○
政府委員(
大和田啓気君)
農地管理事業団法案につきまして、
提案理由説明を補足して御
説明申し上げます。
今回、再び本
法案の御
審議をわずらわしますのは、
農業に専念し、
農業によって
生計を立てようとする熱意のある
農家をできるだけ数多く育成するよう
農地管理事業団が
農地及び
未墾地の
取得の
あっせん、
融資等を行なうことによって
地域の
実情に応じ無理のない
方法で
農地等の
移動を方向づけ、これらの
農家が
農地等の
取得をより容易に行なえるような
条件をつくろうとするものであります。
本
法案を
提出するにあたりましては、第四十八回
通常国会における
農地管理事業団法案の
審議の際の御
意見などを慎重に考慮いたしまして、次の
諸点につき
構想を改めました。
その第一点は、
前回は、
農地管理事業団は当面パイロット的に
業務を行なうこととし、
初年度は、百
市町村で
業務を開始することといたしておりましたが、今回は、今後の
事業実施状況を見、
市町村の
希望により
農村らしい
農村のすべてにおいて
事業を実施することを
目途として、
初年度四百
市町村で
業務を実施することといたしております。
第二点は、
農地移動の
円滑化とあわせて農用地の開発を促進するため、
農地管理事業団は
農地関係業務のほかに
未墾地の
取得についての
あっせん及び
融資を行なうこととし、これに基づいて
農地管理事業団法案の
内容を改めております。
第三点は、
農地管理事業団の
業務実施地域には当面
事業団の
職員を設置せず、
市町村及び
系統農協に
事務を
委託し、
市町村では
農業委員会が
事務処理に当たることとして、
農家に直接接触する
事務は
事業団の指導のもとに
地域の
実情に精通した
職員が処理することといたしたのであります。
第四点は、
前回は
農地管理事業団に
農地を譲り渡した者に対してのみ
譲渡所得にかかる
所得税を軽減するものでありましたが、今回は
事業団の
あっせんにより
農地及び
未墾地を譲り渡した者についてもこれを行なうこととするとともに、
事業団の
あっせん及び
融資を受けて
農地の
譲渡が行なわれた場合に
登録税及び
不動産取得税を軽減することといたしておりましたのを、今回はこれを
未墾地に及ぼすことといたしました。
昭和四十一年度におきましては、
農地管理事業団を発足させ、
市町村の
希望に基づき四百
地域を逐次指定し、
市町村段階の
業務体制の整ったところから
業務を開始することを予定しております。
予算措置といたしましては、
農地管理事業団に対する
出資金、
交付金等合計五億円及び
都道府県、
市町村等による
事業の
普及推進に要する経費約五千五百万円を計上いたしておりますほか、
農地等の
取得に要する
資金貸し付けの原資として
資金運用部からの
借り入れ金四十億円を予定いたしております。
以下、
農地管理事業団法案の
内容について補足して御
説明申し上げます。
まず、
農地管理事業団の
組織につきましては、
農地管理事業団の
資本金は一億円とし、
追加出資に関する
規定を置きますほか、第九条以下におきまして、
役員の
定数は
理事長一人、
理事三人以内、
監事一人とし、
理事長及び
監事は
農林大臣が任命し、
理事は
理事長が
農林大臣の
認可を受けて任命することとし、いずれも任期は三年とするとともに、
役員の
職務及び
権限、欠格条.項、
解任等について
規定しております。
次に、
農地管理事業団の
業務につきましては第三章で
規定しております。
第二十条におきましては、
農地管理事業団の
業務の
範囲を
農地、
未墾地、
採草放牧地または
付帯施設の
売買または
交換の
あっせん、その
取得に必要な
資金の
貸し付け、
農地、
採草放牧地または
付帯施設の
買い入れ、
交換及び
売り渡し、借り受け及び
貸し付け並びに
信託の
引き受けとこれらに付帯する
業務と定め、
付帯施設については、
農地、
採草放牧地または
未墾地について
業務を行なう場合にあわせて
業務を行なうものとしております。なお、本
法案における
農地等の定義につきましては、第二条で
規定しております。
第二十一条から第二十五条までは、
農地管理事業団の
業務実施地域に関する
規定であります。
都道府県知事は
関係市町村と協議し、
都道府県農業会議の
意見を聞いて指定の申し出をすることとしており、
地域の指定は国土資源の総合的な利用の見地からみて、
土地の
農業上の利用の
高度化をはかることが相当と認められる
農業地域で、
農地保有の
合理化等
農業構造の
改善をはかるため
