運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-03-01 第51回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月一日(火曜日)    午前十時七分開議  出席分科員    主査 大橋 武夫君       川崎 秀二君    倉成  正君       竹内 黎一君    古井 喜實君       滝井 義高君    中井徳次郎君       原   茂君    堀  昌雄君       松井  誠君    武藤 山治君       八木 一男君    八木  昇君       山花 秀雄君    永末 英一君       吉川 兼光君    兼務 栗原 俊夫君 兼務 高田 富之君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁水         資源局長)   鈴木 喜治君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸沢 政方君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      中原龍之助君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚 生 技 官         (医務局長)  若松 栄一君         厚生事務官         (薬務局長)  坂元貞一郎君         厚生事務官         (社会局長)  今村  譲君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (援護局長)  実本 博次君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  加藤 威二君         通商産業事務官         (軽工業局長) 伊藤 三郎君         自治政務次官  大西 正男君  分科員外出席者         外務事務官   武藤  武君         大蔵事務官         (主計官)   平井 廸郎君         文部事務官         (大学学術局大         学課長)    吉里 邦夫君         文部事務官         (大学学術局大         学病院課長)  板谷 健吾君         文部事務官         (大学学術局学         生課長)    笠木 三郎君         厚生事務官         (大臣官房企画         室長)     加藤信太郎君         厚生技官         (薬務局製薬課         長)      豊田 勤治君     ————————————— 三月一日  分科員小松幹君及び今澄勇委員辞任につき、  その補欠として原茂君及び受田新吉君が委員長  の指名分科員選任された。 同日  分科員原茂委員辞任につき、その補欠として  中井徳次郎君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員中井徳次郎委員辞任につき、その補欠  として滝井義高君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員滝井義高委員辞任につき、その補欠と  して武藤山泊君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員武藤山治山花秀雄君及び受田新吉君委  員辞任につき、その補欠として八木一男島上  善五郎君及び吉川兼光君が委員長指名分科  員に選任された。 同日  分科員八木一男委員辞任につき、その補欠と  して堀昌雄君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員堀昌雄君及び吉川兼光委員辞任につ  き、その補欠として松井誠君及び永末英一君が  委員長指名分科員選任された。 同日  分科員島上善五郎君、松井誠君及び木末英一君  委員辞任につき、その補欠として山花秀雄君、小  松幹君及び今澄勇君が委員長指名分科員に  選任された。 同日  第五分科員栗原俊夫君及び第二分科員高田富之  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算厚生省所管  昭和四十一年度特別会計予算厚生省所管      ————◇—————
  2. 大橋武夫

    大橋主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十一年度一般会計及び昭和四十一毎度特別会計予算厚生省所管を議題といたします。  この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員になられたお方は三十分程度にとどめることとなっておりますので、御協力お願いいたしたいと存じます。  なお、政府当局においても、質疑時間が限られておりますので、答弁は必ず的確に、要領よく簡潔に行なわれますよう、特に御注意申し上げておきます。  これより順次質疑を許します。川崎秀二君。
  3. 山花秀雄

    山花(秀)分科員 従来、日本においては、精神及び身体障害の種類及び程度に応じまして各種の施設が設置されてきております。私は、この身体障害者の問題については、わが国は戦前も、細々ではあるけれどもかなり施設をしておったし、戦後もかなり重点政策としてやってきておるのですけれども重症身体障害者のうちからだが子供のときから全然きかない、将来社会に復帰する可能性も非常に乏しいという者の措置については、たいへんおくれておったように思うのであります。近来、民間においてもそういうことを放置しておくべきではない。これは心身障害を持つすべての人々の人格を尊重しということが一つと、いま一つは、家庭が非常にかわいそうだ、そういう心身障害児を持った家庭というような見地から、むしろ国が率先してこれらの人々を一定の地域に集めて、重症心身障害児の村ともいうべきものをこしらえたらどうか。そして、その中でも将来社会復帰のできる者もあるいは出てくるかもしれない。あるいは、その村の中においても多少の生産活動もするようなことになるかもしれないというような意味で、これはコロニーと呼んでおりますが、どうかと思うのですが——コロニーと言うと、近ごろは中南米のコロニーというものもあるので、いわゆる新開拓地に行った人の意味も、このほうが国際語としては通用しやすいのでどうかと思うのですが、これをコロニーと呼んでいるわけです。そういった心身障害者コロニー国立としてどういうふうに進めていくか。五百万円調査費が出たようですが、厚生大臣のお考えをまずお伺いしたい。
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま川崎さんのお話のように、重症心身障害児が、昨年の八月の調査によりますと、全国で一万七千人ほどおるわけでございます。そのうち、施設収容して療育を必要とするものが一万四千五百人ほどおるのでございます。これらの施設収容をしてお世話をしなければならないのに対しまして、施設が、今日までわが国では非常に少なかった。民間島田療育園でありますとか、秋津療育園でありますとか、あるいはびわこ学園でありますとか、そういう数少ないところで、わずか三、四百人の子供お世話をしておったという、きわめて貧弱な状態でございました。そこで四十一年度に、政府といたしましても、この谷間に取り残された気の毒な子供さん方の療育のために五百二十ベッド全国で十カ所の国立施設をつくるということの予算措置を講じたのでございます。また、施設収容できない方方もたくさんおりますので、在宅で療育をいたします者につきまして、保健所の嘱託医でありますとか、あるいは児童福祉司等によりまして療育指導を強化してまいる、さらに児童扶養手当等も範囲を拡大いたしまして、従来重度精薄児だけに限られておりましたものを、重症心身障害児のほうにも広げるというような総合的な施策を進めたわけでありますが、さらに、ただいま川崎さんからお話がございましたところの村の建設ということも、こういうお子さん方がだんだん大きくなり、医療をしながら残された能力を助長いたしまして、生活もでき、またその残存能力を通じて社会にも奉仕できるというような希望を持たして生活することが必要であるということで、ぜひ国立モデルケースとして村を建設したい、こういうことで昨年来コロニー懇談会というものを厚生省の中に置きまして、学識経験者方々お願いをして調査準備を進めておったわけでございます。四十一年度の予算でも調査費を計上いたしまして、四十一年度に相当具体的な準備を整えたい。いま国有林野の払い下げを受けて、早く場所もきめたいということで林野庁とも話し合いをいたしておるのでございますが、年度内にもこの候補地を決定し、四十年度中に建設の具体的な準備計画を進めたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 厚生大臣、たいへん系統的にお話しをいただきまして、ありがとうございました。よくわかりましたが、そうすると、二つに分けて、村というものを新たに建設するということ、年度内にも敷地を決定したいということと、それから従来の国立施設の中に重症心身障害児収容しよう、こういうことですね。国立施設の中に収容しようと思うものは、いまのところ何カ所でどのくらいでありますか。それから年度内に村の候補地を決定したい、これはいま候補地としては何カ所くらい当たっておられて——年度内というと、きょうが三月の一日ですから、大体しぼってきていると思うのですが、その点御答弁いただきたい。
  6. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国立収容施設全国で十カ所、五百二十ベッドでございます。そのほかに整肢療護園に四十床つくっていく。そこで全国——整肢療護園のほかに国立で十カ所つくりますものは四十床が一単位でございまして、八十床のものが二カ所程度で、あとは四十床ということでございます。  それから村の候補地につきましては、いろいろ近県の厚生部長衛生部長等候補地推薦方を願い、また厚生省からも現地を調査いたして、候補地をずっとしぼってまいっておるのであります。いまのところ静岡県下、それから群馬県下、二カ所がその中でも一番適当な候補地であるということで、この両者の諸条件を具体的に調査を進めまして最終的に決定をしたい、かように考えております。
  7. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 分科会でございますから、大筋は厚生大臣お答えになられて、あるいは足りなかった点は政府委員からすぐ補足していただきたいと思います。  たいへんけっこうであります。そこで、いま、ただ静岡県あるいは群馬県というお話でありまして、具体的な地名をあげられなかったのでありますが、静岡県で天城山の国有林、あるいは群馬県では棒名山、新鹿沢、それから富士のすそ野、こういうような候補地があがっておりまして、早くそのうちの一つにおきめを願いたいのですが、何せ広大な地面を要するのではないか。後刻触れますけれども、おそらく西ドイツベーテルというものを一つ理想のイメージとしてこのコロニー委員会考えておるし、厚生省考えておられると私は思うのです。そうすると、ほぼ百万坪くらいの敷地が要るのではないか。現在だんだん縮小して、五十万坪だのあるいは三十万坪だのということになると、せっかくよい考え方を持っておっても非常に縮小された形の実現ということで残念でありますので、一段と御努力願いたいけれども、私がこの機会にお伺いしたいのは、実は候補地として一番いいのは南多摩の「こどもの国」の隣接地——朝日新聞ですか、皇太子殿下の御成婚記念に「こどもの国」をつくった。あの隣の地域は、先般も私行ったのですが、なかなか広く、モミやあるいはイチョウの木の雑木林、あるいは少々原始林的なものが相当にあるようなところで非常にいい。二百万坪あるいは三百万坪の土地が自由に取れる。ところが、ここに一つ問題があるのは、旧陸軍の弾薬倉庫、そして占領中はアメリカ軍弾薬庫があり、射撃場もあった。近ごろ聞くと、アメリカの新しいミサイル基地予定地というような話もあり、さらには、そのミサイル基地の隣の約百万坪は米軍ゴルフ場だというような話もあって、それで難航したために土地を他に求めなきゃならなかった。何も東京付近理想地と私は思わぬけれども、最初にできるモデルケースとしては、やはり東京にわりあい近く、しかも広い地域を持っておる閑静な土地がいいのはさまっていることであって、「こどもの国」の隣接地域というのは非常によかったと思うのですが、これが候補地からすべり落ちたというのはどこにあるのですか、伺いたい。
  8. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 お話し土地につきましては、私どもも、東京に近いし、また人を得るという面、あるいは交通の便等を勘案いたしまして適当な地域だ、かように考えるわけでございますが、現在、お話しのように、国有地とはいいましても米軍管理地になっておる、こういうような状況でございますので、そういった面で、いま直ちにこれができるということには非常にむずかしい問題があるように聞いておりますので、現在のところ、その段階でとどめておる次第でございます。
  9. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 これは厚生省がもっと農林省その他と力を合わせて、また外務省等の力もかりてやるならば、必ずしもできないことではないじゃないかというふうに思うのです。鈴木厚生大臣在任のその際において、最も力を入れて具象的にあらわれるのは、このことが一番あなたのお仕事に適しておるのではないか。もとより医療保険の大問題をかかえて、とにかく前厚生大臣以来の懸案を乗り越えたわけでございますから、それだけでも非常に大きな功績ではあるけれども、ひとつ大きな新しい仕事を手がけられて、そうして厚生行政一つの転機をつくるということのためには最も適当なお仕事だと私は思うので、これはぜひ、でき得るならばもう一度、南多摩候補地研究をしていただきたい。実はここにいろいろな材料を持っているのですが、分科会のことですので、別にそれ以上政治的な発言はしたくないと思っておりますので、もう一度がんばってもらいたいということをつけ加えて、お願いをいたしておきたいと思うのであります。  それから、これは厚生大臣、ぜひ力を入れていただけば解決すると思うのですが、いまこの施設ができることを推進しておるのに存外芸能人が多いということ。芸能人といえば、とかく週刊誌エロゴシップ対象になるものが大半のように一般には感ぜられておるけれども、実際にりっぱな人がおります。私は非常に感心しておることは、「歩みの箱」というものを持って歩いて、そしてこの重症心身障害児コロニー建設されるまでは、いま厚生大臣指摘されたように、国立施設あるいは島田療育園等施設寄付しようじゃないかというもので、森繁久弥君、水上勉君、淡島千景さん、伴淳三郎さん——伴淳三郎氏が一番熱心で、自分子供のことにもつまされているのでしょうが、それが寄付を集めて、いま大体二千万円近く集めた。この七日には何かチャリティーショーをやって、二千万円ほどさらに集めて、四千万円をこえる巨額のものを持っているにもかかわらず、これが免税措置というものができていない。いま大蔵省に折衝しているのですが、これは施設のことですから、当然指定免税措置はとれると思うのです。この機会に私は彼らがどれだけ拠金をしたか、調べてみたら、雪村いずみさんが百七万三千三百五円、淡島千景さんが百万円、伴淳三郎氏は七十万円というのですが、いろいろなことで骨折りをして二百万円以上は実際に出しているでしょう。舟木一夫君が七十万円、水谷良重さんが六十一万円、西郷輝彦君が三十四万円、こういうように芸能人の非常な美しい協力ということは、これは世間で多少知っている者もあるけれども一般にまだ知れ渡っておらない。実に涙ぐましい協力だと私は深く感激しております。でき得れば、このことは免税措置をしてやるのが当然だし、一番優先対象になるのではないかと思うのですが、厚生大臣はどういうお考えでありますか。
  10. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いまお話しがございました森繁さんであるとか伴淳さんであるとか水上さんであるとか、そういう芸能界方々が「歩みの箱」の運動を起こされまして、気の毒な心身障害児あるいは社会福祉施設のために多大の寄付をしていただいたり、援助をしていただいているということにつきまして、私も常に心から感謝と敬意を払っているところでございます。昨日も、東京青年会議所日本映画俳優協会が、昨年の暮れに国際慈善市後楽園ホールでやりまして、その益金五百万円を身障児を守る会その他の福祉施設寄付された、また、脳性小児麻痺等研究のためにも使ってほしい、こういうような非常にあたたかい熱意のある運動を展開されておるのでありまして、この寄付につきましては、いま御指摘のようにぜひ免税を行なうようにして、この行為が全部施設に生かされるようにということで大蔵省と折衝を現在いたしております。  いままでの経過によりますと、直接「歩みの箱」の運動免税対象にするということはなかなか困難であるけれども寄付を受けるところの施設等々と結びつけることによって、事実上免税にするということができるような措置を講ずることが大蔵省話し合いが進んでおります。近く、川崎先生の御指摘のような、実質上免税になるような措置を講ずることができる、かように考えております。
  11. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 ただいまの大臣発言につきまして補足説明をいたしたいと思います。  現在の入場税法によりまして、福祉事業施設が直接に慈善興行を行なう場合には免税措置があったわけでございます。これにつきまして、「歩みの箱」あるいはこれを共催しておりますライオンズクラブというのがございますが、そういった団体助成団体でございますので、免税措置がなかったわけでございます。今度大蔵省のほうでも、いまのチャリティーショーにつきましていろいろ検討を加られました結果、社会事業助成団体についての項目を加えまして、免税措置をとるようにしたい、そういう改正が行なわれるようでございますが、ただその場合に、法人であることが必要でございますので、そういった面で、「歩みの箱」運動自体はまだ法人化しておりませんので、そういう点を今後研究さしていただきたい、かように考えます。
  12. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 森繁久弥君が熱心ではあるけれども、実際は秋山ちえ子さんが、鋭い社会感覚のある人ですから、いろいろと世話をしておる。ところが、きのう実は朝から調べてみると、法人に対する考え方というものに対して、まだ組織化ということをしていなかったようですね。何でも、準備佐藤三郎君というのが一人でやっている。これでは法人化していないのでだめだ。やはり多少金がかかってもすみやかに法人化して、そうして免税の恩典を受けるように——もちろん施設に金を集めているわけですから、事実上免税になるような、いま厚生大臣お話でございますけれども、そういう点もひとつ行政指導してやってください。私も側面的にはやっていますけれども、そんなことにばかりかかり合ってはいられないので、できるならば厚生省のほうで、こういう善意のある行動をはぐくんでやっていただきたいというふうに思う次第であります。  それから村のほうの問題は、おそらく国立で、五カ年計画ですか、一応の計画で四十二年度からはいよいよ施設をするということになるでしょう。そのときには、しかし将来のことを思うと、どうもこういうものは民間善意もとで実りつつあるわけですから、国立として施設をしても、将来はやはり特殊法人でもつくって、そして民間の人に心あたたかい気配りをしてもらわぬと、役人の人ではなかなかこれはうまくいかない。これは全世界的な現象である。どうかそういう意味で、ひとつ民間法人ボランティア精神を持った人々中心にやるべきだ、こう私は思うのでありますが、厚生大臣のお考えを伺いたい。
  13. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も全然同感でございまして、施設国立でやりまして、その運営につきましては特殊法人でやってまいるように考えております。
  14. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 私の質問の趣旨と同じような、ピントの合ったお話でありまして、さらに進めます。  この模範的なものは、先ほども申し上げましたように、西ドイツのボンの郊外、約二百キロほど行ったところにあるベーテルの家というのが一番理想的のように思うのです。そのほかにも、アメリカのウィスコンシン州にあるセントラルコロニーというやつ、これもかなり重症患者中心にしての施設ができておりまするし、オランダにもバー・ステッチンというのがあるようであります。日本では先ほど厚生大臣があげられたようなところ。これは去年厚生省から課長が行かれて見てこられたわけですが、私はまだほかの優秀な施設を知っておるのです。それはユーゴスラビアにあります。これはユーゴスラビアのベルグラードに、軽症から中症重症の三段階に分けてのものがあって、あれはチトー元帥が戦争中にゲリラ活動をやった。そのために傷痍軍人が多いとともに、民間の連中も相当に傷ついて、それが社会復帰をする者もあれば、重症として再び立ち上がれないという老人もある。そのトレーニングぶりはなかなかみごとでして、行ってみると、軽症の者は、片ちんばであってもちんちんをやっている。そして社会復帰をしよう、あるいは全然手は両方なくて、左足だけでいろいろな作業をしておる。字も書ける。わが国では、昔は九段のあの靖国神社の境内でお祭りがあると、足で字を書いて、この子は哀れな子でございとやっておったのがありますが、ああいうばかな時代もあったけれども、とにかくユーゴへ行った上で見た施設は非常にいいものですから、これもひとつ将来参考にされるように願いたい。それからハンガリーでも相当進んでおる。フィンランドには、子供の城というのがヘルシンキにあることは、これは御承知のとおり。広く海外の実情を調べて、そのうちで最もよいものをとったほうがいいと思うのです。ドイツベーテルでは、ほぼ一万一千人ですか、あの村におるそうです。そのうち五千人から六千人は患者で、あと三千五百人から四千人近い保護者あるいはボランティアというものがいるわけですね。これは全く至れり尽くせりであって、こういうのにどういう人がつとめておるかというと、若い女の人で来年は自分はお嫁にいくのだ、しかし、あと一年間の残されたその期間を、そういう心身障害児世話をして、その心持ちを持って新しい人生を切り開きたいというドイツ娘相当多い。これは非常に感激的な話であります。どうかそういう精神をこの機会厚生省は広く世間に知らして、そしてそういうボランティアが出てくることを、私はこの時代において期待するものであります。  それからもう一つは、非行少年ども、場合によってはこの村に入れてもよいのではないか。ドイツでは非行少年をその村でやっておる。一緒に入れてみた結果、直らないやつもいる。五〇%は直らないけれどもあとの五〇%は、心身障害児の姿を見て、こういう気の毒な人たちも世の中にいるのか、自分たちはあやまったというので、実物教育でそれから立ち直った、非行少年が奮起したという実例がかなりありますので、そういう意味でのPRと善導をお願いしたいと思いますが、こういうような点について厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  15. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま川崎さんから、ドイツベーテルの例をお引きになって、心身障害者の村の建設の構想、あり方についての御意見がありました。私どもも、資料等によっていろいろ勉強いたしておるのでありますが、 このベーテルには、設備として教会あり、病院あり、学校あり、また医師やその他の指導員の宿舎もある。そしてたくさんの善意人々の奉仕でこれをやっておる。また、軽度の者が重度の者を、お互いに助け合ってやっている、こういうようなことも実際に行なわれておるわけでありまして、このコロニー、村づくりは、そういう方向で今後進めらるべきだ、かように考えております。わが国におきましても、すでに御承知のように、現在あります島田療育園でありますとか秋津等の施設には、秋田県の若い結婚前の娘さんたち二十人余りの方が上京されて、そして、非常に真剣に一生懸命奉仕されておるのであります。私は、そういう奇特な方々に対しましては、お目にかかりましてお礼を申し上げると同時に激励をいたしまして、新聞その他の御協力を得て一般の国民の方々にもこれを報道し、認識を深める、こういうような努力もいたしておるわけであります。私は、こういう気の毒な子供さんたちの、またそういう一生非常な悪条件をしょって生活をしていかなければならぬ方々のために、社会全般が十分あたたかい理解と認識を持って、御協力いただくことを切にお願いをしたいと考えております。
  16. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 ただいま厚生大臣の御所見を伺いましたのですが、島田療育園の院長の小林提樹さんという人は、このことに生涯を打ち込まれて今日まできておる。昨日お会いしたときに、一番痛切な実例として「順子覚え書き」という、青木龍夫さんというおとうさんが、身体障害者重症患者子供を持っておるわけですね。これはまた痛切なものです。この青木順子さんというのは、一九四七年七月十八日生まれ、福井大震災のときに生まれたのですね。大地震が起こったときに、おかあさんが近くの自転車屋に用足しに行っておって、そのときに地震で驚いたので産けづいて生まれた。当時は戦後の栄養の非常に悪かった時代。母親のからだのコンディションは悪く、そこで地震ということのために、生まれ落ちたが重症精薄児になって、知能指数二〇、言語を知らず、七歳の正月元日よりようやく歩き始めた。医師も助産婦も、生命を保証せず、こういうカルテがあるわけですが、初めは全然言語もなにしないし、食べものも自分では食べない、ようやく七歳のときに歩いたというのですから、母親は涙を流して、順子が歩いたら、町じゅう、かねや太鼓をたたいて、順子が歩いたぞ、順子が歩いたぞとふれ歩くと言っておったほどです。こういう哀れな記録ですが、一番胸をそそられるのは、そのおとうさんが、「叱りても冬菜また噛むかなしけれ」という俳句をつくっておる。どういうことだと思ったら、順子はお菓子や肉などよりもタマネギとかキャベツとかなまネギを好んだ。タマネギなど、涙を流しながら一つでも食べてしまう。みそ汁などの中に入れる冬菜を刻んでいるそばで、ほうちょうの刃先に手を出して冬菜をつまんではかむ。「あぶない、あぶない」、幾ら言い聞かせても手を出す。ほうちょうへ手を出す。しかってもだめだ。しかれば順子はそれは悲しい顔をする、涙がこぼれそうでならないという感想を述べておるのですが、こういう母親、父親が非常に多いと思うのです。それで、中にはこういう機関紙に投書で、もういっそのこと何かの注射で殺してしまいたい、これはどういう罪になるのかという投書をしてくる母親もあるということであります。でありますから、ぜひともこの最も恵まれざる人々には愛の手を差し伸べてやることが、今日の国家の急務ではないかというふうに私は思うのです。  きょう最後に、悲しい話ばかりでなしに一つおもしろい話もしますが、厚生大臣というものはみんなによくしなければいけない。厚生大臣の自動車の番号、知っていますか。三七二四一、だれが交渉してこんな番号をつけたのか知らぬが、ミナニヨイとちゃんと書いてある。そこで、厚生大臣というのはずいぶん長生きする連中がいると思って調べてみたら、一松定吉先生が九十二歳。この間、国会図書館で私は調べものをしておったら、隣に大きな声を出す者がおるからだれかと思ったら一松先生で、九十二歳で彼は「風雪九十年」という言行録を出版するために、いま図書館に速記録を写しに来ている。みな写しているのです。私は、そんなものは写さなくても、このごろはゼロックスなんという機械があって、それでやると一ページ三十円でやってくれると言うと、そんなのがあるかい、私は年をとり過ぎたと言っておったが、九十二歳でなお元気であるし、臨時の厚生大臣を入れると吉田茂さんは八十八歳、小松製作所のおやじの河合良成氏も八十になんなんとする年寄りで、しかもみんな健在である。松村老は、八十二歳にして政治信念衰えず、日中国交問題に生涯をかけている。こういう先輩をずっと見てみると、実在者——木戸幸一なんという人も八十近くで生きている。厚生大臣の実在者の平均年齢は七十二歳である。これは何か世の中にお返しをしなければならない。お返しすりなら、私は、そういうふうに一番恵まれざる重症患者というものを、鈴木厚生大臣時代国立で手をつける。厚生大臣はたいへんじょうぶな人だが、副幹事長時代に、一日じゅう副幹事長室におって少しも健康をそこなわなかったから、ある意味ではあなたが一番国会議員の中でモデルケースかもしれない。ぜひとも恵まれざる人々に愛の手を差し伸べるということに、今度の厚生行政一つの重点を向けてもらいたいというのが、私の本日お願いをしておる件であります。これは別に御答弁は要りませんが、御感想でもあれば承っておきたい。
  17. 大橋武夫

    大橋主査 原茂君。
  18. 原茂

    ○原(茂)分科員 いま川崎委員からいろいろと御質問がありましたが、私もきょう、特に恵まれない重度精薄児ですとか、あるいは軽度の精薄児、情緒障害といった方々に対する国の手当ての内容について端的にお伺いをし、なお私の、これも端的な意見を添えて、厚生大臣からできる限りの協力をちょうだいしたい、そういう趣旨でこれから質問をいたしたいと思います。  最初にお伺いしておきたいと思いますのは、現在恵まれない子供といわれておりますこれらの気の毒な子供たちの生まれる前の過程ですが、これから結婚する婦人たち、あるいはいまのおかあさんたちが、単に不幸な子供をどうするかだけでなくて、これからそういう不幸な子供が私のからだを通じて生まれはしないかというような心配を相当大きく持ち始めているわけです。そこで、やはり生まれ出た子供に対する手当ても大事ですが、やはり予防の措置としては、なぜ一体、精薄児が出てくるんだろう、重度障害児がなぜ生まれてくるのかということに十分な検討を加えて、事前にそれを防ごうというところに国としては大きな力を注ぐべきだと思うのです。そういう点について、何か特別に施設を持ち、あるいはいままでも検討したことがあるなら、それをお伺いし、今後どうするかも、あわせて厚生大臣からお伺いしたい。
  19. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 精神薄弱児あるいは重度精神薄弱児あるいは情緒障害児、こういう気の毒な子供さんがどういう原因で生まれるのか、この問題は、学問的にもいろいろ追及をいたしておるのでありますが、まだ十分な結論が見出されておりません。ただ、最近、一部におきまして、脳性麻痺等が相当大きな原因ではないか、こういうことが指摘されておるのでございますが、いずれにいたしましても、厚生省といたしましては予防、さらに医療、さらに進んでは、社会復帰という一貫した対策を進めていかなければならない、こういう考えでおります。  そこで、予防の措置といたしましては、何といっても、母体であるおかあさんの妊娠時の健康の管理あるいは栄養の問題ということがきわめて重要だ、こう私は考えておりまして、そういう観点から、妊産婦の健康診断あるいは保健所の保健婦、指導員等による健康上の指導、あるいは栄養面の指導、そういうものをやっておりますし、また、今年一月一日から実施になりましたところの母子保健法によりまして、さらに母子保健対策を強化してまいりたい。また、栄養の問題につきましては、低所得の御家庭の妊産婦、乳幼児に対しましては無償でミルクを配給する等の対策を強化していくように、四十一年度の予算でも措置いた  しておるわけであります。
  20. 原茂

    ○原(茂)分科員 従来、どの委員からも真剣に論議されてきた問題です。それから、特にわが党でも、長谷川保君なり伊藤よし子君なりがいろいろ論議してまいりましたから、それに重複することは時間の関係で避けたい。大臣あるいは局長等からも端的にお答えをいただいて、時間にきびしい制限があるものですから、有効に使わしていただきたいと思います。  ただ、いまの、おそらく厚生省としては検討しておわかりだろうと思うのですが、これについて、十分大臣の言われたような御配意をいただく必要があると思います。大体生まれる前と生まれろとき、それから生まれたあとというふうに分けまして、生まれる前には遺伝性の障害、それから生理的異常群といいますか、あるいは病的異常群、いろいろこれには内容があります。これは専門家の局長方のほうがわかると思いますから、内訳は申し上げません。それからもう一つ、生まれる前の大きな障害としては、胎生期の障害というのがあるわけです。中毒ですとか、はしかですとか、梅毒、特殊プラズマというような放射線障害もあるでしょう。こうした胎生期と、それから遺伝性の障害と、生まれる前の原因としては二つに分かれているわけですね。また、生まれるときの原因というものも一つある。それは産道狭窄ですとか、鉗子分べんというようなことからくる頭部障害ですが、あるいはまた未熟児、先天的に体質が弱い、いろいろ理由もあります。仮死分べんもあります、というのが生まれるときの原因で、この種の子供たちが生まれる。それから、生まれたあとの問題としては、脳炎とか脳膜炎、日本脳炎あるいは高熱性の疾患、中毒というようなものがあるわけですが、生まれる前の、二つ申し上げたうち、胎生期の障害の中の特に中毒という現象ですね。薬品とか一酸化炭素などによる障害、これが非常にばかにならない高率を占めている。そう高率ではないのでしょうが、生まれる前の原因としては相当の高率を占めている。これに対しては、特に厚生省の立場で、監督も指導も行政的な措置もできる分野が非常に多いわけです。その面における、薬品を知らない間に使うとか、化粧品を使ったとか、あるいは植物を消毒するために、いろいろといま薬品が出ている、そういうものを使った、あるいはまた、暖をとるために、一酸化炭素中毒を知らないうちに軽度に起こしているとかいうようなことから、この種の精薄児その他が出るということがわかっている以上は、特にこの面にも重点を置いて今後の指導監督というものをしていただく必要があるというふうに考えますが、こういう点、厚生大臣が今後そういうことを十分におやりいただけるかどうか、お答えだけいただきたいと思います。
  21. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま、原さんから詳細に御指摘がございましたが、いろいろの原因があると思います。また、そういう原因がさらに重なり合うことによって、そういう結果が生まれてくるということもあると思います。今後、予防の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、母子保健法の実施を契機といたしまして、妊産婦、乳幼児の健康管理の問題、また、それらの研究につきましては、十分政府としても力を入れてまいりたいと考えます。
  22. 原茂

    ○原(茂)分科員 次に、三点に分けて、これから御質問申し上げたい。  第一に、情緒障害児の国の施策についてであります。これに対しては、すでに一部予算も行使されて全国的に施設ができているんじゃないかと思うのですが、今日まで情緒障害児を中心にした施設というものが、どういう内容でどのくらいできているか、まずお答えいただきたい。
  23. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 現在、情緒障害児の短期治療施設につきましては、全国で四カ所でございます。その施設自体が、まだ新しい施設でございますので、普及を十分見てない。特に教護院に入る前の段階といたしまして、非行防止と申しますか、非行の予防にとう観点から、私どもといたしましては今後進めてまいりたい、かように考えております。
  24. 原茂

    ○原(茂)分科員 その四カ所の大体の予算ですね、どのくらいの施設ができているか、それも……。
  25. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 現在四カ所の施設につきましては、収容定員が二百人でございますが、在籍人員は、昨年の六月現在で七十五人という状態でございます。
  26. 原茂

    ○原(茂)分科員 この四カ所で、一体どのくらいの金がかかったのかを、ちょっと一緒に聞きたい。短期治療施設として、おそらく国からも助成金が何割か出ているはずですね。県が出し、地元負担などもあるのじゃないかと思いますが、この内訳も一緒に、四カ所の分をお聞かせいただきたい。
  27. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 現在、情緒障害児の施設につきましては、児童一人当たりに要する経費を申し上げますと、年額でございますが、昭和四十一年度で、一人当たり二十八万三千九百十一円、こういうような予算額になっております。
  28. 原茂

    ○原(茂)分科員 今後の厚生省の方針をここでお伺いしたいのですが、この種の施設を毎年全国に一カ所ないし二カ所くらいはつくっていく、そういう予定がおありですか。四十一年度の予算でそういうものを考慮しているかどうか、金額はどのくらいか。
  29. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在四カ所でございますが、要求はかなり出てまいっております。そういった面からいたしまして、運営その他で今後検討すべき問題がございますが、毎年一カ所か二カ所はつくりたい、かように考えております。四十一年度は、社会福祉施設整備費二十九億の中で、こういった施設についての補助金を考えたいと思っております。
  30. 原茂

    ○原(茂)分科員 できるだけ多くこういう設施ができるようにしていただかないといけないかと思いますが、これはこの程度で、それ以上こまかいことをお伺いしないほうがいいようですから、いたしません。  次に、重度精薄児の手当についてお伺いしたいのです。この国会に何か改正法をお出しになって、精薄ばかりでなくて、身体障害に関しても、重度のものについては手当てができるように法律の改正をしようとなさっておられる——法案が出ているかどうか知りませんが、そういうことを伺いましたが、それを含めまして、依然として、やはり児童一人当たり千円という月額で今後もいかれるのかということをひとつ……。  それから、扶養義務者その他に対する所得制限の引き上げ等を行なう、多少減税といいますか、そういうことや、手当を支給する範囲を拡大するといいますか、そういうようなことを考慮されているようですが、その点の内容、これと同時に、一緒に時間の都合でお伺いしておきたいことは、千円の手当というものが実は児童一人に出されていて、相当の金額のようにも考えられるかもしれませんが、特に、この重度の精薄児その他身障者は、だれか一人ほとんどつきっきりでないと生活ができないんですね。単に目が見えないとか耳が聞こえないとか、これもお気の毒なんですが、しかし、五体健全である人とは違いまして、精薄児の場合は、一本の木でできたつえでなくて、必ずおとなである人間が大半一人か二人ついていないと生活ができていない。それを、本人に対する月額千円というような手当で、一体ほんとうに愛情のある手当といえるかどうか。いままで十分論議をされてきたはずなんですが、いまだに、お伺いするところの法律の一部改正案によっても本人に対する月額千円だけしか配慮されていない。限度額の引き上げその他により、少し支給範囲の拡大をはかっているだけというふうに聞いているわけですが、これは少しく冷た過ぎる。ほんとうに精薄児に国としての親心を示そうとするなら、人間という、しかも、大のおとながつえになり柱になっているという存在を、これら精薄児の場合には考えて、それに対する手厚い手当てが何かの形で行なわれないと、実際には何の役にも立っていないのじゃないかというふうに思いますが、この点も、あわせて、ひとつ御説明のときに厚生大臣から見解をお聞きしたい。  それから、単に所得制限の引き上げその他で支給の幅の拡大等が行なわれるばかりでなくて、いま私が申し上げた理由から、これの扶養義務者である人に対しては思い切った減税措置を講じてやりませんと、目に見えない時間的な損失、経済的な損失というものをだれも計算してくれないのですが、計算しますと、たいへんおそるべき額になるのです、本人が負担をしているわけです。その負担の上に、これら重度精薄児のめんどうが見られているわけですから、したがって、これらの義務者に対しては思い切った減税措置を行なってあげる、もちろん、市民税も減免するというところまで考えていく必要があるのじゃないかと思うのですが、どうも、そういうことも配慮されていないように思いますので、これはぜひそうしなければいけないというふうに考えますのが、あわせてお聞かせをいただきたい二つであります。
  31. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 原さんからお話がありましたように、従来、重度精薄児だけ扶養手当が出ておったのでありますが、重度の肢体不自由児あるいは重症心身障害児、こういうお気の毒な子供さん方もやはり同じような条件にありますので、昭和四十一年度におきましては、重度の心身障害児まで対象範囲を広げるということにいたしまして、特別児童扶養手当法という形で支給範囲の拡大をはかりたい、かように考えております。  また、その手当の額でございますが、月額千二百円の支給をいたすことにいたしておりまして、実は当初、厚生省といたしましては、福祉年金その他の関係との均衡その他を考えまして、せめてこれを千五百円程度に引き上げたいということでいろいろ努力をいたしたのでありますが、昭和四十一年度は、まず対象範囲を広げるということに重点を置きまして、支給額は千二百円ということにとどめざるを得なかったのであります。  それから、所得制限の引き上げの問題につきましては、その内容は、後ほど児童家庭局長から御説明を申し上げます。  なお、扶養義務者に対する減税の措置でございますが、これは今後の重要な問題として、税制部面で御研究を願いたい、かように考えております。
  32. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 今回の改正によります所得制限の緩和につきましては、受給資格者本人、つまり、重度の精薄児または身体障害児を扶養する人につきましての所得制限の限度額は、二十二万円から二十四万円に引き上げられました。また、扶養義務者の所得制限の限度額は、七十一万六千四百円から八十一万七千五百円、これは扶養家族五人の場合を例にいたしておりますが、そういうような緩和を行なった次第でございます。
  33. 原茂

    ○原(茂)分科員 厚生大臣からは、今後の審議に待ちたいという御答弁でなくて、やはりもう一歩突っ込んで、先ほど川崎委員も言われたような、大臣のいわゆる博愛精神にのっとって、大臣の責任で、思い切ったこの種の減税措置等が推進できるように努力を願いたいと思うのですが、どうでしょう。
  34. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題につきましては、社会福祉審議会で、精神薄弱者あるいは身体障害者福祉の問題と一緒にいま御研究を願っておりますので、その審議会の御意見を伺って、いま原さんから御提案になりました方向で努力していきたいと考えております。
  35. 原茂

    ○原(茂)分科員 ありがとうございました。  続いて、六点一緒にお答え願いたいのですが、やはり、これらの精薄児なり身体障害者に対して、いままで一般障害者に行なわれておると同じように、たとえば、精薄者手帳というようなものを交付する制度を設けて、現に、いろいろな配慮の中からラジオ・テレビの聴取料の免税ですとか、交通機関に乗ろうとするとき割引が実施されているとか、身障者に対していろいろとその種の特別な配慮が加わっている。それと同じようなことを、この精薄者あるいは重度身障者及びこれに義務者として常につえのように付き添って動いている人々にも、あわせて特別なこの種の配慮が加えられていかないと、一人で動物園に見に行くとか、汽車に乗ってどこに行くといったって、これらの人々は絶対に一人では行けないのですから、汽車の割引があるにしても、義務者に対してまで一緒に割引が及ばなければ、実際には、ほんとうの意味の国の立場で配慮を加えたことにならないということも含めて、本人はもちろんですが、この義務者一人に対しても、当然いろいろ他の身障者に今日まで与えられていると同じ恩典というものが、交通機関その他のものに対しても与えていただく必要があるのじゃないかということを考えるのが一つ。これもはっきりひとつ御答弁をいただきたい、ぜひやっていただきたい。  それから、精薄者に対して——とにかく あとで別に言う時間がないようですから、一緒に申し上げるのですが、重度の精薄者ばかりでなくて、軽度の精薄者といいますか、この人々に対しては、現在でもその施設がほとんど足らなくて、押すな押すなの盛況なわけですね。ところが、一定の期間がまいりますと、まだまだ完全になおるどころか、これで手放しで社会に出していいという状態になっていないのに、年齢、あれは十八歳でしたか二十歳でしたか知りませんが、くると、やはりどうしても出なければいけないような状態に環境がなっているわけですね。そこで出される、出された者を家庭で引き取って、今度は家庭がめんどうを見るわけでありますが、年齢的にいっても、ちょうど青春の芽ばえのときですから、たいへんな苦労を家庭が一緒にしょい込む、そういうことを考えますと、現在、この種の施設の思い切った増強をやっていただく必要のあるような現状は御存じだと思う。それから、その施設をふやすと同時に、年齢がきたからといって、ただこれをところてん式に出してしまうようなことのないようにする。それと同町に、そういっても、出していいかもしれない程度に軽度になってきた者もあるかもしれません。そういう人々は、家から通院でもいいですから、いわゆる授産場といいますか、この施設をやはり同時にバランスをとりながら拡充していただいて、どうも通院は無理だと思う者に対しては、宿泊施設を持った授産場でやり、それから、だいじょうぶだと思う者に対しては、通院者もそこに収容できるような授産場、そういう施設の増設というものが同時に行なわれないと、ほんとうのこれらに対する国としての手当てをしたことにならないというふうに考えますが、いま申し上げた順序で、今度こうする、あるいは、現在は予算がこの程度で、この程度しかできないが、今後はどういう方針だということを、ひとつ厚生大臣の明快な御答弁を、いまの二つ目にいただきたい。  それから三つ目に、私の出身県の長野なんかには、たとえば、飯田市に非常に大きなものがございますが、手をつなぐ親の会、これは、これらの子供を持ったおかあさんたちが自費でいままでたいへん運動をしてまいりまして、現在では長野県では中心的な——この種の不幸な子供たちに対して思い切ってお互いに手をつないで、国の足らないところを補ってまで、何とか他の不幸な子供にまで手を及ぼして、できるだけの援護措置を講じようじゃないかというので、手をつなぐ親の会というのが相当大きく発展してきております。全国的にもたぶんあるのじゃないかと思うのですが、そういうような会、運動の主体に対しては、相当程度国の立場で助成していただくようにいたしますこと、これは先ほど川崎委員も言っておられましたが、お役人さんにまかしてできる仕事では絶対ありませんので、この種のおかあさんたち、おとうさんたちが一緒になって、国と手をつないでやっていかなければ成果のあがらない仕事ですから、そういう意味では、この種のほんとうに純真な公的な団体に対しては、国の立場での助成の道を講ずるように措置をしてあげることが必要でないか。そのことが、これら精薄あるいは重度身障児等に対する下からのあたたかい思いやりとなって成果があらわれてくるのではないかというふうに考えます。いまのは、一例でございますが、これらの手をつなぐ親の会というようなものに対する国家的な助成措置を講じていただきたい。大臣、どうでしょか。  それから次には、現在どの程度まで年金が支給されるようになっているのか知りませんが、もう少し年金制度というものを具体的に内容を高めながら、いまのままでなくて、将来を考え、いま私が申し上げたようなこと、あるいは大臣以下皆さんがもっと御存じのことを含めまして、年金という制度の中で、できる限りひとつこれらの問題の解消をしようという意思表示と、年金制度をどういうふうに今後運営していくか、内容はどう改めていこうとなさるかを、一緒にお伺いをしたい。  次に、たしか愛知県の一宮にあったと思うのですが、身体障害者の訓練所というのがあるはずです。これはほかにもあるかどうか知りませんが、一宮のは、方々から見学に行くほど有名になっておりますね。その種の身障者の訓練所というようなものが、やはりこれも同じように、全国的にバランスのとれた形で施設が生まれてまいりませんと、最後の仕上げがなかなかむずかしいというふうに考えますし、一宮の例は、非常にその面で成果をあげていますので、一宮と同じような身障者の訓練所というようなものを、やはりこれも国が中心的に動いておつくりいただくような意思があるかどうか、これをぜひやっていただく必要があるのじゃないかというように考えますが、以上六点、一緒に御答弁をいただきたい。
  36. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 お尋ねの第一点の、精薄者にも手帳を交付をして、そうして鉄道の割引であるとか、その他の援護の手を差し伸べるべきじゃないか、また、本人だけでなしに、同道をして看護に当たっておる者についても割引をすべきじゃないか、こういうような点でございますが、この点につきましては、ただいま身体障害者だけにこれが適用になっております。そこで、厚生省におきましても、その均衡上の問題もございますので、ただいま福祉審議会のほうで御審議を願っておりますから、その御意見を伺った上で、前向きで措置いたしたいと考えます。  それから第二の点は、精神薄弱児がだんだん成長してまいりまして、十八歳から十九歳に移る際に、法律が違います関係で、この精薄者に対しましては、せっかく収容したのに施設から出ていってもらわなければならないというような問題点が現在あるわけでございますが、この点につきましては、まず、行政面から改めたいということで、厚生省におきましては、従来、社会局の所管になっておりました精薄者に対するところの福祉行政を児童家庭局に一元化いたしました。そして、窓口を一本にいたしまして、一貫してめんどうを見ていくという体制をとったのでございますが、これに準じまして、各府県等においても同様窓口を一元化して、一貫した、療育あるいは援護の指導をやっていきたい、このように考えております。  それからなお、法制上の整備につきましてはただいま審議会でこれを一元化するという方向で御審議を願っておりますので、その答申を待って法律上の改正等を考えたい、こう思います。  それから、障害福祉年金でございます。これは四十年度の予算では月額二千円支給をいたしておるのでありますが、四十一年度におきましては二千二百円というぐあいに、これをアップすることにいたしたのでございます。  それから第三の、手をつなぐ親の会等に対して国も助成をすべきでないかという点でございますが、お話のように、こういう気の毒な方々お世話は、何といっても民間の盛り上がり、特に親御さん方を中心としたそういう御協力なり援助なりに待たなければならぬ、こう考えておりますので、四十一年度の予算におきましては、まだわずかでございますけれども、六百五十万円ほど予算を計上いたしまして助成をしてまいる所存でございます。  それから第四点は、この収容所から退所をいたしまして社会復帰をするという方々に対して、授産場その他の施設を持ったところの中間的な施設を整備すべきではないかという御提案でございます。これは一宮の例をおあげになりましたが、実は労働省がやっておりますので、労働省とも連携を保ちながら、そういう面につきましても整備していきたいと考えております。
  37. 原茂

