運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-02-24 第51回国会 参議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十四日(木曜日)    午前十時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和泉  覚君     理 事                 木島 義夫君                 稲葉 誠一君                 山田 徹一君     委 員                 岡村文四郎君                 後藤 義隆君                 鈴木 万平君                 中野 文門君                 中山 福藏君                 藤原 道子君                 野坂 参三君    政府委員        法務省入国管理        局長       八木 正男君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (外国人登録に関する件)     —————————————
  2. 和泉覚

    委員長和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  本日は、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたし、外国人登録に関する件について調査を行ないます。稲葉君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この前から問題になっています在日朝鮮人のいわゆる国籍変更の問題に関連して、何回か具体的な事案をいま調査しておりますので、これからお聞きしたいと思うのですけれども、きょうは、時間の関係もありますので、概括的にいままでの経過の中での、ことに数字的なものをお聞かせ願いたいと、こういうふうに思うわけです。  「韓国」という形になっていて、それが「朝鮮」というのに外国人登録証で変わったのは、いままでどのくらいあるか、これはおわかりになりますか。
  4. 八木正男

    政府委員八木正男君) お答えいたします。  実は、きのう先生のこの点の御質問があるということを伺ったのが夕方でございまして、それで、結論的に申しますと、はなはだ申しわけないのですけれども責任を持って明確な数字を申し上げられるのにちょっと時間がかかると思います。実は、いま日韓協定協定永住関係登録課は全部それにかかり切りでございますので、お話のケースを調べようとしますと、都道府県からの申請は数千あるものですから、全部ひっくり返して返事を見ないといけないのであります。ただ、とりあえずきょうお答えせぬといかぬので、登録専門の連中をきのう呼びまして、できるだけ君たちの正確な記憶を呼び起こしてもらいたいといろいろ聞いたのでございますけれども、大体の彼らの結論を申しますと、従来の数字は、昨年政府国籍に関する解釈統一しましたが、それ以前の要するに「用語」の時代といいますか、その当時の年間許可した件数、これは、件数と申しましても、一件が一人の場合もありますし、一家族十人という場合もありますのですが、件数でいきますと、年間五件とか十件とかいうときもあるし、十五件くらいのときもあった。大体その程度であった。しかし、最近朝鮮総連がこの問題を非常に正面に押し出して政治的にいろいろやっておりますわけで、その関係で昨年あたりから非常に申請が出まして、これもどれくらい正確な申請数があるか集計しておりませんけれども、とにかく数干あるというわけでございますけれども、その結果、自然と許可したケースも若干ふえておりまして、たしか去年の間を通じて件数で二、三十件はあるだろうということでございます。これは、例年に比べますと、かなりふえておるということでございます。
  5. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私のほうも連絡が悪かったものですから、十分正確なものをいただけないのではあれですが、やはり二、三週間かかりますか。
  6. 八木正男

    政府委員八木正男君) 実は、私、きのうも皆を集めて、とにかく御要求があるのだからさっそく研究してみろというふうに言いましたのですけれども、二、三週間でできると申し上げて、もしそのときになってできていないと、うそをつくことになりますので、できるだけこれから馬力をかけて調べさせます。ただ、私ども登録課のわずかな人員が全部協定永住調査のほうでとられるので、実は一人々々の永住許可するのに過去八回の登録したもの全部を正確になっているかどうかをチェックしておりますので、それをひっくり返すのにたいへんな手間をかけておりますから、その中の一部の人をそっちのほうの集計のためにさくというのは非常に仕事をやっていく上に痛いものでございますから、できるだけ早くということで、でき次第そのかわりすぐに御連絡いたすということにさしていただきたいと思います。
  7. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままで「韓国」のを「朝鮮」に変えてくれ、こういう場合には、市町村役場から法務省へ吸い上げて、そこで許可というのか変更すべきものはするようにしていたわけですね。その間の手続は、具体的にはどういうふうにやるのですか。
  8. 八木正男

