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1966-06-09 第51回国会 参議院 内閣委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月九日(木曜日)    午前十時五十三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         熊谷太三郎君     理 事                 柴田  栄君                 八田 一朗君                 伊藤 顕道君                 北村  暢君     委 員                 石原幹市郎君                 源田  実君                 船田  譲君                 山本茂一郎君                 中村 英男君                 山本伊三郎君                 鬼木 勝利君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        国 務 大 臣  松野 頼三君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        総理府恩給局長  矢倉 一郎君        防衛庁参事官   鈴木  昇君        防衛施設庁長官  小幡 久男君        防衛施設庁総務        部会計課長    大浜 用正君        防衛施設庁施設        部長       財満  功君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局次        長        武藤謙二郎君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        電気通信監理官  畠山 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君    説明員        大蔵省主計局給        与課長      辻  敬一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十年度における旧令による共済組合等か  らの年金受給者のための特別措置法等規定に  よる年金の額の改定に関する法律等の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○昭和四十年度における公共企業体職員等共済組  合法に規定する共済組合が支給する年金の額の  改定に関する法律等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○防衛施設周辺整備等に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  この際、参考人出席要求につきまして、おはかりいたします。  昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の審査のため、国家公務員共済組合連合会理事長今井一男君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 御異議ないと認めます。なお、参考人出席日時等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。     —————————————
  5. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 恩給法等の一部を改正する法律案昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  なお、恩給法等の一部を改正する法律案を除く二案は、去る七日衆議院から送付され、本委員会に付託されました。両案の提案理由説明はすでに聴取いたしております。また、両案は衆議院におきましては修正議決でございます。両案の衆議院における修正点説明は、便宜上、関係政府委員から漸次聴取することにいたします。  なお、関係当局の御出席は、矢倉恩給局長武藤主計局次長畠山電気通信監理官、以上の方々であります。なお、安井総務長官は後刻出席されます。  それでは衆議院における修正点について御説明を願います。武藤主計局次長
  6. 武藤謙二郎

    政府委員武藤謙二郎君) 衆議院における修正内容につきまして、便宜政府から説明せよというお話でございますので、衆議院大蔵委員会において木村武千代委員修正案提案趣旨説明をいたしておりますので、それを読ませていただきます。趣旨説明はこういうことでございます。  この修正案は、廃疾年金受給者に対する低額年金是正措置につきまして、長期在職要件を撤廃しようとするものであります。  御承知のとおり、今回政府長期勤続者低額年金を是正することとし、このため原案におきましてそれぞれ所要改正規定が設けられております。すなわち、共済年金の基礎となっている実在職した組合員期間年数退職年金についての最短所要年限以上である年金受給者のうち、退職年金あるいは廃疾年金の額が六万円に満たない者または遺族年金の額が三万円に満たない者に対しては、それぞれ六万円又は三万円を支給することといたしております。  しかしながら、これらの年金のうち、廃疾年金につきましては、当該年金が高度の廃疾により退職した職員にその退職後の生活保障を行なうために支給されるものであり、また、現行法規定では、組合員期間退職年金についての最短所要年限に達しておらない場合でも、それぞれ相当額の給付が行なわれていること等にかんがみまして、この際原案をそれぞれ修正し、実在職した組合員期間年数要件を削除して、すべての廃疾年金受給者に六万円の支給を保障することが適当であると考えられるのであります。  さらに、過日、本院を通過いたしました農林漁業団体職員共済組合法等の一部改正案及び私立学校教職員共済組合法等の一部改正案につきましても、それぞれ同様趣旨内容とする修正が行なわれておりますので、これらと平仄をあわせることが必要であると認められるのであります。  趣旨説明は以上のとおりでございました。
  7. 熊谷太三郎

  8. 畠山一郎

    政府委員畠山一郎君) 公共企業体職員等共済組合関係衆議院の御修正趣旨及びその内容につきましては、国家公務員共済組合の場合と全く同様でございまして、ただいま主計局次長から御説明申し上げましたとおりでございます。
  9. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  10. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記起こして。  以上で両案に対する修正部分についての説明は終わりました。  それでは、以上三案一括して質疑を行ないます。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて恩給法に関連いたしました質問をいたしたいと思いますが、まず順序としてお伺いしたいのは、外国政府及び外国特殊法人職員であったかつての公務員恩給通算に関して、いわゆる満・日ケースの場合をお伺いしたいと思いますが、この満・日ケースの場合、前回恩給局長中心にお伺いしたわけです。大臣の御都合で御出席がなかったのです。そういう事情もありますので、本日は総務長官中心に若干の質問を行ないたいと存じます。  いま申し上げました満・日ケースのものは、恩給最短年限までしか通算されないで、結局実在職年限が切り捨てられておるわけです。こういう現在の法規は不合理でもあるし、不公平でもあって、これは日・満・日あるいは日・満ケースのものと同様に、その在職期間を完全に通算してもらいたい、こういう要望が強く当委員会で毎回、しかも全員から要望されておるわけです。しかもこのことはもうすでに四カ年を経過しておる。にもかかわらずいまだに通算されていないということはまことに遺憾だと言わざるを得ないわけです。どういう理由かあらためてお伺いしたいと思います。
  12. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 満・日と申しますか、具体的に申せば満鉄社員であった者が終戦後日本に帰ってきて国鉄というようなものにつとめ、あるいはその他の国の機関につとめた場合に、従来満鉄は会社でございますので、そういうような趣旨から恩給年限に本質的には加算されてなかった。しかし、これは満鉄会社というようなものの性格上、これは国の機関にほとんど準ずべきものじゃないかという御意見も非常に強くございまして、長い間向こうでそういう国策機関に働いておった人がさらにこちらで国の機関で働かれたという場合については、少なくともその恩給年限に達する不足部分はその在満期間を通じて加算を認めようじゃないかということに相なっておることは御承知のとおりでございます。しかし、それだけじゃ不十分じゃないか、会社といいながらも、これは国の機関と同じような機関なんだから、その在職年限をフルに換算をすべき性格のものじゃないか、こういう御意見もあることはよく存じておりますし、また、私どもいままでも伊藤議員はじめいろいろとそういった御質問をいただいたこともございます。私どもそういう御議論に全然根拠がないなどと申しておるわけじゃないのですが、何と申しましてもこの満鉄というような場合を例にとってみましても、これは会社であったことは間違いございませんし、当時つとめるに際してはそういう制度を全然予想してなかったような性格のものでもありますし、それかといって、そういう国策的な機能実情を見ないということもいかぬので、これは恩給年限に達するまでの期間についてはこれを見よう、最低限を見ようということになっておるわけです。しかし、全部フルに見られるかという点につきましては、これはやはり解釈上いろいろな問題も派生してまいります。また、私どももその他のほかの団体との振り合いというようなこともあろうと思いまして、にわかに取り上げ得ないで今日までまいっておるような状況でございます。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 にわかに結論を出しがたい、こういった御指摘があったわけですけれども、あまりにわかでもないわけです。もう四年を経過しておりますから。国会で言うと第四十三国会以来ですね、このことに関して数回にわたって各党共同提案という形で附帯決議がつけられているわけです。このことを申し上げると明確になると思うのですが、「外国政府外国特殊法人職員恩給最短年限をこえる在職年通算等早期実現を図ること。」等について政府は「速かに検討の上、善処するよう要望する。」こういう意味附帯決議は四十三国会以来数回にわたって、しかも各党共同提案でなされておるわけです。したがって、いま総務長官はにわかに結論を出しがたいというお答えがあったわけですけれども、決してにわかの問題でなく、この附帯決議趣旨ももう十分年数がたったのだから、ひとつ十分検討してすみやかに結論を出すよう要望する、こういう趣旨附帯決議がもう何回かなされておる、いまだに実現しない、こういうことであるので、もう要は実現あるのみだと思うのですが、この点について長官のひとつ現在のお気持ちをお聞かせいただきたい。
  14. 安井謙

    国務大臣安井謙君) お話のように、この附帯決議にも御要望がこの当委員会であることも実は承知しております。また、四十一年度につきましても、できるものならひとつ何とかなるまいかということを、たしかこの委員会附帯決議等趣旨も体しまして検討したのでございますが、いろいろな問題が派生します。これは御承知のように、外地勤務軍人の場合をとりましても、これはやはり加算が倍加される場合には最低年限というようなものに押えられている、それから満鉄以外のどこまでそれじゃそういう場合に範囲が広げられるかというような解釈になりましても、これまたなかなか技術的に問題がございますために、ことしも残念ながら踏み切り得なかったというのが実情でございまして、いままで非常に熱心に御要望があり、そうして御質問がある点は十分に考えております。したがいまして、私どもこの段階でことし四十一年をどう処理しようかというときに、この日・満問題以外にもかなりまだ問題がたくさんございますので、そういうものをひとつあわせましてこの恩給審議会でも御検討願って、その結論を待ってひとつこれの解決をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 恩給審議会検討の上、その結論を待ってという意味答弁でありますけれども、全く同一に考えられる日・満・日あるいは日・満のケースの場合は完全実施になっておるわけですね。それと全く同一に扱うべき満・日のケースだけが最短年限という条件一つ付せられておるわけです。これは不公平ではないか、不合理ではないかということでお伺いしているので、このことは恩給審議会に諮問する必要を何ら認められないわけです。われわれとしては、結局この問題に関する政府担当責任者総務長官であり、また恩給局長であるわけです。ところが、任期が比較的短いので、ようやくこちらが骨を折って、満鉄等あるいは外国政府、こういうものについての認識を深めていただいて、ようやく御理解がいただけて、さてよき結論が出るだろう、そのころ突然として更迭になってしまうのですね、かわられる。そういうことでまた新たな総務長官恩給局長が就任されて振り出しからまた始めて、それでとにかく日数をかけてようやく御理解いただける段階まで来るとまたかわってくる、そういうことが繰り返されてきたのです。現に三十八年六月に当時の徳安総務長官は、その当時こういうことを当委員会で言明されておるわけです。高い次元において検討を加え、研究上次国会までに提案したい、こういうふうに約束されておるわけです。三十八年ですからもう三年経過しているわけです。ちょうどまる三年です。三十八年六月ですから。三十八年六月の時点で、高い次元において検討を加え研究の上次期国会提案したい、満鉄のケースを全面認めるような提案をしたい、そうまで言われているわけです。また、このことに関して当時の臼井総務長官はこういう言明をされておるわけです。附帯決議趣旨に沿って十分検討すると、こういうことも約束されているわけです。したがって、もうとうに解決されなければならない時点に来ていると思うのです。特に幸いのことに安井総務長官は以前満鉄にもおられて、満鉄等のいわゆる外国法人性格等については歴代の総務長官に比すべくもなく非常に御理解が深いと思うのですね。したがって、その御理解深い安井総務長官のときに断が下されないと、なかなか解決のめどがつきがたいと思うのです。そういう意味で期待をかけてお伺いしておるわけなんです。そういうことは別としても、前任者がいま申し上げたような公約をされておるわけですから、後任の総務長官としても前任者の約束を尊重するという責任はあろうかと思うのですね。同じ自民党の内閣大臣ですから、前大臣の公約されたことをあとの大臣がこれを引き継いで誠意をもってその実現に努力する、これは当然ではなかろうかと思うんですが、したがって、相当検討もされておると思うんですが、いまの時点ではまだはっきりとお答えがないわけですけれども、察するに、この問題を解決するとほかの問題、先ほども指摘あったのですが、いろいろほかの問題にもかかわってくるので、ことが大きくなってしまうから、そういうことが憂慮されるという意味お答えがあったわけですけれども恩給に関する限り日・満あるいは日・満・日のケースと満・日だけを切り離すのは不公平、不合理であるということに集約して御質問申し上げておるわけなんです。したがって、こと恩給に関する限りは何らそういう御心配ないわけですから、おそらく総務長官も腹の中では、これはもう当然日・満あるいは日・満・日と同じように全年、在職年を通算するようにすべきだというふうなお気持ちあろうかと思うのです。当然あると思うのですが、ただ他への影響を考慮されるのあまり、なかなか断が下せない、そういう時点ではなかろうかと思うんですが、この点はいかがですか。
  16. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 伊藤委員もるるお話しございましたし、私どもも従来からの御説もよく伺っておりますので、真剣に検討はいたしたわけでございます。これは四十一年度予算を組みます際にもこの検討はしたわけでございますが、本質的に見まして、先ほど申し上げましたように、たとえば軍人加算給というような場合でも、これは最低年限というものに限定しても、あるいは満・日の場合と日・満の場合あるいは日・満・日の場合ではスタート条件がかなり違うことは御承知のとおりでございます。これを直ちに同一にしてよろしいかどうかという点になりますと、何といっても問題が事実上残るわけです。そして同じ満・日にしましても、満鉄の場合、また他の機関の場合、これにもおのずから性格上の区分もできておるような次第です。しかし、私も実態から見まして、満・日の人が、あるいは従来日本政府機関にずっとつとめておったような人と勤務年限、年齢、経歴といったようなものを比べましたときに、同じ最低年限を採用されるにしましても、非常な格差があるという点も私どももよく存じております。そういう点もありますので、これは何とかもう少し前向きの結論を出したいと思ってはおるんでございますが、いまのような関係で満鉄の関係だけを一つだけ取り上げてやるということにはなかなか技術的その他の困難が伴います。これはいまお話の私自身が満鉄にもおったわけで、実態はことさらよく知っておるだけに、そういう問題について十分ほかの例との比較等もいたしてみますと、ちょっと直ちに踏み切るというのにはまだ問題が残り過ぎておるという結論になる。たいへん遺憾でありますが、四十一年度の予算というものにはこれを盛るわけにはいかなかったという結論に相なっておるわけであります。しかし、これはそのまま私は見捨てておいてよいと思っておるものじゃないのであります。そういった実例等も十分かみ合わせまして、これをひとつ制度全体の問題として恩給審議会の議に供したい、またそれについては、いままでの御所論あるいは当委員会附帯決議あるいはまた実際につとめておる連中の事実上給与の格差、そういったような資料も十分そろえまして、ひとつこれは前向きで検討願うというような形で恩給審議会へもはかりたい、こういうふうに考えておりますので、ひとつそういう趣旨のあるところを御了承いただきたいと思うわけです。
  17. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ただいまの答弁に対して御了承いただきたいということですが、なかなかもって御了承申し上げるわけにはいかぬわけです。日・満あるいは日・満・日の場合と、満・日の場合では第一、スタートが違うというふうにお考えのようですが、いままでの国会において、総務長官なり恩給局長は、恩給完全通算を認めるかどうか、こういうことについて、いわゆる統一見解なるものを繰り返しお答えになったわけで、それをまとめて言いますと、第一には、その機関国家機関と同様であるかどうかという点、それから第二には、その機関職員政府職員の間に制度的に人事交流が行なわれていたかどうか、こういうことが決定条件であるという見解を従来引き続き示されてきたわけです。そこで、このことについて、私どもの立場から、十分こういう条件を付されても、なおかつ日・満と満・日のケースは平等に扱うべきだという論拠を示して、いわゆる現実の問題を添えて御質問申し上げてきたわけですけれども、いまだ完全に御理解の域に達していないわけです。満州国にしろ、また満鉄等が形式的には日本政府機関でない、これはもう形式的にはそういうことが言えると思う。しかし、実質的には日本政府代行機関であり、また、日本政府そのものと言ってもいい。こういうことについては、代々の総務長官恩給局長も確認されてきたわけです。いわゆるこういう見解については、政府統一見解と言ってもいいと思うのです。いままでの長官局長もそういうふうに言明されてきたわけですから、これは政府統一見解だと断定できるわけです。そこで満鉄創設の経緯とかあるいはその後の運営の歴史から見て、実質的には日本政府機関であるというゆえんは、もう私が繰り返し当委員会において申し述べてきましたので、ここでそのことを確認していただけばいいわけなんですが、結局日本政府自身が満鉄に対して政府機関同様の取り扱いをしてきたということは、幾つかの事実でも明白になっておるわけです。  なお、御理解を深めていただくために、もう総務長官には必要ないと言うかもしれませんけれども、やはり大事な問題でございますので、その認識が違っておると、どうも論拠が合いませんから、そういう意味で、もう、かつての満鉄等について精通されておる長官に対して失礼の向きもありましょうけれども現実を一、二しぼって申し上げてみたいと思うのですが、政府は、満鉄資本金に対するいわゆる出資金一般会計から支出していたということの事実があるわけですね。これは特殊法人に対する政府出資通常特別会計から支出されておる。これがもう慣例であるわけであります。にもかかわらず、満鉄の場合は一般会計から支出しておる。この一つのことからも、政府自身が満鉄を政府機関と見ていたということが確認されると思うのです。このことについて満鉄のかつての監理官であった元大蔵省の某高官も、このことについて言明されておるわけです。  なお、政府は、満鉄のいわゆる利益配当あるいは社債の利子、元本まで保証して国債と同様に取り扱ってきたこと、そういう現実もあるわけです。  それからなお、会社決議会社の目的に反すると政府が判断した場合には、政府みずから会社決議を取り消すことができたわけです。満鉄に限っては。このことは明らかに国の上級官庁下級官庁行政行為を取り消すのと全く同じ性質のものであって、公法上の命令行為であって、国の機関に対してでなければできない事実であるわけです。  まあ時間の関係で、まだたくさん論拠がございますけれども、たとえばこういう二、三の問題を拾い上げてみてもこういうことははっきり言えると思うのです。したがって、こういう御認識が深められないと、なかなか満・日の場合は最短年限でいいのかということになってしまうと思うのですね。ないしは日・満あるいは日・満・日がもうすでに解決しておるのに、満・日の問題については今回審議会にかける必要があるという御意見も出てくるわけです。そういうことにも関係がありますので、この際こういうことに対する現実の問題を大臣としてはどういうふうに認識されておるか、どういうふうに確認されますか。この点にしぼってひとつお伺いしておきたいと思う。
  18. 安井謙

