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1966-02-28 第51回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十八日(月曜日)    午前十時十三分開議  出席分科員    主査 大橋 武夫君       川崎 秀二君    倉成  正君       竹内 黎一君    古井 喜實君      茜ケ久保重光君    栗林 三郎君       田口 誠治君    肥田 次郎君       八木  昇君    山花 秀雄君       春日 一幸君    兼務 稻村 隆一君 兼務 川俣 清音君    兼務 滝井 義高君 兼務 中村 重光君    兼務 藤田 高敏君 兼務 八木 一男君  出席国務大臣         自 治 大 臣 永山 忠則君  出席政府委員         警察庁長官   新井  裕君         警  視  監         (警察庁警務局         長)      大津 英男君         警  視  監         (警察庁交通局         長)      高橋 幹夫君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         自治事務官         (大臣官房長) 松島 五郎君         自治事務官         (大臣官房会計         課長)     芦田 一良君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  分科員外出席者         検     事         (大臣官房人事         課長)     辻 辰三郎君         大蔵事務官         (主計官)   佐藤 吉男君         大蔵事務官         (主計官)   吉瀬 維哉君         文部事務官         (大臣官房人事         課長)     清水 成之君         文部事務官         (初等中等教育         局地方課長)  高橋 恒三君         農林技官         (食糧庁総務部         長)      田中  勉君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐成 重範君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    藤繩 正勝君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      矢崎 憲正君     ————————————— 二月二十八日  分科員小松幹君及び今澄勇委員辞任につき、  その補欠として肥田次郎君及び春日一幸君が委  員長指名分科員選任された。 同日  分科員山花秀雄委員辞任につき、その補欠と  して村山喜一君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員村山喜一委員辞任につき、その補欠と  して田原春次君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員田原春次委員辞任につき、その補欠と  して田口誠治君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員肥田次郎委員辞任につき、その補欠と  して茜ケ久保重光君が委員長指名分科員に  選任された。 同日  分科員茜ケ久保重光委員辞任につき、その補  欠として栗林三郎君が委員長指名分科員に  選任された。 同日  分科員栗林三郎君、田口誠治君及び春日一幸君  委員辞任につき、その補欠として小松幹君、山  花秀雄君及び今澄勇君が委員長指名分科員  に選任された。 同日  第五分科員稻村隆一君、第四分科員川俣清音  君、第三分科員滝井義高君、第二分科員中村重  光君、第五分科員藤里局敏君及び第二分科員八  木一男君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算自治省所管  昭和四十一年度特別会計予算自治省所管      ————◇—————
  2. 大橋武夫

    大橋主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十一年度一般会計及び昭和四十一年度特別会計予算中、自治省所管を議題といたします。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員になられたお方は三十分程度にとどめることとなっておりますので、御協力をお願いいたします。  なお、政府当局においても、質疑時間に限りがありますので、答弁は必ず適確に、要領よく、簡潔に行なわれますよう、特に御注意申し上げておきます。  これより順次質疑を許します。肥田次郎君。
  3. 肥田次郎

    肥田分科員 私は、地方自治体赤字問題を中心にして質問をしたいと思います。特にこの赤字問題の中で、最近大きな問題化してきておるところの地方公営企業の中の交通企業に占めるところの問題と申しますか、こういう問題について質問をいたしたいと思うのであります。  私は、まず冒頭に申し上げたいことは、最近の交通機関の推移と申しましょうか、かつては公営企業として地方財源に寄与をしたような性格を持っておったところの路面電車あるいはバス、こういうものが、近時交通難原因になって、そしてこれらが赤字になってきた。そしてそれが結局は地方自治体赤字だ。数年前には、この赤字原因は、さも労働者賃金が高過ぎるからこれが赤字原因になっておる、こういうふうな意見さえ政府部内から出るようになってまいりました。しかし、私は実はそうは考えないのでありまして、先ほどちょっと触れたように、かつての地方公営企業の中の交通事業というものは、地方財政財源になっておった。このことは過去何十年の実績が示しておるのであります。そういう性格のものが今日赤字になったということで、労働者賃金を云々するということは、これは誤りである、こういうふうにまず考えるのであります。そこで、しかし、それはそれとしておいても、今日逐次赤字が累積してきておる事実は、これは事実として認めざるを得ませんから、私はその問題を中心にして、一体、そういう地方公営事業の中の、特に交通事業に対する政府対策というもの、こういう点について、どういうお考えをもって今後地方公営企業に対して処置をされていこうとするのか、この点について、概略でよろしいから、考え方を承りたいと思います。
  4. 柴田護

    柴田(護)政府委員 交通事業と申しましても、千差万別でございまして、路面電車もございますれば、地下鉄もございます。また乗り合い自動車と申しますか、バスもあるわけでございます。私どもは、お話しのように、都市交通事業というものがそれぞれ地方行政の面に果たしてきた役割りを高く評価するものではございますが、やはり時勢がだんだん変わってきておるわけであります。そこで、場所によりましては、やはり交通機関の交代と申しますか、進歩と申しますか、要するに、時代の要請にそぐわなくなった部面が出てきております。たとえば地方都市に行ってみますと、やはりバス事業も、また路面電車事業も、けっこうそれなりに機能を果たしてまいってきておるところもあるのでございますが、大都市になってまいりますと、もはや路面電車というものは逐次交代する、その機能をほかの交通機関に譲らなければならないような時代になっておる。大都市交通ということになってまいりますと、やはり主流は地下鉄自動車交通、これが中心になるのではなかろうか。その経営形態でございますけれども経営形態といたしまして、どのような形態が一番いいかという問題につきましては、先般の地方公営企業制度調査会におきましてもなかなか議論があったところでありますけれども、結論は出なかったのであります。しかし、おおむねのところの御意見は、その答申にもございますように、大都市におきましては公的な機関による一元的運営というものが望ましい、こういうことばで表現をされております。それは世界の大都市交通のどこを見ましても、やはり何らかの意味合いにおける公的色彩機関によって運営されている、こういうことだろうと思うのであります。これは自治省だけでお答えするのはいかがかと思いますけれども、やはり都市交通というものについて、地方公共団体が担当する分野というものは全然ないことはない。相当これはいままでもそうでございましたし、これからもやはり果たすべき役割りがあるのじゃなかろうか。ただ、それの経営形態がいままでのようなやり方でいいのか悪いのかということになりますと、都市によりましてはいろいろな問題があるだろう。民営に譲るべきものもございましょうし、また、公営と申し上げましても、地方団体が直接経営するのを是とする場合もありましょうし、また、答申が言っておりますように、公的第三機関をつくりまして、それによって運営させることが望ましい、こういう場合もあろうと思うのであります。この辺のところは、政府部内におきましてもまだ見解は統一されておりません。今後なお交通を担当いたします関係各省との間に何回か議論を重ねていって、答申を尊重すべき部分があるだろう、こういうふうに考えるのであります。実は、地方公営企業制度調査会を設けました場合に、そういうような方法までも議論を願い、方向を示していただきたいというふうに思ったのでありますけれども答申といたしましては、大都市交通につきましては示されておりますけれども、その他の部分につきましては積極的な方針は示されておらないのでございます。
  5. 肥田次郎

    肥田分科員 実は私が聞いたのは、そういうことでは、説明を聞くのも時間が長くなるし、また、そういうことで意見の相違ができると、そういう問題の議論になりますから、私は、いま地方公営企業のあり方について、ここでどうこうしようという気はないのです。ただ、私自身は考え方はありますよ。本来地方公営企業自治体が手を出したというのは、そもそも民営企業として、交通機関など都市中心にいわゆる民間企業能力がない時分に、その必要性から、国鉄の鉄道と同じような考え方で、そういう着想のもとに手をつけられたことは、そのとおりだと思います。ところが、それがだんだん利益を得るようになってきたのですね。そして、利益をあげるようになってきたために、たとえば一つの例を申し上げても、まず市電を走らした、路面電車を走らした、調子がいいじゃないかということになる。そしてその次に、どうも電気をよそから買ってきておったのでは採算が悪いから、発電所をひとつ市でつくろうじゃないか、それから発電所をつくってみると、電力供給をよその会社にやらしておくのはどうもぐあいが悪いじゃないか、電力供給をやろうじゃないか、こういうことになって、たとえば一つの例を大阪なら大阪にとってみても、電力会社電力供給区域を市で買収をして、そして電力供給をやり出した。発電所もどんどんつくり出した。市電も走らす。どんどんどんどん延長していく。一部公共性の目的に沿うところはあるけれども、実は市の財源という問題を考えずにやっておった事業じゃないと思うのです。それが今日赤字になってきたのですから、赤字になってきたという立場でものを考えるというのは、これは当然必要になってくると思う。ですから私は、本来民営で手をつけられるような、民営能力ができてきたような今日の状態で、公営企業としてこういうものがあっていいのかどうかということに、私自体も考え方がありますけれども、これは相当問題を起こしそうだから、これはいま申しません。  そこで、私がいま問題の中心をしぼってお伺いしたいのは、一体公営企業の中の、特に交通企業に対する赤字対策というものをどういうふうに考えておられるのか、この点をひとつ簡単に答えていただきたいと思います。
  6. 柴田護

    柴田(護)政府委員 私がよけいなことを申し上げまして、失礼いたしました。  交通事業赤字でございますが、やはり前に申し上げましたような考え方に立っておりますので、赤字は早く計画的に整理をして、そして健全な経営ができるように、そういう体制をつくってやりたいと思うのでございます。しかし、一般論として申し上げますならば、都市によりまして態様は違うのでございますけれども路面電車につきましては、やはり逐次ほかの交通機関にその地位を譲るべきものだろう、特に大都市方面におきましてはそういう方向をたどるべきものだろうというふうに考えておるのでございます。地下鉄につきましては、やはり積極的に推進すべきものだろう。しかし、そのためには、地下鉄について何らかの意味における負担区分制度を確立する必要があるだろう。それからバスにつきましては、その事業だけで十分採算が立つのじゃなかろうか、こういうような考え方で、早く体制を整備して、一方、既発生赤字につきましては、これを長期安定した債務に切りかえまして、そして計画的に消していく、こういう方向で整備をしてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  7. 肥田次郎

    肥田分科員 そうすると、現在、路面電車の問題は、大体一つ考え方というのが出てきておるようですが、私がいま問題にしておるのは、大体大都市です。ですから、いま公営路面電車バスが走っておる札幌だとか鹿児島だとか、こういうところを問題にしておるのじゃないのです。問題の焦点をしぼれば、やはり東京横浜名古屋大阪神戸、こういうことになると思うのです。京都もやがて問題になるでしょうがね。それはともかくといたしまして、現在の路面を地下になしつつある東京大阪の問題は別にして、名古屋地下鉄を持っていますが、京都神戸というものについてはどういうようにお考えでしょうか。  それからもう一つ路面電車赤字対策というものは解決するとしても、バスなんかについての赤字対策というものをどういうふうにお考えでしょうか。これは私はちょっと前提を出しておきたいと思うのです。御承知のように、やはり交通難というものが原因をして、いままでたとえば極端な例が、一台で運行ダイヤというものが組まれたものは走れないものですから、結局二台あるいは三台のバスを用意しないとこれが動かせないということになってきた。ところが、輸送力はたいして変わりはない。結局一対三くらいの倍率になって、設備投資というものが必要になってきた。人員が遊ぶ、しかも実際に稼働率は非常に悪い、こういう原因があるのです。ところが、それだけじゃ片づかぬものですから、仕事をやり出すと、よけいなところに手を出すのですね。それで手一ぱいにもかかわらず、観光バスに手を出したり遊覧ハスに手を出したり、夏の夜のラッシュアワーの時期を都内の遊覧ハスをやっているところもあるのですね、私営のバスあるいは公営バスは。こういうことに手を出すから、よけい赤字が出る。これは一つやり方ですから、改める部面があると思うのです。問題点は、そういうようなものを含めて現在の交通機関に対する赤字というものは、地方行政上どういうふうに考えておられるか、これを承っておきたいと思うのです。
  8. 柴田護

    柴田(護)政府委員 東京大阪名古屋地下鉄を持っておりますところにつきましては、路面電車につきましては、これは逐次地下鉄及びバスにその地位を譲るべきものだと私ども考えるのであります。京都神戸——神戸もやはり名古屋と近うございますけれども、これは地下鉄会社でやっておるわけでございます。やはり路面電車の運命というものは、おのずからそのたどる方向は明確じゃなかろうか。横浜とか京都になりますと、若干事情が違うのじゃなかろうかという気持ちがあると思います。バスにつきましては、これは過去の例を見てまいりますると、やはり料金が比較的押えられておったということ、それからコストがだんだんと高くなってきておるといったようなことが一つ原因でありますけれども、しかし、経営合理化ができないかといえば、まだやる余地は十分ある。現に各都市でもワンマン電車とかワンマンバスとかいうものに力を入れております。これは大いにそういう方向で推進していったらいいじゃないかと思うのでございますが、御承知のように、交通事業につきましては、人件費というものが圧倒的に大きなウエートを占めているわけでありますので、やはり人件費をどのようにして合理化をしていくかということの努力は、交通事業経営については欠くことができないものではないかというように考えておるわけであります。
  9. 肥田次郎

    肥田分科員 もうちょっとはっきり答えてください。私は中心をぐっとしぼれば、こういう状態赤字になるのは、これは何も経営計画が悪いとか、いわゆる従事者といいますか、それが働かないということじゃなしに、働こうにも働けないという条件があるのですから、したがって、当然赤字は出る。運賃もそうむちゃくちゃに上げるわけにいかない。そうすると、当然赤字は出てくるじゃないか。出てきた場合に、その赤字というものに対して、地方自治体としてどのようにこれを処置させるのか、わかりやすくいえばこういうことです。
  10. 柴田護

    柴田(護)政府委員 やはり私どもは、すでに生じました赤字は別として、将来の経営において赤字が出ない体制を早くつくる必要があるというように思うのであります。そのためには、やはり人件費合理化というものも一つの柱でありましょうし、それは何もなまに給与をどうこうするという問題ではなくして、それもあるかもしれませんけれども、むしろ全体としての人件費というものをどのように合理化をしていくかという問題であります。そこにやはりワンマンカーの問題も出てくるであろう。また路線の問題もそこに出てくるであろう。東京都の場合を考えますると、確かに御指摘のように、最近におきましては、交通の錯綜ために、運転能率が悪くなっておる。これは表を見ますれば明らかであります。しかし、そうかといって、それじゃいまの東京都のバスが不採算路線ばかりかといいますれば、これはむしろ路線としては非常にいい路線が多いのであります。ただ、最近のバス交通遠距離交通になっておりますので、旧区部だけを中心とした路線だけでは経営がうまくいくかといえば、若干そこに問題がある。やはり相互乗り入れなら相互乗り入れらしく、路線というものにつきましても再検討を加える必要もあるだろうというように考えます。大阪の場合でいいますれば、そこのところは事情が大いに違うだろうと思いますけれども東京の場合にはそういうことがいえると思います。いずれにいたしましても、そういった都市環境の変化からくる問題について、経営合理化上、路線について再検討を加えるということも必要でございますけれども、それはそれといたしまして、やはり経営そのものにつきましても、さらに合理的な経営が成り立ちまするように各般の施策を講じていく必要があるのではなかろうか、かように思うのでございます。そういうことを逐次軌道に乗せてまいりまして、これを将来赤字が出ないような体制をつくり上げますと同時に、すでに出た赤字につきましては、計画的に処理していくという体制をとってまいりたい、かように思います。
  11. 肥田次郎

    肥田分科員 詰めるとこういうことになるのですか。いままでの赤字はそのままそれはそれとしておいて、そして今後の経営合理化というか、そういうものによって採算経営をやっていこう、こういうことになるわけですね。それはそれでいいとして、これはどうなります。いままでの赤字は一体どういうふうに始末をされようという考えでございますか。
  12. 柴田護

    柴田(護)政府委員 本来をいいますならば、いままで出ました赤字というものは、会社経営でいいますならば、減資によってこれは処理すべきものであります。しかし実際は、短期資金でつながれておりますので、これは一応長期資金に振りかえて、長期安定債務に振りかえる、これを経営内部から生み出していくという体制をとりたい。それができない場合が出てくるかもしれません。できない場合には、結局都でいいますならば、都の交通事業というものは、要するに都民の所有でありますから、最終的には都民が責任を負うべきだ、このように考えられます。しかし、できる限りは交通事業内部において処理すべきものだというように考えます。
  13. 肥田次郎

    肥田分科員 たとえば一つの例をとってみても、具体的にはどういうふうにそれをやられますか。現実横浜市が市電の値上げをしたのは、もうこのままでいくと、二月になると従業員の給料が払えない、金のやりくりがつかない、こういうことなんです。そうすると、過去の累積した赤字という問題はさておいて、とにかく曲がりなりにも分離した企業経営をやっていこう、こういう形でやっておるために、もう金の借りるところもない、こういうことになったんだ、こういうことですね。そういう問題が起きてくると思うのですよ。そうすると、過去の処理の方法と、それから現実にまだ解決できない、そういう赤字対策というものに対して、これは運賃を上げさして、それでいわゆる地方自治体運営をやらしていこうというのか、それとももっとほかに何か方法考えてやろうかというのか、そういう点は何もないのですか。
  14. 柴田護

    柴田(護)政府委員 やはり再建ということになりますれば、一番大事なことは、赤字がどんどんたまっていくようでは再建もへちまもないわけでございまして、やはり今後赤字がたまらないのだという体制を早くつくる必要がある。そのためには、経営合理化も必要でありましょうし、運賃がおかしければそれを適正化する必要もございましょうし、また資本費、つまり債務が非常に経営を圧迫しておりますれば、これを借りかえ等の措置によってなしくずしに延ばすということも必要でございましょう。そういうことで今後赤字がふえていかないのだという体制をつくっていく必要がある。  それからすでに生じた赤字というものが、いまお話の、結局現在の俸給が払えるとか払えぬとかいう問題につながるわけでございます。これを早く安定させていかなければどうにもならない。これを短期でつないでおります間においては、これは月給が払えるとか払えぬという問題があります。これをやはり長期の安定した債務に切りかえてやる、こういうことです。この財源をどこに求めるかというのは、将来の経営に求めなければならないでしょうし、減資によって始末していくべきものもありましょうし、それもどうにもならなければ、最終的には住民がかぶらなければならぬということになるだろうと思いますけれども事業におきましては、できるだけその事業内部において始末すべきものだ、こういうように思うのでございます。そのためには、やはり早く短期の不安定な債務長期の安定した債務に切りかえる、再建債の発行を許して長期債務に切りかえるということが必要であろうというように思うのであります。
  15. 肥田次郎

    肥田分科員 私には意見がありますが、結局おっしゃることはこういうことですか。事業採算性をとれるように、その自治体そのもの考えていく、こういうことですね。それに対して格別の国からの援助の手は差し伸べられない。そうすると、結局地方公営企業というものは、採算性のないものは将来どうなるのですか。もう合理化してもだめだというようなものは全部消えていってしまうわけですか。地方自治体の中から非採算公営企業というものは逐次減っていく、そういうふうに理解をしていいのですか。
  16. 柴田護

    柴田(護)政府委員 それは少し言い過ぎでございまして、一般論といたしましては、やはりこういった企業というものは、受益者負担の原則に立ってしかるべきものだ、それが本旨だ。しかし、所によりましてはそうはいかぬものもある。たとえば瀬戸内海の島の交通というようなものを考えてみますれば、どうしてもだれも来てくれはしない。しかたがないからやめなければならぬ。そういう場合には、村民が受益者負担を乱して税金を出しても交通機関を維持していかなければならぬという場合もあろうかと思うのであります。しかしながら、一般論といたしましては、やはり企業という立場に立ちます以上は、受益者負担に徹底し、その原則に立って経営をしていくべきだというように思うのであります。公営企業全般の問題として考えますれば、公営企業の中には一般会計で持つことが適当だと思われるものもあるわけでございまして、そこは一般会計と特別会計との負担の区分けを明確にして、特別会計で負担すべきと考えられるものにつきましては、これは経営合理化ということを前提にして、独立採算の思想を貫いていく、こういうようなあり方で今後運営していくべきものであろうというように思うのでございます。
  17. 肥田次郎

    肥田分科員 これはあまり時間が長くなりますから、これぐらいでやめますが、公営企業全般についてそういう考え方をお持ちですか。たとえば病院だとか水道だとかこういうもの——その他の清掃関係というような問題はこれは処理する方法もあると思うのです。ところが、現実にいままでやっておる水道というようなもの、これはたとえば全然何か別の事業体にしてしまうというふうにやるということになると、料金上の問題も出てくるし、たいへんな問題が出てきますね。これは逐次非採算性が強くなってきますね。病院なんかもそういう傾向にあるのではないでしょうか。私は、交通企業というものは、先ほど私がちょっと触れたように、本来自治体がやるべき性質のものでないものを必要性において自治体が手を出した、そしてそれが何とかもうかるから、どんどん手を伸ばしてきた、そういう時代的変遷というものはあったと思うのですね。病院なんかはそうじゃないと思うのですね。どうしても、いつまでたっても必要性というものは、これはのかないと思うのです。そういうものもやはり同じような考え方の中に入りますか。簡単でいいです。私は、時間がかかりますから、いまここであまりこの問題で議論しようとは思いません。
  18. 柴田護

    柴田(護)政府委員 私どもは、病院は公営企業として扱っておりません。しかし、病院の経営におきましては、収支は明確にすべきものだというように考えておるわけでございます。したがって、病院につきましては、企業ではございませんけれども公営企業の財務に関する規定は、これは適用していく、その間の収支は、その適用を通じて明確にしていく、しかし、御承知のように、病院にはいろいろな経費がございますので、原則としては、病院の費用の中で一般会計で持つべきものをまず明確にして、そして病院の経営でもって始末すべきものは、それは病院の経営の中でまかないなさい、こういう体制をとっておるわけでございます。
  19. 肥田次郎

    肥田分科員 話を次へ進めたいと思います。  先ほど言われたように、路面電車の不要になったもの——不要というよりも、これがかえって交通妨害の要因になるようなものは逐次地下鉄にということで、いわゆる輸送の地位というものは取ってかわるのだ、これはあり得ることだと思うのです。ただ、ここでひとつ、指導上も、いま何とかうまくいっているように見えるけれども、必ずしもスムーズじゃないと思うので、一、二私はその点を指摘しておきたいと思うのです。たとえば、市電というものは、東京においても大阪においてもこれからどういう運命になるか。京都神戸というようなところにおいても大きな問題になると思うのです。ここらに働いておる大ぜいの人は、これはかつて都心の交通中心になっておった人たちだ。いわば長年働いて、年が寄ってきた古女房が粗末に、じゃけんにされて、そして新しい輸送機関が取ってかわる、いわゆる若い女房が取ってかわる、こういうのと同じような感じ方をしておるようです。そして、平均年齢も相当高いですから、そういう人の転換場所というものは、そう簡単には見つからない、こういうことがいま一番大きい問題です。職場に対する愛着心も当然ながら、身の振り方というものが問題になるから、路面電車をめくるということに大きな問題を起こしてきておる。これは将来もずっと続くと思います。ですから、そういう点は、やはり指導上十分な配慮をしてもらわないと、めくることの必要性よりも、それによって起こるところの問題のほうが大きくなる場合、こういうものが出てくると思うのです。これはひとつ要望事項として申し上げておきます。  そこで、だいぶ時間が過ぎましたから、簡単に本題に入りたいと思うのですが、いまあなたが言われた、路面電車が撤去されて、バスも不必要なら、これも逐次影をひそめて、そして地下鉄に移行していく、地下輸送に移行していく、これは趨勢だと思うのです。そこで問題になるのは、これらに対するいわゆる資金的な面を国は一体どうするのかということで、私はその問題を中心にしてお聞きしたいと思うのです。  御承知のように、東京に営団というのがありますね。営団がありますから、これで大部分のものは分担しておる、それから民間もやろうとしておる。それで、東京都も——本来東京都がこれに手を出すということはどうかと私は思いますよ。営団があるのですから、営団に東京都がもっと力を入れてやらしてもいいのですが、現実に手をつけている線がありますから、それはともかくとして、これは、大体現在の計画は五十年の完成ですか、それから名古屋は少しおくれて五十五年のような計画、大阪は、これも東京と同じように大体五十年には計画の百十四、五キロぐらいですか、これを完成させよう、こういうことですね。それで、大阪は、数日前の新聞によりますと、万国博があるから、これを繰り上げて、大体七十キロ前後のものは四十五年の万国博に間に合うように急いで工事を進めたい、こういう計画があるようです。そこで、一体この膨大な資金を要する地下鉄事業地方自治体事業の中でやらしておる。たとえ別会計にしようと何にしようと、やらしておるということに対しては、これはあなたのほうは手放しでおられるとは思わないのですが、いわゆる指導についてどういう根本的な考え方を持っておられるのか。私のほうでさらに申し上げますと、たとえば、運輸省のほうでこれらのものに対する起債その他のあっせんをしておる額、起債のあっせん程度のものでも、ようやく去年、ことしぐらいになって額がふえてきたんです。ことしの計画で見ると、東京都に対しては——これは営団は別ですね、営団は別で、東京都に対しては七十億、名古屋が四十億、大阪が二百七十億、神戸に対して二十億、大体こういうふうな起債のあっせんをするということになっておる。これは自治省のほうでは、こういうことについて何も手助けをしてはおられないのですか。  それからもう一つ、最近の地下鉄建設というものは、大体もう四十億以上です。そうすると、一つの例を大阪にとってみても、大阪は新線建設という計画の中でおそらく九十キロ、百キロ近いと思いますが、百キロというと、これからなお将来の七、八年分といいますか、繰り上げてみたってそれくらいかかりますが、そのころ、はたして四十億ないし四十五億くらいでキロ当たりの地下鉄が建設できるかどうかということも、これは疑問になると思う。そうすると、完成した暁には、地下鉄建設のために、大阪はおそらく四千億あるいは五千億近いいわゆる負債をかかえて、将来の地下鉄運営というものをやっていくことになる。ドイツで金を借りてこようが、どこで金のくめんをしてこようが、利息というものはばく大なものになります。年々の利払いは、七分の利息にしたって年間三百五十億ですね。これはどんなに政策運賃——現在政策運賃ですが、この運賃でペイしようと計画しても、これはできないことなんですね。そうすると、大阪市、あるいはこれから新線の地下鉄を建設しようとするところは、交通難解消という大きな国家的目的のために、その地域の市民は永久にこれを負担しなければならぬということになるのか、国はこれらに対してどういうふうな考え方をもって財政的援助をやろうとしておられるのか、これは容易ならぬ問題だと私は思うのです。この点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  20. 柴田護

    柴田(護)政府委員 まさにお話のとおりと思うのでございます。自治省は何をしておるかとおっしゃいますけれども地下鉄に対する地方債のあっぜんは、全部私のほうでやっております。地方債計画には一応の額があがっておりますけれども、運用上は、地下鉄の建設は早ければ早いほどいいにきまっておるわけでありますから、資金の許す範囲、それから工事のめどがつき次第、どんどん工事が進められますように、弾力的な態度で進んでまいっております。いままでもそのような態度をとってまいりましたし、今後もそのような態度をとってまいるつもりであります。つまり、仕事ができるところからどんどん仕事をやっていきたい、こういうことでございます。しかし、お話のように、どんどん借金をして仕事をしていけば、借金がたまってたまらぬじゃないかということでありますが、そのとおりであります。私どもは、やはり地下鉄事業というものの考え方でございますけれども、この地下鉄事業というのは、地下道に電車が走っているんだ、こういう考え方をとるべきじゃなかろうか、そうすると、地下道というものにつきましては、やはり道路と同じような考え方をとったらどうだろう、つまり、これはトンネルをつくる経費も全部運賃にはね返すところに問題がある、トンネルをつくります部分については、やはり負担制度という考え方を取り入れてくるべきものだろう、このように思うのでございまして、調査会の答申でも同じような考え方が出ております。そういうような考え方で、実はことしも予算折衝に当たったのでございまして、運輸省にもそういう話をしてまいりました。その負担制度ということになってまいりますと、私どもの所管ではございませんで、これは運輸省の所管であります。ところが、運輸省ではこれに議論がございまして、なかなかその線に乗ってくれない。大蔵省でも、その考え方につきまして、考え方はわかるけれども、いまここですぐに踏み切るにはなお少し問題があるような気がする、そこで、その問題につきましては、できるだけすみやかに検討し、結論を出す、こういうことになっております。ことしは、とりあえず従来の利子補給金的な考え方に立っておりまする補助金を倍にする、こういうことでおさめたわけでございます。これで問題が片づこうとは思いません。今後の地下鉄の問題を考えますならば、どうしてもやはり負担制度に移行していかざるを得ない、つまり、国と一般会計、それから地下鉄事業そのものの負担、この三等分といいますか、三者負担のような考え方をとっていくべきものだろう、そういたしますれば、金利負担等につきましても非常に助かるわけであります。経営もある程度安定性を取り戻すのじゃなかろうかというふうに思うのでございます。
  21. 肥田次郎

    肥田分科員 確かにお考えはりっぱです。そういう形でないと、建設に対する資金を、地方債をあっぜんしようと、融資をあっせんしようと、利息はやはりみな地下鉄なら地下鉄という会計のワクの中で払うのですから、これはもう永久に運賃じゃペイできるものではないのです。あなたもそうお考えでしょう。たとえば、地下鉄運賃を幾ら上げてみても、いわゆる運賃のワクの中と申しましょうか、そういう運賃政策の中できめられた運賃というもので絶対にペイできるものじゃない。そうすると、利払いが精一ぱいということになるのじゃないですか。ですから、あなたの言われるように、そういうお考え方で今後処理してもらえるということなら、一応建設計画と、それから事業の今後の経営というものに対するいわゆる目安というものは立つと思う。  そこで大臣、これは重大な問題でございます。いままで、いろいろと交通問題が起これば、交通問題の閣僚懇談会だとかなんとかいうのができました。ところが、これはネコの目のように変わりまして、たいした効果があらわれぬ間にその名前も消えちゃう、こういうことでした。いまおっしゃったように、こういう地下鉄建設というものは、実は国の事業としてやるべき性質のものを、地方自治体交通困難を緩和する非常手段としてやっておる、こういうことになります。工事の進め方その他の問題については、これはいろいろと問題もあるようです。たとえば、大阪市は、そんなにまであわてて路面をめくって、地下鉄地下鉄で、地下鉄にばく大な投資をしてうき身をやつさぬでもいいじゃないか、もう少しテンポがゆるまってもいいじゃないかというような気がしますよ。町という町をひっくり返して、そしてどんどんどんどん、それだけの建設に大阪市が全力をあげているというような姿は、言い分はあるでしょう、交通問題を解消するにはこれ以外の方法はないのだという、市長なんかそういうことを言っていますから、その考え方はわかりますが、しかし、現実に将来かかえなければならぬところの四千億、五千億という地下鉄赤字問題を一体どう計画的に処理しようとしておるのか、これは非常に疑問なんです。ですから、そういう問題について、いま私は、国としてのこれに対するはっきりした考え方を示してもらわなければいかぬ。それでなかったら、私たちはもう大阪地下鉄建設はやめなさいという運動を起こさなければならぬと思うのですよ。地下鉄だけに四千億も五千億もの金を投じて、そしてそれが永久に大阪市民につきまとってくる。こういう大きな問題ですから、やめるわけにはいかぬだろうけれども、しかし、テンポをゆるめたっていい。四十五年の万国博までにこれだけのものはどうしてもやるのだといっても、そんなに万国博と地下鉄と関係のあるものじゃないと思う。しかし、それはやるならやるでいいのです。やるならやるでいいから、国からの対策というものを明確に示してもらって、その上で将来の見通しも立てた計画ということなら、これは必要性のある問題ですから、やっていいと私は思うのです。ずっと将来その計画で行ってもらわなければなりませんし、計画を実現するために努力をしていただかなければなりませんから、ひとつ、大臣の権威のある御返事を承りたいのです。
  22. 永山忠則

    ○永山国務大臣 局長がお答えいたしましたように、地下鉄は、道路に匹敵するような、ことにトンネルを掘るような相当の費用の要る道路に即するような性格を持っておるものでございますので、ぜひ負担区分を確立をいたして、国もこれに援助のできる体制を確立するように、鋭意この予算を通じても努力は続けたわけでございまして、とりあえず利子補給をぜひやりたいという考えで折衝を続けましたが、国と地方の負担区分等の基本的問題もあるので、本年は、運輸省のほうで旧来の補助金の四億を倍の八億にいたしまして、利子補給の意味を含めた補助をいたして、そうして基本的に問題を掘り下げてやろうという方向で進んでおりますので、鋭意努力を続けたいと考えておるのでございます。ことに、大阪地下鉄路面電車との総合運営によりまして、配置転換等も成績をあげられるのではないかというようにも考えておりますので、東京都のような状態のところは路面電車バス及び地下鉄等の総合運営によりまして、配置転換等によって、従業者に不安を与えないような方向に進む上においても非常に大切なことであると考えます。政府といたしましては、お説のような方向に向かって、今後さらにさらに努力を続けたいと存ずる次第でございます。
  23. 肥田次郎

    肥田分科員 大臣、これはひとつはっきりと確認をさしてもらいたいのですが、財政局長もおっしゃったように、少なくとも地下鉄というものに対する概念は、いわゆる地下を走る電車と、それからいわゆる電車が走るトンネルといいましょうか、これはいまの状態では別なものなんだ、いわゆる地下トンネルというものは国がつくらなければならぬ性質のものなんだ、こういうふうに理解をしてよろしいのですね。ですから、これはどういうことになるかというと、地下トンネルというものは、地上が交通難でふくそうしてくるから、どうしても地下道が必要になってくる、そのために地下トンネルをつくる、それにちょうど路面電車が走っておったと同じように、今度地下電車が走り出す、そうすると、建設その他の条件というものは、路面電車と同じような条件でいいわけなんですよ。たとえば、公営の場合は、土地を借りる必要もないのですが、一応の一つ企業の姿と見て、土地を借りて、そして電車を走らす、その施設だけを市なら市でやればよろしい、地下トンネル、地下道は国がつくる、そういう性格のものなんだ。こういうふうに理解をしてよろしいのですね。これにひとつはっきり御返事をいただきたいと思うのです。というのは、大臣、なかなかこれは古いことで、もうだいぶ改善されてきましたが、たとえば、トンネルがありますね。トンネルには固定資産税がかかっているのですよ。そして、トンネルのドーム型のささえているこれにも固定資産税がかかりていたのです。ところが、トンネルに固定資産税をかけるのはおかしいじゃないか。ただ、道床、電車を走らすレールと道だけには税金をかけられてもしかたがない。しかし、トンネルのいわゆるドーム、これは道をささえているものです。その道をささえているものに税金をかけるなんておかしいじゃないかというので、いまその税金はなくなったのです。そういう経過がありますから、その点の考え方というものを私ははっきりしておいていただきたい。そうしないと、せっかくああいういいことをおっしゃっていただいたのですから……。この問題は、先ほど大臣が言われましたが、運輸省なんて、そんな力のあるものじゃないのです。運輸省というものは、いわゆる免許事項やその他で追い回されて、研究なんて言いわけにしか、ちょっぴりしかやっていない。しかし、今日の交通問題は、本質的に国が始末しなければどうにもできない問題です。運輸省というようなものではできる性質のものじゃないのです。運輸省に交通政策というものはない。運輸省に交通政策がないということは、国に交通政策がないということになります。ですから、国として、はっきり交通政策というものの本義を明確にしてもらう、こういうことでないと、今後の交通問題は処理できないと私は思っているのです。たまたま地下鉄というような問題だけをきょうは取り上げましたが、その点、大臣もそうだとずばり言ってもらえばそれでけっこうです。
  24. 永山忠則

    ○永山国務大臣 局長が申しましたように、国と地方が負担区分を明らかにいたしまして、国が援助をいたして、交通事業経営に対して積極的な姿勢で進むことが絶対必要であると考えておるものでございます。
  25. 肥田次郎

    肥田分科員 ひとつそういう線で御努力をいただきたいと思います。  私の質問は、これで終わります。
  26. 大橋武夫

    大橋主査 藤田高敏君。
  27. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 私は今日の地方財政状態の中における工場誘致条例の適否について質問をさせてもらいたいと思います。  実は、私は昨年のこの予算分科会におきましても、この問題について質問をしたところでございますが、一年の経過の中で、大臣が御答弁になり、あるいは財政局長が御答弁になられたことが、具体的な施策の中でどうもあらわれてきていない。また、行政指導としてもこの分科会の中で方向づけられたことが具体的に行政措置の中でもあまり生かされてきておらないように思うわけであります。そこで、きょうはいま少しこの条例ができておる法的根拠、さらには所管省である自治省自身の基本的な考え方というものをいま一度過去にさかのぼってお尋ねをしてみたいと思うわけであります。  そこでまずお尋ねをいたしたいのは、全国の多くの市町村、というよりも主として市であろうと思います、それと県であろうと思うわけですが、これらの自治体において工場誘致条例を設置しておるわけですが、これは地方税法の六条に基づいて条例をつくっておると理解しておるわけですが、そのように解釈してよろしいかどうか。
  28. 細郷道一

