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1966-04-21 第51回国会 参議院 内閣委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十一日(木曜日)    午前十時五十二分開会     —————————————    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      八田 一朗君     青田源太郎君      野々山一三君     杉山善太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         熊谷太三郎君     理 事                 柴田  栄君                 船田  譲君                 伊藤 顕道君                 北村  暢君     委 員                 青田源太郎君                 石原幹市郎君                 三木與吉郎君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 中村 英男君                 山本伊三郎君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        国 務 大 臣  安井  謙君    政府委員        人事院事務総局        職員局長     大塚 基弘君        総理府人事局長  増子 正宏君        外務政務次官   正示啓次郎君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務大臣官房会        計課長      鹿取 泰衞君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省国際連合        局長       星  文七君        林野庁長官    田中 重五君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君    説明員        林野庁職員部長  森   博君        労働省労働基準        局労災防止対策        部長       石黒 拓爾君        労働省労働基準        局労災補償部長  中村  博君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出)     —————————————
  2. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、野々山一三君が辞任され、その補欠として杉山善太郎君が選任されました。
  3. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 外務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き本案の質疑を行ないます。  なお、関係当局の御出席は、椎名外務大臣、正示外務政務次官高野官房長安川北米局長星国際連合局長鹿取官房会計課長大和田条約局参事官、以上の方々でございます。  それでは御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて二、三お伺いいたしたいと思いますが、きょうは時間の関係もございますから、問題を東南アジア開発閣僚会議にしぼってお伺いしたいと思います。  まずお伺いしたいのは、去る四月六日、七日の両日にわたって東京で開かれました東南アジア開発閣僚会議に関連したことですが、この会議は戦後初めて日本音頭とりで開かれた国際会議であるということになりますが、外務省はその当時、たいへんこれは成功であったというふうに満足しておったようでありますけれども、よく検討してみますると、わずか二日間の会議で、また、各国に対する援助についても何ら具体的なものはないわけですね。で、具体的な問題については、今後の話し合いを通してきめていく、こういう時点であるわけです。したがって、まだ具体策の出ていない現時点に立って、あまり手放しで喜ぶことは早計ではないか、楽観は許されないのではないかと、そういうふうに考えられるのですが、この点に対する大臣のお考えはどうですか。
  5. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今度の開発閣僚会議はほんのスタートでございまして、これからだんだんほんとうの実のある仕事を推進していくというのでございますから、そういう意味からいうと、成功とも言えないし、不成功ともまだ言えない、そう考えます。ただ、こういうスタートがうまく切れるかどうかということに問題がかなりかかっておりますから、それがまあ大体において、ほぼ予期どおり同じ方向に向かってスタートが切られたということ、その問題だけをとらえてその程度の成功であったと、こういうふうに解釈しております。
  6. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 従来からのわが国の東南アジア政策をよく検討してみますると、あまり策がなさ過ぎたのではないかと、こういうふうに考えられるわけです。ちょうどいま申し上げたように、今後いろいろ具体的な面がきめられてくる、そういう段階では必ず困難な問題が起きるであろうことが予測されるわけです。そういう点からまた、今回の会議開催に至るまでの経緯を見ても疑問点が少なくないわけです。こういう点から推して、どうも憂慮したわけですが、この点に対しての大臣のお考えはどういうことですか。
  7. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはなかなか言うべくしてむずかしい問題でございますから、非常に困難もあり、いろいろな障害も出てくると思います。しかし、これはやらなきゃならぬ問題である。どうせやることに、そうたんたんたる道ばかりあるというのでは、たいした効果はまたあがらないというふうに考えます。困難があればあるほど、これを克服することによっていろいろな大きな成果があがると、こう考えております。
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 あなたが東南アジア閣僚会議構想を述べられたのは、昨年夏の第三回の日米貿易経済会議出席のその直前であったと思うわけです。で、たまたまジョンソン大統領が例の東南アジア開発の十億ドル構想を述べられたそのあとだったと思うわけです。それから今日まで相当時間がたっておるわけですが、延び延びになっておった理由那辺にあるのか、その点をお答えいただきたいと思います。
  9. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ジョンソン構想——十億ドル経済協力構想以前から、東南アジア経済協力がこれではいかぬということを考えて、いろいろ事務局において研究しておったのであります。世間に発表されたのはいつでございましたかはっきりと記憶しておりませんが、この問題は、問題のとらえ方、それからまた、これに対する各国の意向というようなものを探ぐる必要もございます。そう、急に思いついて急に旗振ったところが、何のことやらわからぬというようなことになるおそれもございますので、また、必ずしも国内において世論なりあるいは意見なり統一されておるわけではない。まあそういったような動向をにらみながら逐次この問題について準備を進めたい、こういうことでございまして、当初は日韓問題の解決のために時間をさかれておりましたし、片手間にやれるものでは決してないし、大体まあ一月ごろになればこの問題に取り組むことができると、こう考えておったのでありますが、一月は、御承知のとおり時間がございませんので、国会の都合もございまして、まあ四月に入らなければ——それもはたして十分に時間が取れるかどうかということも懸念したわけでありますが、とうとう四月の初旬ということになった次第でございます。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今回の会議にはビルマ出席してなかったようですが、これは一体どういうわけなのか。また、カンボジアインドネシア、この両国も、最終的にはオブザーバーとして出席したけれども、一たん招待を拒否しておるわけですね。これは一体那辺理由があるのか。察するに、日本のこの役割りアメリカアジア政策の下請と見たからではなかろうかというふうに察せられるわけです。この点はどういうことですか。
  11. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ビルマはもう非常に政治的な色合いのつくことをいやがるようであります。そして、もうひたすら、鎖国政策というわけではないけれども、よけいなおつき合いはしない、そして国内の体制というものをしっかりと固めるということに非常にこり固まっておる国でございます。それで、国際会議といえば、国連——これはまあおつき合いですから、しておる。それからAA会議ですか、これは、第二回目のときはビルマが非常にこれに参加することについて渋ったようでありますが、しかし、これはやっぱり地域的な、そして網羅的な会議であるというので、まあ出席もやむを得ないだろうということのようでございましたが、第二回目はあのとおりになった、これは実現しなかった。その他の多数国間の国際会議は一切出ないという鉄則を立てておる。それで、二国間のいろいろな協議なら喜んで参加する、その他の国際会議は一切出ない。こっちへ出てあっちへ出ないということになると、非常にぐあいの悪い問題が出てくるし、どれへも出るというようなことになると、非常に政治色が出てきて不本意な立場に立つということを非常におそれて、もう何と言われても、事柄はけっこうだから、その問題については、日本となら日本とまたあらためてその問題についてビルマとの二国間で協議するということはこれはもうやるけれども、そういう多数の国際会議はかんべんしてくれ、こういうことでございました。それから、インドネシアは、これはもう純然たる政治的な理由で、マレーシアと倶に天を戴かない、席を同じゅうすることなどはとんでもないことだというようなことでございました。それからカンボジアは、どうもいろいろ考えておったようでございますが、ついに最後まで出るということは言わなかった。ただ、一昨年から昨年にかけて、カンボジアにいろんな、農業であるとか、あるいは医療センターといいますか、センターが二つぐらいできている。で、そのつどシアヌーク殿下会議開所式に出て、非常に親日的な方で、日本経済政策というものに対して賛辞をくれるような演説をしておる。事柄自体については何ら反対すべき理由はなかったようであります。ただ、いろいろな政治上の考慮から、出るということを確約しなかった。そこで、この三カ国はまあ来ないかもしらんという予想を立ててございましたが、インドネシアは新しい政権になって考えを変えたのであろう。カンボジアは、態度をはっきりしなかったが、やはりインドネシアに続いてオブザーバーを送る、こういうことになった、これがいきさつでございます。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ、そういうような懸念が——招待を拒否したりしたような問題が起きたその一因には、政府は、この会議は、特にこの会議の性格については、純然たる経済会議であると、こういうふうに強調してきたようでありますけれども、時あたかもベトナム戦況の激化にからんで、いわゆる反共陣営結集をねらったのではないかと、そういう政治的動機が含まれておるのではないかと、こういうふうに推察されるわけです。前の問題にもからんで、こういうことについては一体どうなのか、この点をお伺いしておきたい。
  13. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 会議を開く前は、やはりこれは政治的な会議じゃないかというような疑い最後まで持たれておった向きもあったようでありますが、いよいよ会議を開いてみると、もうどこをさがしても何ら政治的な色合いというものはないというので、会議を開いた後においては、そういうことを批判する声がほとんどなくなった。まあ、どうしても批判しなきゃならぬという向きは、これはどうもしようがない。そうじゃないところは、その疑いを全部一掃したと、こう私は考えております。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま大臣のお答えになったように、全然反共陣営結集などをねらったものではないと、そういうことでもしあるならば、たとえばインドとかパキスタンセイロン、こういう非同盟とか、あるいは中立主義系諸国を当初から除外したのはおかしいということになるわけです。これは一体どういうわけですか。
  15. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) インドは、御承知のとおり、国際的にインド開発に乗り出しておる国々が構成しておる会議がございます。そうしてばく大なインド経済建設というものに対して、先進国数国一つ国際会議をつくって、そうしてこれを応援し支持しておるわけです。パキスタンまたしかり。セイロンは、最近はそういう先進国経済援助を受け入れようという態度になった。前は、そういうものは一切拒絶するという態度でございましたが、それが一変して、経済協力を受け入れるという態勢になった。これまた、インドパキスタンと同じように、国際組織ができてこれを援助しておるというような状況でございます。東南アジアとはいろいろな意味において、気候、風土、その他の文化構造も違っております。人種も違っておる。そういうことで、東南アジアは、やはりこれは一つの、いろいろな意味において共通点が強い、そうして経済開発段階も低いと、こういうような状況にありますので、ここをひとつ一つ地域としてまとめることのほうがはるかに効果があがるだろう、こういうことでして、フィリッピンのすぐ北には台湾がありますけれども、台湾の今日の経済発展段階というのはまた違います。これはまたのけるということにして、今回の地域に限定した、こういう事情であります。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま申し上げたような国々が、東南アジアに属さないから除外したと、もし、そういうことであるならば、やはり地域東南アジアに限定しなければならなかった理由がなければならぬ。これは一体どういうわけですか。もっと拡大したらいい。
  17. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あまり拡大するとまとまりが悪い。それでお互い連帯意識を強めて、そして協力して開発をするという態勢をつくることにねらいを定めたわけです。インドパキスタンを入れると、連帯感というものがだいぶ薄くなる。それから片一方は、またずっと国際的な協力を得ておりますから、年々一国だけで目標にしてやっておる、そういうのとだいぶ段が違う。ですから、まとまりがそうよくない。まとまりがよくないということは、結局、実効があがらないということになるので、別に排除する意味ではないのですが、東南アジアというものを一つ地域として想定することができるから、その地域に限定した。日本東南アジアとの関係も非常に濃密なものがあるし、あそこがいつまでも貧乏だとこっちもいろいろな影響を受ける。そういう意味において、あそこの東南アジアというものをだいぶ限定するということによって非常にまとまりがよくなるというふうに考えたのでありますが、今度集まってみると、どうもわれわれのねらいは間違ってなかったということがよくわかるわけです。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうすると、地域があまり拡大するとまとまりが悪くなる、そういうことのようですが、ただ単なるそれだけの理由では、どうも理由薄弱のように思われるわけです。と申しますのは、除外されたこれらの国々東南アジア諸国と比べてみると、みんな共通立場に置かれているわけです。たとえば食糧不足ということも一致しておる、一次産品値下がりで苦慮しておる、あるいは国際収支の危機、こういう点は、東南アジアとそれ以外の除外された国々とは条件はほとんど同様であるわけです。そういう共通の問題をかかえておるわけですから、この共通悩み共通の問題であるこの悩みを解決するためには、地域を拡大して、いわゆる東南アジアからそういう国々をも含めてこういう経済会議を持つことは有効であり、また、日本のとるべき態度であろうと思うのです。ただまとまりが悪いからというだけでは理由薄弱ではないか、こう指摘せざるを得ないわけです。この点はいかがですか。
  19. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一次産品値下がりで困るとか、外貨不足で困るとかいうことを言ったら、それは東南アジアに限らず、またアジア地域に限らず、中近東、アフリカの至るところで同じような悩みをかかえておる。そういうところを一堂に呼んだと仮定しても、なかなか気勢を上げて景気はいいだろうけれども、実際の経済協力というものを推進する上において、とても一気にそういうものをねらったって実効があがらないと考えます。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、さらに今後の問題についてお伺いいたしますが、今回招待されなかった国があるわけです。それから、招待したけれども出席しなかった国もあるわけです。こういう国々に対する援助は、今後についてはどういう態度をとられるのか、外務省としてそのことについてのお考えをお聞かせいただきたい。
  21. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 招待して来なかったのはビルマだけでございます。このビルマに対しては、来ないからといってとびらを閉めるのではなくて、いつでも出入りができるようにちゃんとそれだけの用意をしている。でありますから、あの地域一帯についての、たとえば農業開発会議なら開発会議というものをこれから開かれて、そうしてそれがかなり相当続くであろう——会議開催だけは限られた期間になるでしょうけれども、今度その会議の決議を受けて、あるいは委員会なりあるいはその他のいろいろな国際機関とかそういうものが設けられて、あるいはいろいろな人を派遣するとかいうような、そういう問題がずっとあとを引いて実行されるような推進の方策がとられるとこう思いますが、そういう場合に、全体の会議には来ないが、そういう問題そのものには賛成だから、東京なら東京に来て、ビルマから相談して、自分の分担あるいは自分管轄範囲の問題についていろいろなことでこっちに来るということになれば、いつでもそれに応じてやる、こういうことだけはわれわれ考えております。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私どもとしては、この会議をよくながめておったわけですが、どうも政府部内に、援助内容とかあるいは計画、こういうことについて不統一があったのではなかろうかと考えられる節があるわけです。この点についてはどうですか。
  23. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 不統一というと語弊がありますが、なかなかそう初めからびたっと合うようになっていません。いろいろな立場立場において、これに対して立場からの論議を加えますから、だんだんそれが共通認識になり、そして共通計画になる、こういうのが普通の成り行きなんでありますが、今回の問題でも、政府部内は初めはほおっておけばいつまでも統一なんかしません。この問題を出したので、それについて勉強を皆して、なるほどそうだというようなふうに認識意見計画も一致した、こういう状況であります。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そういうことをお伺いする理由は、たとえば農業開発会議構想に関連して農林省態度を見ると、農産物買い付け増加は困る、こういうことを主張しておったようです。それから、大蔵省としては、金の支出を義務づけられることには反対だ、こういう態度を示したと思うのです。最も積極的であったのは外務省や全く利害関係のない省だけであったようです。利害関係がないから無責任なことが言えたと思うのですが、こういう状態であったことは、おそらく間違いないと思うのですが、こういう事態について、外務省としてはどうお考えですか、また、今後どういうふうに対策考えられておるのか。こういう基本的な問題であるので、やはり外務省が中心になってこういう問題を統一していく必要があると思うのです。
  25. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 米の問題一つ取り上げて考えますと、依然として日本には自給自足政策をとっていくのだという説もあるようでありますが、実際問題として百万トン近く最近は足りなくて海外から買っておる。ところが、東南アジアの米は細長い米で、日本食糧には適しない。でありますから、あれは主として工業原料に使われている、こういうことでありますから、それを日本米と同じようなものを新しくつくらして、そうしてそれを買うのだといったようなことを言ったら、それはいつのことやらわからないし、また、それを買うように義務づけられることが、はたして日本のためになるか、そういうような点から農林省はこの問題にさわることをあまり好んでなかったというような傾向も見られますけれども、そうじゃなしに、人口がどんどんふえるけれども、東南アジアの米の増産のカーブがそれに追いつかない。現在でももう足りなくて域外から相当に買っておると、こういう状況でありますから、ほっておけば半飢餓の状態におちいるというようなことになりますので、経済開発どころじゃなく、ものが食えぬということじゃ問題にならぬじゃないか。東南アジアのもしも経済開発考えるなら、まず腹一ぱいものが食えるというその基本をつくって、そうしてやるべきだ。だから、この問題を取り上げても、何もこっちで買わなきゃならぬとかなんとか心配する必要がないということがだんだんわかりまして、それならということで、とにかくつくる米の種類は違うけれども、日本の小農、小規模経営とよく似ているし、日本の長い間の経験というものをもってこれは協力してやろうじゃないかと、こういうことであります。農林省は最近に非常に乗り気なんで、ただ農産物の中にトウモロコシとかあるいは油脂原料とかそういうようなものは、日本としてはいまでも足りないぐらいなので、東南アジアでもしそれが安いようなものができたら、これは買ってやろうと、こういう態度は示しております。そういうわけでありますから、この農業問題を取り上げるということについての国内の大勢は大体において一致している。それから、大蔵省関係の金の問題でありますが、これは今回の閣僚会議を開くといなとにかかわらず、すでに国際会議日本国民の総生産の一%までは経済協力資金として提供するということで、いますぐというわけにはいかない。何年か−三、四年先にはそこまで達するという言質を国際会議において与えている。だから、その線は守っていかなきゃならない。それからまた、資金内容については、現在の五分何厘というようなものじゃなしに、国際会議においては少なくとも経済協力資金の八〇%はただでやるか援助するか、あるいはまた、もし貸すというなら三%ぐらいで二十五カ年の年賦償還と、こういうところでいかなきゃだめだというような問題を持ち出されて、日本も趣旨としては反対できないものでございますから、これに同意しておるということでございまして、大体ワクがきまっている。そのワク内においてできるだけの援助を与えようと、こういうことですから、特別に今度の会議日本が新しい負担を引き受けたというようなことにはならない。こういうことで各省とも大体意見が一致したと、そこで開催ということになったわけであります。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま国民所得の一%というなにが出てまいりましたが、政府はOECDの開発援助委員会から国民所得の一%を低開発国援助に回すと、こういう勧告を受けておるわけです。この勧告を受けてから、一%というところにめどを置いて、こういうことをお題目のように唱えてまいりましたけれども、南北問題に対する理解などは、外務省は根本的に欠けておるんじゃないか。こういう点が考えられるわけですが、この点はいかがですか。
  27. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その点は決して認識が欠けておるというようなことはございません。それは今度のアジア会議の問題に対しましても、日本がすらっとアメリカと同じぐらい二億ドルの出資をきめて、もうこれは外務省から大蔵省へ取りつけ云々というようなことではなしに、大蔵省で自主的にきめたというようなところから見ても、非常に認識があると、こういうことが言えると思います。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この国民所得の一%ということをめどに今後援助ということですが、この援助の裏づけについても、日本としては一体金を出すのか、あるいは技術を供与するのか、こういうことについては、方針がすでにきまっておられるのか、今後検討するのかということと、この資金面の裏づけはほんとうにあるのかないのか、こういう点についてお伺いしたい。
  29. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) すでに大綱をそこに置いておるのであります。場合によっては、物にもなるだろうし、役務にもなるだろうし、いろいろな形においてそれを実行していくということになったのでございます。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係がございますから、次に問題を変えて、政府は六月に韓国が主催する東南アジア並びに西太平洋地域諸国の外相会議に参加することをきめたといわれておりますが、この事実は一体どうなのか、この点をお聞かせいただきたい。
  31. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御答弁申し上げておるように、準備会議が昨日終わったばかりでございまして、その詳細な報告をまだ承知しておりません。本省からも補佐官が参りまして、いずれ帰ってくると思いますが、詳細にこれを聞いた後に本会議出席するかしないかということをきめたいと思います。まだ、その段階ではございません。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ところが、ここで考えなければならないのは、韓国政府はこの会議で集団防衛のための常設機構を提案する予定だと報道によってわれわれは承知しているわけですが、もしそうだとすると、これは非常に問題ではないかと思う。このような政治的意図の歴然たる会議には日本としては出席すべきではない、こういうふうに考えられるわけです。韓国としてはそういう提案をする予定はあるのかないのか、もしそうだとすると、日本としては出席はまずいのではないか、避くべきではないか、こういう意見が出ておるわけです。この点はいかがですか。
  33. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 結局、海外派兵というようなものにつながるような申し合わせは、日本としては憲法から変えてかからなければならぬわけでありますから、そのほうはごめんをこうむらなければならぬ。しかし、そういったようなことが一体あるのかないのか、まだ詳細の報告を聞いておりません。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、時間がもうございませんので、最後一つだけ要望を含めてお伺いして私の質問を終わりたいと思いますが、いまかりに今後の動きで、韓国がいま申し上げたような意図で集団防衛のための常設機構をもし提案する、そういうようなことであると、わが国の憲法のたてまえからいってもこれは疑問があるので、当然これには出席すべきではない。また、政府としては、当初はこの会議に参加を見合わせるというような態度をとっておったようですが、いま大臣の答弁によると、まだ最終的には決定していないということですが、したがって、こういう点をあわせ考えて、十分慎重な態度で憲法のたてまえということをも十分踏まえて、そして、こういうかりにも集団防衛のための常設機構をつくる提案をする、そういう懸念のある際は、断固としてこれに参加しない、そういうき然たる態度で臨んでもらいたいということを強く要望するわけですが、そういうことについての大臣のお考えは一体どうか、これをお伺いして私の質問を終わります。
  35. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうような海外派兵につながるような会議に参画することは、これはできません、たてまえ上。でありますから、そういった問題には当然加わることはできない。
  36. 北村暢

    ○北村暢君 私は、ベトナム問題に関連いたしまして、十八日の日ですか、民主党のマンスフィールド上院院内総務がアメリカ議会で演説している中で、ベトナム問題についてマンスフィールド議員がベトナム戦争解決のための関係会議アジア地域で、しかもアジア関係国のイニシアチブで平和会議開催したらどうか、こういう演説がなされて、これに対するアメリカ政府は全面的な支持をしたということが新聞で報道されているわけでございます。この内容等についても若干新聞で報道されておりますが、これはジュネーブの国際会議で、イギリスなりソビエトがこの会議を持つことを努力しながら、なかなかそれに至らなかったという経験の中から、アジアにおいてこういう会議を持てという提案は非常に目新しいことであり、しかも、そういう提案に対してアメリカ政府が直ちにこれに全面的な賛成を、支持をするということもまた珍しい事実だと思うのです。そういうような点に対して、特に日本ビルマ等の名ざしがあるわけでありますが、その開催地等についても日本の名前が出ているわけでございます。そういう点について、一体政府としては、この提案に対し、またアメリカ政府のこれを支持する態度に対して、いかように今後対処せられるおつもりなのか、この点についてまずお伺いいたしたいと思います。
  37. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ提案——マンスフィールド議員の提案の域にすぎないものでありまして、米国政府はこれを支持しておりますけれども、関係アジア諸国がはたしてこれに同調するかどうかということが、まあ一番の大きな問題である、重点であると思います。それが開催に一致して、そして日本における開催を希望してくるならば、日本としては喜んでこれに応ずべきである、これはまあ私の個人の見解でございますが、そう考えております。
  38. 北村暢

