運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-03-07 第51回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月七日(月曜日)    午前十時四十六分開会     —————————————    委員異動  二月二十三日     辞任         補欠選任      吉武 恵市君     河野 謙三君      瀬谷 英行君     田中寿美子君      中村 波男君     亀田 得治君      木村美智男君     木村禧八郎君      岩間 正男君     春日 正一君      山高しげり君     市川 房枝君  三月四日     辞任         補欠選任      河野謙三君      吉武 恵市君      塩見俊二君      迫水 久常君  三月七日     辞任         補欠選任      平島 敏夫君     塩見 俊二君      藤田藤太郎君     加瀬  完君      小平 芳平君     浅井  亨君   出席者は左のとおり。     委員長         石原幹市郎君     理 事                 小沢久太郎君                 大谷藤之助君                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 赤間 文三君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 大谷 贇雄君                 梶原 茂嘉君                 北畠 教真君                 草葉 隆圓君                 小山邦太郎君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 西郷吉之助君                 櫻井 志郎君                 迫水 久常君                 塩見 俊二君                 杉原 荒太君                 増原 恵吉君                 松野 孝一君                 吉武 恵市君                 稲葉 誠一君                 加瀬  完君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 佐多 忠隆君                 鈴木  強君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 林  虎雄君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 浅井  亨君                 多田 省吾君                 宮崎 正義君                 向井 長年君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        農 林 大 臣  坂田 英一君        通商産業大臣   三木 武夫君        運 輸 大 臣  中村 寅太君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        労 働 大 臣  小平 久雄君        建 設 大 臣  瀬戸山三男君        自 治 大 臣  永山 忠則君        国 務 大 臣  上原 正吉君        国 務 大 臣  福田 篤泰君        国 務 大 臣  藤山愛一郎君        国 務 大 臣  松野 頼三君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        総理府総務副長        官        細田 吉藏君        行政管理庁行政        管理局長     井原 敏之君        防衛庁長官官房        長        海原  治君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁教育局長  宍戸 基男君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        防衛庁装備局長  國井  眞君        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     向坂 正男君        経済企画庁調査        局長       眞島 毅夫君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       星  文七君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局長  谷村  裕君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        農林政務次官   後藤 義隆君        農林大臣官房長  大口 駿一君        農林省農林経済        局長       森本  修君        農林省畜産局長  桧垣徳太郎君        農林省園芸局長  小林 誠一君        食糧庁長官    武田 誠三君        水産庁長官    丹羽雅次郎君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        通商産業省企業        局長       島田 喜仁君        通商産業省重工        業局次長     赤澤 璋一君        中小企業庁長官  山本 重信君        運輸省航空局長  佐藤 光夫君        海上保安庁長官  栃内 一彦君        建設省計画局長  志村 清一君        建設省住宅局長  尚   明君        自治省選挙局長  長野 士郎君        自治省財政局長  柴田  護君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君    参考人        日本銀行総裁   宇佐美 洵君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選の件 ○昭和四十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○公聴会開会承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  二月二十三日、岩間正男君、吉武恵市君、山高しげり君、瀬谷英行君、中村波男君、木村美智男君が辞任され、その補欠として春日正一君、河野謙三君、市川房枝君、田中寿美子君、亀田得治君、木村禧八郎君が選任され、三月四日、河野謙三君、塩見俊二君が辞任され、その補欠として、吉武恵市君、迫水久常君が選任され、本日、小平芳平君が辞任され、その補欠として浅井亨君が選任されました。     —————————————
  3. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、理事辞任の件についておはかりいたします。  鈴木強君から、都合により理事辞任したい旨の申し出がございましたが、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  つきましては、直ちに、その補欠互選を行ないたいと存じます。  互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事亀田得治君を指名いたします。     —————————————
  6. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算。  以上、三案を一括して議題といたします。  先日来、委員長及び理事打合会におきまして、三・案の取り扱いについて協議を行なってまいりましたので、その要旨について御報告いたします。  総括質疑は、本日より開始して七日間といたしました。その質疑総時間は、千十分とし、各党への割り当ては、自由民主党及び社会党はそれぞれ四百分、公明党百二十分、民主社会党、共産党及び第二院クラブはそれぞれ三十分といたしました。  質疑順位は、とりあえず社会党自由民主党社会党自由民主党社会党自由民主党公明党社会党自由民主党社会党自由民主党の順とし、以後の順位については、後刻協議することにいたしました。  以上、御報告いたしましたとおり、取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  8. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、公聴会開会承認要求に関する件についておはかりいたします。  公聴会開会は、来たる三月十七日、十八日の両日にわたり行なうこととし、公聴会の問題、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 御異議ないと認め、公聴会開会承認要求書を議長に提出することといたします。     —————————————
  10. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  本日、三案審査のため、宇佐美日本銀行総裁出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  12. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) それでは、これより三案の総括質疑に入ります。佐多忠隆君。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一昨日は、またまた大きな航空機事故が起こりまして、日本国民は非常なショックを受けております。私は日本社会党を代表して、去る五日、富士山麓で起こったイギリスのB ○AC航空機事故による百二十四名の遭難者に対して、心から冥福を祈るとともに、遺族の方々に深甚な弔意を表します。  過ぐる二月四日には、全日空ボーイング727型機が東京湾墜落をしました。一カ月たって三月四日には、カナダ航空ダグラスDC8型が羽田空港で大事故を起こし、その翌日には、いま申し上げましたBOAC飛行機墜落する等、世界的にも全く類のないような三大事故直面をいたしました。この三たびの大事故直面をして、佐藤総理はどんな心境でおられるのか、その心境をまず聞きたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 全日空事故といい、カナダ航空事故といい、また宙士山麓で起こりました今回のBOAC事故といい、まことに残念なことをいたしたと、かように思います。もちろん遭難された方々には心から御冥福をお祈りすると同時に、また遺家族、同時にまたいろいろな方等に対しまして、深甚なる弔意を表したいと思います。  これらの事故につきまして、いろいろ目下原因を探究中でございますので、原因のほどはわかりませんが、私、どうもどこかに無理があるのではないか。航空事故といい、あるいはその他交通事故、これは鉄道の場合も同様であります。また、自動車事故におきましても同様なことが言えるのであります。無理はとにかく禁物だ、十二分に安全度を確認すること、これが必要ではないだろうかと、かように実は心から考えておるのであります。  私が申し上げるまでもなく、最近科学技術が非常に進歩いたしまして、そうしてその科学技術にたよること、また、科学的なもの、技術的なもの、その権威を認めることはもちろんでありますが、しかし、その権威を認めるのが人間であります。どうしても科学技術、その技術だけですべてが終わるわけではない。人間科学技術の確度を確認する、こういう立場にあるように思います。そこで、各人が一そう注意をいたしまして、また、交通事故に対しても、安全度というものに対しては、これはもう一切無理をしないし、また十二分に安全確保、これに徹しないと、かようなことが起こるのだと、かように私は思って、まことに遺憾に思っております。またいろいろ設備上の問題につきましても種々工夫すべき点があるだろうと思います。もともと民間航空国際局間航空では、一つ基準が設けられておりますけれども、その基準をととのえているから、これでだいじょうぶだというものではないと、かように思っておるのであります。現状におきましては、もちろんその基準に沿わないもの、これは論外でありますが、基準に沿っておりましても、さらにただいま申し上げるように、安全第一で工夫し、努力し、そうしてこの種の事故が起こらないようにいたしたいものだと、かように念願しております。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ただいま総理から安全第一を強調されたのでありますが、運輸大臣にお聞きしたいと思いますが、今度の三つの事故に関連をして、羽田の空港管制塔の運営にミスはなかったのかどうか。それから、東京航空気象台の処置が万全であったのかどうか。したがってまた、これら全部をひっくるめまして、航空管制が一体十全であるのかどうか。航空行政について、この際、根本的に再検討をして対策を出さなければならないんじゃないか、こういうふうに考えるのでありますが、これらの点について、運輸大臣は、どういうふうにお考えになっておりますか。
  16. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) お答えいたしますが、お答えいたします前に、カナダ太平洋航空会社ダグラス機事故状態を簡単に報告しておきます。  カナダ太平洋航空会社所属ダグラスDC8型機の事故について、簡単に御報告申し上げます。  カナダ太平洋航空会社所属ダグラスDC8型機は、同社の四〇二便として機一長マレクニール外九名が乗り組み、旅客六十二名を乗せて、昭和四十一令三月四日十六時十四分  これは東京時間でございます——香港を離陸し、東京に向け飛行しました。同機は十九時十六分、高度一万四千フィートで木更津の待機経路に入って、東京国際空港気象状態の回復を待って、その間、一時は台北に引き返そうとしたが、結局二十時五分、レーダーによる精密進入が可能な気象状態になったので、着陸進入のための降下を開始した。二十時十五分ころ、同機は指定された滑走路へ一マイルの距離に達した。それまでの同機の方位及び角度は正常であったが、四分の三マイル以降、降下角度が十ないし二十フィート低過ぎたので、管制官はその旨を注意した。その後も低過ぎる降下を続行したので、再度その旨を注意した。その直後、同機は急角度降下し、滑走路末端手前の岸壁に衝突して炎上、大破した。  政府は直ちに運輸省運輸大臣を長とするカナダ太平洋航空機事故対策連絡本部を設け、警察、消防庁、海上保安庁航空局、その他関係機関は協力して消火及び遭難者の救出に当たるとともに、運輸省担当官を現地に派遣して事故調査を開始した。搭乗者中六十四名が死亡、八名が負傷いたしました。  ついでに、一昨日起こりました英国海外航空会社ボーイング707型機の事故についても御報告いたします。  英国海外航空会社所属ボーイング707型機は、同社の九一一便として、機長ドブソン以下十一名が乗り組み、旅客百十三名を乗せて、昭和四十一年三月五日十三時五十八分——東京時間でごさいますが——東京国際空港を離陸し、香港に向け飛行した。該機は、当初計器飛行方式による飛行計画を提出していたが、東京国際空港離陸前に、富士レベルインターセクション経由、串本まで有視界による飛行を行なう旨、同空港管制塔に対して要求し、有視界飛行で離陸した。  十四時十五分ごろ富士山南南東の二合目付近太郎坊の南四一キロメートルの地点において炎上墜落中の該機が目撃され、十五時五十分、捜索中の自衛隊員から自衛隊富士学校当直司令に対して、激突大破した該機を発見した旨の報告があり、該機事故が確認されました。  捜索救難活動は、十四時二十分ごろから始められ、陸上自衛隊富士学校隊員及び野営中の第一師団総数六百三十六名、静岡県警本部長以下二百五名並びに地元消防団員多数が現場に出動した。  現場状況は、太郎坊気象観測所から西方百メートル付近該機の本体があり、西方七百メートル付近にエンジン、南東、五十メートル付近に尾翼らしきものが発見され、遺体は半径四百メートルにわたり散乱していた。同日中に遺体百十四体(残り十体)を収容し、引き続き徹夜で作業を進め、六日五時三十分には、救難隊を二千百四十四名に増強し、十二時五十分に全遺体を収容した。収容した遺体は、大乗寺及び善竜寺の二寺院に安置し、検屍を行なっているが、五体満足なものはほとんどない状況である。  なお、遺体保存措置に関し、英大使館米大使館の了解を得て、米軍立川基地内にある冷暗所へ遺体を安置することとしているが、これについては該社のグスリー会長来日後に協議を行ない、その結果を待って具体的に移送を決定することとなっている。  政府は、事故発生後、直ちに福井運輸政務次官、古屋総理府総務副長官及び佐藤運輸省航空局長事故現場視察のため急派するとともに、運輸省航空局係官四名を現場に派遣し、事故原因調査を開始した。他方、三月四日、運輸省に設置したカナダ太平洋航空機事故対策連絡本部カナダ太平洋航空機及びBOAC機事故対策連絡本部と改組し、その第一回会議を三月五日十九時三十分、第二回会議を三月六日十六時三十分に開催し、それぞれ万全の措置を手配いたしました。  これが今回の事故状態でございますが、ただいま佐多委員の御質問のありました航空管制の実情でございますが、これにつきましては、大体規定されております条件は一応そろえておりまして、航空安全の体制は整っておるのでございます。  それから、気象の問題でございますが、これは航空協定の中にもあります。各国から、協定条件でございますが、必ず事前に正確な気象状況をそれぞれ機長報告せなければならぬことになっております。一昨日起こりました英国飛行機長に対しましては、気象庁から午前十時に、きわめて詳細な気象状況、これを書類で提出いたしております。機長はその報告気象状況を見て、あのときのきわめて重大な気象状況であるということは、十分事前に了知されておるものと考えております。  しかし、全日空事故カナダ英国機と、こう引き続いて起こりました事故等考えまして、佐多委員が仰せられますように、管制気象、その他航空政策全般に、この機会に再検討を加えまして、絶対に安全につながるすべての設備、諸施策を施したい、かように考えておるものでございます。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 大事な問題でありますので、二つの点につきまして関連して総理並びに運輸大臣にお尋ねをいたしておきたいと思います。  安全航空という立場から考えますと、いろんな要素が完全にいくことが大事だと思います。たとえば、パイロットの訓練の問題、あるいは飛行機自体の設計などの問題等もまず重要なことであります。しかし、政府として最も考えなきゃならぬのは、やはり気象関係あるいは飛行場整備、そういったような点ではなかろうかと思います。そういう立場から、あとの二点につきまして忌憚のないひとつ御意見をこの際承っておきたいわけであります。  その第一は、気象条件関係です。私たちが、これらの事故がありまして、そうして新聞の記事なり、あるいはテレビの放送なり、いろんなものを専門家の諸君からただ聞いて判断するわけでありますが、どうも日本の現在の航空気象のとらえ方、おそいのではないかということが一つ。  それからもう一つ、とらえた気象状態飛行機連絡をするという点が、厳格性を欠いているんじゃないかという気がするわけであります。たとい伝えたといたしましても、その伝え方に幅があったり、何か弱さがあるのではないか、とらえる時点がおそいのと、その伝え方に弱さがあるというふうに、しろうとながら感ずるわけであります。なぜかといいますと、カナダ航空の場合におきましても、ほかの飛行機は同時点においては全部羽田空港を避けたということが実際の状態としてあるわけです。遭難機だけがこの飛行場にやってきた。いや、そのときには若干よくなったのだといったような説明等がありますが、その辺に非常に厳格性を欠いているものが、どうも体制の中にあるような気がいたします。あるいは一昨日のB ○ACの場合におきましても、同時点においては、ほかの飛行機は全部富士山の近くは避けていたということが現に言われております。実際もそうなんでしょう。だからそういうところを見ますると、どうもその辺にゆるみがあるといいますか、あるいは人の配置等からして、もう、もともと欠陥があるのかわかりませんが、やはりそこに一つの大きな問題点があるように思います。運輸大臣報告を聞いておりますと、まあともかく欠点なくそのつど適当に処理されておるようでありますが、私は、まあそういう文書で関係者から報告を求めるというと、えてして、何ら欠点のないようなことが報告されがちです。しかし、どうもいろんな、この新聞なり報道を聞いておりまして、私たちは、はっきりといま申し上げた点についての欠陥を感ずるわけなんですが、総理大臣の率直なひとつ御意見を承りたい。やはり内輪のものをかばいたいとか、そういったようなことじゃなしに、私自身はいろんなものを見て、その点について非常に感じておる一人であります。  それから第二点は、総理大臣は、こういう事故が起きますと、さっそく運輸大臣を呼ばれて、そうして飛行場整備等についても急ぐようにいろいろ指示をされたことは新聞で拝見をいたしております。しかし、問題は、そういう整備をするにいたしましても、なかなか、いろいろ現に問題があるわけですね。そう簡単にいかない点もある。ところが現状では、あしたまた何らかの事故が起こるかもしれぬというふうな心配をわれわれに与えておるわけなんです。そういうものの整備を待つわけにいかないわけなんですね。整備整備として一方では進めなければならぬでしょうが、いまどうするのかということについては、総理大臣から大臣に指示されたことだけでは、私ははっきりしておらないと思います。そういう点についてどうお考えなのか。私が端的に一点考えておることは、日本にはたくさんの軍用飛行場米軍によって設置され、使われておるわけですね。あるいは横田とか、厚木とか、りっぱな飛行場が多々あるわけなんです。で、緊急必要な場合には、民間機にそれを開放するということを、私はいまの事態から見て当然な措置ではないかと思うのですね。そういう点について、これは真剣に御検討される気持ちがあるかどうか、これを総理にひとつ根本的な問題として承りたいわけであります。  以上二点、総理並びに運輸大臣にお尋ねをいたします。
  18. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 私から最初お答えいたしますが、航空管制の点でございますが、これはこの間、カナダの場合も御承知のように、ほとんどの飛行機管制報告によりまして羽田を避けたのでありますけれども、カナダのほうも一応台北に待避しようという態勢をとったのでございますが、その後気象状況が急に変わりましたので、それを一般に流しまして、機長の判断によって羽田におりるということをきめた。そういうことで、私のほうの管制上のまあ手落ちというものは、私はないものと、かように考えておるわけであります。  さらに第二点の、気象の問題でございますが、これは私も実は気象の流し方とか、あるいは通報が完全じゃないのじゃないかというような心配がございましたので、気象長官を呼んでよく調べまして、初めて実情を知ったのでありますが、事故の起こります日の午前十時に、きわめてこれは詳細な気象現象等の図面、図解されたもの、それから飛行機の飛びますコース等についての、これはほんとうにこれだけのものが提出されておれば、これによって判断を誤ったとすれば、それはやはり機長の判断に原因があるなというくらいの完備したものを午前十時に出しておるのでございまして、それによっての判断は、これはまあ機長の判断に待つよりほかにないのでありますが、あのときも、やはり有視界飛行に切りかえましたのも、出発直前に機長の意向によってかえたものでありますが、私は現在の気象情報の通報のしかた、形というものは、非常にもうあれより以上のものは私はできない、かように考えるくらい整備したものを午前十時に手渡しておるような実情でございます。  それから軍用飛行場の点でございますが、これは協定にはございませんが、緊急の場合には早急着陸できるようにちゃんとなっておるのでございます。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま運輸大臣がお答えいたしたとおり、ただいまのたてまえでは、航空管制、これに間違いはないと思います。また、気象通報等におきましても、その時期も十分考えられておった、かように思います。しかし、私は、どうも根本のたてまえとして、いわゆる管制官が指図ができない。一応これだけのことを報告したら、それから先はパイロットの権限で、自分の考え方できめる、こういうところに実は一つ問題があるのではないだろうか、かように思います。こういうことは、いまもなかなかやりにくいこともございますけれども、こう事故が次々に起こるとなりますと、基本的に安全度を確立するためにも、こういう点はもう少し積極的であっていいんじゃないか。航空管制官に権威を持たしてもいいのではないか、かように私は思う。まず第一点はひとつさような点を考えます。  それからもう一つは、計器飛行、これはもう計器飛行が一番たよりになるのでありますから、いまの有視界飛行というものについても、これは限度があるべきじゃないか。ただいま、管制官自身が、こういう点については、これはもうパイロットにまかすという、そういうところに問題が起きているように思いますので、二回とも同じような事故が起きた、それから見ますと、やっぱりここらにも、もっと科学にもたよってしかるべきじゃないか、この計器飛行というものを考えていいんじゃないか、かように私は思います。  それから、まあ緊急避難の問題は、ただいまお答えをいたしましたから、これは飛行場として一切使用しない、借さない、こういうものではございません。しかし、それより、その前に、やはり現在の飛行場整備について、私どもさらに力をいたさなければならないのではないか。これには政府の決意もありますが、国民の協力をどうしても得なければならない。亀田君は関西の伊丹飛行場をずいぶんお使いになると思いますが、ただいま重要なる使命を持ち、その地位も高まってきた伊丹の国際空港、これは地上設備としては、私どもどうも十分だとは思いません。その広さにおきましてももっと広くなければ、非常な窮屈な思いをしてただいま使っておるようであります。そういう意味では、どうしても国民の協力を得まして、そうしてりっぱな空港整備するということが望ましいと思います。  また、羽田空港自身につきましても、将来の航空機の発達、それに相応する設備を必要とすること、また海上等でいろいろ気流あるいはガスがかかるとか、こういうような点も考えまして、国際空港として望ましいような、そういう場所をやはり考えていかなきゃならない、かように思いますので、第二空港の設置について、さらに積極的に取り組まなければならないと思います。もちろん、こういう事柄は、政府の決意も必要でありますけれども、もっと国民各位の、各界の御協力を得なければならないものだ、かように思います。そういう意味で、ただいま運輸省運輸大臣と、事故が起きた後でございますけれども、そういう点をいろいろ注意をいたしまして、万一そういう点で非常に不安を感ずるならば、そういう飛行機の離着について、やはり禁止ぐらいの考え方で臨まなければいけないのじゃないか。そういうところで、どうも無理な状態であることはわかっていますが、みんな注意すれば何とかなりますというような、そういう考え方では、どうも航空の安全を確保するわけにはいかぬ、かように実は思いまして、事務当局並びに運輸大臣等ともいろいろ相談をしているところでございます。  ただいまのお尋ねになりましたことは、それぞれ最も大事な点でございますので、そういう意味で十分御意見のありました点を今後の運営上の参考にしたい、かように私考えます。
  20. 亀田得治

  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申しましたように、緊急の場合にはこの軍あるいは米軍飛行場等の使用はできる、かように考えております。これはもう緊急避難の場合はどういうことでもできる、こういうことでございます。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 もう一度お尋ねしておきます。緊急の場合には米軍飛行場に結局まあおりてよろしいと、こういう意味のようでございますが、そういう点をこれはちゃんとはっきりパイロットに知らしてあるわけでしょうか、はっきりと。もっと具体的に言えば、どういう場合にはこうだというふうな具体的なことが知らされておりませんと、実際上なかなかうまくいかないというふうに思われるわけであります。たとえばこのカナダ航空の場合でも、台北に一時引き返そうとした、こういうことなんですね。台北でなくてもっと近くで間に合いそうだということになれば、台北は遠過ぎるから、近くにあるのならそちらへ行こうと、その近くがないから、じゃあ無理してでもひとつ羽田へおりようと、幸い何かちょっとやわらいだようだからというやはり気持ちが主観的におそらく働いているのじゃないかと思うのですね。だから、そういう場合に、パイロットがちゃんと日本米軍飛行場等はそういうふうに開放されておるということがわかっておれば、あるいはそういう道をもう少し慎重に選んだかもしれないと思うのです。だから、その点について、これは抽象的じゃなしに、相当はっきりと、ちゃんと日本政府米軍側で具体的に取りきめをして、差しつかえない程度にちゃんと専門家の間ではわかっておるということにしてありませんと、私はうまくいかないと思うのです。その辺は一体実際にはどうなっておるのか、差しつかえない程度に御説明願いたい。  それからもう一つは、総理はいま、パイロットと管制官関係のことにつきまして、管制官の指示よりもパイロットの判断が優先するようになっておる、この制度について若干疑問を表明されました。私もそれは、その点は全くそのとおりだと思うのです。パイロットのほうは何といったってこれは商業機のパイロットであるわけでして、どうしてもお客さんの意向なりいろんなことにやはり左右されないとも限らない。管制官のほうは、これはもうきちんと科学的な立場から処理するわけでありますから、何としても、そういうそのどちらの判断が優先するかということについては、これはもう制度的にも逆にはっきりすべきだと思うのです。その点について、これは担当は運輸大臣のことだと思いますが、私はそういうことはもう飛行場整備とかなんとかじゃなしにすぐにでもできることなんですから着手してもらいたいと思うのですが、どうなんでしょうか。国際的な慣例等もあって急にはいかないのかどうか。いかぬのならいかぬで、そういう問題を持ち出すとかなんとか、いろいろ私はやり方があろうと思うのです。根本的に私は、科学と個人の主観的な判断、どちらが優劣するかと、そんなわかり切った問題について制度が逆になっているということは、これは私はふに落ちないと思う。そういう点についての、これは大臣の判断をはっきりここで示してもらいたい。
  23. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 最初の質問に対しましては、政府委員から詳細に御説明させますが、いまのパイロットと管制官との関連でございますが、これはいま亀田委員の仰せられるような点もよくわかりますが、パイロットのやはり判断というものも、これは飛ぶ本人の判断がきわめてやはり気持ちの上でも大切なようなときでないと問題も起こりませんので、管制官との権限の問題、これは国際的な問題等もあると思いますし、国際的に共通した課題でございますので、これも政府委員から答えさせます。
  24. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君)航空機が運航します場合に、気象条件その他で当該飛行場を使用できない場合には、代替飛行場を選ぶわけでございますが、国際的にわが国において規定しております代替飛行場は、たとえば羽田の近くには名古屋、大阪、あるいは北の方には、三沢、千歳、それから板付等があるわけでございます。現に今回の場合におきましても、新聞等で御承知のように、板付等の代替飛行場を使用して着陸した例が相当あるわけでございます。ただ、先ほど来御説明申し上げておりますように、燃料事情その他でどうしてもそこまで行くことができないというような緊急事態の場合には、現に東京周辺の軍用飛行場を利用した例が、従来御承知のように、あるわけでございます。  次に気象状態につきましては、これも国際的にきめた基準に従いまして最低気象条件というものをきめておりまして、現実に羽田においてはこの気象状態に従ってそれぞれ航空機に通知をし、必要がある場合には、その気象条件以下の場合には、管制の指示において着陸を認めないということが航空法上可能でございます。
  25. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) この際、委員異動について御報告いたします。ただいま藤田藤太郎君が辞任され、その補欠として加瀬完君が選任されました。     —————————————
  26. 加瀬完

    加瀬完君 関連。このたびの飛行機事故は、富里空港整備すれば直ちに解決するような政府の見解がたびたび示されておるわけでございますが、免田委員も御指摘のように、空港の安全性は気象条件、あるいは地質、地盤の条件ということが大切な要件になると思いますが、では富里の気象あるいは地質の調査をいつどういう機関で行なっておりますか。行なっておるとすれば、富里の恒常風はどういうものですか。それから富里の地質はCBR値幾らでございますか。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 運輸大臣がお答えしたからいいかと思いますが、これは航空審議会で、いろいろ将来の航空機の発達した場合に超音速の航空機の発着に適当なものはどこだろうか、こういうことで、長いこと航空審議会で検討いたしたのでございます。そうして、ただいまの候補地として、あるいは富里、あるいは霞が浦、こういうものが候補にのぼっておるのであります。そういうところでございますので、ただいままだ、内閣は最終的に決定した、こういう段階ではございませんけれども、どうも霞が浦を調査した結果は、富里のほうが諸条件が整っている、こういうことで、まずただいまのところは富里以外には考えられない、かような状態でございます。その詳細等につきましては、また適当なときにお話を申し上げる機会があろうかと思います。一応ただいま申し上げますような状況でございます。
  28. 加瀬完

    加瀬完君 質問に答えておりませんから、質問に答えてください。(「運輸大臣どうした」と呼ぶ者あり)
  29. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 運輸大臣は、いま聞いてもらっておりますが、きょう航空管制官を集めて緊急の会議をやっておるということを午前の理事会でちょっとお話がありましたので、たぶんそうじゃないかと思うんでありますが、いま調べてもらっております。航空局長の何ですか、答弁でどうでしょうか、加瀬委員
  30. 加瀬完

