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1966-06-24 第51回国会 参議院 大蔵委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月二十四日(金曜日)    午前十時三十七分開会     —————————————    委員の異動  六月七日     辞任         補欠選任      野溝  勝君     小野  明君  六月十六日     辞任         補欠選任      小野  明君     野溝  勝君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 青柳 秀夫君                 藤田 正明君                 柴谷  要君                 中尾 辰義君     委 員                 伊藤 五郎君                 植木 光教君                 大竹平八郎君                 大谷 贇雄君                 西郷吉之助君                 西田 信一君                 林屋亀次郎君                 木村禧八郎君                 田中寿美子君                 戸田 菊雄君                 成瀬 幡治君                 野溝  勝君                 瓜生  清君                 須藤 五郎君                 小林  章君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        外務政務次官   正示啓次郎君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省国際連合        局長事務代理   滝川 正久君        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵大臣官房長  村上孝太郎君        大蔵省主計局次        長        岩尾  一君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省国際金融        局長事務代理   村井 七郎君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        外務省条約局外        務参事官     大和田 渉君        外務省国際連合        局外務参事官   松井佐七郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  それでは、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案、及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案の以上両案を一括して議題とし、審査を進めます。  両案につきましては、昨二十三日衆議院から送付され、本委員会に付託されました。  この際、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案に対する衆議院修正点について、竹中大蔵政務次官説明を聴取いたします。竹中大蔵政務次官
  3. 竹中恒夫

    政府委員竹中恒夫君) 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案につきましては、衆議院において同法案施行期日について修正が行なわれましたので、その内容について御説明申し上げます。  すなわち、同法案の附則第一項に規定しております施行期日につきましては、原案では「昭和四十一年四月一日から施行する。」となっていたのでありますが、衆議院において「公布の日から施行する。」と修正されたのであります。これは、この法律案昭和四十一年四月一日から施行することが審議の都合上困難となったためでございます。  以上が外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案についての衆議院における修正内容であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  4. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 引き続き、質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず私は、さしあたって外為会計の問題について質問いたしたいんですが、今度の外為会計法改正案内容は三点になっているのですね。その第一は、外為インベントリー・ファイナンスとして税金積み立て資金一般会計繰り入れるということが第一点ですね。それから、第二点は、このアジア銀行に対する出資であります。第三点は、韓国オープン勘定における債権処理であります。この三つともそれぞれ非常に重要な意味を持っておりまして、これは今後に重要な問題をはらんでおりますので、個々に掘り下げて質問する必要があると思うのです。  最近まあ韓国との経済協力が第一年度として発足するようになりまして、その計画も具体化しておるわけですが、しかし、この計画具体化についていろいろ当初予想されたのと違った状況が出てきているわけですね。たとえば第一年度の有償無償計画でも、協定では大体五千万ドルとなっているのが、日本政府もこれは韓国と協議してきめたようですが、九千三百万ドル以上になっているのですよね。そういう点が協定と違っているのですよね。また、その他もっとこまかくいえば、いろいろ問題があるのです。たとえば最初無償援助に入っていた中小企業に対する援助なんかが有償のほうに振りかわっておったり、当初経済協力国会論議されたことと非常に違ってきておりますし、しかも、いろいろ新聞雑誌等に、いよいよ日韓経済協力が具体的にスタートしたにつきましては、いろいろな論争が行なわれている。それにはどうも芳しからぬいろいろうわさも報道されております。朴政権の何かてこ入れの資金として云々とかね、あるいは日本のほうの財界のこの経済協力についての芳しからぬうわさとか、いろいろそういうこともありますから、こういう点についてもっと掘り下げて、このオープン勘定における債権処理と関連して伺わなければなりませんし、また、これは無償の三億ドルの中で処理されるということになるわけですね。そうすると、無償では三億ドルですね。三億ドルとこのオープン債権処理、それの残りが今度はほかのほうで開発に使われる、こういうことになるわけですが、そういう関係も、当初の計画と違って初年度九千三百万ドル以上になるというと、そういう点についていろいろ変わってくるわけですよね。協定では五千万ドルですね。十年ですから、そうすると一カ年平均で五千万ドルでしょう。それが九千三百万ドル以上になると、ちょっと違ってくるのですよ。それは今後どういうふうに処理されていくのか。今後の経済協力変化が生じてくるのです。そういうこまかい点についても、同僚議員からおそらくまた突っ込んだ質問があるのじゃないかと思うのです。  また、アジア銀行についても、これは私も時間があればじっくりその設立の目的から定款ですね、いろいろありますが、内容、これはずいぶんいろいろ論議されまして、特に政府間で十日間論議されたのでありますが、しかし、従来のああいう協定と違いまして、中身についての十分な論議というのはあまりないんですね。かなり政治的な論議が多かったと聞いているわけですよね。しかも、アジア銀行は、あれは提案されてから大体四カ月くらいできまっちゃったんですよね。かなり何か倉卒のうちにこれがきめられているということであり、外務省なんか出している資料を見ましても、これはかなり政治的な背景のもとにきめられたのだと、そうなっているのですよ。「高度の政治目的背景に」、そうなっておる。したがって、特にこのアジア銀行に対する大口出資者であるアメリカ日本等アジア経済開発あるいは低開発国に対する援助の基本的な方針、特にアメリカ及び日本のそういうアジアあるいは極東における経済援助計画の基本的な方針というものも明らかにしなければならぬわけですよね。特にジョンソン発言もありまして、ジョンソン発言とこれとは関係ないということがよくいわれているのですがね、それは関係ないことはないと私は思うのです。非常に密接に関連しておりますし、佐藤さんも関連あるような発言をある個所ではしておるのでありまして、そういう意味で、このアメリカの低開発国援助の基本的な考え方、それの一番背景になっているのはいわゆるロストウ理論ですよ。  アメリカ外交政策は、御承知のように、ダレスの反共一点ばり政策からロストウ融和政策——融和というのは変ですけれども、共産主義あるいは共産主義国工業近代化政策というものについては一応認めつつ、いわゆるテークオフ理論というのですか、そういうものを中心にしてアメリカ後進国開発の基本的な政策を出している。で、アフリカ銀行構想あるいは米州銀行構想、そういう構想のもとにアメリカの低開発国に対する政策が展開されているのですし、アジアにおけるアメリカ後進国援助計画も、そうしたロストウ的な考え方に基づいて展開されておるのですよ。ですから、ロストウ理論というものは単なる理論でなく、これはアメリカ対外経済政策の非常に重要なバックボーンになっているのです。そういうものを明らかにしなければなりません。  それから、一体日本政府として、このアジア銀行ばかりじゃないのですが、インドネシアに対する緊急援助等もあるわけですが、一体このアジア極東等において政府は低開発国援助するにあたってどういう基本的な姿勢で、方針で行動しているか。前に福田大蔵大臣が、国民所得の一%程度援助するということを言われましたが、その金額もさることながら、これは諸外国から、日本援助というものはいままではコマーシャルベースで、もうけ主義である、しかも金額も少ないと、いろいろ批判があったと言われて、福田大蔵大臣金額については、前向きの姿勢で、国民所得の一%くらい、大体まあ五億ドル以上になると思うのですが、もう少し多くなるかしれませんが、しかし、それもさることながら、やはり基本的な考え方に基づいてやりませんと、国民のやはり税金負担になってきます。  たとえばインドネシアに対する三千万ドル緊急援助をやって、これはインドネシアのほんとうの開発に役立つのかどうか。どぶに金を捨てるような形の援助ではいけないんじゃないか。特にインドネシアの基本的な経済再建、今度ハッタという前の大統領が出てきて従来と違ったような経済政策をやるようでありますけれども、しかし、軍事費が四〇%も占めている、まあ韓国と同じような状態で、そうして経済再建なんていうことも、これ一体できるのかできないのか、三千万ドルくらいの援助で。もちろんこれは当面の、あのものすごいインフレでありますから、それを安定さして、人心を安定さして、それから本格的な再建にいくまでのつなぎ資金かもしれませんけれども、いろいろ専門家に聞いてみますと、一体この日本政府はどっちを向いてだれに援助しようとしているのか。三千万ドル、しかもこれまでインドネシアへずいぶん各国援助してきているんですよね、スカルノのもとへ。一体それが経済再建に役立たないで、最近見るようにものすごいインフレでしょう。そういう状態になっちゃった。そういうところに日本政府がなぜ三千万ドル緊急援助をするのか。国民税金であります。しかし、これは協定に基づけば国会審議対象になるのですけれども、あれ協定じゃないんですからね。条約協定と違いますから、国会審議対象にならぬというような状態です。  したがって、そういう点についてももっと掘り下げて、この際アジア銀行日本加盟するにあたりまして、従来の日本のこの低開発国援助に対する基本的な考え方方針というものをはっきり承り、間違っている点についてわれわれとしてははっきりわれわれの意見を述べて、それをたださなきゃならない、こういう状態にあるわけです。  それだけに、このアジア銀行への加盟及び出資の問題は、いろんな点で非常に重要な問題をはらんでいるわけですから、こういう点について、私もその点についてもっと詳しく具体的に質問をしてまいりたいと思うのですが、まあ社会党基本方針としては、世界各国が軍備のためにたくさんむだな金使ってるんですから、軍縮をやって、そうしてその金を節約して、そうして東南アジアあるいは低開発国に思い切った援助を行なう。そうした世界的な、平和的な基礎のもとに、軍縮によって節約されたものすごいたくさんの金であります。そういうものを援助するという姿勢にならなければ、これは低開発国開発は軌道に乗らないと、こういうまあ社会党方針です。ですから、これは社会党軍縮に関する考え方、平和に対する考え方と切り離すことができない、そういう立場にあるわけです。  そういう点についてはこれからまた同僚議員からも詳しく質問があると思うのです。私はまあこの点についても質問いたしますが、さしあたり一般会計への外為会計からの繰り入れ、それとアジア銀行に対する出資、それから韓国とのオープン勘定における債権処理に関連して、外為会計の運営に今後かなり大きな変化が生じてくるんじゃないかと思いますので、まずその点から質問してまいりたいと思うのです。  そこで、今度のこの改正法によりまして、外為インベントリー・ファイナンスとして積み立て資金が少なくなるわけですね。その結果、外為運用益というものは非常に減ってくる。つまり、利息がつかない、資金がそれだけ減ってくるわけですから。そこで、外為会計採算に大きな変化が出てくるわけですね。たとえば四十一年度特別会計予算でわれわれに配付された予算参照書外為損益計算書が示されておりますが、これを見ましても、三十九年度の特別会計利益が三十八億九千万円、約三十九億であった。それから、四十年度が三十六億四千五百万円。ところが、四十一年は一億六千六百万円に激減しているわけですよ。どうしてこんなに外為会計利益が激減するか、その理由いかんということを伺いたいのです。  それに関連して、私の要求した資料大蔵省当局が出されましたから、すなわち、私の要求しました四十一年度外為会計採算につきまして資料を出されましたから、この資料に基づいてなるべく詳しく、なぜ四十一年度においてこの利益が激減するに至ったのか、その事情を詳しく説明していただきたい。その説明に基づいてまた質問をしてまいりたいと思うのです。まず、四十一年度外為会計採算について詳しく説明していただきたい。
  6. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 三十九年度、四十年度までは三十数億の益を出しておりましたことは事実でございますが、四十一年度においてそれが激減しておりますのは、いろいろ理由がございます。  まず、歳出の面でございますが、この増加要因といたしまして、今後貿易規模がますます増大してまいりますので、わが国の外貨準備約二十億ドルをもっていたしますれば、やはり場合によってはその振れに対する対策というものを講じておかなければなりませんので、IMFに万が一の場合を想定いたしまして当然の権利でございますいわゆるゴールドトランシュを借りるという計算をいたしますと、それの手数料、それから金利というものを一応安全弁として予算上は見込んでおるわけでございます。これが四十一年度におきましては十五億を一応見込んでおりますが、従来はそういった支出は、三十九年度、四十年度におきましてはなかったわけでございます。  それから、第二の理由といたしましては、先ほど来先生が御指摘になっておられますインベントリーの取りくずしの関係でございますが、これによりまして、やはり外為証券発行増加が見込まれますので、借り入れ金利子支払い増加いたします。それをさらに内容を申し上げますと、百六十一億円は、すでにこれはことしの三月の末でございますが、二十五日でございましたか、IMF増資払い込みでもってインベントリーを取りくずしております。これが四十一年度に全面的に期間的にかかってくるという点が第一点。それから、第二点といたしましては、アジア開銀出資の一年度分の払い込み現金分一千万ドル相当の三十六億円というのが、これもインベントリーから払い出すということに相なっております。それから、一般財源充当分といたしまして百七億円、これは従来のインベントリーの千二百五十億円の分からいろいろアジア開銀IMF、それから過去におきますインドネシア債権棒引き等、それから日韓の二年度分を差っ引きまして、結局インベントリーとして残る残余でございます百七億円というものをインベントリーからくずすようにしております。そういったインベントリー関係がございまして、外為証券利子支払い増加する。  それからなお、国庫余裕金も、近来の状況に照らし合わせまして、余裕金が見込めませんので、四十一年度としてはそういう無利子の金をゼロと見込まざるを得ないという事情がございます。  それから、さらにもう一つの理由といたしましては、四十一年度におきまして外貨が、大蔵大臣勘定外貨手持ちは三千万ドル増加する、外貨準備増加するという想定をいたしますと、この分は百八億円の円資金をさらに要しますので、その外為証券発行増加による利払いの増加というものを見込まなくちゃならない。  これが歳出面におきます増加理由でございます。  歳入の面におきましては、これは近来外貨利子の若干の増加等がございますので、若干は増加いたしますが、歳出増の部分が何ぶんさように大きくございますので、従来の実績に比較して利益が非常に激減した数字しか見込めないという状況でございます。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの説明をもう少し詳しくしていただきたいと思うのですけれども、予算参照書に出ている数字と、それから資料として提出された数字との間に開きが出てきているわけです。その点も説明していただきたい。
  8. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 御指摘の点が、必ずしも私は了解し得なかったのでございます。たとえば、予算書に出ております面と四十年度におきます違いというものは、実は一つございます。予算書では、四十年度の話でございますが、三十六億の予算上の利益を見込んでおりましたが、実際上はこれは五十二億という益が生じまして、この分が、決算の結果でございますが、生じましたので、積み立て金利子予定より四十一年度におきましては、その分だけ、八千八百万円でございますが、ふえるという計算になるかと思いますので、予定よりも若干これを上回る、四十一年度における利益は上回るということになろうかと思います。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 要するに、四十一年度の予算書のほうでは、利益が一億六千七百万ドルであるけれども、見込み額が二億五千五百万ドル、それが先ほどお話ししたように、運用益アメリカ金利が高くなったということから、当初見込みよりも運用益が多くなる、要するにそういうことなんですね。
  10. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) その部門も若干はございますが、主として、四十年度の予定額におきましては、IMF関係で実は五億四千九百万円見込んでおりましたが、これを実際上は借り入れを行ないませんでしたので、その分だけがふえてきた点がございます。それからさらに、いろいろな支出増その他ございまして、若干の変化が、増加減少要因、両方に働いたということでございます。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、インベントリー関係は、結局、前にドッジ・ラインのときに、外為証券で調達していい分を、インフレを急速にストップさせるために、税金収入外為短期資金をまかなう必要があるというのでやったわけですね。これは外為だけではなく、貴金属特別会計食糧管理特別会計、全部そうです。それで、さっきお話を聞きますと、インベントリーとして積み立て税金、これはなくなるということになるわけです。そのほかの、食糧証券のほうはなくなったように思うのですが、それから貴金属特別会計もやったわけです。それはどうなっているか。もう食管のほうはないのかどうか。そういうことと、それから千二百五十億のインベントリーが、結局その後、さっき説明がありましたように、インドネシアに対する援助とか、それからIMF投資払い込み等々で、結局幾らになるのか、そうしてそれが今後結局どういう形でなくなっていくのか、その点を計数的にちょっと説明してください。
  12. 岩尾一

