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1966-02-16 第51回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十六日(水曜日)    午前十時二十分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒舩清十郎君    井出一太郎君       今松 治郎君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       大橋 武夫君    上林山榮吉君       川崎 秀二君    倉成  正君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       登坂重次郎君    丹羽 兵助君       西村 直己君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    古井 喜貴君       松浦周太郎君    三原 朝雄君       水田三喜男君    湊  徹郎君       大原  亨君    加藤 清二君       勝間田清一君    角屋堅次郎君       小松  幹君    多賀谷真稔君       高田 富之君    中澤 茂一君       八木  昇君    山中 吾郎君       山花 秀雄君    竹本 孫一君       吉田 賢一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府事務官         (総理府特別地         域連絡局長)  山野 幸吉君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  井原 敏之君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  鹿野 義夫君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     齋藤  正君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸澤 政方君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      中原龍之助君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚 生 技 官         (医務局長)  若松 栄一君         厚生事務官         (医務局次長) 渥美 節夫君         厚生事務官         (社会局長)  今村  譲君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (年金局長)  伊部 英男君         厚生事務官         (援護局長)  実本 博次君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  小林 誠一君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 久宗  高君         食糧庁長官   武田 誠三君         林野庁長官   田中 重五君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (鉱山局長)  大慈彌嘉久君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      熊谷 典文君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      堀  武夫君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  原山 亮三君         郵政事務官         (貯金局長)  稲増 久義君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      武田  功君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     上原誠之輔君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建設事務官         (計画局長)  志村 清一君         建 設 技 官         (住宅局長)  尚   明君         自治事務官         (大臣官房会計         課長)     芦田 一良君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十六日  委員灘尾弘吉君、岡本隆一君、田中武夫君、楢  崎弥之助君、安井吉典君及び永末英一辞任に  つき、その補欠として湊徹郎君、永井勝次郎君、  多賀谷真稔君、山花秀雄君、勝間田清一君及び  吉田賢一君が議長指名委員に選任された。 同日  湊徹郎辞任につき、その補欠として灘尾弘吉  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第3号)      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第3号)を議題とし、審査を進めます。  提案趣旨はすでに聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 審議に入る前に、委員長一つ予算関係法案をいま法制局審議中のものがたくさんあるようでございます。   〔発言する者あり〕
  4. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  5. 川俣清音

    川俣委員 法案で出されているものもございますが、さらに十八日あるいは二十五日という予定のものもございます。私ども予算関係法案をあえてここへ要求いたしましたのは、予算の前提となる法律案がいつ出てくるかわからないということでは審議ができないから、予算関係法案を早く提出するように、並びにその用意のあるところを示すようにということを再三要求しておるわけでございます。そこで、法制局審議中の予算関係法案は何件あるか、これによって審議が進められると思いますので、御報告を願いたい。
  6. 高辻正巳

    高辻政府委員 予算関係法律案進捗状況につきまして御注意をいただきまして、まことに恐縮に存じます。  法制当局といたしましては、十数名の参事官が夜に日を継いで審議を急ぎまして、昨十五日をもちまして六十一件が閣議決定の運びとなりました。そのらち三十九件は国会提出済みでございます。今国会における予算関係法律案提出予定件数は七十一件でありますので、ただいまの計算でなお十件が残っているわけでございます。私どもといたしましては、極力調整を急ぎまして、すみやかに閣議決定の上国会提出することができますよら、ざらに格段の努力、最善の努力をいたしたいと存じております。
  7. 川俣清音

    川俣委員 総理大臣にお尋ねしておきますが、前例から見ますれば、必ずしも悪い成績ではございませんけれども予算を十分審議するというためには、先行すべき法律案を出されておらないとこの審議ができないわけです。大臣御承知のとおりです。相当スピードが上がっておりましょう、御注意を申し上げたので相当努力を払っていることは認めますけれども、まだ二十五日でなければ出てこない法案もあるようです。あるいは月末になるのもあるようでございます。それでは予算審議を促進してほしいというのがほんとうなのか、ブレーキをかけておられるのがほんとうなのか、まことに疑わしいのです。総理の決意をお伺いしておきたいと思うのです。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま法制局長官がお答上えいたしましたように、あと十件ばかり残っている。私は、今回のこの国会では法律案はよく出そろっておると思います。もちろん、過去の成績等に比べればややいいように思っておりますが、しかし御指摘もございますし、また御審議をいただく上に当然これらの点は必要でございますから、  一そう努力いたしまして御要望に沿うようにいたします。問題は、やはり政府自身予算提案権を持っておりますので、御審議を願う場合に、国会においてその裏づけの法律案がないということは、いかにも片手落ちのような気がいたしますから、今後とも注意してまいるつもりでおります。
  9. 川俣清音

    川俣委員 私は、もう一つ審議に入る前に、全日空のジェット機が不幸な遭難にあいまして、遺体がまだ全部揚がらないということで、遺族はもちろんのこと、国民も非常な注目をしておるところでございます。まことに哀悼にたえないのでございます。国会におきましても、この遭難事件につきましては、非常な関心を持って政府を鞭撻し、特に運輸省に対しまして強くこの対策を要求いたしておるのが国会意思であると存じます。  ところが、全日空機遺体の全部の引き揚げもまだ完了しない間に、しかも多くの努力を払って、自衛隊をはじめ一般の民間の漁船もこれに協力をして遺体引き揚げに、あるいは原因究明に奔走しておるときに、遭難本部本部長である運輸大臣が、国会開会中にもかかわらず、九州の水俣市長選挙に応援に行かれたということでございます。こういうことは私はないのじゃないかと思うのでありますけれども一体ほんとう国会開会中に、しかも審議を急いでほしいという政府要望がありますので、私どもも全力をあげて審議をいたしておりますときに、そういうことが一体あったのですか、私はないのだろうと思うのですけれども、この点いかがですか。おそらく、行かれるからには、総理の御了承を得て行かれたと思いますけれども総理大臣一体こういうときに了承を与えたのかどうか、この点もあわせてお尋ねしたいと思います。
  10. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 私は、日曜に自分郷里に用事があって行きましたついでに、自民党の水俣支部の総会に出席したのでございます。
  11. 川俣清音

    川俣委員 それでは全日空引き揚げは日曜は休むのですか。あなたが督励して遺体引き揚げを命じて、努力を払っておる、日曜は休みなんですか。遭難本部長じゃないですか。本部長ですよ。単なる閣僚ではないのですよ。たとえ郷里であろうとも、何か特別な事情が起こった場合は別でしょう。あなたの親戚に不幸でも起きたというような場合は、あるいは病人ができたというような場合に見舞いに行かなければならないということになれば、これは私もやむを得ないと思います。しかしながら、国民がみんな非常な努力を払っておる、しかも非常に関心を持っておるときに、あの寒い中で水中に入って作業をしておる者を、日曜だから休んでもいいのだなどという、本部長がそういう考えでありますなら、それじゃ休ませなざい。人には、日曜であろうと何であろうと早く引き揚げてくれということを頼みながら、頼んだ本人が、日曜だから差しつかえないのだなどとうらような考え方をされることはどうかと思うのです。われわれは、あえて日曜でも国会審議に応じなければならぬということで待機しておるのですよ。本気ですよ。それは日曜は休むというなら、あらためて総理、日曜でも休む、土曜日は休む、こういうことになるならば、あえてこれは問題にしません。理事の間において日曜も最終にはやってもらわなければならないということをわれわれに、非公式でありますけれども話をした。委員長も、そういう場合もあるかもしらぬからということをわれわれに注意を与え、関心を呼んで、そして待機さしておるのですよ。これは何です。一体。あたりまえのことを言うなら、予算委員会も五時になったらもうやめますよ。人には、人ばかりでなく、国会あげて本予算審議に当たっておるときに、日曜だから——われわれ日曜でも郷里に帰れない。帰らずにおるじゃないですか。(「いいから、いいから」と呼ぶ者あり)いいからじゃないですよ。帰らないでおるのです。日曜でも連絡してやらなければ月曜日の審議が順調にいかないのですよ。そのために努力をしておるのですよ。日曜だからいいなんていうことばは私は許せない。運輸大臣の御答弁を願いたい。
  12. 橋本登美三郎

    橋本政府委員 ただいまの川俣さんのお話、実は運輸大臣用務で日曜日に出張することを了承を与えたのは私でございますが、その点、川俣さんがおっしゃるように、種々の観点からいろいろの事情を十分に了察せずして私が了承を与えたという点において、私もまことに遺憾の点がありますが、用務のために行かれるということでありますので、形式上大臣の出張の場合は官房長官了承を得るということになっておるので、私が了承を与えましたので、その点は、今後とも十分に注意して、了承を与えることについては慎重なる態度をとろうと思いますので、御了承を願いたいと思います。
  13. 川俣清音

    川俣委員 遭難本部長として、日曜こそさいて現地を督励しなければならないであろうと思うのです。国会審議中であるから日曜はさいて督励をする。みずから陣頭に立つということがあってしかるべきなんです。日曜は休みという考え方はどこから出てくるのですか。これは審議日程の中に入っておるのですよ、日曜も。いや、日曜は休むとか、土曜日の午後はやらないということであるならば、私どももそれで了承しますよ。野党に一体協力を求めておりながら、日曜だから、土曜日の午後だから休むということであるならば、もっと早く予算を出されたらどうですか。補正予算案でももっと早く出されたらどうですか。しかも、補正予算運輸省の所管に関するものが大きな問題なんですよ。それが軸になっているのです。私は、中村運輸大臣の良識を疑いますよ。本部長なんか即時やめなさい。本部長の資格がないですよ。ほんとうに気の毒な遺族に対して、心から哀悼の意を表されるならば、日曜だから、そのときにこそ遺族を訪問される等、あるいは遭難究明に当たられることが必要じゃないか。それが本部長の任務ではないかと思うのです。もう一度この点をお伺いして予算審議に入りたいと思います。そういう閣僚が並んでいる限り審議に入れませんよ。
  14. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 川俣議員の御忠告、身にしっかり抱きまして今後注意をして、再び御忠告を受けることのないようにつとめてまいりたいと思います。
  15. 川俣清音

    川俣委員 委員長にも御注意申し上げます。  委員長みずから理事会を運営して、そうして促進をあなたが要請されておるじゃないですか、土曜日もやってほしいし、時間を延長してもやってほしいという熱烈な要望をもってこの委員会を運営されておるはずでございます。私どもはそれを理解して協力をいたしておるはずでございます。こうした私ども協力が不必要ならば、委員長、あえてここで答弁をしてください。そうでなければ、政府に対して委員長としてのもっと強い意思表示をしていただかなければならないと思うのです。この点、明確にひとつ委員長、この委員会を通じて明らかにしてほしいと思うのです。
  16. 福田一

    福田委員長 ただいまの川俣議員の御提案でございますが、政府十分連絡をとって、川俣先生のおっしゃるように処理をいたしてまいりたいと思います。
  17. 川俣清音

    川俣委員 予算委員会審議中は、委員長許可なしには、了解なしにはやはり旅行などはしない。東京から離れないということが、私は審議を促進してほしいという政府の全体の意思でなければならぬと思うのです。連絡もつかないところまで行き、審議を促進するに妨害になるような行為に対しては厳重な制肘を加えなければ、委員に向かって促進してくれというような要請委員長からできない羽目におちいるのじゃないかと思うのです。これだけはひとつ厳重に、委員長も厳格な態度をとっていただかなければ、われわれは喜んで御協力するわけにはいかないことを明らかにいたしまするし、総理から、遺憾なことであった、こういうことは今後いたしませんなんということでなく、予算案審議中であるという、しかも強い要請ですみやかに御審議を願いたいという態度をとっておりながら、一番審議中心になる、補正予算中心になる大臣旅行するというようなことは、この内閣全体として大いに関心を持たなければならぬ問題だと思います。これは総理、どうもうかつに許可を与えたかどうか存じません。あるいは官房長官がかってにやったかもしれませんけれども大蔵大臣も、いま審議中であるから、閣議等におきましては閣議了解なしには旅行はしないという態度をとってもらわなければならぬと思うのです。これは一官房長官だけじゃだめですよ、閣議全体としての予算提出ですから。提出者が、日曜だからなんということで留守になるなんということは、厳に戒めなければならぬと同時に、これは陳謝しなければならぬのです。大蔵大臣自分提案をしておいて、提案の幕僚がいないなんということでは、すみやかに御審議願いますなんという福田さんの声がうそに聞こえますよ。大蔵大臣、ひとつここで御答弁願います。
  18. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今後といえども精励いたします。
  19. 川俣清音

