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1966-02-07 第51回国会 参議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月七日(月曜日)    午後一時四十四分開議     —————————————議事日程 第十一号   昭和四十一年二月七日    午後零時三十分開議  第一 国務大臣報告に関する件(全日空機遭難事故について)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣報告に関する件(全日空機遭難事故について)     —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略 いたします。     ————————————— 去る三日内閣総理大臣から、左の通り補欠選挙に 当選した旨の通知書を受領した。  広島県選出(二月一日当選)   中津井 真君(岩沢忠恭君の補欠) 同日議長において、左の常任委員辞任を許可し た。  内閣委員           石原幹市郎君  地方行政委員         剱木 亨弘君  法務委員           亀田 得治君  外務委員           川野 三暁君  同              岸田 幸雄君  社会労働委員         上原 正吉君  同              重宗 雄三君  同              杉山善太郎君  商工委員           郡  祐一君  同              安井  謙君  予算委員           横山 フク君  同              吉江 勝保君  同              林田 正治君  同              山高しげり君  決算委員           館  哲二君  同              園田 清充君  議院運営委員         前田佳都男君 同日議長において、常任委員補欠を左の通り指 名した。  内閣委員           重宗 雄三君  地方行政委員         郡  祐一君  法務委員           杉山善太郎君  外務委員           上原 正吉君  同              安井  謙君  社会労働委員         川野 三暁君  同              石原幹市郎君  同              亀田 得治君  商工委員           剱木 亨弘君  同              岸田 幸雄君  予算委員           西田 信一君  同             大野木秀次郎君  同              小沢久太郎君  同              市川 房枝君  決算委員           野知 浩之君  同              仲原 善一君  議院運営委員         園田 清充君 同日議長において、左の特別委員辞任を許可し た。  科学技術振興対策特別委員   江藤  智君 同日議長において、特別委員補欠を左の通り指 名した。  科学技術振興対策特別委員   青木 一男君 同日委員会において当選した理事は左の通りであ る。  社会労働委員会   理事 丸茂 重貞君 (川野三暁君の補欠)  逓信委員会   理事 光村 甚助君 (横川正市君の補欠) 同日内閣から予備審査のため左の議案送付され た。  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案  農林省設置法の一部を改正する法律案  農地管理事業団法案 同日内閣から予備審査のため左の議案送付され た。よって議長は即日これを商工委員会に付託し た。  中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する  法律案  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案 同日内閣総理大臣から議長宛、去る一日付をもっ て大蔵大臣官房財務調査官吉国二郎君は東京国税 局長に、労働大臣官房長和田勝美君は労働省職業 訓練局長に、同職業訓練局長松永正男君は中央労 働委員会事務局長にそれぞれ任命され、また同日 付をもって大蔵省関税局長佐々木庸一君は退職と なったので政府委員自然消滅となった旨の通知 書を受領した。 同日議長内閣総理大臣宛、左の者を第五十一回 国会政府委員に任命することを承認した旨回答し た。     大蔵大臣官房財務調査官 川村博太郎君         大蔵省関税局長 谷川  宏君         労働大臣官房長 辻  英雄君       労働省職業訓練局長 和田 勝美君 同日内閣総理大臣から議長宛大蔵大臣官房財務 調査官川村博太郎君外三名(前掲議長承認)を第五 十一回国会政府委員に任命した旨の通知書を受領 した。 去る四日議長において、左の常任委員辞任を許 可した。  