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1966-02-28 第51回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十八日(月曜日)    午前十時七分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       今松 治郎君    坂村 吉正君       砂田 重民君    田中 龍夫君       橋本龍太郎君    角屋堅次郎君       川俣 清音君    兼務 大原  亨君 兼務 大村 邦夫君    兼務 田口 誠治君 兼務 田中 武夫君    兼務 多賀谷真稔君 兼務 野原  覺君    兼務 堀  昌雄君 兼務 山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  三木 武夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         通商産業事務官         (大臣官房長事         務取扱)    吉光  久君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     佐々木 学君         通商産業事務官         (通商局長)  渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      高島 節男君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         通商産業事務官         (軽工業局長) 伊藤 三郎君         通商産業事務官         (鉱山局長)  大慈彌嘉久君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      熊谷 典文君         工業技術院長  馬場 有政君         特許庁長官   倉八  正君         中小企業庁長官 山本 重信君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   吉瀬 維哉君         通商産業事務官         (貿易振興局貿         易振興課長)  楠岡  豪君         通商産業事務官         (企業局産業立         地部長)    中川理一郎君         通商産業技官         (地質調査所         長)      佐藤光之助君         運 輸 技 官         (自動車局整備         部長)     宮田 康久君         労働基準監督官         (労働基準局労         災防止対策部         長)      石黒 拓爾君     ————————————— 二月二十八日  分科員松治郎委員辞任につき、その補欠と  して砂田重民君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員砂田重民委員辞任につき、その補欠と  して今松治郎君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第五分科員大原亨君、第一分科員大村邦夫君、  第三分科員田口誠治君、第一分科員田中武夫  君、多賀谷真稔君、野原覺君、堀昌雄君及び第  五分科員山下榮二君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算通商産業省所管  昭和四十一年度特別会計予算通商産業省所管      ————◇—————
  2. 坂村吉正

    坂村主査代理 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  植木主査が不在でございますので、私が主査の職務を行ないます。  昭和四十一年度一般会計予算及び特別会計予算中、通商産業省所管を議題といたします。  質疑に入ります前に一言申し上げます。本日は多数の方々から質疑の申し出が予定されておりますので、質疑の持ち時間はつとめて、本務員は一時間、兼務員もしくは交代で分科員となった方は三十分にとどめることとして、議事の進行に御協力願いたいと存じます。  質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。砂田重民君。
  3. 砂田重民

    砂田分科員 私は貿易政策について、三十分しか時間をいただいておりませんので、簡単に質問をしてまいりたいと思います。  まず通産大臣に伺っておきたいと思うのですが、最近まできわめて順調に伸びてまいりましたわが国輸出が、昨年の秋口からたいへん鈍化をしてきておることは御承知のとおりであります。低圧経済が超低圧経済にならないように、下ささえしてまいりましたのは経常収支黒字であります。資本収支残もマイナスでありますし、貿易外収支も当分これは黒字を望めない。したがって、今日ほど輸出振興政府が力を尽くさなければならない時代はかってなかったのではないか。通産大臣も相当な決意をもってこれに対処していこうというお考えであろうと思いますが、まず、その大臣の御決意のほどを承っておきたいと思います。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 砂田委員の御指摘のとおり、日本の将来の経済発展のためには、輸出を伸ばすということが経済発展の基礎になる。したがって、大きな国策として、政府民間も一致協力して輸出を伸ばすということに全力を尽くすべきものだと思います。そういう点で、政府自体としても、政府のできる範囲内のことは、予算編成等にも講じてまいったつもりでございますが、何ぶんにもガットなんかの規定があって、あまり露骨な輸出振興策は国際的ないろいろな反発を呼びますから、そういう国際的な貿易の秩序の上において問題にならない点でできるだけのことをしたいという努力を払ってまいっておる次第でございます。
  5. 砂田重民

    砂田分科員 昨年の一−九月には、たしか通関ベースで六十四億ぐらいのものが出ておる。それから一年間の数字を見てみますと八十四億一千万円、秋口から鈍化しておることは数字の上で明白です。非常にたくさんの原因が積み重なっておると思いますけれども、時間がありませんので、その大きな原因考えられます二つの点にしぼって御質問をしておきたいと思います。  一つは、発展途上国外貨事情がきわめて悪くなって、わが国に対する片貿易の是正をやるのだということで輸入制限をやってきた。それが一つ二つ目は、先進諸国輸出意欲が非常に強くなってまいりまして、したがって、海外市場への売り込み競争というものがたいへん激しくなった。やはりこの二つ秋口から輸出が鈍化した大きな原因だろうと思います。私はこの二つの点にしぼって伺っておきたいと思います。  発展途上国外貨事情が悪くなった、その要因はいろいろありましょうけれども、わが国との片貿易の問題というのは何も去年の秋口から始まったことではなくて、これはイラン、イラク、ナイジェリア、東アフリカ国等については、初めから日本輸出超過で始まったわけです。その片貿易がたいへん激しくなってきたのは二、三年前からのことであって、その対策は当然当初から考えておかなければならなかったはずのものであると思うのです。四十一年度の予算にはジェトロに三億円を計上されて、発展途上国一次産品輸入促進特別基金というものを設けられましたが、この三億円というものは、基金という性質上、一体これをどういうふうに運営をしてどういう効果考えておられるか、これを伺いたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 従来からジェトロに四億円ばかりやり、従来のジェトロ資金が七億円、第一次産品輸入促進費として使うわけです。これはやはり融資という形を考えておるわけですが、将来はやはり——今年は、砂田委員もそれぐらいの金額でどうするのだという批判がおありだと思うのですが、われわれでもそう思うのです。これぐらいの金額ではしようがない。しかし、この問題は、やはり世界的な問題になってきておる。国際会議などにおいても、どのようにして第一次産品輸入を促進するかということは、先進国の大問題なんです。特恵制度などもこれに関連をするわけです。まだ国際的にもこれは模索段階です。そこでまあ、しかしこの一年間、日本としてもいろいろな案を考えたけれども、まだ熟し切ってないものがわれわれの側にもあった。この一年の間にこうすべきだという一つの成案を得て、明年度からもう少し大々的にこの問題に乗り出していきたい。その政策的な芽を出して、わずかでありますけれども、この資金を活用して将来一次産品をもっと日本輸入できるような機構というものを考えていきたい。したがって、この基金融資ということを中心にして考えていきたいと思います。
  7. 砂田重民

    砂田分科員 大臣世界的に無策だと言われるけれども、決してそうではない。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 無策じゃない、模索です。
  9. 砂田重民

    砂田分科員 発展途上国からのこの片貿易、一次産品輸入の問題をどうするかということについて、日本無策なんだ。わが国コンペティターヨーロッパ各国は、これは旧植民地という関係もそれぞれあるでしょうが、政策的に一次産品輸入を非常に強力に推進してきている。したがって、発展途上国世界各国との貿易じりを見ますと、日本だけがちっとも改善されていなくて、日本コンペティターである欧米諸国との間の事情というものは改善されてきているわけです。それだけの政策ヨーロッパ各国にみんな強力にやってきている。それと比べて三億円に私は不満を申し上げているわけでございまして、時間がありませんから、これ以上こまかい点の質問はやめたいと思いますけれども、国連貿易開発会議UNCTAD、これはことし発展途上国の一次産品の問題が論議されると思うのですが、アジアにおけるたった一つ先進国です。しかもわが国輸出の四六%はこういった発展途上国向け輸出なんです。それだけに発展途上国との間の貿易バランス改善にもっと力を入れてやっていただきたい。三億円の融資も、これは輸入に対する融資だけでなくて、輸入の損をどう埋めるかという融資にお使いになるのだろうと思うのですが、きわめて不満金額であるということを申し上げておきたいと思います。  ここで、ちょっとわき道にそれるようですけれども、外務省経済局長おいでをいただいておりますか。
  10. 坂村吉正

    坂村主査代理 国連局長が来ております。
  11. 砂田重民

    砂田分科員 それでは通産省高島君からでもけっこうですが、わが国貿易政策行政の上で実際に責任を持ってやっておられる役所通産省外務省でございます。この通商行政の一本化ということを両省とも十分お考えになってやっておられると思うのですが、何か両省仕事の区分といいますか、所管分担といいますか、そういったものの基準のようなものがありましたならば、それをひとつ御説明を願いたい。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 実際に貿易の拡大のために外務省通産省はもっと緊密な連絡が要ると私は思っているのです。機構の点については、高島貿易振興局長から申し上げますけれども、分担はちゃんときまっておるのです。外務省でも外交の内容は変わってきておるわけです。昔の宮廷外交時代ではない。われわれの役所へも大使がサンプルを持って来るんですよ。そういう点で昔の考えではやはりいけない。経済外交という中心からすると、昔のような外務省守備範囲だけではやっていけないわけです。もっとこれは緊密な連絡をはかるように——機構を改革しなくても、運用の面で外務省もなわ張り根性を捨てる、また通産省もなわ張り根性を捨てて、これは一体になる必要がある。いま緊密な連絡はとっておりますけれども、十分だとは私は思っていない。これはやはり改革しなければならぬ点が多々あると考えておる次第でございます。分担はきまっておるわけでございます。
  13. 高島節男

    高島政府委員 分担といたしましては、当然のことでございますが、外務省通商協定の締結という外交中心にいたしまして、その一環としての経済問題という形になっております。われわれのほうは、国内産業というものの実態を踏まえまして、その上に貿易をどうしていくか、こういう形になっております。これが機構でございますので、両者の間の境目と申しますものは、現実の問題となると、両方協力してやるという以外にないと思っております。われわれは常にそういう心がまえでやっております。
  14. 砂田重民

    砂田分科員 それでは、時間がありませんので、次のもう一つの問題は、先進国輸出意欲がたいへん向上してまいっている。この日本コンペティターに負けない対策について伺っておきたい。民間企業側輸出努力のことはさておきまして、政府側としては延べ払い期間の延長でありますとか、あるいは対象を拡大するとかいった輸入金融充実と申しますか、さらに輸出振興税制の拡張、輸出保険充実など、当然これはお考えになっておると思うのです。しかし、今日のように輸出環境がきびしくなってまいりますと、こういう一般的なこんなことだけでは効果がない。やはり市場別にもっときめのこまかい仕事政府自身がやって、民間企業努力というものを側面から援助していくという考え方がなければ、やはりコンペティターに負けてしまうのではないかと私は思うのです。たとえばいろいろなことが私は考えられると思う。民間企業輸出活動体制政府側面から援助できるということは当然しなければならない。また、各市場別情報を的確に正しく早く入手する、こういったインフォーメーションサービスでありますとか、適切な広告宣伝活動でありますとか、ふさわしい流通経路の選択でありますとか、対日輸入制限のある国とのたゆまざる交渉、また先方市場からいろいろなエンクワィアリー在外公館に入ると思うのですが、こういったものを迅速に日本側の業界に結びつけていく、本省在外公館一体となって、側面援助をこういった仕事でもっとしていくべきではないか。どうも日本でこういう仕事分担される外務省通産省両省とも、こういう点に欠けている点があるのではないか。ところが、こういう仕事は何といっても人がやることでありますから、やはりそういうスタッフを十分お持ちにならなければできない。このような仕事を十分できるだけのスタッフ本省在外公館を通じて持っているか。外務省はいまおいでいただきましたが、通産省外務省ではいまの陣容で十分だというふうにお考えですか。これはひとつ事務当局からお答えいただきたい。
  15. 高島節男

    高島政府委員 ただいま御指摘の二点、輸出振興インフォーメーションのキャッチということは非常に重要でございまして、最近めくら貿易時代を脱したとは申しましても、なお日本中小企業中心にいたしました企業輸出は、インフォーメーションの不足ということをひしひしとわれわれも感じさせられております。機構といたしましては、もちろん在外公館でやっていただけるのが中心でございますが、そのほかにきめのこまかい形といたしましてジェトロ機構がございまして、これで分担をいたして緻密なエンクワィアリーというものをしていくという方向に努力いたしております。予算も本年度相当額ふえまして、きめのこまかい実施面のほうにわれわれとしては注目していかなければならぬ時期に入ったと思います。  それから、いろいろ個別の問題といたしまして、エンクワイアリー等がまいりました場合、在外公館にまいります場合もございますし、ジェトロを通じての形になります場合もそれぞれございますが、受けましたところで責任を持ちまして、関係のところと連絡をいたしまして、個別のケースであっても決してうしろを見せずに、十分行き届くようなサービスを今後心がけてまいりたいと思います。
  16. 砂田重民

    砂田分科員 経済局長、途中でおいでをいただいたのですが、先ほど通商外交の一本化ということを大臣からも御答弁をいただいたんですけれども、経済局長のこの問題についてのお考え方をちょっと御説明願いたいと思います。
  17. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 お答えいたします。  御承知のように、一般的に経済外交合理化といいますか、外務省経済局経済協力局等各省との関係の調整問題につきましては、臨時行政調査会答申案が出ておりました。その後行政改革本部等といかなる改善策を講ずるかということについて話し合っておる段階でございます。われわれといたしましては、通産省のみならず、農林省大蔵省経済関係各省庁とできるだけ密接に事務連絡をいたしましてやっておるつもりでございますが、各省側におかれての一番大きな不満は、在外公館関係各省間のパイプの問題だと思います。それで臨時行政調査会あたりでも一番問題にいたしましたのが直接連絡という問題なんでございますが、本質は、この問題は、われわれの要するに事務連絡迅速化正確化ということに帰するかと思います。なるほど毎日数十本という電報公信のたぐいが在外公館から入ってきております。それを関係各省に漏れなくしかも迅速に連絡するということは、実は必ずしも容易なことではないのでございます。それでわれわれのほうで最近考え出しておりますのは、クーリエ便をたくさんふやしまして、日に二回ほど定期便、そのほかに大蔵省郵便ポストがございますので、そこに二回ずつといったようなことで、一日一回とか二回というのではなくて、刻々に入ってくる電報を至急関係各省に回すというようなこと、それから海外から入ってまいりますいろいろな経済情報をなるべく早く一般にも知らせるというような意味で、時事ファックスとかあるいは共同通信の網を通じまして、一般に流し得る材料は本省に入りましてから二時間ないし三時間後に関係の商社なりメーカーあるいは船会社等に通ずるように、いまやっておるわけでございます。できますれば、われわれの理想といたしましては、外務省関係各省間にエアシューターみたいなものをだんだんにつくっていきたい。本省の中ではエアシューターをつくって、それで非常に電信、公信等の発信、受信関係合理化されて、早まったと思います。  それからそういう事務連絡改善のほかに、できますれば関係各省とも局長レベルの会合を一週に一回なり二回持つように心がけております。毎日関係各課とそれこそ四、五カ所で、外務省会議室会議をやっておるわけであります。それでもまだ十分でないというケースも確かにあると見えますので、なるべく局長レベルの調整をはかっていきたいというふうに考えております。
  18. 砂田重民

    砂田分科員 どうもたいへん長くいろいろ御説明いただいたのですが、エアシューターにしても、ドイツのシーメンスの一番力の強いエアシューター輸入されたと思うのですが、それならばエアシューター外務省から通産省でも農林省でも送れるのじゃないか、改善すれば。そういったことも十分心がけてやっていただきたい。  ただ、私が一番お尋ねしたいのは、在外公館スタッフがいまのままでいいかどうかという点、私のほうからどれほどそれが貧弱なものだということを例をあげてお話ししておきたいと思います。ことしの世界通商問題の最重要課題一つ、それは南北問題、これはジュネーブで開かれるUNCTADを舞台にしていろいろ議論されると思います。このUNCTADという大事な会議に、たった一名の商務官通産省から出すか出さないかということで、去年の暮れから通産省外務省の間で話し合って、今日までまだその話がついてない。先ほど私が伺った、そういうスタッフが足りないじゃないかという点については、通産省のほうからもいまのままでは非常に不十分だという御説明があった。事務分担も、先ほど伺えば、国内産業体制というものは、これはもう外務省でなくて通産省がやるのだ、農産物については農林省がやるのだろうと思いますが、これだけの重大な意義を持ったUNCTAD会議でありますから、こういうところにはやはり私は外務なり通産から最優秀のスタッフをそろえて行くべきではないか、こういう点を十分ひとつ考えていただきたい。さらにもう一つ例を申し上げますならば、ロンドンにあります駐英日本大使館、ここの商務関係仕事というのは、日英間の通商の問題だけではなくて、EFTA貿易中心がやはりロンドンですね。日本EFTAとの貿易というものは非常に重要な問題であります。この対EFTA各国との貿易のためのインフォーメーションも、これはやはりロンドンで入手しなければならない。その仕事がある。さらに商品別協定事務局がほとんどロンドンにある。これだけの仕事をかかえている駐英大使館商務担当官がだれかといえば、公使一人、参事官一人、——どんな優秀な人がここに公使参事官でおられても、これだけの仕事をやっていくというのは無理なんです。こういう重要な地点には、やはりもっと事務担当人間をふやすべきじゃないかという気持ちが私は非常に強くするわけです。  もう時間があまりありませんが、こういったスタッフをこれからもっと充実させていこう、前向きにさしていこうというふうなお考えがはたしてあるかどうか。先ほど大臣補助金を出そうと思っても、ガットにひっかかる、税制考えてもガットにひっかかると、なるほどおっしゃるとおりでありますけれども、ガットにひっかかるからといって、日本国内で前もって初めから遠慮してしまうという考え方は私はとらないのです。ガットにひっかかりそうなことでも、思い切ってやってみたらいい。それだけ日本のこれからの輸出というものは大事なものでありますだけに、ひっかかりそうなことでも思い切ってやってみたらどうですか。ひっかかったときにはひっかかったでまたやめればいいので、そのくらい積極的に税制についても、補助金についてもお考えいただいていいのじゃないかと思うのです。国内の外に、各国におりますジェトロなども、先ほど高島局長から、ジェトロ機構ジェトロ人間を十分活用していくという御答弁をいただいたのですが、それだけジェトロ人たち仕事というものを重要視して考えておられるならば、ジェトロ職員公用旅券くらい出されていいのじゃないか。公用旅券をもらえないために、ジェトロ職員はたいへん苦労している。ジェトロ仕事を相当重要なものと通産省外務省もお考えになっているのですから、こういった旅券等についても、それだけの配慮を当然なさるべきじゃないか。ジェトロ人間配置にいたしましても、一人の人間一つジェトロに置いてみたって、これはもう経理から何からそういう平たん的な仕事にばかり時間をとられてしまって、実際に動いていない。先ほど駐英大使館のことを話しましたが、日本で申せば昼めしラーメン一ぱいとって十分で済ましてしまって、あとは仕事で働けるのだという感覚があるかもしれないけれども、相手のあることですから、相手ラーメン一ぱい昼めしを済ましてはくれない。時間的にも相当制約を受けながら、わずかの人間でこれだけたいへんな仕事をやっていかなければならない。こういうところにこそ私はもっと金を使われていいのではないか、こういうふうに考えるのですが、この在外公館スタッフ充実という点について、これは通産省事務当局のほうから、経済局長からも伺っておきます。
  19. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 在外公館経済担当スタッフは、いま約二百五十名でございます。そのうち関係各省から出ておりますのが百十七名でございます。私、公平に見まして、実は先進国はほぼこれでいいのではないか。むしろ後進国への配置が不十分ではないかというふうに考えております。なお、ジェトロは約百八十名でございますが、これも後進国のほうに足りないような気がいたします。
  20. 渡邊彌榮司

    渡邊政府委員 在外公館の定員の関係は、通産省としましても、従来充実努力をしてまいっております。ただいま経済局長指摘されましたように、いわゆる後進地域にもう少し重点を置いた人員の配置を展開していく必要は、全く経済局長意見と同意見でございます。ただ、先ほど来砂田先生から御指摘いただいておりますように、商品協定の関係でございますとか、それから南北問題、UNCTAD仕事がジュネーブを中心に展開してまいりますとかというような新しい事態の発展に即応しまして、やはりこれは相当フレキシブルに人員の問題も考えていく。むしろ商品協定とかUNCTAD関係等は、通産省だけがどうこういうことじゃございませんで、各省一致して相当の人員をそこに配置をして、いまから積極的に準備を進めておくということが、今後の南北問題を処理するためにぜひ必要であるという考えで、先ほど来外務省とも話し合いをしているわけでございます。  在外公館の現状は、砂田先生もよく御承知のように、事務的なスタッフが従来不足しております。そういう関係もございまして、外務省でも頭でっかちになって仕事がやりにくいというような点もございますので、在外公館の定員をふやすことにつきまして、率直に申し上げまして、相当慎重な態度がございます。これは私どももその辺はもう少し柔軟性を持った考えで、必要な人間はどんどんふやしていっていいのではないか。同時に、事務職員——電報でございますとか、いろいろな事務関係がございます。そういうことも各省協力しまして、大いに充実していくべきではないか。これからは、ただいままで海外に展開しました陣容ではやはり不十分であって、相当積極的にふやしていくべきである。特に後進地域に対しては充実しておくべきである。商品協定、南北問題等については、相当思い切って増員をしておくべきであるというふうに考えております。
  21. 砂田重民

    砂田分科員 私の時間がまいったようでありますから、これで私の質問を終わりますが、今日では経常収支の赤字が直ちに外貨バランスの赤字につながってしまう。そういう事態になりましたならば、これはもう景気回復の大型予算も、大型減税も、公債もみんなすっ飛んでしまうわけなんです。  大臣一つ最後に御要望をしておきますが、これほど日本の、去年の秋口から鈍くなっている輸出、これは私は大問題だと思いますが、未来永劫に輸出増進には努力を続けていかなければならないわが国経済宿命でございますが、もう少し十分の力を入れてお考えいただきたい。戦争前のように、大砲と兵隊さんのあと押しがあってやられている輸出ではないのでございまして、いろいろな環境が変わってくれば、変わったような政策を行なっていくべきだということを大臣も先ほどお話しになりましたが、河野農林大臣ロンドンに行ってサケかんの話をすれば下品だといって批判をされる。池田さんがフランスに行ってトランジスターのセールスマンだと言われて、これをあざ笑うような考え方があった。とんでもない話だと思うのです。私は、総理大臣を先頭にして、内閣の閣僚全員が、全員セールスマンになってこれからやっていかなければならない、そういう考え方をしていかなければならないのじゃないか、こう思いますので、何をやろうと思っても、ガットにひっかかるのだという考え方は捨てていただいて、輸出対策というのはいままでがこうなんだから、全部の予算が一七%くらい伸びた中で、四〇何%伸びたのだと言われても、これは初めの数字が小さ過ぎる。けたが一つ間違っておられるのじゃないか。政府予算大綱の七つの柱の中でのこれは一つであります。事実上そういうふうな重要な政策予算というものでなければならない、このように考えますので、総理が議長をつとめられる最高輸出会議というようなものもあるのですから、こういったものにもつと権威を持たして、強力にスタッフもそろえ、機構充実をさせて取り組んでいただきたい、このように思うのでありますが、最後にひとつもう一ぺん大臣から……。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 砂田さんのお話、ごもっともで、やはり経済外交といったら、これは貿易を拡大するということですから、出先の在外公館なども、昔のように何かセールスマン的なことを、品が悪いという考えは捨てなければならない。それは時代は変わっておるのですから、したがって出先の在外公館はもちろん、あるいはまた経済関係の、経済担当のスタッフを、在外公館の陣容をもっと強化していく、ことに低開発地域諸国に対しては、この開発輸入のようなことをやらなければならぬ。ただじっとおいて輸入は拡大するわけではない。コマーシャルベースで考えればそういうものは輸入して引き合わないことはわかり切っているわけです。そういうことから、よほど日本が第一次産品などをもっと買える方法はないかという苦心が伴わなければ、輸入は拡大するものではない。そういう点から見ると、やはり出先の在外公館の使命は昔とは違うのだ。この性根を入れかえなければいかぬ。また陣容も強化しなければいかぬ。そういうことで、ジェトロもこれは補完的な大きな意味があるわけですから、そういうことで、むろん民間努力もあります、官民一致して、そして貿易を拡大していく。ことに南北問題というのは、世界政治の中心課題ですから、南北問題の解決にも日本が寄与する、貿易も拡大する、こういう点でこれは新たなる決意を必要とする情勢だと思います。われわれもまた、そういう考えで今後貿易の拡大に対処してまいりたいと思います。
  23. 坂村吉正

    坂村主査代理 これにて砂田重民君の質疑は終了いたしました。  次に、角屋堅次郎君。
  24. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 私はまず最初に国際貿易関係の問題からお伺いをいたしたいと思います。  過般、二十五日だったと思いますが、最高輸出会議が開催をされまして、大体本年度の貿易の収支状況、あるいは運輸関係から貿易外収支についても触れられて、ことしの貿易関係についての概略の話をされたわけでございます。その概況をまず担当の者からお話を願いたいと思います。
  25. 高島節男

    高島政府委員 先般輸出会議の総合部会を開催いたしまして、先般の輸出会議できまりました目標の遂行状況を中心にいたしまして、現在の輸出中心にいたしまして、どんな段階にあるかということを検討いたしてみました。  御承知のように、今般の経済見通しできめております通関輸出は八十七億ドル四十年度としていくであろう、為替に直しまして八十五億ドル、一時はこれをはるかに突破するのではないかというような意見もございました。大体第一・四半期、第二・四半期ころは、日本輸出は、対前年度三〇%以上の伸びを示しております。ただ、第三・四半期になりますと、御承知のように、一一、二%くらいの伸び率になってまいって、伸び率の鈍化は争えない状況でした。ただ、十二月には、アクシデントといたしまして、港湾ストというような特殊な事情がございますので、これをいかように織り込んで計算するかむずかしゅうございますが、現在のわれわれの感じといたしましては、通関八十七億ドルの経済見通し程度のところに大体いくのではないだろうか、しかし、これをはるかに突破するとか余裕があるとか、そういう感じではないというのが、大体の、集まりました民間の方あるいは各委員の御意見のように見受けられました。要するに伸び率が鈍化するということは、アクシデントを除いてみても、争えない、こういうのが大体の結論だと思います。  輸入のほうでございますが、これは御承知のように、鉱工業生産が非常に停滞いたしておりましたので、現在の見通しといたしまして、為替ベースで六十九億五千万ドル、通関ベースでは八十二億五千万ドルというところで押えております。これはむしろ十分この中に入るであろうというのが大体の見通しでございまして、したがって、経済見通しの総合収支で二億ドルの黒というところが、資本取引という非常につかみにくい理論的な要因で動く分野はございますが、大体達成できるのではなかろうかというのが現在の事務当局の見通しでございます。
  26. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 引き続いて、これも事務当局からでけっこうでございますが、四十一年度の大体のプラン、これを……。
  27. 高島節男

    高島政府委員 四十一年度につきましては、まず輸出でございますが、先ほどの八十五億ドルの四十年度に対します輸出の伸びを九十四億ドルに見ております。これは世界貿易の情勢が、現在御承知のように九%程度に伸びておりますが、これが来年度どのくらいにいくかというところは、予測としていろいろ議論がございます。しかし、先ほど御議論がありましたように、後進国の問題、先進国の景気の息の続き方の問題等、いろいろございますので、まず、大体六%から七%ぐらいではないだろうか。それに日本輸出の伸びぐあいが、ことしは、先ほどの予測でまいりますと実に二・七%という大きな日本輸出の弾性値を見込んでおりましたが、来年度はその弾性値も、いろいろと諸条件が出てまいっておりますので、一・八程度に考えて出しました数字が、経済見通しにございます九十四億ドルの為替、通関で申しまして九十六億二千万ドル、総合の伸び率といたしましては一〇・六%——一一%弱くらいのところに輸出を見ております。  輸入は、来年度の鉱工業生産の伸び率を大体八%と見ておりまして、それと合わせまして輸入の計画を立てまして、その結果が、為替ベースで七十六億ドルということになっております。現在の景気のぐあいから見まして、八%伸びるということは相当なるむずかしさがあると思います。したがって、この輸入見積もりは相当手がたいものではあろうと思います。  なお、資本収支等を総合いたしまして非常にむずかしい要素を含んでおりますが、総合収支としましては四億ドル程度の黒字ということになっております点は、予算委員会経済企画庁から御説明がありましたとおりでございます。
  28. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 大臣にお伺いいたしたいのでありますが、経済の中期計画を破棄いたしまして、これから長期計画を練り直してつくる。大体、今日までの貿易の状況からして、これから五年、十年の貿易というものがどういう展望になるだろうか。最近数年の状況は、大臣も御承知のように、貿易収支の関係黒字傾向を示している。貿易外収支関係では赤字基調、資本収支の関係も必ずしもよくないというような状況なんですが、そういうふうな推移というものをここ三年、五年たどるのだろうか、あるいは将来の展望も含めて大体どういうふうに考えておられるか、基本的な見通しというものを大臣からお伺いしたい。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 過去十年の日本貿易輸出の伸びは一五・五%、世界輸入の趨勢は六・八ですから、日本が相当上回っている。四十一年度の輸出一〇・六%の伸び、計算して九十四億ドルの輸出の目標を立てておる。今後これがどういう趨勢をたどるかということは、世界経済事情日本国内経済事情等も勘案しながら考えなければなりませんから、なかなか予測はむずかしいけれども、少なくとも今後一〇%前後輸出は伸びていくものである、またいかさなければならぬということを、大きな見通しとしては考えておる次第であります。そのためには、国内において輸出の競争力、日本の産業が輸出ができるような国際競争力をつけなければならない。いろんなこちらの努力も必要でありますが、その程度の輸出は伸ばさなければ、日本経済発展のために支障になる、こう考えております。
  30. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 最近の輸出の比較的好調といいますか、そういう根本原因はどこにあると考えておられますか。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 一つにはやはり日本の設備投資というものが行き過ぎて、そのために日本経済に対してひずみを与えていますが、一面からいうと国際競争力をつけたことは事実であります。こういう思い切った設備投資というものがなければ、このひずみはできなかったかもしらぬけれども、貿易の拡大ということは今日のようなものは望めなかった。そういう点で基本的には日本の産業が国際競争力を持った。また不況という圧力もあったでしょう。しかし、根本としてはやはり国際競争力が強化された。また一方においては、欧米諸国経済成長——どこも縮小均衡のような形でなしに、アメリカもヨーロッパも相当成長型の経済発展を遂げてきた。それから海外の状態が日本輸出を伸ばすべき好条件にあった。また、低開発諸国もみな、政治的には独立したけれども、やはり経済的にはまだ自立ができない。国内建設というものに目を向けて、むろん外貨がないために支払い手段の点においていろいろ問題はありますけれども、日本のプラント類から消費財に至るまで買いたいという意欲が、低開発国に非常に旺盛であった。こういういろんな事情を持ちながらも、先進国も後進諸国もやはり日本貿易を拡大する客観的条件というものが存在したということも、輸出拡大の一つの背景をなしたものと考えております。   〔坂村主査代理退席、主査着席〕
  32. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 最近の輸出の比較的順調に伸びておる要因の中には、大臣もお話しのように、おそらく一つには世界貿易関係では比較的伸びておる反面、日本国内の不況からくる押し出し輸出という傾向が、一つどうしても出てくる。もう一つは、大臣もおっしゃったように、国際競争力が日本経済そのものについてきたということだろうと思います。  そこで第二の不況による押し出し輸出の問題は、これは通産省でも、いわゆる輸出採算に関するアンケートというものをやっておるわけですね。その内容を見てみると、前年度に比べて採算の関係でどうであるとか、あるいは実際は採算割れであるとかいうふうな状況が、現実に出ておるわけですね。そういうアンケートの結果を一番新しいので御説明願いたいと思います。
  33. 高島節男

    高島政府委員 アンケートとしましてわれわれがやっておりますのは、実は自信をもって外へ御発表し得るほどの結果になりませんでしたことと、過去のデータがやや古くて、三十九年の伸びを中心にいたしましたデータでございます。きょうちょっと持ってまいりませんでしたが、大体の輪郭を申しますと、三十九年度の姿において輸出が伸びましたことは、原因は先ほど大臣からお答えがありましたように、競争力と市場条件と、それから当時はまださまで圧力がかかっていなかったと思いますが、国内での有利な売れ口が比較的少ないという、そういう感じの答えが出ておりますが、採算はどうかということになりました場合に、大部分のものが、結果的に申しますと、一応直接費を償って出しておるという結果が出ております。間接費の問題になりますと、これは割り掛けの問題等、きわめて計算上いろいろな考え方で要因が動いてまいる部面があるようでございますが、調査いたしましたものが比較的大企業の大きいところ、しかも当該業種の中での輸出比率の大きいところを中心に調査いたしましたので、調査いたしました範囲においては、間接費も大体においてペイした、一応健全な姿の輸出はしているということに結果はなっております。しかし、これはあくまでも全体のうちのおそらく三割見当の輸出の姿、しかも三十九年度という過去、相当まだ前の時期でとらえた調査でございますので、私どもとして現在の情勢をこれで推論することは、非常に誤りを犯すのではないかという感じがあります。
  34. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 いまの三十九年の結果では、アンケート調査が黒字というのは四二%、赤字が一二%、損益なしというのが四六%、私の承知しておる資料ではこういうふうになっておる。しかも黒字幅が小さくなったというのが五三・四%ということになっておるし、赤字の点では従来よりも赤字が大きくなったというのが五二・九%、しかも国内の採算との比較を見てみると、よかったというのが九%で、大体同じというのが三三%で、悪くなったというのが五八%と、いずれにしても在庫との関係等から条件が悪くても海外へ出しているというような結果が、全般的に強まっているということは事実だろうと思われます。そういう形でとにかく輸出が相当に伸びておる。したがって、内容的に見ると、やはり問題がある。しかも最近鉄鋼の関係、機械の関係、あるいは造船の関係、いろいろ輸出増加の貢献度の関係で大きな比重を占めておる、そういうふうな関係のものを見てみても、鉄鋼の関係では、いまのところは国際競争力としては非常な優位にある。しかし、アメリカもこんな状態ではいかぬということであろうし、ヨーロッパの先進諸国でも、やはり技術開発をしなければならぬというふうな情勢等から見て、これらの将来の問題についても、また日本自身としても考えていかなければならぬ問題があるだろう。造船の問題でも、やはり御承知のような世界第一位という優位を誇っておりますけれども、先進諸国との間ではいろいろ波紋があるわけです。そういうふうに見てくると、内容的には、これからの貿易振興という立場で見ると、経済の長期計画の中では十分それに即応した体制整備というものがなければ、いま言った貿易関係黒字、それが貿易外収支の赤字やあるいは資本収支の赤字というものをカバーするというのがここしばらく続くような感じがするのですけれども、そういう場合に、そういう条件でいけるのかどうかという貿易収支の関係においての危険要素、あるいは阻害要因というものが、私は十分あるのだろうと思うのです。そういう点はどうなんですか。
  35. 三木武夫