    川俣委員 今後といえどもでなく、いままであったことについては、これは陳謝をし、反省しなければだめなんですよ。あやまったことは反省しなさいよ。反省するということが将来やりませんということになる。反省もしないで、将来やりませんということは再び繰り返すことになるから……。(「反省している」と呼ぶ者あり)反省意思が明らかでないもの……。
  20. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 川俣委員のおっしゃること、まことにごもっともでございまして、私どもも精励いたしますから、何とぞ一刻もすみやかに御審議あらんことをお願い申し上げます。
  21. 川俣清音

    川俣委員 それでは審議に入りたいと思います。  しかし、こういうときにはどこへ一体質問が発展するかわからぬということで、用意しながら準備をしていただきたいと存じます。  昨日までの委員会におきまして、いわゆる固定資産税について、経済事情変動あるいは地方財政の窮迫の状態からして、法律上は非常に無理があるけれども、あえて今年から、四十一年から増税をするもので、せざるを得ない。いい方法じゃないけれども、やむを得ない処置だということが自治大臣から述べられておるわけでございます。総理大臣もまた、これはやむを得ない処置だと、おくればせながら地方税法改正法律案を出して御審議を願うのであるから御了承願いたいということでございました。これは十八日まで懸案になっておりますが、そこでお尋ねしなければならぬのは、大蔵大臣各省大臣、いずれも同様でございましょうが、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律というのがございますね。各省大臣みな国有財産管理者でありますだけに、各大臣みな御存じのはずです。今度の交付金状態納付金状態予算書で拝見すると、大体前年同様の要求をいたしております。ある省のごときは、わざわざ資料を求めたところ、従来どおり、前年どおりであやまちがないと思いますので、前年どおり予算要求をいたしております。固定資産税が増額になるなんてこと存じませんでしたので、前年どおり要請をいたしておりますという答弁、これは公式答弁じゃございませんけれども資料要求いたしまして、増税になるんだそうだが、一体なぜ前年どおりか、面積でも減ったのか、対象物件が減ったのか。いや、前年と変わりありません。前年どおり大蔵省はそのように査定をいたしましたと、こうなっている。一方においては、民間のほうに対しては、増税の必要がある、経済事情変動に基づいて地方財政の健全のためにも増税の必要があるのだ、こう言う。これは、国有財産も、あるいは行政財産も、税のかわりに交付金あるいは納付金をもって代弁するというのがこの法律の本則なんです。市町村土地台帳に基づいて、評価台帳に基づいて支払うということになっておる。土地台帳が変わる、評価が変われば、当然交付金納付金もまた変わらなければならぬはずでございます。これはどっちなんです。どっちがほんとうなんです。増税するというほうがほんとうなんですか。しないという予算要求をしているほうがほんとうなんですか。どっちなんです。予算書の誤謬ですか。この点明らかにしてもらいたいと思います。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 固定資産税調整をいたすということもほんとうでありますし、また基地交付金対象となる国有財産評価がえをいたさなかったというのも、これも正しいやり方なんであります。つまり固定資産税基地交付金は、これはその沿革において同じような趣旨を持っておりますが、しかし、その評価やり方が一緒じゃないのであります。固定資産税地方税法でその評価方法がきめられておりますが、基地交付金につきましては、国有財産法施行令におきまして、五年ごとに価格の評定をする。その五年目が昭和四十一年の三月三十一日に到来するわけでございます。この時点で評価がえをいたします。その評価の結果は、昭和四十二年度予算にこれを基地交付金の増額として計上する、こういう予定に相なっておるわけであります。−ただいま基地交付金と申し上げましたが、市町村納付金の誤まりでありましたから訂正いたします。
  23. 川俣清音

    川俣委員 大蔵大臣は大蔵省におっとめであったから全体のことは大体おわかりになっていなければならぬと思います。国有林野特別会計におきましては、所在町村の土地台帳評価をもって支払う、こういう規定になっております。評価がえがあれば払うという、したがって義務づけられた法律をみずから持っておる。みずからを規制しておるわけです。このことは御存じないですか。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それでは政府委員がお答え申し上げます。
  25. 細郷道一

    細郷政府委員 お答え申し上げます。  交納付金につきましては、交付金は、国有財産または地方団体が所有しております公有財産のうち、貸し付けをいたしておりますものについて、その所在の市町村固定資産税相当額の交付金を交付する、こういうことになっております。その場合の課税標準となりますものは、それぞれの国有財産の台帳価格であり、あるいは公有財産の台帳価格、こういうことになっております。その価格は五年ごとに改定をするということで、ただいま大蔵大臣からお答え申し上げましたように、この三月三十一日がちょうど五年目に当たりますので、この三月三十一日に一般の評価をも見ながら改定をする、こういうことでございます。ただし、御承知のように、その交付金自体は翌年度の交付金になりますので、との三月三十一日に改定になりましても、それが交付金としてあらわれてまいりますのは四十二年度以降ということになるわけでございます。
  26. 川俣清音

    川俣委員 農林大臣にお尋ねしたいのですが、農林省告示第四百三十六号、国有林野所在市町村交付金交付規程というものがございますね。これによると、評価がえが行なわれれば支払うという規定になっておる。これは農林省の告示ですよ。昭和二十六年十一月三十日の農林省告示四百三十六号の交付金交付規程というものをみずからつくっておる。これで支払いますという告示をしておるじゃないですか。なぜ告示どおりおやりにならないのですか。農林大臣みずから告示を否定されるのですか。
  27. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この国有林の問題について、市町村に対する交付税ですが、これはいろいろ固定資産税の関係も見まして、今年は二二%の増額をいたしておるわけでございます。
  28. 川俣清音

    川俣委員 細々ながら確かにことしは八億三千万くらいな交付金が——去年は六億幾らでしたか、資料を見ればわかりますけれども、確かに国有林野だけは増額はしておる。面積は少しふえております。面積というよりも、地目の種別がちょっと変わってきておって、ふえておる点もございます。そのことは別にいたしまして、みずから規定をつくっておって、この規定で支払われるものとして、市町村は財政計画の中にも、この規定に準じて——みずからの帳簿ですから想定ができるわけですから、これで予算計上をいたしておるはずでございます。四十一年度としてそれを要求するはずであります。特別会計だから余裕がございましょう。あるいは予備金も持っておりますから余裕がございましょうけれども、みずから規定をつくりながら、みずからの規定に従わないというようなことでありますなら、農林省の告示とか訓示というものは何も力がないじゃないですか。農林省みずからが告示をしておいて、あるいは訓示をしておいて、農林省がみずからそれに従わないというようなことでは、これは農林省の信用を失墜すると思う。一体、なぜ予算要求のときにこの点を強く主張しなかったのですか。
  29. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 これは、川俣委員もよく内容は御存じのことであるので、時間の関係もありますから詳しく申していないのでございますが、国有林の会計は、ここ十数年になりますか、だんだんと悪くなりまして、このごろは非常に窮屈に相なっております。したがって、今年のごときは、普通の予算は横ばいでありますが、この交付金の問題だけは、そういういろいろの問題もございますから、これは精一ぱい努力をしたのでございまして、関係の市町村ともよく話し合いをいたしてここへ持ってきたようなわけで、特別の努力をしたつもりでおるわけでございます。
  30. 川俣清音

    川俣委員 農林大臣、農林大臣の所管の国有財産は林野庁だけではないのですよ。確かに林野特別会計では、正確に言うと昨年は六億八千万円、ことしは八億三千三百万円の交付金を用意をいたしております。農林省は国有財産をもっと持っておるじゃありませんか。それは去年と同じですよ。時間がありませんからこれは読み上げません。農林省で一番大きい、まとまったのは国有林財産であるから、これを取り上げただけです。自作農の特別会計の予算交付金対象にならないものもありますけれども対象になるものでありながら昨年同様の予算要求になっている。大蔵省の査定もまた増額というようなことになりますと、大蔵省は目の色を変えますけれども、人から取るときは増税だ、払うときは従来どおりだというような予算編成、これは忠実な予算編成であるといわれますか。金額が小さい——受けるものから言えば、町村から言うならば、町村財政の逼迫したおりから増税もやむを得ない。経済事情の変遷にしたがって改正しなければならない、こういうならば、これもまた見落としてはならないはずじゃないですか。大蔵大臣の御答弁を願いたい。
  31. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政の支出も収入も両々とも適切でなければならない、かように考えます。ただいま御指摘の国有林の評価が適正であるかどうか、私もその点につきましてはまだよく承知しておりませんので、必要があれば事務当局からお答え申し上げます。
  32. 川俣清音

    川俣委員 国有林は規定に基づいて予算計上をしておりますから、問題は薄いと思います。しかし、農林省は国有林だけじゃないです。農地も持っておりますし、あるいは開拓地等のまだ未還付のものも持っておりますし、あるいは農地とは別に宅地も持っておる。農地に付属した宅地も持っておる。原野も持っておれば山林も持っておる。国有林野の山林でなくして自作農創設維持法の所管にかかわる山林も持っておるわけです。これはみな評価がえが行なわれておるわけです。それに対して要求は去年どおりだ、こう言うから、私はあえて農林大臣にお尋ねをした。国有林は確かにほかの国有財産と違って所在町村に大幅に増額しておることは認めます。それでいながら、農林省全体から見ると、去年どおりなものもございます。それでは農林省の予算要求が妥当なものとは言いがたい。大蔵省の査定もまた、一方において固定資産税については増税をする用意であるから、検討を加えるように命ずることは大蔵省の査定の基準でなければならぬはずだと思う。この予算書を見てごらんなさい。そういう検討が一つも加わっていないじゃないですか。御答弁願いたい。
  33. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えしますが、国有林野については、いま申しましたようなわけでございますが、その他の雑多なものにつきましては、大蔵省、自治省の方針に従っておるわけでございます。
  34. 川俣清音

    川俣委員 国有林野以外は大蔵省及び自治省の方針に従っておる、こういう明快な答弁です。ところが、きのうは自治大臣は、地方財政の逼迫のおりから経済事情の変遷に基づいて税の公平の点から言っても増税をせざるを得ません。やむを得ずやらざるを得ません。こういう答弁です。大蔵大臣もこれに同意を与えた。いま農林大臣答弁は何です。大蔵省及び自治省の了解を得た。どっちの了解を与えたのですか。増税をすることに了解を与えたのか。しないということに了解を与えたのか。自治大臣、御答弁願います。
  35. 永山忠則

    ○永山国務大臣 私が答弁いたしまして、詳細は局長からお聞き取りをお願いいたします。  国有財産のほうは本年度改定になりますので、適正価格に価格評価をしていただくように考えております。  それから国有林野は、お説のように普通五千万円上げということでございましたが、特にことしは多く一億上げていただくようにいたしておるのでございます。詳細はひとつ局長からお聞き取りを願います。
  36. 川俣清音

    川俣委員 自治大臣、ちょっと待ってください。今日審議しておるのは、四十一年度の予算並びに補正予算です。来年、四十一年度から上げれば、当然これは予算書に出てこなければならない。四十一年度の予算審議をしているのですよ。
  37. 永山忠則

    ○永山国務大臣 これは、規定によりまして、ことし台帳の価格を上げるといたしますね。そうすると来年度から増税になる、上げた分だけ多く取れるようになるという規定になっておるのでございます。したがって、本年はそのままになるわけです。四十一年度に価格改定をいたします。したがいまして、四十二年度からその改定に応じて地方へ入ってくることになるのであります。
  38. 川俣清音

    川俣委員 自治大臣、それでは増税のほうも、いわゆる評価がえの結果増税になる分は、四十一年度はやらない、実施は四十二年度になる、こういう説明のようにも承るのであります。ところが評価がえによる増税は、四十一年度の予算にもう見込んでおります。国が支払う国有財産のほうは四十二年度から実施するんだ。民間から取り上げる国民の直接負担になるものは四十一年から取るんだ、国の支払いのほうは四十二年から実施するんだという御答弁であったのでは、税の公平を期するなんということはできないじゃないですか。
  39. 永山忠則

    ○永山国務大臣 固定資産税は、三十九年度に評価がえをいたしておるのでございます。ところが、それに応じて取りますと、非常に負担が多くなりますので、一律二割にいたして、その評価がえに即応した税金を取っていないのでございます。したがいまして、本年は漸進的に多少調整をしようかということにいたしておるのでございます。
  40. 川俣清音