    加瀬完君 航空局長でもいいです。調べていないことは答えられないのだから、答えなさい、調べてあれば。
  31. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 新東京国際空港の候補地の決定につきましては、総理からお話がございましたように、航空審議会の位置決定、候補地の決定がございましたので、その後具体的に該地の航空交通管制関係気象それから土質その他の調査をいたしております。
  32. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 加瀬委員に申し上げますが、後刻適当な機会に運輸大臣がお見えになったときにあなたの御質問にお答えすることにして、続行したいと思いますが、いかがですか。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 安全性ということの上において気象なり地盤関係が非常に大切だということは、これはどなたも認めざるを得ない。ところが、富里の第二空港を急げばこの問題の安全性の確保はできるという前提で話が進んでおるようでございます。地盤関係は何も調査していない。気象関係一つ調査していない。かりに航空審議会がそういう答申をしたとしても、政府とすれば当然そういう気象条件がどうなっている、地質関係がどうなっているかという調査をすべきでしょう。しかも、あなた方のほうでは、いままでは恒常風は、東南風だと言っておるが、東南風じゃございませんよ。十一、十二、一、二は、これは北西風ですよ。四、五、六は南西風ですよ。七月は北東風ですよ。三、十は北東または北西の、しかも突風の多い風ですよ。それから八、九だけが南東または南、こういうまるで一応恒常風は南東だということに設計をされた設計図はゼロに返してやらなければ、やり直さなければならないというような状況でしょう。あなた方のほうは現地の観測所があるのに、その観測所のデータをとらないで、はるか離れているところの観測所の銚子と布佐と千葉の観測所の類推で恒常風といういいかげんなことを言っている。私は、関連質問ですから長くは申し上げませんが、しかもCBRは、これは建設省が御存じの二ないし三です。道路の建設にもたえられないような脆弱な関東ローム層ですよ。こういう点を十二分に調査をした上で候補地に適か不適かということをきめてもらわなければならないと思いますが、その点は総理いかがですか。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 加瀬君は地元でもございますので、いろいろ詳しいようでございますが、ただいまのような諸条件を勘案しなければ最終決定はいたしません。
  35. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと提案が一つ。私のは質問でない、提案をさしていただきます。  今度の事故等を見まして感じることは、国内の過当競争もさることながら、国際的にもそういう面が多々あると思います。サービスの過剰、過当競争。だから生命の尊重という点で、科学にも限界があるので、日本がイニシアチブをとって、確かに国際航空に関する一つの機関があるわけです。それをすみやかに会議を持てるようにして、日本のイニシアチブのもとに、いま申し上げた生命の尊重という立場一つの新たなる国際会議の議題にして慎重な検討をされてはどうか。いまの過当競争時代、国際航空における過当競争時代の一つ問題点として提案をしたいと思います。御見解を承りたい。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国内航空におきましても、過当競争ということはしばしば言われております。国際におきましても、現状は確かにただいま言われるような過当競争になっておると、かように思います。適当な機会に、ただいまの提案をどういうような形で持ち出すか、十分検討してみたいと思います。
  37. 鈴木強

    鈴木強君 委員長……。
  38. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 北村君から手があがっているようです。北村君。
  39. 北村暢

    ○北村暢君 先ほども触れておるんですが、航空機の性能が、非常にスピードの時代になってまいりまして、これを扱うのに人間の能力ではなかなか把握しにくい。特に離着陸等については、これは操縦士の目測と勘にたよっている、こういうようなことが指摘されております。これが、完全な自動着陸装置というようなものの開発というのが、経済的に見て可能なのかどうなのかという点、それから、民間機の気圧高度計——民間機は気圧筒度計というものを使っておるが、これを電波高度計にかえたらどうかというような意見が出ておるのであります。で、こういうような点についての、一体そういうことがすでに指摘されているのに、なぜ電波高度計というようなものが使われていないのか。民間だけがこの気圧高度計を使っておるということが言われているんですが、そこら辺のところの技術的な問題について一体どのように考えておられるのか。こういう点が、いま羽生委員の指摘されたように、この点については日本だけがこれをやってもどうにもならない問題でございます。したがって、この国際的に規格なり技術なりというものについて検討をされなければならない問題であるが、一体こういう問題について、従来安全性、航空の安全性というものについてどれだけ真剣にやってきたかということに疑問を持たざるを得ませんので、この点についてひとつ具体的にお答えをいただきたい。
  40. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 御質問の完全自動化でございますが、お話しのように、英国等がその気象条件等を勘案してすでに開発を進め実験段階にいっておる状態でございます。しかしながら、まだ世界各国においてこれを実用に供する状態には至っておらないわけでございますが、この完全自動化については、われわれとしてさらにその検討を進める必要があると考えておるわけでございます。ただ、何といたしましても、かりに完全自動化をいたしましても、その着陸につきましては、万一の場合に計器の異常その他がございますので、やはり最終的な着陸等の場合には完全に操縦技術をマスターする必要があるわけでございまして、これを併用するというたてまえで、なおこの完全自動化のほうの検討を進めておるという段階でございます。それから電波高度計でございますが、これの非常に有用なものであるということはすでに承知されておりますが、まだ実は完全に開発されて実用に供し得る段階にありませんことと、これはやはり完全自動化と一連のものとして使用されるという関係でございますので、現在あわせて実験を進められておる、これを今後状態に応じて取り入れることを考えておるという状態にあるわけでございます。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単に一つだけ。先ほど羽生委員がちょっと提案されましたから簡単に申しますが、先ほど総理は、これからはああいう災害を起こさないためには安全性第一と言われましたが、しかし安全性と採算性との関係が問題ではないかと思うのです。営利会社が運営しているのでありますから、どうしても採算との関係が出てくると思うんですね。これがいわゆる過当競争ということになる。今後いろいろな面で飛行場関係、あるいは設計とかあるいはパイロットの技術関係、いろいろ検討されると思うのですが、その中で、今度のああいう事故で一番全体に共通している面は、いわゆるやはり過当競争、採算の面がこれは一番共通した重大な問題だと思う。これは総理が適当の国際会議のときにはかってみるなんという、そういう問題じゃないと思うのです。そんなのんきなこと言っていられないと思う。これは共通した一番基本的な面だと思うのです。この点を今後もっと掘り下げて——安全性と採算性の問題ですよ、これをもっと基本的に突っ込んで考えて、至急対策を施す必要があると思うんですね。この点についての見解を伺います。
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、安全性と採算性という、たいへん業界に理解のあるような言い方をされましたが、私は、この種の尊い生命を預かる事業としては安全第一に考えるべきだ、採算性がとれなければそういう事業は成り立たない、そんなもの許可しない、このほうが大事だ、かように私は思っております。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 委員長鈴木君。
  44. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 場内交渉で大体打ち合わせておりますので、後刻の北村君のときにでも質問して、北村君のときにどうでようか。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 木村君のやるときに鈴木君がやるつもりでした。鈴木君、もう一問だけ。
  46. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) それじゃ一問だけ。鈴木君。
  47. 鈴木強

    鈴木強君 私は第一番に聞きたいのは、在日米軍のジェット機が空中衝突を誘因してやったのではないかというニュースが流れましたね。そして、現に落下傘で人がおりてきたのを見たというような趣旨の記事もありました。一体それは事実かどうか。政府が調べられた範囲でひとつお示しいただきたい。  もう一つは、さっき佐藤総理は、有視界飛行から計器飛行に切りかえるのが筋だと、こうおっしゃいました。私もそう思いますけれども、現実には総理が一体現在の航空管制塔の実態を知っておられるかどうか多少私は疑問を持ちます。もし、有視界飛行から計器飛行に現在の段階で切りかえられたら、これは管制塔はパンクしちゃうんです。たとえば、定員を見ましても四十名現在おるそうですが、実際八十名なければもっと緻密な安全を確保する航空管制はできないと当事者は言っているんです。待遇の面を見ても、十三年つとめて子供二人ある人が四万何ぼ程度の給料しかもらっていない。そのためにせっかく入りましても半分ぐらいは民間の航空会社にやめて入ってしまう。こういう実態があるわけですから、これらの点等をほんとうに考えて、そうしてその上に立って計器飛行のほうに移行するなら移行しなければ、観念的に言われても、私はわかりませんので、総理のおっしゃる——現在の管制塔はプロペラ時代の管制塔であって、ジェットの時代の管制塔じゃないんですよ。こういう点をはっきりして金を出してもらいたい。これを明確に私は答えてもらいたい。  それからもう一つは、最近、ベトナム戦争が始まって以来、在日米軍飛行機の運航が非常に激しくなってきているように聞いております。こういったものとの関係で、どうかするとそうほうに手が相当かかってしまう。安全性がそのために民間航空のほうが受けられぬというような点があります。こういった点についてもう少し私は実態を知りたいわけですから、防衛庁長官おらなければ総理でけっこうですが、そのことをぜひひとつどういう状況かお知らせをいただきたい。三つです。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最初、これが空中接触あるいは空中で衝突したのじゃないかと、こういううわさが立っておりました。また、ただいま言われるように、落下傘でおりた者もあるという、こういうようなうわさが立っておりました。しかし、その後米軍にも事故を起こしたものはございませんし、また、わがほうの自衛隊にも該当するものはございません。これはもうはっきりいたしまして、ただいまの衝突云々は、これはデマであるというか、十分その根拠のないものだということは、これは非常にはっきりいたしたのであります。  第二の点の、管制官の問題ですが、確かに管制官の地位等については、これはもっと積極的にしなければならない、待遇等も非常に不十分だし、また、この管制官が将来どういうようになるのかという、そういう希望も持てないような状況で、しかも、非常に大事な仕事、ただいま申し上げるように、生命を預かっておるそのもとの仕事をしておると、こういうことでございますから、ただいま御指摘になりましたとおり、今後さらに管制官の地位等につきまして、また待遇等につきまして、十分考えていくつもりであります。この点も指示したわけでございます。また、管制官自身が十分計器その他を持たないという、こういうところで現状においては不備があるのではないかと、そういう点もただいま鈴木君の御指摘でございますが、そういうことで、さらに掘り下げてみる必要があると思います。ただいま、計器飛行やれば、これだけの発着はできないと、こういうことを言われるようでありますが、しかし、外国の空港の利用度等から見れば、日本空港はまだまだ余裕があるように見られる。見受けられまするので、ただいまの計器飛行、これができない、かようには私は考えません。ただ、専門家の話から、意見を聞けば、現状において各施設、空港における施設が十分だとは思わない、こういう指摘がございます。それは、まあ先ほどお答えをいたしましたように、もしもこういうことができなくて、なお非常に不安な、不完全な飛行を許しておるというようなことがあれば、これはどうも利便をそこまで拡張はできないのですから、そういう点で考うべきじゃないかと私は思います。たいへん不便になりましても、現在の状況が航空に適しないような場合は、やはり航空を制限していただく、そういうことでなければほんとうに安全の確保はできないと、かように思います。  また、第三番の問題で、最近は沖縄の問題があるので、たいへん空路が狭まっておるのじゃないかと、こういうお話でありますが、しかし、これは空中衝突その他しないように、広い大気ではありますけれども、やはり自然に計器飛行すればどういう空路を通る、そういう道筋がきまっておりますから、なるべくその道筋を利用するように、その道筋に乗せて、そうして航程等で十分安全を確保するように指導したいものだと、かように思っております。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 まず経済の問題からお尋ねしたいと思いますが、佐藤総理は、早くから池田内閣の所得倍増計画、高度成長政策に対して非常な批判を持っておられたと思うんです。池田内閣から内閣を受け継がれた当時は、池田内閣の方針、政策を踏襲するんだという名のもとに、この批判なり反省は十分表明がされていなかったと思うんです。しかるに、このたび大きく経済政策を転換をされたのでありますが、これは佐藤内閣の本来の姿がいよいよはっきりしてまいったと、こういうふうに見ていいんじゃないかと思うんです。そこで、ここであらためて私は、佐藤総理は過去の池田内閣の所得倍増計画、あるいは高度成長政策に対してどういう批判とどういう反省を持っておられるか、まずその点をお聞きしたいと思います。
  50. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) かつて所得倍増計画なるものが唱えられましたが、これは当時私は大蔵大臣でございました。岸内閣の末期ごろこの所得倍増計画が云々されたのでありますが、その当時は、御記憶に存することだと思いますが、七・二%の成長率ならば十年で所得は倍増する、こういう計算であり、私もその数字をこの席で申し上げたように思います。ところが、その後所得倍増計画というものが池田内閣になって本格的に取り上げられた。それで、これは、十年で倍増とはいわない、さらに実質成長その他を見るとたいへんテンポが速かった、かように記憶するのであります。このテンポの速かった経済成長を、ただいま言われるように高度経済成長、かような表現で、たいへんけっこうじゃないか、かように言われてまいりました。しかし、この高度経済成長、その結果は、業種間にも地域的にも非常な格差を生じた。必ずさような状態が来るだろう、かように指摘されるものですから、いわゆる七・二%の成長度云々が論議されたと思います。また、実際に池田内閣でやってみると七・二以上の実質成長があるから、これだけの力を持つものを七・二に押えることはいかがだろうか、こういうことで高度経済成長がどんどん進められたと思います。私は、これはそれなりにりっぱな意義があると思います。しかし、もともと非常に発展の余地のある、また力のあるもの、そういうものがどんどん進んで、本来整備しなければならないもの、あるいは力のないもの、それらについての育成強化が十分でない、その結果が、ただいま言うように格差を生じてきた、かように思います。格差を生ずると、弱いものに強いものが引っぱられることもときにはあるわけでありまして、強いものが弱いものを引き上げていく、こういうばかりでもない。今度は、いわゆる弱いものに強いものが足を引っぱられた、そうしてただいまのような経済の不況をかもし出した。これはひずみだとかいう表現で言われておりますけれども、今度は、この経済の成長は、一つの部門だけが非常に発達する、それで——それもそれなりに非常に意義があるが、それで喜ぶわけにはいかない。やはり、経済成長は、均斉のとれた、均衡のとれた成長が必要なんじゃないか。そこで初めて経済の強度というものも出てくるし、各方面に不満もなくなる、全体としての力はそのほうが望ましいのだ、これがただいま言われる安定成長という表現で言われておるのであります。しかし、安定成長、これは一体どうなのか。安定成長のもとにおきましても七、八%の成長は適当だという、こういうことを言っておるわけであります・七・二%、十年たてば倍になる、これも最初に言われましたこととちっとも違わないように私は思っております。でありますから、七、八%の成長率で、そうして各事業間に格差がない、あるいは地域的に格差を生じない、全体として均衡のとれた成長をもたらす、こういうことが望ましい姿ではないか、かように私は思って、ただいまそれの方向で取り組んでおるわけであります。御承知のように、過去の高度経済成長がかもし出したそのひずみ、そのひずみがさらに不況の形になってくる、あるいは物価高騰の形になってきた。だから、ことしは、内閣の課題として、課せられた課題として、この不況克服、そうして物価安定、同時に均衡のとれた成長をひとつ計画していこうと、こういうことであります。また、国民に富を与え、企業に貯蓄、蓄積をもたらすように、そういう政治をしようとただいま取り組んでおる次第であります。
  51. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 池田内閣の高度成長政策に対しては藤山長官も非常な批判を持っておられたと思いますが、過去数年の実績からして長官はどういうようにこれを批判し反省をしておられるか、お尋ねしたいと思います。
  52. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いわゆる高度成長政策、むろん一つの政策には一〇〇%悪いものというものは私はないと思います。したがって、高度成長政策も、先ほど総理も言われましたように、五〇%‐六〇%、相当いい面があったと思いますが、しかし、悪い面が相当にあって、それが今日の結果を来たした。それは、いわゆる日本の経済が戦後の発展段階におきまして伸びてきた経緯から見て、そういうものが特にいま申し上げたような点が悪い面が拡大されてきた、その拡大の幅が今日相当広くなった、こういうことが私言えると思うのでございます。したがって、日本の経済をこれからやってまいりますためには、成長が高いことは望ましいことでございますけれども、その成長というものが各部門つり合いのとれた均衡のある成長であって、しかも年々の状況があまり変動を起こさないような状況に政策的に調節されていることが望ましいことだ、こういうふうに考えております。
  53. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この過去の高度成長政策に対する批判として総理大臣あるいは藤山企画庁長官がお述べになったことは、過去の成長率に対する徹底的な批判が欠けているのじゃないかと思うのです。そして、今度の内閣は、安定成長の姿に切りかえるというふうに言っておられるのですが、その安定成長の姿というのはどういう姿をかいておられるのか、先ほどちょっとお答えがありましたが、もう少しその点を詳しく総理から御説明を願いたいと思います。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどちょっとお答えいたしましたが、要するに均衡のとれた成長、それが必要だ。今日の経済の不況はどこからかもし出されたか。生産性の低い部門、これを生産性を向上すると、かようないろいろの計画を立てたが、それがそのとおり行なえない、あるいは、社会資本の充実等、これも力を入れると言いながらも、やっぱり高度経済成長、そういう意味のためにおくれている等々がございますから、今度は業種間また地域的にも格差のないように均衡のとれた成長を計画しよう、そのためには成長率としてまず七、八%程度が望ましいのではないか、かように考えておりますので、そういう方向でこの目標を達成するために努力をしておるわけであります。安定成長と、かように申しますと、どうも足踏みをするのじゃないか、停滞するのじゃないか、かように言われますが、そうじゃなくて、経済自身は本来発展さすべきもの、成長さすべきもの、これには私どもも十分注意するつもりであります。ただ、それが、幾ら自由経済といっても、強いものだけが伸びるとか、あるいは企業採算性のあるものだけが伸びるとか、こういうわけではいかない、かように思っておるのでありまして、均衡のとれたものを考えていくということであります。
  55. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 大体、安定成長の姿を成長率に関する限りは七%あるいは八%というふうにお考えのようですが、それを検討する前に、四十年度の成長率はどうだったか、非常に落ち込んでおるのですが、これらの原因、経緯はどういうところにあったのか、企画庁長官に御説明を願いたいと思います。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 四十年度の成長率は、まあ二・六%前後と推定されます。どういうことかと申しますと、御承知のとおり、三十九年に金融引き締めをやりまして、そして国際収支の改善をはかってきた。で、三十九年の暮れから国際収支が改善されてきたので、これをゆるめようとした。普通の状態ならば、過去の例で言えば、ゆるめてくれば自然景気が回復してくるという状況であったので、多くの人が四十年度になりまして過去と同じような状況が起こってくるんだろうという期待を持ったと思います。その期待が今度ははずれて、さらに不況が悪化してきた、こういう状態になりましたので、この原因としてわれわれも十分考えていかなければならぬものがあるのでございますが、まあ原因は必ずしも一つというわけでもないと思いますけれども、やはり相当な過剰設備ができておった、そしてそれは金融を解除されてきてもこの過剰設備が稼働してくる状況にならなかったというところに一番大きな今回の不況の原因があると思います。それでは、なぜ過剰設備投資が十分に稼働しなかったかと申せば、一つは、設備が過大過ぎたということが言えると同時に、一定の消費の伸びだけではなかなかそれだけの過剰設備を動かしていくだけの力がなかった、こういう両面から、同じことではございますが、たての両面から見れば見られるわけだと思います。そういう点に私は主たる事情があったと考えております。
  57. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 昨年昭和四十年はそういうふうに非常な落ち込みをしたのでありますが、したがって、それをもとに返さなければならないというところに問題があると思うのですが、政府は、これまでも、高度成長政策の成長率は、所得倍増計画のときは当初七・二%という数字を出されたと思うのですが、この七・二%という数字はどういう根拠からあの当時算定をしておられたのか、それをお伺いします。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当時の事情から申せば、十年で所得を倍にするという立場に立って言えば、七・二%で倍になってまいりますから、おそらくそういう基礎で七・二%というものを最初の所得倍増計画の目標とした、こういうことだと思います。
  59. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも、なぜ七・二%でなければならなかったのか、そういうふうに測定されたのかという理由がはっきりしないのですが、それに引き続いて中期経済計画をお立てになったときには、これをさらに伸ばして八%というふうにお伸ばしになった。そこいらの数字の変更の事情はどういうことになっておりますか。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私、当時の事情をよく知りませんから、事務当局から……。
  61. 向坂正男