    ○北村暢君 日本として、いま大臣の個人的な見解とおっしゃいますが、その関係——アメリカはもちろんですが、いわゆる中共、北ベトナム並びにいわゆる南ベトナムのベトコン、これを含めてということで話が出ているようです。関係国というのは、それ以外にも関係する国はあるわけでありますが、そういう国々が賛成するならば喜んでやりたいと言うのですが、なかなか簡単に、これはだまっていて賛成してくれるような筋合いのものでないことは事実であります。したがって、この日本がイニシアチブをとってやることを期待しているわけなんで、日本なりビルマなりがイニシアチブをとってやることを期待しているのである。そういうイニシアチブをとることを日本が積極的にやるかやらないかということなのであります。で、私は、従来の政府のとっておる、ベトナム和平のいろいろな働きかけをやったことも知っておりますが、しかし、それが実効があがらないで今日に至っておるという状態であるわけですね。したがって、いま大臣のおっしゃるような簡単なことでは、このベトナムの平和会議というものは簡単には持たれないのじゃないか、こういうふうに思うのです。したがって、こういう新しい事実に基づいて、日本政府としては賛成してくれればやるというのでなくして、積極的にイニシアチブをとってやるかどうかということについてその意思をお伺いしている。どうですか。
  39. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、同じアジアに位して、一日も早く平和収拾が実現することをどの国にも劣らない程度に望んでおるのは日本である、こう思うのでありますが、この関係国を説得して平和会議を主催するということがもしできれば、これはたいへんな、これ以上の成功はないと思うのでありまして、やはり日本立場なり、分相応の考えをそこにしていかなければならないと思うのであります。こういう方向に日本のできる限りの努力をするということにおいては、これはもう当然やらなければならぬ問題であると思います。正面切って説得工作に乗り出すかどうかということは、よほど慎重に考慮した上でないと決定はできない問題だと考えております。
  40. 北村暢

    ○北村暢君 慎重に考慮されるのは当然でしょうけれどもね、このマンスフィールド上院議員のこの提案内容からいきますと、ベトナムの現在の情勢の深刻さというものを認めながら、無条件話し合いということの基本的な態度というものは変えていないようでありますがね、そういう無条件話し合いというようなことで、一体、日本が幾らイニシアチブをとっても実現可能性というものは私はないんじゃないかと思うんです。そういう点について、一体、できればと言うんですが、どういうような条件が出てくれば見通しを持って日本政府として乗り出すか、そういう点について若干伺っておきたい。
  41. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やっぱりこれは、戦争しながら一方において話し合いをするということもやればやれないことはない。それじゃ十分に効果をあげることができない。でありますから、やはり両方ともまず武器をおいて、そして平和の話し合いに入る、こういうことじゃないといかぬのじゃないかと思います。一方において戦争を継続しながら、とにかく片手間にどこかに集まってと、こういうことになるんじゃ、それはとても効果はおぼつかないのではないか、こう考えます。
  42. 北村暢

    ○北村暢君 そこで、私は外交のしろうとですから、しろうとの質問で答弁しにくいのかもしれませんけれども、中国のアメリカに対する考え方というものがやはり非常に違うんじゃないか。ということは、ラスク国務長官が中国政策に対する十項目を発表いたしましたが、これに対する中国の受け取り方というものは、非常に、アメリカのラスク証言のような受け取り方はしておらない。あくまでも中国としては、現在のアメリカのとっております、十九日の北爆におけるB29の戦略爆撃を開始したということ、あるいはハノイ等の至近距離に爆撃が行なわれているということ、それがひいては中国に波及してくるだろうということを想像しております、ラスク長官はこれに対して、中国の本土攻撃はやらないということを言明しておるにかかわらず、中国の受け取り方は、そういう中国に波及してくるということを非常に警戒をしておる、こういうことで非常に受け取り方が違うと思うんですね。したがって、私は、いま大臣のおっしゃられるように、戦いをやりながら交渉をするということは、まあできないことはないけれども、効果ないだろうということだと思うんです。それは私もそうだと思うんで、この際、ベトナム政情不安に関連するベトコンの進出、それに報復的な北爆の拡大、こういうものがなされている限り、私は、アジアにおける平和会議、ベトナムの平和会議というようなものを開く条件というものは全くないんじゃないか。したがって、そういう意味合いからいくというと、まずイニシアチブをとるとするならば、アメリカに対しても北爆は直ちに停止をするというようなことを要求をしなければなりません。中国に対しても、アメリカに対する不信感というものをぬぐい去る努力もしなければならぬ。そういう非常にむずかしい問題がたくさん横たわっているのだろうと思うんですよ。それですから、できればいいじゃなくて、アメリカもベトナム問題をもてあましぎみになってきておるこの際、こういう提案に対して、これがあるなしにかかわらず、日本としてもベトナム問題については和平の方向を期待をしておるわけですから、当然このイニシアチブを握るための具体的な検討というものをやるべきだと思うんです。その意思がおありになるかどうか、お伺いしたい。
  43. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のように、非常にむずかしいと思います。しかし問題は、とにかく武器をおいてテーブルにつくと、そうしてほんとうに和平の道をお互いにざっくばらんに探求するという、まずそういう腹になることが必要であろうと思いますが、そういう決意をさせるという方法がなかなかむずかしいと思います。まあ、南における唯一の代表はベトコンでなきゃいかぬとか、あるいは米軍がまず撤退をするというようなことを言っておるのじゃ、これは武器をおいて平和会議を始めるというようなことには、なかなかならぬと思うのでありまして、そういうようないろいろな点を考えますと、かなりむずかしい問題でありますが、日本がもしできることならば、なし得る範囲というのはおのずから限定されておる。できることから日本がこの問題に対して努力するということは、これはもう、概括的に申しまして、避けるべき問題じゃない。進んでやるべき問題だとは考えておりますけれども、なかなか、内容が非常に困難な問題を含んでおるというふうに考えます。
  44. 北村暢

    ○北村暢君 まあ、官房長官がこの問題に対して、関係国とよく相談して慎重に検討するように考えてみたいと、こういうような新聞記者に対する、記者会見において発言をしておるわけですね。いま当面の担当者である外務大臣は、なかなかこう、そういう糸口が開きそうもないような感じがします。積極的な努力という点について、具体的にいま言ったように非常にむずかしい問題ですが、大体そういう努力はしなければならないといっても、実際に行動するということはなかなかできない。そこにむずかしい問題があると思うのですけれども、いろいろな努力をした中の一つとして横山特派大使を派遣しておる。いろいろやったわけなんですが、横山特派大使というのは、いまどこにどうやって、どういう報告を受けているのですか。
  45. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) ヨーロッパ諸国を回られまして、次にカイロ、中近東を二、三回られて、ただいまアジアに来ておりまして、現在おそらくビルマを回っております。
  46. 北村暢

    ○北村暢君 おるところくらいはわかってないとしょうないわけですけれども、辻さんみたいに行ったきり帰ってこないのじゃ困るのだけれども、しかし、あれは特派大使として政府が任命して、一定の任務を持って出ていったわけですね。おるところがわかる程度では、私は何かせっかく具体的な一つの手段として出ていかれたわけなんですけれども、一体どういう任務を持って行ったのですか、あの特派大使というのは。それで政府との連絡をとりつついろいろな折衝をしているのですか、それとも、何か個人的なことでふらふら何とはなしに歩いているか、その辺のところはどうなんですか。どうも政府の掌握下にないような気がするのですね。最近は新聞にもほとんど出ない。どこへ行っているのかわからないくらいだ。ああいうことで具体的な努力をしているというふうに言われても、私どもはどうも理解ができない。これはせっかくの任務を持たして出しているわけですからね。どういうことで行っているのか、ひとつそこら辺のところ。いまアジアにおるのだけれども、何をやっているのか、具体的に。アジアといっても広いですから。ビルマということのようですが、ビルマにおられるなら非常に都合がいいので、ビルマ日本というのでイニシアチブをとれと、こう言っているのだから、これは非常に連絡しやすいところにおるのだ。どうなんです、その辺は。
  47. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 横山大使から常時報告を受けております。各地で意見の交換をしておりますし、そのつど意見とともに報告を本省にしてきております。
  48. 北村暢

    ○北村暢君 意見を交換してというのは、その成り行きはどういうふうになっているのですか。意見内容は、報告を受けているならわかるでしょう。それは秘密で言えないのですか。
  49. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 各地で各様の意見を持っている人と会っているわけでございまして、実際に各様の意見を報告してきております。内容の詳しいことにつきましては、なお、帰られてから総合的に報告されることになっております。それまで待ったほうがいいかと思います。
  50. 北村暢

    ○北村暢君 意見を聞いて歩くだけで、日本政府の意思というものに基づいて外交折衝をするということでないのですか、どうなんですか。その行った国々はもちろん違うでしょうけれどもね。たとえばビルマに行っているということになれば、ビルマというのは非常に特殊な国情であるわけですね。主としてベトナム問題についてのために行かれておるわけですね、横山特派大使というのは。それ以外の一般の外交上の問題で行っているわけじゃないだろうと思うんですね。だから、ベトナム問題についての意見というものが出てこなければいけないし、どこの国はどういうふうに考えているか、こういうことでなければならない。どうなんです。
  51. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 横山特使を派遣する大体の大綱は、もちろんこれを指示しております。これは結局ベトナム問題に関する和平の糸口を探求する。そういう意味で、いろいろベトナムの問題につながる向きを歴訪しまして、どういう方法が最も適切有効であるか、また、そのねらいを定めても、これを実行する上において何が一番いいかといったような点について、広く探求するという任務を持って出かけているのでありまして、まだこれら問題の詳細について、帰ってからなおよく確かめたいと思うのでありますが、随時報告してくる内容をいまここで申し上げることはできないことはまことに遺憾と思います。いずれにしましても、情勢だけは明瞭になってくると考えて期待しております。
  52. 北村暢

    ○北村暢君 それはちょっと確かめておきたいのは、それは、こういう公開の委員会等まで内容が発表しにくいということなんですか、どうなんですか。
  53. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 問題をかかえているだけに、まだ発表の時期ではないと、こう考えております。
  54. 北村暢

    ○北村暢君 それじゃ、いま具体的な一つの例として、横山特使がベトナム問題解決のためにせっかく政府の指示を受けて努力中である、まあ近いうちに帰られるのじゃないかと思いますが、いつごろお帰りになって、そうして、ベトナム問題について、横山特使が帰られなければ、具体的なこの問題に対する政府態度というものは出せない、こういうことなんでしょうか。
  55. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 五月中旬に帰るわけでありますが、それまではベトナムに対する日本の出方というものはきまらない、そういうものでもありません。
  56. 北村暢

    ○北村暢君 その程度だろうと思うのですが、それほど横山特使というものは非常に重要な役目を持って行かれたことは事実でしょうけれども、常に連絡があるということでありますから、帰らなければ態度がきまらないということじゃないと思う。したがって、もう少し私はベトナム問題に対する政府態度というものは、本会議で亀田委員も指摘されましたように、政府は努力する努力するということを言っておりますけれども、問題のむずかしい点については私どもも大いにわかるわけですけれども、とにもかくにもベトナム問題解決に乗り出すということについては、へたに乗り出すと失敗するということで、それを警戒するあまり慎重にならざるを得ないということも十分わかるわけでありますけれども、このベトナム問題は私はやはりアジアの重大問題であり、世界でも重大関心のある問題である。とにかく一日も早くこれは解決しなければならない問題である。しかも、これはベトナムだけの問題でない。日本にも間接的に非常に重大な影響を及ぼす、進展のいかんによっては非常に日本にも大きな影響を及ぼす問題であります。特に先ほど申しましたように、中共のアメリカに対する認識というものは、アメリカ考えるのとは非常に段差があるわけでありまして、そういう面からいっても、私はたいへん問題がある。特にアメリカは中国本土は攻撃しないということを言明しておりますけれども、これはもう外交的な事例として、攻撃すると言って、宣言し、初めから攻撃していくというのは、これはないことなんで、現在の段階では攻撃しないと言うのはあたりまえなことなんですね。しかし、それがそのように受け取られていないというところに、やはりベトナム問題というものが将来どういうふうに発展するかということは日本に大きな関係が出てくる。したがって、私はベトナム問題に対する政府の取り組みというものは、人ごとではなしに、アジアの平和のためにも、日本の直接の平和にとっても非常に大事な問題である。そういう意味で、ひとつ形式的な努力ではなしに、実質的な取り組みというものがもっと深刻になされるべきじゃないか、こう思うのです。これについての大臣考え方をお伺いしておきたいと思います。決意のほどをお伺いしたいと思います。
  57. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あらゆる機会をとらえてこの問題の解決のために努力をしておることは御了承願いたいと思います。目に見えてだれがどっちに飛んでいくということ以外に、いろいろな筋々がございまして、そういう問題を動かしていく。そしてこの問題に、それに動員するということもかなり有効であると考えますから、あらゆるそういう機会なりそういう筋をつかまえてそして問題の解決に努力しておるということだけは、ひとつ御了承願いたいと思います。
  58. 北村暢

    ○北村暢君 次に、問題を変えまして、先般の外務当局の出しましたいわゆる「日米安保条約の問題点について」の見解について質問いたしたいと思うのですが、実は「核のかさ」の問題についてこの前の質問で私納得しておりませんのでこれをやりたいと思うのですけれども、時間の関係から、きょうはこれは省略をさせていただきまして、またいつかの機会にやりたいと思います。  そこで、いわゆる安保の問題の外務省文書が出されて以後、社会党、民社党、これに対する強烈な批判が出ているわけです。その中の一つとして、アメリカ軍の有事駐留の問題についてお伺いいたしたいと思うのですが、有事駐留の問題については外務省の見解からすれば、国際常識として有事駐留ということはあり得ないという見解を出したのでありまますが、民社党の強い批判に対して、条件によっては有事駐留も考えられる、その裏づけは、いわゆる日本の自衛体制というものが拡大強化された場合には有事駐留というものがあり得るというような柔軟な態度を表明しているようであります。これに対する見解をひとつ明らかにしておいていただきたい。どうしてそういうような有事駐留というものがあり得る、こういうふうな見解に急に変わったのか、この理由をまず御説明願いたい。
  59. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 有事駐留ということばがどうも近ごろはやっておりますが、有事出動ならわかるけれども、有事駐留というのはどうも正確じゃない。一たん事があった場合に出動するというならわかるが、事があった場合には駐留する——どうも何を言っているのかわけがわからぬ。それで、民社も、これはいい表現じゃないと、こういうふうに思っておるようでございます。問題は、要するに、常時駐留というものがいろいろ国内においてフリクションを起こすので、なるべくあの形を薄めて、平生いざこざのないようにしておきたい。そしてしかも、防衛の機能だけは弱めないようにするということならわれわれは全く賛成でございますから、有事駐留ということばで、表現はよくないけれども、ねらいとして民社党が思っておられることは私はよくわかるような気がいたします。いたしますけれども、全くそれはいよいよという場合に乗り込んできて、どうも落ちつく兵舎もない、こういうような状況ではやはり遺憾なので、ある程度のやはり基地というものは認めざるを得ない。こういう——趣旨としてはよくわかりますし、それから大体年とともに日本のみずからの防衛機能も上がっておるし、それに応じてアメリカの陸上兵なんかはずっと少なくなって、ほとんど残っていないくらいになっておるのでございますから、その方向に進んでいることは事実であります。   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕 これ以上、じゃどうすればいいかということになると、その趣旨はよくわかりますけれども、防衛の機能をそこねてまで常時駐留というものの影を薄くするということは、これはどうも私はできないと、こう考えております。そういうことでございますので、したがって、外務省としてもその趣旨をはっきりさして、そして必ずしも有事駐留ということを、そういう精神を否定するものじゃないということをさらに注釈を加えて新聞に発表をした、こういうわけでございますから、手のひらを返すように変わったというわけではないわけであります。
  60. 北村暢

    ○北村暢君 いま大臣のおっしゃる、この民社党の主張されていることはわからないわけではないと、趣旨についてはわからないわけではないが、常時駐留の機能というものを全然果たせないというのでは困るということですね。気持ちはわかるのだがということですが、わかるならそれでいいんじゃないかと思うのですが、どうなんですか。民社党に気がねして、おせじで、わかると言うだけで、実際の腹のうちは常時駐留なんだということなんですか、端的に言って。
  61. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうわけじゃないので、まあ常時駐留の現在のかまえに対してもうちっとも変更はしないというふうな意味ではなしに、もう現に日本の自衛隊の強化に比例して、いま申し上げたように、陸上兵力というものはほとんどいまはないと、ただ場合によって、有事の際に出動して基地につくと、そういう余裕は残してありますけれども、しかし、全体としてずいぶんそれはもう常時駐留の姿というものはだんだん変わりつつある、こういうことは言えると思います。なお、この上常時駐留によっていろいろな国内において紛議をかもしておるので、それをなるべく薄めていくということについては賛成でありますけれども、しかし、そのために防衛の機能をそこなうという限度はもちろんこれは破りたくない、こういう考えであります。
  62. 北村暢

    ○北村暢君 いや、あくまでもそれは日本の防衛ということで自衛力が漸増をして、そうして米軍の防衛に依存をしなくてもいいといったときに撤退をしてもらう、有事に出動してもらう、こういうことが条件でないのか。問題はそこなんでしょう。したがって、判断は、日本みずからが自衛力を持ってアメリカに依存する必要がない、こういう判断をされる、これが具体的な問題だと思うんですね。その判断以外にないんじゃないですか。そうすれば一体、これは外務省が専門ではないでしょうけれども、現実にいま三次防というものでもって防衛力増強計画というものが考えられて、現状において、近い五カ年等の想定の中においてこの三次防程度の自衛力の増強がなされたならば有事駐留でいいのか、こういう問題が私は当然時期的な問題として出てくると思う。で、外務当局は民社党に遠慮して、そんなことになりっこないのだから、だんだん減ってはきておるけれども、常時駐留というものは近い将来ないということを見越してこういうことを言っておるのか。一体どの程度になれば常時駐留が必要ないというふうに判断されるか。   〔理事柴田榮君退席、委員長着席〕 この点を明らかにしていただきたい。この時期的な見通しというものをはっきりしていただきたい。それでなければ、これは無責任きわまりない政治的な発言だと、こういうふうに言わざるを得ないと思うのですが、どうでしょう。
  63. 安川壯

    政府委員安川壯君) ただいま大臣からも御説明ございましたように、まあ平時アメリカ兵が一兵もいない、アメリカの基地は一つもないというようなことが予見し得る将来に起こるとは実は予想していないわけでございまして、あくまでもやはり防衛に必要な限度の基地なり米軍の駐留というものはある程度は必要であると思っております。ただいま第三次防衛計画が実施されたら米軍がさらにどのくらい撤退可能かという御趣旨の御質問でございますけれども、これはまだ第三次防それ自体がきまっておりませんし、これは主としてまあ軍事的な判断によりますので、私から、かりに第三次防ができたらどの程度米軍が撤退するのだということをお答えできませんし、お答えするのは不適当だと思いますが、かりに第三次防ができましても、それによっていまある米軍が全部撤退してしまうというようなことはとうてい起こり得ないというふうに考えております。
  64. 北村暢

    ○北村暢君 そうしますと、第三次防の途中でこの日米安全保障条約の改定期が来るわけですわね。来るわけです。その改定の時期というのは、私はやはりこういう問題の論争になる非常に大きな一つの時期であろう。で、それを通り越えて常時駐留するということであれば、もう遠い将来の話で、これは自衛力は漸増していけばこの有事駐留もあり得るのだなんということを言うこと自体がおかしいと思うのですね。私は、そういう意味において、何かこれは非常な政治的な発言のように聞こえるわけなんです。腹の底はそうじゃないのでしょう。いま北米局長の言ったように、三次防ぐらいやったって、とても有事駐留というような形にはならないのだというのが本心でないのですか。どうです。
  65. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 有事駐留があり得るということは私は申し上げていないのですよ。そのことばはどうも適当でないと、しかし、この趣旨は、常時駐留というものをなくして、そうしてなお防衛の国の安全保障の道を探究することができたら、それがいいのではないかという考えのもとに民社党はこの問題を取り上げておるのでございますけれども、これはある程度はまあよくわかるけれども、しかし、駐留ということを全然考えないでいけるという時期はそう簡単に来るものじゃないと、こう考えております。ただしかし、なるべく常時駐留することによって国内にいろいろないざこざが起こってきますから、そういったような問題をなるべく解消し、これを少なくする、そうしてなおかつ安全保障の機能が低下しないという方法があれば、そういう方法をとることにやぶさかではない。だから、その方向に向かって努力することはいたしますけれども、しかし、それによって常時駐留を一切否定するというわけにはなかなかいない、こういうことなんです。だから、まあ御趣旨はわかるけれども、そのとおりはなかなかできそうもないが、しかし、その方向に向かって努力はしてみたい、こういうことを考えております。
  66. 北村暢

    ○北村暢君 その点は、やはり民社党の主張しているのは、いわゆる常時駐留と基地の原則的な撤廃をして、安保条約の根本的な改定を主張するんだというんですから、これは改定期を目標に、民社党の主張というのはここにある。したがって、政府のいま答弁されているように、自衛力を漸増していってこれが常時駐留の必要のないところまで来たという場合に——ということは、民社党の主張からは受け取れないわけですね、はっきりしているわけです、これは。したがって、いま、きのうあたりの政府の意思表明されている点は、これは私は民社党の考えていることとはだいぶ違っていることでないか、こう思うんですね。したがって、私は、自衛力が漸増していって基地がなくなるということを望んでいるものではなく、また、そういう主張をしているわけではない。私どもは、現在の自衛力でも、またさらに軍縮をしても、なおかつ、安保改定期において基地の撤廃をすべきであるということがもう主張でありまして、これはもう御存じのとおりです。ですから、そういう点からいけば、今夜の、きのう、きょうの外務省の、政府の見解というのは、どうも政治的な発言にしか受け取れない。本心はそうでない、こういうふうに受け取れるわけですね。この点はまあ見解の相違もあるし、まあ腹にもないことをあまり言わないほうがいいんでないかと思うんですけれども、そういうふうに私は理解しているわけです。どうでしょうか。
  67. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 別に政治的発言だとは思っておりません。詳しくは申し上げたとおりでございまして、その方向に努力はいたします。
  68. 北村暢

    ○北村暢君 最後に、私はこの法案に関連することについて若干お伺いいたしますが、この定員増によりますものが、主として在外公館、新しく設けられるもの、あるいは既設の公館の増強ということのようですが、大体この在外公館に勤務する方々の勤務条件といいますか、まあ外交官でありますから相当体面を保たなきゃならぬ。それかといって、各公館における事務所、大使館そのものの建物の設備なんか、まあ非常に悪いところもたくさんありますし、また、宿舎等においても体面を保たなければいけないし、また、そういうことからあまりひどいところにも入れないということで、相当やはり海外に出ている方は苦労されているようですね。したがって、今度増員せられる大部分の方は在外公館に当てられるようですが、そういう点についての配慮というものは新しく行く人にはなされているんですか、どうなんですか。
  69. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) 今度八十六名の増員になりまして、在外公館に、それぞれ既設公館及び新設公館に配置されるわけでございまして、それぞれの地位に応じまして在勤俸がつくわけでございますが、御説のとおり、日本の地位も上がりますし、したがって、交際費等もふえるということで、本年、在勤俸をいままでの一〇%増加いたしまして、また、ある程度、その後の事情によりまして、物価騰貴及び現地の諸事情を勘案いたしまして、ある程度の格差をつけて外交活動に支障ないように配慮していく所存でございます。
  70. 北村暢