農地等についての
権利の
取得を適正円滑にすることが特に必要と認められる
地域について行なうこととしております。なお、指定は告示ですることとし、区域の変更の手続は指定の手続に準ずることとしております。
第二十六条は、
業務執行の方針でありまして、
事業団は、
農業を営む個人または
農業生産法人で
農業基
本法第十五条で
規定する
自立経営またはこれに準ずる効率的な
協業経営を目標として
農業経営を
改善しようとするものの
農地等の
取得または借り受けを促進するように
業務を行なうものとしております。
次に第二十七条から三十条までにおきまして、
貸し付け金及び
売り渡し対価の
償還条件は、年利三分、
償還期間三十年以内の
元利均等年賦償還とし、借り受け人等は繰り上げ
償還をすることができるものとするほか、
取得した
農地等の耕作をやめた場合、
一定限度以上
経営規模を縮少した場合等の事由があるときは
事業団は一時
償還を請求することができるものとし、災害その他やむ得ない
理由があるときは
償還の猶予をすることができることといたしております。
第三十一条におきましては、
事業団は
農地等を
売り渡した場合には
一定の基準により買戻しの特約をつけなければならないものとし、右の一時
償還とほぼ同様の事由があるときは買い戻しをすることといたしております。
以上のほか、
事業団の
業務運営
方法につきましては、第三十二条から第三十五条までにおいて
事業団の
農地信託業務についてその性格上必要な
信託法の
特例を設け、第三十六条において
資金の
貸し付け及び対価の支払い徴収の
業務の
都道府県信用農協連合会等への
委託及びその他の
地方公共団体への
委託について
規定し、第三十七条に
業務方法書についての
規定を置いております。
次に、
事業団の財務及び会計について第四章で
規定しておりまして、
事業計画、
予算及び
資金計画について
農林大臣の
認可を受けなければならないこととするほか、財務諸表の承認、損益の処理
方法、借入金及び債券の発行、
政府からの
交付金の交付、余裕金の運用
方法等について定めております。
第五章以下は、監督その他の
規定であります。
第五十三条におきましては、
業務実施地域内の
農地または
採草放牧地の
所有者は、その
農地等について
所有権の移転または
賃借権等の設定をしようとするときは、あらかじめ
事業団に通知しなければならないものとし、
事業団は必要があると認めるときは、譲り渡しの
あっせんまたは買い受けもしくは借り受けをしたい旨を申し出ることを
規定しております。
附則におきましては、
事業団の設立手続を定め、
所要の経過
規定と
関係法律の
改正規定を設けております。
まず、
農地法の
特例といたしましては、第一に
事業団が一方の当事者となっている
農地等の
権利移動については
農地法第三条の
許可を不要とし、第二に、
事業団が借り受けている
農地等及び
事業団が所有する
農地等については
小作地の
所有制限を
適用しないこととし、第三に
事業団が借り受けまたは
信託を
引き受けて
貸し付けている
農地等については、借り受け
期間または
信託期間の満了の際の
更新拒否等は
農地法第二十条の
許可を受けることを要しないものとしております。
次に、税制上の
特例といたしましては、本
法案の附則による
地方税法の一部
改正によりまして、
事業団の
あっせん及び
融資または
売り渡しにより
農地、
未墾地等を
取得した場合に
不動産取得税を軽減するほか、別途
租税特別措置法の一部
改正により、
農地、
未墾地等を
農地管理事業団に対して譲り渡しまたはその
あっせんにより
譲渡した個人については、その
譲渡所得に対する
所得税を軽減することとし、また、
不動産取得税の場合と同様に
農地、
未墾地等を
取得した者について
登録税を軽減することとしております。
以上をもちまして
農地管理事業団法案についての
補足説明を終わります。
次に、お手元に配付いたしております
資料について
説明をいたします。
まず、横の
資料で「
農地管理事業団法案関係参考統計
資料」、これは最近における
農地事業を要約いたしております。
まず一ページをごらんいただきたいと思います。
農地面積、
農家数と
農地移動というところですが、右の欄で、
農地法による
農地移動等統制
許可面積というところをごらんいただきますと、
所有権移転で
自作地の有償というところをごらんいただきますと、
昭和三十年に
自作地の有償移転が三万九千四百町歩でありましたものが逐次増加をいたしまして、三十九年では七万五千八百町歩というふうになっております。これはごく一部