    国務大臣安井謙君) いま御指摘の点、これまた非常にいままでのいきさつ、実態を御熱心に御検討いただきまして、いろいろ御研究の結果のお話でございますし、私ども非常に伊藤委員所説そのものに同感を持つ面も非常にあるわけでございます。あるわけでございますが、具体的に言いますと、いま御指摘のような資本金の半額は、これは国の一般会計が持っておるということ。あるいは政府監督権が相当強大なものがあったということは、これは事実でございます。しかし、同時に、やはり何といっても株式会社であったということ。過半数の株をといいますか、半分の株を政府が持っておりましたため、これは株主組織としての権限施行上からいうても相当強大なものを国の機関で持っておったことは事実上の問題でございますが、しかし、やはり運営そのもの株式会社としてやっていっておりますし、就職をします際の条件、われわれにしても最初からまさかこういうことになって、日・満、満・日の問題になろうなんということは夢にも考えてなかったので、そういうような場合に、同じような機関というふうに全部を言い切ってしまうのにはなかなかやっかいな、まだ未解決の点があろうかという気はいたしておるわけです。しかし、いま御指摘のような点がありましたので、私ども過去において満・日ケースについて少なくとも最低限度の不足日数、年限を認めようということで踏み切っておるわけです。しかし、これを全く同じに扱うということになると派生的な問題もかなり私ども出てくる点を憂慮いたしまして、そういう点についてもやはり一応審議会といったようなものの意見を聞いた上でするのが正しいであろう。たとえば、もし全く同じだということになりますと、たとえば、満鉄だけで恩給年限に達しておった人は一体どう扱うか。たまたま国の機関につとめておったという人についてはこういうような待遇ができますが、では、その他の機関につとめておった人、あるいは満鉄だけでこの恩給年限に達しておったような人、こういう人に対しましても何らの特権的なものが今日与えられてないという状況、それもやったらいいという御議論もあるいは出ようかと思いますが、まあそこまでまいりますと、また非常に派生的な問題がいろいろ出てくるわけでありますから、そういうような問題もあることを承知いたしまして、その上で、しかし、満鉄の場合はいま伊藤委員の御指摘のように、非常に特殊な性格を持っておるということを加味しまして、最低年限にはとにかく加算するというところまで踏み切っておるわけです。そこから先をどこまで見ていくかというのは、いまのような問題もあわせて一応検討し、そして特に国に帰ってつとめておられる人とそれから従来から国へつとめておる人とにおいては、同じそういったものを年限計算をして、あるいは退職年金その他についても非常に格差が出ておる実態というようなものもあわせまして、これをどういうふうに考えていくか、ひとつ前向きでこれを審議会検討を願い、でき得れば善処をしたいというふうに考えておるわけなんでありまして、なかなかその伊藤委員の言われるように、非常に私ども共鳴する面はたくさんあるんですが、同時に、同じような扱いをした場合に起こってくるほかとの不均衡ということも一応考慮して、これはこれだけからこの限度でいいじゃないかという点の押えもつけてからでないと、ちょっと一足飛びに踏み切るというわけにはまいりません。これが三年、四年、そういう方向でいろいろと検討され、また、歴代の総務長官もそういう答弁をしながら解決をしていないという点につきましては、はなはだ私も申しわけないと思う次第でございます。実態はそういう問題がありますので、ひとつ今後前向きに、この調査会の検討を得、何らかの前進した方法をとるようにいたしたいと思っているので、できればひとつ御了承を願いたいと思うのです。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なかなかただいまの御答弁では、せいぜいつとめておりますけれども理解しがたいわけです。ただいま長官から、たとえば満鉄の株でも政府は半分しか持っていない、だから政府そのものでないという一つの例にあげられたわけです。しかし、これは当然のことで、当時の国際情勢から考えないとこの問題は理解できないわけです。お釈迦様に御説法になろうかと思いますが、当時の国際情勢ではどうしても満鉄を国営にしてはまずい。外交政策上、国の政策上、どうしても民間会社に表面だけはしておかぬとまずいということ。だがしかし、単なる民間会社ではないということで、そういう配慮から、たとえば株にしても二分の一と、そういう位置をとったと思うのですね。だから形式的には満鉄等政府機関そのものではない、そういうことは言えると思うのです。こういうことは私も繰り返してきたわけです。だがしかし、実質的には政府機関であって、政府機関そのものである、こういう裏書きについては繰り返し申し上げてまいりましたので、ここで同じことを繰り返しませんが、これは御理解いただけると思う。このことが御理解いただけないということになると、論議にならぬわけですから、実質的に政府機関そのもの、形式的には民間会社であったわけです。これはいま申し上げた当時の国際情勢から外交政策の面でどうしても民間会社という看板をかけないとまずかったわけですね。こういういわゆる国際情勢は御理解いただけると思うのです。そういうことからそういう結論が出てきたわけです。さっき私が御指摘申し上げたいわゆる恩給完全通算を認めるやいなやの判断、一つの基準である。国家機関と同様であるかどうかという点と人事交流ですね。この機関政府との間の人事交流がなされたかどうかという点、こういう点についても明確にしておく必要があろうかと思うのです。そこで人事交流については、満鉄と日本政府との間に制度的に常時交流は行なわれた事実はないわけです。これは私も認めているわけです。だがしかし、これは満鉄創立の当初、諸外国に対する、いま繰り返し申し上げた外交政策から、故意に政府がそういう政府直営という形を避けたわけですね。したがって、民間会社でなければならないという、そういう民間会社の形をとったということは当然のことであるわけです。民間会社の形をとった趣旨から見て、人事交流についても制度的に常時交流という形はとらなかったわけですね。この点は御理解いただけると思うのです。だがしかし、実質的にはたとえば朝鮮総督府と満鉄——朝鮮総督府はこれは当然に日本政府機関です。この朝鮮総督府と満鉄、それから満州国と満鉄、この間には国の命令によって一時に大量の人事交流をたびたび行なっておるわけです。こういう現実があるわけです。このことをさらに裏書きするために、現実の問題をあわせて申し上げてみますると、大正六年七月に、勅令九十号によって朝鮮総督府の鉄道全部を満鉄に経営委託をして、大正十四年三月にこの委託を解除したわけです。その際に、委託当初の朝鮮総督府鉄道局の職員——これは日本官吏ですね。日本国の官吏であることはもう明確です。この朝鮮総督府鉄道局の職員は、全員本人の意思のいかんにかかわらず、満鉄社員に身分が切りかえられておるわけです。こういう事実があるわけです。このことは、日本政府と満鉄との人事交流がこういうふうに大幅に行なわれておったという一つの実例になるわけです。  なお、その後、八年近くの間、満州と朝鮮間の人事交流は、社内転勤として自由に行なわれておったわけです。しかも委託解除のときは、在鮮の満鉄社員は全部そのまま朝鮮総督府官吏となっているわけです。その切りかえの際、退職手当とか恩給一時金等は支給されないで勤続年数はそのまま通算されておる。したがって、恩給通算が行なわれたことも事実であるわけです。こういう現実があるわけですね。これは一つの例なんです。  こういうことで、繰り返し申し上げて恐縮ですが、当時の外交政策から常時に制度的に人事交流ということの形はとらなかったけれども、実質的にはいま申し上げたように、日本政府と満鉄との間には人事交流が大幅に行なわれてきた、こういうことだけしかなかったということで申し上げているのではなくして、これは一つの例です。こういうふうに実質的には人事交流も行なわれてきたということなんです。したがって、政府は二つの論拠として完全通算、この二つのことが必要だ、その一つの根拠に対してはこういう現実をもって長官にお伺いできると思うのです。その点を長官としてはいかように御理解か。その点を、これは基本的な問題ですから、このことの認識が違うと論議が進まないわけですから、そのことをあらためてまたお伺いしておきたいと思うんです。
  20. 安井謙