内閣委員           重宗 雄三君  社会労働委員         石原幹市郎君  予算委員          大野木秀次郎君  同              大谷 贇雄君  同              宮崎 正義君  懲罰委員           塩見 俊二君 同日議長において、常任委員補欠を左の通り指 名した。  内閣委員           石原幹市郎君  社会労働委員         重宗 雄三君  予算委員           吉江 勝保君  同              塩見 俊二君  同              鬼木 勝利君  懲罰委員           大谷 贇雄君 同日議長において、左の特別委員辞任を許可し た。  科学技術振興対策特別委員   青木 一男君  公職選挙法改正に  関する特別委員        吉江 勝保君 同日議長において、特別委員補欠を左の通り指 名した。  科学技術振興対策特別委員   江藤  智君  公職選挙法改正に  関する特別委員        米田 正文君 同日委員会において当選した理事は左の通りであ る。  予算委員会   理事 小沢久太郎君 (二木謙吾君の補欠)   理事 西田 信一君 (吉江勝保君の補欠)   理事 日高 広為君 (米田正文君の補欠)  決算委員会   理事 仲原 善一君 (野知浩之君の補欠) 同日衆議院から予備審査のため左の議案送付さ れた。よって議長は即日これを商工委員会に付託 した。  倒産関連中小企業者に対する資金の融通に関す  る特別措置法案栗山礼行君外一名提出) 一昨五日議長において、左の常任委員辞任を許 可した。  商工委員           矢追 秀彦君  運輸委員           浅井  亨君 同日議長において、常任委員補欠を左の通り指 名した。  商工委員           浅井  亨君  運輸委員           矢追 秀彦君 同日議長において、左の特別委員辞任を許可し た。  公職選挙法改正に  関する特別委員        米田 正文君 同日議長において、特別委員補欠を左の通り指 名した。  公職選挙法改正に       吉江 勝保君  関する特別委員 同日内閣から予備審査のため左の議案送付され た。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案  刑法の一部を改正する法律案 同日内閣から予備審査のため左の議案送付され た。よって議長は即日これを農林水産委員会に付 託した。  漁船損害補償法の一部を改正する法律案 同日衆議院から予備審査のため左の議案送付さ れた。よって議長は即日これを産業公害対策特別 委員会に付託した。  公害対策基本法案吉川兼光君外一名提出) 同日議長は、内閣から予備審査のため送付された 左の議案商工委員会に付託した。  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案 同日議長は、ルナ九号の月軟着陸成功に対し、ソ 連邦連邦会議議長スピリドノフ氏宛、左の祝電を 発送した。  貴国ルナ九号による史上初月軟着陸成功に  対し、心からお祝い申し上げます。この輝かし  い科学的偉業の成果は、宇宙開発にさらに大き  な進展をもたらし、世界平和と人類福祉の増進  に大いに貢献するものであることを確信いたし  ます。ここに参議院を代表して、貴国並びに貴  国民に対し深甚なる敬意を表します。      ——————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  去る四日発生いたしました全日空機墜落事故により、搭乗者全員百三十三名が遭難されましたことは、まことに痛恨の至りにたえません。犠牲者とその御遺族に対しまして、心からの弔意を表します。  ここに、犠牲者の御冥福を祈り、黙祷をささげたいと存じます。    〔総員起立黙祷〕      ——————————
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣報告に関する件(全日空機遭難事故について)。  運輸大臣から発言を求められており、ます。発言を許します。中村運輸大臣。    〔国務大臣中村寅太登壇拍手
  5. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 二月四日午後七時、東京湾上において発生いたしました全日本空輸株式会社所属ボーイング727型機の事故により、多数のとうとい人命を失いましたことは、まことに痛恨のきわみでありまして、ここに、つつしんで、なくなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、御遺族方々に対しまして、深く哀悼の意を表するものであります。  いままでに判明いたしました事故の概要、遺体収容、物件の揚収政府のとった措置等について、御報告申し上げます。  全日本空輸株式会社所属ボーイング727型機は、同社の千歳−東京便として、機長高橋正樹外六名が乗り組み、乗客百二十六名を乗せて、東京国際空港十九時五分着の予定で、十七時五十五分、千歳飛行場を離陸しました。  