運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-02-25 第51回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十五日(金曜日)    午前十時十三分開議  出席分科員    主査 大橋 武夫君       川崎 秀二君    倉成  正君       竹内 黎一君    栗林 三郎君       小林  進君    華山 親義君       細谷 治嘉君    八木  昇君       山花 秀雄君    兼務 田口 誠治君 兼務 加藤  進君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小平 久雄君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         労働事務官         (大臣官房長) 辻  英雄君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     上原誠之輔君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (婦人少年局         長)      高橋 展子君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業訓練局         長)      和田 勝美君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   平井 廸郎君         農林事務官         (農政局参事         官)      横尾 正之君         自治事務官         (財政局財政課         長)     佐々木喜久治君     ————————————— 二月二十五日  分科員小松幹君及び今澄勇委員辞任につき、  その補欠として細谷治嘉君及び受田新吉君が委  員長指名分科員選任された。 同日  分科員細谷治嘉委員辞任につき、その補欠と  して小林進君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員小林進委員辞任につき、その補欠とし  て華山親義君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員山花秀雄委員辞任につき、その補欠と  して栗林三郎君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員栗林三郎君、華山親義君及び受田新吉君  委員辞任につき、その補欠として山花秀雄君、  小松幹君及び今澄勇君が委員長指名分科員  に選任された。 同日  第一分科員田口誠治君及び第二分科員加藤進君  が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算労働省所管  昭和四十一年度特別会計予算労働省所管      ————◇—————
  2. 大橋武夫

    大橋主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十一年度一般会計予算及び昭和四十一年度特別会計予算中、労働省所管を議題といたします。  前会に引き続き、質疑を行ないます。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は一酸化炭素中毒の問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、この問題につきましては、去る本会議におきまして多賀谷議員質問した際に、労働大臣の御答弁は、一酸化炭素についての立法はする意思がない、こういうお答えがありました。予算委員会におきまして八木委員がこの問題につきまして質問いたしました際に、内閣総理大臣はこういうふうに答弁しておるのです。「特殊の災害だけについて単独立法をするということは、よくよくの場合だと実はかように考えております。他にもいろいろ影響するところがありますので、それでいままでは、この一酸化炭素中毒に対して単独立法をしないほうがいいんじゃないか、現行法律運用で大体いまの要望にこたえられるのじゃないかと、かような結論でただいまこれに対処しておるのでありますが、しかし、ただいまも八木君から単独立法を強く要望されております。私は、いま言われる中間的なものというのはよくわかりませんので、なおそういう点について検討さしてみたいと、かように思います。」こういうお答えがありました。大臣は否定的であったのでありますけれども総理大臣かなり前向きに検討するという姿勢を示されたのであります。こう私は思うのであります。この問題について、この席で大臣からひとつ明確な考え方をお聞きしたいのであります。
  4. 小平久雄

    小平国務大臣 多賀谷議員の御質問に対して私が御答弁申し上げたところと、総理八木議員の御質問お答えしたところと、方針は別段変わっていないと私は思っておるのですが、特別立法につきましては、私知る限り、特に三池の場合等に処するための特別立法と、こういうことだろうと思いますが、御承知のとおり、他にも類似の問題があるわけでございますので、少なくとも当面の処置といたしましては、現在の労災補償を十分活用いたすことによって対処するのが妥当じゃなかろうか。特別立法ということにつきましては、もちろんこれは検討は当然しなければなりません。なりませんが、いま直ちに特別立法をするということはどうであろうか、そういう気持ちなんであります。本件につきましては、各方面からいろいろ御要望もございますので、労働省といたしましては、もう現行法の許す限りの最大限処置をとにかくとって、不幸な方々患者なりあるいは御家族なりの方々に対してできるだけのあたたかい手を差し伸べる、こういうことに万全を期したい、かように考えておるわけでございます。
  5. 細谷治嘉

    細谷分科員 いま大臣のおことばの中に、三池の問題として取り上げておるかのごとくおことばがあったのでありますけれども、なるほど、一酸化炭素中毒の問題が非常に大きくクローズアップされたのは昭和三十八年の十一月九日の三井三池の大爆発によるわけでありますけれども全国的には、数の多い少ないはございますけれども炭鉱爆発には多かれ少なかれこの問題は必ず起こっておる問題であります。したがって、私が問題としておりますのは、ただ単に三池爆発による一酸化炭素中毒患者でなくて、全体的にはやはり深刻な一酸化炭素中毒の問題に対してどう対処するか、こういう態度で御質問申し上げておるということであります。そこで、一体いま労働省では、この一酸化炭素中毒中毒患者というのはどういう現状になっているか、どういうふうに把握しておるか、お尋ねしておきます。
  6. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 一酸化炭素中毒患者三井三池事故による大量発生を見ましたあのようなケースはほとんどございませんで、年間を通じまして、いわゆる業務上の一酸化炭素中毒として扱われる件数は、年によって非常にまちまちでございますが、百五、六十人から二百人といったようなことでございまして、三十八年は三井三池のあの事故で一ぺんにふえまして、千名を突破いたしました。あのような事故は希有のことでございます。  そこで、一酸化炭素中毒特別立法をするという立法内容に関連して申し上げますと、まず第一に、その予防措置をさらに徹底するための特別措置をなすべしということでございますが、御承知のように、三井三池のような炭鉱爆発炭鉱関係につきましては、鉱山保安法との関係がございまして、そちらとの関係をどうするかという問題がございます。それから一般事業場におきましては、一酸化炭素中毒になり得る可能性は、これは非常に広範でございます。ガス工事もございましょう。それからこの前の名古屋造船所のタンカーにおける火災におきまして、直接の死因は一酸化炭素中毒、いわゆる窒息による死亡でございます。そのようなことで、一酸化炭素中毒予防措置を講ずるということになりますと、およそ一酸化炭素を発生し得るようなほとんどの職場都市ガスを使用する職場可能性ございます。そこら辺をどのように扱うかということからして、予防措置を講ずるとしても、法的な対象をどのように扱うか、非常に検討を要することであろうと思います。  それから具体的な補償、援護の措置内容につきましても、私ども従来からいろいろ検討しておるのでありますが、内容的には、現在の労災補償保険法の給付の内容を高めるべしという内容のものがかなりございます。この問題は、単に一酸化炭素中毒のみならず、二硫化炭素、それから脳神経をおかされるものとしてはベンゼン中毒その他多々ございます。同じような症状を呈するものに対しては同じような補償を行なうという観点から、それをどう扱ったらよいかという問題がございます。また、一酸化炭素中毒患者長期療養を行なう場合に、三年経過した後における雇用関係をどうするかといったような……。(細谷分科員「その辺のことはだんだんに聞くのです」と呼ぶ)それではここで一応中断いたしますが、いろいろな関係がございますので、技術的な検討を私どもいたしておる次第でございます。
  7. 細谷治嘉

    細谷分科員 私がいまお尋ねいたしたい点は、一酸化炭素中毒にはいろいろございます。しかし、昨年起こりました三つの炭鉱爆発、ここでも一酸化炭素中毒が起こっておるのですね。数はなるほど少ない。三十八年の三池、昨年の夕張、伊王島、山野鉱、こういう炭鉱爆発一酸化炭素中毒が起こっておって、現在も入院しておる人、あるいはこのために通院をしておる人があるのですね。昨年の七月中旬、労働省がお調べになった数字と思うのでありますが、全国入院患者三百九名、炭鉱爆発だけですよ。通院患者四百四十三名、合計七百五十二名おるということになっておるのです。そのうちに、相当多い三池が六百九十名というものを占めておるわけでありますけれども全国では千五百名をこえておる、こういうふうにいわれておるのです。この事実はお認めになりますか、この数字は了承できますか。
  8. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先ほど私が申し上げましたのは年間発生件数でございます。したがいまして、一酸化炭素中毒患者が累積いたしてまいりますれば、かなり件数に達してまいります。その主要な部分を占めるのは三井三池関係である、御指摘のとおりと考えております。
  9. 細谷治嘉

    細谷分科員 大体全国で千五百名程度入院通院患者がおるということをお認めになった。  それではお尋ねいたしますが、一体主要中毒患者というのは、累積ということばがいま出ましたけれども、一年前あるいは二年前に爆発を受けて一酸化炭素中毒になったという人は、現在どういう状態になっているのか。よくなっているのか、悪くなっているのか、どうお思いなんですか。
  10. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 一酸化炭素中毒患者療養につきましては、先生承知のように、医学的にもまだ解明せられざる問題がございますし、どのような治療が最も効果的であるかという点については、政府といたしましても研究費を出しまして、各大学にいま研究をしていただいているような状態でございます。また、よくなったか悪くなったかの判断につきましても、どのような状態をとらえてよくなったとし、症状が固定したと見るべきかどうかの点につきましても、医学上学説が分かれておりまして、このような点にかんがみまして、労働省としては、斯界の専門家にお集まり願いまして、先般その認定基準の骨子をおまとめ願うというようなことで、鋭意なおったかなおらぬか、よくなったかどうかといったような判断基準を策定しておるところでございまして、かたがた医療面につきましては、各大学に御研究願いまして、さらにより効果的な治療をいたすべく努力をいたしておるような次第でございます。
  11. 細谷治嘉

    細谷分科員 非常におことばはりっぱで、最善を尽くしておるようなお話でありますが、私は医者ではありませんから、医学的なことは申し上げませんけれども、三十八年の十一月九日の爆発からもうすでに二年数カ月たつのですよ。その患者爆発当時とほとんど変わらない。今日なおのどゴムをはさんで、全然意識不明な人が数人おるのですよ。両親は付きっきりですよ。いっときも離れることができないというのですよ。そういう人がおります。これは一症度、二症度といわれておりますけれども、こういうところで私は言いにくいのでありますが、私はせんだって、母親一人、そしてむすこ一人、これは五症度の人でありますが、そのうちを訪ねました。これは五症度というのですから、一番軽いのであります。せんだっての新聞等でもあなたよく御承知と思うのですが、もう退院しなさいと医者は診断したのです。その人に私は会ってみました。退院しなさいと医者が診断した人、すわって向き合って話しておりますと、本人はわからないが、左手がこのくらいずつゆれている。それを退院しろと言うのです。五症度なんですよ。しかも、さっきまでおった奥さんを、もう五分もしたら、四症度、五症度の人も、奥さんが来たことを忘れておる、家族の識別もつかぬ、こういう状態なんです。二年前とここに一つも変わってないですよ。やがて三年が来るのです。こういう実態御存じなんですか。もっと突き詰めて言いますと、たとえば通院患者、うちに帰ってくれば、いまですからこたつに入っておる。子供がおろうとおるまいとテレビは独占、毎日ごろごろしている。そうして何か気に食わぬと、すぐものを投げつける。こういう家庭悲劇も起こっておるのですよ。夫婦生活は全然できないのですよ。一例をあげましょう。ベビーブームといわれるころには、その社宅では、八百戸くらいある社宅に四百五十人くらい学童が入学してきたのです。あの爆発があって今日まで、軽いという人で、そういう若い夫婦の中で生まれた子供はたった二人です。四百五十人もあったのに、そういう家庭において中毒患者はたった二人の子供しか持っていない。夫婦生活という問題もたいへんな危機になっておる。こういう実態御存じですか。医者ことばでごまかすわけにはいきません。実態論です。
  12. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点につきましては、たとえば三井三池で現在入院しております患者二百八十六名、通院患者四百七十四名という実に多数の方々でございますので、きわめて重度の方からさまざまの状態であるという点につきましては、現地からの報告その他によって承知いたしております。したがいまして、大臣から御答弁がございましたように、労働省としては、できる限りのお世話を申し上げたいという観点から臨んでおるつもりでございますが、ただ問題は医師判断をどう尊重するかということであろうと存じます。先生承知のように、医療費補償の面であるとかそういった点から制限をするとかチェックをするといったことは、私どもさらさら考えてないのでございます。症状症状だけに、どのような状態になった場合に医学的に治癒したとかあるいは退院させるかという点については、非常にむずかしい問題があるようでございます。したがって、この問題の処理につきましても、争いがあります場合には、さらに他の医師が数人集まりまして判断をし、さらに困難なものにつきましては、一応わが国の最高権威と目せられる方々にさらに判断を願うという慎重な手続をいたしまして、医学的な判断を中心にひとつ御処理いただく。私どもとしては、できるだけお世話を申し上げるという体制で臨んではいかがかということで、いろいろ努力をいたしておるような次第でございます。
  13. 細谷治嘉

    細谷分科員 この点、大橋主査は当時労働大臣をされておりましたし、また労働省が建てました労災療養所をつぶさにごらんになったから御存じだろうと思う。労働大臣、私が申し上げたことはうそじゃないということは御存じですか。
  14. 小平久雄

    小平国務大臣 私も、就任以来各方面お話を承りまして、この問題はきわめて重要な問題でありますし、どうしても自分で一回お見舞いがてら現地を見たいと思いましたので、行って見てまいりましたが、大体のところは承知をいたしております。
  15. 細谷治嘉

    細谷分科員 大体のところは承知しているということですが、大臣もおいでになったようでありますから、かなり悲惨な状態御存じであろうと思うのです。  時間がありませんから、次に進んでお尋ねしたいのですが、いま基準局長から、いろいろ最善を尽くしておる、こういうことで、大体八点程度についていろいろ努力されておることは承っておるのであります。その折衝に当たった人から私は聞いたのでありますが、いまの一酸化炭素中毒立法との関連において、あとで具体的に幾つかの点について聞きたいのでありますけれども、そういう折衝段階において、労災保険法とおっしゃいますけれども労働省自体労災保険法では対処できないことをお認めになっているのじゃないですか。私は直接聞いておりませんけれども労働省折衝した方から話を伺いますと、もう労災保険法としてはこれが限度であります、これ以上のことはもう特別立法をしていただかなければどうにもなりませんと言っておる。参議院のほうには一酸化炭素中毒立法議員立法で出ておるそうであります。これは政治の問題として立法でもしてもらわなければできません、こういうことをおっしゃって、ある意味では、労災保険法最善を尽くしておりますとここでは言っておりますけれども、あとこういうふうな立法措置が残っておるということを隠れみのにして、私どもの権限は及ばないところでありますという逃げ腰じゃありませんか。それはどうですか。
  16. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働省ではさようなことを申したことはございませんし、最終的に折衝に当たりましたのは私でございますから、その間の事情は私自身よく承知しております。問題は、法律で処理する部分と、団体交渉等を通じ労使間で処理する部分、手段は幾つもあるはずであります。すべて法律でまるがかえするという体制でいくのか、あるいはもう少し労使間で詰めるべき問題があるのではないだろうか、そういう問題を総合的に考え、かつ問題ごとにきめこまかく詰めていこうではありませんか、その間において労働省としてもできるだけ御援助申し上げたいというような体制の中に、いろいろ話を進めてきたような次第でございまして、一酸化炭素特別立法については、予防健康診断補償等につきまして非常に困難があるということは、再三申し上げておるところでございまして、特別立法によらざれば解決は困難であるというようなことは、私どもは申したことはございません。
  17. 細谷治嘉

    細谷分科員 そういうことを言ったことはないということでありますけれども、私は折衝の経過をかなり詳しく当事者から承った。そういうことばをお使いになったかどうかは別として、労災保険法ではこの程度である、最善を尽くしておりますが、これ以上のことはもうどうにもなりません——ところが、私が思うのに、いま言ったような幾つかの実例、こういうものを見ますと、労災保険法ではどうにもならない問題点がある、こういうふうに私は現状認識をしておる。大臣、そういうふうに思いませんか。間違いなくやれるという自信をお持ちですか。
  18. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほど来申しておりますように、労働省といたしましては、できるだけの努力をいたし、法の運用についても最大限、法の許す限りのことはもちろん努力してまいりましたし、今後もやるつもりでおるのでありますが、いまの法ではできないという面、これは私は率直に申して、どの程度のことをやるということにかかってくるだろうと思うのです。法によってやる以上は、いかに最大限運用しようが、ある程度の限界があることは、これは言うまでもない。ですから、結局御要求なり御要望なりがどの程度のものか、これはいろいろ御要望等もわれわれ承っておりますが、それをすべてそのとおりにやるということになれば、これはいまの法の範囲ではできないということも、中には現実に出てくると思います。そういう関係でございまして、先ほど来御説明申し上げておりますように、一酸化炭素中毒の場合だけについて特別法をいま直ちにやるのはどうであろうか。ですから、いろいろ検討はもちろんいたします。そのほかにまた、局長からも御説明申しましたように、労使間の問題につながる問題もございますから、そういう問題につきましては、私自身会社側に対して責任を持って、できるだけひとつ皆さんの御要望に沿い得るように努力はいたしましょう、こういう約束を実はいたしておるわけなんであります。
  19. 細谷治嘉

    細谷分科員 労使間の問題もありますが、私は国としても考えてやらなければならぬ問題だと思っております。私は詳しくは存じませんけれども参議院議員立法としてこの問題が国会に出ておるのでありますが、その内容を見ますと、大体要点というのは、第一は、将来仕事のできない、職場復帰ができない者、これは相当多数おると見なければならぬ。そういう者については、これはやはり何としてでも生活保障をしてやらなければいかぬ。この十一月九日が来ると三年間でありますが、解雇されるのであります。将来の生活の不安というのがあります。これはやはり完全な生活保障をしてやる。病気がなおらないのでありますから、ひとつ定年までは解雇しないようにしてもらわなければならぬ、こういうのが一点としてあげられておると聞いております。  第二点は、職場に復帰したといたしましても、とうてい坑内に戻ることはできない。いわゆる職場配置転換をしなければならぬ。そういう配置転換をした場合に、自己の原因によって起こった、こういう悲劇じゃないのでありますから、これはひとつこの職場の賃金を保障してほしい、こういうのが第二点。  第三点は、いま私が例をあげて申し上げましたように、のどからあけてゴムホースをやって食べたりなんかしている人は別といたしまして、そういう人はむろんでありますけれども、そうでない人、もう完全にそのときの罹災のままに足が曲がったまま硬直して、てんでもう体の動かない、これは二症度とか一症度、そういう人もおるのです。そのままの形で硬直しちゃっている人がおる。母親はわかるけれども、全然頭の回転ができない人、寄せ算ができない、英語は読める、こういう人もおるのですね。全然わかりませんけれども、そういう人が現におる。そういうことでありますから、どうしても家族がつき添わなければいかぬ。親たちが二人いっときも離れられない。母親が持ってくる御飯でなければ絶対食べないという患者もおるのです。そういう人に対しは、やはり家族に対して看護料を支払ってもらわなければならぬじゃないか。あるいは、この問題は医学上のいろいろな問題点がありますけれども療養対策というもの、それから完全な職場復帰、あるいは職業訓練、そういうものは病状に応じますけれども、そういうものをひとつ完備してほしい。  大体この程度のことなんですね。これはできないことはないでしょう。あたりまえのことでしょう。どうしてそれができないのか、私は不思議でしょうがない。
  20. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 お話しの点、非常に症度の重い人、それに準ずる人、中くらいの人、軽い人、程度がさまざまでございます。御指摘のような病状方々に対しましては、労働省としてはできるだけのことをいたしたいという観点から臨んでおるわけでございまして、たとえば三年たってもなおらない——まあいわば死ぬまでなおらないという重度方々には、もうなおるまでということばは使えないような状態、なおらないという方には、最後段階まで長期療養補償として療養費を全部持ち、かつ休業補償に該当する年金を別に支給するという体制で、最後までごめんどうを見たい。これは現行法長期療養補償で可能なわけでございますから、そういった処置をしたい。ただ、住宅はどうするのか、従来会社から受けておったところの見舞金とかそういうものはどうするかという問題が出てくるわけであります。それを雇用を継続するという形で処理するのか、そうでなくて、何か事実上従来と全く同じような形で処理できないものか、いろいろ考え方があろうと思いますので、そういった点につきまして鋭意検討いたしておるような次第でございます。  また、配置転換の問題にいたしましても、先生指摘のような方には、かりに病状が固定してこれ以上治療効果が期待できないといたしましても、障害補償費を支給する、障害年金を支給する、こういう問題が出てまいります。障害年金の支給と職場配置転換等をどうかみ合わせるかというような問題について、立法措置の前にもう一度研究くふうを重ねる余地がないかどうか。それからリハビリテーションの拡大の問題がございます。これは、私どもも前向きでこの方向で進まなければならないというふうに考えております。これは強化したいと思います。  それから、介添えがなければ食事をとれないというような方には看護料を出すということは、前から申し上げ、かつ出しておるところでございます。私どもは、必要なものには看護料を出すということは、かねて申し上げ、これは今後も変更する意思はないということを申しておるのであります。ただ、他人の介護を必要としないような、相当病状もいい方にまで看護料を出してくれという問題につきましては、これは将来の問題としては非常にむずかしい、しばらく検討したいということにいたしておるのでありまして、御指摘のような方々看護料を出すということについては、従来と何ら変わりない、できるだけのことをさしていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 細谷治嘉

    細谷分科員 特別看護料の問題でありますけれども、私が聞いておる折衝の過程では、いま申し上げた特別看護料というのは、原則として四ないし五症度の人は廃止したい——この三月で全部切れてしまうんですよ。三月までは従来どおりするが、四月以降は四症度、五症度は廃止したいと、こう言っているんですね。四月以降のことについては何らかの方法を考えるという段階でしょう。約束してありますか。どういうことですか、はっきり言ってください。
  22. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点は特別看護料の問題でございますが、従来短期間を区切りまして、特別看護料の支給を離して処置してきたわけであります。昨年の十二月末が一応の期限でございます。それを今後どうするかということを先月話し合ったわけであります。そこで、介護を必要とする方々には看護料を出す、さらに増額することも考えるべきだということは、私どもは積極的に申し上げておるのであります。ただ、四症度といい、五症度といいましても、それは便宜的に名づけた区分でありまして、問題は、特別看護料を出すかいなかはそれぞれのケースについて判断すべきものであります。それに相当する実質があれば労働省は出す、こう申しておるのであります。ところが、そうではなくて、先生よく御承知のとおりと思いますが、いわば賃金補給なり特殊な生活補給的な意味で、いわゆる看護料の名に値しないような措置がなされておるものについては、これは筋どおり処置しなければいかぬだろう。しかも、だんだん治療程度、現在の病状程度等を考えまして、きめのこまかい対策を労働省としてはいたしたい、それは別に退院さすとかどうとかということではなくて、きめのこまかい、それぞれの状態に応じた処置をいたしたいという観点から考えまして、ひとつ再検討をしたい、こう申しておるのでありまして、三月の打ち切りであとはたいへんなことになるというようなことには話してはおらぬはずでございますので、御了承いただきたいと思います。
  23. 細谷治嘉

    細谷分科員 きめのこまかい——たいへんけっこうであります。しかし、私は、労働省の労災事務所の二、三百メートル先に住んでいるんですから、患者の事情もよく知っているのです。また患者の自宅にも行きましたから、おそらく患者実態については、あなたより私のほうが詳しい。労災事務所の二、三百メートル先に住んでいるのですし、同じ部落ですから。たいへんきめのこまかいと言いますけれども、私から言いますと、きめのこまかいというのは国会答弁だ。実態は一つもきめはこまかくないですよ。きめはきわめて荒い、こう申さなければならぬ。この間の療養所の入退院問題、四十三人の問題だって、はっきりしているじゃないですか。私は何人かに会ってきたのですよ。退院しなさいと医者が診断した一例はこうなっておる。嫁さんももらえないという二十六歳の青年です。きめはこまかくないですよ。きめがこまかいなんということは、いままでの現状ではあまり言わないがいいと思う。しかし、私は、きめこまかくやっていただかなければならぬ、こういうことを特にお願いしておきたいと思う。大臣、その辺はひとつ——局長大臣に報告するときは、やはりきめこまかくやっていますと言うでしょうけれども、私が現地に見ている限りは、そうでないと思う。今後もひとつ十分配慮をしていただきたい、こう思います。  そこで、私はいろいろお尋ねしなければいかぬ点があるのでありますけれども、時間がありませんから、村上さん、あの爆発が起こったときに、私はあなたに質問したことがある。六%の賃金がたな上げされておりますよ。これはやめるときには全部あげますよと会社は約束しているのですね。そのとき、何とか考えましょう、会社と打ち合わせしましよう、私にあなたはこう答えた。ところが、その後そのままです。多賀谷さんもそうでありましたが、私は何らかの形で片づいておると思っておったら、依然としてこの六%の問題が残っておる。生活保護に満たないような収入しかないのですよ。会社症度に応じてその特別看護料を出しておりますけれども生活保護にも満たない。そして、未亡人もそうでありますが、奥さんが内職にいっております。内職も一カ月働いて五千円か六千円、そういう形で内職をする。おやじの看護もしなければならぬ。生活にたいへん窮しておる、こういう状態であります。六%、あるいは三百六十円程度の賃金をもらっておる人もおるわけでありますから、これもたいへんな問題、生活の問題というのがひしひしの問題として起こっております。そこで、その一例として、当時私が御質問申し上げました六%の問題というのは、いまだに解決しない、これはどうしてくれるのですか。
  24. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 災害直後にそのようなお話がございましたことは、私も承知いたしております。その場合に、就業規則などで定められた六%控除の問題が、現実に支払われた、こういうことになりますれば、平均賃金算定の基礎になるわけでありますが、それが払われない状態のままでありますならば、平均賃金としての算定は困難である、こういうような基本的な考え方を私どもとっておりました。もし会社のほうが、これは約束なんだから払うという、現実に支払われた賃金であり、平均賃金の基礎になるものでありますれば、当然私ども補償費計算の基礎に入れるわけであります。しかし、その後そういった支払われた事実もなく、将来の問題として残されたまま今日に至っておるわけであります。その間どういうことがなされたかと申しますと、昨年の四月から労災保険法によりますところの休業補償費のスライドアップがなされましたが、そのときの基礎賃金にどれをとるかという点については、六%を支払われないままの、従来の実際に支払われた賃金を基礎にしてスライドアップをいたしまして、たしか二九・三と記憶しておりますが、三〇%近くのスライドアップがなされたわけでございます。そのときの基礎になりましたのが、六%支払われていない、従来現実にもらった賃金を基礎にしてスライドアップの計算をし、自後その計算で補償費が支払われておるわけでありまして、問題は一応解決したものと私ども考えておるわけであります。ただしかしながら、賃金が著しく低くて、石炭鉱業における最低賃金に満たないというものについてはどうするかということにつきましては、いわば職権決定方式によってきめられた最低賃金額に及ばないものにつきましては、これは是正すべきであるという観点から、そのような返事を関係方面に申し上げておる、こういうようなことでございます。
  25. 細谷治嘉

