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1966-03-05 第51回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月五日(土曜日)    午前十時十一分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       安藤  覺君    井出一太郎君       今松 治郎君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       上林山榮吉君    川崎 秀二君       倉成  正君    砂田 重民君       竹内 黎一君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君       西村 直己君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    古井 喜實君       松浦周太郎君    三原 朝雄君       水田三喜男君    渡辺 栄一君       大原  亨君    加藤 清二君       勝間田清一君    角屋堅次郎君       小松  幹君    多賀谷真稔君       高田 富之君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    八木  昇君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       今澄  勇君    佐々木良作君       竹本 孫一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     山野 幸吉君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部会計課長) 大浜 用正君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    財満  功君         防衛庁事務官         (防衛施設庁建         設部長)    柿野二三郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (年金局長)  伊部 英男君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      高島 節男君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      熊谷 典文君         運輸事務官         (航空局長)  佐藤 光夫君         郵政事務官         (郵務局長)  長田 裕二君         郵政事務官         (経理局長)  淺野 賢澄君  委員外出席者         原子力委員会委         員       有澤 廣巳君         防衛庁書記官         (経理局会計課         長)      小幡 琢也君         外務事務官         (国際連合局外         務参事官)   滝川 正久君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 三月五日  委員大橋武夫君、坂村吉正君、灘尾弘吉君、佐  々木良作君及び玉置一徳辞任につき、その補  欠として渡辺栄一君、砂田重民君、安藤覺君、  今澄勇君及び竹本孫一君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員安藤覺君、砂田重民君及び渡辺栄一辞任  につき、その補欠として灘尾弘吉君、坂村吉正  君及び大橋武夫君が議長指名委員に選任さ  れた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算  昭和四十一年度特別会計予算  昭和四十一年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨夜、羽田空港において、カナダ太平洋航空機惨事が発生し、多数のとうとい人命が失われましたことは、まことに痛恨のきわみでございます。ここに慎んで哀悼の意を表したいと思います。  この際、運輸大臣より発言を求められておりますので、これを許します。中村運輸大臣
  3. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 昨夜、カナダ太平洋航空機羽田飛行場事故を起こしまして、たくさんの死傷者を出しましたことは、まことにお気の毒のきわみでございまして、心から哀悼の意を表する次第でございますが、その状況を御報告申し上げます。  カナダ太平洋航空会社所属ダグラスDC8型機は、同社の四〇二便として、機長マクニールほか九名が乗り組み、旅客六十二名を乗せて、昭和四十一年三月四日十六時十四分  これは東京時間でございますが――香港を離陸し、東京に向け飛行しました。  同機は、十九時十六分高度一万四千フィートで木更津の待機経路に入って、東京国際空港気象状態の回復を待った。その間一時は台北へ引き返そうとしたが、結局、二十時五分、レーダーによる精密進入が可能な気象状態になったので、着陸進入のための降下を開始した。  二十時十五分ごろ、同機は指定された滑走路へ一マイルの距離に達した。それまでの同機の方位及び角度は正常であったが、四分の三マイル以降、降下角度が十ないし二十フィート低過ぎたので、管制官はその旨注意した。その後も低過ぎる降下を続行したので、再度その旨を注意した。  その直後、同機は急角度降下し、滑走路末端手前の岸壁に衝突して炎上大破した。  政府は直ちに運輸省運輸大臣を長とするカナダ太平洋航空機事故対策本部を設け、警察、消防庁、海上保安庁、航空局その他関係機関協力して消火及び遭難者の救出に当たるとともに、運輸省担当官現地に派遣して、事故調査を開始した。  搭乗者七十二名中、六十三名が死亡、生存者八名、残り一名は不明でございます。  これは五日の午前九時現在でございます。  以上御報告申し上げます。     ―――――――――――――
  4. 福田一

    福田委員長 これより締めくくり総括質疑に入ります。野原覺
  5. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、昭和四十一年度の予算審議締めくくり総括質疑に立ったわけでありますが、質疑に入ります前に、ただいま御報告のありましたカナダ太平洋航空惨事につきまして、二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。  お尋ねをする前に、私は、党を代表いたしまして、このたびの難にあわれたたくさんのなくなられた方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、御遺族の方々に対しまして衷心から御見舞いを申し上げる次第でございます。  まずお尋ねしたいことの第一点は、羽田空港構造設備についてであります。今回の惨事、それからまた一カ月前の全日空のあの惨事、こういうことを通じまして、しろうとの私ども国民が受ける感じは、何か羽田空港にはどこかに欠陥があるのではないか、構造上の欠陥があるのではないか、管理上に問題があるのではないか、こういうことでありますが、運輸大臣はこの点、どのようにお考えでございますか。
  6. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 私は、現在の羽田飛行場は、飛行場として、さらに管制上から見ましても、安全を確保するには十分であるという自信を持っておりますが、詳細につきましては政府委員から答えさせます。
  7. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 羽田空港施設は、いわゆる民間航空条約によるICAOの基準に適合したものでございまして、そこに施設してある施設及び管理方法等についても万全を期しておる現状でございまして、われわれとしては特に欠点はないかと考えておる次第でございます。
  8. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、けさほど新聞で、専門家羽田空港に対する所見が出ておりましたので拝見をいたしましたが、その中にこういうことが書いてあります。羽田空港は海に面しておる非常に霧の多いところである、しかも東京、横浜の黒煙が立ちのぼって、それがときに気圧の関係空港に押し寄せてくる、スモッグが押し寄せてくる、一時的ではありますけれども、そういう危険性がある、こういう所見も出ておるのであります。これは立地についての意見であります。それからまた、もう一つの専門的な御意見は、大型ジェット機空港としては滑走路が短いと出ておる。滑走路が短い、したがって、飛行機機長の方は、羽田に来ると、早く高度を下げようとあせる、そういう心理的なことも考えてもらわなければならぬ、これは専門家所見であります。それからもう一つ完全誘導管制、これは計器飛行機を誘導されるようでありますが、人間には限界がありまして、御承知のように、目と耳あるいは人間の力というものはときに故障を起こします。機械も起こしますけれども人間は疲れてまいりますと錯覚も覚えます。したがって、こういった科学的な完全誘導の完成を急いでもらわなければ困る、こういう三点が出ております。この三点は、私はしろうとでよくわかりませんが、もっともなことだろうと思うのです。これは運輸大臣、どうお考えでございますか。
  9. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 羽田飛行場気象状況等でかすみ、もやが多いとか、あるいは東京の都内と同じようにいろいろ排気ガス等の影響があることは、最近これは私も認めますけれども、そういうときには飛行は避ける体制をとっておりまして、それから安全度がこわされておるということは、現時点ではないと私は思っております。それから滑走路が短いということは、現在のジェット機の利用する滑走路としては一応十分であるということになっておりますが、これは、長いにこしたことはないだろうと思いますが、羽田事情等によりまして、現在ではいまのジェット機の離着陸には差しつかえのないという、これは世界通有距離を確保しておるわけでございます。それから計器誘導による飛行による処置は、これは私もしろうとでわかりませんけれども昨晩木村大学教授の話を聞きますと、一定の高度から下は、現在の世界共通の問題として計器飛行ではできない限界がある。地上一定の高さから下は、やはり人間の有視界飛行によって、人間の判断によって着陸する以外にいまのところではこれはまだ世界的に開発されていない、こういう事情でございますが、これは日本技術陣を動員しまして、やはり最も安全度の高い、そういう技術を少しでも早く開拓するようにあらゆる機関を動員して努力をしてまいりたい、かように考えております。
  10. 野原覺

    野原(覺)委員 国際空港羽田で、しかも日本羽田で外国の飛行機がこのような事故にあったということは、これは決して日本にとって名誉なことではない。運輸大臣あるいは運輸当局は、いろいろ御所見を持っておられるようだが、私はこの際やはり謙虚に反省をされて、どこかに手ぬかりはないか、再度の点検整備をされて、ひとつ万全の施策を整えられるように要望したいのであります。  なお時間がございませんから、この機会に申し上げておきますが、全日空機は遭難されてから約一カ月、くしくもこの委員会で五日に質疑がございました。自民党の西村直己さんが質問の第一陣でお立ちになられ、各党を代表して質疑をいたしました。それが予算審議の最初の日であります。ところが、きょうは予算審議最後の日、締めくくり総括の日にまたまたこの遭難事故を私ども質疑しなければならぬ、このことをきわめて私は残念に思いますが、どうかひとつ運輸当局はその点の十分なる施策の検討、万全の手ぬかりがないようにしていただくとともに、この際お尋ねしたい一点は、全日空機原因はその後どのように探求されて、どういうことに結論がなりつつあるのか、お聞かせ願いたい。
  11. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 野原委員が御指摘なさいましたように、私はこの際、日本航空のすべてに十分目を配りまして、安全度の確立のために万全の処置をとりたい。これは運輸当局だけでなく、私は航空企業の優秀なパイロットを集めるとか、あるいは管制官を集める等いたしまして、そして現在の設備等を再検討いたしまして、再びこういう事故の起こらないように万全の処置をとりたい、かように考えておりますが、全日空事故調査状態政府委員から答えさせます。
  12. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 全日空機事故現地調査団日本大学教授木村先生を団長といたしまして、二月七日からさっそく調査を始めまして、二月二十四日まで六回の総会を開いて事故原因徹底的究明を現在いたしていただいている段階でございます。なお、現物につきまして大部分回収が終わりましたので、現物だけの特に小委員会を設けて、現在その状態を十分検討しておるという段階でございます。
  13. 野原覺

    野原(覺)委員 こうした大きな災害がありますと、私どもはえりを正し心を正していつも真剣になるのでございますが、やがて忘れてくる。忘れたころに災害は来る、これは今日までの繰り返してきたことであります。こういうことがないようにしてもらわなければならないので、そこで私はこの問題で最後総理に要望とお尋ねを一点いたしておきたいのですが、私ども考えでは、どうしても東京の第二空港を急いでつくらなければならない、こう思うのであります。  そこで、この第二空港をつくるに当たっては、与党も野党も党利党略を離れて、そして国民の各層、各界の学識者の見識に尋ねて、私どもは急いで、絶対に事故のない、構造の上からも欠点のない、立地条件からいっても問題のない、あるいは設備の点においても完成されたほんとう飛行場としてはすばらしいものをつくらなければならぬ、これは急いでつくらなければならぬと思うのでございますが、総理の御決意と御所見を承っておきたい。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回のカナダ太平洋航空会社事故に対しましては、心から哀悼の意を表する次第でありますが、ただいま御指摘になりましたように、とうとい人命を預かっておる航空機事業、また空港施設でございますので、万全の上にも万全を期するという、これでなければならないと思います。いままで起きました事故等を見ましても、もしも十分の考慮が払われて、そして安全第一ということに徹したならば、他の飛行機は、昨日の濃霧では羽田に着かないで、他の飛行場に全部変わっておる。こういう実情から見ましても、やはりよほど無理をしないような、ゆとりのある行き方がどうしても必要だ、かように思うのであります。こういう点は、先ほど運輸大臣からお答えいたしましたように、パイロット会議を開くとか、あるいは管制官等とも十分相談をするとか、あるいは経営者につきましても無理にならないことを特に話をするつもりでございます。同時にまた、民間国際航空としての一つ基準がございますから、その基準をもしも割るということがあれば、これはもうたいへんでありますけれども、それに合致しておると申しましても、ただいまいう余裕のあるいき方というか、無理をしないというそういう立場からさらに私ども考えなきゃならない問題だと、かように思っております。そして日本空港、これは非常に多いのでありますが、わずかに羽田、千歳、あるいは福岡の板付、こういうものは大体基準にも合致しておるようでありますけれども、非常に発着の多い伊丹につきましては、なおこれは不十分だと、かような状態でございます。また地方空港などを考えますと、ずいぶん心配な点もあろうかと思います。しかし空港整備そのものもそうですか、それに相応した飛行をする、こういうことで十分関係者一同が無理をしない、あせらない経営をしていくならば、今日の設備相応のものがやられるのではないか。事故の防止にもなるのではないか、かように実は考えております。ただいま野原君からの御注意もございますが、そういう意味ほんとうにとうとい人命を預かっておる仕事だ、これに徹していくということでなければならない、かように思います。  そこで、ただいまの羽田東京中央空港についてお尋ねがありまして、第二空港設置の要、これはまことに緊切なものがございます。こういう意味におきまして、これが政府では一応内定したものを持っておりますけれども、ただいま各党協力を得るとおっしゃったが、こういうことまで今日まで努力が払われておらないことはまことに残念であります。私はただいまのせっかくのお話もありましたので、第二空港、このことは日本の国家的な事業だ、かように考えておりますし、一佐藤内閣の問題ではない、国の基本的な国策として破り上げるべき問題だ、かように考えておるのでありますし、さような意味で、将来の航空機の発展に備える、こういうことでいろいろ準備を進めております。ただいま御提案がありましたように、これは超党派各党協力を得て、そしてぜひとも万全の空港を設立するように、さらに最善の努力を払っていくつもりでございます。何とぞよろしくお願いいたします。
  15. 野原覺

    野原(覺)委員 飛行場設置については超党派であること、私は賛成です。ただし、総理に申し上げたいことは、国論が二つに分かれるくらい反対運動が猛烈になってきますというと、これは政府においても考えてもらわなければならぬのです。反対する側も考えなければなりませんが、それを推進しようとする政府もそういう場合には謙虚に考えて、どこかに問題があるのではないか、無理押しをしないで、学識経験者の声に聞いて、すみやかに着手されんことを私は要望いたした次第であります。  そこで、時間の関係もございますから、次の質問に入ります。  まず第一は機第4号であります。この機第4号につきましては、これはさきに議決されました国鉄補正予算機(第3号)は二月十五日に運賃を引き上げる予定で積算されておりました。ところが肝心の運賃法改正案はやっと三月四日に成立いたしたのでございますから、その間に十九日分の資金不足を生じたと思うのであります。これは大蔵大臣運輸大臣かどちらでもよろしい、どれだけの資金不足を生じたことになるのか承りたい。
  16. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 大体日数で十八日間になるようでございますが、金額で申し上げますと七十三億円でございます。
  17. 野原覺

    野原(覺)委員 これは何日分ですか。一日を幾ら計算したのですか。
  18. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  十八日分でございます。二月十五日から三月四日までの分でございます。
  19. 野原覺

    野原(覺)委員 一日幾らでございますか。
  20. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 一日大体四億四千万くらいの見当でございますが、二月は大体収入の少ないというようなことで、四億円見当で算定した数字であると存じております。
  21. 野原覺

    野原(覺)委員 補正予算が出されまして、機3号が出されたときの政府提案説明にはこうあったのです。四百五十二億円減収を見込みましたが、これは経営努力ぎりぎりの数字でございます。そこで、その結果、その減収の一部を二月十五日からの値上げによる増収百九十一億で補いたいということでございました。つまり四百五十二億から百九十一億を差し引いた二百六十一億ですか、これが今度の補正予算で、ぜひひとつ国会審議してもらいたいというのが機第3号を出されたときの政府提案説明であったのです。そこで私は計算をしてみたのです。増収百九十一億で補いたい。この増収百九十一億とは二月の十五日から三月の三十一日までだ。その日数で割ってみますと一日平均四億二千五百万円ぐらいになる。だから、この種のものは一日平均計算するのではないかと思いますから、四億三千万円とすることにすれば、これは小さいことのようでございますけれども衆参両院における運輸委員会国鉄審議、それから補正予算審議等を通じて見ますと、ときに四億円になったり三億円になったり、ときにそれが五十億になったり七十億になったり――石田総裁は、きょうは私は要求はあえていたしませんでしたが、石田総裁のごときは、国鉄は大きな世帯を持っておるのだから、なに五、六十億くらいはいつでもひねり出せますよ、こう言って胸を張って答えるなど、私ども補正予算審議するときには、どうしてもこの金を出してもらわなければならぬ、それは二月十五日現在のぎりぎりの要求でございますと言っておきながら、あとから五十億でも六十億でも金がひねり出される、こういったつかみ金的な、ほんとうにつかまえどころのない答弁が国鉄予算審議ではずっと繰り返されてきておるのです。だから、私は小さいことのようだけれどもお尋ねをした。この七十三億円というのは、計算としては私はもっと金額が多くならなければならぬのではないかと思う。しかし、このことはたいしたことでもございませんから、あえ七追及をいたしません。  そこで、総理お尋ねいたします。このようにして私どもは機3号を補正予算で通した。ところがこの機3号は二月十五日の運賃値上げができませんでしたから、国鉄の四十年度の計画事業は資金的に実施困難となってくる。いま運輸大臣は七十三億と言ったが、これは七十七、八億、私の計算では。そこでこの八十億に近い資金不足を補うための補正予算が当然提案されなければならぬのです。どういうわけで補正予算(機第4号)を国会にお出しにならぬのか。総理のその所見を承っておきたいと思います。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 理屈の上で理論的に申せば、ただいま野原君の御指摘のとおり、歳入に欠陥を生ずるといいますか、そういう場合に補正をする。ことにこの種の事業といたしましては、工事は絶対に縮小できない、非常に急いでおる国鉄の実情でございます。そういうことを考えますと、現実に七十二億になるかあるいは七十五億になるかはともかくといたしまして、金が足らないじゃないか、そういうことになるので、それの補正を組めという、これは一つの当然の理論だと思います。しかし、この年度末ではありますし、この間に一体どういうようになりますか、最終的な集計を必要とする問題だと思います。あるいは政府側は金額を減らして予算を立てているのじゃないか、かような御指摘もございますし、これは十分収入がどういう状況になったか、最終的にはそれによってその穴埋めをいかにするかということを考えなければならぬと思います。工事は絶対に減らせない、かような状況でございますから、ただいま一時的な便法として、これは臨時借り入れ、短期借り入れ、そういうことで処理をつけ、そうしてただいまの点を精査された後にこれが一体どういうような負担になるか、それらの点を十分考えて結論を出すべきだ、かように私は考えておる次第でございます。ただいままでいろいろな言い方をされておると思いますが、問題は最終的な収入がどうなったか、その場合において本格的な解決方法をきめるべきだ、かように私考えております。
  23. 野原覺

    野原(覺)委員 総理、あなたのただいまの御答弁がわからないのは、私一人だけじゃない。何を言っていらっしゃるのか、失礼ですが、理解できないのです。理解できませんよ。あなたは、補正第4号を出さないかと言ったら、それは理屈の上では当然だ、筋論だとおっしゃる。私はなぜその筋論をやらないのかと、その点に触れていただいたのでございますが、私は総理の御答弁がどうも理解できないのです。収入がつかめないなんという御発言がありましたが、それじゃなぜ補正3号を出したのですか。補正3号を出されたときには、当面四百六十二億の不足だ。昭和四十年度は三千二百二十億円の事業量になっております。国鉄昭和四十年度の事業として三千二百二十億円の事業をやらなければならぬ。総理が言われるとおり、これは縮小できない。この事業をやるためには当面四百六十二億円足らぬのでございます。したがって、この四百六十二億円を埋めるためには二月十五日から運賃をこれだけの比率で上げたい。ところが、その運賃収入は三月三十一日までで百九十一億円でございます。したがって、四百五十二億円から百九十一億を引いた二百六十一億円というのをぜひひとつ国会で通してくださいと言う。そこで、私ども社会党は何と言ったんだ、総理運輸委員会で、この補正予算審議で、この二百六十一億円という金はもっと減らせるじゃないか、しかも運賃値上げは物価に響くじゃないか、佐藤総理は物価対策には真剣に取り組む、こう言われておるのだから、二百六十一億円というのはもっと減らせるじゃないか、不用の土地が国鉄にありはしないかと川俣委員質問をしたんだ。それから、国鉄は企業努力の余地がないかと楯委員質問をしたんです。この予算委員会で。それにあなた方は何と答弁をしたんですか、総理。ぎりぎりです。こう言ったんだ。ところが、国会はこの問題が紛糾いたしまして、二月十五日に通らないで、参議院でやっときのう三月四日に通った。そうなると八十億近い金の穴があいてきた、こういう事態になったのでございまするから、私は、いままでの経過からいえば、補正予算を組むべきですよ。補正予算を組まない理由を納得さしてください。これは当然組まなければならぬ。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、これは短期借り入れで処理するということを申し上げておるのであります。先ほど来何度も申したのでございますが、今回のこの機3号等を見ましても、あとの最終的なしわ寄せがどうなるのかということは、あとわずかでありますから、それまでにさらに補正を組まないではただいまの工事に支障を来たす、こういうことのないように短期借り入れで処理しよう、こういうのであります。
  25. 野原覺

    野原(覺)委員 短期借り入れはどれだけ組むわけですか。
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま運輸大臣から申し上げましたように、運賃法の成立遅延に伴う不足額は七十三億円あるのです。いまお話もありますが、企業努力といってもなかなか容易じゃないのでありまするが、はからざる緊急の事態でありますので、企業努力等をいたしまして、何とかそのうち五十億円はひねり出そうと努力してみたのです。参議院ではそういうことも申し上げた段階があるのでありますが、なかなかそれはむずかしい。そして四十三億ということに相なったわけであります。そうしますと、三十億円ぐらいの穴がどうしてもあくのです。これをどうするか、こういう問題でありますが、一つの方法としては、三十億だけ支出を削るという方法であります。一つは長期借り入れ金という措置をとるか、これが第二の方法であります。一つは短期借り入れ金でつなぐか、これが第三の方法であります。この三つの方法があるのでいろいろ検討いたしたのですが、国鉄の支出計画、事業計画を減らすということは、今日国鉄の重要な使命にかんがみまして不可能である、これはいたすべきではない、こういう結論に達したわけです。それから第二の長期借り入れ金、これは第一の場合と同時に補正の問題になるわけですが、これは補正を提案いたしました場合に、年度末になっておる、その成り行き等もなかなか見定めができない、これも不安定である。そこで国有鉄道法に予定しております短期借り入れ金を使用する、三十億円は短期借り入れ金で泳ぐ、企業努力とまた収入支出の決算の結果、これが年度内に返せる、そういうことになれば年度内に返しますが、もし返せなければ、運輸大臣の許可を得てこれを四十一年度に繰り越す、四十一年度の歳入歳出外として返済する、そういうことになるわけであります。
  27. 野原覺

    野原(覺)委員 四十三億の国鉄の企業努力、不用財産の処分四十三億円。そういたしますと大蔵大臣、本予算委員会で、もうそういう企業努力の余地はないと言われた。川俣委員国鉄は不動産会社じゃないかと指摘したのですが、そのときに、そういうものはございません。あなた方が胸を張って、ぎりぎりですと言ったあの答弁はお取り消しになりますか。――お取り消しになりますか。いかがですか。
  28. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十三億円は緊急の事態として特別の努力をいたした次第であります。
  29. 野原覺

    野原(覺)委員 いや、お取り消しになるかと聞いておる。ぎりぎりと言ったのは、ぎりぎりじゃないじゃないですか。出そうと思えば、四十三億出てきたじゃありませんか。私が速記録を見ると、参議院では五十億円ひねり出せる、国鉄の総裁はこう答弁しておりますよ。そういうものがひねり出せるにもかかわらず、国会に予算案を提出して審議するときには、もうこれがぎりぎりです。何と言っても出せません、こういう国会をばかにした答弁がございますか心総理、これは私はいさぎよく取り消してもらいたい。これは取り消してください。
  30. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 当時の状況としてはそういうふうに申し上げたのですが、それが何らか誤解を招くようなことがあれば、これは申しわけありませんから取り消しいたします。
  31. 野原覺

    野原(覺)委員 そこで、そういたしますと、四十三億円の企業努力の内訳を、これは大蔵大臣運輸大臣か、説明してください。どこから四十三億円出るのか、内訳を御説明願いたい。
  32. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 四十三億の内訳を申し上げますと、大体資産の売却によりまして、廃用レール、普通鋼くず、銅くず等の廃用貯蔵品の売却をはかるということによって十二億九千万円でございます。それから貯蔵品の効率的使用によりまして二十億円でございます。それから増収努力によりまして十億円でございます。以上でございます。
  33. 野原覺

    野原(覺)委員 これは国鉄運賃値上げ関係があります。国民は非常に大きな関心を持っておるのです。単に運賃が上がって通勤着や旅行者が困るだけではない。このことが佐藤内閣の物価政策にも響く大問題なんだ。だから、これは私はもう少しお尋ねいたしますが、いま増収ということを言われたが、増収の内訳、どこから十億円増収が出るのか。あと三月三十一日までに十億円の増収が出るならば、やろうと思えば、企業努力で一年間には七十億から八十億の金は出るじゃないですか。その増収十億円の内訳を説明しなさい。
  34. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 四十一年三月には東海道新幹線において「こだま」を三往復の増発をはかるほか、主要線区において臨時列車を運転して十億円の増収をはかることといたしたいと存じております。
  35. 野原覺

    野原(覺)委員 これは総理、どう考えてもおかしいですよ。国鉄は、努力をすればお金が出るのですよ。「こだま」を増発して臨時列車を増発すれば、三月三十一日までに、一カ月かそこらで十億円の金が出るのですよ。これはどう考えても国民は納得できませんよ。奇々怪々ですよ。それから不用財産の処分、貯蔵品の売却ということを申されましたが、この貯蔵品の売却はどういうものを考えておりますか。売ってもいい、そういう不用のものとしてどういうものが貯蔵されておるのですか。それは幾らですか、おっしゃってください。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま企業努力をすれば幾らでも出るかというお話でございますが、私も長い鉄道経験から、ずいぶん収入が足らなくなりまして、団体募集をしたり、あるいは荷主さんをさがしたり、いろいろ努力をいたしたものでございます。これはどこまでもそれができるものでもありません。ただいま言われますように、列車を増発することによって、そういう計画を立てることによって、やはり特別に収入をふやしていくという、これは確かにそれだけ職員といいますか、従業員も努力を払うのでありまして、これは涙ぐましいものがある、そういう点は了解していただきたいと思います。また最近の巷間のうわさ等から見ましても、これはいいことではございませんが、盛んに航空機事故がございます。   〔発言する者多し〕
  37. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうことでまた鉄道の客もだんだんふえておる、かようにも伺います。そういう点を鉄道では、いまの列車を増発することによって輸送をふやしていく、そこの増収計画を立てておると思います。しかし、これはまた増収計画を立てると同時に、従業員に対しても労働過重にならないような、そういう処置をとらなければなりませんし、また支出もふえておる、かように思いますが、そういうようなものを勘案して、ただいまのような増収計画を立てたと思います。また不用財産の処理といたしましては、一番わかりいいのは古レールなどの売却でありますが、これは、いつも出てくるとか、このために特にそういうものを出すというわけじゃありません。平素から絶えずそういうような古レールの処理をするとか、あるいは古銅、くず銅等の処理だとか、こういうような、当然もう買い手のついているものがございますから、これは再生する、そういう方向へ持っていけば、別に安く売るわけでもございません。これらの点についてはすでに参議院でも資料を提出したような次第でございますから、皆さま方に対しましても同じような資料を出すのが当然だと思いますが、そういうような意味で、ただいま運賃改正は、とにかく国民に対して非常な重圧、あるいは国民生活にも影響を与えるものである、これはもう経営者もまた従業員諸君も何とかしてサービスに徹しよう、こういう意味のあらわれでございますから、ただ全然架空な数字を羅列しておるものでないことだけは、これはやはり御同情、理解ある考え方でこの処置を見守っていただきたい、かようにお願いをいたしておきます。
  39. 野原覺

    野原(覺)委員 私は事務的なことだから運輸大臣の答弁でと思っておりましたら、総理は、考えてみたら運輸行政のベテランです。見識において、経験において、あなたが佐藤内閣の実質上の運輸大臣かもわかりません。したがって、私はもうこれから運輸大臣には質問いたしません。総理質問します。  総理、いまあなたの御答弁を承りましたが、広告収入やら病院収入、列車の増発、経営にくふうすれば金は入ってくる。経営にくふうすればなお国鉄増収の見込みがあるということです。間違いないでしょう。だから、総理、私どもはこの委員会経営にくふうしなさいと言ったんです。石田総裁に、運輸大臣に、それから大蔵大臣にも総理にも言ったんです。それから不用財産もあるじゃないか。たんぼにはレールを野ざらしにして、ほんとうに雨ざらしにして、腐らせておるところのあの古鉄があるじゃないか、あちらこちらには土地を買ったまま、これはだれの土地ですかと聞いてみると、国鉄の土地ですというのが至るところにある。それは遊ばしておる。そういう企業経営の合理化と申しますか、くふうをなぜせぬのか。それをした上でどうしても運賃収入によってまかなわなければ、国の財政にも限界がある、そういうことになれば、われわれも運賃収入には協力しようじゃないか。国の鉄道でございますから、国民みんなが協力しようじゃないか、そうまで言ったのに、同じことを何回も申し上げますけれども、ぎりぎりですと言ったんです。もう経営合理化はこれ以上できない。不用財産はもうないと、こう言ってきたんです。ところが、いま総理大臣みずから、経営にくふうすればお金が出るということです。そうなると、私どもはあの機3号で審議をいたしました際、あるいは運賃法改正で審議をいたしました運賃のあの値上がりというものは認めるわけにいかない、これは認めるわけにいきません。認めるわけにいきませんが、国会で通っておりまするから、これは運賃法として国鉄国民から徴収するでございましょう。このことは、もうこれは強権でやられるのでございまするから、いまのところはいかんともいたし方がございませんが、七十三億というあなた方のはじき出したこの数字は、いま大蔵大臣なり総理なり運輸大臣から答弁があった増収とかあるいは企業努力、これは大いにやっていただかなければなりませんが、短期借りかえの三十億については私どもは了解できない。私は、これは了解できない。短期借りかえの三十億というものは、これはそういう方法でやるべきではない。これは当然機第4号をこの国会に出して審議をすべきであります。同時に参議院でおととい通過いたしました運賃法についても、再度の検討をすべきであります。それから借りかえについては、これは当然機第4号で審議すべきであります。できない理由はない。これをでかさないというのは、四十一年度の一般会計の予算に響くことをおそれたのでしょう、率直に言って。こんなものでいまごろ補正を出したなら、四十一年度のこの予算は、これはとても年度末に通りやしない。だから出さぬのでしょう。正直に言いなさい、正直に言えば私は先にほかの問題に入る。いかがでしょう、これは。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一応企業努力の点について誤解があるようですから、もう少しお話をしておきます。  いままで国鉄は、在来線においては、これはもう過密ダイヤで臨時列車を出すようなその余裕もほとんどございません。だから臨時列車を出して客の誘致をするというのは、これは新幹線において計画をされておる。また他の東北線等において計画されておる。列車増発ももうあまり余力がないのです。そういう意味のことを、在来から総裁その他もお話をしておると思います。しかし新幹線においてはまだ余力のあることは、これはもうだれも認めるところであります。私はこういうような企業努力はもちろんしなければならないと思いますが、しかし、それも限度に来つつあるのだということを先ほど来申しておるのでありまして、どれも幾らでも企業努力をすれば出せる、かようには考えられないので、やはりこれらのほんとうの真剣の努力をそのまま受け入れてやるのが、やはり事業を愛し、また国民にサービスを提供さすゆえんでもあろう、私はかように思います。そういう意味でこの国鉄努力も、いろいろくふうをするのでございますから、それをあながち悪意のあるような鉄道の処置だとか、あるいは全然ないしょにしているのだと、こういうようにとられないで、実態を十分認めていただきたい、かようにお願いをいたします。  私は、野原君は十分それらの点は、全然鉄道の経験はないとおっしゃっても、いま鉄道の組合の諸君にしてもいかに働いておるかよく御理解がいくだろうと思いますので、そういうあまり無理なことを言われないようにお願いをしておきます。
  41. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、総理の答弁は私は納得できない。しかし、このことで時間をとっては私の質問が十分にできませんから、短期借りかえにしぼってお聞きいたします。大蔵大臣、この短期借りかえの三十億円というのは、四十一年度の財投で消化する、こういうことになるわけですか。
  42. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 短期借り入れでありますから、どこから借りてもいいのですが、ただいま国鉄の負担をなるべく軽くするという意味合いにおきまして、国庫余裕金を使用する、こういうことにいたしたいと存じております。
  43. 野原覺

