運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-05-31 第51回国会 参議院 内閣委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月三十一日(火曜日)    午前十一時十一分開会     —————————————    委員異動  五月二十七日     辞任         補欠選任      北村  暢君     川村 清一君  五月三十一日     辞任         補欠選任      川村 清一君     北村  暢君     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         熊谷太三郎君     理 事                 柴田  栄君                 八田 一朗君                 伊藤 顕道君                 北村  暢君     委 員                 石原幹市郎君                 源田  実君                 船田  譲君                 三木與吉郎君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 鬼木 勝利君                 多田 省吾君    国務大臣        郵 政 大 臣  郡  祐一君        労 働 大 臣  小平 久雄君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        総理府恩給局長  矢倉 一郎君        労働大臣官房長  辻  英雄君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君    説明員        労働省労働基準        局賃金部長    渡辺 健二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○昭和四十年度における公共企業体職員等共済組  合法に規定する共済組合が支給する年金の額の  改定に関する法律等の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。去る五月二十七日、北村暢君が辞任され、その補欠として川村清一君が、また本日、川村清一君が辞任され、その補欠として北村暢君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) この際、委員異動に伴い理事が一名欠けましたので、その補欠互選を行ないたいと存じます。  互選は、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 御異議ないと認めます。それでは、理事北村暢君を指名いたします。     —————————————
  5. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は、去る三月二十三日、予備審査のため本委員会に付託されました。  それでは提案理由説明を聴取いたします。郡郵政大臣
  6. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) ただいま議題となりました昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  この法律案は、昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正し、別途、本国会提案審議を願っております恩給法等の一部を改正する法律案により行なおうとしている給付改善と同様の措置をこれらの法律適用者に対して行なおうとするものであります。  次に、この法律案概要を御説明申し上げます。  まず、「昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律」の一部改正におきましては、第一に、昭和四十年の改正により公共企業体職員等共済組合が支給する年金の額につきましては、恩給年額改定に準じて増額されました際、年金受給者年齢により、その増加分の全部または一部の支給を停止する措置が講ぜられたのでありますが、今回、六十五歳以上の者及び六十五歳未満の妻、子については昭和四十一年十月分、その他の者については昭和四十二年一月分以降、この制限を撤廃しようとするものであります。  第二に、公共企業体職員等共済組合法の施行以前に退職した者の年金基礎となる実在職した組合員期間年数退職年金についての最短所要年限以上である年金受給者のうち、退職年金あるいは廃疾年金の額が六万円に満たない者または遺族年金の額が三万円に満たない者に対しましては、それぞれ六万円または三万円を支給しようとするものであります。  次に、「公共企業体職員等共済組合法」の一部改正におきましては、第一に、日本赤十字社の救護員として戦時衛生勤務に服した期間及び旧軍人戦地勤務等に服した際に加算される期間年金を支給するための期間として計算しようとするものであります。  第二に、年金受給者年金額実質的価値を保全するため、国民生活水準公共企業体職員給与物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情を総合勘案して、すみやかに年金額改定措置を講ずるものとする旨の調整規定を設けようとするものであります。  また、昭和二十三年六月三十日以前に給付事由の生じた年金の額につきまして、同日後に給付事由の生じた年金の額との調整を行なおうとするほか、恩給法等改正に伴う所要措置を講じようとするものであります。  以上が、この法律案提案理由及び概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  7. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 以上で提案理由説明は終わりました。  本案につきましては、本日はこの程度にいたします。     —————————————
  8. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 次に、恩給法等の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は、去る四月二十八日、衆議院から送付され、本委員会に付託されました。  それでは、これより本案質疑に入ります。  なお、関係当局の御出席は、安井総理府総務長官矢倉恩給局長大屋敷恩給問題審議室長、以上の方々であります。  御質疑のおありになる方は、順次御発言を願います。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案に関連して以下若干の質問を申し上げたいと思いますが、まず順序としてお伺いしたいのは、今度恩給年金に関する調整規定が設けられることになったわけであります。しかし、よく考えてみると、この調整規定を設けてもあまり意味がないんではないかと、こういうふうに思うわけです。と申しますのは、たとえば公務員給与については御承知のように、生計費とか物価民間給与、こういうものと、事情の変化を勘案して五%以上の変動等があった場合には給与改定が行なわれておるわけです。ところが、恩給についてはこういうことは何ら考えられないわけです。調整規定がたとえ設けられても、給与のように五%の云々ということは何ら関係ないと思うのです。そうだといたしますと、そういう意味調整規定ではあまり意味がないんではないか、そういうふうに考えられるわけです。この点はいかがお考えか、まずこのことからお伺いしたい。
  10. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 例の調整規定につきましては、いま御指摘のように、中身がどうもはっきりしておらぬじゃないか、これじゃあまり実際効果ないじゃないかという御指摘も私ごもっともな点があろうかと思います。ただしかし、これを法文化をして、とにかく今後調整をしていくんだという方針法律の中で明らかにしたという点では従来に比べで少なくとも数歩前進だと思っております。なお、中身の点につきましては、これは今度できます審議会で十分ひとつ御検討願って、それで具体的な肉づけをしていきたい、こう思っております。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ、いままでなかった調整規定が設けられたんだから一歩前進だと、そういう意味でいうと精神的な効果はあろうかと思うのです。けれども具体的には何ら規定がないわけですね。そこでお伺いするわけですが、現在はないけれども将来こういう具体的な規定を設けようとするお考えがあるのかどうか、また、そういう準備が進められておるのかどうか、将来の展望に立って——いま御指摘になったように、こういう御質問を申し上げると、審議会答申を待って検討すると、そういうふうにお答えになるかもしれませんけれども、それは審議会審議会として、担当の総理府としてもやはり一応のめどを持って、将来の展望に立ってのお考えがあってしかるべきだと思うんです。この点いかがですか。
  12. 安井謙

    国務大臣安井謙君) いまも申し上げましたように、これはまあ内容を十分に盛っておりませんが、それじゃ将来総理府としちゃ何か考えがあるのか、こういう御質問でございますが、まあいままで厚生年金等に載っておりました条文例をこの恩給の中にも入れたということで、まあ一歩前進のきっかけをつくるというのが第一の主眼でございます。内容をさらにどういう程度にするか、公務員給与あるいは一般民間物価給与、その他の条件をどういう程度に織り込んだ場合に直すかという具体的な問題につきましては、やはりこの審議会の相当御意見を伺った上で私どもも案をきめたいと思っておりまして、まだその程度をどの程度にするかということについては明確な腹案をこの際まだ御披露するまでには至っておりません。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 将来の展望に立っていまここですぐ具体的に内容をこういう方向でと、そういうものは現在は持ち合わせないと、審議会等答申を待って具体的に検討したいと、そういう意味はわかりますけれども、私がここでお伺いしておるのは、具体的にそれじゃこういう点をこうしないかとか、そういうことをお伺いしておるのではなくして、将来の展望に立って具体的に今後取り組もうとする姿勢がおありかどうか、そういう心がまえ、そういう点をお伺いしておるわけです。
  14. 安井謙

    国務大臣安井謙君) まあ法案を成文化いたして御審議をお願いします以上、これが成立いたしますれば、その精神方向に沿って私ども何らかの措置をぜひとりたい。まあその基準になりますものは、いまの国民生活水準物価、あるいは公務員給与、そういうものが主たる参考の材料になろうかと思っております。前向きでこれは何らかの解決を今後はかっていくという方向でやっていきたいと思っております。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは次にお伺いいたしますが、この恩給年金とかそれから扶助料ですね、こういうものについては昨年一律に約二割増額したわけですけれども増額はしましたけれども年齢別のいわゆる制限を設けで、結局三年間にわたる段階的措置が講ぜられたわけです。ところが、今回実施期間短縮改正案がいま出されておるわけですが、このことは前の国会で当委員会附帯決議が付せられて、この附帯決議趣旨に沿うた一つ措置として、その点については了解できるわけですが、総理府としてはこの点をどういうふうにお考えなのか。私どもとしては、一歩前進とは考えられますけれども、まあ六十五歳以上、あるいは六十五歳未満の親とか、妻とか子、こういうものについては約三カ月、それ以外の者は六カ月、具体的にはね、こういう措置が講ぜられたので、これは確かに一歩前進であるわけですけれども、いま少しこう、わずか三カ月あるいは六カ月という短縮であったわけですけれども、もう少し附帯決議趣旨を尊重するならば、いま少し何とか措置はつかなかったのか。何か理由があったのか。こういうことをも含めてお答えいただきたいと思います。
  16. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 具体的な問題にうきましていま局長お答えすると思いますが、いま御指摘のように、当委員会での御決議精神も十分尊重いたしまして、あの年限短縮というものをいたしたわけであります。ただ主眼はいまのこの六十五歳以上あるいは妻子といったような、経済的に非常に恵まれないと思われる向きをまず手をつけるべきであるということで、その短縮の中には若干この段階が設けられたと、これはまあその経済状況等を勘案しまして若干の段階を設けたと、こういうつもりでおります。
  17. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 先生の御指摘のように、確かに年次計画というものは受給者の立場からいたしますと短いほうがよろしいかと存じますが、昨年の増額改定の節に一応計画的に年次をつけ、増額改定をするという方針がとられたわけでございまして、そこで、本年の改善考えますときに、やはり私たちといたしましては、できるだけ趣旨としては老齢者あるいは婦女子優遇という線を出すべきが恩給制度の現在のあり方として望ましい、まあかようなところからこれについての年次計画短縮考えたわけでございますが、御承知のように、やはりいろいろな財政上の理由もございまして、今回のような程度にとどまったわけでございます。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この恩給とか年金あるいは扶助料、こういうものは本来は物価に見合うべき性格のものであってしかるべきだと思うのですね、性格からいろと。そうだとすれば、今後ですね、まあ前に措置してしまったのはやむを得ませんが、今後いわゆるそれらの増額考える場合には、このような段階的措置は講ずべきではないと、こういうふうに基本的に考えられるわけです。やはり一律に措置してしかるべきだと思うのですが、まあいま御説明によると、財政的な面も考えなければならないので、やむを得ずそうしたということですが、この点については十分今後は一律に措置する方向で実施してしかるべきだと思うのですが、こういう点はいかがお考えですか。
  19. 安井謙