    三木国務大臣 やはりわれわれもそういう心配をしておるわけであります。それは各国とも技術開発、設備の近代化等によって急速に競争力がつきつつある。そういうことで、日本自身としても、だから今後継続的に輸出を伸ばしていくためには、企業の体質を競争力をつけるような見地から改善し、また輸出貿易秩序の問題、企業自体の体質の問題、この問題というものはわれわれがゆるがせにすることのできない大問題だ。ただ輸出は伸びるのだという、そういう趨勢の上にあぐらをかくことは許されない。それとまた一方においては、低開発国に対しての輸入促進の努力、こういう総合的な今後の貿易拡大の努力が伴わなければ、なかなか今後の輸出を伸ばしていくということは容易ではないという御意見は、私も同様に考えておる次第であります。
  36. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 そこで、わが国貿易のシェアの関係で、後進諸国あるいは先進諸国、また地帯、地域別に見ても、将来の変化はどういうふうになるだろうということは、これは通産省としては十分検討をしていくべき問題でありますけれども、この際日本として、いわゆる後進国開発あるいは後進国援助という問題を考える場合の基本的な考え方というのはどこにあるのか。国際的に見ても、経済の非常におくれておる後進国をどういうふうにレベルアップするかという場合に、第一次産業の関係に軽工業程度のものを加えていくという考え方もあれば、先進諸国が非常に進んでおるのに後進国をいつまでも低位に置くべきでない。したがって、やはり軽工業からさらに重工業まで含めたそういう長期展望の中で、お互いの間に先進国といい後進国といい、極端な差をつけるべきでないというふうな積極的な意見もあるわけです。それは時間を要する問題でありますけれども、日本が東南アジアあるいはアフリカ、あるいは南アメリカ等、いろいろ見てみると、東南アジアでも、これは旧態依然たる農業国のような姿もあれば、軽工業を相当導入してきている国もあるし、また一部には重化学工業を導入してきているような国もある。いろいろ内容的には違っておるが、要するに、後進国経済開発あるいは経済援助というものを考える場合に、どういうレベルアップというものを日本としては基本的に考えて、そうしてそういうものに対処するのか、こういう点はいかがですか。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 これは国際的に、いま御指摘のように、世界の水準化といいますか、あんまり極端に低開発国と先進諸国との差が拡大していくことは、世界の平和あるいは繁栄という見地からいっても、世界政治の最大の課題になっておる。そのために、あらゆる国際会議などを通じて、世界国際会議の底流の中には、南北というものが一番大きく横たわっているわけです。これを中心にして今日の世界政治が大きく動いておると言ってもいいくらいであります。日本に対しても、国民所得の一%は低開発諸国のために出してもらいたいという国際的要請は、非常に強いわけであります。日本もこれに同意を与えておる。直ちにではないが、二、三年のうちには国民所得の一%程度は低開発諸国の援助に出そうという約束もしておるわけであります。まだ〇・四、五%くらいのものです。そこまでいっていませんが、これは二、三年の間にはそこに持っていかなければならぬ。そういうことで、これは日本だけでもいきませんから、先進諸国が協力しなければならぬが、第一番にはやはり農業の開発、これは低開発諸国の基本的な問題だ。これに関連する産業の開発。そうでないと、農業国が食糧を輸入しなければならぬような状態では、資本の蓄積もできるものではない。したがって、農業の開発というものは、じみだけれども、日本などもそういう面で寄与するという面が非常に多いと私は思う。その次には軽工業。いきなり重化学工業といっても、日本の産業発展の歴史を振り返ってみても、それは直ちにそういう条件は整うわけでないのですから、軽工業。そしてまたやがて重化学工業。こういう世界産業の発展の過程、これはやはり低開発諸国が、時代が変わったからいきなり農業をおっぽり出して重化学工業にということはできませんから、日本は、じみちなことであっても、基礎から低開発国の開発に協力するという、そのじみちさが日本の対外経済協力には要る、私はこう考えております。
  38. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 この際、大臣に国務大臣として伺いたいが、インドの食糧危機が非常に深刻になっている。それに対して先進諸国の間では、何とか当面の危機打開のために協力してやらなければならぬ。閣議の中でも、インドの当面の経済危機に対して手を打つということでいろいろ御検討されておるというふうに承っておるわけですが、インドの場合、食糧危機というのは、各州別にも食糧の相互間の搬出というのが制約があったり、いろいろ内部的にも報道等から見ると問題はあるが、それは別として、インドの当面の食糧の非常に深刻な危機に対して、日本政府としては、アジアの一国でもあるし、大国でもあるし、どういうふうにされるという検討を進めておられるか。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 インドの食糧飢饉というものは、非常に深刻なものがある。政府としても当然にこれに対して援助の手を差し伸べようという方針のもとに、具体的な点について検討を加えておる段階でございます。
  40. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 内容的にはついてはどうですか、新聞ではだいぶ報道されておるが……。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 まだ閣議できめる段階ではありませんけれども、早急に政府として閣議でもきめまして、援助の手を差し伸べようというところで、いま具体的に検討を加えておる最中でございます。
  42. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 後進国経済開発あるいは経済協力という問題が一方にございまして、同時にこの問題は、戦前戦後の独立国の多数出てまいります過程で、経済的な問題、政治的な問題がからんで、最近でもあちこちにそういう諸国の間でクーデター問題が起こって、政情必ずしも安定せざる傾向がある。これは日本貿易振興の立場から見てもなかなか苦労が多いことだろうと思いますけれども、そういう問題等に対して、日本として力相応の経済協力をしていく。大臣も言われたようにじみちな方向でもけっこうでありますし、同時にまた、日本自体として経済がたいへんな時期なんだから、うちをほっておいてよそをというにはいささか程度問題があるということもあろうと思いますけれども、しかし、いずれにしても、一九六四年の国連貿易開発会議では、一九七〇年までに国民所得の一%というものを後進国の開発のために出していこうじゃないかということになっている。そこで、日本政府としても、中期経済計画の中では、一九六八年の達成目標として〇・九二というところに行くのだ、こう言っておったわけですね。力相応の協力というものが、平和共存体制の確立の点からも非常に重要であるし、それは積極的に特にアジア方面についてはやるべきである、私はこう思うわけですが、反面、後進国の問題と、貿易関係では共産圏貿易の問題に対する日本の基本的な態度をどうするか。共産圏貿易といっても、これは最近ソ連との関係においては、かつては三木さんもソ連に渡られたわけですけれども、椎名さんも行かれたりして、航空協定ができたり、いろいろ友好関係が促進されておる。三月一日から開かれる日ソの漁業交渉はどうなるか、私は非常に注目をしておるのですけれども、それは別として、問題は、このアジアの一角に大きく位置しておる中国との貿易関係です。これは過般、予算の総括質問のときでも言ったわけですけれども、お互いの食べる米について、ことしは中国から三十万トン——百万トンのうちの約三分の一を入れよう。あるいは肥料についても商談がととのっていくとか、その他、資料をいただいておりますが、中国貿易も往復で大体三億ドル前後というふうな形で進んでおるわけです。ただしかし、これからの経済外交あるいは貿易の振興ということを考える場合に、共産圏貿易についてもさらに前向きに拡大をしていかなければいかぬということは事実だと思うのです。そういう点で、しばしば国会で議論されてまいりました対中国との貿易における日本政府の非常にちゅうちょした態度、吉田書簡問題とかいろいろな点でなかなか正常に前進をしない。特に最近、私どもの党の関係で中国から代表団を受け入れよう。これはわれわれのほうからも行く、また向こうのほうからも受け入れようということになっておって、本年度こちらへ参ってよろしいというふうに話が伝わる。そうしますと、これは新聞報道でありますけれども、外務省では、なるべくこういう入国に対してはシビアーな態度でいこうというふうなことが伝えられておる。これは欧米の先進諸国でも、経済問題は経済問題として割り切る態度でやっておる。日本自身も基本的にはそういうことだろうと思うのですけれども、これから中国貿易についても、できるだけ条件を整備しながらさらに双方に拡大していこうじゃないかという機運のときに、しかもああいう国柄ですから、日本のように野党もあれば与党もあり、いわゆる国内の政党間の平和共存体制と違って、一党が実権を握っておるところでは、それを受け入れる、受け入れないの問題は、直ちに中国貿易との関係にそれが波及するという基本的な問題も慎重に考えなければいかぬ。むしろこれは国務大臣として、大臣は日中間の貿易問題についでは今後とも暗礁に乗り上げることがないように、スムーズに進めるという立場から、積極的に閣内においても進言をしてもらう必要があるのではないか。私どもは、最近の外務省の、椎名さんの国連警察軍の問題、いろんな関係できわめて先走ったあれを見ておると、共産圏に対しての何かかまえた姿勢というものを感じさせられる。むしろその点は、通産大臣あたりが非常に革新的だというふうにいわれておるのですけれども、事実そうだろうと思うのですが、革新的とか革新的でないということは別にして、アジア外交の中では無視できない中国問題について、今度の訪日問題で再び問題を起こすという事態は絶対に避けなければならぬ、こう思うわけであります。共産圏貿易、特に中国貿易の今後の問題、いま言った代表団をわれわれ受け入れようという、相互間の国民外交というものは、やはり必要なわけです。与党の諸君も中国へ行かれたり、あるいは北鮮へ行かれたり、あるいはまたソ連に行かれたり、政府のいわば補佐的な役割りでやっておられるだろうと思いますけれども、そういうことはやられるわけです。事実、そういう国際舞台に出してくるということが、平和共存体制の前進のためにも、また中国のためにも私は必要だと思う。だから、そういう点であまり日本政府としてもかたくなな態度をとらないことがいいのじゃないか。日本に来た場合に、政治的ないろいろな発言とかという点で問題になることが、あるいは政府自民党から見ればあるかもしれないけれども、そういうものを重ねていく過程の中で、私は好ましい状態というものが期待をされるのじゃないかと思う。あまり一事が万事に神経質にならないで、そういう大きな気持ちが必要なんじゃないか。いかがですか。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、世界史の一つの流れというものを見た場合、平和共存以外に人類が生きていく方向はない、その道がいかにいろいろ困難はあっても、それをお互いに追求する以外にないのじゃないかというのが私の基本的な考え方です。そのためには、やはりお互いの主権あるいは政治体制は、気に入らなくても、向こうがいいと言ってそれをやっておる以上、それは尊重するということでなければならぬ。そのかわりに、お互いに内政には干渉しないという原則が必要だと思うのです。そういう意味で、日中関係なども、基礎になるものはやはり人間の往来、貿易ということでしょうけれども、いま直ちに中共を承認するということはできないことはおわかりのとおり。そうなってくると、承認をしていないときにおいても、人間の往来、貿易の拡大、そういうことを考えていくことは、平和共存の基礎になることは事実です。しかし、お互いにいま言った主権の尊重とか、内政に対する不干渉、これはやはり日本だけでなしに、中国側もそのことをきびしく自覚しなければいかぬということでございます。だから、いま日本が神経質になり過ぎておると言ったけれども、中共の態度にもわれわれからいえば自重しなければならぬ面があるのではないか。それはなぜかといえば、みなお互いに立場は違うから、日本はいまの日本のシステムがいいと思ってやっておるのに、これに対して、中共から日本に来た人が、日本人が承認してやっておる現在の政治経済機構に対して非常にきびしい批判を加えるということは、内政に干渉するのではないかという疑いを持たす。われわれもまた北京に行って、中京の国民が承認しておる政治経済体制に対して、これを罵倒するような言は日本人もしてはならぬことだと私は思っております。お互いに国交が回復して、正常な状態ならいいのです。国交も回復しない、いろいろな障害の中で人間の往来や貿易をやろうとするならば、日本ばかりでなしに、中共側も、その困難の中において両国の関係改善していこうというならば、言動に対して慎重であるべきである。こういうことがえてして両方の関係を円滑にしない原因をつくるのだ。これは単に日本ばかりが改善しようと思ってもだめなんで、中共側もそういうふうな気持ちになって、両国がいま言ったようなお互いの主権を尊重して、お互いの内政に干渉はしない、この厳格な一つのプリンシプルを認め合ってやるほかない、双方ともに。日本だけが悪い、中共が悪いというのではなしに、これは双方の責任である。この自覚の上に立たないと、なかなか改善できない、かように考えております。中共から入国することについては、私もまだ何にも聞いていない。新聞紙で読んだ程度であります。中共側は、そういう行こうという希望は何も言ったことはないのだという否定の記事も出ておるような状態でありますから、これはこの際に私の意見は差し控えておきます。
  44. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 先ほども言ったように、人事の往来ということは、これは与党の諸君も積極的に行かれておるわけですし、また向こうからの者も受け入れるということで、話が正式に出てきた場合には、貿易関係から見ても大臣としてはそれを受け入れる方向でぜひ努力をしてもらいたい。最近の外務省外交のあり方は、欧米派と称せられる者が圧倒的多数を占めている。もっとバランスをとった外交をやるという考え方が、ある意味では非常に後退をしているのじゃないかというふうに感じられるわけです。そういう点では、われわれのほうで正式に政府に対して要請をした場合には、ぜひひとつ大臣としても善処をしてもらいたいというふうに思う。  先ほど、砂田君のほうで経済外交の陣容の整備というふうなことが言われておったのは、しごく当然のことだと思うのです。われわれ海外に行ってみて、たとえば経済外交の要路にあるべき通産省関係から外務省に行っている人々、あるいは農林省から外務省に行っている人々、さらに通産省でいえばジエトロあるいはアジア経済研究所とか、いろいろそれなりにあるわけでありますけれども、これは事務当局に聞きたいのですが、ジエトロの在外にいる人員、あるいは外務省通産省から行っている人員、これは概数どのくらいですか。なおまだ、貿易関係の商社で在外にいる人数、そういうものも、概数でけっこうでありますから……。
  45. 渡邊彌榮司

    渡邊政府委員 通産省から在外公館にただいま出向しております数は、四十五名でございます。ジェトロ関係で外国に出ております数字は、ただいまここに正確な数字を持っておりませんが、概数で四十名前後でございます。
  46. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 あとのほうのもう一つ質問、商社関係の長期滞在者はどうですか。
  47. 渡邊彌榮司

    渡邊政府委員 商社の関係の長期滞在の数字、ただいま持っておりませんが、ビザの関係その他もございますが、長期出張の形で出ております者と、二年三年の長期滞在の者、両方ございます。ただいまここにはっきりした数字は持っておりませんので、後ほどお知らせいたします。
  48. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 私は、このジエトロの問題についても、時間がありませんから深く触れようと思いませんが、かつて内閣委員会で通商産業省の設置法の一部改正の議論をしたときにも少し申し上げたのですけれども、国内におるジエトロの要員、外国におるジエトロの要員というものを見た場合に、これは中小企業貿易相談とか、いろいろなことで府県にもおられるわけですね。むしろそれは通産省プロパーのところでできるだけカバーをして、あるいは主体的にやって、そして外国関係のほうにできるだけやはりウエートを置くという姿勢が、基本的に必要なんじゃないか、私はこういうことを考えておるわけなんです。と同時に、東南アジア関係の問題では、ジェトロ関係とアジア経済研究所とのタイアップというものが緊密にいっておるかどうかというふうな問題も、十分やはり事態に即応しながらやっていく必要がある、こういうふうに思っておるわけです。  私はこの機会に特に言いたいのは、経済外交を進めようということになれば、在外公館なりあるいはジェトロなりあるいはアジ研なりあるいはその他民間の商社でもけっこうですけれども、相当数の人が外国に行っておられる。こういう人が進学その他いろいろな関係で内地に家族や、場合によっては自分の子供だけを置かなければならない。一体そういう点について、外務省、あるいは通産省農林省、労働省、各省から行っていますけれども、安心して国際舞台で活躍できる十分な体制をつくっておるかどうかということを真剣に考える必要があるのじゃないか。あちらで苦労をして領事館やあるいは総領事館や大使館等で日本語学校を開いたりして、なるべく日本語を習わせるとかいろいろやっておりますが、私、昨年列国議会同盟で海外に行ったときに、外務省の高官のむすこが受験その他のときに自殺したというようなことをちらっと聞いたのですけれども、それはそれとして、とにかく本腰を入れて後顧の憂いなしに外国で十分腕をふるえる体制というのは、これは通産省だけの問題じゃありませんけれども、経済外交ということを言っても、人がやるわけですから、それらの人がそういうことを落ちついてできる体制というものを具体的にどうやるのか。私は、そういう意味では外務省各省関係の在外に行っておる人々に対して、あるいは一部民間の人でも、民間では相当力のある者は自力でやるかもしれませんが、政府としてそういう者の実態を精査して、たとえば東京に学生会館を置き、そこへそういう者の全体をまとめて、そういう者が孤独感に襲われずに常に出て行けるようなことも考えていくことが必要ではないかということをつくづく思ってきたのですけれども、これはいかがです。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 私も、角屋さんの言われるようなことを必要だと考えております。外務省では小規模なそういう目的のようなものがあるようですけれども、しかし、これは単に外務省だけの問題でもございませんから、何か四十二年度の予算では考えてみたいと思います。そうでないと、子供の教育などというのは大問題ですからね、そういうことで海外における活動が制約されるということは、国のためにも不利益になると思いますから、考えてみたいと思います。
  50. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 これは通産省だけの問題ではなしに、政府として実態の調査がぜひ必要だと思うのです。どの程度の規模が必要なのかということは、やはり検討が必要だと思うのですが、そういう点で後顧の憂いのないような形でやることが、即経済外交の成果をあげる一つの要素になると、私はつくづく海外を回ってそういうことを痛感してきました。ぜひこれは四十二年度の段階でまずスタートをするというふうなことを積極的に考えてもらいたいと思う。  それから今度貿易大学校設立調査の金が三百万円程度出ましたが、これはおそらく経済外交の要員について、ひとつここで教育をやろう、そうしてお互いにやはり一つのところで勉学をともにするということになりますと、海外に出て行ってからも、日本一つの大きな欠点である過当競争だとか、やれ何だとかいう点がその面からも緩和される、あるいは人材の確保もできるというふうなことで、貿易大学の設立ということを考えられたのかと思うのですけれども、この構想の大体の骨子は、どういうことなんですか。
  51. 渡邊彌榮司

    渡邊政府委員 貿易大学校につきましては、今度の予算で調査費を計上させていただきました。これから具体的な内容を掘り下げてまいります段階にございますが、大きい構想としましては、ただいま御指摘のように、今後国際経済関係を進めてまいりますのには、相当次元の高いフレームを必要とする段階に入ってまいりましたので、大学を卒業しました程度のところを二年ほど貿易大学校で訓練いたしまして、語学はもちろんでございますが、各地域の地域学と申しますか、アフリカなり東南アジアなり中南米なりの歴史から、経済、民族、風俗などの点につきましても相当突っ込んだ勉強をいたしまして、その地域をよく理解した上で進出をさせたい。また、貿易についての貿易経済協力等につきましての実務のことも勉強させたいということが一つでございます。この内容は、各大学の専門の方、貿易関係の実務の経験の方等のいろんな御意見を伺いまして、ただいま具体案を検討しております。  それからもう一つのねらいは、高校卒業程度の優秀な学生で、将来海外に大いに進出をしていきたい、貿易だけでございませんで、農業、経済の協力でございますとか、あるいは医療、病院関係、教育関係で、発展途上国で大いに仕事をしてみたい、ただ家庭の事情経済的な事情等もありまして、なかなか上の学校に行きにくいというのがございます。そういう農山漁村の、経済的には比較的恵まれないけれども、素質が非常にあり、大いに情熱を持っておるというような青年諸君を貿易大学で、短期でございますが、語学その他、いまの地域学等の勉強をしてもらいまして、そして海外に進出してもらうというようなことを考えたらどうか。いまそういう大きくは二つの柱で、その内容の掘り下げをやっておる段階でございます。
  52. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 この貿易大学校の点は、いろいろまたさらに検討されていくのだろう。基本的には私はたいへんけっこうなことだと思う。何と言っても人材の養成と、そしてまたそういう機関を通じてそれぞれ派遣される現地あるいはまた事業遂行のための能力というものを付与して、そして一人でもって数人の能力を発揮できるような、そういう形にまで持っていくということ、これはたいへんけっこうなことだと思う。私も満州におる時分に、大同学院というものがあって、そういうところで大学にあがったり専門学校にあがったりした者を一緒にやって、そしてそれからそれぞれのところへ出していくという経験を経たのですけれども、あれはあれでやはり非常にいいと思うのですね。そういう点では、むしろ一回出ていったらそれで終わりというのじゃなしに、中級あるいは高級になってきたらもう一回やるという、満州の場合では一部、二部と言っていたけれども、単に一回そういうふうにろ過してそれで出すというのじゃなしに、さらに指導層についてはもう一度やるようなことも考えて、そしていずれにしても経済外交のエキスパートをつくっていくというねらいが、私は非常に大切じゃないかというふうに思うので、この点は十分効果のあがるように検討されて、なるべく早急に進めてもらいたいというふうに思うのです。  貿易関係の問題で過般予算の総括質問でもちょっと触れたのですけれども、私は農政に力点を置いておる立場はありますけれども、一次産品輸入というのが非常に増大をしてきておる。これは日本国内の農業、漁業、林業の体制がすこやかにいっているならいいのですけれども、そのことのゆえに、またそのことばかりじゃないのですけれども、非常に大きな問題を持ってきているということがあるわけです。ここで通産省農林省考えてもらいたいのは、一次産品輸入というものの取り扱い、これをどういう体制でやるべきなのか。特に一次産品についてと申しますのは、米あるいは麦というようなものは食管がございます。あるいは畜産物については畜産振興事業団というワンクッションがある。しかし、たとえば最近非常にふえてきておる林業関係の外材、これはストレートであります。あるいは漁業関係もストレートでやる。ひどいのになると、韓国の漁船が日本国内に来て、水揚げ地で国内の者と同時にぶつかるというようなことで、国内の者に打撃を与えるというようなことが指摘されております。これは魚の輸入なんというものは、アメリカでもなまのままで入ってくることを許しておるわけです。ヨーロッパの先進諸国でも多くはそうです。そういうふうな点等は、やはり不足分を入れてくるということは全面的に否定するつもりはありませんが、入れ方の問題は十分考える必要があると思います。ことに今日、とうとうとしてふえてきておる問題については、やはり国内の一次産業の力をつけるということも必要でありますし、また入ってきたものの影響というものをなるべく大きくしないという形の配慮も必要なわけです。そういう点で通産省ベースでは一次産品輸入のワンクッションをどういうふうに置くかということは、分科会で議論した中では、たとえば外材については国有林野特別会計というものがあるので、ここでワンクッションを置いたらどうかというような意見を述べられた方もありますが、いずれにしても一次産品輸入について、そういうワンクッションが必要でないものもありましょうけれども、実際にそういうワンクッションはやはり置いていかなければならないというものも当然考えていく必要がある。これは通産省オンリーの問題ではなくて、その点については農林省通産省十分協議してやらなければならない問題でありますが、従来、通産省としては検討されたことがあるわけですか。あるいはこれは検討しなくとも、今後の問題としては、少なくとも五年、十年の展望の中では非常に重要な問題の一つである。ジェトロに三億出して一次産品輸入促進の金をということだけが問題ではなしに、やはりいま言った関係の問題は慎重に考えていく必要があると思います。と同時に、アメリカとか東南アジア、アフリカ、ヨーロッパ、いろいろなところへ日本から出ておる輸出、あるいは外国から入ってきておる輸入、こういう関係では、むしろアメリカからの一次産品輸入というものが相当量を占めておる。これはやはり他の後進諸国の経済協力あるいは開発等と見合って、できるだけそういうものに切りかえていくということになれば、国内に対する輸入量の増大でなくして後進国経済協力ができるという面もあるわけであって、過般片貿易是正と関連して通産省からも出かけられたわけでありますが、そういうようなことも一面では必要がある。同時に、日本国内に入れる場合の必要なものについてのワンクッションをどういうふうにすべきかということは緊急の問題だと思いますが、いかがですか。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、低開発国からの一次産品輸入をふやしてもらいたいという国際的な要請があり、日本の物価問題の見地もあり、また国内における一次産業の保護という面もあって、これはいずれにしても海外から一次産品輸入する場合の体制あるいはまた数量などは、調整を必要とすると思います。しかし、そのためには、やはり日本自身においても、第一次産業の構造の高度化という努力もしなければならぬし、また輸入などについても、農水産物というものはかなり自由化されない分として残っておるわけであります。いつまでもこれを押えていくというのではなしに、自由化に向かっての国内体制整備というものも必要でしょう。こういうことでいろいろな複雑な問題がありますが、輸入する場合には、輸出入取引法によって輸入組合というものをつくって、そしてそれをクッションを置いてやろうというのが通産省の方針で、そういうことで指導していきたい。  それからアメリカからの第一次産品輸入を低開発国に振り向けられないかということは、そういう方向で今後やっていくことは非常に好ましいと思います。現在のところ、アメリカの第一次産品は価格、品質、供給の安定性からいって非常に低開発国のものよりも条件がいいわけですが、しかし、そういうことがだんだんと振りかえられていけば、日本国内産業に対しての打撃も少なくて済むわけですから、これは開発輸入といいますか、ただじっとしておけば、アメリカからの輸入を低開発国に振り向けることは、なかなかむずかしいと思います。日本がそれを開発輸入するというくらいの努力を伴って、だんだんとそういうことに持っていくことができるならば、日本国内産業との摩擦が少なくて済む。そういう努力を今後やっていきたいと考えております。
  54. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 私は、一次産品輸入問題に対する国内の必要な輸入についての受け入れのクッションをどうするかというような問題、いまの大臣のような考え方は非常に不満です。これは最近のマスコミが、林業にしてもあるいは漁業にしても端的に指摘をしておる。非常な勢いで輸入が増大しておる。そういう方向でよろしいという政府考え方なら論はまた別でありますけれども、そうでなくて、やはり国内の一次産業については日本経済の中における正しい位置づけをきっちりしなければならない、そういう主体的な条件に立って一次産品輸入の問題に当面どういう対処をするかということは、これは重大な問題の一つだと思うのです。すべてについて網を張る必要はないでしょう。しかし、現行存在しておる重要な問題について、実際にそれをどう是正をしていくかというふうな問題については、十分農林、通産の間できめこまかく検討してもらいたいと思うのです。これは非常に重要な問題です。いかがですか。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 農林省との関係も多い物資があるわけです。これは農林、通産で十分に検討しながら、とにかく日本の産業に非常な打撃を与えるということは、これは慎まなければなりませんので、国内産業との調整をはかりつつ、第一次産品輸入を拡大していくということの方向で努力をしたいと思っております。
  56. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 時間の関係もありますので、少しく予定をしておりましたが、最後に公害関係国内問題に入って、簡単にお尋ねをいたしたいと思います。  通産省予算を見てみますと、これは、私は昨年公害対策特別委員会の理事をやって公害問題に取っ組んでまいりましたが、その当時からも指摘をしておったのですけれども、たとえば新産都市とかあるいは後進地域の工業開発とか、いろんな点については事前に公害関係の調査をやる。たいへんけっこうなことなんですけれども、そのために五千百二十万円の新年度予算を組まれる。それは公害その他の問題について未然に防止をするための必要な科学的事前調査を実施をする。あるいはその前には新規の工業地域についての立地条件の調査というものを、新産都市とかあるいは工業整備特別地域についてやっていく。これはたいへんけっこうなことだと思うのですが、四日市その他の例からいっても、地方自治体の諸君に聞いてみたりしますと、まさかあんなひどい状態になるとは夢にも思わなかったということをよく言われる。日本の場合は、そういういわば悪い教訓が全国で幾つかあるわけですから、そういうことのないように、新しい地域においては十分事前の科学的調査が必要だと思うのです。  それと同時に、現行の公害の非常に問題のあるところ、こういうところに対して十分な体制をつくっていくためには、かねてから議論されておりますように、政府としてもこの際すみやかに公害基本法というものをはっきりつくって、単に生産第一主義でなくて、住民福祉あるいは経済のバランスある発展という立場から、政治の姿勢としても公害に対してはやはりきっちりした政治責任あるいは法制整備というものが必要な段階に来ておる。また、これから経済の地域開発をどんどんやっていかなければならぬという状況の中でのこういう問題については、じんぜん日を送るという問題ではないのじゃないかと思うのでありまして、これは厚生省のほうでは審議会をつくっていろいろ検討してということですけれども、経済企画庁、それから厚生、通産、農林というようなところは、公害問題では大体柱になるわけですね。特に通産関係では、産業の指導という面からいくと密接不離の関係にあるわけですから、公害基本法の制定問題については真剣に取っ組んで、すみやかな機会に政府自身もやはりそういう態度を明らかにする必要があるのではないか。われわれは、昨年ずっと全国各地の公害の地域を見て、つくづくそういうことを痛感するわけでありますけれども、公害基本法を一体いつ制定するということで検討されておられるか。さらに、いま言った新しく開発をしていこうというところに対する事前の調査というものは、どの程度に通産省としては進めておるか。これはあとの問題は事務局段階でけっこうです。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 御指摘のように、公害というのは大問題であります。生産第一主義といったところで、人間をそこなうようなことがあれば、生産といったって主客転倒になるわけであります。そういう意味で、公害の防止というものは大問題であります。いま各種の公害防止に関する法律はありますけれども、これはばらばらになっておるから、これを一本にして基本法的なものをつくることがいいかどうかということは、通産省だけでもございませんから、ただいま関係各省の間で検討を加えておる段階でございます。できるだけすみやかに結論を出したいと考えております。
  58. 中川理一郎

    ○中川説明員 新しい工業地帯をつくる場合、公害の予防ということをどの程度考えておるかという御質問だと思います。昭和四十年度におきまして、公害の総合事前調査ということで、三地域につきまして大気関係の事前調査を行ないました。一地域につきまして河川の排水関係の調査をいたしました。四十一年度では、いま御審議中の予算案の中で、大気関係は四地域、河川関係で一河川、海域では一海域、新しく力を入れるということで、かなり大幅に拡充をしたのでございます。御承知のように、既設工業地帯における公害現象というものを少なくしていきますためには、実はたいへんな苦労をしていまやっておるわけでございます。これの能率の悪さに比べますと、新しい工業地帯におきまして、計画的な調査を行ないまして、その結論に基づきまして立地を考えていきますならば、いま既設工業地帯に起こっておりますような形での公害問題というものは、いまの技術をもっていたしましても、ほとんど大部分解決できるというふうに考えております。  大気関係につきましては、御承知だと思いますけれども、拡散希釈の効果というものを考えまして、現地で大がかりな調査を、ヘリコプターによる発煙筒を燃やしまして、煙突そのほかから出る煙の状況を実地において検出いたしますとともに、風洞実験によりましてその数値をまた技術的に詰めまして、そこでどの程度の工場、どの程度の立地状況で、もっと具体的に言いますと、煙突をどれくらいの高さでどこに置けば、どれくらいの排気がございましても、周辺の関係からいって問題がないかどうかということで場所を選ぶつもりでございます。幸いに、工業技術院の資源技術試験所に今回新しくこの種の風洞実験をいたしますのに適した最もりっぱな設備が完成し、いま数値的に非常にデリケートなものでございますので調整中でございますけれども、これをもちまして四十一年度はできるだけかっちりとした事前調査を行ない、その上に立って工場の立地というものを進めたい、かように考えております。
  59. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 時間の関係でこれでやめますけれども、最後に希望しておきたいのですが、私、昨年一年公害の調査関係をやり、私三重県ですけれども、四日市を見たり、あるいは大阪の臨海工業地、埋め立てた新しく建設をしておるところを見たり、兵庫へ行ったり、いろいろ各地をずっと回っております。尾鷲にも火力がありますけれども、火力発電所をつくったときに、東亜石油の関係とタイアップして、タンクはこの程度だと言ったが、タンクはさらにふえているというような関係で、住民の住家ともすぐ接近してしまうとか、いろいろな問題があったり、四日市の場合、御承知のように、従来からある住宅地を改造して他へ移転をしなければならぬという問題がある。堺あたりの埋め立て地を見ても、あんなに工場をぴっちり置くことが、風その他の関係から見て、商店や住宅街に公害問題を起こさないだろうかという危惧を感じたり、いろいろなことを思うわけであります。通産省関係ばかりでありませんけれども、新しく地域開発の中で工場等を導入していく場合は、相当その密度とか配置とかいろいろな点は、単に経済第一主義でなくて、もっとやはり住民福祉の立場から考えながら、ぜひひとつ推進をしてもらいたいということを強く希望して、質問を終わります。
  60. 植木庚子郎

    植木主査 これにて角屋堅次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、野原覺君。
  61. 野原覺

    野原(覺)分科員 私は、万国博覧会についてお尋ねをしたいと思います。  まず、お伺いしたいことは、この博覧会に取り組む政府の熱意と申しますか、心がまえと申しますか、基本態度といいますか、これは三木通産大臣政府の実力者であり、私はこの博覧会に対する取り組みについては佐藤総理の熱意のほども伺わなければならぬと実は思っておったのですけれども、通産行政責任者の三木大臣政府与党の実力者でもございますし、分科会でもございますから、大臣の御答弁でもって引き下がらざるを得ない、こういうこともありますので、単に行政庁長官としてのおざなりの答弁でなしに、万国博についてはこれは異常な決意をもって取り組んでおるのか、具体的にはどういうことなのか、そこら辺をお聞かせ願いたい。
  62. 三木武夫

    三木国務大臣 野原君御承知のように、これは単なる見本市ではなくして、万国博覧会条約によって、長い間日本は万国博覧会を日本に誘致したいという希望を抱いておったわけですが、いままで実現をしなかった。そういうことが今回実現をして、しかもアジアにおいては最初のこれは博覧会であります。したがって、政府としては、この博覧会の成功のためにあらゆる協力を惜しまない。むろん地元の側においても応分の協力は当然してもらわなければ困りますが、政府はこの万国博覧会を成功に導くために全面的に協力を惜しまない覚悟であることを、おざなりでなしに申し上げておきたいと思います。
  63. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで、昭和四十五年のことでございますから、まだ詳細な具体的な計画というものは、私もできていないと思います。しかし、大体のアウトラインと申しますか、総合的な事業計画及び資金計画ですね、これを御説明願いたい。
  64. 三木武夫

    三木国務大臣 これは本格的な計画は本年の秋にでき上がることでございますが、大体のアウトラインは、通産省考えておる案がございますから、島田企業局長から御説明を申し上げることにいたします。
  65. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 ただいま大臣からお答えがございましたように、まだ全体の博覧会の事業計画並びに資金計画はきまっておりません。ただいま日本万国博覧会協会でそれの案を立てまして、いま準備中でございます。  ただ、私ども博覧会をやるにあたりまして、きわめて大ざっぱなアウトラインを頭に置かなければならぬという意味で試案をつくっておりますが、大体全体の建設投資は約千二百億ぐらいになると予想をしております。なお、その建設投資の中で、四十一年度はとりあえず準備関係の金といたしまして五億円を見込んでございます。なお会場計画につきましては、できるだけ早く協会を中心につくるように指導しておりますが、おそくも秋ごろまでにはこの計画が大体でき上がる、こういうふうに私ども考えております。
  66. 野原覺

    野原(覺)分科員 その試算をされた総額の千二百億、その内訳を、大まかでけっこうです。
  67. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 まず、博覧会の主要なる事業といたしましては、展示館をつくるわけでございます。その展示館の中で、日本の展示館と外国の展示館というものができるわけでございますが、大体外国の展示館が大ざっぱに約五百億円くらいではないか。それから日本の展示館の中で、民間の展示館と政府あるいは地方公共団体の展示館が考えられますが、大体民間関係が、大ざっぱに言いまして三百億、政府並びに公共団体のものが百億、なお協会関係、要するに建設事業が三百億、合わせまして千二百億、こういうふうになっております。
  68. 野原覺

    野原(覺)分科員 なお残りは……。
  69. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 それは協会が中心になりましていろいろ事業をいたしますが、その事業が三百億、合計で千二百億ということであります。
  70. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、千二百億の資金計画のうち、いまの御説明によれば、五百億は外国館だ、それから三百億は民間館だ、こういう御説明でございますが、大体百億か九十億が政府館あるいは地方公共団体の会館、こういうことになると、残りは大体が三百億か三百十億、この三百十億程度のものは何に使うのか、御説明願いたい。
  71. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 三百億は、たとえば会場の中における下水道あるいは電気関係、あるいはガス関係あるいは造園関係等でございます。
  72. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、この外国館の五百億というものは、国なり地方で、日本側が負担するのじゃないのですね。この辺の御説明を願いたい。
  73. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 今度日本で開きます万国博覧会におきましては、外国が日本に展示館をつくる場合には、外国の負担によりまして外国がつくる、こういうことになっております。
  74. 野原覺