    政府委員(向坂正男君) お答えいたします。  その当時、経済の実際の成長率は、過去平均しましても一〇%近い成長を続けてきたわけでございます。で、この中期計画を策定いたします場合に成長率を考える場合には、まず第一に国際収支の制約条件からいってどの程度の成長率が可能であるだろうかということを考えました。もう一つは、消費者物価が三十五年以来かなり上がってきておりましたから、消費者物価をできるだけ安定さしていくという条件考えた場合にどの程度の成長率が望ましいのか、この二つからまず成長率の大ワクを検討されたわけでございます。実際に数字をきめていきます場合には、近代経済学の計量経済学の手法を用いまして、国際収支の制約条件を入れ、それからまた物価や賃金の関係考え、さらにいろいろな過去の経済のいろいろな要素の間の経済的ないろいろな数量的な関係をよく検討した上で、それを一定の計量マクロモデルに組み上げまして、そこで政府支出あるいは金利その他の政策変数を変えることによってどの程度の——先ほど申し上げた二つの制約条件を満たすどの程度の成長率が望ましいかということを検討いたしました。なお、その結果を産業連関表を使いまして、いろいろな産業の生産その他がマクロモデルから出てきたいろいろな数字と需要の数字と合っておるかどうか、いろいろ検討して、総体的な結論としまして、五年間、三十九年度を含めまして八・一%という数字をきめたわけでございます。
  62. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 七・二%の成長率から八・一%に引き上げられて、そうしてそれを目標にして民間にお示しになった。そこで、角間は、それを目途にしながら非常に無計画に無秩序に競争をやって、例の過剰設備その他で非常なひずみができてきたと思う。それで過去五年間の平均の成長率は一〇%という非常な高い数字になってしまって、そのためのひずみその他国民生活の低下というような問題が結果してまいった。そこで、私は、日本の経済成長率についていま近代経済学の手法その他を採用してつくったと言っておられますけれども、その高く設定をされたところに非常な問題があるのじゃないか、こういうふうに思うのです。  そこで、もう一つ考えてみたいことは、諸外国のここ数年の成長率はどうなっているのか、これとの対比において日本はどう考えなければならないかということを根本的に再検討をしてみる必要がある時期だと思うのですが、その諸外国の状況をどういうふうに把握しておられるか、御説明を願いたい。
  63. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、経済が成長してまいりますと、われわれも永久に日本の経済が八%というような高い水準で行き得るとは思っておりません。先ほど申し上げましたような、また総理からお答えになりましたような事情だと思います。そこで、各国の成長率は、日本と比べてみますれば非常に低いのでありまして、三十五年から三十九年にかけまして、米国が四%、英国が三・七%、西独が六・八%、フランスが五・八%、イタリアが五・九%という、五年間のあれではそうなっております。毎年の例は略しますけれども……。
  64. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いま御説明のとおり、外国の経済成長率は、日本のそれに比べて非常に低いと思う。これはやはり諸外国が非常に堅実な、インフレを警戒しながら非常に堅実な成長方向をたどっている。それに比較して、日本の成長率は、非常に無秩序に発展をしている。たとえば一五%とか一四%とかいうような成長があるかと思うと、五%に落ち込んでしまう。それから一一%なり一二%に回復したかと思うと、昨年のように二・七%にまた落ち込んでしまう。非常に振幅の激しい、動揺の激しい成長をいたしている。これは、政府がいたずらに諸外国にも比類を見ないような高い成長率を目標に設定をして、その上に民間が非常に過当競争その他の関係で無秩序に政策を推し進めている、その結果にほかならないと思うのです。そこで、私は、日本の経済成長率は、ほんとうに地道に経済の発展を考え、安定成長をお考えになるのならば、いま示された諸外国と同じような形において、五%なりあるいは六%というところを目標に置いて計画を進めていかれるということが最も着実なそれこそ安定経済成長の道ではないか。そのことを過去のいきさつを十分に反省した上で、そこまで着実な実直な経済運営のしかたをお考えになるということがこの際ぜひ必要なんじゃないか、こういうふうに私は思うのですが、その点を総理大臣はどうお考えになりますか。
  65. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話しのように、日本の経済も、国民総生産が、所得倍増計画をやりましたときは名目にして十三兆六千億、それがだんだん三十兆にもなり、四十兆、五十兆にもなってまいりましょう。そして、戦後荒廃した経済施設が復活されまして、そして鉄鋼生産も世界で有数な、三番とか二番とかということになってくる、あるいは造船においてもそれになってくる、こうなれば、経済成長率というものは当然私はある程度先進国並みに落ちてきて差しつかえないと思いますし、また、そうならなければいけない時期が来ると思います。したがって、長い将来の問題については、私は佐多委員と同感でございます。ただ、ここ一、二年のところは、いまの不況を回復していくためには若干の相当な刺激が要ります。それから設備投資等につきましても、大企業の設備投資は抑制してもらいますけれども、中小企業のほうの合理化投資、生産性向上のための投資というのは相当やっていただかなきゃならぬというふうに思いますので、社会資本の欠除とあわせて、しばらくは、七、八%は、景気刺激のためにも、いま申し上げたような安定成長の路線、均衡ある成長の路線に乗せるのにも、ここ一、二年は必要なんじゃないかと、こういうふうに考えております。
  66. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 安定成長に持っていく場合に、大体私と同じような気持ちだとおっしゃいましたけれども、しかし、あなた方の考え方によると、安定成長の目標自体が数年先のことでございましょうが、七、八%だというふうにそれを高く目標に掲げておられるので、それが私から見れば高過ぎるんじゃないかという問題なんです。それで、したがって、もう一ぺん繰り返してお尋ねしますが、四十年度は二・七%であったのが、今度は直ちに七・五%に引き返せるというふうにお考えになるのは、どういう施策に基づいてそういうことをされたのか、それを御説明願いたい。
  67. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回は、御承知のとおり、民間における設備投資意欲というものは全くない、本年は特に新たに出てこないだろう。したがって、民間設備投資はまあ横ばいと考える。ただ、個人消費の伸びというものは例年の伸び並みにはある程度見ていけるだろうということも考えられますし、それから輸出の方面につきましても、世界貿易の規模は、昨年は七%ぐらいに、本年は六%ぐらいに増加が推定されます。そういうようなところを見まして、輸出も一〇%前後のところは伸びるのじゃないかというようなこと、それから住宅投資については引き続き好調を呈しておりますし、またそれをやっていかなければなりませんから、そうした一連の関係考えながら景気をある程度高揚さしていくということを考えれば、七・五%ぐらいな経済成長というのが望ましくもあり、またそういう数字としてもあらわれてくるわけであります。ただ、問題は、いまお話しのように、二・六%あるいは六・七%というところの本年から来年に移りますときに、いきなりこの二・六%前後の数字が上半期に続いておりましたのでは、下半期が非常に高い成長でなければならぬ。そんなギャップがあってはいけないのでありまして、望むらくは上下がそう大きな差がないような行き方でないと、それでなければ徐々に景気が回復したと言えない、こういうことでございますから、四月以降の財政投融資を十分考えて、公共事業等をやっていく速度を早めていく、同時に、四十年度第四四半期のいままでおくれておりました工事その他の政府事業を拡大してやっていく、こういうことでそのつながりをなだらかにつなげて年間七・五%に持っていくという考え方で、政府の施策としては七・五%を目標にしていま施策を進めておるところでございます
  68. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 二・七%から七・五%に戻していくということが非常になだらかなやり方であると言われますけれども、数字から見て決してそうでなくて、非常なこれは飛躍であり無理である。そういうふうな目標をお考えになるから、後に問題にしますような公債政策その他を大幅に無理に取り上げなければならないということになってしまうのだと思うのです。私は、先ほども申しましたように、日本の経済成長率はいまやヨーロッパ諸国よりも若干高い五%なり六%ということが安定成長の場合の姿であって、しかもそれを目標にして四十年度の二・七%から漸次その目標に進んでいくというふうにお考えになるのであるならば、四十一年度の成長は、むしろ三%なり四%、これならばヨーロッパの成長率とちょうど合う成長率だと思いますが、来年度はこの程度に上げるということで堅実に着実に日本の経済安定成長を持っていくということに努力すべきだと思いますが、そうお考えにならないのかどうか。
  69. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いまある程度景気を回復さして、そうして生産設備の稼働をいまよりももっと大きなものにしていかなければならない。したがって、そういう意味では、ある程度ここで成長を刺激してまいらなければならぬ状態だと思うのです。先般のときに大蔵大臣申し上げましたように、かりに七・五%でもいまのデフレ・ギャップがはたして一年で埋まるかどうかわからないという状況でございますから、少なくもその程度の刺激はしてまいりませんければ、経済の上における人心の影響というものも非常に強いんですから——心理作用というものが、ですから、ある程度の刺激作用をやり、また、ある程度国民の経済意思をこれ以上不況に落ち込むんじゃないと、そして安心して経済拡大の仕事に持っていけるんだという心理的作用も、弱気でないような状態に支持してまいらなければ経済活動というものはまいらないと思います。そういう意味からいえば私は適当な数字でなければならぬと、こう考えております。
  70. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう高い目標をお立てになることは、あらためて所得倍増計画のときと同じように、大企業なり大資本のほうに有効需要を積極的につけて、そこだけが大きくなっていって、数字だけは高い数字があらわれて、ひずみは依然として改善されないという結果になるんじゃないか、今度有効需要をつけるという場合には、むしろ低生産部門に対して積極的に集中的に有効需要をつけ、ここの成長を促すということでなければならないので、そこに重点を置くとすれば、あなた方のお考えになったような目標はとても掲げられないはずだ、こういうふうに思うんです。この高い目標を、しかも一挙に取り返そうとされるのは、かつての所得倍増計画なりあるいは高度成長政策なりの夢をもう一ぺん追おうとしておられる、同じ失敗を繰り返すことになるんじゃないかと思うんですが、その点はどうですか。
  71. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 七・五%ぐらいな成長の刺激を持っていかなければいまの状態が立ち直れないということは先ほど申し上げたとおりです。したがって、私どもは将来の目標として七・五%を安定的成長の上で考えるかといえば、それは今後の状態であって、私はある程度均衡ある成長を遂げていけば、日本としてはまだ七・五%の成長ぐらいは決して悪いものだとは思いません。しかし、国民総生産が伸びていくにつれて、それはもうそれ以上の伸びというものはだんだんできなくなることは、これは御指摘のとおりですし、私もそう思います。したがって、現状ではまあそういう程度。それから、いまお話のように、たとえばそういうことで成長を見た場合には、たとえばいまのように大企業のほうの需要が増大して、そうして低生産部門に力が及ばないじゃないかと。これはやはり私は、これからの経済政策としては先ほど申し上げましたように、一日も早く低生産部門の生産性向上のために設備投資をつぎ込んでいくという形が必要でございますし、そういう意味からいえば今後の成長は、同じ七・五%でも、あるいは同じ六%でも五%でも、その面についてここ当分の間は力を入れていかなければならぬと、こう考えております。
  72. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 成長率に対して意見はどうも若干食い違っておると思いますが、いずれ長期政策をお立てになることだろうと思いますので、そのときにもう一ぺんこの問題は、基本的に根本的に再検討をしながら、長期計画の策定をお考え願いたい。それを希望しておきます。  次に、物価の問題についてお尋ねいたしますが、物価については、四十年度は当初見通し四・五%だったと思うのですが、しかるに今年・度の物価は、企画庁の予測によると大体七・七%程度に上がってしまう。これはここ数年来の一番高い物価上昇率じゃないかと思うのです。当初の見通しからこのように見通しが狂った原因、経緯はどういうところにあるのか、御説明を願いたい。
  73. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この物価の予想というのは非常にむずかしいのでございまして、そういう意味からいって、物価の予想そのものも非常なこまかいデータによるものではございません。したがって、その一時のデータがどこから狂ってきたかということは、非常に申し上げにくいわけでございますが、大体四十年度の物価の上昇を見てまいりますと、やはり生鮮食料品が一番高く、その次が住居、教育費等、それからサービス業関係というようなものが、大体騰貴が非常に多いわけでございます。そういう点から類推してまいりますと、景気が悪くなってきて、そうしてしかも賃金の平準化によってサービス業、中小企業等が景気の影響をこうむって、仕事が十分でないとなれば、賃金、その面におけるコスト割れというようなものが出てまいります。ですからそういうものをまあカバーしていかなければならぬ。同じような考え方が農業の面で、やはり農産物価を上げている一つの理由だと私は思います。したがって、やはり農業の生産性の向上とか、中小企業の設備改善による合理化というような、生産性の向上というものが過去において並行してこなかったところにすべてのしわがそこへ寄って、昨年にきた、こういうふうに私たちとしては考えております。
  74. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、それらの問題、低生産部門の問題、生鮮食料品の問題、中小企業の問題、そういうところには十分な施策をやるということが数年来の主張だったと思うのですが、そういう施策はほとんどなされなかった、失敗したということを意味するのかどうか。
  75. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価対策につきましては、政府もむろん非常な関心を持っておりまして、過去数年間それぞれ施策をきめてまいりましたし、昨年も一月以降数回にわたって内閣におきまして物価対策の問題、項目をあげ、やってまいりました。それらの項目については特別な変化もございませんし、また、それ自身が適当な問題をとらえていると思います。ただいま申し上げましたようなそういう面から、構造上の面からきている点が非常に多いのでございますから、それを解決してまいりますのには相当やはり力強い方向で施策を推進していかなければならぬのでございまして、そういう意味において、必ずしも施策の全部が私は十分末端行政まで浸透していたとは思えません。したがって、今後物価対策をやります上において、そういう末端行政まで——方法論としてはそう変わった点があるわけじゃございません。いままであげられた問題を力強く根強く一々問題と取り組んで、末端まで浸透していくような行政をやることによって初めてできるのでございますから、物価問題が重要だと考えて、そういうことに取り組むことによって、今後の改善ができると思います。過去の効果がもしも若干でも考えたよりも薄いと言えば、そういうところにあったと思います。
  76. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 三十五年以来消費者物価は上昇し続けてきていると思うのですが、三十五年以来の消費者物価がどういうふうに上がってきたか、御説明願いたい。
  77. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私、ちょっと手元に資料がございませんから、事務局から。
  78. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) お答え申し上げます。年度で申し上げますが、三十五年度は対前年で三・八%であります。それから三十六年度が同じく対前年で六・二%、三十七年度が六・七%、三十八年度が六・六%、三十九年度は四・八%、なお四十年度は先ほど来お話が出ておりますが、七・五%前後ではないか、現段階ではそう見ております。
  79. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今年度の物価、大体七・七%と聞いていたのですが、いま七・五%というふうなお話がありましたが、そういうふうに訂正をされたのかどうか。  それから私は、この一月、二月の消費者物価の上昇を考えると、おのおの一カ月に一・二%ずつ上がっている、こういう点から見れば、むしろ七・七%と見込まれたその数字も、さらにこえるんじゃないかというふうな感じを持っているのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  80. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) お答えいたしますが、七・七%という数字を計算いたしましたのは、昨年年末十二月の見通しでございます。その後一月の指数あるいは二月の指数が出てまいりました。現段階では残すところ一ヵ月でございます。そこで、三月の指数が二月の指数と全く同じである、二月に対して全く変わらないと仮定いたしますと、七・四%というふうに本年度は相なります。しかし、三月も若干は二月より上がるかもしれない、その辺のことを勘案しまして、七・五前後と現段階では申し上げておるわけでございます。十二月に七・七%と、こう言っておりましたが、現状で言いますと、三月の指数が二月の指数に対しまして三%以上上がりませんと七・七%になりません。三月の指数が二月に対して三%も上がることはおそらくないんではないかというふうに考えまして七・五%と押えているわけでございます。ちなみに二月の全都市の指数は一四〇・二、これは御承知のとおりでございます。
  81. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 前月比幾ら上がったか。
  82. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) 二月のでございますか。
  83. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ええ。
  84. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) 二月が、先ほど少し申し落としたのですけれども、東京の指数が出ております。その東京の指数は対前月で一・二の上昇であります。で、先ほど二月の全都市指数をべースにすると申し上げましたが、この二月の全都市指数というのは、東京の指数並みに一・二上がるということを前提にしての計算でございます。
  85. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いまのお話によりまして、三十五年以来の消費者物価の上昇率をお聞きしたのですが、大体に、それはいつも当初の見通しとはずれて、非常に高いものになってしまって、平均をとりますと、大体六%をこえる物価騰貴が毎年続いてきた、こういうことになると思うのです。こういうふうに毎年継続して、しかも六%という非常な高い上昇率で上がったとすれば、これはまさにインフレと言うべきだと思うのですが、この点どうお考えになりますか。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価が引き続き五%、あるいはそれ以上上がっているという状態は、その面から見れば、いわゆるインフレーションと言われることはございますけれども、日本の経済の現状からいうと、他面、産業が非常にデフレの状態になっているということがありますので、それをあわせて考えてみますと、すぐにインフレーションの状態だと、あるいはすぐにデフレーションの状態だと、いずれにも判断しかねるところの二つの要素が備わった状態が、今日の状態ではないかと思います。ただ、私は景気を回復さしていって、景気が回復した上でも、なお七、八%の物価上昇が続いていたら、これはその時期にはやはりインフレ的状況になりつつあるのだと判断せざるを得ないと私は思います。
  87. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 むしろいままで平均六%をこえる上昇率が毎年続いているのですから、少なくとも消費者物価に関する限りでは、インフレーションだと言わざるを得ないと思うのです。特に通貨発行の問題との関連においてこれを見ますと、そう言わざるを得ないのじゃないか。その点についで、通貨価値の安定を保持することを任務としておられる日銀総裁は、過去の物価の継続的な上がりを見て、どういうふうに判断をしておられるか。
  88. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) ただいまお話のとおり、数年にわたりまして、かなり高い物価の上昇を続けているわけでございまして、これにつきましては、私も非常に考えているところでございます。ただ物価上昇を、これをインフレと見るかどうかということにつきましては、インフレというものはどういうのだということも考えなくちゃならないのでありますが、私は現在の状態を見ますと、やはりこれから物価がどんどんなお上がっていくかというか、どういう傾向にあるかということをひとつやはり考えてみなくちゃならないと思うのです。物価を今日まで上げました理由としては、これは私、そのほうの専門家じゃございませんので、はなはだしろうとくさい議論でございますけれども、やはり構造上の問題もあると思います。また、何年間か無理にと言っては、あるいは言い過ぎかもしれませんけれども、問題を解決しないままに押えてきたという問題もあるかと思うのであります。さらにまた、その他において、一般の物資について上がってきたものもありますし、その中には天候その他の関係のものもありますし、いろいろ分析が必要ではないか、かように考えているのであります。それで、構造上の問題につきましてもいろいろございますけれども、たとえば物価を上げました中に、私ども見ておりますと、大企業と中小企業の賃金の格差是正というような問題も、まだあるいは決して十分でないかもしれませんけれども、相当直ってきている面もございます。また、米価の問題につきましても、いろいろ政府におかれても考えられていなさるんじゃないか、また、数年間の、何といいますか、持ち越された問題も政府におかれて相当解決をされているんではないかと考えておるわけでございます。そのほか一般物資についても政府考えておられるという点から考えますと、私は、決して十分ではございませんけれども、潜在的な今後物資を大いに上げていくという面は、むろん完全ではございませんけれども、弱まった。あるいは多少改善されているというふうにも考えるわけでございますので、最初申し上げましたとおり、今後ますます上がっていくという面は、まあ一応弱まってきておって、努力次第では、今後下がる傾向にあるんではないか。それでまた、このわれわれの日本銀行の立場からながめてみますると、最近におきましても、通貨の関係は還流もかなり順調にいっております。むろん通貨自体は経済成長に伴いまして、まあいわゆる成長通貨というものもふえておりますけれども、これもそう特別に、まあいろいろ日本の国内の事情を考えますとふえておりませんし、また、国際収支のほうも、まずいまのところでは、これはもっともっと努力しなくちゃなりませんので、そういう点におきまして、いまのところは、現段階におきましては私どもはインフレではないと、かように考えておる次第でございます。
  89. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 過去平均六%の物価騰貴は、いろいろな構造的な事情なりあるいは特殊な個々の物資の状態についての上がりもあるでしょうが、一般的には何といっても日銀券が増発をされ、それによってインフレ状態が発生をしたというふうに考える以外に解釈はないんじゃないかと思う。そこで過去三十五年以来、日銀券がどういうふうに増発されてきたか。これが総裁は成長通貨であると言われるが、成長通貨という計算は数字的な根拠はどこから出てきたのか。これらの点について御説明願いたい。
  90. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 過去の銀行券のふえ方について御報告申し上げます。三十四年度は、これた平均残高でございますが、三十四年度は一三・五%、三十五年は一八・二%、三十六年は二二・三%、三十七年は一五・五%、三十八年は一七・五%、それから三十九年は一四・九%、それから四十一年は、これは二月までの数字でございますけれども、一二・一%の増加でございます。そうして大ざっぱに申し上げますと、やはり経済成長が高いときは通貨がよけい出ておる、低いときは通貨の増発は少ないというようになっております。
  91. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いま比率でお話がありましたが、私がちょっと目を通したのでは、金額にして、期末の比較ですが、三十五年が千二百二億、三十六年が二千五億、三十七年が二千百七十億、三十八年が二千三百四十三億、三十九年が二千四百六十四億、四十年が二千四百七十四億、こういうふうになっております。これらの通貨の増発は、あの高度成長をなすときに、各産業が、自己資本を、資金を持たないために、あの膨大な設備をするのに市中銀行にかけ込んでいって金を借りた。ところが、市中銀行は、金融機関はそれほど余裕の資金を持っていないので、さらに日本銀行にかけ込んでいった。日本銀行はそれらの要求に応じてどんどん通貨をお出しになった。そういう経緯からいま申し上げたような通貨の増発がなされたと思うんです。これが原因して過去一五%とか一四%とか一〇%とかいうようなとてつもない経済成長率を示して、ついに最後的には今日のように行き詰まってしまったと、こういう結果にほかならないんじゃないか。そういう意味で、過去の日銀券の増発というようなものに対して総裁はどういうふうなお気持ちでおられるか。こういう態度を今後十分に直して、引き締めて、そうして通貨価値の安定の保持に全力を注ぐということをもっと厳格にお考えになるべきときではないか、こういうふうに思うんですが、これらの点をどうお考えになりますか。
  92. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) ただいまの御質問について、通貨の増発についてでございますが、御承知のように、経済は常に流動をいたしております。したがって、通貨を幾らに押えるかという点は、大筋としてはやはり適正な成長通貨ということに押えなければならぬと思うのでありますが、私が考えまするのに、やはり通貨だけを押えてもいけないのでありまして、やはりそのもとになっております経済が適正であるかあるいは不適正であるかということによるんではないかと思うのであります。もしかりに、その経済のほうが不適正でありまして、そうして無理に通貨を抑えるということになりますと、やはりそこにまた経済の混乱がおちいるわけでございます。したがって、私としては、むろんそういう意味におきまして、通貨の適正な増加ということはわれわれの使命として考えなければなりませんが、同時に、そのもとになります経済が適正であるということが非常に必要だと考えておるわけでございます。したがって、経済を適正にもっていくというためにつきましては、政府にわれわれも協力してこれから進まなければならぬと考えておる次第でございます。
  93. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 経済の成長、経済の運営が適正でなければならないということは、お話のとおりでありますが、しかし、過去数年米の経緯を見ますと、先ほど申しましたように、むしろ経済の成長を押えて適正な成長率にもっていくと、たとえば政府の見解によれば、七%というようなところにもつていかなければならないのにかかわらず、それがそうでなくて一五%なり一四%なり一〇%以上にもなったということは、経済の運営もさることながら、根源は過剰な設備、しかもそれに放漫に資金が出されたということに原因があるのでありますから、そういう点については、過去の日本銀行の政策が十分に批判されてしかるべきじゃないかと思う。毎年に二千億以上の通貨発行を適正通貨であるといわれる根拠が私たちにはわからないのであります。そういう点で、今後特に公債を発行する関連において——これは後ほど問題にいたしますが、その関連において、特に日本銀行総裁が留意をされなければならない点であると思うのでありますが、総裁の心がまえをお聞きしたい。
  94. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) お答えいたします。  ただいまお話のとおり、経済が非常に過熱いたしまして、そうして通貨をよけい出さざるを得ない。通貨というものは御承知のように、事後的に出てくるものでございます。やはりもとをただすということが必要だと思うのでございます。結果だけをおっしゃっても、もとをただすことを忘れてはやはり通貨というものは出るのではないか。今度政府が安定成長ということを出されているわけでございますが、私もその線に沿いまして、きびしく経済を見ていきたい、そうして、その結果がほんとうに先ほどお話のような結果にならないように、十分注意していく決心でございます。
  95. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 本年度、物価については、経済企画庁のほうで大体五・五%にとめるというふうにおっしゃっておりますが、四十年度は七・五、六%、七%ぐらいに上がったときに、今度は五・五%にとめるということについては、どういうふうな政策、どういう態度でそこにとめられるというふうにお考えになっているのか、その点をお聞きしたい。
  96. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 五・五%に目標をおきました理由は、この前も申し上げましたとおり、一%のげたの効果を見込んで、一%の努力目標ということでやったわけでございます。したがって、しかし、お話のように、なかなかこの努力目標をおいてやりますにしても、政府各部門がほんとうに物価問題に取り組むことによりまして、最善の努力をしてまいらなければならぬのでございまして、その点は非常に重要な点だと思います。むろん傾向としては、野菜等の関係等も逐次改善をしつつございますし、今後の施策が乗ってまいりますれば、相当効果は出てくると思っておりますけれども、しかし、パーセンテージでどのぐらい出てくるかというようなことを申し上げにくいものですから、われわれも一々そういう問題について数字的には御説明しておりませんし、また、できないと思います。そういう意味において、最善の努力を尽くして物価に取り組むのだ。そうして、それについての従来のたくさんきめた施策でも、これは効果のない施策をきめたわけではございません。やれば効果のあるものでありますから、そういうものについて最大の努力をしていく、こういうことで、われわれ五・五%を達成したい、こう考えております。
  97. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あまり確信がおありになるような感じもしませんが、ことしは消費者物価が五・五%でとどまらないのみならず、卸売り物価についても若干の上昇があるのじゃないか、それをおそれるのですが、この点についてはどうお考えですか。
  98. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ここにきまして卸売り物価一%以上上がってまいりました。おもに非鉄金属、特に銅の上がり、それと卸売り物価の中で米でございますが、それがこの一月から著しく卸売り物価に出ております。その他のものでございますと、これはやはり上がり傾向にはございます。〇・七ぐらい、正確な数字ではございませんが、〇・七ぐらいだと思いましたが、全体に上昇傾向がある。しかし、それ以上に上がっている主たる理由というものは、銅を中心とした非鉄金属、やはりこれは軍需生産その他で世界的に相場が上がっておりますから、その影響は非常に多いと思います。将来の問題として、卸売り物価が引き続き上がってまいりますことは、これまた重大な問題でございまして、銅のような特殊の事情によります問題を別にすれば、稼働していない工場が稼働してくる。そして、稼働することによって総生産量がふえてきますれば、当然合理化された工場においては、コストが下がってこなければならぬわけでございまして、過去における卸売り物価が安定したのも、そういう理由からきているところが多いと思います。ですから、そういう意味において、私はそういう特殊な国際価格をもった特殊な事情のものを除いて、そう上がるとは思いませんけれども、もし上がっていくようでしたら、これに対しても十分な対策を講じなければならぬと思います。
  99. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 政府は、物価の目標を安定成長に戻せば大体三%程度になるだろう、これを安定成長の姿にするのだというふうなお考えのようですが、三%という物価騰貴は、物価問題からいえば非常になみなみならぬ騰貴だと思うのです。これが非常な重要問題であり、物価騰貴としては、われわれのたえられない数字であるということもお考えになる必要があるのじゃないか。諸外国においては、特にアメリカあたりでは、物価騰貴が二%に達するとインフレの徴候だといって非常に大騒ぎをして、物価対策をやっていると思うのです。それらのことを考えると、安定成長の姿としては、一・五%なり二%の物価上昇、非常にきびしい基準を立てて政策をされなければ、ほんとうの安定成長にならないと思うのですが、この点はどうお考えですか。
  100. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 将来においては、私もいまお話しのような点で二%以上だったら——むろんアメリカの場合、一%半ぐらいからもうクリーピングインフレーションになりはしないかということをいっておるのですが、ただ日本の場合におきまして、おそらく先ほど宇佐美総裁も言われましたけれども、賃金の平準化という問題はまだある程度当分続いていかなければならぬ状態になるのじゃないかと思います。そうして、それがサービス業等で吸収する範囲が、合理化設備の改善によって吸収できる部面と、その過程において必ずしも十分吸収できない部面と、たとえばパーマネントとか、理髪とかというようなものがございますから、ですからそういうものがある以上は、そうアメリカの状況のように私はすぐには行きにくいんじゃないか。ですから、その程度はやはり国民生活がくつわを並べて向上していくんだという立場に立てば、ある時期の間はやむを得ぬことじゃないか。しかし、そういうアメリカのような状態が現出してくれば、それはいま申し上げたような事情以外の事情から物価が騰貴するというようなことであれば、これはやはりその意味において相当注意していかなければならぬ。たとえば需給関係から物価が騰貴するのだというようなことで、それが二%以上もそういう状態が起きるというのならいけない、そういうふうに考えております。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 しかし、それでは物価政策そのものの放棄以外の何ものでもないんじゃないか。たとえばわが国の実情からいっても、昭和二十九年から三十五年度あたりの平均をとると、大体一・六%程度で進んでおったのです。過去の日本の実績でもその程度のものはある。それから中期計画においては二・五%という数字を出されたと思います。中期計画以後、いろいろな物価政策その他の施策も進んできているし、今後も中期政策のときより非常に厳格な態度で物価政策をやるんだという意気込みがあるのならば、もっとそこは厳格に渋く設定をされて物価対策に全力を上げるということが必要なんじゃないか。どうもこの政策を見ておりますと、物価騰貴に関しては三、四年間でようやく三%のところに持っていく、経済成長率についてはすぐ来年度からもう目標の七・五%を回復するという計画になっておるから、その不況克服と物価対策との平仄が合わないという問題も出てくる。これから見れば、政府は不況克服に全力を注いで、物価対策はその後だというようなふうにお考えになっているとしか思えないのでありますが、この点、態度はどうなんですか。
  102. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の申し上げたことは、むろん過去にも日本で一・五%のときがあったじゃないか、だから、そういうところを目標にしていくべきだ、これは将来の問題としては、われわれもできるだけ物価が対前年比で上がらないことが望ましいことなんですから、そういう目標を立ててまいるのに、一向に、それはいかぬのだ、できないのだとは申しません。だがしかし、ここ数年の間は、私はやはりいまのような状況からいえば、そういう目標を立てましても、そうして安易な目標を立ててそういくんだと思っておりましても、政府の施策がたいへんな狂いが生じてきてしまうのではないか。だから、やはり適当にわれわれが考えて、努力してそこに持っていける目標をつくらなければ私は目標としては意味がないんじゃないかと思います。そういう意味においてわれわれは今後十分努力をしてまいるわけでございますが、それが何か物価政策が置き去りであって、刺激が先じゃないか。私はやはり今回の景気刺激の過程において経済が安定してくる、そういう場合に、いまとられている財政の需要というものが、たとえば社会資本、道路等に注ぎ込まれる、あるいは住宅等に注ぎ込まれる、そういうようなものによって景気刺激の方向を打ち出してきている限りにおいては、私はこれは将来の物価問題に、いずれの道路も今日狭隘でございまして、そして交通がもっと円滑にいかなければならぬ状態でございます。これもやはり物価に影響していることはもちろん、住宅の問題、同じことでございます。ですから、そういう面にみる限り、私はやはり景気を刺激しながら物価政策と関連してやっていきつつあるのだ、また物価政策に寄与するようなものに景気の刺激を集中していくのだとも舌えるわけでありまして、いずれを重きとしてでなく、一体として私は今回も政府としてはやっているのだ、こういうことを申し上げて差しつかえないと思います。
  103. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 物価問題についてなお個別に御質問をしたいと思いますが、少し時間の関係上それらをあとに回しまして、こんどは国債発行についてお尋ねをしたいと思います。  まず第一に、総理大臣にお尋ねしたいと思いますが、四十年度は赤字公債発行ですか、赤字公債というと福田大蔵大臣はおきらいになりますから、歳入補てん公債といいますか、それをお出しになった。それから四十一年度にはいよいよ本格的に非常に多額の公債をお出しになる。これで日本の財政政策、経済政策は非常に大きな転換を迎えることになった、こういうふうに考えるのですが、なぜこういうふうな大きな転換をしなければならなかったか、それが将来どういう目途で進められようとしているか、まずその大綱を総理大臣にお尋ねをしたいと思います。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今回の予算編成は、ただいま御指摘になりましたように大転換をいたしたのでございます。在来は、わが国の経済は設備投資に支えられておる、かような表現もされております。いわゆる財政の果たす役割りというものは比較的小さい考え方であったと思います。しかし、最近の経済情勢に対しまして不況を克服し物価を安定さす、こういう観点に立って、そして民間、財政の両者の関係をみると、今回は財政において果たすべき役割が非常に大きい、またそしてそういうように財政にうんと働いていただいて、今回の不況を克服しよう、経済の建て直しをしよう、かように実は考えたのでございます。同時にまた大幅な減税もする、これが先ほど来お話がありますように、経済の調整のとれた発展を期し、また民間に蓄積のある企業、また豊かな国民生活、こういう点をぜひとも実現したい、かように考えて財政で積極的な、また大型予算を組む、同時に大幅の減税も実施する。そこで、ただいまそういう財政需要に充てるために公債を発行するということにいたしたわけでございます。
  105. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 非常に大きな転換でありますが、これは過去における高度成長政策の失敗がさらに予算の面にまでしわ寄せをされてきて、それでそこから出直しをしようとしておられる計画以外の何ものでもないと思うのですが、その点はさておき、それじゃまず大蔵大臣にお聞きしたいんですが、四十一年度七千三百億の公債を出すという数字をおきめになった。この数字をおきめになった算定の基礎、その経緯、それを詳しく御説明をまず願いたい。
  106. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公債の額をきめる上におきまして三つの点を考えたのです。一つは財政の規模であります。それから第二は、市中消化の方針をとりますので、その可能額であります。それから第三は、財政法第四条による公債でありますので、それに準拠して対象とさるべき建設費の中であるかどうか、こういう三点でございます。で、財政の見地からいいますと、まあ一般会計は四兆三千億、それから財政投融資が二兆、地方財政が四兆一千億と、こういうふうになっております。これらの政府会計並びに政府機関、さらに地方財政、それらが国民経済の中でどういう地位を占むべきか、国民経済全体は、先ほど企画庁長官からお話がありましたように、来年は七・五%の成長を予定したい、その間において民間消費はまあ大体四十年度ぐらいの速度で伸びそうだ、輸出は一割ぐらいの伸びということ、ところが、大事な設備投資が横ばいの状況である、そういう際に財政がいかなる機能を発揮すれば七・五%の成長ができるか、こういうことを検討いたしたわけであります。そういう際におきましては、財政が、大体ただいま申し上げました一般会計、地方財政、政府諸機関を通じまして、国民経済計画の中でまあ二二、三%のシェアを持つ活動をしなければならぬ、そういうところから考えますと、一般会計の予算は四兆三千億程度、一方減税の要請もある、そういうようなことを考えまして、また公共事業費の額、そういうものも考え、さらに公債の市中における消化力、これはもう数カ月にわたってよく精細に検討し続けてきたわけであります。大体七千億ちょっとこえる程度が限界であろう。この程度ならば大体順調に消化がされる、こういう見当をつけまして七千三百億、これが今年度の公債発行額と、こういういきさつであります。
  107. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 七千三百億の一つのワクを公共事業費にお求めになっていると思うんですが、一体あの財政法でいう公共事業費というのはどういうものを指しているというふうにお考えになるのか、その点。
  108. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公共事業費という予算上の名前がありますが、財政法第四条にいう公共事業費とは、それによってつくり出される資産が国民、国家の財産として将来残り、かつこれが国家の将来の経営上有効なる働きをする、そういうものを指すものと思います。
  109. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 公共事業費は国民、国家の財産として残り、そしてかつ国家の発展に寄与するものだというふうに言っておられると思うんですが、しかし、財政法で考えている公共事業費というのは、もっとそこを厳密に考えて、公共事業費とは生産的なものでなければならないし、したがって、収益的なものでなければならない。将来、返還を予想しておるものでありますから、どうしてもそういうことが厳格に考えられておらなければならないんじゃないか。そういう意味で、ドイツの憲法には資本的な、事業的な経費、それにだけ公債を発行することができるというふうに示していると思うんですが、そういう、厳密に考えるべきであるにかかわらず、非常にルーズに考えておられるのじゃないか、こういうふうに考えますが、どうですか。
  110. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま資本的支出というお話がありますが、まさに資本的支出ということを考えておるわけであります。ただ有料道路のように、料金を取って、そうしてそれが収支がつぐなうというようなものばかりではない。事業によりましては、政府はそんなことをすべからざるものもある。大いに国費は投じて、そうして国民の経済の発展に貢献する、料金なんか期待しないというような性格のものもずいぶんあると思うのです。たとえば、住宅を今度対象にしておりますが、住宅も、これは国家国民の発展に大いに裨益する。それが国民の生計が安定し、また、それがさらに国家経済の発展に寄与する、そういうことで、長い目で見れば国家としてその果実を収納できる、こういう性格を持つであろうと、こういうふうに考えるわけであります。必ずしも国は事業会社のように料金やその他の形で回収できるというふうなものに限定するという考え方は、私はこれは狭過ぎる、こういうふうに考えておるわけであります。
  111. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 しかし、将来の返還を考えると、どうしても生産的なものでなければならないと思うのですが、それにもかかわらず、今度の予算によりますと、公共事業費には公共事業関係費と、それから非常に膨大な七百九十四億に及ぶ設備費というものまで入れておられる。この設備費は、教育施設であるとか、その他の博物館であるとか等々のものを全部拾い上げてきて、ごっちゃに混ぜて考えておられると思うのですが、こういうところに公共事業費に対する非常にルーズな、そうして七千三百億に合わすために各方面からいろいろなものを拾い出してきたという感じしか受けないのですが、こういう安易な態度で公債を出すべきではないと私たちは思うのですが、その点はどうですか。
  112. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 決してルーズに考えているわけではありません。ただ予算といいますか、財政法の要求するところは、公債を四十一年度に出す、その四十一年度に出す当該年度の対象費目はどういうものか、これを予算書に示せと、こういうことでありますので、制限的にまあなっておりまして、私どもが財政法第四条で解釈する公共事業費そのものよりは内輪にまあなっておるわけであります。私どもの解釈によりますれば、今日の予算書の体系からいって、まあ八千三百億くらいの程度がこの財政法第四条に相当するというふうに考えております。しかし、現実に発行するのは七千三百億でありますので、それに相当する費目のみをのっけておるわけでありまするが、今後ともこの考え方、八千三百億と、これが財政法第四条の規定するところに相当する額であるという考え方そのものにつきましては、決して流動的には考えません。これで終始一貫してまいろうと、かように考えておる次第であります。
  113. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、後ほど聞きますが、来年度以降はさらに膨大なものになる伏線を敷いておられるように考えるのですが、これはもう少し後にしまして、その前に、公共事業費を一つの歯止めとすると同時に、消化可能額を考えておられる、こういうことですが、まず第一に四十年度の消化実績がどうであったのか、それから四十一年度の消化の見通しをどういうふうに立てておられるのか、お聞きしたい。
  114. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国債の消化というのは、国債だけのことを私どもは考えておりません。これと並行して発行されます政府保証債、それから地方債、さらに事業債、金融債、これらの証券が並んで円滑に費消される、そこで初めて私は国債の消化ができたと言い得るのではないかというふうに考えておりますが、昭和四十一年度におきましては、大体国債が金融機関で消化されるものが六千三百億円くらい考えております。それから、七百億円くらいは、これは一般国民が証券会社を通じて買う。それから、社債が六千億くらいあろうかというふうに考えております。それから、地方債が千九百億から二千億程度かと思うのであります。それらを合計いたしますと一兆四千億程度になるのでありますが、これは精細に数カ月にわたって検討をしてきておりますが、預金の伸びが四十一年度においては六兆円くらいになるわけであります。その預金というのは貸し出しに使われるか、ただいま申し上げました証券投資に使われるか、こういうことでございますが、預金の伸びが六兆円ある。こういうときに貸し出しがどうか、これはおそらく低調であろう。そういう際におきまして、一兆四千億くらいの証券はゆうゆうとこれを消化し得る、かような観点に立っておるわけであります。
  115. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 非常にゆうゆうと消化できるようにお話しでありますが、一体四十一年・度の公債というのは、国債以外に、正確に地方債、金融債、政府保証債、そういうものが幾らになるのか、まずその数字からお願いします。
  116. 中尾博之