    国務大臣安井謙君) いまも局長からも申し上げましたように、多少財政面も顧慮しなきゃならぬと思います。実はまあこの前年度、四十年度改正の際、相当大幅をやりましたので、四十一年度はなかなか今度まあ前向きの改正むずかしかろうかという気もいたしておったんです。まあ諸般の情勢を考慮しまして、できるだけのものはまあやったつもりでおります。しかし、まあ財政に限度もありますし、おそらく十数億、これ全面的にやるのとやらないのとでは差が出るのじゃないかというような計算もありまして、まあこれ何ぶんことし一ぱいの問題で、この一月からになればすべて全部解決するわけでありまするから、まあ若干財政上の関係もあって、まあ差をつけたというようなことでございます。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおこのことに関連してお伺いいたしますが、どの対象人員ほおおよそどのくらいになって、予算はどのくらいか概数を承っておきたいと思います。
  21. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 今回の改正による額といたしましては、四十一年度予算額として本件に関する限り十七億でございます。対象人員は約七十五万でございます。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今回ですね、加算恩給のいわゆる減算率を妻及び子に給する扶助料ですね、これは普通扶助米といっておりますが、これに限って改善したのは何か理由でもあるのかどうか。この点について承っておきたいと思います。
  23. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 加算恩給のいわゆる扶助料を受ける妻及び子につきまして普通恩給最短在職年のものの年額の十分の五、いわゆる半額の扶助料が支給されておるわけでございますが、妻及び子というふうなそういう妻子の場合に、それだけの優遇措置考えるということが加算恩給等の問題を処理するにあたりましても適切ではなかろうかということで、かような場合の特殊事情を考慮した特例措置としてかような配慮をいたしたわけでございます。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 実在職年年数普通恩給についての最短恩給年限以上のもので普通恩給年額が六万円未満のものについては六万円にするということでありますけれども、この対象者はどのような人なのか、このことについて御説明いただきたい。
  25. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 普通恩給のいわゆる六万円未満あるいは扶助料につきましては三万円未満というふうなことで、一応最低額の保障をいたそうとしたものでございますが、文官につきましては、古い俸給でまいりますと判任の八級俸で、当時の月額にいたしますと五十五円程度の給料の方でございます。旧軍人につきましてはどの程度かと申しますと、当時の曹長という階級の方、それ以下の方々がおおむね対象に相なります。その人数はほぼ四万六百人くらいでございます。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで関連ある数字を伺っておきたいのですが、妻及び子に支給する加算恩給減算改善とその対象人員並びにその予算は大体どのくらいかということと、長期在職者低額恩給改善がなされるわけですが、その対象人員並びに予算、それぞれ概数でけっこうです。
  27. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 長期在職者低額恩給是正を受けるのは、ただいま申し上げましたように、四万五百九十五人という数でございます。それから旧文官のいわゆる恩給扶助料改善が約十五万でございます。  大体以上の数字でございます。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、長期在職者文官恩給についてお伺いしたいわけですが、昭和二十三年六月三十日以前に退職し、または死亡した旧文官等、こういうふうに説明があるわけです。そこでお伺いしたいのは、この二十三年六月三十日については何か特別な根拠でもあるのかどうか、この点について御説明いただきたい
  29. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 実は御承知のように、恩給は古い公務員であった方々への、退職された方々への措置でございますが、退職時の俸給ということが御承知のように恩給基礎に相なっております。そこで退職俸給というものをもとにして恩給措置をとってまいっております状態旧来在職者の中でながめてみましたどきに、昭和二十三年六月三十日という一つの区切りが恩給措置として考えられるわけでございますが、そこで二十三年六月三十日以前の退職者と以後の退職者というものを見てみますと、いわゆる現在の恩給的措置としてみましたときに、若干の格差があるわけでございます。そこで二十三年六月三十日以前の方々に、今回の改善措置によりまして当時の状況をいまの状態に引き直したときに格差が幾らであるかということを見てみましたところが、ほぼ平均四号の格差がございます。そこで、平均号程度是正措置をとることが、六月三十日以前の退職者にとって必要であるという判断のものとに、今回の改正措置をいたそうとするわけでございます。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この該当者について見ますると、過去四回にわたって是正が行なわれておるわけです。にもかかわらず、なお一部のものについて若干の是正が適当と認められる、こういう御説明であるわけです。四回も手直ししてもいまだ不完全であるということについてはどうも納得しがたいわけですが、その理由は一体那辺にあるのか、この点をひとつ具体的に御説明いただきたい。
  31. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 御指摘の点は確かに過去四回も是正しておきながらなおかつという御疑問を抱かれるのはごもっともだと存じますが、御承知のように、実はいま申しました恩給基礎がどこへ置かれるかというところから恩給年額基礎となっております俸給を律しております給与法、これがいろいろな形で改正が行なわれてまいっておりますので、それを追って、いわゆる恩給についての改善措置を講じてきたわけでございますが、その基礎給与法等の動きが必ずしもそのままに追っかけされなかった面もございまして、それを今回の改正措置で新たに調整をはかる必要があると考えたわけでございます。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、警察官とかあるいは教育職員、この恩給扶助料を中心として四号俸ほどの調整を行なうこと、こういう御説明であるわけですが、そこでお伺いしたいわけです。四号俸とは金額にしてはどの程度になるのかということと、ここで調整される最高号俸最低号俸とはどのようになっているのか、この点についてあわせて御説明いただきたい。
  33. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 今回の措置によって行なわれるのは低いところで約一万円程度になろうかと存じます。号俸で申しますと最高六号、最低を一号程度是正措置をするという考え方でおります。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この対象人員はそれではどのくらいで予算はどの程度か。
  35. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 対象人員はほぼ十五万と考えております。
  36. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それに伴う予算はどのくらいですか。
  37. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 金額にして十億二千万くらいでございます。
  38. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 十億くらいですか。
  39. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 約十億でございます。
  40. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私どもの検討によると、そんな十億などにはならぬのですが、それ間違いありませんか。
  41. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) これは平年度に直しましての額でございますので、十億はいわゆる平年度所要額として経常的に出てまいる額でございます。四十一年度を申し上げてみますと、これは二億六千万でございます。
  42. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この意味はよくわかりましたが、そうだとすると、このような金額になるわけで、これは該当者にすると大きな問題だと思うんですが、そうだとすると、いままでこういうのをほっておいたということになるわけです。この点はなぜいままでこういう金額になるものをほっておいたのかという、何か理由があったと思うのですが、その点はいかがですか。
  43. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 実はこれは恩給受給者実態を調べてみましたところが、一応私たちの手持ちのデータによりましたときに、二十三年の六月三十日以前の退職者のひずみというものが具体的につかめましたので、旧来の実は四回の調整でほぼ済んだかと思っておりましたが、やはり実際に調べてみますと、たとえば警察官あるいは教職員等について特別にそういった低く押しえられていたやに見受けられる実態が出てまいりましたので、これの是正を今回はかったわけでございます。
  44. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今回詳細に調べてみたらそういうことがわかった。そうすると、いままでは詳細に調べないでいいかげんに調べたということですか。その辺はどうですか。
  45. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 確かに御指摘まことに痛み入りますが、実は確かにいろいろな実は金額是正については各団体から多数の要望が出ております。私たちも実はそれぞれの問題についてそれなりの配慮をしてまいっておるのでございますが、しかし、一応この文官につきましては旧来調整で済んでいるという見方もないではなかったわけでございます。したがって、そういう点についてやはりわれわれとしてもいろいろなそういう要望がございます場合には、そういった点についての再度の調査ということも行ないますので、この調査は実はかなり個々の人間について全部当たってみなければなりません。現在の受給の額がはたして二十三年六月三十日以前とその後との調整として一体ひずみがあるのかどうか、これも具体的に数字に当たってみました結果がやはり是正を要する、必要があろうかと、是正を要するとすればなるべく早い時期がよろしかろう、こういうことで措置をしたわけでございます。
  46. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先にもお伺いしたように、過去四回にわたって是正が行なわれてきたわけです。そこで、この際御要望申し上げておきたいと思うのですが、やはりそのつど是正にあたっては漏れのないように、やはり科学的な調査を進めて万遺憾なきを期すべきであろうと思うのです。これはお答えはけっこうですが、当然そういう心がけでやっておるとは思うのですが、やはり数多い中でそういった手違いがあると、恩給局にとってはたいした問題でなくても、該当者にとっては重大な問題になろうかと思うのです。そういった点もあわせ考えて、今後万全を期していただきたいと思うのです。  そこでさらにお伺いいたしますが、待遇官吏についての調整は政令で定められることになっておるわけですが、その理由は一体どういうことなのか。政令で定めないで、ちゃんと法で定めたらいいではないか、そういった考え方が成り立つと思うのですが、その待遇官吏だけについての調整は政令で定めるということになっているのは那辺に理由があるのか。
  47. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 昭和二十三年から実施されました新給与制度によりまして従来の制度が根本的に改められた、仕事の内容あるいは責任の度合い等を基準にしたいわゆる職階的な俸給制度がとられたわけでございますが、この制度の切りかえにあたりまして、文官待遇職員あるいはそれ以外の教職員あるいは警察監獄職員、そういった給与改善度合いがいろいろ異なっておったわけでございます。そこでそういうふうなそれぞれの異なるものについて一応是正措置考えてまいりますときに、これをそれなりにその職員にとっての、旧来の職員であった人たちにとっての改善措置というものは複雑に内容がいわゆる織りなされてまいりますので、そこでこれを法律によらず政令に譲ったわけでございます。
  48. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、公務扶助料、それから増加恩給ですね。これを受ける者の不具廃疾の成年の子に四千八百円の扶養加給を支給することになったようです。これはたいへんけっこうだと思うのですが、ただ、そこで検討を要するのは、この金額は未成年の子女と同じ額であるわけですね。成年に達しても不具で働けない、こういう気の毒な方々が生活上ではさらに大きい負担を受けるのではなかろうかと思うのですね。こういうことをあわせ考えた場合、未成年の子女と同じ額よりもう少し一歩前進できなかったものか。それをお尋ねすると、そういう気持ちはあったのだが、予算の面もあわせ考えたので、今回はできなかったと、——はたしてそうなのか、ほんとうに前向きの姿勢で取り組まれたのか。これは総理府としても相当不合理ではないかと思うのですが、この点いかがですか。
  49. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 先に御答弁もついでにいただいたようなかっこうなんですが、お説のとおり、若干財政事情考えざるを得なかった。ただこれも漸進的にやろうということで、いままで成年に達した者はゼロになっておったものを続けていくという、まあこれも数歩前進ということで、いま御趣旨のように、しかしさらにもう少し加給をふやすべきものじゃないかという御意見も、私どもこれは尊重しなければならぬと思います。今後は検討しようと思いますが、今回はとりあえず一歩前進という形で御了承いただきたいと思います。
  50. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ一歩前進段階で今後も十分検討したいということでございますから、さらにお伺いはいたしませんけれども、やはり不具のためになかなか生活意にまかせない、そういうお気の毒な方々のためにこそやはり予算をさいて、一歩どころではなく、数歩前進させてしかるべきだと思う。そういう意味合いで、今後も引き続き真剣にひとつ取り組んでいただきたいということを、この際強く要望を申し上げておきたいと思うのです。  そこでお伺いいたしますが、この対象人員はどのくらいで、予算はどのくらいなのか。これはいま予算関係もあってという事情もございますから、予算は相当多額にのぼるものかと考えられるわけですが、どのくらいですか。
  51. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 人数にいたしますと不具廃疾が約八千人でございます。予算額にいたしますと約一千万円でございます。
  52. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうなるとどうも先ほどの御説明がちょっと納得できなくなるわけですけれども、これが十億、五十億、百億という巨額な額にのぼるということであると財政上の関係もあるということですが、対象人員が八千人で、予算に対して約一千万円、そう驚くべき多額の金額ではないと思いますね。一千万円、これを一千万円を二千万円にすれば、この四千八百円の倍額支給できる。そういう一応の見込みが出てくると思うのですね。総理府としてはわずか一千万円ぐらいの財政に縛られたのではないでしょうか。まだ検討が足りなかったのではないか、そういうふうに考えざるを得ないわけですが、ひとつもうわずか一千万ですから、もう少し奮発できないものか。近い将来にでもそういう前向きの姿勢でお考えがあるかどうか、ひとつこの際承っておきたいと思います。
  53. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 実はこの扶養家族加給につきましては、その他の扶養家族加給がいずれも四千八百円になっておりますので、そこで扶養家族加給としての加給をいたしましたので、結局その額を他のいわゆる扶養家族加給全体として考えてみなければなりませんので、先生の御指摘の御趣旨は確かによくわかるのでございますが、もしそうなると、別のいわゆる加給付考えなければ他との均衡上この措置ができなかったわけでございまして、したがって、ただいま大臣の申しました予算額と申しますのは、実は恩給全体の今度の改善措置財政的な面というものが、やっぱりこういうそれぞれの措置にはそれなりに影響を与えておりますので、さような趣旨での答えでございまして、この件につきまして、さらに追加的に申し上げますれば、大体四十一年度一千万と申しましたのは、大体一期分の支給になりますので、したがって、平年度にいたしますと、これは約四千万に相なります。
  54. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、営内に居住すべき者ということで、特別扶助料の支給を受けられない者とは一体どういう範囲なのかということをまずお伺いしたい。そうしてこれに関連して該当者は大体どれくらいで、この改正に大体どのくらいの予算を必要とするのかあわせて御説明いただきたい。
  55. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 営内居住という制限が従来かぶっておったわけでございますが、この点の改正措置をとりましたのは、当時たとえば、いわゆる配属将校あるいは軍の関係の技術方面に従事した方、そういう人たちの救済が必要である。こういうところから本件についての営内居住の制限を撤廃することが必要であろう、かように考えまして措置をいたしたわけでございます。  で、人数にいたしますと、約四百三十人でございます。そうして金額にいたしますと約六百万の予算でございます。
  56. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、日本赤十字社の救護員の在職期間が、恩給公務員期間と通算されることになるわけですが、その場合、救護員恩給公務員に相当するものとは一体どのような人々なのか。それと対象人員予算、こういうものについてもあわせて御説明いただきたい。
  57. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 日赤の救護員につきまして、今回通算措置をいたしますのは、事変地または戦地に勤務した恩給公務員に相当する日赤の救護員でございまして、その付帯的な仕事は、当時看護婦長でおられたような人、あるいは医師であったような方、こういう人たち恩給公務員に相当の日赤救護員として、今回の措置として改善をしていこうということで、本件につきましては、恩給対象の人としては非常に数が少のうございまして、私たちのいま予測しておりますのは、十人程度ではなかろうかと考えております。したがって、予算的にも約四十万程度予算でございます。
  58. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまその該当者としては、看護婦長、医師等と説明があったわけですが、関連があるからお伺いしておきますが、薬剤師とか事務員はこの中には入らないのですか。
  59. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 薬剤師も——私があるいは十人と簡単に申し上げたのがいけなかったかもしれませんが、薬剤師も入っております。それから事務をおやりになった方も公務員相当の者はこの中で救済するつもりでございます。
  60. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、文官在職年と加算年とが通算されることになるわけですが、この場合通算される加算年の条件は旧軍人に対するものと全く同じものかどうか。もし同じものであるとすればなぜいままで文官だけ除外されていたのか。こういう問題が出てくるわけですが、その点あわせて御説明いただきたい。
  61. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 特定の地域で勤務されたことを理由としてまいります地域加算、これは軍文官いずれも同じに扱っております。そういうことで改正をされてまいっておりますが、特殊の勤務を対象とする加算、たとえば航空機に乗っておられるときの航空機勤務についての加算とか、あるいは戦車に乗られたときの戦車勤務加算あるいは不健康地勤務加算、こういうふうな加算が旧来はあったわけでございますが、これにつきましては、旧軍人についての問題でございますが、現在は適用されておらないわけでございます。
  62. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 その対象人員については、目下調査中というふうに承っておりますが、大体おおよそのめどはついておりますか、もしあったらこの際お知らせいただきたい。
  63. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 実はこの数字は、予算策定のときに明確にしたいと思ったわけでございますが、実はその数字を確実に知るということが当時としてはできませんでしたので、われわれとしては約一万人程度ではなかろうかという見込みを立てております。
  64. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、旧軍人で戦地等で発病した者については、傷病恩給が支給されておるわけです。ところが、内地で職務に関連して疾病する場合には、恩給が支給されていないわけですが、これは不合理だと思うのですが、何か分けなければならない確たる根拠があるのかどうか、この点をお伺いいたします。
  65. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 実は内地と、あるいは戦地ということで特別に区分をするということが本旨ではございませんですが、ただ、その点について恩給については、傷病についていわゆる原因、これが結果と相当因果関係があるかどうかという点が問題に相なりますので、そこでその点の明確になりますのはやはり内地勤務の場合で、戦地勤務につきましては、その辺の事情がかなり明確を欠く場合がございますので、そこでただいまの運用のしかたでいわゆる戦地発病については、できるだけ公務として見ていくというふうな考え方をとっておるわけでございます。
  66. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 内地で発病して、いまだに療養所で療養している者が相当あるやに聞くわけです。これらの人々の療養費は現在どのようになっておるのか、そのことをあわせてお答えいただきたい。
  67. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 旧軍人の内地発病者の療養費の問題は、これは御承知のように、厚生省の援護局の主管の仕事でございますが、ただ私たち承知しております範囲でお答えを申し上げますと、内地発病者の療養費を受けておられる軍人、軍族の数は約八百六十人くらいと承知いたしております。
  68. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 旧軍人の職務加算については廃止されたままになっておるようですが、これはこのままにしておくお考えかどうか、ただ、お考えをこの際お聞きさしておきます。
  69. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 軍人の職務加算については、先ほど来申し上げておりますように、昭和三十六年の法律改正によって加算制度が復活されたわけでございますが、職務加算をはずしましたのは、やはりたとえば勤務時間を基礎とするとか、あるいは業務内容、しかも非常にその内容は細分化されておりました内容基礎としている関係上、個人個人によって非常にまちまちでございまして、加えて現在の資料状況から言いますと、加算の認否の裁定官庁としての恩給局の立場で見ていきますと、非常に認定が困難ではなかろうか、かような点から実は現在の段階においても職務加算制度についての復活を考えるという段階にはまいっておりません。
  70. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 現在傷病年金制度はどうなっておるのか、このことをお伺いしたいと思うのですが、昭和二十八年八月の改正で廃止となっておりますけれども改正前に権利を取得したものは認められておると思うのです、この点。それと扶養家族の加給はどのようになっておるか、このことをあわせて御説明いただきたい。
  71. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 大体法律百五十五号による改正によって措置をいたしておるわけでございますが、家族加給についても現在はそのまま実行に移されているというのが現状でございます。
  72. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に伺いたいのは、傷病年金受給者に対する扶助料、これはどうなっておるのか、その点を。
  73. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 傷病年金扶助料につきましては、御承知のように、いわゆる傷病恩給は二つの形態をとっておりまして、増加恩給と傷病年金に相なっております。増加恩給につきましては、普通恩給が併給になるわけでありますが、傷病年金につきましては普通恩給が併給に相なりません。したがって、傷病年金受給者につきましては、いわゆる恩給年限というものを満たしている方々につきましては、当然に普通扶助料が付与されますが、その年限のない方につきましては普通扶助料が交付されないというふうに相なっております。
  74. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、最後に一点だけお伺いして、本日のところ私の質問をこれでおきたいと思いますが、その最後に伺いたいのは、恩給に関しては従来もそうでございましたが、現在も各種団体からいろいろ要望総理府に出されておると思うのです。そこで安井長官にお伺いいたしますが、これらの各種団体からの要望に対して総理府総務長官としては一体どのようにお考えになっておるのか。先ほども調整規定の際申し上げたように、こういう御質問を申し上げると、いま恩給審議会が進められておるから、まあその結論を待って善処したい、そういうことでございますけれども、それはそれとして、やはりこういう基本的な問題については、総理府自体としても方向を確立しておく必要があろうかと思うのですね。具体的には恩給審議会がせっかく進行中ですから、その具体的な面については答申を待って云々、それは当然であろうと思いますが、大体の方向は所管の総理府長官としてもう方向が打ち出されておるのではないかと思います。そういうことでこの際お伺いしておきたいと思います。
  75. 安井謙

