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1966-02-10 第51回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十日(木曜日)    午前十時十六分開会     —————————————    委員の異動  十二月二十八日     辞任         補欠選任      丸茂 重貞君     館  哲二君      奥村 悦造君     田中 茂穂君      中上川アキ君     鈴木 万平君      近藤英一郎君     後藤 義隆君  一月三十一日     辞任         補欠選任      石井  桂君     斎藤  昇君  二月二日     辞任         補欠選任      田中 茂穂君     重政 庸徳君  二月三日     辞任         補欠選任      亀田 得治君     杉山善太郎君                 中津井 真君  二月七日     辞任         補欠選任      中津井 真君     田中 茂穂君  二月九日     辞任         補欠選任      杉山善太郎君     亀田 得治君     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 木島 義夫君                 松野 孝一君                 稲葉 誠一君                 山田 徹一君     委 員                 岡村文四郎君                 後藤 義隆君                 斎藤  昇君                 鈴木 万平君                 中山 福藏君                 大森 創造君                 藤原 道子君                 野坂 参三君                 山高しげり君    政府委員        法務大臣官房経        理部長      勝尾 鐐三君        法務省刑事局長  津田  實君        法務省保護局長  本位田 昇君        法務省入国管理        局長       八木 正男君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢崎 憲正君        最高裁判所事務        総局人事局任用        課長       草場 良八君        最高裁判所事務        総局経理局長   岩野  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        増木 甲吉君    説明員        法務大臣官房秘        書課長      長島  敦君        国税庁長官    中嶋 晴雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (昭和四十一年度法務省関係予算及び裁判所関  係予算に関する件)  (今期国会における法務省関係提出予定法律案  に関する件)  (法務省共済組合に関する件)  (法務省職員定員等に関する件)  (出入国管理に関する件)  (司法修習に関する件)  (森脇事件に関する件)     —————————————   〔理事山田徹一君委員長席に着く〕
  2. 山田徹一

    理事山田徹一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  和泉覚委員長が請暇中でありますので、その委託を受けまして私が本日の委員会を主宰させていただきます。よろしくお願いします。  本日は、検察及び裁判運営等に関する調査を議題とし、まず、昭和四十一年度法務省関係予算及び裁判所関係予算について順次説明を聴取いたします。法務省勝尾経理部長
  3. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) お手元に「法務省所管昭和四十一年度予算について」と題する印刷物が配付してございますので、右印刷物に基づきまして法務省所管昭和四十一年度予算について概要を御説明申し上げたいと存じます。  昭和四十一年度の予定経費要求額は五百九十四億八千五百六十万二千円でありまして、これを前年度の当初予算額五百四十三億三千六百三十四万三千円と比較しますと、五十一億四千九百二十五万九千円の増額となっております。前年度の補正後予算額五百五十七億六千六百五十二万一千円と比較しますと、三十七億一千九百八万一千円の増額となっております。  増額分の内訳を大別いたしますと、第一は、人件費の四十二億八千七百六十九万六千円であり、第二は、一般事務費の八億五千五百六十万二千円であり、第三は、営繕施設費の五百九十六万一千円でありますが、このほかに、法務本省第二新館新営費が前年度に引き続いて建設省所管に三億一千七百万円計上され、前年度に比して一億二千二百六十八万二千円の増額となっております。  まず、人件費四十二億八千七百万円の増加でありますが、これは、昨年九月から実施された人事院勧告公務員給与ベースの改訂等に伴う所要経費及び昇給原資としての職員俸給等の増額がその大部分でありまして、そのほか、検事、法務事務官等百七十二名(ただし欠員より振り替え充当)の増員に必要な経費の増額等が含まれております。  増員につきましては、法務省としましては最も重点を置いたところでありますが、その内容について申し上げますと、  第一に、公判審理の迅速・適正化をはかるため、検事五名、検察事務官十名が増員となっております。東京外主要都市検察庁における公判立会専従体制を確立して、その迅速化に資するためのものであります。なお、検事については検察事務官の欠員より振り替え充当することとなっております。  第二に、非行青少年対策のため、前年度の少年院教官等四十名の増員に引き続いて、二十五名の増員となっております。その内容は、——少年院教化活動の充実のための教官二十名。2、少年鑑別所鑑別業務の充実のための技官五名でありまして、青少年犯罪の防止及び犯人の改善を強力に推進するためのものであります。  第三に、法務局において事務官百二名が増員となっております。これは、登記事件経済規模の拡大に伴い増加し、処理の能率化をもってしても職員の事務負担量はその限界を越える状況にありますので、登記事務の迅速・適正化をはかるため、前年度の八十名の増員に引き続いて行なわれたものであります。  第四に、日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法に基づいて、大韓民国国民に対する永住許可事務を行なうため、入国管理局に事務官七名、地方入国管理事務所入国審査官二十三名、計三十名が増員となっております。これにより、永住許可事務の処理の適正、迅速化をはかるためのものであります。  なお、以上御説明いたしました増員は、いずれも内部組織凍結欠員の解除の方法により振り替え充当することとなっておりますが、在外公館要員として法務事務官一名が外務省所管に振り替え計上されることになっておりますので、来年度の法務省の定員は、一名減員となっております。  次に、一般事務費八億五千五百万円の増加の内容について御説明申し上げます。  まず、全般的に申し述べますと、法務行政の充実をはかるための経費のほか、職員の執務環境の改善、保護司、人権擁護委員矯正収容者等処遇の改善等に必要な経費の増加がなされております。  そのうち、おもな事項について申し上げます。  第一は、法務行政の充実をはかるために必要な経費の増額でありますが、そのおもなものについて申し上げますと、  1、まず各組織に共通なものとして、旅費類の単価是正により二億一千二百六十四万九千円、賃金の単価是正により四百八十三万四千円等が増額となっております。  2、法務局関係につきましては、登記諸費(すなわち、法務局、地方法務局において登記、台帳、供託、戸籍等の事務を処理するために要する経費)につきましては、登記登録旅費単価是正分を除く。)二百一万五千円、庁費三千五百五十二万三千円、供託金利子三千万円、計六千七百五十八万三千円の増額となっております。なお、能率器具購入費及び消耗品費二千二百七十九万九千円、商業登記簿ファイル化経費二百万円が増額となっております。  3、検察庁関係につきましては、検察費(すなわち、検察庁において処理する一般刑事事件その他各種犯罪事件の直接検察活動に要する経費)につきましては、検察旅費六百五十六万九千円、庁費二千六百八万五千円、精神鑑定依頼等謝金二百万円の増額となっております。なお、事務の能率化等器具整備費五百四十九万七千円が増額となっております。  4、矯正関係につきましては、最近の被収容者の収容人員の増加に伴い、一日平均の収容人員数が、刑務所千人、少年院三百人、計千三百人増員となっており、それに伴う収容諸経費四千五百四十三万五千円の増額、暴力団関係収容者等処遇の適正をはかるための分散拘禁等護送旅費四百八十二万一千円の増額、大通拘置支所等移転に必要な備品整備等経費一千五百三十五万円、看護人養成経費百三十万五千円が増額となっておりますが、滋賀、松江刑務所帯広少年院等の四十年度移転に伴う経費八千四百七十一万円が減額となっております。  5、犯罪者予防更生法等に基づく補導援護につきましては、保護観察を強化するため、補導援護旅費百二十七万九千円が増額となっております。  6、訟務関係につきましては、訟務費(すなわち、訟務局、法務局、地方法務局において、国を当事者とする民事・行政事件等訴訟事務を処理するために要する経費)につきましては、諸謝金七十三万七千円、旅費九十六万六千円、庁費百三万一千円、計二百七十三万四千円が増額となっております。  7、人権擁護関係につきましては、貧困者訴訟援助の強化をはかるため、法律扶助協会補助金一千万円が増額となっております。  第二は、刑務所作業費の四千二百八十四万九千円の増額であります。これは刑務所被収容者に対し作業を行なわせるために必要な経費でありまして、原材料費が相当額増額されたほか、作業形態紙細工等の低格作業から金属、印刷等の有用作業に転換するための機械器具の更新費、作業附帯経費を充実するために必要な経費及び少年受刑者職業訓練用機械器具整備費が増額となっております。  第三は、職員の執務環境や、人権擁護委員、保護司、矯正関係被収容者の処遇の改善に必要な経費の増額でありますが、そのおもなものについて申し上げますと、  1、職員の執務環境の改善につきましては、各組織を通じまして非常勤職員手当単価是正二百七十七万二千円、検察官、訟務官の執務環境の整備として検察庁図書室の整備費五百万円、訟務官資料費八十四万円、外国人登録事務委託費都道府県市町村吏員給与改善費等)八百九十万九千円、検察事務官研修強化経費百二十万円が増額となっております。  2、矯正関係被収容者につきましては、刑務作業等賞与金支給計算基準を一〇%引き上げるための三千二百二十七万六千円が増額となっております。次に、被収容者に支給する精神薬品消化器系薬品日刊新聞等日用品、教化・教育資料寒冷地燃料職業補導費等収容経費二千二百四十万六千円、宗教教講師謝金二百万円が増額となっております。次に、被収容者食糧費でありますが、米価改訂に伴う主食費の単価増(八・六%)により七千四百六十四万五千円が増額となっており、また、菜代単価を最近の物価の趨勢にかんがみて昨年に引き続いて是正することとし、被収容者一人一日当たり二円五十五銭ないし三円三十五銭増額するのに要する経費として七千七百三十六万五千円が増額となっております。  3、保護関係につきましては、更生保護会の充実をはかり収容者の更生に万全を期するため、更生保護委託費について、食事付宿泊費の現行一人一日当たり百九十一円二十銭を二百十七円二十五銭に、宿泊費の現行六十七円四十六銭を七十五円七十八銭に、また、事務費の現行百二円を百九円五十二銭に、それぞれ単価の是正が行なわれたため千六百六十五万六千円の増額となり、なお、これに伴って、更生保護会補助金の事務費についても、現行一人一日当たり二十四円五十銭が二十六円に改訂されております。また、保護司実費弁償金については、補導費の現行単価一件一カ月当たり四百八十円を保護観察内容の難易により最高六百円から最低五百十円に是正すること等により九千二百八十四万六千円が増額となっております。  4、人権擁護関係につきましては、人権侵犯事件調査の強化をはかるため、人権擁護委員実費弁償金を一人当たり三千三百円(一〇%増)平均として二百七十二万二千円が増額となっております。  以上が一般事務費の増額となったおもなるものでありますが、このほか四十一年度予算におきまして次の事項について新規に予算が計上されております。  その一は、昭和四十年六月三日第四十八回通常国会で成立した農地被買収者等に対する給付金の支給に関する法律(法律第百二十一号)に基づいて、法務局、地方法務局が所掌する農地等所有関係証明事務を行なうに必要な経費として一億四百八十七万円が計上されております。  その二は、昭和四十年度補正予算に計上されましたが、日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法に基づいて、入国管理局関係永住許可事務処理を円滑適正に実施するに必要な経費として、前述しました増員三十名のほかに、協定永住事務委託費等として六千四百三十六万九千円が計上されております。  次に、営繕施設費でありますが、検察庁、法務局等庁舎の新営費、特に登記所の施設の整備を前年度に引き続いて充実するための経費を含めて二億一千六百三十三万五千円、刑務所少年院等収容施設の新営整備等施設費九千九百七十五万一千円、量増加に伴う附帯事務費八百四十八万三千円、不動産購入費三千万円が増額となっておりますが、四十年度に計上されました滋賀、松江刑務所特別取得費三億四千八百六十万八千円が減額となりましたので、施設費関係としましては当初申し上げましたように五百九十六万一千円の増額となっております。  以上、来年度予算の増額の内容について概略申し上げました。  次いで、法務省におきましては、昭和四十一年度予算において、治安対策充実強化非行青少年対策登記事務処理の適正化を主要事項として取りまとめておりますので、前述しましたところと多少重複いたしますが、これについて簡単にその内容を申し上げたいと思います。  第一の治安対策の充実につきましては、前述の検事等十五名の増員及び従事職員の人件費を含めて五十三億四千三百八十八万二千円を計上し、前年度に比して三億七千五百七十八万七千円の増額となっております。これにより、組織暴力、公安、交通車犯等に対処して適切な検察権を行使し、矯正施設被収容者の衆情の安定をはかり、破壊活動調査機能を充実して社会不安の根絶を期したい考えであります。  その増額分について申し上げますと、  まず、検察庁関係として二十六億三千九十一万八千円を計上しておりますが、公判審理の迅速化をはかるための検事五名等の増員のほか、直接検察活動に必要な検察費千二百四十四万六千円、交通切符制度運営調査関係経費百八十八万円の増額分が含まれております。  次に、矯正関係として二千四百七十四万七千円を計上しておりますが、暴力団関係被収容者の分散拘禁旅費、並びに警備用器具等六百三十二万五千円が増額となっております。  次に、公安調査庁関係として二十六億八千八百二十一万七千円を計上しておりますが、調査活動費三千七百五十万六千円の増額分が含まれております。  第二に、非行青少年対策でありますが、前述の少年院教官等二十五名の増員及び従事職員人件費並びに収容総経費を含めて八十五億六千五百二十三万六千円を計上し、前年度に比して八億七千九百七十七万八千円の増額となっております。これにより、粗暴化、低年齢化している青少年犯罪に対処する検察体制の充実をはかり、少年院、少年鑑別所の機能を人的、物的に整備し、同時に、青少年に対する保護観察機能を強化して、犯人の改善、再犯の防止をはかりたい所存であります。  その増額分について申し上げますと、まず、検察庁関係として三十七億九千四百四十四万一千円を計上しておりますが、検察取締経費(検察費)三千七百九十九万円の増額分が含まれております。  次に、刑務所関係として五千四百二十三万七千円を計上しておりますが、少年受刑者職業訓練を充実するための訓練用機械器具整備費九百五十七万五千円が増額となっております。  次に、少年院関係として二十二億三千五百九十万四千円を計上しておりますが、少年院教官二十名の増員のほか、初等少年院教化教育経費日用資材医療薬品寒冷地燃料菜代等収容経費職業補導経費等四千五百七十六万五千円の増額分が含まれております。  次に、少年鑑別所関係として十億二百六十三万五千円を計上しておりますが、鑑別技官五名の増員のほか、審判少年護送旅費鑑別器具費菜代等収容経費千四百二十万四千円の増額分が含まれております。  次に、保護関係として十四億七千八百一万九千円を計上しておりますが、前述の補導援護経費、すなわち、更生保護委託費保護司実費弁償金等についてそれぞれ単価の是正等が行なわれたことに伴う八千二百七十六万二千円の増額分が含まれております。  第三に、登記事務処理の適正化でありますが、前述の事務官百二名の増員及び従事職員の人件費を含めて五十九億六百五十七万九千円を計上し、前年度に比して六億四千九百八十八万三千円の増額となっております。これにより、経済規模の拡大、公共事業活発化等に伴う登記事件の増加に対処して、処理の適正・迅速化に一そうの改善をはかりたい所存であります。その増額のおもなものは、増員を含む人件費のほか、複写機等事務能率器具の整備、事務の合理化等経費八千十三万六千円であります。  以上で法務省所管歳出予算について御説明いたしました。  なお、このほか、昭和三十三年二月二十一日の閣議了解に基づく東京拘置所その他の施設を処分することにより、新たに東京拘置所多摩刑務所(仮称)、川越少年刑務所浦和拘置所支所(仮称)を含む)、「岡山刑務所旭川刑務所の各施設を取得するため総額五十七億三千五十九万九千円の国庫債務負担行為を要求しており、これにより刑務所移転対策の促進をはかる所存であります。  終わりに、当省所管歳入予算について一言御説明いたします。  昭和四十一年度法務省主管歳入予算額は三百七億五千八百五十八万三千円でありまして、前年度当初予算額二百十八億一千九百四十五万一千円と比較しますと、八十九億三千九百十三万二千円の増額となっております。なお、前年度の補正後予算額三百一億一千二百三十五万一千円と比較しますと、六億四千六百二十三万二千円の増額となっております。  これは、過去の実績等を基礎として算出されたものでありまして、その増額のおもなものは、罰金及び科料と刑務作業収入であります。  以上をもって、法務省関係昭和四十一年度予算についての御説明を終わります。
  4. 山田徹一

