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1966-05-10 第51回国会 参議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十日(火曜日)    午後一時二十一分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月十日     辞任         補欠選任      柳岡 秋夫君     田中 寿美子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         和泉  覚君     理 事                 松野 孝一君                 稲葉 誠一君     委 員                 後藤 義隆君                 斎藤  昇君                 中野 文門君                 中山 福藏君                 大森 創造君                 亀田 得治君                 田中 寿美子君                 藤原 道子君                 野坂 参三君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  石井光次郎君    政府委員        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  津田  實君        法務省矯正局長  布施  健君        厚生省社会局長  今村  譲君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     福田  勉君        警察庁保安局防        犯少年課長    今野 耿介君        労働省婦人少年        局婦人課長    木下 雪江君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○商法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (売春対策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、商法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 商法が、戦後三回改正されたわけですか。その改正経過は、どういうふうな形になって、どういう点がおもに改正されたか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  4. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 戦後におきまする商法改正経過でございますが、数回にわたりまして商法改正が行なわれておりますが、大部分はほかの法律改正に伴いまする整理でございます。その中に、商法自体改正を含むものがございます。昭和二十五年に法律第百六十七号で改正になりましたのが、戦後の商法改正の最も大きな点であったろうかと思います。これは、資金調達便宜等を考慮に入れまして、株式会社法につきまして全面的な改正が行なわれたわけでございます。それから、昭和二十六年に、株主訴訟の場合の担保提供制度を採用しようということで改正が行なわれました。さらに、昭和三十年に、新株引受権に関する改正中心になりまして、そのほかに若干のこまごました改正が行なわれております。さらに、昭和三十七年に、株式会社計算規定中心にいたしまして、その他若干のこまかい点についての改正が行なわれておるわけであります。  以上が商法自体のおもな改正経過でございますが、そのほかに、昭和二十五年から三十八年にかけまして、鉱業法改正、あるいは非訟事件手続法改正法務省設置法改正商業登記法制定、そういった他の法律改正あるいは制定に伴いまして、商法関係のある部分整理意味で若干の手直しを行なわれたわけでございます。  ごく概要でございまするけれども、戦後における商法改正経過は、以上でございます。
  5. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 二十五年と二十六年と、これは古いことですけれども、あれですか、わざわざ分けて改正したのは、特別な意味があるのですか。これは、占領中で、占領軍からのサゼッションか何かでやったわけですか。
  6. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 昭和二十五年に大改正をいたしますときには、司令部のほうの示唆もあったようでございまして、株式会社法全面的改正ということになったわけでございます。二十六年の改正は、これは改正としましては非常にこまかいのでございまして、特に司令部からのそういう指示というものはなかったようでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 二十五年に株式会社法全面改正があったというのは、そうすると、あれですか、前の株式会社法というか、旧商法現行商法ですか、ちょっとそれの詳しいことはわかりませんが、元来、日本株式会社法は、どこのあれを模範と言うと語弊がありますけれども、受けてつくられたものなんですか。
  8. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 二十五年以前の株式会社に関する法律は、大陸系の、主としてドイツ法律中心にして考えられたもののようでございます。二十五年に改正になりましたときには、いわゆる授権資本制という制度を取り入れまして、資金調達を便宜ならしめるということからそのようになったわけでありまして、これによりまして取締役会の権限の充実をはかると同時に、他方において株主保護をはかるということをねらいまして昭和二十五年の改正が行なわれたわけでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 商法全体としては、元来、日本商法は、やはりドイツ商法を受けてできたものですか。旧民法と、それから民法、それからいまの新民法と、民法では三つの段階があると思うんですが、商法の場合はどういうふうな経過になっているわけですか。
  10. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 明治の初め、明治二十年代だと思いますが、大陸系法典参考にいたしまして、御承知のように、民法商法制定が行なわれたわけでございます。その際に、商法につきましても、フランス系商法を手本にいたしまして最初わが国商法ができたわけでありますが、その後改正になりまして、ドイツ系考え方を取り入れて戦前までその商法が行なわれてきたという経過になっております。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 手形の場合は、万国統一条約ですか、ああいった形になって入っていますね。手形商法ですけれども会社法関係統一的なものはないわけですか。
  12. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株式会社につきましても、これは世界的に共通の分野があるということから、株式会社法統一ということも手形法と同じように考えられておるわけでございます。もっとも、手形法のように統一条約によりまして株式会社の組織なりその他の点を統一的に各国が定めようというところまでまだいっておりません。しかし、これは、株式会社法に限りませず、商法全般についてもある程度、言える事柄でございまして、全体の傾向といたしましてはそういう方向に今後も向いていくであろうということは十分考えられるわけでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 民法の場合は、やはり国民というか民族の固有の色彩が非常に強いわけですが、まあ債権法の場合と身分法の場合とでは違うわけですけれども商法の場合には、それが商取引という形で非常に何といいますか一般的になっているわけですから、手形法統一ができているならば、会社法ことに株式会社の場合は、少なくとも資本主義国株式会社法では、大体同じような系統に進んでいっているんじゃないかと、こう考えられるんですがね。いまお話があった会社法統一関係というのは、どの程度まで進んで、ある程度の試案みたいなものができているんですか。そこまではまだいっておらないわけですか。
  14. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) いろいろ、学者の間、あるいは国際会議の場におきましては、そういうことも考えられておるようでございますけれども統一手形法に関する条約のような形で具体化したものはまだないように承知いたしております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いままでの会社法の中で、フランス糸というか、あるいはドイツ系というか、そういうふうなものは全部なくなって、全部と言っていいくらいにアメリカ系の一まあアメリカ系といいますか、英米系というか、そういう形の法律体系というものが日本株式会社法に入ってきているわけですか。あるいは、まだ昔のドイツ法的な残滓というか、そういうふうなものが残っていることになっているわけですか。ここら辺のところはどういうふうになっているんですか。
  16. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株式会社法は、骨子といたしましては従前大陸系法典参考にしてできたものでございまして、これを骨子としながら、英米法系のただいま申し上げました授権資本制というふうな制度を導入したということでございます。したがいまして、完全にこれが英米法系のものになり切っておるかということにつきましては、若干考え方に差異はあろうと思いますけれども、完全に英米法と同じものになり切ったということは言い切れない面もあろうかと思うわけであります。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとまあペダンチックになるかわかりませんけれども、いまの点で、どういう点が英米法系なものであって、どういう点がドイツ法系なものか、こういうふうな点を二、三御指摘願えませんか。
  18. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 昭和二十五年の改正の際に、こまかい点につきましてもいろいろと改正をいたしておりますが、従前株式会社法考え方をそのまま踏襲した面が比較的多いわけであります。こまかい技術的な面もその際もちろん検討されましてただいまの株式会社法になったわけでありますが、英米法系色彩が特に顕著にあらわれております点は、株式の発行に関しまする授権資本制度、これが何と申しましても一番大きな点でございます。それと、少数株主保護というふうなことをはかる帳簿閲覧請求権というふうなものを認めて株主なり会社債権者保護をはかるというふうなことをいたしたわけであります。そういった点が英米法に近づいておるということになろうかと思います。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 授権資本制度というのは新しく設けられたんだと思いますが、少数株主保護の問題とか、帳簿閲覧請求権というのは、前からあったんじゃないですか。多少変わったんですか。
  20. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 前からあったわけであります。むろん、株主保護というのは、株式会社法全般を通じましてどこの国の法制におきましても当然これは考えられるべき筋合いのもので、ございます。これを無視するわけにはもちろんまいらないわけであります。ただ、授権資本制を導入いたします際に、特にただいま申し上げました帳簿閲覧請求権というふうな問題を取り上げまして、従前以上に株主保護をはかっていこうということを考えられたわけであります。これは英米法的な法律であるから特にそれが強いと言い切れるかどうか多少問題でございますけれども、要するに、全体の傾向といたしまして、英米法にあるそういった制度を導入して二十五年の改正が行なわれたということでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今度の商法の一部改正の案が出ておるわけですが、そうすると、これが改正になった、こうした場合に、今後はどうするんですか。またどこか改正するんですか。その見通しはどうなんですか。ちょくちょく改正するんですか。
  22. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 今回の改正につきましては、株式会社法全般にわたる改正ではむろんございません。七つの大きな項目についての改正でございまして、特に緊急を要するというふうに認められました点のみを取り上げまして、法制審議会の意見を尊重しながらこの法律案ができ上がったわけでございます。商法全体の問題といたしまして将来どうするかということは、まだただいま具体的に法務省としては考えておりませんけれども、とりあえずこの改正案が御承認いただけますならば、今後の商法全体の問題ももちろん検討いたしていかなければならないわけでございます。できますならば、こういった個別的な改正ということではなしに、全体を通観して商法全般にわたる検討をいたすべきものであろうというふうには考えておるわけであります。何ぶんにも大法典でございますし、問題もこまかい問題から大きな問題に至りますまで多々あろうかと存じます。今後の問題としてそういう方向研究いたしてみたいというふうに考えておるわけでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法制審議会商法部会長をやったのは鈴木竹雄さんですが、鈴木さんは、全面的な商法あるいは株式会社法改正が望ましいことは申すまでもないことであるというふうなことを言っておられるわけですね。そうすると、全面的な商法改正──商法といっても、総則から商行為海商までずっとありますから、手形は別ですけれども、そういう商法なりあるいは株式会社法の全面的な改正が望ましいというのは、どこに理由があるわけですか。何かどこかに理由があえて商法全面的改正が望ましいというふうに考えられるのですか。それが一つと、それから株式会社法全面的改正が望ましいのだと言っておられるのですが、そうすると、いまの株式会社法なりあるいは商法なりに、どこに現実にそぐわない点があるのか、法律的な改善をすべき問題点があるというのか、そこら辺のところはどうなんですか。そこら辺のところは、民一局のスタッフがなかなかそこまでいかないからできないと、そういうようなことなんでしょうか。どうなんでしょうか。
  24. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 同法全般検討ということになりますと、ただいまの仰せのように、商法の総則的な面、あるはい商行為海商、さらに会社法関係というふうに大別できるわけでございます。いずれをとりましても非常に大きな問題ばかりでございまして、このいわゆる商法典というものの全部の改正、ということは、これはなかなか容易ならぬことであろうかと思うわけでございます。  しかしながら、この商法という法律は、御承知のように、商事関係に関する特別の法律でございます。経済生活法律生活が日進月歩の進展をいたしております現代社会におきまして、古く制定されました商法法典がはたして現在の実生活経済取引にマッチしているものであるかどうかということが基本的には問題になるわけであります。商法性格といたしまして、経済界実情に合うように、むしろ商取引というものが先行いたしまして、それを追っかけていくというのが商法一つ性格であろうというふうに考えられるわけであります。ある一定の法律現象につきまして、商的な慣行慣習というものも日々生まれてまいるわけであります。そうなってまいりますと、実態と法制とのギャップというものがそこに生まれてまいるわけであります。いろいろの考え方、いろいろの行き方というものもその間に生まれてまいるわけでありますけれども法律制度として考えますならば、やはりそういった社会の進化に伴っていろいろの現象がいろいろに考えられるというふうな場合に、やはり統一的な基準をそこに設けて経済生活法律生活の安定をはかっていくということが必要なわけであります。したがいまして、実生活進展に伴って商法全般の問題を考えていかなければならないことは当然でございます。  さりとて、先ほど申し上げましたように、商法典全般について一挙にこの際改正を企てるかどうかということは、これはなかなか重大な問題でございます。もちろん、これをやるといたしますれば、これに従事いたしまするスタッフ充実もはからなければなりませんし、まだ現在私どものほうでやりかけている問題点がほかに多々ございます。商法のみを最重点としてやれるかどうかということもこれから検討いたすべき問題だろうと思うわけであります。そういう関係にございますために、全体としての商法をこれから改正すべく検討するというふうにここで割り切ってしまうこともなかなか困難でございます。それぞれの緊急性重要性を考えながら体系的にやはりこういったものは改正するのが適当であろうというふうに考えておるわけであります。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここ二、三年来、これから、民事局関係として、商法と限らず、民事局関係法案としては、どういう点に問題があって、どういう点を改正なり何なりしたいと、こういうふうにお考えなんでしょうか。それに従ってどういうふうないま研究をしておる、こういう点はどうなんでしょうか。正確にここでこういうふうに改正したいということまで言うのは、これはいまの段階でまだあれだということならば、こういう点を問題点として研究しているという点だけでもいいと思いますが。
  26. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 御承知のとおり、民事関係法律というものは非常にたくさんございます、いずれも大法典でございますので、すべてにわたりまして改正のための検討を行なうということは、これはとても不可能なことではあるまいかと思うわけでございますけれども、しかし、大法典でありますだけに、これを統一的に改正すべき検討研究ということも、じっくりと腰を据えてやる必要があるわけでございます。私どものほうの関係の大きなものと申しますと、まず民法がございますし、さらに商法があり、民事訴訟法強制執行競売法というふうな比較的古い法律がございます。さらに、御承知法例という国際私法がございます。これもかなり古いものでありまして、世界的な法律生活の進運にはたしてそれが即応しているかどうかというふうな問題もあるわけであります。現在、そのいずれにつきましても、実は民事局といたしましては研究段階に入っております。  民法につきましては、財産法関係身分法関係に分けまして、それぞれ基本的な研究を進めておるわけでありますが、特に民法財産法に関しましては、担保物権制度、これが経済取引の一番重要な問題でありますし、また、新しい問題も提起されております。担保物権、ことに根抵当制度法律的に構成していくことができるかどうかということを中心にただいま検討いたしておるわけでございます。  それから身分法でございますが、これは、戦後、御承知のように、憲法改正に即応いたしまして新しい身分法ができたわけでございます。実施されましてすでにかなりの年月がたっております。これまでのいろいろの実績、実情等も調査研究いたしまして、身分法検討もこれはぜひやらなければならぬことであろうと思うわけでございます。ことに戦後、憲法改正されまして、急遽あの身分法改正が行なわれたわけであります。そこにいろいろの問題も残されたままになっておる分野もあるのではないかということを考えるわけでございます。これも一つの大きな問題でございます。  それから強制執行競売法等でございますが、これはもうすでに非常に古い法律でございます。現在の強制執行制度は、必ずしも完全なものじゃございません。むしろいろいろ不備があるということが指摘されておりますので、これについても研究を進めておるというのが実情でございます。  法例は、先ほど申し上げましたような状況になっております。  さらに、最近の問題といたしましては、会社更生法の問題が現下の一つ問題点として論議されております。したがいまして、法務省におきましては、特に会社更生法緊急改正を要する点というふうな問題も取り上げまして、ただいま法制審議会審議を願っておる状況にあるわけでございます。  非常に多岐にわたっておりますので、なかなか作業は思うように進展いたしませんが、私どもの力の限りこういった問題点を取り上げまして将来に備えたい、このように考えております。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 身分法は別として、民法商法というものを区別して分けなければならないという理由はあるわけですか。
  28. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 私法的な法律生活原則は、御承知のように民法によって規律されるわけでございます。これは原則的な法律関係と申しますか、私生活における原則的な法律関係を規律するというのが民法でございます。ところが、同じく私法分野に属するものではありますけれども商事に関するもの、商的な取引関係に関するものにつきましては、これは行為法分野に属するものにつきましても、また、会社法あるいは商人というふうな組織法的な分野に属するものにいたしましても、これは非常に進歩の激しいものでございます。こういった特殊な分野におきまする法律関係を規律しますためには、一般原則的な民法のみによってはとうてい追いついていかないというふうなところもございますし、また、適切に商事関係を規律する法律制度というものも民法とは別個に考えていく必要があるわけであります。特に商事関係におきましては、もちろん倫理的な面も若干ございましょうけれども、むしろ技術的な分野が非常に多分に入ってくるわけであります。そういうことで、民法とは別個にこういった商事法典というものが必要になってまいるわけであります。一般商人商行為にいたしましても、あるいは売買にいたしましても、特殊な法律技術的なものといたしましては保険とかあるいは海商法というふうなものにいたしましても、これは一般私法原則では律し切れないので、そういった特殊な性格に基づいて特別の私法分野の規律をするために商法というものが必要である、このように理解するわけであります。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 お話を聞いていまして田中耕太郎さんの教科書を思い出したんですが、それはそれとして、たとえば根抵当のような場合は、民事関係だといっても、実情はもう商的な取引関係中心になっているわけですから、ああいう抵当権関係などは商法のほうに入れてもいいんじゃないですか。どうして民法の中に残っているんでしょうかね。
  30. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 根抵当は、もちろんこれは商取引担保として私用されるものでございます。しかし、これは必ずしもそういう商取引のみに限定されるかというと、そうも言えないわけでありまして、これは一般個人──商人以外の個人債権担保の場合にももちろん利用し得るわけであります。そういう意味におきまして、多くは金融取引において利用されるものではありましょうけれども、それのみの問題ではないというわけでございます。一般抵当権にいたしましても質権にいたしましても、一般個人間の債権担保のために利用し得ると同時に、それがまた商取引に基づく債権担保にも利用される、両方の分野にまたがる問題でございます。特に商法典においてこれを規律するという筋合いのものでもなかろうかと思うわけであります。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 約束手形なんかは、個人個人で、商取引関係なくても振り出すことがあるんじゃないですか。
  32. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは主として商人間において利用されるものであろうと思うわけでございますが、手形はまたこれは独特の技術的な法体系のもとに生まれたものでございます。かつてこれは商法の中に手形法制度が取り入れられておったわけでありますけれども統一手形に関する条約関係もございまして、これは現在では別個手形法あるいは小切手法という形をとっております。これはむろん一般の場合にも利用されるわけでありますけれども、多くは商取引に利用されるということから、商法──ごく大きく申し上げまして商法の一環としての別個分野を形成しておるというふうに理解しておるわけでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 本論に入りますが、この商法改正が、この前に提案されたときと今度の提案と内容がどうも変わっておるように考えられるんですがね。ということは、この前は、いつでしたか、二年ほど前の国会のときですか、あのときには五つの事項についての改正中心であったように考えられるのですが、その後、法案が通りそうもなかったときに、緊急にこれだけは通してくれといってそれをまたしぼった形で何か非公式に出してきたりしたことがあったのですが、今度七項目になったのは、具体的にどういうわけで、どこがどういうふうに違うのですか。あるいは私の記憶が不正確かもわかりませんけれども、前に出した法案と今度出した法案内容が違って、今度のほうが、何といいますか、範囲を広げているというふうに考えられるのですが、その点はどうなんですか。