    野原(覺)委員 国庫余裕金というのは、いまどれだけ残っておるか。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府委員がお答えいたします。
  45. 中尾博之

    ○中尾政府委員 現在のところ正確にこまかいところはわかりませんが、例年の例によりまして、三月末から四月、千億円あるいはそれ以上というものが収支のズレによって持ち越されることになります。
  46. 野原覺

    野原(覺)委員 これは非常に重大な答弁ですね。三月から四月にかけて一千億円からの余裕金が出る、こういうことであるならば、ますますもって総理、これは国鉄運賃値上げなどやるべきじゃないですよ。その千億円からなぜ百九十一億円のこれを借り入れないのですか。それから経営努力をしないのですか。どう考えてもこの国鉄運賃値上げは奇々怪々だ。国鉄自体が努力しない、政府努力しない、そうしてこの余裕金についても、困りますと言うと、三十億の金を千億のところに引っぱりにいく。そういうことをして運賃を上げる。これはどう考えても私は納得できない。これは国民に対して納得できるように、総理から御説明願いたい。総理、いかがですか。
  47. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国庫余裕金は、いまはあります。ありますが、これは時期的になくなるときもありまするし、あるときもある。そういうようなことでありますが、要は、これは国鉄の金じゃない。各政府機関全部の会計の余裕金でありまして、国鉄の金ではないのだということをよく御了知願いたいのであります。   〔「名答」と呼ぶ者あり〕
  48. 野原覺

    野原(覺)委員 いや、しかしこれは名答という自民党の声がございますけれども、メイトウとすれば迷いの答えです。これはどうにも詰まった答えです。大蔵大臣、残念ながら。この点は私どもも絶えず明らかにしなければなりませんが、総理、機第4号を出さないという理由をもう一度的確に御説明ください、補正予算が出せないというわけを。補正予算が出せない、あなたは理屈上出さねばならぬと言った。当然出さねばならぬものを、なぜ政府ができないのかということを御説明ください。総理からこれは御答弁願いたい。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、政府考えましたのは、年度末だということと、それから期間が非常に短い、そうして、その歳入も不足ではあるが、最終的に一体何ぼくらいになるのか十分わからない。そこでいまの短期借り入れでこれを処理しよう、こういう考え方を実は持ったのであります。これが年度の途中だとか、そうして非常に明確にこれだけ穴があく、そうして将来の負担にもなる、こういうようなところで、一体どれで処理するか、まあ先ほど大蔵大臣が三つの方法があると言いましたが、その三つの方法、これが結局年度末であること、期間がわずかだというところから、短期借り入れで処理しよう、こういうように政府考えておるのであります。
  50. 野原覺

    野原(覺)委員 いや、補正予算審議する余裕があるじゃありませんか。きょうは三月の五日ですか、あとまだ二十六日あるじゃありませんか。審議の余裕はあるじゃありませんか。なぜ出さぬ。補正予算は衆議院で二日、参議院で二日あれば通る。出しなさいよ、これは。審議の余裕が二十六日あるじゃありませんか。理の当然で、それが筋だというなら出しなさい。これはどう考えても国民が納得できない。出しなさい、いかがですか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いや、これは理の当然というよりか、そういう考え方もあるのですから、これは私は考えが間違っておると申しておるわけじゃない、その方法のどちらをとるか政府考えて、先ほど来お答えしておるように、年度末ではあるし、この際は短期借り入れで処理しよう、こういうように考えたのだ、こういうことを申し上げておるわけです。これが全然この方法は間違っておる、かように御指摘になれば別ですが、私どもは先ほど大蔵大臣がお答えしたように、三つの方法の一つだ、かように考えておりますので、その処理をつけよう、かように考えております。
  52. 野原覺

    野原(覺)委員 じゃ、申し上げます。間違っています。政府がやろうとしておることは間違っています。私は申し上げますよ。これは国鉄法の第四十二条の二の第三項違反です。政府のやり方は、国鉄法の第四十二条の二の第三項に違反をしておる。大蔵大臣、重大ですよ。またあなたはたいへんなことになりますよ。第四十二条の二の第三項には何と書いていますか。当該事業年度内に償還することを原則とする。短期借り入れの場合に、借り入れたならばその年度内というのだから、四十年度の事業で、四十年度に借りれば四十年度償還が原則だ。ところが当然例外があるわけだ、原則という限りには。その例外とは何かといえば、資金不足のため償還できない金額を限り、運輸大臣の認可を受けて借りかえることができる。ただしこれは例外でございますから、法律の常識に従って例外規定は厳密に解釈されなければならない。そこで、その解釈としてはどういうことかといえば、運輸大臣は、補正予算審議する時間的余裕がある場合には短期借りかえを許可すべきではない。時間的余裕がないというなら、私は先ほどの総理の御答弁で了解いたします。時間的余裕が二十六日あるわけです。あなた方は機第3号を審議さしたんです。私の要求したのと同じ理屈じゃありませんか。金が足らないから二百六十一億円審議してください。金が七十三億足らぬから審議してくださいとなぜ言わぬのか、期間があるのに。しかも国鉄法四十二条の二の三項は、時間的余裕がある場合は、運輸大臣はこれは許可すべきではないという解釈の厳密な規定を出しておるじゃありませんか。法律違反ですよ。総理、これはいま答弁できなければいいですからね、閣議を開いて-機第4号はまだ時間的余裕があるんだから、これはひとつ補正予算を出されるように再検討願いたい。総理の御答弁を願います。
  53. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま野原さんは時間的余裕があれば補正予算を出せ、こういうふうに書いてあるというお話でありますが、そう書いてありません。「第一項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。但し、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額を限り、運輸大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。」こうあるわけでありまして、ただいま当面している事態としては、国鉄事業量を減らすことが第一。第二の場合は、長期借り入れ金その他の対策を講ずるということにして、事業量は減らさない、こういう措置、この第一、第二の場合は補正を必要とするわけであります。しかし、第三の場合として、短期借り入れ金という道があるわけであります。年度末でもありますし、また三十億というわりあい小さい金でもある。そこで、この国鉄法の予定をいたしておりまする、また国鉄法が承認をいたし、予算でも七百億円のワクがあるんです。そのワクを使いまして、短期借り入れ金で泳ごう、こういうことであります。
  54. 野原覺

    野原(覺)委員 大蔵大臣は私の質問をよく聞いていただきたい。償還できない金額を限り、運輸大臣が認可するのは例外です。その前に原則とあるでしょう。償還することのできない金額を限って運輸大臣が認可をしなければならぬ必要が生ずる。それは例外です。前に原則とあるわけだから。ところが、こういう例外というものは、これはほんとう運輸大臣が認可をしなければどうにも動きがとれないせっぱ詰まった場合に、この例外を採択すべきだ。ところが、せっぱ詰まっちゃいない、あと二十六日あるじゃないか、それを言っているんですよ。二十六日あるじゃありませんか、あなた。国会を何と思っているんですか、政府は。国鉄政府のものじゃない、国民のものだ。それなら足らない金はなぜ国会審議してもらわぬのですか。短期借りかえなんて、これは、四十一年度の関係予算が通過しないであろうことを心配して、こういう変則的なことをしちゃいけませんよ、立憲政治の国が。法治国家ですよ。だから、私はそれを言っているんだ。だから例外的に運輸大臣は認可することができるわけですね。だから、この例外というものは、審議のできる時間的余裕がある場合には、運輸大臣、あなたは認可すべきではないのだ、国会に出すべきなんだ。国鉄予算というものは国会審議するのですよ。国鉄予算国会審議するのだ。二十六日時間的余裕があるのに、国会に出さないなんというようなことは、私は了解できない。あなた方がそれでいかれれば、私は、この予算審議はどうなるかわからぬ。考えますよ。いかがですか、総理、私の言うことは間違いではございませんね。それじゃひとつ再検討してください。これは出したらいかがですか。もう一度総理の御答弁をお願いします。
  55. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 補正を出すべきだとおっしゃいますが、補正を出す場合は、先ほど申し上げましたように二つの場合、つまり支出権をそれだけ削るか、三十億削るかというと、私どもは削るべきではない、こう考えるのです。その場合の補正は必要はない、こう考えます。第二の場合は何か。他の財源対策を講ずる、おそらくこれは借り入れ金――長期借り入れ金ですから、そういうことになると思う。これは結局長期借り入れ金――これは借り入れ金でございます。これは短期借り入れ金をするのとちっとも実質において違いはないわけなんでありまして、いま年度末、国務ふくそうというこの際とすれば、短期借り入れ金でいく、このほうが私は国鉄のために、国鉄事業を遂行する上に非常に能率的である、かように考える次第であります。
  56. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、これは承服できないことを表明して次に入りたいと思う。  そこで、私が次にお尋ねしたいことは、財政経済についてです。  まず、総理お尋ねしたいのですが、四十一年度の経済見通しです。これは二月五日から私ども一カ月近くこの予算委員会で財政金融各般にわたって審議をしてきたわけでございますが、どうも私どもが納得できないのは、政府の四十一年度の経済見通しは消費者物価の上昇を五・五%に押えている。このことについては、藤山経済企画庁長官、福田大蔵大臣にいろいろお尋ねをしてまいりましたが、どうもこれは説明がなっていないのです。私も速記を全部読んでみた。藤山さん、それで私が納得できないというのはどこかと申しますと、この物価の上昇五・五%という根拠が少しも具体的に述べられていない。五・五%に押えると政府はその方針を出したならば、どこから五・五%が出てきたのか、これを具体的に総理と経済企画庁長官御説明ください。
  57. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 五・五%を私ども目標にしておりますその理由は、かねて御説明申し上げてあるわけでございますが、要するに四十年度から四十一年度に比較して移ってまいりますときのいわゆる私どもげたと申しておるのが一%ございます。それのほかに一%を努力目標として下げよう、その努力目標として下げる内容は何かということであれば、これは単に一つのものを下げるというだけではできません。あらゆるものについて上げてもらわないように、あるいは下げることができるものならば下げてもらうように、そういうような、また便乗値上げ等を押えていくというような問題を考えていかなければならない。また緊急輸入を必要とするものについては、緊急輸入をその時期においてしていくというようなことで、いろいろな面にずっと手を打っていかなければならないので、その努力目標の一%を下げるということは、何で一%下げるかと言われても、それはなかなか御説明しにくいと思う。したがって、私も努力目標ということを申し上げておるのでございまして、正確に数字でどこから何%出てくる、そういうことは申し上げておらぬのでございます。
  58. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、きょうは経済企画庁長官、最後の総括ですから、あなたもそのおつもりで御答弁願いたいのです。基礎はあるでしょう。五・五%というものをはじき出した基礎を聞いておるのですよ。あなた方が五・五%と言う限り基礎があるでしょう。架空の数字ではないでしょう。五・五%にしたいという願望ですか。願望、したがって架空の数字、何も科学的な基礎はない、そうですか。お聞きします。
  59. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 必ずしも科学的基礎がないというわけではございませんけれども、非常にこまかい数字を積み上げていくことでございますから、そういうものは〇・〇一とかなんとかいうようなものが積み上がってくるわけでございます。ですから、なかなかそういうものについて正確な判断はしにくい。しかし、われわれとしては、そういうところに持っていきたいということで努力してまいるわけでございまして、それですから、国会でもって終始私は努力目標としてそこへやっていくのだ、こういうことをいま申し上げているわけ
  60. 野原覺

    野原(覺)委員 これは総理、いま経済企画庁長官の答弁は、依然として最初勝間田委員、それから本会議で成田議員に答弁されたことから一歩も前進していない。依然として同じことを繰り返しておるわけです。これは私どもきわめて遺憾です。佐藤内閣の物価対策というものは、架空の五・五%を目標にしておるのだ。架空でしょう、これは総理総理、いかがですか。五・五%は架空ですか。五・五%で押えるということを国民に約束したんだが、架空ならばよろしい。私は先に質問しますが、架空ですか、これは。
  61. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 たとえば野菜の値段が、本年と四十年度においてこのぐらい上がった。あるいは四十年度において野菜全体がどのぐらい上がるかというような予想は、それはわれわれもしなければなりませんし、ただ個々の野菜の何と何とが上がったというようなことについて、一々やるわけにはまいりません。大体におきまして農林省の施策等も進んでおりますし、四十年度のほうが四十一年度に比べて高かったのではないか。四十一年度はもうちょっとと野菜の価格が平均的には下がっていくのではないか、そういうような見方は、それはむろんわれわれは積み重ねております。
  62. 野原覺

    野原(覺)委員 きわめてたよりない話ですね。それじゃ藤山さん、これが架空の数字でないとするならば、あなたにお尋ねしますが、物価の上昇の寄与率、これはどのようになりますか。私は具体的に例示して申し上げます。農水産物は幾らになるか。それから加工食品が幾らになりますか。サービス料金は幾らになりますか。それ以外のその他は寄与率をどのように見ておりますか。いかがですか。
  63. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 生活局長から御説明いたします。
  64. 中西一郎

    ○中西政府委員 先ほど来の御質問、大臣の御答弁、聞いておりまして、補足したい点もあるのですが、一つは大臣からお話がありましたげたの問題です。これは四十年一二月のCPIの指数が一三二二でございます。四十年度の平均が一二七・八、この差額を年度平均を一〇〇としまして、パーセントにしますと三四に相なります。それから四十一年の三月の指数、これは七・五%程度の年度間の値上がりであるという推定をいたしていますが、それに基づきまして一四一・一という想定をいたしております。それから四十一年度の平均がどうなるかといいますと、 二二七・七になる。その差額が三・四でありますが、年度平均を一〇〇としてパーセントにしますと、それが二・五――二・四程度になります。三・四と二・五の差額で一〇、これはげたの問題でございます。そのほかに、政策努力で一%。お尋ねの寄与率の問題につきましては、過去の趨勢等いろいろ見まして、そう大きな変化はないだろうというふうに達観はしておりますけれども、四十一年度の見込みを立てます場合に、それぞれの項目について寄与率がどうなるかというところまでは作業をいたしておりません。
  65. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、総理お聞きのとおり、物価対策に力を入れると言いながら、物価上昇の寄与率を見ていないのです。しかも、物価対策に力を入れる藤山さんの経済企画庁にしてしかりだ。この寄与率を見ないでどうして物価を下げる努力目標に近づけることができますか、努力ができますか。寄与率を見ることによって努力目標というのが立つのじゃありませんか。これは経済学の常識じゃありませんか。それがないというのです。佐藤内閣の物価対策がいかにいいかげんなものであるか。国鉄運賃にしてしかり。しかも基本的な物価上昇の五・五%の算定にしてしかり、かくのごとき状態です。  そこで、大蔵大臣お尋ねしますが、五・五%に押えることができなかった場合には、これは来年度の、四十一年度の予算支出にはどのような影響があるとあなたはお考えになるか、そうして、その影響に対して、あなたはどういう対策を用意しておられますか、お尋ねしたい。
  66. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 五・五%がそう動くというふうにはただいま考えておりません。政府全体が総力をあげてこの五・五%を達成する、こういうことでございまするから、これが動いた場合にどうするかというようなことは、ただいまの段階では考えておりませんけれども、万一そういう事態があるとすると、予算にきめられた事業がそれだけ減ってくる、こういうことになろうかと思います。しかし、もうそれは仮定のことでありまして、ただいまはさようなことは考えておりませんです。
  67. 野原覺

    野原(覺)委員 仮定といいましても、この仮定は残念ながら実現の見込みがある。いまの佐藤内閣のこの施策からは、五…五%に押えることは絶対不可能です。私は予算締めくくりの総括のときに、このことは公言しておきます。いまのやり方なら絶対不可能です。これは遺憾ながら七%から八%、したがって、最悪の事態というものを財政当局の責任者は考えておいてもらいたいのです。  そこで、お聞きします。これは大蔵大臣でけっこうです。昨年の消費支出の伸び率はどのくらいか。本年のその伸び率はどのくらいになるとあなたは考えておりますか。
  68. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 伸び率は三十九年から四十年一一・一、四十年一一・二%でございます。
  69. 野原覺

    野原(覺)委員 私も、その点はそうなるのじゃないか個人消費支出は、四十年度は経済企画庁の経済の見通しのあの書物によりますと、十四兆九千三百億円、四十一年度は十六兆六千億円、したがってその伸び率は一一・二%、そういうことを四十一年度経済の見通しで企画庁が発表しておりまするから、これは私も了解いたしましょう。  そういたしますと、昨年の伸び率とことしの伸び率はほとんど同じですね。同じであれば、当然に賃金の値上がりについてもこれは同じでなければならぬ。昨年の賃上げがあって、個人消費の支出が伸びたから一一・一だ。ことしは一一・二だということであれば、ことしの民間労働者の賃金、公務員の給与のベースアップというものは、これは昨年よりも少しは上がらなければならぬ。この辺は藤山さん、どうお考えですか。
  70. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国民の総収入というものは、前年よりやはり人口増がございます。そういうものを差し引いてまいらなければ総収入というものが必ずしも――何と申しますか、これは人口増から引いたものが適当だと私は思います。そういうことで、昨年の伸び率がいいからことしの賃金は昨年どおりに上げていい、これはおのおのの業種によって私は違うと思うのでありまして、すべてのものが同じような率で平均的に上げたがいいんだということは言えないと思います。
  71. 野原覺

    野原(覺)委員 言えないと思いますって、あなたはことしの伸び率は一一・二だ、昨年は一一・一だ、昨年の一一・一の伸び率は昨年の賃上げが影響しておるのです。昨年の賃上げで労働者の生活が豊かになったればこそ一一・一の伸び率を示したのです。そういたしますと、ことしは一一・二だということであれば、ことし労働者が特に春闘でいま立ち上がろうとしておりますが、この労働者の賃上げはどのくらいなければならぬかというのは、内閣であなたが検討しなければならぬ責任があるのです。経済企画庁はことしの労働者の賃金はどのくらいだと見ておるのですか。伸び率は一一・二と見ているのですよ、あなたは。そうなれば賃上げを当然考えなければならぬ。いかがですか、これははっきりしてください。
  72. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 過去の数字から人口増をあれしまして、その残りで直接に比較するのは正確かと思いますが、そういう意味で過去のずっと趨勢から見まして、大体こういう状態であれば一この程度のことはいくんだろう、こういう見方です。ただし、いま申し上げたように、一律に全部が同じ賃上げでいいんだという事情には私はならぬと思います。
  73. 野原覺

    野原(覺)委員 私はそういうことを聞いていないんだ。昨年は一一・一の伸び率、ことしは一一・二の伸び率・昨年の一一・一の伸び率の影響は、昨年の労働者の賃上げが大いにあずかっておる。そうなれば、逆算して、ことしはどの程度の賃上げが妥当か、去年はたしか民間労働者は平均して三千円の賃上げ、ベースアップであったのです。公務員は七・八%か何かであったと思う。そうなれば、ことしの労働者のベース改定はどのくらいかという見通しが言えないのですか。あなた、言えないのですか。言えなければ、これは私は審議できない、こんなことは……。
  74. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体、積算の基礎になっておりますものは八%でございます。
  75. 野原覺

    野原(覺)委員 八%だと言いますが、それは民間の場合、金額平均どのくらいですか。
  76. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 こまかい点については事務当局から御説明いたします。
  77. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢政府委員 賃金の伸びが幾らになるかというような具体的な積算は企画庁ではやっておりません。ただいま企画庁長官から申し上げました数字は、結局全産業の賃金俸給所得の中で、人員の増加が大体大ざっぱに申しますと三・六%ぐらいはあると思いますから、したがいまして、一人当たりの所得にすれば八%ぐらいだろうというふうなことを申し上げたわけでございまして、この場合には、定期昇給も入っておりますし、残業なんかも入っておりますし、それから、この大ざっぱな計算の中には、実際の勤労所得の中にはいろいろな重役報酬みたいなものも入っております。それから、その他の兼業収入も入っております。全部入った非常に大ざっぱなつっくるみの見当ということではじいた数字が大体その程度ということになっておるわけでございます。
  78. 野原覺

    野原(覺)委員 大ざっぱでいいから言いなさい。
  79. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢政府委員 大体八%程度でございます。
  80. 野原覺

    野原(覺)委員 八%では、これは民間労働者は私は去年は三千円ではなかったかといって聞いておるのだが、金額を言わない。これはどうも了解できぬのですよ、藤山さん。去年は三千円上がったから、一一・一になったのですよ。二・二にあなたは上げようという計画なんです。それじゃ大体去年の三千円どおりだと政府考えておると――考えなかったら二・二にこれはなりませんよ。いいですか。これは答弁できなければ進行できない。委員長、これは進行できない。答弁しないのだから、経済見通しを私は聞いているのだ。故意に答弁しないのだ。財界をおそれてか何かか知らぬが、答弁しない。言いなさいよ、あなた。
  81. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 総所得のうちには、御承知のように、賃金だけでなしに、したがって賃金の上がりだけを出していくのじゃなくて、賞与もございますし、ですから、それをいきなり賃上げのパーセンテージに持っていくことは、私は適当だとは思いません。
  82. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、八%までは言ったが、金額がどういうものか決して言わない。このことから見ても、経済見通しがいかにずさんなものであるか、五・五%がきわめて架空の数字、経済見通しはまたいまや架空の数字だ、国会においても正確なことを答弁しない。私ども佐藤内閣の財政経済政策についてきわめて遺憾に思うのです。  そこで、大蔵大臣、これは公債ですから、大蔵大臣でいいですね。あなたはわが党の勝間田氏の質問に対して、国債の累積は四兆円になる、これは昭和四十五年でしたね、こう答弁しておる。これは年次的発行計画、去年は二千六百億、ことしは七千三百億、来年は、再来年はと、四兆円までの年次的発行計画、これはあなたが答えているのですから、年次的発行計画の基礎なしに四兆円ということを答えるわけはない。言ってください。
  83. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債政策をとりました後の財政運営は、いままでと非常に変わってくる、こういうふうに思うわけです。つまり民間の経済が活況であるという際には、財政のほうは消極的に、したがって公債はやや低目になるわけであります。それから民間経済が落ち込んでおるという際には、財政のほうは積極化する。したがいまして、その財源として公債は多くなる、こういうふうに一般的に考えておる。これは申し上げたのですが、今後五カ年間の推移を見てみますると、ことし四十一年度、それからさらに四十二、三年度、これはやはり決定的に私は設備過剰型の経済体制である、こういうふうに思うわけであります。そういう体系のもとにおきましては、政府財政が設備投資の落ち込みを補う、こういう立場をとる、これがよろしい、こういうふうに考えます。したがいまして、昭和四十一年度は七千三百億円の公債を発行する。四十二年度、三年度が公債の山場になると思うのですが、ややこれが増加をする、こういうふうに考えるわけであります。それからその次に続く二カ年度ですね、四十四、五、これが公債が減る傾向になるかならないかの境目になる、こういうふうに思うわけであります。この五カ年を見通しますと、そういう弾力的な財政政策をとるのでありますので、公債の発行額をいま幾らというふうに予定するわけにはなかなかまいりません。まいりませんが、まあその五カ年間通じて八千億ずつという、非常にこれは荒っぽいですよ、四十二、三が重いのですから、それから四十三、四、五は軽い、こういうふうになりますから、平均にするのは荒っぽいわけでありますが、かりに八千億ずつ発行されるというふうに見ますると、大体四兆円になる、こういうことで四兆円と申し上げたのであります。まあ大体そんな見当になるのじゃないかと、ただいまも考えておる次第でございます。
  84. 野原覺

    野原(覺)委員 四十五年は四兆円、これを答弁する限りは、大蔵大臣、これは計画どおりにいかないことは私どももわかりますよ。財政は生きものですから、いろいろな条件が影響を与えるわけですから、そのとおりにいかないことは、それはそうでしょう。いかないことはそうだけれども、財政当局の責任者は、少なくとも四十五年までには四兆円の国債だというときには、-年次計画をちゃんと持っておるべきなんです。あるいは持っておりながらあなたはそれをおっしゃらないのか。まあ言っておることは、ことしの七千三百億円だけは、これは言うも言わぬもない。来年からの数字は言わないで四十五年は四兆円だ、こう言ったって、だれがこれを納得できますか。  そこで、これは財政計画や公債の償還とも影響するわけですが、私ども口をすっぱくして、声を枯らしてあなたにこの委員会質問してきたことは、償還計画をなぜ出さないかということだったのです。これは社会党の要求じゃないのです。国民要求なんです。借金をするのです。四十五年までに四兆円借金するならば、その借金は国民のわれわれが負担するんだ。借金をするならその返済の計画を示してくれ、これは当然じゃありませんか。これをお出しにならない。そして、あなたが言っておることは、四十五年には四兆円の国債、そのときになればGNPが四十兆になるから、一割ぐらいは償還に回してもたいしたことはないと言って、あなたは胸をたたいておられる。はたしてそうなるのかも怪しいでしょう。あなたは来年度からの四兆円の内訳が言えないのですから、四十五年に四十兆にはたしてGNPがなるかどうか言えるわけがない。きわめて楽観的なことを言われて、償還計画もお示しにならないで、このような国債の計画を私どもに押しつけてきておるところに非常に実は不満を感ずるのだ。私どもは、もちろんあなた方の公債政策についていろいろ意見はあります。意見はありますけれども意見があればあるなりに、あなた方がそういうことをやるならやるなりに、納得さしてもらわなければならぬけれども、五・五%しかり、それから公債計画の数字しかり、ことしの春闘の賃金は幾らかと言っても言わない。肝心かなめのことは何一つ言わないで、これで一体財政経済の審議が終わったと言えますか。私は予算の理事をいたしております。予算の理事をして、私はまじめに最初から最後まで出ておって、質疑応答を聞いてきたのです。肝心なところになるとはずすのです。だから私は、ここに立って議事進行をやろうかと思うと、委員長が妙な顔をされるから、だいぶ遠慮してきたのです。私は、ほんとうなら毎日ストップしたいのです。しかしながら、そのようなことはあえてやるべきじゃないというので、私どもはがまんをしてきた。  そこで、財政経済の最後お尋ねいたしますが、減税です。大蔵大臣は、これはいつでございましたか、所得税課税最低限度八十万円程度、こうしたい、これが私の目標だ、私は公債もやるが減税もやるのだ、これで景気を振興するのだ、こう言ってきた。だからして、あなたが八十万円の課税最低限を実現できるそのときの日本の経済、それはいつごろですか。あなた、こう言ってあちらこちらで演説をし、話をしておるわけだから、あなたはそれをいつごろだと思っておるか。福田財政経済の計画のもとでは、八十万円の課税最低限の実現ができるのはいつごろだとあなたは目標を置いていらっしゃるか、承りたいと思います。
  85. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 税は増税をするがいいかあるいは減税をするがいいか、こういう議論があると思うのです。私は減税論者である。減税すべきものである。今日、税の率から言いますと、必ずしも低いとは言えませんけれども、しかし、一人一人の国民所得に比べてみますると、日本の税率は非常に高い、こういうふうな私は認識を持っておるのです。ですから、今後とも個人、法人も通じましての減税をいたしていきたい、こういうことを考えておるのですが、先進国のことなんかも考え、また同時に、わが国の国民所得の状況というようなことをあわせ考えまして、まあ追っていくべきそういう考え方の目標は、当面所得税においては八十万円の課税最低限だ、そういうふうに考えておるわけです。法人税につきましてはどの税度を目標とすべきか、これは配当軽課という問題がございまして、やや複雑なんでございますが、その問題も含めて今後検討していく。つまり私が申し上げていることは、そういうことを目標にして今後も減税を進めていくということなんでありますが、ただいま申し上げましたように、初めて公債政策にスタートしたばかりである、今後の財政推移、また経済の動き、そういうものがどういうふうになるか、これがまだ見通しもなかなか困難な状態であります。そういうようなことから考えまして、この八十万円という目標、また配当軽課を含めての適正なる法人税の税率、そういうようなものをいつの年次で達成できるか。なるべく私は早い機会にそういうことを実現したいということを心がけていきたい、かようなことを申し上げたわけであります。
  86. 野原覺

    野原(覺)委員 予算審議は、これはいろいろ委員の間に議論があるのは当然です。政府にも見解があるのは当然です。私はそのことは申し上げたくないが、私どもが議論をするのには、政府の予算案をもとにして、財政計画をもとにして審議をしておる。である限り、政府におかれても、基礎的な数字、財政計画、償還計画、こういったようなものは万遺憾のない計画的なものを出すべきだ。これを出さないできたところに、本予算委員会の大きな欠陥があったと私は思う。どうもから回りをした原因はそこにあったと思う。  そこで、私は次に進みます。これは総理、きのう椎名外務大臣が国連協力の問題でこう答えたのです。いかなる名称を問わず自衛隊の海外派兵は断わるべきだ。断わります。これは総理も御同感ですか。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは憲法、自衛隊法その他から、結論として椎名君が答弁したとおりに私も考えております。
  88. 野原覺

    野原(覺)委員 このことがきのうこの委員会で答弁がされますと、これは私のところに来た記者の方のお話でございますが、外務省の官僚は、あれは派兵だから、なに派遣でやるさ、派兵は断わるんだが、派遣は断わってないんだからと言って、胸をたたいたという。これは、記者の方がどこまでその真相を伝えたか知りませんが、そういうことを言われたという。これは外務大臣、派兵と派遣はどう違うのか。
  89. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 派兵といいますと、やはり私どもの解釈では、軍隊の本来の武力行動というものを前提にした海外への派遣である。でありますから、派兵と派遣とは違うと私は考えます。
  90. 野原覺

    野原(覺)委員 外務大臣、ただ国連の休戦監視団あるいは国連の警察保安隊、こういう名前で出向くことは、これは一体派兵ですか、派遣ですか。
  91. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 とにかく軍隊本来の武力行動を前提とした海外派遣が派兵である、こう考えます。
  92. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは質問に答えたらいいと思いますね。監視団という名でたくさん出ておるわけです。きのうは政府説明員から二十ばかり読み上げたわけです。監視団というのが半分ぐらい一あった。それで、自衛隊がそれで出向くことは派遣か派兵かと聞いておる。実は私は、これはきのう終わったことですから触れたくなかったのですが、外務省の官僚が、なに派遣ならばと、そういう国会でいま審議が終わったばかりのものをやっておるというので、私は、これはぜひ明らかにしておかないと問題が残ると思って尋ねておる。ですから、監視団として自衛隊が出向くことは派遣か派兵か、これを聞いておるのだ。きのうのあなたの答弁のいかんでは、きのうの速記の上に立ってあなたはたいへんな責任を負うことになりますよ。私は速記を用意しておりますから、ずっと速記の経過の上に立っておる。国連の監視団で出向くことは派兵か派遣か。御答弁ください。
  93. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 武力行動を前提とするものであれば、これは派兵である、そう考えます。
  94. 野原覺

