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1966-04-13 第51回国会 参議院 本会議 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十三日(水曜日)    午前十時十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二十三号   昭和四十一年四月十三日    午前十時開議  第一 こどもの国協会法案内閣提出)  第二 都市開発資金融通特別会計法案内閣提   出、衆議院送付)  第三 災害被害者に対する租税減免徴収猶   予等に関する法律の一部を改正する法律案   (内閣提出衆議院送付)  第四 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正   する法律案産炭地域振興事業団法の一部を   改正する法律案及び産炭地域振興臨時措置法   の一部を改正する法律案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、日程第一 こどもの国協会法案内閣提出)  一、日程第二 都市開発資金融通特別会計法案   (内閣提出衆議院送付)  一、日程第三 災害被害者に対する租税の減   免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正す   る法律案内閣提出衆議院送付)  一、郵便法の一部を改正する法律案趣旨説明)  一、日程第四 石炭鉱業合理化臨時措置法の一   部を改正する法律案産炭地域振興事業団法   の一部を改正する法律案及び産炭地域振興臨   時措置法の一部を改正する法律案趣旨説明)     —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  館哲二君から、病気のため三十日間、八田一朗君から、海外旅行のため十七日間、それぞれ請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。      ——————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、こどもの国協会法案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。社会労働委員会理事佐野芳雄君。     —————————————   〔佐野芳雄登壇拍手
  6. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 ただいま議題となりました「こどもの国協会法案」につきまして、社会労働委員会における審議経過と結果を報告いたします。  皇太子殿下成婚記念事業の一つとして、児童自然環境の中で遊びを創造していくことを助成する総合施設設置計画が取り上げられました。昭和三十六年より、東京都と神奈川県にまたがる旧陸軍弾薬庫あとに、厚生省が中心となって建設が進められてまいりましたが、昨年五月、施設がほぼ完成した機会に、「こどもの国」として仮開園をいたしました。  本法律案は、この「こどもの国」の施設運営に当たるべきものとして、特殊法人たる「こどもの国協会」を設立することを内容とするものであります。  第一に、「こどもの国協会」の資本金は、政府が全額を出資することとし、昭和三十六年以降に建設してきた現存の「こどもの国施設及び四十一年度の工事に充当される五千万円のほか、約九十二万平方メートルの国有地をこれに充てることとしております。  第二に、役員として、任期四年の理事長一人及び理事三人以内、並びに任期二年の監事一人を置くことといたします。  第三に、この法人の行なう業務公共性にかんがみ、理事長及び監事については厚生大臣の任命にかからしめるほか、業務方法書事業計画予算財務諸表等については、厚生大臣の認可または承認を受けることを要するものとしております。  委員会においては、特殊法人運営を委託させる必要性、国からの出資の具体的な内容独立採算による運営の可否、入園料適正化入園児童に対する安全及び衛生管理のための措置、敷地内に残存する旧弾薬庫の処置、役員兼職制限、職員の処遇、他府県における同様の施設に対する助成態度等の諸問題について、熱心な質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知願います。  採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  7. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  8. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  9. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第二、都市開発資金融通特別会計法案、  日程第三、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。大蔵委員長徳永正利君。     —————————————    〔徳永正利登壇拍手
  11. 徳永正利

    徳永正利君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、大蔵委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、都市開発資金融通特別会計法案について申し上げます。  本案は、都市開発資金の貸付けに関する法律施行に伴い、都市の機能を維持・増進するため、東京大阪等における特定地域工場等あと地、または、主要都市における都市計画上主要な道路、公園等公共施設の用地を、地方公共団体が先行的に取得するに際し、これら地方公共団体に対して行なう必要な資金貸し付けに関する経理を明確にするため、新たに特別会計を設けようとするものであります。  なお、本法案は、衆議院において、施行期日公布の日に改めるとともに、昭和四十一年度予算から適用するとの修正がなされたものであります。  委員会におきましては、貸し付け資金として計上されている十五億円で所期の目的を達成できると考えるか、また、将来、資金を拡大していく意図があるか、等について質疑がありましたが、詳細については会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。     —————————————  次に、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、最近における所得水準上昇及び所得階級区分の異動並びに課税最低限引き上げ等に伴い、所得税減免及び源泉徴収所得税徴収猶予を受けることができる災害被害者所得限度額を引き上げるものであります。すなわち、住宅、家財について甚大な被害のあった者について、所得税の全部が免除される者の所得限度額を五十万円から百万円に、二分の一に軽減される者の所得限度額を八十万円から百五十万円に、四分の一軽減される者の所得限度額及び源泉徴収所得税徴収猶予を受けることができる者の所得限度額を百二十万円から二百万円に引き上げようとするものであります。  なお、本案につきましては、衆議院において、施行期日公布の日に改める修正が行なわれております。  委員会審査におきましては、事業用資産損失救済所得税雑損控除と本法との関係、非納税者の場合の救済等について質疑がありましたが、詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、採決の結果、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  12. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  まず、都市開発資金融通特別会計法案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  13. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  14. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 次に、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  15. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  16. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、  郵便法の一部を改正する法律案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。郡郵政大臣。    〔国務大臣郡祐一登壇拍手