  34. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 確かに、前回、商法の一部を改正する法律案が提案になりまして、当委員会にも付託されたわけでございます。その当時の内容は、大体四点でございまして、一つは額面株式と無額面株式の発行に関するもの、それから株式の譲渡方式等に関するもの、それから新株引受権の譲渡に関するもの、それから転換社債の転換請求に関するもの、この四点でございます。これは昭和三十九年の二月十七日に法制審議会で答申がございまして、それを受けまして法律案の形にして国会に提案になったわけでございます。不幸にいたしましてこの商法の一部を改正する法律案は成立するに至りませんでしたが、しかし、それ以前から特に必要と認められます事項につきまして法制審議会審議は続いておったわけでございまして、新しく昭和四十年の二月二十五日に別の問題につきまして法制審議会の答申がございまして、それが、株式の譲渡制限に関する点、さらに議決権の不統一行使に関する点、さらに新株発行の手続に関する点、この三点でございます。これを前の四項目に加えまして今回の法律案のおもな内容といたしまして提案いたした次第でございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 前のときには、四つでなくて、株券の発行停止というのがあって、五つじゃなかったのですか。それはほかへ入るわけですか。
  36. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは、株式の譲渡方式に関する問題といたしましてその中に含めてございます。私、先ほど申し上げました株式の譲渡方式と申しました中には、それも含めた趣旨で申し上げたわけでございます。今回の法律案にもむろんその点はそのまま入っておるわけでございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あれですか、かりに最初のときの法案が通ったとすれば、またあとから商法の一部改正を出したんですか。そういうことになるわけですか。
  38. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) たいへんこま切れになってまことに申しわけないと思うわけでございますけれども、万一前回にそれが通っておりましたといたしますならば、おそらく四十年の二月に答申のございました三項目についてまた法律案の形で提案になったかと思うわけでございます。たまたま、時期がそういうふうに接着いたしまして法制審議会の答申が出ましたために、このようなことになったわけであります。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もうしばらく商法の一部改正というものはないわけですか。またあるのなら一緒にしたほうがいいという考えもあるわけですけれども
  40. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 最初に申し上げましたように、こういう大法律でございますので、できますことならばこれはもう少し体系的な法律検討もいたしまして改正をするというのが適当であろうと思うわけでございます。まあ今後の私どものとるべき方向といたしましてはそういうふうにやっていきたいというふうにもちろん考えておるわけでございまして、さしあたってこれ以外に個別的に何か改正する点があるかということになりますと、現在のところさしあたってほかにはないということは申し上げられると思うわけであります。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 実際に、法制審議会の根回しというものは、民事局でやっておるわけでしょう。それは参事官室でやっておるのかどうかわかりませんがね。そうすると、初め四項目で、すぐその次にまた三項目加えて出てくるというのは、どうも少し、何といいますか、あまり芳しい行き方ではないように考えられるのですが、これはまあ過去のことですからいいですけれども、そのときも、最初に法案を出して、通りそうもなかったら、この部分だけぜひ通してくれという話が出てきたんじゃないですか。全部通さないでもいいからこの部分だけ通してくれというのでまたしぼってきたんじゃないですか。
  42. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 私、実は、前回の商法改正案が提案されました当時、また、これが成立しないで終わりました当時、現在の仕事を離れておりましたので、その間の事情をつまびらかにすることはできませんが、あるいは何かその審議の過程におきましてそういうことでもあったかとも思いますけれども、ちょっとその点はただいまはっきり申し上げる材料がございません。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 政府側では、商法の一部改正案を出してきて、その修正案を出してきたんじゃないですか。正式に掲案したのかどうか、ちょっと私いまはっきり覚えておりませんが、何か項目をしぼってきて、これだけでいいから通してくれ、あとはいいんだ、そういう話がたしかあったんですよ。これは中山さんが委員長のときで、中山さんが一番よく御存じじゃないかと思っておるんですが、それはちょっと私も忘れちゃったんですが、そういう関係から見てみると、ある意味では安易であるし、何か定見がないという感じを受けるのですね。それは過去のことだから、それはそれとしてこれ以上なにしませんが、何か修正案のようなものを出してきましたよ。これはあとで委員会の正式の資料としてでなくてちょっと中で調べてくれませんか、あなた方のほうで。  そこで、本論に入りますが、株式の譲渡方式の問題が出てきているわけですけれども、一体、日本の会社で株券を発行しているのはどの程度あるんですか。変な質問ですけれども、みんな発行しているわけでしょうか、あるいは、発行していないところもあるんでしょうか。
  44. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 御質問の趣旨は、株式会社で株券を発行している会社の数という御趣旨でございましょうか、あるいは、発行された株式の数がどのくらいあるかという御趣旨でございましょうか、それによって違ってまいりますが……。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の言うのは──じゃ、問いを変えますか。株式会社の場合には、定款に、あれですか、特別な規定をすれば、株券を発行しなくてもいいんですか。現在どうなっているんですか。
  46. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 現在は、株券の不発行というものはございません。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株券を発行しない株式会社、これは、設立がどうなっているんですか、無効ではないわけですね。どうなんですか、その点は。
  48. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株式の引受人が株金を払い込みますと、それによって株主になるわけでございます。株主になりましたあとで株券というものを発行するわけでございます。したがいまして、その手続ができていない会社も現実にはあるかと思うわけでございますが、株券を発行してないからといって株式会社が成立しないと言うわけにはまいらないわけでございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株主権と株式と株券と、この三つはどういう関係になるわけですか。
  50. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株主たる地位をこれを株主権と申しますか、そういうふうに申しますならば、株主権を化体いたしておりますものが株券ということになるわけでございます。  株式は、その株主たる地位と申しますか、会社における投資家としての株主の地位を言うわけでございますが、株券はその地位をあらわす証券でございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 株主権にはいろいろな権利があるわけですね。それはいろんな権利があるわけですが、株式というのはどういう意味なんですか、株式という意味は。
  52. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株主の地位を分割いたしましてそれを量的にあらわしていこうというために株式という形をとっておるわけであります。すべて株主の持っておりますその株式というものは、これは種類によっていろいろ差異もございますけれども、大体その会社における株主としての地位をあらわすものが株式ということになるわけでありまして、それを化体いたします株券にもまたその内容に応じていろいろな差別がも出てまいるわけであります。御承知のように、株式会社の運営が、株主総会という株主の総会によって重要な事項が決定されてまいるわけであります。その際の株主の発言権と申しますか議決権、これをあらわす意味において株式という形をとって均一な形態で量をあらわす、こういうことになるわけでございます。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 商法の二百五条一項ですか、これを今度変えようというわけでしょう。「記名株式ノ譲渡ハ株券ノ裏書ニ依リ又ハ株券及之ニ株主トシテ表示セラレタル者ノ署名アル譲渡ヲ証スル書面ノ交付ニ依リテ之ヲ為ス」この場合の「記名株式ノ譲渡」というのは、「記名株券ノ譲渡」というのと違うんですか。観念的には違うんですか。実際的には同じだと、こういうんですか。
  54. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 観念的に、株券と株式というのは、これは違うわけであります。株式というのは株主のその会社における地位をあらわしておるということでございまして、その株式を今度は物によって化体いたしましてその株主たる地位を譲渡できるようにするために株券というものを発行する、こういうことになるわけであります。したがいまして、株券によってあらわしておるものはうものででございますが、株券と株式は観念的には違うものでございます。株券を裏書して交付することによって、実質でありまするところの株式が譲渡される、こういうことになるわけであります。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株券によってあらわされるものは株式だけですか。
  56. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) そのとおりでございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株主権というものと株式ということとイコールではないわけですか。
  58. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 株主権といいますのは、株主が持っている権利でございます。これが株式会社における株主の地位をあらわしている。もちろん、株主は、権利のみではなくて、責任もありますし、義務もあるわけであります。したがいまして、株主権といっても、これが一がいに権利のみをあらわしたものだということは問題でございます。そういったものを総称する意味で株式というふうに考えてよろしいのじゃないかと思うわけでございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いまの条文は、「記名株式ノ譲渡ハ」というのを「記名株券ノ譲渡ハ株券ノ裏書ニ依リ」云々、こうやっても、同じですか、違ってきますか。具体的には同じですか。
  60. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 「記名株券ノ譲渡」としますと、紙切れであります、株券の譲渡は。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 権利を化体しているでしょう。
  62. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 権利を化体しているのでございますけれども、譲渡の対象になりますのは、株式が譲渡の対象になるわけでございます。その株式を譲渡する手段といたしまして株券の裏書きあるいは譲渡証書の添付による交付ということを要件といたしているわけでございまして、株券の譲渡ということと株式の譲渡ということは、法律的には同一に帰着するわけでございますけれども、観念的にはこれは別個のものでございます。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 観念的な議論ですけれども基本的なものですが、それはそれとして、現実に日本株式会社では、株式というか株券を発行していないところが相当あるんじゃないですか、小さな会社などでは。
  64. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 小さな同族的な会社で現実に株券を発行していないところはあるようでございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう場合の譲渡はどうやってやるんですか。
  66. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは、株券の交付を受けまして、株券の発行を受けまして、それによって譲渡することになります。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株券の交付を受けてそれによって譲渡していない場合は、新らしい株主と称しても、それはだめなわけですか。
  68. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは株式を取得したことになりません。会社に対して自分が株主になったという主張はできないわけで、ございます。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま、大会社は別として、中小の会社の場合には、株式会社法というものを現実に守っていない会社が非常に多いんではないですか、現実問題として。いまの株券の発行にしたって、発行も何もしていないところも相当ありますね。会社の設立自身が、株主総会を開いたのか開かないのか、形の上では開いたようになっているけれども、現実には開いていない。それから資本充実の場合はいまはどういうふうにやればいいわけですか、それも何か裏をくぐってやる形で、そうして現実に会社が設立されているところが非常に多いんではないですか。
  70. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) ただいまの御質問は、現在の株式会社法の非常な弱点をお突きになったと申しますか、現実と会社法とがうまくマッチしていないと申しますか、そういった面をお突きになったわけでございまして、確かに、小さな会社で、特に株式会社にするよりはほかの会社形態をとったほうが適当だと思われるようなものも、現実には株式会社になっておる場合が多いわけでございます。株式会社になりますと、いろいろの制約がございますので、かえって小さな会社では法律どおりの運用がむずかしくなるということがあるわけでございまして、そこに株式会社法一つの大きな問題があるわけであります。そうかと申しまして、これを資本金で限定して、ある一定の規模以上のものにのみ株式会社としての形態を許すということにいたしますのも十分検討を要する問題でございますし、また、現実に株式会社として運用されておる会社でありながらも商法株式会社法の規定に準拠しないものをほかの適当な会社に組織を変更するというようなことを法律的に行ないますにしましてもこれは相当問題がございます。今後の株式会社法検討いたします際の問題点としては確かに一つの重要なポイントになると思います。現実は、確かに、おっしゃいますように、会社法の法規どおり運用されない小さな会社があることもこれはいなめない事実でございます。どうしたらこれを適正な会社としての運営に持っていくことができるかという問題は、今後の問題として私ども検討しなければならないと思っております。
  71. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 資本充実の、原則法制面ではどういうような形のときに会社が設立されるわけですか。これは旧法とだいぶ大きく変わったわけですね。
  72. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) ごく平たく申し上げますと、会社が発行いたします株式の数とか種類、そういったものを大ワクをきめておきまして、それ全部を一時に発行しなくてもよろしいわけでございます。必要に応じまして取締役会がその株式の発行をいたすわけであります。それによって資本を逐次充実していくという仕組みになっておるわけであります。改正前の株式会社法でございますと、一々株主総会の決議を経まして増資の手続をとっていったわけでございますが、現在ではそのような手続をいたしませんで、取締役会の権限で資本の調達がはかり得る、こういうふうになっておるわけであります。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは資本充実法制面ですけれども、銀行に対してのあれは何と言うんですか、払い込み証明ですか、そういう形のものを持って行って、そして法務局でどういうふうな形で実際に設立するわけですか。発起設立と募集設立とやはり区別はあるのですか。
  74. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) そういう区別はございますが、設立の登記をいたします段階で予定の株金の払い込みがあったかなかったかということが資本充実原則上非常に重要な問題でございます。そして、設立登記いたします場合に、それだけの株金の払い込みがあったということの証明をつけさせまして登記の受理をいたしておるわけであります。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、払い込み証明というのは、現実に銀行なら銀行へ払い込んで、それをあとから引き出しちゃってもいいんですか、会社ができてしまったら。それはどうなっているんですか。
  76. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これはその会社の資本になっていくわけでございますから、銀行に払い込んだものはそのまま凍結されるわけじゃございません。あとで引き出すことは可能でございます。
  77. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ところが、銀行へは払い込んだという証明はあるわけですね、資本充実の形で、設立の要件として。そうして、四、五日たったら全部払い出しちゃった。実際には内容的に資本がさっぱり充実されていない株式会社が形の上でできてくるわけですね。そういう形が相当あるんではないですか。どうなっているんですか、実際問題として。
  78. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは、私どものほう  では登記の面で接触するわけでございますので、銀行に対する払い込み証明書がございますれば、それだけの資金は確保されておるというふうに認めまして登記をいたす、これによって会社が設立されていくわけでございます。そのあとでその資金がどのようになるかということは、今度は会社の運営の問題になってまいりまして、そこまでは法務省としては関与いたしておりません。しかし、設立に際しまして、現実にそういう株金の払い込みがないのに証明書を偽造してやるとか、あるいは発起人が不正にその資金の払い込みがあったように見せかけて登記をするとかというふうなことをいたしますと、発起人の責任とか、あるいは設立後におきましては取締役の責任を追及する方法もあるわけでございます。何と申しましても、設立に際しまして資本を確実に確保したということが株式会社の設立上必要なわけでございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 実際には人から金を借りてきて銀行へ払い込みをして、証明書をもらって、株式会社を設立してしまうわけですね。そして、しばらくたつというと、すぐでも、返してくれといって全部その金を引き出してしまって、結局一銭もなくて株式会社ができ上がってしまっておる。形は資本金があるわけですね。実質的にはないわけですね。そういう形のものが相当行なわれているんじゃないですか、いわゆる見せ金で。そこら辺のところは、ある年限なら年限というものを──まあそこまでできるかどうかは別として、払い込みしたものはある一定の割合のものは必ず法定準備金のような形で──法定準備金もおかしいですけれども、そういう形で残しておかなければいかぬとかなんとかいう形の法律的な一つの規制というものはできないんですか。これは憲法違反ですかね。
  80. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 現在も準備金制度はございまして、資本が欠如してまいりますと、準備金を資本金に繰り入れていくというふうな措置は商法上講ぜられているわけでございます。ただ、設立当初におきましていろいろ不正があったりごまかしがあったりいたしますと、それはそれに応じてまた責任追及の方法あるいは損害賠償の方法ということが制度上設けられておるわけでありまして、それによって会社の資本が確実に確保されて適正に会社が設立されていくということを担保しようとしておるわけであります。しかし、現実には、いまおっしゃいましたように、不正な方法によって実際には資本金が確保されていないのに見せ金でやったというふうな場合も、これは絶無とは申し上げられません。確かにそういうようなものもあり得るわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 不正な方法にはならないんでしょう、現実にそれだけの金は預けてあるんですから。あとから引き出すんですから、不正とは言えないでしょう。株式会社は設立されてしまうんだし……。
  82. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) お説のような場合には、払い込みがないと見るか、あるいは、一応払い込みはあるんだけれども、会社の理事者がそれをかってに引き出して使ってしまった、いわば横領のような形になるか、どちらかの問題じゃないかと思われるわけであります。少なくとも会社設立に際しまして株式の引受人になりますれば払い込みの義務があるわけでございまして、それを払い込んではじめて会社の設立に進んでいくわけであります。その払い込みがないのにやったという場合には、これは不正な手段で会社の設立の形を整えたということになるかもしれません。しかし、いまのような場合に、払い込みがなかったと見るのか、あるいは、払い込みはあったけれども、会社の理事者がそれをかってに引き出してほかに使ってしまったということになるのか、これはそれぞれの事案に応じてきめられるべき問題であろうと思います。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの場合ですね、株式会社の設立で資本金を銀行に預けるわけですね。預けた者が、ある月数とかある年限とかは必ず四分の一なら四分の一は準備金なら準備金として残しておかなくちゃいけない、こういう形のあれはないわけですか、法律としては。そうすると、預けますね。会社が設立されますね。それだけ全額を貸付金で貸してしまえばいいわけですね、ほかへ。決して違法じゃないわけですね。そうすると、一銭もないわけですね、資本金が。それで始まっちゃうわけですね。内容的には幽霊会社みたいになっちゃう。株式会社というのは、そういう実体のないようなものが出てきているという危険性があって、だれでも簡単につくれるんじゃないですか。そういうのはどうなんですかね。あぶなくってしょうがないんじゃないですか、ある意味において。
  84. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは、発起人なり設立後の取締役の責任の問題であろうと思うわけであります。そういうことをすることによって会社の財産を危うくする、あるいは会社の債権者に対して損害を及ぼすということになれば、それぞれ商法の規定でそういうものに対する手当てができているわけであります。これは実際の運用の問題になるわけでありまして、はたしてそういう見せ金でやったかどうかということは一がいには言えないわけでありまして、一応払い込みの証明書がございますれば、それだけの金の払い込みはあったというふうに見ざるを得ないわけであります。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私どもの聞いているのは、払い込みの証明書というのは、いわゆる見せ金か何かでやられて、株式会社が設立される。資本充実原則というものはあるんだけれども、実際は骨抜きにされているのが中小の会社などで相当あるんだということを盛んに聞くわけですね。私だけかもしれませんけれども。そういう点で何らかの規制というものは必要なんじゃないか。あるいは、逆に言えば、中小の株式会社というものは、なにも株式会社の形態をとらないで、別な形のものとして考えていってもまたいいんじゃないかという、ふうな点もあるんではないか。あるいはそれは日本だけの特殊な現象かもわかりませんがね。こういう点なんかは、ちょっとわかりませんけれども、疑問に思っているんでお聞きをしているんですが、これはこの法律案に非常に大きく関係をしてくると思うのですが、長谷部さんが盛んにいわゆる会社法の中で中小の会社などについての問題点を投げかけているわけですね。これはあの方個人の意見かもわかりませんが、法務省あたりでそれに対して賛意を表するわけにはいかぬかと思いまするけれども、長谷部判事が言っているのは、具体的にどういう点とどういう点が現在の株式会社法と実際とが違っていて、そこにどういう問題点がある、こういうようなことを言っているわけなんですか。大ざっぱに言ってどういう点を問題としているわけですか。
