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1966-05-26 第51回国会 参議院 文教委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月二十六日(木曜日)    午前十時三十三分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         二木 謙吾君     理 事                 北畠 教真君                 久保 勘一君     委 員                 楠  正俊君                 近藤 鶴代君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 中上川アキ君                 中村喜四郎君                 山下 春江君                 吉江 勝保君                 小野  明君                 小林  武君                 鈴木  力君                 鶴園 哲夫君                 柏原 ヤス君                 林   塩君    衆議院議員        修正案提出者   川崎 寛治君    国務大臣        文 部 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        文部政務次官   中野 文門君        文化財保護委員        会事務局長    村山 松雄君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国立劇場法案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまより文教委員会を開会いたします。  国立劇場法案を議題といたします。  まず、文部大臣から提案理由説明を聴取いたします。中村文部大臣
  3. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) このたび政府から提出いたしました国立劇場法案につきまして、提案趣旨及び内容概要を御説明申し上げます。  わが国古来伝統的芸能は、歴史的にも、芸術的にもまことにすぐれた価値を有するもので、世界の芸能史上において独自の位置を占める貴重な文化遺産一つに数えられるべきものであります。しかしながら、これら伝統芸能保存のための諸条件は、近時急速に悪化してきておりまして、この貴重な文化退廃内容的にも次第に正しい姿を失ないつつあることは、きわめて憂慮すべき事態であります。したがいまして、現段階において抜本的措置を講じ、その保存振興をはかることは、文化国家としての重要な責務であると考えます。  国立劇場は、右の趣旨から、この伝統的芸能公開して、一般国民の鑑賞に供するとともに、伝承者養成調査研究等を総合的に実施する中心機関として設置するものでありまして、広く各界の協力を受けて具体的構想を練り、一昨年八月、東京千代田区隼町において起工いたしましてから、現在まで順調に工事も進捗いたし、本年九月未完成を目途に鋭意建設を進めております。国立劇場運営につきましては、その業務特殊性にかんがみまして、特殊法人国立劇場設立し、これに国が建設した施設及び土地を出資いたしますとともに、運営費についても一部国庫補助を行ない、もって、円滑適切な運営を期したいと思うのであります。  この法律案は、特殊法人国立劇場設立目的を定めるとともに、その資本金組織業務、財務、会計、監督等に関し、所要の規定を設けたものであります。すなわち、第一に、国立劇場法人といたしますとともに、この法人資本金は、政府施設完成後すみやかに出資した財産の価格の合計額相当する金額といたしております。なお政府は必要があると認めるときは、この法人に追加して出資することができることといたしております。  第二に、この法人業務についてでありますが、第一は、劇場施設設置し、法人みずから伝統芸能公開を行なうことであります。第二は、その設置する施設において伝統芸能伝承者養成することであります。第三は、伝統芸能に関して調査研究を行ない、並びに資料収集し、及び利用に供することであります。第四は、劇場施設伝統芸能保存または振興目的とする事業利用に供することであります。なお、この法人は、これらの業務を行なうほか、この法人目的達成支障のない限り、劇場施設一般利用に供することができることといたしております。  第三に、この法人役員としては、会長一人、理事長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置くこととし、これらの役員文部大臣が任命することといたしております。次に、この法人には、その運営の円滑を期するため、会長諮問機関として、評議員会を置くこととし、また、専門の事項について調査審議させるため、専門委員を置くことができることといたしました。  第四に、この法人は、文部大臣監督を受けるのでありますが、この法律案規定する文部大臣の権限のうち政令で定めるものは、文化財保護法趣旨にのっとり、文化財保護委員会に行なわせるものといたしました。  第五に、この法人設立のための所定の準備手続について規定いたしております。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願いいたします。
  4. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 引き続き、政府委員より補足説明を聴取いたします。村山文化財保護委員会事務局長
  5. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) ただいま文部大臣から趣旨説明のございました国立劇場法案につきまして、若干補足して、御説明申し上げます。  わが国には古来からすぐれた無形文化財が伝承されておりますが、その保存重要性にかんがみ、昭和二十五年からこれらが文化財保護対象とされることになりまして、昭和二十九年度には、重要無形文化財指定制度が設けられ、伝統的な演劇、音楽、工芸技術等の歴史上または芸術価値の高い無形文化財を指定し、その伝承者養成とわざの公開等保存措置を講じてまいりました。特に、雅楽、能楽、文楽歌舞伎邦楽邦舞及び民俗芸能等伝統芸能につきましては、文部大臣提案理由にありましたように、社会的経済的諸事情の変遷により、これらが一般に興行的に成り立ちがたくなっていること等から、内容的にも次第に正しい姿を失いつつあるとともに、伝承者の不足と技術水準の低下もまぬがれがたい状況に立ち至りつつあったのであります。そこで、その公開を初めとして、伝承者養成調査研究、記録の作成、資料収集保存展示等事業を総合的に実施する施設としての国立劇場設置につきまして、関係各界から強く要望が出てまいりました。  申すまでもなく諸外国においても多くの国立劇場設置され、国が相当の援助を行なって、当該一芸能保護に非常な努力を払っているのでありまして、政府といたしましても、右の要望趣旨にのっとり、国立劇場設立し、わが国伝統芸能保護助成努力いたすこととなりました。昭和三十一年四月に国立劇場設立準備協議会閣議決定により設けられ、以後、広く各界意見を徴しながら、国立劇場施設規模敷地選定等について審議検討してまいりました。昭和三十二年六月には、国立劇場設立促進国会議員連盟が結成され、国立劇場設立について促進に当たられ、また、同年七月十日、衆議院(しゅうぎいん)文教委員会において、国立劇場早期実現について決議されました。次いで、三十三年十一月には、現在の東京千代田区隼町に敷地決定いたしまして、以来、幾多の曲折を経ながら、建設規模等実施要綱概要決定し、建築設計案公募等を行ない、三十九年八月に、現在工事中の施設を着工いたしてまいったものであります。なお、この施設は本年九月末竣工、十一月開場を一途に準備を進めておりますが、この施設を適切かつ、円滑に通常させるため、特殊法人国立劇場設立することといたしまして、この法律案を提出いたした次第でございます。  建物概要につきましては、敷地面積が三万四十七平方メートル、九千八十九坪、建物延べ面積が二万六千九百八十八平方メートル、約八千坪で、地上三階、地下二階となっておりまして、公開施設として、大劇場、千七百四十六席、小劇場、六百三十席が設けられ、伝承者養成施設のほか、伝統芸能に関する調査研究を行なうとともに、資料収集保存及び展示等を行なう諸施設がございます。なお、劇場施設伝統芸能の上演、観賞等にもできるだけふさわしいものとするよう専門家意見を徴し、種々の改良を加えております。建設工事費設備費を含めて総額約三十七億円でございます。  国立劇場におきましては、伝統芸能の正しい姿での保存に賞するため、伝統芸能を十分な調査研究に基づいて自主的に企画制作し、公演することを大きな特色としておりまして、この自主公演範囲といたしまして、歌舞伎文楽邦楽邦舞雅楽及び民俗芸能等計画し、さしあたり、初年度は大劇場百二十三日、小劇場七十五日を公演日数に当て、残余は一般に貸与する予定であります。また、公演事業のほか、伝承者養成調査研究等をも行ない、これについては今後漸次拡充いたしまして、もって、伝統芸能公演事業と相並んでわが国伝統芸能保存振興をはかり、文化向上に資したいと考えている次第でございます。  なお、特殊法人国立劇場初年度事業費は約四億二千万円、これに対し約一億一千万円の国庫補助予算案に計上いたしている次第でございます。  以上をもちまして、この法律案提案理由補足説明を終わります。
  6. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) この際、本案に対する衆議院における修正点について、衆議院議員川崎寛治れより説明を聴取いたします。川崎衆議院議員
  7. 川崎寛治

