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1966-05-10 第51回国会 参議院 逓信委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十日(火曜日)    午前十一時五十三分開会     —————————————    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      森中 守義君     野上  元君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田中  一君     理 事                 植竹 春彦君                 新谷寅三郎君                 西村 尚治君                 光村 甚助君     委 員                 小沢久太郎君                 古池 信三君                 迫水 久常君                 寺尾  豊君                 松平 勇雄君                 谷村 貞治君                 久保  等君                 野上  元君                 横川 正市君                 田代富士男君                 石本  茂君                 鈴木 市藏君    国務大臣        郵 政 大 臣  郡  祐一君    政府委員        郵政大臣官房長  鶴岡  寛君        郵政省郵務局長  長田 裕二君        郵政省簡易保険        局長       武田  功君        郵政省人事局長  曾山 克巳君        郵政省経理局長  淺野 賢澄君    事務局側        常任委員会専門        員        倉沢 岩雄君    説明員        大蔵省理財局資        金課長      原  秀三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○郵政事業及び電気通信事業運営並びに電波に  関する調査  (郵政事業運営に関する件) ○郵便法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 田中一

    委員長田中一君) ただいまから委員会を開会いたします。  初めに、理事会打ち合わせ事項について御報告いたします。  本日の委員会は、まず郵政事業運営について質疑を行なった後、郵便法の一部を改正する法律案について、鈴木市藏君及び野上元君がそれぞれ質疑を行なうことになりましたので、御承知願います。     —————————————
  3. 田中一

    委員長田中一君) この際、委員異動について御報告いたします。  昨日、森中守義君が委員を辞任され、その補欠として野上元君が選任されました。     —————————————
  4. 田中一

    委員長田中一君) 郵政事業及び電気通信事業運営並びに電波に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は、順次御発言願います。
  5. 横川正市

    横川正市君 まず、先般私のほうが質問をいたしまして、私の質問前提条件として答えられた部分で、その後、具体的に明らかになった点についての説明を受けたいと思います。
  6. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) 先日いろいろと御質疑のありました中で、私どもといたしましては、特に第二組合の伸長につきまして、省が積極的な支援をこれに与えたことはないか、また、第一組合の存在を、いうならば、危うくするような手だてを講じたことはないか、その実情について調査をしろというお話でございました。それにつきましては、横川先生の御質問並び森中先生の御質問、両方総括いたしまして、私どもといたしましては、現地に対しまして、その事実を調査させたのでございますが、さような事実は、私どもといたしましては、これを発見するに至らなかったのでございます。  なお、具体的な個々の問題につきまして特にお答えいたしておかなければならぬことは、たまたま横川先生からも御質問がございましたけれども小倉の局におきましての組合事務室は、その場所につきまして、その当時におきましてもこれを移転する意思のあることを申し上げましたが、その後すみやかに場所を変更いたしまして、先生の御趣旨のように、いやしくも、外から見まして、第二組合を特に優遇したというような印象を与えないような処置をとった次第でございます。
  7. 横川正市

    横川正市君 まず、この郵政省機構上のことで非常に疑義に思うことは、私どもは節穴ではなしに、実際に現地に行ってみて、それから当事者と質問をし、その質問に答えられた点についてはメモをとって、その内容を私どもは記憶にとどめてきたわけなんだが、そういう事実行為が、国会場所で論議をされると、いま答弁のあったように、全く事実無根になってしまう、これはどういうことなんですか。ただ一つだけは、小倉郵便局事務室の問題だけは、事実問題としてこれは報告をされた。小倉郵便局事務室問題が事実であると同時に、若松郵便局事務室も事実問題である。折尾の郵便局事務室も事実問題である。一つだけは認めた。その一つだけ認めたのは、こういう理由じゃないですか。郵政局長通達で、小倉郵便局次長の隣に第二組合事務所を置くことは適当でないので、すみやかに位置を変更しなさいという指示をいただいております——これは、小倉郵便局長が私に答えられた内容です。そうすると、この指示を与えたという事実については、あなたのほうでこれを正しいと認め、そうでない分については、それがいかに事実であっても事実と認めない報告をぬけぬけと国会報告をする。これはそういう機構上の問題を私はちょっと疑問に思うわけですが、この点はどうですか。
  8. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) 私どもといたしましては、別に郵政局長指示によったものだけが、つまり、郵政局長が反省いたしましてやっているように思われるので、それだけを直したということではございません。もちろん、本省といたしまして、先生等お話をお聞きしました上で、どうもおかしいと思う点につきましては、郵政局を通じて十分調査をしたわけでございます。調査の結果、郵政局ですでに移したほうがいいと認めたものにつきましては、直ちにその措置をとったというような事実上の結果が出たのであろうと思います。  なお、若松等の問題につきましても、十分調査をいたしましたが、これは先般も申し上げましたけれども、第二組合発生が先年の、旧年の末でございました。その中におきまして、一応外から見ましていいような場所に入れたような見方もございますけれどもスペースのとれ次第、私どもといたしましては、外目から誤解を受けないところに移すという、そういう考え方でやっているわけでございまして、その問題等は、第一組合スペースを与えます場合にも同じような考え方をとっているわけでございまして、決して差別をするというような考え方は毛頭ないのでございます。
  9. 横川正市

    横川正市君 ちょっとつじつまが合わないと思いませんか。たとえば小倉郵便局次長室の隣に事務をとったのは移転を指示する、ところが、若松郵便局の応接間を第二組合事務室に貸し与えられたという点については、これは何らの是正措置はとられておらない。これは全然つじつまが合わないということになりませんか。適当な場所ということですか、それは。
  10. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) 場所は先般も御指摘ございましたように、私どもといたしましては、外から誤解を受けないようなぐあいにもちろんすることが大事なことだと思いますが、ただ、準備いたしますスペースの発見というようなことにつきまして、いろいろ手当てを講ずる場合のひまもございますので、決して私ども固執いたしましてそこに永久に置くというようなつもりではございません。できるだけ早い機会に、いい場所等があればそちらに移すという心組みでおり、また、それを実行いたしておるわけでございますので、その点御了承いただきたいと思います。
  11. 横川正市

    横川正市君 私どもは、事務所設置場所がどこであろうと、別にどういう形で貸し与えられていようと、そのことで事実上の論争をしようとは実は思っておらない。そういう事務所設置とからんで、たとえば若松の場合は、課長代理労務担当課長代理が机やいすを運び込み、それから職員数からいきますと一割にも満たない職員に対して、局長の隣に相当大きなスペースをとって事務所を与えるというような、そのこと自体は、これは主事とか主任組合をつくらせたということと、日ならずして第二組合にそれが発展していくということと関連性があるんではないかと、言ってみれば、事務所設置を、そこに置いたということは、そういう事実行為の結果であってへその事実行為はありませんということでは、私どもは事実目で見た上は納得しがたい。そういう事実行為はどうですかと聞いたら、そんなことはありませんと言うから、それじゃ事実行為としてこの事務所の問題はどうかということの質問になるわけです。しかも、第二組合事務所掲示板に、私ども現認をしてきて、写真もこの間見せたように、労務課長代理ですか、労務担当課長代理代表者になって声明文やら、あるいは抗議文を載せて、それを第二組合掲示板に張りつけて掲示をしている。そういうことは、これは管理上少し錯綜していませんか。その錯綜というのはどこから起こってくるかということですね。私は、これは事実行為としてそういうことが公然と行なわれたということを明らかにすることでもあるし、その行なわれたことについての不当性については、これはもう全く自分でもって当否がつけられない、そういう状態になっている。その当否のつけられない状態というのは、これは発展すると、課長代理という労務担当者も、主事とか主任とかいういわゆる中間監督者も、行政上の組織からいくと同一的な役割りを持っているものだから、だから組合関係についてこれらの組織が何らかの組織に対する介入を行なっても、それは不当労働行為には該当しないという一貫した理論づけがあってやっていることだと私は思うんですよ。その一貫した理論づけというのは、私はこれはおかしいと思うんですね。たとえば労務担当課長代理の場合には、これは組合にはいれない純然たる管理監督者立場にある。そうではないものについては、これは監督者立場であっても組合にはいれる立場なんだ。それが共同して行動を行なう場合には、おのずとそれはある限界というものがあってしかるべきだ。その限界から逸脱しているという事実が具体的にあらわれているということについて、郵政当局はどう考えるかというのが、私の質問の骨子なんであります。何にもありませんでしたということでは私はないと思うんですよ、事実行為に基づいて私が質問しているわけですから。
  12. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) ただいま御指摘のありました第二組合掲示板労担課長代理自分所信を発表したということにつきまして、これが組織上、権限上混淆を来たしているのじゃないかという御質疑でございます。先般もその御質問ございましたので、私ども先生のお写しになったお写真も拝見しましたので、これをもとにしましていろいろ調査してみました結果、御案内のように、確かに第二組合掲示板掲示されました。しかし、先生もうすでにお詳しいように、もしこれが省側掲示板掲示されておりましたならば、つまり、相当不当労働行為の色彩の強いものかと思います。と申しますのは、そういう場合に、あの当時は二十六日のストを控えての直前でございました。法律で禁止されたストにはお互い加盟しまいということの所信を、命令の形あるいは通達の形で所属長が自局の掲示板に出すことは正しいやり方でございますし、また、代理権を行使いたしまして労担主事に、課長代理に起案させ、かつまた、局長の命によるという形で出したものであれば、これは何ら私どもそしりを受ける筋合いのものじゃないと思います。しかし、そこを考えまして、この労担課長代理は第二組合掲示板自分所信を発表したわけでございまして、いうならば、省側掲示板にそういう所信を発表せず、第二組合掲示板をかりて発表したということにつきましては、私ども、これが違法、特に不当労働行為のそしりを受ける筋合いのものではないというぐあいの結論に達したわけでございます。  なお、御案内のように、その内容につきましても、特に第一組合の切りくずし、第二組合への加入を勧奨するといったようなものの内容は含んでおりません。あくまで、ストというものに対しての違法性を強調し、したがって、お互い良識をもって良識的な行動をとろう、合理的な行動をとろうということの呼びかけをしたのでございますので、先ほど申したような結論に到達した次第でございます。
  13. 横川正市

    横川正市君 私は、その第二組合が第二組合掲示板を使って意思表示をするという場合と、郵政大臣依命によるところの局長大臣談話をそれぞれの掲示板掲示をするということについて、とやかく言っているわけじゃないのです。少なくとも、この職制上の立場のものが混淆して、しかも、監督者あるいは管理者労務担当者という、そういう立場にあるものが第二組合掲示板にみずからの名前を付して掲示をするということは、これは私はいわゆる正規なものではないというふうに考えておるわけです。あなたのほうはそれは別にたいしたことはないというふうに思われますが、そういう事実行為はどこから出てくるわけですか。単に偶発的に労務担当課長代理自分所信を第二組合掲示板に張ったということじゃないわけでしょう。そういう事実行為が出てくるという根底には、これはいまあなたが、省が第二組合をつくらすために介入した事実もございません、あるいは、第一組合の問題についてこれに対してとかくの介入をした事実もございません、こう言っておる口の裏から、実はあなたの——あなたは知らないかもしれないが、あなたの指揮命令を受けて動いておる末端管理者あるいは監督者というのが、その秩序と法のたてまえ等を混淆して行動したということにはなりませんか。それも、これはささいなことだからたいしたことはないということになるわけですか。
  14. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) くどいようでございますが、先生のおしかりを受けましても、私どもといたしましては、第二組合発生、第一組合の切りくずしというようなことにつきまして手をかす、つまり、不当労働行為をするというような事実はないわけでございます。ただ、先生あくまで関連があるじゃないかという御質問に対しましては、先般もお答えいたしましたが、特に九州管内におきまして、管理者組合員との間にいろいろ正常な労使関係が持たれない時期がございました。そういう時期を何とか乗り越えまして、お互い正しい合理的な近代的な労使関係を築くために、労使ともども努力をしてまいったわけでございます。私は使用者だけじゃなくて、労働側、特に全逓におきましても、相当の努力をしてまいったと思います。しかし、なお、先般も例に引きましたが、ある地方におきましては、全国に見られないような急進的な、いうならば戦術をとって、ときには労務指揮権を麻痺さす、そして職場規律の無秩序から仕事を混乱させるというような局もなお残っておったのでございます。そういった事情を見まして、特に職制立場にありますところの、なかんずく中間管理者たちが、これではならじということでお互いに励み合い、切磋琢磨し合う、当然良識ある行動をとろうという申し合わせもいたしましょうし、また、場合によっては、主事主任会というような形でもっての団結もいたすこともあろうと思います。その主事主任会というものは、直ちに第二組合に必ずしも移行しておるわけでございませんが、そういった集まりを持ったことは私ども事実だと聞いておるわけでございます。そういった中で、特に良識を持ちます中心人物が、自分らの周囲の者に対しまして呼びかけをして、お互いに自粛自戒しようという呼びかけをしますことは、これは先生のいろいろおしかりを受けておりますけれども、私は、ことばは適当でございませんけれども、やはり法律で保障されましたところの意思ないし思想の発表の自由からいいましても、必ずしも押える筋合いのものでなかろう。しかし、これを全局に見るというような形で郵政局が指導しておれば別でございますけれども、そういった事実もございませんし、したがって、先生がたびたび私に対して指摘をされておられますけれども、何回も申して恐縮でございますが、決して私は省が、あるいは郵政局が指導いたしましたような不当労働行為というぐあいには受け取っておらないのでございます。
  15. 横川正市

    横川正市君 あなた、ここで私が質問すると、あなたのところをしかっているような印象を受けるようですが、私はあなたをしかっているわけじゃないんですよ。事実行為——私のいまの質問の焦点というのは、私は現地を見てきた、それであなたに、そういう事実があるけれども、それ一体行き過ぎじゃないのかと、こういう質問をしているのであって、あなたのところは介入したとか介入しないとか、第二組合をつくらすためにどうした、こういうことがなければ、実は組織機構末端ではあるけれども、これはいささか良識にはずれたる点で行き過ぎでございますとか、そういった点は非常に秩序立ったものの考え方からすればこれは間違いでございますとか、いわゆるあなたのほうの手や足とか神経の末端のできごとというものを、実は私は、あなた自身が総括して人事労務管理をしている立場から答弁があってしかるべきだと思うのですよ。その答弁がないというところに、私ども現実見てきたことと郵政局から上がってくるあなたの答弁資料とが違うのは少しおかしいのじゃないか。しかも、私が見てきたことは、これは何かプリズムか何かかけられたもので、あなたのほうに上がってくる現地資料というものが全部正真正銘正しい文書だというようなことでは、私は、これは世論の中でのものの判断ということはできなくなるのじゃないかと思うのです。そういう意味合いから、もし私は、たとえば先ほど言いますように、大臣からの依命通達局長名でもって出されるスト反対厳重処分をするというやつは、これは掲示板に掲げられておるからけしからぬなんということは言っておらぬのですよ。それから第二組合結成されて、第二組合結成状況とか、今後の組合の行き方について、ことに全逓の行き方について違法行為であるとか、こういうことを書いてあることも、私はこれを違法だとかなんとか言ってない。ただ、労務管理者立場にある者が代表になった名前で、第二組合掲示板組合介入をするがごとき行為というものを行なうことは、秩序の面からいって少しおかしいのじゃないか、逸脱じゃないか、こう言っているのであって、その点が認められないというのだったら、秩序というものはどこにあるんですか。無秩序じゃないですか、実際上。同時に、あなたのほうは、第二組合を育成しようと、親戚づき合いをしているから、親戚づき合いをしていて掲示板に一緒に書いたっていいじゃないかというふうに言われてこれはやめないんじゃないですか。親戚づき合いじゃないと言うのだったらこれは別ですが、私は全逓一心同体のもので同じだと思っています。あなたたちと何もどうというのじゃない。ただ、あなたは管理者立場にあって、全逓組合組織を持っている立場であって、お互いにそこで主張し合う立場であるから、ただ、お互い行き過ぎがあったかどうかという点については、あなたは先ほど並べましたけれども、私は前回の質問のときも、組合側行き過ぎについては、これは私自身がそれをカムフラージュしたり弁明したりしていませんよ、あなたのように。組合行き過ぎについては、断固私は、あなたのほうのとるべき手段というものをやるべきだと思っておるのですよ。ただ、職制介入さして第二組合をつくらすようなことはこそくなことだからこれはやめなさい。あなたのほうで全逓と、話し合って、ここで論議するように、どこどこの局ではどういうことをやったじゃないか、これは一体組合運動とどういう関係があるのだということをあなたが団体交渉の席上で言うことについて、だれが制限をしますか。私は正々としたことだと思うのですよ。また、小倉郵便局でも、現実全逓の中闘の尾島君が行きまして——局長は私にこう言っておりましたよ。尾島君が来てくれて、職場の中の通区の能率も、それから班制度も、それからいろいろといままでトラブルがあった管理者とのトラブルも非常によくなりましたと言っておりましたよ。私はそうあるべだきと思う、実際に組合組織というものは。私はその点は否定していないわけですよ、実際には。どうしてこう事実のあがったこの問題をあなたは認めないかということを私は勘ぐれば、その一つを認めたら、今回起こった九州全域の第二組合結成という異常発生というものは、あなたがどう否定しても、いわゆる管理者介入して第二組合をつくらせた不当労働行為を、しかも事実行為として認めざるを得なくなる、この点をおもんぱかって、あなたのほうではこれについていろいろと防波堤をするような答弁をしておるのじゃないかと、私はそういうように解釈するわけですよ。そうでないなら、そういう事実についてひとつ明確にしていただけませんか。
  16. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) 先ほど私のことばが足りなかったために、あるいは正確に御理解いただけなかった点があれば、いま少し述べさしていただきまして御理解願いたいと思います。  と申しますのは、掲示板の問題でございますけれども掲示板省側掲示板組合側掲示板があることは御承知のとおりでございます。省側掲示板に、第二組合の、いうならば育成に対して親戚づき合い的な好意的な内容掲示いたしました掲示物を張り出すということは、おっしゃるように、不当労働行為の少なくとも疑いを持たれてもしかたのないことだと思うのでありますが、それぞれの組合掲示板——特に最近は内容包括承認制度をとりまして、一定の禁止ないし制限事項以外のものにつきましてはこれを認めておりますようなたてまえからいたしましても、それぞれの職員ないし組合員自分の抱負につきまして周囲に対して常識をもって行動しようというようなことを内容とします掲示物を張り出すことにつきましては、私はこれは自由であろうということを申しておるのでございます。その点につきまして御理解をまず最初にいただきたいと思います。  それから、なおいろいろと御指摘がございました事実問題の例も、これも私のほうから都合のいいことだけ言うのじゃないかという御指摘をまたあとから受けることを覚悟の上で申し上げさしていただくのでありますが、やはり九州管内のある局におきまして、たとえば、これは勤務時間外でございましたけれども課長中心にいたしまして花見の会をやったようでございます。そのときに酒に酔ったせいもございましょうけれども課長のネクタイをとらえてゆすぶって、おまけに杯で酒をかけて、課長に対して、おまえ第二組合に対して好意的であるとかいうようなことでもって、いうならば非常にののしったというような事例でございます。それを見まして、いままで周囲におきまして第二組合の動きがその局ではなかったのでございますけれども、それに対して積極的な、その後第二組合発生に至ったというような事情にあるわけでございまして、私はそういう事実に対しましては、これは全逓幹部の皆さんとも話し合って、確かにそういうことはいけないことであるという全逓幹部の方の話もございました。先生指摘のように、いろいろと全逓幹部の方も苦心いたしまして、自分の配下の組合員の統制をきかせまして、異常な行動に出ないようにしておられることを十分承知しております。しかし、なおそういった行動があるということが、全部の局じゃございませんけれども、数少ない局でございましょうけれども、やはり現実良識のある者をして、先ほど申しましたように、いまのこの組織の第一組合組織についていけないというような行動をとらしめたのではなかろうかということを私は思うのであります。しかし、これは私は決して第二組合を弁護しているのではございません。あくまで私どもといたしましては、管理者といたしましては、職場内における秩序を保つ意味で、お互い両方の組合が暴力を打ち合うとか、あるいは引っこ抜き、ないしは加入勧奨のために業務を阻害するというようなことのないような意味でのチェックはしてまいりますけれども、それぞれ第一、第二組合のきらうようなことにつきましての介入はいたさないように指導はしておるつもりでございます。
  17. 横川正市

    横川正市君 まあ、ここで私が事実行為を明確にしてあなたに質問をしているのを、あなたがそれはこうでございますという答弁の中に明らかなように、たとえば労務担当課長代理中心となって持たれた主事主任会が共同してつくられたものであるならば、これはまあ、いわば管理者監督者に立っているものですから、そのものが省の、あるいは局側の掲示板に張られたとしても、私はたいした実は問題にならないだろうと思うんです、事実行為としては。あなたはそれは問題だと、こう言う。私はそれは問題にならぬと思うんですよ、管理者立場に立っている者が、あるいは監督者立場に立っている者がそういう行為を行なうことは。ところが、管理者とか監督者に立っている者とそうでない者とが合同でつくられた掲示を第二組合掲示板に張るということになるから、これは私は逆な意味で異質のものが第二組合に入ってきているということにならないかと、いわゆる通常考える社会常識からいってみて。私の考え方はあなたの考えとは逆なんですよ。同じ職制上からいけば、課長とか課長代理とか、主事とか主任とかというものは、言ってみれば中間の監督者ですね、中間の監督者がまとまって、そして、この際はひとつストライキに反対しようじゃないかというのが、これが省側の、いわゆる局側の掲示板にかりに団体として張られたとしても、私はこれは一つの一分の理というものが立つような気がする。ただ、そのことは、組合にはいれる者とはいれない者とが一緒になってそういうことをやったということについて、これは教唆の問題もあろうと思いますけれども、しかし、異質の、全然組合にはいれない者がはいったその団体のこの種の文書を第二組合掲示板に張るというのが、これはおかしいじゃないかと私は言うんですよ。そのおかしさというものがいろいろな観点になってあらわれてきているから、それを私は一体あなた方のほうでは、おかしいと認めるのか正当と認めるのか、そうしたら、あなたは正当だと。私はおかしいと思うんですね、どうですか。あなた方の場合、いわゆる管理監督の立場からいえば、これは職員、どんな末端であってもあなたの命令を聞いて正常にやってくれるということは、これはもうあなたが一番望むことなんです。ところが、労組法あるいは公労法で労働組合がつくられることになっておって、そして、その労働組合にはいれる範囲というものはきまっているわけですね。これは自主的なものであるから、これに介入してはならないと労組法第二条にきめられているわけです。そのきめられている範疇のものが正しい行為をする場合においては、だれもが介入することができないわけですよ。第二組合なら第二組合にどんなに意思表示をしようと、これはだれも介入するわけにはいかない。しかし、局側の立場に立つ者が局側の掲示板を使うということも、これもやむを得ないことで、ただ、管理監督の立場に立つ者が集まってそういう行為をし、そういう意思表示をしたということが、一体、局側の掲示板にかけられることが正しいのか、第二組合掲示板にかけられるのが正しいのか、その点は、私の考えはあなたの考えとは逆なんです、これは常識から考えてみても、あるいは労組法の考えからしてみても。そして、そういう事実が起きたときには、第二組合と一体監督者に立つ者や管理者に立つ者とはどういう関係というものを持ったのかということを、その裏返しのことを考えるということも、これは当然なことですね。しかもこの場合には、局長のうちで主事主任会が持たれて、四回目に第二組合発生し、しかも、それに参加をした者が全員第二組合に走ったという事実があるわけです。これはもういかに否定してみても、事実行為というものは否定できないですね、実際には。だから、私は、あなたが指示したのではありませんと、そういうことは間違いですと言うのならば、そういうふうにはっきりすべきだと思うのです。その事実行為は、三十八年のたしか十月か十一月に、現在の熊本の九州地方本部と郵政局長との間で、「不当労働行為と疑われることをも行なわないこと」と言って文書交換をやっているわけですね。「疑われることをも行なわないこと」という文書交換に私は違反しないか。これは信義上の問題だと思うのです、そういうふうになってきますとお互いに。  第三点の問題は、あなたは先ほどつばをひっかけた、酒を飲んでどうしたということを言いますが、私は情状酌量なんというようなことでものを言うわけじゃありませんけれども、いまのあのやり方をしていたら、随所で人間的な弱さというものを暴露して、ささいなことで職場の中にトラブルというものが起こるような原因にならないか、私はそれを心配します、実際はそのほうを。もっとやはり正々とした形で解決をして、すなわち、違法行為については、これを違法行為として相手側にそれを是正せしめる、そういうあなたたちのほうのき然とした態度があって初めてこのことは直ることであるし、これは上部団体との話し合いで当然矯正されてくることだと思うのですよ。一つの例が、東京の石神井で起こった実例、御案内でしょう。職場規律にも従わない、あるいは組合の方針にも従わないという五十数名の人が、組合組織、いわゆる組織団結をする力というものを、個人が持っているものをこれを組織が阻害するということは、これはゆゆしい問題なんです。しかも、五十数名というものを組織から除名をして、職場の維持と組織の統制をきかしたという事実もあるわけでしょう。そういう明確な形というものはどうしてとれないわけですか、その熊本郵政局管内で。私はそれをきわめて組織問題あるいは業務問題からして惜しむことだと思っているわけです。私は、酒をかけたとかネクタイを引っぱったということはいいことだとはひとつも思っていない。その是正のしかたとして、今回のような第二組合の育成の方針をとったことは間違いじゃないか。ところが、あなたは上から指示をしていない。それならば現地に起こった、このような発生した事実行為というものは、これは省側考え方からすれば間違いだと断定できることだと、私はこういうふうに思うわけなんです。それを一々抗弁するということになると、あなたのほうのこれは指示、指導によって行なわれたことではないかと私は逆にいえば疑いたくなる、こういう事実が出てくるわけですね。事実行為というものをもう少し——私も常識でものを言っているわけですからね。あなたがいわゆる組織上の問題で、責任上の問題で、メンツ上の問題でものを言わないで、少なくとも、職場の中に平和で健康的な労使関係が生まれるためにはどうあったらいいかという、そういう前提のもとで私は話しすべきだと思うのですよ。そうでなければ、これらの問題の私は解決にはならぬのじゃないかと、こう思いますがね。
  18. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) 私どもといたしましては、最後に先生のおっしゃいましたメンツ上の問題として何か事実を隠蔽し、あるいは都合のいいように解釈し、特に第二組合を弁護するという考えは全然持っておらぬのでございます。そういうこと自身が何かメンツにとらわれるというような御指摘を受けるかもしれませんけれども、決してさような考えは持っておりません。  なお、掲示板につきまして先生と私の意見が違うというお話でございましたが、違うということでございましたら、水かけ論でございますが、いま一ぺん言わしていただきますならば、やはり官の掲示板掲示いたすものは、これは明らかに私は官の組織として決定した事項、あるいは組織上の、大臣郵政局長その他組織上の上局から指示され、通達を受けた事項等の局員に対する通達といった形で行なわれるべきだと思います。その内容といたしまして、もちろん、ストを回避しろ、ストに入るなという呼びかけ等も当然入ると思いますけれども、そういうこと等が主体になるべきでございまして、一個人が少なくともストはやらないという内容でございましても、一々許すとなってきますと、それこそ、第二組合に関心のある者が言ってきた場合、あるいは第一組合からそれを言ってきた場合、紛淆を来たし収拾がつかないということにもなる。かつまた、先生指摘の、職場における安定した労使関係を乱すことにもなると思いますので、そういうことはすべきじゃないと思います。しかし、それぞれの組合が持っております掲示板に、その内容が、先ほど申し上げました、私のほうでいわゆる管理運営の権限を持っておりますものの立場からいたしまして、非常に政治的な内容にわたるもの、あるいは、つまり、公務員法で許されておらない政治的活動にわたるもの、あるいは、人身攻撃にわたるもの、官の信用を失墜するもの等以外のものでございましたならば、特にその内容的に、スト等には参加しまいというようなことなどを堂々と発表することは、私は、それぞれの組合掲示板に掲げられることは自由であろうということを考えるのでございます。先生の御意見は違うようでございますけれども、私はさように考えるのでございます。  それから、なお、非常に疑わしい事実等が頻発しているというお話でございますけれども、私は先ほど例をとって申し上げましたその背景というものをやっぱりお考えいただく必要があるのでございまして、決して私どもはそういう背景があるから第二組合をつくるべきだなどということを申しておるのではございません。  いやしくも、中間管理者であるところの特に主事主任等が、やはり職制の意味というものをはっきり自覚いたしまして、りっぱな業務を遂行するためにまず必要な、この前、業務管理労務管理は車の両輪と申し上げましたが、りっぱな労務管理ができるためには業務の管理が必要でございましょうし、また、りっぱな業務管理を完成するためにはりっぱな労務管理が必要と思います。そういった形で、両方いずれに重いウエートをかけるということでなく、お互いに相均衡し合ったウエートをかけて進みたいと思います。そういったバランスを織り込んだところにおきまして、管理体制の中心になる中間管理者等が相一致いたしまして自発的な会をつくるということ等は、決して私はこれを否定ないし制限すべきものでなく、むしろ慫慂してしかるべきものだというぐあいに考えておる次第でございます。
  19. 横川正市