同機は、十八時四十八分茨城県の大子ビーコン、十八時五十六分千葉県佐倉の東京VOR上空を通過し、十八時五十九分、千葉上空付近において、東京国際空港管制塔から進入許可を受けました。十九時三十秒、管制塔からの呼びかけに応答しましたが、その三十秒後の十九時一分、管制塔は「着陸灯点灯」の指示を行ないましたが、応答はなく、自後、再三にわたる管制塔の呼びかけに対し、同機からは何らの応答もございませんでした。  かねてから、東京国際空港に常置されてあります航空機救難調整本部は、直ちに、下総及び木更津飛行場に対し、同機の不時着の有無を照会しましたが、該当機がない旨、連絡がありましたので、同機緊急状態を予想し、捜索救難活動を開始することとし、直ちに、警察、海上保安庁及び防衛庁救難機関に出動を要請いたしました。各救難機関は、直ちに航空機艦船艇を出動させ、捜索救難に当たったのでありますが、二十三時五十五分に至り、捜索機は、木更津北方七海里付近海面において、「全日空」の標示のある翼の一部を発見し、また、機体の内張りの一部及び乗客の衣類を収容しましたので、当該機遭難が確認されました。  次いで零時五分、捜索船は、羽田灯標東南東六・四海里付近海上で、最初の遺体二体を発見収容しました。二月五日一時四十四分、捜索船は、千葉灯標西南西七海里付近海上で「全日空」の標示のある胴体の一部を発見、これを収容しました。その後、相次いで、遺体、遺品、機体等収容されました。本日は、早朝来、気象状況が不良で、作業は難航し、風の少ない時期を見て間断的に行なっておりますが、本日十三時現在までのところ、遺体三十四体と機体の一部とが収容されております。なお、残された遺体並びに機体収容につきましては、最善努力をいたす所存であります。  政府といたしましては、事件重大性にかんがみ、事故発生後、直ちに関係者を集め、総理府に、運輸大臣本部長とする全日空機事故応急対策本部を設置し、当面の緊急対策を協議いたすとともに、運輸大臣は、羽田に再度急行し、救難調整本部から情報を聴取し、現地において捜索救難活動指揮をとり、また五日、日の出と同時に、海上保安庁長官航空局長官房長とともに、ヘリコプターにより遭難現場におもむき、直接現場指揮をとった次第であります。  なお、全日空機事故応急対策本部におきましては、遭難者遺体収容に全力を集中するとともに、遺族援護に万全を期するよう関係機関指示いたす一方、運輸省民間学識経験者を含めた十三名からなる事故調査団を設置し、事故原因の徹底的な調査を実施することといたしております。  以上をもって御報告といたします。(拍手
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。吉田忠三郎君    〔吉田忠三郎登壇拍手
  7. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま報告のありました羽田沖での全日空機遭難事故に関して、総理並びに運輸大臣質問を行ないます。  御承知のとおり、去る四日夕刻、羽田沖合いで、一瞬にして百三十三人のとうとい命が失われた全日空ジェット旅客機遭難、一機の墜落事故としては世界史上最大の死者を出した、まことに悲しい重大なできごとであります。いまや全国民、こみ上げてくる悲しみ、何ものにぶっつけてよいのかわからぬ怒り——私は、質問に先立ち、犠牲となられました百三十三人の方々に、みたまよ安かれと、心の底から御冥福を祈るとともに、御遺族方々に対し、心からなる御同情を申し上げる次第でございます。  さて、今次事故を顧みて、今後の対策をも含めて幾多の問題があろうと存じます。この機会に、まず総理大臣に伺います。  その第一は、わが国航空政策事故に対処する具体的な対策であります。総理承知のとおり、政府は、さき所得倍増計画の中で、「交通機関利用者たる国民立場に立って、将来の交通体系構造的発展を促進する投資政策がとらるべきである」と国民に公約をしました。総理また就任以来、人間尊重、ひずみの是正を政策基本として、今日なお大々的に宣伝をしてきたところであります。しかるに、運輸交通現状は、政府宣伝とは全く逆に、ますます悪化の傾向にあり、このことは、さきに私が本院において、その例を具体的にあげ、指摘をしたところで明らかになっています。さらに、都市交通通勤通学輸送安全保安、踏切の問題等々、数え上げますれば幾多の問題が山積しています。これに対し、政府は、いまだ効果的な、かつ具体的な施策を施していないのであります。私は、この機会に、総理の言う人間尊重を基調とした運輸交通政策とはいかなるものか、具体的に示していただきたいと思うのであります。  さらに、航空政策でありますが、わが国航空現状は、政府みずから認めているように、国際的に見て、諸施策はまことに立ちおくれているのであります。これらは、衆参を問わず、たびたび国民立場指摘をされてきたところであります。しかるに、今日、これらはいまだ何ら克服されていないのであります。その一つ施設の問題であります。