  86. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) まあもともと株式会社といいますのは、ある程度の規模を持った会社であることを予想しておると思うわけでございます。ごく少数の、全く個人的な色彩の強い会社の場合に、はたして株式会社でやってよろしいかどうかということが問題なのであります。特に、株式会社の運営は、株主総会を頂点にいたしまして、取締役会の業務執行に関する決議をもとにして会社理事者が運営をしてまいるわけでありますけれども、そういった形態をとること自体が不向きな場合も現実にはあるわけであります。また、株式会社の場合には、会社の債権者を保護する必要がありますと同時に、株主の利益も守っていく必要があるわけであります。そのために商法がこまかい規定を随所に置いておるわけでありまして、こういった詳細な法律の規定を小さな会社にまでそのまま適用することがはたして当を得た措置であるかどうか。ことに、会社の財産の確保、資本充実の確保、そういった問題とも関連いたしまして、個人的な小さな会社にはたして株式会社のめんどうな手続がそのまま妥当するものかどうかという点が何といっても中心の問題じゃないかと思うわけであります。先ほど私申し上げましたように、現在の株式会社の実態をながめました場合に、先ほどもお話のありましたように、株券さえも発行してない株式会社があるのじゃないかということも確かにあり得るわけでありまして、そういったものについて将来それを有限会社なりその他の会社に切りかえていくということも考え方としては考えられるわけでありますけれども、現実に存在する株式会社法律の規定によって直ちにそれを切りかえることがこれはまた技術的に非常にむずかしい問題でございます。組織の問題、あるいは資本の問題、いろいろな問題がからまってまいります。非常にむずかしい問題でございますけれども、将来の問題といたしましては、そういった小さな規模の会社にすべて一律にこういった大会社に向くような株式会社の法規を適用していくことは十分検討に値する問題であろうというふうに考えるわけであります。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、今度の中で改正点がいろいろありますね。その一つ一つは、どういうような理由なり、それからもっと率直に言えばどこからの要請──要請というのが直接あったかどうかは別として、どういう方面からの要望をもとにしてできたのかですね。それからこれができ上がることによって、一体、たとえば株主だとか、債権者とか、会社側とか、これらに対してどういうプラスというか、それがあるというふうに考えられるのか、この点はどうなんですか。七つありますけれども、最初の一つだけでもいいです。記名株式の譲渡だけでもいいです。あるいは一緒にずっとやってくださってもけっこうです。
  88. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) その七つの項目につきましては、これはいずれも経済界からの要望に基づくものでございます。もう少し具体的に申し上げますならば、経済団体連合会はもちろんのこと、中小企業を含めました商工会議所からの要望、さらに証券業界、そういった方面からの強い要望がございまして、現在の経済界における緊急の問題として提起されたわけでございます。  そのねらいは、いずれも違いますが、ごく簡単に申し上げますと、第一点の株式の譲渡の制限でございますが、これは、現在の株式会社が、先ほどお話のように、必ずしもすべて大会社に限りません。同族的な小さな会社もございます。そういった会社の株式の譲渡を自由にすることがはたして適切かどうか。会社の経営の安定をはかるとういふうな意味からいたしまして、ある程度の譲渡を制限するということを考えたわけでございます。譲渡制限と申しましても、完全に譲渡を許さぬという意味ではございません。これは相手方をある程度制限するという趣旨でございます。そうなりますと、株主の利益がある程度無視されるじゃないかという心配もございますので、この場合にも、株主がもしも株式を譲渡しようとすれば、確実にその譲渡ができる道を開きまして、投下資本の回収をはかるようにいたしたわけであります。  それから額面株式と無額面株式の変更でございますが、これも、実際発行されております数は、無額面株式につきましては会社の数としては少ないのでございますけれども、これも株主にとりましても、額面株式と無額面株式を変更しようとする際に、このままではできないわけでございます。株式会社の側にいたしましても、株式事務上いろいろ複雑な問題になりますので、できますならばこれを一方に統一して変更し得るようにしよう。これも株主の希望を入れてやるわけでございます。  それから株式の譲渡方式でございますが、現在、株式の譲渡は、株券に裏書きをし、あるいは譲渡証書をつけて相手方に交付するわけでありますが、この際の裏書きに使われます判は、会社に届け出ました判でなくてもよろしいわけでございまして、現在は、ありあわせの判を使って裏書きいたしましても、その後転々と裏書き譲渡されて善意の取得者が取得いたしますと、すべてその取得者の株式の取得が有効になるというふうなことになっております。実際に使われます判がそういうふうなことになっております関係上、株式の譲渡についての裏書きに、その判の占める重要性と申しますか、そういった点が非常に薄らいできてしまっている。ことに、白地裏書きをいたしますと、あとはもう株券の交付だけで転々と株式は譲渡されていくわけであります。そういうことになりますと、むしろ、裏書きというものはなくても、株券を大事に持っておるということが大切なことだ。もちろん譲渡契約も必要でございますけれども、譲渡契約に伴って株券を交付することによって株式の譲渡を認めることが合理的ではあるまいかということになったわけでございます。  なお、この場合にも、株主保護をはかりますために、株主の希望によりましては、株券を発行しないでおくとか、あるいは株券を銀行に寄託するという方法をとりまして、株主保護をはかろうとしたわけでございます。  それから議決権の不統一行使でございますが、これは、たとえば信託的に株主になっておる場合、これを法律的に株主と申しますと、委託者はその信託に基づきまして株主としての利益の配当を受ける仕組みになっております。そういたしますと、実質的には委託者が株主としての地位に立つわけでございますけれども、議決株を行使いたします段階におきましては、株主名簿に記載されました株主、いわば形式的な株主が議決権を行使するわけでございます。そういたしますと、実質的に株主としての利益を受ける者の意向が十分反映し切れないというところから、その意向を反映させますために、委託者の指図に従って名義上の株主が議決権を行使する。場合によりますと、委託者が数名おりますと、必ずしも議案に賛成する者ばかりでなく、反対する者もございますが、そういった株主の意向を十分反映させるためにこの不統一行使という制度を認めたわけでございます。  それから新株発行の手続でございますが、これは従来の商法の規定に若干解釈上疑義がございまして、訴訟問題も起きているような実情でございます。そこで、この規定の趣旨を明確にいたしまして、新株発行の手続が円滑にまいりますようにということをねらったわけでございます。  さらに、新株引受権の譲渡は、新株の引受権を与えられました株主が払い込みをいたします際に、資金調達にいろいろ不便を生ずる場合がございます。そういう場合に、現在では、旧株を売りましてそれを新株の引き受けの資金に充てておるわけでございますが、そこまでやらなくても、むしろ新株引受権そのものを譲渡し得るようにしたほうが簡明な措置と言えるわけでありますので、新株引受権を譲渡し得るようにして株主の便宜をはかっていくというわけでございます。  それから転換社債の転換請求でございますが、これも社債権者の請求によって社債を株式に転換するということでございますが、現在、株主名簿の閉鎖期間内には転換請求ができないわけでございます。それでは社債権者の立場が十分守られないわけでありまして、時宜に応じて株式に転換して株式としてそれを利用する必要がある場合も起きてまいりますので、そういう意味で、転換社債の転換請求についての従前の制限を撤廃しよう、こういうことで、ございます。  これを通じて申し上げられますことは、株主の利益の擁護をはかると同時に、会社の事務の便宜もはかっていく。また、会社の債権者の利益もばかっていく。それぞれにおいて理由は違いますけれども、いま申し上げましたような趣旨におきまして今回の改正案を提出したわけでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの七つの改正の点ですね、これは英米法ではどういうふうになっておるのですか、ことにアメリカの法律では。イギリスは、あれですか、やはり不文法主義なんですか、こういう株式会社法なんかでも法典はないわけですか。
  90. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) イギリスにもアメリカにも──これはアメリカは州によって違うようでございますが、それぞれ法律がございます。また、譲渡制限の規定も、大陸にもまたイギリスの法律にも譲渡制限の規定はあるわけでございます。また、譲渡方式の点につきましては、記名株式ではなく無記名株式の制度をとっているところもあります。また、両建てのところも、ございますが、ドイツあたりではむしろ無記名株式が多くなっており、大部分は無記名株式であるというふうに言われているわけであります。そういたしますと、裏書き方式というものも要らないわけであります。  また、議決権の不統一行使につきましては、これは英国の例であったと思いますが、明文で不統一行使ができるようになっておったと思います。  新株発行の手続、新株引受権の譲渡、あるいは転換社債の転換請求、これはそれぞれ国の法制によって差異はあるわけでありまして、一がいにこれが英米法的な考え方かどうかということは申し上げられませんけれども、現在のわが国の経済界実情に即して考えました場合に、現行法ではいろいろ不備がございますので、会社の立場、株主の立場、債権者の立場も考えて、こうすべきだということにいたしたわけでございます。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 記名株式の譲渡方式の問題これから私の質問は入っていきたいと思っているのですが、これで譲渡方式を変えたというのですが、そうすると、株主としての権利を行使するときには、いままでのやり方とは変わるのですか。株券を持っているということだけで株主としての権利を行使できるわけですか。
  92. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 会社に対しまして株主であるということを主張して、議決権を行使したりあるいは利益の配当を受けるということをいたしますには、現行法と同じく株主名簿の書きかえが必要でございます。会社に対して株主であるということを主張するためには、名簿の書きかえをいたしませんとできないわけでございます。これは、現在におきましても、裏書き譲渡をいたしましても、株主名簿の書きかえをしない限りは会社に対して株主としての主張はできないと同じでございます。ただ、譲渡の方式だけが変わるということに御理解をいただけばけっこうだと思います。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、譲渡方式だけ変えて、権利の行使の面は変わっていないわけですか。それはどういうわけなんですか。やはり譲渡方式も変えたんだから、それに伴って権利の行使も、株券を持っていれば、株主総会のときに持っていけば、その人が株主としての議決権なり何なりを行使できる、こういうふうにするわけにはいかないのですか。そうすると非常に不都合が起きるわけですか。
  94. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) そういう方法も考えられるわけでございます。でございますけれども、そのつど株券を提示しなければ権利の行使ができないということになりますと、株主総会の議決権を行使いたします場合ももちろんのこと、株主として利益配当を受けます場合にも、一々その株券を提示しなければならないということになりまして、株主にしましても非常にめんどうなことになりますし、会社側も一々それを確認しなければいけない。こういう不便を避けるために株主名簿という制度ができておるわけでありまして、名簿に記載されたところに従って会社としては処理すればよろしいというのが現行法のたてまえでございます。また、株主も、名簿に株主として記載されますならば、それによって自分の権利を行使できるわけでありまして、株券を別途保管しておるということになるわけであります。株券の所持がすべての権利の行使の表現ではないわけであります。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株主名簿の名義書きかえをするかしないかということは、譲渡を受けた人の自由──自由と言うと語弊がありますけれども、別にしなくてもいいわけですか。
  96. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 必ずしも株主名簿の書きかえをしなくてもよろしいわけであります。たとえば、甲から乙、乙から丙というように株式が譲渡されまして、乙は自分が株主として権利を行使する意思がなくて丙に譲渡してしまったという場合には、丙が名義書きかえの請求をして、丙の名義を株主名簿に記載してもらえばよろしいわけであります。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 無記名株式の場合には、株主名簿というものはないわけですか。無記名株式がどんどんふえてくれば、株主名簿というものも要らなくなって、その場合に権利の行使は具体的にどうやるのですか。
  98. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 無記名株式の場合には、株主名簿の記載はいたしません。したがいまして、無記名株式を持っておる人は、その株券を会社に提示してそして権利を行使するわけであります。したがいまして、譲渡は非常に簡単でありますけれども、権利を行使する手続としましては記名株式の場合よりはめんどうになるわけであります。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 無記名株式は、聞き漏らしたんですけれども、ヨーロッパなり何なりではふえているのですか、あるいは、国によって特殊事情があるから一がいに言えないということですか、そこはどういうふうになっておりますか。
  100. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) フランスの例でございますが、これは所持人式の証券ということになっております。これは一棟の無記名株券でございます。ドイツにおきましては、無記名式と記名式とございますが、無記名式の株券が多くなっており、大部分は無記名式の株券だというようにいわれておるわけであります。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、無記名の場合には、権利の行使は、フランスなりドイツではどういう形で行なって、どういうような不便が現実にあるのですか。日本もだんだん無記名株券の方向に進みつつあるんですか。そこまで言えないですか。
  102. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) こまかいことは実は私も承知いたしておりませんけれども、無記名株券の場合には、権利を行使いたします際に、自分が株主であるということを証明しなければなりません。やはり株券の提示が必要となるんじゃないかと思います。わが国の場合におきまして無記名株券が多くなっておるかということにつきましては、必ずしもそのような状況にはないだろうと思うわけであります。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 民訴の七百七十八条は除権判決の規定ですか、この中に言うところの「無記名証券」というのは、これは具体的にどういう意味ですか。
  104. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 民事訴訟法の七百七十八条にございます「無記名証券」という中には、無記名株券、それから無記名社債、国債も有価証券でございますが、これもこういう中に入ると思います。それから無記名式の手形、小切手、そういったものもその中に入ります。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 記名株券も、いまの除権判決の関係では「無記名証券」という概念に入るのですか。そういう考え方をする人もいると思いますね。無記名証券というのは占有の移転によって権利が移転する証券だ、こういう意味でしょう、除権判決の規定から言うと。だから、記名の株券も、今回のような形で占有によって権利が移転するという形になってくると、ここに言う「無記名証券」に入るということになってくるんじゃないですか、除権判決の関係では。
  106. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 七百七十八条の関係では、商法改正によりまして裏書き制度がなくなりました後の株券につきましては、ここで言う「無記名証券」の中に入るというふうに考えてよろしいと思います。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 記名株券が「無記名証券」に入るというのはどういうわけですか。ことばからいうとおかしいのですが、概念が違うからそれでもいいのかもしれませんが。
  108. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 七百七十八条にございますように、「無記名証券又ハ裏書ヲ以テ移転シ得ヘク且略式裏書ヲ付シタル証書ニ付テハ最終ノ所持人公示催告手続ヲ申立ツル権アリ」と、こうございます。したがいまして、この規定の運用上の問題といたしましては、これは新しい制度のもとにおきまする株式は、裏書きによるものではありません。「無記名証券」としてやはり扱うべきものであろうというふうに考えます。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きょうは、もう一つでやめて、この次にいたしますから。  記名株券というのは、あれですか、記名と言うけれども、名前を書けという規定は商法にはないわけですか。
  110. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 商法にはそういう明文はございません。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、記名株券と言うのだけれども、名前を書かなくてもいいんですか。
  112. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは記名株式、無記名株式と言うふうに分けてございますので、無記名株式はもちろん株主の名前を書く必要はないのですが、記名株式については株主の名前を株券のどこかに表示すべきだという前提に立って規定ができているものと理解いたしております。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、株主の名前が書いてなくても法律的に有効なわけですか。これは無記名株券として通用するわけですか。
  114. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) かりに株主の名前が脱落しているという場合でございましても、これが無記名株券になるとは考えられません。やはりこれは同じ記名株券でございまして、記名の方法はとる必要がございますが、たまたま脱落したことによってそれが直ちに無記名株券にはならない。発行されますときにすでに株主の名前が書いてございます。今回裏書きを廃止いたしますと、会社にそれを持って参りまして名義の書きかえをいたしますそのときに、会社のほうで新しい株主の名前を株券の中に表示をするということになるものと考えます。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 発行するときに記名株券であって記名していなかった場合には株券として有効か。──口頭試問みたいですみませんが。
  116. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 最初から名前が抜けている場合でございますね。──はたしてそれを記名株式だと断定はできないように思います。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 定款できまっているのじゃないですか。定款できまっているでしょう。記名株式を先行するなら発行すると、そういうふうにきまっていて名前が書いてなかったらどうなんですか。
  118. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) もちろん定款でそれはきまっておりますので、記名株券は記名株券として発行しなければならぬわけでございますが、大事な点が抜けておりますので、記名株券としての効果はないというふうに言わざるを得ないと思います。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあたいした問題じゃありませんが、この次にいまの記名株式の譲渡問題の中に入って質問いたします。  きょうは、あとで売春関係の質問がありますから、この程度にいたします。
  120. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。
  121. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、柳岡秋夫君が委員を辞任され、その補欠として田中寿美子君が委員に選任されました。
  122. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、売春対策に関する件について調査を行ないます。田中君。
  123. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、坐って質問させていただきまずから、どうぞ皆さんもお坐りになったままでお願いします。   私どもの共同提案の売春防止法の一部を改正する法律案については、もうすでに政府側は改正の必要がないという御意見の発表があったようでごごいます。とすれば、もう十年前にできたこの法律が相当の効果をあげているという観点に立っておいでになるのではないかと思うのですけれども、実態は非常にそうでないように思います。きょう、特に法務省、警察庁の方々は、非常にたくさん実態をつかんでいらっしゃると思いますので、その実態をお聞きしたいと思います。  十年前にこの法律を作成します当時、私も関係がありましたのですけれども、その当時私どもがねらっておりましたものは、世間でよくざる法と言われておりますけれども、長い間の管理売春をなくすということ、つまり人肉の市場を公然と開いていたのをなくすということがねらいの一つでございましたし、それからその中で肉体を売らされている不幸な女の人を救い上げるという意味保護処分、こういうことを目的にしておりましたし、それからまた、しかし人権は尊重しなければならないというので、過去にあったようないわゆる臨検というようなものは避ける、こういうような方針でこの前の法律はできたと思うのです。私どもも、この一片の法律で売春がなくなってしまうなんて簡単な考え方は少しもしておりません。また、それから後の社会の変化というのは非常に大きな変化があったと思いますけれども、それでもこの資本主義社会では性というものもやっぱり商品にされる社会でございますから、すべてのものが商品になる社会で売春が簡単になくなるということは考えていないのです。しかし、少なくとも肉体を売らさせて搾取して栄える業者、こういうものをなくしたいというのが何よりも大きな念願だったと思いますし、また、その犠牲になる女性を救うというのが大きな念願だったと思います。  ところが、そういうことは、やはり社会の条件かよくならないと簡単には直らない。すべての人に職場が与えられる、つまり完全雇用と申しますび、みんなが職場を与えられて、そして男女の差もないことや、それからいまの賃金や労働条件がもっとずっとよくなること、それから社会保障というものが十分に充実されるというような条件がないと、いままでこれを業としてきた業者の側も、また、自分に職業の能力を持たなかったり、不しあわせな立場に置かれる女の人の側も、非常に売春に走りやすい。これは、そういう社会の条件というものが改善されていない。したがって、この法律によってたくさんの効果があげられたというふうには私は見ていないわけなんであります。  そこで法務省のお出しになっていらっしゃいます資料によりまして見ますと、この法律が施行されてからの売春の件数というものはだんだん減ってきておりますわけですね。その中でも、たとえば五条違反といいますか、つまり勧誘行為をする女性が一番つかまえられておって、そして助長行為という業者のほうの行為のほうの数はそれより少ないわけなんですけれども、一体、ここにあらわれている数字は四十年五月十五日の法務省刑事局の数字のようでございますが、これはどの程度実態をあらわしているものかどうか、もう少し詳しくお漏らし願いたいと思うのですけれども、そしてこれは三十九年までの数字でございますが、それから後の件数その他もう少し説明していただきたいと思います。
  124. 津田實