    細谷分科員 当時のことをあまり議論しませんけれども、六%の問題については、形としてはおっしゃったような形になっておりますが、私は実態問題としておかしいと思うのですね。経営が苦しいから、ひとつしばらく六%は預けておいてくれ、退職までには間違いなく払います、こういう形で、あの爆発が起こったのですね。それが一切今日まで尾を引いておる。スライドアップの問題も、いまの炭鉱の最低賃金の問題で、そこまで引き上げるということはやったようでありますけれども、二九・三%の問題については、六%の問題が関連して、いまだに解決しないということは、私は非常に不満であります。これは当時の六%のたな上げの経緯、そういうものから、この段階においても十分な再検討を願わなければならぬ、こう思うのです。  時間がありませんから、私は大臣にお願い申し上げたいのですが、私はせんだって熊本の病院を見に行ったのです。ところが狭い部屋です。三つのベッドがありまして、入ってくるのはみな重症患者ですよ。そうしてその中に、一人一酸化炭素の重症患者がおります。これは一切もうからだは硬直したままであります。指も何でもこうなったまま、足は全く曲がりもしない、石のようになっておる人です。夫婦二人ついておるのです。母親と父親とがついております。重症患者が小さい部屋に今度また二人入ってきた、これではとてもどうにもならないということが訴えられました。病院の設備がきわめて不十分だということであります。治療対策もしたがって不十分だと申さなければなりません。あるいはリハビリテーションの問題も私は不十分だと申し上げなければならぬと思うのです。こういう一連の問題として大学研究ということもありましょうけれども研究はどこでもできるのでありますから、もっと一緒にまとめて、この一酸化炭素に対する処置医学的に科学的に対処していくことが必要ではないかと私はしみじみと痛感したわけでありますけれども、この点について大臣の所信といいますか、お考えをひとつお聞きしておきたい。
  26. 小平久雄

    小平国務大臣 前段のお話の、入院患者が非常に無理な入院のしかたをさせられておるという話でありますが、この点は、昨年十一月ごろでありましたか、そういうお話も聞きました。さっそく係官も派遣しまして、非常に無理な部分も確かにあったようですから、これは個室に入っていただくというような措置もとりましたし、今後もなお、そういうだれが考えても非常に無理だ、非常にむちゃだというような場合がありましたならば、これはもうすぐにも直させるように十分注意したいと思います。  それから一カ所に集めるという問題でございますが、これも理想的に申せば先生のおっしゃったとおりかとも思いますが、この問題は、特に医学の現在のわが国の水準等からいって、要するに、医学的にもきめ手がなかなかないというか、極端に言えばそういう状況なのであろうと思います。それで各大学先生などに研究等を依頼して、あるいは治療も依頼しておる、こういうことが行なわれておるわけでございますが、先生の側にもこれはいろいろ御都合もありましょうし、一挙に全部一カ所に患者を集めて、また先生も全部一カ所に集めることは、実際問題としてなかなか困難もあるだろうと思います。しかし、理想としては、先生のおっしゃるようなことがいいのだろうと思います。よく関係方面とも相談をいたしまして、われわれは現実的に改善の方向にできるだけ行き得るように今後とも努力をいたしたいと思います。
  27. 細谷治嘉

    細谷分科員 最後に一言、労働省なり、特に担当である基準局長にお願いしておきたい。  医者が非常に不足しているのです。しかも、患者等から、医者がなれない団体交渉を受けますと、人間はどうもやはり感情的になるのじゃないかと思う。そして、労働省が何と言おうと基準局が何と言おうと、患者の問題は医者の権限なんだ——なるほどそのとおりであります。原則はそのとおりであります。しかし、その医者が科学的じゃなくて、医学的じゃなくて、感情が入っておる。四十三名の退院患者を出せと院長から言われますと、よかろうが悪かろうが、自分が担当している中から七人ずつ出す。六人医者がいるのですから、七人ですと六、七、四十二、四十二人機械的に出してきている。こういうことになりますと、どうも私はよろしくないと思う。基準監督署のそういうあっせんによって、やはりそういうものは、感情じゃなくて、医学的に科学的に判断をしなければならぬぞと、こういうことを言われておりますし、また、たとえば余病を併発しておる。非常に余病を併発しがちになっておる。そういうものを、余病は一酸化炭素中毒が原因じゃない、こういうことで全部はねつけておる。そういうことではいけませんので、やはり医者医学的なブランチにおいて全責任を持つ、こういう態勢が必要でありますが、どうもそういう態勢になっておらぬのであります。この点については、十分ひとつ労働省なり、特に基準局長に配慮をいただきたいと思うのです。  いろいろ具体的な問題について私はお聞きしなければいかぬ点がありますが、時間がありませんから、きょうはこの程度でやめておきますが、たいへん深刻な問題でありますから、労働大臣、私は、どうしてもやはり立法措置が必要であろう、それがこの問題に取り組む一番正しい姿勢であろう、こう思いますので、総理大臣も前向きに検討するということでありますから、労働大臣も所管の大臣でありますから、あまり格式ばらぬで、あまりつれないことを申さぬで、実態に合うような対策を、労働省ひとつ積極的に進んでこの立法措置を講じていただくように配慮いただきたい、こういうことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  28. 大橋武夫

  29. 小林進

    小林分科員 春でございまして、昨年もいまごろは国会も開かれておりましたし、特にその中にはILO八十七号の批准問題等を含めて、あるいは春闘、労災等で、国会のあらゆる審議の中にも労働行政というものは脚光を浴びておった。   〔主査退席、倉成主査代理着席〕 非常に議会の中心をなしまするし、労働大臣もそういう諸般の問題を含めて、労働省全軍を引き連れて非常に活気のある積極的な動きを見せていたのでございまするけれども、最近の労働省の動きはさっぱりどうも、動いているのか、沈んでいるのか、泣いているのか、眠っているのか、労働大臣労働省の存在さえも疑われるくらい寂として声なし、これは私は労働省の立場から見てまことに遺憾にたえないのでございます。それほど世の中は平穏無事にして、労働大臣の活躍を期待するような問題がないのかといったら、そんなものではございません。むしろ昨年の問題はそのまま残されておりますし、特に今年度のこの不況の中における物価値上がり、その中における労働者の実質上の賃金の値下げ等、問題はむしろ多く介在しておる。これは私はたいへんな問題だと思いまして、労働大臣、前任者の業績等をながめながらいま少し積極的に動いていただかなくちゃならぬと思っておる。  そこで、具体的な問題としてまずお尋ねいたしたいのは、ことしの春闘でございます。労働大臣は、今年の一月の二十四日と二十五日の両日でございますか、東京大手町の農協ビルで全国労働基準局長や労働主管部長の合同会議を開かれた。その席上でもろもろの訓示を与えられておりまするけれども、その中ではっきり春闘に対する所見も一部分開陳をしていられるようでございますけれども、そこで述べられた春闘に対する労働大臣の考えというものは単に述べられただけで、さっぱり私ども要を得ない。一体、この春闘に対して労働省としてはどういう所見と見解をお持ちになっているのか。昨年あたりは主管大臣はどんどん動いておりましたよ。御承知のとおり、経団連は経団連で一つの経営白書なるものを出して、春闘に対する防波堤を盛んに築きながらいろいろするし、労働者は労働者で総評の臨時大会を中心に各公労協、あるいは民間労働組合は従来にない決意を固めて、四月にはゼネストまで問題を持ち上げていこうという決意のもとに着々戦線を進めているという、そういうさなかでございます。国民は、その一番の責任省であります労働省が、その労働省の頂点におられる労働大臣がこれに対して一体どういう所見を持っていられるのか、これは全く熱い気持ちであなたの動きをながめている。ひとつ国民にあなたの考えを明確に知らしむるという意味において、堂々たる御所見をここで御発表いただきたいのであります。
  30. 小平久雄

    小平国務大臣 労働省の動きが活発でないというおしかりをちょうだいしたわけでございますが、しかし、具体的にどういう点か、われわれの足らざるところは十分御叱正をいただいて最善努力をいたしたいと思います。  その動きの足らぬ一つとしてかとも思いますが、春闘についても労働省がもっと積極的に何らかの行動をとるべきじゃないかという御趣旨と思いますが、これは専門家小林先生よく御承知のとおり、労働省というものはもちろん労働者の福利増進ということに常に最善努力をしなければなりませんが、しかし、労使間の問題について労働省自体が、あるいは労働大臣がこれに積極的に介入するというようなことは私はむしろできるだけ避くべき立場にある、法もまたそういうことに相なっておると私は承知をいたしておるわけであります。御指摘のように、今回の春闘は、総評あるいは中立労連等を通じまして共闘委員会もでき、ある程度の一つのスケジュール等もできておるように承知をいたしております。しこうして、組合側は生活の防衛という立場から相当大幅の賃上げを要求なさる、片や使用者側は企業防衛ということを旗じるしにいたしまして、これまた相当シビアーな態度で臨もうといたしておる、こういう点は、先生指摘のとおり私どもも認識をいたしております。それだけにまた、今年の春闘は従来とややと申しますか、相当と申しますか、異なった様相も呈するのではなかろうか、かようにはわれわれもいま見ております。しかし、御承知のとおり、まだ各労組の具体的な要求等も出そろわぬ、今日ではまだそういう段階にあるようであります。したがって、今後各労組の関係において労使間の交渉というものがどういうぐあいに展開されるものか、また、いわゆるその交渉の過程においてあるいは交渉が円満にいかぬという場合に、いわゆるストライキ等も一体どういう時期にどういう姿で出てくるのかというようなことも、今日の段階ではまだまだ明確には相なっておりません。そういうことでありすまから、私の立場といたしましては、今日の段階において、春闘はかくあるべし、こういうようなことを何らかの形において申し上げるというようなことは私は適当ではない、かように考えておるのであります。  各基準局長あるいは県庁の労政担当の部長等の会合において申し上げましたことは、とにかくどうしても妥結かできぬというときには——まあ労使間で自主的に話し合いをして妥結を見ることが一番望ましいことではあるが、そうでないときには、せっかく公正なる労働委員会等もあるわけですから、そういう機関を活用するように、つまり国がきめておりますこの正常なルートによって極力解決の方向にいくように、こういうことを私申したように記憶いたしております。  大体ただいまのところはそういうことでございます。
  31. 小林進

    小林分科員 私は、労使の問題に対して介入をしないということ、それはいいけれども、不介入という原則に逃避をして、労働省としての本来あるべき姿までも、仕事までも放棄をするような、そういう消極的、ひきょうな行動をおとりになってはいかぬと思っている。そこで、昨年度の例をとるわけじゃありませんが、昨年度あたりは、経営者の姿に対して、春闘それ自体の労使の間に介入せよというのではないけれども、やはり労働者の立場を守るということで、労働大臣はどんどん日経連や経団連やそういう管理者のあり方に対して非常に正当なる批判をしていられた。それは私は非常にりっぱだと思っている。何もそれは介入ではないです。あなたに対して、そういうことまで批判してくださいと言うのではないけれども労働省には労働省のそれぞれの仕事と業務が与えられているはずであります。たとえれば、私は、この春闘の問題に関連して、数年前にできたあなたのほうの賃金部は何しているんだと言いたい。賃金課をつくって、今度は賃金部に昇格せしめたけれども、そういう問題が——それは労使の間に介入せよと言うのではない、政治的に容喙せよと言うのではないけれども、やはり今日の物価高の中で労働者の賃金の趨勢がどこまできて、今日どうなっているかというようなことくらいは、堂々と資料を出して世間へ発表する勇気を持ってくれればいいと思っている。何かその作業をやりましたか。いいですか。御承知のとおり、今日物価はいまも言うように七・八%、大体八%、まあ最後の結論は出ませんけれども、大まかに経済企画庁の見るところでも八%前後の値上がりをしている。それに加わる労働者の賃金というものは、定期昇給で、あるいは経験を積むことによって、毎年定期的に上がっていかなくちゃならない。物価の値上がりと、そういうものを含めていけば、今年度の労働者の賃金は少なくとも一割三分なり一割五分くらいは上がらなければならぬとか、そういう公正妥当な資料というものがちゃんとあなたのところから出てこなくちゃならぬと私は思う。賃金部などという大きな機構までつくってやったにもかかわらず、そういう仕事をやっておるのかやっていないのか、わけがわからぬ。そういう問題が一つ。時間がないから、次から次とやりますが、どうですか、あなたが簡単に答えるならひとつやってください。
  32. 小平久雄

    小平国務大臣 賃金の情勢等は、これは先生万事御承知のとおり、例の毎月勤労統計ですか、こういうことで毎月いつもできるだけすみやかに出すようにいたして出しております。ただいまのところ昨年の十二月分まで出ておりまして、御承知と思いますが、昨年、四十年をとりますと、名目賃金で一〇%上がった、それから実質賃金では二・二%上がった。これは三十九年におきましては名目で一〇・三%、実質で六・三%上がった、こういうことになっておりまして、まあ名目のほうは上昇率はたいした違いがないのですが、しかし実質賃金においては、いま御指摘のとおり、消費者物価の上昇もございましたから、二・二%に終わった。こういうことはもういつでも発表していますから、各方面とも承知をいたしておると思いますし、それから国会を通じましても、物価と賃金との問題等についてずいぶん御質問もございますし、特に一部の方々からは、とにかくこの物価の上昇の原因は賃金の上昇にあるのじゃないかというような趣旨の御質問等も出ますし、あるいは世間一般でもそういう声もあることをわれわれも耳にします。しかし、私はそういう点において、そう簡単に賃金の上昇だけが物価上昇の原因である、したがって、賃金を上昇することはけしからぬというような説は妥当でもないし、とりもしないということを、あらゆる機会に私自身も申しておるところでございます。ですから、せっかく賃金部をつくっていただいて、賃金も大いに研究もするし、あるいは統計部等もこういう際でありますから、ひとつできるだけ迅速にやれということで、賃金の状況等についてもなるべくすみやかに国民の皆さんにお知りいただくようにつとめておるところでございます。
  33. 小林進

    小林分科員 私はその賃金統計を拝見しております。その賃金統計に基づく大臣の所見というものがさっささっさと出てこなくちゃだめだ、私はこう言うのです。いまあなたは口を開けば、物価値上がりの中で賃金関係が大きなファクターじゃないかということを言われるけれども、あながちそれだけじゃない。
  34. 小平久雄

    小平国務大臣 私が言うのじゃなく……。
  35. 小林進

    小林分科員 そう言っているが、あなたはそうではないということを、労働省の立場でそれを否定していられるがごときことばがあったけれども、そういうことも、やはり欧米先進国に比較して、企業の中に占める賃金のファクター、先進国では六〇%もいっているじゃないか、 六五%もいっているじゃないか、日本はだんだんそれが低下をして、現在では四〇%にも減ってきているではないか、そういうような科学的な論拠のもとで、労働者の利益を守るという考え方でやっていただかなければならぬということを私は言っておる。  なお、私は昨年度に比較していま一つあなたに要求したいことは、まあ前任者を言うのじゃないが、あなたはもっと手腕、力量がある。あなたは前任者より手腕がないとひがんで聞いてはいけません。いけませんが、しかし、去年のいまごろ石田労相は、例の国税庁の国税白書を基調にいたしまして、これは三十八年度の国税庁の発表の中だ。その届け出の中に、いわゆる法人の中における交際費というものが四千六百億、国民一人平均にして四千七、八百円もかけておる。そういうふまじめな態度で企業が赤字だの、黒字だの、不景気だのということは何ごとだ。まず企業者自身が姿勢を改めていかなければいかぬじゃないか。ゴルフ族とは何だ、お客一ぱいてまえ八はいという、そんなふまじめな経営のしかたは何だと、彼は勇敢に春闘に対する批判を加えておりました。ところが本年度どうですか、国税庁の同じく例の発表を見ましたら、それぐらいの批判の中に、一体交際費は減っておりますか。株の配当金は減っておりますか。これは国税庁の発表を、私は国税庁になりかわって申し上げるのでありますけれども、三十九年度における一年間の法人の交際費は、去年よりまた増加をして五千三百億円、国民一人平均五千三百円。そのほか、法人の株の配当金が一体幾らか。六千六百億円です。もっと一番はなはだしいのは何かというと、いわゆる資本に対する金利ですよ。金融資本家に法人が払っている利息です。これが一年間で幾らかというと、国税庁に届け出ただけで二兆八千億円です。どうですかあなた。二兆八千億円、これは金利だ。不労所得だ。私は大蔵大臣に言った。これがすなわち資本主義の悪じゃないのか。労働者が血と汗と涙で働き抜いたその中から、一番味のいい大きなところが、二兆八千億円も不労所得の形で、金利でみんな持っていかれる。その次の不労所得は配当金だ。株を持っている諸君に六千六百億円も持っていかれる。その次は一体何で持っていかれるかというと、いま申し上げました今度は交際費と称する、管理職や重役の諸君がやれこりゃこりゃとおもしろくお遊びになる、そのお金で五千三百億円の金が流れる。合計して何ぼになります。これは四兆円です。四兆円という金が、いわゆる企業を通じて労働者の血と汗と涙の努力の中から、これが全部流れていく。この四兆円という金を、もしこんな金利だのという不労所得、あるいは配当金などという不労所得、交際費などというおかしな金に使わないで、正しく国民に配分をせられるということになったら、わが国の一年間の予算は要りませんよ。今年度の国家予算はお幾らですか。大臣御存じでしょう。私が言わなくても、あなたは閣僚の一人ですから御存じでしょう。四兆三千億円だ。いま私が申し上げたこの不労所得が、やはり同じく四兆円です。国民の税金一銭も取らなくたって、これは全部わが日本をまかなっていける。こういう労働者の尊い資産が、こんな形に使われているからこそ、労働者の生活がだんだん苦しくなってくるのです。これは決して経営者だけが働いたものじゃないのです。株主だけがあげた四兆円の資産じゃないのです。この四兆円の努力というものは、労働者が一番働いたのです。この中から当然正しく労働者のために配分しなくちゃならない。還元をしなくちゃいけない。四兆円全部よこせとは言いませんよ。言いませんが、このうちのせめて一割ぐらい、四千億円ぐらいは、この物価高と実質的な低賃金のために悩んでいる労働者のために正しく公平に分配したら、春闘の問題なんか起きてきませんよ。私はこれを言うのですよ。しかし、歴代の大臣——決してあなたのことを言うのじゃない、先ほども言うように、あなたはりっぱな大臣でいらっしゃいますけれども、歴代の大臣は、やっぱりこういうことを正しく批判しました。それを批判していかなければ、労働者は気の毒です。一年間で四兆円も五兆円も働かざる方向にみな果実を持っていかれて、自分たちが要求する一人前の、この物価高の中でわずか五千円か八千円の賃金を、それをゼロに食わして、そしてどうですか、口を開けば、この日経連の春闘対策正式決定なんか見ると、企業の合理化だ、何でも首切らなくちゃいけない、それから賃金の値上げはやめなければならないといって、自分たちがこれほどのむだづかいをしていることに一つも触れない。そして、不景気の原因を全部労働者にしわ寄せをしようというときに、だれが一体これを守ってくれる。それを守ってくれる官庁、労働大臣、あなたとあなたの省しかないのです。こういうことを、いま少し人道上あるいは公正な立場に立って勇敢に労働大臣、あなたが戦ってもらわなければ、労働者の立場はありませんよ。御所見を承りたい。時間がありませんから、私は長話はしません。御所見を承りたい。
  36. 小平久雄

    小平国務大臣 小林委員のお話、ごもっともなところもありますし、あまり賛成できかねるところもあります。と申しますのは、お話のうち、金利あるいは配当、これらは不労所得であるからけしからぬ、こういう御所論ですが、これは一労働大臣として答弁するのにはあるいは適当でないかと思いますが、これらがけしからぬということになると、これは結局はいまの経済体制自体、いわゆる資本主義経済自体の問題だろうと思います。小林さんは社会主義のお立場でしょうから、そういう御議論になるかと思いますが、私どもの立場からすれば、一がいに金利、配当はけしからぬ、こういう説には原則的には私は賛成いたしかねるわけであります。もちろん、それが不当なものであっては、あるいは適正なものでないということでは、これはいかぬわけですが、しかし、金利、配当そのものをいかぬ、こういうことには私は賛成いたしかねるのであります。  さらに、交際費の問題でございますが、交際費は確かに五千億前後も年間に使われておる、こういうことを私も承知をいたしております。しかし、この内容が必ずしもゴルフをやる、あるいは宴会をやる費用ばかりではなかろうと思います。中には、必要やむを得ざるいわゆる営業費的なものも、相当交際費の名目のもとに出ておるものもあるのじゃないかと思いますが、それはいずれにいたしましても、世間はやはり新聞その他の報道等を通じまして、民間の交際費が五千億内外も年間に使われておる、こう世間一般の人はおそらく理解をいたしておるだろうと思います。こういう事態がありますから、私はあえて世間に向かってそういうことをかれこれ申しませんが、たとえば政府にあります物価対策の閣僚協議会等においても、どうしても一部からは、所得政策というものをやらないからいかぬとか、あるいは賃金がやはり物価上昇の根源であるとか、これは話し合いですから、いろいろな考えが出てきます。しかし、私はそういう機会におきましても、大体年間に五千億内外も交際費という名目の支出がとにかくされておる、こういうことを世間でははなはだ苦々しく思っておる、であるから、こういうものをそのままにして、賃金は抑制すべきであるとか、賃金が物価上昇の原因であるとか、そういう立場に立っての施策というものを考えたのでは、大衆は納得しないであろう、こういうことを私はもう何回か実は強調いたしておるのであります。でありますから、そういうことを、これは別段、こう言った、ああ言ったということを宣伝すべき筋合いではありませんから、私は別段外部に申し上げたこともございませんが、私としてはそういう心がけで、できるだけ妥当な賃金と、労働者の生活確保、こういうことにはあらゆる機会を通じて私は最大の努力をいたしておるつもりでございます。
  37. 小林進

    小林分科員 私は、資本の利子というものを否定しようというのではないのです。社会主義の世の中でも金利というものを全面的に廃止するわけにはいきません。ただ、私の言いたいことは、金利を否定するのではないが、この一年間に支払われる四兆以上、これは法人だけですから、あとは、そのほかやみ金融からもぐり金融まで入れると、一体金利だけで払われている金は何兆円になっているか。実際は国税庁に届けた法人金利だけでも二兆八千億だという。それに加え、いまもあなたのおっしゃった交際費やら株の配当金等まで含めた、その果実というのは、管理者や資本家だけが働いたんじゃない。労働者が一生懸命になって働いたものだ。だから、社会主義国家では、こういう果実というもの、資本利子や配当金や交際費は最優先して労働者に還元されるのです。全部労働者にこれを持っていかれるとは言わないけれども、まず最優先で労働者に持っていかれる。しかし、残念ながら日本では、資本主義の国家だから、それが優先をしないで、いまも言っているように、まず資本利子へ払われたり、配当金へ持っていかれたり、交際費に持っていかれたりして、その余りがかろうじて労働者の賃金のほうに回されているという現状だ。不公平じゃないかと私は言うのです。私は、資本主義の世の中をそのまま否定しようというのではないけれども労働大臣としては、やはりそれだけの大きな果実というものを生み出す大きなファクターをなしているのが労働者なんだから、労働者のほうにも、せめて対等の権利でこれを分配する要求が出てくることだけは、資本主義の世の中でも認めてもいいじゃないですか。そういう要求に対しては、欧米先進国に比較して、日本の労働者が一番まだ恵まれていない。恵まれていないということは、この近代国家、近代化をした日本の労働者は欧米先進国に比較して賃金が三分の一だ。アメリカに比較して三分の一だ。あるいはイギリスやフランスに比較して二分の一だ。イタリアに対してもまだ七〇%ぐらいにしかいっていないという、この事実は明らかなんであります。そういう観点から、労働大臣がいま少し勇敢にこれを守ってくれるという考え方に進んでいかなければだめではないか、私はそういうことを申し上げているのであります。時間がありませんから、まだ少し、この次にきめのこまかいことをやろうじゃありませんか。  しかし、春闘で、いまも言うように、実質二・二%とは一体なんですか。こんなことをよくあなたは見ていられると思う。そういうことをもう少し勇敢に戦って、この生活苦にあえいでいる労働者にやはり一片の理解と同情を与えるような春闘対策、春闘の指導性を生み出してもらいたい。  次に、二番目に行きます。あまりしゃべり過ぎますとしかられますから、簡単に申し上げますけれども、きのうあたりも、これは新聞にこういうことがある。「おとうちゃんおかあちゃん早く帰って来て」「残された坊や重傷」、こういう見出しで、これは二月二十四日ですか、きのうの夕刊ですが、非常に気の毒である。子供さんは自動車にはね飛ばされて、顔や頭に一カ月の重傷を負った。そのおとうさんは昨年暮れから東京へ出かせぎに行ったまま行くえ不明だ。母親、三十歳も、自分の子供をおじいちゃん宅に預けてバーのホステスになりますと言って東京に出たきり、二、三回通信が来たきり、来ないという。子供は重傷で父親と母親の名を叫んでいるという、こういう記事なんです。これはほんの一例でしょうけれども、特に東北を中心にしてこういう例はあとを断たない。これはあとからでもわれわれの仲間から質問がありましょうから、私はこれにあまり時間をとらないで次へ行きますが、これも私が初めて言うことじゃないのですよ。昨年の春の国会でも強くこれは要望いたしました。その要望事項をここで申し上げますると、まず、昨年の一年間に出かせぎの数がどれくらいいるのだ、労働省実態をつかんでくださいと私ども要望いたしましたら、つとめてそれはつかみますという公約を私ども労働省からいただいている。どんなぐあいに出かせぎの人数をつかまれたか、その成果をお聞かせいただきたい。  第二番目に、就業あっせん方法の改善についてひとつ抜本的にやってくれ、そのためには、職安の職員の大幅な増員、職安の窓口行政の改善、それから県、市町村役場と出先との連絡体制、これをひとつ強化してくれという要求を私どもは出しておいたが、これはどうなったか。  それから第三番目といたしましては、労働基準監督行政、これをひとつ大いに拡充しろということ、この労働基準法の完全な実施がどうなっているか。職安行政、監督行政はつとめて働いて、出かせぎの職場、あるいは飯場等をながめて、こういう気の毒な出かせぎ労働者の実態をつかんで、労働基準法の完全な実施をひとつやってもらいたい。東北の例を申し上げますと、七割以上は大体土建業だ。それも大きな土建業じゃなくて、下請の下請のまた下請などというようなところへみな入っているのでありますから、こういう人たちの賃金不払い問題があとを断たない。それをきちっとつかんで、元請が責任を持つ、そういう不払い行政のないような体制を去年一年間でやってくれと私どもはちゃんと言って、あなた方はやりますと言って公約したが、それは一体どうなっているか。  以上、要するに出かせぎに対する職安行政の一年間の成果、この出先に対する労働監督署、基準行政の一年間における成果、それから出かせぎ者の実態をどのようにしてつかんでいただいたか、この三点について御答弁をお聞きいたしたいと思います。
  38. 有馬元治

