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1966-02-25 第51回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十五日(金曜日)    午前十時九分開議  出席分科員    主査 愛知 揆一君       相川 勝六君    赤澤 正道君       上林山榮吉君    木村 剛輔君       登坂重次郎君    佐藤觀次郎君       高田 富之君    只松 祐治君       武藤 山治君    加藤  進君    兼務 加藤 清二君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    財満  功君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     鹿取 泰衛君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         外務事務官         (情報文化局         長)      新関 欽哉君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      中原龍之助君         通商産業事務官         (繊維局長)  乙竹 虔三君  分科員外出席者         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    内田  宏君         農 林 技 官         (食糧庁総務部         長)      田中  勉君         通商産業事務官         (通商局次長) 今村  昇君     ————————————— 二月二十五日  分科員勝間田清一委員辞任につき、その補欠  として佐藤觀次郎君が委員長指名分科員に  選任された。 同日  分科員佐藤觀次郎委員辞任につき、その補欠  として武藤山治君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員武藤山治委員辞任につき、その補欠と  して只松祐治君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員松祐治委員辞任につき、その補欠と  して湯山勇君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員湯山勇委員辞任につき、その補欠とし  て大村邦夫君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員大村邦夫委員辞任につき、その補欠と  して堀昌雄君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員堀昌雄委員辞任につき、その補欠とし  て勝間田清一君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員加藤進委員辞任につき、その補欠とし  て谷口善太郎君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第四分科員加藤清二君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算外務省所管      ————◇—————
  2. 愛知揆一

    愛知主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和四十一年度一般会計予算中、外務省所管を議題といたします。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度にとどめ、議事進行に御協力願いたいと存じます。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に要領よく簡潔に行なうよう特に御注意申し上げます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 椎名外務大臣にお尋ねしますが、先日ソ連に行っておられましたので、きょうは特にソ連に関する問題について若干の質問をしたいと思います。  最初に、あの日ソ交渉の中で、領事館協定が非常に問題になっておりますが、それはいまどのような状態になっておりますか、お伺いしたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 昨年の十月ごろから領事条約の締結を目的として両国の間に協議が開始されました。おおむね順調に進んでおります。それで、この模様では一、二カ月くらいの間に大体結論に到達するのではないか、こういう見通しでございます。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 私たちの聞いたところによりますと、日本の大阪あるいは小樽か新潟に片や総領事館、片や領事館向こうハバロフスクナホトカ総領事館というような話がありましたが、そういうことは具体的になっておりますかどうか、お伺いしたいと思います。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、いずれ条約が成立しましてから、今度はそれを実行する段階に入って、どこそこに置くかというような問題について具体的に協議をしてきめたいと思います。こっちは予算関係上、一応ナホトカということにしてあります。これは、こっちの希望を申し出て、それから向こうのほうはどういうところを一体具体的に希望してくるか、その段階に入ってだんだんはっきりしてくると思います。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 日ソ交渉が非常に順調にいっておりまして、私たちも昨年の夏行きましたので、非常に喜んでおるわけですが、非常に問題になるのは交通機関の問題です。今度日ソ航空協定ということになっておりますが、これはいつごろ具体的に処理されるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは相互単独乗り入れを実行するというたてまえでやったのですけれども、それをやるにはいろいろ地上の準備が要るというのです。レーダーであるとか、あるいは緊急避難の飛行場をつくるとか、あるいはちょっとその通路に当たっておるもので、もう少し遠方にどかさなければならぬというようなところとか、そういうようなことが——自分のところの飛行機だけが通るならいまでもいいのだそうです。そういう準備もあるし、いろいろ国内の事情もあるようでございますが、その関係暫定運航をやって、そして、そのうちにだんだん準備態勢を整えて、しかる後に今度は相互乗り入れをやる、こういうことにしたいというので、なかなか向こう暫定運航というものを譲らない。私のほうはせいぜい二年もあればいいのじゃないか、二年ということにきめようじゃないか、こういうのですが、なかなか、はっきりした年限を明示することは困る、こういうことでだいぶ折衝した結果、日本の二年ということは十分理解をもって、この希望に沿うように努力するというような、はっきり書かないけれども、確信と善意のある表現で妥協したのです。それで、暫定運航はいつから始まるかということは、これから今度は日航と向こう民間航空局と相談をして、そしてきめるのでありますが、夏ごろから始まるのじゃないか。早ければ六月、いずれにしても夏ごろには始まるだろう、こういう見通しでございます。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 この日ソ航空協定というものは、いろいろな意味で、日本ソ連航空関係ばかりでなく、ヨーロッパとの関係も出てきまして非常にいいことだと思いますが、もう一つこれに関連しまして、ソ連貿易というものはだいぶやかましくなりまして、最近、非常に反対をしておった経団連も、あるいはこの間鉄鋼界の永野さんも向こうに行かれて、だいぶ順調にいっておるようでありますが、何といってもソ連はドルが非常に少ないこともあるし、それから貿易も、御承知のようにいままでは活発にできませんでしたけれども、中共などの貿易がうまくいかないということに関連しまして、ソ連貿易が非常に重要なことになってきておるのですが、これに対して外務大臣はどういうような気持ちですか、これは延べ払いの問題、あるいはハバロフスクの見本市の問題等いろいろありますが、そういう点についてどういうような考えを持っておられますか、伺いたいと思います。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 わずか十年たらずで十倍あるいはそれ以上にも伸びておる。たいへんな勢いで日ソ貿易というものは伸びてまいりました。今度向こう希望によって、長期建設計画とマッチするために、従来の三年間の期限を五年間にしたいという申し出がありまして、日本としてもこれに同意をいたしました。それで五年間の協定を結んだわけです。五年間で往復二十一億ぐらい、これは最小限度です。しかし、その間にいろいろな状況の変化もございましょうし、これ以上に上回ることがあっても、これ以下になることはないというのでございますから、とにかく年間に四、五億程度のところへいくのじゃないか。向こうからこっちへ入るものは、銑鉄、それからアルミ、木材といったような原材料ですね。それからこちらからはいろいろなプラント輸出。それで、向こうとしてはかなり民生物資をもっと生産する能力を備えたい、それで日本プラント類を非常にほしがっておる。こっちは買うものがもう少しほしいが、ないのです。いまの石油黒海方面から持ってくる石油につきましても、やはりあの付近にいろいろな新しい需要が起こっておるので、いまの状況下においては、これ以上日本には石油の供給をそうふやすわけにはいかないというようなことがあります。ただ、御承知のとおり北樺太油田地帯天然ガス埋蔵量相当にある。その開発をして、そして日本に買ってもらう。ただし、その開発についてはほとんど大部分日本協力にまちたい、こういうような希望がありまして、日本としても、この問題はかなり魅力のある問題として、民間のほうでいろいろこれを研究しておる、こういう状況でありますが、もしそれが実現するということになれば、貿易量というものは飛躍的にふえるものである、こう考えております。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 椎名さんもおいでになったのですからわかりましょうが、日本に対して非常に好感を持っておる現状でございますので、ひとつぜひ貿易関係にも力を入れていただきたいということが一つ。  それからただいま問題になっておりますシベリア開発の問題について、どのような方策でやっていかれますのか。これはまだ将来のことでありますけれども、大臣に見解を聞きたいと思います。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 向こうシベリアというと、西部シベリア中部シベリア、こっち側のほうは極東といって、シベリアという概念では表現し得ないようなあれなんですね。こっちは何でももうウラジオ、あの辺からシベリアと思っておるけれども、向こうは、こっちは極東と言っておるようです。そんなことはどっちでもいいが、極東寄り資源としてはいろいろなものが考えられておるようであります。主として地下埋蔵資源、そういうものの開発日本工業力協力によって実現したいという気持ちがあるようでございますけれども、開発が実現するまで相当の費用をつぎ込まなければいかぬということでございます。まあみな非常に大きな資源ですから……。そういう点で、まだ具体的にはなっていない。ただ開発が始まると、それに売り込むいろいろな機械設備等生産者は非常な魅力を持っておりますけれども、これには相当の金がかかる。物が出るまでにはなかなかたいへんなことなんです。はたしてそれが実現し得る段階になるかならぬかということについては、まだまだ考えなければならぬ問題があるようです。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 これは、外務大臣への小言になりますが、実は私、ちょうどモスコーに行ったときに、下田大使が次官になられましてこっちへ帰ってきました。その後任に、これは中川さんに気の毒だけれども、中川さんはローマ大使からソ連大使に発令が出ておるわけです。ところが、この間ずっと代理大使がやっていまして、ローマからモスコーへ行って本省へ帰ってくるならいいけれども、ローマにおってわざわざ日本に来て、一月半くらいほかっておいてソ連大使に行くというような、こういうなまやさしいことをやっておられることは、どうも遺憾だと思うのですが、何か事情があってそうおやりになっておられるのか。特に日ソ交渉の非常にやかましいとき、まあミコヤンもおられまして、私は少なくとも代理大使が悪いというわけじゃないけれども、ローマからわざわざ東京に来て、一月おってソ連に行く、二月くらいほかっておいたのではないか。こういうことがありますと、せっかくモスコーに、日本人永住権の問題とか、ウラジオにたくさんおりますが、そういう大使館としての仕事が非常に多いときに、訓令されておる大使赴任をしていないというのは解せないことと思うのですが、これは、中川君に私は何もあれはありませんけれども、少なくとも大使ヨーロッパにおって、ソ連に寄らないで本省に直接来て、一月以上あけてソ連へ行くというのはちょっとおかしいと思うが、何かの因縁があるのか、その点は私たちも非常に不愉快に思ったのでありますが、どういうことになっておるのか、これは外務大臣、ひとつお伺いしたいと思います。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あのとき一応赴任をして、そうして向こうのおもなところにあいさつして、それを頭に入れて日本に帰ってきて準備して行くという一応の段取りはつくったのですけれども、日数を勘定してみると、どうもそういうことよりも、もうこっちへ来て、少しは礼儀に欠けるけれども、いろいろな対ソ問題について、やはり日本に来ないとこまかいことはわかりませんから、そういうことをよく頭に入れて、そうして赴任してもらったので、一つだけそこを省いたのです。あなたの言われるように、あるいは現地の筋にも失礼をしたと思っておりますけれども、いまはすっかりそういうことはなくなっております。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 これは外務省の都合もあることでありましょうが、私は少なくともヨーロッパにおられた大使が、モスコーへ寄らないで東京へ帰ってくるということは、いろいろな点で考えていただきたいと思います。  それから、これは大臣ではなく官房長でけっこうでありますが、外地へ参りますと、私は岡崎外務大臣のときにもそう言ったのでありますが、外交官宿舎の問題とか、在勤加俸の問題とか、どうも気の毒なように私は感じたのです。おそらくそういう予算は取っておられると思うのですが、そういう点は同じ公務員でも、外務省大使館公使館に行く人は、子供さんの教育問題等関係があって、非常に困難な仕事をやっておる。私たちは大体ロンドンとか、パリとか、ベルリンとか、いいところばかり行っておりますが、そういうことはそれでも感じますけれども、もう少しそういう点について、おそらく古い外交官の中には悲壮な気持ちで行くという方もあるのですが、大臣でなくて官房長でけっこうでありますが、そういう待遇の問題についてどういうことになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  16. 高野藤吉

    高野政府委員 在外に勤務される職員は、いろいろな点で犠牲を受けるわけです。子供教育等等、それから在外に行きましても、宿舎の問題、最近独立国が非常にふえまして、特に新興国におきましては住居が非常にないということで、アジアアフリカ地域においては非常に苦労しています。そこで外務省といたしましては、予算宿舎を建てまして、そこに入れる計画で、逐次その計画を実行しております。現在東南アジアではカンボジア、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ラオス、インド、それからアフリカではナイジェリアに持っております。今後こういうアジアアフリカ地域においては、できるだけ宿舎のないところには予算をもってこれを建てたいと考えております。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 それからもう一つ問題になっておりますのは、大使館館員公使館館員たちが、半年ばかりおると借金をして車を買って、転任になるときには二束三文で売っていくというような非常に気の毒な状態です。これは、おそらく普通の商社やその他の人と違いまして、そういう気の毒な点があるのではないか、こういうことについては、もう少し本省からめんどうを見てやる必要があるのではないか、こういうことを私は痛感して帰ってきました。  そこで、いま宿舎の問題も大事でありますが、こういうようなことについて、たとえば私どもモスコーに行っておりますと、非常に気の毒なんです。娯楽機関もないし、ボルガ川のそばに外交官保養地のようなところがありますが、それ以外にはほとんどないような、そういうところで車なんか持って苦労されておる姿は、どうも非常に気の毒な気もするのですが、こういう点について、公務員法がありますから、外務省の役人だけそうすることはできないかもしれませんけれども、少なくとも国から離れて——南米あたりの問題もありますが、非常に気の毒だと私は思って帰ってきたのです。こういう点についてもっと積極的にめんどうを見てやるような方法はないかどうか、私は大蔵委員をやっておりますから、大蔵省でそういうことが納得がいかぬと言うなら、私は説明してやろうと思っておりますが、この点は官房長、どのように考えておられますか。
  18. 高野藤吉

    高野政府委員 海外へ行きまして、家をさがして、それから上級書記官なら自動車を買う。これの初めのお金がだいぶ要るわけでございます。月賦で買いまして、あと一年なり一年半で急にかわると、本人はそれを返せないうちにほかに行かなければならないということで、できるだけそういうことを避けるために二年ないし三年いるということ、それから最初の金が要る場合には、共済組合からある程度の補助をして、それから月賦で返すということを考えております。それから四十一年度は一〇%在勤俸をふやしまして、書記官給与を厚くいたしまして、そういう点も若干補てんするということで、いろいろの要因を考え合わせて、そういう不利、不便をできるだけ今後ともなくしていきたいと考えております。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 先ほどちょっと触れましたが、ソ連貿易が非常にしげくなりますと、日本人居住権の問題ということが非常にむずかしい問題になってきておると思うのです。そこで、私は気の毒なことに思ったのですが、現実に何とか一年か二年ぐらいは住めるような、そういう方策をとってくれということをいろいろ各商社からも伺ったわけですが、この問題について何らかの打開策があるのか。これは条約が結ばれておりませんからむずかしい問題だと思いますけれども、何か居住権のあるような形をとる必要があると思うのですが、そういう点はどういうことになっておるのですか、伺っておきたいと思います。
  20. 北原秀雄

    北原政府委員 本件につきましては、先般外務大臣の訪ソの際にも、現地商社代表の方と長く懇談されました。実は社会主義国家におきましては、個人商社代表というものが、実は先方国家にはないわけでございます。それが根本的なたてまえの差になっておりまして、そういう意味ではっきり居住権と申しますか、居住権の実績、実態といたしまして、住居ソ連政府からあてがうということがどうもたてまえ上非常にむずかしいわけでございます。先般外務大臣先方グロムイコ外相、それからコスイギン首相との会談でも、これを大臣から持ち出しておられます。他方、モスクワ市長との会談でも、これを強く大臣から要望されました。先般モスクワ市長東京に参りましたときにも、本件をずいぶん長く議論しておったわけでございます。現在のところまだ政府間のレベルで、たてまえ上はっきりとこれを認めるというところまではまいっておりません。しかし先方も、ロシア人自体の、モスクワ市民居住状況が逐次改善されているので、実際面においてもう少し楽になれば、何とか具体的には少しはめんどう見ていけるのではないか。現在は、御承知のようにウクライナホテルという大きなホテルの三分の二以上を日本商社代表が占めておりまして、これは非常な異常な状態であります。何とかわれわれといたしましてはこの交渉を続行いたしまして、家族の呼び寄せ等についても何とか打開していきたいと、せっかく努力するつもりでおります。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 もう二つばかりお伺いしたいと思いますが、いよいよ問題になっております日ソ漁業交渉が始まるようでありますが、こういう問題は、いろいろ双方が歩み寄って最後に結末がつくんですが、これは毎年やらないで、何とかもう少し簡単に、上のほうでなくて、下のほうでうまく交渉が進んでいくような、そういう形式ができないものかどうか。毎年漁業交渉があるたびに、非常にいろいろ国民が心配しておるのですが、そういう点はどういうふうになっておりますか、伺いたい。
  22. 北原秀雄

    北原政府委員 仰せのとおり、本年も各社代表全部、幹部こぞってこの三月一日出発することになっております。本年は、御承知のように、非常な不漁年でありますので、よけい心配も多いものでございますが、問題は、御指摘の点は対ソ交渉の面でこの問題があるのではなしに、むしろどうしても業界といたしましてはできるだけ大きな量を確保したい。それに対しまして日ソ政府間での資源調査のほうからは、とうていこういう数字までは達せられない、つまり日本側考えます要望と、両国専門家で行なっております資源調査の面からの結論との間に、相当の間隔があるという点が毎年われわれの悩みとするところであります。しかし十年前に比べますれば、百日交渉と申しておりましたのが、昨年度も一カ月で終わっております。本年度不漁年でございますので、その点ある程度の困難を予想しておりますが、しかし、本年度も昨年どおり、非常に合理的な議論の上に短い期間で片づき得るように、せっかく努力したいと思っております。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 椎名さん、いろいろ発言の中で、なかなか問題が起こることを言われますが、何と言っても日ソ交渉に前向きの姿勢でやっておられますから、こういう漁業交渉貿易の問題、シベリア開発問題等については、一段と努力していただきたいと思います。  それから最後に、実はソビエトのことばの問題でありますが、これは、昔日本ではハルピンに外語学校があったり、中学校課程でも、敦賀、新潟という方面ではそういう語学校があったのでありますが、御承知のとおり、戦後長い間そういうことはなくなってしまいました。そこで業者の中に、そういうふうに、日本人が旧ソ連語がわからぬために貿易上非常に不利な状態があるということで、何とかソ連語学校についてひとつ外務省考えてもらいたいという意見もいろいろ聞きました。そこで、私立ではいま私学問題が問題になっておりますように、なかなか経費がありませんから、少なくとも国立の学校の中にソ連語課程を一これは普通のような課程でもいいのですが、もう少しそういうような方面で力を入れていただくようなことができないものか。これは、現地で非常に要望されましたので承っておきたいと思うのですが、外務省ではそういうことで何かお考えになっておられますか、伺いたい。
  24. 高野藤吉

    高野政府委員 外務省といたしましては、英独仏はもちろん、いろいろなことばがございますが、ロシア語は非常に重視しておりまして、上級試験英独仏で通った方も、ロシア語にかわりまして勉強しております。ただ、先生御指摘のとおり、昔はハルピン学院等非常にあれがございましたが、現在それはございませんので、日本で勉強して、あとイギリスアメリカ等ロシア語専門学校がありまして、それが終わってからロシアに行って勉強するということになっておりまして、戦後上級試験はもちろん、語学研修員もこれに重点を置いて研修をさせておる次第であります。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)分科員 時間がありませんから、最後外務大臣にお願いやらお伺いやらするのですが、御承知のように、日ソ交渉がだいぶ順調に運び、ミコヤンはやめましたけれども、いまのコスイギン首相は、日本と非常に友好関係を持っていこうというあれがありますので、日一日と貿易関係その他で窓があいたような、かすかな光ができたように思うのです。日本はベトナムや韓国やあるいは中共、台湾の問題で、いやな感じがするのだけれども、一つだけかすかな光を与えているのではないか。その点で椎名外務大臣はいろいろ欠点はあるけれども、これだけはよいことをやっておるのではないか、そういう声があるのですが、今後どのように日ソ交渉をやっていかれますか、その気持ちだけを伺っておきたいのであります。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今度参りまして、日本の国民の大部分が考えておるのは、これ以上日ソの親善ムードというものを高めて、そしてお互いにそれによって利益を享受するという高次の段階まで進むのには、どうも一つ問題がひっかかっておる。それは領土を含む平和条約の問題である。そういうことを話しまして、いまの親善ムードは、結局そういったような問題に対して楽観的な期待を持っているからであって、これがどうもそうじゃないというようなことになると、にわかに後退するようなことにならぬとも限らない。ここはまあひとつ、わずかばかりの島にとらわれないで、ソ連としてもより大きな利益を亨受するためには、それくらいのことは顧みない、犠牲を払うという——犠牲を払うというと語弊がありますが、そういう問題については、われわれの主張に従うという気持ちになってもらえないかということを言ったのですが、いや、これはもうすでに解決済みの問題であって、そういうことがなくとも、両国の親善関係というのは限りなく発展するのだということを向こうは言うのです。いや、そうは考えないと言って、とにかく保留はして帰ってまいりましたが、向こう考えは、そういうことにかかわらず、大局的に日本ソ連関係は発展する可能性がある、そういうことをしきりに強調しておりました。そこらにちょっとこだわりがあるのでございまして、いずれこの問題については、だんだん両国関係がもう少し濃密になるに従って、適当に調整をするという機会を見出していかなければならぬと考えておりますが、とにかくベトナムや何かに関する問題では、ソ連はなかなか頑強にがんばっておりますが、事日本との親善ということになると、非常に向こうとしては友好的な態度をしておる。  ただ私は、もう一つ向こうの気に入らないことを言ったのです。ソ連の対日放送というものがある。これは日本語で、日本に向かって放送しておる。ときおり日本の政策に対して非常にぶしつけな批判を直接される。これは、両国の間の政策が違うということは、もうしかたがない。日本語で日本人に向かって直接ああいう政府の政策に対して悪口を言うというようなことは取り締まってもらいたい。それはどういうことか。こう言うから、たとえば日韓条約の問題だと言ったところが——これはグロムイコ外相との話であります。日韓条約の問題は、ソ連でもこれは適当なものでないというふうに政府が言っているのだから、したがって、放送局もそれに従って言っているのだろうから、こっちから別に責めるということはどうか、こういうようなことを言っておった。だから、政府の意見は意見でいいが、直接日本語で、日本の国民に対して政府の悪口を言うのだけはやめてもらいたいということで、これは、うんともノーとも言わないで、そのまま別れてきましたが、そういうことで、いろいろ妥協のできない問題がたくさんありますけれども、しかし、そういうことにかかわらず、あくまで向こうが平和共存の政策で進む限りにおいては、日本といたしましては、こちらの利益になることはどこまでも進めてまいりたい、こう考えております。
  27. 愛知揆一