    ○北村暢君 まあ、支障のないように配慮されているだろうと思うんです。支障があってはたいへんなんですが、しかし、これは非常に十分ではないですね。これはもう私が言わなくても皆さん十分おわかりのことだろうと思う。ただ予算が取れないから十分なことができないというだけだと思うんですがね。海外に行かれる方の子弟の教育の問題等を一つとりましても、これはしばしば問題になっておりますけれども、日本人学校というのは、ほとんどと言っていいくらい、ないわけですね。そして教育の面においても、聞くところによりますれば、ローマにつとめていて子供さんはロンドンの学校に入れているというような人もおるようですね。そういうようなことで非常に苦労されておるということを私も聞いておるわけです。したがって、これはいろいろ宿舎等の設備等についても、まあ借家ということですね、それからアパートを借りている、こういう人が圧倒的に多いわけですよ。施設というものはほとんどないという実情だろうと思うんですね。こういう点について、一〇%程度のもので外交活動に支障ないと言っても、私は簡単にそういうふうに理解はできないような感じがするんですね。そういう点について、まあぜいたくしろということは私は言ってないですけれども、下級の在外公館の職員というのは相当苦労されておるということは事実のようですね。こういう点はおわかりになっていて、そして適当な措置というものがなされているのかどうなのか、こういう点、お伺いいたしたい。
  71. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) 御説のとおり、十分というわけにはまいりませんが、いまの教育問題、それから住宅の問題、それから医療の問題等がございまして、これは東南アジアを主といたしまして、各地に学校と申しますか、塾程度を設けまして、日本から先生が行きまして、あまり教育設備のよくない国には逐次日本人学校をつくって、小学校、中学校程度は教育を進めていきたい。今後アフリカ等教育施設のあまり発達していない国においては、教育施設を逐次進めていきたいと考えております。それから住宅につきましても、非常に住宅がない、あっても非常に高いという東南アジアとかアフリカにつきましても逐次これを拡充している次第でございます。それから医療の問題におきましても、現在アフリカと中近東に一カ所ずつ医師を派遣いたしまして、循環いたしまして、公館員の健康保持のために努力しているわけでございます。この三つの施設を逐次拡大していきたいと考えておる次第でございます。
  72. 北村暢

    ○北村暢君 大体このくらいで終わっておきたいと思います。
  73. 多田省吾

    ○多田省吾君 初めに法案に関して二、三お尋ねしたいと思うのです。  このたびの法案は、在外公館の増員の問題を扱っておられるようでございますが、海外に参りますと、在外公館勤務者の方々が、日本からの訪問者が多く、その送迎に時間、労力を取られて、本来の外交目的のための仕事がなかなかできないという苦情がありますけれども、その点に関してはどのようにお考えでございましょうか。
  74. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) 御指摘のとおり、近年、海外に旅行、視察及び仕事等々で非常に日本人の方が出られまして、外務省の在外公館といたしましても、海外に行かれる方がその目的を達成されるためにいろいろ便宜供与を与えることはわれわれの任務だと考えて、全館員をあげてこれの便宜供与をいたしておるわけでございます。しかし、何ぶんにも限られた人数でありますので、一どきに多勢の方が来られるということでございますと、これは十全の便宜を与えることはできませんので、現地補助員等の援助を得まして、できるだけのことはやっております。しかし、最近は海外に出られる方も非常になれられまして、在外公館が一から十までお世話申し上げなくても所期の目的を達せられるという方もありますので、外務省といたしましても、今後とも人員の増加をはかりまして、必要に応じて便宜を供与すると同時に、また、行かれる方もだんだんなれてきて、そう大使館の世話にならない、両々相まってうまくいくのじゃないかと考えております。ただ、一時的に多勢来られたり、ないしは、非常にむずかしいような御要件で来られた場合には、御不便をかける面もあるかと思います。その点は御了承願いたいと思います。
  75. 多田省吾

    ○多田省吾君 現在の外交は、直接外交と申しますか、総理大臣あるいは外務大臣級の直接外交が中心になっておりますから、在外公館の負担はある程度少なくなっているとは思いますけれども、貿易あるいは経済外交等において、もっと積極的にやっていただきたいという要望が強いわけです。また、もう一面は、日本から行っている海外留学生とか、地元の在外邦人に対するめんどうが非常に足りないのじゃないか、不親切ではないかというような批判も聞かれるわけです。私たちは、この在外公館の増員の問題に対して賛成することにやぶさかではありませんけれども、こういった問題に対しては、いかがお考えでございましょうか。
  76. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) いま御説明申し上げましたように、いろんな方がいろんな目的で行かれて、短期の旅行ないしは長期の滞在ということで、公館員の人数は限られておりますし、世界全体にわたりまして、皆さんに十全の御満足といいますか、便宜供与ということが、ときによってはできないことがございますが、われわれとしては、いろいろ御要望があれば、できる範囲において御援助御便宜をはかりたいと考えておる次第でございます。
  77. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど北村委員から質問のあったことでございますが、マンスフィールド米民主党上院院内総務がベトナム平和会議に対して日本ビルマに対して仲介を望むというような発言をして、その後、ゴールドバーグ・アメリカ国連大使がジョンソン大統領と会った結果、ジョンソン大統領もマンスフィールド上院議員の提案に対して賛成であるという発言をしている。あるいは国務省のスポークスマンも賛成の意を表している。そういうことがいわれております。こういったことに対しまして、外務大臣は、これはベトナム平和に対する一歩前進の好ましい傾向だと考えられるかどうかお伺いしたいと思う。
  78. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この提案は、関係国がこれを受け入れて初めて目六体化するものでございまして、ただ一マンスフィールド議員の提案ということでは、ただ提案があったという事実は、これは認めますが、しかし、その実際的な効果というものは何ら認めることができないと思います。しかし、そうではございますけれども、とにかく、こういう有力な上院議員がこういう提案をするということ及び政府がこれに支持を与えておるというようなことは、やはりそれなりの政治的な意味というものはあるのでありまして、一歩前進と言うことは当たらないかもしれませんけれども、とにかくそれだけの政治効果はあるということは認めることはできると思います。
  79. 多田省吾

    ○多田省吾君 マンスフィールド議員の提案によりますと、アメリカ、ハノイ、北京及びこの地域における平和の実現と維持にとって不可欠な南ベトナム内の諸勢力、ということを言って、その南ベトナム内の諸勢力の中に、ベトナム民族解放戦線、いわゆるベトコンも入るのではないかというような観測も行なわれているわけでございます。また政府は、前々から日本の平和維持会議といったようなものを開きたいというようなこともおっしゃったかと思いますけれども、このマンスフィールド上院議員の発言とは何も直接関係がなくても、この際、日本政府としてベトナムの平和をはかるために、外務大臣があらゆる機会をとらえてとおっしゃっておられるように、ベトコンを含めたこれらの関係諸国の平和会議日本で開くように呼びかけるといったような前向きのお考えはないものかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  80. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) でありますから、このマンスフィールド氏の提案に各関係国が同意をしてくれば、初めて今度は具体的に和平会議開催されることになるのであります。そういう段階におきましては、日本としては喜んで開催地を引き受けてよろしいのではないかと、こう考えております。
  81. 多田省吾

    ○多田省吾君 一昨日、伊藤委員の質問に答えられまして外務大臣は、ジュネーブ軍縮委員会に加入することに積極的にあらゆる機会をとらえて努力したいとおっしゃったようでありますけれども、このジュネーブ軍縮委員会に加入するためには、どうしてもソ連の同意あるいは他の十八カ国の関係諸国の同意あるいは国連総会における拡大決議といったようなものが必要かと思いますが、この五、六月にグロムイコ大使が来日するという話も聞いておりますけれども、この前はソ連の反対にあって軍縮委員会の加入はできなかったわけでございますが、外務大臣の訪ソ等によりまして、ソ連も同意するような姿勢が、そういう可能性が生じたように思いますけれども、具体的に外務大臣はジュネーブ軍縮会議加入のためにどのような努力をされるのか、そしてその見通しはいかがでございますか、お尋ねしたいと思います。
  82. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ジュネーブ軍縮会議のこの十八カ国というのは、自由国家側から五名、一国一名、つまり、五つの国が選ばれる。社会主義国家からはやっぱり同数の五名、それから、その他中立等八名、こうなっておりまして、日本は自由陣営側に入っておりますから、この五つのうちどこか日本に譲ってくれるところがないとなかなか入れない、こういう状況であります。しかし、この十八というのは、必ずしも固定した数字じゃないので、これをもっと拡大するということも可能なはずであります。いずれにしましても、今後このままでいくか、あるいは参加国をもっと数を広げるかわかりませんけれども、あらゆる機会をとらえて日本がこれに加入するように努力したいと、こう考えております。成否のほどはいまのところ予想はつきません。
  83. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、具体的に、五月中旬にグロムイコ外相が来日するといわれておりますけれども、そのときにも外努大臣からこれについて協力を求められる予定でございますか、お尋ねしたいと思います。
  84. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは、いまからどうもはっきりとお約束はできませんが、あらゆる機会をとらえて努力をしたいと、こう考えております。  なお、ソ連外務大臣が五月に来るということは、まだきまったわけではございません。
  85. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほども質問がございましたが、まあ、アジア外相会議に参加の決定をするのはもっと——補佐官が帰ってきてそれと話し合ってからだということをおっしゃっておられましたけれども、大使級準備会議日本はどのような主張をしたのかどうか、可能な限りお答え願いたいと思います。
  86. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この会議がただ気勢を上げる、いわゆる反共主義の国の会議として、会議体として、ただ気勢を上げるというような、そういう空疎なものであってはならない、もっと中身のある建設的な会議でなければならぬ、しからざる限りは、日本はこれに出席ができない、こういうたてまえのもとに準備会議において適当に善処する、そういう指示を与えております。
  87. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは先ほど質問がありましたように、軍事問題なんかにはあまり触れないで、経済とか文化問題を中心にして会議をしようというような主張をなされたのかどうか。それが受け入れられたのかどうか。それからもう一つは、インドとか、パキスタンとか、セイロン等の諸国にも参加を求める方針なのかどうか。  その二点をお尋ねしたい。
  88. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本は憲法のたてまえ上、国際的な軍事会議というようなものに参加ができない、そういう制約がございますから、そういったような問題については、これは日本は参加はできない。それからまた、反共会議のかたまりであるというような誤解を受けないようにというふうに指示してありますから、したがって、招請国の範囲ももっと広げるというようなことが論議されたかもしれません——されたようであります。詳しいことをよく聴取いたしまして、そうして日本態度をきめたいと思います。
  89. 多田省吾

    ○多田省吾君 七月の五日から三日間、日米経済合同委員会開催することにきまったそうでございますが、その会議の最も中心になる焦点はどのような問題になろうかとお考えでございますか。
  90. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来とも同じでありますが、両国の懸案問題、それから両国の関心を持つ国際問題、そういったことが会議の議題として取り上げられるであろう、こう考えております。
  91. 多田省吾

    ○多田省吾君 この前からラスク国務長官等が、十項目にわたる今後の中国政策を掲げて、アメリカの中国に対する態度が軟化したのではないかということもいわれておりますし、また、十九日にはゴールドバーグ・アメリカ国連大使がワシントのナショナル・プレス・クラブの記者会見で、中国の国連加盟をアメリカが受け入れるための最低限の必要な四条件というものをあげて、一つには、中国加盟の代償として国府を国連から追放するという要求を放棄するとか等ということをあげておるようでありますけれども、こういう報道がなされておりますが、この前から中国の国連代表権問題というものはだんだんに国連加盟の方向に進んでおると思いますし、また、世界の平和、アジアの平和の観点から考えましても、中国を国連に加盟させなければならないと私どもは考えておりますが、どういう国際情勢あるいはどういう条件が充足されたならば、日本が重要事項指定方式を放棄してですね、そうして国連に対する加盟を促進するのか、そういった点をお伺いしたいと思います。
  92. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中国が国連に入って、そうして国府が追放されるというこの問題については、日本としてはただいまのところは反対でございます。しかし、この問題はアジアの平和にきわめて重大な関係を持っておるわけでありまして、アジアの平和に重大であれば、これはすなわち世界の平和にもきわめて重大な問題と考えます。で、こういったような問題は単純投票でなしに、いわゆる重要事項指定方式によって少なくとも三分の二以上の表決できめるべきものである、いわば換言すれば、国際世論の、大多数の国際世論というものによってこれはきめるべきものである、こういう態度は変えておりません。どういう条件が満たされればこれを変えるかというお話でありますが、どういう条件であろうとも、とにかく国府を追放して中共が国連に代表権として加盟するということは、これは日本単独の問題じゃない、重要事項指定方式によって三分の二以上の多数をもってきめるべきものであるという主張をしておるのであります。もし、これを日本だけの考えできまるものなら、いろいろな条件というものがあるでしょうが、そうじゃない。さよう御了承願いたいと思います。
  93. 多田省吾

    ○多田省吾君 もし、中国や国府が二つの中国というものをもし認めるとするならば、外務大臣はこの中国の国連加盟に対してどのような態度をとられますか。
  94. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現にそういうことは中共も反対、それから国府も反対でございますから、そういう現実に即して意見を申し述べたいと思いますけれども、仮定の議論としてはきわめてデリケートな問題でありますから、これは、そういう場合にはどうだと言われても答えることは差し控えたいと思います。
  95. 多田省吾

    ○多田省吾君 中国の国連加盟について継承国家方式というものがいわれておりますが、その点に関してはどうお考えになりますか。
  96. 安川壯

    政府委員安川壯君) 継承国家理論という理論として存在しておることは承知しておりますが、日本政府部内でそういう継承国家方式というものを検討したという事実もございませんし、また、アメリカでもそういう考えが現に生きて何かそれが積極的に検討されておるというふうには承知しておりません。したがいまして、日本政府としましても、これに対してどういう意見を持つかということをいままで検討したことはございませんので、ちょっとお答えいたしかねるのでございます。
  97. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、安保問題に対してお尋ねしたいと思うのですが、外務省がまた新しい見解を発表されまして、有事駐留の問題に対して意見を述べられたようでございますけれども、外務省のおっしゃる有事駐留は、実際上は常時駐留ではないかと思います。民主社会党のおっしゃる有事駐留とは根本的に食い違いがあると思いますけれども、その点に関してはいかがでございましょうか。
  98. 安川壯

    政府委員安川壯君) 外務省として有事駐留ということは実は申しておらないのでございまして、先ほども大臣からお答えがありましたように、現在すでにわがほうの自衛隊の増強に応じまして米軍の規模というものはかなり縮小されておりまして、一例を陸軍にとりまするならば、現在の日本におるのは補給部隊だけでございまして、戦闘部隊はいないわけでございます。今後も、自衛隊がさらに増強されるに応じて、ある程度米軍がこれに応じて撤退するであろうということは予想し得るわけでございまして、そういう意味で申しておるのでございまして、有事駐留にすべきだということは、これは外務省として発表したことはないのでございます。
  99. 多田省吾

    ○多田省吾君 それはこの前の見解の発表で、現在の状態は事実上の有事駐留の状態ではあるけれどもということはおっしゃいませんでしたか。
  100. 安川壯

    政府委員安川壯君) 「事実上の有事駐留」というようなことばは使っていないはずでございます。具体的に、たとえば、いま申し上げましたように、たとえば陸軍については日本におるのは補給部隊だけで、戦闘部隊は少しもいない、海軍についても、いわゆる戦闘部隊というようなものは常時配置されておらない、ただ、第七艦隊が補給等のために随時日本に寄港するにすぎないという事実を述べたわけでございます。
  101. 多田省吾

    ○多田省吾君 昨日、総理大臣が、もし中国が国連加盟したあとでも安保体制は必要だということをおっしゃったそうでございますが、この前、外務大臣も、もう安保体制というものは、いわゆる核軍縮というものが行なわれても必要だということをおっしゃっておられますけれども、国連の安全保障機能を強化する、あるいは核軍縮や全面軍縮をどんどん進めていくと、あるいは国際情勢をあらゆる面で平和的に持っていくと、そういう努力をしながら、あくまでも段階的であれ、また、将来において安保条約というものは世界平和の上から解消すべきであると思いますけれども、外務大臣はどのような状態になったときに安保を解消する気であるか、あるいは段階的には安保を解消する御意思があるのかどうか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  102. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現実の世界がそういうふうに変わるということは、いつのことかなかなかこれは見当がつきませんが、とにかく国連が充実して、国連がある程度強制力を持って、そして世界の平和というものを十分に維持していけるというような時期がいつ来るかわからぬけれども、そういう場合には集団安全保障というものは一切不必要であると、日米安保条約のみならずすべてのそういう集団安全保障条約体制というものは不必要になる、そういう場合には当然安保も要らなくなるのであります。  それからもう一つは、国連の平和維持機能の充実ということももちろんこれは考えながらでありますけれども、完全な全面軍縮、普通兵器でも核兵器でも、とにかくそれを全部すべての国がそういう軍備を撤廃する、そういう時代が来れば、もちろんこれは要らなくなる。しかし、なかなかそういう時代はいつ来るかいまのところは予想もつかないような現状ではないかと考えます。
  103. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、外務大臣のいまの御見解は、世界的な完全軍縮が来るまではいまの日米安保体制は必要だと、段階的にせよ解消する意思はないと、そういう御見解でございますか。
  104. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま私が申し上げましたが、しかし、いろいろその間にいろんな段階があると思うのであります。そういう段階に応じて日本の安全がこの程度ならば保障されるという具体的な認識のもとに、その安保体制の内容も変える必要が起こってくるのではないかと考えます。いまからそれを予想して一々申し上げるわけにはいくまいと思います。
  105. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  106. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を始めて。
  107. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) この際、委員異動につきまして御報告いたします。  八田一朗君が辞任され、その補欠として青田源太郎君が選任されました。     —————————————
  108. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ほかに御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  109. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となっておる外務省設置法の一部を改正する法律案に反対の意を表明するものであります。  この法律案は、在外公館の職員の定員増をはかろうとするものでありますが、増員の理由を見ますると、反対せざるを得ないのであります。すなわち、本法律案は在韓国大使館を拡大強化するとともに、釜山の領事館を総領事館に格上げするために十五人の増員を予定しておるのでありますけれども、このような措置は、わが国と北鮮との関係を一そう悪化させるものであると思うのであります。わが党は従来から、北鮮の問題を除外して日韓関係の真の解決はあり得ないということを主張してまいりました。しかるに、政府は、前国会において、北鮮関係を除外した日韓案件を提出いたしまして、審議の中途において一方的に採決を強行いたしました。かかるやり方は議会制民主主義の否定であり、わが党の容認できないところであります。  次に、本法律案は、台湾の高雄に総領事館を新設するための定員増を含んでおります。いまや中国に対する態度を改め、中国を国際場裏に立たしめることこそ世界の趨勢であって、わが国に課せられた使命であると存じておるわけであります。しかるに政府は、かかる趨勢にさからって、さきにわが党が日中友好のために招待した中国代表団の入国を拒否いたしました。私は、これによって日中関係の将来がそこなわれるであろうことを危惧するものであります。高雄に総領事館を新設することは、日中友好関係を逆行させようとするものであって、わが国のとるべき道ではないと、かように信ずるものであります。  以上申し上げましたような理由から、私は本法律案に反対するものであります。
  110. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ほかに御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。外務省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  111. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 挙手多数と認めます。よって本案は、多数をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。  午前はこの程度といたしまして、午後は二時より再開いたします。それでは暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩      —————・—————    午後二時十七分開会
  113. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) それではただいまから、内閣委員会を再開いたします。  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き本案の質疑を行ないます。  なお、関係当局の御出席は、安井総理府総務長官、増子総理府人事局長、山本人事局参事官、大塚人事院職員局長、石黒労働省労働基準局労災防止対策部長中村労働省労働基準局労災補償部長、田中林野庁長官、森林野庁職員部長、以上の方々でございます。  それでは質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  114. 北村暢

    ○北村暢君 まず労働省に、労働災害の発生状況について質問いたしますが、この点については、前回伊藤委員が若干質疑されたと思いますが、なお、若干詳しくお聞きいたしたいと思うわけでございます。最近五カ年間の産業別の災害の発生状況、おわかりになれば就労人員に対する災害の発生状況、発生率ですね。これがおわかりになったらお聞かせ願いたいと思います。
  115. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 最近五カ年間の産業別の災害の発生状況というお話でございましたが、まず、四十年度につきまして災害の状況を申し上げますと、——産業別は後ほど申し上げることにいたしまして、全体の数を申し上げますと、休業一日以上の死傷者の数は、三十六年におきまして八十一万四千、三十七年に七十九万四千二百、三十八年七十五万三千三百、三十九年七十三万七百、四十年は目下推計でございますが、六十九万五千ということに相なっております。そのうち死亡者の数が、三十六年は五千九百八十三、三十七年は五千四百九十、三十八年五千五百三、三十九年五千六百五十二、四十年五千三百八十という数に相なっております。それで、この産業別の数を、必要がございましたら各年次について申し上げますが、とりあえず四十年度で申しますと、労働者千人当たりの死傷者数を千人率と申しておりますが、この千人率は昭和四十年におきまして全産業では一五・〇、その内訳は、製造業が五・六、土石採集業が五・〇、建設業一〇・〇、運輸事業三・〇、貨物取り扱い業一一・〇、林業が九・〇、その他の事業が一・〇ということに相なっております。
  116. 北村暢

    ○北村暢君 大体労働災害としては年々減ってきている、改善されている状況のようでございますが、その中でこの産業別の状況を見ますというと、いわゆる運輸関係ですか、運送関係といいますか、この関係が高いようですね。それから林業関係、これもそれに次いで高いようでございます。それで、林業関係についてだけ、後ほど林業関係の労災関係を聞くものですから、林業関係についてだけその傾向がおわかりになっておったらひとつお知らせ願いたい。
  117. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 林業における死傷者千人率を過去五年について申し上げますと、三十六年が七三・九、三十七年が六九・九、三十八年が六五・六、それから三十九年が六三・九、四十年が五七・一ということで、林業につきましては災害率はかなり高うございますが、逐年低下しております。先ほど申し上げました千人率は休業八日以上でございます、ただいま申し上げましたのは休業一日以上でちょっと違っておりますが、傾向としてはそういうことでございます。
  118. 北村暢

    ○北村暢君 それは国有林の公務災害の林業関係は入ってないのですか。
  119. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 死傷者の統計につきましては、国有林、民有林両方含まれております。労災補償の統計は別個にございまますが、そちらは国有林は含んでおりません。
  120. 北村暢

    ○北村暢君 民有林の千人率の場合は減っている傾向を示しておりますが、林業関係の労災の補償支払いの件数、並びにこの新規の発生数ですね、支払い額、これがどういう傾向にあるのか、この点若干御説明願いたいと思います。
  121. 中村博

    説明員中村博君) 労災関係につきましては、ちょっといま過去五年間の資料持っておりませんので、おそれいりますが、三十八年度におきましては、林業関係の新規災害者教は二万七千九百十三、三十九年度におきましては二万七千四百十、こういうふうな教字になってございます。
  122. 北村暢

    ○北村暢君 だいぶ私の知っている数字と違うのですが、林業労働者の補償費、支払い件数が、ちょっとここに持ってきておらないのですが、林野庁の林野統計要覧というのがあるのですが、それによりまするというと、三十五年以降を言いますと十二万七千六百六十九件、それから三十七年が十三万三千九百八十六件というふうに、実は三十八年以降からの数字はございますけれども、件数においてそういうような件数、新規の補償支払い状況を見ましても、三十五年が件数で二万九千八百三十六件ですか、それから三十七年が三万四百三件というふうに相当ふえる傾向を示している、もちろん支払い金額もふえているわけなんですが、いま私が申したようなことについて誤りはないでしょうか。それからまた、四十年——いま申したのは三十七年までしか統計出ておりませんので、四十年までの傾向はどういう状況になっておるか、この点おわかりになったらひとつお知らせを願いたい。
  123. 中村博

