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1966-05-13 第51回国会 参議院 農林水産委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十三日(金曜日)    午後一時十三分開会     —————————————  出席者は左のとおり。     委員長         山崎  斉君     理 事                 野知 浩之君                 武内 五郎君                 渡辺 勘吉君                 宮崎 正義君     委 員                 青田源太郎君                 櫻井 志郎君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 任田 新治君                 仲原 善一君                 温水 三郎君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 川村 清一君                 中村 波男君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 矢山 有作君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  坂田 英一君    政府委員        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁水資        源局長      鈴木 喜治君        科学技術政務次        官        田川 誠一君        科学技術庁研究        調整局長     高橋 正春君        科学技術庁資源        局長       佐々木 即君        農林政務次官   後藤 義隆君        農林省農政局長  和田 正明君        農林省農地局長  大和田啓気君        農林省蚕糸局長  丸山 文雄君        水産庁長官    丹羽雅次郎君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        会計検査院事務        総局第四局長   小熊 孝次君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査蚕糸事業に関する  件)(漁業の生産基盤整備及び水質汚濁防止に  関する件)(遊休開拓地に関する件)     —————————————
  2. 山崎斉

    委員長山崎斉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農林水産政策に関する調査議題とし、まず蚕糸事業に関する件について、質疑を行なうことといたします。
  3. 八木一郎

    八木一郎君 私は、今回のISA大会農林省丸山蚕糸局長らが出かけられるこの機会に、蚕糸事業、特に生糸輸出増進政策に結びついた諸問題について、若干の質問を試みてみたいと思うのであります。  最初に、今回のISA大会模様を承りたいと思います。なお、この大会における丸山蚕糸局長ステートメントをも承ることができればしあわせだと思います。実は、前回ISA大会は一昨三十九年六月スイス、チューリッヒで開かれましたが、本大会における、時の久宗蚕糸局長ステートメントが、ここに持ってきておりませんが、フランス語で堂々とやってのけたということで、参加国に多大の感銘を与えたと伝えられております。いまからちょうど二年前の蚕糸事情は、三十八年の糸価暴騰あとを受けて暴落し、下限価格支持により糸価の先行き不安を解消することをねらいとしたものであり、低迷している生糸市況正常化により、需要回復期待を寄せて、久宗局長はこのようなことばで結んでおるのであります。「われわれは、世界の絹を愛する人々に日本生糸を、その要求される品位のものを、安定した価格で十分に供給し得るような態勢をつくり上げることが重要であり、このため、日本生糸輸出あり方についてもっと改善するよう政府業界努力している。われわれは、この努力生糸生産国消費国共通の利益を増進することになるだろうと確信している。」、こう結んでおりますが、このステートメントは、いわば世界のひのき舞台で行なわれた蚕糸国日本国際的声明ともいうべきものであって、蚕糸業に関心を持つわれわれ国民政府に大きく期待を寄せたことは言うまでもありません。ところが、結果だけを見ますると、残念ながらその後急速に輸出がふるわなくなり、史上最悪生糸輸出不振状況になってしまったということが事実であります。すなわち、アメリカの市場韓国生糸が進出するし、ヨーロッパの市場中共生糸が蚕食をしてしまいまして、日本は、その奪還容易ならぬ実情にあるのでございます。  そこで、今回地中海で開催される国際絹業大会において、輸出振興のために、局長はどのような見解を表明するのか。一定価格一定数量生糸を供給することを表明すべきではないかと思うのであります。  当時すでに日本輸出生糸保管株式会社においては八千俵の生糸を保有しておったにもかかわらず、その後においても輸出不振であった理由は、保管生糸会社の権能は、政策効果ゼロであったというように反省をするのかどうか、承りたい。  第三点になりますが、尋ねたいのは、また、当時における輸出機構海外受け入れ事情は、前回法案審議の際にも申し上げましたように、マンネリズム化して一向に変わっていない、旧態依然たる姿でやっているように見受けられますが、最近のこの間の事情はどうなっているか。  四番目に、久宗局長が言明をいたしました新しい輸出体制の確立について世界約束をした。その後一体どのような努力をしてこられたのか。それにより現在の輸出機構及び海外受け入れ事情はどのように改善されているか、また改善しようとしておられるかということを承りたいのであります。  以上のような事柄をまず承りまして、質問を続けたいと思います。
  4. 丸山文雄

    政府委員丸山文雄君) 第一点の、今回の会において問題になる事項と申しますか、どういう模様であるかという御質問でございますが、おそらくは前回と同様に、やはり日本糸価が高いあるいは供給力が少ない、したがって、消費国ないしは消費者立場からいたしますと、依然として前回事情が変わらないんではないかというようなことが、質問の形でやはり日本協会並びにわれわれに対しましてあろうかと思います。この点につきましては、先般の大会のときには、御存じのとおり、暴騰あと非常に極端な下がり方をしつつあった時点でございます。具体的に申しますと、その当時のいわゆる政府最低保証価格というのがキログラム当り四千円という時代であったわけでございます。それともう一つ、当時はいわゆる生糸に対するいろいろないわゆる仕手の介入によって暴騰が起こり、その反動として暴落にあったわけでございますが、現状につきましては、その当時と若干趣が違いまして、なるほど昨年の暮れ以来若干上がり、現在はやや持ち合い傾向を保っておりますけれども、この実態はやはり国内における消費が、前回と比べて消費水準が上がりまして、そういう影響で前回に比べますと今回の高騰は国内的には実勢を示しておるという面も相当多いわけでございます。それと、いわゆる御存じ蚕糸事業団ができました関係で、前回最低価格が四千円というのが、政府最低保証価格でございますが、今回は御承知のとおり、特に来生糸年度からは五千円弱のものが最低保証価格という形で事業団で保証されるわけでございます。そういう意味でいいますと、やはり暴落と申しましても、下がり方の限度が前回より上がっておるわけでございまして、そういう意味においては、従来のような極端な暴落は少なくともあり得ないというようなことは、われわれとしては考えております。そういう価格の問題が第一番目でございますが、その他、いわゆる検査の問題でありますとか、あるいは主として業界の問題でございますけれども、いわゆる従来から日本負担しております宣伝費の問題であるとか、そういうものがやはり相当議題になるのではないかというふうに考えております。  それから、その輸出機構につきましては、御指摘のとおり、その当時と現在におきまして機構そのものについては特に変化はないわけでございますが、ただ輸出促進という意味で、現段階におきましては蚕糸団体一定数量一定の金額を拠出いたしまして、それによって不十分ながら輸出ドライブをかけようということが一応きまっております。それでありますけれども、これはなお、養蚕団体であるとか、あるいはその他の関係団体等もこれに参加いたしまして、さらに基金の拠出の問題あるいはまたその経費の使途の問題、そういう問題についてなお今後前向きで根本的な方針を確立する必要があるということは、業界一般あるいはわれわれといたしましてもそういう認識に立っておりますので、さらにこの輸出体制につきましては前向きでやっていきたい、こう思っておるわけでございます。  それから、前回における政府代表久宗局長の発言につながる問題といたしましては、安定した価格輸出できるような、そういうあり方についての改善を検討したい、あるいは努力したいということを言っております。それにつきましては一部は、ただいま申しましたとおり、とにかく国内糸価の安定をはかるという意味において、やはり新しい価格支持機構をつくったということが、ある意味におきましては一つの回答ではないかというように考えられるわけでございます。  今後の対策につきましては、ただいま申し上げましたことを重複いたしますけれども、これは国際的消費促進、もちろん国内的消費促進の問題にもなるわけでございますけれども、現在は御存じのとおり、大会に参加するために、業界幹部方々いまはおられません。したがいまして、そういう業界幹部方々がお帰りになりますころまでには、具体案につきましていろんな輸出体制問題点を鋭意検討を続ける機会を得たいと、若干前後しまして、不十分かもわかりませんが、そういう状態でございます。
  5. 八木一郎

    八木一郎君 時間を制約されておりますから、お尋ねしたい事項を一走り走らしていただいて、許された時間があればなおお尋ねを重ねたいと思います。  次は、生糸宣伝事業あり方通産省農林省も長く助成をいたし、絹業協会中心にやっております宣伝事業そのものも、私は適当でない、改むべきである、こういうことを申し上げてきておるのであります。海外事務所は依然としてお役所仕事で、観光客の御案内や雑務に追われて、統計はつくっておるけれども、商売をしない、これに比べて、中共韓国一定値段生糸出先に引き渡して、出先では経験豊かなエキスパートがノルマで働くセールスマン方式でじゃんじゃん売り込み合戦を続けておる。これはあまりにものんびりした日本の態度で、激しい経済市場争奪戦の姿を思い合わせるわけにはいかないのであります。今回お出かけになる際に、親しくこの実情をごらんいただくと同時に、本国からは一定価格一定数量を計画的に競争国と対等に確保できる仕組みを何としても取りつけねば相ならぬとこう思うのです。日本の実績がまだわずかに残っておりますが、日を経ずしてゼロ、完全敗北の事態になるかもしれません。ひとつここらで日本も新しい体制を打ち出して、一枚看板である日本輸出産業生糸輸出増進とか、宣伝事業、そうしてこれをつくる生産体制、これは蚕糸事業団が一手に引き受けて行なうことが適当ではないかと考えまするが、局長は今回の地中海で行なわれる大会で、日本蚕糸事業団を発足させ、これからは輸出蚕糸事業団、事実上の輸出蚕糸事業団とする考えであって、お客さんの御意向に沿って、前局長約束を実行すると、誠意をもって行ないますという決意を述べてこられるかどうか、ひとつ海外蚕糸生産国協力を求めて帰国してもらいたいものだと願っておるのですが、所信はいかがですか。国際商品たる生糸の六割の生産国として自負する日本でございますから、この際ひとつ真剣に検討努力すれば、十分希望が持てる前途があるはずだと思うのでございます。久宗局長が述べられた程度のことではなまぬるくて不徹底であり、また、おことばにあったように、いずれ日本価格を上げたり下げたり、しかもいまは高い、そして国内で使っておって、われわれには売らないのではないかという、こういう現象に対する会議の空気は察知できますけれども、その際に輸出窓口は一本化して、一定価格海外に売る体制をつくる、こう言い切ってくることを期待いたしたいのでありまして、国際商品たる生糸価格の協定などということは夢のような話であるかもしれませんけれども、国民の声としては、本院の決議にも出ておりますように、蚕糸生産国日本中心になり、関係生産十カ国ほどと提携協力の道を開こうと努力するならば、日本蚕糸事業団中心機構として何か適切な手が打てるはずだ、このように思っておりまするが、御所見はいかがですか、お尋ねをいたします。
  6. 丸山文雄

    政府委員丸山文雄君) いわゆる政府のやっております宣伝事業でございますが、お話しのように、農林省通産省から補助金を出しまして、それに業界負担が加わって各種宣伝事業、あるいは統計事業調査事業をやっておるわけでございます。現在のたとえば宣伝機構、これはいわゆる国際絹業協会に対応するような日本絹業協会というものが、ニューヨークとリヨンに支所を持っておるわけでございますが、機構の問題もありますけれども、宣伝事業内容自体につきまして、われわれもいまのままでいいかどうかということについては、疑問を持っておりますし、また、消費国関係者の中からもそれぞれいろいろな意見がございます。たとえば政府から出ます補助金でありましても、もう少し現地で融通のつくような使い方にしたらどうか、という意味は、要するに、現地消費者消費国の要望も入れた使い方ができないかということでございますが、そういう点につきましても、これは政府補助金でございますから、補助したあとは何に使ってもいいということにはまいりませんけれども、予算のたてまえの許す範囲で、相手国希望なり、あるいはこういう方式よりはこういうふうに改めたほうがいいというような使い方についてのできるだけ弾力的な方法につきましては、いろいろ消費国希望も聞きまして、さらに検討を続けたい、こう思っております。この宣伝機構そのものにつきましては、こう行なうのが一番いいというきめ手もなかなかございませんけれども、やはり消費具体的方法との関連において今後なお検討を続けたいと思っておるわけでございます。そういう意味見解を述べることになろうかと思います。  それから事業団が一手に行なうということにつきましては、実は御指摘のとおり、先般事業団法を御審議の際にもいろいろな方々からいろいろな御質問を受けております。これも一つ方法だとは思いますけれども、われわれがこの問題に取り組むにあたりましての問題点考えますのは、御存じのとおり、輸出窓口、しかも実際に輸出をする絹業部門も含めて、一つ機関に行なわせるということになりますと、たとえば国内価格が安くて何としても輸出をはからなければならないというような、そういう状態のときには、これはほうっておきますと、安値売り込みのようなことを競争いたしますから、おのずからやはり特定の輸出機関というものが必要であるということが出てくるわけでございます。この生糸の場合でございますと、とにかく一般関係会社輸出努力が、国内消費がいいために、むしろそれにかからないという状況なものですから、そういう状況のときに、この事業団というような一種政府機関が一手に行なうことがはたして適当であるかどうか。あるいはまた、能率が悪くなって、むしろ自由に商社等を督励して輸出に馬力をかけるほうがよりいいのではないかというようなところに一つ問題点があるのじゃないかという感じがいたします。この点につきましても、御指摘のような点も有力な御議論としてあるわけでございますので、この点につきましても、事業団運営状況とにらみ合わせながら検討の必要があろうか、こういうような考え方でおるわけでございます。  それから、一定価格にして、その輸出ベース輸出の基準となる価格はできるだけ動かさないほうがいいということにつきましては、これは御指摘のとおりでございます。ただ、国内価格が高い場合でございますと、どうしても輸出価格は安くなければならない。そういう関係でそこに出てくる差額負担と申しますか、まあ平たく言えば、二重価格による輸出促進ということになろうかと思いますが、そうなりますと、要するに、そのときの国内価格あり方のレベルの問題に関係してきますけれども、財源が一体どの程度必要であるか、あるいはその財源をどうやって調達するかというような問題も当然にからんでくるわけであります。先ほどちょっとお答えいたしましたように、実は国内価格は六千円以上、しかもおそらくは海外需給価格が五千円以下ぐらいであろうというときに、製糸関係ではともかく不満足ながら一種奨励金制度というような、一種の二重価格というようなものも一応できておるわけでございますので、それを今後拡充していくという意味において、できるだけ御指摘の趣旨に合うような方向に持っていきたいと考えておるわけであります。ただ、現段階において、いかなる国内価格国際価格の場合でも必ず一年の間動かさないとか、あるいは蚕期は必ず固定するというところまでできるかどうかということについては、やはり今後国内糸価の動きと比べて、それで最終的な考え方をきめる必要があるのじゃないかというふうな基調で現在考えておるわけでございます。
  7. 八木一郎