    川俣委員 いよいよこれは答弁にならない。三十九年に評価がえをしたので、国有林野のほうは、この評価がえに従って六億八千万から八億三千万に増額をして交付金を支払うことになっておる。評価がえをそのまま実行すれば、こういう国有林野のような交付金にならざるを得ないわけなんです。同じ農林省でありながら、国有林野のほうは評価がえに基づいて交付金要求をしておる。ほかのものは自治省、大蔵省と打ち合わせて来年からのつもりでおります。こういう答弁じゃないですか。合わないじゃないですか。あなたはどっちに指導したのかと大臣に聞いておる。
  41. 永山忠則

    ○永山国務大臣 国有林野の関係はわかりませんから、局長からひとつ一応お聞き取り下さいまして……(川俣委員「ほかの国有林はどうなっておるか」と呼ぶ)国有林野の関係は、大体奥地の関係と、そして民有林は非常に里に近いものですから、その評価がえに関していろいろ論議がございまして、非常に少ないのではないかということを言われておりましたので、大体三十九年度かと思いますが、二億円上げようということになりまして、五千万ずつ上げていたのを、非常に税金が少ないということを補正しようということに従ってやっておるわけであります。それから今度一般の分は、三十九年度に評価がえをいたしたのですが、国有財産は五年目ですから、ことし評価がえをする年になっておるわけであります。その評価がえをする年が違う関係上、やはり税の受け入れ方にズレがあるということになるわけでありますが、詳細はひとつ局長からお聞き取りを願いたいと存じます。
  42. 川俣清音

    川俣委員 いま農林大臣は、国有林以外のものについては大蔵省並びに自治省の指導を受けて去年どおり予算要求になっておる、こういう説明なんです。調査の台帳は、三十九年に台帳をかえて評価がえをしたわけですね。それに基づいて国有林のほうは、規定どおりその評価がえに従って交付金を増額をした。一般のほうは、そういうみずからの規定を持っていないために、大蔵省やあるいは自治省の指導を受けて、評価がえはできておるかもしらぬけれども交付金はそのまま四十一年度の予算としておる、こういう答弁なんですよ。だから、自治省はどう指導したのか。
  43. 細郷道一

    細郷政府委員 制度的なことでございますので、私から先にお答えさせていただきます。  先ほども御説明申し上げましたように、国有財産市町村交付金につきましては、国あるいは地方団体が一般に貸し付けをしております財産、たとえば公務員公舎であるとかいったようなものにつきまして、所在の市町村に、台帳価格を基準にして固定資産税がわりのものを交付する、こういう仕組みになっております。その台帳価格は五年ごとに改定をするということでございまして、今度の改定期はこの三月三十一日でございます。この課税標準につきましては、この三月三十一日の価格が翌年度四十二年度の交付金の算定の基礎になるわけでございます。したがいまして、今度改定をいたしますものは、四十二年度以降にあらわれるわけでございます。先ほど農林省の関係でございました交付金の中で、一つは国有林野の問題でございますが、これは、従来からアンバランスでないかといういろいろ御指摘がございまして、ここ三年間を通じまして、先ほどお答えがありましたような増額をいたして均衡化をはかったわけでございます。それ以外のものにつきましては、一般の国有財産でございますので、四十一年度は四十年三月三十一日の帳簿価格によりますので、五年間据え置きという姿になっておるものでございます。なお、固定資産税につきましては、三年ごとに評価がえをするということで、三十九年に評価がえをいたしました結果は、先ほど自治大臣から申し上げたとおりでございます。したがいまして、農林省のみならず各省、各庁の長は、交付金につきましては、法律は自治省の所管しております法律に従い、それによって予算上は大蔵省の予算の仕事として、それぞれ連携をとってやっておる、こういう意味で申し上げたものと存じます。
  44. 川俣清音

    川俣委員 みずから答弁しておいて、答弁のとおりやっておらない。国定資産税については、自治大臣のきのうの答弁総理大臣の裏づけも、地方財政の逼迫のおりから、経済事情の変遷もあり、税の公平な負担からしても増税に踏み切らざるを得ませんでしたと、こういう答弁でしょう。それならば、附則に基づいて実施できないのをあえて、遺憾なことではあるけれどもせざるを得なかった、こう言うからには、交付金についてもまたその例をとらなければならぬはずだ、こういう質問をしておるのです。支払い義務のあるほうは国だからといって——あえてあなた方は、税の公平を期する上から、負担の公平を期する上から、経済事情の変遷に基づいて、四十二年から実施しなければならぬのだけれども、やむを得ず繰り上げてやらざるを得ませんでしたと、こういう答弁なんでしょう。それを取り消されるならば別ですよ。まことに遺憾なことであるけれども、やむを得ずこういう処置をとらざるを得ませんでしたと、こう言うなら、それならば、国有財産におきましても、やむを得ずでない、見ならいをいたしまして、地方財政の逼迫のおりから、——ことに町村等にしても貧弱町村が多い、そこで、これを当てにして毎年予算を組んでおることは、これは自治省よく御存じのとおりなのです。必ず予算項目の中には、国有財産交付金というものを予算の頭に入れて地方財政は組まれておるのじゃないですか。単に国民固定資産税ばかりじゃなく、国から交付される固定資産税に見合うものを期待をいたしておるのです。中には国有地が多くして、税の対象になる民有地が少ない町村もあるぐらいですよ。したがって、国の交付金に期待するところが非常に大きいのです。国の支払いのほうは四十二年からだ、法律に基づいて四十二年からだ、個々の国民の税は、やむを得ず、残念なことでございますが、遺憾なことであるけれども、一年早く取り立てますなんてことがどうしてできるのです。憲法からいいましても、法律によらなければ税は取り立てることができないのです。あえて町村財政の逼迫のおりから、税の公平を期するために増税に踏み切ったというからには、所在国有財産についても同様な処置をとられなければならぬはずだと思う。これは総理一番よくわかるですね。自治省あたりは自分がやったことですから責任逃がれしますが、総理どうですか、聞いておって。御答弁願いたい。
  45. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 問題が二つに分かれるのであります。つまり農林省所管と申しますと、国有林の問題と、それからその他の一般国有財産と、こういうことかと思うのであります。一般国有財産につきましては、先ほど申し上げましたように、五年目五年目にその価格を改定する。ことしその五年目に当たるわけでありまして、ことしの三月三十一日を基準といたしまして価額の改定をする。しかし、固定資産の評価は、あるいは一割増し、あるいは二割増し、三割増しと、こういっておる。もうきまっておる。それを一割掛けるのと違いまして、価格の評定を実際問題としてやるわけであります。そういう関係で時間も多少かかります。そこで価格改定は、評価がえは三月三十一日付でやりますが、これに基づく交付措置は四十二年度になる、これはどうしてもそうならざるを得ないので、やむを得ないのでありまして、御了承願えると思うのであります。  それからもう一つの、国有林野の関係でございますが、これは五年目五年目の原則に必ずしもよらぬでよろしい、こういうことになっておりますので、自治省も相当がんばりまして、昭和四十一年度の予算では、四十年度では六億八千万であったそれを八億三千万円に引き上げておる、こういう努力をいたしておるわけでありまして、まさに川俣委員のおっしゃるような方向で努力をいたしておるものでございます。
  46. 川俣清音

    川俣委員 固定資産の評価については、なかなかやっかいなものであるから、その評価がえは非常に困難だ、手数を要する、時間を要するという御答弁でございます。さもあるべきだろうと思います。それならば、評価がえによって増税をするということもなかなか査定が困難なはずなのです。これは民間の所有者の査定じゃないのですね。土地台帳評価の査定ですから、民有地も同じ査定なのです。個人の財産の査定でなくて、所在する地域の査定、地目の査定なんです。何町村の大字何番地は幾ら幾らに評価するという評価なのです。
  47. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま申し上げましたように、固定資産税のほうはすでに評価が済んでおって、それを一割また二割三割増していこう、こういうものであって、もう自動的に出てくるのであります。手間ひまは要りませんのでございます。
  48. 川俣清音

    川俣委員 そのとおりなのです。非常に手間がかかるということであれば増税のほうも困難であろうし、あるいは交付税のほうも困難だ、こういうことになりますけれども評価という点については民有地、国有地を問わないので、大字何番地、地目宅地、あるいは山林、原野、その評価ですから、したがってこの適用を受けるのは、国有地であろうと民有地であろうと評価が行なわれるわけでございます。所有権の移動があれば、移動者にかけるのではなくして、その地目その面積にかかるものでございますこと御承知のとおりなのです。したがって、交付金もまたそれにならって交付せらるべきものなのです。これは、町村は国から来るという感じはしておりません。当然固定資産税としての欠陥を交付金によって合わせよう、こういう考え方で町村財政が行なわれておるでしょう。これは御存じのとおりなんです。町村内に存在する土地に対する税金が不足になるために、民有地だとすぐ税金の対象にできるけれども国有財産についてはこれに課税することができないために、固定資産税の見返りとして交付金が交付されるものとして、いままで地方財政はそういう計画のもとに行なわれておる。ある町村は、国有財産がないところは、課税対象になって町村財政は豊かになるかもしれません。そういうことで増税に踏み切った、こういうことでございますから、それであるならば、国有財産につきましても同様に、地方財政逼迫のおりから、税の公平の負担の均衡をはかる上から、経済事情の変遷に応じて処置されなければ一貫しないじゃないですか。これはいずれ十八日までに解決しなければならぬ問題でありますけれども、きのうあまり強弁し過ぎたのです。強弁すると、こういう落とし穴にかかることを考えないで盛んに強弁するから、みずから自治大臣は墓穴を掘ったような結果になった。どっちか調整していかなければならぬ。きのうあまりに抗弁しすぎたでしょう。抗弁どおりいくというと、交付金もまた増額せざるを得ない答弁になってくる。だから、増税をやめるか、やめるならこれは別ですよ。支払わなければならぬ、町村財政に寄与しなければならぬ国の義務は怠っておいて、越権にも法律に反してもやむを得ず増税をいたしますというからには、国もみずから姿勢を正すべきだと思う。そうでなければ地方財政はやっていけないじゃないですか。あんなりっぱな答弁をしていながら、自分のほうは払わないのだ、国民のほうの税金はしっかりとるけれども、国のほうは払わないのだということで、一体地方行政がやっていけますか。自治大臣答弁を願います。
  49. 永山忠則

    ○永山国務大臣 固定資産税は、評価がえ額に応じて当然とるべきものが法律上あるのでございますが、それでは急激に負担増になりますので、これを一律二割で押えておったのでございます。ですから、その押えておるのを一年早く繰り上げて、激変緩和をしながら新評価価格でとれるような処置ですね、まあ大体十年がかりくらいで、新評価価格でとるような処置にいこうという考えでおるわけです。  それから、今度国有財産のほうは、法律によって本年度改定になるわけでございます。評価価格が本年度改定になる。それから一般の固定資産は、三十九年度に改定したわけです。改定したのに応じて税率をかけてとるべきでございますが、それでは負担が多くなるから、これを軽減措置を講じていっているわけです。国有財産のほうは軽減措置をとらずに、評価額でとっているわけです。本年評価額をかえますから、四十一年からは軽減措置をとらずにとるわけであります。しかし、農地のほうは、これは五ヵ年の期限がないものですから、非常に財政上困るから、本年は五千万円増すという旧来の約束であったけれども、もう一億多く出してもらいたいというので、地方財政が困っておるからというので、林野庁のほうの予算で計画よりは一億多くもらうようにいたしておるわけです。したがいまして、国有財産のほうは、本年評価額ができましたら、軽減措置をとらずに四十二年度からは全額いただく考えでおるのでございます。そうして、民間側の評価がえがまた四十二年になるようになっておりますが、そうすると、新評価価格でもようとれぬものを、また評価があったのをとりょうがないですから、民間側の評価がえは、これは四十二年にせずに、もう少し見送っていこうということで、国有財産と線をそろえる体制をいま調整をして進めておるわけでございます。したがいまして、評価がえのとおりはとらないのでございます。それよりうんと下回っておるものを、漸進主義でいこうという考えで、国有財産との均衡を考えつつやっておる次第でございます。私のよくわからないところは、局長から答弁させます。
  50. 川俣清音