    説明員中村博君) 林業関係の労災の新規受給者と申しますか、労災関係に新たに労災補償の適用を受けるという数は先ほど申し上げたとおりでございまして、国有林労働者にはこれは関係ないわけでございます。
  124. 北村暢

    ○北村暢君 そうしますと、年々ふえていることは間違いないですね、傾向としては。金額等についてはどうですか。
  125. 中村博

    説明員中村博君) ちょっと年度別の金額を事件例で持っておりませんので、まことに恐縮でございますが、いま申し上げました新規災害者数は、三十八年度の二万七千九百十三に対しまして三十九年度は二万七千四百十と減少いたしてございます。
  126. 北村暢

    ○北村暢君 大体二万七千台ですというと、三十四年、五年、六年、七年は二万九千から三万台ですから、若干最近になって減ってきている。件数において減ってきている、こういうことが言えるだろうと思います。その点については、先ほどの総体的な災害の発生状況からいってだんだん減ってきているということと一致するようでありますが、私の調べた範囲では、三十七年までは件数、金額ともに非常な勢いでふえてきている。まあこういう点からいって、これを国有林の場合、いわゆる公務災害の場合を見ますと、公務災害につきましては、これは人事院の資料だろうと思うんでありますが、件数その他非常に減ってきているわけであります。しかも、その公務災害は減っているのでありますけれども、公務災害の圧倒的部分は、これは林野庁と郵政省が多いようでございます。そのうちでも公務災害は林野庁関係が一番多いわけです。で、発生件数について年々歳々千件くらいずつ減ってきているということがこの前伊藤委員の質問に対して言われておったのでありますが、その減っておるのは主として大部分は林野庁関係が減ってきている、こういうことのようでございますがね。その状況は、いま私の話した程度で、認識で差しつかえないか。これは職員局長
  127. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 北村委員、ごらんになってお話のとおりで、全体としてはそういう傾向なんでございますが、たまたま林野庁に関する数字は、いまごらんのとおり、これは三十九年度の数字でございまして、過去五年間の数字をいま手元に持っておりませんので、私は承知しておりませんが、あるいは林野庁側では実施機関として御承知かと思います。
  128. 北村暢

    ○北村暢君 それではこの点について林野庁にお伺いしますが、実施機関である林野庁ではどのように把握されておるか、この点についてわかっていりゃ、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  129. 田中重五

    政府委員(田中重五君) いまお尋ねの国有林の公務災害の発生件数だと思いますが、それを申し上げますと、これは年度でございます。三十五年度が五千三百二十八件、三十六年度が五千二百七十六件、三十七年度が四千七百五十二件、三十八年度が四千百三十件、三十九年度が三千二百八十四件と、年度を追って漸減の傾向でございます。
  130. 北村暢

    ○北村暢君 ただいまのは新規の発生した件数でございますか。
  131. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 新規でございます。
  132. 北村暢

    ○北村暢君 いま発表のありましたように、相当件数においては減ってきているのであります。これは林野庁の安全衛生に関する施策がよかったのかと思いますが、その結果が明らかに出ておると思うのですね。ところが、民有林関係を見ますと、新規の発生率でも、大体国有林のは減少する傾向、三十七、八年までは非常に逆にふえているわけです。したがって、この傾向について、一体どのように把握されておるか、この点を私お伺いしておきたいと思うのですが……。  もう一つお伺いしたいのは、先ほど千人当て率の発表がございましたが、これは国有林の場合と、民有林の場合、どういうような傾向になっているかお伺いいたしたいと思いますが……。
  133. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 年度別の災害の増減傾向につきましては、一般的に申しますと、昭和三十二年以来、千人率は逐次低下しておりますが、絶対数は労働者数の増加によりましてむしろ増加の傾向がございまして、全産業で申しますると、昭和三十六年がピークでございます。それ以後三十七年以降におきましては、千人率はもちろんでございまいますが、絶対数も逐次減ってきております。労災補償の統計におきましては、補償費の請求支払い等のズレがございます。大体この上がり下がり傾向値は一年おくれで出てまいりますので、おそらく三十七年度あたりが新規補償件数のピークになって、以後下がってくるのではなかろうかというふうに考えております。
  134. 北村暢

    ○北村暢君 民有林と国有林の傾向。
  135. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 民有林と国有林、実は申しわけございません。分けた統計を持ち合わしてございませんが、大ざっぱに申しますと、百人以上の大企業と、百人未満の中小企業におきましては、全産業別に見まして、百人未満の小企業のほうが、百人以上の約倍の災害を発生いたしております。なお、最初に申し上げました四十年の産業別の千人率、それちょっと読み違いございましたのですが、もしよろしかったらあとで訂正さしていただきたいと思います。
  136. 北村暢

    ○北村暢君 それすみませんけれども、後ほど資料にして、数字のことですから、ちょっと書きとれませんので、資料で出していただきたいと思うのですが、お願いいたします。
  137. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 承知いたしました。
  138. 北村暢

    ○北村暢君 そこで林野庁にひとつお伺いいたしますが、国有林のほうは、実施機関でありますから、状況をこまかく把握されておると思うのですが、民有林の面については、やはり民有林の林業の指導という面からいって、林野庁が指導をする、労働省と共管でもって当然これはやられなければならない問題だと思うのですよ。それで、いま労働省のほうの説明ですと、百人未満の規模のところのほうが労働災害が倍程度多いというのですから、林業はそういう大企業というのは少ない。したがって、これはまあ労働災害というのは民有林の場合非常に多いのじゃないかということが常識的に想像できるわけです。しかも、その国有林と民有林の千人率ですか、これを見ましても、国有林のほうはおそらく急速に減少傾向をたどっているでしょうし、民有林のほうは、私はこれは減少傾向は若干あるかもしれませんけれども、かえって多くなるような傾向を示しておるのじゃないか。多くなるというよりは、若干少なくなっても、国有林と比較しては問題にならない、こういうふうに理解するのですけれども、そういう理解で大体のところでいいのですが、間違いないでしょうか。
  139. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 詳しいことは林野庁から御説明があると思いますが、先ほど私が申し上げました百人以上と百人未満の全産業のでは、昭和三十二年におきましても百人未満は百人以上の倍の災害、それから三十九年におきましても同じく倍でございまして、両方とも同じように下がっておるけれども、格差は縮まらないというのが実情でございます。
  140. 北村暢

    ○北村暢君 林野庁もそれでよろしゅうございますか。
  141. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 林野庁の見方といたしましても、いま労働省でお答えになりました傾向に対するお考えとほぼ同じように考えております。
  142. 北村暢

    ○北村暢君 これは私は民有林の関係からいえば、実はもっと多いのじゃないかと思うのです。ということは、国有林の場合は労働組合がありますからね、大小によらず相当厳密に申請もされるだろうというのですよ。ところが、民有林の場合は、労働組合というのはもう圧倒的にございません、組織されておりませんから、まあ少々のところは泣き寝入りになっているというものが相当多数あるのじゃないかというふうに思うのですよ。したがって、統計にあらわれてきた数字よりも、実際の場合のほうは、実数のほうは相当開きがあるのじゃないかという感じがしているのです。まあ統計的に数字を見ましてもおそらくそうじゃないか。これはやはり民有林と国有林の労働条件の差というものがこれははっきりあらわれているものではないか。災害のほうにおいても労働条件の差というものがあらわれているのじゃないかというふうに思います。この点については、林野庁はそうでないというふうに反論される点があったらひとつしてもらいたいと思うのですけれども、おそらくそういう傾向じゃないかという私の認識が間違っておるのかどうか、見解をひとつお伺いしておきたいと思います。
  143. 田中重五

    政府委員(田中重五君) その点につきましては、確かに民有林におきましては、労働組合の結成の程度等もきわめて低いというようなことから、実態についての統計にあらわれてくる程度が必ずしも十分ではなかろうという意味では、先生のお説の点も認めざるを得ないだろうと、こういうふうに考えられる次第でございます。今後、林業労働力対策事業等の中で民有林林業労働の実態の把握等も漸次整備されていくということになりますので、今後その点の実態の把握にはつとめてまいりたいと、こう考えている次第でございます。
  144. 北村暢

    ○北村暢君 そこでお伺いしたいのですが、民有林においても、特に民有林でございますが、昭和二十八年の新規発生件数が一万五千二百八十六件、ところが、三十三年くらいになりますというと、これが二万八千件、それから三十七年ですというと三万件、約倍に件数ははね上がっているわけです。これは私はこの林業の災害は、他産業と比較して非常に災害の発生率高いわけなんですが、その中でもこのように急速に災害件数がふえてきたということは、林業の機械化が非常に進んできた、いわゆる三十年ごろから急速に林業の機械化が進んできたと、こういうことが大きな原因になっているのではないかと、このように判断するのですが、どのような見解を持っておられるか、お伺いいたします。
  145. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 林業に対する機械の導入が急速に近年行なわれているということはお話のとおりでございますし、また、この新しい機械の導入によるところの事故のそのために発生している面はあるということは、これはお説をやはり認めざるを得ないと思います。ただそういう場合もあるにいたしましても、やはり機械の導入によりまして、従来の重筋労働から労働者が解放されていくわけでございます。手作業で非常に危険な仕事に従事していたのが、機械によってその安全性を保障されるといういわゆる経営の近代化の方向に沿って進んでいることも間違いのないところであろうと、こう考えますし、国有林の災害発生件数の減少等はやはり機械の導入の程度に比例をいたしまして、やはり災害が抑制されつつあるのではないかと、こういう考え方に立っております。
  146. 北村暢

    ○北村暢君 そこでお伺いしたいのですが、林業機械の普及の状況ですね、大体傾向でいいんですが、何年ごろからいわゆるチェーンソー、ブッシュカッター等が普及してきたが、現在どのくらいになっているのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  147. 田中重五

    政府委員(田中重五君) これを国有林について申しますと、現在、伐木、造材作業は九六%が機械化をされております。集運材につきましても、その程度に応じて機械化が進んでおりますが、一方、造林事業では、三十九年度におきまして、地ごしらえで五三%、下刈りで四二%、植えつけ作業で二三%、そういう傾向になっております。
  148. 北村暢

    ○北村暢君 大体、普及状況ですから、この国有林のいま状況説明がございましたが、大体チェーンソーあるいはブッシュカッターというものはどのくらいの台数が入っているのか。それから民間はどのくらいの程度になっているのか。
  149. 田中重五

    政府委員(田中重五君) チェーンソーについてこれを見ますと、国有林では昭和三十九年度で四千九百八十八台、民有林では四万一千五百八十二台、合計しまして四万六千五百七十台と、こういうことになっております。
  150. 北村暢

    ○北村暢君 チェーンソーが大体実用化して普及したのは何年ごろですか。
  151. 田中重五

    政府委員(田中重五君) チェーンソーが入り出したのはやはり国有林では戦争直後からでございますけれども、これを一応普及したという形で見ることができるのは昭和三十二、三年ごろからだと考えていいと思います。
  152. 北村暢

    ○北村暢君 そこで主題の白ろう病についてお伺いいたしますが、実はそのように林業が機械化の普及に伴いましていろいろな新しい労働災害的疾病がふえてきているわけです。その中でも、いましばしば問題になっております白ろう病でありますが、この白ろう病が発生してきたのは大体いつごろから発生してきましたか。
  153. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 林野庁としましては、これをレイノー現象といっておりますが、その端緒と見られるのは昭和三十五年ごろだと考えております。
  154. 北村暢

    ○北村暢君 労働省にお伺いしますけれども、労災のほうではすでに白ろう病を職業病として指定をしておるようでございますが、その指定の状況等について若干説明を願いたいと思います。
  155. 中村博

    説明員中村博君) 労災の面におきましては、労働基準法施行規則三十五条に業務上の疾病が列挙してございまして、その十一号に「さく岩機、鋲打機等の使用により身体に著しい振動を与える業務に因る神経炎その他の疾病」と規定されております。そこで、このような「さく岩機、鋲打機等」の中にチェーンソーというような振動行為、これを含めるということでございます。したがって、業務と相当因果関係があります場合には、これを業務上の疾病として補償いたしておるわけであります。
  156. 北村暢

    ○北村暢君 その場合、業務上の疾病と見て三十五条の十一号に含めて職業病とした、こういうことなんですが、その職業病として認定する認定の方法等についてどのようにやっておられるのか。それから指定の何といいますか、労災の対象になった、認定された件数ですね、これは一体どんなような状況になっているのか、この点についてお伺いしたい。
  157. 中村博

    説明員中村博君) 白ろう病のいま北村先生基準とおっしゃいましたが、どのような場合に白ろう病を業務上の疾病として認めるかという点につきましては、その判定基準あるいは治療方法等についてまだ十分解明されていない点があるわけでございます。したがいまして、この点につきまして、振動障害につきましても、診断等につきましての方法の研究等、委託いたしていろいろ研究を重ねていただいておるわけでございます。で、現実の姿といたしましては、個別、具体的なケースに応じまして、医師の診断によりましてチェーンソーに起因して当該疾病が発生したという場合にはこれを補償いたしておるわけでございます。その件数といたしましては、三十七年に二件、それから三十九年に一件、四十年度におきまして十一件と相なってございます。
  158. 北村暢

    ○北村暢君 これは、あの発生件数は非常に少ないわけなんですが、大体この白ろう病は、し始めてから直ちに起こるということはない。大体発生しているのを見ると三年とか、その人によって違うのでしょうけれども、使い始めてから三年後とかに疾病にかかってくるようですね。したがって、これから多くなるのかもしれませんけれども、それにしても非常に少ないわけです。大体チェーンソー一つとっても、先ほど言われておりますように、国有林の約十倍の台数が民有林にあるわけですから、最近における国有林の発生状況を見ましても、申請しているのは二百名からおるようでございます。したがって、民有林においてもおそらく相当多数の発生者がおるのじゃないかと思われるんです。思われるんですが、しかし、それが実際に労災保険の適用になっている件数は、四十年度でわずか十一件、三十八年度二件、三十九年度一件ということで非常に少ない。これはやはり適用基準が、判定のしかたが厳格なために少ないのか、それとも白ろう病というのは作業をやっている間にかかって、ちょっとまあひどくなってきたらあっためるとか、もむとかすればまたもとに返る、こういうことで絶対に作業に耐えないということでない、休まなければならないというようなひどい症状というのはわりあい少ないわけですね、いま。したがって、そういう点から件数が少ないのか。そういうような厳格な、何といいますか、医師の診断を受けるまでもないということでがまんしてしまう、そういうことに起因しているんだろうと思うのですがね。私どもの聞いている範囲では、なかなか適用の基準がむずかしくてその件数が少ないのだというふうに聞いているのですが、そこら辺の事情はどのように理解されておるのかお伺いしたい。
  159. 中村博

    説明員中村博君) 労災補償につきましては、原則的に請求を待っていたすわけでございます。したがいまして、御請求がありました場合に初めて労災補償が働きますわけでございます。したがいまして、御請求がなければこれは補償はされないということになると思うわけでありますが、それから先ほど先生がおっしゃいました、基準で締めているんじゃないかというようなことでございますが、先ほど申し上げましたように、現在まだ診断基準等につきまして不十分な点が非常に多いわけでございます。研究段階でございます。したがいまして、特に基準で締めておるというようなことはございません。  それから、まあ申請なさる方が少ないというのは、やはり病気の態様が非常にいろいろな態様を示しておるようでございまして、そういうことも原因になるのじゃなかろうかと思います。まあ私のほうとしましては、個別、具体的な件数に応じまして、申請がありました場合には当該医師の判断によりまして、チェーンソーを使われることと相当因果関係がございますれば補償いたしております。したがいまして、そういった形で種々勘案いたしまして件数の少なさというかっこうになって出てきておるのではないかと思います。
  160. 北村暢

    ○北村暢君 そうしますと、この件数の少ないのは、申請したものはほとんど通っているんですか。申請件数が幾らで、それを何というか、採択して補償の対象にする、その関係はおわかりになりませんか。
  161. 中村博

    説明員中村博君) その点については、遺憾ながら明確な資料を持ってございません。しかし、申請を待ちまして、医師が——まだ現在十分な判定基準がございませんけれども、個別、具体的なケースにつきまして因果関係があるというふうに御判断なされば、これは当然補償の対象になるわけでございます。
  162. 北村暢

    ○北村暢君 それじゃ公務災害のほうについてお伺いいたしますが、いま労働省のほうで御答弁のありましたように、まだこの問題は、研究中ではっきりした結論が出ていない、がしかし、労災補償の対象に含めておる、まあこういうことがはっきり言われておるわけなんですが、ところが、公務災害補償の関係からするというと、人事院規則の一六−〇の十条に職業病に指定することになっておりますが、これに対する改正の問題がいま問題になっておると思うのですが、この状況をまず御説明願うと同時に、いろいろこの病気に対しての具体的な検討が加えられているようでございますけれども、その状況等について若干御説明を願いたいと思います。
  163. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 御承知のとおり、これは昨年の九月の参議院の社労のときにお話が出たと思います。それで私どもとしては、もちろん職業病に指定をしなくても業務に起因するという限りにおいては、これは災害補償の給付をいたすことができるわけでございまして、その点では差しつかえないわけでございますが、しかし、いずれにしましてもあの当時非常にテレビ、新聞等で取り上げられたことでございますし、林野庁に伺ってみましたところでは、またかなりの数の訴えがあるということでございます。  で、いまお話のとおり、一応経験的に業務に基因するという判断がし得るわけでございますが、労働省のほうからの御説明がありましたとおり、認定基準あるいはどういう療法をやるべきか、治療をやるべきかという点では専門家の間でも定説がないというような状況にあったわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この障害の認定につきましては、林野庁さんに対して、人事院に対して協議をしていただきたい、こういうふうに申し入れたわけでございます。それに基づきまして、林野庁側からは協議がございまして、昨年の四月以降逐次その協議があったわけでございますが、現在までにたぶん二百四十五人——ごく最近までで二百四十五人の職員の協議がまいっております。ところが、いま申しましたとおり、その原因、治療法あるいは認定の基準等が私どもしろうととしてはわからない点がございますので、これを実は専門家に委嘱いたしまして、その御意向をくんでこちらは行政的な判断を下したい、こう考えまして、昨年の八月に労働衛生センターの先生方の——これは沼田でもって、一種のそういう調査のパイロット調査と申しますか、一つのサンプルとして御調査を願って、さらにそれから本格的な調査のいろいろなめどを立てたい、こういうふうに考えて一回行なったわけであります。その後十一月に、これは振動障害に関連した社会衛生関係の学者及びお医者さんで治療に当たっておられる方もございましたが、これらの方々が一種の学会がありまして、その学会の直後、人事院といたしましては、これら北海道から九州までの関係した専門家の方々のお集まりを願いまして、お話のとおり、規則改正をもってはっきり職業病として指定するについてはどう考えたらよろしいのか、診断基準及び治療等に関して諮問をいたしたわけでございます。御検討をお願いしたわけでございます。このときに、大体においてまあ職業病と考えるべきだろうという御意向だったわけですが、なお不明な点も多々ありましたわけで、さらに人事院としてもう少し大がかりな調査をすべきだということで、幸いにして科学技術庁から特別研究促進調整費、いわゆる特調費を年度末に移管をしていただきまして、科学技術庁と林野庁と協力いたしまして、先の労働衛生センター及び労働科学研究所にお願いいたしまして、専門家、お医者さん方が約七人ばかりで、二月中旬から三月上旬にかけまして、約三週間、現にチェーンソーを使用して作業をやっておられる九州管内及び四国管内の営林署に参りまして、約十項目ばかりの検査項目のテストをお願いしたわけでございます。そのテストの結果に関しましては、実はわれわれはまだ答申といいますか、御報告を受けておらない。今月の中旬に実は学会自体としましては、山口県でもって学会がありまして、われわれのほうの調査に参加した先生方もその学会で御報告をなさり、研究討議をなされたと思いますが、われわれとしてはそれを受けまして、来月の中旬にもう一度その振動障害補償の研究会議を人事院として開催いたしまして、そのときに規則改正による職業病としてはっきり指定をすると、その場合にどういう認定基準あるいはどういう治療法というようなものを、まあ方針として立てたらよろしいかという点での結論を得たいと、そう思っております。  なおつけ加えますと、先ほど申し上げた、個別に業務病という指定をいたしましたのは、二百四十何件のうちから本年の二月に八件、及びその後次第に資料が整ったもののうちから、これは結局二百四十何件のうちいろいろな症状の訴えがあるわけでございますし、また、お医者さまの診断としてもいろいろあるわけでございますが、まあそのうちの一番重症と思われるほうから先に入って、近々のうちに約二十件ばかりの業務病の指定をいたしたわけでございます。   〔委員長退席、理事船田譲君着席〕
  164. 北村暢

    ○北村暢君 そこで、私は先ほどの説明でも、チェーンソーを使い始めたのが三十二、三年ごろからという指摘があった。そしてもう約七、八年たってるんですよね。そして白ろう病の出てきたのが三十五、六年からこう騒がれてきた、こういう状況なんですね。したがって、私は、こういう振動を伴う機械化をする場合には、相当なやはり試験をして、身体にどういう影響があるかないかなんて、初めから試験も何もしないうちにやったような傾向があるわけなんですよ。こういうことはまあ非常に遺憾だと思うのですね。実際に使ってみなけりゃわからないといえば、それだけなんですが、労災関係でもすでにこの振動による職業病というものは程度の差はあるけれども、すでに指定になって現実にあるわけですね。だからまあ当然これは科学的に検討がなされて使用されるべきであったと思う。そういう点について、いまだにずいぶんもみにもんで、いまお話によるというと、五月中旬に規則改正にこぎつける、当初これは三月中にやりたいというのが人事院の希望だったですね。それがまあ五月に延び……、この五月は間違いないんでしょうね。
  165. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) どうも初めのほうの機械を導入して使用させる場合には、あらかじめ健康上の障害が起きるかどうかというようなことで、予備的なテストなり何なりすべきだというお話は、これはまあ災害補償の領域にちょっとはずれますし、また、たまたま御質問の件の林野庁の業務に関しましては、この勤務条件に関しましては、これは御承知のとおり、人事院の所管外になります。まあ災害補償の面だけでございます。  で、後段の御質問の五月に間違いないかというお話でございますが、私どもとしては、大体まあ関係の専門家の御意向は連絡をとって承知しておりますし、昨年十一月には一度皆さんお集まり願ってそれを御審議いただいたわけでございます。それからかなり大がかりな先生方の調査もいたしましたので、その点ではいまの見通しとしましては、職業病という指定に関してはまず間違いないだろうというつもりでおります。しかし、いずれにしても、これは専門家の先生方の御意向の固まったところを私どもは御報告いただいて、それに災害補償法上の行政的の判断を加えるということになるわけでございますが、あるいは小さな点では種々御意見の違う点も出てくるかと思いますが、大筋としては、まず来月中旬に会議を開いたときにはめどがつくのではないか、そういう見通しでおります。
  166. 北村暢