    横川正市君 あなたのほうから見れば、自主的な会合で、そうして、そういう自主的な会合ならば、あなたは慫慂し——慫慂しということばを使いましたが、これは助長ということにもつながるでしょう。慫慂し、助長する。その裏に、この間私がちょっと聞きましたように、「これはその会に出席をしてメモをとった者のメモですから、そのメモが、てにをはの点まで具体的に表現しているかどうか、これはわかりませんけれども、そういう事実があったとすれば、それは不当労働行為でございます。」と、あなたはそういうふうにこの間答弁しております。その事実に基づいて、私どもは、これは当然あなたのほうが調査を行なったものと、こういうふうに見ているわけですが、たとえば各項目に分けて、最後に、この局でストライキを行なうようなことになると異動の際考える——異動の際考えるということは、これはたとえば左遷をするとか、あるいは降格をするとか、事実行為——小倉に降格者が一人おりますけれども、そういう事実行為主事とか主任の中に行なわれておる。そういうことが、いわばあなたの言ういわゆる正常な考え方を省として慫慂するために、その背景としてはこういう事実が行なわれている。この点について、あなたは、私が言ったようなことであれば不当労働行為と、この間答弁しているわけですけれども、その点はどういうあれでしたか。
  20. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) その点につきましては、私、特に事が重大だと思いましたので、これはよく再調査させました。しかし、先生指摘のように、ストを行なうというようなことになったらこの次の異動のとき考えるぞと言った、つまり、人事権を振り回しましての行為、発言というものは、私は再調査させました結果、ないという報告を受けておるのでございます。  ただ、ただいま御指摘になりましたように、ストをいやしくも中間管理者である主任等が行なうことについて積極的にこれに加担し、局員を主任が指導し、主事が、監督していく立場にあります者が、一緒にストをやるべきじゃないかというような行為に積極的に出るというようなことがございましたならば、私はこれはやはり本人等がそういう中間管理者の責めにふさわしくない人間だと思うのであります。しかし、これは何と申しましても、スト権奪還という大きな旗じるしを掲げましての行動をしております組合の指令でも指示でもございますから、それにつきましての情状酌量がかりにあるといたしましても、そういったことがはたして管理者としてふさわしいかどうかということになりましたならば、これは私はふさわしくないということを申し上げるほかはないのであります。そういうことは申したかもしれませんが、いやしくも、人事においておまえはこの次降格させるぞ、あるいは左遷するぞというようなことは決して申しておらないという報告でございました。
  21. 横川正市

    横川正市君 どこの局、あすこの局は第二組合ができて、この局には主事主任会ができないのは一体どうしたのかというようなしりたたきが行なわれたという事実についてはどうですか。
  22. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) その点につきましても、佐賀の局の課長がそういうことを申したという先生お話でございましたが、これにつきましても、再調査いたしました結果、さような事実はございませんが、何か酒を飲み合いまして、親しい者同士が議論しているときに、そういうことが出たのではなかろうかということを言った、いうならば、かまをかけて調査したものでございますが、決してそのようなことを言ったということは申しておらないのでございます。
  23. 横川正市

    横川正市君 結局、本人がそういうことを言ったものを第三者が、上からのいろいろ指示、指令であるから、ひとつ明確にメモをとっておこうというので、メモをとって、そのメモを、今度はこういう事実があるのではないかと言ったら、そういうことはありませんと、これは水かけ論なんですか、それとも水かけ論ではないのですか。あなたが、たとえば指揮命令系統のところで、全部文書でやるというわけではなくて、口頭でやるという場合に、各課のそれぞれの責任者がそれを受け取って、あのときに人事局長がこう言ったじゃないか、そう言ったら、今度は人事局長が、いやそんなことは言いませんというようなことが、日常茶飯事のように郵政省では行なわれるわけですか。
  24. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) 詰めてのお話でございますので、私、先ほどちょっと申し上げましたように、発言内容がどちらにも都合のいいようにとれるというような発言をしました場合に、えてして一方の側からはこれまた一方の側に都合のいいようなことになるということはありがちのことでございます。そういったことを前提にいたしまして、その人事権の問題につきましても、人事権をもって第二組合に加入を慫慂するということになりますと、これはもちろん不当労働行為でございます。その点は、私は先日明確に申しました。しかし、ストを行なうようなことを慫慂する管理者はおかしいぞと、管理者の資格はないじゃないかということで議論することは、私は正当なことだと思います。そういったことばが、人事の問題としてとられたというような——とり方がもしあったとすれば、あったんではなかろうかというようなことを先ほど申し上げました。それと同じようなことが、主事主任会がこの組合だけなくて残念だというようなことを、ほかの局を見まして、良識者が相集まって、この主事主任会結成すればいいと思っている管理者がおって、それを口に出したりいたしますことは、それは私は不当労働行為的なものではないというふうに考えるわけでございます。しかし、主事主任会があくまで第二組合として発展すべきだということを申しましたならば、これは主事主任会のそういう形での結成を慫慂するということになってきますと、これはやはり不当労働行為の疑いを持たれてもしかたがないということになるわけでございます。しかし、主事主任会につきましても、私は先ほど申し上げておりますように、慫慂すべきものだと考えておりますので、第二組合とくっつけて考えなければ、先生指摘のような不当労働行為ということにはならないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  25. 横川正市

    横川正市君 さすがに頭のいい曾山さんも、そういうように言い回されると、私は何か結論が違うように思うのだが、内容はいかにもそれを認めているような答弁になっているわけです。これはあとであなた自分でひとつ速記録を読んでみてください。私は事実行為——いわゆるあなたのほうの命令系統の中で、文書だけで命令通達されるのでなしに、口頭の場合もあるでしょう。その口頭の場合に、いつでも第三者が指摘したら、言った者は、いや、それはそうじゃございませんと言わなきゃならないような口頭の指示、指令というものは、これはあり得るわけはないですよ。しかも、あなたのほうでは人事権を握っておるわけですね。相手側は何もないわけですよ。しかも、いつでも組織の中には——これはあなたも意識しておるでしょう。おれが先に局長になるかな、おれは先に課長になるかな、私は先に昇給するかもしれぬし、あいつは不運なやつだ、次官になったらいつの間にか飛ばされたということが、日常茶飯事に省側の中では言われているのじゃないですか。そして、それに当てはまるようなことばが使われたら、これは第三者はどうとるかということです。そして、それを意識してあなたのほうでは言ったのじゃないかと私どもはとるわけですよ。ただ、ことばの言い回しで、言ったことが右にもとれたり、左にもとれたというのじゃないのですね。現実というものはもっときびしいわけですよ。しかも、私どもは現場に入ってみると、こういう事件が起こったところは実に職場の中は暗いですよ、行ってみて。私どもはへんぱな気持ちで局を訪問したことはありませんでした。私もありません。しかし、行ってみたところが、そういう事態が起こっているところは、受け入れ態勢というものがもう個々まるっきり違いますね。ただ、さすがに中央郵便局局長は人格者で、私も会っていろいろ質問したり、話をしましたが、最終的には意見の一致を見て、そして、これはやはりお互いにひとつ注意しようじゃないか、組合側にもそれは十分言おうじゃないかと言って、私ども別れてくるという事態がありました。だから、私たちが現場に行ってみて、話ができないところは何かというと、これを言ったらこうなるだろうといって、いつでも懸念している人がものが言えないのです。いわゆる不利益処分その他が来るんじゃなかろうか、そういうふうに心配している人たちが、これは表面に名前を出さぬでくれと言って書類を持ってくるわけだ。こういう事実、きわめて淡白でなくて、複雑になっているものを、これをどういうふうにあなた方は、一番てっぺんにいて、それをとらえて下部を指導するのか。もう一つは、九州人というものはこういう性格なんだ。これは組合にも言えますけれども管理者にも言えるのじゃないですか。そういう地域で異常的に第二組合発生した。これは慫慂することなのか、本省としては、これはたいへんだ、九州人の性格からいっても、これは将来たいへんな禍根になるぞと言って、これに対する対策を立てるのか、どちらなんですか。私はわずかな期間でありますけれども、九州へ行ってみて、これはたいへんだと思って見てきたのです、その事実を見てですね。これは私がいわゆる被害妄想だということになるのか、そうでないのか。ある人に言わせますと、一部が強いときは一部が引っ込む。今度反対が強いときには、その反対が引っ込んで、いつでもバランスがとれておらないのだ。そんなことで事務が正常化するわけがないじゃないですか。だから、私は、日本全国にあるいまの組織状態というものを十分考えて、そうして異常でないし、正常ならば、別段この問題についてとやかく取り上げようと言っているわけじゃないですよ。いま若松の問題だけを取り上げましたけれども報告と違うのは、たとえば折尾の郵便局組合事務室はどうしたのですか。これは明確に予算の配賦を受けて二万七千円で建てました、現地では局長がそういうふうに言っている。ところが、あなたの返事を聞いたら、自転車の置き場を一部修理したというのです。現地で私どもが聞いてきたことと、あなたの答弁とが違うから、私どものほうでは疑いというものを持つわけなんですよ。その点をもっと明確に、事実なら事実として認めて、起こってきた事態というものは憂慮すべき事態なんだから、これに対しては、両者の立場からどう解決するかということをはかっていくのが当然なんじゃないですか、私はそう思うのです。その点はどうですかな。
  26. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) 再々申し上げておりますように、私どもも別に、ことばはようございませんけれども組合を割りまして、そういう中で仕事を進めていったほうが仕事がしやすいなどと考えておるわけでは全然ございません。これはどこの職場を見ましても、組合が業務の遂行ということにつきまして十分協力をしてまいってさえいきますならば、労使ともども明るい職場の中でしっかりした仕事ができていくわけでございます。ただ、九州におきましては、先般も申し上げ、また、先ほどもちょっと申し上げましたように、従来からとかくそうではなくて、全国ではまれに見るような戦術を行使し、また、仕事も必ずしもうまくいっておらなかった局が多々あった中に、これではならじとして批判者が出てまいりました。その批判者は必ずしもすぐ第二組合ということでなくて、場合によっては無加入なり、あるいは全逓の中にとどまりましていろいろ批判をしてきた者も多かろうと思います。ともかく、そういった批判というものは、私は、九州においては生まれてくるだけの背景があったということを申し上げるのでございます。  なお、若松の自転車置き場の問題につきましても、先般来二万七千円の修繕費を使いまして新築したじゃないかとおっしゃるのでございますが、若松の局におきまして、第一組合のほうとの均衡等から考えましても、必ずしも不当な差別待遇をしたというほどのりっぱな事務室でもないというような報告も受けましたし、私ども、また、先ほど来申し上げておりますように、両方の組合、あるいは組合が三つありました場合等におきましても、その組合のどれを差別待遇し、どれを優遇するというようなことはやってまいっておらないつもりでございます。
  27. 横川正市

    横川正市君 まあ私は現地を見てきたんで、見てきた立場からあなたに質問し、あなたは下部機関から受けた報告答弁をしているのですが、私はこの次の休会になりましたら、委員長にお願いして、九州地方をあなたと一緒に行政視察をしましょう。そのときにどういうことが——まあ具体的な事例というものが出てくると思いますがね。いまあなたの言っているようなことが、かりにそのまま下部に伝わったとしても、下部というものはそれほど正常な業務運行ができるということじゃないと思うのです。  私はいろいろな点で質問をする事項をたくさん持っておりますけれども、ことに、ここに出てきている現在の組織状況の形態から見て、これが異常でないということはあなたのほうでは答弁できないと思うのです、実際上は。そういう具体的な一つ一つ、しかも、一つ一つの局が同一案件やら特殊の案件を持っていろいろな形で介入をしてきております。そうして、その中には各人が名前を出してくれるなと言って私どもに訴えた内容が一ぱいあるわけです。一つ一つこれを示しながら、一体これはどうか、これはどうかと私どものほうで質問をするということも、これはもうどうかと思いますので、いずれ、これは先般もとったと同じような方式で、機会を別に求めてこの問題について論議をしたいと思いますから、何かあなたは所用のようなので、私の質問はきょうはこの程度にしておきます。
  28. 野上元

    野上元君 関連して一つ。きょうは人事局長時間がないそうですから、だから、結論的な問題について一つだけ質問しておきたいのですが、先ほど横川委員のほうから、人事権をたてにとって労働運動を規制するような行為が行なわれておる事実について当局の見解を促した。あなたは、そういうものはきわめて重大な問題だから慎重に調査した結果、事実はありませんでした、こういうわけでしたね。だから、それはもうしかたがないと思うのですがね。もしもかりにあったとしたならば、そのことはあなたとしてはどういうふうにお考えになりますか。
  29. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) 人事権を乱用いたしまして、第二組合に入らなければ左遷する、あるいは、第一組合を出なければ降格するというようなことを、もし——これは仮定の問題でございまして、仮定でもいいからという設問でございますから、もしそういうことをやったとすれば不当労働行為になろうかと思います。
  30. 野上元

    野上元君 それで、私の手元にも不当労働行為に及ぶと思われる資料がたくさん送られてきているわけです。そして末尾に、いついかなるときにも証人台に立ちます、こういうふうに言われているわけなんです。したがって、これは事実だろうと思うのです、私は。ところが、あなたのほうで調べたところでは、事実ではないのだ。事実はそういうことはなかったのだと言われるわけですから、それは特定の場所を調べてそういうことを言われたと思うのです。不特定多数のたくさんの事実が今日ある。この事実をあなたは認められないけれども、そういう事実があることだけは明らかなんです、私のほうに来ているわけですから。そういう重大な問題が起こっているのだから、あなたのほうとしては、これは不当労働行為で下部の管理者が処罰されることが起きるかもしれないわけですから、可能性があるわけですから、そういうことがないことを未然に防止することがあなたの職務だと思います。したがって、最近かかる事例がひんぴんとして起こっているという報告を聞く。したがって、そういうことのないようにという強力なあなたは指導文書を出される気持ちはありますか。
  31. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) いま御指摘のようなことはなかろうというぐあいに信じておりますが、先生のほうでそういう疑いを持たれるようなことがあるような資料が来ているというお話でございます。したがって、それをちょうだいいたしまして、その結果、もう一ぺん調査をさせていただきたいと存じます。
  32. 野上元

    野上元君 私はその事実を調査してくれとは言っておらない。事実は先ほど来調べてみたら、やはりなかったということになりかねないわけです。それだけで不問に付されてしまうと困るのです、どんどんどんどんあがってくるわけですから。したがって、こういうあがってくる事例があるのだ、報告があがってくる事実がある。これはやはり当局としては、十分に考慮しなければならぬ問題なんだから、事前にあなたのほうとしては事故を防止するために、強力な指導文書を出して、そういうことがかりそめにもないように、こういう指導文書を出すのが、ぼくはあなたの役目として当然のことだと思うのですが、それを出される気持ちがあるかどうかというのです。
  33. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) 私ども、会議のつど、不当労働行為はするなということを申しておりますし、また、人事権の乱用というような形での不当労働行為などは特に戒めております。したがって、いまさら私は文書を出す必要はないと考えておるのでございますが、先ほど申しておりますように、先生のほうからは、そういう疑いを持たれるような事実があるということでございますので、もう一ぺん調査させていただきまして、決して、私どもそういう事実があったのを隠して、曲げて報告するようなことはいたしません。そういう事実に立脚いたしまして、その事実があり得るならば、もちろん私は文書等で指導することは差しつかえないと思っております。
  34. 野上元

    野上元君 これ以上論争しません。ただ、重大な問題なんだから、一ぺん警告しておればそれで事足りるのだということではなくて、こういうことなら未然に防止できるなら、あなたのほうは手数を省略しないでどんどん強力な指導をされるように、特に注文して終わります。
  35. 横川正市

    横川正市君 これは私のほうからあとで局名を全部お知らせしますが、その局で郵政局管理課を通じて流された経費の使用結果、これをそれぞれ仮領収書その他をつけてもいいですから、それをひとつ出していただきたい。  それから最近の労務情報、これをあわせて資料として出していただきたい。
  36. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) この点でございますが、最近の労務情報と申しますのは、省で出しております労務情報のことも含めまして出したいと思います。
  37. 横川正市

    横川正市君 これは熊本郵政局管内で……。
  38. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) その点につきましては、私ども、決して不当労働行為などを隠すような意思はさらさら持っておりませんし、また、そういうような指導も労務情報でいたしておらないのでございますが、裁判等におきまして、証拠書類の提出というような形での請求がございました場合にも、実は出しておらない種類のものがございます。したがって、そういうものにつきましては、御了解を得まして、遠慮さしていただきたいと思うのでございます。
  39. 横川正市

    横川正市君 公に出されておる文書ならいいでしょう。それでいいでしょう。
  40. 曾山克巳

    政府委員曾山克巳君) わかりました。そういう点につきまして御相談申し上げます。  同じく一番の仮領収額の云々というお話につきましても、さような趣旨で御了解願います。
  41. 久保等

    ○久保等君 郵務局長が見えておりますから、ちょっと気のついた点で、郵便法の改正法案の審議に必要な資料を二、三要求します。別に答弁は要りません。  すでに衆議院のほうでも出されたようですが、三十六年に一部郵便料金の改定を行なったようですが、その三十六年度以降今日までの収支状況を年度別にひとつ出してもらいたい。これは資料すでにあるようですから出してもらいたい。  それから政令、省令にゆだねておる面がいろいろあるわけですが、これを全部、新しく制定をする予定の政令、それから省令についてはその案をひとつ全部出してもらいたい。  それから、郵便物の運送を委託しておるわけですが、それはもちろん会社なんかも相当数あるようですが、各会社の資本金あるいは委託しておる内容ですね。それから、そこの会社の資本金だとか、それから職員数、従業員数ですね、そういったようなものを資料として出してもらいたい。気のついた以上の点、ひとつ委員長のほうから。
  42. 田中一

    委員長田中一君) 郵務局長いいですか、いまの資料いつごろまでに。
  43. 久保等

    ○久保等君 できるだけ早く。
  44. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 最初の収支状況の問題でございますが、実は総掛り費に関連して収入と支出がなかなかすっぽり出にくい点もございますから、直接郵便費の支出という形で整理さしていただきたいと思います。  それから第三の運送委託の契約をしておる会社ですが、実はこれは非常に世界じゅうのかなりのおもな船会社とか航空会社とか——航空会社は大体外国の郵政庁ですが、船会社などがございますが、その出し方につきましては、久保先生のところに参りまして、さらにお打ち合わせをした上のことにさしていただきたいと存じます。
  45. 田中一

    委員長田中一君) 他に御発言もなければ、本件に対しては、この程度にいたします。  午後一時三十分より再開いたします。    午後零時五十九分休憩      —————・—————    午後一時五十分開会   〔理事光村甚助君委員長席に着く〕
  46. 光村甚助

