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1966-04-19 第51回国会 参議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十九日(火曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員の異動  四月十五日     辞任         補欠選任      野溝  勝君     大河原一次君  四月十九日     辞任         補欠選任      大河原一次君     野溝  勝君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 青柳 秀夫君                 日高 広為君                 藤田 正明君                 成瀬 幡治君                 中尾 辰義君     委 員                 伊藤 五郎君                 栗原 祐幸君                 木暮武太夫君                 西郷吉之助君                 西田 信一君                 木村禧八郎君                 戸田 菊雄君                 北條  浩君                 瓜生  清君                 須藤 五郎君                 小林  章君    政府委員        大蔵政務次官   竹中 恒夫君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    参考人        保険審議会委員  河野 通一君        上智大学教授   鈴木 竹雄君        日本損害保険協        会会長      高木 幹夫君     —————————————   本日の会議に付した案件地震保険に関する法律案内閣送付予備審  査) ○地震保険特別会計法案内閣送付予備審  査)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  それでは、地震保険に関する法律案及び地震保険特別会計法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  本日は、まず参考人より御意見を聴取いたすことになっております。  御出席をいただいております参考人の方は、保険審議会委員河野通一君、上智大学教授鈴木竹雄君及び日本損害保険協会会長高木幹夫君であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。御存じのとおり、ただいま議題となっております両法案は、非常に重要な案件であると思いますので、ここに学識経験を有せられます皆さま方参考人として御出席を願いまして、本案についての御意見を拝聴いたしまして、この法律案審査に資する所存でございますので、両案に対しまして、ひとつ忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いを申し上げる次第でございます。  なお、議事の進め方でございますが、初めに大体二十分程度参考人の御意見の開陳をお願いいたしまして、それが終わりました後に各委員の質疑に移りたいと存ずる次第でございます。  きょうは御多用中のところ、ほんとうに御出席いただきましてありがとうございました。よろしくお願いいたします。  それでは、まず高木参考人にお願いいたします。
  3. 高木幹夫

    参考人高木幹夫君) 私は、たいへんからだが悪うございますし、声も悪いので、お聞き取りにくいかと思いますが、御容赦願います。  ただいま御紹介にあずかりました損害保険協会会長をいたしております高木でございますが、本日は、目下当委員会で御審議中の地震保険法案及び地震保険特別会計法案について意見を述べるようにということでございますので、しばらくの間お時間をちょうだいいたします。  さて、御承知のとおり、わが国は世界一の地震国であるということは、いまさら申し上げるまでもないのでございますが、そこで地震保険という問題、これが、そういう世界一の地震国であるだけに、私どもといたしましてもたいへんな問題であるということはかねがね考えておったのでございますが、なお、私ども損害保険事業者といたしましては、火災海上自動車航空機の衝突や墜落、傷害、第三者に対する賠償、それから工場備えつけの機械、それから原子力等々、各種保険を営んでおりますが、遺憾ながら建物動産に関する地震保険は、普遍的な引き受けはいままでいたしておりません。  もっとも、民営損害保険事業者といたしましては、関東大震災あと地震保険可能性についてわれわれの先輩が研究したこともあったそうでございます。また、政府におかれましても、幾たびか地震保険実施方策を検討されたのでありますが、かつて戦時中に、戦時特殊損害保険法に基づきまして、国が損失補償をする方式で行なわれた以外は、わが国においては普遍的な地震保険実施は見られなかったのでございます。  諸外国における地震発生状況被害規模は、それぞれ国によって違いますし、また地震保険実施態様も違っておりまするが、やはり必ずしも十分発達しているとは言えないのでありまして、この保険実施上の困難性は、ひとりわが国のみではないのでございます。たとえば、一九六四年の三月にアラスカにおいて大地震があったことは、皆さまのまだ記憶に新しいところだと存じますが、その損害額は、伝えられるところによりますと、約七億ドルといわれているのに対しまして、しかも保険がよく発達しているといわれるアメリカにおいてすら、地震保険保険料が高いためと、また保険会社自身としてもこの地震保険引き受けに消極的であるために、あまりこの地震保険というものが利用されておりませず、保険金支払いはほとんどなかったというふうに承知しております。  なぜこのように地震保険がむずかしいかと申しますると、たとえば火災保険ならば、大数の法則に基づいて年々の損害率をおおよそ把握できるのに反しまして、地震保険の場合は、建物被害を及ぼすような地震が全く起こらない年が何年も続くかと思いますると、連続して大きな地震が起こることもあるといったぐあいに、発生の頻度がはっきりわからないとか、あるいは地震による損害の度合いというものも統計的に把握しがたい事情にあるとか、その他学問的にもまだまだわれわれに、つまり人間にわからない面がたくさんあるのでございます。損害規模にいたしましても、かつての関東大震災のような損害がいつ起こるかわからない、あるいはそれ以上の地震発生しないという保証もないのでございまして、このように地震というものは保険制度に乗せるには非常な困難性を有しているのであります。  たとえば関東大震災のとき、罹災した建物動産のうち火災保険がつけられていたものの保険金額は十五億九千万円であったといわれておりますが、これに対して当時の保険会社資産総額はわずかに二億三千万円にすぎませんでした。したがって、もしかりに当時保険会社保険金支払い義務があったといたしますれば、大部分の保険会社は当然破産していたのであります。  このようなことは現在といえどもかわりはないのでございます。損害保険会社といたしましては、前にも申し上げましたとおり、火災海上、運送、自動車航空機その他各種保険責任を負っておりますから、地震保険だけのために全財産を投げ出すなどということはとうてい不可能なことでございますが、いまかりに全財産を投げ出したとしても、地震保険保険金支払い切れない事態も生ずる可能性が十分あるのでございます。したがって、民間保険会社の力のみをもってしてはとうてい処理し切れないというのが従来の研究の結論であったわけであります。  このように、保険金支払いの全くない年が何年も続くかと思うと、いざ大きな地震が起こると、保険会社資力では支払い切れないことがあるというわけでございますから、地震保険というものは、何百年、あるいはそれ以上のきわめて長い年月を通じて収支計算と申しますかをしなければならない性格のものでありまして、このようなことは、単年度、一年度に決算をしなければならない民間企業ベースに合わないということにもなるわけでございます。  このようなことから、今日に至るまで普遍的な地震保険がつくり得なかったのでありますが、損害保険業界としましても決して無関心であったわけでないことは、さきにも申し上げたとおりでございます。最近におきましても、実は昭和三十八年から約一年半にわたって、何とか地震保険を実現させたいものと研究をし直しまして、基礎的資料の検討をほぼ終わり、具体的な保険設計に取りかかろうという段階まで実は達していたのでございます。  ちょうどそのときにあの新潟地震発生を見ましたわけでありまして、これを契機として、衆議院大蔵委員会は「速やかに地震保険等制度確立を根本的に検討し、天災国ともいうべきわが国損害保険制度の一層の整備充実をはかるべきである」という附帯決議をされたのであります。続いて、大蔵大臣は、保険審議会に対しまして、その具体的方策を諮問され、保険審議会は昨年の四月大蔵大臣答申されたのでございます。政府におかれましても、その答申を受けて、目下当委員会において御審議中の法案を御提出になったわけでございます。  私ども民間業者といたしましては、政府の再保険措置等うしろだて、バックアップをたよりに地震保険を始めるのでございますが、前にも申しましたとおり、私どもは従来から営んでおります各種保険契約上、大きな保険責任を負担しております。地震保険実施したために万が一にもそれらの契約者方々に御迷惑を及ぼすような事態になって、国民生活の安定あるいはわが国産業経済維持発展に影響することになっては、これはたいへんなのでございます。私どもは、そのような意味において、地震保険という未知の保険を取り扱うことには大きな責任を感じております。いまでも実は非常な不安の念にかられながら、何とか社会の要請にこたえなければならぬと意を決しまして、実施に踏み切ったというのが実情でございます。  政府の再保険によりまして、民間保険会社として一事故についての責任額限度が設けられておりまするが、本保険創設後早々に大地震が続けて起こることもあり得ましょう。また、地震による被害の大きさによっては、経済界も相当な困乱を来たし、保険会社として資産を直ちに換金することが困難なことも起こったり、またそれ以外種々好ましくない情勢になることもあり得ようかと存じます。そのような場合には、保険契約者全般利益保護に欠けるような事態にならないように、政府におかれましては、この法律の趣旨を十分おくみ取りくださいまして、この法律の運用にあたっては慎重に御配慮くださるようお願い申し上げる次第でございます。  このたび創設いたされます地震保険は、すでに御承知のとおり、現在私どもが取り扱っておりまする住宅総合保険及び店舗——店でございます、店舗総合保険に自動的に付帯させる方式で、地震及び津波、噴火による火災、損壊、埋没及び流失の危険を担保しようとするものでございます。これはまことに画期的な保険でございまするが、一方、併用住宅を含む住宅及び家財に限ること、経済的全損を含む全損のみの担保であって分損に対しまして保険金を支払わないこと、支払い保険金も、親契約、つまりもとの契約でございます、親契約である住宅総合保険または店舗総合保険保険金額の三割以上は支払わないこと、しかも建物については九十万円、家財については六十万円で打ち切りであることなど、この保険内容につきましてはいろいろと御不満な点も多かろうと存ずるのでありまするが、これはいままでとうていわれわれの手におえないと考えておった地震保険をこれから発足するという最初段階でございますので、こういう御不満な点も多いと存じまするが、この点はひとつ御了承を願いたいと思うのであります。  しかし、何度も繰り返し申し上げたように、なかなかむずかしい問題をかかえている保険でございます。私どもといたしましては、数百年という長い年月をかけて収支相償う保険制度を樹立したいというたてまえで、できるだけ純保険料率を低いものとするよう考えておりまするし、経費にいたしましても極力これを切り詰めまして、全体の保険料をなるべく安くするようにする所存でございまして、決してこの地震保険からの利益を得ようなどということは毛頭思ってもおらないのであります。また、思ってもできない事柄でございます。逆に、場合によっては、保険会社として配当ができなくなるとか、それ以上の悪い事態も起こり得ることを覚悟して実施に踏み切るのでございます。  内容的には、先ほども申し上げましたとおり、何かと不十分な面がまだございますが、保険会社として今後十分努力を重ねまして、資力を中心とするその力がつきましたらば、だんだんと内容を充実していきたいと存じておりますので、どうかこの際、何十年来何度か研究が試みられながらも、ついに実現しなかったこの地震保険というものを、政府の御協力のもとに、どうか実施にこぎつけたいというところに意義をお認めくださいまして、本法案のすみやかな成立をおはかりくださいますようお願い申し上げたいのでございます。  私どもといたしましては、この保険実施するにあたりましては、この保険がいままでの保険と異なったいろいろの制限、制約がついておりますことにかんがみまして、保険会社従業員代理店には十分教育を施し、取り扱いに万遺漏なきを期すると同時に、契約者方々に対しても、種々の方法によりこの保険内容を周知徹底し、十分御納得がいった上、大いに利用していただくよう普及につとめたいと存じておる次第でございます。また、異常災害発生に際しましては、保険金を公平かつ迅速に支払うために、あらかじめわかりやすく使いやすい損害査定基準を定めておき、さらに各社が共同査定を行なうための組織、手順をあらかじめ策定しておくなど、使命速成に万全を期する所存でありますので、皆さまのあたたかい御理解、御支援をお願いいたす次第でございます。  以上をもちまして、簡単でございますが、本法案に対する私の意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  4. 徳永正利