    細郷政府委員 工場誘致条例といってもいろいろ中身はあると思いますが、税の減免、課税免除、不均一の課税というようなものでございますと、多くの場合は地方税法六条に基づくものでございます。
  29. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 私の尋ねておりますのは、いわゆる税の減免措置です。そこで、いまの御答弁にもありましたように、地方税法の六条ということになりますと、これは申し上げるまでもないところでありますが、地方税法の六条には「地方団体は、公益上その他の事由に因り課税を不適当とする場合においては、課税をしないことができる。」二項では「地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。」こういうふうになっております。そこで、私はこの工場誘致条例というものは六条を適用する限り、公益上必要があると認められない限り、この種の条例によって固定資産税を中心とする税の免除をすることができないと思うわけですが、この公益上というのはどういうものが具体的に対象となるのか。また地方税法第六条の基本的な立法の趣旨というのはどういうものか、これについてお答えをいただきたい。
  30. 細郷道一

    細郷政府委員 第一項では「公益上その他の事由に因り課税を不適当とする場合においては、課税をしないことができる。」第二項は「必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。」という規定でございます。そこで、地方団体がその判断をそれぞれ団体においていたすわけでございますが、多くの場合には、たとえば工場が来ることによってその地域の産業水準が上がるとか、産業構成が変わるとか、あるいは雇用者がそれによって雇われていくとか、それによってその市町村内に金が落ちるとか、そういったようなことを総合的に判断いたしまして、市町村あるいは府県がこれを進めておるものでございます。
  31. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 私はその解釈自身についてはあとで言及したいと思いますが、かりに百歩譲って、いま局長が御答弁になられたような、そういうごく抽象的な理解の上で、この第六条を適用する場合といえども、今日のように地方財政が非常に窮迫を告げておる、そうしてそれぞれの自治体は財政再建法の準用団体ではないけれども、法の適用によって赤字処理をしなければいかぬ、こういうふうに個々の地方財政というものは非常に窮迫をしておる。そういう状態の中においても、この六条を適用して工場誘致条例というものを存続することが適当な行政であるとお考えになられるかどうか。この点についての見解をただしたい。
  32. 細郷道一

    細郷政府委員 それは指導の考え方の問題でございますが、私どもは従来から、工場誘致条例を設置する場合に、直ちに税の減免という形でやるよりは、むしろ工場が来ることによって必要とされるいろいろな行政施設、そういう施設の面での援助、たとえて言えば道路をつくっていくとか、あるいは下水をつくるとか、あるいは住宅をつくるとか、そういったような歳出面での援助をする方法のほうが望ましい、こういう考え方で指導をいたしてまいっておりますし、現在もその考えを持っております。ただ新産都市でありますとか、低開発地でありますとかいったような特殊な地帯につきましては、特にこの六条の規定のあった場合について財政上の援助をする、交付税の基準収入等において援助をするという法律の規定がございますので、そういった部分につきましては、それによった場合には交付税等においても応援をするというたてまえをとっております。
  33. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 この地方税法ができた当時の立法趣旨というものは、そういう工場誘致を対象とするようなところまで、この法律の趣旨というものは考えてなかったのじゃなかろうか。公益上の理由によって税の免除を行なうとか、あるいは不均一の課税をするという場合の解釈は、いま少し狭義の意味に解されておったのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  34. 細郷道一

    細郷政府委員 この規定は非常に古くからある規定でございます。ただいまの地方税法のできます以前からある規定でございます。したがいまして、同じ公益上の判断につきましても、やはり時代とともに、社会、経済の情勢によって動いてくるのはやむを得ないことだと思っております。ただ、当初素朴な考えにおきましては、たとえば、いまでもそういう条例を設定しておるところがございますが、自動車税におきまして、救急自動車といったようなものについては減免をするというような事例がございます。それなどは最も素朴な形におけるこの六条の適用のものであろうと考えております。
  35. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 法律ができてから情勢の変化に沿って法律の解釈のワクが拡大する場合がある、これは私は抽象的な考え方としては理解ができるわけです。しかし、先ほども質問をしたように、自治体自身がもう財政的に非常に困っておる、そういう中でこういう工場誘致条例というものをそのまま存続することがいいのか悪いのか、これは第六条の税法の趣旨に照らして好ましい状態であるかどうか、このことについての見解をお尋ねしたいのと同時に、財政局長もお見えになっておるようでございますので、ぜひ、財政局長の立場から見てもそういう工場誘致条例を存続さすことが適当であるかどうか、これについて考えを聞かしてもらいたい。
  36. 細郷道一

    細郷政府委員 工場誘致条例自体は中身はいろいろきめ方があるわけでございまして、いきなり税の減免という方法もあるし、また歳出面で、施設の面で応援をするという行き方もあろうと思うのであります。したがいまして、そのどちらによるかということは、地方団体がそれぞれ総合的に判断をし、議会にかけてこれをきめていくべきものであろうと考えております。ただ、私どもは従来からの指導のしかたとしては、先ほど申し上げたように、どちらかと言えば歳出の面でこれを行なうことが望ましいというふうな考え方の指導をいたしておるのでございます。
  37. 柴田護

    柴田(護)政府委員 大体私ども税務局長からお答えいたしましたと同じ考え方を持っておるわけでございます。赤字になったから工場誘致条例をすぐやめるということがいいか悪いかという問題は、その地方地方の実情に応じて判断すべき問題であろうと思っておるのでございます。そもそもそういう条例をつくることがいいか悪いかという問題につきましても、やはり自治のたてまえに立って、それを尊重して判断をすべきものであろう。ただ、つくりました場合の始末のしかたといたしましては、やはり税の減免というような形じゃなくして、それを経費の面でそれに見合うものを出していくというほうが自治運営上も望ましいのじゃなかろうか、こういうことで指導もいたしてまいりましたし、そういう考え方に立っておるわけでございます。
  38. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 そういう方向で指導をされておるということですが、そうしますと、いま全国的に——市だけでけっこうですが、全国市町村の中で内容は若干の違いはありましょうけれども、私は、主として税の減免措置をとっておるところのほうが多いと思うわけですけれども、全体的にこの工場誘致条例をつくっておる市はどれだけあって、その中で今度は施設補助によってこの六条を適用しておるものと、税の減免を中心に適用しておるものとの区分ですね、比率についてどういうふうに集約をされておるか、お聞かせいただきたい。
  39. 細郷道一

    細郷政府委員 いろいろな形があるわけでございますが、税の減免をしております団体は、三十九年度の調べで見ますと、市町村で約二百五十団体、その金額で十三億六千万円、こういうことになっております。
  40. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 これは税のほうですか。
  41. 細郷道一

    細郷政府委員 はい。
  42. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 自治省考え方は大体わかったわけですが、そうしますと、一つ具体的なことでお尋ねをしたいのですが、昭和三十年の十月十八日に自治庁の税務部長通達として都道府県知事あてに通達が出ております。いわゆる「工場誘致等に伴う地方税の減免等について」この趣旨は今日もなおかつ生きておるわけですか。そうして、これを中心に行政指導が行なわれておるというふうに理解してよろしいかどうか。
  43. 細郷道一

    細郷政府委員 基本的にはそのとおりでございます。
  44. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 念のためにこの通達を読んでみますと、「工場誘致等に伴う地方税の減免等について」「標記については、さきに昭和二十六年四月十六日付地財委税第八二三号の二各都道府県総務部長あて、地方財政委員会事務局税務部長通達で、その取扱を示したところであるが、なお、左記事項に留意の上、その取扱に遺憾のないようにせられたい。」として、「一 地方税法第六条の規定に基く公益等の事由に因る地方税の課税免除等の措置はそれがひろく住民一般の利益を増進するものである場合に限り、当該地方団体の財政上支障のない範囲内においてのみなされるべきものであること。」いわゆるこの第六条を適用する場合にも、その一つの限界というものは、「当該地方団体の財政上支障のない範囲内」というふうに一つの条件がはっきり出ておると思うのです。先ほどからも私が質問をしておりますが、この点については財政上非常に困って、そうして法の適用を受けて準用団体になって利子補給をされる、再建債によって財政再建をしなければいけないというような状態にまで来ておるところに対して、この工場誘致条例というものはそのまま残っておるということになると、いま税務局長が御答弁になられて、この通達が生きておるとは言うけれども現実には殺された形で行政指導がなされておるのじゃないか。また、その実態があるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。この点についてはどうか。時間の関係がありますので全部なにしますが、その点がこの質問の第一点。  第二点が、この通達では「二 従って、特定の工場等を誘致するために、当該工場等に係る地方税について課税免除等の措置をとることができるものは、それが右の」——いまの広く住民一般の利益を増進するものであるという「右の事由に該当する場合のみに限られるべきであり、単に特定の企業体の利便のためにこの規定を発動するが如きは、法の趣旨に反するものであること。」これは特定な企業に便益を与えるというだけの目的でやるのは法律の趣旨にむしろ反しておるという積極的な法律解釈についての見解が述べられておるわけです。私は先ほどから税務局長の見解を聞いておると、この三十年に出した通達の第二項の基本的な考え方といまの御答弁が食い違っておるように思う。この点についてはどうか。  第三点は、通達の第三として「三 一部の地方団体においては、特定の工場等を誘致するに急なるのあまり、法旨に反し、競って地方税の課税免除等の措置をとっている向があるやに仄聞するが、このことについては過般の第二十二国会においても、地方財政窮迫の折から当を失するものとして強くその自重を要望されていたところであり、今後においてなお、このような措置が継続されるときは、地方財政全般についての不信を招くこととなるので、充分の留意を払われたいこと。」こういうふうに第三の事項では通達が出ておるわけであります。したがって、この三十年に出した段階では、やはり全国的にはまだ私は工場誘地条例をそれぞれの自治体が制定をしよう、つくっていこうという空気が顕著にあらわれてきた段階だと思うのです。ですから、そういう段階で自治省は、それでいま全国で先ほどの答弁にもあったように二百五十団体からの自治団体が条例をつくっておる、そういうことになっては地方財政上これはゆゆしい問題だ、こういうことを私は国会も自治省も予見をされてこの通達を出したと思うのです。ところが、結果的にはそういうことにならなかった。ですから、私は先ほどの局長の御答弁を聞いておると、こういう一貫した三十年の通達の趣旨というものが現実に行政指導の中では生かされていないと思うのですが、その見解について、三点についてお聞かせを願いたい。
  45. 細郷道一

    細郷政府委員 基本的には従来の通達のとおりに指導いたしておるわけでございます。ここにございますように、広く住民一般の利益を増進するものである場合に限って、財政上支障のない範囲において行なわれる、広く一般住民の利益を増進する考え方の問題があると思うのであります。工場等が来ることによりまして、そこの産業構造が是正され、あるいはそこの住民が雇用され、その地域内に利益が落ちる。またそれによって、そこの市町村の、いま申し上げたような利益が将来にわたって残ってくるというようなことと現実の財政の状況とのかね合いの判断を、市町村自身が理事者も議会も交えてこれをきめていく、こういう考え方に立っておるわけでございます。  それから二番目のものも、その考え方によって法の適用を趣旨として誤らないように、三番目は、競争してそういうようなことをやめよ、これはこの通達をまつまでもなく、自治体というものは自治体独自の考えで、独自の判断をすべきものである。隣がやったからうちもやるというような安易な競争は排除すべきだ、こういう考え方でございまして、いずれもいまでもこういう考え方のもとでやっておるものでございます。
  46. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 それではお尋ねしますが、それは私は、一般的な法律解釈として、経済情勢の推移によって具体的にワクが拡張解釈されることもあろうかと思うのです。しかし、現実地方財政は非常に窮迫をしておる。そうしてここ二、三年来特に自治体の財政が困窮化し、まあことしでいえば、国の財政は公債発行によらなければ、国の財政再建が極端に言えばできない。片や自治体はいまいろいろ問題になっておる固定資産税の引き上げを、公約を無視してやって、それぞれの自治体に財政収入をふやさなければいかぬ、こういうような事態にまでなっておる今日の現実の情勢の中で、いま局長が言われたような一般的な理屈を当てはめて、そうして特定な企業から、まあ個々のケースによって違うと思いますが、多いところでは一年間に六千万もあるいは一億も、あるいはそれ以上も当然取れるべき正当な、税法のたてまえからいえば当然自治体に入るべき税収入を、工場誘地条例によって実質的には免除をしておる。こういうことは今日の地方財政の実態に照らしていいことかどうか、存続すべきかそれとも廃止する方向で処置することが望ましいかどうか、この点についての見解を聞かしてもらいたい。
  47. 細郷道一

    細郷政府委員 地方自治のたてまえをどういうふうに考えるかという問題が基本にあると思います。自治体がそれぞれ住民の意思を代表する議会を持ってどういうふうに自治体運営をやっていくかという場合に、現行の地方税法のみならず、地方の関係の長等におきましても、自治体の判断の幅がある程度認められておるわけでございます。したがいまして、その幅と自治体自体の判断というものの問題がそれぞれ団体によって決定をされている、こういうふうに考えるわけでございまして、財政上の問題をどう考えるか、現在の段階でその収支を考えるか、将来にわたって、その市町村の将来の財政の問題を考えていくのかといったような点もあわせてその団体において考慮の上で判断を下すことが望ましい、こう考えておるわけであります。ただ、御承知のように国の出します地方交付税等の関係におきましては、特定の新産都その他の場合以外には、工場の誘致条例をつくって減収になったからといってその分を補てんするというようなことはいたしていないわけでございますから、そこらは団体の独自の判断にまつことになるわけでございます。
  48. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 非常に私の質問の設定のしかたも悪いのかもわかりませんけれども、的確なお答えになっていないと思うんですね。私はやはりその条例を、AだったらAという市が財政再建法の適用を受けてまで財政再建をやらなければいかぬというような状態にまでなっておるような実態にある、あるいは全国的な趨勢から見ても非常に財政事情が悪い、そういう市町村においてもこのような工場誘致条例を存続さして税を免除するということがいいのかどうか、その率直な、そのものずばりでお答え願いたいと思うのです。
  49. 細郷道一

    細郷政府委員 なお、先ほど二百五十団体と申しましたが、そのうちに、先ほど来申し上げております新産都市法その他の特別な法律によってその地域の中で行なっておりますものが百六団体ございます。したがいまして、それ以外が一般的な規定に基づく団体になるわけでございます。  なお、いまお話しの赤字の団体が工場誘致条例をつくっておることは適当でないのではないか。赤字の度合いにもよると思います。よると思いますが、一般的に赤字になってもなおかつ工場誘致のための条例で減免をするのかということになりますと、常識論としてはそれは避けたらいいだろうという議論は出るだろうと思います。しかしながら、その団体が赤字を解消するのは、過去の赤字を解消するとともに、将来にわたってその団体としてやはり伸びていかなければならないわけでございまして、そういう将来のその市町村の発展ということを考えました場合に、これをどう判断して取捨していくかというところにポイントがあるように思います。
  50. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 いまの局長の答弁を聞いておりますと、二百五十団体の中に新産都関係が百六ある。この百六団体は私が先ほどから指摘をしておる工場誘致条例の該当市町村とは別なのだ、この百六というのは、新産都の関係だから新産都関係の中で処置をして、それ以外が私が指摘をしておる工場誘致条例の該当市になるのだというような御答弁だと思うのです。私はそうじゃないと思う。二百五十団体というものはみな私が指摘しておるような工場誘致条例を適用しておるんですよ。そうして、むしろ、これは去年の予算分科会柴田財政局長は、いわゆる新産都市の建設関係の租税の関係については、いわゆるこの新産都市法の線で集約をしていくのだ、いわば工場誘致条例というようなものはなるべく廃止する方向で指導をして、そうして新産都関係は新産都法の線のワクの中で税の問題についても処置するのだ、こういうことをはっきり言われておりますし、私はそのことは正しいと思うのです。そしてまた、その前段として、柴田局長の答弁の中には、企業の誘致条例については、在来から私どもといたしましては、こういう条例を設けて税金をまけるという形ではなくて、むしろ工場が来ることによって必要となるいわゆる道路、施設、そういう外的条件の整備に自治体としては努力すべきであって、税をまけるというやり方はよろしくないということを財政局長は言われておるわけですよ。私は方向としては正しいと思うのです。そういう点からいくと、私は、少なくとも今日の地方財政の実態から見て、工場誘致条例というものは、特に新産業都市に指定をされた自治体の中に工場誘致条例というものがあるとすれば、そういうものは新産業都市法のワクの中で処置をしていくということで、在来の工場誘致条例による免税措置というようなものは、これはやはり可及的に廃止の方向で行政指導をすることが望ましいのじゃないかと思うわけですが、その点についてはどうでしょうか。これはひとつ柴田さんの見解も聞かしてもらいたい。
  51. 細郷道一

    細郷政府委員 最初に申し上げましたように、六条によって減免の根拠があるけれども、工場誘致にあたって、まっすぐ減免をするというよりは、むしろ歳出面において議論を重ねた末の措置をされるほうが望ましいという基本的な指導方針は最初に申し上げたとおりでございます。その考え方によって、先ほどお話の出た通達も出ておりますし、また現在もその考えで進んでおるわけであります。
  52. 柴田護

    柴田(護)政府委員 私どもの財政的立場からの見解は、昨年本予算委員会分科会でお答え申し上げましたことと変わっておりません。ただ、財政再建団体になりました場合に、すぐ条例を廃止できるかということになりますと、地方的問題があるだろう、やはり理屈としてはなるべくはそういうものはないのがいいのですけれども、もう実際につくってしまったものを、いますぐやめられるかということになりますれば、そこには純粋の理屈以外の行政上の問題、現実問題としていろいろな問題が出てまいるであろう、そうしますと、そこの処理のしかたというものはそうしゃくし定木に割り切るわけにいかないだろうと思うのであります。現に例をあげますならば、倉敷市、これは工場誘致条例を非常にはなやかにやった例であります。ところが財政の弾力が失われて赤字になってしまった。それも、そこですぐ工場誘致条例がなくなるかというとそうはまいりません。やはり工場誘致条例というものを今後の適用につきましては慎重に扱うけれども、在来あったものにつきましては、やはり信義を尊重するという態度をもって財政再建計画の方法をとったわけでございます。したがいまして、一般論一般論でありますけれども、また指導の一般論もそうでございますが、具体的な問題になってまいりますれば、その都市なりが置かれておる環境、事情に即応して適切な措置をとってまいらなければならぬだろう、かように考えるわけであります。
  53. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 基本的な考え方については、税の減免によるような誘致条例ではなくて、現在あるような工場誘致条例については、むしろ廃止する方向で指導すべきである、こういう点については自治省の皆さんのお考え方もそのようにあると思うのですが、そうしますと、新産都の指定を受けた地域については、いわゆる当然の理屈として税の減免等については、新産都市法のワクの中で、条件の中で善処をしていくというように解釈してよろしいかどうか。
  54. 柴田護

    柴田(護)政府委員 これは私どもが口にすべきことじゃないかもしれませんけれども、新産都の法律自身にも、純粋理論上の立場から言いますれば私どもは疑義を持つのであります。しかし、一たん国会の権威をもちまして成立されたものでございますので、それはその限りにおいて尊重すべきもの、かように考える次第であります。
  55. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 いまの局長の答弁を聞いても私は非常にはっきりしてきておると思います。やはり地方財政を預かる立場から言えば、こういう税の減免、当然徴収すべき税を特別に免除をして企業誘致をするようなことは必ずしも好ましい措置でないという見解が私は披瀝されたと思う。これは私ども非常に基本的に賛成であります。したがって、新産業都市建設促進法ができて若干税を配慮するような要素が入っておりますが、これはいま柴田局長が言われたように、一応その善悪はともかくとして、現実的にそういう法律ができておるということになれば、新産業都市の指定を受けておる地域については、在来の工場誘致条例というようなものは可及的すみやかに廃止の方向で指導をしていく、そうして免税措置をとるにしても新産業都市建設促進法のワク内でやるべきだと思うわけであります。そういう考え方は、少なくとも去年のこの予算の分科会においてもそういう見解が述べられておったわけですが、この一年間の中で具体的なそういう方向自治省の財政当局、特に財政局にしてもあるいは税務局にしても、具体的にこの線に沿って指導がなされたようには思われないわけです。この点について具体的に通達を出してこうしたとか、あるいは全国の市町村長会議でこういうふうにしたとか、あるいはどういう行政指導をやったかという実例があればお聞かせ願いたい。  私は、もう時間もありませんので、もう一つ結論として大臣にお尋ねをしたいわけですが、この問題については、先ほどから質疑討論がなされておりますように自治省の見解も明確であります。また、吉武自治大臣も、柴田局長が答弁されたような趣旨に沿って昨年のこの分科会においては答弁をしておるわけですが、大臣は、昨年の十一月二十四日に私の出身地の新居浜市——この地域は新産業都市の指定を受けておる地域ですけれども、そこへ行って、新居浜市で赤字再建策に工場誘致条例廃止の動きがあると聞くが、東予新産都市の中核だけに理事者は再考ぜい。この新居浜市は財政再建をどうするかということでみんなが真剣に取り組んでおるわけです。ところが、そこへ行って、いわば新産業都市の指定を受けた地域だから工場誘致条例を廃止するようなことはやめて、やはり存続するようなことをしたほうがいいじゃないか、こういう談話を発表して、昨年の国会における審議の経過あるいは先ほどからお互いにやりとりしておるような基本的なものの考え方とはおおよそ逆の方向の記者談話を発表しておるわけですが、この真意はどういうところにあったのか、大臣の見解を聞かしてもらうと同時に、先ほど来からの私の質問に対する大臣の考え方をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  56. 柴田護

    柴田(護)政府委員 去年こういった席で質疑応答がございましたが、具体的に何をしたということでございますけれども、基本的な考え方につきましては、すでに先ほど来御指摘のありました税務部長通達で明らかであります。あとは個別の問題でありまして、私ども財政再建等の案件を扱います場合に幾例かそれに類するような事例にぶつかるわけでございますけれども、その際におきましては、基本的な考え方を述べながらも、具体的に現実に即した措置がとられるようにやってまいったつもりであります。  また、地方自治体等の陳情などにおきましても、やはりそういう趣旨をおりに触れ、繰り返し申し上げているわけであります。特別通達を出してどうこう、事新しくどうこうということはいたしておりませんけれども、常に機会あるごとにそういうふうな指導をやってまいっておるわけでございます。
  57. 永山忠則

    ○永山国務大臣 私は、どういうようなことばでどう言ったかということを必ずしも記憶を呼び起こせませんが、私の基本的理念は、要するに自治省は権力的干渉はやらない、地方自治体の実情に即応して自主性もってやることが望ましいということが絶えず基本的に申していることばでございますので、その線に沿っておるものであると考えておるのであります。
  58. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 私は、大臣は非常に横着だと思うのですよ。この談話が発表されたときには、私も新居浜におったわけですけれども、私はそういう抽象的な考え方を聞いておるのじゃない。具体的な工場誘致条例の存廃問題、特に今日の地方財政の実態の中から、この工場誘致条例は、地方財政地方自治体にとって必ずしも私はプラスにならぬという立場から、先ほどからも質問をしておるわけですが、あなたは新居浜へ来て、現実自治省は、われわれは権力的にどうこう言わないので、それぞれの自治体にまかすのだというのであれば、新居浜まで来て、工場誘致条例をどうせい、こうせいということを言わないでもいいのじゃないですか。あなたがそういう基本的な考えを持っておるのであるならば——現実にあなたは新居浜へ来て言うておるんですよ。あなたが干渉せぬ、自主的にやらすのだと言うならば、それぞれ自治体で真剣に工場誘致条例を廃止するか、それとも存続するかということで論議をしておるさなかに、あなたはそんなことに口を出す必要はないじゃないですか。逆のことをおやりになっておって、われわれはそんなことを言うたりしたことは知らぬぞと言わんばかりの答弁をなさることは、私は非常にふまじめだと思うのです。一度その時点に返ってよく考えて御答弁願いたい。
  59. 永山忠則

    ○永山国務大臣 私は、絶えず、どこへ行きましても、自主的な地方運営を期待するということが基本方針でございますので、どこへ行ってもそういう方向でいたしておる考えでございます。
  60. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 これは私が血道を上げた形で、この談話について真意をただそうとしても、いま言われるような態度で答弁される限りにおいては、歯車の合った形の答弁はあるいはしょせん求められないかもわかりませんけれども、少なくとも大臣が昨年の暮れに新居浜市に来られたときには、新居浜市という自治体において問題になっている個々の問題で——私はほかのことも言いたいのだけれども、きょうは持ち時間がないからこれでやめますが、一般的なことではなくて、その自治体にとっていろいろ問題になっておることに対して、あなたは具体的にものを言うているのだ、ですから、それぞれの地方自治体の自主性にまかして運営をされるという立場で私どもは善処したい、こう言われるけれども現実的には、いわばその地域の、自民党だったら自民党の諸君が考えていることの受け売りを言っているのじゃないですか。その言っていることは、昨年だったら、昨年のこの国会だったら国会、あるいは自治省だったら自治省の基本的指導方針と合致するのだったらまだしも、われわれが議論してきている方向なりあるいは自治省が基本的に打ち出している行政指導の方向とは逆になるようなことを大臣がぬけぬけと言っているじゃないですか、こういうことは、少なくとも本来の地方自治の発展にもならないし、しかもそれぞれの自治体が今日これだけみな財政的にも苦しんで、その財政再建をどうしようかというふうに真剣になっているときですから、こういう不用意な、不見識な発言というものは今後慎重を期してもらいたい。注意してもらいたい。少なくとも大臣といえども地方に行っていろいろな談話を発表される場合は、当然のこととして、国会審議の線に沿い、あるいはそれぞれの所管省の方針というものが国会の中で是認された方向のワクで見解を発表してもらいたいということを強く要望したいと思う。私のいま言ったそういう点に対する考え方を最後に大臣の見解として聞かせてもらって、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 永山忠則

    ○永山国務大臣 御説のとおりに法の精神また国会の院議を尊重して、どこまでも地方自治体の自主性に沿ってやっていく方向で今後とも一そうの努力をいたしたいと存じます。
  62. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 そういうことであれば、この新居浜におけるあの談話が、私がいま指摘しているような誤解を受けるような談話であったとすれば、これについては訂正もしくは是正をされる御意思があるかどうか。これは自治体にとって非常に影響があるのですよ。
  63. 永山忠則

    ○永山国務大臣 私は、どこまでも本質的に地方自治体の自主的運営ということを、どこでもその方針で、いかなる場所でも言っておりますので、その真意に反する点があるといたしますれば、それはもちろん私の真意に反するものであるということを御了承願いたいと思います。
  64. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 それではわかりましたが、昨年の国会だったら、国会の審議の線に反するようなことであったら、あるいは先ほど来大臣が言われたように、地方自治体の自治行政については最大限にそれぞれの自治体の自主性というものを尊重していくのだ、こういう自分の趣旨に反したような談話であり、あるいは言質であったとすれば、それは是正することにやぶさかではない、こういうふうに解釈していいですね。
  65. 永山忠則

    ○永山国務大臣 私の真意に反するものではないことを深く期待をいたしております。また、そういう方向で今後ともやりたいと考えております。
  66. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 期待し、やりたいじゃない。言うたりしていることに対して言っているんですよ。
  67. 永山忠則

    ○永山国務大臣 私の真意に反することは申していないと考えておりますが、その真意に反するようなことが考えられているならば、どこまでもその国会の院議並びに法の精神によりまして、地方自治体が自主的にやるものであるということをあらためてここに言明いたします。
  68. 藤田高敏

    ○藤田(高)分科員 終わります。
  69. 大橋武夫

    大橋主査 稻村隆一君。
  70. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 私は、最近の選挙の腐敗につきまして、その防止策について自治大臣に一言お尋ねしたいと思っているのですが、最近の選挙の腐敗は実におそろしい状態です。たとえばこの間の新潟県の知事選挙において、塚田知事が中元と称して四十七名の県会議員に二十万円以上の金をばらまいたという事件があって、いま検察庁によって捜査中です。これはだいぶ問題を起こしておりまして、ついに知事選のやり直しまでに発展しておりますけれども、こういう問題は単に新潟県の知事選挙だけではない。最近の選挙の腐敗というものは、私はおそらく日本の政治始まって以来の状態だと思うのです。ある人は、衆議院選挙に一億使ったなどと言っておる。そういうふうなことは、これは決して政府だけの責任じゃない。これは政府、政党、国民のすべての責任であるから、何とかこれをいまのうちに直さなければ、直す方法考えないと、私は、日本はとんだことになると思うのです。歴史は繰り返すと申しますけれども、かつて二大政党時代におきまして、日本は何だかんだといわれても、アングロサクソンの国と同じように、いわゆる政党政治が最もうまくいった国の一つなんですよ、これは帝国憲法時代でも。ところが買収選挙が行なわれ、政友会が天下をとれば必ず政友会が買収によって勝つ、憲政会が天下をとれば、憲政会が買収によって勝つ、こういうふうなことで選挙界が腐敗の極に達したのです。そして金が要る。金が要るから政治家は利権をあさらざるを得ないのです。何千万使うなどということは、何か利権をあさって、金もうけでもしなければやっていけない。それだから政治が堕落をして、それがいわゆる議会政治が徹底的な批判を受けて、そして二・二六事件とか五・一五事件とかいう事件が起きて、軍事独裁政権にいって陸軍は崩壊した、こういうふうなことになったのです。終戦直後みんなが反省をして、これからほんとうの民主的な選挙が行なわれる、こう思っていたのですが、最近はだんだんひどくなりまして、これは戦前でもかってないような腐敗の極に達しているのです。たとえば野党であるわれわれでも、年賀状何万というものを、与党の人が出せばやはり少しはこっちも出さなければならぬ。冠婚葬祭でも、やはり一方の人が花輪を出せばこっちも出さなければいかぬ、こういうふうなことになるのです。そういうことでだんだん選挙費がかかる。だれでも選挙費を好きで使っておる者はないと思うのですよ。勝つためにはどうしてもどこかから金を見つけてこなければならぬということで政治家が利権をあさるということになる。いまではもう公職選挙法違反なんというのは犯罪じゃない。犯罪の部類に入ってないという一つの観念がある。こういうことでは私は必ず過去の歴史に徴して、日本の議会政治が崩壊すると思います。民主政治だ、議会政治だと言っているけれども、そういうことに対して自治省はいろいろ考えておられるでしょうが、選挙法改正の問題その他考えておられるでしょうが、金のかからない選挙に対して自治省はどういう考えを持っておられるか、自治大臣はどういう考えを持っておられるか、この点についてお尋ねしたいと思うのです。
  71. 永山忠則

    ○永山国務大臣 個人主義の選挙から政党主義の選挙へ移行するほうが好ましいと考えております。
  72. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 具体的に。それだけじゃ私はわからんですがね。金のかからない選挙法の改正を考えたことがありますか。そういう点をひとつお尋ねしたいのです。どうしたら金がかからない選挙ができるか。
  73. 永山忠則

    ○永山国務大臣 個人選挙ということになりますと、いまのようなぐあいにその趣旨の徹底等、いろんな関係で金がかかるのでございますので、金のかからぬ選挙としてやはり政党選挙主義へ移行することが望ましいというので、いまの選挙法の改正の委員会においても論議を進められておるところでございます。
  74. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 私はまず公職選挙法のことは知らない全くのしろうとですが、たとえば比例代表というようなものをやって、そうして個人選挙から政党選挙をやること、一言で言えばこういう意味ですか。
  75. 永山忠則

    ○永山国務大臣 さようでございます。個人でやるということになりますると、宣伝その他いろいろの関係において費用が要るわけでありますので、政党選挙なら政党が日ごろからその主義政策を主張いたして、国会を通じあるいは地方を通じて論戦をいたしておりますので、政党主義の選挙が望ましい、それはもちろんいろいろな形があるでございましょうが、比例代表制というようなものも政党選挙をやる方法一つであると考えておるので、それだけでもございますまいけれども、そういう方向考えられておるのであります。
  76. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 たとえば小選挙区、比例代表というようなものですか。選挙区のことはいろいろ論ぜられておるようですけれども、そういうようなものですか。
  77. 永山忠則

    ○永山国務大臣 政党の選挙には、小選挙区比例代表あるいは中選挙区の連記政党選挙というようないろいろの論議がまだ論ぜられておるのでございまして、方法論については結論を得ておりませんが、おおむね個人の選挙から政党選挙主義へということが金のかからぬ、違反のない選挙であるというような方向で論議を進められております。
  78. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 選挙法の改正の問題は、政府としてもあるいは各政党でもいろいろ研究しておられると思うのです。イギリスの選挙法とかあるいはドイツの選挙法とか、いろいろあります。私はそういうことはあまり知らないんだけれども、問題は金のかからぬ選挙をやることが第一だ。それにはどうするか。それには、どうも政府や自民党は渋っておるけれども、選挙の徹底的な公営が私は絶対に必要じゃないかと思う。これ以外に私は選挙界の腐敗を直す方法はないと思うのですが、その点について自治省では研究されたことがありますか。
  79. 長野士郎