    政府委員(津田實君) 売春防止法制定以来十年になりますわけで、最初の昭和三十四年には二万五千人というような数字が検察庁で扱われたわけでございますが、これがだんだん減少してまいりまして、昭和四十年には一万五千という数字になってきました。ところが、それじゃ一万何がしに減っておるということ自体がそれで喜ぶべきかということになりますと、これは必ずしもそうとは申せないと思うのであります。現在、私ども考え方としては、少なくとも相当数の潜行化しているものもあり、あるいは巧妙化しているものもあるということは、当然予測しており、また推測しておるところでございます。  しかしながら、ただいまもお話がありましたように、取り締まり法規というものはつくりましても、そのすべてを把握するということは困難でございます。そこで、現在におきまして最も重点と考えられるところは、要するに、周旋あるいは管理、場所提供というような、いわゆる売春婦自身の犯罪ではない犯罪ということに重きを置くべきだということは当然でありますし、ここ数年の間、少なくともこの問題には十分な取り組み方をしてきておると私は考えております。これはまあ主として第一線の取り締まりは警察庁のほうからお話を願うほうがいいと思うのでありますけれども、私どものほうの管下の検察庁といたしましても、もちろんこの問題につきましては、これは暴力団あるいは暴力団の資金源につながる問題でもありますしいたしますので、十分その点につきましては、暴力団撲滅の一環としても力を入れておる次第でありまして、すでに各地におきまして相当高い刑を言い渡された事例も出てきております。  しかしながら、一面を申しますと、かような行為が見のがされていると申しますか、網をくぐっておるものがあるのではないかということもしばしば言われていることであり、しばしば私どもも耳にいたしておるところでありまして、その点はまことに遺憾であると思うのであります。  これは前回当委員会におきましても申し上げたと思うのですけれども、私どもの現在考えている重点といいますのは、いかにして的確な検挙なりこれを実際裁判に持っていって的確な有罪判決を得られるだけの証拠が獲得できるかという問題点が最も重要な点になってまいっているわけであります。その点につきましては、いろいろくふう検討をしなければならぬ問題が多々あると思います。事柄の本質が非常に隠密的な場合もありますし、また、被害者と目する者が必ずしも厳格に被害という意識にはないというような問題もございます。そういうような点から、これを捜査し、公訴を提起して有罪判決を得るというような場合の技術的な面の隘路というものはかなりあるということを申し上、げなければならないと思うのであります。にもかかわりませず、私どもといたしましては、さような点を克服して、今後とも十分にこの法律の実効をあげるようにいたしたいということで現在努力をいたしている次第でございます。  そこで、ただいまお尋ねの昭和四十年につきましては、一万五千七十六人という検察庁の受理人員になっておりますが、そのうち、五条違反に当たるものは一万九十六人で、これは六七%を占めております。それから六条違反が一六・四%、それから十条違反が一・二%、場所提供の十一条が九・五%、それから売春させる十二条違反が五・四%、その他〇・五%、こういうふうな内訳になっておりますが、これはあくまでも人員の頭数で言っておりますわけでございまして、業者等につきましては、一人で具体的な犯罪事実というものは相当たくさんあり、あるいは継続的な犯罪と見られるものもございますので、人員のパーセンテージからは必ずしも少ないということは言い切れないのかもしれませんが、しかしながら、数字的に見ますと、ただいま申し上げたような状態になっております。
  125. 田中寿美子