  18. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 郵便法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、郵便事業の円滑な運営とこれに要する財源を確保するため、郵便に関する料金改定しますとともに、郵便物種類体系等整備して業務能率化を進め、あわせて、利用者に対するサービス改善するため所要規定改正を行なおうとするものであります。  まず、郵便に関する料金改定理由について申し上げます。  郵便主要料金は、昭和二十六年以来十五年間にわたって据え置かれましたまま今日に至っておりますが、最近における事業収入の伸びは鈍化の傾向を示し、一方諸経費、特に人件費増高が著しく、昭和四十年度当初においてすでに不足を生じている状況でありまして、このまま推移いたしますときは、昭和四十一年度以降におきまして収支の不均衡はますます大きくなることが予測されるに至ったのであります。他方、増高する郵便物を円滑に処理し、サービスを維持向上して時代に即応した郵便業務とするためには、それに必要な要員を確保し、局舎施設を充実し、その他作業の近代化をはかることが急務であります。そこでこの際、これらに必要な財源を確保するため、郵便料金改定を行なうことといたした次第であります。  この法律案の提案にあたりましては、郵政審議会答申を尊重いたしましたほか、値上げ幅につきましては、できる限り低位に押さえるよう配意いたしたのであります。  次に、郵便料金内容について申しあげます。  まず、第一種郵便物は、従来の第五種郵便物を統合して定形郵便物と非定形郵便物とに分けることとし、定形郵便物基本料金はこれを十五円といたしました。郵便はがきは七円とし、年賀はがきの低料扱いは廃止することといたしております。また、第三種及び第四種郵便物料金につきましては、それぞれの特質に応じて十分の考慮を加えております。  第二に、業務の能率的な運営をはかるため、種類体系整備とともに郵便物の容積及び重量の最大、最小の限度を若干改定することとし、また、郵便物を大量に差し出す場合で、区分などについて協力されるものについては、料金の割引を行ない、さらに新しく簡便な書留制度を設けることといたしております。  第三に、郵便サービス改善をはかるため、学術刊行物、書籍については従来より低料とし、書留郵便物の亡失などの場合における賠償限度額を引き上げるほか、非常災害の際における救助用物資内容とする小包郵便物料金を免除し、さらに書き損じ等郵便はがきの交換を行なうことといたしております。  今般の法律改正によって料金改定されますと、事業収支均衡が得られますので、つとめて、事業近代化をはかり、郵便物の確実迅速な送達を期し、もって国民各位の御期待にこたえる所存でございます。以上をもって、この法律案趣旨説明を終わります。(拍手
  19. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。光村甚助君。    〔光村甚助登壇拍手
  20. 光村甚助

    光村甚助君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま郵政大臣から趣旨説明のありました郵便法の一部を改正する法律案に関して、佐藤総理並びに関係大臣に対し、若干の質問を行ないたいと思います。  ただいま郵政大臣は、本法案は、郵便事業の円滑な運営をはかるための財源を確保し、かつ、事業近代化のための前提条件整備せんとする、非常に建設的な、前向きの法案であるかのような御説明をなされたのでありますが、私どもは、遺憾ながら、本法案のどこからも、そのような意図を読み取ることはできないのであります。  まず第一点として、郵便事業財政改善は、料金値上げ以外に方法がなかったかどうかについてお尋ねいたします。佐藤内閣は、本年に入ってから、一般物価上昇に拍車をかけるように、一月一日の消費者米価値上げに続いて、私鉄運賃国鉄運賃値上げを強行、健康保険料、これを追って、国営独占事業である今回の郵便料金値上げまでも行なわんとするものでありますが、これら一連の公共料金値上げは、必ず連鎖反応的に一般物価値上げを呼び、今後の物価をますます騰貴の一途に追い込むものとして、悪評さくさくたるこの公共料金値上げを、あえて行なわざるを得ない理由が、私にはよく了解できないのであります。この点について経企長官から御答弁をお願いします。  御承知のように、今日の郵便事業は、赤字財政に悩んでおりまして、四十年度の予算におきましても、異例の、五十六億円にも達する赤字を計上している事実にかんがみましても、郵便事業あり方について、この際、抜本的な改善が必要と認められるのであります。わが党は、郵便事業経営根本的改革について、従来からしばしば独立採算制の再検討の必要なことを力説してまいったのでありますが、いまや、事業現状は、その必要を一そう痛感させるものがあります。  最近における郵便事業収支内容を見まするに、現在、郵便事業赤字の大部分は、定期刊行物内容とする第三種郵便物や、通信教育教材等内容とする第四種郵便物料金が、文化の向上を目的とする社会政策的見地から、原価を無視した極端に低い政策料金に押えられているがためであります。国民一般利用者に最も密接な手紙においては現に黒字であり、「はがき」においてもほんのほずかの欠損で、おおむね収支均衡が保たれており、さらに、速達書留等特殊料金においては相当な黒字を示しているにもかかわらず、政策料金の大宗を占める新聞郵送料は、一通二円の収入に対して、約十一円の支出を要している現状であります。すなわち、新聞配給所が、自分で配達しては損な所、たとえば山間僻地の一軒家に、また、冬期積雪で歩行困難なときには、二円貼って郵便局に出せば、郵便はその一通のために数キロの雪の中を一々配って歩かなければならないのであります。一カ月三十回にわたって、取り集めし、差し立てし、逓送し、配達したサービスに対する収入が、一回二円の合計六十円にしかならないというに至っては、全くわれわれの想像し得られないところでありまして、現に全国津々浦々において、毎日、無数に、これが行なわれつつあるのであります。今回の料金改定は、これら公共負担から生ずる赤字を補てんせんとする必要から行なわれたものと見られるのでありますが、いわゆる総括原価主義の美名のもとに、かかる公共負担が、郵便の本来業務である手紙はがき等利用者のみにかけられることは、きわめて不当な、不公平なことでありまして、これは当然、政府の責任として、一般会計からの繰り入れをもって充当すべきものと考えられるのでありますが、この点について総理大臣にお伺いを申し上げます。総理大臣郵政大臣の御経験者でもありますので、よくおわかりのことと思います。  現に、アメリカ郵政事業においては、原則としては収支相償うたてまえをとりながらも、国民の福祉その他の公共的サービスによって発生した不足分は、一般会計から補てんすることとしておるのでありまして、一九六三年における補てん額は、わが国の金に換算して約一千四百億円、事業支出額の約一〇%にも達しております。去る三十九年十一月の郵政審議会の「郵便事業近代化に関する答申」におきましても、「郵便料金決定基準的事項国民に対して明確にすべきである。」と述べられているとおりでありますが、政府は、これについて、どのような検討をなされ、どのような結論に基づいて、今回の改正案提出に踏み切ったのか。以上、政策料金による公共負担あり方、及び郵便料金決定基準等について、大蔵大臣並びに郵政大臣からの明確なる御答弁をお願いいたします。  次に、郵便事業サービス改善計画についてお尋ねいたします。  およそ、一般に、料金値上げしようとする以上、単なる赤字解消ということだけではなく、これに見合う反対給付が伴うのが当然でありまして、郵便料金の場合には、利用者に対するサービス改善がその第一に掲げられるべきものでありましょう。たとえば、郵便事業近代化による速達化機械化等も、期待されるのでありましょうが、郵便サービス最大の使命は、何といっても、その送達確実性にあると言わなければなりません。今日、郵便事業に対する国民不信感はきわめて深いものがあります。一体、何日かかれば必ず着くかという郵便送達確実性が失われているところに基因するものであります。最近におきましては、欠配、遅配は、全国的には、やや少なくなって、改善されてきたようでありますが、いまだに、それが根絶せられないのは、われわれの日常において、現に幾らも体験しているところでありまして、就職試験の日時とか、あるいは採用の通知、会合の知らせなどの郵便のおくれが、人生の悲劇を生んでいるということは、各新聞への投書がいまだにあとを断たないのを見ても、明らかなとおりでありまして、まことに遺憾であります。日本経済構造変化によって、人口都市集中化が避けられないことは、だれでもが予測できるところであり、人口動態変化に伴って郵便利用動態変化することは当然でありまして、このような社会情勢変化に即応できる、確たる長期計画のもとに郵便事業運営されていたならば、今日のような送達の不確実は起こり得ないものと思われるのであります。郵政省は、本法案提出にあたり、普通通常郵便物航空機搭載により、全国主要都市間を速達し、翌日配達を確保するといって、これをサービス改善の一枚看板に掲げているようでありますが、私は、郵便送達確実性を期する上において、航空機搭載にどれだけの期待がかけられるか、まことに疑わざるを得ないのであります。現在の郵便物の流れを見ますと、全体の約五五%は自府県内相互間の郵便であり、さらに約七〇%はその郵政局管内相互間の郵便でありまして、したがって、これらは航空機利用を必要としないものばかりであります。また、今日の郵便遅配となっている原因は、郵便の輸送に要する所要時間の問題よりも、引き受け、配達という、郵便局における業務運行方法に問題があることは、アメリカ本土から羽田まで、わずか十数時間で運ばれてくる外国郵便物が)羽田から東京都内あて所配達されるまでに数日を要することがあるという現実に、問題があるのであります。私どもは、言うがごとく、北は札幌から、南は福岡・鹿児島までも、翌日配達を確保してくれとは申さないのであります。東京大阪のごとき、都内、市内は、翌日に配達するとか、東京から大阪には翌日、東京から福岡・熊本には三日目、東京から北海道には三日目というふうに、おおよその基準が示され、それが確実に完全に実施されることが、最大サービスとして望まれるのであります。遠隔地方には三日でもよいから、そのかわりに、必ずその日限には、一通も誤りなく配達してもらう確実性をこそ、望んでいるのであります。  さらに、私どもが心配しておりますことは、今回の改正案において、現在二十億通をこえる一番大切な第一種の手紙に、従来の第五種である印刷書状ダイレクトメール業務用書類等約二十億通の七%近くのものが、密封され、定型化されて、第一種に加わってまいりますと、第一種は実に四十億通に近いものになると予想されるのでありますが、従来においても、一番重要な手紙に、いまだ遅配あとを断たないのに、あまり急がないダイレクトメールのようなものが加わって、倍近いものになりますと、大切な第一種の疎通に支障を来たし、また再び、多くの遅配を生ずることになりはしないかと憂うるものであります。  