    国務大臣安井謙君) お話しのとおり、恩給審議会も設けられまして、これが第三者機関である学識経験者だけで公正なひとつ御審議、立案をお願いしたい、こういう趣旨で発足をいたしたわけでございます。したがいまして、いままで各種団体等からいろいろと御要望も出ております。こういう点もそれぞれの面で御審議を願う形になっておりますが、一方御指摘のように、総理府恩給局としても、しかしこういう問題についてはこういうふうに扱うべきではないかというくらいなおおむねの原案といいますか、方針は立てるべきじゃないかというお話で、これもごもっともだと思います。ものによりましては、いまちょっとまだ判断つきかねるから、これはもっぱら審議会にお願いするという性格のものも出てまいりましょうし、また、先ほど御指摘のような不具廃疾の年齢撤廃といったようなものにつきましては、いまのような点で総理府としてはこういう程度まではむしろ直すべきではない、しかし、他の関係もあるから、そういう点もあわせて配慮願いたいというような方針も出しながら審議を願う面も相当出てくるものであろうと思っております。
  76. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 午前はこの程度とし、午後は一時十分に再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時六分休憩      —————・—————    午後一時五十七分開会
  77. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) それでは委員会を再開いたします。  労働省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き、本案質疑を行ないます。なお、関係当局の御出席は、小平労働大臣、村上労働基準局長、渡辺賃金部長、高橋婦人少年局長、以上の方々でございます。  質疑のおありになる方は、順次御発言を願います。
  78. 北村暢

    北村暢君 前回若干事務的に臨時家内労働調査会の報告の内容等についてお伺いいたしたのでありますが、きょうは大臣が見えておりまするので、この家内労働調査会の報告と、今回の家内労働審議会設置に関連をいたしまして質問をいたしたいと思いますが、まず、この報告並びに見解を述べておりますが、その見解によりますというと、家内労働の問題に関しては、まあ長期的に継続して調査審議を行なう機関を設ける必要がある、こういうことを述べておりますが、ところが、審議会の設置の期間は三カ年に限定しているわけであります。この意図はどういうところにあるのか。普通の審議会であれば、その審議会の基本になる法律があって、そして問題を継続的に審議する、こういうのが普通の例だと思うのでありますが、三カ年に限定したということは、この見解でも述べておりますように、法制的措置を含めてということになっておりまするので、この審議会の任務は、主として法制的な措置をすることが目的であるのかどうなのか、この点についてひとつ大臣の見解をお伺いしておきたい。
  79. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 今回御審議をわずらわしております家内労働審議会を設置したいと、こういうことは、ただいま御指摘のとおり、家内労働調査会の見解に基づきまして、これを尊重して審議会を設置することにいたしたいと、こういうことでございますが、そこでこの三年間という期間を限って設置するのは、主として法制的措置に重点を置いてのことかというお尋ねでございますが、確かに、この調査会の見解によりますと、今後長期間にわたって家内労働については総合的な施策、また、総合的な見地から検討する必要がある、こう言っておるわけでありますが、特にその際、法制的措置も含めてと、こういうことを答申されておるわけでございます。そこで労働省といたしましては、やはりこの家内労働問題の重要性にかんがみまして、なるべく法制的な措置をやはり講ずべきであると、こういう考えを持っておるわけでございますので、審議会が発足いたしますならば、ぜひこの点につきましても、もちろん、法的措置を講ずべきかどうか、あるいは講ずるとすればどういう内容にすべきかというようなことは十分御審議をいただかなければなりませんが、労働省自体の考えはどうかということになりますならば、やはり法的措置を講ずる必要があるであろうと、かように考えておるわけでございます。そこで、もちろん、そうは申しましても、法的措置を講ずるということに相なりまして、かくかくのことをもって内容とした法的措置を講ずべきだとかりに答申が出ましても、もちろん、家内労働問題につきましては実態調査の問題、把握の問題、あるいはまた、家内労働が御承知のとおり経済の状況とも関連しまして、その事情等もこれは刻々変わっていくということでございますから、法的措置ができたからそれで万事済んだということにはもちろんこれはならぬと思います。しかしながら、一応の目安といたしましてはこの三年くらいの間に法的措置を含めて当面どういう措置をとるべきかということについての御答申をまず得たいと、こういう気持ちからいたしまして、一応三年間と、こういうことに実はいたしたのでございます。もちろん、ただいま申し上げましたとおり、家内労働の問題は、今後もちろん引き続いて、時々刻々いろいろな問題が派生するかと思いますので、三年たちました際において、そのときの事態において、なおどうしてもこれは存続することが必要だというような事態でありますならば、その際、あらためてまたこれが継続についてもお願いを申し上げたい。一応は三年間で、とりあえずは当面の少なくとも結論を出していただきたい、こういう気持ちから、三年ということにいたしているのであります。
  80. 北村暢

    北村暢君 おおむねわかったような気もするのでありますが、まあ、法的措置云々ということでありまして、労働省当局としても、法案内容等についてこの審議会に諮問したいという大臣の気持ちは表明されたようにお伺いいたしますが、そこでお伺いしたいのは、わざわざこの設置法によって審議会という機関を設置するのでありますから、従来の臨時家内労働調査会、これは閣議決定で設置されているわけでありますが、しかも、相当長期間にわたってこの調査会も実態調査なりなんなりをやったと思うのです。それでなおかつ法制化ということについては踏み切れず、現状の報告程度にとどまった、こういう経過からして、私はやはり審議会というものを法制的にもはっきりその位置づけをして、しかも、その臨時調査会の報告が、法制的なものを含めてと、わざわざこれを指摘しているわけでありますから、当然、労働省としては、近い将来において、これだけの調査の報告を受けているから、これを基礎にして、労働省の案というものをこの審議会に諮問をする、こういう段取りになるのが私は当然じゃないか。しかも、三年間という限定をしているのでありますから、三年の間に法的措置が必要であるのかないのかということを聞くのではなくして、労働省当局としては、家内労働法の要綱等のようなものを示して、そして審議会の意見を聞く、諮問をする、こうあるべきだと思うのですが、そこまでいっているのか、いってないのか、先ほどの話を聞きましても、そういう法的措置についても検討をするのだけれども、大臣がどうも自信のない答弁で、審議会にはかって、審議会がいいかいかといった場合には、何か法的措置ができるようでもあるし、審議会がだめだと言えばできないようでもあると、このように受け取れるのですが、そうではなしに、私は、いま申したように、労働省はやはり家内労働法というものを制定するという意欲を持って要綱等を諮問すべきだと、こう思うのですが、その点についての見解をひとつお聞きしたい。
  81. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 審議会にどういう諮問のしかたをするかという問題でございますが、これは、先生お示しのとおり、労働省といたしまして、一応の要綱と申しますか、案と申しますか、そういうものをまずつくって、それを中心に御審議願うというのも確かに一つの方法であると、私どもさように考えております。ただ、この問題は、御承知のとおり、問題自体が非常に複雑でもございますし、また、審議会が発足をいたすということになりますならば、審議会委員にも、家内労働をやっておられる方々の代表なり、あるいは一般労働者の代表なり、あるいは発注者側の代表、あるいはまあ学識経験者と申しますか、あるいは公益委員と、別にかどばったあれでなくても、いずれにしても第三者的な立場の方とか、そういった方々に御委嘱を申し上げることになると思いますので、問題の性格上、そういう委員方々に自由にまず御検討いただくというほうが、あるいはむしろいい案ができるのではなかろうかとも考えられますので、その辺、実はまだいずれとも決定をいたしておりませんが、審議会が発足いたしますならば、もちろん審議会の御意向等も十分拝聴して、お示しのとおり三年以内と審議会はなっておりますが、実はできるだけ早い機会に、やはり答申を待って法制化の措置をなるべくならば講じたいと、こういう気持ちでございますので、まだいずれとも諮問のしかたを決定はいたしておりませんが、審議会が発足いたしましたならば、まずどういう形でか審議会の御意向等も十分拝聴した上で、せっかく審議会をつくるのですから、その御審議に便利なように、なるべく早く答申がちょうだいできるように処置いたしたいと、目下のところはさように考えておる次第でございます。
  82. 北村暢

    北村暢君 衆議院段階における会議録等も見せていただきましたが、大臣は、わが党の大出委員質問に対しまして——社会党は今国会に家内労働法案というものを提案しておるわけでありますが、それに対して大臣は、法律をつくることだけが目的ではなくて、その法律が実効があがるかあがらないかということが問題だというような点の御指摘があったようでございますけれども、私は、いろいろ行政的な処置では、一応労働省当局としてもできる限りの処置はされておると思うのでありますけれども、今日の家内労働者の実態というものはそういうのんびりしたような考え方で対処できるような実態ではないと思うのです。非常にこの家内労働というものは、関係者も相当数おりますし、また、収入面においても、この報告によりますというと、大体いわゆる失対関係の世帯よりも若干いい程度であるということでありますから、生活画においても窮迫していることはもう間違いないと思うのですね。それでありますから、私は、やはり法制化というものは、実効があがるとかあがらないとかじゃなくして、やはり法制化することによって行政措置でやるよりははるかに前進するということは、これは常識であります。そういう意味において、私は家内労働法の制定ということに非常にこだわるわけなんでありますけれども、先ほど申しましたように、調査会は相当長い年月を経て実態調査をやって、相当の資料というものが整っておるわけですね。したがって、政府がもし決断するならば、法制化の方向ということは私は可能である、こういうふうに思うのです。先ほどまだ方針がきまってないというようなことでありますけれども、ぜひやはり労働省としては熱意を持って要綱というような形で出すべきだ、まあ、学識経験者の意見を聞いてから要綱をつくるというようなことでは、私はそういうのんびりした家内労働者の実態ではないのじゃないかと思うのですね。したがって、この点は、いまの大臣の御答弁で実情わからないわけじゃないのですけれども、ぜひひとつ強くこの点は労働省当局が法制化のために積極的にやっていただきたいということの要望を申し述べておきたいと思いまするので、大臣の所見をひとつこの点についてお伺いしておきたい。
  83. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 先生の御見解も私どもよく理解ができるのでございます。先ほども申しましたとおり、労働省といたしましては、立法化もぜひ必要であろうし、これもしたいと、こういう基本的な考えは確かに私ども持っておるわけでございまして、ただ、審議会審議関係等から労働省がまず要綱的なものを示したほうがかえって審議に便利だというあるいは御意向になるかもしれませんし、また、審議会のほうでむしろ、もちろんいままでの調査会の答申等は参考になされましょうが、まあフリーな立場で審議することがかえってよろしいという見解にあるいはなるかもわかりません。この辺のところは十分打ち合わせをいたしまして、いずれにしてもなるべく早くこの法案等の用意ができるように、先生の御主張等も十分尊重いたしまして善処いたしてまいりたいと、かよう考える次第でございます。
  84. 北村暢

    北村暢君 この点はそれだけにしておきますが、しかし、この審議会の設置された目的は、法制的な処置の問題だけではもちろんないわけでありまして、しかも、三年間に限定したという理由は一応伺いましたけれども、私は、この三年間でこの家内労働の問題が行政的にもいろいろな問題について終わるとは考えられないのです。非常にむずかしい問題でありますから、かりに家内労働法が制定されても、なおかつ審議会というものは必要で、しかも、先ほど説明ありましたように、経済社会の動きと並行して家内労働の実態も変わっていく、これはまあ当然のことでしょうが、そういう非常に流動的な、しかも難問題を非常に多くかかえた家内労働問題でありますから、行政的な面においても私は三年間でこれが必要なくなるとは考えられない。まあ、大臣の御答弁では、その時点においてなお必要であれば継続していくことも考えられる、このような先ほどの答弁でございました。この家内労働問題に対する態度として、せっかくこの審議会というものを設けられて労働省はこの家内労働問題に積極的に取り組む、こういう意欲がようやく出たのでありますから、そういう点からいって、この三年間に限定したということについて、私は先ほどの御答弁を了としますけれども、そういう三年間で終わるというようなものではない、そういう認識に立って行政面におけるそのときどきの問題について、やはりこの審議会改善施策なりなんなりというものが検討されるべきなんだ、このように思うのでありますけれども、この点についての見解を再度お願いしたいと思います。
  85. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) その点も私も先生と全く実は同じ考えを持っておるのであります。そこで先ほどあのような御答弁を申し上げたわけでありますが、実は当面の法的措置なりその他の施策についての審議会答申というものをなるべく早くちょうだいしたい、こういう気持ちから、それにはやはり一応審議会自体の存置期間というものをきめておいたほうが効果的ではなかろうか、こういう考え方が一つと、先ほど申しませんでしたが、先生も御承知のとおり、審議会調査会等についてむしろこの際これを整理すべきだと——一般論でございますが、そういう空気が非常に強い際でありまして、今回も御承知のとおり、一部審議会の整理の案等も御審議願っておる、こういう際でございまして、実は自民党におきましても、また政府部内におきましても、審議会は一応原則として一切新たなものは認めない、こういうような方針をとっております関係上、この審議会の設置すらなかなか実は私ども、あるいは政府部内においても、異論と申しますか、容易になかなか賛成が得られないというような、実はこれは内々の話でございますが、そういう事情もありましたし、労働省としましては、この問題の非常な重要性にかんがみまして、特に家内労働——内職をやっておられるというような方々のお立場というようなことの重要性あるいはそれと一般労働者との関連、これもまたきわめて重要である。そこらのところを各方面に説明をいたしまして、いわば例外として、たぶんこの国会に御提案申し上げておるのは審議会としてはこれ一つじゃないかと思うのですが、ようやくこの意思の統一ができた、こういったような事情もございまして、当面の御審議をいただく、こういう立場から、三カ年に限って、さしあたり政府部内で設置に踏み切った、こういうような事情もございまして、その辺のところもひとつ御了承を願いたい、かように思っております。さらに、もちろん三年間でこの問題が解決するということではございませんし、問題がもちろんございますから、先ほど申し上げましたとおり、三年先の実情に応じて引き続きこれは存続されるというようなことになることを私としては希望いたしておるわけです。いまから無期限にというわけにもいきませんので、そういうような事情で今回の御提案を申し上げたわけでございます。
  86. 北村暢

    北村暢君 審議会の整理の法案も出たことを知っております。しかしながら、私も、一年に一回ぐらい形式的に開く審議会というのはたくさんあるんですよ、そういう審議会は整理していいと思うのです。それでこの審議会は、私はそんな審議会ではないと思います。一年間にどの程度開く予定になっているのか。大体これはあとで私質問をする予定になっているんですが、いまその問題が出ましたから関連してお尋ねするんですが、大体この審議会というものの運用の方針ですね、これはどのように考えておられるのか。
  87. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 私は、実は先ほど来、審議会答申というものをなるべく早くちょうだいしたいということを申し上げたわけですが、私の心づもりとしては、まあ、長くとも二年間ぐらいにはできれば答申をちょうだいしたいものだと、実はさように考えているわけでございます。したがいまして、その気持ちも審議会ができますならばもちろんお伝えをして御了解を得たいと思いますが、そういう考え方からしますならば、二年以内にこれの答申をちょうだいするということになれば、逆算してどういうスケジュールでやったならばあるいはできるかというようなことを、スケジュール等もひとつ組んでいただいて、答申をなるべく早くちょうだいしたいというふうに、そうお願いしたい、かように考えているわけでございます。具体的にそうなった場合にどのくらいの審議会の回数開くかということは、これはもちろん審議会とお打ち合わせしなければならぬですが、大体のところ、少なくとも月に一回ぐらい最小限お開き願って、答申を急いでいただきたい、かように考えているわけでございます。
  88. 北村暢