    衆議院議員川崎寛治君) ただいま議題なりました国立劇場法案に対する衆議院修正につきまして、御説明申し上げます。  まず、最初修正部分について申し上げます。本修正は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党共同提案にかかるものであります。  国立劇場法案の一部を次のように修正する。  第一条中「国立劇場は、」の下に「主として」  を加える。  第十九条第二項中「第一条の目的達成支障  のない限り、」を削る。ことであります。  本修正理由は次のとおりであります。国立劇場設立計画の再議に関する従来の経緯、世代芸能関係者の切なる要望もあり、この際、伝統芸能と並んで伝統芸能以外の芸能振興をはかることは必要であると考えられます。よって、右の趣旨を明らかにするため、第一条(目的)に「主として」を加え、業務に関する第十九条第二項の規定中「第一条の目的達成支障のない限り、」を測ることとした次第であります。  以上であります。
  8. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 以上で本法案についての提案理由説明及び衆議院における修正点説明は終わりました。  それでは、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。  なお、政府側より中村文部大臣中野文部政務次官村山文化財保護委員会事務局長が出席いたしております。
  9. 小野明

    小野明君 この国立劇場かできるということは、日本にとりましても芸術文化政策の上で非常に大きい意表があると思うのであります。したがいまして、この際、国立劇場法案審議の冒頭にあたって、大臣わが国芸術文化政策について基本的な方針をどのようにお打ちであるのか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  10. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) わが国伝統芸能はまことに独特のものであり、まして、日本民族としては、この伝統芸能を将来とも長く日本文化のために保存をいたすべきものであると考えておりますが、御本知のように、このまま置きますと、次第に衰微し、あるいは伝承者がだんだん欠乏してくるという傾向もありますので、この際、国としてそういう伝統芸能を十分に広く国民認識を徹底させていくということと、もう一つは、そういう伝承者を育成し、できるだけわが国古来のこうした伝統芸能保存していく必要があると考えておりますので、今回のこの立法もそうした趣旨に基づくものであります。
  11. 小野明

    小野明君 大臣がいまお答えになりましたのは、伝統芸能保護、こういった面に限られまして説明をいただいたのでありますけれども、私かお尋ねいたしておりますのは、国立劇場というのは単なる建物ではないわけですね。やはり一国の芸術文化政策の、ある面からいえば中心的な存在でなければならない。その国の舞台芸術か表現され、集約される、そういったところでなければならぬと思うのであります。そういった面から考えて、いまのところ、この所管といいますか、これはわが国では文化財保護委員会、こういったところが当たっておるのでありますけれども、西欧、特に諸外国の西ドイツあるいはフランスでは、それぞれ科学芸術省、また文化省、こういったものが経営にあたっているようであります。こういった芸術文化に対する政策といいますか、そういった面もあわせてお伺いをしておきたいと思うのです。
  12. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) こうした伝統芸能の問題も非常に重要でございますが、あわせて一般芸能文化向上をはかることは、近代国家として最も必要なことであると私どもも考えております。したがって、将来そういう点につきましては鋭意検討を進め、国として配慮をいたすべきものであると心得ておりますが、ただ、今回の場八口は、いろいろこの計画が始まりまして以来、各方面の意見を聞きつつ、設立準備協議会等検討を続けてこられたわけでありますが、結局、隼町の土地が、どうしても最高裁判所が一部使用いたしまして、最高裁判所をあそこに建設をいたしたいというような半特等もありまして、土地関係から、古典芸能近代芸能と併設するのは困難であるというようなことになりまして、結果的に、さしあたり古典芸能伝統芸能についての施設をしようということになりましたのが今回の国立劇場でございます。したがいまして、将来といたしましては、近代芸能についても別途これは考慮すべきものであると考えております。できますことならば町方兼用ができれば一番いいのでありますが、こうした伝統芸能古典芸能施設と、近代芸能施設とは、音響その他、あるいは関連の施設等が全く異なっておりますので、一つ場所で完全併用することは不可能でございますので、今回の国立劇場設置は、御承知のとおり伝統芸能中心にいたしておりますが、しかし、近代芸能についても使用可能な範囲については、そこは活用も可能な道は考えてまいりたいと思っております。なお、別途近代芸能について、この芸能振興をはかる道を講ずべきであるということは私どもも全く同感でございます。文部省にも、今年の設置法改正によりまして文化局が新たに設けられましたから、今後そうした点については文化局中心研究をし、具体化努力をしてまいりたい、かように考えております。
  13. 小野明

    小野明君 どうもこうお尋ねをしてないところまでみんなお答えをされたんでありますけれども、次に進みたいと思うんですか、国立劇場設立準備協議会ですか、これがまあ大臣お話の中にありましたように答申を出されておるわけですね。これのメンバーはどういうメンバーであるかを実は知らしてもらいたい。こういう通告をしておったのですが、まだ出ておらぬようです。出ておりますか。
  14. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お配り申し上げました。
  15. 小野明

    小野明君 ああそうですが。それでは、いま大臣が、答申はもらったんだけど、土地その他の条件によって現代芸能の面は割愛せざるを得なかった、こういうふうに説明がありました。もう少し詳しく国立劇場設立準備協議会、これがしてきた作業経過ですね。そういうものをお話しいただきたいと思うのです。
  16. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 村山局長から。
  17. 小野明