郵政省は、このたびの料金改定に伴い、事業近代化のための施策として、大幅な局舎整備新築に約六十億円を計上し、また、二十数億円を投じて、郵便機械化等近代化をはかり、さらに平年度七億六千万円をもって、遠隔地への信書の航空機搭載実施等によって、今後は遅配の心配はないと言われておりますが、国民は、はたして、これだけの施設で、直ちに遅配がそのあとを断つと信用するでありましょうか。郵便に対する国民不信は根強いものがあります。料金改定の前に、大都市周辺郵便事業近代化に主力を注ぎ、事業運営機械化従業員の大量の配置、きめのこまかい緻密な労務管理等を行なうことによって、郵便送達の安定を確約せられてこそ、国民も少々の料金改定はやむを得ないものとして納得するのではありますまいか。この郵便送達確実性について、郵政大臣の所信のほどを明確に御答弁願いたのであります。  最後に、私は、今回の料金改定後の郵便事業財政上の見通しについてお伺いいたしたいのであります。私は、郵政当局が確たる財政計画をお持ちの上、本法案をお出しになったのかどうか、疑わざるを得ないのであります。昨年末の郵政審議会答申によりますと、今後五カ年問の事業収支の安定をはかるためには、少なくとも三六・八%の料金改定の必要を認めるが、諸般の事情を考慮して、さしむき今後三カ年間の収支均衡を目途に、最小限二九・五%の値上げを行なうべきであると述べているのであります。政府は、この答申に基づいて本法案を作成したといわれるのでありますから、もし答申基礎資料が正しいものとすれば、今回の政府が行なおうとしている、さき答申を下回った二八・八%の料金改定で、しかも七月からの実施であるとすれば、当然、今後二年半程度で再び事業財政の行き詰まりを来たすことになる勘定であります。しかるに政府は、さき衆議院における予算審議において、今回の二八・八%の料金改定をもってしても、なお今後五カ年間くらいは収支均衡が保てるだろうと言明せられておるようでありますが、はたして何を基礎として本改正案をおつりになったのか、私どもはその真意のほどが理解できないのであります。郵便料金のような、国民大衆のふところに直接響く公共料金値上げにあたっては、その計画は、あくまでも緻密に、今後数年間は改定しなくてもよいとする具体的数字に基づいた確約が国民に明示されなければならないと思うのでありまして、単なる当局の胸算用とか、本改定案を通すための一時的な方便としての口約で終わってはならないのでありますが、郵政審議会答申との食い違い、今後何年間値上げしなくてもやっていけるかという見通しについて、郵政大臣の納得のいく御説明を伺いたいのであります。  以上をもちまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  私がしばしば申し上げますように、佐藤内閣に課せられた課題は、物価の安定並びに不況の克服だと、かように申してまいりました。そういう際に、御指摘になりましたように、米価あるいは国鉄、また今度は郵便料金値上げをせざるを得ない、まことに残念な状態であります。これらの事柄が一般物価に影響を与えることは、御指摘のとおり、もちろんあるだろうと思います。私どもは、そういう意味で、この点を非常に慎重に扱ったつもりであります。また、その上げ幅、その時期等につきましても、特に考慮を払ったのでございます。  郵政事業そのもの赤字である、これを克服するのに一体どうしたらいいのか。——もちろん近代化機械化等がはかられております。また、そういうような赤字が出た場合には、光村君も御承知のように、一般的に、借り入れをするとか、あるいは一般会計から赤字の補てんをする、あるいはまた料金の引き上げをして、それをまかなうとか、こういうような方法があるわけであります。いわゆる借り入れ金制度では、これは根本的な解決方法でないことはおわかりだと思います。いつのときか料金改正をせざるを得なくなる、かように思います。一般会計からする赤字補てん——特に御指摘になりましたような政策料金等について、この問題はあると思いますし、アメリカなどでもそういう処置をとっております。しかしながら、今日、私どもは、この種の公共事業独立採算であるべきだと、かように思っております。その独立採算は、総括原価主義による独立採算、かように私は基本的な態度をきめておりますので、ただいま言われますように、一部、扱い種別によって、あるものはペイしている、あるものは赤字だと、かように考えられて、それぞれのくふうをしろということは、私は賛成しかねるのであります。ことに扱い種別につきましては、そのものの社会的あるいは文化的意義等によりまして、特別料金制度があるわけでありますから、これをそれぞれの社会的理由あるいは文化的理由で安くしておるからといって、総括的な原価主義を乱るわけにはいかないと私は思っております。全体の問題として、これをただいま考えておるのであります。御指摘になりましたように、独立採算制を再検討しろと、こういうお話でございますが、私はこれには賛成をいたしません。一般国民の負担においてこれをまかなうということでなしに、これはやはり利用者負担によって処理すべきが当然だろう、かように私は考えているのであります。また、光村君は、さすがに御出身が郵政省でありますから、専門的な御意見等が出ておりますが、これらのことは委員会におきまして十分御審議をいただきたいと思います。  その他の事柄につきましては、それぞれの担当大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣郡祐一登壇拍手
  22. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 初めに料金あり方についてのお話がございました。総理からお答えがございましたように、郵政事業特別会計自体が企業的に経営すべきものであるということを、法律規定いたしてあります。したがいまして、第三種郵便物等について、これが社会的、文化的な意義がありますならば、低料扱いにいたしました場合においても、独立採算総括原価主義との調和においてこれを維持すべきものであり、アメリカにおいては、御指摘のように、公共サービスについての国庫補てんがございますが、他の国はいずれも、これらの種類のものについても低料扱いをいたしておりまして、文化的な、社会的な意義に着目しているものと存じます。  料金あり方について、郵政審議会料金決定基準の明確化についての答申を採用しているのかどうかというお尋ねがございました。答申の骨子は、このたびの改正案で、ほとんどすべてを採用しているのであります。すなわち、全国の均一料金制を維持すること、独立採算制を維持すること、区分協力等によって郵便局の負担が軽減した場合は割引をいたすこと、これらのものはいずれも採用いたしておりまして、このたび部分的に取り上げておりますのは、政策料金を直接経費に見合わせるようになるべくつとめるという点、これは御承知のように、三種を五割増しの程度にとめておりますが、直接経費に見合う程度のところまでは次第に持っていく努力はしてみたいものだと思っております。  なお、そのほかに、この答申にございます特殊料金の政令委任の点は、ごもっともだと思いますけれども、この公共料金については国会で十分慎重に御審議をいただくという趣旨で、政策料金等はただいまのようにいたしましたのとあわせて、政令委任の分につきましても、直ちに採用はいたさずに、国会に御審議を願う、従来の扱い方を維持しておるわけでございます。  次に、送達確実性について強調なさいました。非常にごもっともな点だと思います。したがいまして、私ども航空機搭載は、むしろ大都市間のことだけを考えておるのでありますが、近県の専用自動車等の増強はぜひいたしたい。大都市、ことに周辺発展地域の局舎整備をいたすと同時に、そこへの要員は充実配置いたします。こうしたことも、すべてを早くというより、むしろ送達を確実にして、国民の信頼をつなぎたい、こういう点でございます。したがいまして、いま光村さんが御指摘のように、翌日配達ということは、私はむしろはっきりと、どこどこには、いつ出した郵便は、いつ届くということを、公に郵便局その他に掲示でもいたしまして、そのお約束を果たしてまいる。およそこれから一年くらいの間には必ずお約束どおりできるというぐあいにいたしたいと考えております。  次に、この送達確実性に関連して、五種を統合したが、これでかえって業務がふえやせぬか。この点はむしろ反対でございまして、従来のように郵便局員が、一種、五種の区分けをする必要がなくなってまいります。それから規格内の郵便物が増加いたしますから、業務量は減少いたします。また、区分協力等による割引き等もいたしております。これらのことによって、五種ダイレクトメールを統合いたしましても、配達の正常化は確保できるように考えております。  最後に、今後の収支見通しのお尋ねがございました。お話のように、郵政審議会は二九・五%の答申をいたしましたがい政府といたしましては、あくまで緻密に、資料によって考え、したがって、委員会等において資料によって御検討願いたいと思っておりますが、郵便物利用状況は順調な伸びが期待できまするし、ことに、四十三年度以降は年五%以上の利用増は期待できますること、業務の正常運行、また、物価の安定による収支均衡期待できまするので、今後五カ年間は改定の必要がない、こういう見通しを立てております。詳細は委員会において、資料によって御説明申し上げます。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  23. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。  私に対しましては、今回の郵便改定を決定したいきさついかん、こういうことでございますが、かねて郵政大臣のほうから今回の御提案がありまして、私も慎重にこれを検討いたしたのであります。つまり、国民の生活に大きな関係がある、これはよほど検討しなければならぬと存じたからであります。御指摘のように、今日、郵政会計は非常に悪化をいたしている。