  5. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者岩野徹君) 昭和四十一年度裁判所所管予定経費要求額につきまして御説明申し上げます。  第一、昭和四十一年度裁判所所管予定経費要求額総額は三百十五億五千七百二十六万一千円でありまして、これを前年度予算額二百八十三億七千十万六千円に比較いたしますと、差し引き三十一億八千七百十五万五千円の増加になっております。  この増加額内訳を大別して申し上げますと、人件費において二十一億二千百七十三万円、営繕費において四億八千四百六十八万九千円、裁判費において三億九千六十二万九千円、その他司法行政事務を行なうために必要な旅費庁費等において一億九千十万七千円となっております。  第二、次に、昭和四十一年度予定経費要求額のうちおもな事項について御説明申し上げます。   一、臨時司法制度調査会意見実現経費でありますが、昭和三十九年八月、臨時司法制度調査会が決定いたしました意見を実現するに必要な経費として、最高裁判所裁判官退職手当増額に要する経費二千五百八十七万五千円、執務体制確立——宅調廃止でございますが——に伴う施設整備に要する経費二億五千九百二十五万八千円、補助機構充実として地方裁判所調査官六人の増員に要する人件費五百三十七万六千円、裁判事務処理に要する能率器具自動車等整備経費八千四百六十八万七千円、裁判所配置改善に要する経費百三十万四千円、新任判事補補修に要する経費百五十三万一千円、合計三億七千八百三万一千円が計上されました。  二、裁判官等増員に必要な経費でありますが、高等裁判所における事件処理正常化訴訟促進をはかるため、判事二十七人、裁判所書記官二十七人の増員に要する人件費六千二百四十四万一千円、家庭裁判所事件処理につき、家庭裁判所調査官二十五人の増員に要する人件費一千二百三十五万三千円、合計七千四百七十九万四千円、が計上されました。三、営繕に必要な経費でありますが、裁判所庁舎継続工事二十四庁舎新規工事庁舎の新営工事費として二十五億一千百三十九万一千円、その他、法廷の増築、庁舎補修等施設整備費として二億二千百十七万五千円、庁舎新営に伴う敷地買収のための不動産購入費及び換地清算金として四千二百四十六万円、以上の諸経費と、前に申し上げました臨時司法制度調査会意見実現経費のうち執務体制確立に伴う施設整備に要する経費とを合わせまして、合計三十億三千四百二十八万四千円が計上されました。  また、このほかに、最高裁判所庁舎敷地取得のため、十五億円を限り、昭和四十二年度において国庫負担となる契約を昭和四十一年度に結ぶことが認められました。  四、裁判に必要な経費でありますが、これは、裁判に直接必要な経費でありまして、国選弁護人報酬、証人、調停委員等の日当、その他裁判に直接必要な旅費庁費等として二十三億一千六百九十二万七千円が計上されました。  なお、この経費には、執行吏国庫補助基準額増額するに必要な経費として二百七十四万八千円、国選弁護人報酬を約一〇%増額するに必要な経費として二千六百三十三万五千円、二千九百八万三千円が含まれております。  以上が昭和四十一年度裁判所所管予定経費要求額大要でございます。  なお、お手元に差し上げております要求額説明書には、昭和四十一年度裁判所所管予算に関する使途別分類表を添付しております。人件費旅費庁費各所修繕裁判費委託費交付金分担金等につきまして、それぞれ四十年度と四十一年度の比較を掲げておきました。備考欄裁判費内訳を掲げております。  その次にございます表は、昭和四十一年度の裁判所予算のうち、重要と思われますものを拾い上げて表として添付いたしております。  第三番目の表は、営繕関係の表でございまして、継続分新規分並び執務体制確立分といたしましてのそれぞれの庁名を掲げておきました。  以上でございます。     —————————————
  6. 山田徹一