    ○北村暢君 職員局長そうおっしゃるけれども、もう労災のほうでは、すでに施行規則の三十五条の十一で職業病だということをきめているのですよね。そしてもう実施しているわけです。したがって、国家公務員災害補償法も労災保険法との均衡をとれということになっていますわね。これは法律の精神から言ったって、私は科学的な根拠が完全にできないうちは、人事院そういうこと好きですからそれもいいでしょう。科学的に根拠がはっきりしなくても、労災保険法では指定をしてそして実施をしている。そしてそれの裏づけなり実施の認定基準なりというものはあとにつくるというようなことになるんでしょうね。   〔理事船田譲君退席、委員長着席〕 したがって、発生件数も非常に労災法のほう少ないわけです。そういう点で私は人事院のものの考え方として、法律の精神から言っても、科学的な根拠が全部そろわなければならないというと、実際にこの白ろう病に関する完全治療法というものはそれじゃ一、二カ月のうちに完全なものができるかというと、なかなかこれも簡単にはいかないわけですよ。いまの科学技術水準ではなかなか簡単に結論を出しにくい。どういう治療法が一番いいのかというとなかなか出てこない。しかもこれは非常に軽度の振動の例の現象ですから、作業には耐えないわけじゃないんですね、仕事はできるわけです。しかしながら、これを繰り返しているうちに白ろう関係でなしに、いろいろなやはり腰痛であるとかあるいはしびれであるとか、作業をやっているときでなしにも、作業終わって後も症状として出てくる。こういうことで、まあ軽度だと思っていることがだんだん高進してくるということも考えられるのです。したがって、そういう点から言えば、私はなるべく早くこれは指定すべきでないか、こう思います。この点については、これは人事院が規則改正するんですからあれですが、この法案を提案した、改正案を提案している大臣のほうもこれやはり少し人事院を鞭撻する必要があるのじゃないかと思うのですね。これは行政面ですけれども、科学的、科学的というと、どうも科学的にはっきりしないものはいつまでもとっておくということになる。それでなくても、指定しなくても方法はあるのだからそれでいいのだというけれども、実際に二百何件を一々中央に持ってきて人事院に協議しろといっていたのでは、何カ月たって八件だの、半年で二十件といっていたのでは、実際に労働者は迷惑しますよ。そういう点でもっと簡単に適用して、不備であっても認定基準なりなんなりというものをはっきりさしてそれを改善していくというような方法だってとれるのですから、これはもう少しスピードを上げるということをやっていいんじゃないか。したがって、この五月中旬というのは、あと一カ月くらいそれでは待てないかということになると、それは待てないわけじゃない。五月中旬でもやむを得なかろうと思いますが、これがおくれるといって、ずるずる引っぱるようなことにはならないようにひとつ御配慮を願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  167. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 私どもも、もちろん専門家なりお医者さんが理論的にはっきりしなければ、職業病として指定しないのだということを申しておるのでは決してございません。お話のとおり、二百四十何件の協議を受けておるわけでございますが、このうちには症状等も非常にまちまちでございますし、これは協議を受けたものに対してはちょっと乱暴な申し方かもしれませんが、治療を受けていないような方も協議の中に入っている。それから少し正確なデータを追加していただきますと、必ずしもレイノー氏現象あるいは白ろう病でないというような場合もあるように思われます。その辺で、一体いかなる範囲を白ろう病あるいはレイノー氏現象の病気というふうにするかという点は、実は先ほど申し上げました十一月の振動障害の学者なんかにお集まりいただいたときにも、大体三つの症群に分けまして、その点ではある程度めどはついておるわけです。しかし、三つの症状のうちのある一番広い範囲でとった場合は、多分に精神的なというか、一時的な機能障害のようなものも入ってくるわけですね。これらの辺のところは、一体有効な障害補償ができるのかどうかという点に問題があるわけでございます。したがいまして、そういう範囲が非常に多岐にわたっていて複雑であるということ、それからこれは北村先生も御承知のとおり、林野の職場で一体レイノー氏病という病気を認定するということになりますと、これは林野の職員と管理医の関係ではなかなかいろいろとむずかしい点もある。これは御承知だろうと思います。したがって、私どもとしては二月、三月にかなりな専門家にお願いして九州、四国の現地でテストをいたしましたのは、一番の目的は、簡単な認定方法ですね、たとえば何らかの機械を使って皮膚温の測定をやる、あるいは指先の毛細管血管の顕微鏡写真をとるとか、その他いろいろな方法があるわけでございますが、そういう方法のうち一番簡単に的確にレイノー氏現象の疾病をとらえる方法をさがすということが一つの目的だったわけです。治療法に関しましては、実は各大学、北は北海道から熊本まで治療を受けられた例はございますけれども、これらの点に関してはまだ定説なるものもあまりないんではないかと思いますが、ともかく病害の認定いかんに関してはできるだけ簡便な認定方法、客観的な認定方法をまず打ち立てようということで努力をせっかくいたしておるわけでございます。決して便々と日数を重ねているという問題ではございませんで、たまたまたとえば全国の学者にお集まり願うということになりますと、関係の学者をほとんど網羅するという形になりますので、その日数なんかも、予定日なんかもなかなかこちらの考えているほど早急にきまらないというような点があるわけでございます。私どもとしては、ともかくでき得る限り早く職業病として指定したい、規則の改正をやりたい、そう考えております。
  168. 北村暢

    ○北村暢君 いまお聞きのとおりですが、大臣ひとつ、これはもう発生してから五、六年たっているわけですよね。したがって、もう、いま、実施の段階へ来るわけなんですけれども、これはひとつ督励をしていただきたいと思う。この点についての意見をまずお伺いしておきたいと思うのですが。
  169. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) お話のとおり、白ろう病はだいぶ前からいろいろ私ども話にも伺っておったわけであります。人事院でいろいろな角度から検討を進められておりますが、思うように簡単にきまらなかったということは残念といいますか、遺憾だと思います。今後もひとつよく協議しまして、できるだけ督促したいと思っております。
  170. 北村暢

    ○北村暢君 いま認定されました八件、それから認定されようとしている二十件程度のもの、これは労災のすでに実施したものとの比較で、そういう比較をされたことがあるのか。こういう労働省のいままで認定したものとの、程度において同じようなものなのか、または人事院の認定したものが、相当程度のひどいものから認定されたといいまずか、厳密にやったということで、労働省との均衡はどうなんですか。
  171. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 労災のほうでの扱いは先ほど労働省側から御説明のあったとおり、たまたまといいますか、各地でチェーンソーを使っておられた労務者の方でレイノー氏現象が出てそれが何らかの治療を受けに行かれた、こういう方に関するものでございまして、われわれとしては、その個々の症状その他については承知しておりません。私ども先ほど申し上げました八件ないし近近二十件と申しますのは、これは先ほど重いほうからと申し上げましたけれども、必ずしも病的な症状として重いほうからということでもございませんので、比較的認定基準としてはっきりしているめどをとりました。そのめどと申しますのは、一つは林野庁の管理医の方がレイノー氏現象と確認されておられるということが一点、もう一点は、治療を受け、または受けたことがある、あるいはまた治療を受けておられる、そういう条件で拾い出したものでございます。
  172. 北村暢

    ○北村暢君 そういうことになれば、書類のていさいが通っていれば大体認定する、こういうふうに受け取れる。  そこで林野庁にお伺いしますが、いまのおっしゃられた管理医ですか……林野庁だれもおりませんか、職員部長……。
  173. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記中止。   〔速記中止〕
  174. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をつけて。
  175. 北村暢

    ○北村暢君 お伺いしたいのは、いまのお話にもありましたように、かりに職業病に指定したとしても、科学的に言って完全とは言えない。将来この問題は検討されるだろうと思うのですがね。それで、予防対策ですが、そういう科学的な研究は研究としてされてけっこうですが、それかといって、その研究の成果が完全に出るまで待っているというわけにいかないので、予防対策——緊急の予防対策ですね、これは考えられるべきだと思うのですが、これについてどのような考え方を持っておられるか、関係の部分でよろしゅうございますから。
  176. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) これは北村委員承知のとおり、われわれの所管ではないわけでございますが、しかし、やはり災害が多発すること、あるいはそれから重傷者が出るということは、災害補償の立場から言っても決して好ましいことではございませんし、われわれの調査は、先ほど申し上げました調査は主として災害の認定が中心ということで、調査はいたしたわけでございますが、調査項目その他からまいりますと、やはり参加された先生方の御意見の中には、報告の中では当然原因がわかれば対策も立ってくるという部分も出てくるかと思われます。その限りにおいては、私ども災害補償と直接の関係はございませんけれども、これらの報告に関しては林野庁側にその報告をいたしまして、行政的に適切な方策をとられたいと、こう申し上げるつもりでおります。  それから、これは私どもがいたしたことではございませんけれども、先ほどの特調費のなにを受けまして、チェーンソーに関する対策の調査をいたしたわけでございますが、人事院は先ほど申し上げたとおりでございますが、林野庁側としては別に東大の勝沼内科で、社会心理学的な調査といいますか、これをあわせて行ない、かつ林業試験場でもって、機械の問題及び作業の扱いの問題、作業のときのからだの動かし方とかなんとかいう、いわゆる人間工学的な調査を同時になさったはずでございます。これらの点からも改善策は出てくるだろう。それから私どもとしては、実はこれはまだ一種のパイロット調査の段階でございますけれども、林野における労働者、特に材木運材というような、一般の労働者、近代的な労働者と比べますと非常に特異な、低い位置の勤労的条件を持っている、社会的条件その他を含めて。これらの非常に大前提になるような何かがありはしないかということも、今回の傷害の発生の問題にあわせまして、その辺の調査が何か役立つかどうかという意味のパイロット調査を、東大及び東京都立大の先生にお願いして、去る三月に一部の地方で行なってみたわけでございます。ただ、もちろんこの調査の報告はまだ受けておりません。これも五月中でなければその報告はいただけない状況でございます。それらの点からも、何らかの意味で作業条件の改善といいますか、災害の発生度の予防になるようなもし結論が出るならば、あわせて林野庁側に報告したい、こう思っております。   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕
  177. 北村暢

    ○北村暢君 そこで林野庁にお伺いいたしますが、いま人事院に申請しているもののうち、認定のあったものは八件という、非常に少ないのでございますが、その際にこの管理医の認めたものは比較的認定しやすいわけですね。その場合に、この管理医に対する林野庁のこれは指示ではないでしょうけれども、考え方などが一応出ているようでございます。一体この管理医については純然たる医学的な見地からこれを検討するのがあたりまえですが、ところが、管理医というのは、相当何百人もいるでしょうけれども、心臓病の専門家というのは、おそらく非常に少ないんじゃないかと思うのですね。したがって、この管理医の認定というのは、はなはだ信用にならないと言えばあれですが、私は疑問があると思うのですね。疑問があるということは、純然たる医学的な良心に基づいて診断がなされたかどうかということなんです。そういう能力を持ったお医者さんが全部管理医であるとは、専門医であるとは限らない。あるいは内科のお医者さんであったりなんかする場合が圧倒的に多いんじゃないかと思うのです。したがって、その場合に、この林野庁は一体この管理医の何といいますか、指示といいますか、指導といいますか、そういうものとの連絡というのは、一体どういうふうになされておるのか、どういう人を管理医に頼んでおるのか、この点でひとつお伺いしたい。
  178. 森博

    説明員(森博君) 私のほうで管理医は、営林局ないし営林署においてその最も信頼のおける医者を頼んでいるわけでございますが、先生のおっしゃいますように、管理医が、もともとこのレイノー氏現象というのは、最近の医学界におきましても、なかなか正確に把握できていない問題でござまいすので、管理医の方々にもこういうものの専門家というのはきわめて少ないわけでございます。したがいまして、私のほうといたしましては、管理医に特にお集まりを願いまして、昨年も専門家の先生方に一週間にわたっていろいろとレクチュア等をしていただき、治療例その他についても十分に連絡をしていただく等のことでもっていろいろ勉強をしていただいているわけでございます。  それで確認の方法につきましても、これはいろいろむずかしい問題があるわけでございますけれども、まず現在のところ、蒼白現象というものを主体にして、これの確認につとめるということをやっておりますが、これにつきましても、その確認の方法について権威のある方々、先生の方々に要領をつくっていただきまして、これについても十分指導をいたしているわけでございます。それで確認したものにつきましては、また人事院のほうにあげているわけでございますが、確認したものばかりでなく、あるいはその管理医が発見できませんでも、いろいろ患者の訴え等によりましては、われわれのほうは、これを管理医が発見できなくても、管理医の意見によりまして、これはわれわれのほうにも送っていただき、これを人事院に提出いたしているわけでございます。そういう問題でございますので、管理医が発見できなくても、いろいろ当人の訴え等によりましては、これは取り上げて人事院のほうに送付いたしているわけでございます。
  179. 北村暢

    ○北村暢君 管理医がそういう実際に現認できなくても診断書を書くというのは、これはどうかと思うのですが、とにかく白ろう病というのはチェーンソーを使っている間になるので、医者に行く間に白いのがだんだんなくなっていくという、こういうことがあり得るわけですね。したがって、これは現認されれば非常に簡単に人事院の認定もパスするのでしょうけれども、いまおっしゃられたように、二百四十件あるうち二十八件くらいしか認定されないということになれば、これはやはり不利になる。したがって、この管理医の判定が非常に問題だと思うのですね。それがあやふやだから認定されないのだろうと思う。したがって、これはやはり私は職業病としての指定を早くやって、認定の基準というものを何か簡潔にできるような方法をとってやらなければ、結局この被害というものは防げないのじゃないかと思うのです。したがって、これはひとつ検討願うとして、いま先ほどもちょっと職員部長に御答弁願ったんですけれども、なかなかこれは科学的に検討するといっても非常にむずかしいのです。したがって、その結論出るまでというわけにいかないので、応急対策というものを当然考えるべきである、こういうことなんですが、この応急対策について一体林野庁はどういう対策を講じておられるのか、この点についてお伺いしたい。
  180. 森博

    説明員(森博君) 応急対策について、これは防止法それから確認の方法——確認の方法につきましては、これは先ほども申し上げましたが、権威の先生方に管理医の方々をよく指導していただいて、確認方法なんかをつくっていただくということでありますが、そのほか防止の対策を申し上げますと、われわれの分野といたしましては、いろいろやはり機械工学的な機械の面の研究、それにつきましては、これは試験場を中心にいたしまして研究調査をいたしておるわけでございますが、お医者の先生方の御意見もいろいろ拝聴しながらやっておるわけでございますが、まずチェーンソーの振動を少なくするということが一番大切なことであるという面からいきまして、さしあたりハンドルにゴムの緩衝装置をつけることが非常に効果的であるということでございまして、本年全部のチェーンソーにつきまして改良ハンドルというのをつけたわけでございます。これは物理的の振動の計数といたしましては三分の一程度に減らすことができるのではないか、こういうふうに考えております。それですから四十一年度からはその改良ハンドルでもって実施するということになって相当の効果をあげる、こういうふうに考えております。  それから機械工学関係の次に、やはり人的工学と申しますか、やはり作業方法によって非常に振動の伝わりぐあいが違うわけでございまして、たとえば目立てのやり方、こういうものにつきましても振動が非常に変わってくるという研究の中間報告もございますので、目立てにつきましても至急それの改善方についての研修等をいたす、それから機械の操作方法でも、力のかかり方によって非常に振動が違うわけでございますから、そういう面につきまして操作方法の要領等をつくると同時に、また、研修等を実施しているわけでございます。  それから治療のほうでございますが、これはなかなか従来とも確たる説といいますか、方法というのを確立したものがないようでございまして、東大等の有名校の治療例というものを管理医に配付いたしまして、これが治療にいま当たっているわけであります。
  181. 北村暢

    ○北村暢君 いまのお話ですと、機械の改善その他あるようですが、やはり作業の方法としては、労働時間を規制するということが考えられると思うんです。これは継続的にやるからこのレイノー現象が出てくるので時間規制をやる、ところが、大部分のものは出来高払いでありますから、労働者自身も無理するせいもあるわけです。出来高が低いというと、これは賃金へ影響する、したがって、これは生活のことを考えれば少々無理してもやる、これは労働災害が賃金の問題と大きな関係持っているというのは伊藤委員からこの前、話がございましたけれども、そういう問題と関連してくるんですね。したがって、これは九〇何%の普及率ですから、もう昔のような手ののこぎりで伐採やっていることはまずないわけです。これは一つの機械化、合理化のために好むと好まざるとにかかわらず、チェーンソーを使う、そういうことですから、したがって、時間の規制ということについて方法が考えられないものかどうか、この点についてはどうですか。
  182. 森博

    説明員(森博君) レイノー氏現象がチェーンソーの振動等に主として原因するということで、時間規制をやるということも、これはさきに労働組合ともいろいろ議論をいたしているところでございますが、いろいろお医者の方々のとりまとめた御意見といたしましても、時間とそれから発生率というようなものについては、これはまだはっきりしておりませんし、したがって、その効果というものもこれは現在のところ不明であって、これは今後の検討を待つべきであるというような結論であったと承っておりますけれども、われわれといたしましては、できるだけはっきり効果のあるものから早急に実施したいという考え方でおるわけでございまして、もちろんそういう時間と発生率、その症状等については、今後真剣に検討していくつもりでございますけれども、目下のところ、われわれの持っております資料等によりましても、時間の長さとの因果関係というのは発見いたされておりませんし、また、その握り方、その間欠の度合い等いろいろ要素が加わるものでございまして、その辺の結論は得られないわけでございます。それでこれは今後なおわれわれとしては検討を続けていきたいと、こう思っているわけでございますが、ただ、問題といたしまして、先生御存じのように、チェーンソーを握ってチェーンソーで仕事をいたしております作業員は、大体いわゆる自律労働によってやっておるわけでございますので、そのチェーンソーを握っている時間を規制するというのは、これははなはだ方法論としてもむずかしい問題ではないかと、こういうふうに考えているわけです。しかし、いろいろ今後検討をしてまいりたいと、こう思っている次第であります。
  183. 北村暢

    ○北村暢君 それは自律労働ではありますけれども、休憩時間を若干長くするとか、休憩回数を多くするとか、そういうことで私はごく簡単に時間規制というのは自律労働であってもできるんじゃないかと思うんですね。それが根本はやはり出来高払いという賃金体系に問題があるわけなんですけれども、結局からだをすり減らして賃金をかせがなきゃならないという自律労働の仕組みになっていること自体が問題であると思うんですね。したがって、これは賃金等の問題とも関連しますが、この問題は検討されるということですから、ぜひひとつこれは有効な一つの方法だろうと思いますので、検討を願いたいと思います。  それから、これは個人個人によって、かかりやすい人とかかりにくい人があるわけですね、そういうことですから、かかりやすい人または重度の疾病の状態になると、こういう人については職種の転換ということが考えられるわけです。事実上そういう運営がなされるんだろうと思いますが、その場合に問題になるのは賃金なんであります。   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 国有林労働者の場合、職種によって非常な賃金の差がある、一番高いのがこのチェーンソーを使う伐木手の賃金です。したがって、職種を転換すれば必ず賃金が下がるという問題が起きてくる、そこで無理をするということが起こってくるわけなんであります。白ろう病になっても伐木手にしがみついていなければならない、こういうことが生活の実態からしてそういうふうにならざるを得ないということなんでありますが、いま議員立法ですが、これは一酸化炭素の中毒症状にかかった、これも労働災害でありますが、その場合に、この被災労働者が作業の転換をした場合には、当該作業の転換前に支払っていた賃金に見合う賃金を支払わねばならない、こういう規定を入れている。これは好きで自分が職種転換をするわけじゃないのでありまして、したがって、そういう面からいえば、その従事してた作業によって得ていた賃金というものと見合う賃金を支払う、こういう観念のものが実は一酸化炭素中毒の立法の場合出ているわけだ。したがって、私は林業のこういう特別な場合、特に軽度のもので作業も継続してできるのであるが、その人の個性で白ろう病にかかりやすい者を転換する場合には、やはり賃金の面で見てやらなければならない、こういうことが起こり得るんじゃないかというふうに思うのでありますけれども、その賃金の問題についての考え方、これについて、これは職員局長ですね、災害認定された場合に六割補償というのとの関係がありますから、それとの関連でどのように賃金の問題を考えておられるか、職種転換の場合の。これは職種転換の場合はひとつ林野庁に御答弁願いたいと思います。
  184. 森博

    説明員(森博君) レイノー氏現象の患者につきましては、いろいろ振動の直接の原因のほか、体質関係、それから心因性というようなもの、いろいろあるわけでございますが、それの職種転換ということにつきましては、いろいろまた医学の権威の方々にも実は必要性について伺っているわけでございますが、これにつきまして、このレイノー氏現象につきましては十分に観察を続けながら、仕事を続けていっても差しつかえないというような大体の御意見であったわけでございます。したがいまして、われわれのほうとしては、特に本人の事情を無視してかえるというような考えは持っておりませんで、やっぱり本人の希望なりなんなりを尊重して、希望があればかえるというたてまえをとっているわけでございます。したがって、その職種転換の場合の補償の問題も当然強制的ではないというたてまえもあるわけでございますが、また一つ、補償のこれを実質的に賃金にかえるとして解決いたしますとしても、やっぱり賃金は賃金なりの一つの体系なり理論づけがあるわけでございますので、これがそういう賃金の理論から、上積みされて、補償の考え方があって、その上に何がしを職種転換の場合に加えるということになりますと、やっぱりそれは補償の意味を持ってくる。そうしますと、やっぱり補償法との関係がいろいろ出てまいりまして、他の疾病等とのバランスの問題というようなものもいろいろ出てきますし、賃金自身としてもいろいろ問題があるわけでございます。この点なかなかむずかしい問題があるので、なかなか結論が出にくいわけでございますので、その点につきましては、いろいろ労働組合とも話し合いを続けているわけでございますが、さらにいろいろ組合と話をつけてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  185. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 職種転換をされた場合には、これは新たな職種で給与を受けておられるわけなので、したがって、休業補償が出ないのは当然でございます。問題は、職種転換をしましてからあと、いわゆるレイノー氏現象による病気なるものが、一応この程度で治癒をした、療養補償を打ち切ったという場合に、障害補償としてどの程度のものが残るかということになるわけでございますが、いままでのところは、その治療例がやっと出ている段階でして、はたして障害補償の対象になるような何らかの症状が固定して残るかどうかという点では、まだ実例もないし、わからないわけでございます。しかし、ずっとやはりレイノー氏現象は残っていく。あるいはレイノー氏現象だけではなくて、骨とか、関節とか、その他の部位に明らかに障害が残っていくということがありますれば、これは障害補償でめんどうを見る、給付があるという場合が考えられると思います。ただいまのところは、まだ見当がつかないということです。
  186. 北村暢