    ○原(茂)分科員 もう一度、二点だけお答えをいただきたい。  いま、職業訓練所方式のものと申し上げましたので、労働省の所管ということにお答えがあったと思うのですが、やはりこの種の児童に対しては、しかも無理に押し出してしまったというようなことも加味されて、軽度であるけれども、依然として精薄児であることに間違いないのですから、労働省所管の職業訓練といったような考え方厚生省から突っ放してまかしてしまうということではいけない。その考えはいけない。そうではなくて、この種の軽度の精薄児に対する職業指導センターといいますか、そういうような感じの、最後の仕上げをするようなことまで厚生省の管轄の中で考えていただくことができないかということですから、そのことをお答えいただきたいのが一つ。  それから、先ほど申し上げました授産場というのは、これは、いま申し上げたように、年齢がきた、まだ十分ではないが出なければいけない、出した、施設がない、そこで家庭にいて、ことによると通ってでもいいから、ある一定の授産場があれば、そこへ行くことも可能な程度の人もあります。あるいは、どうも通うのは無理だ、出されたのだが、しかも、成人にはなったのだけれども、まだまだ野放しにはできない、そういう人を、そこに宿泊せしめながら、ずっと一定の授産場で仕事をさしていくという施設があると、家庭は非常に安心ですし、社会的にも不安が相当除去されてくるのです。二十歳未満の人よりは、成人になって、しかも、まだ軽度ではあるが精薄者だと認定されるような人々が野放しになるという状態を、実は何とかもっとあたたかい手で社会的に国家的に保護を加えていくべきではないか、社会不安もなくせるし、家庭の非常に大きな苦痛がそこから取り去られていくように、国の立場で考えていただく意味の授産場ということを申し上げたので、これをぜひおつくり願いたいのであります。
  38. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど、原さんが一宮の例をおあげになりましたので、労働省関係だと、こう申し上げたのでありますが、厚生省といたしましても、そういう方々に対しまして授産場等をつくりまして、そしてアフターケアをしながら社会復帰ができるような方向に指導していくということを考えておりまして、現に神奈川県にもございます。また、昭和四十一年度には広島県でもそういう設置の計画がございまして、そういうものに助成をしていく方針でございます。
  39. 原茂

    ○原(茂)分科員 ついでで恐縮ですが、いまのお話の神奈川、広島のような施設をことしもつくる計画がおありですか。何カ所か、それをちょっと……。もし場所が言えるなら、言っていただいてけっこうです。  時間がないから、最後の点もお伺いしておきたいのですが、この種の施設における職員の待遇です。身分的に一体どうなっていて、建物が一体どこと比べてどの程度になっているのか、少しこの建物も考えないといけないときがきているのじゃないかと思います。非常に低過ぎるのじゃないかというふうに聞いていますが、そうじゃないなら、そうじゃない、こういう身分で、こういうふうにしているのだということをお聞かせいただけば、それでけっこうです。これが最後の質問です。
  40. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 来年度の施設整備の予算につきましては、現在、各県から予算要求を聴取中でございまして、具体的に何県というところまでなっておりません。  それから第二点の、施設職員の処遇の問題でございますが、県立は、御存じのとおり県立の施設でやっておりますので、県職員としての処遇を受けております。その他のものとしては社会福祉の施設でございますが、その格づけにつきましては、県の公務員と同じような処遇になっております。ただ、昇給財源その他でいろいろ問題があったわけでございますが、四十一年度は民間施設経理調整費、こういったことで昇給の問題あるいは経営費、こういった点に処遇の改善が行なわれたわけでございます。今後とも、そういった面についての改善については努力をいたしたいと考えております。
  41. 原茂

    ○原(茂)分科員 どうもありがとうございました。わかりましたがへどうぞひとつ、いままで私が申し上げた言外の意味も皆さまは御存じのはずだから、歩一歩と、思い切って進めていただくように、厚生大臣のお力に期待したいと思います。どうもありがとうございました。
  42. 大橋武夫

  43. 山花秀雄

    山花分科員 ハンセン氏病対策のことについて、少しお聞きしたいと思います。  厚生大臣が長いこと在職しておられると非常に都合がいいのですが、必ず御趣旨に沿うように努力いたしますと言った厚生大臣は、この次の国会にはいないのです。そこで、局長の皆さんがおいでになっておると思いますが、せんだって、どういう質問をするんだということで、事務局のほうからたびたび私のところまで参りましたが、去年と同じ質問をするんだ、それをよく調べておいてくれ、こう言っておいたのですが、去年厚生大臣が善処すると言ったことがことしの予算上具体的にあらわれておるかどうかという一点でありますが、一応ハンセン氏病に関する予算措置、去年とことしの差異をちょっとお答え願いたいと思います。
  44. 若松栄一

    ○若松政府委員 らいの問題についての処遇の改善は、非常に多岐多彩にわたっております。そこで、私ども来年度の重点といたしまして、患者の作業賞与金を改善するということで、作業賞与金を昨年度九千八百万円程度を一億一千万円程度に増額いたしました。付き添いの看護とかあるいは炊事関係等の特殊な作業等についての作業賞与金の引き上げをいたしました。  第二点は、療養所の中における食費につきましては、物価の値上がり等もございますので、国立療養所等の引き上げと並行いたしまして、同額の引き上げをいたしました。  なお、そのほかにも重症者の付き添いの問題が従来から一番やかましい問題でございまして、昨年度七十五名の増員をいたしましたが、四十一年度におきましてはこれを百名増員するという予定にいたしております。なお、これらに伴いまして、付き添い看護のために必要な施設の整備あるいはその他療養所全般の施設整備を昨年度よりもかなり飛躍的に伸ばした状態でございます。
  45. 山花秀雄

    山花分科員 作業費を大幅に増額したと言われましたが、具体的に去年とことしの差異、たとえば去年五十円だったからことし七十円になったとか、そういうふうにひとつお答え願いたいと思います。
  46. 若松栄一

    ○若松政府委員 作業賞与金につきましては、付き添い作業につきましては日額百三十四円を百六十五円に、特別作業といいますのは比較的院内の助手的な作業でございますが、これが百円を百三十円に引き上げました。
  47. 山花秀雄

    山花分科員 医者の定員と看護婦の定員をひとつお聞かせを願いたい。
  48. 若松栄一

    ○若松政府委員 定員につきましては、患者数それ自体が減ってまいりましたので、その点だけ——定員につきましては、先ほど申しました付き添い看護の要員百名をふやしたということだけでございます。
  49. 山花秀雄

    山花分科員 そうすると、医者と看護婦は定員はそのまま据え置きですか。
  50. 若松栄一

    ○若松政府委員 そのとおりでございます。
  51. 山花秀雄

    山花分科員 定員が充足されないと思いますが、どの程度充足されてないか、全部充足されておるなら充足されておるとお答え願いたいと思います。
  52. 若松栄一

    ○若松政府委員 各職種別の充足状況は、いま手元に用意してございませんが、医師はかなり減りつつあります。新しく入ってこられる人が非常に少ないために、減るかっこうにあります。看護婦は、らいであるにかかわらず、わりにほかの病院との差がなく、充足状態は並行状態でございます。それにつきまして、付添婦を新たに増員いたしておりますが、この付き添いは定員の増加した分の一〇〇%を充足いたしております。
  53. 山花秀雄

    山花分科員 医者は減りつつあるというだけの答弁ではちょっと満足できないと思います。この医者の定員は、患者側の諸君から見れば少ないといって、これは厚生当局のほうへもたびたび訴えておると思うのです。看護婦も同様であります。それをカバーするために、収容されておる患者の諸君がお手伝い作業ということになっております。一応定員の数を言っていただきたい。これは予算できまっておると思います。定員の数、医者が何人、看護婦が何人、そしていま何人不足しておるか。
  54. 若松栄一

    ○若松政府委員 まことに恐縮でございますが、定員数はわかっておりますが、現員がいま手元にございませんので、必要があれば後ほど資料としてお届けいたしたいと思っております。
  55. 山花秀雄

    山花分科員 そのわかっている定員をちょっとお知らせ願いたいと思います。
  56. 若松栄一

    ○若松政府委員 医師につきましては百二十三名、看護婦につきましては五百三十四名、その他薬剤師、エックス線技師その他ございますが、総数で二千二十三名であります。
  57. 山花秀雄

    山花分科員 そうすると、去年から患者数が減ったという意味で、医師と看護婦が減った計算になっておるのですか。
  58. 若松栄一

    ○若松政府委員 患者数は若干ずつ減る傾向にございますが、定員は動かしておりません。
  59. 山花秀雄

    山花分科員 これは患者のほうから訴えてきたことで、あるいは間違っておるかどうかわかりませんが、患者のほうの訴えによりますと、私の手元にこういう数字がまいっております。これはまたあとでよく調べてみたいと思いますが、医師の定員は百五十六名で、現在百十七名、不足が三十九名、看護婦の定員が五百六十五名で、現在五百三十五名、不足が三十名、こういう訴えがきておりますが、この患者の訴えのきておる数字はインチキというふうにお認めになりますか。
  60. 若松栄一

    ○若松政府委員 私どもいま詳細を判断できませんので、患者側のその計算等を十分検討いたしまして、その調べを突き詰めていきたいと存じます。
  61. 山花秀雄

    山花分科員 これは予算上も定員ははっきりしておると思いますが、その衝に当たる人が何だかはっきりした確信ある回答ができないというのは、少しおかしいと思うのですが、もしこれが間違っていたら、これは国会の答弁が非常に間違っているということになりますが、責任とりますか。ひとつ確信ある答弁をしていただきたいと思います。
  62. 若松栄一

    ○若松政府委員 患者側の資料がどういうところからどういう経緯で出ておるか、私ども存じませんので、後ほど詳細に調べまして、その差の出てくる原因を突きとめて御報告いたしたいと思います。
  63. 山花秀雄

    山花分科員 食費はいま幾らの予算になっておりますか。
  64. 若松栄一

    ○若松政府委員 一般食が百四十八円、特別食が百七十九円でございます。
  65. 山花秀雄

    山花分科員 ほかの病院との比較は同一ですか。それと、たとえば地方公共団体東京都がやっておる、こういう地方団体のやっておる食費との関係はどうですか。言いかえれば、国立の結核療養所その他の食費とは同じであるかどうか、あるいはまた地方公共団体のやっておる病院の食費とは同じであるかどうか。
  66. 若松栄一

    ○若松政府委員 その単価は、国立病院、国立療養所と同額の単価でございます。これはたとえば都立全般の病院というものに比べますと、若干低くなっております。しかし、国立病院、療養所というようなものが、大体地域的に非常に都会地を離れておるものが多い関係上、いろいろな便宜もありますし、また、特に療養所では院内生産等もやっておりますので、そういう意味で実質的には決して劣るものではないと思います。
  67. 山花秀雄

    山花分科員 どのくらいの差異がございますか。それからもう一つは、たとえばこれは東京の一例をとって申し上げますと、御案内のように、東村山市に全生園というのがございますが、あそこは隣の清瀬と同様に病院地帯になっておりますが、地域的差はちょっとないと思いますけれども、一応差額はどの程度の差額になっておりますか。
  68. 若松栄一

    ○若松政府委員 清瀬におきます東京療養所と全生園は、差額はございません。差額と申しますのは、東京都内の都立病院というようなものとは若干の差があるということを申し上げたわけでございます。
  69. 山花秀雄

    山花分科員 私の聞きたいのは、遠隔の地にあって、物価も比較的安いから、一般地方自治団体のやっておる病院との食費の差があっても、劣った献立はしていないという答弁でございましたから、そこで、東村山市の全生園のようなところは、一応あれは都会地であるから、それと地方の遠隔の地にあるものと同一にやっておるのかどうかということと、あそこに地方自治団体の病院がたくさんありますが、同じ場所にあって差額ができてきておるということになると、献立なんかも非常に悪いことになると思いますが、その間どうお考えになっておるか、こういう質問であります。
  70. 若松栄一

    ○若松政府委員 金額的には確かに若干低い面があると思います。しかし、私ども、こういう施設が非常に大きい施設でございますので、大量購入等によって、一般の小さな病院等あるいは町の中の病院等よりも比較的安く購入するというようなこと、あるいは院内における生産物を活用する等の方法によりまして、内容の充実をはかってまいる所存でございます。
  71. 山花秀雄

    山花分科員 私はあまり大小はないと思うのです。それはあなた方のほうがよく知っておられると思うのです。たとえば東京都の東京療養所のごときは、ベッドも八百か千くらいございますから、そう小病院じゃないと思うのです。そこで、小病院であっても何でもいいのですが、一体差額がどのくらいあるか。いまお答えによりますと、百四十八円、百七十九円ということでありましたが、一般地方自治体のやっておる金額は、当事者でありますから、よく御検討をしておられると思いますが、その差額が一体幾らかということを聞いておる。
  72. 若松栄一

    ○若松政府委員 これは各病院によりまして非常にまちまちでございますので、全国の公立病院の平均というようなものを現在持ち合わせておりません。しかし、東京都内における公立病院は、たとえば警察であるとか、あるいは聖路加であるとか、虎の門病院というようなところでは、若干高くて、きわめて概算的に申しますと、おそらく二十円前後高いのであろうと存じております。
  73. 山花秀雄

    山花分科員 これは厚生大臣もお聞きになっておると思いますが、ひとつ至急改善していただきたいと思います。二十円という金額は、この少額な金額の中身は相当大きな開きになるのです。大量購入をやっておるから安上がりでいけるのだということになりますが、公共団体のやっておる病院施設、たとえばいま警察あるいはその他をあげられましたが、これも相当大量的に物資購入をやっておる。その辺のちっぽけな病院とは違っておりますので、この二十円の開きというのは、実質的には相当大きな開きになるという点を、厚生大臣どうお考えになりますか。
  74. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 このらい病院をはじめ、病院の食費をできるだけ改善していくという面につきましては、予算委員会等でもしばしば御指摘がございまして、四十一年度の予算編成にあたりましてもできるだけの努力をいたしたつもりでございます。  なお、都内の中心にあります病院との較差の問題でありますが、これは先ほど来局長が申し上げておりますように、院内生産等でその開きをカバーをしていくということに努力をいたしておるわけでありますが、なお今後におきましても、病院の給食の内容の改善につきましては、引き続き努力をしていきたいと考えております。
  75. 山花秀雄

    山花分科員 そう言われまして、この次の国会になりますと、もう厚生大臣がかわってしまって、いつも据え置きの状態になっておりますが、ぜひ在職中にめどをつけるように御奮闘を願いたいと思います。  それから、退所者は最近どのくらい出ておるでしょうか。
  76. 中原龍之助

    ○中原政府委員 最近における軽快退所者数は、昭和三十七年が百三十四名、三十八年が百二十五名、三十九年が百十九名であります。
  77. 山花秀雄

    山花分科員 新規入所者数は最近あまりございませんか。
  78. 中原龍之助

    ○中原政府委員 最近における新発見者数といたしまして、三十七年度二百七十六名、三十八年度百八十名、三十九年度百三十九名でございます。
  79. 山花秀雄

    山花分科員 いまの話を聞いておると、あまりバランスがくずれないような気がするのですが、全体として、昨年度と本年度の予算上の措置における人員減は何人くらいになりますか。
  80. 若松栄一

    ○若松政府委員 国立療養所における人員減は三百五十名でございます。
  81. 山花秀雄

    山花分科員 十一の国立療養所と、あとは私立が若干あると聞いておりますが、何カ所くらいありますか。
  82. 中原龍之助

    ○中原政府委員 私立は三カ所でございます。
  83. 山花秀雄

    山花分科員 三百名以上の人員減になって、先ほどの説明によりますと、あまりバランスがくずれないように承ったのですが、私立のほうで減っているのですか、それともやはり国立のほうでそれだけ減っているのですか。
  84. 若松栄一

    ○若松政府委員 主として国立のほうで減少いたしております。
  85. 山花秀雄

    山花分科員 退所者の待遇、退所手当というのは、去年もなるべく予算を増額したいという答弁でございましたが、本年度はどういうことになっておりますか。
  86. 中原龍之助

    ○中原政府委員 昨年度と同じでございます。
  87. 山花秀雄

    山花分科員 そうすると一万五千円ですか。
  88. 中原龍之助

    ○中原政府委員 三万円でございます。
  89. 山花秀雄

    山花分科員 昨年度と同じということになりますと、退所者に対する思いやりがないのじゃないかと私は思います。御案内のように、去年は政府統計によりましても相当物価が上がっておる。ことしも予算の上でも五・五%上げるというような予算を組んでおるのですから、これの増額をどうしてしなかったのですか。ひとつその理由をお聞かせ願いたいと思います。
  90. 中原龍之助

    ○中原政府委員 三万円の金額につきましては、昨年度と同じでございますけれども、これは全体として見まして、物価等そういうようなものの直接的な影響というものから考えますと、ひどい影響はないというふうに考えられましたので、三万円にいたしたわけてございます。
  91. 山花秀雄

    山花分科員 ただいまの答弁はたいへん不親切だと思うのです。ハンセン氏病に対して、特に予算措置も考慮して去年より改善されておるという最初の答弁でありましたが、去年同様の退所金ということは、これは私は納得できません。厚生大臣いかがですか。
  92. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 昨年山花さんの御質問に対してどのようなお約束をしておりましたか、率直に申し上げて、私は承知いたしていなかったわけでございますが、この退所者の処遇の問題だけを取り上げますと、去年とちっとも変わらぬ、去年あれだけ言ったのに、改善されぬじゃないか、不親切だという御指摘だと思いますが、このハンセン氏病全体の対策につきましては、私どもはできるだけの改善を考えて努力した所存でございます。
  93. 山花秀雄

    山花分科員 ハンセン氏病全体の立場から相当改善をした、こういうお話でございますが、退所者となりますと、もうハンセン氏病の関係から切り離れるわけなんです。もう別のケースになるわけです。そこで、社会復帰をした喜びをも含めて、つまずきのないようにしてやるというのが、私はハンセン氏病全体への思いやりじゃないかと思うのです。去年と同様というのはどうも納得できませんな。これは厚生大臣、予備金なりその他で少し改善する意思ありますか。それとも突っぱねるつもりですか。去年と同様でいいといって突っぱねるつもりですか。これはハンセン氏病全体の待遇改善とは切り離されるべき性格のものです。ハンセン氏病でなくなるのですから。この点、ひとつ納得のいく答弁を願いたいです。
  94. 中原龍之助

    ○中原政府委員 らいにつきましては、このらい患者の生活援護委託費、これにつきましては九百三十二万円の増額になっておりまして、その単価アップを見ている次第でございます。そのほかに、いわゆるらい予防事業委託費といたしまして、藤楓協会に委託いたしまして、退所患者のいわゆる収容その他につきまして便宜をはかっているわけでございます。
  95. 山花秀雄

    山花分科員 どうもいまの答弁は私は納得できません。全体についてのいろいろベースアップあるいは向上は、予算がそれだけふえておるのですから、これは私納得できますけれども、退所者というのはもうハンセン氏病の域から一歩出るのですから、出て社会復帰をする人に対して——長い間、短くても十年、長いのは二十年からいて退所する人たちですから、社会性がないと思うのです。そういう人が更生をするために、よほどあたたかい思いやりがないと、一ぺん出ても帰ってくる、出たいけれども、支度金が少ないので出られないというようなケースが相当あると思うのですが、これはもう少しあったかい思いやりをしていただきたいと私は思う。そんなに大きな金額を——患者自体は要求しておるかわかりませんけれども、せめて、去年とことしは、物価高その他経済変動もあるので、これだけ違うのだという、経済変動に伴ったぐらいの支度金増加ぐらいは当然ではないかと私は思うのです。もしこれは見誤っていたとはっきりしていただくならば、それをすぐ修正するなら修正するとか、そういう態度でこそ謙虚な態度ではないかと思うのです。突っぱねるというようなことでは私は了承できませんが、これは大臣いかがですか。
  96. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 退所者に対する手当は、いわばこれから世の中へ出ていかれるはなむけのようなものでございまして、物価とにらみ合わせて、何%アップしたからこれもアップしなければならぬという、そういう性質のものではないと私は考えております。ただ、私はここで申し上げたいのは、今後社会へ出て生業につかれる、その場合に、それぞれ条件が違うと思います。その出られる方の経済環境その他家庭の環境等で条件が違うと思いますが、どうしても世帯更生資金が要るとかあるいは生業着業資金が要るとかいうような方々に対しましては、十分お世話をするようにいたしたい、このように考えております。
  97. 山花秀雄

    山花分科員 はなむけと一がいには言えないのじゃないかと私は思うのです。当然、退所いたしますと、ざっくばらんに申し上げまして、服もつくらなくちゃならない、住宅も確保しなくちゃならないというケースで、おそらく最小限度の金額を退所資金として出されておるのじゃないかと思うのです。単なるお祝いの意味で金額を査定したのではないと思う。お祝いの意味なら五千円でも一万円でも私はいいと思うのです。やはり将来社会の荒波にこれから十年、二十年隔離されていた場所から出ていくのですから、ある程度の支度金というのは必要だと思うのです。その支度金がどうもいまの経済事情にそぐわない。現在の三万円でも、これは低い低いといって患者相当訴えておられることは御承知だと思うのです。ちょっと厚生大臣考えも違っておると私は思いますが、お考え直しできないでしょうか。単なるはなむけでお祝い金だという考えであると、私はこの金の性格がだいぶ違ってくると思うのですが、いかがでしょうか。
  98. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 物価にこれをスライドいたしまして、三万円を三万一千円にするとか二千円にするとかいうような考え方もあると思います。しかし、さような程度のことであっては、山花さんのおっしゃるように、これから住宅も手当てをするんだとか、いろいろなことをやるということには、私は、この退所の手当てだけではそれは不十分である。しかし、それはそれといたしまして、必要な方に対しましては、世帯更生資金であるとか、あるいは生業資金の貸し付けとか、そういう面のお世話をやることが実際的ではないか、かように考えております。
  99. 山花秀雄

    山花分科員 質問はたくさんございますが、私も実は、十二時にほかの会合を私の名前で招集いたしておりますので、これ以上できません。きょうは朝トップにやるつもりでいたのが、手違いになりまして、時間の関係でできません。  そこで、一つお願いをしたいと思いますが、いま言ったように、意思の疎通もずいぶんうまくいってない点もございますので、厚生大臣東京都下にありますから、一ぺんお出かけになって見学され、それで患者代表と話し合いすることを約束していただけるでしょうか、どうでしょうか。
  100. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 機会を見まして、ぜひ視察をしたいと思います。
  101. 山花秀雄

    山花分科員 それでけっこうです。  残余の質疑は、そのときに患者が直接厚生大臣に訴えると思いますので、ぜひ一回、近くですから、ちょっとひまを見て行っていただけばいいのですから、これだけはひとつ実行していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  102. 大橋武夫

  103. 中井徳次郎

    ○中井分科員 私は、公害関係で伺いたいのです。  鈴木さんが厚生大臣になられましてから、さっそく公害関係の重要性を認識されましたか、公害審議会と申しますか、そういったものを政府としてもおつくりになって、いま鋭意審議中であろうと思うのですが、その概要を伺っておきます。
  104. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 最近における公害問題は、非常にやかましくなってまいりましたし、非常に重要な問題化いたしておるわけであります。そこで、昨年十月に発足いたしました公害審議会に、基本的な公害対策につきましていま諮問をいたし、御意見を実は伺っておるのでございます。大気の汚染にいたしましても、あるいは水質の汚濁にいたしましても、その規制の基準がいまのままでいいのかどうか、これは再検討をしなければならぬ段階にきておると思います。そのほか、騒音でございますとか、いろいろな経済、社会情勢の変化に伴いまして、新しい公害問題も発生いたしてきておりまして、そういう面に対する規制措置も必要である、こう考えまして、いま公害審議会に、できれば基本法を早急に制定したい、次の通常国会あたりを目途にいたしまして基本法の制定をやりまして、公害に対する基本的な方策を確立したいということで、諮問をいたしておる次第でございます。
  105. 中井徳次郎

    ○中井分科員 いまお話を伺うと、公害基本法という仮称でしょうが、そういうものを鋭意つくろうとしておるということでありますが、私ども社会党は、公害対策基本法というものをすでに国会に提出をいたしておるのであります。そのことにつきましていろいろと議論がありましょうけれども、どうも最近これだけやかましく公害が叫ばれながら、法の整備が一向整っておらぬ。いまありまするのは、水質汚濁だとかばい煙規制だとか、ごく二、三のものでありまして、しかもそれは地域の指定をしたり、あるいは指定をしましても、実施までに長い間の期間を置いたり何かいたしまして、私どもから見ますと、国民の生活を守るというよりも、何か公害を出しておりまするところの各企業の立場を考え過ぎておるのではないかというふうな気が実際するのであります。そういうことと関連をいたしまして、公害対策基本法的なものを政府において審議会が発足して検討するという話が、新聞等にちらちら出ますると直ちに日経連あたりでもって、それは時期尚早であるというふうな反対の動きが猛烈にあるやに私は聞いておるのでありますが、大臣のところへそういう話は具体的にありましたか。これは厚生大臣に直接来る前に、あるいは通産大臣あたりに私は来ておるのではないかとも思いまするが、念のために伺っておきたいと思います。
  106. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私のところにはそういう陳情はございません。私は、最近における特に大都市の大気の汚染、あるいは水質の汚濁、あるいは排気ガス、騒音の問題、この公害は非常に急激に悪化の情勢をたどっておりますし、これは国民の健康を守るという面からいたしまして、早急に対策を確立しなければならない、かように考えておりまして、閣議でもしばしばこの点を強調いたしておるのであります。どうしてもこれは関係各庁が政府協力していかなければならぬのでございますので、公害対策の連絡協議会を設置をいたしまして、その発生の防止から除外装置、また規制の進め方、こういう各般にわたっての対策を必要とするのであります。厚生省としましては、特に国民の健康を守るという観点から、今後も一そう強力にこの対策を進めていきたいと考えております。
  107. 中井徳次郎

    ○中井分科員 正式にそういう動きがないということですが、将来ともあった場合には、あなたは職権上はっきり、そんなものは受けつけずに、いま言ったようにやるという決心ですか。あなたの見解をどうぞ。
  108. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま申し上げたとおりでございます。
  109. 中井徳次郎

    ○中井分科員 それからもう一つ、この問題は、いまお話のあった法の整備が非常に抜かっております。ずいぶんおくれておると思うが、ほかに、具体的に、毎年毎年おくれますることに対する施策というものが必要になってきておると思うのでありますが、具体的に本年はどういうことをしておるか。これはあとであらためて伺いますが、いまの法の整備に関連をいたしまして、政府がそういうふうなかたい決心でおられるならば、どうして——油による海水の汚濁防止条約というのがある。油による海水汚濁防止条約、これはもう二、三十年前から世界各国で問題になりまして、そして第二次世界大戦が過ぎましてから、たしか昭和二十九年でありますか、一九五四年に草案ができ上がって、そうして一九五八年、昭和三十三年に条約は発効しておる。そして、わが日本はこれに署名をいたしておるにもかかわりませず、その後大体十年ばかりたつが、いまだに批准しておらぬ。これは一体どういうことでございますか。御案内のとおり、いまや、東京湾とか大阪湾とか伊勢湾あるいは北九州方面と、全国各地でもう魚がとれなくなっております。鈴木さん、あなたは御専門だ。魚がとれないのです。幾らでもつれますよ。だけれども、とったって、くさくて食べられないのです。そういうふうになって、全国の漁業者は非常に困っておる。近海漁業といいますか、沿岸漁業というか、困っておる。それで、わが政府もこれに署名をしながら、批准をしておらぬ。これはどういう原因なんですか。   〔主査退席、倉成主査代理着席〕
  110. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お話しのとおり、油による海面の汚染に関する国際的条約がございまして、御指摘のとおり、わが国は今日まで批准をしてないわけでございます。これは港湾法なり、あるいは港則法、いずれも御承知の運輸省所管の法律でございますが、それとの関連もございまして、なお批准までの運びに至っておりませんが、実際問題として、油が海面を汚染することを防止する意味で、先般発足いたしました公害事業団におきまして、たとえば四日市におきましては、その油の処理のための共同施設をつくるというようなことによりまして、海面の汚染を防止する実際的な措置を進めておるわけでございます。
  111. 中井徳次郎

    ○中井分科員 ちっとも回答になっておらぬじゃないですか。なぜ批准せぬのですか。そんなことは、原因の千分の一か万分の一、ちょっと不足という施策の問題である。なぜこの条約に署名しながら批准しないのですか。原因がちっともわからぬじゃないですか。御承知のとおり何とか法、何とか法と言うが、私は御承知しておらぬ。何ですか、これは。署名したら批准したらいいじゃないですか。さっき大臣は、日経連の諸君が反対に来ても、断固としてこれを排除すると言っているが、これこそ、海運業界その他業者からの反対がある。ほんとうの原因はどうなんですか。あなたの説明ではわからぬ。
  112. 舘林宣夫

    舘林政府委員 本来、油が海面を汚染すると、主たる被害の対象は、御指摘のとおり、水産漁業の影響が非常に大きいわけでございます。もちろん、海水浴をする人々のからだを汚染するというようなことから、人の健康にも影響いたしますけれども、この海面の正常保持という意味合いから、港湾法、港則法に非常に関係があり、また水産物に関係があるということで、ただいま運輸、農林等の各省におきまして検討を加えておるところでございますので、私から御説明をいたしがたいわけでございます。
  113. 中井徳次郎

    ○中井分科員 港湾法、港則法とかなんとか言いますが、実際の船の運航の途中で油を流したり、あるいは油送船はなかなかもってプラスになったりマイナスになったり、途中で——この間も、瀬戸内海で海賊船なんという話もありましたが、ちょっと停船をして漁船に油を流してみたり、いろんなことが行なわれているわけであります。ことに日本のようなこんな人口稠密なところで、これだけ漁業の盛んなところで、これを整備せずして、法の整備を早うやりますなんて署名をしておいて、批准をせぬ。これを国会にはかってだれが反対するのですか。どうも私はわかりません。大臣、どうですか。あなたは実は内輪のようなものだ。厚生大臣というよりも、水産業界の大先輩として、はなはだどうも力が足らずと言わにゃならぬが、これはいかがですか。
  114. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この油の沿岸漁業に及ぼします被害につきましては、私も、漁民諸君のこの大きな打撃、苦痛を痛切に承知をいたしております。特に浅海増殖であるノリ養殖事業その他に及ぼす影響はきわめて甚大であり、この被害の問題で補償の問題等がしばしば提起されておりますことも承知をいたしております。実は、厚生行政をお預かりいたしましてから、全般的な公害対策と取っ組んでおるわけでありますが、この際、中井さんからの強い御鞭撻もございましたので、農林大臣等とも協力をいたしまして、力を合わせて、この早期批准につきまして私も努力をしたいと思います。
  115. 中井徳次郎

    ○中井分科員 まあ、鈴木さんとして当然の御答弁だと思いますが、ほんとうにこれはこれまでの公害のやり方の一つの具体的なあらわれだと思うのですが、これをもとをとめないで、出たものをごまかしていくのですね。一番被害の多いのはノリだと思います。そして、補償をしたらいいだろうという。そういうことではものごとは解決をしない。イギリス、フランス、イタリア、アメリカその他二十九カ国はもうずっと前に批准をしておる。一番重要な日本がしておらぬ。これはもう歴代厚生大臣並びに農林大臣の怠慢だな。怠慢ここにきわまれりと私はいわなければならぬと思いますが、ぜひひとつ鈴木さん、お願いをいたします。  そこで、具体的な施策でございますが、この間からいろいろ他の委員会等で伺っておると、百四十億とか、相当な金額を出しておるが、大体公害とは何ぞやという定義になりますというと、いまだにどうもはっきりしないので、これは大臣でありませんで、あなたから伺いますが、いま世間でいわれておる公害とは一体どういうことですか。厚生省の定義ではどういうことでありますか。
  116. 舘林宣夫

    舘林政府委員 今日、行政的に公害として考えておりますのは、大気汚染、水質汚濁、騒音、悪臭、地盤沈下等、その原因が多種類でありまして、しかも、被害が及ぼす影響が多方面に及ぶというようなものを公害といたしまして、行政の対象といたしておるわけでございます。
  117. 中井徳次郎

    ○中井分科員 私の理解しておりますこれまでの政府の見解によりますと、公害とは、不特定多数の原因で不特定多数の人に迷惑をかけておるというふうな一応の定義のようでございます。しかし、どうも少し研究してみますと、公害は、不特定多数のものが原因ではありませんね。公害の原因は特定ですね。あるいは多数であるか少数であるかは知りません。この点、私は認識を改めてもらいたい。そして、原因を押えるということでありませんことには——去年私は、たしか本会議でこういう関係の質問をしまして、鈴木大臣でありましたか、三木大臣でありましたか、当時の大蔵大臣田中角榮氏も、公害の責任は企業にもありますと、はっきり言われた。それは、まあ進歩である。その企業を個々に押えていくことによって——企業を個々に押えるということは、企業の黒字を赤字にするとか、企業をつぶしてしまうとか、そういうケチなことではありません。企業を個々に診断をして、そうして原因をきわめていく。公害の原因は、私はもうわかっておると思うのです。今日の科学技術の発達をもってすれば、公害の原因がわからぬというのはうそだと思うのです。そのへんのところをはっきりとしてもらいたい。まず、それが公害対策に対する基本的な立場でなかろうかと私は思うので、そういう意味で、公害は厚生省の所管ということでございましょうけれども、具体的には、通産省だとか、科学技術庁だとか、経済企画庁の水資源局とかいろいろございましょう。これをさっき大臣は、一つの協議会のようなものをつくって研究をしておるというが、それではやはり何か生ぬるいような感じがいたします。したがって、公害の原因は不特定多数でないということ、それから公害の原因は、各企業によってわかっているということ、わかっておらぬということはうそであるということ、そういうことだけでもはっきりとさしていくこと、それから、中央における機構をもっと強力にすきっと下まで——これまで厚生省がやっておられますことは、あと始末のふき掃除をやっておられる。その前のところにまでは、厚生省の性格としてはこれまでは無理であったかもしれませんが、それではいつまでたっても、いわゆる百年河清を待つがごとし、これをひとつ改めるように、具体的に積極的な施策をお願いしたいと思うのでありますが、その点について大臣の見解を伺います。
  118. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、公害防止の最も有効な効果的な対策は、その発生源を押えて、そして防除施設を整備させるとか、あるいは工場でありますならば、工場立地の点につきまして十分な配慮をするとか、そういうような発生源に対して十分な対策を立てることが最も重要な点であるという御意見、私も全く同感でございます。今後、そういう面からいたしまして、私は、厚生省だけじゃなしに、内閣全体としてこの公害問題の重大化していることを十分認識をして強力な措置を講ずべきだ、かように考えておるのであります。また、昨年発足いたしました公害防止事業団におきましても、当初、共同施設だけに融資をしておったのでありますが、今回は、そういう面に一歩前進をいたしますために、個別の企業の防除施設の整備に対しましても融資をする、こういう措置を講ずることにいたしました。そして、各企業が自分の責任において公害の発生についての防除対策を講ずるように、金融面からもこれを助長してまいる措置を講じた次第であります。
  119. 中井徳次郎

    ○中井分科員 時間ですから、あと一、二点にいたしますが、そういうふうに、具体的なもとをとめていく、正していくという立場から、先ほど一つの例といたしまして、私は、油による海水汚濁の面を出したわけです。これをぴちっととめていただきましたらずいぶん助かる。そして、そのことによって船舶会社あるいは油輸送船その他がどういうことになるかについての具体的なものをとらまえて、押えていくということが必要であります。もう一つ、私は、これは日本の大問題だと思うのですが、日本資本でもって採掘をいたしましたアラビア石油が、残念ながら硫黄分が非常に多いということで、これが現在、十年間に八倍にも十倍にもなりました石油精製に関連をいたしますいわゆる亜硫酸ガスの公害の問題が、いま全国で最大の問題になっております。これなども、皆さんは煙突を五十メートルを百メートルにするとか、あるいは風の方向をアドバルーンを上げて研究するとか、それはけっこうですよ、けっこうですけれどももともと重油の精製過程において硫黄を取ってしまえばいい。その方法はないかというと、ある。そんなものの完全を待っておってもしようがない。ちゃんとあるのですから、なぜそれをやらないのか。承ると、出光あたりでは計画をされておるということを聞きますが、こういうことは、通産省の一係、課にまかしておくべきではありません。日本じゅうの大問題であります。今日、九電力会社がどっかへ火力発電所をつくる、全部反対です。この問題です。原油をたいたり重油をたいたりするところから出てきます亜硫酸ガスの問題です。この間も三島、沼津でもつぶれています。つぶれるのはあたりまえです。国民の立場からすれば、とにかく問題を片づけてからかからねばなりません。そういう意味のことがたくさんあるわけです。いま一番大きな問題は、日本がほとんど輸入に仰いでおりますところの石油原料から硫黄をどうして摘出するか、摘出をしましたら、純粋なすばらしい硫黄ができるようであるけれども、そうなれば、日本の硫黄の値段もがた下がりするかもしれませんし、いろいろ経済の問題もありましょう。赤字がどれくらいになるか、施設の問題もありましょう。それを個々に計算をすることによって、私は、具体的にこれを取り上げていったら、そうむずかしいことでも何でもないというふうに思うのであります。厚生省としましても、先ほど鈴木大臣が内閣の立場から御答弁になりましたから私は申し上げるのですが、これは拙速をとうとぶ。早急にひとつ全国的にやってもらいたい。煙突を何ぼ高くしたってだめです。それからまた、煙突から硫黄分をとる研究もやっておるようでございます。何か相当な金をかけてやっております。それもけっこうですが、根本は、精製の過程において抜いてしまうというふうなことを——煙は出さないのが一番いいのですから、そういうふうなことをやる段階にきておる。  また、大都市における最近の自動車の排気ガスの問題ですが、これなども、この間ちょっと聞きましたら、私も正確ではないかもしれませんが、クライスラーは、もうそれを排除したというふうなことを聞いております。あれは高級車でありますから、今後どういう研究日本ではされてくるか知りませんけれども……。したがいまして、いま日本でいわれております公害というものは防げるのです。それを、あたかもこれは防げないような説明をしておる。私は、いろいろ言いたいことはありますよ。私の選挙区あたりでは、いまだに午前二時ごろになると非常にくさいという一つの事実があるのです。さぐってみましたら、もう全くたくべからざる原料を使って夜中にたいておる。ちょっとしたつまらない採算のことであります。それをみんながわからないと思ってやっておるというふうな事実が実はあるわけです。そういうことをほんとうに個々にとらまえていく、そして、それを天下に公表することによって前進をしていただきたい、かように思います。私ども社会党も、大いにそういう点では熱心に取り組んでおります。あなた方に負けぬようにやるつもりではおりますけれども、時の政府がわかり切ったことに目をふさいでいる。それで私は、特にこの海水の汚濁の批准問題を取り上げたわけです。どんどんやってもらわぬことにはどうにもならぬというふうな結論であります。  以上、特に要望いたしまして、短時間でありますのではなはだ意を尽くしませんが、私の質問を終わる次第であります。
  120. 倉成正