    野原(覺)委員 武力行動を前提とすれば派兵だ、だから、武力行動を前提とした監視団ならば、これは派兵だ。しかし、武力行動は絶対しないと、こういうような意味のものならば、これは派遣だ、そういう派遣ならばいいのだ、こういう見解でございますか。
  95. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 武力行動を前提としない場合は、派兵とは言わないと私は考える。
  96. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、いかなる名称を問わず、自衛隊の派兵は断わります。こう言っておりますから、それが監視団であれ、警察隊であれ、保安隊であれ、派兵はしない、つまり武力行動を前提とした自衛隊の海外出向というものはこれはいたさない、こういうことだろうと思うのです。ところが、問題は非常にデリケートでございまして、総理、きのう私も申し上げたのですが、監視団として出向いてまいりますと、そういう監視団が行かねばならぬそこの環境、その国情と申しますか、周辺の事態というものはやはり何がしかのやかましい条件を持っておるわけです。騒がなければならない条件を持っておるわけです。どうしてもこれは武力に移るのです。現実に国連が派遣した監視団はたくさん移ってきておる。もう監視だけで終わりはしないのです。日本の自衛隊が何名かその監視団に入っていけば、国連の指揮官の指揮下に入るわけです。武力行動を前提としないということですけれども、その指揮官は、前提としないということであっても、武器を渡すでしょう。何か騒擾があれば号令して行動させるでしょう。こうなると、一体監視団は、直ちに、日本憲法は平和憲法だ、帰れと、こういうことが言えるかというと、現実問題としては言えない。そういうことを言ったら、国連の中において日本国の権威失墜だ。出しておきながら、途中で引き揚げさせるなんて私は大きな政治責任だと思う。したがって、私はそういう前提に立ってきのうは質問をしたのです。だからして、いかなる名称を問わず派兵は断じてしない。つまり、いかなる名称を問わず武力行動によるそういうところの集団には参加するような出向はさせない。ところが、非常にデリケートでございますから、きょう私は、これ以上この問題は入りませんけれども、いかなる名称を問わず武力行動による出動はしないということでございますから、総理、私の理解では、軍事協力日本憲法の禁止するところだ、国連であれ、何であれ。日本憲法は絶対主義の平和憲法でございますから、その憲法に適応したところの協力のしかたというものがあるのだ、私はそう思っておるのです。そういう考え方でなければきのうの椎名外務大臣の答弁は理解ができない。総理、いかがですか。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの軍事協力、ここがやはり問題なんですね。ただいま外務大臣がお答えいたしましたように、武力目的を持つということ、そういう意味の軍事協力のできないことは、これはもうはっきりしておると思います。しかしこれは、南極観測に私どもの自衛官も出ているし、あるいは演習、遠洋航海もしておる、こういう事態を考えれば、いまの点がはっきりするのじゃないか、かように思います。だから、椎名君のお答えしておりますように、武力目的を持つ場合、これは協力ができないのだ、かように実は申しておると思います。戦争、これは申すまでもなく、防衛的な観点の力だけを持っておりますけれども、攻撃的なものは持っていない。だから、自衛権を否定するものではない、これも野原君はすでに御承知だと思います。私はさようにこの問題を考えております。
  98. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、軍事協力ということでは協力できない、こういうことですね。国連といえども軍事協力ということは日本憲法上問題がある、これは当然だと思う。それならばお聞きいたしますが、朝鮮国連軍というのは、あれは国連憲章の第六章、紛争の平和的解決の条章、それからもう一つは、国連憲章の第七章四十二条に軍事協力が述べられておる。あの朝鮮の国連軍はこの第六章によって発動しておるのか、第七章によって発動しておるのか、これはいかがですか、総理
  99. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事務当局からお答えいたします。
  100. 滝川正久

    ○滝川説明員 朝鮮国連軍は第七章と存じます。
  101. 野原覺

    野原(覺)委員 第七章です。これは間違いないことです。第七章の第四十二条だ、これは間違いない。この答弁は正しいと思う。そうすれば、わが国は吉田・アチソン会談によって朝鮮国連軍を支持しておる、このことは憲法上どうなりますか。吉田・アチソン会談によって朝鮮国連軍を支持しておるが、このことは憲法上どうなりますか。
  102. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答えを申し上げます。  吉田・アチソン交換公文にはその辺のことが書いてございますが、要するに問題は、朝鮮国連軍がただいまの質疑応答にありましたように、憲章上の作用として出てきたものであるといたしましても、これは毎度申し上げておることでございますが、国連の勧奨に応じて実は各国がそれに参加をしておるということでございまして、国連の背景というものがあることは確かでございますが、それぞれの国の主権、意思、責任においてやっております余地が残っております関係から申しまして、日本国憲法から申しまして、朝鮮国連軍の本来の使命、つまりあすこにおいて戦闘行動をするということ、そういうことは日本国に関する限り憲法九条が厳に禁止しているところであるというふうに解しておりますし、かつてもまたそういうことで申し上げております。
  103. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、法制局長官、あなたはまた取り消しをしてもらわなきゃいかぬかもわからぬ。吉田・アチソン書簡によって、日本の国は朝鮮国連軍に協力することになっておるのでしょう。ところが、私が一番最初にお尋ねしたことは、日本の憲法は軍事協力については問題があるというならば、軍事協力協力する吉田・アチソン書簡というものは問題がありはしないか。当然日本は平和憲法によって――国連憲章の第六章の紛争の平和的解決に関する条項は、日本は適用を受ける、これは日本の義務でやらなければならぬ。ところが、朝鮮国連軍というのは、強制的な行動をやっておるわけで、これは政府委員が説明したように、第七章第四十二条だ。第七章第四十二条というものは、日本の憲法は問題があるわけです。その問題のあることを吉田・アチソン書簡で協力することにしておるわけでございますから、憲法本来の精神から言うならば、朝鮮国連軍に対して協力すべきではない。朝鮮国連軍に協力することは、日本憲法の違反である。違反でないならば、反証をあげてもらいたい。日本憲法は禁止しておる。反証をあげてもらいたい。
  104. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほど申し上げましたように、朝鮮国連軍に日本国の自衛隊が参加をいたしまして、直接、先ほどお話がありましたような武力の行使に当たるということが、もしも吉田・アチソン交換公文の内容として日本政府の義務となっておれば、仰せのとおりでございます。しかし、ごらんになればわかりますように、そういうようなことが吉田・アチソン交換公文で、日本政府の、あるいは日本国の義務とされている根拠は少しもございません。したがって、ただいままで申し上げたことから言いまして、吉田・アチソン交換公文が憲法に違反するということにはならないというふうに考えます。いずれにしましても、大事なことは、朝鮮国連軍に対して、日本政府がたとえば自衛隊を派遣するとかいうようなことで、それに参加することが憲法九条に違反することは、きわめて明白であると考えます。
  105. 野原覺

    野原(覺)委員 朝鮮国連軍に参加して武力行使してはいけない、これは憲法九条が禁止しておる。しかし、日本憲法の本来の精神というものは、朝鮮国連軍に協力したり、支持したりすること自体も禁止しておると私どもは思っておる。単に武力で参加することだけではない、日本憲法の絶対平和主義の精神というものは、朝鮮国連軍の、相手の国を武力でやっつけるという、あのことも禁止しておるのです。だからこれに協力するということは、憲法違反です。しかし、これはいずれまた適当な機会に議論したいと思う。  そこで次は、総理お尋ねをいたしますが、けさの朝日新聞ですか、それからゆうべの毎日新聞でございましたが、ベトナム和平打診の使命を帯びて派遣された横山大使の記事が載っておる。一体、この横山移動大使は、どういう資格で外国を旅行されておるのか、承りたい。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 特に横山大使には、出発の前に十分政府の意を伝えまして、そうして、ただいま問題の起きているベトナム紛争についてのいろいろな情報の収集並びにこれが妥結の方法等についての考え方を調べさす、こういうことでただいま派遣しておるのでございます。記事が出ましたが、まだそれらについての報告を受けておりません。したがいまして、記事自身が間違っておるとは思いませんが、どういうような状態でどういう発言をしたか、つまびらかでございません。
  107. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたが読んでいなければ、これは毎日も朝日も書いておりますから……。その他の新聞を、私も昨晩からけさのことですから、全部目を通しておりませんが、横山さんは、あなたの特使、佐藤総理の特使という資格、移動大使という肩書きで行かれておるようですね一この人はこういうことを言っておりますよ。グエン・カオ・キ将軍の政府は、米国のかいらいです――あなたの特使がパリに行って、グエン・カオ・キ南ベトナム将軍のあの政府は米国のかいらいですと、こう言っております。どうお考えですか。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本人からはっきりした報告を受けておりませんので、ただいま言われる記事がどういうような状態のもとでどんな発言をしたか、これはつまびらかでございませんので、記事自身で私の意見を徴されましても、私お答えするわけにはまいりません。
  109. 野原覺

    野原(覺)委員 なるほどね、そういう御答弁のしかたもあると思いますね、本人に会って確かめていないと。これは、しかし天下の大新聞が筆をそろえて書いておる。特にパリで会われた日本人記者の方が念を押されたのです。あなたはそれでいいですかと。佐藤さんの特使であなたは来られて、それでいいのですかと言ったら、彼ば、いやそのとおりだ、こう言っておる。それで、どういう条件の中でと言われますが、パリでクーブドミュルビル外相、それからアルファン外務省総務長官、これは前の駐米大使です。それからマナク・アジア局長、それからショーベル元国連大使、フランスのドゴール政権の。そういう人々とまず横山さんは会われた。そうして南ベトナムのパリ駐在の総領事、それから中立系のベトナム人の方々と会われて、そうして会われた上の見解がきのう、三日、日本人の記者団との会見によって表明されたわけです。どう表明されたかというと、行く行くは南北を統一した独立国家にならなければならぬ、ベトナムは。これは正論です。それから第二番目には、米国人はベトナム人の気持ちがわからぬのだ、こう言った。横山さんは外務省切ってのベトナム通だ。だからあなたは、この人を抜てき任用された。米国人はベトナム人の気持ちがわからぬのだということ、そうして南北は統一しなければならぬのだ、こう強調をされたわけです。この強調されたことは、どうしてこうなったかといえば、横山さん自身のお考えもあったでしょう。だが、横山さんがパリに行かれて、いろいろな、このベトナム問題に精通された人々と会い、ベトナムの人々に会った結論だと私は見ておるのであります。ヨーロッパの各国がこぞってこういう考え方を持っておることを彼は感得したればこそ、この強い発言になって記者団発表になったのです。あなたが特使で出した横山さんの発言でございますから、あなたも同感だと思う。いかがですか。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が特使で出したことは確かですが、だから同感だと言われると、そういう結論にはなりません。先ほどお答えしたおりでございます。
  111. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、私がただいま申し上げた横山さんの発言は、あなたの真意ではない、こう言うのですか。横山さんの発言のどこが悪いのか指摘してください。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その横山君の発言でございますが、私これを批評する必要はないように思います。
  113. 野原覺

    野原(覺)委員 ヨーロッパの各国、それからベトナム関係の国々は、あなたの特使と受け取っておるのですよ。あなたの特使ですよ、総理の。そうして、しかも横山移動大使は、ベトナムの独立、平和、統一を説き、それからグエン・カオ・キはかいらいだ、アメリカはわけがわからぬ、あれはベトナム人の気持ちを知らぬ連中だ、こう言っておるのですよ、これがあなたの代理ですよ。あなたが国務多端で国を離れることができないから横山さんをやったんでしょう。だからして、横山さんの発言については責任を持たれますね。これをお聞きしたい。持たれないとしたら、横山さんは外国で行動できませんよ。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は横山君に、パリにおいてこういうことをしろ、こういうような指令は出しておりません。ただ、これにいろいろ調査を頼んだことは確かですが、それより以上に、結論的に権限を持って行動してはおりません。そういうものは、私は命じたのではございません。
  115. 野原覺

    野原(覺)委員 発言に責任を持たれるかと言っておる。横山さんが発言したことには責任を持つのか持たぬのかと聞いておる。いかがですか、それは。あなたが持たれなければ呼び帰しなさいよ。新聞に載ったんだから、さっそくきょうは長距離電話でもかけて聞かなくちゃいけませんよ。だから私は、あなたがだまって行動させることは横山さんの発言をあなたが責任を持たれることだ、横山発言と同じだ、私はそういう考えで聞いておるのです。私は横山発言に賛成なんだ。いかがですか。
  116. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 横山君の発言が、どういう機会に、どういうような意図でなされたか、それは私が関するところではございません。したがって、これも批評いたしませんし、私は責任を持たない。ただいましからば呼び帰せ、こういうお話でございますが、それは御忠告として伺っておきます。
  117. 野原覺

    野原(覺)委員 なお横山大使の観測が、新聞記事によると、こうあるわけです。グエン・カオ・キは平和交渉を望んでいない、こうあるのです。それで、グエン・カオ・キが平和交渉を望んでいないというのは、もとよりこれはアメリカのかいらいでございますから、アメリカの意向だ、そういうように受け取れるような発言もなさっておるわけです。私は、おそらく日本を出発するときにはあなたと同じ考えで、佐藤内閣の意を受けてベトナムに行き、パリに行かれたと思う。しかし横山さんが、ベトナムの問題を厳正公平に考えておるヨーロッパの人々、特にベトナムと関係の深いドゴール政権の人々と話し合いをした結論は、ベトナムはアメリカのかいらい、グエン・カオ・キは平和を望んでいない、アメリカはベトナム人の気持ちを知らぬというこの気持ちに統一されてきておるのであります。これが今日のベトナム問題に対する世界の世論なんですよ。いまやアメリカは、アメリカのドルで世界各国に覇を唱えておりまするけれども、事ベトナム問題に関する限りは、アメリカは孤立しつつあるのですよ。この孤立しつつあるアメリカにあなたが全く――これは勝間田氏が第一陣で質問をされましたが、ほんとう日本独自の主張、要求というものは、アメリカにお出しにならないで、アメリカの使い走りを忙しい外務大臣にやらして、ソ連くんだりまでやって、そうしてソ連から冷笑されて、日本国の権威失墜これよりはなはだしいものはないと私は思う。少なくとも外務大臣が外国に行かれて話し合いをする以上は、メッセンジャーボーイじゃない、ほんとうにあざ笑われるようなそういう使い走りというものを、日本の外務大臣がすべきじゃない。日本の自主的な外交方針というものを確立しない限りは、私は軽々に外国に使いに行ったり使いをやったりやるべきではない、そういうことを考えておるのです。まあ横山問題はどうかすみやかに真相を調査して、できれば横山氏の発言は正しい、横山さんが世界各国を旅行されてつかんだこの見解というものを、佐藤内閣は謙虚に聞かなければならぬと私は思う。この点はいかがですか。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いずれ横山君が書面なり、あるいはそのうち帰ってくるだろうと思いますから、よく事情は聞くつもりでございます。
  119. 野原覺

    野原(覺)委員 外務大臣にお尋ねします。あなたはかつて予算委員会で、韓国の提唱するアジア外相会議には断じて参加をしないと表明をされた。その意思に今日も変わりはないと思うがいかがですか。
  120. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あれはまだ日韓国交正常化以前の段階においての発言でございました。ただいまだいぶその当時と情勢が変わっております。それで、この変わった今日の段階においてあらためてこの問題を十分に、慎重に検討したい、こう考えております。
  121. 野原覺

    野原(覺)委員 たいへんな御答弁ですね。あれは日韓条約がまだ批准されていない事態の段階の話であったから断じて参加をしないのである、今日は日韓条約が批准をされて韓国は友好国家になっておるから、韓国の提唱することには謙虚に耳を傾ける、こういうことですか。
  122. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 情勢が少し変化いたしましたので、この段階においては慎重に検討してこれに対処したい、こういうわけであります。
  123. 野原覺

    野原(覺)委員 またもう一つ条件がふえたわけです。情勢の変化、韓国が友好国家になったのが第一の条件、第二の条件は情勢の変化、こう受け取っていいのですか。そういたしますと、情勢の変化とは、その後の情勢が、アジアの情勢、あるいはその後の国際情勢がどう変化したのか。
  124. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いや、両国の関係が正常化されましたことを中心にして、情勢の変化と申し上げたのです。
  125. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、両国の関係が正常化しない以前の話はきっぱり断わるけれども、正常化した以上は、これに耳を傾けて聞こうじゃないか、こういうことですね。
  126. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 とにかく慎重に対処したいと思います。
  127. 野原覺

    野原(覺)委員 この前の予算委員会では、あなたは断わると言ったのです。そんなものには参加しない、反共軍事同盟だから参加しないと言ったんだ。しかし今度は何ですか。反共軍事同盟の会合じゃないのですか。何かそういうことじゃない、この前の韓国の話と今度の話は中身が違うんだというなら御説明ください。
  128. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 反共軍事同盟だというようなことは私は申し上げておりません。
  129. 野原覺

    野原(覺)委員 反共の国々が会合をすることは問題がある、――いいですか、それはいまここに適当な速記がありませんけれども、これはいずれ私は速記を調べましょう。とにかくあなたはこう言っておる。三十九年十二月十五日、外務委員会十三ページ、「八カ国会議とおっしゃるのは、たしかアジアの、豪州、ニュージーランドを入れての何ですか、いま企てられつつあるところの会合ですか。それならば、日本は参加しないことにきめております。」今度の会合は違うんですか。参加するという、参加を検討せざるを得ないという会合は、この三十九年十二月十五日のこの会合とは違うんですか、どうなっておるのです。
  130. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あのときの企ては無期延期というような形で、一応開催の問題は失敗に終わった、こう承知しております。今度のものは、またあらためての企てのように承知しております。
  131. 野原覺

    野原(覺)委員 あのときの答弁にこうあるのですよ。軍事同盟や反共機構をつくる問題を前提としない、ということは、私どもは、日韓条約はNEATOじゃないか、こう質問したのです。だから、とにかくあのときは日韓条約をまとめなくちゃいかぬ、こんな八カ国の外相会議なんかに参加しておったら、それ見ろNEATO、それ見ろ東南アジアの軍事同盟、こうたたかれるから、あのときは国会で断わったんです。実はあのときも承認をする本心であったのです。日韓条約をまとめるために断わったんだ、こういうように私どもは理解せざるを得ないのですが、いかがですか。
  132. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それは少し思い過ぎじゃないかと思います。
  133. 野原覺

    野原(覺)委員 韓国が提唱しておる今度の会合に集まられる国の名前をあげてください。外務大臣、どういう国がやるのか。
  134. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アジア局長から答弁いたさせます。
  135. 小川平四郎

    小川政府委員 お答えいたします。  豪州、ニュージーランド、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム、韓国、台湾――国府でございます。
  136. 野原覺

    野原(覺)委員 韓国、台湾、タイ、南ベトナムは入りませんか。それからマレーシア、フィリピン、豪州、ニュージーランド、それから日本が入れば日本と、こういうことになる。ビルマとカンボジアとインドネシアは東商アジアの有力な国ですが、なぜこれは入らぬのですか。なぜ入らぬのですか、外務大臣。
  137. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 とにかくこれは日本が提唱しているのではないので、韓国が提唱しておりますが、なぜこういうところはさそわないか、私まだ聞いておりません。
  138. 野原覺

    野原(覺)委員 なるほどね、この点は私の聞き方が悪うございました。それはそういうことです。しかし、なぜ入らないと思いますか、入っていないのですね。なぜ入らないと外務大臣は考えているのですか。
  139. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私がかってにそんたくすることは、この際控えたいと思います。
  140. 野原覺

    野原(覺)委員 これはいま検討しておるのだが、まだ結論は出ていないのですか、参加するかどうかの結論は。
  141. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 慎重に考えておる次第でございます。
  142. 野原覺

    野原(覺)委員 総理大臣、今度は総理大臣です。だいぶおひまのようですから。  韓国は三十九年に提唱しまして、また今度提唱しておる。あなたは日韓親善、日米親善の先頭に立たれておられる方ですから、私とは考え方が違うのでございますけれども、しかし私ども国民が韓国に対して受け取っておる印象は、すでに二万の軍隊をベトナムに送り、いままた二万の軍隊を追加して送ろうとしておるのです。その韓国がいま外務大臣の御答弁にありましたように、提唱しておる国は、台湾であり、タイ、南ベトナム、フィリピン、豪州、ニュージーランド、マレーシアであります。マレーシアだけは、これはアメリカの勢力圏内にはないかもわからないが、間接的にはアメリカ圏内、これはイギリスのかいらい国家だ。韓国とかフィリピン、台湾、タイ、みなこれはアメリカと軍事同盟の国なんです。アメリカと軍事同盟を結んでおる。アメリカと軍事同盟を結んでおる国との会合に日本を引っぱり出そうと、日本も日米安保条約があるから引っぱり出される素地はございます。それを韓国が提唱しておるわけです。いまだに結論が出ていないということでございますから、佐藤さん、あなたは平和に徹するということを主張されておるのでございますから、このような一方に片寄った軍事同盟の国々、しかも日本がアジアで指導的な立場をとらなければならぬのに、ラオスもカンボジアもインドネシアも入らないのです。ビルマも入らないのです。それは、これらの私のいま言った国々は、アメリカのお世話にもなりたい、経済的な支援もほしい貧乏な国々だ、経済的には貧弱な国、それでも彼らは世界の平和のために一方に片寄ってはいけないというので入らない。そのときに日本がこういったアメリカの反共の軍事同盟、ベトナム戦争を有利にする、韓国は四万の軍隊を出すわけですから、そういう片寄ったこの外相会議というものには参加すべきではない。これは、あなたは参加したいのかもしらぬが、私どもの意向をここではっきり表明しておく。日本の将来のために参加すべきではない。日本は日独伊の反共軍事同盟、これで歴史のあやまちをおかしております。この歴史のあやまちをおかしてはいけない。あなたの平和に徹するとは、そういった一方的な反共軍事同盟に行って発言をし、仲間入りすることではない、私どもはこう受け取っております。いかがですか。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 韓国の主宰する外相会議、これは、最初のはただいまお答えしたように無期延期になったということであります。その次にまた招集しておるかのような話ですが、まだ私は具体的に聞いておりません。おそらくこれからどうするかということはまだ具体的になってないのじゃないか、かように思います。私どもが東南アジア諸国に対して閣僚会議を開催しようという、これが外相とは限りませんけれども、ただいま四月に開かれる予定になっておると思います。私はそういうような会議を通じて、そして同じような考え方のもの、いわゆる繁栄と自由、平和の繁栄を望む各国と話し合いを続けて、そして日本はアジアにいる国でございますから、応分の協力をするといいますか、これは当然の責務だと思っております。これも御承知のように集まってくる――これは別にこちらのほうから色分けしたわけではありませんけれども、東南アジア諸地域においては、やはり参加するものと参加しないものとあるようであります。もともと国際的な会議をする、そして日本の行き方はどこの国とも仲よくする、どことも仲よくする、そして、そのもとにおいてはやはりお互いに独立を尊重し、内政に不干渉、こういうことの原則のもとで仲よくしよう、これが日本の行き方でございます。  そこで、いまの韓国の外相会議というもの、これは具体的に出ておりませんから、この際にとやかく言うのはいかがかと思いますが、おそらくこの種の会合が持たれることは、これは私どもが積極的に反対すべき筋ではないだろうと思います。しかしこの種の会合が、日本が入ることによりまして、これがどういうような効果を持つか、あるいは国際的にどんな影響を与えるか、また日本自身にとりましてこのことが役立つかどうか、それも十分考えなければならないことなんです。それがただいま外務大臣が慎重に対処しますというその考え方だと思います。わが国の立場について誤解を受けたりあるいは損がくるような、そんなことの会議に、ばくとしてその会議は望ましいというだけで参加することもどうかと思いますが、そういう意味で、外務大臣が言っているように慎重に考慮すべき問題だ、かように考えております。
  144. 野原覺

    野原(覺)委員 総理はあらゆる国と仲よくする、平和に徹する、これは総理の信条として、私ども何回も拝聴しております。どうかそのことが具体的に誤りがないようにしてもらいたい。私は日本の外務省ぐらい保守反動、右翼と申しますか、日本の役人の中で、日本の外務省の役人くらい今日右寄りのものはないように実は思う。これは防衛庁以上です。これは、どうもアメリカにくっついていないと日本の外交官の出世がおくれるというようなこともあるのかもしれない。特に椎名さんになってからの外交施策というものは、私油断ができないものがあると思うのです。どうかひとつ、総理のほうがまだ椎名さんよりもちょっと何というのですか、ニューライトというのかな、どうかひとつ十分気をつけてやってもらいたい。  そこで時間も何でございますから、最後の大事な質問に入ります。  一月二十一日と二十三日の東京新聞、二月二十二日午前八時のNHKニュース、それから二月二一十四日の毎日新聞はアメリカ軍専用ゴルフ場を多摩弾薬庫につくるという報道をいたしたのであります。私はアメリカ軍のために日本政府がゴルフ場をつくってやるということは、安保条約の精神からいってこれはいかがなものだろうか。これはまことに奇異の感に打たれて、若干その経緯を調べたのであります。  まず、この報道されたことは事実でございますかどうか。これは防衛庁長官の所管でございましょうからお尋ねいたします。
  145. 松野頼三

    ○松野国務大臣 事実でございます。
  146. 野原覺

    野原(覺)委員 どういうわけで米軍のためにゴルフ場をつくって差し上げなければならなくなったのか、また差し上げなければならぬと考えて、公債七千三百億も出す日本の苦しい財政でこういうことをやろうとするのか、お聞かせ願いたい。
  147. 松野頼三

    ○松野国務大臣 現在、米軍の厚生施設、その中にゴルフ場が含まれております。したがって既存のゴルフ場の移転であります。
  148. 野原覺

    野原(覺)委員 既存のゴルフ場の移転と申しますと、どこにゴルフ場があったのですか。
  149. 松野頼三

    ○松野国務大臣 旧民間施設の借地、昭和飛行機と思いますが、場所は立川近くにあります昭和飛行機の旧民間地借地借り上げ、その場所にゴルフ場、住宅及び犬の訓練所、この返還要求に応じて、この返還期限が参りましたのでこれを返還する、その移転であるということであります。
  150. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、昭和飛行機の会社の中にゴルフ場があった。こういたしますと、そのゴルフ場を昭和飛行機の中につくった、日米合同委員会の議事録があろうと思います。日米合同委員会の議事録にゴルフ場のことが載っておるかいないか。できれば議事録を読み上げてください。これは秘密書類じゃございませんからできるはずです。できれは議事録を提出してもらいたい。
  151. 安川壯

    ○安川政府委員 昭和飛行機のゴルフ場につきましては、合同委員会の合意がございまして、その合意を、最初に昭和二十七年の七月二十六日の官報で告示しております。これが合同委員会の合意の内容でございます。合意の内容は、行政協定第二条により在日米軍に提供する施設、区域を左のとおり決定するといたしまして、そのあとに提供する施設を列挙してございます。その中に昭和航空の土地につきましては極東空軍資材廠A地区として記載してございます。その後安保条約が改定されまして、その結果新しく地位協定ができましたので、その新しい協定に基づきましてこの施設の名称を変更いたしまして、三十六年の四月十九日に新たな合同委員会で合意をいたしまして、その結果を調達庁告示第四号で告示しております。それによりますと、同じ施設が昭島住宅地区という名称に変更になっております。ただし内容は実質的には変化はございません。
  152. 野原覺

    野原(覺)委員 これは昭和二十七年七月二十六日ですか、官報は私も拝見をいたしました。しかし、官報はただいま読み上げたように資材廠A地区とあるだけです。ゴルフ場とは書いておりませんね。資材廠A地区です。資材廠A地区が何がゴルフ場ですか。資材廠A地区とあって何がゴルフ場ですか。これは、施設庁長官、官報はゴルフ場とは書いてないじゃないか。
  153. 小幡久男

    小幡政府委員 地位協定の第十五条に、米軍の施設の中に社交クラブとかあるいはPXその他の厚生施設、その他のものが置けるということが書いてございまして、米軍の施設にはそのような施設を置くことを地位協定は認めております。それに従いまして、そこにそういう施設をつくったというのでございます。
  154. 野原覺

    野原(覺)委員 いいかげんな答弁をされちゃいけませんな。昭和二十七年七月二十六日の官報には資材廠A地区とある。私は、ゴルフ場とないじゃないかと聞いておる。そうしたら、いや、地位協定によってそういった娯楽施設、そういったスポーツ施設、そういうものを設けるんだ、こう答弁をされる。  では、お聞きしましょう。このゴルフ場はいつできたのですか。これは昭和二十七年の日米合同委員会会議をして、日米合同委員会で、昭和飛行機日本側が借りてアメリカ軍に提供するというこのときに、このゴルフ場は、では含まれておったのですか、いかがですか。
  155. 安川壯

    ○安川政府委員 この施設には、占領中からゴルフ場はあったと了解しております。それで、占領が終わりまして地位協定ができました際に、占領中にありました各種の米軍の施設がございますが、これをあらためて日米間で検討いたしまして、どういう施設をそのまま引き続いて提供するか、あるいはどういう施設を返還させるかということをあらためて協議しました結果、この施設を引き続き提供すべきものとして合意したわけでございます。そのときにもちろんゴルフ場があるということを承知の上で提供したわけでございます。先ほど御指摘の、この極東空軍資材廠A地区というものは、ゴルフ場は入っておらないじゃないかという御指摘でございましたけれども、これは施設の名称でございまして、その施設の中に何を置くかということは、地位協定によりまして米軍側が必要な施設をつくるわけでございます。ゴルフ場につきましては、先ほど施設庁長官から御説明がありましたように、地位協定で米軍の施設の中に必要な厚生施設をつくり得るということになっておりますので、それに基づきまして、米軍がゴルフ場をみずからつくったということでございます。
  156. 野原覺

    野原(覺)委員 ゴルフ場はいつできだのかという私の質問に対して、いや占領のときからあったと思うというあいまいな答弁です。はっきりしてください、これは。はっきりしてください。こんないいかげんな答弁は許さぬ。
  157. 小幡久男

    小幡政府委員 先ほどアメリカ局長のおっしゃった点に若干修正すべき点がありますので、私から修正申し上げます。  ゴルフ場は三十一年からできております。これは、行政協定にも先ほど私が申し上げたのと同じような文句がございまして、地位協定に引き継いでおりますので、厚生施設として行政協定に基づいてつくったのでございます。
  158. 野原覺