    野原(覺)分科員 時間の関係もあるので、私はしょって要点だけ伺っていきたいと思うのですが、国なり地方なりが、日本側が出さなければならない金額は、どのくらいだと試算されておりますか。
  75. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 外国が負担をするものが大体五百億といたしますと、日本側で出さなければならないのは残りの約七百億、こういうふうに考えております。
  76. 野原覺

    野原(覺)分科員 質問をよく聞いて御答弁願いたい。これは事務的なことですから、私は大臣に尋ねていないわけだから。私は、国なり地方なりと、こう言ったのだ。民間館というのは民間関係でおそらく出すのじゃないかと私は思いますよ。七百億じゃないでしょう。国の予算なり、それから地方の負担するものなり、それは一体どのくらいだと試算をされるか。これは私ども審議する予算関係があるからお尋ねしておるのです。
  77. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 それはただいま申し上げました政府あるいは公共団体が出すものが百億でございまして、あと協会関係が三百億でございますから、合計四百億でございます。
  78. 野原覺

    野原(覺)分科員 それじゃ大臣にお尋ねしたい。いまの御説明を聞きますと、事業計画も資金計画も、おそらくこれは試算の段階ですから的確ではございませんが、これは大体の最初の計画だろうと思う。そこでお尋ねをするのですが、外国館ですね、五百億ということですが、そしてこれは一体何カ国を予定しておるのか、この点だけ大臣から御答弁願います。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 私の希望としては、国は小さくてもできるだけ多く招待をしたいと考えておるのですが、この試算の基礎になったものは、約五十カ国を基礎にしてこういう試算ができておる。これはできればもっとふやしたいという希望を私は持っておることを申し添えておきます。
  80. 野原覺

    野原(覺)分科員 先ほど大臣の基本的な態度についての非常に熱意のある御答弁の中で、アジア、アフリカにおいてはこの万国博は最初なんだと言われた。私はおそらくこれはアジア、アフリカにはちょっと回ってこないのじゃないかと思う。そうなると、これは最初であり最後だということになりかねないと思うのです。そういたしますと、そのアジア、アフリカの国々の参加できるようなことについては、政府はどういうお考えを持っておるか、お伺いしたい。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 基本的には、発展途上にある国国が自分の展示館を大きな国の予算を支出してつくるということは、財政的な理由からやはりなかなか容易でない。だから、必ずしも規模の大きいということよりかは、国力に応じて、小さければ小さいでいい、できるだけ多数の国々が参加してもらいたい。また、いまこれから実際に事業計画ができて、それから勧誘にかかるわけですから、具体的にアジア、アフリカ諸国の勧誘にかかってくれば、その国々からいろいろな注文も出てくるのではないか。その注文も頭に入れて、できる限り多数の国が参加できるような方法を考えてみたい。いまのところは、国力相応の陳列館でいいが、できるだけ多数の国に参加してもらいたい。勧誘に至るときは、いろいろな注文もあれば、その注文も頭に入れながら多数の国が参加できるような方法を考えてみたいと思っておるのでございます。
  82. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは政府ではぜひひとつ考えてもらわなければならぬ。先ほどの御答弁にもありましたように、五百億、五十カ国だ、そうなれば、一国の経費が十億円。五十カ国で五百億の金が要るとすれば、各国はこれに参加するために十億の金を持ち出さなければならぬ。ところが、アジア、アフリカのおくれた国々——これは経済的な意味でございますが、後進国開発援助を受けておるような国が、それだけの金はそう簡単に出せないですよ。かりに建物を建ててみたところが、出品すべきものが大したものがないというようなことがございますから、たとえばいま通産大臣の御答弁のように、アジア・アフリカ館という館を一つつくる。アフリカ館ならアフリカ館でもいい、アラビア館ならアラビア館でもいい、それから東南アジア館なら東南アジア館でもいいから、そういうものを三つぐらいつくる。これは一つの館に十億ですから、その金は日本が負担をする。アジアの盟主ですよ、日本は。いつも胸を張ってアジア外交ということを岸内閣以来自民党は叫んできたのです。そういうためにも、アジア、アフリカの会館の金はひとつ国が出して、ほんとうにアジアにおける、盟主ということばは語弊がございますが、中心国、ほんとうにアジアの先進国ということを事実上示すことが、アジア、アフリカとの今後の親善外交にも大いに役立つのじゃないか。そういうことであれば、その方針を早く樹立されて、アジア、アフリカの各国にその話をいまから進めておくということも必要ではなかろうかと思うわけです。その点いかがです、大臣
  83. 三木武夫

    三木国務大臣 一つの傾聴すべき御提案だと思います。しかし、これはこれから事業計画ができまして、各国へ手分けして回るわけです。そうしていろいろ話をしてみて、また野原さんのような案を提案するような国もありましょうし、あるいはまた独立に陳列館を持って、そうして何かやるのについて相談を受ける場合もあるだろうし、そういう具体的な問題にぶつかって、この問題をどうするかということをきめたい。しかし、いまお話しのようなことも、一つのやはり傾聴すべき御提案であると承っておきます。
  84. 野原覺

    野原(覺)分科員 傾聴すべきだということばもたいへんおそれ入りますが、これはぜひひとつ真剣に考えてもらいたい。  次にお聞きしたいことは、先ほど三百億の民間館とあった。これはおそらく民間が負担するもので、公の金ではないわけでございますが、これは一体どのくらいの民間を予定しておるのか。どのくらいというのは、数で言って。たとえば東芝であるとか、松下ナショナルであるとか、こういうことであると思う。どうなっています。
  85. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 実はこれはただいま申し上げますこれからの事業計画のアウトラインの一環をなすわけでございますが、一社でやるのか、あるいは数社でやるのか、たとえば三菱系なら三菱系という形でやるのか、機械とか化学とかいうような形でやるのか、それによって違いますけれども、大ざっぱに言えば、百館ぐらいはできるのではなかろうかと考えております。  なお、ちょっと戻りますが、全体で外国館が五百億で五十カ国といたしますと、平均十億になりますが、戦後最初開かれましたブラッセル博によりますると、経費の関係と設備の関係がはっきりいたしませんけれども、一応ブラッセル博覧会におきまして各国の使いました金は、ソ連が百七十億、米国が百五十億、あるいはフランス、イギリス、オランダ、イタリア、西独あたりは三十億から二十億使っております。かりに設備費と経費とが半々といたしましても、この半分は設備に使っておる、こういうように考えます。
  86. 野原覺

    野原(覺)分科員 これも時間の関係がございますから、私は大臣に要望なんですが、中小企業の皆さんは、やはり会館建設の負担能力が問題になってくるんじゃないかと私は思うのです。そこで、政府においては、中小企業の育成ということを叫んできておるわけでありますから、中小企業館というようなものは、これは単に普通の大企業と同じように民間が負担するのじゃなしに、政府考えてやる、そういうこともぜひひとつお考え願いたいと思いますが、いかがですか。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 中小企業日本の特徴的な産業構造を代表するものでございますから、中小企業も進んで参加のできるような道を講じたい。あるいは中小企業館というようなものも一つ考え方かもしれません。あるいは税法上の特典を与えるということも、一つの方法かもしれない。これは参加のできるような方法を考えたいと思っております。
  88. 野原覺

    野原(覺)分科員 なお、総合計画の中で、大臣承知のようにアメリカと中共はこの条約に参加していませんね。そうなると、万国博が文字どおりの万国博にならない。特に今日の日本政府の共産圏、北鮮、あるいはベトナム、あるいは中共、こういうものに対する外交方針というものから考えると、これは全く片手落ちの博覧会になって、万国博にならない。あと五年あるから国際情勢は変わってくるんじゃないかと私も思いますが、しかし、変わってきたからといって直ちにおいそれと入れるものでもないので、政府としては博覧会を目標に、共産圏なり、あるいは万国博覧会条約に万国すべてが加入でき得るような、そういう努力を私は日本政府はとるべきじゃないかと思う。ただ拱手傍観、ぽかんとしてと言っては語弊がありますけれども、四十五年になったら、参加してもらう国々だけ大阪の千里山に来てもらって博覧会をやったらいいのだ、こういうことじゃ、日本政府の取り組む熱意を疑わざるを得ない。この辺に対する大臣の御決意を承りたい。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 これは原則的には、万国博覧会に積極的に参加を希望する国は拒まない、歓迎する、これが原則で、個々のことについて、いろいろ今後どういうふうに運んでいくかということは、協会側としていろいろ相談すべき問題があろうと思いますが、原則としては、積極的に参加したいという国は、これは拒まないという態度でございます。
  90. 野原覺

    野原(覺)分科員 北鮮、中共、これはいずれも間違いはありませんか。北鮮も参加を希望したら、日本政府は拒みませんか。いかがですか。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 これは万国博覧会協会の問題になりますが、政府の基本的態度としては、個々の国でなしに——個々の国をどうだこうだと言うと、いろいろややこしくなりますから、原則として参加を希望する国は拒まない、これが政府の方針であるということをこの段階において申し上げておくことが適当だと思います。
  92. 野原覺

    野原(覺)分科員 どうもあいまいですね。原則として参加を希望する国は拒まないと、原則としてはなんて言って、何か三木さんらしくもない逃げ道をこしらえておくということは、私はひきょうな答弁だと思う。万国博覧会のこの条約の精神からいけば、参加する国は拒むべきではないと思う、イデオロギーの博覧会ではないわけですから。そうなると、中共といえども、それから北ベトナムといえども、北鮮といえども、参加をしたい、これは別なんだ——同じ人類の幸福のための産業の博覧会ですからね、別なんだという熱意を示してさましたら、日本政府としては私は拒むべきではないと思いますが、これはひとつ明確にしてください。
  93. 三木武夫

    三木国務大臣 私の考え方も、これは積極的に参加したいという国は、やはり拒まないほうがいいという私の考えでございます。これは具体的には万国博覧会協会のほうでこの問題は処理いたしますが、考え方としては、積極的に参加したいという国を拒むべきではないというのが私の考えであることを明白にいたしておきます。
  94. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで四十一年度の予算は五億一千万円、その五億一千万円のうち、国はいま私どもが審議しておる予算にどれだけ計上しておりますか、お聞きいたします。
  95. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 いまお話のございました五億一千万の半分の二億五千五百万です。
  96. 野原覺

    野原(覺)分科員 残りの半分の二億五千五百万円は、どこから金が出ることになるわけですか。
  97. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 地元で負担をする、大阪府と市で負担する、こういうふうに考えております。
  98. 野原覺

    野原(覺)分科員 その地元が負担するということは、地元の大阪府と市は了解しておりますか。
  99. 三木武夫

    三木国務大臣 今年度の予算の計上には、二分の一の補助ということで今年度予算を計上したわけです。私が知事と市長を呼びまして、そうしてその事情を述べて、これは府、市ともに了承をいたしまして、予算を計上することになっています。しかし、これは永久にこの率でいくわけではない。今年度の予算の暫定的な措置としては、こういう地元と国とが半分ずつということで今年度の予算は計上をいたしました。今後国の負担と地元の負担というものをどうするかということは、今後検討をいたしたいと考えております。
  100. 野原覺

    野原(覺)分科員 三木さん、あなたはたいへんな発言をしておる。二分の一補助ということを言われた。これはあなたが言い間違いであればとがめだていたしませんけれども、この博覧会というのは何ですか。大阪府と市の事業ですか、国の事業ですか、どっちですか、補助というのは何ですか。一体二分の一補助というのは何ですか。これを明らかにしてもらいたい。
  101. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはり日本万国博覧会協会、これは財団法人ですが、これが主催するという形になるわけです。これに対して国も地元も、いろいろ経費も要ることでありますから、これに対して協力するという形で、政府が直接やるという形ではないわけであります。財団法人日本万国博覧会協会、これが博覧会の運営をするということになっておるわけです。
  102. 野原覺

    野原(覺)分科員 さあ、そこなんですよ。博覧会協会が運営することは、私も知っております。形の上からいけば博覧会協会に対する補助と、こういうことになるかもしれませんけれども、取り組む考え方としては、これは国のやる仕事なんです。国が博覧会協会にやらしておるんだ。地元の大阪府と大阪市が博覧会協会にやらしておるんじゃない、国の責任で博覧会協会にこの万国博覧会の仕事をやらしておるんだ、私はこう受け取っておるのですが、間違いありませんか。
  103. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 実はこの万国博覧会は、国民的な事業であることは間違いございませんが、この博覧会をやろうという、まず発祥は、実は関西、特に大阪府、市が——各地区でいろいろ候補者があり、誘致運動があったわけでございますが、府、市が中心になりまして、これに関西の近畿七府県が一緒になりまして、ぜひ地元で、大阪で博覧会を開きたいという希望が強くありまして、まず発足をしたことは一つの経過でございます。ただ、御承知のように、国が国のやるべき事業を委託したわけではございませんので、やはり民間が、国以外で博覧会をやるという一つの前提に立っておりますが、ただいま申し上げましたように、国民的事業でありますから、国もこれに対しまして全面的に応援をする、協力をするという立場をとっております。ただ、ただいま申し上げますことしの要するに五億一千万の事業計画による予算、そのうちの半分を大阪府、市の負担にする、全体から見れば、最初の大きな予算から言えば準備費でございますので、これは予算の要するに始まる前に、国と大阪府、市との間で半々に今年度は負担をしようということで、実は予算折衝が始まっておるわけでございまして、これは大体了解いたしておるわけでございます。
  104. 野原覺

    野原(覺)分科員 いまの局長の答弁は、私は承服できないですよ。通産大臣考え方は大体において納得できますけれども、いまの局長の答弁では承服できない。私も経過は知っている。大阪府と市が万国博覧会をぜひひとつ大阪府、市でやってもらいたい、そういう運動をした経過は知っている。しかしながら、万国博覧会を日本で持つということになった以上、この博覧会が国際的な事業であればあるほど、その責任というものは国が持たなければならぬのです。民間の協会というものができて、それが主体になってやることはわかる。オリンピックだって一緒だ。そういうものが主体で、日本政府が表は主体にはならないけれども、その責任一体国にあるのか、府、市にあるのか、こう言えば、国じゃございませんか。全国的な規模でこの国際的な大事業が行なわれるのであるから、国がその責任を持つべきなんです。大阪府と市が責任を持つのですか、地元の大阪府と市が。協会がやるにしても、その裏打ちの責任というものは国が私は持つべきものだ、そういう基本的な考え方で、いまの局長のような答弁がなされるとすれば、これは私はたいへん重大なことだと思うのです。この万国博覧会というものは、私は国が責任を持つべきものだと思うのです。いかがですか。
  105. 三木武夫

    三木国務大臣 万国博覧会条約、これによって博覧会の種類というものが分けられております。種類は全部万国博覧会条約による博覧会は公の博覧会でなければならない。プライベートのものであってはいけない。公というものに二種類あるわけです。政府によって組織、指導、運営される博覧会、これが一つ。もう一つは、政府の承認を受けた団体によって組織、指導及び運営され、政府の監督及び責任のもとに行動する博覧会、だから政府が直接やるのと、公の団体がやって、そうして政府の監督を受ける、こういう二つがあるわけであります。だから、今度の場合は、政府が直接に政府自体で組織、指導、運営をするというのじゃなくして、万国博覧会協会という公に認められた団体がこの運営に当たるということで、二種類ある中の公に認められた団体による博覧会という種類の中に入るわけであります。したがって、これに対しては、政府もこれにむろん協力しなければなりませんし、政府は、これが成功するといなということは、これは非常に影響も大きいことでありますし、政府が全面的に協力をしなければなりませんが、たてまえとしてはそのようになっておるので、今度の予算の計上のしかたもそれで不都合はないと考えておる次第でございます。
  106. 野原覺

    野原(覺)分科員 いや、私は予算の計上のしかたを取り上げていま問題にしているのじゃないのです。責任を聞いておるわけです。いま大臣が御答弁になったように、政府もしくは政府の監督する団体、民間団体といえども、そういう協会ができましても、アソシエーションができましても、政府責任を持つという裏づけがなければならぬ、いまお読み上げになったとおり。だから私は、その責任というものは国にあるのだろうと聞いておる。地元の大阪府、市じゃないだろう、こう単純に、簡単に聞いているのです。それがはっきりしないから、再度あなたに立ってもらったのです。いかがです。
  107. 三木武夫

    三木国務大臣 これはこういうことであります。その経緯を島田局長が申し上げたのは、こういう経緯になっておるという経過を、野原さんも御承知になっておることと思いますが、申し上げたのは、これによって、なぜ誘致運動を熱心にしたかというと、これに対する関連の公共事業などもいって、結果的には都市関発というもの、あるいは地域開発ということも促進されるわけであります。そういう点で府も市もこれに熱心な誘致運動の先頭に立ったわけでありますので、政府はむろん責任を負わなければなりませんが、地元としても、この運営については応分の協力をすることが、これは当然のことだと考えておるのでございます。しかし、そのことは、政府責任を回避しようというものではございません。しかし、これだけの熱心な誘致運動をして、まあ直接ではなくても、関連のいろいろな地域開発も促進できるのだから、これは政府がやることだから、おれは知らぬというような、政府が監督する団体がやることだからおれは知らぬというようなことは、実際の博覧会の運営のあり方としては好ましくない。地元もやっぱり応分の貢献をすることは当然のことであるということでございます。
  108. 野原覺

    野原(覺)分科員 だいぶはっきりしてきましたね。私も地元が応分の協力をすることは当然だと思うのです。私は大阪の出身ですけれども、それは当然だと思います、地元でやる以上は。しかし、それは応分でなければならぬと思うのです。今度の昭和四十一年度のように、半分国、半分地元と、こういうやり方では私はいけないと思います。大臣もそのことを予測されてか、いま、ことしは二分の一ということになっておるけれども、将来については、地元負担は何も二分の一ということじゃない、応分のことを考えていくのだ、こういうことなんです。  そこで私は、これは大事な点ですから重ねてお聞きしておきますが、四十一年度の二億五千五百万円の二分の一負担というものは、大阪府も、市も、これは正式に了解したわけですか。これはいかがですか。
  109. 三木武夫

    三木国務大臣 私が呼んだのですから…。私が大阪府知事と話をしまして、了解といっても、これは府会、市会の承認を得なければなりませんので、そういうことで府と市とで、いま言ったような方向で実現ができるように府会、市会にかけるということになっております。
  110. 野原覺

    野原(覺)分科員 了解しておるということを大臣がお聞きであれば、私もこれは何をか言わんやでございますけれども。そこで大臣に重ねてお尋ねいたしますが、将来は応分ということで考えていく。私は半額負担の能力は地元にはないと見ているのです。大阪府、特に大阪市の財政がもうこれはピンチです。自治省の財政局長、見えておると思うが、もうピンチです。実は今日の大阪市は戦前の大阪市じゃないのです。今日は貧弱市になってきておる。それで府も相当苦しいわけでございまして、とても半額の負担は、四十一年度は了解しておるとすれば、これは私の聞いたところでは了解していないということを聞いておるのだけれども、いや了解しておるのだということであれば、これは重ねて調査いたしますけれども、今後ばく大な金額の半額を地元に負担しろといっても、その負担能力はない。まずこれは自治省の見解を聞いておきたい。大阪府、市はその半額の負担能力があるかどうか、万国博の仕事をやる半額の負担能力があるかどうか、自治省はどう考えておるか、御答弁願いたい。
  111. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 お話のように大阪市は非常に困っております。大阪府も昭和四十一年度の財政を考えますと、そう楽ではない。しかし、将来どうなるかという問題は、景気の変化によりまして大阪府の場合は非常に変わってくるだろう。大阪市の場合は多少致命的なものがございます。それでどれくらいの負担になるかという問題が一つ基本にあるのでありまして、これは万国博の計画自身が明らかになり、それに対する負担区分が明確になりまして、初めて確定を見るのでございますから、それに対してどういうような財源措置をするか、こういう問題になろうかと思います。負担能力があるないの問題より先に、やはりこの問題が国家的行事として、国民的行事として行なわれますならば、やはりそこにおのずから国なりあるいは民間なり、あるいは地方団体なりというものの、先ほど来おっしゃっております応分の負担の分かち合いというものがあってしかるべきである。その応分の額がきまりますれば、これに対して必要な措置はしてまいらなければならない、かように考えておるわけでございます。
  112. 野原覺

    野原(覺)分科員 あなたはそういう答弁をしておって、そして責任を持ちますか。私は先ほど、当初事業計画なり資金計画についてお尋ねした。これはごくアウトラインしかできていないということです。できていないから私もこれ以上突っ込まなかったのだけれども、二分の一を地元に負担させるということは、今日の大阪府、市の財政からいって酷ではないかと私は聞いておるわけです。これは自治省、答弁してください。酷ではないか、どうなんですか。だから詳細な計画ができていないことは、あなたも私もそのように理解しておる。計画ができていない。できていないけれども、アウトラインは四、五百億でしょう。この種のものは金がよけい要ってくる。だんだんふえてくるのだ。そうすると五百億かりに要るとすれば、持ち出さなければならないとすれば、二百五十億が国で二百五十億が府、市だ。これを出さなければならぬ。こういうことになると、一体できますか。それが出せるという自治省の見解であれば私もこのまま下がる。私は出せないように聞いておるからお尋ねしておるのです。いかがですか。
  113. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 その負担の中身の問題が一つございます。どういうものに出すのか、一般財源をつぎ込んで出すべきものであるか、あるいは、とりあえず起債でつないで将来にわたって出すべきものであるか、それによっておのずから財政への影響、態様は変わってくるだろうと思います。私が申し上げましたのは、いかなる金額でありましょうとも、それが長期的な形において検討の結果負担できるものでありますならば、一時的に負担できませんでも、長期的なものにおいて負担できますものであるならば、この万国博というものの持つ性格からいいまして、政府といたしましては必要な措置はしてまいらなければならぬ、かように申したわけでございます。
  114. 野原覺

    野原(覺)分科員 そうすると、この四十一年度の二分の一負担については自治省も了解しておるわけですか。
  115. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 私どもといたしましては、個々に相談を受けておりません。しかし、それぐらいな程度のものは、現在の大阪府、市の財政の中でございますれば処理できると考えます。
  116. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは大臣との話し合いがあったというふうに三木さんがここで言われると、これはどうにもなりませんが、もし二分の一が困難だ、こういうことにでもなれば、大臣としては、強権を発動する、そういうお考えを持っていますか。
  117. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、万国博覧会についてこれから事業をやらなければならないこの当初において、府としても、市としても、やはり熱意を示さなければならぬわけでありますから、知事も市長もそういうことで努力をいたしますと言って、これは数日前でありましたか、私と会って帰って、そういうふうなことで府会、市会とも相談をしておることと思います。これは大阪市としてもたいへんなことであります。これは府と市とでどういう配分になりますか、とにかくそう大きな金額じゃない。しかし、このことがもたらす大阪市への——博覧会というものの主催地であるという大阪の、このことからくる、名誉ばかりでなしにいろいろな、このことを通ずる関連的な大阪の利点というものは、あげればこれはなかなか計算し切れないくらいの大きな利益があるわけでありますから、どうか社会党も、全面的に協力をしようという御決議のようであることを新聞紙上で拝見したのでありますから、市長も知事もそういうことで帰っておるのですから、どうか府会、市会についても社会党からも御協力を願って、こういう出発点から、この問題を中心としてトラブルの起こることのないように協力を期待いたすものでございます。
  118. 野原覺

    野原(覺)分科員 私は、大体時間もきたようですからこれで終わりたいと思うのですけれども、国の責任でやる事業、このことを考えて、そして話し合いをしなければならぬ。地元は府、市だから、国が半分、府、市が半分だよ、こういったような考え方でいくとすれば、私どもはこれは問題があると思う。国際的な事業、しかも政府の監督、責任でやるわけですから、だから私は、先ほど言ったように、府、市は応分の協力はしなければならぬと思う。それは当然だと思う。それで応分の点については大阪府、市の財政力というものを考えてやらなければいかぬわけです。特に大阪市のごときは、もう非常に火の車なんだ。だからそういうことを考えた上で、十分話し合いをして、そうして国と府、市——しかも表にはその協会が先頭に立って四十五年にはすばらしい博覧会ができ得るように私も協力するに決してやぶさかでございません。また協力しなければならぬ、当然のことだと思います。思いますけれども、その考え方、二分一は府、市だ、それに応じなければ——私は実は大阪で新聞を見て驚いた。これに読売新聞が書いておる。こう書いておるのです。地元の府、市が経費の半額を負担しなければ、博覧会について政府予算の執行停止、会場の変更もあり得る。こういうことを見せられた府、市なり大阪府、市民はどう考えますか。だれがこんなことを言ったのですか。
  119. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 そういうことは事務当局としては申したことはございません。  それからなお、ただいま大臣がお話しになりましたように、知事、市長さんを呼んで、地元が半分負担することを大体了承されたと言っておりますが、私ども実は先ほども申し上げておりますように、事業計画がまだきまっておりません、準備費でございますので、国と民間と地方公共団体との負担が、実は全体の事業量がきまらないからきまらないわけですけれども、とりあえず、要するに半分半分ということで大蔵省予算折衝をしたわけでございます。私どもは、国がたくさん負担してもらえることが一番希望ではあろうと思いますけれども、そのときに実は府と市とそれから私どもの間で、もし半分国の補助が出る場合には、地元も半分負担しますという前提で予算折衝に入っておることもつけ加えさせていただきます。  なお、今後国の負担がどのくらいであるか、特にまた公共団体といたしまして、府、市が負担をするかどうかというような問題は、実は今後の問題でございます。先ほど大臣が申し上げましたように、やはり博覧会はコマーシャルの、国際見本市とは違いますけれども、受益者の中心的な仕事であることも事実でございますので、そういう意味でとりあえず今年度は予算も間に合いませんので、半々ということでスタートをいたしたことをつけ加えさせていただきます。
  120. 野原覺

    野原(覺)分科員 読売新聞が書いておるわけです。言ったことはないと言うが、十七日午後、日本万国博覧会協会の幹事会で、私が調べたところによれば、あなたのほうの審議官が発言している、私はあえてここでは名前を言いません。また、大新聞の読売が、こんなことを、とんでもないことを書くわけはないですよ。「四十一年度の協会予算編成で地元の大阪府、市が経費の半額を負担しなければ博覧会についての政府予算の執行停止」する、一体これはどこに責任があるのですか、この考え方は。大阪府、市の博覧会ですか。大阪府、市の博覧会なら、万国博覧会協会は認めるわけはないですよ。大阪府、市の博覧会という考え方通産省事務局は取り組んでおるのかね。そうなれば私どもは絶対承知しませんよ。そういう説明ならば反対ですよ。だから私は、くどいけれども大臣にいろいろ尋ねてきたのです。ところが、大臣答弁では、いやそれは政府の監督のもとの協会である、政府責任だ、こういうことだから、私はこの点は了承いたしますけれども、この読売新聞に書いておる博覧会についての政府予算の執行を、地元府、市が半分出さなければ停止する、そうして会場の変更もする、大阪府、市にはやらぬ、これは大臣、私は言語道断と思う。中央の官僚がこういうような恐喝、脅迫をするということは言語道断です。これはあなたがやらせるのですか。あなたもその考え方を持っているのか、聞きたいですね、大臣
  121. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、大新聞でありますから、それを前提にして御質問なさることに対してとやかくは言いませんが、その間には何らかの誤解があると思います。審議官がさような発言をするものとは私は考えていません。何らかの行き違いがあった。新聞だけが全部正しいという前提もいかがかと思います。審議官にも私は注意いたしますが、そういうふうなことを申すわけはないのであります。  ただ、ここで、私は申し上げておきたいことは、これは東京も希望したわけであります。それから近畿の各府県も希望をして、府、市が先頭に立って、できるだけの犠牲を払うからということで熱心な勧誘の運動をして、最後には近畿の中においても、これをきめるのは大きな政治問題になったくらいの激しい競争の中に大阪がきめられたという事実を府、市も忘れるべきではない。だから、何もかも全部、えてして政府政府ということでありますが、むろん政府は全面的に協力をする覚悟でありますし、その責任もありますけれども、やはり何としてもその博覧会をやるものは大阪が中心でありますから、できるだけそれは——苦しいといえばみな苦しいでしょうが、できるだけそのときだけの財政状態でなくて、この博覧会に関連するいろいろな公共的な事業だって、これはたいへんな金額にのぼるのでしょうから、そういう将来の大阪の発展も頭に入れて、できるだけの協力をしようということでないと、これをしゃくし定木に考えて、博覧会の条約はこうなって、政府責任だからといって、何もかも政府政府というようなことになりますと、なかなか博覧会を成功に導くことはむずかしい。これは私どもも現在の財政状態ということを頭に入れて、府、市、政府とも今後の負担の割合などについては十分に相談をいたしますから、どうかそういう法律的な解釈でなしに、それが大阪に誘致されたいきさつなども頭に入れて、地元もできるだけ協力しようという態勢は持つべきであるという注意を、野原さん自身からも府、市にお与えを願いたいと思うのでございます。
  122. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは新聞に書いておるんですね。あなたは私に、新聞のことを君は信用してと言いますけれども、信用せざるを得ませんよ。大新聞が天下にまいたのですから。あなたのほうからこれに対する記事訂正の申し込みも何もしてないのだから、われわれは信用せざるを得ないし、それからまた新聞の間違いだと判断することも独断です。ほんとうに言っているかもわからぬですよ。だから大臣、調査してください。私はこういう発言は慎んでもらいたいと思う。それは大阪府知事の左藤義詮氏も、市長の中馬馨氏も、地元だから当然協力しなければならぬと思って懸命になっておるわけです。応分の協力は当然だ。府、市民みなそう考えておりますよ。これは政府仕事だからみな政府でやれなんて、そういう大阪府、市民、大阪府、市議会でもございません。協力はしなければならぬけれども、不用意にこういう考え方の記事が出てくると刺激するわけです。一切やめだ、場所を変えてやる、こういうようなむちゃくちゃなことを発言するような官僚にはひとつ大臣から十分注意してもらいたい。あなたが名前を知りたければ私はいつでも申し上げますから。いかがですか。
  123. 三木武夫

    三木国務大臣 注意いたしましょう。これは御承知のように府、市、通産省からも行っておりますし、それから民間と寄り合い世帯で大事業をするのですから、いずれもなるべく円満に、みなが協調してやらなければ——長い間の歴史があったものたちが寄っておるのではないのですから、お互いに謙虚で、みんなが慎重な運営をしなければならぬことはお説のとおりで、今後も注意をいたすことにいたします。
  124. 野原覺

    野原(覺)分科員 以上で終わります。
  125. 植木庚子郎

    植木主査 これにて野原覺君の質疑は終了いたしました。  午後は、一時五十分から再開し、引き続き通商産業省所管について質疑を続行することといたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十分休憩      ————◇—————    午後二時六分開議
  126. 植木庚子郎

    植木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計予算及び特別会計予算中、通商産業省所管についての質疑を続行いたします。  これより質疑を行なうことになっておりますが、この際質疑御予定の委員の皆さまに申し上げます。午後は質疑者が多数おられますので、議事進行の円滑をはかるため、質疑の持ち時間は、本務員は一時間、兼務員もしくは交代で分科員となられた方は三十分程度にとどめられたいと存じます。この点、つとめて御協力相なるようお願い申し上げます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。
  127. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 事務当局にまずお尋ねいたしますが、いま銅のロンドン金物取引所の相場、それから生産者価格、これはどのようになっておるか、ちょっとお知らせ願いたい。さらにわかれば鉛、亜鉛もあわせて御答弁願いたい。
  128. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 銅の相場でございますが、国内の生産者価格というのは四十二万円であります。国際的にも生産者価格というのがございますが、これは三十三万四千円、約でございますが、日本円に換算するため若干の誤差はありますが、そういうところであります。それからロンドン相場、LMEと言っておりますが、ロンドン相場でありますが、これも毎日のように浮動しておりまして、二月の初めには七十万円程度までいきましたが、現在は六十五、六万円というところだと思います。それから、前後しましたが、国内の市中の相場でございますが、これも一時八十万円をちょっと上回るというところまでいきましたが、現在は下がりまして六十五、六万円ではないかと考えます。それから鉛のほうでございますが、鉛は国内の価格が十一万五千円、それからロンドンのLME相場も十万五千円ということで、大体バランスがとれております。亜鉛のほうは国内のほうが十二万円、ロンドンのほうも十二万円程度かと思います。
  129. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 私どもは昭和三十七年に、貿易自由化を前にして、ことに経営に弾力性のない、しかも国際的に見るとやはり貧鉱である日本の非鉄金属に対して、金属鉱業危機打開の決議をしたわけであります。その後、鉱業審議会において徳永構想といわれるものが出され、そうして銅においては、国内鉱石と外国からの輸入地金並びに輸入鉱石との調整機関が設けられた。ところが、国際的な相場が非常に高騰いたしまして、現在では逆な面があらわれてきておる。そして価格は暴騰し、しかも需要に対して供給が追っつかない。ことに外国鉱石が入らない。こういう状態になっておるわけです。そこで、まず例のプール資金というのは、いまどのくらい余っておるのですか。
  130. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 いわゆるプール資金でございますが、現在約十八億円でございます。
  131. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 そこで、この現在の相場というのがどうも一時的な現象のように思われるし、具体的にもベトナム戦争をはじめとしてかなり各地において紛争状態があり、要するに戦略需要というものがふえてきた。それから第二には、ローデシアの独立宣言に関連してザンビアの銅の出荷が停止されるのではないかという懸念がある。さらにチリのストライキ、こういういろいろな理由で現在ははね上がっておるのだろうと思いますけれども、これは私はやはり一時的な現象ではないかと思うのです。   〔主査退席、坂村主査代理着席〕  しかし、銅の場合は、ことに一時的現象といっても、こういう現象は常に繰り返す、こういうことを考えなければならないと思うのです。そこで大臣質問いたしたいのですが、わが国の非鉄金属というものは、国際的に見ると、やはり貧鉱である。ですから、いま秋田県に黒鉱が出たと非常に騒いでいますけれども、これも将来の日本の需要を十分満たすだけの量はやはり確保できないのじゃないかと思う。そこで、この国際的な商品である、思惑の対象になる品物。さらに第二に、資源が比較的偏在をしておる。しかもその国は、率直にいって政情が安定していないという国が多い。さらにまた、需要の面においても、先ほど申しましたように経済外的な要因によって非常に需要が変わっていく。さらに供給の面からいっても、これも炭鉱と同じですが、供給に弾力性がない。掘れといってもすぐ掘れない。相当の日時がかかる。いよいよそれが掘れるようになった場合には、また経済の状態が変わってくる。こういったものに対して、一体安定的な方法をどういうように政府考えておるか。私は恒久的な安定政策というものが、どうしても必要ではないかと思う。しかも鉱山は、御存じのように、炭鉱と同じようにかなりの労働者を使っておる。雇用面からいっても安定が必要であるし、また地域経済からいっても、これは他に労働力の流用のきかない、移動のきかない地域にある。そこで、あらゆる面からいっても、ことに現在、需要者の側からいっても、供給者の側からいっても、どうしてもこういった商品は安定をさせなきゃならぬ。しかも需要者のほうは、御存じのように電線等でありますから、わりあいに公共的事業で、電力会社であるとか、あるいは電電公社であるとか、もうすぐ価格を上げるとか料金を上げるというような産業ではない。ですから、これもやはり安定を求めておるのです。そこで政府は、一体こういった商品についてどういうような安定対策考えておるか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  132. 三木武夫