    国務大臣安井謙君) いま歴史的な事実の御開陳がありまして、そういう点につきまして、全く伊藤委員の御研究の結果は私どももそのとおりだと思います。かりての満鉄が朝鮮鉄道を委託経営した場合、あるいはそれと分離した場合、ただそういうような場合は、これは国の方針なりなんなりで、本人の意思にかかわらずそういうふうにして変わったわけでありまするから、そういう場合に必要な措置もとられたことであろうと思うのでありますが、今度の場合、私は伊藤さんのお話が実はよくわかるし、何とかできるものならいたしたいという気持ちは正直持っておるわけなんです。しかし、いろいろ掘り下げていきますと、前にも言いましたように、それじゃ同じ機関だというふうに考え、全く同じ扱いをするということになれば、満鉄時代だけで恩給年限に達した人は一体どうするのだというような問題も実は出てくるわけでありまして、これについてはいままで何らの措置も御承知のとおり考えていないし、いまのところそういう問題はあまり議論になってきていないわけです。たまたま国の機関につとめられた方に対する処置をどうするかということで、最低恩給年限までは日にちを見ようという、いわばほかの機関あるいはほかの外地の例から言えば特例と申すような措置をとっておるのです。これじゃまだ不十分じゃないか。もう全く同じに見ろ、こういう御意見でありまして、そのお気持ちなりお話趣旨も、必ずしも私ども絶対反対するとか全然根拠がないというふうに申し上げるわけじゃない。ただしかし、実際やろうと思うといろんなほかとの振り合い、それからいま申し上げましたような問題も派生してくることも事実でありますので、なかなかこの部分だけをちょっと政府として単独に取り上げにくかった。やりたい気持ちは大いにあり、そうして、そういう意味で前向きに検討も続けてきたのだが、なかなか踏み切れなかったというのが現実でございまして、そういうようなことから、そういったいろんないま御指摘のような特殊情勢、特殊事情、また満・日で日本につとめておりまする、そうたくさんの方じゃなかろうと思いますが、現在おられる人の待遇あるいは現行制度における退職年金その他というようなものの実情もよく調べて、比べまして、これをできれば恩給審議会でひとつ善処され、結論を出すように、これからも努力していきたいと思っておるようなわけでございます。
  21. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 長官の御答弁を聞いておりますと、いろいろほかにも影響は大きいからということにこだわっておるようですが、たとえば満鉄だけで恩給年限の達したものは一体どうするのだ、そういう場合を例にあげていまお答えになったわけでありますけれども、それでは逆にお伺いいたしますが、満鉄でたとえば三十年つとめたという場合、日・満・日の場合は、その三十年はまるまると通算されるわけですね。それから日・満の場合もそうです。まるまる三十年満鉄におった場合に、その三十年は完全に通算されるわけです。日・満の場合もしくは日・満・日の場合、これはたとえ三十年、三十五年であろうと、まるまると通算されておる。にもかかわらず、その三十年なり三十五年をまるまる通算したというのは、私が繰り返し申し上げておるように、単なる民間会社ではなくして、従来から私が申し述べておるような事情と根拠があるからこそ、日・満あるいは日・満・日の場合、何年でもまるまると通算しておるわけですね。そうだとすれば、日・満あるいは日・満・日の場合と満・日の場合を比較してみて、両者の満鉄の勤務年数を、同じ条件で同じ職場に同じ努力で働いてきた人を、スタートが違うからという理由で、初めは公務員であった者、いわゆる日・満あるいは日・満・日、初めは公務員であったんだから、これは違うんだと。そうしてまるまる通算する。満・日の場合の満鉄のいわゆる勤務年数は、これはもう何ら変わらぬわけですね。同一条件同一勤務なんです。そこをお伺いしておるわけです。日・満と日・満・日の場合の満鉄の勤務条件ですね、満・日の場合の満鉄の勤務条件、何ら選ぶところはない。全く同じだ。ただ、長官のおことばを借りるというと、スタートが違う。そういうことになると、最初公務員でなかった者はもう人間でないような扱いを受けるわけですね。初め公務員であった人が満鉄に入り、また日本に帰ってくる、または帰ってこないでも、終戦でそのまま向こうでやめても、まるまる通算される。何でも初め公務員でなければだめだということになると思う。それから長官の言われるように、満鉄だけで恩給年限に達したら、そういうものをどうするのか。いまこの時点でこういう問題をやっておるわけじゃない。通算問題をやっておるわけです。しかも、これはおのずから恩給とは別個の問題です。満鉄だけで勤務年数が何年になったという問題は、これはもう他の権益も一切放棄されておるわけですから、遺産、貯金から身元保証金一切がっさいあげて、満鉄は、本社が外国にあったという理由で何ら恩典に浴してないわけですね。その問題も解決しておるわけです。先ほど来私も御指摘申し上げておるのですが、どうも満・日の場合と日・満あるいは日・満・日と切り離して特別に違った扱いをするのは不公平、不合理であると、もう長官はすでにお考えになっていると思うのですよ。ただ、他に影響することが大きいからということにウエートがあるように印象づけられるわけです。これはおのずから別問題で、この問題は恩給の通算問題ということでお伺いしておるわけです。満鉄だけでなった者はどうするか、恩給年限に達した者はどうなるかという問題はおのずから異質の問題です。しかも、いま御指摘申し上げたように、重大な不公平だという理由は、日・満も日・満・日も満鉄勤務はまるまる認めておるわけですね。これはもう確認される。そうだとすると、満・日の場合に、スタートは内地が先か外地が先かということだけでそういういわゆる不公平な取り扱いをするのは不合理ではないかという観点からお伺いしておるわけですね。だからこの問題解決すれば、一応通算問題はこの日・満とか満・日とかというケースに関しては解決するわけです。満鉄だけの勤務年数というのをどうするかということはおのずから異質の問題で、恩給問題じゃない、こういう観点からひとつ事情は十分おわかりだと思うので、ひとつこの辺で断を下すべき段階に来ているんだと思うのです。日・満とか日・満・日の場合も、まるまる通算するかということについてはもうすでに断を下されて解決しておるわけですからね、これと比較をいま申し上げておるわけです。これは片手落ちではないか、不公平ではないか、不合理ではないかと、そういうことに問題をしぼってお伺いしておるわけです。なお、事実を裏づけるために申し上げますが、昭和八年の北鮮鉄道の満鉄委託経営の際にも、北鮮に在職していた朝鮮総督府官吏約二千名は、国策として同様の取り扱いで満鉄社員となった事実もあるわけです。それから満州国成立に伴って満鉄の地方行政の委譲の際には満鉄社員三千五百名が満州国官吏となっておるわけです。同時に、満州国有鉄道、港湾等のいわゆる満鉄委託経営に伴って、満州国官吏約七万人、この七万人というのは、これは満人、ロシア人、朝鮮人、一部の日本人、これが含まれて七万人という数字でありますけれども、とにかく命令によって満鉄社員に身分を切りかえておる。勤続年数はそのまま通算されておるという事実があるわけです。したがって、これらの事実は、日本政府の国策として行なわれたものであって、これは本人の意思のいかんに何ら関係ないわけです。国策として至上命令でこういう職務がえが行なわれたわけです。日本政府は、いわゆる満鉄職員を朝鮮総督府官吏あるいは満州国官吏と全く同一性格のものとして考えていたことは、こういう幾つかの事実からも明白なんです。したがって、満鉄社員を実質的に日本官吏として取り扱っていくのであるということがもう十二分に裏書きされると思うのです。だからこそ、日・満あるいは日・満・日の場合まるまる通算しておると思うのですね。全く一民間会社にすぎない場合、満鉄等の勤務年数をまるまる通算するはずがない。そこのところです。問題は、満鉄の勤務年数をまるまる日・満あるいは日・満・日の場合は通算しておるわけですね、もうすでに。だからスタートが前後しただけで、日本が早かったか満州のほうが早かったかというだけなんです。同一勤務、同一条件での勤務には何ら変わりがないわけですね。これは繰り返し申し上げておるわけです。こういう事実を総括すると、満鉄社員日本公務員と同様に取り扱うべき根拠はもう明白であるということは繰り返し申し上げ得るわけです。したがって、その勤務年数の一部は恩給に通算するけれども、一部分は通算しない。満・日の場合そうですね。恩給年限に足りない年数だけしか通算しないということは、一部は通算するけれども一部は通算しない。これはもう全く根拠のないものと言わざるを得ないわけですね。したがって、満・日の場合も、日・満・日あるいは日・満と全く同様に通算すべきであるということは理の当然だと思うのですね。あまりにも明白なんですよ。だからこの問題に問題を集約して、他に影響するところが大きいということにとらわれるとこの問題も解決しないわけであります。したがって、こういう詳細にわたる幾つかの事例、まだまだ時間の制約がなければ幾らでも申し上げ得るわけです。ただもう長官もかつての経験者ですからもうお釈迦さまにお説法というきらいは免れないと思うから御遠慮申し上げて、問題をしぼってお伺いしておるわけなんです。政府としては、前の国会でも、恩給公務員でない者を恩給公務員として取り扱うのは一つの擬制であるから例外的に厳格に取り扱わねばならない、こういうふうな御意見があり、したがって、日・満・日あるいは日・満の場合も満鉄勤務期間は明らかに恩給公務員でないわけですね。擬制であるにかかわらず、しかも実際にはまるまる通算しておるわけです。なお申し上げますが、国際電気通信株式会社、それから日本電信電話工事株式会社、これは明らかに純然たる民間会社であったわけです。特に、日本電信電話工事株式会社は全くの民間工事請負業者なんです。工事請負業者であったわけですが、官の勧奨によって合併によって政府機関となったにすぎないわけですね。ところが、その日本電信電話工事株式会社の純然たる民間会社をまるまる完全通算しておるわけです。こういう点と比較しても、いかに満・日のケースは不公平であるかということを申し上げたいわけです。日本電信電話工事株式会社は、満鉄の特殊事情と違って、これは当時の外交政策上、民間会社にしなければならなかったという会社じゃないんです。満鉄等と事情は全く違うわけです。全く工事請負の単なる民間会社、純然たる一〇〇%民間会社。当時の外交政策とか、政府の政策上民間会社にしておいたという特殊性はなかったわけですね。単なる民間会社。これをまるまる通算しておるわけです。にもかかわらずですね、満鉄等、形式的には政府機関そのものではないけれども、実質的には政府機関と同様であるという認識がすでに下されておる。満・日のケースのものを完全通算しないというのは、全く不公平、不合理であると指摘せざるを得ないわけなんです。全く不合理、不公平であるという断定に立てば、不公平、不合理をなくすのは政治の要諦であろうと思うんですね。不公平、不合理をそのままにしといてはいかぬのです。これは政府責任を、政治の姿勢を正せば、こういう問題を解決するということが言えるわけです。現実にこういう民間会社ですらまるまる通算しておる。日・満とか日・満・日との比較、これはるる申し上げてきたところです。こういう事実と、さらに二つの民間会社の、一〇〇%民間会社であったその勤務期間をまるまる通算しておるという、そういう事例もあるわけですね。したがってですね、あまりにもそれと満鉄のケースを比較すると不合理であり、不公平であり、そのままにしといては、全く国の政治の威信にもかかわる問題だと思うんです。だから、こちらは無理なことをお願いしておるのじゃない。不合理であり、不公平だから、その点で不合理、不公平を是正すべきではないかということで、同じことを四年間も要求し続けてきたわけです。先ほども言ったように、時の総務長官、時の恩給局長は、先ほども申し上げたように、さっそく次の国会にはその満・日の場合もひとつ解決するように提案したいとまで言われて、それが長官あるいは恩給局長の更迭に伴って、また逆戻りして白紙に戻って、また同じことをるる御質問申し上げておるわけです。なお、この時点で、四年間も、いわゆる共同提案で、すみやかに解決すべきであるという附帯決議をなされておる。こういうこともあわせお考えいただいて、一方にはこういう現実の問題と比較対照せられて、この問題を解決したがために重大な影響があるなどとお考えにならないように、これはもう恩給問題、通算問題に関する限り、日・満と満・日の不公平がこれでりっぱに是正せられると思うんですひとつ決断を下していただきたいと思います。ぼくは。
  22. 安井謙

    国務大臣安井謙君) るる実態についてのお話の点は、種々私どもも首肯するし、お話のとおりだと思う点もたくさんあるわけでございまして、したがいまして、私どもできるだけ前向きに解決しようという決意には変わりはないんですが、しかし、現実には、何と言っても、実態的に問題が残っておることだけは事実でございまして、いまの通算の問題であるから、他の恩給関係とは切り離して議論しろと、こういうことになりましても、これはそうしてもいいと思うんですが、そうすることについてはするだけのやはり一応根拠とかあるいは政府の腹をきめなきゃなりませんので、全く同じものの扱いをしろということになれば、先ほど申し上げましたように、満鉄だけで恩給年限に達した人も言い出されてくると、これは返すことばがなくなるわけであります。そういう場合に対する政府側の腹がためというようなことも、やはり実際には必要になってくることも御了承願えると思うのです。それから、人間の交流にいたしましても、日満あるいは日・満・日というような場合の交流は、ほとんど全部が当時の国策なり、方針に従って、本人の意思以上のもので行なわれておるということ、それからこの恩給制度を前提にした機関に最初からつとめておった人が、国の方針によって満州に行くとか、また帰ってくるとかいった状況にあったという特殊事情、まあそういうものを考えますと、いまこれは御説の点はるるわかるのでございますが、全部同じものだ、国と同じ扱いにしろということにつきましては、やはりまだいまのような、若干引っかかりの点が、これを決して理論的に反論してどうしようというつもりはないのです。まあ伊藤さんのお話の趣や御趣旨についてはよくわかりますし、また、事実的に回答されておる面もよくわかるわけでございますが、他面、そういうような点もあるというために、にわかにこの決断が出しにくいという事情にある点は、ひとつ御了察を願いたいと思います。電電公社の例等もおあげになりましたが、これも当時GHQの方針で、これも会社の意思とか、あるいは従業員の意思というもの以外のものでこれは国の機関になったというふうな形に相なっておる場合、それを、まあ当時は占領下で、国の自主的な意思以外のものできめられたような特殊事情もございますので、これをそのまま当てはめるというのにはいささか事情も違うかという気もしております。しかし、それだからといって、これはひとつどうしてもやらないのだ、あるいは絶対いかぬのだという観点でやっておるわけじゃないのでありまして、何とかそういう御趣旨のほどを生かす方法を考えたい。しかし、考えるについては、やはりそういった派生的といわれるかもしれません、付帯的なほかの条件も考えながら、それに対するめどもつけてやらなきゃならぬ。そこに問題の解決の困難性があるわけでありまして、そういう性格のものでありまするがゆえに、ひとつ学識経験春で今度構成される——法律が通ればできる——これはもう総理府に設置法でできましたこの恩給審議会というものにかけまして、いまのような御趣皆のものに十分に沿いまして意見具申もいたし、また、実態も明らかにした上で、ひとつ前向きの解決をはかるように努力をしたいと思っておるわけでありまして、決してその御趣旨が問題にならぬとか、あるいはいいかげんに扱っておるというようなつもりは毛頭ない点をひとつ御了承願いたいと思います。
  23. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なかなかもって御了承するわけにはまいりません。なかなか長官はもう御答弁にはなれておられるから、適当に前向きのような姿勢をちらりと見せながら、肝心なところでは、完全に同じものとは扱えないという、たとえばそういろ表現で、うっかり聞いておると了承してしまわざるを得ないわけですけれども、こちらも真剣に聞いていますから、なかなか簡単には了承できないわけです。で、もうむずかしい理屈は抜きにして、先ほども指摘申し上げたのですが、この一事をほんとうに御理解いただければ、もう問題は解決すると思うのです。ということは、先ほども申し上げたことですが、日・満とか日・満・日の場合の満鉄等の勤務期間は、これも恩給に満たない、最低年限に達する年数をというならば、私は何もこの問題を追及しないわけです。この問題はもう解決済みでしょう。日・満、日・満・日の場合の満鉄の勤務年数、たとえば三十年としますね。この三十年はまるまる通算されておる。もうすでに解決しておるのでしょう。ところが、日・満の場合はそうだが、今度は満・日の場合、スタートが違っただけで、この場合は三十年であっても、それから内地で十年公務員をやっておった場合は、三十年のうち七年は取り上げられるけれども、大部分の二十三年は捨てられてしまうわけです。しかもこれはまだまだいま申し上げる段階でないので後ほど申し上げたいと思いますが、もう大体そういう該当者が非常に少なくなっておるのですよ。現在の方々は終戦後引き揚げても、たとえば二十年に引き揚げたとするともう二十一年、内地に帰って公務員をやって二十一年というのは、恩給は十七年ですから、もう内地だけで年数はたっておるわけですね、満・日の場合でも。したがって、何ら恩典に浴しない、相当年齢の人はもうほとんど恩典に浴してないわけなんです。ということは、金額にしても予算計上したとしても問題にならぬ額になるということなのです。予算が少ないからやってもいいではないかということを言っているのじゃなくして、ただ参考にいま申し上げたわけです。筋の通っていることなら、たとえ何千億かかったってやらにゃならぬ、筋の通らぬことならたとえ一億、二億でも意味のない金を、国家の税金を乱費することは許されませんから、そういうたとえでございます。だから少ない予算で済むからなどと決して言うのでなく、そういうことをことばじりをとられて反駁されるとはなはだ迷惑しますから、あらかじめ申し上げておくわけですが、ただ参考に申し上げるとそういうことです。それなのに満・日の場合はどうして同時に解決しなかったのか、それがふしぎでならないのです。日・満と日・満・日、この二つの場合と満・日を切り離したことはどうにも理解できないわけです。これはもうこの場で長官がそれではさっそく満・日もまるまる通算するようにいたしますと、この場でぜひ御答弁いただきたいところですが、これはなかなかいろいろ事情もございましょうから、そういう気持ちは一〇〇%あってもそういう答弁をここで長官に要求することは酷に失すると思うので、そういうことは御遠慮したいと思うのです。だがしかし、ただ前向きに恩給審議会にかけて云々ではどうも納得できないわけです。日・満と日・満・日はもうすでにとうに解決しておるわけですから、これはもう非常におくれておるわけですよ、不合理是正がおくれておるわけです。繰り返して言うと恐縮ですから申し上げませんが、もう四年前から各党共同提案附帯決議がなされておるわけです。全会一致でですね。このことを、どれを一つ取り上げてみてもこの不合理を是正しなければならぬ時点に来ておる。あまりにもお伺いする根拠が多過ぎてかえって解決しないというのが現状であろうと思うのです。一つぐらいあっさりやっていくと、それを繰り返し繰り返しやっていると案外解決が早い場合が多いわけですね。この場合はあまりにも根拠、有力な根拠が多過ぎてかえって混乱しちゃってそれで大臣も判断に迷っているというのかもしれませんけれども、事ほどさように当然に平等に扱うべき時点に来ておるということをここではっきり申し上げたいと思うのです。ひとつこの点をいま一度明確に、しかも前向きの姿勢でお答えいただきたいと思います。
  24. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 私も実態に即して何らか解決したい、もうあまり理屈を言ってもこれは水かけ論といっちゃまたしかられますけれども、議論倒れになってもしかたないと思いますから申し上げません。私も実態に即して解決したいという気持ちはありますし、また、事実この最低年限適用という場合にはかなりずっと従来つとめておる人に比べると格差も相当ひどいという実情も私ども知っておりますので、そういう点はひとつ何とか是正をする方向で今後検討をぜひやりたいというふうに思っておりますが、逆に念のためにお伺いしておきますが、これは満鉄以外の機関にもこういうケースはあるわけでございますね、これはやはり同様にというような御趣旨ですか。満鉄という特殊機関がほとんどほかとはまた違うというふうな御見解なのか、ただいま満州国とか、あるいはほかの特殊法人にも同じようなケースを適用している場合もあるわけですね、その問題は私どもこれから問題を扱う上に御参考までに逆に伺っておきたいと思うわけであります。
  25. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この点は従来からもはっきり申し上げたように、満州国、いわゆる外国政府というのは満州国をさしているので、それから満鉄とは言っていないので、便宜上満鉄の場合を別個に切り離して言うことはありますけれども、総括して満鉄等と申し上げている、等に意味があるのです。
  26. 安井謙