    川俣委員 いずれこの問題については、十八日までに理事会において善後処理をして、本予算の成立へ持っていくという申し合わせでありますから、あえてここで論じませんが、しかし、何といっても論理的には、外国の論理は別にして、日本の論理的に言うと、一般国民からは、漸増ではあるけれども増税はするのだ。これは四十一年からいただかなければならない、国有林のほうは別だということは、日本の国民の論理には合わない。どこの論理かわかりませんけれども、日本の論理には合わない。国が率先して模範をたれていくというのが、これが日本の論理なんです。国は怠慢であってもいいけれども、お前のほうだけは規定どおりとる。それだったら規定ではない、三年据え置くというのをとると、こういうのですから。まあ、この問題は十八日に解決しますから深く追及しませんけれども、日本の論理には合わない。これだけは明らかです。国が率先して模範をたれるということ、総理みずから模範をたれるということは、これは日本の論理なんですね。お前は道徳精神を守れ、おれは守らないのだということは、これは日本の論理ではないのです。東洋論理では少なくともない。総理、そうじやないでしょうか。国民が承知をせぬです。総理、どうですか、ひとつあなたの論理、いや、法律論じゃないのですよ。総理の論理論をひとつ伺いたい。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、固定資産税の問題については、国会三党の間でいろいろ論議をかわしております。そういうものの一部のお話かと思いますが、とにかく、この三党の間で十分お話をしていただいて、そうして国会も、また国民も納得のいくような処置を私は期待いたしておりますので、そのほうに譲らせていただきたいと思います。先ほど来の川俣君の御意見は、私も静かに拝聴いたしておりますから、おしかり、あるいはその他の御注意等につきましては、今後十分考えてまいるつもりでございます。
  52. 川俣清音

    川俣委員 それでは前に進みますが、なぜ一体消費者米価を上げなければならないことになったのか、また消費者米価を上げることに非常に熱心になっておるのか、私、これはふしぎでしょうがないのでございます。消費者米価を上げますというと、非常に物価に影響することは必然でございます。最近の経済は、必ずしも米価にそれほど影響を受けないという説をなす者もないわけではございません。大正年間のように、あるいは昭和の初めのように、あるいは明治の時代のように、米価が貨幣評価の基準になるほどの影響力を持っていないことは私も認めますが、諸物価の高騰に、あるいは物価抑制に大きな役割りを果たすことは、これは明らかだと存じます。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 藤山企画庁長官の御答弁でありまするというと、物価は五分五厘に押えたい、こういう御意向でございます。そういう努力を払われるということは当然なことだと存じますが、消費者米価が上がりますと物価の高騰に拍車をかけるということだけは明らかだと存じますが、藤山さん、ひとつお答え願いたいと存じます。
  53. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回の米価の値上げは、消費者物価には大体年間を通じて〇・七、今年度だけならば〇・二でございますけれども、米が上がるということは、やはりいろいろな精神的影響があろうと思います。
  54. 川俣清音

    川俣委員 それでは上げないようなくふうがあってしかるべきだと思う。漫然として上げなければならない、赤字だからという。今日の食管の赤字というものは、解消しようと努力すれば解消できるものだと、私はそう思いますけれども一体農林大臣、検討したことがあるのですか、努力を払ったことがあるのですか。もう毎年マンネリズムで、上げなければならない、季節がくれば上げなければならない、それだけより覚えていないということになると、農林省というものは非常に不勉強な役所だ、むだな役所だという批判を受けなければならないと思うのです。あなたのほうの組織はいいのかもしれませんけれども大臣が無能なのかどうか、こいつは不明なんです。そこであえてお尋ねをするのです。
  55. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 消費者米価を上げずに済む方法がないかというお話でございます。もちろん、これは相当長い期間を見ていきますならば、いろいろの方法によっていけるでありましょうが、現在の情勢においては消費者米価を上げざるを得なかった。その一番大きな理由は、やはり食管制度というものを維持していきたい。なぜ維持していきたいか。それは、川俣さんもよく御存じのところでありますから申しませんが、それを維持していきますときに、消費者米価と、それから生産者米価との逆ざやというものが長く続くということは、食管制度を運営する上においていろいろと差しつかえが起こる。そこで、この際はその逆ざやを是正してまいる。しかし、それを是正するにしても、消費者の家計費に対してやはり安定をはかるのを旨とするというのでございますから、家計費の範囲内においてそれをはかってまいろう、こういうことで今度の消費者米価の引き上げが行なわれたのでございます。
  56. 川俣清音

    川俣委員 大臣が不勉強だということをみずから暴露した。逆ざやだなんという、逆ざやになっていますか。諸経費を入れると逆ざやになるけれども、大体食管をおおよその、大づかみに理解するに、買った米を売るだけでは損はしない。そこに、集荷手数料をはじめとして、卸、小売りのマージンあるいは事務、人件費あるいは金利負担等の中間経費が支払われることによって、毎年約千二、三百億ですが、それらの経費に見合う分が赤字になる。売り買いの中では、生産者米価と消費者米価の間においては幾らか黒になっておる。会計全体として見れば、いま申し上げたように、小売りのマージン、卸のマージンあるいはロス、運搬、集荷手数料、そういうものを合わせて、事務、人件費を合わせて千二、三百億に毎年なっているのじゃないですか。赤字は千二、三百億でしょう。この経費は千二、三百億だ。だから、買ったものとはとんとんなんだ、逆ざやでなんかないのです。だから、従来はどんぶり勘定といわれておったのでありますが、いまのやつはどんぶりよりもっと広くなって、さら勘定みたいなものだ。散らしてあることには間違いない。どこに欠陥があるか。これはひとつ指摘して、−赤字を解消することができますよ。一つは、日通との契約は何です。あれは。運ばないものまで運んだということで運賃支払いをしているでしょう。貨車料、貨車に積まる俵数、これは契約になっている。食糧庁の総務部長と日通の間に契約をしている。何トン貨車は何俵より積めない。実際は、見てごらんなさい。もっと積んでいるじゃないですか。まん中に通りがなければ積みおろしに不便だからといって、わざわざあけてある。実際は、そこへ積んでおる。積んでいるんですよ。貨車の回転が悪いもんですから、来た貨車には十分積むということで積んでいる。これは必ずしも悪いことではない。ところが契約は、一車送れば一軍二分あるいは一分、一車送れば一車のほかにさらに一七%か一六・七%ぐらいのものは送ったという契約になって支払われることになっておる。トラックはどうだ。トラックも、もっと積み荷をしておりながら、積まない契約になっておって、積んだ分だけは一台と余分のものを支払うということになっておる。なぜこんな契約をするか。こういう答弁になっている。トラックは、県道または国道を通過して運搬をするのだ。実際は、国道を通っていない、県道なんか通っていないじゃないですか。いや、町村道はトラックの制限の個所が非常に多いので通れませんという。実際は通っている。それで、遠回りをしてキロ数を伸ばして運賃を多く支払っておる。食管の合理化をはかるならば、こういう点は合理化でないんですか。これを合理化することはできないですか。まず合理化するなら、こういうことをやったらどうです。通っているために、そこを通らなければならぬためのキロ数の計算なら別ですが、わざわざ遠回りするキロ計算で支払われておる。実際はその契約の里程は通っていない。もっと近道をしている。なぜそういう契約をしなければならぬのか。食管が黒字で余裕があるならば、それもいいでしょう。日通もまた国の間接の一つの企業ですから、救済するのもいいでしょう。なぜ一体食管で救済しなければならぬのか。食管でなぜ日通を援護しなければならぬのか。大蔵大臣、どうですか。  それで、さらにもっと露骨に申しましょうか。この日通の株主総会におけるあれを見てごらんなさい。食糧庁と長年にわたってこの契約を結んでいるために、株は非常に安泰ですといって株主総会で説明している。この恩恵のために食糧庁長官を重役に据えました、こういう答弁を株主総会でしているじゃないか。食糧庁の御援助のもとに日通は株が安全です。こういう説明が行なわれておるじわ、ないですか。それで株価が維持されておる。それほど食糧庁は恩恵を施している。恩恵を施すのもいいですよ、消費者米価を上げてまで一体日通を保護しなければならぬ理由はどこにある。農林大臣、ひとつ答弁してください。だんだん具体的に申し上げていきます。
  57. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えします。  いろいろの問題に入る前に少し申し上げておきたい。というのは、これは川俣さんもよく御存じなんで、あんまり私も言う必要もないと思っておるんですけれども、改定前の政府の買い入れ価格は、石一万六千三百七十五、それが政府売り渡し価格が一万三千九百二十四、その差し引きが二千四百五十一というのがマイナスなんです。それが、今度消費者米価との関係にそれをはめますと、これがマージンやそういうものが加わりますから、一万三千九百二十四が一万五千二百円になるわけなんです。これはお米屋のマージンとかいろいろなものが加わるからです。そうすると、それでもなお千百七十五円のマイナスになるわけです。そういう関係がありまするので、これらのいわゆる逆ざやというものを、——いろいろの問題、いま提起されておる問題を離れても、そこに大きな逆ざやがあるわけです。だから、これをどうしても是正してまいりたいというのが問題でございます。それから、その上に立っていろいろの、たとえば運賃はどうか、あるいは保管料はどうか、あるいは人件費はどうかといういろいろな問題がその上に出てくるわけでございます。それらについては、でき得る限りの合理化をはかっておるはずでございます。
  58. 川俣清音

    川俣委員 農林大臣答弁が赤字を生む原因なんです。大体生産者から一万六千円で買っているなんということが、ほんとうにそんなことが言えるのですか。買っていないじゃないですか。それは想定米価であって、買い入れ米価じゃない、買い入れ予定米価なんだ。一−四等平均価格であるから、ことしは五等、等外まで買ったでしょう。等外になると千四百円違うのですよ。一万六千円じゃない。一万五千円にも満たないものも買っておる。それは配給に回しておる。これは何が逆ざやです。もうけているじゃないですか。従来は三等裸を基準にして計算をしたから、赤字がどこで出るかということが明瞭になってきておりますが、いまの制度は、不明瞭なままに運営されておるということなんです。一体、一等米であれば、運賃諸掛かりの費用も、パーセントからいうと割り安になる。下級米は運賃諸掛かりが、価格からいうとかかることになります。普通の営業者を見てごらんなさい。米屋でないにしても、一般の事業を見てごらんなさい。仕入れにしても、在庫を評価するにしても、一等は幾ら、二等は幾ら、こういう品位のものはどう、こういう評価をしている。農林省はやっておらないのです。一等米、二等米の在庫を出せと言ったら、全部の在庫はわかりますけれども、等級別にはなかなか出しにくいと、こう言う。自分の持っている、保管しているものを、どういうものを保管しているかわからないで赤字でございますなんて、どこで言うのですか。一等米についてはこれこれで買ったけれども、これこれの経費がかかった、あるいは二等米はどうだというような整理をしたことがありますか、ないじゃないですか。私は毎年非公式に、これを整理するように言っておりますけれども、やっておらない。大蔵省もまた、赤字が出たらばそれは補てんします。前からそういう赤字の出ないようなことについてはあまり協力されない。赤字が出て、初めて補てんをしましよう、こういうやり方なんです。早くいえば、どうせ先に出しておっても赤字が出るのと同じ、とんとんなんです。千二、三百億の金は、初めから整理させておくならば、赤字が出ないで済むわけです。それを、赤字が出なければ補てんをしないというやり方。いつまでも食管会計の整理ができないでおるのが現状じゃないか。今日の食管の赤字というものは、つくられた赤字だ、惰性によってつくられた赤字を消費者に負担させるというから、私は、これは避けるべきである、やむを得ない赤字じゃない。政府の怠慢による赤字を消費者が負担しなければならないということはないはずだ。藤山さん、どうですか、それでも消費者米価を上げなければならぬのですか。
  59. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 先ほど申し上げましたし、川俣さんのような専門家の方がわからないはずがないので、私もあまり言わぬのですけれども、たとえば買い上げのときの予算は、一万六千三百七十五円でいっておる。ところが売り渡しのほうは、やはり今度変えたやつの上米、それから並み米、それから徳用米の関係で、一応それで——これはやはり仮想の上ですけれども、仮定してそういうことをやるわけなんです。ところが十一月の一日には、それを、検査の結果をこの予算のところへ付記して出さなければいかぬということになっておるわけで、その付記して出すやつはどれだけになるかと申しますと、一万六千三百十九円になるわけなんです。その差は五十幾らになります。それだけ赤字が減るはずなんです。その総額は、大体において二十五億ぐらいになる。ところが、買い入れの数量は七百五万トンになっておるが、買い入れは、現在の情勢においてはもっとふえる予定があるのです。そういう関係がありまするので、大勢論からいきますと、そういうことは、これは技術上やむを得ぬからそうなっておるわけでございまして、そうあなたのような専門の、よく百も承知の方が、いかにも何かもっとどうかということを言われると、人はほんとうにされますから、そこはよほど考えていただきたい。
  60. 川俣清音