    ○北村暢君 要望だけしておきたいと思いますが、実はレイノー氏現象というのは、それほど作業をどうしても休まなければならないという病気じゃないわけですね。それほど重くない。作業をやっておるときに、なって、ちょっと休んであたためたり、もんだりすればなおって、またやれる。こういうことなんですね。したがって、それはしびれるとかなんとかいうので、疾病として治療を要する期間というものがあれば、まあそういうふうに完全に治療をしてということになるのですが、それの場合は休業補償なりなんなりというものは出るわけですね。しかし、ある程度、六割ではいまの賃金では食べていかれないという問題がありますから、それほどひどくないから無理して働くという問題が必ずこれは出てくるのじゃないかと思います。したがって、一般の災害なり、疾病というものは、絶対にこれは医者から休んだほうがいいというふうなことになればあきらめがつくでしょうけれども、私は完全に休むよりは働いたほうがいい、したがって、補償のほうにもあまり迷惑がかからないというふうなことになるので、その面はやはり賃金である程度補償していいんじゃないか。こういう感じがしているわけです。この理屈が正しいかどうかわかりませんけれども、そういう感じがしているのです。したがって、この点は林野庁でひとつ実体の問題ですから、十分、補償の問題とは別に、賃金の問題でひとつ考えていただく、賃金体系からむずかしいような意見もございますけれども、これは好きこのんでそういうふうになるわけではないので、やはりそういう点というものは、やはり労働者の立場に立って、ひとつあたたかい気持ちで検討をしていただきたい。このことを強く要望をいたします。私の質問を終わりたいと思います。
  187. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  188. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。
  189. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、法律案につきましてごく基本的な問題を若干質問させていただきたいと思います。  ILOの一〇二号は、社会保障の最低基準をうたってあります。また、ILO条約の一二一号は、業務災害の場合の給付について述べられておりますが、このILO一〇二号条約と、ILO一二一号条約で示してあるところの給付基準というものと、今度の改正案の内容とではどのように違いがあるのでしょうか。
  190. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 御承知のとおり、ILOの一〇二号及び一二一号でしたか、という条約が関係いたすわけでございますが、いずれも日本ではまだ批准されてない。ついでに申し上げれば、一二一号のほうは、これはまだ昨年の段階では、世界各国とも批准をしておらない、こう思われますが、今回の改正によりまして、大体一〇二号条約の要求しております水準には達しているのではなかろうか。これは規定のしかた、その他いろいろこまかいことがありますし、御承知のとおり、あれは幾つかの項目のうちの三部門を満足すればいいというかっこうで一〇二号条約が規定してあると思いますが、そういう意味で、一〇二号条約の水準には達していると思われますが、ただ一二一号のほうに関しましては、まあたとえば障害補償年金と一時金との選択を認めているというような点、それから遺族補償年金につきましては、二児を有する寡婦に大体年間所得の五割を年金額として給付すべきであるというような点で、若干今回の水準では、たとえば選択制はもちろん方式として違いますし、それから遺族補償に関しましてはやや達していないという点がありますので、その点は残念ながら一二一号の水準には達しておらない。ただ将来の方向としては、こうした一二一号のような国際的に示されている基準、やや理想的な基準ではありますが、それに向かってそれを満足するような努力でまいりたいと思っております。
  191. 多田省吾

    ○多田省吾君 次にお伺いしたいことは、労災保険法と今度の改正案では、内容においてどういう違いがあるのか。それを聞きたいと思います。
  192. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 非常に具体的な個々の問題につきましては、また政府委員から御答弁するかと思いますが、主として例の一時金の支給の額でございます。これは御承知のように、労災保険法では四百日と言っておりますものを、千日以内に人事院がその状況によって定める額、こういうことにしております。
  193. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 総務長官の御指摘になったところ、一番大きなポイントでございますが、なお一、二の点を補足いたしておきますと、遺族の範囲が若干われわれのほうは現行のままで考えておりますので、したがって、一時金を受ける範囲等において違っておるわけでございます。広いわけでございます。それからこれはスライド規定の規定のしかたがすでに前回にも御質問があったわけでございますが、労災のほうは毎月勤労統計を年間に直しまして、二〇%の増減があった場合には、自動的にスライドをするわけでございますが、国家公務員災害の補償法におきましては、これが一応訓示規定になっておりますから、したがいまして、労災のようなきちんとした形をとっておりません。まあ大きな点はそれくらいであります。
  194. 多田省吾

    ○多田省吾君 遺族補償の一時金につきましては、いま労災は四百日分であるが、公務員は千日分の範囲内で人事院規則できめることになっておるという答えでございますが、人事院ではどのように定めてございますか。
  195. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 実は意見の申し出におきましては、これは現行法のまま千日分を残すという考え方でございましたわけですが、その後、人事局で法案を作成される過程におきまして、このような形に変わったわけでございます。そこでまだ実は私どもとしては、人事局側でこの点で各省間の意見の調整をして、こういう形の考え方でというふうなことまでは詰めておられない状況ですから、私ども実際にこれを立案いたします場合は、人事局及び関係の各省庁の御意向なりなんなりを伺って、一つの基本を構想したいと思っております。
  196. 多田省吾

    ○多田省吾君 ただいま年金のスライド制につきましても、若干異なるというお話でございますが、これは改正法十七条の十であろうと思いますけれども、労災法と比べまして公務員のほうが不利であると思いますが、民間と同じような規定を設けるお考えはないのですか。
  197. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) これはいわば精神的規定と申しますか、相当各種の状況を勘案して、変わってくればこれは変えなければいかぬということに、大体恩給法その他についてもそういったような規定がございますので、平仄を合わせる意味で、国のほうの場合にはそういうような規定に置いているわけでございます。
  198. 多田省吾

    ○多田省吾君 補償額につきまして共済給付とか、あるいは恩給等には最低補償制度があるわけでございますが、この災害補償についても最低補償を設けるようなお考えはないのかどうか、お伺いしたいと思います。
  199. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 実は人事院として意見の申し出をまとめます段階においては、実施機関である各省庁といろいろ御意見を伺って調整に当たったわけでございますが、その中にはおっしゃるような各補償について最低額を云々という御希望はたいへん強かったと思っております。しかし、最低額を定めますのは、現在のこの災害補償法の旧日額というものを基礎に置いて算定いたします方式と根本的に変わってまいりますので、この点については、もし踏み切るとすれば、相当慎重な考慮が要るのではなかろうか。それからまた、最低補償の額をどのように押えるかに関しましても、まあ関係法令、いろいろな形でいろいろな額できめておりますので、今回は一応そうした考え方は取り入れず、まあ多分に社会保障全般の体系が、いろいろな各種の社会保障の法令が体系化され統合され、その辺に一貫した考え方が出る段階には当然考えなければならないと思われますが、今回は見送った次第でございます。
  200. 多田省吾

    ○多田省吾君 今度の改正案におきましては、障害補償の年金の範囲を拡大する。それから第四級から第七級までの中度障害者についても年金を支給することとしたとございますが、第一点は、その全部を年金化できなかったかどうか。第二番目は、現行の一時金と比べますとどの程度の改善となるのか。この二点をお伺いしたいと思います。
  201. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 法案にございますとおり、今回の障害補償の年金化はまあ四級から七級まで拡大いたしたわけでございまして、八級から十四級までの間は従来どおり一時金でございます。しかし、これは一級から十四級の間まで補償額としましては傾斜的に漸減しているわけでございまして、八級以下の補償額というのはあまり大きな額ではない。これを年金化してみましても非常に少額であって、はたして年金化して意義があるのかどうかということが考えられるわけでございまして、その点は、ほぼ中程度の労働力を失ったという七級までということでございます。もちろん根本的にはこれは労災と同じ考え方をとったわけでございます、労災にならったというわけです。  それから年金化された部分によって一体どれほど有利になるかということでございますが、これは、金利などを入れまして計算しますとたいへん複雑になるわけでございますが、非常に簡単に申しますと、従来の一時金というのは、ほぼ年金にする場合に六年分に当たる、こういう考え方をとっておるわけであります。ところが、それでは年金を受ける人たちが、今後何年間ぐらい受けられるかということになりますと、これは大まかに見込みまして平均余命、公務員の平均余命から考えますれば三十三年というふうに見込まれますので、三十三年と簡単に考えれば三十三年と六年の違いでそれだけ有利であるということでございますが、先ほど申し上げましたような金利その他いろいろな面でやや精密に計算をいたしまして、われわれの推定から二・七倍ぐらいは有利になるのではなかろうか、こう思っております。
  202. 多田省吾

    ○多田省吾君 現行の障害の等級表にはまだ不合理な点もあると思いますけれども、そういう不合理な点は改正のお考えはないのですか。
  203. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 障害等級に類したものは、これは各種の社会保険的な法令にいろいろございます。公務員共済組合その他にあるわけでございますが、現在の段階では大体等級の呼称などが違っておりますが、実際に障害を押えた押え方はほぼ似た押え方をしておりまして、これは現在のところでは横にワクを引かれておるわけですが、御質問の点で、実際にそれで押えている押え方がそれで足りているのか、あるいは医学的見地あるいは補償条件から見て不備な点はないかということになりますと、これはもちろん今日医学なりなんなりがどんどん進歩しておりますし、また、補償に関しても考え方も前進しておるわけでございまして、現行の押え方が決して完全なものであるというふうには申し上げかねるわけでございます。ただ、現行のその国家公務員災害補償法に関しましては、共済あるいは労済等と同じ押え方をしている、そしてその押え方の内容の改善に関しましては、これは厚生省あたりで研究会をつくりまして鋭意検討されておる、労働省も並びに検討をされておると思われます。われわれもそれらの資料をいただいて、将来検討し改善することになるだろうと思います。
  204. 多田省吾

    ○多田省吾君 この法律案に対して最後に質問したいのですが、遺族補償も年金化がされましたけれども、その理由と、遺族の範囲を限定した理由並びに一時金と比べて、前と同じ質問ですが、どの程度有利になるか、改善されるか、三点をお伺いします。
  205. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) いまこれは、どなたがお考えになっても、遺族補償は一時金よりは年金のほうが安定した補償になるだろうということは納得のいくことだろうと思われます。考え方としては、要するに、補償を必要とする期間、まあ補償を必要とする遺族の人たちに必要な補償を行なうのだということで、その必要な期間にわたって年金を支給していくということでございます。  それから遺族の範囲を限定いたしましたのは、これは一応その災害を受けた人の稼得によって、収入によって家計が維持されているという形の生計の維持の関係でございまして、稼得能力のない方、配偶者−妻の場合を除きましては、稼得能力のない方々に関しまして所得を補償するという意味で範囲を限定したわけでございます。もちろんこれも労災にならったわけでございます。  それから最後の、現行の一時金と比べてどの程度の改善となるかという点でございますが、これもいろいろな試算の方法はあるかと思いますが、かりに算定基礎になる給与とかあるいは現在の国家公務員の家族構成あるいは将来における平均余命というようなものを一応一般的な数字で押えて試算してみたところでは、約二・一三倍の補償になる、一時金よりは二・一三倍ふえるということになるという試算でございます。
  206. 多田省吾

    ○多田省吾君 労働省関係の方いらっしゃいますか。  昭和三十七年から新労災防止五カ年計画ですか、それが立てられておりまして、ことしも労働災害の防止実施計画が発表されたと思いますけれども、ことしはどういう目標を置いておられますか。
  207. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  208. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こしてください。では続けてください。
  209. 多田省吾

    ○多田省吾君 三十七年以来新労災防止実施五カ年計画ですか、そういうものが設けられて、労働災害の防止ということに対しては積極的にやっておられると思いますけれども、特にこの前も中小企業における災害率が依然高いということをお聞きしましたが、それは大体どういう状況でございますか。
  210. 中村博

    説明員中村博君) 直接の担当ではございませんが、百人未満と百人以上と比べてみますと、大体の傾向といたしましては、百人未満が百人以上の二倍程度だというように聞いております。
  211. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうも国対関係で欠席がちで、最後を承って総務長官とひとつ議論を戦わせたいと思います。  まず第一に、本法の休業補償についてまずお聞きしたいのです。これは人事院でもけっこうですが、休業補償の額が、算定基準の給与額においては若干の差がありますけれども、国家公務員の共済組合の休業給付と比較すると二〇%低いですね。国家公務員の場合は、これは御存じだと思いますが、百分の八十となっておると思うのですが、しかるに災害補償については百分の六十、先ほどILOの例を引かれましたけれども、これはあとでまた言いますけれども、国内法においてもこれだけ差があるのですが、一体この理由はどういうことなんですか。
  212. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) どうも理由と申しましても、これは国際的に、いまILOのお話が出たのですが、国際的に見ても三分の二程度ということで、三分の二を正確に計算いたしますと、これは六十よりも上回るわけでございますが、この点では日本の労災、その他一般的な考え方からいって、休業補償というのは百分の六十という実績で押えられておるわけでありまして、その理由というようなものは私はつまびらかにいたしません。ただ念のために申し上げますと、いまの多田委員からの御質問にも関係するかもしれませんが、実施機関である各省との打ち合わせで御要望を伺った段階では、実は百分の百にしろというふうな御主張がたいへん強かったわけでございます。これは一つ国家公務員災害補償法の場合、実際の適用の場合になりますと、運用の場合になりますと、これは常勤職員である一般の職員は給与法体系で百分の百補償されて、非常勤職員が百分の六十になるということで、公務外では、この点の均衡問題から少し弱った、むずかしい問題なわけであります。そこで各省の実施機関の御要望はまことにごもっともだったわけでございますが、なおこれは、労災でも大きな問題でございますので、今回一応百分の八十なり百なりにするということを見送った。ただ、別途何らかの方式をもってこの百分の六十を補う方法は可能なのではなかろうかというふうに考えております。
  213. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その共済組合法によったら公務上でない、また厚生年金からいくと業務上でない休業者に対しても、これは国家公務員と厚生年金と若干違いますが、公務上でない者すらも百分の八十を補償しているのに、労務災害の場合、もちろん常勤の人の場合はこれは給与法によっていいですよ。そういう人はどっちかというと、非常勤から見ると優遇されておると言わざるを得ない、これは優遇ということばはちょっと、比較して——林野庁あたりでは非常に非常勤が多いのですよ。こういう人は、いま北村君は賃金でカバーしようと言っておられるけれども、私は賃金でカバーするというよりも、もうすでにからだに障害があるのですから、休業補償でやるのがたてまえですよ。業務上で障害を受けながら、生活費を百分の六十で押えるというような理由は、私は考えなければならない。ILOの条約からいっても、わずか〇・六%低いといいますけれども、あれは最低の基準をきめているのですよ、ILO条約というのは。したがって、私は、国家公務員との均衡上からいっても、共済組合との均衡上からいっても百分の八十、百分の百、各実施長から百分の百の要望があるというならば、総理府総務長官もこれは否定できぬでしょう。百分の百にやるということについてはどうですか。
  214. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 総務長官のお答えの前に、もう一ぺん繰り返すようになって恐縮でございますが、ともかく百分の六十というのが労災法なりあるいは労基法でも百分の六十、これは御承知のとおり、共済のほうはこれは組合員の拠出とそれから使用者と、両方で資金がまかなわれておるわけでございまして、その点で、全く使用者責任でやっております労災法あるいは基準法あるいは国家公務員災害補償法とはその点性格が違いますので、やはりその二つの性格の違いの点からいきますと、いまの国家公務員の場合だけ百分の八十なり百分の百なりにいたしますということはちょっとむずかしいという、われわれはそう判断をして踏み切れなかったわけでございます。しかし、先ほど申し上げたことを繰り返しますと、今回の改正でその他の福祉施設という項目を新たに加えておりますので、これらの点で、非常勤職員の百分の六十ではあまりにも百分の百の常勤職員と均衡を失するという場合には、何らかの積み上げの方法が可能ではなかろうかと検討中でございます。
  215. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 大体いま局長から御答弁したような事情によると思いますが、しかし、いまのような不均衡があることだけは事実でございます。これはよく検討をしてみたいと思います。
  216. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われましたけれども、これは逆の考え方ですよ。共済組合なり社会保険的な考え方で規定する給付と、これは要するに働かしておる事業主、まあこれは国でありますが、国が働かしておった場合に、その公務の上で災害を受けて、その休業扶助を、日常働いておった生活費をも出さないというような考え方は、これはあとで労災にも聞きますけれども、私はそれは逆だと思う。これこそ完全に補償しなければ安心して働けないじゃないですか。業務上で負傷した場合でも、一般の公務員、常勤公務員についてはあれは三年間ですか、一応給与を保障しておるでしょう。そういう私は不均衡があってよかるべきかと思う、しかもこれはいままで一般の常勤の公務員、私は決して給料高いとは言わない。低いといって要求しておるのですけれども、その比較をして、林野のああいう非常勤労務者の給与から比較すると、きわめて低いですよ。低いことないですか。そういう低い人になおかつ公務上で障害を受けて休んでも、一般の常勤公務員よりもはるかに低いそういう補償をして、それでいいんだというような考え方は、私は起こらないと思うのですね。これは社会正義上からも私は問題あると思う。総務長官は聞いてもらって、これは至急にいま考えてもらいたいと思いますが、これは私は単にこの改正法が出たということだけではない。前からこの労務災害については、この点については私は主張してきたことなんですが、それについて労働省の労災関係部長さん、どうお考えですか。
  217. 中村博

    説明員中村博君) 労災の関係は御指摘のように、百分の六十でございます。しかしながら、この水準はILO一〇二号では百分の五十でございます。また、一二一号におきましても百分の六十、かように相なっておるわけでございます。それからなお、いま先生が御指摘のように、これをふやすということになりますと、これは公租公課がかかりませず、御本人のいろいろな経費もかからないわけでございまして、実質的には百分の六十でございますが、相当程度カバーしておる状態になるわけでございます。したがいまして、現行の労災補償としましては、基準法と同様に百分の六十とし、これで十分とは申せないかもしれませんけれども、給与保障としてのファンクションを果たしておる、かように考えております。
  218. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはあなた、いまお若いから近代的な思想を持っておられると思いますが、これは要らぬことですがね。百分の六十、これは健康保険法が大正十年成立したときに、傷病手当金百分の六十ということからきておるのです。あなたの考えている思想はそれですよ。しかし、実際問題で、この労災でもこれは業務上の障害ですから、したがって、六〇%だったら、それで生活保障をしておるというのは最低の保障なんですよ。私は一般の健康保険とかあるいはその他の社会保険の拠出制社会保険においては百分の六十ということは、保険経済もあるので、百分の八十ということをわれわれは主張しておるのですけれども、問題あると思う。こういう人が公租公課一体幾らかかるのですか、これくらいの階級の人が。計算しましたか。そういうでたらめでは困る。なるほど公租公課がかからないように規定しておりますけれども、実際問題においては公租公課の問題のある人じゃないでしょう、こういう人は。そういう人たちで、しかも業務上負傷した場合に、労災保険法であるから、保険制度であるからといって健康保険並みの傷病手当の百分の六十ということは私は承服できない。百分の百ということは言っておらない。それは国家公務員は別ですよ、これはあとで言いますけれども。労災保険とは若干違います。種々雑多な事業主がありますから、保険経済もありますからそうはいかないけれども、少なくとも傷病手当の率以上にこれは規定すべきである。われわれは百分の八十を主張しておるのですが、国家公務員の共済は百分の八十にしたのです。しかし、この場合は健康保険その他の場合規模が違う、標準報酬が違いますから、標準報酬の場合高くなるから、したがって、国家公務員の場合の百分の八十と、一般の民間の労災あるいは健康保険等の百分の六十とは、若干低いとは思うけれども、ある程度違うと思いますね。そういうILOの問題を引き出してこれでいいというような考え方はわれわれはとらない。あれは、もうとにかく、各国共通する、利潤を得るための一番最低の、どの国でもとり得るようなところをきめておるのですから、したがって、私は労災保険の場合は百分の六十で十分補償しておるという、特に労働災害の場合にそれでいいのだという考え方は私はとらない。それが証拠に、各大きい企業では団体交渉で業務上の場合は百分の百とっておるところもございますよ。それだけ必要だと思うから事業主出しておるのですよ。主としてこういう百分の六十で押えられておるのは中小企業の、要するに、そういうものを補償する能力のない企業に働く方々、非常に恵まれない労働者がこれによって生活をしておるのが実情ですよ。そういうことは労働省知りながら、いまの答弁では、これは当然これでいいのだという、そういうことについては納得できないですよ。保険経済上なかなかそうはいかないというならば、それはそれで考える。理論上いかないということになれば、これは徹底的にこの問題は、きょうは労働省関係の法律でないから上げないとも言えないから、言わないけれども、そういう考え方で労働省おるのだったら承知できない。考え方をもう一ぺん聞かしてほしい。
  219. 中村博

    説明員中村博君) 現在のままで、先生御指摘のように、このままで十分食えるのだということを申し上げておるのじゃなくて、労災保険の保険経済の面から、それから使用者の責任の限界の問題、その他保険制度としての面もございますので、現状におきましては百分の六十でやむを得ないのじゃなかろうかと、かように考えておるわけでございます。
  220. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まああなたを責めるということは……、これは社会保障制度審議会の問題もあるし、保険審議会の問題もありましょうが、一般に民間の労災に関してはあとで言いますけれども、私は相当障害補償の認定の問題もあると思うのですが、私はやはりもう少し立場を変えて、実際この労働災害にあった人の実情というものを十分考えて、やはり立法、改正する場合には積極的にやってもらいたいと思う。あなたのほうからこの災害補償を受けている統計数字をいただきましたけれども、私はそう大きな金はかからないと見ておるのですがね。厚生年金とかその他より対象者がそんなに多くないのですから、こういう人こそ私は優遇してやるということは、資本主義の、いまの自由主義の社会においても積極的に必要でないかと思うのですね。そういう点について、これ以上これを追及いたしませんが、大臣最後一つ、この問題でもう一ぺん要望または尋ねておきたいのですが、少なくとも私は、百分の百というものをやっても、この場合の計算基準の給与から見るとさかのぼって三カ月の給与を平均としているのですから、しかもそれは期末手当も夏の手当も、そういう臨時給与は入っていない、この中には。かりにまるまるもらっても実際の働いて得る収入より減るのですよ、公租公課の問題もありますが。しかし、これは個人的の差がありますから、一般に公租公課があるからといってこれを規定して、一体計算幾ら出るかといったら出ませんよ。税金にいたしましても、公租公課、免税点もあります。だから、そういう点を私はたてに言うのは承服できないのですが、いま言ったように、百分の百でやっても実際の収入は減るということは間違いないです。それが証拠に、実際障害を受けて体験してみるとわかると思うんです。したがって、この点について将来、労災との関係もあると思うけれども、国家公務員という特殊な事業に携っている人々、特に低給与の方々に対してそういう措置をとるように、前向きで私は検討してもらいたいと思うんですが、どうですか。
  221. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) いまやはり労災保険との均衡という問題は、それなりに考えなければなるまいと思うんです。それを考えながらも、しかし、御指摘のような不均衡があるという点は十分これは検討しなければなるまいと思います。今後もできるだけ検討するようにいたします。
  222. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 労災との関係もありますが、先ほど私言いましたように、国家公務員共済組合は百分の八十、しかし、算定の基準の給与は若干違いますけれども、そんなに大きい差がない。したがって、私は、百分の百と各省から要望があるという人事院の意見でありますけれども、少なくとも漸進的に、百分の八十は当然だと私は見ておるのです。これは、これでも少ないのでございますが、この点は十分ひとつ考えていただきたいと要望しておきます。  次に、遺族補償の問題、先ほど多田さんからも質問ありましたが、きわめて紳士的な質問でありましたので、人事院は、何とかごまかした、とは言いませんけれども、納得のできない答弁でしたが、この問題は主として人事院より総理府に責任があると思う。遺族補償の一時金の問題ですが、今度四級から七級まで年金制度に改正されたということについて、これはあとでまた質問いたしますけれども、一応前進だと思うんです。全面的に私はそれは賛成できないのですけれども、しかし、それがために、現行の労災法十五条で千日分を支給するというこの規定をあいまいな表現でここに出しておるのですが、先ほど人事院では千日以内で考えるとかなんとかのような答弁があったけれども、これは当然千日という現行の規定を置くべきですよ。なぜ現行では千日というやつを千日以内、現行の以内にこれを規定するというような、こういう後退した——実は改正案というものを、私は、改正というのは改めて正すというのだけれども、これは改めて悪くしておるのじゃないかと思うんですがね、この点について、総理府は法律案をつくるときに人事院の意向というものを尊重されたのかどうか、その点をひとつ聞かしてもらいたい。
  223. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) これは、御承知のとおり、人事院の意見を尊重して大体九九%までそれに合わせた法律にしておるつもりでございます。いま御指摘の千日以内という少しあいまいな表現がとられておることも事実でございます。ただまあこれはやはり何といっても、労災保険の改正に伴ってひとつできるだけ右へならえして全体を改正しようという際でございます。それで、極端なことを言えば四百日でもいいじゃないかという理屈も出ないことはない。しかし、それじゃ公務員のそういった場合の補償には不適当であろう、といってせっかく年金のほうで非常に改善をした際、従来どおり一時金をそのままでいいかどうか、それらは状況によって若干のアローアンスを考えていいのじゃないかという趣旨で、こういうふうなことにいたしたわけで、しかし、それをきめるのは、千日以内で人事院にきめてもらうということでございますから、まあそう大きな差ではなかったと、まあ話し合いの段階として折り合いがついたと、こう思います。
  224. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで単刀直入に言いますけれども、これであれば、千日もできるし、労災なら四百日にもきめられる。やはり現行のものを尊重して、千日以内ということは、千日できめるということですね。それだけはっきりすればいいのです。
  225. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) これは、千日以内で人事院がきめるということでございますが、人事院はもともと千日を変えろという御意見じゃないのですから、これはできるだけ現状に合ったものになるこであろうと思っております。
  226. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 人事院に聞きますけれども、総理府のそういう答弁ですが、文言は変わったけれども、固定的な数字であらわしておらないけれども、千日以内だから、千日にきめてもこれは違法ではないのだから、それできめるということですか。それだけ聞いておきます。
  227. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) いま総務長官からお答えがありましたとおりでして、ともかくわれわれとしては、現行法のままと考えておったわけですが、総理府で、法案作成段階に、労災法の改正に見合わして四百日という問題がありましたので、そこをまあ考慮せざるを得ないというお考えだったわけです。で、それでは千日でもいいじゃないかという、これはもちろんそれでもよろしいわけございますが、しかし、総理府でそういう御議論が出ましたのについては、やはり一般的には千日であるかもしれないけれども、千日以下のものが、ある場合には出るのだ。たとえば遺族として災害を受けられた職員との関係の親疎の度合いとか、あるいは業務そのものの形態から見てどうかというようなことで、若干はやはりしぼるという考え方をおとりになっていると思われます。ただ、この問題に関しましては、やはり関係省庁との間での御意見の調整ということも必要であろう。最終的にはもちろん事院規則でございますが、これは人事院が立案いたすわけでございますが、この辺の調整も若干は必要であるわけだろうと思われますが、まだ現在のところ、その辺の調整が、こう落ちついたのだという点まではまいっておらぬと思っております。  なお、念のために人事局長から補足していただきたいと思います、
  228. 増子正宏