    田中寿美子君 売春婦のほうも潜在している、それから業者のほうも巧妙化し潜在しているというふうにおっしゃっておりますが、いまどのくらい両方とも推定なさいますか。
  126. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) 一応の数字は持っているのでございますけれども、いま実は衆議院のほうから急にこちらに呼ばれて参りましたので、手元に数字を持っておりませんので、別の機会にお答えさしていただきたいと思います。
  127. 田中寿美子

    田中寿美子君 売春助長行為に対して、今後、非常に悪質になっているから厳重にやるのだというようなことがここに書いてありまして、内偵捜査を行なうというようなことが書いてありますが、内偵捜査というようなことはどういうようなことをなさるのですか、警察庁の方にお尋ねいたします。
  128. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) 私のほうの資料で御質問されているのかどうか、ちょっと存じませんけれども……
  129. 田中寿美子

    田中寿美子君 法務省の刑事局の資料で、ございますけれども、でも実際には警察庁が当たっているということが書いてありますね。
  130. 津田實

    政府委員(津田實君) 一般的に申しまして、これは、個々の事件のいろいろの捜査経過を申し上げて、それによってそういう結論が出ているわけであります。  要しまするに、管理売春その他につきましては、やはり隠密に行なわれているわけでございますので、その管理されたという実態、あるいはその管理された者に対する相手方となった実態、こういうものがはっきりしませんと、これは管理売春なら管理売春としての犯罪の証拠としては十分ではございません。そこで、そういう意味において、これは公々然とやっていることであれば別でございますけれども、隠密の間にやりているとすれば、どういたしましても、ある情報等によりまして業者と目せられる者をマークして、これについていろいろな方面から内偵をいたさなければならぬ。場合によりましては、何十人というそこへ出入りした者につきましていろいろこれを聞いてみなければならないというような実態がある。そういうことでなければ、直ちにその者について逮捕状を請求するとか、あるいは捜査令状を請求するというような資料が出てこない。そういうことを個々の業者について──これは主として警察のほうで行なうことでありまするけれども、あらかじめそういうことをしなければならぬ。いきなり捜査の端緒がつかまえられて、すぐに令状を得られて強制捜査ができるというような実態の場合はきわめて珍しいということ。それから相手方となる客のほうにしましても、なかなかそういうことにつきましては、事柄の性質上協力をしないという実態があります。そういうようなものを全部克服してはじめて一つの業者についての犯罪事実のある程度の外貌がわかる。そこで具体的な捜査を開始するというようなことをしばしば私どものほうに聞かされるわけであります。そういう意味のことはどうしてもやっていかなければ、一人の業者をあげるにしても、なかなかの手数が要る。しかし、それはあくまでも実行していかなければならないということを考えて、現在、検察庁といたしましては、各地の警察と連絡をとりまして、そういうことをやっている。これはいま始まったことではございません、今日までずっとやっておる、こういうようなことを言っておるわけでございます。
  131. 田中寿美子

    田中寿美子君 そのつまり業者、売春助長行為をしたという証拠をつかむのには、相手方をつかまえなければならないといまもおっしゃいましたし、私もそう思うのですけれども、その場合の方法として、いまのお話は抽象的ですからはっきりよくわかりにくいんですけれども、たとえば、これは私先年、だいぶ前ですけれども、ニューヨークの婦人裁判所で見てきたものなんですけれども、あそこは、何といいますかね、悪徳部隊といいますか、ヴァイス・スコードというのがありまして、顧客に化けて常習売春婦に近づいて、そして常習に売春をさせる場所を提供する宿家に入って契約をしたときに、そこで逮捕するというような、そういう方法をとっているということでございました。その後、これはやはり人権の問題になって、最近はやめになったように聞いているんですけれども、内偵捜査というのは人権の問題と非常にからんてくると思うのですが、その辺を──人権擁護局の方はおいでにならなかったですね。いらっしゃいますでしょうか。法務省のほうで方法としてはどの辺までそういうことをやっておいでになるんでしょうか、もう少し具体的にお話ししていただきたいと思います。
  132. 津田實

    政府委員(津田實君) 法務省といたしましては、先ほど申し上げましたように、主として第一線の取り締まりに当たるのは一線の警察官でございまして、検察庁といたしましてはそれらの事件の送致を受けてやるというたてまえになっております。しかしながら、捜査の一般的な方法等につきましては、常時警察と検察庁というものは連絡をいたし、意見交換をしておることは事実でございます。  そこで、ただいまの具体的な──と申しまして、具体的事件じゃありませんが、具体的な事例につきましては、私どものほうとしては、それじゃいかなる形でいかなるふうにやればよろしいかというようなことは一々指示なり指導はいたしておりません。しかしながら、今日まで一番売春防止法の事項で問題になりますのは、この対象となる五条違反の婦人そのものもそうでありますけれども、相手方となった者について取り調べをするについても、やはり取り調べの行き過ぎというものがないようにすべきだということは当然論議にあがっておりましたし、これは立法当時も相当論蔵にあがっておりました。その辺は十分に考えながらやるというところにやはりむずかしさが出てまいると思うのであります。先ほどお話しのことは、いわゆるおとり捜査というものに属するわけであります。現在は、はっきり法律上認められておるのは麻薬関係だけでございますが、まあそのほかの関係でもおとり捜査ということについてはある程度の限界を持っておる。一般の刑事事件においてもやり得るということは考えられておりまするけれども、現在のところにおいては、おとり捜査というものは非常に人権を害しやすいという意味において、具体的にはなかなかやらないというような態度をとっておるわけであります。まあそういう意味で、おとり捜査が一面犯罪を誘発するというようなことになりますと、それこそ人権問題でありますので、そこのおとり捜査の発動のしかたというものは非常にむずかしいと思うので、私は第一線でおとり捜査が売春事犯に使われているかどうかということは、ただいまのところは存じませんけれども、いわゆる典型的なおとり捜査の形はおそらく使われていないのではないかというふうに考えておりますけれども、ただ、まあ五条違反の行為について、たやすくそういう行為をしやすいような場所というようなものに捜査員が目を光らすというようなことはしばしば行なわれているというふうに考えております。
  133. 田中寿美子