    北村暢君 それじゃ次にこの家内労働というものの定義についてですが、家内労働というとばく然としているのでありまして、最賃法に一応の規定はあるようでありますけれども、これは最賃法における家内労働の規定のようでありまして、臨時家内労働調査会の報告によりましても、若干これとは違った見解も述べているようでございますが、一体家内労働というものの定義をどのように考えておられるのか、これをひとつ簡潔でよろしゅうございますから、御説明願いたい。
  89. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 基準局長から御説明いたさせます。
  90. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 現在の法制上の定義といたしましては、ただいま先生御指摘のように、最低賃金法の第二条第四項に「この法律で「家内労働者」とは、委託者の委託により、物品の製造又は加工等に従事する者であって、その業務について同居の親族以外の者を常時使用していないものをいう。」、つまり、「同居の親族以外の者を常時使用していない」ということで、いわゆる労働者を雇っているという状態のものではない、こういう趣旨の定義になっておりますが、ただ、これは最低賃金法上の定義でございまして、問題は、複雑多岐にわたる家内労働を実態的にどう把握するのかという点にいろいろ問題があったわけでございます。この点について、臨時家内労働調査会の報告書におきましては、これを三つに分けまして、家内労働を、その世帯の本業として世帯主自身がこれに従事し、これによって生計を維持しているという、いわゆる専業的家内労働と、それから、たとえば主婦や、老人などの、世帯主以外の家族が家計補助などのため、家事の合い間に従事する、いわゆる内職的家内労働、それから、農家や漁業を営んでおります者などが、すなわち、他に本業を有する世帯主が本業の合い間に従事する副業的家内労働、この三つの類型に分けまして、それぞれのこの類型に応じました実態分析を行なっておるわけであります。最低賃金法の場合には、一般の労働者の最低賃金との関連におきまして最低工賃を決定するという観点から先ほど申し上げましたような定義になっておりますが、先刻来大臣が御答弁申し上げたように、家内労働法という法律を制定するとして、その法律対象になる家内労働をどのように把握するかという点につきましては、ただいま申し上げました専業的家内労働、内職的家内労働、副業的家内労働、このそれぞれの実態を踏まえまして法的規制になじむもの、しからざるものといったものを十分検討いたしまして、その概念なり範囲を明確にする必要があろうと存じております。したがいまして、今後家内労働法を制定する場合の、家内労働とは何かという点につきましては、法案を作成する過程におきまして議論さるべき最も根本的な問題であろうかと存じておる次第であります。   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕
  91. 北村暢

    北村暢君 そういう答弁をされるのではないかと思っておったのですがね。それは専業的とか内職的あるいは副業的というのは形態別の分類であって、定義というのはそうではないのではないですか。定義というのはやはり調査会が、定義がむずかしいのだけれどもと言って、三点かにわたって定義というものを考えるように指摘しているのですよね。あなたは衆議院でもそういうふうな答弁をしているのですよ。それはあなたの答弁が間違いじゃないですか。定義というのは、専業的とか副業的とか内職的とかいうのが定義じゃない。それは家内労働の形態を示したものであって、家内労働というものの定義は、最賃法で述べているのも一つの定義でありましょう、あれも。しかし、それは最低工賃をきめるための最低賃金法による定義であって、今後問題になる定義というのはそうではなくて、定義についてこういう点というのがあるのではないですか。この点は、私はあなたの衆議院の速記録を見てあなたの答弁が間違いだと思うから、それで私はわざわざ質問しているのですよ。したがって、これは答弁し直したほうがいいと思うのですな。どうでしょうかその点は。
  92. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 家内労働とは何をさすかということについて、厳密に言うことは非常にむずかしいという判断に臨時家内労働調査会が立たれまして、そして、その判断基準として、作業場、それから、自分一人でやるかどうかといったようなこと、それに委託の関係といったような柱を立てまして、そのそれぞれの基準に従いまして、まあ三つの類型を専業的、内職的、副業的と、この三つの類型に分けたということでございます。したがいまして、先生が、家内労働の類型を言ったにすぎないので、家内労働の定義自体を述べたわけではなかろうという御指摘は、まさにそのとおりでございます。しかも、一方においては、最低賃金法に定義がございまして、その場合の家内労働とは、委託関係と雇用労働者を使っていない、この二つの点からの定義を定めているわけであります。そこで、私がいまたとえば家内労働法というものをつくるとすればどんな定義を定めるかということをいまここで申し上げるというのは、これは非常にいろいろ御議論もありますので、先ほど申しましたような三つの類型を踏まえまして、どのような概念規定を定めたらよろしいかということが問題になるでありましょうということを申し上げているのでありまして、定義づけが非常に困難でございますというのが最終的なお答えになるかと思うわけでございます。
  93. 北村暢

    北村暢君 それで大体気持ちはわかりました。法律制定する場合に、その三つの業態のうちはずすものが出てくるかもしれないし、副業的だなんというものははずすことがあるかもしれないというようなことであればわかるのですが、まあ、家内労働者というものの規定は、法律を制定をして、そうして実際にその運用をするという場合に、どこまでを家内労働者とするかということ、これもむずかしいことは十分承知しております。したがって、そういう説明であればわかるのですけれども、いま直ちに家内労働者の定義がどこまでだということを言明せよということを言っているのではないので、その法律制定をする場合には、やはり定義をしなければいけない。法律適用をする範囲というものをはっきりしなければいけないのですから、そういう意味で、非常にめんどうですというのであればわかるのですけれども、その点はその程度にいたしておきまして、次にお伺いするのは、家内労働に関する行政措置をいろいろやってきているわけでありますが、この点について若干この前も説明をいただきましたのでありますが、きょうはより具体的にひとつお尋ねいたしたいと思います。最低賃金のほうのとそれから家内労働の最低工賃との関係の問題なんですが、まず最低賃金法のほうでこの最低工賃というのをどのように決定せよということになっているのか、この点法律を見ればわかるのですが、説明をしていただきたいと思います。
  94. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 最低賃金法におきましては、第二十条に最低工賃の決定のしかたについて定めがございますが、かいつまんで申しますと、その要件としては、まず第一に、最低賃金がまず一定の条件のもとで決定されておること、つまり、三つの場合がございますが、一つは法第十条による業者間協定に基づく地域的最低賃金が決定されるか、法第十一条に基づきます労働協約に基づく地域的最低賃金が決定されるか、あるいはまた、法第十六条に言ういわゆる職権に基づく最低賃金が決定されておること、それがまず第一の前提条件でございまして、第二の前提条件としましては、これに関連する家内労働が最低賃金の有効な実施を確保する上に障害となっているということが必要とされるわけでございます。したがいまして、現在までのところ、これら前提となるべき条件が整っていないという関係もございまして、遺憾ながら最低賃金法による最低工賃はまだ決定されていないというのが実情でございます。
  95. 北村暢

    北村暢君 そこでお伺いしたいのは、最低工賃の問題と最低賃金の問題。賃金問題については非常に類似しておりますが、特にこの最低工賃というものがどのような実施状況にあるかということでいま法的な説明を受けましたが、法律に基づく最低工賃というのは一体どのような実施状況になっておるのか。そしてまた、具体的にこのきめられたものというのはどういう、どの程度の工賃になっているのかについていま幾つかの決定の方法があるようでありますが、その最低工賃の決定されたものの決定方法はどういうものであるか、この点について説明を願いたいと思います。   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕
  96. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 最低工賃については、先ほど申しましたように、前提条件が満たされたケースがないものですから、今日まで決定されておりません。しかし、労働省といたしましては、調査会の示された見解の中にも、今後最低賃金法第二十条に基づく最低工賃をさらに進めるべきだという見解が示されておりますので、三月に労働基準局長通達を出しまして、昭和四十一年度におきましてはできるだけこの最低工賃の決定を進めるべく細目を指示いたしまして、目下いろいろ指導しておるような次第でございます。
  97. 北村暢

    北村暢君 いま、前提がないからというのは、決定した例がないと、こうおっしゃるのですけれども、この前提がないという、支障になっている問題は何なんですか。ちょっとわからないので説明していただきたい。
  98. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) まず第一に、最低賃金が決定されておること、その最低賃金としては三種類のものがあるというふうに申し上げたわけでございます。で、その場合に、その最低賃金が決定されたその地域内における同一または類似の事業を営む家内労働者がおるかどうかということが問題になるわけであります。そこで、そういうケースが遺憾ながらあまり——あまりと申しますか、ほとんどないものですから、法第二十条の第一の前提条件が満たされないと、こういうことでございます。しかしながら、御承知のように、最低賃金そのものもかなり普及してまいりまして、最近におきましては四百四十万の労働者がその対象になるといったような形で普及してまいりましたので、それとの見合いにおきまして、今後十分促進できるというふうに考えておる次第でございます。
  99. 北村暢

    北村暢君 たとえば専業的な家内労働者については、私はあるような気がするのですがね。最低賃金、業者間協定賃金でも、決定されているというようなものですね。たとえばまあ燕の金属製品のみがきですか、ああいう類似の業種というのは、そういうふうな面で、専業的な製造工業等の下請等についてはあるのじゃないかというような感じがする。そういうものもまだ一件も例がない、こういうことのようですがね。それくらい最低賃金そのものがきめてなければだめだということですから、ないということになるのでしょうけれども、その通達をされて最低工賃をきめようという指導をされているということは、法的に言えば、最低賃金がきまらなければきまってこない、こういう結果になるのですから、最低工賃独自できめるというわけにはいかない、そういう法的な手続になっているのですね。その指導のやり方は、一体、結局は、最低賃金——類似の最低賃金をきめなければいけないという前提がある。こういうことで、その前提をひとつきめるような指導をする、まずそれをやらなければいけない、こういうことになる、どうでしょうか。
  100. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 大体御指摘のとおりでございまして、つまりまず業者間協定なら業者間協定方式による最低賃金がきまりまして、それの地域的な拡張というような要件が必要になってまいります。かような要件が必要でございますから、実は最低工賃決定の指導をいたします場合には、賃金額内容の問題と実は関連するわけであります。労働省といたしましては、その最低金額が、いわゆる賃金額の目安にはまるように目下指導いたしておるところでありまして、それとの見合いにおきまして実態的に最低工賃の額をどうするかということも十分検討して進めてまいりたい。したがいまして、まちまちでございますけれども、商品の種類によりましては、家内労働の工賃がかなり高いものもあったりいたしまして、必ずしも最低賃金法で定めておる最低工賃がいわば最低賃金の足を引っぱらないようにという趣旨のものでないような、逆現象を生じておりますとか、いろいろ複雑な現象を生じております。しかし、いずれにいたしましても、最低賃金のほうをまず整えまして、それとの関連において最低工賃決定を促進していきたい、こう考えておる次第でございます。
  101. 北村暢

    北村暢君 それではまあ最低工賃の決定は例がない、こういうことですが、委託者間の標準工賃額の申し合わせ、これの実施状況はどうなんですか。
  102. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 標準工賃を指導いたしまして設定しました数は、業種の数で申しまして、業種で四十五業種、委託者の数で三千二百九十五、家内労働者数で八万一千七百四十三というのが昭和四十年十二月末現在の数字でございます。地域的に業種的に多種にわたっておりますが、できるだけ適正な工賃でありますように指導を加えてきておる次第でございます。
  103. 北村暢

    北村暢君 この標準工賃のいま相当指導をされて四十五種にわたって標準工賃額が決定されているようでありますが、これの実際の額の例ですね。どのくらいからどのくらいにきめられているのか、各業種ごとに、全部といってもあれでしょうけれども、代表的なものを、ひとつどのぐらいの額になっているのですかね、示していただきたい。
  104. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 手元にございまする資料から一、二例を申し上げますと、一日八時間作業をした場合に換算いたしまして申し上げますれば、たとえば兵庫の絹、人絹織物業につきましては、ウールお召しで九百円から千円といったような例がございます。静岡のひな類製造業におきまして、たとえばまき絵でございますと非常に幅がございまして、二百五十円から六百円ですが、木地の関係では五百円から八百円というような額になっております。あるいはまた、兵庫県のメリヤスくつ下製造業について申しますと、くつ下のかがり作業が約六百三十円といったような金額になっております。特殊なものとして秋田県の漆器製造業が丸物で千百円から千三百円、角物で千円から千二百円といったような金額のものが標準工賃として設けられております。
  105. 北村暢

    北村暢君 そこで、八時間労働に換算しての金額で一日の標準額になっているようですが、大体これは家内労働の労働時間とも関連してくるのですが、非常にいま聞いたところによるというとこれは高いようにも思われる。こういう家内工業ならば相当収入的にも高いのじゃないかと思うのですけれども、実際に八時間労働に換算をすると、こういうことだということで、労働時間の平均というのは一体どのくらいになっているのか。そうして、実際の一日の手取り収入というのですか、そういうものは一体どの程度になっているのですか。
  106. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 実は臨時家内労働調査会の報告書におきましても、各種の家内労働を平均して労働時間相当のものを出すということが計算上非常に問題があるものでございますから、その家内労働時間の表現につきましても、地域によって違いがあるが、一日の労働時間は三時間ないし七時間、かように申しております。職種によりまして、また専業か内職かといったようなことによりまして、かなり差がございます。一般的にはただいま申しましたような表現を用いておるわけでございます。  それから、工賃につきまして、これも家内労働一般についての概括的な説明でありますが、工賃は百円ないし三百円くらいのものが大部分であるというふうに申しております。しかしながら、これも専業の場合としからざる場合によりましてその内容が違うわけであります。専業の場合は、たとえば機械設備や技能熟練を要する作業が多いときに高い。先ほどお答え申しました標準工賃が高いものは、非常に専業的なものが多うございます。それに対しましてくつ下のかがりといったようなことになりますと内職が多くて低くなる、こういうような実情にございます。
  107. 北村暢

    北村暢君 そこでちょっと問題それるのでありますが、賃金問題出てまいりましたので、最低賃金法の実施状況について、関連がありますのでひとつお伺いいたしたいと存じますが、最低金額の決定は一体どのような状況になっているのか。最低最高、大部分のものが一体どのくらいなのか、この最低金額の決定の状況について御説明願いたいと思う。
  108. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 本年の三月三十一日現在の数字で申し上げますると、最低賃金の決定された件数は、いわゆる業者間決定方式によるものが千九百十七件、その地域的拡張を行なった最賃が二百二十三、それから法第十一条によります労働協約の拡張、これが六件、それからいわゆる職権方式によります法第十六条によるものが二件、かようになっておりまして、適用のある使用者の数は三十三万三千八百二十三、適用を受ける労働者数は四百三十九万七千九百十七人というようになっております。金額につきましては、いわゆる最低賃金の目安を定めまして、それに適合するように指導しておりますが、いま申しました件数のうちで、一番分布の密度が高いのは四百円から四百四十九円でございまして、これが九百六十七件、それから次に分布の密度が高いのが四百五十円から四百九十九円で、これは三百八十八件、かようになっております。四百円から四百九十九円までの分布が一番高いわけでありますが、最高と申しますか、高いものでは、六百円以上のものが五件、逆に三百五十円未満のものが四件と、この四件につきましては、これは特殊な状態でございまして、いろいろ指導を加えておるところでございますが、ごくわずかではございますが、三百五十円未満が四件という件数がございます。
  109. 北村暢