    八木一郎君 価格の問題が出ましたが、なるほど輸出価格内地価格の二重機構の問題は、乳価の用途別二重価格調整の問題と軌を一にして、これを政策でやるということは問題点が多いと思います。これだけでもきのう矢山委員は三時間半も熱心に審議を重ねておられました。私も目をあらためて、価格調整の問題については、検討した上で、時間をもって、重ねて御質問を申し上げたいと思います。  さしあたり輸出価格というものは国際需給均衡価格というような考え方でものを見ていくことができないのかどうか。三十三年の大暴落したときには、大蔵省を中心需給均衡価格という一枚看板でもって、生産者団体生産費の八割五分をせめて保証しろということさえも破った例もある。いまの段階では国内のほうが高くて海外の値が低い。こういう事情にあるのですから、いわゆる国際需給均衡価格というものの考え方についても政府部内では検討しておられる事実があるのか、ないのか。現状ではどのような水準が、そういうふうに見れば、適当であるのか、お考えを承りたいのであります。  それから二番目には、価格調整にからみまして、新しい輸出体制についてはいろいろ考えがあるでありましょうが、私は、今回発足した日本蚕糸事業団は、養蚕製糸業界が打って一丸となって、出資も両団体がいわゆる大株主となりまして、その大株主が重役、理事を送り出して運営をしていくという、こういういきさつになって発足しておるのでもありますから、輸出生糸の製造に必要な繭はこれから増産をはかって、その増産による分はこれすべて輸出工場に渡して、その原料地盤もあわせ、政策の力で培養していく、そうして価格調整を繭の段階で行なうことが最も効果的な方法であるというふうに思うのでありまするが、このためには、事業団指定原料地盤から時価で繭を購入し、事業団価格調整によって輸出指定工場に渡し、事業団において一元的に輸出するような方法考えなければならないわけですが、この可能性についてどの程度検討せられておるかどうか、この問題点。  第三番目は、このような恒久的な輸出体制現行事業団ではできないかどうか。事実上の事業団の法制では無理だというならば、事業団が実質的には支配しておるが、その外郭団体的なものであっても、このような政策方向協力していける私は措置が必要だと思う。ぎりぎり事業団法を改正しなければならないということもわからぬわけではありません。その場合には、どんな点を改正しなければならぬと検討しておるか。今国会におきまして事業団法附帯決議も、冒頭に本院が決議をいたしておりました十億円の追加出資問題も、このような輸出振興政策、いわば繭の生産に主体を置いて生産基盤を育成して、これを製糸養蚕一体的に運用するつなぎの中で輸出振興をはかる、こういう措置を早急にひとつ打ち立てるべきではないかと思う。もう春蚕の時期も当面しておりますが、所信のほどを伺いたいと思います。
  8. 丸山文雄

    政府委員丸山文雄君) 国際均衡価格という問題について研究があるかどうかという御質問でございます。これにつきましては、御存じのとおり、供給国立場考えました場合に、必ずしも国際的な需給によって供給価格が変わるという形をとっている国ばかりではないわけでございます。たとえば消費価格がどうあろうとも売る価格はこういう値段であるという国、これは中共がそうでございますが、そういうたてまえをとっておる。国家管理貿易と申しますか、国家貿易と申しますか、そういう国もございますので、必ずしも全体的に需給だけで国際的にどう価格がきまるかということにつきましては、これはわれわれといたしましても、非常に検討しにくい問題を含んでおると思っておるわけでございます。ただ、大体日本生産額あるいは日本消費事情、これが大体日本は五二%ぐらい生糸生産額にしまして持っておりますので、その価格一体消費国需要に結びつくか結びつかないかというように考えても大体間違いないと思うのでございますが、そういう点から考えますと、いわゆるわれわれ国内における消費価格消費需要とそれから輸出の推測、そういうものを因るにいたしまして考えました場合には、大体四十一年度においていろいろな条件そのもの過程の問題もございますけれども、大体価格にいたしまして五千二百円ぐらいのところが、いわば四十一年の国内需給であり、同時に、輸出を含めまして海外市場に出得る数字じゃないかというような検討過程のものとしては考えておるわけでございます。御指摘の点につきましても、今後新年度に入ります過程においてなお検討は続けたい、こういうふうに考えます。  それから輸出の問題につきましては、原料繭から確保しなければだめだ、その分はよけいに取って置くということについて、まさにこれは理想だと思います。したがいまして、事業団が行なうか、どこが行なうかということは別にいたしましても、これは理想だと思いますけれども、まあ言いますならば、やはりこれも国内価格国際価格との関係が出てきますので、要するに、糸の段階差額考えるか、あるいは原料の繭の段階差額考えるか、そういうどこの段階をとらえて一種差額補給的なことを考えるかという問題では、糸の問題、繭の問題、結論的には共通の問題を含んでおるのではないかというふうに考えております。もちろんこの程度数量を横にどけて輸出用として確保しておくかどうか、数量の問題にも関係しますけれども、この問題もまさにある意味では理想的な方法でございますので、どういうシステムで、あるいはまた財源はどういう形で調達し得るかということもあわせまして、要するに、一般的な輸出振興対策の一環として、これも今後われわれの研究課題である、こういうふうに考えております。現行事業団でそれが行なえるかどうかということになりますと、御承知のとおり現行事業団は、一定価格による申し入れなり、あるいは一定価格による販売委託なりがありませんと、これは動くことになっておりませんので、積極的にこういう場合にはみずから進んで買うという立場にはなっておりません。したがいまして、いま御指摘のような事業事業団自体が行なうという場合におきましては、これは法律改正が必要だろうかとは考えます。ただ、事業団が直接に手を触れなくても、事業団のたとえばある意味における利益金等ありました場合に、そういうものを繭の原料代の金利軽減のために使うというような問題、そういうような問題につきましては、先ほども申し上げておりますように、業界の基金の造成状況等とにらみ合わせまして、これは全然法律改正しなければできないというものではないわけでございます。
  9. 八木一郎

    八木一郎君 以上の問題点を私はあげて、政府政策のごく一、二の点をただしてまいったんですが、恒久的な問題はさておいて、すぐ春蚕繭から始められるこの時点に立って、何か応急的な暫定的なこの際措置が必要なような気がするのであります。事業団法を通過成立させる際にも指摘しておきましたが、輸出振興は現在の急務であるということについては、国民業界もともに一致した見解で、異論はございません。ここで微温的な、いまやっておりますようなことでは、これはやがて海外市場はゼロ敗になってしまうことを憂えるのでありますから、何とかくふう、創意をこらして応急対策を講ずべきであると思うのでございまするが、こういう考えに立って何か構想がありますかどうか承りたいのであります。私はちょっと考えてみますと、現在実施されているこの程度のものを、抜本的にとまではいかなくても、大きく前進をさせる措置として考えられるべきことは、これはさきにも述べましたように、繭の生産者団体が、たとえば全養連等の経済活動団体が、一定数量の繭を保有してこれを輸出製糸工場に対して、輸出価格に見合う繭価で売り渡し、その間の差額補てんについて政策資金を投入する、こういうことをすればいいんじゃないかと思うわけです。事業団に対する十億円の追加出資は、すでに国会を通じて国民約束をしておる十億円でありますから、まあ端的にいえば、その先食いをして、明年度予算化すであろうことを見越してやってもいいと思う。必要な金ならいつでも出すよというのが政府の態度でありますから、そのように考えて、いまからすぐにでも生産者団体の自主的措置によって当面融資をするとか、あるいは部内資金の活用をはかるとかいうような方式をとって、たとえば昨年でしたか、全販連が卵の価格の安定のために、二十億の資金ファンドによってみごとに卵価安定対策政策をとって、効果をあげて、本年、これが正常な政策予算となってきた例もあるわけでありますから、当局の熱意いかんによっては、私はこれはやれるのだ。また、やらなければならぬことだと思っておりますが、このような方向で、関係の金融機関や、養蚕製糸業界を強力に指導するという用意と決意があるかどうか、これが大切だと思うので、率直に。
  10. 丸山文雄

    政府委員丸山文雄君) ただいまの御指摘の点につきましては、これはまああと政府の何らかの方法による財政援助ができるまで、その間、融資等によって差額の金は見出していくということも考えられると思います。まあ確かに一つ方法だと思いますので、協会にもそういう点、十分こちらからも話を持ち出しまして、国も真剣に検討をしていきたい、こういうふうに考えております。
  11. 八木一郎

    八木一郎君 時間を急いでおりますので、終わりに私がお尋ねをいたしたいという点を締めくくっていきたいと思いますけれども、世界の蚕糸生産国が相提携協力して、蚕糸の需要拡大につめる、こういう必要性を決定をして、当院において国会決議となっていることは御承知のとおり。そこで、この種の会合がどういうことになっておるかというのを調べてみますと、国際絹業大会は現に地中海において開会されておるのであります。また近く、国際養蚕会議が開かれるやに聞いております。この二つの機関は次回の開催地を、理事国会議はいつ、総会はいつというようなことが取りきめられるであろうと思うのですが、何かインドの国内事情等によって、日本におはちが回ってきているということも聞いているわけです。蚕糸関係国際会議、会合のこれについて、政府は近い機会に、関係団体に音頭をとらして、世界の蚕糸生産国会議を開かせるつもりがあるかどうか承りたいと思います。この種の会合をきっかけにいたしまして、国会議決の趣旨に沿うて、指導的立場で働きかけをするということを蚕糸当局が決意するならば、私は、期待するような国際協定価額制度というものに一歩近づけるであろう、このようにさえ思うのであります。  そこで質問は終わりますけれども、具体的な建設的な政策事項について、二、三指摘してきたのですけれども、お答えは、検討します、善処しますという程度をあまり越えてない、その場のがれだとは申しませんけれども、この段階における蚕糸政策といたしましては、さっそく実行体制を固めるように行政配慮を尽くしておいて、指示しておいてはるばるお出かけ願いたい。  締めくくりの意味でもう一度繰り返しますと、重点事項として私が指摘したのは、輸出増大の道はただ一つ輸出と宣伝と繭増産事業団が一手に引き受けてやれる仕組みに改め、一定価格一定期間、一定の量を売り出せるようにすれば、競争国である韓国中共に対等の地位で売り手の立場に立てる、量的に質的に優秀なものを持っておる日本が、自由化野放しの状態のために需要者の要求する一定価格一定期間、一定数量を取りつけられないということと、それから海外でこれを受けとめて売り込み合戦に優位を占めておるあり方が、日本のほうは海外事務所は持っておるけれども、統計をつくって、観光客の御案内係と、一方はノルマ方式でじゃんじゃん売り込みをしておる、こういう違いがあることが今日のような悲惨な事態に立ち至らしめたと思うのでありますから、反省の中に、いま特に海外商社のエキスパートを出向社員に雇い入れるように交渉してみるとか、あるいはいま私が言うような何らかの方式を、商業ベースに近い方式をもって売り込み合戦に対処するということです。私は前回指摘しておきましたけれども、ジェトロという看板のかさの下で、実はジェトロ本来の方式を越えて、ほんとうに売り込み合戦に額に汗をして働いておる業界幾多の中で、自転車の輸出実績というものはすばらしいものがある。これが投入しておる費用と蚕糸の場合とを比べてみて、これは私は他山の一石として大いに学ぶべき点があるということを指摘しておきましたが、これらの点についてはお調べになっておるかどうか、こういうことも売り込みについての措置についてひとつお考えを願いたいのと、価格調整は、これは農林省が今回数十億の財政負担をして酪農振興対策で試みようとしておりまする用途別価格調整という、いわゆる不足払い、用途別価格調整方式が実行に移されようとする段階にまできております。だから私は、山村になくてならない養蚕業であるという認識の上に農林省が立つならば、繭の段階価格負担、しかもその価格は内需と輸出との用途別価格ですが、これを調整するという企画立案ができないはずはない。これはすぐできるはずだ、こういうふうに承知しておるのでありまして、世界一の蚕糸国日本が絹業、蚕糸を通じて国際文化経済に貢献しようとしておるあふるるがごとき熱意を披瀝して、前回大会において久宗蚕糸局長ステートメントがフランス語で堂々と述べられたというところに、非常な親しみと期待をかけられたのですけれども、期待を実行するのに二年もかかってしまった。その間に事情の変更があってこのような事態になったのです。せっかくお出かけになる丸山局長におかれては、世界の蚕糸関係者日本に御期待ください、ほかの国並みに一定価格一定数量を十分に供給いたしますと大みえを切って、ひとつ帰ってきていただく決意を、できるなら、前回審議の際にも申したように、新事業団の人心を一新し、その理事長は丸山局長みずから買って出てもやるくらいな熱意を持って国際舞台でやってきていただきたい。私は蚕糸業に愛着を持つ国民の一人として、起死回生の道を開かれる熱意あふるる期待と、あなたの決意のほどを承って、この質問を終わろうかと思うのであります。
  12. 丸山文雄

    政府委員丸山文雄君) いろいろ御激励やら御質問いただきました中に、私ども申しましたように、非常に理想的なものと、あるいはすぐにはできないものといろいろあろうかと思います。いずれにいたしましても、輸出振興策につきましては、御存じのとおり、従来の経緯もありますので、すぐ方向づけしなければならない面は、協会における当面の応分の負担と、それからその使途の問題であろうかと思います。それにつきましては、もちろん、私不在中でございますけれども、関係者十分認識しておりますので、そのことはいたすつもりでございます。  それから、いろいろ大会におけるこちらの主張といたしましては、今後も、いろいろな方法考えて、輸出増進には力を尽くすつもりであるので、今後ともに期待していただきたいということは、もちろん申し上げてくるつもりでございます。従来の経緯から見まして、なかなかその場で申し上げましたことがすぐ実行できない点もありました経緯もありますので、不可能なことは、これは申し上げるわけにはいかないと思いますけれども、できるだけ御質問のような趣旨で臨んでいきたい、こう考えておる次第でございます。
  13. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 本件についての質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  14. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 次に、漁業の生産基盤整備及び水質汚濁防止対策等に関する件について質疑を行ないます。
  15. 森中守義

    ○森中守義君 いま委員長からあげられました項目について少しくお尋ねしたいと思います。  本年度農林省予算が国会に出された際に、農林大臣は、口をきわめて、いま委員長からお話がありましたように、漁業の生産基盤の整備、さらに新規事業として水質汚濁を徹底的に解明をしたい。これを防止する方策を確立をしたいということが強調されておる。ついては具体的にどういったことをお考えになっておるかお尋ねしたいと思う。特に私は、はたしてこの程度の予算でできるかという、こういう問題にぶつかるのですが、特に水質の汚濁については、なるほど新事業でございますので、一挙に相当規模の予算の確保は困難であったのじゃないかとも思うのですけれども、三百七十万程度の予算がついておるようです。こういうことで、はたして生産基盤の拡充、整備あるいは今日最大の急務である公害イコール水質の汚濁、こういう問題が解決されるとは私思っておりません。ついては、まずその辺から、基本的な問題として農林大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  16. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) 森中委員の、沿岸漁業の振興でございますが、国民経済の正常な発展に即応いたしまして、沿岸漁業の近代化と合理化をはかり、その生産性を向上していく。沿岸漁業従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことができるようにする、これを基本的な方針としておることは常に申しておるとおりであります。このために政府は、水産資源の維持、増大、漁港等の生産基盤の整備をはかるとともに、沿岸漁業構造改善事業として、漁場の改良、造成、共同利用施設の整備等を行なわせており、また長期、低利資金の融通及び技術の改良、普及等の施策を進めておるのでございまして、今後もこれらの施策の充実につとめて、沿岸漁業の経営の改善と所得の向上をはかってまいりたいと思うのでございます。  なお、御質問の浅海漁業における水質汚濁でございまするが、これは水産資源の保護、培養、漁業の正常な操業に大きな影響を与えるものでありまするので、これの防止につとめることはきわめて重要であることは、森中委員の言われるとおりであると考えており、浅海漁業の水質汚濁の防止をはかるためには、河口や、海域に放流されます工場、事業場等の排水の水質基準の設定を促進し、また船舶廃油による海水汚濁の防止についても関係各省と密接な連絡をとり、その対策をより一そう強化することとしてまいりたい、かように存じておるわけでございます。
  17. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと抽象的でよく理解できません。そこで、具体的にそれじゃ聞きたいのですが、浅海漁場の開発計画として継続六カ所、新規四カ所、十カ所ということがあげられておりますね。これらの地点は、経済企画庁が基本計画を、三十六年度に全国百二十一の水域指定をやっておりますね。これらの地域にどういう関係があるか。全くこの計画とは関係のない地域を継続六カ所、新規四カ所という調査をやろうとされるのか。あるいは多少ともこれに関係がある地域であるのか、その辺をちょっと聞かしておいてくれませんか。
  18. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答え申します。水産庁の予算の中に、浅海漁場の開発調査費という予算がございまして、これは目下調査の予算でございます。そしていま先生おっしゃいました地域を継続及び新規でやるわけでございますが、これは考え方といたしまして、水質で、いたんでない、いたんでないと申しますか、今後開発をしますならば有効に使える漁場を造成しようという立場での調査でございます。いわゆる開発調査費でございます。たとえば松島湾等におきまして、みお等をもっと掘るならば海水の流れがよくなって、浅海の養殖事業がもっと伸びる。あるいは宮城県の湾内におきまして、こういう仕事をしたならばさらにカキの養殖がよくなるという意味の開発的な事業造成上のための調査費でございます。それは比較的浅海地域で養殖事業をやるための造成、それから前段の、それではなくて、むしろ逆に一定の水域で相当の事業が行なわれておる。それがいろいろの立場におきましていたんでくる。いわゆる公害によりましていたんでまいります。これをいかに防ぐかという問題が一つございます。これにつきましてはむしろ別な立場から特定の河川を拾いまして、将来は沿岸にも及ぼしたいと思って、準備をいたしておりますが、そこでは、いたみ方、あるいはどのように水質をしたならばこの漁業への影響を最小限度に食いとめられるか、こういう立場での予算は、別途金額はわずかでございますが、計上をいたしまして、これが本日先生のおとり上げになりましたテーマに関する調査費でございます。なお基本的には水質二法に基づきます河川及び海岸の調査費、これは経済企画庁を中心にいろいろの調査が行なわれます。こういう関係になっております。
  19. 森中守義