    川俣委員 人は農林大臣よりも私のほうを信用すると私は思っております。なぜかというと——大臣、聞いてください。これは一−四等平均価格なんです。したがって、逆ざやなんということばは出てこないはずだと私は言っておる。あなたがあえて逆ざやということを言うなら、私はこれはとがめませんよ。逆ざやだというような観念で食管を見るから、大きなあやまちを来たしておることを指摘するのが一点。まだ食管会計では整理すべき問題がございます。もっと露骨なことを言いましょうか。いまの在庫の評価をどうするか。従来いろいろ食管に赤字を出さないように表面をつくろうためには、在庫の評価を高めたこともございます。あえて在庫の評価を高めて、利益があるごとく見せたことも、民間の不良会社がやるように、評価益をわざわざ出すための計算をやったこともございます。過去にはあります。あなたの時代にはないけれども。そういうことを大蔵省に教わってやっておるから、いつまでたっても、みずからの整理ができない。ごまかせば幾らでもごまかせるのです。これは。いま在庫しておるものを高く評価してごらんなさい。すると赤字が出ないことになる。いざ売ったときには出ますけれども、現在の処置においては出ないことになる。つくれることはっくれる。そういうこともかつてやったこともある。それよりもむしろ根本的な解決をはかるべきだ、こういうことなんです。それには、これから売る場合にも、おそらく上米ということになると、一、二等を上米とするか、二、三等を上米とするか、あるいは家計に及ぼす影響を考えて、四等、五等あるいは等外までを入れて下米にするというような、初めからそういう計画を立てますと、赤字が出てこないで済むのじゃないか、こう教えているのです。やったことがないから自信がない、こういうのです。食管会計は一体何年になるのです。やったことがないなんて、毎年やってきておって、どこに欠陥があるかというのがわからないというのです。農林大臣なんてなおわからない。あなたを責める気はないですよ。いまあなたとやったってどうせわからないのだから、あえてここに欠陥がありますよという指摘にとどめておきたい。あるいはもっと詳しいのは分科会でやりますけれども、時間がないから……。大蔵省も、ただ赤字が出ないようにということではなしに、一体在庫の評価はどうなっているのです。従来は取得修正価格というものもやったことがある。いまは販売修正価格だそうです。本来からいえば、在庫というものは仕入れ価格を適正に修正をするというのが民間の会社のやり方でございます。販売修正価格というのはあまり健全な会社のやる処置ではないといわれている。不健全の会社の例をとっているのです。どうして健全財政なんてやれます。最も不健全な会社の例をとっているじゃないですか。健全な会社の例をとらないで、不健全な評価方式をとっているのじゃないですか。これは大蔵大臣に聞きたいけれども、ちょっと無理ですから、私は聞かない。もっと検討するという考え方がないですか。ただ赤字が出るということで、それは消費者に負担できるという考え方がそういう安易なやり方になる。国民経済の上からも、家計に及ぼす影響からも、産業に及ぼす影響からも、何としても消費者に負担をかけないで合理的に運営をするということを考えなければならないのがいまの段階であると私は思うのです。これには大蔵大臣も異論がないでしょう。御答弁願いたい。
  61. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 理論といたしまして、まことにお説のとおりであります。しかし農林省も相当そういう考え方努力をいたした結果が、ただいま御審議をいただいておる予算案、こういうことになっておるわけであります。今後ともそういう価格改定の前に諸経費を詰めていくという、この考え方につきましては努力をいたすべきものと、さように考えます。
  62. 川俣清音

    川俣委員 これは総理にもひとつ。総理も、役所におつとめの経験があるからおわかりのように、各局で局長を二年くらいやると、大体局の情勢というものは把握できて、指導できるものですね。大体そう見ていい。無能な人もありましょうし、有能な人はもっと早いでありましょうが、二年おったら大体その局内の状態というものは把握できておるはずだ、私はそう理解しております。ところが食糧庁の長官は、二年やったって三年やったってわからずじまいに終わっている人が多い。わかった人が一人でもおりますか。参考人に呼んでごらんなさい。もうだめですよ、これは。わずかに、それではいい例もとりましょうか、東畑四郎君くらいが幾らかこれは知っているでしょう。あるいは小倉君なら幾らかこれは長官時代に勉強した。その程度です。あとの長官を見てごらんなさい。日通にいく長官なんかありますよ。日通の重役になるという長官なんかありますよ。あれは運賃だけの考え方だからね。食糧というと運賃だと思っている。現にあるじゃないですか。私は別に個人を非難するのじゃないですよ。みんなすぐかわることだけはやっておって、ほんとうにそこへ腰を据えて、身を挺してという考え方がないということを指摘したい。ただ消費者に負担をかければ済む、このだらしなさを私は追及しなければならない。ほんとう国民経済の上から、物価を抑制する上から、もっと真剣に取り組まなければならぬではないか。あれだけ多数の人間をかかえ、機能を持っており、それでいながら、どこから是正していくかということがわからないなんということでは、どうして一体予算編成ができる。大蔵省というのはなかなかしぶくってなんということは聞きますけれども、どこがしぶいんだ。だらしがないでしょう。全くだらしがない。わからないからだらしがないということなんです。どこを詰めるべきかということを理解しないから。また、食管のようなむずかしいものを大蔵省に詰めろといっても、これは無理です。無理ですから、こういう委員会を通じてあなたを鞭撻せざるを得ない、そういうことを申し上げている。もう一度答弁を願いたい。
  63. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 川俣委員のおっしゃることはごもっともなことと思います。消費者価格を改定する前にできる限りの努力をしなければならぬ。これまでもそういう努力をいたしてきておりますが、及ばざるところは多々あると思います。なおこの上とも努力するようにいたします。
  64. 川俣清音

    川俣委員 一つは消費者米価を上げるか、一つは生産者価格を据えるかということだけより能力がないのです。今日の物価の上昇の時代ですから、農業パリティを使いますと、政府はことしの生産者米価をきめるのに非常に苦況に陥るじゃないか。生産費及び所得補償方式をとるであろうけれども、その大勢を見るには農業パリティ指数というものがございます。家計あるいは経営費等の費目をとった物価の趨勢及び米価にはね返る物価の趨勢というものをとっております。これを見ますと、少なくとも一二、三%上げなければならないような結果が出てくるのではないかということが見受けられます。そうすると、生産者米価を上げなければならない、また消費者米価を上げるという順ぐりになるから、どこかで大きなくふうをしなければならないはずだと思う。大蔵大臣は、生産者米価を押えようという考え方ですか。それとも出てくる妥当なものについてはやむを得ないという考え方でしょうか。これについては、大蔵大臣並びに企画庁長官からお答えを願いたいと存じます。
  65. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 生産者米価につきましては、すでにその算定の方式がきまっておることは御承知のとおりであります。その算定の方式に従いまして決定する、こういうことに相なろうというふうに存じます。
  66. 川俣清音

    川俣委員 藤山さん、どうですか。これは算定方式はあるけれども、企画庁ならば大体想定できると思う。そうすると、幾らぐらいになりますか。
  67. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 生産者米価につきましては、いま大蔵大臣がお答えしたように算定方式がありますので、それでやってまいります。そして、今年がどうなるかということは今後の問題だと思います。そこで、先ほど農林大臣が言っておられましたが、私は逆ざやというものと、それから川俣委員のおっしゃっております食管会計の合理化というものと、二つあると思うのです。それで、農村が売り渡す価格よりも安い価格でもって同じ米を入手するということが逆ざやじゃないかと私は思うんで、農村がほんとうに生産者所得補償方式でやっていけば、そういう面で便宜を与えることはいかがかと私は思います。  ただ第二の問題として、食管会計の赤字を国庫が補給する、その金額をできるだけ減らすために、食管会計の赤字をできるだけなくすという意味において運送賃の節約とか、あるいは食管会計経営の人たちの数を減らすとか、能率をあげるとかいうことは、これは大いにつとめて、国庫が食管会計に補給する赤字をできるだけ少なくするという努力は、これはしていかなければならぬ、こう思っております。
  68. 川俣清音

    川俣委員 大体物価の趨勢をにらんでおる企画庁からいうならば、ことしの生産者米価は、新しい方式をとるなら別ですが、従来の方式をとるならば、どの程度上がるということが想定できる、計算できるはずでございます。方式を変えるなら別ですが、変えないということになるならば、大体算定ができるはずでございます。もちろんいろんなファクターがそろっていませんから、十分じゃないにしても、趨勢としては、どのぐらい上がるであろうかという趨勢はにらみ得るはずでございます。一年の経済の見通しを立てる計算の基礎からして、あるいは農業パリティ指数の動向からして、大体立て得るはずです。それをなるべく押えたいという努力はこれから払われるだろうことも想定されます。生産者米価を押えるということになりまするというと、今後の食糧の需給状態に、ことしは影響を与えないにいたしましても、来年からこれが農民にはね返ってまいりまして、生産意欲を減退するばかりでなく、農村の労働力の移動が行なわれまして、土産の確保が困難になるのではないか、こういう情勢も判断できるので、単に安く買えばいい、あるいは逆ざやにならなければいいというような考え方だけでは、この問題は整理できないと思うのです。一体、一等米なら逆ざやなのか、二等米なら逆ざやなのか、そういうことは何も農林省では考えてないのでしょう。ただ総体で、延べに、大道の商人と同じ、たたき屋と同じ、バナナ幾らとたたいていると同じなんです。何も計画的な計算でないでしょう。そうでしょう。四等なら、等外ならば逆ざやどころでなく三千円も開く。一等米ならば諸経費のかかりが割安になってきていて、これも必ずしも逆ざやかどうかというのは疑問です。総体で、一等も二等も四等も平均してみると逆ざやになるというだけの話で、品物別に逆ざやになるということはないのです。どこの商店においても、このものはもうけているけれども、このものは損しているというのがあるでしょう、どこへ行っても。食管にはそれがないのです。店総体では赤字でございます。こう言うだけ。この品物は取り扱ったならば損か得かということをみんな考えている。食管はそんなことはないのです。ないのもやむを得ない点があります。食糧を確保していかなければならないために、くず米も買わなければならない。くず米を買った場合にはどうかというと、これじゃもうけになる。くず米を買った値段よりももっと高い値段で売っているのです。割り高に。こんなばかな話はないですよ。困窮者が食うやつは割り高だという点もあるのです。こういう点についても検討しなければならぬ。大体今後の消費米価というものは、家計米価なのか、あるいは消費者米価なのか。これはいま消費者が負担する米価です。計算のしかたとして、家計米価で計算するのか、消費者米価で計算するのか、そういう検討も行なわれていない。学者の間に議論がある。家計米価でやるのか、あるいは消費者という立場の米価の決定のしかたをするのか、どっちかでないと……。ただ赤字だから負担させる。こういうこと、これを是正していかなければならない。一体何回言ったら大蔵大臣、変えるのですか。毎年ですよ、私が指摘しているのは。だんだん時間がなくなるから、ひとつ答弁してください。ほんとうに親身に変えるという考え方があるのかないのか。食管の内容を変えるということ、合理的にする……。
  69. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 農林大臣からお答えがあるべきところでありますが、私への御指名でありますからお答え申し上げますが、食管会計の合理化につきましては、これは生産者あるいは消費者への価格に非常に関係があり、重大問題でございますので、最善を尽くしてその合理化に努力をいたしたい、私としてはさように考えます。
  70. 川俣清音

    川俣委員 ほんとうに一ぺん会計整理をして、どこに欠陥があるかということを見出ざない、限り、一番安易な方法として、安く買って高く売るという大道商人みたいなことは、国の機関としてやめるべきだと私は思う、端的に言うならば。全くいまの食管というのは大道商人と同じですよ。顔つきを見て、上げられるとするなら消費米価を上げよう、顔つきを見て、下げられるとするなら生産米価を下げよう、どこに自主性があるんです。計画性があるんです。そういうことです。経済に非常に大きな影響を与え、物価に非常な影響を与え、農村の政策に影響を与えるものを、そう安易な考え方でなしにひとつ取り組んでいかなければならないのじゃないかということをあえて指摘をして、時間がないから前に進みます。これは、もっと詰めていくには分科会で詳しく詰めていきますから、きょうはこの程度にしておきますが、どうせ農林大臣はわからないんだから。食糧庁長官も、前に企画庁の課長をしていて、幾らかわかっているはずだけれども、何としても有能な役人というのはうまくごまかすことだけ考えて、うまくごまかしていればつまり有能な役人だ、こういうことになりがちでございます。そうだとは指摘いたしませんが、なりがちでございます。もっと真剣に取り組むことを要請しておきます。  次に中村運輸大臣にお尋ねしますが、国鉄の運賃、私鉄の運賃、一体上げないで合理的にやる方法がないものですか。これもまたマンネリズムでやっておられるんじゃないかと思うのですが、一体ほんとうに検討したことがございますか。石田総裁などは大言壮語するけれども一体どこにほんとうの欠陥があるのかわかっていないんじゃないかと私は思います。これはだんだん指摘いたしますが、運輸大臣、どうですか。
  71. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 現在の交通需要がきわめて急激に上昇しております実態と、交通輸送施設の実態とには、非常に大きな差がございまして、これを解決する方法につきましては、あらゆる研究努力を続けておるものでございます。
  72. 川俣清音