    三木国務大臣 一つには、国内においての探鉱の強化、これはたいした数量にはならないと思う。海外における鉱山、銅鉱の開発、これはこの間もソ連の貿易の代表が来たとき、銅の資源が相当にソ連にあるので、開発をしたいということを私が話をしたわけです。何かバイカル湖の付近ですか、銅鉱があって、向こうのほうとしてもこれに対してノー、イエスということではないが、日本はそういう強い希望を持っておるということを言ったわけです。海外においての開発ということも、これは進めなければならない。しかし、ほかのほうはそう問題が銅ほど深刻に起こるようなことはないですから、銅の価格安定の機関というものが何か要るのではないかというふうに考えて、いま検討を加えておるのですが、業界の中にも賛否両論があって、まだ結論は得ておりませんが、いま研究中でございます。
  133. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 メタルの場合は、石炭の場合と違って、企業間で輸入鉱を主に成り立っておる企業、あるいは国内鉱を主としてやっておる企業、おのおの違うわけです。ですから、業界の一致した意見というのはなかなか困難でありましょうが、しかし、いま輸入鉱が御存じのようになかなか高くて、しかも品物が入らないという状態ですから、政策を打ち出すのには非常にいいチャンスではないか。大体産業政策というのは、好況のときにむしろ不況対策をやる。しかし、それは非常に変動性の少ないものに私はやれというわけではないけれども、どうも長いいままでの経過を見ると、どうしてもそういう非常に変動性の高い、波動性の高い、ことに国際商品については、何らかの安定策が必要ではないかと思うのです。現実に日本の銅の地金の輸出輸入を見ても、輸出をしてみたり、輸入をしてみたりしておるのですね。わずか戦後においても、昭和二十四年から二十六年に銅だけで七万トン輸出しておる。二十八年から二十九年には電気銅で八千トン、故銅で五万六千トン輸入しておる。それから二十九年から三十年にかけては、今度は逆に輸出しておる。両方で約五万六千トン輸出しておる。それからすぐ三十一年、三十二年にかけて、これは十五万トンくらい輸入しておる。かように輸出したり、輸入したりしておるのですね。実に私は安定をしてない産業だと思う。  そこで私は局長に聞きますが、一体輸出産業としてこれは成り立つのですか。すなわち日本の場合は、外国から鉱石を日本に入れて、日本で加工して輸出する。地金として輸出する。これは一体成り立つ産業なんですか、どうなんですか。日本の立地条件から見て成り立つのですか、成り立たないのですか。
  134. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 銅については、海外から鉱石を持ってきまして地金にして輸出するというのは、あり方としては無理ではないだろうかと考えます。それは加工いたします場合に、半製品から完成品といいますか、だんだん加工の度を加えていきますと、これはまたいろいろ大いに輸出産業として期待が持てますが、地金で輸出するというのは、国内資源から見ましても、それから国内資源の需給状況から見ましても、無理と思います。海外から持ってきましても、無理があるのではないかと思います。
  135. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 私は、原料を輸入してそうして加工品として出すということは、日本貿易構造からいって当然奨励をすべきものだと思う。しかし、いま話がありましたように、いわゆる付加価値の少ない地金で出したのでは、事実問題としてはこれはむしろ出血輸出のような形になっておる。そこで、金額に直してみましても、二十四年から私が申しました三十一年まで約八年の間に、輸出が百七万トン、輸入が百十一万トンやっておる。その輸出入の差は四万一千トンでありますけれども、金額に直すとたいへんな損失をしておるわけです。もちろん企業の損失という意味じゃありませんけれども、それを何らか安定機関において備蓄をしておったならば、こういう損失はなかったであろうと思われる金額が出る。すなわち二千百七十三万ドル損をしている。すなわち七十八億円の損失になっている。要するに外貨をそれだけ輸入の場合は使い、輸出の場合は安い価格で出しておる。もちろん鉱石の入ってくる値段も違いますから、それ自体がそのまま企業において損失したとは私は言いません。これだけ損失しておれば、いまの金属鉱業は非常に経営が悪くなりますから、そうとも思いませんけれども、もう少しくふうを加えておったならば、ドルがこんなに支払い超過になることはないわけです。これはわずか八年の間ですよ。ですから、私は、政策として何らか打つ手があるのじゃないかと思うのですね。ですから、そういった面をもう少し考えるべきじゃないか。数字の面から見ても、また現実の姿から見ても、これをただ自由放任にしておく手はないと私は思うのです。大臣からもう一度御答弁願いたい。
  136. 三木武夫

    三木国務大臣 いま多賀谷君のような、そういう必要があるのではないかということで、やはり何らかの価格安定に関する機関というものが必要なのではないかという方向において、いま検討をいたしておるわけでございます。
  137. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 もう少し早くしないと、これまたどんどん下がるかもしれませんよ。もう鉱石のほうは、安い外国の鉱石を買ったほうが得だなどという空気が出ないとも限らぬわけですね。ところが、鉱山企業のほうは弾力性がないわけです。ですから、こんなものは日本の優秀な役人が考えればすぐできるのですよ。そんなに一生懸命考えて、そうしてああでもない、こうでもないと議論することはないのですよ。アメリカは戦略物資としてストックパイルという政策をとっていますけれども、そういうことでなくて、もうすでに自由化を前にして、いわゆる採算ベースでやる二十八万円というのを割って二十三万円、あるいは輸出の場合は二十万円で輸出した時代があるわけです。これはほんの二、三年前に経験をしたのですが、いまはもう非常に高くなっている。ですから、これはすぐ政府政策ができるのじゃないか。ただあなたのほうは、何ですか、自民党は少し経済政策でイデオロギーにこだわるから、これはそういう安定機関をつくって、そうして一応貯鉱をして安いときに放出するという制度は、どうもいかぬのじゃないか。まあそういう考え方があるでしょうけれども、これはこれだけ波動性が大きくて、そうして関連産業に迷惑をかけておりますね。関連産業のほうでかつてのように安い鉱石を入れて、安い地金を入れたほうが得だという考え方にあるならば別として、少なくともいまの関連産業は何とか価格を安定してもらいたいという気持ちではないですか。石炭の二の舞いをすべきじゃない。石炭の場合には、少なくとも電力用炭だけはあんな過当競争をしたり石炭が逼迫したときにはまた高く売ったりするようなことをしないで、電力だけでもひとつ販売会社をまとめたらどうか。ことに電気の場合は料金がそんなに変動できないわけですからね。ですから、景気が石炭側にいいときは非常に高く売って迷惑をかける、そういうことをすべきでないといって、電力だけでも販売会社を統合したらどうかということを言って十年以上になる。やっと最近ですよ、電力用炭販売株式会社というものができた。結局われわれが主張したとおりに細々ながらやっておる。ですから、この問題についても、われわれは三十六年に金属鉱業安定法というものを出して、やはり安定機関が必要であるということを強調したわけです。ですから、政府考えておるならば、一体この国会に出すのかどうか。もう次の国会といいますと、来年度の通常国会は様子が変わりますよ。
  138. 三木武夫

    三木国務大臣 まだこの国会というわけにもいかぬようですが、イデオロギーにとらわれるわけではないのですけれども、そういう新しい機関を設けるということは、やはりいろいろな考え方を調整しなければなりませんので、まだこの国会に提出するという段取りにいっていないのが現状でございます。
  139. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 実はドイツは銅は出ないのです。しかし鉛、亜鉛が出るわけです。そこでドイツも、昭和三十七年から八年にかけて銅の鉱山会社は非常に困った。そこで何らか安定機関を設けたいというので安定機関をつくろうとしたけれども、どうしてもEECがきかない。そこでEECが二条件をつけてきたので、ドイツではその二条件を断わって、それならばストレートで補助金を出す、これならばEECは文句は言わないだろう、ストレートに国内補助金を出すといってがんばっておったことを思い出すわけですが、こういった政策は早くしていいのではないか。ことにその金を使えとは言いませんが、十八億金が余っておるのです。もう資金もあるわけでしょう。ですから、やろうと思えば、とりあえずその十八億を使って、これは予算がなくても出発できるのですよ。これはもっともほんとうは政府の金ではないのですけれども、政府がそれを後に補正をする、ある程度のなにを出すということになれば、私はできると思うのです。当面とりあえずできると思うのです。局長どうなんです。
  140. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 先生よく御承知のとおりに、前に自由化に備えて安定機関をつくれという構想があったわけでありますが、そのときの考え方と申しますのは、国内の市況が非常に下がった場合に国内の鉱山が非常に困るということで、むしろ下ささえの意味の需給安定機関、そういう色彩が非常に強かったと思います。いままでもたびたびそういうことで検討したあげくが、ただいまお話のありましたようなプール機関、そういうことで国内鉱山の突っかい棒といいますか、そういう性格であの金ができたというふうに思っております。現在非常に問題になっておりますのは、ちょうど逆の意味でございまして、値段が高過ぎる場合に備えてストックパイルを持ったらどうだ、こういう感じだろうと思います。もちろんこれは上がり過ぎても下がり過ぎても困るということで、両面をなすわけではございますが、しかし、いま需要家の安定という意味でのささえということになりますと、いつ買い入れるかということで、市況が下がったときに買い入れるといいますか、今が一番高い天井でございますので、いま買い入れるというのは現実問題としてなかなかむずかしいのではないだろうか。そういうことで、今度下がったときに備えてといいますか、そういう感じでいえば、いま生産業界、それから需要業界で鋭意話を進めている段階でございます。したがいまして、御趣旨のように、私たちとしても、ぜひこういうものは必要ではないだろうか、なお検討を続けたいと思いますが、いますぐつくるというのは、将来の母体をつくるといいますか、基礎だけはこの際できるだけ話を詰めようと思いますが、本国会にとかそういうタイミングはなかなかむずかしいのではないだろうかという感じを持っております。
  141. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 私は、いまその機関をつくって買い入れるというのではない。高い鉱石で、こんなものを買い入れたら、将来たいへんですよ。ですから、機関をつくって、その機関はいつ発動するのかわからない。おそらくすぐ発動するような状態にはないのでしょう。しかし、機関ができておかないと、今度安くなったときにまた議論をしておったのでは、また間に合わないのです。その波は動くのです。私は、機関というのは早くつくっておかないと、いよいよ暴落したときにまたつくろうといえば、今度は需要業界のほうは、われわれは高いときに買ったのだから、あれだけ苦労したのだから、安いときは安い鉱石を買わしてくれ、安い地金を買わしてくれ、こう言います。また議論をしておったら、また次の波が来るわけです。ですから、もうすでに何度も経験しておるわけですから、機構だけはつくって、そうして次に外国鉱石その他が値下がりをしたときに、あるいはまた国内の鉱石が値下がりして経営がうまくいかなくなったときに、それを発動するということですから、私は機関というのは早くつくっておかなければ、その次の波が来たときに議論をしても間に合いませんと、こう言っておる。そういうものなんです。間に合わないから、常に波を追っていっておるから、その政策としてはできないし、そのうちに両方とも迷惑をかける、こういうことになるわけですね。ですから、大臣、ひとつ早く踏み切られたほうがいいですよ。
  142. 三木武夫

    三木国務大臣 多賀谷君の御説も勘案しながら、よく検討いたすことにいたします。
  143. 坂村吉正

    坂村主査代理 これにて多賀谷真稔君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣清音君。
  144. 川俣清音

    ○川俣分科員 一番先にひとつ耳の痛いところから始めていきたいと思います。  確かに三木さんが通産大臣になってから、どういう意味かわからぬけれども、相当実績をあげたと思うのです。というのは、政治家的実績。大臣をやって、どういうところにわれわれ目をつけておるかというと、自分の役所内の者がやめたときにどれだけ産業界に手づるをつけておくかということが大臣の実績だと、こういうふうに私どもは見るわけです。政治家としてはそういう見方があるわけです。産業の実績なんというのはなかなかわかりにくいから、われわれそういう判断をするわけです。なぜそういうことかといいますと、なるべく政治家のやめたあとの勢力をひとつ押えておこうという考えもありまして、また、綱紀粛正の上から申しまして、国家公務員法百三条で営利企業へ就職することを禁じているわけです。従来は、運輸省が大体七、八十くらい高級官僚を運輸業界または土木界に入れておる。いまの佐藤さんなんかも、運輸次官時代にみなそれぞれ配置したから、あれはあれだけの勢力をいまだに運輸省に持っていることになると思うのです。前は通産省というものはあまりはけがよくなかった。去年を見ると、が然大蔵省も伸びてまいりましたが、大蔵省は三十件、通産省でも二十八件。前は農林省も相当あったが、十一件とわりあいに少ない。二十八人をうまく配置したということは、相当な政治手腕だ、こう見なければならないと思いますが、それをせんさくしてまいりますると、必ずしも好ましいことではないことが圧倒的に出てまいりました。かつてあなたのところで一番ひどかったのは、硫安の研究に人をドイツへ一年間派遣しておった。帰ってきたらすぐ新しい硫安会社の重役に就任を許可する。これなどは官費をもって勉強さして、しかも会社擁護のために就職させたというような悪例もあるわけです。今度のはそれほどひどいのもないようです。相当通産省で働いたのだから、どこか就職をさがしてやろうということで、三木さんとしては善意の人もかなりあると思うのですけれども、やはりどうかというのもございます。一番大将は今井次官です。これは通産省は、従来のことになると農林省も同じでしょうけれども、どこかいい会社へ世話するというような慣例になっておる。中にはあえてがえんじないで弁護士や何かをやったりしている人もないとは言えない。こういうのは一体就職先がないのかというと、あまりがんこで受け入れ先がなかったということです。がんこというやつがいいか悪いか。やはり通産省本来の形に返って、たまには次官としてはがんこであるのもいいのじゃないか。業界の意思に従わないというのもあってもいいのじゃないか。あんまり業界になれなれしくしているなんということは、大臣の統制よりも外部の統制に従うということになったならば、通産行政というものはおしまいだという感じを持つので、あえて私は初めにこれを出すわけです。今井次官のあっせんをしたのじゃないですか。——首を振っているのですが、大臣の許可がなければ行かれないでしょう。どうです。
  145. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、離職後二カ年という人事院の承認がないと、高級官僚は民間会社に就職はできないことになっておるわけです。したがって、今井次官の場合も、私があっせんしたわけではないのですが、しかし、川俣さんの御指摘になるような、何か監督の地位にあった者がいきなりその会社に行くということについては割り切れない国民感情があることは、私も事実だろうと思う。大体役人も次官なんかに若くしてなってしまうのですね。ですから、どうしても働き盛りのときに役所をやめるというような結果になる。これは諸外国の例なんかを見たならば、相当の年齢に達するまで役所でおって、そしてあとは恩給で生活するというようなことが例ですが、日本のは、これからというときにやめるのですからね。やめた場合に、通産省の官僚というのは、官僚の中においても、きわめて優秀な者が入っておることは事実です。しかも日本の産業に対してのいろいろな知識を持っているということで、通産省の場合は、引く手あまたなんです。こういうことで、実際に数はいま御指摘のようにそう多いというわけでもないが、ほかの役所なんかと比較したら、そういう数字が出てくるのでしょうが、これは絶対にいかぬというわけにはいかないわけです。やはり一つの国民感情として割り切れぬものもあるから、その間節度のある態度が必要であろうと思うのです。だから、人事院の規則でも、二カ年というような期間を置いてあるのだし、またそのことのために行政を曲げるようなことというのは、これは厳に慎まなければならない。何か先に考えておいて行政を曲げる、そんなことはしていないわけです。ただ、ある期間を過ぎた場合に、その人の新たなる第二の人生の道をはばむわけにはいくまい。ただ、在任中における行政官としての態度というところに問題がある。それをくずすようなことがあれば、これは許しがたいものである、こういうふうに考えております。
  146. 川俣清音

    ○川俣分科員 そのとおりなんです。優秀な者が引き手をされるということは、それはその人の優秀さであるから、これを拒むなんというわけにいかない、優秀でない者は行かれないのだから。しかし、在任中から行き先を考えているようなことが、あなただって目立つでしょう。私ども目立たないわけじゃない。むしろそこなんです。役所におりながら、行政をやることよりも、行き先を初めから考えるところに、綱紀紊乱のもとがある。そういうところを指摘しておるのです。私、今井君を決して知らぬわけではなく、碁も強いし、かつて碁を打った仲間ですから、個人的に非難する気はないのですよ。だけれども、やはり次官になると、それと同時にもう行き先を考える、こういうことがある。しかも日本石油に入ったというのが、決して悪いというわけではないけれども、日本石油が新たに石油化学をやろうというのでしょう。それには通産省とコネの深い者でなければなかなか発足できないということで、さがしておったところに、ねらわれたということにもなりましょう。だから、そのことは必ずしも悪いことじゃない。こういうことがあると、これ、みな出しますけれども、全く自分が行くために会社をつくったようなものもあります。運輸省のごときはもっとひどいのです。許可にならなかったタクシー会社へ行って、自分が行くと同時に許可になっているものがある。あるいはバス会社の路線が許可されて、それと一緒に重役に入っていったというのも現にある。通産省はそれほどはひどくないようです。ひどくないからといって、あなたはやめられてもずっとコネをつけておくからいいですよ。あれはおれが入れてやったということで勢力を張ることができる。これは大したものですよ。そこで一体、どういうところを一番選ぶかというと、運輸省だとか建設省とかあるいは通産省とか農林省大臣をねらうのは、やはりそういうところにもあるのです。これはあまりよくないことだと思うのですけれども、いつまでも勢力のあるのは、三木さんが通産省でどのくらい勢力を存続するか、何人一体幹部を出したかという実力なんです。一人もやらないでごらんなさい。もう通産大臣をやめると同時に、三木さんがいかに人格、識見を持っておっても、通産省から浮き上がってしまう。これは中におる者じゃないのです。外に出た者の内部に対する影響力が強いのです。内部に影響力があるのは、大臣だから当然ですよ。外に出た者に勢力があるということは、やめてから内部に対する圧力があることになるのです。
  147. 三木武夫

    三木国務大臣 これは多少川俣さんのひがみがある。社会党もやはりいずれ政権をおとりになったらいいと私は思う。そんなに大臣在任中に役所の者を世話しておいて勢力を張ろうというような考えは、実際ないですよ。役人もまた、自分の在任中に将来のことを、場所を考える、そういうことはないですね。今井君にしたって、ああいうことというのは、考えておったわけではないですよ。偶然のことで、やめてから時間がたって誘われたので、初めからだれも今井君がああいう石油業界に入るなんて考えていない。繊維のほうにでも入るのかと思っておったぐらいで、実際の場合としてはそういうふうには考えていないのです。ただ結果的には、なかなか優秀で、しかも役人を油の乗り切ったときにやめるのですから、これにも私は問題があると思いますよ。だから、もう少し定年をおそくして、一生役人で終わるというようなことも考えていいんじゃないか。いまだったら、こんなに若くしてのぼりつめるでしょう。だから、まだ国家社会のために貢献すべき余力というものは——余力というよりも、一番これから働ける、一番油の乗ったときですから、それを遊ばしておくというのは国家社会のために非常な損失ですから、そういう日本の官僚機構一つのしきたりにも私は問題があると思います。しかし、在任中からそういうことを考えてはやっていないですよ。ただ、世間では遊ばせないですよ。だから、そういうことで産業界に入るような場合があるが、在任中にそういうことを考えてやってはいない。もしそういう者があるならば、これは非常に公務員としての態度を乱すものでありますから、これはやはりわれわれとしてもそのまま捨て置くわけにはいかぬわけですが、そういうことはないと私は思う。
  148. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは各省の恥部ですから、騒ぎ出すことはどうかと私は思うのですよ。おそれながらやっているのです。やはり定年制などについてもずいぶん考えて、十分その省でこなし切れということのほうが、本人のためにも行政上にも必要なのではないかと思うのです。そうなると沈滞するということもあって、刷新もはからなければならぬというところにめんどうさもありますが、私はずっと見てまいりまして、確固とした基礎のきまった会社に行かれるのはわりあいに問題がないと思うのです。そうでなく、新興会社にこれこれを持ってくることによって、会社の値打ちをつけることができる、あるいはコネをつけることができる、あるいは資金を獲得する、こういうものを持ってきたら便宜だという、利用されている方たちがたいへん多い。そういう意味で、新興会社に入ることについて、今井さんの例を出した。日石に入るなら、そう問題でもないのですよ。同じ日石の系統だけれども、問題は新しいことをやる。これには一つ背景がなければならぬ。背景というのは、資金を獲得できる背景、信用を得られる背景というものを求めた。利用された形ですね。そういうことは、通産省にとっては特にありがちなことだと思うのです。たとえば東北の日東金属鉱山などがかなり不安がられて、そこで相当な者を入れなければならないというようなところから、通産省の出先の者を顧問に持ってくるというようなことも、この間行なわれたわけです。会社が不安定ならば、おもしに通産省から連れてこよう、これでひとつ一波を防ごう、こういうことに利用されるということは、ほんとうの意味の有能な人物を派遣をするということにならないのではないかということを憂えておるわけです。三木さんだから言うのです。これが三木さんでなければ、もっと逆な言い方をするのですけれども。みんなあげるのをできるだけ控えましょう。中には東北電力会社へ行かれた方がありますけれども、これなどはいままであんまり電力と関係のない人だし、調査役に入られたということで、これは名前はあげませんけれども、そう関係がなかったので、問題は比較的少ない例じゃないかと思います。そういうのもありますけれども、あんまり露骨なものは、ここで言うことは個人の名誉をいたずらに傷つけることになるばかりでなく、現在いまやっておられる人の収拾策をあえて遮断するようなことも好ましくないと思いますので、例をあげることを控えますけれども、これはやはり十分警戒をしてもらいたい。これはほかの人のときにはもっと露骨にやりますけれども、通産省はひとつかんべんしておいて……。通産省は多いのですよ。これ、ごらんになっていますか。見ておられないかもしれない。  そこで、通産省のことしの予算を拝見して、これは毎年のことでありますけれども、目の6の諸謝金というのが非常に多いのです。これは通産省行政の全部かと思われるくらい、諸謝金がいろいろな方面に出ておるのです。これは一つ一つとってみて、みんな悪いことかというと、みんなもっともなことなんです。これから排除すべきものは一つもない。実によくじょうずに並べて予算を獲得しているものだと思って感心する。諸謝金では各省のうちの筆頭ですね。ほかの省と比べてみると、約十倍以上は諸謝金として出ていますね。一体こういう行政をやらなければ、通産省というのはやれないのでしょうか。この点ひとつお聞きしておきます。いずれももっともなんですよ。
  149. 吉光久

    ○吉光政府委員 目の6の諸謝金でございますが、これは通産省のみならず各省でもやっておりますけれども、職員の研修を中心にいろんな形で研修をやっておるわけでございます。特に通産省の場合には守備範囲が広うございますので、あるいは外国語の研修でございますとか、経済関係の研修でございますとか、あるいは状況によりましては保安監督関係の取り締まり行政もやっておりますので、保安監督官等の研修をやるとかというふうに、守備範囲が非常に広うございますので、それに応じまして講師の諸謝金が非常にいろんな項目にわたりまして計上されておる、こういう状況でございます。
  150. 川俣清音

    ○川俣分科員 その程度の説明はこれを見ただけでわかるわけです。各方面にわたって講師の謝礼的なものもあるでしょうし、もっともなものだと思います。ただ、同じ行政をやっていながら、経済研修講師であるとか、技術研修講師であるとか、管理研修講師、行政研修講師というのがあります。ほかの省にも、こういうものに匹敵するものがありますが、比べてみますと、通産省はよほどりっぱな講師をお呼びになっておるのか、回数が多いのか、相当金額が大きい。これは悪いことじゃないのです。一体謝金をほんのわずか出して講師を頼んできたといういいかげんなものよりも、みっちりやっているという意味だと理解すると、非常に優秀だと思わざるを得ないのですよ。しかし、これだけのことをされるならば、あらためてお尋ねしなければならないのは、わりあいに通産省の旅費が多くないということです。こんなに守備範囲が広いとか関係が多いということになると、行動性がなければならぬはずです。行動性のわりには旅費が少ないのではないか。役所だけに閉じこもっておるなら別です。こういう研修させた者を外へ派遣をしようということになると、旅費が不足ではないか。行動性が不足ではないか。それでもほかの省よりもわりあいに旅費が悪くないのだと言えないこともないけれども、いまお説のようにこういう謝金を支払って勉強されるということになると、それを閉じ込めておいただけでは何にもならぬでしょう。これを産業界に、あるいはこれを一般にふえん宣伝し、そして産業を活発ならしめなければならぬのに、そのわりに旅費が少ないのではないかという感じを持つのですが、官房参事官いかがですか。
  151. 吉光久

    ○吉光政府委員 通産省の旅費の関係でございますけれども、旅費の総額につきまして、昭和三十九年度から四十一年度までの三カ年につきまして当初予算で比較いたしますと、大体四十年度は三十九年度に対しまして一八%増加、また四十一年度、現在提案いたしております予算案の関係では、本年度に比べまして二八%増というふうなことでお願いいたしておるわけでございますが、もちろんこの予算で十分とは言い切れないとは思いますけれども、できるだけ能率をあげまして行政運営の能率をあげてまいりたい、こういうふうに考えています。
  152. 川俣清音

    ○川俣分科員 確かに伸びはわりあいに高い。ここに大臣の政治性もあるということを見ないわけではありませんけれども、私の憂慮しておるのは、七百八十九万という謝金を払って、これだけの勉強をして、これを具体化するためには行動費としては不足ではないか。こんなに研さんを積んで、研修を積んだのを具体的に産業の面にあらわしていかなければならない。あらわすことが通産行政だ。勉強することが行政じゃなくて、これを具現することが行政でなければならぬ。したがって、行政のほうが不足ではないか。いや不足だけれどもがまんしておるということがあろうと思いますが、それでは具体的にお尋ねします。工業用水の調査旅費二百六十六万五千円ございますが、一体こんなことで工業用水の調査ができる旅費ですか。私が反省してもらいたいと思うのは、旅費よりも、出先へ行って、悪いことには出先で会議の支弁をしてもらう。切符を用意をしてもらう。これは通産省が非常に悪い例だと思う。農林省だとこれがやれない。相手が百姓だと、たまたま農協あたりで切符を委託して買ってもらうということがありますけれども、程度が知れている。帰りの旅費などはなかなか心配してもらえない。通産省は往々にしてある。現に私どもが出張したってあるでしょう、帰りのものまで。大体ありがとうと言う礼は、買ってもらってありがとうというばかりではない。金を出してもらった礼も含めた礼が非常に多い。やはり旅費が不足なところから起こってくるのではないか。たかが汽車賃ぐらい出せないなんということはないと思う。やはり旅費が不足なところから弊害を起こすおそれがあるのじゃないか。多額じゃありません。ごく少額なものですよ。問題にするにあたらないけれども、もう少し旅費等について厳格に支払ってやる、必要に応じて支払わなければならないものじゃないか。削減されたから、不足だからがまんしろでは、能率があがらないのじゃないかと思う。この点、大臣どうですか。
  153. 三木武夫

    三木国務大臣 非常に御理解のある発言で、私どももやはり旅費は少ないと思います。去年でしたか、炭鉱の調査に行って会社の寮に泊まって、世間の疑惑を受けたことがある。私は厳重にそういうようなことは——実費を払ったらしいのですけれども、実費を払っても、会社の寮に泊まるということは、調査の公正を害するのではないかという疑念を国民に与えるからいけない。直ちに宿をかわってやるようにということで、今後そういうことは厳に慎むようにということを各出先機関に申し渡したことがあるんです。したがって、旅費は少なくても、それをできるだけ効率的に使うということで、金額予算できまっておるのですからしかたがないですけれども、いやしくもそういう点で誤解を受けることのないように、今後注意をしていきたいと思っております。
  154. 川俣清音

    ○川俣分科員 それでけっこうなんですが、結局予算充実しなければならぬ。大蔵省に聞くと、通産省はわりあいに旅費を出しておる、こういう説明ですよ。だけれども、私から見ると、これだけの謝金を出して研修しておるのならば、これに即応したような旅費がなければ、この研修は生かされないのじゃないか。初め謝金を聞いて次に旅費と、こういうふうにお尋ねをしたのは、そこにあるわけです。なかなか旅費というものは取りにくい。謝金もなかなかとりにくいのをこれだけ背景も大きいし、手が伸びなければならないということの予算ならば、旅費についてもまた同様な考え方でなければ一貫していないんじゃないか、予算の効率が下がるじゃないか、こういう意味で官房参事官にお尋ねしておったわけですが、大臣答弁があったからこれでやめておきましょう。  特に工業用水調査など、あるいは水力発電調査の旅費等について、私は非常に懸念を持って見ておりました。というのは、阿武隈川の上流にダムをおつくりになった。私はあの奥へ行ってみました。それで発電所関係の人が見えたか、あるいは通産省の人が見えたかということを尋ねましたけれども、お見えになっておらない。ダムの地点からちょっと上の地点まで、ほんとうのダムの水源地である林相などはお調べになっていない。どういう調査ですか、気候雨量は調べた。しかし、雨として降った水が一体停滞しておるのか、地下水としてどのくらい一体滞留するかというような調査は、何にもなしです。この間林野庁にも注意しておいたのですが、木を切ったばかりなんですね。植えてもいない。切ったばかりで、ことしで六年くらいになります。したがって、山はだが荒れて土砂が流出するような状態です。すでに崩壊が始まっている。ダムの地点としてはりっぱだけれども、その上流を整備しておかなければ発電能力が低下する。一番低下しておるのは、この間も指摘したが、三浦の北の御嶽山のそばにあります濁川ダムというのは関西電力がつくったもので、つくってもう七、八年でダムは土砂で埋まってしまって、水がたまらない。発電所はそのままですよ。あんな非能率なことをしておる。機械は運搬もできない。これがみんな電力のコストになる。国家経済の上からも、もう少し調査を完備する必要がある。電力会社の損失だけでなく、国家経済からいっても不経済だと思うので、もっと徹底した調査の必要がある。それには旅館も何もないところに行かなければならないし、ほんとうに旅費など気の毒だと思うのです。もっと落ちついて、二日でも三日でもかけて上流まで見るということをさせなければ、調査の効果が薄いのではないか、こう思うので、官房参事官どうですか。現地に行った人に聞いてごらんなさい。もう一日おればよかったが引き揚げてきたというのが非常に多いのではないかと思う。これでは旅費の効率があがらないということになる。二日行けば完ぺきなものを一日で帰ってくるということは、前の一日の効率がなかったということになる。三木さんは科学的だから、こんなことはすぐわかるはずだ。通産省もみな科学者の集まりみたいな顔をしているんだから、このくらいのことはわからぬわけがない、私らのしろうとが言うくらいですから。これはどうですか。
  155. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘のとおりでございまして、旅費の使用面におきまして今後十分効率的に運用してまいりたい、こういうふうに考えております。
  156. 川俣清音

    ○川俣分科員 工業用水は、単に工業用水としてでなく、飲料水とも競合します。農業用水とも競合するわけですが、何といいましても、水源涵養を行なうことが先決だと思うのでございます。ただ、従来これだけの降雨量がある、これだけの流水量があるというだけでは不十分だと思うのでありまして、今後水利を拡大するという、貯蔵するのではなくて流水を拡大していくというような施設を講じていかなければならぬ。通産省の工業用水の大体の予算を見ますと、工業用水の水路を引く、水を引くというだけであって、さらに上に貯蔵能力を持つ施設を設置するというようなことはないようですが、この点いかがですか。
  157. 吉光久

    ○吉光政府委員 いまの工業用水の御質問でございますが、御指摘のとおり、工場で使う水を確保するというところに重点がございまして、ただし、その工場で使う水を確保いたします場合に、あるいは多目的ダムというようなことで、貯水という形でこれを確保するということも河川によってはあろうかと思いますが、それはそれぞれの現地の事情に応じまして処理いたしておるわけでございますが、まさに御指摘のとおり、工場で使用するというその水を確保する、工場の使用関係中心にして処理いたしております。
  158. 川俣清音

    ○川俣分科員 いや、質問しておるのは、工業用水は工場が必要とする水であることには間違いない。それをダムから引いてくる、あるいは川から引いてくるというだけが工業用水の施設になっておるのではないのですか。ダム以前の、ダムよりさらに上流の施設については、何にも考えられておらないのではないか、こういう点なんです。水はあるものという前提を置いたら、その前提に誤りを来たすおそれがあるので、工業用水を確保するというのは、水路を敷くだけが確保ではないのじゃないか。さらに雨量をダムに来る前に地不水として保留し、あるいは雨が降った場合に流出しないように渠溝等をつくって遊水させておく。遊水からさらに流出させるという方策を講じていかなければならない。通産省というのは科学的な頭で処理されるところなのに、水は雨が降ってくればあるものだというのでは、これは非科学的です。そこまでいかなければ、将来の工業用水は確保できないのではないか。
  159. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいまの水利用の合理化の問題、あるいは水資源の合理化と申しますか、この問題につきましては、実は経済企画庁のほうで総合的な計画を立案いたしております。関係省庁と協議の上でやるわけでございますけれども、そういう形で計画が立案されますので、その立案された計画に基づきまして、通産省も工業用水の利用関係を考慮している、こういうたてまえになっております。
  160. 川俣清音

    ○川俣分科員 いつもあなた方は、通産省から、工業用水が必要だということで経済企画庁に相談を持ち込んでおる、あるいは建設省に申し込んでおる。それはわかります。しかし、ないものをお互いに奪い合うという形で申し込みをされておるので、それは能がないことではないか、こう指摘したのです。これも指摘だけにとどめておきます。  もう一つ大臣がおられる間にお尋ねします。日本貿易の上から言って一番問題になると思われるのは、日本に産金量が少ないということだと思うのです。日本の開発というものは、皆さん御存じのとおり、日本貿易が始まったのは、あるいは人が日本に外国から渡来してきたのは何かというと、御承知のように、日本は産金国だということで、金をねらって日本に入ってきたのじゃないかと思われるわけです。それほど日本一つの産金国だった。科学調査があったわけではないでしょうけれども、風聞がもとかもしれませんけれども、やはり産金量が多いということが、外来者が日本の歴史の上に出てきたゆえんではないか。したがって、仏教ですら日本の金をねらって入ってきたのじゃないか。仏教が入ってくると同時に、金細工というふうなものが非常に盛んになったというところを見ても、仏教は金を求めて入ってきたのじゃないかと私どもは見ておる。そういうわけで、日本は産金量は必ずしも少なくなかったのですけれども、その開発がおくれておるということが一つある。  それからもう一つは、いま黒鉱ブームで銅が脚光を浴びてきておりますけれども、もう一つ日本の蓄積で残されておるのは、これは私の見解で、しろうと見解かもしれませんが、硫化鉄鉱だと思う。これは各方面に散在しておるわけです。この開発をやる必要があるのではないか。今後日本の化学工業が盛んになるとすれば、どうしても硫化鉄鉱の需要というものが必要性に迫られるのではないかというふうに考えますので、国内にある資源開発の上から見ても、日本の化学工業の基礎を与える上からも、硫化鉄鉱の開発についてはもう一段と努力しなければいけないのではないかと思いますが、この点についての見解を伺いたい。
  161. 三木武夫