わが国主要飛行場整備について見ても明らかなように、羽田の場合は、予算不足のために、窮屈な、無理な空港になっているのであります。継ぎはぎ式に拡張したため、スポットと整備施設の地域が滑走路で分断をされているのであります。何ぴとが見ても、自動車で引かれた飛行機がよたよた滑走路を横断する状態は、まことに危険といわなくてはなりません。また、空港周辺の住宅、これに伴い騒音問題で、飛行機は離陸後間もなく大旋回をしなければならない問題等々、大阪に至ってはわずか千八百メートル余の滑走路たった一本、これでは、おせじにも国際空港とは言いがたいのであります。さらに、米軍が一切管理をしている福岡に至っては、お話にもならないと考えます。これらは、追って運輸委員会及び予算委員会において、詳細取り上げ、具体的に指摘をいたし、政府を督励し、鞭撻いたすこととしても、空港事故の誘因となるようなものは、たくさん存在しているのであります。まさに「危険がいっぱい」の空港といわなければならない現状であります。加えて、航空行政日本民間航空あり方についても、わが党はしばしば問題を提起してきたところであります。今回の事故はもとより、わが国航空事故も戦後かなりのものになっております。政府も御承知のように、昭和二十七年の木星号事故をはじめ、今回の事故等々、数えあげますれば十数件にのぼり、そのたびごとに多くの犠牲者——とうとい人命が失われているのであります。  政府は、そのつど、それぞれ今後の対策に万全を尽くすと、国民に声明してきたところであります。しかるに、政府が今日まで具体的に取り来たった政策は、恒久、当面を問わず、何らなされていないと言っても過言ではないのであります。したがって、かかる一切の責任は、あげて佐藤自民党政府並びに運輸大臣にあると断ぜざるを得ないのであります。とりわけ、監督指導の面でも言えるのであります。今度の事故の場合、機種の性能に関係があるかどうかは、いまだわからないにしても、そこに一つ問題点があったことはいなめない。なぜかならば、それは、この飛行機製作国たるアメリカで、すでに問題にしているからであります。昨年十一月の米誌によりますれば、航空会社やパイロットから称賛のことばを受けた中距離ジェット機ボーイング727が、八月に事故を起こした。さらに、十一月八日と、その七十二時間後に起こした事故に触れまして、「三つの事故は、みんな飛行場に接近して起こった、そして、そろって夜だった」と述べているのであります。航空局調査でも明らかなように、ボーイング27は、昨年八月以来、三回にわたる大事故を起こしているのであります。いずれも着陸のときにおける事故で、今回の全日空事故共通点があるのであります。このことについて、アメリカ航空局は、同機構造上の欠陥として、「後部の出入り口が必ずしも脱出口として利用できない、機体の底を通っている燃料パイプがショックで火の出る危険があり、その経路を変え、材質をもっとじょうぶなものにする必要がある」と、すでに改造勧告を出しているのであります。また、T字型の尾翼を持ったボーイング727型のような飛行機は、構造上失速しやすい傾向があるともいわれているのであります。しかるに、わが国航空局は、727型は、きわめて高性能化されたもので、離着陸に要する距離が短くて済み、なおかつ、経済性に富み、便利なジェット機であると、しきりに称賛をいたし、かてて加えて、二月五日の運輸大臣記者会見での発言では、何らのためらいもなく、「むしろ安全度の高いものと考えており、日航、全日空、両航空会社に対して、整備点検を十二分に行なうように指示するだけにとどめる。したがって、同型機使用はやめない」と発表したことに、私は、端的にあらわれていると思うのであります。今日まで運輸省として航空会社に対し、この機種の運航に特に注意を払えというような指示指導は全然していないところから見ると、飛行機会社育成にはある程度熱心だが、監督とか、折り目を正すということは、非常に弱いのであります。  これに対して、私は、今日なお幾多の疑問を持っています。かつて英国ではロメット機が立て続けに墜落をしたときに、イギリス政府は、き然たる態度と、厳粛な反省と、公正なる批判の上に立って、直ちにコメット機使用をやめでしまったのであります。事の起きた事態は、よく似通ってはいるようだが、これをすなおに対比してみるときに、両国政府機関のとった態度、処置には、格段の差異があり、あまりにも今回の運輸大臣発言は、慎重を欠いた、軽々しいものであったと批判されても、私はしかたがないと思うのであります。  今日、内外を問わず、一般的に航空企業者は、「いわゆる政府航空政策では先を見越した事業計画すら立てられない」。また、国民からは、機種に対してもすぐれた点のみを強調するあまり、ともすると機種に対して欲目が出ることがあり、そのことが、何かしら、今後の国内主要機に統一された事柄等々をも含めて、一アメリカ商社営利に気がねをしたり、ある意味においては航空業界に振り回されておるのではないかと批判されても、しかたがないことと思うのであります。もしそうであるとするならば、いやしくもとうとい人命がその営利犠牲として軽々に扱われることに、結果として、なるのであります。