    ○有馬政府委員 出かせぎ者の数でございますが、これはいろいろの角度から把握のしかたがございます。農林省の調査によりますと、御承知のように三十八年がピークで二十九万八千、三十九年が二十八万六千、それから、せんだって発表になりました農業白書によりますと、四十年の一−八月が八万八千、これに対応する三十九年の一−八月が十一万五千というような実数が出ております。農林省のこの種の調査によりますと、三十八年をピークにして出かせぎ者が漸減をしつつあるという傾向が出ております。しかし、これは農林省の定期の調査でございまして、私どもは、この数字のほかに、私どもの立場で失業保険を通じて調査をいたしましたところ、三十八年が五十一万八千、三十九年が五十八万一千というふうに、農林省の調査数字とは相当かけ離れた数字が出ております。私どもの推定では、やはり六十万を下らない数が出かせぎ者として出ているというふうに推定をいたしております。  これだけの出かせぎ者に対して、労働省としてはどういう対策を講じているかという問題でございますが、これは農林省とタイアップいたしまして、私のほうとしましては、出稼労務者対策要綱を四十年度に策定いたし、農林省は農家労働力村策事業というものを確立いたしまして、安定所と農業委員会とがタイアップして就労経路の正常化という対策を講じてきておるのでございます。これによって出かせぎにまつわるいろいろな問題を、まず就労経路の正常化によって是正をしていこうという体制を四十年度から確立してまいったわけでございますが、これはまだ緒についたばかりでございまして、これから来年度も引き続いて内容を充実さしていきたいと考えておるわけでございます。また、安定所といたしましては主要の雇用地安定所に、四十六カ所に及びますが出稼相談所を昨年来開設いたしまして、今日までの相談件数を合計いたしますと全国で二千四百七件という相談件数があがっております。もちろん、相談の内容は転職のための相談、あるいは労働条件が非常に食い違っておるというふうな相談、いろいろな内容でございますが、僅々半年くらいの間にこれほどの相談件数があがっておりますところを見ますと、やはり出かせぎ者の問題はきめこまかく対処していかなければ解決しないんじゃないかというふうな感じが強いわけでございます。不十分でございますが、出かせぎ対策についてはようやく緒についた段階ではないか、引き続いて内容を充実させていきたいと思っております。
  39. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 出かせぎ労働者が建設業関係に一番多く就労しておるという事実にかんがみまして、出かせぎ労働者の対策も主として建設業を中心に行なってきておりますが、遺憾ながら賃金不払いに関する限りは、建設業の不払い件数はやや漸増の傾向がございます。たとえば、昨年九月の件数を申し上げますと、千六百十三件というように三十九年の九月の千三百七十一件に比較いたしましてかえってふえておるというまことに遺憾な傾向にございます。労働省といたしましては、たとえば、建設業の定期監督の実績を申しますと、約四万五千事業場を年間に監督いたしておりまするので、出かせぎ労働者の賃金不払いにつきましても、その監督を通じましてできるだけ調査いたしておりますが、しかしながら、率直に申しまして、出かせぎ労働者が就労する場合の契約の内容が明らかでないとか、かなり不明確な点があるというのが実態でございますので、賃金不払い事件が発生しました場合に、その契約の内容等をめぐっていろいろ問題があるということを私どもは遺憾に思っておる次第でございます。また、事件が発生いたしました際の監督所の招致をする場合も申告に基づくものが圧倒的に多い。しかも各先生方はじめ非常な幅広い方面からのお知らせをいただきまして監督活動を展開する。しかもそのときには本人は国に帰っておるといったようないろいろな事情がございまして、賃金不払いの問題の解決についても遺憾ながらついには司法処分をもって処せざるを得ない。で、結局は払えなかったというような件数もありますことを私どももはなはだ遺憾に思っております。  そこで、昨年来特に指導上心がけましたのは、元請に払ってもらう、いわゆる法律上の責任はありませんけれども、今後元請業者としてそのような下請業者を使うにあたっていろいろな考え方もあるであろう。一つの社会的責任として元請のほうで何とか処理できないかということで実際上元請にかわって払っていただいておるというケースが少なくございません。そのような点から、賃金不払いの事件を起こした個々の零細下請業者のみならず元請も一体として考える必要があるのじゃないかということで、建設省にも連絡をとりまして何らかの形でそういう体制の実現を要請しておったのでございますが、考えられます二つの型として、第一は入札制度の合理化対策の一環として、賃金不払いをしばしば起こすような業者に対しては入札に参加させないというような処置の強制と申しますか圧力というものを考えるべきじゃないかという観点から、申し入れをいたしてまいっておりまして、これはすでに昨年十二月二十日の中央建設審議会の勧告におきましても、労働福祉の状況の主観的査定を要素に入れることとし、その具体的な内容を次官通達で指示をする。その次官通達の中に賃金不払い状況をその要件として示すということになってございますが、なお特殊な契約によりまして下請の賃金不払いを元請がかわってできないか、それが賃金不払い解決に一番有力な手段でありまして、その点を強力に申し込みましていませっかく折衝中でございます。そのような形でいろいろな手段を講じまして、この問題の解決に当たっておるところでございます。
  40. 小林進

    小林分科員 安定局、基準局両方のこれに対するお話を承って感ずることは、やはり安定局と基準局との連絡がまだ密にいってない。第一に安定局に言わせますと、あなたは大体六十万とおっしゃる。われわれのそれはざっとの集計で、調査機関があるわけじゃないんだが、われわれは百五十万と踏んでおる。もっと数多いかもしれません。農林省のに至っては問題にならぬ。しかし安定局のほうは御承知のとおり失業保険を基準に考えられておる。出かせぎ者は全部失業保険に入っているか。入ってない。入ってない根本は何かというと、これは、一番問題は縁故あっせんなんだ。出かせぎの縁故就職、縁故あっせん、これがまた一番不明朗だし問題を起こす根本なんです。それを何とかつかむように職業安定局努力をしてもらいたい。そのためには、各出先の市町村と各県なんかでも進歩的な県はもはや中央に出かせぎ対策のセンターみたいなものを置いて県内から来る者をあらゆるところでつかみながら、そういう人たちの不幸を救済するように努力を見せているところもありますけれども、私はそれをひとつ安定局にやってもらいたかった。一体なぜ職業安定局の窓口を通さないでそういう縁故あっぜんや縁故就職をするかというと、もろもろの理由はあります。日本の人情の機微、頼まれたから行くという話もありましょう。それがその中の主要な原因ですが、一つはやはり課税なんです。税金を総合所得で取られる。若干総合所得があるでしょう。それに加えて出かせぎのものも加えられて総合課税をやって取られるから、こういうことを忌みきらってなるべく職安や公的な登録をしないで出かせぎに出る者があることが問題の大部分で、これを何としてもつかみなさいということを私は言っているんだが、いまのお話の中にはどこにもそれが出ていない。そこでそれをつかむと同時に、いま一つは出かせぎ者というものは生活が二重になるんですよ。妻子を離れて郷里にも一つの生活があり都会の中にも生活がある。それだから私はこういうものは所得税、地方税は免税にしなさいと言うんだ。それくらいの努力をしてやらなければ——何も生活のゆとりがあって税金も十分納められる者がわざわざ妻子眷族を離れ子供をあとにして四カ月や半年で出てくるわけがないんだから、そういうものの税金は非課税にするだけのやはり親切さがなければならぬ。そういう努力をされたかされないか。いいですか、安定局長、そういう市町村の縁故者等の就職等をキャッチするために一体努力をされたかどうか。課税の問題に対して大蔵省のどこですか、主税局ですか——主税局、いらっしゃいませんが、あれは悪いところだから、それはまたあとで大蔵省に言って教育をすることにいたしますけれども、そういうことを労働省は積極的にやはり動いていかなくちゃならないのです。そうして出てくるものの形をとらえておいたら、それを今度は、あといま言われた労働基準局と横の連絡をとってすぐできることですから——どこの飯場のどこの職場にどれだけの者が働いているかということは、すぐあなた方は同じ省内で連絡をして、その連絡に基づいて基準局が常時監督をしてもらえば、手がなければ人員をふやして常時監督する。私は単なる賃金不払いの問題ではないと思う。行ってみなさい。飯場なんというものは人間の住む場所じゃないですよ。労働基準法八時間労働なんというものじゃない。夜から昼から働いて、そして犬か豚の住むような豚小屋に住んで生活をしているじゃないですか。都会のまん中で、なぜあなた方それを見ようとしないのか。そういうことも厳格にやってもらわなくちゃならない。もはや出かせぎは出かせぎじゃないのですよ。重要な都会における労働力の源泉ですから、臨時的な出かせぎ対策と言わずに、恒久的な、根本的な対策を立ててもらわなければならぬ。いみじくも職安局長はようやく緒についたばかりだと言われた。緒についたばかりと言われればしようがない。何をもたもたしておるかと言うことよりしかたがないけれども、私は早くこれを完成して、りっぱなものにしていただきたいと思うわけであります。時間がありませんので、この問題はひとつ御努力願うことにいたしますが、やってくださらぬと来年またやりますよ。一年間の猶予を置いてまたやりますから……。  いま一つは失業保険の問題です。失業保険、これは古い話だけれども、三十九年の十二月五日に失業保険の打ち切りと法改正の意図を前任者の石田さんが明らかにされた。それから同じ三十九年の十二月、これも十二月の何日でしたか、保険法の改正を国会に提出をするなどということも労働大臣が言われた。これはそれっきりどうも消えてしまったようだが、現実に地方を歩いてみると、まことに至厳な行政が行なわれて、現実に法改正が行なわれたような形が行政指導の面にあらわれておりますけれども、これは私は非常に行き過ぎじゃないかと思っておるのであります。最近の推移をひとつ承っておきたいのと、いま一つは、労働大臣、これはあなたの仕事なんだけれども、八十七号批准に基づく公務員制度審議会のその後の経過、一体ILO八十七号を批准して、その効力の発生する一年目は何月何日ですか。それまで公務員制度審議会のこういう審議の過程で間に合うのか間に合わないのか。あなたは前田委員会にまかしたんだから、あとは私は責任がないなどとのほほんとして、あるいはゴルフかなにかやっているかもしれませんが、そういうような問題じゃない、これは国際問題ですから。これはいまの公務員制度審議会に入れられておる問題を、やっぱりあなたが中心になって、早くこの問題を完成しなくちゃ、これはたいへんな問題だということを私はおそれているわけでございますけれども、以上二つの問題。   〔倉成主査代理退席、竹内主査代理着席〕  もう時間がないから、いま一つ、あなたは最賃審議会に諮問されたが、そのときにあなたは特にことばを継いで、最賃法は、最賃に関するILOの二十六号に当てはまるようなひとつ答申をしてもらいたい。条件つきのようなことを労働大臣はおやりになったが、一体あの条件の中心をなすものは何ですか。いわゆる業者間協定を廃止することでしょう。賃金の原則は、労使対等の原則に基づいて賃金を決定するというのは、これは国際法の定めた原則だ。ところが、私どもが反対するにもかかわらず、ああいうごまかしの最賃法をあなたはつくられて、そうして業者間協定、労働者が干渉しない、業者だけで労働者の賃金を適当にきめるというごまかしのいわゆる最賃法をおきめになった。それが押せ押せできて、とうとうあなたは予算委員会で多賀谷君に恥をかかせられるようなああいう結果になって、めぐりめぐってきたのでありますけれども、根本はこういう労使対等の原則を一体最賃法の中に入れる考えを労働省は持っているのかいないのか。それからいま一つは賃金にしても地域別だの、職業別だの、産業別だのというごまかしでなしに、全国一律の最賃制を確立する意思があるものかどうか。あなた方は新しい最賃法の改正の中に入れる意思があるかどうか、以上一、二、三点をひとつ御回答をいただきたいと思います。
  41. 小平久雄

    小平国務大臣 この失業保険の最近の状況につきましては、後ほど局長から答弁を申し上げますが、とにかくこの法そのものの改正ということを、近くあるいはこの国会に提出するというような考えはいまありません。しかし、これは将来検討ということは、どの法律でも当然でしょうが、少なくともこの国会に提案するということは考えておりません。  それから公務員制度審議会の関係ですが、これも万事先生承知のとおりでございまして、すでに数回開かれたわけであります。そこで問題は、要するに労使関係の基本に関する問題と同時に、また例のたな上げ部分に対する考え方というものと、両方いま諮問をされておるわけですが、これが今後どういうときに答申になりますか、もちろんわれわれの立場からいたしましたならば、どちらも早いにこしたことはないのですが、しかし基本の関係というものは、少なくともこれは私は常識的に考えて、一年たつというのは六月十四日でございますから、基本的な問題に関するまでの、この答申がおそらく六月十四日までにはなかなか困難だと私は思います。ただ、しかし問題としてはそのたな上げ部分に対する答申というものは、われわれはこの期限までにはぜひ出していただきたいものだ、こういう期待を持っておるところでございます。
  42. 有馬元治

    ○有馬政府委員 法律の改正は大臣が御答弁いたしましたように当面いたしませんが、運用につきまして御指摘のように昨年の六月農業に対する任意適用の基準というものを改めまして、原則的には他産業と同じような季節循環的解雇を繰り返さない事業所に対しましては、他産業並みの適用、したがって離職率をあらかじめ予定するということなしに、もし方やむを得ず全員解雇になれば、全員に支給する、他産業並みということを原則といたしました。ただその前提としては先ほども申しましたように、季節循環的に毎年繰り返して解雇をするということがない事業経営の場合にのみ原則を適用する。そして本来失業保険の原理からいったらおかしい季節循環的な失業といいますか、予定された失業に対しましても、三年前から適用をした経緯がございますので、三年前から適用をして、すでに離職率五〇%のいわば既得権を持っておる事業主に対して、暫定的にこれを踏襲する。また、新規にどうしても季節循環的な解雇を前提として保険の適用を認めてもらいたいという場合には、離職率を二五%に切り下げる。これは五〇%の既得権者と比較しまして、非常に酷ではないかという御意見も強いのでございますけれども、失業保険は、御承知のように、失業率受給率が三%前後で計算をいたしておりますので、あらかじめ予定された離職率をもって律するということはもともとおかしな話で、これは暫定的、例外的な措置としてやむを得ずいまのような措置を講じたわけでございます。農業も、林業も、漁業も、第一次産業がすべでそういう他産業並みの事業経営が年間を通じてできるという体制をつくることが先決でございます。その暁には、他産業並みに失業保険を適用していきたい、当分はいま申しましたような原則と例外の二本立てでもって運用してまいりたいと考えております。
  43. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 最低賃金制度のあり方と、ILO二十六号条約の問題につきましては、先ほど先生指摘のとおり、二月十九日の中央最低賃金審議会にはかりまして、最低賃金法が同条約に適合するよう答申を賜わりたい云々というふうに申し上げた次第でございまして、御指摘のとおりでございます。その際、業者間協定はどうなるのか、廃止するかいなかということでございます。この点につきましては、御承知のように、ILO二十六号条約の第三条が特に問題になるわけでございまして、この第三条では、関係労使が平等の数及び条件によって最低賃金制の運用に参与すべきだということが定められておりますが、現行最賃法の業者間協定による最低賃金方式がこれかどうかということでございます。これについては、この方式による場合であっても、三者構成の最低賃金審議会の審議によって決定されるわけだから、同条約の労使平等参与の趣旨には反しないという見解があります。これに対して、御指摘のように、この方式は抵触するのではないかという見解があるわけでございます。したがいまして、労働省といたしましては、そういう適合する適合しないといったような見解が存在しますことを前提に置きまして、この問題も検討していただきたい、かように述べておるわけであります。廃止するかいなかという点につきましては、いま御検討いただいておりますので、私どもはこれ以上申し上げることは差し控えさしていただきたいと存じます。  なおまた、全国、全産業一律方式の問題につきましても、かねて昨年八月に最低賃金制のあり方につきまして、基本的検討を諮問いたしました際に全国、全産業一律方式、産業別方式、職種別方式等、いろいろの意見もありますので、わが国の実情、今後における産業経済並びに雇用労働の動向などを幅広い視野から検討していただきたいというふうに、すでに検討をお願いしておるような次第でございます。今後いろいろ論議が活発にかわされ、だんだんと結論が出ると存じておるような次第でございます。
  44. 小林進

    小林分科員 まだいろいろ御質問したいこともありまするし、答弁の中にもまだ私の満足しない疑問点もありますけれども、他の質問者も待っておられますので私はこれで一応質問を打ち切りたいと思います。
  45. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 次に加藤進君。   〔竹内主査代理退席、主査着席〕
  46. 加藤進

    加藤(進)分科員 最初に、先ほどの小林さんの質問に続きまして、最低賃金制の問題についてお尋ねをしたいと思います。  去る二月九日に予算委員会労働大臣は次のような答弁をしておられます。「中央最低賃金審議会に、現行最低賃金法がILO二十六号条約に適合するよう、すみやかに、その改正案を求めるため、諮問をいたします。」 そこで現行最賃法のどこを改正されようとしておられるのか、労働大臣の所見をお尋ねしたいと思います。
  47. 小平久雄

    小平国務大臣 御指摘のとおり、先般予算委員会であのような事情がございました。私はその際御答弁を申し上げましたところに従って、さっそく二月の十九日に、あそこで答弁申し上げたと同じ趣旨のことを中央最賃審議会に御諮問を申し上げたのであります。そこで、どこを直そうとしているのか、こういうお尋ねでございますが、先ほど局長からも御説明申し上げましたとおり、一部には現行の最賃法もILOの二十六号条約に適合するのだという見解もございますし、いや適合しないのだという見解もあるわけでございます。そういう両論がございますので、そういう不安と申しますか不確定な状況でないような最賃法というものはどうあるべきかということを御検討ください、こういっておるのでありまして、こちらからここを改めろ、あそこを改めろ、こういうことをいま労働省自身が考えておるというわけではございません。
  48. 加藤進

    加藤(進)分科員 一言をもってするなら、いまの最賃法ではILO二十六号条約をも批准できない、したがって、そのILO条約の批准に何とかつじつまを合わせるような程度内容の改正だ、こういうふうに私には受け取れるわけでございます。いまの最低賃金法というのは、その制定以来すでに四百万をこえる労働者に適用されている。業者間協定賃金なるものがすでに該当適用者の九六%ですからほとんどですね。でありますけれども、そのうち八二%以上の労働者が一体どんな賃金であるか。一日わずか四百五十円以下、月額一万一千二百五十円、これは二十五日就労と考えてです。そのような低賃金である。これは事実です。現行最低賃金法は、このような低賃金をてことして日本の全労働者に安い賃金を押しつけるという作用を現に及ぼしている。こういう最賃法そのものでありますから、多少の手直し程度でこの本質は変わるものではないと私は考えております。そこで私は政府に、こういう低賃金を押しつけるような現行の最賃法の最低賃金を今後とも続けて、低賃金を引き続き労働者に押しつけていかれる気かどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  49. 小平久雄

    小平国務大臣 私は現在の最賃法が労働者に安い賃金を押しつけておるというようなことはないと、かように考えております。と申しますのは、現在の最賃の目安というものは、御承知のとおり、三十九年に最賃審議会の答申に基づいてきめたものでございますが、その結果はどうであるかと申せば、適用者等はいま先生がおあげになったとおりでございますが、この最賃の決定前に最低賃金額二万円であった労働者の適用労働者数の中に占める割合というのは一〇%、一割以上あったわけでございます。さらにまた、この最賃をきめた結果、最賃未満であった労働者の賃金というものはおおむね五尾ないし二〇%上昇した、こういう結果に相なっておるのでございますから、言われるがごとく低賃金を押しつけたというようなことはどうも当たらぬのじゃないかと思います。しかしながら、いま申しますとおり、現在の目安というものは三十九年の答申でございまして、その後情勢の変化もございますので、労働省といたしましてはこの目安の改定をやはり最賃審議会にお願いしておったのですが、二月に入りまして御承知のとおり最近答申がございました。これはいま金額は申し上げませんが、今度の場合ですと、甲地域におきましては、目安の中央値をとりまして上昇率が一二%、下限をとりました場合には上昇率が一七・五%、こうなっています。乙地域の場合にはそれぞれ一二%及び一六%、丙地域の場合には一一%及び一四%、こういうふうに相当のアップと相なっております。でございますので、労働省としましては、今後、この新しい答申を得ました目安、これにさらに最低賃金というものを改めていくように極力指導をいたそう、いまさようにいたしまして手配をいたすところであります。でありますから、現在の最賃法が労働者に低賃金を押しつけたというようなことはいささか誤解ではなかろうかと考えるのであります。
  50. 加藤進

    加藤(進)分科員 ですから、私はただ議論でなしに数字を申し上げたわけです。現にあなたたちの資料によっても八二%以上の労働者は一日四百五十円以下、こういう賃金であるという事実は、もう厳たる事実ですから、この事実をもあえてそれでも決して安くないというふうにおっしゃる労働大臣答弁については、私は絶対に納得いかない。  それからいまお触れになりましたような答申が現に十九日に出ております。しかしこの答申なるものもその内容は驚くべきものです。一つには、こういう答申をして改正の目安を出しておるけれども、「すでに決定されている最低賃金については、それが決定または改正されてから一年間は改訂を猶予することができる」一年間は従来のままでいいと書いてある。それからまた、こういうことがすぐにできない困難な事態については段階的に目安に到達させることを考慮すべきである、だから、達しなくてもいいと書いてある。それから最後に、「最低賃金で、段階的な方法によってもこの目安に適合することが困難なものについては、廃止することもやむをえない」と書いてある。こういう答申の内容でいささか名目的に賃金が引き上げられるなどと考えてみても、実態は何ら変わらない。私はそう断言していいと思う。  次にお尋ねしますが、現行の最低賃金法に基づく賃金協定というものの実態は、先ほどもお触れになりましたけれども、ほとんどが業者間協定、賃金決定が何らこれに直接関係する労働者を参加させないでやられている、全く排除されている、こういう点であります。そもそも賃金というものは、これは労働基準法においてもまた労働組合法においても現に規定されておるように、労使は対等で決定されなくちゃならぬ。しかも、その交渉にあたっては団体交渉の権利が保障されなくちゃならぬ。これが私は侵すべからざる大原則だと思うのです。ところが現行の最賃法なるものは、その原則を全く踏みにじっておることは明らかです。したがって、その意味では最賃法という名前には値しないものだ、こう見てもいいと私は思っている。また、そればかりでなく、政府の特に労働省の部内においても、業者間協定をきめるにあたって、まず労働基準局がこの目安をつくるのに介入し、その指導があって府県の最低賃金審議会にその金額の目安をつくらしておる、これが現実じゃないですか。そしてそれに基づいて賃金をきめる。こういう状況に至っておる。こういう現実があります。しかも、労働省の賃金研究会の中では、かかる地域別の基準賃金をきめるだけではなく、今後年齢別の基準賃金をもきめようという動きがある。政府は、このような最低賃金法によって、四百万をこえる未組織労働者、これをことし中には五百万にされようと努力しておられるが、こういう未組織の労働者を低賃金でくぎづけしている。また別の面からいうならば、日本の組織労働者の三分の一に当たる国公、地公、公労協関係の労働者からはスト権が奪われている。人事院の勧告や仲裁裁定で賃金は押えられている。その結果、これが日本の全労働者を低賃金にする一つのよりどころであり、てこになってきておる。その意味において、政府の言われる現在の最低賃金法なるものは世界に類例のない低賃金くぎづけ、こういう制度であると断言しても私はいいと考えております。最低賃金の名できめた目安に基づいてこれを標準賃金とし、しかも先ほどの労働省賃金研究会の方向とこれが結びついて、最低賃金法という名前で実は最高賃金がきめられている。こういう状況に立ち至っておるところを見るならば、これは戦前の賃金統制令と一体どこに変わりがあるのか、こういうふうに言わざるを得ないと私は考えておりますが、その点労働大臣の所見をお伺いしたい。
  51. 小平久雄