    政府委員岩尾一君) 最初に、インベントリー関係でございますが、先生指摘になりましたように、ドッジの際にインベントリーを行なったわけでございます。その際のインベントリー対象にいたしましたのは、この外為会計と、それから貴金属特別会計、それから食管、この三つでございます。そこで、外為のほうは、いま御審議いただいておりますように、二十六年以前に百億ほど入れた金がございますけれども、二十六年以後の金を合わせまして千二百五十億というインベントリーが入っているわけでございます。それから、貴金属は七十六億でございましたかの金を入れております。それから、食管には二十四年から二十六年の間に二百七十億の資金を入れておるわけでございます。  そこで、このインベントリーがどうなったかというお話でございますが、インベントリーというのをどういうふうに解するかということになるわけでございますけれども、われわれはいわば手持ちの資産というものをふやすために一般会計の金を入れていくというような意味に解しておるわけでございます。そういう趣旨でいいますと、外為円資金の不足ということに対処いたしまして、その円資金を入れるために一般会計税金を入れてきた、こういうことで千二百五十億の積み立てができたわけでございます。それから、貴金属のほうは、実はこの会計につきましては繰り戻しつきで金を入れているわけでございます。そういう意味におきまして、厳密にはこれはインベントリーと言えるかどうかという点に多少疑問がございます。われわれといたしましては、事務屋の段階ではインベントリーではないんじゃないかということで、現実にもう七十六億の金の中で実際にその法律の繰り戻し条件に基づきまして繰り戻されているものが三十六億ぐらいございます。したがって、若干貴金属には残っておりますけれども、これはインベントリーじゃないんじゃないか。それから、食管の二百七十億でございますが、これは先生承知のように、最初はいま申しましたようなインベントリーのつもりで入れたのでございますけれども、その後は損失補てんということで食管の赤字を一般会計から埋めていくというふうに転化したわけでございます。そういう意味合いで、この食管の分についても厳密な意味でのインベントリーとは言えないんじゃないか。あと、やや似ておりますのは、この前御審議いただきました農業近代化資金でございます。これは二百七十五億の繰り入れを行ないまして、その資金運用利子をもって補助に充てるという形にしたわけでございます。これは御審議いただいたように、十億を残しまして全部取りくずしたわけでございます。したがって、今回千二百五十億の外為会計につきましてのインベントリーを取りくずしますと、いわゆるインベントリーというふうに私どもの申しておりますものにつきましては、農業近代化の事業を除きまして、全部取りくずされているというふうにわれわれは解しております。  それから、外為の千二百五十億でございますが、これは先生お話しになりましたように、まずインドネシア債権を放棄いたしました。この分で元本を落としております。これが六百三十六億でございます。それから、アジア開銀につきまして百八十億の出資をいたしております。それから、昨年御審議をいただきましたIMFにつきまして百六十一億の出資をいたしております。それから、今回御審議をいただいております日韓オープン勘定につきまして百六十四億六千万という数字を落とすわけでございます。さらに、それだけ落としますと、残ります金が百六億九千万でございますが、この百六億九千万を一般会計に入れていくということで、数字といたしましては全部なくなるわけでございます。ちょうど。ただ、アジア開銀の百八十億と申しますのは、これは五年間に出資をするわけでございます。それから、日韓オープン勘定のみなす財源を落としますのは、これは十年間でございます。したがって、その五年間あるいは十年間がたった後において完全になくなる、こういう意味でございます。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 わかりました。そこで、大蔵大臣に、せっかくおいで願っておるんですから、御質問しないのも失礼ですから。このインベントリー・ファイナンスですね、さっき岩尾さんからもお話がありましたが、これはいろいろ意見があると言いますけれども、これは理屈としてはいろいろあるでしょうけれども、しかし、経過から見るとはっきりしているんですね。ドッジが、短期証券で泳げばいいものを、なぜ税金でわざわざ資金を調達しなければならなかったのか。あの当時の説明では、急速にインフレをストップさせるには少しブレーキをかけ過ぎるくらい超均衡の政策をとる必要があるというので、従来は食糧証券とか外為証券で泳いでいたものまでも、税金でその資金を調達したということなんです。資産見合いの資金と言っておった。そういうところを見ると、それがインフレに対するいろいろな影響等から考えてみると、資産見合いの資金、ファイナンスでしょう。ですから、貴金属特別会計に幾らあるというけれども、あれを売れば金が入ってくるのですから、だから、やはりあれは税金でもあり、そこのところは非常に議論があるでしょうが、やはりインベントリーの私は経過から見てみるべきだと思うのです。そこのところ、大蔵大臣、ここでインベントリーは、さっきの貴金属特別会計インベントリー・ファイナンスを若干残して全部なくなるわけです。そうすると、今後インベントリー・ファイナンスというものは、大蔵大臣はここでやめてしまうのかどうか。ことにこれは金繰りとしては短期的なものです。これをやめるなら、どうしたって外為証券を多く発行しなければならぬでしょう、どうしたってそういう場合。それから、まあ外為の運用管理からいっても、利息のつかない金がなくなるのですから、それにかわって外為証券、五分八厘ですかの利息のつく外為証券を発行しなければならぬ。そういう外為会計の運用にもいろいろな影響あるでしょうけれども、特にこの点は、公債発行に踏み切られて、今後インフレの歯どめですね、歯どめというのはいろいろ考えていかなければならぬわけでしょう。われわれは公債発行について反対したのですが、発行してしまった以上、またわれわれが反対しても今後発行されるでしょう。そういう場合、私はやはり歯どめとしてそういう機能というものは残しておいたほうがいいようにも思うのですけれども、全然これはやめてしまうのかどうか、その点を大蔵大臣に。
  14. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあ、未来永刧の議論といたしました場合に、私はインベントリーというものを廃止するのがいいのだとか、存置するのがいいのだとか、そういう一方的な考え方は立てにくいと思うのです。結局、これはそのときの財政経済の事情に即してやっていかなければならぬものと考えます。当面一体、それじゃここ数年間一体どうだ、こういうことになれば、これは御承知のように、これは公債政策が採用されていくというそういう事態において、租税収入があり余るということは私はないのじゃないか。まず公債の発行額が減る、こういうことになる。それから、なお余剰があれば減税というものもしてみたい、こういうふうに考えるわけであります。したがいまして、現実の問題として考えました場合におきましては、インベントリーは当分考えられない、こういうことになろうかと思います。まあしかし、資産、負債、これは見合う状態には置いて、外国為替特別会計の運営が健全に行なわれる、こういうことは堅持していきたい、かように考えております。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実際問題として、大蔵大臣御答弁になったのですけれども、このインベントリー・ファイナンス考え方はドッジの着想であったわけです。そうでしょう。ですから、そういう食管会計でも、資産見合いの金融の場合は、原則として従来は金融でやっていたわけでしょう。というのは、農民から買い上げたお米を売れば、あとでお金が入ってくるわけですからね。それが通貨膨張になっていろいろ影響を及ぼすのは、期間としてはかなり短期間ですよね。米を買って、そして売るまでの間、通貨が膨張するわけですよね。だから、ドッジは、その短期の通貨膨張までも押えなきゃならぬと、二十三年のあのインフレを押えるには——そういう考え方であったわけですよね。それ以前は食糧証券短期資金を調達して農民から米を買ったんだし、それから、外為会計でも、為替の調達資金外為証券でやっていたわけだ。ですから、原則として税金によってインベントリー・ファイナンスを行なうという考え方は、超均衡予算になるわけですよね。そういう関連で質問してるんですよ。ですから、当分やらないとか、そういうことではなくて、じゃ、大蔵大臣は、これを存置したということは、将来悪性インフレが起こる可能性があるかもしれない、そういうときにはドッジがやった超均衡予算的な措置としてインベントリー・ファイナンスという制度を残しておくというお考えなのかですね。ですから、これは制度的に私は非常に変則だったと思うんです。それについてのお考えを承りたい。まあ実際問題としては、当分インベントリー・ファイナンスをやるような事態はちょっと考えられないと思うんですけれども、そういう点はどうなんです。
  16. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) だから、理論的に申しまして、超均衡予算がいいとか悪いとか、これは私は一がいには申し上げられないと思うんです。そういう手段としてのインベントリー、現に、為替資金とは違いますが、農林公庫に対しまして政府は金融の財源を租税財源から賦与していますね、ああいう行き方もあるわけなんです。そういうようなことを考えて、理論的にどうもこれは悪だ、そういう行き方は悪なんだという考え方はとりませんけれども、当面、予見し得る時点におきまして、私は超均衡予算ということは考えておりません。また、これがためのインベントリーということは考えられないと、こういうことを申し上げておるわけなんです。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に伺いたいのは、さっき岩尾さんからもお話がありましたが、貴金属特別会計の一部は残っていますが、これは議論があるとしまして、インベントリー資金は大体なくなる。そうなると、四十一年度は百七億ですかね、一般会計繰り入れましたが、来年はこれはないんですよね。繰り入れがなくなるということになると、いままで大蔵当局は方々からいろいろかき集めて、そうして税収不足を調整しようとしたようですが、今度はインベントリーがなくなってしまうと、公債に依存する度合いが大きくなるんじゃないかというふうに思うんですが、どうなんですか。
  18. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 私は、政府歳出を、投資的経費という建設勘定ですね、そういうものと、行政勘定というものに当面分けて考えていきたいと、こういうわけです。そうして建設勘定、投資勘定は公債財源によることができる、こういうたてまえにして、行政勘定のほうは租税収入でこれをやっていく、余裕があれば建設勘定のほうにもこれを使う、こういう考え方をとるわけです。それで、これからの財政ははっきりそういうふうに二つの系統に分けて考えていきたいと、こう考えるのであります。  そういうことで、租税収入の推移、また行政費のふえ方、また建設勘定、つまり投資的経費のふえ方というものの趨勢を考えてみまするときに、まあ租税収入は、その場合大体において行政勘定の財源になります。それから、その行政勘定の租税を財源とする収支を考えてみるときに、昭和四十二年、いま御指摘インベントリーとかなんとかはございません。そういうようなことを考えると、非常に窮屈になる。で、四十三年度も同じような趨勢が続くように思います。四十四年以降になりますと、だんだん楽になってくる、こういうふうに考えておるわけであります。四十二年という年は、そういう見方からいたしまして一番窮屈な年になるので、この窮屈な年をどういうふうに切り抜けるか、いま頭を悩ましておるところでございます。
  19. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  20. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、実際問題として、これは今後大きな問題になってくると思うのですが、公債の発行額、これはいわゆる建設公債といっておりますが、四十一年度は七千三百億ですね。四十二、四十三というのは、七千三百億よりどうしたってふえざるを得ないと思うのです。どの程度に——それはいろんな財政収入とか、それからインベントリーとか、ほかから繰り入れ額がなくなるというようなこと等いろいろの要素があると思うのですけれども、大体どのくらいを押えておりますか。
  22. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 行政費のほうは大体、祖税収入と見合って考える。これは四十二年度なんですよ。で、建設ですね……
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと失礼。建設というのは、大蔵大臣、どの範囲と言われるか、ちょっとそこで注釈してくれませんか。どの範囲に……。
  24. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 建設費は、四十一年度予算の御審議にあたりまして御説明いたしましたが、大体あの見当でございます。そういうものがどういうふうに見込まれるか。これは、一つは私は昭和四十二年における経済情勢、これも考えなければならぬ。で、いま私どもが考えておりますのは、いわゆる低圧経済状態ではないか。つまり民間の設備投資、こういうものがなお微弱な状態にある。そういう際におきましては、政府がこれを補って経済の成長を進める必要がある、そういうふうにただいまは見通しておるのです。そうしますと、政府の建設勘定はふくれていくわけであります。その財源を一体どうするか。一部を租税収入に求め得るかというと、昭和四十二年度という年はなかなかむずかしいのじゃないか。そうしますと、公債を財源としなければならぬということになる。そうしますと、公債の発行額は、建設費、投資勘定の膨張に伴いまして、ふえると、こういうことになるのです。しかし、まあそのふえ方も、そう私は画期的なふえ方というふうな考えは持っておりません。これは適度の増加であろうと、そういうふうに見ておるわけであります。その数字は、いまの段階においてはまだ申し上げるところまで来ておりません。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四十一年度でも建設的経費というのは、財政法四条一項で、あれは大体八千億でしたかね。全部それを公債に依存しておるわけではない。
  26. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 道路費はガソリン税でまかないますから、そういうことになっておりますので、それを除きますと、大体七千六百億円ぐらいでございます。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、四十二年、四十三年あたりは、そうした四十一年度には建設的経費として七千六百億見込まれたのだけれども、そのうち公債でまかなったのは七千三百億、こういうわけですね。その残り三百億は税収その他でまかなうということになるわけですね。そうしますと、四十二年、四十三年になると、もう目一ぱい——目一ぱいというと変ですけれども、いわゆる建設的経費、いまガソリン税のほうは一応別といたしまして、そういうふうに見ているわけですか。
  28. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 大体目一ぱいになろうかと思いますね。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなると、景気対策としても、設備投資の意欲が活発化していないから、財政面から景気を刺激する必要があるということから、やはり公共事業費等もふやす必要があると考えますしね、かなり、八千億近い公債発行になるんじゃないかと思われるわけです。特に最近、公債消化が非常に問題になっておりますので、そういう点を伺っておるわけですけれども、個人消化したものもだいぶ売りがあるそうじゃないですか。だいぶ売りがあるので、そして最近では、公債消化について楽観を許さないように思うのですが、公債の管理政策というものも非常に問題になってくると思うので、公債を発行してから最近までの実績を見て、まだ公債も最近上場されておりませんがね、そういう点をこの際どういうふうに見通されていますか。
  30. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 一口に申し上げまして、公債の発行はきわめて順調であります。発行というか、消化はね。上半期の大体の見当、三千七百億ぐらい腹づもりしているのですがね、きょうあたりも、七、八、九——第二四半期、どういうふうに消化するかという具体的な話し合いが行なわれておりますが、これは何ら問題なしと申し上げていいくらい順調でございます。  それで、いま売りがあるという話ですが、これは、公債は証券でありますから、売りがあり買いがあるのは当然ですが、問題は、その売買が売りから出ているのか買いから出ているのかと、こういうことなんだろうと思いますが、いま私どもが承知しているところでは、買いからこの売買が起こっておるというケースのほうが多いようであります。それで、そういう状態でありますので、公債もできる限り早くこれを市場に上場したい、こういうふうに考えておる。で、おそらく三十日、この三十日ですね、になると思いますが、いま手続を進めておる。で、店頭売買で価格を発表するというようなことをいたしたい。で、その推移を見まして、なるべく早く公債上場、これをやってみたい、こういう考えであります。大体そういうことが現実の計画課題になってきた程度に国債消化は順調である、こういうふうに御了承願いたい。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、この外為会計の運営について伺いたいのですが、まあインベントリー資金がなくなるということは、金利がつかない資金がそれだけ減るということです。それから、他方、貿易が拡大していけば、為替を買う量も多くなってきますから、円資金が必要になってくるわけですね。それで、外為証券の発行はそれだけ従来よりはかなりふえてくるわけです。そうすると、利息の支払いはかなりふえてくる。他方において資金の運用については、アメリカ金利が多少高くなって予想よりはウエートも少しは多くなったと思うのですけれども、外為証券が大体一銭五厘五毛ですが、五分八厘ですわね。アメリカのほうの資金運用、大体定期預金とか当座財務証券等に運用しておるようですが、これは事務当局から御説明していただいたのですが、大体定期預金は最近金利が上がっても五分三厘から五分五厘ぐらいですね。それから、財務証券の利回りは四分七厘程度といわれるわけですけれども、そうすると、これは逆ざやなわけです。もちろん前からアメリカのほうが金利が安いのですから、それは逆ざやなのは当然なのですけれども、それは従来外為会計金利のつかない資金がかなりあった。だから、わりあいに楽な運営ができたと思うのですよ。ところが、インベントリー資金がだんだんなくなるということになると、その点は運営が窮屈になってくるので、そこで私が心配するのは、大蔵省からいただいた資料を見ますると、たとえば四十一年度の借り入れ金利子を見ますると、百九十一億二千万円になっています。これは見込み額ですがね。これに対して運用収入が百八十五億一千万円。逆ざや関係がはっきり出ておるわけです。ここで利子支払いのほうが運用収入より多くなってきておるのですね。ところが、四十年度はそうではなくて、運用収入のほうが借り入れ金利子より多いのですよ。四十一年になるとこれは逆になるわけですね。そこで、今後かなり長期的に見まして、このインベントリーがなくなっちゃったあとで、しかも外為証券の発行が非常にふえてくる、そういう状況のもとで、これまでのようなこういう運営のしかたをしていっていいのかどうか。こういう状態ですと、将来赤字になるという状態が起こってき、むしろ逆に一般会計から外為会計に利息のつかない金を今度は逆に繰り入れなければならぬ、そういう状態が私は必ず起こらざるを得ないと思うのですよ。そういうことをやっぱり頭に置いておかなければならぬ、はっきり傾向的に出てきているのですから。四十年は五十二億の利益があったのでしょう。それが四十一年度、見込みで二億五千五百万円に激減する。たいへんな減少です。約五十億の利益の減少なんです。それに対してどういうふうな処置をとるか、今後の外為会計の運営の基本的な考え方ですね、これを伺っておきたい。
  32. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 木村先生指摘の点でございますが、確かに四十一年度の予算におきましては運用収入のほうが下回った数字になっておりますが、このほかに為替の売買差益というものが約二十六億円ございますし、今後貿易量の増大を見込みますと、これを下回ることはおそらくない、むしろふえるかと思いますが、それからこのほかに資金運用部の預託金の収入が、これは六分五厘で預けておりますので、その収入もございます。したがいまして、傾向としては先生指摘のような傾向はこれは一般的としては言えると思いますが、それがすぐ数年の間に外為会計全体として逆ざやになるという事態が発生するかどうかにつきましては、一応計算いたしましたが、数年はそういう事態にならないという計算になっております。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それをできればもう少し具体的に説明していただきたいんですがね、さしつかえなければ。
  34. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 今後の国際収支の見通し、それから内外の金利情勢等を予測することは非常にむずかしい、ことに長期的に見ますことは非常にむずかしいわけでございますが、一定の前提を置きまして、たとえば外貨の資産の利回り等は、現在の状況をほぼ前提といたしますと、一応の非常に大ざっぱな試算でございますが、外貨十二億五千万ドルを四分四厘で、外貨資産全体の収益——もう少し高くなっていると思いますが、四・六、七ぐらいにはなっていると思いますが、控え目に四・四といたしまして計算し、そして資金運用部の先ほど申しました預託金がございます。これは六分五厘でまあ現状で続く、外為証券利子も五・八でございますか、一銭五厘五毛の金利で発行するということで、要するに外貨が非常に著しく外為会計としてふえるということではなくて、現在の状況を一応前提といたしまして、ただインベントリーが、先ほど来のようにアジア開銀で五年ということ、日韓で十年ということで落ちてまいりまして、そのことだけを前提といたしまして、インベントリーが全部取りくずされたと、要するに残りの四百五十二億円が全部落ちたという計算をいたしました場合に、なお十四億円ばかりの差益が残る計算になっております。したがいまして、逆に今度はこの十四億円をいろいろまあとんとんにまで持っていくには、ある程度外貨というものがふえてもだいじょうぶだということが逆に言えるわけでございまして、そういう前提を置きます限り、ここ二、三年で逆ざやの事態が来るということはちょっと考えられない数字に考えるわけでございます。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう見通しならばよろしいかと思うんですけれども、前にも一ぺん私は問題にしたことがあるんですが、外為会計外貨資金の運用ですね、これは金利とも関連があるんですが、大体大部分がアメリカに対する定期預金、当座預金、それから財務省の証券に運用しているんですね。財務省証券、これはあれですか、その運用について、その詳細をここで報告されますか。大体でいいです。一応、こちらからアメリカにどのくらい預金し、それからアメリカの財務証券にどのくらい運用して、そうしてどのくらいの利回りでやっているかということですね。
  36. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 財務省証券は、これは非常に換金性が高い資産でございますので、私たちはこれを全部ドルで保有しております。したがいまして、先生の御質問のように、大体アメリカ関係で持っておるということが言えるわけでございます。その金額は、これは従来この前の国会でもあれいたしましたが、一億四千万ドル見当でございますが、そのほかの流動資産は預金でございまして、この預金の内訳は、これは御容赦願いたいんでございますが、総額といたしましては八億六千万ドルでございまして、大部分は米ドルということで保有いたしております。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 アメリカでの定期預金の運用は、大体八億六千万ドルのうち五千万ドルぐらいといわれておりますけれども、財務省証券、これは大部分大蔵省管理。定期預金というのはアメリカの市中銀行等もあるわけですね。それで、これはしろうと的な見方かもしれませんが、政府外為証券五分八厘で外貨を買って、そうしてそれをアメリカで五分三厘か五分五厘で運用しておる。聞くところによると、日本が五分八厘で大蔵省証券で買った外貨アメリカの外銀に預ける。アメリカの外銀から日本の銀行が金を借りる、そのときは高い金利で借りる。そうすると、何か日本外貨資金アメリカの銀行をもうけさせている、こういうことになるんですよ。そういう運営のしかたは実際、われわれから見るとどうも割り切れない。なぜこんなにアメリカにたくさん外貨を、しかもアメリカ市中銀行等に預けなければならないのか、外貨の多くの部分をアメリカの市中銀行あるいはアメリカの財務証券に運用しなければならないのか、もっと日本にとって有利になるような運用のしかたができないものかどうか、この点、前から私は疑問に思っておるんです。前に一ぺん池田さんが総理大臣のときでしたかね、予算委員会質問したときに、その点について、それは問題があると思うと池田さん言われまして、何かその再検討をするということを言われたと思うんですよ。それが具体的にどういうふうに再検討されたのか知りませんが、何か大蔵省官僚というものとの関連で、官僚でそれが是正されるのかどうかそこら辺、伺いたいんですよ。
  38. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 木村先生事情を十分御承知の上での御質問なんで、非常に答えにくいのでございますが、これは国際決済のためにドル貨を使用するということからいって、どうしてもそうなるということがまあ結論かと思いますが、これは一つは日本外貨準備というものが少ないということにも基因しておるのではないかというふうにも思います。つまり、借金をしないで済むような状態であれば、いまのように逆により高い金利日本の銀行が借りるという事態は起こらない、さらに、運用益だけの収入でまかなえるわけでございますが、何ぶんにも、そうすぐには、わりあい低い外貨準備でございますので、ある程度いまのところは、ドル貨による債務の運用ということでもって国際収支の運用をはかっていかざるを得ないという状態が根本にあるわけでございますが、かりにこれが非常に外貨準備が好転してくる、したがって、そういう借りる必要性が減少するということになって、さらにその外貨準備が減らないという程度の厚い壁になってまいりますれば、これはまたいろんな運用、あるいは無利子の——これは一例を申すわけでございますが、金とかというような運用も可能でございますが、何ぶん現在におきましてはそういう事態ではない。逆にこれが円の通貨が国際決済に回るとすれば、これは事態は非常に変わると思いますが、いかんせん、まだそこまで通用力がございません。むしろ国際決済用としてはドルをもっぱら利用するという現状でございますので、やむを得ない事態かと思いますが、したがって、私たちは国際収支の基調というものは早くもっと高い水準に、利益の水準に持っていくようにする必要がその面からもあるのではないかというふうに思っております。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外貨準備が少な過ぎるというお話でしたが、大蔵大臣、外貨準備というもの、これは前にもずいぶん議論があったんですがね、やっぱりどの程度必要だと思っておられますか。それから、金準備との関係ですね、これは前にもかなり問題になって、多少金準備率をふやしたこともあるんですが……。
  40. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 金をどういうふうにこれから見ていくか。実はこの七月に、国際流動性の問題についてハーグにおきまして十カ国蔵相会議というのが開かれるわけでありますが、まあ傾向としては、私は金というものを全然度外視した行き方というものにはならぬと思いますが、金にそう密着した制度というものでは窮屈だという考え方がとられるんじゃないかと思います。しかし、金というものの存在というものは国際決済上依然として重要でありますので、私としましては、機会があれば金も準備の中へ加えていきたいと、こういうふうに考えておるわけなんです。  で、外貨の、金を含めての外貨手持ちを一体どういう程度にするか。私は、今日の二十億ドルというものは——まあ二十一億ドルになっていますが、この二十億水準というものは、貿易の実勢から見まして、これはまあ少し低きに失すると、こういうふうに思うわけであります。それで、これを何とかして漸増をいたしていきたい、こういうふうに考えるわけです。  ただ、そこで注意しておかなきゃならぬ問題は、ただ単に風袋が大きくなったということだけにとらわれてはいけない。外貨の量、手持ちの量が拡大されるとともに、その内容を改善しなければならぬ、そういうふうに考えております。そういうことでありますが、いま現実の問題としますと、この二十一億ドルの中身は非常に改善をされてきておる。つまり、短期債務をずいぶんここで返済しつつあるわけであります。アメリカ金利状況等もありまして、日本に滞在しておった短期資金アメリカその他に還流していくというような傾向もずいぶんあるわけであります。資本収支の赤字というものがなければ、今日の時点では、ずいぶんこの二十一億ドルという状態は改善をされておるのではないかと思います。しかし、短期債務を中心とする資本収支の赤字というものがありました関係で、二十一億ドルにとどまっておりますが、そういう内容の改善を加えながら、かつ、二十一億ドルという現状がさらにさらに私はふえていくということを期待しながら、国際収支の政策を運営していきたい、さように考えております。
  41. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 関連。現在の日本の金保有高はどれだけあるんですか。
  42. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 大体三億ドルぐらいです。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ついでですから伺いますが、発券制度と関連しまして、いまの金の問題、それから外貨準備との問題ですが、いまの最高額制限屈伸法というのですか、これについて、やはり保証準備的な考え方も、前の金融制度調査会の何か小委員会でそういう意見もあったし、日銀当局では吉野さんなんか、全然ブレーキがないというのもよくないんじゃないかと、そういうようなことから、やっぱり発券制度についても再検討する必要があるんじゃないかというような意見もあるわけですが、発券制度では、大蔵大臣は、金の問題が出てきたんで質問するんですが、全然いまの制度を変えなくていいというようなお考えですか。
  44. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあ私もこの問題につきまして最終的に詰めた考えを持っておりませんが、管理通貨制度というものは近代国家の通貨制度として、もう、一つの傾向になっておる。この大勢は、私は今後といえども日本としてとっていかなきゃならぬやり方じゃないか、そういうふうに考えております。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはよくわかります。管理通貨制度ということは、最も徹底した管理通貨制度は、これは金に結びついた制度が一番管理通貨的なんですよ。客観的に縛られる。金を離れたいわゆるマネージド・カレンシーというあれは、人間の判断によって調整するということなんですよ。だから、そこに一つの何か客観的な歯どめのあれがないわけですよ、歯どめというものが。もちろん健全な通貨金融政策が行なわれればそれでいいじゃないかというけれども、しかし、日本の場合でも現実に見て、主観的にはそういうふうに考えても、なかなかそのとおりにいかないのが現実ですよ。ですから、客観的にある一つのブレーキ、制度的なものをつくって、それによって全部問題を解決するという、そんなに簡単には考えていないのですけれども、やっぱり公債発行政策を続けるということになれば、発券制度についても、ただ公債消化というだけじゃなくて、発券制度についても再検討が必要じゃないか、こう思うんですよ。前に一ぺん金融制度調査会の小委員会かなんかでそういうような検討をやったように聞いているのですが、世界の大勢はやはりそういう全然無制限的な発券制度ではないように、ことに西ドイツあたりはそうじゃないように聞いているのですけれども、それは原則的に管理通貨制度は世界の大勢だということは、これは金本位に帰ることはもちろんできないでしょうが、そういういま戻ることができないという意味で、これはもう管理通貨制度は大勢であるとは言えますけれども、それでいいのかということについては、私はやっぱり疑問があるのですが、その点どうですか、大蔵大臣。
  46. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 私はやっぱり通貨は経済成長と見合ってきめていくべきものだと思うのです。経済成長という要因とかけ離れて一つの通貨発行のワクを設けるということになると、いろいろな不自然な状態も出てくると思います。やはり通貨の量をどういうふうに規制をしていくか、これは成長を中心とした経済政策全体の見合いにおいてきめていくべき問題であると、そういうふうに考えております。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外為関係でもう一つ最後に。さっき外貨準備の問題が出ましたので、大体貿易量の何%ぐらい、これも機械的には言えないと思うのですけれども、また国際流動性との関係もありますが、大体どのくらいの、何%ぐらいを目途で外貨蓄積が必要であるとお考えですか。
  48. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 外貨準備と輸入量との関連でございますが、これはもちろんその国の経済のあり方あるいは国際収支の見通し等によりまして一律に言えないことは言うまでもございませんが、大体各国の水準というものを見まして、大蔵大臣の先ほど申し上げましたとおり、日本は非常に低いということは、これはもちろん言えるわけでございますが、しからばどの程度かということに相なりますと、どうも国際的な議論の場におきましても、なかなか数字的な考えというものは出てきておりませんが、ただ、よく言われますのは、その年間輸入量の半分ぐらいは持っていると非常に安心であるということは、よく言われることばでございます。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、アジア開発銀行の問題について伺いますが、アジア開発銀行が生まれるに至った背景というものはどういうものか、これを伺っておきたいと思うんですが、これは外務省のほうから御説明願えるんですか、外交、経済的背景
  50. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をちょっととめてください。   〔速記中止〕
  51. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を始めてください。
  52. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 外務省から御説明申し上げます。  すでに提案の趣旨を御説明申し上げましたときに申し上げておると思いますが、アジア地域の経済開発を促進するためこの銀行を設立すべきであるとの要望が、一九六三年十月に開催せられましたエカフェ諸国の閣僚会議におきまして、アジア開発銀行設立計画という形で具体化されまして、以来協定案の作成について交渉が続けられてまいりました。昨年十一月二十九日から十二月一日までマニラにおいて御承知のとおり開催されましたエカフェ域内国の閣僚会議において協定案が採択されまして後、引き続き十二月二日から十二月四日までマニラで開催せられた域外の関係国をも含めた全権会議において同じ協定案が採択されたのであります。わが国といたしましては、前記の全権会議の最終日である十二月四日にこの協定に署名を行ないましたが、署名の期限たる本年一月三十一日までにいわゆる三十一カ国が署名を了しておるような次第でございます。  以上がいわば協定成立の時日的な経過でございますが、ただいま木村委員がお述べになりましたように、そのほかに大きな経済的背景というふうなものも一緒に説明せよということでございますが、これはもう申し上げるまでもなく、アジアにおける現在の情勢は、いわゆる貧困あるいはまた政治的不安、こういうことが非常にございます。まことに遺憾なことでございます。つきましては、われわれといたしましては、アジアに位置する日本もその一員といたしまして、これら各国の経済的開発、民生の向上、そういうものを通じましてともどもに繁栄をしていくと、こういう政策を大きく打ち出していくことが最も肝要なことであるということは申し上げるまでもないと思うのであります。しかして、こうした諸国の経済的発展と民生の向上に最も必要なものは、乏しい資金、この乏しい資金をいかにして補っていくか、またそういう資金の需要に対しましてお互いに力を合わせてこれを充足していく、こういうくふうでなければならないかと存じます。そうした経済的背景が、先ほど申し上げたような背景がございまして、これを基礎にいたしまして、先ほど申し上げましたような時日的な経過をとって、ここにアジア開発銀行の設立計画が進められた、かようにわれわれは理解をいたしておる次第でございます。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまきわめて提案理由みたいな平面的なお話を伺ったんですが、そんな御答弁よりは、外務省調査月報ですね、一九六五年十一月〜十二月、ここに「アジア開発銀行協定の概説」と書いてある。ここにもっと懇切丁寧にかなり要領を得て説明してあるんですよ。ですから、これだけではもちろんほんとうの生きた背景というものはわれわれわからないから、政府としてどういうふうにそれを把握しているかと、いま質問したんですが、特に正示さんは大蔵省に長くおられて経済専門家であられるわけですよ。したがって、そういうアジア開発銀行の生まれる経済的背景というものを、アメリカの低開発国援助政策日本の低開発国援助政策というものとのからみ合いにおいてそれは出てきているのでありますから、もう少し何といいますか、実態に触れた背景、これはだれしも聞きたいと思うのですよ。伺いたいのですよ。やはりかなり機微に触れた御説明をちょっと願いたいのですよ。ざっくばらんに、こうなんですというようなところを御説明願いたい。あまり形式ばらなくて、暑いですし、上着をどうぞ脱いで楽な気持ちで。
  54. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 木村委員すでに御承知のとおりでございまして、いろいろとそういう面についても、この開発銀行の設立計画がいわゆるジョンソン構想等と関連があるじゃないかというふうな御議論もございますが、実はわれわれはその点について非常に良心的に、日本の実質的な、いわゆる先ほど私が申し上げたように、アジア諸連邦との共栄、ともに発展し繁栄していく、こういう考え方から出ているということを強調いたしますために、つい紋切り型の説明を申し上げたようなことでございます。  しかし、これの実証といたしましては、本年四月東京において開催されましたいわゆる東南アジア開発閣僚会議、そういう事実によっても御理解をいただける。この東南アジア開発閣僚会議におきまして、いかに近接な諸国が経済の発展、民生の向上ということに熱意を示したか、これはすでに木村委員も御承知のとおりでございます。そこで、われわれといたしましては、そういう自主的な立場から、ぜひともアジア諸国の発展、繁栄、そういうことに最も有効適切な開発銀行の設立、こういう考え方でやっております。もちろん、そういう考え方に立脚をいたしまして銀行を設立いたしました以上は、その銀行のより一そう効果的な活動の面におきまして、諸外国からの資金その他についてこれを活用していくことはもとより当然でございますが、どこまでもわれわれの期するところは、アジアの自主的な開発、発展、それに貢献する、こういう考え方でやっていることをこの際御理解いただきたい、こういうことでございます。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも私は、外務省の「アジア開発銀行協定の概説」、これが非常にいい参考資料になったのですが、これに基づいて御質問いたします。これによりますと、こうなっております。「アジア開発銀行協定は、きわめて短期間に成立しており、実質的審議が行なわれたのは、政府代表会議においてのみにすぎない。しかして、政府代表会議の期間は、わずかに十日間であり、しかも、同会議においても、審議ないし議論の焦点が投票権、理事会の構成、加盟国の資格、国際入札の要件、特別基金の設置、自国通貨の使用制限、特権免除といった政策的な問題に向けられたため、協定テキストについての詳細かつ慎重な検討は十分行なわれなかった。通常、この種の国際協定を作成するにあたっては、起草委員会を設置して、法律的見地から条文を推敲するのが慣例であるが、かかる手続きを経ずして、全体会議で一挙に採択の運びに持っていったことからしても、協定の作成が、高度の政治目的背景に、きわめてそう争うの間に押し進められたことがうかがい知られよう。」、こうなっております。ですから、さっき私がかなり高度の政治的目的背景としておるということを言ったのですが、それは私は何も独断で言っているのではなくて、外務省の調査月報にちゃんと書いてあるのですよ。ですから、こういう経過で生まれているから、すんなりずっとできているのなら、私は何もそんな疑問を抱かないのですが、かなり「高度の政治目的背景に、きわめてそうそうの間に押し進められたことがうかがい知られよう。」、外務省の調査月報でもこう言っておるのですから、どうしてそんなに従来の慣例を破って起草委員会をも設置しないで全体会議で一挙に採択したかったのだろう、こういう疑問を持つのはこれは当然じゃないだろうかと思うのです。その辺のところから、まずお伺いしたい。
  56. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 私が先ほど申し上げたような経緯でございまするが、外務省から直接、文章につきまして特に御質問がございますので、関係官からお答えを申し上げたいと思います。
  57. 松井佐七郎