    理事山田徹一君) 次に、法務省関係今期国会提出予定法律案について説明を聴取いたします。法務省長島秘書課長
  7. 長島敦

    説明員長島敦君) お手元にございます「第五十一回通常国会提出予定法案」につきまして、大要を御説明申し上げます。  ただいま予定しております法案総数は十五件でございまして、そのうち、予算関係法案が二件、その他の法案が十三件でございます。これらにつきましては、まだ内容が不確定なものも多数ございまして、したがいまして、ただいまから申し上げます説明が、その概要と申しますか、ただいま考えております概要にとどまりますことを御了承いただきたいと存じます。  最初に、裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案でございます。先ほど最高裁判所から御説明がございましたように、このたび工業所有権及び税の関係につきましての調査官が地方裁判所に置かれることになりましたので、裁判所法の改正が必要となるわけでございます。裁判所職員定員法の関係につきましては、これまた先ほど御説明がございましたように、判事二十七名の増員、これに伴います裁判所書記官二十七名の増員家庭裁判所調査官二十五人の増員、及び、先ほど申し上げました地方裁判所調査官六名の増員がございますので、これらの増員につきまして裁判所職員定員法の改正が必要でございます。これらの法案につきましては、来週中ぐらいには国会に提案になろうかと予測しておる次第でございます。  次に、最高裁判所裁判官の退職手当の特例に関する法律案でございます。これも、先ほど最高裁判所から御説明がございましたように、最高裁判所裁判官について国家公務員退職手当法の特例が予算的に認められることになりましたので、それに伴う法案でございまして、最高裁判所裁判官につきましては、退職の日における報酬月額に勤続期間一年について百分の六百五十を乗じた額というのを基準といたしまして退職手当を定めようとするものでございます。これも、来週中ぐらいには国会に提案になろうかと存じております。  次は、借地法等の一部を改正する法律案でございます。これにつきましては、いろいろ問題がございまして、ただいまなお調整中でございますが、その主たる内容は、建物に関します借地条件が事情の変更によりまして不相当となったような場合に、当事者の申し立てによりまして裁判所が借地条件の変更その他の相当な処分をすることができる、また、借地権者が借地上の建物を譲渡しようとする場合におきまして、土地の賃貸し人が正当な理由がないのに賃借権の譲渡または転貸しを承諾しないときは、裁判所が借地権者の申し立てによりまして賃貸し人の承諾にかわる許可を与えることができる、こういった点が借地法の主要な改正点でございます。このような申し立てがございました場合には、裁判所は、原則といたしまして鑑定委員会意見を聞きまして、なお、この手続は非訟事件の手続によることになるわけでございますが、これらの手続の点につきましても、当事者の利益を害しないように、ただいま慎重に検討が加えられておる次第でございます。次に、そのほかこの内容といたしましては、たとえば、借地、借家につきまして家賃、地代等に争いが起こりました場合に、従来どおりの地代、家賃を供託しておきますと、裁判の結果、地代、家賃がきまりました場合には、その差額を支払う、あるいは返戻するというようなことで解決をしようとすることが含まれておるわけでございます。民法の改正につきましては、御承知のように、地下鉄あるいは高架線というような地下あるいは空間の部分のみを利用することがふえてきておりますので、そういうような地下あるいは空間の部分のみについて地上権を設定するということができるようにしようというような内容を含んでおるのでございます。  次は、商法の一部を改正する法律案でございます。これもまだ確定的な内容がきまっていないわけでございますが、いろいろ内容が含まれております。まず、株式の譲渡制限の問題でございますが、会社は定款をもちまして株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨を定めることができるというのが株式譲渡制限の問題でございます。次に、額面株式と無額面株式との間に変更を認めようというのが第二点でございます。それから株券の発行停止または寄託の制度は、記名株式の株主が、定款に別段の定めのないときには、その株式について株券の所有を欲しない旨を申し立てることができるということでございまして、その場合には、株券を発行しない、あるいは株券を銀行等に寄託するということになるわけでございます。新株発行の手続は、証券会社等が新株を一括して引き受けて公募するというような場合につきましての手続を定めようとするものでございます。新株引受権の譲渡は、新株引受権証書というものの発行を認めまして、新株引受権証書の譲渡によりまして新株引受権が譲渡できるという道を開こうとしておるわけでございます。転換社債の転換の請求時期の問題は、転換社債を株式に転換いたします請求は、定款に別段の定めのない限り、株主名簿の閉鎖期間内でも転換することができる、こういった内容のものでございます。いずれもただいままだ検討中でございまして、確定はいたしておらないわけでございます。  次は、会社更生法の一部を改正する法律案でございます。これにつきましても、内容は全く現段階ではさまっておらないわけでございまして、近く法務省にございます法制審議会の会社更生法部会におきましてこれが検討されることになるわけでございますが、その検討の結果、早急に改正を要すべき点として答申がございますれば、それに基づいて法案を立案したいという次第でございますが、主として問題になります点は、更生債権、更生担保権及び共益債権等をめぐる問題であろうかと考えておる次第でございます。  次は、刑法の一部を改正する法律案でございます。これは先般すでに今国会に提案になっておるわけでございますが、前回の通常国会に提案になりまして御審議をいただきました法案と同一の内容法案でございます。  次は、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案でございます。さしあたり考えておりますのは、市町村の廃置分合等に伴います整理でございます。  次は、司法試験法の一部を改正する法律案でございます。これにつきましては、ねらいといたしまして、現在の司法試験が、かなり試験科目が多うございますし、むずかしい試験になっております。で、これを一般の在学生であってもそれほど困難でなく受験できるようにする、また、司法試験管理委員会の中に学識経験者も加えるというような方向で検討をしておるわけでございますが、現在の段階におきましてまだ各方面の御意見を徴して調整中でございます。確定的な要綱はできておりません。  次は、特許関係事件等についての裁判所の管轄の特例等に関する法律案でございます。これは、特許関係事件につきましては特別の知識が必要でございますので、東京地方裁判所あるいは大阪地方裁判所に特別の部を設ける。で、ここの部におきましては土地管轄にかかわらずこの特許事件を受け付けることができるというような内容のものでございますが、なお法律的にいろいろ技術的な問題もございまして、成案を得るに至っておらない状況でございます。  次に、執行官法案、執行官費用法案、執行官法等の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の三案を一括して御説明申し上げます。これにつきましても、近く法制審議会の強制執行部会が開催される予定でございまして、その審議の結果を待ちまして法案を立案するわけでございまして、ただいま確定したものはございませんが、一応考、えられておりますのは、執行吏を執行官というふうに名称を改めます。ただし、執行官になりましても、現在の執行吏制度と同じように手数料制度を前提とするわけでございますが、執行官に対します事務の配分あるいは監督につきまして裁判所の監督権限を強化していこうという内容を含んでおるわけでございます。そういった方向で考えようとしておるわけでございまして、たとえば強制執行に際しましての予納金等につきましては、これは裁判所が保管をいたします。そのかわり、執行官は各個の一つ一つの職務行為が終わったつど手数料を取ることができるというような内容をも含んだものでございます。執行吏が執行官というふうに改まってまいりますのに伴いまして、関係法律の整理が必要でございますので、整理法案が考えられておるわけでございます。  最後に、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案でございますが、これにつきましては、一般公務員の恩給につきまして、年間六万円に満たないものは六万円を最低限度とするというような改正がこの国会に提案されるふうに聞いておりますが、それに合わせまして、執行吏につきましても年間恩給が六万円に満たないものは六万円にするという内容を含む改正でございます。  最後にございます裁判官及び検察官の報酬、俸給等につきましては、すでに昨年当国会において御承認を得て成立済みの案件でございます。  以上、簡単でございますが、御説明といたします。     —————————————
  8. 山田徹一

    理事山田徹一君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査を行ないます。大森君。
  9. 大森創造

    ○大森創造君 前回の委員会で私と亀田委員、それから過去の記録を見ますというとその他の委員からも十分質問があって、大体理論的には解決されたような感じがするのでございますが、例の共済組合の問題ですね、この前の速記録をごらんになってもおわかりになるだろうと思うんですが、全法務という労働組合の代表を入れない理論的根拠はないと思うんです。——ちょっと待ってください。私は理論的根拠はないと思うんですよ、この前の問答で。そこで、私は、ただこの委員会で意味のない空の論議をしたくございませんから、理論的にそのことが適当であるという判断をされた場合には、実行してほしいと思う。六月に改選たそうですから、全法務労働組合の代表もひとつ入れてください。いかがですか。
  10. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 法務省共済組合の運営審議会の委員に全法務労働組合の代表を組合員側の代表として選任する問題につきまして、前回の十月二十一日の当法務委員会で御質疑がありました内容につきましては、当日出席をいたしました所管課長からも直接聞いております。速記録も拝見いたしましたところでございます。つきまして、ごく簡単に私のほうから結論だけ申し上げさしていただきます。  ただいま御質疑のございましたように、六月改選の時期がございますので、その時期に結論を出すという方向で私ども考えております。現在の段階における当法務省内部の実情を率直に申し上げますと、全法務労働組合の代表即組合側の代表という考え方につきましては、なお内部に異論がございまして、目下調整中でございます。私自身の考え方といたしましては、要するに、共済組合法にもございますように、九条ですか、の条件にかなう者でありますれば、それが全法務労働組合の代表であっても、また幹部であっても、当然私のほうとしてこれを選任するにやぶさかなものではございません。ただ、選任の実際の事務的な経過を申し上げますと、前回の委員会でも申し上げてございますように、縦割り組織の関係がございますので、また、その中に全法務の組合員である者とない者とございます。したがいまして、最終的には私のほうで調整をとって決定する責任を持っておりますが、具体的な選任にあたりましては、各組織の所管局とも十分協議をした上でその具体的な人選をきめる運びになっております。その具体出な事務の運びにおいてこの問題を解決していきたいというのが現在における実情でございます。
  11. 大森創造

