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1966-05-31 第51回国会 参議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月三十一日(火曜日)   午前十一時六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木内 四郎君     理 事                 長谷川 仁君                 増原 恵吉君                 森 元治郎君     委 員                 笹森 順造君                 杉原 荒太君                 高橋  衛君                 廣瀬 久忠君                 岡田 宗司君                 佐多 忠隆君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 曾祢  益君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君    政府委員        外務省北米局長  安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君    説明員        大蔵省主税局国        際租税課長    大倉 真隆君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得に対する租税及びある種の他の租税に関す  る二重課税回避のための日本国ドイツ連邦  共和国との間の協定締結について承認を求め  るの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)     —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定締結について承認を求める件を議題といたします。  これより質疑を行ないたいと思いますが、その前に、去る二十六日における本件質疑の際留保されました事項に関し、政府側より発言をいたしたい旨の申し出がございますので、この際これを許可いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。大倉国際租税課長
  4. 大倉真隆

    説明員大倉真隆君) 前回委員会杉原委員から御質問がございまして、現在両国間の実際の所得はどれくらい生じておるか、また、それがこの条約の結果、税としてはどのように変わるのかという御質問がございました。前回答弁をなお補足しまして数字をもちまして御説明いたしたいと思います。  まず投資所得でございますが、ドイツ側日本投資をしていかほどの所得を得ているかと申しますと、技術使用料におきまして年間円ベースで約五十八億円でございます。これに対しまして、現在の国内法によります税負担が約七億二千万円、条約ができまして条約税率適用されますということになりますと、この所得ベースにいたしました税額は約五億六千万円、差し引き一億六千万円、ドイツ居住者の支払う日本の税は軽減される。前回、一億からせいぜい二億というお答えを申し上げましたが、正確に計算いたしますと、一億六千万円というふうに御了解いただきたいと思います。  次に利子でございますが、債券の利子政府保証債利子というふうな形で取得しております利子年額約二十八億円でございますが、これに対する租税につきましては、現在でも国内法によりまする税率条約適用いたしました税率が差異がございませんので、したがいまして、ごく一部の例外を除きましては、税額変動はないというふうにお考え願いたいと思います。  次に配当でございますが、これは現在のところ、まだ現地法人であります子会社はほとんど配当いたしておりませんので、親会社が受け取るという配当はほとんどございません。それから市場経由の株式もドイツにつきましては非常に少のうございますというようなわけで、所得の額といたしまして約三千万円を若干上回わる程度でございますので、これにつきましても税負担変動はネグリジブルであるとお考え願ってよろしいかと思います。  以上総合いたしまして、ドイツ側日本投資いたしておりまする形をまとめますと、年額約八十六億円の所得を得ている。これに対して約十億円の租税が現在課せられている。条約適用になりました場合には、その租税の額が約八億四千万円に軽減される。差し引き軽減は約一億六千万円というふうに御了解いだきたいと思います。  これを裏返しにいたしまして、日本側ドイツに対していかほどの投資をしているかという点でございますが、これも前回申し上げましたとおり、残念ながらいまだ日本からドイツへの使用料利子配当という形での投資所得というものはあまりございません。わずかに技術使用料の形で年間約十五万ドル現在受け取りをしております。これに対しましてドイツ租税が、条約適用になりますると、約八百万円軽減されるであろうという計算になるかと思います。  次に事業所得でございますが、日本企業ドイツに進出いたしましてどれくらいの所得を得ているか、現地法人をおもにいたしましてできる限り調査いたしました結果を取りまとめて申し上げますと、黒字を出している会社と赤字の会社といろいろございます。黒字会社分の一番近い事業年度分を集計いたしました結果は、円で約七千六百万円の所得を得ておりまして、ドイツ租税を約三千五百万円支払っております。また、欠損会社を集計いたしますと、欠損額が約七千百万円という結果になっております。黒字会社欠損会社の比率は、ほぼ半々とお考え願ってよろしいかと思います。  なお、申し上げるまでもないことでございますが、このように、明らかにドイツで拠点を持ち、事業を行なっているという場合には、条約ができましても、それによってドイツ租税が減るということはございません。依然としてドイツ国内法におけるドイツ法人税営業税を支払うことになります。反面、ドイツ日本に進出しております企業、これは数は非常に少のうございますが、この所得は、申告所得はすべて欠損でございます。税務当局調査いたしました結果も、いままでのところ欠損となっております。したがいまして、現実には日本法人税を納付する義務がございません。  なお、前回非常に説明が不足でございまして、申しわけなかったと思っております。条約がなければ取られるかもしれない租税が、条約ができればこういう問題がなくなるでございましょうと申し上げたのを、いろいろの数字を使いまして、ごく仮定の計算をいたしてみますと、年間、いわゆる駐在員事務所日本側からドイツへ送金いたしておりますのが約五百万ドルございます。もちろん、駐在員事務所でございましても、実際の商売をいたしておればドイツの税は払わなくてはならないわけでございますが、前回申し上げましたように、広報活動をやっておる、単にパンフレットを配っておる、あるいは日本からのお客さまの世話をしておるというようなことは、これは租税対象にはならぬ。ところで、条約がございませんと、そういうものでもドイツ国内法租税をかけられるかもしれない。たとえば、送金額の一割程度は利益があると推定をするということでかけられるかもしれぬ。そういうふうな推定をいろいろと加えまして、いまの送金額ベースにいたしまして、一体それはどれくらい負担が出てくるかと申しますと、結論といたしまして、円ベース年間約一億円ドイツ租税を払わなければならないかもしれない。しかし、条約ができますると、その問題は解決する。これは明らかにもはやドイツ租税を課せられることはないという形になるわけでございます。  はなはだおくれまして恐縮でございますが、補足して申し上げます。
  5. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは、これより質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。——別に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入りたいと思います。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願いたいと存じます。——別に御発言もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより本件を採決いたします。  所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件承認することに賛成の方の御挙手を願います。   〔賛成者挙手
  8. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 全会一致と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  10. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、国際情勢等に関する調査議題にいたします。  これより、当面の国際情勢について質疑を行ないたいと思います。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  11. 森元治郎