    田中寿美子君 私も、そのおとり捜査というのは人権を侵すという意味で、よくそんなことがニューヨークでは平気で行なわれるものだと思ってむしろ驚いたわけなんですけれども、そのほかの方法として、もう常習売春者が出入りするような場所というのは大体わかっている。そこへ出入りする男女を見張っていて、そしてその場所に対して禁止のあれをするというのは、これは考えられるのじゃないかと思うのですけれども、そういうことについてはやっておいでになるんでしょうか。つまり、売春助長行為というもののあげられた数は減ってきておるわけなんですけれども、事実は非常にそういうものが多いということ、それから例のヒモが多いという状況の中で、一体どういう方法を一番使っていらっしゃるんでしょうか。
  134. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) いまお話の出ております件でございますが、この前も実はこの委員会でちょっと申し上げたのでございますが、普通この勧誘事犯の層さ、検挙というような場合にどうふうにやるかということでございますけれども、一応街頭でいろいろ目につく売春婦みたいなものがおるじゃないかというふうなことがございましても、それを直ちに引っぱるというわけにはもちろんいかないのでございまして、通常は、男を呼びとめるような形になって、それが一緒に旅館なら旅館というようなところに入る。入った段階で、警察は初めてそこまでつけてまいりましてまず男のほうにいろいろ聞いてみる。そして、まあ嫌疑のほどが十分あるということになりますと、今度は相手方の女のほうに聞くというふうなことで、非常に単純と申せば単純な、第五条関係の勧誘の検挙の場合についてはそういったような手続を経てその女性の検挙ということに至っておるわけでございます。いわんや、管理売春とかというような複雑悪質なものにつきましては、そういうふうな程度のこちらの捜査態勢ではとてもまいらないのでございまして、かりにそういうような形で裁判所のほうに送りましても、結局いろいろな口実のもとに逃げられてしまうというようなことで、管理売春等の検挙の場合には、これも前回ちょっと申し上げたのでございますけれども、何十人かの出入りした審について、一応、その客の足取りといいますか、住居とか、そういったものを調べておき一まして、それから個々に聞いていく。その場合でも、その相手方になった男性の人権を侵害するということについては十分考慮を払わなければなりませんので、なかなか多数の相手方を調べるということも実は非常に努力を要する問題でございます。しかし、たくさん調べましても、それから実際の検挙に役立つ情報として得られるものは非常に少ない。五、六十人を一つのかりにホテルならホテル、宿屋なら宿屋について調べてみましても、それがいわゆる事件としてさらに進んでいけるという情報を得られるものは、五、六十人の中から五、六人というふうな歩どまりであるようでございます。そういうようなことから、非常に悪質な管理売春あるいは暴力団による管理行為というようなものをやるという意気は、気持ちは十分にあるのでございますけれども、そういったような人権というふうな問題も片方にある関係上、非常に慎重に取り運ばなければならないのが実情でございます。  それからもう一つお話の出ましたおとり捜査ということでございますけれども、先ほど御説明のありましたように、麻薬関係はともかくといたしまして、売春関係につきましては、おとり捜査ということは現実にはやっておりません。ただ、実際問題といたしまして、警察官が街頭でいま申し上げましたような勧誘事犯の取り締まりというようなことに従事しておりますと、売春婦のほうが警察官という認識がなしに、向こうにしてみればミスで警察官に勧誘行為をしかけてくる。警察部内ではこれをじか引きというふうな表現で称しておるようでございますけれども、そういったようなもので、結局あくまでも売春防止法違反であることは事実でございますので、そういったものも検挙されておる人員の中の一部には含まれておることは事実でございますけれども、こちらから意識的におとり捜査をやるというふうな態度は現在の売春取締法において警察としてはとっていない次第でございます。
  135. 田中寿美子

    田中寿美子君 売春防止法ができまして以後の業者の転換の状況はつかんでいらっしゃるのでしょうか。業者があの当時日本全国にずいぶん数がたくさんありましたわけですね、いわゆる赤線業者が。その業者の転換状況ですね、それはつかんでおいででございましょうか。
  136. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) これは非常につかみにくい面もございまして、はたしてわれわれの持っております数字がどの程度信用できるものであるかということについては自信がないというところが真相でございますけれども、あいにくきょう実は先ほど申し上げたような実情でちょっとその数字の資料を持って来ておりませんので、次の機会にひとつ回していただきたいと思うので。ございます。
  137. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、お願いします。  もうすでにこの委員会で何回か話があったのかもしれないのですけれども、どうしても五条違反が一番多い。そこで、私たちが一番ねらうものというのは、やはりそういう性を売らせてもうける者、これをできるだけなくそうというところにあるはずだというふうに考えているわけなんですが、その助長行為をする人のほうが非常に巧妙になってきているわけです。で、いわゆるヒモといわれるものに対して厳罰をもって臨むということがここにも記されているのでございますが、ヒモというのもいろいろあると思うんですね。これは刑事局の方にお尋ねするのですけれども、ヒモと目していられる業者──業者といいますか、実態は、どんな人たちをさしておっしゃっているのですか。
  138. 津田實

    政府委員(津田實君) 事例といたしましては、最近ここ一、二年の事例がら申しますと、ヒモをいまの七条あるいは八条というので公訴を提起して、あるいは懲役一年二カ月というようなものになった事例、それから一年六ヵ月になった事例、それから一年二カ月になった事例というのが東京にございます。これはいずれも同棲中の女に困惑させてというようなことであります。それからそのほか内縁関係というような形で、福岡、広島等におきまして、懲役一年五カ月、あるいは十ヵ月、一年六ヵ月、札幌におきまして一年六ヵ月といったような事例がございます。それから暴力団の構成員でそういうことをしたものについてのやはり同様な検挙というような事例が、特異な事例として私どものほうに報告のあった事例としてはございます。  そこで、現在、一般的に申しまして、起訴率と申しますか、検察庁が受理いたしました事件の起訴の率というものは、昭和四十年で、たとえば六条の(周旋等)につきましては八四%、それから十条の(売春をさせる契約)の場合は八一%、十一条の(場所の提供)は六八%、こういうように起訴の割合がかなり高率になっております。一般の事件はとてもそこまで参りませんわけです。そういう意味におきまして、助長事犯で発覚をしておるものにつきましてはさような高率の起訴率をとっております。これは、起訴できないものにつきましては、事実関係の証拠上の問題点があってできなかったという事例が多いと思われるのでありますが、大体そういう意味におきまして検挙して検察庁に送られたものにつきましては相当高率に起訴されておるわけでございます。  そこで、結局、問題は、潜在的なこれらの業者、これらの行為というものにつきまして、どの程度これを把握して検挙できるかということに問題が帰着するというふうに考えております。それから参りますと、かように高率な起訴率を持っておりまするから、やはり検察庁へ送致されるまでの警察等の捜査当局の内偵捜査、あるいは現実の捜査というものが非常に行き届いているということが言えると思います。問題は、先ほども警察庁からお話があり、私どもも申し上げましたが、特定の事件につきまして相当の手数がかかるということによって、全般的な能率問題ということになるとこれはやはり問題があるということではないかというふうに考えております。
  139. 田中寿美子

    田中寿美子君 この資料によりまして、「有罪人員中二千三百七十八人が懲役刑を言い渡されており、うち実刑に処せられた者は五百九十三人」というたいへん少ないわけですけれども、みなどうなったわけですか。保釈したわけなんですか。非常に親切だと思いますね。
  140. 津田實

    政府委員(津田實君) 大体は執行猶予になっております。
  141. 田中寿美子

    田中寿美子君 つかまえられた婦人に関しては、保護処分をしたり、いくらかアフター・ケアがあるわけですけれども、そういう業者やヒモに対しては、あとは何もアフター・ケアというものがないわけですね。
  142. 津田實

    政府委員(津田實君) これらのものにつきましては、あるいは先ほど執行猶予と申し上げましたが、あるいは罰金のものも、ございますが、罰金につきましては、執行済みであれば、あるいは人の資格の関係で若干の制限はありますけれども、これはどうするわけにもいきませんし、執行猶予中のものについては、保護観察でもついておれば、保護観察の対象になるということはあるわけであります。まあ、しかしながら、一般の犯罪として考えました場合におきましても、刑の執行、あるいは執行猶予期間中が終われば、これは特別の措置ということはできない。一つの何かの制限を加えるということは逆に人権上の問題であるということになってくるわけでございます。五条違反の婦人のほうの関係は、法律上補導院なりの措置がとれることになっているからできるということであると思うのであります。
  143. 田中寿美子

    田中寿美子君 それだから私ども改正の必要を言っているわけなんですけれども、そうしますと、業者のほうの累犯というものもいっぱいあるわけですね。それをつかんでいらっしゃいますか。
  144. 津田實

    政府委員(津田實君) 業者の累犯率は、いまちょっと手元に資料がございませんが、売春婦のほうの累犯率は、これはかなり高いことは御承知のとおりでございます。業者についても相当累犯はあると思いますが、累犯につきましては、累犯自体は把握されておりますので、罪の量刑には相当の影響があることは、先ほど申したとおりでございます。
  145. 田中寿美子

    田中寿美子君 この法律は十年前にできて、たいていの法律は、十年もたっておりますと、その間でしばしば修正や改正があるわけなんですが、今日までそのままで、非常にいろいろ不便があってもちっとも改正されずに今日まで来ているわけで、何となく私は法務当局も警察当局もあんまり熱心でないような感じを受けるわけですがね。  それで、私たちは、なにも罰するのが決して目的でないわけなんです。この法律をつくったときに、売春ということが人道に反する、正しいことではないということを宣言しまして、ほんとうならば、法的な問題として残っているのは、単純売春もこれもやっぱりしてはいけないものだという法律にし、それから相手方になった人も──さっきおっしゃいましたように、相手方がはっきりしなければ、業者もつかまえられない、搾取する人もつかまえられないわけですから、相手方にもある程度はっきり責任感と処罰を伴わないと、女の人自身が自分たちだけが被害者になるという非常に片手落ちの感じを受けて、更生の意欲を失うということにもなるわけなんですけれども、ですから、そういう点が法的にも残っていますし、また、管理売春が非常に巧妙になってきた状態の中で、一体これをどういうふうにするのか。非常に重大な問題をたくさんかかえておって、困難ですからやりにくい。そして、人員が足りないとかいうようなこともおっしゃっていると思うのですが、一体どのくらいの方がこの売春防止法関係で警察では働いていらっしゃるのでしょうか。
  146. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) ちょっとこれまた数字をきょう持って来ておりませんので、次回にでもお願いしたいと思います。
  147. 田中寿美子

    田中寿美子君 たいへん残念で、次々にお尋ねすることが全部データがないので、非常に遺憾だと思いますが、その所管でいらっしゃいますから、ざっとした概数くらいは頭に入れておいていただかなければならないはずだと思うのでございます。そういう点で、この十年間にだんだんなすがままにまかせるというような状況になっているような気がいたします。  次に、更生保護のほうでこれは厚生省の方にお伺いしたいと思うのですけれども、更生保護相談室ですか、これは厚生省ですね。ここへ連れて来られるのは最大限二週間くらいですか、滞在の期限は。その間に、そこの定員が十分でないために十分のめんどうが見られなかったり、それからその身の振り方をきめるのにも非常に手不足だという話も聞きますし、それからときとしてアルバイトを頼むために、そこで間違いを起こしたというような事例もあるように聞いておりますけれども、こういうことはいかがですか。
  148. 今村譲

    政府委員(今村譲君) いまお話のありましたのは、各府県に一カ所あります婦人相談所に付属している一時保護所の話だろうと思いますが、それはいまは全部定員で八百六十三人、最大限に見ますとそういうかっこうでありますが、相談所の一時保護所といいますか臨時的なもので、そこに長期にいるものではございません。いろいろ家庭事情の調査をしたり、施設へ入れたりというようなものでございますので、長期的に保護しているということにはならないと思います。予算としては、その人を収容し、食事なり世話をする人員というものはありますから、おっしゃいますように、長期に置けないということもありませんし、あるいは、アルバイトを使っていろいろ世話をしなければならないということは聞いておりません。児童相談所の一時保護所と同じようなかっこうでいっていると思います。たとえば特別に何かそういうことについて御質問がありましたら……。
  149. 田中寿美子

    田中寿美子君 実際に婦人相談員などが見聞きしている範囲でそういうことの報告を受けて聞いているものですから、あるいは一時そこへ保護している間の相談にのるのに人員が十分充足されていないところもあるんじゃないかと思います。  それから婦人補導院がたいへん空席になっておって、これもこのごろはだんだん頭のいい女の人はつかまらないというようなことを聞いておりますけれども、その状況はどうなんですか、だんだん補導院の収容人員は減っていっておりますか。
  150. 布施健

    政府委員(布施健君) 婦人補導院の収容状況を申し上げますと、年々全体としても減っているということは事実でございます。昨年──これは年末で抑えておりますが、昨年の年末の現在員は百三十七名、三十九年は大体似たような数でございまして百三十八、それから三十八年は百十五、三十七年は百五十九、三十六年は百八十六、こういう数字になっております。  新しく入ってきた数を見ますと、昭和四十年度が、四十年度中に入院した数字でございますが、これは二百五十三、それから三十九年が二百四十八、三十八年が二百四十八、三十七年が三百三十一、三十六年が三百九十六、三十五年が四百八といったようなことでございまして、三十八年ごろから年々減ってきているということが言えると思います。  その収容されております、院生と申しております、それについて、ただいま御質問のございました点に触れて申し上げますと、まず第一は知能指数の問題でございますが、これは昨年一年間のものについて見ますと、知能指数は八〇未満という辺を限界点と一応心得ておりますが、その八〇未満というのが大体七九%を占めているという状況でございます。また、これを精神状況から見ますと、精神病質的な傾向のもの、あるいは精神病質、精神病、精神薄弱、こういうものを含めますと、入院者のうちこれが大体半分、五〇%を占めているという状況でございます。質の低下しておりますことは事実だと存じます。
  151. 田中寿美子

    田中寿美子君 ただいまのようにたいへん知能指数の低い者が補導院に入ってきておる。そうして、全体としての数は減っているけれども、まだつかまらない人の中にもそういう人たちがおると思うのですけれども、それでもなおやはり補導期間が終わったらこれを更新することは無理だというふうにお考えなんでございますか。
  152. 布施健

    政府委員(布施健君) 現在のところでは、制度上更新がございませんので、その六カ月という期間の中でカリキュラムを組んでできるだけの努力をしておるわけでございます。ただ、ただいま申し上げましたように、非常に知能指数の低いもの、あるいは精薄者といったようなものが多いというような状況から、必ずしも補導効果がどの程度あがっているかということは確かに問題があると思うのでございまして、しかもこれらは質が低下してまいりますればまいりますほどいろんな問題を含んでおる。それぞれ個々に問題がある。これを一律にたとえば更新して引き延ばしたという場合において、はたしてどれだけの効果があがるかという点につきまして、私どもとしては実はそれをはっきり申し上げるだけの資料を持ち合わせていないというのが実情でございます。
  153. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、精薄に近い知能指数の非常に低い女性は、補導院から放しても、それは同じことを繰り返してまた入ってくるということになると思うのですけれども、そうしますと、むしろこれは生涯収容してあげるいわゆるコロニーみたいなものですね、そういうものも必要なんだというふうに私らは思えるのですが、その辺はどうお考えになりますか。現在の制度上ではお答えになれないと思いますけれども、これは扱っていらっしゃる皆さんの立場からして御意見をお伺いできませんですか。
  154. 布施健