私は、かかる行政国民の名において断じて許されないのであります。この際、運輸大臣の見解を求めます。  ともあれ、今後の航空界はますます大型化傾向にございます。世界は急激に快速大量輸送の時代に進みつつあります。その機械文明進展により、より高性能飛行機が開発されることだろうと存じます。高性能飛行機では機械装置が複雑であり、したがって、操縦技術も複雑であります。それだけに、一瞬にして破局的な事故を生み出す危険性をもひそんでいるともいわれているのであります。しかし、私は、いかに機械文明の発達とはいえ、傾向はどうありましょうとも、事故は避けがたいものだとは信じたくないのであります。もちろん、そこには社会的、経済的、政治的ないろいろな要因が加わり、常にある点で安全性を損うような妥協が行なわれている事実はあるとしても、この事柄機会あるたびに反省しなければならないし、特に今度の事故は目先の東京湾内での事件であるからであります。したがって、事故原因は徹底的に追及されなければならないと考えます。政府は、このことについて調査委員会を設置し、今度の事件を精細に調査すると言っていますが、私は、ただ単なる調査だけでは結局さほどのデータは出てこないと思います。この際は、抜本的な対策として、同一条件状況を厳密に再現し、考えられる限りの場合をテストするということが必要ではないか。と同時に、これがためには、政府は思い切った航空予算を計上すべきであると考えます。今日、日本航空界幾多の問題をかかえています。保安施設の弱体、業界過当競争、要員の不足等々、これらの矛盾の一つ一つをこの機会に真剣に考え、解決することはもとよりでありますが、何といたしましても、安全性を第一義的に取り上げなくてはならないと思うのであります。今日、米ソとも、宇宙船に乗った人間事故は、いまだ一度も起こしていない。このことは、両国は、国制の相違や、置かれている諸条件の違いがありましょうとも、国の威信をかけてすべてを統一をして動員され、総力をあげてその安全に尽くしているからであります。政府は、このことにこの機会に目を向け、今後あらゆる角度から、政策施策を施さなければならないと存ずるのであります。かかる観点から、一つには、基本の問題として、日本航空事業あり方は、先進国のごとく国営もしくは公社制にして運営するという検討も、この段階では必要であろうし、二つには、今後の事故対策としては、今次事故を、前に申し述べたとおり、徹底的に究明し、あくまでも人命尊重と安全を第一に考えた諸施策を常に先行させなくてはならないと考えます。総理大臣の明快な答弁を求めます。  最後に、政府はこの際、犠牲者補償並びに御遺族の救済については、特段の努力最善措置をとられまするよう強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  お答えいたします前に、まず、去る四日、全日空航空機事故により多数の乗客並びに乗員の方々がとうとい生命を失われたことについて、心からこれらの方々の御冥福をお祈りいたしますと同時に、御遺族方々に対しまして、心からなる哀悼の意を表したいと思います。  さて、吉田君のただいまのお話でございますが、今日、御承知のように、高速度化した交通機関、これが要望にこたえるような状況になっております。それだけに、万一の間違いがありますと、引き起こす事故も非常に大きいのでありますし、また、航空機自身大型化されておりますから、ただいまのように、多数の方々生命を奪うことにもなるのであります。そこで、航空事業とばかりは申しませんが、鉄道その他、運輸交通の全般について言われることでありますが、まず安全第一、安全で、正確で、また迅速である、この三つが十分そろって、この三つのもとに初めて運輸交通の利便が提供される、こういうものでなければならないと思います。吉田君も鉄道におつとめになったという、その点から、この安全、正確、迅速、このことが運輸交通のサービスの基本的な問題だと、かように思うのでありまして、御理解をいただけると思います。こういう観点に立ってただいまの問題を見ますると、これから先、機種の選定——どういう飛行機を選ぶかという場合におきましても、この三つの原則できめていかなければならないと思いますし、また、経営の規模等につきましても、ただいまは国営あるいは公団、公庫等が——公庫は別ですが、公団等が望ましいのではないかという具体的な御提案がございましたが、そういう意味でもこれから非常な資金を必要とする航空事業でありますだけに、その経営の規模が適正でなければならない。また、この航空機が発着する空港整備におきましても、お話にもありましたように、これまた十分気をつけて、時代の要請にこたえるような空港でなければならないと思いますし、また同時に、新しい航空機は今後たいへん操縦もむずかしくなる。精巧な機械であるだけに操縦もむずかしい、こういうような意味から、乗員の訓練、適正な休養等々、私どもが頭を働かさなければならない点は非常に多いと思います。そうして、ただいま申しましたような、安全、正確、迅速な交通のサービスを提供するようにいたしたいものだと思いまして、私は、かような意味におきまして、今後とも努力してまいりますが、ただいまの国営、公団という具体的な御提案がございましたが、それは、ただいま私が申しますように、経営の規模、こういう点、またその性格等の点で、十分検討してまいりたい、かように思います。お答えを申し上げます。(拍手)    〔国務大臣中村寅太登壇拍手