    政府委員八木正男君) それは、大体、窓口書きかえてもらいたいという申請と申しますか申し入れがございまして、従来は、窓口では、われわれからたびたび出しておりました通達によりまして、この書きかえは認められないのだという返事をしておったわけでございます。しかし、中には、それを非常にしつこくどうしても変えてもらいたいという陳情をしてきたような場合に、市町村からそれを私どものほうへ上げてくる。したがいまして、一つのきまった手続というよりも、むしろ実際その関係者が非常に苦哀を訴えてぜひ変えてもらいたいという要望が強い場合に、われわれが市町村から相談を受けて、それならそれをこっちのほうへ上申しろということで受けておったわけでございます。しかし、昨年の国籍に関するいろいろな議論がございまして、私どもとしてもそういう点についてははっきりする必要があると思いましたので、市町村に、今後そういう申し入れがあったらどんどん入管のほうへ上げるようにということを申しております。したがいまして、いまでは、一応関係者からそういう希望がございますと、そのままその書類が全部私のほうへ渡ってくるというかっこうになっております。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままでは、市町村で断わるべきものは断わってしまう、それから市町村判断法務省のほうへこれを認めてもいいか悪いかということをいわゆる上げるというか、申請してくるというか、そういうことで、第一義的には市町村判断をしてきたわけですか。
  10. 八木正男

    政府委員八木正男君) 市町村判断と申しますか、私のほうがそういう申請は一切受け付けないのだという訓令を市町村に出してあるものですから、市町村としては受け付けられなかったというわけでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その受け付けられないというのが、現実には上へ上がってきたそこで許可になったようなものもあるわけですね。そういうものはどこで判断して上へ上げてくるのですか。
  12. 八木正男

    政府委員八木正男君) これは、もう、何といいますか、実際上の事務処理関係と申しますか、市町村の出先の担当人たち入管関係者とは前からなじみがございますから、そういう問題でしょっちゅう執拗に申請を受けたような場合に、どうしても断わり切れないという場合に、個人的にと申しますか、担当者から直接入管担当者に電話なりあるいは手紙などでこういうケースがあって非常に困っているんだというようなことを陳情してきたようなことがたびたびあったようでございます。そのつどそのケースをそういうようなことを耳にした場合に上げさせておったというので、これは形からいいますと非常にきちっとしていない点は確かにございますけれども、とにかく、問題が、もともと本来ならば一切受け付けてはいけないものを例外的に取り上げるというかっこうだったものですから、どうも行政的にいってあまり手際のいいものではなかったと思います。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、そこら辺がどうもはっきりしないのですが、法務省へ上がってきて、法務省ではどういうふうにして認める認めないをきめていたわけですか。
  14. 八木正男

    政府委員八木正男君) これも、実は、私以前の代のことは存じませんけれども、私のときになってから言ってきましたケースが若干ありますが、それは、ほとんど大部分は、出生届けをしたときに、自分は字が書けなかったので友だちの朝鮮人に頼んだ。そうしたら、それが勝手に「韓国」という名前戸籍欄登録してしまったんだが、自分はそうするつもりではなかったといったようなケースが大部分でございます。それからそのほかに、これはあまり筋が通らないかもしれませんけれども、「韓国」という登録を受けた女性が結婚をする。婚家先の一家は全部登録欄が「朝鮮」と書いてある。そのために、しょっちゅう、家内はもちろんのこと、嫁に行った隣近所人たちからいろいろなことを言われて非常に困っているから、何とか「朝鮮」と書きかえてもらいたいとこれはしつこく言ってきまして、こんなのはほんとうを言うとそう簡単には書きかえてはいけなかったのかもしれませんけれども、私らのほうで書きかえてよかろうと言って書きかえを許したケースもございます。そんなものがおもな点でございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 書きかえを許す手続がどういう手続かということなんですけれども法務省へ上がってくるといっても、どこへ上がってきて、どういうふうな人が集まって協議して、それを許すとか許さないということをきめるわけですか。かりに許したとするならば、許したのは例外だから、それは記録にちゃんと残っているのではないんですか。
  16. 八木正男