    ○倉成主査代理 滝井義高君。
  121. 滝井義高

    滝井分科員 まず最初にお尋ねをいたしたいのは、環境衛生関係の美容理容、クリーニング等の零細企業に対する問題でございます。  昨年の夏ごろから、自由民主党なり厚生大臣は、これらの零細企業というものは非常に近代化、合理化がおくれておる、いままでは中央環境衛生適正化審議会等で、料金の問題や営業時間の問題を非常に厳重に論議をしてきたけれども、金融上の措置がとられていない、したがって、これらの零細な企業、特にクリーニング以外はオートメーション化が大して進んでいない、これらの企業は、やはり料金や営業時間のほかに、金融面を積極的にやるために環境衛生金融公庫というようなものをつくって、そして、これらの業種の近代化を積極的に推進したいという新聞記者会見等をおやりになっておったわけです。ところが、今度の予算では、その環境衛生金融公庫というものができていないわけです。これは一体どういう理由でできなかったのか。現在、病院、診療所等において、やはり十分な近代化が行なわれないために看護婦が集まらない。美容、理容においても、そういう方向に志願をしてくる人が少なくなりつつある。というのは、高い給料を近代化が行なわれないために払えない、こういうようなことがあるわけです。したがって、少なくとも、中小企業なり零細企業の高度経済によるひずみを是正しようとすれば、当然一番先に手を入れなければならないものなんだが、ことしの予算を見ると、それが実施されていない。どういう理由なのか、まず、ここで明らかにしておいていただきたい。
  122. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 環境衛生営業は、非常に重要な仕事をいたしております反面、企業が非常に零細規模である。千二、三万人の業者及び従業員を擁しておるこの環境衛生営業の八割以上が、五人未満の従業員を使ってやっておるという零細企業である。しかも、国民生活に非常に密接な関係のあるサービス営業等がこれに属しておるということで、公共料金とともにサービス料金を適正にしなければならぬという現下の要請にこたえますためにも、どうしても環境衛生営業の近代化、協業化をはかりまして、その経営を安定させ、また、料金等を適正に押えていくという必要を私は痛感をいたしまして、滝井さんの御指摘のように、環境衛生金融公庫を創設して、そして、厚生省の環境衛生営業の行政と表裏一体な金融の運営によってその目的を達成したい、こういうことで努力してきたのでございますが、政府全体、また党におきましても、本年は公社、公団等の設立を一切認めない方針でいこうということが最終的に大きな予算編成方針として決定をいたしました事情がございまして、私は、環境金融公庫の創設をこの際は見送らざるを得なかったのであります。しかし、先ほど申し上げました趣旨は、どうしてもこれを生かしていかなければならぬのでございまして、大蔵大臣と折衝をいたしました結果、また、これは政治的にも大きな問題として党の最高首脳で協議をいたしました結果、国民金融公庫の中に特別なワク二百億を設定いたしまして、そしてまた、その運営に当たる責任者である理事一名を増員をし、必要なる部課も設置をいたまして、先ほど申し上げましたような趣旨で融資を行ない、そしてこの環境衛生営業の近代化協業化を進めてまいりたい、このように方針を決定いたした次第でございます。なお、融資の条件等々につきましては、ただいま大蔵当局と協議を進めておる段階でございまして、まだ最終的にはきまっておりませんが、早急に結論を出したいものと考えております。
  123. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、環衛生金融公庫ができなかったので、国民金融公庫の中に二百億の特別のワクをつくって、そして、これをもって環境衛生関係の近代化、協業化を促進しよう、融資の条件等は大蔵省と相談中だ。これは法律は出さずに、行政措置でおやりになることになるのですか。
  124. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 理事一名の増員等は、国民金融公庫法の改正を要すると思います。
  125. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、大蔵委員会に出てくるのは、国民金融公庫法の一部を政正する法律で理事一名増員ということだけで、あとは何も出てこないわけですね。
  126. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 理事一名の増員のほか、監事の職務について規定を改正いたします。その二点でございます。
  127. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、われわれとしては、少なくとも——予算審議は御存じのとおり分科会をやって、自民党はあと一般質問を三名くらい許しますか、そうしますと、あと総括で終わってしまうわけです。したがって、やはりあれほど政策的に、少なくとも、大臣以下与党の諸君が公約として掲げたものが実現できなかったわけです。そして、それが国民金融公庫の別ワクとして二百億の融資をやろうということになったのですから、この条件は、やはりここで明らかにしてもらわなければならぬと思うのです。いまからぼつぼつ大蔵省と交渉では、これはわれわれ納得できないのです。  そこで、ここで一つはっきりしてもらいたいのは、まず第一に、二百億の出資をしましたならば、貸し出しの限度額というものを一体幾らにおやりになるのか、これをまず一つお示し願いたいと思うのです。もしこれが普通の国民金融公庫の貸し出しと同じような条件であれば、これはもうほとんどその意味がない。ところが国民金融公庫の中に二百億の別ワクをつくってやるからには、貸し出しの限度額その他についても国民金融公庫の普通のベースより以上のものに前進をしておかぬと、こういう零細企業の近代化、協業化を促進する——しかもこれが公共料金の値上げに非常に大きな影響をいままで与えてきておるわけです。いわゆる消費者物価の値上がりというものに、原動力とは言わないけれども相当大きな影響を与えておる。それをある程度除去しよう、こういう政策も加味しておるわけですから、したがってまず限度額をどの程度他のものに比べて恩典を与えることになるのか、これを御説明願いたい。
  128. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ちょっと初めにお断わり申し上げておきますが、二百億という出資が行なわれるとただいま先生おっしゃいましたが、二百億の出資は行なわれません。これは要するに融資ワクの中の別ワク、こういうことでございますので、御了承願いたいと思います。  そこで、一貸し付け当たりの限度額でございますが、現行制度では三百万円ということになっています。これを今回五百万円まで引き上げよう、かように考えておる次第でございます。
  129. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、その五百万円というのは中小企業一般に五百万円にするのではなくて、この環境衛生関係団体だけ特別に五百万円にするのですか。他のものを五百万円にするのじゃないですか。
  130. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 これは環境衛生関係の分はもちろんでございまして、他につきましても適用する、こういう考えでございます。
  131. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、これは大臣、恩典はないわけでしょう。他のものと同じでしょう。だから私たちはこういうごまかしをやられては困るのです。あれだけ自由民主党が——これはいわば環境衛生の七団体の法律ができるときは、そもそも二回ぐらい前の参議院の選挙対策としてできている経緯があるのです。選挙のたびごとにこういうものを使ってはいかぬとわれわれはいってきた。ところが、ことしの暮れには選挙があるかもしれないと去年いわれておるときに、鈴木さんが打ち出して、自民党が打ち出しているわけです。それが予算編成になってみたらいつの間にか淡雪のごとく消え去って、そして別ワクをくれるというから、これはうんと前進しておるかと思ったら、他のものと同じだ、ということではいかぬと思うのですよ。そういう羊頭を掲げて狗肉を売る政策を出してはいかぬと私は思うのです。  そうしますと、これは担保は要るのですか。
  132. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 二百万円以内の貸し付け先に対しましては原則として担保をとらない、こういう運営にいたしたいと考えております。
  133. 滝井義高

    滝井分科員 これはやはり他の中小企業も同じでしょう。二百万円までは同じでしょう。これは中小企業信用保険等においても、今度は倒産関連の場合においても二百万円まで無担保になることになっている。これは他のものと同じでしょう。
  134. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  135. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、これは、鈴木厚生大臣の政治力を私は非常に期待をしておったけれども、他のものとちっとも変わらぬということになる。  次は金利です。金利は一体どの程度にすることになるのですか。
  136. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 これは現在の国民金融公庫のいわゆる普通貸し付けの基準金利というものが、先生御承知のように現在は八分七厘でございます。これが新年度すなわち四月一日から八分四厘に引き下げられる予定になっておりますが、この環境衛生関係の融資につきましてもその普通金利の適用をする、こういうふうに実は考えておるわけでございます。
  137. 滝井義高

    滝井分科員 私は限度額までは、五百万円、やむを得ないかなと思うけれども、これは零細な企業にいままで八分七厘であったものを四月一日から一般の中小企業と同じように八分四厘で——そうしますと八分四厘では借れないでしょう。これは私は少なくとも六分五厘ぐらいにしなければいかぬと思うのです。それは、そもそもこの立法というのが一体経済立法でやるのか、衛生立法でやるのかというのは、ずいぶん議論があったのです。ところが他の中小企業と違って、衛生上の厳重な基準を設けてそれに従わせるのですから、これは経済立法というわけにはいかぬ。これはずいぶんけんけんがくがくの論議があって衛生立法にしたはずです。これは局長、あなたがみずから衝に当たっているからよく覚えておるはずです。そうしますと、衛生立法とすれば、医療金融公庫は幾らですか。
  138. 舘林宣夫

    舘林政府委員 六分五厘でございます。
  139. 滝井義高

    滝井分科員 そうすると、医療関係が、片や八分四厘、片や公衆衛生を受け持つということで六分四厘。これは同じ環境衛生、公衆衛生ですよ。当然これは六分五厘にすべきだと私は思う。これはどうですか。これはもうぼくは少しがんばらざるを得ない。六分五厘にやらなければいかぬじゃないですか。
  140. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 滝井先生の御主張、非常によくわかるのでございますが、御承知のように、医療公庫の話になりますと、これは滝井先生には釈迦に説法のようで申しわけございませんが、医療公庫の中でも御承知のように六分五厘だけではございません。各種の種類によっていろんな金利がございます。この場合、今日の環境衛生事業に対する融資は、実は、先生御承知のように、従来とも国民金融公庫でやっておったわけでございます。これは一般の中小企業とその意味においては本質的な差が実はないものでございますし、あたかも零細という意味におきましては、一方においては五万、十万の借り入れをやっている人たちが国民金融公庫にはたくさんおられるわけでございまして、未亡人がミシンを買ってとにかく内職をして生計を立てていかなければならぬ、こういう非常に負担力の乏しい人でございますが、この人たちも実は八分四厘の適用を受けておる。一方、魚屋さんも、これまた八分四厘。ところが、そうでないクリーニングの関係の方でございますとかおふろの関係の方に、それじゃなぜ非常に特別な低利を出さなければならぬのかという話になりますと、この国民金融公庫の屋根の中で扱っております限りにおいては、どうもやっぱりそういう他との振り合い上非常にむずかしい問題が出てくると私は思うのでございます。そういう意味から申しまして、ここに特別な金利を設けるということは非常にむずかしいというようなことで、今日一般の金利にした、かように実は考えておるわけでございます。
  141. 滝井義高

    滝井分科員 そこなんですよ。だから普通の経済立法でするならばいまの理論でいいのです。ところが、これは料金が規制をされて、そして料金の上限というものがきちっときめられてしまうわけです。しかも衛生上の基準というものに合致しなければだめなんです。それから、たとえば理容、美容というのは必ず一年に一回身体検査を受けて、そして感染する病気を持っておったならばだめだし、はなはだしかったら営業の停止を受ける、こういうように衛生上の規制がある。それは未亡人とか魚屋さんと違うわけですよ。未亡人はまた別の対策を、私は社会保障の政策をやるべきだと思うのです。国民金融公庫とは別個に、未亡人は世帯更生資金その他の母子福祉資金の貸し付けだって、恩典を受ける法律は別にあるのです。何も国民金融公庫でなくてもいいわけなんです。ところが、これらの環境衛生関係の七団体、いま十四団体ぐらいありますか。職種にしたら十八業種ぐらいありますよ。これらのものは衛生上の規制を受けておるところに特殊性があるわけです。だからこれは八分四厘では画竜点睛ですよ。これは簡単に借りられない。借りるとすれば、それは中以上の企業は借りられるかもしれぬけれども、いま大臣の言うように五人未満の従業員をかかえておるものが八〇%もおるという。この八割の層は借りられないのです。しかも二百万円をこえるものは担保が要るということになったら、担保はないですよ、こういうものは。家族労働でやっているのですから。だからそういうことになればこういうところは料金を上げざるを得ない。上げればそれは料金は規制をされる、こういう形なんです。だから、こういうところの金利の面で安くしなければ、これは近代化、協業化をやると言ったって木によって魚を求むと同じたぐいですよ。だからこの点は、どうも佐竹さんのせっかくの御説明だけれども、私納得ができないですね。少なくともそれは、六分五厘が不可能であれば、七分か七分五厘くらいのところまで下げなければ。そしてその分のかわりに、あと一分くらいか二分くらいは国がかわって利子補給をするとかなんとか、厚生省予算の中にそういうものを取るべきだと思うのですよ。そうしないと、これはもし国民金融公庫の金利体系を乱すというならば、そういう別の政策でやるか、何かの政策を打ち出さなければ、昨年以来鈴木厚生大臣が、池田内閣の官房長官をやめて、ひとつ高度経済成長政策の罪滅ぼしに——こういう零細企業は自分の主人であった池田さんがいじめたのだから、今度はこれを手直しをしようとせっかく打ち上げられた、鈴木さんのアドバルーンとしてはたった一つのアドバルーンですよ。それが大蔵省から否定されてしまったら、池田さん地下で泣こうにも泣けない。あなたもかつては池田さんのところにおったろうと思うのだが、そういうことではいかぬと思うのです。ここで思い切って六分五厘にしてもらわなければいかぬです。六分五厘にできなければ、七分かそこらの特別なケースにやっぱり持っていかなければ話にならないですよ。私は六分五厘を主張したいと思う。医療機関とこういうところはあまり変わらぬですよ。衛生上の規制を受けているのですから。従業員も一年に一回は必ず身体検査を受ける。二回ぐらい受けるかもしれぬ。だから、こういう点は舘林さんのがんばりが足らない。あなたのがんばりも足らぬですよ。こういうところを少しやっぱりがんばらなければだめですよ。どうですか、佐竹さん、まだ結論が出ていないのですが、八分七厘を八分四厘にしましたと言ってこういばっておったのじゃだめですね。少なくとも六分五厘に近いところへ下げるべきです。農業や何かを見てごらんなさい。三分五厘というのがある。農業に三分五厘があって、どうして一番零細な、しかも国民生活に密着をし、消費者物価に重大な影響を与えるものを——これは私は下げ得ないとは言わせないですよ。これは池田さんの罪滅ぼしのためにもやらなければいかぬですよ。どうですか。
  142. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 まことにごもっともなお話と承っておるのでございますが、やはり国民金融公庫の中でやる限りは、もしおっしゃるように環境衛生について六分五厘とか七分とかいう金利を出せということになりますと、やはり国民金融公庫の金利を全部一斉にその線まで下げないと、これはなかなかおさまりません。なかなか社会問題としてやっかいな問題も出てくるおそれもございます。私どもとしてはなるべく金利は低いに越したことはないと思います。思いますからこそ、大蔵大臣も、昨年九月に一回年三厘引き下げられた三機関の金利を再び半年ならずしてまた追い打ちをかけて四月からさらに三厘下げよう、つまり去年の九月から見ますと実は六厘の引き下げを行なうという非常に大英断をふるったわけでございまして、そのために国民金融公庫はやはり損益上赤が出ます。それを埋めるために実は七億円の補給金を交付するということで予算が組まれておるわけでございますので、これを先生のおっしゃるようにさらに動かすということになりますと、やっぱり当然予算にも響きますし、四十一年度の問題としてはそういうことで七億円という交付金をもって実は予算がきまって国会の御審議を仰いでおるわけであります。  ただ一つ申し上げたいことは、先生は、それじゃ何もかも一般並みで、何の特別扱いもないではないか、こうおつしゃいますが、実はここには重大な二点で特別な扱いがございます。第一点は、他の業種にはないそういう特別なワクとして二百億円を用意いたしましょう、これが一つ。それから第二点は、いわゆる償還期限でございます。この償還期限につきましては現在の制度からこれを相当延長いたそう、いわゆる今度の近代化、合理化の事業の特殊性にかんがみまして、そこの償還期限は延長しようということで、実は先般来厚生省ともいろいろとお話し合いをいたしまして、そこを従来よりも引き延ばして扱う、こういうことにいたしておりますので、決して何もかもないということではございませんので、何とぞ御了承いただきたいと思います。
  143. 滝井義高

    滝井分科員 二百億の特別のワクを置いたのが特別扱いだ、こうおっしゃるけれども、これは環境衛生金融公庫というものをつくることを政府は天下に公約しておった。ところが、予算の編成の過程で、内閣としてはどうも大臣が言われたように公団やら公庫というものはつくりませんとなったので、泣き泣きここに二百億円のワクをもらったのです。こういうことですから、これは公約に対する肩がわりだからそう特別なものではないということは当然です。ところが、これがかつおぶしであって、ネコの食えぬかつおぶしじゃだめなんですよ。この二百億がやはり借りられるものでなければいかぬですよ。ネコに食えぬかつおぶしじゃ困るのです。零細な中小企業者にとってやはりこれが利用でき、活用できるものでなければいかぬ。ところが二百万円以上借りたら担保も要るというようなことでは活用ができない。しかも利子が八分四厘という高いものでは活用ができない。だから活用できる形にしてくださいというわけなんです。活用できる形にするならば、何ならことしは二百億を半分にしてもいいですよ。百億にワクを、特別のものを半分にしてでもいいから、あなたが言われるならば、ひとつ利子を六分五厘にしてもらって、そして三百万円くらいのものにしてもいいことになるわけです。(「冗談じゃない」と呼ぶ者あり)うしろに来て言っているが、だから、そういう大企業——あなた方の政策というのは大企業優先ですよ。だから、こういうことでは大企業しか借りない。山一証券のために二百八十二億をわずか二十二億の担保で出して、そうして日本の金融恐慌を防いだんです、証券の暴落を防いだんですからね。そういう前例があるんだから、いまや千三百万の中小企業の皆さんが非常に金繰りに困っておるというときには、これはやはり出してやるのが当然だ。中野さん、来て、言っているが、使えない。幾ら中野さん、力んだって使えない。だから私は、この点はいまのような反撃をしたい。これは結局かつおぶしですよ。食えぬかつおぶしじゃネコは食えないですからね。  いま一つは、償還期限を延長すると言うが、どの程度延長するのですか。
  144. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 まず第一の点からでございますが、二百億の特ワクは、いわば絵にかいたもちに終わってはいかぬぞという話でございます。   〔倉成主査代理退席、主査着席〕 これはつまり大企業でも何でもございません。国民金融公庫の対象は非常な零細企業でございまして、中小企業基本法に基づく中小企業の中で、さらにまた小規模のものを実は対象にいたしております。これは全く大企業のためのものではございません。そこで、そういうものをせっかく設けても動かぬではないか、借りに来る人はおらぬだろう、こういう御心配を先生はおっしゃっていらっしゃると思います。これにつきましては、従来とも、これはもう先生先刻御承知かと思いますけれども、この新しい特別措置のようなことのなかった時代、つまり全く普通の扱いをしておりました時代にも、過去、三年、二年にわたりまして、環境衛生関係の融資の申し込みは相当ございました。それに対する国民公庫からの融資実績というものは、一昨年でございましたか、三十九年度あたりで百四、五十億円、ことしはもうちょっとふえておりましょう。そういうふうに、現実に実は融資の実績が出ておりまして、従来の扱いでも借りていただいておるわけでございます。ましてや、今度は償還期限等について優遇をいたそうということでございますから、むしろ従来以上に申し込みが多くなるのじゃないか、かように考えております。
  145. 滝井義高

    滝井分科員 償還期限はどのくらい延長しますか。大事なところです。
  146. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 失礼いたしました。償還期限は、これは現在の規定では、設備資金につきましては七年、それから運転資金については五年までということでございますが、実際の実行にあたりましては、これがまあ大半のケースが二十四カ月月賦、二年償還でございますね、というあたりがまあ大部分でございます。それを今回は、いわゆる特定施設の設備、いわゆる指定施設でございますか、その合理化のための指定設備の施設につきましては十年でいこう、なおその据え置き期間は、設備資金につきましては一年まで据え置ける、こういうことにしまして、そのほかに、運転資金につきましては五年までフルに見ていこう、こういうことで運用をしてまいろうということで、厚生省ともいろいろ御相談をいたしまして、この点につきましては、舘林さんとの間でも実は円満妥結を見ておるわけでございます。
  147. 滝井義高

    滝井分科員 まあ私が幾分不満を表明しない点はいまの点ぐらいですね。まあこのくらいなら、当初だから実績を見て、次に前進しようかという気持ちになる。いまの十年、据え置き期間一年、こういうところ……。問題は特定の設備というのが問題なんですよ。これは非常にレアケースになる可能性があるわけですよ。やはり美容とか理容とかクリーニングというのが買う機械というものは普遍的に大体きまっていますよ。これはもう一般のクリーニング業なり、美容、理容の使う機械というものはきまっておる。だからそういうやはり一般に使う機械、散髪屋さんでいえばあのつむ台ですね、そういうものを買うときにはやはりこれは十年にしてやらぬといかぬわけですよ。これはそういうことになるのですか、そういうものも特定の設備になるのですか。
  148. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 その点のこまかいことは厚生省と事務的に十分打ち合わせまして、厚生省の御要望に沿って定めてまいりたい、こう思っております。
  149. 滝井義高

    滝井分科員 舘林さん、よく覚えておいてください。あなたの要望に沿うと言っているのだから、しっかりしてもらわなければいけない。  そうすると、結局私が非常に不満なのは、八分四厘、これは少なくとも六分五厘にしなければいかぬと思うわけです。それから私がなぜ別ワクだけで必ずしも満足しないかというと、医療金融公庫をつくる前にも、医療機関は国民金融公庫その他の別ワクで差し上げますという意見があった。商工中金の別ワクにすると言った。ところが別ワクにしてもらってみたけれども、普通の中小企業のところに医療機関が行ってもなかなかなじまないわけですよ。だから別ワクをもらってもだめなんです。そこで医療金融公庫ができたという歴史的経過があるのです。これは中小企業の方たちですから、幾分それはなじんでおるかもしれないけれども、やはりよほど取り扱いに注意をしてもらわないと、そうはいかぬところがあるのです。そこでこれは大臣お願いするわけですが、どうですか。この八分四厘では何としてもやはり問題だ。私は償還期限とか限度額とかいうのはまあしばらく様子を見たい、ちょっとここで言って勝負してもなかなかですから。そこで問題は、勝負するところは利率だ、これを八分四厘以下に下げることだと思うのです。これはまだ最終的にはきまっていないようですから、これは大臣の一番の押しどころだと思うのです。ほんとうは私はきょうここに福田大蔵大臣に来てもらって詰めたいところですけれども、まだあと質問したいことがもう二問あるので、時間がないですから、これ以上詰められないのですが、どうですか、これは八分四厘と六分五厘——まあ大野伴睦先生かおれば、足して二で割ることが非常に得意だけれども、なくなっていないので、なかなかそうもいかぬですが、あなたとしてはこれを八分四厘より下げる努力はできますか。私はきょうはここで幾らということの言質をほんとうはとりたいところだけれども、がまんします。
  150. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいまの問題につきまして、二点だけ明確にしておきたいと思うのであります。  第一点は、私自身もさようでございますし、党の要望といたしましても、今回昭和四十一年度は公社、公団をつくらないという方針が確定をいたしましたために、この環衛金庫の設立を見送った。私は、滝井さんから先ほど来お話がありましたが、医療金融公庫を創設したことによって、医療行政と一体になってこの金融がなされて、医療機関が非常に計画的に整備された、どうしてもこういう金融は政府の行政と表裏一体になって推進されなければ真の目的を達し得ない、かように考えておるわけであります。もとより私どもは、今回の国民金融公庫の運営、その成果、そういうものを検討しつつ、将来の方針をきめたいと思うのでありますけれども、決して環衛金庫を断念したということではございません。このことをまず第一点に申し上げておきたいと思うのであります。  それから融資の条件等につきましては、私が冒頭にはっきり申し上げましたとおり、ただいま厚生省大蔵省の間で折衝中でございまして、佐竹銀行局長からお話しになったことは、佐竹君のお考えを述べたにすぎないものでございます。政府としては決定をいたしておりません。このことは党の最高首脳部が環衛金庫にかわる一つの案として裁定を下したものでございます。したがって、環衛金庫の設立の趣旨、目的に沿うような運営が国民金融公庫の融資においてなされるということが、あの裁定の趣旨である、私はかように了承いたしておるのでありまして、この融資の決定につきましては、当の裁定を下された党四役の承認も得ないで、大蔵大臣厚生大臣だけで決定するわけにいかない筋合いになっておる、こういうことでございますので、先ほど来佐竹君が言ったことは、これはまだ決定案でないということを御了承をいただきたい。私は当初申し上げましたように、環境衛生営業の近代化、協業化をどうやって達成するか、そうして、国民生活に非常な影響のあるサービス料金等の値上がりを適正に押えるような措置をどう講ずるか、そこに大きな目標を置きまして、そして最終的な結論をきめたい、それに対して最善の努力をしたい、かように考えております。
  151. 滝井義高

    滝井分科員 なかなか大臣が大上段に振りかぶって御答弁になりましたけれども日本の政治はビューロークラシーの傾向が非常に強いわけです。したがって、いまや事務当局同士が話し合うと、それが基礎になって固まってしまう可能性が十分あることは、官房長官をおやりになった鈴木さんよく御存じです。ひとついまのことばを、しっかりふんどしを締め直して、また間違いのないようにしていただきたいと思うのです。昨年は、やはり金融公庫をつくるんだといっておったのが、いつの間にか党の方針としてつくらぬのだといって、手の裏を返したのですから、それがまた返らないようにひとつぜひして、利率は六分五厘に近づけるように努力していただきたい。四役に話していただくそうですから、少なくとも予算が衆議院を通るまでには打ち出していただきたいと思うのです。  それから大臣、一体環境衛生関係がつくっている同業組合には、この国民金融公庫のワクから金を貸すことになるのですか。
  152. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点も、ただいま両省間で折衝中でございます。私は、環境衛生営業の協業化をはかったり、また共同施設事業をやる、共同保管であるとか、あるいは原材料の共同購入をする等々のいろいろなことを考えますれば、同業組合に対しても融資されることが当然考えられなければならない、かように存じております。
  153. 滝井義高

    滝井分科員 そうすると、佐竹さんのほうの銀行局も、そういう方針はいいですな。
  154. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 現在の国民金融公庫の制度のもとにおきましては、いわゆる組合貸しの扱いは一切否定しておるものではございません。ただ、組合金融の専門機関でございます商工中金というものがございますので、それに先行して貸し付けたり、あるいは優先的に扱ったりするということがないように、そういう配慮は行なわれておりますが、実際問題として商工中金の利用がなかなかむずかしい、できないといったような場合には、これは国民公庫としてとびらを閉ざすわけにはまいらぬということで現在運営されておるわけでございます。
  155. 滝井義高

    滝井分科員 だから、いま組合は商工中金の窓口を通じなければいかぬわけです。国民金融公庫はだめなんですよ。ところが、零細企業で今後やはり組合の指導というものが非常に重要になってくる。現在日本経済の運営をごらんになっても、新しい経済の秩序を確立するときに一体何が大きな役割りを演じておるかというと、団体ですよ。これは経済の各団体、日経連をはじめ経団連、それぞれ何々工業組合とか、こういうものが非常に大きな役割りを演じて、公取の違反をやるのはむしろその団体のほうがやっていく。御存じのとおりです。そうすると、やはりこういう零細企業をまとめて引っぱっていくには、こういう組合に金を貸して、共同施設をやる。協業化、近代化ということには、組合が動かなければだめなんです。ところが、それには金が貸せないんだ。商工中金だ。商工中金ということになりますと、商工中金に行きますとどうなるかというと、君のほうの下部は国民金融公庫で金を借りておるんだから、組合に金を貸す必要はない。組合で借りた金を集めて使ったらと、こういう形になって、はじき出されることは明らかです。二元的な運営はいかぬですよ。やるなら国民金融公庫一つにするということにならぬといかぬと思う。どうも非常に大きな、四役のきめた大事なことだって、銀行局が金融のたてまえからだめだというなら、いままでの筋が先行して、政治が筋にくっつくことになるんです。やはりこういうのは政治が先行する形をとっていく。筋が曲がっても、それはやはりある程度妥協して行なわれないと、政策は前進しない。せっかく鈴木さんが親心を持って、池田さんの罪滅ぼしをやろうと思っても、あなた方がくずしたなら何にもならぬことになってしまうでしょう。
  156. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 この点につきましては、私ども厚生大臣のお考えと違ってないつもりです。ただ実際問題といたしまして、いまおっしゃるように組合の共同施設の場合は、相当大きなものが出た場合に、いまこっちの限度が五百万円でございますから、実際問題としてこっちで扱えない。ところが商中に参りますと、組合貸し付けは二億円までいきますから、そっちへいく。しかし、こまかいものは国民金融公庫が扱うことはあり得るわけでございますから、さっきから申し上げておりますように、従来の運営としては相当狭く運営しないといけない。しかし、今回はこういう新しい問題が出てまいりましたので、これについては十分配慮してまいりたい、こういうことでございます。
  157. 滝井義高

    滝井分科員 いまの答弁で、非常に弾力的な政治的な答弁でございますから、了承いたします。ぜひひとつ弾力的な運営をやって、また貸し付けの限度額が五百万円しかないわけですから、これは先々は鈴木さんの言われるように、前進した形で、環境衛生の公庫をつくることについては断念していないと言うから、そのときに問題を解決したらいいので、とりあえずは組合のほうもケース・バイ・ケースで見てもらう、こういう形で了承いたしておきます。これはこれで終わります。  最後にちょっと遺骨のことでやらしていただきたい。  最近新聞を見てみますと、宮城県の遺族が慰霊団を組織してガダルカナル島に行った、そしてそこの砂や石ころを持って帰って、愛知県で慰霊祭のときに、遺族に分配をして非常に喜ばれた、こういう記事が出ておった。けさの朝刊をごらんになっても、これはフィリピンの戦跡慰霊団というのが、フィリピンの大統領の好意で遺骨を持って帰る、こういう記事が出ていますね。それから、全日空の事故で死体をあげるのにずいぶん苦労して、底びき網まで使ってやっていらっしゃいますね。一体、大陸なり南方なりに残っている日本の遺骨というのは、持ってお帰りになったのはどの程度あるのですか。大体百六十万人ぐらい戦病死していますね。いま日本に持って帰った遺骨はどのくらいで、残っておるのはどの程度あるのですか。
  158. 実本博次

    ○実本政府委員 概数で申し上げますが、今次の戦争で陸海軍合わせまして約二百十万、海外で戦死いたしております。そのうち遺骨が処理されたということで出てまいっておりますのは、大体約三分の一でございます。七十万見当のものが遺骨の処理をされておるという状況でございます。
  159. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、まだ百四十万、草むすかばね、こけむすかばね、洞窟やら海の底やら密林の中に残っているわけですね。私、ちょっと調べてみますと、昭和三十一年に西部ニューギニア、当時のオランダ領ですね、北ボルネオ、当時の英領、こういうところの遺骨の収集を実施したときに、いま問題の起こっているインドネシアの遺骨収集計画を申し出たけれども、できなかったのですね。その後三十九年にインドネシアの地域の遺骨収集団というのを派遣して、百四十柱ぐらいを収容しているんですね。まだたくさん、残っているんですが、一体遺骨収集をおやりになる予算というのは、毎年どういう形で計上しているのですか。
  160. 実本博次

    ○実本政府委員 遺骨収集につきましては、二十八年から五カ年計画で、いま申し上げましたような北方地域、または南方地域に全部散乱いたしております遺骨の収集の事業を行なってまいっております。その際には、年度当初の予算として計上されてまいっております。三十三年以降、一応遺骨収集の事業が大観して完了したということになっておりまして、それ以降はまだ未処理のままで非常に目につくようなかっこうでさらされているといったような——玉砕か多いわけでございますが、そういったような状態になっているということが情報として入ってまいりますと、そのたびごとに予備費といったようなものでこの収集の予算の手当てをしてまいっておるというふうな状態でございます。
  161. 滝井義高

    滝井分科員 ことしの予算に、外地戦没者遺骨処理費二百三十一万二千円というのがあるわけです。それから去年も多分九百万くらいあったと思いますが、この二百三十一万二千円というのは、遺骨処理費になっておるのですか。どういうところにどういうぐあいに使うのですか。
  162. 実本博次

    ○実本政府委員 先ほど申し添えるのを忘れまして、いま指摘されたわけですが、そういった主として南方地域の孤島なり、玉砕したところにまだ相当目につくかっこうで処理されてないというふうな情報が入ってまいりましたものでございますから、そういった島嶼につきまして、その島嶼を管轄しております当該相手国との交渉もございますが、一応そういった情報の入ってきましたところの二カ所につきまして、来年度年度当初から予算を遺骨収集費といたしまして計上しておるわけでございます。
  163. 滝井義高

    滝井分科員 どことどこですか。
  164. 実本博次

    ○実本政府委員 一応いまのところペリリュー島とそれからニューカレドニアの予定をいたしておるわけでございます。
  165. 滝井義高

    滝井分科員 外務省に伺いますが、平和が回復したら戦場掃除について関係国が協議をして、遺骨収集その他をきめる国際慣例があるわけですね。外務省は韓国の外務大臣が、ひとつ東南アジアの外相会議を開こうじゃないかというと、どうもそれに乗るような姿勢を示しているし、あるいは東南アジアの開発会議みたいなものも開こうとしているわけですね。そういうことも私は大事だと思うのです。しかし、最近の新聞を見ると、ガダルカナル島の石こうや砂を持って帰って、そしてお守り札みたいなものに入れて遺族に与えると、みんな喜んでもらっているという愛知県の記事が出ている。それからけさの朝刊等を見ると、フィリピンの戦跡慰問団が帰ってきて、やはり持って帰って喜んでおるわけでしょう。これは百四十万も残っておるのですから、何かやはり戦場のお掃除をやるくらいの敬虔な気持ちというのを持つことが必要だと思うのです。政府は恩給やら扶助料は非常に一生懸命になる。これは生きている人だから大事です。一生懸命になっていいのです。それから戦没者に勲章をやることに一生懸命になるでしょう、それから追悼式も一生懸命になるでしょう、こういうことに一生懸命になるなら、やはり遺骨の収集についても、東南アジアとの外交が開けておるわけですから、やるべきだと思うのですよ。外務省はこういう諸国と一体どういう交渉をしているのですか。
  166. 武藤武

    武藤説明員 いまのお尋ねでございますが、−確実に遺骨があるということが明らかになった場合には、現地政府側と緊密な連絡をとりまして、遺骨を大使館が引き取り、本邦に送り返す、そうして厚生省を通じて遺家族の方にお渡しするという措置をとっておるのでございます。
  167. 滝井義高

    滝井分科員 オーストリア等では現地に駐在員を置いて、そうして一々収集をしているんですね。やっぱり私は、そのくらいのことはやるべきじゃないかと思うんです。御存じのとおり日本人の習慣というのは、非常に祖先崇拝の念があるわけでしょう。やはり自分のむすこの戦死した島の石ころでもけっこうです、こういう気持ちがあっている。非常に具体的に、千人も集まって愛知県の護国神社か何かでやっているんです。こういうことは復古調ではないんですよ。やはり何かそういう敬虔な気持ちというものを国がしてやるということ、目に見える勲章をやったりすることだけが能じゃないですよ。慰霊祭を大々的にやる金があったらこういう目につかないじみなことをやって、戦場のお掃除をやっていくということが平和回復、もう戦争をしてはいかぬぞという気持ちを起こさせるんですよ。人間の命は泰山よりか重いぞ、昔のように、羽のように軽くはないぞということを教えてやることになるわけですよ。そういうことをやっぱりやらなければいかぬ。政府は勲章をやったり戦没者の慰霊祭をやったりすることには力を入れるけれども、そういう目に見えないじみなことはやろうとしないということは間違いですよ。勲章をやる気持ちがあったり、追悼式をやる気持ちがあったら、もう少しそういうところに駐在員を置いて、じみにきちっと掃除してしまう、戦後でないというならば、あと掃除をやるくらいしなければいかぬですね。だから外務省も少しがんばって、まだ百四十万も残っておるのですから、組織的な計画的な遺骨の処理なり遺品の処理を私はやるべきだと思うんです。これは大臣どうですか、最後のしめくくりにあなたからひとつ。
  168. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど援護局長からお話を申し上げましたように、政府といたしましても、シベリアの一部を除きまして南方、北方の戦場の遺骨の収集を、長い年月にわたって一通りやったわけでございますが、いずれにしても限られた人員と、また限られた日数の制約のもとに行いました関係もありまして、相当残っておると思います。私は遺家族の方々の心情を思います場合に、やはり遺骨が残っておるということが確認されました場合には、予備費等から予算を支出いたしましても、外務省を通じて関係国と折衝をして、遺骨の収集を今後も続けるべきものだ、またそういう方向で努力したいと思います。
  169. 滝井義高

    滝井分科員 どうもありがとうございました。
  170. 大橋武夫

  171. 武藤山治

    武藤分科員 本会議が始まる寸前で、大臣もたいへん時間を気にされる時刻で恐縮であります。  私は、きょうは結核患者の問題について、大臣の所見を特に中心に承りたいと考えておるわけでありますが、最近死亡率がたいへん変動して、結核の死亡率が減ったということで、何か結核の患者に対する対策がたいへん後退をしているのではないか。政府みずからが結核対策をおろそかにし始めたのではないかという傾向を非常に心配するわけであります。特に、結核の場合には、まだ労働力として働ける若い人が多い、三十前後の人が非常にかかりやすくなっている、そういう点から考えるならば、結核の問題については、政府はもっと十分力を入れなきゃいかぬと思うのです。そこでまず、厚生大臣は、結核対策に積極的に一体四十一年度予算でも取り組んだのかどうか、私、非常な疑問を感ずるのでありますが、まず結核に対する対策として、大臣はどういう抱負をお持ちになっているか、ひとつお尋ねしたいと思います。
  172. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、今日までやってまいりました疾病対策のうちで、結核対策ほど成果をあげておる対策はない、こういわれるほど、結核に対する対策は、長い年月にわたって相当計画的に医療機関の整備もやり、また措置入院等の措置も講じ、いろいろな対策を総合的に進めた結果、逐次結核患者が減少していっておる。私はここで油断をして手をゆるめてはいけない、やはり結核対策は、従前に劣らない熱意、努力をもって今後も持続的に進めていくべきものだ、このように考えておるわけでございます。ただ一部にそういうことで空床を生じまして、それを最近各方面から要望されておる精神病のほうに転床をするとか、あるいは重症身心障害児のほうにそれを転換させるとか、そういうようなことが国立療養所で行なわれておりますために、何か政府は結核対策から手を抜きつつあるんではないか、こういうぐあいに誤解をなさる向きもあると思うのでありますが、私が申し上げましたように、結核対策はせっかくここまでりっぱな成果をおさめてきた、ここで手を抜きますと、また逆転するおそれがあるのでございますから、従前に劣らない熱意、努力を今後も続けていきたい、かように考えております。
  173. 武藤山治

    武藤分科員 事務当局にお尋ねいたしますが、現在登録されておる結核の患者はどのくらいおりますか。
  174. 中原龍之助

    ○中原政府委員 昭和三十九年で、総数三十四万五千四百七十名おります。
  175. 武藤山治

    武藤分科員 三十四万五千のうち、入院治療を要すると思われる数はどのくらいになりますか。
  176. 中原龍之助

    ○中原政府委員 要入院は、三十八年度の実態調査の結果でございますけれども、要入院としては全国推計でやりますと、四十六万という数字が出ております。
  177. 武藤山治

    武藤分科員 さっきあなたは結核患者の数は何ぼあるかと聞いたら三十四万五千でしょう。それで今度は入院を必要とする患者が四十六万というのはおかしいじゃないですか。数字の間違いじゃありませんか。
  178. 中原龍之助

    ○中原政府委員 ただいま私申し上げましたのは、三十八年度のものは、実態調査による推計数でございます。実際に、患者を把握しておりますのは登録した患者数でございます。
  179. 武藤山治

    武藤分科員 そういたしますと、要入院患者が三十八年に四十六万、今日何ぼか減ったとしても、かなりの数まだおる。入りたいけれども予算の関係で入れない、あるいは強制収容する国の予算がない。いろいろな事情から国立療養所のベットはあくという実情がある。もちろんそれ以外にベットのあいている理由は医者のいいのがいないから国立療養所に入ってもどうもろくな手術もできぬ。こういうようないろいろな事情があって、ベットがあいていることは確かであります。しかしながら今日要入院患者を一日もすみやかに治療させるには、今日の国立療養所のベッドを全部ふさいでも足りないぐらい病人はおるのではないかと思うのです。そこらの実態を、厚生省予算をあまり出すのをきらってか、どうも四十一年度予算ではたいへん後退をしておる。命令入所の患者数は四十年と四十一年と比較して予算上何名減りますか。
  180. 中原龍之助

    ○中原政府委員 命令入所の患者につきましては、予算上の数は十万五千でありましたのが十万になりました。
  181. 武藤山治

    武藤分科員 大臣、御承知のように、働き盛りの若い結核患者で業務に従事しておる者あるいは他に感染をするおそれのある、そういう者の命令入所の数字五千人ことしは予算上減らされておるわけであります。さらに国立療養所が四カ所今度は廃止になる予算が上程されております。さらに結核病床が千九百九十床減らされるわけですね。さらに職員の定数が六百三十一人結核関係は減少されるわけであります。これで一体結核に対する根本的対策を後退させずに努力したと言えるかどうか、大臣の御所見はいかがでございますか。
  182. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 若い方々措置入院の問題でございますが、若い層の方は早く手当てをすることによってわりあいに治癒も早くなっております。御指摘のように、菌を散布する危険な状態の命令入所をぜひやらねばいかぬというのはお年寄りの層に非常に多い、こういう傾向にありますことは御承知のとおりでございます。私ども、四十一年度の予算の編成にあたりまして御指摘のような点があるわけでございますけれども、これは最近の入院患者の傾向、実際のベッドを利用する状況等を勘案しましてああいう予算の要求をいたしているのでありますが、現在のところ国立療養所の利用率は現在の施設の八〇%程度でございます。本年二カ所の療養所を国立病院に転換をいたしますけれども、入院には支障のないような措置を講ずる方針でございます。
  183. 武藤山治

    武藤分科員 本年の四カ所減少というのは、二カ所は国立病院、二カ所はどこを廃止するのですか、具体的にその四つの廃止の場所を言ってください。
  184. 若松栄一

    ○若松政府委員 四カ所減少いたしますうちの二カ所は病院に転換いたします。二カ所は隣合っている施設を一緒にして新しいりっぱなものに建て直すということで、統合による減少でございます。
  185. 武藤山治

    武藤分科員 どこですか。
  186. 若松栄一

    ○若松政府委員 愛知県の大府荘と愛知療養所が一緒になります。それから千葉千城園と千葉療養所が一緒になります。
  187. 武藤山治

    武藤分科員 厚生大臣はたぶん記憶にあると思いますが、十一月二十六日に国立療養所の患者の代表と会見をなさいましたね。そのときに患者の強い要望は、どうも国立療養所には医者のいいのがいない。したがって摘出手術もほとんどできない病院がある。手術をした途中で手間違いをして、とうとう不具者になってしまったという例が私の町にもある。現在の国立療養所の医師の技術の程度、人員、これがまことに私は貧弱じゃないかと思うのです。大臣もその点を感じて、その陳情団とお会いしたときに、医師の問題は二年計画で解消する、根本的に努力する、こういう約束をしたようであります。医師の手当については、国立療養所はどんなぐあいに四十一年度はいたしましたか。前年度と比較していかがですか。
  188. 若松栄一