    愛知主査 次に、武藤山治君。
  28. 武藤山治

    武藤分科員 私、最初に、きょうは時間が非常に少のうございますから、端的に中南米並びに南アメリカ関係貿易振興について、特にこれに関連した外務省の担当問題を中心にお尋ねをしてみたいと思います。  今日、外務省は、メキシコをはじめ、中南米に対する通商関係にどのような姿勢で対処しておるのか。まず大ざっぱに、東南アジアヨーロッパ、アメリカと分類をした場合に、中南米や南アメリカに対しては、外務省としてどの程度ウエートを置いているのか、その辺からまず大ざっぱな姿勢をお尋ねしておきたいと思います。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 政府としては、もちろん中南米に対する貿易を等閑視しておるものではございません。だんだん一般貿易あるいはプラント輸出、こういつたような問題につきまして、逐次拡大の傾向にあるのでございますが、さらに、民間の経済使節団を政府で任命いたしまして、そしてつぶさに各国を訪問いたし、民間経済人はもとより、政府のそれぞれの機関を訪問して、そうして将来日本との経済交流について、一体どういう方面にまだ有望な開拓すべき余地が残されておるかというような点につきまして十分に調査をして、そして持ち帰って、これを政府の施策とし、あるいは民間の経済進出の資料とする、こういうようなことに進めておるような状況でございまして、最近の進展の実情等につきましては、経済局長からさらに詳しく申し上げたいと思います。
  30. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、中南米とわが国の貿易全体といたしますと、昨年度は輸出で申しますと、わずか三・四%の伸びでございます。全体の輸出が二〇%の伸びであるのに比べますと、非常に伸び率が少ない。しかし、もちろんこれはいろいろな国国の事情によって異なっております。たとえば、メキシコのごときは一七・五%の伸びでございまして、ほぼ一般の世界市場に対する輸出の伸びと同じようになっております。こういうふうにわりあい中南米に昨年伸び率が少なかったというのは、一九六四年に実はたいへん輸出が伸びたのでございます。これは六三年に比較しまして三一%という伸びのために、大きな伸びの年を基準にして伸び率を見ますと、昨年は三・四%と非常に少なく思えますが、六四年は非常に大きかったということが言えると思います。それで、やはり何と申しましても、中南米への輸出増大のかぎは、いわゆるABC三国、つまりアルゼンチン、ブラジル、チリ、この三国が何と申しましても日本貿易相手国として南米では大きなところですが、これが、御承知のように非常に外貨事情に苦しみまして、そのためにわが国の対南米輸出全体が非常に停滞するということになるわけなんでございまして、そのために日本政府としましては、ブラジル、チリ、アルゼンチン、それぞれ債権繰り延べの交流をいたしまして、だんだんに債権を延ばしてやるということによって輸出増大をはかるというほかないと思います。  それから第二は、やはり経済協力をいろいろなかっこうで進めながら貿易増大をはかるということでございますが、これは、やはり農産物の開発、銅その他の鉱産物等の開発といったようなことで着々やっている。もう一つは、一次産品の輸入増大ということによって輸出を拡張するというような方策につきまして、外務省、通産省、農林省等、非常に一生懸命対策を検討中でございます。最近、政府が派遣いたしました水上ミッションの意見の具申、それからもう一つ民間がオーガナイズしました生産性本部から出ました北川ミッション、この方々から現実の現場におけるいろいろな御観察等に基づくいろいろな意見具申をちょうだいしておりますので、それに基づきまして、われわれとしても大いに努力したいと思っております。
  31. 武藤山治

    武藤分科員 大体姿勢はいまの説明でややわかりますが、メキシコとそれから南アメリカと分けてお尋ねいたしますが、貿易じりはどうなっていますか、輸出輸入のバランスは。
  32. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 昨年の貿易じり、これは関税統計でございますが、中米及びカリブ海をとりますと、輸出が六五年が二億三千九百万ドルでございます。それから輸入が三億一千六百万ドル、それから南米について申し上げますと、輸出が二億四千八百万ドルに対しまして輸入が三億九千万ドルでございます。
  33. 武藤山治

    武藤分科員 外務大臣、いまお聞きになりましたように、メキシコ一国でも一年間に一億ドルの日本の輸入超過、南アメリカについても一億ドル以上の輸入超過になっている。アフリカ諸国と日本との関係でわずか二、三千万ドルでも日本のほうが輸出超過になれば大騒ぎになって、南アフリカなどの場合には抗議を申し込まれておる。ところがメキシコや南米については、日本が一億ドルも年々輸入超過の状態になっておる。これについて外務省はもっと貿易バランスを是正しよう、輸出輸入のバランスをとろう、こういう姿勢をとるのが私は当然だと思う。いまここで主要国別の輸出輸入状況を見ますと、三十九年合計において、メキシコの日本からの輸出は三千四百万ドル、輸入は一億四千四百万ドル、四十年の情勢も大体これと同じような趨勢にある。さらに南アメリカ州四国のアルゼンチン、ブラジル、ペルー、チリ、この四カ国を一応統計上南アメリカ州とまとめておりますが、これを見ても、日本からの輸出は二億一千二百万ドル、輸入は三億五千五百万ドル、メキシコ一国でも、また南アメリカ合計にしても一億ドル以上ずつの入超であります。私は、こういう状態はやはり外務省としてすみやかに是正する努力をしなければならないと思う。外務大臣、一体どういう努力をなされましたか。もし努力をしていない場合は、どういう努力を今後したならばこれらの構造を改善することが可能だと考えますか、ひとつ端的な御説明を願いたい。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本は、いまだんだん輸出産業の構造が変わりつつありますけれども、何といっても綿製品、綿紡績が日本の産業の大宗をなしておったような状況もありまして、南米との輸出入のアンバランスは、綿花のそればかりではもちろんございませんけれども、綿花輸入ということが非常に大きくバランスをくずす要素になっておったのでございます。でありまして、個々の国と必ずしも輸出入のバランスをとらなければならないという考え方は、あまりに——そのバランスをくずして輸入超過になっても、その輸入超過というものが日本に必至の原材料でございまして、それがやがてはまた外貨をかせぐ非常な働きをするということであれば、必ずしも悲観すべきものでないと考えますけれども、しかし、輸出入のバランスがとれることは非常に好ましいことでございますので、こういう国々に対しましても十分に日本の輸出を拡大強化するということは、依然大切なものである、こう考えておりまして、メキシコ等につきましては、この調整の問題について特に協議を進めておるような状況であります。
  35. 武藤山治

    武藤分科員 原料を輸入して、加工して輸出でもうけるのだから、片貿易になっておっても悲観すべきではない。そういう場合もあります。しかし、事メキシコの場合を考えてみると、大臣のそんな甘い考えでは済まされないと思うのです。では大臣、今後具体的にメキシコの貿易問題をどのように解決しようとしておるのか、何か具体的な手を考えておるのですか、具体的な方策があったらひとつお聞かせ願いたい。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま申し上げたように、両国の間で貿易額の問題に関して協定をしようという段階でございますので、しばらくこの協定の進行におまかせ願いたいと思っております。
  37. 武藤山治

    武藤分科員 大臣、自由主義国家日本との間で、通商条約を締結していない国は、おもな国でどんな国がありますか。通商条約をまだ未締結の国をちょっとあげてみてください。
  38. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 お答えいたします。  通商条約、いわゆる貿易協定と区別した意味の通商条約は、戦後自由先進諸国とは実はほとんど締結しておりません。ヨーロッパ諸国とは、日英通商航海条約を除きましてほとんどないのであります。先進国では日米通商条約が典型的な大きな条約です。それからソ連というふうになるわけでございます。したがいまして、いわゆる通商条約というのは戦後むしろ後進諸国との間にわりあいに多い。ことに中南米諸国との間で非常に進んでまいりまして、エルサルバドル、ハイチ、ペルー、コスタリカ等々と通商協定を結びました。それからアルゼンチン、メキシコ、ボリビア、エクアドル等ともいま協定の締結交渉中でございます。
  39. 武藤山治

    武藤分科員 私が外務省の怠慢を責めたいのはメキシコとの通商協定、あるいは通商条約、そういうものは何ら結ばれていない。そのために日本に対する輸入制限をしておる。おまけに日本商社の社員がメキシコに駐在しても、そういう協定がないために出入国が非常にむずかしい。特に、いまアメリカ製品より日本の設備をできるだけ輸入しよう、そういう動きがあっても、いろいろな障害がある。特に外務省がそれらの貿易問題、協定問題について努力しようとしていない。昭和三十五年か六年に、池田内閣のときに、はっきりメキシコと日本の間で協定を結ぼうという話が持ち上がったはずであります。それは知っておりますか。知っておったとして、なぜそれを締結しないのか、その締結できない理由を明らかにしていただきたい。
  40. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 御指摘のように、昭和三十七年の十月に協定の第一次案をメキシコ側に提示いたしました。さらに昭和三十九年の九月、メキシコ側から実はこういうふうにしてほしいという対案が参りました。それを今度は加味いたしまして、第二次案を作成して提出いたしておりますが、その後数回にわたって在メキシコ大使館を通じまして督促したにかかわらず、いまだに返事がございません。それで、なぜメキシコ政府がそれをしぶっておるかということにつきましては、先方も実はあまりはっきりした理由を申しておりません。そこで、この四月にメキシコの商工大臣政府の賓客として招聘することになっております。その際にもこの通商協定の締結方について、話し合いをいたすことになっております。
  41. 武藤山治

    武藤分科員 外務大臣、すでに池田内閣のときに協定を結ぼうという話が持ち上がって、もうすでに三年以上経過しているわけです。にもかかわらずこれが締結できないというのは外務省の怠慢ですよ。怠慢じゃありませんか。大臣、どう思います。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まことに遺憾な状況にありますが、将来大いにこれを努力したいと思います。同時にメキシコに対して、協定の利益を感じさせるようにこれはしむけていかなければならない。相手方のある問題でございますから、むずかしいのでありますけれども、大いに努力をしたいと思います。
  43. 武藤山治

    武藤分科員 そこで、私は椎名さんと約束をひとつ結びたいのでありますが、あなたこの間東南アジアから中近東、ずっと特使を派遣して、川島さんを歩かしたり、またあなた自身、昨年ずっと歩いて、大いに経済外交を推進しよう、こういう政府の姿勢のようであります。そこで、こういう中南米あるいはメキシコ、南アメリカなどの国々ともっと経済的な外交を深くするためには、昭和三十七年に一応持ち上がった協定の話が今日実現しないのでありますから、大臣みずからが乗り込むくらいな熱意があって私はしかるべきだと思いますが、大臣、どうですか。国会でも終わったら、近々中にこれらの国々を一回り歩いて大いに経済外交を進めてきょう、こういう気持ちになれませんか。そのころは大臣はもう交代になって、おれはやっておらぬから知らぬというような態度をとりますか。あなたが次の人に引き継ぐくらいの熱意でこれらの貿易交渉の改善に努力する意思はありませんか、どうですか。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さしあたりの問題としては、四月にはメキシコの商工大臣日本に来ることになっております。その際に、十分にメキシコとの経済交流の問題についてはみっちりと話し合いをして将来の基盤をつくるというくらいの意気込みで話し合いを進めたいと考えております。
  45. 武藤山治

    武藤分科員 あなたが行ってくることはどうですか。
  46. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、その情勢によって、そういうつもりではおりますけれども、なかなかひまがございませんので、なるべく外務大臣というものは外を歩かなければいかぬということをつくづく考えておるような次第でございます。
  47. 武藤山治

    武藤分科員 百聞は一見にしかずでありますから、私は大臣が中南米から南アメリカを一回り経済外交推進のために歩くことを期待をして、この問題は一応切ります。  第二の、メキシコやアメリカ、南アメリカとの貿易を改善するためにも、あるいは国交を緊密にするためにもやらねばならぬ重要な問題が一つある。なぜ私はメキシコや南米が輸入超過で、日本が一億ドルも、合わせると両方で二億ドルでありますが、ずっと三年間も引き続き入超になっているか。それは、やはり日本のとるべき方策をとっていないもう一つの大きな問題がある。それは、進歩のための同盟をケネディ大統領が組織をして、基金をつくった。この基金を借りた国々は、基金を出した国とでなければ大きな貿易はできない、公然とその品物を買うということはできない制約があるわけであります。いわゆる輸入制限をしておるわけであります。したがって、カナダのとっておる措置は、この進歩のための同盟にわずか一千万ドルだけれども、カナダは信託をしておる。出資ではなくて信託をしておる。一千万、わずか三十六億円でありますよ。したがって、いずれの国でも進歩のための同盟基金に一千万ドルの信託をすれば、これらの加盟をしている国々は、アメリカに気がねしなくて取引をすることが可能だということを、われわれはメキシコの政府の高官に聞いたのであります。そういうことはうそでありますか、そういうことは可能でありますか、政府はこれをどう受け取っておりますか。
  48. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 いま先生の御指摘の問題は、具体的にはIDBという銀行がございます。それに各国が出資いたしまして、実はひもつきでない輸入資金等に充てるということになっております。それで、これの参加方を実は数年来慫慂されておりまして、先ほど申し上げました水上ミッションも、北川ミッションも、これは熱心に参加方を慫慂されたわけです。そこで外務省といたしましても、ぜひこれに参加したいということで、鋭意いま大蔵省等と折衝中の次第でございます。ただ、実はこれは輸出入銀行から出資するということになりました場合に、多少そのひもつき的な条件がつくというような問題がございまして、いまだにこの問題は解決されてないということは非常に遺憾な次第でございます。
  49. 武藤山治

    武藤分科員 そのIDBに入った場合、それは正式に基金に加盟して出資金として出そうとするからひもがつくのであります。カナダのように、ただ単に信託をするというだけでもいいのであります。そういう点の調査が少し私は政府当局としては怠慢じゃないかと思うのです。それは、基金の中に加盟して出資者になると、いろいろな制約はつく。しかし、カナダのように、ただ預けるだけで、加盟国が非常にアメリカに気がねしないで輸入ができるのだという情勢があるわけですね。そういう点の勉強が少し不勉強じゃないのですか。あなたのいまの答弁、間違いはありませんか。
  50. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 御指摘のカナダの信託は、われわれの了解いたしますところでは、これは社会面、社会開発のための信託であるというふうに了解いたしております。日本のこれからやろうといって目下検討中のものは貿易のほうの問題でございます。社会面の開発の信託は、われわれいま考えていないわけであります。
  51. 武藤山治

    武藤分科員 その社会面の開発基金であろうと、要するに進歩のための同盟基金に協力をしている、信託なら信託をしているそういう事実があれば、それに加盟しておる中南米諸国は、その国との貿易関係を大いに改善することが可能だという情勢にある。特にけしからぬのは、メキシコの場合はガットへ入っておらない。アメリカがすぐそばにおりながら、しかもあれだけの大きな人口をかかえたメキシコがガットに入っていない。したがって、かってに関税障壁を設けて日本製品の輸入をそこでストップするような態度をとっている。たとえばメキシコで日本の日産自動車が工場をつくり、えらいひどい目にあっている。これは、やはり私は日本の資本を保護するという立場からも、このまま見捨てておけない大きな問題があるような気がするのであります。こういう点について、いまの一千万ドル信託については十分考えている、大蔵省とも折衝していると言うが、大臣は、本年度予算編成にあたって大蔵省と具体的に折衝した覚えはありますか、どうですか。その三十六億ばかりの資金を確保するために大蔵省と折衝しましたか。日韓条約ばかりに真剣で、そういうほうについてはさっぱり予算化せぬのじゃないですか、どうですか。
  52. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 予算化する前に向こうとの折衝を遂げないといけませんものですから、まだその段階に達しておらなかったので、予算折衝はいたしませんでした。
  53. 武藤山治

    武藤分科員 まさに外務省の怠慢と言わずして何と言えるでありましょう。怠慢ですよ。あなたたちは、わあわあ騒いだことでなければなかなか真剣に取り組まない。役人にはこういう欠点があるのですよ。私は、そういう点も日本の各国別の貿易収支をずっと調べたりして、なぜこの国と日本との関係はこういう状況なのかということを一つ一つ国別に検討して、国会でいつでもそういう問題については、いつ幾日ごろにはこういう目安でいまこう進んでいると、こういう答弁ができなければ——戦後もう二十年たって、講和条約ができてからもう十数年もたって、しかも通商協定も結ばれていない。商社員は、いつも交代をするのにあとの人がなかなか入りにくい。まことにいろいろな問題が、協定ができていないために派生して起こっておるのであります。こういう点も、外務大臣はもう少し真剣に部下を督励し、監督して、大いにひとつメキシコをはじめ、中南米等に対しては積極的に取り組んでもらいたい。  話のついででありますが、ボリビアに対する銅山開発のために、たいへん日本は海外経済協力基金から金を出しておりますが、それらの問題の状況がわかっておる人おりませんか。
  54. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  ボリビアの鉱山につきましては、内陸奥地でございますので、それから運び出す鉄道施設、それから向こうのコンセッションをとる条件その他について、関係商社において検討いたしておりますけれども、まだ運び出す距離、それのための鉄道の施設とか、そういういろいろな前提条件が固まっておりませんので、それを商社間において詰めておる。それから政府においても、なるべくそれを促進するような形で応援しておりますが、まだ関係商社向こう側との折衝段階であると承知いたしております。
  55. 武藤山治