    説明員松井佐七郎君) 世界の人口の三分の二が現在貧困と無知と疾病と戦っておる、これがいわゆる南北問題として取り上げた政治問題でございまして、国連はその対策といたしまして、一九六〇年代を国連のディベロプメント・ディケードと称しまして、集中的に低開発国の経済開発を促進するということを非常に重要なテーマとしております。この問題が一昨年開催されたUNCTADの会議におきまして、世界の百二十一カ国の代表の参加のもとに論議されたことは御承知のとおりでございます。  この会議において問題になったのは、低開発国開発のおくれておる原因は何かということであります。それは要するに資本と技術の不足である。したがって、この資本をもっと多く提供するためにはどういう方法がいいかということがUNCTADの第三委員会における重要議題でございました。そのときに、低開発国の圧倒的な要求は、現在IMFあるいは世界銀行あるいは第二世銀の多角的な開発融資機関は大体先進国が実質をかっちり握っておりまして、低開発国側の切実なる実態に即した融資条件でやってくれない、額についても条件についても同様である、したがって、現在の世銀、IMFのワクから離れた、したがって彼らが国連のワク内で多数を擁しまして、低開発国が自主的な運用ができるような機構をつくれ、その要求が二つの形をとってあらわれました。その一つは国連のもとにキャピタル・ディベロプメント・ファンドをつくれ、他は地域開発のための地域開発銀行をつくれ、こういう要望が非常に強くなされたわけでございまして、アジア開発銀行背景というものを、世界的な南北問題の一連として、高度の政治的見地から低開発国の切実な実態に即するような措置を構ずること、換言すれば、従来のような単なるコマーシャルベースの融資だけではだめである、かかる意見が世界の三分の二を代表する国々の強い要望でございます。  アジア開発銀行というものは、実は南北問題という世界の流れのうちの一つの現象にすぎないわけでありまして、外務省の調査月報で「高度の政治目的」と申し上げましたのは、そういう態度をもって低開発国を助けろ、それこそ世界の世論である、この意味において、いろいろな技術的な問題についても重要性があるかもしれないけれども、非常に緊迫性を帯びた重要な問題があるから、この南北問題の立場から政治的にやってみろというわけであります。政府におきましても、かかる趨勢に同調したいという次第でございます。  ちょっと補足説明させていただきました次第であります。
  58. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 関連。いまあなた、答弁の中で、世界の人口の三分の一を占める……。
  59. 松井佐七郎

    説明員松井佐七郎君) 三分の二でございます。
  60. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いや、三分の一が貧困だ無知だと、こういうふうにあなたいま言ったが、その三分の一の人口を占める国々をあげてごらんなさい。
  61. 松井佐七郎

    説明員松井佐七郎君) 私の申し上げましたのは、UNCTADの最終議定書にそういう用語がございます。具体的には、もちろん中共なりソ連圏がそうなのかという政治的問題を含んでいるので、正確なる答弁は困難でございます。
  62. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  63. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま、外務省の調査月報で「アジア開発銀行協定の概説」というものを書いておって、その中で、高度の政治目的背景に、全体会議で一挙に採択されたと、こうなっておるんですよね。それで、これまでの国際慣例では、起草委員会を設置して、法律的見地から条文を十分に推敲するのが慣例なんだけれども、そういう手続を経なかったということが書いてあって、そこで「高度の政治目的背景に」というところについての御説明があったんですよね。さっきのは、高度の政治目的というのは高度の政治性というように説明されたんだけれども、いまのお話ではここの私は説明にならないと思うのです。高度の政治目的というのは一体何を言っているのか、これはわれわれも意見がありますし、そう簡単なものでは私はないと思うのですけれども、さっき説明されたような簡単なものじゃないと思うのです。ですから、もう少しここのところを……。これはあれですか、松井さんが起草されたんですか。書かれたんですか。
  65. 松井佐七郎

    説明員松井佐七郎君) 私ではございません。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その政治目的というのはどういうことなんですか。
  67. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) いま松井君からお答えをいたしましたような背景があったと、そういう事実がございまして、それがいま外務省の調査月報の中に書かれておる表現が適当かどうか、私は必ずしもそれが最善のものであるとは考えませんが、しかし、そういう政治的な目的の非常に高度なものがございまして、それが閣僚会議等において非常に簡略な手続でこういう案が決定するに至った背景になっておる、そういうことを調査月報では指摘をしておるのであります。したがって、この政治目的ということがよく世間一般にいわれますような、いわゆるアメリカアジア政策というふうなことではなくて、一般的に低開発国あるいは後進国の開発について資本を結集していくと、そういうことが非常に適当なことであるという世界的な世論があって、その上にこの案がつくられた、こういう意味に御理解をいただければいいのじゃないかと思っております。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど松井さんから、そもそもアジア開発銀行についての構想が出てきたのは、これは国連で低開発国における貧困、無知の原因がどこにあるか、これについては開発が非常におくれている、ことに資本の援助が必要であるということから発しているんであって、というお話があったんですよ。そのアジアにおける貧困と無知について須藤さんからいろいろ質問がありましたけれども、それはあとでまた須藤さんから質問していただくとして、とにかく開発がおくれている、貧困である低開発国がかなりあるということは事実ですね。その原因についての認識が大切なんですよ。われわれはこのアジア開発銀行を賛成するかしないかは、そこの原因についての認識と、それに基づく対策が適切であるかどうかというところから、開発銀行に賛成するかしないかをきめなきゃならぬわけです。ですから、その認識が非常に大切なんですよ。そこで、日本政府は、アジアにおける停滞性というんですか、それから発展の非常におくれている、成長の非常に低い根本の原因はどこにあると考えておりますか、日本政府は。
  69. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは私が政府を代表してお答えするのにはあるいは不適当かもしれませんが、御質問でございますから、率直に申し上げてみたいと思うのでありますが、これはもちろんいわゆるアジアの後進性というふうなことによってよく申されておりますように、まず第一には、やはり非常にいままで不幸にして政治的な関係から、民族の自主独立と、そういうことが実現を見なかったということが非常に大きな原因ではないかと思います。幸いにして、それが近来とみに各国あるいは各民族の自主独立が大いに促進せられております。したがってまた、その自主性を尊重しつつ、ここに経済の開発、発展をなすべき非常な好機にいまわれわれは直面しておる、こういうふうな認識が根本ではなかろうか。  そういう認識のもとにこの経済の開発発展を進めていく場合、幾ら民族のそういう意欲が盛り上がってまいりましょうとも、これに必要なる資本技術、そういうものが相伴わないときにはやはり発展がおくれてまいるわけでございます。したがって、この点について大いに議論があるというお話もそのとおりだと存じますが、われわれといたしましては、すでにあらゆる方法を用いて資本的協力、技術的協力、こういう態勢を経済外交の大きな一環として推し進めておるわけでございますが、その一つの有力な方法といたしまして、今回のような開発銀行を設立することも各国の発展、繁栄のための一つの大きな、何といいますか、助長の方法になる、かような認識のもとにかような案を出したような次第であります。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 このアジア開発銀行協定というものですね、これは外務省の調査月報によっても、このモデルとなっておるのは大体米州開発銀行、いわゆるIDBですね、アフリカ開発銀行、ADBですか、この協定がモデルになっておるといわれておるのですよね。まあそういう点からアジア開発銀行が地域開発銀行といわれるゆえんだと思うのですけれども、そうなると、これはアメリカの低開発国援助政策というものと切り離して考えることはできないわけですね。そこで、日本政府は、アメリカの低開発援助政策というものの基本的な考え方はどういう点にあると考えておりますか。いま日本政府考え方を聞きましたが、非常に何というか、隔靴掻痒というのですか、真髄に触れた御答弁でなかったのが遺憾で、また重ねて伺いますが、このアジア開発銀行の大株主というのですかね、大出資者はアメリカ日本ですからね、非常に大きな比重を持っておるわけです。アメリカはどういうふうに考えておるか、これを伺います。
  71. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 私は、この点につきましても、アメリカがいま御指摘のような米州開発銀行、あるいはアフリカ、またアジアというふうな、この地域の繁栄、発展、これについてもちろん大きな関心を持ち、またできるだけそれに協力しようと、こういうことは木村委員も御指摘のように事実であると思います。先ほど私がお答えを申し上げたのは、そういう考え方が主になって、これにわれわれが引きずられていったと、そういう趣旨ではなくて、どこまでもわれわれはアジアを中心に、アジア開発、発展というそういう見地から自主的に案をつくりまして、その基本方針に支障のない限りアメリカその他の国の協力も得ていきたい、こういうふうに主と従との関係を特に御説明したわけであります。したがって、基本的な考え方におきまして、もちろんいわゆる米州あるいはアフリカあるいはアジア、こういうものについてアメリカがその力を注ぎまして開発の促進に寄与しつつある、これらの点については、われわれは決してそれを無視したりあるいは排除したりする、こういう考えではないわけであります。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうことを伺っているのではないのでして、外務省ですから、アメリカのいわゆる外交政策的な見地から低開発国に対する援助というものに対してどういう基本理念を持ってアメリカは臨んでいるのかですね、そういう点をお聞きする必要があると思うのです。
  73. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 御承知のように、ワールド・バンク、あるいは第二世銀、あるいはIMF、そういう問題について非常に大きな力を持っているのがアメリカであることは御承知のとおりでございます。そうしてまた、アメリカの基本的な考え方がどこにあるか、低開発国開発、発展によって世界の繁栄が開かれ平和が保たれる、こういう基本的な考え方をとっていると思います。したがって、そのためにいま既存のいろいろな機関を動員し、また大いにそれを活用させるという方針をとっていることも事実でございますが、これに補完をさせて各地域の実情に応じたそういうものが自主的に生まれてくることをも歓迎し、それに対して応分の力をいたす、こういう考え方に立っていると、かように私は考えます。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはアメリカは、低開発国開発して、その繁栄が世界の繁栄の基本になるのだという考えでやっていると、こういうのですか。  そこで、じゃ、低開発国開発して繁栄に導くためには、その前提として、なぜ低開発国がその成長率が低く、なぜ貧困の問題が解決しないか、そのやはり基本的な原因に対する認識をはっきりしなければならぬのです。認識が間違っていたら、これは的はずれになるわけです。ですけれども、アメリカは——さっき、国連がアジア地域における貧困と無知ですか、その原因についてこれを明らかにして、これを排除するために経済、技術援助等が必要だということが言われたのですがね、じゃアメリカアジア地域におけるこの貧困、そういうものの根本の原因をどういうふうに理解して、どういう具体的な政策を、基本的政策を出しているとお考えですか。
  75. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは先ほど私が、たいへん潜越ですけれども、日本政府を代表してお答えするのは適当でないということをリザーブいたしましてお答え申し上げたのでありますが、大体私は、日本の判断もアメリカの判断もそう食い違っていないのじゃないか。自由を基本にいたしまして各国相携えて発展し繁栄していく、こういうことが自由経済の基本的な考え方であることは、木村委員承知のとおりでございます。したがいまして、その基本的な同一の認識の上に、一国だけが繁栄するということはとうていあり得ないことでございますから、各国相携えて一そうの発展、繁栄、これを企図していく、こういうことが基本の方針になっている、かように理解をいたしております。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、もう少し具体的に質問してまいりましょう。  正示さんは、日本に来たと思うのですが、アメリカ政府政策計画局長ですかのロストウ氏を御存じですか。ロストウさんですね。御存じですか。
  77. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 私、まだお目にかかっておりませんが、いろいろロストウ氏の見解というものは文章でも読み、また幹部会その他において報告は受けております。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは新聞の報ずるところによると、何か日本に見えることを伺ったし、それから韓国のあの経済計画なんかについていわゆるテークオフ理論に基づいていろいろアドバイスしたり、それからアメリカの低開発国計画につきましてはこのロストウ考え方というのがかなり影響されておるのです。基礎になっているのじゃないかと思うのです。そこで、アメリカの低開発国援助政策の基本政策というものがどこにあるかということを考える場合、やはりこのロストウ考え方というものを基礎にしているのじゃないか、そこから私は出ているのじゃないかと思うのです。基本は。  そこで、ロストウのものをお読みになって大体御存じだと思いますが、それじゃひとつこのロストウ理論に基づいてアメリカはどういうふうに低開発国援助しているか、また、ロストウアジア地域における貧困と無知の原因を一体どこにあると見ているか、そういう点を伺いたい。
  79. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 先ほどお答え申し上げましたように、私はロストウ氏にお目にかかっておりませんし、ロストウ氏の所見を特に研究したというのでございませんので、私からお答えするよりは、あるいはもう少し適当な者がおるかと存じます。しかし、ロストウ氏は先般日本に来るはなずであったのが、たしか何かの理由で来られかったのでありますが、いつも外務省の幹部から幹部会等において伺っておる点から申しましても、先ほど私がお答えをしたような考え方とそれほど変わらないのじゃないか、かように思っております。これは、いまロストウ氏の所見、それを基礎に、もう少しロストウ氏の見解を明らかにせよということでございますれば、もっと詳しい者をしてお答えさせるほうが適当かと存じます。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと待ってください。いま正示さん、大体外務省考え方ロストウ考え方とあまり変わらぬということを言われたのですね。そうでしょう。アメリカのまあ低開発国援助政策の基本の理念になっていることは、これは云う御承知のとおり。また、いろいろとそういう著書を出しておりますね、ロストウが。それで、大体ロストウの考えと日本政府考え方が同じかと言ったら、これは相当問題がありますよ。これから御質問していきますけれども、それでいいんですか。
  81. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 先ほど私が、低開発国援助の必要性、またアジア開発銀行設立の必要性というふうな点について日本政府としてはどう考えておるかという点を、まずお答えをいたしたわけでありますが、それに対しまして、まあアメリカ政府考え方を重ねて御質問でございまして、基本的にはその考えに私が申し上げた限りにおいては食い違いはない、こういうふうな趣旨で申し上げたのでありまして、ロストウ氏の所見については、いまも私が申し上げたように、特に専門家をしてこれを答えさせることが適当かと思っております。しかし、いま申し上げたようなことで特に食い違いはないのじゃないかという趣旨のことだけを、私が一言申し上げたわけであります。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはむずかしいテークオフ理論を聞こうと思ってやしませんよ。このアジア開発銀行を、われわれがこの法律案を賛成するかしないかについて態度をきめるにあたって、アメリカの低開発国援助政策の基本になっているこのロストウ理論、そしてそのロストウが一体アジアの貧困と無知の原因をどういうところに求めて、どういうところにあると考えて、どういう方法で解除し、これを排除しようとするのか、そこが問題なんです。重要な問題なんです。ですから、そうむずかしい理論を聞こうとしているのじゃないのです。ただ、ロストウは、このアジアの貧困と停滞の原因をどういうふうに理解をしているのか、こういうことなんです。それで、大体日本政府もあまりそれと変わらないということになりますと、それは私は問題があると思うのですよ。
  83. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 木村委員が特にお詳しいこのロストウの専門的な見解というものについては、私はあまりここでお答えをしないほうがいいかと思いますが、われわれが基本的に考えておりますように、アジアの諸国は先ほど申し上げたような政治的なそういう面から非常におくれておる。しかして、今日においては、いわゆる経済の発展段階に応じまして、一次産品、そうしてまたいわゆる日本のごときやや、まあこれは中進国とかいわれておりますが、この経済の発展段階に応じて、アジアの経済の状況が非常に不利であるというふうな点についての事実の認識、こういう点は私はだれが見てもそう見解が異なるものではなかろう。問題は、これに対していかなる方法でその状況を打破していくかという点についてはいろいろ見解はあろうかと存じますが、不足しておる資本、開発資金、そういうものを諸国の協力、結集の方法によってこうした国々に確保していく、こういう考え方については大体同じような結論が出るのではないか、こういう趣旨で申し上げておるわけであります。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 答弁になっていないですよ。これはどなたか、多少でもいいですよ。さっき正示さん、そんなことを言わなきゃいいですよ。ロストウのものをかなり読んで承知しているなんというふうなことをおっしゃるから、私はそういう質問をしてしまったわけなんですけれどもね。わからぬというなら……。これは日本に来ていますか。いま来ていないと言うけれども、来ていますよ、ロストウ日本に。
  85. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いまの回答で、ロストウが来ていないと言うけれども、去年の四月、来ているじゃないですか。どうなんですか。
  86. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 最近のことを先ほどお答えを申し上げましたわけでございますが、昨年はたしか来たはずでございます。また、将来来るという話も聞いております。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのときには会わなかったのですか、それではロストウには。
  88. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは私はお会いしておりません。私どものほうの外務省は、もちろんあらゆる機会にお会いしていろいろ何して……。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはアジア開発銀行日本が参加し、そうして国民税金で巨額の出資をするのですが、もしアメリカアジア極東における低開発国の経済の停滞、貧困の原因がどういうところにあるかというその判断が誤っている、その誤った判断に基づいてアメリカ資金援助、技術援助が必要だと言い、そういう援助をやっていったら、むしろ逆に低開発国を混乱させるばかりであって、そこの繁栄には役立たない。そういうアメリカの間違ったロストウ理論に基づく技術援助なり経済援助、そういうもののしり馬に乗ってアジア開発銀行日本が参加するということになれば、これは逆の効果になるのですよ。だから、私はその点を一番基本的な点だから聞いているのです。ロストウは一体、アジアの停滞と貧困の原因をどこにあると考えているか。  われわれはそういうことを——われわれの考えを言えば、すぐわかってくると思うのですが、一体アメリカは具体的にどういうところに援助をしておりますか。そのアジアの停滞地域における腐敗した政府にみな援助をしているでしょう、腐敗堕落した政府に。李承晩がそうじゃないですか。韓国、そうでしょう。台湾、そうじゃございませんか。みな腐敗堕落した政府援助をして、その援助がほんとうに民生安定に役立っていないところに問題があるのですよ。ここに根本の原因があるのですよ。ロストウはそういうふうに見ていないのです。ここまで言えば、ほかに——まあこれは第一ヒント。だから、アメリカは、ロストウは、一体どう考えているか。第一ヒントを与えておく。
  90. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これはお断わりするまでもなく、先ほども申し上げましたように、今度のアジア開発銀行という構想は、また木村委員も御指摘のように、これは国連の考え方から出てきておるものであるということをまず第一に申し上げなければならぬと思います。したがって、これは、私、ロストウ考え方とはもちろん違うわけであります。国連という今日の国際的な唯一の総合的な機関、そこからこれは発想されておるということを第一に申し上げたいと思います。  それから、韓国等を引き合いにお出しになっての御議論、これは過去においていろいろのことがございましたが、今日におきましては非常に、御承知のごとく、韓国も政治的にも落ちついてまいりまして、経済につきましては、先般国会において御審議をいただきましたような有償無償経済協力、こういうことで漸次韓国の経済が安定し繁栄していくということをわれわれは確信をしております。  問題は、今後のアジアに対する経済の開発、発展をどういう方式でやっていくかということでございますが、いま木村委員がくしくも御指摘になりましたようなそういう過去の経緯から考えましても、いわゆるバイラテラルに二国間でいろいろやっていくというようなことにしておきますと、そこにその間いろいろの弊害もあろうかと思われます。できるだけわれわれといたしましては、こういうマルティラテラルな形をとりましての資金の確保、経済援助協力、こういう体制を進めていくべきではないか、こんな考え方から、先般の東南アジア開発閣僚会議というようなことにも実を結んだものと考えておりますが、そういう一環といたしまして、今回のアジア開発銀行は一つの有力な手段である、こう考えておる次第でございます。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ロストウ氏に、昨年四月ですか、来られ、外務省でどなたかがお会いになっているというのですが、わかったら、そのときにロストウ氏はどういう用件で来られたのか、どういう話をしたのか。これは非常に重要だと思うのです。経済協力によって韓国の経済の開発考え方、ずいぶんこれはいろんな雑誌なんかにも出ているしけですよ。大体ロストウさんの考えははずれた。いままでの実績から見て、ロストウ理論はこれは通用しないということが相場らしいですよ。私は学者じゃありませんから、よくわかりませんが。そのロストウさんが日本に来られて、日本の低開発国に対する援助に対して、開発に対するアドバイスをされるのじゃないかと思うのです。さっき正示さんが、大体アメリカ考え方とは違いないということは、ロストウ考え方と違いないということになるのであって、そうなると、ロストウ氏が日本に来られてどういう話し合いをしたかということは、非常に重要な意味があると思うのです。このアジア開発銀行に対してわれわれが態度をきめる場合にも、一つの資料になると思いますので、後刻、詳しく……。これは外務大臣はお会いになっているのじゃないですかね。
  92. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 御指摘のように、ロストウ氏に会った者がそのときのお話内容を差しつかえない程度でお話し申し上げることにいたしたいと思いますが、外務大臣はおそらくお会いしていないのじゃないかと、これも私の推察ですから、あとで確かめまして申し上げますが、大体さっき申し上げましたことは、外務省の者がお会いいたしましても、一般的な問題についての見解を交換するというようなことでございまして、少なくともことにありまするアジア開発銀行設立の構想、こういう具体的な問題には全然触れていないということだけは、はっきり申し上げられると思います。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、あとで一般的な考え方でけっこうですよ、アジアの低開発国開発に関するアメリカの一般的考え方、基本的考え方、それはこのアジア開発銀行の性格を解く一つのかぎにもなりますから、それでもけっこうなんです。それと同時に、ロストウ氏がアジアの貧困の、停滞の原因をどういうふうに考えて、そうしてアメリカの低開発国援助政策というものを出しているのか、そこら辺の具体的にわかる人を、午後よこしていただけませんか。
  94. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 承知いたしました。
  95. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  96. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  両案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後は一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      —————・—————    午後一時五十四分開会
  97. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 午前に引き続き、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案、以上両案を一括して議題とし、質疑を続けます。  質疑の通告がありますので、これを許します。田中寿美子君。
  98. 田中寿美子