    三木国務大臣 金については地質調査所などでやっていますが、実際金の埋蔵量というのは、日本の場合はあまり多くないですね。産金量もそう多くない。しかし力を入れてやらなければならぬ。  第二のお尋ねである硫化鉄鉱、これは各地にあるわけです。しかし、それがやはり亜鉛とか鉛、硫黄、銅などに付随してやっているわけですから、こういう方式に沿うて、今後国としてはなるべく広い範囲内で広域の調査をやっていくし、また最近では探鉱の事業団もできていますから、国がやる上に事業団としてもやっていく。将来の硫化鉄鉱などの需要ともにらみ合わせて、こういう点をわれわれとしても探鉱もするし、あるいはまたこういうものに対する生産も考えていかなければならぬということです。  銅については、いまローデシアの独立宣言があったり、ベトナムの紛争があったりして、銅の世界的な需給関係が非常に変化が起こっておるわけです。さしあたり政府の当面の対策としては、輸出に対して規制を加えるとともに、アメリカなどに対して銅の供給確保を要請しておるわけです。それから四月一日からは銅の関税を撤廃する。それから銅にかわるアルミなどによる代替の金属、これを奨励する、こういうふうなことを当面としては政策としてとっておるのですが、やはり国内資源開発、海外における銅鉱の開発、こういうものもやはり積極的にやらなければならぬ。当面の応急対策と将来のそういう開発の努力も伴わなければならぬ、こういうことで努力をいたしておるわけでございます。
  162. 川俣清音

    ○川俣分科員 時間がないので先に進みますが、せっかく通産省は地質調査所や、そういうような付属機関を持っておるわけです。単なる付属機関としてわずかに存在するものを、これを十分活用するように、あるいは予算の裏づけにおきましても、こうしたじみなところに出すのが、私は国民の要望に沿うゆえんだと思う。これは御承知のとおり、国会というふうなところはまことに情けないところですけれども、はでなことについては相当みんな努力をしてくれますけれども、こういうじみちな研究については、とかく投げやりというか、軽視するという傾向がある。いざ問題が起きた場合にはあわてるということになりがちでございます。これは常日ごろからの準備が必要なのであります。調査が必要なのであります。こういう点について、幸い三木さんが大臣のときに、こういう付属機関、地質調査所あるいはその他の機関、技術機関をフルに活用して、日本の資源の調査あるいは活用について研究をさすべきである、これが私、通産大臣の一番の使命じゃないかと思うのです。こういうじみちなことをひとつやっていただかなければならぬのじゃないかと思うのですが、この点についてひとつ。
  163. 三木武夫

    三木国務大臣 きょうの川俣さんの御質問は、全体として非常にじみではあるけれども、大事な点に触れた御質問で敬意を表する次第であります。はでな問題はみな取り扱うが、日本の鉱物資源の調査等はえてしてじみですが、あまり問題にならない問題をお取り上げになって質問をされるということに対して、われわれとしても非常に敬意を表する次第であります。  きょうは地質調査所の所長も参っておりますので、われわれとしても言われるとおり、こういうじみではあるけれども、日本産業のこれは基盤をなすものですから、力を入れていかなければならぬ。先般私がお答えしたことを地質調査所長が少し補足をして答弁をいたしたほうがよろしかろうと思いますので、金とか硫化鉱あるいは銅などについて、地質調査の見地から簡単に補足いたすことにいたします。
  164. 佐藤光之助

    ○佐藤説明員 私のほうは、御指摘のとおり地下資源及び地質に関する国として行なうべき基礎的な調査研究をしております。ただいま御指摘になりましたような金あるいは硫化鉄、こういうようなものも常に学問的に、大体日本でどのくらいのものが考えられるのかということは常日ごろこれが把握につとめております。御指摘の硫化鉄の問題につきましては、鉱床学的には大体日本におきまして約一億トンくらいあるんじゃないか。しかし、その中の掘れる部分が約半分、しかし、ここでこれを経済的に採掘するということになりますと、またそれ相応ないろいろ調査研究が必要になると思います。先生のおっしゃいますようなじみな仕事でございますが、今後も一そう努力して御期待に沿いたいと思っております。
  165. 川俣清音

    ○川俣分科員 日本の金の含有量も、実は私なりの調査では不足である。ただ、採算ベースに合わせるには困難かもしれませんけれども、ごく微量の金が各地に存在するということは否定できないのじゃないかと思うのです。ただ、これは採算ベースに合わせて、いわゆる産金鉱業として成り立たせることができるか、あるいは金を活用するまでの製造ができるかどうかということになると、問題があると思いますけれども、各土壌の中に金分があることは明らかでございましょう。たとえば南部鉄などには金の含有量があるといわれております。また、銅の中にあるのでなくして、むしろ土壌の中にあるのではないかとすらいわれてきたのでありまして、それだけに微量のサンプルがある。これをどうして地上に引き揚げるか、どうして一体活用していくかということは、今後の問題だと思いますが、採算ベースに合うところには至っていないと言うことはできるんじゃないかと思いますけれども、ないという地質調査の研究ではないと思う。こういう点で、ほんとうにじみなことで、しかし、じみでありながら国民経済に大きく寄与することでありますから、もっと勇猛果敢にと申しますか、いろんな予算上の制限は受けるでしょうけれども、これに耐えて、日本の基礎産業の確立のために一段の御努力を願いたいと切に希望する次第であります。したがって、この点の予算については、いま大臣の御答弁にありましたけれども、じみなことだけれども、通産省もこれにあげて協力する態勢をとられたいということを私は申し上げたのでありますから、そのつもりで御努力願いたいと思います。  次に、大臣、地方に出先機関を持っておりまして、地方産業にいろいろな助成あるいは指導をしておられるようですが、毎年一年に二回くらい通産局の局長会議を開いておられますが、今年の会議の結果、今後の日本経済の見通し等について議論になりました点を資料としてお出し願いたいと思うのですが、どうでしょうか。
  166. 三木武夫

    三木国務大臣 中小企業の実情につきましては、近日中に中小企業白書を出しまして、そうして、これには相当詳細にわたって一応中小企業の金融、税制、各般の問題について、われわれの集め得た資料を白書の中に盛ってありますので、御参考に供したいと思います。
  167. 川俣清音

    ○川俣分科員 了承しました。これで質問を終わることにいたします。
  168. 坂村吉正

    坂村主査代理 これにて川俣清音君の質疑は終了いたしました。  次に、田中武夫君。
  169. 田中武夫

    田中(武)分科員 きょうは中小企業基本法を中心に若干の質問をしてみたいと思います。  まず第一に、通産大臣承知のように、中小企業基本法の十三条には、「事業の共同化のための組織の整備」というようなことがうたってあります。今日中小企業の組織は、中小企業等協同組合法、団体組織法、環境衛生の同業組合、いろいろといわゆる縦の線にもたくさんの法律によって組織がきめられております。地域的には商工会議所あるいは商工会法、商店街振興組合法、こういったように、業種別には縦あるいは横、地域的にもいろんな法律がありまして、私はこの法律を整理する必要があるんじゃないか、このように考えまして、社会党といたしましては、中小企業基本法提出以来、組織法というのを出しまして、組織の一元化ということを考えておるのです。一つの商店なり一つ企業二つも三つも、あるいはもっと以上の団体に加盟しているのが実情でありまして、いわゆる組合への掛け金もたいへんだと思うのです。そこで、少なくとも私は、縦の線としては業種別には一つ、地域的には一つ、こういうように整理すべきではないかと思うのです。  そこで十三条の事業共同化のための組織整備について、基本法ができましてから三年、通産省なり中小企業庁は、組織整備についてどのように努力をせられ、またどういう方針で整備をしていこうと考えておられますか。
  170. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、私も田中さんのように考えます。いろいろなものがあるが、やはり、これはもう少し単純化したらいい。しかも、中小企業の場合には、組織化というのは中小企業対策の大きな柱の一つだと思います。近代化などと並んで、やはり組織化というものは政策の柱だと思います。また、中小企業基本法の中にも、組織化というのは重要な問題として取り上げられておる。いま中小企業政策審議会の組織小委員会で、やはりもっと組織を強化し、単純化するというような含みを持ちまして検討を加えておるところで、できるだけ早く成案を得たいと考えております。
  171. 田中武夫

    田中(武)分科員 たとえば中小企業等協同組合法と団体組織法ですね、できたときにはそれだけの意義があったと思います。しかし、その後相互に改正がなされまして、今日では商工組合と協同組合では、ほとんどやれることが同じなんです、ことに、商工組合の設立に対する不況要件というものを削除してからというものは。だから、これなんか一本にしたらいいんじゃないか。そうなりますと、かつて私は、大堀さんが中小企業庁長官のときに、そういう問題を詳細に取り上げたことがあるのです。そのときに、一つ提起をした問題として、たとえば団体組織法の九十六条、事業協同組合への組織変更というのがあります。事業協同組合でやることも商工組合ができるわけなんです。だとすると、いまさら組織変更の必要もないのです。だからこういう条文は整理せよ、こういうことを申し上げたことがあるのですが、その後企業庁のほうで、どうですか、いま大臣のおっしゃったように、あげて中小企業政策審議会に諮問をしただけで終わっておるのですか。この問題につきまして、組織整備のことについての方針、そういうものを明確にしてもらいたい。  ついでに大臣に、社会党は、組織整備のときに、協同組合方式でやるというのを組織法で出しております。それについて、大臣はどういう組織形態がいいのか、あわせて御答弁願います。
  172. 三木武夫

    三木国務大臣 協同組合という方式は、中小企業の中のやはり中心的な組織体だと私も思っているわけです。いろいろな、縦、横、地域的な、業種的な、形態はいろいろ違っても、協同組合というものは、やはりこの方式は育てていくべきものだというふうに私は考えております。
  173. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 組合の法制につきましては、かねてから整理再編成の必要があるという各方面からの御要望に応じまして、ただいま中小企業政策審議会の組織小委員会におきまして、鋭意その改正のための審議をしていただいております。特に最近は相当に頻度を高めまして、おそらくいままでに、いわゆる正式の小委員会だけで二十回をこえておると思います。その間に随時担当者だけで集まりまして検討も続けております。  なお、役所としても、事務レベルで、できるだけその下準備的な作業を進めることが必要であるというので、改正準備室というものを、ごく非公式のものでございますがつくりまして、担当の事務官数名で、本質的な勉強も並行してやっております。その場合のねらいといたしましては、一つには全般的な法制の相互間の関連をもっとすっきりさせるということが一つのねらいでございます。それから、同時に、もう一つは、最近組合の中で協同事業を、それが従来の協同組合の観念だけでは律しられそうもないような新しい現象が出ておりますので、いわゆる協業化の問題を、新しい組合法制の中にどういうふうに織り込むか、この問題も重要なテーマの一つとして検討いたしておる段階でございます。
  174. 田中武夫

    田中(武)分科員 それで、大体いつごろに結論を得て組織整備の法案を国会へ出すことができるかということが一点。  それから、今度近代化資金助成法を改正して、いわゆる新しい試みとしてボランタリーチェーンのことも考えておられるようですが、これは、大体東京で言うならば新宿あるいは銀座あるいは池袋といったところに一店ずつを選んで、そして三十以上のところでチェーン化しよう、こういう考え方のようなんですが、中小企業の組織というものは、地域に土台を置いて発展してきたことは、いなめない事実であります。中小企業者自体も地域性というものが強いと思います。このボランタリーチェーンのときに、この地域性というものが考えられていないのだが、新しく制度の恩典を受けるというか、このボランタリーチェーンをつくろうとする場合には、新しく協同組合をつくる、あるいは連合会をやる、こういうことだが、地域性の問題についてはどう考えておられますか。
  175. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 まず第一に、組合法制の改正の時期の問題でございます。なかなかこの本質的な問題点を多く含んでおります関係上、はっきりした時期の予測はむずかしいのでございますけれども、今日ただいま、私たちの目標といたしましては、一年後の通常国会に提出するようにいたしたいということを目標として努力をいたしております。  それから第二点のボランタリーチェーンと地域との関連でございますが、今回のボランタリーチェーンにおきましては、従来のように必ずしもある地域に一緒におるということを必要としませんで、場合によれば、地域の離れたところに同じ系統のものがチェーンをつくるということも考えておりますので、特に固定した地域性というものを必ずしも考えていないわけでございます。
  176. 田中武夫

    田中(武)分科員 いや、だから中小企業の組織というものは、大体地域性の上に立って発展してきたと思うのです。必ずしもそうではないかもわからぬが、だから地域性にこだわらずにやるということはいけないとは私は言っていないのです。同時に、地域性を加味したものということも考えるべきじゃないか、その名前がボランタリーチェーンといわなくても、いわゆる小売り商のチェーン化といいますか、たとえば、いまの構想だと、商店街振興組合は該当しないわけでしょう。だから、そういうものを考えていくというようなことも必要ではないかということなんです。それが一つ。  時間がないからとっととやりますが、次に、大臣、同じ近代化資金助成法を改正して、機械の貸与制度というものを新たに考えておられる。その機械は一体どういう種類のことを考えておられるのか。その中に建設機械なんかも考えておられるのかをお伺いします。
  177. 三木武夫

    三木国務大臣 各府県に貸与制度の機関ができますね。そして中小企業が希望する機械を買って、そしてそれを貸与するという仕組みになる。その中にはむろん建設事業の機械も含んでいるということでございます。
  178. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 地域的なものというお考えでございますが、実は、従来も商業の段階におきましては、地域性が主体になったいろいろな制度がありまして、また、それに対する助成もいたしてきておるわけでございますから、それはそれとして今後も育成をはかってまいるつもりでございます。ボランタリーチェーンは必ずしもそれにこだわらない新しい行き方でございまして、従来のものと置きかえるとかいう意味でございませんで、並行して両方とも利用していきたい、こういうふうに考えております。
  179. 田中武夫

    田中(武)分科員 小売り商のチェーン化という問題では、地域性も加味したものも考えておる。あるいはまた、今後も推進していく、そういう意味に受け取ってよろしゅうございますか。
  180. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 いわゆるチェーン化といいいます場合には、今回そういう新しい用語を使い出したわけでございますが、ある程度分散をしておる。その地域が、たとえば東京都の中に何軒か小売り商が分散しておって、それがチェーンになる、こういうことは考え得ると思います。いままでの考えのように、ある地域に集合して、たとえばスーパーマーケットをつくるとか、寄り合い百貨店をつくるとか、あるいは商店街をつくる、そういう意味の密着した地域性というものはボランタリーチェーンの場合は当てはまらないと思います。
  181. 田中武夫

    田中(武)分科員 いや、そのボランタリーチェーンじゃなしに、地域というものに主体を置いた小売り商のチェーン化ということは考えていますかということです。
  182. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいま申し上げましたように、あるやや比較的広い地域の中に……
  183. 田中武夫

    田中(武)分科員 いや、ボランタリーチェーンを説明してくれと言っておるのじゃないのだよ。地域に密着した小売り商のチェーン化ということも考えていますか、こういうことなのです。
  184. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 従来からあります商店街の近代化というように、ある地域にまとまっている、こういうものも、もちろんそれでやります。ちょっと先生の御趣旨が……。
  185. 田中武夫

    田中(武)分科員 ともかく、また法案のときにじっくりやりましょう。  大臣、機械貸与の問題ですが、現に機械を貸与することを業としているものを調べてみたのです。そうすると、ほかの機械にはあまりなさそうですが、建設機械を貸す、こういうことを業務とする会社がだいぶあるわけなのです。全国で二千社ほどあるそうで、その大部分はやはりいわゆる中小企業だそうです。そして五千万円以下の資本、すなわち中小企業です。そして五百万円以上のところくらいで、東京で二百社、地方で二百社ほどあるそうです。そうすると、もちろん今度の宮城、福島、秋田、石川、長野、兵庫の六県の中には東京の二百社のは含まれていないのですが、片や中小企業振興で考えた施策が、一方において同じ業種の中小企業が二千軒ほどあるわけですが、その二千社ほどを滅ぼしていくということです。そういうような矛盾についてはどのように調整をせられる予定ですか。
  186. 三木武夫

    三木国務大臣 これは中小企業のためにということで機械貸与制度をやるのですから、そのことで従来の中小企業がつぶれていくということならば、その土地、土地の事情を勘案して、その間両立ができるような調整を行なうことにいたします。
  187. 田中武夫

    田中(武)分科員 きょうは議論はやめて前に進みますが、そういうことにも関連がありますが、基本法の十五条、近代化促進法の十条には、この間もちょっと予算委員会で申し上げたが、「事業の転換」とか「転換の指導」ということがうたわれているわけです。ところが、実際はこの条文は動いていますか。具体的にどのような運用をし、どのような効果をあげてきたか、お伺いいたします。
  188. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 「転換」ということばがうたってございますが、中には従来の事業をやめて新しい事業を始めようという場合に、その新しい事業を始めることにつきまして、近代化の資金とかあるいは高度化の資金等が使われることは、これは従来も行なわれておったところでございます。それから、特にいままでの仕事をやめて転廃業するという点につきましては、実はこれという制度がないのでありまして、これからさらに整備をしていく必要があると思います。今回その一つの新しい試みといたしまして構造改善準備金制度というものができまして、組合で、将来転廃業する人のための見舞い金や転廃業資金に充てるための積み立てをするという場合に、そういうことがしやすいようにするというわけであります。
  189. 田中武夫

    田中(武)分科員 近代化促進法の十条はいまあなたがおっしゃったような意味なのですか。基本計画を立て、近代化を促進していく中において、転業等をやらねばならないものができてきた場合に、その指導をする、そうじゃないのですか。したがって、今日までそういうことを積極的にやったことはないでしょう。具体的事実があったらあげてみてください。
  190. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 この場合の転換という意味でございますが、中には従来、たとえばキリの和だんすをつくっていたところが、今度は洋式のたんすとかテーブルをつくるように転換する、こういうようなこともございますし、また同じ織物屋にいたしましても、従来の綿とか毛とかから新しい合成繊維に切りかわる、こういうこともございますので、そういう広い意味の転換というのがこれに入ると思います。
  191. 田中武夫

    田中(武)分科員 いままでにそういう申し出はありましたか。転換の申し出がある場合はとあるが、申し出はあったか。
  192. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 近代化促進法に基づきます近代化計画をつくって、従来業種ごとに近代化の促進をしてまいっておりますが、その中にはただいま申し上げたような性質のものが入っております。
  193. 田中武夫

    田中(武)分科員 申し出はあったかというのです、積極的な。
  194. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 その場合に、中には必ずしもそういう転換ということを標傍して言ってきているのではなくて、広い意味の近代化ですが、内容自体が実はこういう転換によるというものもございます。それから一ころ北陸の絹織物が相当大きく合成繊維に転換をしましたが、そういう場合にも近代化資金その他が活用されております。
  195. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣、この間もちょっとこの点に触れたのですが、これはいわゆる積極的な場合に適用するようになっているのですね。しかし、中小企業の振興、近代化ということが積極政策なら、倒産防止は消極政策として重要な政策だろうと思うのです。もちろんこの条文からそういうように読めるかどうかは別として、そういう面に立っての業種転換あるいは転換資金、そういうものを考えていかなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  196. 三木武夫

    三木国務大臣 今度の高度化準備金というもの、税制上の新らしい制度などを設けましたのも、転換というものの資金というような考え方によってそういう新しい制度を設けたのですが、これはやはり非常に大上段に振りかざして、転換というようなことは、非常に混乱を起こす面もありますから、これはやはり一つ中小企業の指導の面においてこの問題は取り上げて、そうして将来こういうふうな開放経済のもとで、経済も非常に変化の激しいときでありますから、転換を必要とするものがやはりこれから出てくる。そういうことにならざるを得ないので、そういう対策というものはわれわれとしても用意しなければならぬ時期になるのではないか。いままでの施策が、いろいろ申しておりますけれども、あまり十分でないことは事実で、そういうことで転換に対してのわれわれの一つ体制を整えておくという必要は私あると思うのです。
  197. 田中武夫

    田中(武)分科員 きょうは、ここで議論する時間もありませんので結論を言いますが、今度総合指導所というものをつくりますね。こういうところでそういうようなことを十分にやっていけるような体制にしてもらいたい、こう思うわけです。  それから近代化促進法の第三条では、一項二号で、「産業構造の高度化又は産業の国際競争力の強化を促進し、」云々と大きく大上段にかまえておるのですね。そして政令でもって何を指定したかというと、第一番に清酒としょうちゅうを指定したのですね。法律では国際競争力、産業構造の高度化といっておいて、しょうちゅうというのはどうなんですか。したらいけないとは言っておりません。しかし、どうも法律では大上段にかまえて、実際は何かみみっちいというか、あまりそう急がなくてもいいようなものが入っていますね。こういうことはどうなんですか。  さらに、ついでですから申し上げます。この近代化促進法に基づいての基本計画ですね。これは当時のいわゆる高度成長経済計画、あるいは佐藤内閣になってから中期経済計画というような上に立って基本計画が立てられたと思います。しかし、今日、内閣においてそれらを御破算にしたのですから、その上に立ってつくった基本計画は、何といいますか、新たな政府経済計画に合わすように基本的に変更する必要があるのじゃないか、こう思いますが、どうでしょう。
  198. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 まず第一に近代化促進法の指定業種につきまして、第一項の指定が清酒、しょうちゅうになっておりまして、これは御指摘のように、何となく大上段に振りかぶった条文から言えばどうかという印象は、これは免れないと思います。しかし、この清酒業界につきましては、業界自体が非常に近代化、合理化、ある意味から言うと企業再編成に熱心でございまして、ひいては、ある意味から言えば、おいしい清酒ができれば、少しでも輸入の防遏になるということで指定した次第であります。その後、次第に基礎的な産業の関連の部門、輸出振興に寄与するもの、あるいは国民生活の安定に寄与するもの、こういう観点から選択をいたしてきております。  それから次に、基本計画について非常に重要な御質問がございましたが、近代化促進法の基本計画を作成いたします場合には、一応五年後の目標をまず定めまして、これを基本計画とするわけでございます。その後毎年実施計画を作成いたしております。したがいまして、実際の問題といたしましては、毎年の実施計画作成の際に、そのときの情勢を織り込みまして、そうして事実上適当な修正を加えながら進んでおるのが現状でございます。
  199. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣、いま長官がはからずも言ったように、業界が非常に熱心だった。国際競争力とか、産業の構造の高度化とかうたっておっても、結局は業界が熱心だというか、言いかえるならば、ボスがおるというか、そういうところのほうが指定を受けておる。これは法律の精神からいって、私は必ずしも当を得ていないと思うのです。そういうことについての大臣考え方と、時間がないので飛ばして申しますが、現在の下請代金支払遅延等防止法では、土建業が入っていないわけです。これは公取の所管ですが、そこで一番の問題は、土建業なんかひどいと思うのです。だから下請代金支払遅延等防止法をやはり土建業にも考える必要があるのじゃないか。  それから労働災害を見ましても、最近労働災害が非常に多いわけです。たとえば名古屋のタンカーの火災等を見ましても、下請関係といいますか、下請の従業員の犠牲が多いわけです。その辺にやはり何か元請と下請、親と下請との間に問題があるように思うわけなんです。そこでそのことについて、公取と通産大臣とにお伺いするわけですが、下請の近代化ですね。近代化促進と、こうおっしゃっておられますが、どういうことを考えておられるのか知りませんが、下請の近代化とは何かというと、親企業と前近代的な、いわゆる封建的な身分的従属関係にあって、そうして言うこともよう言わない、こういうような状態に置かれておる下請企業と親企業との身分的従属関係を、まず近代的な請負契約なりそういうことが十分にやれるようにしてやることこそ近代化だと思うのです。ところが、現在の近代化促進法では、そういうことはできませんね。一体、近代化促進法と大きく名を掲げておるけれども、この法律はそういった基本的なことを直すことはできないと思うのです。そういうような問題、この下請と親企業との関係の中に、労働災害等を見ましても、何かすっきり割り切れないものがある。そのことについて、労働省等の考え方を伺いたい。  時間がありませんから一ぺんに聞きましたので、質問の要点がよくわからなかったかもしりませんが、公取、通産大臣、労働省、お答え願います。
  200. 三木武夫

    三木国務大臣 下請の問題ですが、これはやはり下請代金支払遅延等防止法なども、通産省の場合、立ち入り検査をやった件数も相当にあるわけです。むろん法律を厳重に実行しようということで相当の努力もいままで払ってきておるわけです。しかし、また一方においては、下請と親会社との関係、これをただ法律の条文だけの関係ではスムーズにまいりませんから、下請と親会社との間にいろんな協議会などをつくって、これを通産省があっせんをしたりして、いま申されたようなしわが下請に寄らないような努力はしたわけでございます。しかし、やはりいま御指摘になったように、従属関係というようなことで、どうしても弱い立場にありますから、下請をやはり組織化せねばならぬ。組織化して、そうして発言権が対等にあるようにしないと、やはり下請は個人としては弱いですからね、そこに下請の組織化というものは大きな問題を含んでおると思います。そういうことで、下請関係というものは、私どもも今後下請関係の地位の向上、近代化ということについては、一段と力を入れなければならない弱い面だというふうに考えておる次第でございます。
  201. 北島武雄

    ○北島政府委員 下請代金支払遅延等防止法は、御承知のとおり製造事業と修理事業の関係に限っておるわけでございますが、土建なども入れたらどうか、こういうお話でございます。この点につきましては、昨年その下請代金支払遅延等防止法改定に際し、国会の御決議もございますので、当委員会といたしましても検討はいたしておりますが、ただ何分にも下請代金支払遅延等防止法の施行に当たる人員がきわめて私どものほうは少数でございまして、昨年強化された下請法の実施に目下手一ぱいだという状況でございますので、当分は昨年強化された現行法を十分にやってみて、その上でまた事態に応じて適宜拡大したらいいんじゃないか、かように考えております。
  202. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 労働災害につきまして、下請関係の労働者の災害が大企業に比べて多いという点は御指摘のとおりでございまして、私どもも従来から非常に頭を悩ましておりますが、なかなかこれといったきめ手がございません。一昨年新しく災害防止団体等に関する法律というものをつくりまして、下請と元方が混在する場合に統一的な安全管理ができるようにというふうに制度的にはいろいろ考えておりまして、また、実際問題として下請だけの安全協議会というものをつくらせる、いろいろなことをいたしておりますが、依然として下請の災害というものは、元方と申しますか、大企業に比べてかなり高率でございます。私どもといたしましては、これは下請のあり方そのものについて改善すべき点もあるのではないかという気はいたしますが、労働省といたしましては、直接それについて経済体制そのものをどうこうという力もございませんので、中間搾取とかいうような典型的な形が出てきた場合にだけこれを何とかするというふうにだけしかできませんのですが、最近の事情にかんがみまして、たとえば造船業について近く一斉監督をするという考えでおりますが、その際にも下請の危害防止というようなことに特に重点を置いてやるというようなことで、微力ではございますが、できるだけのことをいたしておるつもりでございます。
  203. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間がないので議論はやめますが、親企業が危険な仕事を安く下請に押しつけているんじゃないかという気がする。それから安全管理の問題が、責任がどこにあるか、あるいは親との間に直接雇用契約はないとしても、そういう保障等について親の責任とかいろいろあると思うのです。しかし時間がないからまたの機会にいたします。  それから通産大臣、基本法の十九条には、中小企業の事業活動の機会の適正な確保、いわゆる新分野の確保、そういう規定がございまして、社会党は御承知のように中小企業の分野確保の法律を何回か出しております。また小売商業調整特別措置法では、十五条にいわゆる小売り商の分野確保のためにあっせん、調停というような規定もございますが、これも実際は空文化しておる現状であります。そこで、十五条の一項一号を見ましてもおわかりのように、メーカー等の販売についての紛争について規定してあるのですが、今日メーカーの直売あるいは系列販売、こういうものはますます強化せられておる。こういう問題と、事業分野の問題、それからメーカーの系列販売に関連して再販価格維持契約、ことに薬とか化粧品、いろいろ問題があると思います。また具体的には商工委員会で議論しますが、時間がありませんので簡単でけっこうですが、基本的に通産大臣あるいは公取委員長、こういう問題についてどう考えておりますか。
  204. 三木武夫

    三木国務大臣 分野の確保につきましては、御承知のように特殊契約制度があって、中小企業団体と大企業との間の調整、それから主務大臣のあっせん、調停を法定しました。現在まで適用の事例はあまりないのでありますが、しかし、こういうふうな立法があるということで、これを背景にして解決をされておるわけで、この立法が背景にあるということは、やはり相当な効果を出しておると考えるわけでございます。(田中(武)分科員「ところが何もないんだよ」と呼ぶ)そういう点でやはり中小企業の分野は確保しなければ、大企業が進出するということはますます狭くいたしますから、今後ともこの点に分野確保については十分われわれとしても意を配っていかなければならぬ。たとえば官公需などに対して、これは私どもいま事務当局に命じて何か立法的な措置はできないかというようなことを至急に研究するように私も申し渡してあるわけでございます。われわれのほうとしては、できるだけ中小企業の分野を確保するという努力をしなければ、弱いのですからどうしてもその分野は狭められておるということで、今後とも気を配ってまいりたいと思っております。
  205. 北島武雄

    ○北島政府委員 再販売価格維持契約は一応の理由はあるわけでございますが、最近の物価事情にかんがみまして、いろいろ問題となる点があるわけでございます。そこで公正取引委員会といたしましては、公正取引委員会の過去において指定しました九品目について、まずその商品が適当であるかどうかということを再検討いたしまして、とりあえずそのうちでほとんど行なわれていない四品目については、指定の取り消しあるいはさらに範囲をきわめて縮小したばかりでございます。残りの五品目につきましても、さらに検討を加えまして、これが自由な競争が行なわれていないということがございますので、再販売価格維持契約の要件に該当いたしますので、そういう残っている品目についてさらに検討を加えていきたい。それと公正取引委員会が指定している商品でなくて、再販売価格維持行為が行なわれているものがございますが、こういうものは違反として取り締まっていきたい、こう考えております。
  206. 田中武夫

    田中(武)分科員 この一点で終わります。  公正取引委員会が、最近十年間くらい指定してほっておったやつに向かってだいぶ活動しておられるのには、私は敬意を表しています。もう一つ努力をしていただきたいと思います。  それから、大臣にいまの事業分野の確保、それから受注の確保、紛争調停、これは単独立法が必要だと思うのです。だからこれは、われわれのほうにも原案は持っておりますので、大臣のほうでもひとつ政府案として早急に単独立法ができるように努力してもらいたいと思います。  それからもう一つお伺いしておきますが、実は商工会法の第七条では、商工会議所との地域重複を禁止しております。これは当時商工会法審議のときに問題になったわけなのでありますが、商工会議所と話し合って、大都会では、たとえば東京では区ごとに中小企業の指導のための部会を置くとか、なにかというようなことに話がついたようですが、それもうまくいっていないし、ことに私は、商工会議所は大企業のサロンになっている。したがって、商工会こそやはり中小企業のための地域組織ではないか、こう考えるので、七条を検討し直して、必ずしも商工会議所との地域的な重複を禁止する必要もないのじゃないか、必要に応じては東京とか大阪のようなところはやらしたらいいのではないか、こう思いますので、第七条の検討の問題、さらにこれに関連して、中小企業の指導員といいますか普及員、この人たちは本来の指導という仕事のほかに、いわゆる金融のための書類を書かされたり、あるいは税務署へ提出する書類を指導したりということで、なかなか忙しいようでもあるし、ことに相当な専門知識も必要だと思うのです。ところが、現在のような給与でいいのかどうか、これではいい人を集めることができないと思います。さらに現在この指導員の身分があいまいであって、御承知のように団体職員ということになっている。したがって、退職金だとかあるいは将来の共済の問題等については、何らきまっていない不安定な状態である。そこで、たとえば地方公務員にするとか、何かそういう身分をはっきりさす必要があるのではないか、そのように考えるわけなんですが、そのことについてどのように考えられておるのか、それをお伺いいたします。  それからこれはもう何べんも聞いたことですが、基本法の当時から議論になっております中小企業省の設置、これはいまさら私から必要を申し上げるまでもないと思うのですが、やはり中小企業の発言を代表して申し上げると、三木さんがいま閣議で中小企業の発言を代表していないとは申しませんが、やはり通産省という立場になりますと中小企業プロパーではないと思います。したがって、中小企業省を設けて国務大臣を置く必要があると思うのですが、これはまだいま考えていないというような総理の答弁もあったようですけれども、これはぜひ考えてもらわなければいけないと思いますが、所管大臣としていまの三点についてお伺いいたします。
  207. 三木武夫

    三木国務大臣 第一点は、商工会議所が必ずしも中小企業を疎外しておるわけではないのでありますが、確かに何か大企業のような一つの色彩を持っておるような面もありますので、商工会と地域的にダブってもいい組織は至急に検討いたしたいと思います。  第二点の指導員も、われわれもやはり実際指導員というものは、中小企業の場合に何よりも大事なのは相談相手で、いろんな点について相談に乗ってくれるという人が一番ほしいんだと思います。ことに零細企業の場合ではそういう必要度がさらに多いと思いますので、指導員の地位、身分、待遇というものは、再検討いたします。  それから第三は、第一、第二に比べてそう積極的な発言はできないのでありますが、それは機構だけでなしに通産行政の中でもどうしてもやはり中小企業対策というものは最重点ですよ、今日の通商産業政策の中で。そういう点で中小企業庁であるからといって、必ずしもこれで中小企業対策がうとんぜられておるわけではないので、まあ大企業というのは力を持っておるのですから、しっかりやれといっておけばいいので、たまたまこういう不況になっておるから、調整、行政指導とか、いろんな調整あっせんというようなことがありますが、これは景気が直ってきたらしっかりやれといって、通産行政の重点はやはり中小企業に向けられるべきものだ、そういうことで必ずしも省にしなければ中小企業対策が前進しないと私は思っていない。だからこれは一、二に比べてまあ検討はいたしますけれども、中小企業省を早急につくるという考え方にはなっていないのであります。
  208. 田中武夫

    田中(武)分科員 それからさっきの分野確保とか、紛争調整とかについての単独立法は……。
  209. 三木武夫

    三木国務大臣 いま何もかもそういうものを全部単独立法とは考えていないのです。いま私が研究して至急結論を出すようにというのは、官公需のものに対して、もう少し中小企業の分野を確保できないかという点です。ほかにも中小企業の分野確保に関連をする法律はありますから、いまのところ全部ひっくるめてという考えではないのであります。まあ官公需についてはもう少し立法的な措置は講じられないであろうかということを申しておるわけでございます。
  210. 田中武夫

    田中(武)分科員 通産大臣の御答弁は大体七十点ぐらいだと思うのです。あとは私も意見があって議論したいですが、分科会ですからきょうは問題点をずらっと並べただけで、あらためて商工委員会で一項目、一項目、議論をします。  主査、どうもありがとうございました。
  211. 坂村吉正

    坂村主査代理 これにて田中武夫君の質疑は終了いたしました。  次に、山下榮二君。
  212. 山下榮二

    山下分科員 大臣、まことに恐縮ですけれども二、三お尋ねをいたしたいと思います。  まず三点について伺いたいと思います。その第一点は会社更生法に関する問題であります。第二点は工業用水、先ほど問題になっておった問題であります。第三点は化学工業の発展に伴いまして、最近非常に化学関係の爆発が多いのでありまして、これの取り締まりあるいはそれのいろいろの構造等について伺ってみたい、かように考えておるのであります。  まず最初に会社更生法に関して伺ってみたいと思うのですが、会社更生法という法律自体については、これは法務省の関係であろうと想像いたすのであります。しかしその適用されるところは御承知のごとく通産省所管関係に適用されるのでありまして、したがいまして、この際三木大臣にお伺いをしておきたいと思うのであります。  まず第一に伺いたいと思いますのは、会社更生法は大企業の、私は悪法とまでは申し上げませんが、悪用される危険のある法律である、かように考えるのであります。したがいまして、大臣は、真にわが国中小企業、零細企業というものを保護育成するためには、会社更生法の改正その他振興策について一体いかようにお考えになっておるか、その辺のことをお伺いをいたしたい、こう思うのであります。
  213. 三木武夫