    森元治郎君 大臣にお伺いするのは、原子力潜水艦の入港に関連してでありますが、ベトナムにおけるアメリカ北ベトナムとの戦い戦争、これと日本立場というものはどういうふうな関係に立つのでしょうか。たとえば、同盟国としてアメリカ軍事アメリカ行動には全面的に協力、支持を与えるというたてまえなのか。いわゆる戦争の直接の当事国ではないから、中立的——的ですよ——中立的な立場なのか、この関係をまず伺います。
  12. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ベトナム戦争協力するという積極的な立場をとっておるわけではございません。ただ、日本アメリカの間に締結されておる安全保障条約、そのたてまえを忠実に守っていくという立場にあるわけでございます。
  13. 森元治郎

    森元治郎君 安保条約のたてまえというのは、大臣はどういうふうに御理解になっておりますか。
  14. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 極東の安全のために日本施設区域使用し得ると、こういう権利をアメリカが持っておるわけであります。それを行使することに対しては、わが国は条約のたてまえ上これを認めざるを得ない、こういうわけであります。
  15. 森元治郎

    森元治郎君 条約が、なるほど条約に書いてあるのは、極東の平和と安全に対して「共通関心を有する」と、しかし、条約のポイントは、日本領域のもとにある地域に対する外からの攻撃——日本領域がですよ、日本の領土に対する攻撃がおのおのの国に対する、日米に対する攻撃と見て、共同して、共通の危険に対処すると、こうなっておるので、関心は有するが、あのベトナム戦争に対しては中立的立場であると思うのですが、どうですか。
  16. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 「極東の平和と安全」ということが書かれておりまして、直接日本の安全と平和だけではない。そこで極東範囲ということになりますと、フィリピン以北ということになっておりますが、極東範囲外に起こっておる事件でも、それが「極東の安全と平和」に至大な関係があるという場合には、この条約条項が働くわけでございます。そういうわけで、極東範囲外ではあるけれども、「極東の平和と安全」にきわめて緊切な関係のある事件がいま発生しつつある、こういうことであります。
  17. 森元治郎

    森元治郎君 北ベトナムに対して日本はあるいは敵だと見ておるんですか、侵略国として、あるいはまた、そういうふうな規定はしない。一体、北ベトナムというものに対する日本態度はどういう態度ですか。
  18. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) われわれの北ベトナム戦闘行為のとらえ方は、南ベトナムに対する北からの侵透侵略というのが行なわれている、これを南ベトナム独立と平和のために南ベトナム要請によってアメリカがこれに協力している、その侵透侵略を排除するために戦っておる、こういうふうなとらえ方をしております。
  19. 森元治郎

    森元治郎君 そういう、それは大臣は、地理的な表現でありますが、北から侵略があったという、その北というのは北ベトナムであるわけですね。北ベトナムに対して日本はどういう態度でおるのか、これはともに天をいだかざる、非難さるべき侵略国規定をするのかどうか。
  20. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは国際法で言う敵国というのではございません。
  21. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、その北は敵国ではないわけですね。そうすると、日本北ベトナムに対する態度というのは、アメリカの味方となって北ベトナムをたたいているわけではないのですね。北は敵国ではない、しかも、日本アメリカ協力して北をたたいて、共同して敵をたたいている立場にはないわけですね。
  22. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういう立場ではございません。
  23. 森元治郎

    森元治郎君 私はやっぱり考えるんですが、これは中立的な立場にあるのじゃないかと思うんです、この軍事問題そのものは。それが証拠に、政府は特使を送り、出先の大公使も動員し、そうして何とか平和に持っていきたい、話し合いの場でもできるなら平和の方向に行かせるようにしたいということで、北とアメリカに対しても同じ態度でおるのだ、こういうふうなことになってくれば、日本北ベトナムにおける軍事状態戦争状態に対しては中立的立場である、こういうふうに考えられますが、いかがですか。
  24. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、北越とアメリカを同じに見ておるわけではないのでありまして、いま申し上げたように、北ベトナム南ベトナム政治的独立と安全、そういうものを脅かしている、これに対してアメリカ南ベトナム要請をいれてこの排除につとめておる、こういうふうに見ております。同じようなふうに見ておるわけではない。
  25. 森元治郎

    森元治郎君 政府は、北を敵国とは見ていない、アメリカとは協力するが、ベトナムに対する軍事行動協力しているわけではないんだ、こういう立場ならば、そういう立場ならば、アメリカ軍艦日本寄港をする、これに補給なり修理なり、あるいは兵員に対する休養の便宜をはかるというようなことは、軍事行動に対する中立的な立場からいくならば、その間おのずから差があるべきだと思うんですね。これは純然たる、古い、国連ができないころの中立主義という立場からいって、しかも、戦争宣言があって、ほんとう戦争状態なら別でありますが、いまみたいなもやもやした状態にあっても、なおかつ、日本としては、一方の国に対して、直接たる間接たるとを問わず、軍事力を増強させる、ポテンシャルを上げる、そういう援助行動は慎むべきだと思うんですが、どうでしょう。
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本純然たる中立立場をとっておるならば、あるいはいま御指摘のようなことをやるべきだと思いますが、日本純然たる中立立場をとっておるわけじゃないんです。アメリカと防衛的な安保条約締結しておる、どういうわけでありますから、両国——北ベトナムそれからアメリカに対して中立立場をとっておるというのではございません。
  27. 森元治郎