    ○理事(光村甚助君) 休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。  郵便法の一部を改正する法律案について質疑を続けます。
  47. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 まず大臣にお伺いしたいと思いますのは、この郵便料の値上げという問題は、佐藤内閣の一連の物価値上げ政策の一環であるというふうに世上一般に受け取られているわけですが、きわめて、何といいますか、政治的公害とでもいいますか、非常な迷惑をこうむっているのは国民であります。かつて国鉄の運賃、郵便料金が値上がりしましたときに、某新聞にこういう川柳が出たことがあります。「ふるさとは遠きにありて思うもの」というのが出ましたが、今度は国鉄の運賃が上がった、郵便料金が上がった、いよいよふるさとというものは遠くなった。特に、第一種、第二種の郵便物を値上げしたということによって心にくいを打ったことになるということで非常に憎い政治であるという投書が某新聞に載っていたことがあります。この値上げムードをことさらに政治の政策として打ち出してくる、一体その根拠はどこにあるのか。いま世界各国もインフレ傾向に悩んでいるときに、まっ先に取り上げてその解決に当たられたたとえばフランスにおいてもイタリアにおいても、物価値上げを抑制するということに全力をあげていた事実がありますが、日本政府に関しては、逆に政府みずからが値上げムードをあおっているという政策をとっている根拠は一体どこにあるのか、この点をまず最初に大臣にお聞きしたいと思います。
  48. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 御承知のように、物価抑制を非常に心がけておりますのは、御指摘のように、ことにヨーロッパに多い。それらの国でも郵便料金については相次いで値上げせざるを得ない状態になっている。結局、どこの国で見ましても、人件費というものが大部分を占めておるところで、人件費をどこまでも押えっぱなしにしていくということは政策としてとり得ない。そうすると、その無理がどこかで起こってくる。昭和三十六年に値上げをいたしましたが、これは当時の一〇%の急激な人件費の上昇で百億足らずの金額というものはなくなってしまった。そういたしますると、郵便料金の引き上げというものは昭和二十六年以来初めて、十五カ年ぶりに行なった。もちろん、公共料金を上げるということは一番最後にいたすべきことでありますが、料金を上げなければ、そのために必要な給与も見ることができない、この不合理というものは許されないことであります。したがいまして、私自身就任いたしまして、電波法、放送法においては方針をきめながら、値上げについては最後まで他に方法がないだろうかと検討する途中においても、でき得る限り広く各方面の声を聞いたつもりであります。そうして、その中で、これは決して郵政当局の名誉じゃございませんけれども、遅配、欠配、これは困る。とにかく、郵便は戦前までの水準に行っていない、これを何とか戻してほしい。しかしながら、いまお目にかけておるような程度の料金の値上げについても、これはもう心理的な影響等ございます。ございまするけれども、一般の家庭生活を営む方については、消費者物価指数等の示しておりますとおりに、それほどの国民生活に影響はない。したがって、声としての反対論ももちろん軽視をいたしませんけれども、それ以上に私は随所で伺った郵便の近代化、合理化を進めなければ、それに応じたものであるならばがまんができるが、そうでなくて、ただの穴埋めだけでないことを期待する、こういう御要望にごもっとも、なるほどだと思いながら耳を傾けて、そして、このたびの料金の改定をいたしたわけでございます。
  49. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 いまの大臣の御説明を聞いておりますと、人件費に食われるとか、あるいは近代化、合理化といったようなものに金がかかるとか、サービスの向上のためにやむを得なかったという説明でありますが、それは政府が値上げをするときの提案理由の説明にあることであって、私がここで聞いておるのは、そういうのがあるにもかかわらず、なぜ値上げをしなければならないものと値上げをしなくてもいいものとの区別なしに、全体をひっくるめてこういうふうな値上げの方針案を出してきたのか、そこに問題があると思う。たとえば、あなたのおっしゃったような立場で言ってみましても、第一種は値上げの必要は現在でもない、第二種に若干の赤字が出ておる、つまり、それぞれの種目別の実情を見ましても、値上げをしなければならないというものとそうでないものとが区別されるにもかかわらず、一般的に郵便料金の値上げという形で問題を投げ出しているところに、この値上げ案の一つの性格があると思う。この具体的な内容については後ほど御質問したいと思いますけれども、いま言われたような理由によっても、必ずしも郵便料金のすべてにわたっての値上げを行なう必要はなかったのじゃないか、この辺のところは、いまの大臣説明では一般論過ぎて、当委員会として問題を具体的に追及していかなければならない性質から言って、いささか抽象的過ぎるんじゃないかという感じがいたしますが、この点はどうです。
  50. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 確かに、一種については、原価よりもよけいな料金をきめておる、しかし、お考えいただきたいのは、郵便事業というものは一種の特別会計、二種の特別会計でなくて、一種、二種、三種、四種、今度五種を統合いたしまして、それが寄りましたものが郵便事業なんでありまして、一種だけの郵便事業というものの特別会計、三種だけの特別会計というようなものは成り立たないことは、当委員会の方々はよくおわかりのことであります。そうでありますと、われわれといたしましては、郵便事業全体として、確かに、過般も御指摘がありましたように、三種あたりで、もう少し直接経費くらいに近いものにすべきじゃなかろうかというようなことは考えなければいかぬ点であります。しかしながら、全体としてこれが非常にほかのものまで加えて卒業会計を見ようとするなら別でありますが、同じ郵便であります。その中で、たまたま今度一種と五種をひとつ統合いたしましたけれども、お説のように、一種の特別会計、二種の特別会計、三種、四種、五種の特別会計というようなものはできようがないのであります。そうすれば、郵便事業全体としてどう考えてまいるか、一種については、確かに国民の御負担よけいにかかりますが、今度二十五グラムに上げましたし、場合によりましては、いままでよりもかえって格安になる、そうして特に航空機などを使っての送達もいたすので、サービス全体の上で、それが妥当かどうかという御判断も国民にお願いしなければならないことでありまして、そういう点について私どものPRがなお不十分な点がございまするから、その点は指図もいたしておりまするが、別々に考えて、そうして、それぞれでそろばんを合わせていくようにという、御説明ではいたしますけれども、事業会計を持ちます上では、とうてい考えられないことというぐあいに御理解願いたいと思います。
  51. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 今回の値上げの一理由としまして、今後のつまり郵便物の取り扱い物数の推移の問題について、その数字が出ておりまするが、この数字の根拠は一体どこから出てくるのでしょう。この数字の根拠というものは非常に疑惑に包まれている。むしろ、科学的な根拠というものはないのではないかという疑問さえ感ずるものですが、これをひとつ具体的に御説明願いたいと思います。
  52. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) これは確かに、郵便物数の傾向というものは、まことに一つのむずかしい問題でございます。私はよく日本の郵便物数のことを考えますると、日本国民の所得の問題と似たような考えを持ちます。人口が非常に多うございます。全体の物数を見れば、現に九十六億通、すでに百億通に達する。しかしながら、一人当たりになると、ぐっと減ってくる。それで、百億通をこす程度の郵便物を扱う国で見ると、確かに郵政審議会で考えられましたように、鈍化の傾向を来たしている。郵政審議会は三・五%と考えられましたが、三%程度鈍化を、アメリカにいたしましても、イギリスにいたしましても一、いたしておる。そうすると、その程度のものをとらえたほうが確実ではないかという見方がございます。しかしながら、一方、ちょうど私が先ほど国民所得と申しましたようなぐあいに、一人当たりの物数になると、著しく日本は低い。ことに世界的な傾向として、はがきというものよりも、封書で、信書で出しまする場合が——それは人に読まれないような封書で扱いますことが一番普通でございましょう。その占める比率というものは非常に高い。そうして、日本ではとにかく一人当たりの通数が少ないだけに、三十六年でございましたか、七・六%、従来も五%の下になったことはない、こういうような傾向をたどって今日に至っております。そういたしますると、三・五%という郵政審議会の見方はいかにも低いのでございます。合理的な根拠と申しますよりも、これは一体国民が何通書くことが日本国民の生活として普通であるかということで、この見当がなかなかつかないものでございます。しかしながら、三十六年度では対前年比七・六%、三十七年度の五・七%に至りますまで、とにかく七%、六%程度の漸減をいたしておるが、その程度を維持しておる。そういたしますと、四十一年度で料金の改定によって幾らか物の減るのを見ましても、四十一年度は特殊な現象である。四十二年度でそれが復活して、四十三年度で従来の七・六%ないし五・七%という実績をおくならば、平均五%ということはまず統計的に見て正しいのではないだろうか。やや手がたくは見ておりますが、その程度の手がたさは維持できるものと、そういう考え方で政府案を考えた次第でございます。
  53. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 政府案二八・八%値上げということの一つの基礎は、年率五%の増加ということを基礎にされたと、こういうふうに理解してよろしいのでございますか。
  54. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 二八・八%の値上げをいたしますならば、それによって、ただいま申しましたような四十三年度以降平均五%という物の増加を一方で期待しながら、五カ年間の収支の見込みが立つ、こういうぐあいに御理解を願いたい。
  55. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 そういたしますると、政府原案の基礎になる物数の推移ですね、五カ年間五%というこの推移と答申との間にずいぶんの開きがあると思いますが、これは一体どういう原因でこうなったのですか。
  56. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) こまかいことは郵務局長からお答えいたしまするが、先ほど申しましたように、郵政審議会は非常に御苦心をいただきまして、ことに現実に四十年度の実質赤字五十六億を持った予算を見て、そうして、悪い条件というものを考えながらいたしましたときに、先進国の物の三%というところで大体安定をしておるという状態で見られた三・五%というのは、私はものを手がたく見るというほうであれば、一つの見方だと思います。そういう見方に立って郵政審議会は判断をされました。私はその判断が間違っているとは思いません。しかしながら、国民に公共料金として御負担を願う場合においての政府の判断としては、実際期待できる物のほうを土台にすることがこれが当然でございまして、安全率だけを見てとるわけにはいかない。でありまするから、期待できる物でありまするから、これは郵政職員全体の非常な企業への努力というものを期待いたさなければなりませんけれども、従来の経験から期待できる数字を土台にするということは、これはこうした公共料金の決定の際に当然とらなければならない態度である、その態度の違いとお考えいただきたいと思います。
  57. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 それはちょっと受け取りかねる御答弁だと思うのですね。郵政審議会のほうの答申は手がたく見て三・五%、これにはこれの一つの理由があるんだ。しかし、政府としては公共料金の値上げというような意味合いもかねて、それを五%というふうに数字を若干ふくらませて原案なるものをつくった。そういたしますると、数字の根拠というものには科学的なものがなくて、政治的な数字だ、こういうふうに受け取っても差しつかえございませんか。
  58. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 数字に科学的も政治的もないんです。郵政審議会が言いましたときには、私がさきに説明したように、ただ手がたくというのじゃなくて、先進諸国の物数百億以上に達しておるところは三%で落ちついておるから、外国の例をとりますということを言うておるのです、郵政審議会は。それは一つの理由ですよ。しかし、外国の例をとるよりも、日本の実際の数をとるべきではないだろうか。ただの手がたさだけではない。外国で百億通をこえるところの諸国の例を見たというのでありまして、それが別に科学的というのでもなくて、現実の数字をとらえたのです。しかしながら、それは外国の現実の数字でありまするから、われわれは日本の実際の物数をとらえたのであります。これだけであります。別にどっちが科学的で、どっちが政治的というのじゃなくて、ただ、ありのままの経験としてあらわれてくる経験上の数字というぐあいに御理解を願いたいと思います。
  59. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 ここは意見の分かれるところです。私は、郵政審議会に郵政当局資料を全然渡さないで、また、十分な説明もせずに郵政審議会が独自に自主的に三・五%という数字をはじいたとは理解しがたい。いままでのこういう審議会の諸過程を見まして、当然そこには今日までの物数の変化の数字——外国の例は一つの参考でしょうけれども、日本の郵便料金を決定するのですから、日本の実情について審議会が結論を下し得るに足る資料、並びに説明はしたと思います。それはなかったのですか。どうして審議会が外国の数字を持ってきて三・五%の根拠にしなければならないような羽目におちいらざるを得なかったのですか。そこのところがよくわからない。
  60. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 羽目におちいるとか、おちいらぬとかおっしゃいますが、そうではなくて、あらゆる材料をさらけ出すのです。審議会にあらゆる材料をさらけ出して、そうして委員の皆さんで数字をおとりになる。実際の傾向の数字もお目にかけました。そうして、それは審議会ですから、外国の例も、いろいろな材料も出せとおっしゃるから、それはそのまま出しますよ。出します。しかし、その御判断のところは審議会がやる。ほかの審議会でもそうだと思いますが、郵政審議会のほうを、ある意図をもって引っ張るというなことはいたしませんし、それから私どもも、十分違った角度から考えてくださることは正しいわけですから、いろいろ御要求のあった材料を出してみる。外国の先進国ということばは語弊がありますが、百億通以上の国の例などをとられるのも、これも一つ考え方だと思っております。思っておりますけれども、決してどっちでなければいけないというようなことも考えておりません。ただ、私どもは、やはり実際に国民の方が出してくださる数字というもののほうが実情に合うだろう、こういう判断を下しただけでございます。したがいまして、郵政審議会も幾つかの案をおこしらえになって、こういう考え方もある、こういう考え方もあると、おこしらえになれば、長い目で見ればどこかで日本の郵便というものも、百億通をこす多くの郵便を扱っている数のパーセンテージの安定した水準にいくであろうというようなことは私どもも考えます。しかしながら、いまの目の前の問題としては、かつ、郵政審議会が一つの案としておまとめになりましたときに、そうした比較的低い数値をおとりになった。これは私もそれなりのお考えであったろうということを申しておるのでございまして、そのことの別に価値判断をどうするという種類のものではなかろうと思っております。
  61. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 そうすると、まあ郵政審議会の出した答申というようなものは、別に価値判断の材料にならないというようなことになるわけなのですけれども、いまの大臣答弁から言っても、私はしかし、おかしなことがそこにあるのではないかと思う。審議会が答申をしたのはたしか十二月の九日だったと思うのですが、郵政省はその前に昨年の十一月二十七日だと思いましたが、郵便料金の値上げ案を公表しておるわけです。これは一体その間の事情はどうなのですか。この十一月二十七日のときに郵政省自身が出した値上げ案の数字の根拠となるべきいま申しました数字の根拠がやはり五%だったのですか。
  62. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 十一月二十七日には、すでにその前に十三回くらい郵政審議会をなさいました。それで答申と同じような案を当時の小委員長から私のところに御報告がありました。書面でしてもよろしいが、書面の煩を省いて口頭で言うからということでございました。それから郵政審議会の資料——当時は郵政審議会の資料だけをもとにいたしまして、経済政策会議を開きまして、その経済政策会議の席上、こういう大体の中間報告をいただいておる、したがって郵便料金はどうしても値上げせざるを得ない、そして値上げせざるを得ないということと、値上げの幅はでき得る限り低位に押えていく、これだけを十一月の二十七日には決定いたした次第でございます。
  63. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 だから、そのときに、十一月の二十七日に料金値上げ案を公表したわけでありますから、そのときには、一体見込み数字というものの比率はどうであったかということを聞いているのです。
  64. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) そのときには、ただいま御説明しておりますような数字はございませんでした。それが決定いたしましたのは一月十一日の郵便料金の正式決定の閣議の際であります。先ほども申しましたように、十一月二十七日には素材といたしましてはいろいろな説明はいたします。いろいろな説明はいたしますけれども、素材としては、郵政審議会の中間的な御報告はこれこれであるから料金の値上げをせざるを得ない、しかし、各種の公共料金がおっしゃるようにいろいろ上がるときでありますから、できる限り低位に押える、こういうことだけをきめました。したがいまして、そのときの数字というものは、閣議で決定いたしましたときには、数字というものはございませんでした。
  65. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 したがって、この値上げの根拠になるべき物数の推移の比率、この数字は十一月二十七日のときには検討されなかった。しかし、値上げは必要だということだけを先にきめたと、こういうふうに、まあ大臣もうなづいているようですから、そういうふうに考えますが、そういたしますと、つまり、値上げ案なるものを先にきめて、これにつじつまを合わせるためにいろいろと数字を工作したというように一般的にとられても、いまの説明ではやむを得ませんな。当然こういう公共料金を値上げするには値上げするに足るところの資料がすべて公表をされて、しかる後に政策を決定するというのが普通のたてまえですが、まず値上げというものを先にきめて、それに数字をあとから追っかけていくということは、私が先ほど申したように、この数字には科学的な根拠がない、いわば一種の腰だめ的な数字です。こういうような質問者の根拠をくつがえすに足るような御説明とは受け取れませんが、そう理解してよろしゅうございますか。
  66. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 御理解なさるのはかってですけれども、私の申しておりますのは、どういう郵政審議会の資料をとっても、私ども資料をとっても、どうしても郵便料金値上げをせざるを得ない。このことはお察しいただけると思いますが、十一月二十七日という時期は、郵便料金を値上げすべきか、値上げしないほかの方法でとにかく四十一年度の予算を組まざるを得ぬかという境のときであります。そうして、いかような資料をこしらえても郵便料金の値上げをせざるを得ないのだという事実のはっきりした状態でありまして、それで、あとはやはり正式な郵政審議会の御答申をいただいて、そうして政府の部内において関係機関の間で検討をいたして、そうしてきめるという、ごくあたりまえの順序を踏んだと、こういうことで、ごく平らかにずっと普通の順序をいたしましたが、何ぶんにも、私が就任いたしまして郵便料金というものに取り組み始めまして、他の国鉄の料金等に比べますと、確かにその間の期間が短うございました。短いがために、一つ一つのステップをわりに短い時間に縮めざるを得なかった。ちょうど予算の編成期でもありますために、そういう手順になりましたので、それだけのことでございまして、したがいまして、郵便料金の値上げというものがどういう推移でしたかということは、一月十一日の閣議決定の際の数字が政府の判断であると、こういうぐあいに御理解いただきたい。
  67. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 政府の判断は、確かに一月十一日の閣議決定でありますね。それはわかりました。しかし、その一月十一日の閣議決定に至るまでの間に、物数で、絶対数の物数の比率もあれやこれやととにかく変わったという事実だけは、あなたも認めるわけですから——認めざるを得ないわけだ。事実で出ているのです。私はその数字をいまここで読んでもよろしゅうございますけれども、答申の場合には、昭和四十年度の見込み物数が九十六億通だろう、四十五年度には約百十六億通であろうと、年間増加としては四億通だ、こういうことが出ているわけです。ところが、郵政省自体が出した数字によれば、それとは違っているわけですね。四十五年度には百二十二億になる。そうして年間増加は約五億通だ。年間増加が一億違うということはたいへんなことです。ですから、こういうふうに郵政審議会がみずから独自に数字を出すということは、これは不可能なことだと思うのですよ。やはり郵政当局から出された数字に基づいて検討した審議会の見込み数と、郵政当局みずからが出した数字とが、一カ月かそこいらの間にこういうふうに違ってきているという事実は、私は値上げ案が先に発表されたあとで数字の問題をあれこれといじくった結果、こういうふうに一カ月もたたない間に年間の増加が一億通もの差が出たりするということになってきたのではないか、具体的な数字が変化をしてきた推移を見れば、そういうふうに言わざるを得ないと思います。しかし、それだけではございません。これは郵務局長を目の前に置いてたいへん失礼でありますけれども、あなた自身が衆議院で答弁なさった四月七日の速記録の一節を取り出して見ましても、いかにこの伸び率の数字について自信がないかということがうかがえるわけです。「四十二年度対前年比四・五%を底にいたしまして、四十三年度以降〇・五%くらいずつ持ち直していくという見方をとっている次第でございます。」、これだと四十五年度六%になるわけですね。郵務局長です。これは衆議院速記録のナンバー二十、ページ五に出ているあなた自身の発言です。ですから、この数字の問題については、こう修正され、訂正されていったという過程がずっと出ているわけです。これはどういうことですか。ですから、このことについては、先ほど大臣もおっしゃったように、閣議決定以前の資料と、またその後におけるところの資料との間に、そういう政治的な考慮に基づく操作が行なわれたのじゃないかという疑問を持たざるを得ない。これについてひとつ御答弁願いたいと思います。
  68. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) ただいま御指摘になりました速記録、四十三年度五、四十四年度五・五でございますか、四十五年度が六%になるというお話でございましたが、もしそういうふうに書いてあるのでしたら、私が答弁いたしましたのと少し違っているのじゃないかと思います。私は、四十一年度対前年比四・五、四十二年度対前年比四%、四%を底にいたしましてあと〇・五%ずつ上がってまいりますというふうにお答えしたつもりでございますから、もしそうなっておりましたら、それはどこか行き違いがあったことだろうと思います。  先ほどのお話の郵政審議会で答申した際の裏づけになっている数字と、それから二八・八%、政府案決定する裏づけになっている数字の食い違いでございますが、大臣、先ほどお答え申しましたように、実はまあ四十年度当初予算五十六億円の不足というものを背景にして、今後どういうふうに事業収支というものを見込んでいくかということについての郵政審議会の御判断の資料、私どもも当然ある程度参画しましていろいろのものをお出ししたわけでございます。その際、選挙郵便を除いた国内郵便の増加率をずっと数えてまいりますと、三十六年度が七・六%、対前年比です。三十七年度が七・四%、三十八年度が六・七%、三十九年度五・七%、そういうものを経過しまして七・六、七・四、六・七、五・七というようなものを経過しまして四十年度を迎えたわけでございます。年度当初の四月−六月ころの郵便物数、これを前年度と比較いたしますと五%になかなか達していない、四%台のような状況でございました。  そこで、今後の四十一年度以降の推移を見まするのに、外国のたとえばアメリカ、イギリスは、ともに過去六年間の平均伸び率が二・六%でございます。それから、ドイツが三・四%、フランスも、これは統計上のあれを別にしますと、やっぱりそのくらいということでございまして、そういう国々は伸び率でいずれにしても三%前後になっている。日本の郵便というものも、だんだんもう戦後の復興あるいは経済成長を経由してそういう段階に入ってきたのではなかろうかという気持ちが、私どもにも、それから委員の方々にも相当ございました。あまり甘く見ても事業の今後の収支を危うくすることにもなるということも若干配慮は——これはある程度配慮はもちろんされまして、そういうただいま申しました外国が三%前後、日本も七・六から始まって五・七まで下がってきて、しかも、年度当初の数ヵ月は四%台だということを背景にしまして、四十一年度はおそらく対前年比四・五くらいになるのじゃないか。それから、さらに四十二年度が四%くらいになり、四十三年度以降は、日本は外国と違うからまだ一人当たりの郵便物数もかなり低いところにもありますので、その傾向からいっても、おそらく三・五くらいのところを底にして横ばいくらいに——悪くても横ばいになるんじゃないかというような考え方をしたわけでございます。その後、政府案の決定はまあ一月でございますが、そのころまで手元に集まりました数字、大体十月ころまでの郵便の物数を見ますと五・四——五%くらいのところまでずっと少し戻ってきております。全体の景気や、いろいろな世の中のあれはまだ下がっているものが多い中で、大体五%台のところで、五%強のところでずっととまっているというようなこと、しかし、三十九年度の五・七%よりもまだ下がっている。最近推計いたしましたところでは、結局、四十年度は前年比五・三%の増加ということになったわけでございます。五・七から五・二くらいのところへ来ている。しかし、予想よりも少し強目になっているということでございます。したがいまして、今後の四十一年度四・五という面は、これは予算の作業とも関連しまして、大体そこらが妥当だろうということできめたわけでございます。それに若干の利用減などを見込みまして、四十二年度については、なかなか見方がむずかしいところでございますが、私ども事業改善のための努力、あるいは近代化のいろいろな施策というものが、四十一年度の後半からだんだん展開されますけれども、それがほんとうに事業に定着し、実を結ぶのは、おそらく四十二年度中ではなかろうかと、それが一般の認識もあり、郵便に対する信頼を回復し、物数にもあらわれてくるというのは四十三年度ごろからではなかろうか、四十二年度の四%を底にしまして、四十三年度四・五、四十四年度五、四十五年度五・五というふうに、ほぼ五%台まで戻ることは確実ではなかろうか、そういうふうに考えたわけでございまして、その食い違いの問題は、一つは、先ほど大臣も申しましたようなこと、それから四十年度当初の落ち方がわりあいに激しかった、その後かなり持ち直してきている、そういう状況などが背景になっていたわけでございます。  なお、先ほども大臣から申しましたが、一人当たりの物数が、アメリカの三百数十通、日本の九十数通というようなこと、あるいはフランス等が百五十通をそれぞれこえているということも、これは最初の若干固く見ると申します段階では、やはり生活様式も相当違うので、日本では電話が先に発達してきた。で、しかも、郵便の相当の混乱というものもあって、その間に電話が非常に発達したということなども相当考慮しなければならないというふうに考え、その考え方の程度は少し持ち直してきました場合に、ある程度やはりまだ底力がある、若さを相当残しているのだ、われわれのやり方によれば、郵便事業というものも相当回復できるのだ、そういうような見方、そこらの若干の気持ちの違いというものがあることは、まあいなめないと思いますけれども、そういうふうな事柄を背景にしまして算定したわけでございます。
  69. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 私が先ほど衆議院の速記録で申し上げたのは、あなたは四十二年度対前年比四・五%を底にしまして四十三年度以降〇・五ぐらいずつなっていくということを答えているわけです。そこまでは答えている。したがって、あなたの計算はそのまま算術的に引き伸ばしていけば、四十五年度は六%になる。四十五年度六%になるというのは、私の見方で、速記録に載っているわけではございません。しかし、私は、この見方も非常に根拠がない。私どもが日本の郵便の一体伸び率をどう見たらいいか。これは私は専門家ではございませんから、もし皆さんのおっしゃっていることが正しければ、私もそれに従いたいと思いますが、私どもが考える場合には、やはり過去十年間あるいは過去五年間、少なくともその推移を見て伸び率をきめるというのが妥当ではないか、こういう形で見てみますると、おたくで出された資料に従っても、十年間の年平均は七・五%近く伸びていますね。七・五%の伸び率を示しています。最近五年間をやってみましても、七・二%の伸び率を示している。これは少なくとも過去五年間ないし過去十年間の実績に基づく伸び率ですから、この伸び率は今後五カ年間においてもそう大きな変動があり得る数字ではないと考えるほうが私は常識的だと思う。妥当だと思うのです。そう見るべきだと思うのです。で、なぜ一体、答申の段階で三・五%という数字が出たのか、あるいはまた、一月段階でも、先ほど大臣答弁なすったように、五%という低い数字が出たのは、おそらくは三十九年度の落ち込みですね。三十九年度の落ち込みが一つのよりどころになっていたのではないかと思いますが、三十九年度の落ち込みは、確かに四・二%前後で伸び率は落ち込んでいますが、一体四十年度はどうですか。もうすでに五月の半ばですから、四十年度の私は物数も、また伸び率も出ていることだと思いますが、四十年度はいかがですか。
  70. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 先ほどの衆議院の速記に、もし四十二年度が対前年比四・五%というふうに出ていたのでしたら、私の言い違いだったと思います。先ほど申し上げたとおりのことを私どもは考えているわけでございます。  それから過去十年間あるいは五年間をとってみても、七%をこえる増加率ではないかというお話でございます。それにつきましては、私どもは、終戦後非常に郵便物数が落ちましてから、一人当たりにしましても、総体としても非常に落ちましてからの回復率というもの、これが相当な率でございます。戦後の復興と、それから日本経済の異常な伸びというものと、やはり相当結びついた数字であろうと思われますし、先ほど申しましたように、三十六年度七・六からずっと三十九年度の五・七まで下がってまいりましたのは、単に景気が悪くなったということばかりでなしに、三十六年度からもやはりいろいろな起伏があったかと思いますが、一貫しまして私が申し上げるのは、選挙とそれから外国郵便を除いております。お手元の資料と若干食い違っておると思いますが、そのような数値を省いたほうがよいという見地からそれを除いたりしておりますが、そういう形から見ますと、単に景気が悪くなったというばかりでなしに、日本の郵便がだんだんそういう方向に来たと考えざるを得ないというふうに私ども考えるわけです。ただ、その程度をどこまでこれから落ちていくのかという考え方で、時点とともに少し考え方が変わったというのが実情でございます。
  71. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 あなたの、これは衆議院の速記録にちゃんと書いてある。「現在私ども考えておりますのは、政府の景気対策あるいは物価対策等もからめまして、四十二年度対前年比四・五%を底にいたしまして、四十三年度以降〇・五%ぐらいずつ持ち直していくという見方をとっている次第でございます。」とちゃんと書いてある。まあいいですよ。これはこういう衆議院の速記録をもって質問しているのですから、そういうあなたの言い違いならそれでよろしい。  しかし、私の聞いているのは、こういう、つまり過去十年間の実績を見て七・五%、あなたのほうはパーセンテージは出ているのですから、それはすぐわかることなんです、計算すれば。過去五年間七・二%、この実績をあなた方は今度の答申においても、値上げにおいても、この率をほとんど無視とまで言わないのだけれども、重要な資料にしてはじき出さなかったということが私にはわからない。だから、私は四十年度の見込みはどうだと聞いているのです。確かに三十九年度は落ち込んでいます。しかし、三十九年度はどういう事情で落ち込んだのかは、いろいろそれは検討を要しましょう。三十九年度には一般的には選挙もなかった年でありますから落ち込んだのでしょうけれども、四十年度の見込みです。もし実績がなければ、見込みでもけっこうです、出してください。
  72. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 三十九年度の落ち、先ほど私がお答えするのをちょっとそのままあれしましたが、三十九年度の落ち、対前年比四・二%——なまの数字では四 二%が出ております。これにつきましては、先ほど私申し上げましたように、三十八年度に統一地方選挙がありまして、普通の、郵政省が自治省等から繰り入れます形式上の選挙郵便物、ことばがあまり適切じゃありませんが、繰り入れます選挙郵便物の関係の物数、そればかりでなしに、非常に選挙に関係したと思われる郵便が出た。ことばが適切でなかったらまたあとで訂正いたしますけれども、そこらをある程度修正して数字を申し述べたわけでございまして、なまの数字で申せば、三十八年度対前年度比八・一、三十九年度は逆に前の年がふえましたために四・二となっております。修正いたしまして考えますと、三十八年度が六・七、三十九年度が五・七というふうにやはり漸減の傾向をたどっておる。それから四十年度でございますが、これは実はまだ確定的な数字までまとまっておりません。ちょっとあと一カ月余りかかると思いますが、現在のいままで集まりましたものの二月末までのものを推計しまして、例年の二月比対三月比を加えて計算いたしますと、大体五・三%くらいになるのではないかというふうに考えております。
  73. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 私の質問は、四十年度の見込みですが、あなたはいま五・三%とおっしゃった、これはおかしいじゃございませんか。たとえば、あなた方が出した数字からはじいてみても、五・三%という数字は出てきません。資料から見たって、それは三十九年度が八十八億通で、四十年度の見込みが九十六億通だと出ているじゃないですか。この数字から逆算したって、あなた、もうパーセンテージは出るわけです。——答える前に、私の出したパーセンテージを聞いてください。三十九年度は八十八億通というのは、これは実数です。四十年度が九十六億通というのは、これは見込みです。この差額をあなた、パーセンテージに直してごらんなさい。八・七%という数字が出るじゃないですか、四十年度はすでに物数においてそういう見込みをしているのですから。したがって、四十一年度四・五という数字の根拠というものは全くないのです。ないと言わざるを得ない、四十年度がこうなっていますから。だから、三十九年度は若干落ち込みましたが、四十年度は持ち直した、少なくとも八%の上昇率というところまで持ち直した、こう見るべきだ、どうですか。
  74. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 三十九年度八十八億通といいますのは、これは有料だけの累計でございます。そのほかに無料郵便物、内部で事業用に使いますものが二億通余りありまして、しかも、四十年度におきましては、当初の予想九十六億通でございましたが、現在推計いたしますところでは、九十六億通を少し割っております。しかし、その割った数字だけでは大きな率になりませんで、一番の食い違いは、無料郵便物を入れた数字と入れない数字の食い違いでございます。
  75. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 無料郵便物を入れた数字と、無料郵便物を入れない数字というのは、あなたたち資料の中でちゃんとその区別が出ておりますか。
  76. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) この郵便法の一部を改正する法律案につけました資料についておりますのは、ここに「年度別引受郵便物数」カッコして「〔有料のみ〕」というあれが書いてございます。五六ページでございます。それから、別途お手元に差し上げました資料のBでございます。Bの、二ページのところに、ございます九十六億一千六百万通、これは有料、無料合わせた数字でございます。
  77. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 そうすると、四十年度の見込みの物数は、有料、無料を合わして、三十九年度の場合は無料を除いた有料だけの数字だと、こういうことですか。
  78. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 仰せのとおりでございます。
  79. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 そうすると、有料と無料というこの区分けを、四十年度の、どうして見込みのときにおやりにならなかったのでしょう。
  80. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 確かに、統計の面で絶えず同じ種類の数字だけを、同じ種類の分け方のものだけを出すことが望ましいとは申せるわけでございますが、従来、使い道によりまして、無料郵便物は、作業の面などからしますと、無料も相当入れて計算しなければならない、外部からの収入ということを一つのねらいとする場合の統計としては、有料の物数というものが非常にものを言うという、そういうようなこともございまして、内部の統計といたしましても、有料、無料二通りの数字が出ているわけでございます。
  81. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 この二通りの数字という使い分けは、非常に私はくせ者だと思うのです。要するに、数字を修正する、あるいはパーセンテージを修正するときの操作の材料に使われている。四十年度は九十六億通というのは、あなたがたのほうから出されてきた数字で、その数字は、われわれに示されているだけでなくて、審議会の資料の中にも示されている数字ですよ。これは見込み数だ。これでもって推定を当然すべき性質のものなんだが、この中にも有料と無料がある、こういう区別をされて、しかも、無料がふえてくるならば、実数、訂正パーセンテージが変わってくる、こういうふうな御答弁で抜けられているようでありますけれども、やはり当然統計を比較してものごとを見る場合に、有料、無料、それは、見込みの場合であろうと、実績の場合であろうと、ぴちっと出すべき性質のものだと思います。それで、もしあなたのほうがそれほどこの有料と無料との区別においてパーセンテージが変わるというのならば、実数において、じゃ昨年の八十八億通の中に無料はどれだけか、本年度の九十六億通の中での無料は一体どれくらいになるのですか、実数とパーセンテージをあげてください。
  82. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 三十九年度につきましては、八十八億三千三百万通の有料のほかに、無料が二億八百万通あったというふうに考えております。
  83. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 それを修正するとどうなりますか、
  84. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 率はちょっといま手元にありませんが、三十八年度以前につきましては、無料の数が相当入っておるわけでございます、四十年度の無料郵便物の推計は二億一千三百万通でございます。
  85. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 修正数字になると幾らになりますか、パーセンテージの修正は。
  86. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) パーセンテージはちょっといまありませんが、ただこれは当初の見込みでございますので、先ほど申し上げましたように、四十年度は総体で実数の推定は九十五億二千万通に減っております。当初の見込みより少し落ちております。
  87. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 それは二月現在でしょう。
  88. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) そうです。二月現在で三月の分を推計して加えた数字でございます。
  89. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 しかし、いずれにしても、この無料と有料とを問わず、取扱い物数ということを基礎にして郵便物の推移を見るという場合には、これを基礎にして間違いございませんね。無料がふえるとか減るとかいうことに応じて郵便物数の推移をパーセンテージに出すということよりも、取扱い物数を基礎にして郵便物の推移を見るということが統計としては正しいですね、これは念を押しておきます。
  90. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 郵便物総体ということを特にはっきりしました場合に、無料が入ることは当然でございます。ときに、私ども内部で有料の統計がございまして、たまたまこの資料に添付いたします際に、有料のものだけを出しましたのは、ただいまのような御論議を招くことにもなりましたので、あまり適切ではなかったという反省はしております。
  91. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 まあこれ以上数字をあげての伸び率の論争をしてもしようがないので、私はこれで次の問題に移りたいと思いますが、私は、この伸び率は、全く伸びたり縮んだり、きわめて政策的な、何かそういう意図があるのではないかということを疑わせるような、自信のない伸び率だと思うのです。時間があれば、私はその伸び率を、それぞれの第一種から五種に至るそれぞれの伸び率の実際の数字を聞いてみたいと思いますが、おそらくそれはなかなか明らかにはできないだろうと思います。ですから、もうこの数字の根拠についてはこの辺にして、次にお伺いしたいのは、具体的な内容です。料金値上げに関する具体的な内容の問題です。で、それは、非常に郵便物は、郵送は改善されたといわれておりまするが、依然として遅配、延配といったようなことが行なわれているわけです。郵便労働者の、私は全逓労働者の御苦労に対しては感謝しているものでありますが、実際こういうふうになっていると、こういうときにこの値上げがされるわけでありまするが、これは皆さんに申し上げるのは全く釈迦に説法のようなことでありまするけれども、どうして、つまり値上げについて先ほどの質問に戻りますが、それぞれのつまり郵便物に応じて値上げの状況が、要するに黒字、赤字の状況が変わっているにもかかわらず、黒字のものにもあえて値上げを行ない、赤字であるべきものに対してはさほど大きな値上げをしないで済ませるといったような、そういう種目別値上げに関する具体的な根拠というものも非常に乏しいのじゃないか、今度の値上げについて見るならば。それで、むしろ大衆課税的な性格を濃くしているのじゃないかという疑問を持たざるを得ないのです。つまり、種目別値上げの内訳ですね、またそれをあなた方が持ち出した根拠について御説明願いたいと思うのです。
  92. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 最初に、今後何年間かの期間を見込みまして、その期間中に現在の料金でどの程度の収入が入るか、それから支出はどの程度になるか、その支出にまたどういうものを見込むべきかというようなことが当然検討されるわけでございまして、その差額を値上げによる財源に求めたわけでございます。その差額を充足することを値上げによる財源に求めたわけでございます。総体といたしましてどの程度まず足りないかということでございますから……。
  93. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 総体はいいです、わかっておる。
  94. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) それをどういう種目にどうかけていくかということが一番問題でございます。問題に一番なりましたのは、国民一般がよく使われるはがきを一体幾らにすべきか、それから三種等は従来コストを相当割っている、これをどの程度上げていくかという問題、それから四種等はついても相当これは政策料金でございますから、どういうふうに今後持っていったらいいかというようなこと、それから以前からいろいろ論議されました学術雑誌の料金を安くする、どういう、ふうにしていったらいいか、あるいは書籍の料金が三十六年度の値上げの際に非常に高くなった、急に高くなった、これをもう少し安くするようなことを研究しろという声がかなり広くございました。これをどうしたらいいか、そういうようなことを考え合わせましてそういう料金をきめてまいる。はがきについてはいろいろ問題がございますが、従来は封書と料金の比が二対一でございましたが、封書を十五円にすると七円五十銭というわけにはまいりませんし、そういうようなことから、はがきが七円くらい、三種につきましては、郵政審議会の答申等もございますが、二十六年以来の料金の経緯を考えてみますと、低料三種については二十六年から三十六年の値上げまで一円であったわけでございます。これはまず三円くらいにとどめるべきではなかろうか、将来の方向というものは別としても、現在の段階では三円くらいにとどめるべきではなかろうかというようなことからきめたわけでございます。あと四種につきましては、御承知のように、盲人用では当然そのまま据え置き、通信教育についても、これもいろいろな事情から据え置くのが妥当だというような結論が出てまいりました。学術雑誌については、百グラム十円というようなところにしてはどうか、書籍小包につきましては、いま小包は一般に地帯別の料金をきめておりますが、全国各地の書籍購読者が同じ負担で書籍が手に入るということも相当意義が深いというような観点から、均一性の料金で、わりあいに車量の刻みもこまかく割っていくのが妥当だというようなことで、それぞれ料金がきめられました。しかし、結局総体として要る金の量ということを考ますと、二種、三種、四種、書籍小包等々の料金がそういうふうに固められてまいりますと、不足の金額は、一種あるいは従来の五種、それから書留、速達その他の特殊料金、そういうところでかぶせるのはやむを得ないのではなかろうかというようなことで、ごらんのような料金に決定されたわけでございます。
  95. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 いろいろな御説明がありましたけれども、国民が今度の郵便料金の値上げを身近なものとしておこっているのは、つまり総体としては二八・八%の値上げだと言ってはいるが、大衆の負担すべき、要するに、非常に広く一般的に大衆が利用しているものの値上げの率が非常に多い。たとえば封書の場合は五〇%の値上がりになるわけですね、十円が十五円になるんですから、はがきの場合は四〇%の値上がりになるわけです。今度は速達の場合を見てみますると、従来四十円のものが今回値上げになると六十五円になるわけです。これは六二・五%の値上げになるわけです。はがきを今度速達で出しますと、いままでの三十五円が五十七円になりまするから、六三%の値上げになるわけです。つまり、封書とか、はがきとか、あるいは封書の速達、はがきの速達といったものの値上がりが、総体にしてみると六〇%近くになっている。ここが問題なんです。だから、値上げ全体は総体として見れば二八・八%かもしれないんだが、実際に大衆生活に密着した部分の値上げは、二八・八%ではなくて、五〇%にも六〇%にもなるというところに問題があると言っていいんです。これをきめた根拠はなぜかということを質問しているんです。こういうことにならざるを得ない、大衆負担が加重してくると、これを質問をしているんです。これに対するお答えを願いたいのです。
  96. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 先ほども申し上げましたように、二種、三種、四種あるいは書籍小包の扱い、学術用刊行物の扱い、そういうようなものを若干政策的にも考えなければならないようなものがだんだん固まってまいりまして、結局残りの不足額が一種あるいは特殊の料金にかかってまいらざるを得ないような状態でございまして、ただいまのはがきの速達というようなものは、なるほど、仰せのように、相当大衆的なものでもございましょうが、中での利用のあれから申しますと、高くなりました速達等につきましては、実は一、二極の送達につきまして、御承知のように、航空搭載その他の方法によりまして相当改善されてまいります。書留につきましても、実は私どもの口から申しますとたいへんあれでございますけれども、最近送達が比較的に改善されてまいりまして、実は書留郵便物の増加率というものは、四十年度は三十九年度からほとんどふえておりません、横ばいの状態でございます。従来相当ふえておりましたのが、全く横ばいになり、速達についても、今後そういうように一般の送達がかなり改善されるにつれまして減らし得る。利用者の立場からまた別の御意見もあろうかとも思いますが、全体が改善されるという中での速達の必要性というものは、相対的にだんだん減ってくる、そういうようなことも考えますと、必ずしも、ただいまのお話のように、利用者大衆の負担が非常に、特に重くされておるというふうには私ども考えておらないのでございます。
  97. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 ずいぶんあんた自信のない答弁ですけれども、私は具体的な数字でもってパーセンテージを示しているんですよ。総体二八・八%の値上げだっていうんだが、封書は五〇%値上げだし、はがきは四〇%だし、封書の速達は六二・五%だし、はがきの速達は六三%の値上げになる。要するに、大衆が利用する郵便物の値上げの率というものは、二八・八%ではなく、五〇%から六〇%になりますよと、具体的な数字ですから、これについては否定のしようがないはずだと思うんです、そうでしょう。これを否定してみたところで、これは具体的な数字を否定することになって、これでは済まないと思うのですから、これを認めざるを得ない。なぜそういうふうにならざるを得なかったのかという根拠を聞いているんです。
  98. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 先ほど私は二種ないし四種あるいは書籍小包について申し上げましたが、そのほかに、法文でもう御承知のように、たとえば被災地あての小包の料金免除とか、あるいは割引制度の実施とか等々、相当、書き損じはがきの交換とか、幾つかの従来の収入を失い、あるいは支出を増すというような措置も今度とられているわけでございます。そういうほかの値上げの率を小さくするために、そういうことを全部やめるべきかどうかということも一つの問題でございましょうが、私どもは、それらの事柄は、それぞれいままでのいきさつもございますし、現在の社会でやはり必要だというふうに判断いたしたわけですが、そういうものの合計もほぼ十五億円くらいになるわけでございます。それに、先ほど申し上げましたような据え置きの料金、逆に安くなる部分、一種等につきましても、従来の二十グラムから二十五グラムの間、あるいは四十グラムと五十グラムの間は安くなるとか、そういうような要素等もございまして、特に高くなる部分だけを拾われて御指摘になりますと、お話のようなことにもなろうかと思いますが、そうでない部分につきましては、それぞれの事情があってそうなっておりますので、総体といたしましてそういう結果になったというわけでございます。
  99. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 あなたは言いたくない点が一つあるのじゃないかと思うんです。つまり、今度の郵便料金値上げの問題で、大衆負担となるべきそういう性格を持っているものに大きなしわ寄せがきて、それで郵便物の赤字の、つまり赤字の王さまと言っちゃおかしいけれども、そうなっているのは、実はいま言った封書やはがきや速達じゃないでしょう。郵便物でも、郵便料金の中で赤字の一番多いのは一体何ですか。
  100. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 赤字の原因といたしましては、三種のうちの低料扱いのもの、それからあとは無料郵便物、それからはがきの二種、はがきもある程度原因になっております。それから盲人用点字、農産種苗、こういったものが赤字の原因になっております。
  101. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 そのうちで、第三種はどのくらいの赤字なんですか。
  102. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 三種の一件当たりでまいりますと、三十九年度の状況に見てみますと、単位原価といたしまして九円四十三銭でございますが、それに対しまする収入は二円二銭、したがいまして一通当たり七円四十一銭の赤と、こういうふうになります。その他の三種におきましては、単位原価が十一円三十六銭でありまして、単位収入が八円三銭でありますから、一通当たり三円三十三銭の赤と、かように相なっております。
  103. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 そうすると、低料扱いのものの赤字が一番大きいわけですね、第三種の中でも。総額どのぐらいになりますか。
  104. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 同じく三十九年度の状況で見てみますと、低料扱いの分におきまして三十九年度内約五十七億の赤字になっております。
  105. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 そうすると、それは郵便物全体の中で赤字の占める。パーセンテージと申しますか、どのぐらいのパーセンテージになるのです。
  106. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 郵便のうちの総原価に対する収入、こういった面で見てみますと八十六億の赤でありますが、そのうちで五十七億を占めるわけでございます。ただしこれは三十九年度でございますが、四十年度——まだ出ておりませんが四十年度、それから将来を見てみますと、全般につきまして通数の多いものほど赤字が大きくなってくるというわけでございます。と申しますのは、人件費の伸びがそれぞれのサービス種類に響いてまいりますと、通数の多いものに対する人件費の割り振りが大きくなります。三十九年度では三種が非常に大きな幅を占めておりますが、四十年度以降、四十一年度、二年度になりますと、ほかの種目は非常に、特に二種のはがき、こういったものが非常に大きな率を占めてまいる、かように考えております。
  107. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 私も端的に御質問してるんですから、端的にお答え願いたいんです。つまり、三十九年度を一つの基礎にして、低料第三種五十七億の赤字というのが総体の郵便の赤字の中に占める割合は約七〇%近いようですね。これについて答申はどの程度の率の値上がりを答申していたんですか。まあ私もわかっておりますけれども、はっきりと念のために聞いておきたいと思います。
  108. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 三種の低料は五円でございます。
  109. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 それで、今度の値上げ案によりますると、この三種低料は三円ですね。そうすると、答申が五円だと言うのにもかかわらず、あえてこれを三円に押えたという、その根拠はどこにあるんでございましょうか。あるいは、これが赤字の中で約七〇%を占めるにもかかわらず、この赤字を解消するということに、なぜ一体今回の値上げ案では一つの問題点をここに置かなかったのか、この理由はどこにあるんです。二つをあわせてひとつお答え願いたい。
  110. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 郵政審議会の答申は、確かに低料について五円、そうでないものについて六円というような答申でございましたが、一昨年十一月、郵便事業近代化に関する答申という中で、料金決定の基準の明確化という項目がございまして、その中に「文化政策的、社会政策的な料金の軽減については本来郵便事業で負担すべきものとは考えないが、急激な是正は困難と思われるのである程度やむを得ないであろう。しかし、その際低料金のものでも少なくともそれを取り扱う直接の経費に見合う程度には定める必要がある。」ということがうたってありまして、原価計算で出てきたなまの数字全部を料金にかけろというところまでは言っておらないわけでございます。しかし、お話のように、今度通信教育についても五円の答申がなされましたが、通信教育のほうは据え置きということでございました。それから新聞——第三種につきましては、先ほども申し上げましたが、二十六年の料金改正では一円でございまして、三十六年の初めまでは一円できたわけでございます。その後二円になり、今回、答申の線も考えながら料金の検討をいたしたわけでございますけれども、過去の、三十六年の初めまでは一円であったという事情ども考慮いたし、また現実にその負担は辺地の購読者がこれを負担しているという状況なども考え合わせまして、五割の値上げである三円程度にとどめるのが妥当ではないかというふうに考えた次第でございます。
  111. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 どうもその考えた次第がよくないね。この文化的、社会的性格を持つものについては云々ということは、一般論としてはわかります。だけれども、なぜ第三種でなければならぬかということの積極的な理由にはならぬ。むしろ社会的、文化的、生活的要素を占めるのは、第一種とか第二種のほうがはるかにそういうものだと思うのですね。ですから、私は、第三種を基本的に値上げすべしということで、この論拠を出しているものじゃないのです。つまり、あなた方の値上げの、先ほどから、ずっと数字を示して言っているように、一般大衆の負担になるべきものについてはかなり高額な値上げをしておきながら、しかも赤字の一番親玉であるころの第三種低料については、これをほとんど原価の三分の一以下のままの数字で今度も値上げ率を抑えたということの根拠がきわめて薄弱だと思うのです。言うならば、第、二種の赤字を埋めるために、第一種あるいは速達、黒字であるそういったものを値上げすることによってカバーしたと言われてもしかたがないような結果が出ているじゃありませんか。文化的、社会的というだけでは私は説明がつかないと思うのです。率直にお聞きしたいのですが、おそらく第三種の低料を最も大量に扱っているのは新聞社だと思いますが、それらの大新聞社から、これを答申どおり、あるいはまたさらに答申を上回って原価主義でやるということについては非常に困るというような強い圧力でも郵政当局やあるいは自民党にかかったのではないかと思うのですが、そういう事実ありませんか。
  112. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 私の知る限り、そういう圧力がかかったということはないと思っております。
  113. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 それはまあこういう委員会ですから、まともに聞けば、ないと答えるでしょう。答えるでしょうけれども、実際上出てきた数字を見るならば、明らかに第三種郵便物の赤字の負担を、なるべくは第三種の低料を上げることによってではなく、封書並びに第二種はがき、速達といったものを上げることによってカバーしたという、きわめてそういう点においては私は政策的な意図を持った値上げ案だというふうに言われてもしかたがないと思います。で、もしこの第三種が社会的、文化的という理由によって値上げの幅がきわめて低く押えられたとするならば、これはむしろ他の何かの方法で、たとえば一種や二種や速達などの値上げによってカバーしないで、他の何らかの方法によってカバーする道もあっただろうと思いますが、そういう点についてお考えになったことございません。
  114. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 総体といたしまして郵便料金の中でまかなってまいりますことが現在の時点で最も現実的であり、妥当だと、そういうふうに考えたわけでございます。
  115. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 そこで、さっき私が質問しようと思ったのに対して、大臣が先手を打ってしまったのだが、私は、大臣の答えたにもかかわらず、第三種と非定形の、第一種に今度統合された非定形刊行物というのがございますね。あれとは特別会計にしてみたらどうですか。そうすれば、きわめてはっきりと第三種と非定形の郵便物がどれだけの数量で、どれだけの赤字でどうなっているかということが、きわめて合理的に、だれの目にもわかって、赤字を穴埋めするためにはどうしたらいいかということを世論に聞いたら、たちどころに結論の出る問題だと思います。あなたは先ほど、第一種特別会計、第二種特別会計なんということはとてもできることではない——私もそうだと思いますが、第三種に関して、郵便料金の赤字の大宗を占めるような部分についてだけは、しばらくの間特別会計でやってみて、その実態を明らかにして、だれでも首肯できるような事実に基づいて対策を講じるということは必要な措置だというふうに考えますが、この点もう一度念を押すようですが、お考えをお聞きしたいと思います。
  116. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 郵便料金の問題で一番考えなければいけないのは、大衆にどういう負担をかけるかという問題です。それで、第一種の郵便物等について見まして、はがき等について見ましても、これは実際に調査いたしました。個人が差し出すのがどのくらい、団体、大きい企業が出すのがどのくらいだ、こういうような実際の調査をいたしました。それから、家計費調査の数字から逆算をいたしました。そういたしますると、一般の家計もしくは大衆が使われる部分は二割、八割は大企業、官庁等であります。そうすると、私どもが考えなければいけないことは、大衆に対しての負担低減というものをできる限り考えなければいけない。その負担を全体の消費者物価指数などの指数のほかにも重点を置いて考えていかなければいけない。そうすると、一口に第一種と申しましても、その中にはかなりないろいろな態様がある。一口に、第一種が大衆だ、第二種が大衆だということは、実際の利用状況から見れば違ってくるということ。それから、非定形といいますのは、これはダイレクトメールだけではなくて、非定形の中には、いわゆる印刷親書——親書と言えるかどうかという議論があると思います。しかし、私は印刷親書でも親書だと思います。そういうものを扱っております。したがいまして、第一種と第五種を一つにして、そうして定形して、封書の中身で親書と非親書に区別することは不可能でありまするから、ですから形で区別したというのが今度の改正の要点であります。それで、確かに、第三種の低料扱いが六十億ばかりの赤字——約どのくらいになりますか、四十一年度千二百億ばかりになるでしょうか、総収入。そのうちの六十億くらい低料扱いを原価どおりにすれば埋めることができる。だから、これは何も特別会計にしないでも、第三種の低料扱いでこれこれの赤字があるということ、私はこう思っております。この国会でも問題になりましたが、たとえば重症身障者のお出しになる第三種郵便物、これらは、もし可能ならば、ほんとうに上げずに済めば上げないでいたいくらいでございます。ただしかし、点字のようなものと違いまして、区別のしようがございません、中身で。そういう種類のものが第三種郵便物に……。なるほど、低料扱いにいたします対象は、大きいのは新聞でございましょう。しかしながら、いろいろな態様がある。その態様を見ますと、必ずしも第何種だからどうだという区別はなかなか困難だ。したがって、鈴木さんのおっしゃる点、一体どこに赤字が出ているかという点、私は率直に、いままでの第三種なり、第四種なり、これだけ赤字が出ております。この埋め方をどうする。私は徐々に、いくら第三種でも、やはり五割の上げ幅ということは、一つの上げ幅の限度だと思います。これを将来直していくということは、別に考えなければいけない問題だと思います。
  117. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 たとえば、今度の値上げの問題でもって、実数でひとつ見てみたいと思うんです。いま大臣は、いろいろな種目について大衆の利用度とそうでないものとの区別もいたしましたが、一応この実数について見てみますとよくわかると思うんです。たとえば普通郵便物といわれている第一種は、三十九年度だけをとってみますと黒字が二十一億あるわけですね。そうして、その二十一億黒字のあるのに、これを五割の値上げをする。それで第三種の場合の低料は赤字が六十億もあって、それにもかかわらず五割程度の値上げで済ませるというこの不合理性というものは、ちょっとことばで何と言おうとも、現実のこの数字の上からいってこれはおかしな問題であります。それから第二種は、なるほど三十九年度四十六億の赤字を出しております。この三十九年度の四十六億の赤字の大半は、やはり年賀郵便の負担がこの赤字にかかっているからだろうというふうに想定できるわけですが、第二種はなるほど三十九年度四十六億の赤字になっております。送達のほうはどうか。普通と書留と合計いたしまして三十九年は二十一億の黒字になっておりまするから、したがって、第一種の封書と速達、書留を含めた黒字を合わせますと、三十九年度四十一億という黒字になるわけですね、この四十一億という黒字の部分に対して値上げのパーセンテージがよけいにかかっているということです。そして、先ほど申し上げましたように、第二種のはがきの部分が三十九年度四十六億の赤でありまするから、かりにこの三十九年度の四十六億の赤を第一種プラス速達、書留の四十一億の黒字と対比してみますと、わずかに五億だけの赤字にしかすぎない。つまり、大衆の利用度で問題を見るならば五億だけの赤字でしかないのにもかかわらず、事実はこのような膨大な赤字を負担させるということ、実際は五億の赤字でしかない大衆利用の郵便物にしわ寄せができているというこの事実ですよ。だから、私も何も、特別会計にしろということを強調したのは、それをただ事態を明らかにする意味で申し上げているのであって、こういう事実から見て、今度の値上げの性格というものが、こういうつまり大衆利用度の多いものにしわ寄せされてきているという、ここに問題がある。ここにむしろ今回の値上げの基本的な性格があると言ってもいいほどのものだと思うんです。このことを、第三種の赤をカバーするためになされたという点で、私はこれはむしろ文化的、社会的な立場を逆に行くものだ、逆行するものだと言われてもしかたがないんじゃないかというように考えるわけです。  そこで、速達でありまするが、最近における速達の伸びが非常に急速だといわれております。そこで、まあひとつ、これはどういう傾向にあるのか。つまり、普通の場合の速達ですが、かなり急速な伸びを示しているというこの事実は、どういうところにその原因があるか、これをそれなりに庶民の立場で考えてみますと、郵便物が遅配をする、延配をするということで、普通郵便で出せるはずのものを最近は速達で出すという傾向が非常に多くなってきている。だから、郵便物の遅配ですね、これが逆に速達を増加さしているという——だから逆説的な論法で言うならば、郵便物の遅配によって速達を多くして、郵便局はこれでもうけてるんじゃあるまいかというような、そういう逆説的な論法さえ出てくるほど速達の伸びが大きくなる、いままで普通郵便であったものも送達に変わっていくという傾向も出ていますが、こういう傾向というものは遅配が続けば続くほど多くなっていくという心配があります。こういう心配が出てきます。ですから、一種や二種といわれるようなつまり大衆利用度の多かったものが速達に変わっていくということも、同時にこれはまた大衆負担が加わることになりますから、こういう点について、どうしても第一種なり第二種が確実迅速に目的地に着くということを確保しない限り、この速達の利用度というものはふえる一方になると、こうしてますます大衆的な負担が増加していくという傾向を生むと思いますが、こういうことに対して当局のとろうとしている処置についてお聞かせ願いたいと思うんです。
  118. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 速達の増加率は、ただいまのお話のように、世間に郵便の遅配についての御批判が高まります前後——昭和三十三、四年ごろでございますが、そのころからずっとふえてまいりました。昭和二十七年は対前年比〇・八、その次が七・六というふうに、かなり低い率でございましたが、昭和三十三年度におきまして一四・七%、その次が二一・六、二四・七、三十六年度三一・三%にまでのぼりまして、これをピークとしてその後下がってまいりまして、三十七年が一四・一、三十八年九・〇、三十九年度八・〇というふうに下がってきているわけでございますが、全体の率よりは三十九年度におきましてまだ若干高い状態でございました。で、そういう状態を、速達の増加率が一般の郵便の増加率より非常に高いというような状態の背景になっているものを早く克服するようにというお話でございまして、実は今回料金改正とともに御提案しております法律の改正案等にもそういう趣旨を織り込んでございますし、また料金の改正を裏づけとしました予算の内容におきましても、ただいまのお話のような御趣旨を実現するための措置が、要員面、局舎面、いろいろ機材の面等々についてとられているわけでございます。全郵便関係者力をそろえまして、ただいまお話のような御趣旨に沿うように努力してまいるつもりでございます。
  119. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 どうも具体的でないんですが、いわゆる郵便物の遅配、欠配というのは、一体どこがネックになっているのか、端的にひとつネックになっている場所と、その理由と、したがってどうすれば打解できるかという、この三点を端的にお答え願いたいと思います。
  120. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 比較的遅配の原因となっている事柄を起こしやすいところは、東京都内の数局——局数はだんだん減ってまいりまして、おそらく現在では四局か五局ぐらいになっていると思いますが、そういう局、それから東京近郊の、これは世帯数などが非常にふえてまいりますのに、局舎の改善等が少しおくれているとか、あるいは定員などをふやしましても十分熟練度がまだ上がらないというようなところ、そういうところがある程度ございます。これらにつきましては、職員の訓練もございますし、あるいは非常勤職員の必要な数を充当していくというようないき方などもやっておりますが、全体の大勢といたしまして熟練度も逐次増してまいっておりまして、かなりよくなっておりますことは、先般当委員会の白井先生から御指摘がありましたことにも若干あらわれているのではないかというふうに考えているわけでございます。ただ、御承知のように、郵便事業は非常に受け身の仕事でございますからして、一度に非常に多数の郵便物を持ち込まれますと、急にアルバイトなりあるいは超過勤務を非常に長くやるということで片づける以外には、やり方がいまのところない。超過勤務のための協定などができておりません場合には、アルバイト以外にはないということで、学生が学校を休みなんかのときは別といたしまして、なかなか思うにまかせないという現象がかなりございます。そうしますと、一時的にそこで差し立てに時間がかかってまずおくれてしまう。途中の問題としましても、一度に差し出されましたものが殺到いたしますと、これは現在の五種等に若干ございますが、予定の郵便車に積み切れない、次の便に載せざるを得ないというようなことなども間々ございます。それから、配達局へ参りまして、急に病人ができると、日ごろから訓練の度合いが高ければ、ほかの人がそこへ差し繰りで入りましても、すぐに普通の状態で配達ができますが、通区と申しますか、ほかの人の訓練ができておらない場合には、その休まれた区について半分おくれる。一区の半分が半日とか一日おくれるというようなこともあるわけでございます。総体としましては、私だんだん改善されてきているというふうに考えておりますが、ただいま申しましたような幾つかの点がまだ十分に克服されておりませんし、特に物数の差し出し等につきましては、こちら側では現在これに対する対応策というものは十分ございません。今回の法案の中にございます料金の割引制度などは、これに対する郵便事業の長い間の悩みを解決する一つの方法であろうかと考えております。
  121. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 まあこの遅配、延配といわれるようなものが起きてきているネックが、端的に言えば、結局人と設備、これをそれに見合うように充実させる以外に道はないというように私たちも考えます。これは私は郵便局に働いている皆さんには非常に御苦労だと思っているのです。これらの人たちのやはり基本的には待遇をよくして、いわゆる郵便配達といわれるものによって一見イメージがわくような、そういうつまり待遇ではなくて、やっぱりこの仕事の持っている重要性をもっと社会的にも認めるような、そういう物質的な保障を与えなければ、なかなか人は集まってこないのじゃないかという気もいたします。優良な人がさらに集まってくるようにしていく必要もあるだろうと思いますが、またそれに見合う人員も必要だと思いますが、いわゆる設備の近代化ということも、これまた人減らしを伴わない設備の近代化ということが必要だと思います。ただ、これらの資金を値上げによってまかなうというのは、いささかどうかと思うのですよ。機械設備の近代化ということ、これは資本財的な要素を含むものですから、この資本財的なものをつくるのに大衆料金によってまかなうというのは避けるべきだし、特に公共的な事業においては一そう避けるべき性質のものだというように考えるわけです。だから、このような資本財を充実する必要があるという場合には、いま公債発行制度にも踏み切っている佐藤内閣のことですから、私は、これらの資本財は国有ですから、当然ひとつ一般会計からまかなうべき性質のものだと考えていますが、この辺についてのお考えはいかがでしょうか。
  122. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 一般会計から郵政事業経常費並びに設備投資両方に不足分に対して充当すべきではないか、繰り入れすべきではないか、こういうお話でございますが、郵便事業を一般会計から繰り入れをしてはどうか、それから借り入れでいってはどうか、いろいろ御意見もございますが、現在の法律のたてまえから、それから事業のあり方と、二面から考えてみまして、法律論のたてまえからまいりますと、特別会計法その他から独立採算でやるようになっておるわけであります。それからまた事業といたしましても、全体の国民の税金にたよってまいりますか、それともやはり利用者負担に仰いでいくか、やはり国といたしましても、私どもが申し上げるのはどうかと存じますが、それぞれたくさんの公共事業がございますと、利用者の負担においてやっぱりやっていかないと税金のほうにも無理が出てまいるので、したがいまして、こういった公共事業におきましては利用者の負担にたよってまいる、こういうようになっているように存じております。同時に、私どもといたしましては、特別会計法、郵便法ともに、そういったたてまえから事業運営するようになってまいっております。したがいまして、いろいろ御意見もございましょうが、特に経常費につきましては、一般会計からの借り入れ金ということになりますと、いつかは料金値上げの幅が大きくなってまいる。また、建設投資の場合におきましても、これも同じように独立採算制をたてまえにいたしております。借り入れ金で料金の面をしてまいりますと、料金の値上げ幅にも影響いたしますから、建設投資については損益勘定でまかなう、業務運営の面については独立採算の面におきまして解決してまいる、こういうふうに私どもはいくべきである、かように考えております。
  123. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 たてまえ論で論争するわけではございませんけれども、いわゆる国有財産となるべき資材、資本的要素を持つものは、これは利用者負担ということはそもそもおかしいんですよ。要するに国有財産です。だから、こういうものはむしろ一般会計によって負担すべき性質のものだと私は考えます。これは議論の分かれるところです。で、そもそも郵政事業を独立採算制にしろということが、私は根本的に無理だと思う。たとえば郵便法の第一条を見ましても、とにかく「安い料金で、あまねく、公平に提供する」というサービスを法律で規定しております。あまねく、公平に、しかも安くということと、独立採算制が成り立つはずがない。だから、基本的な考え方としては、独算制ではやれない、郵便事業は。そういうことはむしろ、あなたがさつき法律論で言えばと言いましたが、郵便法の第一条の場合は、独算制ではやれないのだということを言っておると私どもは考える。安い料金で、あまねく、公平にという、この精神を生かしていくならば、少くとも資本財に関するところの金は、これは一般会計から出すべき性質のものではないのか、こういう議論は当然出てくるところだというふうに思うわけです。それから独算制は、同時に機構的にもとれないようにできておる。いかに利用者負担によって切り抜けていこうといっても、機構的にできないようにできておる。赤字を生むようにできておる。ちょうど昭和二十四年のときに、いまのいわゆる公共企業体が分離したとき、あのときに私も国鉄におりまして、つまり当時は電信電話も郵便も一本になっておった。これが切り離された。電話事業というのはもうかる仕事なんですが、もうかる仕事を切り離されてしまって、言うならばサービス部門でもうからない部門だけが郵政として残ったものですから、機構的に独立採算制ができない、こういうようなことを占領政策としてやられて、やられっぱなしの状態で今日まで来ているわけです。ここの、つまり問題の中心点は、しかもそれにもかかわらず独立採算制ということで押してくる。賃金のときだけは独立採算制だけれども、当事者能力はないという逃げる口実に使いながらも、独立採算制で押してくる根拠というものはほとんどない。だから、機構的にも独算制では無理だし、また法の精神からいっても独算制ではやれないものをやろうとしているから無理が出てくる。この無理が結局今回の大衆負担に転嫁する値上げの私はよって起こる原因になっているというように考えています。これは郵政事業一つのあり方に対する考え方の私は根底にある問題の一つだと思います。ですから、そういうたてまえから見て、私どもはこの郵政事業を、特に郵便などの事業を独算制でやるということがそもそも無理だという観点から、さらに次の問題についてちょっと聞きたいと思いますが、たとえば、いま郵政事業特別会計というのがありますね、三つの特別会計から成り立っている郵政事業特別会計というのがありますが、この郵政事業特別会計だって、ほとんど、郵便事業の問題を切り離して言うならば、郵便貯金と簡保が、大蔵省の資金運用部の、何というか、あるいはまた大蔵省の財投の財源つくりのために郵政が使われている、下請になっている、下働きをやらされていると言っても過言ではないような形で運用されているんじゃないかと思いますが、こういう点については一体郵政当局としてはどうお考えなのか。
  124. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 現在、郵政事業特別会計におきまして、郵便を主体にいたしまして、貯金、保険、電信電話、その他もろもろの国の業務の支出、受け入れの委託を受けて、一本の郵政事業特別会計でまかなっておる次第でございます。先生ただいまおっしゃいました貯金と保険を、これは郵便に比べて採算が合っておるが、しかし大蔵省の直接の指揮のもとにあるのではないか、下請と、こういうふうに解釈いたしましたんですが、貯金につきましては、昭和二十六年でございましたか、郵便貯金事業特別会計ができまして以来、当時までは、資金運用部から支払う利子は直接受ける、それから事業運営費は直接必要なものを郵政会計が受ける、こういった状況でありましたものが、郵便貯金事業特別会計というものができましたがために、非常に貯金事業としての性格がはっきりしてまいったという意味におきまして、貯金事業の運営といたしましてははっきりした体制になってまいっておる、かように考えています。  それから、保険につきましては、当初から保険事業特別会計、これは昭和五年でございますか、できましたときから、保険事業特別会計をもちまして、保険の加入者に常に還元することを前提として特別会計を持っておりますので、保険事業特別会計につきましては、これは事業運営につきまして責任を持ってやっておる、運営につきましては責任を持ってやっておる、かように思っておる次第でございます。  あとは電信電話につきましては、必要な額を繰り入れてもらって運営いたしておりますし、その他国庫金取り扱いその他の事業につきましては、それぞれ必要な額をもらっております。  貯金、保険につきましては、下請と申しますよりも、事業運営につきまして、郵政省がそれぞれ責任を持ってただいま計画をいたしてまいっておる、かように存じております。
  125. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 世俗的なことばで言うならば、大蔵省の資金集めの長良川のウみたいなものだといわれているぐらいに、実に全国の特定郵便局の皆さんの力によって、今年度の予算においても約四千九百億というばく大な郵便貯金の増加目標を立ててやっておりますが、ほとんどこういうものが、ここで集まった金の運用権というものは大蔵省資金運用部にいわばにぎられてしまって、郵政当局としては、極論を言うならば、指一本さすことができないようなものになっている。しかも、これを集めておるのは、特定郵便局を先頭として、郵便業務の主要な仕事になっている。ずいぶんこれは不合理な話だというふうに私どもは考えるわけです。しかも、資金運用部の資金の面は、開発銀行だとか——開発銀行なんというのは、言うならばこれはアメリカの出先銀行ですから、見返り資金によって設立された銀行ですから、本質的にはこれはアメリカ銀行としての性格を持っているものです。この開発銀行だとかあるいは輸出入銀行だとかいうようなものに日本の大独占資本に奉仕するために大量に資金が放出されて、そしてこれを集めてきた人たち、またこの郵便貯金に応ずる一般の国民にはほとんど利用が制限されている、こういうような状態をこのままにしておいて、郵政業務全体を郵政事業特別会計ということの中に割り込んで、独立採算制でやっていけというこの機構、運用自体にも——先ほどは機構の問題を言ったが、運用自体にも私は根本的に独立採算制ができないようなたてまえにしておいて、独算制を強要ししてくるというところに、やはり無理があるんじゃないかというふうに思うんです。  そこで、きょうは大蔵省からも来ているでしょう。大蔵省の資金課長に聞きますけれども、資金運用部はこのような郵便貯金の性質についてどう一体お考えになっておられるのか。しかもこれは、本年度の予算で見ましても、いわゆる剰余金なるものが三百十八億ですか出ておる。こういうものさえも、郵便局舎の改築とかあるいは設備の近代化とかいうものに優先的に回すということもなかなかむずかしいような話も聞いておりますが、一体資金運用部の運用について郵便貯金の持っている位置づけと役割り、どういうふうにお考えですか。
  126. 原秀三