    小平国務大臣 せっかくのお話でございますが、賃金研究会等で年齢別の賃金をきめようなどという動きはございません。どこからそういう情報をおとりか知りませんが、そういうことはございませんから申し上げておきます。  先生は、もっぱら、最賃法はどうも賃金のくぎづけだ、こう言われるのですが、先ほど申しましたとおり、現行の最賃法でありましても、いままで最賃以下であったものが少なくも最賃のところまで上がるとか、あるいは全般的にもある程度の賃金アップになったとか、こういう事実があるのでございます。しかも、なお、言うまでもなく最賃法はどこまでも文字どおり最賃でありまして、いわばこれは一つの最低の基準でございますから、そこにどこまでもストップしているわけでももちろんないわけですし、どうも先生のおっしゃるところを私は理解いたしかねるのであります。
  52. 加藤進

    加藤(進)分科員 ここで十分な議論をする時間はございませんが、特に最後に、労働者の要求しているのは、いま政府の考えておられる現行の最賃制でもまた多少の手直しをやられようとしている賃金法の内容でもない。労働者と日本の勤労者人民は、とにかく働いて生活するという権利がある。政府と資本家にはこれを保障するという責任がある。こういうことは憲法が十分に保障した権利でありますから、現行法のようなにせ最賃制は直ちに廃止すべきである。賃金の額は労使対等の立場での団体交渉によって決定さるべきである。この原則によって決定された賃金をすべての労働者に適用する最賃法こそ、政府がその責任においてこれを実施すべきである、こういうことを私は強く政府に要求するものであります。  次に、低賃金の実態について御質問申し上げたいのですが、いま日本の全労働者がどれほどの低賃金で苦しんでいるか、私はここに政府機関の職員である裁判所で働く労働者の例を一つとってみたいと思います。大学卒の事務官で五年二カ月勤続の二十七歳、手取りは一万六千八十三円、同じく大学を卒業しておられて三十五歳の事務官で十五年七カ月勤続の四人家族の労働者は三万円、これは昨年十月現在ですから、その後多少の変化はあると思いますけれども、この数字の基本は変わらないと思うのです。これはもちろん政府機関や公務員の方たちばかりではありません。民間でも同様でありまして、賃金水準の高いといわれるはずの東京新宿のある大きな印刷工場の労働者でも、二十五歳の独身で二万七百九十円、三十五歳四人家族で三万千七百二十円という低賃金です。私はここで念のためにお聞きしたいのは、労働大臣が、いよいよ物価は上がる、こういうさなかでこのような賃金で一家を養い、労働者は食っていけるとお考えかどうか、この点をお聞きしたい。
  53. 小平久雄

    小平国務大臣 賃金がその人の能力に応じて適正に支払わるべきであるということは、これはもう理屈として当然だろうと思います。ただ先生のお尋ねは、いまおあげになったような例の方がこういうことで食べていけるかと、こういう御質問でございますが、まあ食べていけるかいけないかと言われても、現実の問題としては、おことばを返すようですが、どうやらといいますか、何かくふうなさって食べていることは事実なんだろうと思う。ただどういう食べ方をしているかが実は問題なんだろうと思います。食べていることは、これは事実なんだろうと思う。その内容がどういうことかということなんだろうと思う。われわれとしては一口に賃金と申しましても、これはいろいろな要素から決定をされておることですから、これがはたして一がいに妥当か妥当じゃないかと、ここで例にあげられたような場合を申し上げるわけにはいかぬと思います。
  54. 加藤進

    加藤(進)分科員 これは私は笑いごとじゃないと思うのですよ。この例は決して一、二の特別な例をあげたわけではない。どうやって食っているか、現に食っているじゃないかと言われる。じゃどうやって食っているかということについて、私はあと一、二例をあげたいと思うのです。  現在の国鉄の労働者の七割——これは国鉄労働組合の調査によりますけれども、七割は内職しております。これは国鉄だけじゃないです。若い青年労働者のほとんどは何をやっているか。昼に何を食べているか。インスタントラーメン、昼飯抜きですよ。こうして働いている。からだを休めるはずの公休日にもアルバイトに出ているんです。これで食っておるのです。多くの労働組合の家計調査の結果をごらんなさい。八〇%の労働者とその家族は、家計の赤字に追われています。内職、共かせぎ、借金でやっと暮らしをささえております。こういう調査が現に出ているということは、これはどうしても知ってもらわなくちゃならぬです。これで一家を養い、食っていけるのかどうか、私はここを聞いておるのです。私はあなたも同感であろうと思いますけれども、この状態ではならぬと思うのです。だからこそ、いま全国の幾百万労働者が高物価に反対し、賃金の大幅引き上げを要求して、現在春闘に立ち上がっておることは当然じゃないですか。ところが、このような状態にもかかわらず、日経連がつい最近御承知の賃金白書を発表いたしました中には、春闘相場など考慮する必要はない、ゼロ回答もやむを得ない、こういうことをはっきりと言っております。これこそ私は独占資本が今次春闘にあたって労働者の要求を全く無視し、労働者に挑戦するという態度を明らかにしたものだと断言できると思うのですが、政府はこのような独占資本のいわば賃金ストップの政策に対して、これをあくまで支持され、擁護されるのかどうか、この点労働大臣にお尋ねしたい。
  55. 小平久雄

    小平国務大臣 われわれとして、独占資本の利益を擁護しようなどという、そんなけちな考えで臨んでおりません。
  56. 加藤進

    加藤(進)分科員 きわめて簡潔ですけれども、私はそんな御答弁では納得できないのです。去る九日の予算委員会で佐藤総理はこういうことを言っておられます。賃金は上がったが物価も上がった、これじゃ何のことかわからないじゃないか、だから、しばらくしんぼうしても、この際物価を鎮静さすよう一そう協力してほしい、こう言っておられます。これは物価値上がりの原因がいかにも労働者の賃上げにあるように言っている。そうして政府の言う物価安定のために賃上げは待てと言う。これが独占資本の意向を代弁しないと一体どうして言えますか。このことばの中に賃上げを押えようとする重大な発言の意味があると思うのです。私はこの点について総理大臣にお尋ねするわけにまいりませんけれども労働大臣にかわって御答弁を願いたいと思います。
  57. 小平久雄

    小平国務大臣 物価と賃金の関係もずいぶん論議されておりますが、政府が終始一貫申しておりますことは、単純に賃金の上昇が物価上昇の原因である、こう割り切った答弁はどなたもいたしておらぬと思います。ただ、そうは申しましても、生産性のあげにくい中小企業の場合であるとか、あるいはいわゆるサービス関係の場合であるとか、さらに申せば、農業あるいは林業等の場合であるとか、そういう場合には、特に最近の雇用情勢はいわゆる人手不足、特に若い者を中心としての人手不足、こういう関係から、人を確保するたてまえから、どうしても賃金を上げざるを得ない。しかしながら生産性はあげ得ない。そういう関係のある場合にはどうもやむを得ずそれが物価に反映をせざるを得ない。またそういうことも事実存するであろう、こういうことを申しておるので、一がいに賃金を押えるべきだというようなことは、私は総理をはじめとして各閣僚ともどなたも申しておらぬと思うのであります。したがって、いま先生が御指摘総理答弁も、別段独占資本を擁護するためにそういうことを意図しているとは私は解しません。
  58. 加藤進

    加藤(進)分科員 私はここに労働省の調査の毎月勤労統計調査を持っておりますが、これによりますと、三十人以上の企業の労働者の実質賃金はどうなっているか。昭和三十五年を一〇〇として、昨年一〇〇を割った月ですよ、実質賃金の低下した月、これが何と二月、四月、五月、九月、十月、五カ月ある。そうしてやっと一〇〇に到達したという月は、これは夏期手当をもらったときだ。こういう実態が明らかです。明らかにこれは物価の高騰に対して追いつけないという実態数字をはっきり示しておると私は考えております。こういうあなたたちがやられた調査に基づいてでも、いかに労働者が高物価に悩み、低賃金に苦しんでおるかということは、はっきりしておると思うのです。私は、一、二の例その他じゃなしに、この実態をはっきり踏んまえて、春闘で掲げた労働者の大幅賃上げの要求に対して、労働省みずからこれを支持するような立場に真に立っていただかなくちゃならぬ、こういうことを申し上げたい。
  59. 小平久雄

    小平国務大臣 基本的には、私どもはもちろん、労働者の福祉を向上するということが使命ですから、そういう立場に立つことは、あらためて申し上げるまでもないと思うのです。  先生のいまの、昨年三十五年に比べて実質賃金が下回った月があったという御指摘でありますが、それはそういうことが出ることが実はあるのです。これは出ることがあると言ってはおかしいのですが、その場合は先生、その基準になる三十五年の平均というものは、これは夏期手当であるとか年末手当とか、そういうものを一切含めた年間の所得の月の平均をとりておるわけです。ですから、年末なりあるいは夏期手当なりその分が入った平均ですから、それを基準にして、そういうものが入らない月と比較しますから、どうしても低くならざるを得ない。特に昨年は、たとえば春闘などにおいて決定がおくれたとか、そういう関係で、ベースアップの分が入らぬとか、これは後になってバックペイがされておるわけですが、そういう関係がありますので、個々の月をとりますと、特に実質賃金において三十五年の平均と比べると、それを下回る、こういう特殊なことが数字の上であらわれる、こういうことなんですから、その辺のところも、もとの三十五年の基準というものを、これはよくその内容を御理解願って統計をごらんいただきたい、こう思うわけです。
  60. 加藤進

    加藤(進)分科員 いま弁解された程度のことは、私ももちろん頭の中には置いております。しかし、にもかかわらず、労働者の実態に即してやられた皆さんの統計なるものの数字が、冷酷にこのような状態を示している。この点について私は、労働大臣とし、労働省としては、労働者の状態についてもう少し真剣な配慮を加えて、労働省の行政を続けられなくてはならぬ、やられなくてはならぬということを一言注意をしまして、次に移りたいと思うのです。  いま御承知のように、不況を口実として、いよいよひどい合理化政策が現在強行されております。私はその点について御質問を続けたいと思います。  政府は、昨年一年間に、炭鉱の首切り合理化計画によって、どれだけの炭鉱労働者が解雇されたと思われるか、また合理化による労働災害というものが、どの程度の死者、重軽傷者を生んだと思われるか、その点はひとつ数字を明らかにしてもらいたい。
  61. 有馬元治

    ○有馬政府委員 四十年度の炭鉱離職者の数でございますが、新規に発生をいたしました離職者が一万二千七百名という実績でございます。
  62. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 合理化に伴う災害発生状況は、労働省としては把握いたしておりません。合理化によるかどうかという原因は、災害発生原因とは直接結びつかない場合が多うございますから、合理化に伴う災害発生件数というのはございませんが、昨年一年間の統計で見ますと、休業一日以上の災害を受けた労働者の数が約六十九万五千人、前年度は七十三万でございましたので、相当な数ではございますが、昭和三十二年以来初めて七十万人を割ったという数字になっております。その中で死亡者は約六千百人、それから死亡者以外の負傷者の中で休業八日以上の重傷者数は、約四十万三千人、かようになっております。
  63. 加藤進

    加藤(進)分科員 まだ私のお聞きしないような点も数字が出されたわけですが、ここで私、炭労の調査の結果を申しますと、昨年一年間に炭鉱を解雇された数は三万五千八百三十二人、それから災害による死者六百十二名、重軽傷者は実に三万九千六百六十一名、こうなっております。これだけは私は実際の数字として労働省も頭に入れておいていただきたいと思うのです。しかし、これは決して炭鉱だけではありません。今日中小企業は言うに及ばず、大企業でも、首切り合理化が次々に広まって、失業者の数は増大の一途をたどっておりますし、また、職場で働く労働者には、労働条件は悪化し、また権利も剥奪されるなど、労働者は、生活苦の上に、生命と健康さえすり減らして働いておるというのが現状だと思うのです。ところが、日経連を引き合いにいたしますと、前田専務理事のごときは、いまわが国の企業は平均一五%程度の余剰労働力をかかえている、不況に対処して人員の合理化を進める必要がある、こういうふうに公言しております。これは米日独占資本がみずから招いた不況の犠牲をすべて労働者に転嫁して、一段と首切りを強行しようとしていることをはっきり示しておるものだと思います。小平労働大臣は、年頭の所感の中で、こう言っておられます。産業、企業の合理化の実情に応じて雇用政策を迅速かつ機動的に講じていく、こういうふうに言っておられますが、この意味するところは、政府が独占資本の進めておる合理化、首切りを支持して、これに協力されるということを、別のことばで表現されておるのではないか、こういうふうに思いますが、その点、労働大臣の所見をお聞きしたい。
  64. 小平久雄

    小平国務大臣 どうも加藤先生のは、すべて私どもがやることが独占資本に奉仕すると、こう解されがちなので、はなはだ私は心外でございます。不幸にして職を失われた方、あるいは新たに職を求められようとする方、こういう方も相当あるわけです。それで私は、何も首切りを奨励するわけでもなく、あるいは希望するわけでも、もちろんございません。ございませんが、しかし、産業自体がこれは時代とともにやはり推移することも、これももう申し上げるまでもないことであります。これは、資本主義の国であろうと、社会主義の国であろうと、共産主義の国であろうと、当然だろうと思います。その間どうしても職業を変えなくちゃならぬ人も出てくるわけでありまして、そういう労働者諸君に対して次の職場というものをなるべく早く与え得るように、次の職につき得るように世話をするのは、私ども労働省を担当する者としては当然の責務だと、私はさように考えております。
  65. 加藤進

    加藤(進)分科員 したがって、独占資本が現在進めておる合理化をともかく認めて、これを前提にした上での労働政策であるということは、私ははっきり言えると思うのです。政府は、こういう米日独占資本の進めておる首切り合理化には、実は直接は関係がない、こういうふうに言おうとしておられるわけでありますけれども、そもそも、たとえば炭鉱合理化というのは一体だれが推進したのか。これこそ、政府がアメリカに従属して自由化を進め、アメリカ石油独占によるエネルギー支配を許しながら、炭鉱取りつぶし政策をとり、そのために法律をつくって、国家権力によってこの合理化を強行したものではありませんか。それはひとり炭鉱のみではなく、各産業にわたって今日の合理化攻撃というものは、ただ個々の資本家の攻撃ということではなく、米日独占資本の基本政策として、しかも政府はこれを国家権力でささえ、さらにこれを推し進めている、こういうのが実態ではないのでしょうか。炭鉱では、このために労働者はわずかこの五年の間に二十三万から十一万に激減しております。それだけではなく、職場に残った労働者は、一そうひどい労働条件によって働かされている。保安は無視され、相次ぐ炭鉱爆発などという災害を招いたことは御承知のとおりです。こうしてほとんどの産業にわたって、首切り合理化政策のために失業者の数は、労働省の統計からいっても、月々一万人以上昨年同月に比べて増加しておる、こういう実態であります。政府のいう雇用転換というのは、炭鉱合理化に伴い行なわれたあの炭鉱離職者政策を全産業にわたって拡大しようという程度以外の何ものでもないと思いますけれども、その点はいかがでございましょう。
  66. 小平久雄

    小平国務大臣 エネルギー革命といわれるくらいの時代であり、特にわが国としては、いわゆる貿易立国、そういう立場でいかなければならぬ、こう考えられますことは、これはほとんど国民の全部といってもいいくらいの人が、そういう立場であろうと思います。そういう際に処して、炭鉱政策というものが、大筋においては、そういう立場から進めてこられたものだと私は理解をいたしております。でありますから、政府が権力をもって炭鉱を無理やりに整理をして、そして多くの失業者を出したんだと、どうもそう簡単に割り切った見方というものは、私はいかがなものであろうかと思います。  さらには、炭鉱でやったと同じような考えで、あらゆる産業に合理化を推し進めて失業者を出していくのだ、そういう立場でやっているのではないかという御趣旨のように受け取れましたが、私は、産業全般に、これはひとり炭鉱ばかりでなく、いま申しますとおり、わが国の経済自体が、とにかく貿易を通じて維持し、発展しなければならぬ、こういう立場にある。そうでなければ、国民の生活も維持できませんし、国民の働く場も確保できませんし、そういう立場に置かれておるのですから、やはり原則的にはあらゆる産業で合理化というものを私は当然進めるべきだと思います。だからといって、安易に労働者の整理をやる、こういう経営者の考え方というものは、私はもちろん賛成いたしませんが、しかし、大筋としては、私はいま申すとおりだろうと思う。  そういう過程にあって、先ほど申しましたとおり、どうしても職をかえざるを得ないという人が出てまいった場合には、われわれの当然の任務として、なるべくすみやかに次の職場を与えるように最善の施策を講ずるというのが、私どもの任務だ、かように私は心得ておるわけであります。
  67. 加藤進

    加藤(進)分科員 時間がきておるようでございますから、最後質問を一つ申し上げて、終わりたいと思います。  現在の合理化政策の結果、どのように労働者にとって残酷なものであるかということを端的に示すものは、最近頻発しておる労働災害そのものだと思うのです。日立造船の川崎において、LSTの爆発事故がありました。しかも次いで石川島播磨名古屋造船で、造船界に戦後最大の労働災害の起きた原因は、納期を早めろという会社の命令によって、火気厳禁の場所で火を使う作業が強行されたためだとはっきりしております。独占資本の利潤追求のために、人命さえ犠牲にして省みない合理化政策の結果であることははっきりいたしておりますが、労働災害が発生するたびに、政府は常に遺憾の意を表し、災害根絶のために努力するという口約束はされますけれども、労働災害はあとを絶たないばかりか、ますます増大の一途をたどっておるのであります。政府の統計でさえ、労働災害によって年々百万人以上の障害者、六千人をはるかにこえるような死者、すなわち日々二十名近い労働者が災害によって死んでいるこの事実を、はっきり私たちは認める必要があると考えるのであります。  そこで、この頻発する労働災害を根絶するただ一つの道は、労働者の健康と生命をさえ奪っておる現在の政府独占資本の進めている合理化政策そのものをやめること以外にないと思いますけれども、その点について最後労働大臣の所見をお願いしたい。
  68. 小平久雄

    小平国務大臣 労働災害の問題につきましては、労働省としては、これが防止に従来からも非常な努力をいたしてまいったわけでございますが、私も、就任以来、この問題は重点中の重点としてひとつやろう、こういう方針を持ちまして、事務当局にもせっかく努力をしてもらっておるのであります。  私が就任してからだけ考えましても、先生もいま御指摘のように、相当の事故が発生し、中にはとうとい人命まで失うというような事故が発生しているということは、非常に残念なことでございます。しかしながら、全体的に見ますると、災害の発生率あるいはさらに発生の件数それ自体までも最近ではむしろ減少の傾向にございます。このことはひとり政府だけがいかに努力いたしましても、目的を達することにはならないことでございますので、関係の業界あるいはさらには労使双方がみずからつとめてもらわなければならぬ。こういうことで、これらに対する態勢などももちろん逐次確立いたしておるのであります。  しかし、先生お話しのように、合理化というものと災害の発生ということが必ずしも直接結びつくとは私は考えません。災害が発生しないようにすることも合理化なんですから、一がいに合理化が災害の原因だ、こう簡単にきめるということはいかがかと思います。  いずれにいたしましても、災害の発生ということは重大な問題ですから、来年度の予算などにおきましても、私は特に力を入れまして、安全研究所の屋外実験場をつくるとか、災害防止のための施設等に対して、これは衛生施設とあわせてでございますが、特に低利の融資の道を創設するとか、いろいろ具体的に災害防止の策を講じていきたい、こういうことに努力をいたしておるわけでございます。
  69. 加藤進

    加藤(進)分科員 災害防止も合理化の一つの目標だと言われておりますけれども、災害は、政府の統計からいっても、あとを絶たないばかりか、年年ほとんど減らないと言ったほうがいいと思う。しかも一方では、合理化が進み、そうして生産力は急速に大きくなる。そうして、資本の蓄積は増大していく。こういう合理化の実態があるわけですから、私たちはこの頻発する労働災害を一つの重要な問題として、労働者の生活を守るばかりでなく、健康と生命を守るためにも、現在の合理化政策に対しては反対していかなければならぬと考えております。  質問を終わるにあたりまして、私たちの党として、人民の生活向上、経済の自主的な平和的発展のために、次のことを私は要求したいと思うのです。  一、労働者の犠牲による合理化、首切り、労働強化をやめよ。  一、賃金の大幅引き上げ、にせ最賃制をやめ、真の最低賃金制を確立せよ。  一、労働災害、職業病の絶滅、災害疾病に対する完全補償予防の完全実施、その他労働条件の改善を要求する。  一、不当処分と断圧に反対し、職場の内外における労働組合運動、政治活動の自由、労働者の基本的人権を保障せよ。  一、日本経済の自主的、平和的発展によって雇用が拡大され、すべての失業者、失対労働者に生活と仕事を保障せよ。  一、独占資本と政府の経済成長政策に反対し、失業と貧困、低賃金を打破し、人民の生活と権利の根本的な向上を中心とする経済の発展を要求する。  以上要求して、私の質問を終わりたいと思います。
  70. 大橋武夫

  71. 華山親義

    華山分科員 最近、労働力の逼迫等の問題から、定年制の問題が取り上げられるようになっておりまして、労働省におきましても定年制の調査をなさいました結果を発表していらっしゃいますけれども、私それを読んでまいりましたから、時間がございませんので、その中身をくどくど説明していただく必要はございません。結論だけからお聞きいたしますが、労働大臣あるいは労働省は、この定年制ということにつきまして、基礎的には定年というものは延びたほうがいいのか、どんなふうにお考えになっておりますか。
  72. 小平久雄

    小平国務大臣 定年制の問題につきましては、昨日も実は御質問があったのでございますが、元来、どういうことで一体定年制というものが、特にわが国では大体五十五歳程度ときめてあったのであろうかということを考えますと、一つには、日本人の平均寿命というものが、ごく最近までは諸外国、特に先進諸国に比べて非常に短かった、われわれの若いころには、人生わずか五十年と言われて、五十を過ぎるともうけものと、俗にそう言われるくらい短かった、そういう点から、私は、以前においてはやはり五十五くらいが大体人間の能力の限界だと世間一般が見ておったのではないかと思います。それと同時に、一つには、わが国では何と申しましても産業がそう活発でなかったという点から考えて、労働力が豊富であった、したがって、若い者に職を与えるという関係からいたしましても、あるいは個々の企業にとりましても、特に若いエネルギーというものを各企業に注入していく必要がある、こういう考え方もあったと思います。さらに、私は率直に申しまして、わが国の賃金制度といいますか、給与制度というものもやはり一つの大きな原因ではなかったかという気がします。いわゆる勤続、年功によって、むしろ人間としては能力が限界に来、場合によっては低下するというようなところにいっても、勤続年数が長ければ賃金を上げていかなければならぬ、長い間のそういう慣習があるわけでございますから、そういう制度もやはり考えて、そう年をとって能力のない者を、単に勤続が長いからということで賃金をどこまでも上げていかなければならぬというのでは困るということで、一応定年というものを定めた。その他にもいろいろございましょうが、大体これらのものが、この五十五にきめられておった一つの大きな理由ではなかろうかと私は思うのであります。そこで、御承知のとおり、終戦後国民の栄養もよくなって、男子の場合ですと最近では平均寿命六十九歳何カ月、女性の場合は七十歳何カ月、こういうところまで、とにかく平均寿命が十年以上も最近は延びてきた。一方においては、目下は若干の雇用の停滞もございますが、しかし、全般的には労働力の不足、将来はますますそういう傾向が多くなるであろう、こういう際でございますから、この定年制というものは、少なくともこういった、一口に言えば社会環境と申しますか、経済環境と申しますか、そういうもの全般から、あるいは基本的には日本人の寿命そのものが延びておる、五十五歳でやめてもまだまだ活動力が十分ある、こういうところに来ておるのですから、これはもう各般の事情からいたしまして、定年制というものは今後おそらく、かりにこういう制度を置くといたしましてもその年限が延びてまいる、こういう傾向にあるであろう。これを政府のほうから特に延ばすことを奨励するとかどうということはないにいたしましても、これは各労使の間できまることでございますが、しかし、いま申すとおり各般の事情から当然延びていくであろう、私はさように見ておるわけであります。
  73. 華山親義

    華山分科員 お話は承りましたが、ただいま大臣労使の間の相談によってきまるのだ、こういうことを申されました。これは事務当局にお聞きいたしますが、定年制は労使間の話し合いによってきまるのが原則でございますか。
  74. 辻英雄

    ○辻政府委員 民間におきましては、労使の間できめますのが原則でございます。労働協約によっております場合もございますし、あるいは就業規則できめられておる場合もございます。
  75. 華山親義

    華山分科員 就業規則の場合も、これは労働者の意見を聞かなければいけない、したがってまた、労働者の意見と合わないような場合でも、労働者の意見を付して許可を得る、こういうことになっているわけでございますから、定年制につきましては労働者の意見が入らなければいけない、これは原則としてお認めになりますか。
  76. 辻英雄

    ○辻政府委員 労働条件につきまして、労使の話し合いによってきめるということが原則であると存じております。
  77. 華山親義

    華山分科員 労働条件ということは、しばしば目の前の給料が幾らであるとか、労働時間が幾らであるとか、休日が幾らであるとか、そういうふうなことに限定されがちでございますが、この定年制というものも、そういう労働条件というふうに考えてよろしゅうございますか。
  78. 辻英雄

    ○辻政府委員 労働基準法の中に、先生承知のように就業規則に関する条項がございます。八十九条の中で、次のようなことをきめておる場合には、必ずこれは就業規則として明らかにするというたてまえでございまして、労働者が何歳になったら当該企業から引退するということをきめられましたものは、労働条件であると考えております。
  79. 華山親義

    華山分科員 お調べになった中で、内規できめてあるというのが多少あるようでございますが、こういうふうな内規できめたところのものを、労働者に、おまえは定年が来たから内規によってやめるのだと強要はできませんですね。
  80. 辻英雄