    小野明君 局長でいいです。
  18. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) お手元に国立劇場設立経過施設概要、それから連帯要綱につきまして資料を差し上げてございます。それからお話の出ました国立劇場設立準備協議会委員の名簿も差し上げてございます。実は設立準備協議会のほうは、経過概要にもありますように、三十一年の四月に閣議決定によって設けられまして、以後、文化財保護委員会としては、この協議会の御意見基礎として諸般の仕事を進めてまいったんでありますが、御承知のように、先年米、閣議決定による審議会類似組織はやめるようにというお話がございましたので、国立劇場設立準備協議会も、中途で、何と申しますか、消滅したような形になっております。しかし、文化財保護委員会といたしましては、形人的にはなくなりました後も、設立準備協議会メンバー方々にお願いいたしまして、諸般準備は進めてまいった次第でございます。  そういうことで、経過概要資料によりまして御説明申し上げますと、国立劇場設立の議は、遠くさかのぼりますと、明治のころからあったようでありますが、今回の国立劇場に関しまする限りは、昭和二一十年ころから起こった議論基礎に進めておるわけであります。昭和三十年に、文化財保証委員会国立劇場設立準備調査のための予算が計上されました。それが初めてで、以後、諸般準備を進めた次第でございますが、文化財保護委員会設立準備の経費が計上されたということは、今回の国立劇場の議案が、現代芸能の問題ももちろん含めてはおりますけれども中心的な課題は、まあ伝統芸能保存振興にあるのではないかというのを示唆しておるのではないかと、私ども承知しておるわけであります。そういう次第で、文化財保護委員会準備調査費が計上されまして、三十一年に国立劇場設立準備協議会閣議決定設立されました。それから最初のうちは、とにかくこの建物をつくるのが先決の課題であるというような認識があったようであります。特に設立準備協議会の幹部であった、なくなられた小宮豊降先生とか、久保田万太郎先生などは、いろいろ議論もあるけれども建物をつくらなければすべての議論文字どおり空中楼閣のようなもので根拠がない。建物をつくることに全力を集中すべきであるというような御意見であったようであります。建物をつくるためには、今度はまた敷地がなければ問題になりませんので、設立準備協議会の当初の努力は、文化財保護委員会政府ども一緒になりまして、敷地をどこにするかということに集中されておりました。敷地さがしをするかたわら、どういうものをつくるかということも、もちろん並行的には進められておったわけでありますが、敷地さがしとして比較的いろいろな案があったわけでありますが、比較的具体的な案としては、結局きまりました隼町の元パレスハイツのところと、それから大宮御所の一画を国立劇場に充てたいという両論が相並んで進んでおったわけであります。その間に国会のほうからも設立促進についていろいろな動きがありまして、三十三年の十一月に、国有財産中央審議会におきまして、現在の隼町の敷地約三万平方メートルが国立劇場敷地として最高裁判所と同時に決定されました。そこで、敷地がきまりましたので、今度は敷地に建てるべき建物、それから建物中心として展開する活動内容のほうに準備協議会議論が移ってまいりまして、三十四年の六月から九月にかけまして建物建設のための基礎的な案が答申されまして、それには伝統芸能のみならず、現代芸能のための施設、能楽堂といったものまで含んでおったわけでありまして、国立劇場計画案としては実は最大規模にふくらんだ時期でございます。そういう答申を得まして、現実の三万平方メートルの敷地に当てはめて、建築基準法関係、あるいは都市計画関係、それから当時進められておりました高速道路との調整、その他技術的な検討に入りますと、三万、平方メートルの敷地にこのような膨大な建物計画をはめることばとうてい不可能であるということが判明したのであります。  そこで、現実具体案として、どういう順序でどういう建物をつくるかにつきまして、国立劇場準備協議会においても種々議論をいたしました、その結果、三十六年の二月に至りまして、現在の伝統芸能中心としたプラン修正決定になった次第であります。伝統芸能中心にしぼった理由は、何と申しましても国立劇場設立の順位が、どちらかより衰亡に瀕しておって振興の必要があるかという緊急度を考えれれば、やはり現代芸能よりも伝統芸能のほうが先であろう。現代芸能につきましては、そういう保存振興をはかることもさることながら、自主的な発展を見守ってもよろしいのではないかというような議論がありまして、狭い敷地に何から先にやるかということになれば、伝統芸能のほうが先だということで、三十六年の二月に現在のような姿の国立劇場建設案修正可決になったわけであります。  そのいきさつは、そのころから、実はこの国立劇場設立準備協議会は、先ほども申し上げました法律によらざる審議会対象というような意見とも関連いたしまして、あまり全体組織活動がひんぱんに行なわれずに、何と申しますか、運営委員といいますか、常任委員といいますか、そういう小範囲方々議論が進められておったわけでありますけれども決定になりましたので、当時の全メンバー方々にはいきさつを文書で御連絡を申し上げまして、御了解を願ったと考えまして、伝統芸能中心とした案で以後の作業を進めたわけであります。  次に、計画がきまりましたので、建築計画につきましては、三十七年に至りまして予算の大ワクにつきまして大蔵省と折衝し、それから実施計画につきましては、国立劇場趣旨にかんがみまして、懸賞公募いたしまして、当選案が三十八年になりまして岩本博行氏外十三名のプランになるものがきまりました。で、この当選案基礎といたしまして予算文化財保護委員会に計上されまして、実施設計を行ない、三十九年に至りまして着工の運びとなり、文化財保証委員会に計上された予算建設省に執行をお願いいたしまして、それから工事担当者としては竹中工務店が決定しまして、三十九年の八月に起工式を行ない、三年計画をもちまして本年の九月には竣工する、こういう運びになったわけであります。  そこで、この建物運営する運営組織としては、これまた設立準備協議会でいろいろな議論がありましたが、主たる議論は大別して二つあったようであります。一つは、直接、国立国営でやるべきだという案と、もう一つ特殊法人方式でやるべきだという案のようであります。この両案につきましては、実は先ほどちょっと小宮先生久保田先生の御意見を御紹介いたしましたが、やはり建物のほうに主たる勢力が注がれまして、運営方式をそれほど準備協議会で深刻に議論したことは建物に比べるとないようであります。しかし、一応、国立国営か、特殊法人方式かというようなことが当選案にも出ておりますし、そういう考え方でまいったことは事実のようであります。文化財保護委員会におきまして、いよいよ四十一年度の建物完成、それから劇場活動の発足を前にいたしまして、四十一年度予算を編成するにあたりまして、この運営方式につきましてもいろいろ検討いたしました結果、結果的にはいま提案しておりますように、特殊法人方式に踏み切ったのであります。その理由としては、これまた明確に御説明することは困難かと思いますが、国立国営というのは、国が全責任を持つ上におきましてはよろしい点もありますが、何と申しましても相当金額規模事業でありますし、その事業内容に、何と申しますか、いわゆる浮動的な要素が多い、いわば水商売的な劇場運営をするには、どうも国立国労では窮屈過ぎてまずいのじゃなかろうか、たとえば、早い話が出演する俳優の出演料にいたしましても、これはかりにこれを公務員というようなことにすれば、とても公務員の常識では考えられないような出演料を取っているわけでありまして、国でやるがゆえにこれを安くするわけにもまいりませんし、それから大体常識的に現在行なわれておるような出演料を払うとすれば、どうも国の給与的な考え方でこなし切れないものを含んでおるし、それから仕事の内容についても、必要があれば朝から晩まで時間かまわずやらなければならぬというような事情から、公務員の勤務体制ということには必ずしもなじまないというような懸念もございます。それらの諸般の事情を勘案いたしまして、特殊法人でも必ずしも十分な弾力性がないわけでありますが、国立国営よりは、劇場のような浮動性のあるリスクを持った仕事を運営するにはベターな運営方式であろう、こういう考え方のもとに特殊法人方式国立劇場を発足させることに踏み切りまして、現在御審議願っておるような案を提出した次第でございます。
  19. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 暫時休憩いたします。    午前十一時九分休憩      ―――――・―――――    午後二時四十二分開会
  20. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  午前に引き続き、国立劇場法案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。  なお、政府側より中村文部大臣村山文化財保護委員会事務局長が出席をいたしております。
  21. 小野明

    小野明君 午前中に事務局長のほうから国立劇場設立経過概要というものをお聞きしたわけなんですが、私のお聞きしたい点が抜けておるわけですね。その点は、あなたのほうかう配られた資料で、国立劇場関係資料というものの表紙をあけてすぐのところですが、三十四年の九月八日、ここで、第一劇場伝統芸能、第二劇場現代芸能、その他関係施設、こういった案ができておるわけです。で、上記案が不可能な場合に、次の下の欄に書いてある第一、第三とそれぞれ伝統芸能、こう書いてあるわけです。私の質問しておる立場というのは、やはり伝統芸能というものは正しい保存をしながら、これが世代にどう生かされてくるか、創造発展させていくか、こういう立場から若干疑問を持っておるのでお尋ねをしておるので、結論として、この上の欄から下の欄に飛躍があまり大き過ぎると思うのです。それでこの間の問題を少し説明をしていただきたいと思うのです。
  22. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 前回御説明申し上げましたように、主として敷地関係で、当初立てました大きな建設計画は入らないことが明瞭になりました。しからば敷地の中にどれだけのものを収容し得るかという次善の策を立てる段階になりまして取捨選択が行なわれたわけでありますが、結論的に申し上げますと、伝統芸能のみになったわけでありますが、その経過を若干詳しく申し上げますと、一つは、伝統芸能のほうが考え方がまとまりやすく、現代芸能のほうはいろいろな議論がありまして、一つのコンクリートな建設計画を固めるのにむずかしい点があったということがいわれようかと思います。第二には、現代芸能のための施設は、大きさからいってもきわめて大きいものをという御要望が強かったわけであります。小さいものではとてもだめである。席数にしても、極端に言えば二千人をこえる大劇場でなければつくる意味がないというような御意見が強くて、狭い敷地に立てる計画としてはますます取り上げにくいといったような事情があったようであります。  それからややデリケートな問題になりますが、当時の準備協議会メンバー、特におなくなりになった方を引き合いに出してぐあいが悪いわけでありますが、会長であった小宮豊隆先生とか、あるいは副会長であった久保田万太郎先生ですとか、そういう方々が、取捨選択するとすれば伝統芸能が先であるということをおっしゃり、そういうことが案の変更にかなり強い影響を及ぼしたのではないか、これは若干想像を交えた御説明になりますが、そういう事情があったようでございます。その他細部の点はいろいあろうかと思いますけれども伝統芸能にしぼった最大の理由は、午前中に御説明申し上げました大ざっぱに比較検討すれば、より緊急なのは伝統芸能であるという線が一本あったのと、こまかい理由を申し上げすまと、いま申し上げたような三つの点がおもな理由となって伝統芸能中心具体案が固まった、かように承知しております。
  23. 小野明

    小野明君 そうしますと、国立劇場設立に関する答申ですね、これを見ますと、大体、文部省が諮問され答申をされたものにいままでのものはいいものはないんですけれども、これの答申、私のもらった資料の中では、この目的にこういうふうに書いてあるわけですね。「国立劇場は、日本芸能の伝統を正しく保存するとともに、新しい芸能の創造発展をはかることを目的とする。」こういうふうに書かれておるわけです。そうすると、メンバー構成か何か知りませんが、非常に答申目的、これに反する計画が実現されつつある、こういうことが言えるわけですね。
  24. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 設立準備協議会は三十一年にできまして、午前中に御説明申し上げたような経緯で、途中でいわば事実上廃止のような状態になり、メンバーもかなり出入りがあったわけであります。それからいわゆる答申なるものも何回かにわたって出されております。御説明申し上げましたように、ある段階では非常に広範囲現代芸能を含めた施設設置計画答申もありましたが、それが技術的にむずかしいということで、設立準備協議会それ自体におかれましても再三議論した結果、最終的な設立準備協議会の御意見は、伝統芸能中心国立劇場設立案になったわけでありまして、文化財保護委員会はその最終的な答申基礎として今回の国立劇場設置計画を進めたわけでありまして、設立準備協議会趣旨に反した方向で具体的な計画が進められたわけではございません。
  25. 小野明

