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政府委員(
新谷正夫君) その七つの
項目につきましては、これはいずれも
経済界からの要望に基づくものでございます。もう少し具体的に申し上げますならば、経済団体連合会はもちろんのこと、中小企業を含めました商工
会議所からの要望、さらに証券業界、そういった方面からの強い要望がございまして、現在の
経済界における緊急の問題として提起されたわけでございます。
そのねらいは、いずれも違いますが、ごく簡単に申し上げますと、第一点の株式の譲渡の制限でございますが、これは、現在の
株式会社が、先ほど
お話のように、必ずしもすべて大会社に限りません。同族的な小さな会社もございます。そういった会社の株式の譲渡を自由にすることがはたして適切かどうか。会社の経営の安定をはかるとういふうな
意味からいたしまして、ある程度の譲渡を制限するということを考えたわけでございます。譲渡制限と申しましても、完全に譲渡を許さぬという
意味ではございません。これは相手方をある程度制限するという趣旨でございます。そうなりますと、
株主の利益がある程度無視されるじゃないかという心配もございますので、この場合にも、
株主がもしも株式を譲渡しようとすれば、確実にその譲渡ができる道を開きまして、投下資本の回収をはかるようにいたしたわけであります。
それから額面株式と無額面株式の変更でございますが、これも、実際発行されております数は、無額面株式につきましては会社の数としては少ないのでございますけれ
ども、これも
株主にとりましても、額面株式と無額面株式を変更しようとする際に、このままではできないわけでございます。
株式会社の側にいたしましても、株式事務上いろいろ複雑な問題になりますので、できますならばこれを一方に
統一して変更し得るようにしよう。これも
株主の希望を入れてやるわけでございます。
それから株式の譲渡方式でございますが、現在、株式の譲渡は、株券に裏書きをし、あるいは譲渡証書をつけて相手方に交付するわけでありますが、この際の裏書きに使われます判は、会社に届け出ました判でなくてもよろしいわけでございまして、現在は、ありあわせの判を使って裏書きいたしましても、その後転々と裏書き譲渡されて善意の取得者が取得いたしますと、すべてその取得者の株式の取得が有効になるというふうなことになっております。実際に使われます判がそういうふうなことになっております
関係上、株式の譲渡についての裏書きに、その判の占める
重要性と申しますか、そういった点が非常に薄らいできてしまっている。ことに、白地裏書きをいたしますと、あとはもう株券の交付だけで転々と株式は譲渡されていくわけであります。そういうことになりますと、むしろ、裏書きというものはなくても、株券を大事に持っておるということが大切なことだ。もちろん譲渡契約も必要でございますけれ
ども、譲渡契約に伴って株券を交付することによって株式の譲渡を認めることが合理的ではあるまいかということになったわけでございます。
なお、この場合にも、
株主の
保護をはかりますために、
株主の希望によりましては、株券を発行しないでおくとか、あるいは株券を銀行に寄託するという方法をとりまして、
株主の
保護をはかろうとしたわけでございます。
それから議決権の不
統一行使でございますが、これは、たとえば信託的に
株主になっておる場合、これを
法律的に
株主と申しますと、委託者はその信託に基づきまして
株主としての利益の配当を受ける仕組みになっております。そういたしますと、実質的には委託者が
株主としての地位に立つわけでございますけれ
ども、議決株を行使いたします
段階におきましては、
株主名簿に記載されました
株主、いわば形式的な
株主が議決権を行使するわけでございます。そういたしますと、実質的に
株主としての利益を受ける者の意向が十分反映し切れないというところから、その意向を反映させますために、委託者の指図に従って名義上の
株主が議決権を行使する。場合によりますと、委託者が数名おりますと、必ずしも議案に賛成する者ばかりでなく、反対する者もございますが、そういった
株主の意向を十分反映させるためにこの不
統一行使という
制度を認めたわけでございます。
それから新株発行の手続でございますが、これは従来の
商法の規定に若干解釈上疑義がございまして、訴訟問題も起きているような
実情でございます。そこで、この規定の趣旨を明確にいたしまして、新株発行の手続が円滑にまいりますようにということをねらったわけでございます。
さらに、
新株引受権の譲渡は、新株の引受権を与えられました
株主が払い込みをいたします際に、
資金調達にいろいろ不便を生ずる場合がございます。そういう場合に、現在では、旧株を売りましてそれを新株の引き受けの
資金に充てておるわけでございますが、そこまでやらなくても、むしろ
新株引受権そのものを譲渡し得るようにしたほうが簡明な措置と言えるわけでありますので、
新株引受権を譲渡し得るようにして
株主の便宜をはかっていくというわけでございます。
それから転換社債の転換請求でございますが、これも社
債権者の請求によって社債を株式に転換するということでございますが、現在、
株主名簿の閉鎖期間内には転換請求ができないわけでございます。それでは社
債権者の立場が十分守られないわけでありまして、時宜に応じて株式に転換して株式としてそれを利用する必要がある場合も起きてまいりますので、そういう
意味で、転換社債の転換請求についての
従前の制限を撤廃しよう、こういうことで、ございます。
これを通じて申し上げられますことは、
株主の利益の擁護をはかると同時に、会社の事務の便宜もはかっていく。また、会社の
債権者の利益もばかっていく。それぞれにおいて
理由は違いますけれ
ども、いま申し上げましたような趣旨におきまして今回の
改正案を提出したわけでございます。