    政府委員(布施健君) 一応いま御指摘のようなことが言えるかとも思うのでございます。けれども、処遇の実際を見ておりますと、彼らは、特殊な生活をしてきたという者でありますだけに、非常に自由というものへのあこがれが強いようであります。そういった者を期限もなしに施設の中に収容しておくということで一体どれだけの補導効果があがるかということはいろいろ検討を要する問題だと思うのでございまして、いま直ちにそれがいいとか悪いとかいうふうなことを申し上げるだけの実はまだ資料はないわけであります。
  155. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ政府委員の立場でいらっしゃいますから、そういうお答えしかできないと思うのですけれども、しかし、これは売春婦の問題だけではないのですが、心身障害児とか精薄児なんかも含めて、現在あるような設備のままでしたら、これは厚生省の問題でもありますけれども、そういうふうなお考えが出るかと思うのですけれども、そうじゃなくて、自由を拘束して不幸な生涯を一生涯そこで送らせるというような立場からではなくて、やはりもっと将来こういう人たちのための長い計画というものがあってもいいと思うのです。これは厚生省に関することになるかもしれないと思うのですけれども、そういう点は意見として申し上げておきたいと思います。  それから婦人相談員でございますけれども、私は今度の私ども改正案の中でぜひともそこのところは採用していただきたいと思った点だったわけなんですが、この婦人相談員の中に常勤にすることのできる道を開いておいていただくということや、それから非常にわずか報酬が上がったわけですけれども、もう少し、それと同じ立場にある公務員との比較において、非常勤で四日間だから七五%ですか、そうしたらもう少し上げるべきだと思いますのと、それからボーナスも何もない。そうして、中には非常に献身的に自分の時間をたくさん使って仕事をしている人たちが多いということを厚生省ではそういうふうに認識していらっしゃるのかどうか。あるいは、このごろは、売春婦の問題だけじゃなくて、それ以外に仕事の性格が変わってきたから、これはあまり必要ではないんだというふうに考えていらっしゃるのでしょうか、ちょっとその辺の御意見もお聞かせいただきたい。
  156. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。  婦人相談員の問題は、現在は御承知のように非常勤にするというふうに現行法では書いてあります趣旨は、やはり家庭を持たれ、経験の相当しっかりした人が全部本式の公務員になるということになりますと、なかなか引っぱり出しにくいという問題がありまして、むしろそういう有識者の御婦人方を、あるいは男性もおられますけれども、引っぱり出すということは、非常勤のほうがいいんだという趣旨であのように非常勤にするとわざわざ断わり書きを書いたというふうに私聞いておるわけでありますけれども、それがだんだん実態から見ますと、夜夜中まで二十四時間勤務みたいにいろいろ相談に人が押しかけて来るというような点から見ると、非常勤というものを常勤にしてもよろしいんだ、思い切って全部常勤だというふうにやってしまえば、これは簡単なんです。ただ、そうなってくると、家庭を持ち、それぞれの学識意見を持っておられる方がやめていかざるを得ない、ほんとうの公務員というかっこうになりますと。その辺がもったいないじゃないかというふうな気持ちが一つと、どうもはっきり言いたくございませんが、この婦人相談員の費用は国庫補助でございます。普通、こういうふうなものは、たとえば福祉事務所の二万四千人いる職員、児童相談所の職員は、交付税交付金で国庫補助の対象になっていない。これを国庫補助に残しておいておきますのは、そうすることによって県なり相当の市なりが置きやすくなるだろうということでやっておるわけでありますけれども、これが市によっては常勤にしてもいいし非常勤でもかまわない、同じ市でも人によっては常勤があり非常勤があるということになりますと、現行の法律では婦人相談員については国がこれを補助すると書いてありますだけに、そこのところはうかうかしていると全部国庫補助から交付税交付金によって市町村長のあるいは地方公共団体の自発的なものにしたらどうかという、議論として交付税交付金の議論におちいるんじゃないか。常勤の場合は、これは非常に現実的な話で恐縮ですが、非常勤の場合と補助単価が当然変わってまいります、勤務日数、時間が変わりますから。その辺になりますと、むしろそういう国がこうしろというんじゃなしに、市町村長が任意でどうでもいいというかっこうになさるなら交付税交付金が筋であるといって、いまの現行法の補助のたてまえが変わってくるんじゃないか。その辺に非常にむずかしい問題があるというような気がするわけであります。
  157. 田中寿美子

    田中寿美子君 それですから、私ども改正案では、必要やむを得ざるときのみ常勤にすることができるというふうなことで、全員常勤にするというふうに考えていたわけではないので、ほんとうに非常勤の非常に優秀な方々がたくさん、ことに初期に出てこられたわけでございますが、それにしても、そのほかの母子相談員とか家庭相談員とかいう方々との均衡があまりに違います。一般にときとしては非常に危険を伴う仕事しておりますから、もっとこの点を当然考えていただきたいと思います。それは、厚生省が大蔵省に予算の原案を要求なさいますときに、ぜひ今度はもっと大きくそこのところを上げていただきたい。数にしたってわずかのものでございますね、いま、におきましても。その辺、一原案からあまり内輪になさいますものですから、大蔵省ではさらにそれを査定するということになりますので、ひとつもっと実態をよく見ていただいて、この人たちの労働条件を考えてあげていただきたいと思います。  それから、続いて労働省にお伺いいたしますけれども、ちょうど今度は十周年に当たるから、いろいろと資料をつくる。これは売春対策審議会のほうで問題になっておりますんですけれども、その資料はおそらく法務省あるいは総理府でおつくりになるんでしょうか。で、労働省のほうでも年表をつくるというようなお話でございましたけれども、その辺がどんなふうに進んでおりますか。  それから、最初に法律ができますころには、しばしば世論調査をしたものなんです。最近、こういう問題についての世論調査をなさったかどうか、してあったら、どんな傾向が出ているのかをお尋ねしたいと思います。
  158. 木下雪江

    説明員(木下雪江君) 婦人少年局長が欠席でございますので、婦人課長でございます。  労働省では、婦人問題の見地からこの売春問題を取り上げているのでございますが、法律ができまして十年の間、毎年啓蒙活動を行なって、売春防止特別活動を行なって、一般のこの問題に対する正しい世論の啓発ということにつとめてまいりました。また、調査を実施して実態の把握につとめているわけでございます。また、各出先にございます婦人少年室を通して、婦人少年室の業務としての婦人相談員の仕事としての相談業務で売春未然防止などに力を尽くしている状態でございまして、いまちょうど、ことし売春防止法制定十周年ということで、特に十年間の売春問題に関係のあるいろいろの動きを年表に取りまとめて、そしてこの問題に関心をお持ちの方々に差し上げてこの問題をもっと深く考えていただく資料にしたいということで、もう原案を作成して近く出版する予定でございます。  世論調査につきましては、毎年実施しているのでございますが、売春問題等、こういうものが悪であるということは、あの十年前のときから比べまして非常に皆さまの認識が高まってきているように思うのでございます。こういう法律ができましたことは、組織売春の取り締まり、あるいは婦人の保護更生の面で非常にいい機会と思っておりますが、なお、それと並行して、一般の方々のこの問題に対する世論を啓発していくということ、それからまた、新しい人間関係とかあるいは生活の慣習が変わっていくようにということで、一そう努力してまいりたいと思っているわけでございます。
  159. 田中寿美子

    田中寿美子君 その世論調査の対象は一般市民ですか。
  160. 木下雪江

    説明員(木下雪江君) 当初は一般市民男女につきましていたしましたが、その後、学生──男女共学の大学生、あるいは男子の多い専業場の男子に対してというような、対象別にいたしたこともございます。いろいろの方法で売春問題に関係のある意識を把握してまいりたいということでございます。
  161. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、いまの世論調査で売春というものが悪だというような答えは世論調査としては出てきているということですけれども、一部に、マスコミなんか、いかにも赤線復活論があるかのように宣伝しておりますが、そういうことは世論としては出ていない、若い層には出ていないということでございますか。
  162. 木下雪江

    説明員(木下雪江君) 若い層、そしてまた学生というような層では、この問題に対しては正しい認識を持っておりまして、一部に言われているようなああいう問題は、私どものほうではあまり強く出ておらないようでございます。
  163. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃ、最後に、総理府の方にお尋ねいたしますが、ことし行政管理庁はいろいろと審議会の整理をするということでございますが、売春対策審議会は生き残るわけでございますね。で、過去の今日までの審議会の実績──と言うとあれですけれども、どういうことを主としてされて、どれだけのお役に立ったかということや、それからいまこういうまた別の様相を呈しているときに、審議会はどういうことをしようとしているかというようなことについてお話を承りたいと思います。
  164. 福田勉

    説明員(福田勉君) 売春対策審議会についてでございますが、先生御承知のように、そもそも昭和三十一年の三月に設置されたわけでございまして、当初、いわゆる売春防止法の制定に関しまして非常に積極的な活動をしたわけでございます。で、御承知のように、売春防止法が制定されましてから、先ほど説題になっておりました関係業者の転廃業、あるいはそれに対する各行政機関の指導等につきまして、さまざまな建議を三十五年当時まではいたしております。その後、特に現在までの間は、売春防止法の施行運用につきまして、取り締まりあるいは保護史生という並等にわたりまして関係各省間と協議するということを主体にしております。あわせまして、売春防止に役立つための周辺の問題と申しますか、たとえば、麻薬対策のようなもの、あるいは最近問題になっております性病予防等の問題につきましても、小委員会を置きましてそれぞれ審議をし、必要に応じましてそれぞれ各大臣に建議をいたしておる、そういうようないままで実態になっております。  今後、お尋ねのように、売春防止の問題につきましても非常にもっと考えるべき問題も多々ございますし、あるいは、現在の売春防止法自体につきましてもいろいろ問題点があろうかと思います。そういうような問題点も含めまして、さらにこの審議会の内部で組織的にももっと審議を継続し、さらに問題を出していくというような態度でまいりたいという考え方でおります。
  165. 田中寿美子

    田中寿美子君 今度の私どもの一部改正法案ですね、これに対しては、審議会はどういう態度にきめたのでございますか。
  166. 福田勉

    説明員(福田勉君) 実は、今度の先生方御提出の法案改正の問題でございますが、御承知のように、つい先回の総会におきまして、これを小委員会にかける、法律改正あるいは法律運用の問題についての本質的な討議に入ろうという段階に至っていたわけでございます。まあこの間の案とは別にいたしまして、審議会は審議会なりの独自の検討をさらに続けるという態度をとっております。
  167. 田中寿美子

    田中寿美子君 最後に、要望したいと思うのですけれども、私も売春対策審議会の審議委員の一人でございますけれども、それぞれ関係しております各省が、ただときどき担当して顔を合わせるというような程度で、あまりこのごろ売春防止法関係では動きが鈍かったような感じがいたしますが、せっかくいまこういう問題点が提起されておりますから、ぜひ改正法案に関しても熱意のある審議をして、政府当局と同じ立場に立つという原則ではなしに、この問題そのものの立場から進めていけますように御努力をお願いしたいと思います。  以上で私の質問は終わります。
  168. 山高しげり

    ○山高しげり君 関連して一、二厚生省にお伺いいたしますけれども、先ほど婦人相談員のお話がございましたが、婦人相談員の相談件数というものが非常に地域差がございますようですけれども、それの原因はどういうところにあるのでしょうか。
  169. 今村譲

    政府委員(今村譲君) ちょっと私どもも具体的に各県ごとに分析しておりませんが、やはり大都会のようなところでかけ込んでくる要するにウエートといいますか、その辺のかけ込んでくる人の多少というふうな問題も一つあるし、わりあい相談員がのんびりしているというような問題ではないだろうかと思っております。
  170. 山高しげり

    ○山高しげり君 格別私は婦人相談員がのんびりしているところが件数が少ないというふうに申し上げたつもりはないのでございますけれども、ただ、非常に地域差があります。これはもちろん売春防止のお仕事それ自身が初めから地域差があるわけですから、相談員のお仕事にもおのずから同じ事情があることは私どもも存じておりましたけれども、たとえば福岡県なんかは全国一なんでございますね、取り扱い件数が。第二位が東京であって、第三位が大阪である。こういうような事情がございますので、何か相談員さんの話を聞きますと、なるたけ幅を広げて相談を受けるようにというような指示が厚生省当局からわりに近年あった、こう聞いておりますが、それはいかがでございましょうか。──と申しますのは、地方で相談のお仕事をしていらっしゃっても、売春婦が相談に来るということは比較的に少ないと私は思います。したがって、どうしても相談の場を広げて未然防止というようなことに心がけなければならないというような実情ども勘案なさって、厚生省当局から、なるたけ幅を広げて受けなさいというような御指示があったように私は聞きましたけれども、そのことをいっそういうものをお出しになったか、それを承りたかったんですが。
  171. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答えいたします。  そういう公文書でもっと手を広げて家庭の問題、経済、一般の問題についてやれというふうなとを出したことはないということでございます。ただ、問題は、研修会とか、あるいは県の担当係官の集まり、会議、こういうようなときに、たとえば私は山形県の出身でありますので、山形県の例をとって申し上げますと、あの辺のところでは、婦人相談所を見ますと、年間六十三件というふうな非常に少ない件数しかございません。ところが、それ以外の家庭問題というのがいろいろたくさんあるというようなかっこうがあるので、売春婦だけの相談に応ずるというだけでは困るので、もっと予防的な措置というか、いろいろな家庭問題について来る人については相談をしてあげる、こういう口頭の指示はいたした、こういうことでありまして、文書では出しておりません。
  172. 山高しげり