    政府委員八木正男君) そういうはずだと思います。手続としましては、文書法務省に参りまして、登録課長のところへ参り、登録課長が私のところへ持って参りまして、私がほとんど個人的に勝手に認定して指示しております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 個人的に勝手に認定したという意味は、あれですか、ことばはちょっとあれだと思いますが、たとえば在留許可とか退去強制ですか、そういうようなものを出すときには、ちゃんと機関で集まって協議するわけでしょう。それはどういうふうにやっているんですか。
  18. 八木正男

    政府委員八木正男君) 在留許可とかその他の場合には、全部採決委員会で局の幹部が全部集まったところできめます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、国籍変更——国籍変更というのは正しいことばかどうかなかなか議論があると思うのですが、それは、そういう正規の委員会手続はとらないわけですか。
  20. 八木正男

    政府委員八木正男君) これが実は昨年の国籍欄記載の持つ意味について政府見解が決定される以前の時代でございましたので、いわゆる用語と言っておった時代でございます。言いかえますと、韓国と言い、朝鮮と言っても、それは国籍をあらわすものではなく、単なる名称にすぎないという政府見解とわれわれは理解しておったわけでございまして、その筋から考えますと、単なる名称だから、特別に委員会を開いて皆の意見を集めて決定するというよりも、むしろ個々の人間の家庭的な事情とかそういうものを主にして、どうせ官報や何かに告示するとかいう大げさなものじゃございませんから、窓口に呼び出してそこに書いてある字を書きかえるということだけで本人は非常に幸福に感ずるというならばそれでよかろうと思いまして、私が登録課長から話を聞いて、私限りの責任で決裁をしておったというようなわけであります。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それが、統一見解というものが出たあとでは、やり方が変わってきたわけですか。
  22. 八木正男

    政府委員八木正男君) この許可を−許可と申しますか、書きかえを認めるという精神は、これはあまり以前と関係者の間の気持ちは変わっていないと思いますが、ただ、統一見解で、「韓国」というのは大韓民国国籍をあらわすものである。「韓国」と書きかえたときに、韓国国民登録証を提示させて現実にその人間韓国国籍を持っているということを法的に認定した上で「韓国」と書きかえたのだから、「韓国」というのは国籍をあらわすものである。「朝鮮」というのは、本来朝鮮という国があるのじゃなくて、朝鮮という戸籍出身者であるということにすぎないので、したがって、国籍意味するものではない。だから「韓国」というのを「朝鮮」に改めるというのは、韓国国籍がないということを確認することが前提になってくるという結論が当然政府解釈として出ると思います。そこで、政府声明の以後におきましては、この同じような申し立てがありましても、韓国国籍証明された人間に対しては、それはそう簡単に書きかえることはできないというふうに考えております。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 統一見解というのは、この前法務大臣に予算委員会で聞いたら、そんなものはないんだと言っておりました。統一見解なんて出した覚えはない、新聞がそういうふうに言ったんだと言っておりました。まあそれは統一見解という名前内容というか呼び方にもよるかもわかりませんけれども統一見解なんてない、新聞がそういうふうに言っただけなんであると言っていましたがね。統一見解というようなちゃんとしたものができたんですか。
  24. 八木正男

    政府委員八木正男君) 名称は、私も、統一見解一般に言われるから、ついそう言っておりますが、総連側国籍欄書きかえというのを昭和四十年の闘争目標に掲げて全国的に指令をしてこの運動が始まって、そのために市町村などは事務が妨害されて非常に困った事態が出てまいりました。そういう段階になりますと、いままでのように単なる用語というが、書きかえは認めないという論理では非常に弱いということから、そのために、この際、あそこに書いてある「韓国」というのは法的にどういう意味があるのかということについて関係者の間で意見統一さしたというわけでございます。それが統一見解と言われているものでございまして、政府関係機関が集まりまして——関係機関というのは、法務省法制局が主でございますが、その担当官の間でいろいろ論論をしまして、四項目見解というものを、法務省としては今後こういう見解をもって事務を処理するという考え方の統一をあれによってなしたとわれわれは了解しております。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この統一見解というのはどういうもので、それは資料として御提出願いたいと、こう思うんですが……。
  26. 八木正男

