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1966-02-17 第51回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十七日(木曜日)    午前十時三十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         熊谷太三郎君     理 事                 柴田  栄君                 八田 一朗君                 伊藤 顕道君     委 員                 石原幹市郎君                 源田  実君                 塩見 俊二君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 三木與吉郎君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 松本治一郎君                 鬼木 勝利君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        国 務 大 臣  上原 正吉君    政府委員        総理府総務副長        官        細田 吉藏君        総理府人事局長  増子 正宏君        総理府恩給局長  矢倉 一郎君        科学技術庁長官        官房長      小林 貞雄君        科学技術庁計画        局長       梅澤 邦臣君        外務大臣官房長  高野 藤吉君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君     —————————————   本日の会議に付した案件外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣送  付、予備審査) ○科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣送付、予備審査) ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査  (恩給及び退職手当通算に関する件)     —————————————
  2. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  外務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は、去る十日、予備審査のため本委員会に付託されました。  それではまず、提案理由説明を聴取いたします。椎名外務大臣
  3. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外務省設置法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  本改正案は、特別職三人、一般職八十三人計八十六人を増員するものであります。  特別職につきましては、従来兼館大使館でありました在グァテマラ及び在ブルガリア大使館を今回実館とすることに伴い大使二人、並びに在シンガポール総領事館大使館に昇格することに伴い大使一人、計三人であります。  一般職につきましては、新たに実館といたします在グァテマラ大使館、在ブルガリア大使館、高雄、パース、ナホトカに新設いたします総領事館、エドモントンに新設いたします領事館の計六館に配置いたします二十人、並びに事務量の増加に対処するための要員として既設公館に配置する六十三人の計八十三人であります。したがって、外務省の総定員は、現在の二千六百八人から二千六百九十四人となります。  なお、一般職の増員八十三人には他省庁よりの出向者十六人が含まれていますが、そのうち法務省、大蔵省、労働省及び警察庁につきましては、ただ、当省へ出向のための減員の措置をするのみでありますので、この法律の附則におきまして、それぞれ関係法改正措置をとることといたしております。その他の関係省庁につきましては、いずれも機構等改正をするための法案がそれぞれの省庁より提出されますので、その中に定員減措置がなされております。  以上が、この法律案提出理由及びその概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛成あらんことをお願いいたします。
  4. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 以上で提案理由説明は終わりました。  本案につきましては、本日はこの程度にいたします。     —————————————
  5. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) それでは、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は、去る二日、予備審査のため本委員会に付託されました。  それではまず、提案理由説明を聴取いたします。上原科学技術庁長官
  6. 上原正吉

    国務大臣上原正吉君) ただいま議題となりました科学技術庁設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  改正の第一点は、科学技術庁附属機関として、無機材質研究所を設け、この研究所管理監督等事務振興局に所掌せしめることであります。  この無機材質研究所は、非金属無機材質にかかる超高純度材質及びこれに類する材質創製に関する研究を、みずから、あるいは委託に応じて、行なうとともに、研究に伴い得られた物を試料として提供することをその所掌事務とする機関であります。  御承知のごとく、近年、原子力利用技術宇宙科学技術電子技術その他の諸分野における科学技術は、急速な発展を遂げておりますが、これに伴って、非金属無機材質が、他の材料では得られない特性を有するものとして注目され、その品質ないし性能の向上及び創製に関する研究がきわめて重要となってきております。アメリカ、イギリス、フランス等欧米先進諸国におきましては、非金属無機材質に関する研究政府機関によって積極的に推進されている現状でありますが、わが国におきましてもこの分野研究を強力に推進するため、科学技術庁附属機関として無機材質研究所を設けることが必要であるとつとに考えられていたのであります。この結果、昭和四十年度予算において、その設立に必要な準備費が計上されるに至ったのでありますが、今回その準備も終わり、いよいよ実施に移すこととしたのであります。  次に、改正の第二点は、科学技術庁職員の定数を改めることであります。  科学技術庁におきましては、昭和四十一年度に、無機材質研究所をはじめ、附属機関強化拡充をはかることとし、このため、当庁の定員を従来よりも四十五人増加して、昭和四十一年度における定員を千九百五人に改めるものであります。  以上が、この法律案を提案する理由であります。科学技術振興に対する皆さまの深い御理解によりまして慎重な御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたす次第であります。
  7. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 以上で、提案理由説明は終わりました。本案につきましては、本日はこの程度にいたします。     —————————————
  8. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 次に、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査のうち、恩給及び退職手当通算に関する件を議題といたします。  本件につきましては質疑の通告がございます。  なお、関係当局出席は、細田総理府総務長官増子総理府人事局長矢倉総理府恩給局長内山自治省行政局給与課長寺本自治省行政局福利課長、以上でございます。  それでは御発言を願います。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 順序として、まず恩給通算について二、三お伺いしたいと思いますが、外国政府それと外国特殊法人職員であった公務員恩給通算問題、こういうことについてお伺いするわけですが、いろいろ各方面に関係がありますけれども、本日のところは、満・日のケースに限定してお伺いしたいと思います。この満・日ケースの者は恩給最短年限までしか通算されていないわけであって、最短年限をこえる実在職年については切り捨てられておるというこの現行法規はまことに不合理、不公平ではないか、こういう観点に立ってお伺いするわけです。と申しますのは、日・満・日または日・満、こういうケースの場合は完全に通算現行法で認められておるにもかかわらず、その在職年が認められていない。私がいま指摘したように、きわめて不合理、不公平であるという観点から、毎国会各党共同提案附帯決議を付せられて強い要望が続けられてきておるわけです。この要望が出されてからもうすでに四カ年を経過しておるわけですが、いまだにこの問題が未解決のまま残されておるということはきわめて遺憾と言わなければならないわけです。そこでいまだに完全通算されていない理由は一体那辺にあるのか、まずこのことからお伺いしたいと思います。
  10. 細田吉藏