    ○森中守義君 企画庁の長官が何かの御都合でおいでになっていないようですが、どなたか来ておりますか。  これは先般の衆議院、参議院の公害特別委員会でだいぶ問題になったのですが、三十六年の基本計画ですね。この中で、先ほど申し上げたようにすでに公告をしているのが百二十一地域、しかも多少私の手持ちにあるのが古いのかわかりませんが、この中で調査に着手をしているもの、ないしは調査が完了して水質基準の決定が行なわれている地域が、全部で二十三カ所ですね。そういうふうに、多少誤差があるかわかりませんが、もしそういうことであれば御訂正を願いたいと思う。それと同時に、どうも百二十一では、今日のように新産都市がだんだんだんだん進んでいる、あるいは工業特別計画が行なわれている、こういうような状態の中から今日の公害が非常にきびしいということで、百二十一の指定だけではだめだろう、もっと拡大をして調査をしなければならぬということは、まあいまや国会はもちろん関係各方面も取り上げている大きな問題なんですが、こういうようなことを考えますと、いま農林大臣及び水産庁長官がお述べになりましたような、そういう水産庁は水産庁、企画庁は企画庁、こういう別個なものであっていいとは私は思わない。したがって、企画庁のほうではこの百二十一にさらにどのくらい追加されようとするのか、あるいはまた二十三カ所現在行なわれておりますが、これを年間に平均割ってみると大体四・六カ所ということになりますね、二十三カ所ですからちょうど五年間の間に。したがって、まあこれはあとで聞きますけれども、五カ年計画によってどういうテンポのもとに調査をさらにピッチを上げようとするのか、その辺を企画庁のほうからお答え願っておきたいと思います。
  20. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) ただいま先生からお話のございました昭和三十六年に水質保全法に基づきまして調査の基本計画を告示したわけでございますが、その際の水域の数は百二十一でございます。御指摘のとおりでございます。ただ、いままでに調査してまいりましたのは、若干数字違いますが、これは法律ができましたのが三十四年度でございまして、それ以来毎年七本程度の水域をやってまいりまして、四十年度末までに五十一の水域の調査をやっております。ただ、それにはまだ今後調査の結果の解析その他がございますので、いままでにその調査の結果につきまして具体的な水域の指定ないし水質基準の設定を行ないましたのは、たとえば隅田川その他十三の水域にとどまっております。このような次第でございますので、先ほど先生からもお話のございましたように、このようなテンポでは今後十年あるいは二十年の歳月を要しなければおおむね満足すべきような調査が終わらないというような結果になりますので、実は本年度予算の編成の際に、従来の調査方式等も改めまして、今後五カ年間に相当な数の調査の水域を行なえるように、実はわれわれは緊急五カ年計画と申しておるわけでございますが、そういうことで百二十一水域の残りの七十水域のほかに、これは今後具体的に関係各省と相談しながらきめていくわけでございますが、この五カ年間にそのほかに五、六十程度調査しよう、こういうことで、昭和四十一年度の予算では約三十の水域の調査をやることになっております。
  21. 森中守義

    ○森中守義君 いまの百二十一のほかに三十追加する、こういうことですか。
  22. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) 百二十一のほかに五、六十程度の水域を取り上げていこう、両方合わした中で、四十一年度に約三十を取り上げる、こういうことでございます。
  23. 森中守義

    ○森中守義君 水産庁長官、いままで企画庁からお話があったように、大体一通りの調査が終わって、したがって、水質の基準の決定等が行なわれているということのようですが、これによって、どういう水質あるいはその水産資源に対する影響をもたらしていますか。ということは、大体水産物がこういう汚染のために受けた被害、大体調査ができていると思う。そのことを御答弁願いたい。
  24. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 水産関係の資源の水質汚濁によりまして影響を受けます態様といたしまして、河川におきまして、たとえばでん粉工場がでん粉を流す、あるいはパルプ工場がパルプを流す、そういう形におきましての被害の態様と、それから、さらに汚れた河川が海に入りまして海をいためる態様と、それから、海岸にございます工場が廃液を直接海に出していたむ態様とかようにございます。そこで、いま先生直接の御質問の問題でございますが、この水資源法によりまして、全国の河川百二十幾つのうちから最も汚染度の激しいものを指定しまして、水質の基準をつくる作業を経済企画庁でおやりになり、関係各省がそれに参画いたしたわけでございます。御承知のとおり、隅田川あるいはその他淀川も入っていると思いますが、そういう非常に汚染したほうから現在手をつけております。そうして水産庁の関係として、この関係におきまして非常に関心を持っておりましたのが、北海道の石狩川でございます。石狩川につきまして、水質基準の問題が相当議論をされましたけれども、具体的に水産に直接からみまして、現在までのところの調査及び水質基準の関係におきまして、具体的な問題として上がっております点は、私の記憶するところでは、目下のところ石狩川でございます。また早い話が、隅田川、淀川等はもっと水産被害以前の、公害の問題として考えられた川でございます。そこで、石狩川につきましては、具体的にこの基準の設定その他で、どの程度の効果が出たかという問題の測定につきましては、現在のところまだ明確な資料を持っておりません。
  25. 森中守義

    ○森中守義君 いま私がお尋ねしたのは、こういうことなんですよ。三十七年に政府が発表した、水質の汚染あるいは汚濁等によって漁業者がこうむった被害は六十億だという、こういう発表が行なわれている。すでにそれから三年ないし四年経過しておりますから、その後における汚染の度合いというものは相当激しいものを私は考えねばならぬと思う。そこで、この六十億というものが、漁家がこうむった三、四年前の被害ですから、現在どういう程度の被害になっているのか、そういう額を試算したことがあるかどうか、こういうことなんです。
  26. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 三十七年に水産庁が県を通じまして被害調査を行ないまして、その後被害の調査というものが継続して行なわれております。いま御指摘のとおり、三十六年には五十七億程度の被害の統計に相なっております。その後の情勢を申し上げますと、三十七年が約五十八億七千万円、三十八年が五十七億七千万円、こういうふうな形に統計上あらわれております。これは、ただし油の海上放棄による被害は含んでおりません。先ほど申し上げましたような形におきます被害でございます。
  27. 森中守義

    ○森中守義君 それは、私の手元にもある。一番新しいもの、つまり四十一年度あるいは四十年度年度末なら年度末、一番最近の被害の総額をまとめたことがあるかと、私はこう聞いているのですよ。
  28. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) ごく最近、私の手に入りましたこの報告書は三十八年のものでございまして、それ以後のものは事例調査としてはいろいろとっておりますが、こういう形にまとまったものは、三十八年がまとまった形のものでございます。
  29. 森中守義

    ○森中守義君 私は、水質汚濁の問題は、浅海漁場に非常に大きな影響を与え、ひいては基盤の整備等と言っても、こういう関心を一番持たねばならない漁家の被害がどういうものであるか、この辺のことがもう少しすっきりと把握をされておかないと、やはり水質対策、防止対策としては、その確度が少し薄いのではないかと思うのですよ。これは、おそらく私は水産庁にも、請願なり、あるいは陳情なり、あるいは要望という形で当然来ていると思うのですけれども、先般、全国の漁業者が汚水対策大会というものを開催されておるようです。この中で水産庁が、あるいは国が三十七年あるいは三十八年等に拾い上げている地方自治体等から集計をした被害では全然話にはならぬ、こういう強い表現を用いながら、この汚染等による漁家の被害は数百億に及んでいるという、こういうことを言っておるようですが、そういう話を聞いたことはありませんか。だから、ことさらに本日この問題をお尋ねしようというのは、浅海漁場の開発をやることもけっこうながら、まずこの辺の問題を一ぺん整理されておかないと、わが国の水産界に重大な影響を与えるのではないか。そういう心配をするので、お尋ねをしているのです。だから、その被害の額というものは、ずいぶん古い統計ですね。ですから、本年、新規事業として防止対策をおやりになるならば、大体大ざっぱではあるけれども、おおむねこの程度の被害がある、そういう額くらい拾い上げておってもいいじゃないですか。
  30. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 私も全く先生と同じ感じを持ちまして、在来ずっとやっておりますこの調査では、非常に不十分である。それで、被害等も、まあどのくらいになったかというのも、これは海の底の被害でございますから、なかなか判断がむずかしいとは思いますけれども、相当府県ごとの数字の取りまとめもまちまちである。ことにこの調査でございますと、最近問題になっております先ほども申しました油の洋上の問題等が集計されないわけです。そこで、数カ月くらいに相なりますが、あらためて調査方法を統一いたしまして、自今こういう形できちっとしたものをできるだけ早く出すような通達を各府県に手交いたしまして、先生のおっしゃいますように、もう少し精度も高く、かつ、各項目的にもあらゆる水産物の公害による被害が集計できるような立場におきまして取りまとめられるように、様式も一定いたしまして、すでにおそいという御批判はございましょうけれども、私も全くそう感じまして、やかましく言いまして、すでに本年度におきましてそういう通達を出したような次第でございます。この関係も取り急ぎ整備をしたい。かつ、被害額も、いまの被害は、先ほど来申し上げますように、工場被害というふうに狭義に解釈いたしておりますので、実際の被害はもっと多いものと、かように考えておるわけでございます。
  31. 森中守義

    ○森中守義君 質問よりこれは若干意見になりますが、やはり政府がこの種問題に対してどの程度力点を置くかということは、被害の状況あるいはおおむね真相に近い状態というものが完全に把握されておりませんと、世間がやかましいから、あるいは国会でよく問題になるからやらねばならぬだろうというおざなりの結果に私はなろうと思う。それで先ほど申し上げましたように、新しく水産庁のほうでも三百七十万の予算を特に本年はつけてこれに乗り出したということでは、確かに一歩前進ではあると思うのですけれども、はなはだ残念なことに、相当古い統計を用いてこの種被害の総額はこれこれであるというのでは、どうしても私はまじめに水質の汚染の対策に乗り出しているとは思えません。したがって、私のそういう所見に対しておおむね同感であるという長官の意見なんですが、ただ、そういう精神的な共鳴、共感ではお話にならない。具体的にそういうことをお気づきであれば、もちろんきょうから始まったということでもないこの問題ですから、おそらく今回の三百七十万の予算をつけるにあたっては、かなり詳細に財政当局への資料の提出なり、あるいは意見の開陳なり具体的な計画の内容等が提示されて初めて予算がついたと私は思う。したがって、これから先行なわんとする被害調査のやり方、方法、またそういうものをどうすればいいかというその辺のことを少しくお尋ねしておきたいと思います。
  32. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 初めに一言申し上げたいと思います。それは、三百七十万という数字の御指摘がございますが、実は水質問題につきまして対策を行ないます際に、私ども昨年度から非常にいろいろ研究をいたしたわけであります。ただ、結局は先ほど申したような形で被害が出てまいりますので、なかなかそれに対する対策というものは、政府関係各省があげて全体的に対策を講じないと、この公害の措置はなかなかできない。また、そういう立場におきまして水質保全法その他ができておるとわれわれ了承いたしております。  そこで、三百七十万というのは、実はそういう深い——深いと言いますか、本格的な問題ではございません。実はこれはパトロールと私ども俗語で言っておりますが、河川のいたみかける状態を事前にできるだけ早くキャッチしたい、そのために水産的に必要な内水面に漁協の方々、その他に実はこれはパトロールをしていただいて、どこかのでん粉工場あるいはどこかの工場が廃液を出している、あるいは出しそうである、そういうことを事前に把握いたしまして県庁に連絡をし、事前に県庁内部での指導をしよう、そういう意味のきわめて何と言いますか現実的ではございますが、いわば抹消的という御批判を免れないものでもございますが、そういう予算なのでございます。それで、それとは別に、先ほどちょっとお話を申し上げましたが、水産試験場を通じまして重要河川の水質、漁業に及ぼす影響等の調査は、別途委託費の形で、金額も数百万円でございますが、これは試験研究機関を通じてその系統のほうを流しておる、これがいわば、どちらかというと話の筋に乗った形の試験調査関係に関する予算でございます。  それからもう一つ、被害の調査の問題は、これはやはり県を通じて統一ある統計をもらう必要があるということで通達を三カ月前に出したわけであります。それで、先生の御質問の御本論の、この公害を根本的にどう取り組むのか、どういう対策として三百七十七万と結びつけていくのかという点につきましては、三百七十万はそういう、パトロールと俗に言っておりますが、そのための経費でございます。それで、基本的には私はここに経済企画庁もおられますが、根本的な問題として、公害の問題として抜本的に御相談をし、対策を講じなければならない性格のものである。わずか数百万とか数千万の予算でこの問題が解決できる筋合いのものでもない、かように考えておる次第でございます。
  33. 森中守義