    川俣委員 私は努力をしておらないと思う。前に池田さんが大蔵大臣のときに、国鉄運賃の値上げが行なわれた。その際に池田さんは何と言ったか。今度値上げをしておくならば、あとで値上げをすることよりも国鉄は健全運営ができて、再び運賃の値上げなんという問題は起こらないで済むから、運賃の値上げに同意をしてほしい、こういう答弁をしております。これは、上げなければいつまでも運賃の値上げというものはついて回るけれども、この際上げてもらえるならばもはや健全な形になって、必ずしも運賃にだけ依存しない運営ができるはずだ、こういう自信のほどをもって答弁されております。国鉄というのは、私鉄も同様ですけれども、国からいろいろな便宜を与えられておる。なぜかというと、公共性が高い、あるいは国民生活、経済活動に密接な関係を有するものであるからして、特別な援護を受けておる。私鉄においてすらそうです。私鉄はどうですか。ここに建設大臣がおられますが、日本の一級国道、二級国道に施設をして、特別な便宜を与えているじゃないですか。それをあたかも自分の土地のごとく評価して、それで赤字でございます。こういう計算を私鉄が出しているのです。何でも運賃を上げれば事足るというような態度です。いまの東急の玉川線を見てごらんなさい。あれは国道でございます。国道に敷設をさして交通に障害を与えながらも、特権を与えているじゃないですか。その恩恵があるにかかわらず、あたかもなきがごとき計算のしかたをして、赤字でございます。赤字をつくれば何とかなるだろう、運賃の値上げでこれをカバーしよう。国鉄もまた同様ですよ。どういうところに欠陥があるのか。土地を買っておりながら、十年先か二十年先か建設がわからぬような土地を、人にも使わせない、自分も使わないで保存している面積がどのくらいありますか。しかも、これは寄付をされたり——自分で買ったなら別です。寄付までさせて、人の所有を制限して、専用を制限しておりながら、敷設もしないで遊ばしているところがどこにある。こんな不経済な経営をしておりながら、赤字でございます。これはどうなんです。運輸大臣、調べたことがありますか。私が国鉄にこの資料を持ってこいと言ったんですけれども、持ってこない。なぜかというと、一々面積を出すのはむずかしいという。むずかしいかもしらぬ。むずかしいかもしらぬが、常にこれは持っていなければならぬ、常に備えていなければならぬものです。いま計算するのならむずかしいことはわかります。自分が金を出したにせよ、あるいは寄付を受けたにせよ、ここに鉄道を敷設いたします。拡張いたします。そういうことで召し上げておいて、それを利用しないで、交通のために利用しないでおいて、特権だけを振り回しているところに赤字の大きな原因があると私は思うのです。そして、その責任はあたかも乗客にあるがごとく運賃を値上げしてくるなんというのは不届きしごくですよ、これは。公共機関をそういうだらしのないところへ委任するわけにはいかないのじゃないかと思うが、運輸大臣、どうお考えになりますか。
  73. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 政府委員からお答えをいたさせます。
  74. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 総裁が運輸委員会に出席されますので、私からかわってお答えいたします。  先生の御指摘の、国鉄が土地を早目に入手して、そしてそのまま使わないでおくというお話でございました。(川俣委員「私鉄もそうだ」と呼ぶ)私、国鉄でございますので、国鉄だけお答え申し上げますが、確かに建設線をやっておりましたときにはそういう点が相当あったと思います。過般も先生から御指摘いただいた点をよく記憶いたしております。実は最近新線の建設を全部建設公団のほうに譲ってしまいましたので、新線建設につきましては、いまそういう問題は私どもにはございませんが、先生の御指摘になっておられます。たとえば複線化にするとか、あるいは車の基地をつくるとかという場合には、どうしてもやっぱりある程度土地を先に買っておきませんと、土地の値上がりがひどいということで、若干無理をしてでも用地を先に買うという方法は現在やっておりますが、用地が買え次第工事をするという原則は極力今後ともやってまいりたいと思います。現時点ではそれほど、何と申しますか、買ったままでほうってあるという土地は、ごくまれに、ある区間ができても一ヵ所だけどうしても買えないとか、そういう場合にはむだな土地もございますけれども、現時点では、複線化の土地にいたしましても、車両の基地にいたしましても、大体土地を入手しますと極力それを早く使うような方法で考えております。
  75. 川俣清音

    川俣委員 答弁が十分じゃないんですけれども、私は、運賃の値上げに簡単に応ぜられないという点もここにあると思う。みずからやらなきやならぬことは放任しておいて、運賃の値上がりで経営をしようというような心がけであるならば、これは公共性に乏しいと判断せざるを得ない。あくまでも国の財政計画または産業経済にプラスをするというところに国鉄の公共性を認めてやらなきやならぬ点があると思う。それを、ただ運賃で経営をするんだというような考え方であるならば、これは特権を剥奪しなきゃならぬじゃないかと思う。特権があるからそこへ腰を据えておる、こういうことになるんじゃないか。だから、運賃の値上げというものについては、やむを得ないのであるか、そうでなくて運営が悪いのであるか、この点を十分検討していかなきゃならない。ただ政府も、運賃の値上げは絶対必要だからという——一体幾ら資材を遊ばしておるんです。しかも土地が高いと言う、これも遊ばしておるんです。あるいは農業用にでも他の利用にでも幾らでも使えるところを、自分がただ専有しておいて、人にも使わせない、自分も使わないという、こんな不経済な経営がありますか。国全体の経済からいってもそうです。中には寄付までさせてですよ、そうしてそれを使わない。鉄道敷設に必要だからということで寄付をさせ、しかも近くに駅をつくるからということで土地を提供さしていながら、まだ使わないでおる。日本の国はそんなに余裕のある土地はない。したがって、宅地が値上がりをするとかいうことで問題になっておるときに、使いもしないものを専有するというようなことでは経営が合理化されているなんて言えない。国鉄総裁は、いつでも、合理化に対しては全力を注ぐと言うが、何が……。もし個人であれば、持っているものを利用しないなんていったら、これは破産ですよ。あるいはこれは道楽むすこですよ。持っているものを利用しないなんていうのは、これは道楽むすこですよ。土地を先買いをしておかなきゃならないなんていう考え方も、これは私鉄と同じなんです。私鉄というものは、あれは輸送で利益をあげることよりも、土地を買っておいて、その値上がりのために路線を引くというのが私鉄のやり方なんです。私の近所に、知っておるでしょうけれども田丸さんというのがおったでしょう。五島慶太の親分と称するんだ。庭師でね。あれが言っておった。ここに庭園を築いたのは、見るためでもなく石を並べるためでもなく木を植えるためでもない。要は東急のお客さんをふやすために、私はわざわざここへ庭園をつくっておるのです。こういう田丸さんの説明であった。私ももうかるかわりに五島さんにもこれはもうける方法だと思うのでやっておるのですと、こういう説明を加えておる。だから、私鉄というのは一体運輸業じゃないのです。土地業者なんです。早く言えばブローカーなんです。いまのことばで言えば土地ブローカーなんだ。国鉄もまた土地を先買いしておかなきゃならない。いよいよ運輸業をやめて不動産売買業にかわるということにならざるを得ない。(「それはひどい」と呼ぶ者あり)ひどいといったって、そうじやないか、専有で買っておくんだから。何でも運賃を上げればいいというような考え方を是正してかからなきやならないということが要点なんです。上げないというくふうをしない。まだありますよ。運輸大臣、土地が非常に高くて困る、こう言うでしょう。道路は、道路整備法に基づいて、国有財産は無償で譲渡を受けたり無償貸し付けを受けることができる、道路は公共性が高いから。国鉄もまた公共性が高い。運賃も上げないで公共性を高めるということになるならば、国有地を無償で借り受けたり、あるいは無償譲渡を受ける方法も講ぜられていいはずなんです。運賃でとってやろうなんて考えるから、そこに考えが及ばない。佐藤さんは多年の経験があるから、それくらいのことは御存じだと思う。最も原価の高まるものが公共性がほんとうに高いということになりますか。運賃を上げないで公共性を高めるということになるなら、国有地というものを無償貸し付けしてもよかろうし、あるいは無償譲渡して運輸機関に協力してもいいはずだと私は思う。それもやらないで、運賃でひとつ何とか……。何とだらしがないか。やれる方法はあるにかかわらずやらない、やろうとしないところに問題がある、こう思うのですが、大蔵大臣、どうでしょうか。
  76. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国鉄は、お話のような線で従来とも努力をしてきておるのであります。現に、前回の運賃値上げ、五年前のあの際なんかも、ずいぶん不要の土地を売り払いまして、そして、その最後の詰まりを運賃に求めた、こういうことをいたしておるわけであります。今回はそういう土地も少なくなっております関係上、土地のほうはあまり話を聞きませんけれども、とにかく運賃の値上げは最小限度にとどめたい、そういうので努力をした結果、いま御審議をいただいておるようなことになっておるわけであります。
  77. 川俣清音

    川俣委員 ここは運輸委員会でないですから、あまり運賃そのものに私は触れないつもりなんです。考え方として、私鉄にしろ公共性の高い国鉄にしても、その観点に立たないで、運賃値上げでカバーしていこうというような商人勘定で経営をする限りにおいては、公共性というものが非常に薄らいでくる。公共性が高ければ高い処置というものが考えられるはずだ。それをただ運賃でカバーしていく、単なる営業みたいな考え方でやられることについて、もっと関心を持ってしかるべきじゃないか、こういうことです。物資の輸送、これは問題がございますよ。私は指摘していないが、もっと露骨なやつをやりましょうか。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕  いま東京で非常に値上がりしているものは何かというと、農業パリティから見ると、動物なんです。家畜なんです。これはどうして値下げをするか、農林省頭を悩ましている。これは国鉄がちょっと協力すれば値下がりするんです。なぜかといえば、従来は十五トン貨車に十四頭積めるようになっておったのが、規程を変えて八頭より積み荷ができないように整理した。一頭当たりの運賃は幾らかかりますか。牛の値段よりも、豚の値段よりも、運賃のほうがかかるというようなことでは、畜産奨励なんというものは——倉成委員に、大いに畜産については努力をいたしておりますなんて、農林大臣答弁しておる。与党だからこれを聞きのがしたでしょうが、努力するならこれをやったらどうでしょう。動物がだんだん減ってくる。輸送も悪くなってくる。根源は何だ。国鉄は、十四頭積んでいた貨車に、今度は八頭より積ませないという。そこで私は、民有貨車をつくってひとつ輸送に協力しようか、こう思ったところが、国鉄では、それは困る、なぜかというと、民有貨車がつくられると、回送の責任まで持たなければならぬように追い込まれるから困る、こう言う。昔よりももっとだめなんです。あなたがおったころは、もっときちんとしておった。剣下げたくらいにしておったから、もっときちんとしておった。いまはそうじやない。ただ運賃を上げれば何とかなるだろう。日本の物価に協力するとか、日本の産業に協力するとか、農業に協力するという考え方はない。中村さんは農業に非常に理解が深かったはずなんですよ。それを、こんなことをやらしておいて一体どうするのです。家畜奨励だ、運賃だけは特別に前よりもたくさんとってやろうなんて、どこに家畜の奨励があるか。農林大臣は、畜産の奨励については努力を払いますと与党の倉成さんに答弁されたが、これは輸送を困難ならしめ、運賃をかけさせておいて、奨励でございます。運賃を取られる奨励じゃないですか、同じ奨励でも。これはどうですか、運輸大臣
  78. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 川俣委員が仰せられますように、国鉄の経営もなるべく運賃に依存しないで設備等を整えていくという方向でいくことが好ましいこととは思いますが、現在の国家の財政事情、あるいは公共企業体として独立採算制のたてまえをとっております等の、いろいろの問題等を考え合わせまして、現在では運賃にある程度依存することがやむを得ないということで、今回の値上げをお願いしておる次第でございます。
  79. 川俣清音