    ○山高しげり君 大体それで了解いたしました。また婦人相談員のことは別の機会にもう少し伺いたいと思います。それから潜在化のお話は前回も今回も皆さま方から出ておりますけれども、先ほどお話がありましたように、たとえば週刊誌等において、赤線はすでに復活しているというようなテーマで、内容が非常に具体的な原稿を週刊誌の読者は読まされているわけですけれども、警察の御当局としては、おとり調査もやれないと。そうすると、その辺のことはどうなりますのでしょうか。事実が一体あるのかないのか。われわれはちょっと調査に行くわけにはいきませんけれども、まあああいう原稿を書いている人たちは、なかなか見識を振り回して、現場に乗り込んで、こうであるああである、幾らで女が買えるとか、周旋はだれに頼めばいいとか、はなはだ具体的でございますけれども、ああいうことについてはお認めになるのかならぬのか、どういうふうに考えていらっしゃるのでございましょうか。
  173. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) 確かに、最近、週刊誌にはそういった記事がよく出ておるのでございますけれども、まあどういう仕組みでああいう記事が出ておるのか、つまびらかにはいたしておりませんが、もちろんああいうふうに書かれておるのでございますから、われわれのほうが相当努力しておるにもかかわらず、それに類した事態が若干あるということは認めざるを得ないのではないかというふうに考えるのでございますけれども、ただ、それだからと申しまして、警察がいわゆる捜査という立場でそういう場面に臨む場合と、それからいま話のございましたようにいわゆる探訪記者が探訪という形で臨んだ場合とでは、あらわれてくる問題というものがずいぶん違うのじゃないかというような感じもするわけでございます。警察官が捜査という立場で臨みますと、先ほども申し上げましたように、一つの事件を捜査し、これを検挙するというところまでたどりつくには、非常な苦労が要るわけでございまして、警察は、先ほども専従しておる職員が何人かというお話がございましたけれども、全国で十七万人おる警察官のうち、いわゆる売春捜査に専従しておるという者は、おそらく大都市の限られた警察署におる程度でございまして、あとはその他の防犯係官であるとかあるいは少年係官の者が兼任という形で、片手間と言うと語弊がございますけれども、そういった形で売春取り締まりに従事しておるというような関係でございまして、結局、警察の要するに兵力──と言うと適切なことはではないかもしれませんけれども、警察の要するに人員の問題とかといったようなものもああいった事態をきれいにクリアーするためには非常に限られておるのじゃなかろうかというような感じがいたしておりますが、いずれにいたしましても、警察としては、手持ちのこまをできるだけ有効に活用いたしまして、ああいった記事に書かれておるような事態をできるだけ押えていくというふうには及ばずながら努力しておるつもりでございます。
  174. 山高しげり

    ○山高しげり君 警察庁のお話では確かにそのとおりと思いますけれども、それで、持ちごまがたいへん少ないということについて、持ちごまをふやしてもらいたい、そういった積極的な予算要求というようなものは、これは警察庁にとどまらないと思いますけれども、売春防止法関係の所管の各官庁において、この十年間に一体そういう予算要求を下のほうでなさって、それが上のほうでどれだけ削られてきたかといったような資料というものは、拝見できないものでございましょうか。つくっていただくというようなわけにはいかないものでございましょうか。これはなぜそういうことを言うかといいますと、私ども婦人の議員として幅広くいろんな仕事をしておりますと、たとえば子供の遊び場がほしいというようなことはおかあさんたちの切なる要求であるけれども、建設省なら建設省の公園なら公園の所管のほうでもはやり同じ要求を持っていらっしゃるというようなときには、いろいろ御連絡もあって、ことしはこれだけ予算を出しているけれども、陳情してひとつぜひ削られないように頼むとか、よくそういうことがあるのでございますけれども、売防法関係でそういうようなことをお頼まれしたことは一ぺんもございませんし、まあある中でどうにか暮らしておいでになったということなんでしょうが、そこいら辺に赤線が復活したと言われなければならないような現実を生んできたということも考えられないことがないような気がいたしますけれども、たいへんしろうとの突拍子もない要求でございますけれども、御無理でしょうか。──まあどなたからもお声がないとすると、(「いかに熱意がないかということがわかる」と呼ぶ者あり)どうやらそういう感じがするわけでございますけれども……。(笑声)
  175. 津田實

    政府委員(津田實君) 私が申し上げるのは、全体を通じての意味じゃこざいませんが、累年の比較表というものは、これは差し上げることはできると思います。ただ、申し上げたいことは、現在、法務省関係でございますと、予算の区別で売春関係が入っておりますのは、法務総合研究所、検察庁関係、婦人補導院関係保護観察所関係、大体これに大別できるわけであります。しかしながら、ここに入っております予算は、比較いたしますと、たとえば昨年昭和四十年度予算には法務総合研究所には何もなかったのが、本年はわずかでありますが調査費が二十五万円入っておる、検察庁が千八百万円というのが本年は千九百万円になっておる、あるいは補導院関係では昨年と四十一年度では七百万円ふえておるというようなふえ方はもちろんいたしております。ただ、この予算が即それだけの予算しかないかとおっしゃいますと、これは全体の機構のうちの共通のものが非常にあるわけでございます。それを分離して一々申し上げることもできませんし、また、分離するという作業ができないわけであります。そういう意味で、これが売春対策に使われている予算だというふうに御理解願うと、ちょっと違うということになります。そういう御理解の上に立ちますれば、そのこと自体の特別経費というものだけは、これは逐年のものは表にすることは私のほうとしてはできます。
  176. 山高しげり

    ○山高しげり君 最後に、一つ警察庁の方に伺いますけれども、今野さんが前回のときにおっしゃった御発言の中に、きょうもそれに触れたことをちょっとおっしゃったように思うのですが、現行法は単純売春を罰していないものだから、むしろ派生的な管理売春を取り締まることが非常に不徹底のように思うというようなことを前回おっしゃっておられるのでございますけれども、それは議事録も出ておりますけれども、単純売春の問題について、警察庁としてはどう思うかということはおっしゃりにくいかもしれませんけれども、もしも単純売春を罰しておればもうちょっとお楽にお仕事ができるという意味でございますか。
  177. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) 前回の発言、私がまあいまの単純売春を処罰していない現行法のたてまえ上云々ということをたしか申し上げたと思いますけれども、その意味は、管理売春がしたがってやりにくいというつもりで必ずしも申し上げたのではなかったのではないかと思っております。そのときの気持ちといたしましては、結局、単純売春というものに触れていないにもかかわらず、まあ今回の改正案に出ておりますようなたとえば周旋の相手方となることを承諾した者が処罰されるというような規定のしかたをやっていくと、そういった者が処罰されて、しかも周旋を依頼した女子は処罰されないというふうな意味のアンバランスが起こるんじゃなかろうかというふうなことを申し上げたつもりなんでございまして、単純売春というものに現行法が触れてないという場合に今回のような改正案が出てまいりますと、周旋というような場合にもアンバランスが出てくるような気がするということを申し上げたつもりでおります。
  178. 山高しげり

    ○山高しげり君 そうすると、単純売春を処罰しないという原則的なものがあって、それに伴う派生的な管理売春というものだけを取り締まろうという体制は何か不徹底だというふうにおっしゃったように……。
  179. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) いや……。
  180. 山高しげり

    ○山高しげり君 議事録はですね。ですから、もし御訂正なさるなら御訂正なさっておかないと、これを引用するかもしれません。ちょっと表現が足りないのかもしれませんけれども
  181. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) 私の意思は、もし速記録がそういうふうに誤解を生むようになっていたとすれば非常に困ると思うのでございますけれども、真意は、そういう管理売春をやらないとかやれないとかというようなことを言ったつもりではないのでございまして、要するに、処罰という面から見ていくと、こういうふうな改正のしかたをやるとアンバランスが出るんじゃなかろうかというような気持ちを申し上げたつもりでおるわけでございます。  それから先ほど増員というふうな問題でお話があったような関係がございますので、一言申し上げますと、警察庁の場合は、最近警備警察の強化というようなことで過去数年間に何千という増員をいたしてまいっております。あるいはまた、交通問題が非常にクローズアップしてまいりまして、非常に取り締まり警察官の数が足りないというようなことで、また交通警察官の増員というようなことが最近行なわれております。それからまた、現在では外勤警察官が非常に不足であるというようなことから、たいへん外勤警察官の増員ということが行なわれておるわけでございまして、ここ数年来そういったような点について増員が行なわれております。私も最近いまの仕事に来た関係で、過去売春関係でどういうふうな増員要求を出したかということは、ちょっといまつまびらかにいたしておりませんけれども、そういったような大きな問題についての増員というようなことが大きく打ち出されてきた関係上、売春関係に従事する警察官の増員ないしはそれに対する他からの振りかえというような問題が必ずしも御期待に沿えるような形ではあるいは行なわれてこなかったんではなかろうかと感じます。
  182. 山高しげり

    ○山高しげり君 警察庁としてこの売春問題について立ち入る場合に、防犯少年課というのが所管課なんでございますか。
  183. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) はい。警察庁の場合には、防犯少年課の所掌事務ということになっております。
  184. 山高しげり

    ○山高しげり君 ありがとうございました。
  185. 藤原道子

    ○藤原道子君 一つだけ。先ほど、この間もそうだけれども、売春婦の場合に精薄が多いということは、もう周知の事実なんですね。精薄だから半年や一年やったってよくなりはせぬ。拘束していたからといって精薄がなおらない、これもわかる。それならば野放しにしていいかということになるわけね。それで、精薄者の対策、とりわけこういうところに転落しやすい女性の対策について、厚生省はどういうふうに考えておるか。それからおとなの精薄者あるいは性格異常者、こういう者がどのくらいいるのか、そうして福祉施設にそういう人たちが何人入っているのか、厚生省はどういう指導をしてきているのか、その点だけお伺いします。
  186. 今村譲

    政府委員(今村譲君) この前、精薄の施設収容人員というのを手持ちがなかったもんですから、調べて参りましたが、子供いわゆる十八歳未満の精薄児の施設につきましては、児童福祉法関係の施設の中に入っておりますが、百九十六施設でございます。総定員は一万三千百四十三名。それからおとなのほうは、これはあとからできた施設なものですから数が少ないのですが、まだ六十七施設で、四千八百二十九名。それで、両方合わせまして二百六十三施設、一万七千九百七十二名、大体  一万八千人という程度のものしかできておらない状態であります。これは、四十年から、十八歳以上は社会局、十八歳以下は児童局というのはどうもおかしい、身体障害と事情が違いますから、薄はむしろどっちかにいくべきじゃないかということで、児童局のほうに全部移管して、法律案はまだ二本立てになっておりますけれども、いま審議会で、年齢にこだわらず、年齢十八歳になったら向こうへ行ってくれというようなことは言わぬというようなことで、法律改正ができるように研究中でございます。  それから精薄の実態調査につきましては、私、いま記憶にありますのでは、十八歳以上が三十四万、児童で約九十万というふうな膨大な数字がございます。ただ、これは、とり方によりまして非常に突っ込んで聞けないのです。家庭に行っても、人権問題とかいろいろありますから。もっと何か聞く方法がないかと思いますけれども、それにしても、そういうものに対しましておとな子供入れて一万八千人ぐらい、そういうかっこうでは困るじゃないかということで、精薄のそういうおとな子供を一本化して合わせてもっと施設の思い切った増設といいますか、そういうものを考えなくちゃいかぬ。ただ、こっちの婦人収容施設が、この前申し上げましたように、実は定員が二千三百三十名、こう言っておりますが、実際は五五%から六〇%ぐらいしか入っておらないわけであります。ということは、施設長もいろいろ相談所やあちこち問っておりますけれども、対象者に説得にかかりますと、私はそんなこといやだと言う。こっちは強制的な権力は何もないわけですから、そういうことで実質の収答はいま六〇%切れるというようなかっこうでありますだけに、その辺が非常にむずかしいのであります。  それから施設の中に二年、三年という人が相当おります、収容所の中に。それは、そういう点、別に何年おったから困るというわけではないけれども、中には職業補導なりいろいろありますが、ものによってはやはり精薄の大きな施設と交流みたいなものを時期によっては考える。施設にみなそれぞれ特殊の領域があります。ただの精薄の中でも、手足がよく動く人とか、いろいろあるのですから、その辺も分類するということが考えられておる、かようなことでございます。
  187. 藤原道子

    ○藤原道子君 この問題は、まだ問題が多うございますから、きょうはただその点だけにしておきます。  それから先ほど田中さんから資料の要求があって、警察庁では手持ちがないとおっしゃった。この資料を委員長のほうから御提出くださるように確認しておいてほしいと思います。お願いします。
  188. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 警察庁のほう、資料よろしゅうございますか。
  189. 今野耿介

    説明員(今野耿介君) 先ほどお話のございましたのは、現在警察がつかんでおる容疑者とおっしゃいましたですか、それからあとは潜在売春婦、それからあと転換業者の実態、それから専従警官というふうなことかと思いますが、初めの二つにつきましては、もちろん帰って調べますけれども、資料がないことはないと思うのでございますけれども、まあ非常に自信のないと申しますか、そういう数字でございまして、推定数という程度に軽くおとりいただくよりしかたがない数字じゃないかと思いますけれども、一応準備いたしてみます。
  190. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会