    ○辻政府委員 就業規則といいます場合に、私ども理解いたしておりますのは、ただいま申し上げましたように、きめられましたことは就業規則に書かなければならないということが基本でございます。したがいまして、原則としては、先生おっしゃいましたように、きめられたものが書かれておるはずでございます。ただ、日本のいろいろな慣行の場合に明確になっていない。あるいは常時十人未満の労働者を使用するところは、就業規則を作成する法律上の義務がございませんので、そういうところは内規できまっておるというようなこともあり得るかと存じます。
  81. 華山親義

    華山分科員 お調べになったものによりますと、大部分は労働協約または就業規則によっている。ただ、少しの部分でございますけれども、内規できめてあるというところがある。いまお話しのとおり、十人未満の小規模のところは別といたしまして、それ以上のところで内規できめたというふうなものは労働者に強要できませんね。
  82. 辻英雄

    ○辻政府委員 たてまえといたしましては、内規というものがどう運用されるか問題でございますけれども、書くべきでございますけれども、書いてないから労働条件としていかなる場合にも存在しないというふうに断定することはいかがかと存ずる場合もあるかと思います。
  83. 華山親義

    華山分科員 くどいようでございますが聞きますが、たとえば私が会社の経営者だったとする。そしてその会社で、五十歳をこえた場合には退職をしてもらうのだ、退職するのだということを労働者には何ら相談もしないできめていた、そういう場合に、そういうふうな内規というものは、労働者に対しまして、会社の内規だからおまえは退職してくれということが言えるかどうかということなんです。
  84. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 会社のいろいろな規則を見ますと、規則とか内規であるとか社規であるとか、名称はいろいろ使ってございます。その場合に、基本的な事項を就業規則という名称で所定の手続で定める、そしてその委任を受けたような形で内規だとかいろいろな規則ができておるという場合がございます。でありますので、内規と称しましても本来就業規則の一部であるというよろな場合もございますれば、ただいま官房長から御答弁申し上げましたように、必ずしもそうではない、ただ一般的な労働契約の草案的な意味で労働基準法上の手続は経ていないけれども、契約との関係においては法的な効力なり意味を持っておるというものもあろうかと存じます。先生の御指摘の点につきましては、さらに私ども個別的に判断させていただきたいと思いますが、抽象的に一応そのようにお答え申し上げておきます。
  85. 華山親義

    華山分科員 まことにことばが荒くなるかもしれませんが、私、言っておるじゃありませんか。かってに私が会社の社長として内規をきめた、この会社では五十歳になったら退職するんだという内規をきめた、労働者には何の相談もしてない、そういう場合に、そういう内規でもって五十歳になった労働者に、会社の内規だからおまえは退職するんだということが言えるかどうかということを聞いている。何も前提がない、それだけのこと、だったらどうかということを聞いている。
  86. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 内規ということばと手続の問題がございますが、労働者が全く知らないものを内規と称するということでは、これはいかがかと思いますが、一定の形式をとり、多数の労働者に一律に適用されるようなものを作成いたしまして労働者の意向を聞く場合に、反対という意見もございますれば、さまざまあるわけでございます。全く労働者が知らないというような内規をつくるということであれば問題でございます。ただ、内規と称するものはある、そうして雇われる際に、いわば労働契約に対する草案的なものとして存在しておって、労働契約の場においては法律的に意味があるという場合もあろうかと思います。
  87. 華山親義

    華山分科員 くどいようでございますが、そういたしますと、会社の社長が、あるいは会社が、当局が内規というものを労働者には全然相談しないできめておって、それでもって労働者に定年に達したからやめろと言うわけにはいきませんですな。
  88. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 おっしゃるとおりの場合がございますれば、はなはだ不適当でございます。行政的に直さすか、あるいはいま先生が申されましたように、法的な拘束力を否認するかといったような措置をとらざるを得ないと思います。
  89. 華山親義

    華山分科員 そういたしますと、定年制というものは、労働協約なりあるいは労働者の意見を聞いたところの就業規則でもって定めなければこういうものは空文にひとしい、こういうふうに了解をいたします。よろしゅうございますね。  それで、定年制のことはそのくらいにいたしまして、お聞きいたしますが、最近私のところに建築業者の人が盛んに押しかけてくる。建設業法を改正するということだということでございますが、大臣はそのほうの所管大臣ではございませんけれども、何か政府では建設業法を改正される御意向でございますか。
  90. 小平久雄

    小平国務大臣 私は承知いたしておりません。ただ、先般もあるいは申し上げたかと思いますが、われわれ労働省の立場からいたしますならば、問題の賃金不払い等に関連して、下請の者が賃金不払いをやった場合に元請の者にぜひ責任を持ってもらうようにしてもらいたい、こういった趣旨で建設省にも申し入れていま協議中でございますので、あるいはそれらに関連があるのかとも思いますが、いずれにいたしましても、私は法の改正それ自体についていま何も聞き及んでおりません。
  91. 華山親義

    華山分科員 私が建築業者から受けた陳情では、党といたしまして、また私といたしまして今日それに対する賛否を申すことはできませんけれども、きわめてわがままかってなものである。自分のところは、現在のあのような労働機構の上で利潤を得ている。それを訂正しようとする熱意はあの中に何も書いてない。非常にわがままかってな改正であると私は思います。彼らの希望する改正はわがままかってなものだと私は思う。  それで、労働大臣にお願いいたしますけれども、建設業法を改正するというこの段階こそ非常にいい機会だと思います。この機会を逸してはまた再びいい機会がないと思いますので、あの飯場のようなああいう状態というものはこの機会に直してもらいたい。私は、二、三日前にある飯場をたずねてまいりました。そうしてどういうことだというふうなことで、幾らの賃金で労働時間が幾らだということを聞きましたところが、全然知らない。なぜ知らないのか。それはもうほんとうの人入れ稼業のところにその人は来ているのです。その人入れ稼業のところから、建築現場から人夫を何人派遣してくれと言われると人夫を派遣してよこす。そうしてあしたからこの飯場に行って働いてくれ、そして一カ月もたちますと、今度は、この飯場からあっちの飯場に移ってくれ、こう言う。そうしてその人たちにあっちに行け、こっちに行けと言う人は、決して仕事をやっているのではない、別の建築業者、建設業者がやっているわけなんです。それですから、何か話によると、水道管を何メートル掘って何メートル埋めると幾らぐらいだそうだけれども、話はよくわかりません。なぜそんなことをよくきめないでこんなところに来るのだ、こういうことを言いますと、そんなことを交渉しておる間に二日も三日も時間がたってしまう、もう毎日毎日働きたいからここに来てやっているのです、こういうことなんですよ。ですから、現在の建設業というものは、全くもう前時代的な労働機構の上に立ってもうけているということなんです。そういうふうなことは、私は、労働省の立場として何としてでも是正してもらわなければならない。そして私の見るところ、大体のそういうふうな現場というものには暴力団がつきまとっている。団とは言わなくても、暴力がつきまとっている。空疎な論ではいけませんので、私は一、二の実例を申し上げますが、名前は控えますけれども、あるところでは給料を払ってくれない。君、そこでがんばったらいいじゃないかと言うのですけれども、私はあそこでは暴力がつきまとっているからがんばれない、ですから、働いても金にならないようなところはやめます、こう言ってやめて、そして交渉を続けている。交渉を続けておりますと、相手方では、おまえはかってに途中でやめたんじゃないか、賃金を払わない、こういうことを言うのですね。それから、もう一人の私のところに参りました労働者は、やはり賃金の不払いだ。じゃ、私がひとつ労働基準監督署ですかに参って交渉してあげる、私が忙しい場合は私の秘書でも交渉してあげるからそうしよう、こういうことを言うと、先生、やめてくださいと、こう言う。そういう問題が起きたら私があぶない、こう言うのですよ。それですから、私はいまここでとにかく働いてがんばっていきます、くにに帰ってからこれを問題にしますと、こう言っておるのだ。その人は、とにかく今度は市会議員にでも立とうという人なんですよ。一応見識がある。そして、その人が言うには、その飯場に入ると同時に親方にぶんなぐられた、何の理屈でぶんなぐられたのかわからない、とにかくおれには暴力があるのだ、おまえはかってなことをしちゃたいへんだぞということだろうと思う。そういうふうに暴力に囲まれた飯場なんだ。そして、飯場の状況は一体どうだ。もう皆さまからお話のあったような状況なんだ。こういうふうなところを直さなければいけないと私は思うのです。不払いの問題もいろいろの問題も、もとは何かといえばそういうふうな労働組織、労働機構から出ている。この労働機構に直ちに、いま建設業法の改正ということが出ているのですから、メスを入れていただきたい。強力に直していただきたい。大臣の御覚悟のほどをお聞きしたい。
  92. 小平久雄

    小平国務大臣 建設業法の改正のことにつきましては、建設業者の方とよく連絡をとってみたいと思います。  それから、特に建築の関係で、いま先生お話のような労働状態というものも、おそらく先生が見てこられたのですから間違いなくあるのだろうと思います。私もこの点は非常に関心を持ち、どうしてもこれは改めなければならぬ問題だろうと思います。ただ、率直に申しまして、労働省関係の監督などが十分に行なわれていないという面もあろうかと思いますが、これも逐次厳重にひとつやらせよう、こういうことで、いまいろいろ計画いたしておりますが、私は先般実は出かせぎの方々の代表の方々とお会いしまして、いろいろ御陳情を受けたのであります。その際申したのでありますが、出かせぎの方々でいろいろ問題があるのだろう、それはあらかじめ監督署のほうで全部回ってよく巡視による監督ができればけっこうなんですが、なかなかそこまでいかぬ場合もあるので、何か問題があるとか、どうも理解しがたいということがあった場合にはどんどん監督署に申し出てほしい、それから、それでもなおかつらちがあかぬということならば、直接自分のところへ問題を言ってきてくれ、そうすればできるだけすみやかにその処置をとるから、もう具体的に、直接でも何でもいいから言ってきてくれ、私は実はそういう話までいたしたのであります。いずれにいたしましても、基本的には、先生のおっしゃるように機構的にも改善しなければならぬ面がたくさんありましょうし、あるいは業界自身の粛正というものを促さなければならぬ面もありましょうし、事務当局にも命じましてよく検討さして、できるだけ先生の御指摘のようなことの起こらぬように努力をしてまいりたいと思います。
  93. 華山親義

    華山分科員 私は、この問題は出かせぎ者の問題と関連をいたしまして出発したのでございますけれども、出かせぎ者のみに関する問題ではございません。現在の建設業界のあの労働機構といいますか、ああいうふうなものはそれだけの問題じゃない。それにからまって出かせぎ者がひどい目にあっているということなんです。そこを直していただきたいということを申し上げた。それで、前の石田労働大臣にお聞きしたところが、石田労働大臣は私にこういう答弁をなさった。労働省は、港湾労働者につきまして、とにかく秩序のある労働機構、労働秩序というものをつくるために骨を折って、ようやくこれができ上がろうとしている、あるいはできるかもしれない、それで、この問題が片づいたならばさっそく建設業界の労働問題について私は着手をするつもりだ、こういうふうに言われた。いまの大臣よりはもっと具体的に前向きだったわけですね。大臣、どうですか。前の大臣がそうだったからと言って、もう一ぺん聞いておかなければならぬ。
  94. 小平久雄

    小平国務大臣 前任の石田労働大臣から、当時、いまお話しのような答弁があったのかとも思いますが、私は、この建設業界の労働事情を改善しようという熱意では前任者に劣らぬだけ熱意を持ってやろう、こう決意をいたしておるわけでごいます。ただ、その方法はどういうのがいいかとなりますと、なかなかむずかしい点もあるのじゃないかと思います。確かに、港湾労働者につきましては港湾労働法によって一応基礎ができたわけでございますが、港湾の場合は、申し上げるまでもなく一定の地域でやっておる、こういうことでございますが、建設関係ですと、むしろ臨時の作業所がいつ、どこへできるのか、これは非常に複雑でございますから、そういう点で港湾労働者の場合と違った事情があると思います。ですから、同じ筆法でうまくいけるものかどうか、そこらはよほど検討してみないと何とも言えないと思いますが、いずれにいたしましても、いま職業安定審議会で特に建設業に関する部会まで設けまして、専門の方々に御検討をいただいておるところでございますので、それらの答申も待ちまして、できるだけ御期待に沿うようにやっていきたい、こう思います。
  95. 華山親義

    華山分科員 私は、港湾労働者の法律と同じ法律をつくれと言っているのじゃない。それは、労働事情も違いますから別個の面もいろいろあろうと思うけれども、ああいうふうな精神で、そして建設業界の労働秩序というものはぴしっとしていないのじゃないかということを申し上げているのですが、真剣に取り組んでいただけますか。場合によってはそれを、法律をもって何かつくるというふうなことまで真剣に取り組んでいただけますか、簡単に決意を御表明願いたい。
  96. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほど来何回か申しておりますように、私は真剣に熱意を持ってやる、こういう決意でおるわけでございます。
  97. 華山親義

    華山分科員 それから、先ほどからお話がございました中に、不払いを起こしたような業者には指名をしない、こういうふうな方針でいきますと、局長でしたかおっしゃいましたが、そのとおりでございますか。
  98. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先ほど申し上げましたのは、入札制度を合理化するという観点から、昨年の十二月二十日に中央建設業審議会から勧告が建設省になされました。その勧告を受けまして、建設事務次官の通達が十二月二十七日に出されたわけでありますが、これはもちろん公共事業を中心とするものでございます。この中で、査定要素の中に労働福祉の状況というのを加える。しこうして、労働福祉の状況とは何かという中に、賃金不払いが含まれるということが事務次官通達で明らかにされる。なお、先ほど申し上げませんでしたが、かねてから飯場問題につきましては、ここ数年来、先生からいろいろ御指摘を受けておりましたので、私どもは労働基準監督の立場からできるだけの努力をいたすと同時に、飯場建設自身を何らかの形で改めたいという観点から、建設省にかねて強く要望しておったものでございますが、いまの賃金不払いの問題とあわせまして労働環境の状況という、衛生、休養施設の問題、これも入札を決定する場合の査定要素に入れる、こういうふうに具体化してまいっております。ただ、これは通達でございますから、これが第一線においてどのように具体化されるかという点につきましては、私ども第一線の労働基準監督機関に強く通達をいたしまして、趣旨の徹底をはかるべく建設省と一そう緊密に連絡をいたしまして進めてまいりたいと考えております。
  99. 華山親義

    華山分科員 大体、公共事業等において不払いが起きるというものは、元請業者のところで不払いが起きるのじゃございません。元請業者というものは、ほとんど人夫なんか使っておらない。もうほとんど全部のものを下請に回す。第一番目の下請のところでは、元請会社の監督を受けながら、しかし一応材料等を使って、そして下請らしい仕事をする。これが三番目、四番目になりますと、もう人入れ稼業ということになるわけです。先ほど申しましたような実態になってくる。そういうような下請について不払いが起きた場合にも入札はさせないということがなければ、そんなものじゃだめですよ。どうなんですか。
  100. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘のような実態は私ども承知いたしておりまして、問題は、下請のまた下請という、最下層の下請業者に問題があるということを承知いたしております。そこで、大筋としては、このような通達に従いまして、飯場の監督改善、賃金不払い等を、元請を通じまして下請に流すと同時に、法的に何か可能な措置はないか。法的にというのは立法ではございません。元請と下請の契約という形式を通じまして、賃金不払いを元請が出す、不払いの場合は元請がかわって支払うという下請契約というものは考えられないかというような観点から、建設省に、この点についての制度としての明確化を強く申し入れておるわけであります。ただ、御承知のように、この点につきましては、そのような責任を元請に課せしめるためにはどのような観点からこれを考えるか、いわゆる無過失責任ではこれは無理だ、そうすればこういった元請と下請との契約関係を、任意契約——もちろん任意契約ではありますけれども、何らかの形でこれを助長するような方策がないかどうかというような観点で、いろいろいま折衝しておる段階でございます。
  101. 華山親義

    華山分科員 無過失責任、それから先ほどあなた方のおっしゃったようなやり方、そういうことは私が申し上げた。私は無過失責任でないというのはおかしいと思うのですよ。とにかく企業というものが、こういうふうな労働機構、労働構造の上に立って仕事をしてもうけているんじゃありませんか。損害を受けたのは労働者なんだ。そういうふうな社会機構になっている、遺憾ながらそういう労働機構になっている、そういうところで損害を受けた、片方はもうけている、そういうふうなことで損害賠償的なことを元請がやる、これはあたりまえのことだ。そういうふうなことでなければ、現在のように自由主義あるいは自由契約の発達したこの社会では救われませんよ。普通の民法だけのことじゃできない。借地借家法だってそうでしょう。契約がどうあろうとも、借り受け人を保護している。私は、無過失責任というものの観念をいまの自民党政府が排除するということであるならば、これは無責任だと思いますよ。そんなことでは、自由主義経済のもとにおける弱者は救われません。無過失責任ということを言ったのは私だし、それから元請が下請にそういうふうな不都合のあった場合は責任を負うのだということを請負契約の中に明記する、そういうことをしてみたらどうだ、法律が急にできないならしてみたらどうかと言ったのも、これはほかの方も言ったと思いますが、私だと思う。したがって責任がある。どうして無過失責任が通じないか。
  102. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ことばに拘泥いたしましてまことに恐縮に存じますが、精神においてはまさに先生の御指摘のとおりでありまして、私どもも、社会的責任があるではないか、これは強調いたしております。ただ、法律学的な意味で無過失責任が形成されるかいなかという点については、これは法律学上のいろいろな問題があるわけでございます。しかし、さはさりながら、私どもといたしましては、現実に下請の下請で働いておる労働者の賃金不払いを解消することが、何としても達成しなければならないことでございますので、いま無過失責任なりやいなやということの法律学的な議論はおきましても、とにかく社会的責任ということを認める点においては、ほとんど何人も御異存はないようでございますので、ひとつ制度的にそういう趣旨を具現する方法を考えてもらいたい。それについては、下請契約等を通じてこれを明確にするいろいろな方法があるはずだ、こういうふうに考えておる次第でございまして、無過失責任を否定するという立場に立ってどうこうとか、そういった気持ちではさらさらございません。何とかして先生指摘のような問題を解決するために、制度的に何とか考えられないかということで寄り寄り折衝しておるような次第でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  103. 華山親義

    華山分科員 私は、先ほどあなたのほうで無過失責任ということを言われたから申し上げたのですけれども、無過失責任のものの考え方を入れなければ、強い者と弱い者との間では弱い者が助かりません。単なる民法上の観念だけでやったんじゃ助かりませんよ。これは何も社会党の立場で言っているんじゃない。自民党だって当然でしょう。私は、そういう意味でどうしてもこの制度はぜひやっていただきたい、確立していただきたい。声が大きくなりましてまことに申しわけありませんけれども、この問題は、私は二年以来言い続けてきたのです。その間に、労働省の安定局等のほうにおきましてもいろいろやっておられることは、私は承知しておりますし、感謝もしております。しかし、この根本をひとつ直していただきたい。それで、いままでは私は辞を低くしてお願いする態度でいたけれども、いまは声を大きくして言ってもいいだろうと私は思います。二年間の実績につきまして——石の上にも三年と言う。この上にできなければ、私はだるまさまより、もっとしんぼうしたことになるわけです。ほんとうに弱い人たちなんです。そういう人たちのために、強い者が弱い者に対して責任を負うような社会的な観念で、この問題をひとつぜひとも解決してもらいたいと思います。  これで質問を終わります。(拍手)
  104. 大橋武夫

    大橋主査 本会議散会後再開することとして、休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ————◇—————    午後四時四十分開議
  105. 大橋武夫

    大橋主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働省所管につき質疑を続行いたします。栗林三郎君。
  106. 栗林三郎

    栗林分科員 一昨日、出かせぎ者の諸君が久保講堂に約千五百名ほど集まりまして大会を持ち、それぞれ決議をして、そうして労働大臣はじめ各関係方面に要請をしたのでありますが、私は、この大会で決議をしました内容等を御報告申し上げて、それをもって私の質問にかえていきたいと思います。  特に大会の代表団が労働大臣に会見を申し入れましたところ、国会中非常に多忙なからだにもかかわらず、院内で三十分それらの人々とお会いくださいまして十分彼らの言い分を聞いてくれ、かつまた、それぞれ意見の交換をされたということを私ども承りました。特にこれらの代表者諸君は、多忙な中に労働大臣がよく会ってくれた、この点については、私を通じて機会があったらお礼を申し上げてくれ、こういうあの人々のことばでありましたので、この席をかりましてお礼を申し上げる次第でございます。  一番最初にお尋ねしたいのは、去る十六日の名古屋の船火事事件で犠牲になりました十五名の犠牲者の中に含まれる七人の出かせぎ労務者の災害補償関係はいまどうなっておるか、その手続等につきまして承ってみたいと思います。
  107. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 私から答えさせていただきます。  石川島播磨名古屋造船所の災害犠牲者に対しましては、遺族補償を遺族に対して支払うことになっておりますので、かけつけられた遺族の方々に対しましては、その手続について、次のように御相談申し上げております。  遺族補償は年金として支給されますが、一時にまとまったお金の入り用な方は四百日分は前渡しをいたしますという制度がありますので、初めから年金を支給するか、あるいは四百日分の一括前払いをするか、それはどちらでもよろしゅうございますから希望を述べてくださいということで連絡をとっておるはずであります。補償費の額は、労働者個々の方々の平均賃金の差によって違いますけれども、私どもは、大体千五百円平均の日額であるというふうに算定をいたしております。なおまた、労災保険法に定める遺族補償のほかに、会社側でも、公定基準を上回るあたたかい措置をお願いしたいというので連絡をいたしておったわけでございますが、石川島播磨が十万円、明星工業が七万円という話を聞いております。しかし、この点につきましては、現地労働基準局長にも連絡をいたしまして、できるだけの手厚い処置をしてくださるように、さらに一そう会社側に要請するように連絡をいたしておるような次第でございます。
  108. 栗林三郎

    栗林分科員 あとでよろしゅうございますから、十五人のうち、これは何も区別するわけじゃありませんが、ただ、特にその中の七人の季節労務者の労災関係の手続とその内容について——手続はすでに終わっていると思いますので、あとでよろしゅうございますから、ひとつ一人一人の額を見て記入して御報告を願いたいと思います。  一般質問の際にもお尋ねしたのでありますが、当時は、その原因は目下調査中ということになっておりまして、十九日の時点では、原因はまだ判明しなかったのであります。この際、ひとつどこにどういう原因があったのか、それをお尋ねしたいのでありますが、時間の関係で、私もう少し加えて御答弁をいただきたいと思います。  この事故は業務上過失致死の疑いもあるわけであります。したがって、業務上過失致死の疑いがはだしてあったのかないのか、これも今日の段階ではややはっきりしておると思いますから、これらを含めて御報告願いたいと思います。  それからもう一つ。危険作業の制限事項には触れておらない、こういう御答弁がありましたが、ただ、安全管理につきましては若干私は疑問を持っているわけです。なぜ疑問を持っているかといいますと、あの事故現場は船倉で、そして何といいますか、入口といいますか出口といいますか、それが狭い出口が一カ所しかなかった。それからマンホールが一つありました。そういう船底で仕事をしておるのですから、これは、いざというときには、もう逃げることができない。避難することができなかったと思うのです。したがって、それらに対する措置が不完全ではなかったのか。そういう点が疑問として残るわけであります。さらにまた、事故が生じた場合に、それを通報する設備もなかったようでありますし、また、消火器などの設備もなかったやに聞いておるわけであります。これらの状況を推測しますと、この事故現場の安全管理の点については、私はきわめて不十分ではなかったかと思われるのでありますが、これらのことも含めて御報告、御答弁願いたい。
  109. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 まず第一点の事故原因につきましては、目下捜査中でありまして、まだ結論は出ておりません。甲板上の溶接作業の火花と申しますか——火花と申しましても鉄の溶けたものの長さ三、四センチ、幅一センチくらいのかなりなものでございます。そういうものが下に落ちていって、それが発火の原因になったのではないか。それは私も先ほど現物を見てまいったようなわけでございます。そういう観点からの容疑、あるいは配線の被覆の不備からのスパーク、たばこの原因といったような形で、問題は逐次しぼられておりますけれども、ただいま捜査の段階でございまして、事故の原因はまだ確定はいたしておりません。いま申しましたような点について、問題をしぼって捜査いたしておるような次第でございます。  ところで、安全管理体制についていろいろ問題があり、どうかということでございます。その前に、過失致死という問題がございました。過失致死と関連いたしまして、法規違反の問題もあるわけでございますが、これもただいま申しましたように、事故原因の捜査と相まちまして取り調べをいたしておるような次第でございます。  いま申しました安全管理につきましては、労働災害防止団体等に関する法律に基づく統括管理者の選任等については法規違反はございませんでしたが、肝心の下請の明星工業で安全管理者を選任していたかいなかったかという点については、していなかったという事実がございますので、これは法違反になる可能性が多いという判断に立ちまして、目下検討をいたしておるような次第でございます。  なおまた、すこぶる狭隘な場所において作業するということについていかがかという点につきまして、災害防止関係法令の点から見ますると、そういった場所についてのこまかい規制が十分になされておらぬという問題もございます。しかしながら、この問題につきましては、事故発生の事実にかんがみまして、労働省といたしましては、造船工業会を通じまして、そういった場合の措置についてこまかい指示をするということにいたし——これは反省の上に立ちました措置でございますが、今後、そういった場合の災害防止措置につきまして具体的な指導をいたしてまいりたいというふうに考えております。  また、通報、連絡等について十分でなかったのではないかという御指摘がございました。率直に申しまして、十分ではないという点を私ども判断をいたしておるわけでございまして、冒頭に御質問がございました過失致死罪が成立するかいなかという点につきましては、そういった諸点を総合的に判断をして目下捜査を進めておる次第でございまして、現段階においては、遺憾ながら結論を申し上げる段階に至っておりませんが、鋭意捜査を進めておるような次第でございます。
  110. 栗林三郎