    説明員(原秀三君) ただいま鈴木先生指摘のとおり、郵便貯金、これは零細な国民の貯蓄の集積であるということは、私どもも重々承知しているわけでございます。ただ、御承知のように、現在郵便貯金をはじめといたしまして、私どもいわゆる財政資金と申しておりますが、これに対しまする国民一般からの資金需要、これは非常に強いものでございます。御承知のように、昨年の十月に各機関から出されました四十一年度の財政投融資の要求額、これは三兆三千億でございます。四十年度の運用計画額の約二倍でございます。これを私どもいろいろと査定をいたしまして、本年度の計画額でございまするところの二兆円余りというところまで圧縮したわけでございます。したがいまして、各機関から——これは国民一般の資金需要であると、こう考えてよろしいかと思うのでございますが、それの資金需要を完全には満たしていないという状況でございます。  なお、原資の面におきまして、先生指摘のとおり、郵便貯金、これは資金運用部の資金のうちの過半数を占めておりますたいへんウエートの大きい重要な資金でございます。しかし、この郵便貯金の伸びをもっていたしましても、さっきの財政投融資の資金需要を全部満たすわけにはいきませんが、いわゆる民間資金の活用と申しております政府保証債あるいは外貨債——外貨債につきましては最近市況が悪うございますが、国内で出しますところの政府保証債、これにつきましては、四十年度の当初計画額が二千二百七十億を四千億まで市場に売り出すということをいたしまして、これらの資金需要にこたえたわけでございます。そこで、このような財政資金につきましての公的資金と申しますか、これにつきましての国民一般の資金需要が非常に強いということを御了解いただきたいと思うのでございますが、他面、先生指摘のございましたとおり、郵便貯金というものがやはり国民の零細な貯金の集積であるということも、これはその利用者の利益というものを十分考えた有利運用をしなくちゃならぬということは、これは当然考えなければならないわけでございます。私どもが運用しております基本法でございます資金運用部資金法におきましても、資金運用部資金特別会計に預託されました積み立て金その他余裕金につきましては、その資金の性質等を考えまして、確実有利な方法で運用をしなければならない、そういう一つの規制がございますと同時に、これらの資金につきましては、これは国家資金として統合管理をして、公共の利益の増進に寄与させなければならない、この二つの目的がございます。私どもは、これらの二つの目的の指定内におきまして、どういうふうにくふういたしまして一般の財政投融資資金の需要にこたえて、かつ零細な利用者の利益も考えていくかということに腐心しているわけでございます。それで、郵便貯金につきましては、このような点から考えまして、利回りの向上に対する——資金運用部資金といたしましてこれは運用するわけでございますが、運用利回りをできるだけ向上するような配意をいたしているわけでございます。たとえば、債券を発行いたします機関につきましては、通常の運用部の貸し出し利率は六分五厘でございますが、収支のつぐなうものについては債券引き受けの形式でもってこれを持ってもらう、そうしますと利回り七分以上になるわけでございます。これは三十六年以降とっている措置でございますが、長期の預託の、これは法律上七年以上のものは六分でございますが、これを特に五厘の特利をつけまして六分五厘の運用をするというように、いろいろ配慮しているわけでございます。ただ、何と申しましても、これらの資金運用部資金の使途、財政投融資の金の出先でございますが、これは長期低利の資金を需要する。先ほど先生から御指摘がございました、開発銀行が中心にという御指摘でございましたが、これは現在財政投融資の使途別分類を見ますと、住宅あるいは生活環境整備といったような国民生活に直結した部門に、四十一年度におきましては五三%の運用がはかられております。したがいまして、これらの資金の使途は終局的に国民の生活に直結した部分を中心に運用されているということで、直接利用者の福祉にもこれを還元していくということを考えているわけでございます。冒頭申し上げましたように、いわゆる国家資金としての統合運用をする、そういう要請と、利用者のこれらの資金のもとをなしております郵便貯金あるいは簡保につきましては、これは独立運用ではございますけれども、簡保資金というものの性格をも十分考慮いたしまして、どういうようにここら辺を調和をとった運用をしていくかということが私どもの課題であると、こう考えているわけでございます。
  127. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 長々と課長さんお話を承りましたけれども、私の言っていることは、たとえばあなた方がどういう形で運用をしても、そこから上がってくる余剰金なり利益金なんというものは、一体郵政特別会計の中へそれが入っていくものかどうか。そうして利用者に還元されるものなのかどうなのか。だから、たとえば運用利回りで七分以上にするように心がけているとか、やれ長期については六分何厘だとかいうことを言ったって、それはそこだけの話であって、そういうものによって上がってくる剰余金なり利益金なりというものが、集める側の郵便局なりあるいは零細な預金者のほうにどういう具体的な形で還元してくるのか、そういう点を聞いているのです。だから、私は具体的には、先ほどちょっとお聞きしましたように、三百十八億になる。今度の予算で見ましても、四十一年度の郵特会計の総額の残高で剰余金が三百十八億あると言っているが、こういうものの運用さえなかなか自由にはさしておらない、そこを言っているのです。そういうことをしておいて、集めるだけ集める、財投にはうんといま金が要るのだからというふうなぐあいで。それはちょっと質問とお答えが合っていないのじゃないかという気がするのですよ。そういう何か具体的な処置というものをお考えになったことがございませんかという質問なんです。  で、私これで質問終わりますから、ついでにもう一つだけ聞いておきますが、簡保についても同様です。これは財投に入っておりまして、本年度予算でも千七百億という見込みを立てておりまするが、この簡保についてさえも、あなた方は昨年よりもことしのほうを削っているわけですね、そうして財投からの郵政事業への出資は、四十年度が五十七億であったものが、四十一年度の予算で見ると三十億に減っている。二十七億円削っているわけです。簡保は四十年度予算ではたぶん千百億だと思ったが、四十一年度では千七百億、これだけを財投に繰り入れることになっているにもかかわらず、逆に財投から簡保のほうへは二十七億円昨年度に比べて減らしているといったようなことまでやっていて、これでしかも郵政事業を独立採算制でやらしていけと言っているのは、基本的には運用権を持っていない郵政事業として、きわめてやり方として正しくないのじゃないか。それで赤字が出れば、これを大衆課税的な性格を持った方向へ打開していこうということを考える。私は、こういうやり方というものは、まさに組み込まれた国家独占資本主義と言われているいまの日本の体制の中に置かれている根本的な矛盾の一つだと思うのですよ。これで質問をやめますが、この二つの点、具体的に言いましたいまの簡保への二十七億円の減と、それから三百十八億の剰余金を一体どういうふうにして郵政特別会計のほうにこれを回すようにするのか、回さないのか、あるいは今後どういうふうなことをお考えになっているか、明らかにしていただきたいと思うのです。
  128. 原秀三