    ○長野政府委員 選挙の公営につきましては、従来からいろいろ議論がございます。お話のような完全公営主義という議論一つ有力にございまして、たとえば元総理をなさいました片山哲先生などが、完全公営論を非常に最近も主張しておられます。それはお話の趣旨と合うかどうか知りませんが、結局御発想のもとは同じでございまして、金がかからない選挙にするためには、たとえば現在候補者がやっておりますような運動のほとんどは公営でやる、そうして候補者自身は数名の秘書くらいの者しか身の回りに置かない、要するに現在やっておりますところの運動員とか、事務員とか、労務者関係の仕事は全部選挙管理委員会が行なう、そして演説会からポスターからそういうものも全部やる、こういう御発想でございます。これに関しましては、それ自身が選挙制度審議会でも従来から議論のあるところでございますが、結局そういうことになりますと、本来、選挙運動というものは最も自由であるべきであるという理想が非常に画一的になり、形式的になり、実のないといいますか、公平ということを旨とすることになりますから、非常に精彩を失う、言論と文書の自由ということが非常に制約されて、選挙運動というものが非常に画一化するおそれがあるんじゃないかという考え方が、一つ疑問として出てくるわけでございます。  それから、現在の選挙法のたてまえからいいましても、わが国の選挙につきましては、十分御承知と思いますが、たとえばこの前の衆議院選挙で申しますと、選挙費用は約三十三億かけております。そしてその中では選挙公営に関する部分は約十四億もございます。そして、候補者一人当たりにいたしますと、選挙公営費用としては百四十五万円、百五十万円ばかり実はかけておるわけでございます。選挙公営というものの内容は、御承知のように選挙公報でございますとかポスターの掲示場でございますとか、あるいは候補者の氏名の掲示でございますとかいろいろやっておるわけでございますが、実は西欧諸国のものと比べますと、現在これほど公営をやっている国はございません。たとえばイギリスで申しますと、無料郵便はがきはイギリスもやっている。それから演説会のための公営施設の利用というものはイギリスもございます。フランスではポスターの掲示場はやっておりますが、イギリスでは郵便はがきと公営施設の演説会のための利用、この二つしかやっておりません。アメリカでも、少しの州が選挙公報の発行ということをやっている、その程度でございます。これらの国では、どうしてそういうことで金のかからない選挙というものが——ドイツでは全然やっておりませんが、そういうことができるのかと申しますと、先ほど大臣がお話し申し上げた政党本位の選挙になっているということでありまして、政党本位と申しますのは、先ほどお話がございましたように、いろいろ議論があると思いますが、結局一人一区のイギリスは単純小選挙区の国である。ドイツは小選挙区と比例代表を併用しておると申しますが、基礎は比例代表の国であります。いずれもこれは政党本位の選挙でございまして、したがって、党が党をあげて政策の普及宣伝と党勢の拡張のために日ごろから運動いたしておりまして、むしろ公営というような意味の運動は党が基本になって行なっておる。いわゆる党営といっては少しあれでございますけれども、いわば公営にかわる党営的な選挙をやっておる。これが選挙の腐敗というものを非常に防ぐ一つ原因になっておる。現在選挙制度審議会におきましても、選挙制度のあり方はこのままではいかぬという考え方の基礎には、やはり現在の中選挙区でございますと、衆議院の場合は個人本位の選挙に流れまして、そしていわば同士打ちの選挙が行なわれる。したがって当選するためには手段を選ばないというような形がどうしても出てこざるを得ない。お互いの党同士で同一の選挙区で争うという形がどうしても出てまいるものでございますから、そうなれば政策の違いで争うというよりは、個人的な力で争うというようなことから、選挙に金がかかるという原因もそこからも一つ出てくる。そういう意味では、諸外国の例等を見ますと、小選挙区なり比例代表なりという選挙の仕組みそのものを変えていきまして、いわゆる個人本位の選挙制度から、政党本位の選挙制度に切りかえるということが一番根本ではないかというような考え方で、先ほど大臣が申し上げました選挙制度審議会では現在いろいろな案が出ております。小選挙区制あるいは小選挙区比例代表併用方式、あるいは中選挙区制限連記方式というのが出ておりますが、いずれも発想の基礎となっておりますのは、個人本位の選挙制度から政党本位の選挙制度に移行すべきだという考え方であります。お話しの趣旨と合うかどうかわかりませんが、先ほど申し上げました片山哲先生の完全公営論も選挙制度審議会では何回か検討されております。しかし、そういう現在の選挙制度なり選挙運動なりというものをそのままにしておいて、完全公営論をするということで、はたして完全公営に踏み切ったところで、金のかからない選挙に移行できるかどうかわからないし、わからないと申しますのは、むしろそのために、極端な言い方をしますと、角をためて牛を殺すといいますか、要するに選挙運動が非常に精彩のないものになる、特色のないものになるということは、選挙の本来の姿からいって適当であるかどうかというので、疑問を持っておる意見が非常に多いわけであります。そういう意味で選挙公営についてもいろいろと研究がございまして、私ども事務的にもいろいろ研究しておりますが、現在の選挙制度の上で考えました場合には、現在程度の選挙公営というものがほとんど限界ではないが、これ以上のことはどうもなかなかできないのじゃないかというように考えられるわけでございます。私どもは、むしろ問題は制度の根本に問題が胚胎しておるのじゃないだろうかという選挙制度審議会の御意見が正しいのじゃないだろうかというような感じがしておるのでございます。
  80. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 これは私ヨーロッパなんかを回ったときに聞いた話ですけれども、たとえばイギリスでは買収なんか考えられない。ヨーロッパでは、ほかの国だってほとんどそうです。それは御存じでしょう。アメリカに行けば利権の誘導とかそういう問題がたくさんあるらしいが、ヨーロッパではほとんど買収とか供応をするなんということは考えられない。だから個別訪問は自由です。日本では戸別訪問は金を持っていけば困るから禁じておる。それはやはり議会政治の歴史がイギリスとか向こうは古いから、それだけに選挙の問題で非常に訓練されておるのじゃないかと思う。日本は議会政治がうまくいっておる国だといっても、歴史が非常に浅いから、そういう点もありましょうけれども、日本の状態では、政党本位にしたって買収選挙は絶えないのです。それだから私は、たとえば公営を徹底する、公営は金がかかるから、政府は非常に金を使うことになるから、そこで選挙運動をある程度制限するのはしかたないと思うのです。精彩がなくなるというけれども、選挙運動というものは、そんな騒いだり、われわれは歌手や役者じゃないのだから——いま国会議員候補者はムードとかなんとかいって歌手か役者化しておる。一体議員に出る人がムードや何かとっぴなことを言うて、何か新しいことを言うて人気を得て出るということがそもそも間違っておるので、それは地方のために働かない者、国民のためにまじめにやらない者が出られないのはあたりまえなんです。実績を買われて出るということになるのだから、精彩がないとか——そんなことは精彩がないほうがいい、選挙というものは平凡なことでいい。選挙でお祭り騒ぎをしたり大騒ぎするなんということは全く愚劣なことです。相撲か何か見ておるように、あるいは競技か何か見ておるように、競馬か何か見ておるみたいに、このごろは非常に選挙が不まじめになっておる。ある農村へ行くと、選挙がきたと喜んでいる。ただ酒がのめる、盆と正月が一緒にやってきたようなことで喜んでおるところがある。こういうふうなことをどうしてもやめさせなければいかぬ。それはむろん法の力もあるけれども、同時に、私の経験によれば、日本では選挙の公営を徹底的にやる、そして公営の費用は非常に要るから、はでな選挙運動をやらせなければいいのです。たとえば選挙事務所なんてああいうものはやらせない。選挙事務所を設けて、そこへ集まって一酒をのんだり、いろいろなことをやって、どうしてもそこに違反が行なわれるのだ。文書戦と公報と演説会でけっこうです。テレビも出したらいいです。テレビとかあるいは公報とか演説会といっても、全然禁ずるわけではなくて、選挙を制限しておいてなるべく費用をかからないようにして言論で訴える、テレビで訴える、それから公報で政策を訴える、そういうことでいいと思うのです。何もはでなことはやる必要がない。それでまじめに、この候補者はどういう考えを持っているか、テレビへ出れば感じで大体わかる。文書戦もやるのは特定の文書戦でやる。日本では選挙運動を制限するが、外国では制限していないと思います。イギリスあたりでは長い歴史を持っていて、昔は買収選挙がひどかったのを、買収をやった者は永久に選挙権、被選挙権の停止をやるという厳罰をやって、イギリスは今日直ってきたわけだ。そういうふうにしていけば差しつかえないと思う。公営は金がかかり過ぎるとかなんとかいうのは、公営を好まない人が言うのであって、政党本位にしても同じですよ。このごろは後援会かなんかできて弱っている。自民党が後援会をつくるから、われわれは後援会をつくるのは邪道だと思っておったが、やはり票集めができないので、こっちもつくる。そうすれば金がかかる。選挙違反をやらないように、法に触れないように、実はお互いにいろいろな選挙運動をやっている。たとえば、百円会費で五百円の宴会をやったりしているのは、選挙前なら法に触れなくて差しつかえないということになる。そうして政治家は、非常に金がかかるのだから、いまの選挙だったら利権をあさらざるを得ないのですよ。利権をあさってどこからか金を持ってくる人間でなければ当選しません。たとえば政党でも、どこからか金を持ってきてばらまいて強引にやるボスでなければ勢力を持つことができない、政党の親分になれない。大学教授で識見がある、学問があるといっても、おれが政党に出てひとつ政党を粛正してやろうといったって、そんなものは出てみたら幻滅の悲哀を感ずる。識見とか人格というものはいまの政界では全然通用せぬというわけではないけれども、ほとんど通用せぬ。強引にどこからか金を持ってきて選挙費用をばらまく人が実力者になるんですよ。それだから大学教授で識見があるとか、学問があるという人たちも、一たび政界に足を踏み入れると、そういう人から金をもらっておるからその言うままになる。唯々諾々として言うままだということになる。そういうようなことになるから、私はあまり法律のことは知らぬけれども、公職選挙法の問題などはあまり研究したことがないから、確信を持って言えないけれども、常識から考えて、やはり選挙をもっと徹底的に公営にして、文書なども選挙管理委員会が張ってやればいいんですよ。演説会のポスターなども、もっと選挙管理委員会の手当をよくして演説会も一切準備してやる。そういうふうにして、はでな選挙運動、はでなお祭り騒ぎの選挙運動をやらせないようにする以外に、いまの腐敗している選挙界を実際問題として粛正する方法はないと思う。だから私がいま申し上げたとおり、選挙の公営を徹底して選挙事務所なんかもやめさせる。そんなものは要らない。運動員が大ぜいいてがあがあ騒ぐ必要はない。立ち会い演説会あるいは公報を二回も三回も出すとか、そういうふうにしてやる以外にない。小選挙区制としたらもっと買収がたやすくなる。いまの小さい選挙ほど買収がひどい。市長になるために何千万円も使ったという例はたくさんありますよ。村長になるために何百万円も現に使っておる。千万円も二千万円も使っている者もある。こういうふうなことを考えるとき、私はいま何も政府を責めるわけではないが、政府も政党も国民も、まじめに金のかからない選挙を考える時期ではないかと思いますが、それには公営を徹底させてお祭り騒ぎの選挙運動をやらせないで、言論と文書の選挙に制限するということが一番いいのではないかと思います。新人が出られないということは絶対ない。新人だって選挙演説をやればわかるからです。政治的な功績のない、国民のために尽くさない者が、何か金の力で、まるで薬屋の広告のように広告して、それによって出てくることは実態問題として邪道ですよ。まじめに民衆のために働く者が出てくる、そういう経験のある、そういう実績を積んだ人が高点で出てくるのはあたりまえの話だ。海のものとも山のものともわからぬ、ただ金をばらまいて広告料を払って、売名で出てくるのは、幾ら新人でも好ましくない。そういう点に対して自治大臣はどう考えますか。私はまじめに考えなければならぬ問題だと思うのですよ。
  81. 永山忠則

    ○永山国務大臣 選挙を金のかからぬようにするために公営を徹底するという問題につきましては、片山哲さんのほうから選挙制度審議会へ書類も提出され、審議会のほうもまた本人をお招きしていろいろ意見を聞いておるのでございまして、あらゆる面を総合いたしまして選挙制度審議会は金のかからぬ違反のないような選挙制度改正の答申をされることを期待いたしておるものでございますが、現段階におきましては、個人選挙から政党選挙へ移行することが金のかからぬものである、しかもその政党は点と線のボス的なものではなくして、会員の会費制を確立いたして近代国民政党となって、近代組織によって候補者がきめられる、その組織が国民の収穫となって、政党そのものの活動が政治に反映する、議会政治は政党政治であり、政党がまた国民政党の近代政党に脱皮して、その姿において選挙をすることが金のかからぬ違反のない選挙ではないかという議論が強く台頭をいたしておりますので、それらの審議を待ちまして政府としては態度をきめたいと考えておる次第でございます。ただいまのお説の点も十分ひとつ審議会も参照にいたしておることであると考えておりますし、政府のほうにおきましても十分ひとつ御意見は尊重をいたしてあらゆる角度で検討をいたしてみたいと考えております。
  82. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 選挙制度調査会の答申もけっこうですが、あなたも選挙の体験をしておられるのだから、選挙制度調査会の答申を待ってなんということでなくて、まじめにこの点はお考えいただきたい。やはりぼくは公営以外にないと思うのです。それはいろいろ見解の違いがありますけれども、とにかくあなたは自治大臣としてまじめに、真剣に——あなたは元来まじめな人なんだ。その点、私は非常に信じておりますから、金のかからない選挙をあなたの体験からひとつ考えていただいて、至急いまの選挙界の腐敗を直すように御尽力のほどをお願いして、私の質問を終わりたいと思っております。
  83. 大橋武夫

  84. 中村重光

    中村(重)分科員 いろいろお尋ねをしたいことがあるのだけれども、三十分の時間じゃどうにもしようがないですから、端的に伺いますが、交通取り締まりに関する経費というものがどの程度になっているか、これは数字ですから事務当局からでけっこうです。  申し上げるまでもなく、交通事故というものが激増の一途をたどっている、そういった点から、国民も交通取り締まりというものを相当期待をし、警察庁としても大いに力こぶを入れておるということはわかる。そこでいろいろお尋ねしてまいりますけれども、まず予算関係につきまして、交通取り締まりに関する経費がどの程度になっておるかということを伺っておきたい。
  85. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 ただいま御指摘になりました交通関係の取り締まりの予算でございますが、一応その前提といたしまして、簡単に交通関係の予算の総額を御説明申し上げます。  一応たてまえとして国費と補助金とに分かれておりまして、国費は四十一年度の当初予算におきましては五千六百六十五万六千円でございます。それから補助金は七億六百七十五万一千円、総計いたしまして七億六千三百四十万七千円というものが予算でございます。ただこの国費の中には、これは主として国費で支弁できるものは警察庁の職員の旅費あるいは捜査費ということでございまして、この内容につきましては旅費あるいは庁費が大部分でありまして、捜査費は約一千何百万かと思います。ちょっと私、手持ちの資料がございませんので、これは正確な数字は御説明申し上げられませんが、後ほど差し上げたいと思います。  なお、補助金の中におきます。億六百七十五万一千円、これは大部分交通安全施設の関係の整備のための補助金でございまして、あとはそれぞれ捜査費、旅費の補助金がございますが、それらについてはそれぞれの県におきまして、これは二分の一の補助でございますので、それぞれに見合ったものを組むということになっておりますので、各県がどのように組むかということは、これからの県会等の当初予算の中においてきまるということでございます。
  86. 中村重光

    中村(重)分科員 二分の一補助ですね。この七億六百七十五万ですか、これは補助額だけですか。
  87. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 これは補助額だけでございます。
  88. 中村重光

    中村(重)分科員 そうすると、交通違反に対して罰金を取っておられる、これの収入は大体どの程度ですか。
  89. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 これは私のほうは直接所管しておりませんけれども、大蔵省等の昨年度の集計によりますと、約二百億近くになるかと思います。
  90. 中村重光

    中村(重)分科員 私が調べたところによると、昨年は二百九億五千六百九十五万九千三百六十二円、そういう膨大な予算です。いま交通取り締まりに関する経費は幾らかという質問に対しては、国自体が出しているものが五千六百万、補助金が七億、こういう程度ですね。——私は、あまりにもこの差が大きいのに驚いているのですが、それはあとで時間がございましたらお尋ねすることにいたします。  そこで今度は、交通の安全を期していくという立場、非常に交通事故によって苦しんでいる被害者、これに対しては、従来、警察はあまり介入していなかった。今度は被害者の救済という立場からこれに介入をしていこう、こういう態度のようでございますが、具体的にどのようにお考えになっておりますか。
  91. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 この被害者対策の問題につきましては、かねてからいろいろ特別の関心を持っておりまして、事故処理の過程におきましていろいろ処理をしておった事実はございますが、ただ全体といたしまして、一つの方針に基づいてやるということではございません。そこで最近における交通事故の被害者の状況から見まして、私どもといたしましては、この被害者対策のためにわれわれの担当いたしておりますところの交通事故の処理を通して、いかに被害者対策ができるかということを考えたわけでございます。ただ御承知のとおり、警察には民事不介入の原則というのがございまして、それぞれの交通事故につきましては損害賠償等の問題がいつも関連をいたします。民事関係ときわめて密接な関係があるということで、私どもは、従来そういう民事不介入の原則ということで差し控えておるところございますが、しかしそれだけではものごとは律することができないということで、民事不介入の原則を持ちながら、個々別々の具体的な問題について、被害者に対する、指導と申し上げますと語弊がありますが、いろいろな指導をしていきたいということで、一つは、たとえば具体的に申し上げますと、被害者の中には、いかにして強制保険の請求をするかということについてもつまびらかにしない向きがある。そこで、交通のための強制保険を、いかにして被害者請求ができるか、あるいはどういう方法によってそれを請求をしていくかというようなことが一つと、あるいはさらには通称示談ということが行なわれておりますが、その示談をする場合において、捜査の過程におきましてそれぞれ相手方に示談の意思があるかどうかということを聞きますと、たいがい示談の意思がある、こう言うわけでございますので、その間にあっせんの労をとることが可能である場合にはあっせんの労をとる。しかし、当事者の間に非常に意見の不一致を来たす場合においては、それぞれのものを所管いたしますところの、たとえば裁判所の調停であるとかあるいは弁護士会の交通事故処理委員会であるとか、あるいは交通安全協会が担当しております交通相談であるとかというようなそれぞれの部門にあっせんをするということで、これを広くわれわれは交通相談と呼んでおりますが、交通相談業務を民事不介入の原則と相反しないということを前提に置いて、個々具体別に推進をして、被害者の保護の万全をはかるということを考えておる次第でございます。
  92. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣に伺いますが、いろいろ救済対策に乗り出すということはけっこうなことです。やはり民事不介入の原則というのがありますが、おのずから限界があるわけですね。けれども、いま被害者は交通事故にあって全くほったらかされて、実に気の毒な状態にあるわけです。かといって、それじゃ加害者を相手どって裁判をするか、これはできる人もあるだろうが、全くこれも費用その他いろいろな面からできない人が多い。全く泣き寝入りというような気の毒な状態にある。これに対して何らかの措置というものをもっと積極的に講ずる必要があるのではないかと思いますが、その点についてどうですか。
  93. 永山忠則

    ○永山国務大臣 いま局長が申しましたように、民事不介入の原則を守りながら、交通相談に対して積極的な相談に応じて努力をいたすという方向で、本年はさらに指導を強くいたしたいと考えておる次第であります。
  94. 中村重光

    中村(重)分科員 私は大臣に、もう少し前向きの何か対策検討する必要があるのではないか、こういうことでお尋ねをしたのですが、いまの局長の答弁を重ねてあなたが補足するというような形でなくて、何か被害者救済ということについて、法的な措置、あるいはこれは法的にはなかなかむずかしいでしょうが、行政的にもっと積極的な何らかの対策を講ずる必要があるのではないかと思うのですがね。いま警察の考えている民事不介入の原則、そういう範囲、いままでやらなかったことをそれだけやることになりますから、それ自体私は前向きであると思うのです。ですけれども、どうしてもそういう不介入の原則というものに対して拘束されるから、限界がある。何かもっと積極的な強力な行政措置というものをもってこの被害者を救済するということが必要になってくるのではないかと思うのですが、そこらに対して、ひとつ大臣の考え方を伺ったのですけれども、何かありませんか。
  95. 永山忠則

    ○永山国務大臣 本年は、特に警察及び安全協会に交通相談の担当者を置きまして、弁護士会その他の関係機関、及び団体と密接なる連絡をとりつつ損害賠償等の諸種の相談に積極的に応ずる指導をいたしたい考えでございます。
  96. 中村重光

    中村(重)分科員 お考えは、局長から伺ったことをさらに大臣からオウム返しに伺ったというかっこうでして、何というのか、いまのところ別に新たな構想はない、こういうことになるようです。  しかし時間の関係がありますから、次をお尋ねいたします。事故保険ですね、これは昔といっていいくらいにずいぶん前に定められたわけですね。これは現在の実情にはそぐわない、再検討の時期にもうきているのではないかと思うのですが、その点どうでしょう。
  97. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 この法律の所管は、率直に申し上げますと、運輸省と大蔵省でございますが、私はたまたま自賠法の審議会の委員の一人をしておりますので、今回の自賠法の審議会で問題になりました一つは、従来の百万円の給付金額をふやすということで、一応答申をいたしましたのは、百五十万円にする、ただし現行のいわゆる保険の料率をそのままにして、つまり保険をかけるものの負担を同一にして、最近における事故率等が下がりまして、保険特別会計の財政内容が余裕ができた、そこでそれをやはり被害者に回すということで、百万円を百五十万円にしたということが一つ。それから従来は原動機つき自転車については自賠法の適用がなかったわけでありますが、これも自賠法の適用をすべきであるというのが、多年私どもの警察並びに全国の府県の公安委員会から熱烈な要望がございまして、関係方面も了承をして、このいわゆる原つきについて強制保険を適用するということが一つでございます。その際にいろいろ問題がありまして、当時つくった自賠法の内容については、その後の自動車のふえ方であるとか、あるいは交通事故の内容の問題だとか、客観的な条件というものが相当変わってきておるということで、私どもの主張としては、事故率が下がったから百五十万円にするということでなくて、被害者対策というもののために百万円の内容がいいか悪いかということを検討するのがまず先決ではないか。したがって、そういう前向きな姿勢で、たとえば三百万円とか何百万円とかいうようないろんな諸外国の例もあるわけでございますので、そういう方向に向かいながら、一体全体の保険の率をどう定める、あるいはその特別会計の運営について考えるということを考えるべきではないかということで、自賠法の審議会におきましても、今後いろいろな問題については検討すべき時期にきているというのが、率直に申し上げまして、自賠法審議会の経過でございます。一応これは私の所管でございませんので、他省の所管にわたることを申し上げてはどうかと思いますが、たまたま私が自賠法の審議会の委員の一員として会議に参加しておったということで申し上げるわけであります。警察の立場としては、平生大臣からもいわれておりますように、この給付の金額を多くしなければならぬということを私どもは申し上げている、それだけ申し上げておきます。
  98. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣のお考え方としても、これは確かに再検討の時期にきている、そういうお考え方でしょう。
  99. 永山忠則

    ○永山国務大臣 いま局長が申しましたように、再検討をする時期であると考えております。
  100. 中村重光

    中村(重)分科員 最近の交通事故の発生状況はどうですか。
  101. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 一応いろいろな事故統計がございますが、きのうできた死亡事故の分析の状況から申し上げますと、三十九年度と四十年度を比較して申し上げますと、三十九年度は一万二千七百六十七名の死亡でありましたが、四十年度は一万一千九百二十二、したがいまして四十年度は三十九年度に比べて八百四十五名の減ということになっております。それからいわゆる件数でございますが、件数は三十九年度の件数が五十六万七千二百八十六件、傷者数が四十二万五千六百六十六人、四十年度は件数で一万百三件の減でございます。これから一万百三件を引きますと四十年度が出ます。それから傷者数においては残念ながら二万四千五百四十九人の増というのが最近の交通事故の件数、死者数、傷者数の状況でございます。したがいまして、四十年度は私ども一つの目標であった死者数の絶対数を押えるということにおいてはある程度の目的を達しましたが、残念ながら傷者数は漸増の傾向にあるわけであります。そのふえ方の歴年のパーセンテージに比べますと、ふえたパーセンテージは六・一%で、いつでも一二%から一四%ぐらいの増でございますので、相当数の増加率を押えることができた、こういうふうに考えております。  なおこれらの内容を見ますと、それぞれ御質問に応じてお答えいたしますが、一般的に申し上げられますことは、大都市を持つ府県においては減少の傾向にございますけれども、山陰、北陸、南九州というようなところあるいは大都市周辺の地帯において増加が目立っておるということであります。  それから原因について見ますと、めいてい運転あるいはわき見運転、追い越し違反、スピード違反というようなものが構成率が多いわけであります。   〔主査退席、竹内主査代理着席〕 一応めいてい運転とスピード違反は減少しておりますが、構成率は多いということでございます。  おもな原因車になった自動車は、自家用の貨物自動車、それから原つきの自転車、自家用の乗用車というもので、これはそれぞれの中で自家用乗用車と営業用乗用車というものがふえておる。ただ自動二輪とか原つきというようなものについては、私ども相当努力をいたしまして、三十九年に比べて四十年は減少しております。自動車の事故の中でやや残念なことは、営業車による事故が多かったということでございます。今後の問題でもう一つは、歩行者事故を私どもは大幅に減少させたいという希望を持っておりましたが、残念ながら、減少はいたしましたけれども、依然として全体の死亡事故の中で占める構成率は多いということで、今後の努力目標であるというふうに考えております。
  102. 中村重光

    中村(重)分科員 何かで見たのですが、ことしの一月、これは史上最高の事故率である、何か二万五千六百八十二件、死者が一千五十二名、負傷三万五百五十九名、こういう数字が出ているわけですね。これも何かで見たような気がするのですが、はっきりしませんが、こういう状況で進むと、十年間に相当な死傷という形になるように書いておったようですが、あなたのほうで何かで計算した数字がありますか。これは具体的でなくてけっこうです。
  103. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもが過去の件数、死者、傷者について、いわゆる五カ年間の平均増加率というものをとってみると、それが、先ほども申し上げましたが、件数で九%、死者で六%、傷者で一二%というのが、三十九年までの過去五カ年間の平均の伸び率ということになるわけであります。それから、それをもとにいたしまして、一体今後、四十三年ごろを私ども一つのポイントと思っていろいろ作業をしているわけでありますが、四十三年ごろまでに一体どういうふうになるだろうかということで、私どもこういうような傷者、死者のパーセンテージがどの程度にふえていくかということをいろいろ作業して——ちょっと私きょう手元に持ってきませんでしたものですから、詳細申し上げられませんが、やはりいま申し上げたような平均増加率よりもやや上回るのではないか。つまり、一二%から一四%くらい、あるいは六%から九%くらい。というのは、車のふえるふえ方というものが一つと、それから運転者のふえ方というものが一つ、これらのものを考えてみますと、そういうようなことでいくのじゃないだろうかというふうに考えておって、相当の努力をしなければこのパーセンテージを押えることはできない、そのためにはいろいろな対策を講じなければならない、いままでくらいの対策を講じておれば、こういうようなパーセンテージを示すであろう、こういうことを考えております。
  104. 中村重光

    中村(重)分科員 事故を起こすのは経験者、初心者、運転経験が浅いものとかあるいは年齢関係、といろいろあると思うのですが、それで事故の比率が違っていますか。
  105. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 それは、私どもの調べる場合において、一年未満の者、あるいは三年未満の者、五年未満の者、あるいは五年以上十年、こういうことでやってみますと、やはり一年未満の者が多く、三年未満の者が、いま申し上げたように、五年未満の者に比べればはるかに多いということが言えるわけで、やはり一年から三年というところくらいの間の初歩の運転者というものについて、われわれは一つの目標を定めていかなければならぬということと、もう一つは、単に年数ばかりでなくて、事故多発者という一つの類型があで事故多発者類型というものがどのくらいあるかということについては、現在それぞれいろいろな角度から追跡調査をやっている状況でございます。
  106. 中村重光

    中村(重)分科員 初歩の者が事故を起こす率が非常に多いというお答えです。そこで私考えるのですが、いまやっておられるのは、違反者講習会というものをやっていますね。それは当然それなりにやらなければならないのですけれども、それだけでなくて、免許を交付してからたとえば一年なら一年、二年なら二年というように、定期的に講習を義務づけていくというやり方、さらには、何というのか、いま言ったのは免許取得後ということですね。あるいは違反の場合も違反者講習ということだけで、何か講習を受けると行政処分の期間が短くなるというような、そういうことであってはならないので、その短くすることもあるだろうけれども、同時に、そういう違反常習者的なものに対しては定期的な講習を義務づけていく。違反をしたそのつどということでなくて、何かそういう特別の措置が必要になってくるのではないかと思いますが、その点いかがでしょう。
  107. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 ただいま御指摘のような点は私も原則的に同感でございます。私どもはなぜ行政処分を軽減するかわりに講習制度をとったかというと、行政処分をしてその間停止しておっただけでは、決して技量も向上しないし、法規に対するいろいろな精通もしない。そこで私どもとしては、この講習制度を取り入れたということでありますが、だんだんいろいろ講習制度をいま現在やっておりまして、受講率も非常に上がってきておるというような状況である、さらには一般の運転者の中で、われわれも講習の受講をしたいという希望が各地方でいろいろ出ております。そこで、御指摘のような、一般の者に更新の際あるいは更新以外の臨時的なときに講習を義務づけるかということについては、法的な根拠と、それからもう一つはそれをまかなうべき予算の問題というようなものを総合的に考えて、次には、やはりいまの違反者講習の組織というものを確立したら、それを使うことによって一般の者を講習するような措置ができるのではないかということで、いま御指摘のような点については、私どもはいろいろと研究いたしておるところであります。
  108. 中村重光

    中村(重)分科員 事故というものは社会悪なんです。これはあなたからいろいろと統計的なものをお示し願った。将来の見通しについても全く憂慮すべき事態であると思うわけです。ですから、法律の不備な点は改めていくようにしなければならないし、予算ということになってまいりますと、何よりも優先してこれはやらなければいけない。まして、私がお尋ねして明らかになりましたように、交通違反の罰金なんというものは二百億以上。ところがその金を交通取り締まりに使っているのは八億に足らないというようなことでは、話にならぬじゃありませんか。だから、予算なんというものは大蔵省に対してあなたのほうで積極的に要求して、大臣もまたそういう強い心がまえでもって予算の問題を克服する、法律の不備な点はこれを克服していく、そして交通取り締まりの万全を期していくということが必要であると私は思います。だから、そういうことでひとつこの問題は取り組んでもらいたい。なお、この交通違反というものに対しては、相当力を入れてやっておられるということはわかるわけです。またそれでなければならないのですが、私が感じることですが、どうも従来の取り締まりというのが、交通安全の思想を普及していく、徹底していくというようなこともそれなりにやっておりますけれども、より重点はどうも摘発に置いておるような感じがいたします。いま申し上げましたように、交通事故は社会悪なんだから、これはもう摘発するということもやらなければいけない。具体的には覆面パトカーであるとか、あるいは俗にネズミ取りといわれておるように、どこかに隠れておいて無線でもって連絡をして、スピード違反を摘発していくということもやっておられる。それはそれなりに必要であると私は思いますから、これをやってはいかぬとは言いません。しかしながら、より力こぶを入れなければならぬことは、事故発生、交通違反を未然に防ぐということ、そこに重大なかまえを持って、そこに重要点を置いて取り組んでいかれる必要があるのではないか、そういう感じを持つのでございますが、その点いかがですか。
  109. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 その前にちょっと補足さしていただきたいと思います。先ほど御指摘のあった、私どもの取り締まり費用だけが政府交通関係予算ではないのでございまして、今度は安全施設等の緊急整備措置法というのを建設省と共同で立案いたしまして、これに対して、私ども担当する信号機であるとか道路標識、それ以外の横断歩道橋であるとか簡易な歩道をつくる、あるいはバス停をつくるとか、あるいは街路照明灯をつくるとか、あるいはガードレールをつくるとか、中央グリーン帯をつくるとかいうようなことについて、大幅な公共投資をすべきであるということで、建設省も今回事業費にいたしまして約百億——これらの内容については三分の二あるいは二分の一のあれがありますが、そういうことで初年度事業費で私どものと合わせて百何億の予算を組んでおります。三カ年で約六百億の金を入れまして安全施設を整備していくということをやっております。  なおいま御指摘のように、確かに違反摘発だけで事故防止ができるとは私は思っておりませんし、特に最近のような大量交通、昔のようないわゆる一握りの運転手と車の時代ではございませんので、大量交通に対処するためには強力な取り締まりも必要ですが、その前提となるところの事故防止のためのいろいろな諸施策を講ずるという意味におきまして、たとえば安全施設を整備するとかあるいは安全教育を充実するということをぜひやっていって、なるべくわれわれの街頭における違反取り締まりは、ほんとうに悪質なものに重点を置いていくということで、御指摘になったようなネズミ取りであるとか、あるいは隠れておってぱっとやるとか、あるいは件数主義におちいって、いたずらに相手方に迷惑をかけるということのないようにしていきたいということで、検挙主義あるいは件数主義ではなくて、一つの秩序をつくり上げるような指導も加味してやっていきたい、こういうふうに思っております。
  110. 中村重光

    中村(重)分科員 私が希望しておったことを進んで御答弁願ったのですが、どうも成績主義、点数主義におちいっているような感じがいたします。これは厳に改められなければならぬ。私は何かそういう一つの組織形態というものがあるのではないかというように感じるのです。だからその点だけはひとつあなたのほうでも厳重にこれを改めさせる、交通違反を防止していく指導主義というものに相当力こぶを入れていく、こういうことでなければならぬと思います。  たまたま一つの例ですが、埼玉県のある交番の前に、私の友人がそこが駐車禁止区域とは知らないでとまっておった。ところが五分くらいたったらぱっと前の交番所から出てきた。そこで、五分だというわけで、超過したというので、その名前を書いて処分するという態度に出た。こういうけしからぬ話はない。前におって見ておるのだから、駐車禁止区域なら、すぐそのときに出てきて、ここは駐車禁止区域ですよとなぜに御注意をなさらぬのか。そういうことが一番いけない。ともかく成績主義、点数主義というものがある。だから点数を上げなさい、成績を上げなさい、そうすれば出世させるよ、こういう指導をしておられるのではなかろうか、私はそういったような感じすらいたします。しかしあなたのほうで進んで前向きの答弁をされたのですから、あらためて指摘はいたしません。ともかくいまのような成績主義、点数主義ということをやっておりますと、結局警察に対する国民の反感というものが非常に高まってくる。まして交通事故を起こした者は、おのれが悪いことをしながら、それを反省することよりも非常な反感を持つという形になってくると思います。こういうことは警察と国民との離間になる。政府と国民との離反になる。こういうことになってまいりますから、厳にそういう点は御注意が願いたい、こう思います。  時間もきたようでございますので、次にお尋ねをいたします。農業用のテイラー、これはあなたの所管でしょうか。これはいままでも議論されたことはあるだろうと思うのですが、農民はこのテイラーには助手を乗せてもらいたいという熾烈な要望があると私も思うのです。荷物を積んでおらないときはそうでもないと思うのですが、荷物を積んでいるときは、どうしてもやはり一人は運転するのに事故を起こさぬように一生懸命になっているのです。だから事故を起こさぬように回りを見る、そういう助手的なものが必要ではないか、こう思いますが、その点はどうでしょう。
  111. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 現行の法律体制では不可能でございますが、そういう御意見はいろいろ私の耳にも第一線から入ってきているわけであります。ただしかし、そういう点でたとえば事故防止をするために乗せていろいろ見るのだ、こういうことになっておりましても、またそれがだんだん高じていったときには別なほうの問題になってくるということで、にわかに私がここでいずれかに決定するというようなことは申し上げられませんが、よく実際の実情を見まして、検討を要すべきことであれば、私は決して検討することにやぶさかではございません。たいへんばく然とした御答申で申しわけございません。
  112. 中村重光

    中村(重)分科員 長尺物の運搬と同じようにそのつど申し出をしなさい、そうすれば認めますよ、こういうことを言っておられるのですね。農民が一々警察まで行って届け出をするようなことはできやしませんよ。そういうことでなくて、たとえば幹線道路は一人しかだめなんだ、そういう規制、制約はそれなりに私は必要であると思います。ですけれども、農地だって交換分合なんというものはうまく行なわれておりませんから、家からたんぼのあるところまで相当行かなければいかぬでしょう。またたんぼから、わらだとか何とかたくさん積んでくるのですね。そうなってくると、何か助手席に乗せておかぬと、私はかえって危険だと思う。だから、必要があればというのではなくて、進んでそうしたことを検討する。そして認めるものはこれを認めていくという態度でなければならぬと思う。検討も必要だろうけれども、このことについてはずいぶん前から議論されているのですから、いつまで議論するのか、そろそろ結論をお出しになる必要がある。むしろこれは積極的にお認めになる必要があると思う。いろいろ弊害もあるかもしれない。いままでテイラーの事故がどういう程度に起こったのか。助手がいることにおいて、あるいはいないことにおいてその事故がどうなっていくのか。そこらあたりも、いままで起こった事故等についていろいろ検討されておると思います。だから、それを認めてやるという態度であるべきだと思う。この点は、大臣も明確にお答え願いたい。
  113. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 私が申し上げたのは、一々そういうことを事前に届け出ろということではなくて、確かに交通上乗せることによって危険だというところのある道路は避けて、そうでないところはいいじゃないだろうか、率直にいうと、われわれの検討の段階でもそういう議論があったわけであります。そういうような点から一回考えてみたらどうかということが一つという意味で私が先ほど申し上げたわけなんですが、これを立法化したり、あるいは改正するということについては、率直に申し上げて、やはりそれぞれ相当のデータを持ち、それから改正をするなら、いろいろな点について慎重に審議しなければならぬ問題がありますので、私がこの委員会の答弁で右左ということを申し上げられないということを申し上げましたが、確かに実情はそういう点がございますので、抽象論で申しわけありませんが、実情を見て前向きで検討さしていただきたい、こういうふうに思います。
  114. 中村重光

    中村(重)分科員 もう一つ、屋台ですが、これは道路交通取締法によって道路使用許可をしている。この使用許可の条件ですか、基準というのか、これはやはり道交法に基づいて交通の危険を排除する、こういう観点から許可するかしないかをきめる、こういうことでございますね。
  115. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 道路使用の問題については私のほうだけでなくて、やはり道路管理者の意見もあるわけでございます。両方で使用許可をする場合においては道路管理者と警察で、警察はいま申し上げたように交通上の見地からこれについての可否の議論をすることになっております。   〔竹内主査代理退席、主査着席〕
  116. 中村重光

    中村(重)分科員 道路管理者の意見というものもある、こうおっしゃる。それはやはり交通上の安全、こういう点からでしょう。その管理者の意見を聞くということもそれ以外ないのでしょう。
  117. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 いわゆる道路の利用のための見地から言うわけでありますから、私のほうの交通の安全と円滑というものと、道路利用というものがあるわけでございます。そういう意味ではある程度の一致した点もあるかと思います。
  118. 中村重光

    中村(重)分科員 この取り締まりの準則といったような点、いわゆる許可の準則みたいなものはあなたのほうでお示しになっておられますか。
  119. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 道路使用の問題については、率直に申し上げまして、いろいろ具体的に問題点があるかと思います。そういう点で、ちょっとおそいわけでありますけれども、私どもとしては昨年来道路使用というものについての一般的な準則というものを新しい見地から考え直さなければいけないということで、それについての基準をわれわれでつくって、そしてこれを府県に示して、それに基づいて公安委員会規則なりそれぞれの関係で処理をしていこう、一般論で申し上げまして道交法に基づく公安委員会の規則なりあるいは府県でつくっております規程をこの間からずっと検討いたしますと、いろいろ各府県によってまちまちでありますし、いろいろ問題点がありますので、そういうものも含めて一つの基準を定めて、あるいは地方の実情に合うようにするものは地方の実情に合うようにしたいということで、率直に申し上げていま検討している最中でございます。
  120. 中村重光