    ○森中守義君 先ほど私は非常に丁重な表現を使ったのですがね。何といっても国民の税金ですから、たとえ五円であろうと十円であろうと貴重なものだという理解をしなければいけませんけれども、要するに、三百七十万それ自体が問題じゃない。むしろ次年度以降将来にかけてこの程度の予算ではどうにもならぬという、そういう一つの前提をおきながらものを考えているのですが、要するに、先ほど私が申し上げましたように、浅海漁場の開発をやる、これで自然のほうをやる、こういってみても、先ほど企画庁の答弁にもありましたように、すでに状態がずいぶん大きく変貌をしておる。したがって、さらに百二十一のほかに五十も六十も追加をしなければならぬという、こういう現状から考えると、残念ながら水産庁のお考えになっている監視体制では何といってもこれは現状肯定ですよ。この現状肯定では話にならない。そこで、一体四カ所及び六カ所、十カ所の浅海漁場の開発ということは、具体的に企画庁と相談をされて、先ほど水産庁長官のお話しのように、こういうものとはあまり関係がないという、そういうことで言い切れるのかどうなのか。もっと具体的に言うならば、漁場の開発あるいは汚染対策というものは、いま少し十分なる関係の向きとも協議があって私はしかるべきだと思うのです。ところが、残念ながら先ほど来のお答えからいけば、企画庁は企画庁、水産庁は水産庁独自の立場でこの対策をおやりになっておるのじゃないかと、こういうふうに実は感じとれるのです。ですから、その辺の両方の連携の状態あるいは実情把握の状態、その辺をもう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。これはこれから先の質問に非常に重大な関係がありますので、特にあらためてのお答えをちょうだいしたいと思うのです。
  34. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) 水質保全法関係のほうから水産庁とどういう接触をやっておるか、そちらのほうを中心にして申し上げますと、もともと水質二法ができましたのは、御承知のように江戸川の本州製紙と漁業者との争い、それをきっかけにしまして法律ができたわけでございます。現状からいたしましても、やはり漁業関係が水質汚濁の中の主要テーマになっておりまして、いままで五十一の調査をいたしましたが、そのうち約二十が主として水産関係、それから水質基準ができております。わずか十三でございますが、そのうち六水域が漁業が中心の問題についてでございます。その他水質保全法にございます和解の仲介制度で、現在までにあの制度によった府県の調停が三十四件ございますが、そのうち二十六、七件が漁業関係、こういうような実態でございますので、われわれのほうでも当然関係各省のうち、特に水産庁等に連絡を密にしまして、調査水域の取り上げ、あるいは調査のやり方等についても相互に連絡をとりながらやっておる次第でございます。また、部内の話を申し上げて恐縮でございますが、われわれのほうの水質調査課には水産庁からも相当な方に来ていただきまして調査をやっておるような次第でございます。
  35. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) なお補足さしていただきますと、この法律に基づきまして水質審議会がございまして、その中には全漁連を代表して委員が入り、かつ活発に漁業の立場の発言をお願いをいたしておるわけであります。それから政府関係職員といたしましては、当然農林次官が入っておりまして、主として実際出ますのも水産庁のほうが出るという形におきまして、目下の態勢は水質二法を中心にして、水による被害というものをいかに最小限に食いとめるか、これを軸にして全体の行政は動いている。ただ、そのテンポなり規模なり等がいろいろ御批判があるという点はございましょうが、ものの考え方としてはやはり関係各省が一緒になってこの問題をやらないとならない、こういう立場で経済企画庁を中心に各省が集まってこの問題をやっていくと、こういう政府部内の関係になっております。
  36. 森中守義

    ○森中守義君 そうしますとね、先ほど被害の額が正確に把握されていない現状において、こういう質問は少し行き過ぎているかわかりませんが、経済企画庁のお答えから申しますると、すでに調査の結果、基準の決定が行なわれている、こういうことのようですが、それによってどの程度の成果をあげておりますか。つまり被害の額がこれこれという想定ができ、それに対して調査の結果基準設定をやったのでこれこれの成果をあげ、つまり正常な状態に戻っているか、その辺の成果についてお答えいただきたい。
  37. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) ただいまの先生の御質問に直接答えるということにならないかもしれませんが、水質基準を設定いたします際には、特に漁業が中心の水域につきましては、水産庁から水産資源を守るための要望水域というのが企画庁に出されます。たとえば石狩川でサケ・マスの保護をやる場合に、BODで申しますと三とか四とか、そういう水質にしてもらいたいと、こういう要望が出てまいりまして、石狩川の流水を三あるいは四というふうに保つためには工場、事業場等の排水をどの程度規制したらいいか、こういうことに因果関係を求めまして、水質基準を設定しているわけでございます。したがいまして、水質基準のできたあとでのわれわれのほうの観察といたしましては、流水が三とか、あるいは四とかという、そういうふうな要望水質になっているかどうか、こういう点の把握はできるだけやっておりますが、被害額がどうなっておるかというところまでは私どものほうでは把握しておりません。
  38. 森中守義

    ○森中守義君 これはこれから先の施策を講じていく中の非常に重要なことですよ。原因がある、その原因を除去するためにかくかくの施策をやるとこういう成果がある、こういうことでないと、ただ私どもさあやれ、さあやれだけでは意味がない。したがって、私は漁家の損害を先ほど水産庁長官お尋ねしたのですが、その額についても正確ではない。したがって、水産庁、企画庁が先ほどのお答えからいけば両々相まって対策をやっている。しかもある種の成果をおさめたと、こういう答弁がありましたので、それならば汚染水域というものはどの程度まで復元できたのか、あるいは漁業に対する被害を最小限に食いとめることができたのか、このことの答えはもらっておかないと、私は企画庁なり、あるいは魚価の補償に専念をされる水産庁あるいは経済企画庁としては少々無責任じゃないか、こういうように思うのですがね、その辺のことが、一番だれしもが聞きたいことじゃないかと思うのですよ。わかっておればお答え願いたいと思います。
  39. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 先ほど経済企画庁のほうからもお答え申し上げましたように、まずどういう水域を選ぶかということから始まりまして、指定をいたしまして、調査をいたしまして、調査の結果水質基準をつくる、そして水質基準に合うように、通産省、その他関係業界、行政庁の協力のもとにそれを確保する、こういう仕組みに相なっております。そこで、先ほどの百二十幾つという数字も対象地域でございます。それからそれに非常にたくさんな調査を手をつけておりますが、水質基準が設定されますまでには非常に問題がございまして、現実に水質基準が設定された河川は、私の承知する限りではまだ非常に少ないわけでございます。ことにそのうちで漁業に密接なのは、先ほど申し上げました形におきまして、石狩川に水質の基準ができた。私のほうはその前から、非常に多くの河川を漁業に大いに影響があるから取り上げるべしという、要求として非常にたくさんの要求を出しております。しかし、現実にここまで今日まで動いております、最終的な水質基準の設定ができて、さらにそれに伴いまして関係の工場に規制が行なわれまして、そしてその基準どおりに水がなって、漁業がどうなったかという段階に達します問題としては、まだ遺憾ながら相当広範囲にはなっておらない、こういう現状であると思うのでございます。
  40. 森中守義

    ○森中守義君 それじゃ一歩話を進めまして、汚水対策全国漁業者協議会、こういうものが発足をした事実を知っていますか。
  41. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 承知いたしております。
  42. 森中守義

    ○森中守義君 私も、これは直接そういう関係の皆さんにお目にかかったわけじゃございませんが、こういう関係の向きのいろいろな書類等を拝見してみれば、内容的に非常に重要なことが指摘されております。しかもこれは率直に申して、沿岸漁家の深刻な悩みを実は集約したものと私は理解をするのです。大臣もしくは長官は、こういう代表者と会見をされて、いろいろこれから水産庁の政策として、こうこういう問題についてはこうしたい、この辺のことにはこういう対策を立てたい、こういったようなお話をされたことがありますか。
  43. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お話は、この今回できました協議会ですか、団体ともお話はいたしております。それから、実は昨年は全漁連が中心に相なりまして汚水対策を取り上げて、そこで昨年いろいろお話し合いをいたしまして、なかなかむずかしい問題であるけれども、せめて少なくとも、とりあえずでもいいから、その水質のパトロール事業というものに手をつけてもらいたいという熱心なお話であり、私どももそれに同調いたしまして、第一歩としてそれを予算化したわけでございまして、これらすべてお話し合いの上でのことでございます。ただ、根本的に、全国の非常に大きな公害に類する被害にいかにして対処するかということに相なりますと、問題が非常にむずかしいわけでございます。お互いによく話し合いはしておりますが、この手を講ずればすぐそういう問題がきれいにいくというふうには現段階ではなかなかまいらない。今後ともお話し合いをして、やれるものからやっていこうじゃないか、こういうふうなお話し合いをいたしておるわけでございます。
  44. 森中守義

    ○森中守義君 けさの読売新聞によりますと、きのう衆議院の公害特別委員会で、鈴木厚生大臣が、公害基本法を次の国会に提案をしたい、構想はかくかくである、こういうことが相当大きく発表されております。そこで私は、この構想が内容的に見ていろいろ問題とすべき点もあることはあるのですが、いままでおおむね議論をされてきた方向というものが、この公害防止基本法の中に網羅されつつあるということは、非常にけっこうなことだと思うのです。  そこで、実は関係の閣僚が全部おいででございませんので、その辺の重要なことがお尋ねできないのを残念に思いますが、現在この種関係の法律がたくさんありますね、先ほど来言われた水質二法あるいは清掃法、農薬取締法、たくさんある。そこで、水産庁の場合、今日の水資源保護法、こういうものも今回この公害防止基本法提案の時期とあわせて、現状に即応したような内容の改正が必要ではなかろうか、私はいま各条項の一つ一つを提示するわけにもまいりませんけれども、少なくとも今日この状態で、水資源保護法が現状に完全にマッチしているとは思えない。したがって、こういう一連の現存の法律というものをいま少し改正をする、あるいは整理統合のほうに進めるということはお考えになりませんか、大臣。
  45. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) この問題はきわめて重要な問題であることは言うまでもございません。しかし、農林大臣、農林省だけでいくというわけにもいきませんので、これらの問題は関係各省とも十分検討を加えてまいりたいと、こう存じておるわけであります。
  46. 森中守義

    ○森中守義君 行政組織法によれば、大体この問題は経済企画庁が一応主務官庁という、こういうことになっておりますね。しかしながら、実際問題としては農林省あるいは厚生省、科学技術庁、通産省、こういうように各省庁の設置法の中にも同様なことがいわれておりまして、そこにこういう問題の根本的な解決をはばんでいる最大の原因があると思う。そういう意味から、この厚生省の構想の中には、たとえば主務官庁ともいうべきものをこの際はどうしても起こさねばならぬ、ついては、現在の公取とか、あるいは人権擁護局とか、こういうものと同じような性格を持たせて、この種問題の一元的な行政運営に当たりたいと、こういっておるのですが、企画庁のほうではこの問題に対してどうお考えですか。
  47. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) 御承知のように、公害の現象は非常に複雑でございまして、しかもいろいろな多様性を持っておるわけでございますので、それに応ずるいろいろな予防措置、あるいは事後措置、これらも関係各省にまたがって、なかなか単一の行政機関が一元的に処理するということは困難な実情にございます。したがって、ただいまのところでは総理府に公害対策推進連絡会議というものを設けて、この辺の調整をやっておるわけでございますが、そのうち水質二法の関係につきましては、行政組織法でも企画庁がそれらの基本的なことは総合調整するということで、私どもの局がそれを担当しておるわけでございます。しかし、本日の新聞にも出ていますような公害全般につきましては、まだどこがやるというような問題まで詰めた政府見解は出ておりません。厚生省におきましては、厚生省の設置法で公害審議会というのをつくって、そこで公害の基本問題をただいま検討されておりますし、私どもも水質審議会が企画庁にございますが、そこで水質保全関係の基本問題につきまして、これらと厚生省の動き等と並行いたしまして、これを審議するために、先ほど水産庁長官からもお話のございました全漁連の会長等も入りました総合部会をつくりまして、ただいま根本問題の検討をやっておる次等でございます。
  48. 森中守義

    ○森中守義君 いまの質問はちょっと局長ではお答えがなかなかむずかしいのじゃないかと思うのですがね。要するに、困ったものであることは間違いございません。それで、いまの御答弁と、先ほどの答弁に関連をする、審議会に水産庁からも相当な人が入っている、こういうことのようですけれども、具体的に、私は残念なことながら、これら水質汚染によってどの程度の漁家の被害があったという、そういう被害の内容も完全に掌握をしないで会議に参加するということそれ自体が少々こっけいだと思う。ついては、なるほど現行の組織法からいけば、経済企画庁が主務官庁に違いございませんが、これに参加をする農林省、水産庁の態度、どういうものを大体お持ちになっているのですか。
  49. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  どういうものを持っておるかということですが、どの河川を選ぶかということも審議会の問題でございますし、どういうような調査をするかも審議会の問題だし、また、どの程度にするかということも問題になるわけでございます。したがいまして、それぞれの河川につきまして現実に金何円何十銭の被害ということの精度の問題はございましょうが、河川ごとにどういう工場でどういう被害が出ているということは、私のほうでは掌握し、県からも具体的な審議会の河川指定の問題との関連においては、これは統計の問題とは別個に一応いろいろ取り寄せまして、こういう河川をできるだけ早く指定してもらいたいという立場において参与をし、発言をいたしておるわけであります。  それから、いろいろな理由でどの程度の基準にするかという際におきましても、その基準については魚族の生息その他の立場から、どの程度のものであるべきだ、そういったって無理だ、いやこの程度のものにすべきだという立場において水産庁は参与し、発言し、参画する。こういう形に相なっておる次第であります。
  50. 森中守義

    ○森中守義君 大臣は三時にお出かけだそうですから、この質問あと質問することにしまして、特にいまの水質汚染の問題で、大臣に最後に私はお尋ねしておきたいと思うのですが、先ほど来いろいろお答えを拝聴しておりますと、必ずしも全国の漁家が期待できるような対策は、残念ながらいまのところ水産庁ではお持ちでないようです。ただし新規事業として三百七十万程度の予算がついた、これは一つの前進のきざしではあろと思うのですけれども、しかしながら、くどいようですが、大体こういう問題のためにどの程度の被害を漁家がこうむっているかというその内容の把握もされていない。私は、世間が騒がしいからせにゃなるまいという、そう程度のものであるとも思いませんが、いま少しこの問題と真剣に取り組まないと、ただ浅海漁場の基盤整備をやる、それで水産資源の保護をするとか、あるいは魚価の補償をしよう、こういうことではどう考えてみても少し手おくれではなかろうか、こう思うのです。それで、いまにわかに具体的の政策を示せと言っても無理かわかりませんが、一応この問題に対する農林大臣としての、こうこういう方向でやっていきたいという具体的な構想、内容を聞かしてもらっておきたいと思うのです。
  51. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) この水質汚濁に関する問題はきわめて重要でございます。これらに対する問題については各省ともよく連携をとりまして、十分これらの調査並びに対策についての目的を達する方向に向かっての努力はもちろん進めてまいりたいと存ずる次第でございます。
  52. 温水三郎