    栗林分科員 この際、特に要望しておきたいことは、先ほども申し上げましたように、これは六十三条の危険業務就業制限令には触れておらない就労の状態であった、こういう御報告でありますが、この際、この制限の規則に触れる触れないにかかわらず、こういう季節労働者は工場生活には全くふなれであります。広い自然を相手に仕事をしておる農民でありますから、そういう狭い、しかも機械設備の非常に複雑した職場で働くという経験は非常に少ないわけです。それでありますから、運動神経といいますか、そういうものが普通の工員より神経の働きが劣っておることは当然であります。それだけに^こういう季節労働者を使用する場合には、こういうような危険な場所からできるだけ遠ざけて使っていただけるような、特にそういう注意を各関係者に私は要望したいのであります。制限令に触れておらないからそれでよいというものではありませんで、ぜひ事故を防止する上におきましても、これら季節労働者を使う場合に、そういう点についても十分配慮をしてくださるような御注意なり通達をそれぞれの関係者に、あるいは事業者へ徹底させていただきたい、私はこのことを御要望申し上げる次第であります。
  111. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点につきましては、いわゆる危険業務の就業制限という一般条項には該当しないということは前にも申し上げたとおりであります。就業制限には違反いたしませんけれども、ある作業が危険であるかどうかというのは、当該労働者の能力、つまり精神的、肉体的な能力とその作業との関連性においていろいろ考えられ得るわけでございます。したがいまして、先生ただいま御指摘のように、通常農業に従事しておる者が、そのような作業に従うということはどうかという点は、法規上の就業制限の問題とは直接触れないにいたしましても、十分注意すべき事柄であろうと存じます。この点、実は安全教育が十分行なわれていたかどうかという点についても具体的に取り調べをしたところでございます。率直に申しまして、安全教育が行なわれておったという結論には達しておりません。こういう点、今後指導上十分注意をしなければならない問題と考えております。先ほど申し上げました造船工業会を通じまして注意を喚起し、具体的な指導内容を通達する場合には、この点も含めていたすことにいたしておる次第でございます。
  112. 栗林三郎

    栗林分科員 今年度の予算を見ますと、出かせぎ対策費として七百十万円計上されております。これは就労前講習費、こういう説明がついておるわけであります。私はこの出かせぎ対策費七百十万円に反対するのではございません。これは私どもも賛成でありますが、ただ、ここでひとつ大臣にお伺いしたいことは、いまこのように激増しておる出かせぎの問題、数におきましては、先ほどの小林委員と安定局長との質疑応答の中で、農林当局の出かせぎの数と労働省が押えておる数とは、少しばかりの違いでありません、もうひどい大差があるわけですが、とにかく労働省で先ほど御答弁になりました少なくとも六十万以上の季節労働者が、三十六年、三十七年この方激増して、こういう数字になっておるわけであります。そうして、これはいろいろ重大な問題、深刻な問題を投げかけておるわけです。そこで、労働省としては、この出かせぎ問題に対して何を重点的にやらけれればならないのか、この出かぜぎ対策として何が中心であるのか、何をやらなければならないのか、何が緊急の対策であるか、この点を私は伺いたいのだが、出かぜぎ対策、就労前講習費の七百十万円を計上して、これが出かせぎ対策だという考え方、こういう施策には私は賛成できないのであります。そこで、激増しており、いろいろ深刻な問題を投げかけておるこの出かせぎ対策として、労働省はどういう問題を緊急問題として取り上げようとしておるのか、どういう施策を一体とろうとしておるのか、その基本的な姿勢について、考え方について、ひとつ所信を承っておきたいと思います。
  113. 小平久雄

    小平国務大臣 出かせぎ問題で何が大切か、何を重点にやろうとしておるかというお尋ねだと思いますが、先生も御指摘のように、大体出かせぎ労働者が何人あるかということ自体が実は正確にいまのところ把握されていないということでございまして、同じ政府の役所である農林省の調査と、それから労働省が把握しておるところとが倍も違う、あるいはそれ以上も違う。こういうこと自体が非常に何といいますか、理解しがたいところであり、また、それだけに問題が複雑性をあらわしておる、こういうことだろうと私は思うのです。もちろん、これは調査の時期等にもよって、出かせぎでございますからずいぶん違うと思いますが、いずれにいたしましても、はたして何人出かせぎしておるのか正確に把握できない、こういうことでございますから、基本的には、まず正確な数をとらえるということが必要であろうと思います。しかし、またその数をとらえますためには、先ほどもお話があったのでありますが、どうも、とかく出かせぎというと、縁故応募といいますか、そういう関係で誘われていく、あるいは中には、ことさら内緒で——というと語弊があるかもしれませんが、あまり人に知られぬようにということで、実際上は行かれる方もあるんじゃないかと思うのです。そういう姿で、縁故なりあるいは内緒なりで行かれた方について、より多く問題も発生するのだろうと思います。そういう関係もありますから、極力相談等を通じて、あるいは啓蒙等を通じて、とにかくこの出かせぎについては正規のルートと申しますか、安定所を通じて職を求め、また就職をしていただく、こういうことに極力まず第一につとむべきであろう、それによってこそ、初めて就職の数もつかめ、要するに実態がわかってくる、こういうことではないかと思って、その方面にまず力を入れるように私は指示しておるわけでございます。ついては、勤務先におけるいろいろな問題があるわけでございまして、勤務条件等が必ずしも明確でないまま就労をする、その結果は、賃金不払いを中心としていろいろな問題がそこにまた起きてくる、こういうことですから、安定所を通じて就職するということは、そういう面でもこれは大いに役立つわけでございます。その意味においては安定所を通じてもらいたいし、その部面だけを申しますならば、就労条件等をはっきりした上で職についていただきたい。そういうことは業者の方にもぜひ励行させるようにこれをやらなければならぬ。こういう意味で、就職先における相談所等もでき得る限り拡充してまいりたい、こういうことを考えておるわけでございます。  それから、この監督の面で、これはずいぶん厳重にしなければならぬのであります。また、他の場合に比べますと、監督の実施率なども倍以上もやっておるわけでございますが、それにしても何しろ、特に建設業の飯場等は転々として歩いておる、こういうことでございますから、なかなか監督しきれないと申しますと語弊があるかもしれませんが、とにかく、十分の監督ができていないということも事実だと思います。したがって、それにも十分力をいたしますが、先般、いまお話のありました出かせぎの代表の方々ともお会いしたときも話したのでありますが、何か不都合なこと、不審なこと、理解しにくいこと、そういうことがあったならば、どうぞ具体的に所轄の監督署等になるべく早めに申し出てほしいという話をしましたところ、申し出てもなかなか来てくれないと言う人もありました。だから、そういう際には、どうぞ遠慮なく労働大臣に直接にでもどんどん申し出てほしい。そういう際には、われわれさっそく所轄の監督署等に連絡をとって、できるだけの監督なり指導なり、そういうことをするから、そうしてほしい。これはどうもばく然とではなかなか問題が処理しにくい、こういう関係がありますので、私は、以上申し上げましたような方針に従って、今後そういうふうに行政を進めてまいりたい、かように考えております。
  114. 栗林三郎

    栗林分科員 いま出かせぎの問題で一番心配されておる問題は、やはり先ほど来質疑応答がありました賃金の不払い問題であります。さらに、この賃金の不払い問題は、そのよってきたる遠因は、やはり雇用関係が非常にでたらめだということです。やはり雇用関係にあるわけであります。したがって、どうしても雇用関係を明確にして、そうしてあるいは労働契約を結ばせるとか、そういう方法で雇用関係を明確にしてやらないと、こういうような不詳事は決して私はあとを断たないと思うのです。したがって、賃金問題は、一番これは大事な問題でありますが、同時に、雇用問題もぜひひとつ御心配願わなければならない問題であります。  それから、これはもう政策の問題でなくて、人間の問題だと私は言いたいのだが、一般質問の際にも申しましたように、とにかく東京のどまん中に、とても恥ずかしいことだが、人間の住むような宿舎ではない、実にもう動物が住むような、動物でなければ住めないような、そういう飯場が何百とあるわけであります。それでありますから、私は、この飯場の改善は、これはイデオロギーの問題ではない。政策の問題でも私はないと思う。これはもう人間の問題、人道上の問題であります。人権の問題であります。したがって、このような劣悪な飯場を改善するということ、これがもう緊急中の緊急事だと私どもは思うわけであります。そういうような問題につきまして一般質問の際に質疑をいたしましたが、その質疑とできるだけ重複を避けまして、順を追って質疑をしていきたいと思います。農林省はどなたか御出席くださいましたか——それでは農林省へお尋ねしますが、何といっても数をどう把握しておるか、これが問題だと思う。五万、十万の出かせぎ者でも、出かせぎ問題としてはこれは重要であります。しかし、今日の出かせぎは五万、十万ではないのであります。労働省に言わせますと六十万以上、こう言っておる。私どもがいただいております労働省で出しましたこの資料、これによりますと、少なくとも季節労働者で失業保険を受給した者が約五十二万と、このように報告されておるのであります。五十一万八千であります。これは受給した者だけが五十二万でありますから、受給のできない多くの季節労務者があることは申し上げるまでもございません。それですから、あるいは百万あるいは百五十万と推定されるゆえんはここにあるわけであります。少なくとも五十万以下ではない。農林省はこの数を一体幾らと押えておるか。むしろ労働省よりも、この出かせぎの全部が農民でありますので、農林省のほうで正確な数字をつかんでおることが当然だと私は思うのです。したがって、ひとつ農林省は、季節労働者として出かせぎ農民が三十八年、三十九年に一体どのくらいおったのか御報告願いたいと思います。
  115. 横尾正之

    ○横尾説明員 ただいま御指摘のございました農家世帯員の出かせぎ者の数の問題でございますが、農林省では、三十八年度で二十九万八千、三十九年度におきましては二十八万六千という数字で、三十九年度におきましては約二十九万程度というふうに考えておりますが、これに対しまして、ただいまも御指摘がございましたけれども、失業保険金の季節的受給者は、三十九年度は五十一万八千という数字労働省のほうにあるようでございます。御指摘のごとく非常に食い違いがございますが、実は農家世帯員の出かぜぎ者といたしましていま申し上げました数字は、農家就業動向調査という調査に基づいた数字を使っておるのでございます。通常農林省で農家世帯員の出かせぎ者の数と申しますと、いま申し上げました農家就業動向調査の数字を使って申し上げておるわけでございます。ところで、この農家就業動向調査でございますが、御存じのように、これは毎月末調査をいたします。その調査対象になります農家世帯員中の出かせぎ者は、これは一カ月以上六カ月未満の予定で家を離れて他に就業するという者を対象にいたしまして毎月末その動態を把握する、こういうことでございます。  なお、失業保険金の受給資格を満たしますためには、これは失業保険法の十五条あるいは十四冬であったかと思いますが、そこで六カ月以上の就業期間と申しますか、被保険期間を必要とする、こういうことになっているかと存じます。この場合六カ月というのは、計算上まるまる六カ月ということではないと存じますが、十五条の規定によれば、六カ月以上の被保険期間を必要とする、こういうことになっておるようでございます。そこで、先ほど申し上げました農家就業動向調査では一カ月以上六カ月未満、こういうことになっておりますので、この農家就業動向調査によりまして捕捉されました対象出かせぎ者の相当部分と申しますか、一部は、必ずしも失業保険の季節的受給者の中には入らないのではないかということが第一点と、もう一つは、失業保険の季節的受給者数といたしまして、先ほども指摘がございました五十一万八千という人数は、これは農家世帯員のみの受給者数ではなしに、農家以外の受給者が含まれていると存じます。逆に申しますならば、五十一万八千のうちから農家の世帯員のみを分離して数を考えるというのは、どうもはっきりしない、不明であるように存じます。そのようなことで、農家就業動向調査によりまして農家世帯員の出かせぎ者という形で捕捉しております基礎ないし対象と、季節的受給者という形で押えております数字との間に、その基礎、対象者の食い違いがあるように存じます。その結果が、御指摘のように相当大きな数字の乖離になって現われたのではないかというふうに私のほうは考えております。
  116. 栗林三郎

    栗林分科員 ここでこのことを議論する時間がありませんので、ただ農民で出かせぎをしておる者、いわゆる一般に季節労働者といわれておるものが一体何十万あるのか、何調査でもけっこうです。そのはっきりした数字をひとつお調べになって報告していただきたい。このことをお願い申し上げておきます。  ここで明らかになったことは、農林省はどういうわけか知らないが、この出かせぎ農民の数を少なく押えよう、少なく押えようという、そういうような配慮がありありとわかるわけであります。労働省のほうは、これは保険金を払うのですから、これはもうはっきりしております。もちろんこの受給者の全部が農民だとは私も申し上げておるわけではないのであります。しかし、この大半は農民であることは間違いない。大半といいましても八〇%以上は農民です。純粋の農民はほとんどいないでしょう。同じ政府部内で、労働省のほうの数字と農林省のほうで捕捉しておる数字がこのような違いでは、議論をするわれわれとしても非常に戸惑うわけです。どうかひとつ、農民で、しかも季節労働をしておる者がどのくらいおるのか、ぜひ調査をして御報告願いたい。そのように要望しておきます。  さて、雇用の問題でありますが、一般質問の際にも申し上げましたように、土建業界は、元請から数段階下がって下請、下請という状態であります。それでも登録業者との間に雇用関係が結ばれたものでありますと、比較的事件は少ないようであります。ところが、飯場がしらであるとか棒がしらであるとか、そういうようなものと雇用関係を結んで就労しておる出かせぎ者もかなり多いわけであります。こういう人方は、もちろん非登録であります。登録業者ではございません。出かせぎ農民に聞いてみますと、「そう言われても、だれに使われているかわからぬです」と言う、こういうような人方が大半であります。それですから、自分の使用者あるいは雇用主がだれであるかわからないものがたくさんおる。そういう状態の中で雇用され、働いておるわけであります。それでありますから、もちろん安定所を経てまいりますと、こういうような問題は比較的発生しないと思いますが、実態は安定所を経ざる者が六〇%ないし七〇%であります。したがいまして、これらの不正常な雇用関係、これはもうはっきりしているんです。これをつかまえるには、監督署の皆さんのパトロール以外にはないと思います。監督署の皆さんには非常に御苦労ではありますが、十分に飯場を見回る。あとで申しますが、労働基準監督官には、使用者及び労働者を尋問する権限も与えられておるわけであります。随時臨検する権限も与えられておるわけであります。それでありますから、十分パトロールをして、そうして、それぞれの関係者に尋問するなり、あるいは尋ねるなりして調査をいたしますれば、こういうような不正常な雇用関係は大半私は明確にされると思うのであります。したがいまして、私はこの際端的に聞きますが、末端の監督署の皆さんには非常に御苦労をかけますけれども、この際パトロールを強化して、これらの不正常な雇用関係を明確にして、そうしてこれを是正する、そういうような監督行政を強化してもらわなければならないと思うものでありますが、これに対する労働大臣の御決意を承っておきたいと思います。
  117. 小平久雄

    小平国務大臣 先生から、御熱心に出かせぎの方々の実情についてのお話が先般来あるわけでございまして、私どももよりより打ち合わせをいたしておるのでありますが、お話のとおり、監督署の者にできるだけひんぱんにパトロールさせて監督指導を十分にやる、こういう方面をこの際ぜひとも強化しよう、こういう考えでおります。近いうちに、いわゆる一斉の特別監督と申しますか、こういうこともぜひやってみたい、こう思います。
  118. 栗林三郎

    栗林分科員 これらの不正常な雇用関係でいわゆる労務供給が公然と行なわれ、ピンはねが行なわれておるわけであります。いずれも法の禁ずるところ、しかも、これが東京のどまん中で白昼公然と行なわれておるこの事実。私は、ただいまの労働大臣の御答弁によりまして、今後このパトロールを強化して——私はこれを摘発せいというのではありません、これを事前に行政指導で是正せしめる、こういう努力をぜひしていただきたいと強く御要望申し上げておきます。  それでは次に、賃金の問題に移ります。これも一般質問の際に質疑をいたしたのでありますが、法二十四条には、賃金に関する規定がまことに美しく、きれいに、どこからも欠点を指摘することのできないほどりっぱな条文があるわけであります。私は労働問題にしろうとでありますが、 これを賃金の五原則という、こういうように私は教わってまいりました。まことにりっぱな条文であります、規定であります。しかし私は、この賃金の五原則では、これから私が申し上げることは、これを救済することはできない、このように思うのであります。私は労働問題にはしろうとでありますから、もしも私の考えが間違っておれば、それをひとつ指摘して教えていただきたいと思います。  具体的な問題を提起します。締め切りがその月の二十五日、支払いが翌月の二十日、締め切ってから二十五日目にその賃金を払う、こういうように就業規則に定められた現場が非常に多いのであります。中には三十日で支払うという現場もございます。大体私どもが調査をしました約七百現場の中では、その六割ないし六割五分までが締め切り後十五日から二十五日までの間に支払う、こういう支払いの約束といいますか、そういう就業規則になって処理されておるようであります。ここで私は、二十五日に締め切って二十五日、三十日後に支払う、こういう支払いは、いまの二十四条に違反しておるのかおらないのか、まず、これを教えていただきたいのであります。もしも違反しておらないというのであれば、こういうようないわゆる賃金の計算及び支払いの規定は妥当なものであるかどうかということであります。一般質問の際にも申し上げましたが、極端なものの言い方でありますけれども、公務員は二十日が給料日です。あるいは十五日に月給をもらうところもございます。われわれ国会議員は、これこそ申しわけないと私は思いますが、十日に一カ月の給料をもらうわけであります。なぜ日雇い労働者は、締め切ってから、しかも二十五日、三十日たたなければ給料がもらえないのでしょうか、賃金がもらえないのでしょうか。経済的にも生活条件の一番弱いのがこのような日雇い労働者ではないでしょうか、出かせぎ労働者ではないでしょうか。そういう労働者の賃金を、おくれから守るために賃金の五原則が規定されておると私は思うのでおります。そうしますと、現行の二十四条では、この賃金の五原則では、二十五日後に支払うということがきわめて不合理であり、労働者の生活を破壊するものだとするならば、これを救うことはできないのではないでしょうか。違法であるならば、これは法律を直す必要はなくて、そういう違法行為を取り締まればよいわけであります。違法でない、合法であるというのであるならば、一体これをどう指導したらよいのでしょうか、この点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  119. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点、この前の予算委員会でも御答弁申し上げたのでありますが、御指摘の労働基準法第二十四条から見ますると、「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」かようになっておりますので、先生の御指摘の例の中に、二十五日に締め切って二十日に支払うという場合と、二十五日から働いて三十日以上たたなければ、賃金の支払い日は三十日であるという例もございましたが、この後者の例は、明らかに毎月一回以上支払われないということで、これは違反であることは明らかであります。しかし、前者の締め切り日が二十五日で支払い日が二十日である、翌月もまた二十日に支払われるというように、支払い日が一定しており、また、毎月一回以上支払われるということになりますと、形式的には二十四条違反にならないのではないか、こういうことになるわけであります。ただ、形式の問題と実態の問題とあわせて考えました際に、そのような締め切り日と支払い日の著しく隔たった就業規則のきめ方が適当であるかどうかという点については、御指摘のように問題があるわけであります。先般も予算委員会でこの点の御指摘がございました。私どもも、御指摘の事例もございましたので、そういった方面をさっそく監督をいたしてみたのでございます。先生の御指摘の事例とはやや違っておりましたが、締め切り日と支払い日のかなり離れた規定を持つ会社がございました。下請でございます。これにつきましては、監督というよりもむしろ指導という形で、そのような締め切り日と支払い日の著しく隔たったというものについては、これを適正な形に直していただくように指導をいたしまして、その当該下請のみならず、元請に対しましてもその旨を話しまして、そういった、形式的には法違反にならないとしても実質的にははなはだ不合理だ、何のための締め切り日かわからない、締め切ってから二十日もおくというような扱い方は、締め切り日と支払い日との関係から申しましても、理論的に考えました場合にあまりにも離れ過ぎておる、これはおかしいではないかというような観点からいろいろ指導を加えたという措置を講じてまいりましたが、これは法律改正をする必要があるのじゃないかという御指摘につきましては、なお一そうの指導監督を行ないまして、こういった実態をある程度是正するといったような努力を払いました上で、さらに検討さしていただきたいと思います。
  120. 栗林三郎

    栗林分科員 出かせぎ農民は、大半は三月の末に帰ります。いまの事例で申し上げますと、三月一ぱい働きますが、まず三月二十五日に締め切るわけですね。しかし、支払い日が翌月の二十日でありますから、彼らは帰郷するときにこの賃金の精算を受けることができないわけであります。もちろん親切な、思いやりのある、しかも経済的にも力のあるそういう業者は、そういう就業規則いかんにかかわらず、あるいはそういう契約のいかんにかかわらず、帰郷の際には精算をして帰す、そういう業者もあるのです。全部が全部そうではないと言うのではありません。私ども、こういう労働者にかわって感謝をしたいと思うほどの業者もおるわけでありますが、しかし、大部分はいま申し上げましたように二十五日に締め切られるものですから、支払いは翌月の二十日で、帰郷するときに賃金をもらって帰ることができない。あとから送る。さて、彼らが帰ってはたして送ってくれるかどうかです。最近の不払いのケースは、あとから送ると言って送らない不払いのケースが非常に多いのであります。送ってこないからといって、上京して交渉するわけにもまいりません。そういうひまもない、また、そういう経費も使いたくない。だから、結局は泣き寝入りになってしまう。そういうようなケースの不払いが非常に多いのであります。締め切って一週間も十日もたたなければ賃金が払えないなんというようなことは、これは私どもは考えられないことです。少なくとも経済的にも生活条件のうんと悪い、そういう労働者を働かせるのですから、一日でも二日でも早く賃金を支払ってやらなければならないはずなんです。それに対して、月給を取る者は、一カ月たたなくても月給はくれる。しかし、日給の労働者はこのようにおくれるということでは、私は納得ができないのであります。もちろん、行政指導を強めてこれらを是正すると局長答弁されますが、私どもは、行政指導を強化してもこの問題は完全には解消はできないものと思います。したがって、やはりこの賃金五原則をどうしても一部改正してもらいたいものだ。端的に言うならば、締め切ったならば締め切った以後二日以内に支払うべきだというような内容を盛った条文を、この二十四条にひとつ入れてもらいたい。賃金五原則の中にこのように修正してもらいたい。こういう法の一部改正を私は強く要望するものでありますが、この点についての御所信をもう一ぺんお伺いいたしたいと思います。
  121. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいまの先生の御指摘の事例でございますが、やめて帰るときの問題は二十四条の問題ではなくして、別に労働基準法二十三条の問題になってまいります。すなわち、「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、七日以内に賃金を支払い、」云々という規定がございまして、いま御指摘の点につきましては労働基準法二十三条で七日以内に支払わせる、こういう形で処理されるべきものかと考えます。ただ、いずれにいたしましても採用される場合の労働条件が明確でない、賃金支払い日と称するものが就業規則でどのように定められているか、いろいろ御指摘のような非常に不明確な労働関係からして、明らかでないという点が多々あります。こういう問題につきましては、二十四条だけの問題でなくて、就業規則の問題その他いろいろ関連いたしておりますので、御指摘の点は御趣旨を私ども十分拝聴いたしまして、今後も監督指導に一そうの努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  122. 栗林三郎

    栗林分科員 それでは、時間がなくなりますので簡単にもう二、三点お伺いしますが、三十九条に定められております有給休暇の問題についてお尋ねしてみたいと思います。  継続して一年働く一般労働者には、原則として有給休暇が与えられておるわけです。そこで私は、この季節労働者に対しては特例を設けてもらいたい、また、特例を設けるべきだ、このように思っておるものであります。その理由を簡潔に申し上げますと、普通の労働者で一年働いた者は心身の休養を与えなければならぬ、それによって労働力の再生産をしなければならぬ、こういうことで、近代的な国家はすべて有給の休暇を与えておると承っておるわけであります。ところが季節労働者は、一つは、一般労働者よりもきわめて悪条件の中で労働をしておるのであります。いずれの点から見ましても、一般の労働者よりもまことに劣悪な条件の中で働いておるわけであります。具体的に言うならば、夫婦が別居して働いておる。これは人生の最大悲劇であります。戦争中ならばしかたがないといたしましても、今日は戦争ではありません。平和な民主主義の日本において、夫婦が別居して五カ月も六カ月も暮らさなければならない、働かなければならないということは、これほど人間として悲劇はないと私は思います。しかし、彼らは出かせぎをしなければならない。そうしなければ生活ができないので、やむを得ず別居して働いておるわけであります。家族とも別居であります。これほど悪条件はないと私は思う。さらに、彼らは遠く郷里を離れて、そうして醜悪な飯場生活の中でからだを休めて働いておるわけでありますから、いずれの点から見ましても、悪条件の中で彼らは働いておるわけであります。したがいまして、一般の労働者よりも心身の疲労は私は激しいと思う。それでありますから、彼らに休養を与えて、その労働力を再現させなければならないのですから、一般の労働者には一年で有給休暇を与えるというのでありますならば、このような悪条件の中で働く季節労働者にはもっと短い期間で有給休暇の権利と恩典を与えるべきではないか、このように思うのであります。  もう一つの理由は、家族生活が別々でありますから、そこからいろいろな家族問題、社会問題が発生するのであります。発生するのが当然であります。そこで、私どもは、これらを人道的な面から考えまして、彼らに有給休暇を与えることによって、この休暇を利用して家族面会も可能になると思うのであります。こういう家族面会が可能になる機会を与える、そうすることによって、いろいろな社会問題もこれを未然に防ぐことができると思うのであります。こういうような労働政策の面からいいましても、人道上の高い見地から考えましても、私は、彼ら季節労働者に対しては、もっと短い期間で有給休暇の権利と恩典を与えるべきだと考えるものでありますが、この点に関する労働大臣の御意見を承りたいと思います。
  123. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 私から答えさせていただきます。  夫婦別居の生活実態等から考えますと、先生が御指摘の点、私どもも十分傾聴すべきことであると存じます。ただ、現在の制度は年次有給休暇という制度で、一年継続勤務というのが、先生指摘のように要件になっておるわけであります。かりに出かせぎ労働者の問題を考えます場合に、臨時工はしからばどうなるのであろうか、それから一年に満たない者はどうなるのであろうか、いろいろ問題がございますわけで、各国の例を見ましても、一年というのを基準にいたしまして年次有給休暇という制度をつくっておるわけでございます。いろいろ出かせぎの方々の御要望の中にも、四カ月以上の出かせぎ者に対して、一カ月一日以上の有給休暇を与えるように要望がございました。私はこれを拝見しまして、これは有給休暇よりもむしろ週休を与えたらいいんじゃないか、このことのほうがむしろ先決であり、ややもすれば週一回与えるべき週休を与えるということすら十分でないのではなかろうか。そこで、当面の問題としては、先ほど来申し上げておりますように就業規則におきまして週休を十分とらす、それが相当の実績をあげつつ、その使い方をどうするかといったような問題を考え、かつ労務管理の問題として、企業ではそれをどう扱うかといった問題からの検討の余地もあるんじゃなかろうかというふうに考えまして、せっかくの御指摘であり、御趣旨は、私はいわば感情的にはまことによくわかるのでございますけれども、制度本来の姿から見まして、週休制度その他労務管理の問題としてそういった休暇制度をどうするか、いろいろあるように存じまするので、そういった点、さらに検討さしていただきたいと思います。
  124. 栗林三郎