    森元治郎君 純中立的な立場ではないと言うけれども、私は、局限をして、アメリカ北ベトナムとの戦い戦争、これに対しては中立的立場だろうと思うのです。もし中立的でないと言うならば、片方を敵国、好ましからざる国、あるいは侵略的な国、敵国だということで初めてアメリカを支援するという立場になるのじゃないですか。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカと、そうかといって攻守同盟、いわゆる軍事同盟を結んでいるわけじゃない。特殊の、まあ、条約専門家がここにおりますが、どういうふうにこれを定義づけるのか知りませんけれども、純然たる軍事同盟をやっているわけじゃない。だから、軍事同盟にあらずんば中立と、こういうふうに割り切って解釈できないと思います。
  29. 森元治郎

    森元治郎君 割り切って解釈できなければ、どういうふうに解釈するのですか。
  30. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ですから、日米安保条約条項に従って、日本アメリカ行動というものに対して特殊の関係を持つということは、これは当然のことだと思います。
  31. 森元治郎

    森元治郎君 その「特殊な関係」というのをひとつ説明をしてもらいたいのですが、専門家がそこにいるようだから。私は、このインドシナ半島における北と南、アメリカ北ベトナム戦いというのは、戦いに対して日本参加国でもなければ何でもない立場でなんですから、軍事行動そのものですよ、戦闘そのものですよ。ですから、その意味では中立的立場にあるのだ。中立は宣言したほうが有効だと思うが、しなくても、一方の国を特に支援して相手をたたくというようなことは控えるべきである。安保条約の場合は、これは日本領域が侵されたときにやるし、アメリカ軍協力が求められるが、大きな目的の「極東の平和と安全」に対しては「共通関心」を持っているだけなんです、「共通関心」。どこに何が起こっても、それを見過ごさないでともに相談しようという共通関心はあるが、北ベトナム戦争に対しては、私は日本戦いに対する態度そのもの中立的だ。その証拠に、政府は、平和的に両方の国が何とか折り合いがつくようにと言って努力しているのじゃないですか。もし、アメリカ側に立って戦争協力しているというなら、まん中に立って両方の国をテーブルにつかせようという努力をするのはおかしいと思うのですがね。
  32. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) こまかいことはまた局長から申し上げることにしまして、日米安保条約の第六条にこう書いてある。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域使用することを許される。」。「特殊の立場」というのはこの六条から来るわけであります。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 この六条は、その前の、日本の本土に外からの、外敵の侵略があった場合には対抗する、こういう、それを補足しておるのがその六条であって、それが大目的ではないと思うのですね。一体その中立的立場はどうかという私の質問に対して、大臣政治家として、——条約専門家でないから、政治家としてお答え願いたいのは、あの行なわれておる軍事行動に対して日本中立的立場にあるんだろう、アメリカの言っておることに対して理解はあるかもしれぬが。友好国として理解はあるかもしれぬが、中立的立場にあるんじゃないか、どっちにも。
  34. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 繰り返して申し上げますが、日本両国の間において中立的な立場をとっておるわけじゃないのです。すなわち、いま申し上げたように、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」と、こうなっております。いまのベトナム軍事行動は、「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」にやっておる、とられておる行動である。である限りにおいては、日本はこの条約のたてまえに従って、日本国における施設区域米軍使用させるという義務がある、こう私は考えております。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 北ベトナムに対して、敵意を持たない、敵性国とも判断をしていないのに、どうして日本が脅威を受けると感ずるのですか。これがおそるべき侵略国でじっとしておれないというならば、アメリカ軍の駐留が日本の安全に寄与するということになるかもしらぬが、敵と認めていないのですから、日本は北に対して。だから、この北ベトナム軍事行動に対しては、少なくとも、中立と私は言いません。まん中立場両方まん中立場。したがって、平和に持っていくという日本の従来の努力から見れば、一方に偏していないはずだと思うのです。ですから、時間もないから、軍港にああいう軍艦が入ってくる。今後あれを契機としていろいろな、エンタープライズとかというような大きなフリートというものも入ってくるでしょう。こういうものに対して補給させる、あるいは滞留期間五日ならもう少し短くするとか、三日なら一日とかというふうなこと、ここから進んでいって、兵隊さんは元気になる、水も十分に積み、修理もやり、あるいは補給、あるいは軍事補給もやるかもしらぬが、それはだれも見ていないからわからぬが、補給して力をつけて出ていく。出ていったものが、日本が敵と見ない北ベトナム軍事行動に直接、間接に寄与するというならば、日本はこれを慎しむ、そこから深入りしない、そうして和平のほうに努力するというのがほんとうだと思うのです。そういう意味で私は、原子力潜水艦の今回の受け入れ方というのは少しく深い思慮が足りなかったんじゃないかという感じがいたします。もう一。へん大臣から。
  36. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは日米安保条約のたてまえからいって、日本極東の平和、安全の維持のためにアメリカ行動しておるという考えをとりまして、そして日本国内における施設区域使用ということをわれわれは認めざるを得ない、認めておる、こういう解釈でございます。
  37. 森元治郎