    委員長徳永正利君) どうもありがとうこざいました。  速記をとめて。   〔速記中止
  5. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  高木参考人には、ほんとうに、おからだの悪い中をまげて御出席をいただきまして、御供述をありがとうございました。ありがたくお礼申し上げます。
  6. 高木幹夫

    参考人高木幹夫君) おことば恐縮いたします。
  7. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それでは、続きまして、鈴木参考人からの御意見を聴取いたしたいと思います。鈴木参考人
  8. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) では、御指名によりまして、意見を申し述べさせていただきます。  私は、保険審議会委員をしております。また、保険審議会におきまして地震保険研究いたします小委員会委員もいたしております。今回提出されておりまする法案は、この保険審議会答申をほとんど全く取り入れたものでございます。したがって、委員会でこのような内容答申に達しましたいきさつ、その間における私の考え方を織りまぜて、申し上げたいと存じます。  この間画保険審議会に提示されましたのは、一昨年の七月新潟地震の直後でございました。ちょうど地震の当時でございますが、保険業法の一部改正を審議中であった衆議院大蔵委員会が、すみやかに地震保険等制度確立を検討すべき旨の附帯決議を行なわれましたことにうながされたものであったと思われるのであります。地震保険制度化することのきわめてむずかしいものであることは、ただいま高木損保会長の言われたとおりでございまして、現在の火災保険の普通の場合、つまり普通保険約款でございますが、その中にはいわゆる地震約款というものを置きまして、地震による直接間接の損害については保険会社は免責されるということが定められているわけであります。  しかしながら、この地震約款の効力が関東大震災の際に大問題になりまして、そのような約款は無効であり、保険会社責任をしょわなければならないんだという主張が強く一方においてなされたのでございますが、法律上の解釈といたしましては、やはり地震約款も有効なものであると、この点は大正十五年の大審院の判例によって明らかにされております。そうしてまた、学説もこれを支持しているわけであります。その後もこの種の判例が繰り返されておりまして、今日において地震約款の有効なことについては、法律論としてはほとんど争いがないと思われるのでございます。しかしながら、関東大震災の場合におきましても、このように法律上は地震約款が無効であるとされながらも、やはり一種の政治的あるいは社会的な妥協といたしまして、若干の見舞い金保険会社によって出されたのでありまして、それがその後もあとを引きまして、地震たびごとに、法律上は保険会社責任がないにもかかわらず、ある程度のものを出すべしというような声が常に聞かれるのでございます。先ほど申し上げました衆議院大蔵委員会附帯決議の中にも、保険会社が何らかの措置を講ずるように指導を行なうべき旨の要望がなされております。その結果、保険会社は若干のものを出したということでございます。  しかし、このような形ははなはだ非法律的な解決でございます。そうして、それによって保険会社が出します金というふうなものもきわめてわずかなものにすぎないのでありまして、とうてい地震による損害というものをてん補するに足りないということは申すまでもないわけであります。言いかえれば、きわめて、本来の目的から申しますと、意味の少ないものでございます。したがって、私もかねがね地震保険のようなものが普遍的な制度として何とかできないものであろうかというふうなことを考えてはおりました。もちろん、現在におきましても、火災保険地震の場合においても責任を負担するという特約をつけるということは可能であり、現にそのような保険もとられてはいるのでありまするけれども、これはきわめて部分的なものでございまして、金額もきわめて少なく、一般的な保険というものにははなはだ適しないものでございます。   〔委員長退席理事藤田正明君着席〕 したがって、そういう意味で普遍的な地震保険というものができることが望ましいと考えておりましたので、先ほど申し上げたように、国会の御希望というものが基礎になって、そして保険審議会でその問題が取り上げられましたことは、私としてもきわめて妥当なものであると考えたわけでございます。  しかしながら、このような地震保険というものをやるにつきまして、それがきわめてむずかしいものであるということは言うまでもございません。第一に、国営でやるか民営でやるかというふうなことが問題に当然なったわけでございます。そのときに、民営という形が最初にわりあいに強く出てきたわけでございます。しかしながら、先ほど高木会長も申しましたように、損保会社というものは広く名神の保険を営んでおるわけでございまして、そのようないわば本来やってまいりましたところの仕事地震保険を始めたことによりまして危うき状態におちいっては、これはいわば元も子もなくなると申しますか、たいへんなことだとまあ私も考えたわけでございまして、したがって、審議会の席上損保会社のほうからやるというふうな意向が示されましたのでございますが、あるいは先ほど申しました兄舞い金と同じように社会的ないしは政治的の圧力というふうなものが損保会社に働いて、そのような発言になったのではないかということを私自身おそれたのでございまして、そこでまあコンフィデンシャルな形で私は損保会社関係意見を聞いてみたのでございますが、先ほどお話のように、担保会社としては保険事業の公共的な性質というものを深く自覚をして、必要な地震保険というものを自分の力でできるだけのものとして実現をしたいという強い希望を持っていることを知りましたので、それならば民営というふうなもので前向きの姿勢で考えていくということに私の意見もなってきたわけでございます。  しかしながら、民営でやると申しましても、もちろん民間だけでできることではございません。もしそうなりますれば、ほんとうにひさしを貸しておもやを取られてしまうというような重大な結果も起こるのでございますから、やはり国の支援というものがなければならない。したがって、民保会社のとりました保険というものを再保険する、それを国が引き受けるという形をとらざるを得ないというふうに思ったのであります。しかしながら、これは、いま私はまあ民営というものに国が支援をするというふうに申し上げましたけれども、逆に考えまするならば、国がやる仕事民保を使うのだという考え方もできるかと思うのであります。すなわち、国が直接に乗り出してまいりますよりは、民保会社のいままでの機構、そしてまた持っております力というものを利用するのだと、第一義的にはそれを利用していくのだというふうに考えることもできるのではないかと思うわけであります。  で、かようにいたしまして、一義的には民保が取り扱いますけれども、国がこれを再保するということになります。しかし、この問題を考えてまいります場合に一番重大なことは、先ほどからもお話がありました地震危険というものの特殊性であります。あるいは地震損害特殊性というものでございます。これはきわめて大きなものになる可能性があるわけであって、たとえ国の直営でやる場合におきましても、その損害の全額を負担するということがはたして可能かどうかということが疑問視されるだろうと思います。その上に、たとえば非常に大きな家を持っている人、豊富な家財を持っている人の損害を、国が直接なりあるいは国がバックアップいたしました再保険というものでカバーするというふうなことは、これはやはり適当ではない。ある程度と申しますかのものをただカバーできれば、それでがまんするほかはないのではないかというふうに思われるわけであります。  そうしてまた、その問題は、他面におきまして保険料という問題にもつながってくるわけでありまして、もし保険金額が非常に高いということになれば、それに応じて保険料が高くなり、そういうふうな保険料の高いものを、生ずか生じないかわからない、ある意味においてはたいていだいじょうぶだろうと思っているような契約者が支払ってまで地震保険というものをつけるというふうなことはなかなか考えられないということになりますと、やはりある程度にそれを押えて、保険料が高くならないというふうにすることの一つのまた必要性も起こってくるわけでございます。  そのような観点から、この地震保険というものを制度化してまいりますことになりますと、きわめて複雑な形のものをとらざるを得ないということになるわけでありまして、すなわち、民保の力をあげて引き受け得る限度というものは三百億である。そうしてまた、政府がこれを再保にとるといたしましても、先ほど申しましたような考え方からいたしますと、やはり限度を国としても設けざるを得ないわけでありまして、それは民保を合わせて結局三千億というところで一応とめていこうというふうなことになります。  そうしてまた、保険にとります対象といたしましても、住宅及び家財というものがその対象として考えられてくるわけでございます。もちろん、工場のようなものも地震によって損害は受けるわけでございますが、そのようなものまではいま及ぶということはできない。そうして結局民生の安定というものをはかるということからいけば、やはり生活自身に直結したところで限るということが妥当であろうということになったわけでございます。  そうしてまた、それを独立の地震保険というふうなものにいたしませんで、火災保険に付帯させていくということが望ましいだろう。その場合におきまして、やはり住宅総合保険のものに地震保険を入れる、自動付帯と申しますけれども、その自動付帯というのは、結局総合保険の負担しております事故の中に地震を入れるということ、言いかえれば、約款の中に地震保険事故として加えるということなんでありまして、別に知らないうちに地震の危険までがその中に入ってしまうというのではない、一般の普通約款の中にそれが入り込んでいるというだけのことでございます。そうしてまた、それ以外の普通の火災保険の場合にも、これは欲すれば地震保険というものを任意につけることができると、そういう形にすることがいいだろう。  そうしてそのような形になりましたときに、地震保険のほうで払います額というものはやはり限定をせざるを得ないということになって、その結果として、結局主契約保険金額の十分の三、しかもそれは地震保険に付することのできる金額は、住宅のほうは三百万円、家財のほうは二百万円となるから、したがって、保険金を払われ得る限度というものは、住宅については九十万円、家財については六十万円、計百五十万円というところでとどまるということになったわけでございます。そうして国が再保をいたします場合におきましても、やはりその限度は国としては二千七百億円。したがって、両方合わせて三千億というところで頭打ちになるわけであって、それ以上に達した場合には削減ということを考えざるを得ないということになるわけであります。  このような形のものはいままでの保険にはなかったことでありまして、損保としてはきわめて新しいタイプのものがここででき上がることになるわけであります。しかし、このような非常に複雑な技術を使いますことも、いわばわりあいに短時日の間——もっとも損保会社におきまして相当以前から研究をしていたようでありますけれども保険審議会として比較的短時日の間にこのような技術を考え出してきたということは、相当よくやったんじゃないかというような感じもするわけでございます。  要するに、その他、全損の場合だけ責任を負担するようにしてございますけれども、これも分損のことを考えますと、なるほどしてはやりたいけれども、それは非常に評価が困難になってくるということ、できるだけ迅速に払うという必要から考えますると、こういうふうなものはその点に問題が多い。しかも、分損を含ませますと、また保険料が非常にふえてくるといったような問題も出てまいりまするので、一応分損をはずすということにしたわけでございます。  要するにいま申し上げましたように、この地震保険というものは相当不十分なような感じもするわけでございますけれども、しかし、やはり損保会社としてできるだけの力をそこへ吐き出させた結果というものがこういうものにとどまらざるを得ないという現状でございます。これは将来において、幸いに地震というふうなものがすぐに起こるようなことがなく、順調にこれが進んでまいりまするならば、もっと契約を改善をしていくということは可能であろうと思われるのでありますが、要するに、非常にむずかしい問題も、現在における解決としては、まずこのところにとどめざるを得ないだろうというのが私の感じでございます。  以上、私の意見を申し述べました。
  9. 藤田正明