交換を含んでおりますが、大部分、ほとんど全部が
売買による
移動でございます。
その左に無償というのがございますが、これは生前贈与、分家等々無償贈与でございます。
それから
小作地の小作人が
小作地を地主から買うという形の
移動でございますが、最近においてはやや少なくなりまして、一万町歩程度という状態でございます。
それから賃借権による
農地の
移動がありますのは、まず、賃借権の設定で新しく小作
関係をつくるというものは、最近大体三千町歩程度、
昭和三十八年に六千五百町歩の設定というものがございますが、近くの年と比べて相当多く動いておりますけれども、これはそのときにおける
農業生産法人への賃借しが相当なウエートを持っております。
それから使用貸借による
権利、これはただで倍す
関係で、最近使用貸借による
権利が三十八年に二千九百町歩、三十九年に四千六百町歩というふうに多少ふえておりますけれども、これも山形その他における
農業生産法人の設立に
関係するものであります。
それから賃貸借の解約等、これが大体四千町歩。転用、これは
農地を他のものに変える、
農地をつぶすための
移動でございますが、逐年ふえて、
昭和三十九年において二万九千七百町歩という状態でございます。これを通観いたしますと、ここには
資料としては出ておりませんけれども、耕作
目的の
農地の
移動は三十九年で件数にいたしまして五十九万件でございます。正確には五十八万九千九百件でございます。総面積で十一万四千八百町歩でございます。これは
農家の数との比較におきましては、大体十軒に一軒の割で何らかの形で
農地移動に
関係をいたしておる。それから面積といたしましては、大約二%の
農地が何らかの形で動いているということでございます。それで、
農地の
移動はいま申し上げましたように、主体はあくまで
自作地の有償による
所有権の移伝でございます。若干の例外はございますけれども、それがほとんど大部分であるばかりではなしに、最近における
移動面積等々の増加は、
自作地の有償移転の増加が大きな原因になっておるわけでございます。
それから、いま申し上げましたのは、全国の数字でございますが、面積で申し上げますと、
自作地の有償移転が全体で七万五千八百町歩でございますが、これを内地と北海道とに分けますと、北海道が三万一千六百町歩、それから内地は四万四千二百町歩という状態でございます。さかのぼって、
昭和三十五年で申し上げますと、全体の
有償移動の
自作地の面積のうちで北海道の占める割合が三一%でございましたけれども、三十九年においては、それが四二%に増大をしているという状態でございます。また、これは
農地の
移動の
規模の相違もございまして、内地では
有償移動の一件当たりの面積が約一反一畝でございますけれども、北海道ではそれが二町一反二畝というふうに、内地のほぼ二十倍くらいになっておるという状態でございます。
二ページにまいります。二ページでは、まず
農家数の
規模別の増減がございますが、その次に
自作地の
売買件数、最後に
自作地の
売買面積というのがございます。これは
売買に限っての数字でございまして、
規模別に、どういう
農家からどういう
農家に移っているかということでございます。たとえばお読みいただきますと、三反歩未満のところで、全体の面積の一四・一%のものが三反歩未満の
農家によって売られ、また全体の
売買面積の六・四%のものが三反未満の
農家によって買われておるという、そういう状態でございます。都府県で北海道を除いた数字でございますけれども、この表を通覧されますと、内地で七反未満のところでは、売却が譲り受けよりも多いという状態であることがおわかりになるだろうと思います。七反以上において階層として見た場合、
農地を売るよりも買うほうが多い、しかし、その差はそんなに多くないということが次に出てくるわけでございます。
四ページをお開き願いたいと思います。
四ページは、
自作地の
売買につきまして、階層別の分布
状況を示したものでございます。三十八年と三十九年と多少の動きはございますけれども、三十九年でごらんいただきますと、譲り渡し人、譲り受け人、これは階層でございますが、三反未満のものの譲り渡しが面積で一四・三%、譲り受けの場合に三反未満のものが七・七%という状態でございます。そうして七反未満のところでは、譲り渡しのほうが譲り受けより多いということは、先ほども申し上げたとおりで、七反未満でこの面積を総計いたしますと、割合にして譲り渡しが四二・一%、譲り受けが三三・四%という状態でございます。そうして都府児の