    政府委員八木正男君) 統一見解と言われているものにつきましては、さっそく文書を提出いたします。内容を御説明いたしましょうか。簡単に申しますと、項目が四つございます。  第一の項目は、日本におります外国人は、その住んでおる市町村外国人登録をするわけでございますが、その場合に、外国人登録票というものが作成されます。そこに国籍という欄がございます。そこにその外国人がどこの国籍を持っておるかということを書くわけでございます。本来は、その国籍欄に書く国名は、その者の持っている旅券、またはそれにかわる国籍証明文書に基づく国籍が書かれる、それが一般の原則でございます。それが第一項目でございます。  それから第二項目は、在日朝鮮人は、もと朝鮮戸籍日本国内に居住していたまま平和条約が発効した段階日本国籍を失ったという特殊な事情から、普通の外国人のように外から旅券を持って入って来た外国人とわけが違う。したがって、旅券もしくはそれにかかわる国籍証明書によって国籍記載することができないので、当時便宜の措置として「朝鮮」という名称を全部に外国人登録記載したのである。したがって、この「朝鮮」という記載は、かつて日本の領土であった朝鮮半島から来日した朝鮮人を示す用語であって、何らの国籍を示すものではない。これが第二項目であります。  第三項目は、ところが、それらの者——これは在日朝鮮人ですが、その中から「韓国」または「大韓民国」への書きかえを強く要望してきた者があるので、本人自由意思に基づく申し立てと、その大部分には韓国代表部発行国民登録証を提示させた上、「韓国」への書きかえを認めた。このような経過によって「韓国」と書きかえたものであるので、現時点から見ればその記載大韓民国国籍を示すものと考えざるを得ない。これが第三項目でございます。  第四項目としまして、最近、「韓国」と書きかえた者の一部から「朝鮮」に再書きかえを希望するものが出てきたが、右に申したとおり、外国人登録上の「韓国」という記載大韓民国国籍を示すものと考えられる以上、もともと国籍変更が単に本人希望のみによって自由に行なわれるものではないという国籍の本質にかんがみ、本人希望だけで再書きかえをすることはできないというのが第四項目でございます。  これは後ほど資料として提出いたします。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いわゆるその統一見解というのが出た後に申請がたくさん出てきて、そして認めたものが二十件ぐらいあると言いましたが、これはあとで正式に資料を出していただけばいいと思います。ぼくは登録課が忙しいのはよくわかりますが、きわめて例外的なもので認めたものは認めたものとしての資料が整理してあるのだと、こう思っていたものですから、それならば、認めた件数なり、どういう理由で認めたか、簡単にわかっているのじゃないかと、こう思っていたのですが、それはあとでけっこうです。  そうすると、その後、統一見解の後に認めたというのは、どういう理由がおもなんですか。前に言われた出生届け出の問題とか、女性が結婚する場合とか、こういうのは、統一見解の前のことなのですか。その点はどうなんでしょうか。
  28. 八木正男

    政府委員八木正男君) まあいまの女性の例は、実は政府がはっきりこういう統一見解というものを公表して、国籍であると言っております。そうすると、国籍でないという証明がない限りは書きかえができないことになりますので、先ほど申しました例のうちで女性ケースなんかは、ちょっと簡単には書きかえはできないと思います。ただ、出生の際に、依頼を受けた人間が勘違いで書いてしまったというような、錯誤と申しますか、そういう錯誤に基づくものは、手続段階での錯誤でありますので、当然変更されるべきものだと考えております。それから大韓民国国民登録をしていない人間でございましたならば、これは韓国国籍を持っているものだとわれわれは認定する必要がありませんので、何かおもにこの人たちの言います申し立てによりますと、登録切りかえの際にあやまって書き直されてしまったということをよく申しております。私のほうとしては、そういう申請に対して、一応市町村担当者について、本人が言っているように行政事務段階で何か錯誤なり手違いがあったというようなことがあるならば書きかえてもよろしいというふうに指示しております。  した、かいまして、いまの書きかえが認められた大部分ケースというのは、行政上の手違いとか錯誤とかいう理由書きかえを認められたものであります。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから、資料としては、統一見解後でいいですから、書きかえが認められたものの件数と、それが個別的に一つ一つどういう理由で認められたのかということを明らかにして出していただきたいと思うんです。それでないというと、問題がはっきりしなくなってきますから。それは多少日にちがかかっても出していただきたいと思います。
  30. 八木正男