    ○大森創造君 いま御答弁になったようなことは、前回においても議論が尽くされていると思うんでよ。そういうことは私はよくわかっているのです。しかし、それにもかかわらず、全法務の代表を一人入れたほうが、実際の共済組合の運営上好ましい、より効率的であるという立場で私と亀田さんが申し上げた。御了承いただいたと思いますか、いまあなたの御説明というものは、もう尽くされておることなんです。繰り返し聞きたくございませんけれども、大阪のほうから連れてきて、そうしてぽっと来るということは、横の連絡もないし、それなら、全法務というものは法務省全体の職員を網羅していないということは私もその事実は知っておりますが、全法務の代表を入れたほうが運営に効果があると思うのですが、これはひとつ決断をしていただけませんか。
  12. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) その点につきましては、私、全法務の諸君とときどき会ってよく話をしているところでございます。要は、共済組合の運営が効率的に動かしていけるという面と、それから法務省全体として運営が円滑にいく、両面から私どもとしては解決していきたいということでございまして、その両面のいま調整をしているというのが実情でございます。
  13. 大森創造

    ○大森創造君 とにかく入れてください、一人。それで、次に移りますけれども、定員の問題については次回の委員会で詳しく質問したいと思いますけれども、まず概括的にお尋ねいたしておきます。定員増は、ただいまの御説明によれば、全部で百七十二名、法務局関係が百二名、入管関係が三十名、その他が四十名となっておりますが、欠員小補充という原則があって、非現業関係が五割、現業関係が九割の補充というのが認められておる、それが実情ですね。そこで、要望は——要望の前に、現在欠員はどれくらいありますか。
  14. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 本来は民事局長あるいは人事課長から御説明申し上げるのが筋かもしれませんが、私予算折衝においてこの問題に直接タッチいたしておりますので、私からひとつ答弁をさしていただきたいと思います。昨年の十二月、予算編成期に、欠員凍結並びにたな上げの人員は、法務省組織を通じまして四百九十四名でございます。
  15. 大森創造

    ○大森創造君 そこで、相当大幅な増員の要求をしていたわけですね。四百九十四名の欠員ということなんだが、そこで問題なのは、いま申し上げましたように欠員不補充という原則で、そういう人数を今度の増員でまず現実の欠員を満たしておいて、それにプラス百七十二名という数字がほしかったのですが、こういうことはできないのですか。
  16. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 率直に申し上げますと、この欠員不補充並びに凍結の問題が四十一年度予算の際にどのような形で予算編成方針になるかということについて、事務当局として実ははっきりいたさなかったのでございます。それで、御承知のように、予算の編成は八月三十一日までに概算要求書を出すわけでございますが、そのときにおきましては、私のほうといたしましては、欠員の凍結の解除の問題というものを一応ネグレクトいたしまして、法務省所管の人員として必要な人員というものを計上いたしまして、約二千百名前後であったかと思いますが、増員要求を続けてまいったわけでございます。それが予算編成方針としてはっきり内閣の方針としてわれわれが確認いたしましたのが、昨年の暮れであったかと思います。そういう状況になりましたので、当初の二千数百名の増員の折衝に際して一応欠員並びに凍結の中からの補充という大原則が打ち立てられましたので、その方針に従いまして私のほうも予算の折衝の過程において逐次増員の要求について話し合いを進めていったというのが実情でございます。
  17. 大森創造

    ○大森創造君 予算委員会をこれから二カ月ぐらいやるでしょう、今度は予算国会ですから。私不審にたえないのは、一回政府のほうで固めた予算というものが、予算委員会の審議で変更にならないのですね。その前に復活折衝だとかなんとかという手続の中で増額になって、圧力団体の強いところがうんとふくらんだりするのですが、法務省関係はその意味ではぼくは弱いと思うんですよ。  そこで、どうなんですか、将来、欠員を凍結してはならない、ことに忙しいのだから、現業的な性格を持っているのですから、そういう方向で努力していただけませんかな。
  18. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 事務当局といたしましては、その旨を大臣にもよくお願いをいたしまして、忙しい部局につきましては必要な人員の確保につとめるという考え方でございます。
  19. 大森創造

    ○大森創造君 その次に臨時職員の問題。一体何人ありますか。
  20. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 臨時職員につきましては、私のほうの予算上、約六百名でございます。
  21. 大森創造

    ○大森創造君 私のほうで調べた範囲では千三百六十四名という数字が出ているのですけれども、どっちがほんとうですか。
  22. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 私の答弁、全く事務的だと思うわけでございますが、総理府あるいは国税庁と委託のいわゆる賃金職員がそのほかに約六百名いると承知いたしております。
  23. 大森創造

    ○大森創造君 そこで、大蔵省の方はおいでになっておるか——おられなくてもけっこうだけれども、臨時職員に対する報酬というんですか、日当といいますか、これは幾らなんですか。
  24. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 予算目といたしましては賃金ということで、来年度一〇%アップの五百五十円でございます。
  25. 大森創造

    ○大森創造君 そうすると、ことしは五百円ということですね。
  26. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) はい、そうでございます。
  27. 大森創造

    ○大森創造君 そこで、お伺いしますが、その五百円の中から年末のボーナスなんかを出す、あるいは、弁当代だとか——弁当は自分持ちなんですね、昼めしなんかは。それから交通費なんかももちろん自分持ちとなる。実質は私の計算では平均四百二十円ぐらいになる、一日の日当が。日当じゃない、賃金か。そういう計算になりませんか。
  28. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 大体そのくらいになるかと思います。
  29. 大森創造

    ○大森創造君 そこで、さらに調べてみるというと、松江市ですね、あそこの臨時職員は三百八十円程度なんですね、実質手取りが。これはお調べになってください。これはあまりに少ないと思う。私の近くの臨時職員に聞いたのだが、年は二十六歳で、一昨年試験を受けた。前職は自動車教習所の指導員だったが、試験をやった、法務局で。試験をするということで、施行するのは法務省法務局。だから、これはもう自動車教習所よりいいだろうと思って試験を受けたら、通っちゃった。そうしたならば、四百八十円。前の月給より安くなってしまった、いいと思ったら。この人に聞いたら、通勤費が二千四百円かかる、月に。昼食が、六十円、二十五日で千五百円。手取り七千円前後しかない。そこで、私が調べたところによると、人員が足りないので、臨時職員を補充すべく職業安定所へ行っている。安定所では、あまりに給与が低いからこれは断わられているのが実情なんですね。四百二十円とか三百八十円の日当では、これはもう安定所だって受け付けませんよ。断わられているのが実情です。そして、一方、あなたのほうでは試験をしている。試験というのは、十名受けて七人合格とか八人合格ということだろうと私は思うのだけれども、そういう採用試験ということは私は少し矛盾しているのではないかと思うし、これは法務省が給与が低いにかかわらず臨時職員というものを利用する一つのえさにしているような感じがするわけですけれども、どうでしょう。
  30. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 具体的な各地の志望者数、あるいはそこでの採用数について、私ちょっといま手元にございませんが、ただいま大森委員の言われたようなことはあるかとも考えております。ただ、この賃金の単価につきましては、御承知のように、各省共通と申しましょうか、という予算になっておりまして、私のほう、法務省だけで解決できない問題も含んでおるということで、われわれ事務当局として折衝上非常に困難があるというのが実情でございます。それで、おそらく、試験をする趣旨といたしまして、賃金職員ではございますが、法務局の仕事でございますので、やはりかなり権利の移動等に関連する職務を事実上扱わさしていると思いますので、そういう意味で、やはり一定の能力を持った者を採用して執務に過誤なきを期したいということと、それから含みといたしまして、また現状といたしまして、賃金職員が相当長期間つとめた場合に、その間において勤務成績のよい者につきましては人事院と折衝いたしまして正式に法務局事務官として採用するということも考えておりますので、それらと一連の考え方において一種の試験を行なっておる、このように私理解しております。
  31. 大森創造

    ○大森創造君 それで、なぜ臨時職員になっているかというと、まあ職員になれるのだという期待を持っているのですね。全部。試験を受けて採用通知の中に書いてあるんですよ、文章が。将来職員に採用される道があるなどというふうに書いてある現実に。ところが、採用されるパーセントというのは非常に低いでしょう。どの程度なんですか。ほとんどないのじゃないですか。
  32. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 賃金職員で採用いたしました者の中から公務員試験に——これは民事局といたしましては極力公務員試験を受験することをすすめていると存じますが、合格した場合には、優先的に職員に採用しておりますが、大体年間五十ないし六十名の合格者がある、これは優先的に職員に採用いたしております。なお、このほかに、公務員試験に合格しなくとも、勤務成績のいい者については、人事院と協議をして採用いたしております。これが年間六十名ないし七十名というように承知いたしております。
  33. 大森創造

    ○大森創造君 臨時職員で、長い人は六年という人がいるのですね。それで、そういう期待を持って入ってくる。それから法務局長や人事担当官などに肩をたたかれて、いつかは職員になれるのだと言われて、とうとう制限年齢に達してしまうという哀れな人がたくさんいる。そういう人を職員に採用するようなことをもう少し幅を広げていただきたい。朝八時半に来て、夕方五時まで一般職員と同じように仕事をしている。高等学校卒業、短大卒業という人が大部分なんだから、たいへん気の毒だと思う。先ほど申しましたように、試験をする、一方では安定所で断わられるというような矛盾、天下の法務省、その出先の試験に合格したから小踊りして入ってみたらば、いつまでたったって職員になれないで、手取りが一日四百八十円、月に七千円前後、いま申し上げましたように前のほうが給料がはるかに多いというようなことで、人生の岐路立っておるような人がたくさんございますから、これは特段の御考慮をいただきたい。  その次に、私は、入管の問題についてお伺いいたします。  現行出入国管理令というのは、スピード時代の今日、内容的にマッチしない点が多々あると思います。たとえば、外国人の在留資格は十六種類以上もあるわけですね。アメリカあたりでは四つか五つでしょう。外国に例がないと思います。こんなものはひとつ出入国管理令を改正するようなそういうお考えはございませんか、将来にわたって。
  34. 八木正男