    政府委員細田吉藏君) お答え申し上げます。ただいま御質疑にもございましたように、日・満・日、また日・満につきましては満の全期間通算いたしております。満・日につきましては全期間通算されていない、さようになっておるわけでございまして、昨年の本委員会恩給法等の一部改正法律案に対する附帯決議の中にも、このことが上がっておることをよく承知いたしておる次第でございます。われわれのほうといたしましては、その後いろいろ検討いたしておるのでございますが、ただいまの御質疑はなぜこれだけがおくれているかということでございますので、現行法上こうなっておるというたてまえについての御説明、もちろん現在の考え方でございますが、これを一応御説明申し上げたいと思います。  満・日のケースにおきましては、これはもう申し上げるまでもなく、いわゆる恩給公務員としての経歴を最初から始めた人でないという点が日・満・日、日・満の場合と違う、大体もうこの一点だけだと思います。恩給法のたてまえといたしましては、恩給公務員でない期間恩給公務員であったと同じように在職年に計算していくということについては、いわば例外的な措置でありますので、厳格な考え方で臨むということを基本的に考えておるわけでございます。ただ、それならば初めから満・日というものは全然認めないのかということに論理から推すとそうなるわけでございますが、終戦満州から帰りまして、公務員として再発足した年齢等いろいろな関係から年金年限まで在職が非常に困難だ、こういうような方々が非常に多い、こういったような点から、いわゆる人事管理上やむを得ない要請といたしまして年金をこういう方々に支給したい、こういうことでまず満・日の場合一部の通算を認めたわけでございます。ただ、在満の全期間通算するという措置につきましては、ただいまのところ前に申し上げましたような厳格な立場をとっておるというこのたてまえからいたしまして、むしろ終戦公務員になられたといういわゆる十七年の通算というものが例外的な措置であるという考え方でこうなっておるということでございますが、しかし、この問題につきましては、数年来本委員会でも非常にいろいろ問題になっておるようでございまして、私どもといたしましても、今回のこれから提出いたそうといたしております恩給法改正にはまだそれは含まれておりませんけれども、慎重に今後とも検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 どうも御答弁を拝承いたしておりますと、まあ四カ年も経過しているのに、現在なお検討中であるとか、いま御説明があったようなきわめて間違った考え方に立っての御答弁であるので、とてもわれわれとしては納得できないわけです。それではどういうわけでということについて以下順を追うてお伺いしていきたいと思います。  まず、先ほど申し上げた附帯決議の問題ですが、これは第四十三国会以来数回にわたって同趣旨附帯決議各党共同提案でなされておるということ、試みにその内容を読み上げてみますると、「外国政府外国特殊法人職員恩給最短年限をこえる在職年通算等早期実現を図ること。」等について、「政府は」「速かに検討の上、善処するよう要望する。」これは繰り返し申し上げるように、こういう附帯決議は繰り返しなされたわけですが、最初から計算すると、もうすでに四カ年経過しておるわけです。しかも「政府は」「速かに検討の上、善処するよう要望する。」「速かに」という意味が特にここにあげられておるわけです。四カ年もたっていまだにその方向さえ出ないということについては、政府はこの附帯決議をあまり尊重していないということの証左になろうと思う。この附帯決議国会の場で上げられて、しかもそれが軽視されておるということ、それ一つを取り上げてもこれは大きな問題になると思う。いまだに検討中ということでは納得できないと思います。
  12. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 伊藤先生の御指摘本件につきましては、お話のごとく、委員会での附帯決議が付せられ、「速かに」ということばもその附帯決議の中に文言としてあらわされておるということは私も十分承知をいたしておるわけでございます。したがって、今回恩給法等のいろいろな改正措置考えるにあたりましても、満・日ケースにつきましては旧来から問題になっておりますので、われわれのほうでも事務的な検討を種々重ねてまいったわけでございますが、これまでの委員会等で実はかつての総務長官あるいは恩給局長がいろいろ御答弁を申し上げておりますように、実はこの措置につきましては、満・日ケースについてのこういった一つの特別な扱いということが一つ課題になりまして、これを最短年限まで認めるということが一つの当時の人事管理上の要請というふうな、ただいま副長官から申し上げましたような理由によりまして出ておりますところから、これの実現方についてはいろいろなところに影響する問題でもございますので、実は今回検討いたしましたけれども、ただいまの段階では、これの実現に踏み切るということができないというような状態にあるわけでございます。しかし、副長官答弁のように、私たちは決してこれを軽視するというふうな趣旨は毛頭ございませんでして、これらの問題についていかように解決することがいいであろうかということは、目下なお検討段階というわけでございます。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 繰り返し申し上げるように、この問題が遅々として前進を見ないという政府考え方に誤りがあるとか、いろいろほかにも理由がございますが、一つ理由としては、その担当の総務長官なり恩給局長が再三かわっておるということ、その長官ないし局長が更迭するごとに問題が振り出しに戻ってしまう、また、満州国とか満鉄等特殊事情最初からこちらから具体的に例をあげて御説明申し上げ、大体わかっていただけるとこちらが考えたころまたかわってしまう。それを繰り返してきたということも一つの大きな原因になっておると思うんです。このこと自体、まことに遺憾のわけで、前任者のいわゆる決意なり、また国会の場で約束されたことは、後任者が当然これを引き継いで、その意に沿うよう努力してしかるべきだと思うのです。たとえば徳安総務長官は、三十八年の六月の当委員会でこう発言されておるわけです。高い次元において検討を加え、研究上次国会までに提案したい、こういうふうに具体的にあげられておる。これは三十八年六月ですよ。高い次元において検討を加えて、研究上次国会までに提案したい、こう約束されておるわけです。それから数年もうすでにたっておる。それと、臼井総務長官についてもこう約束されておるわけです。附帯決議趣旨に沿って十分検討する、こういうように総務長官恩給局長も、それぞれのお立場で、この国会の場で約束されておるわけです。しかも年数は相当たっておる。にもかかわらず、全然この国会では、満・日のケースの場合は一歩も前進を見ていないわけです。これでは国会でせっかく貴重な時間をかけて審議を進めても全く意味がないのではないか、こういう問題も出てくるわけです。きわめて遺憾といわなければならない。この点いかがですか。
  14. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) いま伊藤先生の御指摘のございました総務長官臼井あるいは徳安長官の御発言内容、実は私もこの内閣委員会のいろいろな御発言の経過を私なりにたどってみたわけでございます。したがって、先生の御主張になっておられます御趣旨及びそれぞれの総務長官あるいはその間における恩給局長答弁内容につきましても、実は私なりに検討をいたしました。したがって、従来いろいろお答えになっておられます内容というものを、十分に私たち検討します素材といたしましたことは、実は現在の状態においてあまりに——総務長官あるいは恩給局長の更迭によってこれが遅滞しているという御指摘でございますが、しかし、御承知のような行政組織というものは、それなりに一応継続性を持っておりますので、私たちは十分に、それぞれの方々の御発言の中身を尊重しながら実は検討をいたしてまいったわけでございますが、ただその検討の中でも、現在の段階で直ちにそういうふうに踏み切っていくということにはいろいろ問題がございまして、今日なお実現に至らないという状態でございます。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほど来お伺いしてきたように、総理府としては、四年ごしのこの問題に対して国会要望趣旨に沿うよう努力してきたということで、現在なお検討中、こういう御答弁でございますが、それでは具体的にお伺いしたいと思うんですが、いろいろ検討を加えてきたということでありますが、具体的には新年度予算要求にはどろいう働きかけをなされたか、こういう点について具体的にまずお伺いしたいと思います。
  16. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 実は恩給問題につきましては、御承知のように、恩給制度というのは、従来、権利関係一つ法規でございますので、そういういろいろな恩給権利関係について、次第に積み上げ形式によって恩給法というものが是正のあとをたどってきておるわけでございます。したがって、こういう問題の性質から、一つ解決がやはり次の問題を生むというふうに、まあ給与の一部かと思われますが、かような恩給については絶対的なものというのが非常に見出しにくいのではなかろうかと考えられます。さような関係から、現在もわれわれのほうに提出されております恩給課題というのが、すでに四十項目を数えるような課題になっておりまして、それらの多くの累積してきております課題を、どのように考えていけばいいのかというふうな点につきまして、政府側としてもいろいろな検討を加えてまいったわけでございますが、ところが、そういう検討の中で、私たちはこの中の問題点というものをいろいろ各項別検討いたしまして、それなり一つ解決策を見出そうといたしたわけでございます。本件のいわゆる満・日のケースにつきましては、一応最短恩給資格年限を認めるということが現在の他のいわゆる恩給制度内容からいたしまして、現在の段階においては一応の実はバランスがとれているように私たち考えまして、さしあたり本件につきまして、本年度改正案件としては見送るというふうなかっこうにいたしたわけでございます。