    政府委員八木正男君) ただいまの統一見解発表後における事例、これは大至急調査いたしまして、個別的な事情を添えて提出いたします。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま言われたように、錯誤であるとか手違いだということの場合には認めた例があると。しかし、そういう場合には、認めてもいいという意味通達は出しているのですか。
  32. 八木正男

    政府委員八木正男君) これは、ことしの二月十二日付の法務省入国管理局登録課長から各都道府県外国人登録専務を主管している部長に対して出した方針がございます。その趣旨は、最近の  「韓国」から「朝鮮」への記載変更申し立て事例のうちには、市町村吏員事務上の過誤理由とするものが増加している傾向がある。しかるに、右の申立書によると、単にあやまって書きかえられたと書いてあるだけで、そういうあやまって書かれた事実の具体性明確性を欠くものが多く、あるいは、その形式面においても、一通の申立書に数人が連記署名したり、あるいは同一内容申立書をたくさん複写しましてそれに各自が別々に署名して出すといったような、いかにもこれはそういう運動の一環というような形だろうと思うのですが、そういう例が非常に多い。こういうものは、判断する当局としてははなはだ困るので、今後市町村吏員事務上の過誤理由とした国籍欄書きかえの申し立ての場合には、個人別に具体的にその内容を書いて出させるようにということを指示しております。そういう申立書市町村本人からもらって、それを一々法務省登録課に送付してくるようにということを指示したものでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、ことしの二月十二日だと思うのですが、あなたが言ったように、確かに個人別に具体的に事実を書かないと、これはもらったほうでも困ると思うんです。これはそのとおりだと思いますが、その前にも何回か登録課長名通速が出ているんじゃないですか。何回ぐらい出ていますか、統一見解後に。——というよりも、むしろ、私が去年の二月十八日でしたか、三月十八日でしたか、ここで質問したときに、書きかえを認めるにやぶさかでないというような答弁があったんです。その後申請が非常にふえてきたわけですが、それに関連して登録課長名なり何なりでだいぶ通達が出ているのではないですか。何回くらい出ていますか。
  34. 八木正男

    政府委員八木正男君) どうもはなはだお恥ずかしいのですけれども、私全部集計してございません。ことに、昨年実は大量切りかえがありまして、あの際などは大最切りかえの期間中は一切の書きかえはストップするというのがこれが大量切りかえの常灯の慣例だったそうで、ことしもたとえば大量切りかえ中はストップだという指示を出しております。ところが、その後、西宮の市長でしたか、これが彼らの犠牲になって仕事が完全にできないというような状態に追い込まれて、泣く泣く陳情を繰り返されたものですから、どうも困ってしまって、とうとう切りかえ中でもやむを得ないから受け付けろという指示を出したり、そういう朝令暮改的なことまで、はなはだ醜態でございましたがやったりしておりますので、おもにこれに関する指示というのはほとんど全部登録課長名前で出しておりますので、おそらくまあ大ざっぱに言って五、六回くらいは通達が出ておると思いますが、これも至急整理してお送りいたします。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ほかの役人ならごまかしてしまうところを、あなたは非常に正直にお答えになるので、その点私も一非常に感服するのですけれども、いまの通達の問題ですね、私があれを通告したのはきのうの午後でして、急だったので、間に合わなかったことは無理もないのですが、いままで何回くらい出て、どういう趣旨通達かということを、これはもう一ぺん質問しますから、その前に明らかにしていただいて、なお、その通達がもっと出ていると思うのですが、その通達の写しをつくって資料として当委員会にぜひ出していただきたい、こういうふうに考えます。いかがですか。
  36. 八木正男

    政府委員八木正男君) そのように取り計らいます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、何か通達の中で問答式なものがあるんですか。向こうがこういうふうに言ってきたらこういうふうに答えろという問答式なものをつくったものがあるんですか。
  38. 八木正男