    野原(覺)委員 防衛庁長官も、これはあなたの所管だけれども施設庁のことは技術的なことですからあえてあなたに答弁は要求しません。あなたに答弁を要求すると時間がかかりますから要求しませんが、いかがですか、ああいうごまかしの答弁をして。これは奇々怪々なんだ。これは私が再度追及しなければ、資材廠A地区でごまかすつもりだ、施設庁は。再度追及したら、またあとからかわった人が出てこられて、昭和三十一年ごろできました、こう言っておる。昭和三十一年、つまり資材廠A地区を提供した、この昭和二十七年の合同委員会の議事録は資材廠A地区。資材廠A地区とは文字どおり資材を置くところだ。そうしてそれはA地区だ、アメリカの。そこにゴルフ場が入るわけはない。使用目的と使用方法というものは、日米合同委員会においてこれは論議をされて、はっきり明確にするということになっておるのだ、地位協定では。それをいいかげんな答弁で、いや、占領のときからあったと思いますとは一体何ごとですか。何としたことだ。それでは、ゴルフ場が昭和三十年ごろできたとすれば、防衛庁長官、当然使用目的の変更でございますから、これは日米合同委員会にかけなければなりません。かけなかったとしたら、たいへんな失態です。使用目的の変更は、地位協定でかけることになっておるのだ。かけましたか、かけなかったか。かけたとすれば、その議事録はどうなっておるか、御説明願いたい。
  159. 安川壯

    ○安川政府委員 地位協定には、施設区域を提供いたします際に、その目的、使用条件をきめなければならないということは、定められておりません。通常の場合には、目的でありますとか使用条件というものは定めませんで提供するのが通常でございます。ただし特殊な施設、特に周辺の住民の公共とか安全というものに非常に影響のある施設、たとえば演習場でございますとか、あるいは射撃場でございますとか、そういうものにつきましては、合同委員会で別途に使用条件を合意いたしますので、そういう合意があります場合には、それを変更する場合には、当然あらためて合同委員会の合意を必要とするわけでございますけれども、その他の場合には、目的とか条件というものを定めないで提供いたしますから、その中で必要な厚生施設をつくるというような場合には、合同委員会の新たな合意というものは必要でないわけでございます。
  160. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、資材廠A地区として昭和二十七年はこの議事録にあるわけだ。この議事録は出さぬわけだ。ただ、官報に書いておるのは、議事録と同じことですと言って、どういうものか、要求しておるけれども、私に出さない。これは先般も横路君が外務省に詰め寄ったでしょう。外務省は、どういうものか出さぬ。これは外務省が持っておる。防衛庁じゃない。この合同委員会の議事録は、外務省が保管しておる。安全保障下にある。出さぬ。これは秘密書類じゃないのだ。  そこで、資材廠A地区は、これは住宅、工場なんですよ。資材廠A地区として合同委員会の議事録に記載されたときに、ゴルフ場が含まれておりましたか。ゴルフ場は確認していないでしょう。含まれるわけがない。ないのだから。昭和三十一年にゴルフ場に変わったのだ、いつの間にか。いつの間にか変わったんです。どうしてゴルフ場に変わったかということは、提供した日本側としては明確にしなければならぬじゃないか。提供した日本側がどうしてゴルフ場に変わったかを明確にしないでどうなりますか。どうしてゴルフ場になったのか。昭和三十一年にどういうわけで資材廠A地区がゴルフ場になったのか。そのことは、ゴルフ場になることは施設庁は了解したのか。いかがですか。
  161. 安川壯

    ○安川政府委員 使用目的とか使用条件を定めないままで米軍に提供いたしました場合に、その中にどういう施設をつくるかというのは、いまおっしゃいましたゴルフ場を含めまして、どういう施設をつくるかということは、米軍が自分の決定し得る権利を持っておるわけでございまして、あらためて合同委員会にはかって日本側の同意を必要としないわけでございます。したがいまして、日本側としてはゴルフ場をつくったことに対して、その事実は知っておりますけれども、それに対して新たに合同委員会の協議を要求するという必要はないわけでございます。
  162. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、このゴルフ場は米軍側がかってにつくったのです。こういうことですね。日本側は了解するもしないも、そういうことはしていない。米軍側がかってにつくったのだ。
  163. 安川壯

    ○安川政府委員 地位協定で認められておる米軍の権利の範囲内で、米軍の責任においてやったことであります。
  164. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、これはアメリカの国防予算から出ておりますか、歳出外資金になっておりますか、どちらです。
  165. 安川壯

    ○安川政府委員 このゴルフ場の運営は、歳出外資金によって行なわれておると承知しておりますけれども、建設の予算が成規の国防予算から出たか、あるいは歳出外の資金から出たかは承知しておりません。
  166. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、このゴルフ場をつくったのは国防予算ですか、どちらです。これは。
  167. 安川壯

    ○安川政府委員 その点は承知しておりません。
  168. 野原覺

    野原(覺)委員 承知していないのに、昭和飛行機のゴルフ場を日本の金でどうして多摩弾薬庫に移さなければならぬのだ。このゴルフ場というのは、米軍側がかってにつくったんだ。日本が提供したのは資材廠A地区なんだ、ゴルフ場は含まれていない。アメリカがかってにつくったゴルフ場の移転のために、どうして日本が金を出さなければならぬのか。
  169. 安川壯

    ○安川政府委員 もし米軍が新たに施設を必要としまして、そして、それを日本が新たに提供いたしまして、その中に新しく米軍がたとえばゴルフ場をつくるという場合には、当然、米軍が負担すべきものでございます。ただし、この場合には移転でございまして、現在ありますものに対して日本側が返還を要求いたしまして、返還を実現させるために日本が代替の施設を提供するわけでございます。したがいまして、この場合には日本側で負担するわけでございます。これはほかにも例がございまして、たとえばオリンピックのときにワシントンハイツを移転させまして、あそこにオリンピック村をつくりましたときにも、ワシントンハイツの住宅にかわる代替の住宅については、日本政府が費用を負担したわけでございます。それと同様でございます。
  170. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、返還移転ということだが、どういうわけでこの昭和飛行機のゴルフ場は返還しなければならなくなった。そのわけ……。
  171. 小幡久男

    小幡政府委員 本件につきましては、昭和三十七年、昭和飛行機から訴訟がございまして、当初五十七万坪の地区を貸しておったのですが、その後たびたび一部返還がございまして、残りが二十八万坪になっておる。その中で、主として軍犬センターあるいは住宅、ゴルフ場に利用されておる実態から見まして、早期に返還してほしい、すべきだという訴訟が出たわけでございます。それに従いまして、われわれのほうも、訴訟ざたをいつまでもやっておるということもいかがなものかと考えまして、裁判長の勧告もありまして、和解によりましてゴルフ場の移転を、軍犬センター、住宅等の移転と同時に解決するという方針に踏み切った次第であります。
  172. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、昭和飛行機側から訴えられたわけですね。東京地方裁判所は国が負けたわけです。高等裁判所に控訴をしたわけだ。控訴をしたら、東京高等裁判所の民事部は和解を勧告した。その勧告に基づいて和解をした、こういう経緯です。そうなりますというと、昭和飛行機はどういうわけで訴えたんですか、何を理由に。これは年限を切って国に貸しておきながら、昭和飛行機が訴えるという理由が私は納得ができない。どういうわけなんですか。
  173. 小幡久男

    小幡政府委員 昭和飛行機の訴えの要旨は、先ほど申しましたように、当初五十数万坪貸しておりました、主たる施設でありますところの工場等が返還されまして、残りは従たる施設が残っておる。これは使用目的から見まして、当然早期に返還さるべきものだ、そういう意味の訴えであります。
  174. 野原覺

    野原(覺)委員 東京地方裁判所の判決はどうなっておりますか。
  175. 小幡久男

    小幡政府委員 東京地方裁判所の判決は、大体その趣旨を認めまして、主たる工場施設がなくなった今日において、厚生施設に主として使用しておるという形態は好ましくないということで、大体原告の趣旨を認めております。
  176. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、昭和飛行機から訴えられたのは、資材廠A地区として貸しておきながら、ゴルフ場にするとは一体何事だ、使用目的の変更じゃないか。東京地方裁判所のほうは、白米安保条約の規定からいくならば、ゴルフ場など提供すべきではない、こういうことで国が敗れておるわけですね。そうして国は、その判決には不服で控訴はいたしましたけれども、最終的には和解をしたわけです。最終的には昭和飛行機との解約をしたわけです。だからして、私ども考えでいけば、これはアメリカ軍がゴルフ場をかってにつくっている。かってにつくったのですから、かってにつくったものの代替施設をなぜ国が負わなければならぬのか。日本の国がアメリカに提供したのは資材廠A地区――総理、これは聞いてください。資材廠A地区を提供したのです。ところが、アメリカ軍は資材廠が不要になってきたのです。もう住宅は何十戸かありました。それから工場などは、物置廠がもう要らなくなった。要らなくなったから、なに、日本から提供されているのだから、みなつぶして、ブルドーザーを持ってきてゴルフ場にしてしまえというので、日本には無断で、――いまお聞きのとおり、総理、相談していないのです。無断でゴルフ場にしたのです。そうしたら、ゴルフ場にしたら昭和飛行機から訴えられたのです。訴えられて裁判所で国が負けたのです。裁判所から返せと言われた。おまえは安保条約で資材廠を提供したといいながら、ゴルフ場を提供したわけじゃないだろう。しかも使用目的の変更で、合同委員会の議事録もないだろう。返しなさい。安保条約はゴルフ場を提供しろとはどこにも書いてない、それは不当な提供だ、返しなさいということで、返したわけです。返さざるを得なくなった。和解によって結局は返した。その和解とは、有益費とかいろいろな経費の問題がございまするから、これは国と相談するということになった。ところが一方のアメリカのほうは、おれのゴルフ場を一体どうしてくれるのだ、こう開き直ったのです。そこで政府は困って、施設庁は、多摩の弾薬庫あとにゴルフ場をつくることになった。こういう経過なんですね。そうすると、アメリカ軍がかってにつくったゴルフ場の代替施設を提供しなければならぬ理由はどこにある。アメリカ軍に提供したのは資材廠A地区だ、それをかってにゴルフ場をつくっておきながら、そのかってなゴルフ場を日本が提供しなければならぬ理由がどこにある。どう考えてもおかしいじゃありませんか。そうして、実は私がその間の調査をしようと思って日米合同委員会の議事録を出してくれというけれども総理、どう言っても出さぬのです。私はこの予算委員会でなぜこれを取り上げたかといえば、予算に計上されているから取り上げたのです。継続しておいて、三億二千万円計上しておるじゃありませんか。大蔵大臣、あなたはどういうわけでこの経費を認めたのですか。この要求を認めたのですか。大蔵大臣、あなたが認めたのだから、どういうわけでこういういきさつのものを認めたのです。
  177. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府は裁判上和解した。政府の意思によって和解したわけであります。その結果米軍が移転しなければならぬ、こういうことになりますので、その際にも最も安上がりというようなことを考えて弾薬庫あとを使う、そのためこれを整備する必要のある経費ということで、これを承認したわけでございます。
  178. 野原覺

    野原(覺)委員 時間の関係があるから、大蔵大臣、予算書のどこにございますか、説明してください。
  179. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府委員から説明します。
  180. 谷村裕

    ○谷村政府委員 いま予算書のページをつくっておりますが、とりあえず申し上げられることは、防衛庁の施設提供等諸費というのであったと覚えておりますが……。失礼、ちょっとお待ちください。項の名前か違っているかもしれません。――どうも失礼いたしました。施設運営等関連諸費という項でございます。本年度はこれに要する経費は一億計上でございます。
  181. 野原覺

    野原(覺)委員 施設運営等関連諸費、ありますね。確かにある。ところが、本年度は一億というが、どれですか。項目のどこですか、説明してください。
  182. 谷村裕

    ○谷村政府委員 はっきり申し上げますと、一般会計予算の予算書の項の名前で申しますれば、いま申し上げました施設運営等関連諸費でありまして、説明としては二三〇ページに出ております。それから、その中身のどういう科目に入っているかということは、二三二ページの提供施設等整備費という科目の中に入っております。
  183. 野原覺

    野原(覺)委員 それを詳しく、内訳も含めて説明しなさい。ゴルフ場が出ているか出ていないか、説明しなさい。
  184. 谷村裕

    ○谷村政府委員 そこまでは書いてありませんが、施設運営等関連諸費という項の説明は、「「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」及び「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定」に基づく合衆国軍、「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」に基づく国際連合軍及び旧連合国軍の駐留に関連し必要な土地等の購入、賃借、各種の補償、騒音防止措置、飛行場周辺の安全措置等に必要な経費並びに自衛隊の施設の維持運営に関連し必要な騒音防止措置、飛行場周辺の安全措置等に必要な経費である。」。
  185. 野原覺

    野原(覺)委員 提供施設等整備費の総額は、本年は二十八億八千三百四十八万円、間違いないですね。間違いなければ、その積算の基礎、どうして二十八億八千三百四十八万円になったのか、積算の基礎を説明してください。
  186. 谷村裕

    ○谷村政府委員 いまおっしゃいましたのは、提供施設等整備費の二億八千八百万のことでございますか。
  187. 野原覺

    野原(覺)委員 二億だ。失礼失礼。
  188. 谷村裕

    ○谷村政府委員 所管の省のほうからたぶん御説明できると思います。ちょっとお待ちください。
  189. 小幡琢也

    小幡説明員 お答えいたします。  この二億八千八百万の内訳でございますが、一つは、ただいまのゴルフ場の土工事一億がございまして、あと残りは横浜地区の施設移転に伴います工事費、これが一億二千二百万、その他横浜関係の同じような工事費が二千五百万、山手住宅地区と根岸とございます。合わせまして二億八千八百万でございます。
  190. 野原覺

    野原(覺)委員 その積算の内訳ですが、ゴルフ場工事と言ったが、それを読み上げてください。正確にはどう書いていますか。ゴルフ場工事費と書いていますか。何と書いているか。いいかげんなことは許さないよ、ぼくは。何と書いているか。その積算の項目の説明、中身、何と書いていますか。
  191. 小幡琢也

    小幡説明員 内訳といたしましては、これは昭和ゴルフ場移転一億でございます。内容は土工事でございます。
  192. 野原覺

    野原(覺)委員 昭和ゴルフ場移転と書いてないじゃないか。それは住宅移設工事になっておるだろう。
  193. 小幡琢也

    小幡説明員 これは施設整備費でございます。多摩の用地はこちらの地区でございますので、それに土工事を施しますので、これは施設整備費になるわけでございます。
  194. 野原覺

    野原(覺)委員 これは大蔵大臣昭和飛行機ゴルフ場移転費としては書いてないのですよ。昭島住宅移設工事費一億円というのはありますよ。正直に言いなさい、正直に。昭島住宅移設工事費一億円とあるけれども、ゴルフ場の工場費一億円があるか。ありますか。もう一ぺん……。
  195. 谷村裕

    ○谷村政府委員 ただいま防衛庁のほうの説明員が申し上げましたことは、要するにここで御審議願っております項の中のまた科目の中の積算の中身の説明を申し上げたことでありまして、国会に御審議をお願いしておりますところは、項としての問題と、その項の説明として参考に先ほど私が申し上げたことが書いてあるので……   〔発言する者多し〕
  196. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  197. 谷村裕

    ○谷村政府委員 さらに御質問がありましたので、説明員がその内容の内訳を申し上げたわけでございます。別にふしぎなことはございません。
  198. 野原覺

    野原(覺)委員 ばかなことがあるか、君。予算の審議をいたしますのに、四兆一千三百四十何億というこの総予算、これはみな積算の基礎があってこの総額になってきておるわけだ。国会には、なるほど予算書には項までしか書いてない。その積算の内訳はこまかに書いていないけれども、これを国会が取り上げて論議をすることが予算審議じゃないか。その基礎になるところの積算の基礎を私は聞いておる。その積算の中身で、これは住宅移設工事費が四つあるんだ。私が読み上げますというと、山手住宅移設工事費が一千五百万円、それは間違いないと思う。それから根岸が一千万円、それから横浜のほうが一億二千百六十一万三千円、そうして、その一億円については、昭島住宅移設工事費と書いてある。書いてなければここに持ってきなさい。書いてあるだろう、昭島住宅移設工事費左。なぜそれを正直に言わぬのだ。
  199. 谷村裕

    ○谷村政府委員 野原委員がどういうものに基づいて言っておられるか存じませんが、防衛庁の内部で今回要求になっておりますものの中身を、便宜、たとえば根岸のものについてはこう、横浜のものについてはこう、昭島地区のものについてはこうというふうに整理しておるであろうかとは思います。しかし、全体としてそれは要するにそういう目的、それはどういう表現をするかということにもよるかと思いますが、そういうことで防衛庁の中で整理しておることであろうと私どもは思っております。
  200. 野原覺

    野原(覺)委員 いいかげんなことを言ったらいかぬ。大蔵大臣が予算書を編成する場合には、積算の基礎を査定するわけだ。そうしなければ全体の数字が出るわけはない。常識なんだ、これは。ところが、私はその表現を聞いておる。中身の表現、どうなっておるんだね、これは。多摩ゴルフ場工事費と書いているか、住宅移設工事費と書いているかと聞いているんだ。それを答えなさい、それを。
  201. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私どものほうに参っておりますのは、いろいろな予算の要求の事項として中身を書いて持ってまいっております。私どもはそういうふうに書いてあるのを、いま見当たりませんですが……。
  202. 野原覺

    野原(覺)委員 これは私は承服できない。委員長、遺憾ながらあのような答弁では承服できない。私は、この提供施設移設等工事費は二億四千六百六十六万八千円、これの積算の内訳を聞いておる。これは答弁がない。これはゴルフ場と書いておるか書いてないか、私は住宅移設工事費と、そう了解しておる。   〔発言する者多し〕
  203. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  204. 小幡久男

    小幡政府委員 大蔵省ではございませずに、防衛施設庁の予算参考書の中に昭島住宅地区――地区です。移設工事費として一億計上しております。
  205. 野原覺

    野原(覺)委員 どうしてそのことをすなおに答えないのですか。私は、その内訳の積算を、山手、根岸、横浜とまで読んだのです。山手も住宅移設工事費、根岸もそうだ。横浜もそうだ。これはそうなっている。だからして、これもおそらくゴルフ場でないだろう、移設工事費だろうと言うけれども、それを知りながら、これを読み上げないのです。読み上げたらたいへんであるからです。これは昭島住宅移設工事費として大蔵省に施設庁が一億円要求したのです。昭島住宅移設工事費として要求しておきながら、多摩弾薬庫のあとにこの金でゴルフ場をつくるのです。三年計画、三億二千万円。私はこういう予算の計上は非常に問題があると思うのです。住宅移設工事費は住宅を移す工事費です。住宅を移す工事費として要求して、これでゴルフ場をつくるというのは一体何事ですか。これは許せない。
  206. 小幡久男

    小幡政府委員 先ほど外務省からも御答弁がありましたように、告示では当該地区は昭島住宅地区となっております。したがいまして、私のほうの予算参考書にも、住宅の移転でございませずに、昭島住宅地区移設工事費として出しております。内容的にはゴルフ場としております。
  207. 野原覺

    野原(覺)委員 これは昭島住宅地区移設工事費、私はこの一億円というのは何に使うかと聞いたら、さっきゴルフ場と答弁したのです。今度表現が違うから問題になるということをおそれて、今度は、いや、住宅地区であります。こう言う。答弁が支離滅裂じゃございませんか。これはたいへんなことですね。私は、この問題は、不当なる予算の編成でございまして、これは許しがたいと思うのですよ、大蔵大臣。こういうような要求で予算が要求されて国会提案されるということは、私は許せないと思います。   〔「休憩、休憩」、「会計検査院を呼べ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  208. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま御指摘のように、提供施設移設等工事費二億四千六百万円あるわけですね。その内訳は、先ほど政府委員が読み上げたとおりでありますが、その中に昭島住宅地区移設工事費一億円とある。これがゴルフ場の費用であります。それは、その内訳がみんな山手地区住宅施設でありますとか、そういうふうな地区別になっておりますので、そういう名称を用いただけでありまして、その内容は御説明したとおりである。これはもう予算書を、これは予算書の…   〔発言する者多し〕
  209. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  210. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 しかも防衛施設庁の予算参考書でありまして、これとても、これだけの金を一々内容を精細に書き上げるわけにはいかない。そこで昭島住宅地区移設工事という名前で出しておるわけですが、これらはまた口頭の説明で御理解を願う、こういうことになっておるわけでありまして、必ずしもお話のように、何かごまかしているというようなわけでありませんで、予算書というものはそれだけ広範であり、その付属参考書でも説明し切れないようなものである、そういうふうに御理解願いたいのであります。   〔「だめだ、だめだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  211. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  212. 野原覺

    野原(覺)委員 これは大蔵大臣、昭島住宅地区移設工事費とあるから、だからゴルフ場だということは、これは納得できないし、根岸住宅地区移設工事、これは住宅が入るのか、子供の遊園地が入るのか、これもわからない。私は幾ら国会に出さないものであるにせよ、大蔵省が査定するときに、これは本来の実態というものをつかんでいただかなければどうにもならぬじゃございませんか。これではわからないじゃないですか。ゴルフ場があるのやら、ないのなら、国の金を一億円出すのにこういったごまかしの表現では、これはどうも私は了解ができないと思うのですね。だからして、私はこれで何もどうしようと思っておりません。総理国民が納得できない、こんなことでは。こういう予算書の作成では、われわれに配付しないものですからというような答え方だし、最初から何かしらん隠そう、隠そうというような事務当局の……   〔発言する者多し〕
  213. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  214. 野原覺

    野原(覺)委員 報道なんですから、それで……   〔発言する者あり〕
  215. 福田一

    福田委員長 静粛に。
  216. 野原覺

    野原(覺)委員 私、納得できれば下がりますよ。   〔発言する者あり〕
  217. 福田一

    福田委員長 静粛に。
  218. 野原覺

    野原(覺)委員 私を納得さしてください、答弁をよほど考えて。
  219. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま申し上げましたように、これは予算書じゃないのです。予算の各省ごとの参考書なんです。とにかく四兆三千億だもんですから、とても一冊の本でまとめるわけにいかない。   〔発言する者あり〕
  220. 福田一

    福田委員長 静粛に。
  221. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そこで、各省ごとにこういう参考書をつくりまして御理解の用に供しておるわけでありますから、大蔵省が、各省から要求を受けまして、そうして、査定を受ける際にはこういうような表題を使ってきます。しかし、さらにそれに対しまして、詳しい説明がついているものもあり、また口頭をもって説明するものもあり、国会にそれを整理して御提案をするという段階になりますると、そうこまがいものを一々書くわけにはいかぬ、こういうことでゴルフ場という名称を付さない、こういうことになっておる。ただ、これは、分科会等における詳細な説明を求められた際には、率直に御説明をしておるはずでございます。
  222. 野原覺

    野原(覺)委員 裁判所の判決は、ゴルフ場をつくることはいけない、ゴルフ場は安保条約の精神に沿わない、これは必要な施設ではないと明確な判決を出した。それから、私は、先ほどの事務当局との質疑の経過で明らかにいたしましたように、このゴルフ場は日本側が了解してつくったゴルフ場でないということも明らかになったのです。アメリカがかってにやりました。議事録もございません。昭和三十一年にアメリカが無断でやりました。これも明らかになったのだ。アメリカが無断でやったゴルフ場、裁判所の判決も、これはいけないと判決を下したゴルフ場、それを今度は、私は堂々と金を出すならいいと思うのです。ゴルフ場として要求をなぜしないのか。昭島住宅移設工事費で一億円要求して、だれが見ても、あのゴルフ場の金がどこから出たのか調べがつかない。これが調べがつくのは防衛庁のこの仕事をやっておる人、それだけだ。だれが見たってわからない。幾ら国会に出さないものでございましても積算の基礎になるところのものは、文書はわかるように書くべきだ。第一、こういうような文書でゴルフ場だとして査定した大蔵大臣、これはあなたの責任になりますよ。あなたは住宅移設工事費として査定したはずだ。住宅地区でもいい。住宅地区でも同じことです。ゴルフ場ではないのです。ところが全額一億円ゴルフ場に使う。私は、なおこれは何戸かの住宅が、たとえば五十戸でも百戸でも移る計画があるかと調べてみましたら、この一億円は、全額ゴルフ場に使われるということである。そうなると、私はますますいかぬと思うのだ。これはどうかね、事務当局。大蔵大臣、よく御相談をして、私どもやはり国民を納得させるようにしていただきたいと思う。   〔「休憩しろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  223. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  224. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大蔵省が施設庁から要求を受けてその査定をするという際には、その説明として、これをゴルフ場に使うのだ、その価格は一億円であるということはよく承知しているのです。これは私もその報告を聞いております。ただ、施設庁の説明書の整理といたしまして、付属参考資料を出す。その整理の科目がたまたま昭島住宅地区、こういうふうになっておりまして、その説明がついていなかった、こういうことでございますので、さように御理解を願いたいと思います。
  225. 野原覺

    野原(覺)委員 私、これで下がりますから。これは私どうしても納得できない。だから、これは委員長、それから理事の皆さんに十分ひとつ検討してもらいたい。その次は、私これは非常に時間をとってなんでございますから、実は日韓条約の竹島問題、経済協力、それから貿易、あるいはまた、政府の監督するたとえば労働基準協会、海上保安協会といったようなものがある。各事業場の監督官庁だな。これに実は非常にいかがわしい問題がある。あるいは沖繩の問題についても総理にただしたい。こう思ったのでございますが、これは約束の時間でもございますから私は割愛いたします。しかし、いま私が出しましたこの問題は、これは財政法、会計法上、たとえ予算書として配付されなくても、疑惑が残らないようにしてもらわなければならないし、国民の金を、アメリカがかってにつくったゴルフ場に乱費をして、支出する。しかも、その出し方は明確でない。こういうことは、福田大蔵大臣、やっきになって御答弁されても、それはむしろあなたが、そういうやり方はいけないといって事務当局をしかるべき立場であって、国民に向かってごまかす立場ではないのです。だから、あなたがどういうわけでゴルフ場について査定したのかということも、私はどうも了解ができない。だから、この問題は、どうかひとつ委員長を中心に十分検討をしていただきたいと思います。  そういう意味で、私は質問を留保いたしまして、午後この問題について続けたいと思います。
  226. 福田一

    福田委員長 ただいま野原君からの御発言がありましたが、この点については、政府部内の意見を十分統一した上で御返事をすることがよいと考えますので、ちょうど昼の時間でもありますから、三十分間休憩をいたします。そうして再開のときに御答弁をいたすようにいたしたいと思います。    午後一時二十六分休憩      ――――◇―――――    午前二時二十六分開議
  227. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十一年度総予算に対する質疑を続行いたします。  この際、大蔵大臣防衛施設庁長官より、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。小幡防衛施設庁長官
  228. 小幡久男

    小幡政府委員 午前中、私のほうの書類に関連しまして御質疑がありましたので、私からお答え申し上げます。たとえ内部の書類とはいえ、ゴルフ場の移転経費を昭島住宅地区移設工事費として掲げたことは、誤解を招くので、これを訂正し、今後は十分留意をいたします。
  229. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算は国民共同の家計簿であります。したがいまして、国民になるべく具体的によくわかるように、今後とも努力してまいりたいと存じます。
  230. 野原覺

    野原(覺)委員 事は国民の血税でございますので、私は特にこの問題を重視したのであります。金額はわずかに一億円だというお考えがもし少しでもございますならば、これはたいへんなことでありまして、大蔵大臣は特に御承知のように、社会保障費のごときは一日二十七円三十九銭、そう・して昨四十年度までは、この社会保障費の保育所の予算でございますが、おやつ代が一日五円、ミカン一個買えなかったのです。このくらい国の財政は切り詰めて、社会保障費に回せという私ども一の要求は、実は無視されてきております。ことしになりますと、やっと一日七円十五銭におやつ代が上がった。七円十五銭で何が一体買えますか。これで今日生活保護世帯の保育所の子供たちは育てられておる。こういう状態なのに、アメリカ軍のためにゴルフ場を国はつくらなければならぬというので、三年間で三億二千万円計上しておる。しかもその計上のしかたたるや、国民の目をごまかすような計上のしかたであります。私はこれは許すことができないと思うのです。  私は、先ほど東京地方裁判所の判決を読み上げませんでしたが、東京地裁はこういつておるのです。「本件賃貸借の使用目的と見るべき行政協定実施のためにする使用とは、結局において安保条約第一条の米軍駐留の目的を達成するために必須的な使用方法を意味すると見るべきで、ゴルフ場に使用することはこの目的に沿うものとはいいがたい。」これが東京地方裁判所の判決の中身でございまして、これによって国は負けたのであります。ゴルフ場は、これは安保条約第一条の精神から考えてみて問題がある、こういつておる。しかも、私は長い時間をかけて質疑のやりとりを事務当局といたしましたが、お聞きのように昭和三十一年にこのゴルフ場はできて、国には何の相談もしていない。アメリカ側がかってにつくった。このアメリカ側がかってにつくったゴルフ場を、三億二千万円かけて多摩弾薬庫のあとにこれから国がつくろうというのであります。私はこれは非常に問題があると思う。こういうやり方は、はたして国民が納得するでございましょうか。しかもこの予算の問題は、ただいま大蔵大臣が御答弁になりましたから、今後はひとつ十分気をつけてもらいたいと思いますが、どうかひとつ、こういう点でやはり国民の納得できるような政治をしてもらわなければならないし、ことに国民の血税に関しては、その使途というものは、あるいはその予算の作成というものはきわめて慎重でなければならぬ、私はこのことをあえてここで御注意申し上げておきたいと思うのであります。  そこで私は、この予算委員会で、総括でございまするから、これが最後でございますが、わが党の滝井委員が一般質問で鈴木厚生大臣に質問をいたしました。その資料の提出がいまだに未提出であります。そこで、これはひとつ鈴木厚生大臣から明らかにしていただきたい。  滝井君の質問で留保しておりましたのは、社会保険診療報酬支払基金の一・五カ月分の委託金がどうなったか。それから第二点は、審査事務嘱託や法的地位確立の点はいつまでに立法措置をするのか、この資料提出の要求がございましたが、これは鈴木厚生大臣の答弁をもって資料提出と私どもは了解いたしますから、ただし答弁の中身いかんであります。御答弁をお願いします。
  231. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 先般当委員会において滝井議員より御質問のありました社会保険診療報酬支払基金の運営に関する諸問題につきましては、長い間関係諸団体の了解の上、円滑に運営されてきたものでありますが、今後その運営の適正を期するようさらに留意するとともに、特に、審査事務嘱託に関し、その地位及び秘密保持について法的にこれを明確化するよう、次期通常国会を目途に検討を行なう所存でございます。
  232. 野原覺