    北村暢君 そこでお伺いしたいのは、職権でやりました二件というものの内容ですね、これは二件ですからわかっておると思うのですが、どこでどういうふうな状況になっておるのか、これをお聞きしたい。
  110. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) これは先生御承知の石炭の最低賃金と金属工業の最低賃金でございます。金額はともに一万六千円ということでございます。ただし、これは坑内でございます。
  111. 北村暢

    北村暢君 いまの職権は中央最賃審議会で決定されたもの、これですね。
  112. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) はい、さようでございます。
  113. 北村暢

    北村暢君 それで地方の最低賃金審議会で職権できめたという例はございませんか。
  114. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 現在までございませんが、ちょっと説明を加えさしていただきますと、第十六条によるいわゆる職権決定方式の発動には、この業者間協定とかあるいは労働協約の拡張適用だとか、そういった方式を用いて最低賃金を決定することが困難あるいは不適当だという判断が前提にあるわけでございます。したがいまして、それぞれの県におきましては、まずこの基本的な最低賃金制度をまず普及いたしまして、しかもかつ残った分野におきまして非常に困難あるいは不適当だというものが明らかになりました際には、職権決定できめる、こういう段取りになっているわけでございます。で、先ほど申しましたように、最低賃金制度がかなり普及してまいりました。そのような段階に至りましたので、最近幾つかの県におきまして、地方の最低賃金審議会の手によります職権決定方式が行なわれんといましつつありまして、地方最低賃金審議会で幾つかのものが目下審議をしておる、こういう状態でございます。
  115. 北村暢

    北村暢君 幾つかの地方でそういう状況にあるようでありますが、これに対して日経連その他が相当、どちらかといえば、警戒をしているようであります。したがって、これについて労働省としては、どうなんでしょうか、指導としてそういう決定がなされては困るとかなんどかいうことで圧力を加えたりなんだりするようなことはないのかどうか。先ほどの説明でややわかったような気もするわけですけれども、重ねてこの点についてお伺いしておきたいと思います。
  116. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) かつて中央最低賃金審議会におきまして今後の最低賃金の進め方の答申を出しました際に、十六条方式による最低賃金の普及につきましては、最低賃金法の十四条による勧告をしてから職権決定方式を用いるべきだというような考え方を出されたこともございますが、一方におきましては、最低賃金法に規定する各種の方式を活用すべきだということを指摘しておられたわけであります。ところで、ただいま申しましたように、職権決定方式の動きが各地で出てまいりました。そこで、中央最低賃金審議会といたしましても、これに対してどのような運営を適当と考えるかということが問題になりまして、小委員会が昨日開かれたようなわけでございます。労使、公益が話し合いまして、そのような職権による最賃が決定されるということはこれは望ましいことではないか、ただ問題は、実態調査を十分実施し、関係労使の意向を十分反映し、それで三者の同意を得て決定していくというのは、これが望ましい形じゃないか。要するに、実態調査も労使の納得のできるように深甚なる考慮を払ってもらいたいというようなことでございました。いま進められておりますものにつきましては、そのような前提の上に地方最低賃金審議会の決定を見るならば、これはけっこうなことではないかという意見が支配的でございました。かような考えで、十六条方式による最低賃金は指導すべきでないか、こういうように相なっておる次第でございます。したがいまして、いま御懸念のような点につきましては、一応中央最低賃金審議会として考え方を明らかにしているということでございます。
  117. 北村暢

    北村暢君 そこで、その点は中央最低賃金審議会等で十分検討されているということでありますから、私は要望として、そういういま説明のありましたような指導が望ましいと、このように思いますので、大臣においてもひとつこの点は意にとめておいていただきたい、このように思います。  そこでお伺いしたいのは、先ほど最低金額のいろいろな例が示されました。大体四百円から四百四十九円、四百五十円から四百九十九円のものが圧倒的に多いわけですね。そこでお伺いしたいのは、昭和三十九年の四月における東京都の独身男子十八歳の標準生計費というのは幾らぐらいになっているか。
  118. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) 標準生計費のとり方につきましてはいろいろあるわけでございますが、一応政府関係におきましては、人事院が御承知のとおり標準生計費を出しております。ただいま昭和三十九年という先生のお話でございましたが、ちょっと手元に三十九年の数字がございませんので、四十年の人事院の標準生計費が出ております。これによりますと、十八歳、独身男子で一万五千五百九十円、かようになっております。
  119. 北村暢

    北村暢君 いまお聞きのとおりで、満十八歳の成年男子の標準生計費が一万五千五百九十円である。先ほど来説明のありました日額の大体圧倒的に多いのが四百円から五百円の間ですね。これは満十八歳とは限らないわけです。いかにこの最低金額の制度が普及して、しかも、これもまだまだ普及したといえども問題にならないわけでありますが、その額においては、いま出ました東京都の男子十八歳の標準生計費より低いというのが圧倒的である。こういう実情における最低賃金法というものについて私は疑問を持たざるを得ないのであります。したがって、ここで大臣にお伺いしたいのは、そもそもこれは最低賃金法の制定そのものに私は問題がある。これはもう私どもの年来の主張、現行最低賃金法の業者間協定による賃金決定方式、これにまず問題があるわけなんでありますが、実情はこのようであります。したがって、これについてどのような見解を持たれるか。しかも、先ほど来御説明のありました標準工賃に至っては、これは、一日百円から三百円というのが平均すれば非常に多いわけであります。おそらくこういう点からいきますというと、専業的なものは若干、先ほどの八時間労働換算では相当の工賃になっているようでありますけれども、いずれにしても、大部分のものが家内労働等においても賃金が非常に低い。これは最低賃金と、それからもう一つは、先ほど決定のまだ出ておらない最低工賃の問題、これらの問題がまだ決定されたものはないということでございますが、いずれにしても標準生計費を割った賃金であるということはいまお聞きのとおりであります。したがって、私はここで大臣にお伺いしたいのは、こういう実情における最低賃金というものの効果というものについてどのように考えておられるのか、そしてまた、今後この最低賃金法に対する改正その他についてどのような方針と見解を持っておられるのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  120. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 現在行なわれております大部分の最低賃金というものがいわゆる業者間協定に基づいて行なわれておることは御承知のとおりでございまして、これにつきましても、実は最低賃金の目安につきましても、先般賃金審議会の御答申を得て、最近における賃金の傾向等を勘案いたしまして目安の引き上げをいたしたのであります。大体一四%から一七・五%程度の引き上げをいたしたわけでございまして、これが生計費等の目安との比較において必ずしも十分でない、こういう点もそのとおりだろうと思います。ただ、生計費と賃金の関係でございますが、まあ賃金は賃金それ自体として一つの、何と申しますか、傾向なり実態があるわけでございまして、最低賃金をきめる際にもまず主としてその趨勢を見てきめる、こういう状況でございますので、そこに必ずしも相マッチしてないという面が現に存在せざるを得ない、こういうことだろうと思いますが、しかし、実際問題といたしましては、最近の特に初任給の上昇の傾向等からいたしますならば、最低賃金に縛られてと申しますか、それに拘束された初任給、こういうことにも必ずしもなっておらぬようでありまして、そういう点から考えましたならば、生計費とのアンバランスという問題も、事実は直接最賃そのものと比較したことではないのではないか、こういうふうにも実は考えられるのであります。いずれにいたしましても、その間の基礎数字は事務当局から説明いたさせますが、まあ最賃制の問題につきましては、もうあらためて申し上げるまでもなく、いろいろな御主張がございますので、昨年八月に、中央最賃審議会に、今後の将来の最賃制というものをどうすることが一番適当であろうか、特にその際においてはILOの二十六号条約等にも合致するようにぜひ御検討いただきたい、こういうことをお願いいたしておるわけであります。さしあたってといたしましては、これまた最賃審議会の御答申に従って、四十一年度末までは現行の制度に基づいて極力これが施行を拡大していく、こういうことに目下計画的に努力をいたしておる、こういうことでございまして、私どもとしましては、最賃審議会の御答申をこれまたなるべく早くひとつちょうだいをいたしまして、将来の最賃制というものを確立をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。何か数字的のことにつきましては、事務当局のほうから御説明いたします。
  121. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) ただいま大臣が申されましたように、最低金額の目安につきましては、昭和三十九年十月の答申におきまして、三百六十円を最低にし、最高が四百八十円という幅のあるものを甲乙丙の三つの地域に分かちまして日額を定めたのでございます。しかし、その後の賃金の上昇傾向等からして、これでは低いという意見もございましたので、その後中央最低賃金審議会では、この金額の目安をさらに検討いたしまして、本年の二月に、甲地域におきましては四百七十円から五百二十円、乙地域におきましては四百四十円から五百円、丙地域におきましては四百十円から四百八十円というふうに改定いたしました。その上昇率は、甲地域では、一番下の下限のものにつきましては一七・五、乙地域では一六、丙地域では一四と、それぞれのパーセンテージだけ引き上げを行なった、こういうことでございます。しかもなおかつ標準生計費より低いじゃないか、こういう御指摘でございます。この点につきましては、最低生計費ではなくして標準生計費でございますので、直ちに比較するということは困難かと存じます。しかし問題は、当面、最低賃金制をどうするかという基本的な問題が非常に大きくクローズアップされておりますので、ただいま大臣御答弁のような形で鋭意審議を進めておるという状態でございます。
  122. 北村暢

    北村暢君 私も、その最低賃金制度の問題と標準生計費と直ちに比較しろという意思は持っていないのですが、その比較することは無理であることも十分承知しておるのですが、標準生計費を割っておるような最低賃金をきめておるということだけは、低いという意味においての比較なんです。ただ最低賃金はこれくらいに決定されておりますけれども、労働省では一体——私どもの最近よく聞きますのには、中小企業の初任給等はほとんど大企業とも一致するような賃金になってきている、そしてまた、中小企業では低賃金ではもう人が来なくなってきておるということです。したがって、中小企業労働者の賃金というのは私は相当やはり上がってきておるとは思うのです。その実態ですね。最低賃金はこのようにきめられているが、一体この実態最低賃金をどのように上回っているのかですね。最低賃金ですからこれ以下ということはないんでしょうけれども、大体この中小企業労働者のこれはまあ規模にもよりましょうし、いろいろな見方もあるんでしょうけれども、この最低賃金をきめた、こういうふうにきめてあるんだが、実態は、賃金の実態はどういうふうに動いているのかということなんです。これはどのように把握されているのか、これをひとつ伺っておきたいと思います。
  123. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) ただいま先生の御指摘の賃金の実態という問題にはいろいろな内容があろうかと存じますが、まず冒頭に先生御指摘の、中小企業と大企業ではだんだん賃金の格差が縮まってきているというじゃないかという点につきましては、たとえば昭和三十三年当時を見ますると、規模五百人以上の事業場におきまする賃金を一〇〇といたしますれば、規模九十九人から三十人までの労働者を使用する規模のものが五四・七、二十九人から五人といった規模におきましては四三・六と、かなりの格差がございまして、それが、昭和四十年について見ますると、五百人以上を一〇〇としますれば、三十人から九十九人までのものは七一・〇、それから五人から二十九人の規模のものは六三・二というように、かなりの格差縮小を見せてまいっております。一方初任給につきましては、御指摘のように、初任給全般につきましては最近数年間著しい上昇傾向を示しておりますが、その初任給がいわゆる平準化傾向を示しまして、地域間の格差及び企業間の格差をなくしつつあるということは、これまた御指摘のとおりでございます。これ一々数字を申し上げるのもいかがかと存じます。明らかに従来の格差縮小、平準化傾向の促進と申しますか、平準化傾向がますます大になってきたということは明らかでございます。そのようなものとの関連におきまして、今後最低賃金制度をどう考えるかという点についてはいろいろ問題があろうかと存じまするが、先ほど申しました目安の改定といったような場合におきましても、そういった全般の状況をも考慮しつつ検討がなされておるわけでございます。
  124. 北村暢

    北村暢君 私お伺いしたいのは、いまの中小企業の賃金の値上がりというものは、労働力の需給の関係から、中小企業が上げざるを得なくて上げてるということだと思うのです。したがって、企業採算、利潤というものを低下してまでやはり上げざるを得ないわけですね。そういう意味で上がったんであって、先ほど最低賃金のアップ率が一七%ということでございましたから、そういう点においてまあ低所得者がだんだん上がってきているということは、これはいい傾向であり、また、いろいろな給与政策上もそういう面が配慮されていることもわかります。ただ私は、最低賃金法によるこういう最低金額の決定というものが、中小企業労働者でしょうね、大部分が、この適用されるのは。したがってそういうものにどういうふうに効果があがったのかということですね。私はこの労働需給の関係で、中小企業は、もう最低賃金あるなしにかかわらず上げざるを得なくて上げているのだろうと思うので、最低賃金を適用にならない者でたくさんおるわけですね。そういう人が、この最低賃金を割っておるような者が非常にたくさんあるのかないのか。適用になっている業者間協定がなされていなくても最低賃金を上回っているんじゃないかというふうに、感じとして、そう思うんですよ。したがって、最低賃金をきめることがどれだけの意義があるか、こういう低いものを。そういう点についての効果を実はお伺いしたかったのです。
  125. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 最低賃金を進めるにあたりまして、計画をつくって進めておるわけでありますが、予定といたしましては、五百十三万程度の労働者について来年の三月までに最低賃金を普及したい、かように考えておるわけでありますが、その中でもいわゆる重点対象業種というものを定めまして、国として中小企業の中でもいろいろな施策を講じておる業種につきましては、これを重点産業としてとらえまして、そこに最低賃金を精力的に普及していきたい、かような考えを持っておるわけであります。で、普及の過程におきまして、最低賃金を実施した結果、従来低かったものが引き上げられたといういわゆる影響率につきましては、一〇%ないし一五%のものが影響を受けた。つまり、それより以下のものがそれだけ引き上げられたというその効果が認められております。その引き上げに伴いまして、さらに上のものがさらにどのような影響を受けたかということは、数字的に把握いたしておりませんが、少なくともそれ以下のものは引き上げられたという効果を伴っておるわけでございます。しかしながら、一方において、最賃の額よりも高い賃金をすでに支払っているから、ことさらつくる必要もなく、また、その意欲もないものもあるだろうという御指摘は、これは東京とか大阪とか、そういうかなり賃金の高い地域におきましてはそういうものがあるようでございます。それにつきましても、せっかくの最低賃金が実効性に乏しいものであっては困るという観点から、先ほど申しましたように、昭和三十九年に勧告がございまして決定した最低金額の目安を、本年二月に改定する際には、引き上げ率としてはかなり高い引き上げ率を考えたということでございまして、できるだけ実効性のあるものに近づきたいというのが最低賃金審議会並びに労働省の基本的な考え方でございます。
  126. 北村暢