    ○理事(藤田正明君) ありがとうございました。  質疑は後ほどということにいたしまして、次に、河野参考人より公述をお願いいたします。
  10. 河野通一

    参考人河野通一君) 御紹介にあずかりました河野でございます。はなはだ失礼でございますけれども、お許しを願って、すわったままで発言をさしていただきたいと思います。
  11. 藤田正明

    ○理事(藤田正明君) どうぞ。
  12. 河野通一

    参考人河野通一君) 私も、ただいま述べられた鈴木参考人と同様、保険審議会委員をいたしており、かつ地震保険制度審議するために設けられた小委員会にも関係いたしましたのでありますが、この制度に関する審議会意見は、昨年の四月に大蔵大臣に提出せられておるのであります。ただいま本委員会で御審議になっておられる法案は、この審議会意見を大体全部取り入れておられるようでありますので、法案自体については、私は全面的に賛意を表したいと存ずるのであります。  以下、若干の御意見を申し述べさしていただきたいと思うのでありますが、高木鈴木参考人のお述べになったところと若干重複をする点があるかとも存じますのですが、この点もあらかじめお許しをいただきたいと存ずるものであります。  先ほど高木さんからも申されたように、御承知のような地震国といわれる日本におきまして、この地震保険制度というものは実は非常に長い間の懸案であったのであります。にもかかわらず、いろいろむずかしい問題を含んでおりますために、今日まで実現を見るに至らなかった。もっとも、戦争中に臨時措置が行なわれたのでありますけれども、これは臨時のものでありまして、除外して考えますならば、地震保険制度というものは、そういったいろいろむずかしい問題を含んでおりますために、今日までいろいろ研究をされ、解決をはかられてまいったにもかかわらず、実現しなかったというものであります。この法案は、このきわめて重要ではあるが、またきわめてむずかしい問題を含んでいるこの地震保険制度に解決を与えようとするいわば画期的な企てだと私は思うのであります。また、このように非常に困難な問題を幾多蔵しており、かつ、ある場合にはまことに巨額にのぼる保険金支払いの負担を覚悟しなければならないこの制度の創設に、政府及び損害保険協会が踏み切られたことに対して、心から敬意を表する次第であります。と同時に、この法案がなるべく早く円満に成立いたしますことを、衷心から希望いたす次第であります。  次に、この制度について審議会において問題となりました諸点について、若干の御説明を申し上げたいと存じます。  まず、第一に問題となりましたのは、はたして地震危険というものが保険対象になるものであるかどうかということであります。御承知のように、地震というものは、いつ、どこで、どのような規模で起こるのかわからない、その上、損害ができたときにまことに巨大なものとなる可能性を包蔵いたしておりますために、保険数理にのりにくい、民間保険会社の力だけではとうてい処理できないものとして、今日まで実現に至らなかったものでありますから、もともとこれが不可能だということでありますならば、保険審議会といたしましても、その旨大蔵大臣に答えなければならないということであったのであります。結局、いろいろ論議をいたしました結果、種々の方策を講じますならば、保険制度にのせることも不可能ではないとの結論に達したのであります。というのは、実際に建物などに損害をもたらす程度の地震発生する頻度というものは、日本国じゅうを一つの単位として考えてみた場合には、おのずから一定の確率があるようでありますし、地震災害といえども、小規模地震でありますならば、民間損害保険会社の負担にたえ得ないというものではない、かように考えられるのであります。問題の根本は、ときに異常な巨大な損害をもたらすものをどういうふうにするかということが一点、それから、被保険者の保険料負担を適正にするということを考慮しながら、どのようにしてこれを普遍的な制度に組み入れるかという、この二点だと考えられるのであります。  しこうして、その方策と申しますのは、第一に、通常の企業ベースをこえた長い期間で収支を考えることのできる国が関与するということ、第二には、一つの地震によって起こる損害の過大集積を避けるということ、第三には、いわゆる逆選択を防止する措置をとるということ、この三点を前提として考えるならば、この地震保険制度というものは保険の中に組み入れることが可能であるという結論に到達した次第であります。  次に、この制度内容について問題となりました点を若干御説明申し上げてみたいと思います。  その第一は、国の関与する方式はどのようにしたらいいかという問題であります。先ほど鈴木参考人からも、これはやはり国営という形でやってはどうかという意見も論議されたのでありますけれども、やはりいまの場合におきましては、民営保険に対して国がそれを適当にバックアップするといいますか、サポートするという形がよかろうということになったのでありますが、国の関与のしかたには、御承知のように、先ほどちょっと申し上げました戦時中の戦時特殊損害保険法による地震保険のやり方があります。これは、この保険によって損害保険会社の受けた損失を国が補償するという方式であったのであります。このいわゆる損失補償方式は、ともすれば制度運営に関する合理的な配慮を欠きがちになるおそれがある。地震保険のように長期間で見なければ収支の判断のできないものを、一年を単位とする企業の損益計算とかみ合わせて損失補償制度に組み入れることは、まことに困難ではなかろうかと考えられたのであります。また、現在、原子力損害の賠償に関する法律というものができておりまして、この制度もいろいろ検討いたしたのでありますが、この制度は、保険金額を上回る大損害が生じた場合に国が何らかの援助をするというものでありまして、大体において定められた保険金額を上回るような損害は生じないことの前提に立ちまして、万々一これをこえるような損害が生じた場合の国の措置としては、あらかじめ具体的な方式は定められていないのでありますから、このような制度地震災害に対して採用することは不適当であると考えたのであります。また、大災害が起こった場合の保険会社担保力の不足を国が融資をして補完をする方式はどうであろうかということも検討いたしました。そもそも、保険会社担保力を補う方式として、いかに長期でありかつ低利の融資をいたしたといたしましても、借り入れ金による保険会社の負担が損害保険事業全体の運営を圧迫し、将来にわたってわが国損保の発展を阻害するおそれがあると認められたのであります。結局、支払い保険金総額が一定金額以内の場合は民間保険会社の負担とし、これをこえる場合は国の再保険によってまかなうという、いわゆる超過損害額保険方式が最も適当であるという結論に達した次第であります。もっとも、このような再保険方式のもとにおいて、民間保険会社の負担部分の範囲内におきましても、その資産の流動化が容易にできないという場合も考えられますので、そういった場合におきましては政府において資金的な融資のあっせん等の措置も必要になるということも考えたのであります。  次に、第二に問題になりましたのは、保険金額の削減の問題であります。これは先ほど鈴木参考人からも述べられたところでありますが、この保険は既存の家計保険に付帯することとなるのでありますが、この場合主契約の全額はとうてい支払うことができないと認められるのであります。一定率の支払い割合を設けることは、まことにやむを得ないと思うのであります。しかしながら、かりにそれを低く定めたところで、異常に巨大な災害が発生しないということは、これは限らないのでありますから、その場合に備えてあらかじめ負担の限度を定めておき、このような限度を越える超異常の災害が生じた場合には、損害の総額とその限度額との割合に応じて、個々の契約に基づく支払い保険金を削減するという制度、つまり支払い保険金総額の頭打ちの制度を考えることがどうしても必要となったのであります。この削減ないし頭打ちの考え方につきましては、異常な、また巨大な損害を生じた場合にこそ救済の実効が発揮されるのではないか、したがって、そういったものを削減するということは全く矛盾ではないかという御意見や、契約者にとって保険の眼目である受け取り保険金が削減されるということは、契約のときには納得できても罹災時には納得しがたいこととなる、また保険者側にとっては不測の事態を生ずるおそれがあるといったようなこと、また契約者側において公平の原則に反する結果になるではないかといったような御意見もあったのであります。しかしながら、保険会社においても、また政府においても、この保険のための負担にはおのずから限界があるということは考えなければなりません。したがいまして、こういう制度は決して好ましいことではありませんけれども、やむを得ないという結論に達したのであります。  そのように、この制度保険制度としてはまことに異例なものであると思います。したがいまして、その限度はできるだけ高くするように要望いたしたのでありますが、今回の案を拝見いたしますと、この点の手当てが一応十分に行なわれているように認められますので、まことにけっこうだと存じている次第であります。  第三には、この際地震災害とともに台風などによる風水害を含む天災保険を考えてはどうかという点であります。わが国地震のほか台風等にも常時悩まされていることは御承知のとおりであります。地震保険を行なうのであれば、同時に風水害保険もこの中に組み入れてはどうかという意見があったのでありますが、風水害は台風の進路あるいは土地の高低などの関係できわめて地域的特性がある、またいつ、どこに襲来するかの予測がかなり確実にできるといったような点から、これを保険制度にのせることは地震保険以上にきわめて困難であるので、一応今回の案からは除外をしたほうがいいというふうな考えになったのでありますが、なお今後その問題の可否等については検討を続けていただきたいということになったのであります。  そのほか、先ほど来両参考人からも申し述べられたとおり、支払い保険金の額が建物については九十万円、家財については六十万円、計百五十万円が限度であるという点、支払い割合が主契約の三〇%であるという点など、他の民営損害保険に比べますと異例というのでありますか、はなはだもの足りない点も多々あろうかと存ずるのでありますが、限られた負担力の中で本質的に問題の多い地震危険負担、担保ということを保険のシステムの上にのせるということを考えた場合には、これが少なくとも現段階では精一ぱいのところではなかったかと考えた次第であります。  以上、この制度に関しまして保険審議会審議の過程で問題となった点を、若干御説明申し上げたのでありますが、以上申し上げましたところからおわかり願えるとおり、この制度にはいろいろむずかしい問題が含まれておるのであります。  第一に、この制度保険制度に組み入れるについては本質的に困難な問題が生ずることはまことにやむを得なかったのであります。したがって、この制度がいろいろの点で不徹底、つまり徹底を欠き、保険制度として各般の制約を受けることになったのであります。たとえば、先ほど申し上げましたとおり保険金支払い限度にいたしましても、被害者の立場からいたしますと、もっと高額の保険金支払いが望ましいのでありましょう。しかし、それは直ちに政府及び保険会社保険金支払いの負担の増大を来たすでありましょうし、また被保険者の保険料負担を増大させることになるでありましょう。同じような問題は、保険料率についても、また異常、巨大の災害の場合の保険金削減の問題についても同様にあるのであります。  第二に、この制度わが国としては初めての画期的な大事業だと思うのであります。したがって、この制度が発足の当初から理想的なもの、あるいは完全無欠なものでなくてはならないということは、なかなか申しにくいのではないかと思うのであります。したがって、現実的に可能な案で発足をはかるのがこの際としては最も肝要なことなのではないかと思われます。しかしながら、われわれは末長くこれで満足すべきではないと思うのでありまして、国民生活の態様とか、あるいは生活水準の推移、また国の財政力や、あるいは保険会社担保力の増大等をよく考え、またこの制度実施の経験などを十分に生かしていただいて、今後この制度内容を一そういいものにし、また充実をしていって、社会、国民の要請に一そう沿うようにつとむべきだと考えるのであります。  以上で私の意見開陳を終わらしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  13. 藤田正明