    政府委員(中尾博之君) 計数の点でございますので、事務的に御説明いたします。  国債は七千三百億発行いたします。そのうち資金運用部で三百億引き受けますので、これはお話の関係の外になるわけであります。それから、証券会社を通じまして一般に消化されますのが、先ほど申し上げましたように七百億。したがって、六千三百億が金融機関の消化になります。それから、地方債でございますが、地方債は公募地方債が七百二十六億発行されます。それから、そのほかに縁故債が発行されます。その縁故債のうち貸し出しの形になりまするものとボンドの形になりまするものとございますが、これはおおむね地方財政計画によりまして確定されております。若干その外に事実上毎年実績的に起債をいたしまする分がございますので、それらを勘案いたしますと、まずボンドの形の発行ベースが三千三百億前後かと存じます。それが金融機関に純増ベースで参りますというと、この地方債——いまのは発行のベースでございます。償還ものがございますので、これを差し引きますと純増のベースで二千億余り、それが金融機関に参りましてただいま御説明いたしましたような千九百億ないし二千億という数字になります。それから、社債でございまするが、社債は政府保証債が四千億、これは財政投融資計画できまっております。それの純増になりまする分、これがやはり償還がございまする関係で純増になりまする分は三千二百六十億、そのうち、これは金融機関に参りまする分が二千五百億程度だろうと思います。そのほかに政府関係機関の起債——政保債以外のものでございますが、これらのもの、並びに民間の事業債、これが四千五百億か五千億か、いずれにいたしましても、今月末あたりまでにはいろいろお話し合いもあろうかと思いますが、そういう見当かと存じます。それらにつきましても、先ほど政保債で申し上げましたように、発行ベースはそういうことになっておりますが、純増ベースにおきましてはそれが差し引かれまして、全体でもって八、九千億というのが社債の純増のベースかと推定されます。それらのうち金融機関におきまして引き受けまする分が大体六千億ということでございます。
  117. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 政保債や地方債や事業債、そういうものをひっくるめると二兆円くらいにもなるかと思いますが、そういうものの消化がはたしていまおっしゃったように簡単にいくのかどうか。特に今後有効需要が出されるということになると、そこに景気が上向いてくる。そうすると、市中銀行に対する資金需要がふえてくる。こういう民間の資金需要と政府のそういうものとの調整、それらの点が確実にできるというふうにお考えになっているのかどうか、そこらには特殊ないろいろな対策がなされなければどうしても消化はできないというふうに私たち考えるのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  118. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体、預金の増加が順調でありまして、昭和四十一年度では六兆円を下らざる預金を期待していいのではなかろうか。これは詳細に申し上げますと御了解できると思いますが、割合に消極的というか、堅実な見方をしまして、そのくらいのものは見込まれるわけであります。  それから、一体その貯金がどうなるかということは、これはただいま問題になっておる証券投資に使われるか、あるいは銀行を通じての貸し出しに使われるか、このいずれしかまあないわけでありまするが、貸し出しの趨勢を見てみますると、昭和三十九年度が三兆九千億くらいです。四兆億円に及ばない。そういう際で、しかも四十年度のことは、まだ半期くらいしかはっきりしたことはわかりませんけれども、これは非常に低調であります。そういういわゆる低圧経済下におきまして、昭和四十一年度の銀行貸し出しがどのくらいになるか。三十九年が三兆九千億、それに対して四兆五、六千億も見込んでいれば相当手がたいところではあるまいか、こういうふうに考えるわけであります。そうすると、貯金に比べまして一兆四、五千億の余りが出るわけであります。これが証券投資の財源になるわけであります。これは先ほどからるる御説明申し上げておるとおり、六千三百億以下各並行して発行されるところの証券の合計が一兆三千億ないし四千億でありますから、十分包摂できる規模のものである、かように考えております。今後とも貯蓄ということが非常に大事でありますので、これに大いに努力していきたいと、さような考えであります。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。ただいま、国債消化についての佐多委員の質問に対して、大蔵大臣はゆうゆうと消化できると、心配ないと、そういうことでございましたが、この心配があるという、そういういろいろな資料が二つあるんです。それについて簡単に申しますので、御答弁願いたいと思います。  一つは、全国銀行協会連合会——全銀協の試算であります。試みにはじいた数であります。これによりますと、全国銀行の預金の増加が二兆八千億と推定されている。先ほど大蔵大臣は四兆幾らと言われましたが、ここでは二兆八千億。貸し出しの増加が二兆五千六百億。そこで、先ほど来のお話で、大体四十一年度は一兆二千億円程度の有価証券の増発が見込まれるわけですね。そうしてこの一兆二千億の有価証券を消化するためには、まず第一に、日銀信用の大体二千億ぐらいの膨張が必要である。それから、第二は、外部の負債が三千七百億必要である。計五千七百億の負債増加が必要であると、こういう試算が行なわれているんです。これから見ますと、どうしても日銀信用にたよらなければならないのであります。こういうことが一点です。これは日本銀行総裁にもこの点、こういう試算があるんですけれども、はたしてこれは大体当たっているのかどうか、もし当たっているとすれば、ゆうゆうとは消化できない、やはり日銀の貸し出し増か信用にたよらなきゃならぬということが明らかである。  それから、もう一つは、先ほど、四十一年度の金融機関の貯蓄の増加が六兆六千億から七千億である、したがってゆうゆうと消化できるというお話ですが、これは新聞の批評でも、第一に、この大蔵省の公債消化がゆうゆうとできる根拠として発表した預金の増加については、民間金融機関が内部留保を充実した分とか、あるいは政府関係の融機関の資金の伸びを債券消化資金と見込む金は、はたしていかがであるかどうかですね、これは適当ではないんじゃないかと。それから、を消化する場合、金融機関によってその引き受けに差があるから、金融機関全体の資金量の増加分だけから消化可能範囲を割り出すのは適切ではないんじゃないかと。これが第二点。  第三点は、福田大蔵大臣が言うように、四十一年度から景気が上向き始める、もうそろそろ景気がよくなりそうだと言っているんですから、この点は、佐多委員が指摘されましたように、そうすれば資金需要が起こってくるんではないか。  それから、第四には、日銀が一兆円以上も貸し出しをしておる、オーバーローンの状態でですよ。そうして公債消化をするのでありますから、一体このオーバーローンというものを解消しないで、そういう状態のもとでの消化というものは、はたして健全であるかどうか。金融を正常化しようとすれば、日銀からも出っぱなしで一兆円以上もオーバーローンが続いているということは、非常に不健全じゃないかと思うのです。ですから、そういうオーバーローンが返されて、正常のもとになって消化が可能というのなら、これは私は正常な消化と思うのです。日銀が一兆円以上の貸し出しをやっているもとで消化されても、これは健全でないのじゃないか、こういう論拠があるわけです。この点について御答弁を願いたい。
  120. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、新聞で、銀行協会の検討しておる預金、それからその運用計画というものを私もちょっとつらだけは見ましたのですが、しかし、まだ大蔵省にもタッチはございません。おそらく日本銀行に対してもないのじゃないかと思いますが、大体、先ほどから申し上げておりまする、預金の増加六兆、そういうことで……。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、全体の金融機関ですよ。
  122. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 全体の金融機関のですね、私どもは保険会社なり信託会社なり全部を含めての話をしておるわけです。そういうことで、金融機関ともだんだんと話を詰めていきたい。資金審議会という機構もありますので、これにもおはかりをしたい、かように考えますので、今日の段階で全国銀行協会の試案等を論議のベースにするのは、まだ早いのじゃないかと、かように考えます。  それから、金融機関の内部留保の資金等を資金計画に持ち込むのはどうかというふうなお話ですが、全体の国家資金計画というような見地でありますると、そういうふうにするのが正当であるというふうに考えます。ただ、ただいまこの場でお話しになっておりますのは、預金が幾らになるか、その預金がどういうふうに使用されるか、そういう話でありまするから、もちろんこの場の議論としては、内部留保資金も加えて言っているわけじゃないので、預金だけで六兆になる、こういうふうに申し上げている次第でございます。  それから、オーバーローンの話がございましたが、これは今日やはり都市銀行のオーバーローンの状態にありますことはまことに残念に思います。しかしながら、これとても金融政策がだいぶ変わってきておる。また、その背景としての国の経済が、低圧経済というその類型の変化を来たしておるわけであります。そういう影響を受けまして、この一年間には非常な改善を見ておるわけであります。こういう金融情勢下、その背景となる経済情勢下におきましては、私はこのオーバーローンの正常化の問題は、なお進むべきものだと思いますが、急にそうはいかない。しかし、たいへんこの一年間には改善されてきておるということだけを御報告申し上げます。
  123. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 非常に膨大な発行計画で、消化見込みについては、必ずしもいま大蔵大臣の言われたような楽観論は考えられないと思うのですが、この消化可能額について、日銀総裁はどういうふうにお考えになっておりますか。
  124. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 計数的にこまかく下まで申し上げることは、この金融の性質上できないわけでございますが、大体私どもも、ただいま大蔵大臣がおっしゃいましたとおり、銀行をはじめすべての金融機関、生保まで入れまして、約六兆ぐらいにはなるのじゃないか、かように考えておるわけであります。したがって、貸し出しはまあ大体昨年どおりと考えますと、ただいまお話しのように相当余裕があると。そこで、国債をはじめ生保債その他のものは、まず私どもも消化できると、かように考えておるのであります。  それから、ただいま大蔵大臣もおっしゃいましたが、銀行協会のものはこれは単なる試算だということで、われわれも聞いておりますけれども、まだ正武には……。私は銀行におりましたのでよく存じておりますが、銀行協会としての数字は、もうしばらく様子を見ないとなかなかできないのじゃないか。われわれとしては、ただいまお話しのように六兆ぐらいはいくのじゃないか。まあ努力も必要だと思っております。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 オーバーローンについてさっき……。
  126. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) どうでしょうか、木村さん。あなたの持ち時間が後ほどあるのですから。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 答弁していないのです。
  128. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) オーバーローンにつきましては、ただいまお話しのように、依然として一兆五、六千億の日本銀行の貸し出しがございます。しかし、そのうちは、外国為替関係のもの、あるいはその他のものを入れまして、純粋の銀行の、つまり担保貸し出しといいますか、そういうものはただいまのところ、これは出入りございますけれども、約七千億台、かように考えております。だんだんこのほうは改善されているのではないか、かように考えます。
  129. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 七千三百億の公債、非常に膨大な公債だと思うのですが、これは財政規模、あるいは租税収入との比率においては非常に高い比率になっていると思うのです。外国の例を見ると、アメリカでも、イギリスでも、西ドイツでもこんなべらぼうに高い比率で公債を、戦後出しているところは、どこにもないと思うのですが、そういう点から見て、私たちはこの公債発行が非常に危険な規模である。財政規模との関連において非常に危険な規模である。こういうふうに考えるのですが、大蔵大臣はこれをどうお考えですか。
  130. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 財政との規模から言いますと、一七%ぐらいになるわけであります。しかし、昭和四十年、本年度におきましては、下半期において二千五百九十億円のものを発行いたしておるわけであります。それが順調に下半期、しかも、第四四半期だけでそれだけのあれを、措置をしているわけですが、もっとも、その中の半分ぐらいは資金運用部でこなしておりまするが、ともかくこなしておる。それから、わが国において、同じような政策をとりました昭和七年のときの公債、これは実に歳出総額の三割を急に発行するというような措置をとっておるわけです。私はそういうような日本の過去から考えまして、今日のような国民の負担も軽減しなければならない。しかし、一方において積極的に財政が、有効需要を喚起しなければならぬというこの際の規模としてはそう過高ではない——高過ぎはしない。さように考えております。
  131. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 戦前の例を引かれて、日本では過高でないと言われますが、戦前の実例は痛ましいインフレの結果をもたらしているのであって、あれを前例にされることは、そういうことを予見するような形になっていく、非常に不吉であると思うので、そういうものでなしに、最近の国際的ないろんな実例その他から勘案しながら、規模をおきめになることが必要じゃないか、こういうふうに思いますが、この点は次の四十二年度以降において、どういうふうにお考えになっているか、この点をお聞きしたいと思います。そもそもこの公債発行をおやりになるときには、ほんとうは長期財政計画をお立てになって、その長期の見通しの上に償還計画もあわせ考えながら、数、額をきめてスタートされるということがしかるべきであったと思うんですが、そういうことは何らなされていないのではないか、その点を、四十二年度以降を、どういうふうにお考えになるか。
  132. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど総理からお答えがありましたように、公債政策はいろんな意味を持ちますが、一つはフィスカルポリシーというか、この財政に景気調整的な機能を持たせたい。こういうことであります。同時におくれておる社会資本の取り戻しをやる、こういう使命も持っておる。そういう角度から考えまするときに、いままでのように収支均衡ではまいりませんから、今後は景気がいいというときには、財政はやや低目な姿勢に移る、それから、景気が非常に悪いときには財政が積極的な役割りを果たす。そのために拡大をされる。そういう考え方に従いまして公債の額も伸び縮みが出てくるわけであります。つまりそういうようにして民間の経済活動と、それから政府の経済活動、つまり財政、その総和が、これが安定的に成長していくということをねらっておるわけであります。したがいまして、今後は景気の推移によりまして、財政の規模は弾力的にきまっていく。したがって、公債の量も、そういうふうに規定されておるということになるのであります。これを、国債は今後七年後の償還で発行しますが、その先々のことまでなかなか計数的にここで御審議願うということは、かえってこれは適当でないのではないかと、そういうふうに考えておるわけです。ただ、当面この数カ年間のことを考えますと、四十二年度、四十三年度、これは決定的に低圧型の経済であって、したがって、財政が大いに活躍しなきゃならぬ。したがって、その財源としての公債、これは七千三百億円の四十一年度よりはやや私は増加するであろう。そういうふうに見ております。したがって、その財政経済政策の結果、一面において景気は回復される、租税収入もふえてくる、そういうふうな状態になることが予想されますので、四十四年、四十五年と、そのころになりますると公債の発行額は、まあ頭打ちというか、漸減の方向に向かい得ると、こういうふうに考えておるわけであります。しかし、公債はそういうフィスカルポリシー的な意味を持ちますので、これがそういうふうに弾力的に用いられるということは、経済の動きを安定化させる上において相当重要な働きをなすことがあっても、これが適切に運用される限りにおいては害するところはない。こういうふうな見方をしております。
  133. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 大蔵大臣のお話によりますと、今後数年間は公債発行もやむを得ずというふうにお考えになって、しかもその幅については景気変動との間に伸び縮みがあるけれども、しかし、大体日本の経済発展なり、あるいは財政の規模の拡大ということを考えていくと、公債の発行の額も累増をしていくのじゃないか。そうすると四十三、四年には一兆円をこしてしまう。それが累増をしてくると、四十五年には残高は五兆以上に達する。そういうふうに累増していって、それを、しかも四十七年になっても償還の計画では償還を全部するというお見通しはないようでありますから、だんだん残高はふえていく。そうすると、償還の期間になって、元利払いその他を考えなければならないということになると非常に困難な事態に到達することは火を見るよりも明らかであると思う。そういう点について総理大臣はどういうふうにお考えになっているか、非常に重大な問題を含んでいる。こういうふうに思いますので。
  134. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公債は国民からの借金でありまするから、これは将来お返ししなければならぬ。これはそのとおりであります。しかし、その返し方につきましては、いろいろのことを考えておるのですが、昭和四十年度に発行します二千五百九十億円の公債、これはその期限の到来する四十七年度においてこれを現金償還をしたい。そのための積み立てを早手回しにやっていきたい、こういうふうに考えています。  それから、昭和四十一年度において発行する七千三百億円の公債につきましては、これは四十年度と違う性格のものであるというふうに考えております。つまりあとに残る国民の資産、それを引き当てにして発行するものである。でありまするので、私どもとすると、二十年か三十年くらいの償還期限のものを出したかったのです。ところがこれができない。市中の状況からどうしても七年だというようなことで七年債を発行する。しかし、そういう性格のものであるにいたしましても、七年の償還期限をつけましたので、この際できるだけ七年後における現金償還のための努力をする。そのためのいろいろな積み立てをやっていきたいというふうに考えておりますが、これは必ずしも七年で、そのときに全部を現金償還をする必要があるかというと、公債の性格上そうは考えておりません。これはやはり二十年、三十年というその資産に見合う性格のものでありますので、その間に返していけばいいものである。ですから、相当部分を借りかえでやると、こういうことも私は考えてよろしいのじゃなかろうか、そういうように考えておりますので、とにかくこの償還につきましては、国民に何の御心配もかけないということを旨としてやっていこうと思っております。
  135. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 佐多君、時間がまいっております。
  136. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 はい。膨大な公債を発行する計画を立てながら、長期の財政計画についてはほとんど具体的な策定がなされていないで、やみくもに今後のことをお考えになっている。しかも、今後はさらに公債発行が続くという、そうすれば——財政法第四条は、公債不発行主義だと思うが、特別な場合においてだけ公債が出されるという規定ですから、原則的には公債は出すべきでないという規定であると思うのですが、その規定がこわされて、その原則が破れてしまう。しかも、だんだん累増する公債の元利払いについては、大した検討もなく、しかも、七年後には相当大部分を借りかえをするというような、非常に安易な考え方をしておられる点について、私たちは非常な危険性を感ずるものであります。同時に、先ほど物価政策についてもいろいろお話を願いましたが、その物価政策についても、これだけ大きな公債政策がなされているのに、具体的な施策がほとんど考えられておらない。ことに強力な行政指導なり何なりが必要であるにもかかわらず、そういう点については何らの配慮もなされていない。これらに対して非常な不満を持っておりますけれども、時間の関係上私はこれで終わりたいと思います。
  137. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 佐多君の質疑は終了いたしました。  午後二時三十分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時五十三分休憩      —————・—————    午後二時四十八分開会
  138. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  先刻、平島敏夫君が辞任され、その補欠として塩見俊二君が選任されました。
  139. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 午前に引き続き、昭和四十一年度一般会計予算外二案を議題とし、質疑を行ないます。迫水久常君。
  140. 迫水久常

    迫水久常君 佐藤内閣は、すでにILO八十七号条約、農地報償、さらに日韓友好条約など、長年懸案であった難問題を解決し、その他なかなか見るべき実績をあげておりまするが、その人気は私どもが期待するほどは上がっていないことは、これは結局昭和四十年が不景気に明けて、とうとう不景気で暮れてしまったからだと思います。そこで、政府は不況克服の意欲を持って四十一年度予算を編成したのでありますが、早くも若干ながら景気回復のムードがあらわれ、政府でも景気は底を固めたと言明するほどになっております。国民は非常に期待をしておると同時に、またいろいな不安や疑問も持っておるようでありまするので、私はここに自民党を代表いたしまして、主として経済問題について、国民にかわって質問をする趣旨でお尋ねをしたいと思います。午前中佐多君も経済問題を取り上げられましたので、大体テーマは同じようになると思いまするし、また、偶然にも佐多君と私とは同郷の出身であって、ここで見比べられることになるのはまことにつらい話でございますが、(笑声)できるだけやってみたいと思う次第でございます。  政府は、今後日本経済を安定成長の線で導いていくという方針を出しておられるのでありまするが、この安定成長という表現は、池田内閣当時の経済のあり方を高度成長と称して、それに対比する立場で使われておるようでございます。実は近来の深刻な不況にこりごりした国民は、このことについて大きな期待を寄せておるようでございまするから、まずこの問題から入っていきたいと思います。  明治以来、わが国経済の最後のポイントはいつも国際収支でありまして、戦時その他非常時は別として、国内的に景気がよくなると国際収支が逆調になる傾向が出てまいりまして、そこで緊縮政策がとられて、内需を押えて輸出を増加に導くという、こういう形の循環が繰り返されてきたのであります。池田内閣になりまして、池田前首相の見識によって、いわゆる高度成長政策が打ち出された結果、積極的な成長ムードが生まれまして、予想外に高度の成長が果されたのでありまするが、ただいま申し上げました日本経済循環の鉄則はこの間にも厳として存在したのでありまして、実際に何べんか成長と引き締めとを繰り返したのであります。そして成長が高度であっただけに、この循環の落差はだんだんに広さを加えたのであります。池田内閣では、ただ成長を助長するだけであったと思っている人もあるようでありまするが、当時といえども成長スピードの出し過ぎについては、産業側に対しても、また資金を供給する金融機関に対しても常に強く警戒警報を出し続けておったのであります。ただ、成長の主たる動因が民間資金による設備投資であって、政府としてはその規模や速度を直接調整する具体的手段を持っていなかったものでありまするから、ムードに乗った勢いに対しまして、はらはらしているうちに現実に国際収支の壁にぶつかってしまうというのが常であったわけでございます。もっとも、この場合、引き締めに転ずる時期がとかくおくれ勝ちであり、そのためにかえって落差を大きくしてしまったという基盤は確かにあろうかと思います。高度成長と称せられて池田内閣当時の経済の推移はこのようなものでありました。佐藤内閣のいう安定成長という線では経済はどのような推移をとることになるでありましょうか、これが質問の要点でありまして、この際、佐藤首相御自身から安定成長路線のダイヤの大要を説明していただきたいと思います。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 午前中佐多君にもお答えいたしたのでございますが、ただいま御指摘のように、四十年の経済展望をいたしますと、不況に明けて不況に暮れたと、一言にして申せばさような状態であったと思います。国民生活を萎縮さし、ときにまた圧迫させた、こういうことでございますが、政治が国民生活の向上をさし、また、しあわせをもたらすと、こういうことが目標であります以上、この経済の状態にわれわれも真剣に取り組んでいかなければなりません。本年こそはこの不況克服、同時にまた物価安定、この二つの課題がわが内閣に課せられた問題だ、かように思って閣内におきましてもこれが対策に取り組んでおるわけであります。その際に、ただいま言われます安定成長ということばを使っております。私は、高度経済成長、これは過去においてりっぱな功績をあげたと思います。したがって、ただいま安定成長に切りかえたからといって、いわゆる高度経済成長を批判するという立場ではございません。しかし、この高度経済成長がもたらした各産業間の格差あるいは地域的な格差、これらのものが今日の不況を招来したともいえるのであります。経済は相互関連をいたしております。お互いに均衡のとれた発展をしていくことが望ましいのであります。そういう意味において、ぜひとも各業種間の均衡をとらなければならぬと思います。ことに中小企業や農山漁村における農業、漁業等はいずれも経済成長の面におきまして非常に弱い部門でございますし、その生産性が低いと言われております。この生産性を向上さしていかなければならない、こういうことで、これが今日の不況をもたらした原因だとも言えるのであります。経済の場合においてしばしば言われることでありますが、非常な高度成長をきたす、そういう産業部門が弱いものを引っ張り上げてくれる、こういう力もあります。これはもう確かにそのとおりだと思いますが、しかし、強いものと弱いものとの間の格差が非常に大きい場合には、むしろその弱い面について十分政治的な考慮を払わなければならない、かように考えますと、ときにその弱い部門が高度成長の他の面の足を引っ張る、こういうことにもなるのでありまして、過去においてこの経済のひずみを是正する、こういう意味で真剣に中小企業や、農山漁業等の弱い部門の生産性向上に努力してまいりましたけれども、他の部門の成長にとても追いつかない。そこで、この際は中小企業や、農業、こういうもののために、しばらく経済の成長を調整しなければならないような羽目になったと思います。いわゆる設備投資、供給能力、それを下回る需要といわれますのもこういう点にあると思います。したがいまして、いわゆる有効需要をふやして、設備が十二分にその能力を発揮するように経済を持っていかなければならない。これが今日の課題だと思います。そこで、いわゆるものの考え方あるいは財政の面におきましても大転換をして今回予算を編成した。不況克服のためには、いずれにしても積極的の大型予算を組む必要があります。そういう場合に弱い部門あるいは立ちおくれた社会資本の充実等、これに力を入れますが、同時にまた大幅の減税をする。そうして財政の果すその働きを、その効果を十分あげるように民間の力と合わせて経済を成長の方向へ持っていく、こういう考え方であります。このものの考え方に沿っていろいろ計画いたしましたものが経済成長を七・五%程度の目標にしよう、あるいは物価も五・五の上昇率にとどめよう等々のいろいろの目標を定めまして、そうして関係各省、いわゆる総合的に、経済政策が効果をあげるようにただいま努力している最中であります。いずれ詳細等につきましては、企画庁長官や、あるいは大蔵大臣等からお答えしたいと思います。
  142. 迫水久常