    中村(重)分科員 これで終わりますが、あなたのほうで検討をして準則を示すということでございますから、それでよろしいと思います。いまのところいろいろ都道府県の条例できめているようですけれども交通の安全ということよりも、まあ何と言うのでしょうか、火災あるいは衛生上あるいは夜中に非常に喧騒をきわめている。そういう点がむしろ許可すべきかどうかということの前提条件みたいな感じになっているような気がするわけです。ですからそういう点は十分検討される必要があると私は考えます。それから屋台なんというのは、これはいろいろな面から好ましいことではないです。健全な屋内におけるおでん屋さんなんかにしましても、あるいはその他飲食物を販売するものは屋内のほうが好ましい。好ましいけれども、やはり資金の問題あるいは場所の問題、いろいろな点からそれができない。やむを得ず屋台をやっている、こういう人は何も好んでやっているのじゃないと私は思う。人が寝るときは寝たいだろう。しかし人が寝るときに起きてでもやらなければならぬというような今日の社会の状態というものが、仕組みがそういう形になっているわけですから、やはり取り締まりの面と社会政策的な面、そういう点を十分勘案して、それで交通安全ということと合わせてそういう点も十分配慮してやってもらいたい。なるほど第一線の警察はそこいらあたりの配慮というものはあるでしょう。あるだろうけれども、相当苦労しておられるように私どもも見受けるのですが、県であるとか、市であるとかいうものは無関心、全く一切を警察へまかせるというようなことで、警察はみずからの所管以外のことまでもやらなければいかぬというようなことのようです。ですからあなたのほうでも積極的にそういったあらゆる面から十分配慮して取り締まっていくというような取り組みが望ましいと私は思います。その点についてもう一度、できればひとつ大臣の御答弁をお聞かせ願いたい。
  121. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 確かに露店の問題については、私ども過去に整理した経験を持っておりますので、いろいろこれの転換配置というような問題であるとか、資金の問題であるとか、相当総合的な対策を必要とするわけであります。したがいまして警察としてもこれを単に交通という問題じゃなくて、風俗あるいはその他一般の治安維持という問題から関係方面にいろいろと意見の具申をしておりますが、やはり府県なり市町村というものが、総合対策を打つという面からもっと積極的に取り組んでいただかなければならない、こういうふうに私ども思っておりますが、警察としてもそれぞれの問題について単に警察的な割り切り方からこれに対処するということではなくして、総合的な面からいろいろ考えておりますので、風俗あるいは一般治安維持の問題であるとか、あるいはこういう露店に関連して暴力団がこれについてくるというような問題もありますので、これらの問題をも排除するというような意味で、警察全般の総合対策から一つの結論を出しながら、なおかつ関係の市町村に対して前向きで善処してもらうということでスムーズに、もしやめる場合にはそれをやめさせる、あるいはどうしても置かなければならないならばどういうふうな規模で置くかということについては、各地方の状況に応じて考えていくということになっておりますが、一般的な方向といたしましては、最近のやはり交通の問題からいいますと、メーンストリートにおける露店等については、やはりだんだん整理をしなければならぬというような状況になっておりますので、そういう方向へ進みながら、なおかつ御指摘のような点について十分考慮して総合的に対策を立てていきたい、こういうふうに考えております。
  122. 中村重光

    中村(重)分科員 総合的なことで大臣からお答えを願いたい。
  123. 永山忠則

    ○永山国務大臣 いまの屋台関係につきましては、警察及び各市町村関係と、局長が申しましたように、総合的に対策を推進をするように、前向きで事を進めたいと考えております。
  124. 大橋武夫

  125. 川俣清音

    川俣分科員 時間がないので、なるべく簡略にお尋ねをしたいと思います。  第一にお尋ねしたいのは、各官庁と比較してみて旅費が非常に豊富だとも見えるわけですが、行動を必要とする自治省職員の旅費が、必ずしも多いとも思われませんけれども、各官庁と比較してみると非常に大きい。千七百万というのですから、ほかの官庁の約十倍くらいな予算になっておると思うのです。まあこれでも足りないのじゃないかと思うわけですが、それは問題ないのですが、そこでお尋ねしたいのは、そういうふうに見てまいりますと、目の十七、交際費四百五十万というのがございます。これも各官庁と比較してみると、大体四、五十万の交際費が四百五十万という多額な——他庁と比較して多額に予算要求をされておりますが、これはどういう理由ですか。簡単でけっこうですから、お答えを願いたいと思います。——会計課長がいないとわからないらしいから次にいきますが、固定資産の評価謝金等、諸謝金というのがだいぶ出ております。百十九万五千円くらい出ているのですが、この中の固定資産評価謝金という、わずか二十一万ですけれども、この内容もあとで御説明願いたいと思います。  そこで、一番お尋ねしたいのは、庁費あるいは旅費にも出てくるわけですが、旅費としては固定資産税実態調査旅費というのがございます。これも百五十八万という、旅費にしては多額なものでございますが、一体この固定資産税実態調査旅費、及び事務費にもございますが、固定資産税実施事務費として百五十八万、固定資産税改正評価制度準備及び実施事務費として二百四十九万、二百五十万ばかりの金、合わせて四百万ばかりお使いになっておりますが、この結果をひとつお知らせ願いたいのです。いまここでは無理でしょう、しかし、なぜこういうことをお聞きするかというと、当然、あとのほうにも出てきますが、国有財産または公社、公団資産の納付金の指導または分配について関与されておるわけです。固定資産の評価がえを行なうための準備の旅費または事務費であろうと思います。また、公社、公団等の納付金あるいは国有財産所在市町村の交付金などについても検討されたようですが、一体固定資産税は上げるし、交付税納付金のほうは据え置きだということはどこから出てくるのですか。全然調査、研究もされないで出てきたなら別ですよ、これほどまでに調査、研究の費用をかけ、旅費をかけてやっておられるならば、当然国の政治は同一でなければならない。片一方は据え置きだ、片一方は上げるのだという調査、これはどういうことなんですか。
  126. 細郷道一

    細郷政府委員 事務費の詳細については、追って後刻御報告申し上げたいと思いますが、現状におきます国有資産の評価のベースと固定資産の評価ベースとの関係いかんという御質問と存じます。御承知のように、国有資産につきましては五年ごとに評価がえをするというので、この次はこの三月末ということになっております。固定資産税のほうは、土地、家屋につきましては三年ごとというので、前回三十九年に評価がえをいたしたわけでございますが、この次は四十二年というのが現行法のたてまえでございます。それぞれそのねらいが違うわけでございまして、御承知のように、固定資産税の評価は、固定資産税の課税標準となる評価額の適正なものを求めたいというところにございます。国有財産のほうは、本来固定資産税は国、地方相互間には課税をしないというたてまえのもののうち、例外的に地元との関係の強いものあるいは貸し付け資産等につきまして交納付金を納める、こういうたてまえになっておりまして、その際に、その交納付金の課税標準には国有財産台帳価格を使う、こういうふうにたてまえがなっておるのでございます。なお、現実の問題といたしまして、今回この固定資産税につきましては、土地について一年繰り上げをしていきたいということにつきましては、三十九年の新評価をいたしましたけれども、それにまで実は課税が現実に行なわれておりません。おりませんので、それに近づくために、今回、明年度から負担調整の措置を講じてまいりたい、こういう考え方に立っております。現実に課税の基礎となっております固定資産税の価格は、一般的には国有財産の価格よりも下回っておるというのが現状でございます。
  127. 川俣清音

    川俣分科員 答弁がおかしい。例外なんて、例外じゃないですよ。別建ての法律でできておるので、例外規定じゃございません。法律が別にある。国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律というのがあるのです。別建てじゃない、二本立てになっておるのですよ。あのときの法律の提案の説明で何と説明されておるか。固定資産税の見返りのための制度だと明らかにしておるじゃないですか。税率の問題じゃないです。評価の問題だ。評価台帳が変われば、当然これは変わっていかなければならぬ。あなた方の指導も、現地に行きまして、国有財産であろうと、みんな評価がえの指導をしておられるじゃないですか。固定資産税というものは、民有地だけというわけにいかないでしょう。そういう指導をしておりますか。この区域という指導でしょう。その中に国有地があれば、それも評価に入るわけです。宅地なり山林なり原野なり、まあ農地は除かれておりますが、これに入っておる。国有地だけに別な評価がえをするということになっておりますか。そうじゃないでしょう。支払うほうの基準が五年ごとに評価し直すということはありますけれども、地元町村の評価は同じ時点の評価です。一体何のために旅費を使って行っているのか。この旅費というのは、むだな旅費ですか、遊びの旅費ですか。調査に行っているじゃないですか。事務費も使っているじゃないですか。一体自治省というのは、この旅費を使い、事務費を使っておって、いまのような答弁はおかしいじゃないですか。他の事情だということなら別ですよ。この旅費は何です。こういうものを調査指導に行かれたのですか。
  128. 細郷道一

    細郷政府委員 例外的と申し上げたのは、多少私の説明が不十分かもしれませんが、こういうことでございます。現在、固定資産税自体は、国、地方団体相互間には課税しないというのが、固定資産税のみならず、租税の原則でございます。その原則に対しまして、国有の財産であっても貸し付けをしている、たとえば公務員宿舎であるとか公営住宅であるとか、そういったような貸し付けをしておる財産、あるいは国有林野であるとか国鉄のような、三公社のような企業財産、こういったようなものについてはそれぞれ収益を生んでおるのだから、これらについて固定資産税としてはかけないけれども、固定資産税にかわるものとしての交納付金の制度をつくる、そういう意味合いにおいて、租税の原則であります国、地方団体相互間は課税せずという税制上の原則に対しては例外になっておる、こういう意味で申し上げたものでございまして、法律はそういう趣旨のもとに別建ての法律になっております。  それからなお、固定資産税の評価につきましては、固定資産税の課税対象にならない物件につきましては、市町村は評価をいたしておりません。したがって、市町村内に国有地がございますれば、先ほどの原則に戻って、国有地については市町村は評価をいたしません。ただ、国有地の中でも貸し付けております資産、交納付金の対象になるものにつきましては、これは別個国有財産法によりましてその評価をいたして、台帳価格に登載されておるものをもって課税標準に使う、こういうことでございますので、市町村自体は交納付金の対象資産についての評価はいたさない、こういうことになっております。
  129. 川俣清音

    川俣分科員 あなた、どう指導されておるのです。ことし国有財産については町村会があげて運動したでしょう。どういう運動をしたか。民有林地と国有地を区別しない要求を出された。自治省は、それを指導されたというか、参与をしている。何です。区別して評価するものならば、こんなことに参与される必要はないじゃないですか。国有林野は、自分のほうの評価より増額をして民有林並みの評価にかえて、ことしは交付金を出しておる。それじゃ、あの必要はなかったのですか。自治省の見解によると、あの必要はなかったという見解ですか。そうすると、林野庁の予算というものはたいへんな予算だ。説明によると、町村会の要求等により民有林並みの評価がえをして評価したということによって、国有林野だけは交付金がふえている。ほかの国有資産はふえておりません。増額はしておりません。たしか八億六千万ばかり国有林は出ておるはずです。去年は四億台ですか。あなたの答弁、おかしいじゃないですか。どっちが誤りなんです。自治省との見解は、林野庁のほうが誤りなのか、あるいはあなたのいまの答弁が誤りなのか、どっちなんです。はっきりしてほしい。
  130. 細郷道一

    細郷政府委員 交付金の対象資産につきましては、国有財産でございますので、それぞれ各省各庁の長から所有市町村に価格を通知することになっております。その通知されました価格が、その市町村内におきます同種類の固定資産との間にバランスを非常に失するという場合には、市町村長が各省各庁の長に修正方の申し出をすることができるようになっておりまして、それが国有資産等所在市町村交付金法に入っておるわけでございます。市町村長が、その自分の市町村内の民有地とそれから国有地との間で非常に不均衡があるということでございますと、市町村長としてはこの価格の修正申し出ができるわけでございます。したがいまして、私のほうとしましては、国有林野につきましては従来から必ずしも満足すべきバランスがとれていないというところで、三十八年以来林野庁と、価格を直して交付金の額をふやすようにという折衝をずっと続けてまいりました。今年もその折衝の結果、一億五千万円昨年よりもふえてまいったわけでございます。
  131. 川俣清音

    川俣分科員 前の説明と違うじゃないですか。国有資産は地元の資産評価と違ってもいいのだ、こういう説明でしょう。これは別建てだ、こういう説明でしょう。あなたが今度払った林野のあれは、市町村台帳に基づく、府県台帳に基づく評価による支払いですよ。あなたのほうでそう指導したじゃないですか。これは、地方によっては町村会の大会を開いたり議長会を開いたりして要求があった。あるいは自治省には運動があったことは事実ですよ。それをどう指導したのです。不均衡だということ、民有資産と同じ評価であるべきだという要求じゃないですか。国有資産は別建てだ、別評価だという、そういう運動じゃないでしょう。あなたのほうで指導したのは、やはり民有地と同じような評価をしてほしい、それに対する交付金であってほしい、こういう指導をしたじゃないですか。それで増額さしたじゃないですか。まだ五年の年期はきておりませんよ。それじゃなぜかえさせた、私はかえたのが悪いと言うのじゃない。あなたの回答がおかしいのですよ。
  132. 細郷道一

    細郷政府委員 それぞれの評価は別々にいたします。その結果、末端の市町村におきまして同種類の資産と非常にバランスが違うという場合には、市町村長が、この場合であれば農林大臣に価格を直してもらいたい、こういう申し出ができるわけでございます。農林大臣は、直すべきものと認めればそれによって直すわけであります。今回は、市町村長側からも、法律によるものではございませんでしたけれども、どうも低いから事実問題としてもっと直してもらいたいという要望があったことは事実でございます。その結果、農林省においてもいろいろ検討の結果今回ふえたわけでございます。国有林野の価格につきましては、一般の国有財産法の場合と同じ台帳価格ではございますけれども、国有林野会計が特別な企業財産であるということから、農林大臣は必ずしも五年ごとに価格を改定するということではございませんで、一般物価の変動等、特別な事由がありまして非常に現在の価格が不適当だというときには、農林大臣自身が、これを、五年を待たずして改定ができるというたてまえになっておりますので、他の一般の公社等の国有財産とは扱いが違うわけでございます。
  133. 川俣清音

    川俣分科員 違いありません。法律によってきまったことであり、また、国有林運営規程によって地方の評価が台帳に基づいて支払うということになっておりましたので、法律の適用を受けた国有地だけでございます。と同時に、あなたの場合は大蔵省へ回答しているでしょう。林野庁は、一様に上げるならばやむを得ないけれども、大蔵省へ問い合わしたところが、大蔵省から自治省に対して、固定資産税を上げなければならぬかどうかというのに対して回答を求めているはずです。あなたのほうで回答を出したから、回答に応じて予算編成している。その文書を出しましょうか。大蔵省はそれで固定資産の増額を認めたことになっている。初めは削られておったのです。町村会の議決書や自治省意見を付して増額したんですよ。これはかってに増額したんじゃないんですよ。だいぶん予算折衝中にごたごたした問題なんです。だから、これはあなたの説明だと違うんですよ。評価がえを五年でいいというのなら、これは林野庁の越権行為ですよ、あなたの説明であるならば。しかし、自治省や大蔵省も入って、やむを得ないということで、これは増額しておることには間違いない。各省ともそんなに、自分の事業費をふやすなら別にして、固定資産税を無条件でふやすなんということは考えられないですよ。もちろん、町村会の議決もあったろうし、運動もあったろうと思う。その裏づけを自治省がされたからですよ。裏づけをされたから大蔵省もこれは認めたのでしょう。国有林野は赤字でしょう。赤字ですよ。なお、固定資産税だけを増額を認めたんですよ。あと増額になったものはないじゃないですか。みな削減されている。固定資産税だけですよ。交付金だけですよ、増額になっているのは。これはおかしいじゃないですか。もし五年ごとでいいというならば、これは予算を削減しなければならぬ。もう少し統一した答弁をしてほしい。
  134. 細郷道一

    細郷政府委員 国有財産一般は、五年ごとに改定をすることになっております。先ほど申し上げましたように、国有林野だけはその五年ごとの改定でないわけでございます。それの適用を受けないわけでございます。したがって、農林大臣が一般の価格の変動その他特別な事由で不適当だという場合には、これを直せる。これは企業財産であるが、国有財産法の五年ごとの改定という規定の適用を受けていないのであります。
  135. 川俣清音

    川俣分科員 企業財産は、このほかに、国有財産ばかりでなくあります。実は非常に国有林野が熾烈に要求されるものは、山村等において固定資産の対象になる財産が少ないために、国有地が一番ねらわれざるを得ないことになるとは言えるでしょう。この点では、鉄道であれ、あるいは専売公社であれ同じですよ。たばこの専売公社なども山村地にありますが、一番大きい固定資産税の対象物件が抜けるわけです。そういうところからも、必ず固定資産税の値上がりとともに、交付金の値上がりを唯一の収入にして毎年予算を組んでいる。その調査にあなた方は行かれているじゃないですか。お調べになったのでしょう。その報告書を出してください。何のために行ったのか。固定資産税実態調査旅費百五十八万一千円、行っているじゃないですか。これは使わなかったのですか、お使いになったのですか。これは四十一年ですが、昨年度も出ている。ことしは、さらに増額になって出ている。こんな要求はおかしいじゃないですか。それは要らないのですか。不用額の要求ですか、大臣どうですか。
  136. 細郷道一

    細郷政府委員 私のほうにあがっております旅費の予算は、市町村の固定資産税の評価事務の指導に要する旅費でございます。これは国有林野の評価額についての調査に使うものではございません。国有林野のほうの評価は、先ほど来申し上げておりますように、農林大臣がいたすべきものであります。
  137. 川俣清音

    川俣分科員 これはたいへんなことですから、速記録を調べてあれしますけれども、固定資産税実態調査ですから、その中には、当然国有財産についても調査をしなければならぬことになるわけです。固定資産税の収入がなかった場合どうするか、当然問題になって出てくるでしょう。国有林野ばかりじゃないですよ。もちろん、特別に除外されているものもあります。当然調査の対象になって、除外されてないものもある。それで町村の実態を見なければならぬ。あなたは重大なことをおっしゃいました。単なる旅費かせぎのためか、また実態調査をほんとうにするためか。人数や何か、みんな積算してください。どこへ行かれるのか、あとで資料でけっこうです、県別、町村別に出してください。何のために行くかわからぬですよ。時間がないので、旅費のほうは大体よろしゅうございますが、あとで資料を出していただきます。  交際費については、各官庁とも大体四、五十万ですね。
  138. 松島五郎

    ○松島政府委員 交際費は各省共通でございまして……
  139. 川俣清音

    川俣分科員 金額は共通でない。
  140. 松島五郎

    ○松島政府委員 四百五十万円と……。
  141. 川俣清音

    川俣分科員 よろしゅうございます。それじゃ共通であるかないか、お調べになってあとで御回答願ってけっこうです。私の見ておる、政府から配付された予算書には同一ではございません。通産省が四十万ですか、農林省が四十八万、けたが違うからどういうわけかと聞いておる。悪いと指摘しておるのじゃないですよ。大きくやらなければならぬなら、大きくやらなければならぬ理由を聞きたいだけで、別に交際費が多いから不都合だと言うわけじゃない。同一でないから、違うからどういうわけでしょうかとお聞きしたのです。あとでけっこうです。  大臣、最後の質問です。あなたは、公明選挙ということを大いにうたわれておりますね。大臣は、やはり公明選挙の先頭に立たなければならないと思いますが、そうじゃないでしょうか。
  142. 永山忠則

    ○永山国務大臣 さようでございます。
  143. 川俣清音

    川俣分科員 ところが、あなたが秋田に行きながら選挙運動をされた。選挙違反を起こしておるわけだ。これはあなたのためじゃないかもしれぬ。それよりもはなはだしいのは、あなたが来られるというので警察官が六十何名動員されて、取り締まりはどうした。あのときは田植えの時期ですね。ところが、通る道路のそばに、くわやなんかを置いてはいけないという取り締まりをした。何ですか、一体百姓の農具を、自治大臣が通るからといって、道路のそばに置いてはならないとは。しかも農道ですよ。あなたは農道をお通りになった。その農道にくわやかまを置いてはならないというような取り締まりがどこから出てくるか、これが一つと、それから自治大臣永山さんが来るというのでポスターを張ったでしょう。これは違反ではないか。もし張ってよければわれわれも張るよということになったら、これは違反だからだめだ。私は写真をとっておきました。その写真を返してくれ。写真を返してくれと言うのは、とられたのが悪ければ適当な処分をしたらいいのです。写看をとることが違反じゃないんだ。違反のものをとられたことがいやだから、返してくれと言う。これ公明選挙に反するじゃないですか。これはあなたの知らぬことでしょう。自治大臣が来るというので演説会のポスターを張った。検印のない、許可のないポスターを張った。大臣、どういう責任を感じますか。自治大臣という地方を指導する役目を果たす者が、急いで選挙運動地に行くなんということになるから、近回りをして農道を通る。農道を通るために、百姓の農機具を道路のそばに置くな。国道とか県道なら別ですよ。農道というものは農業用の道路ですよ。当然、くわやかまがある場所なんです。危険だから取れなんて何です。永山大臣は、そんなに農民から信用がないですか。殺される心配があるのですか。くわやかまがおそろしいのですか。あなたは、それまでして行って選挙運動をしなければならぬというのは、どういうわけですか。それは、くわやかまのない県道なり国道なりを通ったらどうですか。時間を急ぐということで農道を通るが、農道を通ったために、そこに農機具があっては危険だ、何です一体。なければお百姓じゃないですよ。農業ではないです。これはどうお考えになりますか。ちょうどあのとき、たまたまあなたに会ったから・おわかりでしょう。農道をお通りになったのです。あなたが通るときに、農道だから、狭いために、リヤカーなどが全部寄せてあった。リヤカーなどを寄せる程度のことはいいですよ。くわやかまは、少なくとも三十メートル道路から離せ、何です。それはだれが指導したのですか。農道でなければまだ問題はないですよ。自分で農道を通っていながら、くわやかまは農道に置くなとはどういうことです、これは。三十メートル離さなければならぬというのはどういうわけです。
  144. 永山忠則

    ○永山国務大臣 公明選挙を強く推進しておるのでございます。したがいまして、違反等のなきようによく指示をいたしておるのでございますが、さらに今後におきましてもそういうことのないように一段の指導をいたし、かつまた、交通の整備等につきましても、不必要なる行き過ぎのないように、よく地方を指導いたしたいと考えておる次第でございます。
  145. 川俣清音

    川俣分科員 交通取り締まり——農道というものは、農機具を運搬する道路でしょう、農作物を運搬する道路でしょう。交通の障害になるのはあなたなんですよ。農業以外の人が、やたらに通ることが交通妨害なんです。農業用に通るのは交通妨害じゃないですよ。農作業のための農道でしょう。幾らか国の補助もありますけれども、みんな農民の負担によってつくられた道路ですよ。したがって、一般交通の取り締まりにもならない道路です。そこをあなたが通るために、農業用道具をよそへ移転しなければならない。交通取り締まりも、あなたを取り締まるのが交通取り締まりなんです。農業を妨げるようなことをするほうを取り締まるのが、農道の交通取り締まりですよ。大いに交通取り締まりをいたしまして、行き過ぎないようにと言うけれども、農道なんですよ。あなたは農道を通ってこられたでしょう。たんぼで手をあげられたりしたから、よく御存じでしょう。あれは選挙区じゃないですが、参議院の選挙もあったからいいでしょう。別に私は、手をあげたから悪いとは言わない。農道を通ってこられた意識があるはずです。もちろん、狭いからリヤカーを置いておくというのはよくない。この程度のことは、せっかくあなたがおいでになったのだから、通りやすくすることには私は文句は言わない。その程度のことはいい。しかし、くわやかまは危険だから寄せろというのはどういうわけですか。農機具を寄せろというのは、これは全く取り締まりの対象外ですよ。町の中でくわやかまを寄せておけというなら、これはいいですよ。農地ですよ。作業地ですよ。作業ができないじゃないですか。警察に言わせると、大臣に危険があってはいけないから離さしたという。一体あなたは、農民からそんなに信用ないんですか。農村を回るときに危険を感ずるんですか。自治大臣が農村を回るときに危険を感ずるんですか。何も危険を感ずること、ないでしょう。百姓に危険を感ずるようだったら、大臣はつとまらない。暴力団なんかには危険を感ずるとかといえば、これはわかりますよ。精神病者に危険を感ずる、これもわかります。一般の農民が農作業に従事しているのが危険だなんていうのは、一体どこから感ずるんです。あなた、みずから農道を回ると言ったって、危険じゃないからやかましく言うな、と言うくらいなことがなければならぬはずじゃないですか。あなた、そんなことで選挙ができますか。あなたのほうにも農村があるでしょう。百姓、いつおれをぶんなぐるかわからないということで、一体選挙ができますか。そんな選挙をやっておっては落選します。百姓が危険だなんて、おそろしい、何をするかわからぬなんというのは、これは政策が悪いからです。何とこれをお考えになりますか。どうしてもこの点はあなたにただしておきたい。あなたの名誉のためにもただしておきたい。今度旅行されるときは、農村を回るときには、農機具などを取り締まるなと、これくらいのことがなければ出張しないほうがいいですよ。一体何でくわやかまがおそろしいんですか。あなた、ほんとうにおそろしいと思いますか。敵がい心も持っていない農民に危険を感ずるなんていうのだったら、どこかの政治が悪いからです。あなたが悪くなくても、佐藤内閣の政治が悪ければ、あるいは危険を感じなければならないかもしれない。これをどうお考えになりますか。
  146. 永山忠則

    ○永山国務大臣 私は、農民には最も愛される議員であるように自負をいたしており、また、私も農村政策には政治生命を投げて、川俣さんの御存じのように努力を続けておる関係でございます。したがいまして、取り締まり等において作業などに支障いたさないように、取り締まりの行き過ぎがないように厳に注意をするようにいたしたいと考えております。
  147. 川俣清音

    川俣分科員 時間がないからこの程度にいたしますが、これはほんとうに、あなた、出張するときは考えてもらいたい。農民の持っているくわやかまなんというのは、百姓一揆でも起こしたとか、税金でも無理に取り立てるという場合には、あなた、行ったらあぶないでしょう。それはあぶないかもしれない。そのほかのときに農村に視察に行って、くわやかまを持っているからおそろしいなんという感覚を持っておったら、これは政治になりませんよ。それを下部がやっているんですよ。大臣をかばおう。こんなかばい方されてまで、あなた、出張しなければならぬというようなことはおやめなさい。ほんとうにあなたの名誉のためにやるべきじゃない。これが選挙区に聞こえてごらんなさい。あなた、たいへんなことですよ。百姓が神さまに近いと思っておるのが、くわやかまがおそろしくて取り締まったなんて言ってごらんなさい。ほんとうにあなたの名誉のために——これは行き過ぎです。大臣をかばい過ぎる。不必要なかばい過ぎです。そういうことをあなたがやるから、固定資産税なんかについては、まことにたよりないんですよ。おれは知らない——それは、あなたが善良だから、知らないでいいですよ。だけれども、あなたの下には、こういうことが行なわれていることは事実なんです。これを私はあえて指摘したのです。あなたがいかに善良でありましても、こういうことがあった。固定資産税についてもまだ問題が残っているのですから、十分さらに御勉強を願っておきたいと思います。  これで私の質問は終わります。
  148. 大橋武夫

    大橋主査 二時三十分より再開することとし、休憩いたします。    午後一時五十一分休憩      ————◇—————    午後二時三十九分開議
  149. 大橋武夫

    大橋主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春日一幸君。
  150. 春日一幸

    春日分科員 私は、固定資産税中、なかんずく償却資産税について、本日は主としてその免税点の設定のあり方について政府の見解をただしながら、私の意見を申し述べて、ひとつ善処方を求めたいと思うのであります。  申し上げるまでもなく、固定資産税の課税客体と申しまするものは、土地、家屋、これに償却資産を加えて、三つからなっておるのでありますが、なかんずく、その償却資産なるものは、例の昭和二十五年のシャウプ勧告、これに基づいて新しく創設されたものでございました。したがって、この新しい制度は、私ども国民にも十分なれてはいないし、また、徴税技術上、十分まだこなされていない、そういう意味で、この制度は、いまなお徴税理論といたしましては相当の疑義があると思いますし、のみならず、このことが厳格に行なわれますと、及ぼす中小企業への負担、苦痛、これが中小企業対策として、また多くの問題を発生してまいると思うのでございます。こういうような意味合いにおいて、いまや、この固定資産税中、なかんずく、その償却資産税なるものの免税点については、徴税政策の根本的立場から、かつまた、中小企業対策の政策的立場から、大いに検討を加える必要はないかと思うのでございます。  そこで、まずお伺いをいたしますが、現在、現時点において、この償却資産税なるものの、特に中小企業を対象とした全国における普及率と申しますか、徴税度合い、これは、法律が定める課税客体に対して、何%程度の徴収を行ない得ておるか、どのように政府は把握をいたしておりますか、この点について御答弁を願いたいと思います。
  151. 細郷道一

    細郷政府委員 ただいま、償却資産に対します固定資産税の免税点は十五万円でございます。これが納税免税点を越えて納税を実際に行なっているものの数は約六十万人でございます。事業税の対象となっております納税義務者は、個人が百五十万、法人が約七十万でございますので、合わせますと二百二十万くらいになるわけでございますが、償却資産税といたしましては、いま申し上げましたような六十万人がその納税義務者になっておりますので、おおむね事業者の法人、個人を突っ込みまして約三割足らずというところが納税義務者になっておる、こういうふうに見ております。
  152. 春日一幸

    春日分科員 そういたしますと、その納税義務者六十万人、すなわち、すべての納税義務者の三分の一、この程度の率は、いかなる理由でこの程度の率にとどまっておるのであるか。これは十五万円の免税点によって、他の諸君はそれ以下のものである、こういうふうに認識をされておるのであるか、それとも、申告がされていないので、徴収し得ていないと理解をすべきであるか、どのように判断されておりますか。
  153. 細郷道一

    細郷政府委員 率直に言って、両面あると思います。償却資産の免税点は、御承知のように、土地、家屋に比較して、中小企業対策といったような意味で、かなり高く上げておるわけでございます。土地、家屋の三万円に対して、これは十五万円に現在いたしております。それの影響も非常に大きく出ていると思いますが、反面におきましては、現実の申告の問題がございますので、その点の捕捉の不十分という面も多少あらわれているのではなかろうか、こう見ております。
  154. 春日一幸

    春日分科員 あるいは自治省当局にすでにその意思表示がなされておるかと思うのでありますが、先般来、全国の青色申告会が、大会の決定を持たれまして、これに基づいて、免税点を大幅に引き上げてもらいたい、大会決定は百万円まで引き上げてもらいたいという要請を行なっておると思うのであります。御承知でございますか。
  155. 細郷道一

    細郷政府委員 そういう要望のあることは伺っております。
  156. 春日一幸

    春日分科員 彼らのその要望の中に訴えております内容は、すなわち、いままで市町村が、何となくその課税について緩慢な手心を加えてまいっておる、しかしながら、それは法律で、市町村自治体に対して徴税の義務権利を課しておるのに、そのようなことが行なわれておるということは適当でないということと、もう一つは、自治体の財政が窮迫を告げておるからして、財源調弁のためにも、さらに徴税攻勢を加えてくる、そのような面から、本年あたり、各市町村とも、この償却資産税に対して全面的な攻勢の姿勢をあらためて加えてまいる、こういうような情勢にあると思われる。ここで、もしそれ、法律に基づいて一〇〇%の徴税攻勢が加えられるという形になるならば、いまや、中小企業がはなはだしく困窮の中に置かれており、御承知のごとく、破産、倒産が相次いでおる、そこで中小企業の安定、振興のための諸施策をいよいよ重点的に行なおうとしておるときに、一つは、中小企業自体として負担にたえかねる、一つは、国の施策にこれは逆行するものである、特に減税時点において実際的の増税が行なわれているということは、まことに困った問題である、だから、この問題については、政府並びに国会において、十分ひとつ実情に即した再検討を願いたいという強い要求が、この陳情、要請の中に述べられておるのでございます。これについて局長、政府はどのようにお考えになっておりますか。
  157. 細郷道一

    細郷政府委員 従来から、償却資産につきましては、本人の申告をもとにして課税事務を進めるという行き方をとっておるわけでございます。先ほどもちょっと触れましたように、申告が漏れておったり、申告がおくれたりというようなこともございまして、私も、率直に言って、必ずしも完璧に法律どおりになっていないのではなかろうか、こう考えます。したがって、市町村当局も、だんだんとそういった方面につきましても、何と申しますか、そういう意味での経験を積んでまいりまして、課税の適正化につとめていると思うのであります。いま御指摘のように、全面的に各市町村が本年攻勢をかけているというふうには、私ども実は理解をいたしていないのでございます。
  158. 春日一幸

    春日分科員 理解をされていないということについては、若干疑義があると思うのでありますが、本来的には、法律が定められておるのであるから、実態は、法律に基づいて徴税を行なう、だから、本来的な職務を遂行していくというだけのことであり、すなわち、それが積極的攻勢というような表現に合致するかどうかは別問題といたしまして、現実に、全国の青色申告会の代表者諸君が異口同音に唱えられておりますことは、すなわち、それぞれの町村役場で何千枚、何万枚という納税申告書を配付いたしておる、いままで、かってなかりしことが本年度から全国一斉に行なわれておる、こういうことでございます。  そこで、いま局長御答弁のごとく、いろいろ法律関係を調べてみると、国税通則法にならって、五年間はこれが徴収できるものである、場合によっては重加算税、無申告加算税、このような懲罰的重税を課せられるおそれがある、こういうことでございまするから、したがいまして、もし、そのことがなされたならばたいへんな重圧になってくるのである。国は、中小企業者がいまはなはだしく困窮の中に置かれておるという事態を正当に認識をしてくれるのであるならば、いまこの時点において、中小企業者がそのような重き負担にさらされようといたしておるのであるから、これに対して何らかの救済策をとってくれ、こういう要望があるということについては、これはひとつ十分御認識をいただきたいと思うのであります。  そこで私は、論旨を進めてまいりたいと思うのでありまするが、この際、私は、この償却資産税が法律どおり執行されてまいりますると、いかに問題を随所に惹起してくるものであるかという問題について、私の見聞した範囲内の事柄を述べて、御判断を願いたいと思うのであります。とにかく、税法というものは——法律はすべてそうでありますが、なかんずく税法は、あくまで公平の原則が貫かれなければならぬと思うのでございます。はたして公平にこの償却資産税の徴税を遂行することが可能であるかどうかという問題が出てまいると思うのでございます。  まず、第一番にお伺いをいたしたいと思うのは、この評価は、法律によりますると、法人税法それから所得税法による耐用年数表に基づくもの、こういわれております。そこでお伺いをいたしたいことは、この耐用年数なるものは、この耐用年数リスト以外にも、他の法律でそれぞれの制約あるいは特別措置というものがとられておるわけでございます。申し上げますると、中小企業近代化促進法、これの中で、設備近代化の指定を受けた機械については五年間、これは通常の場合の三分の一の割り増し償却が認められておる。あるいは企業合理化促進法によりますると、これは特別償却が初年度四分の一の特例が認められておる。あるいは中小企業近代化資金助成法に基づいて、寄り合い百貨店のような場合、これは初年度十分の一の特別償却が認められておる。その他、租税特別措置法の単独取りきめによりまして、大臣が告示する場合においては、合理化機械あるいは農協の機械、あるいは漁業協同組合のいろんな設備、こういうものについて三分の一の初年度償却が認められておる。そういうようなぐあいに、耐用年数の関係というものは、複雑かつ実態的に政策行政に基づいてそれぞれ細密な取りきめがなされておるが、このような対象に対して、償却資産税の税率というものはどういうぐあいに作用することに相なるのでございますか、お答えを願いたい。
  159. 細郷道一

    細郷政府委員 償却資産の課税の課税標準となります価額は、法人税法にうたわれております耐用年数によって年々償却をいたしているわけでございます。その際に、その償却は特別償却とか割り増し償却というものは含まず、普通償却だけによってまいる、こういうことにいたしております。
  160. 春日一幸

    春日分科員 税法上の目的でこういう特別償却措置がとられておるものでございますから、したがって、地方税法の本旨である応益者負担の原則からいえば、必ずしもこれはリンクさせなければならないという論理はそこからは出てこないかもしれないと思うのでありますが、一応、納税者側のいろいろな資産台帳等からいたしますと、これは同じ機械についても、すなわち簿価というものが二様三様に分かれてくる。たとえば固定資産税用の簿価、あるいは事業経営上の、すなわち収支決算用の簿価というぐあいに、台帳を二様三様につくっていかなければならぬと思うのでありまするが、具体的に申しますると、ある時点においては、一つの旋盤なら旋盤が、会社の台帳では、もうすでに減価償却が多く行なわれて、残存価額というものは、とにかく十万か十五万しかない。ところが固定資産税のほうでは、五十万も六十万もなお残存しておるというような形になってきて、同一物件に対する評価額というものが合致しない形になってまいると思うのでございます。それはどういうふうにお考えになりますか。
  161. 細郷道一

    細郷政府委員 固定資産税の償却資産に対する課税としましては、やはり資産を持っております納税義務者相互間に、同じ資産を持っておった場合には、同じような課税標準を使って公平にいきたいという一つの要請があるということが一つございます。もう一つは、それによって特別償却とかあるいは割り増し償却とかいったような、政策上の姿をこの固定資産税自体に反映させることは、固定資産税の本質から見ていかがであろうかという問題もあるわけでございまして、そういうような点から、普通償却によっております。したがいまして、その限りにおいては、納税者に、固定資産税については普通償却としての計算をしていただく、こういうことでございまして、もし、その会社なり納税義務者が、所得計算上は特別償却の適用を受ける、いわゆる租税特別措置法の適用を受けるという場合には、そちらのほうで、またそのほうの計算をしていただかなければならないというようなことでございまして、現状におきましては、やむを得ない措置であろう、こう考えております。
  162. 春日一幸