    ○理事(藤田正明君) ありがとうございました。  これより質疑に入ります。参考人各位に対して質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  14. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 鈴木さん、ちょっと先ほど中座しまして聞き漏らしたかもわかりませんですが、今度の法案で先生が、ここは不合理な点だ、ここが不備だと、こういうふうに思われる点がありましたら、聞かしていただきたいと思います。
  15. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) 一面からだけいえば、不備ということも申せましょう。たとえば、河野さんのおっしゃいましたように、支払われる保険金額が少ないといったような点ですね。しかし、他面から申しますと、これを非常に高めることはほかに大きな不備を生ずることになるわけでございますから、そういうかね合いの問題として考えましたときは、まずやむを得ないという結果になるのじゃないかと思うのでございます。
  16. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いろいろな点あるけれども、やむを得ないというお考えですか、これが最上の法案だというふうにお考えですか。
  17. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) ですから、最上の案ということは、何といいますか、ほかのものを抜きにして理想を言えと言われれば、もっと最上はあるだろうと思いますけれども、現実の問題として私はこれが可能な一番いい案じゃないかという気がいたします。
  18. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうですか。この法案見まして、私はやはり一番中心問題になるのは全損かどうか、この点が非常にむずかしいと思うのですね。これは政府に対する質問になると思うのですが、日本の家屋は大体木造が非常に多いと思うのです。木造が全損するということですね、これは柱一本残っても、傾いても全損でないという認定になれば、おそらく全損ということはあり得ない。関東大震災のとき私は東京に住んでおりましたけれども、もう家の中ですら立って歩けないほどの地震でしたけれども、家は倒れなかったわけです。それで、東京じゅうでもおそらく倒れた家はごく少ないと思うのです。あれは火災で焼けたわけですね。そうすると、今度の法案にきめられておる全損というのは、物理的全損、経済的全損ということになるのですが、全損という場合ですと、案外被害がその保険対象になるものが少なくなるのじゃないかという感じがするわけなんですよ。そこで、全損というものに対する先生の御見解ですね、それをひとつ伺っておきたいと思います。
  19. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) 私は、そのものの経済的な、本来の経済的な機能というものが損失をすることが、それが全損だと思うのです。したがって、たとえば家が焼けまして、そうして焼けあとにいろいろなものが残りましても、それはやはり全損であることには変わりはないと思います。したがって、いまおっしゃいましたように、柱が幾つ立っていたとかなんとかいったって、家としてそれを利用できないという形になりますことはイコール全損であるというふうに、少なくとも一般になるのじゃないか。それで、経済的全損というものを含む形を明らかにしておりますから、なおさらその点については心配はないのじゃないかという感じを受けますけれども
  20. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、保険審議会審議の過程で、家がすっかり倒れてしまって、ぺちゃんこになってしまえば、これは最も簡単だと思うのですが、それが傾いて残っておる、形としては傾いた家が残っておる。しかし、これを住む家にするためには、一ぺんこわしてしまって、そうしてまた建て直さなきゃならぬ。そうすると、こわすのに金がかかって、建てるのに金がかかって、もうぺしゃんこに倒れてしまったほうがかえって経済的に簡単なんだ。よけい金がかかるのに、半分傾いたもので半分建っているために、全損と認められないで、保険金もらえない。この法案の中には半壊という問題が入っていないわけですね。すべて全損となっているわけです。だから、その全損という認定が非常にむずかしいと思うのですが、先生のいまの意見ですと、住むにたえない程度になったものは全損だという御解釈だと思うのですが、審議会の中でそういうふうにきまったのですか、それとも保険会社でそういうふうにきまったのですか、それを伺っておきたいのです。
  21. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) われわれとして別にそこのところ詰めて考えた、議論した——とにかくだいぶ前のことになりますし、私も記憶がはっきりしておりませんけれども、そういうことなかっただろうと思うのですけれども、私は当然そういうことだろうと思うのでございますけれども、たとえば、ですから、家のうち半分だけが一番ひどい場合は何というのですか、簡単な場合は、屋根からかわらが落っこっちゃったとか、壁があるところだけ落ちたとかいうふうなものは、これはもちろん問題にならぬことは言うまでもございませんし、それから、家の半分はぴちんとしておったけれども、半分はいまもう住むこと、つまり家としてもう利用できないというふうな形になりますれば、その場合は片方残っておりますから、これは区別はできませんから、たいへんだということで、それは全損の中に入りません、その片方だけ完全に残っていれば。しかし、そうでなければ、いまおっしゃったようなときは、私は全損だろうと思うのでございますけれども、これはほかの方の御意見もあろうかと思います。
  22. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 鈴木先生個人の見解では困っちゃうのですよ。やはり審議会なりその権威あるところの判断で、必ず今後保険会社がそういう意見に従うとか、住むにたえないような程度に損害を受けた場合はそれを全損と認めるのだという、そういう方針がぐっと貫いていないと、問題が起こったとき、先生はそう言うけれども、ほかの人はそうじゃないということになると、実際被害を受けた人は困ってしまうわけなのです。  私どもこの法案を見たときに、非常に不備な点があると思うのです。この法案のねらい自体は、それには私たちも賛成してもいいと思っているのです。しかし、この法案をずっと審議していくと、不備の点が一ぱい出てくるわけです。そうすると、この法案は私は賛成することができないような感じがしてくるわけです。必ず最後にトラブルが起こってくる。それに対してはっきりした見解がないというと、これは政府に私は見解を求めなければならない問題だと思っていますけれども法案審議をなさった責任ある皆さんの意見もはっきり伺っておかないと困る。一体、河野さん、どうなのですか。   〔理事藤田正明君退席、委員長着席〕
  23. 河野通一

    参考人河野通一君) 基本的にはいま鈴木参考人から申されたとおりだと思うのでありますが、私はやはりこの問題は二つの点から考えなければならぬと思うのです。この考え方としては、一つは、物理的な全損でなくても経済的にその機能を果たし得ないということまで含めるべきだという点が一点と、もう一つは、ただいま須藤委員からおっしゃったとおり、半損といいますか、要するに半壊、分損ですね、これはてん補しないということになっておるわけでありますから、これはぼくはそうすべきだと思うのですけれども、そういう点から考えて、ある限界の中では私はできるだけ広く、物理的な考え方以外に経済的な考え方で広く考えるべきだというふうに考えております。この点は私は鈴木参考人と同じであるのみならず、審議会でも大体皆さんの意見はそういうことであったわけです。ただ、それではこういう場合には一体どうなるかと、こう言われますと、鈴木先生は別として、私どもはしろうとですから、柱が何本残ったらどうかと言われても、私には答えようがないので、この点はやはり大蔵事務当局、専門家である大蔵事務当局なり、あるいは損害保険会社の具体的な考え方をよくお確め願いたい。私どもがここでただ常識論で申し上げても、ほんとうにしろうとなんですから、常識論で言っていることはまことにそういう具体的な問題になったらたよりない話なんでございますから、これ以上のことはひとつお許しを願いたいと思います。
  24. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 しろうとだと逃げられてしまっては、全くこちらは困るのです。こちらはやはり、審議会意見政府は尊重してこの法律をつくったわけですから、審議会責任は重大だと思うのです。それならば、審議会に伺いたいのは、審議会はこの法案審議するときにあたって、建設省関係ですね、いわゆる専門家、これをお呼びになって、建設省の意見も徴されましたか、どうですか。
  25. 河野通一

    参考人河野通一君) そういうことはいたしておりません。いたしておりませんが、おことばを返すわけではありませんけれども、建設省にその問題を聞かないでも、私どもは大体損害保険会社がいままでそういう火災損害についていろいろのケースにぶつかっておりますから、それらの意見を聞いて、その意見に従うという意味ではなくて、それらの意見を聞いた上で私どもなりに一応の判断はいたしておるつもりでございます。いたしておりますけれども、いまお話がありましたように、柱が三本残ったらどうだと言われても、私どもは、あるいはまた柱三本ではいけないなら二本ではどうだということになりますと、それは私どもにはとても答えられないということを申し上げたのです。
  26. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあ経済全損の一つの標本として、見本として、新潟地震のときのアパートの倒壊という問題があると思うです。あのアパートは傾いたのですね。それでアパートは使い道がないというわけです。それで、あれをこわしてもう一ぺん建てかえなければならない。あれは経済的全損と、こういうふうに認めることができるという見解ですね。ところが、それでは、鉄筋コンクリートのアパートが傾いたら、これをこわさなければならないから、経済的全損で、全損の中に入れる。木造の建築が傾いたら、これもこわさなければならないということにおいては一緒なんです。みんなが縄で引っぱってもとへ起こして、釘をちょんちょんと打って、それでもとへ戻って住まえるというものではない。やはり木造の建築でも、傾いたら起こさなければならない。起こして建て直さなければならない。そうすると、コンクリートの建物と大差ないわけですね。金は多少、コンクリートをこわすのに金がかかるけれども、経済的全損という面でいうならば、木造建築も傾いたら経済的全損になるだろうと思うのですよ、私は。ところが、今度の法案は木造建築の傾いたときにはこの法案対象にならないという不合理さがあるわけなんですよ。  そこらがどうしてもはっきりしないから、それはやはり審議会の過程においてそういうところまで親切に、保険会社の立場に立つのではなしに、実際に被保険者の立場に立ってそういうような場合はどうだということについて、やはり結論をつけて審議会の記録に残しておいてもらわぬと、さあといったときに必ず問題が起こって、これはもうとんでもないことになる。保険金は払ってもらえない。とにかくがあがあ言っている間に時がたってしまって、保険金を払うのに時間がかかる。保険金を受け取るとそれが三分の一になってしまって、何の役にも立たぬ。そういう非常なしわ寄せが全部被保険者へ来て、もう困るのは被保険者ということになるのと違いますか。そこらはもう少し責任をもってやっていくべきではないでしょうか。
  27. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) ただいまおっしゃいました、木造の家が傾いてしまって家としてどうしても使えないという状態になりますれば、私は同じことだと思いますし、それが対象にならないのだというふうにおっしゃいますことが、そう……。
  28. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうはなっていないから私は言っているので、そういう意味鈴木さんがおっしゃるのは、やはり私は審議の過程でこれは全損と認めるのだということをその記録の中にはっきり残しておいていただかないと、さあといったときの証拠にならぬわけなんですよ。それを私は申し上げるわけなんですよ。それは私はこう思いますということでは、鈴木個人の考えになってしまって、審議会としてのあれにならないのですよ。
  29. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) 私はまあ常識的にそう考えて、法律常識的に考えてそうなるものだと思い、そうしていま河野さんもおっしゃったように、みんなも大体そういう考え方だったのだと思いますので、特にそういうことを書かなかったと思うのでございますけれども、もちろん、私個人の考え方を申しましたところで、裁判所に行って、結局きめるのは裁判所でございますから、裁判所がどういう判断をするかということは、これはわかりません。おっしゃるとおり、その意味では裁判所に行ってどういうふうな解決、判決が下されるであろうかというふうなことは、ある意味では、極端なことをいえば、当てるようなものだと言ってもいいかもしれませんし、そういう点から考えますれば、かりに審議会のところで何か書きましても、それが裁判所を拘束するということにはならないわけでございますけれどもね。
  30. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  31. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  32. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は参考人をつかまえて議論を吹っかけるつもりはないのですけれども、やはり参考人意見というものは今後の審議に一つの権威を持つものだから、私は伺っておいたわけです。  それから、もう二、三私は問題があるのですが、三百万円保険をかけますね、そうすると、それは三百万円に対する保険料を払うわけでしょう。掛け金は三百万円に対する掛け金でしょう。九十万円に対する掛け金ですか。
  33. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) それは総合保険でございますから、その意味では全体のものに対しての掛け金で、地震のものが幾らとかというふうなものではございません。全体の保険料になるのだと思います。
  34. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これはもう議論になりますから、私は控えますけれども、ここらにも少し問題があるような感じがするのですね。
  35. 河野通一