    迫水久常君 ただいまいろいろ詳細な、御親切な御答弁をいただきましたが、私は、きょうは安定成長ということを一つの大きなテーマにして御質問したいと思いますので、はなはだ恐縮ですけれども、一応安定成長という概念はこういうものじゃないかということを私は前提として御質問をさらに進めていきたいと思います。安定成長ということは、簡単に言えば、結局経済成長に関して高い成長率を目標としないで、成長率はむしろほどほどにして、時間的、地域的に業種的及びその企業の規模的、そういう各方面において落差を、浮き沈みの落差を小さくすることを主眼とする、そういう経済の成長のあり方だと、こういうふうに考えていいと思いますので、そういうことを前提としていきたいと思うんですけれども、そこで、お伺いしたいことは、そういうことの経済を主導していくために、具体的手段はどういうことになるのか、こういうことを伺いたいのであります。池田内閣では、最初成立当時、三年間の成長率を九・二%と策定したことを御記憶だと思いまするが、実際には三十五年、三十六年と続いて実質一五%ほどの成長率になってしまい、そこで国際収支の壁にぶつかって緊縮に転じたので、三十七年の成長率は実質五%に落ちたのであります。このように、あらかじめ成長率を策定することと実際の成長とは全く別問題であったわけでございまして、そうして内閣は、この間、前に申しましたとおり、成長を調節する何らの手段なきを嘆じておったような次第であります。私は、本年度公債が発行せられることになったことを、この安定成長指導の面からきわめて重視いたしまして、その意味からも公債発行の効用を認めるものでございます。すなわち、政府は公債の発行額を調節することによって経済成長の調整を可能にする若干の直接の手がかりを持つことになったと思うからであります。この関連においてさらに別にお伺いする点もございますが、安定成長実現のための具体策について、どういう手段で安定成長をしていくかということについて、大蔵大臣及び経済企画庁長官から御説明をわずらわしたいと存じます。
  143. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま迫水さんから、安定成長とは各経済部門の均衡ある発展だというようなお話ですが、私ども考えておりますのはもう一つあるのです。それも重要な要素でありまするが、同時に、経済がでこぼこなしに成長していくことという時間的な要素も含めておる、かように御了解願いたいのであります。そういう意味からいたしまして、今度財政政策として公債を使うことになった。これはどういうことかというと、いまお話にもありましたが、過去においては金融独走であります。つまり設備投資需要が多い。そうすると、その設備投資需要に応ずる金融をやってきた、これが経済の非常な走り続けに対しまして抑制的に働き得なかったという点なんです。今度はそれに、金融政策もさることながら、財政も景気調整機能として使っていこうと、そこで公債を使うということになるわけであります。景気が過去数カ年のように、民間景気が相当高度に熱っぽくなるという際には財政を消極的に使う。それから、経済が落ち込んでいるという際には財政を積極化いたしまして、政府の財政活動、つまり政府経済と民間の経済活動、この総和が年年そうでこぼこなしに成長する基盤を備えたわけであります。そういう方法によって今後時間的に見た安定ということを期していきたい、そういう考えであります。  それから、各経済部門の均衡調整ということにつきましては、これは経済があまりに高度に成長する際には、どうしても大企業が中心で産業を引っぱるという形にならざるを得ないのであります。低生産部門というものがますますおくれが目立つ。また、地域的に見まするときには、これは都市が中心にならざるを得ないというような傾向を持つ、あるいは民間の経済が主動型になるわけでありまするから、したがって、民間設備は非常に高度に進むけれども、政府の担当する活動、つまり社会資本の立ちおくれということが目立つわけであります。今後はそういうことを反省いたしまして、政府の受け持つ社会資本の立ちおくれ、これは財政を積極的に拡大いたしましてそういう任務を担当する。また、産業各部門のおくれに対しましては成長の度合いを落とす。落とすといっても、これは相当な高度なんですが、結局でこぼこのない程度、また、でこぼこを生ぜしめる根源である国際収支、これを狂わせない限度といううちにおける高い成長度でありますが、そういう成長度を落としまして、そして不均衡が出てこないような考え方を貫いていこう。成長度が低いから、それで日本の経済の発展が立ちおくれるかというと、そうじゃないと思います。あまり高い成長を企図するという際には、どうしても反動として低成長の時期というものが必ずある。しかし、適度の成長速度でいきますれば、これが継続は安定していくわけでございます。ちょうどウサギとカメみたいなもので、長い目で見ますると、ゆるみなく走り続けるカメのほうが結局高い成長をなし遂げるということになるだろうと、こういうふうに思うわけであります。さようなことで、安定成長を、質において、また、時間的な関係において実現いたしていきたい、かような考えでございます。
  144. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体大蔵大臣と同じような考え方であります。
  145. 迫水久常

    迫水久常君 ただいまの安定成長の定義は、時間的な落差の浮き沈みも少なくするということ、私の質問の中にも時間的とちゃんと書いてありますから、おそらく読んだんだろうと思いますが、よく了承をいたしました。現在不況であるということは、要するに、現実の需要と生産能力との間に大きなギャップがありまして、そのために企業の稼働率は低く、採算が悪くなっているということだと思います。そこで、不況を克服するためには、このギャップを埋めていくことが先決であるわけでありますが、このギャップはきわめて大きい、しかも、不況をかこった四十年度末の設備投資は四兆円をこえ、生産能力は引き続いて大いに増加しつつありますから、このギャップを埋めるためには、今後まことに巨大な有効需要の投入が必要なわけであります。藤山長官福田大蔵大臣も、今後このギャップが埋められて企業の稼働率が上がり、景気が本格的に回復するのには二、三年はかかると言っておられるようでありますが、この間における日本経済のあり方について、私は政府のお考えを承りたいと思うのであります。私は、ここで昭和三十七年の経済白書、この経済白書の署名者がだれであるかと思って見てみますというと、ちょうど経済企画庁長官おられなかったときとみえまして、池田勇人——経済企画庁長官事務取扱ですか、「池田勇人」と書いてあります。藤山長官のこころじゃなかったかと思うのですが、その経済白書には、日本経済は将来型が変わって、設備投資にかわって財政需要と個人消費と輸出とが成長を主動する型に転ずるという、いわゆる転型期論というものを、そう思い出すものでございますが、はたしていまや日本経済はそのように転型したものであるかどうか、そうなれば財政需要が有効需要の中心となるわけでございますから、今後公債は必然的に累積していくことでしょう。公債が累積していくことになりますと、インフレとの関係考えなければならなくなってくるでしょうと思います。一方、政府のものの言い方では、やはり本格的に経済成長の主軸となるものは設備投資であって、それが勢いを回復するまでの間財政需要を活用するものであり、したがって、公債発行も一時的なものというように聞こえるところもあるのでありますが、もしそういうことになって、財政需要というもののウエートが下がってきた場合には、今度は安定成長のたてまえとの関係は一体どういうことになるのか、今後当分の間、日本経済の指導はまことにむずかしいと思いますが、経済企画庁長官からある程度の見通しと計画とを説明していただきたいと思います。
  146. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) デフレギャップを埋めるのには本年だけではいかぬ、これは大蔵大臣も私もそう考えます。二、三年はかかるだろう。そこで、今後の財政主導型にした場合に、一方では民間景気が刺激されたら民間設備投資が出てくるじゃないか、それとどういうふうに調節するのかというのが御質問の御趣旨だろう、こう思います。むろん政府が財政を刺激の手段に使いまして不況から脱出するということは、民間の経済活動が旺盛になることでありまして、したがって、その面からいえば、設備投資というものもある程度出てくることは、これは当然なことだ。ただ、しかし、これがあまりに過多のように、乱に流れ——乱ということばを使って私はいいと思いますが、乱に流れちゃって、たとえば石油化学が非常なシェア競争をして無理な設備拡充をやり、あるいは新投資をしてやった、ああいう事態は、やはりこれは政府の行政の上で押え、あるいは指導していかなければならぬ。民主主義経済、自由経済の中でも、それはやっぱり今日の段階ではそういう問題について政府が指導的立場をとらなければいかぬと思います。同時に、民間の設備投資が、さつき午前中にも申したのですが、ある程度やはり生産性の向上、あるいは時代に即応するような合理的な設備投資のおくれている方面にこれが集中されていかなければならぬ、こう思います。その辺についても、いわゆる中小企業の合理化、近代化という問題について、政府がやはり指導的な立場をとっていく。そしてまいりますと、必ずしも局間設備投資というものが大きくなるとは考えられない。また、なってはいけないと思いますから、そういう方向に指導していかなければならぬ。そうしますと、いまおくれております社会資本の充実のために道路をつくる、あるいは住宅をつくるというものが、政府の財政支出によってある程度並行していき得る立場にあるのじゃないか。しかし、民間が、いま申し上げたようなことをこえて、非常に活動が激しくなってくれば、その面から民間の経済活動を政府が指導すると同時に、一時的には、あるいは財政を縮小しなければならぬ事態が起こると思います。望むらくは、民間の設備活動の意欲も衰えないけれども、正しい方向に向かいながら進み、政府の社会資本に対する投資もある程度圧縮しないでいけるというような状態が、業種間、あるいは社会間における地域間等の不均衡を是正しながら持っていけることじゃないか。ただ、このことは非常にむずかしいということであり、また、きめのこまかい各省の行政、力をあわせてやらなければならぬ、こうは思いますけれども、われわれのねらいとしてはそういうところをねらっていきたい、こう思っております。
  147. 迫水久常

    迫水久常君 ただいま長官のおっしゃいましたように、また、私も質問いたしましたように、これから当分の間の日本経済の指導というものは非常にむずかしいことだということを思いまして、簡単にこれは解決ができないものでありますが、政府としては常にひとつ十分御検討になって、今度のいずれ策定せられるであろうところの長期経済計画をおつくりになる場合には、十分にそういうことも考慮に入れたりっぱなものをおつくりいただきたいと思います。  次に伺いたいと思いますることは、国民は、本年の予算によって景気が回復に導かれることを非常に期待しておることは事実であります。ところが、この程度の予算ではその景気に対する刺激力はしれたものであって、景気は国民の期待するようにははかばかしくは回復しないだろうという意見も有力に行なわれておるようであります。先日もある会合で皮肉な人が、近ごろ田中幹事長はしきりに年内総選挙ということを否定しているが、あれは結局ことしの秋までには国民の期待するような景気の回復は不可能だということを自民党自身が認めているものではないかといった皮肉なことを言った人もありました。政府は、また、景気回復を促進するために、予算の支出をなるべく早期に繰り上げるようにするとも言っておられますることに対しては、世間ではほんとうに繰り上げがうまくいけば、年度終わりには金がなくなって工事が中絶し、景気回復が息切れをするのではないかと心配をしておる者もあるようであります。景気の回復ということばによって数年前のような好況がことしの秋に実現すると考えるような人はまさかないと思いますが、国民は、ことしの秋には景気は大体どんなことになるのだろうかということを何とか具体性をもってつかみたいということを願っておるようでございまするので、この際、大蔵大臣なり、あるいは経済企画庁長官なりから、ひとつ何かうまい事例でも引いて絵解きをしていただければしあわせであると思うのであります。  なお、私は、いま解散ということばを出しましたが、もし総理大臣において解散について何かおっしゃりたいなら、この機会に御答弁を願ってもけっこうでございます。
  148. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国民は景気がどうなってくるかということについて重大な関心を持っております、これはそのとおりに思います。しかし、景気がどうなるかということにつきましては、二つの意味を区別して考えなければならない、こう思います。いま膨大なデフレギャップというものがある、これを一挙に解決するということは、私はきわめて困難である、また、したらたいへんなことになる、するためには、何十%の経済成長を一挙にやらなければならぬ、こういうことであります。それはすべきではない、こういうふうに思いますが、このデフレギャップという問題が大体のところ解決されたというところになりませんと、全国おしなべての企業は、まあ例外がありましょうが、大体において企業が高収益の状態だというところまでいかないと思います。そういうところまでいくのには、私は二、三年の期間はかかる。しかし、そういうことを景気がよくなるということの意味として考えておるという人もありますが、同時に、そうじゃなくて、そういう状態に向かって堅実に経済が歩み出したというはっきりした証拠が立つ、これをもって景気回復だ、こういう人もあるわけであります。そういう後の意味からいいますると、私は、昭和四十一年度という年は、まさに二、三年後の正常経営、そういう状態に向かって企業が堅実に着実な歩みを始める年である、こういうふうに考えるわけであります。現に昨年の十一月から、すでに鉱工業生産は十二月、一月と上がり続けておるわけであります。ことに一月の上がりは非常に大きいです、三・八%。あるいは出荷指数は十二月から好転しまして、一月も好調であります。あるいは在庫率、これは一昨年の水準まで調整を終えておる、こういうような状態です。まさに私は、景気は昨年末を境にいたしまして上昇に向かっておる、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。幸か不幸か、昭和四十年度、本年度の財政の支出が非常におくれてきた。昨年の暮れからこの三月に集中しておるかの感があるのであります。これは私は景気の上昇に大きな影響を与えておると思います。したがいまして、今日この時点で一体景気がどういうふうに動いておるか。私が申し上げましたのは一月の時点のお話でございます。今日も相当の動きを始めているのじゃないか。この調子が昭和四十一年度、四月から始まる年度に乗っていく。四十一年度という年は財政が非常に拡大し、財政主導型の経済ということでありまするが、しかも、これを上半期に支出のウエイトを置いていこう、六割の契約をしよう、支払いベースでいくと、四割程度のものは支払いを了するようにしよう、こういう考え方でございますが、この傾向がおそらくこの支出促進計画に乗っていく。で、四十一年度という年は、年度初頭から相当の高さの成長で一年間を経過する、こういうように見ているわけであります。私は、昭和四十一年度、この年を通じまして、本格的な企業の体質改善、景気回復に向かって着実な動きを始める、こういうふうに確信をいたしております。  最後に、迫水さんから、金を上半期に使い過ぎたら、下半期はからになるじゃないかと、こういうお話でございますが、六割の契約で四割の支出であります。決してこれはあとがからになるわけじゃないので、半分ばかりはあとに残るわけでございます。年度末にいつも集中して、年度末に相当ふくそうするという状態が著しく改善されて、ノーマルな状態に移る、このノーマルな状態を今後とも続けていく、こういうことになるので、その辺の御心配はないと、かように考えております。
  149. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大蔵大臣で大体御説明がありましたけれども、ごく簡単な意味でみんながどういうふうに見ているかといえば、たとえば最近アンケート調査で、従来は中小企業は金融が苦しいとか、あるいは税金が高いとか、そのために困るのだという返事が非常に多いのです。ところが、最近、昨年の暮から本年にかけては、注文がないというのが圧倒的に多くなっております。で、これらの数字が逆になっても、全然注文が少ない——ゼロになるわけはないと思いますけれども、そういう数字が変わってきて、注文は出てくるけれども、金融がうまくどうもつきにくいとか、あるいはそういうことが同じようになってくるような状態に秋になればなるのじゃないか。中小企業に対する末端の受注が相当いまよりも改善されてきて、仕事はとにかく出てくるのだと、こういう事情にあろうかと思います。
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 解散についてのお尋ねがありましたが、ただいま解散は考えておりません。ただ、その解散についてのお尋ねになりました理由として、景気の回復ができないから解散はしないんだろうと、こういうたいへん皮肉な言い方をしておられますが、ただいま大蔵大臣がお答えいたしましたように、すでに不況はいま脱しつつある、そうして上昇しつつある、こういう状況でございますから、国民の皆さん方は、いまの経済の実態について十分御認識があると思います。これとは別に、解散は独自の立場で考慮されるべきものだと私は思いますが、ただいま冒頭に申しましたように、解散については考えておりません。また、景気は必ずよくいたします。どうか御安心願います。
  151. 迫水久常

    迫水久常君 よく了解をいたしましたが、景気がよくならないから解散をしないんだろうと言ったのは私ではなくて、ある人はと、こういうことを申しておったことをもう一ぺんリマインドしていただきたいと思います。  政府は、本年度の成長率を名目一一・三%、実質七・五%と見通されておりますが、政府がいわゆる安定成長下における標準的成長率としてこの数値を打ち出されたものでありましょうか。もしそうだとすると、私は、実は安定成長下における標準的成長率としては、これはいささか高い数字ではなかろうかと実は思うのであります。この点、遺憾ながら佐多君と同じようなことを言うようでありまするが、安定成長下においては高過ぎるような感じがいたします。しかし、こういう数字を出されたのは、本年は不況克服の年と銘を打っておられる立場上、いわゆる標準成長率とは無関係に高い成長を目ざしたものであるならば、前の質問と関連いたしまするが、もっと高い目の成長をことしは目ざすべきではなかったか、不況克服という点からいえば、もっと高い目の成長を目標とすべきではなかったか、こういうような議論もあり得るわけでありまするので、政府がこの成長率を策定された考え方をひとつお伺いをいたしたいと思います。
  152. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体この計算を出しました大きな基本としては、個人消費の支出は、ほぼ例年どおり伸びていくであろう。それから、民間設備投資は、まず四十年度の横ばいか、ちょっと上だ。それから、民間住宅投資は相当な伸びがあって、あるいは四十年度よりは若干上回るのじゃないか。貿易に関しては、本年度は昨年ほどは伸びないであろうけれども、一〇%前後のものは伸びるのじゃないか、そういうところから考えまして一応の基礎の標準をつくりまして、そうして景気を刺激するという意味から申して、財政投融資が出てくるということを考えて見ますと、七・五%ぐらいな成長は可能でもあるし、また、それによって経済が刺激されていく、そのくらいな財政投融資の力を持っていく、こういうことで、景気回復に役立ってくるだろう。しかし、長期のこれからいわゆる均衡ある安定成長に乗せてまいりますときになりますと、日本経済も、とにかくもういわゆる戦後の経営を終わって、新しい出発に対するような時期でございますから、そうそう高い成長ばかりが期待もできず、また、不必要に高い成長だけを意図しますと均衡を欠くようになってまいると思います。そこで、その場合にどの程度の成長率がいいか、欧米並みの成長率のうちのどの程度のところをとるかということは、今後の課題としてわれわれも十分考えてまいらなければならない。当面の問題としては、景気を刺激しながら、あまりに乱に流れないようにという意味からいって七・五%ぐらいが適当だと、こう考えております。
  153. 迫水久常

    迫水久常君 次は、公債発行がインフレにつながるかどうかという問題でございます。先ほどの佐多君の質問によりますると、社会党は、いますぐにもインフレに突入するといったようなものの言い方をされておるようでありますが、これは別といたしまして、日本国民の中には、戦時中の不正確な記憶によって、ばく然と公債はインフレにつながるという不安を持っている者は少なくないことは事実だと思います。昨今の株価の高いのは経済の実勢を反映しているのではなくて、インフレの恐怖が大きな材料になっているのだと言う人もあります。ここも、言う人もありますということで、私がそう言ったということではないことを御注意願いますが、また、一方には、不況克服を目的とする以上、政府はもっとインフレ含みの予算を編成すべきではなかったか、もしケネディさんが日本にいたら、おそらくあっというような予算を組んで、二年も三年もかからないで成長を本格的なものにしたであろうと言うような人もおるのでございまして、そういう人たちは今度の予算を見てインフレを連想しているわけでございます。私は、今度の予算は、池田内閣当時のいわゆる超均衡予算を脱却しただけで、きわめて健全な予算であり、むしろ政府としてはインフレに対する警戒、ことに国際的金融機関が受けるであろう感触に対する配慮等のために、不況克服の希望に対しては、やや中途はんぱなことになってしまったものではないかとさへ考えるものでありまして、この予算のためにインフレが起こるとは決して考えておりませんが、将来に対する見通しを含めて、あらためてこの点を解明していただきたいと思います。
  154. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回初めて国債を発行することになったわけでありますが、これは三つの理由を考えております。  第一は、先ほども申し上げましたが、社会資本の立ちおくれ、まあ非常に目立ってきたわけです。住宅にいたしましても道路にいたしましても、あるいは過密都市対策、こういうようなことがもう数十年のおくれじゃなくて、百何十年のおくれというくらいにまでなっておる。これはもう政府の財政に期待されておるところが非常に大きい。そういうことを考えると、財政の需要がだんだんとふくらんでくるわけです。これに備えるところがなきゃならぬ。その備えとして、しからば第二の問題としては、増税をするかというと、今日の国民所得の増加状態、これは一人一人をとってみれば二十番目以下に位するわけであります。その国民所得の状態において増税ができるかというと、これはなかなか困難である。むしろ減税をして国民に蓄積の機会を与えるということを考えなきゃならぬ、そういう問題に財政は当面しておる。また、同時に、もう一つの問題は、先ほど申し上げましたが、財政が、この際、景気調整機能を持つべきである。こういうことを考えまして、この三つの論点に立ちまして公債を発行すると、こういうことになったのでありますが、世間では二つの見方がありまして、一つは、インフレになるんじゃないかと、こういう見方でありまするが、一体、国債発行をしてインフレになるか。これは結局財政の規模がそれによって膨大化するわけでありまするが、それが度を越すかどうかという問題にあると思うのです。これは公債を使うか使わないかじゃなくて、税を使っても同じなんです。国の中で最大の消費者である政府が、物資を、資金を、労働力を使い過ぎて民間の需給が破れるということになれば、それはインフレになる。ところが、今日のわれわれの判断では、非常なデフレギャップがある、それをなかなか埋め尽くせないというような状態下において予算が膨大化される、決して民間の資金や物資や労働力の需給を圧迫するということはないと、こういう判断で、決してインフレ要因というものはないわけであります。で、インフレについていまお触れになりましたが、戦時中というか、戦前の高橋さんのころのことを連想されるという人が多いという話でありまするが、これは連想するとほんとうは逆なんです。高橋さんは、昭和七年に、歳出の三割を公債に依存するということを始めまして、八年も九年もやったわけです。そうすると、九年には非常に景気がよくなってきて、もう公債を減らしてよろしい、漸減です。十年にもまた減らしております。十一年にも減らしておる。景気が回復するものですから公債を減らし得るわけです。税の収入が伸びる結果であります。それから、その期間にインフレが起こったかというと、物価は実に安定しておる。昭和十一年、高橋さんがなくなるまでの日本の物価というものは、むしろ下がったんです。ですから、今日、戦前を基準といたしまして、国民生産は何倍になっておる、物価は何倍になっておる。その基準というのはいつかというと、九年、十年、十一年。戦前、昭和の時代において最も安定した時期は、この公債政策がとられたときなんです。その公債政策のあとで高橋さんが二・二六事件でおなくなりになる。で、戦争経済に入る。これは戦争がインフレにしたのであって、公債がインフレにしたのではないんです。公債は非常に日本の経済を安定発展さしたわけなんです。その同じことが私は今後行なわれるであろう。今後二、三年は、どうしても公債が昭和四十一年度に比べるとふえていくと思います。これは低圧経済下においてインフレの危惧というものは全然ないと思います。それから、一方において、さあそれじゃお話しのように、少し消極に過ぎるんじゃないかという意見がありますが、今日それはデフレギャップというようなことを考えますと、公債を一兆五千億出す、二兆円出して、そして一挙にこのデフレギャップを埋めるということは考えられないわけじゃない。しかし、その際は、過去数年間に行なわれたような高度成長にまた輪をかけたようなことが行なわれるわけであります。そうなったらあとは一体どうなるか、もうたいへんなまたひずみです。これは救いがたいような状態が出てくるだろう。そういうようなことを考えますときに、デフレギャップ問題というものはまあ二、三年で片づける、時間を要する。しかし、それに向かって堅実な歩み、しかも、各界均衡をとりながらいけるような政策、それにスタートしようというのが今回の七・五%、公債にすると七千三百億円という規模を採用したゆえんであります。
  155. 迫水久常

    迫水久常君 公債がインフレにつながるというのは、公債は麻薬のようなものであって、一度使い出すと歯どめがきかなくなる危険があるというところからいわれているのでございますが、そこで、公債の一応の限度、先ほどから大蔵大臣のお話の中にありますることは、建設公債に限定するとか、日銀引き受けによらないで、市中消化のみに依存するとかいうようなことは、いわば形式的な基準であるような気がいたします。もっと何か量的な実質的な基準がないと、やっぱり公債発行については少なからず不安が残るような気もいたすのであります。ただいまも大蔵大臣がおっしゃいましたように、財政の適正規模、こういう見地から御説明になっておられることはまことにそのとおりだと思いますけれども、それでは財政の適正規模というものはどういう基準できめられてくるかという、またそこに問題が出てくると思います。そこで、私は、公債発行の限度を何か計算的に量定する方法を政府において真剣に検討すべきではないかと考えるものであります。公債は、要するに追加購買力造出の手段でありますから、追加購買力が物資供給の限度をこえて造出されればすなわちインフレになるわけでございますし、また、公債によって当然内需が増加してまいりまするから、その内需が過度に増加いたしますれば国際収支に悪影響を与えてくるということは、これは必至であります。すなわち、公債を活用しつつ、インフレを避け、安定成長を確保するためには、どうしても公債の発行限度の策定が必要だと思うのでありまするが、戦争の前にも、私ども大蔵省におりますころ、公債発行の限度ということについては勉強をしたこともございまするが、その点は大蔵大臣も御承知と思いますが、いまは電子計算機という便利なもののある世の中でありますから、国際収支への影響を主たる目安として、公債発行限度のおおよその見当は相当の権威を持って量定できると私は確信をいたしております。経済企画庁においては、量的に公債発行限度を、たとえばさっき向坂局長は、成長率や物価の騰貴率というものは、いろんな要素を入れて、そうして電子計算機で計算をするんだと言われたんですけれども、そういうようにやられたら、公債発行は、大体今日の状態においては何千億円程度ということが量的に出て、それは国民に非常に安心感を与えるのではないかと思いまするが、その点について御意見を承りたいと思います。
  156. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国債の発行限度は、これは科学的にきめられなければならぬ、これはお説のとおりでございまして、ただいまでは経済成長ということを考えまして、その高さを達成するために財政をいかなる規模に持たせるべきか、その経済成長の基盤には国際収支がおるわけであります。それは国際収支から出発するわけであります。経済成長の中で占める財政の役割り、その役割りの中で、地方団体もありますし、あるいは政府関係機関もありますし、また、政府自体もおるわけですが、それらの中の政府の役割りというものを考えまして財政の規模がきまるわけです。その規模がきまった中で、租税収入の見積もり、また、減税の必要があるかどうかという問題を考量いたしましてきまる。つまり直接的には財政の規模が国債の額を決定すると、こういうたてまえになるわけでありまして、まあいわば市中消化でありますとか、あるいは建設事業などというものは第二次的な意義を持つことだと心得ます。適正なる財政規模はどうだというような点、この測定ですね、これにつきましては電子力時代だというお話もあります。なおさらにこれを科学的にきめるためにこれは努力していくということだけを申し上げさせていただきます。
  157. 迫水久常