  17. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 満・日のケースについては、現行程度で大体均衡が保たれておると、そういうお考えで、何ら不公正、不公平はないんだ、こういう意味にとれるわけですが、それではそういう点をもとにして、そういう考え方がいかに間違っておるかということについて以下お伺いしたいと思いますが、前の国会総務長官恩給局長は、恩給完全通算を認めるか認めないかは、以下申し上げる二つの点によるんだと、こういうことを明確に言われておるわけです。その一つは、その機関国家機関と同様であるかどうか、この点が一つと、第二には、その機関職員政府職員の間に制度的に人事交流は行なわれていたかどうか、これが決定条件である、こういう統一見解を示されてきておるわけです。そこで満州国あるいは満鉄等、これは形式的には日本政府機関ではない、これははっきりしておるわけです、形式的には。しかし、実質的には日本政府代行機関であり、日本政府そのものといっても過言でない、このことについては代々の総務長官恩給局長も確認されてきたところです。政府統一見解といってよいと思うのです。ところが、満鉄が創立の経緯とか、その後の運営の歴史から見て、実質的に日本政府機関であるというゆえんは、いままでの委員会で私は繰り返し繰り返し申し上げてきたところで、もうその点については同じことを繰り返さないことにいたしますが、日本政府自身が満鉄に対して政府機関同様の扱いをしてきたことは、ここでさらに必要な論拠になりまするので、あえて具体的な根拠を以下あげてお尋ねしたいと思うわけです。一つは、政府は満鉄資本金に対する出資金一般会計から支出しておるということ、その現実をどのようにお考えになるか。御承知のように、特殊法人に対する政府出資は、通常特別会計から出資されておるのが慣例となっておったわけです。にもかかわらず、満鉄に対してはいわゆる一般会計から支出をしておるという点、この一点からだけ見ても満鉄を政府機関と見ていいことは確認されなければならないわけです。このことについては元大蔵省に籍のあられました、いわゆる満鉄の管理官であった方も、具体的に例証をあげて詳しく根拠説明しておるわけです、いまはこれを省略いたしますが。そこで政府は、満鉄の利益配当あるいは社債の利子元本まで保証して、国債と同様に扱ってきた、こういう点、それから会社決議会社の目的に反すると政府が判断したときには、政府みずから会社決議を取り消すことができたことは、このことは明らかに、国の上級官庁下級官庁行政行為を取り消すと全く同一性格のものであって、公法上の命令行為であって、国の機関に対してでなければ全くこのことはできることではない、こういう根拠からこの点を再確認して論点を進めないと話が進みませんので、以上申し上げた問題についてお考えをあらためてこの際お伺いしておきたいと思います。
  18. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 確かに先生の御指摘の点につきましては、旧来の当委員会におきましても、御趣旨のような点が述べられ、また、それをめぐっての論議がかわされていたということを私は記録を通して実は承知をいたしておるわけでございます。お説のごとく、まあ満鉄が特殊機関であり、そのことのゆえに一般会計からの支出というふうな一つ特殊性を明らかに持っていたということはわかるわけでございます。ただまあ御指摘の中で、やはりこの形態そのもの株式会社組織であったように考えますし、またそのことのゆえに利益配当というふうな制度一般株主に行なわれたというような実質もございます。したがって、形の上はあくまでもやはり株式会社という一つ形態をとっておるわけでございます。ただその他の実質的な内容はかなり日本行政機関類似性を持っておるというふうな点がうかがえるわけでございますが、それなればこそ、実は特別に満・日ケースとしてのいわゆる最短恩給年限までを認めるという恩給制度上のそれなり解決が得られてきたのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体この趣旨については了解されたように考えられますので、次の問題に入りますが、次の問題の人事交流の問題について満鉄と日本政府との間に制度的に常時交流が行なわれた事実は率直に言ってなかったわけです。しかしながら、これは満鉄創立の当初諸外国に対するいわゆる外交政策から故意に、政府直営でなくして株式会社という名称を付したということは、これはもうここで私があえて指摘申し上げるまでもないわけで、よく御理解いただけると思うのです。そこで政府は、朝鮮総督府と満鉄、満洲国と満鉄との間に、国の命令によって一時に大量の人事交流を行なっているわけです。このことについても人事交流考え方から非常に深い関係がございますので、これを具体的に明らかにしておく必要があろうかと思いますので、以下一、二申し上げてみたいと思いますが、大正六年の七月の勅令七十号によって朝鮮総督府の鉄道全部を満鉄に経営委託をしたことがあるわけです。それでこれは大正十四年三月に委託を解除したわけですが、その際委託当初の朝鮮総督府の鉄道局職員、これはもう言うまでもなく日本官吏です。この方々は全員、本人の意思のいかんにかかわらず、満鉄社員に身分が切りかえられておるわけです、本人の意にかかわらずです。その後八年近くの間、満州と朝鮮の間の人事交流は、社内転勤として自由に行なわれて、委託解除のときはその切りかえの際、退職手当恩給一時金等は支給されないで、勤続年数はそのまま通算されておるわけです。したがって、恩給通算が行なわれたことは言うまでもないわけです。こういういわゆる現実の問題がこの経緯の中に、こういうふうに見出されるわけです。こういう根拠からも、人事交流については本質的に満鉄と日本政府の間にこういうような深い交流があるというこの事実をここで確認していただく必要があろうかと思う。この点はいかがですか。
  20. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 確かに先生の御指摘のとおり、満鉄のそういう一つのまあ長い歴史の経過の中に、そういう朝鮮鉄道関係がありましたことも、実はいろいろな記録を通して私も拝見をいたしております。で、ただ考え方は、御承知のように、先ほど来申しております、つまり一般的ないわゆる満鉄の社員構成というものの考え方がどういうふうになるのかというふうな点から、これまで申し上げましたような経過で、なかなかに解決の困難であったという事情がこれに伏在しているように考えるわけでございます。
  21. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、根拠を明らかにする意味で、さらに具体的な事例を申し上げたいと思うのですが、昭和八年の北鮮鉄道の満鉄へ委託経営の際にも、北鮮に在勤していた朝鮮総督府官吏、これは日本国官吏であることは言うまでもないのですが、その二千名が国策として同様の取り扱いで、満鉄社員となっておるわけです。また、満州国の成立に伴って、満鉄の地方行政の委譲の際には満鉄社員三千五百名で満州国官吏、実質的には日本官吏となっておるわけです。同時に満州国鉄道とか港湾等の満鉄委託経営に伴って、満州国官吏約七万人が、もちろんこの大多数は満人とかロシア人、朝鮮人、もちろん日本人もおるわけですが、この七万人は命令によって、満鉄社員に身分を切りかえて、勤続年数はそのまま通算された、こういう事実があるわけです。この点をどのようにお考えになるのか。
  22. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) ただいまの件につきましては、実は私といたしましては、数をあげていろいろお教えをいただきましたのでありますが、この件については、私は新しく先生からお伺いしたという状況でございます。
  23. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 以上、幾つか具体的な事例を申し上げたわけですけれども、これらの事実はみな日本政府の国策として行なわれたものであって、決して本人の意で、個人の意思でこういうことが行なわれたわけではないわけです。当時の国策遂行上、こういうことが命令として行なわれた、こういう現実があるわけです。そうして日本政府は、満鉄社員朝鮮総督府官吏あるいは満州国官吏と全く同一性格のものと考えていたことはこういう事実によって明らかに認識されるわけです。満鉄社員は実質的に日本官吏として扱っておるということがこの点からも言えると思うのです。  以上の事実によって、満鉄社員日本公務員と同様に取り扱うべき根拠は明白であって、その勤続年数の一部は恩給通算するけれども、一部は通算しない、こういうことでは全く不合理、不公正な処置であると断定せざるを得ないわけです。したがって、満・日の場合も、日・満・日、日・満、こういうケースと全く同様に通算してしかるべきである、そういう先ほどの恩給局長のお話では、私の言ったようなことがあるから、満・日のケースでは恩給最短年数を通算しておるのだ、こういうことを言われておるわけです。ところが、日・満・日と日・満の場合は完全に通算しておる。満・日のケースに限っていわゆる最短年限通算しない、全く根拠がないわけです。不公平であり不公正である。そこで、きわめて不公平であるので、不適当であるので、四年前から繰り返し当委員会で、いわゆる全会一致の附帯決議が繰り返し上げられてきたわけです。すでに四年たっておるけれども遅々として前進の姿が見えない。こういうことで質疑を繰り返しておるわけです。この点はいかがです。
  24. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 確かに伊藤先生の御指摘の、たとえば、人事交流のこういう経過的にとられた問題、これは確かに一つの実質として、満鉄がどういうふうな実態を持ったかという一つの材料であることは私も十分うなずき得ると思うのでありますが、ただ、先ほど来申しておりますように、満鉄社員そのものが行政官そのものであったという認定が実は政府側としていたしにくいので、そこで、いわゆる公務員から、いわゆる恩給公務員から満鉄に入られて、また再び日本恩給公務員として帰られたとか、あるいは恩給公務員からいうところの満鉄の社員になられた、かような場合とややそこに懸隔がございますので、そこで、いわゆる満・日のケース最短年限まで見ていくことが相当であるというふうな現在の段階における問題の意識でございましたので、そこで、なおこの問題については十分慎重な検討を要するというふうにお答えを申し上げた次第でございます。