    春日分科員 私は、いわばセクト主義といっては語弊がありますけれども、そういうような意味合いにおいて、目的は相異なるものでありますから、したがって、二重、三重の手数は、やむを得ないといえばそれまでのことであろうと思うのであります。けれども、すべからく税法というものは、できるだけ簡便に、そうして徴税費用のかからぬように、国民に迷惑、負担があまり多くないように、いわば繁雑にわたらないように、そうして、あくまで負担均衡がはかられなければならぬ、こういうような立場から総合的に判断をいたしますと、この耐用年数関係の法律によって定められたものをそのまま適用していくということは、これ自体にも、やはり一つの政策要素が含められておるのです。あるものは二年、あるものは三年、あるものは五年ということは、実質上の耐用年数であるか、若干の政策を加味しての耐用年数であるか、この中にも、さらに政策というものは耐用年数設定にあたって込められておる。それは中小企業対策というべきか、産業政策というべきか、そういうものも込められておる。これだけでは足らないから、さらに、これを専門的に濃縮したものが、他の法律による耐用年数の特別短年圧縮ということになると思うのでございます。だから、全然別個のごとくであるけれども、しかし、国の政治全体として考えますと、これは有機的なつながりがあるものと判断して、私は、論理はそう飛躍もしないと思う。だから、そういうような意味合いで、納税者が二つも三つも台帳を持たなければならない、そうして、そのつど年次計算を行なっていかなければならない、このことが、相当の株式会社ならよろしい、大々会社ならよろしいけれども、町の一人親方の旋盤工なんかに——おやじも働いて旋盤を回しておる、あるいは散髪屋のおやじが自分ではさみをとっておるというような親方、いわば零細中小企業者諸君にこのような繁雑を義務を課していくという税体系というものが、最終的に研究され、洗練された徴税方式であるかどうか、これは十分御検討願う余地がある問題であると思うのでございます。  わけて、私は、この応益性についていささか御検討願いたいと思うのであります。私は、この応益性の問題について論じてみたいと思うのでありまするが、地方税がそのような理念から出発をしておるという立脚点に立ちまするならば、土地というもの、家屋というもの、こういうものと、それから、少なくとも五年、十年と長期的な耐用年数を持つ物件、これは、市町村がそのものの安全を確保するためのさまざまな行政措置、たとえば、消防でありまするとか、子弟の教育でありまするとか、環境整備に関する諸行政費、こういうものが、そのような物件を対象として行なわれるのでありまするから、したがって、反対負担として、そのような償却資産税を負担することは、私は、政策理念としては、まあいけると思うのです。ところが、自転車であるとかリヤカーであるとか、ここの中には二年、三年というような短年償却のものも全部含まれておるわけなんですね。調べてみますると、自転車、リヤカー、マネキン人形、かつら、印刷屋の購入活字、オペラグラス、そこをずっと見ていただけばわかりまするけれども、そんなものが、市町村によって特別の行政上の保護を受けるとか、負担をかけるとかいう実態は、現実の問題としてないと思うのです。自転車税は廃止になったと思うのでありまするが、それにしても、自転車やリヤカーを持っておるといったって、市役所や村役場にえらいごめんどうをかけるわけでもない、マネキン人形やオペラグラス、そんなものは無関係であると思うんですね。そんなものに税をかけるということについて、一体応益性、市町村行政のフェーバーをどの程度受けるのであるか、実感が出てこない。そして、事実上の理論としても、大風が吹けばおけ屋がもうかるような回り回った理屈でこね合わせていけば、それは、それぞれの応益性は絶無ではないであろうけれども、こういうような短年償却、そういうようなものは、シャウプさんが勧告をしていったものだから、そのままこれが課税されておる。これは適当ではないとお思いになりませんか。私は、この問題について非常な疑義があると思われたので、いろいろな論者の著述に基づいて研究をしてみたのであります。私は、大蔵委員を十五年やっておりまするので、税法については、とにかくいささか——国税については研究をいたしておりまするが、地方税は、これに関連しての知識しか持ちませんから、必ずしも的確な理論になるかどうかわかりませんが、そのために、当時横浜国立大学教授でありました黒沢清君の論述、それから、主税局長や国税庁長官をやっておりました渡辺喜久造君の税の理論等、いろいろ読んでみますると、その結論とするところは、どうもこれはしっくりしたものではない、こういうことを言っております。特に短期長期の償却資産、これを同一の取り扱いをするということは適当ではない、こういうことを言っておるのですね。ショート・ピリオド、それからロング・ピリオド、こういうものを同じように取り扱っていくということは適当ではない、ロング・ピリオド・オンリーになすべきであるというように、それぞれ徴税学者の意見は集約されておる。したがって、これを区分するといってもなかなかむずかしいであろうから、これを政策的に整理をしようとすれば、私は、現行十五万円の免税点を、青色申告会の諸君が願望いたしておりまするがごとく、百万円に上げることが当面困難であるといたしまするならば、少なくとも、このような自転車やリヤカーや、散髪屋のいすや歯医者さんの診療機械、そういうようなものには事実上負担の至らないように、すなわち零細業者、また、政策的にいろいろと他の法律で措置が講じられておるようなものにはそれが及ばないように法律を組み直していく、すなわち、免税点を引き上げていく、こういうことによって、これらの矛盾は大幅に緩和されると思うのでありますが、これについて大臣の御所見はいかがでありましょうか。
  163. 細郷道一

    細郷政府委員 多少技術的なことでございますので、先に私から……。  先ほど来、償却の二通り三通りという問題、これは納税者に不便ではないか、これにつきましては、やはり将来の検討問題であると思うのであります。と申しますことは、法人税あるいは所得税は、先生も十分御存じのとおり、本来、企業の経理をもとにして税務計算上の是否認をしていくというたてまえをとっております。それに反しまして固定資産税は、いわば外形的な課税ということで、資産の大小によってこれを捕捉して課税をしていく、こういう考えに立っておりますので、もし、法人税や何かと合わせるということになりますと、かりに、その企業が償却をしないといったような場合には、固定資産税のほうでは、どうもその点がよけいに普通の場合よりも税がかかるといったような問題も実は起こるわけでございまして、いろいろ技術的に研究を要する問題であろうと思っております。  それからなお、いまのことに関連をいたすわけでございますが、応益性ありやいなや、あるいは償却資産に対する固定資産税と事業税の関係がどうであるか、あるいは資産の分類を長期やあるいは短期に分けてやってはどうか、いろいろ学者その他学識経験者の御意見があることも、私ども承知をいたしております。ただ、それぞれその場合に難点がございまして、短期長期に分けるといたしましても、何年で分けたらいいのか、会計上の流動資産と固定資産の分け方が現在一年になっておるというようなことが基本になって分けられておりますけれども、さて、それ以外にどういう分け方をしたらいいか、それがその企業者の帳簿との関係ではぴったりうまくいけるものかどうかといったような問題もございますので、これは、いろいろそういった資産の区分であるとか、あるいはその課税の限度であるとか、あるいはいま御指摘のような免税点の問題であるとか、いろいろな角度から、この問題についてはなお検討をしていかなければならない、かように考えております。
  164. 永山忠則

    ○永山国務大臣 話はよくわかるのでございますが、明年度の地方財政は極度に困難な状況にありますので、免税点の引き上げによって町村税収に相当の減収を招くような措置を講ずることは、現段階においてはきわめて困難な情勢にあるのでございます。いずれ法案を提出いたします際に十分ひとつ論議を進められて御検討をしていただきたいと考えるのでございますが、現段階といたしましては、お説のようなことになりかねる状態であるのでございます。
  165. 春日一幸

    春日分科員 私は、永山さん、あなたのほうの課長か局長かだれかが相談の結果書かれた答弁要旨をそのまま棒読みに読んでおられると思うのだが、まことにそんなことは遺憾である。われわれは天下の政治家として、ともに国民のために政策を論じておるのであるから、したがって、そのようなものがどのように盛られておりましても、ともかくあなたは政治家という立場に立って、政策の根源に触れて、もう少し情けのこもった御答弁を願わなければ意味をなさぬのである。  そこで私はお伺いをいたしたいが、かりに現行十五万円から五十万円に免税点を引き上げた場合、税収減はどのように見込まれますか、これをひとつ御答弁願いたい。
  166. 細郷道一

    細郷政府委員 約十五億円でございます。
  167. 春日一幸

    春日分科員 本年度の償却資産税の税収総額見込み額は幾らでございますか。
  168. 細郷道一

    細郷政府委員 約九百億でございます。
  169. 春日一幸

    春日分科員 九百億の中で、いま彼らが要望するごとくに措置をとるといたしますると、十五億円の減収が見込まれるというのでありまするが、しかし、この問題は、私は政治的に政治家が判断をして措置をなすべき事柄であると思うのであります。と申しまするのは、ただいま細郷局長が述べられておりまするように、これは一〇〇%申告がなされてはいない。現状はそうである。すなわち、納税者が三百万人近くおる中で、ざっと三分の一かれこれしか納税していない。なぜ納税していないか。その理由は、十五万円の免税点によって救われておる者、それからいまだその調査が十分行なえないので課税ということが困難であるので、したがって、そのことがなし得ていないからである。このような実態を踏んまえて今後どうしていくかということを重点に置いて判断をする必要があると思う。市町村は、なるほど財政が窮乏いたしておりますから、これらの地方財政赤字対策については、政府は十分措置をとらなければならぬが、しかし、中央、地方の政治の真髄は、税金を十分取り立てて、豊かな財政をつくることだけが政治じゃない。やはり国民福祉を確保することのために政治はある。したがって、中小企業者、わけても政策のささえを必要とする零細業者たちが、自転車からリヤカーからタイプライターから机から戸だなから、散髪屋さんならば、あのような腰かけいすから鏡から、何もかも課税されるということになってきたらたまらぬのである。また、そのような帳簿を備えつけて一々申告するといったってできないことである。なるほど、株式会社はよろしい。せめて個人の場合でも青色申告の場合は記帳があるからよろしい。白色申告の場合は一体どうするのか。何も帳簿がないのである。したがって、このものの耐用年数がどれだけのものであるのか、本時点においてどの程度償却されておるものであるか、一体だれがどのようにしてこれを捕捉するのであるか。できないことではないか。これが買ってから七年償却済みであるのか、八年償却済みであるのか、六年償却したものであるのか、一体これをどう識別するのでありますか。それだから私が申し上げるのは、九百億の中で三百億も二百億もこれが減収になるような問題であるならば、その減収の大きさと政策効果の大きさとを比べて、選択はおのずから決すると思う。ところが、九百億の税収があって、そこの中で零細業者の切なる願望にこたえたとしても、わずかそれは十五億の減収にとどまるのであり、しかも、そのことによって、徴税理論上の疑義と中小企業政策上の問題点が解決されるとするならば、政治というものは国民福祉のためにある、税金を取るために政治があるのではない。そういう立場から総合的に判断をすれば、私は、国会において各政党が超党派的に、大臣もともに加えて、この問題について根本的な検討をなすべき段階に立ち至っておると思うし、いまやそのことをなさねばならない時点にあると思うが、大臣の御見解はいかがでありますか。
  170. 永山忠則

    ○永山国務大臣 委員会でひとつ大いに論議を尽くしていただきまして、検討を願っていただきたいのでございますが、政府といたしましては、この場合免税点の引き上げをする考え方を持っていないのでございます。
  171. 春日一幸

    春日分科員 何と言われても、事務当局がきめたとおりしかわしはやらないということならば、国会論議、何をかいわんや。私がいま申し上げておるように、この償却資産税の問題については、会計理論からいうても、徴税理論からいうても、中小企業政策に立脚した判断からしても、大いに再検討を要する。しかも、戦前においてはなかった。昭和二十五年から初めて創設された税金目である。しかも、現在一〇〇%これが実施されていないという問題、だから、制度としてこなされていないし、また、国民の側から、納税者といたしますると、なれてもいないという問題、そうして、応益性というけれども、自転車やリヤカーを買ったからといって、市役所のお世話にどれだけなるのか、町役場のお世話にどれだけなるのか。なるには相違ないであろうけれども、しかし、それは直接的なものではないのである。土地や家屋のようにごめんどうをかけるものではないのである。そうして、いま中小企業の安定と振興のために、中小企業安定法にしかり、中小企業団体法にしかり、政府は、中小企業者に対して税法上、金融上特別の措置をとらなければならない。その方向に向かって国の施策の重点を定めておる。これは政府に対する宣言規定である。宣言にこたえて、各党がほんとうに政策理論の根源に触れて話をなすべき問題であって、今後地方行政委員会等においても、地方税法が上程されまするならば、私はこの問題は十分理事会その他において御協議が超党派的になされると思う。ひとつ大臣、あなたの協力を得なければ、実際問題としてこういう問題の解決ははかり得ないと思う。われわれが幾ら毒づいたところで、いまのところは野党の悲しさで、何ともしょうがない。だからひとつ、地方行政の上で超党派的に、自民党の諸君も交えて、九百億の中で、あるいは十五億減るかもしれないとおもんばかられてはいるけれども、しかし、五十万円の免税点を設定すれば、これは道義、条理にもかなってくるから、したがって、みんなが納税しなければならぬという形になってくる。さすれば、私は、十五億どころではない。私は相当の増収がはかり得ると思う。みなが納税義務というものを道義、条理に照らして、実感を持ってみずからこれを実行するという、そういう気がまえがわいてくると思う。だから、私は、この自然増収というものは、大きなものが期待できると思う。なぜかなら、いままで納めていない人が多いのである。納めていない人たちに納めなさい、五十万円以下は納める必要はございません、五十万円こす諸君は、これを納めなさいということになれば、納めていない五十万円超の納税がどんどん申告されてくることになる。そういう刺激を、私は客観的に総合的に加えていくことになると思われるので、この問題は、いままでの省議においてはそのような統一見解がなされておるかもしれませんけれども、実態について、さらに御検討を賜わり、さらに当事者たちの切実な意見も聴取され、各党の意見等もいろいろと勘案されて、この問題については十分御検討願いたいと思う。伸びも減りも、いろいろと機能的な変化があらわれてまいると思いますので、十分御検討願いたいと思うが、大臣いかがでありますか。
  172. 永山忠則

    ○永山国務大臣 委員会その他議会側の意見は、十分ひとつ検討をいたすつもりでございます。
  173. 春日一幸

    春日分科員 それでは、私は、この問題については、委員長におかれましてなお十分御善処を願い、かたがた本分科会の理事各位の御配慮を得まして、ひとつそのことを求めてやまざる国民の声にこたえられ、かつは、何といっても、新しい制度であり、国民になれてはおりませんし、地方自治体においても実際的にその徴税がどの程度の普及率を持っておるものであるのか、これなんかも十分御検討願いまして、願わくは、今次国会においてこの問題についてさらに完全なる措置がとられますことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  174. 大橋武夫

  175. 滝井義高

    滝井分科員 きょうは自治省関係で、定年制の問題と、それから石炭山における鉱害復旧の地方財政との関係、この二点についてお尋ねをいたします。大臣、少し元気よく大きい声で答弁をお願いします。  まず第一に、定年制の問題についてでございますが、最近、新聞紙その他の伝えるところによりますと、地方公務員法を改正をして、地方公務員の定年制を実施するという報道があるのですが、それに対する大臣の考え方をひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  176. 永山忠則

    ○永山国務大臣 定年制は、地方の実情に応じて、地方が条例で定める場合は差しつかえないという意味で、地方自治体の自主性によるものをいま考えて、検討をいたしておるところでございます。
  177. 滝井義高

    滝井分科員 地方公務員の定年制を地方の実情に応じて自主的にやるといっても、何かそこに科学的な基準がないと、これはできないと思うのです。そこで、国としては何か基準らしきものを示さなければできないと思うのですが、何か年齢的な基準か、そのほか、何か具体的な基準をお示しになるのですか。
  178. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 ただいま検討中の案におきましては、定年の最下限を法定をいたそうと考えております。最下限といたしましては、地方公務員等共済組合法第七十九条第二項に規定する年齢を押えたい、かように考えております。
  179. 滝井義高

    滝井分科員 その七十九条二項の年齢というと、五十五歳ですか。
  180. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 退職年金が完全に支給できる年齢でございまして、現行法では五十五歳となっております。
  181. 滝井義高

    滝井分科員 大臣御存じのとおり、昭和二十三年以前に退職した公務員というのは、非常に物価が上昇して生活が苦しくなっている。大臣も恩給引き上げの急先鋒でいままでやったわけですね。いまの年金制度、特に今後は厚生年金その他の年金制度の通算制が行なわれるわけですね。その実態を見ても、いま食える状態の年金ではないですね。そこで、いま大体、共済組合法七十九条二項の年齢、すなわち、下限を五十五歳にするということがはっきりしましたので、しばらくこれをここにおいておきます。  そこで、私、法務省と文部省と防衛庁と最高裁判所を要求しておきましたが、いらっしゃっていますか。——そうしますと、いらっしゃっているところから、ちょっと実態をお尋ねをして、永山さんのほうへ質問を持っていきます。先に外堀を埋めましてから本丸に切り込んでいきますから、御用心をしておいていただきたい。  まず法務省でございます。現在法務省の所管の中で定年制を実施をしておるものがあると思いますが、その実態をちょっと御説明願いたい。
  182. 辻辰三郎

    ○辻説明員 法務省所管の職員につきまして定年制が定められておりますのは、検察庁法によります検察官が定められておるわけでございます。
  183. 滝井義高

    滝井分科員 その検察官の年齢をひとつ御説明願いたい。
  184. 辻辰三郎

    ○辻説明員 検事総長につきましては、年齢六十五年に達したとき、その他の検察官につきましては、六十三年に達したときに退官するということになっております。
  185. 滝井義高

    滝井分科員 大臣お聞きのとおりです。検察庁は、総長が六十五歳で、その他が六十三歳ですね。  次は文部省です。文部省にも定年があるのですが、その実態を御説明願いたい。
  186. 清水成之

    ○清水説明員 いまお話しのとおり、国立大学の教官につきまして、教育公務員特例法で停年が規定されております。大学評議会の議を経まして、大学自体できめるたてまえになっております。その実態を申しますと、六十歳が二大学、六十二歳が一大学、六十三歳が三十四大学、六十四歳が一大学、六十五歳が三十三大学、六十七歳が一大学、六十七歳は芸術大学でございます。それから、宮城教育大学につきましては、発足当初でございますので、まだ停年の規程をつくってございません。そういう実態でございます。
  187. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、教育公務員特例法で大体大学の実態がわかりました。そうすると、あと文部省で給与を半額払っておる小、中、高——高等学校は別ですが、小、中、高の先生については、何か文部省は定年制みたいなものを考えておるのですか。
  188. 高橋恒三

    高橋説明員 現在のところ何にもございません。
  189. 滝井義高

    滝井分科員 考えていない。文部省は大学だけ、教育公務員特例法で、停年を大学の評議会の議を経てやっておる。それはいま御説明のように、六十歳から六十七歳まであるわけですね。  次は、防衛庁の実態をひとつ御説明願いたい。
  190. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 お答えを申し上げます。自衛隊法の第四十五条に、任期制の自衛官以外の自衛官の停年を政令で定めると規定しております。その政令は、自衛隊法の施行令第六十条でございまして、六十条によりまして、別表で各階級ごとに規定をいたしております。三等陸海空曹四十三、二等陸海空曹四十五、一等陸海空曹から二等陸海空佐まで五十、一等陸海空佐五十三、陸海空将補五十五、陸海空将五十八となっております。
  191. 滝井義高

    滝井分科員 あと、最高裁がいらっしゃらないのですが、これはあと回しにしまして、いまお聞きのとおりです。自衛官は、日本は交戦権はないのですけれども、戦争類似のことをやるので比較的若いのですが、そのほかの、会計検査院の検査官が六十五歳です。それから公正取引委員会の委員長と委員が六十五歳です。裁判所のほうは、これは六十五歳から大体七十歳くらいです。いま自治省が試みようとする五十五歳なんというのは、残念ながら自衛官を除いてはないわけですね。そこで、一体いかなる理論的根拠から退職年金をもらう五十五歳ということになったのか。これは、やはり理論的な根拠というものがないと、下限というものは、それはもう上限になる可能性があるわけです。たとえば、下限をきめて、それが非常に問題になるのは、理容、美容等の料金です。これは、もうここまでが一番最低の値段です、こうきめますと、ずんずん上へ上がってしまうのです。ところが、この場合は上へ上がらないのですね。したがって、こういうことをきめるときには、よほど科学的根拠をもってきめないとぐあいが悪いわけです。何か自治省が五十五歳を下回ってはならぬという、五十五歳をきめたのはどういう科学的根拠があってきめたのか、それをひとつ明らかにしてもらいたい。
  192. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 先ほど申し上げましたように、一つの基準といたしまして、下限の基準といたしましては、やはり退職年金が若年停止を受けないで完全に支給できる年齢、これを少なくとも下ってはならないというふうにいたしますことが適当であるという判断をいたしたわけでございます。  なお、それとあわせて考慮いたしました点は、一つは、昭和三十一年に地方公務員法の改正案を提案いたしまして、国会で御審議をいただいたことがございますが、このときの法案におきましては、最下限を法定いたしませんで、年齢を定めるにあたっては、地方公務員の退職年金の制度との関連を考慮しなければならないという趣旨の規定を置いたのでございます。その際の国会の速記録を拝見いたしますと、そのようなばく然とした訓示規定では、地方公共団体の長の中に非常識な者がおる場合には、五十歳とか四十五歳とかというような年齢を条例で定められる危険があるという御心配を持った向きの御質問が非常に多かったのでございます。そこで、今回は、その点については、最下限をはっきりと法定をしたほうがよかろうというふうに考えたわけでございます。  なお、御参考に申し上げますと、現在地方公共団体で勧奨退職をいたしておるところが多いのでございますが、その場合におきまして、五十五歳を一つのめどにいたしておりますところが相当多数あるという実情でもございますので、これらの諸般の事情考えあわせまして、さような規定を設けることがいいのではなかろうかと、現在考えておる次第でございます。
  193. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、理由は二つで、三十一年に地方公務員法の改正を出した。そのときに定年制を実施しようとして年齢を定めなかった。しかし、それはどうも極端に低いので退職をさせるような市町村が出ても困るという点を考慮した。それから、最近の勧奨年齢の状態が五十五歳を目途としておる、この二つのようでございます。御存じのとおり、三十一年の二十四国会に、地方公務員法の定年制を条例で定める法案を出したけれども、これは流れたわけですよ。審議未了に終わったという前例があるわけです。  次に進む前に、最高裁の人が参りましたから、裁判官の定年制の実情をちょっと御説明願いたいと思います。
  194. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判官の定年は、判事につきましては六十五歳、それから最高裁判所の裁判官につきましては七十歳、簡易裁判所の判事につきましては七十歳、これが定年の原則ということに相なっております。  そこで、どの程度の人数の方々が定年でおやめになったかということを申し上げますと、高裁、地裁を通じまして、三十六年では二十九人、三十七年では二十七人、三十八年では二十人、三十九年では十六人、四十年では二十二人、本年度は多分二十七、八人の方がおやめになるのじゃないかというようにわれわれは考えておるわけでございます。そのほかに、簡易裁判所の判事は、昭和三十六年には二十七人、三十七年には二十八人、三十八年には二十七人、三十九年にも二十七人、四十年に二十五人、四十一年、本年度はおそらく三十七、八人の方が定年でおやめになるのじゃないか。要するに、各年を通じまして、判事及び簡易裁判所の判事で大体五十人から七十人ぐらいの者が各年定年でおやめになっておられる。これが実情でございます。
  195. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、いまの裁判官の状態を見ると、最高のほうと、それから最低と言ってはおかしいけれども、下級の簡易裁判所が七十歳で、中のほうは六十五歳にしているわけですね。戦前は、時間を省くために私のほうから言うのですが、大審院は六十五歳、その他の裁判官は六十三歳だったのですね。これは間違いございませんか。
  196. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  197. 滝井義高

    滝井分科員 間違いないそうです。そうしますと、この最高裁に当たる大審院の六十五歳が戦後七十歳になったという理論的根拠、あるいは六十三歳のものが六十五歳になったという根拠は、一体どこに求めたのかということです。
  198. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 まず、地方裁判所について申し上げますと、御承知のように、地方裁判所の判事は、一人で裁判できるという、われわれはフルジャッジと申しておりますけれども、その判事は、十年間判事補をいたしませんと、いわゆるフルジャッジにはなれないわけでございます。いわゆる判事補の期間が十年あるわけでございます。そういう点から見ますと、十年以上の判事の数というのは、非常に少ない数になってまいるわけでございます。そういたしますと、定年をそのくらい延ばしておかないと、全国の裁判が麻痺するのじゃないかというような点も考慮いたしまして、定年制の延長が実現されたわけでございますが、もちろん、それだけではございません。そのほかに、われわれのいままでの経験からいたしまして、六十五歳までは十分高裁判事ないし地裁判事として職務がとれるではないかというような点からの考慮もあるわけでございます。  それから、最高裁の裁判官につきましては、これは、御承知のように、各界でほんとうにすぐれたお方が、ごく限られた十五人の人数だけでなっていただくということになりますと、そういうすぐれたお方は、やはり相当の御年配になられた方で、しかも、七十歳ぐらいまではそういうすぐれた方には最高裁で裁判をやっていただきたいという点等を考慮いたしまして、七十歳ということになったようにいま記憶いたしておるわけでございますけれども、なお、詳略につきましては、十分調査いたしませんと、はっきりしたことは申し上げかねるわけでございます。一応、いまのように御承知いただければ、幸いと存じます。
  199. 滝井義高

    滝井分科員 法務省にお尋ねしますが、検察官のほうは、戦前も検事総長六十五歳で、その他六十三歳だったのですか。
  200. 辻辰三郎

    ○辻説明員 しかとお答えできかねますが、おそらくそうであったと理解しております。
  201. 滝井義高

    滝井分科員 その点は、検察庁のほうが科学の進歩がちょっとおくれておるのですね。御存じのとおり、ぼくらが学生のときは、人世五十年だったのです。ずっと昔は、人世は二十年ぐらいだった。いまは、御存じのとおり、平均寿命が女七十二・九歳で、男が六十七・七歳でしょう。これは四十年七月発表の昭和三十九年簡易生命表です。そうすると、さすがは最高裁だと私は思う。これだけ人間が働く能力ができたわけです。だから、昔ならば、大審院の判事は、六十五歳くらいでもう定年にしなければ使えなかったんです。ところが、いまや、人間の平均寿命が延びてきて、ずっと若返ってきた。昔、われわれも五十歳になったら使いものにならなかった。ところが、いまや七十歳でも使いものになるんです。戦争する自衛官のほうは、生理的な行動力というものが必要だから、五十八歳くらいで、昔は、終身官、あるいは将校以上の旧軍人についてはやはり定年制があった。いまもこれを定めるのは当然だと思う。しかし、普通の一般文官については、定年制がなかった。吏員については、昔ありました。だから、おそらく今度地方公務員についても、これはリバイバルムードかもしれぬけれども、やろう、こういうことだと思うのです。しかし、それにしても、五十五歳では、これはおかしいんです。いま言ったように、他のもので五十五歳なんというところは、日本では自衛官以外にはないですよ。  大臣、一体、外国の文官はどうなっておるか、調べたことがありますか。日本は、池田さんじゃないけれども、あなたは池田さんを非常にきらいだったけれども、池田さんは、ヨーロッパ、アメリカ、日本と、世界の三大柱の一つになった、こうおっしゃっていたんですから、経済成長その他もヨーロッパ諸国よりもはるかにしておるとすれば、外国の実態というものを見る必要がある。一体、五十五歳か五十六歳で定年退職をするところがありますか。私は調べたけれども、どうもそういうところは見つからぬように思いますが、どこかにあったら、教えてもらいたい。外国の一番われわれと友好関係のあるアメリカの実態、それから日本が議会制度をまねたイギリスの実態、これは、大臣どうですか。
  202. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 アメリカにおきましては七十歳、それから六十五歳、イギリスにおきましては、いわゆる管理職に相当するものが六十五歳、一般職員が六十歳ということになっておると思います。
  203. 滝井義高

    滝井分科員 いまのとおりです。全部六十歳以上です。アメリカは、連邦公務員の退職年金法によって、六十五歳から七十歳です。これはフランスでも、普通職というのは、やはり六十歳以上です。特殊官職があるのですが、これはおまわりさんで、これは五十五歳、西ドイツでも、連邦公務員法で六十五歳でしょう。イギリスは、いま言った六十歳、といたしますと、日本の定年制を実施しようとする場合には、やはり六十歳というのが下限ですよ。  私がもう一つ主張しなければならぬ問題点がある。それは、昨年の暮れに、内閣のほうで雇用審議会の意見を求めています。そして、その意見の中で、日本の人口構造が急激に変わって、若年の新規労働力というのは急激に不足してくることは、御存じのとおりです。四十五年以降になったら急激に不足します。そうして、何が余ってくるかというと、中高年齢層が余ってくる。いま委員長席に着かれておる大橋さんは労働大臣だったから、一番身をもって体験している。そこで、一番労働省が頭を悩ましているのは何かというと、中高年齢層の雇用対策に一番頭を悩ましている。そこで、今度の国会に雇用対策法というものを出してくる。その雇用対策法の主眼、三本の柱は何かというと、一つは、中高年齢層の流動化をはかるということですよ。いま役所の形態を見てごらんなさいよ。役所は頭でっかちです。いわゆる三十五歳以上の職員が非常に多い。下は少ないのですよ。役所は給料が安いというので入り手がいないのですが、しかし、いまのようにだんだん不景気になってきて、民間の会社がペイポーズ、いわゆる賃金の凍結をやったり、あるいは一時帰休制をやるということになると、これはだんだん官庁にくることになるわけですが、そういうことで、労働省で民間の中高年齢層対策というものをふんどしを締め直して、そしてはち巻きをやりかえてやろうとするときに、自治省地方公務員の首切りを奨励するというようなことをやったら、一つの内閣の中で、片一方では中高年齢層の対策をやり、片や五十五歳以上は首を切れというような政策を出すことになって、これは矛盾しておるわけです。これから、昭和五十年になると、十五歳以上の労働人口の中で、四十歳以上が四割六分を占めることになるのですよ。そうすると、役所が、これから五十五歳以上になったら退職金をやることになるんだから、どんどん首を切れということになったら、労働省の政策と違ったことになってしまうのですよ。そういうことは、私は許されぬと思うのです。永山さんが大臣になって——永山さん、なかなか明治生まれのチャンピオンだといっても、昔の頭の五十五歳じゃだめですよ。いま、あなた自身がぴんぴんして働けるじゃないですか。失礼な言い分だけれども、あなた、お年幾つですか。
  204. 永山忠則

    ○永山国務大臣 六十七でございます。
  205. 滝井義高

    滝井分科員 そうでしょう。六十七で、御存じのとおりいまや自由民主党におけるチャンピォンとして働いているのですよ。そうすれば、あなたの手足となって働く地方自治体の職員に、あなたより十二も若いうちに首を切れなんというのでは、それは気の毒ですよ。やはりそういう政策をやるときにはみずからの立場を考えて、おれが六十七歳でこんなにぴんぴんして働けるんだったら、まあ六十がいいところだろう、下限は六十だ、これならまあまあ話はわかるのです。しかし五十五歳じゃ無理だ。世界に例のないことを日本がやるのはいかぬです。しかもいま言ったように、中高年齢層の雇用対策を今後どうやるかということは、労働省のことしの一番重要な政策になっているのですよ。その労働省の一番重要な政策になっているものを、自治省が今度は五十五歳にするというなら、民間にみんな奨励することになってしまう、そういうことはいけないことだと思うのです。人事院でも、公務員の給与というものは民間に従うんだ、こういうことをいっておりますけれども、こういう給与以外の政策というものはやはりあまり民間に先走ってやるべきものではないと私は思うのです。どうですか、永山さん。いまの各省の実態をお聞きになっても、自衛隊を別としてみんな六十とか七十ですよ。そうするとあなたのところだけが五十五、六、共済組合の退職年金をもらえるからといって、してはいかぬ。この退職金で官吏の時代と同じような生活水準ができれば別です。そういうことは木によって魚を求めると同じで、できない。とすれば、やはりこれはもう少し頭を働かして、そしてそういう古い人も使えるという体制をとる必要があると私は思う。ただ地方自治体が財政的に苦しいからという、いわゆる地方財政の中における人件費の比率がだんだんふえてきた、だからこれは定年制をやらなければならぬという財政の問題で、もはや日本は人間を首切ったり何かする時代は過ぎた。いまや日本は、六十歳以上の人口が全人口の一割あるのですよ。九百万あるのですよ。九人に一人は六十歳以上なんです。永山さんもその一人なんです。そういう中において五十五歳で首を切ったらどうなるのですか。永山さん、五十五歳で代議士やめてもらおうといったらたいへんでしょうが。それと同じです。五十五歳といえば、まだ子供がようやく高等学校を卒業して大学に行くか行かぬかの年齢ですよ。一番おやじが働かなければならぬ時代ですよ。おやじは最も志を持って働かなければならぬ時代ですよ。そういうときに首を切るような政策は出すべきでないと思うのですがね。腹はいろいろきめておるけれども、これは直すことはすぐできますからね。あやまちを改めるにはばかっちゃならぬ。世界がやってない。他の官庁が、自衛官以外はやっていないときに、何も突き進んで突撃する必要はない。だから、六十七歳だそうですから、よく自分のお年も考えていただいて、この政策というものは、やるとすればもう少し上に上げなければいかぬ。少なくとも六十歳以上にしなければならぬ。これならば相当弾力も出る。六十歳以上に持ち上げていく、こういうことでなければならぬと思うのですが、どうですか。
  206. 永山忠則

    ○永山国務大臣 五十五歳というのは、要するにそれを下ってはいけないということを言うことは、前も非常に議論がありまして、やはり一定の下限を置く必要はあるというような論議が議会で行なわれたためにやっておるのでございまして、下限が即首切りのものであるというようには考えていないのでございます。すなわち、いまいろいろの例証をあげられました、それらの諸要素をくんで、やはり地方の実情に即応したものが制定されると思うのであります。もちろん諸外国の例等も入れまして、その地方団体に即応したものが考えられると思っておりますので、すなわちそれをきめる場合においては、労働科学的な能力の問題、社会保障制度の問題、その他各国の問題あるいは国内の公務員の関係、あらゆるものが総合されて、またしかも必要なところだけがやるのでありまして、必要のないところはやらないと思うのであります。極端に自治団体が老齢化して、人事の渋滞がはなはだしくありまして、その能率、効率化、あるいは採用、管理の実施面においてあるいは計画的な昇格等の諸問題等を考慮して、実情に即してやるところがやればそういうことが考えられるのでございますからして、これは決してその線で、下限即上限であるというように考えていないのでございます。
  207. 滝井義高

    滝井分科員 それならば五十五歳という線の出ないような書き方をすべきなんです。そうでしょう。いまのように労働科学的な見地からあるいは社会保障の充実の状態あるいは地方財政自体を見て、それぞれ自治体が独自にきめますというもならば、そんなものに共済組合の退職年金をもらう年齢を書かなくてもいいわけです。訓示規定みたいなものを置けば、自治体が自由にやれるわけです。ところがさいぜん一体科学的根拠はどこにあるかと言いましたら、五十五歳で大体肩たたきをやっておるのだ、勧奨はそういうことが多いということと、それから今度は前の三十一年、二十四国会に出した法律は、そんなもの年齢の下限をきめていなかった、だから今度はきめたのだ。二つの理由をあげた。大臣の答弁とそこは違っておるのです。労働省は中高年齢層対策に頭を痛めておる。大臣のほうはそれで首を切れというようなことになってしまうのです。どこも、外国もやっておらぬ。外国は低いところで六十歳でしょう。普通は六十五歳だが、アメリカのごときは六十五歳とか七十歳でしょう。それから日本の他の、法務省にしても文部省にしても——それは大学の先生と地方の官吏が違うことにはならないと思うのです。仕事によっては大学の先生と同じようなことをしている人もいるのですから。文部省はやる意思はありませんと言っておる。大臣だけが何も突撃する必要はない。突撃するとするならば、ひとつばく然たる規定にしたらどうだ、こういうことなんです。確たる根拠はないでしょう。人生五十年はもう昔のことなんですよ。いまは子供は死ななくなったし、大臣御存じのとおり、昔は肺炎になったら、年寄りは九割は死んだのですよ。いまは年寄りが肺炎になっても九割は助かる。これだけ学問が進んできた。そして昔のように含水炭素ばかり食わなくなった。だんだん良質のたん白質を食うようになった。学校でも全部給食が行なわれるようになった。これで全部寿命は延びて、若返ってきた。あなたのおとうさん、おかあさんの実態を見てごらんなさい。おとうさん、おかあさんの六十七歳とあなたの六十七歳と比べてごらんなさい。雲泥の差がある。だから、定年制なんかは科学的根拠からきめてこなければならぬ。単に、そのころから退職金をもらうからという、そういう非科学的なことからではいかぬと思うのです。これは科学性がないから、通らぬですよ。通らぬものなら、初めからやめておいたほうがいいです。いま国会は正常化を念願しているのです。それを、火をつけておいて、正常化をこわすようなことはやめられたほうがいい。これはころばぬ先のつえで言うわけです。どうですか、ここでひとつ思い直しませんか。思い直すなら早いほうがいいですよ。
  208. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 大臣もお答えになりましたように、最下限をきめるわけでございまして、下限が即上限ではむろんございませんで、しかも、先生がおあげになりましたようないろいろな国家公務員の職につきましては、一般の公務員と違った職の特殊性のあるものでございます。地方公務員におきましても、一律ではございませんで、それぞれの職の特殊性に応じて適当な考慮を払わなければならないという趣旨の規定を入れることにただいま検討中でございますが、その規定をもとにいたしまして、私どもといたしましては、地方公共団体が条例を定めます場合に、十分それらの特殊性を考慮して実情に合うように定めるよう指導をいたすつもりでございます。  なお、民間の状況も参考に見てみますと、人口五千人以上の企業におきまして定年制を定めておりますが、七五・二%が五十五歳を定めており、一二・四%が五十六歳を定めておるというような状況でもございますので、地方公務員の場合におきまして最下限を五十五歳と定めることにつきましては適当であろう、かような判断もいたしておるわけでございます。もちろん先生の御指摘のように、人間の寿命も延びてまいりますから、それに応じてだんだんと条例で定める年齢も引き上げられてくるということは、これは自然の傾向であろうというふうに考えておるわけでございます。
  209. 滝井義高