    北村暢君 最賃問題はそのくらいにいたしまして、次にお伺いしたいのは、この家内労働手帳の普及並びに家内労働者の安全等の問題、これは普及の問題についてはこの前お伺いいたしましたのですが、家内労働手帳の委託条件の内容というものはどういうことを規定しているのでありますか。
  127. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 労働省が行政指導として行なっております家内労働手帳は、その趣旨は、できるだけ委託条件を明確にして委託条件の記録を保管させようというねらいがございます。したがいまして、家内労働手帳の記載事項としては、委託、納品及び工賃支払いの際、それぞれの年月日、製品の種類、規格、工程、数量、工賃単価、工賃額というような事項を手帳の中に記載させるようにいたしております。で、このような委託を中心にいたしましていろんな事項の記載をするというふうにいたしておりますのも、先生御承知のように、この委託なりあっせんの経路というものは非常に複雑でございまして、その委託が幾つかの階層に分かれておるという、委託に重層性と申しますか、そういうものもございますし、また、委託する者が一方においてみずから家内労働者でもあるといったような形がございまして、物によりますと、いわゆる迷路のような、どの経路を経て委託がなされておるか把握が困難だというものもしばしばございます。したがいまして、そのような委託の経路を追うということが非常に困難だということを考慮いたしまして、とにかく家内労働手帳を持っていただきまして、委託条件をそこに明らかに記載しておくと、後日紛争の起こらぬようにいたしたいというのが家内労働手帳を普及させておるねらいであるわけでございます。その点についてはそれなりに効果があったものというふうに私ども承知しておるような次第でございます。
  128. 北村暢

    北村暢君 それから家内労働者の安全ということが問題にされておりますが、その重点はどういうところに置いておられるのですか。
  129. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) かつて家内労働の中で、ヘップサンダルの製造をめぐりまして、いわゆる有機溶剤による災害というものがかなり大きく取り上げられたわけでございます。現在労働省がやっております家内労働の安全衛生対策として特に重点を置いておりますのは、ただいま申し上げました有機溶剤その他の有害物を使用しているもの、あるいは引火性料品、火薬類を扱っておるもの、それからプレス機、木工機など、指や腕などのけがをするといったような機械を使用しておるものといったようなものを中心にいたしまして指導しておるわけでございますが、その指導の経路といたしましては、末端の家内労働者すべてについて指導するというのは、実際上なかなか困難でございますので、業界を指導する機会をとらえまして、委託者を中心に、これらについての指導を行ないたいというふうに考えておる次第でございます。これにつきましても、安全衛生に関するいろんな啓蒙指導等も必要になるわけでございますが、労働省といたしましては、先ほども申し上げましたように、三月に労働基準局長通達を出しまして、それらの指導の細目を指示した次第でございます。
  130. 北村暢

    北村暢君 次に健康保持ということを行政指導でやるようですが、これは非常に多い人を一体どういう手段でこの健康保持ということをやっておられるのですか。
  131. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) これは現実にはなかなか普及指導が困難でございます。結局労働省といたしましては、いわゆる産地集団、たとえば燕でございますとか、ああいったような家内労働形態のものが地域的に集中しておるというようなものをとらえまして、健康診断等についてのあっせんをできるだけ進めておるような次第でございます。ただ御承知のように、たとえば巡回健康診断と、いろいろ方法はございますけれども、まだ地域によっては十分でないところがございますので、指導を加えますについてもいろいろ苦慮しておるような次第でございます。しかし、この点につきましても、直接家内労働者の生命健康に関する問題でございますから、できるだけ進めてまいりたいと、労働省としては、中小企業に対する労働対策として、巡回健康診断その他いろいろ配慮しておるような次第でございますが、そういった機会をできるだけ利用して、今後健康診断等の励行につとめたいと考えておる次第でございます。
  132. 北村暢

    北村暢君 労働災害保険への特別加入の制度、この制度の運用状況は一体どのようになっておりますか。
  133. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 従来雇用労働関係にございません家内労働者につきましては、労災保険法の適用がなかったわけであります。しかるに、昨年労災保険法の大幅改正を行ないまして、雇用労働者にあらざる者、たとえば一人親方とか、大工、左官の中でそういうまあ自営業を営む者、あるいは個人タクシーといったような、労働者に準ずる人々につきましては、特別加入という制度を設けまして労災保険で扱うという制度を設けたわけであります。  そこで、一口に家内労働者と申しましても業種がさまざまございます。そこで、労災保険の特別加入制度に乗せるものについてはどのようなものが適当であるかという点について目下検討を進めておるところでございます。
  134. 北村暢

    北村暢君 まあ特別加入制度としては、制度としてはこれはできるということで、その方向その他について検討中だと、法改正によってできるようにはなったと、こういうことですね。
  135. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 法的には規則を定めまして、業種を指定するということが可能でございます。そこで、家内労働全般といいましてもいろいろの業種がございますので、どのようなものを扱うのが適当かという点について検討を加えておるというわけでございます。
  136. 北村暢

    北村暢君 次にお伺いいたしますが、先ほど、この非常に複雑な、この委託者、仲介人等複雑なので、家内労働手帳というようなものをやると言われたのですが、その実態なんですが、仲介者というのはどのくらいおって、どういう形をとっておるのかですね、これをちょっと御説明願いたいと思います。
  137. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) まあ仲介人の実数把握もこれはすこぶる困難でございますが、臨時家内労働調査会の報告書において把握いたしました数は、仲介人約九千人、かように把握いたしております。この委託経路につきましては、その委託するものが問屋である場合があり、それから製造業者である場合があり、つまりメーカーであったり、問屋であったり、まずその委託する最初の形態がさまざまであるということと、仲介人のあり方がその委託者から末端にいくまで幾つもの仲介人がある場合と、そうじゃなくて、比較的簡単に問屋あるいは製造業者と、つまり近い経路を経て委託されるといったようなものがある、千差万別であるということが調査会の報告書にも示されておるところでございます。これはちょっとことばで申し上げるのが非常に困難でありますために、臨時家内労働調査会におきましても、その仲介経路につきまして幾つかの型を図解いたしておるような次第でございまして、これによって御了察いただきたいと思います。
  138. 北村暢

    北村暢君 それで非常に工賃の安いものにこういう仲介人が幾らもいるということ自体が、零細一な副業、内職的なものの工賃のピンはねをやっていなければいいようなものですけれども、結果的にはそういうことになるんじゃないかという感じがするのですね。これは私はあまり実態はよく知りませんけれども。したがって、委託者の五万七千くらいの事業所のうち、九千人——約一万人近い仲介人がいる。これはどうしても置かなければならないものはやむを得ないとしても、これは指導としては一体委託者との協議によって何とかこれはならないものなのかというような気がするので、工賃が零細であるがゆえに、高い工賃になっていればいいのですが、そうではないわけですから、下請下請で仲介人がおってやっていくという点について、何かしら割り切れないものを感ずるのですが、指導的な方向としてはどういう方針で臨まれるのか、この点ですね。まあ実態が調べなければわかりませんけれども方針だけひとつお伺いしておきたい。
  139. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御指摘のように、仲介人の介在によっていろいろの問題があるわけでございます。臨時家内労働調査会の報告書におきましても、実際に行なわれておる仲介人の手数料の額は、普通、家内労働者に渡す工賃の五ないし二〇%程度を目安にしてきめられておるようだ、それでその手数料は社会通念上からいって、仕事の中身を考慮して必ずしも不当に高いと一がいには断定できない、こういうことを指摘しつつも、高い手数料を取る可能性を内蔵しておることは事実だというふうな問題意識を持って報告をされておるわけでございます。で、この点につきましては先ほど申し上げましたように、労働基準行政の系統としましては、家内労働手帳の普及によりまして条件をできるだけ明確にする、また、標準工賃制度をできるだけ普及するというふうな指導をしておるわけでありますが、一方、婦人少年局におきましても^内職補導所を通じまして委託条件の改善等にいろいろ努力をしておる次第でございます。
  140. 北村暢

    北村暢君 最後に——まあだんだん最後になってきたのですが、この審議会の構成でありますが、これは一体どのように考えておられるか。この点お答え願いたいと思います。
  141. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 現在のところ、委員の数は大体十五人と予定いたしております。その構成としましては、いわゆる労働者委員に相当する者としましては、家内労働者の代表及び一般労働者代表を予定する。それから使用者代表に相当する者としましては委託者及び一般の使用者の代表をそれぞれ委員にお願いしたい。その労使に相当する委員の数はほぼ同数にいたしたいと考えておる次第でございます。
  142. 北村暢

    北村暢君 大体この前の臨時家内労働調査会のメンバーも拝見しますというと、まあ大体そういうような家内労働者の代表が出ておるようでございますが、この家内労働者の代表というような人は、これはまあ労働組合があるわけでもないし、どういう推薦のしかたをするのですかね。私は適当な方がなかなか、表面に出てくるような、そういう活動をやっている人が適当な人がおられるのかもしれませんけれども、ちょっと推薦母体というものが組織的なものはないようにも思いますので、どういう方がどういう方法で選ばれるのか、従来の例からいってどうなるのか、お伺いしたい。
  143. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私ども家内労働問題につきまして、しばしば家内労働者の団体なり代表にお会いいたしまして、従来私ども接触いたしております限りにおいてはある程度承知いたしておりますが、臨時家内労働調査会の場合におきましては、婦人少年局で扱っております内職相談所の系統を通じまして把握すると同時に、一方においては産地ごとにある程度候補者を人選したというようないきさつがございます。したがいまして、確かに家内労働者の代表を選ぶことについて非常にむずかしい問題ありますけれども、従来の経験を生かしましてできるだけ手広く、かつ適正な代表を選ぶように努力したいと考えております。
  144. 北村暢

    北村暢君 時間もだいぶ過ぎましたから、最後にお伺いしたいのですが、この事務体制でありますが、一体この審議会の事務的なものを担当するのはどこで担当するのか。それから家内労働行政の全体的なものですが、本省、地方別にどういう機構を持っておられるのか。それからこの前、内職公共職業補導所全国で四十カ所ということをお伺いいたしましたが、この補導所の陣容というのは一体どのようなふうになっておるのか。私は先ほど来この家内労働手帳の問題なり、あるいは安全、衛生、まあこの標準工賃なり最低工賃なり、こういう問題非常にむずかしい複雑な問題をかかえておりますね。内職公共職業補導所の職員は私は非常に苦労されておるのじゃないかと思うのです。これはどういう内容でやっておられるのか。まずこの点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  145. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 従来家内労働調査会の当時におきましては、労働基準局におきましてその庶務的な事務を扱っておりました。したがいまして、今後におきましても本省では、労働基準局におきましてその庶務的な事項をつかさどってまいりたいと思います。ただ御指摘のように、家内労働問題につきましては婦人少年局もいろいろ施策を進めておられます。特に地方におきましては、内職公共職業補導所を通じまして施策を進めておるわけでございますが、今日までの行政指導の内容といたしましては、労働基準局系統では、工賃の問題、安全、衛生の問題といったような問題を労働基準法の施行と相関連せしめまして、事実上の指導をしてきた。婦人少年局におかれましては、内職婦人、その他いろいろな方々に対しまして、いわゆる相談業務を通じまして啓蒙指導するというような形でやってきたわけでありますが、先生御承知のように、第一線におきましては、労働基準局と婦人少年室が同じ施設におりますので、両者間の連絡は緊密にとり得るわけでございます。第一線におきましてはそのような形において事を処理してまいりたい。今後についてどうするかという点につきましては、事務体制の強化という問題は残りましょうけれども。従来実施しておりました行政経験等を生かしまして、今後の方策につきましても検討してまいりたいと考えておる次第であります。
  146. 北村暢

    北村暢君 内職的な家内労働者の九〇%は女子、主婦の方も多いのじゃないかと思うのですがね。したがって、内職公共職業補導所の陣容はどのくらい、どういうことになっているのか、先ほどお尋ねしたが、御答弁ないようですが、これはどの程度になっているのか。ひとつ陣容と業務内容、これを説明願いたいと思うのですが。
  147. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) お答えいたします。御指摘の内職公共職業補導所でございますが、これは昭和三十年以来設置をはかっておりまして、現在三十九カ所を数える状態でございます。これは婦人少年局が国の補助をもちまして府県に設置を促進しているところでございますが、その事業内容といたしましては、内職の相談あっせんを主体にいたしまして、それにさらに苦情の処理、あるいはまた、内職者に対する技術の指導も行なっているわけでございます。これらの事業の業務の実績といたしましては、たとえば三十九年においては、内職の相談あっせんの件数が全国で四十二万六千近くを数えています。また、苦情の処理は二千件余り、そのほかに巡回指導ということをいたしておりますが、これは相談所に来ることの困難な遠隔地に住まわれておられる内職希望者に対する内職の相談あっせん、技術指導等ございますが、この巡回指導にやはり一万件ほど出かけて業務を行なっているわけでございます。それからまた、この補導所では、先ほど来問題となっております委託条件の明確化ということに資するために、やはり内職手帳というものを補導所に登録された者のすべてに手交するようにいたしております。三十九年度末におきまして内職手帳を交付しております者の数は十一万二千六百ほどございます。  以上のような業務を遂行いたします上での内職補導所の陣容でございますが、内職補導所は大別してA級とB級の二種類と申しますか、二つのタイプにいたしておりまして、A級は東京、大阪、福岡等の大府県でございます。こちらでは、定員といたしまして職員九名をもって構成するようにいたしております。また、B級はその他の府県でございまして、こちらは七名で構成するということにいたしておりますが、県によりましては、さらにその上に職員を設置するようなこともあるようでございます。さらにまた、内職補導所外に、地域にありまして、内職者の便宜をはかるために、相談員というものを設置するように勧奨いたしておりまして、これにこたえ、相談員を置いている府県も数県あるわけでございます。
  148. 北村暢

    北村暢君 そこで、いまの御説明で大体概略わかりましたが、この家内労働というのは地域的に集中して、東京、大阪、兵庫、愛知ですか、それから京都などの大都市に集中しているわけですね。したがって、補導所も各県に全部一カ所ずつ三十九カ所があるわけではないので、相当地域的にこれは偏在しているのじゃないかと思うのですが、それはどういうことになっているのでしょうか。
  149. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 御指摘のように、内職の需要あるいはまた内職者の求人というものが地域的にかなり差はあると思われるのでございますが、私どもはそれらの需要を見合いながら、昭和三十年以来漸次この数を増加するようにつとめてまいっております。その間に、おのずから需要度の高いところから優先的にということになっているわけでございますが、現在では三十五都道府県であります。そうしてその数が三十九カ所、このようになっております。
  150. 北村暢