    迫水久常君 まあ以上で公債に関連のある質問を終わるわけですけれども、ちょっとここで私見を述べさせていただきます。  率直に言って、池田内閣当時の超均衡財政ともいうべき公債なしの財政では、民間金融と政府財政との間のチャンネルは、財政投融資の線で細々と片道交通が行なわれていただけで、まことに私はぎこちないものであったと思います。それが、この超均衡財政ということが、実はそれが困るほどの高度成長に突き進んでしまった一つ原因だとさえ、私は言えるのではないかと思うのでありますが、ところが、今度公債を発行することになりますというと、民間金融と財政との間に大きなパイプができて、全体の資金政策上、より高度な、精密なメカニズムができたと言ってよいと思います。政府のいわゆる安定成長も、公債の発行があればこそ、実現の可能性を多くするものであるということは前にも申しました。社会党佐多君の質問を聞いておりますというと、公債はインフレに結びつくというところから、公債は悪いものだ、悪なりという立場から、いろいろ議論されておるようでありますが、政府は決して公債を悪の範疇に属するものとはお考えにならないで、公債のある場合のほうが、公債なしの場合よりも、はるかに高級であるという自信でひとつやっていただきたいと思います。  次に、景気の問題に関連してもう一点お伺いをいたしたいと思いますが、これは三木通産大臣に御答弁をお願いいたしたいと思っております。景気の問題、私は、今日の不況の根本原因たる需要と生産能力との間の大きなギャップの発生については、実は民間にことに重大な責任があると思っておるのであります。私は、現在このギャップの縮小について、政府、ことに大蔵省はあまりにも自分で責任をしょい込み過ぎているような感じがいたします。このギャップを埋めるのに、政府側では、財政需要による有効需要を投入することを考えているわけでありますが、他面、民間側において、同町に、生産能力のほうの合理化、老朽淘汰、過当競争の排除など、生産能力を整備するための措置が講ぜられてしかるべきだと思います。そのために必要な体制が当然民間においてつくらるべきであり、政府もそのためにしかるべく措置すべきだと思うのであります。私は、海運業界における一つのりっぱな先例を考えながら、この質問をしておるわけでありますが、通産大臣からこの点について、事業関係大臣を代表して、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  158. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 経企長官や大蔵大臣からお答えになっておるとおり、相当なやはり設備過剰がある。生産と供給とのアンバランス、これはまあ一がいに言えぬけれども、三割ぐらいはやはり過剰設備があると見なければならない。この生産と供給のギャップを埋めるためには、一つには、やはり有効需要を喚起しなければならぬ財政も大いにやろう、輸出も伸ばさなければならない、こういう点で大いに需要を喚起すると同時に、一方においては、やはり今後の、いままあ非常にこういう過渡期でありますから、生産調整などもやっておるわけであります。不況カルテルなど、これはまあ一時的なもので、今後は設備投資に対しては、やはり各企業が分野あるいは将来の市場なども、ただシェア競争だけで設備投資をやるというのではなくして、長期的な見通しを立ててやらなければいかぬ。それに対しては、民間も責任も持たなければなりませんが、できるだけ通産行政の今後においては、そういうことに対する将来の産業構造に対する親切な行政指導というものは通産省のやはり大きな課題だと私は思っております。そういう点で、産業構造審議会という場もあるし、あるいはまた、官民合同の懇談会という方式もあるし、今後はむやみにやはりシェア競争で過大な設備をやらないように、やはりこの合理的な設備投資をやるということと、また、老朽な施設を思い切ってやはりスクラップ化しなければならぬ。ただ機械の設備があるから、これに対して需要が足りないのだ、足りないのだというだけでは、国際競争力にはならない。だから、思い切って老朽の施設を破棄して、そうして新鋭な設備にかえていく、そういう体質の改善が行なわれなければならない。そこで税制、金融の面でスクラップ、老朽施設を破棄するための優遇措置を講じてあります。今年度の減税の中にもこれを取り入れてある。そういうことで、また、そればかりで十分とはいかない。繊維産業などに対しては、転廃業に対しての老朽な機械買い上げの資金も、まあ金額は事務費も入れて五億五千万ほどですが、計上してある。これはこういう税制だけではなしに、もう少し思い切った措置が、こういう老朽施設のスクラップ化というものに対して講じなければならない。こういう総合的な施策が、やはり日本の産業の国際競争力を弧化して、将来に飛躍する基盤をつくるものである。こういう見地から、産業の行政というものはやっていかなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  159. 迫水久常

    迫水久常君 まあ、ただいまの通産大臣のお話は、きわめてそのとおりだと私は思います。したがって、問題は、通産大臣がそれを実行に移されるかどうかという点に残っておるのでありまして、週刊誌等の問題になることを心配しないで、ちっとは通産省の話がそういうようなことをやられて、週刊誌に問題になってもいいから、勇敢にひとつ実行されることが、日本の経済の安定成長のためにぜひ必要だと思いますので、通産大臣はじめ皆さん方のひとつ御奮発をお願いいたします。  次に、物価の問題についてお伺いいたします。  卸売り物価については、景気の回復につれて若干強含みの状態になることはあっても、インフレによる卸売り物価の一斉騰貴というようなことは少なくとも当分——長い間の当分ないと思いますから、ここでは消費者物価の問題だけを取り上げたいと思います。  消費者物価の騰貴は、現在まさに国民の最大の関心事だと思います。あらためて統計を引用するまでもなく、昭和三十五年以降の騰貴率は驚くべきものであります。しかし、この間、実質的な生活はともかく毎年向上してきておったのでありまするが、四十年には十年ぶりで微弱ながら実質収入が減少したというのですから、これはショックだと思います。いまの国民の心持ちは、政府に対してほんとうに何とかしてくれという立場だと思うのでございます。この消費者物価の騰貴の原因については、いろいろと説明されておりまするし、いまさら論ずるまでもありませんが、生鮮食料品において若干のデマンドプル的要素が存在する場合のほかは、大部分はコストプッシュによるものであるということは、これは定説だと思います。私もいろいろ勉強してみましたが、昭和三十五年から三十九年までの間の消費者物価の騰貴率と、勤労者の可処分所得の増加の動きとの間には、一定の関係のあることが十分に看取されるようでございます。ただ、昭和四十年の数字だけは、まことに異常であって、ちょっと説明がつきませんが、とにかく、概括的に言って、消費者物価の騰貴は、結局、経済成長による国民所得増加の投影だと言ってよいと思っております。国民はいまどういうことを心配しておるかというと、本年度の五・五%の上昇という率は守れるのか、あれよりももっと上がるのじゃないだろうか、一体、政府は消費者物価を調整するのにほんとうに何か手段を持っているのだろうかということを心配していると私は思うのでありまして、さっき佐多君のお話では、五・五%はとても守り切れないだろうということを言われたし、社会党さんのほうでは、政府は何も消費者物価を調整する手段は持ってはいないのだということをきめ込んでいるようでありますが、ひとつここで政府のお考えをあらためて披瀝していただきたいと思います。  参考までに私の意見を申し上げてみますと、政府は目下、供給不足のものについては供給増加をはかり、また、コストプッシュの除去については、中間コストを引き下げるため措置を講じつつありまして、その効果は相当にこれは期待できると思いますし、同時にまた、根本的に言って、消費者物価の騰貴が経済成長、所得増加の投影だとするならば、いままではいわゆる高度成長であったから、それを投影して、消費者物価も高度な上がり方をしたのだが、今後は安定成長に推移するのだから、それを反映することになると、消費者物価の上げ方も安定度を増すと考えて間違いないと思います。要は、政府がいわゆる安定成長ということに成功するかどうかということであって、これに成功すれば、消費者物価も落ちついてくることは当然だと私は思っておるのであります。  なお、本年度の五・五%という見通しについても、私は佐多君とは違って、うまくいけばそれほどは上がらないで、それ以下で済むのではないかと思っております。ただし、この場合は率直に言って、本年の春闘相場が非常に重大な関係を持つであろうと、私は考えている次第でございます。
  160. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体、今日の消費者物価の上昇の要因というものは、お示しのとおり、日本の経済も、非常に人口が多かった、労働力が余っているという時代から、逐次、労働力が少なくなってくるような状況に移り変わりつつございます。産業の拡大が、そうしたことは申すまでもございません。したがって、労働人口の供給が比較的過去よりも十分でないというところと同時に、賃金の平準化という問題が起こりまして、そして、それを吸収するだけの生産性の向上あるいは合理化というようなものが行なわれない部面に、いままで申し上げたような、いわゆる物価問題の一つ問題点がございます。ですから、合理化をやり、あるいは近代化をやって、それらのものをできるだけ吸収してまいらなければならぬので、賃金の平準化そのものに対して、これをチェックするわけにはまいらぬと思います。しかし、どうしてもできない部面があると、全然あることを無視するわけにまいりませんから、若干は当分やむを得ない、しかし、それもいま申し上げたように、お説にもありましたように、安定的な成長ということであれば、格差のない成長がいくのでありますから、たとえば中小企業が合理化、近代化に十分つとめていくということであれば、その仕事自体が吸収していくことになりますから、いま申し上げたような面での原因が除去されることになろうと思います。したがって、安定成長に乗せていくことが大事であることは申すまでもありませんし、当面の問題について、それぞれ供給不足のものには、緊急輸入をするとかなんとかいうような対策はとってまいりながら、いま申し上げたような安定成長の路線に乗り、ゆがみ、ひずみを直すほうに手を打ってまいれば、安定してくるものだと、こう考えております。
  161. 迫水久常

    迫水久常君 次に、国際収支のことをお尋ねいたします。  最近の新聞は、国際収支の前途が必ずしも楽観できないことを報じております。日本の輸出の増加はまことに顕著なものがありまして、数年前の倍になっていることは、うれしいことでございますが、最近の好成績が不況による国内需要の圧迫によるものが相当に含まれておることは、これは想像にかたくないと思います。景気の回復に伴う内需の増大につれて輸出の趨勢はどうなるであろうか、また、国際金利の関係で、貿易金融や短期資本の流動の趨勢は一体どうなるであろう、発行の可能性はどうだろうか、なかなかこういうふうな問題が多いと思います。率直に言って、今日まで政府が話しておられまする国際収支に対する見方は、私はやや甘いのではないかと思われるのでございまするが、日本経済の最後のポイントが国際収支であるということは前にも申し上げまして、先ほどからの御答弁の中にもしばしばその点が出てくるのでありまするが、国際収支についての政府の見通しや対策について、御説明を願いたいと思います。
  162. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総括的に一応私から申し上げます。  大体昨年は、御承知のとおり、四十年度は八十五億ドル、これを本年は九十四億ドル見て、約一〇%くらいな伸びを見たわけでございます。で、世界の買切の伸びというのは、七%くらい昨年ありましたが、本年は六%くらいなところでございます。ですから、そのこと自体は、やはり世界の貿易が縮小しておりますから、その中でわれわれがよけいなシェアを獲得していくということは、相当な競争をいたしてまいらなければならず、体質の改善もしていかなければならぬと思います。また、輸入のほうも、昨年の六十九億五千よりも、本年は七十六億ぐらいになろうと思いますので、若干昨年よりは伸び率が多いと思います。そういう状況でもって貿易のほうの収支はまいりますけれども、貿易外収支のほうは、やはり引き続き改善を見ないままに推移するのじゃないかということでございまして、これに対しては、相当今後海運の問題その他に対して力を入れてまいらなければならぬと思います。また、資本取引のほうになりますと、問題がいろいろ国際金融の関係からしてあると思います。あるいは、この点は大蔵大臣に御説明いただくほうが適当かと思いますので、略しておきます。
  163. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国際収支は最近非常にその形が変わってきたわけです。つまり、一昨年の中ごろまでの形は貿易が赤字である、それを資本収支の黒字でまかなう、したがって、ほんとうは借金経済、国際的な借金経済だと。一昨年の中ごろからその形が変わってきまして、経常収支は黒字である、それが資本収支の赤字によって減殺をされる、しかし、それでもなお黒字を残す、こういう形になってきて、たいへん形としては改善もされたというふうに考えております。そういう過程を通じまして、経常収支の黒を借金で消すという形、つまり、借金がそれだけ減ってきておる、こういう実態になってきておるわけであります。したがって、外貨保有高は二十一億ドルになりまして、多少はふえております。しかし、大体横ばいだというけれども、国際収支の根底にある借金は、ことに短期の外資は非常に少なくなって、内容は健全化されてきておる。私どもの見方では、だいぶんユーロダラーズなんかは流れ出ましたので、今後そう大きな響きはないと思います。それからユーザンスですね、これがアメリカの金利の関係であるいは減るのじゃないか、ドルユーザンスが、というようなことを言う人がありますが、今日までのところでは、そう大きな影響を見ておりません。しかし、昨今どうも、またアメリカで公定歩合の話なんか出ておるようでありますが、これが一体どうなるか、そういうような動きによっては、ある程度の影響は受けよう、こういうふうに思いまするが、ただいま申し上げましたように、短期債務をかかえる量がだいぶん整理してこられた今日におきましては、そう大きな心配を私どもはしておりません。  それで、今後の国際収支の傾向を見てみますと、輸出はおそらく、ある程度ずつ伸びておると思います。また、輸入もことしほどの落ち込みはないと思いますが、輸出と並んで伸びていきましても、今日の姿が輸出超過のバランスですから、同じ速度で伸びれば、ますます貿易バランスというものは、この黒字幅が大きくなるわけです。ただいま申し上げましたような一昨年以来の貿易パターン、これが当分続く、そして日本の国際収支の内容というものがだんだんと改善されてくる、そういう改善の過程を通じまして、外貨保有高を、さらにこれをふやしていきたい、こういう政策で臨もうと思っています。
  164. 迫水久常

    迫水久常君 次は、本年政府の大看板でありまする減税を話題にいたしたいと思います。  実は、私は、今回の減税をことのほか高く評価しているものであります。池田内閣当時もずいぶん減税をいたしましたが、それは自然増収の中から財源充当分を差し引いた残りを減税に振り向けたものでありましたが、今度の減税は、ゆとりある家計を実現するために、国民消費の増大にも資し、また、企業の採算性向上とその体質改善に資する趣旨において重要な政策の一つとして積極的に行なわれたものであります。そこで、私は、池田内閣当時の減税を「差し引き減税」と称するならば、これに対して、今回の佐藤内閣の減税は「天引き減税」と称すべきものであって、また、一そう仁徳天皇的であると称賛をいたしたいと思います。(笑声)減税は将来も引き続いて考えられるべきでありますが、私は、企業減税の面において、もう一段ひとつ奮発をしてしかるべきではないかと考えます。先ほどもちょっと話が出ましたが、日進月歩の技術革新に照応する生産設備の更新を一そう容易ならしめ、また、老朽設備のスクラップ化を促進して、生産能力の整備に資する等のために、資産の償却については一段と考慮していただきたく思うと同時に、中小企業に対しては、大企業との格差是正のため、まあ大蔵省が非常に大事にしておられます負担の公平論に必ずしも拘泥しない措置が一そう望まれるように思うのでございまするが、大蔵大臣の将来の税制に対する御見解を承りたいと思います。
  165. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今度の減税は、仁徳天皇まではまいりませんけれども、仁徳天皇以来と申し上げて差しつかえないと思います。(笑声)その中で、もちろん所得税を中心として取り上げておるわけでありまするが、企業減税もまた六対四の、その四の比率において取り上げておるわけであります。企業減税を取り上げることについていろいろ意見を言う人があるのでありまするが、今日、中小企業が非常に困っておる、これは不況がこれだけ長引きますと、抵抗力の弱い中小企業が弱るのは当然でございます。そういう点で、中小企業の特別減税を考えなければならぬ。それから、今日われわれが当面しておる問題は、やはり経済の不況を克服するということ、これも大事でございまするが、同時に、この不況を再び繰り返しちゃいけない。企業の抵抗力を、大企業も中小企業もつけなければならぬ、そのための蓄積、内部留保をふやすということに、これは企業の責任ではございまするけれども、税制において尽くすことができるならばという配慮をこの際加えるべきである、そういうことで企業減税を取り上げておるわけであります。  今後の税に関する考え方といたしましては、今度これだけの減税をいたしますが、今後といえども、冗費を節し、できる限りの余裕をつくって減税という考え方を進めていきたい。その目標としては、個人の課税最低限、これを八十万ぐらいのところへ持っていきたい。それから法人税につきましても、いま配当軽課ということをやって、これは非常に税制を複雑にしておりまするが、これを含めて再検討する、そして適正法人税率というものをつくって、これを目がけて進んでいきたい。さらに、いま税制が非常に複雑で、これは国民の目から見て理解しがたい面が非常にあるわけであります。そういう面を国民の税制であるというような角度から簡素化していきたい。そういうようないろんな角度から、今後財政の状況等もにらみ合わせながら、減税政策というものをねばり強く進めていきたい、かように考えております。
  166. 迫水久常

    迫水久常君 減税というのは、佐藤総理総理就任以前からの大看板であったわけですが、減税だけは幾らやってもやり過ぎるということは、これは私はないのじゃないかと思います。ですから、ひとつそういう方向で、いま大蔵大臣の御説のとおり実行せられんことを切望いたす次第でございます。  以上で経済関係の質問を終わるのですが、先刻来の問答を通しまして、こういうことが私はわかったような気がします。すなわち、政府は景気はすでに底をついたから、これからは徐々に上がりぎみになっていって、秋になるとずっとほのぼのとした空気が出てくる、それから先は、はなばなしくはないが、安定したテンポで景気は回復していって、いわゆる過去の好景気ほどではもちろんないが、逐次景気は本格的に立ち直ったと国民のみんなが感ずるようになる、その間は、国債の十分の歯どめがあるからインフレになる心配もなく、成長のテンポがほどほどになるから、消費者物価の騰貴もほどほどになるだろう、こういうことが政府考えておられる構想の大要だと思います。国民は政府を信頼しておりまするから、国民の期待を裏切らないようにひとつしっかりお願いをいたす次第でございます。  最後に一つ別な話でありますが、平和の問題について申し上げたいと思います。  日本国民の絶対の念願である平和の確保の問題について、いささか所見を述べながら、政府の御見解を伺いたいと思います。  日本が戦争に巻き込まれることなく、平和が維持されることを念願することは、平生簡単に平和を口に出し続けている社会党よりも、われわれのほうがむしろずっと強く実質的に考えておることは、鳴かぬホタルが身を焦がすのたとえのとおりだと私は思っております。(笑声)佐藤内閣が世界平和の問題、軍縮問題などについて積極的な意欲を示しておられることは、まことにけっこうなことだと思います。日本は自分のほうから戦争を始めたり、戦争に参加することは決してありませんから、日本の平和の大条件は、世界的な戦争が起こらないということだろうと思います。すなわち、日本が自己の平和を保持するための一番の近道は何かというと、世界戦争が起こらないようにみずからを処していくことだと私は考えております。  二十世紀における二回の世界大戦は、いずれも、存在する一つの世界秩序に対して新秩序を求める者が、無理してその願望を達成しようとした場合に起こっておるように私は観測いたします。すなわち、戦争は新秩序への願望が強くなり過ぎると戦争が起こっているのであります。大東亜戦争の苦い経験によって、新秩序の主張者に同調し、また、みずから新秩序を求めることはみずから平和を破ることに通ずるものであるということを私どもは深刻に知っておるはずだと思うのであります。ひとしく共産主義国であっても、ソ連と中共との間に一致のないのは、現在不一致であるように見えますのは、実はこの既存の秩序と新秋序に対する両者の立場の相違によるものと私は観測をいたしているわけであります。日本は平和でいることを念願いたします以上、将来新秋序の側に立たないで、現在存在する秩序の中にあって、それが沈滞することなく、日々新たなるように努力することのみが最善の道であると信ずるのでありまして、このことは、国際的ばかりでなく、国内的にも同じことが言えるようでございまして、私は社会党の方もよく考えていただきたいと思うのでございまするが、日本の平和確保のことにつきまして、総理から何か御抱負を聞かせていただければしあわせでございます。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。私は平和に徹するということを常々申しております。また、わが国の安全を確保すること、これまた総理として一番大事な問題だとも思っております。そこで、ただいままで提案いたしましたのは、いずれの国とも仲よくしていく。そこで、どうかお互いに独立を尊重し、また内政に干渉しないこと、そうして世界的な繁栄と、そして国際的な平和を確保していこう、こういうことを実は呼びかけておるのであります。いわゆる平和共存、これにつながるような考え方だと思います。ただいまいろいろ、新秩序、そういうものがしばしば事態をむつかしくするのだ、こういうような御指摘がございました。確かに新秩序、それが自然に生まれてくるならともかくも、新秩序をつくるために在来の秩序のあり方を力でどうこうしようという、これはたいへんな問題だと思います。過去におきましても、そういう事態、しばしば苦い経験をなめてまいったのであります。私は、自然発生的に発展することは、これをいなむものではございませんが、力によって特殊な状態をつくろうとする、これはどうもお互いに慎しまなきゃならぬことじゃないか、かように私も思います。
  168. 迫水久常

    迫水久常君 ここで私は質問を終わりまするが、終わるのにあたって、総理はじめ閣僚にお願いをいたしたいと思いますることは、ケネディさんのことばのように、国家は自分のために何をしてくれるかというふうに考え日本国民よりも、自分は国家のために何をなし得るかと考え日本国民のほうが多い、そういうひとつ日本国であるように、正しい政治をしていただきたいということをお願いをいたす次第でございます。  どうも質問の技術が拙劣でございまして、総括質問でありながら、棟梁を引っぱり出すことが少なく、もっぱら職人衆を相手としてしまいまして、総理には失礼をいたしました。それに質問が経済問題に片寄り、しかも時間の関係で、中小企業の問題や金融の問題、これらはいずれも国民が大きな関心を持っておるとは思いますが、少しも触れる機会がなかったことを遺憾に思うのでございます。今期国会は、何となしに太平ムードが支配しまして、たいした理由もないのに審議がおくれがちでございまして、こういう状態では、案の年度内成立も、これではよほどの努力が必要と思われますが、政府は、閣僚一同たるむことなく、審議の促進のために十分に努力、精進していただきたいということを最後にお願いをして質問を終わります。(拍手)
  169. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 迫水君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  170. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に北村暢君。
  171. 北村暢

    ○北村暢君 私は、主としてベトナム問題、それから中国の核武装の問題、それから防衛問題等について御質問いたしたいと思いますが、私はこの外交問題については全くのしろうとでございまするので、ひとつ国民の一人が聞いているつもりで親切な答弁をしていただきたい、このことをあらかじめお願いをいたしておきます。  総理は、施政方針の演説で、平和に徹することを外交の基本方針とし、最も緊急を要する問題はベトナム紛争の平和的解決であるということを強調をされておるのでありますが、その具体的な努力というものがどのようになされたか、これをまずお伺いをいたしたいと思います。
  172. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほども、わが国の平和に徹するその態度について御説明をいたしました。もちろんこれはただいまの憲法の私どもに期待するものでもあるし、また国民とともどもにこの憲法のもとにおいて積極的な攻撃的な戦争などするものではない。そういう意味で、防衛的なことは別でございますが、攻撃的なものではないのだ、これが十分各界にも理解されなければならない。  そういう立場で国際的な情勢を見ますると、ただいま危険をかもしておりますのが、ただいまのベトナム問題。ベトナム問題には、日本が積極的に参加する意思はもちろんございません。また、このベトナム問題が直ちに拡大すると、かような心配も私はないと思いますが、しかしながら、アジアの一角においてこの戦争、戦闘が展開されておる。その事実は私どもも認めざるを得ない状況でありますし、したがいまして、これを一日も早く平和な状態に回復さすことだ、かように思いまして、今日までもあらゆる努力をしてまいりました。しかしながら、御承知のように、なかなか機熟しないとでも申しますか、まだまだ、国際的な世論が戦闘を停止するように心から要求いたしておりましても、関係国等におきましては、なおいろいろの口実あるいは理由を見つけて、なおただいま戦闘が続いておる。かような状態でございまするので、このことはまことに遺憾であります。  どういうことを具体的にしたか、こういうお話でございますが、御承知のように、昨年来、一日も早く関係国が、関係者が話し合いをするようにと、こういうことを機会あるごとに呼びかけてまいりました。ことにまた、アメリカが昨年のクリスマス以来北爆停止、こういう機会に副大統領が訪日するとか、そうしてアメリカの考え方を十分説明もしまするが、われわれの希望にも十分こたえると、こういうような状態で小康を得たと、かように思いまするけれども、しかし、旧正月を過ごして以来、また北爆が再開された。こういうことで、たいへん心配をしております。  なお、日本は国連の安保理事会の議長国でもあります。その国連を通じまして種々の努力を払ったことは、新聞その他で御承知のことだと思います。また、外務大臣が訪ソその他訪独等の旅行に際しましても、ベトナム問題が一日も早くおさまるように、また関係国へもわがほうの心からの願いを十分話し合った次第で、ございます。もちろん、まだそういうことが十分成果をあげることができていない、こういうことは、まことに残念でございますが、今後ともあらゆる努力を続けるつもりでございます。
  173. 北村暢