    参考人河野通一君) ちょっと誤解があるといけませんから……。いま鈴木先生の言われたのは全くそのとおりなんですけれども、総合保険の中に保険料として入るけれども、その中を分析しますと、三百万円の保険金額に対して九十万円しか払われないのだということを頭に置きながら保険料は計算されます。これは間違いのないように……。鈴木さんはそういうつもりで言われたんだと思いますけれども、三百万円に相当する、三百万円がもらえるということを前提にして保険料をはじいたら、結局九十万円しかもらえなかったというような、そんな保険料の計算はいたしません。そうはいたさないはずに審議会にはなっているはずだから、大蔵省もそんなことはしないと思います。
  36. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そこの点もやっぱし被保険者としては、何だかこう割り切れぬ感じがするところなんですよ。三百万円の保険をかける、地震保険をかける人は、地震のみだと思ってかける人もあるわけなんです。それはいまのように説明すればわかりますけれども、ところが、三百万円に対する保険料は払っておって、そして地震となって家が倒れ家が焼けてしまう、そうすると、火災地震も両方一緒に受けたような感じのときに、保険料をもらう段になると九十万円しかもらえない。おれは三百万の保険料を払っておって九十万円しかもらえない、保険料高いじゃないかというそういう感じも抱くだろうと思うのですよ、被保険者は。そこらがちょっと納得がいかない。  それから、もう一つ申しますと、七十二時間という時間を限定されたのは、どこに根拠があるのですか。
  37. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) 私の記憶では、こういうこまかいところまで保険審議会で議論したかどうか。私も必ずどの保険審議会にも出席していたという自信はございませんけれども、七十二時間というその時間をきめることにまで私はやった記憶がちょっとはっきりしないのですが、河野さんは何かおありになるかどうか知らないけれども……。
  38. 河野通一