    説明員(原秀三君) 郵貯特会の剰余金を他会計に繰り入れる件、これは実は主計局のほうからお答えすべき問題でございますので、私の所管外でございますが、基本的な考え方といたしましては、やはり郵便貯金の運用益というものは、郵便貯金が一つの信用事業でございますので、郵便貯金事業の準備金といたしまして零細な貯金者のために備えておくべきである。したがいまして、これを直接関係のない郵便事業の経費の財源に充てるのは適当でない、こういう考え方によっているものでございます。三十七年以降郵便貯金特会にかなりの益金を上げておりますが、三十六年までは相当な赤字が累積していたわけでございまして、郵便貯金の金利というものの数字をほかの一般金利とのバランスをとって考えざるを得ないというところがございまして、そこら辺を配慮いたしますと、相当の剰余金をやはり信用事業の郵便貯金の準備金として準備しておく必要がある、そういう考え方でございます。  あと特別会計の借り入れにつきましては、郵政省のほうから……。
  129. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 保険のお金を郵政のほうに建設資金として持ってまいりますのは、昨年五十七億円であったがことしは三十億に減ったのはどういうことか、こういうお話でございますが、この点につきまして、昨年度の建設勘定は全部で百十五億でございます。ことしは百七十五億と、非常に事業始まって以来の大幅な建設勘定をお認めいただいたいわけでございます。昨年に比べまして五〇%以上に相なっております。その中には御指摘の財投からの三十億がございますが、それ以外に、今度の予算は料金値上げを前提といたしまして組ましていただきましたのでありまして、五年間を見てみますと、初年度はどうしても剰余が出てまいるわけであります。この剰余五十九億を充当いたしましたので、百七十五億の建設勘定のうちで、財投からの三十億、それから剰余金六十億——九十億はこり締めてしまいますと、この百七十五億の編成が、あとは減価償却、それから貯金、保険の負担金、こういったものでちょうど百七十億に相なりますので、ことしは三十億財投から借り入れを受けますとちょうどいいところへ参ったものでございますから、特にこれは昨年度に比べまして非常に減らしたというわけにはなっていないわけであります。   〔理事光村甚助君退席、委員長着席〕
  130. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 私はこれで質問終わるつもりでおりましたけれども、いまの局長答弁誤解を与えるおそれがありますのではっきりしておきますが、つまり昨年は財投から五十七億来たのですね。ことしは予算は三十億に減らされている。約半減ですよ、二十七億減っているのですから。そうして、去年は五十七億でも足りなかったが、ことしは三十億でもやっていけるという、その根拠は値上げなんです、値上げ分が回るからなんです。ここに問題があると言っているのです。しかも、簡保は千七百億でしょう、今度財投に繰り入れる金額は千七百億。千七百億簡保で集めた資金を繰り入れて、去年は五十七億、今年度は三十億ということに減ってくるということで、しかも不足分は値上げ分でカバーするから、少なくてもつじつまは合うということでは、これは成り立たない議論じゃないか。集めた金の大部分は財投に繰り入れて、しかも財投から借り入れる金は約半減に近いということでは、簡保を一生懸命で集めても、うまいところは全部吸い取られてしまって、やはり簡保財政あるいは郵特財政というものは全くもうからを食っているようなもので、こういうことで、先ほど私は独立採算制について——一つは法のたてまえから言ってもこれは実現不可能な独立採算制を無理じいしている、二番目は機構的に言ってもそうだ、運用でさえもそうだ、それにもかかわらず独立採算制をたてにとってやろうとしているところに無理がくる、この無理が今回の大衆課税的な性格を持つ郵便料金の値上げというところへしわが寄ってきているのだと、こういうふうにわれわれは考えざるを得ない。私の質問を終わります。
  131. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 郵便貯金の運用を将来いかに考えるかという問題は、一つの大きい問題でございます。私自身も考えましたし、このたび多くの法律をお願いいたします際に、郵便貯金の自主運用をどの限度において国庫統一の原則と調和させるかということは、相当根深くものを検討しなければいけません。ことに郵便貯金の利用者還元という問題がございます。最も端的に郵便貯金の剰余金等を利用者に還元すると申しますと、金利の引き上げ、これが一番端的であります。しかし、これはバンキングという上から、郵便貯金だけが金利を引き上げるということはできないわけでございます。施設面でサービスする、これは特利類似行為ということが起こってまいります。そういたしますと、この剰余金というものをどのような福祉方面に回すかという問題、しかし、これにいたしましても、すでに政府委員が申しておりましたように、剰余金というものが、私はただいまの運用の状態から見まして、だんだんと剰余金が減ってまいる、数年前の状態に戻ってまいるおそれのほうを私は持っております。そういたしますと、この際に一番大事なことは、国庫統一の原則ということをこれは国の財政全体の上から考えながら、それと調和を保って、同じような問題簡易保険にもございますよ。簡易保険はとにかく自主運用に一歩踏み出している、形の上で。内容は貧弱でございますが。したがいまして、この問題と郵便貯金の自主運用というものをどのように伸ばしてまいるか。これはひとつ、一口に利用者還元といいましても、なかなかにむずかしい性格のものがございますから、郵政当局も十分これは検討してまいりまして、次の日程にはのせたいものでございます。どうかそのような点に関心をお持ちくださる皆さん方、あらゆる方面からいいお知恵を集積していきたいと思っております。
  132. 野上元

    野上元君 最初に郵便料金値上げに対する政府の基本的態度についてお聞きしたいのですが、これは国鉄運賃の値上げのときにも私は政府に対して質問したのですが、御承知のように、今日消費者物価が非常に上がっております。しかも、政府の直接あるいは間接に影響下にある公共料金が、米価をはじめ軒並みに上がっていく。そういうものを計算した結果、分析した結果、四十年度における物価の上昇率というのは、ここ十数年来最高のレベルを示したわけですね。これは明らかに政府の物価に対する態度といいますか、これが誤っておるのじゃないかというふうに実は私は考えているわけです。御承知のように、池田さんが総理になられてから、いわゆる所得倍増計画あるいは高度経済成長政策が実施された。その結果、経済にひずみができて、低生産部門の価格が非常に値上がりをしてきた。したがって、このひずみを直さなければならぬというのが佐藤さんの総理大臣になる一つの理由であったわけですね。いわば池田政策に対するアンチテーゼとして、佐藤内閣の存在価値はあるわけです。ところが、実際に佐藤さんが政権をとってみると、戦後最高の物価の上昇を見ておるということは、一体何を意味しておるのかという問題が根本的な問題としてあるわけです。そういうときに、郵便料金もまた二八・八%の値上げをしようとしておるわけです。この郵便料金の値上げの時期に対する政治的センスと申しますか、そういうものは非常にまずいのではないかというふうに考えるわけです。したがって、独立採算あるいはまた原価方式等については後ほどいろいろ質問したいと思いますが、少なくともことし一年郵便料金だけでも一ぺん一般会計からの補助金あるいは借り入れ金等によって値上げを避けるべきではなかったかというふうに実は私は考えるわけです。そして時期を見て手直しをしていけばいいじゃないか、それくらいの政治的な配慮があってしかるべきだと思うのですが、郵政大臣の御意見を伺いたいと思います。
  133. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) これも野上さんよく御存じのように、郵便料金というものは四十年度の当初の予算を組むときに考えなければいけない事態でした。それで私は郵政省を担当いたしました当初に、一体あの時期から郵便料金の値上げを判断いたしますのにはかなり時間が短うございました。どなたも実質の赤字を出しておることは承知しておられます。しかし、事柄は運びである。私もしたがって、いろいろな郵便料金の値上げによらない方法がないだろうかということを考えたのであります。ただ、当時から佐藤内閣がめどをつけておりました、これは四月の物価の状況でも、御承知のように、三月が異常気候のために蔬菜類の出荷が非常に早まりました、とうが立つので早まって出したので、四月に品不足のために生鮮食料品全体の価格が上がりました。これが響いておりまするほかは、やはり学校の入学に要する経費というものが消費者物価指数に響いております。小包が響きます状況なども、実はかなり私は関心を持って見ておりましたが、これはごく低位であります。そういう状況で、四月から大体横ばいにこれがめどがつきますならば、すでに、七月からの郵便料金値上げの問題がございますが、これを除けばすべての材料は出そろったところですから、五%ないし五・五%というところで物価指数はめどがつくのじゃないか。これに対しましては、もちろん政府全体が努力を要することであります。そういたしますると、郵便料金が明瞭に赤字である。それから、公債を発行したのだから一般会計から出させたらいいじゃないか——ところが、そういう場合に、一般会計から金を、一般会計が自然増でもありますときは取りやすいのでありますけれども、公債を発行してありまする際に、一般会計からの繰り入れをいたしまするならば、これは予算折衝をいたしましても、いかに政府全体が考えましても、またもう一段四十一年度において郵政事業というものをいびつな経理をせざるを得ない。借り入れ金に至っては、後年度において負担を残すものだ、後年度の利用者がさらに負担をいたす・そうして、実際郵政省で調べてみましても、郵便料金の、ことに第一種、第二種というようなところでは、その八割というのは大企業とか官庁とかが負担されておりまするから、〇・一四というような指数の低いものが出てまいるわけでございます。そのように判断いたしまするので、一般の物価への影響、大衆への負担というものが決してないとは申しませんが、比較的低い状態で判断ができるのだから、少しでも早く——一体毎年毎年どれだけ繰り入れられるか、借り入れられるかというような状態で、財政計画が立たない状態でおくということは、郵政事業の上で郵便というようなものの性質、また事実現実にここまで押え押えてきた会計をお預かりする者としては、そのままではほうっておけない、これは判断すべきときだ、こういうことで、いろいろの影響も判断しながら、私自身も判断をいたし、総理大臣も判断をいたし、しかしながらできる限り低率に押える、こういうところから二八・八%の値上げに決心をした次第でございます。
  134. 野上元