    森元治郎君 私がお伺いしたいことより低い御答弁だと思うのです。で、これは後日に譲りますが、今後、単なる一隻の駆逐艦ではなく、数隻が来ることもあるはずですね。それから一つフリートといいますか、艦隊というか、船隊というか、一つ戦闘単位、そういうものの空母なり、あるいは潜水艦なりの来航があっても、数にかかわらず入れる、そうしてこれに対して補給修理兵員休養もさせるという方針ですか。
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この数がふえても、もちろんこれは実際上港にあふれるほど入ってくるはずはありません。数が少しふえても、補給のためである限りにおいては、これは認める考えでございます。そういう立場である、こう考えております。
  39. 森元治郎

    森元治郎君 もう一つ。  そうすると、港にあふれるほどというと、あそこは昔の旧連合艦隊の二百五十隻ぐらいたっぷりのみ込んでなお余りありますが、何隻来てもかまわないとなれば、いわゆる事前協議に言う重要な配備の問題になってくると思う。そういう点は事前協議対象になると思うのですが、どうですか。
  40. 安川壯

    政府委員安川壯君) たとえば、まあ第七艦隊なら第七艦隊という艦隊が、日本に対して配備でございますから、これをいわゆる横須賀なら横須賀を第七艦隊根拠地と申しますか、根拠地にするというような配備のしかたであるならば、これは当然事前協議対象になります。第七艦隊というのはどこに配備されておるかといえば、これはいわば洋上に配備されているわけでありまして、横須賀、佐世保に入港いたしますのは、あくまでも補給休養のために入ってくるわけでございますから、補給休養のために随時入ってくるという形におきましては、必ずしも船の隻数に限らず、多いから事前協議対象になるという関係にはならないのであります。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連して。  いまの森委員質問に対する大臣の御答弁は、ちょっと私、次元が違うと思うのです。ですから、安保条約でそれが義務づけられているとかなんとかいう条約上のことは別として、条約上の解釈は別として、いまの極東における安全という高い角度から見た場合に、ベトナム戦争といまの原潜寄港等と関連して、日本が何らか両者をテーブルにつけて平和的な話し合いの糸口をつかもうというような動きを、それがアメリカの意図を受け継いでおるかどうかは別として、そういうことは言わぬとしても、そういうことをやっている立場、そういうさなかにおける問題であるのですから、条約上はそういう義務をつけられておるかもしれないけれども、アジアの平和という高い観点から見るならば、ときには断わることもある。アメリカに対して、それは義務はあるかもしれません。しかし、いまこういうことはしないほうが日本の今後のいろいろな動きにも発言にも、あるいはアジアの平和にもいいのではないですかと、なぜそれを言えないのですか。それが政治じゃないですか。それを承りたい。条約上のことは私は問いません。
  42. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もしもベトナムが平和の話し合いに応ずるというような顕著な、明らかにそういう意思が推定されておるのにかかわらず、アメリカがもうしゃにむに武器をおかないで戦いで結着をつけるというような、そういうような場合がもしかりにありとすれば、いろいろ考えなければならぬ問題がそこに出てくると思います。その場合について、どうする、こうするということは、これはもちろんいま私申し上げる段階ではございませんけれども、しかし、現在のような情勢において原潜の補給のための寄港を断わるという何ら特別の政治的な理由はないと私は考えております。
  43. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 椎名外務大臣に原潜寄港の問題についてお伺いする場合に、私は、いまの内閣のスポークスマンである橋本官房長官が言っているように、あるいはまた椎名大臣も他の委員会においても言われたように、条約アメリカ日本原子力潜水艦でも何でも入れる権利を持っておる、だから入れるのを認めるのは当然である、こういうようなことのようでありますけれども、私は、そういう条約局長の言うような答弁でなくて、実は政治家としてのあなたにお伺いをしたいと思うのです。そこで、まず率直にお伺いしますが、いまの時期において原子力潜水艦日本に入港することは歓迎すべきことであるのか、あるいは歓迎すべき事態ではないのか、それは政治家としてのあたのお考えをはっきり示していただきたい。
  44. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 歓迎ということばはあまり適当でございませんが、これを断わる理由は私はないと考えます。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 しかし、あなたは佐藤内閣の外務大臣、ところが、佐藤内閣のスポークスマンである橋本官房長官は、この原子力潜水艦の入港あるいは将来予想されるであろう原子力空母エンタープライズの入港について決して断わる理由はないのだということを言いつつ、むしろ歓迎するような態度を示しておるわけです。もう一つ、これは内閣が直接やっておることではありませんけれども、自民党が、つまりあなたの属している政党の一部では、横須賀における自民党の支部は歓迎委員会を組織いたしまして、昨日原子力潜水艦が入港したときは歓迎委員がわざわざ出向いておるのです。自民党がそういうふうに歓迎委員会を設け、しかも、歓迎委員会横須賀におきまして歓迎するというような宣伝活動、広報活動を盛んにやっておるところを見ると、どうも自民党は積極的に歓迎をしておるのじゃないか。あなたはいま、条約上やむを得ないというようなことを言っておるけれども、自民党の末端における態度から見るならば、積極的に歓迎をあるいは自民党のほうから指令しておるのじゃないかとさえ疑われるのですが、その点はどう考えるか、自民党党員としてのあなたの立場、これに対する考え方をお伺いしたい。
  46. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) われわれは、あくまで感情をまじえないで、問題を冷静に取り扱うつもりで、そういう歓迎とかなんとかということばを控えておるわけでございます。地元で歓迎なさることに対して、これをまた抑圧しようという気持ちも持っておりません。ただ、それぞれの立場において感情を込めた表現をとる場合もこれはあるでしょう。そういうことは認めてやっていいのではないかと考えております。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 積極的に歓迎の活動を自民党がやっておる、そして、この問題が日本の国民の間にいろいろ波紋を描いておるときに、そういう態度であなた方が、それは地元でやっておることだからそれはやらしておいて、それを押えるつもりはないのだということは、消極的な歓迎になるということを是認されておるように思われるのですが、どうでしょう。
  48. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 入港を認めるというわれわれの立場をそこなうものではございません。これがむしろ入港を絶対阻止しようということだと、これはどうもわれわれとしてはポリシーに非常に反してくるわけなんであります。しかし、歓迎は、まあ入港を認めるという立場にプラスある感情を込めた表現でございまして、われわれの立場に抵抗するわけじゃない、こういうわけでございます。