    滝井分科員 民間企業はなるほど労働省の定年調査によって五十五歳が七〇%から八〇%あります。千人以上の大企業で最高六十、最低五十五、それから千人以下の企業では六十五歳は少ない、といって五十から五十四歳も少ない。というと、やはりこれは六十前後になるのです。御存じのとおり、最近は新規若年労働力が急激に不足して、労働省ではその新規若年労働力を一人雇うならば中高年齢の者を一人雇えとかいう、こういう労働政策上の問題をいまや打ち出そうとしているわけです。そういう状態ですよ。しかもいま御存じのとおり、役所は三十五歳以上の中高年齢の層が多いのです。そうすると、あなた方は国家公務員にもやるつもりなんですか。
  210. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 国家公務員は自治省の所管ではございませんので、私どもから答弁いたすことはいかがかと思いますが、私ども地方公務員につきまして、こういうことを検討いたしておるということにつきましては国家公務員関係の機関にも十分連絡をいたしております。国家公務員につきましても検討されておるというふうに聞いておるわけでございます。
  211. 滝井義高

    滝井分科員 そういうことになると、ますます五十五というのは問題なんです。そこでこれはどうしても佐久間さんのほうで五十五をさがらぬということになれば、この法案は、いまから予言しておきますが、つぶれます。科学性がないのだから、また審議未了です。ぼくは医者ですが、科学的根拠がないものは認めるわけにはいかぬ。しかも大臣自身が六十七歳でぴんぴんして働いているでしょう。あなたでも五十五歳で定年だと言われてごらんなさい。あなたのうしろにおる人はみなそうですよ。五十五じゃまだ民間の外郭団体に行って、いまよりよけい給料をもらわなければいかぬということになる。役所はみなそうしているのです。地方公務員はそれができない、そういうところはない。だからやはり自分の身をつねって他人の痛さを知らなければいかぬですよ。科学的根拠がないものを政治権力でただ地方財政が苦しいからやるのだということではできない。三十一年のときもできなかった。あなたはそのとき行政局長じゃなかったけれどもできなかったでしょう。審議未了になった。また審議未了の運命をたどるでしょう。審議未了の運命になって大臣が赤恥かくならば、やめておいたほうがいいと思うんです。大事なところは大臣がやらぬで、佐久間さんが答弁されておるが、大臣どうですか、この際五十五歳というものを思いとどまって、ひとつもう一ぺん再検討しようと言えますか。それともこの際わが道を行かん、初志貫徹ということになるのですか、そのイエス、ノーだけでけっこうです、どちらですか。
  212. 永山忠則

    ○永山国務大臣 本法案は、いま内部で各省と検討をいたしておる最中でございます。御意見の点はよく拝聴いたしております。
  213. 滝井義高

    滝井分科員 意見はよく拝聴しているのはわかるが、佐久間さんの言うのには、もはや地方で五十五で勧奨をやっているんだから五十五でいいんです。それから前は下限をきめておらなかったけれども、今度はきめたほうがいいんですという、その二つの理由で五十五にしておりますということをはっきり言っておるわけです。私は、それは科学的根拠はない、そういう下限をきめれば五十五の勧奨がますますひんぱんになる、しかもそれば国の労働政策と違った方向にいっているじゃないかということなんです。ほんとうはここへ労働省を呼んでおれば、労働省は反対ですと言いますよ。だからこれはまた場所を変えて質問いたしますが、私個人的に聞いてみましても、いやどうも自治省やり方は困ったことですと言っているんです。今度は雇用対策法というものを出すのですから、中高年齢層の流動化をはかって、できるだけ中高年齢層を就職させようとしているときに、同じ内閣の一方の役所では首を切ろうというのでは、政策が矛盾していますよ。大臣、答弁ができなければ私これで引き下がっておきますが、五十五歳というところをもう一ぺん思い直して再検討する意思があるのか、それとももうありません、この方針でいくということになるのか、それだけでけっこうです。
  214. 永山忠則

    ○永山国務大臣 自治省原案をもって各関係機関と相談をいたしたい考えでございます。
  215. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、その五十五歳でいくという方針なんですね。
  216. 永山忠則

    ○永山国務大臣 一応原案はそれで各関係者と相談をしようと考えております。
  217. 滝井義高

    滝井分科員 関係者というのはどことどこですか。
  218. 永山忠則

    ○永山国務大臣 各関係省でございます。あるいはそういうことはどうかと思いますが、政党内閣ですから、党のほうの意見もよく聞いて進んでいきたいと考えております。
  219. 滝井義高

    滝井分科員 五十五歳その他というのは、もう党と相談をして案をつくっておるんじゃないですか。新聞にも発表しておるし、いまも公式の答弁があったんですよ。五十五で自治省はいきますという答弁があったんです。五十五というのはまだきまっていないですか。不確定のものなんですか。関係各省といっても、関係各省は五十五にしておるところはない。相談するとすれば防衛庁だけなんです。ほかのところはどこもない。しかも、文部省は地方公務員の教職員についてはやる意思はございませんと、こうおっしゃっておるんですよ。あなた一人じゃないですか。
  220. 永山忠則

    ○永山国務大臣 まだ閣議できまっておりません。したがって、各省との連絡ができておるということではございません。なお、私はよく存じませんが、自民党政調においてもまだ結論を得ていないと聞いております。
  221. 滝井義高

    滝井分科員 どうも自民党でも結論を得ていないように聞いておりますと言うけれども、新聞その他にも出ておりますし、いままでのあなたの御答弁は五十五歳で押していくというような御答弁だったからしつこく聞くわけです。そうしますと、五十五というものはまだ固まっていない。なお、これは滝井質問もあるので関係各省と協議をして動かす可能性のあるものだ、こう理解して差しつかえないですか。
  222. 永山忠則

    ○永山国務大臣 自治省の原案といたしましてはこれで進んでいきたいと考えております。これは結局即上限ではございませんので、それを下ることを得ないということを入れるほうがより以上いいのではないかというように考えておるのでございまして、すべては地方の実情によって、地方の自主性によって、やりたいところはやるというだけでございますから、何ら権力的な干渉もせず、また窓通もしない。ほんとうに地方自治体でどうしてもやらねばならぬ実情にあるところがあらゆる面を総合してやる道を開くということでございますので、この原案を推し進めたいと考えておるのでございますが、先刻申しましたように、まだ閣議を経ておりません。また、党のほうでも最終結論を経ておるものでもないように聞いておるのでございます。
  223. 滝井義高

    滝井分科員 いまのようなことになると、非常に自治省原案で勇往邁進したいということに聞こえるわけです。だいぶんまた答弁が後退をし、いわば固まってきたような感じがするのです。  そこで、どこも五十五歳でやるところはないのですね。関係各省と相談をいたします、自民党のほうとも相談をいたします——相談した結果、五十五歳というものが変わることがあるのかどうかということを聞いておるのです。ところが、いまのでは、わが案でいきたい、逆に自民党を説得し各省を説得していくというような感じに聞こえる。しかし、あなたを取り巻くのは四面楚歌ですよ。どこも五十五でやるところはない。また相談していないのは自民党と各省ということになる。しかし、自民党なり閣議で五十五歳ではそれは無理だというようになれば変えますか、こう言っておる。
  224. 永山忠則

    ○永山国務大臣 閣議はもちろん私一人の意見ではどうにもならぬのでございます。閣僚の総意できまることであると思うのであります。
  225. 滝井義高

    滝井分科員 したがって、五十五歳というのは弾力を持ってもよろしい、こう理解して差しつかえないかと言っておる。あなたが所管大臣として、五十五歳でなければ絶対だめだ、てこでも動かぬぞという形でいく場合と、いや、いろいろ検討したけれども五十五歳というものが妥当だと思っていたけれども、客観情勢から見て法案も通らぬかもしれぬし、自民党も必ずしもそうもいかぬかもしれぬ、だから、そういう場合になれば、五十五歳はこだわらずに検討する余地はある、こういうことなのか、それともこれで何が何でも押し通していくか、どっちですかと、こう聞いておる。
  226. 永山忠則

    ○永山国務大臣 閣議は皆さんの総意によってきまるものでございます。
  227. 滝井義高

    滝井分科員 閣議は総意によってきまるけれども、やはり所管大臣がこれを首をかけてやろうとしたら、そう簡単にはほかの大臣は反対したってできないでしょう。所管の大臣でないのだから……。問題はそこなんです。だから、弾力のあるものかどうなのかということを聞いておるのです。どうもいまの答弁では、弾力のなさそうに聞こえるのです。だから、そういう弾力のないものならないものでわれわれも態勢を整えなければいかぬ。これはわれわれにとっては非常に重大なものと考えておる。ぼくは偏見やひがんだことでこれを言っておるのではない。一人のやせても科学者ですから、科学的な立場から、あるいは日本の人口構造の状態から、日本の労働政策の立場から見て、五十五歳というものがいかぬという信念に立って言っているわけです。あなたの信念で、おれは五十五歳でいいのだという信念でいくのか、それともその信念にも、世界の情勢や他の官庁等の情勢から見ても幾ぶん弾力を持っておるものなのか、そこをお尋ねしたい。閣議はどういう決定になるか知れませんけれども、これはあなたの意思によってきまってくるわけですね。弾力を持っておりますかどうかということです。
  228. 永山忠則

    ○永山国務大臣 閣議は私だけの意見ではきまらないのでございます。総意できまりまするし、どうしても意見が分かれる場合には総理大臣の決裁ということになるのでございまして、自治大臣といたしましては、これはこれをもって定年の限度にするというのではないのでありまして、これを下ってはならないということを書いて、むしろ保護しておるというように考えておるのであります。それ以上の諸種の情勢を勘案して、その自治体必要性に応じてつくるところを妨げないというだけでございますので、原案のほうが正しいのであるという考え方で進んでいきたいと考えておるのでございます。
  229. 滝井義高

    滝井分科員 それならば六十歳を下ってはならぬとしてどうしてぐあいが悪いのです。男子の平均寿命は六十七歳、女性は七十二・九ですから七十三歳になるわけです。六十歳を下ってはならぬとした場合に何か支障がありますか。他の最高裁もそれから大学もみんな六十以上ですよ。そうすると、地方公務員を六十を下ってはならぬとして、何か地方自治体が倒産、破産に追い込まれるような大きな客観性がありますか。
  230. 永山忠則

    ○永山国務大臣 特別職その他労務職等、あるいは教職員、そういうような関係の者に対しては特に考慮を払う必要があるというような点も、十分ひとつ検討するように指導いたしたいと考えております。
  231. 滝井義高

    滝井分科員 六十歳を下ってはならぬとしてどこか支障がありますか、こう言っているのです。これはえんま帳には書いておらぬですよ。五十五歳を下ってはならぬ理由だけしかおそらくしておらぬですよ。六十歳を下ってはならぬとして何か支障がありますか、こう言っている。何も支障はないはずでしょう。もしあなたのいまのような親心があるとするならば、六十歳を下ってはならぬとしたらどうですか、こう言っている。
  232. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 将来の問題といたしまして最下限を六十歳に持っていくというような事態も十分予想されないことはないと思いまするが、今回私ども考えておりまするのは、現在の勧奨退職の実態を土台といたしまして問題を考えてまいりたい、かように考えておるわけでございます。むろん、先ほど大臣もおっしゃいましたように、特殊の職務につきましては、現在におきましても六十歳で勧奨退職をいたしておりますものもございますので、そういうものは現状を尊重して指導をしてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  233. 滝井義高

    滝井分科員 これで終わります。大体永山さんの意向はわかりました。五十五歳というのは相当固い信念であるということはわかりましたから、わが党はこの法案は通さないように万全の策を講ずることを宣言をして、私の質問を終わらしていただきます。ほかの政府の人済みませんでした。
  234. 大橋武夫

  235. 田口誠治

    田口(誠)分科員 従来の選挙人名簿の整備は非常に不十分であって、相当国民から批判が出てきておるわけであります。ところが、今年度の予算を見ますると、永久選挙人名簿の調製に必要な経費として四億九千万円余を予算化しておられるわけです。したがって、この四億九千万円の金で具体的にどういうことをされようとするのか、まずこれをお聞かせをいただきたいと思います。
  236. 長野士郎

    ○長野政府委員 永久選挙人名簿と申しますのは、いまお話のあったとおりでございますが、従来——従来と申しますか現在の選挙人名簿は、御存じのように毎年一回九月十五日現在で名簿をつくりかえをいたします。そして毎年一回名簿をつくりかえるのと同時に、選挙に際しましてその名簿を九月十五日現在つくりました以後、選挙のときまでに年齢が満二十歳以上に達しました者、あるいは同一市町村内で三カ月以上住所を持ちましたとかいう者につきまして、補充選挙人名簿というものをあわせてつくることにいたしておるわけでございます。これは名簿調整の方式としては非常に丁寧な方式なんでございますが、その結果といたしまして、必ずしも名簿が正確に行なわれていないというようなことが、最近社会移動その他のことで人の移動の激しい現在の社会情勢とも関連をいたしまして、選挙のたびごとにそういう意味でのいろいろな議論が起こるわけでございます。そこで、従来毎年一回選挙人名簿をつくりかえるということは、当然その中にずっと、その市町村なり何なりにおりまして調べないでもいい人も全部調査をしかえるということをいたしますので、そこで永久選挙人名簿と申しますのは、そういう人はそのまま据え置きにいたしまして、新たに追加する人、あるいは名簿から消す人というだけについて詳細な調査をいたしたいというわけでございます。今度の予算にあがっておりますところの調査費と申しますものは、永久選挙人名簿に移行いたしますためにも現在の選挙人名簿が一応基礎になるわけでございます。そこで、その基礎になる選挙人名簿につきましていろいろ名簿の正確性を確保いたしますためには一応いわゆる有権者の調査をいたしまして、そしてその調査の結果集まりました資料に基づきまして現在確定をいたしております名簿でありましても、それをもう一ぺん再審査をいたしまして、正しいかどうかを確認をいたしました上で、永久選挙人名簿につくりかえていく、こういうことをいたそうというわけでございます。
  237. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そうしますと、現在までは補充選挙人名簿を毎年つくって、そしてそのときに選挙があれば閲覧期間もつくって、そして閲覧をさせる、こういうことをやっておるのだけれども、今度はそうでなしに現在ある補充選挙人名簿を基礎にして抹消したり書き添えたりして正確なものをつくる、こういうことなんですが、毎年つくりかえるのと、抹消したり書き添えたりするのはあまり変わりないと思うのですが、ただ、私はことし初めて四億九千万円というのがこういう名前のもとに予算化されておるから、相当自信を持った調査がなされて、そうして明確に、また確実な選挙人名簿ができるのじゃないか、こう思っておりましたので、お聞きしたのですが、いまお聞きした範囲内ではそんなに変わりないと思うのですが、どうですか。
  238. 長野士郎

    ○長野政府委員 従来の選挙人名簿はもちろん毎年一回名簿のつくり直しをいたしまして、そうして選挙のたびごとに補充名簿をつくるというやり方をいたしております。したがって、名簿の作成については毎年一回それぞれの市町村におきまして登録資格を有する者の一斉調査をいたしておるわけであります。したがって、有権者が十万人もおるようなところでありますと、正確には十万人について一斉調査をいたしておるわけであります。ところが、実際は大都市といえども、それほど人口の移動があるわけではございませんので、相当数の人はそのままその土地に居住をいたしておるわけでございます。そこで、名簿の一斉調査というものを毎年、毎年やるというような方式でなくて、名簿というものは一回正確な調査に基づきましたならば、それを永久据え置き式にいたします。そうしてその後毎年何回かの定時に名簿に登録資格を有するような人が出てまいりますと、新しくそこへ移転をしてまいりましたとか、あるいは年齢が二十歳以上に達しましたとか、そういう新しく登録されていい人が出てまいりますと、その人たちが今度は選挙管理委員会に申し出をいたしまして、その申し出に基づいて先ほど申し上げました追加なり何なりということだけをやっていくということを原則にいたしたい。そういたしますと、毎年毎年十万人なら十万人の人を調査するということをいたしませんで、登録資格のあります人が申し出てまいりますと、その申し出てまいりました人について正確な調査をいたしまして、そして誤まりのないという確信を得ましたときに、その人を名簿に追加していく、こういうやり方をいたしたい。また、名簿から抹消いたしますときもそういうふうにいたしたい。そういうことをいたします際に、新しく登録資格をその市町村で得たというのに二種類ございます。一つは、Aの市町村からBの市町村へ移住してきたという人でございます。もう一つは、その市町村におりまして二十歳以上に達したという人でございます。前者のほうにつきましては、その人は従来Aの市町村で選挙人名簿に載っておったわけでございます。そこで、今度Bの市町村に移りますときには、その人がAの市町村で選挙人名簿に載っておったということがはっきりするような資料をもちまして、そしてBの市町村に申し出をする、こういうことにいたしたい。これは政府の当局だけで考えておるわけでございませんで、選挙制度審議会におきましても、あるいはまた選挙関係者におきましても、長い間選挙人名簿の正確性をほんとうに確保いたしますためには永久選挙人名簿方式によりまして、そして新たに登録資格を持った者だけについて調査をするというやり方のほうが、名簿の正確性を維持する上で一番よろしいのだという考え方が従来からあったわけです。今回それを選挙制度審議会でも取り上げまして種々検討されました結果、やはりいま申し上げましたようなかっこうで名簿の制度というものの改革をいたすべきだということになっておるわけでございます。
  239. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それで、現在までは公職選挙法の第四章に基づいてそれぞれなされておるのですけれども、ただいま答弁のあった範囲内でいきますと、どちらかというと費用がよけいかからないように思うのですね。毎年つくりかえるのと、現在あるのをもとにしてそれに書き添えるのと、それからもう一つは抹消するのと、こうするのだから、費用はよけいかからないと思うのです。それがことし初めて予算化されたのだから、私はもう少し何か名案があってこういう案を出されたのではないか、こう思って聞いたわけなんです。聞いてみればあまり変わった名案でもないように思うのだが、ただ、今日までの補充選挙人名簿というのは非常にずさんな面があって迷惑を受けておるわけです。だから、これを明確化してもらうというのは、これは大切なことである。国民の選挙をする権利を放棄しなければならないような、また剥奪するような状態に行政として行なわれるということは、これはよくないことであるから改めてもらわなければなりませんが、ただいまの答弁の範囲ではあまりこと新しく変わったように思えないのです。そこでお聞きをいたしたいのは、それではこの選挙人名簿に登録する人たちの基礎は何に基づくかということです。聞き方が悪いかもわかりませんけれども、国勢調査のときの資料とか、あるいは戸籍簿とか食管法に基づくところの米の通帳とか、いろいろあるわけなんです。だから戸籍法でいくのか、食管法でいくのか、それとも国勢調査の資料でいくのか、米穀手帳でいくのか、いろいろあると思いますが、一番明確化するには何でいこうとされておるのか、これをひとつお示しいただきたい。
  240. 長野士郎

    ○長野政府委員 選挙人名簿をつくりますときに一番問題になりますのは、いまお話がございましたように、その人がその市町村の住民であるかどうか、要するにそれはその市町村に住所を有する人であるかどうかということになるわけでございます。住所を有するという点につきましては、民法その他でなかなかむずかしい定義がございますが、結局、要約して申しますと、生活の本拠がそこにあるということになるようでございます。ということは、その人がそこで社会的な活動も、経済的な活動もしておるという根拠地だということが考えられておるわけであります。それを一番正確に把握いたしますのは実態調査でございます。実態調査と申しますのは、現にその人がそこにおる人で、そこで活動している人だということを、その場所においてその人の生活あるいは住まい、住居あるいは職務関係その他がわかれば一番いいわけでございます。それにいたしましても、十分なことになるというためには、いろいろな副次的な資料といいますか、いろいろ資料を整えて調査するということも必要になってまいります。そういう意味では、また生活の本拠というものを証明するための資料も出てまいりますが、そういう点からまいりますと、先ほどお話しのありました、たとえば戸籍——本籍がそこにあってその人がそこに住んでおるということも、そういう意味で戸籍というものも一つの重要な資料としての効果を持つと思います。それからまた、いわゆる米穀通帳でその人がその場所で米の配給を受けておるということがわかれば、それも一つの重要な資料になると思います。あるいはまた、住民登録をいたしておりまして、その人がその土地に住民として登録をされておるということが正確であれば、それも資料の一つになると思いますが、要は、そういうふうな役所、あるいはまた生活のためにいろいろな通信なり連絡なり業務なりいたしておるわけでございますから、そういう公私にわたるいろいろな資料でその人の住所がここにあるということを認定することもございますし、また同時に、実際選挙管理委員会の関係者がその場所に出かけまして、そして実態を把握する、ほんとうにその人の住所を突きとめまして、その人の申し出のとおりの住所にその人が住んでおられるか、家族と一緒におられるかということがわかるような実態調査も必要になってまいります。そういういろいろな資料なり調査の結果、その人がその市町村の住民であるということを突きとめまして、そして、その上で選挙人名簿に登録するという手続をとっていくのが従来からのやり方でございます。  先ほど十分に申し上げなかったようでございましたから、ちょっとつけ加えさせていただきますが、今回の予算で要求しておりますものは、従来、いろいろな意味で選挙が、それぞれの市町村で時期も違います、国の選挙は一定しておりますが、時期も違いますので、補充選挙人名簿というのは選挙のたびごとにつくったわけです。そういたしますと、極端に言いますと、Aの市町村で載っておりながら、Bの市町村にもまた載っておるというような人がおるわけです。それからまた、名簿から落ちておる人があります。いわゆる二重登録の人とか脱漏しておる人があります。したがって、そういう名簿を永久選挙人名簿に切りかえます場合には、名簿という制度が非常に大切でございますだけに、一定の時点で全国一斉に世帯についての調査をいたしまして、誤った資料をそれで是正するというかっこうをぜひとりたいということで、全国統一的にそういう制度改正として永久選挙人名簿に切りかえるということであるので、今回は特に国の予算をお願いしておるわけです。従来、選挙人名簿の作製の経費は地方公共団体が負担をしております。今回国の予算を特にお願いいたしましたのは、永久選挙人名簿に切りかえをいたします前に、一定時点で一斉調査をするというために、最小限度必要な経費としてお願いをしておるわけでございます。
  241. 田口誠治

    田口(誠)分科員 いいような悪いような、あまりよくならないような、なるような、はっきりしませんが、こういうことでしょう。現在は選挙人名簿の調製というのは、二十条の「市町村の選挙管理委員会は、毎年九月十五日現在により、その日まで引き続き三箇月以来その市町村の区域内に住所を有する者の選挙資格を調査し、十月三十一日までに基本選挙人名簿を調製しなければならない。」という、この法律に基づいてされておるのだから、やはり一年に一回ずつやるわけなんです。やり方は、いまお話しになったように、いろいろ調べ方があるわけなんです。ただ、私がお聞きしているのは、従来は名簿から落ちておったり、二重になっておったり、縦覧期間があるということを知らずにいたりして自分の選挙権を行使できなかった人や、二重に選挙権を行使したというような人もありますし、極端な人は、公民権の停止を受けていても選挙の用紙が来るし、選挙の会場に行ってみれば名簿に載っておるし、ああ私もいいかいなというので選挙をしてきたということも聞いておるし、そういうずさんなことがあったから、もう少し明確化しなければならないし、国民の権利は権利として完全に行使できるような体制をとってやらなければならない。そういうことから、せっかく国のほうで予算化をして今度おやりになるのなら、もう少しすっきりとした調査のしかたをしてもらわなければ、従来と同じようなやり方だったら、地方自治体でやらせるか、それとも国のほうで予算をどれだけかとって地方自治体に手伝ってもらってやるか、何ら変わりはないわけなんです。予算のとり方をどうするかということなんです。だから、私が根本的にお聞きしたいのは、ただいまお話しのありましたように、その土地に居住するという、いわゆる居住権というものを尊重してやられておったのですが、そうしますと、これは法務の関係のほうでお答えを願いたいと思いますが、住民登録法の一条、それから民法の二十一条、二十四条というようなところからいけば、この選挙人名簿をどこへたよるべきが正しいのかということをまずお聞きをいたしたい。  それから、食糧庁のほうからも来ていただいておると思いますが、現在のところでは、住所を変わった場合には、そこの役所に行って登録をして、米穀手帳をもらうことが一番居住権を振り回せるわけなんです。だから、食管法でいうところの米穀手帳というものがそれだけ力があり、これにたよらなければならないものかどうかということを判断しなければいかぬし、あなたのほうも判断をしていただかなければなりませんので、それぞれ両方から、いま申し上げた点について、内容そのままをひとつ御説明いただきたいと思います。
  242. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 法務省の所管事務の観点から申し上げます。  御承知のように、民法には住所というものが規定されておりますが、先ほど来御意見に出ましたように、住民ということについての規定は、民法その他私法——私業と申しますのは、公法、私法と分けました場合の私法という意味でございますが、私法法規の中には、住民という表現を使ったものはないように承知いたしております。行政法規の中には、だんだんと住民ということばを使っておるのがございますが、私法関係にはございません。よりどころとしましては、民法の住所ということになるのではなかろうかと思うのであります。そこで、住所と申しますのは、先ほど選挙局長からもお話しがございましたように、各人の生活の本拠を住所、こういうわけでございます。これが地方自治法にもその規定を置きまして、市町村の区域内で住所を有する者を、その市町村なりあるいは当該市町村を包括する都道府県の住民とするというふうに書いてございます。住所を基礎にして住民というものが行政法規の上にあらわれてきておるということになるわけでございます。私どもの関係の法律といたしましては、行政法規としては住民登録法というのがございまして、これは各市町村内の住民を登録することによりまして、その住民の日常の生活の利便に供したり、あるいはまた、その市町村内の人口の動態を明らかにすることによって各種の行政事務の適正、簡素化をはかるということに資するのが住民登録法の目的でございます。住民登録法に登録されます際には、その住所をもってその地の市町村に登録されるということになっておるわけでございます。したがいまして、各種の行政に住民登録法が利用されますれば、それはそれなりに意味があるものと思うわけでございます。  御質問の選挙人名簿の問題につきましては、公職選挙法の附則の第十二項に規定がございまして、この住民登録法に基づいて選挙人名簿を調製するという原則がうたってございます。もちろん、各一定時期において選挙人名簿というものが作製されるのでございますので、その時点においては移動もございますし、また新しく選挙が行なわれます際には、住民登録もなされていないものもあるかもしれません。そういったものについては、別個その実態を調査して選挙人名簿を調製するということになっておるわけでございます。法務省の関係といたしましては、住民登録法がそういったものの行政に役立ち得るということになっておるわけでございます。
  243. 田中勉

    ○田中説明員 食糧庁の関係のお尋ねでございますが、食糧庁のほうといたしましては、食糧管理法に基づきまして、米穀を生活上消費する者、これを消費者と称するわけでございますが、この者に対しまして、食管法八条に基づきまして、購入券というものを国が発行することを義務づけられておるわけでございます。したがいまして、消費者におきましては、この購入券によらなければ米の登録販売業者から米穀を購入することができない、こういうたてまえになっておるわけでございます。この場合に、消費者につきましては、その購入券を発行する場合には、日本国内に住所を——先ほどお話しのごさいました住所あるいは居所を有する者に対しまして、米穀の配給を受けようとする者の申請に基づきまして、これを市区町村におきまして配給台帳に記載して購入券を発行する、こういうたてまえをとっておるわけでございます。そこで、消費者の側におきまして住所あるいは居所が変更されるということになりますれば、これは転出証明書によりまして、その転出先と、それから転出する町村との間における購入券の抹消、それから新規発行、こういうことで整理いたしておるわけでございます。配給関係につきましては、消費者に対してそのような米の配給のための手続を規定しておるわけでございますが、やはり生産地におきましては生産者というようなものがございまして、米の配給も受けない、むしろ政府に売り渡すというような農家、また農家の中におきましても、一年間を通じて配給を受けるわけでございませんで、ある時期に配給を受けるというような一部保有農家もございますので、そういうことに対しまして米の配給を確実に行なうという観点からいたしまして、そのような購入券を発行することによって整理をいたしておるのが食糧庁の現状でございます。
  244. 田口誠治

    田口(誠)分科員 あらゆる角度からのそれぞれの答弁をいただきましたが、そこでお聞きをいたしておきたいと思いますことは、いまの住民登録法の関係もお話しになりましたし、民法からの説明もありましたし、それから食管法による説明もあったわけですが、しからば住民権というものの概念、これは一体どういうものをいうのですか。法律ではいまそれぞれ示してあるけれども、選挙人名簿をつくるのには、必ずしもこの民法の二十一条に該当しておらなくても選挙人名簿には載るわけなんです、一つの例を引きますと。だから、ぼくは、今度国のほうが予算化をして永久選挙人名簿を調整するという、非常に事こまかいことだけれども、国民の権利には重大な関係のある重要な仕事をおやりになるんだから、こういう予算化されたときに、十分にこの内容を聞いて、明確な見解をただして、りっぱにその仕事をやり遂げてもらわなければなりませんので、お聞きをするわけなんです。どうも住民権の概念というものが、いまお聞きした中からいうと、自分の選挙権を行使するに民法上の住所、二十一条というところからこなくても、これは選挙人名簿には載るわけなんです。この辺のところがちょっとおかしいし、こういうようなところから、いままで選挙人名簿に載っていなかったり二重に載っていたり、そして公民権の停止された人の名簿が載っていたり、いろいろしておるんだから、私は、この機会にそうした点をすっきりさせて、そして完全なものをつくってもらいたい。それにはやはりどうも疑念のある点は十分にただしておきたいと思って質問しておるような次第で、ひとつよく御相談をしていただいて、統一的な見解をお示しいただきたいと思います。そうでないと、それはあなたのほうでおやりになるにも実際困ると思うのです。
  245. 長野士郎

    ○長野政府委員 私どものほうの記憶が正確ではないかもしれませんが、かつて地方制度におきましては、戦前は市町村公民権という考え方を基礎に持っておりまして、市町村の住民には公民権がある、そして先ほどもお話がありました公民権の停止というような考え方があった時代がございます。現在は地方自治法におきましては、市町村の住民について申しますと、先ほども民事局のほうからお話がありましたが、「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。」ということで考えておるようでございますし、そういう市町村の区域内に住所を有する者は、それが住民だということになっております。旧来からあります公民権というものの内容につきましても、だんだんその中をたぐってまいりますと、旧来のものでもその中で一番重要なものとして考えられておりましたものが選挙権で、その選挙権につきましては現在御承知のように公職選挙法におきまして「日本国民で年齢満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。」こういうことになっております。地方公共団体の選挙権につきましては同じ公職選挙法の第九条の二項に「日本国民たる年齢満二十年以上の者で三箇月以来市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。」こういうことに相なっております。そうして先ほどお話がありました選挙人名簿を作成するための公職選挙法の第二十条によりますと、「市町村の選挙管理委員会は、毎年九月十五日現在により、その日まで引き続き三箇月以来その市町村の区域内に住所を有する者の選挙資格を調査し、」そしてその者を名簿に載せる、こういうことになっておるわけであります。したがいましてここで国につきましては、日本国民で年齢満二十歳以上の者であれば全部選挙権を持っておる選挙権者である。地方公共団体の選挙権につきましては、そのほかにその市町村に三カ月以上住所を有することが要求されておる。それから選挙人名簿は、国も地方の選挙におきましても同一の名簿をつくることになっておりまして、その名簿登録の要件といたしまして、三カ月以来住所を有する者で、年齢満二十歳以上の者は選挙人名簿に載せる資格があるのだ、こういうことになっております。したがいまして選挙人名簿に載せるための必要な技術的な要請というような観点も加えまして、結局国の選挙を行使するにいたしましても、選挙人名簿に載らなければ行使できませんから、そういう意味で年齢二十歳以上の者で、三カ月以来同一の市町村内に住所を有する者が選挙人名簿に載る、こういうことになって、国も地方もそれで統一をされておるようないまのかっこうになっておるわけであります。したがって問題はどこにあるかといいますと、結局その者がその市町村に住所を有する者であるかどうか、これが一番のポイントになるわけでございます。住所というものについては、先ほどお話がありましたように、生活の本拠であるということになっておるわけでございますが、生活の舞台の問題といたしまして、その人がほんとうにその市町村に住所を有するかどうかということは、やはりいろいろな角度から調査をいたして、その実態を明らかにいたしまして、その上で住所を有する者と選挙管理委員会が認定をいたしまして、その場合に選挙人名簿に載せる、こういう段取りになるわけでございます。その場合に、先ほどお話がありましたように、住民登録がされておる人でほんとうに住所を有しておる者、あるいは食糧の配給台帳といいますか、米穀通帳を持っておるとかいうようなことで、その立証の一つになるというようなことももちろんございます。したがって、現在のところただそれだけにたよるわけに私どもまいらないのは、ただいま食糧庁のほうでお話がありましたように、それは消費者の場合にそういうことは言えるけれども、生産者の場合そういうことは言えないというお話もございましたが、同時に実態の問題になりますといろいろありまして、現在都市生活者の中でもそういう配給台帳を持たないで生活しているような実態も相当にあるわけでございます。それから住民登録につきましても、住民登録に基づいて名簿を調製するという基本的な考え方は私どもも全く同感なのでございますが、住民登録の実態とほんと三に住所を有しておるということと必ずしも合致しておりません。変な例で恐縮でございますけれども、たとえば越境入学をいたした。越境入学なんということになりますと、必ず両親がどこかその学校に入学したいところに住民登録だけをしておるわけでございます。しかしながらその人がほんとうに麹町なら麹町に住所を有しておるかということになりますと、選挙法の場合の住所というのは実態をつかまえることを要求しておりますので、その場合その人がほんとうは渋谷区に住所を有しておるということになりますと、渋谷区で選挙人名簿に載るべきであります。そこが必ずしもいま結びついていないところに一つの問題がございます。やはりそういう点があるわけでございます。  それからもう一つは、九月十五日現在で基本選挙人名簿をつくりますが、同時に公職選挙法の二十六条には補充選挙人名簿の調製という規定がある。これが選挙のたびごとに、毎年九月十五日現在で名簿に登録される資格のある者以外に、選挙のときまでにさらに登録資格を持つような人が出てまいりますと、それは選挙のたびごとに補充的に名簿をつくり合わせるわけでございます。そういうことからいたしまして、現在選挙の機会を失わせないという意味では有権者を漏れなく登録するというたてまえを貫いておるわけでございますが、それが非常に人口移動の激しいような現状でございますので、往々にして二重登録になりましたり、あるいは脱漏をいたしましたり、あるいはまた誤載、過誤が生じたりということがございますので、名簿を正確にいたしまして、そうして正確な名簿に基づいて選挙が行なわれるようにいたしたい。   〔主査退席、倉成主査代理着席〕 そのために永久選挙人名簿というやり方で、一斉調査に基づいて現在の名簿を正確なものにつくりかえる。それ以後はその関係者本人の申し出というものを原則にいたしまして、申し出に基づいて出てきました者を追加登録という形で登録をしていく。その際に十分な調査をする、こういうことでございます。
  246. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ぼくの聞こうとすることは、いまそういうむずかしい面があるけれども、簡潔に調査をして確実なものを国の責任でつくりたい、従来のものは不十分なものであったからということで、今年予算化されたということははっきりしております。そこで、ただ疑問の出てくることは、先ほど申したように、民法でいうところの住所、「各人ノ生活ノ本拠ヲ以テ其住所トス」、この住所がいわゆる選挙人名簿に載せられる住所でなければならぬというように民法では考えられるけれども、そうでなしに、今度はほかのほうへ行って、そうして三カ月以上その市町村に実際に住んでおるという人たちの場合は、住民登録をしておった場合に名簿の中に入れるのだから、どうもこういう点で明確にはっきりとならないわけなんです。それで私はいまもうむずかしいことを聞いておってもいかぬから、そうなれば住民権というものの概念というものはどういうものであって、それから発して結局こういう選挙人名簿なんかの作製には、そういう概念の上に立ってやられるのだということが明確にならないと、選挙になりますと、いろいろな方法を使えば、選挙のために登録をして米穀手帳をもらっておく、それによって選挙名簿に載せてもらって、そしてそこで選挙をする、こういうこともそれはあり得るのだ。だから、そういうことをなくしたり、ほんとうに選挙権のある者が落ちておったり、二重になったり、そういうことのないようにするために、今度国が責任を持って、永久選挙人名簿の調製を行なわれるのですから、そのことは非常にいいことなんだが、それをやってもらうには幾つかの問題があるから、私は、やるといったとてなかなかそれはやれぬのじゃないかという一つの頭があって、そういう考え方があって、お聞きをしておるのですから、その概念がどんなものかということをどういうように受け取っておられるのか、これからひとつ説明をしてもらわぬと——答弁の口数は少のうてよろしいのです。時間がだいぶきましたから、よろしいのですが、もうその点を明確にして、次から次へと質疑応答していきましょう。もうぼくの時間はきてしまいましたからね。
  247. 長野士郎