    三木国務大臣 私も山下さんと一緒に、これは弊害が非常に出てきておる、会社更生法は改正をすべきものであると思う。いま法務省が中心になって審議会で検討を加えておる。改正しなければいかぬ。  その第一点は、これは安易に乱用すればいまにも会社をつぶしてしまって、そして既往の債務はたな上げしてやるというようなことになれば、それは無責任考えれば早いことつぶしたほうがいいというような、そういう風潮は日本の産業の秩序の上からいかぬ。乱用せしめぬということが第一点。  第二点は、これが下請にしわ寄せする。零細な下請企業の債権をもっと確保しなければいかぬ。ことに働いておる労務者の退職金とかそういうものに対して、もっと確保しなければいかぬ。いわゆる労働者もひっくるめて下請中小企業者、この保護がいまの会社更生法は足りない。  第三点には、裁判所がもっとやはり経済官庁との間に緊密な連絡をとる必要がある。ただ法律的に更生法適用の要件が備わっておるかどうかというだけでなしに、もう少しやはり経済政策的な判断も要りますから、もっと連携を強化しなければいかぬ、こういう点について現在の会社更生法はできるだけすみやかに改正すべきものである、弊害の点が非常にあるということは山下さんと同感でございます。
  214. 山下榮二

    山下分科員 大臣から同感の意を表されて、まことに意を強くいたしました。  そこで私は、政府としてぜひとってもらいたい具体的なことについてお伺いをいたしたいと思うのでありますが、御承知のごとく会社更生法は国家の権力で債権を凍結するのであります。そうでございますから、その代償として政府は凍結された債権に対して見返りの融資を行なうべき考え方をやはりさるべきではないか、こう思うのでございますが、これにつきましてはいかようにお考えでございますか。
  215. 三木武夫

    三木国務大臣 融資のあっせんはいたしておるわけであります。これは政府が直接というわけには、やはり私企業としていきませんが、融資のあっせんはして、その企業が立ち直るような協力はそれは当然にすべきだと考えます。
  216. 山下榮二

    山下分科員 ただ融資をあっせんするというだけではなくして、あるいは回収不能となった債権は回収され得ない期間は損金としてこれを認める、あるいは損金勘定の中に繰り入れて課税対象にしないようにするとかいうようないろんな政府としての方策があろうと思うのであります。こういうことに対しましては一体いかようにお考えになっていますか。
  217. 三木武夫

    三木国務大臣 政府委員のほうからお答えをいたします。
  218. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 信用保証制度によりまして保証がついておりますれば、その分につきましては当然保証協会が肩がわりをするわけでございます。  それから、経理上の問題につきましては、焦げつきになってそれがその債権を放棄するという何かおそらく法的なけじめが必要なんだろうと思いますけれども、私ちょっとただいまここで明らかにしておりませんので、調査した上で……。
  219. 山下榮二

    山下分科員 そこでいろいろ最初に大臣が申されましたように、政府としても、法務省の関係で会社更生法の改正等の考え方もあるというお考えのようでございますが、先ほど田中君との質疑応答を伺っておりまして、通産省中小企業、零細企業に対していかに育成強化に努力されようといたしておるかということは、うかがい知ることはできたのであります。ただ問題は、私はこういうときに倒産によって連鎖反応を起こす倒産、中小企業のこまい工場ですか、こういう工場に対してはできるだけ資金の融通に関する特別の立法措置をもって政府が保護してやるべきじゃないか、かように考えるのであります。先ほど応答を伺っておりましても、まだ何か知らん、もの足りない感じがする。日本の産業の成り立つゆえんは、何といいましても、大企業じゃなくして、中小企業にあることは論をまたないのであります。ただ口先で中小企業の近代化だのあるいは合理化だの、こう言うただけでは、中小企業は立ち直らないのであります。一例をとって申し上げますならば、先ほど系列等の関係のお話もございましたが、系列下請工場にいたしましても、これを近代化するというなら、あるいは企業仕事の専門化を考えるとか、もっと企業全般の上から考えまして中小企業というものの日本の現規模における産業にマッチした体制というものを打ち立てるべきではないか、こういう考え方をわれわれは持つのであります。そういうことに対して一体どういうお考えを持っていらっしゃいますか。私の党では、御承知のごとく、今国会にはこれら関連倒産の中小企業、零細企業に対する資金の融通に関する特別措置法案をつくりまして、国会に提出はいたしておるのであります。しかし、ただ金融面だけでは日本中小企業が近代化し、立ち直るというわけにはまいらないのであります。私はここに通産省が思い切った処置をとり、先ほど申し上げましたように、系列なら系列に基づく専門的ないわゆる下請工場にする、そこの下請工場がなければそこの親工場の製品は成り立たないというがごとき体制を打ち立てて、初めて中小企業というのが近代化され、あるいは振興、促進されてまいるのじゃなかろうか、こう思うのですが、大臣一体いかようにお考えになりますか。   〔坂村主査代理退席、主査着席〕
  220. 三木武夫

    三木国務大臣 大企業の倒産に伴った連鎖反応といいますか、連鎖倒産を防止するための措置は、いろいろとこまかく昨年末にそういう措置を講じて、現に倒産会社でこの適用を受けて非常に連鎖倒産を防止しておる例もございます。企業の自己責任というものも、山下さん、やはりある程度あると思うのです。つぶれるものは全部金を出してやってつぶさないという、これもやはり弊害も出てくると思うんですね。やはり企業を経営しておる責任の立場にあるものが放漫経営などして、自己責任に属するようなことから企業を窮地におとしいれることのないような自己の努力、自己責任というものも考えなければ、こういう自由経済のもとにおいては、全部が全部しりぬぐいを政府がということでは、政府といってもその金は国民の税金でありますから、そうはいかないと思います。しかし、ただ大企業が倒産したことによって、まじめにやっておる中小企業がいろいろな金融上のあるいは代金の支払いの遅延というようなことで打撃を受けるということは救わなければならないので、そういう手配はここに講じてあるわけであります。また後段にお述べになったように、田中さんでしたか角屋さんでしたかの御質問の中にもあったが、やはり組織化ということは非常に大事である、大企業中小企業というものが非常に極端な従属関係でなくして、対等の立場をとるためには、こういう下請企業というものが組織化されて、そして発言権を持つということがなければ、大企業に弱い中小企業が一人で当たっていったんでは、なかなか大企業に太刀打ちはできないと思う。そういう点で下請などが組織化されて、その組織化の中にお互いの経営の合理化、技術の向上などもはかりながら、大企業に対しても対等の発言権を持つように指導していかなければならぬと考えておる次第でございます。
  221. 山下榮二

    山下分科員 いま大臣から申されましたように、政府も過般中小企業信用保険法の改正その他臨時措置法等も提案されて、中小企業を育成強化された実績は私も認めます。そこで私は時間がありませんから先を急ぎまするが、日本の産業は、先ほども申しましたように、昭和四十年度で中小企業六千余りも倒産をした、こういわれるほど非常な不況の中に年が明けたのでございますが、一方金融機関というものをながめてみますと、これまた戦後最大の大きな利益をあげておることは御承知であろうと思うのであります。一例をとってみますと、住友銀行が九月決算期で百二十一億円、富士銀行が百十九億円、三菱銀行が百十億円、三和銀行が百二億円というような大幅な利益をあげております。私はここに日本の産業、金融あわせて経済というものの矛盾があるのではなかろうか。やはり生産、ものをつくる産業というものに一つの大きなウエートを置いて個々に倒産を防止し、利益を上げしめるような施策を起こしてこそ日本の国家、産業というものの発展がある。金融機関だけが大もうけをいたしましても、これは国の産業にはプラスになっていないのであります。なぜこういうふうに金融機関がべらぼうに戦後最高の利益を上げたか。この原因はいろいろあるでありましょう。たとえば一例をとってみまするならば、公定歩合の引き下げによって、あるいは銀行が貸し出す金利はそれに見合っただけの低金利ではない。いろいろなことがあるであろうと思うのですが、こういう関係から考えて、私は政府はもう少し金融機関と生産面、産業界との利益のバランスというものを考えなければならぬ、あまりにもこれはアンバランスではないか、かように考えるのですが、これに対していかように考えますか。
  222. 三木武夫

    三木国務大臣 私も同様な感じを持つわけであります。銀行はしかし信用が大事でありますから、銀行の経営がみな現在の企業のあるもののような赤字で、いつ銀行がつぶれるか知らぬというような不安を与えることは、日本経済の中枢神経がやられることになりますから、ある程度の利益になる経営はやらなければなりますまい。しかしながら、どうも銀行は産業界の受けておる現在の苦痛に比べて少し歩がよ過ぎるのではないかという感じを持つわけであります。そのためには今後政府も歩積み両建ての制度であるとか、あるいは金利に対しても長期の設備資金の金利が非常に高いわけですから、そういう点で銀行自身も合理化もやるし、そして金利も下げて産業界に奉仕するという仕組みが政府の指導の中にもあらわれなければいけない。銀行家自身もやはりそういう点で今後歩積み両建ての制度とか、長期な設備資金に対する金利を下げていくとか、こういう努力をしなければ、あまりにもアンバランスだという感じは、山下さんと同様な感じを私も持っておるわけでございます。
  223. 山下榮二

    山下分科員 三木通産大臣はただ単なる通産大臣ということだけではなく、閣僚の中における最も重きをなされる閣僚である。政府の施策の上には大きな発言権と力を持っておられる。私はこの機会にお願いを申し上げたいと思うのは、やはり日本の産業の振興助長のためには、もっと産業界に潤いを与える施策を政府は思い切ってとっていっていただきたい。いわゆる金融業者との利益のバランスをとっていくようにしてもらいたい。このことをお願い申し上げておきたいと思うのであります。  次に、なかなか時間がないようでありますが、お願いを申し上げたいと思うのは、工業用水であります。産業都市造成とか、いろいろ政府は手を尽くしてきておられますが、工業用水というのはきわめて産業にとって重要である。したがいまして、新産都市等と水資源、工業用水等々のかね合いというものをうまく考えて、これの計画が立てられておるのであるかどうか、その辺を伺いたいと思います。
  224. 三木武夫

    三木国務大臣 日本は産業の構造改革をやらなければならぬ、こういわれておるのです。このことは産業自体の企業内部における構造改革というばかりでなく、全体としてのやはり産業立地的な構造改革を伴わなければ、あまり一地域に集中し過ぎれば公害等の問題も大きな社会問題になっておるわけでありますから、そういう意味において、工業用水の開発ということは、これは先行投資として非常に重要な部分だと思います。現在まだ自民党の内部においても、この地方自治団体の補助金の問題でちょっともめておることは事実であります。まだ結論を得ておりませんが、私の考えでは、これは地域開発ですからやはり地域もある程度の負担をしていいのではないか。国、企業、地域、こういうことで、まあ負担の区分は別として、そういうことでないと、どうも工業用水の開発というものは円滑にいかないのではないかという通産省の立場から、いま与党内部において調整をいたしておるのでございます。しかし何としても、安いからといって地下水をくみ上げられれば地盤沈下の問題も起こってきて、そういうことになってくると企業にとってこのほうがコストが安いからというだけでもいかないわけで、全体としてもそういう国土保全の見地からも、これを独立採算という見地から全部企業負担にするということには私は無理があるという考え方で、いま調整をいたしておる次第でございます。
  225. 山下榮二

    山下分科員 いまの大臣の御答弁になったことを実は伺おうと思っておったわけなんですが、新聞で拝見いたしますると、自治省のほうでは地方公営企業法を改正をして独立採算制の確立というたてまえから補助を打ち切ろう、こういう意見が相当強い、こういうことで自民党内でも相当議論が行なわれている。したがって、ひょっとすると工業用水に対する地方一般会計からの補助が打ち切りになるのじゃないか、こういう心配を企業家はいたしてまいっておるのであります。そこでいま大臣も申されましたように、工業用水はほかのものと違いまして、国土保全というのですか、地盤沈下あるいは産業政策あるいは地域開発、いろいろな関係が加味されて一つの大きな国策として行なわれていくべき性格のものではなかろうか、こう私は思うのであります。したがいまして、工業用水に対して補助金制度を打ち切るということは少し行き過ぎではないか。さようなことをすれば、いわゆる地下水くみ上げがまた行なわれる。規制をいたしておっても、ないしょででも行なわれるでありましょう。あるいは補助金を打ち切りますならば、必然工業用水の料金の値上げにつながることは論をまたないのであります。さようになってまいりますと、やはり製品コストの上にも影響を与えてくる、こういう結果になりまして、私は影響がきわめて広範である、こう考えるのであります。これはぜひ通産省はがんばっていただいて、当初通産省がお考えになりましたように、工業用水についてはトン当たり四円ないし六円までの範囲で、コストにも影響を及ぼさない、あるいは国土保全の上にもそれで万全が期せられる、かような関係に持っていっていただきたい、こう思うのですが、その確信があるかどうか、ちょっと伺っておきたい。
  226. 三木武夫

    三木国務大臣 これはそういう約束で工場も来ておるのですから、現に既存の工場は工業用水がその程度に手に入るということで採算を立てて工場も来ておるわけでありますから、こういう民間の採算の基礎になったようなことを簡単に政府が変えるべきではない、こういう考え方で、私は最後までこういう通産省考え方を貫きたいと思っております。
  227. 山下榮二

    山下分科員 時間があと四、五分しかありませんから、最後に先ほど申し上げました火薬類等の最近の爆発事故について伺っておきたいと思います。  御承知のとおり、最近プロパンガスは日本の山間僻地に至るまで、まきも十分あり、炭も十分あるところまでプロパンガスを使うというような時代になってまいりました。そこでプロパンガスの運搬というのは、全国各地に相当広く運搬されてきておることは御承知のとおりであります。ところが、ひとりプロパンガスだけではなく、最近は、過般名古屋において造船中のタンカーが火災を起こして大きな犠牲を出した。あるいはタンクローリーにおきましても、昨年十月西宮の第二阪神国道で夜中の三時ごろ転覆をして、それが爆発して大きな事故を起こした。あるいはそのほか富山でも、あるいは横浜でも、最近これに類するような大きな災害が起こっておるのであります。こういうことに対しましては、通産省当局の考え方というものが、私はこういう危険物に対する取り扱いということに対して少し緩慢過ぎるんじゃないかという考え方を持っておるのであります。時間がありませんから一例だけを申しますが、西宮におけるタンクローリーの転覆爆発事件等を考えてみましても、およそガソリンを運んだり、その他の危険物を運ぶタンクというものは卵型のタンク車である。プロパンガスを運ぶタンク車というのは円形型である。したがいまして、車の重心というものが、運転を右か左に急激にハンドルを切りますと、重心のバランスがこわれて倒れる、こういう結果が私は一番危険ではないか、こう思うのであります。あるいは西宮の転覆等もそういうところに原因があったんではなかろうかということも考えるのであります。したがいまして、安全弁の問題ないしはタンクローリーのいわゆる構造上の問題、こういうものの改善が行なわれなければならぬのじゃなかろうか、こう考えるのですが、通産省はいかように考えておりますか。
  228. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 高圧ガス取締法につきましては、昨年の通常国会で大口消費工場に対する規制につきまして一部改正を行ない、また関係の省令の整備につとめてまいったわけでございます。昨年十月の西宮の事故について、ただいま御指摘の点でございますが、タンクローリーの上部に安全弁等が突出をしておりまして、それが転覆等の際に破損をして事故を起こす危険がある。現に西宮でそういうことがあったわけでございます。これにつきましては、さっそく省令を改正いたしまして、そういう突出部を持っておる構造のタンクローリーにつきましては、周囲に防護装置、プロテクターをつけるような省令改正をいたしたのであります。ただ、それは車両工場等の改造の能力もありますので、九月までの猶予期間を置いております。現在着々準備中でございます。さらにLPGのタンクローリーの安定性についてでございますが、実は通産省では、容器について検査を実施いたしております。従来タンクローリーの横転、転覆等の場合、容器については、亀裂が起きてそこから漏れたという容器本体についての事故はございませんで、お話しのように安定性がどうかという点がございます。これにつきましても、タンクに一ぱい積ませるということではなくて、一定の制限を設けておりますが、それでもまだ安全であるかどうかという点につきましては、車体検査は運輸省で所管いたしておりますので、省と協議いたしまして、運輸省のほうで鋭意検討中でございます。
  229. 山下榮二

    山下分科員 時間がまいったようでございますから、もう申し上げません。運輸省にも伺いたいと思っておったのですが、一般の火薬類等の取り締まり規則と同じように、かようなタンクローリー等は規制をされるべきではなかろうか、いろいろなことを伺いたいと思いますが、通産省のほうは、ほかにもあるようでございますから、いずれ他の機会にそれらの問題についてはお伺いをすることにいたしまして、きょうはこれで質問を終わります。
  230. 植木庚子郎

    植木主査 これにて山下榮二君の質疑は終了いたしました。  次に、大原亨君。
  231. 大原亨

    大原分科員 三つほどの問題を質問したいのであります。  第一は、いろいろと学者や巷間で議論をされております中性洗剤の問題でありますが、中性洗剤につきましては厚生省の環境衛生局、企業の育成につきましては通産省が監督指導の立場にある、こういうふうに思うわけです。そういうふうに私は理解をしている。それは間違いありませんね。
  232. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 そのとおりでございます。
  233. 大原亨

    大原分科員 その中性洗剤につきましては、食品化学とか、そういう家庭生活、日常生活に関係深い問題の観点からは、法律上若干微妙な点があるのですが、これはまた、私は法律上の厚生省関係の欠陥でもあると思っているのですが、それは別にいたしまして、通産省で監督指導する権限というか、根拠法規は大体どういう点なんですか。
  234. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 化学工業品の生産の増進等に関しては、通産省の設置法に権原がございます。さらに、そういう中性洗剤等を製造するにつきまして、外国の技術を導入して企業化しようというような場合に、外資法上通産省意見を発言する、こういうような権限がございます。
  235. 大原亨

    大原分科員 この中性洗剤、たとえばライポンFとかなんとかたくさんあるわけですが、これは相当はでに宣伝されましたけれども、最近御承知のようにモノゲンとかその他でハードをソフトに切りかえるのだといって宣伝して、中性洗剤に含まれているABS、これの公害問題が非常に大きくなっているわけです。あした私は別のところでやるから、厚生省の関係でありますが、そこへ通産省にも出てもらいたいと思います。たとえば多摩川の上水も活性炭を投げ込みまして、これを浄化をしているというふうなことであります。それでそのために非常に世界でもこれはコストが高くなるというのでやらぬのですが、日本では水道料金が高いところに活性炭を使ってやっておるわけです。しかも、日本では水は御承知のように硬水ではないわけです。軟水であります。だから日本は外国のように普通の石けんが使えないというふうな事情はないわけです。ですから、しいてABS中性洗剤でなくても、ABSを含んでいるいわゆる分解しがたいハード型の洗剤でなくてもいい、こういう条件もあるわけですけれども、しかし非常にあわ立ちがよくて、ききめがあるというようなことでこれが使われておるわけであります。しかし、アメリカやドイツのように、特にドイツなどというふうに、これが石油化学工業の中ででき上がったそういう先進国においても、これはこれから発生する公害の問題あるいは私はこれは専門でないからここでは議論しませんが、毒性の問題、これをあやまって飲んで死んだという事件があっていま裁判になっておりますが、そういう毒性と公害の問題で、いまハード型の中性洗剤を転換すべきである、こういう国際的な学者その他の議論が起きておるのであります。やはり日本日本で独自の立場でこの問題を処理すべきでありますけれども、新しい、そういうふうに四、五年来のことでありますから、根拠法規がないということと、技術を導入いたしまして、設備投資のために金がかかったから何とかこの際もうけなければいかぬ、これは黙ってほおかぶりしてやればずいぶんもうかる、こういうふうなことでございまして、業者の利益等がございましてこれがはかばかしくいっていない、こういうことであります。毒性とか公害のそういう化学的の問題については、厚生省やあるいは科学技術庁が八月に一つの結論を出しましたものですから、私はそれらのことで議論したいと思うのですが、通産省としてはこの問題について一定の方針を持つべきである。通産省がこれについての監督指導を、いまのお話のようになす権限を持っておるわけです。技術については通産省にあるわけですから、この問題についてはっきりした態度を、十分各方面の意見を聞いて政策を立てるべきではないか、こういうふうに私は思うのですが、これにつきまして、通産省としてはどのように理解されているか。
  236. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 ハード型の洗剤があわの分解率が低いために、河川の汚濁を招く、あるいは下水の処理能力の低下を招いたりしておるということがございますので、各国の状況も調査いたしております。また、現在通産省では、軽工業生産技術審議会に中性洗剤に関する分科会を設けまして、その分科会対策の検討をいたしてもらっておる次第でございます。その間におきましても、ハード型の洗剤の生産能力をこれ以上増加させるということは好ましくありませんので、洗剤の増設につきましてはソフト型で行なうようにということで指導いたしまして、ハード型についての増設はやらせないように行政指導をいたしております。先ほど言いました軽工業生産技術審議会の結論を待ってはっきりした方策を打ち出したいと考えておる次第でございます。
  237. 大原亨

    大原分科員 いまのお話のように中性洗剤は、ハード型の分解しにくいABSと、それからソフト型がある。それからひとつ第三の洗剤を研究しようという分野もあるわけです。何はともあれ、その上水道の水を家庭で使い、あるいは下水その他を通じまして出ていったのが井戸水にまた返ってくる、あるいは上水に返ってくるということで、これはものすごいスピードで中性洗剤、その中のABSハード型の中性洗剤が使われておりまするから、非常に急速度にそういう問題が出てきて、国際的にも許容量はあるのですが、日本においてはまだ設定されていない。こういう点は、私は厚生省と議論いたしますが、そういうことになっておるわけでありまして、この問題は厚生省が最初日本食品衛生協会という、業者と局長や担当の課長などが集まりまして、次官なんかが集まってつくった、それが私は日本に最初に持ってくる際に非常に護毒を流したと思うのです。まるで業者の立場に立って宣伝して、無害である、無害である、非常によくきくのだという大宣伝を、厚生省の事務局の中で、食品衛生協会でやった。こういうことで大宣伝いたしましたことに今日なお拘泥をいたしまして、非常に大きな被害を与えた。もちろんメーカーの中には暴利をむさぼったのもおるけれども、そういうことで大きな問題になって、処理しがたいような条件があるわけです。一つ一つ私はこの点については検討いたしたいと思いますが、通産省といたしましても、この問題につきましては、日本のような国土の狭小なところでもありますし、そうして上水道や井戸水等その他この問題で相当大きな害毒を流した、こういう事情でありますから、いま諮問になっておる軽工業生産技術審議会の分科会の理由はどうかということを究明したい点でありまするけれども、業者の力が強かったら業者はほおかぶりでしばらくもうけていこう、こういうことになります。ですからその問題と一緒に私はこの点について十分研究をいたしたいと思いますが、通産大臣としても、この問題については、国民の健康を守るという問題から考えまして、ひとつメーカーの立場でなしに、国民の立場に立って厳重な研究と、この監督について遺憾なきを期してもらいたい。きょうは私はそこまでにして、通産行政の面におきましては要望をいたしますが、御見解をひとつ伺っておきたい。
  238. 三木武夫

    三木国務大臣 大原さんの御指摘のとおりで、この問題は国際的にも問題が起こっているわけであります。そういうことで今後洗剤の問題については、国民の保健という立場から厳重に監督もし、あるいは検討も加えたいと考えております。
  239. 大原亨

    大原分科員 次に第二の問題ですが、これは通産大臣とは直接関係ありません。しかしあと公益事業関係もありますが、その前に公取の関係、独占禁止法の二十四条の二項の、この間もちょっと議論いたしましたし、他の機会にも、この予算委員会ではありませんが議論になったそうでありますが、再販売価格維持契約について私は具体的にお尋ねしたいのです。  再販売価格維持契約の指定、この法律に基づく公取の推定ですね。その中に、私は大正製薬を目のかたきのように言うのもなんだけれども、具体的に言わなければわからぬから私は言うのですが、リポビタンDの百円という、再販売価格維持契約の指定をいたしました。これは時間の関係でずばりと言いますが、リポビタンD百円となっている。ほかにずっと名前はあるわけです。みな同じような、大同小異のいわゆる保健剤があるわけですが、この百円というのは、どういう根拠法規と、いつこの指定をされたのですか。
  240. 北島武雄

    ○北島政府委員 御案内のごとく独禁法の二十四条の二で、公正取引委員会の指定する商品で、一定の条件を備えたものについては、再販売価格維持契約ができることになっておりまして、これは公正取引委員会が二十八年以降最近まで九品目指定してございますが、この品目に当たりさえすれば届け出によってできるわけでございます。この点についていろいろ問題もございますが、個々の商品について、実は残念ながらただいままで、最後の小売り価格が一々幾らならばよろしいというような規定はございません。ただ届け出によって成立することでございますので、ただいまお話のありました個々の薬品について、その百円が妥当なりやいなやということを審査して指定したわけではございませんので、御了承願います。
  241. 大原亨

    大原分科員 昭和二十九年九月二十日、告示第五号の、第五号、第六号に、ホルモン製剤、ビタミン製剤というのがありますね。ここにございますそれ以外にこれは見当たらないから、私はどういうことだろうかと思っておったのですが、つまり、それに基づいて届け出があれば、再販売価格の維持契約による指定商品、指定価格として効力を発生する、そういう仕組みになっておるのですか。
  242. 北島武雄

    ○北島政府委員 さようでございます。
  243. 大原亨

    大原分科員 それはおかしいですね。そのおかしいのはなぜかと言いますと、昭和二十九年に規定いたしましても、たとえば一般の治療薬でもそうなんです。治療薬は非常にもうからない。これは研究にたくさんの費用を要する品物なんですね。しかしながらこの保健剤というのは大量生産するわけです。一般の薬でも、厚生大臣は、あれほど医療保険の問題でやかましくなりまして、バルクラインの九〇とかいろいろなことを議論いたしまして、薬価基準を昨年も四百五十億円、総医療費の中の四・五%下げたのです。毎年一カ年間ずつ告示するということになっておるわけです。いわゆるB価格ですけれども、大体卸売り価格を中心として、実際上医療機関に納入する薬を苦労して調査いたしまして、やることになっているわけです。しかし、このほうは、昭和二十九年に出て、一方的に出しておるのです。私は特にどうこう言うわけではないのだけれども、たとえばリポビタンDというのを、ビタミン耳その他原価計算してみたら、少なくとも人件費を入れて五円以下ですよ。大量生産すればどんどん安くなるのです。そうして何十割配当して、私は目のかたきにするわけではないが、それで日本一の金持ちになって、高額所得者になって、大臣になって、というようなことでしょう。そうして、一方においては、皆保険下において、医者も、患者も、一般国民も、これを服用する者も、これは保健剤だけだって数百億円、一千億円でしょう、そういう金を使っておるのです。それを再販価格として二十四条の二で保護するなどということは、私はこれは問題じゃないかと思うのです。ビタミン耳だったら、昔はオリザニンといって、大量のぬかからちょっぴりとって、原価も高かったけれども、いまは大量生産できるのですから、私がこの前言ったように、一キロ五千円くらい、ミリ単位について計算したら、ただみたいなものです。日本人くらい耳をとるものはおらぬ。日本人は飲み過ぎて、きたない話だけれども、日本人の尿は外国に持っていけばビタミン剤で売れる、こういう話なんです。そういうようなビタミン過剰であって、たくさんとればみな出てしまう。しかも最近は、清涼飲料のコカコーラその他のジュース業者が、あれはハチ蜜を薄めてやっておって、カフェインがちょっと入って、頭がすっとするだけで、あれは別に肝臓にきくのではない、それを薬として保護しておって物品税はかからぬ、あれは清涼飲料水にしてくれ、こう言っておる。私はこの前も指摘したけれども、薬剤士がいないところで、競馬場やゴルフ場にいってどんどん売っている。医薬品でも何でもない。日本の医薬分業その他の制度全体が悪いのです。悪いのですけれども、薬品の扱いが悪いのです。悪いけれども、これを独禁法の二十四条の二の、例外としてそういうものを保護するのは、おかしいのじゃないかと思う。中身からいっても、届け出だけできまるのはおかしいのじゃないか。しかもこの法律の根拠による届け出を見ると、私は、幾ら薬屋の天国、注射好きの日本国民とはいいながら、これはあんまり人をばかにしておりはせぬかと思うのです。いかがですか。
  244. 北島武雄

    ○北島政府委員 その点は、再販売価格維持契約の存在そのものについての問題が多分にあるわけでございます。御案内の、再販売価格維持契約ということは、昭和二十八年に独占禁止法の改正によりまして適用除外となりまして、公にできるようになりました。その考え方というのは、結局商標の発達に伴って、化粧品とか医薬品とか、こういったものはメーカーが直接品質なり価格なりについて責任を負うという考え方になって、小売り店で大いに宣伝して売っているのじゃなくて、メーカーが直接宣伝をして、メーカー自身が価格、品質について責任を負うという考え方でできておりまして、そのメーカーの商標を保護するという見地からできている。  そこで、しからばすべての商品にできるかというと、それは法律をごらんになりますとおわかりでございますように、自由なる競争が行なわれていなければならない。すなわち、同じ品種の中で自由なる競争が行なわれていれば、自然に小売り価格がメーカー間同士の競争できまる。こういう考えでできておるわけでございまして、独禁法は価格でやっているわけではございませんで、メーカー間に、化粧品なら化粧品、医薬品なら医薬品で自由なる競争が行なわれておれば、メーカーもそう高い値段を小売りに指定することはできないわけであります。そういった考えで再販売価格維持契約ができておる。  この点についてはいろいろ問題はございますけれども、根本的には再販売価格維持契約というのはそういう制度でございますので、公正取引委員会が個々の末端の小売り価格についてこれを規制するということにはなっておらないわけでございます。ただしこれは独禁法にも書いてございますように、一般消費者の利益を不当に害することとなればこの限りでないということでございますので、この点については、今後公正取引委員会といたしましては、現在行なわれている商品について、はたしてそれが自由な競争が行なわれているか、あるいはまた不当な利益を害することがないか、こういった点で十分検討して、この品目についての検討をする余地はあるわけです。こういう方面については公正取引委員会は今後大いに検討いたしたいとは思っております。
  245. 大原亨

    大原分科員 私が研究した範囲で、あなたのほうで足りない点は、公取は医薬品についての知識がないのですよ。言っては悪いけれども、専門的知識がないのですよ。ビタミン剤というのはただみたいなものなんです。幾ら飲んだって過剰なものは出ていくのですよ。その中に入っている肝臓薬というのは、類似品が、百円のものがずっと並んでいるのです。再販売価格維持契約でばっとやられるのです。そういうようなものがずらっと並んでいるのです。それは、きくかきかないかというのは百年後になってみなければわからないかもしれませんよ。しかし、それは国際的に通用しない議論なんです。日本で肝臓薬ということは、四十過ぎたら精力が減退するとかなんとかいって、人をおどかしておいて飲ますやつだ。人を脅迫しておいて、テレビでやったり新聞でやったりしてやるわけですよ。こんなものは根拠はないと国際的にはいわれている。そういう論文がたくさん出ているのです。この間言ったように、貿易という観点から見ても、日本の薬は二・九%しか売れてない、だんだん減っているのです。こんなに国民が関心を持っている薬を輸出できない、というのは、外国では社会主義国、資本主義国を問わず、権威を認めない。普通の治療薬でも毎年薬価基準を改定したら何十億円か下がっていく、それが、メーカーの中でべらぼうに生産高がふえている分野というものは保健剤です。七対三になっている、七が保健薬ですよ。それを国民が飲まなければならぬ責任はないと思う。再販価格で末端価格を指定しておいて、国民を縛っておいて、薬だということで飲まなければならぬ責任はないと思うのです。だから私は、指摘をすればあなたのほうに薬についての知識がない、このこと自体が自由な競争を妨げておる。これはある会社、大正製薬だけれども、千本売ったら千本ただでやろうということをいっている。何のために再販価格をやっているのですか。脱法行為をやっているじゃないか、そんなことで暴利をむさぼって、薬だという仮面の中に隠れてやるということは、価格政策、国民経済から言ったって許すことはできないですよ。これは再検討してくださいよ。
  246. 北島武雄

    ○北島政府委員 この医薬品の分類は、現在になってみますと、非常に古い分類でございまして、最近の情勢に合わせてこれは直さなければならぬわけでございますが、そういうお話の点も含めまして、今後この医薬品の分類については、十分ひとつ厚生省とも打ち合わせた上で決定いたしたいと思います。
  247. 大原亨

    大原分科員 これは専門的な面はまた別に私は議論いたします。  最後に、公益事業の関係ですが、私はずばりと言いますが、あなたの親しい櫻内通産大臣のときだと思うのですけれども、その兄さんか弟か、顔を見ただけだからわからぬが、中国電力の櫻内社長、これがやはり私どもは期待したのですが、やるなと思ったのですが、三%ほど電力料金を下げると言った。これは新聞に出たのですよ。私は広島ですから、それを見ているのです。三%電力料金を下げると言ったのですよ。私は、九電力の営業状況、それからガス会社の経理の内容等について、報告を調べたわけです。きょうは時間がないから申し上げませんが、たとえば中国電力とか、東京電力とか、東京ガスとか、あるいは大阪ガスとかいうふうなところを大体検討いたしますと、やはり公益事業で、競争会社がなくて、そして戦争の被害等もわりあい少なくて、あるいはその復活が簡単で、水資源その他もあって、各工業用、小口電灯等がそれぞれありますけれども、それでなお下げることができるというふうなものは、やはり公益事業であるならば下げるべきじゃないか。物価というものは上がらなければならぬものじゃないわけですから、生産性があがっていけば下がるということが資本主義の原理ですから。だから、私は公益事業のかさの中に隠れて、そして政治献金やあるいはその利益を蓄積するだけのことに使ったり、ほかのむだづかいをしておるとは言わぬけれども、そういうことについて経営者自体がそういうことを表明したことが、この利益金その他を見まして、私はできないことはないと思う。一部に言われるところによると、他の業者のチェックもあるとか、あるいは通産省も、待て待て、そんなことをやったらたいへんだ、ほかのほうへ影響するぞ、こういうこともあるとかいうように、うわさでは聞くわけです。私は、物価の問題がこんなにやかましいときに、薬や化粧品の問題についても議論したかったわけですが、この問題も、私は大きく言えば、通産省行政範囲内において、しかも公益事業ですから、処理すべき問題ではないかと思うので、ひとつ経過を伺いたい。
  248. 三木武夫

    三木国務大臣 中国電力がそういう電力料金の値下げをしたいという発表をされたということは、私も聞いておりますが、正式に申請は出てないのです。むろん通産省としても、そういう申請を出すときに、それを抑制する何らの理由はない。しかも公益事業であればあるほど、できるだけ需用家に低廉な電力を供給するということが好ましい。中国電力が料金の値下げをしたいという申請は、歓迎するところであります。それはぜひそういうふうにしてもらいたい。また他の社においても、そういうことの可能なところが値下げをしてもらうことに対しては、われわれも歓迎するところであります。ただ、電力料金があまり短期間に上下するということは、その性質からいって好ましくない。だから、ある程度の見通しを立てなければ、あまりひんぱんな料金の改定ということは、産業界にも悪い影響を与えるでしょうから、ある期間の見通しを立てて、できる限り下げられるものは下げるべきである、そういうふうな考え方でわれわれも指導をしていきたいと考えております。
  249. 大原亨