    野原(覺)委員 以上で終わります。
  233. 福田一

    福田委員長 これにて野原君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木良作君。
  234. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 四十一年度の予算案の審議に際しまして、財政経済上のいろんな問題につきまして、わが党は佐藤内閣考え方と相当に意見を異にするものでありまして、問題はまだ残っておるのでありますけれども、時間的の制約もございまするので、財政経済上のそれらの問題は、すべてわが党は四十一年度の政府予算案に対しましてわが党独自の組みかえ案を提示して対決をするつもりでございまするので、したがって、これらの問題に対する質疑は省略をいたしたいと思います。ただ、先ほど来野原委員質問と関連をしながら、私は、今度の財政経済問題の中で、いわゆる物価問題、格別公共料金の値上げというものはまことに重大なるものであるのにもかかわりませず、その先駆をなす国鉄、郵便料金の値上げについて、どうも政府の取り組み方が私は甘いと考えます。したがいまして、むしろ佐藤内閣の政治姿勢をただす意味において、一、二この問題についての補足の質問をいたしたいと存じます。  先ほど、国鉄運賃値上げ法案がおくれたことによりましての約七十数億の穴埋め措置をしなければならないという話に対しまして、野原委員から、当然にこれは機3号の補正を行なうべきだという話が出ておりまして、私も当然にそうあるべきだと存じますが、これに対しまして大蔵大臣は、言うならば四十三億程度の企業努力と、それから三十億の短期借り入れとによってまかなうという方針をお示しになりました。これは、先ほど来話がありましたから繰り返そうとはしませんけれども、その中の三十億の短期借り入れというのは、これは、御承知のように、本来ならば、国鉄法によりましても、短期の借り入ればその年度中に始末をつける筋合いのものでありまして、特別の場合にだけ限って翌年度に繰り越す。先ほどのお話のとおりでありますが、四十一年度にこれを繰り越すといたしますならば、四十一年度中に始末をしなければならぬことが、たぶん二項か三項についておるはずであります。四十一年度中にこれを始末する方法を大蔵大臣はどう考えておいでになりますか。
  235. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、収入支出予算外で返還をするわけであります。その返還する財源は、企業努力等で予想外の収入をあげる、こういうようなことかと思います。万一できない場合には、これが処置について特別の措置をしなければならぬ、さような次第でございます。
  236. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これは繰り返すわけじゃありませんけれども大蔵大臣、その答弁は先ほどの野原君への答弁と同じでありまして、本来企業努力でできるものであるならば値上げの必要はないわけでありますから、企業努力をすべてしてもうまくいかぬであろうという、そのために値上げの措置がとられたわけでありまして、しかも値上げの措置によって行なわなければならぬのは、国鉄の第三次長期計画であります。長期計画というのは、言うならば投資です。それを当てにならない企業努力と短期借り入れの繰り越しみたいなことではまかなえないはずであります。どうしてもこれは長期債に切りかえなければならないのであるが、その長期債に切りかえるのは何を大体当てにしておられるか、これは明確にしておいていただきたいと思います。
  237. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 短期借り入れ金でありまするから、昭和四十年度にどういう結末になりますか、収入支出の決算というか、締めくくりをしてみた場合に、おそらく返済ができるんじゃないかというような気もしますが、もしこれが四十一年度に繰り越されるというようなことがありました場合におきましては、-とにかく特別の努力をしてこれを払うということをいたします。いたしますが、万一これが何とも返しがたい、こういう際におきましては、長期資金に振りかえるとか、何らかの対策をとらなければならぬ、こういうふうに考えます。
  238. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理大臣にお尋ねをいたしておきたいと思います。  国鉄を経験されておりますから、総理大臣、この程度のものがほんとに企業努力でできるんならば問題はない。しかしながら、大きな世帯でありますから、やりくりできることは当然です。この二つの意味で、私は非常に重大なる意味を持っておると思う。まず、法案を通して一日も早く値上げをしなければならぬという立場に立ったときには、先ほどから話があったように、一日五億ずつ何ともならぬことになる。その場合には、第三次長期計画が途中でおかしくなるから、したがってそれを変更しなければならぬようになる、727がひっくり返ったのは、そのようなことを倹約するからだみたいな状態で、強引に言うならば、われわれの十分なる審議に対してむしろおどしをかけるような状態で、ほんとは予定どおりに上げろ上げろと迫られた。その際には、もし延びたならば長期計画の完遂に重大なる影響を及ぼすのだという前提で追い込まれた。そのときは当然に七十億だの八十億だのという企業努力によって出る財源がないということが前提でなければ、そのような話はできぬわけだ。それであるにもかかわらず、今度は延びたとなると、企業努力とかなんとかいいかげんなことでやろうというこの言いのがれ、われわれが――社会党の議員の方々も、おそらく自民党の議員の方々も、予算審議の際にこの問題で一番かっときているのはそのことである。われわれの数字が甘いところにつけ込んで、官僚のなわ張りの中で、先ほど来のゴルフ場の問題にあったように、中身はなかなかわからぬようにしておいて、もしわれわれの言うことを聞かなかったならば国家的に重大なることになるぞ、こうおどしつけて、そしてやってみると何のことはない、また適当に言いのがれしようとする。このやり方に対して、もし値上げというような問題が、いつでもそのようなものがもとになっておるとするならば重大なことである。したがいまして、そのような甘い考え方や官僚独特の考え方が基礎になるような措置に対して、十分警戒をされるように。  それから二番目には、会計技術の問題を大蔵大臣に申し上げたいのですが、先ほどの話を聞いておりましても、大蔵官僚の中の会計技術を中心としたやりくりの問題につきまして、大蔵大臣は最もそのたんのうな方でありますから、一そうそれを感じるのでありますけれども、常識的に見て、本来このようなものが短期の借り入れで、繰り越し、繰り延べでやり得べき性質のものでないことは御承知のとおりだ。そして四十一年度で始末しなければならぬとするならば一しかも四十一年度の予算案をいま審議している、もうここへ提出済みであります。したがって、四十一年度の予算自身はもういじることはできない。だから、四十一年度に措置を延ばすということであるならば、ほんとうはあなたは四十一年度の補正をもうすでに頭に描けなければ考えられない措置ということになる。私は非常に奇妙なことだと思う。先ほど来話があるように、今年度、四十年度中に始末をすべきもの、そしてできるものをやらずにおいて、すでに四十一年度の補正で始末をしなければならないことを前提として問題を前進させるということは、ほんとうをいうと、予算審議をするわれわれにとっては重大な責任のある問題だ、こう思うわけであります。  時間がもったいないような気がいたしますから、総理大臣に明確に伺っておきたいのでありますが、国営事業に対する国民の信頼感は非常に薄れつつあることは、御承知のとおりであります。したがいまして、値上げの措置のようなときには、この問題は国民感情に非常に微妙でありますので、国営事業に対する確固たる総理大臣の所見をひとつお聞かせをいただいておきたいと思います。
  239. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま佐々木君からるるお話がございました。またいろいろ御注意等も受けたのでございます。申すまでもなく、国鉄は公共性の非常に強い企業でございます。そういう意味で国有鉄道という。在来は国有、国営でもあった。戦後はようやくこれが公社になりましたものの、その公共性の強い点、これは政府も十分感じておるのでございますし、経営者そのものも公共性をどこまでも達成していく、その使命を果たすように、同時にまたいわゆる企業の独立採算制の観点に立ってサービスを提供する、こういうものでありたいと思うのでございます。ただいまも、二月十五日に全部が議了いたしますれば、御指摘になるような重大な問題は起こらなかったと思います。たいへんな御審議をいただいたにかかわらず、われわれが予期した時期にこれを成立さすことができなかった。そこで、予算hにもいろいろそごを来たし、これの遂行上において何かと懸念されております。しかし、今日最も大事なことは、国鉄が予定しておる工事、それはもう絶対に減少するわけにはいかない。必ずこれを遂行していく。その他の面において企業努力をし、収入もふやすでありましょうが、また支出も十分検討を加えていくでありましょう。こういうことは、もちろん独立採算制から平素におきましても考えるべきことでございますが、今日のむずかしい状態においては、なおさら十全の注意の上にも注意し、また一そう努力しなければならない。このことは、私が申し上げるまでもないところだと思います。  問題の借り入れ金、臨時借り入れをするという事柄につきましても、ただいま申し上げるような観点でこれを取り組むつもりであります。四十一年の収入予算、また支出予算等は十分精査いたしましたから、予算としてそこに非常な食い違いがあるとは私は思いませんけれども、しかし、いずれにいたしましても、経済の情勢にもよりますし、また客の動き等によりましてもこの収入も変わってまいりますし、また支出の面でも、物価等によりまして、時に変わることもあるだろうと思います。しかし、どこまでもその公共性に立って国民に迷惑のかからないように最善を尽くし、注意していくことは当然だ、かように私は思います。そういう意味で、ただいまの御注意は、十分今後の運営に資するようにありがたくちょうだいいたしたいと思います。
  240. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 郵政大臣にお伺いをいたします。今度の郵便の値上げで、大体どれくらい増収をはかられるつもりですか。
  241. 郡祐一

    ○郡国務大臣 二八・八%の増額を期待しております。したがいまして、初年度で二百八十六億、平年度で三百六十四億を予定しております。
  242. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 赤字補てんが大体理由のようでありますが、経営赤字はいまどういう状態か、ちょっと簡単に……。
  243. 郡祐一

    ○郡国務大臣 前年度から持ち越しました歳入の不足、四十年度の当初予算ですでに五十六億の赤字を持ち越しておりました。これが赤字の現状でありまして、このまま推移いたしますと、四十一年度では二百億に近い赤字があるもののように考えております。したがいまして、それの補てんをいたしますためと、それから、何と申しましても昭和二十六年以来一種、二種については料金を手をつけておりませんでしたので、この際手をつけることにいたしました。
  244. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 四十年度で大体五十六億の繰り越し、四十一年度以降、いまお話のありましたものをつけ加えると三年間で千百億程度、五年間で二千五百億程度ということらしいですが、そうしますと、今度の値上げによって生ずる増収の三百六十四億程度のものというのは、いま行なっておる郵便事業の赤字を埋めるか埋められないかくらいなことだけですか。つまり赤字補てんだけか。そうすると、郵便料金が値上げされても、国民大衆へのサービスはちっとも改善されないというふうに解してよろしいか。
  245. 郡祐一

    ○郡国務大臣 郵便物は、当然相当の率で物の増加をいたしております。ただ、昭和二十六年度に料金の改正をいたしまして、しかし今日において苦しくなってまいりましたのは、その間異常な物の増加をいたしておりました。その物の増勢がやや鈍化しております。したがいまして、ここでどうしても物の増加をいたすように努力をいたさなければ相ならぬ。それには国民へのサービスという点がございます。したがいまして、主要な幹線は、速達でございませんでもすべて航空機を使うということをいたしますし、専用の自動車の用意をよくいたします。しかし、何と申しましても総事業費の九割までが人件費でございます。したがいまして、国民へのサービスを高めますためにも、今度も特に局舎の改善などをいたしましたが、従業員に対する職場環境をよくいたしますと同時に、従業員の士気を高めてまいる、これが大事なのでございます。したがって、赤字を埋めるだけでなく、国民へのサービス、そうしてさらに職場の能率を高めてまいる、これに努力をいたしたいと思います。
  246. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今度の改正法によりますと、郵便物の規格の問題は明確に取り上げられており、それから航空機利用の問題だとか、わが党が主張しておりました書き損じはがきの問題救済のような措置はとられておりますが、しかし、今度の値上げのもとになった郵政審議会の昨年末の答申の前に、三十九年の十一月、つまり一昨年に同じような郵政審議会の答申があって、それは郵便事業の近代化に関する提案を行なっておるはずであります。この提案を行なっておる内容は、お話しのように、郵便事業というのは一番ほんとうはおくれておる、だからこれを近代化しなければならぬといって、ずっと具体的な項目が並んでおりますが、そのうちで、たぶん郵便物の規格化ぐらいなことにしかまだ取りかかっておられないと思うが、これは、今度の値上げ措置ではできないということですか。
  247. 郡祐一

    ○郡国務大臣 郵便物の規格化にいたしましても機械化にいたしましても、それぞれ手をつけてまいります。規格化は一挙にできるのでありまするが、機械化の点は、中には窓口機械のように試作の域のものもございます。それから、局舎内の機械化等で、すでに進んでいるものもございます。こうしたものをあわせて年次計画を立てて進めてまいりたいと思っております。
  248. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理大臣は、私の質問のポイントはおわかりだろうと思います。幾ら理屈を言われましても、値上げがされる限り、国民は、値段が上がればいまの郵便事業に対するいろんなぐあいの悪いことがよくなるに違いないという期待がなければ、この値上げ問題にしぶしぶでも賛意を表するわけはないし、認めるわけはないのです。ところが、いま私どもが俎上に乗せておる問題は、言うならば、過去の赤字と、これから数年に生ずるかもしれない赤字対策だけであって、ほとんど積極的な施策を見ることができないという不信と不満を持っておるわけです。総理大臣、最近民営の飛脚事業ということが行なわれておるという話を聞いておられると思いますが、民営の飛脚みたいなことが行なわれるというのは、まことに重大なことだと思います。国の郵便では当てにならぬから、大事な通知は自分の会社の者だとか、自分の手で配らせるとか、あるいは大事な小包等はじかに持っていかせるとか、それがだんだんとそれを業とする特殊のものがこのごろはできかかっておるような話を伺います。言うまでもなく、もしそのようなことがあるとするならば、郵便法第五条違反に違いないと思いますが、この民営の飛脚事業みたいなものが起ころうとしておることに対しまして、総理大臣、どうお考えになるか、御所信を承りたいと思います。
  249. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのまあ便利屋式のもの、これは私、批評いたしませんが、とにかく郵政省におきまして郵便業務をあずかっておる以上、これがほんとう国民の要請にこたえるというか、そういうものでなければならない、ただいまの料金の改定も、同時にサービスの向上に役立たせなければならない、かように私は思います。そういう意味で、郵政省は、管理者も、また職員も、従業者も一体となりまして、そうして、そのサービスの向上に徹することが必要ではないか、それでこそ初めて今日の料金改定も国民が納得する、かように私は思います。
  250. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 郵便事業は、先ほど郵政大臣がお話しになりましたように、機械化の問題もあるけれどもほんとうはそのサービスの根幹であるものは人事管理だというお話です。その人事管理の面で、一番郵便事業がなお前近代的な状態が続いておる。あるいは行き過ぎの状態がまたそれに重なるということらしい。私は総理大臣に――国鉄にも関係された経験があるのですから、国営事業は少なくとも戦前ぐらいな国民の信頼感を回復するということが、政治に対する国民の信頼感をつける一番まず最初のものではなかろうかと思います。民主主義というのは、回り遠いこともありますけれどもほんとう国民の納得ずくと信頼がもとになっておるはずであるのにかかわらず、民主主義の時代になって一そうこういう国営事業に対する不信感が高まっておることは、私どもは憂慮にたえないと思います。これはまあ総理大臣に何ぼ聞いても、同じような答弁しか伺えないと思いますから、ほんとう佐藤内閣一つの目標に、国営事業に対する国民の信頼感を明確に取り戻すための重大なる決意をされたいと思います。強く要望いたして、次に参りたいと思います。  外交、防衛問題につきまして、この委員会でわが党の永末君や玉置君が質問で掘り当てて、それがいろいろ発展をいたしておる問題がございます。国連との関係における海外派兵の問題は、昨日の穂積君や、いま野原君等を中心に、相当深刻に発展いたしましたので、時間の関係上割愛いたしますが、わが国がアメリカの核戦力のかさの中にあるのかどうかという問題について、下田次官が談話を出されて、これに一対して外務省が否定的な立場で、言うならば統一的な見解を出した。ところがそれに対しまして、わが党の永末君の質問に対して防衛庁長官は、大体外務省の見解に批判的な御発言を行なっておられて、言うならばわが国の防衛は、一アメリカの核戦力のかさの中に入っており、それを当てにして立てるものではないという意味のお答えがあったかに思います。  外務大臣にお伺いいたしたいと思うのでありますが、私はいまあげ足をとろうとも何とも思っておりませんから、核のかさということばが――この間外務省から何か見解が発表されて、書きつけも来ました。見てもわからぬぐらいな話。核のかさということばが誤解を招くならば、核のかさということばをやめてもよろしいから、はっきりと、わが国はアメリカの核戦力の保障を受ける立場にいまあるのかどうか。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕 これをはっきりひとつ出発点としておかないと、いま問題の核の拡散防止問題につきまして、私は的確に国際政治に対してものが言いにくいと思うのでありますけれども、外務大臣、お願いいたします。
  251. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アメリカはそのすべての戦力をもって日米安保体制の趣旨に沿うてあくまで日本の安全を保障する立場にある、これは昨年の佐藤・ジョンソン会談においても、さらに共同声明において確認されておるところであります。
  252. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、外務大臣の考え方は、まあ常識的にわが国はアメリカの核戦力の保障を受ける立場にあるのだというお考えのようですが、そうですね。――長官、よろしいか。
  253. 松野頼三

    ○松野国務大臣 永末委員とのやりとりの前提がございまして、自衛隊は米軍の核戦術と共同訓練、共同作戦を今日しておるかという質問であります。それについて、今日はその段階ではございませんという話で、戦力の抑止力ということじゃなしに、自衛隊の行動、訓練の範囲内における質疑が主でございました。したがって、ただいまの外務大臣の答弁と私の答弁とは、所掌によって発言と説明が違うだけであります。
  254. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 外務大臣にお伺いいたしますが、それでは、たとえば目下開かれておるインドとの会談、目印会談、こういう会談の際に、まあ核の拡散防止の問題がいま問題になっておりますから、多分話題に出ようかと思います。その場合には外務大臣のお考えによりますと、わが国はアメリカの核保障を受けているという立場で話をするわけですが、当然にインドはどこの国の核保障も受けておらないという立場をとっておられようと思いますから、その立場は明確に違うことを前提にして話に入られますか、あるいはそういう話し合いをされますか。
  255. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その核戦力の問題が議題になるかならぬか、今後の問題だと思いますが、核戦力というものに対する日本の立場とインドの立場は違いまして、いまあなたの御指摘のとおりだと思います。
  256. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうしますと、核拡散防止から軍縮へという動きに対しまして、ほんとうは、一昨年の施政方針演説に対するわが党の西尾委員長質問の問題に答えられ、最近において、外務省でも外務大臣でも、相当に強力に、核兵器の製造能力を持ちながらも核兵器を持っておらない非核保有国、日本みたいなもの、そういう国が一緒になって、そしてその団結を強化しながら核を持っておる国に対する、言うならば発言権を増加していって、軍縮の方向に世界世論を持っていこう、こういう動きに対しまして、外務大臣、そのような国際政治の中で、ものが十分その立場で言えるでしょうかな。同じ立場に立ち得ますか。
  257. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本と同じように、核開発能力を持ちながらこれを自制しておるという国は数カ国あると思うのであります。これらの国の大体の世論は、核不拡散条約というものに対してはもちろん賛成でありますけれども、その際、核保有国も相当の犠牲を払うべきである。くだいて言うと、漸次漸減の方針をとって、一般兵器を含めて戦力を逐次縮減をするという姿勢をとることが適当である、こういう考え方を持っております。でありますから、不拡散条約の制定にあたっては、核所有国というものも相当みずから自制するという立場をとるということが要請されるものと考えます。わが国もまた同様でございまして、これが望ましい方向である、こう考えております。
  258. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 核保有国が共同して非核保有国の保障をしようという動きに対しましては、賛成的ですか、反対的な感じですか。
  259. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう考え方は決して悪いことではない、こう考えております。
  260. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 もしインドやスウェーデンやあるいはノルウェー、いまお話しのような核製造能力を持ちながら非核保有国である、言うならばわが国と似たような状況にある国々が一緒になつて、そのように核を持っておる国々が共同して核を持っておらない国々を保障しようではないかという動きを起こすことが、あるいはその世論を高めることが、私は最初の出発点に戻りまして、拡散防止から核軍縮への非核保有国の発言を増しながらやっていく方法だと思いますけれども、その動きに参加できますか。わが国はアメリカ一国の核保障を受けておるという立場に立って、インドはいまどこの国の核保障も受けておらない、スウェーデンも同様である、そして核を持っておらない国々が核を持っておる国々に対してものを言うことを強めて、そして、拡散防止から核軍縮へと、こういう動きに対して一緒の行動をとれるでしょうか。
  261. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 同一の歩調がどの程度までとれることになるか、これは今後の発展の段階に応じた考えをそれぞれしなければならぬと思いますが、ここで一言申し上げたいのは、核不拡散条約、それを制定するに際して、核保有国が各非核保有国に対して核の攻撃をまず最初にやらない、核攻撃をやらないということは悪いことではございませんけれども、それによって各非核保有国の国の安全が保障されるというものではない。それはそれとして、また集団安全保障なりいろいろな安全保障の体制が別に講ぜられなければならぬ。こう考えるのでありまして、わが国は日米安保体制というものによって国の安全が保障されておるが、核保有国が非核保有国である日本に対して核攻撃をやらぬ、こういうことを言われたことと、国の安全というものはまた別である、こう考えるのと同様でありまして、この問題はまた別途講ぜられなければならぬ、こう考えております。
  262. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 たとえばインドに対しまして、共通にわれわれは核を持っておらない立場で世界から核兵器をなくしようではないかという国際世論へのアピールをしようとする場合に、インドと日本とは全然違った立場である。日本はアメリカの核保障を受けておるが、インドは受けておらない。インドはそれならどういう立場をとれば日本と同じようになるというふうに、言うならば話が出た場合に、あなたのほうもやはり日本と同じような集団安全保障の中に入って日本と同じような立場を持って、そして共通の立場でものを言おう、こういうふうになるのか。もしソ連もアメリカもイギリスも加わったような形で核保有国が一緒になって、インドにも日本にも核攻撃を加えないから、したがってだんだんと核軍縮の方向へ持っていくような方法を講じよう、というふうに持ってくることを誘導しようとするのか。どっち向きに誘導することによって拡散防止及び軍縮への方向をたどろうとされるのか。
  263. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 インドはやはり自主的にものを考えるでしょうから、インドは核拡散防止条約というものをやる上において、核保有国に対して、核の先制攻撃をするな、のみならず漸減方式をとれというような意見を言うか言わぬか、とにかくそれはそれとして、自分の国の安全をいかなる方法によって講じていくかということが一つ残っている問題でありますから、これは一緒くたにはならない。やはり別途にその方法を講ずるのでなければならぬのではないか。これはきわめて現実とは遠い話でありますけれども、北大西洋条約において多角的戦略体制をいまとろうかとして、その問題の審議が進行しておりますが、アジアにおいても、さような方法をあるいは主張するかどうか、それもわかりませんけれども、アジアにおいては、少なくとも多角的核戦力体制ということはかなり非現実的な問題ではないか。しからばどういう方法で、一方においては自分の安全保障の道を見出すか、これは核拡散防止あるいは核軍縮の問題とはまた別個の問題として、インドとしては考えなければならぬのではないかと思います。
  264. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 ほんとうをいうなら、私は、防衛庁長官がいま外務大臣のような立場で、そんな理想的なことを言っても心配だから、われわれはこういうふうにいくんだ。しかしながら、世界人類のために拡散防止の方向を、日本は世界で唯一の被爆者の国として一番推進すべきであるから、したがってこういう方法で世界世論に訴えていくべきだ、そのためにはアメリカ一国の核保障の中に閉じこもっておってはならないのだという感じで、世界の拡散防止へ、核軍縮へ外務省が中心になって音頭をとられて、むしろ防衛庁長官のほうがちょっと出過ぎるなよといって足を引っぱっておるほうが、私はほんとうの立場のような気がいたします。それであるのにもかかわらず、外務省で一これは椎名さんに言えば失礼かもしれませんけれども、次官が核のかさの中に入っておると言ったら、また騒動をやって、入っておらぬと言う。行ったり来たり、行ったり来たりしておる近所に、わが国がほんとうの自分のいま立っておる防衛の拠点と、それから世界平和を目ざして動こうとする政策と、それがちっとも筋が通っておらないところに根本の原因があるような気がするわけであります。したがいまして、私は、この際、いまのような問題に対しまして明確に総理大臣も判断をされることが必要だろうと思います。わが党は、総理大臣御承知のように、安保改定の機をとらえまして、そのときに日本に常時的に駐留しておるところのアメリカの軍隊に引き揚げてもらおう。そうするならば、北大西洋条約機構の中における常時駐留でない国と同じような状態になり得る。その状態になれば、いまちょうど拡散防止問題で、いろいろ核の製造能力を持っておりながら核保有をしておらない国々が一緒になって国際世論をつくろうとし、世界平和の方向を推進しようとする動きとちょうど同じになれる。したがって、われわれは今度の安保改定期を目ざして、そのようなことを考えるべきである、こういうふうに考えながら、いま世論形成や検討をしておる最中です。もし総理大臣が考えられるごとく、ほんとう日本の国が初めての原爆の洗礼を受けた国民として世界平和を願うならば、その危険をひしひしと感じておられるところのインドに対しても、ノルウェーに対しても、スウェーデンに対しても、大体似たような立場だ、共通の立場だといえる条件をつくることが私は国際世論にアピールする筋だと思うのです。その前提は、常時に駐留しておる軍隊を引き揚げてもらい、日本本土の基地をなくしてもらうということだと思うのです。これを取り除きさえすれば、いまの製造能力を持ちながら非核武装国であるところの連中が考えておるのとほとんど同じ方向に私は行き得ると思う。総理大臣の御所見を承りたいと思います。
  265. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、わが国の安全確保、これは何といってもただいま日米安全保障条約、これが根幹をなしていると思います。先ほど外務大臣がお答えをいたしましたように、昨年私がアメリカへ参りまして、ジョンソン大統領と会い、そうして共同声明にも、外部からの日本に対する侵略に対しては、アメリカはどういう場合でもこれを守る、かように申しておるわけであります。これがただいまいわれる核のかさに入っているとか、こういう意味ではないかと思いますが、とにかく核の戦争抑止力、それをアメリカにたよっているというか、そういう状態であること、これはもう私が申し上げるまでもないところであります。また民社党が、常時駐留をやめて有事駐留に切りかえるべきだ、こういう説をなしていらっしゃることも承知いたしております。しかし、この予算委員会を通じまして、いままで私は、今日の安全保障条約の体制は、国の安全を守る、確保する最も現実的な方法として、今日の状態が適当ではないか、かように考えておるということを申しました。いずれにいたしましても、なお期間のあることだから、十分検討はいたします。かようにつけ加えて申し上げたと思います。ただいまお尋ねがございますが、在来の考え方に私変わりございませんので、重ねて同じことを申し上げておきます。
  266. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねてもう一つだけ確かめておきたいと思います。  防衛庁長官、いま外務大臣は、日本はアメリカの核保障の中にあるという立場をほとんど明確に言われたと思います。それと、あなたが何か先ほどの演習計画の中に入っておるとか入ってないとかいうこととそれは関係なしに、自衛隊の中でいろいろわが国の防衛を考えておる際には、アメリカの核戦力というものが背景に入って考えておるのですか、そうでないのですか。
  267. 松野頼三

    ○松野国務大臣 お答えしましたのは、野球の内野と外野のお話をいたしました。まだ自衛隊は内野程度しか守備がない。したがって、外野においては米軍という安保条約でやっている。もう一つの話は、かさの話をしました。それは放射能の雨が降ればかさをさすだろう。雨が降らなければかさをささないだろう。今日雨が降ってないから、自衛隊は、かさは持っているが、まださしていないという話をいたしました。この二つの話で、抑止力の中には入っておる、しかし、自衛隊の装備には入っていないというような話を、終始いたしたと私は思います。
  268. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 永末君に答弁した話でなくて、それなら新しく御意見を承りたい。  いま日本の国にアメリカの軍隊が駐留をしております。アメリカの基地もございます。それはお話しのように、決して核装備された基地でも、核装備された軍隊でもないと思います。しかしながら、日本に駐留しているところのアメリカの軍隊及び基地は、核戦力を中心とし、あるいは背景としてでき上がっておるアメリカの総合戦力の一翼をになっているものであることには間違いございませんな。したがって、もし日本におるアメリカの軍隊がそのアメリカの核戦力の背景を持つ総合戦力の一環をになうものであるとするならば、それとの関係において日本の防衛を考えておられる日本の防衛庁の考え方の中に、アメリカの核戦力を当てにしていないということは、私は言い得ないと思う。そうすると、いろいろ言われますけれども、防衛庁のほうもやはり外務省と同様に、アメリカの核戦力の言うならば保障下で日本の安全をいま考えておる、こういうふうに理解してよろしいか。
  269. 松野頼三

    ○松野国務大臣 お互いの考えとことばですから、多少の行き違いはあります。私は今日、アメリカが核戦力というものを保持している、その日米安保条約である。これはおっしゃるとおりでありますが、今日ただいま、防衛庁と日米間と、この二つの問題が混合されているのではないかと思います。したがって、ただいまの佐々木委員の御質問を二つに分けるならば、総力的なアメリカの核、日米間の安保条約、これは動かすべからざるものであります。と同時に、今日国内における自衛隊の動き、この二つであります。したがって、この二つの問題は矛盾もしていなければ、現状と、大きなところと小さいところの話を二つしただけであって、少しも矛盾はない。したがって、言うなれば、大きな意味における日米、これはそのとおりであります。自衛隊の話、この二つの話をしただけであります。
  270. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 特定の外国から核戦力による攻撃を受けた場合には、当然アメリカの核戦力がこれに対してこたえ得ることはお考えになるでしょう。それならば、まあことばはあれですけれども、何にもどうということはなしに、明確にアメリカの核戦力の保障の中に日本の防衛を考えておる。あまりいろいろ回りくどく考えられるから話がおかしい、そういうことじゃないですか、どこが違うのですか
  271. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いまの御質問のことばのとおりなら、そのとおりでございます。
  272. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間がございませんので先にまいりたいと思いますが、総理大臣に私は重ねて要望をいたしておきたいと思うのです。  純粋の中立国でもなしに、自由主義陣営の中におる国々で、明確なるアメリカの核戦力の保障を受けたり、あるいはまた明確に常時に基地を持って兵隊が駐留したりしておるところは、それほどたくさんではないと思うのです。そして、現に日本の本土からアメリカの軍隊が引き揚げてみたところで、大差はない、どうせ似たようなことだと私は思うのです。しかしながら、日本から現実にアメリカの軍隊が引き揚げた状態になれば、むしろわれわれの仲間は、インドにしても、スウェーデンにしても、デンマークにしても、その近所はほとんど同じような条件のもとに核拡散に対してお互いに胸襟を開いて同じ立場で話し合い、手を握り合い、そしてアメリカに対しても、ソ連に対しても人類共通の目的のために善処せよということが相当強く言い得る力ができると私は思うのです。そのことは、まあ総理大臣はいまなかなか言いにくいかしれないけれども日本の防衛にそんなに心配の状態ではないと私は思う。すぐ近所にはおるのだし、問題はその辺をまあ日本人は割り切りたいというのかしれませんけれども、非常に自主的でないものの考え方に立ちたがるものだと思います。私は、そういうような意味で、むしろ足を引っぱるなら防衛庁長官が相当引っぱってもよろしいが、外務省を中心にしてはむしろそのような方向を考えながら、まだ一ぺんに常時駐留なしにせいと言っているわけじゃありませんから、そういう方向を考えながら、いまの拡散防止に対しまして、たとえばインドに対して、スウェーデンに対して、ノルウェーに対して積極的な姿勢をとられることが必要ではなかろうかと私は思います。重ねて御所見を承って先に進みます。
  273. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一国の安全、これはその国の特異性と申しますか、その国自身が考えるべきことだ。ただいま言われるように、インドがどうした、あるいはスウェーデンがどうした――共通する面もあるだろうと思いますが、しかし、一国の安全はその国において責任を持って考える、それが望ましいことだ、かように思います。佐々木君は、そういう意味でもちろん日本の国の安全確保について最大の考慮を払っておられると思いますが、私自身は、ただいまそういう観点で、まあいずれの国がどういうように考えようとも、この国の安全確保は現実的に日米安全保障条約、これがただいまのところ必要だ、かように実は考えております。その中身の問題についていろいろ先ほど来お話しがございますが。これらのこともまことに重大なことでありますし、ことに私が申し上げたいのは、一国の防衛それ自身は、そうしょっちゅう変わるものでもないと思います。長期的な観点に立っての防衛計画というものを持つのが、本来の防衛のある姿だ、かように思いますので、私は在来から一貫した方針をただいま貫いておりますし、またその方針を変えなければならないような事態も、私自身感じておらないのであります。しかし、ただいまの佐々木君のお話ももちろん参考にする、かようにお答えをしておきます。
  274. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 まだ時があることでありますから、十分再検討を加えられんことを希望いたします。  次に、原子力の問題につきましてお伺いをいたしたいと思います。  原子力行政不在だという批判が、相当高く一般に言われております。にもかかわらず、原子力発電という問題は明確に今日のエネルギーの日程にのぼってきたと思いますので、私はこの委員会を通じまして、佐藤総理大臣の認識をひとつ改めていただきながら、適切なる施策を必要とする段階にありますので、特に動力炉の問題を中心に質問を展開をいたしたいと思います。  まず佐藤総理大臣にお伺いいたしますが、原子力発電の基本的な問題のあり方に対しまして、動力炉開発懇談会というのがございまして、これが昨年の七月の中間報告において三つの基本的な方針――むずかしい問題だから、総理大臣はなかなかわかりにくいと思うけれども一つは国内における核燃料サイクルの確立という問題。それから二番目には動力炉の自主的開発という問題、三番目には、それには政府が相当積極的に参加して施策を行なわなければならないという問題、この三つの方針を決定いたしておりまして、そうして、それの中身をいま一生懸命に具体化しつつある最中であります。もしほんとうにこの線に沿って問題を考えようとするならば、総理大臣、とてもこれは重大な 決意を要すると思いますけれども、そういうふうに取り組む用意ありやいなや。
  275. 上原正吉