    政府委員(八木正男君) お答えいたします。  実は、御質問の機会にちょっと釈明と申しますか、言いわけを申さなければならないと思いますが、ちょうど一年ほど前の衆議院の内閣委員会で、受田新吉先生から、入管令改正の意思があるかどうかということの御質問がございました。ただいま大森先生から御指摘のように、この入管令は制定されて十数年たっておりまして、その間にいろいろ内容的に実情に合わない、あるいは非常に不便であるというような点が若干ありましたので、すでに五、六年前からこれを改正しなければいけないということになりまして、局内に入管令改正のための部屋をつくりまして、そこで各国の立法例を調べたり、従来の実務の上から得た経験に基づいて改正すべき点を調べたりして準備をしておりました。昨年の受田先生の御質問のときに私お答えしましたのは、その作業もだいぶ進んでかなり具体的な新しい法律の要綱が完成しておる、そして、もともとポツダム政令から法律化された法律でございますので、名前も入管令というようなことで非常に体裁がよくないというようなことから、近々に具体的に審議が完成して、年末の通常国会、すなわち現在の国会でございますが、それまでには何とか提出したいと思うという答弁をしたわけでございます。  ところが、そのころ私日韓会談の法的地位関係の代表をやっておりまして、日韓会談第七次会談が始まった当時でございます。で、実は日韓協定がそう年内に急速にできるということは当時予想しておりませんで、これは過去十年来日韓会談というのは一年くらい続いては断絶するというのが年中行事であったものですから、その辺を見越してそういう答弁を申し上げたわけでありますが、意外にも協定が成立ということになりまして、そこで、私としては、局内に持っておりました参事官室という部屋でやっておるのですが、その参事官室全員に、すぐ入管令改正の仕事をやめて、協定による永住のための特別立法をしなければならない、また、その後の永住申請の受付の一切の手続等、そういうことを立案しなければいけないという事態になったものですから、そっちのほうに専念するようにすぐ命令をいたしました。しかし、前に国会でそういう答弁をしておりますし、この国会に間に合うようにできれば改正案を出したいと思っておりますけれども、実は、御承知のとおり、この一月十七日に協定永住の申請が始まりまして、当分の間そっちのほうで忙殺されておるものでありますから、この通常国会にはたして提出できるかどうか、私非常に自信がございません。その点は、いずれまた別の機会におわびせぬといかぬのじゃないかと思います。  それは蛇足でございますが、そういうわけで、実はこの入管令の改正について、ただいま御指摘のような在留資格について十六もある、確かに非常に一面から申すと繁雑であるということは認めざるを得ないと思います。ただ、御承知のとおり、日本という国は非常に狭い国土に非常に多数の人間が住んでおりまして、日本のために金を落として行ってくれる観光客のようなものは大いに歓迎いたしますけれども、日本に住みついて仕事をする人間がふえるということは、ただいま法務関係の地方の方々の非常に待遇の悪いお話が出ましたが、こういうような面から言いましても、日本人の職業を外国人に奪われるということは日本のためにならないわけであります。そこで、私どもは、常に、相当長期にわたって日本に滞在する外国人に対しては、その在留をできるだけ厳格に取り締まる、なるべく長くはおらせないようにしたいというのが一番の基本的な考え方でございます。そこで、それを法律に具現化いたしますと、どうしても在留資格を非常に厳密に規定する、そうしてそれを融通無碍にはしないというのがわれわれのどうしても根本方針にならざるを得ないかと思います。  ただ、実情に合わない面はいろいろございます。たとえば、くだらぬことでございますが、一つの例として申しますと、現在留学生という制度で来た人に対しては在留期間一年というように規定されております。一年以下の期間は与えられない。したがって、半年勉強したいという学生を日本へ入れてやろうとしますと、それには一年やらざるを得ない。しかし、一年やりたくないという場合に、半年しか留学させないということができないわけでございます。そのためにいろいろやりくりをしてほかの方法でやったりなんかしておりまして、こういうような融通のきかない点なんかを改正する必要もございますし、それやこれやで、ただいまの十六の種類は大幅に減らす必要があると私ども考えております。同時に、従来の在留期間というものは非常にかたくきめられておって、種類が非常に少なかった。これをもう少し実情に合わせてふやしていきたい。それから入国審査官による期間の供与についてもかなり自由裁量を与えなくちゃならないというような点を考えまして、こういうような点を盛り込んで現在入国管理令の改正の仕事もやっておるわけでありますが、各国の立法例なんかも十分に参酌いたしまして、その基礎的な調査は大体終了いたしております。あとは、これを法文の上に法文の体裁をつけるという仕事がまだ残っておりますが、それは、先ほど申しましたように、実は手持ちのそういった専門家を全部協定実施のためにいま振り向けておりますので、できるだけ早い機会に提出できるように今後とも努力を重ねていきたいと思っております。
  35. 大森創造

    ○大森創造君 大体経過は了承いたしました。見込み違いだったんですね。日韓会談があんなに早く成立するとあなたも思わなかったんですね。それはびっくりするのはあたりまえだ、社会党が。当事者のあなたが日韓会談があれほど急ピッチできまると思わなかったんだから……。  それはそれとして、入管令というものを、私が申し上げたような趣旨で、非常に矛盾点が多いから、しかも国会で答弁されたことだから、近い将来にこれは改正すると、こういうことですね。大体見当はいつごろになりますか。
  36. 八木正男

    政府委員(八木正男君) 昨年のようなことを再び繰り返さないために、オオカミが何回も来るようになっては困りますので、はっきりこの次の通常国会というふうに具体的に申し上げるのは私はちょっとこりましたので、今度はそれはかんべんしていただきますが、私としては突発事故が起こらない限りはこの次の通常国会には出したいと思っております。
  37. 大森創造

    ○大森創造君 次に移りますけれども、入国管理局構成幹部職員——課長以上ですね——は、私の調査したところによるというと、外務省と法務省との話し合いで割り当てられているような気がする、話し合いで。局長は外務省から来ている。次長は法務省、総務課長は外務省、審判課長法務省、資格審査課長は外務省、警備課長法務省、入国審査課長は外務省、登録課長は外務省、こういうことです。かつて外務省の外局であって、現在法務省の内局でありますけれども、こういうことはどうでしょう。単なる慣習でしょう。しかも悪い習慣、悪い慣例ではないかと思うのだけれども、いかがでしょう。
  38. 八木正男

    政府委員(八木正男君) 私自身その一人だものでありますから、私から申し上げるのはちょっとどうかと思いますが、法務大臣が人事権によりましてどういう人間を入管局長、次長、課長の地位につけるかという点は、大臣がおきめになり得る点でございます。ただ、ただいま御質問にございましたように、本来、局の成り立ちが、外務省の中にでき、それが法務省に移ってきたといった過去の経緯から現在そのような構成をやっておりますけれども、これは決して法律できまったというような性質のものではございませんから、今後状況に応じて大臣が適当と認めた人間をその地位に任命するということは当然行なわれていくものと考えます。
  39. 大森創造

    ○大森創造君 そこで、入管設置以来すでに十六年になりますので、基礎も確立されたと思われますが、入管本来の職員は、いま私が申し上げたようなポストにはいかに優秀であっても就任できないのが実情ですね。そういう実情はお認めになっているだろうと思うのだけれども、それでは一般入管職員の士気に非常に影響すると思う。これはひとつやめていただきたいと思うのですけれども、いまの御答弁の趣旨を実際に生かしてほしいと思うのだけれども、いかがでしょう。
  40. 八木正男

    政府委員(八木正男君) これも、どうも直接私がやる仕事ではないと思います。ただ、ただいまのお話に関連しまして申し上げますと、現在のところはそういうかっこうになっておりますが、入管にも、入管固有のと申しますか、すなわち上級職試験を合格して初めから入管の職員として入ってきた人たちが、昭和二十三年度から始まって、毎年数名ずつ入っております。こういう人たちがいずれその年限に達すればその地位についてくるだろうということは私として予想できると思っております。
  41. 大森創造

    ○大森創造君 しかし、これはもう旧套を打破しないと、そういうことは実際問題としてできないでしょう。だから、私が申し上げるのは、法務大臣に機会があったらお尋ねしたいと思うのだけれども、単なる悪例だと思うのです。単なるいままでの習慣だと思うんですよ。入管という組織、機構の成立上こういうことになったのはある意味ではいたし方がない面があるかもしれないが、十六年になるのだから、これは断ち切ったらどうだ。そうでないと、意欲が出てきませんよ。それから腰かけ的になりますから、ほんとうの勉強できませんよ、落ちついて。家族的な空気も生まれてこないですよ。だから、ここですっきりした形にいたしたい。これはまああなたではなくて、機会があったら法務大臣にお伺いすることにいたします。  その次に、日韓国交正常化に伴って韓国人の永住権の申請が行なわれているが、外国人登録法の施行当初、韓国人登録が民団や団体の一括申請などを行なったため、間違った登録が今日に至っているものが相当あると思うので、これを整理するのは非常に容易でないと思われる。人員、期間などの準備はどういうふうになっているか。これは五年ぐらいかかるのではないかと思うのです、いまの二十何人ですか、三十名の増員が認められた程度では。お見通しはいかがでしょうか。
  42. 八木正男

    政府委員(八木正男君) 三十人特に増員していただきまして、大体、私どもの腹づもりとしまして、東京に七名程度、それから各入国管理事務所の中で在日韓国人の人口の特に多いところの入国管理事務所に残余の二十三名を配分いたす予定でおります。この人たちの仕事と申しますのは、法的地位協定に規定されております資格要件を備えた韓国人が協定による永住申請をした場合、その申請の内容に疑問があったような場合に、個々の事例を調査するための任務を持っておるわけでございます。ただいまの御質問にお答えするためには、具体的にどのくらいの件数の協定永住の申請があり、そのうち何%ぐらいが調査を必要とする——調査と申しますのは、特別にそういう人たちを使って個人的な調査をする必要があるのが何%ぐらいになるかというようなこと、これは一切実は将来に属することでございます。  そこで、予算折衝の段階で人員の増加を要求しました際にももちろんいろいろ将来に対して推測をしてそれに基づいて請求をしたわけでございますが、これはあくまで裏づけはないわけでございます。われわれの見込みに基づいて申請をした、そういう点でまずとりあえず初年度分としてこれだけの人間をもらったわけでありますが、実は在日韓国人というのは万をもって数える数があるわけで、その大きな数に対して三十人ぐらいで何ができるかという御疑念もお持ちかもしれませんけれども、実はこの協定によって協定永住の資格者と認められた人間の判定というのは、比較的大多数のものについては簡単でございます。と申しますのは、昭和二十二年に第一回の外国人登録が始まりまして後、二年ないし三年ごとに一括して外国人登録を切りかえておりまして、昨年の秋第八次の切りかえが行なわれましたが、第一次から八次まで続いて全部登録されている人間であれば、それは当然該当者ということになりますので、調査の必要はないわけでございます。したがいまして、われわれとしては、相当大ぜい韓国人は対象者はあったとしても、個々の調査の必要の生じてくる人間、たとえば、偽っておるとかいうような場合、あるいは名前が変わっておって疑わしいとか、そういった個々のケースについて調べる数というのはそう無制限に多いものではないというふうに考えます。  それから五年というお話でございますが、これは協定にも五年間は申請期間が認められておりますので、五年の間当然その仕事が続きます。  そこで、具体的にどのくらいの比率の人間の調査が必要になるのかということは、この一月十七日から始まった申請でございまして、まだほとんど言うに足りない数しか来ておりませんが、この新年度以降になりまして相当まとまった申請が行なわれたころになれば、われわれとしてもかなりの具体的な予測ができて、その結果、現在の人員ではとうてい迅速な処理が困難であるということになりますれば、随時予算的な措置をお願いして、増員するなり何なりしなければならないかと思いますが、その予測はいまの段階ではちょっとまだ裏づけになる数字が出せませんので、もう半年ぐらいは待たないと、われわれとしての見通しも持ちかねるのではないかと思います。
  43. 大森創造