農家を、かりに小さいもの、中くらいなもの、比較的大きいものという、ふうに分けるといたしますと、七反未満、七反から一町五反、一町五反以上という分け方ができると思いますけれども、七反未満というのはいま申し上げましたように四二%を売って三三%を買うという状態でございます。一町五反のところで線を引きますと、これにもあらわれておりますように、三十九年で一町五反以上の
農家が二〇・一%売って、二三・八%買うという状態でございます。
それを要約して申し上げますと、ラウンドナンバーにして申し上げますと、七反未満、七反から一町五反、一町五反以上というふうに、かりに小、中、大というふうな感じで申し上げますと、三十九年で全体の売られた
農地のうち七反未満のものは、四二%売って三三%買う。七反から一町五反のいわば中位の
農家は、三八%売って四三%買う。それから一町五反以上の
農家というのは、二〇%売って二四%買うという状態でございます。しかし、全体が、ここにも書いてございますように、内地で
売買が四万町歩とちょっとでございますから、いま申し上げましたような数字も、面積にいたしますとそれなに多くはございません。たとえば七反歩以下の層から七反歩以上の層に移ったものは八%ないし九%あるわけでございますが、面積にいたしますと大体三千町歩台でございます。それから一町五反以上になりますと、面積にして全体の三%ないし四%、割合にして三ないし四%、面積にして千町歩ないし千五百町歩という状態でございます。したがいまして、私どもは小さな
農家が
土地を買うということが
農業生産から見て困るというふうには申し上げませんけれども、
経営規模の
拡大、あるいは
農業で自立しようとする
農家に向かって前進することを
農政の一つの主題として考えますと、いまのように比較的
規模の大きな
農家に
土地が移るということの傾向というのは、はなはだ微弱であろうというふうに思います。これが私どもが
農地管理事業団の御
審議をお願いいたす一番大きな
理由でございます。
それから、六ページに参りますと、これはいま申し上げたような
自作地売買がどういう
理由で行なわれるかということの一つの考えのよりどころになるわけでございますが、内地と北海道と分けまして、
自作地を売り渡す人の
理由といたしまして、
農業をやめる、あるいは兼業による
経営規模を縮小する、労力不足で手放す、あるいは耕作不便、低
生産地のために手放すという、そういう似たような一つのグループでそれをつくりまして、それからとにかく
資金の必要だというものを第二のグループといたしまして、それからここにも書いてございますように、相手がぜひ欲しいというような事情の第三のグループをつくりますと、内地では第一のグループで
農業をやめるとか労力不足でもうかなわぬという場合が約半分ございます。それから
資金が必要なためというのが約三割、その他が二割という状態になっております。これに対しまして北海道のほうは、第一の
理由が非常にふえまして、約八割でございます。金が必要だというのが約一五%、その他が、それ以外というのが大体七%ぐらいでございます。
それから八ページをちょっとごらんいただきます。これは
自作地の有償
所有権移転が全体で七万五、六千町歩あるわけですが、それは一体どういう地帯の
農村で行なわれているか。
農村の性格から見て、都市近郊とか平地
農村、農山村、山村という区分けであるわけでございますけれども、どこが主体になって動いておるかということの一つの手がかりでございます。で、この表をお読みになります場合の御注意でございますが、そこの面積、その村の面積に対して、
自作地が動く面積を分子としまして、全体の
農村の耕地を分母にいたしましてそうして割合を出したものでございますが、〇・二%未満のほとんど動いていないものから、五%以上の相当の動き方をしているものまでずっと町村を並べてみたわけでございますが、
農地の
移動率というのは、先ほども簡単に触れましたが、北海道で三・三%、都府県で〇・九%でございます。こまかく言いますと、北海道で三・二八%、都府県で〇・八六%ということでございますから、この都府県で言いますと、ワクが上から四番目くらいのところに〇・六ないし〇・八%というのがございますから、〇・八%未満のところが平均よりも
土地が動かないところというふうにお考え願ってよろしかろうと思います。そういたしますと都市近郊で、数でございますから、十八、四十三、六十一というのがございますが、これを