  9. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 吉田議員の御質問の要点は、航空事業あり方、さらに航空政策あり方、あるいは航空機の選び方、事故防止対策等の諸点についての御質問でございましたが、まず、航空事業あり方についてお答え申し上げたいと思います。  航空事業の運営につきましては、安全性確保が第一に大切であるということは申すまでもございませんが、さらに、企業運営の態度もこれを中心とすべきものと存じております。また、航空の安全性確保はもとより、事業の適正な運営を確保するために、航空企業の経営基盤の充実強化が必要でありますが、そのためには、従来にも増して、企業の集約化の推進をはかる必要があると存じております。  航空政策等のあり方につきましては、吉田議員の仰せられた点等は十分私ども同意をいたす点がほとんどでございますが、政府といたしましても、最近における内外の航空情勢にかんがみまして、国際及び国内を通じ、わが国定期航空事業あり方について早急に施策を確立する必要があるものと考えまして、昨年十月初めに航空審議会に対しまして諮問をいたし、去る十二月中には答申を得ました次第であります。この答申におきましては、国内線の運営について、航空企業の経営基盤の強化をはかるためには、将来できる限りすみやかに企業の集約化を実現すべきである旨を指摘しておるのでございます。さらに、過当競争の防止についても措置するよう、要望しております。政府といたしましては、この答申の趣旨を尊重しまして、その実施について逐次着手してまいったところでありますが、今回の事故発生という事態に直面し、いよいよその早急な実現の必要について痛感いたしておる次第であります。これを強力に推進していく所存でございます。  今回の事故原因につきましては、調査の結果を見なければはっきりいたしませんが、過当競争原因となったとは直接考えられないのでございます。ボーイング727型機の導入につきましても、幹線の運営を担当する企業が、増大する航空事業に対応するために新規に機材を増強する場合には、できるだけ同一機材を採用することが適切と考えられ、この趣旨の行政指導を行なってまいったのであります。これに基づきまして、日本航空と全日空とは、三十七年以来二年にわたり安全性及び経済性について慎重な検討を行なった結果、導入されるに至ったものであります。決して新機種等の競争等によるものではなかったのでございます。  さらに、今後の事故対策でございますが、二月五日に設置が決定いたしました全日空機事故技術調査団において、今回の事故原因を徹底的に究明してまいりたいと存じております。なお、現在就航中のボーイング727型機については、日常点検はもちろんのこと、百二十五時間、五百時間等の定時点検をさらに一そう細心の注意を払って実施するよう、同型機所有運送事業者に強く指示をいたしておるのでございます。しかし、かかる重大な事故を再び起こすことのないように、会社の職員の安全性確保のための認識、あるいはこれが安全性確保するための努力に向かって全力を傾注するように、厳重に注意を与えておる次第でございます。  なお、将来の安全を確保いたしますために、吉田議員が仰せられました意見の中にもあったようでございますが、私は、政府といたしましては、航空事業の安全を確保するためにあらゆる処置をとってまいったのでございますが、さらに、この事故機会に、安全性確保するためのいろいろの機関等を設ける必要がありはせぬかというようなことまで含めまして、慎重に検討して、将来、再び大きな事故を発生することのないように、万全の処置をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。  先ほど私が御報告申し上げました時点では、収容人員が三十四名でございましたが、ただいま報告がまいりまして、さらに二名の遺体収容したようでございます。きょうは朝から非常に風が強うございまして、最も強かったときは二十三メートルくらいの風が吹いておりまして、作業もやめなければならぬのではないかと心配しておりましたが、風の弱い合い間を見計らって最善努力をいたしておるようでございます。さっき二名揚がりましたので、合計三十六名の遺体収容いたしております。さらに、いまも引き続いて収容作業に全力をあげておる状態でございます。ついででございますから御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 浅井亨君。    〔浅井亨君登壇拍手
  11. 浅井亨