    田中寿美子君 長くなりますから、すわったままで。どうぞそちらもすわったままでお願いいたします。  午前中、木村委員から、お得意の計数的な非常にこまかいことから入りまして、そしてようやくそのアジア開発銀行及び東南アジアに対する経済援助の政治的な背景というような問題に入りかかっておるところで中断されたんですが、私はその辺から始めたいと思います。  実は、私は多少アジア・アフリカ地域を旅もしておりますし、それから政府ベースでない民間ベースの国際会議にも何回か出ておりますし、また研究にも行った経験があるんですけれども、それで東南アジア諸国の民衆の考え方というのは幾らかつかんでいるつもりでございます。それで、日本の東南アジアに対する経済援助姿勢、あるいは今度のアジア開発銀行に関するやり方その他、これは非常に問題なんじゃないかと思っております。  皆さんお読みになったか知りませんが、私はよくアメリカの雑誌を読みますので、その中に、先般四月に行なわれました東南アジア開発経済閣僚会議に関して相当いろいろ書かれている。たとえば、これはタイムですけれども、タイムの四月十五日号です。日本はフランスのシャンペンを抜いて東洋の連帯のために祝杯をあげた、そしてかつての戦時中の不愉快な記憶が消え去っておらないにもかかわらず、八カ国の閣僚が集まったというのは、日本としてはたいへん大できだった、そこで、その不愉快な記憶があるけれども、その過去の問題よりは未来に望みをかけている会議であるというようなことを、シンガポールの財務相のリム・キム・サンという人が述べたということが書かれてありまして、これは東南アジア日本が一体何を提供してくれるのかということに対する期待を述べたものである。  そこで、そのタイムのコメントなんですけれども、日本はかつての戦争当時に軍国主義的なやり方で失敗したところの大東亜共栄圏、それを今回は平和裏に経済的な外交によって果たしつつあるものであるということをタイムは書いております。それと同じようなことがいろいろのアメリカの雑誌に書かれているということは、これはアメリカ日本の今回のアジア開発銀行への出資、それから日本が東南アジア経済援助なんかに対して何を期待しているのかということをおのずから物語っているものだというような気がいたします。先ほどロストウの話が出たんですけれども、私はアジア、アフリカの新興諸国を歩いて、先ほど世界の人口の三分の一は貧困と無知と経済的、政治的不安の中にあるというようなことを外務省の方がおっしゃったんですが、いわゆる後進国と呼ばれる国に対して、特にアジア、アフリカあるいはラテンアメリカも含めて、戦後のアメリカの進出というのは、これは新しい意味の植民地主義的な進出だというふうに民衆は考えております。日本政府のレベルで話をなさるときには、それは日本から何か引き出そうと思う相手とつき合いをなさるんですから、非常にあいきょうもいいし、親日的なことを言うかもしれませんけれども、私はじかにいろいろなアジアの人々、あるいはアフリカもそうですか、と会いますと、非常に疑惑というか、不信感をいまだに持っております。  で、四月に行なわれた東南アジア閣僚会議の場合も、さっきのシンガポールの財務相のことばの中にも、過去の不愉快な記憶は消えないけれども、というようなことばがあるくらいですし、それから、会議の席上は一応まとまったとしても、会議の外で非常に白々しいものがあった、お互いに不信なものがある、そのときに佐藤総理が国民所得の一%を援助するぞということを言って、非常にみんなの不満が出ない先にそういうことばをもってみんなを喜ばしたというようなふうに書かれています。このようなこと、これはアメリカアジアあるいは東南アジアに対する政策、それはかつての植民地時代にはアジアやアフリカの地域をヨーロッパ諸国が政治的にも支配し、経済的にも支配した、すべての面で支配していたのですが、戦後はこれらの地域の諸国に主権を戻して一応政治的な独立はしているけれども、実際には経済的な権益を握っている、あるいは経済的に自立できない状況の中にありますこれらの国々に対して、軍事援助、あるいは経済援助という形で新しい支配をしつつある。これは新植民地主義だというふうに言われているわけなんです。  ところが、日本アジアにおける政策というのは、これは先ほども木村委員質問のときにも出ましたけれども、ジョンソン構想よりもっと前から、もちろんアメリカの東南アジアにおける政策と相呼応しているものだと私は思うのです。それで、いわゆる大東亜共栄圏という思想を経済的にあらためてここに打ち立てて、工業的には東南アジアアジアにおける一番進んでいる日本が、多額の出資をしたり、たくさんの経済援助をすることによって東南アジアアメリカ政策と結びついた一種の機構をつくる前提のようなものになるのではないか、こういうことを心配するのですけれども、この点に関してほんとうなら外務大臣にもお伺いしたいところなんですけれども、外務省の方及び大蔵大臣に、つまりアメリカの各紙がいろいろ言っている、そういうような問題についでどういうふうにお考えになりますか、お答えいただきたいと思います。
  99. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 私は近ごろ毎週のように、アフリカだとか、あるいは南米だとか、あるいはアジア、そういう国々の方々にお目にかかります。そういう方々が相次いでやってくるわけです。また、国際会議なんかに参りましても、非常にそれらの国々の方々から面会が多いわけですが、それはなぜかというと、日本に何がしかの経済協力を頼みに来ると、こういうことなんであります。私はそういう人々に会いまして実はさびしい気持ちがするのですが、そういう求めに応じてわが日本が期待されたような協力をすることができる立場にあれば、これはたいへん日本は世界の平和と発展に貢献できる立場に立ち得る。したがって、国際社会においても日本発言権というものがずいぶん大きくなっていくのじゃないか。そういう発言権を通じて、日本なりに平和と繁栄のために貢献し得るのだと、こういう感じがするのであります。ところが、実際わが国力を顧みてみますと、なかなかそうはできない、非常に乏しい協力しかできない、こういうことでございまして、その点がいかにも残念であり、さびしく感ぜられる、こういうことなんです。  私は、戦後の世界において一つの国がただ一人栄えると、こういうことはあり得ないと思います。これはやはり世界の戦後の想像もできなかったような科学技術の進歩発展の中においては、やはり世界は連帯的に繁栄し、連帯的に発展していく、その道をとるほかはない。そういうことを考えますときに、日本日本の置かれている立場において他の国の発展というととも考えなければ、おのずからそこに日本の繁栄、発展にも限界がある、こういうふうに考えるわけであります。乏しいながら、常にそういう世界連帯による発展、繁栄のためには協力しなければならない、こういうふうに考えるわけですが、特にアジアの問題なんかはわれわれに身近な問題でありますから、強くそういう考え方を押し出してまいりたい、こういうように考えているわけでございます。日本が中心になって昔の大東亜共栄圏を再現してみようというような、そういう狭い考えは持っておりませんです。
  100. 田中寿美子

    田中寿美子君 昔の軍国主義的な大東亜共栄圏を考えているというようなことは、それはできないことだと思いますけれども、経済的な方法によって、いまのいわゆる経済外交というやり方で大東亜共栄圏を再現しつつあるというのは、これは内閣調査室から出されております国際情勢資料の中にも、アメリカのUSニュース・アンド・ワールド・リポートというのですけれども、これの中にもそういうことが書かれておりまして、日本はもう世界第四の工業国である、また日本は世界の造船業をリードして、第三位の鉄鋼生産を占め、高度の電子工業を発展させ、国民アジアで最高の生活水準を与えている、日本の農民はきわめて生産性が高い、日本の科学者や技術者は世界で最高だとみなされている、そういうふうなことが書いてあって、これだけの力ができたのは、アメリカ日本の防衛のほうを引き受けてくれて金をつぎ込んで、日本が自分で使わなかったおかげである、いまやそれに対して日本自身が金をつぎ込んでやるべき時ではないか。そうしてアメリカ考え方からすれば、東南アジア諸国が打って一丸として中国に対する封じ込め政策をとること、これが正しいと考えているからそういうことを言うのだと思うのですが、その考え方を、いまや日本アメリカの期待にこたえんとしているというふうにコメントしているのですけれども、事実はそういうふうに動いてきていると思うのです。  それで、大蔵大臣の言われたような気持ちは、それは表面のことだと思うのですね。ここにも日本は天然資源が少ないという問題があるから、原材料を海外から輸入しなければならない、こういう原材料の輸入代金を支払うためには大規模な輸出をしなければならない、だから結局日本の経済にとってもアジア経済協力という名前で進出していくことは非常に大事なことだ、その一点と、それからもう一つは、アジアにおける安全保障という考え方から期待をしているわけであります。その辺は大蔵大臣だけでないと思いますので、外務省の方にも、さっき木村委員が、そもそも東南アジアへ向けての日本経済協力、経済援助というのは、考え方は、基本的にアメリカの立場と相呼応しているものだということがあったと思うのです。表面的なお話だけだったら非常にきれいに済んでしまうのですけれども、いかがでしょうか、その点は。
  101. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 先ほど大蔵大臣がお述べになったことと全く同一に考えておりますが、この前、東南アジアの閣僚会議を日本がイニシアチブをとりましてやりました趣旨は、東南アジアにおきましては、いろいろ政治的にも対立がありましたり、それからものごとの考え方にも相違がございまして、いろいろ混乱があるわけでございますが、私どもとしましては、結局、経済が安定していない、またその裏には中産階級がいない、いろいろな経済的な立場から見まして成熟したものの考え方ができないような社会的な環境にある。それから、経済的にもそういうことが実行されるような、達成されるような基盤がまだつくられていない。もちろん、国によりまして非常に事情が違います。相当程度の高い国もあれば、非常に原始的な国もございます。一がいに同じようなことは言えないのでございますけれども、総じてそういうことが言えるのではないか。結局、いろいろの角度から見ましても、経済が安定し、また発展していくような環境をお互いに協力してつくっていくべきである。また、その中でも最も必要なことは、各国がみずからそういうような機運を醸成することでございまして、そういうものを含めまして、日本は、アジアの国として唯一の先進国としまして、そういうものを醸成する一つの手助けをする。これはまた、広い意味からいいまして、日本としても責任があるのじゃないか。こういう意味でこの閣僚会議が開催されたと私は了解しておりまして、参加の各国もその趣旨に非常に賛成しておりまして、各国もみずからこの経済の発展のための努力を非常に強調しておりました。そしてまた、単に経済の発展が工業化の促進によるものだけでなくて、安定したバランスのとれた発展をするためには農業の発展が必要である、というようなことが強調されたような次第でございまして、長い目からの地域の発展ということを考えて経済協力をやっておるわけでございまして、そこに勢力圏をつくるとかあるいは支配をするとか、そういう考えは毛頭ない次第でございます。
  102. 田中寿美子

    田中寿美子君 国民所得の一%を東南アジア開発に充てるということを発表したのは、先ほどの一九六三年のジュネーブでの国際貿易会議ですか、そのときですね、最初言われましたのは。今度の東南アジア閣僚会議のときにも、またあらためて佐藤総理が一%の援助をするということを言われたわけなんですけれども、いま日本国民所得は、去年はだいぶ上がり方が低下しましたね。しかし、それまで一%を援助に充てるというようになった動機はどういうことですか。現在までは〇・何%でしょう。昨年は〇・六三%ですか。それだけする余裕があるという判断に立たれたのでしょうか。
  103. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) これは、低開発国援助をしようじゃないかという国際的機運は非常に高いわけです。ことに私は驚いたのですが、昨年IMFの総会に行ってみると、IMFというけれども、低開発国援助ムード一ぱいというくらいであります。そういう低開発国援助ムードを受けまして、DACにおきまして、進んだ国においては、工業国においては、国民所得の一%は援助すべきである、こういう決議が行なわれたわけであります。日本はそれに対しまして、でき得る限り協力するということを言明をいたしているわけであります。その言明をいたしたところでございまするから、極力これに沿っていかなければならない。でありますが、さて国民所得の一%ということになりますと、これはなかなか大きな額でありまして、そう簡単に実現するわけにまいらないのであります。  それで、いま政府方針はどうかと、こういうことになると、でき得る限り早く一%に達するように努力をしよう、こういうことを言い得るにとどまるわけであります。四月のアジア開発閣僚会議におきましても、私から、日本はなるべくすみやかに一%の援助をするようにいたしたいと、こう考えておるということを発言をいたし、特にそのうちアジアに対しては重点を置くつもりであるということを申し上げたわけであります。昨年四十年度におきましては、一%という目標に対しまして〇・六三%、それからその前の三十九年度が〇・四一%ということになっております。四十一年度は、四十年度の〇・六三%の水準より幾らか上がるのではないかと思いますが、これは実施してみなければわからぬわけであります。  いずれにいたしましても、外国援助するということは、われわれ国内の力をそれだけ海外にさくということであり、国民所得の可処分額を海外に振り向けることでございます。いろいろな形はありますが、回り回って財政にはね返ってくる問題である。わが国の財政の状態は、先ほども申し上げたのですが、四十二年、四十三年、この二年が特に苦しい状態であります。そういうことを考えまするときに、これがこの一、二年で急激にこの率が改善されるとは考えられませんが、財政の状況ともにらみ合わせまして、なるべく早くそういうような国際的な期待にこたえたい、こういうふうに考えております。
  104. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  105. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  106. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、日本が後進国を援助をしてはいけないというのじゃないわけです。というよりは、むしろ大東亜戦争中に非常に迷惑をかけた東南アジア諸国に対しては義務があると思います。ただ、そのしかたが問題だと思うのですね。いま低開発国から要請があるということは、これは民間レベルの会合だって非常にそれは弱い要請が、私なんかが出席した会合でよく聞いております。しかし、それに対して応じる国の側の姿勢が問題だと思うのです。その辺をお尋ねしたのに対してお答えいただいていないのですけれどもね。  これはつまり、低開発国からの要請と、それから片っ方にアメリカのプッシュと要望があり、それから日本が戦後の経済をだんだん復活してきた、そして復興してきた、そして賠償なんかがある程度片づき始めたというところで、ぜひやれという押しがあったのだというふうに想像しますけれども、そしてアメリカの雑誌のほうにはそういうふうに書いてあるのですけれども、いかがでしょう。
  107. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 先ほど大臣からお話がありましたように、経済協力いたします場合には、日本の財政の能力の問題が直ちに関係してくるわけでございまして、数年前まではまだ系統的な検討をするまでになかなかいかなかったわけでございますが、最近におきましては、いろいろの国際的な環境も変わりまして、日本といたしましても御指摘のように経済協力をシステマティックに考える必要がございまして、全体の財政の資金のワクの中でどれくらいを考えていくか、またその使途にあたりましてはどういう点に重点をおいたらいいか、そして今後ほんとうに低開発国が必要としまする要求を日本から見まして最も有効に協力し得るような体制を考えるという方向に鋭意検討しておるわけでございまして、そういう意味では経済協力自体がまだ比較的新しい問題でございまして、世界銀行におきましても、あるいはOECD等の援助部門におきましても、いろいろ検討いたしております。今後ますますそういう意味で後進国の実際の必要、それから後進国といいましても、低開発国といいましても、国によっていろいろ段階の実情の相違がございます。そういうものに合わせまして、先進諸国がどういうぐあいに応援したらほんとうに有効な適切な協力ができるか、また、受け入れをする国におきましても、どういうような努力をしてもらわなければならないか、こういうものがいわばもう少し体系的に検討されつつある状況でございまして、もちろん日本としましても、日本の立場から、また日本の能力の角度から、そういう点をあわせまして実行を行なうということにしたいと思っております。
  108. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまおっしゃったように、低開発国がどうしたら経済的に立ち上がっていけるかということを主にして考えてする経済援助というのは、これはたいへん理想的に聞こえるわけなんですけれども、これは私、アフリカやなんかでことによく見たんですが、アジアでもそうですけれども、旧植民地支配者が引き揚げていったあと、やっぱり経済援助や軍事援助でひもをつけているわけですね。ですから、結局自力で立ち上がれるような援助になっていない場合が非常に多いのです。私は、アフリカ開発銀行とか米州開発銀行の実績、国別にどんなことを援助したのかという資料をいただきたいと思ってお願いしたんですけれども、大蔵省からも外務省からもそのたてまえの規則みたいなものだけいただきまして、資料が入りませんでしたけれども、もしおわかりになっていたら、いまおっしゃったように、その国が立ち上がれるような援助を過去にやってきたのかどうか、それを話していただきたいと思いますが。
  109. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  110. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  111. 西山昭