  25. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 政府は前の国会でもそういう意味のことを言われておるのですが、恩給公務員でないものを恩給公務員として取り扱うのは一つの擬制であるから、例外的に厳格に取り扱わなければならない。しかしながら、日・満・日、日・満の場合も、満鉄勤続期間は明らかに恩給公務員でないわけです。これは擬制である。この擬制であるにもかかわらず、まるまる完全通算をしておる。ところが、満・日の場合はそういうことを考慮して、特種事情を考慮して、恩給最短年限だけ通算するのだ、同じく擬制であるわけです。もうそれだけ最短年限通算しておるからいいではないか、そういうふうに聞き取れるわけです。それじゃ不公平じゃないか、日・満・日と日・満のケースの場合はもう完全に通算がすでに認められておるわけです。なぜ日・満・日、日・満、そうして満・日の間にそういう不可解な差別を付するのか、この点はどうにも納得できないわけです。  さらに申し上げるならば、国際電気通信株式会社、また日本電信電話工事株式会社、これらは明らかに民間会社であったわけです。特に後者の日本電信電話工事株式会社は、全くの民間工事を請け負う業者が官の勧奨によって合弁されたにすぎないわけです。したがって、その民間期間政府側の御主張からいうとこれはもうとうてい通算されないわけです。にもかかわらず、この民間期間をまるまる完全に通算しておるわけです。こういう事実があるにもかかわらず、実質的に国家機関である満鉄等の満・日のケースの場合完全に通算しないのはどう考えても不公平と不合理であると指摘せざるを得ないわけです。総理府の御答弁ではどうも矛盾だらけで了解できないわけです。現実に純然たる民間会社のその職務期間が完全にまるまると通算されておる。しかも、満鉄等については形式的には政府機関のそのものであるとは私どもも申し上げていないわけです。これはもう繰り返し申し上げるように、当時の外交政策から、どうも日本政府が直接経営者ではまずい、これは表面上はあくまでも株式会社にしなければまずいと、こういう国の基本方針からあえて株式会社という文字を使った。しかしながら、実質的には全く政府代行機関であり、政府機関そのものであるということは、具体的に幾つかの事例をあげるまでもなくもうすでに明確になっておるわけです。そういう特殊性がある満鉄等のその勤務時間を全然無視するんじゃない、恩給最短年限だけは通算しているからいいじゃないかと言う。ところが、これは満・日のケースだけであって、日・満・日、日・満の場合はまるまると完全に通算しておる。それとの不均衡、不公平、それと、全く純然たる民間株式会社のその期間であった勤務年数をまるまる通算しておる。あまりにも不公平、不均衡ではないか。片手落ちの非難は免れないと思う。どう答弁されてもこれは納得できない。これはもうまさしく、総理府にみなそれぞれ有能の士が集まっておって、これしきの簡単な理由がわからないはずがないと思う。これは後ほど御指摘申し上げますが、さらにこれが拡大することをおそれてなかなか踏み切れぬのではなかろうか、こう憶測せざるを得ないわけです。事ほどさように事実は明確なんです。この点はいかがですか。
  26. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 確かに先生の御指摘のいろいろな問題点というものを考えてみますと、そういう条件の中におられた方々の切実なる御要求という点については私たちも十分に理解ができるわけでございますが、実は日・満・日とか日・満という場合のいわゆる全部の通算をいたしておりますのは、それなりに——先ほど来も御指摘ございましたように、日本政府側からたとえば満鉄の職員になるというふうな場面は、それなりに、たとえば若い人たちを満鉄に有能な職員として迎えなければならない、あるいは実態的にそういう必要性がある程度包括的にそういう人間の使用を考えなければならなかった。結局さような点がそれなりに実は日・満の場合というふうな、あるいは日・満・日の場合には十分にそういった全数通算をするだけの理由が成り立つわけでございますので、そこで日・満・日とか、日・満はこういうふうに一応全数通算措置をとっておるわけでございますが、最初から満鉄にお入りになった方々には、それとの懸隔があるのではないかという考え方ができるわけでございます。そこでそういうことならば、いまお話の国際電気通信等のいわゆる改正措置が中間にあったではないかという御指摘でございますが、本件につきましては、先生もすでに御承知のように、いわゆる占領下における特殊事情であったということ、さらにこういう人たちについては退職金等については、そのときに退職金を自分で選択すればあとは通算をしないというふうな特別な措置を講ぜられておりますし、さらには、実はこれを吸収する組織が、先生も御承知のように、いわゆる恩給公務員であるというところに一つの特色があるので、包括承継的にこれを引き継いでいったという、特別な経緯もございますので、本件については確かに御指摘のような事情があることもわかるわけでございますが、いまのような特殊な経緯にありますところから、それなりにこれを認めるだけの意義というものがあるように考えられ、所要の措置が講ぜられてきたものと考えられるわけでございます。
  27. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そのような御答弁なさるから、政府考え方は間違いだと指摘せざるを得ないわけです。前の国会でも答弁ありましたが、その経歴において公務員として始めた人と、最初鉄等に入って、後に公務員になった人、この間にはもう処遇上若干の差があるのは当然だという、そういう根拠から、いま日・満・日あるいは日・満と満・日の場合は違うのだと、こういう説明をされておるわけです。初め公務員となった者と、最初鉄等に入って後に公務員になった者、これはあたかも全く人種が違って、人間の値打ちがもう完全に違うのだと、初め公務員になった人はもうきわめて優秀であって、国家奉仕のために尽くされたので、後に公務員になった人は全くこれとは逆であってとるに足らぬと、こういうような、極端にいうとこういうことになるわけです。これはまあ驚くべき時代錯誤の論説と指摘せざるを得ないわけです。いわゆる前時代的な官尊民卑、あの当時戦争中非常に官尊民卑の風が強かったわけです。こういう官尊民卑の感情論にすぎないと思うのです。繰り返し申し上げるように、電信電話工事株式会社、初めは民間人です。これは恩給公務員じゃないわけです。それが併合によって、官の勧奨によって国の施設となり、そうしたら民間のその期間通算されるのだと、まあいろいろ戦時中であったとか、いろいろ特殊事情をあげられておる。しかし、満鉄等の場合も、この戦争によってこういうことが起きた、いわゆる全くの特殊事情だと。一方の特殊事情は認めるけれども、一方の特殊事情は認められない、こういうことにもなるわけです。やはり最初公務員であった者と、後に公務員になった者で、そんなに差をつけなければならぬのか、それならあえてお伺いしますが、もしそういう前提に立つと、日・満・日、日・満の場合も、これはもう完全に満鉄なり、満州国等の勤務期間は同じなわけですね。満・日の場合と、日・満・日の場合と比較してみると、全く同じでしょう。満州国なり、満鉄等におったときの勤務状態は全く同じだろうと思う。ところが、日・満とか日・満・日の場合は、同じ条件で満州国とか満鉄等期間をまるまる通算しておる。満・日の場合は同じ満鉄等であり、同じ満州国であったにもかかわらず、これは恩給最短年限しかとらない、きわめて不均衡と言わざるを得ないわけです。どうもそういうふうな答弁ではとうてい納得できないわけです。この点をさらによくお伺いしておきたい。
  28. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 先生が実は日本公務員から満鉄に行った人間、あるいは満鉄に最初から入った人と、人間の差別をしているやに御指摘でございますが、決してそういう考え方ではございませんで、御承知のように、恩給というのは、一つ権利関係でございますので、そこで権利取得の根拠に何を考えるかというふうな点から考えまして、この日・満・日も日・満も確かに実は恩給本来の考え方からいきますと、御承知のように、恩給制度はいわゆる判任官あるいは判任相当の待遇官吏以上の身分関係につながった制度であったことは事実でございますので、そこで、そういうふうな一つの身分関係に基づく権利関係としての考え方恩給制度が運用されてきたわけでございますが、ところが、その後のいろいろな条件の中で、たとえば日・満・日とか日清というふうな場合には、そういう満州国政府あるいは満鉄といったようないわゆる外国政府またはそういう特殊法人につきまして、かような例外的措置としてそういうものを恩給公務員として扱うことの必要性を十分に是認されて制度化されたものであり、そうしてその制度化の中では、おのずから権利関係にそれぞれの懸隔のあるものは懸隔のあるように措置していくことがむしろ公平の原則に沿うということが考えられますので、したがって、現在のかような制度全般をながめてみますと、おのずからなるそういう公平の原則を働かしていくという制度的展開をいたしておりますので、現在の段階は、その趣旨に沿った意味において満・日の扱いをしておるというのが現状でございます。
  29. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 恩給公務員であったかどうかということを根拠にして、いまいろいろと御答弁があったわけですが、やはり恩給公務員として擬制しようとする期間は、国家機関として取り扱い得るのか取り扱い得ないのか、こういう点が中心でなければならぬと思う。日・満の場合とあるいは満・日の場合と比較すれば、先ほど御指摘申し上げたように、満鉄あるいは日本政府との連続であって、その順序がただ前後しているだけだ、どちらが先であったかというだけの差にすぎないわけです。したがって、満州国なり満鉄それ自体の期間は全く差別がないわけです。満鉄社員といっても、やはり日本公務員として不適格な者については満・日に含まれていないことは当然でありますから、日・満とか満・日、これを区別して、一方は恩給期間通算するけれども一方は通算しない、そういう根拠は何もないと思うのですがね。なぜそういう差別をつけなければならないか、ここのところがどうも納得しがたいわけですが、この点はいかがですか。