  49. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういう感情を込めた表現に対して、これはわれわれの立場に抵抗しているものではないということは、暗黙に是認されておる、つまり、他の国の団体がやっておるんではなくて、自民党の支部がやっておるんで、自民党の元防衛長官等も関係しておるんだから、これは当然自民党自身でも承認をしておるとしか私には思えないんです。大臣は、やむを得ざると言っておるけれども、いまのあなたの答弁からしても、歓迎をしても差しつかえないんだ、そうして、歓迎することもわれわれとしては押えるわけじゃないんだということで、歓迎を消極的に是認されておるとしか解されないんですが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 別にこれを阻止しようと思っておりませんから、是認しておるというふうに御解釈になってもかまわないと思います。
  51. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 つまり私が、外務大臣は自民党が歓迎をしておるということを是認していると、そう解釈してもかまわないんだということは、結局、あなたは歓迎ということを消極的に賛成しておられるんだと、そういう立場をとっておられると、そういうふうに解釈してもいいわけですね。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どうも、しいて引き込もうとしておられるようですが、私はそれはあえてとがめないというだけの話でございます。私の申し上げるとおり御解釈願います。
  53. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いや、あなたの言うとおりに解釈すると、どうもそうとしかとれないんで、まあ、そういうふうに私は解釈しましょう。ところで、この問題が国民に及ぼした心理的影響というものを私は考えていただきたいと思うんです。一体今度の、あなたが是認されて、あなたがこの入港についてこれを認められるという立場をとるにあたって、これが国民に影響を及ぼすということを考えられたか、つまり、政治家としてそういうことを考慮されたかどうかという点なんですが、どうもあなたのいままでの発言を見ておると、日米安保条約が結ばれておって、その日米安保条約に基づいてアメリカが権利を持っているんだから、どうも認めざるを得ないという、こういういわば属僚的解釈しかとっておられない。これはどうも私、外務大臣としていささか見識が足りないんじゃないかと思うんですが、とにかくこれは国民の間に大きな心理的波紋を投げかけておる問題でありますから、そういうような観点から私はこの問題を見てもらいたかったと思う。なるほど佐世保に八回入港いたしました。そうして、確かにこの八回の入港の過程におきまして、最初の強い反対運動が漸次弱まっていった、こういうような経過のあとで、横須賀にこの入港をアメリカ側が希望してき、現に入れたということは、横須賀アメリカ原子力潜水艦を入港させることもやはり佐世保と同じような過程をとるんじゃないか、そうして、横須賀に入港させても、しまいに反抗もなく、抵抗もなく、その後原子力潜水艦はいつでも何の反対も受けずに入ることができるようになる。さらには、原子力航空母艦のエンタープライズを入れても、そこに問題はないんじゃないか、そういう心理状態を漸次つくり出していこうというアメリカの意図が、あなた、くみ取られたのかどうか、その点はどういうふうにお考えになっておられたのでしょうか。
  54. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私は日本の安全というものは、これは全く丸腰で日本の国の安全というものはこれははかれない状況であることは、これははなはだ遺憾でありますけれども、現実はそうでございます。少なくとも、考え方によっては絶えず脅威を受けているといういま環境にあるのではないか、そういう場合にアメリカが責任を持って日本の安全に対してこれを守るという条約上の義務を負っているのでございますから、その義務を遂行するために個々の軍艦の入港はそれはどういう意義を持っているかというふうに、虫めがねで見るような議論をすれば、これは際限のない問題ではないか。守ってくれるという相手の国の軍艦日本の港に、しかも、指定した港に立ち寄るということは、これは私はきわめてあたりまえのことだと考えるのであります。ただ、日本の国民は唯一の被爆国としてこの原爆というものに対して特別の感覚を持っている、感情を持っている、そういう点も現実の政治としてはこれは考えざるを得ない。そういうことで、ただ断わりなしに出入りするということでなしに、前もって断わってそうして十分に相互の間で安全性を確認してそうしてやっているのでございまして、国民がまだ心理的な影響を受けると、こう仰せられますけれども、まあ、だんだんやっぱりこういう問題は感情としてはある程度はもちろんこれは尊重しなければならない。しかし、実際問題として、そう人体に危害のないもので、そうして大局的に見て日本の国の安全というものを保障している相手方の国の軍艦の入港でございますから、これは認めるべきものである、こういう心境に国民がなることをわれわれは期待するわけであります。だんだんそういうことになれて、もはやただ亡霊に脅かされるというのじゃなしに、ほんとうに冷静に事態をみな認識するということになることが私は望ましいし、そういうふうに政治はやはり指導すべきではないか、あべこべにそれをあおるようなことは私はやめたほうがいいと思います。
  55. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いまの外務大臣答弁を聞いているというと、まあ、日本人は早く原子力潜水艦にも原子力空母にも不感症になれ、そうしてこんな問題は気にするな、こういうことなんですね。しかし、この問題を、入港問題を単に原子力潜水艦が入港したときの放射能を水の中に出すか出さないかという安全性の問題に還元をして、そうして安全性の問題については安全だからということでこの問題に不感症になれと言っても、国民は不感症になりませんよ。むしろそれよりも、問題は、あのべトナム戦争の行なわれている際に、このベトナム戦争に参加してベトナムの海域において軍事行動をとったアメリカ原子力潜水艦日本に入ってくるということは、先ほど森君も指摘されたように、この戦争の問題との関連性が非常にありますから、そういう事態について国民は心配しているのです。それを、アメリカ側でやっているように、日本の国民を漸次原子力潜水艦にならしていこうという、外務大臣自身がそれの片棒をかつぐようなことをやってどうしてあなたが国民の信頼を得られますか、自民党の信頼を得られますか。あの原子力潜水艦横須賀で、あるいは佐世保で一番歓迎しているのは、パンパン、パンパン宿のおやじ、そしてまたおみやげ屋さん、こういう連中なんです。あなたは、それにだんだん日本の国民をならしていこう、つまり、そういう連中と同じ考え方で、そして同じような効果をねらっておるのであって、私どもとしては、あなたのやり方はまことに政治家らしからざるものだと、こう言って、私の見解を述べるのをやめておきます。
  56. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣は、原潜の入港は国益に害がない、このような御発言がありましたですが、いま横須賀できのうきょう、さらには拡大しようとするこの警察官と労働者あるいは学生とのデモですね、流血の惨事も起こっております。このデモがはたして国益に害がないと、こういうふうにお考えでしょうか。
  57. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私は、デモのことを言っておるのじゃないので、デモは、まあ、ものによっては容認されるべきものもありますが、あまりほめた行動ではないと考えております。
  58. 黒柳明