    ○長野政府委員 住民権というお話があるわけでございますが、選挙権につきましては、先ほど申し上げましたように、結局詰めていいますと、その市町村に三カ月以上住所を有している者が、選挙人名簿に載る資格があるわけであります。そういう意味で、住民というものは、その市町村に住所を有する者が住民であります。その住民はその市町村に三カ月以上住所を有しておれば、市町村の選挙権も持ちますし、もちろん納税義務も持っておるわけであります。選挙があれば選挙もいたしますし、直接請求権その他の権利も発生するわけであります。問題のぎりぎりのところは何かといえば、その人が一体どこの市町村に住所を有する者であるかどうか、これを正確に把握して、その把握されたとおりに選挙人名簿なら選挙人名簿に載せていく、このことが一番必要で大切なことです。元来、住所はその人にとっては一つしかないという考え方をとっておるわけです。そうすると、どこかにその人の住所がある。その住所がどこかということをはっきりさせるためには、一番徹底するのは、その実態を実際に当たって調査をして把握する、これしかないわけです。
  248. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そのとおりなんです。そのとおりだけれども、それはやっていないのですよ。だから、ことし予算化をしたら、それができるかということを聞いておるのですよ。机上プランとしてはまことにけっこうでございますけれども、行動はそのとおりにできません。またできておらないのだから、現在。それを今度やろうとされるのだが、こういう、いま私が幾つか条文を申し上げて、何に基づいてといってみても、これは一つに基づくわけにはいかぬわけです。実態はやはり把握しなければいかぬので、そういうことができるのかどうかということなんです。それを国が今度国の責任で永久名簿を作製されるのだから、もちろん地方自治体に手伝ってもらうでしょうけれども、そのことが完全にできるかできないかということ、これは選挙が、いろいろと政党が多くできて乱立をしてやっておる場合には、ほんとうに一票で当落のあるような場合もあり得るのだから、そうすると、いまのようなやり方だと、幾らでも選挙のために住所を変更したり、そうしてそこで選挙することができる。そうなると、民法で明確に規定されておることも、これはそっちのけになっちゃうということになる。だから、こういうような点が法的にも非常に疑義のある点であって、おそらくこれ以上明確にしようといっても、ちょっと明確にできないかもわかりませんが、せっかくこういうような考え方の上に立って、今年は四億九千万円の予算をとって永久選挙人名簿を調製をして、そうしていままでの選挙人名簿の不備な点を完全化していくということなんですから、この作業は完全にやってもらいたいのですが、非常にむずかしい点がありますが、大臣、いままでお聞きになって、いろいろメモしてみえたし、それからいろいろ考えてみえましたが、こうしたむずかしい問題ですが、自治大臣のほうから、せっかく予算化をしたのであるから、今年は従来隘路となされておるところを、この四億九千万円の予算をもって永久選挙人名簿を作成をして、いままでの不備を補えるか補えぬか、こういうような点をやっぱり明確にしておいていただいて、お約束をしていただかなければ、ただ予算化をして今度は国がこうするのだ、地方自治体にどう手伝ってもらうのだ、いままでは地方自治体でやってもらったのだ、だから不備だったと言ったとて、これは解消するものでないから、その点を大臣のほうから一口に明確に答弁を願いたいし、この答弁は約束をしていただくということです。
  249. 永山忠則

    ○永山国務大臣 一定の基準時の現在によりまして、その日まで引き続き三カ月以上その市町村の区域内に住所を有する者の選挙資格を、国勢調査のように一斉調査いたします。そうして、二重登録にならないように、各町村間との連絡を密にして、そして永久名簿の作製をいたすのでございまして、この約五億の費用は、全国一斉調査の費用でございます。さらに、交付税の中にも数億の金を入れておりますので、これによりまして、各町村にこの事務の粗漏がないように、十分ひとつ事務的な連絡をとって、なお、やり方等については、皆さん方のお気づきの点を十分ひとつ取り入れまして、万全を期して、そうしてこれが移動をした場合においては、関係町村から抹消の証明書を出さなければこれを受け入れないというように、今度は実態調査を精密にいたす。机上プランでなしにやれるような、加除訂正ができる基礎となる永久名簿をつくる。そして、その加除訂正に対しても、市町村の証明書を添付して、二重登録にならないように厳にやるという決意をもって臨んでおるわけでございます。
  250. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そういう答弁ですが、その中で従来と変わっておることは、あなたの言われたことで、国勢調査のように徹底的に調査をしてというところが、従来と変わっておるだけなんです。ところが、その国勢調査のようにというと、その国勢調査のやり方はどういうようなやり方をやったか。国勢調査は、用紙がきて、そこにはだれがどれだけどうおるというやつを、調査員がその町内町内におって、それを集めていって集計して、そうして市役所に出すということなんでしょう。それをやったとて、その網をくぐる者はくぐるから、そういうような点をなくするために、完全にするためにということなら、国勢調査をもう一回やり直すというわけにもいかぬでしょうし、国勢調査の予算というものはたいした予算でしたが、あれだけのことをやるだけでも、これは予算化は相当なんでして、非常にむずかしいと思うのです。むずかしいと思うのだが、まあ、私も時間がないので、これ以上きょうはやれませんが、いずれにいたしましても、自治省としては、従来の補充選挙人名簿によって選挙を行なった場合には、二重になっておったり、あるいは帳簿から落ちておったり、または閲覧時期があるということを知らずに届けをしなかったり、そういう不備があったので、今度は国のほうで予算化をして、国が乗り出して、そして地方自治体にも若干の交付金の予算は出してあるから、協力をさして完全なものにするんだ、こういうことだと思うのですが、それは間違いないですね。
  251. 永山忠則

    ○永山国務大臣 さようにやる考えでございまして、大体五億円で十万人の人を動員して、実態調査を十分いたして、机上プランに終わらないようにするという考え方を持っております。
  252. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その点を期待いたしまして、私の質問を終わります。
  253. 倉成正

    ○倉成主査代理 茜ケ久保重光君。
  254. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 私は、少し警察庁関係の案件について、端的に御質問したいと思います。  最初に、自治大臣に国家公安委員長というお立場で御所見をお伺いしたいのであります。と申しますのは、私は、十数年来の日本の治安も安定しているし、いわゆる凶悪粗暴犯も、集団的あるいは危険な武器等を所持する事犯も少なくなったのであるから、警察官の常時拳銃携帯について廃止すべきでないかという意見を申し上げ、警察当局の御意見もたびたび承ってまいったのでありますが、今日まだその実があがっておりません。最近にも、京都で十七歳の少年が警察官の拳銃ほしさに人を殺し、あるいは警察官に非常な危害を加え、世間の耳目を聳動した事実は、まだ真新しいのであります。この例は非常に一般的な社会の耳目を聳動したわけでありますけれども、これほど大きくなりませんでも、その直後にも、また少年が危うく警察官をだまして拳銃を奪い取ろうとした事実もあったようでありますが、ああいうふうに騒がれませんでも、かなり全国的には、警察官が拳銃を常時携帯しているということから派生する問題がたくさんあると思うのであります。あるときには警察官自体が拳銃を手入れするために暴発をして同僚を傷つけたり、あるいは通行人に危害を与えたり、こういうふうに現在の日本の警察官の拳銃携帯ということが、犯人逮捕ないしは治安維持のために役立つというよりも、そのこと自体が警察官の身辺を危険におとしいれ、さらにひいては社会にいろんな悪い影響を与えるという事実のほうが多いと思うのであります。これは、私がしばしば当分科会において従前も指摘をしたことに対する警察当局の答弁でもはっきりしております。この事態に対しまして、公安委員長として、京都のあの少年の事件等は、もちろん少年自体にも精神異常的な素質もあったようでありますけれども、もしあの少年が幾らか精神に異常があったとしても、たとえば有名な話で、登山者がよく遭難する。遭難しても遭難しても登山者が減らない。私の選挙区の谷川岳などはその最も有名な山でありますが、幾ら遭難してもあとを断たない。むしろ遭難があった直後のほうが登山者が多いという現実、これは俗に言う、そこに山があるから登るんだ、山がなければ登らぬのだということばが有名でありますが、自治大臣、あの京都の事件のようないまわしい事件は、どういうふうな素因からああいう事件が起こったか、これに対する御所見をお伺いしたいと思います。
  255. 永山忠則

    ○永山国務大臣 ちょっと質問に対する答弁がずれるかもしれませんが、要するに、拳銃は常時持たぬのがいいのではないかという意味の御質問で、たとえば京都のような問題等もあるではないかというような趣旨と心得まして、それに対しての答弁を申し上げたいと存じます。  拳銃は常時持つということが原則でありまして、ではございますけれども、現在は交通や雑踏警備の関係は持っておりません。外勤の関係者五万二千人が常時携帯をいたしておるのでございます。  なお、警察官が職務執行中犯人の攻撃によって受傷した件数は、三十七年が六百九十五でございますし、三十八年が六百六十、三十九年が七百三十二で、やはり犯人の攻撃によって受傷する関係は減っていないのでございます。凶悪犯の関係におきましても減ってはいない状態でございます。詳細は長官から答弁すると思うのでございますが、そういうような関係におきまして、祭銃はやはり外勤関係は常時携帯をする必要があると考えられるのでございます。
  256. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 用意された答弁のようでございますが、永山自治大臣は長い間野にあっていろんな御苦労もなさっていらっしゃるので、私は、永山自治大臣に国家公安委員長としての率直な御意見をお聞きしたがったのでありますが、それも無理とするならば、京都事件も少年が一応精神異常者であるからということで片づくかのような観点でございますが、あの事件がたとえ少年が精神に異常があったと仮定しても、もし警察官が常時拳銃を持たないという実態でありますならば、あの事件は起こらなかったと思う。いま警察官が五万とおっしゃいましたが、いま粗暴犯が減らぬとおっしゃいますが、もちろん、いわゆるやくざとか不良とかいうものがかなりあることは事実であります。しかし、その諸料には、現在拳銃の所持ないしは短刀、刀剣等の所持については厳重な規制がある。したがって、密輸入等もあるようでありますけれども、その数は非常にわずかで、おそらく微々たるものであると思う。そこへもってきて、五万というたくさんな拳銃が社会を横行しておる。これは私は非常にあぶない状態と思うのであります。いわゆる拳銃のほしい者、また、最近いろんな関係で非行少年が問題になりますが、そういった諸君が、ほんとうに子供におもちゃよりももっとほしいものを常時携帯しておる。そこに、その持ちたいという非常な欲望のものが目につくという場合、私はやはりそんな事件が起こると思う。京都事件などは、端的に申し上げると、拳銃がなければあの事件は起こらなかったと思う。いま公安委員長として永山自治大臣は、治安に対するかなり過激的な事件もあるし、粗暴犯も減らぬから、拳銃は依然として外勤者には常時携帯をさせる方針だということでございますが、いわゆるそういった粗暴犯なり、あるいは警察官に対していろんなことがあった場合に、拳銃を持っていたがために、非常に有効に逮捕なり、あるいは自分の身を守るということがあった事例がありましたならば、その点もひとつお聞きしたいと思うのであります。これは警察庁長官でも刑事部長でもけっこうです。
  257. 新井裕

    ○新井(裕)政府委員 件数を申し上げますと、三十九年に職務上拳銃を発射いたしました事件が五十七件ございまして、それによって犯人を逮捕したものが四十四件ございます。
  258. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 五万人の常時拳銃所持者、その中で、五十件足らずの案件、しかも、これはおそらく常時携帯していなくても——そういう拳銃を使用をしなければならぬという案件だが、外勤警察官が五万幾らある中で、その外勤勤務上常時拳銃を持たなければそういった事犯に対する対処ができないということはなかろうと思うのです。私は、拳銃を警察官から取り上げて全然使わせないというのではない。やむを得ないことがあった場合に使うということは、これは当然だと思うのです。したがって、私が主張するのは、警察署なり派出署なり、そういったところに常時完全に保管をして、有事の場合に、非常に拳銃を必要とする場合にのみ使用する。交番のおまわりさんが何もああいう大きな拳銃を毎日ぶら下げて歩くことはないと思う。皆さん方はよく口を開けば民主警察だということをおっしゃる。それはあなたがたはスマートなかっこうをしていらっしゃるが、私はいつも言っているように、おまわりさんがああいう大きなピストルを腰に下げて、こん棒を下げて歩く姿は少なくとも平和日本の国内で一般民衆と溶け合うものでないと思うのであります。あのかっこうで、国民大衆の信頼感とほんとうに愛される警察官ということは、当然これは望めない。特殊な人はあります。それは十何万という全国の警察官の中で特殊な方はあるでしょうが、一般には少ない。私が言うのは、いわゆる皆さん方がほんとうに民主警察を標擁し、ほんとうに国民に信頼される警察となるためには、一たん事があった場合に、一般の国民が協力するかしないかによると思う。自衛隊ですら愛され自衛隊になっている。これはやはり自衛隊が、何かの場合にその目的を達成するには、国民の協力がなければできないということを知っているからである。警察官は自衛隊以上に国民自体を直接守る責任と義務を負っている。その警察官が一般の国民から信頼され、愛されなくては、私はほんとうの任務を遂行はできぬと思う。たとえば、いろんな犯人逮捕に民間の協力がなければできないことは数限りなくあった。ところが、実際は山谷やあるいは大阪の釜ケ崎を例にとるまでもなく、ややもすると、逆に警察官が民衆から阻害されている。犯人が民衆の中に溶け込んで、検挙を非常にむずかしくしているという事例が非常に多い。  私が十数年主張をしているのは、一つには、私、全国を回って、おりあるごとに現場のいわゆる拳銃をぶら下げた警官に聞くと、だれ一人拳銃を持っていたいという人はありません。これは自治大臣なり長官なりが調査したならば明らかでありましょう。もしほんとうにあなた方がやる気ならば、何らか第二者の機関で第一線の警官諸君に聞いてみたらいいです。警官が持ちたいから持たせるというのではなくて、いかに彼らが職務執行上平生このことで苦労しているかがわかるのです。私は、かつて柏村長官のときに、どうしてもそんなに必要ならば、長官がじかにこの議場に拳銃と警棒をつけていらっしゃいと言ったことがある。幹部諸君は平服でスマートな姿でいる。そんなに職務上必要ならば、長官以下みんなほんとうに制服でいらっしゃい。できないでしょう。長官、本部長以下、内勤の諸君はほとんど私服である。私は、現場の諸君も私服を着ていいと思う。もっとスマートな服装にして、拳銃がもしどうしても必要ならば、もっと性能のいいものにして、内ポケットに入るような、第三者の目につかないようなものにしたらいいと思う。それが予算上できないならば、国の費用で予算上やったらいいと私は思う。——長官、まじめに聞いてください。質問中ににやにやして聞いているとは何です。もっとまじめに質問を聞いてください。不誠実だ。警察庁長官はこの前のときには何か外出しているということで来なかったが、なぜ来なかったか。私は冗談を言っているのではない。日本の警察がほんとうに民主警察として国民に愛され、ほんとうに国民を守る警察ならば、もっと信頼を持たれなければならない。警察官の目となり、耳となる国民に対して、警察官がほんとうに真剣に愛情を持って警察行政を運用するということを私は期待している。数年前に、およそ二万二千円ベースのときに、警察官には三万ないし四万円のベースでやって、名実ともに警察官が安んじて国民の中に溶け込んでいく行政をしてもらいたいということを私は申し上げているが、しかし、二、三年前から今日まで、いまの自治大臣も機械的に御答弁なさったが、何らお考えにならない。私はいま少し検討してもらいたい。私も昨年、一昨年世界一周をしてまいりましたが、どこの警察でも、日本の警察みたいにああいうぶかっこうな制服の国はない。ぶかっこうというか、何というか、全くお話になりません。だから、服装をもっとりっぱにして、拳銃がどうしても必要ならば、小さい性能のいい拳銃もあるはずだから、そういうものを内ポケットなりどこかにもっとスマートに所持することも考えてもらいたいと思う。いまの状態を続けるのでは、警察官も気の毒だし、国民も警察に対して常に威圧感と不安感を持つ。逆である。  少し私はしゃべり過ぎましたが、しかし、私は、これはあなたに強制しようとは思わぬけれども、警察としてはこれは一考を要するものだと思うのであります。いろいろな観点から調査もし、検討もし、どうしても現状を変えることができないということでしたならばやむを得ませんが、しかし、いまも答弁でおっしゃるように、拳銃で起きた事件が五十件足らずだが、その反面、拳銃のためにかなり問題を起こしている。でありますから、服装の点についても、拳銃の所持についても、もっと真剣にお考え願って——十年一日変わらない。私は、オリンピックの前に、オリンピックを契機に日本の警察官の服装を改善したいという御意向で、何かデザイナーに見本をつくらせたという新聞を見まして、日本の警察も何かここに一つ明るさを取り戻すチャンスと思っておりましたが、ついに、どういうかげんでありますか、それも不発に終わっています。長官、この辺でひとつそういった面で——警察を愛するために、警察官を愛するがために私は申し上げておる。私も、警察にはいろいろな意味でずいぶんごやっかいになっておる。私自身も豚箱に入ったし、あるいは警察にごやっかいになっておる。しかし、いろんなところで現場の現職の警察官の諸君と話し合うと、私には率直に、北海道の諸君も九州の諸君も、もしこの拳銃がなくて、もっとスマートな服装にしてもらえれば、勤務がどんなにしやすいかということを述懐しておるのです。したがって、あなた方も、それについて第三者の調査なり、あるいは皆さん方の中で調査されるなり、一応調査をして、何らかの対策を私は立てる必要があると思うのだが、ひとつ長官、いかようにお考えか、承りたい。
  259. 新井裕

    ○新井(裕)政府委員 最初に、=三身上のことで申し上げますが、私は、茜ケ久保委員の御質問に対して笑いながら聞いておったものではありませんから、誤解のないように願います。  いま、前から御意見がございまして、拳銃を、ことに大型の拳銃を常時携帯していることはたいへんな不便を感じておるということは、われわれも前から気がついておりました。最近、ようやく予算も認められまして、これを小型化することを三カ年で——一部でございますけれども、ことに四五口径の大きいものは全部小型にしようということでやっております。  それからまた、もともと日本の警察官は、御承知のようにサーベルを下げておりまして、拳銃を常時携帯しだしたというのは、戦後の二十年足らずの経験であります。御指摘のように、最初のころは、常時そばに置くということはわれわれの気持ちにそぐわないために、事故もございましたけれども、だいぶなれてまいりまして、ことに暴発事故のごときは減ってまいりました。そういう意味におきまして、われわれも常時携帯がいいかどうかということを検討する場合に、常時携帯しているほうがなれるという事実がございまして、そういう意味からいままでずっとやってきております。ただ、御指摘のように、四五口径というものは日本人の体格にはたいへん無理であります。それを小型化しようということをやっておるというのが現状でございます。  それから服装につきましては、昨年も御指摘がございまして、ことに縫製の問題ということで去年も申し上げたつもりでございます。いまの制服でももっとスマートにできるということを専門家にいわれております。ことにあれをつくったときといまとでは、たとえばズボンの太さというようなもので格段の相違がございまして、そういうことで何らかの改善をほどこそうということで研究をいたしております。できれば、あまり予算上の措置を講じないでやれるものをという観点からやっております。  それから、いま御質問にはございませんでしたけれども、この前も申し上げましたように、一つは、支給の点数が少ないために、どうしても手入れが行き届かないということでありますが、幸いにいたしまして、大体半数くらいの県は支給の点数をふやしつつありまして、この点からも改善されております。できるだけあまりみっともない服装でなく——これは私は、一つは形式もございますけれども、ふだんの手入れであると思います。そういうものも、初任科の生徒につきまして、特に厳重に訓練をしていくということにいたしたいと思っております。
  260. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 小型化とおっしゃったんですが、それはやはり依然として、携帯の方式は、現在のように外にベルトをつけて、現在の形と同じにしてただ小さくするということですか。  公安委員長にお尋ねしますが、ちょうど現在非常に大きな問題ですが、拳銃の形式をお変えになるときを期して、一歩前進して、現在の外にベルトでつるという形式じゃなくて——ベルトがどうしても服装の関係で必要ならば、ベルトがあることは、これはいいでしょう。しかし、拳銃自体をベルトにつけなくとも、いま言ったように、何かほかの方法——もう少し小型化して、これは予算等の関係もございましょうが、内ポケットなり——どうしても先ほど言うように持ったほうがいいという御所見で、これをはずしたくないということなら、もっと一歩進んで、内ポケットなりその他のところへ、外部から目につかぬところに、しかもいざという場合には操作に不自由をしないということは、これは幾らでも考えることはできますので、そういうところまで進めるという御英断ができないものかどうか。これは公安委員長としての立場で御所信をお聞かせ願います。
  261. 永山忠則

    ○永山国務大臣 私も、その点に対して、いろいろ各国はどうかということを聞きましたら、イギリスはああいうように持っておりませんが、その他の先進国はみな持っておる。そして、日本のような状態に持っておるかといえば、日本と同じような状態で保持しておる。それはやはり万一の場合のために、そういう持ち方が最も効果的であるというように承っておるのでございますが、なお十分熱意のある御意見に対して検討はいたすつもりでございますが、いまのような現状でございます。
  262. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 拳銃の所持についてはかなり強い御熱意でございますが、これは一つの私どもの試案でありますが、農村の、わりあい平和で、長い時間的に見ても、かつても凶悪犯がなかったし、今日でもないし、また将来も特別な事件がない限り凶悪犯もないというところもたくさんあろうと思うのです。市街地でも、私どもの関知する限りでは、私どもの住んでおる前橋なども、ピストルを使わなければならぬという交番などもそうないと思うのです。したがって、法的な面としては、拳銃常時携帯ということがあっても、これはやはり内規の、皆さん方のいわゆる規則で幾らにでもなると思うのですが、地方においては警察本部長なり署長が、この地区は常時携行しなくても済むというような認定——ないしは国家公安委員会でもけっこうです。そういう認定のあるところだけでも、当座、拳銃を常時携行しないで、試験的にでもやってみる。その結果、必ずしも拳銃を常時携行しないことが警察官の職務執行上支障がないというようなことが、具体的に証明される場合においては、これをかなり広範な地域に広げていくといったことは考えられると思う。私は、私の一つの主張としては、私自身はこの拳銃の常時携行を逆に非常に不安に思っておるし、ぜひこれをやめてもらいたいと思うのだが、これはしかし、私自身の意見、所信でありますから、当事者である国家公安委員長ないしは警察庁長官、最高責任者がどうしてもいかぬというなら、私は、別にここで皆さんにしゃにむにとは申し上げません。しかし、皆さん方も、これは長い日本の歴史的な事実として、現在あるものを変えるということはなかなか容易じゃないわけですね。まして、あなた方は、犯罪捜査ないしは犯人逮捕という責任を持っておられる、そういう点で、拳銃を持たぬために何かそごがあってはならぬという危惧がありましょうから、これは当然だと思いますけれども、しかし私は、やはり最初言ったように、警察官の本来の姿という面から見ると、国民に愛され、信頼され、しかも、国民がともにその警察行政の運営に協力するような一つの雰囲気をつくるためには、そういうことも決して軽く考えちゃいかぬという観点から申し上げるのです。長官、これは私のほんとうのそういった気持ちをなにするための考えですが、何かそういった方法はとれぬものかどうか。現在のあなた方の職務執行上、いま私が指摘したような、あるいは非常に平和な農村とか、あるいはほとんどそういう危惧のない地帯におけるいわゆる拳銃の常時携帯を、その地方の公安委員長なり公安委員会なり、署長あるいは本部長といった責任者の人たちの認定によって、一部そういう試験的なことはできないものかどうか、この点いかがでしょう。
  263. 新井裕

    ○新井(裕)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、拳銃が日本の警察官になじむためには、私は、いまでも常時携帯をさせるほうがいいと思っております。と申しますのは、自分が携帯をしていなかったときと、しているときと、そう器用に気分を変えて勤務できるとは考えられませんし、いつまでも山村だけに勤務しているわけでもございませんので、そこを一部だけそういうふうにするということがどういう結果になるか、いまのところは、私どもちょっと見当がつきかねますので、いますぐ返答しろとおっしゃれば、とてもできないということを申し上げるよりほかないと思います。ただ、先ほどからお話もあり、この間の京都の事件につきましていろいろお話がありますように、あるいはまた投書その他で意見がありますように、拳銃を常時携帯しているということによって生ずるいろいろな障害というものも私どもも十分に検討をいたしまして——いまお話かありました内ポケットに入れるということは操作がたいへん不便でございますけれども、戦前の警察官は、拳銃を携帯しております場合に皮の袋の中に入れておったことは、あるいはごらんになったことがあるかもしれませんが、そういうようなことのほうがよければ、そういうことも考えなければならぬ。もし、そういうことをやるといたしますと、また何ぶんたいへん予算もかかることでありますから、そう軽々しくはきめられないと思います。いろいろ毎年熱心な御意見がございまして、私どもも、決してそんなものは問題にならないなどというふうには考えておりません。着実に職務を執行すると同時に、いかに危険が確実に防止できるかということは、われわれ常に考えなければならない問題でありますから、御意見も十分に参酌いたしまして、今後とも研究を続けてまいりつつ、なかなか一年や二年で問題が片づくとは思っておりませんけれども長期にわたりまして、そういう点は常に反省し、十分検討を加えてまいりたいと思っております。
  264. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 この問題は、ここであなた方と議論しようと思っているわけではありません。しかし、何といいましても、たびたび指摘しているように、私は、警察官は民衆の中に溶け込んでいなければ、たとえ拳銃を持とうと、やりを持とうと、本来の任務は遂行できないと思う。これは私もまた、あしたからということは申しませんが、問題は、いわゆる拳銃を持ったことによって国民がその被害を受け、あるいは警察官自体がその被害を受けるということであってはならぬし、これはただ単に操作のなれふなれの問題だけではないと思うのでありますが、そういうことがあってはならぬのでありますので、ひとつ、ぜひ警察官の服装なり、拳銃の所持の方法なり、あるいはいろいろな点も、一度自分の立場を離れた状態から根本的に検討されまして、警察官諸君が気持ちよく、しかも、国民の信頼をかちとるような状態で勤務できるように御苦労願いたいし、公安委員もたいへん熱意を持って措置されるのでありますから、ひとつ、ぜひあなたが御在任中に——私は何もあすからとは申しません、前進する形で解決の努力をしてもらいたい。それによって、国がどうしても必要というなら、これは三兆、四兆という予算の中ですから、私は、他の案件よりもむしろ優先的に、そういうことをすべきだと思うのです。私ども、そういう点に対する協力はあえて辞しません。くどいようでありますが、ぜひそういう点を心得の上、今後の警察行政に当たっていただきたい、こういうように御要望申し上げます。
  265. 倉成正

    ○倉成主査代理 栗林三郎君。
  266. 栗林三郎

    栗林分科員 私は、去る十九日及び二十五日の予算委員会あるいは分科会におきまして、出かせぎ対策につきまして詳細にわたった質疑を行なったのでありますが、その中で、ぜひ自治大臣にお伺いいたしたいと思っておる問題が一、二ございますので、自治大臣に二、三の点についてお尋ねいたしたい、かように思います。  まず、大臣にお伺いいたしたいことは、出かせぎ労働者賃金不払いと、これに関連して、工事請負指名に関する問題であります。出かせぎ者の賃金不払いは、不当な重層下請から発生しておるものでありまして——重層ということばは、私も初めて発見したことばでありますが、これは過般、十二月二十七日に建設次官からそれぞれの各官庁、地方自治体に送られました次官通牒の中にあることばであります。   〔倉成主査代理退席、主査着席〕 聞いてみますと、重層下請というのは、三段階、四段階も下のほうへ下げて下請をさせておる、そのことを重層下請、こういうことばで表現したのだ、こういう説明でございました。この賃金の不払いは、不当な重層下請から発生しておるものでありまして、私は、下請が賃金の不払いを行なった場合に、親会社、元請業者がこの賃金の責任を負うような立法措置を要求して議論してまいった次第であります。特に行政官庁の発注する工事は、中央ばかりでなしに、地方自治体ともに、下請の賃金不払いの場合はその元請が責任を負う、あるいは補償するというような誓約を求むるか、または、その不払いを元請業者が誠意を持って解決しない限り、次の発注の際には、その元請業者には工事発注を差しとめるというような行政措置は可能だと思われるわけであります。この際、地方自治体に対して、このような行政通達なりあるいは通牒等を発して、県、市町村当局の善処を積極的に促す、そういうような御配慮は持っておらないのかどうか、この点をひとつ自治大臣にお伺いいたしたいと思います。
  267. 永山忠則

    ○永山国務大臣 何といっても、請負関係は建設省が主管でございますので、十分ひとつ建設省関係と相談をいたしまして、御趣旨の点は検討をいたしたいと考えておりますが、唐突のことでございまして、建設省とまだ打ち合わせておりませんので、御趣旨の点を十分打ち合わせをいたしたいと考えます。
  268. 栗林三郎

    栗林分科員 いまの件は、私は、建設省の所管になるのか、あるいは労働省、自治省の所管になるのか、その辺のことはよくわかりません。わからないが、暮れの十二月二十七日付をもちまして、建設次官の名をもちまして、「建設工事の入札制度の合理化対策の一部改正について」という表題の通牒が、これは中央官庁はもちろんでありますが、都道府県あるいは公団等にも発せられておるわけであります。これは請負業務に関することでありますから、建設省の所管だとは思いますけれども地方自治体に関する発注は、これは地方自治の一般的な行政の問題でありますから、当然自治省におきましても、自治大臣におきましても、やはりこれらのことには重大な関心と、また行政的な指導というものは考えておられなければならないと思います。所管外の問題ではないのであります。たまたま建設次官の名をもちまして、ただいま申し上げました表題の通牒が出されておるわけでありますが、この通牒の中に、先ほどちょっと触れました、下請業者が不始末を起こした場合に、元請業者も十分その責任をとらなければならない、もちろん、これは法律上の責任を意味しておるのではありません。道義上の責任を負わなければならぬ、また、そういうような責任を負わない業者に対しては、所管省庁の工事発注は保留する、こういう意味の通牒であります。それでありますが、この通牒の内容等をここで議論するのではありません。問題は、まだまだたくさん含まれておりますが、私は、このような通牒が各官庁、地方自治体あるいは各業者に対して発せられたということが、出かせぎ労働者をめぐる不払い問題等を解決するための積極的な姿勢を示したものと見て喜んでおるわけであります。願わくは、地方自治体におきましても、多くの工事発注があるわけでありますから、ひとり建設次官の通牒で足れりとするのでなしに、地方自治体を指導、監督する、そういう責任を持つ自治大臣でありますから、私は、自治大臣からもこれに関する通牒なりあるいは通達なりをお出しになって、そして地方自治体としても、下請業者の不始末を親会社の元請が全然知らないふりをしておる、全然責任をとろうとしない、解決に善処しようとしない、そういう業者に対しては地方自治体の発注も保留せい、こういうことの何らかの行政的な措置を希望したいのでありますが、この点はどうでしょうか。建設次官が出しておるのだから、それでよいというものでしょうか、私は、進んで自治大臣からもこれと同じ趣旨の通牒なり通達を出して、各県、各市町村の善処をひとつ要望してもらいたい、こういうように希望するものですが、御答弁をいただきたい。
  269. 柴田護

    柴田(護)政府委員 お話の通牒につきましては、実は私ども、いまだ見たことがない、いまこの席で初めて伺ったのであります。したがって、大臣から、先ほど、十分検討いたしましてということを言われたのでございますが、私、お話を伺っているうちにだんだん思いましたことは、おそらくは、工事というものが下請業者の不始末によってめちゃくちゃになってしまうということを防ぐ、こういう趣旨から出たものであろう、つまり、工事そのものの完全な施行というものを確保する意味合いにおいて、そういうような業者の責任を明確にする一つの方途として考えられたものだろう、このように思いまして伺ったわけでございますが、同じような事例は、おっしゃいますように、何も請負事業だけではございませんで、地方にございます単独事業にも多々あるわけでございます。私は、あるいは地方団体によりましては、すでに同じようなことを実行している、それを建設省が採用したというようなこともあるのじゃなかろうかという感じもするのでありますけれども、そういう意味では、事業をやります立場におきましても、これはあたりまえといいますが、一つの当然の施策でありましょうし、それが出かせぎ問題というものの困難を解決するのでございますれば、むしろ、私どもといたしましては、前向きに検討いたして措置したい、かように存ずるわけでございます。よく検討さしていただきたいと思います。
  270. 栗林三郎

    栗林分科員 これは私、具体的に例を示すとたくさんありますが、先ほども申し上げましたように、このことを再びここに触れようとは思いません。ただ、地方官庁で発注した工事をめぐって、いわゆる下請の不始末から出かせぎ労働者が不払いのために泣いておるケースが非常に多い。たとえば、横浜市に馬淵建設という相当大きな建設会社があります。この馬淵建設は、横浜市の工事をかなり指命を受けてこなしておる業者であります。さらにまた中央官庁の仕事も発注を受けて、いま仕事をしておる業者であります。ところがたまたまこれの下請が賃金の不払いを起こしまして、これは過般私は一般質問の際にも実例として申し上げたのでありますが、秋田県の矢島町出身の出かせぎ農民が十八名、宮城県の季節労務者、いわゆる出かせぎ農民が七名、合わせて二十五名、この人方の賃金不払いというものは、去年の十二月一日からことしの一月十七日までの間にこの賃金が一銭も払われておらない。これは合わせますと約百二十万円の未払い賃金になります。一銭ももらっていないのです。こういうような問題がありまして、やはり中央官庁だけでなしに、地方の発注した工事をめぐって下請の不始末からこのような不払いで泣く出かせぎ農民が非常に多いのであります。したがって地方自治団体を一応行政指導する立場にある自治省でありますから、ぜひとも建設省のほうで通知を出したのだからそれでよいのだというような態度でなしに、自治省としても進んで行政指導を加えていただきたい。こういうことを切に御要望申し上げてこの点に関する質問は終えたいと思います。  第二の問題は、出かせぎ者の所得、収入をめぐる住民税の問題であります。この出かせぎ者の出かせぎ所得に対する住民税の問題につきましては、去る二十三日に出かせぎ者の第二回大会が開かれて、その大会で決議をし、大会の代表が自治省を訪ずれてそれぞれ要望し、かつ話し合いを行なっておるわけであります。私は端的に申し上げますが、この出かせぎ者の立場というものは生きんがための追い詰められた最後の一線であります。これが出かせぎという形になってあらわれておるわけです。それでありますから、これらの出かせぎ所得に対しては、特に住民税の対象からは当分はずしてもらいたいものだ、こういうように考えておるわけでございます。  その理由として、私は申し上げたいのですが、出かせぎ者のいま働いておる職場というものはきわめて不安定です。したがって、その収入もまことに不安定です。こういうような不安定な職場、不安定な収入でありますから、その収入を完全に捕捉する、把握するということは非常に困難でございます。そういう困難な事情を無理して課税をするということになりますと、必ずこれはいろいろなトラブルを起こすわけであります。これが第一の理由。  第二の理由としましては、いま出かせぎ農民の諸君は職安を通ぜざるものが約七割に達しておるわけであります。職安を通じますと比較的不払いであるとかその他の事故は少のうございます。しかし、残念なことには、どういうわけか職安を通じないで出てくる農民が非常に多い。したがって、悪い手配師とか、そういう悪質なものにだまされて就労をする、そういう農民が非常に多いわけであります。国家の機関政府機関でもありますので、職安を通ずればこういうような不幸な事故というものを防ぐこともできますので、何とかして職安を通ずるように私どもも努力しているつもりであります。だが職安を通じない。なぜかといえば、いろいろ問題があります。その問題の中の一つに税金の問題があるわけであります。やはり役所の世話になると、自分たちの収入がはっきりわかるのだ。こういうような不安と心配があるものですから、職安を通じないで出てくるのが非常に多いわけです。そのために不安な職場に就労していろいろな事故が発生しておるのでありますから、この際課税をするということよりも、まず安全な職場と安全な収入をひとつ心配をする、そういう安全な職場を確保するということに全力をあげねばならないと思うわけであります。課税を急いではならない。まず安全な職場をわれわれが紹介をする。安全な職場に就労してもらうよう行政指導をやる。これが先決であろうと思うわけであります。そうして職安を通じて安全な就労がここに確立した場合に、所得のあるものに税を課するのは、これは国民の税に対する平等の負担の義務でありますから、私は当然のことだと思いますけれども、いまの段階ではそういうような不安があるものですから、農民は職安を利用しない。そうして不払いというような事故が発生しておる。くどいようですが、私はまず安全な職場をわれわれが保障する。そういう職場が確立した後にはじめて課税対象として考慮すべきではないか、こういうように思うわけであります。したがいまして、私はいまの出かせぎ者の所得を住民税の対象から、これは調査検討するということで当分はひとつ政治的な配慮をしてもらいたいと思うものでございますが、この点に対する大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  271. 永山忠則

    ○永山国務大臣 税の関係は、基本的に国、地方を通じまして、やはり総合課税主義をとっておりますので、これをただいまどうするということは申し上げることはでき得ないのであります。したがいまして、やはり職業安定の関係と、あるいは総合課税のあり方とのいろいろの点を今後研究をいたし、かつまた勤労者所得が最も過重にありますので、勤労所得の控除の問題、あらゆる点を総合してひとつ十分検討させていただきたいと存じます。
  272. 栗林三郎