    野上元君 そうしますと、郵便のサービスを提供する場合に、必ずしもすべて料金でまかなわなくてもよろしい、事情さえ許せば他の方法もあり得るんだという基本的な思想は持っておられるのですか。
  135. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 私は、一般の議論として、どこの国ではこうだとかいう議論をしていけば、いかようにもあろうかと思います。そして、もし何かの事情で、絶対に郵便料金は値上げが不可能だ、あるいは非常に突発的な、もうそういうことを考える余地もないような事態が、非常な減収を来たす事態が起こってくるというときには、何とか経費を出さなきゃいけません。しかし、郵便事業というようなもの、普通の状態で考えるならば、私は、なるべく安い料金でという郵便法と、それから企業的に経営しろという特別会計と、両方の考えること、なるべく低い料金——なるべく低い料金というのは、しばらく時代がたてばまた料金を上げなきゃいかぬという問題がございます。しかし、それは私はやや公営事業の負っている宿命だと思います。しかし、利用者負担によってやっていく種類のもの、そうじゃなくて、こういう利用者負担はでき得る限り安くして、つとめて一般会計に追い込む、税一本で取ったらいいじゃないかという議論は、私は議論としてはあると思います。しかしながら、私は、日本の全体の仕組みから申しまして、ことに郵便事業、私が比較的短い時間にやはり料金引き上げに踏み切ろうと思いましたのは、国鉄等と比べますると、収支の見込みがわりに簡単であります。それですから、非常に長く、これから一年も何もかけなくてもめどがつくと、こういう判断でありましたし、日本の全体から見れば、したがってあの場合にもし間に合わなければどうしたらいいかということを考えたことは事実でございます。そういう意味合いで考えられるんじゃないかとおっしゃられれば、そういう意味合いでは考えられる。しかし、筋としては、やはり利用者負担ということで全体ができているんだ。まあ一部を第三種郵便物など低料扱いの分だけ入れたらいいじゃないかという御議論はございますよ。ございますけれども、仕組み全体は、やはり利用者負担というものでいっているんだ。それのほうが、一般会計から繰り入れてもらったりして、一般会計のほうの窮屈な要求を、実際事業に沿わないような要求を受けるよりも、利用者負担ということで事業会計でいくということのほうが事業の経営上正しいんだ、そういう意味合いで、日本の郵便事業というものが私は利用者負担でいっているというのは、そのほうが筋だ、こう思っております。
  136. 野上元

    野上元君 私は、いわゆるレート・レベルだけではなくして、何といいますか、レート・ストラクチュアといいますか、料金構造といいますか、その問題は重要な問題と思うから後ほど質問したいと思いますが、私が質問しておりますのは、郵便事業というものの性格ですね。性格から見て、必ず料金でやらなきゃならぬということではないんではないか。あるときには料金以外のもので経営をまかなうことも許されるのではないか。というのは、事業の内容を見てみますと、社会政策的な面も多分に持っておるし、あるいはまた文化政策的な面も持っておるわけです。したがって、純然たる企業と言えない点も中にある。したがって、そういうものがある以上、必ずしも料金だけでやっていかなければならぬという理屈にはならぬのではないか。そして、いま大臣答弁されましたように、緊急事態の場合においてはそういうこともあり得るのだと、こういうふうに言われましたね。どうにもならぬときには上げるわけにはいかぬじゃないかということを言われたのですが、いまの論法を少し広げていけば、異常な物価の上昇が国民の非常な関心の的になっておるときに、生活に非常に大きな影響を与えておるときに、この事態を一つの緊急の事態とみなすことはできないかどうかですね。ある学者に言わせれば、十分その理由はある、したがって公共料金決定そのものは科学的ではないのだと、本来。これはいわばアートに属するものだと、こういう表現を使っておる人もおります。妥協の産物なんだ、こういう言い方をしておる人もおるわけですから、そういうことを考えてみれば、将来のことは別として、今日の段階において、物価上昇を少しでも考慮するならば、補助金あるいはまた特別の借り入れ金等でこの料金借上げを防ぐということは可能なんじゃないかと私は思うのですが、大臣としてはその点についてはどうですか。
  137. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 物価の問題、どういうぐあいに考えていくかということでございましたが、方法を講じても物価がどんどん上がっていく、一方においては景気が深刻になっていく一方であるというときの問題、これを想定いたしますと、緊急避難的なものの考え方も私はしなければいけないじゃないか。しかしながら、ごらんのとおり、三月末の輸出の伸び方をごらんくだすっても、在庫の状況、これが必ずしもいいことかどうかわかりませんが、久しぶりに必要な程度の在庫の伸びを示しておりまするし、それから生産の増加をいたしております。こういう状況、しかも景気となかなか調和のむずかしい物価というものも、ただいま申しましたように、非常に目に見えて事態をとらえられておる野菜と、それから教育費ということ以外には、あまり顕著な要素というものが出ておらない。交通費に幾らかやはり鉄道運賃の影響は出ております。そういたしますると、私はこの時期にはそういう緊急避難的なことをしなかったことのほうが実際に合っておったのではないだろうか。それから社会政策的という面で、私は、日本の郵便には、これはいい悪いは別でございますが、アメリカのように宗教関係のものはほとんどただにひとしいような扱いをするとか、それからこちらでも事実御議論がございました重症身障者の郵便物であるとか、こういうものを広げますれば相当広がりますから、そうした面の社会政策的な扱いというものは日本の国ではそれほどしておりません。これをもっとして、そしてそれは一般会計で負担したほうがいいのじゃないかとかいうような議論は別にあると思います。あると思いますが、いまの郵便事業については社会政策的な扱いをしておるから、それをすぐ一般的に見ろというようなことまでにはまいらない状態ではないだろうか。まあしかし、おっしゃるお気持ちはよくわかります。  それで、いま私どもがこういうやり方で郵便事業の会計をお願いしておることと、それからさらに根本的な議論としての考え方、これは私ども分けてものは考えるべきだと思います。ただ、現在の段階で郵便料金の改定をせずに、借り入れ金または繰り入れ金でいくべきじゃなかったろうかということになりますると、現実に四十一年度から、これから数年の見通しが立たないような料金の改定を回避するために無理な郵便事業の会計の見通しを立てるよりは、こうして料金の改定を国民の負担でお願いをいたしながら、見通しを少なくも五年程度は立てるということのほうが実情に合っておる、こういう判断を私どもとしてはしておるわけであります。
  138. 野上元

    野上元君 その点は基本的な思想の問題ですから、あまりやりとりしてもなかなか交差する点がないと思います。思いますが、先ほども鈴木君から質問がありましたように、個別原価の状態を見ておると、黒字のところに大幅な値上げをして、そして赤字のところは埋めていかなきゃならぬ。しかも、その赤字がなおかつ黒字にならない、やればやるほど赤字がかさんでいくというようなことを見てみますると、いまあなたがおっしゃったように、社会政策的なものはあまりないと言われましたが、しかしまあ、盲人用点字のようなただのものもありますし、その赤字を負担をしておるということは、原価から見ると大きな社会政策的なものがあるんじゃないかと、こう考えるわけですね。したがって、それを無視するとどうしても一種、二種にかかっていくというような矛盾が出てくるので、それを続けるということになると大問題になるから、それを是正ができるまでは——ひとつある程度の是正ができるまでは、補助金というようなもので個別料金あるいは料金構造を改定していくということが必要なんじゃないかというような気がするんですが、その点はこれ以上論争はやめたいと思います。  それで、これも一般の公共企業料金論のようなものに属することなんですが、大体公共料金というのは公共事業の生産物の価格である。そしてそれは生活必需品である。さらにまたいわゆる公定価格でもある。さらにまた独占あるいは独占に近い寡占価格である。こういう性格を一つ持っておりますね。その性格から見ますと、次のような料金統制上の注意が必要じゃないかというふうに言われております。たとえば、総括原価が五%以上高騰しない限り値上げをすべきではない。五%以上上がったときは一〇%ぐらいの値上げが妥当である。二〇%以上の料金値上げは適当でない。三〇%以上の値上げはインフレのほか特別の場合を除きすべきではない。コストに騰貴があった場合、直ちに値上げは必要ないけれども、時期をおくらしたために三〇%以上にならないこと。三〇%以上のときは過去の政策が不適当であったという問題を含んでおる。平均二〇%でも、一部のものが三〇%以上の場合、特に五%以上のものがあれば、レート・ストラクチュアに大きな欠陥がある。個々の料金がみな少なくとも直接費を償うことが理想であるが、一挙にこれを実現することには事実上困難がある。しかし、この場合といえども、直接費を償わないものの需要が増加する場合、またコストを割る率が次第に拡大される傾向があるときは、料金構成の手直しをすべきである。まあこういう一つの一般的な見方があるわけですね。で、この考え方が正しいとすれば、今回郵政当局が出された郵便料金値上げ案というのは、過去の政策において重大な失策があった、こういうふうになっておるんです。その項目にこれは当てはめることができるわけです。どうですか、その点は。
  139. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 公共料金というものを理屈で考えますときは、一体公企業とは何だと、日本のそうすると現在の三公社五現業で扱っているものを一つの公企業と考えますけれども、あれが実際いわゆる公企業というものになるのかという一つの問題、しかしそれは別におきまして、公共料金というものは、私は、あなたが先ほどおっしゃったと同じような意味合いにおいて、公共料金と一つかみに言っているけれども、非常に行政的というか、政治的と言うと語弊がありますけれども、妥協の産物なんだという。それは公共料金というものをほんとうに利用者の負担というものといつもパラレルにいこうとすれば、おっしゃったように、一つの原則を置いて、そのつど考えなければいかぬ問題です。ある年の、ある数年の負担が後年度の負担をカバーしているんじゃおかしいし、そうすると公共料金というものの考え方というもの、公共料金を純粋に考えれば、そのつどそのつどもっと正確に収支の見込みに合っていっていなければいけない。ところが、一種、二種というものを、これを郵便に限って見ると、とにかく二十六年から四十一年までの経済の推移は非常な変化です。したがって、その間同じような料金をいただいているということは、ある時期にはよけいに御負担を願い、ある時期には原価を割ったって仕事をいたしておる。しかし、郵便というような素朴な公共料金については、今度でも、これはまた話を別に持っていってしまいますが、七月に変えますということを、私はこういうことを言っている。定形ということばはわかるが、非定形、非定形と言うておりますが、国民の皆さまが非定形と言ってわかるか。規格外と言ったらわかるが、非定形、どういう字だろうとおっしゃる。そうすると、非常な改革をいたすものですから、その時期というものに国民がなるべくなれていただいたら、その状態を長く続ける。そういたしますと、私より野上さんのほうがいろいろお調べになってお詳しいだろうと思いますが、ただ私が妥協の産物だと言うたのは、公共料金はこういう意味で、五カ年の収支を見ていたしますと、こういうことを言いますが、そのときの状況はなかなかわかりません。経済企画庁のほうの経済の見通しがまだ出てこない状態ですから。しかし、五年よりもっと長く安定した料金であるということの状態に置くことが必要です、ことに基本の一種とか二種というものは。そういたしますと、必ずしも公共料金は原則どおりにいかないで、ある時期に、妥協の産物と申しますか、このくらいならまずまず御負担を願えるであろうというところで落ちつけて、そうしてむしろ安定した長い時間というものにもちこたえるということで決定していくよりしかたがない。そうすると、純粋に公共料金は何ぞやということを考える。公共料金の決定の原則を考えますならば、あるいはそれとは相当ずれたと申しますか、非常に大ざっぱにものを扱っているという感じでございます。そういう感じは私は持っております。先ほど鈴木さんのお話の中にも、二八・八%と言うが五割もあり四割もあるじゃないか——それはそのとおりでございます。国民の皆さんの前には、十円が十五円でございます。五円が七円でございます。二八・八%という説明のほうは、国民の皆さまはそれは収益率がそうなるということでございましょうが、それは値上げの幅じゃない。そうすると、かなり大幅だとお考えになることはごもっともだということを承知しながら、これから相当長い期間もちこたえ得る料金というものを決定いたしたい、こういうやや非常に大量観察的な作業をいたしたということだと思います。
  140. 野上元

    野上元君 郵政事業をどういう公共企業として見るかということによって、この料金の決定には重大な影響が出てくるわけです。いま大臣の言われるのは、企業として企業的経営というものを頭に描きながら一つの案を発表されたわけですが、もしも企業として見るならば、単に赤字が出るから料金の値上げをするのだ、あるいはまた赤字が出るときでなければ料金は値上げできないのだ、こういう考え方は、明らかに企業的経営から見れば消極的である。郵政事業というものが、郵便企業というものがいわゆるゴーイング・コンサーンであるという実態を把握しておらないから、ただ収支だけ合わせればいいのだ、収益と費用だけ合わしておけばいいのだという考え方が根本的な思想に流れておるというふうに私は考えられてならないのです。だからこそ、今回赤字が出て、とにかく赤字が出たから料金値上げは当然認められるだろう、さて料金計算してみたら五〇%のものもあるし、六十数%のものもある。これはやはり企業経営者として過去における値上げのチャンスを失したと私は考えるのですよ。いま物価の上昇が非常にやかましいときに、こんな大幅な値上げを出すということは、非常に政治的センスとしてまずいのじゃないか、こういうふうに私は考えるのですが、その私の考え方に対して、大臣はどのようにお考えですか。
  141. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) それはですね、昭和四十年度の予算を見ても、確かにもう少し前に上げておかなければならなかったくらいの会計だと思います。これがいろいろな料金の値上げの時期に一緒になったことも、それは私自身はかなりちゅうちょを感じた理由でもあります。ただしかし、それはともかくとして、過去はともかくとして、とにかく私は上げなければいけない。おっしゃるように赤字が出たから、それでどうにもつじつまが合わなくなったからというものじゃなくて、一体郵便事業というのは最も能率的に、なるほど収支は合っておるけれども、それは非能率である、合理的でないというような経営でございます。事業の経営それ自身が、これは国鉄とか電話だとかというような仕事に比べれば、非常に簡単な仕事なんですから、事業の経営が最も堅実な状態であるのには、一体どういう時期に料金をきめたらよろしいかというほうから、ものを判断していくのが筋だと思います。そういう意味合いでは、おっしゃることはごもっともだと思います。ただまあ、さてそれじゃやってみるというときに、これじゃもう少し機械化をしたほうが合理的であるから、いまは収支償ってこれだけ黒がある、来年も出そうだが料金を変えようということは、なかなかふん切りがつきませんで、したがって、どうにもやりくりがつかなくなっていたしたということであることは、率直に私も感じております。しかし、それだけにどうにもせっぱ詰まった状態ですが、この辺で少しこれからのあり方というものを見ていかなければならぬのだということ。  それからもう一つ、私、省の中で役所の諸君にお願いをしておりますことは、今度あたり、これはいろいろなことから私自身が御指摘を受けたのでありますが、舟橋聖一さんなどが言われるのもそれで、いよいよ上げるときになって、あれやこれやで上げなければいけません、ああいうたぐいのことを、ふだんもっと親切にありのままの状態をさらけ出していればだけれども、いまになって幾ら君らパンフレットをわかりやすくものを書いて送ってきたって、やっぱり何か弁護しているようで受け取れぬぞと、だから苦労をして書いたろうが、あれはあまり響かなかったのだと、私はそれはおっしゃることすなおに肯定しながらそうだろうと感じたのですが、これからはむしろ郵便料金というようなものについては、それはその利用者に対してこういうぐあいにやっていただくと、一番自他ともにいいのだというようなことを理解していただくと同時に、そういう面でももう少し国民の前にいつも明らかにしていく、こういう努力が少し足りなかったと、それはこれからはぜひいたさなければいかぬと思います。
  142. 野上元

    野上元君 確かに料金値上げあるいはその他国民に不利益を及ぼすことを計画した場合には、事前に十分何といいますか、メンタルマッサージといいますか、そういうことが必要なんですよ。ところが実際行政官庁の場合には、そういう宣伝費もない、方法がなかなかむずかしいということもあるでしょう。あるでしょうが、しかし、そういうことは常に心がけてやらなければいかぬと思うので、来たるべき時期を予想されるから十分その点は考慮してもらいたいと思います。  それからいまあなたが言われた中に、料金の値上げは、赤字でにっちもさっちもつかなくなったんだということではなくて、能率の向上あるいはサービスの改善というようなことが実際は主目的なんだと、こういうふうに言われておりますがね。しかし、次期のいわゆる原価の再計算をするときに、おそらくあなたの御発言から見ると五年後だというようなことを言っておられるのですが、五年のときには、また赤字でにっちもさっちも動かなくなって、それで料金値上げの正当性をそこに求めようと、こういうことを繰り返し、繰り返しやっているのではないでしょうか。能率の向上、あるいはサービスの改善ということになれば、いわゆるコスト的に言えば、コストダウンを十分に考慮しながらやっていかなければならぬはずなんですね。しかし、実際には原価計算が行なわれるけれども、原価管理というのは公共企業の場合行なわれておらない、これが実態だろうと思うのですが、そういう心配は五年後にないですか。五年後にもやはりにっちもさっちも動かなくなって、そこに料金値上げの根拠を求めようと、こういうことになるのじゃないですか、また。
  143. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) それで、先ほども鈴木さんのお尋ねの中にあった四十三年度から平均五%の率の増を見ておる、いままでの実績から見れば、もし景気の状態や何かの安定した状態を前提とするならばもっと見得るのじゃないか。そうすれば、五年ということを考えればもっと小幅でいいんじゃないか、そういう見方もあると思います。しかし、私はむしろ平均五%というのは妥当なところを押えているのだと思いますし、しかし、確かに公企業と申しまするか、ほかのは別といたしまして、郵便事業全体を見て、もう少し何と申しますか、経営自体の近代化的なセンスが、これが取り入れたならば、すぐそれがどれだけ金額に響いてくるということは別といたしましても、長い将来にはそのほうが働く者も国民に対していいことである。しかも長い間では、やはり支出の面でも負担を軽減していくことができるのだというような方法がどうもありそうに思うのです。これはしかし、私どもの勘ではなくて、部内のそれぞれの専門家に頼んでおるのでありますが、それで私はどうにか、なかなか五年先のことを予断できないのでございますけれどもね、五年先というと万国博覧会の、あの博覧会は宇宙開発の博覧会だそうでして、世の中だいぶ変わってきておると思うので、そうするといやでも私は郵便事業というものも、それはほかの宇宙開発に比べたら非常に素朴な歩みをしていきますが、やはり郵便事業というのは、たいへん近代化のスピードを進めていかにゃいかぬ時期である。ところが、この五年の間というものを、私どもが機械化だとかやれ何だとか言うておりますけれども、これはまことにそれに見合っているものではございません。ですから、とにかくこれで出発いたしますが、五カ年これでいって、そのときになってまた考えるという状態ではなくて、もう来年、とにかく郵便料金の御決定をいただきましたならば、来年の四十二年度から料金というものは、もっと何か精密な状態にものを置かなければいけない、こういうもんだろうと確かに思います。で、おっしゃるようににっちもさっちもいきません。私どもの申し上げておりますように、元来悪いことをしておりませんから、どうか申しわけありませんが上げてくださいと、これを繰り返しているということは、このような意味合いのお願いはもう私限りで、この次はもう少しスマートなお願いのしかたをするようにぜひありたいもんだと思っております。
  144. 野上元

    野上元君 五年先のことをとやかく言ってみても、これはどうにもならぬことですから、できるだけ狂わない計画がほしいということですからね。そういう意味で申し上げておるのですが、経済成長率と郵便の伸び率というものを比較してみますとね、必ずしも経済成長率とは一致しないのじゃないかというふうに私は思っているのです。というのは、たとえば昭和三十三年及び昭和三十七年のいわゆる不況のどん底にあったときにも、郵便物はきわめて順調に伸びておるのですね、なぜこういうふうに伸びておるのかと思って、実は私も研究してみたんですが、それは国民総支出の中に占める個人消費あるいは政府消費その他一切の消費が下がっておらないのですね、三十三年も三十七年も。下がっておるのは生産部門のほうなんですね。在庫投資だとかそういうほうが著しく下がっておりますが、しかし国民消費あるいは政府消費——政府需要といいますか、というものは全然下がっておらない。だからこの三十三年、三十七年にも郵便物は順調な伸びというか、大体下がらないで済んだのじゃないかと思うのです。だけれども、そういうことを考えてみますると、単なる経済成長率の平均のパーセンテージで将来の郵便物をはじいていくと、非常な狂いが生じてくるのじゃないかというふうに、実は私は心配しておるわけです。郵務局長はなかなか、将来経済成長率が伸びを予想できるという強気なようですが、郵便の伸びが必ずしも経済成長とそういうものとが、経済成長率と郵便の伸び率とは一致しないのじゃないかというふうな心配があるから、その点も十分に試算をしておいてもらいたいと思うのです。それと同時に、国民の消費傾向として、衣と食は足って住は不足しておりますが、将来どこに伸びていくかというと、住には伸びていきますが、その他今度は娯楽、通信、レジャー、こういうものが非常に伸びるという予想を立てておる学者もあるわけです。そうしますと、郵便の物数増加から見れば、いい影響を与えるということも予想できるわけですがね。そういうことを全部計算をしてみて、狂いのないようにして、できるだけ狂いのない計算を立ててもらいたいと思うのです。というのは、狂えば、どこかにしわが寄るということですね、必ずしわが寄るのですね。そのしわが一体どこに寄るかが問題なんです。それはまた後にその問題については、できるだけ明らかにしていきたいと思います。  次には、郵政は特別会計であり、独立採算をとっておるのだということを言われるのですが、その確固たる根拠というのは、何に求めておられるのですか。
  145. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 郵政事業におきまして、独立採算制を採用するという明文はございませんが、ただ郵政事業特別会計法におきまして、一条におきまして、企業的に郵政事業を経営してまいる。それから十六条におきまして、資金の自主性、公債、借り入れ金、特にこの中で国の財政法によります国の場合におきましては、業務の運営に要する場合には赤字公債が出せませんが、郵政事業におきましては、そういった場合にも出すことができる。それから二十条で余裕金の運用とか三十六条で利益金の処分、欠損の処分、こういった項目がございますので、これらが郵政事業は独立採算でやっていくようにきめられておる、かようにそういった面から解釈いたしております。
  146. 野上元

    野上元君 私も郵政事業特別会計法を見てみたのですが、いまあなたがおっしゃられたようなところをつまみ食いして、それを出して見て、まあいわゆる独立採算制なのかなということがわかる程度なのですが、この点はもっとはっきりする必要はないのですか。
  147. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 私も郵便法それからこのたび改正をお願いいたしました……、しかし一条等については触れませんでした。これは一条というのは、ある意味ではなかなかよくできておると思います。何か非常になめらかな表現であって、この中で均一主義であるとかそれから独占であるとか、それから決して必要以上なものはちょうだいしないようにと、いろいろな思想が入っております。しかし、もしこれをもっと理屈を言うならば、なるべく安くていいような表現で一体料金というものがあらわれるものだろうかどうかという気はいたします。それから特別会計、企業的に事業をやっていけということであれば、ただいま経理局長が申しましたとおり、ほかにどうも郵便事業のようなものは、ほかに考えようがございませんから、それから独立採算の根拠が出てくるのだということは言えるのだろうと思いますが、特別会計法等については、将来はあるいはもう少しはっきりと事業そのものの根拠になるような、根拠を与えるような改正をするというようなことは、あるいは私は必要なことかと思います。
  148. 野上元