    浅井亨君 私は質問に先立ちまして、今回の全日空機墜落事故において遭難されました犠牲者方々に対し、心からなる御冥福をお祈りいたしますとともに、その御遺族方々に対し衷心より哀悼の意を表するものであります。  ただいま御報告のありました全日空機遭難事故について、私は公明党を代表いたしまして、総理並びに運輸大臣に若干の質問をいたすものであります。  今回の事故は、百三十三名のとうとい人命を奪うという世界航空史上未曽有の大惨事となったことは、まことに遺憾のきわみであり、悲しみにたえないのであります。このような痛ましい航空事故を今後再び起こさないよう、政府としても万全の恒久的対策を講ずべきであります。常に人間尊重を唱えておられる総理は、この大惨事に対して政治的責任をどのように感じておられるのか。ただ単になくなった人に哀悼の意を表するというのみでは、あまりにも無責任きわまるものであり、国民の納得のできないところであります。総理の誠意ある明確なる答弁を求めるものであります。  次に、事故発生の要因ともいうべき航空行政について質問をいたします。航空技術の急速な進歩に伴い、航空機大型化、超音速化に対応するためには、膨大な資本と高度な技術の集中を要するのは当然であります。ところが、国際水準からいえば、資本も技術も乏しいといわれているにもかかわらず、わが国航空界は、現在、国内幹線は、日航、全日空、国内航空の三社がこの狭い国土の中でひしめき合っている状態であります。このように分割された体制の中では、過当競争による種種の弊害が生ずることは当然であり、これが事故発生をもたらす一因となり得ることは十分考えられるところであります。今回の大惨事は決して偶然のものではありません。その事故発生の背景になると考えられる航空行政について、政府はどのようにお考えであるか、総理並びに運輸大臣の、この点についての見解を承りたいのであります。  次に、機種選定の問題であります。中村運輸大臣は、先日の衆議院予算委員会で、このボーイング727機について、安全度が高いというのが世界の常識だと発言されていますが、日本航空が取り寄せた米国側の資料によりますと、着陸態勢に入る直前から、リア・エンジン特有の操縦の困難があるようだと、明らかにされておるのであります。さらに、米国では、一度ならず、二度、三度と、今回と全く同じ状況のもとで事故を起こし、実に百二十四人の犠牲者を出しており、民間航空局で調査中の飛行機であります。このような連続事故を起こした同型の飛行機を、近くさらに二機購入することになっており、民間航空機は将来全部同じ機種にする予定だといわれております。したがって、今回の事故原因究明と並行して、ボーイング727型の性能についてさらに本格的な検討を加え、今後の使用についての結論を出すべきであると考えますが、この点について政府の見解を承るとともに、事故原因が解明され、機体安全性が保障されるまで、現在就航中の同機の運航を取りやめるお考えがあるかどうか、運輸大臣にお伺いいたします。  次に、パイロット養成の問題であります。わが国のパイロット養成機関は、現在国立の民間パイロット養成機関として宮崎市に航空大学があるだけで、しかも、その卒業生は年間約二十人にすぎず、したがって、他の供給源として、自衛隊の退職者や、自社養成、あるいは外国人パイロットの雇い入れ等にたよっている現状であります。また、この大学を卒業しても、双発プロペラ機を、やっと、こなせる程度で、彼らを採用した各社はさらに教育しなければならないのであります。ところが、訓練用飛行場は皆無であり、定期路線の空港で発着のすきを見て訓練をいたしております。そうして、このあき時間をさがして全国の空港を転々とするため、一人前のジェット・パイロットにするためには、一人五千万円の費用が必要といわれております。欧米では、こうした養成はすべて国の責任によって行なっております。政府はジェット・パイロットを国家機関により計画的に養成する必要があると私は思うが、運輸大臣にはその意思があるかどうか、お伺いいたします。  次に、空港整備の問題であります。わが国空港事情は極度に行き詰まっており、急速に進む航空機大型化、高速化、運航回数の増大に追いつけない現状にあります。このままでは、第二、第三の羽田沖事故が発生する危険性は十分にあると言わねばならないのであります。もし陸上における事故であった場合を考え合わせますと、四十一年度予算案における空港整備事業費は五十七億六千万円でありますが、これだけでは抜本的解決をはかることはとうてい困難であります。特に急務を要する第二東京国際空港の選定も含めて、政府はこの空港整備対策に対してどのような具体的方針を持っておられるのか、お答えを願いたいのであります。  最後に、犠牲者及びその御遣族の方に対する補償措置についてでありますが、法的には政府の責任はないといわれておりますが、行き詰まった航空行政現状を考えるとき、その責任の一端は当然政府が負うべきものであります。かかる見地から、今後の補償措置について政府の考えを具体的にお示し願いたいのであります。  以上をもって私の質問を終わりといたします。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 浅井君にお答えいたします。  