    川俣委員 そんなことじゃだめですよ。十四頭積んだものを八頭にしたからといって、運賃が上がるわけじゃないのですよ。貨車不足の中に、その貨車の利用率が足りないことになる。十四頭運べるなら、十四頭運んだらどうなんです。それを作業に経費がかかるとかなんとかいうことで、わざわざ民間に経費を負担させるような経営のしかたは誤りじゃないか、こう言っておる。それで運賃は高くなるのではない、収入がふえるわけじゃない。幾ぶん経費はかかるかもしれません。十四頭積んだものを八頭にすれば、管理も楽かもしれません。それは輸送機関としての当然のサービスじゃないですか。そういう点でもっと考慮しなければならない。東京にだんだん畜産物が入ってこなくなる。それで値上がりをするんじゃないですか。藤山さん、どうですか。こういうことで値上がりさせるなんて、こんなむだな話はない。貨車に十四頭積んだものを、今度八頭より積まない。そのために一頭当たりの運賃をよけいかけて、物価の上がることをさせておいて、物価は上げませんなんて、上がることが国の機関の中で行なわれておるんじゃないですか。
  80. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 大体、農林物資等につきましては、できるだけ運賃が上がらないようにという配慮をいたしておるのでございますが、いま川俣委員の仰せられます牛の問題につきましては、私は詳細には承知いたしておりませんので、国鉄のほうからお答えをさせます。
  81. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの生きた活牛の輸送の問題でございますが、十四頭まで運んでおったものを八頭にしたのは事実でございます。ただ、御記憶かと存じますが、昭和三十七年に丹那トンネルの中で大事故を起こしたわけでございます。これは、家畜が非常にあばれまして、家畜車の中を戸を締めてある桟がございますが、それを破りましてトンネルの中へ出まして、対向列車が参って、重大事故をトンネルの中でやったことがございます。それ以来、やはり何と申しましても家畜というものは、あまり無理をして積めば何かのはずみでもって非常にあばれる。その際には、もちろん家畜は貨車をあけたまま輸送いたしますので、それをささえております鉄の棒とか、あるいは木のワクとかを全部ぶちこわしてしまいます。そういう実績があって、輸送の安全を確保するという意味で、これも農林省とも御相談いたしまして、もう八頭が限度だということで八頭にいたしたわけでございます。それからさらにその後、やはりそういう一般の貨車で家畜を輸送すること自体に無理があるんだということで、先生御承知のとおり、一般の貨車と家畜車の中間のものをつくりまして、そして、いまほとんど大部分それで輸送いたしております。  さらに、現在畜産局といろいろ御相談いたしておりますのは、やはりもう生きたまま動物を輸送するということは、これは非常に原始的な方法で、途中で死ぬこともございますれば、いろいろ間違いが多いということで、やはり産地でもって最小限枝肉にして輸送すれば、それだけコストも下がってくるということで、枝肉の冷凍輸送、冷蔵輸送等を現在試みにやっておりますし、将来これがさらに進みまして、完全に産地でもって冷凍化されますれば、非常にコストの安い輸送ができるというふうに考えておりまして、今回の私のほうの運賃改定の中にも、そういった各物資別の流通経費の全般的な低減ということにも極力金をかけて、輸送の合理化、流通経費の低減をはかりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  82. 川俣清音

    川俣委員 いよいよ時間が迫ってまいりましたから省略しますが、いまお話しのように、十四頭積んだものが八頭なんです。これがみんな食肉になるなら、また屠殺をして送るという方法もあるのです。いま畜産奨励ということで、あるいは品種の改良等が行なわれて、動物としての輸送もしなければならない情勢になっている。したがって、畜産物といっても、動物の値上がりがいま一番大きな値上がりを示しておる。これを何とか緩和しなければ畜産奨励にならないというところまで追い込まれておるので、これは農林大臣関心を持たなければならぬと言っておる。倉成さんに、大いに畜産奨励はたん白質資源のためにやらなければならない、あんな大きい声でみえを切ったじゃないですか。みえを切ったからには、これに対して農林省の了解を得たんでしょう。——了解を得たか得ないかは別問題。動物の移動についてはいま関心を持たなければならぬときに、割り高になるような——国鉄がもうかるならまた別です。もうかりも何もしないんだ。ただ、事故を防ぐということならば、これはいいんです。事故を防ぐ方法があるんですよ。動物の性質を鉄道が知らぬから、多く積めばかえってお互いにからだをせり合ってけんかになると思っているが、間があるというと——あれ二頭を積んでごらんなさい、必ずけんかになる。三頭ならけんかになる。十五頭積んでごらんなさい。けんかになる余地がないじゃないですか。そんな動物の性質も知らないで、少なく積めばけんかが少ない、逃げるのが少ない、そんなばかな……。こういうことでよく国鉄が合理化なんて言える。非合理化の模範が国鉄じゃないんですか。この例を見たってわかるでしょう。国鉄がこれでもうかるなら別ですよ。もうかりもしない。ただ逃げることをおそれている。逃げないようにするには幾らでも方法があるんじゃないですか。幾らか経費がかかりましょうけれども方法がある。それをあえて輸送者に負担させることも、解せない点だ。そういうことをやらないで——あなたは一番よく知っているでしょう、畜産のことについては。鉄道に行くまでは畜産のことをよく知っておった。鉄道に行ったところが、畜産のことを忘れたのかどうか知らぬけれども関心を持たないというのはおかしいですね。
  83. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 川俣委員のお話を聞きまして、今後の課題としてひとつ検討してみたいと思います。
  84. 川俣清音

    川俣委員 検討——いま検討の余地のないように私が説明した。だから、時間がかかった。抽象的にやったなら別として、即答できるように詳しくやった。いま国鉄が、十四頭積んだのを八頭にした、事実そのとおりですという答弁でしょう。それで明らかじゃないか。運賃がもうかりましたにならないのです。一車幾らでやっている。距離でいっている。国鉄も利益を得なければ、農業においても利益を得ないようなことが、これが合理化というのですか。鉄道の合理化というのは、こういうことですか。人毛利益を得ないかわりに自分も利益を得ないのが合理化でございます。単に運賃をとることが合理化でございます。どこにそんな合理化があるのですか。
  85. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 先ほど国鉄の副総裁が申しましたように、過去に大きな事故を起こしたというような経験もあるようでございますから、今後は事故を起こさないようにして、仰せられるように牛を十四頭も十五頭も送れるような方法をひとつ検討してみたいと思います。
  86. 川俣清音

    川俣委員 そういう検討をすることによって、運賃は上げないで済む結果になる。検討しないで、ただ運賃に依存するというやり方がいかぬのだ、こういう結論になるのでありまして、時間がまいりましたから、これで終わります。  ただ、農林大臣にこのことだけ言っておく。三木さんが来ていれば、三木通産大臣、あなたにもひとつ言わなければならぬ。今度の補正予算で、科学技術庁をはじめ通産省の試験研究の予算が非常に大幅に削られておるのを、三木さんはどう理解されておるのです。あなたは科学について非常に見識があるはずだ。ものの合理化についてなかなか率先をして唱道されておるのに、試験研究については予算の削られることを意としないというあなたの考え方について、ひとつ答弁願いたい。農林省も同じ。試験研究機関はみな削られている。
  87. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 これは第三次補正予算のときに、全般の経済情勢の関係から削減を受けたわけでございますが、試験研究機関については、その点は、本質的に試験研究にできるだけ障害にならぬ部分ということで、本質的な研究の施設とか、そういうものは対象から除外しております。  それで、農林関係で申しますと、増加したものを入れますから、約一億になります。一%くらいでしょう。それで、三十九年の予算に比較しますと、まだそれでも平均して二四%の増で、四十年一度の補正を済ましたあとでも二四%の増でございます。それから、もちろん四十一年度においては、御存じのとおりのような状況でございます。
  88. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御指摘のように、試験研究とか技術開発というものは、これからの通産行政でも大事でありますから、来年度の予算なんかでは、特にこの点は気をつけて相当にふえているのですが、補正予算との関係については、私も減っておるというふうには考えない。川俣委員非常に勉強家でありますので、どういう資料から出てきたのか、私、減っておるという感じは持っておりません。私は、減っておるということはないと思います。
  89. 川俣清音

    川俣委員 これは、総理大臣補正予算を出しておいて、自分の省の補正予算を見ていないというのは——詳しく見ていないかもしらぬけれども、急所、どこを削られているかなんて、わからないうちに大蔵省削ったわけでもないと思いますよ。これからの産業の開発の上からも、あらゆる試験研究というものは重要になっておる。じみではあるけれども、これはやはりないがしろにすべきじゃないのじゃないか。とかくこれははででないだけに、あるいはスポンサしもないだけに、圧力団体もないだけに、見のがされやすいけれども、これは政府としては重要に考えていかなければならぬじゃないか。私はそういう見解から、大蔵省はいろいろ苦慮したであろうけれども、本質的な試験研究などについては、国全体の利益のために、私はこれを補正で削るようなことのないことが望ましいと思うのです。みな出ておるのです。各省ともそうです。試験研究はみな一様に減額補正されておる。見てごらんなさい。みな減額補正です。そういう点について、ひとつ大いにこれからでも検討してもらわなければならぬ。その上で補正予算に対する態度もきめますからね。こういうじみなもの、国民の将来に希望を持たせるようなもの、宇宙開発なんか、みな補正で削っている。見てごらんなさい。どうして一体そんなことをしなければならぬのですか。金額にしてはそんな大きくはありませんけれども、全部そういう点について無理解であるということは、私は遺憾しごくだと思うのです。総理大臣、よく目を通しておいて——ちょっと聞いてごらんなさい。大いに反省しなければならぬと思う。これで早く通してくださいなんといったって、なかなかそういうわけにいきませんということもつけ加えなければならぬ。一番やさしいじみなもの、じみなものほど理解をしなければならぬ。総理答弁を聞いて、私の質問をこれで終わります。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 科学技術の研究費、これはもうお説のとおりであります。しかし、いま予算の上に出てきて、そういうものが減っているということは、これは事務費の節約ということで、軒並みに事務費を減らしている。むしろ皆さん方から喜ばれるだろう、むだをこれだけ省いた、こういうので、おしかりじゃなくて、ほめられるだろう、かような予算編成をしたつもりでございます。
  91. 川俣清音

    川俣委員 今度は補正予算をごらんなさい。補正で減額補正をしているのは、試験研究のところに大きな減額をしておる。予算の組み方が悪いのじゃない。研究機関に対する減額補正なんです。十分ひとつ検討して、もう一ぺん閣議で相談してみてください。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申したようですが、なお重ねて御意見を述べられておりますから、よく検討いたします。
  93. 福田一

    福田委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後は一時五十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ————◇—————    午後一時五十九分開議
  94. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度補正予算に対する質疑を続行いたします。小松幹君。
  95. 小松幹