    北村暢君 最後に大臣にお伺いしておきますが、この臨時家内労働調査会の見解の中にも、家内労働に関する行政推進のための事務体制の整備ということが要望されているのですよ。いまそのためにいろいろお伺いしたわけなんですが、一体事務体制の整備というのについてどういう方針を持っておられるのか、この点を最後にお伺いいたしておきます。
  151. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 実は私どもこの家内労働行政を進める事務機構というものが現状でいいのかどうかということにつきましては、多分に疑問を持っておるわけであります。先ほど来の先生のお尋ねによりまして、大体の事務体制なり陣容なりが明らかになったわけでありますが、特にこの公共職業補導所は、御承知のとおり、実は県の職員によって県の施設としてやっておる、労働省としてはこれに若干のお手伝いをしておる、こういうことでもございます。こういう体制で家内労働法といったようなものができた暁に、特にそういう暁において、いまの体制でいいのか。補導所の人員等も先ほど御説明がありましたとおり、まあ非常に貧弱と言えば貧弱でございます。そういう点から申しまして、いずれにいたしましても、私はその事務の体制にしても、あるいは陣容にいたしましても、よほどこれは強化をしないと、せっかく法律をつくりましても、それが所期の目的、所期の効果をあげ得ない、こういうようなことになりましては、これはまあ行政当局としては申しわけないことでございますから、労働省といたしましては、今後体制、陣容というものについてはひとつ慎重にむしろまた積極的にひとつ検討をして、法が制定を見るような場合には十分効果をあげ得るように私は当然なすべきではないか、かように考えております。十分ひとつ検討してまいりたい、かように考えております。
  152. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  153. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  154. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 時間があまりありませんから簡単にひとつ質問申し上げたいと思いますが、大臣にお伺いしますが、この臨時家内労働調査会ができたのはたしか三十四年だと思いますが、七年という長い時日を要して、そして今日家内労働法制定の資料を十分集められて、そしてここに労働法を制定する、そして審議会を設置する、こういうことになったのだと思いますが、これから三年間と、こう期間を区切られたのはどういう意味か、その根拠を……。
  155. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) この点、先ほども御答弁申し上げたわけでございますが、何ぶんにもこの家内労働問題というものが非常に複雑なもろもろの問題を含んでおるわけでございますから、これに対する保護措置というようなことで立法措置を講ずるにいたしましても、非常にまあむずかしい問題があると思います。そういう関係からいたしましても、あまりに短期間でもどうかと思いますし、それかと申して全然無期限に設置するということでも何かきまりがつかないというようなうらみもございます。そこである程度実態把握というものはもちろん調査会がなさったわけでございますが、同時に、その示されました見解によって法的措置を含む総合的な施策を今後講ずべきである、こういうことでございますので、労働省としては、ぜひ家内労働法といったようなものをつくりたい、その必要性がある、かように思っておるわけでございますので、できるだけ早目に答申もちょうだいいたしたい。先ほど申したのでありますが、私どもの心組みとしては、審議会の存置期間は一応三年となっておりますが、なるべく二年ぐらいでひとつぜひ答申をちょうだいして立法措置を講じたい、かようにまあ考えておるわけであります。また一面、どうも三年と区切るのはおかしいのじゃないか、この種の審議会ならばむしろ無期限に置くほうがいいじゃないか、こういう御見解もおありのはずでありまして、しかし、その点につきましては三年たった時点において、もちろん家内労働問題というものが三年ですっかりなくなるという性格のものではございませんから、その時点において、また場合によりましては御審議をいただいて期間の延長等も考慮をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  156. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 私がその次に尋ねようと思っていることをもう大臣は答弁されて、手回しいいので……。七年間労働調査会が時日をかけられて、ほぼ大体の調査実態の把握も終わっているという大臣のお話でございますが、私は十分審議され尽くしておると思います。その点に対しては、敬意を表しますが、七年間も家内労働調査会を置いて調査して、そうして家内労働法制定を早くやりたい、少し大臣のおっしゃることは私は自語相違のような気持ちがするが、早くやりたいとおっしゃるのに七年間もゆっくり審議された。どういうことをされたのか。大体ここにあらまし概略は出ておりますが、七年間という歳月を費やして一体どういうことを——そんな重大事件があったのですかね。その点を、大臣でなければ労働基準局長でもいい。そして大臣は一日も早く家内労働法の制定を見たい、——七年も八年もかかって一日も早く見たいというのは、どうも私その点があなたのおっしゃることと実際が自語相違というような気持ちがいたしますが、その点……。
  157. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 七年間もすでにかかったのにと、こういうことでございますが、この点も私率直に申しまして、私も実は当初そういう同じような感じを受けたのであります。七年間も勉強していただいたことであるから、まあできればかくかくの内容の立法措置を講ずべきだといったような答申までも実は私ももらうのかと思っておりましたのですが、私が就任後ちょうだいいたしました答申は御承知のとおりのものでございます。そこで、従来の調査会の経過につきましては局長から詳しく御説明いたさせますが、私としましては、先ほど来申しますとおり、調査会が、いずれにいたしましても法的措置を含む今後の行政の進め方についてはさらに永続的に検討する機関を設くべきだ、こういう御見解をちょうだいいたしましたので、それを尊重してなるべく早くその見解の実現をはかりたい、こういう気持ちなのであります。
  158. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 臨時家内労働調査会が設置されましたのは、昭和三十四年の十一月十二日のことでございましたが、先生御承知のように、家内労働の問題は、最低賃金法の制定と関連しまして、最低賃金制度の健全な発達のためには家内労働の問題について十分実態を把握し対策を講ずる必要があるという観点から、別にいわゆる臨時家内労働調査会を設けまして調査に着手したわけでございます。しかるところ、調査に着手いたしましたけれども、わが国の家内労働の全体を把握するという資料が乏しい、しかも実態がきわめて複雑であるという点について、調査会といたしましては、今後の調査を本格的にやるためには相当な時日を要するであろう、しかし、さしあたり行政指導として何らかの手を打つ必要があるという判断から、昭和三十五年九月二十九日に中間報告をいたしまして、従来労働省がやっておりましたような行政指導の内容を中間報告として出されたわけであります。その後、国内各地の家内労働の現場につきまして内職的なもの、専業的なもの、幾つかの調査をされて、その調査もいわばルポルタージュ式なものでございますので、全体を推定する資料としては十分ではないという観点から、さらに全国的な調査を実施すると、非常な時間がかかりましたような次第でございます。それで第一回の報告書原案をまとめたのが、昭和三十八年のことでございます。ところが、先ほど来申し上げました、家内労働の類型化にしましても、学識経験者の立場からもいろいろ議論があり、その類型化についての考え方をまとめるだけでも実は相当な論議が繰り返されたような次第でございます。その後まとめました報告案につきまして再三再四にわたる検討が加えられました。   〔委員長退席、理事八田一朗君着席〕 ようやく昨年の六月に報告案の修正案をつくったという次第でございます。その後さらに学問的立場から、この報告書を提出するについて用語その他に誤りがないかどうかというようなきわめて専門的な立場からの推敲が加えられまして、報告書ができたという経過になっております。調査会におきましても、わが国において初めて総合的な家内労働の調査報告書ができたというふうに申しておりまして、非常な貴重な資料が得られたわけであります。ただ調査会におきましては、先日も申し上げましたように、労働大臣が個々の委員を委嘱いたしまして、そのグループが通称調査会と称しておったのでございまして、調査は一応終わり報告書を出すが、今後どうあるべきかという対策についての具体的な内容を俗称調査会であるこのグループが出すべきかいなかという点についてはいろいろ御議論がございましたが、まず実態分析した結果だけを報告して、そしてこれをどう今後対策を講ずべきであるという政策については触れないということにいたして、報告書が出たような次第でございます。きわめて複雑多岐にわたる家内労働の実態調査を総合的にまとめたという点は高く評価されておるようでありますけれども、その調査の結果からおのずから問題点が指摘された、こういう形に相なっておりますが、その問題点に対処する政策をどう考えるかという点については触れられておらない、こういう形に相なっております。しかし、調査会としては、いま申しましたようなことで対策について触れられなかったのでありますが、おのずから示唆し、暗示するところがあるわけでございますので、ただいま大臣から御答弁がございましたように、その基礎の上に立ちまして、問題点把握の上に政策的な内容を盛るということにつきましては新しい審議会委員の精力的な努力によりまして、かなり促進されるのではなかろうかというふうに私ども期待しておるような次第でございます。
  159. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 大体、大臣、局長の御説明で経過その他はよく了承しましたが、いずれにしましても七年間という長年月を費やしてやられたことに対して、それに対して私は云々するのではありません。その労に対しては大いに感謝しておりますが、もともと臨時家内労働調査会というのが首相の意中の人を個人的に相談された、それがまとまって調査会と、その形態に対してもそれは問題がないでもないと思うのですが、要するに、私はいま大臣もおっしゃるように、もうすでに答申でも出るのかと、それによって出発するのかと、こういうふうに私は考えておったわけです。ところが、これからまた調査検討するのだと、そこで問題は、労働省自体も、先ほどから村上局長あるいは高橋局長さんから御説明があっておりましたが、労働省自体も私はこういう労働法の制定でもできる、あるいは審議会でもできるまではということで案外この家内労働という問題に対しては熱意がなかったのじゃないかと、各県に置いてありますところの内職公共職業補導所ですか、その機能、機構、組織を承りまして、なお各県に内職労働の実態を調べるところの婦人少年室ですか、こういう機関が私は今日まで十分にその機能を発揮し、十分に活躍をしておられたかどうか、そのことに少し疑念を持つのです。九州各県の婦人少年室なんかも内職労働の実態把握というようなことに対するデータその他調査なんかもほとんどない、実績が。局長は至れり尽くせりをやっておるという御説明でございましたが、その点はどういうのですかね。基準局長それから高橋婦人少年局長にお伺いしたい。
  160. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) この前の本委員会におきましても行政効果につきましていろいろお尋ねございました。私ども率直に申し上げたつもりでございますが、何ぶんにも法的に根拠なく、行政的には権限がないわけでございます。そのような状態の中において、昭和三十五年の臨時家内労働調査会の中間報告を受けまして、家内労働手帳の普及、標準工賃の設定、安全衛生についての指導、週休制の指導といったようなことをやってきたわけであります。したがいまして、労働基準局の地方における活動状況を見ましても、労働基準法の実施であるとかあるいは最低賃金法の施行といったような面と比較いたしまして、家内労働指導に向けられた行政のエネルギーもかなり小さかったということは御指摘のとおりでございまして、御不満の点が多々あろうかと存じます。この点については私どもも従来の行政効果とあわせて判断いたしましたときには反省すべき点が多々あると存じておるような次第でございます。しかし、本年二月には、対策は示しておりませんけれども、臨時家内労働調査会の報告書も出たことでありますので、   〔理事八田一朗君退席、委員長着席〕 これを受けまして、本年の三月には、労働基準局長名で通達を出しまして、家内労働行政の推進について細目の指示をいたしたような次第でございます。この四月以来かなり努力をいたしておるところでございますが、何ぶんにも法的根拠なく、かっ権限もない、事実上の指導にとどまっておるということからいたしまして、不十分のそしりを免れないと存じまするけれども、従来の経験を生かしましてさらに努力をいたしたいと考えておるような次第でございます。
  161. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 内職公共職業補導所関係の業務につきまして御指摘があったわけでございますが、従来婦人少年局ではこの内職対策といたしまして、内職公共職業補導所の行政を中心に仕事を進めてまいったわけでございます。したがいまして、この補導所で業務を進めていく上でのいろいろな問題点につきまして、府県に対して指導を行なうという、そのような間接的な指導の方向で行なってまいったわけでございます。  で、この補導所におきましては、先ほど申し上げましたような諸般の業務を行なうほかに、随時調査も行なってまいっております。そのような意味合いにおきまして、従来は、この三十五府県にございます内職公共職業補導所が、いわば婦人少年局としての内職対策の唯一の窓口あるいは機関であったかと思うのでございます。そのような意味合いにおきまして、御指摘のように、婦人少年室は内職対策というものに十分な力を向けていなかったということは認めざるを得ないと思うのでございます。婦人少年室は、従来、内職公共職業補導所を府県に設置するための側面的な力となって、府県にその設置の実現をはかるように努力をするというところに内職対策のほとんどすべての機能を傾けてまいったわけでございます。したがいまして、婦人少年室が独自で内職従事者の業態の調査を行なうということなどは、従来、行なっていなかったわけでございます。で、このような状態は、もちろん十分に婦人少年局の使命を果たしているとは思われませんので、今年度からは婦人少年室におきましても、内職問題につきまして大きな力を向ける。このような姿勢をとることにいたしまして、まず第一に内職の工賃適正化の一助にも資するために内職の工賃の実態がどのようになっているか、特に流通段階別にそれがどのような実態を示すかというようなことを明らかにすることを目途といたしまして、ただいま内職工賃の調査を婦人少年室を通じて行なっているわけでございます。  このようにいたしまして、今後は、府県で行ないます内職公共職業補導所を通じての業務とあわせまして、婦人少年室も、この問題に一そう力を注いでまいりたいと、そのような考えでおりますので、何とぞよろしく御了承いただきたいと思います。
  162. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 大体、最近の内職は、私、考えまするに、おおむね二通りあると思うのです。趣味と実益を兼ねるものがある。つまり生活の合理化で、その余暇を利用するという面も、これはあるかと思うのです。しかしながら、大体において、根本的には最近の物価の値上がりが原因で家計が苦しくなって、その家計を助けなければ生計が保たれない。こうした私はいわゆる内職の労働でございますので、私は、これは家庭内職、家庭労働ということはりっぱな、一般労働法と何ら変わりはない。そこで、先ほどから、何ら権限がないからというお話をなさっておりましたが、まことにごもっともと思いますが、高橋局長も僻地には巡回指導もやりたい、相談に応じておる。だから、私はもう少し実態に即応した指導、相談に乗ってもらって、そうして先ほど北村委員からもお話が出ておりましたが、最低賃金制、これは家内労働には最低賃金制はないから、従来の二十条を適用しておるというお話でございましたが、現行の最低賃金制でもわれわれは不満であります。ところが、その最低賃金制すら家内労働にはしかれていない、非常にでたらめであります。これに示してあるのは一日に百円、それから三百円程度だというようなことを書いてありますが、三百円だったら約一万円、九千円ですから。でございますけれども、私どもが調べました範囲におきましては、主として北九州方面でございますが、団地の奥さん方が五世帯に一世帯、五人に一人はもうほとんどやっておる。それから御承知のとおり、福岡は産炭地でございまして、炭鉱の合理化によって閉山、廃山が相次いで起こっておりまして、みな離職をしたり非常に生活に困窮しております。そこで、ほとんど奥さんはみな内職をしておる。ところが、一例をあげますと、レースの編みものなんかの内職をして五日も六日もかかって、わずかに千円程度しかもらえない。だから日に二百円足らず、しかも、七時間も八時間も、十時間くらい働いています。そうしてわずかに二百円足らず。そうして、それが今度はデパートに出たときには、原料が、材料が三千円程度だと、三千円にしまして、編み賃が千円、そうして一万三千円から一万四千円でデパートで売っているのです。これではたいへんな暴利であって、何ら権限はないとおっしゃるけれども、婦人少年室あたりの方はやはり奥さん方のお仕事だから、私はよくおわかりだと思う。そういう方にこそ相談にも乗ってあげて……これまた法的には家内労働法の最低賃金制はないからとおっしゃるかもしれないけれども、少くとも二十条を適用してでもいま少し私は、指導の手を伸ばしていただきたい。あるいは、一時間の平均が十七円である。そうすると十時間働いても一日百七十円、十時間働くというのはこれはたいへんなことですね。まあ、臨時調査会のほうからの発表も、一日の内職の労働平均が、全国平均が六時間、五・九から六時間と発表してあるようですが、とてもそんなことでは一時間に十七円で五時間では話にならない。だから勢い十時間からやっているが、そういう点において、もう少し各県にありますところの内職公共職業補導所あるいは少年婦人室が積極的に私は権限を振り回すのでなく、熱意をもって指導、あっせん、相談に乗っていただきたい、こういう考えを私は持っておる。最低賃金制の点につきましては、あらゆる観点から北村委員からお話がありました。私もそのとおりのことを実は要望しようと思っておったのですが、その点は抜きにいたしまして、ぜひ、そういう点に私はいま一歩積極的にやっていただきたい。この点について村上基準局長、高橋婦人少年局長に御答弁をお願いいたしたいと思います。