  30. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) おそらく先生の御指摘の御趣旨根拠になるものは、いわゆる実は満鉄は即日本政府であったという一番最初の御指摘の御本旨から、いまのお話が出るのではなかろうかと考えるのでありますが、われわれ政府側考え方といたしましては、原則をどこへ置くかというところに、実は先生との考え方に若干の差が出てくるのではなかろうかと思うのであります。と申しますのは、いわゆる外国政府とか、こういう外国特殊法人というものを、そういった本来的に日本政府そのものであるということになりますと、恩給のいわゆる本則の考え方に返ってくるのでございましょうが、いわゆる日・満にしましてもあるいは満・日にいたしましてもそれなり一つの特異な措置として、これらを救済していくことが、つまり日本の敗戦というような現状に合致する方策であるというふうな考え方から、一応そういう制度をとられ、したがって、その制度をとる限りにおいて、恩給制度全体のワクの中にはめたときに、一体どう措置するのが一番望ましいのか、かような考え方から、やはりそこに一つのいわゆる相互間における均衡というものを考えて、現在のような制度にいたしておるわけでございます。
  31. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 どうもその点が食い違っていると思うわけですが、満・日のケースの場合も、同一人の同一個所における勤続年数、その中で、たとえば二年は恩給通算するけれども、三年以上は何年あってもこれは切り捨てるのだということが、現実に満・日のケースでは行なわれているわけですね。恩給通算を規定した昭和二十八年法律第百五十五号、附則第四十二条、これを見ますると、「外国政府職員となるため公務員を退職し、外国政府職員として引き続き昭和二十年八月八日まで在職し、再び公務員となった者」こういうふうに規定されているわけです。これは外国政府職員となるためという条件はありますけれども、官の命令とか、あるいは勧奨によって公務員を退職しという条件はないわけです。これは明らかな事実です。そこで、自由意思による退職であることは、もう明白です。もしも官の命令または勧奨が必要条件であるといたしますならば、臼井長官がおっしゃったように、公務員として一生従事する目的で経歴をスタートしたのに、自分の意に反して、命令によって国家のため、公務員の経歴を中断されたものであるから、その中断期間について国が補償してやる責任がある。この場合、自由意思によって退職した者は補償問題は起こらないわけであります、命令によったものではありませんから。満鉄あるいは満州国において経歴をスタートしたあとから公務員となった者と処遇上差別する根拠は、こういう点からも全くないと指摘せざるを得ないわけであります。この法律第百五十五号、附則第四十二条、これを見ると、いま申し上げたようなことが明確になるわけです。「外国政府職員となるため」、こういう条件は明確になっているわけです。しかし、官の命令とか、勧奨によって公務員を退職したということは、何ら条件となっていないわけです。このことは事実だと思う。何ら条件となっていない。そうすると、その意に反してということは言えないわけです。そこでいま私が指摘したようなことが言えると思うのです。この点はいかがですか。
  32. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 確かに先生のいろいろ御指摘いただきますように、たとえば実在職三年、あるいはもっと長いのは三十年勤務があっても、結局、たとえば満鉄に三十年おつとめになりまして、こちらにお帰りになって半年つとめられたという場合には、いわゆる恩給最短年限の十七年までは見るということで、あとは切ってかかる、不合理じゃないかという御趣旨も確かに要求される側からいたしますと、もし満鉄が日本政府そのものであるということの考え方に立つ限りは不合理さが指摘されることになろうかと考えるわけでございます。しかしながら、この制度趣旨は、先ほど来繰り返し申し上げますように、いま申し上げましたような、いわゆる株式会社組織一つ形態的差異というものに目をつけておるわけでございます。ただ、そのときに、いわゆる法律百五十五号の四十二条の項の御指摘がございましたが、なぜ、たとえばここに書いてありますような「外国政府職員となるため」という文言を入れておるかということでございますが、本来形式的にはあるいはこういう規定はなくてもいいのかもしれないのでありますが、ところが、やはり外国政府職員という場合を想定いたします場合に、当時の状況からいきますと、実は、日本政府職員となった者がやはり当初から日本政府職員として十分な勤務をしていこうとする気持ちで勤務をいたしておるのは事実でございまして、ことに日本の雇用制度は、御承知のように、昔も現在も続いているようないわゆる終身雇用的なものの考え方が雇用される側にもございますので、そこでこの当時における一般の官吏、おそらくやそういう人たちは、日本の行政庁に勤務をした以上は、終身を行政庁で勤務するつもりでおったはずであります。ところが、その当時の経緯といたしまして、やはりそういった人たちをも日本の国策遂行のためというふうなことで外国政府職員とせざるを得ない場合があったかと思われます。そこで当時の条件の中におきましても、やはりこれを外国政府職員とする場合には、それなり本人の意思の働きも若干考慮されたのではなかろうかと考えるわけであります。さような点からいきますと、いわゆる強制による外国政府職員となったという表現は立てかねますので、そこでおそらくそういう当時の条件から考えますと、本人の自由意思というものはある程度束縛を受けざるを得ない。そういう束縛を受けざるを得ない条件の中で外国政府職員となったような人たちに対する措置を一体考えなくていいのかということが、本質的には外国政府職員恩給の対象になること自体は筋ではないかもしれないが、かような人についての特別措置を講ずるという一つの例外措置を講ずることによってこれらの事態に沿おうとしたというふうに考えられるわけでございます。
  33. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 「外国政府職員となるため」という条件は明確であって、そして官の命令とか勧奨によって公務員を退職しと、そういうことが条件でないということを御指摘申し上げたわけですが、それに対して、官の命令あるいは勧奨によって公務員を退職したということについては、そのとおりであるから、ある程度の強制があったのじゃないかと、そういうふうな総理府として都合のいいときには拡大解釈をし、総理府として都合の悪いときにはきわめて縮小した解釈をする、こういうことでは論議にならぬと思うのです。やはりどう考えても処遇上差別をする根拠があるならそれは話は別ですけれども、根拠はどうもきわめて薄弱の理由で、ただ最初恩給公務員であったかどうかということにとらわれておるわけです。これではなかなか問題は前進しないと思うのです。四十三国会で全会一致で現行法改正を認めたのは、こういう経緯があるわけです。理論的には当然完全通算すべきであるけれども、財政上の立場から漸進的に実施するものと了解して、附帯決議を付して成立させたという経緯があるわけです。その後の経済力とかあるいは財政力も進展しておりますし、最近やや財政の不如意という事情はあるにしても、国全体としての経済力、財政力は非常に伸長しておる、これは佐藤内閣は明確に打ち出しておるところなんで、われわれは信用せざるを得ないわけです。そういう状況にあって、しかもこの満・日の場合を解決するにしてもいかにも筋が通っておる、理論的に正しいことでもばく大な国庫支出をする必要がある、こういうことならまた話は別で、これは事情はよくわかる。筋はよく通った要求であるけれども、国の財政これを許さないから漸進的に進みたい、こういうことなら話はわかるわけです。ところが、私どもの調べによると、満・日の完全通算を認めた場合でも、満州国、満鉄等特殊法人職員合計で国家公務員の経費年額は二百万足らずだ。わずか二百万足らず。このうちには、きょうは御指摘申し上げませんけれども、抑留とか留用期間通算を認めたとしても、こういうものを含めても二百万足らずであるということ、こういうことであるので、これがけた違いに、二百万でなく二百億とかそういうばく大な経費を要する問題であるならまた話は別なんです。これは満・日のケースを抑留、留用の完全通算を含めて計算しても該当者は少ないわけです。わずか二百万で問題は解決するわけです。わずか二百万だから何でもやってやろうと、そういうことではなくして、四年間も繰り返し繰り返しこの問題を追及している。こういうしかじかの根拠がある。あまりにも日・満あるいは日・満・日と比較して不公平ではないか、片手落ちではないか、こういう根拠を具体的にあげて要求しておるわけです。しかもこれ、経済上、財政上国の事情がこれを許さないというなら漸進的にまず恩給のいわゆる最短年限を認めて、次の時点で完全に認めよう、こういうことも一つの政策であるわけです、いい悪いは別として。ところが、こういう問題がいまだに以上申し上げたような事情があるにもかかわらず、これが不問に付されておるということについては全く遺憾の意を表さざるを得ないわけです。ところが、実情はこうなんです。満・日のケースのものについて考えると、内地の公務員となって十数年もうすでに経過しておるわけです。したがって、内地の公務員期間のみで恩給年限に達している者が大多数なんです。したがって、現職者の大部分は現行規定によって何ら恩恵を受けていない、これが実情なんです。満・日の場合は恩給年限に不足分、いわゆる最短年限を加算している、こういう優遇をしておるのだ、こういう措置を講じておるんだと言われても、現職公務員は何ら恩恵を受けていない。もう、内地の勤務だけで完全に恩給年限に達しておるわけです。終戦後から通算して。恩給は十七年ですから、もう完全にその年限に達しておって、こういうようないろいろ口角あわを飛ばして国会で論議しておる問題を、表面はいかにも恩恵らしく政府は吹聴しておりますけれども、何らの実質的な恩恵はないわけです。形式的にはもう人事対策としてほんとうに恩恵処遇のごとく見えるわけです、表面は。これはもうすでに前に退職した人のみが受ける恩恵であって、現職者は全く恩恵を受けないのが現状であるということ、ここにも不公平、不合理があるではないかと指摘せざるを得ないわけですね。日・満・日、日・満の場合は完全通算になっている。いま申し上げたように、現職公務員についていうと、満鉄にたとえば二十年、三十年勤めた人でも一年も恩恵に浴しない、こういうことが言える。現実にそうなんです。引き揚げてから十七年たった方はこちらで恩給がつくわけですから、したがって、満鉄時代あるいは満州国——満州国は歴史が浅いから三十年ということはあり得ないわけですが、満鉄は歴史が古いわけですから二十年、三十年の人はざらにいる。その二十年、三十年が全く一年も恩恵に浴さない、現在の公務員は何ら恩恵を受けていない、ところが、繰り返し申し上げますが、日・満とか日・満・日の場合は、二十年が二十年、三十年が三十年として通算されておる、片や満・日の場合は一年も通算されていないというのが現実なんです。これは表面と実質ではだいぶ話が違ってくるわけです。不足分だけ通算するからいいではないか、これだけでも非常な恩恵だとおっしゃるけれども、何ら恩恵を受けていない、一年も恩恵を受けていない、ここにも不公平、不合理があるではないかということを指摘せざるを得ない、この点はいかがですか。