去る四日の事故の起こりましたことは、まことに残念でたまりません。多数の、百三十三名のとうとい生命が一瞬にして失われたことに対しまして、ほんとうに返す返すも残念の一語に尽きるものでございます。私は、政府といたしまして、いわゆる法律的な責任の問題ではなしに、この種の事故の起こりましたことについてまことに遺憾に思いますが、これにこたえる道は、今回の事故発生原因をどこまでも探求いたしまして、そうして再びこの種の事故が起こらないように努力することだと、かように考えておる次第でございます。  また、わが国航空行政あり方等についてお尋ねがございましたが、この点、先ほど吉田君にお答えしたとおりでございますから、それは省略させていただきます。(拍手)    〔国務大臣中村寅太登壇拍手
  13. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 浅井議員の御質問にお答えいたします。  今回の航空事故によりまして、多数のとうとい人命を一挙に失う大惨事を引き起こしましたことは、主管大臣といたしまして、まことに遺憾のきわみでございます。私といたしましては、就任以来、安全の確保航空行政の第一の目標として努力してまいったところでありますが、この上は、今回の事故原因を徹底的に究明いたし、二度とこのような惨事を繰り返すことのないよう、航空の安全の確保に、さらに万全の対策を講ずることが、いまの私に課せられました最大の責任と考えている次第でございます。  次に、新機種の導入あるいは新機種の選び方等というようなことについてでございますが、ここ数年来、航空需要の増加傾向は非常に著しいものがございますために、幹線の運営を担当する航空企業が、このように増大する航空需要に対応するために、新規に機材を増強する場合には、できるだけ同一機種を採用することが適切と考えられ、三十七年にこの趣旨の行政指導を行なったのであります。それに基づき、日本航空と全日空とは、二ヵ年にわたり、安全性及び経済性について慎重な検討を行なった結果、三十九年に至りこの機種を選定採用することに決したものであります。  乗員の養成等の問題でございますが、現在、民間航空操縦士は、年間百二十名ないし百三十名程度の需要が想定されますが、これらの操縦士の養成は、航空大学校における直轄養成、防衛庁における委託養成、航空会社における自社養成の三本建ての体系のもとに行なわれております。航空大学校につきましては、YS11を課程の中に新設いたしまして、その教育内容の充実を強化することといたしております。民間航空機操縦士の一元的養成体制の整備について、早急に検討いたしてまいりたいと考えております。なお、乗員の訓練研修につきまして、訓練専用の飛行場等、訓練施設整備を推進いたす所存でございます。  空港整備の問題でございますが、昭和三十一年、空港整備法制定以来、東京、大阪両国際空港をはじめとし、逐次ローカル空港整備を進めてまいり、数の面では全国的にほぼ充足されるに至りましたが、就航航空機大型化、高速化、運航回数の増加に対処し、かつ、保安の向上、定期性の確保をはかるため、滑走路の延長等、基本施設の拡張整備、航空保安施設整備改良等、質的向上をさらに促進するよう、つとめてまいる所存であります。また、航空交通量の増大に対応し、電子計算機の導入等による管制の自動化、近代化をはかる所存であります。  さらに、新空港のことのお尋ねがございましたが、羽田が、御承知のように、非常に狭隘なために、新しい空港といたしまして富里地区を予定いたしまして、設備の急速な完成を急ぎつつあるような事情でございます。  最後に、補償の問題でございますが、被害者に対する損害賠償につきましては、全日空において、でき得る限り手厚い処置をするように行政指導を行なっております。目下のところ、確認された死亡者に対しましては、弔慰金及び葬祭料として四十万円ずつとりあえず差し上げたとの報告を受けております。保険の問題でございますが、運送約款で定められております最高限度の金額が、現在におきましては、死亡の場合は三百万、物的損害が十五万等となっておりますが、保険に入っておるおらぬにかかわらず、適切な補償が行なわれるよう、十分な指導を行なう所存で対処しておる次第でございます。  この機種は、現在各国の航空企業十数社で、二百数十機の飛行機が飛んでおるのでございますが、大体この飛行機安全度が低いものではないということが常識でございます。アメリカで先般三回事故が起こりましたが、二回は操縦のミスであったというようなことにもなっておるようでございますが、しかしながら、そういうことのいかんにかかわらず、今回設置いたしました事故調査団の厳密な調査によって、その結論を得て、この問題に対処してまいりたいと考えております。しかし、現在のところ、この飛行機を中止させるという意思は持っておりません。(拍手
  14. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時三十九分散会      ——————————