    国務大臣安井謙君) よくわかりました。
  27. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは従来もさようであったように、現在も満鉄等ということは明確なんです。だから華北交通とか蒙疆電気、こういうものを一切含めて満鉄等、そのうちの一つ一つの場合をここで申し上げたら何十時間あっても足りませんから、たとえば一番人口に膾炙されている、常識的に御理解いただきやすい満鉄について申し上げているので、他もみな同じです。
  28. 安井謙

    国務大臣安井謙君) よくわかりました。
  29. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで繰り返しお伺いするわけですが、このことに対してまだ御答弁がなかったわけですが、日・満あるいは日・満・日の場合と満・日の場合とでは、先ほどから長官がどうもそのまま同じには扱いがたい事情があるという意味の御答弁ですが、それでは日・満もしくは日・満・日の場合、満鉄の勤務期間をまるまる認めたことはもう現実の問題ですから、これはもう説明を要しないわけですね。それでは満・日の場合の満鉄の勤務は違うのですか、その満鉄と。そういうふうに解釈しているのですか、そこのところですね、大事な点なんです。もう一回申し上げます。日・満もしくは日・満・日の場合は満鉄勤務期間ですね、満鉄等の等といったほうが正しいかもしれませんが、そのまるまるとその勤務期間を認めているわけでしょう、日・満、日・満・日の場合は。その場合の満鉄と、満・日の場合の満鉄とは違うのだということになると、長官の言われることが必ずしも全く同じには扱えないということは言い得ると思うのですが、それに対するお考えですね。日・満・日の場合と満・日の場合で満鉄に対する評価がどう違うのか、私どもは繰り返し申し上げているように、これは全く同じ満鉄である、同一条件同一勤務であったということ、だから差別はないじゃないかということをお伺いしておるわけです。ここは非常に大事な一つの問題だろうと思うのです。どなたがどう考えてもその満鉄には変わりはないと思うのです。同一条件同一勤務でやってきた、ただスタートが違うだけで、満・日の場合は満を最初にして日本に来た、いずれにしてもその満鉄等の時代は変わりはないと思うのですが、そこが違う満鉄だと論議はまた別に発展すると思うのですがね。
  30. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 日・満、行かれたときの満鉄、もともと満鉄にいる満鉄と、その満鉄が違うかどうかという点では、これはもう抽象的といいますか、お話のとおり同じ満鉄であることは間違いありませんし、また、それなら直ちに同じに扱えと言われる御根拠も私ないとは決して言っておらない、おありだから私どもはひとつこういう問題についても前向きに考えたいという気持ちは持っておりますが、しかし、というて、これ日・満で行った場合の人は、何といいましても満だけであれば、いまも言いましたように、現在でも何らの特典がないというような事情がもうすでに違う。それから日本の国の機関につとめるのは初めから恩給という制度のもとにつとめておる、それが国策上の必要から向こうへ、半分は派遣のような形で行って、あるいは向こうへ行きっきりになっておる、あるいは帰ってきておるというような形の場合と、もともとそういう恩給制度のとられてなかった満鉄へつとめる場合とには、その個人の勤務状況のスタートにおいて相当な違いがあることだけは事実だと思うんです。したがって、これを全部同じだ、満鉄も国の機関も完全に同じだと言い切ってしまうのは、正直な話、言い過ぎだと思うのです。といいますのは、もしそういうことを言い切ることになれば、いまの話で、これはここだけの問題は、いまなお通算を問題にしておるというお話で、ごもっともでございますが、それ以外の問題当然派生してくるわけです。ですから、私どもはやはりこれは完全に満鉄と国の機関とが同じもんだということは、これはなかなか言い切れないということが実情だと思うのです。しかし、同時に、いまのような日・満・日といったような実態もあるんだから、そこんところをひとつよくできるだけあわせて考えろ、こういう御趣旨のものについては、私はこれは非常にごもっともな点もありますので、先ほどから申しておりますように、ひとつ何とか前向きで解決の方法を進めるようにこれからも努力はしたいと思うのです。しかし、何といっても、同じもんだということになると、これはまた議論のむし返しになりますが、なかなか理論的にも言い切れない面もありますし、また実際問題として派生する面もあるんだから、これを実際そのほかのほうを無視してこれだけ片づければよろしいじゃないかというわけにもまいらぬものがある、ここはひとつおわかりをぜひいただきたいと思うんです。
  31. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、最後に一点だけお伺いして、本日のところ恩給関係質問を終わりたいと思いますが、きょう最後にお伺いしたいのは、第四十三国会で、全会一致で現行法の改正を認めた経緯についてこの際申し上げておきたいと思うんです。これはなぜ全会一致で現行法の改正を認めたかと申しますと、理論的には当然満・日の場合も完全通算すべきであるけれども、財政上の立場から漸進的に実施するものと了解して附帯決議を付して成立させたのであって、その後、国の経済力とか、あるいは財政力も進展してまいりました。なお、最近やや財政上の不如意が伝えられておるとは申せ、所要経費は、先ほどもちょっと参考までに申し上げたように、きわめて僅少で、満・日の完全通算、これは後ほどお伺いするであろう抑留、留用、こういう通算をも含めてみても、満州国、満鉄等特殊法人職員、これを私どもで算出してみると、国家公務員の経費は年額で二百万円足らずだという結論が出ておるわけです。それは総務長官も首をかしげておられる数字だと思いますが、ことほどさように相当年配の人は該当しないわけです。相当年齢の人はもうこちらだけで年数が来てしまったから、そういうことで該当者がきわめて少ないから、予算もきわめて少ないということになるわけです。こういう事情もあって繰り返しお伺いするように、長官としては、他に波及することを誇大にこうお考えになっておるようですが、これは他にもし問題が出るとすれば、これは恩給でなくて、社会保障的な問題で解決すべき筋合いはいろいろあろうかと思うのです。事恩給に関する限りは大体こういう問題がいま起こっておるにすぎないと思う。それはいまいろいろワクを広げれば、社会保障は非常におくれておる、日本としては社会保障はこのままでいいとはだれも認めていないわけです。社会保障の問題を推進する必要のあることは異論ないわけです。ただ、ここでは恩給の限界で御質問申し上げておるわけですから、事恩給に関する限りは次々に問題が拡大していくという筋合いのものではないわけです。どうもいろいろ御答弁を伺っておると、長官の一番頭を痛めておるのは、これを満・日はもう当然通算すべきだと結論が出ておると思うのです。おそらく。ただ、御答弁にそう言ってしまうと、これは容易ならぬことになるから、そこでいろいろ他に波及する問題も多いのでということで、いわゆる歯に衣を着せて御答弁になっておると思うのです。こういう事実もありますから、ひとつ本日の最後としてこれに対する御答弁をいただき、次回までには、数日の冷却期間もあるからよく頭を整理していただいて、次の定例日には必ずまたこの問題を引き続きお伺いいたしますので、その際はひとつきわめて前向きな、きわめて具体性のあるお答えをいただきたいということをあわせ御要望申し上げて、本日の質問を終わりたいと思います。
  32. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  33. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  34. 安井謙

    国務大臣安井謙君) これは国会委員会で御質問でございますから、御要望があればむろん何度でも誠意をもって御答弁しなければなるまいと思っております。ただ、いまの扱いといたしましては、この次にお聞きを願いましても、私がいま申し上げましたような一つの——いろいろな伊藤委員の御趣旨に対して大いに気持ちの上では共鳴をして善処をしようという以上のものはちょっと無理だと思いますので、そこいらにつきましてはひとつ御了承願いたいと思います。
  35. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ御謙遜なさってそうおっしゃっておると思うのですが、時間もあることですから、よく私のお伺いした点をかみしめていただいて、伊藤は一体無理なことを要求しておるのかどうか、よくそういう点をもひとつあわせお考えいただいて、満足すべき方向に具体性をもってひとつ次回にお答えいただきたいと思います。  なお、問題は若干残されておりますから、あとは次回にお伺いしたいと思います。
  36. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記とめて。   〔速記中上〕
  37. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。  それでは午前はこの程度とし、午後は一時三十分より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  38. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) これより委員会を再開いたします。  午前に引き続き、三案の質疑を行ないます。  関係当局の御出席は、福田大蔵大臣武藤主計局次長、辻給与課長、以上の方々でございます。  御質疑のおありになる方は、順次御発言を願います。
  39. 北村暢

    ○北村暢君 まず、私は恩給法との関連における国家公務員共済組合関係の今度の改正案でありまするので、大体質問が若干ダブるかと思いますけれども年金制度の総体的な問題について若干御質問いたしたいと思いますが、そのうちの一つであります所要財源率の問題についてお伺いいたしますが……。
  40. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと北村さん。ちょっと申し上げますが、塩崎主税局長もお見えになっていますから、どうぞ。
  41. 北村暢

    ○北村暢君 まず、この共済組合の長期給付の運営にあたって国家公務員関係所要財源でありますが、これについては相当将来の見通しを持ってやっていかなければならないと思うのでありますが、三公社等の各組合でもこれの検討をされているようであります。が、将来にわたって相当現在の状況でいけば赤字が出ていくんじゃないかというような見通しがあるようでございます。したがって、そういうものを掛け金あるいは負担率、これを引き上げていくということについての問題については、やはり掛け金は低いほうがいいという要望はこれは当然のことなんです。そこで厚生年金が国庫負担二〇%になりましたね、それで使用者と組合員負担が均等四〇%ずつ、こういうことになっているのですが、国家公務員の負担についても国庫の負担を二〇%にしてくれという要望が非常に強く出ているわけであります。現在の状況は使用者側である政府が、政府負担と組合員負担で組合員が四二・五%でそのほかは政府負担と、こういうことになっているようでありますけれども、その内容が結局事業主負担ということの政府の負担が五七・五%でありますけれども、これは政府の負担する分、国庫負担一五%というものは同じ政府であるからという考え方に立っているからでありましょうけれども、そういう五七・五%の事業主負担と被保険者が四二・五%、こういうことになっている。そこでこれは国家公務員の場合はそういうことを言うのでありますけれども、企業体等においても現在国庫の負担を増額してもらいたいという要望があるわけです。この点について一体どのような見通しを持っておられるのか、この点についてまずお伺いいたしたいと思います。
  42. 武藤謙二郎

    政府委員武藤謙二郎君) ただいまお話の厚生年金と国家公務員の共済の長期の関係のバランスの問題でございますけれども、これは給付水準が厚生年金と比べますと共済組合のほうが高くなっておりまして、そこで基礎俸給とか年金支給開始の年齢等、そういうことを考慮しますと、給付水準が厚生年金の場合は共済組合の六割ないし七割程度、そういうふうに考えられます。そういうことを考慮に入れますと、厚生年金の国庫負担の二〇%と共済組合の一五%と、これは均衡を得ておる、そういうふうに考えております。
  43. 北村暢