    ○黒柳明君 なぜこのようなデモが起こるか、先日の当委員会において、大臣はそんなわけははっきりわからない、このようなことをおっしゃいましたですけれども、デモが起こされる理由、大臣はっきりおわかりになりませんでしょう。いかがでしよう。
  59. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、わからないわけでもないが、しかし、つまらないことだと考えております。
  60. 黒柳明

    ○黒柳明君 佐世保に原潜が入港したとき、ライシャワー大使でも、米軍の要するに原潜が入港する、こういうようなことは日本人を戦争に巻き込む、こういうおそれを日本人に抱かせる可能性がある、このような発言をしているわけです。アメリカの大使ですらもこのような非常にこまかい気のつかい方をしておるわけですが、いまの外務大臣発言を聞きますと、非常に何かおざなりな、先ほどからお話がありましたように、ほんとうに対外交問題の総責任者として日本の国是、日本の国民を思っての発言、そういうことに欠けているのじゃないか、責任感に欠けているのじゃないか、こう思うわけですが、このライシャワー大使の発言、それといまの外務大臣の心境いかがでございましょうか。
  61. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、政策上の御質問でもないようでございまして、意見の相違としてひとつごかんべんを願いたいと思います。
  62. 黒柳明

    ○黒柳明君 すると、外務大臣、原潜を受け入れる日本の最高責任者である外務大臣と、まあ当事者とは言わないまでも、その責任の一部を担当するアメリカの駐日大使との意見は相違していると、こういうようなことで了解してよろしいでしょうか。
  63. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ライシャワー大使がどういう意見を持っておるか、どうもあなたのおことばだけでは信用がちょっとできないのでありまして……。
  64. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ、信用ができないと言ったって、私だってだてや酔狂でここへ来て大臣をつかまえて発言しているのじゃない。私は年も若い、また一年生議員ですから、私は信用できないと思いますけれども、イコール、ライシャワー信用できない、こういうことにはならないと思いますし、これははっきり大使言明しておる。その言明に対して、ライシャワー発言は信用できないと、こう受け取ってよろしいですか。
  65. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、そうおとりになってもけっこうであります。
  66. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ、確認します。ライシャワー大使は、こういう原潜が日本に入港する、こういうアメリカ行動は、日本ベトナム戦争に引き込む、こういう日本人に対しての憂えを拘かせる可能性があると、こういうことはないと、こういうふうに大臣はお考えになるわけですね。こういう大使の発言は間違っておると、私はその意見とは違うと、こういう発言でよろしいでしょうか、考えでよろしいでしょうか。
  67. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もしライシャワー大使がそういうことを考えておるとすれば、遺憾ながら大使と私は意見が少し違います。
  68. 黒柳明

    ○黒柳明君 意見が違うと、こういうことで私は確認したいと思いますが、それから、先ほども話がちょっと出ました、要するに、なしくずし方式です。自衛隊が今日の自衛隊に発展したと同じように、原潜から空母からやがては核弾頭も日本に持ち込ませる、それに対しての不感症、そういう要素を国民に植えつけるのじゃないか、こういうような憂えがある。これは絶対にないと、こういうことでよろしいでしょうか、こういうなしくずしは絶対にやらないと。
  69. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いや、原潜の寄港というものだけを私は取り上げております。核兵器の持ち込みであるとかそういったような問題まで考えてのことじゃございません。
  70. 黒柳明