    ○大森創造君 時間がありませんから、次に移ります。  日韓恩赦ということがときどき取りざたされました。選挙違反を恩赦でかんべんするというようなお話もあったけれども、日韓恩赦、情状酌量の余地のある韓国人の犯罪について考えてやるというような考え方はございませんか、選挙違反ではなくて。
  44. 本位田昇

    政府委員(本位田昇君) 実は、私ども、今回の日韓条約に関連する特別の恩赦というものは行なわない意向というふうに承知しておるわけであります。昨年十二月初めごろから日韓恩赦を期待される一般の要望があるやに伺いまして、上司からいろいろ基礎的な資料などにつきまして整理検討することを指示されたこともございます。その段階で日韓恩赦を日韓条約の締結ということについてふさわしいものとして考える場合の題名などについても考えてみたわけでありますが、まず中心的に考えられますのは、やはり出入国管理令であるとかあるいは外国人登録法というような法令に関するところの違反事件であろうかと思うわけであります。  ところが、これについていろいろ検討をいたしましたが、犯情のくむべきものがある場合は大部分罰金刑になっておりまして、すでに執行が終了しておるということであります。また、それ以上の犯情と申しますか、罰金ではないけれども懲役刑に処せられる場合でありましても、情状のよい者につきましてはやはり執行猶予が大部分ついておりまして、そういう者に対しまして恩赦を行なうということは、これは実益も全くないわけでございます。そこで、残りますのは、懲役の実刑に処せられておる者がどれくらいの数があるかということなんでございますが、いま申しましたように、懲役刑につきましても大多数が執行猶予になっておる。残っておりますものは数も非常に限られてまいりますし、個々の事案について見ますと、犯情といたしまして必ずしも恩赦を行なうに適当とは考えられないようなものになるということでございます。数字は正確にいまここでは記憶しませんが、たとえば昭和三十八年の裁判の結果に徴しますと、懲役刑に処せられまして一年以上の実刑になっておる者というものは、出入国管理令の場合に十数名、それから外国人登録法の場合は二、三名という程度なんでございます。それらは、かなり犯情といたしまして裁判上実刑相当ということになりましたような事案でございます。恩赦を行なうことは必ずしも適当でないと考えられるほか、外国人管理の行政の上から申しましても、一挙に恩赦ということは適当でないというふうに考えております。
  45. 大森創造

    ○大森創造君 次に移りますけれども、昨年の十一月二十九日の鈴木忠一司法研修所長の講話、これを私は手に入れてこの講話の内容を読んでみたけれども、非常に不穏当な個所が多いのですね、これは。憲法否定の言辞が随所に出ておりますし、ずっと読んでみるというと、たいへんなことを講話しておりますね。司法研修所長が司法修習生全員を集めてこういう講話をするということは、一体許されるのかどうか。こういうことも言っているのですね。これはそのとおりのことばでないかもしれないが、「弁護士を非難する例はもっとも悪い例をとらえて全体を批判しようとするくせがある。法律家は、例外的な一、二の事柄をあたかも原則かのようにとりあげて議論する傾向がある。国会での社会党のような三百代言的な発言がそれである。」と、こう言っている。社会党が三百代言なら、自民党は一体何だ。政治ブローカーじゃないか。こういうことを言っているし、これはそのままでなくて誤記もあるだろうと思うのだけれども、これをずっと読んでみるというと、こういう思想で教育されたんでは、将来の判事検事、弁護士はたまったものではない。これは大いに問題だと思うのです。私は、法務大臣と、それから担当の鈴木忠一さんに来てもらってただしたいと思うのだけれども、ひとつ御答弁をいただきたい、どなたかこの問題について。ゆるがせにできない不穏当な内容が随所に出ておりますが、いかがお考えですか。
  46. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 昨年の年末の衆議院の法務委員会におきまして、横山委員から、鈴木所長が発言された内容についての御質疑がございました。さっそくいろいろと研修所について実情を聞きまして、そうして御答弁を申し上げたわけでございます。それで、横山委員からのお話では、非常に不穏当な発言があるではないか、どういうようにその点を鈴木所長は考えているかというようなことでございました。その際いろいろと聞きましたところによりますと、要するに、法律家というものはとかく枝葉の点について頭を突っ込みがちなものである。だから、たとえば修習生の諸君が検察庁に行けば、検察庁の内部から裁判所、弁護士会のいろいろなこまかい批判を聞くだろう。それから弁護士会に行けば、また裁判所検察庁についてとかくこまかい批判を聞くだろう。また、裁判所に行けば、弁護士会、検察庁についていろいろなこまかい批判を聞くだろう。どうもわれわれ法律家というのは、とかくこまかいことについてとらわれがちなもので、うっかりすると自分自身もそういうような弊害におちいりかねないのだというようなことを言われまして、そうしてその際、ただいま大森委員から御指摘のあったような点についての発言をさしたようでございます。  そこで、その点を衆議院の法務委員会において申し上げまして、そうして、横山委員から、鈴木所長においてその発言について釈明する意思はないか、司法修習生全員が集まったところでそういう趣旨についての発言があったんだから、やはり司法修習生全員が集まったところで釈明する気持ちはないのかということでございまして、ちょうどその年末には司法修習生が正月を控えまして全国に散らばって郷里に帰っております。したがいまして、一月になったならばさっそくその点について釈明する。ちょうどその横山委員から御指摘のあった委員会が、裁判官の報酬の問題についても論議されている委員会でございます。そういう委員会の席上を騒がせたことはまことに申しわけなかったというようなことで、結局のところ、本年の一月の十四日に鈴木研修所長が修習生全員を集めまして非訟事件に関する講話をいたしたのでございますが、その際前回の発言について衷心より遺憾の意を表するということを述べられまして、横山委員から御指摘のあったような点についての釈明と申しますか、遺憾の意を全修習生を前にして述べられたということでございます。
  47. 大森創造

    ○大森創造君 私は社会党を三百代言と言われてもけっこうだけれども、問題は、この鈴木さんの講話なるものの内容自体が、随所に不穏当な表現がある。考え方、思想の上において問題がある。だから、いま御説明があったように、衆議院の法務委員会で横山委員から指摘があったので、そこで今度は一月の何日かに釈明をし、取り消すようなことを言ったけれども、これは免許の取り消しなんかと違うのですね、性質は。思想ですよ。考え方ですよ。こういう考え方、思想というものを持っている人が、釈明する、あるいは前言を取り消すというふうなことでは私は済まされないと思う。いまの個所は不適当ですから速記取りやめだとか取り消しだというものとは事の性質が違うと思う。こんな思想を持っている人、考え方を持っている人は、がっちりこんと固まっていますよ。憲法否定の思想や考え方が随所に横溢していて固まっている。この方が、司法修習生全員を集めて、そうして前の話は間違いだったなんと言ったって、済まされる問題ではないと思う。  これは法務大臣に聞こうと思うけれども、この人は不適当ですよ。間違った発言ではありません、相当長時間にわたって講話しているのですから。それを、前回そんなことを述べたのは誤りであった、あるいはあのことは私の考えではないなんと言ったって、これはそういうことは許されませんね。取り消しができない問題ですよ、これは。この考え方を持っている人を司法研修所の所長に置くことは不適当だと私は思うのだが、どうですか。
  48. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 鈴木所長は、お人柄の点等から申しましても、非常に私どもはりっぱな先輩として尊敬いたしておるわけでございますけれども、非常に学術的な論文なんかもたくさん書かれまして、また文芸上の素養も十分持っておられまして、裁判官としての実務経歴も非常に長い民事の裁判官でございまして、ただいま御指摘の発言が社会党の非難ないし批判というような趣旨で述べているのでは決してございませんので、その際述べたことの一つの、何と申しますか、端的に言いますれば、ほんとうの述べたことに対してちょっと口がすべったというような趣旨でございますので、どうぞその点を御了解願いたいと思うわけでございます。
  49. 大森創造