    ○北村暢君 ところが、これは後の郵政大臣来られてからの質問になると思うのですが、三公社の各収支計画策定のための審議会の答申を全部見ましても、国庫負担というものを増額してもらいたいということがほとんど答申として出ておるわけです。これは御存じであろうと思うのですがね。特に国庫負担の問題ですから私は大蔵大臣にお伺いするのですけれども、そういう要望があるわけです。これはもう一律に三公社要望しておりますよ。それから国家公務員のほうの共済組合のほうは、これはそういう答申というものはまだ出ておらないようですけれども、この点については事業主負担の五七・五%というのは、まあ私立学校なり農業共済なり一五%の国庫負担というものがあるわけです。そういうものをひっくるめた形の五七・五%というのでバランスがとれているのだと思うのですがね、それについてもなおかつ国庫負担の二〇%というものを増額してくれという要望は、これは組合員の中から相当出ているわけです。しかも、この問題については理論的根拠がないんじゃなくして、相当理論的根拠をもって増額をしてもらいたいという要望が出ているのであります。そういう点からいって社会保障制度的な観点からして、当然この国庫負担分というものが拡大をされていくという目標というものは私は誤りじゃないと思っている。したがって、この厚生年金とのバランスの問題についてはいま説明がありましたけれども、それでは各公社とも納得しておりませんし、国家公務員共済組合も私は納得しないんじゃないかと思うのです。そういう点で、見方によれば一五%の国庫負担分というものを二〇%に増額する必要があるんじゃないか、このように思うのです。これは後ほど三公社の問題の過去勤務債務の処理の問題について相当な意見が出ておりますから、そこでも私は質問する予定なんですが、国家公務員のほうについてはそういうものがまだ審議会から答申も出ていないようですね。したがって、国家公務員の場合、そういう要望審議会からは出ておらないようでありますけれども、一般の要望としては相当あるわけです。しかも三公社関係についてはそういう問題がすでに答申として出ているわけですから、三公社の当局なり政府としてもこの答申をいかにして処理するかということについて当然対策というものを持たなければならない、こういう段階に私はきているだろうと思うのです。したがって、これは国庫負担の問題は、やはり相当財源の問題と関連して大蔵当局が頑強に拒否している限り、なかなかこれは答申がいかにあっても、これは実施できないという問題になってくるわけです。したがって、この際非常に概念的でありますけれども、国庫負担の増額分に対する考え方をひとつ大臣からお伺いしたいと思う。
  44. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 各方面から、また長期給付につきましても、短期給付につきましても、国庫負担をふやせ、こういう要請があることはよく承知しております。現在の制度はそれらの要請がありますが、大体国庫負担というものは各共済組合間のバランスをとり、また、他の同種のもの、たとえば厚生年金というものとの関係のバランスを考えまして適正にきめられておる、こういうふうに考えておるわけであります。国庫負担をなぜ出すか、共済組合なり、また同種の年金制度、これは組合員の相互扶助というたてまえからできておるわけでありますけれども、これを円滑にやっていきたいという意味において国庫はそれに補助をしておる、こういうことになるわけであります。厚生年金なら二割、共済組合ならば一割五分と、こう差はありますが、しかし、差はあるだけの実質上のバランスは見てやっておるというふうに考えておるわけであります。そういうバランスをとりながら、全体的に補助金の率を引き上げるという御意見だろうと思うんですが、これはまた財政上の事情もあります。また、共済組合自体の性格というようなものがあり、今日この程度が適正じゃないか、そういうふうに考えておるわけでありまして、ただいまのところはこれを引き上げるという考えはいたしておらないのであります。
  45. 北村暢

    ○北村暢君 バランスの問題からいえば、公共企業体と国家公務員の場合、それから地方公務員の場合、負担区分は事業主が公社の場合も五七・五%、それから被保険者が四二・五%になっているわけですね。ところが、国家公務員の場合は、これは同じ政府ですから、事業主負担といっても国が負担ですからいいんでありますけれども、公共企業体から言わせれば、国庫負担分の一五%というのは大体私立学校その他でも国庫負担というものがあるわけですから、これとのバランスとれば、公共企業体等から一五%——二〇%といま私は言っているわけですけれども、その程度の国庫負担をしてもらいたいというのは当然出てくるんじゃないかと思うんです。その点についての考え方はどうなんでしょうか。このバランスという点からいえば、この公共企業体なり、地方公務員なりは当然この一五%というものは国庫負担というのがあってしかるべきだと思うのですが、そこら辺の考え方はどのようになっているでしょうか。
  46. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府委員にバランスの点は申し上げさせます。
  47. 武藤謙二郎

    政府委員武藤謙二郎君) 政府とそれから公社の関係は、政府ですと一般の社会保障の国庫負担に見合うものと、それから事業主の負担に見合うもの、それを合わせて政府が負担しております。それから公社の場合はやはりその両方を合わせて公社が出しております。それで、御質問趣旨は、そのうちの国庫負担に見合う一五%は、公社でなくて国庫が出したらどうか、こういう御趣旨だと思います。いまのたてまえは、公経済の主体としての公社が一般の公務員の場合に、国庫が出しておる分まで負担する、そういうたてまえでやっております。で、立法論として、それを国庫で出すべきかどうか、これは非常にいろいろな議論はあると思いますけれども、いまのところは、いろいろな状況を考えますと、公社が公経済の主体として従来どおりその分を負担していく、これが適当と思います。
  48. 北村暢

    ○北村暢君 いまのところこれが適当と考えると、こういうことですが、法律のたてまえからいって、適当と言わざるを得ないから言うのだろうと思いますけれども、しかし、これは検討する余地があるのじゃないですか。私は公社の問題については、それぞれの収支計画の策定の審議会があって、それの答申がすでになされておるわけでしょう。そのことは皆さん御存じだと思うのですね。国鉄総裁に対してこの審議会から答申がなされて、国庫負担というものは当然見るべきものがあるから国庫負担でやるべきだと言っておりますし、また、専売関係の面についても、同様の審議会が専売公社の副総裁に対して財源率の増加に伴って、社会保障制度の一環としての役割りを果たしているので、その部分については、現在国にかわって公社が負担しているところを、追加費用をも含めて国庫の負担とするのが望ましいということではっきり答申しております。したがって、現在のところ妥当と、こうおっしゃておられるけれども、これは現在の法律のたてまえがそうなっているからそう言わざるを得ないのであって、私は国鉄にしても、電電公社にしても、それから専売公社にしても、国庫負担をしてもらいたいという要望、これは計画策定の審議会としてはっきり出ておるわけです。したがって、いずれ三公社の当局者から政府に対して国庫負担をしてもらいたいということの要請が来るのじゃないかというふうに思われるのです。しかし、まだ正式に三公社の当局者から国庫負担をしてくれという要望があったかどうか、それは私は知りませんけれども、この答申をまじめに尊重してやるということになれば、この問題は必ず出てくる。したがって、国庫負担の増額の問題については、早晩私は問題になってくるだろう、こういうふうに思うのです。でありますから、そういう点からいって、現行制度で妥当しているのだ、こういうふうにおっしゃられるけれども、そういう見解でおるということでありますけれども、将来やはり検討しなければならない問題ではあると思うのですがね。そういうふうには感じておりませんか。一切これは受け付けないという考え方なんですか。
  49. 武藤謙二郎

    政府委員武藤謙二郎君) ただいまお話のように、たとえば電電それから国鉄について、それぞれ別な年金財政についての答申が出ております。これは総裁、あるいは副総裁あてに出たものでございますので、これを公社当局が検討して、それから私どものところに相談があることと思います。で、その内容につきましては、これは国鉄と電電と全部同じというわけではございません。そこで、たとえば、先ほどお話がございましたように、国庫負担については、共済年金についても国の社会的責任に相当する部分に対しては国庫負担がなされるのが望ましい、こう電電の場合にはいっております。で、ここなかなかむずかしい問題だと思います。たとえば、恩給公務員関係の追加費用の関係ですが、こういう問題につきましては、電電の場合には、その費用は現在も公社が負担している経緯を考慮すれば、公社が引き続き負担するのもやむを得ない、こういうふうにいっております。で、これをどういうふうに振り分けるか、非常にむずかしい問題で、一つの理論でもって一刀両断にいかない。そう簡単には割り切れないからおそらく答申もいろいろ違ったところも出てくるというのが実情だと思います。そこで、年金財政の関係ばかりではございませんで、また、一般会計のどういう状況になっておるか、そういうことも考えて公社が負担するのか、あるいは国庫が負担するのかということを、そういうことも考慮してきめなければいけないことだと思います。そこで、この問題につきましては、それぞれ答申が出ておりますので、お話のように、追って公社当局からいろいろと意見が出ることと思いますので、その際にあらためて検討をせなければならない、そう思っております。
  50. 北村暢

    ○北村暢君 私手元には公社の答申しかないものですから、いま公社の問題を主体にしてそういう要望があるということを申し上げたのですが、これは国家公務員関係においても国家公務員審議会関係審議会があるわけですから、この審議会では論議になったことがあるのでしょうか、どうでしょうか。見ますというと、追加費用の問題、それから過去勤務債務の問題これは相当な額になるようですね。国鉄の場合を見ましても、電電の場合を見ましても相当なもの。したがって、これは国家公務員の場合でもこの問題が必ず問題に将来なってくるだろうと思うのですね。そういう点からいきますというと、私は、過去勤務の債務関係について、その発生原因別に処理のしかたというものが、国鉄の場合も電電の場合も若干違いますけれども、大体同じような意見が出ているわけです。したがって、これは三公社に限ったことではないのでありまして、国家公務員、これは大蔵省、大蔵大臣の監督下にある国家公務員共済組合の長期給付においても将来当然起こってくる問題だろうと思います。そういう点について、国家公務員の場合検討されたことがあるのか、ないのか、この点お伺いしたいと思います。
  51. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 国家公務員共済組合関係の長期給付に関しましては、共済組合法の九十九条という規定がございまして、少なくとも五年ごとに再計算を行なうということに相なっております。前回は三十九年度に再計算をいたしましたので、次回は四十四年度に再計算をいたすわけでございます。その際財源率はどの程度でまかなっていけるか、慎重に検討する手はずになっておるわけであります。
  52. 北村暢

    ○北村暢君 私は、各共済組合恩給その他の一連の共済制度のバランスの問題があるのでありますから、国家公務員の場合は五年ごとに再計算をやるということですが、公社関係はもうすでに相当な検討がなされているわけです。しかし、前回の再計算の際にも、こういう問題についての国庫負担という問題について、過去勤務債務についての処理の方法等について論議はなかったんですか。
  53. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 過去勤務債務の取り扱いにつきましては、前回の際にもいろいろ御議論がございました。そこで現在どういうふうにやっておるかと申しますと、恩給期間に見合う財源すなわち追加費用につきましては、現在、修正実額負担方式という方式によりまして、現実の追加費用の発生額に見合って毎年国が負担するということでやっております。四十一年度予算につきましては、このたてまえに従いまして六十一億円計上いたしておるわけでございます。
  54. 北村暢

    ○北村暢君 いや、そのことはわかっているんです。それでやってなおかつ相当な処理しなければならない過去勤務の債務についての処理の方法等について、相当細部にわたって検討されておりますね。国鉄にしても電電にしても検討されておるわけです。それでこれは事業主が負担すべきものあるいは被保険者が負担すべきもの、国庫で負担してもらいたいものというようなことで、これはやはり理由づけがはっきりなされているわけです。まあそういう点からいって当然国家公務員の場合においてもこれは起こってくる問題だと思うのです。いまおっしゃられたこの処理のしかたをやっておられることは私も知っております。知っておりますが、それでは処理し切れない問題が出てくるんじゃないですか。そういう点で私は当然そういう問題についてこの審議会というのは長期にわたって検討しなければなりませんし、また、各共済のバランスも考えなければなりませんし、こはれ当然四十四年だから四十四年まで、五年間ごとに再計算するので、そのときに問題になるのでということではないと思うのですね。これはもう相当検討がなさるべきだと、ところが、そういうことは検討されておるのかどうか知りませんけれども、国家公務員のほうの審議会の答申というのは、ごく簡単なものが最近出ておるだけで、そういう検討の、答申した結果についての検討というものはないようでございます。したがって、将来のことを見ますというと、たいへんこれは問題が出てくるんじゃないかというふうに思われますので、私はその点についてはちょっと納得しないわけなんです。やはり政府としても根本的にやはり国庫負担というものについて検討をするべき段階にあるんじゃないかというふうに思うのです。これは当然先ほど言ったように、三公社から出てくれば検討しなければならないわけですね。しなければならない。しかし、その場合に、国家公務員は四十四年だから四十四年までほっておくというわけには私はいかない問題になってくるんじゃないかと思うのですがね。どうなんです。その点は。
  55. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 現在の共済の新年金制度の施行に伴う追加費用につきましては、施行法の五十五条の規定によりましてこれは国が負担することになっております。したがって、国家公務員共済組合の新制度の施行に伴います追加費用の負担については一応問題は割り切っておるわけでございます。ただいま御指摘のように、もとより四十四年度の再計算の際、またいたずらに放置しておくというつもりは毛頭ございません。いろんな角度からどういうような処理の方法がよいか検討いたしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、三十九年度の再計算の際に一応この追加費用の処理方式を検討の結果、現在のような修正実額負担方式というたてまえでやっておるわけでございます。  なお、御承知のように、過去勤務債務につきましては、早急に全部償却しなければならないという性質のものではございません。たとえば先ほどお示しの電電公社の答申におきましても、これらの過去勤務債務については早急にひとつ償却しなければ年金財政が成り立たないという性質のものではないというような答申がなされておりますので、そういうような性格にかんがみまして、ただいまのところの処理方式としては修正実額負担方式で妥当ではなかろうか、このように考えておるわけでございます。
  56. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと申し上げますが、郡郵政大臣畠山電気通信監理官、園部日本専売公社職員部長、中西日本国有鉄道厚生局長、飯森日本電信電話公社厚生局長、以上の方々が御出席されております。あわせて御質疑を願います。
  57. 北村暢

    ○北村暢君 いま郵政大臣が見えましたから、三公社関係の各収支計画策定審議会の答申が各総裁に対してなされているわけですが、これに対して、郵政大臣は電電公社ですから電電公社の関係について、一体電電公社ではどのような答申を受けて、どのような動きをしているのか、その状況をひとつどういうふうに把握されておるのかお伺いしたいと思うのですが。
  58. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 電電公社について、三公社もそうでありますが、それぞれから陳情並びに答申が来ておりまして、そして陳情によりますると、千分の五以上の率での追加費用の上積みの拡大の配慮ということが出ておりますし、それから共済組合収支計画調査委員会からやはり出ておりまするが、私どもこの陳情書をもとにしてものを考えておるという状態でございます。
  59. 北村暢