移動が平均に至らないものの数といたしますと百四十町村になるわけでございます。百四十町村というのは全体の四百五十一町村の三一%にあたるわけでございます。そういうふうに平均に至らない村の全体の村数に対する割合を出しますと、都市近郊が三一%、平地
農村が四六%、農山村が四二%、山村が四八%、全体が四三%というふうになるわけでございます。したがいまして、この数字が少ないところが
土地がよく動いておるというところで、都市近郊の三一%というのが一番動いて、それから平地
農村、農山村というのは都市近郊についで農山村、平地
農村、山村という形で、三一%ないし四八%ですから、裏返しに申し上げると、大体平均よりも
土地が動いているような町村は都市近郊で六九%、山村で五二%ということになるわけでございますから、大体山村、都市近郊が割合
土地がよく動いておることは事実でございますけれども、平地
農村なり農山村でも
土地が動かないわけでもない。都市近郊なり山村なり平地
農村たり農山村で、そんなに大きな違いはなさそうだというふうに考えられるわけでございます。これは
農地管理事業団が仕事をする場合に、一体平地
農村では全然
土地が動かないではないかというふうに御批判をいただく場合が多いのでございますけれども、実際は動き方としてはそんなに大きくはありませんけれども、平地
農村においても
土地はある程度までは動いておるということの
説明でございます。
それを九ページで、村別に私どもは実態調査をいたしたもので、ある意味では確かめておりますが、その
説明は略さしていただきます。以下
農地の転用でありますとか、いろいろ
資料がございますが、それは省略をいたします。
一一ページに、
農地の価格の動きがございますのでちょっとごらんいただきたいと思います。
農地の動きで、
昭和三十年に、田畑、普通のところをごらんいただきますと、田で、反当十一万六千円が、三十九年十九万八千円で、四十年二十万四千円というふうになっておるわけでございます。畑は、三十年に六万八千円のものが、三十九年十二万、四十年十二万三千円ということでございます。これを市街地の価格指数に比べますと、たとえば住宅地で
昭和三十年に相場を一〇〇といたしますと、四十年で七〇七と七倍になっておりますから、大体
農地は、純粋に耕作
目的で売られる
農地の価格は、
昭和三十年と
昭和四十年とを比べまして倍前後ということになるわけでございます。それでもたいへんな上がり方でございますけれども、この表をごらんになりましても、
昭和三十五、六年くらいから
農地の値上がり——転用
目的のものば別でございますけれども、耕作
目的のものの値上がりはある程度まで頭打ちをして、多少強含みで完全に落ち着いたわけでございませんけれども、そんなに大きな飛躍的な値上がりは最近なくなっている、こういうふうにお考えになってよろしかろうと思います。
一二ページは、それの地方別な数字がございます。普通の水田の反当にいたしまして、
昭和三十九年度十九万八千円でございますが、その十九万八千円という数字は、最高は四国の二十三万九千円、それから
最低は北海道の七万三千円というふうに相当な散らばりがございます。畑でいいますと、
昭和三十九年で反当十二万円のものが、東海で十六万七千円、北海道は三万七千円というふうに散らばりがあるわけでございます。
一三ページ以下は、
農地取得資金、公庫
資金についての
説明でございますが、これは省略さしていただきます。
それからもう少しお時間をいただきまして、「
農地管理事業団運営の考え方」というのをちょっとごらんいただきたいと思います。これは昨年の夏以来、私たち
農地局の者が
農村に入りまして、
農地管理事業団を動かす場合、一体どういう問題があるか、あるいはどういう点を顧慮しなければいけないのか、あるいは
農地管理事業団というような
構想がはたして村に根づくものであるかどうかということを勉強し直す意味で、数班に分かれまして村へ入って、いわば村の人になったつもりで
農地管理事業団を具体的に村でどう動かしたらいいかということを検討いたしました結果でございます。
農地管理事業団の
法案が通りまして、
事業団が設立された場合に、これですぐ全国一せいにやるという
趣旨でもございませんけれども、大体の考え方をひとつお聞き取りいただきたいと思います。
農地管理事業団の第一ページの「基本的考え方」、それから三ページの「
業務実施地域」というようなところは、
提案理由の
説明その他にございますから、これは省略さしていただきまして、八ページからときどき抜いて御
説明をいたしますと、「
事業実施体制」ということでございます。
事業実施体制で「
農地管理事業団の