    大原分科員 これは公益事業ですから、皆さんのほうは経理について報告を受けておられるわけです。ですから、下げることができるやつは下げるべきです。下げるべきであるというサゼスチョンをやるのが通産省です。それを下げることを期待する、歓迎するというだけでは、いまのように物価問題が非常にやかましくて、しかも独占価格、公益事業の価格について問題があるときに、たとえば広島ガスなんかを見てみたら、原爆でごっぽりやられているから、設備投資のために金がかかっちゃって、ほかのところよりもよほど高いですよ。広島ガスはわれわれも高いと思う。東京よりも高いです。しかし、そういう被害を受けないところで簡単に復活できたところや、下げられる条件のあるところがある。われわれの中国電力だってあるわけでしょう。別にどっちに味方ということでなしに、公益事業であるならば、価格政策の上から、やはり基礎エネルギーの価格の問題ですから、他のほうへ心理的な大きな影響を及ぼしますから、私は価格政策としてはやるべきだと思う。天下に中国電力の櫻内社長が言っているのですから。専門家に話を聞いてみたら、経営分析してみればまだほかにもあるという意見であります。私は積極的に御指導あってしかるべきではないかと思うが、通産大臣、いかがですか。
  250. 三木武夫

    三木国務大臣 歓迎するということばを希望すると変えてもよろしゅうございます。やはり下げられるものはできるだけ下げたらいい。ただ、電力会社とすれば、いま言ったように多少ある期間の見通しを立てなければならぬ。中国電力がああいう意向を示したときと、最近の経済情勢は多少変わっておりますから、多少変化はあると思うが、中国電力は今年中には料金を値下げするものであるとわれわれは考えておるし、そういう指導をいたすつもりでございます。
  251. 大原亨

    大原分科員 今年中ということですから、中国電力だけでなしに、各社についても、公益事業については経理を十分検討されて、物価がどんどん上がっている中で下がるように、ひとつ納得できるような明朗な指導監督をしていただきたい。このことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  252. 植木庚子郎

    植木主査 これにて大原亨君の質疑は終了いたしました。  次に、大村邦夫君。
  253. 大村邦夫

    大村分科員 前者の大原委員と若干ダブを気配もありますが、私は電気事業関係について、大臣並びに企業局に見解を聞きたいと思います。  大原委員からも言われましたが、かつては商工委員会で板川委員からも、あるいはまたほかの委員からも、この電力料金の問題がかなり取り上げられました。これは地域の需用の構成とか、あるいは需用密度の向上とか、あるいは企業努力とか、いろいろな要素が加わって、一方では中国のように電気料金を下げたいというし、一方では北陸のように上げたいという申請が出ております。しかし、いずれにいたしましても、率直な感じとして、一方では下げたいというときに一方で上げたいというのは、私どもとしてはやはり大きな関心と疑問を抱かざるを得ないのです。そこで、電気事業経営の問題、なかんずく料金の問題についてお尋ねをするわけですが、電気事業法の第十九条で供給規程がきめてあります。それによりますと、その第二項の第一号には、「料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること。」という、いわゆる料金設定の心がまえというものがちゃんときめてあります。さらに二十二条の二項におきまして、いま申しました十九条の二項の一号にいう「適正な利潤を加えたもの」とあるのはということで、以下説明がしてあります。それによりますと、「「適正な原価を下らず、かつ、供給の相手方たる一般電気事業者の電気の料金を適正にするもの」と読み替えるものとする。」こういうように規定づけがされておるのです。電気料金を議論する前には、やはりこの解釈というものが基本になってくると思います。  そこでお尋ねしたいのは、いま申しました一口に言えば適正な利潤を加える——電気料金は原価主義がとられておりますが、それに加えて適正な利潤を加えるという、その適正な利潤の考え方、これをひとつ具体的にお尋ねをしたいわけです。
  254. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 適正な利潤と申しますのは、具体的に申し上げますと、現在の料金の算定基準におきましては、有効な資産に対しまして八%の利潤を押えております。それはもちろんそれをもとにいたしまして配当、金利、こういう形になるわけでございます。  なお、先ほど先生が御指摘になりました二十二条と十九条の関係でございますが、二十二条の二項といいますのは、先ほど私が申し上げましたのは、これを一般に売る場合の利潤としてそういう形になっておるわけでございますが、二十二条の二項は、電気事業者同士でいわゆる広域運営をやっております。その場合に、片一方の経理が悪いからできるだけ助けようという場合には、利潤は取らずに、利潤は相手方の経理の苦しいところに差し上げる、こういう趣旨の規定でございまして、広域運営の一つの運用の方向を示しておるものでございます。
  255. 大村邦夫

    大村分科員 では、原価主義をとりながら、一方では供給の相手方である他の企業、電気事業者との料金のバランス等も考えるということなんですね。と同時に適正な利潤ということは、いまあなたが言われたように、電気事業が健全に発達をするために必要な資金、こういうものがやはり利潤の中には考えられていくと思うのです。と同時に、配当の問題が出ました。  そこで、具体的に以下お尋ねをするのですが、会社年鑑の決算報告によりますと、昭和三十八年十月から三十九年の三月までのいわゆる三十八年度の下期において、中国電力は当期利益を十三億七千万円計上しております。この十三億七千万円というのは、中国電力が値下げをしたという関連において適正な利潤であると考えるかどうかということです。その点をひとつお尋ねをしたい。
  256. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 お答え申します。ただいま御指摘になりました十三億何がしという利益でございますが、配当に要する金は十二億ちょっとばかりでありますので、多少の余裕金が出るという程度のものでございます。
  257. 大村邦夫

    大村分科員 ということは、暴利をむさぼってはいない、適正な利潤をあげている、こういうことに読みかえられると思うのです。  そこでお尋ねをしたいのですが、昭和三十九年度の下期の決算ですね。大蔵省法人企業統計の全国十一社、これは電源開発会社も入っておると思います。それの当期純利益を見ますと二百四十四億八百万円、こうなっておるわけです。これは統計のとった期が違いますから、必ずしもこの中に占める中国電力の利益というものが当てはまるかどうか知りませんが、先ほど私が申し上げました十三億七千万円というものが、中国電力では一方利益があがっておる。そう高低はないと思いますから、読みかえまして、二百四十四億八百万円の十一社の利益の中に、中国電力は十三億七千万円程度の利益をあげておる、この中国電力の利益は適正な利潤だと読みかえるとすれば、中国が値下げをやりたいというのですから、これ以上もうかっておる電力会社もあると思うのです。たとえば中部とか関西とか、こういうものについては一体どうなるのか。これが一つ。  それからさらに、先ほど申し上げました中国の関係の決算報告の中で、関係会社長期投資が純利益以外に八億三千五百万円ほど計上してあります。これは内容を聞いてみないとわかりませんが、これがどういうものかということをお尋ねしたいのです。もしこれがあまり関係のないところに投資をされておるとするならば、そういうものを引き戻してみますと、二十二億の利益計上になるわけです。ここら辺の関係がわからない。この点もひとつお尋ねします。
  258. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 第一点の、中国以外に中部、関西のお話がございましたが、御承知のように、中部は経理状況が極度に悪化いたしましたので、昨年度値上げをいたしたような状況でございます。その後の状況を見ますと、その値上げによりまして、ようやく収支が改善に向かっております。しかし、まだ定率の償却はできずに定額の償却にとどまっておる、こういう状況でございます。それから関西でございますが、これは私率直に申し上げまして、御指摘のように、ほかの電力会社から見ますと、多少余裕があるように感ぜられます。  そこで、これを今後どういうふうにしていくかという問題でございますが、後ほどあるいは問題も出ると思いますけれども、北陸電力が非常に困っておるという事態にあるわけでございます。隣同士でございますので、私どもの気持ちといたしましては、今後広域運営ということにいたしまして北陸の値上げをできるだけ押えていく、関西の協力によって押えていく、こういう措置を今後の方針としてとりたい、かように考えておるわけでございます。  それから第二点の、中国が関係会社に八億何がしというものを投資しておるではないかというお尋ねでございますが、どこにどれだけの投資をしておるかというこまかいデータはただいま手元に持ち合わしておりませんので、後ほど提出いたしたいと思いますが、考え方といたしまして、これは中国に限らず、各社とも、やはり電力会社といいますのは地域開発の一端をになっておる立場にございますので、いろいろな関連会社に投資をする、あるいは自分の本社でやるよりは、専門の会社をつくってそこで専門にやらしたほうがいいというような、たとえば工事会社というような面におきまして子会社をつくっておる面がございます。そういう投資が、各社とも相当の額にのぼっております。ただ、これを無制限に考えてまいりますと、これが回り回っては、地域開発にはなると思いますが、電気料金にはね返ってくるということにもなりますので、私はそういう地域社会に貢献するという面と、やはり電気を使っておる需用者に経営の合理化効果を還元する面と、両面あると思いますので、最近の情勢からいいますと、できるだけ監査等によりまして、必要最小限度の出資あるいは金の支出にそういう関連会社にはとどめていただくような指導をやっているところでございます。具体的な数字につきましては、先ほど申し上げましたように後刻提出いたしたいと思います。
  259. 大村邦夫

    大村分科員 そういう把握のしかたで通産省なり公益事業局が電気事業者を指導するというのは、私はそれも問題があると思うのです。いまここにはないけれども、帰ったらわかるんだ、こういうことだと思うのです。思うのですが、これは非常に重要なことなんですね。そして地域開発の任務は持っておるがと言われましたけれども、しかし、そういう方面に金をどんどん使うと、今度は電気料金に響いてくるから、できるだけそれは押えていきたい、そういうように指導をしたい、こうおっしゃる。確かにそうなりますね、原価主義をとっておるのですから。その電気料金の中に、地域開発の役目があるからというので金を出せば、多かれ少なかれみな影響するんですよ。そうでしょう。そういうやり方を中国が八億何ぼもやっておる。また、あなたが言われた中に、下請、専門的な企業に、電気事業の健全な発展に資する意味からも投資するという場合も考えられるとおっしゃいました。しからば一体——何か電気保全協会とかいろいろあります、そういうことかもしれませんが、いずれにしても投資をすればするだけ今度は電気料金に響いてくる、こういうやり方を中国はやっておるわけですが、このことは単に中国だけなのかどうか、ここも実は聞きたかったのです。いまは資料がないからやむを得ないですが、もし金がなかったら、そういうところに投資をしないと思うのです。あるから投資をするのですよ。ここにやっぱり企業経営の中味について検討する必要があるのじゃないか、私はそう思います。十三億何ぼの利益が上がった。これでもかなり上げておる。適正な利潤だ。じゃ八億ふえたら適正な利潤じゃないか——ないと思いますね、ぼくは一企業で二十数億もうけていれば、大したものだと思う。そういう点を考えていくならば、私は中国電力の値下げ等については、あるいは関西もそうでしょう、早急にこれは指導すべきじゃないかと思う。私は先ほど大原委員の質問をそばで聞いておりましたが、大臣は、商工常任委員会でも、望ましいとか希望するとか言われましたが、しからば電気事業法の二十三条「通商産業大臣は、電気の料金その他の供給条件が社会的経済事情の変動により著しく不適当となり、公共の利益の増進に支障があると認めるときは、」以下省略しますが、「変更の認可を申請すべきことを命ずることができる。」次にまたいろいろ指導規定がきめてあります。こういう条項があるじゃないですか。なぜこれを運用、活用しないのか。たとえば今日不況克服のため、産業界の再編成が行なわれておりますね。これは開放経済体制に備えて、さらに国際競争力の強化、そういう面からいろいろ再編成が進められておる、また通産省も、指導する。さらにまた不況克服の観点から、過剰生産に備えて勧告操短なりが積極的に行なわれている。一方、いま申しましたように、公益性の非常に強いこの電気事業料金については、ちゃんと指導規定があるにもかかわらず、経済的な変動が若干あると思いますと、大臣はさっきちょっと言われましたが、私は若干じゃないと思います、かなりあると思います、そういう中ですから、なぜこういう項を生かして積極的に指導されないのか。希望するとか、望ましいとか、単にそれだけじゃ済まないじゃないか。そういう点について大臣の御所見を聞きたいのです。
  260. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはり御発言のように、こちらのほうが法規の上においても指導は可能でありますから、今後やはり公益事業としての料金の安定性という見地からも、それを頭に入れながら指導をいたすことが適当だと思います。
  261. 大村邦夫

    大村分科員 その指導のしかたですが、電気料金といっても、産業用もあるし、家庭用もあります。産業用の中には大口あるいは小口電力料金、こういうように分かれております。何を重点にして力点を置いて指導されるか、家庭用を下げようというのか、あるいは産業用を下げるように指導されるのか。聞くところによりますと、中国電力値下げの問題については、これは取りざたされておることなんですが、中国の管内には自家用発電者があり、一般料金は確かに高いです。そういうところから、豊富な電力をもてあまして、できるだけ自分のところで電気を販売したい、そのためには料金を下げなければならない、そういう趣旨から、実は副社長なり社長が電気料金値下げのアドバルーンを上げられた、こういうように聞いています。もしそうだとするならば、勢い産業用の電力料金の値下げがここにクローズアップされてくる。そうしますと、一般の家庭用についてはあまりやられないということが起きてくるわけです。そこでいまのようなお尋ねになったわけですが、繰り返しますと、産業用なのか、家庭用なのか、どこに重点を置いて指導するか、その点をお尋ねしたいのですが。
  262. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 具体的に今後どういう形で値下げが出てくるかという問題は、今後の問題でございますが、現在の私どもの指導といいますか、指導上の気持ちを申し上げますと、御承知のように、電気料金にはいろいろな種類がございます。その中でも、中国地区は二段料金が高いということが一般的にいわれております。この二段料金の問題というのは、御承知のように、これはほんとうは中国地区だけの問題ではございません。電気料金制度調査会におきましても、二段料金は料金制度としてできるだけ早く余裕ができる限りにおいては是正をすべきだという答申を実はいただいておるわけでございます。したがいまして、私どもの考え方としまして、余裕ができました場合に、何も産業用だけ片寄って下げるという気持ちはございません。やはり電灯についても、あるいは業務用についても、あるいは小口用についても、できるだけ恩典を均等に及ぼしたい、かような考え方を持っていますが、中でもそういう、調査会でも指摘がありましたように、こぶのような、よけいなといいますか、非常に悪い形のものがまだ残っております。これをまず是正するのが先決であろう。したがって、考え方としてはすべてに考えていきたいと思いますが、悪い面から是正していきたい、かように考えております。
  263. 大村邦夫

    大村分科員 質問を続けますが、この前の四十六通常国会で新電気事業法が制定されました。従来の電気事業法の法体系の整備ということで提案された中身を見ますと、広域運営ということが強調されたわけです。その広域運営のいわゆるねらいとするものについては、もう私が説明するまでもないことと思いますが、要するに、電力コストの低減、あるいは開発資金の節減、企業格差の拡大防止、むしろ是正、こういうことがねらいとされたと思います。私どもは今日家庭電灯料一つをとっても、全国九ブロックに電気事業が分割をされてばらばらである。したがって、そういう広域性の面からも一元化、国有化を強調したわけです。それに対して、当時の福田通産大臣からは、今日マンモス化した企業体で、しかもかなりの歴史的な発展の経過がある中で、いまこれを一元化するというのは、そう摩擦もなくスムーズに合同はできないだろう、あるいは能率の面からもいろいろ強調されて、福田さんは、ずっと以前は一元化の賛成者であったが、あのときには九分割を固執をされました。この広域運営について、北陸電力との関係ですね。先ほど関西との関係で言われましたが、北陸電力については幾らか上げざるを得ないと考えておられるようですが、この広域運営によって企業格差、あるいはこれは料金格差にもつながってきますが、こういう広域運営をこれから大幅に取り上げることによって、強化することによって、企業格差というのはどういう方向をたどっていくか、縮まっていくのかどうなのか、この点をお尋ねしたいのです。
  264. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 将来の見通しにも関連いたします非常にむずかしい御質問でございますが、北陸の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、広域運営の強化によって上げ幅をできるだけ少なくする。御承知のように、北陸自体の料金は、これはすべてがそうだとは言いませんが、中には他社と比べまして非常に安いものがあるわけであります。したがって、ある程度の値上げはやむを得ない。それ以上に上がります場合は広域運営の強化によってそれをカバーしていく、こういう二本立てでまいりたい。そうなりますと、おのずから料金が平準化されてくる。中国あたりは非常に高うございますが、できるだけ下げていく。それから非常に安いところは、広域運営の強化もございますが、電力を少し上げざるを得ない。それによって料金は平準化されていくと思います。その平準化された料金の中において、御質問経済の格差が、経営の格差が開いていくか、あるいは縮小していくかという御質問だと思いますが、私はこれを考えます場合に、二つの面から考えていきたいと思います。一つは、今後の建設コストというものが平準化されてくる。これは先生御承知のように、大体今後の長期的な見通しでございますが、火力のウエートがふえてまいりますけれども、これは工業製品でございますので、できるだけ均一になってきております。ただ一方、地域経済発展の状況あるいは需用構造という問題がございます。これは変な形で地域経済発展してまいります場合は格差が開いてまいる傾向にあるわけでございますが、御承知のように、最近は地域経済発展ということもいわれておりますし、経済の成長テンポが安定化している、こういう面から考えます場合は、私は、現在以上にその面から格差が開いていくことはなかろう、かように考えております。一方、稠密地帯におきましては、御承知のように送電線の強化の問題とか、あるいは公害問題とか、いろいろな社会費的なものがふえてまいる傾向にございます。そういうことを考えますと、現在すでに格差がございますが、これが現在以上に開いていくことはなかろう、縮小の傾向をたどっていくのではなかろうか、むしろそういう方向に持っていかなくてはならない、かように考えております。
  265. 大村邦夫

    大村分科員 いまお説のように、電気事業の経理状況を見てみますと、あなたのほうも指摘をしておるように、電力需用が急増し、それに見合って画期的な電源開発が推進をされた。それには巨額な設備資金が必要となる。そうしてその結果は、内部留保の過小と外部資本への依存度が高まって資本構成が悪くなった。九電力会社の自己資本比率は、昭和二十六年度の六九%から三十八年度には三二%へと転落をした。他方、電源開発の推進は、減価償却費や支払い利息など資本費の増大を伴い、これが原因して電力原価は高騰し、事業経営を圧迫した。しかし、電源開発のテンポも、長期的に見ると需用の伸びがいまおっしゃったように鈍化をしてまいったこと、それから供給予備力を含めて開発するという過渡的な特殊要因が消滅をしたこと、つまり安定化の方向をたどっておる。そうしますと、中国電力でいえば、長期的な展望に立ってここで料金を下げるかどうかを考えなければならないと言うが、もう安定化の方向に向きつつあるのです。このことをひとつ大臣はよく認識をしておいていただきたい。と同時に、これまた御指摘のように、火力発電の発電コストの低減傾向、そういうことで事業収支も改善をされつつある。だからだんだんと企業の内容はよくなっていくはずなのに、北陸電力は——いろいろ経過はあります。時間の制約がありますから私も説明しませんが、上げなければならない。そうして、関西電力はもうかっておるじゃないかと言えば、いやこれは広域運営、その企業の協調体制の強化によってできるだけ安く提供してもらうようにして上げ幅を押えたいと言うが、実際に広域運営の中で利点としてあげられるのは、豊富な電力、必要な電力が供給されるということで、企業の格差なりあるいは料金の格差の方向に向いていないのですよ。なぜならば、原価主義をとりますね、と同時に、適正な利潤も加えて提供しておるのですよ。だから広域運営、広域運営といっても、その必要な電気の需用量については提供ができるが、あるいはまた建設コストは、そういう面では不要なものは、要らなくなりますから、それを伸ばしていけば電気料金にもこたえていきますし、現実に拡大の防止には少し役には立つが、縮小の方向をたどっていない。だから私は、今度は実績を見て申し上げます。関西電力はいまもうかっておるのか、広域運営の中ではたして北陸電力の料金値上げにどれだけ響いていくか、この点については大いなる疑問を持っております。いま申し上げた点は十分お考え願って、中国電力なりあるいは関西電力なり、いや全国的な九ブロックの電力会社についての料金のあり方等については十分検討していただきたい、積極的に指導もしていただきたい。このことをお願いしまして、時間の関係質問を終わります。
  266. 植木庚子郎

    植木主査 これにて大村邦夫君の質疑は終了いたしました。  次に、田口誠治君。
  267. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間もございませんので端的にお伺いをし、答弁をいただきたいと思います。  最初に中小企業輸出振興についてお伺いをいたしたいと思いますが、これは中小企業対策の一環として政府のほうでもいろいろと考えておられると思いますが、まず最初にどういうような考え方を持っておられるか、それをお尋ねしたいと思います。
  268. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 最近の不況の状況を見ますと、中小企業は注文が非常に減っているというのが非常に大きな困難な原因になっておりますので、中小企業のための需要をいかにして確保するかということについては、私たちも格別の注意を払っておる次第でございます。基本的にはやはり日本経済全体が上向きになるということが前提でございますので、そのための一般的な施策を進めていくということでございますが、特にその際、中小企業のほうにもそれが均てんしますように、たとえば各通産局に臨時相談室を設けまして、そして受注のあっせんの仕事を積極的にやっております。また下請振興協会をつくりまして、そこでも仕事のあっせんをいたしております。そうした努力を一方においてやりますと同時に、その間のつなぎの金融につきましても特別な配慮をしておる、こういう実情でございます。
  269. 田口誠治

    田口(誠)分科員 この相談室なんかの場合の利用とかまた成果というようなものは、幾つか聞きたいのですけれども、それをひとつ伺いたいと思います。
  270. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 成果というと………
  271. 田口誠治

    田口(誠)分科員 いま答弁のありました中で、相談室の成果。
  272. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 相談室はいままで八地方通産局で、合計いたしまして約三百件余りの相談がまいっております。そのうちの半分は金融の相談でございます。金融関係は、幸いにして地方の財務局ともタイアップし、また政府系の金融機関の出先とも連絡をとりまして、比較的順調にそのあっせんの業務が進んでおります。  受注あっせんのほうは、一方におきまして中小企業のほうからの受注あっせんの要望を聞きますと同時に、他方、関係企業のほうにその発注の可能性を調査いたしまして、そして両者の結びつきがうまくいくようにしておるのでございます。こちらのほうは、遺憾ながら、全体の状況が現在のような状況でございますので、金融のようにはうまくまいっておりませんが、約百五十件のうちの二、三十件くらいはあっせんが成功いたしておる、こういう状況でございます。
  273. 田口誠治

    田口(誠)分科員 中小企業輸出振興関係についての具体策の中に、準備積み立て金の制度が考えられておりますが、これは現行税法との関係は別に疑義がないかどうか。
  274. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 輸出振興につきましては、市場開拓準備金という制度が一般的にございますが、その中で特に中小企業のための組合に積み立てる場合の制度がございまして、今回その積み立ての限度について若干の改正をいたした点がございます。それからもう一つは、組合で構造改善のために積み立てをします。将来共同施設をつくり、あるいは業界で自主的に企業整備をする、そのための転廃業資金をあらかじめみんなが積み立てておく、こういう場合の制度につきまして、税制上の改正をいたしました。これは一見直接輸出には関係はないようでございますけれども、やはり間接には共同施設によって輸出競争力をふやす、あるいはまた業界の体制をつくりまして、それだけ輸出競争力を強化する、こういうことにも役立つことを期待いたしておる次第でございます。
  275. 田口誠治

    田口(誠)分科員 現行税法との関係は疑義がないかということ。
  276. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 今回、その点につきまして、先ほど申しました市場開拓準備金のほうはその率の改正、それから構造改善準備金のほうは、中小企業近代化資金助成法の改正によりましてその点の改正をお願いすることにいたしております。
  277. 田口誠治

    田口(誠)分科員 産業基盤の強化という角度からいろいろな施策を講ぜられておりますが、そのほか別にお考えになっておることはございませんですか。
  278. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 需要確保の問題につきましてですか、輸出振興ですか。
  279. 田口誠治

    田口(誠)分科員 いままでお答えになった範囲は、いま準備金の関係をお聞きしたのですけれども、これは税法との関係をお聞きしてお答えがあったのですが、その他中小企業の産業基盤を強化するためにはいろいろな施策があると思いますけれども、ほかに施策をいま用意されておらないかどうかということをお聞きしたい。
  280. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 中小企業の産業基盤強化につきましては、実は中小企業のいわゆる近代化を目的といたしますいろいろな制度が現在行なわれておりますが、特に設備近代化及び高度化資金の制度がございまして、近代化のほうは中小企業の競争力、新しい事態に適応するための合理化のための資金を特別有利な条件で貸与する制度でございます。それから高度化のほうはいわゆる協業化、共同化を進める場合の資金の制度でございまして、その両方につきまして今回条件について相当大幅な緩和、改善をいたしました。たとえば償還期限等は従来七年であったものを十年にするということで、中小企業者が使いやすいようにする。それから協同組合による協業化を進めますために、共同施設をつくる場合の制度につきましても条件の緩和をいたしまして、従来は、たとえばその資金の貸し付けの対象には建物と設備だけが取り上げられておりましたが、今回土地をその対象に入れるということを決定いたしておる次第でございます。  そのほか、そうしたいろいろな計画を中小企業者が進めようとします場合に、知識、経験その他必ずしも十分でない方のためにいい相談相手になるような体制をつくりたいというので、中小企業に対する指導体制を整備することをいろいろ考えておりまして、こういう施策を全部総合いたしまして中小企業の基盤強化ということを実現いたしたいと思っておる次第でございます。
  281. 田口誠治

    田口(誠)分科員 あとから答弁のありました近代化、高度化の点ですが、これは各中小企業とも望んでおるところですけれども、なかなか金融が思うようにいかない。借りても、現在の競争状況、大企業中小企業との関係からいって、返すめどがなかなか立たないといって、よう踏み切らないところもあるわけなんですが、なおこれは長期貸し付けとか金額の増額とか、あるいは低利——利子補給までできぬとしても、もう少し低利というようなことを考えてやらなければ、行く道だけはつくってやっても、それを通ろうと思っても通り切れない、力がない中小企業が多いわけで、そういう点で今後いろいろと配慮していただかなければなりませんが、もしお答えがあればここにお示しをいただき、そうでなかったら、その点については今後考慮していただく、こういうようにお願いいたしたいと思います。
  282. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 中小企業は、当面、不況の克服、切り抜けをどうするかということで、たいへんに困難な事態にございますけれども、御存じのように、いろいろな積極策によりまして、いずれ遠からず景気全体も明るくなってまいると思います。そこで、私たちは、中小企業に対しまして、当面の不況克服というだけでなく、先を見ました近代化を積極的に進めるような心がまえをつくってもらうように、機会あるごとにそういう要請、要望をいたしておる次第であります。  そういうことが実現しますためには、ちょうどいま先生からお話がございましたけれども、資金の面で私たちのほうでも十分に用意をしておく必要がございますので、来年度につきましては、ただいま申し上げました近代化、高度化という資金一般会計のほうで確保いたしましたが、それと同時に、並行しまして、政府系の中小企業金融機関につきまして、今年度の貸し出し規模が大体四千六百億くらいかと思いますが、それの約二割増、五千五百億円という貸し出し規模を想定いたしまして、その貸し出しに必要な財政投融資資金をそれにつぎ込むということを決定した次第であります。  それから、その場合の条件の緩和等につきましても、できるだけ期間を長くする。それから、金利の負担がだんだん大きくなってまいっておりますので、金利につきましては、昨年の九月に三厘引き下げたばかりでございますが、今回さらに四月一日から基準金利をおおむね三厘引き下げるということを決定いたしまして、そのために必要な手当ても全部することにいたしておる次第でございます。
  283. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その点が非常に隘路でございましたので、大いに力を入れていただきたいと思います。  それから、輸出保険制度についての、政府中小企業者への優遇策は、これはどういうようなお考えですか。
  284. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 これは貿易振興局のほうとも関係のあることでございますが、中小企業の場合には、保険にかける場合も、大商社の場合と違いまして、なかなか直接保険に加入ということもむずかしい場合がございますので、そういう場合には組合を通じまして包括契約をするということが現在行なわれております。そういう方法によりまして中小企業者のリスクをできるだけ軽減をして、輸出意欲をかき立てるようにいたしたい、かように考えておる次第であります。
  285. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これは再保険の制度はなかったですね。
  286. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 現在、輸出保険でカバーできないところを県が一部補足しておるところがございますが、さらに、中小企業のための特別の再保険というのがございます。
  287. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これはこれから検討していただくといいと思いますが、再保険の制度をつくる必要が私はあると思う。今後検討していただきたいと思います。  それから中小企業輸出関係を申し上げておるのですが、いまの実績からいきますと、海外への大企業輸出がどうもダンピングされておるように思うのです。こういうような点の調整はあなたのほうでどこがおとりになっておるのか。手放しかどうか。
  288. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 いわゆる輸出取引き秩序の維持という問題は、これは商品の分類に従いまして、各局、たとえば農水産物でございましたら通商局へ、繊維品でございましたら繊維局というところでそれぞれ見ております。法律といたしましては輸出入取引法の活用によりまして、輸出秩序が乱れることを防いでおります。
  289. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それから通産省の外郭団体で日本貿易振興会、これは特に中小企業海外へ進出するための調査についての経済的な基盤を持っておらないから、ここで相当の調査等をやらなければならないと思うのです。また、協力をしてやらなければならないと思うのですが、こういう点の相互連携ということは、どういう運営がなされておりますか。また、あなたのほうの指導はどういうようにされておりますか。
  290. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 ジェトロの調査資料は、本来中小企業のためのものでございまして、現在ジェトロとしては海外に四十二のいわゆるジェトロ事務所というものを持ちまして、さらに十四のトレードセンターというものを持っております。これらの機能は、まさに海外に手足を持ちません中小企業のための情報を常時送ることでございます。それから、そのほかに、現地の専門調査機関に委託をいたしまして、専門的に掘り下げて調査を行ないます。私どもマーケッティング調査と言っておりますが、それがございます。これは四十年度は六十数品目に達すると思いますが、これらの品目のほとんどは中小企業関係の品目でございます。中小企業が主として生産しているような品目でございます。  それで、問題は、かように集めました情報を、どうして中小企業のところへ流していくか、あるいは中小企業がどうしたらこれらの資料を簡単に使えるようになるかということでございまして、この点につきましては、実は四十一年度は大蔵省にもお願いいたしまして、ジェトロの中に現在ございます資料センターというものを強化いたしまして、使いやすい資料をつくる。それから海外の手足が直接中小企業の御要望に従って動きますように、ジェトロのあっせん関係の機能を国内においても強化する等の措置をとっております。
  291. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで、先ほどもちょっと触れておきましたけれども、海外における国内中小企業の市場競争というのを調整をしてやらなければならぬのですが、これはあなたのほうでおやりになって実績が上がっておるかどうか。聞くところによりますと、中小企業は資本が小さいだけに、苦境に追い込まれておるというように聞いておるわけなんです。あなたのほうではどういうように把握されておるか。また、この問題についてどう取り組んでおられますかお伺いいたします。
  292. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 輸出取引秩序の維持の問題は、実は非常にむずかしい問題でございまして、私どもの輸出振興対策中心でございます。先ほど御説明申し上げましたとおり、品目的には各関係局がそれぞれごらんになっておられるわけでありますが、現在輸出入取引法に基づきます輸出関係の協定が約二百ございます。そういうような協定によりまして、輸出価格の維持とか数量の規制を行なっているわけでございます。  それから、ジェトロのこういうような機関のほかに、たとえば軽機械センターというような施設、それから雑貨、農水産関係ジェトロとの共同施設というのがございます。そういうような施設を通じまして海外からの情報を入れまして、適切に、中小企業と申しますよりも、関係者を指導するというようなことをいたしております。
  293. 田口誠治

    田口(誠)分科員 大企業に相当押されておるということを聞いておるのですが、そういう点はどう把握されており、どのような手を打っておられるか、お聞きしたい。
  294. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 大企業中小企業との競争関係も……。
  295. 田口誠治

    田口(誠)分科員 量の関係でなしに、片方はダンピングするから。
  296. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 ダンピングにつきましては、私どもは、全般的に考えますと、きわめて例外に属すると思います。もしそういうようなケースがございますれば、これは単に国内関係ばかりでなくて、国際関係にもなるわけであります。私どもとしては、適切な指導によりまして、そういうことのないように防止するように極力努力していきたい、こういうふうに思います。
  297. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これは、大臣、いままでお聞きになって、いろいろと問題もある、隘路もあると思いまするが、政治的に振興策をとろうとしましたときに、この中小企業輸出振興資金融資というのは、金利は六分五厘七毛、それから貸し付け期間が三カ月で最高五回だと把握しておるのですが、これではなかなか長期借り入れをして、中小企業が大企業と太刀打って海外輸出を行なうということは困難性があるわけなんですが、ここらのところを何かかっこうをつけてやらなければ、中小企業も、輸出振興輸出振興と言ってみても、大企業に押されてなかなか振興にもなりませんので、この辺のところが一番みそだと私は思うのです。大臣、どういうようにお考えになるか、こういう実態をどう打開していこうとされるのか、大臣のほうからお示しを願いたいと思います。
  298. 三木武夫

    三木国務大臣 中小企業より大企業のほうが競争力を持っているという前提でお話しになっておるわけですが、ものによったならばそうではない中小企業の分野があるわけでありますから、全体的に輸出貿易中小企業が不利であるという前提ではないと私は思います。なかなか大企業ではできないような点もあるわけで、やはり今後中小企業の場合に一番基本的なことは、中小企業の設備近代化であるとか、あるいは中小企業の高度化であるとか、とにかく中小企業の持っておる体質を改善するということが中心になると思います。これについては、御承知のように、いろいろな資金などもほとんどこれは無利子の資金であります。近代化、高度化などの資金は、無利子でしかも長期に貸し付ける資金でありまして、また今度できた機械類貸与制度とか共同工場の貸与制度なども、これは活用すれば非常に中小企業の構造を近代化していくために役立つことになるに違いない、こういうことで、中小企業に対して特に大企業よりも手厚いいろいろな施策をいたしておりますが、このことが輸出の国際競争力というものの培養に私はなると思う。一方において、大メーカーあるいは大商社というようなものは、直接に海外の市場調査、あるいはまた、自分のスタッフ海外に送っておりますから、むしろジェトロなどは中小企業に利用価値があるのではないか。そういう点で市場調査あるいは商品の宣伝であるとか、展示であるとか、こういうようなのに、ジェトロというものに中小企業に重点を置いた役割りを果たさしめ、中小企業自体も中小企業同士の過当競争というものがあって、せっかくの利潤をみずから食いつぶしておるような点がありますから、こういう点では中小企業の組織化といいますか、こういうものを通じて秩序ある輸出をしていくように持っていく、こういう総合的な対策を講じて、輸出の面における中小企業というものの割合は大企業に劣らない比重を持っておるのでありますから、今後中小企業輸出振興というものには、総合的な手を打って特に力を入れていきたいと考えております。
  299. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間もございませんので、結論的な質問に移ります。  中小企業が受注する場合に、いまのところでは、協同組合単位というような形で行なわれているようですが、これは基準は何かあるのか、ひとつどこかに尺度を置いておるのか、直接にはぐあいが悪いのか、この辺のところを説明してもらいたい。官公需のものでよろしいです。
  300. 三木武夫