    ○温水三郎君 ちょっと関連質問をいたしますが、宮崎県のでん粉汚水の問題ですけれども、経済企画庁と農林省質問しますが、でん粉汚水はこれは内水面漁業という観点から見ても重大な問題であります。しかしながら、その他の方面で非常に社会問題として大きく宮崎県では取り上げられておる問題であります。そこで、宮崎県の知事としては、素掘り沈でん池方式によって一応当面を糊塗いたしておりますけれども、これは汚濁度すなわちBODにいたしますというと大体一五%ないし三〇%の浄化にしかならないのであって、決してこれは根本的な解決にはならないわけであります。ところで、従来これが非常に大きな問題でありながら問題とできなかった点は、イモ作農家と内水面漁業者はほとんど同一な人たちであり、かつまた、でん粉工場なるものは非常に小さな資本でございまするから、浄化装置などということはとうていできない、こういうことであったわけでありますが、非常に大きな問題になってまいりましたので、ただいま申し上げますとおり素掘り沈でん池というようなことで、当面を糊塗いたしておるのでありますけれども、根本的な解決にはとうていならない。そこで宮崎県の経済連が県と相談いたしまして実験いたしました活性汚泥法による浄化装置は、通産省の千葉の発酵研究所によって分析をした結果、大体最終の結論によっては六〇ないし八〇%のBOD除去率になっておるわけであります。ただし、これとても昨年のでん粉時期における実験の中で確定的にそういう結果が出ておるわけではなくて、第一回においては四〇%程度の除去率であり、第二回の分析においては一〇%程度の分析であって、最終的な第三次の実験において六〇ないし八〇の除去率を出しておるのであって、今後なお幾多の研究にまたなければならないところがあると思います。これは単に民間団体もしくは宮崎県のような貧乏県、こういうものが担当するにはあまりにも大きな問題であって、ぜひとも国のこの浄化装置の開発というものに対する援助とか、あるいは国自体の研究というものがなければ、これらは完成しないと思うのでありますが、さらに最近におきましては、でん粉汚水の中からえさの材料であるところのたん白、これを抽出するということも東洋技術という会社で目下発明中であるのであります。こういうような重大な問題に関して経済企画庁及び農林省は関心をお持ちであるかどうか。関心があるとすれば、これに対して研究もしくは援助をする方針がきめられるかどうか。これらの点についてお答えを願いたいと思う次第であります。
  53. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) ただいま御指摘の点、大体私どもも承っております。でん粉関係が汚濁の源になりまして、その結果水産が被害者になっておる、こういう例は、たとえば北海道の、もうすでに水準基準をつくりました常呂川についても同様な問題でございまするが、御指摘のとおり、でん粉事業そのものが非常に零細な企業でございます。そういうようなことのために、ただいまのところ、御指摘のとおり、たとえば宮崎県あたりは非常に先進県でございますが、その点に関する素掘り沈でん池による——ある程度冬期がでん粉の最盛期でございますので、冬期に水を出すのを調節する、こういうことによって素掘り沈でん池の効果をあげるというような程度に終わっております。先日私のほうで水質基準をつくりました四日市の水道問題についても同様の結果になっておりますが、その際にも、もう二、三年たちますと、でん粉につきまして脱汁方式というのがわりあいに経済的に可能になるんではないか、こういうようなこともございまして、この辺につきましては、でん粉の主管官庁でございます食糧庁とも連絡をとりながら研究を進めていきたい。なお、私どものほうとしては、四十一年度には特にパルプとでん粉につきましては、横に全国の問題の水域を並べて調査をするということで、特殊問題調査ということで予算をとりまして、その辺の研究を進めていきたい、こう考えております。
  54. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。私どもといたしましては、水産庁の立場としては、何が何でも、どういう事情があろうと、でん粉の放出はやめてくれ、また適当な基準にするための方法は工場の側で考えてもらいたいという立場で一応たてまえはやっております。しかし、実際にやってまいります過程におきまして、当然いつもぶつかります問題は、やはりでん粉になりますと、食糧庁との間の問題。具体的な技術的な問題は、私まだ不勉強でよく存じませんが、御指摘の点は食糧庁とよく話し合ってみたいと思います。問題は、この公害防止の対策として工場側に施設を講じさせて補助金を出すというところが、やはりこの問題の全体的に非常にむずかしい問題の根源ではないか、かように思っておるのでございます。これが一つのこの問題の問題点だと、かように存じております。
  55. 温水三郎

    ○温水三郎君 ただいま脱汁方式ということを経済企画庁は言われましたが、なるほどそれが理想的なものであろうということは私どもも考えておるのでありますが、でん粉工場は二百万貫の工場について大体二千万ぐらいの設備費用がかかるのでございまするけれども、そうして、それによってやっておりますでん粉工場の経営は、これは現在の農安法等で非常に問題になっているとおり、決して利潤が大きいのでなくて、やっとやっていける程度のものであると認識せざるを得ないのであります。そこで、脱汁方式ということを採用するとすると、この機械をほとんど改変しなければならない。そうするというと一千万以上、あるいは一千五百万程度の追加設備を要するのであって、この点が非常に困難な問題になっておるわけであります。さらに、でん粉工場で浄化設備をするといたしましても、これは東洋技研が開発せんといたしておる浄化装置は大体二百万貫で二百万足らずの金でできるのでございますが、このことがまだ確定していない。研究が完成していない。だから、この研究に対する助成なり、あるいは指導なり、もしくは国の機関を動員しての研究なり、そういうことをしてもらわなければならないかと、かように思うのでありまして、脱汁方式というものはいま申し上げましたようなものでございまするから、これは理想ではあるけれども、これはなかなか早急に私はできないと思う。だからどうしても浄化装置というものに対して、経済企画庁あるいは農林省はひとつ熱を入れてもらいたいと思うのでありますが、この点に関して、重ねてひとつ経済企画庁と農林省の簡単な答弁をお願いしたい。
  56. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) 私の申し上げました脱汁方式は御指摘のとおりでございまして、でん粉工場からの廃液を徹底的に処理するのには、いまのところ脱汁方式が一番しいい。しかし、御承知のようなでん粉に対して、こういう相当な投資の要るものについて、はたして可能かどうかという問題もございます。それから、もっと採算のとれる程度にまでなりましても、助成の問題等もございます。そうなりますと、これは主管官庁の食糧庁の問題にもなってまいりますので、その辺については、連絡をよくとりながら、今後検討を進めていきたいと、こう考えております。
  57. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 御趣旨をくみまして、食糧庁と折衝いたします。
  58. 川村清一

    ○川村清一君 私も関連して一言お尋ねしたいのですが、大臣がいないので、政務次官にお尋ねしたいと思います。  ただいまの質疑応答を聞いておりますと、北海道の石狩川や常呂川が例に出されておりますので、それに関連してお尋ねしたいわけですが、森中委員が指摘されまして強く要望されておりますように、問題は、各省庁の行政所管に関連してまいっておるわけです。したがって、端的に私に言わしていただくならば、やはり総合的に、前向きにこれを調整いたしまして、きちっと責任を持って行政を施行する機構がなければまずいのではないかと思うのです。そこで、北海道庁におきましても、これは北海道議会やなんかにおきましても非常に問題になりまして、ただいま公害課という一つの課を設けて、総合的な行政を施行しております。そこで、地方官庁の問題に進めて考えてみますならば、私は、まず第一に、農林省の内部が機構的にきちっと意思統一されるような形にならなければならないのではないかと思うわけであります。ただいまも質問がありましたが、いわゆるでん粉工場をつくるということは、これは農民のやはり生活安定、向上、農民の所得をふやす、こういう立場において、やはりそういう農政のもとにでん粉工場をやる。たまたま常呂川の話が出ましたが、あそこのでん粉工場はいわゆるホクレン、北海道における農業協同組合の連合会ががやる工場であります。これは農民自体の農民の資本によって農民自体によって経営していく。そして網走のあの地帯に、バレイショのこれは主要な産地でございますので、そのバレイショを原料としてでん粉をつくっている。ところが、その廃液は常呂川に流れるわけであります。常呂川は御承知のようにこれはサケ・マスの漁をするこれは河川なんであります。このサケ・マスに依存しておる漁民はたくさんおりますし、漁民自身が、サケ・マスの資源を永続的に漁業を継続できるように、漁民の手によって採卵し、そして稚魚を養殖して川に放流しておる。完全に、こういう中で漁民と農民との利害が相対する、一致しないわけであります。で、ホクレンのほうでは工場をぜひつくらしてくれという、これは政治問題にまで発展しておる。これに対して、今度は漁民のほうは、絶対これを阻止するという立場で反対運動を展開する。そうしますと、今度議会の中ではどうかといいますと、農民の立場でいろいろ行政を施行しようとする農務委員会は、これは農民組織によってつくられる工場ですから賛成するわけです。ところが、漁民の生活権を守るという立場からは、水産委員会は反対するというようなことで、議会もなかなか意見は一致されないし、知事のもとにある行政機関もなかなか一致しないという問題があるわけであります。これがずっと進んでまいりますというと、農林省の中にも当然あるのではないか。先ほど水産庁長官は、われわれは何がなんでも漁業を守る立場からこれは反対する、これは当然だと思う。それは、そういうふうな気がまえのない水産庁の長官なら、これはとても話にならない。全国の漁民がとてもこれは信頼できないわけですね。ところが、農民の立場からいろんなことを考える行政というものは、それは賛成するでしょう。そこで、行政的にも一致しない問題が出てくるのではないかと思うわけであります。この点はどういうふうに調整していくのか。同じ農林大臣のもとに行なわれている行政の機構の中においてそういうふうに相反するいき方があるわけでございます。それが今度もっと発展してまいりますと、石狩川へまいります。御承知のように石狩川というのは、これは北海道における昔はもうサケの大産地でございますね。政務次官も石狩なべということばをお聞きになったと思いますが、石狩なべというものは、石狩川にのぼってくるサケを川口でつかまえて、それを北海道流に言うとサケの三平をつくる。それが北海道の名物になっておる。いまは石狩なべという名物になっておるけれども、石狩川にサケなんて一尾ものぼってきません。ところが秋になりますと、札幌あたりから石狩川に石狩なべを食べに行きますけれども、そのなべに入っているサケは大体どこのサケかというと、石狩川にのぼってきたサケでなくて、それは食わせる料理屋が札幌あたりからサケを買っていって、よそでとれたサケを買っていって、そのサケを石狩川で石狩なべを食わせる。全然石狩川にはサケなんてのぼってこなくなっております。のぼってこない原因は何か、河川がずっと汚濁してしまった。なぜかというと、とにかくその同じ百里以上も流れている川の上流には、旭川のあそこにはパルプ工場がある。あるいは合同のしょうちゅう工場がある。各地に工場ができたり、また炭鉱地帯がありますから、炭じんが流れてくる。もう一つ、あそこは北海道における一番の水田もありましょう。北海道の穀倉地帯です。農薬がどんどん流れてくる。農薬の被害もあるわけです。そうしますと、工場の被害なら通産省ですか、経済企画庁ですか、農薬は農林省でしょう。いろんなものが総合的にきて、そうして一番迷惑を受けるのはだれかというとこれは漁民なんです。その川で、いわゆる川の沿岸において、あるいは河口においてささやかなる漁業を営んでおる漁民がその集中的な被害を全部受けている。先ほど被害総額わからないなんて言っておりましたけれども、あすこはもう石狩川の漁民の計算したところによりますと、百二、三十億の被害があるわけです。それは昔とれたものがとれなくなったのですから、それを全部計算して、いまの貨幣価値に換算すればサケは一尾幾ら、昔はどのくらいとれたが、いまは一尾もとれない。当時とれたサケをいまの価格に換算しても百何十億の損害が出てくる。ですからこういう被害があります。損害がこれだけありますということをもし責任官庁がそれを発表してごらんなさい。たちまち漁民から損害補償の要求運動が起きてくる。そんなふうになってきたらたいへんだから、川岸にある炭鉱会社も工場経営をしておる企業家もそんなことを発表させないように押えるでしょう。発表させたらたいへんですから発表させないように押える。ですからあなた方がないないと言っているが、これはわれわれ北海道で、道議会の中でさんざん知事にかみついて何年間かやってきたのですからよくわかるのです。こういう非常に複雑なんです。そうして一番困っておるのは漁民である。一番損害を受けてどうしようかというほんとうに情けない状態になってきておる。有名な石狩なべのサケは一尾もいない。よそから買ってきたサケを入れてなべをつくって、これが石狩なべになっている。これが現実の姿なんです。こういう点から考えていくと農林省の中に問題があるのです。これはいわゆる水産庁と、それから農業をやっているほうの行政をきちんと大臣のもとに調整しないと、農林省ができないでもって経済企画庁がどうだ、通産省がどうだといっても私はできないのじゃないか。こういうことでやってもらわなければたいへんなんです。先ほど水産庁長官は、何がなんでもという非常に強い意思表示をされましたので、私は心の中で敬服しておるのです。水産庁はぜひそういうひとつ気がまえで漁民を守る立場でがんばってもらわなければ困る。たくさんの金を使って、この構造改善事業をやっているのです、一生懸命。浅海増殖や魚巣の設置をやっているのです。そうやっているところが、今度は廃液が流れてきて、あるいは油が流れてきてだめになってしまう。せっかく魚巣をつくっても魚が死んでしまう。コンブとか海藻類もみんな死滅してしまう。それから、今度少しでも、資源をとる漁業から育てる漁業に、水産行政のいき方を変えるのだということで、とにかく資源の培養のできるところはあらゆる河川をこれでもってやる。いわゆる内水面漁業を発展させる、内水面漁業を設定するというようなことでやられている。相当金をかけてやられても、そうしてせっかく金をかけてそういう行政を施行しながら、逆に今度は、そういう資源をみな死滅させていってしまうような片っ方では行政が行なわれておる。ですから、これはよく古人が、百年河清を待つということを言われましたが、いまのようなやり方でいったら川がきれいになるのは百年どころか二百年たってますますきたなくなって、どろ水ばかりになってしまう。私はそう考えるのです。こういう点で八方やっていただかなければたいへんだと思うのです。これはぜひ大臣に聞かなければならないことでございますが、ひとつ政務次官、大臣にかわって、元気のいい先ほどの水産庁長官のようなこういうかまえで御答弁いただきたいと思います。
  59. 後藤義隆

    政府委員(後藤義隆君) ただいまの問題は非常に重大な問題でありまして、また適当な時期に大臣から直接御答弁を申し上げると思いますが、私ちょっといまのお話を伺ってまして考えますことは、廃液によって水を、河川あるいは浅海、そういうような水を汚濁するということは、非常にこれは重要な大きな問題でありますが、その水質汚濁することは、工場の廃液によってされる場合が多いと思いますが、その工場も、農産物加工の工場と、あるいは農産物には全然関係のない他の工場等が考えられるわけであります。それからまた農薬等によって非常に河川が汚濁されるようなふうなこともあると思います。そこでもって、工場はできても、あるいは農薬を使っても漁業に大きな被害がなくて済むようなふうに研究することが一番必要だと思います。漁業を保護するために工場の設置を禁止する。これは工場というのは、農産物に関係のある工場はもちろんでありますが、それより以外のものも一切これを禁止してしまうというようなふうなことがいいかどうか、また、そういうことができるかどうかというふうなことも非常に問題でありまして、ただいまあなたが御質問になりましたが、農産物加工の工場と、それから河川の水質汚濁の問題についてどちらに重きを置くかというような非常に大きな問題でありまして、なるべくでん粉工場、その他のいろいろな工場ができてもやはりこれは水質は汚濁しないのだ、そうして漁業にはあまり大した被害ないのだというような研究をすることがこれは必要だと思います。少々の金がかかっても、そういうふうな設備をすることが私は第一に考えなければならぬことだと思いますが、しかし、現在の研究程度あるいは現在少々資本を入れても、やはり絶対にこの被害は免れないのだというふうなことになると、農業のほうに重点を置くか、あるいは漁業のほうに重点を置くかということについて考えなければならぬことになると思うのです。そこでもって、どちらをするかということは、実に重要な問題でありまするが、各河川、その他についていろいろまた違ってもくると思います。それでもってやはりこれは省内において水産庁並びにそれから食糧庁、そういうようなふうなところとよく話し合って検討いたしますが、これは農林省だけの問題じゃなしに、さっき申しましたような経済企画庁あるいは通産省、そういうようなふうなところともよく相談いたしまして、そうしてそういうような重要な問題であるから、これは漁業についても被害の出ないような適当な処置を検討してもらいたい、こういうようなふうに私は考えております。
  60. 森中守義

    ○森中守義君 経済企画庁に続いて一、二お尋ねしておきますが、この工場排水の規則について、工場側ではこういう法律によって企業権の存立が奪われては困るというふうなことが、よく具体的な問題として処理する際に意見として出る。ついては、一体企業権と公害、どちらが先んずるものだという指導方針をとっているんですか。
  61. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) 非常にむずかしい問題でございますが、われわれとしては、企業の社会的責任というものがまず先行するんじゃないか。したがって、企業が、これは技術的に不可能なものはやむを得ませんが、技術的に可能な限り経済的に水質汚濁等の防止につとめなければならない。また、それが経済的に非常に困難な場合には、国なり地方団体がそれに対して助成していく、これが本筋だと思います。
  62. 森中守義

