例報告の中に、最近の経済動向を見ると、設備投資、消費というものが目立った動きはないけれども、財政支出の増加、輸出の好調、あるいは商品市況が底入れ感を強めた、鉱工業生産の指数、あるいは出荷もふえた、製品の在庫率も低下しているということから、景気はやや明るさが見えるようになった、いわゆる底入れというような、そういう報告がされている。しかし、財政支出の増加とか輸出の好調、あるいは商品市況の活況ということだけで、それだけの材料でもって景気の底入れというふうに見ることができるかどうか、この点は非常に疑問だと思う。その点について伺いたいと思います。
  185. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いまの企画庁での月例報告で申したような点については、お話のとおり、非常に順調でございます。ただ、こうやって大観して見ますればそうでございますけれども、企業別にいろいろ見てまいりますと、なおこれらの影響を非常に受けていない階層のところもございます。それから、たとえば一月の倒産件数は非常に下がったのですが、二月にいくと倒産件数がふえている。そういうようなことで、個々のいろいろな業種、あるいは事業の実態、そういうようなものについて見ますと、まだ完全にそれぞれ立ち直っていないもの、あるいは、いま申し上げたような倒産の件数等も多い、改善していないというのもございますが、しかし、大体いまいいましたような数字的に見ますと、まず一応底入れ感が出てきたと判断しても差しつかえない段階ではないか。ただ、これがこの上とも順当に侵透していくことによりまして、まだ十分なそういう浸透を受けてないところまで浸透していくことを私どもは期待するわけであります。
  186. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 まあ鉱工業生産が大きく伸びたということが一つの理由になっているようでありますけれども、これはいままでが生産調整ということで、かなり低く押えられていた。そういうことから出発したことだと思うのです。稼働率の変化のほうは一体どうなっておりますか。それを見れば、実際問題としてそれほど景気というものが上がっていないというふうに言えると思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  187. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 稼働率については、かねて申し上げておりますように、正確な数字が出てまいりません。しかし、鉱工業生産の指数が上がってまいりますことは、やはり景気が回復しつつある状況でなければ上がってこない。つまり需要が増加してきたということでございますから、当然景気回復の一つの指標として私ども見て差しつかえない、こう思っております。むろん稼働率がいままで六〇%のが七〇%になったからといって、まだ先ほど来の論議のように、デフレギャップというような意味もありますですが、しかし、六〇%がかりに七〇%になったらそれだけ改善をしてきている、こういうことだと思うのです。
  188. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 日銀のほうでは、今回の景気が多少上向いているように見えるのも実勢ではないという判断をしている。それは商品市況がよくなったのも生産調整ということで、いままで供給のほうが押えられてきているその効果があらわれたために市況が活発になった。需要がふえたために市況が活発になったというふうに見えない。だから、現実問題として需要の要因が少ないということになれば、これは景気の回復ということにもならないと思うのですが、私はそういう点で非常に根拠が薄いということをまず申し上げざるを得ない。ただよくなったぞというムードづくりということのために言われたのか、それともこういう面も検討の上で言われているのか。
  189. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げたように、たとえば二月の倒産件数が多いということもわれわれは頭に入れて問題を考えております。たとえば不況に対する対策のためにつり上げをやったというようなことがありましても、その解除が需要促進によって平衡化していけば、それは景気につながっていくわけであります。それがそのままどすんと落ちてしまえば、それは効果が出なかったということになるわけであります。ですから、そういう意味では私ども順調に推移していると思います。また、日銀と企画庁との見方も、そう大きな違いはございません。大体マクロ的には景気が回復しつつある、底入れは終わって回復に向かっている。ただ、ミクロ的に各種の業態を見ていきますと、その中にはまだまだでこぼこがある、そういうことだと思います。
  190. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまマクロの話が出ましたけれども、マクロとミクロの対峙ということが非常に問題になったわけです。前には、先行指標としてミクロは見るべきであるというような話もだいぶ伝わったわけでありますが、現在でいえば、やはり長官としては、ミクロのほうが先行指標と見るのか、あるいはこれはおくれてくるほうの指標と見るのか、その辺によって景気の判断は大きく変わるだろうと思うのです。その点はどう考えますか。
  191. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) やはり景気というものが出てまいりました場合に、自然ミクロのほうの状態が全体としておくれて改善に向かっていく、こういうことだと思います。また、ダウンに行きますときも同じ現象が起こると思います。   〔委員長退席、理事小沢久太郎君着席〕 ですから、見方とすれば若干ずれてくるんじゃないか、こういうことは言えると思います。
  192. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 やはり見通しでありますけれども、一月は経常収支が五千万ドルの赤字を出している。ところが、輸入素原材料の在庫率指数を見るというと、一月になってかなり上がってきています。こうなると、国際収支というものはこれから悪くなるというような、ちょっと一つだけを見て言うことはできませんけれども、その点、これから先の、さっきは輸出も好調であると言っているけれども、そういう面が起きてくるとこれは考えざるを得なくなってくる。その辺の判断は間違いじゃないのですか。
  193. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 輸出は比較的好調だと見ていいと思います。ただ、輸入のほうが若干やはりふえてきております。で、その関係をどうこれから見ていくかということがこれからの問題だと思います。しかし、輸入にいたしましても、そんなに非常に急激にふえてくるという状態には忍ばないんじゃないかと思います。ですから、まず貿易収支の上では困難な状況にはそう入っていないんじゃないか、こう考えております。