    栗林分科員 不払いに関するその責任を元請にとってもらおうという質疑は、先ほど小林委員からなされ、御答弁いただいておりますが、この際、もう一ぺん私は伺っておきたいと思います。  もしも下請業者に賃金上の不払い等が発生した場合には元請が補償する、あるいは責任を負うという立法措置をとる御意思がないかどうか、あるいはそういう検討をする御意思がないかどうか。  それからいま一つは、いま直ちに立法措置がとれないといたしましても、官庁関係の発注につきましては行政措置で可能だと私は思います。したがいまして、もしも下請業者が労賃の不払い等を起こした際に元請がその責任を負わないという場合には、そういう業者には官庁の発注はこれを差しとめる、保留する、このような行政措置はとられないものかどうか、あるいはとる意思があるのかどうか。この点、重複になりましょうが、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  125. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点につきましては、公共事業等の入札の場合に査定要素としていろいろ考えられますが、その中に労働者の福祉という要素を入れ、その具体的な内容として賃金不払い条項をこの中に入れるというような考え方につきましては、労働省からもかねて建設省に強く要望しておったところでございますが、昨年十二月二十七日、建設事務次官通達におきまして、入札の査定要素といたしましてその一項が入ることになった次第でございます。そういった新しい制度の経験を私ども十分見ました上で、さらにいろいろ検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  126. 栗林三郎

    栗林分科員 昨年の二月五日の予算委員会で、わが党の中澤委員の質問に対して総理大臣は次のごとく答弁をしておるのであります。私はこれをきわめて重要視しておるものであります。中澤委員の質問内容を申し上げますと、四点ありますが、その四つの中に、一つは不払いに対する政府の方針、たとえば元請が補償する、そういうような積極的な検討をすべきではないかという質問、もう一つは有給休暇を与えるべきではないかという質問、あとの二点は省略いたします。この四つの質問に対して、佐藤内閣総理大臣は次のように答弁をしておるわけであります。「ただいまの問題で、賃金不払いなど、また国保と日雇い保険との二重負担だとか、あるいはまた、この税金の問題はなかなかむずかしいと思いますが、」その次ですね、「有給休暇の制度、それぞれ関係のところを十分連絡をいたしまして、こういうあたたかい処置をとることが私の本来の政治の姿勢でもありますので)十分各省を督励いたしまして研究いたします。」以上が総理大臣の中澤委員に対する答弁であります。したがいまして、どうかひとつこの有給休暇の制度の問題、不払いに対する元請の補償の問題、あるいは官庁発注の際のそういう行政的な配慮の問題、措置の問題、私はもっともっと積極的に御検討を願いたいと思うものであります。時間がありませんので、私はこの点についての質疑は、この賃金問題についてはこれで終えますが、この際ひとつ、総理大臣はこのように答弁しておるのでありますから、所管大臣である労働大臣から直接所信を承っておきたいと思います。
  127. 小平久雄

    小平国務大臣 賃金の不払いの問題にしろ、あるいはお話しの有給休暇のことにせよ、とにかく、先ほど先生からお話がありましたとおり、考えようによると、根本的に考えれば人道的な問題でもあると私は思います。そういう問題でありますから、私自身も就任以来、特に当面賃金不払い問題につきましては重大な関心を持ちまして、瀬戸山建設大臣とも何回か顔を合わせるたびぐらいに話をいたしまして、これは建設業の関係ですから何とか善処をしてくれ、こういう話をしまして、建設大臣もそれは全くだということで、非常に強い同感の意を表してくれました。そこで事務当局に命じまして、事務的にも再三折衝させまして、先ほど局長からお話をいたしましたとおり、当面この程度処置がとられることになったわけであります。しかし、もちろん私どももこれで万全だ、こう考えておるわけではございません。したがって、今後さらに行政措置なり、でき得べくんば、私たちの立場からすれば法的にも何とかしたい、ほんとうに私はそういう気持ちを持っています。しかしながら、法をつくるということはそう簡単にもいきませんので、当面は行政措置でやっていく、また一面、業者自身の心がけの問題が当然ありますから、その点についても、私は近く業者の代表等も呼んで十分話し合い、あるいは警告をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  128. 大橋武夫

    大橋主査 栗林君にお願いを申し上げますが、すでに御相談いたしました時間をだいぶ超過しておりますが、まだ多数質問者がございますので、できるだけ簡単に御進行いただきたいと存じます。
  129. 栗林三郎

    栗林分科員 それでは、寄宿舎の改善につきましてお尋ねしておきたいと思います。  寄宿舎の改善につきましては、去る十九日の私の一般質問以後、直ちにそれぞれ係官が必要だと思われる幾つかの飯場、現場を調査されたと聞いておるわけであります。私は、そのような迅速な活動、そういう機動力を発揮して調査をして、いわゆる監督署としてのパトロールを強化してもらいたいと思うわけでありますが、ここで具体的に、一種、二種の規定がありますけれども、一般質問のときにも言いましたが、一種の規定は三十カ条にわたる相当こまかい配慮が加えられておるわけであります。ところが、二種の場合はたった三カ条なんです。これで人間が住めるような寄宿舎が設置できるとは思えません。たった三カ条ですよ。それでありますから、端的に言って、私は、この附属寄宿舎規程の中から二種を削除してもらいたい。この規程に基づいてすべて一種の寄宿舎の設置をせしむべきだと思うのでありますが、二種を廃止する意思がないかどうか、端的にひとつお尋ねいたします。
  130. 小平久雄

    小平国務大臣 先生承知のとおり、二種関係は六カ月以内という、いわば臨時的な宿舎、こういうことをたてまえにいたしておりまして、それだけいわば簡易にというか、簡素にと申しますか、確かにそういうたてまえでできておると思います。必ずしも条文の多い少ないということでなくして、たてまえがそういうことでございますから、簡素であることはある程度やむを得ぬかと思います。それにしても、人間が住むにふさわしくないようなものであってはならぬのであります。また、先般申し上げましたが、とかく最もひどいというのは、経済力のない下請のまた下請、さらにまたその下請というようなところがおそらくやっておることでございましょうから、そういう点についても何らかのくふうをしなければならぬ。少なくも元請のものがつくる第二種くらいのものを、元請たると下請たるとを問わず利用できるように何とかできぬものか、私自身もそういう考えを持っておりまして、いまいろいろ検討いたしておるところでございます。
  131. 栗林三郎

    栗林分科員 寄宿舎規程の第五条にはこういう条文があります。面会室、娯楽室、そういうような部屋をなるべく設備すべきだ、これが第五条の規定であります。ところがこの五条には、「なるべく」ということばがついているわけです。「なるべく」があるものですから、こういう施設のある寄宿舎はほとんどないのであります。これは一種、二種ともに適用を受ける条文だと思いますが、二種の規定の中に、過日も指摘いたしましたが、寝具を整理整とんするために押し入れもしくはたな、あるいはこれにかわるべき設備をしなければならないという規定がありますが、「若しくは」ということばがあるものですから、押し入れを設備しておる飯場は全然ないと言ってもよいのであります。したがって、全廃することができないなら、こういうような個所を一つ一つ改正する、これは法律でないのですから、やる気になればむずかしくないと私は思う。しかも、だれが聞いてもこれは当然のことではないかと私は思うわけです。押し入れがないために、ふとんが万年床になる。押し入れがあれば、押し入れに寝具を片づける。したがって掃除もできるわけであります。ところが「押入若しくは棚」となっておるものですから、みんな「若しくは」のたなをたくさんつくりますが、押し入れを設置するところはないのであります。これを押し入れまたはと、「若しくは」をまたはと置きかえてもらう、またはとこれを直す、こういうように改正すれば、いまのプレハブ飯場でありましても、すべての飯場には押し入れを設置しなければならなくなるわけであります。押し入れが設置される。たなも設置される。そのほかに、労働着であるとか作業着が部屋にぶらぶら下がっておったのでは、これは清潔ではありません。また、整とんもできないのであります。一種の規定の中には片廊下をつくるという規定があります。二種の場合もやはり廊下をつくるというように改正しまして、片廊下でもよろしゅうございますから廊下ができる。そうしますと、その廊下に作業衣であるとかそういうものをかけておく。したがって、寝室は清潔になるわけであります。  具体的な例を指摘すれば以上のとおりでありますが、このようにすれば、いまの移動飯場でもプレハブ飯場でも、もっともっと清潔な寄宿舎ができると私は思うのであります。飯場の改善は、ある意味におきましては、私は賃金以上の問題だと思うのであります。このような前々近代的なこういう飯場が東京や神奈川のどまん中にあるということそれ自体、私は日本の恥部だとも思うわけであります。まことに恥ずかしいと思うわけであります。どうかこれらは、イデオロギーの問題でもありません、人権を尊重するという立場に立ちますならば、これはだれでも賛成してくれることだと思いますので、この際、ひとつ労働省は一そうこれらの飯場などの調査を強化されまして、一方においてはこの規定の不備を改正すると同時に、行政指導を通じて、もっともっと労働者がほんとうに手足を伸ばして休養のできるような清潔な寄宿舎を設置させるように、少なくとも飯場を一掃するというような決意で寄宿舎の改善に乗り出してもらいたいということを強く要望するものでありますが、この点に関する労働大臣の決意を伺いたいと思うのであります。
  132. 小平久雄

    小平国務大臣 先生の御指摘のように、はなはだ不備なと申しますか、そういう寄宿舎がずいぶんあることはあります。そこで、すでに役所といたしましても寄宿舎の規則等の検討をいまいたしておりますので、先生の意のあるところも十分体しまして善処いたしたいと思います。
  133. 栗林三郎

    栗林分科員 人事院総裁がお見えになっておられます。御病気のことを承っておりましたが、わざわざ御出席くださいまして、しかも長時間お待たせしてまことに恐縮に存じますが、総裁にお尋ねしたいことは次のことであります。  労働基準監督署の監督官あるいは職員の皆さんが、今後もっと現場回りを強化されて、そうしてこれら恵まれない、日の当たらない出かせぎ労働者あるいはその他一般労働者の保護のために活動しなければならないわけであります。私どもは、結局文句を言えば、監督署の皆さんに小言を言うわけであります。しかし、考えてみますと監督署の職員は非常に少ない。この人数の問題は総裁の所管ではありませんが、非常に数が少ないのであります。そうして受け持つ現場は非常に多い。私は中野の監督署あるいは品川の監督署を克明に調査してまいりましたが、中野のごときは二千五百から三千の現場を持っております。ところが、わずか十三人の職員しかおらないようであります。もしも数字で間違いがあれば訂正をいたしますが、十三人。そのうちで監督官がわずか三人であります。署長は女の方でありますが、非常に親切な、ほんとうにこの人こそ出かせぎ農民の相談相手だと私どもは心から感謝をしておる女の署長さん、その次の次席ともう一人、三人の監督官しかおらないのであります。この三人の監督官で、二千五百から三千の現場をどうしてパトロールができるでありましょう。たくさんの不払い事件を処理しておられましたが、その不払い事件の処理につきましても、親切にこれを処理しておられるのであります。私ども幾つかの問題を持ち込んで処理をしていただきましたが、ほんとうに中野の監督署の皆さんに対しては、関係のあるそういう出かせぎの労働者、農民は心から感謝をしておるわけであります。しかし、今後一そうこのパトロールを強化してもらう、そういうことになりますと、監督官の仕事というものはまことに困難であり、つらいことだと私は思うのであります。元来、この監督官の給与は、一般行政職と同じ給与法に基づく給与を受けておると聞いておるものでありますが、監督官の皆さんは、室内で事務をとる、そういう職務ではないのであります。この監督官の仕事は外をパトロールする、現場を回る、これがこの方々の仕事なんでございます。いまは暴力飯場は少なくなりましたが、あるときは暴力飯場まで行って、身の危険をおかしてまでも調査をしなければならないこともあったはずであります。したがいまして、一般の行政職と同じに扱うということは、私は無理であろうと思うのであります。警察官や税務職にある方々は、一般行政職とは違った俸給を受けておるやに私は聞いておるわけでありますが、この際、労働基準監督官の俸給につきましては、一般行政職から離して特別の考慮をすべきだと思うのでありますが、これに対する総裁の御所信を承っておきたい、かように思う次第であります。
  134. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 御趣旨はまことによくわかりますし、かつ平素の監督官の諸君の御苦労についても十分お察しするわけであります。ただ、いまのおことばにもありましたように、定員が少な過ぎるための御苦労ということがありますれば、その分はいみじくも御指摘になったように私どもの管轄ではございませんので、これは私ども栗林委員と一緒になって、他の方面にまたお願いすべき立場にあると思います。しかし、いま本題であります給与の問題についてお答え申し上げるわけでありますが、確かに、御指摘のように普通の青テーブルの事務をとっております人々と違うことははっきりしておりますが、給与表上はそれらの人と一緒に行政職の中に入っておる、これはもうおっしゃるとおりであります。ただ、今日の俸給表のたてまえが、これはもう十分御承知のことでございますけれども、何ぶん職階制というようなのがまだ確立しておりませんために、非常に大まかな形になっております。ことに顕著な性格を認められます、いまお話に出ました公安職あるいは税務職というようなものと並びまして先生方の教育職員、それから医療の職員、それから研究職の方々、船に乗っておられる海事の職員の方々、ごく顕著なものだけが実は別の俸給表になっております。その他非常に広範囲の方々が実は行政職の俸給表に混在しておる。これはもう率直に申し上げてそのとおりでございます。ただ、その混在しておりますものを見ますと、確かに、ただいまの基準監督官については公安職なり税務職なりに非常に似ておる面がございますが、実はまた、この基準監督官の皆さまに非常に近い職種の方々というのは、ずいぶんこの行政職の中に入っております。もう一々職名は申し上げませんけれども、そういうものが一緒になっておる。したがいまして、これらのものをさらにこまかく区分いたしますとなると、やはりよほど職階的にはっきりと基礎をきめてまいりませんと、これは収拾がつかないことになるという実情にあるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、一応その大まかな行政職の中に置きながら、しかし、たとえば危険作業に従事される方の特殊勤務手当というようなものをある特定の方々に対してはお認めをしておる、あるいはまた運用の問題としては、級別定数をきめます際におのおのの職種の特殊性をできるだけ勘案して、適正な結果を期待しておるというようなことで実際やっておるわけであります。したがいまして、問題は問題として残りますけれども、当面はやはりそういった運用の面でわれわれは十分理解を深め、調査を進めていきたいと思っております。根本問題につきましては、もう何でも正直に申し上げますけれども、ここで引き受けましたと安受け合いを申し上げるだけの自信は、まだ、ただいまのところではございません。しかし、なお検討は続けてまいるつもりであります。
  135. 栗林三郎

    栗林分科員 では、最後でありますが、せっかく自治省からもおいでになってお待ち願っておりますから、私はごく簡単に一つだけお尋ねして終えたいと思います。  いま地方自治体では、この出かせぎ対策を非常に重視しまして、それぞれの対策を立てておるわけであります。したがって、これに要する経費も相当多額にのぼっておるわけであります。たとえば秋田県の場合は、相当の予算を計上してこの対策を進めておる。秋田県の東京事務所には専任の係官を駐在せしめて、問題処理に当たらせておるわけであります。これはひとり秋田県だけでなしに、各県ともこの対策費を計上して、この対策上遺憾なきを期して努力しておるわけであります。これは県だけではなしに、各町村におきましても、それぞれの経費を計上して対策を進めておるわけであります。私は、これらの対策を労働省だけで、国だけで進めても、決して万全を期することができないと思う。したがって、地方自治体におきましても、それぞれ自分の住民でありますから、できるだけの措置をしなければならない。そのためには経費のかかることは当然でありますが、この際、これらの出かせぎ対策に要する経費の一部を何らかの方法で助成をする、そういう配慮を持つべきではないか。あるいは特別交付税の算定の中にそういうものは考慮しているんだ、こういう御答弁があれば私も喜んで引き下がることができるわけでありますが、交付税の中にこれを考慮するとか、あるいは他の方法でこれらの経費の一部を自治省のほうでも心配する、こういうような配慮がないかどうか、これを承っておきたいと思います。
  136. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 地方団体に対する財源措置の問題につきましては、一般的に、地方交付税算定にあたりまして、基準財政需要額の見積もりをどうするかという問題がございます。私どもが、ただいまお述べになりましたような出かせぎ対策につきまして、特にそれに要する経費について、どういう経費があるかということは現在調査いたしておりますが、現在の段階では、いまだ特別交付税等で措置するほどの財政需要は出ておらないのではないだろうかという気がいたしております。なお、こうした経費につきまして、さらに該当県につきまして調査を進めまして、必要があれば、さしあたり特別交付税等で措置することになるだろうというふうに感じておりますが、まだ現在の段階においては検討中であります。
  137. 栗林三郎

    栗林分科員 長時間にわたってたいへんありがとうございました。ただ、失業保険の改正につきましては、その意思はないということを、先ほどの小林委員の質問大臣お答えになっておられます。願わくば、これはこの国会に提案しないというのでなしに、これは永久に改正しない、こういう決意を持っていただきたいと思います。特に失業保険は、法改正だけでなしに、給付制限を強化されておりますために、ここに非常に問題が起きておるわけであります。私どもも不正なものは排除しなければなりません。しかし、考えなければならぬことは、職業を選択する自由はあるわけであります。それから遠方へ出て行けといいましても、居住を変更するということはなかなか容易なことではないのであります。どうかひとつ、給付制限のあることは私承知しておりますが、この制限を一そう行政措置をもって強化する、必要以上に地元にトラブルを起こすことのないように、もっと親切な配慮をもちましてこれらの問題を処理していただきたい、こういうことを最後に御要望申し上げまして、私の質疑を終えたいと思います。
  138. 大橋武夫

  139. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間の関係も頭に浮かばせなら質問をさせていただきたいと思いますが、私はきょうは最賃法の問題と社内貯金の問題、それに職業訓練所の問題、こういう三点について、時間があれば全部お聞きをいたしたいと思います。  そこで、最賃の関係に入る前に、私は婦人少年局長にお伺いをいたしたいと思いまするが、御存じのとおり、憲法におきましても、また労働基準法の三条、四条においても、婦人なるがゆえに格別不利な取り扱いをしないことが明確に規定されておるわけでございますけれども実態を見ますると、そうでなしに、婦人なるがゆえに非常に冷やめし扱いを各職場でしているという実例が非常に多いわけなんですが、こういう点について局長御存じであるかどうかということをまず伺いたいと思います。
  140. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 先生指摘の点は、婦人が憲法あるいは労働基準法において男子と同等に扱われるよう保障されていながら、実態においては多々差別があるという意味にお聞きしたのでございますが、その点につきましては、私どもも、婦人少年局設置以来最も大きな関心を持って注目してまいったところでございます。戦前におきまして、女子の労働を男子よりも質の低いものと見る慣行が、長い間、日本の社会におきまして存続しておりました。その関係もございまして、戦後の法制の改正によりましても、にわかにそのような考え方が改まることはむずかしかったような実情があったと思われます。でございますので、特に戦後日の浅いころは、男女の差別待遇ということが、形式の上でも、また慣行の上でも非常に目に立つものがあったようでございます。しかし、それらの遺憾な状態は、その後の社会の基調の変化、あるいは労働組合活動における業績、あるいは行政指導などと相まちまして、次第に男女平等の主張が普及いたしますとともに、少なくとも形式的な差別ということは非常に影を薄めてまいってきたものと一般的には言えるかと思います。しかし、今日におきましても、もちろん個々のケースにつきましては、幾多遺憾な実情が存在していることは私どもも常に痛感いたしておるところでございますし、また、そのためにこそ私どもは各機関と御協力の上で、その一そうの改善のためにつとめている、このような次第でございます。
  141. 田口誠治

    田口(誠)分科員 新憲法になってから、ただいま御答弁のありましたように、職場におきましても、婦人の地位というものは男子と同等な取り扱いをなされようとして社会では努力されておりまするが、実際問題を考えてみますると、家庭におきましては非常に婦人は強くなっておりますけれども、まだ職場では不平等な取り扱いをされておる。具体的な例を申し上げて、それにお答えをいただいたほうが早いと思いまするが、まず定年制の問題等は、これは婦人なるがゆえに年齢が若くて定年制をしいておる向きがあるわけなんですが、こういう点は憲法とか基準法の保護立法に違反するものでないかどうか、あわせてそういう実態御存じであるのかどうか、また御存じであるとすれば、それに対してどういうような指導をなされておるか、この点をひとつ承りたいと思います。
  142. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘の定年制の問題でございますが、女子に対して特別な定年制を設けるという事実が、確かに先生指摘のようにあるわけでございます。この女子に対する特別な定年制といいますと、大体形としては三種類あるかと思います。   〔主査退席、竹内主査代理着席〕  一つは、男子にも定年制がありまして、いわゆる高年の定年制がございまして、それと比べてやや低い程度の定年制を女子に設けるもの、通常男子五十五歳、女子五十歳というような五歳くらいの格差で、女子がやや低い定年制がございます。  それからまた、いわゆる女子若年定年制というのがございまして、これは女子に対して著しく低い定年制を設けるものでございまして、たとえば二十五歳というような定年制を女子だけに設けているという例でございます。  それから第三の類型といたしまして、いわゆる結婚退職という形のものがございます。これは年齢は定めないのでございますが、結婚という事実が発生すれば、年齢にかかわりなく職を退くという点で、一律にやはり職を退くわけでございますから、若年定年制に類似した一種の定年制であるかと思われるのでございます。  これらの女子に対する特別な定年制を設けることが法律に違反するのではないかというお尋ねでございましたが、このことにつきましては、いろいろと学説もあるようでございますが、従来の行政上の解釈では、これは直ちに法律に違反するとはいえないというような解釈が出ているようでございます。
  143. 田口誠治