しかも、その内容を見てみますると、その支出の大部分が人件費でありまして、会計の運営にゆとりがない、硬直しているという状態であります。こういう状態は、昭和二十六年以来の郵便料据え置きというようなところからきていると思うのでありますが、ともかく何らかの策をとらなければならない、こういうところにきていると思ったのであります。さあそれでは、借金でつなぐかというが、そういう硬直からきた非常な事態に対しまして、借金でやる、これは私は一時のびぼう策にすぎない、こう思うのであります。また、いま御指摘のように、一般会計でこれを負担したらどうか、こういうお話でございまするが、この郵便会計が行なう事業は、特定の個人に対する、つまり受益者に対するサービスでございます。そういうようなことを考えまするときに、国民全体から徴収いたしまする税をもってやるということは適切ではない。やはりこれは受益者負担の原則でやるべきだ、こういうふうにまあ考えざるを得ないのであります。そういう考え方で郵便料引き上げということになるわけでありまするが、これをいつのタイミングにするか、まあしばらくつないで後年度というようなお考えもあるかもしれません。しかし、先に送れば送るほどこの事態は悪化する、改善されるという見通しはございません。やはりあとに送れば送るほど郵便改定の断層を大きくする、こういうことに相なる。かようなことから、今回郵便料の引き上げまことにやむを得ざるものである、かように判断いたしまして、賛成を申し上げた次第でございます。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 私に対する御質問は、なぜ郵便料金値上げに同意したかと、こういう御質問だと思います。大体、総理大臣及び大蔵大臣等からすでにお話ししましたところで尽きておるのでございまして、私がそれにつけ加えることはないと思いますが、ただ、今回の場合におきまして、郵政大臣に対しましては、人件費が七〇%以上で、必ずしも機械化、合理化の余地はないかもしれぬけれども、できるだけ機械を採用し、あるいは運搬要員の執勢改善をして、労働負担を軽減すると同時に、迅速的確な配達が行なわれるように、そうして一般市民の満足を得るようにということを、ぜひともやってもらいたいということを申し添えまして、同意をいたした次第でございます。(拍手)     —————————————
  25. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 田代富士男君    〔田代富士男君登壇拍手
  26. 田代富士男

    ○田代富士男君 私は、公明党を代表しまして、ただいま趣旨説明のありました郵便法の一部を改正する法律案に対し、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。  この法律案は、さき国鉄料金値上げに続き、物価高に悩む国民大衆にとって最も注目を集めているものであります。そこで、まず第一にお伺いしたい点は、この郵便料金値上げに対する政治姿勢についてであります。総理大臣は、不況の克服及び物価安定を重要政策項目にあげておりますが、しかし、政府の唱えた物価安定政策はいまもって一向その効果をあげておりません。かえって逆に物価高を増進している感があります。昨年の全都市消費者物価指数は、前年の上昇率三・八%を大きく上回わり、七・六%という驚くべき値上がりを示しております。この事実は、口では物価安定に力を入れると言っている佐藤内閣も、その対策を何ら持ち合わせていないことを如実に示したと言えるのであります。一月一日よりの米価値上げ、私鉄及び国鉄料金値上げ強行、さらには、健康保険料金の値上げをしようとしているなど、政府がみずから公共料金を引き上げることは、物価安定を唱えていることと、あまりにも矛盾していると言えるのであります。総理は、このことに対して、真に国民の生活安定を心から考えての上で値上げ政策をとったのかどうか、まずお伺いしたいのであります。また、国営独占事業である郵便料金値上げは、一般物価値上げをさらに拡大せしめていくことは火を見るよりも明らかであります。政府は、四十一年度において、消費者物価上昇見通しを六・五%とし、そのうち一%は政府の政治的努力によって引き下げ、五・五%程度にしたいとの意向を予算委員会において述べていましたが、一方では公共料金の引き上げを断行していて、どうして一般物価の安定がはかられるのか。政府の言う政治的努力を見出すことができないのであります。この点について、具体的に、なおかつ、国民大衆が納得のいくように総理の御所見をお聞きしたいのであります。  質問の第二は、今回の郵便料金値上げに対して、政府は、「家計に及ぼす比率が〇・一四%にすぎず、若干の値上げがあったにしても影響は全くない。また、一般物価に対する影響力も大きくない」と言っておりますが、このような見解は、ことし一年の出発ともいうべき一月元旦に、国民生活の根本ともいうべき米価値上げ実施した暴挙と全く同じであり、国民生活を無視した考えと言わざるを得ません。実に国民不在の政治と言わざるを得ません。このようなことでは、物価問題の根本的解決はなされないと思う。この点、総理並びに郵政大臣はどのように現実を見ていられるのか、国民郵便料金値上げ反対の声をどう受け取っていられるのか、お聞かせ願いたいのであります。  質問の第三は、郵便料金値上げ幅赤字解消関係についてお伺いいたします。  今回の郵便料金値上げ幅を、手紙は五〇%、はがきは四〇%、全体を通じては二八・八%の値上げを見込んでおり、これによって、今後三年間の郵便事業赤字解消と合理化をはかろうとしておりますが、現在の郵便事業赤字を単なる料金値上げによって解消しようとする態度は、あまりにも安易な解決策と言わざるを得ません。今日まで郵政省として、この赤字解消のために、近代化、合理化に向かってどのような企業努力を推進してきたのか、この点について郵政大臣に具体的に御説明していただきたいのであります。  質問の第四は、独立採算制度についてであります。現在の郵便事業は、昭和二十四年より独立採算制度がとられてきましたが、この独立採算制あり方について、この際、再検討する必要があると思うのであります。郵便事業をはじめ国営または公社経営の事業に対しては、政策料金からくる公共負担というべき赤字が当然生じてくるのでありますが、それを独立採算制をたてに、この赤字の解消を一般利用者の負担としていることは、はなはだ不適当であると考えられます。また、今回の郵便料金値上げによって、郵政省当局計画している合理化、また近代化による集中処理局の設置、自動区分機、電子計算機を応用する機械の開発研究等に必要な、多くの資金を捻出しようとしております。この赤字の解消や設備資金については、郵便料金が低料金制度をとっており、それが国民文化の普及向上に貢献するところがすこぶる大であるだけに、独立採算制の制度下においては、少なくとも一般会計によりてその直接経費を負担すべきであります。これでこそ、郵便事業が本来の目的を達成することができると言えるのであります。この点について、大蔵大臣郵政大臣のお考えをお尋ねします。  質問の第五は、郵便サービスあり方についてであります。今回の改正案では、値上げをすることによって、サービスの徹底、スピード化をはかると言っており、そのために航空機輸送に大きなウエートがかけられております。ところが、現在の郵便物数の五五%が自府県で配達され、これを含めた地方郵政局管内の扱いは全体の七〇%であり、残りの三〇%のみが遠距離郵便物となっており、そのため、航空輸送により都市間のスピード化はなされたとしても、配達局での誤配、遅配等の解消がなされない限り、サービスの向上には結びつかないと思うがどうか。また、郵政省では、配達のスピード化、正確性を来たすために、昭和三十七年五月に五カ年計画で住居表示制度の設置がなされたのでありますが、昭和四十一年一月になっても二〇%しか進行してない現状であります。このことは、地方自治体によって推進されることになっているが、郵政省としてどのような対策をいままで講じてこられたのか、また将来の見通しについてはどのような計画を持っているのか、お聞かせ願いたいのであります。  以上、郵便事業に対する基本的な問題を取り上げてまいりましたが、結論としてお伺いしたいことは、郵便事業の全支出中の八〇%を占める人件費による赤字だけが問題であり、その補てんにすなわち郵便料金値上げをもってつじつまを合わせようとする安易な態度は、改めるべきであります。考えてみますれば、このように人件費が高騰した原因は、政府の高度経済成長政策の失敗による異常な物価上昇というひずみであり、郵便事業がかかる赤字をかかえるようになった原因も、実はここに問題があると断ぜざるを得ないのであります。その責任を総理はどう考えておられるのか、お伺いいたします。この失敗を反省しないままに、国民生活の負担に置きかえるというような政府の政策には、納得できないのであります。総理は勇断をもって、大衆のため、今回の値上げを中止する決意はおありでないかどうかお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  私に対するお尋ねは、主として物価との関係のようでございますが、しばしば申し上げますように、この内閣の目下の課題は、物価を安定さすことと、不況を克服することにある、かように申しております。私どもは、その意味で、この二点に重点を置いて、今回の郵便料金値上げにつきましても、これを年当初におきまして一応予定いたしたのでありまして、すでに本年度の五・五%の消費者物価値上げ目標というものは、これは公共料金値上げを見込んだ上で五・五というものを実は目標に立てたのであります。したがいまして、在来からの物価安定方策、それと実は矛盾するものではありません。私が申し上げるまでもなく、この種の公共料金適正化等につきましては、これは、いたずらにただとめるだけが能であるわけじゃありません。必ずいつのときか、これを是正しなければならない。そういう羽目にこれがなっておるのでありますから、ただ政府として考えられるのは、その上げ幅についても十分考慮して、そうして相当の期間もう改定をしなくても済むように、そういう上げ幅をすること、また同時に、公共料金値上げを見込んだとは申しましても、他のものと重ならないようにして、消費者物価に及ぼす影響をできるだけ小さくする、こういう努力をいたしたつもりであります。そういう意味で、今回の郵便料金値上げを御審議いただくのであります。また、これが総括原価主義により、また独立採算制によるんだということは、先ほど光村君にもお答えしたところでございますから、省略さしていただきます。また、委員会等におきましても十分御審議を得たい、かように思うのであります。私は、かような観点から見まして、今回の郵便料金値上げは、これはやむを得なかったものだと、かように思いますので、ただいま御勧告がありましても、これを取り下げるつもりはございません。  ただ、人件費等につきまして、ただいま八〇%が人件費だと言われますが、私どもは、郵便事業とすれば大体七〇%程度、これが人件費のように実は思っております。この人件費事業経営上の負担になる、こういう点で、いわゆる機械化も進めていくとか、さらに合理化を徹底さす、そうして、サービスを低下させない、こういうような努力をただいまいたしておるのでありまして、それらの点をも十分御理解いただき、今回の料金値上げがやむを得ない仕儀であることを御了承賜わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣郡祐一登壇拍手