    武藤分科員 大臣、参考までに耳に入れておきたいのですが、これは五年も前にボリビア銅山に金をつぎ込んだのです。ところが、五年たった今日でもいまのような説明の状態です。どぶ金を捨てたのと同じであります。私は、そういうものに金をむだに使うのならば、もっと有効に中近東や南アメリカ開発の資金というものは使えるはずだ。それは、やはり何といってもこれらの国々と日本が緊密感を持つこと、貿易関係がスムーズにいけるような資金に使うことのほうがよほど効率はあがります。そんなところに金をつぎ込むような指導をするものですから、大蔵省は、わずか一千万ドルを同盟基金に預託しようといっても、なかなかうんと言わぬのであります。そういう点は非常にずさんであります。私は、そういう点を、きょうは時間がありませんからこまかく追及いたしませんが、もっと外務省としてもしっかりした計画に基づいて、ブロック別の提携を考えなければいかぬ。  もう一つメキシコに行って、特に向こう日本人系の商工会議所の会頭や日系人と話し合って感じたことは、ヨーロッパはメキシコとの貿易が全部輸出超過である。輸入超過は、特に大きいのは日本だけです。あとはドイツにしても、フランス、イタリアにしてもみな輸出国です。日本だけなぜメキシコとの貿易がこんなにも入超なのかということが理解できなかったのであります。それには、いま言った同盟への預託でもやって解決をする、通商協定を結ぶ。もう一つは、やはり延べ払いの問題がある。調べてみると、フランス、イギリス、これは大体十五年の長い延べ払いを認めておる。金利も日本より安く貿易の資金を提供している。日本は七年から八年、これではとてもプラント輸出の競争では立ち打ちできない。特にメキシコは、この次オリンピックをやるので、いま地下鉄をつくろう、大きな施設をつくろう、自動車も大いに購入しようというので、各国にこれを打ち合わせをしております。しかし、いまの状態でいったら、なかなか日本の技術が入れない情勢に追い込まれるのではなかろうか。特に私たちが行ったときに、日本の国鉄技術を大いに称賛して、地下鉄は日本の技術でやりたいということをメキシコの人たちは言っておった。しかし、いまのような外務省日本の通産省の力の入れぐあいでは、とても日本が入っていくわけにはいかぬなという心配を私はいたしておるのであります。そういうような点からも、私はメキシコをなぜこんなにうるさく言うかというと、およそLAFTA諸国というのは人口が二億一千万ぐらいありますが、このLAFTA諸国を一番リードしておるのは、何といってもメキシコがこれらの国々の中では工業国であります。したがってLAFTA諸国に根をおろすポイントは、メキシコと日本との関係を強固なものにする、ここに貿易の根をおろすということがLAFTA諸国に対する日本の優位性を確保する道ではないか、そういうために日本政府がもう少し力を入れるべきではないかというのが私の立論の基礎であります。そういう私の姿勢に対しては、当局はどうお考えになりますか。
  56. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 われわれも全く先生の御所見と同感でございます。それで、実は何もしていないわけではございませんで、四十一年度予算におきましてメキシコのテレコミュニケーション・センターの設置が認められておりまして、これを通じまして今後テレコミュニケーション関係の輸出が相当増大するのではないかということが期待されております。  それからもう一つ、これはまだ統計にあらわれておりませんが、昨年の暮れに五千万ドルのタンカー輸出に成功をいたしております。これは延べ払いでございますが、逐次メキシコに出ていくというふうに思われます。  それからもう一つ、メキシコに御承知のようにジェトロの機械センター、これはかねてから設置して機械関係の売り込みに努力しているということ。それから、何と申しましても米国、ヨーロッパと中南米とのつながりというものは歴史的にも非常に古いわけで、人的な交流というものがやはり日本と中南米との間に不足している。特にメキシコとの間にそれが痛感されます。そこで、今度商工大臣が参りますときに、先方から民間の使節団を十数名一緒に連れてまいりまして、わが財界とも大いに民間の接触を深めるということ、それから先生御指摘のLAFTAの中でメキシコが中心的な地位を占める、まことにそのとおりでございまして、このたび山中宏さんを団長といたしますLAFTA調査団というのを近日中に政府が派遣いたしまして、LAFTAとも貿易関係をいかに発展し得るかということを真剣にこれから取り組んでいきたいというふうに考えております。
  57. 武藤山治

    武藤分科員 制約の時間がきましたから結論だけにしますが、大臣、いまの応答を聞いておりまして、通商協定をいつごろまでをめどに結ぶように努力をするか、それからもう一つは、ヨーロッパは十五年長期の延べ払いを国によって非常に選択をして、国がきちっときめている。したがって、日本も一律に何年というようなことではなくて、その経済圏、その実情、過去の取引状況等を勘案して、延べ払いの年数というものを相手国の状況等によって長期のもの、短期のもの、それぞれきめていく、そういう姿勢で外務省としてはもっと大蔵省なり通産省と折衝する、もっと政府として、抜本的な延べ払い体制というものをつくるべきだと思うが、大臣の所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。その二点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  58. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 通商協定はなかなか複雑多岐でございまして、一日も早くこの協定を結ぶ段階に到達したいと考えておりますが、今度の商工大臣の来日を機会に、この問題についてもできるだけ突き詰めた話し合いをいたしたいと考えております。  それから延べ払いの問題は、お説のとおり全く日本としては考えざるを得ない問題である。低開発国に対する経済協力の問題についても、利子、期限ともに日本はお話にならぬほど条件が悪いのであります。日本としては普通の商売、それから低開発国に対する経済協力、この両面にわたって資金提供の条件というものを相当大きく奮発をしなければならぬという段階にもう追い込まれておる。御趣旨はまことにごもっともに思いますので、今後大いに努力したいと思います。
  59. 武藤山治

    武藤分科員 せっかく通産省がお見えになっておりますから、いまの質疑応答を聞いて、メキシコとの関係を通産省として貿易上どういうことでどうしたらいいか、いま考えておる構想をちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  60. 今村昇

    ○今村説明員 メキシコとの通商関係は漸次拡大しておりますが、構造的にこれを見ますると、日本の大幅な輸入超過という形になっておりまして、昨年の数字を見ましても、一九六五年が輸入が一億四千四百万ドル、輸出が約四千万ドルというふうに、非常に大幅な入超の構造になっております。したがいまして、私どもとしては、日本とメキシコの貿易と拡大する過程においてこれを均衡させるというような考えのもとに、でき得ればメキシコとの通商協定を結びまして、漸次拡大均衡というようなことを実現してまいりたいというふうに考えております。市場としましては非常に将来性のある市場でございますから、今後十分これに気をつけて育成をしていく、こういうふうな考え方で進んでおります。
  61. 愛知揆一

    愛知主査 次に只松祐治君。
  62. 只松祐治

    ○只松分科員 外務省はこの前から、日本が核戦略体制と申しますか、いわゆる核のかさのもとにおける軍事体制には入らない、こういう近来としてはたいへんなヒット的な発言をなさった。そのことをこの場でも確認してよろしゅうございますか。それとともに、今後とも核のかさには入らない、こういうことをかたく大臣としても約束することができますか。まずお伺いをいたしたいと思います。
  63. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核のかさという表現はあいまいな表現でございまして、もしも日本が現状においていかなる外部からの核兵器による攻撃を受けても、日米安保体制下にある限りにおいてはアメリカがこれに対して有効なる反撃を加えて、日本の安全をあくまで守るという責任を必ず果たすということを言っておるのでありますが、そういうことを総括して核のかさというならば、現状はまさに核のかさのもとにあるということになるのであります。しかし、日本はいま核兵器の持ち込みあるいは核の基地をアメリカに許すということは絶対にしないというたてまえをとっておる。もし核のかさということが、核基地を提供したり、アメリカによる核の持ち込みを許すというような意味であるならば、今後とも核のかさには入らない、こういうことを言っておるのであります。さらにまた、北大西洋同盟条約のようなアジアにおける多角的戦略体制というものができて、日本がそれに入るか入らぬかというような問題を取り上げても、日本としてはそういうものに入る必要はない、そう考えております。この多角的戦略体制あるいは核の持ち込み、核基地の提供というようなことが核のかさに入るのだということならば、日本はそのつもりはない、こういうたてまえをとっております。
  64. 只松祐治

    ○只松分科員 私は、今日その問題を論じようと思ってお聞きしておるわけではございませんが、せっかくでございますからもう一点聞いておきたい。  いまのお答えを聞きますと、まあ防衛庁長官じゃありませんが、日本独自には自衛隊は核を持たない、あるいは日本にある基地にいわゆる核の持ち込みはしない、このことは明確におっしゃっておるわけです。しかし、日本相互防衛協定を結んでおるアメリカは核装備をすでにしておるわけですから、アメリカが日本を守るためにあらゆる力、いわゆる核を使うということを拒否するものではない、突き詰めればこういうお話だ。したがって、日本独自にはしないけれども、アメリカとの関係においては核を使用することがある、日米防衛協定から当然にそういうことになる、こういうふうなお説だと思いますけれども、そうすると、ことばとして、あるいは日本独自の立場としては、何か核の問題について明確に割り切ったようで、きれいなようでございます。核を持たないということが明確なように聞こえますけれども、実際問題として日米行政協定のもとにある日本としては、核をアメリカが使うことを許す、換言すれば核のかさのもとにある、広義に言えばそういうことになるとおっしゃっておりますけれども、事実上は日本は核の戦略体制の中に組み込まれておる、それを認める、こういうことになると思うのです。一応さっきから言われておる、この前も言われておる外務省日本国内における立場と日米防衛協定を結んだ立場からすれば、これは実際上あなたたちの希求といいますか、あるいは意図にかかわらず核の戦略体制に組み込まれておる、それを認める、こういうことになると解釈してもよろしゅうございますか。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本を守るために、アメリカが核を日本の国内に持ち込まないで、有効に日本の防衛のためにとる手段については、それが核使用であろうとなかろうと、その防衛手段に対して日本は——持ち込まないということだけは、これは日本はかたく決心しておるのであります。持ち込まずして有効なる反撃を加えるということについては、これを否定するものじゃない。
  66. 只松祐治

    ○只松分科員 まあ日本というのをどういうふうにお考えになるか、したがって、持ち込むというのをどういうふうに考えるか、これはたいへんな問題が出てまいります。たとえば太平洋艦隊や第七艦隊、これが日本の領海にあって、そこから核装備をした爆撃機やあるいは攻撃機を飛ばす、こういうことなら、あなたの言う拒否するという形になるでしょう。しかし、領海外から日本を守っておる。日本の近くにあって、この第七艦隊から飛ばすということになれば、これは完全な核戦争に日本が巻き込まれる、こういうことになるわけです。あるいは領海といっても、海の上はあとで潜水艦の問題を聞きますけれども、たとえば陸の上において、とにかく沖縄からこの前B57機が発進してまいりましたけれども、ああやって沖縄から日本に有事のときに進駐してくる。そうして核装備をした爆撃機なり戦闘機がそれを攻撃する、あるいは防備する、こういうことになれば、完全に日本は核戦略体制の中に入る。核戦争に巻き込まれる、こういうことになるわけです。だから、あなたたちが、この前外務省が見解を示したのと完全に違ってまいります。きょうは私はこれが主じゃありませんから、これは重大な発言だと思いますが、私はこの問題はお答えだけ聞いておいて、また他日党に持ち帰って問題にいたしたいと思いますけれども、いま私が言っておるように、突き詰めて端的に言うならば、核戦略体制のもとに入ることを日本は認める、こういうふうに外務省としては見解を明らかにされた、こういうことでよろしゅうございますか。
  67. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局、核戦争というようなものに、それに限ったわけではありませんが、戦争に巻き込まれないための抑止力というものが存在することを私どもは否定するわけにいかない。日本の安全を全うする上において、いかなる攻撃に対しても十分にこれを防衛するということを、これは否定するわけにはいきません。日本の生存のためにはやむを得ない。ただ、核兵器のために基地を提供し、あるいは核兵器の持ち込みを許すということは、従来どおりしないつもりである、こう考えております。今日の核兵器の事実上の発達から見て、必ずしも日本にそういう基地を置かなければならぬとか、日本に持ち込まなければならぬとか、あるいは日本みずからがこれに手を触れるというようなことをしようとは思っていない。しかし、日本の生存を全うするためには、いかなる外部の攻撃に対しても対処し得るアメリカの戦略体制というもの、どこまでもこれにたよるというのが日本の防衛の現状でありまして、これを変更するつもりはないわけであります。
  68. 只松祐治

    ○只松分科員 たいへん危険な話でございますが、きょうはそれが主題ではありませんので、他日に譲ります。  次にお聞きいたしますが、外務省でも防衛庁でもけっこうですが、太平洋あるいは日本近海における米軍の、特に艦隊を中心とした配置状況というものをひとつお知らせいただきたい。
  69. 安川壯

    ○安川政府委員 日本には、駐留軍の中に海軍部隊がおります。常時駐留しておりますものに海軍部隊がおりますけれども、これはいわゆる艦隊といわれるような性質のものではございません。主として補給関係、輸送関係というような部隊がある。それから一部航空部隊というようなものが配置されております。その他、極東地域でアメリカの海軍の主力をなしておるものは、御承知のように第七艦隊でございまして、これは日本を根拠地とするという性質のものではございません。しいてどこに根拠地があるかといえば、太平洋の洋上にあると申し得ると思います。ただ、これは補給その他の目的に従いまして、日本においては横須賀あるいは佐世保、場合によってはフィリピン、あるいは香港というようなところに随時寄港するというのが現状でございまして、根拠地がどこに配置されておるかとしいていえば、洋上に配置されておるということになるかと思います。
  70. 只松祐治

    ○只松分科員 第七艦隊だけではなくて、太平洋艦隊その他もあるわけですし、その程度では、さっき大臣が言ったアメリカにたよる、こういうことの実態をなさないわけで、アメリカにたよるということが日本の防衛を全部まかせるということならば、どういう艦隊が、しかも編制内容はどういうもので日本の周辺を守っておるということを、外務省なり防衛庁は国民の前に明らかにすべきだと思いますので、ひとつ教えていただきたい。
  71. 安川壯

    ○安川政府委員 第七艦隊の編制その他は、防衛庁でございませんので、私のほうで特にいまここに資料を持っておりませんので、御説明する用意がございません。  それから、太平洋全体にほかに艦隊がおるかという御質問でございますが、御承知のようにハワイのホノルルに太平洋海軍司令部がございます。第七艦隊もその配下にあるわけであります。その太平洋海軍司令部の司令下に、第七艦隊以外に、いわゆる艦隊と称されるものはどういう規模でどこにいるかということは、ちょっと私、ここに資料を持っておりませんのでお答えいたしかねます。
  72. 只松祐治

    ○只松分科員 防衛庁は……。
  73. 愛知揆一

    愛知主査 只松君、いま防衛庁の政府委員を至急呼びますから、できましたらちょっと保留していただいて、ほかの質疑をしていただけませんでしょうか。
  74. 只松祐治

    ○只松分科員 それでは話を進めますが、私がこういうことを前段としてお聞きしておるのは、御承知のように、日本に原子力潜水艦がたびたび来ております。いわゆる物理的な反対現象というものもたび重なって、いわばだんだん下火になってきたと申しますか、少なくなってきた。こういうことで、いま原子力潜水艦が無制限に入港しておる。これもあとでお聞きしますが、今度は原子力艦隊さえも入ってこようか、こういう状態になってきております。たいへん憂うべき状態です。たびたび自民党政府は、沖縄を順次日本に施政権返還、これを取り戻すというような方向を出し、話しておりますが、軍事面で逆に日本が沖縄化しておる、こういうふうに言っても、私はそう言い過ぎではないと思う。こういう状態にあるわけです。  そこでまずお聞きしますが、現在まで日本に入ってきた原子力潜水艦の一覧表、艦名、型等、わかりましたら詳細にお答えをいただきたい。
  75. 安川壯

    ○安川政府委員 現在まで佐世保に入港いたしましたのは八隻でございます。その型は、いまちょっとここに資料を持ってきておりませんので、必要ならばすぐに取り寄せます。
  76. 愛知揆一

    愛知主査 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  77. 愛知揆一

    愛知主査 それでは速記を始めてください。
  78. 安川壯

    ○安川政府委員 また追って資料を持ってまいりますので、さらに詳しい資料はまたあとでできるだけのことはお答え申し上げますが、いままで佐世保に入港しました原子力潜水艦の名称と型だけをとりあえず申し上げます。  第一回目に入りましたのがシードラゴン、これはスケート型です。二回目も同じシードラゴン型であります。三回目がスヌック、これはスキップジャック型です。四回目がパーミット、これはスレッシャ一型であります。五番目がジードラゴン、これは前に入りましたのと同じでございまして、スケート型であります。それから六番目に入りましたのがサーゴ、これもスケート型であります。七番目に入りましたのがプランジャー、これはスレッシャ一型であります。最後に八回目に入りましたのがサーゴ、これは前に入りましたのと同じでございまして、スケート型であります。  以上でございます。
  79. 只松祐治

    ○只松分科員 いまお話しのとおりすでに八回も入り、いろいろな型のものが入ってきております。私は、この原潜が一番最初入港するというたいへん問題になりましたときに、いろいろお聞きをしたわけでございます。きょうはそういう時間がございませんので、原潜の内容等について論ずる時間もございませんが、原潜を一口で言うならば、いわゆる艦隊の主力兵器というのが現在の原潜の立場です。昔は戦艦が主力艦で、潜水艦というのはいわば露払いの役目をしておったにすぎなかった。現在では、事実上この原子力潜水艦というのが海上部隊の主力部隊をなしておる。特にポラリス潜水艦を中心とする艦隊というものはそういうふうになっているわけです。これは現在の軍事専門家のいわば通説と申しますか、軍事上当然のことで、私が取り立てて言うわけではない。そういたしますと、この原子力潜水艦というのは非常な重要なウエートを占めておる。日本を守っておる第七艦隊でも、ほぼそういう形態にあることはもう言うまでもない。ただ、原子力潜水艦というのは隠密を非常に重んじまして、別行動をとって、ほかの、たとえば第七艦隊にありながらも別行動をとって、第七艦隊のその隊の中にはないけれども、別な自由な任務を帯びる。こういう作戦上のことはいろいろあります。そういうことはおくといたしまして、とにかく今日海上部隊の中で非常に主要な位置を占めている。したがいまして、当然に北ベトナムのこういう情勢の中、極東の緊張した情勢の中においては、こういう原子力潜水艦というものは常にいわば最善の装備をいたしておるわけでございます。いわば、ポラリス型にはポラリスを積み、あるいはほかのありとあらゆるもの、いわゆる原子力兵器なり、そういう兵器を装備しています。日本にこうやってたびたび参りますと、おそらくこの型の中にはサブロックは積んでおらないという答弁があろうかと思いますけれども、こういう原子力潜水艦はほとんどがもうサブロック型の魚雷というものを搭載いたしております。よほどの練習用か何かでない限り、魚雷を積んでおらないということはない、魚雷というのはほとんどサブロック化しておるわけですから。したがって、こうやってたびたび日本に原子力潜水艦が入ってきておる、あるいは今後も入ってくるということは、それは当然に日本にもサブロックを積んだ原子力潜水艦が入港をしておる、する、こういうことを意味するわけです。ポラリスまでということになりますと、これこそまたたいへんな問題になってまいりますので、一挙にそこまではいかないでしょうけれども、平時においてサブロック搭載の原子力潜水艦を入れてくるということはある。ただそのときに、海原防衛局長だったか、サブロック搭載のものは入港させません、こういう形式上の答弁がありました。しかし、私はそのときに、そういういわゆる海上艦隊の主力をなしておるものがただ一隻のこのこと日本に来たり、あるいは佐世保の港外の東シナ海でサブロックや原子力兵器をおろして、日本にいわば無装備で、まる腰でやってくるということはあり得ない、こういうことを言ったわけです。そのとおりだと思うのです。さっき、日本の基地あるいは日本国内に核兵器は持ち込まないという大臣の答弁がありましたけれども、現実にはこうやってサブロックを積んだ原潜が入ってきておるということで、日本が核基地化しておるということが言えるのではないか。そういう点について、いままでの原子力潜水艦に一つもそういうことがなかったか、あるいは今後ないか。ないとお答えになるか知りませんが、ないならば、これはあとの質問になりますけれども、皆さん方はどうやって検査をなさっておるのか。一片の通告で、おそらく文書も来てないでしょう、一片の口上書でそういうことを御信用になっておるのか、あるいはそこへ立ち会った係官が、サブロックを搭載してないかどうかということをお調べになっておるのかどうか。それだけ日本に核兵器を持ち込まないということを明言なさるならば、ひとつ国民の前にお答えをいただきたい。
  80. 安川壯