    参考人河野通一君) どこかで区切らなきゃ、一回の地震というものの期間を考えなければいけません。その考える場合に、これはいろいろ専門家の意見も伺ったんですけれども、二昼夜がいいか三昼夜がいいかということは、いろいろ議論がされましたけれども、それを三昼夜とすべしということは、少なくとも審議会においてはそういう結論は出しておりませんし、またそこまではとてもわれわれには、須藤さんにしかられるかもしれませんけれども、力が及ばずでありまして、そういうこまかいところまではとても私ども手が回らない。したがって、もっと大筋のところで私ども審議いたしたのでありまして、そういう点はやはりお願いしたいことは、大蔵省の御当局なりあるいは専門的に保険会社でそうした問題をやっておられる方の御意見を聞いていただきたいと思うのであります。
  39. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一ぺん、これで終わりますから、どうぞ……。  七十二時間というのが、私たち根拠がわからないわけなんです。これは大蔵省に尋ねましょう。先生たちの意見を伺っておきたいと思うのですが、関東大震災、あれが何昼夜燃えたか私いまちょっと記憶がないんですが、東京のような広いところだと、片方に火災が起こる、それは地震による火災だとして、それから三日たったあとで類焼したところのそれは、今度の地震保険には関係がないということ、むしろ地震保険に関係ないから火災保険で全額もらえるというようなことにもなるわけですね。だから、七十二時間という時間を区切ったのがいいのか悪いのか、その場にならないとわからなくなるわけですが、そうすると、この間の新潟のあのタンクが燃えると、これが七十二時間も、もっと燃えましたね、あれは。その燃えている間に類焼を来たす場合があるということを仮定できるわけですよ。そうすると、その場合は火災保険で全額もらえるんですね。七十二時間ちょっと前に類焼したところは、地震保険になってしまって、三分の二しかもらえないと、そういうことが起こり得るんじゃないかと思うのですよ。
  40. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) いまのおっしゃいましたことのように私はこの法案を読んでおりませんけれども、つまり、地震がいまの松代でございますように九時に起こるとか三時に起こるとか、その次の場合は何時に起こるというその地震地震のことでございまして、一ぺん起こってしまった地震からそれが燃え続けていくなら、幾ら長くたって、そちらのほうはこれで押えているわけじゃございません。
  41. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういうふうにはっきり断定していいですか。私はこの法案を読んだときは、そうは受け取らないですよ。
  42. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) 断定していいと思うのですが、四項の規定は「一括して一回の地震等とみなす。」ということであり、それは前の二項で「一回の地震等により」と言っている。それをただ受けて、これの解釈ということでございますかしているので、地震から起こった災害が七十二時間以内に起こらなければならないということは書いてないので、ただ、地震が数回あるいは数十回起こってまいりますもので、七十二時間以内に当然ゆれ返しがございますので、それは一回の地震にする、それで頭打ちをきめるということなんでございます。
  43. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 一回の地震というのは、七十二時間以内に起こった現象に対して、この地震保険はこうこうこういうことになるのだ、こういうふうに私たちは読んでいるわけですよ。——もうよしましょう。
  44. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 鈴木先生に。先ほど全損の問題で、経済的機能が果たされなくなった、そういうものがひとつ全損、こういうことですか。それで、抽象的だと思うのですがね。そのかね合いで、第七条で、そういう認定については、今後地震保険審査会、こういうものを設置をして、そこでいろいろ認定をしていく、こういうことになっているわけですね。ですから、当然、この法律審議会答申に基づいて大体その精神をくんでつくられた、ですから、将来そういうところに持ち込まれて最終認定がなされるということになると思いますが、そういうことを考えるときに、経済的機能を果たせない、こういう抽象的なことではちょっとわれわれとしても理解しにくいのですが、この全損の問題について。だから、この法案と並行してそういうものが具体的に政令の形で出されるようにしてやらなければいけないのじゃないか。答申を落としてしまうといけないのじゃないかと思います。その辺の取り扱いの問題、その点をひとつ……。
  45. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) そういう抽象的な言い方がいかぬとおっしゃるのでございますが、しかし、一般的な形とすれば、つまり物理的な減損、全損と経済的な減損、全損とを両方ここで含ませて全損ということばにしているわけでございますから、そういうふうな一般的なことで言わざるを得ないので、あとは具体的な適用の問題になるわけで、それはあるいはこの地震保険審査会におきましてそれを具体化するといったようなことは、具体的指針というようなものをつくるというならつくっていくべきでありましょう。したがって、そこできめられましたことを、そうしてまた大蔵省の指導というふうなことで普通には円満に処理されていくだろうと思うのでございますが、しかし、これもぎりぎりのことをいえば、どんなふうにきめましても、やはり終局的には裁判所に行く問題にならざるを得ない。最終的にはそこに持っていかざるを得ない。ですから、そういうことのないように審査会におきましても具体的な指針がつくられるでありましょうという方針で、そうして行政指導も私はうまくいくだろうというふうに思うのでございますけれども、裁判所に行ってはたいへんでございますから。
  46. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それから、保険金支払い限度ですが、九十万円と六十万円とあるようですが、今後この経済状況などを考えますと、九十万円と六十万円ではたして役割りが完ぺきと言い得るかどうか。いま家を建てるにしても九十万じゃとてもこれは建たないと思うのですが、今後ますます情勢は物価高騰その他によって経済が変動していくし、その辺の限度額の問題、適否の問題、これはどうですか。
  47. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) これは法律で九十万、六十万ときめているわけではございませんで、政令できめていくわけでございますから、もちろん事情の変化につれて変わっていくということは考えられるわけでございますね。私もおっしゃるとおり九十万、六十万というのはずいぶん少ないのじゃないかというふうにも思いましたけれども、現在、損保協会で聞きますところでは、普通の火災保険もわれわれが率直に空に考えますよりは非常に少ない金額しかかかっていないのでございますね。案外なものだという感じを私も持ったわけで、これもこの程度だったら、見ようによれば貯金しておいたらいいじゃないかというような感じもしないじゃないのですけれども、やはり貯金ならば全額百五十万積まなければならぬわけですけれども保険料でもってそれがカバーできるということになればいいだろうという感じです。そしていまおっしゃったように九十万、六十万と上げれば上げるだけ、保険料はふえますから、それがやはり保険をつけることをちゅうちょさせるといったような問題も起こるわけでございますから。しかし、物価が上がってそんなものじゃだめだというふうなこと、あるいは民度が上がりましてそれじゃだめだということになれば、それじゃ同町に保険料を払うということについても国民として納得する、高い保険料を払うことにも納得するといったようなことは出てくるだろうと思いますから、これは事情のいかんによることではなかろうかと思います。
  48. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 大体関東大震災等の一つの例にならってそういう支払い金額等をおおむね想定したようですけれども、しかし、今後そういった関東大震災のようなああいう地震があったら、これはもう悲惨なものだと思うのです。その被害たるや、この東京のあの高架道ができて一ぱいビルができているといったぐあいですから、その損害度合いというものはわれわれが想像しがたいくらい悲惨なものになってくると思う。そういう中で、一端の補償を与えるということになれば、これはやはりその限度額においてもう少し、そういう悲惨な原状復興と、それから経済関係と、こういうものを見合わせて、これは適当に引き上げていくような必要があるのじゃないかと思うのですが。