    小野明君 そうしますと、その準備委員会の結論としてこれになった、こういうふうにおっしゃるわけですが、ところが、私のところに陳情書が出ておるのです。名簿をいただいておりますが、かなり重なった名前があがっておるわけです。伝統芸能だけになった。これではこういうことが言われておるわけですね。「国立劇場目的業務が、革に伝統芸能保存振興だけではなく現代芸能の創造育成にあるということは、伝統芸能にたずさわる方々の代表も含めてほとんど全員の意見一致をみているのであります。ですからこの法律案国会審議を通過するということは、現代芸能に親しむ広汎な国民を裏切ることにほかなりません。そればかりか、国際交流の盛んな今日、諸外国にたいして時代錯誤の感を抱かせることをおそれるものであります。」、こういうことが、この準備委員会の委員の中から、相当有力と思われる多数の方々から出ておるわけです、この国立劇場法案審議に当たって。それで、この目的には反しないとおっしゃるけれども、まあ結果的には、この法律案を見ましても「主として」という修正は入れられたようです。これはあとでお聞きしますが、伝統芸能だけを守り、保存していくというものなんです。それでお尋ねしたいのは、この国立劇場設立準備協議会委員名簿、これをいただきましたが、これに委員と臨時委員というのがありますね。これはどれが委員で、どれが臨時委員になるのですか。
  26. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) お手元に差し上げました資料の二枚目の終わりまでが委員でありまして、三枚目以降が臨時委員であります。経過的に申しますと、委員で発足いたしましたが、いろいろ範囲も広うございますし、専門的な事項も出てまいりましたので、あとから臨時委員を補充いたしまして、運営としては委員と臨時委員とあわせて会議をやってまいった、それから必要に応じて分科会、小委員会をつくって審議をしてまいったというのが準備委員会の運営の実態であります。
  27. 小野明

    小野明君 もう一回そこのところ説明してくれませんか。委員と臨時委員に分けた理由といいますかね。
  28. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 資料で御説明申し上げますと、最初の二枚に掲げてある方が委員であります。それから三枚目以降が臨時委員になります。分けた理由は、最初委員で発足いたしましたが、専門的な事項があり、かつまた、審議する範囲も広範になってまいりましたので、臨時委員を追加して、委員と臨時委員とをあわせて運営してまいったというのが実態であります。
  29. 小林武

    ○小林武君 ちょっと関連一つあります。国立劇場経過というのは、先ほど小野委員から質問されているように、だんだんA案からB案に、B案からC案、最後にとにかくA案となった、これは簡単にぼくがあれをつけたのですが、そういうふうに変わっていくでしょう。逆に伝統芸能経過的にはしぼられていくのですよ。ところが、あとから準備委員会に入った人たちというのは、これは必ずしもそういう古典芸能ばかりの人じゃないのです。ここらあたりがおかしいと思うのだ。案がだんだんせばめられていく。あとのほうでいろいろな方面からの意見を聞きたい。こういう行き方というのは、どうもぼくらには納得がいかない。だんだん広げられていくというなら話はわかるけれども。それとももう一つは、結局、ぼくは聞いていて、久保田万太郎さん、小宮豊隆さんという二人の御意見でこういうようなことになったというようなことを言われては――先ほどのあれではそういうことになる。それじゃ何のために国立劇場設立準備協議会をつくったのか意味がなくなる。二人の意見によって左右されるという性格のものではないのです。ただし、予算がどうとか何とかということなら話は別ですよ。
  30. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 設立準備協議会審議経過につきまして、多少誤解されておられることがあるようでございますので申し上げますが、最初にできましたのは昭和三十一年であります。で、そのときは、実は伝統芸能中心に考えたわけであります。と申しますのは、先ほど来御説明申し上げましたように、調査費も文化財保護委員会に計上されております。文化財保護委員会に仕事があずけられるということは、やはり無形文化財保護、それから振興ということがまあ動機であったことを立証するわけであります。ところが、三十一年にこの準備協議会が発足いたしますと、現代芸能の方から、範囲が狭いこと、それから委員どももっと範囲を広げるべきであるというような御意見が出てまいりまして、現代芸能を含めた方々が参加されて、現代芸能を含めた設立計画案審議されるようになったわけであります。それが大体三十三、四年ごろで、これが、委員も一番ふくらみましたし、それから計画それ自体も大規模になった時期でありまして、それと前後いたしまして敷地がきまって、敷地に当てはめた具体的なプランを練るに至った段階でまた計画が縮小していった。そういう経過をたどっておるわけでありまして、計画が縮小し始めてから臨時委員を増強したわけではありません。臨時委員を増強して計画がふくらんで、それがまた主としてその敷地の制約によって縮んでいったのが経過であります。  それから計画の変更が、当時の会長であった小宮先生久保田先生の個人的意見に左右されたかどうかということにつきましては、これはまあ正確に立証することは困難でありますが、委員会として運営してまいった以上は、会長や副会長の個人的意見委員会の結論が全面的に左右されるということはあり得ないと思います。そういう意味もありまして、たまたま二人とも故人でありますので、実は私お名前をあげるのも若干ちゅうちょしたわけでありますけれども、そういう発言もあったというような申し継ぎもございますので、参考までに申し上げた次第でありまして、お二人が伝統芸能を主にしたお考えの持ち主であったということは事実であるようでございますが、さればといって、お二人の個人的な意見委員会が全面的にその方向づけられたということではないと考えております。
  31. 小林武

    ○小林武君 もうこれ一回でいいです。またあとで質問しますからいいですけれども、あなたの先ほどの説明からすればそういうふうに聞こえるのです。ぼくが誤解しているわけではない。会長、副会長がそういう御意見であった、そういう説明をあなたはされたでしょう。だから、ぼくの聞き方はそういうふうに聞こえるのです。誤解なんというものじゃない。ぼくが前に何か聞いておって誤解して言っているのじゃない。あなたのおっしゃり方がそういうものだったからそういうふうにぼくは受け取ったのです。  それから、人選の問題なんですがね。いろいろな人がいる。これは一体どういうふうにしてお選びになったのですか。たとえば伝統芸能であるからとか、それから一番議論のあるところですが、ぼくは金の問題もあると思うのです。金の問題があると言っても、金をくれる人を集めているわけではないと思う、国でやるのですからね。そうすると、一体、国立劇場設立するという趣旨、それに沿うたどういう計画であって、どういう建物をやって、どういう目的でやるのかということをまず委員会というものはやるべきだとぼくは考えている。それから、あなたのほうで出した経過のあれはほとんど読みました。だから、あなたのほうで誤解されるなんて言われなくても、ぼくのほうでは、相当あなたのほうで委員会前から出したやつを全部目を通しました。そんないいかげんなことを言ってはいけない。そこで、この国立劇場の人選、なかなかぼくはおもしろいと思って見ておったのです、私なりに。なかなかいろいろな方面の人を集めている。その集めるときに、一体どういうあれで集めたか、あまり関係のない人もこの中にいると思う。どういう尺度で――岩井君は労働組合の幹部だから入れておかなければぐあい悪いということで入れたのかどうか知らぬけれども、これは一体どういう気持ちで準備委員というものを選んで、結論としてはどんな結論が出ようが、これだけの人を集めれば大体どういう方向のことが明らかになると一体お考えになったのか、そこらを聞きたい。それからもう一つは、一体これらの人たちの出席の状況はどうであるのか。何回やって、これは全員出席のもとにやられたのかどうか。いつも出席の程度はどういうぐあいになっておったのかということも聞いてみたい。
  32. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 委員の選任の基準について、明確な基準があって、それにあてはめて選任されたというぐあいには私は承っておりませんが、およそ劇場をつくるということになれば、おのずから劇場でやる演目の種類、それから活動の方向ということは見当がつくわけでありまして、歌舞伎とか、それから文楽であるとか、邦楽であるとか、そういう伝統芸能専門家最初中心に考え、それから関係官庁のそれぞれ所管の方々というような方でまず発足したように考えます。それからその後の追加につきましては、実はこういう議がのぼりましていろいろ御意見が出てまいったようでありますので、御意見がおありの向きをなるべく漏れなく含めるようにして、委員会になるべく各方面の意見が反映するように配慮したということだと思います。それから協議会委員の出欠状況でありますが、一々出欠をとった記録は実はないようであります。聞いてみますと、必ずしも毎回全員出席というような状況ではなかったようでございます。なお、先ほど申し上げましたが、事項別に分科会をつくり、それから比較的少数の方々常任委員というのをつくって運営してまいったようであります。そう長くありませんので、常任委員としてあげられた方だけを名前を申し上げますと、小宮豊隆、久保田万太郎、河竹繁俊――これは文化財保護委員に任命される以前の状態であります。これが会長、副会長ということです。それから委員に入りまして、加藤成之、伊藤圀夫――これは千田是也さん。新関良三――これは都民劇場理事長で共立女子大学の文芸学部長をされた方です。吉田五十八。伊藤熹朔、阿部真之助――これはなくなられました。高橋歳雄、それから花柳芳三郎――これは現在の寿翁さん。それから小汀利得、それから石坂泰三、谷口吉郎、堀内敬三、福田繁――これは当時管理局長として建物関係で入ったようであります。以上十六名を常任委員として運営してまいったようであります。
  33. 小林武