    田口(誠)分科員 いまのところの理由をちょっと言ってください。法律に違反しないという解釈を行政指導としてしておるということだから、その理由はどういうわけか。
  144. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 労働基準法の第四条には、賃金について男子と女子を差別することはできないことをうたっておるわけでございまして、解雇についてこれが援用されるかどうかということは直ちには言えない、このような解釈であるかと思います。実際には、だいぶ前でございますが、労働省に対してこのことが違法であるかという問い合わせに対して、法違反ではないという通達が出されていることがございます。  次に、実態につきましてお答えいたしますと、女子に対して男子と異なる定年制を設けておる場合というのは比較的少ないようでございまして、労働省のほうで前年調査されたところによりますと、調査対象四千事業場ほどの中で、約二割のものが男女別の定年制を設けていることが発見されたのでございます。その際、どのような形態で男女の区別が見られるかといいますと、先ほど申しました第一の類型、すなわち、男子五十五歳、女子五十歳、あるいは男子六十歳、女子五十五歳というように、わずかと申しますか、五歳程度の開きをかなり高年のところで設けておる例がおもでございまして、先ほど申しました若年定年といわれるものはきわめて少ないように見られたわけでございます。また、結婚退職につきましても、これは例としてはきわめて少ないようでございます。  それから指導の点についてお尋ねがございましたが、私どもといたしましては、女子に対して特別な定年制を設けることは望ましくないという立場から、一般的な啓蒙活動を行なっておりますし、また、照会がありましたときには、これを改善するように指導をいたしているわけでございます。
  145. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これは婦人少年局長に限らず、答弁のできる方で答弁していただきたいと思いまするが、この定年制の格差というのは、男子の場合でもあるわけなんです。事務員と作業員、こう格差があるのですね。だからこの格差というのは、どういうところに格差をつけ、そうしていまの平等の取り扱いに違反しないかといえば、その仕事の内応が、女子なり、また作業員なり事務員なりの体力にふさわしいとか、ふさわしくないとか、こういうことで格差をつける場合には、これはやはり労働基準法の保護立法の精神からいっても、憲法の精神からいっても、こういう格差はまあいいというようにぼくらは解釈をしておりますが、その他の場合は、いろいろ理由はありましょうけれども、格差をつけることは、基準法には賃金の問題が出ておるけれども、憲法十四条等の問題を援用してみましても、これは格差をつけることは違法である、こういうように解釈をしておるのですが、どうですか。
  146. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先ほど婦人少年局長からお答えいたしましたが、まず第一に、一般労働者、男子労働者相互間におきましては、いわゆる労働条件として考えました場合に、労働条件の差別取り扱いという観点から見ますれば、差別取り扱いを禁止いたしておりますのは、労働基準法の第三条でございまして、これは先生承知のとおりでございますが、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由とする差別的取り扱いを禁止しておるわけでございまして、それ以外のものには労働基準法では触れていない。男子と女子については、賃金についてだけ第四条に規定しているだけでございまして、第三条には触れていない。こういうことからしまして、労働基準法違反になるかどうかという問題提起に対しましては、労働基準法には直接違反するものじゃない、こういうお答えをし、かつ婦人少年局長からお答え申し上げましたとおり、ただ、労働基準法違反にならないとしても、考え方として、そういう考え方が適当であるかどうかという判断に立ちますれば、先生指摘のように、憲法の第十四条の規定から申しまして、そういった著しい差別的な扱いをするということは適当でなかろう。したがいまして、法違反の問題とは別に、指導としては、やはり好ましくないという立場で処理すべきではなかろうかという観点から、婦人少年局労働基準局が同一の見解をもちまして指導に当たっておるということでございます。
  147. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その四条のほうですが、初任給の違った場合には、これは違反にならないですか。
  148. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 第四条は、賃金について、労働者が女子であることを理由とする差別的取り扱いを禁止しておるわけでございます。したがいまして、初任給の場合に、たとえば高校卒の男子は幾ら、女子だから幾らということで、それじゃ低いという場合には、この第四条違反になる可能性が多いわけでございます。
  149. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それがあるということを御存じ御存じでないかわかりませんけれども、私はあるから指摘をしておる。それで、採用試験をするときに、試験の内容に格差をつけた場合には、たとえて言うならば、高度な答案を出した場合と、それからやさしい答案を出した場合とによって、採用するときにはやさしい試験内容でもった場合には、これは職種によって賃金に格差をつけることがあり得ると思うのです。また、それは違反にならないと思うけれども、そうでなしに、男子も女子も一律の試験をして、そして試験の点数の上位にある者から採用した、その採用のしかたに、女子が女子なるがゆえに初任給が低いというのは、これは四条違反になると思うのです。だから、こういうものは事実あるのだが、これからどうしなさるのですか。
  150. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 初任給のきめ方で基準法違反と判断されるようなケースがままありますことは、私も承知いたしております。具体的な事例も手がけております。ただ、先生いまお話しのように、単純に女子であることを理由としたのか、そうでなくて、能力テストをしてそれに応じて処置したのか、その他いろいろな付帯条件が多うございますので、この第四条違反かどうかという点については、そういった点を総合的に判断しなければならないという問題がございます。しかしながら、お説のように、問題がありますことは私ども承知いたしております。ただ、全体の傾向としましては、最近の中学卒あるいは高校卒、特に中学におきましては、男子中卒と女子中卒の賃金がほぼ同額に接近しておるというような一般的な傾向から判断いたしまして、そういった問題がだんだん是正されてきておるのではないかというふうに私どもは観測し、かつ期待を申し上げておるような次第でございます。
  151. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私が指摘をして質問をしておりますのは、同一テストをしておる場合を言っておるのです。同一テストをして、そして点数の多い人から五十名なら五十名採用する、この中に女子が十名入っておった場合に、女子の初任給は低い。これは違反をしておるのだから、こういう職場があれば、役所のほうでそういう事業場に対しては取り締まりをしてもらわなくちゃならないし、手を打ってもらわなければならないと思うのです。それは事実あるのだから、その点を指摘をしておるのです。そしてそういう事業場に対しては、そうしないように指導をしていただく、また手を尽くしていただくということについては、これは御異存はないと思いますが、念のためそこを確認しておきたいと思います。
  152. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 お話でございますが、採用試験の形式と、もう一つは、働く労働の実質をこれは判断しなければならないわけでございまして、むしろ問題は、同じ労働をしておるという角度からの判断が重要になってまいります。採用試験が違うからというだけで判断すべきかいなか、ただいま申しましたような諸条件がございますから、労働の実態そのものからむしろ判断すべきではないかという観点があるわけでございまして、したがいまして、いま先年の御指摘の場合に、直ちに法違反でもり、どういうふうに直すという答弁がちょっとしにくいのでございますけれども、御趣旨の存するところは私ども十分了解できますので、今後十分注意々して措置してまいりたいと考えております。
  153. 田口誠治

    田口(誠)分科員 なるべくさわらぬようにしたいという考え方でいろいろ答弁してみえますけれども、私は、テストも同じ、職場も同じ、こういう同一労働の場合を申し上げておるのです。これに格差があったり、テストに格差があったりした場合には、これは相違ができても——相違ができることは好ましくはありませんけれども、それがあった場合に、即これは基準法の違反であるといって指摘することは困難であろうけれども、同一の職場で同一のテストをして、女子なるがゆえに賃金が低い、初任給が低いということは、これは私は不平等な取り扱いの中に入ると思うのです。  それから、採用してから一年たち二年たちするうちに昇給をしますね。昇給をするときに、下げても、女子なるがゆえに下げたと事業場では言わないわけです。それは能率的に勘案してやりましたと言う。だから、そういうむずかしいところまでいかなくても、もうスタートが違反事項が非常に多いので、その一点を申し上げて、そういう点についての取り締まりをひとつしてもらいたいということを希望を申し上げておきたいと思います。  特に金融機関の場合には、女子の定年制というものは全く格差が大きいわけなのです。結婚したら必ずやめなければならぬというのが大半でありますし、そうでたしに、ある程度の年齢のいった場合には退職をさせる、強引に退職をさせる、就業規則とか労働組合との労働協約の中に入っておらずに、ある年齢になったら、どうだ、お前はもうやめたらどうだといって、いやがらせの肩たたきをする、こういうことがあるわけなのです。これを婦人少年局長は知ってみえますか。
  154. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 御指摘のような事例があることは、私どもおりに触れて耳にするわけでございます。で、そのようなことを排除してまいりますために、先ほど申したところでございますが、婦人少年局におきまして啓蒙活動を行ないまして、使用者、労働者あるいは一般の方々に対して、このような女子に対する特別な定年制を設けることが望ましくないという趣旨を普及することにつとめているわけでございます。
  155. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ついででございますから、私は端的に申し上げておきますけれども、金融機関の場合は、募集するときには、男子も女子も同じ募集をする、募集条件は同じである、それから採用試験のテストの内容も同じである、そこで、いよいよ甲乙丙丁、あなたとあなたは採用しますといって採用予定者をきめますね。そうしますと、採用するすぐ直前になって、一回出てきてくださいと言ってくる。そして就業規則か何かわかりませんけれども、これに判を押してください、ぽんと判を押すと、その中には、結婚をしたらやめさせられても異議を申しません、こう書いてあるわけなんです。ペテンにかけておるんですよ。初めから結婚をすればやめなきゃならぬという職場なら、そういうところに応募しないだろうけれども、それを知らずに応募して採用予定者になっておる。学校を卒業して、もう二、三日過ぎには職場につとめに入るんだという直前に呼んで、この就業規則に判を押してください、よく読んでみると、結婚をすればやめます、やめさせられても異議を申しません、こういう職場が金融機関にあるわけなんです。あまり会社指摘しても悪いと思いますので、指摘はいたしませんが、そういう金融機関もありますので、そこまで御存じかどうかということです。どうですか。
  156. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 ただいま御指摘のような、いわゆる誓約書と申しますか、念書というようなものをとることが行なわれたということを、私ども情報でキャッチいたしました。
  157. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そういう情報をキャッチしたときには、どういうような手を打っていただいておりますか、あまり強い手は打ってないですか。
  158. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 その点につきましては、先ほど申したところでございますが、照会がありましたときは、そのようなことは望ましくないという指導をいたしまして、それによって改善された例もございます。しかし照会がない場合には、一般的な啓蒙を越えて強い措置というものはなかなかとりにくいのが現状でございます。
  159. 田口誠治

    田口(誠)分科員 この点は、婦人少年局長の権限なり手元ではむずかしい点もあろうと思いますので、関係基準局、安定所、こういうところとよく連携をとってもらって、そういうことのないようにしてもらわなければ全くかわいそうです。だから、そういうこともあるということを知っていただいて、そうして、私が指摘いたしましたことは、賃金においても定年制の場合も、今日においてもなお婦人なるがゆえに不平等な取り扱いをされておることがあり得るということを知っていただいて、今後の行政指導をしていただきたい。この点を強く要望をいたしておきたいと思います。よろしいですね、どうですか。
  160. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 御意見、たいへんありがたく拝聴いたしました。今後一そう力を入れて仕事をいたしたいと思います。
  161. 田口誠治

    田口(誠)分科員 この問題はこの辺でやめまして、最賃の問題をお聞きをいたしたいと思います。  御承知のとおり、今度答申案が出まして、そうして何かかっこうをつけなければならないということになったんですが、あの答申以来、計画が進んでおるのかおらないのか、その点をお伺いをいたしたいし、そして一応速記録の関係もありまするので、現行の最賃の目安の最低と最高と、それから答申による最低と最高をまず述べていただいて、そして、いつどうしようとしておるのか、これをひとつここで明確にお答えをいただきたい。お答えは約束になるわけです。
  162. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 現在推進いたしております最低賃金は、御承知のように昭和四十一年度末までを期限の目標といたしまして、五百万の労働者にこれの適用を拡大するということで計画を策定して推進しておるわけでありますが、その過程におきまして、昭和三十九年十月に定めました最低賃金額の目安の改定の必要があるという観点から、中央最低賃金審議会において検討を重ねておられましたが、答申がございまして、甲地域は五百二十円から四百七十円、乙地域は五百円から四百四十円、丙地域は四百八十円から四百十円ということで、目安最下限の上昇率は、甲地域においては一七・五%、乙地域におきましては一六%、丙地域におきましては一四%というような、それぞれの上昇率を見たわけであります。この目安に従いまして、地方最低賃金審議会におきましては、従来の最低賃金をこれによって改定するという努力がなされるわけでありまして、労働省といたしましても、第一線労働基準監督機関を通じまして、この目安額に適合いたしますように、鋭意指導いたしていきたいと考えております。
  163. 田口誠治

    田口(誠)分科員 現場のほうへ、もう通達は出ておるのですか。
  164. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 手順といたしましては、三月四日に賃金課長会議を招集いたしております。その際に、詳細を指示しまして実施に移させる、こういうことにいたしておる次第でございます。  ただ、先ほど申しました答申につきましては、地域的に困難なもの、あるいは改定後間もないもの、それから対象となる労働者につきまして、いわゆる一人前の労働者であることなど、幾つかの付帯条件がついておりますので、そういう内容をも勘案いたしまして適正な最低賃金の形成に努力していきたいと考えておる次第でございます。
  165. 田口誠治

    田口(誠)分科員 申し上げますが、今度の答申の内容も、私どもの考えておるような最賃の形式をとっておりませんので非常に不満ですから、これはこれとして指導していただいても、本来のいわゆる最賃法というものの制定ができるような準備をお願いをいたしたいと思うのですが、こういう方面研究はどこでやっておりますか。
  166. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 学問的研究はそれぞれ研究者がおられると存じますが、制度的に扱うことをお願いいたしておりますのは中央最低賃金審議会でございまして、会長は有沢広己先生でございます。経済関係その他の専門家方々が公益委員になっておられまして、労使双方から、たとえば労働側でございますと総評の岩井さんとか、同盟の滝田さんといったような方が出ておられるということで、各界の代表的な方々が委員として参加せられて御審議をいただくことになっております。
  167. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこから建議はございませんですか、答申でもいいです。
  168. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先ほどちょっとことばが足りませんで失礼いたしました。先ほど申しましたように、現在最低賃金制度を推進しておるわけであります。最低賃金制のあり方につきましては、いろいろ御議論のございますことは先生承知のとおりであります。そういう点にかんがみまして、昨年の八月、労働大臣から中央最低賃金審議会最低賃金制度のあり方について基本的検討をお願いした次第であります。基本問題小委員会を設けまして、専門的に検討を進めてきておるところであります。過日、あらためてILO二十六号条約関係につきましても申し上げましたが、これに適合するように御検討いただき、できるだけすみやかに御答申いただきたい、こういう予定にいたしております。したがいまして、いまの建議というお話でございますが、そういった最低賃金の基本的なあり方についての問題は、すみやかに答申をお願いしたいということに労働省のほうから積極的に諮問という形でお願いしておる次第であります。
  169. 田口誠治

    田口(誠)分科員 この辺で大臣お答えを願いたいと思いますが、先ほどからの、婦人なるがゆえに不平等の取り扱いをしておる点はお聞きになったのですね。これは基準局なり安定所なり婦人少年局なりでいろいろ行政指導でなされると思いますけれども大臣としても、この点は頭に置いていただいて督励をしていただかなくてはなりませんので、その点をやはりこの際約束をしておいていただきたいし、ただいま答弁のありました諮問機関の答申については、これは最大限に尊重するというお考え方でおられるかどうか。
  170. 小平久雄

    小平国務大臣 婦人の、あるいは女子のと言うのが適当かもしれませんが、労働条件等が男子と比べて不平等じゃないかという御質問でございまして、それにつきましては先ほど来いろいろ当局の考えも御説明申し上げたわけですが、結論的には、婦人局長から申し上げましたように、われわれとしても婦人の地位ということは常に考えていかなければならぬ問題でございますし、また、その地位の向上ということを考えなければならぬのですから、そういう立場から十分指導をしてまいりたいと思います。  それから最賃の問題でございますが、これはいまも申し上げましたとおり、私のほうから中央最低賃金審議会に基本的な検討をお願いをいたしておるのですから、その答申がちょうだいできれば、これを尊重していくということはもう当然でございます。できるだけ尊重いたしてまいるつもりでございます。
  171. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間がないので、あまりやりとりはいたしませんが、前のほうで答弁になった、婦人なるがゆえに不平等な取り扱いをされておるという点についての回答は、一時中座されておったのか、私が受けようとする答弁にはならなかったのだが、実際的には、法律からいっても違法になるような内容職場もあるので、そういう職場については、これは婦人少年局あるいは基準局、安定所、そういうところが協力をして、そうした職場をなくして、男女平等の取り扱いをするように努力をする、こういうことになっておるのでして、この点については御異議ございませんね、努力をするということですね。
  172. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほど来、事務当局から御説明申し上げましたように、法的にいえば、必ずしも、現在行なわれておるようなことが違法である、こういうことでもない、こういうことでありまして、したがって、私は先ほど申し上げましたとおり、一般的にいって婦人の地位の向上という問題は、当然われわれは心がけなければならぬのですから、そういう見地からいたしましても、先生の御指摘のようなことがだんだんなくなるように十分指導いたしてまいります、こう申し上げておるわけであります。
  173. 田口誠治

    田口(誠)分科員 大臣政府委員のほうにちょっともたれてみえたかもわかりませんが、私の質問した中には、必ずしも違反にならないことと、それからなることとあったわけです。だから、そういうことを含めて努力をするというように受け取っておいてよろしいですね。そうでないと、いまの答弁では、必ずしも違法ではないとかということだけれども、なる部分があるのだから、ならぬということなら、ぼくはもっとここで申し上げなくてはならぬと思います。
  174. 小平久雄

    小平国務大臣 法に違反することは、これを改めるのは当然のことなんです。ですから、必ずしも法に触れぬでも婦人の地位というのは逐次改善しなければならぬから、そういう立場から強力に指導しましょう、こういうふうに申し上げておるわけです。
  175. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それでは満足です。  それでは次に移ります。職業訓練のほうで一つお聞きします。  職業訓練のほうではたいへんお骨折りをいただき、また、予算要求のときにも予算獲得に全精力を打ち込んでもらっておりますけれども、結果は、その予算を余しておるというのが実態なんです。私どもは、職業訓練の問題は、なお強化をしていかなければならないと思うのに、せっかく獲得した予算が十分に消化できないというようなことでは私は目的に反すると思うので、なぜそういうことになるのか、これからの考え方をひとつ御説明いただきたいと思う。
  176. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 訓練の予算についてたいへん御理解のある御発言をいただきました。まず、お礼を申し上げておきたいと思います。  実は、三十八年の十月から職業安定法の改正がございまして、中高年の職業訓練につきまして大蔵省側のたいへんな理解があって、大幅に訓練の経費がつくことになりました。しかし、先生もよく御存じのように、この法律の改正趣旨その他が当時なかなか浸透をいたさなかったものですから、中高年の問題につきまして、当時消化不良というか、こういう状態が出てまいっております。しかし、中高年の手当問題以外は全額を消化いたしておるわけでございます。  なぜそういう事態が出たかと申しますと、いま申しましたように、趣旨がまだ徹底しなかったということと、あわせて、予算で考えましたよりも以上に中高年の失業者の中で失業保険をもらっておる者のパーセントが高かった、こういうような事情もございまして、予算が一〇〇%消化をしておらなかったわけでございます。しかし、逐年その率も上がってまいりました。たとえば三十九年度におきましては、予算定員に対しまして入所した現員が七二・四%でありましたものが、四十年の十月になりますと八七・八%、こういうように上昇をいたしておりまして、今後これが円滑に消化されるだろう、こういうように私ども期待をいたしております。
  177. 田口誠治

    田口(誠)分科員 この職業訓練所に対する期待というのは、地方へ行きますると大きい期待をかけておるわけなんです。したがって、ますます内容を拡大強化をして、そしてそれぞれりっぱな技術者を養成していただくようにお願いをいたしたいと思います。  そこで、農村の中高年齢層の訓練の関係ですが、これは御承知のとおり、農村のほうは疲弊をいたしておって、そうして町のほうへ出てくるという場合に、何か手に職がなければならないというので訓練所を希望しておるのですが、希望しておりましても、なかなか定員があって訓練をさしてもらえぬというのが実態であるわけです。押すな押すなの盛況であるわけです。したがって、こういうような状況を、私の申し上げたように把握しておられるのかどうか、把握しておられるということになれば、これは予算要求をぐっとやってもらって、そして訓練所の内容を拡充して、多くの人たちに技術的な職業をつけてやることが、こういう時期には非常に大切であろうと思うので、その点について御説明をいただきたいし、それから御説明をしていただいたことは、来年度は実行に努力をしてもらうということをも含めて私のほうから申し上げておきます。
  178. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、中高年の失業者の方の訓練につきましては、なお余裕があるわけでございます。ただ、安定所による就職促進措置というものによって中高年の転職訓練をやることを主たるねらいとしておりますので、いま先生お話のようなことと多少食い違っておる向きもなきにしもあらずかと存じますが、定員一ぱいが活用できますようにいたすことが当然私どもの念願でもございますので、実情に即して定員の配置がえ等を行ないまして、農村から都会にかわる、あるいは第一次産業から第二次産業にかわるような方の転職訓練につきましては、今後さらに努力を重ねてまいりたいと思います。四十一年度予算につきましても、同じような趣旨で定員も増加になっておるわけであります。御趣旨に沿うように考えております。
  179. 田口誠治

    田口(誠)分科員 実態関係もございますけれども、予算の関係もございますが、そこの指導員の給料というのは、公務員の賃金が上がると同様に上がっていかないというのが実態なんです。その点は御存じでしょうね。それで御存じなら、これからどうするのですか。
  180. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 指導員の給与につきましては、一般訓練所と総合訓練所と両方あるわけでございますが、一般訓練所につきましては、実は地方の財政負担、超過負担というものを肩がわりするという趣旨も入れまして、本年度におきましては、四十年度に比較しまして、補助額におきまして四一・九%ばかりの増加をいたしております。こういうようにいたしまして、大体従来の金額が、本俸におきまして四十年度は月額二万一千四百二十一円でありましたものが、四十一年度には三万二千九百円、こういうようなぐあいになっております。また、総合訓練所につきましては、これも全体の趨勢とにらみ合わせてさらにより一そう高めたいということで、率にしましては大体九・二%の増額をいたしまして、三万八千三百二十二円が四万一千四百五十六円というように、これは本俸でございますが、そういうように予算的に普通のものよりは高いアップ率を示しておる、こういうようにいたしまして、指導員の給与の改善につきましては今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  181. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間がございませんのでこの程度にしておきますが、給与の面は相当引き上げていただいて、これはたいへん張り切ってやると思いますし、先ほども申しましたように非常に訓練所に対する期待が大きいわけなので、そういう点からひとつお願いをいたしたいし、特に農村から都会へ出てくる人たちが——ほんとうの技術的な職を持たない人はどうしても不良化、非行化、こういう方面へ走りやすいので、こういう点を防止するにも非常にいいところでございますので、この点についてはせいぜい予算要求をして、そして拡充強化をはかって、地方自治体の要求にも沿うような方法をひとつ今後講じていただくように強く要望を申し上げておきます。  もう次で終わります。  そこで、最後は、せっかく来ていただいておりますので、銀行局長にはえらいお待たせをいたしましたが、ことしは社内貯金の規制をなされるということでございますが、どの程度の規制をなされるのか、ひとつ御説明をいただいておきたいと思います。
  182. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 これにつきましては、もう先生かねて御承知のとおり、中央労働基準審議会におきまして先般答申が出されたわけでございます内容はもうよく御承知と思いますので省略いたしますが、従来、かねがね私ども指摘いたしておりました預金者保護の問題、その他もろもろの点につきまして、運営上ともかくも改善に向かって一歩前進するという形のように了解をいたしておりますので、それの線を尊重いたしまして、労働省において確実に御監督をいただくように期待をいたしておるわけであります。
  183. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それで、どうなるのですか。規制するところはどう変わるのですか。
  184. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 実は先生、もう十分御承知と思いましたので省略いたしましたが……。  この答申でございますが、これは御承知のように、一番のねらいはやはりその運営の適正化を期するということでございますので、一つには預金者の範囲を労働者に限る、また、一人当たりの預金の額につきその総額の限度を設けるといったような問題、さらには預金者保護のための、つまり預金の保全のための必要な措置、これらをいわゆる協定の中に盛り込まなければならぬ、こういうことが骨子になっておるわけでございまして、なかんずく預金者の保護につきましては、金融機関による質権の設定でございますとか、あるいは金融機関の保証をとる、もしくはその他必要な措置をとるということで、従来に比べてかなり前進をいたしておる内容かと考えます。
  185. 田口誠治

    田口(誠)分科員 銀行局長としての私見をお伺いしたいのですけれども、私の持論としては、社内貯金は違法だということです。戦前の町内貯金から社内貯金へずっとやってきまして、戦後もそれが引き続いてきましたけれども、積んだ労働者は、金を引き出そうと思っても会社がなかなかおろしてくれない。場合によっては破産して、そして積んだ金がもらえない。こういうようなことから、労働基準法で一つの保護立法として規制が設げられた。ところが、その後保全経済会が御案内のとおりの不始末をやりましたために、こういうやみ金融を取り締まらなければならないというので、昭和二十九年六月二十三日ですか、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律というのができて、端的に言えば、その他の法律に規定されておらないものは、いかなる者といえども金を預かったり預けてはならないんだ、こういうことになっておるわけであります。それで、その他の法律に、ということは、質屋は質法によるとか、こういう法律なんです。だから労働基準法には一つの手続としての法の規制がありますけれども、これは労働者の保護立法であって、金融取り締まりのほうとは無関係であるわけです。したがって、この出資受け入れ等のやみ金融取り締まりの法律ができてからは、社内貯金というものは無効である、やってはならないという解釈を私はしておるのです。特にこの内容の解釈を聞いてみますと、受け入れとは、預金とは、ということは反覆継続式のものだ、今月も来月も再来月もこういうふうに反覆継続式に行なう預金であるということだから、社内貯金がぴったりそれに当てはまるわけなんです。だから、この時点で社内貯金というものを廃止すべきだったと思うのですが、なかなかそういっておりませんが、ようやく今度は少し内容が規制されておりますけれども、労働者の保護ということから、いま答弁の中にはありましたが、もちろんそれも必要でありますけれども、私はこのやみ金融の取り締まり法の違反であるという解釈なんですが、その点はどういうようにお考えですか。
  186. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 田口先生がそういうお説でございますことは、かねがね私も承知いたしております。ただ、この点は、たしか数年前でございましたか、国会の委員会におきましていろいろ御高説をいただきました際に私から申し上げたのでございますが、私どもの解釈では、ただいまの出資の受入、預り金および金利等の取締等に関する法律に違反するやいなやという点につきましては、この社内預金は違法ではないという解釈を当時も申し上げたと思います。その点は、今日、法律解釈といたしましていささかも実は変わっておらないのであります。ただ問題は、はたしてそれが適当であるかという点は、これはまたおのずから別なことでございまして、田中大蔵大臣が先年の国会においてしばしば御答弁になりましたように、これはやはり基本的には廃止の方向で検討すべきものである、この点においては田口先生の御結論と実は全く一致しておるわけであります。法律論といたしますとこれは違法である、こうおきめになる田口先生の御見解に対しましては、私どもいささかその点は違う見解を持っております。
  187. 田口誠治

    田口(誠)分科員 あなたは銀行局長をやっておるうちは持論を曲げないし、ぼくのほうが筋は通っておるわけなんです。これは、いかなるものといえどもその他の法律に規定のないものはだめだといっておるのだから、それをあなたのほうは、労働基準法には取り扱いが規制されておるのだからいい、こういっておるのだけれども、労働基準法のほうは保護立法として一つのものができておるのであって、やみ金融の取り締まりというこの精神に基づいての法律に沿ったら、こういうものはやってはいけないということになる。  幾ら繰り返しておっても、あなたと私とおるうちはいけませんから、きょうはこれで質問を終わります。
  188. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十六日午前十時から開会し、自治省所管に対する質疑を行なうことといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時十二分散会