  49. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) おっしゃるような問題もございましょうし、それにもかかわらず、民間政府両方入れたもので三千億円というところで切っているわけでございますね。それ以上は出さないという形の契約でございますが、しかし、そういう事態が起こりましたときに、はなはだ悲しい残念な事態なわけでございますが、そのときになりますと、住宅のほかに工場、それから事業のビルといったようなものも大損害を受けることもありましょう。それから、他方におきまして、国としては橋の落ちたものとか道のこわれたものとかというもの、その他エトセトラ、非常なばく大な金をたくさん出さなければならぬというふうなことに、当然保険契約があるなしにかかわらずやらなければならないということになるわけで、したがって、そういうほんとうに一度非常事態が起こりましたときに国の負担ということの非常に大きなことを考えますと、契約があったからうんとよこせというようなことは必ずしも言えないというふうな事態ではなかろうかというような感じもするわけでございます。
  50. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 最後に一つだけ、諸外国で地震保険をやっておるということはさっき三人の先生方から聞けなかったのですけれども、現実やっておるところはないわけですか。
  51. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) 私も非常に正確なことは存じておりませんけれども、とにかくやっていることは、地震保険といっていいでございましょうが、地震の危険を保険会社引き受けているという事例は、それは外国でもございます。日本でももちろん引き受けているわけでございます。御承知だと思いますけれども、この間の新潟の地震がありましたときにも、昭和石油は四日市の工場には地震保険をつけておったが、新潟にはつけていなかったということがございますので、それは日本でも引きうけておりますが、今度の場合はそういうふうな個別的な特殊的な形というものでなく、もっと一般的な形でやっていこうということであって、ここまで踏み込んだ例というものは私はないのじゃないかと思うのでございますけれども
  52. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 一体、私も、火災保険はなかなか普及いたさないわけで、実際はしてもらいたい。地震保険というものは、新潟のときにやれやれということになったが、一体これをやってもどのくらい加入があるだろうかということが非常に問題になると思います。どのくらいのことを一体想定されたわけでしょうか。
  53. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) その点はおそらくどなたも的確な見通しというふうなものは必ずしも持てないのじゃないかと思います。ことに、御承知のように、総合保険というものは非常に伸びておるわけでございますが、それに今度地震がその中に入りまして、そうすると料率が上がりまして、したがって、そういうものはいやだといって普通の単純火災保険のほうに逃げるというふうなものも出てくるかもしれません。しかし、やはり住宅総合保険の伸びの比率で、地震が入りましたもの、これは非常に率直に申しますと、いままでの総合保険の中で火災のほかにもいろいろの危険を持ちますけれども、普通の人が考えると、そんなことを心配しなくてもいいようなことがあるのでございます。たとえば自動車がぶつかって損害を受けても、払うと言われても、へいとか家に自動車がぶつかるというところは限られている。そんなものはほとんど考慮に入れる必要もないような危険だと一般の人は思われるかもしれませんけれども、しかし、今度地震が入ると、相当総合保険というものの内容がよくなるのです。商品としての値打ちがよくなる。そのかわり高くなるということであります。それにどこまで入っていくかという問題がございます。それについては、やはり地震の心配は絶対ないのだと思っているようなところの方はちゅうちょされるだろうと思います。しかし、たとえば長野の地区のような、現在の長野県のようなところですと、どうしても入りたいという希望が強くなるだろうというような気がします。しかし、だんだんに、先ほど昭和石油の例でもだいじょうぶだといっておった新潟に起こるということも起こるわけでございますから、一般の人がこれを希望してくるのではなかろうか。希望する人に、少なくともそういう希望をかなえ得るような道を開いておくということが望ましいのじゃないかということでございます。
  54. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は民営か国営かという議論になると思うのです。ということは、逆にいえば、強制加入か民営加入かということです。自動車保険等は一つの強制加入をさせておりますね。元来は私たちはこういう損保の保険が発達してというか、なるたけたくさん入ってもらったら好ましいと思います。しかし、なかなか火災保険等でも、実際はこの前新潟大火があったときに聞いてみると、上九%ぐらいしか入っていないというようなことがございますので、せっかくあるものが活用されないという一つのネックがあります。そこで地震保険というものは、なるほど抽象論でいえばあったほうがいい、またやるべきだと思います。ところが、実際やってみたら加入者が非常に少ないことになることもあるから、そういうような点について審議会等で、もっと損保は普及せなくちゃならぬ、火災保険だってもっと入ってもらわなくちゃならぬ、地震保険も当然そういう場合には入ってくるというのが普通なんだ、そういうたてまえの議論というものが相当なされておるんじゃないかと想像したわけです。ですから、そういうことについて何かあったらお聞かせ願えないものか、こう思っておったのです。
  55. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) もちろん、何といいますか、私はやってみなければわからぬと申しましたけれども、努力をしてこれを普及させることの必要というものはもちろん感じておりますし、それはそのたてまえで保険審議会でも議論したけわでございます。損保会社としても、乗り出した以上、これがそんな小さなものであることはなく、やはり社会的な意味を持つ程度のものにするということについては全力をあげるべきだと私は思いますし、あげるだろうとも思っておりますが、しかし、たださっきのようにどれだけの確信があるかと言われると、これは私にはちょっとどのくらになりますものか、想像はつきませんけれども、いろいろな実際をやっている人にすれば、これくらいは少なくとも初年度はいくだろうといったような見込みはあるだろうと思いますけれどもね。
  56. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 もう一つ、前には保険会社が非常に火災保険なんかやっておりますと、地方自治体は道路をつくったり広げたり防火地帯をつくったり拡張したり、津それから防火施設をよくしますね、したがって、地方自治体の財政において火災予防というものがやられて、したがって大火というものがなくなってきた。もっといえば、火災発生件数も少なくなってきた。したがって、保険会社は少しもうけ過ぎておる。だから、消防施設税という、仮称ですがね、そういうものがあって、ある程度地方自治体にバックペイしたらどうだ。いや、現に、最近のことは私知りませんけれども、損保協会から消防庁に対しましてポンプを五台とか何かを寄付したこともあります。その前には一億とか、五億までくらいですか、十億までくらいですか、何か寄付したようなことがあります。こういう何と申しますか、地方自治体のある程度の行政のレベルアップが損保会社に有利になってまいりますね、そういうようなところには、保険料率というものが非常に問題になってくると思いますけれども、こういうような点については、何か審議会等では議論されませんでしたか。
  57. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) もちろん出まして、その点について保険料率を下げるべきであるということについて議論もいたしましたし、たしか答申しております。
  58. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 火災保険は下げろと……。
  59. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) つまり、料率をもっと下げていくべきだということについて、たとえば、何というのですか、火災発生して、そこのところに消防が行く時間がどうだとか、これを外国に比べて料率が高いか低いか、もちろん日本の家は木造の家が多数ございますから、そう外国と直ちに比較もできませんけれども、そういう点も入れまして、相当長期にわたってそういう問題についてこの地震保険と別に議論した記憶がございます。
  60. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最後です。いま国民住宅金融公庫のいわゆる政府公庫から借りて家を建てますと、これは無条件に住宅保険に加入させられることになっていますね。したがって、政府がやっているところの住宅公団の建物は無条件に対象になる、それはしたがって地震のほうにも無条件に加入させられろ、そんなような点は議論されましたか。
  61. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) 私はあまり記憶が、実際もの覚えが悪い上に、ほんとうにいろいろなことをやっているものでございますから、一つ一つのこまかいことをちょっと覚えておりませんけれども、私はそんな住宅公団の家まで議論したようなことがあるような気はちょっといたしませんけれども
  62. 河野通一