    ○小林武君 まああとでまた質問しましょう。
  34. 小野明

    小野明君 どうもその辺が、私もどうして修正議決が、三十六年の二月十六日に準備協議会において修正可決、これに至ったのか、その辺の経緯がよく理解できないのです。それで、先ほどの準備協議会ですか、国立劇場設立に関する答申、これの目的と実際がやはり背馳していない、間違っていないのだ、こういうように言われたのですけれども、やはり多少――多少ではありません。いまのお話を聞いてみますと、非常に無理があるように思うのです。この三十四年に答申をされた趣旨が、私のほうと、あなたからもらった国立劇場設立経過概要と多少異なっている。国立劇場設立に関する答申というやつ、あなたお持ちでしょう。この趣旨をもう一回要約してくれませんか。
  35. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 三十四年の答申は、実は二段階に分かれておりまして、五月と六月と二つあわせまして、いわゆる三十四年度の一番大規模答申になっているわけであります。そこで、答申目的として掲げられておりますのは、「国立劇場は、日本芸能の伝統を正しく保存するとともに、新しい芸能の創造発展をはかることを目的とする。」ということになっておりまして、施設としては第一劇場、これは古典を主とするものであります。それから第二劇場、これは現代芸能を主とするものであります。それから能楽堂、これに資料、調査、養成施設をつけたものをつくるべきである、こういう答申になっております。なお、六月にその一部を修正いたしまして、文楽に関する小劇場をつけ加えまして、これをあわせまして三十四年度の設立準備協議会答申という扱いになっております。
  36. 小野明

    小野明君 そうしますと、やはり答申趣旨からいくと、日本芸能の上演に適すると同時に、現代芸能の上演にも応ずるようにくふうしなければならない。あるいは第二劇場は、今度は現代芸能が先で、あと古典芸能に応ずるようにしなければならない、こういうようになっているのですね。これが再度、初めの問いに返るのですけれども、三十六年の二月十六日に修正可決をした。修正可決をしていまの劇場構想というものはでき上がった、こういうのですが、やはり現在、これの問題として現代芸能家の意見が分かれた。これが一つと、それから非常に現代芸能に応ずる劇場設立といいますか、建築がむずかしいのだ、そういう技術的なものになるのかどうか、再度説明いただきたいと思います。
  37. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 計画変更の理由が明文をもって示されたわけではございませんので、自信を持って断言するのははばかれるわけでありますが、私ども承知しておるところでは、一番根本的な理由は、狭い敷地にどうしても目的の一部しか実現できないとすれば、伝統芸能が先で、現代芸能は次の段階というのがきめ手となったようであります。
  38. 小野明

    小野明君 そうしますと、この答申されておる趣旨というのは、やっぱりあくまでも生かさなければならぬと、このようにお考えでございますか、どうですか。これは大臣がいいかもしれませんね。局長大臣にひとつお尋ねしたい。
  39. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 実は審議会等の答申を得まして、それを役所として実現するにはいろいろな段階があろうかと思います。もちろん審議会答申を全面的に、実現でき得ればそれが理想でありますが、国立劇場の場合は審議会――協議会を便宜審議会と申し上げますが、審議会答申のしかも三十四年の一番規模の拡大した段階の答申を全面的に実現することは、もうこれは不可能ということに協議会それ自体も認識せられたわけでありますし、したがって、協議会それ自体としても答申修正せられておるわけであります。で、文化財保護委員会としては、その修正せられた答申基礎として具体的な計画をつくり上げたわけでありまして、三十四年ごろの答申は実は、実現に着手せられなかったということを申し上げたほうが正確かと思います。しからば、その三十四年ごろの実現せられなかった答申趣旨はどうであるかということであれば、これは長い目で見れば、そういう方向で努力すべき筋合いのものと心得ます。
  40. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私どもも実は直接の関係のない時代、国立劇場に関するうわさ等を聞いておりましたが、いろいろな変遷があったようで、今度私もこういう担当者としてそれを大体総じて見ますと、昭和三十年に初めて国立劇場建設の議が起こって閣議決定をしたころは、伝統芸能歌舞伎を初め能楽とかいろんな伝統芸能をこのまま置くと種切れになってしまうのではないか。何とか国の力でやろうということで起こったのであって、したがって、その所管の役所としては、文化財保護委員会中心にやらせようということになって、文化財保護委員会中心でスタートしたわけですが、さて、この準備協議会をつくってみますと、伝統芸能だけでなくて、やはり現代芸能も大いに取り上げるべきだという意見が世間にもあり、そういう意見がこの協議会の内部でも起こりいたしまして、いろんな変化をたどりましたが、昭和三十四年の六月ごろの段階では、大体、伝統芸能現代芸能とをあわせて四劇場ぐらい、四つぐらいつくろうということになってきておりました。そこで、先ほどの運営委員会ですか、管理会のような機関もありまして、建設関係ですから、東京都の都市計画との関係もあり、東京都の建築建蔽率等を担当しておる部局ともいろいろ検討をされた結果、建蔽率の上からどうもそんなにはとうていできないということになってきた。その後、しからば伝統芸能現代芸能と二つぐらいの大劇場をつくったらどうかというような案も出たようです。その段階でまた東京都と交渉をしたようですが、そのころには昭和三十四、五年ころから高速道路計画というものが始まりまして、二つの大劇場をつくったらどうだという案ができたころには、東京都に折衝したころには、もう高速道路というものの計画ができ上がってきている、高速道路の三号線、四号線との関係で、そのほうにも土地を取られる、とても大劇場二つは無理だということになってきて、その後またさらに変化をしてきて、しからば、まず将来憂えられておる伝統芸能について小劇場中心につくったらということに議がまとまってきまして、準備協議会の中にももちろん現代芸能方々も入っておったわけですから、この方々としては不本意であったろうと思うのですが、まあしかし場所がそういうことで、それだけのスペースがない。さらに高速道路に一部と取られるということであれば、自分らは希望を将来に託して、この案でいたしかたないだろうというのが、最終的に昭和三十六年二月十六日の結論になったというように、私は大局的に経過を見てみますと、変化して来ていると思います。そこで私どもの現在の考えとしては、いまお尋ねございましたが、さしあたりそういう趣旨にのっとりまして、今度の国立劇場設置いたしますについて、今後やはり現代芸能というものについては、大いに助長、育成すべきことは、国家の文化的な発展の上から当然のことでございますから、これは十分に、何ということばが当たりますか、前向きの態度で積極的に検討を進めるべきであろう、こう実は現在考えておるような次第でございます。事の起こりのころから、中間から、終わりころからいろいろ変化をしてきて、その変化にはそれぞれの事情、理由があったように思うのであります。
  41. 小野明