  28. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) お答えいたします。  初めに、料金国民生活への影響、これは田代さんもお引きになりましたが、家計費調査によれば、家計費の〇・一四、これを——家計費調査をもとにして消費者物価指数ができておりまするが、これによりますと〇・二になっております。郵便料金のこのたび御提案申し上げております値上げによる影響というのは〇・〇六でありまするから、したがいまして、心理的影響ということは私ども十分考えておりまするが、一般物価への影響はほとんど考えられませんし、かつ、利用者の一割五分ないし二割程度が一般家庭の方でいらっしゃいまして、残りは大企業等が利用しておられるのであります。したがいまして、こうした点から考えましても、国民生活への影響はほとんどなしに、ものを考えていくことができる種類のものかと思っております。  次に、二八・八%の値上げの具体的根拠というお尋ねでございます。ただいま申し上げましたように、国民生活への影響を、直接の影響は考えないといたしましても、これからのサービスの向上によって、国民の御期待にこたえなければ相ならぬのでありまするから、したがいまして、今後は可及的低位に押える、そうして、今後の郵便物数の増加というものを確実に把握いたしまして、サービスの向上を——送達速度を確保するとか、機械化だとか、窓口事務を改善するとか、こういうサービスの向上につとめてまいりたいと思います。ことに、人件費見通しを十分立てて収支計算をいたしてみますると、二八・八%値上げによって、先ほど申しましたように、五カ年間の収支を見込むことができるのであります。  次に、政策料金一般会計で負担したらどうかというお尋ねがございました。これは、郵便事業は全体として収支均衡を保ちます独立採算制のたてまえから申しまして、いわゆる政策料金が適度なものであるならば、かつ、適度なものであるという保証ができるならば、これを国民の直接の負担、税という形においてまかなわるべきものではないと思いまするし、また、田代さんが御指摘になりました、近代化機械化等は国庫で負担できないだろうか——これは私は所見を異にするのでありまして、郵政事業自体の運営のために必要な経費でございます。したがいまして、局舎を建設いたすというような建設資金は、これは私は、ある部分は借り入れによることが適当だと思いまするけれども事業近代化機械化自体は、郵政事業会計において解決するのが筋だと考えております。  次に、遅配配達段階で起こるのであるから——この御指摘はごもっともであります。私は、したがって、配達作業面の改善、たとえば、ことに大都市には、その現実が非常に顕著にあらわれておるのでございますが、配達をいたします区画の適正化を保つこと、適正区画を設定すること、それから要員を充実いたすこと、こういう配達作業面の改善と相まちまして、御指摘になりましたような近距離間の輸送、自動車その他、機械力の利用が必要なんでございますが、そういう配達輸送と相まって遅配の解消ができるものであり、このたび料金改定によってお願いいたしました予算によりまして、これらの正常運行を期待することができております。  住居表示の進捗状況、対策というお尋ねでございますが、これは、現在五百八十三地区の中で、二百四十二地区が実施に着手いたしております。特に、東京都の特別区では、全面積の六三%が実施できておりまするので、四十二年度から四十三年度にかけて、人口十万以上の市街地は完了いたすと思います。郵政省といたしましては、関係省とともに住居表示協力会等の推進を極力いたしまして、現状の非能率から早く脱却いたしたいと思っております。  最後に、お話がございましたが、郵政全職員は、今日の郵便料金改定をお願いいたします機会を出発点といたしまして、お話のとおり、安易な態度を排して、国民の信頼にほんとうにこたえる業績をあげる覚悟でおりますので、よろしく御後援をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  29. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。  私に対しましては、この際、郵便料金の引き上げを取りやめまして、一般会計から補てんしたらどうか、こういうような御趣旨のお尋ねでございまするが、先ほど申し上げたとおり、いま郵政会計が非常に硬直化しておる。しかも悪化しておる。今後ますますその傾向が強まる。そういう事態に対しまして、これは恒久的な対策を講じなければならない。その恒久的な対策といたしまして、料金の引き上げがいい。それはやはり、郵政事業の行なう事業は、特定の国民に対するサービスであります。それを、一般国民から徴求する税をもって支弁するということは適切でない、かように考えたからであります。どうも、郵便料金の引き上げをするということは安易な行き方ではないかと、こういうお話でございますが、米の問題につきましても、あるいは国鉄の問題につきましても、あるいは郵便の問題につきましても、みんなこれを一般会計から入れろという、この考え方こそ、私は安易な考え方だと、こういうふうに思います。みんなこれは国民の税金に、はね返ってくるのです。いま計画をいたしております減税計画、これもできなくなってしまう。むしろ、減税ができないばかりでなく、それをこえて増税でもしなければ追っつかない。こういう計算になるので、それでいいでありましょうかと、かようにお尋ねをいたしたくなるのであります。いろいろ検討いたしました結果、万やむを得ざる処置と考えた次第でございます。(拍手
  30. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  31. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第四、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案趣旨説明)。  三案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。三木通商産業大臣。    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  32. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案趣旨を御説明申し上げます。  御承知のとおり、わが国石炭鉱業は、 エネルギー革命の進行に伴い、きわめて憂慮すべき状況におかれており、政府といたしましては、従来から、第一次及び第二次石炭鉱業調査団の答申に基づき、各般にわたる措置を講じてまいりましたが、石炭鉱業の構造的危機は予想以上に急迫の度を強め、このまま放置することを許されない情勢に立ち至っております。このため、昨春以来、石炭鉱業審議会において、石炭鉱業の抜本的安定対策について慎重な検討が進められ、昨年十二月中間答申提出される運びに至ったのであります。政府といたしましては、中間答直申の後、この答申趣旨を尊重し、石炭対策を強力に推進する旨の閣議決定を行ない、今後の石炭対策の基本的方向を明らかにいたした次第であります。  この方針に沿いました諸措置の一環として、今回、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正を提案いたした次第であります。  この法律案内容の第一点は、石炭鉱業の安定出炭体制の確保に資するよう炭鉱の機械化を促進するため、新たに炭鉱機械貸し付け制度を創設することとし、石炭鉱業合理化事業団にその業務を行なわせることとしたことであります。政府は、従来から、近代化資金貸し付け制度等の融資措置を講じて、炭鉱の機械化を推進してまいりましたが、この制度は、融資措置では実現が困難でありました新鋭機械等の導入及び普及をはかっていくこととしたものであります。  改正の第二点は、石炭鉱業の合理化と資源の合理的開発に資するよう、石炭鉱業合理化事業団の保有鉱区及び石炭鉱山整理促進交付金制度により放棄された鉱区について、鉱区調整の一環として、その特例的な再活用をはかることとしたことであります。従来、これらの鉱区につきましては、石炭を採掘することができないようになっておりましたが、隣接鉱区から一体的に開発することが著しく合理的である場合には、例外的に、その活用を認めることとしたものであります。  改正の第三点といたしましては、石炭鉱業合理化事業団が行なう石炭運賃の延納にかかる債務の保証業務昭和四十二年三月三十一日まで延長することとしたことであります。