  163. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御指摘のように、家内労働の中の内職は特に内職条件が劣悪でありまして、家内労働者の中でも専業的な家内労働者と比べるとかなりな劣悪な状態にあることは事実でございます。しかもまた、地域的に東京と比べて福岡、福島といったようなところはやはり格差がございますようで、その地域の労働市場の状況を反映しましてかなり条件も違うように私ども承知いたしております。編みものの内職を労働省が調べたところによりましても、全国平均的な数字では一時間当たりの工賃が二十八円、四十年四月の調査であります。そういった数字が出ておる次第でございまして、かなり工賃が低いわけでございます。これらの問題に対処するために私どもが苦慮いたしておりますのは、内職者が多い地域がある程度まとまっておりますと、かなりな指導ができるのでありますが、それがばらばらであって、かつ内職というように世間ていをはばかりましてあまり言わない、個々の人は言うことを好まないというような状態の人もかなりございまして、指導上もいろいろ困難を感じているというような次第でございます。先ほど婦人少年局長からお答え申し上げましたように、内職公共職業補導所に相談に見えられたり、あるいは苦情を持ち込まれるというような積極的な面をお持ちの方につきましては、できるだけの御指導なりあるいは御援助も可能でございますけれども、そういった内職にまつわりますところの秘匿性と申しますか、あまり外部に出したくない、こういう問題がございまして、指導に困難を感じておるような次第でございます。しかし、御指摘のように、内職者の大部分の人々は労働者の方の奥さんであるとかあるいはお母さんであるとかいったような方が多いわけでございまして、労働者の家庭生活といったような面からもないがしろにできない非常に重要な内容を含んでおるわけでございます。指導の面につきましては、全般的に積極性が足りないという御指摘をいただいたわけでございますが、御指摘の点を十分体しまして、今後できるだけ積極的な指導を加えてまいりたいと思っております。ただ基本的には、法的な背景がございませんと、工賃の問題にいたしましても委託系統をどういうふうにしてコントロールするか、あるいは規制するかといったような問題等もいろいろ関連しておるわけでございまして、法的に直接委託者を規制できないといった問題がございます。しかし、それにいたしましても、一般的な社会的な世論なり社会的な認識を背景にいたしまして、ある程度説得その他の方法を用いましてできるだけ工賃の適正化といったことにもつとめてまいりたい、特に産地集団がございます場合には、先ほど申しました標準工賃を申し合わせによって協定するということは可能で、かつやってきたわけでありますが、そういった方式は今後さらに拡大してまいりたいと考えておる次第でございます。
  164. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 内職の補導事業関係におきましての工賃の問題につきましては、従来からその工賃が適正なものであるようにいろいろな努力を補導所におきまして行なっておりますし、また、婦人少年局もそのように指導をはかっているところでございますが、それは方法といたしましては、一つには委託内容の面、委託条件の明確化ということでございまして、先ほど申しましたように、内職手帳によって、その委託条件を明瞭なものといたすように努力いたしております。あるいはまた、工賃の額が内職者の技術によって非常に変わりますので、内職者により高い技術を習得させるための技術指導ということにも力を用いているわけでございます。あるいはまた、当然にこの補導所で扱いますものは無料でございますから、いわゆる手数料ということで工賃が引かれるというその問題はないわけでございます。あるいはまた、内職補導所が内職者と委託者の間のその工賃の取りきめに立ち会いまして、適正な工賃額で契約が行なわれますように援助をするわけでございますが、その際のよりどころにするための資料といたしまして、各地域における内職工賃の事情、あるいは職種別の内職工賃の情報というものを常時把握いたしまして、各補導所にそれが備えつけられるようにいたしております。また、本年度からは中央におきましても内職工賃適正化懇談会というものを開きまして、内職工賃の基準の目安になるものを考えていきたい、そのような準備もいたしているような次第であります。  実際の工賃の実情といたしましては、これは把握がたいへんにむずかしいのでございますが、しかし、私どものほうで全国的に調査いたしましたものと比べますときに、補導所で扱う工賃のほうがかなり金額が高くなっているのでございます。それで現在の段階は私どもの仕事といたしましては、内職を求める方がなるべく公共職業補導所を利用なさるように、また、利用することが可能なようにということのために力を用いている次第でございます。  また、婦人少年室はその機能といたしまして、婦人問題の相談ということをいたしております。その一環として内職を求める方の御相談を受けることが往々にしてあるわけでございます。また、婦人少年室の第一線の仕事を手伝っていただく民間の組織といたしまして協助員制度がございます。この方にも相談ということを受け持っております。その婦人少年室あるいは婦人少年室協助員が内職についての相談を受けましたようなときには、もちろんその室あるいは協助員の見解で指導できる分野もございましょうが、多くの場合は、この内職公共職業補導所に行きますように指導する、あるいは内職公共職業補導所の巡回指導を受けるように指導する。このような形で婦人少年室が公共職業指導所と連係をとりながら進めてまいったというのが実情でございます。御指摘のように、今後これをより有機的に推進していきますために多くの検討をいたしまして努力いたしてまいりたいと思います。
  165. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 ただいま局長の御説明を聞きましたら、これは工賃ということにつきましては、レース編みでも一時間平均二十八円だと局長はおっしゃったのですが、そういう点におきましても、むろんこれは問屋とかメーカーによっても違うかもしれぬし、地域によっても違うかもしれませんけれども、私どもの調べた範囲では、北九州では一時間十七円ということになっておる、もうすでに十円の大きな格差であります。そういう点におきましても、そこに私は公共内職補導所あるいは婦人少年室の指導が要るのだ、こういうことを申し上げておるのです。要するに、この補導所でも、あるいは山口、福岡、大分、長崎、全国に八カ所か七カ所かこの内職あっせん所という機関もあると聞いております。いずれにしましても、これは内職をあっせんするとともに、内職をあっせんするということは、そのメーカー、問屋、すべて企業体をよく把握された上で、そしてしかも工賃が不当にたたかれないで最も内職者の利益を守るという立場に立った私はあっせん機関であり、補導はそういう機関であると思います。その事実が往々にして皆さんのお考えになっておるようなことに全部いっていないのではないかと、私が調べた範囲内ではこういうことだと、こういうことを申し上げておるのでありまして、皆さんの指導方針というものはよくわかります。それはお二人のいまの御答弁で、まことにみごとな御答弁でありますが、事実は案外そうじゃないぞということを申し上げておるのであって、その点、局長おわかりですか。そこで、私はこういうことを考えておるのです。家内労働審議会ができなければ手も足も出ない、労働省は。というのでなくして、できようができまいがあなた方労働省自体として、家内労働者の保護育成ということに対しては、その利益を守るということに対しては私は十分あなた方に責任がある。そこで安い内職工賃などをなくするためには、内職者とかあるいはメーカーあるいは問屋、あるいは小売り店とか、こういうのを登録制でもつくって、そして内職監督官といいますか、監督官が基準局から巡回でもして、そういう権限がないとおっしゃるけれども、指導、補導、助言ということはできるはずだ。そういう点は基準局長はどう考えるか。
  166. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 確かに内職問題の一番ポイントは、その委託経路を正すということであろうという点につきましては、私どもも同感でございます。特に仲介人についてこれを明確にする、そのために登録制を考えるということも確かに考えられることでございます。私どもは、先ほど来若干家内労働手帳の普及とか標準工賃の設定であるとかということを申し上げましたが、そういった場合には、もちろん委託者及び仲介人といったものについて、ある程度これを把握しつつ指導するということをいたしておるようなわけでございますが、法的行政を伴わない形でやっておりますので、非常に理解ある仲介人あるいは委託者の場合においては比較的事柄はスムーズにいくわけでありますけれども、そうでないものについてはかなり困難を感ずるというのが偽らざる実情でございます。しかし、一面において、家内労働者の側におきましても、個々ばらばらで、しかも内職をやっておることを隠しておるというような実情の場合には、なかなか指導の手を差し伸べるということも困難でございます。したがいまして、私どもといたしましては、この内職問題を処理するためには一方において相当なPRを行ない、内職を行なっておる人々が適正な条件のもとに内職をするのだというような意識をお持ちくださいまして、われわれの行政機関のほうにいわば接近していただきたいということを心から願っておるような次第でございます。  登録制云々の問題につきましては、これは家内労働法制化の場合に問題になることが予想せられる事柄でございます。しかし、これを行政指導としてやってみてはどうかという御指摘でございますので、私どもも今後検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  167. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 委員長と約束の時間がありますから、もうこれで大体打ち切りますが、いま、基準局長お答えを聞きまして私も大いに了承しましたが、問題はやはりこの内職の工賃、各地によって地域的にも違うと思いますけれども、内職の工賃を協定する、そういうあっせんも私は大事じゃないかと思うのです。あっせんというのは、どういう意味か、あっせんの定義をひとつ、申し上げなくてもこれはいいかと思うけれども、あっせんということはあっせんをすること、単に仕事だけ世話をしてあすこがあるからやりなさいということでなくして、工賃の世話もするし、また他の問屋がこれだけ出しているからこちらもこれだけというような協定、その他万般の私はあっせんをすべきだと思う。ただあっせんというのは、内職のあっせんをすることだけがあっせんの機関じゃない、こういうふうに解釈しておりますが、それは先ほど婦人局長説明で大体そういうふうな意味だと思います。その点なお私は念を押して申し上げておきます。  それから最後に婦人局長にちょっとお尋ねしますが、あなたのところに阪本孝子という庶務課長補佐がいらっしゃいますか。それをちょっと、いらっしゃるか、いらっしゃらないか
  168. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  169. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  170. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いらっしゃいますね。その方が、内職は地域差、需給関係のアンバランスで、簡単に片づく問題ではないというような、簡単に片づく問題じゃないから七年間もかかっているのはあたりまえなんです。簡単に片づくことではない、当然のことではないですか。それが簡単に片づくなら審議会も、要らないし、七年間も調査会をつくる必要ない。簡単に片づくものではない。ただ、工賃が不当に安いときには主婦たちがグループをつくって工賃引き上げ交渉をするよう、これじゃああっせんもなければ相談もない。突き放しですね。主婦たちがグループをつくって工賃引き上げ交渉をするよう内職補導所を通じて指導しようと思っています、家内労働を保護する法律の制定も急いではいるのですがと口ごもった、こういうようなことを発言されておるが、まことに奇怪千万です。婦人局長の御答弁をお願いいたします。これ、あなたがおっしゃったのじゃないけれでも、直接責任者である婦人局長から。
  171. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 実はそのいま引用なさいました点は、初めて伺いましたので、いつどのような場合に行なわれた発言かつまびらかでございませんが、おそらく談話の口述、談話の筆記ということでございましょうから、本人が話しましたとおりのことばであったかどうかということはいかがなものかと思いますが、おそらく言おうとしました意図は、第一点の組織化ということにつきましては、これは内職の、職業補導所の事業といたしましてもグループの育成ということはいたしております。これはそのいまの引用の中にございました交渉というようなことのためではございませんで、内職者がグループを組織することによりましてそれぞれが仕事に対する自覚というものをはっきり持つ、そしてまた委託者と連絡その他の便宜のためにもよろしい、また、お互いに力づけ合うというような効果もあろうかということで、内職グループの育成ということは従来から行なっております。これはおむむね良好な結果を見ているように思われます。で法律云々ということも、おそらくそれは質問者が労働者としてはというふうな御質問があって答えざるを得なかったのではないかと思いますが、どのような意図であったかは存じませんが、考え方としては逸脱した思想を持っていたものではないと、もちろんこのように考えます。
  172. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 局長としてはさもあらんと思う、それはね。そのようにしてかばうのがあなたの立場だと思いますけれどもね。工賃が安ければグループをつくって交渉せよなんてとんでない。主婦に対して何らそこには指導もなければ補導もなければ相談にも乗っていない。そうしてあなた方のおっしゃる、ここを私は言いたいためにいろいろいままでお尋ねしたのですけれどもね。こういう考えが労働省の中枢部にあるということ、これはもってのほかだ。大臣はいかにお考えであるか、その点ひとつ……。
  173. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) いま先生御指摘の談話かどういうときの発言か知りませんが、おそらく言わんとするところは、局長も申しましたが、私は内職の方、やっておられる方をあっせんしないとかお世話しないとかそういうことではなくて、むしろお世話をするあるいはあっせん申し上げるというのに、なかなか個人個人、お一人お一人、しかも先ほど来話が出ていますように、中には何といいますか、人に知られたくない、ないしょでいわば内職をやる、そうしたいいこういったような方もおいでのようでありますので、この内職をやられる方々があるいは地域的なりあるいは発注者を中心としてなりグループをひとつつくってもらう、そのことのほうがよりお世話がしやすい、それに便宜である、そういう見地からグループをひとつつくっていただきたい、そういうむしろ私は、おそらくこれはそういうものをつくってかってに交渉しろといったような趣旨ではなく、お世話をしてあげる便宜上そうしていただくことが望ましい、こういう気持ちで私は言ったのだろうと思います。いやしくも労働省につとめておる者がめんどう見ないとかかってにやれとかそういう考えは、これはもちろんないと私は信じておるわけでございますので、どうかそういう好意的に先生にもひとつ御了解いただきたい、かように思うわけでございます。
  174. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いや、私も婦人局長の御説明のように、みなグループをつくって、そして内職をいそいそとみな親しみを持って仲よく仕事をしていきなさい、そしてお互いに家庭労働の発展のためには、そんな隠れてするようなことでなくして、喜々としてこれに従事すべきものというような意味のグループを育成すべきものであって、こういう団体交渉とかデモをやるというようなふうな意味のグループをつくれと指導なさったのではないと思います。私もさようにそれは考えるわけでございますが、この文面では一応大きな誤解を招くおそれがございますので、そういうことはなかったろうと思いますけれども、十分ひとつこういう点を細心の注意を払っていただいて、やはり女は女同士でございますので、婦人局長さんは特にその点を大所高所から御指導いただいて、家庭労働の全きを期していただくように、その点私も了承いたします。じゃ、これで終わります。
  175. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ほかに御発言もないようでございますから、本案につきましては、本日はこの程度にいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十五分散会      —————・—————