    小野明君 現在建築されつつある国立劇場、これがいわゆる古典芸能だけを保護する、保存していくという立場で建てられているというのは、われわれはわかるわけです。しかし、答申をされました三十四年の答申趣旨は、先ほども私は申し上げたのですけれども古典芸能というのは、それだけに値打ちがあるものじゃないのですね。やっぱり現代芸能に生かされて初めて芸術としての価値があるものなんですね。そういう趣旨答申目的にもはっきり書かれておる。意地の悪い言い方をするならば、この諮問委員メンバーがやっぱり頭株が非常に古いと言いますか、文化財保護委員会的な人が非常に強力な意見を持っておられて、金も制限がある、土地も制限がある、こういうことであるならば、いっそすっきり古典だけのものをこしらえようじゃないか、現代芸能の面はそれならどうするか、これは口やかましいやつがおるから、努力した、あるいは前向きで検討したと言うておけばいいじゃないか、具体的計画は持たぬでもいいじゃないか、こういうふうに見られないこともない。午前中の村山局長の話の中にも、説明の中にもこういうことばがあるわけです。それじゃ現代芸能については一体どうするのか、この議論については、しばらく推移を見守る、推移を見守るというのは、ことばはいいのですけれども、裏返して言えば放ったらかしておけ、こういうことなんですね。だから、諮問委員のこういった有力なメンバーから、この法案かかかってきた場合に、きびしいことはで修正してもらいたい、こういうことのつき上げが来ているわけです。だから、古典芸能保存と同時に、やっぱり現代芸能についても三十四年の答申趣旨を生かされた具体的な長期計画、構想というものがなければならぬと思うのです。こういった点について衆議院でも修正になっておるのですがね、大臣はどのようにお考えになっておるか、あるいはまた事務局はどういった計画をお持ちであるのか、その辺をお尋ねしておるのですがね。
  42. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私の気持ちを率直に申し上げますと、大体、国としての理想としては、昭和三十四年の六月ごろ、伝統芸能現代芸能について四つぐらいの大小の劇場をつくったらどうかという答申をされたころの考え方が、国の将来向かうべき理想であろうと私は思っております。ただ、敷地その他建蔽率あるいは高速道路との関係等でこういうふうに制約をされてきた。そこで、初めの発想の、起こりの伝統芸能が、このままおけば種切れになってしまうのじゃないかという憂慮から生まれたところに、一応それだけをさしあたり実脱するということになったと思うのですが、現在でも文部省としては現代芸能については相当の補助金を出しまして、創作活動やあるいは普及活動に、大体、相当といいましても年額六、七千万円の金でございますが、助成をしておるわけで、今後こういう国立劇場計画というものについても、設立準備協議会昭和三十四年のころに考えられた構想というものを実現に移していくべきものだろうと、かように思っておるわけです。そこで、歌舞伎伝統芸能については、たとえば歌舞伎なら歌舞伎については歌舞伎保存会という統一的のものができておりまして、それらと連携すれば白土公演をやったり、伝承者の育成をやったりすることも可能であるわけです。現代芸能につきましては、なお今後研究をすべきことは、非常に現代芸能はまだ派がたくさんございまして、たとえばイタリアとか、フランスのように、オペラならオペラというもので長い伝統があれば、その国立劇場をつくることも、また自主公演することも簡単にできますけれども、現段階では、現代芸能については自主公演ということはいまの状況ではいろいろな派があり、たくさんの流儀がありますから非常な困難が伴う。そこで、ただ場所貸しだけの国立劇場をつくるか、あるいは自主公演をある程度含めた国立劇場にするかというようなことは、今後やはり相当関係者の衆知を集めて検討をすべき問題点ではなかろうか、かように考えておる次第で、私ども日本の国の文化的な発展の上から現代芸能を軽視するようなことは好ましくないので、むしろ積極的に助長育成をしていく、べきもの、また、その助長育成の道は、現在のような補助金などの行き方よりはもっと具体的に、こういう国立劇場のような具体策を講じてやるべきであるというような点については、今後ひとつ積極的に、前向きに研究をすべき課題であろうと、こういうふうに実は目下のところ考えておる次第でございます。
  43. 小野明

    小野明君 衆議院修正されておるわけですね。「国立劇場は、主としてわが国古来の」と、こういうふうに「主として」ということばを入れられた、あるいは附帯決議の趣旨はもういま大臣が言われましたように、「施設その他につき、必要な措置を講ずべきである。」、こういうふうにつけられておるのですね。これがきめられたときには、大田も御趣旨に従って努力しますというようなことを害われたと思うのですけれども、再度この附帯決議なり、あるいは修正についてどういったお考えをお持ちであるのか、その点をお尋ねしておきたいと思うのです。
  44. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 両院を通じてこの修正及び附帯決議が議決された場合には、私ども十分にその趣旨を尊重してまいりたい、かように考えておる次第でございます。そこで、「主として」というのに修正されることになりましたが、問題は劇場の音響効果・あるいは舞台などにつきましても、伝統芸能の場合と、現代芸能とは、舞台、それからオーケストラの場所、こういうものが非常に設備的に違いますから、今後、修正及び附帯決議の趣旨を尊重してまいるにいたしましても一、どこまで包容できるかという点は、やっぱり実際に使う方々と御相談をしてやりませんと、その施設利用効果が問題があると思いますから、そういう点はありますが、とにかく修正及び附帯決議については、私どももその御趣旨を尊重してまいりたいと、かように考えております。
  45. 小野明

    小野明君 先ほどの施設その他についても検討していくんだと大臣が答弁されましたから、その点とあわせていまの御答弁を伺っておきたい。古典芸能保存のために国立劇場を建てられた、現代芸能のためにもそういったことを実現するために努力するのだと、こういうことでございますね。――それから、これは小さい問題になるかと思うのですが、われわれにとっては大きな問題ですが、国立劇場の入場料、それから、これはまあ何日か定期興行をやってあいているときがあるわけですね、貸し劇場をやるのですが、その貸し料、それからあわせてこれに対する国庫補助、あるいは入場税等の関係ですね、これはどのように局長お考えでございますか。
  46. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) まず入場料でありますが、これは考え方といたしまして、国立劇場でありますが、民間で同種の芸能をやっておるわけでありますので、それとの均衡も考慮しなければなりませんので、種々検討しました結果、現在、予算で計上いたしておりますのは、民間の同種の演劇をやる料金よりはやや安くするけれども国立劇場であるからといって非常に安くするという考え方はとっておりません。施設の貸与料金につきましても同様でありまして、民間の劇場型のところ、たとえば歌舞伎座であるとか、明治座であるとか、新橋演舞場であるとか、そういうところよりは安くいたしますが、いわゆるホール型と称するもの、たとえば三越劇場、それから東横ホール、それから産経ホールというふうに、いわゆるホールと称するところよりは高めになっております。これはやはり照明ですとか、それから音響ですとか、そういうサービスともにらみ合わせて実質的には安いと考えておりますが、金額的に申し上げますと、民間の演劇専門劇場よりは安いが、貸しホールの形をとっておるところよりは高いと、こういうことになります。それから入場税の問題でありますが、これにつきましては、国立劇場で、行なう口上公演無形文化財公開中心とする自主公演につき、なしては入湯税を課さないことになっております。それから、この施設を貸与する場合は、貸与された劇団が興行の主体となるわけでありまして、その場合につきましては入場税の非課税という措置はとられておりません。
  47. 小野明