    ○安川政府委員 ただいまサブロックについてのお話でございますが、私も軍事専門家ではございませんけれども、私どもの了解しておるところによりますと、原子力潜水艦のすべてがサブロックを積むというふうには了解しておりません。その点が一点と、それから、ただいまのお話を伺いますと、サブロックを積む原子力潜水艦はもっぱらサブロックのみが装備であるというふうに私承ったのでございますけれども、私どもが了解しておるところによりますと、サブロックというものは特殊な使命を持っておる兵器でございまして、これはいわば敵の潜水艦攻撃用にもっぱら使う兵器であると承知しております。ところで潜水艦は、これは原子力潜水艦に限りませず、必ずしも敵の潜水艦を攻撃するだけを任務としているものではないのでございまして、その他哨戒でございますとか、戦艦の護衛でございますとか、いろいろな任務を持っていると了解しております。そして、現実に原子力潜水艦は、すべて通常の魚雷を搭載しているわけでございます。したがいまして、サブロックを搭載いたします場合にも、サブロックだけということではなくて、常に通常魚雷と両方を装備するものであるというふうに私どもは了解しております。したがいまして、原子力潜水艦であれば必ずサブロックを積み、そしてサブロックを積まなければ原子力潜水艦として用をなさないものだというふうには私どもは了解しておらないわけでございまして、サブロックを積んでおらなければ日本に寄港する意味が全然ないというふうには私どもは了解しておらないわけでございます。したがいまして、今後もサブロックを搭載しているものは日本には入港させないという、この方針は変わらないわけでございます。これは原子力兵器に限りませんことで、たとえば日本にはF105という戦闘爆撃機がおりますけれども、これも原子爆弾を積もうと思えば積めるわけでございますが、日本に入ってくる場合に限って核爆弾を積まないたてまえになっております。かりに積む場合には、必ず事前協議をするというたてまえでございます。これは条約上の約束でございますから、こういう約束を守らないということになれば、これは安保条約それ自体を破壊することになりますので、そういうことをアメリカがするということは前提になっておらないわけであります。  なお、サブロックにつきまして御参考までに申し上げますと、昨年の八月の三十一日に国防省が発表いたしましたところによりますと、サブロックにつきましては、技術的、作戦的な面での評価は完了したが、いまだ実用段階にいっておらぬ、ようやく艦隊用の量産を始めた段階に入ったということを発表しております。その後正式な発表がございませんので、現実に装備しておるかどうかということはわかりませんけれども、少なくとも実際に原子力潜水艦がサブロックを搭載しているという公式の発表は現在までないというのが実情でございます。
  81. 只松祐治

    ○只松分科員 そういう講義やら、そういうでたらめといってはおかしいのですが、そんなことを聞いているのではないのです。現在軍事評論家の間で、原子力潜水艦がサブロックを積んでいるのは公然の事実になっている。それを外務省が、公式な発表がないからわかるとかわからないとか、そんなでたらめを言っている。そんなことで日本の防衛が何でできるか。大別すれば攻撃型とポラリス型とあって、攻撃型がサブロックを積み、ポラリス型はポラリスを積んでいるようなことは、もう本にだって何にだって一々聞かなくたって書いてある。そういうことを聞いているのではなくて、日本に現実に——その前に、いまの艦隊というものはそういうふうにちゃんと原子力潜水艦を中心に編成されておるんだ。それは、極東のように緊張した状態のもとにおいての——緊張しなくても、軍事力というものはすべてそういうものを要求をされるわけでありますから、極東のように特に緊張した状態において戦闘配置についておる場合には、これは一戸の戸締まりにいたしましても、厳重にする場合には全部かぎをかけてなにするように、それだけの装備を施す。そうする場合には、特殊の哨戒とか、何か特殊の練習をやるとかというようなものは別にして、当然サブロックを積むということはいま軍事上の常識になっているわけです。そういう潜水艦がこうやって無制限に近いような状態日本に来る、こういうことになれば、これは必ずサブロックの搭載が行なわれている。だから、それならば、一積んでおらないということならば、あなたたちは一ぺんでも原子力艦水艦に乗り込んで、立ち会って調査したことが外務省なり防衛庁にありますか、何かその確認方法はございますか。
  82. 安川壯

    ○安川政府委員 安保条約のたてまえ上、それから安保条約のたてまえのみならず一般の国際通念といたしまして、外国の軍艦に乗り込んで兵器を点検するということは国際常識にも反するのでございまして、安保条約はそういうたてまえになっておりません。
  83. 只松祐治

    ○只松分科員 そういうことで一ぺんに突っぱねるでしょう。ということは、逆にいえば、そういうものを積んでおるか積んでおらないかわからないということなんです。  それから次に、ついでに聞きますけれども、須賀に原子力艦隊が入港する、こういうお話です。横須賀に原子力艦隊が入港するならば、それこそそのときは、私が言うように、いろんな原子力潜水艦が付随して来るならば、当然にそういうものが入ってくるでしょう。あるいは原子力空母が入ってくるならば、それに積んである戦闘機には当然に攻撃用のそういう核兵器というものが積んである。そういうものを一々沖縄でおろして、グアムでおろしてきますか。あるいはおろしているかおろしていないかということを東京湾の外で検査して、核兵器がないからその原子力空母は入ってよろしい、こういうことをするのですか。いまの答弁で見られるように、原子力空母が入ってくるということは、すでにそれは装備されておる、北ベトナムや太平洋上で作戦に参加しておる、作戦に参加しておるということは最大限の武装をしておる、武装をしておるものが横須賀に入ってくれば、当然に核装備しているのじゃないですか。それを皆さん方は国民の前に、こうやってわれわれは具体的に積んでおらないということを検分した、われわれはこうやって証拠立てるのだ、だから積んでおらないというのなら、また国民に納得させる方法があると思うのです。そうではなくて、国際慣行上あるいは条約上そんなばかな、とはあなたは言いませんけれども、ことばをかえれば、そんなばかなことはできるか、そういう答弁でしょう。それで国民が納得しますか。そんなことで、核兵器を一つも積んでおりません、日本に核兵器を持ち込むということは一切ありません、外務省は責任を持ってそれをいたします、こういうことをだれが信用しますか。今度原子力空母が入ってくる、そういうことに関連してひとつお答えいただきたい。
  84. 安川壯

    ○安川政府委員 原子力空母の問題は、まだ入港すると確定したわけではございませんので、これはあくまで仮定の問題でございますけれども、私どもが了解しておるところによりますと、原子力空母というものが従来の空母と違っておるところは、要するに動力に原子力を利用するという点だけでありまして、もちろんその搭載機の搭載能力その他で相違はございますと思いますけれども、装備そのものについては、私どもは従来の航空母艦と変わらないというふうに了解しております。  それから、現在ベトナムで戦争しておるから、必ず原子力空母に搭載する飛行機は核兵器を搭載しておるのだというお話でございましたけれども、これは、私から申し上げるまでもなく、ベトナムで原子力空母が北爆に従事しておることは従事しているのでございますけれども、同時に、核兵器は一切使っておらないということも事実でございます。それからマクナマラ長官も、最近国会の証言で、ベトナム戦争で核兵器を使う計画はないということを言っておりますので、ベトナム戦争に参加した原子力空母が日本に来るときに、必ず核兵器を積んでおるというふうには私どもは理解しておらないわけであります。
  85. 只松祐治

    ○只松分科員 爆撃に使っておらないくらいのことはよくわかるのです。使っておらないというか、使えないということはぼくら知っております。そういうことじゃなくて、とにかくいまの日本の自衛隊の再軍備の状況など、外務省は御存じでしょうか。役人なら知っているでしょうけれども、昔の陸軍やなんかより近代的な重装備をしているのですよ。そんなことくらいわれわれしろうとだって知っておるのですよ。要するに、いかに防御といえども、防御ということは相手の力に打ち勝つことが防御なんですよ。したがって、完全な防御をするためには最大限の武装というものをしなければならぬ。矛盾ということは、ほことたてということばがありますように、このたてはやりを通さないのだ、いや、このやりはたてを通すのだというように、これが防衛論争なんですよ。したがって、相手方に勝つためには——この相手方としてアメリカが指向しておるのはソ連や中国の社会主義国家であることは、外務省は百も承知しているのです。だから、あなたたちはアメリカ一辺倒の外交をやっている。その場合に、有事即応の体制をとっておくためには、近代戦で最も進んでおるのは核兵器であるし、核の運搬手段たる中距離弾道弾、誘導弾であるわけです。こういうものを全部装備しておるのですよ。だから、私は、いまから入ってくるこの原子力空母の問題だけをちょっと聞きましたけれども、現在入ってきておる第七艦隊の中にも、核兵器を積んだ飛行機が搭載されておるのかもしれないと思うのです。そう言っても、あなたたち一つも規制していないでしょう、どこかで規制しているのですか、事実立ち会っているのですか。いま太平洋上にある艦隊は全部やっていませんよ、そんなに核兵器というものはないから。しかし、その中に含まれている、第七艦隊、太平洋艦隊に含まれて、これは核装備をしているのですよ。それがどんどん無制限に佐世保や呉や横須賀に入港しているじゃないですか。こうやってどんどん原子力潜水艦が日本に無制限に——私はそのときも言った。一番最初は、どんなことがあっても一番古い型の原子力潜水艦を持ってくるでしょう、ばかでない限りそういうことをする、一番古い型の原子力潜水艦を持ってきたじゃないですか。その次に多少役立つものを持ってくる。だんだんなしくずしに、最後はポラリス型の潜水艦も、抵抗がなくなって、国民が麻痺したときにはこういうものを持ってきて、日本を原子力の基地化をするのでしょう。それには、要するにあなたが言うように、そんなにばかではないのです。外国の軍艦は、これを極端に言うなら、サブロックを積んでおるか、ポラリスを積んでおるかというよりも、ポラリス型の原子力潜水艦でないかどうかということで、それを、これはノーテラス型だといって入ってくればわからないですよ、いまの日本には調べる方法はないのです。きょうは話しませんけれども、それが万一事故を起こした場合にはどうなるかという問題まで、この前時間があったから論議をしたわけですけれども、こうやって無制限に日本に原子力潜水艦が入ってくる、あるいは第七艦隊が入ってくるということは、日本に核基地を許さない、核装備をしないといっても、事実上許しておる状況にあるのではないか。逆に言うならば、私たちが調査機関がないからといって、そんなことは知りませんといって突っぱねる。これで国会を乗り切ったとしたって、国民はなかなかおいそれとは安心してはいない。だから、こういうふうに無制限に入ってくれば、何らかの形でそれをいわば規制すると申しますか、阻止すると申しますか、そういう方法をもうこの段階になれば私たちはお考えをいただかなければならないのではないか、こういうふうに思います。大臣、どうです。核基地、核装備を日本には許さないというならば、いま無制限に入りつつある原子力潜水艦——一般の艦隊も含んでおるが、それはきょうは問題にいたしませんが、何らか規制することをお考えになっておるかどうか。単に条約上の問題だけで片づけて、それには一つも触れることができないのだ、こういうふうにお答えになるかどうか。
  86. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お互いに外国の軍艦を点検する権利を持っておらない、これを破るわけにはまいりません。ただわれわれは同盟国を信頼する、最後はこの信頼の問題であると思います。
  87. 只松祐治

    ○只松分科員 そうおっしゃってしまえば、これは身もふたもないと申しますか、国民はどうしようもないわけでございますが、信頼ということの中にも、何らかやはり国民を安心させる方法というのは、大臣、ございませんか。この国会をもうちょっと納得さして、こういうふうにすれば日本に核兵器が入ってこない、こういうことの立証というか、あかしというか、おわかりになりませんか。こういうことをお考えになる余地はございませんか。
  88. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、あくまでこれは信頼関係であると思います。
  89. 只松祐治

    ○只松分科員 政府が信頼をされておるので、われわれは信頼していないのですから。しかし、これは押し問答したってしょうがありませんから、この問題はこれでやめます。  最後に、重ねて私は、さっきお答えになったことについて、大臣に、次の問題に移る前に聞いておきたいのですが、これは考えてみたら、いままでにない重大な発言だと私は思うのです。核のかさには入らない、こういうことを——いわゆる日本が核持ち込みは許さない、核武装はしない、日本自体が核を保有する、そういう狭義の意味の核のかさに入るということはしないけれども、広義の意味で、アメリカが核装備をしておるもとにおいて、核兵器を使っても日本の防衛は行なうのだ、いわゆる広義の意味においては核のかさに入る、入っておるのだ、こういうことを明言されたことは、国会においては初めてだと思うのです。そのことを確認してよろしゅうございますか。
  90. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核のかさ——かさということはを用いなければ承知できないという考え方はどうもおかしいのですが、とにかくこういうあいまいな文句を使うのでいろいろ騒ぎが大きくなるので、結局アメリカは、いかなる形の攻撃を日本が受けようとも、日本の安全を責任を持って防衛する、こういうことを言っているのですから、それでもう万事は解決する。だから、場合によっては、アメリカも核兵器を使っても日本の安全は守るということになるのは当然でございます。そういうことが核のかさに入るというなら、核のかさに入るということになるだろうし、それから、そうじやなくて、日本の基地を核戦略の基地に提供する、核兵器の持ち込みを許す、その他多角的な核戦力の機構に日本が入るというようなことを核のかさに入るという意味だとすれば、そうじゃない、その場合には核の外だ、こういうことになるのであって、核のかさはどっちでもよろしい。とにかくいかなる形の攻撃に対しても守るということに結局帰着するのでありますから、われわれはそれで満足してよろしい。進んで、従来とっておる持ち込みあるいは基地提供あるいは多角的な核戦略体制というものに入るというようなことは考えておらないのであります。
  91. 只松祐治

    ○只松分科員 いまの問題はたいへん重大な問題でございます。確認だけしておいて、次に話を進めたいと思います。  いま日本に、そういう防衛条約のもとで——これも防衛条約上、私はそういうことまであるとすれば、たいへんおかしな話だと思うがベトナムで戦争をやっておる。それで、ベトナムの関係日本にいろいろな問題が起きております。その一つに、ベトナムで負傷した兵隊、病気した兵隊が日本にたくさん来ておりますが、その状況についてお話しをいただきたいと思います。厚生省でも外務省でもどっちでもけっこうですから、詳しいところから……。
  92. 安川壯

    ○安川政府委員 私から、どういう施設があるかということについて御説明申し上げます。  昨年の十一月末に、医療を目的としてアメリカの陸軍第七野戦病院部隊を日本に派遣するという連絡がございました。それに伴いまして、アメリカの陸軍医療センター、これは場所は相模原です。そこに三百五十のベッドが増設されました。それから岸根兵舎地区、これは横浜でございます。ここに千二百。それからキャンプ王子、これは東京の北区であります。それに千ベッド。それからジョンソン飛行場、これは埼玉県、ここに五百ベッドがそれぞれ新設されました。そこに米軍の負傷者を収容するということになっております。
  93. 只松祐治

    ○只松分科員 入院患者その他、厚生省……。
  94. 中原龍之助

    ○中原政府委員 お答えいたします。患者数についてはわかりませんです。
  95. 只松祐治

    ○只松分科員 そういうことじゃないかと思ったのですが、日本は信頼関係だ、あるいはお互いに守ってもらうのだ、何だかんだ言っているが、日本に何名アメリカの兵隊がいるか、傷ついた兵隊がおるか、そんなことも政府はわからないのですか、またわからないでいいのですか、そんなことで。どうです。
  96. 中原龍之助

    ○中原政府委員 この問題は、私ども所管いたしております問題は、いわゆる検疫のほうの問題でございまして、米軍の施設の中に何名患者が入っておるかという問題については存じませんです。
  97. 只松祐治

    ○只松分科員 外務省は……。
  98. 安川壯

    ○安川政府委員 ベッド数は、いま申し上げましたように、これを合計すれば収容能力はわかるわけでございます。そのほかに既設の病院がございますから、それらのベッド数を足せば、一応収容能力としてはわかるわけでございますけれども、現実に何名入っておるかという数字は把握しておらないわけでございます。私のほうとしましては、ただいま厚生省のほうからお答えがございましたように、何名入っておるかということを必ずしも知らなければならないというふうに考えておらないのでございまして、むしろ検疫のほうに重点があるというふうに考えております。
  99. 只松祐治

    ○只松分科員 そんなでたらめな答弁はありませんよ。日本に外国人が何人おるか、外国の駐留軍隊が何人おるか、負傷者が何人おるか。公表できないならできないでいいですよ。秘密事項で公表できないということなら別だ。しかし、日本に外国人が何人おるかどうかわからない、出たり入ったり、日本国は自由自在だ、そんなでたらめな国が、主権のある国のどこにあるか。大臣、それでいいですか。
  100. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米安保条約という条約のもとに、相互に信頼関係で提携しておる国でありまして、その入院の傷病兵の数がわかるとかわからぬとかいうようなことを、そう詮議立てる必要は私はないと思います。
  101. 只松祐治

    ○只松分科員 詮議立てる必要はないといって、それは最後の逃げ手は、日米行政協定があるから、あるいは安保条約があるから、それで逃げてしまうでしょうが、常識で考えて、諸外国に、たとえばアメリカならアメリカに日本人が何名おる、一、二名も違わぬというところまではわからぬでも、大使館その他を通じ、およそわかりますよ。どこの国に外国人が何名おるかわからぬという国がありますか。そんなことで行政庁と言えますか。
  102. 安川壯

    ○安川政府委員 いま特に病人が何名かという御質問でございましたので、その実際の人数は的確に把握してないと申し上げたわけでございますけれども、安保条約全体としまして、日本にどれだけの規模の米軍が何人おるかということはもちろん把握しておるわけでございます。それから把握していないからといって、無制限に何人でも入ってこれるというたてまえにはもちろんなっていないわけでございまして、それについてはおのずから制約がございまして、一つは安保条約上重要な配備の変更がある、たとえば一個師団の兵隊が入ってくるというときには、事前協議の対象になるわけでございまして、それによって日本が、場合によっては大部隊が入ることを拒否するということもあり得るわけであります。したがいまして、そういう大部隊の入ってくるというような場合には、当然そこで把握できるわけでございます。それから入ってくる以上は、そこに当然施設というものが必要になってまいりますので、どの程度の施設を提供するかということは、これまた地位協定上日米間の合意を必要とするわけでございますから、その面からも当然何人入るということには一つのワクがあるわけであります。もろちん米軍全体が、現在どういう部隊がどの程度の兵力を持って駐在しておるかということは十分に把握しておるわけでございます。
  103. 只松祐治

    ○只松分科員 現在の米軍の編成なり、それから駐留状況というのはわかっているわけでしょう。現在のいわゆる部隊でさえわかっておる。ところが直接防衛上関係のない——個人個人にすれば傷病兵というのは気の毒な人です。気の毒だけれども、対国際関係ということになりますと、ある国に何名外国人が入ってきておるか、あるいは防疫上からいっても、どういう病気なり、病名で何名入ってきておるか、そういうことが日本では全然関知されないということは外交上も大きな問題であるし、医療行政上、厚生行政上からも、どういう病人がどのくらい入ってきているかわからない、そういうことで日本の医療行政、防疫行政ができますか。何の検疫もしないで、そういうものが日本に来ているのですか。そういうことはないでしょう。発表されないなら発表されない、わからないならわからないと言いなさい。
  104. 安川壯

    ○安川政府委員 人数については、現実に入ってきている人数は把握しておらないと申し上げましたが、たまたま検疫のお話がございましたので申し上げますが、検疫につきましてもアメリカ側と了解がございまして、かりにアメリカの施設以外を通じて入ってくる米軍につきましては、日本の検疫官が普通の検疫手続をとるわけであります。ただし米軍の施設区域に直接入ってきます場合には、厚生省と米軍側との取りきめがございまして、あらかじめ米軍の検疫官に検疫を代行させまして、もし日本の検疫上問題があるときには、そのつど日本側の検疫当局と協議する、その取り扱いを協議の上できめる、こういうたてまえになっております。
  105. 只松祐治

    ○只松分科員 時間がないから、このことについてはあまりこまかくは申しませんが、こまかく問うても大まかな答弁しかしないあなた方ですから。こまかく一々言えば、どういうような極端に悪い病気を持って羽田におりるか、立川におりるか、どこにおりるか知らぬが、そこをおりてから病院まで飛行機で行くわけではないでしょう。自動車で行くわけです。そうすれば、その途中でたんを吐くとか、あるいは何かの自動車事故で衝突してそこら辺に血を流すとか、いろいろなことが想定できるのです。こういう悪い病気を持っておるものを放任状態で、東京のどまん中に、いま王子につくろうとしているじゃありませんか。そういうことで厚生行政ができるのですか。そういう放任状態をアメリカだけには許すのですか。諸外国、特に社会主義国家なら入るのはたいへんです。ところがアメリカは無制限に入ってきておる。病気とか、そんなことをこっちはほとんど知らないで、それを放任している状態で、厚生省のほうはそれでいいのですか。
  106. 中原龍之助

    ○中原政府委員 厚生省のほうの関係では検疫をやりまして、検疫は、外国から入ってくるものにつきまして、きめられた検疫伝染病についてやるものでありまして、現在、それは先ほど外務省のほうからお答え申し上げましたとおり、やってございます。
  107. 只松祐治