  34. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) 実は、この問題についてのこの当委員会における御論議の中で、確かに財政上の理由というふうなことばも出ていることは私も承知いたしております。しかしながら、実は恩給そのものを考えますときには、財政も一つの大きなファクターでございますが、同時に、実は恩給というものを考えてみましたときに、理論でもって考えていく大筋と、さらに実は権利関係でございますので、いろいろ積み上げの形になっておりますところから、そこの中における権衡という問題がやはりこの恩給制度の中で必然的に出てまいるわけであります。で、たとえば、外国政府外国特殊機関と区分をしておるというふうなところにも実は恩給制度そのものの実体があるように考えるわけでございます。したがって、この制度が実は制度化される当時におきましては、日・満あるいは日・満・日あるいは満・日のそういった通算関係を認める十分な理由がある、それはそれなりに多くの意味を持っておるという判断のもとに行なわれたものでありまして、ただいま先生の御指摘のように、現在の段階にあっては、あるいは長期勤務者につきましては、それほどの恩典を受けていないという御指摘は、あるいは事実さようであるかも存じませんが、ただ、制度化されるのは、制度を制定するときの、そのときの背景になる事情というものが制度化を促すのでございますからそれはそれなりにこれは私は当時としては大きく意味を持った改正措置ではなかったかと考えているわけでございます。
  35. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま、財政上の問題云々の御指摘があったわけですけれども、察するに、政府は満・日の完全通算を認めた場合には、満だけのものを、すなわち満州国とかあるいは満鉄だけの経歴で公務員とならない者にまで問題が波及するのではなかろうか、こういうことをおそれているのではないかとそんたくされるわけです。満州国とか満鉄等だけの経歴の者に対する処遇については、これはもう福祉国家として何らかの形において考慮すべきは理の当然なことであって、このことをほうっておいていいとは決して申し上げかねると思う。当然考慮すべきである。しかしながら、恩給法とは何ら関係がないわけです、これらの人たちは。したがって、恩給法の範囲を越えた問題として将来考慮すべき問題であって、この際、満・日のケースの場合、もしこれを完全に通算すれば、わずか二百万であっても問題が波及する。現地採用になって、満州だけであるいは満鉄等だけでやめられた方が相当数が多いわけです。これはここにまで問題が波及したら、これはもう政府としては容易ならぬ。うっかり満・日の場合、話はよくわかる、伊藤の言うことも筋が通って、そのとおりだと思っておるに違いない、総理府では。歴代の総務長官も、歴代の恩給局長も全くそのとおりだと、うっかりそれに同意してしまうと、これは容易ならぬ大きな問題が起きる。満だけで——満州国だけ、満鉄等だけでやめられた人、こういうことにもこれが波及してくる、こういう問題をおそらく考慮されておると思う。したがって、もう現にそういう考え方の一端がうかがえるわけです。総務長官といろいろ話を進めている中でそういうこともそんたくされるわけです。ところが、この問題は全く別個の問題なわけです。全く別個の問題であって、これは日本も福祉国家でありますから、将来福祉国家として別問題として考慮すべきであり、この恩給通算の問題にはいささかの関係もないわけです。これはもう明確です。そういうことを考慮するのあまり、憂慮するのあまりこの問題が遅々として進まない。この辺にもこの問題の前進しない一つの大きな理由があろうかと思うんです。総理府に伺えば、いやそんなことはないと言うかもしれませんが、おそらくそういう問題が相当大きな比重をなしておることはいなめない事実だと思うんです。この点いかがですか。
  36. 矢倉一郎

    政府委員矢倉一郎君) ただいま先生指摘の問題でございますが、私たちはやはり恩給恩給のカテゴリーの中で考えていくという一つ考え方をいたしておりまして、ただいま御指摘の、たとえば満鉄だけでおやめになった方々に波及するかもしれないという課題でございますが、私たちはそこまで考えているのではなくて、むしろ先生の御指摘のように、満鉄が即日本政府だという言い方が是認される場合に、そういうふうな問題の可能性が出てくるんじゃなかろうかというあるいはお考えから、さようなお話が出たのかもしれませんが、私のほうでは、実は政府側としての検討段階では、やはり恩給恩給制度の中における権衡論で、一番の問題としてそこに制度の一応の合理性を発見したい、かように考えて、諸種の課題検討につとめておるわけでございます。
  37. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、時間の関係もございますし、きょうは衆議院の補正予算関係総務長官がどうしても御出席できない、こういうやむを得ない事情もございますので、これ以上お伺いしても意味がないと思いますから、次回総務長官の御出席をいただいた上で、あらためてこの問題をさらに検討申し上げたいと思うわけです。  ただ、最後に一点強く要望申し上げたいことは、私が先ほど来お伺いしている点は、恩給法の中における日・満・日、日・満と満・日の、この問題はあまりにも不均衡が大きいではないか、この不均衡を是正する必要があるという、そういう考え方に立っていろいろお伺いしてきたわけです。で、繰り返し申し上げるように、これは当委員会で全会一致の附帯決議が付せられてすでに四年を経過しておるわけです。先ほど来るる申し上げたように、その時代時代の総務長官なり恩給局長が時期を明示してまでも強くこの委員会で約束されておる事実もある。こういう経緯にかんがみて、この問題を不問に付することなく、ただ検討検討中ということでなくて、前向きの姿勢で早急にこの問題を解決されるよう強く要望申し上げて、本日のところこの問題に関する私の質問を終わることにしたいと思います。
  38. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 引き続き退職手当の問題に関する御質疑を願うことにいたします。伊藤委員。
  39. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは以下退職手当通算問題について、時間の関係もございますから、ごく要点だけをお伺いしておきたいと思います。  まずお伺いしたい一つの問題は、昭和十六年十二月八日から昭和二十年八月十四日までの間に海外から引き揚げて再就職した者、この者の退職手当通算、こういうワク内で以下お伺いをしたいと思います。外地から引き揚げてきて再就職した退職公務員の手当の通算措置、この問題について、たびたび改正がありまして漸次改善されておるわけです。ただこの引き揚げの時期については、私が申し上げるまでもなく、昭和二十年八月十五日以後の者に限られておるわけです。したがって、八月十四日以前に引き揚げてきた者、これらの者の大部分は、自分の意に反してやむを程ず帰国した者、あるいは特別の要務を帯びて帰国した者であって、したがって、こういう特殊事情がございますから、たとえ八月十五日以前の者であっても当然に退職手当通算を行なってしかるべきではないか、こういう問題なんです。この点をまず順序としてお伺いしておきたい。
  40. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 御質問は、外地関係職員で、いわゆる大東亜戦争中に内地に引き揚げてきてその後公務員に再就職したという場合の問題でございますが、退職手当のいわゆる期間通算という問題につきましては、実は恩給と違った考え方が基礎になっておるわけでございます。すなわち退職手当は、恩給の場合と違いまして、職員としての引き続いた在職期間というものを対象にいたしまして、それに基づき支給する、いわゆる勤続報償をたてまえとしているわけでございます。したがいまして、その内容といたしましても、引き続いた在職期間ということが原則でございます。在職期間が途中で中断された場合には、それは別個に考えられるという原則でございます。それからなお、その在職期間が長ければ長いだけ、有利な計算による退職手当が支給されるというようなことでございます。で一方、御指摘になりました場合の問題でございますが、外地関係職員につきましては、一つの特例がすでに御指摘のようにあるわけでございます。すなわち、終戦時の特殊事情を考慮しまして、内地に帰ってきた後、一定期間内に再就職いたしました場合には、終戦前の期間を再就職後の期間通算するという措置でございます。これは退職手当の原則なり、あるいはその本質から考えますと、全くの例外というわけでございます。で、このような例外措置がとられましたことは、本来ならば引き続きずっと就職したであろう人が、全く予想できなかった敗戦というような事態によりまして、退職を余儀なくされたという、そういう特殊事情をくんだものと考えられるわけでございます。したがいまして、御質問として取り上げられました大東亜戦争の期間中、昭和十六年の十二月八日から昭和二十年の八月十五日までの退職者の場合でございますが、この場合には、さきに申し上げました特例の場合に区別されたことによって明らかなように、まず敗戦という特殊な事態によって退職を余儀なくされたというふうには考えていなかったわけでございます。すなわち、この場合におきましては、一応個人的に見ますれば、いろいろな事情もあろうかと思いますけれども、本人の意思に反して退職を余儀なくされたという事態としては考えなかったわけでございますが、その事情は、現在におきましても同様に考えてよろしいのじゃないかというのが、私どもの現在の考え方でございます。