鉄道運賃の値上げに際しましては、石炭鉱業の経営悪化を極力防止する見地から、値上げ分について一カ年の延納措置を講ずることとしておりますが、それに伴い、事業団の保証業務を延長することとしたものであります。  なお、以上のほか、石炭鉱業合理化事業団の役員の欠格条項も整理することといたしております。  以上が石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案趣旨でございます。     —————————————  次に、産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  産炭地域振興事業団は、石炭鉱業の不況により特に疲弊の著しい産炭地域において、鉱工業等の計画的な発展をはかるため、産炭地域振興の推進機関として昭和三十七年七月に設立されたものであり、これまで、工業用地の造成、ぼた山の処理、設備資金貸し付け等の業務を行なってまいりました。産炭地域の現状は、産炭地域振興事業団のこれらの事業実施等により、最近ようやく改善のきざしが見え始めてはおりますが、その疲弊は依然として著しいものがあり、産炭地域の振興を促進すべき必要性は、なお続いております。このため、この法律案におきまして、産業基盤の整備及び企業誘致の一そうの推進の見地から、産炭地域振興事業団に、従来の業務のほか、同事業団が造成した工業用地において使用する工業用水の開発、供給及び産炭地域の振興に必要な鉱工業等を営む者に対する長期運転資金貸し付け、または出資の業務を新たに行なわせようとするものであります。このうち、工業用水の開発供給事業としては、当面、筑豊鞍手地区のクリークの活用による用水開発事業を二カ年計画で行なうこととし、また出資事業としては、四十一年度におきましては、ぼた山利用による人工軽量骨材製造事業の企業化を行なう予定であります。  なお、この法律案においては、産炭地域振興事業団の監事の職務権限を強化するとともに、役員の欠格条項について所要の整理を行なっております。  以上が、産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案趣旨でございます。     —————————————  次に、産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  産炭地域振興臨時措置法は、石炭鉱業の合理化に伴い疲弊した産炭地域の振興をはかるため、産炭地域における鉱工業等の急速かつ計画的な発展等をはかることを目的とし、昭和三十六年十一月十三日から昭和四十一年十一月十二日までの時限立法として制定され、以来、この法律に基づく産炭地域振興計画基礎として、産業基盤の整備及び企業の誘致対策を中心とした種々の産炭地域振興対策が講じられてまいったのであります。しかしながら、石炭鉱業の合理化が本法制定当時予想した以上に急速かつ大規模に行なわれたこと等の事情を反映して、産炭地域の実情は、昭和三十七、八年に比べると、改善のきざしが見え始めているとはいえ、その疲弊は依然として著しものがあり、産炭地域の振興のための施策を継続する必要性は、なお続いている現状にあります。  この法律案は、このような考えのもとに、産炭地域振興臨時措置法の有効期間を五カ年間延長しようとするものであります。  なお、この法律案の附則におきまして、通商産業省設置法の一部を改正いたし、通商産業大臣の諮問機関である産炭地域振興審議会の設置期間につきまして、産炭地域振興臨時措置法の有効期間の延長に対応して、五カ年延長することにいたしております。  以上が、産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手
  33. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。小野明君。    〔小野明君登壇拍手
  34. 小野明

    ○小野明君 私は、日本社会党を代表し、ただいま趣旨説明のありました石炭関係法案に関連いたしまして、総理並びに関係大臣に若干の質問を行なうものであります。  現在の石炭危機を象徴している基本的な問題は、石炭産業の将来に対する不安感、並びに真の意味における生産力の荒廃であります。石炭産業における労働生産性は、ここ数年来急激に上昇しておりますが、これは非能率炭鉱の買いつぶしが計画以上に進められた結果にほかならず、ビルドとして生き残った山にいたしましても、坑内の骨格構造の近代化機械化が停滞しているのでありまして、このため、出炭総量は必ずしも伸びてこないのであります。近代化機械化の停滞は、通産省の昭和三十九年度「設備、切羽調査」によっても明らかで、採炭掘進機械の在籍、使用台数が、昭和三十五年をピークに、その後は減少ないし停滞の傾向にあることからも証明されるところであります。また、炭鉱近代化の指標とされておりました立て坑開発は全く停滞し、依然、斜坑方式が優位を占めているのに反し、第一次答申で規制されたはずの第二会社は、昭和三十五年以来続生し、独立中小鉱の存立さえ脅かすほどになっておるのであります。このような結果をもたらしたのは、第一次答申以来の石炭政策にありますことは明らかであり、石炭産業がかかる事態になったのは、もともと政府の石炭政策には長期の展望がなく、きわめて場当たり的なものであったからであります。  このことは、五千五百万トンの出炭を目標とした、第一次、第二次石炭答申に対し、政府と経営者の無為無策と相まちまして、政策の破綻を見、五千万トンベースをも割るような事態に追い込まれた事実をもってしても明らかであります。昨年夏、石炭局長は大手代表を招致いたしまして、出炭に対する要請と警告を発し、労働者はこれに応じまして増産体制をとり、ようやく五千二百万トンに到達いたしたのであります。しかるに、今日、貯炭は一千万トンにのぼり、山元貯炭だけでも三百万トンになるといわれております。石炭不足といわれて増産をすれば、すぐ貯炭となり、引き取り先のないという状態は、何を物語るのでありましょうか。これは、政府並びに日本財界全体の石炭に対する認識の欠除を意味するものであります。同時にまた、政府に総合エネルギー政策がないままに放置されてきたからにほかならないと思うのであります。しかるに、政府は、いたずらに事態を遷延し、ここまで追い込まれて初めて、総合エネルギーにおける石炭の位置づけに基づいて新たな石炭政策を打ち出そうとしているのでありますが、あまりにもおそきに失した感は免れ得ないのであります。この際、総理並びに通産大臣は、今日までの石炭政策についてどのように批判を持ち、反省をされておられるのか。また、焦眉の問題である本年度の需要確保と総合エネルギー政策に対する決意のほどを明らかにしていただきたいのであります。  第二の問題は、炭鉱における労働力の流出と苦汗労働の復活という点であります。  第一次答申の当初計画では、目標年次四十二年度における人員を十二万人台に置いておりますが、三十九年六月には、すでに十一万人台に達するという状態であります。この中で、特に若年技能労働者の離山が激しく、労働力の老齢化が急速に進んでいることが重大であります。さらに、いわゆる離山ムードの高まりの直接の動機は、石炭産業に対する将来の不安にありますが、基本的には、生命の危険と低賃金に基因しております。御承知のとおり、先進資本主義国の炭鉱賃金は、全産業の中で首位を占めていますが、わが国では、労働省調査によると、昭和四十年十一月現在、二十五業種中石炭鉱業は第六位でありまして、坑外夫に至っては第二十位なのであります。また、切羽個所の深部移行に伴い、高温個所は全国的に広がり、三十七、八度の高温かつ劣悪な労働環境の中で、大手炭鉱においてさえ十時間労働が常態化し、体力の消耗は著しく、熱中症に苦しむ労働者が多いのであります。ことに、中小炭鉱では、なおさら労働基準法を無視した苦汗労働が復活しております。また、答申で厳重に規制されたはずの組夫は、労働省調査によると、大手炭鉱ほどその依存度が高く、九十六山二百四十事業所の八六%に労働基準法違反が認められたと報告されております。石炭危機が労働者の離山を促進し、労働力の流出が石炭危機に拍車をかけていることを、政府はお認めになりますか。お認めになるならば、労働者を確保するのにいま最も必要なことは、石炭危機の救済という基本問題はあるといたしましても、時間短縮と賃金の大幅引き上げにあると思うのでありますが、政府は、抜本策の中で、あるいは当面現実の問題として、いかなる措置をとられようとしているのか、お伺いをいたしたいのであります。  第三の問題は、災害の増大と保安体制の崩壊であります。  三井、三池、夕張、伊王島、山野など、いわゆる保安優良鉱といわれている炭鉱での相次ぐ大爆発は、炭鉱が現在いかに危険な職場となっているかを国民の前に明らかにしております。皮肉にも、昨年の山野炭鉱——三井鉱山の第二会社でありますが、これと同様、石炭調査団をして、第二会社の典型的ビルド鉱と称賛させた北海道の空知炭鉱、これも北炭の第二会社でありますが、ここでも、去る三月二十二日、またもガス爆発で、八名が重軽傷、十名が死亡するという重大災害が起こりました。また、今月に入りまして、この八日には、第二会社の山野炭鉱の子会社である漆生炭鉱は、古洞の出水事故で三名の行くえ不明者を出しました。引き続き、この十日、またも山野炭鉱でガス突出がございまして、三名の犠牲者を出しておるのであります。統計によりますと、昨年一年間で六百四十一名の死亡者を出しておるのであります。いま、世間では、全日空、カナダ航空、B ○ACなどの空の惨事が注目を集めておるのでありますが、炭鉱では、実に三カ月に一回の割りで、墜落事故と同じ災害を出しているのであります。こうした災害の続発は、現在の合理化政策によって、もはや炭鉱の保安体制が崩壊していることを証明しているのであります。かかる状況のもとでは、事故のたびの警告や自戒では、何の役にも立たないのであります。政府は、災害のたびに、保安第一主義、人命尊重を旨とすると、こう言っておりますが、この災害絶滅のための具体的な施策を、通産並びに労働大臣にお伺いをいたしたいのであります。  私は、以上、石炭政策に関する基本的な問題を指摘してまいりました。