    栗林分科員 この出かせぎ者の所得の中で、工場関係に就労しておるものの税把握は大部分可能であります。源泉徴収も行なわれておりますし、当然地方自治体に対してもそれぞれ通報をしておるようでありますから、工場関係に就労する出かせぎ者の所得はまず完全に把握できると思います。この場合に、私は、特に必要経費として特別控除等を考慮してもらいたいと思うわけです。なぜなれば、これら出かせぎ者は出かせぎするためのいろいろの支度金もかかります。それから出かせぎに来ましてもこれはいろいろな経費がかかる。特に二重生活でありますから、相当の経費がかかるわけであります。そういう経費を一々書き上げれば、あるいは控除になるものもたくさんあろうかと思いますが、いまの出かせぎ農民の諸君に詳しくそういうような必要経費を書き上げて申告せいといっても、これは無理であります。それでありますから、元来がこの所得そのものが非常に不正常な、完全に捕捉もできない所得もあります。しかし工場関係は比較的これは捕捉ができますけれども、いま申し上げましたようないろいろな経費がかかり、二重生活でもある、こういう点を十分考慮に入れられまして、私は、経費の特別一括控除の制度というものをぜひ検討してもらいたい、こういうように希望するものですが、これに対してはどういうお考えでしょうか、ひとつお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  273. 細郷道一

    細郷政府委員 出かせぎの形態によると思いますけれども、多くの場合給与所得になるだろうと思います。給与所得ということになりますと、必要経費を見るか見ないかというのは一般のサラリーマンにも同じような問題があるわけでありますが、現在は給与所得控除というものをもってそれにかえるというようなことで、給与所得控除については年々引き上げをいたしております。住民税につきましても来年度は従来よりも約一万円くらい上がるというようなことになっております。
  274. 栗林三郎

    栗林分科員 もう一ぺんお尋ねしますが、出かせぎ者の所得は給与といえば給与、あるいは所得といえば所得です。そのことは私もわかりますけれども、いま申し上げましたような、そういう悪条件の中で働いておるわけですから、したがって、この給与所得控除の中に、こういう出かせぎ者に対しては特に一括控除をする、いろいろな諸経費を含めて、一括控除をする、そういう方法を講じてもらいたいと思うのですがね。これは無理でしょうかね。ひとつお答え願いたい。
  275. 細郷道一

    細郷政府委員 給与の性質によっていろいろ控除を変えるということは、いまの所得税並びに住民税のたてまえ上はなはだ困難でございます。ただ、おっしゃるような出かせぎの場合ですと、私の思いますのには、そう収入も大きくないということになってまいりますと、家族の扶養控除でありますとか、本人の基礎控除でありますとかいうようなことによりまして、住民税の失格者になるというようなことも考えられるわけであります。来年度は、いずれ提出いたします地方税法の中で住民税の控除を引き上げることにいたしておりますので、標準家庭でございますれば従来の三十五万が四十二万に上がるというようなことになりますので、そういうことによって徐々に救われていくものと考えます。
  276. 栗林三郎

    栗林分科員 二十三日の大会の際に、代表団が自治省へ参りまして、私はどなたと折衝したか忘れましたが、その報告によりますと、出かせぎ者の旅費等については何らかの考慮をしないわけにいかぬだろう、こういう意味の御答弁があったと私は報告を受けているわけです。しかし、それはどなたか、何課か、私そこまでわかりませんが、そういう報告を受けておりますので、この際、再答弁の必要はありませんが、どうかひとつ出かせぎ者の所得については何らか特別の諸経費等に対する控除ができますように御検討を切にお願いしたい、このように要望してこの質疑を終えたいと思います。  最後に、これも簡単なことでありますが、各県あるいは市町村によりましては出かせぎ対策費をそれぞれ経費に計上して対策上遺憾なきを期しているわけです。もちろん何千万というようなそういう大金ではありませんが、しかし出かせぎの多い地方自治団体でありますと、やはりかなりな経費を計上してその対策を立てておるわけであります。たとえば秋田県の場合、やはり県としては七、八百万の予算を計上しております。また町村におきましては十万ないし二十万程度対策費を計上して、そして対策を進めておるわけであります。この際、これにならう各出かせぎ県におきましても、それぞれ経費を計上しておられると思うわけであります。私はこれら出かせぎ対策費につきましては、交付税等の中で経費上、財政上の配慮をしてもらいたいと思うものですけれども、交付税等の中でこういう経費の面について考慮する余地がないものかどうか、ぜひ積極的にそれらの点についても対策を進めていただきたい、こういうように思いますが、いかがでしょうか。
  277. 柴田護

    柴田(護)政府委員 出かせぎ対策の経費の中身はいろいろあろうかと思うのでございます。るるお話のありました点拝聴いたしておりまして、よく了解できますところがございますので、将来問題として検討さしていただきたい、かように思います。
  278. 栗林三郎

    栗林分科員 自治大臣に対する質問は以上で終わりますが、ただいま労働省の監督課長が御出席くださいましたので、最後に一つだけお尋ねしておきたいと思います。  新聞によりますと、二日に労働省、建設省が中心になりまして、建設業界の方々を招いて出かせぎ者の保護をする立場からいろいろな問題についての懇談の会が設けられると伺っているわけであります。また、私もそのように御通知をいただいておるわけであります。私はこのことは労働省なり建設省が、出かせぎ者を保護する立場からまず業者に呼びかけるという一つの前進した姿勢であると見ておるわけであります。その中で特にお尋ねしたいことは、お尋ねということよりも要望したいことが一つあります。どうか二日のこの席上——もちろん元請には法律上の責任はございません。法律上の責任はありませんが、しかし下請業者の不払いというものは道義上からいうならば元請が責任を負うべきものだと私は思います。したがいまして、下請から発生したこういう賃金不払い等については元請業者が誠意を持って道義上の責任を持ってこの不払いの問題を解決してもらいたい、解決すべきであるということをひとつ強く業者に要望してもらいたいと思うのでありますが、そういう決意を労働大臣なり建設大臣がお持ちになっておるかどうか、これをひとつお伺いしたいわけであります。願わくは、そういう強い態度で、法律上の責任をここで私は申し上げても無理でありますが、道義上の責任をぜひとも強く訴えてもらいたい、彼らに善処を求めてもらいたい、そういう御相談が課長のところにはないかどうか、ありましたら、監督課長からの御答弁でけっこうですから、もしも御相談がないとすれば、これは大臣から直接御答弁いただくほかはないと思いますので、きょうは無理かと思いますが、御相談があったとすれば、課長からひとつこの点に関して一言だけお答え願いたい、こういうように思います。
  279. 藤繩正勝

    藤繩説明員 お答えを申し上げます。  先週、先生はじめ諸先生から、出かせぎ労働者の問題につきまして非常に御熱心な御発言がございまして、労働省といたしましても、このまま放置することを許されない重要な問題と考えまして、大臣の発議によりまして建設省にもお願いし、いま御発言ありましたように、明後日建設業界のおもだった方々にお集まりをいただきまして、先般来お話がございました建設業の、特に出かせぎ労働者中心といたします労働災害の問題、賃金不払いの問題、寄宿舎の問題、それから労務形態の問題、就労経路の問題、そういった諸問題について政府考えを示し、またいろいろ業界の意見も聞くという会合を持とうという考えでございまして、先生ただいまの御提案の趣旨も含めまして十分懇談をし、その実をおさめたい、かように考えております。さっそく大臣にも御報告いたしておきたい、かように思います。
  280. 大橋武夫

    大橋主査 八木一男君。
  281. 八木一男

    八木(一)分科員 自治大臣並びに政府委員に、主として同和問題についての関係の問題を御質問申し上げたいと思います。  先日、予算委員会の総括質問において総理大臣に、一般質問において自治大臣はじめ各国務大臣に御質問をいたしました。政府側は、非常に積極的に部落の完全解放の問題について取り組まれるという決意を示されたわけであります。そこで、私、一般質問のときに全部の国務大臣に質問をいたしました。そして確認をいたしましたことは、この憲法の各条章に従った問題を解決する問題であるから、それで非常に重大な問題であるから、いままでの法令や慣例あるいは規則、そういうものを乗り越えてやらなければならないときには乗り越えてやる。そうなければ完全に問題が果たされない。そういうつもりで各国務大臣と各行政庁の長官に決意の御披瀝をいただいたわけであります。そこで、みな各国務大臣は前向きの御答弁をいただきました。私の質問に対してそのままそっくりお答えになった方ばかりではございませんので、問題ははっきりしなければいけませんので、三回にわたりましてその問題を言い、その問題に違う意見を持っている方は発言を求めたわけであります。その発言を国務大臣はどなたもされませんでした。委員長立ち会いのもとに、私の質問の趣旨については各国務大臣が全部賛成をし、約束されたものと認めるということで終わったわけであります。その間自治大臣も別に異議の申し立てがございませんでしたから、そのような意味でこの問題に対処していかれることが確認をされているわけであります。自治大臣、十分御了承だと思います。それを実際にやってまいりますのに、国務大臣たる自治大臣自体がそうお思いになりましても、各次官、局長あるいは部長、課長と、この問題は全部各行政庁の人が把握しておりませんと、問題がそこでブレーキがかかり、非常な混乱が起こり、問題の完全解決はできないということになる。でございますから、自治大臣としては、自治省の全員にその考え方が浸透するように特にやっていただきたいと思うわけであります。その点についての御答弁をいただきたい。
  282. 永山忠則

    ○永山国務大臣 本問題は、お話しのような御趣旨をわれわれは体しまして、ぜひひとつ実現するように努力いたしたいと考えます。特に私は、昭和二十七年、自民党の社会部長でありましたときに、本問題を別ワクで取り上げて旗じるしを出していくべきか、一般行政の中にオブラートでいくべきかということが論議されましたときに、私は、この場合やはり旗じるしを出して、積極的に教育その他施設、あらゆる面で取り上げて、こういうようなことのすみやかに解消する方向にいくべきであるということから、隣保館というものをとりあえず取り上げて予算化するということに努力をいたしました関係等もございまして、いずれの大臣にも劣らない熱意を持って進みたいと考えておる次第でございます。
  283. 八木一男

    八木(一)分科員 前向きの御決意を伺いまして非常に力強く存じます。そこで一番関係の深い具体的な問題に移りたいと思います。  この部落の完全解放、同和問題の完全解決のためには、地方行政の占める比重は非常に大きいわけであります。国自体が非常にしっかりやらなければなりませんが、地方自治体がやはり熱心に取り組まなければ問題の完全解決はできません。そこで政府のほうで同和対策基本法の草案をいま練っておられます。同対審の答申では、同和特別措置法という名前をうたっておりますが、二つにするか一つにするか、どちらにしろ、その法律の中では、これは全国民的な問題であって、国の責任を明確にする、地方自治体の義務を明確化するということが、その答申においても、また、この前からの本会議、予算委員会議論からも、あるいは各界の議論からも、当然中の当然のこととされておるわけであります。その意味で、地方自治体がそれをやっていくことを義務化をされることになろうと思います。ところがそれについての財源の問題がございまして、いまこの問題について——もちろん同和問題は、一般行政の問題であると同時に特別行政の問題である。一般行政の問題で、すべての道路の問題とか、農業の問題とか、そういう問題に全部関係がございまするし、また社会保障、社会福祉の問題も全部関係がある。ところがそれだけではまだ十分ではないので、特別な措置をとらなければならない。これは国の行政においても地方の行政においても同じであります。そこで、その問題について、交付税の特別交付金という制度があります中に、一般交付税交付金と特別交付税交付金という制度が現行ございます。この前、一般質問のときに申し上げて、同和対策の特別交付税という制度がはっきりあるかどうかということを申し上げましたときに、自治大臣といろいろ応答がありまして、この次までにはっきりしておいていただきたいということを要請したわけでございますが、とにかく法律上は交付税交付金というものがあって、その中に普通交付税交付金、それから特別交付税交付金という制度があるわけであります。行政上その特別交付税交付金の中で、たとえば災害の問題もございまするが、ここで部落問題、同和問題解決のためのものが盛られておるわけであります。そういうことで、法律上は残念ながら特別交付税交付金ということで、制度になっておりませんで、行政上でそういうふうにされておる制度であります。私どもは、これは法制上でしっかり問題をきめていかなければならないというふうに考えるわけでございますが、その前にいまの制度でも特別交付税交付金の中の同和問題の中のワクが非常に少ないと思うわけであります。そこで、財政局長からでもけっこうでございますが、この昭和四十一年度の予算のうち、この特別交付税交付金をどのくらい算定されて、その中に同和問題の分がどのくらいあるか。大体私は知っておりますけれども、はっきりしておきたいと思います。  それからもう一つ、その同和問題の中の特別交付税交付金の中で、府県分と市町村分がどのくらい、それからその算定の基礎はどのようにして算定されたか、簡単でけっこうでございますけれども、ちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  284. 柴田護

    柴田(護)政府委員 昭和四十一年度の予算につきましては、国の事業費四十九億円、補助事業費二十九億円、こういうことになっておりまして、したがって、補助事業関係だけで申し上げるならば、二十億の地方負担がある、こういうことになるわけでございます。それで、これを何で始末するかということでございますけれども、たとえば事業費で建物を建てましたり住宅をつくりましたりあるいは道をつくりましたりということをやってまいりますと、その財源措置は地方債ということになってまいります。それからそのほかに地方で単独でするもろもろの事業もございますし、こういったものを興しました地方債の元利償還金というものもあるわけでございますから、特別交付税の中でやはりこれを見ていくことになるわけでございますけれども、御承知のように特別交付税というのは交付税総額の中の六%でございまして、その中で何が幾らというものはございません。したがってその大きなどんぶりの中で災害が起こりましたら災害を中心に見てまいりますし、災害が少なければほかのほうに回っていく部分が多くなる。ちょっと何と申しますかコンニャクみたいなところがあるわけでございまして、いまここで四十一年度の特別交付税をどうするかという問題はまだきめておりません。それは四十一年度の災害発生状況、その他年度途中に起こります状況等を勘案して考えていかなければならない問題でございます。同和事業につきましては、そういうもろもろの因子をやはり見ていかなければならないとは考えておるわけでございます。在来こういうものの分担につきましては、一々個々の団体について克明に洗っていくわけにはまいりません。つまり補助事業の裏みたいなものもございますし、単独で始末をしているものもあるわけでございますので、大ざっぱに一世帯幾らあるいは同和関係の人口あたり幾らといったようなかっこうで単価を計算いたしまして補助を考えるような次第でございます。したがって、言うなれば特別交付税総ワクの中で一定のワクを保有をして、そしてそれをいま申し上げました世帯割り、人口割りみたいなかっこうで補助を行なう、こういう形なのでございます。それなら普通交付税の中へ入れてしまえという御意見も出るかと思いますけれども、御承知のようにこの問題は地区別に非常に片寄っておるものでございますから、普通交付税に入れてまいりますことはかえって適切を欠くであろうということで、特別交付税のほうに移しておるわけでございます。しかし、特別交付税の中では在来、総金額からいいますならば、だんだん金額はふえてまいっておるわけでございます。私どもといたしましては、私どもなりに力のある限り努力をしてきたつもりでございますが、基本的には何か特別の法律みたいなものをつくってはっきりさすことは、先ほど来御発言のように必要じゃないかというふうに考える次第でございます。
  285. 八木一男

    八木(一)分科員 もう一回、その数字をはっきりしていただきたいのです。もう一回、初めから申します。交付税全体の額、その中で特別交付税の額、その中で同和対策に積算した額、その中で府県当たり、市町村当たり、それをちょっと数字だけでけっこうですからはっきりひとつ……。
  286. 柴田護

    柴田(護)政府委員 昭和三十九年度の特別交付税の額は四百億足らず、三百九十七、八億だったと記憶いたしておりますが、その中で同和対策に見てまいりました額は約八億でございます。そのうちで府県は二億九千万、市町村分が五億五千万程度でございます。四十年度は、交付税の額は四百三十七億だったと思いますが、その中で同和対策関係として計算いたしました額は約九億強でありまして、府県が三億であります。市町村が五億九千万、こんなようなかっこうになっております。五億九千九百万でありますから、約六億でございます。
  287. 八木一男

    八木(一)分科員 もう一回、これは何年度でもけっこうですけれども、数字がわかったら、一人当たり、世帯当たり幾らくらいになりますか、さっきいろいろ詳しく、やや複雑に御説明になりましたので……。
  288. 柴田護

    柴田(護)政府委員 世帯割りにつきましては、この世帯の集まっておりますものにつきまして大体二百世帯ぐらいを中心考えて、二百世帯以下のものと、二百から四百くらいのもの、四百以上のもの、三つくらいに分けておるわけでございますが、大体二百から四百くらいのところの地区に対しては、一地区当たりが四十二万円、それから四百世帯をこえます分については八十五万円、二百世帯以下のものにつきましては十七万円。人口につきましては、一人当たり五十一円程度のものを積算の基礎にいたしておるわけでございます。
  289. 八木一男

    八木(一)分科員 実はこの金額は、財政局長、御説明になっておるときに非常に少ないと思われたと思います。四百世帯で四十二万円というと、一世帯についてこれは一千円ぐらいにしかなりませんね。これは一年間の分でしょう。そういうものではほんとうにスズメの涙というふうに財政局長自体お考えになるでしょう。自治大臣ももちろんそうお考えになると思う。  それからもう一つ、この基礎はおそらく三十三年の調査に基づいて計算をしておいでになると思う。三十三年というのは、この同和対策が三十三年の十一月に閣議で取り上げられたわけでございまして、その前はそういう対策はなかったわけでございます。地方では取り上げられていたかもわかりませんけれども、まだ非常に関心の薄かったころであります。したがって、その算定の基礎にもいま変わってこなければならないものがあると思う。総人口でとらえているか、同和対策を必要とする大事なところだけを洗ってそういう計算をしているか、そこのところを時間があればよく伺いたいのですが、そういうことをやはり洗って、それから後にこの問題の重要性が国でも府県市町村でも認識をされて、それで対象地区として、対象人口として事業がされておるところが多いわけでございますから、そういう三十三年よりも現在の時点に立って非常に拡大をする見地に立ってそういうことを計算し直される必要があろう、こう思います。意見として申し上げておきます。  本筋の大事な点に戻りまして、実はここにある表がございます。これは同和対策関係の団体が自治省に要請をしてつくった書類の複製であります。ですから、この数字のもとは自治省から出ておるわけであります。これを見ますと、府県のほうの事業費が、四十年度で二十億、三十九年度で十七億、その中で府県のほうが一般財源で負担しているのが十二億であります。十七億のうち十二億。ところがそのときに、三十九年度で交付税のほうで府県分として出ているのが二億九千万円とこの数字ではなっております。そうしますと、結局十二億というものが府県負担になっているわけでございまして、これでは地方財政が非常に貧困だといわれているときに、非常に困った問題だと思います。残念ながら、これをお願いしたのですが、市町村のほうの統計が出てきておらないのです。おらないから、市町村はもっと大きな問題になろうと思う。府県では一つの大きな単位でやりますから、問題が平均化されますけれども、市町村になると、部落が非常に多い市町村と多くない市町村があります。多い市町村のときには、その厚みがかかって経費がよけいにかかる。そこで府県にあらわれた傾向が市町村では数倍になってあらわれているというふうに推定されるわけです。そういうようなところで、このように一般財政が非常に枯渇しているときに、このような交付税の対策では、結局一般財政の枯渇ということでいま急速に発動しなければならない部落解放対策がとまってしまうおそれがあると思う。そういうことについて、自治大臣のお考えをひとつ伺っておきたいと思います。
  290. 柴田護

    柴田(護)政府委員 お話のように、現在特別交付税で見ております額が決して多いとは私も思いません。しかし、先ほど来申し上げておりますように、総ワクに限りがありまして、そのどんぶり勘定の中でどっちにウエートを置くかということになってきて、結局災害関係が優先する、こういう形になりますものですから、思うように伸びないというのが率直な実情でございます。したがって、そういう問題をどう扱うかという問題につきましては、基本的には先ほど来御指摘がありましたように、この問題を特別に取り上げて立法措置か何かしてちゃんとするという方法一つは必要でございましょう。もう一つは、地方債の活用をある程度はかっていく。小さな市町村になりますれば、やはり何か一つつくるにいたしましても不時の出費でありましょうし、大きな支出になるわけでございますから、そういうところにつきましては、やはり地方債の活用をはかっていくということにならざるを得ないのじゃないかと思うわけでございまして、在来から、地方債の運用につきましては、これはワクが交付税等に比べますれば比較的弾力がございますので、わりあいに活用がはかれる、こういう状態でございますので、将来とも、現在の制度のもとにおきましては国庫補助と地方債の活用をはかって、この辺の隘路を打開していく以外にないであろう、こう思っております。しかし基本的には、私どももやはり別途の制度的なものを考えなければいかぬのじゃないかというような考えを持っておる次第でございます。
  291. 八木一男

    八木(一)分科員 ひとつ大臣に今度は御答弁願いたいと思います、大きな政治的な問題ですから。答弁のちょっとぐらいの食い違いでどうのこうのというような意地の悪いことは一つもいたしませんから、ひとつ前向きに御答弁を大臣から願いたいと思います。  いま大臣や財政局長質疑応答でわかりますように、財源がそういう非常に困った状態にあるわけです。第一に、一般交付税交付金の中でこれは算定すべき性質のものでもあるのですが、さっき財政局長の言われたように、そういう現象のある府県とない府県、ある市町村とない市町村があるから、特別交付税のほうで算定をされている。これはそれで一応いいと思う。だけれども、この特別交付税に算定をされても、災害が起こったら埋めるというようなほかの性質とはこれは違うものだ。特別交付税の災害に対するものがありますけれども、さっき言うたような事情で、特別交付税として勘定はされておりますけれども、性質の違った問題であります。府県によってある、市町村によってある、また逆にないところがあるから、普通の基準財政需要額で計算できないので特別交付税でやった。交付税法にそういうことがあるのですが、そういうものだとか、災害だとか、いろいろなものがある。ところが災害なんかとは違った性質のものがあります。だからその問題は違った考え方でやらないといけないわけです。それは地方的に偏在はしておるけれども、強力に進めなければならない行政である。災害がなければ一文も出さないでいいというものとは性質が違うということをひとつお互いに認識を新たにしてかからなければならない。それから災害その他のいろいろなことで、交付税の中の百分の六をこえてはならないという規定が地方交付税法にあるわけです。この交付税法をつくったときには、部落問題という特別な重要な問題があるということを考慮しないでつくっておるのです。ところがそういう問題が起こってからここへワクをはめておる。そこに無理があるわけです。ですから、たとえば部落対策でたくさんやらなければならないということになれば、百分の六という数字を変えなければならないときも起こります。そうじゃないと百分の六という数字に固着して、地方で部落対策をやるための交付金が少ないから、地方財政赤字になるので、それがブレーキになってできない。この前も申しましたが、これは憲法のすべての条章に関係のある問題で、あらゆる法令を乗り越えて、これを解決するためにやるという強い決意を内閣総理大臣及び各国務大臣が表明されたわけです。そうなればこれがじゃまになる場合には、いま直ちにじゃまになるとは言いませんが、じゃまになる場合、この交付税の百分の六、これも変えていただかなければならない。そういう方法でできなければ、特別な法律をつくる、同和対策の特別交付税というものを特別につくって、特別にやるということも考えていただかなければならないということになろうかと思うわけであります。いまの法令、いままでのしきたりの範囲内でやったら、地方はこんなに自分が出血してやっておるということをカバーできません。地方の財政が全般的に苦しいときに出血が続けられないから、国が見なければならないことをしないということに通ずるわけであります。そういうことになりますので、このような問題について、同和対策の特別交付税交付金を別ワクにするとか、別な法律をつくるとか、あるいはまた、全体の額の中で八億なんです、三百九十億の。小さなワクです。行政的にできるなら三百九十億の中で、たとえば二百億でもとるということを行政的にしていただいてもいい。そして残りが、百九十億になった、ほかのほうが少なくなるならば、百分の六という制限が悪いのだ、これをふやすということをそっちから考えていただいてもいいし、最初から同和対策特別交付税という法律をつくるなり、そういう上から考えていただいてもいいけれども、とにかくどの方法にしても、このようないままでのしきたりによってしなければならないことが、地方自治体自体ができないという状態にあった、そうであってはならないということであろうと思う。そういうことを解決するために、自治大臣が勇往邁進していただかなければならないと思いますが、総括的に、どの方法でどうするという、責任のある人に即刻返事をしていただきたいとは言いませんが、いかなる方法によってでも急速にこの地方自治体がこの責任義務を果たすために、財源的に十分やれるという体制をとられるという決意だけはきょうはっきりさしていただきたいと思う。
  292. 永山忠則

    ○永山国務大臣 政府答申の線に沿いまして特別措置法等も考え方向に進んでおると思うのです。したがいまして、この事業量あるいはそれに対する起債、補助率の引き上げ、並びに特別交付税の交付の問題、こういうようなものを総合的に検討いたしまして、御意思の線に沿うように積極的な努力をいたしたいと考える次第でございます。
  293. 八木一男

    八木(一)分科員 私どもはさらに検討しまして、同和対策特別交付税という制度の新設が必要だと思いますので、またこの委員会の席じゃないところで自治大臣にも、総理府長官にも、あるいは総理大臣にも申し上げたいと思いますが、どうかこういう私どもの積極的な提案についても至急に御検討になっていただいて、地方行政の専門家である方々のもっといい方法があればそういう方法でもけっこうでありますから、ひとつ至急にいまの大臣の御決意に基づいて検討を進めていただきたいと思います。  それから現行法の中の運用の問題でありますが、この両方の問題を——交付税かどのくらい出ておる、それから各府県ではどのくらいの事業をやっておるかということを、両方とも自治省の資料でいただきまして、——大半の府県では、自分の一般財政の出血をしても、問題の重要性をやや理解してそれ以上の事業をやっております。自己負担をしても大部分はやっておりますが、残念ながら二府県においては、こちらの算定基礎よりも少ない事業しかやっていないところがある。それから最もけしからぬ府県は一つもやっていない府県がある。三つだけ非常に成績不良の府県がある。そういうところに対して、これは指導をしていただきたい。たとえば交付税については、その交付税でいろんな地方自治の精神を曲げてはいけない、ひもつきにしてはいけないという一般規定があります。それはわかります。一般規定はございますけれども、その精神は、ほんとうにその精神に基づいて考えていかなければならないと思うわけです。たとえば同和対策で、こちらのほうで算定されたものを同和対策の中の、たとえば職業訓練に使おうと、あるいは環境改善に使おうと、あるいは同和教育に使おうと、そういうことはこういう性質上地方自治体の自主性にまかしたらいいと思う。ところが同和対策で組まれたものを、二、三の府県だけです、ほかの府県はもっとそれ以上に熱心にやっていますが、それを何にもしないでほったらかす、まことに、法律的には逃げられるかもしれないけれども、政治的、道義的、それから憲法の精神に従った問題としては不当である。そういうような府県は、明らかに申し上げますと、栃木県が全然やっておりません。鹿児島県と熊本県が、おたくの算定よりも少ない事業しかやっていない。ほかの府県はそれよりも熱心だ。そういう府県に対しては、そういうけしからぬやり方をさせないように、自治省としては指導をしていただきたい。法律上いろいろ問題があります。しかしよい行政をやるためには、そういう指導をする責任は自治省に当然あろうと思います。それについて、これは自治大臣からひとつ御答弁をいただきたい。
  294. 永山忠則

    ○永山国務大臣 やはり特別交付税にこれが算定基準を置きましたことは、その必要性を感ずるがゆえにやっておるわけでございますから、その精神に沿うてやりますような行政指導をいたしたいと考えております。
  295. 八木一男

    八木(一)分科員 それからこの算定基礎については、各府県にいっております。府県にいっておりますが、府県がこれを公表しない風習を持っているところが多いわけであります。これは無理に解釈すれば、公表をすればそのとおりやれということで、地方自治の精神を何とか縛るというようなかってな理屈をつけて公表をしないというような自治体があるわけであります。自分がないしょ金でこっちに使う金をこっちに使おうと思っていたから、そういうようなことを隠しておいたほうが都合がいいというようなかってな考え方をされると思うのです。その算定基礎を明らかにして、それからその地方自治体、府県なり市町村で、それはそれで出ているけれども、これについては地方自治体が自主性がある。ことしはこうやろう、ことしはこうやろうというのは、地方自治体の自主性でけっこうですけれども、少なくともその算定が、こういう基礎に出ているということは、地方自治体の中の財政関係者のふところにしまっておくのじゃなしに、そういうようないろんな財源、一般財源も含めて、それを地方自治体としてどう使おうという、地方議員の予算の算定のために、また住民が住民自身の立場から、府県なり市町村に対して、予算の要望をする、予算が緩急を逆にして使われないように自治体の主権者である住民が、自治体についてのいろんな要望をするというときにも、問題が明らかになった上で、——しかしそうあってもこうでいいということであれば、地方自治の精神にかなっていると思うのですが、それを一部の財政担当者だけが知っていて、ふところに入れておいて、知らさないで、知らないのをいいことにして、何もそれに関係の費用がきてないようなふりをして、一般財政に流用するというようなことがあってはならない。そういう意味で、そういう基礎算定数字については、府県の要請があったときには、はっきり要請がなくては、一般に公表する必要はありませんけれども、要請があったときには、はっきりとそれを議員なり住民に示す。それからまた府県の地方課が市町村についてこれを分けるときに、これを明らかにしなければなりません。市町村にはどれだけいったかということを明らかにする。市町村はどれだけきたかということをもちろんそれを審議する市町村の議員なりあるいはそれを要望する住民なりに明らかにするということが必要だろうと思います。ところがそれがされていないところが多いわけです。議員がほんとうの意味の地方財政の審議をするために、住民がほんとうの意味の地方自治を自分の権利として見守り、いい意味の要請をするということのために、要請があった場合にはそれを明らかにする、そういうふうになるように自治省の指令とか指導とかそういうことをぜひお願いをいたしたいと思うわけです。それについての自治大臣のお考えを承りたいと思います。
  296. 永山忠則

    ○永山国務大臣 自治省がよき指導をするということを申し上げましたと同じような意味におきまして、やはりこの精神に従いまして府県知事もまた市町村の指導よろしきを得るようにさせねばならぬと考えておる次第でございます。
  297. 八木一男

    八木(一)分科員 ではほかの問題にちょっと触れます。この前一般質問のときに大蔵大臣に私質問をいたしました。そのときに自治大臣と大蔵大臣に質問を申し上げると言ったが、自治大臣は政府委員と研究をしておられましたので、弘法大師じゃありませんのでちょっと聞きそびれていらっしゃいましたから、時間の関係上すぐその問題を厚生大臣にお伺いをしたわけであります。その問題をちょっと明らかにしておきたいと思いますが、先ほどのあらゆる法令や慣例を乗りこえて、部落完全解放のためにやっていく必要がある、それを各大臣がはっきり賛成をされたという立場に立って大蔵大臣に御質問申し上げたわけです。例としまして、同和対策審議会の答申の中の重要項目の第二項目に、地方自治体がこの問題を推進する責任がある、それを義務化しなければならないということと、その地方の財政に対して国が大きく対処をしなければならない。そこで例示としてあげられましたことは補助金の問題であります。補助金ですからほかの省が直接関係があるかもしれませんけれども、間接に非常に地方財政に関係があります。補助金についてはその補助対象を拡大をしなければならない、補助率を上げなければならない、それからもう一つは実質単価をとらなければならない、そういうことが書いてあるわけであります。それについて、この答申に従って大蔵大臣は対処をしていただきたいということを福田大蔵大臣に御質問をしたわけであります。結局何回もやりとりがありましたけれども、福田大蔵大臣はそのとおりにやってまいります、ただし具体的な問題については、各省からその具体的な要求があったときにいまのそのとおりやる精神に従って問題を処理いたしますという御答弁であったわけであります。したがって、その関係の省に対するものとして、大臣がそういう状態でしたので厚生大臣にお伺いをいたしました。そこで厚生大臣の御答弁もやや不十分な点がありましたから重ねて追及をしまして、大蔵大臣はこういうことを言っておられる、したがって厚生省関係のいろいろな同和対策の問題について、たとえば土地の問題について、土地にいろいろな建物を建てる、たとえば共同浴場を建てるという場合に、建物の費用だけ出たのでは問題は推進しない、土地の購入費が必要だ、土地が斜面であるときには整地費が必要だ、前に倉庫か何かあるときは移転費が必要だ、そういうようないままでやっている補助対象をふやすことが必要だし、共同浴場をやっているようならそのほかにまた共同倉庫が必要だということになれば、そういうような項目についても補助対象をふやさなければならないし、一つのことをやるについて、建物だけじゃなくて土地の整地費なり移転費も、そういうようなことを全部補助対象の中に入れて、全般的にこの問題の関係を広げる、これを要求をしなければならぬということです。  その次に、補助率がたとえば厚生省関係で三分の二と二分の一とあります。農林省関係で四割とかなんとかごちゃごちゃにいろいろ率が違っておりますが、少なくともこういう問題については、たとえば市町村には集中していますから、市町村は負担にたえられない。まして財政負担はたえられない。ましてや受益者負担というものはたえられない。ですから問題を推進するときに、そういうような率が少ないことはいけない。補助率を高めなければいけない。それから一番の焦点は、実質単価を、三分の二の補助だなんて言っておっても、実際は二分の一以下になっておる。すべての問題について実質単価が必要だけれども、少なくともこの問題に関する限りは、実質単価をとらなければならないというような問題を質問をして、総括的に大蔵大臣はそういうことについて賛成だと言っているので、各省はそれについては、いままでのしきたりにとらわれずに、その精神に従って、補助対象についても、補助率についても、実質単価についても要求をしてもらわなければならないということを、厚生省を一つの例として言ったわけであります。これは実際にはそういうことができれば、地方自治体は非常に財政的に助かるわけです。厚生省の補助事業であっても、文部省の補助事業であっても、何であっても、補助率が少なかったり、あるいは実質単価じゃなかったりすれば、地方自治体自体の財政に非常に大きな影響があります。ですから地方自治体に一番大きな影響を持っておられる自治大臣としては、そういうふうに大蔵大臣は答え、各省はそういうふうになっておられるので、その地方財政の立場から、そういうことを推進するという非常に大きな立場におありになると思うわけであります。この問題が、たとえば同和対策の基本法あるいは特別措置法という問題の中ではっきりと明記されなければならない問題だろうと思います。そのことを、おそらく法律をつくる事務局は総理府になると思いますが、実際関係は、地方自治体の行財政について非常な責任を持っておられる自治大臣に、非常に熱意があるとないとによってこの問題が明確化される、あるいは十分に書かれるかという問題が非常に影響が多い。その点で、自治大臣がこの問題を完全に解決をする、そして財政難に苦しむ地方自治団体が、それに苦しまないで邁進できるという態勢をつくるために、渾身の勇をふるっていただいて、そのような基本法あるいは特別措置法によって、そういうことが明確に書かれるというための御努力をぜひお願いをいたしたいと思うわけです。それについての自治大臣の御答弁を伺いたい。
  298. 永山忠則

    ○永山国務大臣 いま自治体で強く大蔵省と折衝を続けてやっておりますことは、御説のような超過負担の解消でございます。なおその範囲を、土地その他の必要な範囲への拡大をいたすべく、実質単価に見合うもので、また実質の補助率を確立するという方向で強く要請をいたしております。その線に沿いまして、本年度は約三百億の超過負担の解消に前進をいたしましたけれども、しかしそれはまだまだはるかに及ばないのでございます。たとえて言いますと、ことに同和地区に必要な第二種の公営住宅の建設費等に対しましても、従来七万一千五百円でございましたものを七万七千二百円で、八%のアップをいたしております。土地につきましては一万一千四百円の坪当たりを一万三千百円、すなわち一四・九%上げてはおりますけれども、なお実情に即しておりません。その他各種の問題、御説のようでありますので、これが超過負担の解消に向かって強く要請をいたしつつありますが、さらに今後も努力をいたします。さらにまた起債の充当率に対しましても、大体百万円以下の事業に対しては起債はやらないということになっておりますが、同和地区はこれを八十万円に下げまして、ほぼ一〇〇%に近い起債を認めておりますが、これらを総合いたしまして、あらゆる点で財政能力のきわめて弱い、水準の低いところには重点的な配分及びその率をよくするということに格段の努力をいたしたい考えであります。
  299. 八木一男

    八木(一)分科員 時間が来ましたので、まだまだ御質問したいことがたくさんございますけれども、きょうはこれで打ち切りたいと思います。また地方行政委員会なりいろいろな関係委員会に大臣としておいでいただくなり、また参議院において同僚諸君が質問を申し上げると思いますが、いま申し上げました精神でひとつ邁進をしていただきたいと思います。きょうまだ幾分固まっていない、いまの交付税の制度の問題につきましては、後ほどまた御質問をするときには明快な結論が出るように、至急に前向きの御検討を進めていただきたいと思います。これで質問を終わります。
  300. 大橋武夫

    大橋主査 次会は明三月一日午前十時より開会し、厚生省所管に対する質疑を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時七分散会