    政府委員(西山昭君) でき得る限り資料をそろえまして、御提出いたします。
  112. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 西山局長説明を補足さしていただきますが、アフリカ開発銀行に関しましては、まだ業務を開始しておりません。この七月一日から業務を開始する予定になっております。以上補足の説明でございます。
  113. 田中寿美子

    田中寿美子君 いや、開発銀行でなくて、過去にアジア及びアフリカに対して、経済援助あるいは民間投資の形ででも、どういう方向に主として出ていったかということはおわかりになるだろうと思うのですけれども、どなたか聞いていませんか。
  114. 西山昭

    政府委員(西山昭君) この経済協力で、年間に幾らぐらい経済協力が行なわれたかという内訳を、統計の便宜上、OECD等で採用しておりまする分類は、国が贈与その他で出しますものと、それから政府あるいは政府べーシスで直接借款を行ないますものと、それから国際機関、世銀あるいは最近の例でいいますとアジア開発銀行等に出資をしたり分担金を払ったりするような金、それから民間で直接投資を行ないます資金だとか、それからまた輸出信用の金額、こういうものを合計しまして経済協力の総和を出しておるわけでございまして、南米におきましても、南米銀行等は、いろいろのインフラストラクチャーの改善あるいは振興等に直接借款をやりましたり、またサプライヤーズ・クレジットをやりましたり、その辺は多種ございます。日本につきましても、世界各国関係を申し上げますと、たとえば日韓協力のように、政府間で協定をいたしまして、無償援助あるいは有償協力をやります場合もありますれば、インド、パキスタンのように、世銀等のコンソーシアムを通じまして直接借款をやる面もございます。それから、市場によりまして、中南米あるいは中近東におきましては、主として延べ払いの輸出信用が主体をなしております。東南アジアにおきましては、そういう意味で技術協力が相当の部門を占めております。また、賠償も経済協力の一つと数えられておりますが、そういうものが主体になっております。最近の傾向としましては、だんだん政府がイニシアティブをとります直接借款が必要とされる傾向が生じておりまして、今後はその方面が増大するものと考えております。
  115. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまおっしゃったような資料はいただいたのです。いままでに低開発国に対する経済協力の形態別実績表というのをいただき、金額もそれは出ていますし、いまおっしゃったような種類は出ているのですけれども、私がお尋ねしたいのは、これはアメリカやヨーロッパの旧植民国、こういう国が新しく独立した国に経済援助をしているその実態が非常にひもつきが多いわけです。そうしてことに新興国というのは、みんな第一次産業の多い国でございます。それを工業化して、自分で自分の国の経済発展をさせていくという方向でなしに、先進諸国は自分の国の製品を売りつけるという形になっていきやすいのですね。ですから、その点でせっかくの経済援助というものがそれぞれの国の経済自立に寄与していないということが、しばしば——全然しないわけじゃありませんけれどもね、いまおっしゃったような方向だったら、本来ならば売りつけるものは、たとえば日本でいま電気製品が余っているとか、繊維製品が余っているとかいうものを売りつけるというのではなしに、それぞれの国が工業的に発展できるような基礎的な産業のほうに金を貸すとかなんとか、そういうつまり実際の経済援助の実態をお聞かせ願いたかったわけです。
  116. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 経済の関係は、私から申し上げるまでもございませんで、非常にいろいろ複雑でございまして、ただダムができたからといってすぐ農業が振興されるわけのものではございませんし、いろいろ付帯の問題もございます。日本の能力の特徴から申しますと、資金面の制約もございますし、また工業の形態の問題もございまして、どういうような協力のしかたが一番適切かという日本から見た問題もあろうかと思いますが、それにしましても、相手国がそういうものを受け入れた場合に、それがその国の経済の発展に役に立つということがやはり必要であるわけであります。  たとえば、詳細な資料はなかなかわからないんでございますが、フランスは旧フランス植民地に対しましては非常に技術協力といいますか、そういう面が大きい比率を占めておりまして、これは御承知のように、独立はしましたけれどもなかなか行政をやる人的な要素が欠けておる、そういう関係で学生をたくさん引き受けて訓練をするとか、あるいは従来の経験があるフランス人がそのまま残っておるとか、あるいは新たにフランスから人を入れていろいろの近代的な必要な施設にそういう人を配置いたしまして国家の運営に寄与させるとか、そういう面が相当大きい特徴をなしておると理解しております。イギリスにつきましては、いろいろのたくさんの植民地がございましたけれども、これは独立しました国の実情に応じましてやり方も相当違うわけでございまして、たとえばインド等に対しましては、これはアフリカの小さな独立国とはまた違った取り扱いをしておるというように理解しております。
  117. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、日本のとるべき態度、あるいはとってきたいままでの実績をお伺いしていたわけなんですけれども、たとえばアフリカですね、これは例として申し上げるんですけれども、東アフリカから南アフリカのほうに向かって私は旅したことありますけれども、それから北アフリカにも参りましたが、アフリカ全体にわたって日本の商社が繊維を持って歩いて売り込んでおります。それで、日本人というものの認識はホンダ、サンヨー、というようなことばを知っているぐらいで、それと布地で知っているわけです。つまり消費物資を持ち込んでいるわけです。ですから、ほんとうに自分たちの国を立ち上がらせようと思う人からは、非常に批判されております。  ことに一番ひどい例を申し上げますと、これは東アフリカの諸国ですけれども、アフリカの黒人に日本のナイロンのかつらを売りつけておりますね。ちょうどケニアが独立する直前でしたけれども、新聞紙上にジョモ・ケニヤッタ首相が、黒人の女性が髪の毛が短くて縮れているというのは、これは天賦のものである、だからそんなものを無理やりに、日本のスカーフを——スカーフを非常に売りつけておりますが、ですから、そういうものを買って使うということは浪費でもあるし、また非衛生でもあると。それから、ましてかつらなんというものは黒人にとっては非常に高いものです。フランスの製品が三万円のとき日本は一万円で入り込む、こういうやり方。それから、もうよく御承知だと思いますけれども、南アフリカとの貿易は国連であのように制裁決議までされているときでも、日本は貿易をどんどん伸ばしている。日中貿易よりもっと実績が高かったわけです。こういうやり方を東南アジアにも持ち込んでいくというようなことがあったら、私はまた事実相当あると思いますけれども、いまおっしゃったようなこととはまるで違った意味になってしまうと思う。  そういう点で、今度の東南アジア閣僚会議、それからソウルで開かれた外相会議、さらに開発銀行が発足する今後のあり方についてよほど気をつけていただかないと、その国民の自主性を傷つけるだけでなしに、これはいつまでたっても先進国の従属物にしてしまうということになると思うのです。その辺は、開発銀行に二億ドルも投資するという以上は、何かプランがおありになるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。何にも、大体どういうふうな方向に投資されるのだというようなプランはないでしょうか。
  118. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 今度のアジア開発銀行が発足いたしましてどういうプランをやるかということは、もちろんこれから運営を総務会、理事会等の機関で議論を積み重ねましてでき上がるわけでございますが、たとえば、参考になりますものといたしましては、世銀が発足いたしましてどういう事業に投資しておるかというような事例を見ましたりいたしますと、結局、社会開発的な事業に投資している場合が非常に多い。世銀の例で申しますと、電力、運輸等がかなりの部分を占めておりまして、工業化という部面の投資はそれに相次いでいるということになっております。アジア開発銀行の場合は、そういったもののほかに、農業関係とか、より基盤的な社会開発的なものに投資されることが多いというふうに思われますが、農業、鉱工業、水利、かんがいといったものが当然予想されるわけでございますが、それの具体的な計画ないし予想数字というものはございません。
  119. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあその世界銀行とか開発銀行などというものは、当然そういう方向に使うべきものだと思いますね。それに付随して民間ベースで援助したり、また出ていくものに非常に心配なものがよけいあると思う。それから、先ほどからの御説明で、東南アジア諸国は非常に経済的に貧困だ、そうしてそれを助けることはアジアの平和のために、経済的な安定のためになるという御説明ですし、またそれが表面出ていますけれども、で、いまベトナム戦争やっておりますですね。それはアメリカがやっておりまして日本は大いに協力しているわけなんですけれども、そういう状態の中で経済援助をして、はたしてそれはアジアの平和のためになるというふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  120. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 私が午前中申し上げたことに関連しての御質問でございますが、先ほど来もお話のございますように、経済援助経済協力、それによって経済の開発発展、繁栄を促進していくということについては田中議員も御異論はないのでありまして、問題はその方法にある、そういうふうなお話も伺っております。われわれはやはり経済の繁栄、民生の安定、そういうことがあってほんとうに平和がさらに一そう確実になっていくのだと、こういうふうに考えております。ただ、いまお話の中にありましたように、アメリカに追随してとか、アメリカのやり方に右へならえして日本がやるということがどうであろうか、こういうふうな御趣旨がちょっとあるんでございますが、これは私どもはあくまでも日本の自主的な方針に従ってやっておるんでありまして、ただ、しかしながら、われらの方針に対してそれに即応してアメリカがさらに援助するというふうな場合に、あえてこれを拒むものではないという趣旨で申し上げておるわけでございまして、決してこちら側が追随しておる、そういう考え方ではないのであります。
  121. 田中寿美子

    田中寿美子君 私はどうもその反対のように思いますがね。さっきもロストウが来た来ないという話が出ましたけれども、ことしの二月に金鍾泌氏が来たのじゃないですか。そしてアメリカのバンディ極東担当国務次官補と東京で話し合った。これはソウルの会議に関してだと思うし、またあるいは東南アジア閣僚会議にも関連があるのだと思うんですけれども、すべて、ことに今度のアジア開発銀行に、アメリカは域外国であるけれども二億ドル出す、日本も二億ドル出す、大株主なわけですが、この二つが話し合ってやっているとしか思えないのですね。そして民生を安定するとか、生活を安定させるとか、確かに私は平和のためになると思うんですけれども、しかし、現在ベトナム戦争をやっているときに、東南アジア諸国に金を出して、そこで何がつくられるか。その先々まではっきりわからないわけですけれども、それはやはりアメリカが行なっている戦争目的にも使われていくということ、平和どころじゃないと思うんですね。その辺の、まず金鍾泌が来たかどうかということからお聞かせ願います。私はこれは新聞記者関係の人から聞いたのですが、事実がありますかどうか。
  122. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 金鍾泌が来たかどうかということは、私存じませんが、別にアジア開発銀行に関連して、全然そういう事実はございません。また、午前中木村委員にお答え申し上げましたように、ロストウ氏もそういうものには全然関係がございません。われわれはどこまでも、先ほど来申し上げますように、自主的な考え方からアジア開発銀行の設立を推進していく、こういう考えでございまして、他国の特定の人たちのインフルエンスを受けているということは絶対にございません。
  123. 田中寿美子

    田中寿美子君 アメリカのいろいろな雑誌や新聞がそういうふうに報じておりまして、かえって向こうのほうで真相がわかるような気がするのです。いつも私はアメリカの雑誌を愛読している。それで、その中に先ほどのUSニュース社のUSニュース・アンド・ワールド・リポート、その中に、日本が第三次防衛計画に踏み出したのも、やはりアメリカでいま訓練しているところのミサイル要員、これが現在ナイキアジャックスの訓練を受けている。で、やがて将来はナイキハーキュリーズの装備に備えるものである。こういうふうに日本が自分で防衛する姿勢変化しつつあるのも、これは日本の経済状態がだんだんよくなって、いまやアメリカに肩がわりして、自分で自分を守ると同時にアジアを守るべきものであると考えつつあるのであろうというふうに言っておりますけれども、この辺は、これは外務省のほうですか、それに対してはどうですか。そういうものはお読みになっていらっしゃいませんですか。
  124. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) アメリカの雑誌等がいろいろ書いておる点について御指摘でございますが、これはまあジャーナリズムが興味本位に書くことは、いまどこの国でも同じでございまして、私どものアジア開発銀行設立の方針は先ほどから申し上げたとおりであり、また、この銀行の設立によりまして経済開発面の融資をすることが、先ほど何かベトナム戦争に関係があるがごとくお話しございましたが、これはもう全然そういう関係はございません。もっぱら純粋に経済の開発、民生の安定、そしてそれがアジア全体の繁栄、こういうことになるわけでございます。
  125. 田中寿美子

    田中寿美子君 私はベトナム戦争のために日本がやるなんていうふうに申したのでなくて、アメリカの期待にこたえて、そうしてそういう東南アジアへの経済援助をする結果は、現在こうやってベトナム戦争をしているときにはベトナム戦争への協力に変わっていくだろう、いろいろの経済援助によって行なわれるところの経済活動がそうなっていくだろうということを申し上げたのですが、それは外務省としては、もちろんたてまえとしてそんなことを言うことはできないと思いますが、いずれあした戸田さんがベトナム問題については御質問なさるはずでありますから、この辺で……。  大蔵大臣がお見えになりましたけれども、東京で開かれた閣僚会議のときに、これは新聞紙上の報道で、新聞紙が興味本位に書くのだとおっしゃるとちょっと困りますけれども、外務大臣、それから大蔵大臣、農林大臣の間に、国民所得の一%援助ということに関しては意見の相違があったというふうに報道されておりましたけれども、いかがですか。
  126. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 全然ございません。
  127. 田中寿美子

    田中寿美子君 火のないところに煙は立たないといいますが、これも興味本位ですか。たとえば後進地域の農業を開発すれば日本の農作物に影響する、それで農林大臣は反対である、あるいは、外務省は一%を主張したけれども、この不況のおりから、経済的に困難なので、大蔵大臣は首をかしげたと、たいへん見たような報道がされておりますけれども、そういうことは全然ないのですか。
  128. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) これはもうすべての問題でございますが、政府案をきめるまでの間には、各省ともそれぞれの意見を持っております。そういう過程の意見とすれば、幾つかの意見があったと思いますが、政府の外に対しての一致の見解、そういうものにつきましては、まぎれはございません。
  129. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、国民所得の一%の経済援助の見通し、先ほどできるだけ早い期間にとおっしゃいましたけれども、大体何年度ぐらいまでの見通しでいらっしゃいますか。
  130. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) いま何年ということは申し上げられないのです。つまり、いま経済が非常に流動的でございます。そういうようなことで、経済の影響を受けて財政も運営されるわけでございますから、その財政の見通しというものが非常に困難です。そういうようなことから、まあ数年ということばで言えば、言うことができると思いますが、何年度というようなことを言う必要もなく、またそれを言うことはまことにむずかしい状況である、こういうふうに考えております。
  131. 田中寿美子

    田中寿美子君 その一%の経済援助という場合は、賠償もみんな含めていられるわけですね。
  132. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) さようでございます。
  133. 田中寿美子

    田中寿美子君 たいへんあいまいな感じがするのですけれども、どこまで含まるわけですか。民間投資も全部……。
  134. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 中身の事項を申し上げましょうか。
  135. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 中身といたしましては、二国間の贈与、これに賠償、技術協力というものが含まれます。それから、二国間の長期信用供与、これは五年超の延べ払い等が含まれるわけでございます。それが第二。第三といたしましては、民間の投資の関係が入ります。第四番目といたしましては、国際機関への出資、拠出金、こういったものが入るわけでございます。
  136. 田中寿美子

    田中寿美子君 最近の政府の発表ですけれども、国民所得一人当たり二十四万五千五百五十六円ですか、これは日本国民総所得あるいは国民総生産が非常に高いのに比べて、相変わらず大へん低いわけですね。二十一位ですか。そういう状況の中でこの一人当たりの所得をもっと高めながら経済援助一%ということは可能でございますか。
  137. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 可能でございます。
  138. 田中寿美子

    田中寿美子君 大蔵大臣が不可能だと言ったらたいへんだろうと思いますので……。  農業開発会議のことが決議されましたですね、この前の閣僚会議で。これは技術の開発が主でございますか、それとも肥料を売り込むとかそういうようなことも……。
  139. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) これは会議を開こうということでありまして、まだその会議において討議されることは、農業問題、その農業問題をどうしていくかということまではまだ予定はしておらないのでございます。
  140. 田中寿美子

    田中寿美子君 米州開発銀行の内容の中に——これも最近の新聞紙上で、六月二十三日、きのうの日経紙上で読んだのですが、米州開発銀行総裁が米州共同市場の構想を持っている、そしてその中でも労働力やサービス、資本の自由移動のための取りきめを結ぶというようなことを言っておりますがね。アジア開発銀行にもそういうふうな構想がございますのですか。
  141. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まだそういう構想は私どもは承っておりませんですが、いずれにいたしましても、まだ銀行ができないのですから、これからできるのでありまして、総裁、副総裁、理事等がきまりまして、その場でこの銀行の具体的な業務、運営方法いかんということをきめるわけでございまするから、おそらくただいま米州開発銀行について御指摘のような問題は起こってこないのじゃないかというような感じがいたします。
  142. 田中寿美子

    田中寿美子君 これは日本韓国との関係で、韓国のほうからの技術研修生を三、四千人ばかり日本に受け入れてほしいという申し入れがありましたですね。これに対して、これは前の予算委員会のときに私が質問したときに、労働大臣が、そういう大量に韓国の労働力を導入するというようなことは一切しないという方針であるというふうに言われましたのですけれども、三、四千人もの技術研修生を受け入れるということになるのでございますか。その辺は……。
  143. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 新聞紙上で拝見いたしましたけれども、政府といたしましては、何ら韓国政府からそういう申し入れを受けておりません。
  144. 田中寿美子

    田中寿美子君 これは韓国中小企業協同組合中央会から日本の全国中小企業団体中央会に要請してきたということでございますね。ですから、政府がタッチしていらっしゃらなくても、民間ベースでそういうことが起こり得る。その場合に、日本では建設労働者が非常に足りない、若手の労働者が足りないので、飛びついていく可能性もあるのじゃないかと思いますね。で、先ほどの米州開発銀行の場合にも労働力やサービス、資本の自由な移動というようなことが問題に出ているのですけれども、韓国との場合は、これは日韓経済協力の形でそうなるのか、そういう話があったということは、これは政府に言ってこなくても、御存じではないのですか。
  145. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 何ら聞いておりませんし、具体的に話が進んでおるということも聞いておりません。
  146. 田中寿美子

    田中寿美子君 非常にふしぎな気がします。こういう問題はどこでやるのですか。中小企業ですから、大蔵省ですか、通産省ですか。
  147. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  148. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それじゃ速記を起こして。
  149. 田中寿美子

    田中寿美子君 朝日、毎日、日経、全部報道しているのですけれども、これは全然皆さんお読みにもならなかったわけでしょうか。もし読まれたら、自分らに関係のある問題ですから、調べて掌握なさるはずだと思うのですけれどもね。
  150. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは入国の問題になりますれば窓口は法務省でやっておりますし、われわれのほうにももちろん連絡があるのでございますが、新聞報道になったような事実は役所のところまで何にも来ていない、そういう事実をはっきり申し上げたわけでございます。
  151. 田中寿美子

    田中寿美子君 どうも役所はしっぽをつかまれないほうがいいから、何も言わないほうがいいということは私も知っていますけれども……。
  152. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 議事進行について。これはしかし、はいそうですかといって済まされる問題じゃない。たとえば農業関係なら、農林省なら農林省は知っておるだろうと思う。中小関係なら、中小で通産省が知っておらなくちゃならぬと思うのですよ。これまで知らぬといったら、これはおかしなことになっちゃう。ですから、もしこの際できたら、農林の担当官に来てもらうように。それから、どこまでか知らぬけれども、たとえば中小企業のそういう労働問題なら労働省か、あるいは農林省なら知っておらなくちゃならぬけれども、そういうのに来てもらう以外にない。
  153. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  154. 徳永正利

    委員長徳永正利君) では、速記を起こして。  次の質問をお願いします。田中君。
  155. 田中寿美子

    田中寿美子君 これは大蔵大臣のことばですね。アジア開発銀行と東南アジア閣僚会議ですね、この二つの機関、これは衆議院委員会でのお答えですから、これは御承知のはずだと思う。この二つの機関は、これを通じましてアジアの連帯が強化され、また同時にその余慶がわが国にも反映してくるということにつきまして、同一の効果を持つものだと考えますとおっしゃっておりますけれども、その余慶というものはどういうことでございますか。
  156. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) アジアの諸国が繁栄すれば、したがって日本のこれらの国々に対する輸出も伸長する、そういうようなことを通じまして、わが国にもそのはね返りが来る、こういうことを申し上げたつもりでございます。
  157. 田中寿美子

    田中寿美子君 アジア諸国は第一次産品がおもな輸出品でございますね。日本からの輸出がいつも過剰になっているわけです。その辺はうまくいくというふうに考えていらっしゃるわけですか。
  158. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) だんだんアジア諸国が繁栄するに従って、それらの問題が解決されていくのではないか。たとえば、アジア諸国にはずいぶん天然資源なんかもあります。その資源が日本に供給される、日本はそれに対して消費財を出すとか建設資材を出すとかという道が開かれていく、こういう過程を通じまして、貿易はバランスするような状態に近づいていく、こういうふうに言っておるわけであります。
  159. 田中寿美子

    田中寿美子君 そういう考え方が、これはアフリカでもアジアでも、ラテンアメリカでもそうなんですが、先進諸国がいつまでもいわゆる後進諸国を第一次産品の生産国として押えておくというようなことになりはしないか。その国がみんな工業化されていくということに、そういうふうになっていかなければならないと思うのですが、それは自分で自主独立の経済を持てるようになっていかなければならないと思いますがね。そういうことの見通しはどうでしょうか。
  160. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) たとえば繊維ですね、あるいはその他軽工業ですね、こういうものはだんだん低開発国でも開発されていく、こういうふうに考えるわけです。わが日本とすれば、やはりそういうものがだんだん低開発国に置きかえられていくという傾向ですね、これを十分考慮しておかなければならないと、こういうふうに思います。また、そういう傾向も現に出てきておりますが、わが国の産業体制というものが重化学工業中心になりつつある。また、輸出構造を見てみましても、軽いものよりは重いものという傾向になりつつあります。そういう傾向なり動きを注目しながら、わが国の産業政策、また貿易政策、こういうもののかじをとっていく、こういうふうに御了承願います。
  161. 田中寿美子