今日、石炭産業をかかる破局的状態にまでもたらした責任は、昭和三十五年以来一貫して政府がとってまいりました、国際石油資本に従属し、国内エネルギー市場を外国石油に売り渡す、すなわち、スクラップ・アンド・ビルド政策という名のスクラップ・アンド・スクラップ政策にあったのであります。ロンドン・エコノミスト誌(昭和三十九年十一月二十九日)では、次のように指摘をしております。「工業国で日本のように輸入エネルギーに依存する国はない。このような状況で日本が自国の石炭産業を衰退にまかせていることは、西欧人にとっては奇異なことである」!炭鉱をつぶすことが政策ではありません。企業が赤字になったら金を出すことが政策ではないと思うのであります。いまこそ、国家百年の大計に立って、従属的エネルギー政策を改め、私の指摘した問題に対する真剣な究明こそ、政治であると信ずるものであります。しかるに、伝えられる抜本策は、石炭危機の原因には目をおおい、結果として起こった現象の手当てのみに終わっているようであります。政府がいままで実施してまいりましたスクラップ・アンド・ビルドを柱とした合理化政策は、結果として、急激なスクラップ化の進行により企業に過重な負担をかけ、炭鉱労働者の離山ムードを醸成したにすぎないと思うのであります。  第二次答申に基づく石炭対策にいたしましても、企業収支改善をはかることが石炭鉱業再建の道であるとして、炭価の引き上げ、利子補給制度の創設を中心として、企業経理の負担軽減をはかったのでありますが、企業収支改善策はその効果をあらわさず、企業の累積赤字は、減少するどころか、すでに八百億円に達しているのであります。しかも、大手十七社の四十年度末では、トン当たりの赤字が六百円をこえ、また、借り入れ残高におきましても、三十九年度末に一千七百億円に達しているのであります。このような石炭鉱業の実情に対しまして、先ほど出されました審議会の中間答申は、合理化過程において発生した過重な負担の財政資金による肩がわり、画期的な助成措置、安定補給金の交付という基本方向を示しているのでありますが、これこそ私企業に対する国の保護政策の限界を越える措置と言わざるを得ないのであります。また、これに要する資金は、ばく大な額にのぼるであろうことは想像にかたくありません。政府は、これが財源を一体どこに求めようとしておられるのか。私企業を前提とする限り、これらの肩がわりや交付金の政策が、国民の税金の有効な使用と、唯一の国家資源である石炭の合理的な開発に役立たないことは、過去五年間の実績と今日の石炭危機そのものが最もよく証明しているではありませんか。石炭産業安定の道は、英国、フランスのごとく、確固とした総合エネルギー政策のもとで、石炭産業の近代化を阻害している鉱区解放と労働者の低賃金を打破する方向での国有化以外にはないと思うのでありますが、総理並びに通産大臣の所信を伺いたいのであります。  最後にお伺いをいたしたいのは、産炭地における教育の荒廃についてであります。  政府の石炭政策の失敗は、産炭地の社会機能を破壊しつつあります。合理化による閉廃山のあと、産炭地は、ただいま趣旨説明のありましたこととは逆に、政府の無為無策により、無数の鉱害と、地方自治体の貧困と、おびただしい失業者の洪水を生み出しております。また、この産炭地に誘致された企業もごく少数であり、この企業も、政府の積極的援助策がないまま、成長することができず、立ち枯れ状態に追い詰められつつあるのであります。こういった中での教育がいかに困難をきわめておるかは、想像を絶するものがあります。いまや、産炭地の学校は教育の場とは言えず、教師は、青少年非行の防止、あるいは児童生徒の家庭の貧困との戦いに追われ、あるいはまた、教育扶助費の支給、学用品の購入、支給等の事務に忙殺されるため、極端な人員不足と労働強化を来たし、ために、学校は福祉事務所か職業安定所のごとき観を呈する場合さえあるのであります。総理は、この第五十一国会の冒頭、青少年教育の重要性に触れ、次のように述べております。「私は、最後に青少年諸君に訴えたい。今日の青少年諸君が自由と平和に恵まれつつ、はつらつと成長できることは、まことに幸福であります。」——これを、産炭地の児童生徒五十三万、なかんずく生活保護、準要保護児童生徒約十万名、並びにその父兄は、何と聞いたでありましょうか。教育の機会均等を失すること今日の産炭地学校ほど深刻なものはないと思うのであります。この中で、さきの第四十八国会において、愛知文部大臣の言明、あるいは本院石炭特別委員会の決議等、産炭地教育に対する財政的、行政的な特別措置がなされるよう約束はされておりますけれども、いまだにその施策はきわめて不十分と言わざるを得ないのであります。この産炭地教育の窮状に目をおおうことなく、これを救済するため、総理並びに文部大臣はいかなる方途をお持ちであるか、また、救済する必要はないとお考えであるか、この点をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  35. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  石炭政策につきまして、去る三十七年に石炭審議会のメンバーが第一回の調査をいたしました。そうして答申を得、さらにまた、三十九年にも、この第二回の調査をいたしたわけであります。その答申内容そのものは、お話にもありましたスクラップ・アンド・ビルドもございますが、同時に、需要確保対策、これに最も力を入れたものでございます。また、労働者の確保につきまして、非常な減員を生ずるというので、離職者対策にも力を入れ、あるいは産炭地振興対策、鉱害対策等々の基本的態度をきめまして、これと取り組んだのであります。しかしながら、このエネルギー革命における石炭の構造的な危機というものはたいへん重大であります。なかなか私どもの想像以上に深刻なものがありまして、そこで、三十九年に第二回の調査をいたしまして、これが補強をいたしたわけであります。それは、ただいま小野君の御指摘になりましたように、炭価も引き上げをする、あるいは利子補給の新しい制度を考えるということであります。  その後の経過を見ましても、これだけで十分ではございません。御指摘になりましたように、国産の石炭、これは何と申しましても、エネルギー源として安定供給のものでありますし、さらにまた、外貸使用の面から見ましても、重大なる意義、また価値があるのであります。そういう意味で、石炭鉱業というものを育成強化していくというか、これを維持していく、これが国の基本的政策からも必要なのであります。そういう意味で、さらに第三回目のいま御審議を願い、近くその答申が出てくることになっております。昨年は、その根本的な対策が出るまで待てないような状況だと、ことに年越しのための資金等を必要とするということで、中間的な答申を得まして、利子補給の拡大を大幅にいたしましたり、あるいは運賃についても所要の処置をとったり、積極的に資金を見ておるわけであります。今日は、この状態が、総合エネルギーの観点から石炭の位置づけをすることが必要でありますし、また、どうしてもこれだけは維持していかなきゃならないというものがございますので、そういう意味の抜本的な根本的対策を立てようと、こういうことで、石炭審議会にただいま御審議を願っておるということであります。政府は、もちろん、ただいま申し上げるような観点に立ちまして、これと真剣に取り組んでおる状態でありますので、審議会の答申を待ちまして、必ず基本的な、抜本的な対策に遺憾なきを期していきたいと、かように思っております。  次に、もうすでに、かような立場で考えても、私企業としての限界に来ているのじゃないか、これからは、イギリスやフランスの例にならって、国営、国管の方向に行ったらどうか、こういうお尋ねでございますが、国営、国管というようなことは、これはもう経済の基本的な態度、基本的な問題にも触れるのでありますから、これは慎重に考えなければならないと思います。今日まで私ども答申を得ておりますのは、私企業としての石炭鉱業、その基盤を強固にするにはいかにすべきか、そういう意味の答申を得ておりますので、国営、国管の問題は、これは慎重に検討するとして、ただいま私企業としての基礎を強固にする、こういう立場で答申の出てくるのを待っております。昨年なされましたのも、そういう意味の、私企業としての基礎を強固にする、こういうことで答申を得たように思っております。  次に、教育の問題についてのお尋ねがございました。確かに、この産炭地地方における教育の荒廃、これはもう、ほおっておけない状況でございます。御指摘のとおりであります。私どもたいへん心配しております。そういう立場でございますから、貧困児童生徒の就学の助成をする、積極的にこれを助成する、あるいは給食につきましても特に考えていくとか、あるいはまた、指導主事——充て指導主事と言っておりますが、これを増員することによりまして、ただいまの貧困者の生徒児童のめんどうをさらに積極的に見ていく、あるいは高等学校進学者に対しましても育英資金のワクを増大するとか、積極的にそれぞれの処置をとりまして、ただいまの教育問題の解決と取り組んでいく考えでございます。  その他の問題につきましては、それぞれの大臣からお答えさせたいと思います。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  36. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 小野さんにお答えをいたします。  数点の御質問がございましたが、第一点は、政府の石炭政策というものは、しょっちゅう変わっておるではないか、これに対してどう反省しておるか。——確かに、昭和三十七年の第一次調査団以来、石炭政策というものが、そのときどきの状態に応じて政府は施策を進めてまいったのであります。日本ばかりでなしに、欧州諸国においても、石炭鉱業というものは、たいへんに難問題になっていることは御承知のとおりであります。それは、エネルギー革命のスピードが予想以上に早いということであります。こんなにエネルギーの面における革命が来ようとは、だれも予想をしなかった。