    ○若松政府委員 国立療養所における医師の定数は現在九〇%程度充足していることになっています。しかし、りっぱな中心的な療養所は一〇〇%充足しておりますし、比較的小さい療養所のほうは欠員が非常に多うございます。そういう点で、療養所相互間にアンバランスというものがかなりあらわれているということは事実でございます。それに伴いまして技術差というものもだんだんあらわれてきておりまして、中心的な療養所を将来とも医療中心として十分に整備すると同時に、そこでは十分な技術を確保していく。また、一方将来だんだん利用価値が少なくなってまいる療養所もございますので、そういうところも一律にきれいに充実し、あるいは技術能力の水準も同じように確保するということは困難でございますので、そこら辺のところにおきましてはやはり療養所相互間の機能分化ということを考えまして、むずかしい手術みたいなものは十分な人員と設備の整ったところでやる。先ほど大臣お話がありましたように、老人の患者が非常にふえてまいりまして、過半数が六十歳以上というような療養所もございます。そういうところでは手術等の件数も非常に少のうございますので、十分に専門医が活躍する余地がございません。そういうようなことで、機能分類というような形で再編整備を現在着着と計画いたしておるところでございます。医師の研修等につきまして、医師が新しい技術を覚え、あるいは新しい知識を得るために研修に行くための国内旅費を用意しております。
  189. 武藤山治

    武藤分科員 実は足利に国立療養所があるのでありますが、これは今日非常に大きな問題をかかえて、かつては水の問題で疫痢になったりたいへんな騒ぎをした。私も県会議時代から国立療養所の整備の問題については首を突っ込んできたのでありますが、今日は何といっても医者が貧弱で、何とも患者は不安で、どうも医師の診察を信頼できない、こういう実情にあるようであります。所長ともう一人の外科医がおるけれども、所長は管理のほうの仕事がいろいろある。そういう人事管理や経営管理のほうすべてをやらなければならないので、なかなか医師としての時間がとりにくい、こういうような実情ではベッドがあくのも無理はないと私は判断をしております。これらのことについて、きょうは多くを論ずる時間がありません。しかしかつてそこの代表と厚生省との間に、一カ月以内に必ず本省から調査官を派遣して実態を調査するという約束があるようでありますが、この約束を必ず果たしてもらいたいと思いますが、いかがでございましょう。
  190. 若松栄一

    ○若松政府委員 近く療養所課長が現地に参って実情を調査する予定でございます。
  191. 武藤山治

    武藤分科員 大臣、いま足利国立療養所にせっかく大臣の御努力によってとれた予算重症心身障害児収容施設をこの国立療養所の中に併設をする、こういうことが一月十四日に発表され、翌日の新聞にはこの障害児の施設ができることによって三、四年間で結核療養所は閉鎖するのだ、こういう報道が出たわけであります。その新聞記事もここに持っておるのでありますが、それについて患者地域住民は非常な心配をいたしております。そういうことがあるのかないのか、厚生省の方針、計画、これを明らかにしてもらいたい。
  192. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま武藤さんからお話のありましたように、昭和四十一年度に重症心身障害児収容施設全国国立で十カ所つくることになっておりまして、足利療養所につきましても、地元の御要望もございますし、また厚生省の医務局及び児童家庭局等で療養所の所長はじめ関係職員と十分話し合いをいたしました結果、足利の療養所に重症心身障害児施設を併置するということが内定をいたしておるのでございます。ただそのために現在おります結核患者方々に対して、入院、療養に支障を来たすというようなことは絶対にしない方針でございますので、その点御了承いただきたいと思います。
  193. 武藤山治

    武藤分科員 それはいま入院しておる人たちには心配をかけない。しかし何年くらいそういう確約が守られるのでありますか。将来の計画というのはどうなっているのですか。
  194. 若松栄一

    ○若松政府委員 将来のことをいま確実に申し上げるわけにはまいりませんけれども全国の結核病床が現在二十二万何千床ございます。それが四十五年には大体十八万床くらいに減るだろうという予測をいたしております。国立療養所におきましても若干の減少をせざるを得ないであろうという見込みでございます。しかし国立療養所は結核対策の最終的な責任をとるという意味で、民間がどんどんやめていっても国療はできるだけ最後までこれを持ちこたえて、最後のあと始末をするという決心でございます。それにいたしましても五年後、十年後には相当数の結核病床を減らさざるを得ない運命になることを予想いたしております。そういう状態でございまするので、どの療養所がいつどのくらいになるということは確言申されませんけれども、数年後にはある療養所は減り、ある療養所は依然として同じベッドを持ち続けるというようなことになろうと思いまして、これはその地域の需要等を勘案いたしまして、適切に処理いたしたいと存じております。
  195. 武藤山治

    武藤分科員 そういう長期のこれらの検討、調査の上やるのでありましょうが、特に足利療養所の場合、栃木県に二つの国立療養所がある。一つは宇都宮である。栃木県をちょうど半分に割った人口が密集する南のほうに一カ所、北のほうに一カ所、こういう地域をおそらく国として考えて設立をしたものだと思うのです。そこでこれを廃止された場合には、地域住民は宇都宮の国立でなければ国立施設には入れない。交通の面、距離の面からも非常な不便を来たす。地域住民の要望からも、また患者の期待からもどうしても足利療養所というものは残してほしいという強い要望でありまするから、こういう問題については十分ひとつ実情を、現状を調査の上、長い計画を立てていただきたいと思いますが、十年間くらいはそういうものがつぶされるという心配はないと一応判断してよろしゅうございますか。十年というややの年数を切って確認をしたいのでありますが、いかがでありますか。
  196. 若松栄一

    ○若松政府委員 十年という段階になりますと、私ここで責任を持って十年以内ということを確言いたしかねると思います。しかし国立療養所が、ただいま足利には重症心身施設ができますように重症心身施設も大きくなるかもしれません。またそういう場合に結核がある程度減って、重症心身施設が大きくなり、あるいは老人のリバビリテーションの施設に変わっていくというようなことはあるかもしれません。
  197. 武藤山治

    武藤分科員 それは三、四年の間にはありませんね。それはいかがですか。
  198. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在私ども三、四年以内にということを具体的に考慮はいたしておりません。しかし計画は非常に進展しておりますので、万が一ないということはあるいはわかりませんが、いまのところ三、四年程度では考えておりません。
  199. 武藤山治

    武藤分科員 本会議予鈴のベルが鳴りましたので、詳しく聞く時間がありません。  そこで私はきょうはほんとうの大臣の意思だけを聞くというつもりであったのでありますが、資料をひとつ要求しておきます。今日の全国の結核の患者の趨勢。それから第二、国立療養所における入所患者数とベッド数。第三は、今日ベッドがあいている原因は何であるかという厚生省側の究明した原因。さらに今度つくられる足利における心身障害児の療養施設の青写真、それに対する看護婦あるいは保母さん、そういうようなものをどうするのか、これらの具体的な厚生省の今日きめてある計画、さらに全国国立療養所で、摘出手術のできない療養所はどことどこであるか、成形手術ができないような国立療養所では意味がないのであります。これは患者が入るはずがありません。そういうような点も資料としてきちっと出してもらいたい。  いろいろ重症心身障害児の問題についても問題点がたくさんあるのでありますが、時間がないのでまことに残念でありますが、厚生大臣ぜひひとつ地元住民の希望である結核患者療養施設だけは閉鎖をしないという方針で、——現在のベットが余っているというのは、患者が減ったから余っているのではなくて、国の予算措置も減ってくる、あるいは施設が非常に貧弱である、そういうような点から患者が逃げているのであります。そういう点も十分ひとつ厚生大臣として今後再検討してもらいたいと思いますが、大臣の所見を伺ってやめたいと思います。
  200. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、結核対策は今後後退するようなことがあってはいけない、従前に引き続いて熱意を持って結核対策の推進をはかるべきだ、こういう考え方を持っております。したがって今後実態をよく調査把握をいたしまして、施策に誤りのないようにやってまいりたいと思います。
  201. 武藤山治

    武藤分科員 それでは主査、時間ですから終わります。
  202. 大橋武夫

    大橋主査 本会議散会後直ちに再開することとし、休憩いたします。    午後一時五十三分休憩      ————◇—————    午後四時六分開議
  203. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。倉成正君。
  204. 倉成正

    ○倉成分科員 私は、原爆被爆者の遺族の援護対策、離島の医療問題、高水準の水道料を支払っている都市に対する国の助成措置、この三つの点についてお伺いしたいと思います。  第一は、原爆被爆者に対するいろいろ援護措置につきましては、かねてから、厚生大臣はじめ非常に御熱心にこの問題に取り組んでいただきまして、数次の国会におきまして、その援護の措置について、だんだん具体的な広い範囲において措置されつつあることに深い敬意を表する次第であります。ところが、この原爆被災者の遺族の援護についてもいろいろ措置をしておられるわけでありますけれども、非常に盲点がございまして、そういう原爆被災者の遺族でありながら、いろいろな法令の関係、いろいろな手続の不備のために、の措置を受けていない人たちがまだ相当残されておるわけでございます。この問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  この問題の一つは、私が、昭和三十八年の第四十三国会のこの分科会におきまして、西村厚生大臣に対して質問をいたし、西村厚生大臣も、前向きで検討するということでございました。そこで、鈴木厚生大臣は初めてでございますから、ごく簡単に概要を申し上げますと、昭和二十年八月九日の午前十一時二分に長崎市に原子爆弾が投下されたわけでございますが、当時、長崎医大の学生四百六十七名が、八月九日に原爆中心地の医大付近におりまして若き命をなくした。しかし、これらの諸君につきましては、今日まで何らの援護の措置がとられていないという点でございます。そこで、これは援護局長からでけっこうでございますが、西村大臣に私が質問をいたし、前向きの検討をされた経過について、まずお伺いをしたいと思います。
  205. 実本博次

    ○実本政府委員 三十八年に、いま先生のお話のように、長崎医大の学生で原爆に被爆されました方々についての処置を検討するということで西村大臣が御答弁申し上げましたが、その後、援護局におきまして、こういうケースといたしまして、援護法の対象ということで処遇してまいりますためには、何らかの形におきまして総動員業務に協力中であったという事実が積極的に明らかになるということが前提でございますので、そういう総動員業務に協力中であったという事実について、文部省または地元長崎医大、さらには、長崎県当局等、関係方面とその調査究明に当たってまいったわけでございますが、いままでの間におきまして、そういった意味で学徒が旧国家総動員法第五条の規定によりますと総動員業務に協力したというような事実関係を裏づける資料が、いまのところ発見されませんで、まだその調査、究明を行なっておるところでございまして、現場の段階では、そういった意味での積極的な説明がつきかねているというふうな事態でございます。
  206. 倉成正

    ○倉成分科員 ただいまお答えがございましたけれども昭和二十年の八月と申しますと、ちょうど戦争の末期でございますので、市内の医者という医者はほとんど応召になっておったという状況でございまして、これらの諸君は、学生とは言いながら、医療関係のいろいろな仕事に従事しておったということは、推定しても間違いじゃないと思いますし、また、八月九日という日は、御案内のように、平時であれば当然夏休みの時期でございます。この時期に、五名、十名の諸君が、たまたま大学に出ておったということならわかるのでありますけれども、四百六十七名という、ほとんど全部の諸君が大学に出ていろいろな仕事に従事しておったということは、やはり自分の意思というよりも、何か国家的な要請に基づいてこういう境遇に置かれておったということが考えられるわけでありまして、国家総動員法云々という御趣旨はよくわかるのですけれども、何としても、そういう時期に、他の学徒動員と同様、あるいは医療仕事に、あるいは軍医としての修業に一生懸命携わられておった人たちが、全然顧みられることなくしているということは非常に残念に思うわけでございます。当時の大学の学長その他のいろいろな指示というようなもの、たとえば、勅令三百二十号によります戦時教育令等に基づいて学校長が生徒にいろいろな指示をする、休みだけれども出てこいというような場合には、援護法の対象として取り扱うわけにはいかないものか、この点ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  207. 実本博次

    ○実本政府委員 お話のように、戦時教育令に基づきます措置ということで、総動員業務の関係とつながらないかという観点からもいろいろ調査をし、究明いたしたわけでございますが、戦時教育令の第四条を見ますと、「戦局ノ推移ニ即應スル學校教育ノ運營ノ為特ニ必要アルトキハ文部大臣ハ其ノ定ムル所ニ依リ教科目及授業時数ニ付特例ヲ設ケ其ノ地學校教育ノ實施ニ關シ特別ノ措置ヲ為スコトヲ得」というような文面になっておりまして、もっぱら、教育の面におきます応急措置ということだけにとどまっておるようでございまして、総動員業務といったようなものについての関係が、ここである一定の措置をする権限を与えておるというふうに関係づけることがどうしてもできないことになっておるわけでございます。先ほど来先生がおっしゃっておられましたように、休みにわざわざ出てきて、教室でいわば授業を受けながら待機をしておられたというふうな実態でございますので、そういった待機をしている状態というものが、どこか総動員法系統からの指示が出ていないかどうかという点について、われわれ関係方面を調査し、究明しておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、いままでの段階におきましては、そういった意味での措置がなされておるというふうな資料が出てまいってない段階でございます。
  208. 倉成正

    ○倉成分科員 この医学部の学生というのは、私は、やはりこういう戦争末期においては特殊な環境に置かれている諸君だと思うわけです。これらの諸君の中には、一部は動員学徒として一時は動員されても、また軍医の不足であるとか、あるいは医者の不足ということから、どうしても戦時目的のために医者の修業をさせる必要があるということで、こういう八月九日というような時期にも、医学部において研修をし、あるいは待機をし、当時は、御案内のように、ほとんど連日のように空襲があった時代でありますから、そういう仕事に従事している、いわば国家総動員法に基づいていろいろやっておる諸君に、まさるとも劣らないだけの重要な役割りを果たしておったというふうに私ども考えるわけですけれども、そういった場合に、やはり非常に形式的な議論で、これが援護の措置から省かれるということになりますと、学徒の両親、これはすでに他界した人も相当ございますし、また、当時の長崎医大の学生諸君というのは、長崎だけではございませんで、全国から参っておりまして、この遺族の方も、いま全国に散らばっておるわけでございます。こういう人たちが、子供たちが犬、死にしたということで、どうしてもあきらめ切れないここ二十年来の悲願でございますので、何かいい方法はないものか、ひとつ、いま一度援護局長からお答えいただきたいと思います。
  209. 実本博次

    ○実本政府委員 これからまだ究明して調査してみようと思っておりますケースを申し上げたいと思いますが、たとえば、何か国家総動員法系統からの要請があったということで、そういう措置がとられてないかということを調査してみたいと思うのでございます。緊急の必要に応ずるための学徒の機動的配置をなすべき命令を地方長官が文部大臣にかわって発する、機動配置を命ずる総動員法系統の学徒勤労令でございますか、それによる命令を出す規定があるわけでございますが、そういったものが発せられてないかどうか、現在までのところ、まだそういったものについてのはっきりしたものが出てまいっておりませんし、その部面におきます調査はやっておりませんので、そういった点について、なお究明すべき余地があるということが考えられます。そこで、さらにそういった点を中心にしまして、地元の協力も得まして、引き続きその点の調査をしてまいりたい、かように考えております。
  210. 倉成正

    ○倉成分科員 いまの問題と関連して、原爆のため殉職した警防団員、こういう者の取り扱いはどういうことになりましょうか、この遺族ですね。
  211. 実本博次

    ○実本政府委員 警防団員の場合も、国家総動員法に基づきます総動員業務に協力したということでなくて、別の体系の防空法という法律がございまして、その法律の上での警防団令なり警防団の規則になっておりますので、やはり、この問題も、一応そういった意味での検討をいたす時期があったわけでございますが、総動員法系統の関係がないということで、これも対象にあげていないというような現状でございます。
  212. 倉成正

    ○倉成分科員 大臣にお尋ねしたいと思います。ただいまお聞きのとおりの状態でございます。そこで、どこかで線を引かなきゃいけない。その基準を国家総動員法に求めるという趣旨は、法治国家としていろいろ行政をやっていく上においての目安としてはよくわかるわけですけれども、実質的に、こういう医学部の学生諸君であるとか、あるいは空襲下においていろいろ警防事務にあずかった諸君、しかも、これも散発的な爆弾じゃなくて、原爆という特殊な爆弾によりまして全滅したという人たちの遺族、これに対する援護措置は、私は、何らかの方法で救ってやりたい。その数も非常に多いものじゃございませんし、また、医学部の学生諸君の例をあげますと、先ほども申し上げましたように、当時二十前後の学生の親でございますから、まあ、若くて四十四、五から五十越した人たちですよ、現在は七十かそれ以上でしょう。たくさんの人がなくたっておりまして、自分たち子供の死が、多少とも国に役立って死んだんだという気持ちですね。それで、いまの議論を進めていくと、年金をいただくとか、弔慰金とかいう問題に発展するわけでありますが、それ以上に、精神的なもの、せめて靖国神社にでも祭ってもらえないかというような非常な希望があったわけでございます。ところが、靖国神社については、政府としては関与すべきものではないけれでも、慣例として、援護法の対象になった人たちだけを祭るということでありますので、それもかなわない。いわば、みなし子みたいに、結局、気の毒だけれども、どうしようもないということで捨てられている。私も、ここ数年来この問題を取り上げて、非常に地域の問題で恐縮でありますけれども、私は、これは社会正義の問題として取り上げてきておるわけでございます。この問題は、歴代の大臣にまたがっておるわけでありますが、特に厚生行政に御熱心な鈴木大臣として、どういうふうに対処されるおつもりであるか、お尋ねいたします。
  213. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 倉成さんから、当時の模様を浮き彫りにずるような御説明がありましたが、まことに御同情にたえない意見だと存ずるわけであります。そこで、厚生省といたしましては、西村大臣当時、国会を通じてお約束を申した方向に向かいまして鋭意調査を進めておる段階であり、いまだに何とかこれを援護法の面で取り上げられるようにしたいという希望を捨てずに、援護局もせっかく努力をいたしておるところでございます。なお今後も、倉成先生は地元でもいらっしゃるのでありますから、御協力をいただきまして、さらに調査を進めてまいりたいと存じます。なお、その上で、また何らか別途の対策を講じなければならぬというようなことにつきましては、十分政府とそれぞれの機関との間でも御相談をいたしたい、こう存ずるわけであります。
  214. 倉成正

    ○倉成分科員 ただいま大臣から力強いお話がございましたので、この問題はこれでやめたいと思いますけれども、非常にレアケース、まれなケースでございますし、薬学部等につきましては、同じ学生諸君で援護法の対象になっている。医学部の場合には、どういうかげんか、そういうことになっている。広島にはちょうど医学部がございませんで、こういうケースがないわけでございますが、他との均衡、他の援護法の対象になっている人たち考えますと、非常に気の毒なケースだと思いますので、ひとつ、御答弁をぜひ前向きで実現できますようにお願いを申し上げておきたいと思います。  第二の問題は、自治省のほうでお急ぎのようでありますから、水道の問題についてお尋ね申し上げたいと思います。  全国の水の問題は、御承知のように、人間が生存するための基本的な欠くべからざる問題でございます。これも、普通のときはそれほど感じないのですが、東京都の水不足であるとか、異常渇水が起こる場合には、特にこの問題がクローズアップされてくる。そこで私は、やはりそういう非常の場合、異常渇水の場合を含めまして、現在の水がある程度十分供給されているということではなくして 五年ないし十年後 あるいはもっと長男のビジョンに立って水対策を考える必要があるのではなかろうか。また、不幸にして、非常に異常な渇水が起こるというような場合には、少し広域的に水の問題を解決していくことがやはり大切でなかろうか、こういう観点に立ってお尋ねを申し上げたいと思いますが、まず、お伺いしたいのは、全国の水道料金の平均、それから高いところ、低いところ、大体どういうことになっているか、お伺いしたいと思います。
  215. 舘林宣夫

    舘林政府委員 全国の水道料金の平均は、おおむね二百円あるいはそれをやや上回るかもしれませんが、推量で平均をすれば、その程度かと思います。高いものは千円、非常に安いものは六十円程度のものもございます。
  216. 倉成正

    ○倉成分科員 ただいま御説明がありましたように、水道料金について非常にアンバランスがある。非常に高い水道料金を払うところもあれば、安い料金を払うところもある。これは、やはりその地域によって、水は安いけれどもほかのものは高いとか、水は高いけれどもほかの条件が恵まれているとか、いろいろありましょうから、ある程度の幅は当然起こるのはやむを得ないといたしましても、水という人間生活にとって欠くべからざる要素であるものを、あまり大きな負担を地元住民にかけるということは適当でないと思うわけであります。そのために、これも長崎市の例を取り上げて恐縮ですが、昨年は三日に二、三時間の給水、自衛隊が出るというような大騒ぎをしたことがございます。また、東京都も非常な渇水が起こったときもございます。しかし、東京都というような大きな都市になりますと、住民も非常に騒ぎますし、また政府も、足元でありますから、かなり積極的にこの問題に取り組む姿勢を示し、解決が容易でありますけれども、地方の都市になりますと、水道の問題でそういうことが起こりましても、なかなかむずかしいわけであります。そういう際には、自治省にかけ込んで起債のワクをふやしてくれ、あるいは特別交付税を少しよけいにくれ、あるいは公営企業について起債がほしいというようなことでお茶を濁しているわけでありますけれども、将来の五年、十年先の見通し、また、不幸にして、渇水が起こるというようなことを考えますと、かなり膨大な資金が要る。そしてまた、そういうことを考えないで、その場限りでやっておりますと、全然こないかもしれませんけれども、またそういう不幸な事態が起こるかもしれない。そこで、こういう地域の責任者としては、何とかそういう五年、十年、あるいはそれ以上の長期を見通しての対策としてダムをつくるなり、遠いところから水を引っぱってくるとか、いろいろの対策を講じたいということを考えておるわけです。そういたしますと、べらぼうに高い水道料金を地元住民が負担しなければならないということで、これはとうていそういう負担能力にも耐えないし、また、公平の原則からいっても、これはまずいと思うわけでありますが、こういう非常に高率な水道料金を払わなければならないような都市の水道に対して、どういう対策をお持ちであるか、厚生大臣自治政務次官お見えでございますから、御両者からお伺いしたいと思います。
  217. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 水道料金を決定いたします場合には、能率的な経営、適正な原価計算に基づいて妥当な料金をきめる、こういうたてまえになっておりますことは御承知のとおりでございます。それが水源の関係だとか、いろんな条件で、先ほど環境衛生局長から御説明申し上げましたように、水道料金の面では各地方とも相当のアンバランス、格差があるわけでございます。私どもは、こういう非常に高い水道料金につきましては、今後増設とか改築とかいうような、設備をさらに広げてまいります場合には、ますますそういう傾向が各地に出てくるのじゃないか、こういうことが予想されますので、ある程度の財政的な援助をやはりする必要が出てくるのではないか、こういうことも考えております。また、東京、大阪等の大都市につきましては、行政区域にとらわれないで、広域的な観点で水道政策というものを立てる必要があるのではないか、こういうことで、ただいま公害審議会の水道部会でせっかく御研究を願っておりまして、その答申を待って適切な対策を講じたい、かように考えておりますが、御承知のように、昭和四十年におきましては、起債の償還年限を五カ年間延長をいたしました。これは、公営企業金融公庫の場合も同様、十八年を二十三年に償還期限を延長した。こういうことで、それぞれの市町村の財政負担をできるだけ緩和するように措置いたしたのでございます。さらに、四十一年度におきましては、その融資いたしますところの起債の金利を、七分三厘から七分に引き下げるというような、金利負担を転減する措置を講じようといたしておるのでございます。また、簡易水道につきましては、従来は一律四分の一の補助でございましたが、これを、市町村の財政事情によりましては、財政が特に苦しいという際には三分の一まで補助率をアップできるようにしよう、こういう対策を講じておるところでございます。
  218. 大西正男

    ○大西政府委員 お答えいたします。  いま、厚生大臣からお答えのございましたとおりでございまして、四十年度から、すでに償還年限については、水道に関しましては五カ年間それぞれ延長することに相なっております。また、四十一年度からは、七分三厘の利子を七分に引き下げるというふうなことを実施することに相なっておるのでございます。  なお、水道事業につきましては、自治省関係におきましては、公営企業のたてまえからいたしまして、昨年の十一月、地方公営企業制度調査会の答申がありましたことは御承知のとおりでございます。それによりますと、料金は原価主義によって決定をして、独立採算を堅持すべきものであるということになっておるのでございまして、自治省としましても、そのように考えておるわけでございます。  なお、調査会の答申の中にも指摘をされておるのでございますが、地理的な条件等によりまして、住民生活に著しい影響を及ぼすほどの高料金水準となるものがありますれば、例外的に、国によって何らかの措置を講ずる必要があるというふうな答申もあるわけでございまして、この答申に応じまして、具体策につきましては、今後、政府としても前向きに検討してまいりたい、かように自治省としては考えておる次第でございます。
  219. 倉成正

    ○倉成分科員 ただいま厚生大臣から、また、自治省の大西政府次官からお答えのように、起債の償還年限が延長されたとか、あるいは利子の引き下げ、七分三厘が七分になったとか、簡易水道の補助のアップの問題等、いろいろと御検討いただいて、まことにこれはけっこうだと思いますし、われわれも感謝しておりますけれども、しかし、非常に水が不足しておる地域については、この程度のものではどうしてもやっていけない。また、大西政務次官からは、ただいま地方公営企業の改善に関する答申を引用されましたけれども、この答申に基づいていろいろと自治省で案をつくられたはずです。しかし、大蔵省の反対にあって実現できなかったということですが、これはせっかく答申も出ておりますし、自治省としても、やろうという意欲があるならば、もっと勇気を持って、そうして前向きで、元気を出してやらなければ、なかなか検討するというようなことじゃだめだと思うのですね。そういう点を、ひとつぜひこれから進めていただきたいと思いますし、また、少しこまかいことになりますが、現在の制度の中でも、単に償還期限の延長ということではなくて、据え置き期間には利子は払わないでたな上げするとか、あるいは利子の引き下げ、七分三厘を七分にするとか、地方公営企業の改善に関する答申の中にもあるように、地理的条件等により住民生活に著しい影響を及ぼすほどの高料金水準となるような、そういう特殊な地域については、思い切ってもう少し利子を引き下げ、具体的には、利子補給という形になるかと思いますが、そういうことをする用意があるかどうか、これは厚生省の局長、それから自治省、両方からでけっこうですからお答えください。
  220. 舘林宣夫

    舘林政府委員 起債条件をよりよくする方向で従来努力してまいりまして、自治省、大蔵省の理解ある措置お願いしてきておりますが、今後とも、御趣旨に沿いまして努力してまいりたい、かように存じております。
  221. 大西正男

    ○大西政府委員 いま御指摘になりましたように、昨年の十一月、先ほど申し上げました調査会の答申が出ましてから、その直後に、自治省におきましては、地方公営企業の健全化対策というものを立案をいたしまして、そうして、その中にはたくさんございますが、全国平均の料金よりも異常に高いところ、たとえば、一・五倍から二倍に達するような水道事業につきましては、四十一年度以降発行分の企業債利子につきましてその二分の一の額、それから全国平均水準の二倍をこえますものにつきましては四分の三の額を、それぞれ国が補給するといったようなことを考えまして、予算編成の時期に、自治省といたしましてはその関係におきまして努力をいたしたのでございますが、倉成委員も御承知のように、遺憾ながらこれは実現しなかったわけであります。しかし、自治省は断念いたしておるわけではございませんので、今後とも、委員の方々の御激励を賜わりまして、大いに前向きにがんばりたい、かように存じておる次第でございます。
  222. 倉成正

    ○倉成分科員 ただいま自治省からの御答弁がございました。先ほど厚生大臣は、環境衛生の公庫では非常に前向きの力強い御発言がありましたが、この水道の問題について、ただいま自治省が考えているような案、これでも不十分と思いますけれども、少なくとも、ただいま御説明があった程度のことは実現できるように、ひとつ御推進いただきたいと思いますが、厚生大臣の御所見を伺いたいと思います。
  223. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点につきましては、私、先ほど私の考えを率直に申し述べたところでございまして、自治省とも協力いたしまして、御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。
  224. 倉成正

    ○倉成分科員 この問題はこの程度にいたしたいいと思ますが、いずれにいたしましても、水道の問題は、非常な渇水とか、特殊なことが起こらないと騒がない。そのときはやりましても、これは先行投資でありますから急に間に合わないということでございますので、全国全部というわけにはまいりませんけれども、少なくとも、問題のありそうな地域の水道問題については、ひとつ、ぜひ厚生省中心に御調査をいただきまして、そして地元も覚悟をきめ、また、国としてもそれに応分の援護の手を差し伸べてやる、こういうふうにひとつお願いを申し上げたいと思います。  次に、時間がございませんから簡単にお伺いしたいと思いますが、離島の医療対策についてでございます。  この問題につきましては、私ども全国の離島をいろいろ回りますと、いま一番大きな問題の一つは、やはり航路の問題と医療の問題で、行くところ行くところ医者に対する陳情を伺うわけであります。大橋主査の島根県も、隠岐島でやはりそういう問題に悩んでおられるわけであります。こういう離島には医者が行きたがらない。そこで、なおる病気がなかなかなおらないし、また、手当てが非常におくれるということになっておるわけでありますが、こういう離島についての医者を確保するためには、どういう具体的な策を厚生省としてお考えになっておるか。これは非常にむずかしい問題でございますし、なかなか国の力だけでできるとも考えませんけれども、これは住民の切なる希望がございますので、担当大臣としての御方針、具体的な対策、それをお伺いしたいと思います。
  225. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 離島におけるお医者さんの確保の問題、これは僻地におきましても同様の悩みがあるわけでございます。この離島及び僻地の医者の確保、医療の確保ということは、国民皆保険の医療制度のもとにおきましては、私は、きわめて重大な問題だと常日ごろ考えておりまして、就任早早、事務当局に、この離島及び僻地の医療機関の整備及び医療職員の確保ということにつきましていろいろ研究を命じて、努力をしてまいったのであります。しかし、これは倉成さんも御承知のように、いろいろな原因があるわけであります。待遇の問題だけでなしに、子供さん方の教育の問題でありますとか、あるいはまた、医学の中心である大学や何かから遠く離れた遠隔の地に長年おると、非常に学問の面でも、技術の面でもおくれをとるというような問題もございましょう。いろいろな悪条件が重なり合いまして、なかなかお医者さんの確保ができない、こういうことでございますので、それに対しましては研修、研究のための特別な手当を出すようにするとか、まだ、中心になる国立の病院等と十分結びつきをつけるようにするとか、あるいはさらに、巡回診療車であるとか、あるいは患者輸送車の増強、輸送船の整備であるとか、そういうような問題等もいろいろ手を打っていかなければならない、かように考えておるわけでございます。  なお、さらに具体的な問題につきましては、医務局長から御説明をいたさせます。
  226. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま大臣の申されました僻地対策の具体的なことを、項目だけを申し上げますと、従来から、僻地に診療所を設置する場合に、その設置費の補助並びに運営費の補助をいたしております。これを引き継ぎまして、四十一年度においても三十九カ所を設置したい。また、僻地におきまして診療所を設置することが困難であっても、近くの医師のいる部落に輸送することがきわめて合理的な場合がございますので、そういうために、僻地の市町村に対して、患者輸送車を来年度三十台補助をして整備させたい。また、特別非常に広大な地域を持つ僻地につきましては、巡回診療車、巡回診療船、雪のあるところでは巡回用雪上車あるいは歯科診療車というようなものを、補助金をもって整備させたい。また、そのほか、僻地の巡回診療をやってくれる施設がございますので、そういう人たちに対しても奨励的な補助金を出したい。そのようなことで、明年度におきましては、四十年度を二〇%ほど上回る二億一千六百万円の経費を計上いたしているわけでございます。
  227. 倉成正

    ○倉成分科員 時間もございませんから、ごく簡単にはしょって申し上げたいと思いますが、私は、医療問題は、あまりマクロの議論だけが非常に先行して、やはりミクロ——いま大臣がおっしゃったように離島である、僻地である、あるいは離島、僻地でなくても、地域的な特殊事情があるというふうに、ミクロの議論を進めていかなければ、ほんとうの医療行政はできないと思うわけであります。そのために、たとえば、国立病院などを中心にいろいろお話がございましたけれども、具体的な実例で申し上げたほうが大臣も御認識を改められるのじゃないかと思いますので、申し上げたいと思います。医務局長、対馬の鶏地に国立病院がございますね。ここのベットの数、それからお医者さんの数、それから医者の種類、どういう種類の医者がいるか、あるいは診療車の数、そういうのがおわかりでしたら、ひとつここでおっしゃってください。
  228. 若松栄一

    ○若松政府委員 鶏地にあります国立対馬病院は、一般ベッド五十床、結核ベッド五十七床、伝染病ベッド二十二床、計百二十九床を持っております。これが対馬全体では百七十八床のベッドがございますので、約三分の二近くがこの国立病院のベッドであるということになります。  医師は定員四名でございますが、現在のところ内科医と産婦人科医が定員としてありまして、二人は欠員でございます。外科医が欠員でございますので、この外科医を補充する意味で、福岡中央病院から若い外科医を定期的に交代で派遣いたしております。
  229. 倉成正

    ○倉成分科員 外科医の問題、ただいまお話がございましたけれども、案外、外科の外傷というのが非常に多いわけです。たとえば内科の疾患でありますれば、特殊な急病を除けば、若干の時間のズレがありましても助かる。しかし、交通事故であるとか、いろんな骨折であるとか、いろんな外科的な疾患というのは、これはほんとうに一刻を争うものでございますけれども、従来は厳原までお医者さんを迎えにいく、しかし、なかなかこれが来てくれないということで、非常な不安、不便を感じておった。また、そのためになかなか間に合わなかったという事例もあるわけですけれども、ただいまお話しのは、常時行きっきりで交代で行っているという意味でございますか、それはいつからですか。
  230. 若松栄一

    ○若松政府委員 現地の指導をしております九州地方医務局長が、昨年の秋ごろでございましたか、現地を視察いたしまして、現地の要望の切なることを聞きまして、それで福岡中央病院から、それ以来交代で派遣しておるということであります。交代というのは、大体一カ月交代でございます。
  231. 倉成正

    ○倉成分科員 非常にその点はけっこうでございますけれども、やはりどうしても外科、将来はやはり神経系の医者とかいうふうで、どうしても僻地、難局については医療水準が若干落ちるということはやむを得ないにしても、少なくとも国立病院の名を掲げて定員を確保している、それからベッドかなりあるというならば、医者の確保を何とかひとつしなければいけないし、また、それも交代ということもけっこうでやむを得ない措置かと思いますけれども、しかし、やはりそれに専任してその中に溶け込むような医者でないと、ほんとうの医療対策はできないのじゃなかろうか。かりにいまの医者を一名に数えるにしても、もう一名足らないというようなことでは、どうしてもこれは国立病院としてなかなかその機能を発揮することはできない。  そこで、私として提案がありますのは、ベトナムにも医療団を派遣するというような状態であるならば、少なくとも離島やこういう僻地については、国として積極的にいろいろな対策を講ずる必要がある。そのためには、何としてもこれに一番力がありますのは、やはり大学であろうかと思うわけでありまして、やはり特別に厚生省が大学の教室、そういうところに連絡をとられまして、できれば委託学生というような制度も一つの制度でありましょうし、あるいはそうでなくても、大学のそういう研究室に相当の助成金を出して、その中の篤志家、これは宗教的な意味もありましょうし、あるいはいろいろなキャンペーンをやっていけば、あるいは離島に行ってやろうという諸君も、多い中にはあると私は思うのです。そういうことを具体的に、ずっときめこまかく長い目でそういう対策を講じていかないと、急に、医者がないからおまえ済まぬけれども少し給料をよくするから離島に行け、僻地に行けと言っても、それは人間でありますから、大臣が御指摘のように、なかなかそう簡単にそういう難局、僻地に家族をかかえて行けるものではございません。そういういろいろな施策を、少し長期的なビジョンを描きながら、そういう離島、僻地の医療対策に取り組んでいただきたいと思うのですが、この点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  232. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のように、医者の確保、また、養成対策というものが非常におくれております。保健所等の医者の確保につきましては、奨学資金等の制度を設けまして、そうしてできるだけこれを、学生の時代から来ていただくように手を打っておるというようなこともやっておるわけでありますが、離島に対しては現在特別な手が打たれておりません。そのときそのときの実情に応じて、できるだけ近くの国立病院だとか、あるいは療養所だとか、あるいは大学のほうにお願いをして医者の確保をはかる、こういうようなことをやっておるわけであります。また手当につきましても、離島にはわずか八%程度の手当しかないというさびしい状況でございますので、今後は、先ほど申し上げましたような対策とあわせて、さらに医者の養成確保につきまして努力したいと思います。
  233. 倉成正

    ○倉成分科員 同僚の分科員がたくさん控えておられますので、これで質問は終わりたいと思いますが、いずれも、いま申し上げた三つの問題は非常にむずかしい問題でありますので、分科会ではいろいろ最終結論を出すとかいう問題ではないと思いますが、大臣が非常に御熱意のある御答弁でございましたので、ぜひこれが実を結ぶようにお願いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  234. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 次に、吉川兼光君。   〔竹内主査代理退席、主査着席〕
  235. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 同和問題に対しましてお伺いいたします。  従来、厚生省がとってまいりました同和問題に対する施策と、予算に関してまず御説明を伺いたい。
  236. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 同和対策につきましては、昭和二十八年度当時から、隣保館を設置いたしましたことを契機といたしまして、厚生省としては同和対策に力を入れるようにしてまいったのでありますが、特に昨年、審議会から答申がございました。そこで、厚生省といたしましては、その御趣旨に沿うように環境整備の問題、それから社会福祉の問題、そういう点に重点を置きましていろいろな施策を進めてまいっております。隣保館でありますとかあるいは共同浴場、共同作業場、あるいは共同炊事場、あるいはその他環境衛生に関する諸施設の整備、地区道路等の建設、そういうような環境を改善する、こういう面に努力をいたしますと同時に、生活保護の問題あるいは老人、児童の福祉施設の整備、あるいは授産場、保育所の整備、そういうような施設の整備に努力をいたしまして、そして地域住民の生活の向上安定に資するように努力をいたしておる次第でございます。
  237. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 この問題は、一般の想像に絶する深刻な問題であり、政府の重大施策でなければならないのですが、いま大臣お話の中にもありましたように、三十六年の十二月に同和対策審議会に対し総理大臣から諮問が発せられまして、昨年の八月十一日にようやく答申が出ておるわけであります。その答申のしまいのほうに、「結語」といたしまして解決への新方向が示されており、この問題を根本的に解決するについては、「具体案を強力かつすみやかに実施に移すことが国の責務である。」と述べ、さらに、「国の政治的課題としての同和対策を政策のなかに明確に位置づける」とか、「行政施策の目標を正しく方向づけることが必要である。」ということが書いてあるのであります。従来も関係の法規はあるわけでありますが、きわめて不徹底なものであり、また事実上同和地区に関する対策は、これらの一般施設のワク外に置かれているような傾向にありました。したがって、これを改善するためには、同和対策の大きな目標のもとに、関係制度の運用上に特別の配慮と特別の措置を規定する内容を持つところの特別措置法を制定することが答申の中にうたわれているわけです。これはまことに重大な指摘であると思うのでございますが、ただいまお話しのありましたいろいろの施設、それらにつきましても、この答申を契機といたしまして、私は画期的に拡大強化されねばならないものと考えるのであります。  この問題につきましては、二月十七日の予算委員会社会党の八木一男委員の質問に対し、佐藤総理大臣は長い時間をかけて答弁をしておりますが、その中で、いま時分にこういう事実があるということはまことに恥ずかしいとまで切言されておるのであります。厚生大臣は、二月二十三日の予算委員会の席上で、環境施設社会福祉、生活保護問題等に対し御答弁がなされており、厚生省としては真剣にこの問題と取り組み、長期的な年次計画を立てて計画的にこれが政策の実現を期している、大体そういうような意味のお答えをしておるのであります。  そこで伺いたいのは、この長期的な年次計画を立ててということでありますが、長期的とは大体何年くらいのおつもりであるのか、どのくらいの予算をお考えになっておるのか、それを年次的にどういうふうにやっていこうというのか、御成案ができておれば詳しく、できていなければ大体の構想でよろしいからお話しいただきたい。
  238. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この総合的な年次計画の策定、これは答申の結語で政府に勧告をされておる問題でございます。今後政府におきましては特別措置法の制定を考えて、いろいろ関係各省の間で、総理府を中心準備を進めておる段階でございまするし、内閣には、各省の局長クラスをもちまして、いろいろ具体的な計画を、いま各省の関係を持ち寄りまして検討を進めておる段階でございます。私は、同和対策はかつて十年計画をもって強力に推進しようとした経過がありますが、それからだいぶ年月を経ておりまして、まだ未解決の問題が残っておるというようなことは、先ごろ総理のお話がございましたように、日本としては非常に恥ずかしいような状況にあると思います。したがいまして、私は、長期年次計画といいましてもそう長い年月をかけるものでなしに、五カ年くらいの年次計画をもって早急に強力に推進をさるべきものだ、かように考えておるのでありますが、総合的な部落改善の計画でございますから、建設省、自治省あるいは農林省その他関係する各省庁も多うございますので、十分連絡をとりまして、そういう方向で促進をはかるように努力したいと考えております。
  239. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 内閣に同和対策協議会を設置するについては、総理府設置法の改正案として今国会に提案されておるようで、まだ決定はないようですが、早晩それができるでございましょう。私、いまお伺いしておりますのは、各省にまたがる重大問題でありますが、本日のところは厚生省所管に関してお伺いを申し上げておるのでございます。それは、環境の改善その他面接厚生省の主管に属することが、この問題の場合に相当なウエートがあると思うからであります。私は、大臣のただいまの五カ年くらいという御答弁はけっこうだと思います。まあ五カ年くらいの間に何とかこの問題が片づくような、少なくとも解決の方向に大またに進むことができるようなことをぜひやってもらいたいと思います。本日は私の持ち時間に制限がありますので、具体的なことをお伺いすることができないのは残念でありますが、いまの五年くらいという長期計画の見通し、この方針はぜひ大臣は堅持し、実行していただきたいことを繰り返し申し上げておきます。もしこれを十年、二十年というような長期に持っていったのでは、問題をいたずらに遷延させるにとどまるだけでなく、いわゆる竜頭蛇尾になるおそれなしといたしません。昭和十一年でしたか、十カ年計画というものを立てたことがありましたが、しまいにはとうとう立ち消えの状態になったという実例もありますので、いま佐藤総理大臣がたいへん乗り気になっておるこの時期において、厚生省の所管において鈴木大臣の強力な御推進を切望申し上げておきます。  次は、児童手当制度のことにつきましてお伺いしたいと思います。  この制度は、申し上げるまでもなく、諸外国では年金、医療保険と並んで社会保障の重要な柱となっておるわけでございます。わが国におきましても、三十九年でございましたか、たしか神田厚生大臣時代だったと思いますが、中央児童福祉審議会の児童手当部会というのが中間報告を行ない、厚生省昭和四十一年度実施の目標で問題の検討に踏み切りまして、四十年の四月には、児童手当制度準備室というものまで発足させたように私は記憶いたしております。ところが、その後、どういうわけなのか、この児童手当制度創設に対する熱がさめてしまって、ほとんど何らの前進を示していないことはどういうわけなのか、局長からでよいからお聞かせいただきたい。
  240. 加藤信太郎