    田中寿美子君 次に、インドネシアに関してなんですけれども、いわゆるインドネシアに対する経済援助のことですが、賠償が現在どの辺まで進んでおりますか。
  162. 西山昭

    政府委員(西山昭君) インドネシアの賠償は現在履行率が七一・七%でございます。総額二億二千三百万ドルのうち、履行済みが一億六千万ドルと相なっております。
  163. 田中寿美子

    田中寿美子君 インドネシアに対するこれまでの経済援助内容について資料をいただいたのですが、私がいままで何度も申しましたように、東南アジアとか、それからアフリカとか、諸後進国に対する援助の使い方ですね、やり方ですよ、賠償を含めて、そのほか民間の投資があるわけですが、このいただいた資料で拝見しますと、非常にふしぎに感じることがたくさんあるのです。たとえばホテルの建設ですね、これに十六億も出しておりますね。それから、使節団経費というのが八億六千六百万。三年間に八億も使節団接待費を使っておるわけですが、つまり私が伺いたいのは、その国の経済が自立できるように、その国の経済を安定させるのだ、平和のためだとおっしゃっているのですけれども、その使い方が非常におかしい。援助したものがみんな腐敗したものになってしまう。これは向こうの側だけではない、日本の側にも私はあると思うのです。  それで、まずホテルですね、十六億。それから、このウイスマ・ヌサンタラ・ビルというのは、これは何の建築ですか。
  164. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 賠償は、経済協力の統計上、無償援助の中に入れております。しかし、これは御承知のように、インドネシアに対しまする戦争に際しまして生じたいろいろの損害のために賠償をする、こういう性質のものでございます。そういう意味で、本来日本が完全に自発的な気持ちで提供いたします経済協力とは性質が違う面があるわけでございます。そういう意味におきまして、留学生、研修生等も、先方との話し合いの結果、この資金を一部使うということに協定上了解ができておりまして、ただいまの三十一億一千二百万円と申しますのは、賠償が実施されました当初から今日までの総額でございます。それから、使節団の経費の八億六千六百万円もそのように御了解願いたいと思います。それから、ホテルでございますが、これは賠償担保で実施いたしたわけでございまして、賠償そのものではございません。
  165. 田中寿美子

    田中寿美子君 私のいただいた資料は、これは賠償だけではないのですね。いまいろいろ賠償担保のものもあるし、それから民間の経済援助も含めてあるものだと思うのですけれども、使節団経費というものは認証を要しない、そうして八億六千六百万も使っているわけですがね。ことにスカルノ大統領がたびたび日本に見える接待費も入っているだろうと思うのですが、どうなんですか。
  166. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 賠償の実施につきましては、大使館と離れまして、賠償使節団というものが存在いたしております。賠償の実施に関しまする日本政府のいろいろの事務の連絡をやっておるわけでございまして、そういう意味で毎年年間の賠償の支出を打ち合わせいたしますときに、使節団の経費を幾ばくというぐあいに両国間で話をつけまして、そうして計上して賠償の中から落としていく、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  167. 田中寿美子

    田中寿美子君 この間アダム・マリクいまの外相が見えたとき、緊急援助を要請して、日本緊急援助を三千万ドルですかきめましたね。あのときに、インドネシアの経済状態が非常に悪い状況であるのにもかかわらず、各商社が相争って出迎えに出かけて、そうしてたいへん接待しているようなんですがね。どうもインドネシアへの賠償、それから経済援助には、たいへんな何かうまみがあるらしいのですけれども、そういうことは外務省としては言うことはおできにならないと思いますが、もうこれはたいへん世間に伝わっていることなんです。  で、ホテルは全部賠償なんですか、これ。それから、サリーナ百貨店というのは、これも賠償ですか。非常に金額が大きいのですね。もう一つ非常におかしいと思うのは、雑製品というのがありましてね、これが一億二百五十万円ほど出している。ところが、インドネシアの人口は一億くらいですかね、この雑製品の内容は書籍、コーラン及び聖書と書いてあるのですよ。回教徒ですからコーランを買うと思うけれども、一億の人口に一億何千万円、一人当たり約一万円くらいコーランやバイブルを買わしていることになるわけですね。非常にインドネシア援助というものは不明朗なものがあると思うのです。これどういうふうに説明していただけますか。
  168. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  169. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  170. 西山昭

    政府委員(西山昭君) コーラン及びバイブルにつきましては、インドネシア政府国民の民心対策上国民にこれを無料で提供いたします。そのために日本から賠償の資金の中から提供を要求いたしまして、総額、コーラン及びバイブルを合わせまして七億三千八百万円でございます。
  171. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、なお私がいただいた資料より金額が多いのですが、コーランなんというのは一年で破れてしまうようなものじゃないと思うけれども、子供から年寄りから、読めない者まで含めて一億の人口に七億円もやったら、一人幾らですか。しかし、どうもその間で何かこうリベートみたいなものがあるのじゃないか、これはインドネシア賠償その他に関して非常にうわさが飛んでおりますが。
  172. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 一冊の提供の単価が百四十八円でございます。
  173. 田中寿美子

    田中寿美子君 それを七億円も買ったわけですね。ちょっとこれはもう想像外にたくさん買ったことになりますが、まあこれは本の数を調べるわけにもいきませんので、どこかで消えたかもしれないと思います。  そういう不明朗なことが低開発国への援助には非常に伴います。ですから、ほんとうに先ほどからおっしゃっているような大義名文ですね、その国の経済を助けてやって、そうして平和を守ってやるのだというようなことにちっともなっていないということを私は問題にしたいと思うわけです。
  174. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ただいまのコーラン、バイブルにつきまして、たいへん不明朗という御指摘がございましたので、ちょっと詳しく申し上げますと、単価百四十八円で五百万人分と、こういうことでございまして、先ほど来申し上げますようなインドネシア政府の特別の国民に対する何といいますか、信仰、国民に対して非常に重点を置いた政策でございます。したがって、これは不明朗でないということだけははっきり申し上げます。
  175. 田中寿美子

    田中寿美子君 私はコーラン、バイブルのことが不明朗だと言っているのじゃなくて、全体にインドネシア賠償そのほか、援助に関して不明朗なことがずっと何年もあったということを申し上げた。そのようなことが今後国民所得の一%を使って行なわれるという危険性がありますので、十分注意していただかなければならないと思います。  インドネシアへの援助の中でPS方式というのがございますね。これはどういうものなんですか。
  176. 西山昭

    政府委員(西山昭君) PSと申しますのは、プロダクション・シェアリングを略した呼び方でございまして、インドネシア政府はこの数年間外貨が非常に不足をいたしておりまして、なるべく外貨を使わないで資源を開発して、かつ輸出にも貢献したい、こういう思想からいろいろ検討いたしまして、天然資源を開発いたしますが、それに必要な所要の資材、機械等を借り入れまして、その代金の返済は開発の結果の産品で支払うという構想がいわゆるプロダクション・シェアリングと了解いたしております。
  177. 田中寿美子

    田中寿美子君 そのPS方式は、こちら側から出たものですか、インドネシア側から出たものですか。
  178. 西山昭

    政府委員(西山昭君) インドネシア政府の検討の結果、インドネシア政府が提出したものでございます。
  179. 田中寿美子

    田中寿美子君 主として何にこれは使われておりますか、石油ですか。
  180. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 日本といたしましては、石油、木材、それからすず等に適用しておりますが、ヨーロッパの諸国につきましては農産品等に適用している例もあるように了解いたしております。
  181. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは政府の貸し付けのわけですね。そうしてそれは現物で支払いをどの程度支払うというか、返済を受けたものですか。
  182. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 石油につきましては、現に支払いが行なわれつつあります。また、木材資源につきましては、着手されたばかりでありまして、支払いが開始の段階にあるものがございます。それから、すずにつきましては、これは技術提携をいたしまして、まだ産品は入手するまでにいっていない状況にあると理解しております。
  183. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまインドネシアの政情、これは一応安定したというふうに見ていらっしゃるわけなんでしょうね、緊急援助なすっているわけですから。いかがでしょうか。
  184. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ちょっといま御質問がよく聞こえなかったのですが、インドネシアの政情はどうなっているか……。
  185. 田中寿美子

    田中寿美子君 緊急援助が、この間マリク外相が来て、緊急援助日本が決定なすったのですね。というのは、インドネシアの今度の政変、そしていまの政権が安定したものという判断のもとになすっているわけですね。
  186. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 御承知のようなインドネシアの政変がございまして、その後いろいろとインドネシアの各方面で努力が続けられておるわけでございます。したがって、このインドネシアの努力に対しまして、われわれも友邦としてできる限りの援助をしていきたい、こういう判断でございまして、もちろん政変、インドネシアの事態が完全に安定しておるというふうには申し上げかねるのでございますが、次第にそういう方向へ向かいつつあることはまことに御同慶の至りだと考えております。
  187. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、まだインドネシア日本が国交を回復しない、する直前、少し前に行ったのですけれども、そしてその当時、最初のスカルノ政権に対するクーデターが始まった。一九五六年の暮れですか、そのときのクーデターの一番頭立ったのがハッタ副大統領とナスチオンだったわけですけれども、いまそのナスチオンが表面に出てきて、そうしてその背後に軍部の右派がいるわけなんですけれども、日本政府とそのインドネシアの右派的なもの、それとアメリカ考え方とぴったりと一致していると思うのですがね。そういう点で非常に緊急な援助もし、いまのインドネシア政権にてこ入れをする、こういう考え方なんではないでしょうか。
  188. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 御質問の御趣旨は、どういう点において一致しておるかというような御見解かと存じますが、少なくとも今日インドネシアにおきましては、非常に真剣に、まじめに民生の安定向上のために、いわゆる新しい政権がその基盤を確立しつつある、そういう状態に対しまして、われわれとしてもできる限りこの努力を助長できればそういうふうにしたい、こういう考え方でございます。
  189. 田中寿美子

    田中寿美子君 インドネシアに対しては、アメリカは直接援助できない状態にあるわけですね。スカルノとの関係、そして世銀に入っていない、それから国連からも脱退したこと、そういうようなことからですね。それで、今度東南アジア開発計画をつくって、閣僚会議のオブザーバーを送ってきたわけですが、それで日本アメリカにかわってインドネシアのいまの政権にてこ入れをしよう、こういうふうに考えられるわけですが、そしてこのことはけさから問題になったロストウ、バンディの話し合いでもあるわけですがね。その辺のことは御承知だろうと思いますが……。
  190. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) おことばでございますが、全然さような考えはございません。日本の独自の判断に基づきまして、インドネシアとの特別の関係もあり、自主的に考えてやっておることでございます。
  191. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう何を聞いても、一つもほんとうのことはお答えになりませんので、非常に残念でございます。  それでは、次に、これに関連があると思いますので、いわゆる平和部隊、日本青年海外協力隊のことをお尋ねしたいと思いますが、いま現状はどのくらい、何人くらいがどこへ派遣されていって、どういうようなことをしているのですか。
  192. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 現在四十八名が東南アジアの諸国に派遣されておりまして、その詳細は、ラオスが十名、カンボジアに九名、マレーシアに十三名、フィリピンに十三名、それからケニアに三名入っておりまして、合計が四十八名でございます。  そうしてその活動の内容は、ラオスが稲作、野菜、日本語等、それからまた水道管の施設とか、柔道の教師、外科の助手、カンボジアにつきましては、稲作、水泳、柔道及び農薬、農業機械による応援、それから木材の伐採、それからマレーシアにつきましては、農業普及及び数学の教育、漁業、日本語等になっております。それから、フィリピンにつきましては、農業関係、それから小規模のかんがい土木、竹細工、窯業、それからケニアにつきましては、建設機械修理、電気関係、こういうぐあいに相なっております。
  193. 田中寿美子

    田中寿美子君 正確な名称はどういうことですか。いわゆる平和部隊といわれておりますけれども、日本青年海外協力隊というのですか。
  194. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 日本青年海外協力隊が正式の呼称でございます。
  195. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしてその主管は。
  196. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 海外技術協力事業団が主管いたしております。
  197. 田中寿美子

    田中寿美子君 これはどういう団体ですか。
  198. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 外務省の監督のもとにあります。主として技術協力の推進をはかる機関でございます。
  199. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、労働省の管轄であったかと思いますが、低開発国の技術訓練センターというのがありますね。あれは主管は労働省ですか。幾つありますか、職業技術訓練をする……。
  200. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 技術協力事業団が主管しております。各地に訓練センターがございます。これは重工業から農業関係、あるいは電気通信関係、あるいはビールスのセンター等いろいろ種類がございまして、主として海外技術協力事業団が海外におきましてそれらの国のそういう初歩的な技術の向上に応援するために設けた機関でございまして、そのほかには通産省が主管しておりますセンターがインドに一カ所ございます。
  201. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、そのいまの技術センターは全部外務省の管轄、監督のもとにあるんですか。
  202. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 海外技術協力事業団が実行いたしておりますセンターは外務省のもとにあるわけでございます。
  203. 田中寿美子

    田中寿美子君 ちょっとついでですけれども、一九六三年だったと思いますが、ケニアですね、東アフリカのケニアが独立する前に、あそこのハイランドの地域の白人が土地を、つまり英国が引き揚げるについて土地を全部手離したわけですね。そのころにちょうど私行き合わせました際に、労働者がそのハイランドの白人の農地を買って技術センターにするといって買い込んでおりましたけれども、あんなのはどういうんですか。
  204. 西山昭

    政府委員(西山昭君) ケニアにつきましては、ナイロビの北方、たしか二百キロぐらいの所だったと思いますが、そこに中小企業の訓練センターを設置するようにいたしておりまして、目下人員が現地に到着いたしまして建設に当たっておる次第でございます。
  205. 田中寿美子

    田中寿美子君 これも、そうすると、海外技術協力事業団の中に入るわけですか。
  206. 西山昭

    政府委員(西山昭君) さようでございます。
  207. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、平和部隊のことに戻りますけれども、この平和部隊、まだ四十八人しか出ていないわけですが、それに先立って調査団を派遣なさいましたね、各地に。そのときにフィリピンなんかはその調査に行った調査団に石を投げたというようなことが載っております。つまり、東南アジア地域に日本が戦争中進出していった、それに対する民族の感情というのは決して簡単には直っておらないわけです。さっきも申し上げましたように、政府間のレベルで話し合いをなさいますときには、日本から金を引き出したい、援助を引き出したい者との話し合いですから、たいへんあいそのいい人たちかもしれないですけれども、民間のレベルでは非常にいろいろなまだ反感が残っておりますわけです。したがって、その平和部隊などというものを送って、一体どれだけの効果をねらっていらっしゃるのか、その辺を伺いたい。
  208. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 御指摘のとおりに、地方等に参りますると、そういう空気がまだ残っておるところもあるように聞いております。私どもといたしましては、そういう現状を十分考慮いたしまして、ただ低開発国のいろいろな面におきまして、機械を据えつけるとかあるいは大きいダムをつくるとか、そういうことでなくして、動脈の末端の機能が平均して発展しないことには経済の円滑な発展が望まれない、また民生の安全も期待し得ない。かつて日本の青年におきましても、現実に東南アジア等の事情を身をもって体験いたしまして、そして理解を深める、こういう点を考慮いたしまして、経済海外協力隊を派遣することに決定いたした次第でございまして、私どもとしましては十分誤解が起こらないような、また押しつけたりなんかする意思は毛頭ないのでございまして、青年がよく現地の事情も理解し、また相手国の国民からも好かれるということが結果として起こりますように、十分の注意を払っておる次第でございます。したがいまして、いたずらに数を多くふやして出すということよりも、少数であっても効果があがるようなぐあいに計画を進めたいと、こう考えておる次第でございます。
  209. 田中寿美子

    田中寿美子君 平和部隊というのは、アメリカのケネディの考えた、アメリカが各地に送った平和部隊の構想をまねたものだと思うんですけれども、アメリカの平和部隊は非常に各地で不評判なんですね。これもやはりアメリカの雑誌で非常に詳しく特集したことがあります。平和部隊がいかに各地で失敗しているかということを。四十八人ぐらい日本からいま送って民生の安定に貢献するなんというようなことは、私は不可能だと思うんですけれども、それよりむしろ、ねらいは佐藤内閣の青少年対策にあるというふうに思うんですがね。日本のPRにも役立つというようなことが何かに書いてありましたけれども、いかがですか。
  210. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 私どもは、第一義的には先ほど申し上げましたような国際関係を頭に入れているわけでございまして、国内の青少年対策というものと結びつけて考えていない次第でございます。
  211. 田中寿美子

    田中寿美子君 この日本のいわゆる平和部隊というのは、自民党の中でも岸さん、賀屋さんという方が強力に推しておられるということが報道されております。そういう方々の考え方というのは、日本でも右翼に属する。これに対して外務省はいまおっしゃったようなことをたてまえとして、意見の食い違いがあったかのように報道されております。その辺はいかがでございますか。
  212. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 大体、外務省としては技術協力を低開発国に対してやっております。その一環として青年にこの一端を受け持ってもらう、こういう考え方でございまして、いま西山局長から申し上げた趣旨とわれわれは了解して、これを実行いたしております。
  213. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務大臣がイニシアチブをとっておやりになるはずだと思うんですが、いままでのことは全部、ほんとうのことを外務大臣にお聞きしたいようなことだったのですが、経済協力局長からはほんとうだと思うようなお答えはいただけなかったんです。外務省、自民党、民間団体の間に、平和部隊の問題については意見の違いがあったというふうに報道されていますが、どういうふうにどう意見が違っていたのか、御存じではございませんか。技術協力の一端をになわせるというのだったら、ずいぶん重大なことだと思います。
  214. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) これは私どもはよくその間の事情をつまびらかにしておらないかと思いますが、結局ケネディの創設した平和部隊というような構想で相談がございました。しかし、われわれとしては、いま実行しているところの低開発国に対する技術協力、そういう基本ラインに結びつけて、そうして青年の諸君にひとつ手伝ってもらうということならば受け入れる用意があるということで、そこで、妥協といっちゃ語弊がありますが、そういう形を変えて外務省としては受け入れた。でありますから、そういうものとして私どもとしては了解をしております。
  215. 田中寿美子

    田中寿美子君 少しわかりました。やはり自民党の岸、賀屋その他の若い青年将校の方々の考えていられることは、これはアジアの民族の理解に不足しておりますアメリカがとった政策である平和部隊、それをまねて、そして日本のPRに使おう、こういうことであったと私は思うんです。それに対して外務省は技術本位にしたと、こういうふうに私のほうで了解しておきます。  で、アジア開発銀行、東南アジア諸国への経済協力あるいは援助、すべてが私は非常に、これはもう朝から木村先生も論じ始められたところで終わったんですが、アメリカの東南アジア政策を通してその片棒をかつぎつつあるということや、それから、その経済援助の結果が、その国々のほんとうに平和なり安定、あるいは自主独立の国家建設に役立つような方向に向かっていかない危険性が多分にあるということを指摘しまして、私の質問は終わりたいと思います。
  216. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 木村君。
  217. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私のアジア銀行協定についての質問は、ただいま田中さんが質問された基本的な考え方と一致しているんですが、まず外務大臣に具体的に伺いたいのは、先ほど正示政務次官にも一応伺ったんですが、どうもかみしもつき的な、提案理由的な答弁で、どうも納得しにくかったんですが、ざっくばらんにひとつ、このアジア銀行協定ができるに至りましたいきさつですね。提案理由には、いろいろかみしも的な提案理由が書いてあるんですよ。もう少し、何というか、生きた——大臣、じかにいろいろ折衝されたと思うんですよ。それで、これはざっくばらんにいいまして、外務省の調査月報、これにかなりアジア開発銀行協定の概要ということが出ている。それで、これはかなりよくレポートされていると思うんです。  で、これを拝見しますと、だいぶ急いででき上がったというように書かれているわけですね。大体、ほんとうに審議したのが、政府代表会議で約十日間ですね、審議して、そして従来の——前にも私は正示さんに質問したんですが、こういう国際協定を作成するにあたっては、国際的ないままでの慣例としまして、起草委員会というものができて、それで法律的な見地から条文を推敲するのが慣例だそうです。私も知らなかったんですが、これによって知ったんですが、ところが、今度はこういう手続をとらないんですね。とらないで、全体会議で一挙に採択したと、こういう経過があるわけです。それで、「協定の作成が、高度の政治目的背景に、きわめてそうそうの間に押し進められた」、こういうふうに書いてあるんですね。ですから、こういう経過から見まして、これはいろろな背景があったと思うんですね。それから、大体これはアメリカの低開発国援助構想というんですが、そういうものがやっぱり背景になっているんじゃないですか。たとえば世界銀行、米州開発銀行、アフリカ開発銀行、こういう諸協定がモデルになっているというように、また中身を見ればそうなっておるわけですから、そういうふうにも書かれているんです。  そこで、外務大臣、いろいろこれができ上がるには、まあエカフェのころからずっと問題が起こってきているんですけれども、いろいろ折衝した過程ですね、じかに外務大臣、いろいろ折衝されたんですから、そこのところをひとつざっくばらんに、かみしも的でなく、ひとつ経過をお伺いしたいわけなんですね。いかがですか。
  218. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) そのいきさつは、そう長いことではないかもしらぬが、そう短く、あわててやったわけでもありません。いきさつはいま局長代理から申し上げます。
  219. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと待ってください。外務大臣、いろいろこれまでアジア開銀について、全然そういう折衝されなかったんですか。大蔵大臣がいろいろ折衝されて——その体験でいいんですよ。そういう事務的なあれは、こういうものの参考資料見りゃわかるんです。実はこうだったんだという、そういうことをはっきり……。
  220. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 私は直接折衝いたしておりません。それで、国連局のほうでずっとそういう事務的ないきさつを経験しておりますので、国連局の局長代理から一応事実に関して申し上げたいと思います。
  221. 滝川正久