    ○只松分科員 そうすると、アメリカ軍に関する限り、特に北ベトナムで現在行なわれているこういう傷病兵に関する限りは、日本は防疫上無防備状態である。あるいは無防備ということがあなた方の立場から言い過ぎであるならば、厚生省はほとんど関知しないで、アメリカにまかせきりで、放任状態である、こう言っても私は過言でないと思う。これは国民の医療行政上大きな問題になってくると思う。しかも、さっきから聞くと、とにかく何人入っておるかも全然わからぬ。少なくとも、協定があるならば、こういう病気でこのくらいの者が日本に入ったからよろしくぐらいなことは、よその家へ入ってきたら、言うのはあたりまえのことですよ。日本に何人入ってこようが何しようがそんなことはかってだ、そんなことをしている国が世界じゅうどこにあるか。きょうは専門的にそこまで突っつくことはいたしません。またいずれ外務委員会に出かけていってお聞きしたいと思うが、そういうことで、王子の陸上自衛隊武器補給処跡に今度新しくつくろうと、いま結局大蔵省の普通財産とあるのを行政財産にして、永久的にそこを移して、とにかくアメリカ軍の病院にしよう、こういう動きがある。こういうふうにいわれて地元でも騒いでおりますけれども、そういう計画がございますか。  それからそういう行政措置その他は、いままでのものを何でそういうものに恒久的に変えて、そういうことをしようとなさっておるのか。ベトナム戦争が永久に続くと見て、それで永久にアメリカ軍にやろう、こういうことでやられておるのか。そこら辺をお伺いしたい。
  108. 財満功

    財満政府委員 王子のキャンプには米軍の地図局がございますが、一応その使命を達成したということで、閉鎖の準備をいたしているところに、野戦病院を開設するということで計画が出されておるわけであります。ただいま先生のおっしゃいました行政財産にしてということにつきましては、これは元来普通財産でございまして、今後においても普通財産として使用されるということに相なっております。
  109. 只松祐治

    ○只松分科員 詳しく言えば、北区下十条の坪数四万坪のところに米軍の王子キャンプがある、ここにつくるということが一つ。それから陸上自衛隊武器補給処十条支処、北区稲付庚塚というのに三万五千坪、これはいま私が言った普通財産であるのを行政財産にしょう、こういう動きがあるということです。あそこの地区に二つのそういう野戦病院をつくろう、こういう動きがあるようであります。私たちは、常識的にいっても、あまり空気のよくないところに病院をつくるのはどうかと思うけれども、そういうこまかいことは別として、こういう動きがありますか。
  110. 財満功

    財満政府委員 私どもといたしましては、ただいまのあとのほうの普通財産を行政財産に変えて病院を開設するという計画については承っておりません。
  111. 只松祐治

    ○只松分科員 計画があることについては事実ですか。
  112. 財満功

    財満政府委員 計画につきましても存じておりません。
  113. 只松祐治

    ○只松分科員 ところが、地元では相当の騒ぎになっておるわけですが、これを政府側が全然知らぬということはどういうことですか。防衛庁なりどこかなり御承知のところはないですか。全然まだ議題にのぼっていませんか。
  114. 安川壯

    ○安川政府委員 外務省といたしましても、さきのキャンプ王子という話は聞いておりますけれども、ただいま御指摘のような計画は一切聞いておりません。
  115. 只松祐治

    ○只松分科員 逃げているような顔でもございませんが、あったらひとつ至急調べてお教えいただきたい。財産関係ですから大蔵省のほうへも聞きまして、私も調べてみたい。  それからきのうの毎日新聞に、ゴルフ場を南多摩郡稲城に、これも逃げの一手で行政協定から出てくるのだろうと思いますけれども、三億二千万円でつくる、こういうことが出ておりました。私は、何から何まで、病院になるかどうかわからぬが、アメリカの特権的なものにあきれ入るばかりですけれども、日本人がゴルフ場までつくってやらなければならないということが行政協定のどこから出てくるのか、私はふしぎでたまらないのです。つくる予定があるのかどうか、あるとすればどういう立場からそれをつくるのか、お答えいただきます。
  116. 財満功

    財満政府委員 現在昭島におきまして、昭和飛行機の提供いたしました土地の中に、米軍のレクリエーション施設としてゴルフ場がございます。これは地位協定十五条の諸機関によって運営されております。これは早くから昭和飛行機株式会社のほうで返してもらいたい、自分の本来の事業に使いたいという要求がございまして、これに関しまして、昭和三十六年以来訴訟を係属中でございます。昨年の十二月に裁判上の和解をいたしました。そして、現在のゴルフ場の土地を返還する。そこで、米側といたしましては、これが代替地をぜひつくってもらいたい、そういうことを言っておるわけでございまして、これが代替施設といたしましていま多摩につくるというふうに考えておりまして、その計画はございます。
  117. 只松祐治

    ○只松分科員 いまあるというお話でございます。人間ですから娯楽その他も必要ですし、アメリカ軍がおれば、いろいろなものを要求される、そういうものまで私は否定しようとは思いませんけれども、行政協定からその前の安保条約というものに当然返ってくるわけですが、どうしてそういうゴルフ場まで日本国民が血税を払ってつくってやらなければならないか。ゴルフ場をつくるとすれば、今度はゴルフ場まではいいけれども、たとえば映画館、それからキャバレー、バー、こういうものまで日本政府がつくってアメリカ軍に提供しなければならないのか。どこに一体めどを引かなければならないのか。ゴルフ場なんか、人によっては健全なスポーツだとお考えになるかもしれません。あるいはアメリカのような国では一般化しているが、日本では全国民を対象とするような娯楽ではない。こういうものにまで日本政府が一ことしは税収が足りない、この足りない税収の中から出さなければならないのか。大臣、どうですか。キャバレー、バーからお座敷までつくってやるのか。どこまでつくってやるのですか。
  118. 安川壯

    ○安川政府委員 ただいまの件は、ちょっと特殊な例でございますので御説明させていただきますけれども、一般論としまして、アメリカ側が何か施設が要ると言って要求してまいりました場合に、たとえば飛行場をつくりたい、あるいはゴルフ場もそれに該当するかと思いますけれども、それに対して日本側としましては、それが合理的な要求だと認める場合には土地だけは提供するわけでございます。たとえば飛行場をつくりたい、兵舎をつくりたい、通信施設をつくりたいというときには、それに必要な土地だけは日本政府の負担において提供するわけでございます。その土地の中につくります施設、たとえば飛行場それ自体、滑走路をつくる、あるいは兵舎をつくる、そういう建設の費用は全部米軍の負担になるわけでございます。でございますから、本来ならばかりにゴルフ場、あるいは娯楽施設にいたしましても、日本政府としては土地だけを提供して、あとの建設は当然米軍がすべきものでございます。その点ははっきりした原則でございます。ただこの場合は特別のケースでございまして、ほかにも例がございますけれども、ある場所に米軍の施設がございまして、それをどうしても日本が返還してもらいたいという場合には、そのかわりの施設を提供して返還させるわけでございます。これは従来いろいろ例がございます。たとえば東京都内のビルディングにおる米軍をなるべく都内から郊外に撤退させたいという場合には、郊外の適当な土地に日本側の責任においてそれにかわり得る施設をつくりまして、そしていままでいた施設を返還させる、こういう方式をとっておるわけでございます。このゴルフ場の場合もそれに該当するわけでございまして、昭島に現在アメリカ軍が持っておりますゴルフ場を返還させる、返還させるためにかわりのものをやるからこっちは出ろという一つのやり方でございます。でございますから、かりに新しく米軍がゴルフ場をつくるから土地をよこせという場合に、土地を提供して、その上に日本政府がゴルフ場の建設の経費まで負担するという性質のものではございません。今後も、たとえばキャバレーをつくるとかいう場合に、その費用を日本政府が負担するということは絶対にあり得ないわけです。
  119. 只松祐治

    ○只松分科員 特殊だと言ってしまえば、特殊というのはすべて逃げで、特別だからということで、何か日本人というものはごまかされるといいますか、納得をせざるを得ないような立場に追い込まれると思うのです。しかし、ものには限度というものがあると思うのです。アメリカ対日本でしょう。国家間でしょう。さっきから言うように行政協定でどうにもならないという考えならば、あなたたちはそれでいいが、しかし、唐人お吉じゃないけれども、それはいろいろないきさつがあるでしょう。新聞にもいろいろ書いておりますが、日本政府が米軍に対してゴルフ場をつくってやる、それはほかに方法がないのか。とにかくこういうことで日本がいかに隷属しておるか。それは幾ら理屈を言ったって、自民党が隷属しておるから、ゴルフ場までアメリカ軍につくって差し上げておる。キャバレーとか何とか、何をつくってやるかわからぬ。こういったら言い過ぎかもしれぬが、やはり国対国の場合にはおのずから限度というものを心得てやっていかないと、たいへんな屈辱外交ですよ。そういうことは外務省のほうにおいても十分配慮をしていただいて、たとえば万が一やるにしても、国が直接つくるということでなくて、いろいろな方法があるだろうと思うのです。少なくとも自主独立の外交を自民党は自民党なりにやっていこうというのだったら、これはものの限度というものをわきまえてやっていただきたい。こういうことを要望いたしまして、時間がございませんので、私の質問を終わります。
  120. 愛知揆一

    愛知主査 午後は本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後四時三十七分開議
  121. 愛知揆一

    愛知主査 休憩前に引き続き会議を開きます。外務省所管について質疑を続行いたします。加藤清二君。
  122. 加藤清二

    加藤(清)分科員 外務大臣にまずお尋ねをいたします。  それは自衛隊の海外派兵の件でございます。総括質問におきまする本件に対する外務大臣の御答弁と、きのうここで行なわれました玉置君に対する答えと、受け取るニュアンスが違います。しかし、事重大問題でございまするし、国民環視の問題でございまするから、ひとつこの際、ニュアンスの違いとか、あるいは国民が受け取り違いをしないように、はっきりとひとつ確信のほどをお答え願いたいと存じます。  そこで、自衛隊の海外派兵について、自衛隊法の改正をなさる用意があるかないか、こういうことでございます。
  123. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは所管違いでもありますし、また、従来は、どういう形においても海外派遣ということはしないというたてまえになっておるのでございます。それを変えることになるので、これは所管外ではあるけれども、かなり重要な変更になると思います、こういうことを述べておる次第であります。   〔主査退席、登坂主査代理着席〕
  124. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そこで、重要な変更になるからお尋ねしておるわけでございます。ニュアンスの違いがあるというのもそこなんです。国民が注目している問題でございまするので、所管外だなどと言わずに。あなたは、総括質問において、もし国連軍の要請があった場合には、警察軍程度は派遣するのが——こちらの義務とまではおっしゃらなかったのですけれども、当然国連加盟国としては出動すべき筋合いの問題であるという意味のことを答えておられます。私、きょうあなたの答弁を取ろうと思ったが、いま手元にございません。そこで首を振ってみえるならば、あなたの真意のほどをここで再確認したいと思います。
  125. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま海外派遣ということについては、重大な変更になるから、これは相当簡単にいかない問題であると思う。しかし、ここから先は私の所管の問題なんですが、海外派遣というけれども、段階はもう数段階あるいはそれ以上あるかもしれない。最も軽い段階の、二国間にある休戦ラインを引いて、これをお互いに侵さないという約束をした場合、国連がこれを監視するというような場合はしばしばある。だから、そういう場合の監視団の一部として加盟国から人員を送り出す場合、それはどっちかといいますと、専門的知識は、やはり軍事教育を受けた人が専門家と言えるだろうと思う。そういう国連の要請が各加盟国に出されるというような事情が当然予想されるような状況にある、そういう場合には、やはり国連加盟国の一員としてそれにこたえるという態勢ができていることが望ましいのではないか。これはすでに国会において答弁済みの問題であって、自衛隊の問題はしばらくおいて、憲法上はこれは問題はないということを、法制局も答えておる問題でありますから、そろそろそういう問題についていろいろ考究し、準備をする必要がある情勢のように思う。こういうことでございます。
  126. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は、憲法違反であるとかどうとか、そんな先のことまでお尋ねしているのではありません。要は、総括質問において、国連軍の要請があった場合には、せめて警察軍、くらいはそれにこたえる準備をしていく必要がある段階に立ち至っているという旨のことを答えている。また、いまもそのようなことをおっしゃった。  そこでお尋ねするのですが、一体国連軍の要請、それはあったんですか、なかったんですか。
  127. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちょっと用語に気をつけていただきたいと思うのでありますが、国連軍というものはまだ制度上確立しておりません。(加藤(清)分科員「国連ということにしましょう。」と呼ぶ)国連からいろいろな要請があることは考え得る。まず低い段階では、いまの監視団に加わる要員の供出、それから、将来の問題ではあるけれども、国際社会というものの秩序を維持するための国連警察軍というようなものまで考え得るのだが、まだそういう高次の段階の現実の要請はない。  さしあたり現実の問題となっておるものは、事例としてはレバノンの問題、それから最近ローデシアに対する経済の断交、そういったようなものがすでにある。日本は、こういう要請にもうすでにこたえ得るならばこたえなければならぬという状況ではないか。国連の加盟国として、またかりそめにも議長国として選ばれるというような状況になっておりますから。  ところが、国内法としては、これに応ずる態勢にない。これはしかし非常な趣旨の変更であるから重大な問題である。また、これは所管外でございますから言いませんけれども、相当むずかしいだろうと思う。むずかしい問題ではあるけれども、われわれの所管から見ると、それにこたえ得る態勢を整えなければならぬという状況に近づきつつある、こういうことを述べたのであります。
  128. 加藤清二

    加藤(清)分科員 国連の要請があった場合には、それにこたえ得る準備ないしは態勢をとる必要がある、しかるに、国内法はそれを許していない。したがって、それを変えることは重大問題であるけれども、外務省としてはこたえる準備態勢を整えたい、こういうことでございますか。
  129. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そうであります。
  130. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかりました。  では次に、現在の状況としては、すでに過去にも例があったごとく、国連の要請ということが起こり得る世界の諸情勢である、こう認識していらっしゃるんですか。
  131. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そうでございます。
  132. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかりました。  それでは次に、監視団は専門家でなければならない。その専門家というのは、軍事教育を受けた人をさす、これも間違いございませんか。
  133. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いろいろな要素、受け持ち受け持ちでいろいろな人で構成されておって、必ずしも軍事教育を受けた者だけで構成するということはないかもしれぬけれども、大部分は、やはり中心になるものは、そういう経験なり、知識なり、訓練なりというものを受けた人が適格者であるということが言えると思います。
  134. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、国連においてその監視団が構成される場合に、もし日本に要請があって、日本からそれに参加させるということになるならば、それは日本の警察でございまするか、それとも自衛隊でございましょうか。いずれがふさわしいとお考えでございましょうか。
  135. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは、警察でもいろいろなのがありますね。交通巡査もあれば、それから機動隊というようなものもあると思います。しかし、大体においてやはり自衛隊でしょう。
  136. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それは自衛隊である。そこで私が次にお尋ねしなければならぬのは、自衛隊を派遣するということをもし考えたとすれば、今日の自衛隊法で可能とお考えでございましょうか。ないしは自衛隊法を改廃するとか、あるいは一部修正するとかいう作業を行なおうとしていらっしゃるか、そのいずれでございますか。
  137. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはり自衛隊法の改正が必要のように考えます。
  138. 加藤清二

    加藤(清)分科員 自衛隊法の改正は、しからばいつ行なわれる御予定でございますか。すなわち、国連の要請はすでにもう過去にもあり、現在そういう空気にあるとあなたはおっしゃってみえますが、さすれば、この自衛隊法の改正は急がなければならぬということに相なるわけでございます。いつおやりになる御予定ですか。
  139. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは考えようですけれども、日本がどうしても国連に出さなければこういうものが成り立たないという状況でもない。ほかの国から要員を供出させて、それで十分間に合わせるということもできるであろう。ですから、日本が出さなければこういうことが成り立たないというわけじゃない。ところがこっちのほうの用意が整わなければ、ほしいといっても、それは日本からやるわけにはいかない。ですからそういう要請があっても、ただいまはこれに応ずることができない。できないということを、いつまでもできないということではやはりいかぬのではないか、そろそろ考えなければいかぬのではないか、こう思いますが、自衛隊法の所管ではございませんので、また従来のたてまえを変えることにもなりますから、困難な問題かもしらぬ、こういう考え方を持っております。
  140. 加藤清二

    加藤(清)分科員 自衛隊法の改正ということは、当然これは所管違いでございます。しかし、国連から要請を直接受ける窓口は外務省でございます。したがって外務省としては、受ける態勢を整えたいという御意思ならば、その発議をするとか、閣議ではかるくらいのことはできるし、意思表示はできると思います。変えるか変えないかは、それは所管違いですから、この問題は私また防衛庁長官にお尋ねするつもりでございますが、あなたとしては、要請を国連から受ける側ですから、その準備態勢を整える側として、一体自衛隊法はいつ、どういう時期に改正をしようとなさるのでありますか。
  141. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ、そこまで十分に検討しておりません。
  142. 加藤清二

    加藤(清)分科員 では、それは、せっかくこの国会の大切な予算委員会、国民注目の的の前へあなたは一つの波紋を投げなさったわけですから、だからそれにこたえなければならぬ。準備態勢を整える必要があるとおっしゃってみえるのだから、その態勢を整えるのは一体いつから始めなさるのか、すでに始まっているのか、そこをはっきりしてもらいたい。
  143. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とてもこの通常国会には間に合わないと考えております。
  144. 加藤清二

    加藤(清)分科員 では次の臨時国会とか、あるいは次の国会とか——じゃもう一つお尋ねしますが、ことしじゅう、昭和四十一年度中にはこれを修正、立法の運びにする御予定ですか、どうです。
  145. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ぼつぼつ用意をしなければならぬと私は考えますけれども、これはやはり政府部内の全般の関係者の協議をやって、しかる後に進めるということになるわけであります。
  146. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなたほどの慎重な方が国会で答弁なさった、しかも総括質問の席でお答えになっても、なお総理も、防衛庁の長官も、大蔵大臣も異議を差しはさまなかったのです。私はあのときに、ああこれは準備ができ終わったなと見ました。それでなければ、あの際に、とんでもないことを言うなということで問題になるはずなんです。あなたのような慎重なお方があれだけのことをおっしゃっても、総理から、防衛庁長官から何も言わなかったということは、すでにうちうちにおいて準備が進められておるということだと見て差しつかえございませんですね。
  147. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 総括のときの質問に対する私の答えは、もう一度ひとつあなたも速記録でよく読んでいただきたいのですが、私はそのときはただ憲法論として申しまして、自衛隊法はまあしばらくおき、憲法上どうなるかという議論であれば、どうも憲法上は差しつかえないように思われるが、なおここに法制局長官がおるから、そちらのほうからもひとつお答え申し上げることになりますと、そう言って、やはり私と同じような、憲法論としてそういうことを答えております。あのときは、自衛隊のことは何も触れてないのです。
  148. 加藤清二

    加藤(清)分科員 自衛隊とまではおっしゃらなんだが、国連から要請があった場合には、せめて警察軍ぐらいには協力する準備体制を整えるべきであるというニュアンスのことをおっしゃった。それはあとで調べるとしましょう、こんなことで貴重な時間を費やすのは損ですから。ただ私は、それと、きのうの御答弁とをあわせ考えてみて、相当準備がうちうちで進んでいるではないかと受け取れる節がありまするが、その点はいかがでございますかとお尋ねしている。
  149. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ですから、まだうちうちで十分に協議が整っておるわけではございません。
  150. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、いままでの発言は、外務大臣、つまり外務省だけのことと、こう考えてよろしゅうございますか。
  151. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そうでございます。
  152. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、もちろんこれから質問することもその範疇に属するかもしれませんが、そうなりますると、必然的に自衛隊を海外に、名前が警察軍であろうと何であろうと派遣する以上は、憲法の条章に照らし合わしてみて、このままの憲法ではと考えられまするが、外務大臣はそういうことを行なう場合に、憲法には関係なくそのことが行なえると考えていらっしゃるのか、それとも関係を生ずると踏んでのお考えでございますか。
  153. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先般、予算委員会の総括質問の際に問題になったのは、監視国に参加すべき構成員を送るということは、自衛隊法はしばらくおき、憲法上は差しつかえないものと認める、そういうお答えをいたしまして、同様の答えを法制局長官からしたはずです。
  154. 加藤清二