  41. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 退職手当の性格は勤続報償的性格であるから恩給と違うのだと、こういう問題については、後ほど関係の項でお伺いするとして、いま御指摘のあったように、自分の意に反してやむを得ず帰国したとか、特別の要務を帯びてきたものとは考えられない。みな自分の意思でやめておるのだ、こういう御指摘ですけれども、この点はそのまま受け取りがたいわけです。私なども、私は該当者じゃないが、現地におりましたから、よく四囲の事情からそういうことは全くあり得ないで、あのころ、自分の意思でやめること自体もできなかったわけです。それでまた自分の意思で、いわゆる大陸から内地に引き揚げるなんていうことは事情がこれを許さなかった、まあこういうことはしばらくおいて、こういうふうに不均衡があるので、そういう考え方に立って、昨年この問題についても御質問申し上げたわけです。しかし、昨年の場合は、まだ所管省が大蔵省であったわけです。もちろん地方公務員については自治省の関係ですが、そこで、この特殊事情を考慮されて、前向きの姿勢で検討していくと、そういう意味の御答弁のあったことは事実だ、そのことからすでに一カ年を経過しているわけです。最近、この退職手当の所管が大蔵省から総理府人事局に移られたという事情はございますけれども、当然、このことは引き継がれていると思うので、すでに一カ年経過しているので、前向きの姿勢で検討されたその結果はどうなっているかと、こういう点をお伺いしたい。
  42. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 退職手当制度についての所管が変わりましたことについては、ただいま御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、退職手当の処理につきましての事務が移管になりましたに伴いまして、従来、退職手当制度につきまして指摘されておりますいろいろな問題点につきましては、できる限り、これを勉強しまして、今後の改善に資したいということでまいっているわけでございますが、その中の問題として、御指摘のようなケースがあるわけでございます。このケースにつきましては、先ほども申し上げましたように、現在のところは、御指摘のような改正をするのが適当であるという結論を得ていないわけでございます。
  43. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 結論は、検討したけれどもいま改正することは適当でないという御答弁のようですが、それでは、もちろん了解しがたいので、たとえば、この八月十五日という日をきめたのは、御説明によると、前国会での説明によると、終戦という特殊事情によるものである、こういうことを説明されているわけです。これはそれなりに一応了解できるわけです。しかし、この八月十五日は、必ずしも絶対的なものではなく、当時の実情を考慮すれば、これをさらに拡大して、八月十四日以前に、いわゆる戦争勃発後、引き揚げてきた者まで、そういう程度まで拡大することは、むしろ、実情に即しておるのではなかろうか、こういう考え方が持たれるわけです、この点はいかがですか。
  44. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 八月十五日という日限を一応とりましたこと、これは制度的な画一性といいますか、そういう観点からとったわけでございます。もちろん八月十五日前後におきましては、地域によりましてはいろいろな状態があったわけでございますが、少なくとも制度的なものとしましては、八月十五日まではそれぞれ従来の形が存続しておったというふうに考えているわけでございます。ところでまあ伊藤委員の御指摘といいますか、御提案の場合は、昭和十六年の十二月八日の開戦以来、開戦以後の期間ということでございますが、この約四年近い期間につきましては、まあ、いろいろな地域によりまして、事態が違っておりますので、すべての地域に一律の状態というものは考えられないのでございます。そうなりますと、個々のケースによりまして、ほんとうにまあ戦争の関係でやむを得ず外地から引き揚げてきたのか、あるいはきわめて個人的な事情で引き揚げてきたのか、そういった事情の判別はなかなか困難ではなかろうかと思うわけでございます。したがいまして、制度的な扱いとしましては、やはり取り扱いの統一性という点から明々白々として議論の余地のない昭和二十年の八月十五日という時点がとられたものと考えるわけでございます。
  45. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 当時海外にあった者は、私がここで申し上げるまでもなく、国家の政策実施のため、国の政策に協力するためであったことはもう言うまでもないわけです。当時の非協力、それが許される事情にはなかったわけです。みんな内心はともあれ、みな協力しておったわけです。たまたま引き揚げてきた時期が八月十五日以前であったということなんです。しかもいま御指摘もございましたが、自己の意思によって引き揚げた者もあるし、そうでない者もあるし、なかなか判別がむずかしい。だからいろいろりっぱな表現で言われましたけれども、そんなめんどくさいことをとるよりも、すっきりする十五日をとったのだと、こういうことになりますけれども、めんどうだから、複雑だから、困難だから、こういうことで、それだけの理由で十五日に一線を画するということは許されないと思う。引くほうは簡単ですけれども、引かれたほうは非常にお気の毒な事情に置かれるわけです。したがって、ここで問題なのは引き揚げを余儀なくされたということであるので、終戦後余儀なく引き揚げてきた者、終戦前に余儀なく引き揚げてきた者、こういうことにはそれぞれ事情があるわけです。したがって、これを区別する理由はないではないか、こういうことが言えると思う。それぞれ事情はあるわけですね。しかも大事なことは、個人の事情であるということは許されませんけれども、調査の上これは国策に協力して終戦前に引き揚げてきたのだということが明確になれば、その者だけにでもそういう措置を講じてしかるべきだと思うのですね。この点はいかがですか。
  46. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 私が先ほど申し上げましたのは、御指摘のような場合にいろいろなケースがあって、それを調べるのがめんどうだというようなそういう意味ではございませんでして、いろいろな事態があろうと思いますが、それらのすべてを一律にやることがはたして実際に合うかどうか。場合によっては不公平な問題も逆に出てまいるのじゃないかということでございます。したがいまして、現実の問題としましては、一番明確な時期として選んだわけでございます。最初に申し上げましたように、退職手当につきまして中断された在職期間通算しないというたてまえに立っておりますこと、これはいわゆる退職手当の従来からの原則でございます。で、いま問題になっておりますケースは、この中断された在職期間を例外的に通算するという場合でございます。したがいまして、この特例措置はできるだけ厳格に取り扱う、こういう考え方が働いておるわけでございます。
  47. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほど局長から御説明がありました退職手当のこの制度については、単に勤続報償という性格があるからという御説明がございましたけれども、いまは違うのじゃないか、この点はひとつお伺いするわけですが、この勤続報償という性格はもちろんありますけれども、加えて公務員の退職後の生活保障というそういう性格が強くなってきているのではないか、また、このような生活保障というような性格に持っていくべきではないかと当然考えられるわけです。この点をまずお伺いして、そしてさらにお伺いしたいのは、終戦後引き揚げてきた者についてはその期間が順次拡大されて、現在では終戦後たしか十年以上たって引き揚げた者についても通算措置はとられておると思うのです。これはその間の特殊事情が考慮されたものであって、これはもう確かに前進、前向きの措置であることは当然考えられるわけです。そうであるならば、同様特殊事情にあったがために八月十四日以前に引き揚げた者についても同様の措置をとるということは、これは実体論からしても体系的に当然ではないかということが考えられるわけです。この点についてあわせてお伺いしておきたいと思います。
  48. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 退職手当制度の本質といいますか、その性格をどういうものと考えるかということにつきましては、もちろんいろいろな説があり得るわけでございます。ただし、それらの説におそらく共通しますのは、この勤続報償的な性格、そういうものではないかと思うわけでございます。  さらにその金額の計算等につきましては、いろいろな考え方が入ってくるわけでございますし、御指摘のように、退職後の生活保障的な要素もこれは全くないとは言い切れないと思うわけでございます。ただし、まあ退職後の生活保障という点になりますと、むしろ伊藤委員もよく御存じの恩給制度なりあるいは共済組合制度による退職年金制度、そのほうがむしろ退職後の生活保障という目的にはこたえるという関係になっておるのではないかと思うわけでございます。つまり退職後の一般的な広い給与制度といいますか、そういうものとしましては、いまここで問題になっております退職手当と、それから退職年金制度があるわけでございます。まあこの両者の調和というような問題もいろいろと研究すべき問題があるわけでございますが、まあそれはともかくといたしまして、退職手当の現在の性格といたしましては、御指摘のような生活保障的な要素を全く度外視するというふうには考えておりませんけれども、少なくとも長年勤続したというその勤続に報いるという点に重点が置かれているのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから御質問の後段の点でございますが、終戦後の引き揚げ者につきましてのいろいろな措置——特例措置、その内容につきましていろいろ御指摘があったわけでございますが、そういう措置があるのであるから、この終戦前の引き揚げ者についても同様にというお考え承知するわけでございますけれども、終戦前の引き揚げにつきましては、先ほど申し上げましたような意味で、終戦後の引き揚げ者と全く同断に論ずることには問題があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  49. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 終戦前と後を同じように考えることには問題があると、そういう御議論でございますけれども、全く完全に合わせてということではなくして、終戦後の場合は十年以上認めておるわけですね。で、戦事中は十六年から二十年、約四年と、こういうことでおのずから条件が変わってくるわけです。おのずから制約があるわけです。開戦から終戦までというおのずから限定があるわけなので、決して終戦後の問題とはおのずから違うわけで、比較できないと思うのです。性格が違うわけです。そういうこともありますから、終戦後の問題については、たとえば十年以後に引き揚げても認められておると、そういう配慮もされておるんだから、終戦前に引き揚げた者についても応分の配慮があってしかるべきではないか、こういうことが言えると思うのですね。  なお、この問題に関連して、昨年防衛庁職員給与法の改正にあたっては、自衛官に対する退職手当の特例が設けられたわけです。これは退職年当の期間通算について一般の退職手当法及び政令範囲を拡大したものであることは言うまでもないわけです。こういうふうにこれは一つの例で、退職手当についてできるだけその範囲を拡大して、そういう特例を設けられることをあわせ考えるならば、いままで申し述べてきたことについても当然善処できる問題ではなかろうか、こういうことがあわせ考えられるわけです。したがって、前向きの姿勢でこの問題と取り組んで、何らかの応分の配慮があってしかるべきだと思うのですね。この点はいかがですか。
  50. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 伊藤委員のお説も私ども一つ改正案といいますか、改善案として傾聴いたしておるわけでございますが、少なくとも現在におきましては、私どもまだこの点につきまして何らかの措置を講ずべきだという結論を得ていないわけでございます。今後の問題としまして引き続いて検討さしていただきたいと思うわけでございます。
  51. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、この問題に関連して、時間がございませんし、総務長官もお見えにならないわけですから、あと要点だけを簡単にお伺いしますが、当時の国策に協力するためにやむなく退職して、その後再就職する者、たとえば満州開拓青年義勇隊の訓練機関、いわゆる義勇隊の訓練所、義勇隊の訓練機関というと訓練所になると思うが、この職員であった者、この者についてはまだ考えられていないわけですが、海外にあった特殊機関職員であった者については、恩給ではすでにその通算措置がとられておるわけです。こう申し上げると、いや恩給退職手当は違うのだ、必ず局長は言われると思うのですけれども、とにかく恩給では認められており、退職手当については通算措置がとられていない。やはりそういう国の配慮がなされるならば、こういうところまで配慮されてしかるべきだと思う。これは結論としては、片手落ちではないかということを指摘せざるを得ないわけです。もちろん検討中であり、今後の検討すべき問題である、そういうふうにお答えになると思う。いまここでイエスかノーかということを言えないと思いますが、こういう問題についてのひとつ前向きの姿勢に立った御答弁をいただきたいと思います。
  52. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) ただいま御指摘の問題につきましては、なるほどおっしゃるとおりに一つの早急に解決を要する問題ではないかというふうに考えるわけでございます。すなわち退職手当につきましても外国政府なり日本政府と特殊な関係のあった特定の法人の勤務期間につきましては、通算措置を特例としてとっておるわけであります。したがいまして、これとの均衡を考慮しますれば、御指摘満州開拓義勇隊の訓練機関職員在職期間につきましては十分に前向きで検討する必要があるのではないかというふうに感じております。
  53. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、最後にお伺いしたいのは、教育公務員特例法の第十四条によって休職した教職員のうちで休職期間を経過して自然退職となった者、それがあとで再就職した者があるわけですね。もちろんこの中にはこのような教育公務員特例法が制定される前に同様の状態にあった者も含めてお伺いするわけですが、この教育公務員特例法の第十四条によると、結核のため休職となった教職員で休職期間を経過して退職した者の中には、いま申し上げたように、まだ教育公務員特例法が制定なかった時代に発病した者が相当多いわけです。と申しますのは、現在のように早期発見、早期治療、こういう観点から早期発見とか早期治療に重点を置いたいわゆる予防法が以前にはなかったわけです。早期発見、早期治療ができなかったというそういう悪条件の中で、結核患者が相当悪化して数的にも量的にも相当多かったわけです。と申しますのは、早期発見でないから、つまり発見がおくれて治癒まで相当期間が長くかかった。そのいわゆる休職期間だけではなかなか治癒しがたい事態にあったわけです。いまは医薬が進み、治療法が進み、相当短期間の休職期間で事足りるわけです。アフターケアを入れてなおかつ足りるわけです、以前はそういう悪条件下であったので病気も長引いたわけですね。そういう事情を考慮して、その後復職した場合には退職手当についても通算を認めるべきではないか、こういう問題なんです。したがって、問題はおのずから二つになるわけですね。一つは教育公務員特例法十四条によって休職した者が期間が切れて自然退職となり、その後治癒して再就職した者、この者について当然通算をいたすべきではないかということと、この教育公務員特例法の制定前の悪条件下に発病して結局休職期間が終え、その後長い期間かかって治癒して再就職した者、こういう者についてはそういう配慮がなされてしかるべきではないか、こういうことなんです。この問題についてのお考えをお聞きしたい。
  54. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) この問題につきましても退職手当制度のあり方の問題と関連いたしまして、検討しなければならない問題があるわけでございます。そういう観点から申しますと、ただいま問題の御指摘を受けまして直ちに申し上げる回答といたしましては、非常に困難だということにならざるを得ないのでございますが、内容的に申し上げますと、教育公務員特例法の十四条によるいわゆる結核性疾患の休職の場合でございますが、お話しのように、休職期間が満了しましてそのために退職したが、その後病気も回復しまして再就職するという場合でございますが、退職を中にはさんだ前後の在職期間通算するという問題でございます。これはひとりこの教育公務員特例法の適用を受ける、つまり結核性疾患の場合の休職だけに限らるべき問題ではないのではないか。すなわち対象といたしましては、教職員以外の場合も考えられるわけでございますし、また、いわゆる結核性疾患以外の疾病による休職の場合等も考えられるわけでございます。これらの場合を通じまして、まあ病気の関係で休職期間が切れやむを得ず退職した、しかし、その後健康が回復して再就職した、その場合の前後の在職期間通算すべきやいなや、通算するのが適当かどうかという問題でございます。いろいろな場合を考慮しまして慎重に検討を要する問題ではないかというふうに思うわけでございますが、現在申し上げることは、退職手当制度というものにつきまして、先ほど来申し上げているような観点からいたしますと、困難だというふうに考えるわけでございます。
  55. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御答弁の中で、この退職手当通算問題は、ただ単に結核療養者に限定すべきではない、これは全く同感であって、一つの事例としてお伺いしているわけで、これは結核であろうと他の病気であろうと当然で、たとえば一つの事例として結核を申し上げたわけであって、ただここではっきりしていることは、普通の病気と違って、結核については療養期間が相当長かった。したがって、特に結核の場合については、休職期間を長くしているわけです。これは国家公務員に限らず、地方公務員を当然結核というのはいまと事情が違っておりましたから、前では相当休職期間を長く考慮されたわけです。したがって、そういう一つの事例として結核を申し上げたわけでありまして、それからこれは御指摘のように、教育公務員に限定すべき問題ではない、全くそのとおり。これも一つの事例としてお伺いしたわけであって、教育公務員にこういうことが許されるならば、これは当然これと同一範疇内のものは解決されてしかるべきだという角度からお伺いしているわけです。  そこでこの退職手当通算問題は時期の問題——退職、引き揚げてきたときの時期の問題が一つと、それから国策に協力するためやむを得ず職を離れたが、後再就職した者、あるいは病気のため休職期間が断たれて自然退職で、後回復して再就職した者、大別するとこの三つになる。この三つについてそれぞれ要点をお伺いしたわけです。もちろんこの場で人事局長立場で、さっそく通算できるようにいたしますとか、いたしませんとかということは答弁できないだろうことはよくわかりますが、ただあくまでそれぞれみなそれ相当の特殊事情の問題があるのですから、やはり何といっても前向きの姿勢で取り組んでもらわないと、なかなかこういう問題は解決できないわけだ。国会でうるさく言うとちょっちょっとやるが、またほおっておく、また国会でうるさく追及されるとちょっちょっとやるということでは解決できないと思う。  なお、きょうは総務長官もお見えになりませんし、まだ問題はございますが、一応こういうことにして退職手当通算問題は本日のところこの程度にとどめて、あらためて総務長官を中心にお伺いしたいと思います。
  56. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  57. 熊谷太三郎

    委員長熊谷太三郎君) 速記を始めて。  本日はこれをもって散会いたします。    午後零時四十二分散会