    政府委員(増子正宏君) この遺族補償の一時金の額の定め方でございまますが、いま人事院の職員局長から御答弁申し上げたとおりで大体尽きておるのでございますが、実は、先ほど総務長官から申し上げたことのほかに、この法案につきまして、社会保障制度審議会にも諮問をいたしたわけでございますが、この社会保障制度審議会からは、一応全体としてやむを得ないものと認めるけれども、特に遺族補償一時金について、人事院規則で千日以内の額を定める場合には、慎重に処理すべきものと考えるという意味で、まあやや消極的な御意見も出ているわけでございます。要するに、労働者災害補償保険法あるいは労働者全般との関係を十分考慮してやるようにという趣旨に考えられるわけでございます。まあそういうことで、人事院の意見の申し出の際に考えられたように、従来どおり千日分ということでいくか、あるいは労災法のほうで四百日に改まったという事実をある程度考慮していくか、その辺の調整の問題であろうと思うわけでございます。で、具体的には、いま人事院の職員局長がお答えしましたように、人事院規則で具体的にきめてもらうわけでございますが、その際には、いままで私どもと話し合いをしておりました中では、いろいろと基準の定め方が考えられまして、たとえば遺族などと職員との親疎の度合いとか、あるいは職員の職務の種類でありますとか、あるいは一定の基準額というものを考えまして、それとの比較によって段階を設けるというような方法が考えられるわけでございまして、これらの具体的な内容につきましては、人事院を中心にしまして関係機関におきまして協議をして遺憾のないようにいたしたい、まあかような考え方で実はこの法案をつくっておるわけでございます。
  229. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 何とかかんとか答弁されたけれども、千日ではどうもいかないというような印象を受けるのです。しかし、実際問題で、改正する場合に、なるほど四級から七級の人たちは年金になったから、その点一応これは計算はあとで言いますから別として、それ以下の人は結局六百日——四百日とは言いませんけれども、労災は四百日。六百日の損害をこうむるのですね。給付の低下でしょう。そんなことを許せますか。実際問題法律改正の場合、そういうことをずけずけとこういう法律案を審議してくれといって出してきて、これは社会党でない、自民党の方でもそうだと思います、いままで補償されたものが半分以下に下げられて、国会でそれを許しますといって通すということは、私はできないと思うのですがね。それはどういうわけですか。
  230. 増子正宏

    政府委員(増子正宏君) 先生の御指摘の点は、確かにこれは一つの問題といいますか、十分検討さるべき問題であるとは思うのでございますが、実はこの点は、労働者災害補償保険法におきまして、同じように論議されながら、実は従来の千日分が四百日分というふうに改められたということでございます。これが労働者災害補償保険としては、国会で御審議の上こういうふうに決定になったという事実があるわけでございます。したがいまして、先ほど来、人事院から御説明申しておりますように、労働者災害補償保険法の改正ということを、何といいますか、動機といいますか、それを契機といたしまして、それとの調整というか、均衡をはかるというような意味におきまして、今回の公務員災害補償法の改正が立案されたという経過があるわけでございます。したがいまして、実はただいまも申し上げましたように、この労働者災害補償保険法と同じような考え方を公務員の場合にもそのままとるか、あるいは公務員の特殊性というものをある程度考えていくか、その問題になるわけでございます。そういう点で、実は人事院の申し出がありましたあと、労働省、その他関係省ともいろいろとこの問題を協議いたしたわけでございます。で、最終的には、この法案のように、まあ人事院にも入っていただきまして、こういう形で実は調整をはかったということでございます。
  231. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは昭和三十四年ですか、私が国会に出てきた年ですが、国家公務員の共済組合法をつくるときにも、社会保障制度審議会、保険審議会からいろいろと答申がありました。社会保障制度審議会においての考え方というのは、公務員だから別な扱いをすることはどうであろうかという、戦後ああいう問題がありましたので、論議をされ、よく知っておるのです。そういういきさつはあったけれども、公務員という別なやっぱり立場があるということで、一般の労働者の厚生年金とは若干違う内容のものが人事院から勧告をされたのです。したがって、今度の場合も、この文を私もらっておりますけれども、社会保障制度審議会からの答申は「千日分以内の額を定める場合には、慎重に処理すべきものと考える。」、したがって、ここに相当私は意味慎重な、ニュアンスじゃなしに、ものを含んでおると思う。労災法との関係があるからそれにならうべきであるという答申じゃないのですよ。私は、それを踏んまえて総理府は考えてもらいたい、人事院でも考えてもらいたいと思うんですよ。労災と公務員と、それから一般労働者は全部同じにやるのだという、そういう思想に立つならば、私は別の考えがありますよ。別のものが、公務員は公務員としていろいろな制約があるのですよ。その特殊性を認めて、やはり公務員に対して立法上は考えなくちゃいけない。労災保険が国会で審議をされたから、したがって、それは審議済みだという、いま人事局長のニュアンスもそういうふうに聞こえたが、これはそういうふうにはいかない。この法律はいま審議している。それならば、労災法通ったときに、労災法の附則で書いといたらいい。そういう考え方を出されるから、この前、伊藤委員からも追及されたと思うけれども、われわれは承服できない。しかも千日としてやっても、法律上私は違反でないから言っているんですよ。前の休業補償の場合はできない。総理府長官何ぼ約束されても法律改正されない限りはできないんですけれども、この答申にも抵触しないし、改正案第十七条の六ですか、附則七条ですか、これには私は抵触をしなさいと判断したから、きょうせっかくお話をしておる。これすらも聞かれぬというならば、これは賛成だということで向こうを通ってきております。しかもきょうは賛成して上げるということを理事の皆さんからお聞きしております。そういう答弁では、これは自民党の方々も賛成ですと私は言わぬと思うんですよ。いままで千日補償されていた人が四百日でしんぼうしよう、それで皆さんよろしゅうございますかという法律案を出して、それでけっこうですと総務長官言えますか。法律も抵触しなければ、答申にも若干の意味深長なところはあるけれども、千日にやっても答申にははずれない。そういう場合にこれが人事院の職員局長は何か千日にやれない、それから人事局長もそれはどうもいかないというようなニュアンスの答弁であるけれども、それじゃ承服できない。私は承服できない、千日にできるのですから。
  232. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) いまおっしゃるとおりでして、千日やっちゃ絶対いかぬというふうにはなっておりません。それから人事院もほんとうは千日、現行のままにしてほしいという気持ちなんです。ただ問題は、やはり労災保険としかし全然平仄はまるきり違っていいんだという考え方はいかがであろう。そこで、いまの社会保険制度でも、非常に慎重に考慮せいと、こう言っておられるように、少しいまそこに味といいますか、ゆとりを残して慎重に考慮する余地を残しておるというふうにお考えをいただければ、決して千日やれないんだというふうに考えてもいませんし、また、人事院自身がそういうふうに当初から考えていない、考えていないところにひとつ裁定はまかすのでありますから、大体において御趣旨にそうはずれたようなことには相なるまいと思う。ただ若干は、しかし、やはり労災保険との均衡というものを、これはニュアンスから考えみることはやはりこれは一応必要じゃなかろうかと、それだけの配慮をしておるというふうに御理解をいただきたいと思うわけです。
  233. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ここで労災、労災と出されるとわれわれは迷惑するんですよ。それは労災保険は、昨年の国会でどういう審議がされたか、私は社労じゃないから審議には参加しておりません。したがって、私はここで労災の問題についてどうこうとは言えないけれども、しかし、この国家公務員災害補償法については私はこうだという主張をしておるんです。同一であるなら、これは要らないんです。現在地方公務員法は労災でやっているんです。国家公務員については特に国家公務員災害補償法というものをつくったということもそこに一つ意味があると私は見ているんですよ。今度の地方公務員の場合も、これは地方公務員災害補償法をつくるという意向があるんです。これではいかないですよ。長官、労災は保険制度でやっているんですよ、たくさん事業主おりますからね、保険経済もあるから、なかなか保険料を上げることもできない、そういう理由があるので制約を受けます。しかし、それでも私はきょう労働省あまり責めないけれども、私は一般の労働者でも、それはいかないと思っているんですよ。しかし、それは済んで法律改正されたと言ってしまえば別だから追及しませんけれども、現行法がいま成立するまぎわですね、そのときに、下がる人を認めていいのだというようなことをやれと言ってもぼくらは良心的にやれませんね、何かの補償というものがなければ。ほかの人がよくなったのだからおまえらしんぼうせいというような理屈は成り立たぬ。そういう点については、ここで何ぼ総務長官に言うても四百日分を千日分にしますということは言いにくいと思うが、これは人事院の職員局長、これは私はいまの答弁で納得しないけれども、納得したとしましょう。それは千日を期待して納得する。それを期待して私は一応この問題については、次に移りますから答弁は要りません。要らないということは承服したということじゃない。いいですね。  それじゃ次に移ります。次は、先ほど言われましたその遺族の範囲、遺族補償を受ける資格の問題ですがね。その前に心配になること、これは私がそう言いましたけれども、法律上非常に心配になることが一つあるのですよ。というのは第六条ですね、改正法の第六条。附則です。こういう文言が入っておるのですね。第六条、「この法律の施行の日から五年以内に職員が公務上死亡した場合における当該死亡に関し、遺族補償年金を受ける権利を有する遺族が遺族補償年金の最初の支払に先立って申し出たときは、国は、平均給与額の四百日分に相当する額を一時金として支給する。」という法律がある。これは先ほど言わなかったけれども、先ほど言いました千日以内にきめられるというけれども、第六条の権衡上四百日しかできないというような権衡上の問題がある。
  234. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) そうじゃないですよ。
  235. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうでしょう、遺族年金はね。そういう、ぼくはこれを見たときにひやっとしたのですよ。
  236. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) ひやっとせぬでいいですよ。
  237. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ聞きますけれども……。
  238. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 専門家のほうがいいと思いますから……。
  239. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) この六条は、年金を受ける方の場合に、実情は四百日分の一時前借りみたいな形になるわけです。したがいまして、この四百日分に当たるものがいわば毎年受ける年金から返済したようなかっこうになりますと、そのあと年金が続くわけです。一時金を受けられる方と全然対象が違います。たまたま四百というのが労災の一時金と同じ数字になっておるというところが御心配になるような理由になったかと思われますが、その点は全く違うと思います。
  240. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはいまの四百日に対する何らの関連性はないのですね。
  241. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) ない。
  242. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ないというのはどういうことで四百日ということを出されたのですか。
  243. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 従来は一時金であったものを今回は大部分の遺族に関して年金にかえたわけでございます。しかし、年金となりますと、何といたしましてもやはり最初の金額というのはかなり少なくなる。この金額のめどは、大体一時金を六年分と見ましてその六分の一を年金にいたしたわけでございます。そこでまあ年金となると非常に金額が少なくなるので、たまたま給与を受けておられたその職員が死亡をされたあとというのは、たとえば国家公務員の場合をとりますと、公務員住宅からも出なければならないような場合も起こりますし、また、残された遺族の方は何らかの生業を新たにやろうというような場合も考えられますので、その意味では何らかのもう少しまとまった金額が必要な場合が多いのではなかろうか、そういう点からいって一応その四百日分と申しますのは、六年分と見た場合のその半分−三年分に当たる金額として四百日という算定が出てきたわけでございます。これは一時金の労災法の四百日とは全く無関係な数字でございます。
  244. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それであればもう私は心配はそれで消えたので、なおさらいいです。  次に、先ほど申しました遺族の範囲ですがね、今度だいぶ改正されましたね。いままで遺族の範囲についてはきわめて抽象的であったが、今度は年齢まで入れておりますが、労災に入っておるのですが、前の法律にないのですが、たとえばこの場合は五十五歳までの者は支給しない、こういうことになっておりますが、それはどういうことなんですか。
  245. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) これは年金化に伴いまして、一時金の場合は別なんですが、年金化に伴って必要な期間必要な遺族の方に給付するということで、稼得能力のあるようなお子さんなりあるいは主人あるいは父母というような遺族で稼得能力のある方にはその必要な年金というものは考えられないのではないかという点で、年齢等の制限をつけたわけでございます。
  246. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 従来からそういう取り扱いをしておったんですか。
  247. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 従来は一時金でございますので、そういう扱いをしておりません。
  248. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、従来も今後も、たとえば例をもっていいますがね、これは自衛隊なんかに多いと思うんですが、国家公務員にもありますが、若い人で死亡した場合、死亡当時はまだ未婚の人ですから——具体的に申し上げますが、未婚の人だから子供も配偶者もない、親も若い、五十五歳以下だ、そういう場合はどうなんですか。具体的に例をひとつ……。
  249. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 私知っておる分だけは答えますが、自衛隊の場合にはこれは別扱いにしておる。いまの場合でいうと一時金ということで、これはこの法律そのまま適用されておらないということでございます。
  250. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 自衛隊以外の人もいるでしょう。
  251. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 特別職に関する場合は、この法律の適用外だというふうに思います。
  252. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 適用外だ——その場合にとうなるかということ。自衛隊は別だ。
  253. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) その場合は、先ほど問題になりましたその一時金で千日分以内ということになるわけでございます。
  254. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この法律から見たらそういう形にとれるがね。それじゃ、いいことですからそれでけっこうです。  それじゃ生計を維持した、その事故のあった当時生計を本人の主たる給与で生計を維持しているという観念というものは年金の場合であって、一時金の場合にはそういうものを考えていないということですね。
  255. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 御質問の趣旨をちょっと取り違えるかもしれませんけれども、当然年金の場合も生計を維持しておられますし、それから一時金の場合は生計を維持している関係——親族関係で年金を支給、補償される者以外の方、こういうことになると思います。
  256. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、ぼくの言っておるのは年金の場合。いま言われたように、その当時その要件に達しない者については年金を一時停止するということでしょう、年金を。その趣旨がわからぬ。あの答弁がわからぬ。
  257. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 特殊の場合を除いては年金を停止する場合はございません。これは労災法の場合には、受給資格と年金支給時期とが五年ほどの差があるわけでございますが、国家公務員災害補償法の場合は、受給資格を生じて受給権者になっている方が支給を停止されるということはございません。
  258. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この第十六条ですね、第十六条の末のほうを見てくださいよ。いろいろ書いておりますが、「職員の死亡の当時次の各号に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。」ということになっておるんですがね、一の場合、「夫、父母又は祖父母については、五十五歳以上であること。」、以上でなければ——死亡当時ですから、私の解釈では、死亡当時そうあっても、父や母が五十五歳に達したならば、その年金が支給されるという解釈でいいんですね、どうなんです。
  259. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) そういうことになれば非常に理想的だと思いますが、現在のところでは、労災法においてもそういうことでございませんし、死亡当時五十五歳以上でなければなりません。
  260. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、若い人で家族はない、独身だから配偶者もない、子供もない、父母だけがある。その父母はまだ五十五歳に達しておらない、将来はどうせ達するんだから、年とるんですからね、その子供が業務上でなくなった、年金をもらう資格はある、たまたま父母が五十五歳以下だから一生年金もらえないということになるのですか。それちょっとお伺いします。
  261. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 年金としてはその場合は残念ながら支給されません。一時金でございます。
  262. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは私も——これは問題があるんですがね、停止ということはわかるんですがね、一時金と、先ほど言ったように千日きめてくれると思うけれども、千日といったところでわずかですよ。そして自分の子供をなくして、しかも年金がつくという法律がありながら、五十五歳に達しないといって——厳格に言ってですよ。これ満歳でいくんでしょう、五十四歳十一カ月未満だったら——一年ですか、一年計算ですか、五十四歳の場合はだめ。来年死んでくれたらもらえるけれども、わずかな期間でもらえないですね。これは私は一つのある程度停止期間というものを認めてやるべきだと思う。
  263. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 私は残念ながらと申し上げたわけは、確かにそういう考え方もあり得るわけでございます。しかし、これは各種年金に関しまして、全般的にやはりそういう一般原則みたいなものが打ち立てられませんと、たまたま国家公務員災害補償法だけがおっしゃるような方式を採用するということは、現在の段階では困難だろうと思われます。
  264. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは恩給法、特に軍人恩給から考えてですよ、私は公務員——一般労働者災害も一緒ですがね、業務上死んで、なくなったと、その場合に、一時金と葬祭料でお払い箱だと、しかもせっかく年金がつくという資格がありながら、年が足らぬだけで出さないという。これは私は考えるべきだと思うのですね。これは当然遺族なんですね。子供と奥さんはないから、これはもらうまで奥さんじゃない、配偶者じゃないから、これはしかたがない。予約をしておってもだめだ。親は自分の生んだ子供だ。その子供が自分が五十五歳−五十五歳で切るかあるいは、どこかで切らなければなりませんから、六十歳になるか、五十五歳にするかは別として、年齢を指定して考えるということについては、年金制度の半分を殺してしまうと思いますがね。これはどうでしょうか。将来ほかの関係もありますけれども、総理府総務長官は非常にものわかりのいい人だ。これも一つの盲点だと思うのですがね。この点について、どう考えられますか。
  265. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 純粋にいまの部分だけ取り上げて考えれば、私は山本さんのお話も、一理屈も二理屈もあると思います。これはやはりそういう点も、今後いろいろ検討しなければなるまいと思うのですが、いまの軍人恩給にしましても、その他の分にしましても、やはり一定のそれぞれ年齢制限というものは設けている。たまたまそれに近い人については、非常に気の毒だとか、これは実質上不均衡だという問題は出ると思いますが、現在の場合は、ほかの法律その他とのつり合い上これはやむを得ないという、従来のとおりの一時金ということでがまんしていただく。しかし、いまもお話のように、今後の問題としては、私はやはりこういう問題もあわせて考えていかなければならぬ性質のものだと思います。
  266. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま職員局長ね、ほかの法律の関係といいますか、これは拠出制の保険といえば別ですけれども、配偶者は別ですが、父母とかそういうものについては、夫の場合もそうだが、ある年齢までは停止期間として規定しているのじゃないですか、国家公務員共済組合法の場合は。
  267. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 先ほどちょっと申し上げましたように、労災の場合は、家は五十五歳から支給される資格が生じて、六十歳までは実際に支給されないということになっております。で、その点はこれは労災と比較しますと、これも実は国家公務員のほうが、年齢の点では有利だということになります。
  268. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 共済組合関係はどうなっていますか、遺族年金の。
  269. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 共済では全部若干停止等で、そうした制度は導入されていると思います。
  270. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうでしょう。ぼくはどうもこの考え方が逆になっていると思うのですがね。父母なんか優遇すべきものに対しては、その制限を使い、それは労災の関係だと、労災は六十歳だと思うのですね。五歳だけちょっと下げてあるから優遇していると言うけれども、私はもし社会保障の観点からいくと——五十五歳で出せと言っておらないのですよ、働ける人にそういう年金をやるということは私は問題があるから、これは地方公務員共済組合法のときに、長官もいてだいぶやりましたけれども、私はそれを主張しておらない。しかし、せめてその停止期間として、六十歳でいいですよ、六十歳になればこれを支給するのだという、そういうものが必要だと言っているのですよ。勘違いしてもらっては困る。若い、三十歳ぐらいの、そんな親はないけれども、若い人にまで、働いている人にまでどうしてもやれとは言っていない。働けなくなった人には、せっかく自分の子供があった——極端にいえば一人っ子が業務上なくなった、たまたま五十五歳以下であったからもらえないのだと、こういうことを私は、立法する——法案をつくるときに考えるべきだと思うのですね。労災部長はどうです、この問題について、どう考えますか。
  271. 中村博

    説明員中村博君) ほかの厚生年金との関連がございますし、これは年金に直しまして、必要な限りは必要な補償をするという基本線に立っております関係上、現行こういった稼得能力を持たない方々について考えるということが、やはり社会保障的な性格を一面持ち始めました労災にいたしましても、当然なことと考えております。
  272. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなた、聞いてない。私は若い稼得能力のあるときはいいと言うのですよ。なくなったときに停止をしておいて支給すべきであるというのですよ、こういう性格のものは。それを私は言っておるのですよ。働いて収入のある人に年金を出すというようなことは一つも言ってない。停止期間とすべきである、厚生年金もそうなっておる。
  273. 中村博

    説明員中村博君) 厚生年金は六十歳に達したときでございます。
  274. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 こういう規定がありますか。
  275. 中村博