    ○大森創造君 私は、社会党が三百代言だというようなことにいたずらに固執するわけではございませんけれども、人柄が何であろうと、あなたは尊敬をしておられようと、こういう趣旨の講話を修習生会員のいるところで述べられたその人は不適当だと思うのです。これはあなたは云々言えないでしょうから、法務大臣にあとでお伺いいたしますが、私は片言隻句をとらえて云々しているのではございません。この考え方でやられたのではたまったものではありませんよ、これは。あなたはごらんになったかどうか知らぬけれども、こういうことを言っているんですよ。「弁護士法第一条の「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」という規定をどう考えるのか。世人は「社会的正義……」というようなことを考えていない」、こういうふうに断言しておる。「私は弁護士法第一条のこういう規定を弁護士に掲げることに疑問を持つ。」ずっとこう読んでくると、これは非常に危険な思想だ。日本の司法制度、司法関係、これはもう危ぶまざるを得ないような考え方が終始一貫これは述べられている。これは取り消しのできない問題ですよ。だから、こういう考え方がまずいということを衆議院の法務委員会で肯定をされて、それで今度は一月になってから修習生全員を集めて取り消しのような発言をしたんだろうと思うんだが、そうならばなお問題だと私は思う。これは押し問答になりますから、あとでひとつ法務大臣と鈴木さんに法務委員会の御了承を得られればおいで願って、私はもう少しただしたいと思う。私は非常にまずいと思うんですよ、こういうことでは。前回言ったことは間違いであったなんというようなことで済まされる性質の問題ではないと思う。できるならば、私も所長それから法務大臣に来てもらってこのことをただしたいと思う。  その次に移ります。司法修習生の研修内容を見るというと、やはり鈴木忠一所長の講話を裏づけているごとく、最近では、講義内容の中に憲法が入っていないんですよ。憲法が入っていない。いくらなしくずしにくずされていく憲法であろうと、司法修習生の科目の中に憲法というものがないというのはどういわけか。鈴木所長のこういう講話と裏腹一体になっているんじゃないかというふうな、私はそういう疑問を持つ。非常に不安を感ずる。あまりに技術的に片寄り過ぎていると思う。やせても枯れても、憲法というものは、これはもろもろの法律の親ですよ。基本ですよ。それが司法修習生の講義の中に憲法という科目はないんでしょう、いま。その教科内容を示してください。
  50. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 憲法の講義でございますけれども、御承知のように、司法修習生になられる方々は、大学等におきまして十分法律的な検討及び勉強を積み重ねて試験に合格をしておいでになった方たちでございます。憲法は法律のすべての基礎となる根本的なものである、基本法であるということは、これはもう当然のことでございまして、おそらく司法研修所が憲法を教科課程の中に入れていないのは、もう当然そういった素養があるものだということを前提にしているのではないかと、こう思うわけでございますが、教科の決定は研修所の教官の会議できめているようでございます。従来憲法の講義ないしその教科があったのかどうか、あったとすればいつごろからなくなったかというような点について、私ここではつまびらかにいたしませんので、十分調査いたしたいと思います。
  51. 大森創造

    ○大森創造君 非常に私は問題だと思うのです。この鈴木所長の発言の内容というものと、それから現在司法研修所の教科課程の中に肝心な憲法という課程がないという事実は、私は表裏一体をなしているものだと思う。これは憲法否定の精神に充満しておりますよ、この所長の講話は。前は憲法の講義はあったはずですよ。そこで、それが去年かあるいはその前の年あたりから憲法という講義をなくしたのですよ。これは重大な問題だから、これはひとつお調べいただきたいと思うのだが、その教科課程というものは教官の会議できめられるというけれども、所長がすでにこういう思想の持ち主なんだから、これは教官の会議で憲法を意識的に除いているのだろうと思う、意識的に。まあ大学を出て素養がある人だから憲法を知っている——冗談じゃないですよ。一番勉強せにゃならぬのは私は憲法だと思うのだ。憲法の精神というものをしっかり身につけて、それでその他の法律を勉強しなかったら、意味ないと思うのです、私は。あまりに技術的なことに片寄り過ぎている。  いいですか。もう一回繰り返しますが、この所長がこういう思想の持ち主で、そこで前は憲法の講義をがっちりやっていたはずだ。いつごろからかこいつは課程の中からはずされているということ、これは非常に私は疑問に思うし、危険にも思う。で、これはひとつ本委員会で了承を得て、いかなる経緯なのか資料として提出してもらうと同時に、関係の方においで願うほかないと思う。いまおわかりでしょう、憲法という科目はないでしょう、いまは。
  52. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) ただいまは教科としてはないだろうと思いますけれども、ただいま大森委員から御指摘の点、あったとすればいつごろあって、いつごろなくなったかというような点については、調査いたしますればわかることでございますから、さっそく調査いたしたいと思います。
  53. 大森創造

    ○大森創造君 私は、まあ押し問答になりますから、これ以上追及いたしませんが、非常に重大だと思うのです。司法修習生の講義に教科の中に肝心の憲法が抜けていたのでは、これは話にならぬと思うのです。国会法にしたって、もろもろの法律だって、これは全部憲法が、第九条はともかくとして、生きているのですからね。そういうものを意識して私は省いていると思うので、ひとつ研修の教科課程というものをひとつ準備して私のほうに出していただきたい。同時に、この法務委員会のほうにお出しいただきたいと思います。これは単なる委員会でのやりとりだけでは済まされない重大な私は問題を含んでいると思う。将来の検事ですよ。森脇将光の問題を担当する検事ですよ。それから判事ですよ。弁護士ですよ。その司法修習生に対して、こういう講話をして、そうしてそれを裏づけするように講義内容に憲法が近ごろ抜けているという事実は看過できないと思う。これだけはがっちりひとつ経過を資料として出していただきたい。よろしゅうございますね。  その次に移りますが、横浜地裁において、近ごろ修習生の修習の方法を四班に分けておりますね。若い人と、それからだんだんと年齢によって。これはいかなる意図で分けてきましたか。
  54. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 横浜における司法修習生は、大体三十名内外を横浜の裁判所委託しておるものと存じます。これについて四班に分けてやっておりますことも、御指摘のとおりでございます。四班に分ける分け方につきましては、現地で弁護士会と検察庁裁判所から出ました委員によって分け方をきめて、分けて実務の修習をさせている、こういうように承知しております。
  55. 大森創造

    ○大森創造君 なぜ分けたんですか。いつから分けたんですか。
  56. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 三十名前後ということになりますと、一つにまとめてやるということは、とても困難で、できませんでございます。たとえて申し上げますと、修習生の修習は、裁判所の中にいたしますれば刑事、民事に分かれますし、それから検察庁のほうにも分かれますし、それから弁護士会のほうに分かれているのでございます。それで、その修習生たちに裁判の面、検察の面、それから弁護士の面から最も修習させるに都合のいい人数というものは、これはできるだけ少ないほうが都合がいいわけでございますけれども、大きな裁判所になりますと、おのずからそういうように四つなり五つなり、またあるいは数を多く班を分けて実務を修習させるということになるものと思われます。
  57. 大森創造

    ○大森創造君 それならば、どうして東京、大阪、名古屋、仙台、札幌あたりは分けてやっていないんですか。どうして横浜だけを分けてやっておるのですか。
  58. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) これはもうどこの裁判所も分けてやっておるのが実情でございます。分けませんと、とても修習の実務を教えるのに不可能というようなことになりますから、必ず一定の人数に小分けしてやっておるわけでございます。
  59. 大森創造

    ○大森創造君 一応あなたの説明もわかりますけれども、真意はこうでしょう。ある程度の年配の者は判事にしたくないと、そういう思想があるでしょう。それで、年配の者は弁護士のほうにすると、こういう思想が近ごろ芽ばえてきたから始まったんでしょう。これはそう言うていますよ。全部そういう不安を感じておる。
  60. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) ただいま大森委員の御指摘の点は、おそらく横浜におきまして昨年の修習生について年齢で四班に分けたという点について、何か特別の意図があるんではないかというようなことに関連しての御指摘ではないかと思うわけでございますが、横浜で分けました実情を申し上げますと、横浜には昨年三十三名参りました。そして、その中で八名ずつを三班に分けまして、それから残り九名が一班になったわけでございます。都合合計四班になったわけでございます。ところで、その分け方につきましては、従来はアイウエオ順というようなことで分けていたようでございますけれども、昨年は、裁判所側、検察庁側、弁護士会側から集まりました委員で構成されておりますところの司法修習生指導連絡委員会におきまして、年齢別で班別を組んでみようじゃないかということになりまして、年齢別で四つに班を組んだようでございます。大体その趣旨とするところは、一番上の方が五十二歳の修習生がおいでになったようでございます。一番若い方が二十二歳でございました。いわば親とそれから自分の子供みたような年齢の開きがございます。あまりに年齢が開き過ぎるから、これはやはり若い人、それから年配の方というように組んで一度やってみたほうがまとまりの点とか発言の点とかでいいんじゃなかろうかというような点から、そういうような年齢別の編成方式を考えたようでございまして、これは私ども聞いておりますところでは現在のところは横浜だけの一庁だけでそれをやったようでございまして、その趣旨とするところも決して年齢差によって別に差別を設けるというのではなく、いわゆる修習の便宜という点からそういうような分け方をしたというように承知いたしております。
  61. 大森創造

    ○大森創造君 時間がありませんから、先に急ぎます。  国税庁長官……
  62. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 次長でございます。
  63. 大森創造

    ○大森創造君 それから刑事局長に、森脇の問題についてお尋ねいたします。  これは、国税徴収法の五十六条の規定によっていろいろなものを差し押えているはずだと思う。動産なり有価証券なり、これは現在国税庁のほうで占有しておりますか。
  64. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 森脇関係につきましては、更正決定をいたしました税額に相応する資産につきまして保全処分を行なっております。大部分は銀行預金等でございますが、そのほか、ただいまお尋ねの有価証券、不動産等につきましても保全処分を行なっております。
  65. 大森創造

    ○大森創造君 そうすると、国税庁のほうで押えているんですね、占有しているんですね。
  66. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 不動産等につきましては差押しているものがございます。
  67. 大森創造

    ○大森創造君 そのうちで、回収不可能の分と回収可能の分とあるだろうと思うんだが、どういうことになっているか、これは資料として全部こっちへ出していただけませんか。森脇の貸金に対する手形とか、貸金の証書、それから保証金、いわゆる黒金念書に類するところの一切の原本というものを国税庁は占有していると思うんだが、本委員会のほうに出していただけませんか。お出しできるでしょうか。
  68. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 森脇関係の脱税の追徴につきましては、数字で申しますと、大体延滞料を含めまして七十八億程度になっているわけでございますが、これはもちろん徴収のほうで非常に徴収職員が苦労いたしまして、二十三億円程度はすでに国庫に納付されております。したがいまして、残り——ラウンドで申し上げますが、五十五億円程度につきましてなお差押あるいは仮処分等の必要があるわけでございます。しかしながら、その内容につきましては、これは非常に個別の問題でございますし、また、取引先、利害関係人の方の問題もございますので、非常に具体的の問題につきましては当委員会に資料を提出いたしますことはお許しを願いたい、かように考えております。
  69. 大森創造