    小野明君 具体的に幾らという額は出てないかもしれませんがね、幾らくらいになるものか、それまで検討されておれば額がすでに出てくると思うのですが、額をひとつ出してください。
  48. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 国立劇場の諸料金につきましては、法人が発足後、料金規定といったようなものをきめて実施することといたしおります。現在の段階では、予算単価でございますが、入場料について申し上げますと、大劇物で歌舞伎公演をする場合は、一等席千八百円、ニ等席千二百円、三等席四百円、それから邦楽邦舞、指定芸能等々を実施する場合には、一等料金千五百円、邦楽の場合は千、雅楽は八百円、民族芸能の場合は五百円、それから小劇場につきましては、歌舞伎邦楽邦舞文楽等の場合は千円、それから民族芸能や狂言などにつきましては五百円というような単価で計上いたしております。そういう関係もありますので、本ぎまりになるのは劇場発足後の料金規定にまつわけでありますが、予算が積算されておるわけでありますので、この金額から著しく増減をすることは実際問題としてできがたいので、この前後で決定されることと思います。それから劇物の貸与料のほうは、これは有料公開の場合、それから無料非公開の場合、それから演劇以外のものに使用する場合、たとえば会合ですとか、儀代とか、そういうものに使う場合、その三段階に分けまして、また、さらに平日とそれから土曜、日曜、祭日それから、全日とそれから午前、午後、そういうことでみんな違うわけでありますが、一番高い場合、つまり有料公開で全日を使う場合、平日で五十万円、それから土曜、日雇、祝日で六十五万円というのが予算の積算単価であります。それから一番安い場合、つまり儀式等に使う場合は、大劇場で全日使う場合、平日十二万五千円、それから土曜、日曜、祭日が十六万二千、そういう予算単価になっております。これも本ぎまりになるには国立劇場の料金規定ということできめるわけでありますが、予算単価がこうなっておりますので、大体これを基礎にしてきめることになろうかと思います。
  49. 小野明

  50. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 失礼いたしました。国庫補助といたしましては、これは初年度は実は十一月に開場を予定しておりますので、ほぼ事業費としては半年分、それから人件費としては、実は国立劇場は、法案にありますように、公布の日から施行することといたしまして、年度早々から発足を予定しましたので、ほぼ十カ月分ぐらいを計上してお石わけでありますが、それに対する専業費は約四億円であり出して、国庫補助は一応一千三百万を予定いたしております。
  51. 小野明

    小野明君 値段を聞いて私は驚いたのですが、国立劇場という名を冠するならば、もっと庶民に親しめる私は料金であってほしいと思う。それはむちゃくちゃに高過ぎる。これは民間と変わらないですよね。ここでお尋ねをしたいのですが、特にまた貸しホールなんかの場合でも、五十万円といったら現代芸能を育成助長すると言われますけれども、とてもこれだけのものを払える人たちはないですよ。結局、こういった料金の面で、現代芸能に親しむ庶民といいますか、そういうものを締め出してい乙ということがはっきり言えると思うのです。そこで、特に諸外国、ヨーロッパの国々で国立劇場を持っておるところがありますね、これは一体、午前中もちょっとお尋ねをしたのですが、この例を、どういう運営になっておるか、あるいは入場料の関係ですね、国庫補助関係、そういったもの、また年間予算、こういうものを説明をしていただきたいと思うのです、比較しながらね、日本の場合と比較しながら検討してみたいと思うのです。
  52. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 諸外国と申しましても、網羅的に調べたわけではございませんが、おもな国について申し上げますと、大体の傾向としまして、ヨーロッパの大陸諸国は国立劇場を持っているのが常態のようであります。それからアメリカ、イギリスは国立劇場は持っていないようであります。もっともイギリスにつきましては、最近つくるべきであるという議論が固まりまして、設立計画を進めておる段階と承知しております。そこで、まあヨーロッパ大陸の国々でありますが、一番たくさん持っておりますのはフランス、イタリアでありまして、これはまあ数個の国立劇場を持っております。で、いずれもそれぞれの国の伝統芸能、つまりあの国でいえばオペラですとか、バレーですとか、そういうものになるわけであります。まあフランスは現代芸能についての国立劇場も持っておるようであります。その内容でありますが、芸能の種類が違いますので、まあ中には専属の劇団、それからオーケストラ、それから衣装ですとか、道具ですとか、そういう付属技術者までも持っておるところがありまして、職員も四、五百人から多いものは千人にのぼるような職員をかかえておるようであります。それから予算額につきましても、これは貨幣価値とか、経理の方法も違いますので、まあ金額を申し上げてもあまり意味がないかと思いますが、たとえばパリのオペラ座で申し上げますと、年間の予算額が約三十億円程度、それに対して国庫補助は二十億円程度出しておるようであります。これが私どもの聞きました一番大きい組織であります。あとまあ現代芸能をやっておるオデオン座あたりですと、予算額が約四億に対して補助額が約二億というような状況のようであります。ドイツの場合ですと、ベルリンのオペラ劇場予算額が十八億円に対して補助額が十三億円、それからシラー劇場ですと予算額が約七億に対して補助額が五億というような状況でございます。なお、運営の実態は、実は若干、外国に行くような演劇の専門家に委嘱して調べていただいたのでありますが、なかなか経営の実態はつかめない点がありまして、まあ御説明できるような資料は持ち合わしておりませんが、国が職員を公務員のような形で雇っておるところもあるようでありますし、それから国立劇場と申しましても、職員や演技者は契約によって運営しているところもあるようでありまして、一がいには、外国国立劇場においてはまあこういう運営が常態であるということは言えないようでございます。
  53. 小野明

    小野明君 あなたの言われたことばじりをとるようですけれどもね、こういった諸外国の国立例場の運営というものが一がいに比較にならないのだと、こういうふうに言われれますけどね、これは国立劇場の場合、補助金が幾らでしたかね、ほぼ一億一千万、予算が四億ぐらいでしょう、そうですね、ここの場合はね。いま言われただけでも、一あなたの調べた資料だが、西ドイツの場合でも、十八億の予算計画で十二億の補助、それからフランスの国立オペラ劇場、これでも二十七億の年間予算で二十一億、ほとんどこれは経営によって出た、あるいは入場者が少なくて出た赤字を、この国庫補助によって、埋めていると、こういうように私は聞いておるわけです。ところが日本の場合、この場合は、いまの日本の人たちから見れば非常に高い、あるいは貸し劇場の場合も演劇に親しむ人たちが借れないような条件、この金は入場料なり、この関係は、何ですか、最終的には法人、できめるんですか。それとも、それといまあなたが、もう予算額としてぴしっと、言われたんですけれども、これがまあ最終決定なんだと、これは国庫補助関係もあるでしょうが、国庫補助はこれだけときまっておれば将来どうすのか、それは大臣からもあわせてひとつお聞きをしたいと思います。
  54. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 諸料金につきましては、御説明申し上げましたように、法人が料金規定を設けてきめることになっております。そこのきめ方でありますが、予算に積算した金額は各種の上演を通じての平均単価のようなものでありまして、民間の劇場を見ますと、特別公演であるとか、あるいは一般公演であるとか、それから比較的入りの悪い公演については料金を安くするとか、これは劇場でありますから運営に弾力性を持っております。国立劇場につきましても、予算できめた単価と一文の出入りもならぬというようなことは大蔵省言っておりませんし、私どももそう考えておりませんが、さればといって大幅な出入りがあるということは、まあ予算計画が、これまた大幅に狂うということになりますので、これはむずかしかろうと思います。まあ実情に応じて幅を若干持たせることは可能と思っております。
  55. 小野明

    小野明君 国庫補助関係をひとつ。
  56. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは初めての試みでございますので、まあ事務当局も大蔵省と補助金を中心に先ほど来話か出ておりまするような積算をいたしますのには、かなり苦労をして折衝をしてきたようであります。いずれにしても初めての試みで、やってみて、それでまあ非常に、せっかく国立劇場設立趣旨に沿うか沿わないか、まあ諸般のそういう影響を見て、財政当局と今後折衝を続けて、改善すべき点は改善をしていくというふうに進む以外には、どうもいまのところ方法がないようでございますので、私もいままで補助金の結論を出すまでの積み上げ作業については、十分しっかり国立劇場趣旨説明して努力するようには鞭撻してまいりましたが、先ほど来御説明申し上げておるような線に落ちつきましたので、初めてのことでしかたないと思っているわけでございます。したがって、初年度といたしましては、とにかくこういう線で進めてまいりまして、今後の推移によって、これはいろいろ研究もし、また改善もしていかなければならない。いずれにしましても国立劇場設立した趣旨目的にかなわなければ相済まぬわけでありますから、将来としてはとにかく、その趣旨からははずれないように、改善すべき点は改善をしてまいるべきである。ただ、まあさしあたりはそういうような次第で、今年の予算関係の積み上げ、積算は一応できておりますので、これで進めて、その後の状況を見た上で研究をしてまいりたいと、かように考えております。
  57. 小野明