    政府委員(滝川正久君) ただいま先生がおっしゃいましたとおり、すでに資料で相当御存じでございますので、あるいは繰り返しになるかと思いますが、多少お時間をいただきまして申し上げてよろしゅうございますか。
  222. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、あんまり長く……。(笑声)外務大臣がずっとおられればいいですよ。ですけれども、やはり時間に制限があるんでしょう。
  223. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 五時までおります。
  224. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  225. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  226. 滝川正久

    政府委員(滝川正久君) それでは少しはしょらしていただきます。これは私自身も直接その交流に当たったわけではございませんが、主管局の責任者といたしまして承知いたしておりますことを、多少はしょらしていただいて申し上げてみます。  アジア地域の経済開発を促進するための金融機関を設立するという要望が出ましたのは、一九六三年十二月に開催されましたエカフェ諸国の閣僚会議においてでございます。これが、アジア開発銀行設立計画といった形で具体化されまして、それ以来協定案という形で、協定案をどういうものにしていくかということで交渉が続けられておりました。これには幾段階かの専門会議等の活動もあるわけでございますが、そこのところをはしょらしていただきまして、昨年の十一月二十日から十二月一日までマニラで開かれましたエカフェ域内国の閣僚会議におきまして協定案が作成されました。引き続きまして、十二月二日から四日までやはりマニラで開かれました域外関係国をも含めました全権会議において、この協定が作成されたわけでございます。  それで、特に強調して申し上げておきたいのは、これは初めから日本がリーダーシップをとり、あるいは域外国の先進国等からの考えによりましてでき上がったということではございませんで、むしろ域内の低開発国、いわゆる低開発国の要望をいれまして、大多数の要望をいれまして、それで次第に形をとって、それがいまのような幾段階かの過程を経まして協定採択に至った、これが骨子でございます。
  227. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうようなことは、エカフェの日本側の前の何といいますかね、代表で行っていましたね、大来君がね、詳しく書いていますよ。「アジア開発銀行の発足」という表題で「国際問題」に、いまあなたが話されたよりさらに詳しく。大来君も最初エカフェでいろいろやって、それで最初アジア開発銀行のことを言い出したのは、東京銀行の堀江さんあたりがまあそういうことを、アジア開発には銀行が必要じゃないかと、そういうことから、その当時はあまり気にしていなかったけれども、そういう堀江さんの着想というものに敬意を表したとかなんとかいうことが書いてありますけれども、そういうことはわれわれ資料がありますから、拝見させてもらって一応知っている。そうではなくて、もっとなまの政治外交的背景というべきものを伺いたいのです。  そこで、それでは具体的に外務大臣に伺いますが、十億ドルの出資ですが、その中でアメリカ日本が一番大口の出資者ですよ。二億ドルずつ、四億ドルでしょう。その中でアメリカ日本が大きな比重を占めているのですよ。これがまあこういう構想外務省資料にもあります。大体米州開発銀行とかアフリカ開発銀行、そういうものをモデルにしてつくられている。それで、地域開発銀行の性格を持っているわけなんです。ですから、これにはアメリカの低開発国援助の基本的な考えの一環、それはさっき正示さんはさらに、それだけではなくて実際は国連におけるアジア開発考え方に基づいているのだと、こういうお話がありました。そこで、まずアメリカの低開発国援助の基本的な考え方というものはどういうものなのか、この点、外務大臣に伺いたいのですよ。それからまた、日本の低開発国援助の基本的な考え方。  これはしっかり聞いておきませんと、もうしょっちゅう、たとえばインドネシア緊急援助とか、そういうものが出てくるわけでしょう。そういうのをただ場当たり的に、国民税金ですから、ただ援助していくのではいけないのであって、やはりこれはかなり長期的な見通しに基づいて、日本の財政経済情勢及び外貨事情等、それとそれから基本的な外交政策というものも考えながらやっていかなければいかぬと思うのです。このアジア開発銀行に対してわれわれが賛否の態度をきめるにあたっては、アメリカの低開発国開発の基本構想日本の基本構想というものをしっかり聞いておかなきゃならないのでして、さっき正示さんは大体両方あまり変わらぬだろうというお話があったのです。変わらぬなら変わらぬでいいですよ。基本的構想というものは、長期的な展望に基づいてこれは行なわれていると思うのです。ただひょっこり出てきたような問題ではないと思うのですよ。そういう点で、まず外務大臣にしっかりした考え方を聞きたいのですがね。
  228. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 低開発国の経済援助、あるいは経済協力と申してもよかろうと思いますが、これはだれが考えても、そう隔たりはあるべきはずのものではないと思います。ただ、日本日本の立場においてどう考えるか、アメリカアメリカの立場においてどう考えるかという、考え方の多少の相違は私はあると思います。  日本といたしましては、御承知のとおりアジア、なかんずく東南アジアを中心とするアジア日本との関係はきわめて濃密なものがございまして、ただいまでも輸出の相当部分を占めておる。ところが、特にアジアのうちで東南アジアが最も中心でございますが、どの国とも輸出入のアンバランスをだんだん深めております。年がたつに従ってそういうふうになってくる。でありますから、それらの国からいろいろな不平不満が出されている。場合によっては日本からの輸入をボイコットをしようというような露骨な態度すら示そうとしているような国もあった。それを何とか、いろいろな経済援助を、一時的なものにせよ、そういうことをやって、表面化しないようにはしておりますけれども、そういう大体情勢でございまして、日本としても大切な従来からのお得意なんですから、それをもっと経済力をもう少し育成して、お互いが共存共栄の道を進むというふうにいかなければ、日本の対アジア貿易ももうこれ以上伸びないというような状況になっておりますので、それでできるだけ長い目で見て、さしあたりはこっちから持ち出すものが多いけれども、結局はだんだん向こうが太ってきて、こっちにはね返ってくるということを楽しみにして、この経済協力をもう少し腰を入れてやらなければならぬ、こういうようなことが日本から見た低開発国援助方針で、これが方針の全部ではないけれども、ウエートをそこに置かざるを得ない、こういう状況になっていると考えます。アメリカアメリカで、世界の繁栄が結局はみんなの繁栄になる、であるからして、不幸な国をほったらかしておくということはやはりいろいろに物議をかもす原因にもなるから、みんなが向上するようにしようというのがアメリカの世界政策というか、そういうものの第一段だと私は思っております。日本はもっと身近にそれを感じておる。それだけの違いはあるのじゃないかと思う。
  229. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは外務大臣のいまの御答弁はわかります。また、そういう方向で進めるべきだとも思うのです。しかし、それが実効があがらなければいけないわけですね。それにはひとつこの際、大蔵大臣も十分お考えじゃないかと思うのですけれども、今後日本の低開発国に対する援助の要求はかなり多く出てくると思うのです。アジア開発閣僚会議でもいろいろあるでしょう。日本を兄貴分に思って、そして日本が戦後経済的にも成長したということもあり、ずいぶんそういう要求が日本に来る。そういうときに、アジア開発銀行が発足をし、日本が非常に大口の出資者になるわけですから、今後一体どういう基本的な姿勢日本が後進国援助に乗り出すべきかという基本の方針をはっきりここできめなければいけないと思うのです。この際ですよ。そうでありませんと、せっかく国民税金で投資したものが——将来豊かになってはね返ってくると期待する、これはけっこうなんですけれども、逆にそうならない、そういうことになってはいけないのでありますから、今後のあり方をはっきりきめなければならぬ。  それについては、これまでたとえばアメリカ韓国にずいぶんお金をつぎ込んだでしょう。それにもかかわらず、韓国の経済がどうして発展をしなかったのか。それから、インドネシアにつきましても、これは私は資料をいただきましたが、ずいぶん多くの国が債権を持っているわけです。いままでね。これは共産圏もありますが、これは正確な数字じゃないかもしれませんが、大体昨年末で、インドネシア債務残高は大体二十六億ドルをこえているのですね。さらにもっとこれは多いのかもしれませんが、インドネシア側の資料によったものである、こう注がついておるわけです。ずいぶんアメリカもいろいろ援助をしておる。日本援助をしてきておる。それにもかかわらず、どうして低開発国の貧困とそれから停滞というものがなかなか解決されないのか。もちろんこれはずいぶん長い間の歴史的な経過がありますから、そう一挙には立ち直らないと思うのですが、それにしても、ずいぶんお金をつぎ込んで、経済は安定しない。インドネシアなんかものすごいインフレでしょう。それから、韓国もそうなんですよ。台湾については、もう何か一応テークオフしたというふうに報じられておりますけれども、それにしても、まだ本格的なあれじゃない。その原因がどこにあるか考えてみる必要があるのじゃないか。いままでの援助のしかたに何か誤りがあったのじゃないか、そう考えられるのですよ。  そこで、今度は日本アジア開発銀行加盟をし、大口出資者となるについて、また、アジア開発閣僚会議なんか設けて、日本が今後かなり援助をしなければならないような立場に立たされておるのでありますから、こういう点についてもっとはっきりした考え方をここでまとめるべきじゃないかと思うのです。外務大臣、この点についてはどういうふうに……。
  230. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 韓国はまだ始まったばかりでございますから、効果がどういうふうにあらわれるか、これからの問題だと思います。
  231. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、従来アメリカがたくさん援助をしていた。
  232. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 他国の援助をしたことはわかりませんが、まあむしろ軍事援助がおもでなかったかと思います。日本経済協力は始まったばかりでございますから、今後の問題だと思います。  インドネシアは、対外債務が御指摘のとおり二十六、七億ドルないし三十億足らずあるようでありますが、これも半分は軍事援助であると考えます。今度政権もかわりまして、むしろこの国内の民生の安定、経済の復興ということに重点を置いて今後政治を行なっていくという姿勢をいま固めつつありますので、従来ともまた違った行き方でございますから、経済的には相当な効果を期待していいのではないかと考えております。  それから、台湾は、とにかく安定し、そしてかなり繁栄ということが期待できるのではないか、私はこう考えております。  今後の問題は、やはり日本日本としての立場から、あくまで経済的な効果、それが短期的であろうと長期的であろうと、政治的効果ということでなしに、純粋に民生の安定、国の繁栄ということをねらって、そのラインに沿うた経済協力援助をすべきであると、こう考えております。   〔委員長退席、理事青柳秀夫君着席〕
  233. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、今後日本援助する場合にですよ、その援助の効果が有効に生じ得るような条件を整えなければ貸しませんよくらいに、それくらいのあれを言ってもよいと思うのですよ。そうでないと、かなり日本はそういう立場になってくるから、何も意地悪言うんでなくて、ほんとうの意味で、たとえば三千万ドル今度インドネシア援助をやる。これが当面はまああそこは非常にインフレひどいですからね、安定にどれだけ役立つかわかりませんが、まあ九牛の一毛かもしれませんが、多少は役立つとして、それがやはり将来インドネシアの本格的な経済再建に役立つような線においてじゃないと、それが軍事費に使われちゃったりなんかしちゃったら、やはり本格的な再建に役立たないですよ。そういうはっきりした立場に立って、ものも言い、条件もつける。やはりそれくらいの立場に立ってやりませんと、今後せっかく国民税金援助しても、それがほんとうに役立たない。  そうして私の考えでは、いろいろほかにも理由がありますけれども、主としてこれまで、たとえば韓国でも台湾でも、それからインドネシアでも、その他方々援助をしましたけれども、大体において民家に信頼のない腐敗的政治勢力、そういうものに技術援助なり経済援助が利用されちゃっておる。ほんとうにこれが実らない。韓国においては最も顕著な例じゃないかと思うのですね。そういう援助であってはならないのであって、こういうものに対してははっきりやはりけじめをつけていかなければいけないのじゃないか。そういう時期に来ているんじゃないか。そういうことをいま伺っておるわけですよ。
  234. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 全く御同感でございまして、先般インドネシアから新しい政権が、とりあえず技術的なミッションを派遣いたしまして、そうして続いて副首相が来日いたしまして、で、われわれとしては大蔵省その他通産、経企、農林等々と十分協議をいたしまして、経済的な協力をするのもいいけれども、まずその基盤である政治的な基盤というものがほんとうに確立する曙光が見えてきているのかどうかということが非常に大きな問題でありますので、その点についてかなり突っ込んだ説明を求め、現地の情報等も集めて検討したようなわけであります。御承知のとおり、いままでマレーシア粉砕計画というようなものを実行して、このために多額の戦費を使っている。こういったようなことは、何らの確定した目的もなしにああいうことを、国民を引っぱるというだけの目的かと思われますので、そういう浪費をするということがあっては、これはとても新しい援助計画なんというものは問題にならぬ、そういうことで、まずその点を十分たたいて、たたいた結果、大体その後のいきさつ、見通しについて、もうこの問題は百八十度転換するということのようでございますので、そういうことを確かめた上でいろいろな経済的な本来の協議に入った、こういう状況でございまして、お説のとおり、出す以上は有効にそれが実るということを唯一のめどにしてその政策を進めている、こういう状況でございます。
  235. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣は、昨年四月ロストウ氏が日本を訪れたそうですか、そのときお会いになりましたですか。
  236. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) あのときは、わずかの時間でございましたけれども、会いまして、二、三十分程度でありましたが会いました。
  237. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのとき、まあどういうお話し合いでしたか。それはお差しつかえがあればよろしいですけれども、このロストウ氏は御承知のようにアメリカの低開発国援助計画については独創的なというのですか、独特な考えを持っておりますよ。アメリカ政府に非常にそういう点で影響力のある人ですよね。   〔理事青柳秀夫君退席、委員長着席〕 ですから、そういう点について何か具体的に、アジア開発銀行の問題ということではなくて、一般的なお話し合いかもしれませんが、アメリカの低開発国援助についてのいろいろな基本的な考え方ですね、そういうものを何か話され、また日本のほうでもそれについて何か話をされたようなことはないのでしょうか。
  238. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) よく記憶しておりません。どういうことを話したか、もうごく表敬の程度でございまして、もちろんアメリカの低開発国援助計画等の話は、私はほとんど記憶しておりません。私は話したような覚えはありません。
  239. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはもうロスストウ氏から直接伺わなくても、外務大臣よく御存じと思うのですが、アメリカのこれは外交策にもかなり影響を及ぼしているが、前のダレスのかちかちな反共政策からロストウ的な方向に転換して、ロストウ的な方向というのは、一応共産圏はこれは否定しても否定できない、そしてこの共産主義的な生産方式というのは、一応工業の近代化に役立ったことは否定していないですね。段階的な、発展段階論ですかということですね。しかし、ロストウ氏の書いたものやなんか見ますと、結局低開発国がなかなかこの貧困、停滞等そういうものが解決されない、それでその経済の発展がうまくいかないのは技術援助をやったりあるいはまた経済援助をやっても、結局共産的な勢力がこれを妨害しているのだ、こういう考え方なんですよ、基本的な考え方は。ですから、それはラスク氏ほど反共的では表面はないようですけれども、やはり基本的には援助を、経済援助をやると同時に、片一方では、共産主義勢力を排除するための軍事的援助というものをやっぱりかなり強くやっているわけですよ。そういうやり方ですよ。だから、基本において私は考え方が間違っているのではないかと思うのです。アメリカは。  低開発国の経済がうまくいかないのは、従来の、たとえば朴政権とかあるいは蒋介石政権とか、その他非常に世界的にも一番腐敗的な政府と見られるところに経済援助をやり技術援助をやる。だから、それがほんとうの国民のウェルフェア、厚生に役立つように使われていない。そういうところに問題があるのである。だから、ロストウ考え方は基本的には間違いじゃないかと思う。そういう間違った認識からアメリカの低開発国援助計画というのが出ているとすれば、これはよほど日本はこれについては批判的な立場でこれは向かわなければいけないのじゃないかと思うのです。この点が私は非常に重要じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  240. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) しかし、やっぱりいろいろな段階があるのではないかと思うのです。いろいろな、形を変えたいろいろな侵略が行なわれているという、ただこれに目をおおうて経済建設だけを進めても、実際問題としてそれが育たない。だから、やっぱり降りかかる火の粉は一応払っておく、そしてしかる後に経済建設に協力する、こういうことじゃないといかぬのじゃないかと思います。私は、まあその経済協力を与える国の状態対象である状態いかんによって、いろいろな手心が必要であると思います。しかし、現在その火の粉が降りかかっている、それをおかまいなしに建設のほうだけ、平和建設のほうだけ進めるということは実際上成り立たない。ある程度はそれを排除して、しかる後に平和建設を助ける、こういうことになるのじゃないかと思います。
  241. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ平和建設といいますけれども、どういう形の建設が必要かということが問題なんだ。そこまで腐敗した政治権力者、それと結んだ一部の資本家を富ませるような形の平和建設では、せっかく日本国民の血税で援助したりなんかしても、それはもうほんとうに逆効果になるかと思うのです。これはまあ議論は、外務大臣と私の間にはだいぶ立場の相違がありますから、意見の一致を求めるのは全く無理なわけですよ。しかし、少なくとも、これまでかなり長い間低開発国援助してみたけれども、それが効果がなかったことは一体どこにあるか。この根本の原因についてはほんとうにいきさつにとらわれないで十分にこれは検討して、国民税金がむだに使われないような援助をすべきだと思います。こう私は考えるわけです。  そこで、今度は開発銀行の中身について、これは具体的に質問していきたいと思うのですが、その前に、いろいろ新聞等で伝えられておりますが、開発銀行の本店を、これは日本に置きたかったのだけれども、東京に誘致したかったのだけれども、結局これはマニラに決定してしまったと。このいきさつはどういうことであるのか、伺いたいのです。
  242. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) これは代表団がマニラに参りまして、日本が非常な懸命な説得を試み、事前においても、日本としては外交ルートを通じて関係国に働きかけておったわけでございます。しかし、何せ当のマニラにおいて最後の会議が開かれたというようなことで、フィリピンとしてもちょうどその場所的な有利性を大いに活用して、ずいぶん働きかけもやったようであります。その詳細はお互いにこれは新聞その他で承知しておることでございますけれども、最もフィリピンのほうに傾いたことは、日本は本店も総裁も両方持っていこうとしている、しかし、総裁の人選はしばらくおくとして、低開発国開発促進のために設置される開銀であるから、やはり低開発地域に置くのがほんとうじゃないかというような宣伝がかなり有力に行なわれておったと聞いております。いずれにしても、選挙みたいなものでございまして、なかなか、わずかの差でございましたが、たった一票の差で東京設置が実現しなかった、遺憾ではございますけれども。しかし、本店がどこにきまっても、アジア開銀は、であるからしてとかなんとかということではないのでありまして、今後このアジア開銀というものをほんとうにりっぱに育てて機能を発揮させることが最も大事なねらいではないかと考えております。
  243. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これについてはいろいろ新聞雑誌等に書かれておるわけですけれども、これは朝日ジャーナルですけれども、朝日ジャーナルでは六月十二日号にこういうふうに書いてあるのですね。「昨年十二月はじめ、アジア開発銀行の本店をマニラにとられたことは、〃ケネディ暗殺いらい〃とさえいわれるほどのショックを日本政府にあたえたが」……外務大臣はあまりショックを受けていないかもしれませんが、「日本が同本店の東京誘致に失敗した最大の理由は、<日本と組んでアジア開銀を牛耳ろうとしている>という域内諸国からの非難をおそれたアメリカの工作ではなかったか。」と、こういうふうにあるのです。この点はどうですか、大臣。外務大臣、第一ショックを受けたのか受けないのか。かなり熱心にやはり東京誘致工作をやられた、努力されたように伺っておるのです。
  244. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 国際的な最近の機関というものは日本に何もありません。アジア開発については、自分のこととして日本は非常なこれに対しては重大なる関心を持っておりますので、したがって、開銀の本店が東京に来るということを非常に希望した一人でございますが、しかし、さっきも申し上げたように、これが他の土地に行ったからといって、アジア開銀の設立の理由が失われたとかなんとかという、そういうことは言うべきものではないし、またそうでもないと思います。でありますから、ちょっと当てがはずれたと。これはショックだか何だかわかりませんが、当てがはずれたことは確かであります。
  245. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今度総裁は日本側になる可能性があるのですか。新聞等では渡辺武さんなんということが下馬評に載っておるようですが、その点はどうなんですか。
  246. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあぽつぽつ総裁を選考をしなければならぬ段階に来ておることは事実なんです。そういう情勢に対処しまして、わが国としては渡辺武君を候補者として正式に立候補していただいたわけです。これは当然渡辺君とは相談をしまして、その承諾を得てやっております。  その見通しにつきましては、ただいま外務大臣からもお話がありましたが、本店がマニラにきまった。それはなぜかというと、東南アジアの諸国の中に、総裁はどうしても渡辺君だと、こういう声が前から一般的になっておるわけなんです。つまり、アジア人で一流の国際ファイナンサーを求めると渡辺君だと、こういう国際金融界における定説ですね。それで、ぜひ渡辺君になってもらいたいという空気がある。そこへ持っていって、本店を東京にすれば、本店も東京だ、総裁も渡辺君だということになる。これは排除しなければならぬ。私はマニラに本店がきまった最大の理由はそこにあると思います。そのくらい渡辺君が適格者であるということは普遍化されておるわけなんです。で、もう十月の中旬にテヘランにおいて創立総会が開かれるのでありますが、今日いまだに渡辺君の立候補に対して対立候補というものが出てこないのです。そういうところから見まして、まず私は渡辺君の立候補が成功するということについては間違いなかろうと、こういうふうに踏んでいるわけであります。
  247. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ、このアジア開発銀行協定と、それから昨年四月七日ですか、ジョンソン声明、約十億ドルの援助アジアの平和と開発のために行なう用意があるというあのジョンソン声明、これとの関係はどうなんですか。そうでないということをいろいろ政府の出している刊行物あるいは政府の息のかかった人の書いたものにはそういうふうに出ているのですよ。この関係はどうなんですか。
  248. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) アジア開発銀行構想というのは、数年前から始まっております。これが六三年ですね、暮れにはもうエカフェの決議にもなっているわけです。昨年の七月ごろの段階では、その討議が相当具体化してまいりまして、それでまあ投票権の数え方をどうしようかとか、あるいは各国の資本の持ち分をどうしようかとか、その辺まで来ておったわけであります。最後の詰めが残されておるという段階だったわけでありますけれども、その時点においてジョンソン構想というものが発表されたわけであります。つまり、発生の経過がジョンソン構想アジア開発銀行というものとは全然違っている。ですから、内容も違うのです。アジア開発銀行のほうはその対象地域がアジア全域でございます。ところが、ジョンソン構想というのは、メコン開発ですね、これが中心であります。その他のアジア地域、東南アジア地域も含めるというのですが、広くアジア地域全域を対象とするというのと異なっておるわけであります。  それから、ジョンソン構想が発表されましてから、その後の具体的なこれが現実化の動きというものは、今日まで見られません。アジア開発銀行のほうは着々最後の詰めに入りまして、十月中旬には創立総会が持たれよう、こういう段階まで来ておる。これは全く別なものだというふうに御了承願いたい。
  249. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは大来君の書いたものですが、大来君によると、このアジア開発銀行の具体的な構想が出たのはエカフェですね。最初なんですよ。ところが、エカフェのウェリントン会議があったが、その会議では「アメリカ政府アジア開銀出資するか否かの態度を明らかにしておらなかったが、その後四月になって東南アジア援助に関するいわゆる「ジョンソン構想」が発表され、それに関する大統領特別顧問として前世銀総裁のブラック氏が任命された。同氏は前記の六月の幹事国会議にあとから出席して、アメリカ政府アジア開銀日本と同額の二億ドルを出資する意向であることを明らかにした。」、こういうふうに書いてあるのですね。そして大来氏もこのジョンソン構想とそれからアジア開銀とは全く違うのだと。いま大蔵大臣が説明されたような、大体ジョンソン構想がインドシナ半島をおもな対象地域としているのに対して、アジア開銀がエカフェですか、地域全体を対象にしている。そういうような点で一部に誤解があるようだけれども、別個のものだと言われているのです。しかし、この経過から見ると、ここは非常に焦げくさいですね、こういうふうに。そう思う。だから、無関係であるとは私は言えないと思うのです。どうなんですか、この点。
  250. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 大来さんはその状況をかなりよく知っている人の一人であります。ですから、大来さんの言われているとおりだと思うのですがね。ただいま申し上げましたように、発生の経過が全然違うのです。そういうところから、その両者の間には私は何らの交錯する点はないように、こういうふうに見ております。ただ、ジョンソン構想の一部分として、アジア開発銀行に信託基金というものができれば、アメリカはそれに一億ドルを信託してもよろしいというようなことを言っております。そういう点は、もしそれが実現するということになれば出てきますが、これは本質的なものじゃない、あとでくっつかったものである、この程度のものかと思います。
  251. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  252. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こしてください。
  253. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はまだ質疑の途中なんですが、ただいま委員長から、公明党の中尾さんが大蔵大臣が衆議院に行く前に質問されたいというので、私の質問はこれで保留しまして、中尾さんに質問していただくことにいたします。私の質疑は終わったわけじゃありませんから、その点は、委員長、了解してください。
  254. 徳永正利