    野上元君 私は独立採算であるかないかということは、料金決定の大きな条件になると思うのです。これによってきまると思うのですね、料金の理論的根拠が。だからそれを求めてみたのですけれども、ぴちっとしたものがないのですね、その点を非常に私は残念に実は思っておるので、将来ひとつこの点は何かの方法で十分研究してもらって、はっきりできるものならはっきりしたほうがいいんじゃないかというような気がするのです。そうしないと、なるべく安い料金でというようなことがあるし、企業的にやれということもあるし、そこで料金決定に混乱が起きる。理論的あいまいさが出てくる、こういう実は感じを持ったわけですから、その点をひとつ一ぺん検討してもらいたいと思いますが、独立採算制といった場合にも、解釈が幾つにも分かれているのです。たとえば企業的な独立採算制、いわゆるゴーイング・コンサーンとしての経済的自立性を目的とした独立採算制というのがあるのですね。第二番目には収支を均衡すればよろしいという独立採算制があるのですね。そのうちの収支均衡の中にも営業費用だけでよろしい、費用のほうはというのと、いや資本費用も含めた収支のバランスという独立採算制もあるのですね。一体その郵政省の場合はどの解釈に基づいて、独立採算と言っているけれども、どの部類に属するのか、その点ひとつ経理局長、はっきりしてもらいたい。
  149. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 現在の会計法からまいりますと、独立採算の明文はないわけでございます。ないだけにただいまおっしゃいました点が出てくる。それでただ資本的な費用まで料金の中に求めるかどうか、結局そこへまいると思いますが、現在公共企業、国営企業、こういった分野におきまして、公共企業におきましては資本的な費用に充当すべき公正報酬とか、こういった面はある程度考え得るというような考えが強いようでございますが、国営企業におきましては、まだそういった点に至っていないのでございます。特に郵政事業のように、投資をしましてもそれが直ちに大きな収益を生んでいくと、こういった分野がないだけに、その点は非常にむずかしいことになると思います。ただ何と申しましても、こういった国の事業であります以上、自前でやれます場合が一番従来の、よい悪いは別にいたしまして、従来の長い経験としまして、自前でやっていける場合が一番事業がうまくいく、こういった面から見てまいりますると、でき得べくんば料金の中でそういった分野が少しでもあったほうがいいんじゃないか、こういうふうに考えられます。ただ物価に及ぼす影響等から料金の幅を考えてみますと、なかなかそこまでは十分にいけないというところから、資本支出につきましては、やっぱり借り入れ金でまいる、そして長い目で償還、利払い、その他を処理していく、こういったことしか方法がない、かように考えております。
  150. 野上元

    野上元君 私は、やっぱり料金決定の根拠がないからいきなり料金に食らいついてしまって、料金をどうするかという問題になっているわけですね。私の言いたいのは、そういうことじゃなくて、料金の決定される基本的な条件、独立採算制であるということと、原価主義であるということと、原価は原価補償主義であるというようなのがきまらないと、料金を幾らいじってみても、いいかげんな料金になってしまうのです。だから私は先ほど言ったように、これは価格じゃなくてアートだと、こう言ったのです。妥協だと言ったのです。いつでも変わり得るわけですね。そこのところは、もっと私ははっきりすべきじゃないかと実は思うんです。で、あなたの御答弁の中から、どの部類に属するのかはっきりとわからないのですけれども、いま私は三つ例をあげたのですが、たとえば経済的自立性を確保するための独立採算制、それから単に収支の均衡のみを目的とした独立採算制、その中にも、収益と営業費用の収支バランスだけを考えておるものと、収益と営業費用プラス資本費用を加えたもののバランスを考えておるものと三つあるのですよ、独立採算制というものの解釈の中には。だから、郵政というのは一体そのどれに属するのか。どれに属するのかによって、料金決定の私の考え方は非常に違うのです。それを聞いておるのですがね。
  151. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 経済的な独立性を得たいというのはたてまえであります。しかし実際問題としましては、資本費用につきましては借り入れ金でまいる、こういう中間的な立場に立つと思います。
  152. 野上元

    野上元君 そうしますと、独立採算制であるということになると、原価主義をとっているわけ。そうですね。それは原価補償主義ですか。
  153. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 原価主義、結果的には原価主義をとっております。それで現在の法律上は、原価主義をとるということをうたっておりません。しかし原価計算はするようにいたしておりますし、それから将来の料金を出します場合には、独立採算であります以上、必要とする金に見合う、結局将来必要とする総原価に見合う料金を求めることになります。したがいまして総合的には原価補償、こういうことに相なるのではないかと、かように考えております。
  154. 野上元

    野上元君 先ほどの独立採算制をはっきりうたってないと同時に、郵政事業特別会計の中には原価主義もうたってないのですね。ただ原価の計算をすべきだということになっているわけです。この条文の目的は、財務諸表をつくる一つの基礎資料という意味じゃないかと思うんです。私は料金決定の原則になっておらぬと思うのだが、その点どうですか。
  155. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 料金決定の原則としては、明文といたしましては、できるだけ安い費用でやるといいます郵便法の一条、それから特別会計法の結局一条になりますか、企業的に経営していく、こういった両者から出していくように相なると思います。したがいまして、先生のおっしゃいましたように、料金の出し方の基準という条文は、現在のところはございません。
  156. 野上元

    野上元君 私はそういうあいまいなことだから、郵便料金の場合は非常に問題が残ると思うんです。料金決定の原則は、安い料金だと、それに企業的なものを加味するのだと、そうしたら今度の五〇%の値上げなんというのは、なるべく安い料金じゃなくて、なるべく高い料金ということになる。それは原価補償主義というものががっちりときまっておらぬから、こういうことになるのじゃないですか。たとえば国鉄の運賃法を見ると、その点ははっきりとうたわれているわけです。あなたのほうでなければ読んで聞かせますが、国鉄運賃法の第一条第二項第二号に「原価を償うものであること。」こういうふうに、原価補償主義というのがちゃんと入っているわけです。したがってこういうものが入っておれば、原価構成要素というものは、自然と出てくるわけです。それで、原価構成要素の中心には、国鉄の場合には公共的必要余剰というものが非常に含まれております。ちょっと読んでみますと、まず第一に都市交通対策に要する費用、それから線路増設に要する費用、ターミナル改善に要する費用、線路改良に要する費用、保安対策に要する費用、車両増備に要する費用、その他と、こうなっております。これが原価構成要素の中に入ってよろしいというのです。これが公共的必要余剰だというわけです。これは原価補償主義の場合には認められるというのです。公共企業として、いわゆるゴーイング・コンサーン、これを認めなければ料金というのは成り立たないのだという考え方が、はっきり国鉄の場合には出ている。ところが郵政の場合には、なるべく安い料金というだけで、その企業的経営ということが明記されておるにもかかわらず、その裏づけというのは、はっきり言えば全然ない。その点が私は非常な弱みじゃないかというような気がするのです。あなたのほうの原価要素の中には、いわゆる公共的必要余剰というのは入っていないのですか。
  157. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 総合的に計算をしてまいりますと、結果的には入るようになるのではないかと思います。そういう点につきまして、条文の具体的な面、それからこういった法律のあり方につきましては、先ほども大臣が申し上げましたように、検討すべきではないか、こういうふうに申し上げましたが、現在のところを見てみましても、明確に正面からは出ておりませんが、ただ、十六条を見てみましても、先ほど申し上げましたように、業務の運営に要する経費の財源に不足が出ましたときは、その会計の負担において借り入れができる。それからまた利益金が出ました場合には積み立て、並びに欠損の出ましたときには取りくずす、こういった点から見てみますと、やはりこの会計の責任において、原価補償主義というものが背後にはある。それから料金は、やっぱり料金において事業は自主的にやるべきであるということがあるものと解釈いたしております。
  158. 野上元

    野上元君 郵政事業特別会計の第二十条には、余裕金の処理について書いてあるわけです。余裕金というものが生ずるというのは、先ほど言った独立採算制のうちの第一の経済的自立性を確保する独立採算制、その場合には公共的必要余剰というものが認められるということが採用されておらないと、余裕金というのは原価の中から生まれてこないはずです。そうでしょう、収支償うものだけであるということであるなら、余裕金なんて理論的に出るはずはないです。ところがこの特別会計の中には、余裕金というものがちゃんと明記されておる。だから、一体どういうことを考えておるのか、私はどうもよくわからない。だから私の言いたいのは、原価を少なくとも償うべきものであるということを料金の基本に持っていかないと、あなた方が将来の計画を立てられるに非常にぐあい悪いんじゃないかというふうに思うんです。で、あなたは、結果的にはそういうものが入った原価主義である、こういうふうに言われている。それでは非常に計画というのが成り立たないんですね。結果的にそうなったんだということで積極性がないでしょう、事業経営としての。結果的にそうなったんだと言われるならば、今度郵務当局でつくった五カ年計画といいますか、五年後を目ざしてつくった今度の郵便料金改定のときに、明らかに原価計算をされたわけですね。原価計算に基づいて計画が立てられたと思うんです。そのときの原価構成要素の中にはどういうものが入っていますか。
  159. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) ただいま私どもでいたしております原価には、決算をたてまえといたしました決算原価主義でございます。ただ、将来の料金に対しまして、将来の収入を見通しますために、総合原価主義によりまして見込みを立てておるわけであります。ただ、その場合に原価の構成要素として何を見ておるかというお話でございますが、これにつきましては、営業費とそれから減価償却費、支払い利子、こういったものを原価の構成要素として現在見ております。
  160. 野上元

    野上元君 そうしますと、私がさっき言った公共的必要余剰というのは、その中に含まれておらない。いわゆる営業費用プラス資本費用、これが郵政省の場合の原価、こういうふうに解釈してよろしいんですか。
  161. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 資本費用も償還金程度しか見ておりません。あとは借り入れ金でやっていくんだと、こういうたてまえになっております。償還金は支払い利子と同じように本来なれば資本支出であり、利益金処分の一部だとは存じますけれども、こういった利益を生まない投資を、投資としての郵便局金とか、利益を生まない資本支出が主体でありますので、郵便事業におきましては、せめて償還金ぐらいは利払いと同じ形におきまして原価の要素にせねばなるまいと、こういったところから、この程度は原価の構成要素にいたしております。
  162. 野上元

    野上元君 そういう原価だと、郵政事業特別会計法二十条にいう余裕金というのは、理論的には生まれないんですな。
  163. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) この余裕金は二つに分かれておりまして、年度途中におきます余裕金等も、これによりまして資金運用部に入れます点と、それから決算上出てまいりました利益も、料金値上げがございますので、当初五年でありますと二、三年の間は相当利益金が出てくるわけであります。そういった場合の運用ということもこういった面から考えられますが、これはそういった意味における限定されたものである、かように思います。
  164. 野上元

    野上元君 あなたの言われる利益金というのは、どういう性格のものですか。
  165. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) この会計はやはり自主性を一応持っております。収支の差額は差額として、出てまいりました剰余金は利益金として積み立てると、こういった場合の、一般の利益金と同じであろうと思います。
  166. 野上元

    野上元君 いずれにしても、先ほど言いましたように、原価補償主義というものをはっきりうたうということは、私もいま答申書というものを初めて見たんですが、その中にもやはり書いてあるんですね、そういうことが。なぜ、今度改正してそういうことをやらなかったのか、ふしぎに思っているんですけれどもね、そういうせっかくいいサゼッションがあったら、どしどし採用して、あなた方やりいいようにすべきだと思います。私はそれがきまらないと、いつまでも郵便料金というものはごたごたもめると思うんですよ。そういった点を、もう一ぺんよく検討してみてもらいたいと思うんです。  それからね、光村委員が本会議で総理大臣あるいは郵政大臣質問したときに、こういう質問をしたんですよ、郵政事業、郵便事業の内容を見ると、一種は黒字だと、それから二種はまあとんとん。三種以下赤字がある。その黒字を大幅に値上げをして赤字のところを埋めていくということは、明らかに誤りではないかと、こう言ったところが、総理大臣答弁はですね、郵政事業は総括原価方式をとっておるので、その点は問題ありませんと、こういうふうに答弁したのですが、いまでもやはり郵政大臣はそういうふうにお考えですか。
  167. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) これはどうも各種別ごとに、それこそ種別ごとにぴったり合わして、絶えず料金を変えていくというような考え方も、考えとしてできないことはないと思います、ただ、もう全国均一のサービスをして。まあそれで私はある意味で郵便法の一条というものは、非常に含蓄があると思いますが、なるべく簡単に——ところがそれに比べると、私も反省をしながら、ほかにやりようがないなと思ってしたのでありますが、今度の一種の料金等は少し複雑になっておるかと思います。しかしながら、とにかく簡単にきめてまいるという場合に、そうして、しかも非常に慣熟した状態に置くとするならば、それぞれの種別ごとで見当をつけまして、そうしてひんぱんに変えるということは適当じゃない。それじゃ、今度、ひんぱんに変えずに各種別でやっていったらどうかということになりますると、同じ、今度は、一種と五種を寄せましたけれども、書状にいたしましても印刷したやはり信書が、今度は非定形という形で出てまいりましょう。同じような種類の事業でありまするから、これは総理がお答えいたしましたように、総括原価主義で配賦をしてまいる、このやり方で非常に不合理だということではない。もし、いまの状態でだんだんと直していかなければならないとすれば、とにかく五割上げましたから、この際はその限度にとどめましたけれども、第三種の低料扱いの分を直していくというような点は問題があると思います。あると思いまするけれども、光村さんにお答えしたと同じような意味合いで、全体の独立採算をはかっていく、こういうぐあいに考えております。
  168. 野上元

    野上元君 私はね、そのところがちょっと理解できないのは、この総括原価というものの概念は、これは営業費用プラス資本費用イコール総括原価、こういうふうになっておるわけですね。これが一般に認められた総括原価の規定ですがね、それを考えてみると、光村氏が質問しておることとは全然違うんですよ、その内容が。一種と二種、三種のほうの料金をきめるのはいわゆる料金構造なんであって、どこが黒字で、これはどこが赤字かということは、総括原価というものとは関係がないことなんです、総括原価という文字、言い方をするならば。そうでなくて、総括原価というものは、イコール営業費用プラス資本費用、あるいはまた国鉄等では公共的必要余剰、こういうものが含まれたものをいわゆる総括原価と言っておるわけですね。光村氏が聞いたのも、私が聞きたいのもそうじゃなくて、そういう総理が答弁したような総括原価の考え方じゃなくて、一種は黒字なんだから、それを値上げをして赤字のほうを埋めていくというのは、それはおかしいじゃないかというのは、料金構造に誤りがあるのではないかということを聞いておるわけなんですよ。ここにもやはり原価補償主義の問題が出てきておらぬのですね、はっきりと、郵政事業の場合には。その点をついた質問をしておるわけなんです。総括原価というものと混同してもらっては困ると思うんですが、その点はどうですか。
  169. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 確かに、これは総括原価主義と、ことばで申し上げますよりも、むしろ私は、ある意味でそれぞれ同じ郵便なんでありまするから、それぞれの一種、二種、三種、四種に配賦をいたしておりますというような言い方をしておる場合もあるのでございますがね。ただ私は、国鉄などと非常に違いますのは、むしろ法律自体が非常にその点について総括原価主義なり独立採算のあらわし方というものは非常にあいまいでありますのは、ある意味で郵便事業というのは非常に素朴な事業であります。それから、先ほど御指摘になりました点ですが、確かに私は、景気の動向と必ずしも一致しているものじゃないように思います。たまたま近ごろの終戦後の状況を見ますと、カーブをかいてみますと一つのカーブは出てくると思います。しかし、これは非常に短い間の、二十年くらいの間のカーブをとっておるのでありまして、むしろあるところまでは伸びてまいる。必ずしも景気の動向にかかわらずに、そうしてあるところまでいけばそう伸びなくなってまいるというのが、郵便じゃないだろうか、こんなぐあいに考えます。したがいまして、そういう景気の影響等も、企業でありますと影響を受ける場合が非常に多いのです。そういう受け方もなくて、むしろあるところまでは伸びていく。そうして、伸びていく過程で封書のほうがふえて、はがきのほうが減っていく。はがきに当たるものは、ほとんど絵はがきだけにだんだんなっていくとか、そうすると、景気と合わせて考えますよりも、郵便事業というものの長い歴史を持っているそれぞれの国でどんな動きをしていくのかということでめどをつけるのが必要なんじゃないか。したがって、そういう材料等も現に郵政部内でも取りそろえるように用意はいたしております。そういうしたがって郵便事業独特の一つの発展があり、また事業が非常に素朴である。したがって、法律等の根拠も鉄道の事業等に比べますと、だいぶ立て方が違っておる。しかしながら、そういう事業であるとすれば、その特徴に合わせてどういう経営をいたしていくかということの根拠がある。それから、それに伴って料金の決定についてももっと正確な根拠があるということは、私は将来のためには望ましいことだと思いますが、このたびの改正は、そこまでいっておりませんけれども、これはひとつ研究問題として郵政部内にしょわせていただきたいと思います。
  170. 野上元

    野上元君 確かに国鉄あるいは電電公社の事業と郵政事業を比べた場合に、二つの事業のように膨大な固定資産はないわけですね。あるいはまた、長期の貸借契約もまあ郵政の場合には少ない。したがって、同じ公益性でも性格は若干違いますね。しかし、いまは全般的に見て、世界的に見て、やっぱり郵便事業も、いよいよ公益企業として企業的経営をする方向に漸次移行しつつある。それのほうが国民に対するサービスがよくなるんだという考え方があるわけですから、郵政当局もひとつ積極的にそういう点は研究してもらいたいと思うのです。それと同時に、郵便料金というのはいわゆるサービスですからね、サービスの形の変わったものですから、したがって大衆がそんなにたくさんサービスを望まなければ、料金は上げる必要もないし、低くてもいいのです。しかし、大衆はサービスは非常に望むというならば、高いサービスを望むというならば、それは当然料金ですから、高い料金ということになるわけです。これはもう対応的なものなんですね、サービスと料金とは。その点国民にもっともっとアピールしていかなければいかぬと思うのです。先進国においては、料金よりもサービスに重点を置いているわけです。サービスを高くしてくれ、料金は高くてよろしい、当然これはついてくるものですから。ところが後進国にいくと、サービスより料金がまず頭にきて、料金を低くしてくれ、しからばサービスも低くなります、けっこうです、というのが後進国の支配的な傾向のようですね、大体。日本は一体どの程度にあるのかということになるのですが、郵便法の第一条を見ると、なるたけ安い料金というから、後進性を持っているんでしょうね、郵政省自体が認めておるようなことになっておる。そういう点もひとつあわせて今後十分考えてもらいたいと思うのです。  それから料金の個別的内容なんですがね、一種、二種、三種、四種、小包。小包は法定料金ではないけれども、おそらく先ほど言った意味の総括原価の中に入っておると思います。これは十分に計算しながらほかのものとのバランスをとったと思いますね。そうしますと、独占的性格を持った一種、二種、これが大体黒字であって、価格競争的な性格を持った三種、四種、小包が赤字なんです。こういうものを全部ひっくるめて同一範疇の中に入れて料金を包括的に計算していくという方向は誤りじゃないかというふうに私は思うのですね。たとえば価格競争的な品種については、原価で計算してもよろしいと思うのであります。で、それが高くなったらこれは競争的性格を持っておるのですから、高ければ利用者がこないだけです。ほかの安いところにいくでしょう、独占じゃないのですから。一種にしたら独占だからいやでも郵便局にこなければならぬ。この一種、二種の料金は独占価格だ、いわゆる競争価格の料金の決定方法と全然別個でなければならぬ。これを全部ひっくるめて総収益の中で案分していくといういき方は誤りじゃないかと思うのだが、その点、郵政当局はどう思いますか。
  171. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 仰せのように一種、二種、特に一種の中の筆書した書状と二種は独占的な業務の中核をなすものでございます。この料金が原価計算をするときには、実ははがきのほうは、二種のほうはもう赤になっておるわけですけれども、一種などは黒で、三種以下の必ずしも独占でないものが赤だということの御指摘でございますが、三種以下につきましても、実は事柄の性質からいたしまして、普通の運送業務の対象になるわけではございませんです。非常に軽い小さなものでございまして、他の運送業務にこれをかけます場合には、自然非常に高い価格にならざるを得ないということから、価格の面にいたしましても、あるいはまた地域の面にいたしましても、郵便業務のような全国的な組織を持った業務はほかにございませんので、事実上やはり独占だということになりますので、私はその面で、私どもがほかに競争事業を許しておるものについて特に価格を低くして、それで独占業務のほうにそのしりをかぶせておるということでは決してないというふうに考えております。
  172. 野上元

    野上元君 この答申を読んでみますと、「諸料金の決定方法」の工の項に、「文化政策的、社会政策的な料金の軽減については本来郵便事業で負担すべきものとは考えないが、急激な是正は困難と思われるのである程度やむを得ないであろう。しかし、その際低料金のものでも少なくともそれを取り扱う直接の経費に見合う程度には定める必要がある。」、こういうふうにうたわれておるわけですね。それでこれを現実に実行していけば、一種の料金とこれらの料金とは、格差を縮めていかなければならぬと思うのです。一挙にはできないけれども、急激にはできないが徐々にやりなさい、こういう思想がこれには含まれておると思うのですね。ところが今回の料金の値上げを見ると、新聞も五〇%でしょう、一種も五〇%でしょう。これではこの答申を無視したことになりませんか。こんなことを繰り返したら、また五年はだめですよね。そうするとこれを繰り返していけば、いつまでもこういう状態になるんじゃないですか。その点はなぜこういう処置をとったのか。
  173. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 今回の料金改正だけで比較いたしますと、お説のようにもなろうかと思います。実は御承知のように一、二種につきましては、三十六年の料金改正の際には据え置きにいたしております。二十六年の改正のときから見ますと、当時はがきが五円、低料三種が一円、それが今度の改正によりまして七円と三円になるわけでございます。これは二種でございます。一種につきましては、十円と一円の比率が十五円と三円の比率になるというようなことにもなりまして、この郵政審議会の郵便事業近代化に関する答申のとおりにまだ現在到達はいたしておりませんけれども、その方向に向かって逐次歩みを進めていると、そういうことにはなるかと思っておりますし、また私どももさような心がまえでいるわけでございます。
  174. 野上元

    野上元君 前回の郵便料金の改定でせっかく接近したのを、またそのまま持続したってことになるわけですね。一つのチャンスですね。チャンスはやっぱりつかんで生かしていかなきゃ、また五年間同じことになるということになりますからね。そういう点も、やっぱりさっき言ったように原価主義なら原価主義に戻ってはっきりした政策を打ち出していく必要があるんじゃないかと、まあこのように考えますが、ひとつ参考にしてもらいたいと思うんです。  それから、この郵政事業特別会計というのは、非常に変な会計なんですね。たとえば、この中には郵便貯金事業もあるし、簡易保険事業もあるし、年金事業もあるし、電電公社の委託もあるし、いわゆる企業でない、まあ通り抜け勘定というようなものも全部含まれておるし、ということで、非常に何というか、すっきりしないわけですね。で、貯金あるいは保険の特別会計があるなら、郵便の特別会計もあっていいんじゃないか、こういうふうに思うんだがね。そうすればもっとはっきり料金の問題等についても浮き彫りできると思うんですよ。その点はどうなんですか。
  175. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) 御意見のようなことも十分考えられるわけでございますが、ただ、郵政事業末端におきまして、まあ特定局におきましては、総合的にいろんなものを扱っております。その点の面まで考えていかないと、あとの段取りが非常にめんどうになります。当面いまの形の特別会計が一番便利である、こういうところから出発したものと考えております。まあ将来そういった点も検討は要すると思いますが、とにかく郵便局の形がああいう形であります限りにおきましては、いまの形は便利であるということは言えるんじゃないかと、かように考えております。結局、あと処理の手数を省くという面から見ましていまのところに落ちついたと、かように考えております。
  176. 野上元

    野上元君 で、あの中にはたくさんの会計がありますね。あれ全部取り去って、不純分を取り去って残ったのが郵便特別会計ですか、計算上は。
  177. 淺野賢澄

    政府委員(淺野賢澄君) さように相なっております。
  178. 野上元

    野上元君 そのために非常に見にくいわけですよね。だから郵便事業というものが、独立会計として確固としたものがなくなるのじゃないかというような心配があるわけです。その点はひとつ研究をしてもらいたいと思う点です。  時間がなくなったので先を急ぎますが、郵政大臣は、五年間は郵便料金を値上げしないでよろしいと思う、こういうことを発表されているし、総理大臣まで発表されておりますが、あれはどういう根拠に基づいているのですか。
  179. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 詳細は郵務局長からお答えいたしますが、結局四十一年度の料金改定による利用減を見、四十二年度でそれが回復し、その後どのように手がたく見ましても、四十三年度からの三カ年、平均五%の増は見込み得る。そうすると歳出のほうの人件費なり、物件費なりの見込み方というものを、物価の状況等を勘案いたしまして、人件費、物件費の今後の傾向を一応考えますると、五カ年間の収支のバランスがとれる。ただしこの点につきましては、私どもも確かにこの夏ごろには発表される政府の長期の経済の見通し等をあわせまして、十分と考えなければ相ならぬと思います。ある意味合いで収入においてもやや内輪に、歳出においてもやや不確定な要素を込めながら、一応五カ年の収支の見込みを立てると収支の均衡がとれる、こういう状態であります。ひとつ詳しい点は、郵務局長から申し上げます。
  180. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 補足して御説明申し上げます。今後五カ年間の収支につきましては、まず収入では、その裏づけになります郵便物数、昭和四十一年度で四十年度比四・五%の増、これに利用減が加わります。四十二年度で四%増、先の利用減は全部回復、四十三年度四・五%増、四十四年度五%増、四十五年度五・五%増というふうに見込みました。これにつきましては、先ほどほかの委員の方の関連した御質問につきまして少し詳しく申し上げたわけでございます。支出の見込みでございますが、御承知のように一番大きな部分を占めますものが人件費でございます。人件費につきましては四十一年度、四十二年度、四十三年度は年七%の増加を見込んでおります。それから物件費につきましては、そのうち賃金につきましては一般の人件費を同様に見ておりますし、集配運送費、簡易郵便局手数料、切手売りさばき手数料の人件費的色彩の強いものにつきましては七%の約半分程度を見込んでおります。それ以外の物件費につきましては、大体物増の増加の比率で見ていったわけでございます。四十一年度の予算が相当望ましい姿で成立いたしておりますので、それで非常に窮屈といいますか、不足なことはまあそうないというふうに見込んでおります。なお近代化関係の機械等の経費も、ほどほどに四十一年度見込まれておりますし、これらにつきましては四十二年度以降さらに相当大幅に見込んであるわけでございます。四十四年度、四十五年度につきましては、少し先になるわけでございますが、一応人件費の増加につきましては、まあ物価安定というような姿があらわれ得るというような考えのもとに五%、人件費につきましては。その他の物件費等につきましては、大体物増に見合うもの程度を見込んで出したわけでございます。その結果が先にお手元へお配りしたかと存じますが、五年間この料金引き上げによりまして千九百四十億円の増加ということになりまして、収入と支出がほぼバランスがとれるというふうに考えている次第でございます。
  181. 野上元

    野上元君 いまのあなたの計画を狂わせる寄与率というかね。おかしな言い方だけれども、これを狂わせる寄与率で最も大きいのは物数の問題と、それから人件費だと思いますね。そうですね。この二つの条件が大きく狂えば、あなた方の計画も根底からくずれると思いますね。そこで聞きたいんだが、人件費の七%を四十一、四十二、四十三年の三年間に、各年度ごとに増加率を見込んだと、こういうわけですが、その中には昇給も、それからベースアップも、それから増員も、そういうものをすべて含んでおるのですか。
  182. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 増員の分は別途計算して加えてありますが、この七%の中には定期昇給とベースアップ、両方込めたわけでございます。
  183. 野上元