    加藤(清)分科員 この点だけは総括質問と答えが一致しておるようですね。しかし私どもは、これは当然憲法の条章に触れる問題であって、憲法改正につながる問題である、したがって、事重大であるから、きわめて慎重を要すると考えております。しかし、それから先になりますると外務省の所管外に相なりまするので、私は本問題はこの程度にして、いずれ防衛庁、あるいは最後の一般、総括のところでもう一度関係大臣の御所見を承り、同時に、国民の憂いとか、あるいは国民の受け取り方から生ずる誤謬、そういうことをなからしめるようにしたい、かように思うものでございます。  さて、次に申し上げます。私が内々のうちに準備が整えられているのではないかということを想定したのは、決してゆえなくではございません。すでに日韓の問題におきまして行なわれております有償無償、クレジットの問題、これもあなた方は内々のうちに鞭声粛々事を進めておいきになったはずでございます。さてそこから一体日本の産業にどのような影響を及ぼすであろうか、もし及んだとしたならば、それを事前にどのようにころばぬ先のつえをしておいたならばよろしいかの問題については、当然政治家として考えなければならぬ問題でございます。  したがって、私がお尋ねしたいのは、横路質問から発しましたところのいわゆる民間信用供与によるところプラント十件、秘密、秘密とおっしゃられながら、外務省は御提出なさったわけでございます。この民間信用供与によるところのプラント、いわゆるクレジット、延べ払いの問題は目下のところ進行しておりますか。それともあのままでございますか。あの横路質問が行なわれた当時のままでございますか。それ以後何か新しいものが出たのでございますか。
  155. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事務当局から……。
  156. 西山昭

    ○西山政府委員 先般の予算委員会で御説明申し上げました当時は、約七千万ドルでございましたが、現状におきましては十一件、約八千万ドルでございます。
  157. 加藤清二

    加藤(清)分科員 このクレジットは今後どこまで、どの範囲に伸ばされる御予定でございますか。
  158. 西山昭

    ○西山政府委員 もちろん韓国の支払い能力、それから商談の進行の状況というものを見合わせまして、私どもは慎重に検討すべき問題と考えております。韓国の支払い能力につきましては、私どもも輸出の目標、あるいは輸出の実績等を考えまして、過度に輸出信用が行なわれないように十分注意したいと考えております。
  159. 加藤清二

    加藤(清)分科員 これから抽象論はやめましょうね。過度だとか過大だとか、そんな抽象論じゃないんです、銭の問題ですから、日本の国民の金の問題ですから。  それじゃ、あれ以来一千万ドルばかり増加した、その内訳をここで示してください。
  160. 西山昭

    ○西山政府委員 衣岩発電所用の機械、これが四百九十七万九千ドル、それからレールが四百三十七万五千ドルでございます。これは先般の答弁以後のケースでございます。
  161. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなたのところのお手元に、合成繊維のプラントについては届けがありましたか、ありませんか。
  162. 西山昭

    ○西山政府委員 すでに許可済みのものが、四十年の五月と四十年の十月に一件ずつございまして……。
  163. 加藤清二

    加藤(清)分科員 その内訳を言うてください。
  164. 西山昭

    ○西山政府委員 四十年の五月はポリアクリル・プラントがございます。これが三百八十万ドル、それから十月の塩化ビニール・プラントが三百三十八万ドルでございます。
  165. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは合成繊維の撚糸業、織布業のプラントはあったかなかったか。
  166. 西山昭

    ○西山政府委員 いままではございません。
  167. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、その計画外務省にはなかったかもしれませんが、通産省の方には下相談があったかなかったか。
  168. 今村昇

    ○今村説明員 ただいまのお尋ねの点は、商談としては進行しているように聞いておりますけれども、まだ正式に通産省へ持ち込まれておりません。
  169. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ここらあたりのことなんですね、鞭声粛々行なわれるというのは。これは、その商社の方々がじゃんじゃん向こうへ渡航してみえる、向こうと会議をしてみえる。こちらはこちらで金大使と赤坂あたりでいろいろ御相談をしていらっしゃる、そこらあたりで大体煮えてきてしまう、それがすっといくのです。  私はあえて銘柄まで申し上げておるのでございますから、合成繊維の撚糸、イタリー式、その撚糸と織布、Tレーヨンと言うておきましょう、A化成ということにしておきましょう。そこらの共同出資、共同経営にかかわる問題が、すでに具体的事実としてものが煮えかかってきている。それはやがて、きのうの新聞にも出ましたように、Nレその他が合同をして対抗策を立てなければならないという問題にも関連を持つわけでございます。そのことを外務省としてはよくわきまえていらっしゃいましょうか、いかがでございましょうか。
  170. 西山昭

    ○西山政府委員 私どもはまだよく知っておりません。
  171. 加藤清二

    加藤(清)分科員 その申請があったら、それは許可なさいますか、なさいませんか。
  172. 西山昭

    ○西山政府委員 一々の申請がございますときは、一番関係が深い通産省その他とよく相談してきめるわけでございまして、現状におきましては事情もよくわかりませんし、お答えできません。
  173. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣、あなたは後進国の工業を指導育成することは必要だとお考えでございましょう。私も、発展途上の国の経済開発をすることについては、その熱心さにおいて決して人後に落ちるものではございません。しかし有償無償の賠償や、あるいは長期にわたるクレジットによって設備が輸出される、それがずっと遠い国ならばよろしゅうございます。すぐ近く、海をちょっと隔てたところにそれがプラント輸出される、そうして、きわめて低廉なる労力によって加工される、その品物はその国の需要を満たして余る、そういう生産になっております。その結果は、やがて日本の海外市場のシェアで競争をしたり、あるいは逆に国内へ逆輸入をされるというおそれが発生してまいりまするが、これについて外務大臣としてはどのようにお考えでございましょうか。
  174. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはり日本の既存の工業に悪影響を及ぼすに至れば、これは考えざるを得ないと思います。しかし、考え方に二つあると思うのです。あくまで自己防衛のために向こうの工業育成にストップをかける、それ以上発達しないように協力しないというやり方と、それから、低開発国でございますから、程度の低い段階の工業ならば、まあとにかく少しこっちも痛いのをがまんしてこれを認めて、そしてこちらはもっと高度な段階に進んでいく、こういう二つのやり方があると思いますが、できればやはり後者のほうをとっていって、そして共存共栄ということになったほうが私はよかろうと思います。
  175. 加藤清二

    加藤(清)分科員 まことに一般論としてはけっこうなお話でございます。私もその点は賛成でございます。しかし、問題は日本が高度に伸びると申しましても、日本の綿業、羊毛加工業、あるいはスフ、人絹から合繊の加工業の分布の状態から見ておわかりのとおり、多きは九〇%以上、少ないものでも七八%以上は零細でございます。紡績の錘でいえば、三万錘以下が七〇%の余を占めておるわけでございます。機場の織機百台以下というのが九〇%以上でございます。そこらは高度化しようとしたってできないのでございまするが、もしそれを高度化する必要がある、程度の低いものは後進国に譲っちゃって、じゃ日本は高度化しましょうと言ったときに、高度化に必要な資金を通産省が出してくれと言ったら、外務省はこれに相呼応する準備がございますか。できますか。
  176. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外務省は金を取り扱っておりませんから、外務省からひねり出すことはできませんけれども、一緒になって大蔵省に働きかけるというくらいのことはできると思います。
  177. 加藤清二

    加藤(清)分科員 発展途上の国を日本が助けてやる、これOECDにも加盟した以上そうならざるを得ぬでしょう。それはそうでしょう。それに日本が手を貸さなければ、よその国がここへ設備を持ってきて仕事を始めちゃいますから、ちょうど中共の合繊プラントを日本が送らなければ、よその国が持ってきちゃうのですから、それと同じでそこまではわかるのです。しかし、日本の力で外国の後進産業まで助けるという余力があるならば、日本の零細企業、中小企業にして生産設備が高度化しない部門に対する援助その他は、当然日本人としては行なってしかるべきである、かように考えるものですが、この点、あなたも後進国は助けなければならぬ、日本は高度化して生き伸びるんだと先ほど前提条件をおっしゃった。さすれば高度化するような予算的措置を日本政府がとる場合に、外務省としては、——もう一度お尋ねします、これは差し迫った問題ですから。どうなさる御予定でございましょうか。
  178. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはりできるならば高度化をして、そうして後進国に比較的低度の工業の分野を譲るということにしたほうがいいと思いますが、できなければ、これはやっぱりしょうがない。育成にも限度がある。しかし、できるだけやっぱりつとめたほうが私はよいと思います。
  179. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それに関連いたしまして、この賠償を担保にいわゆる賠償の債権国に繰り上げ支給と申しましょうか、先貸しと申しましょうか、する件についてお尋ねしたいのですが、フィリピン、インドネシアの資料はあなたのほうから丁重なものをいただきました。これでよくわかりました。ところがこれによりますると、インドネシア、フィリピンに対するところの貸し金による設備、たとえば船舶であるとか、ホテルの建造であるとか、パルプ工場の建造、橋梁の構築、ドック、造船所等々、これについて貸与をしていらっしゃいますね。貸与ということは繰り上げ支給ということなんです。この問題について、すでに行なわれておりまするインドネシアとそれからフィリピンの金額、トータルをお教え願いたい。
  180. 西山昭

    ○西山政府委員 フィリピンにつきましては、資料で提出いたしました約四千万ドルの賠償をいたしましたけれども、実際マリキナダムの関係の三千万ドル程度が実施されておりませんので、金額ははるかに少ない金額でございます。フィリピンの四千万ドルは、約千万ドル程度でございます。  それからインドネシアにつきましては、賠償担保で供与しました信用額の残高が現在約五千六百万ドルになっております。
  181. 加藤清二

    加藤(清)分科員 インドネシアの五千六百万ドルの賠償担保による貸し付け、これはいわゆる経済ベースとして債権を、こちらの債権ですよ、を確保することが可能とお考えですかいなか、いずれでございましょう。
  182. 西山昭

    ○西山政府委員 賠償担保は、名前の示しますとおりに普通の貸し付けをやりますけれども、不払いの場合は賠償を担保にするということでございまして、現実に支払いが何らかの理由によりまして行なわれない場合は、与うべき賠償を与えない。ことばをかえますと、延べ払いでやりましたものを賠償で供与したものとみなす、こういうことでございますから、確実な担保になっておるわけでございます。
  183. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は担保があるとかないとか、担保があるのはあたりまえで、そういうことを聞いておるのじゃなくて、債権を確保する。つまり貸した金を返してもらうことが可能か可能でないかと聞いておるのです。
  184. 西山昭

    ○西山政府委員 賠償を毎年金額をきめて先方に支払うわけでございますが、その範囲で不払いの場合は回収をすることでございまして、賠償の金額が残っておる範囲で担保をやっておりますので、不払いの問題は起こらないと思います。
  185. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それは一年決済でございますか。
  186. 西山昭

    ○西山政府委員 賠償担保の借款は、賠償年限等を考慮しまして、賠償の残額が幾らあるかということを考慮いたしまして、その範囲内で貸し付けておりますから、延べ払いでございますので、毎年支払い期限が来る金額が幾らかわかるわけでございまして、賠償とにらみ合わせまして、その範囲で貸し付けをやっておりますから、賠償の残額があります限りは、支払いの遅滞の問題はないわけであります。
  187. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私の質問に答えてください。それは一年決済ですか。それとも賠償が十年分割といえば、最後の十年目に借金のカタと借金との相殺をなさるのですか。いずれです。
  188. 西山昭

    ○西山政府委員 御承知のように賠償は一年間に幾らという金額をきめておりまして、何年間で総額幾らということになっておりまして、賠償担保の貸し付けは、支払い期限が延べ払い十年でありますと何年に幾ら返ってくる、そういう支払いの予定額がございまして、そういうものと、毎年の支払いの予定額と毎年の賠償額を見合ってやっておりますから、賠償の最終年度に全部返るという性質のものではございません。毎年の実施計画に織り込んでおるわけであります。
  189. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そうしたら、毎年の実施計画によって債権と債務が相殺されていくという形式、それは、あなたのおっしゃる方向であれば、そのほうが正しいのですよ、当然経済ベースとしても。そのほうが危険も分散されるのですから。すると、十年決済じゃなくて一年決済ということですね。
  190. 西山昭

    ○西山政府委員 そうです。
  191. 加藤清二

    加藤(清)分科員 毎年決済ということですね。そのおりに、先払いされますね。賠償として支払うよりはクレジットとして実物が行くほうが早いのですね。早いことが多いでしょう。賠償支払いの期日を延期しておいて、何か貸してくれというやつを待ってするのではなくて、貸してくれというやつのほうが早くて、賠償を払う期日のほうがおそいでしょう。そうですね。すると、それが担保で相殺された場合の諸経費や金利はどうなりますか。
  192. 西山昭

    ○西山政府委員 延べ払いの契約には、もちろん諸経費、金利が入っているわけでございまして、そういうものを全部織り込んで、先ほど申し上げましたような計算をしたわけであります。
  193. 加藤清二

    加藤(清)分科員 金利計算は入っておりますか、おりませんか。
  194. 西山昭

    ○西山政府委員 入っております。
  195. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣、そうなりますると、債務者の義務不履行の場合の取りきめ事項の中に、支払いが行なわれない金額に相当する生産物及び役務は賠償として供与されたものとする、こういう契約になっていますね。これは形を変えていいますと、民間の、いわゆる日本国内の経済ベースでいきますと、先払いをしたと、こういうことになるわけですね。言うなれば繰り上げ支給をした、こうなる。もっとわかりやすく言いましょうか。そこのところがわからぬといかぬと思いますから……。たとえば私どもが月給をかりに今月月末に十万円もらえるとしましょう。ところが月初めに金が要った。そこで、その月給の範囲内で十万円借りた。そうすると、借りたほうが一月間繰り上げて支給されたことになるのですね。それが行なわれたとすればそうでしょう。これは大臣に聞いておるのですよ。
  196. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 おとなしく待っておればただでもらえるやつが、それを担保にして金を借りれば、やはり諸経費、利子を払わなければいかぬ。ですから、実態が違います。
  197. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それではお尋ねいたします。その諸経費、金利はいままで幾らになっています。大至急出してください。
  198. 西山昭

    ○西山政府委員 ただいま数字は詳細に持ち合わせておりませんが、延べ払いのものの供給の値段の中には、経費等を入れたものが対価として考えられております。
  199. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そんなところであなたのほうがそんなことを言うもんで大臣も困っちまう。私はここで立ち往生させようなんて思っていないのだから、スムーズに話を持っていこうとしておるのに、あなたがそういうことを言うもんで、大臣までがそのとおりであると言わなければならぬ。そうしたら、実際の経費と金利計算、きちっとしてくれと言ったらどうします。できないですよ。私は知っておって聞くのですから、だめですよ、そんなことを言ったら。いま言い直すか、言い直さなかったら、あなた至急私の質問の終わるまでに提出してください。いずれでもいい。あれは間違いましたとか、勇み足をしましたというなら、それは不問に付しましょう。それともあくまであなたがそうだと言って抗弁するなら、私の質問の終わるまでにその資料を出してください。どっちでもいいですよ。この答えはここで言わせるのは気の毒だ。だから、委員長あとでいいから、あれはこうだった、こういう答えをあなたがとってください。次へ行きます。  それでは、こういう事件は賠償の権利義務を履行する場合の通例でございますか、あるいは違例の措置でございますか。大臣にお答え願いたい。
  200. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ賠償というものはごくまれに起こる現象でございます。それで、おとなしく待っていればたたでもらえるやつが、それがうっかりすると金利も払わなければならぬということになります。そして、支給する場所が違う。片一方は国家がやる、片一方は銀行がやるのですから……。
  201. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そこで、違例であるか通例であるか。
  202. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはどっちですかよくわかりませんが、ちょっと事務当局から……。
  203. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 サンフランシスコ条約で役務賠償ということをきめまして、役務の化体として生産物まで入れて賠償をやっておるわけでございますが、こういうふうに金銭賠償じゃなくて生産物、役務で賠償を払うということはわりに新しいアイデアでございまして、したがいまして、違例といいますと、ほかにそういう例がたくさんあって、今度のだけ賠償担保をしたように聞こえますが、こういう生産物、役務賠償というもの自体があまりほかにないわけでありますから、賠償担保が違例ということも的確には言えないと思います。
  204. 加藤清二

    加藤(清)分科員 まああんまり数の少ないことである、こういうことですね。  さて、それで本問題の結論をお尋ねしたいのですが、ついせんだっての日韓の関係から有償無償八億ドル、三千億円になんなんとすることが決定され、それにプラス先ほど来の民間借款の供与が行なわれつつあるというのが現状でございます。しかし、韓国としましては、でき得ればその例にならって私のほうも早く繰り上げ支給がしてもらいたいという要望が盛んに行なわれているようでございますが、この日韓の条約からくる賠償に、この違例な方式を適用なさいますか、適用なさいませんか。向こうの要望は繰り上げ、早くもらいたい、こういう要望のようでございます。
  205. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 韓国の繰り上げの要望は、無償、それを請求権を担保にして金を借りるというのじゃなくて、本体そのものを早く出してくれないか、こういうのでありますから、ごくわずかですね。ごくわずかいろいろな都合で繰り上げということは、予算の範囲において考える余地はきわめて少ない。しかし、そうでなしに、請求権担保でそれから金を借りるということじゃないようであります。日本政府に対して繰り上げて支給してくれないか、こういうことでありますから、担保貸付けじゃない。
  206. 加藤清二

    加藤(清)分科員 期限をきめ、スケジュールをきめて日本のほうは支払いをするということで契約が成り立っておる。そういうかっこうで条約ができている。これが民間の形式でございますと、その期限、内容を変えたり、総体では同じでも譲渡する時期を変えますと、これは明らかに内容変更ということで、もしそれを株式会社ですれば、これは重役会のみならず、総会にまでかけなければならぬ問題が発生してくるわけでございます。民法上は当然でございます。国際法でもそれに準拠しておると思います。いま、そういうことは幅は狭い、だからないだろうというお答えでございますが、そこをもう一度ひとつお答えを願いたい。ほんとうにないのですか。ある程度小幅にはそれをおやりになろうとしていらっしゃるのか。
  207. 西山昭

    ○西山政府委員 協定によりますと、有償と無償と二つに分かれておりまして、無償のほうは三億ドルを十年間にわたってやりまして、年間三千万ドルになるわけでございますが、そのうちの約五百万ドルは清算勘定と差し引きがありますから、実質は二千五百万ドルくらいの年間の供与になっております。これにつきましては、協定によりますと、両政府協議をして合意をすれば増額することができるようになっておりますけれども、日本の現在の予算の性質その他から申しまして、ワク内の二千五百万ドル、三千万ドルから清算勘定を差し引きました分を一年間に支払うということを日本政府考えておりまして、増額することは考えておりません。
  208. 加藤清二