    委員長徳永正利君) また、明日にでも相談いたします。
  255. 中尾辰義

    中尾辰義君 両大臣に総括的にお伺いしますけれども、今度の法案は、アジア開発銀行を通じて低開発地区に経済的な協力をしようということでありますけれども、東南アジア諸国が食糧事情に非常に困っておる事情は、私どもも新聞、雑誌等によりまして大体承知をいたしております。また、アジアの先進国としてこのような低開発の地域に援助することは当然ではないか、こういうようなふうに考えておるのですけれども、わが公明党としては、大体賛成の立場をとっておりますが、いままでの議論になった点は、要するに、今度のアジア開銀による経済協力というものが、単なる純粋の経済的な援助であるか、多少なり政治的な軍事的な色合いを持つものであるかということで、いままで議論があったわけであります。そういうふうに政治的な軍事的な色彩を持っておるとすれば、私どもはこれは考え直さなければならないので、あらためて外務大臣に、政府の東南アジアの低開発諸国に対する基本的な態度、構想等について、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  256. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 先ほど木村さんの御質問に関連しても申し上げたつもりでございますが、日本といたしましては、やはりアジアにおける唯一の工業国、先進国として、いま国際的に大きく取り上げられておる南北問題、これに相応の力をいたすという責任があることはもちろんでございますが、ただ、それを離れましても、日本として、東南アジアを中心とするアジア地域の一帯というものは、日本のこれはお得意市場ですね、三分の一くらいの。輸出量の三分の一くらいを東南アジア中心でさばかれておる。ところが、いまはもう東南アジア、ことに東南アジアはきわめて政治的に不安定でありまして、それから経済的にもなかなか進歩しない、そういうことで、それにもってきて、日本が非常にこの地方にたくさん売っておりますけれども、日本は東南アジアから輸入するものが非常にアンバランスになって、少ないのであります。そういうことで、このままでは、東南アジアを中心とする市場もだんだん日本から離れていくのではないかというような懸念もされる。でありますから、日本の自衛のために、東南アジアを中心としてこれらの低開発国というものを育成すると。経済協力をいたしましてこれを育成していく力をつけていく。そうして、それがやがて日本にもはね返ってくると、こういうことを日本自身としても考えなければならぬという時代に到達しておるのでございます。そういう意味でございまして、純粋に経済協力、東南アジアを中心とするアジア地域一帯の繁栄というものを育て上げていく、こういう考えのもとにアジア開銀に参加を決定した、こういう状況でございます。
  257. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、先般行なわれました東南アジア閣僚会議において、わが国が援助を強化しようと、運輸とか通信、教育、医療等、非常に幅広い分野にわたって約束をしておるわけです。ことに、将来国民所得の一%まで援助してあげようと。そういうことで大きな反響を呼んでおるわけでありますけれども、当面考えられるようなことは、無償援助の増大とか、借款金利の引き下げ、あるいは支払い期限の延長、援助条件の緩和、あるいは一次産品等の買い付け、いろいろと考えられるわけでありますが、こういうことを、あのような国際会議におきまして単なる口約束だけで済むわけにはいかない、将来具体的にどういうようなふうに進めていくのか、この点を。この援助の点につきましては、大蔵大臣、農林大臣はちょっと渋い顔しておりますね。この際にひとつ、どのように具体的に進めていくのか、その点について両大臣に私はお伺いしたい。
  258. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) この点に関して、あの会議の前後において参加国の二、三の国から具体的な経済協力の申し出がございまして、それは前から問題になっておったのでありますが、責任閣僚が見えましたので、今度は責任閣僚が直接この話を持ち出して、かねがねこれに対しては日本としても研究しておったところであります。関係各省十分に相談をしておったわけでございます。それは大蔵大臣からも一お話があるだろうと思いますが、具体的にこの問題を着々実行に移しつつある、こういう状況でございます。
  259. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) ただいま外務大臣からお話しのとおりなんですが、別に大蔵省が消極的であるとか、農林省がどうとかというわけじゃないのです。いま問題になっておるのは、会議を開くかどうかという問題なんです。その会議において、一体どういう農業開発をやるかという段になりますれば、私はいろいろそれぞれの国においても議論はあるだろう、こういうふうに思います。農業開発は、アジアの振興国、これはどうしても農業開発をやらなければやっていけない国なんであります。それが日本のインタレストと両立するような形において進められていくことが私は必要である、また、その道はある、こういうふうに思っております。
  260. 中尾辰義

    中尾辰義君 経済援助国民所得の一%まで引き上げるということは、かなりな私は負担だろうと思うのですが、これは何年がかりぐらいでそういうほうに持っていくつもりですか。
  261. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) これはDACの会議におきまして日本は約束をしているので、努力をしなければならぬわけですが、結局、財政負担という問題なんです。いまわが国の財政力ということになりますと、非常に窮屈な状態であります。ことに来年、再来年、四十二年、四十三年の二つの年度は特にその中でも苦しいのであります。ですから、急に一%まで持っていくわけにいかぬ。しかし、四十年度にすでに〇・六三%まで来ておる。でありまするから、もう少し努力をいたしますれば、私は数年中には実現できるのじゃないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  262. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、話を変えまして、来月の五日から京都におきまして日米合同の貿易経済会議があるわけです。この開催を目前にいたしまして、こういったような東南アジア援助という面に関して政府ほどのような態度をもって臨まれるのか、その点について外務大臣と大蔵大臣にひとつお伺いしたい。
  263. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) アメリカもことしの春にホノルル会議を開きまして、そしてまあ緊急の防衛のために軍事行動をとるかたわら、一方においては経済的な方面も相当に強化しなければならないということで会議を開いたようでございます。そして引き続いて経済閣僚の一部の人が現地におもむいて、いろいろな視察をしておるようであります。そういう状況でございますから、日本が先般東南アジア開発のために閣僚会議を開いたことにアメリカとしても相当強い注意を向けておるように推察されます。したがって、今度の合同会議におきましても、そういう点を詳しく日本から直接聞きたいというおそらく期待をもって臨んでくるに違いないと、こう考えております。一応その間の事情というものを詳細に述べまして、アメリカの参考に供したいと、こう考えておるわけであります。そうしてまた、その問題に関連して何か向こうのほうから意見の提出があれば、それも聴取するという、とにかくこの機会を利用したいと、こう考えております。
  264. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 日本アメリカは経済的に非常な関係があるわけであります。貿易からいいましても、三割は往復ともアメリカだと、こういうような状態です。でありますから、アメリカの経済が今後どういうふうになっていくか。ことに御承知のように、アメリカではいま過熱状態に対してどういう手を打つかということが問題になっている。その打つ手によりましては、わが国の輸出に大きな影響があるわけです。そういうようなことで、アメリカが一体どういう経済運営の態度をとるのか、またアメリカの経済は今後どういうふうになっていくのか、当面の問題もありますが、もちろん長期にわたったアメリカ考え方というものをとくとただしておきたい、こういうふうに思うわけであります。そこが私は非常に重要だと思うのでありますが、同時に、アメリカ内に日本に対しまして、あるいは資本導入の問題でありますとか、あるいは関税政策の問題でありますとか、いろいろ日本に聞きたいことも、要望したいこともあるだろう。そういう点もアメリカ日本との経済の関係から見まして重要なことでありますので、よく意見を聞いておきたい、こういうふうに考えるわけであります。
  265. 中尾辰義

    中尾辰義君 いろいろ意見を聞くということはいいでしょうけれども、先ほどからの外務大臣の話を聞きますと、東南アジア経済援助というのは例のジョンソン大統領の十億ドルの援助計画とは関係がないというようなことが答弁にあったのですが、ですから、こちらとしてもやはりいろいろな向こうに対する要望なり、心がまえというものがなければならないのじゃないか、こう思うわけですよ。ですから、いろいろな外交、経済、多面にわたるお話があるでしょうけれども、当面私は、アジア開銀に関して、東南アジア援助計画について、外務大臣はどのような態度で臨むのか。向こうの援助計画の一翼をになって、ただそれに乗っかってやるという、そういうことではないだろうと思います。先ほどから話を聞いているわけですが、やはり自主的にアジア先進国としてこのようにしたいのだ、そういったような考えというものを持って臨まなければならぬのじゃないかと、こういうわけで私は先ほどから質問をしておるわけです。この点はどうですか、外務大臣。
  266. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 大蔵大臣から御答弁申し上げたように、去年四月の十億ドルのジョンソン構想というようなこととは無関係に、全く自発的にこのアジア開銀というものが生まれてきたことは事実でございます。しかし、アメリカとしても特に東南アジアの経済開発の問題については興味を示しておるということは、これはどうも隠れもなき事実である。これはホノルル会談によってもりっぱに証明されておる。でありますから、おそらく東南アジア開発閣僚会議のいきさつを、非常にいろいろな事情を聞きたたがると思うのです。私は。しかし、まだあの結論として、農業開発会議も近く開くという申し合わせにはなっておりますけれども、それは開いておりません。ことしの十月以降において開きたいという考えを持っておりますが、その結論がやはり相当これはみんなの注目して、期待しておるところだろうと思いますが、これはまだ将来の問題で、しかし、非常に興味を持っておることは事実だと思います。アメリカはどういう気持ちを持って、どういう程度の関心ですかまだわかりませんけれども、十分に私は情勢を解明をしておきたいと、こう考えております。
  267. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  268. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  269. 中尾辰義

    中尾辰義君 新聞に、これは東南アジアの農業開発基金の件につきましてちょっと出ておるわけですが、アジア開銀に信託基金をして二億ドルのこれは出資でもって置くと、こういうようなことが出ておるのですがね。これは一体どうなっているのか、この構想について外務大臣にひとつお伺いしたいのですが。
  270. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) これはどういうところからそういう記事が出たのか、ほとんど私は見当がつかないのでございます。いま申し上げましたように、この農業開発会議というものは相当なエキスパートも入れてことしの十月以降に開きたいと、こう考えております。そこで、各国からそれぞれの担当官あるいはそれぞれのエキスパートが見えるだろうと思います。そこであらゆる面からこれを論議して、そしてだんだんと構想が固まっていくことと思います。その結果、それぞれのプロジェクトに対してどれくらいのタイミングでどれくらいの資金量というものが要るかというようなことも明らかになってくる。しかる上に初めてその所要資金というものをどういうふうにして調達するかということが論議されまして、そうしていよいよ最終の結論が得られると思うのであります。そういう経過を一切飛び越えて、アジア開銀の基金としてそこに浮かび上がってきたのは一体どういうわけか、どうも私どもよくわからないのでございますが、これはあるいはそういう農業開発基金というようなものに落ちつくか、それと会そうでないメコン川の開発といったようなああいう方式になるか、あるいはその他の適当な方式を採用することになるか、一切それはわからない。でありますから、その問題は全然政府としては責任のない記事でございます。
  271. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、まだ大臣はこういう問題に対しては自分としてははっきりしていたいのだと、これからの問題だと、こういうことですがね。同じようなことを三木通産相も東南アジア閣僚会議が済んだあとで述べていらっしゃるように新聞記事で見たのですが、大体政府としての構想ではないのですか。外務大臣としてのお考え……。
  272. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 少なくとも大蔵大臣もあまり承知していないだろうと思います。
  273. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 大体アジアの問題をアメリカ日本が話すということ、それだけでもおかしいのですよ。これは。アジアの問題はアジアで話すべきだと、そういうふうに考えております。いま農業問題につきましてはアジア諸国で農業会議をやろう、こういうことでありまするから、すべて農業会議の場において今後どういうふうな開発計画を立てるか、またそのための手段をどうするかということをきむべきものである。それを日本がこうひとりで発想してみたり、あるいは日米の間でそういうものを話し合ってみたり、そういう性質のものじゃない。したがって、新聞に何かあるというが、閣僚の中にはこういう構想がいいだろうというような個人的な見解を持っている人はあるであろうと思います。そういうのがちょいちょい新聞なんかに顔を出す、こういうことかと思います。
  274. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  275. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  276. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。ジョンソン声明が出たあとで、ジョンソンのブラック特別補佐官が日本に来て、福田大蔵大臣に会って、日米共同投資について、アジア開発銀行には日米それぞれ二億ドルを、特別開発基金に同じく一億ドルずつ提供すること、またメコン川ナムグム・ダムの水門建設投資二千七百万ドルのうち半分はアメリカが負担し、四分の一、七百万ドルは日本が負担するという具体的提案を行なった、これに対して福田大蔵大臣は最大の努力をする、こういうふうに表明したと伝えられています。いまの農業開発基金、直接にはそれじゃないのですが、こういう話し合いがやっぱりこのブラック特別補佐官との間に行なわれたというように伝えられておるのですが、大蔵大臣はブラックさんにお会いになって、こういうお話をされたのじゃないですか。
  277. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 昨年のいつでしたか、日米経済委員会よりはあとの段階だと思いますが、ブラック顧問と会いました。そしてブラック顧問は、アメリカアジア銀行ができればアジア銀行に対して一億ドルを信託する用意がある、日本も協力したらどうだという話がありまして、それで私は、日本の財政状況からなかなかこれは簡単にはいかぬ問題だ、こういうふうに答えておいたのですが、それっきりになっています。あとまたどうしたというような話は聞いておりません。ちょうど一年ぐらいたっております。  それから、ナムグム・ダムの建設につきましては、これはブラックからも話があったかどうかちょっと忘れましたが、その前からメコン開発ということで国際的に話題になっている問題でありますから、メコン開発計画日本も協力すると、こういうたてまえをとっておりますので、金は忘れましたが、何百万ドルでありましたか、日本はこれに拠出をするということになったわけであります。
  278. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、この業務内容のことについて若干お伺いしますけれども、アジア開発銀行と、名前が銀行になっておりますので、融資の面だけであるかと思ったら、そうじゃなしに、いろいろと事業の立案あるいは準備、技術援助、こういうものも含まれておるように思うわけです。ですから、この協定の第二条の任務のところに出ております第二項と第三項の点について、これは事務当局でもいいですが、説明をしていただきたいと思うんです。
  279. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) アジア開発銀行の業務内容といたしまして、任務が二条にございますが、その任務を受けまして、十一条あるいは二十一条にやや具体的な活動範囲を規定しております。そのおもなるものはもちろん直接貸し付けでございまして、域内低開発加盟国に対しまして、その企業に直接貸し付けを行なう、これが中心になるわけでございますが、そのほかに企業の株式あるいは持ち分への投資もできますし、あるいは貸し付けの保証もできることになっております。また、先ほどちょっと先生がお触れになりました技術援助というものもこれはできることになっておりますし、証券を発行いたしますときの引き受けあるいは保証ということもできるように相なっております。
  280. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、資金の融資だけでなくて、やはり開発に関する事業計画、またそれを実施するためのいろいろの技術援助と、こういうようなことも含まれるわけですね。
  281. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) さようでございます。
  282. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしたら、先ほどから質問がありましたアフリカ銀行とか米州銀行の業務内容とはどういう点が違うんですか。
  283. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) おおむね同様でございまして、そういった地域開発銀行の活動を規定しておりまするいろんな条項あるいは活動状況を参酌いたしまして、決定したものでございます。
  284. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、まあ銀行ですから、やはり企業体である関係上、採算ということがまた問題になってくるんだと思うんですが、どうしてもこういった低開発の諸国に対する融資というものは、非常に金利も低いし、また長期間でもあろうかと、こういうふうに思うわけですがね。そういう点から考慮して、このアジア開発銀行の企業体としての採算性が成り立つのかどうか、ここら辺のことをひとつ答えてください。
  285. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) アジア開銀が発足いたしますときは、大体規模といたしましては百五十人見当、いろんな雑役までも含めましてそういった程度を考えております。そのうちで非常に業務に直接関係するのは大体五十人程度ではなかろうかという発足時の状況を勘案いたしまして、片方、総出資額は十億ドルでございますが、これを五年間にわたりまして、しかもその半額を出資いたしまして、またさらにその半額は自国通貨でいいわけでございますので、そういった収入の面と支出の面を大ざっぱに勘案いたしまして、非常に大ざっぱな推計でございますけれども、また本格的なものではございませんが、一部では初年度におきまして大体収入は三百万ドルくらいではなかろうか、支出も大体三百万ドル、人件費が主たるものでございますが、そうではなかろうかという推算をいたしております。これが二年度、三年度になってまいりますと、収入が逐次払い込みが行なわれますので、その運用益増加してまいる関係から、採算が好転してまいるという試算を一応しているものはございます。
  286. 中尾辰義

    中尾辰義君 説明聞きますと、そういうわけですけれども、どうも低開発国援助という性質上、将来また低開発諸国がいろんな無理な、金利の安い長期間の条件で申し込んでくる、そういうことがどんどん全面的に出てまいりますというと、域外の諸国のアジア開発銀行に対する協力というものがだんだん薄らいでくるのじゃなかろうかということも考慮されるわけなんですがね。そういう点について心配はないのかどうか、これはまあ大蔵大臣にひとつ聞きたいです。
  287. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 十億ドルの資本でございます。この資本が運用の種になるわけでございます。したがいまして、その運用は相当低利でいたしましても、経費をカバーする。もっとも貸し倒れというようなこともなしとしませんが、そういうもののカバー、そういうものも考えながら収支計画を立てる、こういうことになります。
  288. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、業務の中には通常業務と特別業務と、こういうふうに分けられておりますね。この特別基金ということについてひとつ説明してください。それと信託基金の運営等はどうなるか、またその融資の対象はどういうふうになっているのか、この点について。
  289. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 特別基金と申します場合は、二種類考えていいのではないかというふうに思っております。一つは先ほど来から話題になっております信託基金でございますが、もう一つは特別に設定するということに相なっております特別基金でございます。十九条に規定してあるものでございます。第一の信託基金のほうは、これは信託者と受託者の間の契約によりまして、その目的、条件、使用方法等について具体的に取りきめが行なわれまして使用されるということに相なるわけでございますが、第二の特別基金の点につきましては、これは払い込み資本の一割までを限度といたしまして、域内国が必要といたします社会開発等に充てるためにソフトローンを行なうというときに、こういうローンに充てるものを一割を限度としてなし得るということにしておりますのが特別基金でございます。
  290. 中尾辰義

    中尾辰義君 そのソフトローンというのはどういう程度の条件になるわけですか。
  291. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) ソフトローンというものは、実ははっきりした定義はないのでございますが、通念的に考えられておりますのは、いろいろ普通の世銀あたりで融資いたしますよりもさらにややゆるい条件、つまり、低利であるとか期間が長いとかいうようなゆるい条件を普通さしていうのが通例でございます。
  292. 中尾辰義

    中尾辰義君 わかりました。
  293. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 関連して一言聞いておきたいのですが、信託基金には限度があるのですか、限度がないのですか。
  294. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) 限度はございません。先ほどあると申しましたのは、第二のほうの特別基金の話でございます。これが払い込み済み資本の一割を限度として行なうというのが特別基金でございます。
  295. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、信託基金には限度がないとするならば、今後アメリカの資本が限度なしにアジア開発銀行に信託基金の形で入ってきて、そしてアメリカの指導力というものが絶大なものになるということじゃないですか。
  296. 村井七郎

    政府委員村井七郎君) このアジア開発銀行の設立の趣旨は、やはりアジア的な性格を持たせる必要があるということが述べられておりますので、かりに信託基金の金額につきまして各国から申し込みがございましても、そういった事情を勘案いたしまして、これを受託するかどうかはもちろん銀行の裁決、裁量によることでございますので、ここら辺は行き過ぎがないように行なわれるであろうというふうに考えております。
  297. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あしたにします。
  298. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 両案に対する質疑は、きょうはこの程度にとどめます。  なお、次回の委員会は明二十五日(土曜日)午後一時よりとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十四分散会      —————・—————