    ○北村暢君 いま郵政大臣の御答弁にあるように、答申なり要望なりというものをやはりもとにして今後の運営というものを考えていきたいということですよ。その場合は、必ず国庫負担の問題を大蔵省に協議なされる結果に私は近い将来になると思うのです。ですから、先ほど来大蔵当局の態度を聞いているわけですが、なかなか警戒的な答弁で、積極的にそういうものを含めて検討するというような答弁がなかったのですが、先ほど給与課長が、若干それに類したような、ほうっておくことはなしに検討はしたいということのようですが、ようやくそれが出てきたようです。したがって、この国庫負担の問題は、私はひとつ近い将来必ず要望として各組合から出てくると思うのです。したがって、これは大蔵当局として国庫負担の問題で、かぎを握っているのは大蔵省になっちまう。これは十分ひとつ社会保障制度的な感覚から国庫負担の問題を検討していただきたいということを要望しておきたいと思うのです。これは要望で、またあとに運用上の問題について関連してまいりますから、次の、今度の法律による調整規定の問題についてお伺いいたします。  今度の調整規定が設けられたというのは、今度の改正のうちで私は非常に画期的な改正の一つだと思うのです。ところが、この調整規定が「国民ノ生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動が生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノ」とする旨の規定が設けられた。これは一見しますというと、年金額の改定その他について何か希望を与えたような規定になっているのでありますけれども、実際にこれを運用する場合において、「諸事情ニ著シキ変動が生ジタル場合」、これを一体だれが著しく変動を生じた場合と判定をし、どの程度であれば著しいというのか、これは非常に抽象的な表現なわけである。従来年金問題について主張されておるのは、スライド制を実施しよう、一定の規定を設けてそれに物価なり給与なり上がってきた場合に、それに自動的にスライドしていくというスライド制度を設けようという主張が非常に強い主張としてある。そしてまた世界の各国にも、そういう制度を採用しておるところもあるわけですね。この調整規定が即スライド制ではないことは私もそういうふうには理解しますけれども、この点は一体どのようにこの規定を運用されようとしているのか。これはまただれがこれを判定をするのか。この点について御答弁をいただきたいと思うのです。
  60. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話のように、今回の調整規定の挿入は、俗に言うスライド制を意味しているわけじゃない。つまり給付の実質的価値を維持する、この原則を法としてきめておきたい、こういう趣旨でございます。それを一体どういうふうな方向できめるかという問題がいまお尋ねのことかと思いますが、これは恩給につきましては恩給審議会があります。また、共済組合につきましては国家公務員共済組合審議会がある。その場でひとつ議論をし、結論を出していただくようにしたらいかがであろうか。これは、御承知のような構成でございますので、公正な結論が得られるんじゃあるまいか、そういうふうに考えておるわけであります。
  61. 北村暢

    ○北村暢君 これは問題を恩給審議会なり国家公務員共済組合審議会なり、そういうところで個々に検討するということのようですけれども、私はこれはやはりこういう問題は、恩給法にもあるし、各共済の規定にこの調整規定が今度設けられて、同じような趣旨規定が設けられたわけです。したがって、これはやはりそれらの国家公務員、あるいは地方公務員、あるいは公社、これを総合したもので判断する機関というものが必要じゃないか。私どもはやはり三者構成の総合的な機関というものが設けられ、たとえば社会保障制度審議会なら審議会にこれを検討する任務を与えるとか、新たにそういう三者構成の機関をつくるとかということによって、私はある程度目的を達するのではないか。いま大臣のおっしゃるように、個々の審議会検討して同じような結論が出ればいいが、同じような結論が出ない場合には、また何らかの方法もとらなければいけない、こういうことに結果的にはなる。これは全部の今度の改正案の中に載ってきているわけですね。でありますから、国家公務員共済組合審議会といいましても、これは加盟している組合に連合会で二十、それ以外に連合会に加盟していないところもありますから、それらを引っくるめて審議会はやるでしょうけれども、どうもそういう専門的な年金と直接関係があるわけですけれども、しかし、物価の問題であるとか、賃金の問題であるとか、経済情勢の問題であるとか、こういうものを総合的に判断する機関ですから、そういう総合的なものがあってしかるべきじゃないかというふうに思うんです。これに対する見解はどうでしょうか。どうも責任のない、ばらばらに判断をしてやるということについては、せっかくの規定の運用が私はうまくいかないのじゃないかというふうに思うのです。
  62. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 北村さんの御意見一つの見方かと思います。ただ、国家公務員共済組合制度は、まあ相当専門的な制度ですね。そういうようなことで、特に、この組合に関連いたしまして、国家公務員共済組合審議会というものがある。これは何をするかというと、まさにいま問題になっておる調整規定というような問題に取り組むべき性格を持っているのです。構成につきましても三者構成、きわめて妥当なものである、こういうふうに思っておりますので、まあしいてこれをまた一本化した、別の屋上屋をつくる必要は私はないのじゃないか。実際的な制度を用いるがいいじゃないか、そういう見解を持っております。
  63. 北村暢

    ○北村暢君 そこで運用上の問題について私はお伺いしますが、国家公務員共済組合審議会の答申というのがなされているわけです。これの一番目に、「恩給法の独走的改正については、しばしば意見を述べておいたところであるが、ほとんど顧みられないことは遺憾である。現在においては、恩給公務員期間は通算の上、共済年金として支給される建前であるから、その改正に当っては、単に退職者のみならず、引きつづき公務員として在職する者との関係も考慮の上検討の要がある。両者の間には緊密な連絡がなければならない。」ということが等申の中に書いてある。そしてこれは社会保障制度審議会の答申にも同じような趣旨恩給法の独走的な改正が強く戒められて述べられております。同じいまおっしゃた各個の審議会で三者構成になっているのだから、それでやればいいじゃないかと、こうおっしゃられるけれども、まだ、この恩給審議会というのはできたばかりで、運用がうまくいくかいかないか、今後の問題だと思う。でありますけれども、とにかくこういうことが答申でいわれているわけですよ。したがって、必ずしも恩給なり、国家公務員共済組合審議会なり、連絡がうまくいってないと思うのですよ。したがって、いま大臣のおっしゃられるようなことで、それじゃ将来もうまくいくのかどうなのかということについて、私心配があるわけです。現実にこういう答申が出ているわけですから。したがって、しかも問題は各共済組合に共通の問題です。共通の問題……。物価であるとか、賃金問題とかね。そういう共通の問題であるので、各個にやるということについては運用上にそごを来たすのじゃないかという心配があるわけです。そこでまあ私は特にお伺いしたい。どうでしょう、この調整をとる機関というものはあるでしょうか。
  64. 武藤謙二郎

    政府委員武藤謙二郎君) ただいまのお話でございますが、先ほど申しました審議会のほかに、公務員につきましては総理府に公務員年金制度連絡協議会というものがございます。そこで先ほどの答申の趣旨は、すでに退職した者だけでなくて、現に在職している者についても十分考慮しようということでございますので、そういう点はこれからも十分均衡を得るように考慮していかなければならないと思っておりますし、それから恩給審議会、共済審議会、それから社会保障制度審議会がございますし、いま申し上げました公務員の連絡協議会もございます。で、十分よく連絡をしていけばバランスがとれないというようなことはないと思いますので、さらに調整規定の問題について屋上屋を架して新しく機構を設けるという必要はなかろう、要は連絡をよくしていくことだ、そう思っております。
  65. 北村暢

    ○北村暢君 いまおっしゃった共済年金の連絡協議会ですか、それの構成はどういうふうになっているのですか。
  66. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 公務員年金制度連絡協議会の構成は、人事院の給与局長、それから総理府恩給局長大蔵省主計局長、自治省行政局長、三公社それぞれの監督局の長、厚生省の年金局長、防衛庁人事局長、総理府の人事局長ということに相なっております。
  67. 北村暢

    ○北村暢君 いまのそういう機関は何の規定に基づいてできているのですか。
  68. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 法律上の機関ではございません。
  69. 北村暢

    ○北村暢君 それについてはどこが主宰をしてそういう協議会を持つのですか。
  70. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 幹事役は総理府の人事局のほうでやっております。
  71. 北村暢

    ○北村暢君 まあ行政の連絡のためのそういう協議会を持たれるということは、これはあり得ることでしょうけれども、しかし、それはあくまでも連絡であって、そこで決定したことがどうこうということではない。しかも、これはいま申されたように、局長クラスの人が集まって行政上の連絡をとるというだけのことで、直接審議会の連絡機関ではないわけですね。でありますから、そこで連絡して協調をはかるというのですけれども、それは私はやはり問題があると思うのですね。共済組合運営というのは、やはり審議会は三者構成でできているんですから、いまの連絡協議会というのは局長クラスの行政的な事務連絡の協議会であって、民主的な審議会運営にどれだけの影響があるかということについては、私は非常に疑問を持たざるを得ない。したがって、そういうものがあるから、今後の運営上、さしつかえないんだということはごうもならないと思うのですがね。この点の見解はどうですか。
  72. 武藤謙二郎

    政府委員武藤謙二郎君) これはそれぞれの制度にそれぞれの特色がございますので、共済はお話のように、三者構成でやっております。しかし、調整規定のように、いろいろな制度に共通の問題、それを均衡のとれた解決をはからなければいかぬということになりますと、ただいま申しましたようなことで、連絡をとってバランスがとれるようにしていく。しかし、おのおの特色がございますから、どこか一つできめてしまうということも無理だと思います。そこでおのおのの制度に即応した審議会がおのおのある。さらにその間の調整をとっていく。それで十分いくんだと思いますし、さらに屋上屋を架するということも、いろいろむずかしい問題があろうかと思います。
  73. 北村暢

    ○北村暢君 私はスライド制というものを前提にして質問しておりますから、今度の調整規定では満足していないわけです。そういう立場からの考え方ですから、だいぶやはり答弁と違った感覚での質問になっていくと思うんですけれども、そこでお伺いしたいのは、国家公務員の新法以後の給付の改定した年度別の率、おわかりになりますか。
  74. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) これは御承知のように、恩給とバランスをとりまして、恩給と同じ率で改定してまいってきているわけでございます。
  75. 北村暢

    ○北村暢君 いや、それはいいんですけれども、年度別に何%ずつ上がったかということを聞きたい。
  76. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 二十八年の十月には一万二千八百二十円ベースに合わせて改定いたしております。それから三十五年の七月に一万五千四百八十円ベースに合わせて改定をいたしております。いずれも恩給と同様の処置でございます。それから三十七年の十月に二万円ベースに合わせて改定いたしました。それから四十年の十月から二万円ベースの二割アップということに改定いたしました。現在そのベースでまいっておるわけでございます。
  77. 北村暢

    ○北村暢君 いま大臣お聞きのとおり、二十八年、三十五年、三十七年、四十年、こういうことで改定が行なわれておるわけですね。しかし、最近の物価の上昇なり給与の引き上げの実態なりというものから見まして、これは保護世帯なり、あるいはいわゆる職安関係の賃金なり、これはもう毎年一〇%、一二%……一〇%程度上がってきておるわけです。毎年ですね。そういうふうに、社会保障全体としては毎年上げざるを得ないような状況になっておる。公務員の給与にしても最近の状況を見まして毎年上がっておる。ところが、年金受給者は私は決して楽な生活をしておるとは思いません。年金受給者年金で食えるか食えないか、また非常に慎まなければならぬ生活をやっておるのだと思うのですね。そういう人ですから、私はやはり二、三年おいて年金額が改定されていくということについて相当なやはり矛盾があると思うのです。したがって、当然これはやはりスライド制というものを考えていいのじゃないかと思うのです。そういう観点からして、これは国鉄共済組合の収支計画策定審議会の答申でありますが、この中の最後のところにも、経済の変動と年金制度の問題という点でスライド制というものを検討をすべきではないかという点が述べられております。これは直ちにスライド制にしろとはもちろん言っておりません。しかし、スライド制については給付額が経済の変動につれて合理的に調整されるということが望ましいという点で、その際の財源の裏づけ等についても非常に困難な問題があるけれども、これらの問題について今後十分な検討が望まれるという趣旨のことがはっきり出ております。したがって、この年金関係者はスライド制というものについてやはり相当な関心を示しておることは間違いない。受給者からいえば、当然このスライド制というものは要求しておりますし、そういう点から見て今度の調整規定というものが非常に概念的な規定であって、スライド制とは似ておるようでありますけれども、スライド制ではもちろんないわけです。この調整規定を設けたことは前進したことは認めますけれども、スライド制そのものについてやはり検討する段階であるということについて、どのようなお考えを持っておられるか、この点聞いておきたいと思います。
  78. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 北村さんのおっしゃるスライド制というものは自動的な意味のスライド制と、こういうことかと思いますが、私はスライド制なんというものは考える余地のない経済、それが一番いいと思うのですが、しかし、遺憾ながら今日消費者物価というものの値上がりが続いておる。そういう段階で今度こういう規定をさらに追加挿入するということにしたわけなんですが、自動的にスライドが行なわれるというようなことになりますると、これは財政上の見地、また共済組合については会計上の見地、そういうようなものとちぐはぐができないとも限らない、そういうようなことを考えまして、しかし給付額の実質はどこまでも維持しなければならぬ、そういうことで、場合によると一年、二年というズレが出る場合があるかもしれませんが、まあそういうことのないようになるべくしたい。とにかく給付受給者の実を維持するということを眼目として、また、そういうことをいたしましても財政上、会計上支障がないというその前提を整える、そういうことをいたしながらこの制度を守っていく、そういうことから今回のような改正規定を挿入するということにいたしたわけなんです。したがって、そのやり方がまあどういう仕組みがいいかというところに問題があるので、御期待のような自動的にはなりませんけれども、よく各方面の意見を聞いた上で、適正な結論を得て、これをなるべく早く実施したい、こういう考えであります。
  79. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  80. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  81. 北村暢