しかも、そのエネルギーというものに対して、一面においては、国際競争力の上から、低廉であるということが原則である。また、一面において、安定供給という面もある。また、地域経済との調和をはからなければならない。ただ安いということだけでは割り切れない。国民経済全体との調和をはかり、エネルギー源の安定的な確保をしていかなければならない。こういう点が、たいへんなむずかしい課題であるという点は、これは、われわれが政府として弁解するのでなくして、国民の各位も御理解を願えると思うのであります。そういう点でいろいろ反省をしながら、石炭対策としては、日本の産業政策の中で、こんなに政府が気を配っている政策は、私はないと思う。しかしながら、いま言ったように、背景にあるエネルギー革命の早さというものが、われわれにも、こうだと言って、石炭に抜本策を講じて、それが十年も二十年もそれでいけるという政策が、なかなか事実できないところの困難は、小野さん御自身でも御理解たまわれると思うのであります。しかしながら、いまのような状態をこのまま放置することはできませんから、いま総合エネルギー調査会——昨年の六月、国会において法律によって設けられた調査会、これにおける石炭の置位づけ、あるいは、また、一面においては石炭鉱業審議会における石炭の抜本策、こういうものの答申も待って、まあ何十年も先というわけにはいきませんが、相当長期にわたって、日本の石炭鉱業というものが安定してやっていけるような対策を講じたいと思って、鋭意努力をいたしておるのが現状であります。  第二の点は、労務者の確保対策という点でございます。これは非常に大事な点であって、近時、若年労務者、ことに若年の技能労務者の確保が困難になってきておる、これは石炭鉱業の安定の基本の条件に触れる大問題であります。そのためには、小野さんは、いろいろ賃金を上げろ、時間を短縮せよとおっしゃいましたけれども、石炭鉱業というものがもっと安定しなければ、労働条件の改善というものができる基盤が私はできるとは思わない。石炭鉱業というものを、その経営が安定してやっていけるようなところに持っていくのが第一であります。第二には、やはり保安体制というものが、われわれも気をつけておるのですが、残念ながら小野さん御指摘のように、いろいろな災害が頻発する、まことに残念に思っておりますが、この保安体制を整備する。また、第三には、労働環境というものが改善されて、若い労務者の方々がやはり石炭鉱業に働くという魅力を持たす職場でなくてはならない。そのためには、住宅の改善であるとか、あるいはまた、一面においては、できるだけ早期に実現をはかりたいと考えております労務者の年金制度、これは各省と検討を加えておるわけであります。こういう点で、職場の環境の改善ということも、これは大事なのであります。こういう、いまここで申し上げましたような諸点というものについて改善を加えて、若年労務者の確保をはかりたいと考えております。  第三は、保安対策に対しての御質問でありますが、これは何としても、こんなに次々に災害が頻発するということは、まことに残念であります。産業の政策の前に、やはり人命尊重がなければならぬことは申すまでもないことであります。それには、第一番に、やはり労務者と経営者——労使が、やはり自主的に保安体制を整備するということが何としても中心である。全部政府だ何だということだけでは、保安体制というものは整備できるものではない。まず、労使が自主的に保安の確保をはかろうという、この努力、意欲、これがやはり中心だと思う。その上に、第二には、やはり政府としても、監督とか検査とか、こういうものも強化しなければなりません。監督の強化ということであります。第三は、やはり坑内の作業の環境を変えなければいかぬ。坑内の掘進というようなものに対しては、これはやはり坑内の構造改善に対して、政府が助成を行なって、災害が起こらないような坑内の作業環境の改善ということが、次に問題になる。こういう点を——いま申し上げたような見地から、今後とも保安の確保ということに対しては、一そう意を用いたいと考えておる次第でございます。  国有化の問題については、総理がお答えになりましたが、私も同様に考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  37. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私に対しては、質問はなかったと思いますが、せっかくの議長からの御指名でございますので、一言申し上げさせていただきます。私は、石炭鉱業に働く方々にも知り合いがあります。ほんとうに私は、それらの方々がお気の毒だという感じがしてならないのであります。つまり、先がない、先が不安である、先に光明を求めることができないままに、毎日毎日を過ごさなければならない。私は、日本じゅうで炭鉱で働く人々ほどお気の毒な人はないと、こういうふうに思います。それには何としても、石炭鉱業の前途はこうこうだという見通しを立てる、それに政府が協力することが、私は政府の任務である、こういうふうに考えております。幸いに、そういう機運が盛り上がってまいりまして、六月には石炭鉱業審議会の最終答申もある、こういう話でございますので、それらの答申の結果を十分検討いたしまして、私どもといたしましても最善の努力をする、働く人に希望の持てるような事態をつくり上げる、こういう気持ちでございます。(拍手)    〔国務大臣小平久雄君登壇拍手
  38. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 私に対する御質問の第一点は、石炭鉱業における労働力の確保の問題でございますが、これにつきましては、ただいま通産大臣あるいは大蔵大臣から御答弁申し上げたとおりでございます。何と申しましても、石炭鉱業が労働者にとりまして魅力のある職場、あるいは希望の持てる職場、こういうことになってもらうことが一番望ましいわけでありまして、私どもといたしましては、従来から特に、この労働力の確保の問題につきましては、炭鉱離職者を高能率の炭鉱へ優先的にあっせんするというようなことを重点にして、努力をいたしてまいったわけでございますが、今後におきましても、近く答申が得られる予定の石炭鉱業審議会の答申におきまして、労働力の確保安定対策も含めて御答申をいただけると、かように期待いたしておるわけでございまして、これが出ました以上は、これを尊重いたしまして、十分努力をいたしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。  なお、第二の点は、賃金及び労働時間の問題でございますが、炭鉱労働者の賃金は、お示しのとおり、近時、他の基幹産業に比べまして、相対的に低い、こういう状況にあるのであります。労働環境等から考えまして、私どもは、これが将来改善されることを希望するわけでございますが、これもまた、業界自体の再検討ということが、当然これは問題になるわけでございまして、この改善に業界の立ち直りに伴って、私は賃金その他の労働条件も改善されることを強く希望いたすわけでございます。なお、労働時間の問題でございますが、これにつきましても、御承知のとおり労働基準法におきまして、坑内夫につきましては一日二時間を限って時間外の労働が認められておるわけでございますが、実際にはそれをこす労働というものが相当ある。つまり基準法違反の労働が行なわれておるということも、これも事実であります。したがって、労働省といたしましては、この点について特に重点を置きまして、監督指導をやってまいったのでございますが、最近におきましては、業界におきましても、これが是正につとめてまいっておりまして、相当の成果をおさめておりまするが、労働省といたしましては、なお引き続きまして監督指導を十分やってまいるつもりでございます。  なお最後に、災害の関係でございますが、これも通産大臣から御答弁があったとおりでございます。労働省といたしましては、通産省と十分緊密な連携をとりまして、労働時間その他の労働条件に対する監督指導を十分にいたし、労務管理の改善、これを通じまして災害の予防につとめてまいりたい、かように考えておるわけでございます。(拍手)    〔国務大臣中村梅吉君登壇一、拍手
  39. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御指摘のございましたように、産炭地の教育問題というものは、石炭産業の現状から見て非常に重要であると、私どもも心得ております。要約いたしますと、要保護世帯、準要保護世帯が急増する、あるいは生徒の激減、こういうことと、所在市町村の非常に貧困化しての財政難、もう一つは、そういう事情下にある産炭地の児童生徒の進学の問題や非行化の問題、こういうことに相なろうかと思うのでございます。したがいまして、御承知のとおり、今日まで、この要保護世帯や準要保護世帯の激増等の現状にかんがみまして、就学奨励に関する、教科書とか学用品あるいは修学旅行、給食等についての高率補助、また、市町村の財政難にかんがみまして、文教施設に対する高率補助、こういうようなことを実施してまいっております。また、児童生徒の進学につきましては、育英資金による奨学の特別のワクをつくりまして、そうして高校進学等については、できるだけそういう能力を持った者が進学のできるように配慮を進めてまいっておるわけでございます。なお、問題は、児童生徒が産炭地の現状から非常に激減をする、こういう状態下にありますので、標準法のとおり教員を減らしてまいりますと、急激に教職員も減らさなければならないことになりますので、こういう調節措置、及び生徒児童のための指導主事の配置、こういうような点が非常に大事でございますので、これらの点につきましても、現にいろいろと、くふうをいたしている次第でございますが、今後とも、産炭地の教育問題の重要性にかんがみまして、私どもとしましては、鋭意これに最善の努力を尽くしてまいりたいと、かように考えております。(拍手
  40. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十四分散会