    ○大森創造君 資料を提出することはお許し願いたいということはあなたのほうの希望であるけれども、これは憲法の六十二条かにありましたけれども、国会の要求があれば提出しないわけにはいかぬでしょう、法律的にこれは。ひとつ提出してください。どうしても内容を見たい。
  70. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) ただいまお尋ねのとおり、国会法に、資料提出の要求があれば、応じなければならぬという規定がございます。一方、公掛員につきましては守秘義務が課せられておりまして、特に一般の公務員の守秘義務のほかにさらに国税職員についてはそれよりさらに重い守秘義務が課せられているわけでございます。これは、考えまするに、やはり納税者の財産、所得等につきまして相当具体的な問題になりますとプライバシーの問題がございますので、そこまでやはり資料を公表いたしますことはいかがかというような趣旨でさような規定があるものではなかろうかと考えている次第でございます。非常な大きな方針等につきましては申し上げますが、個々の差押物件の明細等につきましてはひとつごかんべんを願いたい、かように思います。
  71. 大森創造

    ○大森創造君 法務当局に私は再三にわたって、また法務委員会調査室を通じて、森脇事件の冒頭陳述の写しを提出してほしいということを依頼したが、今日まで提出しておられない。これはどういう理由ですか。
  72. 津田實

    政府委員(津田實君) 冒頭陳述書の要旨につきましてはすでに差し出したと思うのであります。この分はすでに公表いたしておりますが、冒頭陳述そのものは法廷におきましてこれを行なうものでありまして、その法廷において行なう冒頭陳述の内容をしるした書面として裁判所及び訴訟関係人に提示するものであります。したがいまして、そのもの自体は、その毛のが原本でありまして、そのものそのものを御提出するということはまあできないわけです。ただ、問題は、それじゃそれの写しを出すかどうかという問題でございますが、これは訴訟記録の写しということになりますと、それ自体訴訟関係人以外の者には渡る余地がないわけであります。したがいまして、そういう意味におきまして、これはやはり司法関係の管理に属しておる書類という意味におきまして、法務省としてはこれを差し出すということは私は差し控えたいと思うのであります。
  73. 大森創造

    ○大森創造君 私は少しおかしいと思うのだ。要旨は私のほうに確かに出した。なぜ全文が出せないのか。現在裁判が開始されているし、世間に公開されているわけでして、原木の写しを出すことは差しつかえない。三権分立ということもあるけれども、検察行政というものは行政官が行なうものでございますから、これは本委員会——委員会は院を代表するものですから、本委員会のほうで要請があれば、私は原本の写しは出して差しつかえないと思う。係争中の事件であることは説明を聞かなくても私は知っております。私は、の内容、または未公開の証拠や内容を報告せよとは言うてない。訴訟遂行の妨げとなる事実や、法廷の訴訟指揮を妨げる事項ではない。すでに検事が世間に発表した冒頭陳述の写しでしょう、私の要求しているのは。それが出せない理由がわからない。また、事務局からの報告によるというと、検察官の会議の結果、提出できないというような結論が出たというが、どういうわけか私はわからない。そういう会議が必要なのかどうか。私は実に奇怪だと思うのだけれども、いかがですか。本委員会でもって、すでに世間に公表されている相当膨大なものだというが、それの原本の写しを出すことに応じていただけませんか。
  74. 津田實

    政府委員(津田實君) この問題は、すでに裁判所に提出した書類の内容の、いわばそれについての御調査ということに私はなると思うのです。したがいまして、それは司法権と国会との関係においてお考えをいただいて御承知いただくのでありまして、私ども行政府はすでに司法部内に提出したものなのでありますので、その意味において、その原木が御必要ならば、司法権と国会との関係において処置をしていただきたいというのが私どもの考え方でございます。
  75. 大森創造

    ○大森創造君 そうしますというと、本委員会のほうで、冒頭陳述、並びに先ほど申し上げました国税庁で占有しているところのいろいろな債券あるいは黒金念書などというようなもの、そういうもろもろのもの——その中で取れないものが相当あるでしょう。百億なんてないはずですよ。そういうものを一切本委員会の要求があれば、お出し願えますね、法律的に。法制局の方がおられないからわからないけれども、これはそういうことになりますね。
  76. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりますと、要求されました資料につきまして行政府が出せない場合につきましては、やはりそれが「国家の重大な利益」に影響するというような声明を求めることができるということになっておるようでございます。そこで、そういう声明があった場合には、「証人は証言又は書類を提出する必要がない。」ということになっておりまして、これは証人として喚問された場合の規定でございます。普通の場合につきましては、私どもやはり公務員の守秘義務の関係から、具体的な差押の内容、明細につきましては、やはり提出いたしますにつきましては相当問題があろうかと、かように私は考えております。
  77. 大森創造

    ○大森創造君 これはまあ当事者のあなたのほうに伺ってもなんだから、あとで法制局なり何なりにただすことにして、法務委員会意見を代表して言えば、いままでずっと習慣的にそれをやっておりますから、委員会の要求があれば、当然委員会に提出すべきものだ、国会に提出すべきものだ、私はそう思います。あなたのほうの答弁は参考までにお伺いしたわけです。  その次の質問、最後の質問に移りますが、これは国税庁のほうでどういうふうにお考えか、政治団体の寄付金のことで伺いたい。  政治資金規正法により届け出をしている団体が寄付を受け取ったとき、税金をかけるのですか、かけないのですか。たとえば、宏池会とか佐藤さんの政治団体などが一日二千万円ぐらい上がってきた場合に、税金はかけなくてもいいですか。
  78. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 法人あるいは個人からいろいろな寄付の態様につきましては、さまざまなものがございます。その中の一つとして政治献金という場合もあろうかと思うのでございますが、ただいまお尋ねの一つの政治結社と申しますか、政治団体、これはまあ法人格のない社団である場合が大部分であろうと思うのでございます。その場合には、法律の上におきましては、収益事業を営んでおればその部分については課税関係が発生いたしますけれども、さような収益事業がない場合には課税関係は起こらないということになっております。
  79. 大森創造

    ○大森創造君 所得税法の九条で免税にしているのは、公職選挙法による選挙の際に寄付を受けた候補者個人が届け出をした場合には課税をしないという規定で、福田会とか政治団体が日常の政治活動のために受けた寄付を免税にしていいとは書いていない。だから、実情は、政治資金規正法を拡大解釈して課税対象からはずしているのと違いますか。
  80. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) ただいま御答弁申し上げましたのは不正確でございまして、お尋ねの所得税法第九条の点につきましては、公職選挙法に基づきますものにつきましては、これは法律上わざわざ非課税というふうに書いております。それ以外のものにつきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。
  81. 大森創造

    ○大森創造君 それなら、私は課税していいんじゃないかと思うのです。よく週刊誌なんかに出ておりますけれども、ある有力な代議士が年間の所得六百万円だ、八百万円だというのに、一方では十年にして何百億かの財産ができたとか週刊誌に出ておる。こういうからくりの種がここにあるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。不思議にたえない。
  82. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) いろいろな寄附の態様は、初めに申し上げましたようにさまざまでございますが、個人にその資金が帰属いたします場合には、それは所得税法に従いまして課税関係が生じてまいります。先ほど申し上げましたのは、政治結社、人格のない社団に対しての寄付の場合を申し上げた次第でございます。
  83. 大森創造

    ○大森創造君 具体的な事例でお伺いしますが、ある株式会社があって、それで利益金が一千万円あったという場合に、個人を中心にした政治結社があって、その一千万円の利益金をそっちに——私なら私に、福田会でも、宏池会でも何でもいい——に寄附をする。そうして、税務署のほうではこれは領収証は要らないことになっていますね。領収証は必ずしも必要でない。こういうことになると、脱税はいくらでもできますね。架空の話だけれども、一千万円の利益金をだれだれさんの政治結社に渡しましたということを言明する。そうして、一定期間を過ぎると、その金をその政治家のほうから株式会社のほうに戻してやるということはできますね、いまの法律上。そういうことになるでしょう。いかがでしょう。
  84. 中嶋晴雄

    説明員(中嶋晴雄君) 国税職員が法人税等を調査をいたします場合に、いわゆる使途不明経費と申しますか、使途不明支出にぶつかる場合が相当ございます。その場合、やはりこれはそれぞれ正規の領収証等がなければ、この取引が実際にあったかどうかがわかりませんから、申し立てがありました場合には、相手方につきまして反面調査を取引先調査をいたします。それで合致いたします場合には、法人のほうでは損金に落とし、受けたほうでは課税処理をするというのがたてまえでございます。したがいまして、一般論として申し上げますと、ただいまお尋ねのような領収証がなくてもいいんじゃないか、脱税は公然と行なわれておるというようなことには私どもは考えておりませんし、そういう使途不明支出につきましては十分追及するように指導をいたしておるつもりでございます。
  85. 大森創造

    ○大森創造君 お話はわかるんだけれども、実情はそうでないんですね。有力な政治家の場合には決して課税にならないようにできている。そういうことになっている。だから、先ほど申し上げたように、たてまえはそうでしょうけれども、年間六百万なり八百万の収入しかないはずなのに、数十億の資産ができたなどという現象が週刊誌にすっぱ抜かれる。私は、政治資金規正法というものは、やっぱり時の政治権力者——吉田茂さんがこういうことを言いました。政治家の台所はつまびらかにできないと言ってたんかを切ったことがある。そういう政治的な力のもとに政治資金規正法というものはできていると思う。このことは時間がないからあとにします。  そこで、きょうは、委員長代行理事の方にお願い申し上げますが、私がさっき要求した二つの資料、これはもう必ず本委員会でもって正式に資料要求があれば出さなければならないもの、出して差しつかえないものというふうに了解いたしますので、これは委員理事打合会において御検討の上、ひとつ資料提出をお願いいたしたいと思います。  以上をもちまして、時間がありませんから、終わります。
  86. 山田徹一

    理事山田徹一君) 本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十三分散会      —————・—————