    ○北村暢君 いまの大臣の御答弁ですがね。私は今度の調整規定を設けられたことの意義は認めるわけですが、この運用がうまくいけば実質的なスライド制に近いものになる。これはそのように私も理解しているわけです。したがって、この規定は、衆議院の速記録を見ますというと、給与課長は精神的な訓示規定だと、こう言っているのですね、そういうことを精神的、訓示的規定であって、これが実施されるかされないかということについては、どうも怪しい答弁をされておる、速記録を読みましたら。どうも担当の課長がこういうことを言われるのじゃ、どういうように運営されるのか私は非常に疑問に思いますので、実際に著しく物価が上がり、賃金が上がったといった場合には、自動的にとは言いませんけれども、その運用上の問題が、二年も三年もほおっておかれて、そうして年金だけは二、三年おくれにあとをついていくというのでは、現在の物価の値上がり、まあ大蔵大臣になられてから今度物価が安定されるそうですし、景気も安定するそうですから、そういうことが心配要らないと言えば要らないのかもしれませんけれども現実の問題として、いままでは相当な賃金なり物価の値上がりというものは続いているわけです。ところが、実際には年金は二年おくれ三年おくれでいっている。そうすればこれはもう明らかに実質給付の低下になっているわけですね。これはもう間違いないわけです。ところが、先ほど申しましたように、精神的訓示規定であって、やるのだかやらないのだかわからないような、運用のしかたによっては従来と何にも変わらない、せっかく規定は設けたけれども、従来と何にも変わらなかったというのではこの規定を設けた趣旨というものは私は生かされないと思うのです。したがって、この精神的な訓示規定ということではなしに、実際に恩給審議会なり国家公務員共済審議会なりが年々歳々しっかり物価なり給与なり経済情勢の動きというものをとらえて、そしてこの調整規定というものを積極的に活用をする、そういう方針というものを政府としてもとってもらいたい、指導をしてもらいたい。これが私の要望なんです。どうもせっかく設けられた規定が運用の妙を発揮しないで、規定は設けたけれども、前と同じだったというのなら何にも意味がないことになっちゃう。そういうところの指導方針を大臣からひとつはっきりお伺いしておきたい。
  82. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) かような規定を設けます以上は、この規定趣旨を忠実に実現できるように最大の努力をいたします。
  83. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ほかに御発言もないようでございますから、三案につきましては本日はこの程度にいたします。  速記とめて。   〔速記中止
  84. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記起こして。     —————————————
  85. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 次に、防衛施設周辺整備等に関する法律案を議題といたします。前回に引き続き、本案の質疑を行ないます。  なお、関係当局の御出席は、松野防衛庁長官、鈴木防衛庁参事官、小幡防衛施設庁長官、沼尻防衛施設庁次長、大浜会計課長財満施設部長、以上の方々でございます。  御質疑のおありになる方は、順次御発言を願います。
  86. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて若干御質問申し上げたいと存じます。  まずお伺いしたいのは、基地についての将来の見通しはどうかという問題をまずお伺いしたいと思いますが、   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕 米軍基地及び自衛隊基地の用途別の数量、広さ、こういうものの現状について、それぞれ大要でけっこうです。御説明いただきたいということと、なお、その詳細についてはここではたいへんでしょうから、資料として当委員会に提出していただきたいということをお願いしておきたいと思います。
  87. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 自衛隊施設と駐留軍施設の用途別の広さということについて申し上げます。  まず、自衛隊の施設から申しますと、要するに、現在用途別に見ますと、キャンプ等が約三千万坪、演習場が約一億五千万坪、射撃場が六百七十万坪、飛行場が一千六百万坪、国設宿舎が八十万坪、合計いたしまして、大きいところ二億坪というのが自衛隊の施設の現状でございます。  次に、駐留軍の提供施設につきまして、兵舎の施設が三百七十万坪。おもなものを申しますと、飛行場が一千四百万坪、演習場が七千百五十万坪、倉庫が約七百万坪、通信施設が六百六十五万坪、合計いたしまして、自衛隊施設の半分の、約一億坪というのが、駐留軍施設の現状でございます。
  88. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 概要を御説明いただいたわけですが、資料については別途お願いしたいと思います。  なお、これはこまかいことですが、たしか広さについては、四月一日にメートル法が実施になっておるので、坪で言うと、過料とか何かに処せられるのじゃないですか。それは、こちらはかまいませんけれども、防衛庁のために、将来問題を起こすといけないから、メートルで御訂正なさったほうがよろしかろうと思います。
  89. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) ただいま御注意がございましたので、トータルだけにつきまして、メートル法で申し上げます。自衛隊の施設につきましては、約六億七千五百万平方メートルでございます。それから駐留軍の施設は、約三億六千万平方メートルでございます。
  90. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いしたいのは、現在に至るまでの経過について、その大要を御説明いただきたいと思います。  なお、数字を交えての詳細については、ここでは御説明、たいへんだと思いますので、別途資料として委員会に提出いただきたい。
  91. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 現在までの経過、数字を省きまして、概要を申し上げますと、御承知のように、駐留軍の施設につきましては、岸・アイク声明の当時に、相当減りまして、現在では大体占領軍と称された時分の、一番土地を多く持っておりました時代に比較いたしますと、大体のところは四分の一に減っております。  自衛隊のほうは、これに引きかえまして漸増しておりまして、昭和二十七年に比較いたしますと、まあちょっと数字が出まして恐縮ですが、五百七十九万平方メートルに対しまして、現在は六億七千五百万平方メートルになっております。
  92. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いいたしたいのは、政府は本法案立案の前提として、米軍基地及び自衛隊基地の様相が、将来どうなっていくであろうかという、一応予測を持っておられると思うのですが、この点はいかがですか。これは長官のお考えを、ひとつお尋ねしたい。
  93. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) ただいま施設庁からお答えしましたように、概略的に申しますと、この十数年間の間に、自衛隊の件数がふえて、駐留軍のほうが激減しております。その面積も、大体それに見合っております。したがって、要するに、駐留軍の使用面積が減って、自衛隊のほうがふえるという趨勢は、今後とも私は続くのじゃなかろうか、こう考えております。
  94. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ただいま御説明がありましたが、昭和三十二年の岸・アイク声明に基づくところの大量撤退による基地返還以後、あまり返還されていないわけですが、小さなものは若干あったようですが、返還交渉は続けるとしても、見通しとしては一体どういうふうにお考えですか。
  95. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 三十二年のだけ取り上げますと、ただいま施設庁からお答えしましたように、約十億平方メートルであります。三十三年になりますと、これが六億六千に、これは駐留軍でありますが、六億六千に減っております。三十四年は四億九千、三十五年が三億三千、三十六年が三億一千平方メートルに激減しております。それが三十九年で三億五千と、多少これは共用部門があるわけですが、ずっと減ってきております。この傾向は今後も続く。また最近は、駐留軍と自衛隊との共同使用というものが非常にふえている現状も、御存じのとおりであります。したがって、駐留軍は減る。それに自衛隊が乗りかわるという傾向が大勢じゃないかと、私は思います。
  96. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、米軍の基地については、今後、自衛隊基地へ一応転換していきたいというのが、政府の方針のように受けとめられるわけですが、そう理解してよろしいのかどうか。
  97. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 大勢は、その方向に向かうと思います。先般問題の多かった東富士演習場も、米軍の管理から自衛隊管理へ、方向としては移る傾向に、今日ございます。
  98. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そういたしますと、いま第三次防計画を進めていると思いますが、この三次防でも、いま御説明のあったような方向で、漸増の方向へいくという見通しであるというふうに解せられるわけですが、そう理解してよろしいかどうか。
  99. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 駐留軍に提供する基地面積は、ずっと減るという傾向は、今後とも顕著にあらわれると、私は思います。
  100. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、本法律案にいうところの防衛施設、このことについて二、三お伺いしたいと思いますが、本法案でいう防衛施設ということについては、米軍基地と自衛隊基地の双方一緒に規定しているわけですが、ここに若干問題があろうと思うのです。防衛施設庁は、その所掌として、米軍基地と自衛隊基地双方の基地行政を担当している。なおこのことは、それなりに意味があるかと思うのですが、ただ、そのことのゆえに、本法案の中に防衛施設という概念で一緒に規定することは、これは間違いじゃないか。と申しますのは、米軍基地は、私が指摘するまでもなく、地位協定という条約に基づく、そこに基礎があるわけです。この地位協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法とか、特損法あるいは米軍の水面の使用に伴う漁船の操業制限等に関する法律などの適用を受けているわけです。したがって、自衛隊基地とは、法体系が全然別個になっていると解せられるわけです。そういうものを一緒に、ここに防衛施設という名称でまとめているわけですね。法体系の違うものを、こういうふうに一緒にしているわけです。これは若干問題がありと解せられるわけです。この点を明らかにしていただきたい。
  101. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) ただいま伊藤先生のお話しのように、駐留軍施設と自衛隊の防衛施設とは根拠法規を異にすることは事実でございます。駐留軍のほうは安保条約、地位協定に基礎を置いておりまして、自衛隊のほうは国内法に基礎を置いておる、これはもう厳然たる事実でございます。したがいまして、駐留軍のほうにつきましては、その条約の実施規定ともいうべきものにつきましては、別個の法体系をなすことも事実でございます。臨特法とかいろいろそれらしき形態の体系が存在することは事実でございますが、今度制定いたします基地周辺整備に関する法案といいますのは、直接に条約の実施規定ではございません。条約の結果、日本国内に展開しております基地の周辺の対策を日本政府がいかにするかという政策の問題でございまして、この見地から見ますと、自衛隊の基地と米軍の基地というものの中に非常な類似性がある。たとえば飛行場ですと、同じジェット機の飛行場につきましては、きわめて類似性の濃い基地問題が発生しておる。演習場もしかりでございまして、そういった点に着目いたしますと、やはり基地周辺対策としましては、もとの根は違いますけれども、基地周辺対策としましては、その類似性に着目しまして共通の原則が適用されるであろうという見地から、本法案において両方一緒にやっていくというのが事実でございまして、この点は、先ほど問題になりました将来米軍の施設の一部が自衛隊の施設に転用されるということの中にも、客観的にそういうことが立証されておるというふうに考えるのでございます。
  102. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御説明ではありますけれども、法体系の違いのあることは事実であって、なおまた実態上においても、米軍基地には民有地が約三分の一含まれておると思うのですが、自衛隊基地には民有地は全然ないと承知しておりますが、まあこういう実態上にもそういう違いがあるわけですね。そういう違いのあるものを一体としておるところにどうも混乱があるように思うのですけれども、その点いかがですか。
  103. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 御指摘のように、米駐留軍の基地のほうには民有地が約三〇%ございまして、自衛隊のほうには約一%ぐらいしかございません。したがいまして、先ほどの御指摘はそのとおりでございますが、この民有地は、施設として提供しておるその区域内の土地の所有形態でございまして、周辺の施策とは直接には関係ございません。またこういう問題がございましても、その周辺におけるいろいろな基地の機能としての障害は、そういう所有関係いかんかにかわらず、同じような影響を与えておる。その点に着目した法案が本法でございますので、この所有の形態いかんということは、直ちには基地周辺の諸対策には反映しないというのがわれわれの考えでございます。
  104. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは先ほども長官からお答えがあったように、米軍基地については、   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 将来返還された際は自衛隊基地として使用していこうというそういう方向は明らかになったわけですが、ただここで問題になるのは、米軍基地の場合は、先ほど私が指摘したように、約三分の一の民有地があるわけですね。こういう民有地がなければ別ですけれども、民有地が三分の一を占めておるということになると、この米軍基地を自衛隊基地にいわゆる返還していく際には、いわゆる民有地の所有主に十分な話し合いを通しての了解が成り立たなければならぬと思うのです。従来から防衛庁では、地元住民の意向を尊重して基地問題を解決したいと、これは一貫した防衛庁の考え方であろうと思うのですね。そうだとすると、いわゆる米軍基地には三分の一の民有地がありますから、いわゆるこれを自衛隊基地に転換する際には、そういう配慮がなされてしかるべきだと思うわけです。そういう際には実際にはどうしようとするのか、この辺に問題があろうかと思います。
  105. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 御指摘の点は全く同感でございまして、たとえばある演習場を現在米軍が使っておる。その演習場のうちの何分の一かが民有地であるというものを自衛隊に使用転換いたします際には、自衛隊の必要とする地籍の中にやはり民有地が含まれるということでありますれば、その民有地の所有者と契約を新しく結びまして納得のいく施策を講じた上で使用転換を行ないたいと思います。
  106. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、本法案と特損法との問題について意見をお伺いしたいわけです。いわゆる特損法と同趣旨規定を本法案の第二章に規定しておるわけです。自衛隊の特定の行為について特別損失補償を認めようとするものでありましょうが、これはやはり問題があるのではなかろうかと思うのです。特損法は、米軍による東京湾の防潜網の設置による漁業被害、あるいはまた、福岡県芦屋の防風林伐採による農業被害を契機として、昭和二十八年制定されたものであろうと思うのですが、米軍の適用行為のうちのある特定行為に対して、それに基づく農業、漁業、林業等の損失に対して、国家に補償義務、いわゆる無過失責任主義に踏み切った、当時としては注目すべき立法であったと思うのですが、特損法の場合には、たとえ無過失責任主義を認めたとしても、それは安保条約に基づく米軍の行為によるものであったために、こういう理由があげ得たわけですね。今度これを自衛隊の行為に及ぼす際には、何ゆえ他の一般の国家活動に及ぼさないのか、こういう問題、疑問がここに出てくるわけですね。自衛隊の行為だけにこういう問題を認めるのかという当然の疑問が出てくると思う。この疑問にひとつお答えいただきたい。
  107. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) ただいまの御質問は、一般の国家活動によっていろいろな公害的のものがあるのに、特に自衛隊の行為とか、駐留軍の行為とかについてだけそういった施策をとるかという御質問だと思いますが、こういう点につきましては、特別幹事会でもいま先生のおっしゃったような立場からいろいろ問題がございました。しかしながら、そこで審議しました結果、一般公害問題は全体として現在各方面で検討されておりますので、とりあえずこの防衛施設といいますか、いわゆる軍隊または自衛隊の特性ある行為、たとえば道路等についていいますと、戦車がひんぱんに通る、あるいは飛行場でいいますと、高速ジェット機がひんぱんにタッチ・アンド・ゴーをやる、そういったいわゆる一般の国家活動にない軍事的な特性あるものにひとつ重点を置いて、一般公害の制度を確立する時期がきたならば、そのときはまたそのときでそれにふさわしい一つの調整もやるという余地を残しまして、そういう特殊のものだけ先に取り上げようという見地から、この法案をつくった次第であります。
  108. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御答弁ではございますけれども、最近特に一般の公害が問題になっておるとき、これはまあ自衛隊以外の国家活動で同程度の損失を与えている事例は多いわけです。特に最近厚生大臣国会答弁を見ても、来たる通常国会には公害基本法を提案したいというような意味の御答弁がなされておるわけです。そういたしますと、本法案の第三章の規定は、今度規定せられるであろう公害基本法と矛盾そごを来たすようなことはないか、こういう疑問点が出てくるわけです。そこでお伺いしたい趣意は、公害基本法の制定を待って調整の上規定するようにしたならば適法ではなかったかと、こういうことが考えられるわけですね。それをまあ次の国会には公害基本法を出すと言っておるのですから、それとにらみ合わせて矛盾がないようにという配慮のもとに本法案が成立されるわけですけれども、それを待たずにやってしまったから、今度この公害基本法はまだできませんから今後の問題として問題を残すのだ、その公害基本法の内容によっては矛盾そごを来たす問題があり得る、いまどういう基本法ができるかまだ内容はわかりませんから、いま直ちに矛盾そごを来たすときめつけるわけにはいかぬわけですね。しかし、そういう配慮は当然起きてくるわけです。この点をお伺いしたい。
  109. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) ただいまお話にもありましたように、まだ公害基本法の概要は明瞭でございませんので、具体的に何が矛盾するかということはお答えいたしかねますが、かりに公害基本法等で企業者のほうに何といいますか、制限させたくない、かりにそういうような場合があるといたします場合に、自衛隊とかあるいは駐留軍等が軍事的な部隊でございますので、必ずしもそれを全面的に適用することはあるいはむずかしいかもしれませんという問題は若干あろうかと思っております。しかし、それ以外の一般的な問題につきましては、われわれも可能な限り公害本基法がきまりましたらそのよい点を吸収してこの法案をさらにりっぱなものにしたいという気持ちでございます。
  110. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案の第三章の規定を見ますると、特撮法の補償と全く同趣旨のものであって、他に対象の同程度のものと考えることがでにきるわけですが、従来から特損法の補償対象並び範囲が限られている等の問題があったわけですね。この特損法の補償対象並びに範囲については限定されておるという指摘批判がなされておったわけです。今度新たにこういう法律をつくられるに際しては、こういう過去の問題点を問題として、こういう機会に改善してしかるべきではなかったか、何ら改善のあとが見られぬわけです。この点はどうなんですか。
  111. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 御指摘のように、補償の対象として考えておりますのは、主として農業、林業、漁業でございます。これはおっしゃるように原始的な産業でございますが、この種のものは地理的と言いますか、水面と言いますか、非常に自然的な空間を占めておって、それに依存する生業であります。そういうところに対しましては、基地の障害というものは非常に直接的に反映いたしまして、だれが見てもそれが基地の影響であるということが客観的に指摘できるという点で非常に明瞭なものでございます。だから、こういう明瞭なものをまず取り上げて、その他政令というところで、若干、船舶運送業等も考えておりますが、この政令に将来何を入れるかという点については、先ほど来、伊藤先生からも御意見の出ております一般公害というものの関連も相当将来は出てくるかと思います。現在のところ、われわれは、まだそこまで進んで、これを構成的に熟したものとして取り上げるだけのまだ時期でないと考えましたものですから、将来の問題として、今後検討したいという余地を残した次第でございます。
  112. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昭和二十八年に、特損法が国会で審議された際に、いろいろ将来検討すべき点が指摘されておるわけです。これは衆参の水産委員会附帯決議も付されたわけです。この附帯決議に対する検討の結果については、その後どうなっておるのか、御存じであったらこの機会にお聞かせいただきたいと思います。
  113. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 大体、その当時の附帯決議趣旨は、手続の簡素化と完全補償の実施、それから各省間の緊密な連絡のもとに損失を的確に調査して迅速な補償を行なう、この三点だったと思います。簡素化等については非常に努力いたしております。また、完全補償につきましても、原則として一〇〇%の補償をいたすことにして、例外的に八〇%というような運用をやっております。各省間の連絡につきましては、これは十分附帯決議趣旨を尊重いたしまして今日やっておる次第であります。
  114. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま御指摘附帯決議が付されたわけですが、通常生ずべき損失についての政府解釈が、平年の収入と対象行為のもとにおける収入との差額の八〇%と算定しておるようでありますけれども、ここでお伺いしたいのは、どうしてこういう機会に算定方式を改善して実損失に対して完全補償をしないのかというととなんです。裏を返せば、こういう機会に、せっかく法律をつくるのだから、完全補償はできるような仕組みにはならなかったのかということなんです。
  115. 財満功