    政府委員八木正男君) 問答式に書いたものというのは私は記憶しておりませんが、こういうようなことを言うことがあるかもしれないけれども、それはこういうふうに理解すべきものだというふうな説明したものはあると思います。しかし、問答体で書いたものか、あるかどうか、私記憶にございません。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 福島県で私ども県会議員がそれを入手いたしまして追及したことかあるんです。ぼくは見ましして問答式だと思いましたけれども問答式でもあるいはこういう場合にはこういうふうに答えろといったようなことでも同じようなことですけれども、いずれにいたしましても、資料を出していただければわかりますから、これはあと内容を検討いたします。  そこで、この前もあなたが言われたのは、入管行政で血の通った行政をしたいんだ、こういうようなことを予算委員会でも言われたわけですね。これは国籍の問題のときにもそういうようなことを言われたわけですが、それの困った一つの例で、たとえば、家族の中でほとんとが「朝鮮」だ、そこへ「韓国」の人がお嫁に行った、それで家庭の中で非常に困っている、こういうふうな例なんか相当あるわけですね。  それから、実は私のほうで、各地でいま現実申請をしている人がいるわけです。その人に集まってもらってぼくも中心となって事情を聞いているわけです。きのうもやったんですけれども、これは関東をずっとやっているわけですが、そういう人の話を聞くと、いろいろありまして、非常に気の毒な例が多い。いま言った「朝鮮」の中へ一人「韓国」がお嫁に来たので、何といいますか、うまくいかないというようなこと。それから「朝鮮」の中で子供は「韓国」になっている、それで何か自分は養子じゃないかというので、それで家庭が不和みたいになってしまって非常に困るというような訴えも出てきているわけです。いろいろな例がありますから、これはやはり具体的、個別的に、これをここで取り上げるかどこで取り上げるかは別として、やっていかなければいけないと思いますが、これはきょうでなくて、あとでいたします。  そうすると、いままでの例は、家族の中がほとんど「朝鮮」で、「韓国」がいない、あるいは「韓国」が少数で、非常に家庭的に困る、その人が非常に気の毒だというような場合とか、あるいは、市町村役場で一方的にやったとか、あるいはそこで手続にあやまちがあったとか、こういうふうなものが中心で、そのほかに、何か国民登録証の提示がなくてやったもの、大体大きく分けると三つになるわけですか、いままで許していたものは。
  40. 八木正男

    政府委員八木正男君) 大体そういうことでございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その国民登録証というのを提示しないでやったのは、ある年限ですか、一九五〇年ごろですか。四七年に、実施されたのですか、これは。
  42. 八木正男

    政府委員八木正男君) 昭和二十三年に韓国ができまして、二十四年には当時の在日米占領軍司令部に派遣された韓国代表部というのが日本に駐在しておりまして、そして昭和二十四年の秋、たしか十一月ごろだと思いますが、そのころに韓国国民登録法という法律によって日本にいる韓国国民は韓国代表部で登録しなくちゃいけないということになりました。したがいまして、韓国国民に登録をした人間というのは、大体昭和二十四年ごろから以後できております。そして、昭和二十五年その翌年に、韓国代表部からの総司令部に対する強い要望に基づいて日本政府に対する総司令部からの勧告が出まして、それによって、本人希望する場合には国籍欄を「朝鮮」から「韓国」と書きかえてほしいという要望が取り次がれました。それを当時の法務総裁が承認して談話を出したのは二十五年でございますが、そして、翌年昭和三十六年になりますと、今後「韓国」と書きかえを希望してくる場合にはその者の国民登録証の提示を求めた上で書きかえに応ずるようにという訓令が出ております。そこで、逆に言いますと、昭和二十五年に法務総裁が、これは五月ごろでございますが、「韓国」というふうに書きかえを認めた時期から、翌年昭和二十六年のこれは二月ごろだと思いましたが、法務省関係局長からの指示によりまして登録証の提示を条件としたまでの一年足らずの時期がございます。この間は、理論的にいいますと、国民登録証の提示を義務づけていなかったわけでございます。ただ、実際は、当時の実情をわれわれが聞いたところによりますと、韓国代表部から韓国民の登録を受けた連中が、非常な韓国から見れば先鋭な愛国者たちでありますが、彼らが、自分たちは「朝鮮」と書かれるのは困る、韓国民だから「韓国」と書いてほしいという運動を非常に何回も繰り返して、とうとう総司令部まで持ち上げまして、日本政府は一ぺん司令部の勧告を拒否したことがあるのでございますが、あまりにも執拗な要望なのでやむを得ず勧告に応じたというような事情でございます。したがって、当時書きかえを認めるという法務総裁の指令が出た直後に一斉に押しかけてきて書きかえをやった連中というのは、これはもう韓国の中でも愛国心の一番強い連中でありますので、もしその当時国民登録証を見せろと言えばみんな持っていたのに違いないのでありますが、しかし、それは事実問題と理論の問題とは若干食い違いますので、その約一年ほどの期間の間は国民登録証の提示が条件とはされていなかったということはございます。そこで、先ほど申しました政府統一見解の中に「その大部分には国民登録証を提示させたうえ」と書いてあります理由は、「その大部分には」というのは、約一年間条件となっていなかった人があり得るものですから、それで大部分と書いたわけでございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま、「韓国」から「朝鮮」へ変えてくれという申請は、大体幾ら出てきておりますか。——これは大ざっぱでけっこうです。
  44. 八木正男