    説明員中村博君) 厚年につきましては、停止という関係の規定はございません。
  276. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生年金の点、ちょっといま調べても時間かかるから調べないけれども、たぶん私は停止期間だと見ておるのですよ、この場合は。国家公務員の場合は私は停止期間だと思うのですよ。それが停止期間じゃないですか。
  277. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 先ほどばく然と申し上げましたけれども、確かに停止期間でございます。五十五歳以上になったとき支給される。ただしこれは、二十年間の掛金をしていなければならない、これはやはり拠出制ということで、当然やはり拠出したものが返ってくるという考え方に立ったんだろうと思われますが、われわれの場合、先ほどから御議論がありまして、私どもといえども、もちろんその点一応考えなかったわけではございません。しかし、かりに労災の五年間、こういう停止期間をとりますと、こちらのほうは五十歳に下げて五十五歳からということになりますが、これはますます大きな開きが労災との間に出てまいります。また、おっしゃるような趣旨のものを一体何年で押えるか、何歳で停止期間を押えるかという問題、またこれを実施するとなりますと、事務的にも非常にむずかしい問題があるだろうと思われます。私どもとしては、やはりこれは将来のこの種の年金制度の全般的な、原則的な考え方として、それぞれの年金制度に採用される時期を待つよりほかはないのではなかろうか、しかし、この点について将来改善したいという気持ちは十分持っております。
  278. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総務長官にこの問題はひとつ考えてもらうことにして、いま言いましたように、これがそう考えられない限りは一時金で全部処分されてしまう。それからいっても、繰り返すわけじゃないけれども、一時金というものは重要性を持っておるという認識をしておいていただきたい。そこにくくりつけるつもりはありませんけれども、それほど重要な意義を持っておりますから、この問題については、この法律について言っても、なかなかこれで長官をうんと言わすわけにはいかないと思う。これは相当基本的な問題を含んでおりますけれども、私は停止期間が妥当である、年齢は六十歳、五十五歳ということは、これはありがたい、ありがたいけれども、停止期間として六十歳から年金を支給するというのがたてまえでなかろうか、私はそう思っておりますから、意見だけ。  その次に三点、これでしまいですが、しまいといってもちょっと長いです。障害年金と他の法令による年金との競合の場合の調整措置。労災の場合は、厚生年金には業務上、業務外がないから、厚生年金の障害年金はずばり出して、労災補償については二分の一これを削減して支給するということになっておるらしいのです。それから国家公務員の場合は、国家公務員共済組合の規定でこれは廃疾年金と言っております。廃疾年金の場合は公務上と公務外があるから、災害補償を受ける場合には、国家公務員共済組合の廃疾年金は、公務上のやつではなくて、公務外で率を落として、まるきり支給する、そのかわりに労災のほうでこれをやはり二分の一減額するという規定になっているのですが、その立法趣旨がどういうところにあるかということを労働省と、人事院なり、総理府から聞きたいと思います。どちらからでもけっこうです。
  279. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 他の給付との調整の問題というのは、非常に附則でごたごたしておりまして、むずかしい、いわゆる技術的なむずかしい問題なわけでございますが、われわれの考え方としましては、大体労災の調整方式にならったのである。ただ労災の場合は、大部分が厚年との調整でございまして、われわれの場合は、これは共済関係との調整ということでございます。したがいまして、ならったのでございますが、大原則としましては、国も使用者として、使用者負担がダブっている部分はこれは調整するのだ、こういう考えでございます。その場合もでき得る限り国家公務員の災害に関しては、災害補償を優先さして考えたいのだというのが、われわれの考えました原則でございますが、そこであとはいわゆる共済グループ及び厚年グループ、それから無拠出の補償のグループというようなことでございますが、原則はいま申し上げたようなことで、使用者としてダブっている部分は調整いたす、こういうことでございます。
  280. 中村博

    説明員中村博君) 厚生年金との調整につきましては、やはり同じように、いま職員局長からお話がありましたように、やはり同一のものについて、同一の費用負担者が二重に費用を負担することがないように、こういうたてまえでございます。
  281. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 二分の一減額するという思想はどこから出ているのですか。知っていて聞くことはやぼかもしれませんが。
  282. 中村博

    説明員中村博君) このたてまえで申しますと、昭和三十五年の改正で一部年金導入いたしましたときに、五七・五%を控除いたしておったわけでございます。それが国会の御修正によりまして五〇となったわけでございます。その七・五%分だけは改善されたと申しますか、切り捨てられたわけでございます。
  283. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはぼくは立法者の考え方の問題だと思うのですね。大体二分の一を削ったというのは厚生年金で二分の一を削るのがたてまえで、拠出制が折半になっておるから、本人の分は競合しても出してやる、労働者災害の関係は、これは使用主の責任であるから、まるまる出すべきであるけれども、厚生年金はああいう保険制度であるから、本人の権利として認めているのだから、その分をこちらで引いたという思想です。そうことになっておる、考え方は。その筋からいって、ちょうど厚生年金、これは国家公務員の共済組合と一緒ですけれども、国家公務員の普通の場合は、あれは折半で負担しているのですね。公務上のは別です。公務上の場合は、これは全部使用主が負担をしておるので、ちょっとおのずから違うのです。そういう思想から五〇%と私はしておると思うのですが、しかし、その五〇%引くのは、私は労働者災害補償法並びに国家公務員災害補償法のたてまえからいうと、私はシビアだと思う。もう少し考えてやらなくちゃいけない。例をとると、計算されておると思いますけれども、一級の場合、国家公務員の場合は五〇%です。国家公務員共済組合の公務上の場合は八〇%もらえることになっておりますが、それは五〇%に普通の場合減して、三〇%減して、そうして労働者災害補償法のほうで五〇%出すと、こういうのですね。そういう計算になっておる。だから考えてみると、ぼくは労災法でも国家公務員の災害補償法でも、私はずるい考え方だと思う。当然やるべきところでやらずに、向こうのほうへもたれておる。言いかえれば、厚年でも、国家公務員共済組合でも、自分が受ける、不具廃疾になったらこれだけもらうという権利をもっている。そのもっているものと競合するということで、災害補償のほうでこれを減額するというのは、私はやり方がこそくだと思う。そう思いませんか。
  284. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 遺族補償の場合、一時金でございますから別といたしまして、障害補償として考えますと、これは山本先生御承知のとおりなんですが、現行法では、前六年間のあれで調整をしていたわけです。今度の改正に関しましては、山本委員の御主張のとおり、共済との関係は、国家公務員の災害補償法のほうは一〇〇%ずっと出していくのだ。そうして御承知のとおりの三〇%の共済のほうは上積みの分だけをはずして調整いたしたわけでございまして、これはもうわれわれとしては、改善された、たてまえ、考え方としては改善されたと思っております。
  285. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは確認しておきますけれども、国家公務員共済組合法の廃業年金、これは公務外と、それからこれに規定している額は、両方とも満額支給するということですね。
  286. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) これは級によって違っておりますけれども、おっしゃるとおりだと思います。
  287. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 労災のほうの場合に、この場合は非常に違った優遇をしておりますね。労災の場合は、二分の一引くのじゃないですか。
  288. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) かりに労災の場合でございましても、こうした拠出例の共済の場合には、われわれと同じ考え方だろうと思います。ただ、労災のほうは、プロパーの部分が厚年でございますから。
  289. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それであったら私は文句はないのです。厚年のほうは満配出して、規定のように、国家公務員の場合には、業務外のやつで満配出して、災害補償のほうも、これもこの規定で減額せずに、それだけの金額を出すということですね、それを聞いておけばそれでいいのです。何か二分の一減額するというのですが。
  290. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 国家公務員に関しては、おっしゃるとおりでございます。
  291. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 労災もそれでいいのですね。
  292. 中村博

    説明員中村博君) 労災の場合には、国家公務員の考え方とは関係ございません。
  293. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関係ないのだが、先ほど言われた国家公務員と同じような形で支給するということになっているのですねということを尋ねているのです。
  294. 中村博

    説明員中村博君) 厚生年金は先ほど申し上げました。それから地方共済等の共済組合につきましては、認めております。
  295. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いいのですね。どちらも全額出すということですね。
  296. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) もう一ぺんお答えいたします。国家公務員の災害補償法と、それから共済との関係ではおっしゃるとおりでございます。
  297. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 労災もそういうことですね。それだけ言ってもらったらいいのです。同じように全額出すということですね。労災のほうでは、一級の人が二百七十日ですか、ありますね、二百四十日ですか、ここに規定しておりますね。そのとおりのものを厚生年金と競合しても、厚生年金について、向こうは引かないというのです。国家公務員の公務上の場合は引きますけれども、三〇%、二〇%、一〇%引くけれども、厚年のときは公務上でないからこれは出すということを厚生省は言っている。労働災害のほうは労働災害のほうで、私のほうとは関係ありませんと、こういうことですが、労働災害の場合ですね、年金の場合ですよ、給付の場合には規定どおり出して、減額するという規定はないんですね。私は調べるのがじゃまくさいから、聞いておけば一番早いので、あしからず。それだけはっきりしてください。
  298. 中村博

    説明員中村博君) 厚生年金との関係につきましては、厚生年金は全額出ますけれども、労災補償給付は厚生年金の額の百分の五十を減額した額が支給されます。
  299. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで長官ね、やはり一時金で先ほど言われた例だけれども、非常に労災とはいろいろ優遇されたやつがあるんですね。というのは、別な考えを持っておる。だからぼくは一時金だけをそう固くなる必要はないと思うんです。もう式が違うということは職員局長がそう言っているんですから。しかし、あとでこれは訂正は許しませんよ。そういう点はひとつ十分考えて。それで私は、労災のほうは二分の一引くと、五〇%出さぬという規定は、国家公務員災害補償の場合は、私は十分いま調べようと思うが、しかし、それ時間もないから、私はおそらくそういうものは均衡上とあなたはやかましく言うから、そういうものが改正案に載っていないけれども、どこかにあるんじゃないかということを調べたいんだが、そういうものはありませんよということを明らかにされておりますから、これはそれでいい。そのとおり私は聞いておきましょう。  それから次に、あと急ぎましょう。大事な点がよかったんだから。  今度実は四級から七級まで優遇したと、こう言われるんですが、いまの事務的な関係だけではございませんが、厚生年金もおそらくそうなっておると思うのだが、国家公務員の場合の廃疾年金の廃疾程度の区分ですね。これが国家公務員では三級です。年金の場合は三級で、あとは別表で一時金四つのクラスしかないのですね。ところが、この労働災害補償ではまあいま言った十二階級あって、七級まで今度は実は年金になったと、いままでは三級までということで合わしておったのですが、七級までふえたんですが、その区画は違うのですが、これはまあ厚生年金、私は国家公務員の場合はどっちも全部出すというのだからこれは問題ないのですが、労災のように二分の一を引くということになると、相関関係があるのですね。たとえば、例を申しますとですね、答えてもらいたいのですが、厚生年金も国家公務員共済組合も、両眼の視力が〇・〇二以下に減じたときにはこれは一級という認定をしているのですね。ところが、労災のほうではこれが二級になっておるのですね、この区画を見ますると。いや国家公務員のこの認定基準を見まするとね。この場合は、その一方は二級で認定して、一方は一級に認定するということは、どういうことでこの表が変わってきておるのですか。ぼくの言うことわかりますか。
  300. 中村博

    説明員中村博君) 厚生年金のほうは、年金部分は一級、二級、三級とこう三つのグループに分かれておるわけでございます。労災につきましては十四級まで分かれてございまして、そのうち七級までが年金になるわけでございます。したがいまして、この場合に、負傷、疾病の範囲は完全に厚生年金と一致してございます。
  301. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生年金の私はまあ表を持っていないのですがね。三級というのは国家公務員の共済組合と一致しておるのです。そういたしますと、いま申しましたように——あなた表持っていますか——厚生年金の場合も、国家公務員共済組合の場合も、両眼〇・〇二以下に減じたときにはこれは一級に認定するのですよ。ところが、この書類を見ますと、災害補償については二級に認定をしておるのですが、一方は一級、一方は二級ということに分かれておるのですね。この資料が間違いならば別ですよ。そういうことになっておるのですが、そういうものをどう調整するか、認定が。そういうことになっていないですか。
  302. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) この点はただくくり方の級の数が違うだけでございまして、たとえば補償で一、二級が共済で一級、つまり補償法での二級部分が共済で一級の範囲に入っている。ただ表をごらんいただいて、こまかい部分で多少の表現が違ったり簡略があったりすることはございますが、くくり方としては全く同じでございます、ただ呼び方が違っているものですから。補償を支給するという点においては全く同じでございます。
  303. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 共済組合でもそれから厚年でも、その等級によってこれはもう非常に給付が変わってくる、一級、二級に格付けされることによって——格付けというか、認定の場合。この場合、私は一つの例をとったのですが、みんなそうなんですよ。全部そういうふうになっておるのですよ。大体国家公務員共済組合法で一級に認定する部分は労災では二級ということに区分をしておるのですね。これ一級に認定されるのと二級とは金額は違うのでしょう。言いかえれば、共済組合で一級に認定すれば五十万円出る。ところが、労災では二級だから、級が落ちておるのです。落ちなければ級を分ける必要はない。それは同じことになりますか。
  304. 中村博

    説明員中村博君) 労災は先ほど申し上げましたように、十四級に分れてございまして、七級までを年金にいたしております。厚年は、同じ範囲のものを一、二、三と三級に分けておるわけでございます。その労災のほうがきめこまかくなっておるといいますか、級数が多いとうことで、範囲は一緒でございます。
  305. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それなら言うけれども、共済組合では、三級の年金部門はこちらの五級の部門しかないのです。五級しかない。共済組合は五級以下、この認定区画でいうころの五級以下は共済組合では一時金だ。したがって、六級、七級はこれは一時金で支払うという認定になっておる。障害の程度は同じものがそういう区画になっておる。そうならざるを得ない、それは改正の過程がありますから、厚年も前は十六級くらいに分けておる。それをだんだんと狭めてきた。狭めたのが得かどうか別ですよ。しかし、できるだけ重症者を年金にしようという思想で縮めてきた。いままで五級であったやつを三級に縮めてきた。それと災害補償と合わないのです。合わないのですよ、実際問題として。
  306. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) これは今回の改正でつまり四級から七級までが年金になったことによって共済と全く合ったというのが、われわれの解釈なんです。
  307. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 合っているんですか。
  308. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) はあ。これ、たまたま呼び名が違っているだけでして、くくり方で片方が十四までということ、片方がそうでないということで、くくり方は違うわけですが、実質的には中身をごらんいただいてもわかりますように、片方一級、二級といっておるところでそれをくくった場合の内容はどういう障害ということを表示してある内容はほとんど一致しております。
  309. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 合ってないんだ。国家公務員の別表を持っていますか。
  310. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) はい、ございます。
  311. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 国家公務員の別表第三表ですね、三表見てください。合っていますか。
  312. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 合っております。あの項目の中の、たとえば国家公務員のほうで、一級の中で一、二、三、四と各号で表現しておりますし、それから共済のほうは三級まであって、それぞれ表現しておりますが、これは若干の表現上の違いはあるのですが、原則的にはこの区分けは、全くそれぞれカバーしておるところは一致しておると思っております。一致してない部分に関しては、今回若干の訂正をいたしまして……。
  313. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、わしの法律が古いなら別ですよ、この間もらったやつ、四十一年度の。第三級の十一号見てください。「両下肢のすべての足ゆびの用を廃したもの」それからこの労災法の新法の第五級の六の「両足の足指の全部を失ったもの」これは表現は違うのですが、これは同じことではないですか。片っ方は五級です、片っ方は三級、廃した、ということと、足指を全部失ったということとは別だ、こういうことなんですか。
  314. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) これは表現が若干違いますけれども、われわれとしては、その症状としては同じと考えております。
  315. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこが問題です。片一方は三級に認定しているんですよ、国家公務員の場合は。いま三級の一番最後を言ったんですよ。三級じゃないですか。
  316. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 共済のほうで三級、それから国家公務員災害補償法のほうで七級でございます。いずれもこれが年金化されている、こういうことでございます。
  317. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこが年金にくくり入れたと言っているけれども、認定の格が違うというのです。一級、二級にされるのと、七級にされるのと、額が違う。
  318. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) 恐縮でございますが、共済組合のほうは級数が少ない、国家公務員災害補償法が十四級まで、そうして年金部分に関しては級数が少ないということで、なるほど級数の呼び方は数が少ないということになりますが、こちらのほうもそれを年金にしてしまった、こういう限りにおいては、その範囲は全く同じでございます。
  319. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは、ほかの人が退屈になるから言いませんけれども、国家公務員の三級というのは、相当優遇された等級にあてはめた、この前改正の前改正のときは。したがって、いま言っているこの五級のいまのやつでいうと、百四十二日しか支給されないということになっているんですよ。国家公務員の場合は三級だから上のほうに認定されておるから級が上がっている。年金には違いないですよ。年金には違いないが、年金の額が違うといことを言っているのです。
  320. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) それはくくり方を国家公務員の災害補償のほうは十四級までで大きく、つまりこまかく分けてありまするので、したがって、こまかく分けて支給額をきめておりますから、その点での差があるということは、これは当初からのことでございまして、これはもう区分けのしかたという問題で、別に格がどうこうということではない。むしろ格というものは、それぞれの体系の中では、大まかに分けたのと、こまかく分けたのと違いがあるということではないかと思われますが。
  321. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうも理解できないようですが、たとえば一級に認定された場合は、国家公務員の場合は三〇%控除することになっているのです。国家公務員共済組合でそれが二級の場合は二〇%引かれる。率が変わってくるのです、同じ傷病で。したがって、この場合、二級で認定された場合には、二級の分しかもらえない。国家公務員の場合は一級に認定されると、公務上であっても三〇%引くという規定になっている。先ほど言われたように、控除の率が変わってくるのです。理解されているかどうか、わかっている人もあると思うのだが。そういう点を一致さしておかなければ、競合するときには困るということを言っているのです。これは労災も一緒です。これは早くから、ILOでも問題になっているのですよ。すなわち、認定区分けの問題はILOでも論議されている。だんだん縮小させるという方向に進んでいる。私が言いたいのは、こういう改正の場合には、国家公務員のあるいは厚生年金もそうだと思うが、船員の場合は七等級になっております。船員の場合はまだ多いのです。厚生年金は三級に上げてきた。ずっと区分けを全部上げてきて、いままで一時金であったようなものを、年金であっても、額は少ないけれども、上へ上げて年金の額を多くするという、そういう考え方に変わりつつある。変わりつつあるのです。これは国家公務員の場合は別として、労災の場合も、それから厚生年金の場合も、前はもっと多かったのです。十二か、あるいは七か、多かったのを、だんだん縮めてきている。それを、労災の場合の認定と国家公務員の認定と変わった場合には、そういう控除の場合も変わってくるので、そういう点がわかっているのかどうかということを私は聞いたのです。一級と二級に認定されることによって、額も違うし、控除される額も変わってぐるのです。そういう点が、職員局長のみ込めているのかどうか。わからないけれども、ここでそういうことをあまりやっても、あまり興味のない人にはどうかと思うけれども、やはり参議院でやる以上は、そういう点も、ミスといえばミスで、法改正しなければならぬ点はここにある。そういう点を浮き彫りにしておく必要があると思って、あえて言ったのです。将来問題になりますが、これほど言ったところで、あまり理解をされてない人に言ったところで、金仏に念仏ですから、私はやめます。
  322. 大塚基弘

    政府委員(大塚基弘君) お話しの点はよくわかりました。わかりましたが、ただ、これは等級の分け方が、それぞれ法律によって違っておりますので、ただ、その等級の分け方に関しては、確かに私どもは一応この年金の範囲としては一致していると思っておりますが、しかし、この点に決して問題がないわけではございませんで、この点について、厚生省、労働省でもそれぞれ委員会等も設けられて検討が進められることと思います。将来、この種の等級の分け方に関しては、一本の制度ができればそれにこしたことはございません。われわれも、この点の改善については逐次検討していくというつもりでございます。
  323. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 労働省に聞いておきますが、厚生年金と認定区分が違うのですが、労災の場合は、やはり十四ですか、そういう区分だけで一致さすという方向に考えられないですか、同じ認定区分。
  324. 中村博

    説明員中村博君) 年金に関しましては、年金部分に関しましては、一致しているわけでございます。
  325. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 最後に、それではあまり興味のない人に言ってもしかたがないから、スライド制について最後に総務長官に聞いておきたい。今度恩給法、各法律、厚生年金が一番早かったと思いますが、年金額のスライド制を取り入れられた。しかし、それは抽象的ですね。具体的にどうこうということを言ってないのですが、きょうは厚年とかほかのことは言いませんが、国家公務員共済組合にスライドを入れられたようでありますけれども、具体的にそれがどういう形でやるという方向で進められますか。
  326. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) お話しのとおり、これはまあやや抽象的な規定であることは間違いありません。いまここでどういう場合にどうするというふうにきちっときめていない。これはいろんな諸条件を検討して、変えなければならぬと思われるときに変えるというふうにいまなっておりますので、いまここで具体的にどうするというわけになかなかまいりません。しかし、これもまあ恩給なんかと同様ですから、これ将来もう少しきちっとした規定がどこかに基準でできる場合は、それに合わせるようにきちっとさしたいと思っております。
  327. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはきょうの一番大きい問題として訴えたいんですが、時間がないから、これはほんのわずかで済んでしまいますが、御承知のように、いまのような物価が上昇機運にあるときには、もう五年たっちゃったら年金ももう半分ぐらいの、五〇%ぐらいの価値しかなくなる、固定しておけばね。年金というのはスライド制があって初めて年金の機能を発揮するんですから、もうフランスあたりでも早くからすでに御存じのようにスライド制をとっておりますがね。したがって、恩給の場合は仮定俸給の改正で、戦後おそらく何回か、四、五回やっておると思うんです。恩給の場合、仮定俸給を改正してですよ。したがって、やはりそういう方向でも考えるとかどうかということは言えないですか。
  328. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) これは、今度できます恩給制度審議会では、ぜひひとつこの問題も具体的に検討してもらいたいと思っておりますし、そういうようなもので基準ができますれば、これもまあそういうものへ右へならえというふうになり得ると思います。ですが、これはたいへん御不満かもしれませんが、なかったやつを入れたんですから、まあ一歩か五歩ぐらいは前進したんだという点で、ひとつ今回は御了承願いたいと思います。
  329. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは一歩前進と言われるが、一応ことばは入れた。ことばは入れたが、これは厚生年金のときに問題になったのですがね。やっぱり何でしょう、この法律を国民に対して将来スライドするのだという方向を示したということですね。しかし私はね、これは問題の解決には相当大きい問題あるのですよ。だれがその追加負担をするかということですね。問題が、大きい問題あるのですよ。したがって、それがですよ、恩給だけであれば私は政府はやると思う。しかし、厚年もあるいは共済組合の年金も全部そうならば、それはばく大な費用です。だから私は、これ入れたと言うけれどもね。はたして本気でやる気があるのかどうかということを私はただしたいのですよ。これはおそらくね、だからこういうことを出せばいいだろうということで政府考えておるのか。ほんとうにスライド制というものを実現するという考え方で政府は取っ組むか。財源措置を一ぺん考えてやるべきだと思う。何もやってないでしょう。そういう点、何もやってないでしょう。私はね、厚生大臣にも言ったんですがね、ほんとうにやる気になればどれだけの費用が要るだろうかと尋ねたのですよ。わからぬのです。これはわからぬはずですよ。それはばく大な費用が要ります。しかし、現在はやれるのです。厚生年金でももう一兆億円からの資金ためてますからね。現在の資金を使えばやれるのです。しかし、将来を考えて、追加費用をどうするかということを、国で負担するということになればどうするかという大きい問題。今度は厚生年金もスライド・アップしましたね。法律改正ちょっとやりますね。あれでもですよ、今度の上がった厚生年金の組合員のかけた保険料で上げておるのですよ。スライドさす。政府は出しておらないのです。だから、そういう点もぼくは真剣にひとつ考えてもらいたいのです。ただ、この法律を出してですね、われわれにちょっと気を持たすということでなくして、ほんとうの、特に労働者災害のようなことについては、いま言ったこういう事情で年金をもらうのだ。特にこういうものから手をかけてスライド制早く実施してもらいたい。これを要望いたしまして、皆さん方非常に迷惑かけましたけれども、私の質問を終わります。
  330. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記をやめて。   〔速記中止〕
  331. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を起こして。  ほかに御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありになる方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めます。  それではこれより採決に入ります。国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方は、挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  332. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 総員挙手と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  333. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後六時二分散会