    ○黒柳明君 ですから、考えてはないとしても、要するに、先ほども言ったように、国民は原潜、そういうものになれてもらいたい、こういう発言があったわけです。そうすると、今度はエンタープライズも入ってくる、それにもなれてもらいたい。やがてはこの次には核兵器を持ち込む、それにもなれてもらいたい、こういう憂えがある、心配がある、こういうことなんですが、こういう例に対しては、絶対そんなことはない、こんなふうな確認をしていただきたいと思います。
  71. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはまあ推進力を従来の油から、重油から原子力に置きかえたというだけのものでございますから、そう大騒ぎをするほどのことではない、そういう考え方でこの問題に私は対処しておるのでありまして、それ以上、エンタープライズであるとか、あるいは核兵器の持ち込みであるとか、そういったようなことをいま問題にしておるわけじゃございません。
  72. 黒柳明

    ○黒柳明君 もしそんな問題がなければ、マスコミでも、あるいは国会においても、これほど問題にならないのです。問題がないとお考えになっているのは、大臣だけの判断じゃないかと、こう思いますが、それはともかくとして、はたして、これは何回も繰り返されておりますけれども、科学的安全性、それに対しての裏付けのデータ、これはもう完ぺきにそろっておるのですか、その点もう一回確認したいと思うのですが、もしそろっておるとすれば、その資料を提出していただきたいと思いますし、その中には、例のイギリスの原潜基地であるホリーロッホにおけるその汚染のデータも入っているのかどうか、いかかでしょうか。
  73. 安川壯

    政府委員安川壯君) 原子力潜水艦の安全性につきましては、寄港を認めるという最終決定に至りますまで、一年間以上にわたりまして、できるだけの資料を入手いたしまして、それに基づきまして原子力委員会で検討をいたしまして、最終的に危険はないという結論が出ましたので、それに基づいて寄港を認めるということになったわけでございます。その間の資料につきましては、その当時、すでに当委員会にもたしか御提出申し上げたと記憶しておりますけれども、もし提出しておらないのであれば、いつでも提出申し上げます。  ホリーロックにつきましては、これは実は原子力潜水艦寄港を決定した後に起こった問題でございますけれども、これもさっそく調査いたしましたところが、一部海底のどろの中に、ごく少量の一部の放射能の増加が認められた。ただし、その増加の程度というものは、いわゆる人体に危害を与えない許容限度よりはるかに低い限度でありまして、しかも、その後はこういう現象は逐次解消しておるということが判明いたしております。
  74. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に一問だけ。非常事態  これは不慮の事故の発生だと思いますが——に対して、万全の処置をとっている、このような大臣発言でございますが、万全の処置、事故が起きたときの万全の処置とは具体的にはどのような処置であるかお伺いしたいと思います。
  75. 安川壯