    三木国務大臣 これは個人でいいわけです。しかし、とにかく中小企業の単位が非常に零細ですから、まとまった一つの注文を処理していくのには、できる限り私は組合を結成して、そういうもので受注するほうが形式としてはいい。それでないと、実際中小企業が個々にということになってくると、原則としてそういうほうがいいというようなことを考えられる面もありましょうが、そうなってきたら、手続とか、官庁の注文が、一体どう、いつあるのか、どういう手続をしたらいいのか——実際問題としては、なかなか官公需要に対しての中小企業の受注というものはふえてこないと思います。だから形式としてはやはり協同組合のような形式で、組合が受注するというほうが実際的に中小企業の受注率を高めるのではないかと考えております。
  301. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで、この入札の資格、これも何か尺度があるのか、何か線を引いておるのか、どうなんですか。
  302. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 官公需の入札の場合にはそれぞれ発注官庁によりまして、そのときの注文の仕事の内容等によりましていろいろな制限をつけております。ただ、いまお話しの中小企業、特に組合単位の受注の場合でございますが、現在の法制によりますと、随意契約によって組合に対する共同発注ができることになっております。しかし、これは実際問題として発注官庁のほうがなかなか積極的にやらないのが実情でございます。そこで、私たちとしましては、現在なぜ発注が組合単位に積極的にいかないかという原因を調べてみますと、結局、組合が共同責任を持つ体制ができているかどうかということについて発注者側のほうが自信が持てないということだろうと思うのであります。そこで最近組合受注ができるように、またそれだけ信頼してもらえるようにするには、組合側としてもその体制をつくる必要がある。それにはどういうことをしたらいいかということにつきまして、いま政府部内でせっかく検討中でございます。できるだけ早い機会に組合単位の受注ができるような仕組みをつくりたい、かように考えておる次第でございます。
  303. 田口誠治

    田口(誠)分科員 東京中心の契約というのはふえていくようですけれども、地方の受注量がだんだん減っていっておるように数字では出ております。こういう問題をどういうように解決されていこうとするのか。これをほうっておけば、中央方面の業者はいいけれども、地方の中小企業はますますそうした仕事にありつけないということになりますので、この点は何といっても一つの政治で解決をしてやらなくちゃならないと思います。この点をどう思われるか。数字は見ていただけばおそらく減っておると思います。これは大臣のほうからお答えをいただいて、私は質問を打ち切りたいと思います。
  304. 三木武夫

    三木国務大臣 非常に極端なことではないと思うが、田口さん御指摘のように、地方のほうが少し少ないでしょう。しかし、われわれとしては、何としてもこれだけ中小企業を育成するというのが一つの国策の方向でもございますから、官公庁の需要に中央、地方を問わず、もう少し中小企業が進出のできるような措置を強力に講じてみたいと思っていま検討を加えておる最中でございます。近くそれに対して結論を出したいと思います。
  305. 田口誠治

    田口(誠)分科員 加えてちょっとお聞きしておきたいが、防衛庁関係の受注関係は、これはまた変わっておるのですか。あなたのほうの手を通じなくても、これは直接防衛庁からやっておるのか。やはり通産省というところを通じて受注さしておるのか、この点を伺っておきたいと思います。
  306. 三木武夫

    三木国務大臣 防衛庁関係は直接やっております。
  307. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それでは質問を打ち切ります。
  308. 植木庚子郎

    植木主査 これにて田口誠治君の質疑は終了いたしました。  次に、堀昌雄君。
  309. 堀昌雄

    ○堀分科員 公取委員長すぐ参りますね。時間がありませんから先に始めます。  本日はすでに問題は解決をいたしておりますけれども、粗鋼減産に関して住友金属の問題というのは昨年の暮れかなり大きな問題になりました。問題は一応落ちつきましたけれども、あの問題の中にはかなり重要な問題点があると私は思います。そこで大臣があの問題をどういう角度でお考えになっておるか、ちょっとそれを最初にお答えしていただきたい。
  310. 三木武夫

    三木国務大臣 やはりああいうことは各社とも不満なんですよ。あれは住友だけがわあわあ言って、声を大にされたから、住友だけが不満でほかのものはみな満足しておると思ったら大間違いで、みながやはりこういうときにはやむを得ないということで、全部が協調の精神でがまんをしたんですよ。みなが満足でないのです。そういうことでああいうコストを割ってきた。それで平炉メーカーなんかはばたばたと倒れたでしょう。こういう状態が続いていけば、緊急避難といいますか、異常な事態であるということで不況カルテルをつくればいいのですけれども、平炉メーカーは百軒もあるのですね。なかなかまとまらない。そんなら通産省はまとまらないからといって、このような不況産業を黙っておっていいかというと、私はそうは思わない。これは御承知のように、アメリカでも鉄鋼に対しては大統領があんな権限を持っておると思わぬですけれども、強力な行政指導をやっているのですから、通産省として当然これに対して行政指導をやっていい。もしそれをやらないと、住友金属のことで通産省がどうかこうかという批判もありますけれども、あれをやらないで鉄鋼業界に混乱が起きたときの国民の批判はずっと大きいのではないか、そういう意味においてああいうことは当然のことである。ただ、しかし、だれもみなが満足するようなことはできないのですから、設備を十分持っておるものに対して生産を制限するわけですから、できるだけ短期間にああいう事態は終わらすべきである。長期に、ああいう行政指導による勧告操短のようなことを恒常化することはいけない。できるだけ短期に終わらすべきものである。こういうふうに住友金属をめぐる問題を考えておる次第でございます。
  311. 堀昌雄

    ○堀分科員 いま大臣はそういうふうな角度でとらえていらっしゃるのですが、実は私はこの問題をちょっと——もちろんそういうことがあったと思うのですが、問題の中心は、私は鉄鋼の輸出のあり方の問題があの問題の中心ではなかったのか、実はそういうふうな問題のとらえ方をしておるわけです。  そこで、公取委員長に入っていただきましたから伺いますが、二月の二十三日に、商工委員会で板川君の質問に関連をいたしまして、田中武夫君が北島公取委員長に、いま大臣のお話になりました勧告操短は適当でないのなら、その旨を文書によって通産省に申し入れるべきであるということをお尋ねしたら、文書で申し入れますという答弁があったと実はきょう田中さんとちょっと話をしていました。——これは会議録がまだ中途はんぱでわからないのですが、そういう御答弁があったと聞いたのですが、御本人ですから、ちょっとその点を伺っておきたいと思います。
  312. 北島武雄

    ○北島政府委員 この席に通産大臣もいらっしゃいますので、私が申し上げたことは間違いなくお聞きいただいたと思うのですが、私は文書で申し上げるということは申しておりません。
  313. 堀昌雄

    ○堀分科員 そうするとあれですね。私は予算委員会における田中さんと大臣との会議録は拝見をいたしましたが、いまも大臣がおっしゃるように、勧告操短はできるだけ早くやめたほうがいいとおっしゃることは私もそうだと思います。   〔主査退席、坂村主査代理着席〕  そこで、この問題をずっと私なりに分析をしてみますと、私は何も住友の肩を持つわけではございませんけれども、この間十八日の日に大蔵委員会で、私、大蔵大臣との間に国際収支の問題はきわめて注意を要する段階にきていると思う、成長論者の皆さんは、あまりそれをお考えになっていないようだけれども、私はどうもそういう感じがするという議論をいたしました。そうなってきたときに、実は日本の国際収支をささえておるのはまさに貿易収支でささえているということになりますし、その貿易収支でささえておるという中に占める鉄鋼輸出の割合というものはいま非常にウエートが高くなっておるわけですね。そこで私は、今度の問題の中における住友側の最大の不満は、結局その輸出のウエートが住友の場合は非常に高いんですね。その他の各社に比較して高いというときに、輸出国内が同一のワクにされたということが、結局その輸出ワクの制限に連なるということが、どうもこの問題の一番中心点ではなかったか、こういうふうな理解を実はしているのですが、大臣はどうお考えになりますか。
  314. 三木武夫

    三木国務大臣 私は日向君に会いまして、輸出に対しては別ワクに考えましょう、ただし、あなたのほうがこれだけ輸出するからということではいけませんよ、契約書があって、それを吟味いたしますが、これは別ワクにいたしましょうということを日向君自身に私が言ったのです。そういう意味においてあの問題は、輸出ということが最大の原因だったとは私は思わないのです。本人にもそう言ったのです。ところが、前の期にはそうしてくれなかった、こう言うから、今度は私自身が、大臣がすると言うのだから、だからそういうことで前向きにこの問題を考えましょうと言ったので、その問題が中心だとは私は考えていないんです。やはり会社の社長として、設備が十分余っている、できるだけ自分の生産を伸ばしたいという企業者の立場からすれば、そういう考え方はあるだろう、日向君がほかの社長に比べて非常に熱心な社長であるだけに、そういうところに御不満があったのだろうというふうに考えておるわけでございます。
  315. 堀昌雄

    ○堀分科員 私も当事者でもございませんし、中にいろいろと書かれてある資料を見ますと、他社における割り当て等を引いておられる点もありますし、私はもちろんそれだけではないと思うのですが、しかし、私ずっと中を見ておりまして、今後の問題に連なることとして重要なのは、輸出の問題ではないかと思います。  時間がありませんから私のほうから申し上げて、もし私の申し上げる数字が間違っていたら、あなた方のほうで訂正をしていただきたいと思うのですが、実は各社の普通鋼の圧延用鋼塊生産の状態を少し私つぶさに分析をして調べてみたのですけれども、少し古い三十七年の二クォーターくらいからずっと見てみますと、これが鋼塊生産量の中に占める輸出向けの比率というのは住友が非常に高いですね。これはちょっと申し上げますと、三十七年の三クォーターは三三・三%、それから四クォーターは三九・二%、三十八年の一クォーターは四〇・八%、三十八年の二クォーターが三二・五%、三十八年の三クォーターは二六・五%と下がっておりますが、このときは全体として非常に伸びが悪い。その後も三十八年の四クォーターが二二・六、三十九年一クォーターが二六・九、三十九年二クォーターが三一・七、三十九年三クォーターが三〇・二、三十九年の四クォーターが三五・二、四十年の一クォーターが三六・六、大体平均三割くらいが輸出に向けられておる。結局、この場合は大きいところもありますけれども、名前を出して恐縮ですけれども、日本鋼管あたりは生産量の中に占める輸出の割合が比較的小さいですね。  そこで、結局この問題は、輸出別ワクということを住友のほうで言っておられるのに対して、その他の各社のほうからいろいろ御議論が出ているのですが、いま大臣のおっしゃったように、輸出別ワクにするからといって、何も中身がわからずに別ワクでは私も困るので、ちゃんとライセンスがあるかどうかは、きちんと皆さんのほうで調べていただいて、間違いがないというものに限って、輸出は別ワクで考えるというふうにしませんと、要するに輸出国内一本にしたワクの中で、粗鋼減産の処理をするというのは、輸出の問題から見るとやや問題があるように思うのです。いまお話しのように、確かに当初は特認とか称するものが非常に少なかったが、現状は、そうするともう実際には輸出別ワクと同じようなかっこうにこの輸出問題というものはなっているのでしょうか。たとえば第四クォーターですね。現在動いている四クォーターというのはどうなっているのかちょっと伺いたい。
  316. 川出千速

    ○川出政府委員 住友問題の解決されましたあと、いわゆる特認制度の運用の問題に入ったわけであります。第三・四半期と第四・四半期と一本で運用しろということになりまして、現在審査をしております。住友はすでに第三・四半期について申請を出しております。ほかの会社のほうは、一社は出しましたけれども、遠慮するということで出さなかったわけであります。第三、第四と一緒に審査をするということになりまして、各社一斉に申請をいたしまして、相当の数字になる予定でございます。現在、一件、一件契約の内容を審査して、書面審査でありますが、形式的な要件を具備しておれば認めるという方針で進んでおります。その意味ではいわゆる一種の別ワクと言ってもよいのではないかと思います。
  317. 堀昌雄

    ○堀分科員 過当競争は日本の通弊でありまして、これはやはり特に反ダンピングその他がとられるようなことを招いてはたいへんなことになると思いますので、やはり輸出については適正な処置をしてもらいたいと思いますが、しかし、はっきりライセンスがあって、個別にきちんと契約ができておるものは比較的少ないのではないか。ダンピングで一番困ることは、商社ががばっと持っていって、そうしてどばっとはかす、これに非常に問題があるので、個々に契約がとられておるものは、私はそんなに激しいダンピングというかっこうになりにくいのではないかと思いますので、その点は現実にはいまの重工業局長のお話で輸出別ワクという形でとられておるということでありますならば、私はこの問題の一つ側面は、将来の展望を含めてよい方向に進んでおると考えております。  その次に、さっき大臣がおっしゃいました、非常にたくさんのメーカーがある、できるだけ早くやめたい、こういうことでありますが、大臣、いまの情勢として、この勧告操短はいつになったらやめられるでしょうか。
  318. 三木武夫

    三木国務大臣 これはできるだけ早くですが、いまの状態では、ここに数字も取り寄せてありますが、御承知のように、まだ市況の回復はおもわしくない、そういうことで今年度の第一・四半期にやらざるを得ないのではないかという見通しでございます。公取委員長の文書をもらうまでもなく、この方は私と同席する場合が非常にひんぱんでございまして、文書以上に何回も聞いておりまして、それはわれわれもそうだと思うのですが、これはもう少し続けざるを得ないのではないかという見通しでございます。
  319. 堀昌雄

    ○堀分科員 そうすると、技術的にはどういうところにきたらやめるということになりますか。価格の面で言いますと、この前は昭和三十七年の六月ですかから約一年余り勧告操短が行なわれたわけですね。そうして三十八年九月に終わっておりますね。そういう市況の価格の面等から見ますと、私はすでに昨年の七月が当時では一番低かったように思うのですが、それらの倍率から推計をしてみますと、価格の面だけから見るならば、ほぼ回復をしてきておるという感じがするのです。  ただ、問題はさっき大臣がお話しになりました平電炉メーカーの問題、これは私はちょっとあとで少し議論をしておかなければいけないと思うのですけれども、そういう市況の問題以外の構造問題が入っております。ですから、不況カルテルの要件というのはここにありますし、そして同時に、やはり公取委員長も言われておるし、大臣もお考えのように、どっちかというと、勧告操短というのは、順序から言いますと不況カルテルよりもっと緊急避難なんですね。これは緊急避難の最たるものです。その次は不況カルテル、これは時間をかけても話し合える。そういうような緊急避難というのはおかしなことだから、いま大臣の言うようにできるだけ短くしたい。しかし、片や平電炉メーカーの問題が解決しなければ、これはちょっと、問題が残ってくるのではないか、そこらに対する考えですね。これは非常に複雑な問題がからんできておる。この前の三十八年の粗鋼減産を解いたときと現状では、この問題は非常に複雑になっておる、こう思いますが、大臣、その点はどういうふうにお考えですか。
  320. 三木武夫

    三木国務大臣 堀さんの御指摘のとおり、これは単なる景気循環的な問題ではなくして、やはり構造問題というものが非常に大きく横たわっておる。これは徹底的に構造改革ということに取り組まざるを得ないわけで、産業構造審議会においても検討を加えておるのですが、われわれとしても、この問題は真剣に取り組まなければ、なかなか平炉メーカーの製品も、ある限られておる製品に対して、商社関係も大小入り乱れて非常な過当競争というものの弊害が一番端的に出ておるわけですから、この構造改革というのは、お説のとおりこの問題と取り組まざるを得ない。しかし、それまでの間、構造改革ができるまで勧告操短というようなものを続けていくというようなことではあまりにも長期化しますから、これはやはりできるだけ勧告操短のようなものは、不況カルテルに切りかえられるなら切りかえる。もし容易でないときには、できるだけ短くこれを終わらすようにするということで、一方において構造改革は多小の時間がかかるが、これはやはり進めていかざるを得ない、こういうふうに考えております。
  321. 堀昌雄

    ○堀分科員 そこで、今度の勧告操短をやられますときに、不況カルテルにしたらどうかということに対しては、いまお話しのように、七十社も八十社もあるからなかなか話がまとまらない、こういうことですね。いま私はこの平電炉メーカーの構造上の問題というのはちょっと簡単にいかないなという感じがしております。通産省で資料をいただいた中で、三十九年度は転炉の生産能力が千八百三万六千トンですか、それから平炉が千八百九十二万八千トン、こういうふうになっておりましたのが、四十年度には平炉が九百八十二万八千トンに半減をするわけでございますね。その分の生産力は実は転炉のほうへまいって、二千六百六十四万八千トン、こうなるわけです。ですから、大体四十年度に一貫メーカーのほうはもう平炉を使わないで、ほとんど転炉に切りかわっておる。そうなれば、本来的にはくず鉄価格というものはかなり下がってきて、平電炉メーカーが少しやりやすくならなければならないのにもかかわらず、実は四十年度というのは御承知のようなかっこうがずっと出てきておるわけです。これは私はくず鉄にとって一番ドラスティックに条件の変わったのが四十年度だったと思うのです。四十一年度以降は全体としてくず鉄の出る量がふえるという問題もありましょうけれども、くず鉄の市況が急激に下がるという見通しはないとなると、この平電炉メーカーの問題というのは、かなり長期的に、いまおっしゃるような構造改善をやっていかなければならぬとするならば、すでに今日からこの平電炉メーカーの主要生産物に対してだけは、品種別の不況カルテルをいまからでも準備しておかないと、これは一カ月や二カ月で解決がつかない問題だと私は思う。ですから、いまの第一・四半期はどうにもしかたがないといたしましても、少なくとも第二・四半期からはやめるのか。おそくとも第三・四半期からは粗鋼減産をやめるということの目標をつけるならば、いまからこれらの平電炉メーカーの主要生産物の不況カルテルについての話し合いを煮詰めていかなければ、じりじりこれに足を引っぱられて、粗鋼減産をやめられないのではないか、私はこういうふうに思うのですが、大臣いかがですか。
  322. 三木武夫

    三木国務大臣 現在でも無規格の厚中板に対する不況カルテルがあるわけですから、これは今後一つ行政によって、勧告操短なんかはあまり長期にやるべきではないのですから、それは構造改善は切り離して考えなければならぬような場面が私は起こり得ると考えております。   〔坂村主査代理退席、主査着席〕
  323. 堀昌雄

    ○堀分科員 実は、いまの勧告操短が持っておる中身として、これも私は一種の不況カルテルだと思うのですが、不況カルテルというものは生産形態が同一のものの中で行なうのが当然のことだと思う。ところが、この場合は、片方は銑鋼一貫メーカーで、片方は平炉、電炉メーカーというのでは、生産形態は違うし、原材料は違うし、いろいろな角度で全然違う。ただ、たまたま生産物が同じかっこうに出てくる。そういうものを十ぱ一からげにした不況カルテルというものは、法律論議以外のそういう政策的な面から見ても非常に私は問題があると思うのです。これは公取委員長どうですか、ものの考え方として。たとえば繊維の不況カルテルというものは、綿糸なら綿糸というのは同じメカニズムでつくりますね。綿糸を特別の形でつくるということはないと思う。おおむね同じようにつくるから、綿糸操短といえば、まあまあきまったかっこうになるけれども、これは片方は鉄鉱石を入れて高炉から溶銑にして転炉に入れて、今度はミルに入れてだっと出てくる。片方は平炉や電炉からくず鉄を使いながら出てくる。全然生産形態が違うものなんですね。これが十ぱ一からげにしてあるというのはちょっと問題があると思うのですが、公取の側から見たらどうか。これは不況カルテルではないから何とも言えないのですが、この面からはどうもおかしい。
  324. 北島武雄

    ○北島政府委員 お話の点もわからないことはないのですが、ただできるのは粗鋼なんですが、粗鋼について需給のバランスがとれないということでやはり減産なさるわけです。やはり全体を見ないと通産省としてはぐあいが悪いのではなかろうか、こう考えます。
  325. 堀昌雄

    ○堀分科員 私はこの前、三十八年のときにちょっと議論をしたのですが、非常にたくさんの投資をして銑鋼一貫メーカーが設備投資をしてきたわけですね。ところが、これはしょっちゅう使わせない。三年に一ぺんくらい一年ずつ休む。だから三十七年から八年にかけて一年休んで、そしてまた二年にならないくらいでまた一年休むという形になっておりますね。そして片や生産能力のほうを見ますと、現在すでに着工されておる分だけでも四十三年度に粗鋼は大体五千八百万トンの生産能力に達する。片方は粗鋼減産をやりながら、片方では生産力をどんどんふやしていくという、まことに私はおかしなことが行なわれておると思うのですが、大臣、その点いかがでしょうか。
  326. 三木武夫

    三木国務大臣 これは鉄鋼の輸出あるいは国内消費需要の伸びというものをいろいろと大きく算定したのでしょう。しかしこれからはやはり鉄鋼のいろんな設備投資なども共同でやるというような、そういうふうにしなければ各社が競争して、しかもこれからの設備は大型化していきますからね。そうすると、むやみに鉄鋼の需要というものは伸びてくるわけではないので、だから将来にわたっては共同施設というようなことが考えられてこないと、いまのような状態で、競争で設備をふやすということになれば、どうしたっていつまでたっても——不況カルテル券、勧告操短だのというようなことは好ましいものだと私は思わない。今後の設備投資に対しては新しいくふうを要する段階に鉄鋼業界は来ている、私はこういうふうに感じます。
  327. 堀昌雄

    ○堀分科員 ですから私は鉄鋼の設備投資、結局ここへ来ますと、設備投資をある程度コントロールする以外に問題は解決しないと私は思うのです。それについてはこの前もちょっと申し上げたように、これから産構審の資金部会でいろいろおやりになるところにきているわけですけれども、どうももう少し通産省としてもきちんとした処置をなさらないと、これまた繰り返しになるのじゃないか。私きょうここで大臣にひとつお約束していただきたいのは、もうこれで今後勧告操短というものはやらぬと一ぺん約束してもらいたいと思うのです。なぜかというと、安易に勧告操短ができるということになっていれば、それなら設備投資もまあ少しはいいではないかということになり、あれもいいではないか、これもいいではないか、だらだらして悪くなったらまた緊急避難だという——もう二回やっているわけですね。三度目の正直ということでもうやらないというように、ここではっきり答えていただくと、事務当局も真剣に今度やらぬようにするためにはどうするかということで、問題が非常に前向きになると思うのですが、大臣、いかがでしょう。
  328. 三木武夫

    三木国務大臣 ものごとを、絶対にということは、なかなか、やはり使うべきでないと思っていますが、しかしこれを安易に勧告操短はやるべきではない、もうこれは例外中の例外だ、これを簡単にやることは、設備投資に対しての真剣さも失うでしょう、あるいは構造上の改革もおくらすでしょうし、いろいろな点で産業政策として好ましいものとは思わない。したがって、勧告操短というようなものを簡単にするということはできる限り慎むべきものである。これは堀さんの言われるとおりであります。絶対ということになると、絶対ということばは、どうも政治の社会では私は使いたくない。絶対論者では私はない。その点だけはごかんべんを願いたいと思います。
  329. 堀昌雄

    ○堀分科員 いま大臣が例外中の例外とおっしゃいましたから。ともかく二年目ごとに一ぺんやるのは例外じゃございませんからね。これはまああと五年か十年ごとにまたやるというなら私は例外として認めますが、これが終わるのはことしの九月ですから、向こう三、四年間はやらぬ——これは四十三年まで出ているわけですけれども、四十二年、四十三年、四十四年くらいまで、向こう三年間くらいはやらぬということになれば、これは私だいぶん変わってくると思うのです。その点は大臣よろしいでしょうか、そのくらいの間は。これは例外中の例外というなら、そのくらいはやらぬということで答弁なさってもいいと思います。
  330. 三木武夫

    三木国務大臣 まあこれは先のことを予言するのは非常にむずかしいのですが、これからはそのくらいの設備は実際に余っているのですから、何としても生産の調整をしなければならない。それくらいの調整が、まあこれを相談ずくでなくて、自主的に業界がそれくらいの協調態勢はとれるようになることが好ましいと考えております。だから、堀さんのようなことを私は鉄鋼業界に期待をする。
  331. 堀昌雄

    ○堀分科員 実は、私がしつこいようにこれを申し上げておりますのは、いまの日本の生産は輸出でもっているのですよ。輸出をいまこんなに異常にやっておって、なおかつ操短しなければならぬという、たいへんなことなんです、実はね。ところが、御承知のようにアメリカは、鉄鋼の設備につきましては合理化投資を初めやっていたけれども、そのうち能力投資に変わってきて、いまどんどん設備投資をして、やがて生産力化するわけですね。欧州もおくればせながらいま設備投資をどんどんやっておりますからね。私は日本の鉄鋼がアメリカへ出ておりますのは、やはりある意味では限界的輸出だと思っているのです。ほんとうの勝負になったらどうなるか。いまはいいですよ、日本のほうが新しい設備ですから、競争力が非常にあると思うのですけれども、向こうの設備がどしどし稼働し始めれば、いま動かしているような老朽設備は動かさない、スクラップ・アンド・ビールドで、こうやってきたときには、私は二、三年先というのは、そういう意味でたいへん問題が起こってくると思っているわけです。そこへきてまた勧告操短ということになるなれば、これは私は困ると思うのですね。今度は勧告操短で済まないのですよ。たいへんなことが起こってくるのですから。やはりそういう海外の生産力との関係をにらみながら、日本の経営者というものはもう少し真剣にこの問題に取り組んでもらいたいし、同時に平電炉メーカーの問題は、もう少し政府として積極的な対策を具体的に考えていただかないと、お前たちでかってにやれといったってできる問題ではないような気がするのですがね。その点、平電炉メーカーの構造改善を、具体的なプログラムに基づいて、どういうふうにすれば、どこでどういう価格で合理化ができるのかというめどが立っているでしょうか。いまその点をちょっと大臣から……。
  332. 三木武夫

    三木国務大臣 最初の点は、私もやっぱり堀さんの考えるように、勧告操短などは、あまりこういうことはやりたくないと考えております。  第二の点は、いま構造審議会でこの問題は衆知を集めてやっているわけですが、この問題については、ただおざなりでなしに、真剣に取り組まなければどうにもならぬと思います。そういう点でどの程度これが進んでおるか、必要があれば、いまからということで——われわれ考えてもあまりスピードが早いほうではないようですけれども、これは真剣に取り組んでやることはやらなければならぬ問題と考えております。
  333. 堀昌雄

    ○堀分科員 その次に、鉄鋼の価格の問題でございますけれども、ちょっと事務当局にお伺いをいたしますが、四十年の八月の形鋼、棒鋼十九ミリ、厚板十二ミリですか、ここらの日本の市況、市中のあれでいいですが、安値というのは一体幾らくらいだったんでしょうか。
  334. 川出千速

    ○川出政府委員 いま安値の資料を見ておりますが、市中相場の高値で三万九百円くらいでございますので、安値はこれより若干下だと思います。
  335. 堀昌雄

    ○堀分科員 棒鋼で……。
  336. 川出千速

    ○川出政府委員 棒鋼で四十年の八月、三万二千円くらいであります。厚中板は十二ミリもので三万七千円くらいでございます。
  337. 堀昌雄

    ○堀分科員 私の持っているのは、いろいろな資料がまじっているものだからよくわからないのですが、どうもこの資料は通産省の資料ではないかと思うのです。この四十年八月の輸出のドル建ての、いまの形鋼、棒鋼、厚板の価格というのはどのくらいだったんですか。これは四十年四月と八月と比べて、非常に悪くなったという実情が出ている資料があるんです。いまのあなたのお話をドル建てで見ると、形鋼八十六ドル、棒鋼が九十ドル、厚板が百三ドルです。いまの日本の円を換算しますと、そうなっているんですけれども、輸出価格というのは、このときどんなものですか。
  338. 川出千速

    ○川出政府委員 通産省の資料ではございませんが、四十年の八月、形鋼の価格は九十五ドルくらいでございます。
  339. 堀昌雄

    ○堀分科員 私、ここに資料3というので、「対米鉄鋼輸出の現状と問題点」という資料があるんです。どうも読んだ感じでは通産省の資料のように思うのですが、あっちこっちからいろいろな資料をもらっているものですからよくわからないんですが、そこの中にはこういうことを書いてあるんです。「アメリカの鉄鋼需要は上期に比べ下期は減少が予想される。厖大な輸出をしたアメリカ鉄鋼業界も、鉄鋼ストライキ回避によって在庫調整期に入り、需要は減少し、日本からの輸出も約九十万トン減少することが見込まれている。」「これらの状況を反映して日本輸出価格はかなり下落している。」注1として、欧州輸出実勢価格として四十年の四月に形鋼九十一ドル、棒鋼八十ドル、厚板九十四ドルというのが、四十年八月には形鋼八十四ドル、棒鋼七十三ドル、厚板八十五ドルと、こういうふうになっているんですね。これはおたくの資料かどうかわからないけれども、どこから出ておるのかわからないけれども、鉄鋼関係の人が出した資料であることは間違いないんです。それで見ると、いまや国内価格に比べてずいぶん低い価格になっているから、これはおかしいと思うんです。  そこで、時間がありませんから話を前に進めるといたしまして、公取委員長、鉄鋼には鉄鋼公販価格というのがございますね。これは公取委員長のあなたの立場から見て、どういうふうにお考えになりますか。
  340. 北島武雄

    ○北島政府委員 私もいきさつはよく存じないんですが、たしか昭和三十三年から行ないまして、三十五年に現在の制度になっております。そのときに、公正取引委員会といたしましては、通産省から同意を求められて、これを黙認と申しますか、オーケーを与えておるわけであります。ただ、考え方からいたしますと、一種の行政指導によるカルテルくさいようなことが行なわれたわけでありまして、こういう点については、その後の公取の態度、すなわち行政指導による勧告操短等によって、できるだけすみやかにやめていただく、こういう趣旨からすると、問題はありそうではございますが、ただいまではそういった関係で公取委員会としては、これをオーケーを与えておるということでございます。
  341. 堀昌雄

    ○堀分科員 三十五年から現在まで六年たっておるわけですね。そうして現実にはいま鉄鋼公販価格なるものは、私もいろんな資料を見ておりますと、いろんな価格が出ておるわけです。そうして見ますと、日本の場合には、ちっとも動いてない価格がいろんなところへ出てくるわけですね。なぜ動いてないかというと、これは鉄鋼公販価格を出しておって、それがいろんなベースになっている。これでは鉄鋼価格はずいぶん下がっているわけです。長い間公販価格から下がっている。公取委員会の三十五年当時のことは私もまだ調べていませんからよくわかりませんけれども、いまや鉄鋼公販価格なんというものは、価格カルテルとしても妙なものだ、こう思うのですけれども、大臣どんなものでしょう。これもいいかげんに取っ払っちゃったらどうかと思うんですがね。諸外国に対して鉄鋼公販価格があって、安値で輸出していれば、おまえのところはあれがとにかく標準プライスだろう、これだけはダンピングではないかという口実を逆に与えるくらいのもので、それを中心にしてあそこへ値段を引き上げようということでは、われわれはそういうカルテルや操短は認められないと思うんです。その点、大臣どうでしょうか、この鉄鋼公販価格の問題というのは。
  342. 三木武夫

    三木国務大臣 公販価格は、これは届け出によっておるものですね。これを通産行政としては一つ行政の指導のめどにしておるわけですが、いま堀さんの御指摘のような面もありまして、これは再検討を加えたいと私も思っております。
  343. 堀昌雄

    ○堀分科員 大体時間もたいへん過ぎましたから、また後日に議論をさせていただきますけれども、本日はそういうことで、少なくとも鉄鋼の輸出については、もういまおやりになっている輸出別ワクという考え方はひとつはっきりしていただいて、ただし中身はきちんとチェックをしていただいて、過当競争はやめてもらいたい、これがきょう私のお願いしたい第一点。  第二点は、平電炉メーカー対策があまりにおくれ過ぎている。これからかかるなんということで、通産省は何をしておったのか。平電炉の資料、これも同じようなところから出ている。これも通産省の資料だろうと思うのですが、どこから出ているかよくわかりませんが、ずっと売り上げ高、利益率なり、いろいろな純利益なり見ますと、三十五年ぐらいのところから一貫して下がってきて、この間にいいところがないのですね。いまはまさにどん底に落ちている。落ちる前に私は通産省は構造問題を考えてもらわないと、要するに粗鋼減産で大手のほうに問題が起きてきたときに一緒にやるということでは困ると思うのですね。いつになったらこれの対策が出るのですか。ちょっと時間をきめて、いつまでに対策をきちんと出して、どこからどういうプログラムでそれに入るのか、それをひとつ聞かせてください。うしろを聞いておかないと、ほっておいたらいつになるかわからぬ。
  344. 川出千速

    ○川出政府委員 実は、平電炉対策について通産省が全然無策でおるわけではないわけです。昨年でございますが、省議決定で平電炉対策というもので一応きめたものがございます。これは大手高炉メーカーでは、生産分野の調整あるいは平電炉メーカー相互の間のいろいろな品種の調整、流通経路改善の問題、そこからスクラップの見通しの問題、なお低廉なスクラップを入手するための努力の問題、金融の問題等が主要なテーマの柱になっているわけでございまして、行政指導でその点やっているのですが、実効をあげていないのはまさしく御指摘のとおりでございます。鉄鋼業の根本的なあり方の問題につきまして、大臣からちょっとお話がありましたけれども、構造審議会の中で、近くこの平電炉メーカーの問題だけでなくて、設備調整のあり方の問題、あるいは御指摘輸出秩序のあり方の問題というものも含めまして、根本的な検討を加えようといま事務当局で準備をしております。この準備ができましたら、スタートして、もちろんことしじゅうには結論を出すつもりですけれども、なるべくできたものから早く出していきたいと思っておりますので、御指摘のように平電炉対策につきましては、その中でもなるべく早く出したいと思っております。まだスタートしていない段階でございますので、いつまでということをここで明言するのはちょっと御容赦願いたいと思います。
  345. 堀昌雄

    ○堀分科員 大臣、いま重工業局長の話では、ことしじゅうには何とか目鼻をつけたい、それは計画ですよ。四十年に何かつくったものがあるのならそれでも実行してもらわなければ、計画をいまから一年たってやって、そのころには、もう日本の市況が非常に回復すればいいですけれども、私は日本経済というものは、回復はすると思いまするが、きわめて徐々であって、いまの平電炉メーカーの置かれておるいろいろの構造上の隘路が広がるようなところには、なかなかいかないだろう。これはひとつ大臣事務当局を督励をしていただいてやっていただかないと、あと播磨鉄工とかいろいろ問題があって、伺いたかったんですけれども、時間がないからよしますけれども、たいへんな問題をあとに控えておりますから、その点はひとつ十分御配慮を願いたいと思います。設備調整の問題、それからさっきの公販価格の問題等、私ももう少し鉄鋼について勉強いたしますけれども、日本の基幹産業でもありますし、私はあの住友の問題というのを、ただ、もめただけで済んだということでなしに、やはり禍を転じて福となすと言いますから、前向きにこの問題を処理していくという中で、ああいうことがあまり起こらぬようにすることが私は非常に重要だと思いますので、その点についての大臣の御答弁を伺って私の質問を終わります。
  346. 三木武夫

    三木国務大臣 輸出別ワクという問題、これはやはり私のほうとしても希望があるわけで、堀さん御承知のように、輸出が一千万トンですから、粗鋼だけで八百六十万トンも行っているわけですけれども、あまりにも急激な日本の鉄鋼輸出が、ことにアメリカ市場などについては、いろいろな問題で波紋を描いたことは御承知のとおり。一つには、やはりアメリカ市場に集中するという、市場分散の考え方も要る。それから、また一国の貿易が集中して、非常な急激な増加を示すということは、その国の産業にも打撃を与えますから、こちらのほうも、輸出に対しては節度のある協調の体制が要る。だからこれが過当競争をアメリカ市場に持ち込むようなことであっては、かえって長い目で見ると安定した輸出にならない。だから別ワクはいいけれども、そのかわりに鉄鋼メーカーも、鉄鋼の輸出に対しては協調する態度が必要である。この前提に立って、別ワクであるということを申し上げておるのです。  それから平炉、電炉メーカーの体質の改善につきましては、これはぜひともやらねばならぬことでありますから、真剣に通産省として取り組むことにいたします。
  347. 植木庚子郎

    植木主査 これにて堀昌雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十一年度一般会計予算及び特別会計予算中、通商産業省所管に対する質疑は一応終了いたしました。  次会は、明三月一日午前十時より開会し、農林省所管について質疑を続行することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十二分散会