    小野明君 きょうの私の質問はこれで終わりたいと思いますが、この法案について参考人を呼びたいと思っております。で、あとで、理事を通じて御協議を願いますので、よろしくお願いしたいと思います。終わります。
  58. 小林武

    ○小林武君 関連して、ちょっと一言だけお尋ねをしておきたいのですがね。これはダブらせないという意味であと聞かないことにしますから、そういう意味で。  目的以外の使用というのはこれはどういうことですかね。目的以外の使用といったかな、とにかくたとえば歌舞伎なら歌舞伎とか何とか、そういうものをやる以外のことで何か使用させるというのがあったでしょう。そういうことを見とめるつもりなんですか。
  59. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 国立劇場施設の使用の態様といたしましては、一つ国立劇場が企画製作いたします自主公開でございます。それから第二は、他の演劇団体が実施する演劇活動に対して施設を貸与することでございます。これには公開の場合と非公開の勉強会の場合があろうかと思います。それから三番目は、演劇以外のものに貸与する場合でありまして、これはまあ国家的な行事ですとか、儀式ですとか、国立劇場のH的に照らして不都合でないと認められるものに対しては、あいている場合は施設を貸与して差しつかえなかろうと、かように考えております。
  60. 小林武

    ○小林武君 ぼくはやはりこの点では相当配慮すべきだという考え方なのです。なぜかというと、ぼくがちょっと想像しますと、大体、国立劇場の一年の使用ということを考えましたときに、やはり歌舞伎なら歌舞伎というものがどの時期にいったら――やはり予定かあると思うのです、突如出てくれということはない。九月なら九月に、ある期間みんな予定があると思うのです。そうすると、申し込みのその目的外といった――目的外にしておきますわ、その他のあれですから。目的外のものもやはりいろいろな何か行事を予定しているところが借りると思うのです。相当の金を出して借りるわけですから、相当の大規模な。そういうものがずいぶんはまり込んできた場合は、これはやはり私は経営するものというのは妙なもので、やはり金が向ければいいし、完全に金が入ればいいというようなところから、どうもやはりそういうもののワクを広げ石おそれが一つあると思うのです。そういうことがあってはならないと思うので、これはどこまでも、やはり先ほど来の小野委員から質問のされておることにもそういう趣旨があるのですが、やはり芸能というようなものに提供するのだ、しかも力のないものにはひとつ安くやはり貸してやるべきじゃないか、そういう趣旨のほうに傾いていかなければならない。たとえば、私はこの間西洋美術館に行ったんですよ。西洋美術館で、何の会合か知らぬけれども、何かちょっと小人数の――小人数といってもかなりの人数を入れる会合が開かれておった。 それはまるっきりとんでもないもんじゃない。たしか役所の関係のもんだと思うんですよ。そこで相当の人がたむろしているんですね、いろいろ参会した方が。そこにはまた絵を兄に来ておる人も、修学旅行なんかがあって、少なくとも西洋美術館の絵を鑑賞するという雰囲気からすれば、やや雑踏している。たいへん好ましくないというようなあれをやっている。ぼくはそのとき思ったんです。何でこんなものに貸すかということですな。まるっきりとんでもないものに貸したとは私は思わない。やはり国の仕事の一連のものだと、何か思い出せないんですけれども、そういうものだということははっきりわかるんですけれども、やはりあそこは美術館らしい使い方にするべきじゃないかということを考えたのです。だから国立劇場というようなものも、そういう点で、私は計画の初めからやはりなるたけそういう諸行事、どこそこの学校の卒業式だとか、それから明治百年祭なんとかいうようなこともけっこうでしょうけれども、まるきりやっぱり芸能が入らないというようなことに、はじき飛ばされているというようなことになっちゃ私はまずいと思うのです。その点はどうなんですか、金のことを考えるものですから、われわれも当事者になればそうなるかもしらぬけれども
  61. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 運営の実態につきましては、特殊法人発足後さらに練り上げてやることになりますが、私どもが考えておりますのは、劇場施設利用の方法としましては、お示しのように芸能公開、自主公開と、それから部外者による公用と、それを主体としてやっていきたいと思っておりますし、実は年間の利用計画を立てます際に、その二つを優先的にスケジュールを組みます。そうして、なおかつあきができた場合に、演劇活動以外の、芸能活動以外のものに貸与してもよろしいのではないか、実はかように考えておるわけでございます。特に、たとえば歌舞伎の上演などは、これはでき得る限り一部制で、やりたいと思っております。そうなりますと、午前、午後、かなりの時間はあいているというようなことになりますので、これはけいこに使うといいましても、限度がありますので、やはりあきの時間ももできるので、そういう場合に貸さないというのも、かどが立つので、目的支障がない限りは貸してもよかろう、この程度に考えておるわけでありまして、大いに借りてを誘引して借り料をかせごうというような気持ちは全然持っておりません。
  62. 小林武

    ○小林武君 文部大臣に聞いていただきたい、別に答弁していただかなくてもけっこうですからね。いまのように断わればかどが立つというような式の、これではちょっと弱いのですけれども。しかし、事務局長にしてみれば、それは気打ちはよくわかりますし、立場もありますから。しかし、大臣のほうとしては、ぼくはやはりこれは本来の、これは私はその方面からいろんなかなり期待を持っていると思うのです。だから、そういう意味ではひとつはっきりしてやってもらいたい。それから小野さんの質問の中に料金の話が出ましたが、私は料金の話は、これから自分の質問のときは、この次ですけれども、やらないつもりですが、やはりこれは考えにゃいかぬと思うのです。向こうの金の換算できないということをおっしゃるけれども、一体、経費の何%ということは割り出せますね。もし、かりに換算がなかなかピンとこないというようなことだって、何%はとにかく国が補助しておるということになる。そういう、とにかくこれをやれと言ってもできないことはぼくもわかります。すぐやれとは言わぬですけれども、少なくともそういうものを見習えということはあってしかるべきだ。将来のやはりそれは到達点として考えるべきだと思うのです。大胆、私はこういうことを聞いたのです。あの科学博物館、あそこで料金をとるなんて、世界じゅうどこにもないというのですね。これはある大学の学長さんで、その面で政府のほうでも非常にいろいろのことを頼まれている、これは私は直接聞いたのですが、科学博物館、あそこでああいう金をとって、いまは学校の子供から何から修学旅行にくると、あそこへ必ず行きます。金をとってやるというようなけちな考え方がそもそも科学の振興に影響するというお話、私も実は直ちにただで入れろというところまではいかぬだろう、実際、予算なんか見た場合には考えられますけれども、これなんかもやはり検討する余地はぼくはあると思うのですよ。だから、かってなことをわれわれ言っているというふうに御理解されないで、こういう問題についても、やはり先ほどの小町委員の質問に対しても十分ひとつ耳を傾けて、漸進的にでもいいから、やはりだんだん補助はふやしていって、そうして、資力のないたとえば劇団とか、そういう芸能の集団とかに対して使用できるようなやはりやり方を考慮する必要があるのじゃないかと思うのです。
  63. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 二つとも非常に大事な御指摘であると思っております。前段につきましては、局長からお答え申し上げたようにあくまで自主公演及び芸能、演劇団体の公演、こういうふうなことに中心を置いてまいるべきである。これは当然なことで、もっともこれらは相当、半年も一年も前から計画しなければできないことでありますから、かなり早く計画をされる。その間、自主公演にいたしましても、役者が切りかえのときに、二日なり三日なりどうしても休みたいというようなことが起こるかもしれません。あるいは団体の公演自主公演との間に、役者が関西へ行っておって、若干の空白ができるかもしれない。こういうようなものが、年度を通して早くから計画をされていて、そうして、そういうあいたところにはまって、合理的な使用者が出てくれば考えてもしかるべきだと思うのですが、こちらがわざわざそのためにこの計画を変更するというようなことがあってはならない。かように私ども思いますので、御指摘の点は十分に注意をしてまいるようにいたしたいと思います。  第二段につきましても、非常にごもっともな点もありますので、しかし、国立劇場としては初めての試みでございますから、今後の推移を見て、改善すべきところは財政当局とも相談をして改善につとめていくと、こういうようにいたしたいと思っております。
  64. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 他に御発言がなければ、本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十七分散会