    加藤(清)分科員 増額ではなくして、わかりやすく民間ことばで言うと、繰り上げ支給、繰り上げ譲渡が行なわれるかどうかということを聞いておる。
  209. 西山昭

    ○西山政府委員 繰り上げ支給は考えておりません。
  210. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかりました。  これで結論です。この日本の生産性本部と韓国の生産性本部とが共同してつくりましたところの、日韓経済協力の方向とその背景という本がございます。これは韓国の産業を指導、育成、強化するところの基本方針とスケジュールでございます。それによりますると、この有償無償の賠償プラスクレジットを加えまして、それをなるべく早く韓国に渡しまして、期近に渡しまして、設備を早くつくり上げる。事と次第によってはその製品を日本国内へも逆輸出をするのだというところまで書かれているわけでございます。日本生産性本部と韓国生産性本部の合作なんです。この生産性本部というのは一体何かといえば、これは総本山はアメリカでございます。その際に、いま日本の賠償支払いの基本骨子とこれとが相異なる、そごしてくるという問題が発生する可能性がございます。私はこの問題について、いまここで大臣の答弁を要求いたしません。これは後日に譲ります。しかし、問題は残るわけでございます。この点をとくとお考えいただきまして、そこで最初に申し上げました、日本の産業が大事なのか、韓国の産業が大事なのか、アメリカの指示が大事であるのか、この点をとくとお考えいただきたい。  最後にもう一つだけ、この一点で終わります。私は数年前に、外務省の方々で海外の領事館大使館等々に働いていらっしゃる方の子供さんは日本人でないのかという質問をいたしました。それはなぜかというと、向こうに行ってみますと、子供さん連れの——ほんとうは数字を詰めてお尋ねしたかったのですが、時間だそうですから一方交通で、こっちだけでしゃべっちゃいます。そして協力いたします。これでおしまいとします。海外に派遣されていらっしゃる方々の子供の教育は重大でございます。大使館領事館に参りますと、ここに日本のコックはおられます。おさしみざらまでもございます。けっこうでございます。せめてノスタルジアをこれでいやすということであればけっこうなことです。しかし黒板がございません。教師がございません。この方々は非常に子供の教育に難渋をなさるわけでございます。国家のために海外へ防人として行かれた方々が、自分の子供の教育が十分にできない。その結果は、自分の母校である日本の指折りのいい学校子供が入ることができないような小学校、中学校教育を受けてしまわなければならないということは、私はまことにすまぬことであると思うのでございますが、外務大臣、これについて一体どのような見解を持ち、その後どのような予算措置をなさいましたか。おととしこれをやりましたところ、去年はこの予算はややふえたのでございます。  次に、一緒にやっちゃいます。もう一つの問題は、近ごろ、きょうの新聞にも出ておりますが、外務省はPRのために宣伝カーまで買って海外で日本宣伝をやってみえる、これは大賛成です。こんなけっこうなことはございません。私も賛成です。しかし、やはり大使館公使館には日本の美術を宣伝する任務もございまして、ここに絵画、彫刻、日本の陶器等々が並べられている。これは日本の文化と権威を保つためにも必要だと存じます。ところが、日本の美術にして諸外国にすでにその価値をうたわれており、ビエンナーレの展覧会においても、あるいはマチス、ピカソ等々とも一緒に並んで展覧会ができる、ジュネーブにおいてもこれを宣伝しておりますところの書道、これが一顧だにも顧みられていない。どこにもない。ただあるのはアメリカの日本から移住された農民の家のお座敷に額がかかっておる程度、これは一体どういうことでございましょう。中国は自分の国を宣伝するために、中華料理が至るところにありますが、その中華料理に行ったら必ず書道が入っている。これは一体いかがなものでございましょうか。これも、二年前にそれを申し上げましたら、文部省と協力してこれを買い上げて、大使館公使館に掲げて、日本の美術宣伝の一助にするとおっしゃられましたが、その後一向に音さたを聞いておらない状況で、まことに遺憾と言わなければなりません。海外に住んでいる子供の教育と、日本の美術の宣伝については、書道も当然加えられてしかるべきではないか。二年前の大臣は、これにごもっとも、だから実行に移すと言われたのでございますが、今日の外務大臣の御所見を承って、本日の質問はこれで終わります。
  211. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 教育の問題は非常に切実な問題でございまして、年々予算工作を進めておりましたが、なかなか成果があがらなかったのでございますが、四十一年の予算において相当大幅に認められました。なお御要求があれば事務当局から申し上げますが、書道の点は、これはどうも私もついそういうことにあまり気を回すことができなかったので、いま伺いまして、なるほどこれはごもっともだと思います。一ぺん考えてみたいと思います。
  212. 登坂重次郎

    ○登坂主査代理 高田君。
  213. 高田富之

    ○高田分科員 私が最後でございますので、ごく簡潔に三点ほどお伺いいたしますから、要領よく明瞭にお答えいただきまして、あまり時間を食わないようにしたいと思います。  三点と申しますのは、一つは、この間椎名外相が訪ソされまして、そのときに出されました北方領土のことにつきましてお尋ねをしたいと思います。第二の問題は、核拡散防止条約の問題でソビエトから案が出まして、それをもとにしていろいろ論議があるわけでありますので、この問題についての考え方を伺う。それから三点目は、東南アジア閣僚会議が四月ですか、予定されております。この会議に関連してお尋ねをしたい。この三つでございます。  まず第一に北方領土の問題でございますが、実は先般大臣が訪ソされましたときに、この問題は非常に長い間の懸案でもあり、国民は大きな期待を持っていたわけでございますが、帰られましてからの新聞発表等を見まして、何だかこの問題がせっかく出されましたけれども、別段これという話し合いが進んだとも思われませんし、逆に何かだめだというような印象をあらためて強く受けてきたような、言ってみればマイナスの効果があったのじゃないかというような印象がいたします。そういうことであってはたいへん困ると思いますので、この北方領土問題はどういうわけで、どういう成算があってお出しになったのか、またどういう形でお出しになったのか、その結果はどうなのかということをひとつ簡潔に御説明いただきたい。
  214. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日ソの平和友好のムードが最近非常に拡大強化されてきたことはまことにけっこうであるけれども、しかしおのずからこれには限界があるのではないか。領土問題を含む平和条約がすでに長年の懸案になって一歩も前進しない、もしこれがどうしても現状のままということになると、この親善ムードというものも急速に後退するおそれもある。両国の親善関係はまだまだもっともっと高めていくべきものであり、またそれによって両国が受ける利益というものは有形無形に大きいものがある。ところが、おのずからこの問題で限界があるということになることは、双方にとって非常な損失ではないか。こういう説き方をいたしました。そこでソ連のお立場から考えると、領土の問題でいろいろな国といろいろな経緯があったようであって、この問題をいま直ちに簡単に割り切って解決してもらいたい、こういうことを言うのがもし無理であるならば、日ソ同じ立場に立って、そしてより高い将来の利益のためにこの問題の解決を一緒に考えようじゃないか、同じスタートラインに立って考えようじゃないか、そういうことを話したのであります。しかし、これに対しては、すでにこの問題は解決済みである。そして、この問題にかかわらず、われわれとしてはいつでも平和条約を締結する用意がある。しかし、日本が領土問題を含めてでなければいかぬというならば、われわれは静かに日本が翻意するまで待つ——翻意するまでということばは出なかったのですが、とにかくもう少し先へ延ばしていいじゃないか、そして両国の親善友好の関係はどこまでもこの調子で進み得るものと考える。こういうのがグロムイコ並びにコスイギン両氏の考え方でございました。私どもは、せっかくそういう御意見ではあるけれども、われわれは同意するわけにはいかない。なお今後別の機会をつかんでこの問題について話し合うことをわれわれとしては保留したい。今回は時間もないし、この問題はこの程度にしておく。こういうことで打ち切ったわけであります。  私の感触は、ソ連が大戦の前後にバルト三国あるいはドイツ、ポーランド、ルーマニア等、いろいろな周辺の領土をふやしておる。一カ国において譲歩すれば、すべての方面にまた同じような波及をいたしまして、ソ連としては相当困難な立場に立つということを厳に警戒して、かなりかたい態度をもってこの問題に対処しておるということを、私はひそかに感じ取って帰ってきた、こういうわけであります。
  215. 高田富之

    ○高田分科員 そういたしますと、ぶつかってみて、やはり非常にかたいということを再認識されてお帰りになったというのですが、それでは、今後この問題についてはどういうふうにお進めになるお考えですか。
  216. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どういうふうというて、あらゆる機会を利用して説得するということだろうと思います、一口に言えば。いろいろなチャンスが訪れてくるものと思われます。あらゆる機会をとらえて、この問題をあくまで主張する、こういう態度で臨みたいと考えます。
  217. 高田富之

    ○高田分科員 あらゆる機会、けっこうなんですけれども、今度のように、ぶつかっては何かぴしゃっと戸を締められるようなことを重ねますと、逆にだめなんだということを何か既成事実のように内外に印象づけてしまうということで、私ども考えまして、あとで持ち出しにくくなるということが非常に心配されるのです。ですから、せっかくお出しになるなら、根回しといいますか、もう少しいろいろなところを打診したりしまして、今度出せば、幾らか半歩くらい前進するのじゃないかという目安でもつけておやりになるのでないと、逆になりはせぬか、こういう心配があるのです。  それで、こういう点はいかがでしょうか。何べんもソビエトに同じようなことを機会あるごとに言っても、同じ結果になってしまうというのでは能のない話なんで、たとえば歯舞、色丹は平和条約のとき返すということなんでしょうが、それ以北の島々につきましては、日本は、固有の領土であり放棄したのではない、あれは千島の中に入っていないのだということを言いましても、連合国全体とすれば、そういうのは日本の解釈であって、別に公式に連合国がそれを認めたわけでも何でもないわけです。だから、ああいう結果になって今日に及んでいるわけなんで、やはりこれは一度アメリカあたりに十分話し込んで、そしてアメリカ、イギリス——とにかくアメリカを中心として連合国に、日本考え方を理解してもらった上で、ソビエト側に対して連合国側からも話をしてもらう。こういうふうなことは、当然平和条約二条でああいうふうになっておるわけなんですから、この問題はそういう方法をとってみる必要があるのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  218. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もちろん鳩山さんが向こうに行って共同宣言を出して以来、約十年間この問題に触れなかったわけであります。今度はまっ正直にぶつかったのでありますが、同じ手を用いて何べんも何べんもただぴしゃっとやられるというようなことはもちろん芸のない話でありまして、説得するにしてもいろいろな方法を考えなければならぬ。その一つとして、有力なる国々の協力を得て説くという考え方もありましょうし、その他につきましても、いろいろその方法等につきましては考える余地が多々あると思いますので、まず十分に今後練って、適当な機会を見つけて迫る、説く、こういうようなきわめて多彩なる方法によってこの目的に向かって進んでいく、こういう考え方が適当であろうと思います。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕
  219. 高田富之

    ○高田分科員 この問題については、特にアメリカは相当責任がある立場じゃないかと思うのです。例のヤルタ協定のときに端を発しているわけでありまして、ルーズベルト大統領が直接の責任ある立場でこれをやった。ですから、平和条約のときにもそれをのみ込んでああいう条約になっておるわけでございますので、日本政府日本国民全体のこれだけの悲願であるならば、特に今後日本も仲介者になって米ソの関係をますますよくしていこうというような立場にあるとすれば、別に反ソ宣伝に利用するとかなんとかいう心配は今日では私はないと思うのでありまして、ほんとうに誠心誠意、理を説いて国民の悲願を早く達成しようということであれば、私は率直にアメリカから、けんか仕掛けでなしに、ほんとうに親善友好関係の上に立った話を持ち出してもらうということは有効ではないかと思うのです。かつて私も耳にしたことがあるのですが、バーンズ国務長官がルーズベルトについていってヤルタ会議に出て、それを手記に書いた。その書いたものの中にも、克明にそのときの事情を書いてある。むしろこれはアメリカ側の提案だった。それにスターリンがオーケーして対日参戦ということになった。したがって、アメリカとしても相当の責任があるわけなんです。ですから、これはカイロ宣言や大西洋憲章、あの領土不拡大の精神とはいささか違った例外的な措置になっているわけです。北方領土は当時の日本の軍事基地として非常に重要だったということからああいう措置がとられていると思うのであります。そういうことでありますから、例外的な措置でありますので、ヤルタ協定の内容についても今日の段階で再検討するということは十分あり得べきことだと思うのです。日本はこれに拘束されませんから、これに拘束されておる連合国、特にアメリカ、イギリス——ですから、アメリカあたりの発意によって、もう二十年たつのでありますから、ヤルタ協定などの再検討も含めまして、あるいは条約の解釈を確定するのでもいいでしょうし、あるいは条約自体の改正でもいいでしょう、どっちでもいいですが、要するにヤルタ協定に端を発するあの領土の処置というものについて再検討してもらうというふうなことを、私は誠意を持ってアメリカにやってもらうというのが筋じゃないかと思うのです。もちろん日本から直接ソビエトとお話しすることもけっこうなんですけれども、こういうのとあわせて、それ以上私はアメリカに対して要請をするということは当然やるべきことだと思うのですが、この点だけもう一ペんお答え願いたいのです。
  220. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘の点も十分に考慮すべき問題であろうと考えます。
  221. 高田富之

    ○高田分科員 それで、これを解決しなければどこまでも平和条約は締結せぬという形でずっと押していくのがいいものか、それとも平和条約を結んで歯舞、色丹がとにかく返ってくる、さらに、それによって一そう飛躍的に親善関係友好関係が深まってくる、そういう状況をつくり出していって、第二段にそれ以北の島の話を、さっき話したいろいろな方法を通じながら、また相手にも了解をさせながら解決していくほうが早いのか、どちらがいいとお考えになりますか。
  222. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題を考える上においてのキーポイントにお触れになったと思うのですが、それはどっちがいいともまだ私はきめられないと思います。
  223. 高田富之

    ○高田分科員 ひとつそれは重要な問題ですから、十分検討してもらいたいと思うのですが、私は、どうもこれができなければやらぬといっていつまでもほったらかしておくことは、逆に国民の悲願をずっと無限の将来に追いやってしまうのではないかという感じを強く持つのであります。むしろ親善友好関係を深めながら解決するには、先に締結していくということのほうが、それも一つの北方問題解決への重要な前進である、こういうふうに考えて進むべきじゃないかということを感じます。それと同時に、実は数年前に、わが党の野溝勝氏が団長になってソビエトに使節団を出したことがあります。それから一昨年は成田書記長が団長になってソビエトへ行っているのですが、二回ともこの問題には触れておるのです。そのときにフルシチョフ首相その他責任のある方々は、こちらの質問に答えてでございましょうけれども、向こうが積極的に言ったわけではないでしょうが、こちら側からいろいろと、どういう条件だったら返してくれるかというような突っ込んだ話をしたときに、これはもちろん議事録には残してありませんが、お帰りになった責任者の方の正式報告によりますと、やはり軍事基地になることを心配しているのじゃないか。経済的にはたいした価値はない、ただ軍事基地になってはかなわぬのだということであれば、将来、いまの本土が軍事基地になっている状態というものが解消されていくことなどと見合って、返してもらえるような話に乗ってもらえるかどうかということになってきたときに、それは非常に興味のある発言である、一考に値する。そういう状況になれば、むろん状況は変わることであるから検討していいと思う。あれは別に経済的にどうしてもなければならぬというわけで握っておるわけではないのだという重要な発言があったことを、二つの使節団ともに言っておるわけであります。ですから、そういうようなことをいろいろ考えるにつけましても、私は、もしほんとうに誠意を持って国民の悲願を達成しようと思うならば、順序としては、やはり一たんは平和条約締結ということに踏み切って、そうしてさらに前進して、友好親善関係相互理解を深めながら、その他の問題を解決するのが順序ではないかと思いますので、これは意見として申し上げておくことにいたします。  それで、時間もあれですから第二の問題に移りますが、第二の問題は、核拡散防止の条約の問題で、先般下田さんの発言を中心にしていろいろ統一解釈などが出まして、委員会でも問題になったのですが、その大もとをなしますソ連提案の核拡散防止に関しますこれの骨子というものは、核を持っている国は核を持たない国に対しては使用しないことを誓約するというようなこと、あるいは攻撃されないうちから自分が使用することはないのだ、最初に使用することはしない。さらにソビエト側の解説によれば、そのためには非核武装地帯というものを正式に設定する、これを認めて攻撃の対象にしない、こういうようなことで、非常にわが国に関係のある提案を出しておるわけであります。この提案にからんで、下田さんがいろいろなああいうふうな御発言をなさり、統一見解というところに達しておると思うのでありますが、そもそもこの提案なるものは、わが国の立場からして基本的には歓迎すべきである。賛成してよろしいものだというふうにお考えになりますか。それとも条件つき賛成、あるいは絶対反対——反対ということはないと思うのですが、政府の態度はいかがでございましょうか。
  224. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非保有国に対して、保有国では攻撃をしない、これはそれ自体としては非常にいいアイデアだと思います。しかし、これだけを聞いて、核拡散防止条約にそれじゃ賛成かということになると、まだ言い分が残っておるというのではないかと思います。しかし、それをいま参加の条件として持ち出すかどうかということにつきましては、まだここではっきり申し上げる段階には至っておりませんけれども、考え方としては、持ってない国は守ってやる、というよりも、こっちから攻撃しない。だから拡散防止条約に入れ、こういうことは、まだ説得力が足りないのではないか。やはり核保有国もとにかく完全軍縮あるいは核兵器の縮減というような姿勢をとって、そして核の能力がありながら、なおかっこれを開発しない、あるいは譲渡も受けない、そういう国々もあるのでありますから、ともにやはり最後の理想の目標に向かってみんなが努力前進するという姿勢を核保有国にもとってもらわなければ、どうもきん然として参加はできないのではないかというようなことは、すでに日本以外の、核保有能力がありながら開発しない国々が言い出しておるような状況でございますから、そういう点も十分考慮に入れなければいかぬのではないか、こういうことを下田次官が発言しておるわけでございます。これは、いまこの条約参加の条件というところまではたしていくべきものかどうかということについては、ここでははっきり申し上げられませんけれども、そういうようなことが加わって初めて説得力があるのではないか、こう考えます。
  225. 高田富之

    ○高田分科員 そうしますと、それは条件とするかどうかは別問題として、核保有国がこれを削減し、最終的には破棄するという方向へ進めていくことに対しては、これはもちろん非常なけっこうな話であって、当然主張すべきだと思いまするし、けっこうだと思うのですが、からめていくのがいいのか、何か別建てのものにするのがいいのか、こういう問題が残っている、こういういまの御説明だったと思うのですが、そうしますと、それは一応別個の問題だとすれば、今度のソビエトの提案というものは、核拡散防止ということは基本的な考え方としてはいい考えである。拡散を防止するにはそれ以外にはないのだろうと思うのですが、非武装地帯でもつくって、そこは持っている国は不侵略の、核非攻撃の条約を共同で結んで保障するわけですから、非常にいい方法だ、こういうふうに、その点に関する限りは原則的に賛意を表しておるというふうにとってよろしいわけですね。
  226. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そのこと、そのアイデア、それ自体については決して文句をつける筋合いのものではない、こう考えております。
  227. 高田富之

    ○高田分科員 その場合に、いずれにしましてもその後のソビエト側のいろいろな言い分なんかはありまして、ほんとうに持ってないか、持っているかということについて疑義を差しはさまれるということになると、わが国は核非保有国である。大臣もしばしば言明されているとおり、核兵器を持ち込むというようなことは一切しないのだということを最高の国の方針としておるわけでありますから、そうなると、疑いを差しはさまれるようなことがないほうが得なんであって、そういう方針を立てておきながら疑われたのではかなわぬわけでありますから、せっかくそういういい案が出ておるときに、日本なんかまっ先に適用される地域なんだということを明確にした上で、拡散防止のためにわが国も一はだ脱いで国際世論をリードしていくくらいのことをやらなければならぬ。また日本はやるべき立場にあると思うのです。そういう点からいって核非武装宣言、日本は絶対に武装しないという非武装宣言のようなものを堂々とひとつ出して、またその事実に疑いを持たれるような事実は具体的に排除していって、そうして、世界にそういう点の信望を厚くして、この問題に一役買うというような方針をおとりになったらいかがかと思うのですが、いかがでしょう。
  228. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ日本といたしましては唯一の被爆国としてもう核武装はしない。また同盟国の核持ち込みも、これは事前協議の対象としてこれを認めないという方針を、ただ口先で言っておるのみならず、長年にわたってそういう姿勢を忠実にとり来たっておるのでありますから、いまここであらためて非武装宣言をするという必要はない、私はこう考えております。
  229. 高田富之

    ○高田分科員 しかし、したほうがますますいいと思いますので、この点はひとつ御検討願いたいと思います。  それから、実はそういう点でむしろ逆にいろいろ疑われるような問題がたくさんあって、それはいろいろいままでも質疑があったわけですが、こういう点はどうでしょう。この間下田さんの発言の中にもあったわけなんですけれども、いまのようなソビエトの考え方は基本的にいいということになりますと、日本の国が安保条約がありますからといって、アメリカに対して特に核による防衛、たとえば中国なりソビエトなり——特に中共でしょうが、そういうものの核の脅威ということに対する核をもって戦略的にも戦術的にも日本の安全を守ってもらいたいということを、日本側からアメリカに対して要請をしたり、相談をかけたりすることはやるべきでない。下田さんの発言もおそらくそういうことだろうと思うのですが、そういうことをやる必要もないし、やるべきことでもない。日本は核を持ち込まれないのであるというたてまえを明確にして、先ほど来の御説明にもありますように、アメリカ側がかりにいかなる方法で防衛をしょうが、それはアメリカの兵器についてこっちはとやかく言わないのだ。安保条約というものがある以上、どういう兵器を使って守ってくれなんていうことまで一々こっちは文句を言わない。もちろんその中には核兵器も入っておるだろう。それによって抑止力として働いているのだ、こういう御説明があったのですが、それならば、そういう意味での解釈ならば、こっちから積極的に、中国核武装に対処すべき核の戦略、戦術上の問題について、日本としてアメリカ側に対する意見を言ったり何かするという必要は全然ない、こういうことになろうと思うのですが、その点はいかがでしょう。
  230. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もうすでに昨年の一月、ジョンソン・佐藤会談によって、いかなる国のいかなる攻撃に対しても日本を防衛する責任を果たす、こういうことを言っておるのでございますから、いまさら核問題を持ち出して、新たに核安保体制というものをアメリカとの間に設定する必要は、ごうもないと私は考えます。
  231. 高田富之