    加藤説明員 お答えいたします。  児童手当制度の検討につきましては、引き続きまして極力進めておりますが、問題が非常にむずかしいのと、先生よく御承知のように、厚生行政の他の既存の制度の整備拡充の必要性並びに最近の国民経済の動向等の諸問題もございますので、これらを勘案し、なお基礎資料の不足の分を補充するように、明年度につきましても、御審議を願っております。予算で基礎調査を進めてまいりたい、そのような段階でございます。
  241. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 なるほど、いまの御答弁のように、児童手当を実施するにつきましては、いろいろな困難な問題が相当あることでしょう。これは私も認めるのであります。けれども、この問題は、母子福祉年金とか児童扶養手当のような、いわゆる母子世帯ないしは貧困世帯に対する救貧的な制度であってはならないことは言うまでもありません。したがって、国際的な社会保障のレベルとも見合ったところの児童手当制度というものを確立する必要がある、私はそういうふうに考えております。この点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  242. 加藤信太郎

    加藤説明員 先生のような御意見が、現在、世界の児童手当の中心を占めております。ただ、最近の情勢としまして、児童手当を世界各国で実施しております段階でいろいろな問題が出てまいりまして、各国の動きも各方面にわたっておりまして、私ども、実はその点もある程度見きわめをつけたいと思っていろいろ調査をしておりますが、はっきりと一つの方向になっておりません。
  243. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 先刻の御答弁にありました基礎調査費でございますが、本年度の予算面では七百十何万でしたか、そういうものしか計上されていないようでございますが、その程度予算をもってして、はたして希望どおりの調査ができるかどうか、私はこの予算を見て、問題は非常な後退のように思うのであります。その辺はいかがお考えですか。
  244. 加藤信太郎

    加藤説明員 先生御指摘のように、四十一年度で御審議をお願いしております調査そのものだけでは不十分でございますが、すでに三十七年度から、毎年単独調査または他の大きな調査と一緒にいたしまして、調査を続けてまいっております。なお、先生十分御承知のとおり、児童手当制度の創設につきましては、既存の各方面の調査資料も利用できますので、はたして四十一年度の調査だけで完了するかどうかという点につきましては、調査の結果を待たなければ何とも申し上げかねるのでありますけれども、ある程度の資料は得られるものと思っております。
  245. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 生活保護基準の問題でお伺いしたいと思いますが、生活保護制度は、何といいましても、わが国における社会保障の大きな柱であります。しかるに、最近のような不況と物価上昇が続いておりまする際には、私どもといたしましては、特に大きな関心を持つわけでございます。四十一年度の予算において、生活保護費は総額が千二百四十億円、前年度に比べまして百七十二億円増加しておるようであります。これは。一三・五%の引き上げになると思いますが、厚生省は、当初の予算要求におきましては、たしか一六%の引き上げを予定していたように思います。一体生活保護基準というのは、一六%引き上げるのが正しいのか、一三・五%の引き上げにとどまっている来年の予算案が正しいのか、大臣からお答え願いたい。
  246. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 生活保護費の引き上げの問題につきましては、私は、これが低所得階層、特に減税の思恵に浴さない階層、そして最近の物価動向等から考えまして、生活保護費の適正な改善をはかるということはきわめて大切な問題である、こう考えまして、大蔵大臣との折衝におきましても特にこの問題につきましては時間をかけて十分説明もし、話し合いを続けたのでございますが、吉川議員も御承知のように、一般の消費水準の向上と見合って生活保護費の引き上げというものは考えられるべき問題でございまして、経済企画庁の経済見通しによりますと、一般の生活水準は一〇・二%引き上げられることに相なっております。したがいまして、生活保護費を一三・五%引き上げるということは、ただに一般の水準に沿うものであるばかりでなしに、格差をできるだけ早く縮めようということで、こういうぐあいに一〇・二%の一般の生活水準に対して一三・五%ということにいたした次第でございます。それで、これは昭和三十六年当時、社会保障制度審議会で、昭和四十五年までに実質三倍に引き上げるようにという御答申があったのでございますが、昭和四十年度までに名目約二倍、実質で一・五二倍、こういうことになっておりまして、今回の一三・五%の引き上げでさらにそれが前進をいたしておる。私どもは、社会保障制度審議会の御答申の線に沿うて、大体四十五年度ころまでに目標に達するように改善を続けていきたい、かように考えておるわけであります。
  247. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 私は、一般の生活費の上昇が一〇・二%、それに対して一三・五%の引き上げだから、それだけ格差を縮めたと言ういまの大臣の御説明は、実は数字の魔術であると思います。そういうふうにしか解釈できない。というのは、一般国民と要生活保護者とではそもそも生活費のレベルが違うのであります。同じ生活費、同じ数字のパーセンテージであればわかりますが、非常に低いもののパーセンテージが、高いもののパーセンテージに比べて三%やそこら多いからといって、三%だけ格差が縮まったという解釈はどうかと思います。まあこういう議論をしていたのでは持ち時間がなくなりますから、これはこれくらいにして、私が伺いましたのは、最初の御要求は一六%であったのが、一三・五%に下がって大蔵省と話がついたようでありますが、大臣はどちらが正しいと思うかということをお伺いしたつもりでございます。もう一度その点だけを……。
  248. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは格差をできるだけ早く縮めよう、こういうねらいもございまして、一六%のアップということを考えたのでございますが、財政事情等も勘案いたしまして一三・五%、まあ格差を縮めるという方向ではやはり趣旨は貫かれておるわけでありますが、一挙に大幅な格差を縮めるということは財政事情からできなかった、こういうことでございます。
  249. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 この生活保護費の例年の予算の編成の経過を見て、私には納得のいかないものがあります。それは、生活保護基準というものが客観的にきまって、それから予算が組まれるというのが普通でなければならぬと思いますのに、事実はそうでなくして、予算の編成の結果、生活保護基準が決定してくるというようなことになっておりますのは、どうも本末転倒のように思いますが、この点、大臣はどのようにお考えになりますか。
  250. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように、生活保護基準をきめます場合には、いろいろな経済指標、データ等を整備いたしまして、そして決定をされるということでございます。経済企画庁その他のそういう関係資料が整備された段階に初めてこの生活保護基準がきめられる、こういうことでございまして、私どもとしてはなるたけ早くこれを決定したいと思うのでありますが、そういう事情からおくれておるのでございます。
  251. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 四十一年度の生活保護人員、これは百四十三万三千人となっておりまして、前年度に比べまして、八千人ほど減少して計上されておるようでございます。この最低生活の保障というものと予算というものの関係を、大臣はどういうふうにお考えになっておるかということを伺っておきたい。
  252. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 生活保護を受けておりまする世帯の数はあまり減っておりません。世帯の数は減っておりませんが、生活保護の適用を受けておる人数は、御指摘のように減っておるということでございますが、これは最近の雇用や経済情勢等がそういうような結果をもたらしておるのではないか、こう思うわけでございますので、決して私どもが、生活保護の対象人員を作為的に削減する等の指導はやっておりません。この運用は、社会保障の面からいってきわめて重要な、特に生活の困窮者を対象としておりますので、私どもは運用につきましても慎重に配慮をいたしておるつもりでございます。
  253. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 予算に左右されることはやむを得ない点もありましょうが、先刻私がお尋ねいたしました、最低生活の保障ということと予算というものを大臣はどういうふうに考えておるか、この関係について御所見のほどを伺っておきたいと思います。
  254. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 当初予算で、そういうことで予算を組んだわけでございますが、もしも実際に生活保護を受けなければならないような方がふえてきた、そして予算上不足を告げるという場合には、これは義務費でございますから、補正予算等で直ちに補正をいたしまして、そして予算面からそういう方々に対して扶助の手が抜かれるようなことがないように、十分私どもは手を尽くしてまいる考えでございます。
  255. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 そこで、大臣も御存じのように、要保護人口は年々減少をいたしております。ところが、最近の不況、物価高その他の面から考えまして、逆にこれらの人口はふえていると思いますが、予算面の生活保護を必要とする人口と実際の実態とは、かなり違うのではありますまいか。それらの点につきましても万遺漏なき調査をしてもらいたいということを申し上げまして、時間の関係もありますから、次の問題に移ります。  最後に、ガン対策につきまして、簡単にお伺いしたいと思います。  昭和三十九年の死亡者数は、厚生省の統計によりますと六十七万二千八百人でありますか、その中で悪性新生物、つまりガンによるものが十万何がしというので、死因の順位では第二位となっているようであります。死亡者六人に対しまして一人がガンで死亡しておるということになるわけでございますが、いまや社会的にも大きな問題となっています。四十一年度の予算獲得の騒ぎの際に、厚生省はガン対策費に二十億円計上したことを大いに宣伝されたようですが、それは前年に比べて七億円の増加にすぎません。当時の宣伝にかかわらず、中身はそれほどでないのであります。先般の社会労働委員会における厚生大臣の所信表明にも大きな項目に数えておったのでございますが、私は、七億円程度の増加で、鈴木厚生行政のキャッチフレーズとして御宣伝なさるほど、十分なガン対策が行なえるものであるかどうか、はなはだ疑わしく思うのでございます。その点について伺っておきたい。
  256. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のありましたように、ガンによる死亡率は第二位でございまして、しかも、三十四、五歳から五十四、五歳までの一番働き盛りの、社会の中堅の年齢層の方が年々十万人前後ガンのために倒れておるということは、これは国家的にも、また社会的にもきわめて重大な損失であり、重大な問題である、こう考えましてこの対策を急速に確立しなければならない、こう考えておるわけでございます。  そこで、このガン対策といたしましては、中央のがんセンターを中核といたしまして、国立、公立の専門の医療機関を体系的にこれを整備するということが第一でございます。  それから第二は、その専門の医療機関に働きます専門の医師あるいは専門の技術者の確保ということが大切な問題でございます。  第三は、やはり現在のところ、ガン対策といたしましては早期発見、早期治療ということが必要でございますので、集団検診をやります際にできるだけ診断料を安く軽減するようにしたい、これが第三でございます。それから第四は、ガンの根本的な研究、ガン制圧の研究を促進いたしますために、研究費の増額をはかる。  こういう線でガン対策を組んだわけでございますが、しかし、吉川さんも御承知のとおり、専門の医療機関を、かりに相当予算を計上してつくったにいたしましても、専門の医師や専門の技術者等を急に速成はできない。やはり年次計画でもって漸次これを整備していくほかはないと考えるのでございまして、そういうような意味合いから、昭和四十一年度を出発点といたしまして、今後五カ年計画もとにいま申し上げた対策を進めてまいりたい、こういうことでございます。
  257. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 昭和四十一年度を出発点として、これまた五カ年の年次計画で推進をするという御答弁は、私も了とするにやぶさかでありませんが、当面、毎年毎年ガンに倒れるおびただしい同胞を、できるだけ早急に救わなければならぬという至上命令があるのです。したがって、当面の対策というものに、まず政府の可能な全力を傾けなければならぬと思うのであります。いま医療機関についてのいろいろの御説明があり、これから私が問わんとするところを先に大臣がおっしゃった形になりましたが、たとえば中央におけるがんセンターを中心に体系的に云々ということがございましたが、体系的というだけでははなはだ抽象的でわかりかねるのですが、たとえば地方にもガンセンターをどこどこにつくるとかいったような本年度の御計画があるようでありますが、そういう具体的な面、さらに医師の研究等についても必要なことは大臣の答弁のとおりでありますが、これに対しましても、七億円の増加程度研究費も大幅に補うことができるかどうか。私はそのくらいの金ではどうにもしようがないのではないかという気がいたしておるのでございますが、大臣考えていられるところを具体的に、所要の予算の問題とあわせて御答弁いただきたい。
  258. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 具体的な計画、内容でございますので、政府委員から説明いたさせます。
  259. 若松栄一

    ○若松政府委員 具体的な計画のうち、たとえば医療機関の整備は、一番大きな年次計画の中核になると思います。これにつきましては、国立がんセンターを中核といたしまして、さらに地方の、たとえばブロック中心のセンターというようなものをつくり、さらに都道府県のセンターというようなものをつくり、さらに、都道府県のその地方を区分したところに基幹的な病院をつくるという計画でございまして、国立のがんセンターは、病院を持ちますと同時に研究所も持ち、また研修施設も持つということにいたしますし、ブロック別のセンターと称しますのは、診療部門、研究部門と同時にやはり専門の病棟を相当数持ち、かつ、できれば研修施設も専門の研修施設を持ちたい。また、都道府県のセンターにおきましては、少なくとも専門のベッドを持ち、専門の高度な医療機械を備える。ただし、これについては研究部門等はたいして必要としない。できれば研修を行ない得るような形をとりたい。さらに、都道府県のもう少し下部の施設につきましては、できるだけ専門のベッドと、ある程度高度な技術を持つというような計画準備をいたしておりまして、現在すでに、たとえば大阪の成人病センターあるいは愛知県のがんセンター、新潟県のガンセンターというようなものは、地方ブロック的なセンターにふさわしいものができております。また国立病院の中で呉病院は、そういう設備も従来から非常に専門の技術を持っておりますので、呉病院を中国地方のセンターとする、また国立松山病院は四国におけるセンターとして、これを計画、整備していくというようなぐあいに、現在着々ブロックのセンターまでは国の意思を十分に反映させながら整備をいたしております。  なお、研修計画その他につきましては、逐次人員を増加していくということでございます。  なお、研究費につきましては、本年度文部省が二億五千万円、私どもが二億円、合計四億五千万円という研究費でございまして、多々ますます弁ずることは申すまでもございませんが、従来の各種研究機関の研究費に比較いたしまして、飛躍的な増額であろうと思います。
  260. 吉川兼光

    吉川(兼)分科員 いま文部省が二億五千万とか言われたが、三億じゃなかったですか。まあ、他の省のことははっきり御答弁を聞かなくてもよいでしょう。わが国のガン治療についての医学の水準は相当高いものだといわれますが、大臣がたいへんガン対策に御熱心であることを多といたしますけれども、貧弱な予算をもらって、キャッチフレーズとなさることはいかがなものでしょう。本年はまあやむを得ないものがあるとして、ひとつ来年以後においてもっと大幅に予算を獲得して、いまや日本の民族病といわれるガン対策について完ぺきを期せられるよう切望するものであります。  では、これで終わります。
  261. 大橋武夫

  262. 八木一男

    八木(一)分科員 厚生大臣並びに政府委員に対して御質問を申し上げたいと思います。私は社会労働委員でございますから、所得保障とか、医療保障とか、医療制度とか、あるいはまた、公衆衛生関係については十分伺うことができる機会がございますので、この前の予算委員会の総括質問、一般質問に続いた同和問題並びにそれに関係する問題に限って御質問を申し上げたいと考えておるわけでございます。  まず第一に、厚生大臣に、この前の一般質問の続きでございますので、その点の問題をもう一回記憶をはっきりさせていただいて、それからひとつ御答弁を願いたいと思います。  一般質問におきましては、非常にこの重大な問題を解決するために本腰で急速に取り組まなければならない、そのためには既存の法令、あるいは規則、あるいは慣習、政治の面のそういうやり方を乗り越えたやり方で対処をしなければできないのであるから、そういう点で各大臣は国務大臣としても、また各行政庁の長官としても、そういう決心でやっていただきたいということを御質問申し上げたわけであります。それに対していろいろ前向きの御答弁がございました。前向きでございますが、表現の違いがございましたので、明確にしておかなければなりませんので、私は再度また三度その問題を申し上げまして、その私の御質問に全面的に賛成であり、そのとおりやられるお約束をなさるという意味で御答弁を願いたい。またその御答弁がなければ、それと同じように全面的に賛成をなさり、お約束をなさったとみなすから、もし違うお考えの方があったら御発言を願いたいということを申し上げたわけであります。そこで国務大臣から違ったお考え一つも御発表がありませんでしたので、その問題を確認していただいて先の質問を進めたわけでございます。そういう点で各国務大臣がそういう御意見でございました。特に厚生大臣が交渉になる大蔵大臣その他も同様の意見だという点を、ひとつ大臣から厚生省の各次官、局長、部長、課長、そういう方々に浸透させていただいて、政府全体がそういう姿勢だから、いままでのしきたりにとらわれることなく、この問題を解決するための具体的な政策を用意し、そのための予算要求を勇気を出して勇敢にするというような態度にしていただきたいと思うわけであります。それについて厚生大臣の総括的な前向きの御決心をひとつ伺っておきたいと思う。
  263. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 同和問題に対する私の考え方につきましては、先般予算委員会におきましてはっきりと申し上げた次第でございますが、憲法に保障されておる国民の自由、また基本的人権の尊重、それから生活の保障、そういうような観点に立ちまして、この同和対策とわれわれは真剣に取り組んでまいらなければならない。特に昨年八月に審議会から御答申がありましたその結語に提起されておりまするところの特別措置法の制定、さらには総合的な部落改善の長期的な年次計画の策定、そういうものを中心にして同和対策を強力に計画的に進めてまいりたい。特に厚生省関係の環境施設の改善、それから社会福祉の面、そういう面につきましては特に主管大臣といたしまして最善を尽くす考えでございます。
  264. 八木一男

    八木(一)分科員 前向きな御答弁をいただいてけっこうでございます。私がいま申し上げたこと全部を含んで御答弁をいただいたものというふうに理解をいたしたいと思います。もし違っておりましたら、この次の質問の機会におっしゃっていただきたいと思います。おっしゃっていただけなければ全部御理解いただいたということで進めたいと思います。  その次にちょっとこまかい問題に移りますが、同和問題の閣僚懇談会というものが昭和三十三年からたしか置かれているはずでございます。鈴木厚生大臣が就任されましてから、もちろん閣僚懇談会の一員でおられるわけでございますが、どのくらい開会をされて、どういう内容の御審議になったか、もしいますぐ覚えていらしたらひとつお知らせ願いたい。
  265. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私はこの閣僚懇談会の開催の回数等はちょっといま記憶がはっきりいたしておりませんが、この特別措置法の問題、それから同和対策推進連絡協議会の問題、こういう問題でお打ち合わせをいたしたのでございます。
  266. 八木一男

    八木(一)分科員 そうするとことしになってからでございますか、去年の暮れでございますか。
  267. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 去年の暮れだったと思います。
  268. 八木一男

    八木(一)分科員 済んだことをごちゃごちゃ申し上げてもあれでございますが、そこで推測しますと、違っておりましたらおっしゃっていただいたらけっこうだと思いますが、去年の八月十一日に答申が出てから、主要大臣である厚生大臣が御記憶がなければ、おそらくその間において暮れまでに開かれておらないのではないか、また開かれたとしても、ごく形式的な連絡で、それで御記憶がないくらいですから、内容がほとんど審議なしに終わってしまったのではないかと推測するわけでございますが、それについて……。
  269. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 閣僚懇談会には事務的にある程度整理をいたしました問題点をかけて、そして討議することになっておりますので、内閣の審議室のほうでは答申を受けましてから十数回にわたってこの問題の検討を進めておるということを承知いたしております。
  270. 八木一男

    八木(一)分科員 ことばの反面解釈だと、開かれておらないということだと思います。別に過去を追うわけではありませんが、いろいろ政府のほうでは、また各閣僚もお忙しいからそういう状態であろうと想像はいたしておりました。しかしやはりそれではこの問題に本格的に対処したことにならないと思うわけでございます。そこで私どもは、この閣僚懇談会というものが何か非常に基礎のしっかりしていない、ふわふわとした名称でございますから、また内容もそういうことになるのではないか。一つの提案でございますが、閣僚会議というようなものにして定期的に会合を持たなければならない、そしてこの問題全体について指導し、推進する、そのような強力な機関にしなければならないというふうに思うわけであります。いま総理府の設置法の中で同和対策協議会というものが提案をされております。それ自体も一つの前進であろうとは思いまするけれども、内閣総理大臣がお約束になりましたように、この問題全体を進める上において与野党ともの意見を受け入れて、そして前進をしたいというお約束をされました。私どもとしてはそういうことで積極的な提案をいたしたいと思うわけであります。これは内閣総理大臣にいたしたいわけでございますが、私ども総理府長官を通じていたしますけれども、やはりこの議会の場で、国会の審議の場でそれを申し上げることが具体的に一番権威のあることになろうと思います。そこでここで申し上げておきたいと思うわけでございますが、閣僚会議というものをしっかり置く、これは法制上の閣僚会議であって、開かなければいかぬ、そして議長なり事務局長に当たるような人をがっちりきめる。議長は総理大臣が一番望ましいし、事務局長は総理府の長官が望ましいけれども、閣僚には厚生大臣をはじめとして関係の深い官庁の大臣が全部そこに並ばれる。それが上に一つありまして、その下部機構でありますが、実質的な機構として次官なり局長なり関係の人でずっと横に推進会議というようなものをつくる。推進協議会とか推進懇談会とか、そういうあいまいもことしたものではなくて、推進会議という法制に基づいたものをつくる。その縦のつながりはどうかというと、上の閣僚会議の事務局長、国務大臣である総理府の長官のその下に内局長を置いた形にして、その内局長が今度推進会議の座長なりそういうものになって取りまとめる。推進会議のほうは具体的な総合政策を立案し、これを閣僚会戦にはかる。閣僚会議はこれを決定して、推進会議が総括的な具体的な指導推進に当たるというよりな機構をつくったほうがいいと思うわけであります。その中心のものとして総理府の中に内局を置く必要がある。いまのように審議会の中で一部門として取り扱っておっては、ほかのいろいろの問題とごちゃごちゃになって進まないし、事務局員もそれだけ手が省かれますから、このような何百年の問題をこれから一挙に、少なくとも五年ぐらいで片づけよう、解決をしようという体制にはならないと思う。ですから、そういう内局を置いてそういうかなめにする必要があろうと思うわけであります。これはむしろ総理府の長官に御質問を申し上げるのが妥当であると思いますが、一般質問の中で申し上げておきました。いままで同和問題について厚生省が実際的に一番具体的に推進を早くからされ、強力にされ、そして具体的な実際的な指導的な立場に厚生省が、あるいは社会局があるいは生活課がなっておられます。ですから、その機能その能力その熱意を生かしていただいて、閣議の中で閣僚会議をつくる、あるいは推進会議をつくるということについて強力に御推進をいただきたいと思います。もちろん総理大臣にも、それから総務長官にも申し上げ、その方々が御推進になるようにしたいと思いますが、そういう点についてぜひお考えをいただきたいと思うわけであります。新しい機構については、この間一般質問で申し上げましたように、臨時行政調査会のこの答申は、この同和問題のようなものは積極的に機構を整備しなければいかぬということを答申をしておるわけでございますから、そういう点で妨げにはならないわけであります。どうか基本法をつくられるときに、基本法の中にどういうものが盛られるかはこれからの問題でありますが、私どもとしては基本法にはこのほんとうの意義、背景を書く。全国民的な問題である、国の責任においてしなければならない、地方自治体もその義務があるということを前文及び基本条文に書いて、それと同時に、その機構の問題をそこに明記をして、それから具体的な政策を全部、考えられるすべての政策のもとをこの法律に書くということが、同和対策基本法であろうと、あるいは同和対策特別措置法であろうと、どっちにしても必要であろうと思うわけであります。そういう点について、ぜひ、いままで具体的な推進の任務に当たってこられた厚生大臣はじめ厚生省方々がひとつ内部で強力に推進をしていただきたいと思うわけであります。その点について厚生大臣の前向きの御決意をひとつ伺っておきたいと思います。
  271. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 同和対策の、今後強力に推進をいたしますための機構なりあるいは体制の整備、この問題は総合調整に当たります総務長官が御所管になり、また内閣全体としては内閣官房長官等が関係閣僚と協議をされて結論を出さるべきだ、こう考えますが、国務大臣の一人として、また同和対策の重要な仕事を担当しております私といたしましても、御趣旨に沿うように最善の努力をいたしたいと思います。
  272. 八木一男

    八木(一)分科員 前向きな御決意で非常にありがたく思います。特に大臣からもおっしゃっていただきたいと思います。ここで聞いておられますので。社会局長なり生活課長が、実際の具体的な草案を練られるときに、総理府関係の審議室長その他に対して、いままで経験をされて一番有力な助言を与え得る立場にあるわけでありますから、そういう点で、社会局長なり生活課長が強力に確信を持って進められるようにぜひ厚生大臣からそういう御指令をひとつ願いたいと思うわけであります。  その次に、具体的なものに入る前に一つ申し上げておきたいと思いますが、先ほど私、民社党の吉川委員の御質問をほかの用務がございましたので伺っておりませんでした。同僚から伺いますと、少しこの同和対策の完成する目標の年限に触れられた。そして御答弁になったというふうに伺っております。その御答弁は間接的に伺えば満足する御答弁だったと思いますけれども、もう一回はっきり伺っておかなきゃなりませんが、いま長期計画ということばを言われた。この長期計画ということばは、同和対策審議会の答申は非常によい答申ですが、九十点くらいですが、やや十点くらいの減点がある。その中の減点の大きな一つであります長期計画というのは、いまの世の中のはやりことばになり、これを言わないとハイカラじゃないというようなことで、何かこのことばを使うくせがある。ところがこれはほんとうは総合計画であって、年次計画である、長期というものはあまりよくないことばなんだ。必要なものをゆっくりやるということばにも逆に解釈するとなるわけであります。ですから、これは永続的にずっとやらなければならないものについては長期計画というものはいいですが、至急解決しなければならない問題には不当なことばなんです。私はこの中で、先ほど厚生大臣吉川委員に対して、いま必要だと思われる問題については五カ年間でこれを完成する決意を持って当たると言われたと伺いました。それをひとつ再確認をしておきたいと思います。これは内閣総理大臣に私が質問しましたときに、とにかく長期であってはこれはかえって問題の解決の逆な方向になる。差別を増すことになる。総合計画、年次計画にその九割九分の重点が入っているので、このような環境に惑わされてはならない、いま考えられる方策をすべて猛烈に推進をして、五年以内に完全にこれを完了する。ただ同対審の答申にも、これは完全でない部分にうたっておるように、それから後に気がついた有効な方法、あるいは一生懸命やったけれども少し残ったというような問題について、残りの五年間でこれを補完し完成するというような意味で、前期五カ年でほとんど完成するというような方向で研究をいただかなければならないと思うわけであります。その点について、おそらく厚生大臣は同じ意見だと思いますけれども、もう一回はっきりと確認をしておきたいと思います。
  273. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 同和対策につきましては、昭和十一年でございましたか、当時十カ年計画でこれを進めようという大きな強力な計画があったのでございます。しかしそれが戦争その他の事情で中断をいたしまして今日に至っておる経過から考えまして、これ以上遷延を許さないものだと私は考えておるのでありまして、したがいまして、今度の総合的な年次計画は少なくとも五年ぐらいでこれを完了するぐらいの決意で臨むべきだ、私はそう考えております。
  274. 八木一男

    八木(一)分科員 たいへんけっこうでございます。ぜひひとつその点を閣議の中、すべての中で貫いていただきたいと思います。一番厚生省がその点で実績があり権威を持っておられるわけでありますから、ほかで、もしかりに無理解な人が出たときには完全にそれを説得をし、そうしてその方針を貫いていただきたいというふうに思います。  それではやや具体的なものに触れたいと思います。実はこれは自治省から出た資料でございます。当然御承知のものでございますが、昭和三十年度と昭和四十年度の各地方における同和対策事業をやった実績が出ているわけであります。そこで、三十九年度においては府県の合計で——これは残念ながら府県だけしか出ておりません。市町村はまだ自治省で統計ができていないらしいですが府県のやった分は十七億の事業であります。それからその中で府県負担が十二億であります。それからもう一つは、四十年度は合計二十億であります。府県負担が十二億六千万円、明らかに非常に地方負担が多いわけであります。地方財政が一般的に逼迫しているときにこういうことでございますと、よほどしっかりした手当てをしないと実際に同和対策がとまってしまう。うっかりすると逆行するというおそれがございます。そこで問題は、もちろん自治省のほうの交付税交付金の問題もございますけれども、直接にこの超過負担が多い点は補助金の関係になるわけであります。補助金の関係でこの前大蔵大臣に御質問を申し上げまして、補助金の補助対象はこれを拡大をしなければならない。拡大の方向は二つあります。たとえば厚生省のやっておられる共同浴場に対する補助、まあいまたくさんやっております。新しくいまやっておいでになりますが、ここで仮定をして、新しく火葬場をつくり、ごみ焼却場をつくるというようなものをつけ加える、こういう意味の拡大もございますし、また共同浴場をつくるときにその建物費の補助だけではいけない、土地の購入費あるいは整地費あるいはその前に建物があったら移転費、そういうものを入れなければ実際にものが動きません。そういう問題が一つ、補助対象を拡大するということ、補助率を増大するという問題、それから実質単価をとるという問題があります。それについては大蔵大臣に御質問を申し上げました。厚生大臣御承知のとおり、この全体について大蔵大臣は賛成をされました。各省から具体的な要求が出れば、その精神に従ってそれを善処したいということを、重ねて私がしつこく何回も明確にしましたところ、そうお答えになったわけであります。したがって、ほんとうに各省から同和対策に対する予算要求が出たときには、大蔵大臣のあの考え方では全部これが通るということになる。そこでしっかりひとつ元気を出してやっていただきたいと思うわけです。昨年まで厚生省がいろいろやられましたものにつきまして、補助率の問題については三分の二の部分と二分の一の部分がございます。実質単価と予算単価の差を入れますと、これははるかに低率になるわけでございますが、その問題はさておいて、三分の二、二分の一というようなものでは、これはほんとうに問題にならないわけであります。一般に国の補助金とそれから地方行政団体の負担と、それについての一般的なバランスがございますけれども、しかし、この同和問題は、同和地区が集中している府県、市町村が多いわけです。したがって、国でどのくらい負担して、府県でどのくらい負担して、市町村がどのくらい負担するとか、一般的な行政のバランスが普通考えられがちでありますけれども、ないところには一つもありません。北海道には一つもない、青森もほとんどないわけです。ないところには一つもないけれども、市町村でも府県の場合でも、あるところには集中してあるわけです。ですから、こういうものが二分の一、三分の一であってはならないわけです。しかもこういうことによってしばしば起こる市町村負担あるいは大字負担、そういうものが絶対にできない状態にあるわけであります。したがって、ほんとうの意味でいえば、これは十割負担をしてもいいわけです。十割負担をしなければ推進をしません。ところが、十割負担するということになれば、しなくてもいいところまで金だけ取ればいいということで市町村がするかもしれないというおそれがあろうかと思います。私の考え方で極端にいえば、九割九分負担して一分だけ地方負担にしてもいいというふうに思います。が、それもいまの行政のベースから見れば、非常に飛躍的なことというふうにお考えになると思う。しかし、そのくらいの勢いでやらなければいけないので、三分の二、二分の一の国庫補助率はこの問題を推進するためには問題にならない低率の補助率ということなる。その点で少なくとも補助率を九割以上というようなものに縛らなければいけない。そのために、たとえばその基本法なりあるいはまた特別措置法には同和対策に対する国の補助を九割以上でなければならないというような書き方をして、一々交渉しなくてもずばり入るいうような体制をつくらなければならないと思いますし、そうして厚生省としては、九割以上と書いたら九割でいいということでなしに、九割五分、九割九分とるというような勢いでやっていただかなければならないと思うわけであります。まず補助対象の問題と補助率の問題について、私としての考えておる意見を申し上げたわけでございますが、それに対する厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  275. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  いま先生のおっしゃいました補助対象の拡大、補助率の引き上げ、それから補助単価のアップ、三点でございますが、実は明年度予算につきましては、いま補助単価は相当大幅なものを上げてもらうように交渉しております。たとえば例を申し上げますと、共同作業場なんかはブロック四万七千というのを六万二千、約二二・九%くらいの引き上げ、それから隣保館につきましても、鉄筋はいままで認めておらなかったものを八万八千円、新規に認めるとか、そういうふうに相当大幅な引き上げというものを認めてもらっております。  それから補助率の問題は、いま先生がおっしゃいましたように、各省とも横の関連がございますが、特別措置法の問題は九割を書けというようなお話がございましたが、その辺は三分の二、あるいは四分の三、八割、九割、いろいろな議論がありまして、これは各個ばらばらでは困る、根本的なそういう法制を特に議論すべきではなかろうかというので、予算のワクはふやしますけれども、補助率の問題は基本の問題であるから、そういう措置法の検討の中で考えていくべきじゃないかということで、補助率そのものは従来どおりで据え置きになったわけであります。  それから補助の対象の問題は、先生よく御存じでありますが、隣保館以下いろいろ入れますと十何種類もあるわけです。それ以外のものに考えつきません。むしろ隣保館なり共同作業場なりそういうようなものを集中的に、まだ足らない地区がたくさんありますから、つくっていったらどうかというので、問題は予算のワクがほしいのであります。  それから用地買収、移転補償費というような問題でありますが、用地買収は一平米五百円というのが入っております。それから移転補償費の問題は、これはまだ未決定でございますが、総額が一億五千万ほどふえておりますので、その中でこれから検討していっていただきたい、こういうような気持ちでございます。
  276. 八木一男

    八木(一)分科員 非常に大事なことでございますので、この補助率の問題は一括してやりたい、各官庁の連絡会議で一応そういう話し合いになったと思うのです。そういうことで来年にずらされたということで非常に問題だろうと思いますが、とにかく特別措置法ではこの率を高率に書こうということで、各省、総理府を中心として考えておられると思う。ところが、新聞報道によれば、特別措置法は非常に書きにくいから、基本法を一応つくって、それから特別措置法はあと回しになるようなニュアンスの書き方がある。どちらか存じません。この問題は総理大臣にも各大臣にも、その後にもその前にも、野党の意見をいれて考えるようにと言っていただいておりますから、これから意見を出してどんどんやっていきたいと思いますが、少なくとも基本法であっても特別措置法であっても、その中に補助率の一般的規定、補助率は九割以上でなければならないというような規定はどうしても入れなければ問題は進まないと思うわけです。そういう点についてどういう状態にあるかということと、もう一つは、厚生省としてはどうしてもこれをやっていく決心がなければいけないと思いますが、あるのかどうか、大臣でも局長でもどちらでもけっこうです。
  277. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  先生のおっしゃいます九割も、これは四分の三補助というのもあれば、三分の二補助というのもあれば、いろいろな種類があります。おっしゃる御趣旨はわかりますが、これは厚生省だけの問題でなしに、全部ひっくるめまして、九割が妥当かどうかということは、私も確信がない。ただ問題は、実際に建てられます隣保館は全国で二百三十八くらいできるわけですが、非常に貧困な市町村が多い。そういう実態から見ますならば、大体社会福祉事業は国が二分の一、県が四分の一持ちますから、そういうふうなところから見れば高くなければならぬのではないかというふうには考えます。考えますが、九割と言えるかどうか、その辺はもう少し各省のいろいろな補助金の関連もあるだろうと思いますので、いましばらく検討させていただきたいと考えます。
  278. 八木一男

    八木(一)分科員 その率を書くように推進されているのかどうかということと、それからそれを推進する気持ちは厚生省としてなければいけないと思うが、あるかどうかということ。
  279. 今村譲

    ○今村政府委員 第一点の、法律が特別措置法あいるは基本法になるかどうか、あるいはどの程度の範囲のものを書き込むかということにつきましては、まだ内閣審議室のほうで集まってそこまでの具体的な検討段階にはきておらないわけです。したがって、われわれが主張いたしましても、総理府の内部でいろいろ議論がこれからあるということじゃないかと思いますので、いまのところは私どものほうとしてはちょっと確信が持てないのであります。
  280. 八木一男

    八木(一)分科員 大臣にお尋ねします。  いまのような経過です。ですから、先ほどの精神に従って、それを基本法であろうと特別措置法であろうと、その率について明記しなければいけない。書き方は法律技術的に幾つもあります。たとえば九割以上という書き方があって、その中でまだやり方であるものは九割二分にする、あるいは九割五分にする、あるいは九割八分にするということだってできるわけです。ですから、そういうような率について明記をしなければ問題が進まない。それについて厚生省が実際的な推進力として熱心に主張をし、その問題を完成するようにしていただかなければならない。それについて率の問題も——数の問題はいますくにおっしゃらなくてもけっこうですが、率を高率にすることについて明記をする、それを法律にうたう、このことについて厚生省はまっしぐらに推進をするという決意を、ひとつ厚生大臣から伺っておきたい。
  281. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この同和対策のいろんな事業は、それぞれ関連もございますし、各省でできるだけ歩調を合わせるようにしてこの計画を推進したほうがよろしい、私はこう考えておるわけであります。したがって、補助率等につきましても、十分各省で話し合いをし、意思の統一をはかって、そして政府全体として方針をきめたほうがよろしい、こう考えておるわけでありますが、できるだけ御趣旨に沿うように厚生省としては努力をしたいと思います。
  282. 八木一男

    八木(一)分科員 もう一つ、先ほどの御答弁の中で実質単価の問題がございます。御努力によって、また大蔵省もある程度理解されてそういうふうになったのはいいのですが、それでもやはり予算単価であります。実質単価ではない。そうすると、やはり物価が安定して、下落をしてくればいいですが、そういう意味で、残念ながら、いまの政府にこの数年間で物価が下落基調になるという自信はなさそうであります。五・五%くらいでとどまるであろうという希望的観測をしておられるだけでありますから、この五年間は上がる一方であります。そうなれば、ほんとうの実質単価にしないと、この問題がブレーキがかかる。ですから、予算単価を実質単価に近づけるということだけではなしに、この問題については実質単価にしなければならない。したがって、予算単価を実質単価に推定して同じものをやってみて、やってみたあとで足が出たら、あとで埋め合わせる。ほんとうの実質単価にするというようなことがすべての政策に必要でございますけれども、ことにこの同和対策については、それをしないと問題がとどまるという意味で、そういうりっぱな、政治の一つの突破口、糸口としてでも、またそういう間接的な意味ではなしに、この問題を解決するためのほんとうの処置が一番中心課題でございますが、そういう意味で、実質単価を法律的にこれを推進しなければならない。行政的な努力としてはどうしてもおくれます。どうしても値切られる。そういう点について強力に推進していただかなければならないと思う。これは厚生大臣から、ひとつその強力に推進される御決意を伺っておきたいと思います。
  283. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 補助率の問題につきましては、私は特別に同和対策の際には配慮すべきだ、かように考えておりますが、単価の場合におきましては、これは公共事業なりいろんな施設の整備費なり、全般にこの単価の問題は及ぶ問題ではなかろうか、かように考えておるわけでありますが、もとより予算単価と実質単価が離れておっては不合理であるということでございますから、全体としてその単価が適正になりますように努力いたしたいと思います。
  284. 八木一男

    八木(一)分科員 厚生大臣、お名前に示されるように非常に善意で、国民の幸いを進めるつもりでやっていられる善意はわかるのですが、いまの御答弁の点では、これは非常に不十分だと思う。さっきの、同和対策を推進する意味において、厚生省関係なり、建設省関係なり、農林省関係、これを合わせるという考え方自体に不十分な点があります。農業なら、自立農業でそれを援助する場合と、実際にそうじゃない人の施設をつくる場合と、少しニュアンスが違いますから、それもまとめてという考え方も少し不十分だと思いますが、ともかく同和対策の中で各省がまとめてという考え方でございますから、これは全面的に、一〇〇%いかぬとは思いませんが、不十分だと思います。ところが、いまの単価の問題で、一般公共事業と同じように考えられたら、これは問題は進みません。全部を変えられるなら、政府が全部実質単価をとられるなら、それは大英断です。それをこの時点において、いま即刻、ことしなり来年やられるということで解決されるなら、それでよろしい。ところが、この問題については、なかなか政府部内でできない要素も多いから、厚生大臣も非常に警戒をして答えておられる。それで、この間大蔵大臣に質問したときも、対象の問題と率の問題と単価の問題をさんざん申し上げて、大蔵大臣も、そういう精神に従って各省の要求があったら入れますという答弁をしておられる。そこで、代表として鈴木さんにお伺いをした。そうしたら、率の問題と対象の問題をお答えになって、単価の問題を残されたわけです。それで、私は最後に質問をしたわけです。質問をして、特に実質単価の問題を入れてその問題を明らかにしていただきたいと言って、鈴木善幸厚生大臣は、全部御質問の御趣旨に従って努力しますということで、私は善意に解釈をして、これは完全に入ったと思って答弁を聞いておった。ところが、いま御質問を申し上げても、実質単価の問題については、予算単価を実質単価に近づける努力をするという御答弁だけで、一般のものと並列して考えるという考え方をとっておられる。それは、この問題にブレーキをかける大きな障害になる。非常に貧困な人が多くて、貧困な大臣が多くて、貧困な府県、貧困な市町村が多い。そこで、実質単価と予算単価と違う点が、補助率より以上に地方財政を苦しめるわけです。この問題で、ほんとうに問題は進行しないわけです。ところが、これは五年間に推進をしなければならない。厚生大臣がお約束をしたとおり、五年以内に全部の公共事業の単価を実質単価にする。五カ年以内——来年からするという自信があるならその答弁でもいいけれども大臣が警戒してお答えになっておるようないまの政府の姿勢では、五年で実質単価になる、二年内でなる、来年になるというようなことはむずかしい状態だと思う。そうすると、この問題は五年で推進しなければならぬから、その問題がブレーキになる。とすれば、同和問題に関する限り、予算単価ではなく実質単価で進めるということにしなければ、厚生大臣善意でありながら、その考え方によって同和問題の解決にブレーキをかけるということになります。その考え方は払拭して、憲法の各条章を実現するために、困難であろうと、それを乗り越えてやる。それで、この間申し上げたのです。あらゆる法令や規則や慣習を乗り越えてやる決心でやってもらいたい。それについて厚生大臣も約束をされたわけです。ですから、ほかの問題もそういうような実質単価をとっていないからむずかしかろうというような考え方の答弁であってはならない。特に実施官庁として、一番実際的な推進官庁の責任大臣がそういう考え方では、問題にブレーキをかける。憲法の問題を解決するブレーキになる。鈴木さんはそういう考え方ではないと思う。ですから、いま言った御答弁はこれを変えられて、実質単価になるように政治生命をかけて努力をするというような前向きの御答弁をぜひお願いをしたいと思いますし、その御答弁がもし不十分であれば、憲法の条章で、厚生大臣の憲法九十九条の責任について追及をしてまいらなければならないと思う。どうかひとつ前向きの御答弁を願いたいと思う。
  285. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御趣旨に沿うように努力いたします。
  286. 八木一男