    ○森中守義君 確かにこれは今日の社会構造あるいは産業構造等からしましてむずかしい問題に違いありませんよ。しかし、公害が今日こういう問題になっているときに、いくら今日の規制法をもってしても、どうしても企業権を奪われるようなことでは困るということで問題が必ずぶつかるようなことになると思う。ついては、私はこういう基本的な問題を、いま少し政府におかれても一定の方針というものが確立されておらないと、だんだんだんだんむずかしい方向に発展をしていくと思うんです。同時に、今日の水質二法中の一つである工場排水規制法というのが、内容的に相当以上に企業権を尊重し過ぎている、あるいはまた自治体等も今日の困窮している財政等の中からめんどうが十分見れない、ついては、そのことを国のほうに相談をするということになれば、あまりにも所管が多面的にわたって、あるいは助成金なり何なりという財政的な裏づけがないために、解決できる問題が解決できないでいるという現状を私は知っております。たとえば大牟田川の問題等がその一つの顕著な例だと思うんですよ。しかも大牟田の場合には、ほとんど三井の関連産業ですから金に困るという、こういう経営体であるとは私は思っておりません。しかし、話がだんだんだんだん煮詰まってまいりますると、一体公害と企業権はどういう関係かということが必ず議論の中心になる。それで通産なり、あるいは企画庁等にだんだん話を詰めてまいると、いま局長のお答えのように、正確な答弁ができない。正確というよりも、公害に対するものの考え方というものが、重要であるという認識の上に立ちながらも、やはり企業権の問題にぶつかって一歩後退しているというのが私は現状だと思うんです。これは、これから先、公害基本法の制定等をめぐりまして一つの大きな争点の一つになろうかと思うんですが、先ほども申し上げましたように、今日の水質二法をはじめ清掃法なり、あるいは農薬の取り締まり法なり、一連の公害の既存の法律というものはかなり遠いものであって、現状に内容として即しているとは思えません。したがって、これは要望意見ということに相なろうかと思いますが、企業権と公害ということはいま少し正確に割り切っておかないと、一体日本の公害対策はどこにいくか、行き当たりばったりのことに終わるんじゃないかと思います。むしろ私は個人的な意見としては、企業権よりも公害が先んずる、一企業の存立のために有形無形に多数の国民が被害を受けていいということにはならぬと思うんです。少々局長には荷の重い質問であるかもわかりませんが、こういうことを重ねて御答弁をいただいておきたいと思うんです。
  63. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) 御指摘のとおり、非常に大事な、しかもむずかしい問題でございますが、同時に社会情勢の変化に応じまして、同じ法律の運用にあたりましてもだいぶその点の情勢が変わってくるんではないか、こういう点もございます。たとえば水質二法も、御指摘のように、いろいろ問題がございます。したがいまして、われわれのほうでは水質審議会に総合部会を設けまして、そういう基本的な問題の検討も始めておりますが、たとえば最近の過密いたしました大都市におきましては、工場の新増設はほとんど禁止的な水質基準を適用する。先日つくりました多摩川の水質基準におきましても、現在下水道の最高の処理基準でございます二十PPMというのを新増設工場に適用する、こういうようなことによりまして、ほんとうに過密しているところにはもうそれ以上汚濁するような工場はきてもらいたくない、こういうようなことまで現在の法律でやっております。したがいまして、法律そのものの問題もございますが、会社情勢の変化に応じた法律の運用ということでも、ある程度前進できる面もあるのではないか。ただいまはこの程度しか申し上げられませんが、そういう状況でございます。
  64. 森中守義

    ○森中守義君 いまのことを、私は確かに基本的な問題の一つだと思いますので、これから先何回かこういうことで話し合う機会もあろうかと思いますが、特にひとつ留意しておいていただきたいと思います。  それからいま一つは、どうもこの委員会で企画庁にいろいろ尋ねて恐縮ですが、各自治体に対して防止対策の条例をできるだけ急いでつくるように、そういう指示をしたことがありますか。ないしは、指示をしたとするならば、一定の基準といいましょうか、こういう水準の防止条例をつくったほうがよろしかろうというようなことを指示されたことがありますか。
  65. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) 従来は、自治体と国との関係は、むしろ自治体から国において水資基準を設定してくれと、こういう要望も一方通行でございましたが、昨年来、われわれのほうも本式に取り組みますし、自治体におきましても、公害問題が非常に重要な問題になってまいりましたので、主管課長会議あるいは主管部長会議等を通じまして、これは水質だけではございません、厚生省なり通産省なり、あるいは農林省というような、公害全般の問題を一堂に集まって連絡討議する、そういうようなことはやっております。また、具体的にも、条例の制定にあたってわれわれのほうに相談を受けておるというような状況でございます。
  66. 森中守義

    ○森中守義君 経過としてはわかりましたがね。どうなんですか。きのう、きょうの問題じゃありませんしね。しかもいまや大きな社会問題であることはだれもこれは否定できないと思うんですよ。そうなれば、先ほど申し上げましたように、自治体もこういうことの取り扱いで非常に困っていますよ。特に、新産都市の指定を受けた地域等においてはそういうことが顕著に私は言えると思う七そこで、各自治体が、問題が起きたから条例をつくろうということではやはり凹凸があると思う。それで、こういうことについても、もちろんこれは水質に限定されるものではなく、ばい煙とかいろいろとありましょう、そういう総体的なものとして、一度各自治体に、防止条例の基準は少なくともこの程度水準は維持すべきである、こういう基準というようなものでもつくる必要があるんじゃないですか。そうしなければ、私は、国は国、自治体は自治体において一そう混乱は激しくなると思う。そういうことを多少とも阻止するために、あるいは予防するためにとってもいい時期じゃないかと思う。どうでしょう。
  67. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) まことに御指摘のとおりでございまして、私どもそういう点についての連絡なり指導なりということが、まことに不十分であったということを認めざるを得ません。ただ、地方団体はいろいろその状況によりまして、たとえば東京、大阪、神奈川というような、もうすでに過密した都市、大都会のある都道府県におきましては、むしろ公害のほうを中心にしまして、これを何とか防止しようということでございますが、また逆に、後進県におきましては、何とかそういうことはあとの問題にして工場誘致のほうを先にやろう、こういうような気がまえのところもございまして、なかなか統一的な立場で積極的に公害に取り組んでいこうというような情勢には必ずしもまだなっておりませんが、先生の御指摘のとおりでございますので、今後は関係の各省とも連絡をとりながら、水質に限らず公害全般について、そういうような方向努力していきたいと、こう考えております。
  68. 森中守義

    ○森中守義君 この質問はひょっとするとこれは厚生省の所管じゃないかとも思うのですが、科学技術庁の政務次官おいでですから、ちょっとお尋ねしておきたいと思います。  熊本の水俣の奇病、その後の第二の水俣病といわれている阿賀野川の奇病、これはいずれも学術的に答えが与えられておりましょうか。
  69. 田川誠一

    政府委員(田川誠一君) 私のほうでは直接これにタッチをしておりませんので、詳しいことはちょっとわかりませんのでございますが、局長に答弁をさしていただきます。
  70. 高橋正春

    政府委員(高橋正春君) 御質問の向きの前段の、水俣病に関しますところの研究につきましては、経済企画庁の御所管でございますので、そちらのほうから。  それから後段の、今回の新潟の阿賀野川の関係につきましては、関係いたします通産省農林省、厚生省というような関係省庁で調査研究をいたしていただきますために、科学技術庁のほうから特別研究促進調整費というものをつけておりまして、検討いたしております。ただいま中間報告の段階でございまして、最終的な結論を出すに至っておりません。  以上でございます。
  71. 鈴木喜治

    政府委員(鈴木喜治君) 水俣の場合は、当時企画庁が中心になりまして、関係各省協力して調査に当たったわけでございますが、当時、厚生省に置かれております食品衛生調査会が水俣病の原因究明をやりましたところ、ある種の有機水銀化合物に起因するものである、こういう中間的な答申が出ました。その後学者の間でいろいろ検討がなされておりますが、その以後におきまして、当時汚染源と見られました新日本窒素の水俣工場が、排水処理施設を完成いたしまして、その後、これはやはり熊本大学等で調査したところでは、有機水銀の排出はないと、また水産関係におきましても、一博漁獲禁止をやっておりましたが、三十九年ごろから全面的に解除して、新たな患者の発生を見てない、こういう状況であります。
  72. 森中守義

    ○森中守義君 いまのその答弁に、あるいは質問に見られますように、一体どの問題をどこに聞けば正確な答えになるのかということがわからない。もう絶えずこれには衆議院はもちろん、参議院でも参るんですよ。結局、窓口として官房長官も呼ぼうか、総務長官も呼ぼうか、さもなければ総理も来てもらおうか、こういうことになるんですね。私は熊本ですから、しかも水俣の奇病にはずいぶん早くから関係をしてきておりますけれども、実は学界では一応定説がもうできているようです。しかし、それがなかなか公にされない。公にされない原因というものは、所管官庁が、厚生省に、先ほど企画庁の局長がお話しのように、確かに公衆衛生研究所で学術的な研究が行なわれて、あるいは熊大は熊大でやる、こういうようなことで、非常にこういう直ちに人畜に重大な影響を与える問題等が、右往左往しているのが現状なんです。だから、これはこのままの議論では、はなはだ適当でないかもわかりませんが、すみやかに一元化の方向にいく必要があります。しかも、なお、公害ということは、いま申し上げましたように、事人畜に関する問題ですから、特に水俣の場合には、おそらく生命を断つまであの病気はなおりません。まことに悲惨なものですよ。  そこで私は、これもどなたに答弁してもらったほうがいいのかわかりませんが、要するに、公害というものが人畜に影響を与える限り、国として一体化した専門の研究機関、そういうものをすみやかにつくる必要があると思う。それで私は、大体科学技術庁というものは公害に対してどういう立場に立っているのか。まあ非常にお気の毒な場合がありますよ。むずかしい問題は科学技術庁に持っていけ。さて科学技術庁では、設置法上では何と何と何をやるか一定のものがある。しかし、およそそういう新学説をつくるとか、あるいは新しい研究調整に入らなければならぬ、そういう問題は全部技術庁のほうにかぶさってしまう。しかし、実際の取り扱いの行政機関としては、必ずしも技術庁が中心的な役割りを果たしていない。もち屋はもち屋といえばそれまでのことでしょうけれども、私はそういう意味では、きょう発表されている鈴木厚生大臣のこの構想という、内容それ自体には若干問題はあるけれども、非常に前進したものだとは思う。しかし、こういう際に一体科学技術庁はどういう立場をとるべきであるのか、政務次官から技術庁の立場をひとつ明らかにしておいてもらいたいと思う。
  73. 田川誠一

    政府委員(田川誠一君) 公害防止につきましては、私ども科学技術庁におきましても相当な関心を持っておるわけでありまして、御承知のように、衆議院にも参議院にも科学技術振興の特別委員会ができておりまして、ここで三年前でありますか、公害防止の促進に関する決議を衆議院のほうで行ないまして、もっと学術的に公害に関して取り組んでいかなければならぬじゃないかというような決議を受けまして、私どももその面については研究促進しておるつもりでございますが、ただ私どものほうの役所といたしましては、たとえば水質汚濁あるいは農薬の問題にとりましても、すべて各省に関係があるというよりも、むしろ各省の固有の問題が多うございます。で、われわれのほうの役所の設置法の立場から申し上げますと、そうした各省にまたがる研究機関の総合研究と申しますか、そういう研究の連絡調整をやる、またそれぞれの研究機関、各国立の研究機関の予算の見積もりの調整をやるというようなこと。それからさらに、各省庁の研究機関で特別に何か研究をやらなければいかぬ、こういう事件が起こった、水俣のそういう問題が起こったというような場合に、特別に研究費として出す、いわゆる特認費と申しますか、そういう特調費を科学技術庁のほうから出す。それからさらに、民間の研究機関一つの問題を取り上げて研究するような場合に助成をするというようなことが私どもの科学技術庁の立場でございまして、いま森中委員のおっしゃったように、まあむずかしい問題をぶつけられて、私どもの担当だといえばそうかもしれませんけれども、固有の仕事が実際にあまりないのでございます。まあ原子力のような問題は私ども科学技術庁が専門的にやっておりますけれども、なかなか固有の問題が少のうございまして、各省にまたがる問題が多いわけであります。でありますから、結局、連絡調整それから特別研究費をやるとか、あるいは予算の見積もり、各省の試験研究の予算の見積もりの調整というようなことが私どものほうの仕事になるわけでございまして、先ほど来おっしゃっておられるように、公害全般の問題について機構が一本化したほうがいいという御意見でございますけれども、まあそういうことを私どものほうの立場考えますと、そういうような機構が一本になったほうがいいような気がいたしますけれども——これは私個人の意見でございますが、そういうような立場を私どものほうではとっております。
  74. 森中守義

    ○森中守義君 いまのことはあとでもう少しお尋ねすることにしまして、農林省あるいは技術庁、どちらがこれは大体専門でおやりになるのですか、例の農薬の開発ということ。これは先ほども水俣の話も出ましたが、あの水銀の問題が非常に重要問題であると同時に、衆議院では公害特別委員会で学者を招致していろいろ意見の開陳が行なわれたようであります。しかもその中で非常に驚くべき学説が提起されまして、私どもは恐怖のどん底に落とされたような気がします。したがって、いまの劇薬あるいは毒薬にひとしいような農薬を何とか代替するような新農薬の開発の方向にいこう、こういう時代を迎えておることは事実だと思うのですよ。この前私は、公害委員会でちょっとそういうことに触れたことがありましたが、農林省も科学技術庁も、もち屋はもち屋ということであまり正確なお答えがなかった。蒸し返すようですけれども、大体どちらのほうがこれは専門的に研究さるべきものであるのか、ひとつおのおのの立場からお答えをもう一回いただいておきたいと思います。そのときは農林省おいでになりませんでしたがね。
  75. 田川誠一

    政府委員(田川誠一君) 農薬の毒性につきましては、国民の保健衛生の立場から、なかなかこれは事態が重大な問題であると私どもも思っておりますが、この問題については、私どものほうの立場は、毒性のない農薬をどうしてつくったらいいかというような農薬の創製について私どものほうは担当をしております。これは私どものほうが監督しております理化学研究所というのがありまして、そこで研究をしておる。この農薬の使用の問題になりますと、これは御承知のように、農林省になるわけであります。その衛生の問題については厚生省というような問題になっております。   〔委員長退席、理事野知浩之君着席〕
  76. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 各省の担当しております所管の事務の内容につきましては、ただいま科学技術庁の政務次官からお答えがありましたとおりであります。
  77. 森中守義