    ○高田分科員 この間バンディ氏がこっちに来て、下田さんといろいろお話しになったということなんですが、その内容ですね。新聞報道などで一部ちょっとしか出ておりませんが、やはり核問題について、中共の核実験、核兵器の急速な発達ということを前提としながら、今後長期にわたるそういう面での核政策というものについて、いろいろ日本と相談していこうという話がまとまったというふうに報道されておりますが、その内容、どんな御相談がまとまったのですか。
  232. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私はバンディ氏にとうとう会うことができませんでした。それで、下田次官から報告を聞きましたが、その問題は全然ないようです。まさか私にうそをつくはずはありません。その核戦略に対する長期的な話し合いというものは、何ら行なわれない、こう御理解願います。
  233. 高田富之

    ○高田分科員 私も別に特別の情報を持っているというわけでもなんでもないのですが、あの当時の新聞は、どの新聞もみんなバンディ氏との話し合いで、核政策について今後ともいろいろな機会をつくり、特別の機関はつくらないらしいのですが、十年、二十年の長期にわたる核戦略体制、あるいは戦術問題などについても、これから緊密に連絡をとって相談していくんだということで話し合いがついたと書いてあるのです。これは全部新聞の間違いですか。それじゃどういうことを一体お話し合いになったのですか。
  234. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ここに立ち会った者もおりませんし、そういう話は私は聞いておりませんので、これ以上申し上げかねます。
  235. 高田富之

    ○高田分科員 そのときの人がいないんじゃしょうがないですが、これはハンフリー氏も言っていたと思うのですが、大統領もおそらく言っていたと思うのです。これからやはり核政策についても日本と相談をして、日本にも相談に乗ってもらう、そういうふうな方法でやっていきたいということが言明されているわけですね、向こうは。ですから、これからも相談をかけられてくると思うのです。その場合に、日本政府は、一緒に極東における日本を中心とした防衛の問題について、核の体制について相談に乗っていく、こういうことは一切いたしませんか、どうなんですか。
  236. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ソ連が非核保有国に対して核保有国は一方的に攻撃をしないという保証を与えるという提案をしておりますが、それと相前後してラスク及びハンフリー氏でしたか、非核保有国も、核政策といったか、戦略といったかわかりませんが、そういうものに対して、十分の意見を述べる機会が与えられるべきであるというような発言をしておることが新聞にも出ております。その際に、日本としては、そういう話し合いを申し込まれた場合には、いつでもそれに応ずるというような意見を出しておるのは御承知のとおりであります。これは別に拒否すべき理由もない。また核不拡散条約というものを目の前に控えておるのでありますから、こういう機会に十分そういう問題について当然発言する機会が日本にも与えられるべきである。また自然にそうなるだろうと考えております。
  237. 高田富之

    ○高田分科員 しかし、そうなりますと、やっぱりある国の例のかさ問題にもなるわけです。そういうかさに入っているということばで批評されることになると思うのですよ。結局そういう核体制というものをしいて、それに対する発言権を日本に与えるわけです。日本が自分の国を守ってもらうためには、核兵器の修理とか配置とか、いろんなことに発言の機会を与えられることになるのですから、それは完全にアメリカのかさの中に組み込まれていくことになるわけで、積極的に発言権を持つようになると、引き金は向こうが持っているかもしれないけれども、それじゃMLFとあまり違わないことになる。現実に日本の領土内に置いておかなくても、そこまでいけば、相談に乗ったら最後には置かなければならない羽目になってしまうと思うのです。ですから、これは基本的な態度の問題だと思うのです。ソビエトが言っておるような方法での拡散防止がいいということになれば、そのいいことを主張する他国に向かっても、自分のほうでそういう態度をぴしゃっととらないから言われるんだと思います。いろいろなことをだいぶ言われておるようですが、言われるのは首尾一貫しないから、明瞭でないからです。もしほんとうにどうしても核によって日本の防衛体制をとらなければならない、中共の核がどんどん発展しているんだということになれば、明瞭に核のあれについては日本へ持ち込むことを主張するくらいの——そういう議論も実はあるわけですから、それならそれで首尾一貫性があるわけです。どっちだかちっともわからないようなことで、ずるずる引っぱり込まれることに不安を一般国民は持つわけです。ですから、この問題につきましては、最初にお答えになりましたように、ソ連考え方に賛成だということならば、その線で一貫した、明瞭な、わかりやすい態度をお示し願いたい。いまの最後の御答弁は矛盾しておると私は考えるわけでありますので、この点については再検討を要請したいと思うのです。  それから、時間がありませんのでもう一問最後に御質問いたしますが、東南アジアの閣僚会議の問題ですが、先般来アジア開発銀行の東京誘致の問題などもおやりになりましたし、アジア政策につきましても、政府としては相当これから慎重に、かつ本腰を入れましていろいろお考えのことだろうと思うのですが、その第一着手が今度の東南アジアの会議ではないかというふうに考えるわけであります。この会議につきましては、現在までにどの程度準備が進んでおり、またその趣旨、参加国、会議の内容等につきまして概略御説明願いたいと思います。
  238. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 東南アジアの現状は、御承知のとおり多く説明する要もありません。しかし、東南アジアのあの一帯の数カ国は、気候風土を共通にしておりまして、いかにして東南アジアを経済的に開発するかということになると、共通な問題が多々ある、そこでお互いに連帯感を持って、そうして開発途上にある東南アジアの諸国がお互いに助け合って、しかも自主的に開発のプランを立てる、そうしてお互いに知恵なり力なりを貸し合って共通の問題に対処する、こういうような構えから発達しないと、ただ与えられるものを喜んで受けるというようなかっこうではいかぬのであって、みずから何を欲するか、そういう意欲を燃やして、そうしてお互いに連帯感を持って協力し合う、そういう体制からまず始めるべきではないか。日本といたしましては、この地帯における唯一の先進工業国ではございますけれども、しかし東南アジア開発いかんが日本にとりましても非常に大きな経済的な影響を与えられることになる。でありますから、日本としてはあの国々と一緒になって、そうして知恵なり力なり、あるいは経済力なり、技術なり、そういうものをできるだけ供与する、そうして一緒に繁栄の道を進んでいこう、こういう立場でまず日本が呼びかけてみたら、こういうことから発足したわけであります。  それで、範囲といたしましては、インドネシア、ビルマ、マレーシア、タイ、フィリピン、それからインドシナ三国、シンガポール、そういうところを選ぶのが適当ではないか、台湾であるとか、あるいは韓国であるとか、あるいはインド、パキスタンというようなところは、開発段階がやや違っておるし、やはりこれらは除いて、そうしていま申し上げたような国々が集まって、自由にひとつ討議をする。そうしてただ会議をして別れるというだけじゃなしに、それからだんだん発展していくというような体制をとる。そのためには一年に数回、一向、二回あるいは三回、必要があれば委員会等を結成して、そうしてひんぱんにその開催地を変えるということもけっこうだろうと思います。とにかく会議をしてただ別れるというだけじゃなしに、だんだんお互いの協力によって東南アジア開発の道をつくっていく、そういうふうな考え方でやったらどうかというので、いまそういう線に沿うていろいろ議題等につきましても、会議の運営等につきましても、せっかく審議を進めておるような状況でございます。しかしインドネシアは、マレーシア粉砕問題で、席を同じくしない、こういうような非常に政治的な固いかまえをとっております。それからビルマは二国間協定なら喜んでやるという。多数国の国際会議には一切顔を出さない、どこかで一カ所出席すると、その次にまた出席しなければならぬというようなことで、いろいろ均衡とか義理とかいうようなものが重なってきてつい政治的になる、そういうことなら一切出ないという非常にこれはまた固いかまえ方をしております。カンボジアは出るかと思うと、また出ないと言ってみたり、いろいろ複雑でございます。これらの国に対しては、たとえ欠席しても、いつでも気が向いたら出てくるように、またビルマでもバイラテラルならいつでも喜んで協議に応ずる、こういうかまえでございます。カンボジアなんかも、日本のいろんな経済技術センターなんかも国内にできておる。非常に官民も喜んでおるというような状況でございますから、私は会議に出席するしないということが非常に決定的な要素になるものではない、こう考えております。
  239. 高田富之

    ○高田分科員 それは、ジョンソン大統領が東南アジアに十億ドルの経済援助をするということを発表しておるわけですが、あれとはどういう関係になるのですか。全然関係ないのですか。独自の構想ですか。それともアメリカとの関係で…。
  240. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは全然アメリカと関係はございません。こういう体制を築いて、そうしてお互いに協力して開発の方向に進んでまいって、その結果またいろいろ東南アジアというものに利害関係を持っておる国が何がしかの協力をしようというような場合には、これはまた何も拒む理由はない。そういうことと関係なしに、まずもって自発的なそういう意欲を燃やして、連帯感を持って東南アジア開発にひとつ協力していこう、こういう純粋な意味の会議であります。こう御了解願いたいと思います。
  241. 高田富之

    ○高田分科員 いろいろ御説明があったのですが、いろいろの理由はあるかもしれませんが、インドネシア、ビルマ、カンボジアのようなところが入りますと、色彩的にも非常に政治的な一色というようなあれがなくなりまして好ましいと思うのですよ。ところが、こういうふうに、こういうところが入ってこないということになりますと、非常に片寄った会議のようになりますし、いまもちょっとお話の中にもありましたように、日本が一応音頭をとって荒ごなしのようなことをやる。しかし、結局はアメリカの力というものが結びついてくるということになる可能性が十分あるわけで、そういうようなことに対する疑いというものも、また東南アジア諸国の間にも当然あろうと思うのです。そうなりますと、結局いろいろ腹を探られたりしまして、こういう会合そのものが一種の反共経済連盟でもやるんじゃないかといったようなことになる。たまたまいまベトナムであんなふうな解決のつかない、たいへんな戦争の起こっている最中でもありますし、不必要にそういうふうな疑惑を持たれるようなブロックをつくっていくということがはたして得策であるかどうかということは、これは長い目で見まして相当問題じゃないかと思うのですがね。むしろあとでいろいろなところに障害を生み出しはしないかということを非常におそれるわけでありますが、これらの中立的な立場をとるような国々がどうしても参加しないのでしょうか、どういうことなんですか。
  242. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ずいぶん出先の公館長、あるいはまた特に出向いて担当局長等も説得に当たったのでありますが、なかなか出ると言わない。もしぐあいが悪ければ出先の大使でもオブザーバーで出てもらいたい、こういうことを言っておりますが、どういうことになりますか、なおひとつ十分に努力してみたいと考えます。そして、やった結果を見れば、なるほどこれは政治的な意味がないんだということが十分に納得がいくと思うのであります。そういうことに遠慮をして、そうしてやるべきことをやらないということのほうが、私はどうも得策じゃないように思われます。また日本自身としても、そういうことにかかわらず、とにかく東南アジアの経済開発問題にやはり力強く踏み出す。踏み出すにはやはりこういうきっかけをつくっていくのが最良の方法ではないか、こう考えております。
  243. 高田富之

    ○高田分科員 ある報道によりますと、外務省の一部にはむしろそういうふうな経済的な会合をとりあえずの出発点として、将来はむしろいまおっしゃるのとは反対に、中国というものの脅威にさらされて同じ立場に立つ国々を糾合して、そうしてひんぱんに会議も持ち、情報交換もやり、力をあわせていけるような政治的な話し合いもざっくばらんにできるようなブロックというようなものにむしろ発展させる、あるいは別にそういうものをつくる、そういうことのほうがむしろ好ましいんじゃないかというような、そういう方向を目ざしているというふうな考えも流布されておるわけでございますが、そういうお考えはございますか。
  244. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは、私から見ると全くとんだ当て推量でございまして、そういう考えは毛頭ありません。
  245. 高田富之

    ○高田分科員 それじゃ、ひところから言われておりますが、現在もやっているのかもしれませんが、韓国ではアジアの八カ国外相会議をやりたいと言っておりますが、これには反対でございますね。
  246. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 特に反対といっていきまく必要もないようなもので、大体韓国が非常に熱心でございまして、国交正常化以前からそういうことを呼びかけておる。当初は日本はごめんこうむるという態度をとっておりました。今度はいよいよ国交正常化した今日においては、どうもいきなりぴしゃりと断わるというのも国際礼譲に反するような気もいたします。まだいずれとも決定しておりません。いつごろどういう議題で開くのか、そういったようなことも十分に承知しておらないような段階でございます。
  247. 高田富之

    ○高田分科員 国交回復をしたからというので、だんだんに引きずり込まれるというのでは困りますので、初めの御方針のとおり、先ほど来お話しのとおり、もしそういうような考えを貫徹されるならば、いまのうちに韓国にはっきり、日本はそういうものに参加しないということを宣明されたほうが、私は国のためだと思います。その点はひとつ強く要請をしておきたいと思います。  それから、これと実は関連するのですが、今度の会議でビルマ、タイ、東南アジアの国々から、米の長期契約をして入れるというような構想を検討されておるということですが、そういうことを研究されておるわけですね。
  248. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こういう問題は、国内の農業政策というものと非常に近接な関係を持ってくる問題でございまして、なかなか重大な問題ではあるが、簡単に触れられない問題でございます。しかし、大局的に見た場合に、日本の米に対する需給の関係が、いま七、八〇%くらい自給ができるが、あとは米の産出国から買い集めておるというような状況でございます。そういうような状況でもございますので、日本としても非常な関心事でなければならぬ。特にこの問題をこっちから提起しなくても、東南アジアの数カ国は米の産出国か、あるいは米の需要国、しかもみな主食である、そういう状況でございますから、当然必ず問題として提起されるのではないか。その際に処して、日本としてはあとで悔いないように、かじをとりそこなわないように、日本の情勢とも十分にマッチして、そこに何がしかの結論めいたものが、あるいは方向でもよろしい、そういうものができることは、確かに日本としても非常に利益である、こう考えておりまして、実はいろいろな研究をしておる。しかし、日本からこの問題を提起するかどうかということにつきましては、まだ慎重に考えなければならぬ問題でありますから、いずれともきめておりません。用意はして臨まなければならぬと思います。
  249. 高田富之

    ○高田分科員 そうすると、その用意の段階で、たとえばどの程度まで——向こうが当然そういうようなことを持ち出すだろうというような想定のもとに、その問題を持ち出すだろうということを予定いたしまして、その場合に、それに対応する日本考え方というものでは、現在の段階ではどの程度まで固まったものをお持ちですか。
  250. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ申し上げる段階でございません。いま自給率七、八〇%程度だと申し上げましたが、三十九年は九六%——もちろん三十九米穀年度でございますが、そういう状況でございます。大体現在はこんな程度の自給率だそうでございます。したがって、八〇%前後というのは訂正いたします。
  251. 高田富之

    ○高田分科員 農林省からみえていますね。もしも、そういう提案があって、日本の農業政策ということを一応度外視しますと、当然東南アジア等から第一次産品等をたくさん買い込まなければならぬ。片貿易是正をしなければならぬということになるだろうと思います。文句なしにそういう結論に持っていかれると思うのですが、さてこの問題は、農業政策の観点から見ると、これは相当大きな問題だろうと思うので、ほんとうに向こうの要望にこたえて、ある程度長期の計画で、日本からそのための協力、援助もやっていくというようなことにでももしなりますと、これは相当国内の農業政策というものとの調整は大きな問題だと思いますが、農林省ではこの問題で外務省と連絡をとって検討されておりますか。
  252. 田中勉

    ○田中説明員 ただいま外務大臣からお答えになりました点でございますが、東南アジアの米につきましては、御案内のように大体長い米、長粒形の米と、いま輸入しておりますのは砕け米を入れておるわけであります。この需要は大体工業原料的なものでありまして、過去三年の輸入の実績等を見ましても十四、五万トンから二十万トン近くということでございます。したがいまして、国内の食糧の、主食の需給操作の観点から見ますと、東南アジアの米は日本の需要にはなじみにくいものであります。しいて申し上げますならば、工業原料用の米ということで、先ほど申し上げましたように十四、五万トンから二十万トン程度の需要があるわけであります。そういう観点からいたしまして、将来長期的に、これらの地域から米を恒久的にどうだという問題につきましては、まず需要の面において相当限界がある米でありまして、かりに将来東南アジア方面におきまして日本と同じような米を育成したり、あるいは栽培するというようなことがあれば別でございますが、ああいう気象条件のもとにおきましては、おそらく日本のわれわれの主食の需給操作上、日本米にすぐ代替できるような米ができるとは考えておりませんので、そういう長期にわたって買いつけをどうするというような問題につきましては、国内の農業政策の観点から申しましても、極力国内米をもって自給するという考え方に立っている関係もありまして、また一面これらの地帯の米が国内の需要において限度があるというような面から見まして、長期的なそういう提案がこれらの地域からありましても、これは農林省といたしましては慎重に検討を要する問題ではないか、こういうように考えております。
  253. 高田富之

    ○高田分科員 その問題については、外務省のほうから農林省のほうに相談をかけてはいないのですか。
  254. 田中勉

    ○田中説明員 この点につきましては、外務省から農林省のほうには、まだそういう形においての話し合いというものは聞いておりません。
  255. 高田富之

    ○高田分科員 そういう問題が出されることを想定しておくということは当然だろうと思いますが、そうなりますと、これは国内の農業政策との関係においても相当重大な問題なのです。いまおっしゃるように、いま入っている米はそういう米かもしれませんけれども、向こう側が要求するとなると、日本の需要に応ずるようなものを大量につくりたい、だから、つくれるように指導し、援助してやってくれという要求だろうと思いますよ。当然そういうことになるじゃないかと思う。いま入っている、日本人の主食に合わないような、工業原料用のものを買ってくれというのじゃないと思うのです。だから大問題だと思う。やるとなれば本腰を入れて、相当の指導もしなければならぬし、金もぶち込まなければならぬ。技術員も送らなければならぬ。そうして計画を立ててどんどんつくらせてこっちが買い取らなければ話にならぬと思うのです。だから事は非常に大問題なわけで、そういうようなことについて向こうが要求してきた場合、それに対してどうするかということをはっきりしておかぬと、誠意なしということになってしまったのでは困るし、といってあとでまた国内で大問題になるようなことをしゃべってしまっても大問題なのですが、そうすると、そこら辺は全然御相談はないのですか。外務省ではある程度それは考えているのではないですか。どうなんですか。
  256. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 この問題は、大体昔からそういう話がございますので、あるいはそういう問題が出るのではないかという観点から事務的に検討はいたしておりますが、まだ外務事務当局と食糧庁等と具体的に相談をいたす段階にももちろん至っておりません。
  257. 高田富之

    ○高田分科員 それじゃ、この問題はひとつ、非常に事が重大ですし、農政の立場からはこれは深刻な問題で、いま御承知のとおり、日本農業の根幹をなす、骨格をなす米作というものが非常に危機に瀕しておる。毎年米価の問題であれだけ国内で割れるような騒ぎをし、食管制度もこれを維持するのに相当骨が折れるというような段階で、しかもこの上、何とか日本の米作自体にも力を入れないと、農業自体が崩壊するのじゃないか、こういうところにきておりますね。ですから、ちょっと二律背反的な要請を受けておるわけですね、東南アジアに対する要請とは。それだけにこれは国政の非常に大きな問題ですから、その会議を前にいたしまして、その点を外務省のほうだけで簡単に突っ走ってしまうようなことがあったらたいへんでございますので、いまから十分御検討願って、いずれかの機会にまた御発表願いたい、こう思います。  以上をもって終わります。
  258. 愛知揆一

    愛知主査 以上をもちまして、昭和四十一年度一般会計予算中、外務省所管に対する質疑は終了いたしました。  明二十六日は午前十時より開会し、大蔵省所管について質疑を行なうことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十二分散会