業務がその成果を挙げるためには、
業務実施地域の
農業事情に即応し、農民の意向を反映し、
関係機関の協力によって
業務が運営される体制を整えなければならない。」として、一番では「各
地域における
事業団の第一線の
事務処理機関としては、
市町村、具体的には
農業委員会を活用することにする。」ということで、いろいろ現在
農業委員会が
農地関係でやっておりますことを足場にいたしまして、具体的に
農地の
売買の
あっせんでありますとか、あるいは来年度以降
農地の買い取り、
売り渡しをいたすわけでございますから、そういう
事務でありますとか、あるいは小作の、いわば
事業団を媒介として小作を行なうとかいうようなことをいたすということもこまかく書いております。なお、このことは九ページにもございますが、実は北海道でさきに私が申し上げましたように、内地と違って北海道では相当
農家戸数も減り、また、
農地の
移動も内地とは違う形で
農業準位で動いている状態でございますから、
昭和三十五年から道の指導で、
農地管理事業団的なといいますか、そういう
農地の
移動と方向づけを相当な数の
農業委員会がやっておるわけでございます。私ども
農地管理事業団を
構想するにつきましては、たとえばフランス、ドイツその他の外国の例も当然参考にいたしましたけれども、北海道において現にやっていることを一つの考え方の参考にいたしたわけでございます。
それから一〇ページでございますが、まあ
農業委員会が実務をやるわけでございますが、
農業委員会だけでものごとをきめるのではなくて、全体の村のまあ学識経験者といいますか、力のある人といいますか、一〇ページにも書いてございますが、
農業委員会に
農地管理協議会というものを設けて、
市町村長、
農業委員、
農業団体の代表者、それからほんとうにそこですぐれた
農業経営をやっている人というもので、これからの一体
農地管理の方針をどうするか、そこでどういう
農家をつくることを目標とするか、あるいはどういう段取りでやるか、どういう
農家を中心にして、
土地の
移動の
あっせんなり、
売り渡しをするかというようなことをつくるということが書かれてあるわけでございます。
なお、一一ページには農協、あるいは一二、一三ページに、県とか
農業会議とか、その他
関係機関の役割りが詳しく書かれてございます。
一五ページは、
農地管理の方針でございますが、
農地管理の方針を
農地管理協議会でつくるわけでございますから、私どもも大体の方針を示して、そうこまかい干渉はあまりいたさないつもりでございますが、この
農地管理協議会でつくりますところの
農地管理の方針の大体の
内容を申し上げますが、まず第一に、この一五ページの第一にございますように具体的な村について、「
農業によって自立しうる
農業経営としてどのような
農業経営をつくることが当面の目標であるか」を検討してきめるわけでございます。これは、
自立経営というのは、私どもそう高望みをしてもなかなか実現の可能性もないわけでございますから、当面の目標としては、町村在住の勤労者の
生活水準と同じような生活を
農業所得によって実現可能な
農家というふうに
規定いたしておるわけでございますが、そういう
農業をやって
農業で生活できるだけの
農家というのは、一体具体的にその村ではどういうものかという問い方をいたしますと、私どもの経験したどの村でも、村で大体の見当がついておるわけでございます。たとえば、米一本なら内地で二町五反から三町とか、米作にブタなどを加えれば水田一町程度、一八ページのはじめに書いてございますが、果樹地帯ならミカンで一町五反とかというふうに、理屈で割り出すことももちろん可能でありますけれども、村に入って、一体わが村で、
自立経営というとやかましい問題になりますけれども、家族労力を減少して、そうして
農業所得で生活のできる
農家は一体どういうものかというのは、村では具体的には大体見当がついておるわけでございます。全国一律で、
自立経営というのはどういう性格かという議論はなかなかやかましいことでございますけれども、村の現実の問題としては、村の人たちの知恵によって、それは私は現実的に解決をされておるというふうに考えるわけでございます。
それから一八ページは、
農地管理事業団というものは
自立経営の育成と同時に、協業の助長といいますか、
自立経営に準ずるような
協業経営なり、
土地の
あっせんなり
売り渡しをいたすわけでございますから、そういう
自立経営に準ずるような
協業経営の
内容というものが書かれておるわけでございます。
それから一九ページになりますと、