    ○上原国務大臣 お答えいたします。  仰せのように、原子力開発につきましては、その三つが最も重大だと思うのでございまして、原子力開発懇談会ではこれを強力に推進する覚悟で準備をいたし、進捗を見ておるわけでございます。核燃料サイクルの確立につきましては、ことしは十数億の予算をちょうだいいたしまして、そうしてフランスのサンゴバンに工場建設の詳細見積りを頼んでおるわけでざいます。  それから、動力炉の開発につきましては、昨年の十月に動力炉開発懇談会が世界各国を回りまして、そうして現在の世界の動力炉の開発状況をつぶさに視察してまいりまして、その結果、わが国の動力炉開発の根本方針を確立しよう、こういうことでただいま熱心に協議を進めております。これは、この三月の終わりまでに具体案を作成いたしまして、それが総理のほうへも私どものほうへも報告されまして、それによって開発計画を樹立して進捗をはかってまいるつもりでございます。
  276. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国の原子力は、たいへん他国に比べましておくれている。そういう現状でございますから、今日まで原子力発電が、ただいま第一動力炉と申すのですか、これがようやく動き出そうといたしておりますが、とにかくおくれておる原子力、これを先進国の地位まで高める、このことには非常な努力を要することは、もうお説のとおりであります。したがいまして、自主的開発、こういうことをいわれておりますが、ただいままだ、まずまずその基礎的な研究をする、こういう段階ではないかと思います。また一面において原子力の平和利用、これはもう平和利用に限るという原子力基本法で定むるところでもありまするし、そういう意味で平和的な利用方法としてさらに発達すべき原子力だと、かように思いますが、まだまだその域には出ておらない。この点は佐々木君もよく御承知のとおりだと思います。
  277. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 通産大臣に念のために伺いたい。ことしじゅうに約百万キロの原子力発電の決定をされるであろうこと、それから十年先というのはおかしいのですけれども、みんなやりかけたら四、五年かかるわけでありますから、したがって、五十年までという計画は、ほかの問題と比べて決して遠い話でなくて、近い話なんですから、五十年までの間に、たとえば四、五百万キロ、それから次の十年にはむしろ一けた上がって四千万キロ程度、そのときにはほとんど三〇%ぐらい全部の発電量の中で原子力が占めるというくらい大きな計画がいま組まれております。その辺の事情につきまして、通産大臣、いま私は原子力発電は現実の日程にのぼってきたと思いますけれども、ちょっと事情を御説明いただきたいと思います。
  278. 三木武夫

    ○三木国務大臣 現実の日程にのぼってきたと思います。将来原子力発電ということにエネルギー資源として重点が置かれる日があると思いますが、何ぶんにもエネルギーの革命と申しますか、この変遷は激しいものでありますので、この機会に、日本においても一体総合エネルギーというものをどういうふうに考えるか、その間石炭等の問題もございますので、現在総合エネルギー調査会において今後の日本のエネルギーというもの、石炭あるいは石油、原子力、これを相当長期的な観点に立ってどう考えるかという位置づけの検討を願っておるわけでございます。これには相当専門家が入って、できるだけ早く結論を出してもらいたいということで検討を願っておりますので、こういう結論も出て、これも参考にしながら政府としての今後のエネルギー開発の具体策を検討してまいりたいと考えております。
  279. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 原子力発電会社の二号炉、これは決定だと思いますが、続いてことしじゅうに電力会社の中央三社と称せられる東京、関西、中部、これが大体三十万キロずつくらい、合わせて大かた百万キロになろうという開発計画が直ちに計画の俎上にのぼろうとしていることは御承知のとおりだと思います。たぶん私は次の電源開発審議会あたりで相談になるんじゃないかと思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  280. 三木武夫

    ○三木国務大臣 第二号炉はただいま許可の申請が出されております。これは敦賀における第二号炉であります。三月末までにはこれに対して許可を与えることになる。安全性の見地から検討を加えておるわけでありまして、この許可がおり次第直ちに工事に着手するわけであります。第三号炉に  ついては、おそらく審議会等でも、まだこれは具体化しておりませんけれども、佐々木さんの御指摘のようなことになると私は予定いたしております。
  281. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 少なくともいま計画中の最初の百万キロぐらいは、そうすると電源開発会社か、あるいは三電力会社かがこれを建設することになるだろう。つまりこれは完全民営で建設することになるだろうと思いますが、違いございませんか。
  282. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そのように考えております。
  283. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 有澤先生おいでになっておりますか。――お伺いいたしたいのでありますが、工いまお話しのように、最初の百万キロまでは大体今日の日程にのぼって電気会社が開発をいたします。そして、それに基づきまして、いま三木さんからお話がありましたように、十年先、二十年先の具体的なエネルギー計画の中で、原子力発電の占める位置がまことに膨大にだんだんときまりつつあります。検討がされつつある状況であります。この中にありまして、せんだって、先ほど申しました動力炉懇談会の中間報告は、これは有澤先生が中心になっておつくりになったと思いますけれども、動力炉の開発の基本方針として、自主的開発という方針を先ほど申し上げたようにうたっておるわけでありますが、この自主的開発という意味、まあいろいろのことにいわれておりますので、総理大臣、よう聞いておいてもらわぬと、話がこんがらがってどうもならぬ。自主的開発の意味をきちっと説明していただけませんか。
  284. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 動力炉開発懇談会の中間報告となりますか、中間的な決定におきましては、動力炉の開発につきましては三つの考え方をしております。  一つは、もうすでに実証済みの炉、これはもっぱらアメリカやイギリスですでに開発が行なわれ、実際に運転も行なわれている、こういう炉でございまして、言ってみますれば、アメリカの軽水炉、イギリスのAGR、こういう炉を考えております。これにつきましては、自主的に開発するといいましても、もうすでに英米におきましては十分実用化できる炉として現に動いておるのですから、いまさらこれを日本自身の技術で開発をするということはあまり意義がない。したがって、こういう実用炉につきましては、これは技術を導入いたしまして、日本で早期国産が行なわれるような手段を講じていくべきである、これが一つ。  それからあとは、いま申し上げましたような実証炉におきましては、もっぱら経済性の点から申しますと、アメリカの軽水炉のほうが現在のところは非常に有利であります。したがって、実証炉の導入ということになりますと、軽水炉のほうが非常に多くなるということが考えられます。先ほど御指摘のありました、今後二十年ないし二十五年くらいの後には日本の原子力発電がざっと四千万キロワット程度にのぼるだろうという、これは見通しでございますけれども、そういう時期になりましても、その大部分が軽水炉であるということも考えられます。そうなりますと、先ほども指摘のありましたように、日本の核燃料政策の見地から見ると、御承知のように、軽水の濃縮ウランはまあフランスやイギリスでも若干はつくっておりますけれども、いまのところ最も安く供給のできる国はアメリカしかない。そういたしますと、アメリカにその軽水炉用の燃料の大部分を依存するというようなおそれも出てくるだろうと思うのです。日本において、動力炉について何も開発をしないでやっていくということになりますと、そういうふうな事態が予想されるということでございます。そういう事態は日本のエネルギー政策の見地からいって必ずしも好ましくはないのであるから、この際、日本といたしましては他の動力炉、いま申しました実証済みの炉ではなくて、他の型の動力炉を開発するという方針を立てるべきでないか、こういうことにわれわれは考えております。  その他の炉としましては二つ考られます。一つは、いわゆる高速増殖炉でございます。これはプルトニウムを使ってまいりますが、これは、原子炉といたしましては本命の炉であります。どの国もこの高速増殖炉を開発するということが本命になっております。これは技術的に申しましてもそうでございます。もし増殖炉が十分に開発されることになりますれば、燃料の核燃料が自己生産が行なわれるのでありますから、ある時期以降は、もう核燃料の輸入を全く必要としないという時期も考えられるわけです。そういう本命たる高速増殖炉を開発する、これが一つ。ところで高速増殖炉が実用化される時期はいつごろであろうかという問題になりますと、これは二十年後、あるいは早いところでは十五年後という人もおります。あるいは二十五年後ころになるだろう。まあそういう状況でございますので、先ほど科学技術庁長官がお話しになりましたように、懇談会といたしましては、海外の動力炉開発の状況を視察するための視察団を派遣いたしまして、その報告書をわれわれは受け取っております。その報告書に基づきまして、もうこればかりではないのですけれども、これをも参考にいたしまして、目下この高速増殖炉がいつごろ大体開発されると考えられるかということにつきまして、一方では検討を進めております。しかし、もしこの高速増殖炉の実用化ということがかなりおくれるということになりますと、先ほど来申しましたようなウランのアメリカへの全面的な依存という形が行なわれてまいります。これは、核燃料の供給の分散化という点から申しましても好ましくないし、また核燃料の貯蓄、貯備、備蓄と申しますか、備蓄の見当からいってもおもしろくない。われわれとしましては、濃縮ウランでなく天然ウランをもって炉を動かす、天然ウランを使うような炉、これをひとつ開発する必要がありはしないか、こういうふうに考えておりまして、これはイギリスのほうも、先ほど申しましたようにAGRなんかはそういうものでございますけれども、われわれといたしましては、やはり天然ウランを燃料として使う炉を開発する。これは、開発するのでありますから、経済性の面においても軽水炉と十分対抗ができるような形の炉、そのほかにもいろいろの有利な点がある。軽水炉に比べまして、核燃料の効率利用の点からいったならばはるかに有利な炉、経済性におきましても、核燃料の利用の面から申しましても有利なそういう炉、これは新型転換炉というふうに申しておりますが、その新型転換炉の開発、これは各国におきまして、もうある国はここ数年来その開発を進めておりまして、ある程度の成果といいましょうか、進歩があるのでありますけれども、しかし日本がいまから始めましても、この新型転換炉を日本の研究、実験、それを積み重ねることによりましてこの炉を開発することが十分可能であろうというふうにも考えられます。もっともこの場合におきましては、高速増殖炉もそうでございますが、新型転換炉の場合におきましても、何といいましても先進国のほうがある程度、日本より五年とか六年とかいうふうに進んでおります。高速増殖炉のごときものはもう十年以上進んでおります。それでありますから、国際協力を相当強力に行なわなければならないと考えております。国際協力のもとに日本の科学者、技術者、そういう人々も集まりまして、そして実験と研究を積み重ねることによって日本の特別な、何といいましまうか、エネルギー政策の上からいって日本において特別な意義を持っておるような新型転換炉の開発をいたしたい、こういう考え方に相なっております。  ただ、一つ最後に申し上げておきたいのは、この高速増殖炉といまの新型転換炉とを二つやるということになりますと、お金の面、マンパワーの面、そういう面において非常に大きなストレスといいましょうか、力がかかってまいりますので、それをどういうふうな組み合わせで行なっていくべきかということにつきまして、いま原子力委員会においてはそれを検討中でございます。近く成案を得たいと考えております。以上。
  285. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 お話しのように、大体外国ででき上がって実用の段階に入っているものを実証炉と称するならば、それを日本に直輸入して持ってくる。それがいまお話しになっておりますような最初の百万キロ程度のものです。総理大臣、そういうものです。それは完全にいま電気会社で民営でやらせる、そういうことになっております。それからいま有澤先生は、そのあとのものにつきまして自主的開発、要するに日本でつくるということを前提にしてこれはやるんだというお話、これはとてもじゃないが、もう金がかかるし、よっぽど総理大臣、決意されないとできるものじゃないと思うのです。その中で特別に高速増殖炉というものはもう理想型でありますから、これ一本につぎ込むというのも方法でありましょうが、その高速増殖炉といまの実証炉との間のものを総称して中間的な炉まあ中間炉というならば、この中にいろいろなものがあるわけです。この中にいろいろなものがあるからこそこれがいま一番研究開発といって、研究しながら実証の段階に入れたり入れなかったりしている最中のものであります。したがって、私は、日本が本格的な自主的な研究開発を行なおうとするならば、いまでき上がっているものを電気会社で、民間で入れるというだけでもなく、それから原研で基礎研究だけをいまイロハからしているというものでもなしに、いま一番大事な、次々にでき上がりかけたりしているものを導入したり研究したりして、そして、そこの技術を習得することだと思うのですが、そのことを担当する場所がないのです。総理大臣、電気会社にやれといったって、そろばんに合わぬからやりはしません。それから研究所にやれといっても、とてもじゃないが、いま原研というものは、これは基礎研究と応用研究との間でふらふらしておって、しかもしみったれな予算でもって拘束されて、しかも学者と技術屋の自意識の強いのがけんかばかりしておって、正直言って何ともかんともならぬ状態です。それは、しかし研究させるとしましても、ことしから現実日程に入ってきて技術的な具体的なものをやろうとするのに、いまになわせるものがない。私は、最初原子力発電会社をつくるときにここでずいぶん論議のあったことを思い出すわけです。そのときに、悪いけれども、正力さんが強引に完全民営に持っていかれたわけだが、完全民営ならいまの電気会社と同じことです。ですから、存在価値もほとんどなくなりつつある。この研究開発を中心とする中間的な、いま有澤先生の言われた中間的な一番大事なもの、これをやらなければならないが、何の機関をしてやらせるべきか、総理大臣、本気にお考えいただけますか。
  286. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいままでは科学技術庁でやっております。これはもう御承知のとおりだ。いま原子力研究所についての御批判がございましたが、これは開発研究をやるところでございまして、基礎研究をやるところではない。基礎研究は大学がやるところだ。また原子力委員会、あるいはただいまの懇談会等がこれに協力をしていく、かような状態であります。もともと、申し上げましたように、わが国の原子力はとにかく他国におくれて始めたのでございますから、ただいまは非常な差もついていることは御指摘のとおりでありますし、またそれを取り返そうとしてわが国の学者諸君やまた財界の方、産業界も同時に立ち上がっておると思います。  そこで、ただいま言われますこの原子力発電の計画ですが、昭和四十五年ならば、最初百万キロというものを大体予定したが、実際にできるのは百四十万じゃないか、かようにも言われております。したがいまして、これは四十五年にはたしてそのとおりできるかどうか疑問でございますが、非常な意気込みをもって原子力発電は進みつつあると思います。もう一つ困ったものは、例の原子力を推進力とする船の問題でありますが、これは国会におきまして原子力観測船をつくるという計画であった。それにかかわらず、わが国ではどうも価額等の点においていまだにこの実施計画ができないというような状態であります。これが今日の現状であります。この現状を、とにかくおくれを取り返す、こういうことでせっかく各方面で努力をいたしておるのであります。先ほど、予算もなかなかっきかねるという話でありました。先ほどの有澤先生のお話の増殖炉の問題、この開発なども、そういう意味で、数年かかっての長期開発計画というようにただいま科学技術庁は取り組んでおるのじゃないか、かように思いますが、これあたりも、だんだん各国の実情を調査することによって軌道に乗るのではないか、かように私思います。
  287. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間がありませんので、先を急ぎたいと思いますが、端的に言って、三木さんにお伺いいたしますが、たとえば中間炉の一つの型のように言われているかもしれないし、あるいは実証炉の中に入っているかもしれないが、カナダ型の重水炉、これを日本に入れたほうがいいのか悪いのかということを決定するのはだれで、もし入れたほうがいいとするならば、やるものはだれですか。決定するものも、やるものも存在しないじゃないか。どうですか。有澤さんでもいい、どっちでもいい、返事の早いほう……。
  288. 三木武夫

    ○三木国務大臣 原子力委員会においてこれは検討を加えて、そして、それによって政府の決定になるという順序だと考えております。
  289. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いまそれに取り組むものは電気会社しかないんです。電気会社が自分にやらしてくれというものを受けて立つのが通産省です。研究開発しようにも、政府のほうでしょうと思っても、電気会社は民間ですから、強制することはできません。有澤先生、これはどうすればいいのですか。
  290. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 経済性の十分あるものはもう実証炉でございますが、これはほうっておいても一と言うと悪いのですが、進んで電力会社のほうが導入するという状況になっております。お話のカナダの炉につきましては、あるいは私が先ほど申しました新型転換炉、中間炉、これはまだなかな一か経済性の面が確立しておりません。これを入れる、あるいはこれを技術的に自主的に開発するということでありますならば、開発の主体と開発体制というものをここに新たにつくらなくてはならないと私は考えております。
  291. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 カナダ型重水炉は経済的でないと言われますけれども、経済的であるかないかはほんとうはわからぬのです。そして、もし有澤さんの委員会で経済的だからやろうと思いましても、いまお話があったように、やれと言っても、政府自身で銭を出してやらぬ限りやり手がないのです。しかし、それは先ほどの、ほんとうは自主的開発の中に入らない、電気会社がやらしてくれと言ったらできますけれども。その意味で一番大事な、いま世界の中で研究をし、いまこれを本気に導入して取り組むか、やるかどうかという、その問題について、やれという決定も、ほんとうは有澤さんのところでしょうと思ってもできないわけだ、やらせるものがないのだから。決定するものもないし、決定してもそれを取り組む機関がないということです。  総理大臣にお願いをいたしておきますが、いずれ私は科学技術委員会か何かで具体的にはっきりと取り組みたいと思いますけれども、要するに原子力発電の問題、動力炉の問題は、完全にいまもう現実の日程に入ってきているのです。きているのにかかわらず、どこも力を持ってこれを行政指導するところも、決定するところも事実上ないんです。ところが外国、アメリカやその他のものは、御承知のように軍事目的で出発いたしましたから、同じ原子力委員会というハイカラな名前がついておる原子力委員会ではありますけれども、行政力を全然持っておらぬ日本の原子力委員会みたいなものと月とスッポンの相違でして、完全な力を持っておる。したがって金もうんと使えれば、民間に対する指導力もはっきりと持っておる。にらみを一〇〇%きかせながら、この原子力発電の問題も含めて原子力を推進しておるわけであります。ところが日本の場合には、形の上において委員会という民主的な方法をとりながら、総理大臣にストレートでものを言えることになっておるけれども、この総理大臣の忙しいところに、とてもむずかしい話なんか入るような状態ではない。したがって、現実日程でありながら、本気に取り組む姿勢ができておらない。こいねがわくは総理大臣、まずこれに本気に取り組もうと思われるならば、ほっておいてもことし百万キロくらい取り組まなければならないのです。その状態でありますから、行政機構に対しまして、原子力と取り組む姿勢を抜本的にひとつ再検討願わなければならない。宿題としてお願いをいたしておきたいと思います。  もう時間がなくなりましたから、具体的にこっちだけ言っておきますけれども、燃料のほうは、燃料公社というて、公社でやることになっておるわけだ。掘ってみてもウランも出やせぬし何もないけれども、やることになっておる。そして、その中で使用済みの燃料の再処理の工場をつくろうとして取り組んでおられる。ことしの予算にも十四、五億か何か入っておることになっておる。おそらく総理大臣の知っておられるのは、十四、五億の予算がついたから、その再処理工場をつくるのに、いろいろあっちこっちから売り込みがきておるが、どこにすべきかという運動が総理大臣の耳にほんとうは入ったくらいのことであろうかと思う。最初七、八十億くらいな予算でできるつもりでおったのが、まず最初の設計をやらしてみたらおかしくなり、次の今度は詳細設計ということに、これはやろうとするのだけれども、その詳細設計を当てるところはどこだということになり、次に今度はほんとのプラントはどこに発注するかということになる。そうしますと、予定はおそらく最初七、八十億でできるとしたものが、多分二百億こすでしょう。二百億をこしたもので再処理工場ができたとする。再処理工場にほうり込むところの使用済み燃料は、民間の電力会社でできるのです。もとのところに、アメリカなりあるいはイギリスなり、買ったところに送ったほうがよほど安上がりとするとなるならば、燃料公社に送らぬことになる。その場合二百億もかけて、ほとんど政府の金でつくった状態の再処理工場というものは全然おかしなことになってしまう。片一方のその問題と、原子力発電をつくる機構と、民間と公社と、全然ちぐはぐな状態になってしまっておる。そういうことで、すべてがちぐはぐだ。  最後に、この問題と取り組む場合に、総理大臣に注意を喚起しながら私はお願いをしておきたい。それは安全の問題です。  727も、カナダ航空機も、技術屋が見て設計上に誤りがあるかないかなんて、幾ら検討したっておそらくないだろうと思います。にもかかわらず事故は発生する。しかも原子力関係事故がもし発生した場合にはまことに重大です。外国の、アメリカにおいてもイギリスにおいても一カナダにおいても、現実に開発をした国におきましては、事故実験もみずから行なって承知しております。日本の場合には、それをペーパープランで持ってくるだけなんです。ペーパープランで持ってきても信用せざるを得ないから、これはしかたがないとしても、もしやりそこなった場合にはという不安は、現在の日本の政治家としてはほんとうに腹の底にぴたっと入れておりながらその問題に取り組まなければならぬと思います。  それから安全の問題で第二点。今度東海に地帯整備という予算がついております。ところが三木さん、民間会社で、たとえば敦賀に今度同じような原子炉の発電所をつくるのだ。その場合に東海村につけた、たとえば地帯整備のような予算をつけますか。これはつけぬと言うとぐあいが悪くなってきますよ。もしそれをつけぬということになるならば、民間でその負担を負えということになれば、原子力発電をやろうというものはなくなりますよ。したがって、その意味で、具体的にもう来年度予算の中からはっきりとこの問題が出ることを大蔵大臣、ひとつ御承知おきをいただきたい。安全のためには多分地帯の整備ということをしなければならないものだから、ことし予算をつけたのだと思いますから、同じことが民間の場合に必要になってくるだろうと思うのです。  安全の問題で第三番目に、もし事故が起きたとするならばどういう状態になるかわからぬほど非常にこわいことです。したがいまして、もし事故が起きたらという想定に基づきまして、たとえばアメリカにおいてもイギリスにおいても、原子力委員会はその場合に全権を持ってその事故を収拾する力を、権能を持っております。これは、ほんとう総理大臣、お考えをいただきたいと思うのでありますけれども事故発生をした場合に、ほんとうに全権を持って処理する者がないとするならば、非常にわれわれは危険でたまらぬわけであります。アメリカであるならば、たとえばその放射能がどういうふうに出るかということを測定して記録をしなければならぬが、その人間をどこに配置するということから、煙霧という霧みたいなものが流れてくるわけですが、その煙霧の動きにつれて退避をどういうふうに指導していくかということ、あるいは放射能の被曝者に対しましてすぐに適切な措置を施すということ、さらに、根本的な、基本的な、警察活動も救護活動も全部ひっくるめて総合統一するような形で実施できるような命令権者を、命令権能を持った者を原子力委員会がはっきりと掌握しておって、そして起こるかもしれない恐慌に対しまして重大なる行政の再集中を行なうシステムを考えて、その状態で行なっておるわけであります。ところが、日本には、御承知のように全然その措置はございません。もし事故が起こるならば、警察は警察、消防は消防、それから厚生省は厚生省で走るでしょうし、とんでもない状態が起き得るわけであります。したがいまして、これらの問題に対しまして行政力をどう動員するかということは重大なる問題です。原子力発電が現実に日程にのぼってきましたこの段階におきまして、私は政治の最高の問題であると考えまするがゆえに、総理大臣にひとつ明確に意識にのぼせておいていただきまするように、同時に見解を承りたいと思います。  繰り返して申し上げますけれども、今世紀というのは、御承知のように、おそらく原子力をうまいこと使えば非常に人類は繁栄するでしょう。やりそこなえばえらいことだ。その意味で、私は現在の政治家というのは原子力の破壊力からどうして人類を守るかというのは、根本的に腹の中に入れておかなければならぬ問題だと思います。最近頻発する航空事故に関連して言うわけではございませんけれども、ことしから原子力発電が現実の日程にのぼってくるわけでありますので、三点を中心といたしまして総理大臣の覚悟をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  292. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もかつて科学技術庁長官をしばらくいたしまして、原子力の開発、この必要なこと、同時にまた持つこの破壊力、そのおそるべきもの、これもよくわかっているつもりでございます。したがいまして、この種のものは文明の利器としてたいへん役立つのだが、同時にその危険もあるわけであります。そこで、御指摘になりました諸点につきまして、これは最も大事なことでありますから、今後ともこういう点について十分思いをいたしましてい・ただいまのように文明の利便を提供するように、また危険を防除するように最善を尽くしたい、かように考えます。
  293. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて申し上げますが、この安全あるいは保安の問題は、私はいまこの問題についてそうやかましく言おうとは思いません。なぜならば、これをやかましく言ったらこれでもう終わりです。あまりあぶないものは入れぬようにということのほうが強くなってまいりますから、このことを中心にして非常に神経を使っておられることも私はよくわかりますし、われわれこの問題に本気に取り組む者がまた問題の把握のしかたとして注意しなければならぬことは承知しております。しかし、いま総理が言われましたように、これは民営であろうが何であろうが、国の責任、政治家の責任はまさに重大だと思います。十分ひとつ腹に入れられて対処せられんことを要望いたします。  意を尽くしませんでしたけれども、原子力の問題は別にはっきりと当該委員会で具体的に追及いたしたいと思いますので、質問を終わります。                  (拍手)
  294. 松澤雄藏

    ○松澤委員長代理 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  これにて締めくくり総括質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十一年度総予算に対する質疑は全部終了いたしました。  午後四時三十五分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後四時五分休憩      ――――◇―――――    午後四時四十六分開議
  295. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、川俣清音君外十四名より、昭和四十一年度総予算につき撤回のうえ経済財政政策を転換し編成替えすることを求めるの動議が、また小平忠君外二名より、昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算及び昭和四十一年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議がそれぞれ提出されております。
  296. 福田一