    政府委員八木正男君) これもどうもはなはだ統計が弱くて申しわけございませんが、大体月に千件から千五百件ぐらい毎月出ております。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大体千四、五百件いま出ているというようにぼくは聞いているんですが、大体そんなものですか。あるいはあとで調べてもらえばいいですけれども
  46. 八木正男

    政府委員八木正男君) はっきり調べまして、またまとめてあれいたします。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、なぜ「韓国」から「朝鮮」へ変えたいというのがそんなに出てくるんですかね。そこら辺はどういうようにお考えでしょうか。
  48. 八木正男

    政府委員八木正男君) ただいま私申し上げた数字、月に千から千五百と申し上げましたのは、「朝鮮」というのを「韓国」に書きかえてくれという申請でございます。「韓国」から「朝鮮」に書きかえてくれという数、これは、いままでに何手と申し立てが出ておりますが、大体去年の春ごろ、例の私が書きかえてもいいというお答えを申し上げた当時、ちょうどそれをうまく利用されまして、それを全部刷りものにして総連日本じゅうに配ってしまったものですから、一斉に始まったのですけれども、それを総計しておりませんけれども、おそらく何千という申し立てがあると考えております。  それからその理由は、これも一々私どもそういうものを、これは宣伝臭が強いものですから、具体的にあまり私は目を通しておりませんけれども、報告によりますと、大部分は、指示に基づいて、同じ文句で、われわれは独立国の国民だからどうのこうのということを書いている。私どもはそういうのは問題にならないので考慮しておりませんが、考慮する対象になるような、そういったあやまちによるものとか、それから家族の問題、それから自分は「韓国」に登録した覚えはないのに「韓国」とされてしまったのだというような、具体的にはそういうのが若干その中に入っております。その理由というのは、私は直接治安をやっている機関ではございませんので、その辺の陰の事情は存じませんけれども、まあ常識的には、例の日韓の法的地位の協定ができて、その協定に基づいて永住韓国民に認められることになる。そうすると、彼らの日本における在留は非常に安定したものになる。それに対して、北鮮系あるいは韓国民以外の人たちの在留というのは、単に法律百二十六号があるというだけで、一見安定したように見えるけれども、はなはだ不安定なものであるというので、彼らは非常に脅威を感じまして、「韓国」の国籍をとって協定永住をとることは非常に損だ、たとえば徴兵にとられるだろうとか、重い罪を犯せば追い出される、われわれはどんな罪を犯しても追い出されないというような運動をやりまして、そういう宣伝が効果を奏しているようでありまして、この際「朝鮮」と書きかえればいつまでも日本におられるけれども、「韓国」となっていれば兵隊にとられたり追い出されたりするという宣伝がきいておりますので、それが私は大部分だろうと考えております。これは、しかし、直接関係者人たちは、全然逆な見方、むしろ、われわれは独立国の公民なんだ、「朝鮮」というのは符号じゃなくて北鮮の国籍意味するものだといったようなつもりで議論しているようでありますけれども、全然議論が平行線になりますので、私個人のそういった見解を言いましても、それは私だけのものでありまして、ほんとうのところはどうかということは私が責任を持って申し上げるような立場にないと思います。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「韓国」から「朝鮮」への申請と、今度は「朝鮮」から「韓国」への申請と、それが統一見解後にどの程度毎月あるのか、これは資料としてあとで出していただきたいと思います。これは、話を聞いていると、法務省市町村とどちらに権限があるのか、どちらが実態を握っているのかわからないような感じを受けるのですが、市町村のほうじゃこれを返上したい、かんべんしてくれというんでしょう、外国人登録事務は。そういうようなあれが出ているでしょう。聞いておりませんか。
  50. 八木正男