    ○森中守義君 農政局長、農薬がいろいろな面で水産物にも影響を与える、あるいは人畜にも影響を与える、その事実はお認めでしょうか、どうなんですか。積極的に関係の向きともいろいろ協議をされて、研究開発の方向に少し一歩前進する意思はございませんか。
  78. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 農薬は御承知のように、農作物に害を与えます虫あるいは菌のたぐいをそれぞれ殺すものでございますので、本来、本質的に、たとえば水のように完全な無害なものというようなぐあいにはまいらないと思います。ただ問題は、先ほど来公害一般の問題でもお話がありましたように、人畜のみならず水産物の被害とかその他いろいろな問題がございますので、使用の方法等につきまして、取り扱いの方法について、従来からいろいろと指導もし、監督もしてまいったのでございますが、単にそれだけではなくて、できるだけ毒性の低い薬に切りかえていくということが基本的な対策として、また私どもの考え方としてもそうあるべきだと思います。  そこで、若干の数字を申し上げてみますと、昭和三十五年におきます農薬の使用量の中では、大体五割から六割ぐらいのものがきわめて毒性の高い農薬であったわけでございますが、その後いろいろな方面での関係が進みまして、昭和三十九年におきます使用量としては、毒性の低い農薬が七割強を占めるというような形になっておりまして、でき得る限り毒性の低い農薬に切りかえるということは、私どもの基本姿勢として従来からとってまいりました考え方でございます。今後とも引き続き、科学技術庁等の御協力も得まして、毒性の低い農薬の開発におつとめいただきまして、できるだけ他へ害を及ぼさないような農薬に切りかえていくということは、基本的姿勢としてとってまいりたいと思っておるのでございます。さらに進んで申すならば、対象として殺菌をすべき菌あるいは殺すべき虫には効果があるけれども、たとえばタニシは殺さないとか、トンボのような他に害のないものには影響がないとか、そういうような特定の対象をねらったような薬が一そう開発されることが私どもとしては理想だと考えておりますが、そういう方向に沿ってできるだけ毒性の低い農薬に切りかえていくように、今後ともつとめてまいりたいというふうに思っております。
  79. 森中守義

    ○森中守義君 きょうこの質問は、水産資源の確保ということが一つ中心的な内容でしたが、時間も十分でございませんし、必ずしも十分な質問をしたとは思いませんけれども、要するに、浅海漁場の開発あるいは、ひいては水産資源の確保ということが非常に大きな問題になりながら、事実は公害によって漸次侵食をされているということが、いまやおおうことのできない事実になっている。でありまするから、私は、今後農林省、水産庁の具体的な政策を実行されるにあたって、新規漁場の開発即公害ということをかね合わせながら、もっと具体的な、しかも内容的なものをおやりいただきたい、こう思うのですよ。そのためには、先ほど来質問の中にもしばしば指摘してまいりましたように、今日の水産資源保護法がそういう関係の条項を完全に網羅しているのか、新しい今日の時代に対応できるようなものであるかどうかはなはだ疑問です。その辺の検討を一度やっていただきたいということ、あるいは農薬取締法等も、いま農政局長の答弁によって、代替農薬の開発の方向にいっている、また、そういうところに力点を置いているということではございますが、これらについてもやはり水に関係があります。ついては、それも一連の問題として検討していただきたいし、しかも清掃法、またこれもずいぶん古い法律ですし、ずいぶん水質汚染しているという事実を追及すればあげられていくのじゃないかと思うのです。もちろん水質二法、こういうものを新しく制定されんとする公害基本法の際に抜本的に検討していただき、また同時に、水産庁も進んで経済企画庁なり、あるいは技術庁と連絡を密にしながら——底辺漁家ですよ、どうしても沿岸漁業というのは。そういう底辺漁家が、年間はかり知れないような被害を受けているという事実を考えていただくならば、いま私が申し上げるようなことをさらに積極的に具体的に推進をしていただきたいということを、最後に強く要望いたしまして、この関係質問を終わりたいと思います。ひとつ、農林政務次官、それぞれ決意のほどをあらわしておいていただきたいと思います。
  80. 後藤義隆

    政府委員(後藤義隆君) ただいま森中委員よりお話がございましたが、御趣旨に沿うように内部において十分検討して、御趣旨に沿うようなふうにいたしたいと思います。
  81. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 政務次官のお答えのとおりいたしていきたいと存じます。
  82. 森中守義

    ○森中守義君 長官、資料をお願いしておきたいのですがね。なかなかつかみにくい問題かもわかりませんが、現在の機構とやり方では。しかし、先ほど申し上げましたように、政府統計に三十七年六十億、ところが各系統漁業団体のほうでは、とんでもない、数百億に及んでいる、こういうわけで、被害額の把握というものが正確でございません。できますならば、若干の時間をかけてもけっこうですから、ひとつ正確な数字を、各汚染されている漁場ごとにあげてみてもらいたいと思うのです。
  83. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 極力御趣旨に沿うようにいたしたいとは存じますが、いま先生十分御承知のように、水面下でどのくらいのものが得られるだろう、それから先ほどお話がございましたように、それをどういうふうな金額に評価するかという点に、技術的に非常に問題があろうかと思います。いろいろくふうをして、資料として考えさしていただきたいと思います。
  84. 野知浩之

    ○理事(野知浩之君) 本件についての質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  85. 野知浩之

    ○理事(野知浩之君) 次に、遊休開拓地に関する件について質疑を行ないます。
  86. 森中守義

    ○森中守義君 政務次官あるいは農地局長、ちょっとお尋ねいたしますが、旧法の自作農創設特別措置法、この三十条によりましてね、戦後買収した総面積はどのくらいになりますか。   〔理事野知浩之君退席、委員長着席〕
  87. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 政府が買収によって取得いたしました面積の総計を申し上げますと、昭和二十二年以降最近に至るまで、七十八万八千町歩となっております。
  88. 森中守義

    ○森中守義君 いまの総面積の中で、もとの所有者に売り戻した面積はどのくらいですか。
  89. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 法八十条によりまして売り払いました面積は十六万八千町歩ほどになります。
  90. 森中守義

    ○森中守義君 現在残されている面積はどのくらいですか。
  91. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 未墾地の関係につきましては、民有地で買収いたしましたものが先ほど申し上げましたように七十八万八千町歩、それから国有林その他で所管がえをいたしたものも大体それに匹敵するほどございますので、合計いたしまして未墾地の取得が百五十一万五、六千町歩になっておるわけでございます。そのうち、現在未墾地として国がなお保有いたしておりますものは、昭和三十九年度末現在におきまして約二十七万町歩ほどでございます。
  92. 森中守義

    ○森中守義君 農政局長、問題はその未墾地ということですがね。これだけ膨大な面積をとりながら未墾状態にあるということは、どういうことを意味するんですか。たとえば適地適作を原則とする開拓用地が測定を誤ったとか、あるいは好ましくない条件の累積のために入植者を選定することができなかったとか、要するに、驚くべき膨大な土地というものがすでに戦後二十年を数えている今日遊休状態にあるということは、開拓行政に対し少なからざる疑問を私は持つんですけれども、どういう理由によってこういう状態になっているのか、まあその辺の経緯を少しく詳細に聞かしてもらいたいと思うんです。
  93. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 未墾地の買収あるいは所管がえは、戦後の農地改革と並んで行なわれました緊急開拓時代から始まりましたものでございまして、相当膨大な未墾地の面積を早急に買収したという経過もございますから、その中にはいま、戦後二十年あとになって振り返ってみますと、開拓適地として必ずしも適当でなかったものも相当あったわけでございます。そうして、未墾地の買収いたしましたものについてできるだけ開墾の工事を行ない、それを売り渡すことにつとめ、また、すでに開拓適地として不適当なものは旧所有者に売り渡すということを自来やってまいりましたけれども、いま申し上げましたように、なかなか買収の時期あるいは買収の目的、その他複雑な所有関係にあったものもございますので、なかなかその事業がうまく進まなかったのが現状でございます。そうして、昭和三十五年の時点で申し上げますと、三十五年度末で開拓財産として国が所有いたしておりましたものは四十八万二千町歩ほどにのぼっておるわけでございます。それで、この開拓適地の農家に対する売り渡し及び不適地の旧所有者等に対する売り払いにつきましては、会計検査院からもしばしば御指摘がありますし、また私ども農地行政に携わる者として、それを早急に処置することは必要でございますので、自来非常な努力を加えまして、三十五年の末に四十八万二千町歩ほどでありましたものが、三十九年度末に二十七万一千町歩ほどに減少いたしたわけでございます。なお今後もと申しますか、現在も私どもこの開拓財産の処分につきましては鋭意努力をいたしているわけでございまして、大体年五万五千町歩程度の売り渡し、あるいは売り払いにつとめておりまして、あと三、四年、あるいは非常におそくなりましても四、五年のうちにはぜひ開拓財産の処置を全部終えたいという気組みで現在仕事を進めているわけであります。
  94. 森中守義

    ○森中守義君 御説のように、戦後のあの食糧事情の中での仕事ですからね。当時のことは私はあまり振り返って深入りするということはもちろん適当であるとは思っておりません。しかしながら、何と言っても旧法が農地法の制定によって消滅をしております。しかも二十七年農地法がこれにかわった。二十七年といえば大体安定経済に入った、そういう時点だと心得ているのです。その後ずっと経過を沿革的に調べて見ますと、要するに、未墾地の買収対価は若干の変遷をたどっているようです。だから対価それ自体は適当であるかどうか、これはまた議論はありましょうけれども、少なくとも旧法から農地法にかわるあの時点においては、未墾地についてはすでにもう将来入植者の期待すべき時代はないだろう、あるいはあるだろう、どのくらいあるだろうか、その辺のことが少し考慮されて、もっと計画的に旧所有者に売り戻していくなり、あるいはまた国有の所管がえをされたもの等については、いま少しく有効適切に取り扱いがとられてもよかったんじゃないか、こういうふうに思うのですよ。で、すでに農地法制定から相当の年月を費やしているのに、いま申し上げたように対価の変遷はあったけれども、計画的な本件に対する措置はとられていない。私はその限りにおいては非常に大きな問題があると思う。したがって、当時局長あるいは次官はこの問題に関係されておったかどうか知りませんけれども、いまにしてみれば結果的にはそういうことが言えるのじゃないかと思いますし、かなりこういう問題に若干知識を持っている国民からすれば強い批判があることも承知しておいてもらいたいと思うのです。  そこで、検査院の場合、いままで各年次の検査の際に農林省に、農地法制定以来すでに十数年をたとうとしておりますから、何回くらいこういう問題に対して指摘をされたのか、検査院の立場からどうお考えになるのか、一ぺんひとつ聞かしておいてもらいたい。
  95. 小熊孝次

    説明員(小熊孝次君) お答えいたします。この問題につきましては検査院におきましても昭和三十三年度、三十五年度、三十六年度の検査報告に掲記いたしましたし、その後三十七年六月に、いままでのその検査の結果にかんがみまして改善措置の要求を農林省当局にお出しをいたしました。さらに引き続きまして、いわば改善要求の措置につきまして農林省がいろいろ努力なさっているわけでございますが、これにつきましてさらに引き続いて現地につきまして検査をしていく、こういうような態勢で検査を実施しております。三十九年度の検査報告にも具体的な事例につきまして掲記いたしまして、そうしてさらに努力をお願いする、こういうような態度をとっているわけでございます。
  96. 森中守義

    ○森中守義君 そういう経過を考えて見ますと、相当なこれは国損であったことは事実でしょうね、ただもう遊ばしておったわけだから。  それと、いまひとつ農地局長お尋ねしたいのは、いままで処分されたものは、積極的に農林省が指導をして処分をされたのか、あるいは八十条ないしはその二項等によって、自治体等の申請に基づいて処分をされたのか、つまり積極的な処分のしかた、あるいは上がってくるのを待って処分をする、認可を与えるというそういう消極的な、……どちらに大体比重が置かれていたんですか。
  97. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 先ほども申し上げましたように、三十五年度で四十七万八千町歩ありましたものを、三十九年度において二十七万町歩ほどに減らしましたことは、農林省本省あるいは地方農政局、県を含めて、積極的に、農家に耕作適地として売り渡すものは早く売り渡してくれ、それから旧所有者に戻すものはできるだけ早く売り戻してくれということを積極的に申し上げてやってもらっておるわけでございます。決して旧所有者その他から言ってきたのを待って、受けて立つという態度ではございません。
  98. 森中守義

    ○森中守義君 その問題は、やっぱりその辺なんですね。受けて立つということじゃなかったけれども、結果においてはこうなっておる。そこで私は、今日のように農村の人口がどんどんなだれのように流出している、現在いままですらも未墾地があるのに、いまあらためて入植しようという人が一体いるかどうか、この辺を考えると、相当思い切った整理をもうそろそろ始めていいんじゃないか。残念ながらいままで沿革をたどってみれば、たとえば一回だって次官通達とか、あるいはまたそれに類するような積極的な措置はとられていないようです。そうなると、こういう際に問題を提起しなければ、おそらく残されている二十七万一千町歩、こういうものは、なお相当長期にわたってこのまま持続するような結果になりはしないか、こういうふうに私は考える。こういう遊休未墾地をかかえていくということは、もちろん適当なやり方ではないと思いますし、買収の際の経済価値等が、いま比べても問題にならぬでしょうけれども、当時は当時なりに相当高額の金を出したということになると思う。それをこのまましておいていいということにはならないと思いますので、この際ひとつ思い切って計画的な整理段階に入るべきであると私は思うのですが、次官、局長のお考えどうでしょう。
  99. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 農林省はこの問題に対して決して消極的ではございません。三十五、六年度以降もしばしば役所からの文書、あるいは会議等で国有の未墾地をできるだけ早期に整理するようにずいぶん努力をいたしております。ただ努力をしてもなかなかむずかしい問題がございますのは、旧所有者に払い戻す場合でも、所有者がもうすでにそこにいないで、都会に出ている。あるいは都会に出て御当人が死んで、それがもう相続されているという、そういう技術的な問題が非常にたくさんあるわけでございます。そういう技術的な問題がたくさんありますので、なかなか順調には進んでおらないように見えますけれども、私ども、あるいは県を含めて努力としては一生懸命やっているわけでございます。最近のような五万五千町歩ないし六万町歩ずつ毎年減っているということは、決して受けて立つという態度をとりますと、五千町歩もあるいははけないような性格のものでございます。したがいまして、私はいままでのようなことでいいというふうには毛頭申し上げておりません。実は農地局の仕事の中でも、これはもうすでに新しい問題ではございませんで、いわばあと始末でありますけれども、いつまでも国有農地あるいは国有未墾地がこういう不安定な形で残っておりますことは、私たちとしても非常にたえず気がもめる問題でございます、正直申し上げまして。したがいまして、地方農政局や、あるいは県当局を十分叱咤激励してこの問題を進めているわけなんでございます。それから二十七万町歩ほどの未墾地が残っておりますけれども、その中で相当部分はやはり開拓の工事を現に進めておって、その工事ができれば売り渡すものがございます。これはいま先生、農村からこれだけ人が出ているから、そう入植の希望がないのではないかというふうに言われましたけれども、確かに新しく入植する希望はそれほど多くはありませんけれども、地元増反の形で草地改良なり、あるいは農地の造成という形で、やはり地方によりまして、北海道、東北、九州等と、地方によりまして農用地の造成の意欲は非常に盛んでございますから、二十七万町歩のうち、旧地主に払い戻すものも相当ございますけれども、農家に耕作目的で売り渡すものも相当ございます。いずれにいたしましても、旧地主に払い戻すものばかりではございません。地元増反という形で、経営規模の拡大に資するために農家に売り渡すものも私はできるだけ急いでやっていく、いまでも五万五千町歩、四十年度四十一年度五万五千町歩はぜひやるようにということでやっておりますから、もうしばらく御猶予をいただければ、この問題は片がつくというように思います。
  100. 森中守義