    福田委員長 これより両動議について順次その趣旨弁明を求めます。  山中吾郎君。
  297. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題とされました昭和四十一年度総予算につき撤回のうえ経済財政政策を転換し編成替えすることを求めるの動議につき、その趣旨及び理由を御説明申し上げます。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕  まず、本動議の主文は、昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算及び昭和四十一年度政府関係機関予算については、政府はこれを撤回し、政府の経済財政政策を左記要綱により根本的に転換し、その上に立って編成替えすることを要求するというものであります。  政府は、今回の予算編成にあたりまして、今日の深刻な不況と物価高によって国民生活を不安に追い込んでいるみずからの経済財政政策破綻の責任を忘れ、何ら反省を示さず、景気停滞は底をついた、今後の見通しは明るいとの安易な判断に立って、一方では、独占価格の維持、弱小企業の切り捨て、賃金ストップと合理化による産業再編成を推し進め、他方では、放漫な物価値上げ政策とともに事実上の赤字公債発行を軸とするインフレ予算を編成し、労働者、農漁民、小規模事業者など、勤労大衆に対する生活圧迫に拍車をかけようとしておることはまことに遺憾であります。これらの諸施策を一方的に推進いたしますならば、実質成長率七・五%の達成はおろか、日本経済を根底から破壊するに至るであろうことをおそれるものであります。  申すまでもなく、現在の深刻な経済不況を招来いたしました根本原因は、自民党政府の無計画、無責任な高度経済成長政策に根ざしているのであります。すなわち、過去数年間、とりわけ好況期におきましても、金づくり政策と称して租税の自然増収を最大限に取り込んで予算規模を膨張させ、その資金を大資本のための産業基盤投資につぎ込んできたのであり、さらにまた日銀による通貨信用を膨張させながら、株式、社債等の有価証券を増発させ、最大限に銀行借り入れを行なわせ、これらの資金をあげて民間設備投資に傾注させてきたのであります。  以上のような諸施策を通ずる大資本優先の高度成長政策の過程におきまして、貧富の格差及び産業間、地域間の格差が拡大し、さらには生産と消費のアンバランスが拡大してまいり、その結果として過剰生産の圧力による構造的不況が生み出されたのであります。それと同時に、インフレと物価騰貴の進行は財政の歳出要因を膨張させ、経済不況に伴う国庫の租税収入の縮小と相まって、ここに必然的に財政破綻の様相があらわれてきたのであります。  にもかかわらず、政府は、過去においてとってきた経済財政政策の誤りを悟らず、その政策の転換の努力を怠り、昭和四十年度補正予算においては二千五百九十億円の赤字国債を発行し、いままた昭和四十一年度予算におきまして、建設公債の美名のもとに、七千三百億円の事実上の赤字国債を発行して、表面を糊塗しようとしているのであります。  政府の国債発行のねらいは、明らかにこれによって大資本のための需要をつくり出し、他方国債財源の一部を見返りとした大企業減税を推し進め、大資本の経営の改善を通じて、勤労大衆の生活を犠牲にして、大資本優先の景気回復政策をとろうとしているのであり、まさに羊頭狗肉の愚民政策というほかはございません。  このような政府の経済財政政策は、次の諸点において日本経済と国民生活に重大な悪影響を与えるものであります。  その第一は、インフレと物価騰貴をいよいよ悪性化させるということであります。政府は、今回の国債発行にあたって市中消化を行なうと称しているのでありますが、それは当然に民間金融市場を逼迫させ、日銀の大量の追加信用を呼び起こす結果となるのであります。日銀が買い切りオペの方式をとることをきめたのもその一環であります。それに加えて政府は各種の基礎的公共料金を軒並み引き上げて物価安定対策を放棄し、また大資本の側においては、企業コストの中で特に膨張のはなはだしい金利、償却、管理販売費等の資本費の増大をすべて物価に転嫁しているのであります。このようなやり方は、ひいては国民の通貨価値への不信を招く結果となり、本年一年間の物価上昇が、政府の言うように五・五%にとどまるであろうなどという甘い見通しはとうてい許されないのであります。この一月の東京の消費者物価指数が、私鉄運賃の引き上げを織り込まないで、すでに対前月比で一・二%も上昇したことは、このことを示唆しているのであります。  国民経済と国民生活に及ぼす悪影響の第二は、不況が長引き、その克服が困難になるということであります。現在の不況の原因は、三ないし四兆円にのぼる供給能力と有効需要とのギャップにあると見ることができるのでありますが、今日、政府と財界筋が一体となって進めております賃金くぎづけ、合理化政策と相まって、勤労者世帯の実質所得水準を低下させ、国民総需要の中の個人消費支出を停滞させる結果を招き、四十一年度個人消費支出が一一・二%伸びるという政府の見通しは、現在の雇用賃金等の状況から考えますならば、まことに困難と見なければなりません。  また、政府の経済財政政策は、大資本の集中合併とアク抜きの推進により、中小企業の倒産を拡大し、また国債発行のしわ寄せと超過負担の押しつけによって地方財政を窮迫せしめているのであり、したがって、大資本の不況脱出に奉仕しようとする政府の政策でつくり出されるものは、大資本だけが潤う見せかけの景気であり、大資本以外の大多数の国民諸階層は格差拡大の下積みとして圧迫され、その生活の危機はいよいよ深刻なものとなってくるでありましょう。  第三には、国債発行には歯どめがなくなるということであります。四十一年度の七千三百億円の国債発行は、四十二年度には一兆円をこえ、四十三年度には一兆数千億円にのぼるでありましょう。この予質の規模も毎年大幅に増大せざるを得なくなるのであります。こうして、わが国の予算は国債の発行なくしては予算を編成不可能となり、国債残高は急増し、その元利償還のために大増税を国民に強制するか、でなければ、国債元利償還のために、またしても国債発行を迫られ、自転車操業的悪循環におちいるでありましょう。同時に、第三次防衛計画によります防衛費の急増とあわせて考えまするならば、この国債はやがて事実上の軍事国債の性格に変質するおそれが十分であるといわなければなりません。  第四には、国際収支の危機が招来されるということであります。昨年来の貿易の動向は、すでにわが国の輸出の増勢が純化してきたことを示しておりますが、現在の政府の経済財政政策を進めますならば、国内価格の騰貴により、輸出減、輸入増の傾向に一そう拍車をかけることになる心配が顕著になっております。しかも、それに加えてアメリカのドル防衛政策と、さらにはわが国と欧米諸国との金利差の動向等により、資本収支の赤字が拡大することも避けられないと見ることができるのであります。こうして、わが国の国際収支の天井は低下し、経済規模の拡大を制約することになるのであります。これは国債発行の最大眼目とされておる財政需要造出の政策と根本的に矛盾撞着するものであります。  以上のような政府の経済財政政策は、根本的に社会正義と国民的利益に相反するものであり、われわれの断じて承認することができないものであります。  このような立場から、われわれは、政府がここにわが党が提示いたします経済財政政策転換要綱に基づき、その経済財政政策を根本転換することを強く求めるものであります。わが党の経済財政政策転換要綱の基本は、何よりも経済財政政策を大資本優先から勤労大衆優先に転換することを主眼として、国債の発行を取りやめ、物価安定を第一義とし、大衆生活の擁護につとめ、産業と地域の二重構造を是正し、混乱をした日本経済に国民生活の安定を軸とする秩序と方向を与えることにあります。  この基本によって立てました次の六つの政策転換の柱を中心に具体的施策の実施を政府要求するものであります。  政策転換の第一の柱は、国民生活の安定の最大の前提としての物価の安定をはかることであります。そのために政府に要望する施策は、第一に日銀法を改正し、日銀政策委員会を抜本的に改組し、中小企業者、農漁民、労働者、民主的学識経験者を加えて構成し、大資本奉仕の日銀の運営を国民奉仕に転換をして、通貨価値の擁護に万全を期すること。第二、各種公共料金の値上げを防止する強力な法制的及び財政金融的措置をとり、消費者米価、郵便料金等の引き上げを防止するため、一般会計より所要の繰り入れを行ない、国鉄運賃については経理の洗い直し、含み資産の厳正な把握を行なうとともに、その上でなお必要な経費は一般会計より繰り入れること。第三、各種健康保険については国の補助を引き上げ、国民の保険料負担を増すことなく、生命と健康を保障し、地方公営企業についても長期低利資金の供給、国の補助の導入等、赤字補てん措置によって料金値上げを防止すること。第四、一般諸物価については企業優先の通産行政の姿勢の転換、公正取引委員会の機能と独禁法の適用強化、不当なカルテル行為の禁止により独占管理価格を引き下げ、また生鮮食料品については、生産基盤の強化と計画的生産と出荷体制の整備、中小企業を主体とする流通機構の整備、国費による冷凍・冷蔵施設、輸送施設の整備とその民主的管理により、需給と価格を安定させる措置を強力に推進すること。第五、土地利用区分の設定と、市街地指定地域内の土地売買及び宅地造成の国家管理、宅地基準価格の設定、国有地の開放、空閑地税及び土地譲渡所得課税の強化などにより、地価引き下げを積極的に推進すること。第六、以上の措置と並行して、消費者保護行政確立の立場から物価安定法を制定し、物価安定委員会設置し、物価に関する諸事項を調査して、その対策を国会政府に勧告する強力なる権限を付与することであります。  政策転換の第二の柱は、所得の不均衡を是正し、最終消費需要の拡大をはかるということであります。そのため政府に要望する施策の第一、全国一律最低賃金法及び家内労働法の施行により、低賃金の大幅底上げを行ない、その土台の上に物価上昇をカバーして、勤労大衆の生活水準を引き上げるに足る大幅賃上げを実行すること。第二に、生活保護基準、失対賃金、福祉年金等の大幅引き上げを中心として、社会保障制度を拡充し、また医療保険の国庫補助を引き上げて、国民の健康にして文化的な生活を保障する国の責任を明確にすること。第三、勤労大衆に対する大幅な所得税、住民税の減税を行ない、またその他、大衆消費生活に関連する間接税も引き下げること。第四、義務教育無償の原則に立って、父母負担の解消を進めるとともに、高校、大学教育の父母負担の軽減のため、国立学校の予算を充実し、また私立学校に対しても私学振興費の利子補給、私学寄付金の免税等の措置をとること。援助して支配せずの立場から、経常費への助成措置をとること。第五、住宅政策には特に力を注ぎ、五カ年間に七百六十万戸の住宅を建設し、うち四百六十万戸は初年度五十五尺以後毎年三割ずつ戸数をふやす方法による政府施策住宅を建設することを目標として、オリンピック工事に匹敵する熱意と資金を集中して、大規模に住宅及び付帯施設の建設を推進し、住宅難を一挙に解決するとともに、有効需要の拡大をはかること。  政策転換の第三の柱は、産業間、地域間の不均衡是正と、底辺経済の強化をはかることであります。そのために政府に要望する施策の第一、大企業の圧迫による中小企業の倒産を防止するため、公正取引委員会の機能を強化して取引関係の公正化をはかるとともに、倒産防止の万全の財政金融政策をとり、また大企業と下請企業の系列関係に関する下請関係調整法をつくり、下請条件の公正化、現金取引を主体とする代金支払いの確保などをはかるとともに、下請企業の共同組織化を促進し、さらに大企業の中小企業分野への進出を規制し、官公需の大幅割合を中小企業に確保するとともに、小規模事業、勤労性事業については共同化を促進しつつ、一口二百万円までの無担保、無保証、低利融資を確保すること。第二に、農林漁業に関する長期発展計画を策定し、それに基づく農用地及び漁場の開発、農林漁業基盤整備、機械化、共同化を進め、もって農林漁業生産力を高め、あわせて農漁民の所得水準と食糧自給度を大きく高めること。そのため特に、米作、畑作、畜産、果樹を中心とする農業を育成し、主要農畜産物の生産費の引き下げを進めるとともに、その再生産と所得を補償する原則に立って、価格支持政策を強化すべきであります。この関連において、米麦、牛乳、肥料、飼料は国の管理のもとに置き、漁業については、採取漁業とともに育てる漁業を育成し、特に多獲性大衆魚の価格安定措置を早急に確立すべきであります。第三、大企業偏重、地方財政圧迫、住民福祉無視の地域開発方針を根本的に転換し、道路交通網整備と、工場再配置による後進地産業水準の引き上げを進め、また地域の特色に応じた地場産業育成、農工併進の開発を推進すること。  政策転換の第四の柱は、国際貿易の改造と、経済自立の強化をはかることであります。そのために政府に要望する施策の第一、アメリカに対して過度に依存しておる現在の貿易構造を転換し、わが国貿易が北米、中ソ、東南アジアの三大市場を中心に、西欧、アフリカ、中南米、大洋州等と交流する体制をつくり、もって輸出入の均衡のもとに貿易規模を急速に拡大発展させること。このため対米貿易については、輸出入の均衡をはかり、同時に、原材料については中ソ及びアジア諸国からの輸入を増大し、中ソ、北朝鮮貿易については一切の貿易制度を撤廃し、輸出入銀行の延べ払い条件を改善し、大型プラント類、鉄鋼、船舶、重機械、車両、化学製品等の輸出を急速に増加すべきであり、特に中国に対しては、政府間貿易協定を締結し、中ソ、北朝鮮と往復二十億ドルの貿易規模を直ちに実現すべきであります。第二、貿易外収支の改善のため、前述の貿易転換とあわせて、貿易物資の日本船積み取り率を向上し、米船優先方式の圧迫を排除すること。第三、低開発諸国との経済協力は、アメリカの下請として、東南アジア開発計画を進めたり、台湾に一億五千万ドルの円借款を供与することをやめ、日本の真の自主性に立って、アジア、アフリカ諸国の民族独立を強化するため、友好的協力を進めること。第四、経済の計画的運営と物価の安定をはかり、また国民経済に不可欠な重要物資の供給の安全を確保するため、食糧、砂糖、飼料、石油、木材などの輸入物資は、国の管理のもとに置き、その最終末端価格に至るまで国が責任を持つこと。第五、各産業、企業の外資導入計画、導入にあたっての契約条件を国の一元的指導のもとに置き、アメリカのドル防衛措置の変動によって、わが国経済がゆすぶられるのを防止すべきであり、そのため外国為替業務は、国の管理する単一、専門の金融機関に統括し、また外国銀行の為替業務並びに外国商社の貿易業務を国の規制に従わせること。  政策転換の第五の柱としましては、金融の計画化と資金の有効利用を確保することであります。そのため政府に実施を要望する施策は、第一、内閣に強力な権限を持つ資金計画委員会設置し、財政を民間を通ずる長期資金の運用について、その産業別投融資順位、株式会社及び社債の産業別発行限度ワク、中小企業金融、農林漁業金融、公共投資、政保債、地方債の引き受けなどの資金計画を定め、その計画に基づいて、各金融機関の運営をさせる体制をつくること。第二に、日銀法を改正し、前述のような日銀政策委員会の抜本的改組により、大企業による過剰投資、オーバーローンを規制し、その反面、地銀、相銀、信金、信組、農協などの資金の、それぞれ地方産業、中小企業、農業への還流を促進して、資金の中央集中を避け、また歩積み両建てを解消して実質貸し出し金利の引き下げをはかること。  政策転換の第六の柱といたしましては、国債発行によらないで、民生優先の財政を確立することであります。そのため要求する施策の第一、租税公平の原則に立って税制を大胆に改正し、四十一年度新設のものも含めて、大企業本位の租税特別措置の整理、法人税率に累進制の導入、会社交際費や過当広告費への課税、利子配当分離課税の廃止、土地、山林、有価証券等の譲渡所得への総合累進課税、富裕税の新設を行なうこと。第二に、所得税の免税点を標準世帯年収八十万円に引き上げ、所得税納税人口を現在の二千百万人から千三百万人に減らし、その他間接税、住民税も含めて、大衆減税の規模を四十一年度四千億円にすること。第三、歳出においては防衛関係費、公安調査庁等の反動機関経費、それから農地報償費、対韓国供与等のうしろ向き経費を削減、削除し、各種補助金を整理、合理化すること。第四、地方財政につきましては、国と地方の事務及び税源の再配分を進め、また十分な自主起債ワクを地方公共団体に付与し、農林漁業、中小企業、社会福祉、文教、公営住宅等の行政を、国とともに都道府県、市町村が自主的に活発に行なえるよう制度改正を行ない、各種公共事業の予算単価を実態に合わせて適正化し、地方公共団体のいわゆる超過負担を解消すること。第五、財政投融資計画の重点は、住宅建設、生活環境整備、各種国営事業及び地方公営企業の経営改善に向け、特に住宅建設については、所要の資金を調達するため、生保、損保、農協等の余裕資金を活用し、厚生年金還元融資の四分の一のワクは、これを打破すること。  以上述べましたわが党の経済財政政策の転換が行なわれるとすれば、日本経済の体質は大きく変わり、安定した発展が軌道に乗ることを確信いたします。すなわち、インフレと物価騰貴は抑制され、四十一年度の卸売り物価は生産性向上の成果を国民へ還元するため引き下げられ、消費者物価も安定に向かうとともに、付加価値総額における労働分配率が高まり、中小企業、農林漁業の振興とあわせて大衆の消費購買力が向上し、国民総需要のうち個人消費支出は大幅に拡大し、また中小企業、農業の生産活動及び大量住宅建設を土台とする下からの活発な需要が生まれることを確信いたします。また、対外貿易では、中ソ等への重化学工業製品の輸出を中心として新しい需要が生み出され、また国際収支の天井も高められ、これらの有効需要は現在の生産能力をフルに動かすとともに、さらに新しい生産能力を拡大するにも役立つことは明らかであります。  以上、私は日本社会党の提出いたしております昭和四十一年度総予算につき撤回のうえ経済財政政策を転換し編成替えすることを求めるの動議につき、その概要を御説明申し上げました。  このわが党の動議は、もし政府が真に国民大衆のしあわせを願う責任ある態度を持てりとするならば、一部大資本に対する思惑を断ち切り、ためらうことなく直ちに実行に移すべきものと確信し、いまこそ、政府は長期の展望に立ち、勇気と決断ある態度をもって日本経済の安定と発展、国民生活の向上を目ざして、わが党提出動議に賛意を表せられるよう強く要望いたしまして、提案説明を終わりといたします。(拍手)
  298. 松澤雄藏

    ○松澤委員長代理 次に、小平忠君。
  299. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、民主社会党を代表して、政府提出の昭和四十一年度予算三案について、政府はこれを撤回し、お手元に配付されておりまする民社党動議の要綱によりまして、すみやかに組替えを行ない、再提出するよう要求する動議を提出いたします。  政府案につきましては、本委員会におきまして、すでに一カ月余の審議を尽くしたのでありますが、審議を深めれば深めるほど、政府案の欠陥を私どもは痛感せざるを得ないのであります。  申すまでもなく、明年度予算の編成にあたりまして、一方では長期にわたる不況のために租税収入が減退し、他方では、これも長期にわたる物価高のために歳出予算の膨張は避けられなくなっております。不況と物価高の同時克服の施策がない限り、今後の予算編成は財源難と歳出増加のジレンマに苦しむことは不可避であります。いまや、わが国の予算編成は抜本的に編成方式を改め、かつまた不況と物価高の克服のために、国の財政政策が経済活動全般の先頭に立つべきときであります。しかるに、政府案は、財源難は明年度だけの特殊事情とみなし、物価高のための経費単価の引き上げによってふくれた歳出予算を政策の前進であると国民を欺瞞しておるのであります。私どもは、このような政策不在予算を断じて許容することはできません。ここに、民社党が政府案の組替え要求動議を提出せざるを得ない理由があるのであります。  わが党は、昭和四十一年度予算の編成こそは、不況と物価高の克服を通じて、わが国の経済体質を是正していく長期経済政策の一環として行なうべきものと確信しております。この見地に立ちまして、わが党は、予算編成の前提として、三つの重要施策の実施を政府要求します。  その第一は、重要産業の大企業間の過当競争によって強い支配を受けているわが国の経済体質を是正することを目途に、これら大企業の投資活動と、これに対する金融のあり方につき、国が調整する制度を確立することであります。この方針のもとに、重要産業基本法を制定し、かつ銀行法その他の金融法規を改正すべきであります。  その第二は、政府は物価高抑制につき何らの基本方針を示さずして、今回の国鉄運賃の引き上げをはじめ、各種の公共料金の引き上げを行ない、むしろ消費者物価引き上げの役割りを果たしておりますが、わが党は、消費者物価上昇の抑制、消費者保護行政の体系整備と、政府の責任体制の確立を目途として、消費者基本法を制定すべきことを強く政府要求するものであります。  また第三に、今後財政がますます経済政策の先頭に立って主導的役割りを果たすべき必要性にかんがみまして、直ちに財政法改正に着手し、歳出予算は、経常経費と資本的経費に大別すること、資本的支出については、多年度制編成をすることとし、その財源として、公債または借り入れ金を認めることにするよう財政法の改正を要求する次第であります。  わが党は、この三つの基本的施策の実施を前提として、政府案の組みかえを提案するものであります。わが党の組みかえ構想は、第一に、歳入予算につきまして、財政法を改正した後、六千億円の公債発行を認めることであります。この使途は、中小企業と農林漁業の近代化施策、住宅と住宅環境整備、文教福祉厚生施設の建設に限定いたします。  また税制改正としては、あくまで勤労国民の実質所得の擁護に置き、国民の個人消費支出の向上によって、経済成長についての最大の刺激要因とせんとするものであります。この見地に立ちまして、明年度の税制改正は、所得税の免税点を、政府案の五人世帯年収六十三万円より年収八十五万円に引き上げることを改正の最大眼目といたします。このほかの減税は、申告所得税、中小法人税、同族会社課税、退職所得等につき、これに準じた改正を行ないまして、明年度の減税規模は約三千五百億円とします。一方、大企業関係の課税につきましては、法人税は五百億円の増収、租税特別措置法の改廃で千八百億円の増収、大企業向け法人税率の一律引き下げ中止と、交際費非課税範囲の縮小により八百六十億円の増収を見込みまして、税収全体としては差し引き千七百六十億円の増収を見込んだのであります。  また、わが党は、政府案の財政措置だけでは地方財政の絶対的窮乏は打開し得ないとの見地に立ちまして、専売益金の全額千八百十三億円を地方財政に移譲することといたしました。  これら組みかえの結果、明年度の歳入予算規模は、政府案よりも一約千三百五十三億円減額した四兆一千七百九十億円となります。  これに対しまして、歳出予算の組みかえといたしましては、まず歳出予算規模は歳入予算と同額にし、その均衡をはかったのであります。  歳出予算の組みかえ減額の面では、一般行政費の節減を各省庁一律に五%天引きとして、約二千百五十七億円を各省庁に案分節減し、さらに零細補助金のうち約一千三百四十三億円を整理いたしました。これは、これから申し上げる歳出増額並びに専売益金約千八百億円の地方移譲によりまして、何らの地方財政上の欠陥を来たさず、むしろ政府が当然にとるべき行財政改革の第一歩であると考えます-もう一つの組みかえ減額は、防衛庁費のうち継続費並びに債務負担行為など、後年度に影響する予算計上一千百億円を減額したのであります。  一方、組みかえ増額としましては、主として四つの政策グループに集中いたしました。その第一は、物価高抑制のための調整的支出、第二は社会保障、住宅、文教など、国民福祉向上のための経費、第三は中小企業と農林漁業の近代化促進のための経費、第四は不況産業対策費であります。  第一の物価高抑制につきましては、向こう一年間公営企業の料金値上げを中止するために、国鉄、郵政並びに地方公営企業に対して国の出資または利子補給を行ない、かつ医療保険につきましては、医療給付を最低七割に引き上げるため、合計九百億円を新たに計上いたしました。  第二の国民福祉の向上につきましては、政府案より千五百億円を増額し、その内容についてはお手元の資料を参照願いたいのであります。  第三の中小企業と農林漁業の近代化のための経費は、政府案より五百億円の増額といたしまして、施策の中心は中小企業近代化助成金の増額、倒産関連中小企業に対する中小企業金融公庫の特別融資ワクの設定並びに農業生産基盤の拡充整備と、これに伴う農地管理事業団の事業範囲の拡大などであります。  第四の不況産業対策費は、不況被害が最も激しい繊維、産業機械、内航船の運航、地下鉱物資源、産炭地域の振興などにわたりまして、それぞれの産業助成策の強化費であり、三百億円を計上したのであります。  なお、財政投融資計画関係につきましては、政府案は国民福祉に直接還元する住宅建設、文教施設、体育保健施設並びに中小企業と農林漁業の近代化のための投融資に五〇%程度しか充当されておりません。わが党はこの点についての是正を政府に強く要求するものであります。  以上がわが党の組みかえ構想の概要でありますが、自民、社会両党の委員各位並びに政府におかれましても、わが党動議を参照されまして、政府案の欠陥是正につとめるよう強く要望いたしまして、私の提案説明を終わります。(拍手)
  300. 松澤雄藏

    ○松澤委員長代理 以上をもちまして両動議の趣旨弁明は終わりました。     ―――――――――――――
  301. 松澤雄藏

    ○松澤委員長代理 これより討論に入ります。  昭和四十一年度総予算三案及びこれに対する編成替えを求めるの動議二件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。  田中龍夫君。
  302. 田中龍夫

    ○田中(龍)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出の昭和四十一年度予算三案に賛成し、日本社会党並びに民主社会党提出の予算の編成替えを求めるの動議に反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)  御承知のごとく、わが国経済は、ここ三年来深刻なる不況下にありましたが、ようやく景気回復のきざしが見え始めてまいりました反面に、物価特に消費者物価は高騰を続けております。この一面不況、一面高物価に対処する政府施策も容易ならざるものがある次第であります。  ここに当予算委員会における論戦を通じまして明らかにされました予算の重要な数点について、国民各位に十分な理解と協力を求めつつ賛成討論を進めてまいりたいと存じております。  まず、公債政策の問題について申し上げます。今回の七千三百億円に及ぶ公債発行は、わが国経済の新しい局面に即応して財政の機能に新しい画期的施策を行なって、財政政策の弾力的かつ積極的な展開をはかろうとするものであります。この点、四十年度の特別措置として発行されました国債とは全くその性格を異にするものであることは申すまでもありません。  私は、今回の公債発行の意義を次の三点に求めることができると思うのであります。  その第一は、最近の経済動向から見て、ここ当分の間税収入に多くを期待することが困難であるため、今後の公共投資は税収入に制約されることなく、公債によって着実に実施できるのであります。  第二には、今後の国民経済が繁栄するために、個人にはゆとりのある家計を、企業には蓄積ある経営をそれぞれ実現させるために意欲的な大幅減税を断行したのであります。  第三には、以上二点を推進することによって今後の経済を着実に安定成長路線に乗せることができるというきわめて有効な意義を持っておると理解することができるのであります。つまり、財政新時代にふさわしいフィスカルポリシーがここに着実に展開されたものと思うのであります。私どものこのような考え方に対して、世上一部には間違った批判が行なわれておることは承知しております。すなわち、それによれば、今回の公債発行は他の政府保証債等を含めて二兆円以上にも及び、したがって、その消化にあたって、民間金融を圧迫し、その結果は、いずれ日銀引き受け債とならざるを得ない。そうして、これがやがてはインフレを招来し、予算の硬直性からいずれ財政が放漫に流れるおそれがある、さらに極端な議論をなすものは、かつての軍事公債に発展するものだというのであります。御承知のように、公債の発行にあたっては、これらの点は十分に検討され済みのことであります。すなわち、発行対象を財政法第四条に基づく公共事業などの建設公債に限定したのもそのためであり、消化にあたっては、市中消化の原則を厳に守るという十分なる歯どめ策を講じて発行されるものでありまして、日銀引き受けの赤字公債とは全く性格の異なるものであります。また政府の見通しでは、民間における預貯金の伸びも四十一年度は六兆円が確実に期待されるという状況であり、したがって、公債が未消化に終わって、直ちに日銀引き受けに肩がわりすることはあり得ないのであります。  過日、当委員会において、大蔵大臣及び日銀総裁が言明されたように、四十一年度中はいかなる事態になろうとも、公債をオペレーションの対象などには絶対にしないということでありまして、公債発行をもって、直ちにインフレにつながると割り切る議論は、全く理解できないのであります。さらに、軍事公債に発展するなどという議論は、日本社会党すら言っておりません。社会党の諸君はそのおそれがあると申しておるのでありますが、こうした極端な議論は、新時代における公債政策の真の意義を正しく理解しようとしない者のこじつけの反対論でありまして、賢明なる国民諸君の断じて賛同せざるところであると信ずるのであります。私はかく信ずるがゆえに、賛成をいたす次第であります。  次に、本予算における第二の特色ともいうべき減税の問題について述べたいと存じます。わが自由民主党並びに政府は、戦後一貫して年々減税政策をとってまいり、今日までおおよそ一兆数千億円に及ぶ巨額の減税を実施してまいりましたことは、すでに国民各位御承知のとおりであります。四十一年度減税は、景気対策の見地から、これまでのいわゆる単年度均衡主義財政のもと、自然増収の範囲内で歳出増加額との見合いにおいて実施したものと大きく異なりまして、公債発行という新政策のもとに、不況の打開と経済の安定成長を目ざして長期的視野に立って行なうものであり、しかも減税規模は、税制調査会の答申をはるかに上回った史上かつてなき画期的大幅なものであるところに注目すべき特色と意義が認められるのであります。減税の内容は、所得減税と企業減税を中心に、物品税、相続税等を合わせて平年度三千六十九億円、初年度二千五十八億円でありまして、国税の減税額としては、かつて戦後最大の減税といわれました去る三十七年度の一千百六十四億円のおよそ二倍のものであります。これに地方税減税等を加えた減税額は、実に三千六百億円余に達する巨額のものでありまして、この結果、国民所得に対する租税の負担率は、国税地方税を通じて二〇・二%となり、四十年度よりかなり大きな負担の軽減となっております。また、所得税における標準世帯の課税最低限は引き上げられ、かねてわが党が国民に公約してまいりました六十万円を一挙に実現して、さらにこれを上回り大幅な減税をいたしたという快挙をなし遂げたものでありまして、私がここに満腔の賛意と敬意を表する次第であります。また、今回の減税においては、所得税減税と並んで平年度一千億円をこえる大幅な企業減税を断行しましたが、このうち特に中小企業に対する減税は、明年度七百二十五億円で、いまだかつてない大幅な減税でありまして、この点、野党の諸君が言われるような大企業優先の企業減税では断じてないことは明らかであります。  以上、私は、本予算が最も特色とする公債と減税の問題について述べたのでありますが、明年度予算は、これらの政策を通じて、さらに社会資本の充実と同時に、社会保障の前進、農林漁業、中小企業の近代化、物価対策、輸出振興と対外経済協力、文教及び科学技術の振興並びに地方財政の健全化対策等、当面する各般の施策が強力に推進されていることは申すまでもありません。  次に、公債発行、減税等の景気対策と並びまして今日大きな国民的関心事となっておりますところの物価問題について一百申し述べてみたいと存じます。  わが国の物価問題は、御承知のように農林漁業、中小企業等、低生産部門や流通部門、あるいは労働需給や所得平準化の問題など、多分に構造上の問題に大きな要因があるのでありまして、施策の重点も当然これらの点に向けられなければならないのであります。したがいまして、これらの生産性の向上策といたしまして、四十一年度においては、農林漁業、中小企業などに直接間接二千二十六億円の予算が計上せられ、その振興をはかっているのでありまして、これは前年度をおよそ三百五十億円上回るものであります。このほか直接的な物価対策といたしましては、生鮮食料品を安く消費者の手元に届ける対策、食肉の供給をふやす対策、新鮮な水産物を早く消費地に送る対策等、流通段階の合理化をはじめ、中小企業の近代化や新たに小売商におけるボランタリーチェーンの奨励、協業化の推進など、従前にも増してきめこまかな施策が講ぜられています。特に公取委員会の強化は、従来とかく言われておりました管理価格の問題をはじめ、業者のカルテルや再販売価格維持契約の取り締まり等に強い態度をもって臨もうというのでありまして、私は国民の一人としてその成果に大きな期待を寄せておるものであります。  この際、特に留意しなければならないことは、今日の物価問題は、単に政府施策だけですべての物価問題が解決するというものではないということでありまして、これには、私ども国民の一人一人の自覚にまつところがきわめて大きいということであります。生産者も消費者も、あるいは企業家も労働者も、お互いにすべてが消費者であるという自覚こそが最も重要であると存ずるのでありまして、この観点に立って私は政府施策協力を誓うとともに、野党の諸君も、ただいたずらに政府の責任を追及するだけではなく、建設的に広く国民的立場から物価問題の解決に一段の御協力を要請したいのであります。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕  最後に、社会党並びに民主社会党の組み替え案に対しまして一言反対の意見を申し述べます。  民主社会党の組み替え案は、いろいろ傾聴すべき点もありますが、やや現実的に困難な点もあり、残念ながら賛成できないものであります。社会党の組み替え案に至っては、予算規模や財投計画の規模が全く明示されておらず、いたずらに公式的文章の羅列にすぎない観念論であって、国民政党とし七の現実性も責任観念もうかがうことのできないものであり、いかに野党という安易な立場とはいいながら、まことに悲しむべきことというほかはないのであります。一日もすみやかに現実的な政党として脱皮されんことを切望し、私は政府原案に全面的に賛成し、両党の組み替え案に反対の討論を終わります。(拍手)
  303. 福田一