    ○北村暢君 まだ具体的にやられたことについてたくさんあるだろうと思うのですが、とりあえず出ました、外務大臣がソ連を訪問した際にこの問題が出て、特にクリスマス休戦の際におけるアメリカの平和工作というものが行なわれた。これについて、アメリカの、要請もあり、外務大臣はこの訪ソの際においてベトナム問題について折衝をされたようである。その内容等、具体的にどういうことであったのかひとつ発表願いたい。
  174. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先般訪ソの際に、グロムイコ外務大臣及びコスイギン首相との会談において、この何者の関心ある国際問題について会談をいたしました。その際に、このベトナム問題を取り上げたのであります。外務大臣も吉相も意見は、大体ベトナム問題に対する私の申し入れに対する返答は同じ要旨でございました。それはすなわち、私のほうから、日本としては極東に位する一国として、東南アジアがいつまでもああいう状況にあることは、政治的にも、また経済的にも、その他の面において、あらゆる面において日本が緊切なる影響を受けておる。国の利益に非常に反するものである。今般アメリカがクリスマス以来停戦をずっと続けており、しかも、八方に人を派遣して、そして真剣な和平工作をやりつつある。アメリカの真意については、いまや疑うべきものはない。で、これは一番平和話し合いのきっかけをつくる非常に重大なチャンスである。ゆえに、問題の解決は、相手方が戦争を放棄する、武器を捨てて話し合いに入るという決意をするかしないかというその一点にかかっておるのである。であるからして、北越に対して影響力を持つソ連が、この際北越を説いて、アメリカの和平申し入れに応ずるという態度をとることにひとつ努力してほしい。これは日本が独自の立場において申し入れるものであるということを話したのであります。これに対して両氏の回答は、アメリカのこれは一方的な侵略行為である。で、アメリカが戦いをやめて兵を撤退することによって問題が解決するものと思うけれども、しかしそれと同時に、アメリカが直接北越あるいはベトコンに和平に関する話し合いをするという道を求めるべきであると、こういう話でございました。そして、ソ連はこの両者の間の調停をする立場にない、こういうことに要約されるのであります。これ以上話し合っても時間のむだになるばかりでございまして、他のいろいろな問題について話し合いをするつもりでおりましたので、問題はこの程度で打ち切って帰ってまいりました。
  175. 北村暢

    ○北村暢君 いまの外相の答弁の中で、一つずつ重ねてお伺いしたいのは、北ベトナムに交渉の場に出るように工作をしてもらいたいということを、要望はされなかったのですか。
  176. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本に対して何ら向こうから要請はありませんでした。
  177. 北村暢

    ○北村暢君 いや、ソビエトが要請したのじゃなくて、あなたが要請したのじゃないかと聞いている。
  178. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうの意見は、アメリカが一方的に撤退することと、それからもう一つの道は、直接、仲介者を入れないで、アメリカが直接北ベトナムに話し合いを申し入れたほうが一番早道である、それも一つの方法である、こういうことを言ったのであります。それでなお、これに関連して、その北越等の話し合いの申し入れは、第三者の調停を必要としない、アメリカみずからが直接北越と接触しておるということを言っておる。第三者によってそういうチャンスをつくってもらうという必要はもはやないように思われるという話でございます。
  179. 北村暢

    ○北村暢君 次に、国連の、安保理事会におきまして、松井大使が議長になられ、このベトナム問題を取り上げたのでありますが、結果的に松井声明ということで終わったのであります。この点について、先ほど首相も、そういう努力をされたと、こういうのでありますけれども、実際あの書簡の出るまでに、政府部内においては、ああいう問題を取り上げるべきでないというような意見もあったようでございます。それがアメリカから言われて、あの問題を取り上げた、議題にすること自体についてかろうじて過半数を占めた、こういう結果になった。これは私は、やはりアメリカから頼まれて、日本政府の方針を変えて、急遽ああいうようなことになったのじゃないかというふうにいわれているのであります。この点について、内容については後ほど御質問しますが、このいきさつについて、なぜ議長国としての松井大使がああいうような問題を急遽取り上げるようになったのか、このいきさつについて説明を願いたい。
  180. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あのいきさつは、新聞でもしばしば出ておりますが、ジュネーブ協定の共同議長国であるイギリス及びソ連、その音頭とりによってあの関係国が動くのが一番筋としては順序である、こういうふうに思われておったのでありますが、この共同議長国の間において、すでにこの問題を取り上げることについて意見の一致を見ない、そうして戦争は依然として継続しておる、こういう状況でありますので、国連として、世界唯一の平和機構である国連として、そうしてしかもその国連の内部における実権が安保理事会にあるのでありますから、安保理事会で取り上げるべきであるという意見をもってアメリカがこれに提案をした。その結果、多数の、全体の意見の一致を見て、議題としてこれを取り上げるということになったのでありまして、特にこの問題についてアメリカが日本に協力を求めたというようないきさつはないのであります。
  181. 北村暢

    ○北村暢君 次に、川島副総裁が非同盟国を歴訪されているようでありますが、この任務は一体どういうことであったのか、それからまた、非同盟国に対する政府の外交方針、考え方、これをひとつ御説明願いたい。
  182. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事の起こりは、第二回のAA会議の問題から発端を求めなければならぬのでありますが、あの際に川島副総裁が日本の首席代表として行くことになっておったのであります。ところが、御承知のとおりのアルジェリアの内乱、クーデターによりまして延び、一ぺんは延期、そうして最終的にはほとんど永久、無期延期ということに相なったのでありまして、それで、その際に、AAグループに対する非同盟十四カ国、それの牛耳を取っておるナセル大統領というのがこのグループ内において相当な発言力をだんだん強化しつつある、まあこういう状況にかんがみて、日本としてはナセル大統領と十分に話し合いをして、そうしてAAグループの行き方、第二回AA会議を開くという場合に際して、最も適当な会議の運営をはかるためにナセル大統領と会談をする必要がある、こういうようなことで接触を求めたことにいきさつが発するのでございまして、その後あれは無期延期になりました。なりましたが、そういう因縁がございまして、向こうのほうから今度はぜひ、あの当時はとうとう会談の実現は見なかったけれども、あらためてアラブ連合を訪問していただきたい、こういう招待がありました。そういうことに端を発するわけでございまして、AA会議がたとえ無期延期になりましても、今日の国際情勢から見て、依然として一方の非同盟の勢力というものをこれは無視するわけにいかない。最近はほとんど、高碕達之助氏が、たしか閣僚でなかったかもしれませんが、何年か前にナセル大統領と会った以後、日本の官界、財界ともにごぶさたをしておる、あまりその関係がどうも、ないと言ってはなんですが、きわめて希薄でございましたので、この際その招請に応じて行くということにきまったような次第でございます。そして、なおこれを機会にパキスタンのほうからも招待がございまして、それでまあその他二、三の国を訪問すると、こういうことに相なったわけであります。
  183. 北村暢

    ○北村暢君 ベトナム問題について、これらの諮問国との話し合いというものはなかったのかどうか。
  184. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もちろん、きわめて重要な国際問題でございましたから、この話はあったのでございます。しかし、これといって、この際としての有力な具体的な手がかりというものはとうとうつかめなかった、こういう状況であります。
  185. 北村暢

    ○北村暢君 横山特使を派遣されておりますが、これは一体どういう趣旨で派遣をされているのか。  それからまた、この人はパリでいろいろ談話を発表しておりますが、どうもそれによりますというと、パリの、いわゆるフランスの当局から、人物そのものについて、かつての横山氏が、日本の進駐当時というのですが、進駐当時のかいらい政権の黒幕であった、こういうようなことを言われて、人物的に信頼をされていないようなことのようです。したがって、横山特使という人は一体どういう経歴の人で、どういう人であったのか、これをひとつ御説明願いたい。
  186. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 横山特使を派遣した大きな目的は、やはり広く関係国を回りまして、そしてベトナム和平工作の手がかりを探索する、探求するということにあったのであります。  横山特使は、これは外務省の古い外交官でございますので、インドシナ及びフランス方面に相当のいまだに知己を持っておる人であります。まあ、現役もさることながら、そういう古い、たくさんの知己を持っておるという人をこの際わずらわして、そして関係国を回り、いろいろの人の意見を聞いて、そしてその間に和平工作に対する何か具体的な手がかりをつかむということになれば、非常に、たいへんな収穫である、あるいはこれに関するいろいろな具体的な意見を集めるということすらまた非常に参考になる問題である、そういう趣旨で派遣することになったわけであります。  先般パリにおいて記者会見をして、グエン・カオ・キ内閣はかいらい政権であるというようなことをしゃべったという記事が出ましたが、真相は、フランス政府のいろいろな首脳部あるいはパリに集まっておるインドシナに関する旧要人等々歴訪して、そうしてこれらの人の考え方をただ客観的に記者に話した。でありますから、自分の意見一つも言っていない。これらの意見の大部分の連中がどうもグエン・カオ・キ政権はアメリカのかいらい政権であるというふうにとられておるということを新聞記者に話したところが、いつの間にかと言ったふうにとられておるということを省いて、あたかも横山特使自身の意見であるかのごとくに伝わったのでありまして、これは誤報であるということがわかりました。
  187. 北村暢

    ○北村暢君 まだそこまでは聞いていないんだけれども、いまのようにいろいろ政府としても外務大臣を派遣し、松井大使にこのベトナム問題を取り上げさせ、横山特派大使を派遣をしいろいろ努力をしたようです。しかし、この努力した結果がまだ期熟しないというようなことで言っておられますけれども、私はやはりこれは日本政府の外交方針というものが確固としない。何かアメリカのメッセンジャー・ボーイ式で、自主性のない形でアメリカの言いなりの使い走りをやっている。こういう程度のものであるから、行った先々では真剣味というものが何もない。ソビエトへ外務大臣行かれた際も、何か友好的なムードであるから、そこへこれを出せばというようなことがあったのかもしれませんけれども、その出したことが全く逆の結果になって——非常な友好とは逆のこのベトナムに関する問題については逆の結果が出ている。こういうことだろうと思うのです。これはやはり、総理大臣にひとつ根本的な外交の姿勢というものを私はただしたいのでありますが、ベトナム問題について、政府はアメリカに対して一体どういうことをやったのか、当のアメリカは戦っているのですから。このアメリカの真意を伝える伝えると言うけれども、日本政府ができることは、いま日本政府が兵たん基地になろうとしている。こういうことについてはっきり断わる。韓国の日韓条約等についても、これはベトナム問題と私は関係ないとは判断できない。これはしきりに総理大臣関係ないと言っておられるけれども、国際的な視野から言えば、これは日韓問題は確かにベトナム問題と関係ある。こういうふうに見られておるんであります。そういう点からいたしまして、この政府の外交姿勢というものを、もう少し自主性を持った外交姿勢というものを確固として、やはりアメリカに対して言うべきことは言うという気概がなければ、その裏づけがないというと、幾らやってもこれはメッセンジャー・ボーイにしかならない。このように思うんでありますが、基本的な姿勢についてひとつお伺いいたしたい。
  188. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、わが国の基本的外交方針、これを説明いたしております。これを十分日本の国民大多数の方は支持しておると思います。また社会党の方といえども、ベトナムにおいてかような戦闘行為が行なわれておる、一日も早くこれが平静に帰するべきだ、そういうことを願っていらっしゃるに違いないと思います。その点では、全部の国民が一致している。ただその行き方について、それぞれの考え方があるようでありますから、そこらに問題があるように思います。私は日本の外交は、どこまでも日本の国益を増進さすと、こういう意味、またそれを守るという意味で展開いたしておるのでありまして、別にアメリカに追随しているわけじゃない、アメリカのメッセンジャー・ボーイでは絶対にありません。国民からかようなことを昔われ、そういうふうに見られ、こういうような一部の説が、国際的にもわが国のあり方を誤解に導くのじゃないかと思います。私は、今日この問題が非常に簡単なことだと言われながらも、まことに国際的な非常に広範にわたり各国の利害関係を持っておりますから、これは日本が先立ちになりまして、一日も早く戦争がとまるように努力いたしましても、そう簡単には成果はあがらないと思います。しかし、たゆまず、またあきらめることなしに、これは長く努力すべき事柄だと思います。  そこで私は国民にもお願いをしたいのですが、私どもの外交、これは日本の国益を守り、国益を進める意味において展開しておるのでありまして、アメリカのメッセンジャー・ボーイではない、ここだけははっきり御理解をいただき、また御声援を賜わりたいと思います。
  189. 北村暢

    ○北村暢君 そこで、ベトナムの戦争の現状について、遺憾ながら世界の期待というものを裏切って北爆が再開され、現在激しい戦争になっておるわけであります。一体ベトナムの戦争開始以来の両者の死傷者というものは、一体どのくらい出ているのか、外務省はどのくらい出ているのか把握されておりますか。
  190. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 各線の発表によりますと、南ベトナムの死者が約現在七千名程度と思われます。またベトコンのほうの死者は二方七千ないし八千、アメリカ軍の死者は、最近までに二千百余名。
  191. 北村暢

    ○北村暢君 航空機事故であれだけの死者が出れば、新聞社はあれだけ書き立てる。もういま言った数字だけでも、こう言っているときでも、どんどん死傷者は出ているわけです。こういうことは、われわれは人道的に言っても許されないことだと思う。これを早く解決しなければならない。これはアジアの国民の一員であるわれわれも、痛切にその点は感ずるのであります。そういう点から言って、いまの数字の発表、最近それがまた日日の新聞でも相当多数、激烈なものが出てきているというので、一日も早くこれを解決しなければならない問題だと思うのであります。ところが、最近の状況を見てみますというと、二日のマクナマラ国防長官がベトナム問題に対する米軍の派兵というものを、二万人ふやして二十三万五千名にするというようなことが出ております。したがって、これについてもどのようにお考えになるか。さらにハノイを越えて中国の二十何キロ近くまで北爆が行っておる。このエスカレーションの方向というものは、きわめて現実の問題として起こってきている。これに対して一体どのように思っておられるのか、この点ひとつまずお答えいただきたい。
  192. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現実に戦争をやっているアメリカの国防省の考え方に対して、われわれがいまかれこれ批判をすることは避けたいと思います。またわれわれは、あくまで戦争がどんどん無限にエスカレーションするということは、これはよろしくないと考えております。考えますが、具体的に、いま二万の増兵に対して、いいとか悪いとか言うことは、これは答弁を差し控えたいと考えます。全般的に見て、一日も早く両当事者の合意によって、戦争がまず停止されて、そうして平和の話し合いに入るということについては、これはもうしばしば総理もこの国会において言明しておられるとおりでありまして、これに対しては、私らは、絶対にこの考え方を曲げるものではございません。
  193. 北村暢

    ○北村暢君 すでにラオスは、事実上戦争に引き込まれているように——いることは周知の事実であります。それからカンボジアに対しては、大統領はカンボジアの国境を越えてゲリラを追及する権限を、現地司令官に与えているということが伝えられている。こういう南ベトナムだけでなしに、周辺の国にこれが波及してきているという事実について、一体、外務大臣はどういうふうに判断しますか。
  194. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ラオス、カンボジアに影響を与えるということは、おそらく北からの人員及び物資の補給の関係で、国境すれすれを通るか、あるいは、少しは向こうのほうにはみ出ているか、とにかくそういったような問題に関連して、トラブルが非常に起こっておるのではないかと思うのでありますが、これをもって、一がいに戦争拡大と見ることはいかがかと思います。
  195. 北村暢

    ○北村暢君 韓国軍も南ベトナムに派遣をされ、さらに近く、もう派遣されたかもしれませんが、一個師団派遣せられるということがすでに伝えられておる。で、このことは、私はやはりベトナムだけの問題ではなしに、特に日韓条約が成立して以来、三十八度線に紛争が非常に多くなってきている。この事実を知っておられるかどうか。北鮮は、北ベトナムの要請があれば、派兵をするということを言っているそうであります。これはあなたのほうの数字には入ってこないかもしれませんけれども、亀田理事が先般北鮮に行った際に、そういうことで話があったということを聞いておる。このように北ベトナムの——いや、ベトナム戦争というものは、ベトナムにかかわらず、いま北鮮へ——朝鮮の半島に飛び火する可能性というものが、非常に強く出てきているというふうに思われるのであります。こういう点について、外務大臣はどのように判断されているか。
  196. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 当初、韓国の軍隊が数千名送られ、それからさらに増強されて何万ということになっているように言われております。当初のその派兵のときから、国会において御質問がございましたが、これは日本が全然介入しておらない問題でありまして、ある一国がこれに対して、韓国が派兵するしないということは、韓国の自由でありまして、日本としてはこれは関知しない問題で、できない問題であるということを申し上げておりましたが、今日になりましても、の考え方を持っております。
  197. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連して。私の名前がちょっと出ましたので、この際、ちょっと総理にお聞きしたいと思うのですが、朝鮮では、韓国がベトナムに派兵しておるという問題について、非常な関心を持っております。アジア人同士をこういう形で戦わせる、結果はそういうことになっておるわけです。私は、日本政府が韓国政府との間ではよく話ができる仲でありますから、ぜひ、そういうことはしないようにということを話をしてもらいたいと思うのですね。一体、そういうことがあったのかどうか。ただいまの外務大臣のお話ですと、どうもそういう戦略的なことについてはタッチしにくいというふうなお話でありますが、私はそれは間違いだと思う。総理が先ほども——最初に言われましたように、ともかく、平和という立場でものを考えていくのだということであれば、米軍の増強についても、そのような具体的なやはり意見を私は出してほしいと思う。米軍のほうで戦略上それは困るという話があっても、それはそれとして、さらに何か日本政府のほうで、それならばということで、さらに次に考えたらいいわけです。ともかく現実に兵隊が増強されていく。それを見過ごしておいて、そうして口だけで平和を唱えても、私はどうもぴんとこないと思うのです。ポーズだけじゃないかというふうに一部言われますのは、やはりそういう点が私は影響しておると思うのです。いわんや、アジア人同士が殺し合いをする、そういうことについて、われわれ隣国の者が黙っておるということは、私は、はなはだ総理の言われておることと矛盾があるというふうに考えるわけです。だから、一体、そういう派兵という問題について、日本政府として、アジアの平和という立場から、忠告をされたことがあるかどうか。また、今後ともそういうことをされる意思があるかどうか。そういう点について、適当な機会に私は聞きたいと思っていたわけですが、この際、総理から率直にひとつ考え方を聞かしてもらいたい。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は平和に徹するということを申しました。またお互いに独立を尊重し、内政不干渉だということを申しております。ただいまの韓国が派兵する、それを日本からそれはよけいだとか、日本はどうだとかいうことは、ただいま申す干渉にわたらないような方法があれば、これはもちろん、考えていいことだと思います。ただ、いまの問題で北村君が話をされていたのに、北鮮は北鮮で北ベトナムへ出兵をする、こういう話が出ていました。これこそ、これはたいへんな問題だろうと私は思います。ただいま韓国の派兵について、亀田君も特別な考え方を持っていらっしゃるようですし、それから見ると、やはり北の派兵についても同じような考え方じゃないかと思うのです。問題が、北村君が御指摘のように、三十八年度線をめぐって南北の争いがだんだん激化してきた。こういうような状態は、たいへん憂慮すべき状態だと、かように私も思います。しかしながら、冒頭に申しましたように、私は内政干渉はいたす考えはございません。それぞれの国が、それぞれの判断によって行動されることだと思います。
  199. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと……内政干渉を何もわれわれも考えているわけじゃありません。しかし、この世界の平和、アジアの平和ということを考える場合、どうしたって各国の外交政策なり、そのことに関してお互いに話し合う、触れ合うということは、私は当然だと思うわけであります。それを押し切ってやる、それを力づくで引きとめる、これは内政干渉になるでしょうが、そうでない限りは、平和の立場で話し合うということは、少しも私は差しつかえないと思う。外交というものは、本来そういう性格を私は持っていると思うのです。そういう立場からお聞きしているわけでありますが、いま北村君も言われましたように、日韓条約ができた前後から、休戦ラインで非常に紛争が多くなっているのです。一月の数だけでも、主として南からの挑発行為というふうに説明されておりますが、四百五件という数が出ております。具体的にはいろいろなケースがあります。そういう状態でありまして、もしこの事態がさらにエスカレーションして、ベトナム共和国の義勇軍が派遣されるといったような場合には、これは私はたいへんなことになると思う。ベトナムで衝突していて、休戦ラインがそのままでおさまるわけがありませんね、常識的に考えて。だから、そういう状態に現在あるわけですから、私は、アジアのどこの国でありましょうとも、ベトナムの問題に、具体的に兵隊を持っていくといったようなことは、非常に問題をこじらせるものだと考えるわけです。  それから誤解のないように申し上げますが、この北の派兵のことについては、要求があればそういうことはするということは言明されましたが、しかし現在までそういう要求はない。それから最終的には、ベトナム問題はベトナム人の民族問題だ。必ずこれは米軍がどれだけあすこに物量をつぎ込んでも敗北するだろう、そういう信念を北の諸君は持っております。だから決して私が報告したことが、すぐ共和国が近いうちに派兵をするのだといったようなふうにとられないように、これはしてもらいたいと思います。ベトナム戦争の経過を見たって、むしろ北のほうがきわめて慎重な、だから私は北がそういうふうに自重しておるわけですから、韓国の行動、これは私は、話のできる日本政府がもっとアジアの立場から、そういう内政干渉等にわたらない立場で十分話をすべきではないか、こういうつもりで言っておるわけなんです。それは休戦ラインの現状を、佐藤さんがほんとうに知ったら、これはほうっておけないという気持ちになるはずなんです。そういう立場から聞いておるわけです。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほどお答えしたように考えております。ただいま亀田君の御意見は、御意見として拝聴いたしました。
  201. 北村暢

    ○北村暢君 次に、北爆の性格についてどのように判断しておるか、お伺いいたします。
  202. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは北越の支持、すなわち人員と物資を浸透さしてそうして国内において破壊活動をやり、南ベトナム政府の政治的独立というものを阻止しておる。こういう事実に基づいて、南ベトナムの政治的独立と自由を守るために、やむを得ず北爆をしておるものと、かように政府としては考えております。
  203. 北村暢

    ○北村暢君 これは北ベトナムとの関係で、北ベトナムに対して宣戦を布告しておるわけではないですね、どうですか。
  204. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いわゆる国際法における戦争状態というものではないと考えております。したがって、宣戦布告ということはない。  なお、国際法の解釈上の問題でありますから、外務省の条約局長から申し上げます。
  205. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ベトナムの戦闘に関係しているいずれの当事者からも、宣戦布告は行なわれておりません。
  206. 北村暢

    ○北村暢君 宣戦布告はしていないでこの爆撃をやっているのは、アメリカがやっているわけですから、その補給をしたとかしないとかいう事実、これの判断もあるでしょうけれども、これは戦争状態であるというふうな事実は、そうだろうと思うのですね。これは国際法には違反をしないのかどうなのか、解釈はどうでしょう。
  207. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 北ベトナムから武装した者を隠密に忍び込ませる、いわゆる浸透という形で南ベトナムに対して侵略が行なわれております。それに対して、南ベトナムとしては自衛権を行使しておる。それで、南ベトナムだけではこれに対応し切れないので、アメリカの援助を求めた、アメリカはこの南ベトナムの自衛権の行使を助けておる。それでその浸透に対抗するのに必要な手段として、南ベトナムの領域内だけでは十分に浸透に対処し切れないので、これを封ずるためには、そのルートに使われているところだとかを爆撃する必要がある、つまり自衛権の行使の必要上そういうことをやっておる、これが南ベトナム側の立場でございます。
  208. 北村暢

    ○北村暢君 それは国際法上どういうふうな解釈になるのかと聞いているのです。
  209. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 慣習国際法上も、自衛権というものは認められておりますが、国際連合憲章でも特別にそのための規定がございまして、第五十一条、これの行使としてやっておるわけでございます。
  210. 北村暢

    ○北村暢君 この北爆というものについて、軍事目的以外に何か目的があるのかどうなのか、この点は、どのように判断されておりますか。
  211. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 以上、条約局長から申し上げる以外の目的は、全然ないものと解釈しております。
  212. 北村暢

    ○北村暢君 この状態でエスカレーションしていけば、米中との武力の衝突に発展しかねない。これを保証する何ものもないと思うんでありますが、どうでしょうか。
  213. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もともと領土的目標もなければ、あるいは政権を特に倒して次の手をねらうというようなこともない。ただ北からの浸透を防衛するという目的以上にアメリカは出ないものと考えますので、したがって、中共との武力衝突は起こり得ないと、かように考えております。
  214. 北村暢

    ○北村暢君 まあその論理については、補給基地だの何だのという点からいけば、これはひとりでにいってしまうんではないかというふうに解釈される。で、現在の戦争が、ベトナムの戦争がアメリカでは盛んに限定戦華ということが宣伝されている。いま外務大臣がはからずも、中国には波及しないだろうと、こう言った。これはアメリカがいっている限定戦争という考え方で出ているんだろうと思うんです。しかし事実上は、私は、このアメリカの極東核戦略の中にもうすでに入っておるというふうに思われるのでありますが、考え方はどうでしょうか。
  215. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカの考え方によって米中戦争が起こるようなきっかけをつくるということであれば、これは重大な戦略の転換であると考えます。しかし、さようなことはないとわれわれは信じておる次第であります。
  216. 北村暢

    ○北村暢君 まあこの点はまた詳しく論議する機会、時間をとりますからこれであまりやらないことにしますが、ベトナムの問題の解決の方法であります。これについて一体どのように日本政府考えておるのか、具体的な解決の方法というものについてひとつお伺いいたしたい。
  217. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 結局、アメリカの提案は、すでに先般の北爆停止及びこれと並行しての和平工作によって明らかなるごとく、相手方がまず武器をおいてそして平和の話し合いに入るということであれば、これはアメリカはいつまででも、その話がつくまでは停戦をして話し合いに努力する用意があるといっておるのでありますが、北越側がこれに同調しないということが、これはもう戦争が長引く唯一の要因である、こういうふうに考えられるのでありまして、これをどうして解決するかということで、みんな関係国がやっきとなっておるのでありますが、当の御本人がそういう翻意する気色がないということで、はたが非常に迷惑を感じておる、こういう状況であります。でありますから、話をすればきわめて簡単でありますが、そこまで持っていくのにどういう手順、方法を用いたらいいかということで、日本といたしましても、横山特派大使等を派遣して、そしてこの糸口を探求してみるというような状況であります。
  218. 北村暢

    ○北村暢君 私は、日本政府がこの問題について和平のためのあっせん役をとろうとしておる努力、その際におけるこの、ベトナム問題の本質、特徴というものをやはりはっきりとらえておかなければいけない。いま外務大臣の言うようなのであれば、これはアメリカの言うとおりで解決しなければ解決しないということになる。そんなことでこの問題は解決しないと思う。で、この、ベトナム問題の本質、特徴というものは一体何かという理解ですね、これをひとつ外務大臣、はっきりさしていただきたい。
  219. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私の申し上げたのは、まず話し合いに入るためには戦争を、武器をおかなければいかぬ、そうして和平の話し合いに入るということだけを言っておるのでありまして、これで解決するわけではない。両方でいろいろ言い分はございましょう。その言い分をお互いに主張して、そうしてもし第三国の判定というものを待つならば、それはアメリカだって少し出過ぎたこともあるだろうし、あるいは相当無理なこともいっておるかもしれない。それはいよいよその和平の話し合いについてからの問題だ。そうして終局的に解決さるべきものと考えるのであります。
  220. 北村暢

    ○北村暢君 そういうことを聞いているのじゃなくて、ベトナム戦争そのものの本質というものをどういうふうに、特徴というものをどういうふうに把握しておるかと、それを聞いているんですよ。
  221. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ民族が同じであるか、どうかということについては、こまかくいえば、ベトナムでも北と南ではだいぶ流れが違うんだそうであります。であるからして、その内部においてどういうことが起ころうと、もう一切はたのものは干渉するなというようなことは、もはや今日の世界情勢においては許されない。いわんや、南と北と政権が一応できて、そうしてジュネーブ協定というものもできておるのでございますから、やはりまず一つの政権単位に両者の主張というものを認める必要があるのではないか。片一方の政権というものが、国内破壊活動によって力で無理やりに押しまくられるということに対しては、絶対に南がこれにがえんじない。どうしてもこれに抵抗する、力が足りないのでアメリカの援助を要請しておるというのでありますから、まずこの政治的な独立、自由というものをお互いに尊重するという立場に立ってこの問題を解決しなければならないのではないか。そいつを無視して、そうしておまえはおれの言うことを力ずくでもう聞かなければいかぬのだというようなやり方は、同じ地球上にそういうむちゃくちゃなことが行なわれてははたが迷惑する、そういうことであろうと思うのです。
  222. 北村暢