    八木(一)分科員 どうもありがとうございました。  たいへん大きな声で失礼を申し上げました。どうかひとつ厚生大臣はじめ各省の方々が前向きに前進をされるようにお願いいたしまして、質問を終わります。
  287. 大橋武夫

  288. 栗原俊夫

    栗原分科員 本日午前中、同僚の山花氏が質問をされたようでありますが、私も時間の制約がありますので、ハンセン氏病に関連した問題に限って御質問をいたしたいと思います。  まず第一にお尋ねいたしますが、ハンセン氏病についても、薬や療法の進歩によって、不治の病いといわれたものが非常に診療の効果があって、健全体に返る、全快する、こういう姿の中から社会復帰というような問題も出ておるようでありますが、ここ数年来のハンセン氏病患者の中で、全快になっておる状況はどんな状況になっておるか、まずお尋ねをいたします。
  289. 若松栄一

    ○若松政府委員 全快になっている状況ということはなかなかむずかしいことでございまして、かりに、軽快して療養所を退所する人間ということでございますと、これはきわめて明瞭でございまして、三十七年度に百三十四名、三十八年度に百二十五名、三十九年度に百十九名というぐあいに、らい患者は若干減少しておりますが、しかし療養所内におきまして、事実上非常に軽快をして、労働能力、生活能力等が一般人にほとんど近く回復している者もまだ多数ございます。
  290. 栗原俊夫

    栗原分科員 実はそこが問題点なんです。医者の立場から見て、いつでも退所できるという状況になっておる、具体的には退所はできないけれども、いつでも退所できる状況になっておる、これは私は全快患者だと思うのですが、それを全快患者と言うと厚生省のほうでもちょっとぐあいが悪い事情もあるのではないか、こう思うのですが、社会復帰の問題というのは、全快になって社会復帰ができる、全快者は社会復帰できるのだ、こういうぐあいに実は私は考えたいのだが、社会復帰とは退所のことだ、こういう形に取り扱っておるように思えるのですが、この辺はどうですか。非常に微妙なところなんですが、退所した者が社会復帰なんだ、病人でなくなった者は社会復帰したんだ、たまたまその他の条件で直ちに退所できない条件があるかもわからぬけれども、健全体として、強制隔離をしておく必要のないからだになった者は社会復帰したからだである、こう考えたいのだけれども、この辺を大臣ひとつ。
  291. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 きわめて専門的な問題でございますが、厚生省としては、退所した者、退所できる者を社会復帰、こういうぐあいに見ております。
  292. 栗原俊夫

    栗原分科員 それではお伺いしますが、本人が退所しようと主張すれば退所できる健康の状況である、こういう人がその他の条件でにわかに退所できない、経済上の問題、生活上の問題等で、退所はしたいのだけれども、そして健康上は退所できる状況にあるのだけれども、具体的には退所できない、こういう状況にある人はおりませんか。
  293. 若松栄一

    ○若松政府委員 医学的に見まして、らいという疾患、それ自体は非常によくなおっておる、しかしなかなか退所したがらないという患者がいることは事実でございます。その中には、らいという疾患そのものはなおっておりましても、事実上、この身体障害かなり残っておる。この身体障害はらいの後遺症でございまして、らいそのものではないわけでございます。そういうことで、後遺症が非常に著しいために、機能的に社会復帰がむずかしい者と、また肉体的な機能はそれほどひどくなくても、醜形を残しているために外へ出たがらないという者と、もう一つは、長い間療養所生活になれてしまって、社会に出て独立していくだけの危険をおかす気力がないという種々の者がおろうかと存じます。
  294. 栗原俊夫

    栗原分科員 そこで大臣、お尋ねするのですが、健康的にはもうなおった、なおったけれども、らいというものは残念ながら後遺症が残る、出ていっても、そうして社会復帰ができる状況になっても、実際にはまだ社会が受け入れない、こういう状況にある気の毒な人たちがいるのですよ。そこで、健康的に完全になおった、外へ出てもいい、いろいろと身体障害の形があるから一〇〇%の健康体としての労働はできないかもしれぬけれども、そういう身体障害者の立場に立って——身体障害的な労働のマイナスはあるけれども、健康的には健全であるから、働こうとすれば働ける、こういう立場の人が、たまたま療養所の外へは出ていけないけれども、やはり一般人として社会復帰した立場の身分取得をさしてやりたい、また、したいというのがあの人たち考え方なんです。そうして、所内におるのだからどうしてもこれは患者扱いなんだとおっしゃるならば、療養所のすぐ近くに、アフターケアといいますか、そういう意味合いの居住地でもつくってもらいたい。一般社会へ入って働くことは、いま言う後遺症でなかなか受け入れもむずかしいというなら、療養所の中にもやはり健康体として働く場というものがあるのだから、また、身体障害があるならば、それだけはマイナスした職場というものを一般的な賃金によって持たしてもらいたい、われわれは外へ出ていくばかりが社会復帰じゃないのだ、いわゆる一般人と同様な取り扱いを受けることが社会復帰なんだ、その社会復帰がしたいのだ、こう言っているのです。これに対する大臣の御所見を伺いたい。ひとつあたたかい御所見を願いますよ。
  295. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医学的にらいはもうなおった、そういう方が、いろいろな生活上の問題等でまだ退所できないということは、非常に不自然でもあり、お気の毒だと私は思います。そこで、状況によりましては、世帯更生資金の貸し付けであるとか、あるいは生業資金のお世話をするとか、さらにまた、いま栗原さんから御提案がありましたところの、中間的な施設として授産所等のようなものをつくりまして、らい療養所と一般社会との中間的なそういう施設でもってそれらの人たちに生活の根拠を与えてあげる、また、リハビリテーションその他の措置もそこで働きながらやっていく、こういうようなことも考えねばいかぬ問題だ、私はこう思います。栗原さんの御提案を十分検討してみたいと思います。
  296. 栗原俊夫

    栗原分科員 非常に思いやりの深い大臣の御答弁で、大いに期待をいたします。ぜひお願いしたいと思います。  そこで問題は、らい療養所に入っている人たちは、その大部分はらい予防法による強制隔離、そのほかに生活保護法による医療扶助を受けて入院している患者というものもあるという、これは群馬の楽泉園の諸君の請願書なんですけれども、そういう方々もおるわけですか。
  297. 若松栄一

    ○若松政府委員 療養所に入院しております患者は全額公費でやっておりますので、これは生活保護でも医療扶助でも、何でも受けるに及ばず、らい予防法で全額やってやっております。ただし、その留守家族の方々がもし貧困であります場合に、生活保護を受けるというような場合、あるいは医療扶助を受けるという場合に、その家族がらい患者の家族であるということが明らかとなることをおそれまして、らい予防法で、特別にらい担当者がその世話をして、実質上、生活保護あるいは医療扶助と同じものを行なっております。
  298. 栗原俊夫

    栗原分科員 時間が非常に短いので、たくさん要望が、もちろん厚生省にも出ておるわけなんですが、ある中で、二、三特に質問をしながら要望というか、入院患者にかわってお願いを申し上げたい、こう思うわけです。  その第一点は、日用品費、慰安金と称しておるらしいのですが、これは具体的にはどういう状況になっておりますか。
  299. 若松栄一

    ○若松政府委員 日用品費というものと患者慰安金というものと、別のものでございます。日用品費は、毎日毎日の生活に必要な歯みがき、鼻紙、タオルのたぐい。それから慰安金といいますのは、それぞれ不自由者であるとか、老人であるとかいう者にお小づかいといいますか、そういうような形のお金を差し上げております。そういうようなものにつきましては、実はいろいろな処遇改善の要望がございましたけれども、本年度は、明年度の予算は重点をしぼりましたために、その問題は見送りをいたしたのでございます。
  300. 栗原俊夫

    栗原分科員 それは、金額にするとどの程度になっておるのですか。患者たちの言い分によりますと、生活保護法や、あるいは生活保護法によって入院する他の患者意味なんだろうと思いますが、たいへんどうも格差があるように訴えておるのです。端的に言えば、法によって強制隔離をされておって、われわれはたまたまそういう業病に取りつかれたので、世の中をされいにするという、そういう制度のもとにわれわれはここに甘んじておるわけだけれども、せめて人間扱いをしてもらいたいという気持ちがあるらしいのですが、現在のいろいろな生活の状況、またいま言う生活をするために与えられる給与等が、どうも人間扱いの線ではないというような受けとめ方をしておるのです。それはどうであるかということはお互いが判断するわけなんですから、それには、具体的には幾らくれてあるのかということがわからなければ、判断もできません。具体的には、どんな金額を給与しておるのか。
  301. 若松栄一

    ○若松政府委員 日用品費と称するものにつきましては、いわゆる日用のほんとうの諸雑費でございますので、考え方は、生活保護法の基準より若干下回っておると思います。といいますのは、住居から被服から全部支給されておりますので、生活保護で、単独に自力で世帯を持っておる方々よりは、若干少な目であるということで、算定をいたしております。  また、身体障害者あるいは老人等の慰安金につきましては、これは身体障害者の福祉年金であるとか、老齢福祉年金というようなものとつり合いをとったものを差し上げております。
  302. 栗原俊夫

    栗原分科員 彼らの言い分によりますと、全患者一律に支給されておる現金給与は、月額八百五十円の慰安金だけだ。これが全患者に一律に、だれにでも与えられる現金給与である。そのほかに、身体不自由者であるとか、あるいは作業についてはならない立場に置かれておる者とか、そういう者には、この基本の給与のほかに幾ぶんの給与がある。その金額は、内科疾患等で作業はやってはならないという立場の者には二百五十円、身体不自由者には特別慰安金として七百五十円が支給されておる、こう言っておるわけです。働ける者には、作業した場合に、月に二千五百八十三円六十二銭という平均額、これは平均額という言い方をしておりますが、プラスされておる。こういうことなんですが、確かに、あそこへ入っておれば、住まいは確保はされておる、寝具類も、いろいろ足りず目ながら確保されておる。しかし、何としても近ごろの物価高で、いろいろめんどうを見てもらうのだからとはいうけれども、どうも月に八百五十円、不自由慰安金が二百五十円加算される、または不自由者特別慰安金が七百五十円支給される、こういうような程度では、——実は、二十七日には、物価問題でいろいろとわれわれもデモンストレーションをやったのですが、動物園へ行ってチンパンジーを見ると、一日五百円、ゴリラには千円の食費が払ってあるなんというプラカードも出ておりましたが、あれは特別の動物ですから、人間より高くかかってもしようがありませんが、どうも少し——一カ月ですからね、これは少し少ないように思うのです。たまたま予算関係で今年は据え置きました、こういうお話なんですが、こんなことでいいとお考えなのですか。
  303. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま日用品費あるいは身体障害者の慰安金について据え置くということを申し上げました。しかし、そのほかに、実は患者が作業をいたしますとその賞与金を出しております。それから患者も、先ほどお話しのように、かなり労働能力のある患者がたくさんおります。そういう労働能力のある患者がゆうゆうと遊んでいるということは、本人のためにもかえって悪いことでもございますし、働ける人はできるだけ働いて、自分でかせいで、自分の小づかいも取るということが社会復帰につながる道でございますので、日用品費等は増額はいたしませんでしたけれども、働く人には励みを与えたいという意味で、来年度は、患者の作業賞与金は増額いたしました。たとえば付添看護をやってくれる人については日額百三十四円であったものを百六十五円に増額する。また、炊事の手伝いとか、その他の特別の作業をする人につきましては、一日百円であったものを百三十円に上げる。また、その他一般の軽度の、ごく単純な作業、あるいはある程度不自由であってもできるような作業につきましては、四十五円そのままに据え置きましたが、そういうように、できるだけ働く意欲を盛り上げるというためには、ある程度の施策を講じたわけでございます。
  304. 栗原俊夫

    栗原分科員 私は、冒頭に申し上げたように、完全に健康体になった、しかし、身体障害があるから一人前には働けない、こういう人たちかなりいるだろうと思うのです。私はしばしば訪れるんですが、行って握手するにしても、決してあとで手を洗う心配のないような人たちが、たいへん多いのであります。そういう人たちがどういうことになるかというと、ここにいうところの、まだ社会に復帰をしない患者という取り扱いを受けて、マイナスはあっても健康体として一人前になっておる。こういう者をいわゆる一人前の計算をせずに、患者扱いの給与をしている。そこには非常に大きな、ことばは悪いが、搾取みたいな形の姿が生まれておると思うのです。したがって、この療養所の総括的な会計の中からいえば、まともに支払えば、労賃では非常に大きな浮きが出ているような気がするんです。これはどうですか、そういうことは考えられませんか。現在、健康体になった人を所外に住まわして、所外から通って、いまのところでいまの仕事をしてもらうとすればいまの賃金では済まない。もっと高い賃金を払わなければならないはずだと私は思うんだけれども、これは少し錯覚ですか、どうですか。
  305. 若松栄一

    ○若松政府委員 もちろん、健康体の人が外から来て作業する場合に、当然いまの手当ではおさまらぬわけでございます。現在の患者は、衣食住を全部給与された上に、ごく軽易な労働をした場合に賞与金を与えるということですから、賃金の比較はなかなか困難であると思います。
  306. 栗原俊夫

    栗原分科員 私は、特にここで要望したいのは、率直に言って、あそこに入っている人たちは、それでなくとも大きなひがみを持っておるんです。言うならば、社会の落後者的なひがみを持っています。なおかつ、経済的に他のところと比較して、他よりもやはり下回っておるということだ。おれたちはこういう業病に取りつかれたからというようなことで、彼らも決して、人さまよりもよけいなめんどうを見てくれとは言っておらぬわけです。おれたちも皆さん並みの扱いをしてくれ、せめて生活保護法によるところの、まあ医療援護並みのめんどうを見てくれ、こういうことを要求しておるのですが、ひとつ、いろいろと出費多端のおりからでありますから、なかなか、おいそれとはいい返事も苦しいところではありましょう。もっと砕いて言えば、皆さんがお骨折りを願って、大蔵省相当強硬な折衝をしたけれども、ここまでしか取れなかったのだというようなことが実態だということを私たちは想像はしておるのですけれども、もちろん私たちも、大蔵省当局にも特にこういう立場にある人のためにはあらゆる要望を申し上げて、皆さんの戦ってくれておる要求が一日も早く実現するように努力もしたいと思っておりますが、ぜひ一日も早く、こういう人たちが、やれやれわれわれもまあ人間並みの扱いをしてもらえるようになった、おそらく皆さんはしてやっておるつもりかもしれませんが、患者はまだそういう気持ちになっておりませんから、数字の上でも人並みの扱いをしてもらえるようになった、やれやれというような事態を一日も早く招来するように御努力を願いたいと思うのですが、大臣、ひとつ御所見をお願いいたします。
  307. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 栗原さんから詳細にわたってのお話がございました。私も近い機会に一ぺん施設を視察いたしまして、直接患者の諸君の日常生活に触れてみたい、かように考えております。また、その際、御同様の陳情等もあろうかと思いますが、できるだけ私も努力していきたいと思います。
  308. 栗原俊夫

    栗原分科員 特に私が質問をしておるのは、同じ療養所でも群馬県の楽泉園を中心お願いをしておるわけですが、ここには特殊事情が一つあります。それは、非常に標高が高いものですから寒気が激しいということで、患者人たちも、楽泉園一カ所で全国の燃料費の一三%を上回っておるということをちゃんとよく知っております。それだけもらっておりながら、煮たきその他のいろいろなことに使われて個室の暖房その他にはなかなか回らない、こういうような状況なので、特に手足の悪い人たち、特にあそこは広いものですから道に線を張り、線に鈴をつけて、そうしてその線をたよりに、鈴をたよりに歩いておる。非常にたいへんなところなんですが、画一的に暖房費はこれこれでよいというのが、おそらく予算編成の一つの手法であることはわからぬではございませんけれども、とりわけ特にそうした暖房をとるようなことによけい燃料費が要るというようなところには、特段の配慮をしてやってもいいのではないかというような気持ちがしてなりません。もちろん、だからといって、ほかが少なくなっていいとは少しも考えませんので、これらについても特に御配慮を願いたいと思うのですが、そういう意味では、何だ患者のわがままかというようなことではなくて、一度、ただいま大臣施設を見たい、こう言っておりますが、まあ、昨今でもたいへんな寒に襲われておる草津のことであります。大臣が行くということは、なかなかここはできますまい。まあ都下の施設は、これはぜひ行ってもらいたいと思います。できれば大臣にかわる人にも一度行ってもらって、そしてなるほどそうかというような、やはり実際にはだで触れた中からあたたかい施策を打ち立ててもらいたい、こう思うのですが、これはひとつ局長でけっこうですから……。
  309. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま先生のおっしゃいましたような事項については、常々患者側からもよく聞いておりまして、それらの事情を拝見いたしますためには冬の間に行って見なければならないというので、先日療養所課長が現地に参りましてつぶさに、状況を視察してまいりました。高地でありますために水道のせんが凍って、どうにもならぬというような特殊な事情がございます。また、地域が非常に広うございまして、あの楽泉園の村のいわゆるメインストリートと称されておりますものだけでも、延長が四キロございます。これが舗装がごくわずかしかできておりませんで、いまごろになりますと、あたたかい日は泥津につかるというような実情もよく承知してまいりましたので、一挙にはまいりませんが、できるだけそのような努力をしてまいりたいと思います。
  310. 栗原俊夫

    栗原分科員 時間もまいりましたので質問を終わりますが、ただいま大臣あるいは担当局長等からいろいろと前向きの答弁をいただきましたので、ひとつその御答弁が一日も早く実を結んで実現していただけることを期待して、質問を終わります。ありがとうございました。
  311. 大橋武夫

  312. 堀昌雄

    ○堀分科員 私は、本日は重症身体障害者に対する対策の問題と、ガンの対策の問題と、医療費の中での請求簡素化と、それから技術料の適正評価、これだけをちょっと伺いたいと思うのです。  最初に、重症身体障害者の問題なんですが、ずっと私この問題を調べておりまして、現在多少不況にはなっておりますけれども、国民生活全体としては、かなり生活の内容は改善をされてきまして、一般的にいえば物価高で生活が苦しいとはいいながらも、ささやかなしあわせの暮らしをしておる国民が大多数だと思いますが、この重症身体障害児をかかえておる親の場合には、これはもうまことに不幸のどん底にあるという状態が間々見られて、このためにあるいは一家心中が起きてみたり、あるいは子供を殺したりという、私ども人道上の見地から見てまことに遺憾な事実が次々と引き続き起きておるわけです。この問題は、最近、いろいろな角度からの国民の声によって、ようやく政府においても施策を前向きに検討しようというところにきたわけでありますけれども、その中で私はひとつ、現在の児童福祉法は十八歳までで、そこから先は身体障害者福祉法その他法律が変わってしまう。同じ人間が、それも普通の状態ならばともかく、非常に困難な状態にある者が自動的に成長していく過程で、これが十八歳までは児童局、ここから先が社会局、法律も違えば所管も違うという、これは非常に問題があるところではないか。児童福祉対策として入っているものが、十八歳になったら一応出て、今度は別の角度になるなんということでは、私はこの問題の将来の発展のために非常にまずいような気がするのですが、そういう意味で、これは行政上の過去のいろいろな問題からきていると思いますけれども重症身体障害児及び障害者などと二つに分けて言わなければならぬといういまのあり方は、これはもう早急に再検討していただく必要があると思うのですが、大臣いかがでしょう。
  313. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 堀さんから御指摘のございました点につきましては、私どももさように反省をいたしておりまして、まず役所の機構の面から改善をしようということで、昨年から児童家庭局に一元化いたしまして、窓口を一本にいたしております。本省のほうでそういたしましたので、逐次各府県等におきましても、そういうぐあいに、重症心身障害児と者のごめんどうを見る行政を一元化する方向に進むものと考えておりますし、促進をさしたい、かように考えております。また、児童福祉法と身体障害者福祉法の問題につきましても、法制的に整備する必要があると考えまして、ただいま審議会に諮問いたして御意見を伺っておりますので、その御意見をお聞きいたしまして、所要の改善をいたしたいと考えております。
  314. 堀昌雄

    ○堀分科員 そこで、予算上で見ますと、ことしは施設費として十五億円御要求になったのが六億円認められて、全国に、国立療養所に付設して五百二十床できることになりました。現在までにありますものは、都道府県に六施設と国か二施設ですか、保養所のようなものがあって、現状では必ずしも十分でないのですが、この中で、特に民間のものの中に非常に問題があるし、おそらくこれはその他の施設でも問題があるだろうと思いますのは、せっかく施設ができても、看護婦がいないために、実際収容をしていないところが最近だいぶ出てまいりました。大津にありますところの第二びわこ学園というのは、この二月に百人収容施設——大阪、京都、神戸ですが、これらの都市とその府県が補助をいたしまして施設はできたのですけれども、看護婦が一名もいないというので実はスタートできない。そこで、びわこ学園のほうから三十人ばかりの不自由児を移して、またびわこ学園のほうからやはり看護婦等を移して、とりあえず開所式をやった。そのびわこ学園のほうも、定員は九十人はいれるのにもかかわらず、やはりこれは看護婦不足で七十五人しか入っていない。これを考えてみますと、今度国のおやりになった施設は、非常にわずかではあるけれども、かえてきておりますが、施設がふえてもそれを看護する人がいないためにこれが動かないということでは、これはやはりこの問題に対して非常に盲点として残ってくるのではないか。東京には秋津療育園というのが東村山にあるようでして、定員が百二十一人ですが、そこに対して現在七十三人しか収容ができていない。これはやはり看護婦が五人しかいないから——これは本来は何名か適当かという点は問題があるでしょうが、五人で七十三人を見るというのは、重症身体障害児の場合、たいへんなことだと思うのですが、そういうふうに、看護婦の問題というのがいま非常に重大な問題になってきておると思うのです。そこで、まず私は、看護婦でこの処置をしなければならぬかどうかという点は、ちょっと検討を要する問題ではないか。看護婦は、御承知のように一般患者の療養の看護のために教育訓練を受けておりますから、どちらかというと比較的年齢の若い者が多いのでありますが、こういう介護というか、看護をやられる方は、比較的年齢が高くても、要するに母性的な立場でやっていただけるような人であれば、新しく何らかの方法によってそういう人たちを短期に教育をして、適正な給与を払ってこういうところに働いていただく、こういうふうな新しい方法を考えない限り問題は解決しないのではないか、こう思いますけれども大臣、この点についていかがでしょうか。
  315. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 介護に当たります職員の問題は、きわめて大切な、また、今回国立でやります場合にも一番むずかしい点でございます。大体四十床を一単位に考えておりますが、その場合におきましてお医者さんが二人、そのほかに、理学療法士であるとか作業療法士であるとかいうような方がやはり二、三人要ります。そのほかに看護婦さんが二十名程度やはり要る。総員で、四十人の子供さんに対して三十人程度の介護の職員が要るということで、非常に手のかかる仕事でございます。   〔主査退席、倉成主査代理着席〕 また、ほんとうに血の通ったようなあたたかい介護をやらなければならぬのでございますから、この人の問題、今回国立でやりましても、成功するかどうかの分かれ目はここにあるような気が私はいたします。そういう観点からいたしまして、国立療養所にこれを併置することを考えまして、十カ所の選定にあたりましては、事前に現在の療養所の院長さんはじめ看護婦さん、その他とも十分話し合いをいたしまして、そしてこれを併置するというめどが立ったところに全国で十カ所これを設ける、こういうことにいたしたのも、そういう配慮からであるわけであります。なお、根本は、何といっても待遇改善、処遇を改善しなければならないということでございますので、ただいま人事院のほうと御相談をいたしまして、そして次の給与改定の際に、調整号俸等の面で十分考えていただくというようなこともいろいろやっておるわけでございます。また、看護婦さん等の養成の問題あるいは研修、再訓練の問題、こういう問題も今後力を入れていかなければならないと思います。さらに、社会全般の御理解と御協力を得ることも、こういう社会福祉の仕事でありますだけに私は非常に大切な問題だと思います。幸いにいたしまして、最近重症心身障害児の問題や精薄児の問題は、社会各方面で非常な御理解をいただきまして、御承知のように秋田の若い娘さんたちが進んで介護のために上京して、島田療育園秋津療育園お世話いただいておるとか、そういうようなことでございまして、今後私は、これは国立で、そして国の役人みたいな立場でだけではなかなかうまくいかないと思うのでありまして、そういうあたたかい社会の御協力、御援助があってうまくいくのじゃないか、そういう面にも十分配慮していきたいと考えております。
  316. 堀昌雄

    ○堀分科員 私は、いま看護婦たちの協力でやっていただくこと非常にけっこうだと思うのですけれども、実は、この介護というのは一つの生活なんですね。病人の看護というのは、比較的病気そのものに対する分のほうが多くて、もちろん完全看護ですからやりますけれども、それは非常に短期に限られております。しかし、この人たちは経過が非常に長いのです。もう一つ、看護婦の側からいいますと、患者に接していれば、よくなってくれば笑いもあるし、そして退院をしていく、まず自分たちのいろいろな仕事が報われるという気持ちがあるわけですが、この問題は一体どういう形で報われておるかということは、なかなかちょっと具体的に出てこないので、非常にむずかしい問題だと思うのです。確かに看護婦も必要でありますからいいですが、それを助ける看護助手といいますか、それらについて、現在中高年齢層の中で、そういう仕事に携わってもいいという婦人はかなりあるだろうと私は思うのです。だから、そういう人たち——いまの秋田の娘さんのような気持ちの方もたいへんけっこうですが、どなたでもそういうヒューマニズムの上から、それは長い期間できなくても、たとえ一年でもそういうことをやってあげようという方たちに、ひとつ門戸を開いて、そうして研修をしていただいて、そういう人たち協力を求めるということも、国だけやれればそれでいいという問題ではなくて、国以外にも、現在各地でそういう施設がだんだんできてきつつあるわけですから、その点については、看護助手といいますか、そういうものについての考えをひとつ早急に検討をしていただきたいということをお願いをしておきたいと思うのです。  その次に、今度は皆さんのほうで身体障害者コロニーに対して積極的に予算要求を出して、いま調査費なりついたようです。たいへん私もけっこうだと思うのです。この問題は、さっきちょっと栗原さんがらいについてお話になっておりますけれども、らいよりもう一つむずかしい問題なんです。重症精神薄弱な含めて重症心身障害児というものは、費用も非常にかかる問題ですし、将来に対して非常にむずかしい問題だ。やはりそれについては、私は、単にいまのそういう国立の療養園といいますか、そういうものだけで解決をしないと存じますので、これについては大体調査費はおとりになったのでしょうが、具体的にはどういう計画で、いつからこれにかかって、一体何年になったらこのコロニーがほんとうに使えるようになるのか、それについてのいまの見通しをちょっと伺っておきたいと思います。
  317. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 コロニー建設の問題につきましては、昨年来コロニー懇談会厚生省の中に設けまして、糸賀さんであるとか、あるいは島田療育園の小林さんであるとか、あるいは秋山ちえ子さんであるとか、各方面の学識経験者や、また非常な熱意を持っておられる方をお願いいたしまして、検討を進めてまいりました。そこで、まずとりあえず、国立でテストケースとして一カ所つくってみようということで、関係各府県の厚生部長衛生部長等にその候補地の推薦を願い、また林野庁等とも連絡をとりまして、国有林野の払い下げのための調査をいろいろやっております。大体各地いままで調査をしてまいりましたが、候補地が二カ所ぐらいにしぼられまして、できるだけ早く、年度内候補地は決定をしたい、こう考えております。  それからなお、調査費予算でとりましたので、さっそく具体的な建設準備委員会を発足させたいと考えております。これにはいろいろ世界各国のおやりになっている実例等もございますから、そういうものの参考になる点を十分取り入れましてやっていきたいと思うのでありますが、これはいわゆる村の建設でございますから、やはり相当時間がかかるのではないか。病院も必要でございましょうし、学校も必要でありましょうし、あるいは授産場のような施設も必要でございましょうし、医者はじめ介護に当たりますところの職員の住宅、施設等も要るわけでございます。一つの村つくりでございますから、これは基幹の施設国立でやるにいたしましても、その運営等につきましては、特殊法人のようなものをつくりまして、そういうところで行き届いた運営ができまするようにしたらどうか、こういうことも実は考えておるわけであります。政府といたしましては、将来そこにできることによって、各地方ブロックにもそういうものができるように念願をいたしておりますが、それだけに、まず一つのテストケースになります国立コロニーは、できるだけ早く建設収容ができますように推進をいたしたいと考えております。
  318. 堀昌雄

    ○堀分科員 ちょっと先の長いことですから、あまり具体的に伺えないかもしれませんが、ものごとはやはりある程度、これは大体どこでやってというあれがないと、まあたいへんけっこうなことですけれども、いつまでたってもなかなか実際にはかどらないでは私まずいと思いますので、その点、きょうはそこまで伺いませんけれども、ひとつ計画を立てて、国の施設としてやるものは何年度には終わるのだ、その次は並行してどうなるのだというような青写真は、やはり早急にお考えを願いたいと思います。  それから重度障害児扶養手当というのは、大体いま一人当たりどのくらい出ているのでしょうか。
  319. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほどのお話についてでありますが、建設準備委員会を発足させますのは、堀さんが御指摘になったような計画を立てるためでございますから、その点御了承いただきたいと思います。  現在重度精薄児に扶養手当が出ておりますが、これは月額千二百円でございます。これを重度の肢体不自由児あるいは重症心身障害児に範囲を広げて支給をしたい、額をもう少し上げたいと考えておったのでありますが、今回はこの範囲を広げるということと、それから所得制限を引き上げるというようなことにとどまった次第でございますが、今後支給額を引き上げるようにさらに努力をしていきたいと思います。
  320. 堀昌雄

    ○堀分科員 ちょっと大蔵省に、これはことしはもうこれで終わりましたから、私はこの前予算委員会でも言ったのですが、いま私ども分科会なり委員会でやっても、ことしの予算にはちょっと反映しませんから、これは来年のことなので特に私もお願いしておきたいのですが、いま大臣のほうでは、範囲を広げた、それで所得制限を上に上げた、だから実際費用が要ったのだろうと思うのですけれども、ちょっと私、一カ月に千二百円もらっても、ほんとうの重症の精薄児なり身体不自由児の場合というのは、これは出すのならもう少し出してあげないとあまり実効がないような気がするのです。私は、いまこういうふうにずっと重症身体障害児の問題を見てみますと、施設に対しては今度はかなり思い切って出していただいて、その点、私たいへんけっこうだと思うのですけれども施設にはいれる人間というのは、今度は五百二十床できれば五百二十人しかはいれない。二万人近くの者が外に残っている。こうなると、やはり非常にその中にアンバランスもあるわけですから、何とか来年度は——来年度の予算というものはむずかしいということは、この前も予算委員会で議論しておりますけれども、特に重度障害児扶養手当というものは、来年はもう少し前向きに検討してもらいたいと思うのですが、その点、主計局として、来年のことをいまから言うのもおかしいですけれども、ちょっとひとつあなた方の考えを述べていただきたい。
  321. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 扶養手当の額の問題でございますが、この手当は、いろいろ現在予算上の扶養手当に類するものはたくさんございます。ございますが、御承知のように、社会保障制度といたしましては、将来、児童扶養手当というものが抜けておるので、これをどうしてもやりたいというような気持ちも非常にあるわけでございます。そういう方向に進展するといたしまして、そういう中でどれくらいのものをどういうふうに出していったらいいか、さしあたり重度身体障害児に対してどういうふうな措置をするかというふうな面からわれわれ考えまして、現在の千二百円というのは、確かにおっしゃるように決して高い額ではございませんけれども、他の国民年金、障害手当とか、そのほか関連のある手当がございますので、そういうものとのつり合いを考えて、こういう額にきめたわけでございます。来年もそういう意味で、よく諸制度の間の連関を見ながら検討いたしたいと思います。
  322. 堀昌雄

    ○堀分科員 いまのお話大蔵省の立場としては、他との権衡がありましょうけれども、確かに特にみんな厚生省関係から問題があろうと思うのですが、大臣、どうでしょうか、確かに身体障害者の福祉年金にしろ、いろいろな問題もありますけれども、しかし、重度障害児というものをかかえておる親の立場というのは、これはほんとうに何というか、その他の面に幾らしあわせがあっても、これを全部帳消しにされるほどお気の毒な状態だと私は思うのです。だから来年は、そういう権衡はあっても、これにはもう少しやはり重点を置いてやっていただきたい。金額としてみますと、ことしついたのが二億五千万円くらいで、国の予算から見るとたいした額ではないわけですね。ですから、施設も私は大事だと思いますけれども、しかし、私は、このほうがもっと切実に多くの親に与える影響があるのではないかと思う。ですから、その点、厚生省としてもそういう考えで、ひとつ来年予算要求をしていただきたいと思うが、どうでしょうか。
  323. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 重症心身障害児の対策は、四十一年度でようやく柱が立った、こう言って差しつかえないと思います。昨年八月の厚生省調査によりますと、一万六千五百人、ざっと一万七千人ぐらい重症のお子さんがおるわけでございます。そのうち、一万四千五百人ぐらいが施設収容して介護しなければならない、療育しなければならぬ、こういうことでございます。そこで、五百二十床だけでは、これはどうしても不十分でございます。少なくとも一万五千人の三分の一程度、五千人程度施設収容するようにしたいということで、今後も年次計画をもってその整備に当たっていきたいと考えておるわけでございます。  それから、堀さんお話しのように、それにいたしましても、在宅で療育をしなければいかぬ子供さんがたくさん残るわけでございますから、その面につきましては、児童福祉司でありますとか、あるいは保健婦さんでありますとか、そういう人たちを十分研修をいたしまして、家庭療育指導に当たってもらう。また手当の面でも、お説のとおり、だんだんこれを改善するようにいたしたいものだと思っております。
  324. 堀昌雄

    ○堀分科員 時間がありませんから、次に移ることにいたします。  ちょっと私資料をひとつお願いしておきたいと思うのですが、さっきちょっと看護婦の問題に触れましたけれども全国の国公立の病院につとめております看護婦の出身養成機関別の資料を一ぺん集めていただきたいと思うのです。というのは、最近民間の看護婦養成機関で教育しました者がどんどん官公立に流れていきまして、それでなくとも民間看護婦は非常に不足をしてどうにもならない。自分たち医師会でいろいろ苦労してつくっても、それが民間のほうにだけいけばいいのですが、現状では、何としても民間病院と官公立病院では、いろいろな点で待遇上に差ができておるわけです。片方は無税でやっておる、片方は有税でやっておるというような問題も基本的にはあるし、医療費が十分に上がらないために、どうしても官公立に流れていくという傾向にあるようです。そこで、この問題一ぺん調査をしていただいて——これはやはり官公立側が充足していない。だから、官公立側としては、自分たちのところで使う者は官公立側で養成した者で十分余って、ときに民間に流れるくらいに官公立では養成をしていただかないと、この問題は解決しないのじゃないかと思いますので、そういう意味で、ちょっと資料として、お願いをしておきたいと思います。
  325. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいまお申し出のありました資料は、現在私どもはそういう資料を持っておりません。したがって、これを調査いたしますと相当な期間がかかると思います。したがって、全数調査は不可能と思いますので、私どものほうで適当な数の抽出調査をいたすことにいたします。
  326. 堀昌雄

    ○堀分科員 抽出でしたら、できるだけカバレージを大きくしていただかないと、官公立の出身者ばかりのようなところでも、ランダムサンプリングにしても小さいのじゃわかりませんので、ひとつカバレージを少し大きくとっていただきたいと思います。  次に、時間がありませんが、ガン対策の問題で、今度のガン対策予算というのは、さっきもちょっとお話が出ておりましたけれども、ずっと拝見をしておりますと、一番私問題になると思いますのは、今度新たにガンの集団検診に対する予算がつくことになりました。これは私たいへんにけっこうなことだと思うのです。現在、ガンの手術その他の水準は非常に上がってきましたけれども、何さま、手おくれで来られた方については、ガンだけは処置がない。これは早期発見以外手がありませんから。それについてはガン学界ではいろいろと現在の集団検診について意見があるようですけれども、しかし、何にしても早期発見するということのためには、皆さんのほうで施設としておやりになるやり方もありますが、同時に、集団検診の方式というものは、私はやはり非常に有効だと思っておるのです。これについて、今度は府県に大体一台ずつのガン検診用の車と、それに対する費用が予算化されて、たいへんけっこうです。ただ、私ちょっとここでひっかかりますのは、これが二億二千三百七十五万円ですか、出ましたが、三分の一の補助ですから、約四億四千万円くらい地方が負担しなければならないわけですね。おそらくこれは交付税なり起債なりでお考えになるのかもしれませんけれども、実際に四十六の府県がみな消化してくれるでしょうか。私は、そこに最近地方自治体の赤字の状態から見て不安があるのですが、大臣、これについていかがでしょう。
  327. 中原龍之助

    ○中原政府委員 この集団検診につきましては、府県は非常に関心がございますので、消化ができるものと考えております。
  328. 堀昌雄

    ○堀分科員 消化ができれば私はたいへんけっこうだと思います。今度新たに府県にこういうものをお置きになってけっこうなんですが、そこで、集団検診の歴史を少し見てみますと、民間で皆さん努力をなさって、今日、三十九年、三十何万人という集団検診をおやりになって、その中で早期発見ができておるデータがあるわけですけれども、非常に民間で努力なさってきた人たちに対して、もう少し国も協力をしてあげたらどうか。どうも最初の予算要求を見ると、国、府県に置くというよりも、そっちのほうに予算要求がかかっておったのが、どうもいろんな事情があろうと思うのですが、こういうことになった。私はこれでいいと思うのです。民間だけにおまかせしておいていいものではない。当然国なり地方公共団体も責任を持ってやるべきで、予算のつけ方はこれでいいのですが、ちょっと何か民間人たちの努力に報いておらないような気がするので、もう少しこの点は、助成のための要求があってよかったのではないか。要求があったのでしょうか。ぐらっと全部変わってしまったように思うのですが、その点、大臣、来年度の問題ですけれど、これまでのお考えが変わらなければ、もう少し来年は要求をなさることになるのだろうと思いますが、いかがですか。
  329. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 予算要求の際に、既存の民間のものにつきましても、たとえば対ガン協会でありますとか、そういうものの検診車の運営費等につきましては考えてみたのでございますが、現在の状況を見てまいりますと、県によって非常にアンバランスがございます。そこで、前からやっておって、車をたくさん持っておったところは、非常な特別な恩恵に浴するというようなこと等も出てまいるわけでございますので、昭和四十一年度は柱を立てるという意味合いからいたしまして、各県に一台ずつ運営費をつけて配置する、こういうことにいたしたのでございますが、将来は各県間の均衡の問題も考慮に入れながら、だんだんそういう面につきましても考えていきたいと思っております。
  330. 堀昌雄

    ○堀分科員 それからもう一つ。最初の考え方では、検診費も多少補助してはどうかというようなことになっていたと思うのですね。一体、いま受診料というものは大体幾らに考えていますか、府県の場合は。現在の民間の場合は別として、府県もこれからやるのでしょうが、これは胃の検診の場合にしましょう。
  331. 中原龍之助

    ○中原政府委員 この予算は、車が動く運営費でございまして、個人的な予算というものは組んでございません。
  332. 堀昌雄

    ○堀分科員 私が聞いているのは、これは府県のはただで見てくれるのですか。そうすると、府県が今度のこれでやるあれは運営費、人件費だ。全部持ってしまえば、要るのはフィルム代ぐらいのものですからね。ただならたいへんけっこうだ思うのですが、どうなるのでしょうか。
  333. 中原龍之助

    ○中原政府委員 これは実際問題として、いままで府県でやっておるところもございました。いろいろ民間協力してやっております。いろいろの寄付金等をそれに充てましたりして、そうして人によりましては有料なものもあり、人によりましては無料のものもあるというようなかっこうになっております。
  334. 堀昌雄

    ○堀分科員 私がちょっとそれに触れておりますのは、府県がやるのはただで、民間がやるのは金がないのだから、検診料を払うということになりますと、非常に問題が出てくると思うのです。やはり府県のただのほうでやってもらいたいということになりますね。せっかくこれまでやってきた人のほうは、同じところで競合関係にあったら、あなたのほうは五百円なり千円なりとられるならやめます、府県のほうにしますということになってしまうのではないか。そこで私は、これは一つの問題点として残ってきておるように思いますので、その点は予算を見ると、人件費から運営費からみんなついていますね。そうすると、府県のほうはただでやれそうに思うのですよ。いまあなたのおっしゃったように、とるのもあり、とらないのもあるというようにお話になると、これは何かルールがなければおかしいのではないか。もしとるとすれば、それだけの金が予算に入ってくるわけです。その分は少しプールしないとおかしいと思うのですが、この検診料の問題というのはどうですか。
  335. 中原龍之助

    ○中原政府委員 これは先ほど申しましたように、個人の負担するものは全然入っていないわけです。
  336. 堀昌雄

    ○堀分科員 私は、そういうことを聞いておるのじゃないのですよ。実際にやるときに、検診料負担のことが入っていないのはいいのですよ。これはこの予算だけで見れば、そんなものは入っておりません。そうじゃなくて——それじゃこれはただなのかどうか、個人の側から見て、受診者の側、受ける人から見て、幾らの費用になるかということです。
  337. 中原龍之助