農地管理の方針の一つの問題点でございますけれども、一体どういう段取りで
自立経営といいますか、その村で育成することを目標とする
農家をつくるかという段前りでございます。これは私ども、かりにその村では水田経営で二町五反なり三町なりないと
農業所得で十分やっていけないということでありましても、いきなり
初年度からそういう
農家をつくるということはなかなか無理なことでございますから、一挙に目標の
規模へ到達することを考える必要はなくて、要するに、段階的に望ましい
経営規模に接近していくという考え方をこの方針の中で明らかにするというわけでございます。
二一ページ以下は、私どもが村に入って作業をいたした場合に、一体わが村で望ましい
農家というものはどういうものかということが、北海道の畑作地帯、北陸の水田地帯あるいは中部の畑作地帯、東海の果樹地帯等々、そこで具体的に問題になりましたものがわが村ではどのくらいの
農家かということが具体的に書かれておるわけでございます。
そこで、次の問題といたしましては、そういう望ましい
農家といいますか、目標的な
農家を設定したとして、一体どういうふうにそういう
農家に候補者を選ぶかという問題でございます。これはまあ村の人たちの
意見も十分聞いて考えますことは、基本的な問題といたしましては、二三ページの下の部分に書いてございますが、「将来とも
農業に生活の本拠を置き他産業従事者に匹敵するような
所得を挙げうるような
農業経営をしようという
農業従事者の意欲と能力」が根本でございます。「その意味では現在の
経営規模や専業別などに必ずしもこだわることはない。」ということでございます。
それで、二四ページの三行目からでございますが、「最も重視しなければならないのは「人」の要素である」、「具体的には少なくとも経営主やあととりが
農業に従事し、
農業を一生の仕事と考え、しかもすぐれた
農業経営をする能力をもっているかどうかの問題である。」ということでございます。
それから二五ページから、そういうものは一体どういうものであるか、もう少し具体的に考えますと、二五ページの終わりから四行目ぐらいでございますが、「青壮年男子を含む二人以上の家族労力が
農業に専ら従事し、
自立経営を目ざして経営を
改善する意欲を有すること。」「
農業経営主が
農業におおむね専従しているか、経営主が高年齢に達しているときはそのような後継者が確実に得られること。」また、「経営主又は
農業後継者が、
農業経営について、
自立経営を目標とするに十分な高度の技術や経営能力を有すること。」というようなことが考えられるわけでございます。
その次には、以上のような要件に該当する
農家は複数あるわけでありましょうが、一体、具体的に
農地を
取得させるものをどうやって選ぶかという問題でございます。これは二六ページにもございますが、一体、非常に大きな
農家をつくるのか、あるいは、とにかくある程度の
農業所得でやっていける
農家を第一につくるのかという問題でございますが、これも私はその地帯その地帯における
農業の事情によって違うでありましょうから機械的に結論を出す必要はないと思いますが、大体私が感じた限りでは、この二六ページのまん中以下にございますが、「
農家として他産業従事者なみの
所得を挙げるための
最低限の経営面積に到達するものを優先させ、次にその経営面積をこえて更に一そうの
規模拡大を図るという方針をとることとする
意見が多かった。」私はそれはそれでもよかろうと思います。「また、特定の
農地の
取得者をきめる場合には、その
農地の位置、品位からみて、耕作の便や
農地の
集団化に最も利益を受ける者を優先させることが適当であるといわれた。」
二七ページは、
農地管理の方針を出す場合に、
地域内における
農地移動の現状と見通し、あるいは
土地利用の計画、
農地の開発計画あるいは
土地改良
事業等々、十分連絡をはかって行なう必要があろうということが次に書かれてございます。
三四ページ以下は、実際の活動のしかたというようなことで、
農業委員会はどういう点に気をつけて
事業するかというようなことがこまかく書かれておるわけでございます。これは、私どもがこれでやれという、そういう厳格なものとは考えておりませんで、まあ私どもがただ、いわば霞ヶ関
農政ということで机の上で考えたことではなくて、村に入って、どういう形で動かし、また動かすべきだということの一つの御参考としての
資料でございます。
以上でございます。
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