    福田委員長 次に、角屋堅次郎君。
  304. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題とされております政府提出昭和四十一年度総予算に反対し、わが党提出の昭和四十一年総予算につき撤回のうえ経済財政政策を転換し編成替えすることを求めるの動議について、賛成の討論を行ないたいと存じます。  今回、政府が提出した昭和四十一年度予算は、前年度補正予算に引き続き七千三百億円にのぼる事実上の赤字公債を発行することにより、一般会計の規模は四兆三千百四十二億円余で、対前年度比一七・九%増加、金額で約六千五百億円の増加であります。また、財政投融資計画の総額は二兆二百七十三億円で、対前年度比二五・一%増という、いずれも超大型のものでありますが、これは戦後わが国財政政策の根幹である均衡予算のたてまえを完全に放棄し、本格的な公債発行に踏み切ったという意味において、まさに歴史的な財政政策転換の予算であり、同時に、フィスカルポリシーの意識的展開と呼ばれる新年度予算が、総体として大産業、大企業の不況脱出に急なるあまり、経済の均衡ある発展、国民福祉、物価の安定を軽視もしくは犠牲にしていることは、本委員会における論議を通じても明らかであり、したがって、野党第一党たるわが党が、国民的視野に立って、国民不在の政府予算を撤回し、経済財政政策を転換し、編成がえを求めることは、けだし当然のことであります。(拍手)  政府予算と関連して、国民の重大関心事の第一は、何といっても物価問題であります。昨年十二月二十三日に発表された昭和四十一年度の経済見通しと経済運営の基本的態度によれば、新年度の国民総生産は、名目一一・三%、実質七・五%の成長率で、三十兆円以上となりますが、その際、卸売り物価は〇・七%増程度で、消費者物価は五・五%上昇に押えるというのであります。われわれは、事物価問題に関する限り、消費者物価五・五%上昇は、政府のはかない願望ではあり得ても、実現の見込みなき目標であると考えざるを得ないのであります。試みに、昭和三十五年から三十九年にかけての消費者物価上昇率は実に二五・六%であり、四十年度は、不況下にもかかわらず、八%以上にはね上がる勢いを見せており、かてて加えて、昭和四十一年度には、新年早々消費者米価八・六%、医療費二〇%、国鉄二五%等々の値上げに加えて、郵便料金、授業料、私鉄、電信電話等の値上げがメジロ押しに並んでいることを思えば、ここで物価値上げ抑制の抜本的対策を総合的に実行しない限り、新年度五・五%上昇程度に押えることは断じて不可能であります。さすがに政府も事の重大性に驚き、新年度予算の中において、経済企画庁を中心に、直接物価対策費と目されるものとして、生鮮食料品対策、流通合理化、中小企業近代化・高度化、公取委の強化拡充、消費者教育等をあげ、総額でわずかに百五十七億円の予算計上をいたしておりますが、政府みずからコントロールすべき公共料金の値上げを次々行ない、インフレ誘発要因たる公債発行に踏み切り、中小企業の倒産、農村の荒廃を放置し、また、わが党が鋭く追及を行なってきた独占価格、管理価格等に根本的なメスを加えることなく、単なる小手先の物価対策では、国民に救いはないのであります。去る二月二十五日に発表された総理府統計局の資料によりますと、二月の東京都消費者物価指数は前月に比べ一・二%と、一月に引き続いて大幅な上昇を示しております。また、同時に発表されました四十年の家計調査報告には、不況と物価値上がりとの板ばさみにあって苦しんでいる国民の台所の姿が、政府統計の数字をもってしても明らかに示されているのであります。  佐藤内閣は、今次通常国会において、しばしば不況打開と物価対策は当面の最大課題であるとの見解を表明しておりますが、新年度予算が、総体として物価対策に著しく手薄なことは明瞭であり、政府の答弁も、多くは物価対策にはきめ手がない、もうしばらく待ってほしいの一点ばりであります。今日まで国民が最も苦しんできた物価値上がり、したがって、また国民が最も望んでいる物価安定について、何ら確信のある回答を与えていない。いな、むしろ政府みずから物価値上がりの先べんをつけている政府予算を了承することは、政治家の良心においても断じてなし得ないところであります。  第二は、不況対策と国民の暮らしの問題についてであります。  現在の深刻な経済不況は、特に昭和三十四年から三十六年まで続いた過度の設備投資と、それを促進した池田前内閣の高度成長政策の破綻にそもそも遠因がありますが、同時に、それを受け継いだ佐藤内閣の景気見通しの甘さ、朝令暮改ともいうべき経済政策のまずさが、一そう悪化をさせている要因であります。そのしわ寄せをもろに受けているのが、中小企業や農漁民、勤労大衆であります。したがって、当面の不況対策は、強力な物価安定対策の推進の上に立って、産業間、地域間の不均衡是正と底辺経済の強化をはかり、また所得の不均衡是正と最終消費需要の拡大につとめ、すみやかに日本経済を安定基調に乗せるべきであります。今日問題となっている三ないし四兆円と目されているいわゆるデフレギャップ対策も、かかる視点からこそ大衆のものとなり得るものと確信するのであります。  しかるに、佐藤内閣の不況対策の焦点は、いかにして大企業の過大投資、過剰生産を救済するかに目を奪われ、手厚い企業減税、政府の財貨サービス購入の優先的割り当て、貿易振興に対する配慮等、なかなか行き届いたものであります。反面、中小企業の倒産は依然として続き、農山漁村の荒廃は、食糧自給率の低下、輸入食糧の増大となってあらわれております。また勤労大衆には、不況を口実に強力な賃金抑制の圧力を加え、国際的要請たる最低賃金制の確立をサボり、首切り合理化攻勢も激しいのであります。このままでいけば、勤労者世帯の実質的所得水準の低下は必至であり、かくして国民総需要の中で個人消費支出の割合は依然として停滞し、有効需要を喚起する大きな支柱の一つは失われることと相なるのであります。総理府統計局の資料によっても、消費支出は実質で前年に比べると〇・三%減、エンゲル係数は三六・三%となって、朝鮮戦争後のひどい不況であった昭和二十九年以来、実に十一年ぶりの上昇であります。政府が鳴りもの入りで宣伝する昭和四十一年度の国税の減税は、平年度三千六十九億円、初年度二千五十八億円で、所得税減税と企業減税との比率は六対四と説明されておりますが、内容を見てまいりますと、あまりにも大企業救済の色彩が強いことは、われわれの賛成しがたいところであります。わが国の企業経営の中に占める租税公課の割合は、諸外国に比べて決して高くなく、利潤低下は税制に何らの責任もないはずであります。むしろ高度成長過程において、借り入れ依存による無計画な設備拡大によって過剰生産の矛盾を増大さした企業経営のあり方こそ問題とすべきであって、不況脱出のために大企業減税を要求することは、いささか筋違いであろうと存じます。所得税減税による標準世帯の課税最低限が六十三・一万円とは、物価調整でほとんど実効なく、租税公平の原則から見ても、われわれがかねて主張する租税特別措置の大幅な改廃を行なうべきであります。  さらに社会保障関係費は歳出予算の一四・四%にすぎず、イギリスの三一%、アメリカ二七%、カナダ二五%など、欧米先進諸国に比較して、まだまだ低位にあり、生活扶助基準の二二・五%引き上げのごときも、今日の激しい物価高の中では、人間尊重を口にする佐藤内閣としては、もっと愛情のある政治を実践すべきであります。  政府予算の欠陥は、単に以上の指摘にとどまらず、自由民主党の公約たる昭和四十五年までに一世帯一住宅という庶民大衆の夢も、高騰する地価値上がりに抜本的な対策が講ぜられない限り達成が困難であり、地方財政の赤字対策のごときも、その財源の一部を公党間の約束、国会における政府答弁をほごとして、固定資産税の増徴に求めんとして紛糾し、ようやく三党間の話し合いがまとまったのでありますが、根本的に地方財政を確立するためには、中央地方を通ずる行財政の適正配分を行なうことが必要であります。要するに国の予算は、特定の企業、特定の団体等の圧力によって水増しさるべき性格のものでなく、社会正義的な公平平等の立場に立って民生優先の予算を編成すべきであり、それがまた現在のきびしい経済情勢にも適合するものであると固く信じておるものであります。  第三は、問題の公債発行が国際収支の危機をもたらし、それがわが国の自主性を拘束する危険があるという点であります。冒頭に申し上げましたとおり、今回の政府予算の特徴は、戦後堅持されてきた均衡予算方式を放棄し、本格的な国債発行に踏み切ったという、まさに歴史的な財政政策の転換を行なったことであります。さきに福田大蔵大臣は、国債発行総額は、ここ数年で四兆円に達するであろうと言明いたしました。すでに昭和四十年度補正予算及び昭和四十一年度予算と合わせて約一兆円に近い国債が発行される計画でありますが、そのあと四十二年度以降、四十五年度までに三兆円以上の国債発行が予定されているわけであります。これらのプランは、かりに実施に移される場合、膨大な国債発行が必ずやインフレを誘発するであろうし、大蔵大臣がしばしば説明されてきたいわゆる国債発行歯どめ論も、やがて事実上くずれ去るであろうことは、わが党の強く指摘してきたところであります。このような膨大な国債が、わが国の国際収支の赤字となってはね返ってくることは、当然予想されるところであります。現に諸外国においても、この問題では相当苦労をしているのであり、わが国も決して例外ではあり得ないと思うのであります。すでに昨年後半の貿易の動向を見ますと、わが国の輸出の増勢は鈍化を示しており、それに加えてアメリカのドル防衛政策、さらにわが国と欧米諸国との金利差の動向などが原因となって、資本収支の赤字も避けることば困難でありましょう。もしそれを償うために緊急の借款を獲得するということになれば、その借款には政治的、経済的に有形無形のきびしい条件がつくことは、現にわれわれが目のあたりに目撃しておる事実であります。いま、政治的なひもは別として、経済的な条件だけを考えるといたしましても、それはどんな厳格なものであるかは、さきの東京都の水道建設に対する世界銀行の借款がついに失敗に終わった例を見ても明らかであります。それは当然わが国の財政についてもきびしい貸し付け条件を要求するでありましょうし、そういうことになれば、そのしわ寄せは中小企業の倒産、労働者の首切り合理化をもたらすことは、火を見るよりも明らかであります。  要するに、国債発行、借金政策というものは、よく言われるように、麻薬注射のようなものであります。それを数年にわたって実施すれば、わが国の財政経済は、必ず麻薬中毒患者に転落いたしましょう。これを治療するには相当思い切った処置をとらねばなりませんが、その際患者は禁断症状を呈し、非常に苦しむのであります。国の財政政策もまた同様であり、いつまでも大量の国債を発行すれば、国の経済そのものが破産状態におちいるわけでありまするから、一定のときがくれば、いやおうなしに思い切った処置が必要になります。麻薬患者の症状がひどければひどいほど禁断症状が苦痛に満ちたものになると同様、国の経済財政政策も、国債の額が大きくなり、財源の国債への依存度が高ければ高いほど、緊縮財政に転換するときの経済社会への反動、国民生活の苦悩はきわめて深刻であろうことを憂慮するものであります。昭和四十年度補正予算、それに続く四十一年度予算と、二つの予算において、総額一兆円になんなんとする国債を発行する自民党政府は、はたしてここまで先のことを真剣に考えて編成されたものであるかどうか、私ははなはだしく疑問に思うものであります。政府のいままでやってきたところを見ますと、財界の強い圧力に左右され、あとは成り行き次第という態度が至るところにあらわれております。これは国の経済をあずかり、国民生活に責任を負う政府としては、まさに国民不在の無責任なやり方というべきでありましょう。  私は、自由民主党政府が最近日韓条約の締結、ベトナム特需に対してとっている態度、あるいは第三次防衛力整備計画策定の方針などを見ますと、政府は現在の不況からの脱出を相当量軍需景気振興に求めているのではないかと疑わざるを得ないのであります。戦前の国債発行が、わが国の無謀な戦争と結びついていたという歴史的事実は、われわれの決して忘れることのできない教訓であります。しかし、自民党政府は、この教訓から何ものも学ぼうとせず、財界の中に強く存在する現在の不況を脱出するためには、戦争特需けっこう、防衛産業の振興歓迎という風潮を安易に受け入れるとするならば、勢いのおもむくところ、軍国主義の台頭の素地をつくり、憲法改正、再軍備のコースを押し上げる力に相なりましょう。わが党は、平和憲法擁護の立場から、今次国会で論議を呼んだ自衛隊の海外派兵は、いかなる形をとろうと平和憲法の固く禁ずるところであると確信をいたします。また、ベトナム戦争に便乗する死の商人の活動を容認することは断じてできないのであります。率直に言って、佐藤内閣の内外政策には、きわめて危険なものを包蔵しておると私は看取しておるのであります。昭和四十一年度予算も、ある意味においてその第一歩を踏み出す歴史的出発点ではないかと危惧するものであります。  以上の理由に基づき、私は本予算案に反対するものであります。  次に、日本社会党が提出いたしました四十一年度予算に対する動議は、これに賛成をいたします。本動議は、政府昭和四十一年度予算案を撤回し、経済財政政策を根本的に転換することを要求しております。その転換の目標は、大資本優先から勤労大衆優先へということであります。その具体的な内容として、本動議は、物価の安定、所得の不均衡是正と最終需要の拡大、産業間、地域間の不均衡是正と底辺経済の強化、国際貿易の改造と経済自立の強化、金融の計画化と資金の有効利用という、五つの柱を立てております。そうしてこの五つの柱をもとに、それぞれの具体策をとるとともに、これと並んで、国債発行によらない民生優先の予算を編成することを要求しております。  その主要な内容は、まず第一に、租税公平の原則に立って税制を根本的に改め、大資本並びに高額所得者には増税し、中小企業並びに勤労者には減税することであります。  第二は、防衛関係費その他のうしろ向き予算を削減し、これを農林漁業、中小企業、社会保障、文教、住宅などの民生安定、格差解消に振り向けることであります。その際、特に沖繩に対しては、施政権返還が実現するまでの暫定措置として、財政その他の援助を強化いたします。  第三は、消費者米価、国鉄運賃、郵便料金などの引き上げを防止するため、それぞれの経理を洗い直し、含み資産をきびしく把握するとともに、その上でなお必要な経費は一般会計から繰り入れ、その引き上げの必要をなくすることであります。  第四は、地方制度の改革を行ない、地方自治体が十分な自主財源を持ち得るようにし、同時に、各種公共事業の予算単価を実態に合わせて適正化し、地方公共団体のいわゆる超過負担を解消することであります。  第五は、財政投融資の重点を住宅、生活環境整備などに振り向けることであります。これに関連して、財政投融資計画の一環として発行される政府保証債については、その発行から二年を経過したあとでなければ日銀の担保またはオペレーションの対象にできないこととし、この部分からするインフレの進行を抑制いたします。  以上が、本動議の概要であります。私は、本動議を成立させ、この動議の趣旨に沿って昭和四十一年度予算案を再編成することが、現在のわが国経済と国民生活がおちいっている苦境を脱却する唯一の通であることを確信しております。この動議は、自民党政府に対し、社会主義政策を取り入れよと要求するものでなく、資本主義のワク内において、日本経済を建て直し、国民生活をよくするためにどうしたらよいかという具体策を総合的に要請いたしたものであります。自由民主党の諸君も、静かに国民の声に耳を傾けるならば、必ずやわが党の主張に賛同し得るはずであります。政府、自民党も十分御理解のように、わが党は、本予算委員会において、国民の血と汗の結晶たる税金を一銭一厘たりともおろそかにすべきでない、これを最も有効に国民のために活用すべきであるという真摯な気持ちから、ときに問題点については徹底的な究明を行なってまいりましたが、その教訓を今後の予算編成、財政運営にぜひ生かしていただきたいと強く要請しておきます。  重ねて、本動議が委員各位の御賛同を得て成立し、政府が、この動議の趣旨に沿って四十一年度予算を根本的に編成がえし、当面の経済不況打開と物価の安定はもちろん、大衆福祉の向上に貢献し、国会国民から負託されている重大な使命にこたえることができるよう、心からお願いを申し上げ、最後に、民社党の動議には、わが党の基本的主張と相いれない国債発行是認を前提としたものであり、反対であることを申し添え、私の討論を終わります。(拍手)
  305. 福田一

    福田委員長 次に、竹本孫一君。
  306. 竹本孫一

    竹本委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提案昭和四十一年度予算関係三案並びに社会党提案のこれが編成がえを求めるの動議にそれぞれ反対し、民社党提案の動議に賛成をいたす立場から討論を行なわんとするものであります。  現下の日本経済は、まことに多事多難であります。不況はすでに戦後最長の十八カ月を経過してもいまだにその回復の目途が立たず、物価は上昇の一途をたどり、昨年は実に七・六%、平常時では最高の上昇を記録したのであります。かくして国民生活の向上はいまや完全にストップして、それどころか、昨年は一昨年に比較して実質消費が〇・三%も減少するというような最悪の事態を招いたのであります。  思うに、現在この段階において政府がまずなすべきことは、今日の無秩序、無法則な企業の暴走をチェックして、秩序のあるものとし、バランスのとれた計画的な経済成長に導くことであります。社会経済的なアンバランスに対する正しいこの認識がなくして、今日の不況を克服するための施策は生まれてまいりません。今日の不況の根本である構造的な矛盾の解決の方策は出てまいりません。いたずらに国債発行によって有効需要を喚起し、景気を回復しようとするだけでは、不況を真に克服する道ではなくして、最もイージーゴーイングなインフレへの道となることを憂える点が、第一の理由であります。  第二点は、確固たる将来のビジョンと計画性を持たない安易な国債の発行についてであります。特に国債を含む財政の運営にあたりましては、きびしい財政節度と、それがための制度的な準備が必要であります。しかるに、政府は、減債基金制度の改正はもちろん、何ら全面的な国債管理政策を実施いたしておりません。せいぜい国債担保の貸し出しを日銀も一年間は運用上行なわないという程度の自粛であります。また、福田蔵相は、財政計画は経済全体の動きと関連が深いので、今後七年間を予想して国債償還計画の数字を示すことは困難であり、意味もないと言っておられますけれども、一応それはそのとおりであります。問題は、その七年を通ずる確固たる長期の経済計画がいまの日本政府にないというところにあるわけであります。さらに、われわれの立場からいえば、新しく国債を発行するこの際にこそ、これまでわれわれの主張いたしておりますように、予算制度に根本的な検討を加えまして、新しい予算分類の方式、すなわち一般租税でまかなう経常予算、公債発行をも含む資本予算、福祉予算、この三本立ての予算制度に本格的に取り組むべき時期でありますが、政府は全くこれを無視してまいりました。かくのごとく将来のビジョンも長期の計画性も持たない安易な国債発行が、はたして財政の新時代といえるでありましょうか。ただ借金をふやすだけということでは困るのであります。  私が反対する第三点は、今回の国債が実質的には赤字国債であり、財政法の精神に反することであります。私ども民社党は、不況沈淪の現段階において、建設国債を発行することは必要でもあるし、有益でもあると考えております。したがって、観念的に建設国債の発行そのものに反対しようとは思いません。しかし、赤字公債の発行には断じて賛成することはできないのであります。試みに、今回の予算の実態を見てまいりますと、公共事業関係費の増額は千四百四億円、出資金、貸し付け金の増額は五百二十四億円でありまして、合計約二千億円、これが真の建設国債発行許容額でありまして、残りの約五千億は明らかに実質的には赤字国債であります。また、財政法第五条は、国債の日銀引き受けをかたく禁じておるのであります。これはただに日銀が国債を直接引き受けることを禁止しておるだけではなく、たとえ間接的であっても、実質上日銀がこれを引き受ける場合には、これを禁止しておることは申すまでもありません。また、実際問題といたしまして、今日もしあくまでも市中消化を貫くということになりますならば、いまのように総合的な資金計画が立っていない現状におきましては、必ずや民間経済、なかんずく中小企業の金融を大幅に圧迫することを私どもは心配いたすのであります。さらに、もしまたその中小企業の金融について中小企業が必要とするそれだけの資金、すなわち全体の生産の六割を担当しておる。したがってまた六割までの資金のシェアを与えようということになりますならば、必ずや成長通貨の美名のもとに通貨増発、信用インフレが必至になるほかはないのであります。政府は、国債発行に伴うこうしたジレンマに対して深い反省と理解がなく、したがって対策もないのであります。  第四に私どもが反対をする点は、この予算の中身において、大衆不在、政策不在の無性格予算であるということであります。たとえば税制改正による減税の規模は、平年度三千六十九億円と、一応総額だけをとってみれば、近年にない大きなものになりました。しかし、納税者の九〇%を占める課税所得百万円以下の減税額は、わずかに大体六百億円程度にすぎません。しかも、今年軒並みに引き上げられます公共料金の値上げ総額は、おおむね三千億円をこえるのであります。これでは大衆にとっては実質上大きな増税になることであります。しかも、二千億円をこえる租税特別措置法について、われわれが意図するような根本的な改正は何ら試みようとされておりません。したがいまして、今回の減税ほど、働く庶民にあたたかい思いやりの少ない、不公平な減税はないと断ぜざるを得ないのであります。  次に、目を歳出に向けますならば、たとえば、住宅政策の増額は、わずかに予算において百十六億円であります。生活環境整備に至っては、四十二億円の増額にすぎません。これらを合計いたしましても、国債七千三百億円のわずかに二・二%にしか当たらないのであります。七千三百億円の国債は、一体どこに使われてしまったのでありましょうか。公共事業だ、住宅政策だと、大きな宣伝が行なわれます中で今回の国債発行が行なわれるわけでございますけれども、実質は、いま申しましたように、わずかに住宅政策等には二・二%が回されておるだけでありまして、羊頭狗肉の感を免れないのであります。  一方、農政面からこれを考えてみますと、米つくりが停滞をして、食糧の輸入は二十億円に近づかんとしておりますにもかかわらず、そしてまた、農業の近代化と社会開発、不況克服、物価抑制、いずれも一体でありますが、これが基本的な課題でありますにもかかわらず、政府には、農村に対しまして強い重点施策が見受けられないのであります。四千百億円の農林省予算から食管の千二百億円差し引けば、一体幾らになりましょう。食糧自給率は、八〇%を割って、さらに毎年低下しようとしておるとき、土地改良は遅々として進みません。自立農家の百万戸育成には、おおむね百年を要するだろうといわれ、兼業農家はいよいよふえて、七九%になろうとしておる、この矛盾を一体政府はどう見ておられるのでありましょうか。農家所得は六十六万七千円、おおむね一般国民平均の半分に過ぎず、しかも、その五二%は非農業所得であります。農業基本法は、御承知のごとく、農業従事者の所得をふやすことを基本の目的としているのであります。これでは、農業基本法は政府みずからの手によってその精神を圧殺じゅうりんされつつあると言わなければなりません。中小企業についても、場合は全く同様であり、地方財政の行き詰まりも次第に深刻化するこりを、私どもは憂うるのであります。  最後に、私が反対する第五点は、政府の物価対策に対する誤った姿勢並びにこれが克服のための熱意の不足の問題であります。消費者物価は昨年七・六%も上昇し、卸売り物価に至りましてはこの三カ月間に二・一%も上昇しておる現在こそ、まさにインフレの段階であると言わなければなりません。思うに、政府のインフレ論は、戦前のドイツのごときギャロッピング・インフレーション、かけ足インフレでなければインフレではないというがごとき古い考え方に立っておられるのではないかと思うのであります。しかし、一たびギャロッピングインフレーションが起こったときには、すでに手おくれであります。インフレの現代的姿である忍び寄るインフレ、クリーピング・インフレーションこそ、われわれが政策論議の中で最大の関心を持たなければならない問題であると思うのであります。このクリーピング・インフレーションの過程において、第一に、社会的アンバランスが激化するでありましょう。第二に、国際収支の赤字が激化するでありましょう。第三に、金融政策による景気調節の行き詰まりが考えられるのであります。特に、私はこの際、政府の注意を換起したいことは、卸売り物価の上昇並びにアメリカの景気の動きとドル防衛政策の強化に伴いまして、来年から国際収支が資本収支、貿易収支、いずれも赤字になることが必至である点であります。この時にあたって、政府は、金融を強力にもし引き締めようとするならば、現在以上の不況が再び日本経済を襲うことは避けられません。また、国債は値下がりをして、その場合には、財政の新時代、公債政策が窒息するほかはないのであります。さればといって、その段階で金融をゆるめたままにしておくならば、インフレはいよいよ高進して、しかも、為替相場が一応固定している以上、貿易収支はますます赤字にならざるを得ないのであります。まさに日本経済は進退両難におちいる危険が多いのであります。本予算は、この困難を準備し、むしろ拡大するものであります。  今日のようなこの深刻な不況を前にしまして、佐藤内閣がいろいろと御努力をなさっている御苦心のほどは、これを認めるにやぶさかでありませんけれども、問題は、その指導理念であります。「豊かな社会」の名著をものしましたガルブレイスも言っております。経済の欠陥は、最初に誤りがあったからではなく、陳腐な経済理論を改めないことにあるというのであります。自由経済、過当競争、大企業中心、弱肉強食のこの陳腐な理論と政策にわれわれはいまこそ訣別をして、社会開発、社会改造の正しい理念のもとに、新しき真の民主的な社会秩序、民主的な生産組織を創造するのでなければ、当面の経済危機を乗り切ることはできないと信ずるのであります。  以上の理由によりまして、私は、政府の予算三案に反対し、また、公債その他に関する基本的見解を異にするため、社会党の動議に反対し、民社党の組みかえ動議に賛成して、私の討論を終わります。(拍手)
  307. 福田一

    福田委員長 次に、加藤進君。
  308. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の昭和四十一年度予算三案に反対するものであります。  反対の理由の第一は、かつてみない膨大な予算案が、人民の負担をますます強めながら、国家財政をあげて独占資本に奉仕させる反人民的なものであることであります。  すなわち、本予算案は、いわゆる日米経済協力、高度成長政策の結果として生じた深刻な過剰生産に直面している独占資本に対して、需要と利潤を保証し、アメリカ独占資本の対日進出を一そう推し進めるために、不況対策を口実に、膨大な道路、港湾、国鉄、その他の建設費を計上しているのであります。そして、その財源として、財政法を全くじゅうりんする巨額の赤字公債を発行し、公共料金を相次いで引き上げておるのであります。佐藤内閣の一枚看板としてうたっている住宅建設にしても、そのねらいが、人民の深刻な住宅難にこたえるものではなく、独占資本の不況対策として、関連需要をつくり出すことにあることは言うまでもありません。かくのごとき本予算案に示された財政政策の大転換の及ぼすところは、きわめて重大であります。  政府は、巨額の赤字公債、政府保証債、地方債などの発行を行なっても、なおインフレにはならないと繰り返し強弁しておりましたが、しかし、昭和四十年度の赤字公債の発行でさえ、すでに日銀のオペレーション政策や貸し出し増加による日銀券の増発となり、消費者物価の一そうの高騰となっておる事実によっても、この赤字公債の発行が、インフレを一そう進行させ、人民の生活を一そう悪化させていることは明白であります。しかも、赤字公債の発行は、今後軍需産業の一そうの拡大、戦費調達のための道を切り開いた点で許すことのできないものであります。  反対する第二の理由は、本予算案において、経済協力と称する対外侵略費が、本格的に計上されていることであります。昨年七月、佐藤内閣は、日米貿易経済合同委員会において、アメリカからアジア侵略に協力するために、いわゆる経済援助を一段と強化するよう強く要求されたのであります。このアメリカの方針を忠実に実行しながら、日本独占資本自身も、日本人民の負担において、海外侵略を行なわんとするのが、この経済協力の実体であります。  それだけではありません。さきに佐藤内閣は、ジョンソン大統領の無条件交渉というベトナム侵略戦争拡大のためのペテンと陰謀に進んで協力したばかりか、今回は、国連安保理事会の議長国として、ベトナム侵略戦争を国連の名において正当化しようとするアメリカの破廉恥きわまる策謀の手先となり、その結果、周知のとおり、議長書簡さえ認められないという大醜態を全世界に向かって演じたではありませんか。しかも日韓条約に基づく朴かいらい政権への経済援助を繰り上げ実施して韓国軍の南ベトナム増派に協力するばかりか、近くアメリカの手先でありベトナム人民の裏切り者であるグエン・カオ・キを政府の賓客として招請しようとしておるのであります。このねらいは、アメリカの要望にこたえてかいらい政権を政治的にてこ入れをし、あたかも独立した政府であるかのように日本、ベトナム両国人民に思い込ませ、アメリカの侵略戦争とこれに対する日本政府の積極的協力を合法化しようとする陰険きわまる策謀であって、われわれはこれを断じて許すことができないのであります。  第三に、さらに許しがたいことは、第三次防衛力整備計画の一年繰り上げ実施をはじめとする巨額の軍事費の支出であります。すでに三矢作戦計画や年々行なわれておる軍事演習でも明らかなように、わが国の自衛隊はアメリカのアジア侵略の戦略に従い、その指揮のもとで日米共同作戦を展開するための一部隊であります。この経費を日本人民に負担させ、またこれによって日本の軍需産業に利潤を保証するがごときは、断じて認められないのであります。その上、佐藤内閣は、本委員会においてわが国がアメリカの核戦略に参加することさえ日米安全保障条約による当然の義務であると公言してはばからず、また、アメリカの原子力潜水鑑のみならず、原子力鑑隊の基地化を許すなど、わが国を全くアメリカのアジア侵略戦争の一大前進基地としておるのであります。特に最近に至って、国連協力の美名のもとに危険きわまる自衛隊の海外派兵さえたくらんでおるのであります。そうして、その一方では、小選挙区制の実施を急ぎ、自民党の一党独裁による軍国主義体制の確立を目ざし、憲法改悪をさえたくらんでおるのであります。  このように反動的性格を持つかつてない膨大な予算であればこそ、勤労人民には一そうの重税を課しながら、人民が要求する経費はこれを極力圧縮しております。労働者に対しては低賃金、首切り合理化を強制し、社会保障制度を改悪し、農業、中小企業を一そう破壊し、また地方財政を極度に悪化させているのであります。特に指摘しなければならないのは、佐藤内閣のいわゆる物価安定政策なるものが一方では独占資本の集中合併、カルテル強化などを推進し、公共料金など物価を引き上げながら、他方では賃金と物価の悪循環を押えると称して労働者の切実な賃金の大幅引き上げの要求を抑圧し、低生産部門や流通機構近代化の口実のもとに農業、中小企業の大規模な切り捨てと独占資本の支配強化を目ざしていることであります。  以上のように、佐藤内閣は本予算案によってわが国を一そうアメリカに従属させ、危険な軍国主義復活と対外侵略の道に向かって一段と推し進めるものであり、わが民族の運命を危うくし、アジアと世界の平和を脅かし、日本人民の生活をいよいよ困難におとしいれるものであることは、もはや明白であります。よって、日本共産党は、かかる予算案に絶対に反対するものであります。  なお、民主社会党の予算組みかえ案は、政府案と本質的には変わらないものでありまして、これには反対の意を表明するものであります。  日本社会党の組みかえ案についても、人民の要望に十分にこたえるものとは言い得ないという点で賛成しがたいものであります。  以上をもって反対討論を終わります。
  309. 福田一

    福田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、川俣清音君外十四名提出の昭和四十一年度総予算につき撤回のうえ経済財政政策を転換し編成替えすることを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  310. 福田一

    福田委員長 起立少数。よって、川俣清音君外十四名提出の動議は否決されました。  次に、小平忠君外二名提出の昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算及び昭和四十一年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  311. 福田一

    福田委員長 起立少数。よって、小平忠君外二名提出の動議は否決されました。  これより昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  312. 福田一

    福田委員長 起立多数。よって、昭和四十一年度総予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、おはかりいたします。委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  313. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。   〔報告書は附録に掲載〕
  314. 福田一

    福田委員長 これにて昭和四十一年度総予算に関する議事は全部終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  去る二月四日総予算の審査を開始いたしまして以来、終始真摯なる論議を重ね、慎重な審議を尽くし、本日ここに円満に審査を終了するに至りました。このことはひとえに委員各位の御理解ある御協力のたまものでありまして、委員長といたしまして衷心より感謝にたえないところであります。ここに、連日の審査に精励されました委員各位の御労苦に対し深く敬意を表し、ごあいさつを申し上げる次第でございます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十七分散会