    ○中原政府委員 有料でございます。
  338. 堀昌雄

    ○堀分科員 そうすると、一回の大体の目安は幾らですか。
  339. 中原龍之助

    ○中原政府委員 大体三百円くらいになると思います。
  340. 堀昌雄

    ○堀分科員 現在民間でやっておられるのは、これまでの実績によると一体幾らですか。
  341. 中原龍之助

    ○中原政府委員 大体七百五十円見当です。
  342. 堀昌雄

    ○堀分科員 そうすると、県やその他のほうは、その三百円がなくても大体回るのじゃないですか。要するに、三百円と七百五十円では非常に問題があるような気がする。だから私は、もし三百円というようなことならば、何らかの形でできるだけ差が少なくなるような措置——といって、たくさんとれということではないのですよ。できるだけ安くするというほうで考えるということになると、これまでの助成のあり方としては、検診車に対して、何人か見たら、それだけは多少検診料の補助というか、何か出してやって、バランスをとるということになるべきではないのか、こう思うのですけれども厚生省側としてはどう考えますか。大臣、どうでしょうね。道理としてはそういうことでないとおかしい。横からかっぱらって、何か人がせっかくやってきたものをできないようにしちゃうようなことはまずいと思う。
  343. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 民間でやっております面につきましては、いろんな援助の方法を考えなければならないと考えております。たとえば自転車の振興基金でありますとか、モーターボートでありますとか、いろんなことのほうから、私どもはできるだけ助言をいたしまして援助させたいと思っておりますが、大体政府がこういう措置考えましたのは、ただでやるということではございませんで、こういう車を配置し、運営費を補助することによって、実際上の検診料を、患者の負担を軽くしてあげようという趣旨でやったわけでございますから、また、それと見合って民間のほうの運営に支障を来たさないように、別の面で配慮いたしたいと存じております。
  344. 堀昌雄

    ○堀分科員 その点は、できるだけせっかく民間の方がここまで持ってこられた努力に報いながら、そして、国だけでやらないで、やはり民間の方もやっていただくほうがいいわけですからね。その点については、ひとつ今後予算の場合にもそれを含めて、いまのモーターボートとか、そういうもののテラ銭をもって充てるということはあまり私は感心しないけれども、まあ、ないよりはましでしょうから、やっていただくとしても、ひとつ国としてももう少し考えるべきではないか、こう思います。その点は、主計局も、お聞きになったようなことでもありますので、ひとつ前向きに考えていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  345. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 ただいまの検診の補助の問題ですが、現在予算を組んでおります検診車の補助は、大体四十六台でございますが、これは検診車は各県一台ということになっておりますけれども、実際に使われる場合には、必ず県がこの車を動かして検診を行なうというふうにはさまっておらないわけです。したがって、この検診車をさらに民間に委託をして、そうして民間が検診を従来どおり続けていくというケースも考えられます。あらゆる点を考慮いたしまして、ちょっとお話がございましたけれども、現在の民間の検診料というのは、低いところは二百円から高いところは千二百円まで、非常に段階がございます。これに対して、現在でも各県から補助金を出したりいろいろやっておるわけでございます。そういうこともございますので、この四十六台の検診車が補助をされました場合に、それが民間に行くか、あるいは県のほうで行なうかという場合にも、それによって徴収さるべき検診料のほうは、県内の権衡を考えておそらく決定されると私は考えております。
  346. 堀昌雄

    ○堀分科員 最後に、いまの医療費の問題の中で、もちろん、医療費全体を上げてくれという問題はよそへどけまして、問題点が二つあります。その一つは、御承知のように、いま甲表、乙表という二つの診療報酬体系がありまして、特に乙表というのは、極度に技術料が低評価をされているわけです。これは専門的になりますが、ちょっと簡単に申し上げますと、痔の手術をいたしますときに、少し痔核が多いような場合には、私どもはホワイトヘッドという手術をします。甲表ならば四百三十点、約四千三百円くれるわけですが、乙表ですと七十五・六点、七百五十六円です。ですから倍率は五・六倍、片方は、同じ医者が同じような行為をして、ただ請求の制度によって、一と五・六倍なんという技術評価が行なわれるなんて、常識で考えられない問題である。じん臓の周囲の膿瘍切開術というのがやはり三・一倍であるわけですね。これは部分的に直しましたけれども、眼科で角膜異物除去というのがあるのですね。よく郊外電車や鉄道で鉄粉が飛びますから、これが目にささってしまう場合に、これを取る角膜異物除去、乙表では、もとは処置料として四・六点、五十円ほどしかもらえなかった。ところが、甲表では三百六十円ということで、これはもう八倍ぐらいの差が実はあったわけです。最近は、深層角膜異物除去ということで、前房穿刺に準ずるということで二十二・七点もらえるということになっておるようです。甲表では、前房穿刺というのは三十六点なんですね。何にしても、技術料が乙表の中では非常に低評価されている。これは歴史的に、大体点数表ができた歴史というのはかなり古いんだと思うのですが、医者の世界では、内科医者というのは一番数が多いわけですね。ですから、医師会の幹部というのはたいてい内科医者が多いというようなこともあって、おそらく、歴史的な経過で、メス相手というものが不当に低評価されてきたという歴史的な沿革があると思うのです。これは甲表、乙表とか、いろいろな問題がありますけれども医療費の問題というのは、医師の技術料で払うということにしない限り問題解決はしませんから、その点で、これは一日も早く解決していただきたい。大体眼科、耳鼻科、外科、婦人科というメスを持ってやるものの技術がこんなに低評価されておるということは、私はどうも納得がいかないのですが、大臣はこの点についてどう考えておられますか。
  347. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 診療報酬体系の適正化の問題は、いま堀さんからお話しになりましたように、医師の技術料を適正に評価するということが根本だと思います。もちろん、技術を分離いたしまして、そして技術を尊重するというたてまえで適正にこれを評価する、私は、それが正しい方向だ、かように考えておるわけであります。したがって、甲乙二表の調整の問題もございますわけでありますが、この問題は、中央社会保険医療協議会の私に対する建議の中でも、ぜひこれをやるべきであるという答申をされておりますし、私もかねがね診療報酬体系の適正化ということを、いま申し上げた方向でやりたい、こう考えておりますので、制度の根本の問題の改正とあわせて、この問題をぜひやりたい、かように考えております。
  348. 堀昌雄

    ○堀分科員 制度の根本的改正というのは、私は、簡単にはいかないと思うのですよ。実は私は、この問題に長く携わってきておった者ですけれども、ひとつこの際、その中でやっていただければいいのですが、時間的にある程度早く技術料の適正化、特に手術料の適正化ということだけでも、とりあえず少しやっていただかないと、メス相手の人たちというのは非常に恵まれない状態に置かれて、しかも、高度の技術を要求されているわけですからね。私は、出身が外科の教室から出て、その後、事情があって内科の診療に従事している。内科の診療と外科の診療では、メス相手のほうが非常に技術的には高度のものを要求されているわけですから、これに報いるためには、抜本的、根本的改正も必要ですけれども、早急にひとつ検討を進めていただきたい、こういうふうにお願いしたいのです。その点、抜本的にやるには、全体の中以外にはできないでしょうが、これだけを取り上げてでも、少しやっていただきたい。
  349. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 堀さんも、いまの診療者側と支払い者側の考え方というものを十分申し上げるまでもなく御承知のことだと思います。支払い側は、診療報酬の適正化、医業経営の実態調査を早くやれ、こういうことを要求いたしておりますが、また診療者側は、いまの保険財政がこういう状態にあるのは、各種医療保険制度が、給付の内容においても、負担の面においても非常にアンバランスがあるのではないか、こういう問題の総合調整なり、統合なりということを考えなければ、保険財政の長期的健全化ということは困難である、こういう両側のそれぞれ主張があるわけでございます。私は、両方ともやるべきだ、一方だけではわが国医療保険制度を長期的に健全化し、安定化させることはできない、こういう観点で取っ組んでいきたいと考えております。
  350. 堀昌雄

    ○堀分科員 それはよくわかりました。しかし早くやってくださいね。もうこれを言い出してから何年もたっているわけですから、これは早く……。
  351. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は半年です。
  352. 堀昌雄

    ○堀分科員 あなたは半年だけれども、歴代やっているわけですよ。だから、私、これは早くやってもらわないとどうにもならないので、ともかく早くやっていただきたい。私は、この前もそう言っているのですが、厚生大臣だけはちょっと三年くらいやってもらわないと困る。ともかく、一年やってまたやめちゃいますと、次の人も私は三カ月、こういうことになってしまう。これでは賽の河原のようなもので、医療行政も前に進みませんから……。
  353. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 命が縮みますよ。
  354. 堀昌雄

    ○堀分科員 だから、幾ら死んでも、これはほんとうに責任を持ってやってもらわないと国民のためにならない。  もう一つ、請求の簡素化という問題ですが、これも長い問題ですよ。田中正巳さんが次官のころだから、もう十年ぐらい前でしょうか、私が議員になったそのころから、何回もいろいろなところで言ってきたけれども、これも全然進捗しないのですね。ともかく、いま医師の最大の悩みは、診療報酬の請求書を書くことが最大の悩みですよ。収入の多い少ないの前に、たいへんなことなんです。正月に、私はうっかり友人のところへ遊びに行ったわけです。こっちは正月、久しぶりですから、五日ごろまでは時間があると思って行ったところが、「何だ、お前は代議士になって医者を忘れたか」こう言われたわけです。なぜかというと、「いま、おれらは一生懸命診療報酬を書いているのに、正月いまごろ遊びに来るやつがあるか」ということで、私もうっかりしておって、たいへん恥をかいたわけです。私自身も、家内と一緒に三時、四時までかかって一生懸命書いて、十数年にわたって診療報酬を請求してきましたから、これは大臣、もう少し私は考えようもあろうと思うのです。現在、大体五千億の医療費の中で二十五億ぐらい、〇・五%ぐらい削っているわけです。削り方の問題は、時間もありませんからやりませんが、私も非常に心外なことがあるのです。ですけれども、それは別として、その〇・五%のために、お医者さんたちは医師としてやるべきことでないことをやらされているわけです。この点は、ひとつあなたの大臣在職中に、これだけはかまわぬと思うのですよ、いまの対立はあっても、いけることだと思うのですが、ひとつ何とかなりませんか。
  355. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 請求事務の簡素化の問題につきましては、御指摘のとおり、前々から、私どもも関係団体からずいぶん聞かされて承知いたしております。ただ、これもやはり関係団体と相談をした上できめるということで話を進めておりまして、すでに、最近におきましても医師側のほうから、請求明細書の中におきまして、たとえば、保険者の名前を一々書く必要はないじゃないか、記号当たりにしたらどうかというような御意見も出ております。それにつきましては、関係団体でいま話し合いを進めております。さらにまた、請求事務を促進するというような関係で、支払い基金のほうに電子計算機を導入して簡素化をはかるというふうなことを含めまして早急に検討いたすつもりで、必ず近いうちには実現をさせるつもりで努力いたしております。御了承いただきたいと思います。
  356. 堀昌雄

    ○堀分科員 じゃ、終わります。
  357. 倉成正

    ○倉成主査代理 松井誠君。   〔倉成主査代理退席、竹内主査代理着席〕
  358. 松井誠

    松井(誠)分科員 昨年の六月表面化をしました新潟県の有機水銀中毒事件、いわゆる新潟の水俣病のことにつきまして、国の水汚染対策との関連で何がしかお尋ねをいたしたいと思います。これは管轄が非常に複雑なようでありますから、適宜各省のほうから簡潔に、時間の関係もありますので御答弁をいただきたいと思います。  これは、幸いにして、熊本の水俣病から見れば被害者の数ははるかに少なくて、いま山を越しておりますけれども、しかし、それにしましても死者は五名出ておる。いまこそ山を越しましたけれども、その当時は、この阿賀野川の下流沿岸の住民は非常に恐怖のどん底に落とされた。特に妊娠可能な婦人が約五千人いるという発表があって、その婦人の中で、さらに頭髪から有機水銀が抽出されたというそういう婦人、しかも、妊娠中の婦人が抱いた不安というものは、もうぎりぎりの精神状況に追い込まれるような、そういう不安にかられたわけです。山を越した現在としては、その沿岸の住民が関心を持っておる最大の問題は、原因は一体何であるのか。その有機水銀が人体に入った経過はもうわかっておりますけれども、その有機水銀を排出した犯人は一体どこなのかということが、いま、まず第一の関心の的になっております。そこで、この原因究明、そういう意味での犯人の追及というものについて、現在の段階における状況あるいは見通し、そういうものについて、最初に簡単にお願いいたしたいと思います。
  359. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これはきわめて専門的、学問的な問題でございますので、まず最初に、事務当局から説明をさせます。
  360. 舘林宣夫

    舘林政府委員 昨年の三月、新潟大学が、特殊な患者が阿賀野川下流に発見されるということから急速に追及を始めまして、これが水銀中毒らしいということが漸次判明してまいりました。昨年五月に衛生部がこの問題にタッチをし始めました。直ちに厚生省に連絡がありまして、厚生省といたしましても、国としてこの問題の解明に当たりたい。と申しますのは、ただいま御指摘のありましたように、昭和三十一年に発病を始めたと思われる水俣病の原因がまだ必ずしも明確でない、これが水銀中毒であることは明らかでありましても、その原因が必ずしも明確でない。そのようなさなかに、再び水銀中毒患者が発生したということから、これは何としてもその原因を明確にいたしたいということで、厚生省におきましても現地の調査を再々いたし、専門官を派遣いたしましたが、さらに、これが原因究明のために徹底的な研究をする必要があるということから、昨年秋、科学技術庁の特別予算を約一千万円取りまして、それによって特別研究班を作成して、昨秋以来、鋭意その研究を進めてもらっておるわけでございます。その内容は、厚生省関係に疫学関係、検査関係並びに臨床関係という三班ができ、そのほかに農林省にもう一班があり、以上の事務の総括を科学技術庁がやっておるという状況で進めておるわけでございまして、漸次研究が進んでまいりました。私どもとしては、どんなにおそくなりましても、前回の水俣病のようなことのないように、私もどの決意といたしましては、本年中には明確にいたしたい、かような決意でございます。
  361. 松井誠

    松井(誠)分科員 本年というのはことしの三月末という意味ですか。
  362. 舘林宣夫

    舘林政府委員 ことしの三月末までに事態のすべてを明確にすることは、いまのところはやや困難かと思います。本年と申しますのは、できることなら、ことしの夏前にと思っておりますが、十分な研究結果を明確にするためには、少なくとも本年一ぱいはかかるのではなかろうか。しかし、ある程度の予測がつくのは比較的早くいたしたい、かように私どもとしては希望いたしておりますが、何ぶんにも、これは多数の研究者が現在集まって合同研究をいたしておりますので、明確なことは申し上げられません。しかし、私どもの意のあるところは十分伝えて御努力をお願いいたしておるわけでございます。
  363. 松井誠

    松井(誠)分科員 この原因は、もちろん、科学的に何よりも追及をしてもらわなければなりませんけれども、いま、われわれが常識的に考えられることは、少なくとも、その有機水銀というのはどこかから排出をされたものに違いない。そうして、その水銀を使う事業場というのは二つか三つくらいしかない。しかも、阿賀野川にその水を排出するというところは一つか二つ。しかも、その中で、その水銀を排出する可能性のあるのは一つではないかということが常識的にいわれておりますし、地元新聞も、むしろそれを前提にした書き方を去年の秋あたりからすでに始めておるわけであります。そうして熊本の水俣の場合と同じように、工場から排出をされるものは無機水銀であるのに、それが有機水銀になるという過程がわからないという、そこの最後のところでつかえておるというふうに、われわれは新聞を通して想像するわけですが、そのように、問題の焦点はそこにあるというふうに大体理解をしてよろしゅうございますか。
  364. 舘林宣夫

    舘林政府委員 全く先生の御指摘のとおりでございまして、これが有機水銀中毒であろうということは、この問題の当初からかなり推定は明確になっておったわけであります。ただ、有機水銀にはフェニル水銀とアルキル水銀とがございまして、そのいずれかという問題が一つございます。その後、これはフェニル水銀ではなくて、アルキル水銀であろうということも漸次明らかになっております。アルキル水銀といたしますと、その内容は、メチル水銀あるいはエチル水銀というものが現在最も考えられるわけでございます。そのいずれにいたしましても、その原因が何であるかということを明らかにするためには、その分析が必要なわけでございますが、御承知のように、それは非常な少量でございます。従来の蒸留式の分析方法では、ほとんどの検体がガスになって飛んでしまいまして、新たな検出方法を考えざるを得ないという、むずかしい問題に逢着いたしたわけでございます。現在まで相当な時日を要しておりますのは、そのような分析方法の基本的な研究から始めて出発しなければならなかったという理由があるわけでございます。漸次その方法も明らかになってまいりました。それによってかなり精密な分析を目下進めておる段階でございまして、いずれは、かなり明確にその原因がわかるようになる、かように思っております。
  365. 松井誠

    松井(誠)分科員 われわれ全くのしろうとですから、よくわかりませんけれども、あの熊本の水俣病の場合は、会社との交渉か終わって、いわゆる見舞い金という名目で事実上の補償が終わった数年後に、熊本大学で、その有機水銀が工場の中で変化をするのだということを、モデルプラントをつくって立証したということが伝えられておる。おそらく、政府のほうでも、それが信用に値するかどうかという検討をされたと思う。今度も、去年の八月ごろでありましたか、神戸大学の喜田村教授という方が、無機から有機に変わるという過程をモデルプラントをつくって立証された。しかし、それは実際のプラントを使ったのではないから、その辺はわかりませんけれども、しかし、ともかく、そういう科学的な立証がすでに再三にわたって行なわれておる。しかも、それが最後のきめ手であると常識的にも考えられるのに、さて、それは一体うそかほんとうか、いまだに議論をやっているのはどういうことなんでしょう。私は、あの熊本の水俣病の教訓が生かされたのかといえば、医学的な研究は確かに生かされたが、しかし、それ以外の点ではほとんど生かされていないのではないかと思う。新潟市民のこの問題の受け取り方は、いつの間にか騒ぎが下火になって、原因究明もうやむやになるのではないかということです。なるほど、厚生省は、当初には、今度は熊本の水俣病も含めて徹底的に原因を究明するのだと言われたが、しかし、原因の究明時期がおくれればおくれるほど、そういう疑惑さえするわけです。いま言われた無機から有機に変わるという、そのことをいわば最後の焦点にして、いまやっておる。それのおおよそのめどがつくのは大体夏ごろ以降ですか。
  366. 舘林宣夫

    舘林政府委員 いま、要点となっておりますのは、その分析方法が、専門家の間で確認せられる確かな方法であるかどうか、それがきまりましたら、その分析方法によって、再度、いままで水銀の含有量だけがわかっておりましたものの中からメチル水銀の含有量を精密にはかり直していく。その結果、中毒を起こした原因となった水銀の含有量がどの部分に幾ら含まれており、どの工場からの排出物、ないし、どの農薬の関係が幾ら分量があったかということを明確にいたしますとともに、ただいま先生のお話がございましたように、無機水銀からメチル水銀に移る過程はいかなる過程であるかということまで解明をはかるということで、いま進めておるわけでございまして、やや時日がかかっておりますが、あまり遠くないうちに結論が出るのではなかろうかと私どもは期待をいたしております。
  367. 松井誠

    松井(誠)分科員 私は、その点では二つの懸念を持っておるわけです。一つは、それはよくあることでありますが、残念ながら、私は、熊本の水俣病の場合にもそれと同じようなことがあったと思います。つまり、科学的な真偽のほどはわれわれにはわかりませんけれども、何か客観的に見ると、そういう企業の代弁者となっておるかのような立場の人が、ただ理論だけは一応科学的な装いをもって出してくる。そうすると、それが一応科学上の論争になって、当然早く結論が出るべきものがおくれる。新潟の地盤沈下は御存じだと思いますけれども、あの地盤沈下の原因は、ガスの大量のくみ上げだということは、常識的にはみなわかっておる。しかし、それにもかかわらず、異説を立てる人も一、二おる。そうしますと、この科学的な究明は、最終的な結論が出ないということになって何年か引っぱられる。現実には、もうその説は破れましたけれども、しかし、そういう場合はままるわけです。今度の場合には、そういう純粋に科学的な問題ではなしに、科学的な装いをこらしておるけれども 実は業者の代弁者だという そういうものはまぎれ込んでいないのですか。
  368. 舘林宣夫

    舘林政府委員 先ほど先生が仰せられました水俣のときには、四十名の死者を出し、また、六十名以上七十名にもなんなんとする一生涯この病気に苦しむ犠牲者を出し、今回また、多数の患者と五名の死者を出したこの事件は、そのようにうやむやで済まされるべきではないというかたい決意で私どもは今回は進んでおりまして、その点、科学的に結論が出されるように私どもとしても最大の注意を払い、努力も進めてまいっておりまして、今後も必ずそういう結論が出される、かような確信をいたしております。
  369. 松井誠

    松井(誠)分科員 もう一つ心配なのは、おそるべき犯人であろうと目される工場では、そのアセトアルデヒドというものの、そういう形での製造はやめて、現在はどの程度残っておるか知りませんけれども、一体、その当時と同じ状況の資料があらためて得られるのかどうか。私の仄聞するところによりますと、この研究班が、最近またその工場に行って資料を集めたというのは聞いておりますけれども、そのことは別といたしまして、いまさら、そういう形をして資料の収集に行っても、ほんとうにその当時の状態の資料というものが一体得られるだろうか。あるいは、その当時ほんとうに使っておった触媒なり何なりの原材料というものは、ほんとうに間違いなく現在行っても任意に得られるだろうか、会社から提出をされるだろうか。そういう意味で、幾ら研究をやっても、分析する対象そのものが、この有機水銀の中毒事件を起こしたものと違うものであるとすれば何にもならぬのではないか。あの問題を起こしたときに、間髪を入れずいろいろな資料を押えるという方法をとっていなかっただけに、ここの機械は、現在徳山に移転したのですから動いていない。ですから、そういう状況の中で、間違いなくその当時の状況を基礎にした結論が得られるのかどうか。繰り返しますけれども、科学に弱いのでそういう素朴な疑問を持つわけなんですが、どうなんでしょうか。
  370. 舘林宣夫

    舘林政府委員 当時、かなり多数の廃物が工場内にあった場合もございまして、現在のところ、研究班は資料の不足という意見を申し述べておりませんので、現在手に入っております資料の範囲内で十分な結論が出るもの、かような期待をいたしております。
  371. 松井誠

    松井(誠)分科員 この問題が表面化したときに収集した資料は、研究班が指定をして、あれを出せ、これを出せ、ここを見せろ、あそこを見せろといって収集したものでありますか。会社が任意に提出するものをもらい、任意に案内してくれるところを案内してもらうという形でやったのではありませんか。
  372. 舘林宣夫

    舘林政府委員 資料をとりますについて、あるものは、すでに機械を撤去をいたしておりまして、とれないものもございますが、その一部のものはとれなくても、結果を判定するには差しつかえない範囲のものは残っておりますし、また、当初、すでに資料をとっておるものもございますので、原因の判断には差しつかえないように研究班は思っておる、かように了解いたしております。
  373. 松井誠

    松井(誠)分科員 いまの御答弁は、あまり自信がなさそうなので、私は一まつの不安を感ずるのですが、ここで私は、日本の水汚染に対する対策、その行政に少し手抜かりがあるのじゃないかということを考えるわけです。  そこで、これはどこの管轄になるかわかりませんけれども、いわゆる水質二法という法律がある。そして指定水域が指定をされ、水質基準というものがきめられる。調べてみますと、阿賀野川は指定水域に入ってないようでありますし、もう一つ、水質二法の中には、特に規制を受ける特定施設というものがありますけれども、その中には、この水銀を使うアセトアルデヒド製造工程の施設というものが入っておるのかどうか、この辺をひとつお答え願いたい。
  374. 鈴木喜治

    鈴木(喜)政府委員 水質保全法関係を担当しておりますので、お答えいたしますが、いまの水汚染関係の法律は、水質二法以外にいろいろございまして、御承知のように、たとえば、厚生省関係でも毒物及び劇物取締法あるいは清掃法その他汚物あるいは毒物の投棄等に関する取り締まりもございます。水質保全のほうは、もっぱら工場、事業場の排水あるいは下水道、鉱山等からの排水についての汚濁の規制でございまして、したがいまして、水質保全法関係で水の汚濁に関する全部を扱っておるわけではございません。しかも、水質保全等につきましては、問題のすでに発生しておるところ、あるいはそのおそれの非常に大きいところにつきまして水域を指定しまして、水質基準をつくり、その水質基準に基づきまして、各省があるいは工排法、下水道法、鉱山保安法等に基づいて規制するという仕組みになっております。いままでのところ五十数水域を調査いたしましたが、その中には阿賀野川は入っておりません。また、工排法に基づきます特定施設、ただいま先生お話しの特定施設は工排法の関係でございますが、工排法の特定施設の中には、水銀関係はたしか入ってなかったと思います。
  375. 松井誠

    松井(誠)分科員 だから私は、この熊本の水俣病の教訓がさっぱり生かされていないということを言いたいのですよ。つまり、あれがほんとうの科学的な、一〇〇%理論的に実証されたものではないにしても、しかし、あの新日本窒素から出てくる排水があれだけの惨害を起こしたということはわかるわけですね。しかも、それが、おそらくあそこの水銀を使うことからくるのだろうということはわかるわけでしょう。そして、そういうような工場が全国に何カ所かあるということもわかっておるわけです。それが阿賀野川にあるということもおわかりでしょう。そうしたら、阿賀野川はそういう指定水域に当然するとか、あるいはこの特定施設というものにそういうものを含めるとか、そういうことを検討し、早急に手配をするというのが当然じゃないですか。これは一体どこの責任なんですか。
  376. 鈴木喜治

    鈴木(喜)政府委員 先ほども申し上げましたように、水質保全法だけでなしに、その他の法律が水の汚濁について所管しておるわけでございまして、本件のような場合、はたして水質保全法で規制するのがいいのか、あるいは毒物及び劇物取締法等で物の面から規制していったほうがいいのか、この辺はいろいろ問題がございますが、いままでのところ、特定施設を指定しておりますのは、指定水域をきめまして、それについての水質基準をきめた場合に、それに関係のございます特定施設をきめていくというかっこうで、追加のかっこうでやっております。したがいまして、水俣の場合あるいは阿賀野川の場合、いままでのところ水質基準はできておりませんので、特定施設もできていない。いままでのところ、水銀関係の特定施設で問題になった県は、この二県でございますので、特定施設の中にはきまっていないという状況でございます。
  377. 松井誠

    松井(誠)分科員 まあ、毒物及び劇物取締法というのもあるし、あれもあるし、これもあるし、どこでやったらいいか、どこが適当かわからないというのですけれども、しかし、それは役所の都合であって、ともかく、役所が怠慢なために人間が死んでいるんですよ。本来ならば、あの水俣病の教訓というものがほんとうに生かされたならば死ななくても済んでいたであろう人が死んでいるんですよ。問題はそっちのほうなんで、役所のなわ張りの問題じゃないわけです。たとえば、これが一体どうして水質二法の適用を受けられないのですか、そういう形で、どうしてこれが特定施設というものになれないのですか。特定施設と指定水域の問題は、またあとで聞きますけれども、そういう大きな問題を起こしたものを、たった二回しかなかったので、指定水域でないから特定施設に指定しない。同じような危険を持っておる工場というのは、いま全国でどれくらいあるのですか。
  378. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 アセトアルデヒドを、阿賀野川の、場合におきましてはカーバイドアセチレンから製造しておりましたが、これを石油化学のほうに切りかえまして、現在はそういう製法をとっておりません。現在でもアセチレンからアセトアルデヒドをつくっておりますのは、全国で三工場でございます。
  379. 松井誠

    松井(誠)分科員 それじゃ、ついでに通産省の方にお伺いをしたいのですけれども、熊木の水俣病の原因は、常識的にはおよそわかる。そこで、同じような全国の工場に、その後、こういう問題が起きたんだからということで、何か指導行政を強化されたというようなことがあるか、具体的にはどういう措置をおとりになったか伺いたい。
  380. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 水俣病の発生によりまして、先ほど厚生省のほうから御説明がありましたように、原因について明確でない点はございますが、有害である水銀を排水に流すということは不適当でございますので、当時の新日本窒素株式会社に対しましては排水施設の増強を指示いたしましたり、また、その他の工場に対しましても、排水中における水銀の測定を定期に行なって、極力減らすように指導をいたしたのでございます。阿賀野川の事件が起きましたあとにおきましても、またそういう水銀を使用しておる工場に対しまして再度注意を喚起いたしまして、極力排水中にそういう水銀などを放出しないようにという注意を喚起いたしました。その結果、工場によりましては、排水処理施設を増強したりあるいは水銀の濃度を測定しました結果、非常によくなっておる、あるいは水銀の汚泥を捨てる場所につきまして、確実な構築物をつくりまして、外へ流出しないようにする、そういうような措置を講じておる状況でございます。
  381. 松井誠

    松井(誠)分科員 この熊本の水俣病のあとにもかかわらず、阿賀野川が忘れられておったというのは、一つは、水汚染対策の機構に私は問題があると思う。それは、先ほどもちょっと言いましたけれども、指定水域の特定施設ならばいろいろの規制を受ける、ところが、指定水域でない、特定施設は規制は受けない、そういう仕組みになっておるんじゃないですか。
  382. 鈴木喜治

    鈴木(喜)政府委員 先ほども御説明いたしましたように、工場排水等の汚濁に基づいて相当な被害が出た、そういう因果関係が明らかなときに水域を指定しまして水質基準を設定し、この水質基準に合わせて特定施設を追加していくというかっこうでございます。したがいまして、特定施設になっていないからというお話だったように思いますが、逆の関係にございます。
  383. 松井誠

    松井(誠)分科員 私が先ほど、なぜこの水銀の製造の工程というものを特定施設に指定をしなかったかという質問のときに、それは当然の前提として、阿賀野川が指定水域じゃないのだし、そして水銀の同じような事件というのは二つしがなかっただから特定施設としての指定はしなかったというような話だった。そうなんだろうと思うのです。私は、指定水域の指定というものとは別に、やはり少なくともこういうように——私は、全国一つでも二つでもいいと思うのですよ。そういう人体に影響を及ぼす、あるいは産業に影響を及ぼす、そういうものである限りは、特定施設として指定をして規制をするということでなければだめじゃないか。そう人間の命がお粗末にされたんではたまらぬということです。ですから、何かもう少し数が多ければ取り上げるが、数が少ないから特定施設としては取り上げないということだから、こういう問題が出てくるのじゃないか。そういうことで私はさっき聞いたのです。そうじゃないですか。
  384. 鈴木喜治

    鈴木(喜)政府委員 私の先ほどの話が、どうもことば足らずの関係で誤解を与えたようなきらいがございますが、問題が二件だから特定施設をきめなかったということは毛頭ございません。水質保全法でも明らかなように、因果関係が明らかでないとそれについての規制が行ない得ない、こういうこともございまして、先ほどの厚生省のほうからの御答弁のように、本件につきましても、水俣の二の舞いにならぬようにということで、われわれのほうも通産省のほうも、厚生省協力をいたしまして、水の汚濁の問題の今回の原因の究明に協力しておるような状況でございます。
  385. 松井誠

    松井(誠)分科員 それで、水俣の場合に、私、たぶん三十八年だったと思うのですけれども、熊本大学で、無機から有機になる経過が立証された、そういうこと、そういう報告はおそらく私はお聞きになったと思うのですけれども、それに基づいて具体的な原因究明をされましたか。
  386. 鈴木喜治

    鈴木(喜)政府委員 ただいまの水俣の件でございますが、私ども研究が不十分なのかもしれませんが、熊本大学の入鹿山教授の報告によりますと、三十五年に水俣の新日本窒素の工場が排水処理施設をつくって以来水銀量が著しく減少している。それから、これらの水銀は無機水銀であって、水俣病の原因である有機水銀、特にアルカリ水銀は含まれていない、こういうような報告もわれわれ聞いております。
  387. 松井誠

    松井(誠)分科員 それは三十五、六年までの話ですよ。私は、ここに「科学」という雑誌を持っていますけれども、ここには、いまあなたの言われた入鹿山教授なんかがモデルプラントをつくってやった。それはたぶん三十八年だったと思う。そういう教訓がちっとも生かされていないのは、一体、水保全対策というものの管轄官庁があいまいであるということにも私はあるんだろうと思うのですけれども、それにしてもひどいと思うのですよ。具体的に資料が必要なら、私、あとで差し上げますけれども、ほんとうにそうですよ。ですから、私は、大臣にひとつお尋ねをしたいのですけれども、公害問題というもののイニシアチブを通産省がとるというのは、私はうそだと思う。やはり環境衛生という観点から、厚生省がイニシアチブを取り上げるという姿勢でないと、企業に影響を与えない限りにおいて規制をしよう、それはほんとうはさか立ちなんで、やはり人間の生活に影響のない限りにおいて企業を伸ばしていこうというように考えを転換する時期だと私は思う。そういう意味で、この水俣病を契機にして、これは各省が関係するというので経済企画庁か何か担当しているようですけれども、あるいは科学技術庁ですか、しておるようですけれども、やはり公害問題に対する厚生省のかまえというものをもう少しはっきりしなければならぬ。そういう意味で、何か通産省の役人が書いたものを読みますと、いまの日本というのは、環境衛生のために産業を犠牲にするほど産業は強くないんだ、そうかといって、昔のように公害は二の次で、産業さえ大きくすればいいというほど日本の産業は弱くはないんだ。言ってみればその中間なんだという言い方をしている。私はそれはうそだと思う。そうではなしに、やはり人間の命を大事にするという立場からいえば、環境衛生というものを中心にして公害の問題を考える。そのために企業が影響があるとすれば、何がしか政府が必要があれば補助をするということでもいいので、そういう形で私は考えるべきがほんとうだと思う。どうでしょうか。
  388. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 公害の問題は、ただいま松井さんからお話がございましたように、大気の汚染の問題にいたしましても、また水質の汚濁の問題にいたしましても、さらにまた排気ガスや騒音の問題にいたしましても、われわれ人間の健康なり日常生活に大きな影響を持つ重大な社会問題に発展してまいったのであります。そういうような観点から、今後私どもは公害問題と真剣に取っ組んでまいらなければならないということで、昨年の十月に公害審議会を厚生省に設置いたしまして、そうして予想されます公害問題について、あらゆる角度からいま御検討を願っておるのであります。特に公害基本法というものを制定いたしまして公害に対する基本的な政府の対策なり方針を確立する必要があるということで、いまその御答申を待っておるのでありますが、私は、この答申があり次第、次の通常国会にはぜひ公害基本法を国会で御審議を願うようにいたしたい、このように考えております。  また、この公害を防除いたしますためには、発生源を押えることが必要であり、発生源に対する防除施設を整備することが必要であるわけでございますので、すでに発足をいたしておりまする公害防止事業団におきましても、公共の施設のみでなしに、個々の企業に対しても長期低利の資金を融資いたしまして、必要な防除施設を整備するように対策を講じておる次第でございます。
  389. 松井誠

    松井(誠)分科員 時間がなくなりましたので、実はほんとうは、あと具体的に被害者の援護対策などをお聞きをしようと思ったのでありますけれども、それは省略しまして、最後に一つだけお伺いをしておきたいのです。  それは、こういう公害問題の被害者というのは、えてして泣き寝入りになるか、あるいはなかなか話がつかないと大衆的な一種の暴動じみた形で爆発をするか、やはりなかなかその補償問題というのは一対一ではうまくいかないわけですね。そこで、この水質二法のどっちでありましたか、都道府県が和解を仲介をするという制度がある。この制度は一体どのように活用されておるのか、簡単な数字でけっこうですけれども…。
  390. 鈴木喜治

    鈴木(喜)政府委員 水質保全法のほうに和解仲介制度がございます。ちょうどばい煙規制法の制度と同様な制度でございますが、水質保全法のいままでの例で申し上げますと、法律によった和解仲介の実例は、これは各都道府県知事がやることになっておりますが、件数としては三十件でございまして、そのうち二十五件が解決したという実例になっております。
  391. 松井誠

    松井(誠)分科員 公害に関する全体の紛争という数字がつかめないでしょうから、わからないかもしれませんけれども、大体そういう公害関係の紛争のどれくらいを、この和解仲介という形でやっておられるか、その辺は見当つきませんか。
  392. 鈴木喜治

    鈴木(喜)政府委員 ただいま申し上げましたのは、法律に基づく和解仲介制度の実例でございまして、事実上、和解仲介の件数は非常に無数にあるというふうに、各般の資料からうかがわれます。
  393. 松井誠

    松井(誠)分科員 この和解仲介に対する行政指導というものは、管轄はあなたのところですか。これはどこなんです。
  394. 鈴木喜治

    鈴木(喜)政府委員 水質汚濁関係では私のほうでございます。
  395. 松井誠

    松井(誠)分科員 どなたにお伺いをしていいのかわからないのですけれども、この和解仲介をするという場合の考え方ですね。これは私さっきもちょっと言いましたように、足して二で割る式の、加害者と被害者のまん中に立って足して二で割るという形で府県が仲介に入るというのはうそではないか。法律的な理屈になりますけれども、これだけの公害を起こす会社というのは、いろいろ言い分はあるでしょう。それは不可抗力だという抗弁も確かに出ると思います。しかし不可抗力だから責任を持たなくてもいいということになると、これはとても和解仲介なんかできない。やはりこういうものはそれこそ無過失責任論といいますか、そういう公共的な責任を持っておるべき企業は、民法の一般原則を越えた無過失責任のようなものをしょわされるというかまえで臨んでもらわないと、普通の民法の法理で、今度の場合はしかたがなかったのじゃないか、新潟の場合も思わない地震があったじゃないか、かってなかった洪水があったじゃないか、だから完全にその工場の水銀であったとしても、不可抗力だったのじゃないかというような形で逃げられる、それが当然だというような気持ちで和解に入られると私は困るので、大臣にもう一ぺんお伺いしたいのです。  まさにこの公害の害から住民を守るという立場から考えると、民法的な紛争の観念をもっと越えて、企業が持っておる社会的な責任という立場から、その被害をなくしていく義務があるんだという立場で府県が和解の中に入ってくれないと、足して二で割るような形で——受けた住民の被害は非常に大きいわけですね。具体的に新潟の場合で言えば、新潟の河口あたりの漁民もしばらくは魚がさっぱり売れなかった、全然関係がないはずの魚であるけれども、しかし買い手がない、売れなかった。あるいはいまどうにか重症にならなかった患者でも、もうそのためにずいぶん長い間仕事を休まなければならぬという問題がある。いろいろな意味でこまかく計算すれば膨大な数字になるに違いない。そういう膨大な数字であるだけに、その紛争はいつまでもこじれるという可能性を持っていると思います。そのときに解決する精神の基礎というものは、やはり企業の社会的な責任に重きを置いて考える、そういう御指導は、これはどこが指導するかわからないのであれですけれども、そういう指導が必要じゃないかと私は思うので、その点についての大臣の御意見を最後にお伺いしてやめたいと思います。
  396. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この公害対策は、公害の発生した後のことをやっておるのでは、ほんとうにわれわれの生活を守る公害対策にはならない。発生する前の防除につきまして、企業もやはり社会的な責任を痛感しなければならないし、また国としてもそういう方向に指導する必要がある。また私どもは公害に対する基本的な方針を早く確立をいたしまして、総合的な面でこの公害対策を強力に進めていきたい、かように考えております。
  397. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 次に高田富之君。
  398. 高田富之

    高田分科員 私は二つの問題につきまして簡潔に御質問をいたしたいと思います。  一つは、ただいま大量にわが国で生産され、販売され、使用されておりますいわゆる活性または持続性ビタミン剤と称する薬、この薬がはたして薬の名に値するものであるかどうかという問題。  それから第二の問題は、わが国にだけありまして世界じゅうどこにも例のない医者が博士と博士でない医者と二つに分かれておる、こういうことが今日はたしてどれだけの意味があるのか、こういう医学教育制度に関する問題、この二点であります。  まず、初めにビタミン剤に関する問題につきまして御質問をいたしますが、活性または持続性と称するビタミン、たとえばアリナミン、ビオタミン、ハイベストン、ベストンその他まだたくさんあると思いますが、その他おもなものを幾つかあげていただきたいのです。
  399. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 活性ビタミン剤あるいは活性持続型ビタミン剤といわれておる医薬品でありますが、これは御存じのように、十年くらい前から従来のビタミンB1外に新たにビタミン耳の誘導体というものででき上がった製品であります。いま先生御指摘のように、この品目といたしましては、アリナミン、ビオタミン、ノイビタ、ベストンそれからジセタミン等がおもな品目でございますが、それ以外に、ごく最近いわゆるTDS製品と称せられるグループの新しい活性ビタミンが約五十品目くらいできておるという状況であります。
  400. 高田富之

    高田分科員 この種のB1誘導体の年間生産額は、最近の年次でどのくらいになっておりますか。
  401. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 三十九年の例をとって申し上げますと、ビタミンB1誘導体の錠剤でございますが、これの年間生産額は約四百四十億ぐらいでございます。
  402. 高田富之

    高田分科員 これらのいわゆる活性または持続性と称するビタミン、これは純性ビタミンB1とどういうふうに違うのですか。ごく簡単に、しろうとにわかるように説明してください。
  403. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 やや専門的なことでございますので、専門の課長から答弁いたさせます。
  404. 豊田勤治

    ○豊田説明員 いま御指摘の活性ビタミンの種類は、先ほど局長が申し上げましたように、各種類ございます。  まず開発されましたのは、一九五一年に京大の衛生学の助教授をしておった藤原元典博士が、いわゆる普通のビタミン耳の作用のある物質と、それから昔からいわれておりますニンニクの成分、これは非常にからだにいいといわれておりますが、その成分とをひっつけたものがアリナミンでございまして、そのようなものをアリチアミン、アリサイアミンというようなことばで述べられておるのでございますけれども、そういうようなニンニクの有効因子と、いわゆる従来のビタミン、B1鈴木梅太郎博士が発見されましたビタミンB1をひっつけたものが、最初に発見された持続性ビタミンという類のものでございます。
  405. 高田富之