    政府委員財満功君) 特損法にございます損失の対象となる事業、これはいずれも自家労務を伴うものでございます。原則として自家労務を含むものが多いわけでございます。そこで原則は、先ほど施設庁長官が申し上げましたとおり、一〇〇%補償でございますけれども、ただ遊休化された自家労務、つまり仕事を休まされておるわけでございますので、その間に自家労力は他に転用できるであろう。その転用によりまして、おおむね二〇%程度の収入は他で得ることができると思われるという観察を私どものほうで下しておったわけでございます。したがいまして、現在におきましてやはり一〇〇%補償をすることによりまして他は他で収入を得ていた。したがって、私どもの考え方といたしましては、一〇〇%補償を計算におきまして八〇%という形が出ておるだけで、こういうふうに考えておる次第でございます。
  116. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この特損法では、従来、適法に農業、林業、漁業ですか営んだものの、ここでこういう意味の従来適法がはなはだしく狭く解釈されておる点が従来問題となってきたと思うのです。本法案の解釈もこの解釈でいくのかどうか、こういう点をお聞かせいただきたい。
  117. 財満功

    政府委員財満功君) 従来と申しますのは、損失が発生いたしました時点の以前という意味でございますが、まあ適法にやっておったものだけ補償する。つまり必ずしも適法でない方々に対してはその補償の必要がないであろうという考え方でおるわけでございまして、この法律をつくります際に、従来の考え方を狭く厳重に解釈したというふうな意味のものではございませんので、従前からのものをそのまま当てはめてまいりたいというふうに思っております。
  118. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案では農業、林業、漁業等の経営上の損失というように限定的にしぼっておるわけですね。私どもの立場から言うと、この範囲を広げて、一般の家屋とか商店等にも及ぼすべきではないかという見解を述べておるわけです。で、このことでお伺いしたい点は、なぜ家屋とか、あるいは商店、そういう面にも範囲を広げなかったのかという疑問が出てくるわけですね。こういう点を明らかにしていただきたい。
  119. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 防衛施設の周辺の住民に与えております障害のうち、どのようなものを損失補償の対象にするかという問題は、きわめてむずかしい問題でございます。そのうちで、特に農業、林業、漁業を取り上げて、商工業者のほうは明白には取り上げないといいますのは、先ほども申しましたように、自然産業は非常に障害が明瞭である。商工業者あるいは一般の私人というものは一般公害というものとの関連で理論がいろいろ成熟しまして、法律の概念になってまいりますれば、われわれも政令の中で追加していくことは決して避けるものではないと考えております。そこのところを、先ほど申しました、まさにそこのところはこの政令で余白を残しておるというふうに御了解願いたいと思います。
  120. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 後ほどこの政令についてはお伺いすることにしておりますので、その際、いまの御答弁に対して、こちらからの立場をお伺いしたいと思います。したがって、御了解いただきたいと言っても、いまここで御了解するわけにはまいりません。  そこで、なおお伺いいたしますが、本法案の規定は特損法と同趣旨だとおっしゃっておるわけですが、本法案第二章の規定は特損法の施行令あるいは施行規則、こういうものを法律段階に引き上げた例があちこちに見受けられるわけですね。これは同趣旨とは言いますけれども、施行規則や、あるいは施行令を法律の段階に引き上げるということは、よりきびしくなったんだと解せざるを律ないわけですね。施行令や施行規則を法律段階に引き上げればよけい強くなるわけでしょう、拘束力は。こういうふうに解せられるわけです。この点はどうなんですか。
  121. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 私の聞き違いかもしれませんが、第二章の規定は特損法と見合いになった規定じゃなくて、特損法と見合いになっておりますのは第三章でございます。第二章は、御指摘のように、従来の特損法の中でいろいろ書いておりましたものを法律的に列挙したものもございます。しかし、第二章は、特損法と異なりまして、特損法以外にこれだけ広げて、周辺住民に助成施策を講じようという、旧特損法をさらに範囲を広げて助成措置を講じようというのが第二章でございまして、その意味では、特損法よりも周辺に対しまして対策の手が広く緻密に伸びたというふうに御理解願えるのじゃないかと考えております。
  122. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、お伺いいたしますが、本法案の第三章の損失補償とありますが、これはまあ別として、他は防衛施設の運営によって生ずる障害防止という考え方が中心になっておるようですが、ここでいう「障害」とは、一体何をさすのか。また、これと、第三章の「損失」とはどういう関係になるのか、こういう点を明らかにしていただきたい。
  123. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) すべては大きな意味の障害に入ると思います。しかしながら、まず強いほうから申しますと、第三章の「損失」は、自衛隊等の行為によりまして、先ほど来申しましたように、事業経営上に損失を与え、その補償の権利を国民が持つにふさわしい、権利を持つにふさわしいというものが第三章でございます。第二章にまいりますと、それほどではございませんが、しかし、防音とか、防災とか、そういった施策を要するような不利益を周辺の方々に与えておる、これは周辺の方々に対しましてそれをなくする権利を認めるというほどまでには実定法上なっておりませんが、しかし、そのまま放置しておくことは、いかにも社会公平の原則に反するという見地から、何とか補助という助成措置によって、その不利益を軽減したいというのが第三条の「障害」でございます。そういった障害でございます。
  124. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま御指摘になった、第三章に規定する損失補償が制限されておるために、その損失ということばも制限的に解せざるを得ないので、「障害」という概念をもってこざるを得なかったのではないのか、こういう疑問もまた出てくるわけですね。この点はいかがですか。
  125. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 先ほども申しましたように、第三章は権利を与える程度の明白な損失というものでございますから、勢い、定義も厳格になりまして、これは国民の権利としての経営上の損失をカバーせにゃいかぬという義務を負ったものになるわけでありますから、その定義の厳格なことはこれは当然と思います。しかしながら、それ以外に、必ずしも国民の権利とまではいかないが、音響とか、あるいは一般の公共の人が使う道路等に対して、他の原因と一緒になってそれをこわすとか、いろいろな御迷惑を与えておる、これをそのまま放置しておくことは、やはり国防というものに対する一つの御苦労を、特定の地域の国民だけにしわ寄せするということはいかにも不合理であるという見地から、できるだけこれを救済したい、義務ではないが、義務に近い観念で救済したいというのが、第三条のいわゆる補助助成、こういう考えでございます。
  126. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、第二条についてお伺いいたしますが、第二条の「自衛隊の施設」この施設はどういうものをさすのか。自衛隊法上でもこの施設についてはどうも明確でな、と思うのでありますが、防衛庁所管の、たとえば国設宿舎、これも含まれるのかどうか。あるいはまた、飛行場にしても、運輸省所管の民間空港を自衛隊が共同使用している場合があり得るわけですね。その場合、これは自衛隊の施設となるのか、こういう幾つかの疑問が出てくるわけです。こういう点を明らかにしてください。
  127. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) ただいまの国設宿舎は、施設の中に入ります。もっとも、この周辺対策はそう多くは必要ないと思いますけれども「防衛施設」は何であるかという概念からいたしますと、それが該当することは確かでございます。それからなお、たとえば小牧の飛行場のように、共同使用しているような飛行場でございますね。これも自衛隊が、共同使用とは言いながら、継続的に使用しております場合におきましては、われわれは施設と考えております。
  128. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に第三条ですが、第三条を見て感ずることは、これはまあ第四条についても同じことが言えると思うのでありますが、どうも国の責任であるものを地方公共団体に転嫁したような条文の書き方になっておる節があるわけです。自衛隊等の行為による障害である以上、その防止工事は、たとえ地方公共団体が実施するにしても最終的責任は当然国が負うべきではないか、そうなのになぜかような書き方をしたのか、そういう意味からいうとその費用を補助するというのはどうも逆ではないかというような考え方が出てくるわけです。これはもう当然国の面において最終的責任を負うべきものではなかろうか、こういうふうに考えられるわけですが、こういう点はどうですか。
  129. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 一般にこの基地等でいろいろ障害を与えます際に、その救済の方法につきましては法令もございますが、その原因につきましてあらかじめそれを防止せなければいかぬという法律は不完全でございます。必ずしも実定法上防止の義務が国家にあるということは言えない現状でございます。たとえばこういうことは少しまだ熟した議論ではございませんけれども、一説には受忍の義務というような説もございまして、なかなかすべての不利益を国が義務を負って防止するということにはなっておりません。どうしても国が救済せなければならぬ義務的なものは第三章に限定いたしまして、第二章におきましては、そうは言いましても国が不利益を与えておる事実は変わりないもんですから、何とかひとつそれに近い気持ちで、助成ということで補助をする、こういう考えからここは補助ということにしたわけでございます。
  130. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 どうもこのような規定のしかただと、各市町村から三条、四条の必要工事としていろいろな申請があった場合にどう調整するのかということも考えられるわけですが、その点については、先日も長官にお伺いした。赤沢試案では審議会を設けてそこで調整すべきことが明らかになっておるわけですね、そういう場合は。本法案では別に指定がないわけですけれども、これは将来審議会でも設置して調整することが至当だと考えられる、この点はいかがですか。
  131. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) この点は前回も申しました点と若干繰り返しになると思いますが、十数年近くの経験によりまして大体飛行場についてはあれこれの障害、演習場についてはあれこれの障害というふうなものが大体どの地区もほぼ定型的になっております。ほとんど、数量的には言いあらわせませんが、大ざっぱにいいまして八割ないし九割までは列挙できる、予算にもそういうふうに固定し得る状況まで進んできております。あとの一、二割が新しい、あるいは突然のものというふうに考えておりますが、そういったものにつきましては、定型化したものはわれわれのほうで十分公平にやりますが、新しいものにつきましては、そのつど関係各省、これは農林省もございますし、建設省もございますし、あるいは厚生省もございますし、自治省もございますので、各省と十分連絡をとりまして、また、ときには必要があれば、地元の県知事にも直接事実上御相談申し上げまして、赤沢試案にあります審議会の運用に劣らぬ程度の論議を尽くして判定をしたいと考えております。
  132. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の制約もございますから、最後に一点だけお伺いして、本日のところ本法案に対する私の質問は終えておきたいと思いますが、次に第四条ですね、「民生安定施設の助成」これが第四条だろうと思うのですが、御説明によりますと、この第四条の規定が本法案の柱であるように伺っているのですが、どうもこの規定、よく見ても明確でないのです。この規定がこれからの予算のつけ方に左右される書き方になっていると思うのです。この四条の助成金と基地交付金との関係は一体どうなのか、こういう点を御説明願います。
  133. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 四条の規定と基地交付金の差異は、まず基地交付金は自治省の所管でございまして、基地の所在する市町村に対しまして、その基地の固定資産の評価に見合いまして、入り得べかりし固定資産税等も予想いたしまして、相当機械的に原則的に割り当てるというのが基地交付金でございまして、現在約十五億の予算があると聞いておりまして、いわば基地の性質というものはあまり考えない、固定資産に着目しているというのが特徴でございます。第二の特徴は、その施設を管轄する市町村だけに出すことが第二の特徴。第三はこれは金銭で一般会計に入ってくるというのが第三の特徴でございます。  これに対しまして周辺整備のほうは、まず第一に、固定資産というものに関係なく、その基地の及ぼす地方への影響、その基地が飛行場であるか、射爆場であるか、そういった地方にいろいろ障害を与える強度によって判断をするというのが第一でございます。それから第二は、その演習場とかあるいは飛行場を管轄する市町村だけではなくて、たとえば飛行場ですと滑走路はAの村にある、しかし、飛び上がったところにはBの村があるという場合には、Bの村にも騒音ということで出そうというのが第二点でございます。第三点は、一般の地方の財政の経理の中に組み入れるのではございませずに、地方の市町村の発意と責任におきまして、大体公共的な施設について一定の補助をするという、いわばそういう施設というものを中心に考えた一つの補助施策である、かように御了解願いたいと思います。
  134. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  135. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) じゃ速記を起こして。  ほかに御発言もないようでございますから、本案につきましては、本日はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十八分散会      —————・—————