    ○北村暢君 そういう感覚で和戦のあっせんをしようだの何だのといったって、これはまたそれだとならば、あんた、ベトコンが承知しませんよ、それではね。したがって、これはベトナム戦争というものは本来内戦であるということ、この認識を再び確認をしておかなければいけない。内戦なんだ、そのことを。それから解放民族戦線から見ればこれは植民地独立の戦争で、独立か死かの妥協のない戦争だ、こういうふうな判断をしておる。それからまた解放民族戦線からすれば、アメリカは遠征軍である。先ほどは南ベトナム軍に対する要請でもって加勢に行っているような話だけれども、いま現実に見てごらんなさい、二十三万以上の兵力を派遣し北爆をやっている。これでは民族解放戦線側からいえば、アメリカは遠征軍であり侵略者である、こういう考え方を持っておる。こういう事実というものはやはりはっきり認識してかからなきゃいけない。それからアメリカは比較にならぬほどの強大な軍事力を持っておる。にもかかわらず、膨大な被害が出てもなおかつそれほどの効果をあげていない。解放戦線は戦意も失っていないし、戦力もくじけてない。ここに大きな問題があると思うのです。それからジュネーブ協定をアメリカが無視をして今日の状態に来ているという、アメリカに対するベトナム人の根本的な根強い不信感というものが今日ある。したがって、アメリカが無条件で話し合いに応じて、それで解決しようと言ったって、今日そういう状態にならない。あれはにせの和平交渉だと、こう判断しておる。こういう事態というものを踏まえて、特徴というものを踏まえていかなきゃいけない。これは私が言っているんじゃなくして、権威ある「エコノミスト」がそういうことをはっきり言っているんです。そういう特徴というものをやはり把握した中で、あっせんに当たらなきゃいけないということなんです。この点についてはどうでしょうか。
  223. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ多少の違いがあっても、ベトナム人はベトナム人であるから、ベトナムのことはベトナム人が片をつけるんだから、干渉するなということは、私は正しい主張だと思うのであります。そうだからといって、ベトナムに二つの政権があって、片一方が実力をもって国内にゲリラ戦を展開して、そして一方の政権の自由独立を力で抑えつけるということは、これはあくまで戦意でございますから、そういったような問題、そういう秩序を容認するわけにはいかぬ、こういうことも私は正しい議論であると思うのであります。でありますから、そういう実力を用いないで、そして一切の外部の干渉を排して、穏やかに、自由意思によって政権を選ぶ、多数のベトナム人をもって選ぶという、そういう環境をつくることについては、これは何人も異存がないと思うのであります。そうでなしに、とにかく一切の外部勢力というものを駆逐して、そして従来の国内破壊活動によって特定の政治目的を達しようとするということは、これはもしそれでもいいと言うなら別問題、それでは困るということを言って、いわゆる死の抵抗をしておるような状況でありますから、これは少し無理ではないか、こう考えるわけであります。
  224. 北村暢

    ○北村暢君 まあこれは深く論議いたしませんけれども、そこで、そういうむずかしい問題をかかえて、今日なおかつベトナム問題は放置できない。こういうことで何かしらやはり具体策をもって和平に乗り出さなきゃならない、ここに悩みがあると思うのですね。したがって私は、今日この和平の根本について、時間がございませんので、これはなかなか意見を言うわけにいかないのでありますけれども、とにかくアメリカにおいてもフルブライト外交委員長が、ああいう東南アジアの中立政策というものを打ち出した、あなたの派遣しておる横山特使も中立にしたほうがいいという意見になりそうな、そういう報告になりそうなようです。そういうようなことを含めて、平和の根本については、幾つかの各国から提案が出ている。これに対して日本政府は一体どういう態度でこの具体的な提案をして、いま行き詰まっているベトナム問題を解決するという方針を持っているのか、この点をひと明らかにしていただきたい。
  225. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 両者の言い分はいろいろあると思います。でありますから、両方に悪いことがあると同時に、また両方にいいことがあるとおそらく考えますが、それもこれもまずけんかをやめて、いわゆる武器をおいて、そして話し合いに入る。話し合いに入って初めて両者の主張がはっきりとそこに浮かび出てくるのでありますから、それによって、われわれも極東の一国として重大なる関心を持っておるのでありますから、われわれの意見もその際に言うべきである、それで和平のおさまり方、この戦争の終結のしかたというもは、その和平の会談に入って、そしてだんだんと具体的にきまっていくものと考えます。
  226. 北村暢

    ○北村暢君 まあ非常に具体的じゃないんですが、とにかく私は一つ意見として、まずアメリカに対しては、北爆を停止するということを日本政府ははっきり申し入れる、それからジュネーブ協定に基づいて和平を確立するんだ、あるいは民族解放戦線を交渉の場に、正式に相手にするんだ、こういうような具体的なものを出して、そして和平のあっせんの労をとるという意味において、日本政府が積極的に乗り出す、こういう御意思があるかないか、こういうことを聞いておるのです。
  227. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 総理はしばしば言われるように、アメリカが和平工作に入るために北爆を停止する用意があり、また、すでに先般四十数日にわたってそれをやり、同時に、非常に活発に、人を世界じゅうに派して、和平工作をやったにもかかわらず、これに応じてこないからまた好めた、こういうわけでありまして、今度一回切りで、あとは北爆は停止しないぞというようなことは言っておらない。いつでも相手方の出方によっては北爆を停止する用意ありということを言っており、また日本は、さような状況においてはアメリカに対して日本考え方を申し入れるというようなことを総理はしばしば言っておるのでありますから、私がここであらためて申し上げる必要要もないことであります。さよう御了承を願います。
  228. 北村暢

    ○北村暢君 この問題について、最後に総理大臣にお伺いしますけれども、いまあらゆる努力をしたにもかかわらず、不幸な状態にあるわけです。しかしながら、先ほども申したように、人道上からいっても、アジアの平和という点からいってもこれはベトナムの問題じゃなくして、将来日本の安全にも重大な影響を持ってくる問題です。拡大をさせられない問題だ。そういうような点からいって、日本政府としては、このむずかしくなった段階において積極的にいかなる外交手段に訴えて——私はしろうとでありますからわかりませんけれども、とにかく、この外交の手段に訴えて早急にこの問題を解決するという方向に乗り出す御意思があるかどうか。これをひとつ最後に総理大臣にお伺いします。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、北村君と外務大臣質疑応答を伺っておりまして、ただいま北村君がしろうとだと言われるけれども、なかなかどうして……、外交上の機微に触れた御質問でございます。私はただいま、先ほどのお話を聞いておりまして、これは南ベトナムにおける内戦だと、かように実は伺ったのでありますが、その内戦がさらに北ベトナムまで戦闘の渦中に引き込んだ、かような状態、これは一体どうして起こったのか、ここらに一つの問題があるわけなのです。さらにまた、それがエスカレートすれば、中共との問題も起こすだろう、こういう御心配だし、だんだん、どこまでいくやらわからない、こういうお話であります。外務大臣がしばしばお答えいたしましたように、とにかく、実力によって現有の秩序を変えるという、そういうことはわれわれは許せないのだ。しかしながら、外国のやることですから、それも外国だけで小ぢんまりとやられるなら、私どもがとやかく言う筋の何ものもございません。ですが、ただいまの状態はそれがだんだん拡大している、そこに一つの問題があるわけです。そこで、こういう場合にどうしたらいいか、もうすでに北からも南からも、アメリカもまたベトコン自身も、こういう場合の条件は一体どうだ、どういうことで解決すべきだ、こういうような条件をそれぞれ出しておる。だから、もうそれぞれの関係国の意向というものははっきりしたと、かように私思います。ソ連自身は、これは自分たちのやることじゃない、自分が仲介の労をとる筋のものじゃない、直接話をしたらどうか、こういうように言っておる。また、中共自身も、あまりこの問題については積極的な発言をしておらない、かように思います。そこで、先ほど来言われるように、どういうように片づくかは、話し合った上でその結論を出したらどうか、それより前にとにかく戦争をやめることなんだ、武器をとにかく放棄することなんだ、それで、ただいまはアメリカに対して北爆をやめろと、こういうことを言ったらどうか、こういうことを言われます。アメリカに対しても北爆をやめろ、また、北からの浸透もこれもやめろ、お互いにそれぞれが侵さないようにすれば、これは自然におさまるのじゃないのか。そうして、どういうところで話し合いの結末をつけるか、それこそお互いに胸襟を開いて話し合っていったらどうだ、アジアの平和のため、世界の平和のために、お互いがほんとに心配しているからというので話し合えば、必ずいい結論を見出すだろう、これが私どもの主張であります。今日までどういうようにやるべきだと、こういうことは実は申しておりませんけれども、とにかく、お互いが同じテーブルに着いて話し合うこと、それがまず何よりも先だ、先の問題だ。そうしてそこでどういう形にまとめるかそれを見出すべきだ、かように実は申しておるのであります。  私は、そういう意味で、この種の問題も、やはり世論といいますか、国際世論のきめるところも非常に大きいのでありますので、関係国のいろいろ意向も聞き、そうして、ただいま申し上げるようなひとつ結末のつく、そういう方法を見つけたい、かように思っておる次第でございます。あらゆる面におきましてそれぞれの努力は払われておることは、先ほど来お話があったようでございますので、あえて重ねて申し上げませんけれども、この上しんぼう強く努力しないと成果はあがらない、かように思います。
  230. 北村暢

    ○北村暢君 この問題は、私は最後に、日本政府がアメリカの言いなりになる、先ほど言ったメッセンジャーボーイ式のものではなくして、アジアにおける平和、しかも、アジアにおける一等国として自負を持っておる日本が、ベトナム問題を解決するということに異常な熱情を持ってこたえるということは、私は当然のことだろうと思うのです。このことに対して、ひとつ政府は勇気をふるって臨んでいただきたいということを要望いたしたいと思います。  それから次に、中国の核実験以後における問題についてお伺いいたしますが、この世界のいわゆる核保有国におけるいままでの状況では、米ソの間において、核の均衡というような観点から平和共存という考え方ができてきている。そのときに、一九六四年秋に中国が核実験を初めてやった、このことによって、世界の核の秩序というものが根底からゆるがされたのではないかというふうに思われるのであります。特に、隣接しておるわれわれとしては、そのように感じる。したがって、私どもは、あらゆる国の核実験にも反対をするという立場から、即時これを中止するように要求したのでありますが、こういう情勢の中で、この中国の核実験開始以後における中国国内の核武装の現状というものをどのように把握されておるのか、この点をひとつ、まずお伺いいたします。
  231. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 中共の核実験のその後の進行状況というのは、明細には、もちろん外国のことで、わかりませんが、しかし、第一次、第二次と引き続き、あるいは第三次も近いのではないかと言われますと、おのずから核装備のほうも相当に準備されていると見るのが一般の常識だと思います。
  232. 北村暢

    ○北村暢君 これは、はっきりはしませんでしょうけれども、日本自身がそういう情報網を持っておりませんから、自分自身ではわからないけれども、アメリカなり、ほかの国で、すでに国会等において、イギリスの国会でも、アメリカの国会でも、核関係者から、それぞれ中国の核装備について、これは推定でしょうけれども、発表がなされている。そういう点について、外務当局なり日本政府なりというものは、把握されているはずなんです。そういうことで、ひとつ、どういう状況になっているかをお伺いしたい。
  233. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 今日まで諸外国で言われておりますのは、早ければ三年、あるいは五年というふうに言われております。三年または五年のうちには核装備をされるであろう年限を切ったというのは、早ければ三年、おそい方でも五年というのが、いままで言われておる証言の内容でございます。
  234. 北村暢

    ○北村暢君 そのように、中国の核武装というのは、核武装そのものに非常に力を入れて、進度が思ったよりも——十年かかるだろうと思ったものが、三年、五年と早くなっている、これが判断だと思う。そういう時期にあたって、一体日本政府は、この中国の核武装の問題に関連をして、日本の安全保障対策というものをどのように考えておられるか、この点についてお伺いしたい。これは総理から……。
  235. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) この状況が現実に進むというならば、日本としては非常な脅威を受けると同時に、日本の防衛力については、なお格段の変革を来たすであろう。われわれは中共を敵だと思っているわけではありません。諸外国がそういう状況になるということは、日本としても当然防衛力としては考えなければならない時期である。それは一般的に言えると思います。
  236. 北村暢

    ○北村暢君 総理大臣、いかがですか。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま松野防衛庁長官がお答えしたとおり、実は、わが国の安全確保、こういう立場に立ちまして、いろいろ頭を悩ましております。しかし、私どもは、いままでしばしばお答えいたしましたとおり、国民とともに、日本の国は絶対に核武装はしない、核の持ち込みは、これは考えない、こういうことを実は申してまいってきました。いまわずかに、わが国の安全確保は、日米安全保障条約によりまして、アメリカが、日本が外部からの攻撃を受けたら、どういう場合でも日本を防衛すると、こういう約束を取りつけておるこの日米安全保障条約、このもとにおいて確保されておると、かように思います。同時にまた、各国とも核拡散防止——これは、とにかく核を持ち得る力を持っているが、もうそういうものは人類の敵として、こういう核武装はしない、核拡散はしない、核拡散防止という、その方向でいろいろ考えておる。また、核爆発の実験等については、部分的な停止条約を結んでおる。こういう状況であります。また、お尋ねになりませんけれども、そういう意味で、軍縮会議等におきましても、この部分的な実験禁止から同時に全面的軍縮への方向で努力すべきだと、これが各国の考え方であります。今日までのところ、この軍縮会議にフランスと中共が入ってない、核を保有しながらこれらの二国が入ってないというのが実情であります。ここらに一つの問題のあることは、私が申し上げるまでもなく問題だと、かように思っております。
  238. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。ただいまの問題に関連して、一つだけお尋ねいたします。お尋ねというより、またこれも提案になるかもしれませんが……。  いまの北村君の質問に対するお答えとともに、先般外務大臣は、衆議院で、いま総理もちょっと触れられましたが、アメリカがやはり安保条約で核の問題はあらためて提起しなくても、当然日本を核攻撃の場合は守ってくれる、こう理解をしておる、また、参議院の外務委員会では、その場合、新たなる取りきめをする必要はない、自動的にそうなる、こう理解しておると、こういうお答えがありました。そこで、平時に核兵器が持ち込まれるはずはございません。持ち込みも許さないし、日本自身も持つ意思はない。日本の基地の使用も認めない。核兵器としては認めない。その場合には、相談があれば事前協議ということになる。そうすると、有事の場合、有事の場合そういうことが起こる。そのときはアメリカが守るということだが、それが現に起こったときは、いま総理自身も触れられたように、終わりですね、万事。起こらないようにする。そのためには、日本が、核兵器の持ち込みはもちろん許さない、基地の使用も核兵器については認めない、それから日本自身ももちろん保有しないということを、あらためて宣言をして、同時に相手国、核保有国、それに対して、日本はそういう政策をとるから、相手も日本に対しては核攻撃を加えないという相互保障を取りつける、これは一つの問題だと思う。ですから、これはどういう形か、たとえば中国は国連に加盟しておらないし、外交関係がありませんから、なかなかむずかしい問題でありますが、しかし、何らかの、そういう相互保障を取りつけることを考えないと、ただ、核戦争になればアメリカが守ってくれるからというようなことで、たとえば米・中戦争が起こったら危険だなんて……。起こったら終わりなんですよ、日本に波及すれば。だから、起こさないためにこそ問題がある。そこで、軍縮会議、あるいは世界……、いわゆる国連による軍縮会議もあるでしょうし、中国を含める会議もあるでしょう、別の。それが、いま申し上げたことも一つの案として、日本自身がそういうものを持たないということを言うのですから、核を持てる国もまた日本を攻撃の対象にしない、相互保障といいますか、兵力を引き離すといいますか、それをひとつお考えになってはどうか。これはまあ提案みたいなことになるのですが、いかがでございましょう。
  239. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの羽生君と同じような言い方といいますが、ソ連から、核保有をしない国に対して、核を保有している国は核攻撃をしない、こういう申し合わせをしたらどうか、こういうような話がございます。これは一つの前進だと、かように私は思いますが、これは一体真意はどこをねらっておるのか、よく各国の問題で、そのまま額面どおり受け取れないものがあるように思っております。日米安全保障条約、これが攻撃的なものでないこと、これはもう御承知のとおりであります。だから、ただいま言われるとおりに、核攻撃を受けたらおしまいじゃないか、こういうことなんです。しかしながら、この日米安全保障条約は核戦争の抑止力があると言われております。この抑止力とは一体何であるか。それは結局、報復力を持っていることだろう。そこにやはり核攻撃を差し控えるものがある。かように私は理解しておるのであります。だから、まず攻撃されれば、それでもうおしまいだと、こういうことだが、日本の国はそれでおしまいかどうか、まあ全体がつぶれるようなこともないだろうと思いますけれども、同時に、やはり報復力をこの日米安全保障条約が持っておるから、そう簡単に日本を攻撃するわけにはいかぬだろう。自分の国があとで報復を受ける、それを覚悟しなければならない。もう、私が申し上げるまでもないことですが、戦争は、自分のほうが勝つということでなければ始められないでしょうし、勝つということにしばしば誤算があるから、ずいぶんみじめな結果にもなるのです。それでございますから、ただいままで、この安全保障条約が戦争の抑止力があると言われていることは、ただいまのような報復力を持っておるということだと思いますし、これは憲法上も考えられることでございますから、そういう点では、私はいまの新しい提案は別としまして、今日の戦争抑止力は現状においてもあるのだ、このことは十分考えてしかるべきだ。また、新しい提案としての、お互いにそういうことをしないという、そういうものはどうだという話ですが、これはちょうどソ連からそういうような意見が述べられたということを報道しておりますけれども、これが一体何をねらっているか、ここらの十分の見きわめがつかないという状況でありますので、まだ、ただいまの御提案のとおりに進むことはいかがかと、かように思います。
  240. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一点だけ。  それはよくわかりますが、たとえば、いま中国が核兵器を持ったからどうなるかということからそういう問題が起こりましたので、これが進んでいくと、必ず政府部内、あるいは政府与党内で、最近の——外務大臣は非常にきらいなおことばだそうですが、核のかさ云々という問題が出ているわけです。そこまで発展していく可能性があるので、ソ連の提案とは別に、日本みずからが持たない、持ち込みも許さないという、そういう声明といいますか、意思表示をするという前提に立って相手国の保証を求めていくということ、そういうことを考えない核論争というものは、無限に私は発展していくと思います。これはひとつ、外務大臣からも意見を聞かせてください。
  241. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま総理からお答え申し上げましたとおり、いわゆる、いわば伝家の宝刀ではないか。日米安保体制によって、いかなる攻撃からも保障されるということは、これはこっちからしかけるのではなくて、あくまでも防衛的なものである。いわば伝家の宝刀である。そうして今日の日米安保体制下において日本は核をつくらない、持ち込みは許さない、こういう状況下においてすら、今日の核兵器の発展の状況から見て、十分に伝家の宝刀であるその実力を発揮しておるのでありますから、これに盲目でない限り、絶対に核攻撃は相手方のほうから始められないということをわれわれは確信せざるを得ないのであります。始まったらどうするか、あったらどうするか、ということでありますが、これはいわゆる仮定の問題でございますが、かりに、百歩を譲って、そういう中共なら中共から、そういう保証を得ておけばいいではないかというお説でございますが、これは単なる核の争いではなくて、やはり政治的な問題をからんでおるのでありまして、今日、アメリカと中共との対立が非常に先鋭化しておる状況下においては、これまた、あまりに現実離れした仮定ではあるまいか、かように私は考えます。
  242. 北村暢

    ○北村暢君 事実上、衆議院の論議からいたしましても、あらゆる危害に対してアメリカは日本の安全保障をやるのだというから、中国が核兵器を使う場合には、もちろんそれに対応するのだ、こういう趣旨であったと思うのです。そういう意味では、核のかさに入っているのだ、こういう衆議院での論議のようでありますが、まあ事実、そういうことになっているのじゃないか、ということは、アメリカの太平洋戦略というものが、一体最近になって、どのように変わっているか。このことについて、ひとつ、もうわかっていることでありますから、御説明願いたい。
  243. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) アメリカの戦略、戦術について、こまかく日米間において打ち合わせをじているわけではありませんので、一応外電あるいは一般的なものによって知る以外はございません。私の知る範囲においては、第七艦隊というものが主力として台湾周辺にいるということ。日米間においては特に今日大きな変動はございません。
  244. 北村暢

    ○北村暢君 そういう簡単なことでない。これはもう、どこにでも出ておることなんですよ。そんなことで日本は安全でございますなんて言ったって——アメリカまかせで安全でごさいますなんて言ったって、だれもほんとうにしない、そんないまのような答弁で。大体まじめじゃないですよ、防衛庁長官は。もう少しまじめに答弁しないとだめですよ。もう一ぺん答弁していただきたい。
  245. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私は、非常にまじめに実は答弁したわけです、何かもっとこまかい御質問があれば別ですが。特に基本的に、第七艦隊に大きな変動があったということは私は聞いておりません。もちろん、日米間においては何ら変更がないというのは、大まじめに私は申し上げておる。
  246. 北村暢

    ○北村暢君 こっちから言えばいいのですけれども、やはり時間がなくて、なかなか言えぬのです。そこで私は、やはり中国が核実験を再開して以後、アメリカの太平洋戦略というものは変わってきておる、明らかに変わってきておる、これはもう原子力潜水艦の例を見ても、いまの第七艦隊の問題を取り上げても。しかも今日、北爆に参加しておるのは、この第七艦隊の艦載機が主力である。その司令部が横須賀にある、こういうような点からいって、これはまあ重大な問題です。したがって私は、アメリカのそういう体制というものが、もうすでにできてきておるというふうに思いますから、そういう中で、中国が核武装したことについて、私は、いま羽生委員から質問がありましたように、中国が現実の問題としてこの核装備をやっておるものに、これをやめさせるのに一体どうするか。これは何としても、やはり話し合いのできないところに中国というものは国際的にいる。ここにおいて、従来の安保体制下における日本立場として、台湾政府を認め、中国との国交ということについてどうにもならないという状況だけでは、私はほうっておけない段階に今日きたのではないか。そして、重要事項指定方式というようなことで、中国を国際ひのき舞台の対象外にするということについては、ほうっておけない段階に今日きたのではないか。政府としてはその考えを改めるべき段階じゃないか、このように思うのです。そういうような点からして、この中国の核実験再開、しかも近い機会に核武装するであろうという想定の上に立って、外交上においてやはり大きな転換がなければならない、このように思うのでありますけれども、政府の所見をお伺いしたい。
  247. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中共の問題は、しばしば申し上げましたとおり、これは国際的な重大な問題でありまして、国際世論の背景のもとにこの問題を処理するのでなければ、十分の実績をあげることができないのでございます。一方において、いま御指摘のような事情の推移もありますが、これを国際的な動向を無視して、ただ日本だけがこの問題を処理するということは、きわめて至難の事柄である、こう考えますので、従来どおり、きわめて慎重にこの問題に対処してまいりたい、こう思います。
  248. 北村暢

    ○北村暢君 国際的な周囲の状況を判断しなければならないと言うんであるが、その点の障害は一体どこにあるのか。これは自主外交の立場から、その障害があるとするならば一体どういうところにあるのか、これを具体的に一つ一つ説明してもらいたい。
  249. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 問題がきわめて広範な、重要な問題でありますので、これを具体的に申し上げることは、今日はまだその時期でないと、こう考えます。国際事情は、ことに最近は絶えず流動しておる。そういう中にあって、あまり固定した分析をいたしますことは、将来のために非常に障害をなす。そういう点も考慮いたしまして、この点は、いませんさくすべき段階ではない、こう考えます。
  250. 北村暢

    ○北村暢君 外務大臣ではだめですから、総理大臣にお伺いしますが、私はやはり、この中国が核武装をするという段階にきた時点において、いままでの考え方で対処していくということは、これはもう許されないのじゃないか、そういう情勢ではないのじゃないか、こういう判断をしているのです。したがって、いままでどおりずっとやっていくのですというのじゃ、これは私は理解できない。こういう重要な時期でありますから、総理大臣として従来の外交方針について検討されるということで、それは内部的に一いろいろな国に対して影響のあることでありますから、これはいま直ちにどうこうというわけにはもちろんいかないでしょう。しかしながら、そういう情勢の変化というものについて、中国問題というものについては、やはり検討すべき段階にきたと思うのですけれども、そういう認識というものを、全然お持ちでないのか、どうなのかですね、この点をひとつ、はっきりしていただきたい。
  251. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣がお答えしたとおりでございます。外務大臣のお答えで御不満ということですが、別に変わったことは申し上げるわけでもございませんが、私はただいま中共が核武装した今日、核武装に特に重点を置いて中共問題を考えろ、かようにいわれますが、核武装でこれはさらに加わったということにはなると思います。しかし、中共問題はまことに重大な問題でありますから、基本的態度といたしまして、ことに最近流動しておる情勢に対処しても、慎重にやらなければならない。ただいまの外務大臣の答えも、中共問題は重要な問題でありますから慎重に取り組んでまいりますと、こういうお話でございます。これより以上の何ものもございません。ただいま特に核武装したこと、これが重大な変化だ、かようにいわれますけれども、私はそれよりも、中共のいままでの国際社会への復帰、これを国際的に非常に要望しておる、こういう事態——この問題に私どもは、いままで同様、あるいはさらに慎重にこれと取り組まなければならない、かようなものだと、かように考えております。
  252. 北村暢

    ○北村暢君 核問題は、私は力関係だけでは解決しない外交上の問題で、先ほど総理大臣が言ったように、核の全面禁止まで発展しなければならない問題だと思うのでありますが、その問題について、いま十八カ国の軍縮会議において核拡散防止の議題になっておる、それの中に、ソ連の新提案で、先ほど説明のありました自国領土内に核兵器を持たないものについては核攻撃をしない、こういう新提案が出たのでありますけれども、それの解釈なんでありますが、まあ下田発言とも関連して論議になっておりますが、とにかくソビエトは、日本あるいは韓国というものはもう核武装しておるのだ、核を保有しておるのだ、こういう認識であります。それは沖縄に核の基地がある、こういうことからして、もう核を持ったうちに入っておるという解釈をとっておるようであります。これについて一体、政府はどのように判断をされておるか。
  253. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ソ連の提案は、核所有国が非核所有国に対して先制的に核攻撃を行なわないという保障を与えようと、こういう意思表示でありまして、それ以上の詳細な点については何ら発言をしておりませんので、大体の趣旨においては一歩前進ではあると思うけれども、具体的にこの問題に対処する上におきましては、なお詳細の説明を聞かないと、何とも申しようがないと、こう考えております。  それから、ソ連のこの問題に対する日本観というものは、どういうものであるかということは、まだ私のほうとしては、これを確かめておりません。  それからもう一つ、沖縄に核基地があるか、あるいは基地の中に核を所有しておるかどうかということについても、これは日本としては確かめておりませんので、この問題については、いまお答えをすることができないことを、まことに遺憾に存じます。
  254. 北村暢

    ○北村暢君 もう時間が来ましたから最後に一点。  中国の国連加盟の問題は、なかなか簡単に解決しそうもございませんが、しかし、この核問題についての世界の軍縮会議に中国を引き入れる、こういうことは、これは重要性というものは認識されているのではないかと思うのであります。これに対して政府は、どのように考えておられるか、お伺いいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  255. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 全般的な軍縮会議を——国連加盟といなとを問わず、広く会議をおこすことにつきましては、日本は基本的に賛成でございます。
  256. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 北村君の質疑は終了いたしました。  次会は明日午前十時開会いたします。本日はこれをもって散会いたします。    午後六時六分散会