    参考人河野通一君) そういう問題は別に議論いたしておりません。住宅公団がどういう保険のつけ方をしておりますか、私は存じませんが、かりにそれがここであがっているような条件を備えて、たとえば住宅総合保険に入っておって、そうしてその要件を満たしているものであれば、あるいは当然これは自動付帯いたしますから、つくと思います。しかし、普通火災保険になっていれば、これはここにも書いてありますとおり、任意には地震保険はつけられますけれども、自動付帯にはならないわけですから、その辺、住宅公団の火災保険のやり方はよく存じませんものですから、よくわかりませんが、そういう問題について具体的には審議会では議論をしておりません。
  63. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 公団住宅の家賃値上げの問題が出てきましたが、こういうようなことが一つの理由にもなっておるようでありますから、こういう点で何か議論をされたかと思ってお伺いをしたわけです。  次に、最後でございますが、保険会社はどっちかというと、若干もうかっていることは確かなんです。行政指導等で配当等を制限しておる。ちょっとこの資料を見ると、住友が一番内容がいいのかもしれませんけれども、一割二分五厘配当しております。こういういま言ったような損保というようなものは、たとえば自動車関係でいうならば強制でやっているし、飛行機なんかは落ちがいいので、みんな入りたくなる。飛行機はみんな入っている。縁起でもないから入らないという人もあるが、大体は入っていると思う。こういうところに対して、大蔵省が非常にいままでの料率の問題、あるいは利益の配当はこうしなければならないとかなんとかで、いろいろ制限を設けたと思うのですが、何かこういうものに対しては若干内部留保等もよくしてもらわなければならない。そうでないと、つぶれてしまうということがあってはたいへんだと思いますから、そこで配当制限というようなことはどうだというようなことについては、どんな御意見でございましょうか。
  64. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) これは審議会でそんな配当制限をするといったような話が出たことはないだろうと思いますけれども、とにかく損保会社がもうけ過ぎているということならば、料率を低くしろ、できるだけ保険加入者の利益をはかっていくべきだという議論はもちろん出ましたですけれども、それからすれば配当も高率におのずからならないと思いますけれども、直接保険会社は一割二分配当をしちゃいかぬのだ、八分にとどめるべきだというような直接の議論は出なかったと思っておりますけれども、私自身の意見はどうかというふうにお開きになるわけでございましょうか。
  65. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ええ。
  66. 鈴木竹雄

    参考人鈴木竹雄君) その点は、私は、見ようによりますと、保険会社の配当というようなものがわりあいに、何といいますか、右にならえといいますか、一律の形になっておりますことがどうかという感じをむしろ持っているのでございます。つまり、企業努力をしてよくなれば、それだけのものに報いててもいいじゃないか、それだのに、それを配当をそこで押えますと、結局企業努力というものがとまる、ある意味でいえば自由な競争というものが阻害されるというような危険もあるわけです。そうかといって、それがむやみやたらに格差があっては、これは悪い保険会社といいますか、成績の悪い保険会社の運命に関係してくるわけで、それが一保険会社利益だけの問題ではございませんで、やはり社会的な影響も大きいわけですから、そうむやみなことを言うわけじゃございませんけれども、むしろ以前にはもうほとんど全部一律に配当率がなっていたようなこと、それはむしろ安住をしていく危険があるのではないかというような感じを持っておりましたが、このごろはこの辺が若干のゆとりを認めるようになったわけでございます。結局、幾ら以上しちゃあいかぬというようなことをやりますよりは、そうしてまた、保険会社の配当というようなものは、事業から比べますと小さなものでございますから、そういうものでいくよりは、事業自体のほうの健全化といいますか、あるいは努力といいますか、そういうものを要求していくというふうな形のほうがいいんじゃないかという感じを私は持ちます。
  67. 日高広為

    ○日高広為君 ちょっと河野参考人にお伺いしますが、この審議会で全損というものについては、どの程度は全損であるとか、大体そういうような範囲のことは論議なさらなかったのかどうか。それから、契約金額の最高限度は大体どれぐらいがいいのか、いま三百万でしたかね、そういうものについて審議会で何か御意見等なかったですか。
  68. 河野通一

    参考人河野通一君) 第一点の全損の問題は、先ほど須藤委員からも御質問があったのでありますが、全損とは何ぞやということは、いろいろわれわれなりに議論をいたしたことは事実でございます。その結果、やはり物理的な全壊ということだけでなくて、物理的には全壊ではないけれども経済的にもう用をなさないものは、これはやはり全損として考えなきゃいかぬと。先ほども申し上げましたように、分損をこの案では担保しないことになっておりますから、そういう点からいっても、全損の範囲は、許される範囲でぼくは広く解釈すべきだと。分損はやはりこれはちょっとむずかしいと思います。分損は担保すべきかどうかも議論が出ましたけれども、やっぱりどうもこういった地震保険といったような性質のものでは分損はむずかしいだろうと。第一、査定が非常にむずかしいし、それから、あんな一ぺんにがさっときたときに何%だということはとてもできないのですね。それから、保険金額は、これのよしあしは御質問の第二の点に関連しますけれども、最高で九十万だと、こういうことになっておりますから、分損ということになったらあまりたいした金額にはならないと思いますから、分担はやめたほうがいいと思いますが、分損をやる以上は、全損の範囲は、これはもちろん許される限界があるだろうと思いますが、許される範囲で広く解釈するのが、つまり物理的な問題ではなくて、経済的に考えていくべきじゃないか、こういうのが審議会の結論になったわけでございます。  それから、第二点の保険金の最高支払い割合がどうだという御意見は、先ほど来私も御説明申し上げましたように、たとえば被保険者の立場からいいますと、何だ九十万円しかくれないのかと。九十万円もらったからといって、いまのような状態で物価とかいろんなことを考えて、何もできないじゃないかと、こういう議論が一方であるわけですね。それから、今度は、それじゃ国のほうの立場は、保険会社自体は一体どの程度負担できるのか、国の財政状態からいって一体どの程度できるのか、われわれが考えられる非常に巨大な被害ということを考えた場合に、この最高の保険金支払い額——保険金と言っちゃ悪いですけれども保険金支払い額を上げれば上げるだけ、巨大災害に対しては国の財政の負担割合は非常に大きくなる、そのこととのからみ合わせの問題だと思います。  それで、まあいろいろ議論が出たんですが、こういう大体の考え方だったんですね。この九十万円は一体何だろうということがいろいろ考えられたんですが、おそらく地震で倒れた建物に対して、それを復旧するすべての金を保険金によってまかなうということは、地震保険の性質からいって無理だと、国の財政状態からいうとすれば。そこで、さしあたり、ことばは悪いけれども、頭金——家を建てるための頭金くらいのものは何とか出せるものでなきゃならぬのじゃないか。じゃ、頭金とは一体何なのかと、いろいろ実はわれわれなりに議論をしたんですが、大体百万円前後のものは、いろんなことをやって一通りの家を一あまり豪勢な家を建てるわけじゃないんで、家を建てるのなら、百万円ぐらいあれば何とかスタートできるんじゃないかといったようなことを裏から考えながら、決してその金額は十分だとは思わないけれども、いまのような地震保険というものについて、国の財政というものを考え、いろんなことを考えると、満足すべきじゃないけれども、いまの状態からいけばやむを得ないのじゃないか。しかし、これで満足しちゃいけないので、今後正清程度というもの、国民生活限度は変わっていき、国の財政力というものがふえ、保険会社担保力というものが、だんだん増大してくるのに応じて、これらの対策をさらにもっといいものにしていかなきゃならないと、こういう結論に逃したわけです。
  69. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 他に御質疑もないようでございますから……。
  70. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ちょっと一つだけ、最後に河町先生にお伺い申し上げたい。保険料率の問題について、何か審議会のほうで意見が出ましたか。これは低いほうがいいということになっておりますが、具体的にその額等の問題ですね。
  71. 河野通一

    参考人河野通一君) これはいろいろ議論が出ました。それでほんとうにいろんな意見が出ましたけれども、どうもやはりこれは勘で話ししていちゃだめだ、一ぺん計算をしなくちゃいかぬじゃないか。危険率とか保険の数理というものに地震というものはのりにくいものだそうでございますけれども、それは何らかの仮定を置いて、できるだけやはり数理的に計算をしてみようじゃないか。そしてその中でできるだけ純保険料というものを安くして低くしよう、いわんや付加保険料については、できるだけサービスを保険会社にしてもらう立場で、純保険料というものは計算で出るものですから、なかなかむずかしいと思いますけれども、付加保険料は少なくともできるだけサービスをするということで、保険料自体を低くしてもらう、その中で、大体いまある総合の火災保険、これは場所によってみな違うけれども、それと比較してそれにプラスするものがあまり多過ぎちゃいかぬから、それもよく考えようということ。  それから、もう一つ、保険料についてわれわれが考えたことは、保険というものの社会的、公共的意味から考えて、地震の頻度あるいは可能性の程度が高い土地と低い土地と、これを普通の営利保険で——営利保険ということばは悪いけれども民間の純粋の保険であるならば、その頻度あるいは危険の可能性の多いか少ないかによって非常に違ってくるわけですね、保険料というものは。しかし、この保険はもっと公共的な意味があるのだから、ただそういう危険の起こる可能性、だけに従って開差をつけるのはいけないので、一番危険の高いところと危険の少ないところの開差をできるだけ縮めようじゃないか。しかし、これは一緒にするわけにはいかないので、危険のほとんどないところと多いところと一緒の保険料というわけにはいかぬから、おのずから差があるけれども、その差はできるだけ縮めたほうがいいじゃないか、社会的な状態において。こういう程度のことだけ議論をいたしました。
  72. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 他に御質疑もないようでございますので、参考人意見聴取はこれをもって終了いたしたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 参考人の皆、さまにおかれましては、きょうはほんとうにお忙しいところを長時間にわたりまして、この委員会のために貴重な御意見をお述べいただきましたことを、心からお礼を申し上げる次第でございます。委員会を代表いたしまして、一言ごあいさつ申し上げます。  両案につきましては、本日はこの程度にとどめます。  なお、次回の委員会は四月二十一日(木曜日)午前十時からとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十七分散会      —————・—————