    野上元君 そうしますと、七%の中で定期昇給たしか四・何%くらいあったと思うのですが、何%になりますか。
  184. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) ごく最近の予算上の率でございますが、これは新陳代謝等いろいろございまして、三・五%を見ております。
  185. 野上元

    野上元君 そうしますと、残った三・五%がベースアップということになるわけですね。で、いまの仲裁裁定がまさに出されようとしておりますが、このベースアップは大体どれくらいに見ておられるのですか。
  186. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) ちょっと、私その点について見込む能力を持ち合わせておりません。
  187. 野上元

    野上元君 少なくとも三・五%をこえることは間違いないと思う。もしもこえるとね、初年度において狂ってくるということになりかねないがどうですか。
  188. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 先ほどお答えいたしましたように、五年間におきまして千九百四十億円の増加ということが見込んでありまして、当然、まあどうなるかわかりませんが、年々の増減というものはいろいろあり得るかと思います。長い目で見まして、その範囲内におさまるのではないかというふうに考えるわけであります。
  189. 野上元

    野上元君 これは推定ですから、これも水かけ論になりますからやめます。やめますが少なくとも五年後には料金の値上げを予定されているわけです、逆に言えば。五年間はとにかく料金値上げはしませんということは、それは六年目にはやらなければならぬかもしれない、こういうことだと思うんです。そうしますと、毎年ずっと一年を追うごとにいわゆる余裕金というか、郵政事業特別会計の経費というか、その弾力性が薄れていくわけですね。そうすると、当然計上しなければならぬ予算というものはさまっているわけですね。固定費というものがありますね。問題は流動費がどのくらいあるかしらぬけれども、たいしてないと思うのですが、それがだんだん少なくなっていくという場合には、どこにしわが寄っていくのですか。建設費ですか。
  190. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 先ほど申し上げましたように、五年間で千九百四十億の増加を見込んだということでございますが、初年度は、これは先般の予算で御承知のとおり五十九億八百万、これを剰余金として建設勘定に繰り入れております。二年目は計算上十八億六千七百万剰余金が出ると見込みまして、これをどうするかということは、また四十二年度予算の問題になろうかと思います。以下四十三年度に二十三億余り、四十四年度十九億余り、四十五年度三十億余りそれぞれ不足するという計算になっております。この内容につきましては、先ほど経理局長申し上げましたように、減価償却、借り入れ金の利子、それから元本の償還、そういうものが見込まれているわけでございます。なお、機械類等につきましては、全部損益勘定支弁といいますか、借り入れ金は全然予定しておらないわけでございます。局内搬送設備は別として全然予定しておらないわけでございます。だんだんとそういうはさみの交差のような形になっているという点は、前半につきましては御指摘のとおりでございます。六年目あたりがどうなるかということでございますが、実は六年目はまだ計算してみなかったのでございます。必ず不足になって六年目は引き上げになるのだ、こういうことになるかどうかは、そのときの郵便物の伸び方の問題と物価の傾向、それらを背景にいたします人件費の問題、そういうものが背景になってまいろうかと思うわけであります。昭和三十年前後、御承知のようにあの時期におきましては郵便の物数は相当伸びておりましたが、ベースアップということは、あまりなくて済んだ時代でございます。そういうようなことになれば、まだあるいは六年以上も保つかもしれませんし、最近数年間のような情勢ではとてもそうはまいらない、こういうふうに考えております。
  191. 野上元

    野上元君 私が聞きたいのは、値上げの問題じゃないのです。値上げの問題になる過程においてだんだん剰余金が減っていくから、そして取りくずしになる可能性があるから、その場合には建設費を食ったり、あるいは物件費の節約をしろということで、料金の値上げをしなければということでは、これはあまりいばれないと思います、公共企業の経営者としては。そうじゃなくて、やはり、いまの初年度における事業計画が、五年後においても十分に同じペースでやれるような事業経営というものが好ましいわけですね。そうでなければまたじり貧になっていくという、そして結局はまた最後には赤字になって料金値上げ、これは物価にしわが寄るわけですから、このしわがしょっちゅう寄ったのでは、事業経営としてまずいと思うので、その点を聞いておきたかったわけです。
  192. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 現在見込んでおります近代化関係の経費等は五年間に、おしまいのほうではほとんど何もできないということではなしに、五年間私どもの期待しております程度のものは、継続できるという見込みでございます。ただ、帳じりがたとえば四十五年度三十億ばかり不足という形が出ております。五年先のことでございますし、あれですが、企業努力等によりまして、収入支出それぞれ相当努力をいたすことによりまして、この差し引き不足のものは補うようにしなければならないというふうに考えております。ただ五年間を通じて見ますと、これも御承知のように一応収支合っている。しかも、その内容はそれほど支出等無理に切り詰めるといった内容ではない次第でございます。
  193. 野上元

    野上元君 私は去年郵政を回ったときに各郵政局の首脳部から訴えられたことは、何でも節約しろ、いまはとにかく何でも使えないのですということはなんですね。それは事業にとって非常にマイナスですね。あらゆる面にとってマイナスです。それは結局だんだん郵政事業会計が追い詰められていった結果だと思うのです。そういうことを長く続けることは非常にまずいことだから、そういうことのないようにひとつ気をつけてもらいたい。  それから退職給与引き当て金の問題なんですが、国鉄の場合を調べてみたら、現在三十歳代のものが二十万人おります。国鉄の全体が四十五万人ですから、四五%ぐらいいるわけです。いわゆる中ぶくれのちょうちん型と呼んでいるようですが、これが退職給与額の急増をもたらす可能性を持っている。昭和五十八年には約三万人の退職者が出る。その退職金総計は一千一百億円にのぼる。これは昭和三十九年の実績二百五十九億円の約四倍に当たる、こういう状態にあるので、国鉄としては非常にこの問題を重視して、どう切り抜けていくかということに神経を使っているそうです。郵政の場合こういう職員構成になっているかどうか、ちょっと聞かしておいてもらいたい。
  194. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) では、今後五年間の支出を見込む際の退職金でございますが、郵政事業の場合におきましては、管理者の定年は五十八歳から少しずつ延びて五十九歳になろうとしているところでございますが、一般の職員につきましては、国鉄と変わりまして、五十五歳ごろから退職させているわけではありません。大体六十歳前後から退職の勧奨をしているわけでございまして、事情がかなり違っているわけでございますし、年齢構成におきましても、ある年代が非常に多くて、将来の経理の大きな負担になるということは、さほどひどくはないと思われます。たとえばいま六十歳以上についてやめてもらうということになっておりますが、四十歳以上等について見ますと、そう大きな幅になっておらない。それ以前もあるところだけが急にふくれているということにはなっておりません。今回、今後の五カ年間の退職手当所要額を見込みましたのも、先ほど申し上げましたような程度の、ことに六十歳以上について相当しっかりと、六十歳以上のものについてはほとんど全員でき得るような、本人の意思等の関係もございますが、でき得るようなものを見込んでいるわけでございまして、その金額もこの中に必要額を見込んでおるわけであります。四十一年度におきまして百三十五億、四十二年度百七十五億、四十三年度百六十億、四十四年度百四十四億、四十五年度百四十五億、四十二年度が非常に多うございますのは、いままで相当たまっているものを、従来退職手当の不足等のためにやれなかったものを、かなりまとめてやるということでございますから、大体格別大きな問題は、それに関してはないというふうに考えております。
  195. 野上元

    野上元君 時間がないので経営問題はやめます。  今度は郵便プロパーの問題で少し質問します。郵便の種別改正にあたって基本的な問題として、信書という観念が非常に薄れてきた。要するに中身の問題でなくて外の形の問題で、いわゆるコミュニケーションからトランスポーテーション的な思想に変わってきたというふうに思えるのだが、その点はどうですか。
  196. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 実は今回の改正の一つの問題は、御説のように、その点にあると思っております。実際には現在の一種の中にも筆書した書状のほかに密封すれば全部一種になるという状態でございまして、五種の中にも、印刷書状という信書が相当——これは四〇数%含まれているわけでございますから、信書というものが、今度の法律の改正によって扱いが変わるということは全然ないわけでございますけれども、ただ従来信書的な一種が一番高くて、それ以外のものを安くしているということから開封にさしておりましたのを、料金を両方まとめて全体として能率をあげるということから、その差別をしなくなった、いわば内容による差異を郵便物についてはつけない。一種と五種との関係については、内容による差をつけなくなったということから、コミュニケーションからトランスポーテーションというようなおことばも出るのかと思いますけれども、実際の扱いといたしましては、私どもやはり郵便事業の本質は、筆書であると印刷であるとを問わず、信書の送達にあるというふうに現在思っておりますし、また、内部の訓練その他の場でも、その点を特に郵便事業としては強調してまいらなければというふうに考えております。このたびの法律改正におきましても、二十一条に第一種郵便物の規定がございます。一九ページにございますが、一項の一号に筆書した書状を内容とするもの。二が郵便書簡、三が前二号に掲げるもののほか、第二、第三、第四種郵便物に該当しないものというふうに規定してございますが、実はこの一項一号、筆書した書状を内容とするものというのは、論理的には要らない規定でございます。二号と三号だけすれば十分に書き得るのでございまして、内閣の法制局と打ち合わせましたときにも、それは削除したらどうかということをかなり強く申されたのでございますけれども、私どもは論理的にはなくてもいいとしても、この点は郵便事業関係者として、また世間の利用者の立場からも相当重要な問題である、郵便の本質的な問題だから、どうしても残しておかなければ困るのだということで残したような次第でございますし、今後もそういう形で全関係者気をつけてまいるつもりであります。
  197. 野上元

    野上元君 郵便物の容積及び重量の制限をしたのは、これは長年の経験によるのか、あるいは国際的な何か一つの基準があるのか、その点を教えてもらいたい。
  198. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 両方と申せるかと思います。一種の大きさ並びに重量を六キロから四キロへ、それから容積を四十五センチ、三十センチ、十五センチというところから、四十センチ、二十七センチ、十センチというふうに縮めますことは、現在そのような通常郵便物がほとんどない。四キロ以上のものは、もう私どもが調べました限りでは絶無といってよろしいわけでございます。大きさにつきましても、新しい長さ四十センチ、巾二十七センチ、厚さ十センチをこえますものは、中央郵便局等で数日にわたりまして調べましてもほとんどないわけでございます。これは実は一般に使用される用紙、B型四号の大きさが三百六十四ミリ掛ける二百五十七ミリということで、縦も横も若干ずつ余裕を持たせた形でございますし、この用紙のB型四号の上の型になりますと、もう現在の大きさでも入り切れない。包装すれば間に合わなくなるということでございますから、そういうようなことも経験法則からほとんどないということになります。一種の最小限、これは小包も全部でございますが、これは最小限は従来の長さ十二センチ、幅七センチから、長さ十四センチ、幅九センチに引き上げましたのは、これは一つは先般の万国郵便会議において封筒の最小限の大きさをここにきめるように決議いたしまして、きめると申しますか正式の決定は、次の東京大会できめようということでございますが、一応みんなの意向として決議いたしまして、一般の封筒製造業者、利用者等にだんだんこれを徹底させてまいろうということからやったのでございます。現在はこれにつきましては、たとえば封筒の長五号、長六号、これらにつきましては幅が九センチ以下でございますので、ちょっと問題がございますけれどもこれは日本の封筒製造業者のほうが昨年十月以来製造ももう中止しておりますし、JISの規格からもことしの二月にはずされておりますので、二カ年半の猶予期間をもちまして昭和四十三年末までには、町からもほとんど姿を消すというふうに思われるのでございますので、実行上はそう無理はないと思います。小包の大きさも、小包は重量はそのままでございまして、大きさは現在長さ百十センチを一メートル、長さ、幅、厚さの合計二メートルを百五十センチというふうに縮めますのも、実はこれは昭和二十六年の郵便法の改正で、大きさがずっとゆるめられました。お手元にございます五〇ページの資料にもございますように、昭和二十六年の改正で非常に大きくなりましたので、まあそのころは、のこぎりとかギターとかいうようなものが送られたこともございますけれども、最近はほとんどほかの輸送手段で送られているような事情でもございますので、以前の姿に返すというようなわけでございます。
  199. 野上元

    野上元君 よくぼくらは、東海道を汽車に乗っていくと、かんてんというのですか、かんてんを裸のままで郵便車に積み込んでいる。非常に、見ておって、空気を運んでおるようなものですよね。空気を運んで一貨車の借料を払わなければならぬというような、非常に不経済なものを見たのですが、いまはああいうものはないのですか。
  200. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 現在でもかんてんはやはり送られておりますが、新しい規格を越えるような大きさは、業者のほうでやっておらないようでございます。
  201. 野上元

    野上元君 最近、私企業でも、たとえばセメンを送る場合に、袋を積んで、袋に一つ一つ入れて送らないで、全部一つの、含めて船の中に入れて、向こうへいって袋に詰めるというようなことをやっておりますが、これは非常に、空気を運ぶロスを省くということで非常に経営的な向上があったというふうに思う。それを考えてみると、あれはまるで空気を運んでおるようなものだと思うのですね。ああいうものはやっぱりやらにゃいかぬのですかね。
  202. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 品目、ほかの郵便物に害を与えるとかそういうようなものは取り扱わないことにしております。かんてんにつきましては、そこまでの状態でもございませんし、まあ目方がわりあいに軽うございますから、扱いに比べて料金が安いという点はございますが、これを断わるというわけにはまいらないかと思いますし、先ほど申し上げましたように、むしろ業者の側で取り扱いの便宜から、だんだんこれを手ごろの大きさに縮めて入れていくという状態でございます。
  203. 野上元

    野上元君 この郵便法の一部を改正する法律案の付録の資料としてついておるものについて質問していきたいと思いますが、五一ページに第一種、第二種の料金の比較が出ておるわけですが、これを見てみますると、大体の傾向としては、第一種が二、第二種が一という割合でずっと料金ができ上がっているわけです。ところが、昭和二十四年の五月にいくと、四対一になっているわけですね、あるいは二・五対一というふうに二以上の場合はないわけですね。これは何かひとつの伝統といいますか、習慣といいますか、慣習といいますか、そういうものによってやっているんですか。
  204. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) まあ何とはなしに、明治以来そういうことで二対一ということでやってまいったのが実情だというふうに考えておりますが、最近、外国の例などもいろいろ調べまして、あるいはまた原価計算などをやってみますと、二対一の比率といいますのは非常に少ない、世界でも日本をはじめ比較的少数国、大多数は三分の二、四分の三、三対二、四対三というような比率のところが多うございます。そういうようなことからいたしまして、内部でもコストに即応した料金のほうが妥当なのではないか、もう少し引き上げてもいいんじゃないかという声は相当ございます。しかし、今回の料金の改正におきましては、まだそれを一挙に実現しようというところまでまいりませんで、従来の二対一という考え方をほぼ踏襲いたしまして七円五十銭の端数を切って、十五円対七円、そういうことにいたした次第でございます。
  205. 野上元

    野上元君 五二ページに外国の書状とはがきと、それから新聞との比較が出ておるわけですが、これを見ると、いまあなたが言われたように、日本とスイスだけが二対一なんですよね。あとのほうは十対八ぐらいの比率で料金がきまっておるわけです。で、これらの十対八というところを見ると、大体やはり原価主義がとられておるのじゃないかというふうに思うのです。原価主義をとっておらないのは日本とスイスだけだと、先進国では。そういうことになると思うので、あなたのほうとしてもこれに近づけようとするならば、今回もやはりそういう配慮があってよかったのじゃないかというような気がするのですが、いまそれを言ってみても始まりませんから言いません。それから新聞ですね、特に発行人差し出しのもので百グラムのもの、これも書状との比較が出ておるのですが、日本とフランスが著しく低いのですね。他のほうは比較的原価に忠実に料金が決定されておる。こういうところにもやはり日本の料金のつくり方が、明治以来の伝統を守ってきたというような考え方があるので、企業経営としては少し一歩前進しにやならぬのじゃないかというような気がするのですがね、これは。
  206. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) ちょうど五二ページの表の新聞の欄は、外国にありますいろいろな種類のうちのある一種類のものを抜き出して書きましたので、いまになって考えますと、全部が必ずしも適切な例ではなかったと思われるのでございまして、たとえばアメリカでは十円八銭というふうになっておりますが、これは一ポンド、四百五十グラムまでの料金でございまして、アメリカの新聞関係の料金は非常に複雑になっております。郡の中に送られるもの、郡外の全国的に送られるもの等によって料金が違いまして、たとえば郡内に送られますものは一部三円六十銭くらいでございます。それからドイツのが十三円五十銭と出ておりますが、百グラムでは十三円五十銭ですが、五十グラムまでだったら九円だというような状態でございます。またフランスにつきまして、ここで二円十九銭と出ておりますが、区分して差し出されるもの等につきましては、はるかにまた安い料金等も出ております。イギリスでは最近印刷物と大体同じ料金になっております。もっとも二十一円と出ておりますが、大体二オンス、約五十六グラムばかりですが、それでは十二円六十銭、二オンスから四オンスまでで二十一円というふうになっておりまして、もう少し表として出しますのでしたら、詳しい表を提出すべきだったというふうに考えております。
  207. 野上元

    野上元君 この表は何ですか。日本の郵便料金は安いんだということをPRするために出したのですか。
  208. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) ありのままを——そのいまの新聞の外国のほうは適切な例じゃなかった点もあるかと思いますが、総体としてありのままをお示ししたつもりでございます。結果的にかなり安いことにもなっているようでございます。
  209. 野上元

    野上元君 ただ、国民一人当たりの所得を計算してみますと、必ずしも安くないんだな。たとえば日本の場合は六百三十三ドル、それからイギリスが千二百六十ドル、アメリカは二千五百六ドル、ドイツは千二百九十九ドル、フランスは千二百六十三ドルというふうに見てみると、日本の皆さんの三倍、四倍という国民所得を持っているわけですからね。それを換算すると、必ずしもこれは日本のやつは安いとも言えないのじゃないですか。
  210. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) いま所得の比率を前に持っておりましたが、手元にちょっと持ってくるのを忘れましたのですが、いままで私どもが調べましたのでは、名目上の所得とそれから一単位当たりの購買力といいますか、所得の購買力というものを合わせました場合に、日本の郵便料金が所得と比べると特に外国より高いということにはなっておらない。改正した料金でもそこまではなっていないというふうには感じたのでございますが、いま手元に資料を忘れました。ただここで日本の十円、五円、たとえばイギリスの十六円八十銭と十二円六十銭、これだけの比率でなしに、実は日本の場合は、はがきの比重が相当高いわけでございます。普通のはがきが二八%、年賀はがきが全体の郵便の一六・二%ということで、はがきが占めます比率は四四%くらいになっておりますが、オランダで五・三%、アメリカでは三・九%、イギリスでは二・四%というふうに、ヨーロッパの諸国でははがきの使用率が非常に低いということからしまして、この表以上に利用者の一通当たりの経費は高くなる。十円と五円、あるいは、十六円八十銭と十二円六十銭という比率ではなくて、日本では十円と五円の間あたりにありますけれども、イギリスではほとんど十七円かそこらにはなっているというような点も、御考慮願わなければならないのではないかというように考えます。
  211. 野上元

    野上元君 そんな説明をしなければならないのなら、こんな表を出しても意味がないんじゃないですか。そんな具体的な説明を加えなければわからないのじゃ、この表ずばりで判断できないのじゃ、意味がないのじゃないかと思いますが、それはいいです。  次の、郵便料金及び一般物価の値上がり指数、これも二十七年を一〇〇としたものですから、その後値上がりしたものがあれば、これには指数としては高く出てくるわけですが、本来ならばもっとさかのぼって計算しなければならないんですが、それもまだ説明しなければならぬという表なら意味がないと思うので、これもいま特に問題にしませんが……。  次の五四ページの私書箱のこれについて聞きたいんですが、私書箱を使っておる郵便物の数量は、全国でどのくらいになりますか。
  212. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 現在利用されております私書箱は、その五四ページの表にもございますように、三万一千六百二十個でございます。
  213. 野上元

    野上元君 それはわかりましたが、これの中に入っている郵便物の総数は幾らかという……。わからなければ、あとでまた資料を出してもらいます。
  214. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) ちょっとただいまわかりません。
  215. 野上元

    野上元君 それから設備数と利用数に非常に大きなギャップがあるわけですね。たとえば設備数の総個数は五万千三百六、利用個数は三万一千六百二十、約二万近い遊休施設があるわけですね。これは全体から見ると、非常に大きなパーセンテージを占めると思うのですが、これはどうしてこういう状態になっているのですか。
  216. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) この表を見ますと、特定局のほうでその程度がはなはだしいようでございます。局をつくる場合に、私書箱というものも利用者を想定してつくっておかなければならないと、つくる場合にまあ特定局などでも最低の単位と申しますか、そういうものをつくるからには一個とか二個とかじゃなしに、ある程度まとめてつくってしまうというようなことも、一つの原因かと思いますが、また、新築いたします局につきましては、当然五年なり十年なり、大体現在では十年先のものを一応予想して局舎を設計しておりますけれども、現在はあまり利用がなくても、将来相当ふえるかもわからないということなども考えてつくっているようなわけでございますので、まああながちにこれが非常に稼働率が悪いんだというようなことにもなり切らないかと思います。また、今度の法律改正でもお願いしておりますように、非常に受け取り郵便物数の多い利用者に対しまして、私書箱の使用料を免除するような制度も設けられておりますし、これから日本でも私書箱の利用度は、だんだん高まっていくのではないかというふうにも考えておるわけでございます。
  217. 野上元

    野上元君 私は、この全体の数から見て、あまりにも遊休施設が多いので、実は驚いたわけですが、これもロスがあれば、こういう点も十分ひとつ検討してもらいたいと思います。  それから、その次のページの高層建築物の郵便受け箱設置状況ですが、これを見ますと非常に率がいいですね。これは協力の程度がうかがわれてうれしいんですが、これによって、当然増員すべき外務員をどれぐらい増員しないで済んでいるのか、その数はわかりますか。
  218. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 正確なところを、ちょっと私どもいま数字を持っておりませんが、千個について一人ぐらい節約できるのではないかというふうに考えております。
  219. 野上元

    野上元君 千個というのは、この数字で見るとどれですか。
  220. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 総計のところに設置済みが三十万八千九百五十三個、未設置四千六百三十一とございますが、これは高層建築物の一室が一個になっている例も相当多いかと思われますが、千個について一人ぐらいは節約できると思います。
  221. 野上元

    野上元君 それではその次のページの年度別引き受け郵便物数で調べてみますと、年間の普及率は大体一人九十通という程度になっていますね、これは国際的に見てどれくらいのレベルなんですか。それと、将来これはどの辺まで伸びる、上限といいますか、上限をどの辺というふうに見ておるのですか。
  222. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) お話のように日本では、昭和三十九年度におきまして九十一通ぐらいになっているわけでございます。四十年度ではこれが九十六通か七通ぐらいのところまできているかと思いますが、外国に例をとってみますと、全部内国通常でございますが、アメリカでは一人当たり三百五十通、イギリスで百九十五通、西ドイツ百四十七通、フランス百七十二通、イタリアが九十九通というような状態でございます。カナダ、オーストラリアのような非常に地域が広くて人口の少ないところでは、カナダが二百二十二通、オーストラリア百八十八通というように郵便の利用がわりあいに高いわけでございまして、日本は一人当たり通数では、まだ計算したことはございませんが、世界じゅうのかなり下のほうになるのじゃないか、総体の郵便物数では四位前後くらいかと思いますけれども、一人当たり差し出し通数では世界で十八位だそうでございます。
  223. 野上元

    野上元君 今度五種がなくなったわけですから、この物数調査の中から五種というものはどこかへくらがえするわけですね、これは一種にくらがえするわけですか。
  224. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) ほとんど全部一種に移りますが、一部学術雑誌が約二百五十八万通が四種のほうに移る。それから、書籍のうち九百七十五万通が書籍小包に移る、残りは全部一種に移る、そういうふうに考えております。
  225. 野上元

    野上元君 これもあなたのほうで計算できているのかどうかわからぬが、この五種が一種に転換するために、収入はどのように増減しますか。従来の五種のままでの収入と、一種に転換した場合の収入との差といいますか、それはどのくらいになるか計算したことはないのですか。
  226. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 一種と五種とを合わせましたものについては計算しておりますが、従来の五種のままで幾ら、一種のままで幾らというのをただいま手もとに持ち合わせてございません。一種と五種とを合わせましたものにつきましては、現行料金で三百九十八億、改正料金で五百三十九億、年間、昭和四十一年度ですから、小包み以外は全部七月一日以降です、年間百四十億の増加というふうに考えております。
  227. 野上元

    野上元君 一種と二種との合計と三種、四種、五種の合計との物数の比較が一番右の欄に出ておりますが、これを言いかえてみますると、一種、二種の合計を次第に三種、四種、五種の合計が、引き離しつつあるという傾向が見られるわけですが、これは何か特別の理由があるのでしょうか。
  228. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) これは一人当たり郵便物数の非常に多いスイスやアメリカなどの例を見ますと、三種以下のようなものの比率が全体の四分の三ぐらいになっておりまして、結局郵便物が非常にふえていく傾向、あるいは非常に郵便物が多い国におきましては、そういうものが多い。日本でもだんだんその方向に近づいている過程が、このお話のような増加率、一種、二種の合計より三種、四種、五種の増加率が高い。そういうことにあらわれているのではないかというふうに考えております。
  229. 野上元

    野上元君 二種の伸びは、他の種類の伸びに比べれば非常に緩慢なんだが、これが二種の原価を割る原因になったのですか。
  230. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 二種の増加率が非常に低いことは、先ほどは外国の料金の二種の料金の比率でちょっと申し上げましたけれども、やはり一種と二種、封書とはがきというものの関係は、世の中が進むにつれ、また経済力がだんだん充実してくるにつれて、外から見られる通信よりも、封書の通信のほうにだんだん移っていくように見受けられます。たとえば外国の例で申しますと、先ほどアメリカが三・九%、イギリスが二・四%と申しましたが、インドではまだ総体の郵便のうちはがきが四〇・七%、パキスタンでは三一・五%というような状態でございまして、これは料金の関係もないわけではありませんけれども、総体といたしまして、非常に郵便利用が比較的少ない段階では、はがきが多い。多くなるにつれて逐次封書に移っていくという傾向が世界的にもあるようでございます。
  231. 野上元

    野上元君 もう時間がないので、最後に聞いておきますが、無料郵便物というのは、先ほど発表されたと思いますが年間どのくらいあるのですか。
  232. 長田裕二

    政府委員(長田裕二君) 四十年度におきまして二億一千三百万通と推定しております。
  233. 野上元

    野上元君 本日はこの程度でとどめておきます。
  234. 田中一

    委員長田中一君) 他に御発言がなければ、本案の質疑は本日はこの程度といたします。  次回は十二日午前十時開会の予定とし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十五分散会      —————・—————