    政府委員安川壯君) 放射能の影響につきましては、入港の事前、事後に厳密な調査をいたしまして、従来は、少なくとも何らの変化がないということが確認されておりますし、今後もそのような調査を続ける予定でございます。それから、入港の際のいろいろの運航上のことにつきましては、私も専門家、当事者でございませんから、具体的に詳しくは申し上げかねますけれども、あらかじめ航路が指定されておりますので、それに基づきまして、わがほうの関係の海上保安庁当局を中心といたしまして、運航の安全については万全の措置がとられておるわけでございます。
  76. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣は時間が少ないそうですから、あまり本格的な議論はいたしませんが、先ほど来伺っていると、社会党の同僚諸君が言われている点は、本質的には安全保障条約の問題で、必ずしも原子力潜水艦ということに——関係もありますけれども、より一般的な問題だろうと思う。この問題を議論する時間がございませんから、原子力潜水艦入港問題に限って二点ばかり伺います。  第一は、これは黒柳君からすでに御質問があったところですけれども、何といっても、炉の安全性というものについてはまだこれで十分証明済みだということは言えないと思うのです。つまり、原子力推進機関を持ったアメリカ軍艦日本に来るのだ、しかも、それが日本でも一番交通の激しい浦賀水道を通って、日本の一番人口の稠密している、日本の心臓部である京浜工業地帯のそばに来る。これは安全保障の問題で、炉の安全の問題衝突のことも含めて、これは非常に大きな問題だと、こういうふうに考えるのです。そこで、その点についても安全だということが、自民党が現地で楽隊つきでPRするのでなくて、国民の中に科学的にそれが十分証明されておらないところに、原潜問題に対する、漠然としているけれども重大な不安があると思う。ですから、これはやはり安全性がもうこれで確認された段階ではまだない、私はそういうふうに考えて、その意味で、安全性が確認されない限り、まことに迷惑しごくであるというのが私は偽らざる国民の声だと思うのです。おそらく横須賀の市民に聞いてみても、おみやげ物屋さんを含めて、どうも心配なんだけれども商売にはかえられない、これは私は実際の心境だと思う。そこで、安全性の確認について万遺憾なきを期しているのかどうか。私は決して安全じゃない、まあまあしばらくの間は佐世保ぐらいで——と言うと、いかにも横須賀の利己主義のように聞こえるけれども、まあまあ佐世保ぐらいで、もっと国民が、それこそ安全性についてだいじょうぶだという気持ちが起こるまで横須賀に入港は見合わせるというやはり政治的の措置がいいのではないか。この意味において、安全性の問題から横須賀は適当でないというのが私の見解で、あらためて当局の、外務大臣の意見を聞きたいというのが第一点。  それから第二点は、一番われ一われが残念に思うのは、同じ日本人が、一方においては実力阻止、きょうのお話を聞いていると、いかにもここのサロン的空気といいますか、そういう意味できわめてレベルの高い政治的な談議ですけれども、現地へ行ってみると、血なまぐさいベトナム戦争の血を浴びた原潜が来るのだから実力で阻止しましょうと、そういう実際の訴えをやっているのです。それで、一部の人はゲートを越して中に入り込んだやつを実力阻止、他の阻止闘争も、やはりアメリカの水兵さんが現実に、おみやげだか人間のサービスだか知らないけれども、町へ買いに行くのを監視部隊でじゃましよう、実際補給休養に来たのを、実力かあるいは実力のおどしによって阻止しようと、こういうかまえをしていることは事実です。つまり、現地においては実力阻止のかまえ、他方においては、一方において日本人としてどうかなと思うような行き過ぎた歓迎と言うか、アメリカの旗を振っていらっしゃい、いらっしゃいと、この同じ日本人、同じ横須賀市民が積極的歓迎派と積極的実力阻止派に分かれて戦っておる。しかも、その横須賀に入り込んでいるのは横須賀市民でないという大部隊——警察部隊とそれから労働組合、学生の部隊が入り込んでいるというのは、私は正常の好ましい姿じゃない。そういう意味で、一番問題なのは、先ほど来議論になっている一つは炉の安全性の問題だけれども、一つは、何かなしくずしに原子力兵器、つまり核兵器、本格的核兵器を持ち込むという腹があって、それをなしくずしにやるのじゃないかというこの疑いというものをどうして晴らしていくかということが現実の政治でなければならぬと思う。その意味からいうと、核兵器持ち込みは事前協議のためにお断わりしますというだけでは済まない。一方において、もう核兵器の持ち込み同様だと言って騒いでいる部隊があるのですから、現地で。してみれば、私は政治の要請からいえば、われわれがよく言っておりますように、現在の安全保障条約では協議いかんによっては持ち込めることになっているわけです。これは事前協議というのは、日本政府の同意なくしては核兵器は持ち込めない。だとするならば、われわれはそのアメリカ軍事力が全然要らないのだ、アメリカ軍事力というのはこれは全然悪だという一方的きめつけをしているわけじゃない。現在の世界の平和はやはり両陣営の力と力のバランスによってかろうじて保たれているということをわれわれは忘れるわけにいかない。だから、アメリカの核を含む軍事力というものは、やはり一方の陣営の同様な軍事力とのつり合いを保っていることにやはり極東の安全というものがかかっていることは事実です。しかし、そのことと、日本みたいな狭い地域に、そういう前進基地みたいなところに核兵器を持ち込んだり、日本みずからが核兵器を持つなんということは愚かなことだ、りっぱにこのアメリカ軍事力に依存している防衛の姿と日本地域に核兵器を持ち込まないということとは、私は両立する、こう思う。したがって、いまの安保条約のもとにおいても核兵器だけは持ち込みませんよということをあらためて日米間で政治的協定をつくったらいいじゃないですか。それを発表するならば、何でもかんでも一緒くたにした、なしくずしで原子力兵器を、核兵器を持ち込むもう事前運動だというような意味のこの誤解並びにそれを扇動するような人たちの運動というものは、どうしてもこれはしりつぼみになる、私はそう考えておる。そういう意味で、現安保条約のもとにおいても核兵器だけは持ち込まないという政治協定をやり、政治協定ということばが大げさならば、ちょうどアメリカの閣僚も日本に近く来るようですし、何か日米政府の共同声明みたいなもので——相談すれば持ち込めますというそういう立場になっておる、これはやはり政治的に持ち込まないのだという両国政府の明確な意思表示をするのが私は事態を解決する一番前向きの姿ではないか、こう思うのです。  以上、二点についての外務大臣の所信をお伺いしたい。
  77. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 安全性の問題につきましては北米局長から具体的にお答えいたします。  私は、第二の、この核兵器を持ち込まないんだという、事前協議対象にするというだけじゃなしに、進んでそういう政治的発言でもする考えはないかといういまお話でございましたが、この問題につきましては、ただいまのところ、そういう積極的な考え方を持っておりません。しかし、この問題については御意見として十分に私どもとしても考えてみたいと、こう考えております。
  78. 安川壯

    政府委員安川壯君) 炉の安全性という点につきましては、原子力潜水艦に積んでおります原子炉の、何と申しますか、こまかいデータというものが現実に軍事機密になっておりますので、これは知る方法がないわけでございます。それからまた、万一衡突が起こった場合にどの程度の衝撃に耐え得るかという点についても、具体的なデータを入手することはできないのでございますけれども、一般的に、単なる衝突によって直ちに原子炉がこわれて放射能を排出する危険があるというようなことはないというふうにいわれております。それから、実際の運航上の安全確保でございますけれども、これをきめますときにアメリカ側がはっきり言いましたことは、よほど何らか例外的な事態が起こらない限り、入港は昼間に入港する、夜間は入港しないということでございます。従来、今回を入れて九回入港しておりますが、いずれも昼間の入港でございます。それから、日本の領海に入りましたならば、潜水はしないで浮上して入港するという点もはっきりいたしました。それに加えまして、さらに念を入れて、実際に入港いたします場合には、先ほども申し上げましたように、海上保安庁の船が、巡視艇がこれに同伴いたしまして必要な保護に当たっておるというのが現状でございまして、それだけの措置によりまして、まずまず衝突というようなことは万々一起こらないものと考えております。
  79. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 他に御発言もないようでございますから、本件に関する質疑は、本日はこの程度にいたしたいと思います。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時十五分散会