    高田分科員 それで、純正ビタミンB1とこれは、どういうふうに人体に対する作用は違うのですか。
  406. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 ただいま申しましたように、従来のビタミンB1にニンニクの有効成分を含めさしたものが、ただいま問題になっております活性ビタミンB1でございますが、この人体に対する作用でございますけれども、従来のビタミンB1よりも活性ビタミンB1のほうが体内に入ってからの吸収速度が早いとか、あるいは血中濃度が高いとか、あるいは効果が長時間持続するというようなふうに、非常に従来のビタミン司以上に効能効果がある、こういうふうに言われております。
  407. 高田富之

    高田分科員 純正ビタミンB1のほうはいま年産どのくらいですか。
  408. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 統計のとり方によりまして、はっきりしたことは申し上げられませんが、ごく大ざっぱに申し上げますと、二十億から二十五、六億だろうと思います。
  409. 高田富之

    高田分科員 いまそちらのほうで言っているとおり、いずれにしましても非常に高いのです。非常に高価なんです。普通の、前の純正ビタミンB1の何倍かする非常に高価なもの。一体その活性持続性ビタミン剤なるものは輸出はどのくらいされておりますか。生産は年間四百四十億、輸出はどのくらいありますか。
  410. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いま手元に正確な数字がありませんので、はっきりしたことは申し上げられません。
  411. 高田富之

    高田分科員 あんまりないでしょう。どうですか。
  412. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 活性ビタミンB1、つまり代表的な名前でいいますと、先生御存じのようにアリナミンでございます。これは相当輸出されておるというふうに聞いております。
  413. 高田富之

    高田分科員 在留邦人や何かは使っているらしいのですが、外国の病院や外国のお医者さん、外国人は大体使っていないらしいですね。在留邦人の間には宣伝がきいておるから幾らか売れるらしい。いままではこれは健康によろしい、保健薬として相当きき目があるということに対して、そうじゃない、きき目なんかありはしないというように問題になったことはありませんか。
  414. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 結論から申し上げますと、そのような意見は私聞いておりません。
  415. 高田富之

    高田分科員 聞いていないとすれば、これは相当問題なんです。私は確信を持ってこれから申し上げますから、ひとつこれから徹底的に御研究願って真相を究明してもらいたい。何しろこれだけ四百何十億もつくってろくに輸出もできない。外国人は買ってくれない、外国の医者も買ってくれない、それであれだけ宣伝をしまして、しかも相当高価なもので、健康保険が赤字になるのはあたりまえなんです、どんどん使いますから。ですからこれは大問題だと思うのです。ひとつ真剣に御検討願いたいと思いまして、これから確信を持って申し上げますところをひとつお聞き取りを願って御感想をお聞きしたい、こう思うのです。  日本人の医師の大部分、全部じゃございませんよ。大部分の人は、おおむねビタミンの定義、そうして、生物学者の命名するビタミンというものの本質についてまず無知だと言っていいだろう。大体の大学教授クラスの人でもあまり知らない人が多い。知っておっても会社と特殊な関係にある人が非常に多いというわけであります。例を申し上げますと、アリナミンの注射液はブドウ糖が入っておる。この注射液はブドウ糖の強心作用はあるけれども、それ以外のものは何もない。このことは国立東京医科歯科大学心臓血管研究所薬理部長重井教授が昨年の薬理学会で発表しておるのです。実験に立ち会った武田薬品の技師も承知した。ところが、ほかの大学の先生たちがこのブドウ糖をごちっゃにしたもので強心作用があったというようないいかげんなことを言って、強心作用があるというふうな宣伝をずっと続けておる。これも一つの実例でございます。大体ビタミンというものが問題なんで、わざわざビタミン耳というものをつくり変えるというところに問題がある、こういうわけです。ビタミンには御承知のとおり、A、B1、B2、B6、B12、C、D、E、Kなどあります。これは生物学の名称で、生物が単細胞動物から進化して生命を保つための不可欠の化学構造物なんです。われわれのからだのいわば一部であって、これはいわゆる薬というようなものではない。薬というのはわれわれのからだから一応異物になっておる。そういう性質のものではない。だからビタミンといわれる。ところがその化学構造をどんなにわずかでもつくり変えれば、もうビタミンではなくなってしまう。それはビタミンではない。これはからだにとって異物になる。からだに刺さったとげと同じような異物になってしまう。したがって、これはビタミンではない。こういう活性だとか持続性とかいって、無知な大衆をごまかすようないいかげんな名前をくっけてビタミンをつくり変えをする、そして全く本来のビタミンではないものにしてしまっておる。こういうものは実際は何や価値のないものである。そういうものにこういう多額の生産量があって、これが健康保険にも使われて、そして大衆を惑わして、まぜもののほうに幾らかきくものが入っておるという程度のもの。だから外国にも売れない。今日の薬の製造の中にはずいぶんいかがわしい薬がたくさんあって、先般もたくさんの会社に製造禁止を命ぜられた。けっこうな話なんですが、まだまだあるわけですね。ビタミンはその大ものですよ。これは退治しなければだめだと思うのです。それには相当本腰を入れてやらなければならぬ。ですからその道の権威者の意見を全部聞かなければならぬし、これはなかなか言えないのじゃないかと思う。それは研究室でもどこでもそういう製薬会社の金が回っておる。おおむねそうなんです。だから、よほどの決意を持って徹底的に調べなければならぬ。外国の専門家に調べさせればいいのではないか。日本よりもむしろ外国のりっぱな病院あたりでそういうことはやりませんと、こういうことを許しておいたのでは保険財政がこわれるのもあたりまえの話なんです。いままでも薬の問題は昨年以来ずいぶん問題になりまして、かぜ薬を飲んで死んだとかいろいろの問題が起こって、ずいぶんだだいまは御努力をなさっておるということはよくわかるのですが、さらにひとつその方面には一段と御努力を願わなければならない、こう思うわけなんです。この点については、以上申し上げたことについて御感想だけを承っておきたいと思います。
  416. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 先ほど来いろいろ先生から私ども承知していないような新しい事実を御説明いただきました。実はおことばを返すようで恐縮でございますが、この活性ビタミン耳の製剤、医薬品につきましては、先ほど申しましたように十年くらい前から生産をされているわけでございますが、この活性ビタミン耳につきましては、私どもで製造の許可を与える際も、各全国の有名な大学、研究機関四十カ所くらいの研究施設で臨床データも三千例くらいのものを出してきております。そういうものをデータとしまして、私どものほうの中央薬事審議会でずいぶん長い期間にわたっていろいろの角度から慎重に、審議しまして、製薬許可を与えて今日に至っておるわけでございます。製薬許可が出された以降今日に至るまでも、いろいろなその後の新しい学問の進展により・まして、この活性ビタミンB1につきましての新しい臨床効果というものが出ておる、こういうふうにわれわれは承知しておるわけでございます。したがいまして、先ほど来先生申されましたように、この活性ビタミン耳がどうもおかしいんじゃないかというような御意見につきましては、現在のところ私どもは、日本の国内の学者、研究者等からこの活性ビタミン耳の問題につきましては、いろいろなデータが出されているわけでありますので、そういうふうな観点に立ちまして、この問題について行政指導なりなんなりをやっているわけでございます。したがいまして、ただいま述べられましたような御意見は十分拝聴はいたしますけれども、現在のわが国の学問の段階におきましては、どうしてもわれわれ厚生省当局は、当時製薬許可を与えたときと同様なあるいはまたその後いろいろな臨床データによって新しい治療効果も生まれているというような事実も十分尊重してまいらなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  417. 高田富之

    高田分科員 そういうこともありましょうけれども、やはり外国の大学なり外国の研究所なり外国の病院なりそういうところでひとつ意見を聞いてもらいたいと思うのですよ、これは。臨床実験とかなんとかいったってわからぬですよ。おきゅうがきいたり、まじないがきいたりするような場合がある。これはとにかく売れてないのだから、これだけ大宣伝をしておって外国へ輸出できないなんてはずはないですからね。日本人しか飲まない薬なんというそんなばかなことはあるはずがない。ですからどうかひとつこれはそういう意味で真剣に御検討願いたい。これは御要望申し上げておきます。  それから続きまして、医学教育制度の問題でありますが、まあいまのお話じゃありませんが、とにかく近代科学の最先端をいかなければならない医学教育制度というものの中に、今日なお明治以来の封建的な制度としきたりというものががんとしてはびこっていてちっとも改革されていない、まことにふしぎな現象なんですね。そういうような点から申しまして、その一番典型的なものは博士号という制度じゃないか、こういうことなんです。医者を二つに分けて、博士と普通の医者と分けまして、開業医の中で博士と博士じゃない医者との比率はおよそどのくらいになっておりますか。
  418. 若松栄一

    ○若松政府委員 開業医の中の割合というものはわかりませんが、現在一年に千五百人ぐらいずつ医学博士が出ているそうでございます。
  419. 高田富之

    高田分科員 博士号を持っている医者と博士号を持たない医者とこういう二つの制度になっている国は、世界じゅうにございますか、どうですか、日本のほかに。
  420. 若松栄一

    ○若松政府委員 日本の医学博士というのは、博士という称号で、学位でございまして、世界にもデグリーというような、いわゆる学位に相当するものが方々の国にございます。しかしそれがいわゆる一般大衆に診療能力と結びつけて考えられている国はあまりないと思うのです。むしろアメリカにおきましても欧米におきましても、診療能力を判定する名称といたしましては専門医制度がむしろ普通でございます。
  421. 高田富之

    高田分科員 そうですね、そうだと思うのです。だから博士にならなければどうも一人前の医者でないみたいな、普通の医者は半人前の医者みたいな扱いを受けている、こういう意味での博士号というのは、おそらく日本だけなんですね。これは非常に問題だと思うのです。外国では日本のこの博士号をとるための論文に対しては、相当茶化して言っていることを、あなたおそらく御存じだろうと思うのですが、博士論文のことを外国で何と言っているか御存じですか。
  422. 若松栄一

    ○若松政府委員 どういう批評が出ておりますか、存じておりません。
  423. 高田富之

    高田分科員 これはぼくは有名なことなのかと思っていたのですがね、外国では博士論文のことは、ジャパニーズ・ペーパー・トラッシュ、紙くず、こういうふうに言っているそうですよ。大体私も専門家じゃないのですけれども、しかしとんでもないようなことを一生懸命になって博士論文なるものを書くのでしょうけれども、そういうものと実際の医療というものとは必ずしも結びついてないと思うのですね。博士号をとるために五年も六年もみんな苦労して金をかけて長く大学病院に残ってただ働きをする、この制度も世界にないのですね。医局へいってみると、大半ただ働きの博士の卵みたいなもの、こういう人をただ働きをさせておくという制度はあまりない。そういうような点からいきましても、これは大問題。だからだれでも大学を出て一人前の医者としての教育を受け終わって、修練も経たという者は、全部同じ博士なら博士にしてしまう。これが至当だと思うのですよ。どう思いますか。
  424. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま申しましたように、博士というのは学位、称号でございまして、医師の能力を判定する何ものでもございません。したがってインターンを終え、まともな医師になった者は医師として登録され、医師として活動すればそれでいいわけで、博士というものは博士コースをとって初めて博士になるものでございますから、それは厳密に区別されるべきものと思います。
  425. 高田富之

    高田分科員 それがおかしいと思うのですよ。だから医師の診断能力と関係ないものが関係あるもののごとくいまは通用していることは事実なんです。だからみんな博士号をとらなければしょうがないと思って、苦労して無理して、そして五年も六年もただ働きをしてやる。金のない人はそんなことはできませんよ。だからこれは全然意味がないのです。それよりもむしろ外国並みに全部同じで、もっと充実した医者になるための教育というものをしたらいいのですよ。全部博士コースにしたらいいのです。外国では、大体中国にしてもあるいはアメリカなんかもちろんのことでありますが、中共あたりにしてもあるいはアラブ連合あたりにしてもあるいはナイジェリアあたりにしても、とにかく一流国とはいえないところだって、教育制度は日本よりは充実しているのですね。大体医者になるためには少なくとも基礎生物学課程というのですか、基礎的な教養のコースというものを、日本では二年ですけれども、お隣の中共では四年、アメリカも四年、その他の国も大体三年から四年です。二年というのは日本しかない。その次の医学の専門、四年、これは大体どこでも四年らしいのですが、それからそのあとの一年のインターン、こういうことでやって、基礎的な部門がとにかく日本は諸外国と比べて半分くらいしかないということなんです。これは事実でしょう。どうですか。
  426. 若松栄一

    ○若松政府委員 大体現在の医学教育は世界の水準のほぼ平均値でございます。日本より長いものも若干ありますし、日本より短いものも若干あります。
  427. 高田富之

    高田分科員 日本より短いところ、典型的なところはどこですか。
  428. 若松栄一

    ○若松政府委員 各国によって非常にまちまちでございまして、たとえばオーストリアは医学教育は五年間でございますけれども、そのかわりインターンを三年間やる。セイロンは医学教育を六年間やってインターンを一年間、西ドイツでは、これはいろいろ教育制度がかなり変わっておりますので、大学卒業ということがなくて、単位を取ればどこの大学で単位を取ってもいいという形になりますので、五年半の教育でインターンを二年というようなこと、ポーランドは六年の教育でインターンはなし、こういうところは日本よりは明らかに短くなるわけです。ソ連も六年の教育でインターンなし、こういうところも日本よりも短くなるわけです。そういうふうに、長いところは米国の九年にさらにインターンということで一番長くなっておる。そういう意味で、日本は大体中等度のところに位していると言うことができると思います。
  429. 高田富之

    高田分科員 しからばそのインターンですが、インターンを全然まるっきりただでやらしているというところは日本のほかにございますか。
  430. 若松栄一

    ○若松政府委員 私ども現在承知しておりますものでは、インターンは給与の点はいろいろあると思います。実質的にやっているところと、インターンはそれ自体やはり教育の一環として給与を受けていないのがむしろ多いだろうと思います。
  431. 高田富之

    高田分科員 具体例を申してください。ないと思うのですがね。給与がないようなところでは寄宿舎をやる、食事や衣服を支給するとか、そういうところがあると思うのですけれども、普通はたいてい給料を出している。全然何もしないで、まるっきりアルバイトに行くひまもない。これではもうほんとうにどうしようもないと思うのですがね。だいぶ問題が起こっているようですけれども、ただほっておくわけにはいかない。それは教育の課程だとあなたはおっしゃいますけれども、教育の課程なら、文部省の方も見えていると思うのですが、文部省あたりで管轄しまして教官を配属して、そして教育の一課程として最後の仕上げとしてやるならいいですけれども、何もしていないのですよ。ただ働きさしているだけですよ。教育になっていないじゃないですか。その点はどうですか。
  432. 若松栄一

    ○若松政府委員 教育の課程と先ほど申しましたのは、諸外国では教育の課程と考えてやっているところもあります。わが国では教育の課程と考えるよりは、むしろ医師の技術水準の向上のために、医療水準の向上の措置というように考えて医師法で規定しているわけです。したがって、日本においては教育の課程としては扱ってはおりません。  なおただ働き云々という問題と、それから教育内容の充実の問題でございます。そういう意味で、このインターンというものは確かに医療水準の向上のために国が義務づけているということになりますと、ある程度国としてもペイすべきではないかという感じもありますし、また、一部非常に施設としても教育に重点を置き、そのために相当能力がさかれております。したがって、施設側として見ました場合にお荷物になるという点と若干労働力になるという点とございます。したがって、これに対して現在民間その他の施設では若干の手当を出しております。国の施設におきましては現在はその手当は出しておりません。
  433. 高田富之

    高田分科員 ですから考え方が、いまあなたがおっしゃるように日本の場合には教育課程というふうには見ない。実習、修練だということになりますから、非常に無責任に方々の病院に配給してしまうということになるわけです。これは教育の一課程ならばもっと責任を持って文部省あたりで管轄をして、そして教官を置いてきちっとやる、こういうことになるわけです。だから、その点からいっても実質的にそういう期間が短いことになる。教育の最後の仕上げの大事な期間として扱うべきものではないかと思うのですね。金を出してくれないところだけが教育の扱いみたいになっている。それではいけないので、教育の扱いにしても、実際は働くわけですから、実働人員というのはほとんどこういう人たちが病院で働いているのですから、当然相当程度必要な給料を出すということがあたりまえではないかと思うのです。いずれにしましてもいろいろお考えもあるでしょうけれども、いままでのこの制度というものは古くからの因習的なもので、とにかく博士号というのはおかしいですよ。私はしろうとですけれども、不合理だと思うのですよ。博士号なるものをとるために、何年も何年も、二十五で大学を終わって三十ごろまでごろごろしちゃって、それで医者になって働いている年限だってうんと短くなっちゃうのですよ。金のない者はできませんよ。博士号をとったって実際の実力の上では差がありゃしないですよ。だからそれは古くからの因習であると同時に、基礎医学やなんかの教授連中の金もうけの一種の特権みたいになっているのですよ。だからこれらの人たちは反対するのです。なぜこういう制度にしがみつくのです。これらをなくすことは容易じゃないのですね。だからいまの医局制度、それからお医者さんをつくり上げるための制度の中には、そういう封建的なものが非常に強く盤踞していると見なければならないのです。これを改革するためには、諸外国の例を先ほどいろいろ申されましたが、よくお調べになってください。おそらく諸外国でも、かなりの後進国でも相当いまでは力を入れてきているのです。こんなことをやっていると、日本の場合は立ちおくれてきていると思うのです。だからひとつぜひこの機会に新しい諸外国の制度をどんどん導入していくように、そのためには古い封建的な制度や因習を打破していくようにする。そうしてみんながりっぱな医者になって、平等の資格で大衆の前に医者として出られるように、私はそうすべきだと思うのです。ひとつそういう点で根本的に真剣にこの制度の改革に取り組んでいただきたいということを強く要望いたしまして、質問を終わります。
  434. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 次に永末英一君。
  435. 永末英一

    永末分科員 私は社会保険診療問題の中で、特に歯科医療に重点を置いて質問をいたしたいと存じます。  昨年の十月に東畑中医協会長が五十九号諮問案に対する答申案を出しました際、それに付して建議をいたしました。その建議の中で、特に歯科医療の特殊性を配慮して問題を解決するよう努力する、こういうことを申しました。これを受けて、厚生大臣は、この点を取り上げて、よく尊重いたして今後最善を尽くすように考えております、こういう意見を発表されたと伺っておりますが、大臣、相違ございませんか。
  436. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 中医協のほうからそういう御意見をちょうだいいたしまして、この問題は診療報酬体系の適正化を検討いたします際に、十分考えていきたい、かように私お答えをいたしておるわけでありまして、今後この問題は制度の根本的な改正の際に十分取り上げていきたいと思います。
  437. 永末英一

    永末分科員 いまの御答弁を伺いますと、今後という話ですが、現在まで四カ月たっておりますが、その間やられたことはございますか。
  438. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この材料基準の設定の問題は、技術とそれから材料費を分離をして、そして材料の基準を設定する、こういうことであるわけでありますが、そこで材料費の値上がりその他の価格の推移、動向というものを調査いたしております。大体その集計が三月ごろにまとまる予定でございますので、これを診療報酬体系の中にどういうぐあいに取り入れていくか、こういう問題がございますので、今後中央医療協議会にはかりまして、十分御研究を願って、その御答申を尊重して処理してまいりたいと考えております。
  439. 永末英一

    永末分科員 一足飛びに内容を言われましたので、その問題から始めたいと思いますが、昨年の十月以降にそういう調査をやられたように伺っております。しかし、いま伺っておりますと、その調査をことしの三月ごろにまとめて、それからこの中医協にはかってぼちぼちやろう、こういうのですが、たとえば金属材料を中心としての値上がりというのは、去年始まった問題ではございません。すでに数年前からの問題であって、このことはよく御存じだと思う。それをいまのような調査にかけて、三月にもう一ぺんまとめて中医協にかけて、それからどれくらい月がたつかわかりませんが、それからでないとやられない、こういう御方針ですか。
  440. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 永末さんも御存じと思うのでありますが、この歯科の診療報酬だけでなしに、一般の診療報酬体系も、物と技術がミックスされて点数等がきめられておるというものが相当あるわけでございます。しかし、この点につきましては、大いに改善を要すべき点があるのでございまして、むしろ今後におきましては、物と技術を分離して、そして技術を適正に評価するという方向で診療報酬体系をもう一ぺん検討すべきだという考え方が、各方面から強く出ております。そういう意味合いからいたしまして、特に金属材料費が価格的に変動が多いものであるというような観点からいたしまして、今度の診療報酬体系の適正化の際には、ぜひこれを取り入れていきたい、かように考えておるわけでございます。
  441. 永末英一

    永末分科員 いつごろにはそれができるという時期的な見通しをひとつ伺いたい。
  442. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これはただいま中医協でこういう診療報酬体系の適正化あるいは医業の実態調査、甲乙二表の調整でありますとか、そういうような基本的な改善をいたしますためのいろいろな問題点があるわけでありますが、そういう審議の進め方、どういう面から入っていくかということにつきまして、公益委員が中心になりまして、支払い側、医療担当者側両方の意見を調整しながら、今後この審議に入ろうといまやっておる段階でございます。私は、昭和四十二年度の予算の編成は、各種医療保険制度の総合調整あるいは統合の問題とあわせまして、医療制度全般の根本策を次の通常国会にはぜひ提案をして御審議を願いたい、そういう目標で努力をいたしております。
  443. 永末英一

    永末分科員 薬価基準に照らして実際の薬価が安くなっておるということで措置をされた。ところが歯科材料の問題につきましては、上がっておる実態は昨年調査されなくても大体わかっておられたと思う。そうしますと、いまこの材料を扱っておる歯科医は、実質上上がっておる材料のために、点数が固定しておれば実際上の損害を受けておる、こういう関係になっておると思います。そこで、いま厚生大臣が言われたような、いろいろな問題点を総合的に処理をされて、来年度の通常国会にはぜひ出したい、こういう御意見はよく承りました。しかし、その間この材料の値上がり分に対する加算というようなことをやられる御用意はございませんか。
  444. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 先生御承知のところだろうと思いますが、材料費の値上がり等によりまして診療報酬を変えるということになりますと、これが薬価基準と違いまして固定点数になっておる。そうしますと、必然的に診療報酬点数の改正ということになってまいるわけでございまして、薬価基準の場合には、これは薬価基準の値下がり等によりまして、毎年一回ずつ改定する場合には点数表の改正ではございませんので、中央医療協議会の議を経ずに厚生大臣に一任されておりますが、固定点数表の改正ということになりますと、薬価基準と違いまして、中央医療協議会の議を経なければならない、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、歯科医師会のほうの御要望も、薬価基準と同じように材料費を分離するということになれば固定点数と分離されますので、ぜひそういうふうにしていただきたいというふうなことで中央医療協議会で御意見の発表がございました。私どもも賛成である、ぜひそういうふうにしたいということでやっておるわけでございますから、いま直ちに材料費の値上がりによって点数を変えるということになりますと、やはり医療協議会にかけなければならぬという問題があるわけでございますので、これはやはり支払い側、両者の話し合いの上で公益委員にきめていただくということにならなければならないことになるわけでございます。
  445. 永末英一

    永末分科員 厚生大臣、次の通常国会と申しますと、ことしじゅうに解散があるかもしれぬですね。解散がございますと自民党内閣はかわるかもしれません。とにかく次の通常国会というのは、政府はどなたが厚生大臣になられようとも一体でございますから、あなたがそのときの厚生大臣であれば、私は、必ずいままでのような各級機関の議を経てきめられるものと信頼をいたします。たとえあなたがそのときに厚生大臣でなくても、それだけはひとつ全力を注いで申し継いで、時間を引っぱることなく、ぜひ次の年度からはこれを完成する、この御決意のほどをひとつ伺いたい。
  446. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この診療報酬体系の適正化の問題は、中央社会保険医療協議会のほうからも私に対して建議案として提出をされておる問題でございます。したがいまして、中医協自体におきましても、この診療報酬体系の改定の問題につきましては、真剣に取り組んでいこうという御意向でございますので、厚生大臣がかりにかわることがありましても、これは中医協におきましても推進されていく。また政府におきましても、いまのままでは医療保険制度というものが長期的な展望の上に立ちまして財政の健全化なり制度の改善ということができない。やはりそういう根本的な改善をせにゃいかぬということに迫られておる事情もございますので、厚生大臣はかわりましょうとも、この問題は不可避の問題として必ずやらなければならない問題だ、かように考えております。
  447. 永末英一

    永末分科員 ただいまの御決意、貴重なものと承りました。  さて、この社会保険診療が国民皆保険という形で出まして、いわば潜在疾患が顕在化してきたのでございますけれども、歯科疾患というものはどうですか、だんだんふえておりますか、減っておりますか。
  448. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 疾患自体につきましては、現在のところ、私どもはやはり顕在化されておるという意味でふえておると思います。特に国民皆保険によりまして農村、つまり国民健康保険の普及が全国一円にわたりましたので、潜在化されたものが顕在化するという形にはなっておると思います。
  449. 永末英一

    永末分科員 歯科疾患数の総数がふえてきておる。そうするとこれに対して治療に当たる医師というものの数も問題になってくると思うのです。ところが歯科診療の特殊性というのは、医師が持っております治療台数、あるいはそれに対する補助者、介護者の数、こういうものにきわめて左右される性格を持っておると私は思います。そこで疾患数がふえてまいりますと、当然一人一人の医師に対する負担過重と申しますか、それは非常に大きくなってきておるのではないか。大体厚生省は、現在一人当たりの医師がどれくらいの平均稼働時間を一日持っておると見ておられますか、伺いたいと思います。
  450. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 これは推定でございますが、大体一人の歯科医が九時間程度じゃなかろうかという考え方をとっております。
  451. 永末英一

    永末分科員 九時間でも八時間労働の世の中では長いですね。しかし、いろいろな調査、私どもが調べたところでは十時間を越えておる、こういう調査の結果も私は承知をいたしております。  そこで問題は、歯科医師にも若い人と年寄りがございますが、若い人の場合と年寄りの場合と一体収入というものはどういうカーブを描いておると御判断なすっておられるか。
  452. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 大体歯科医師の場合もそれから一般医師の場合も、ある程度共通的なものだろうという推定を私どもはいたしておるわけでございますが、大体体力の充実したころ、三十代から四十代が一番収入も多いし、それだけ患者数も多くとっておるということでございまして、年齢が多くなるにつれましてやはり担当患者数も漸減してくるというふうに見ております。
  453. 永末英一

    永末分科員 日本の企業は年功序列型賃金、こういうので、年をとれば賃金は上がる、官公吏の賃金体系もそのようになっておると思います。ところが、歯科医師なり医師がだんだん年をとってくればくるほど収入が下がる、こういうのでは、いまの日本にある普通の収入カーブとは逆の形をとっている。原因は何だと思われますか。
  454. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 現在の社会保険診療報酬点数表の中身の問題に関連があると思います。つまり、技術を尊重すると先ほど大臣がおっしゃられましたように、固有の技術を尊重するというたてまえを貫くとすれば、技術の高い人に対してはそれだけのそれに応じた報酬が払われるということになるわけでありますが、現在のところ材料が込みに入っておる。したがいまして、件数がふえればふえるほど収入は上がるという形になっておりますので、技術に報いられる報酬にはなっていない。これは歯科、医科を通じましてやはり共通的な問題だろうと思いますので、その辺を含めまして、中央医療協議会で、技術を尊重して正当評価をしようということでこれから審議に入りましょう、こういう形になっておるわけでございます。
  455. 永末英一

    永末分科員 いまのような方向でぜひひとつ御検討願いたいと思いますが、大体先ほどからお話がございましたように、八時間労働をオーバーして労働しなければならぬという状態は異常ではないかと思うわけです。  そこで、一体厚生省は、現在の日本人の歯科疾患、あるいはまた医療を受けるようなケースの数と、それから歯科医師の数というものは一体どの程度必要だとお考えか。
  456. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 実は、医師なり歯科医師の養成計画といいますか、今後の増加数なりなんなりにつきましては私どもの所管外で、医務局のほうでやっておるのでございますが、私のほうで調べた数字によりますと、昭和三十八年末で歯科医師の数は三万四千ちょっとになっておりまして、三十年度から三十九年度までの人口の増加率に比較してみますと、歯科医師の増加率はむろん多いわけでございます。数字で申し上げますと、人口増加率は大体八・九%、ところが歯科医師の増加率は一二・八%ということになりまして、歯科医師一人当たりの人口は大体二千七、八百人になりますので、私の乏しい知識で覚えておるところでは大体欧米先進国に比べまして現在の日本の歯科医師数は人口一人当たりに比べますと、まずまず欧米先進国に比べて遜色がないというふうに考えております。
  457. 永末英一

    永末分科員 遜色がないというのは、大体人並みの八時間労働をやっておればちゃんとやれるのだということがあって遜色がないと言える。九時間も十時間も働かなくちゃならぬというようなことをやっておる状態では——大体人間が十時間働くというのは、よほどたんねんなんでもその内容がやはり粗雑になってくるのではないかというおそれもある。これはわれわれ一般の国民の側からして、やはりいい治療をしてもらいたいと思えばたんねんな治療をしてほしいわけであるので、あなたがいいんだということはちょっと伺えないですが、どうですか。
  458. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 その点は御説の点も私はよくわかるわけでございますし、そのような点は今後やはり点数表の改正その他で十分技術に報いられるような報酬を確立していくということで逐次解決をしていかなければならぬと思います。ただ、歯科医師の数自体につきましては、やはり医師の数と比べまして決して少ないとは言えないわけでございまして、技術内容その他につきましても、欧米先進国に比べてわが国の歯科医師の技術というものは優に先進国並みであるというふうな形になっておるのじゃないかと思っております。
  459. 永末英一

    永末分科員 それは現在の歯科治療の内容に問題があり、日本人の起こしておる歯科疾患の状態にも関連のある問題であって、あなたは医師と比べて比率が同じだから十分だとか、先進諸国はどこか知りませんが、そこにおける歯科疾患の状態とは違うわけですから、技術内容的に見て、ともかく歯科医師が八時間労働でちゃんとやれるような状態になったときには、それは一応のレベルだと思う。その状態がやはり八時間以上労働しなければならぬというような、そういう平均的な値が出ておるなら、それをやはり下げるためには歯科医師の絶対数というものについて配慮を願わなければいかぬのじゃないか、もちろん絶対数だけが問題でなくて、配置の問題もございます。もう一ぺんお答えを願いたい。
  460. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 大体先生の御意見は私は否定するつもりはございませんで、大体御意見のとおりだということでお答え申しておるわけでありますが、ただおそらく、これは歯科医師の方々共通的ないままでの考え方だったと思いますけれども、歯科医師の増加につきまして、確かに日本の現在の歯科医関係の養成機関というのは、医師に比べましてそう多くないわけでございます。これを積極的にふやしていくかどうかということは、これから歯科医業の担当をどのようにしていくかという根本問題にもつながる問題だろうと思います。私が承っておるところでは、一ころよりはやはりもう少し歯科医師の数をふやしたほうがいいのではないかという御意見もあるやに聞いておりますけれども、これはふやしていくがいいか、あるいは現状のままである程度自然の勢いにまかしておいて、個々の開業歯科医師の所得をふやすようにやっていくのがいいかという相関関係の問題だろうと思います。しかし、御指摘のように労働時間が非常に多い。そのために、いわば粗診、粗療に流れるということは、これは国民医療にとって好ましいことではございませんので、その面からの診療報酬点数表の内容の充実ということにつきまして、私どもも十分考えてまいりたい、こう思っております。
  461. 永末英一

    永末分科員 いま診療内容の充実、こういうことがございましたが、御承知のように、歯科医は制限診療というやつでくくられておるわけですね。療養担当規則あるいは治療指針等でくくられておる。一体この制限診療を課しておる目的は何ですか。
  462. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 御承知のように歯科診療につきましては、療養担当規則で使用材料等について一定の制限があるわけでございますが、これは使用材料それ自身につきましての効果といいますか、そういう点にいろいろと段階別に考えなければならないというふうな考え方もとに、現在一定の制限をしておるという形になっておるわけでございます。ただ、この制限診療を今後どのように取り扱っていくかということにつきましては、十分検討しなければならない部分がございますので、われわれとしましては、やはり中央医療協議会の議にも付さなければならない問題でもございますので、積極的に制限診療を今後どのようにやっていくかということにつきましては、検討していく所存でございます。
  463. 永末英一

    永末分科員 はっきりしないのですがね。制限診療をやっていることはいいというお考えか、撤廃する方向で考えるというのか、その辺の意向をひとつ伺いたい。
  464. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 これはいろいろ御意見のあるところでございまして、全部完全に撤廃するのがいいか、あるいは現在のままで逐次撤廃していくようにして、しかも片一方におきまして、いわば差額徴収という形でその間をカバーしていくかどうかということは、議論の分かれるところだろうと思います。この点につきましては、現在直ちに撤廃するとかなんとかいうことは、現在のところは考えられない点でもあろうかと思いますけれども、将来の問題として検討するという形で処理したいと思います。
  465. 永末英一

    永末分科員 制限診療というのをやりますと、第一、患者が医者に対して信頼感を失いますね。たとえば前歯に金のインレーをやった患者が、奥歯、臼歯にインレーを同じ金でやってくれと言うと、それはできない、それは制限診療だからできない、こう言う。保険でできないというだけですよ。そうしますと、どうしたらできるのだと患者が問いますと、もっと金を出せ、保険でできないから金を払ったらできる、そう言いますね。そうしますと、患者側からしますと、このお医者は金もうけをしていやがる、こういう感じがするのではないか。つまり、しろうと目からすれば、なぜ一体前歯に十四金のインレーを許して臼歯に許さないのかわからないのです。そういう医術というのは、患者と医師との相互信頼ということが一番の根本だと思う。その信頼感を打ち破っておるのは、この制限診療だとあなたはお考えになりませんか。
  466. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 そのような御意見があることも私どもはよく承っております。しかし、完全には歯科診療につきまして一切撤廃してしまう、それでどのような材料を使っても全部保険のほうでこれを支払いますということがはたしていいかどうかということについては、十分検討しなければならない問題があると私ども考えておるわけでございます。いわゆる社会保障、医療保障が充実しておるという他の国におきましても、歯科についてある程度の制限診療といいますか、自己負担を認めておるところは相当多いわけでございまして、いわば完全撤廃ということがいいかどうかということについては、現在のところ、私どもはいまなお検討の余地があるというふうに考えておるわけでございます。
  467. 永末英一

    永末分科員 完全撤廃はやらぬというならば、大幅に撤廃する用意がございますか。
  468. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 現在の考え方としては、逐次これは関係団体とも話し合いをしなければならない問題でございまして、歯科医師の方々が、現在の社会保険制度下で御満足のいくような方向で漸進的に改善をしていくという措置をとってまいりたいと思います。
  469. 永末英一

    永末分科員 戦後歯科専門学校が歯科大学になりました。いろいろな新しい技術を研究いたしておるわけです。ところがこの制限診療があるために、大学でいろいろな実習をして、こういう治療方法がある、こういうことになりましても、いよいよ大学を出て開業いたしますと、保険証を持ってきますと保険診療でやるのだ、こうなりますと、この制限診療のワク内でやれ、こういうことになりますね。そうすると、何のために学校で最新の技術を習得したのか、要らぬじゃないか、こういうことになるのです。それはたとえば大学で教えようとしておる教授のほうにいたしましても、おれが一生懸命に研究しておることは、これは国民に実際の益を与えない研究をしておるのだ、こういうことになりますと、日本の歯科技術というものは、きわめて低位に低迷せざるを得ない、こういうおそれがこの制限診療には、私はあると思います。あなたはそう思われませんか。
  470. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 非常に議論の分かれるところだろうと思いますけれども、まあ制限診療ということば自体、いままで慣用として使われておりましたけれども、これは語感自体が非常に問題でございまして、いわば保険給付の制限といいますか、そういうふうな考え方のほうが私どもはいいと思っておるわけでございます。ただ歯科医療自体のプロパーの技術の向上というものと、それからそれに対応しまして、保険のほうでどの程度支払い得るかという問題とは、これは分けて考えていただかなければならないと思うわけでございまして、いわば保険のほうで支払うものはこれだけしかないということで、医学、医術の進歩がおくれるという形は、私どもは避けたい。しかし保険のほうで支払うにつきましても、支払いの限度というものがあるわけでございますので、それと歯科医療の進歩向上を阻害しないような形でどのようにこれをかみ合わせて考えていくかという問題に尽きるのじゃないかと思います。御意見は、ごもっともでございますので、いろいろと検討さしていただきたいと思います。
  471. 永末英一

    永末分科員 いま局長が申しましたように、制限診療の本質は、給付制限にある、私もそう思うのです。おそらくそれははなはだ経済的な、財政的な理由じゃないか。したがってもし本質が給付制限にあるというお考えなら、まさしくそれは、そのことによって医療制限を意味するものではない、こうなるのが論理的には当然の結論ではないか。したがって医療制限をしないということになるならば、給付の制限をした場合に、一体どのようにその間を埋めるかということになれば、たとえばいまは差額徴収ということが行なわれておりますが、言われておりますところの定額給付方式というようなものも御検討になることはできますか、伺いたい。
  472. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 いわゆる差額徴収というものと、御指摘の定額給付方式といいますものとは、必ずしも私は、一緒とは思っておりませんが、私どもとしましては、歯科診療につきまして、差額徴収といいますか、そういう形のものを考える必要性はあるというふうに考えております。
  473. 永末英一

    永末分科員 差額徴収と定額給付とは違うわけである。違うものを検討をいただきたい。  そこでもう一つの問題は、幼少年の診療については、これはなかなか歯科医療の場合、問題があるわけです。大体あんなところへすわらせられて、ぴかぴかしたものを持ってこられますと、子供はいやがる。それでもなだめすかしてこれをやらなければならない。ところが六歳未満の者については少しの加算がございますが、それだけでは、なかなかその苦労に報いるだけの点数になっていないというのが医師の一般の世論であります。しかもまた国民全体の歯科の健康という面からいたしますと、やはりこの幼少年時代に治療を完ぺきならしめておくことが成年になりましてからの歯科疾患に対する大きな予防措置になると思います。したがって、この幼少年に対する特別の点数加算ということについては御検討なすっておられるか、伺いたい。
  474. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 御指摘のとおりだと思います。関係団体からも強い御要望がまいっておりまして、昨年の改正の際には、乳幼児加算で多少これを初診の際に考えるという措置をとったのでございますが、御意見のとおりでもございますし、前向きで検討するように、中央医療協議会でお願いをいたす所存でおります。
  475. 永末英一

    永末分科員 特にこの場合もう一つお願いしておきたいのは、幼少年というのは全部扶養家族であって、現在の保険が被用者保険でございますから、全部自己負担をしなければならない。そこで幼少年については広く国民の歯牙の健康という点からすれば、その給付率の引き上げについても御検討を願いたいと存じます。お答え願います。
  476. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 将来の問題といたしまして、診療報酬体系の合理化なりあるいは現在の保険制度を根本的に検討するという際に、御指摘のように幼少年につきましての歯科疾患についてそのような考え方もとで十分私どもも検討してまいりたいと考えております。
  477. 永末英一

    永末分科員 将来というのは、先ほど厚生大臣の言われた四十二年ですから、あまりおくらさぬようにやってください。  もう一つ伺いたいのは、昨年の三月のいわゆる会計年度末に支払い遅延が関西で起こりました。わずかの日数ではございましたが、そのわずかの日数のために、それを支払う労苦というのは並みたいていではない。たとえば金を借りてきますと、その利子はだれが払うんだ、こういうことで非常な苦労をするわけであって、ことしも年度末が近づきます。ことしは支払い遅延は絶対やらぬという御用意をしておられるかどうか伺いたい。
  478. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医療機関に対しまして診療報酬を支払います場合に、遅延を起こさないように私ども努力をいたしておるわけであります。大体診療から翌々月の二十四、五日ごろには支払いを完了するということにいたしておりまして、四十年の場合をずっと見てまいりましても、おおむねそうなっております。おくれたときでも、二十九日には支払いを完了しておるということでございます。ただ一回、京都及び四府県で翌々々月の二日かに払った事例があるようでございます。しかしそれは異例のことでございまして、大体健康保険法等では支払い期限を法定はいたしておりません。いたしておりませんが、国民健康保険の場合と同じように、いま申し上げたように、診療の翌々月の下旬には、二十四、五ごろまでには支払いが完了する、そういうようにいたしておるわけでありまして、今後も支払い資金等の確保につきましては十分努力をいたしまして、さような事態が起こらぬようにいたしたいと考えております。またしたがいまして、今日まで遅延いたしました場合の利息を払ったという例はございません。要はそういう事態を起こさぬように十分努力してまいる所存であります。また国民健康保険法との関係におきまして、健康保険のほうにおいても支払い期限を法定すべきかどうかという問題につきましては、今後十分私どもも検討していきたいと思っております。
  479. 永末英一

    永末分科員 最後に一つ厚生大臣に伺いたいのでありますが、中央医療協というのは、国民の健康、医療の問題、その内容についていろいろな専門家が入っておりますから、そういうことが十分に論議されてほしいとわれわれ一般国民は思うわけです。ところが何か経済の話ばかりやっていまして、そしてわっしょいわっしょいやっておる。どうもそれでは舞台が違うのではないか。そこで今度健康と医療の懇談会というものをおつくりになったようでありますが、私は現在国民の医療の問題につきましては、普通、医師と歯科医、薬剤師というのでありますけれども、医師のほうも専門がそれぞれ分かれておる。精神科の医師もおれば性病科の医師もおれば、内科医も耳鼻咽喉科もおるわけであります。歯科医というのは、内容はそれぞれありますが、小さな口でございますから一括して考えられる。そうなりますと、いま厚生大臣が、来年の通常国会までには、むずかしい経緯のある問題だけれどもぜひまとめて、ひとつ新しい国民全体に対する健康保険関係について出そう、こういうことでございます。ところが中央医療協には医師会の代表がおりますが、あとの二つの社会保障制度審議会や社会保険審議会にはいない。何か制度やそういう問題ではなくて、医療についてやはり医師、歯科医師等が入って十分に内容について検討する、そういう機関を設ける必要があるとはお考えにはなりませんか。
  480. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 できるだけ関係のあります各方面の権威者の御意見を伺いまして、それを医療行政の上に生かしていくということは大切なことだと考えておりますので、今後はそういう方向で人選等につきましても十分考えたいと思います。
  481. 永末英一

    永末分科員 これで質問は終わりますが、厚生大臣に特に、通常国会を待望いたしておりますから、十分なひとつ御努力を要望しておきます。
  482. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明二日午前十時より開会し、厚生省所管に対する質疑を続行することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後九時三十八分散会