  194. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、輸入素原材料の在庫がふえるということは、いずれ好況になればなるほどこれは大きく国際収支を脅すことになる。いまの長官の発言だと、そう響かないのではないかというお話ですが、じゃ輸出に対しての世界景気の見通しというものはそう特別にいいというわけじゃないでしょう。そうなると、国際収支にこれから赤信号がつくということになってこないですか。
  195. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 輸出のほうは、本年まあ世界貿易も昨年よりは伸びが低いだろうということで、昨年の七%伸びに対して六・二%ぐらいに見ております。その中ですから、日本の貿易もやはり低目に見たほうがいいということも言えます。したがって一〇・二%でございましたが、その辺の伸びを見ているわけです。ですから、輸出のほうは相当努力していけるのじゃないかと思います。輸入のほうのいまの原材料の在庫率が減ってくるから、これから大いに景気が出てくれば輸入がふえるだろう、こう言う。最近ではわりに在庫管理が非常によくいっておりますし、それから、貿易の自由化にもなってまいりました。それから、大きな原料等につきましては、自社船と申しますか、たとえば鉱石車用船なら鉱石専用船というようなものの運用、石油ならタンカーというようなものの運用が非常に大きくなっておりますので、必ずしも原材料の在庫が昔のような状態で大きくなくても、それらの事情の変化によって、若干昔のような在庫率でなくても生産にそう影響を与えないでやっていけるだろう。ですから、在庫が若干低いから、景気が出てくれば急に在庫をうんとふやしていかなければならぬ。輸入貿易がふえるかというと、やはりいま申し上げたような状況からして、むろん工業がふえていけば原料がふえることは当然ですが、しかし、それに対する在庫を急激にふやさなければならぬ状況じゃないのじゃないか、こう思っております。
  196. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次いで、物価に移りたいのですが、四十一年度の物価上昇については、たびたびここで五・五%ということを言われてきたわけです。その算出の基準でありますが、ここに大きな問題があるだろう。聞くところによると、四十年度の物価上昇率というものを基礎にして出したと、そうして六・五%ということになったけれども、政策努力を一%見込んで、そうして五・五になった、こういう話でありますが、ことしでさえも大きく見込みがくずれたわけです、今年度。その政策努力の一%というのは一体どうやって出すわけですか、どうしてそういう算定が出たわけですか。
  197. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この一%は、一々の必ずしも積み上げた数字を基礎にして持ってきたわけじゃございません。しかし、今日政府がやっております生鮮食料品の対策のうちで、恒久的な基盤的観点による施策を別にいたしましても、たとえば緊急輸入に対する措置をやっておりますし、あるいは生鮮食料品等の安定価格を維持するような方向も、従来よりもさらに一そう強化して、政府の資金面において補助金等もふやしていく、そういうふうな一連の政策をずっと積み重ねてやってまいります。ですから、私どもはこれらの努力を重ねて、なお今後の諸般の問題につきましても、たとえば消費税を下げる場合には、できるだけそれに対して全額が下がっていくように指導をしていくと、いろいろなものをこまかく積み上げてまいりまして、そうしてわれわれとして一%の結晶をかちとっていきたいと、こういうふうに考えております。
  198. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 結局一%ということは、努力でもってこの程度下げようじゃないかという目の子みたいな勘定で出たということですね。  そこで、これは物価指数、あるいはそのほかの問題になるわけでありますが、この指数の基準を四十年度に改正していきたい、こういう話を聞いております。そういう事実がございますか。
  199. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体総理府の統計局で毎五年度に統計を新たにして、新推計を用いることにしております。今年はちょうど四十年でございますから、いままで全部三十五年を基準にしてやっておりましたから、本年は四十年度の基準数字によって統計の作成をしてまいりますことが適当だと考えて、今後そういう数字を採用していきたい。しかし、これには統計審議会等のちゃんと意見もとってまいりますから、何も政府のほうで都合のいいような数字をとるというのではございません。
  200. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 経済構造も変わってきているから変化さしたい、そういう意向はよくわかりますけれども、いままで五年ごとにやっていたから、今回も物価指数の基準を昭和四十年を一〇〇にしたい、それはどうかと思うのです。というのは、まあいままでの状態、ここのところの五年間ぐらいを見ると、何といっても上がっているのは生鮮食料品関係、それがここのところで四十年度基準ということならば、それから先がいままでの基準で見るのとは大きく見方が違ってくる。いまは政府として国民を欺瞞するというか、そういうようなためにやるのではないということを言われたのですけれども、三十五年基準でもかなり高くなっているわけです。その高くなったところでいろいろ生鮮食料品問題についての対策等も樹立されておるわけです。四十年度がまた一〇〇ということになれば、これが再び問題になるのはまた四、五年先になってしまうというような、そういうことにならざるを得ないのではないか。その点について、物価が安定してるときならば、私は基準の改定はよかろうと思います。いま非常に不安定なんです。そういう不安定なときに改定をするということは、これは考え直したほうがいいんじゃないか、そう思うわけです。その点についてはどうでしょう。
  201. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) このウエートを、ことに物価指数をやっておりますと、ウエートが、生活様式の変化によってたいへん違ってくるものもございます。そういうことでございますから、やはり五年ぐらいに、従来やっておりましたように、変えてまいりますのが私は適当だと思います。しかし、こういうような数字を変化させますときには、やっぱしこの統計審議会等の議を経て十分検討してやりますけれども、しかし、同時に、過去のわれわれ責任をもって実は三十五年の数字でもってこれから何%上がったからどうということを言っているのですから、それの御参考になるようには、過去の数字的な統計ですね、それもある期間は併用していかなければならぬと思います、この点は。半年といいますか、あるいは三カ月といいますか、両方併用している期間がある程度あると思うのであります。それで御了解が得られるものだと、私は思います。
  202. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この物価の問題で、今度は指数の基準をいじるとなれば、いま問題になっているの