    政府委員八木正男君) 協定永住申請する窓口市町村にするというときに、朝鮮人を大ぜいかかえている一部の市町村から、非常にそれは迷惑だからやめてももらいたいという陳情はたびたびあったことは事実でございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま言った「韓国」から「朝鮮」への申請、「朝鮮」から「韓国」への申請、これは月々どのくらいあるかという統計を、これは多少日にちがかかるかもわかりませんけれども、出していただきたいと思いますが、これは一月もあれば出せますか。
  52. 八木正男

    政府委員八木正男君) 大至急準備するようにいたします。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 永住権の申請は、いまどの程度出ていますか。——大ざっぱでいいですよ。
  54. 八木正男

    政府委員八木正男君) これもたしか受け付けが始まったのがことしの一月十七日でございますので、一応一月末で締め切った数字が約千件だと思います。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私が聞いているのは、そんなに出ていないように聞いているんですが、あるいは私の間違いかもしれませんが、二百五十件前後しか出ていないと聞いているんですが……。
  56. 八木正男

    政府委員八木正男君) 実は、一月十七日に永住申請が始まったわけでございます。そこで、その当時私ども一国会で御質問などにその数字を質問があるだろうと思いまして、普通は、毎月月末に数字を締め切って、それが文書市町村から都道府県を経て私どものほうへ統計として上がってくるわけでございます。したがいまして、まず数字が上がってくるのが大体一カ月以上かかる。それを集計したときは、すでに一月分は正確な数字を集計するのには三月ごろでないと出てこないわけでございます。しかし、国会の方々の御質問があった場合に、それではあまりに醜態だからというので、特に朝鮮人の多く住んでいる道都府県五、六県を選びまして、そこの入管に電報を出しまして、できるだけのわかる範囲でいいから最近の数字を毎日報告しろといって一月の末にそういう指示をいたしまして、四、五日の間毎日毎日電話できょうは何人という数字が来ております。これもしかし正確な数字とは申せませんが、おそらくただいまお話しになった二百件というのがそれだと思います。現在の段階では、大体大づかみの数字がわかっております。それによりますと、九百八十何件という数字が出ております。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きょうはこの程度にしておきまして、いまの具体的な資料をいただきまして、そして、問題点なり、あるいは個別的な事案についての問題なり、これらを逐次質問していきたいと思いますので、きょうはこの程度にしておきまして、資料をできるだけ早く出していただきたいとお願いしておきます。
  58. 八木正男

    政府委員八木正男君) ただいまのを、私非常に記憶があれなものですから、ちょっと整理しますと、まず、数字といたしましては、少なくとも統一見解の発表された以後、国籍欄を「韓国」と書いてあったも一のを「朝鮮」と変更した事例とその件数、その内容でございますね。それから、昨年の三月以後ぐらい、おそらく四月以後になると思いますが、新年度において登録課長がこの問題に関連して出した通牒と、それからただいまの「韓国」から「朝鮮」、「朝鮮」から「韓国」への月別の申請でございますか、大体そんな程度と了解してよろしゅうございますか。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ええ。
  60. 和泉覚

    委員長和泉覚君) 本日はこれにて散会いたします。    午前十時五十九分散会      —————・—————