    ○森中守義君 いま地元増反という話が出たのですがね、いまの局長のお答えからいけば、八十条の二項に抵触するのじゃないですか、ちょっとその辺は非常に大きな問題だと思うんですよ。
  101. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 八十条につきましては、これは旧地主に戻す場合でございます。それから一般の本法の規定によりまして、開拓をして、開墾事業を進めて、農家に地元増反として売り渡すわけでございます。これは八十条の規定によるものでは毛頭ございません。
  102. 森中守義

    ○森中守義君 それでね、その八十条の二項ではそういうことを規定しているのじゃないでしょう。要するに、元の所有者から一たん国に移った、それでだれか入植者があって入植をして、それでまた国が買い戻した場合に、売る場合には、他の者に売っていい、こういうことが八十条の二項の規定じゃないですか。私はそういうふうにこれを読んでいるのですが。
  103. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 未墾地を処理する場合は、言うまでもございません、二つ方法がございます。農家に売り渡すために買収した未墾地でございますから、開拓をして、開墾をして農家に売り渡すのが本道でございます。それは現在の農地法の六十一条で、「国は、左に掲げるものを次条から第六十七条までに規定する手続に従い、売り渡すことができる。」ということで、土地の配分計画、あるいは買受予約申込書の提出等々の規定がございます。八十条の規定は、開拓をして、農地として使用するのには非常に不適当な未墾地について、旧地主に、あるいは旧所有者に売り払いをするという規定でございます。したがいまして、私が申し上げました三十九年度末において二十七万町歩ほどの未墾地があると申しますのは、この両方に使うための未墾地でございまして、二十七万町歩を全部旧所有者に売り払うというわけではございません。これはひとつひとつの土地の事情に従って、農家に売り渡す場合と、旧所有者に売り払う場合と両方あります。
  104. 森中守義

    ○森中守義君 わかりました。そこで、ちょっと具体的な問題ですがね、園田先生の地元で、私のよく知ったところですが、熊本県下益城郡松橋という町がありますよ。ここでこういう問題がある。二十三年の十月二日に、旧法三十条によって買収した、その全部の面積が三十四町八反余りですよ。しかもこれには二百六十七人の所有者が、まあ要するに零細な農家ばかりですからね。そういうものを全部買い取った。そして三十六年の十月二十六日に不要地認定が行なわれて、約二十一町六反余り九十八人の人に売り戻している、もとの所有者にですね。いま残余のものを旧所有者が売り戻してくれと、どういう手落ちであったかよく存じませんが、説によれば、私も正確に確かめておりませんので、その点断定的な言い方はしませんけれども、登記が完了していなかった。したがって、こういう皆さんは、もとの所有者というものは、まあ三畝とか四畝とか、みんな出し合ったようですがね。そういうものに対して税金をとられておる、こういう話なんです。したがってこの八十条の問題とは、どこまでそういう関係の皆さんが理解をされているかよくわかりませんけれども、要するに台帳が変わっていない。所有移転が行なわれておらないので、税金はその人たちが二十三年以降ずっと払った。したがって、税金を払っているんだから、何としてもこれは売り戻しの最優先権があるということ、あるいは所有権の帰属がいまなおあるという、そういう認識を持っているのか、その辺はよくわかりませんが、いずれにしても、そういう状態のようです。ところが、いま言われる地元増反ということで何名かの人が自分たちにそれを分けてほしいと、こういう申し出があって、ずいぶん長期間にわたり決着がつかないでいるようです。で、私はいまここでその問題をどうこうということを議論するわけじゃございませんが、まあ一応ものの考え方からいけば八十条ずばり、これは適用さるべきであろうというように考えるのですよ。そういう具体的な事実に対しては、どういうお考えをお持ちですか。
  105. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) ただいま御指摘の、熊本県の下益城郡の松橋町であります、旧豊福村の開拓地の例は、私も多少承知いたしております。これは未墾地の買収についてうまくいかなかったといいますか、トラブルの比較的多かったものの事例の一つであろうと思います。確かに三十四町歩ほどの土地に三百六十七人の旧所有者がございまして、筆数も八百七十筆というふうに、未墾地でございますけれども、きわめて零細な所有のところでございます。したがいまして、この買収につきましては、当初からなかなか御納得をいただくことができない問題があったようでございます。一般には政府が買収いたしました未墾地については、当然登記はやっておるのが一般でございますけれども、きわめて多数の小さな所有者から土地を政府が買収したということに関連しまして、しかも市町村の農地委員会がこれに関係いたしまして、市町村農地委員会の計画に基づいて買収した件でございますので、十分納得がいかないまま時間が経過したということで、登記もやりずらかったという面が確かにあったようでございます。それはそういう特別な事情によって登記が行なわれなかった一つの例であろうかと思います。そこでこの三十四町歩ほどの土地の中で、実は一部分、まあ十三町と六反ほどのものにつきまして、農地として造成してそれを売り渡すというたてまえから、昭和三十五年に土地配分計画を公示したことがございます。ところが、その際に買い受けの申し込み者がおらなかったわけでございます。その後時間が経過いたしますうちに、必ずしも地元の人ではないようでございますけれども、私が承知いたしておりますのは、この村の近所に国立療養所がございまして、そこに入院されている人で体がなおって、その土地を買って農業をやりたいという人がおるようでございますが、その人たちを含めて当初は十三人、現在は六名ほどの者がその土地を買いたいということを言っておられるようです。そこで、私が申し上げましたのは、農耕適地であれば一般的には地元増反という形で売り渡すのが普通であります。農耕適地でなければ旧所有者に売り払うということになるわけでございますが、この場合はその土地が農耕に適しているかどうか私必ずしも明確には存じておりませんけれども、旧所有者の人たちが零細であって、しかも農家の人たちが相当多いというように聞いておりますので、私が申し上げましたような原則論で旧所有者に売り払うことが悪いというふうにも必ずしも言えない事件ではないかと思います。そこで現在県も中に入りまして、いずれにしてもこれは農地として使うということに結局なるのではないかと思いますが、零細な旧所有者に売り払うか、あるいは地元増反というような形で、療養者を含めて新しい農家にも売り渡しをするかという現在調整中であるという話を聞いております。なおその十三町六反ほどを除きまして残りの二十一町ほどのものにつきましては、大部分は施行令十七条に基づきまして売り払う旨の通知をすでに行なっております。そのうち六町五反ほどにつきましては、私が先ほど申し上げましたように、町に出ていって住所不明であったり、あるいは相続人が不明であるということで、県当局におきましては極力住所あるいは相続者等を尋ねておるようでございますから、近々売り払いの通知ができますからという報告を受けておりまして、せっかく県当局においても努力をしてもらって、その分につきましてはできるだけ旧所有者に売り払うという方針でやったらどうかと思っております。残りの十三町六反ほどですでに買い受けの申し込み者が出ておるものは、これはそう異質な人たちの争いとも思えないわけでございますから、町の当局なり県の当局なりの調整をしばらく見て、私どもも必要な助言でもして円満に事態が運ぶことをもう少し見守りたいというように考えております。
  106. 森中守義

    ○森中守義君 いま私が申し上げましたのは、相当長期にわたってこういう状態にある結果発生をした問題だと思う。それでこういうケースのものがどこにもあるかと言えば、これまた画一的には言えないでしょうけれども、あまり歳月がたちますと、確かにもとの所有者が死亡する、さて承継人がどこにいるのか非常に困難な事態にぶつかっていくと思うのですよ。ですから、先ほどの二十七万一千町歩余のものも、これは私はもうそろそろこのあたりで一定のきちんとした方針を立てる。そうして現行法上どうしても始末のつかないような隘路があるとするならば、これらのものを解決できるような何らかの方法をとる時期ではないのか、こういうように思うのです。もちろんいま具体例としてそういう熊本の一つの問題は、固有の問題として別途またいろいろお話を伺う機会もございましょうが、要するに、だんだん時間がたってきますと、どこにもこういう問題は発生する可能性はありますよ。同時に、相当膨大な土地を、戦後の一つの食糧確保の一策としてとられた方法が持ち越されておるという点は、必ずしも適当であるとは思いません。したがって、この問題の結論みたいになりますけれども、なぜこういうものを放置しておいたか、こういう責め方ではなくして、むしろ、もうこの際こういう問題にはケリをつけるべきじゃないかというのが私の意見なんですが、何かそういうことを具体的に検討するお考えはございますか。
  107. 後藤義隆

    政府委員(後藤義隆君) 未解決のまま、あまり長くそのままにしておくことは適当でないと思いますし、事務当局を督励いたしまして、なるべく早く解決するようにいたしたいと思います。
  108. 森中守義

    ○森中守義君 それじゃその件はそういうことにぜひお願いしたいと思うのですが、いまひとつ、せっかくの機会ですから、開拓問題で少しお尋ねしておきたい。  どうなんでしょう、今日農家所得がだんだん他産業との間に所得格差を広めていく。こういう今日の事情の中に、開拓地においでになる諸君というものと、そうでない農家との所得状態はどういうように把握していますか。
  109. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 開拓農家は、現在約十三万戸ほどございます。その開拓農家に対しまして、私ども毎年開拓農家の経営の実態調査をやっておるわけでございます。その結果によりますと、だんだん全体としても、また、上層の開拓農家については特にでございますけれども、だんだんよくなってはおりますけれども、まだ一般の農家の農業所得に比べれば相当の懸隔があるというふうに思っております。したがいまして、私ども昭和三十八年から新振興計画という形で開拓営農の振興について新しい施策を進めて、大体途中の山を越えて、だんだん終わりに近づきつつある状態でございますが、その新振興計画につきましては、大体十三五月の農家のうちの半数くらいの農家は現在では非常に農業所得が少ないけれども、農業をやり抜こうという意欲には燃えているし、それから将来の問題として、ここ数年政府が相当なバックをすれば、その地帯における専業農家の大体中ぐらいに、あるいは中から多少下がるかもわかりませんけれども、とにかく専業農家並みの生活水準が営めるような農家になり得るという、そういう農家をいわゆる二種農家というふうに考えまして、その二種農家に対しまして、現在新振興計画を樹立いたしまして、政府として相当な融資をいたしまして、また、指導もいたしまして、その農家の立ち直りについて努力をいたしておるわけでございます。あとの五割ほどの農家の大体半分ほどは、一般の農家並みでございますから、これは開拓行政として特別の手を加えなくても、一般農家、農政の対象として措置いたしたい。残りの大体四分の一程度の人たちは、開拓地の条件も非常に悪いし、また、これ以上開拓地にとどまってもなかなかうまいぐあいにはいきそうもないという農家でございますので、それはもし開拓地から出て、いわば山を下るということになりますれば、政府として離農奨励金、これは現在四十五万円程度の奨励金を出しておりますけれども、それと同時に、借金を片づけることについても、県なり、あるいは開拓団体が中に入って指導いたしまして、できるだけ離農しやすいような条件をつくっていく、そういう形で、現在開拓政策を進めているのでございます。
  110. 森中守義

    ○森中守義君 この問題も一つの戦後の問題ですし、なかなかむずかしい問題ですが、いま決してことばじりをとるものじゃないけれども、一番最初に言われた二分の一の世帯、農業をやろうという意欲がある、こういうことですが、確かにそうでしょう。ところが、ある部分ではこういうこともあるのですよ。早い人で二十年、おそくて十五、六年、そういう相当長期間にわたって土に親しんできている。ところが、比較的にみれば、決してこれは生活水準が高くないし、もちろん所得としても問題にならない。よくよく考えるとばかばかしくてしようがないけれども、しかし、いままで二十年近く住みついてきたし、これを自分の生来の生計のかてとしてきたのだから、もういまさら、困りはするけれども、出ていけないじゃないか、こういう人たちも相当多いという事実は、私はやはり当局におかれても十分察知しておかれないと、ただ、営農の意欲があるからそれでよかろうということにはならぬのじゃないか、こういうように思うのです。私宅方々歩き回ったというわけでもございませんが、そういう地域を幾つか知っております。そうなれば、先ほど率直に局長が言われたように、一般の営農家と開拓営農家との間には、所得上相当の開きがある。この事実を、いま少し具体的にどうするのだということになれば、必ずしも今日の開拓行政に注がれている力点というものがもちろん完ぺきであるとは思いません。ですから、それぞれの態様に応じた施策というものがもう一回吟味されてもいいのじゃないかと思うのです。それと、いま言われたように、なるほど離農にあたっては四十五万の離農資金を出す。今日の四十五万で一体離農するにどういう結果をもたらすか、おそらく統計上の生計費等は、局長あるいは次官も御承知のとおりです。半年もちませんよ。さればといって、工場に出よう、町に出て商売しようといってもなかなかそう簡単にいくものでは私はないと思っているのです。だから、これにはこういう措置をとっているということだけではやはり済まないような気がするのです。だから、なるほどそういうどうしても困窮状態にある皆さん方を離農促進するならそれでいいから、もう少し現状に見合ったような離農資金なり、あるいはまた、それに相当するようないろいろな措置というものがとられていいのじゃなかろうか、こういうふうに思うのです。したがって、戦後のこういう特殊な問題等は、いまなお、言いかえるならば戦後処理の一つのようになっておりますので、特に皆さん方の十分なる再検討、再吟味、あるいは実情の完全なる把握ということをやっていただいたほうがいいのじゃないか、こういうふうに思うのです。
  111. 後藤義隆

    政府委員(後藤義隆君) ただいまいろいろお話がありましたが、開拓農民の実情につきましては、よく調査をいたしまして、そうして必要な検討を加えたいと思っております。すみやかにそういうようなふうに善処したいと思っておりますから、御了承願います。
  112. 森中守義

    ○森中守義君 後藤次官ね、まあこういう際の答弁だからなかなか言いにくいでしょうが、やはり答弁は注意してもらったほうがいい。いまごろ調査しなければならぬという、そんなばかなことはないですよ。私はそういうようなものは完全に把握調査が行なわれた上の開拓行政だと思っている。それでなければ、全国の十三万の開拓者は、これはほんとうに泣きますよ。いまごろ何だ農林省調査するのかというんじゃ、これは私は少々適当じゃないと思う。そこで、私はすでにもう一切がっさい調査が済んで、その答えが局長からも具体的に、二分の一の人の状態はどうであるか、残余の人はどうであるか、こういう答えが出て、さらに精密に調査をしようという意味じゃありましょうけれどもね、問題はそういう現状把握の上に立って、なおかつ不十分だと、こういうことなんだから、あと農林省の施策の中でそういうものをどう消化していくかということが私は課題だと思うんですよ。だから調査段階じゃない。だから、精密になお調査をするというんなら話は別ですけれども、一応農政局にもそういう所管の部署がありますしね、もう調査は十分済んでいますよ。それは何も取り消せとかそういう意味じゃないけれども、まあとにかくいまからということじゃなくして、もうわかっていることだから、だから内容的に検討する、十分期待にこたえようというような返事で私は満足しておきたいと思います。
  113. 後藤義隆

    政府委員(後藤義隆君) 大体の大筋はまあわかっておると思いますが、現実にいま開拓農民のうちでもってそこを離れたいというようなふうな希望者があるかどうか、そうして離れたいという現実の希望者が何人くらいあるのか、そういうようなふうなこともやはり私は調査せなければいけないと、こういうようなふうにも考えますから、どうしてもそこでもって生活ができない、やはり山をおりたいという希望者があれば、それに対してはやはり適当な検討をして適当に善処することが必要だ、こういうふうに私は考えますから、そういたします。
  114. 森中守義

    ○森中守義君 ちょうどお約束の時間がそろそろまいったようですから一応これで終わりますが、またひとつゆっくり聞かしてもらいたいと思います。
  115. 山崎斉

    委員長山崎斉君) 農林水産政策に関する調査については、本日はこの程度にとどめ、散会いたします。    午後四時四十三分散会