    ○小松委員 私は、補正予算に関連して、ただいま一番国民の側から見て問題になっている物価の問題並びに財政金融政策、この二点について政府にお伺いしたいと思います。  それで、物価問題は、この二月初めから各委員がそれぞれ総理あるいは大蔵大臣にずいぶんと質問をいたしました。私も聞いておりまして、あるいはテレビで映るのを人が見たのを聞いて、その実情を承りますと、何だか政府答弁は全くそらぞらしくて内容がない、全く空疎な抽象論を並べておるのだ。野党のほうも、もう少し具体性なものを聞かなければいかぬというようなふうに言われておるわけでございます。私も承っておりますと、総理のお返ししておることば、答弁を聞いてみますと、どうも内容がない。詰まってくると、物価値上げよりも不況打開のほうが先だ、それに困まると、両方二本立てでいくのだ、こういうような逃げを打ってきておると思うのです。この点について、さらに私は総理に——物価が今日これほど問題になっていることはないと思うのです。もちろん消費者米価がウナギ登りに上がっているということだけではないので、公共料金が正月から毎日の新聞をにぎわして上がっておる。まあ新聞も物価戦争なんという題目で書いたり、あるいは最近の情勢を見ても、公共料金を見ても、便乗値上げといえばそれまでなんでしょうけれども、タクシー料金も上がる、都電も都バスも地下鉄も私鉄も上がる、入浴料金も上がる、あるいはクリーニング代も散髪代も上がろうと、こういうような情勢を来たしております。この点について、総理一体消費者米価の値上がりを含め、公共料金のこれだけ上がる情勢をつくっておきながら、物価に対して何らの手の打ちどころがないのかどうか、この点についてさらにお伺いします。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が申し上げるまでもなく、政府の目的とするところの国民生活を守る、これは政治の大きな柱でもあります。これが、諸物価が上がることによりまして国民生活が非常な圧迫を受けておる、かような状態でありますから、その現状に対する分析は、小松君も私も同じように考えております。ただ、ただいま言われております物価高、そういう傾向は一体何によるのか。いろいろの原因があります。したがいまして、これだという対策というよりも、いわゆる総合的な物価対策を立てない限り、十分の成果があがってまいらない、かように思います。たとえばいまの公共料金の問題にいたしましても、これなどは、公共事業の健全な育成強化ができておらない、また合理化がみずから進んでおらない、そういうような点ももちろん反省すべきでありますから、それらも努力してまいりますが、しかし、最終的には、いろいろなくふうをしましてもどうしても事業は健全な運営ができない、こうなれば、やすきにつくわけでは絶対にありませんが、安易に料金を上げるという形ではございませんが、やはり料金を上げざるを得ない、かようなことでございます。また、労賃についていえば、それがいわゆる事業の生産性の問題にもからんでおる場合がありますから、そういう場合には、やはり低生産性部門の生産性を上げていく、こういうことにつとめなければならない。また、サービス業等の料金の上がることについての考え方を見れば、これはどうも賃金そのものが、だんだん経済の現象から見まして、必要な労務を獲得するためにも上げざるを得ないということ、こういうような実情にある。そういう場合に、サービスの賃金が上がれば、それを料金のほうへ転嫁、あるいは料金で吸収する、こういうことが行なわれる。こういう点も、やはりわれわれがこれからくふうしていかなければならない。だから、こういう場合に、サービス料金を経営者だけの立場において処理しないで、いわゆるセルフサービスというような事柄が言われておりますように、消費者自身も、利用者自身も、やはり自分がサービスするというようなことで料金の上がらないように協力するということも必要なことだと思います。ただいま言われております物価そのものは、ただいま申し上げるように、総合的な施策をとって初めて成果があがってくるんだ、かように私考えますので、そういう意味の努力を続けていくつもりでございます。
  97. 小松幹

    ○小松委員 努力を続けるその内容が、はっきりしないのでございます。そこまではわかります。これはいままでの論議でもわかったから、それならば、生産性を上げるために本年度はこうしますという、そのする姿が出てこなければ、私は砂をかむような思いがする。あるいは上げることは最後にやむを得ないからというが、それじゃカルテルの問題を一つとっても、戦後十四年間もずっと不況カルテルが続きっぱなしになって国民の中に存在しておる。不況時代も好況時代もカルテルを結成して、物価というものを一つの固定したものにつくっておるというようなことに具体的に総理はどう取り組むのかという、その取り組み方が出てこなければ私は何にもならぬと思うのです。この点、私は例を引きますけれども、西ドイツのエアハルトが、最近たいへん卵等の物価が上がって、いわゆる消費物価の水準が四・四%上がった。卵が一番上がって二〇%も上がった。そのために非常に評判が悪うなってきた。そのために、エアハルトがかつて世紀の奇跡をつくり上げたものをこわすんじゃないかというような心配もされてきた。その原因は何であったかといえば、地方財政並びに中央の財政が、選挙を前にかけ込みに追い込んでたいへんオーバーしてしまった。そのためにたいへんインフレを促進して物価高になったということで、ごく最近エアハルトは、国会に出すところの首相の施政演説をわざわざ四日間もおくらかして、そうして、いかにして国民の声にこたえて物価を引き下げるべきかというので、予算編成をし直すということをやった。思い切ってエアハルト自身がメスを入れて、予算を削って国民の負託にこたえた。こういうようなことを最近承りますと、私は、総理の考えがまことに口頭的だと思うのです。その内容は、あなたはことばではたいへん真剣にやります。真剣にやりますということを言いますけれども、エアハルトが四日間施政演説を延期して、予算をぶった切って、自分の手で削ってまでそれにこたえようとする情熱、たった四・四%の物価高ですよ、それにこたえるにそれだけやったというのに、首相は、それじゃここ二週間の間に、国民にこたえるために私は物価抑制政策にこれをやったというのがあったら、具体的に出していただきたい。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 予算編成にあたりまして、この物価対策、中小企業や農業の低生産性部門の生産性を上げるために予算を計上しておること、これはしさいに点検されればよくおわかりだろう。これは直接農業や中小企業、いわゆるそれぞれの基本法がもとでございますが、その方向によってやはり所要の予算を計上いたしたわけであります。また、最近におきまする一つの具体的な事例は、いわゆる小麦粉、製粉会社の値上げを押えた、こういうことは、これははっきりした事実でございますし、またいわゆるカルテルその他等につきましても、公取等におきましての自由なる価格形成、この努力をわれわれも高く評価し、その方向で政府も公取の施策に協力している、これはそれぞれ枚挙にいとまがないと思います。したがいまして、私は、順次今回の予算編成を通じてわれわれがとってきたものが、物価やらあるいは不況克服に好影響を与えるものだ、かようにかたく信じております。
  99. 小松幹

    ○小松委員 それでは、公共料金の値上げに対し、あるいは将来もう新聞にいろいろ出てくる、陳情もきているが、そういうことにどうこたえようとしているか。公共料金はもうしょうがないから全部上げろ、こういう形ですか。上げないという方針ですか。
  100. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公共料金については、これはもうたびたび御説明をいたしました。まず第一に、公共性の点から見まして、料金を上げるということは最終の段階の問題だ、これを上げなければならないという、その前になすべきことがあるだろう、こういうことで機械化なりあるいは近代化なり能率化なり合理化なり、そういうことをどんどん進めていっておるわけであります。しかもなお、そういうことを行ない、一方で政府の低利長期の資金の供給その他筆をいたしましても、なおかつ事業の将来についての見通しがなかなか立たない、こういう場合が出てまいりますと、やむを得ない措置として料金を上げていくのでありますが、しかし、このことなども昨年一年は国鉄の料金も押えてまいりました。しかし、今日になってなおかつ考えるということは、私、適当でない、かように考えまして、ただいま御審議をいただいておるのであります。もう一つ問題になりますのは、最近郵便料金等がございますが、こういう公共性を供与する、公共の利便を増進する、また確保する、こういう観点に立てば、料金を上げるというものは最後のものだ。これは料金を上げるというような安易な政策をとるものではないので、これは最後にやむを得ない処置としてとるんだ、かように私ども考えておりますので、それぞれの担当省をして、十分合理化その他を検討ぎし、しかる上に最後の手段としての料金の値上げ、これを決したわけであります。
  101. 小松幹

    ○小松委員 福田大蔵大臣にちょっとお尋ねしますが、あなたは去年の暮れ財界人と出会ったときに、景気政策と物価政策との話をした。ところがそのときに、財界人が、不況克服のためなら少々物価が上がってもやむを得ない、こう言われたら、福田大蔵大臣は、そのとおりだと相づちを打った。だから、財界人は、インフレでもよいから、物価は上がってもとにかく不況克服だけはやるんだというのが大蔵大臣意思だといって喜んだというが、あなたは不況を克服さえすれば物価は上がってもいいという観念を持っておられるのですか。その辺はどうですか。
  102. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 何回も申し上げているのですが、われわれは当面不況を克服しなければならぬ。同時に、この不況克服の過程を通じまして、物価の安定を中心とする経済の安定成長路線を確立しなければならぬ。この二つの問題に取り組んでおる、こういうふうに申しておるのであります。
  103. 小松幹

    ○小松委員 それならば、二つの問題に取り組んでいくあなたは、同時にそれがどういう道を通れば物価は下がる、不況は克服できるというその筋道があるか。特に物価が下がる筋道をあなたひとつ言っていただきたい。
  104. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 景気対策についてまず申し上げますと、やはり今日の経済の動きの一番特徴的な点は、これは設備投資が低調である、こういう点にあると思うのです。それが経済の成長に非常に影響しておる。これを財政が補うというたてまえの政策をとりたいと思っておるのです。これで私は景気回復が可能である、こういうふうに考えております。  それから物価の問題につきましては、これは私は経済的要因、経済循環的要因、需給の面からの問題もあるし、いわゆる構造的要因といわれておる要因、この二つをはらんでおると思う。経済的、需給的要因からいえば、今日は不況の状況でございまするから、循環理論からすると、当然物価がほんとうは下がるべきなんです。それが下がらない。下がらないゆえんのものは、経済的要因を消して強く構造的要因が働いておる、こういうふうに見ておるわけです。ですから、今日の物価問題というのは、そう簡単に、さあ一生懸命やるからすぐ下がるかというと、そういう状態じゃない。構造的要因、つまり二重構造というか、低生産性部門というものが出てきておるわけであります。これが生産性を上げる、この問題を解決するという方向に力強く、またねばり強く取り組んでいく、これが私は物価政策に取り組む正しい姿勢である、またこれを続けていけば、これは克服できる、かように考えております。
  105. 小松幹

    ○小松委員 福田大蔵大臣は、常に二元論者みたいなことを言って逃げる。あなたは政策担当者であり、あるいは経済のトップの人ですけれども、循環理論を振り回してみたり構造理論を振り回してみたり、全くいつもデフレとインフレとの間だとか、常に二つをもてあそんでいる、これはもう最も悪い。何をやるか。あたりまえの常識から言ったら、財政を膨脹させて、そして公債を発行してやれば、基本的理念はインフレを呼ぶということは、これは定則の定則じゃありませんか。どうして物価が下がるという定則が出ますか、あなたのやっている財政政策の中から。いかなる経済学者がとってみても、財政を膨脹させ、そして公債を発行して、ものが下がりますなんという経済学者がどこに行ったらおりますか。あなたは、常に二つのことをもてあそんでおるだけなんです。そんな理論というものはありはしないですよ。幾らあなたが偉くても、これはどうしても自然に、クリーピングであっても、がぶっと来なくても、とにかく物価は上がりますよ。現実に公共料金などは上がっているじゃないですか。上がりつつあるじゃありませんか。それにあなたが財政政策をオーバーな——オーバーというわけではない、まああなたとしてはオーバーな財政政策をして、物価が下がる政策をやっていますなんて、どこから言えますか。あなたはどういう原理をとって言えますか。経済政策があるなら、そういう点で釈明してもらいたい。どうしたら下がるのか。
  106. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま私は、物価の問題には経済循環的な要因もあるし構造的要因もある、こういうふうに申し上げたわけです。経済的要因といえば何であるかというと、卵の値段が上がる、これは需給の関係です。そういう関係で上がったり下がったりする。そういう要因もあるけれども、同時に低生産部門で、生産性が賃金の上がり、そういうものを吸収していない、こういう面もある。こういうことを申しているのです。
  107. 小松幹

    ○小松委員 経済の流れとかいう長期の展望に立てば、循環理論というのは消えてはいないでしょう。同時に、今度は構造上の問題も現実に起こっておるじゃありませんか。その場合に、政治家はそういう長い目の学者の言うようなことを言っておったらしょうがない。きょうどうするかということになれば、自分は循環理論の上に立って政治をやるんだとか、あるいは構造改善と取り組むんだという一本の線しか出ないはずです。それを評論家みたようなことを言って、大蔵大臣が評論家みたような経済政策を持っておって、どうして物価が下がりますか。そんなことだから物価が下がらぬのだ。がちっと一つしか経済政策は出ないはずです。考える過程は二つも三つもあるでしょうが、最後にやるといったときに、一発やるというときには、その政策は一本しか出らぬはずです。あなたは評論家みたようなことを言っているから、ほんとうは、実際は物価というものは眼中にないと私は言いたいのです。物価というものを考え政策をやっておるならば、ひとつここではっきり言ってもらいたい。いつ物価が下がるのか。物価の問題をあなたが言うなら、いわゆる経済が不況から脱出するということは一応ここにおきます。それはおきますよ。物価が下がるという政策は、あなたはどこから出ますか、それを言ってください。   〔「いつ下がるのか」と呼び、その他発言する者あり〕
  108. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  109. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 物価が下がるということにつきましては、企画庁長官からもことしは五・五%に下げたい、また下げ得るということを申し上げておる。それで、どういう政策でそれをやっていくか、こう言いますと、これは予算にもずいぶんいろいろな施策をとっております。農業の生産性を向上する、あるいは中小企業を援助する、そういう長期的な問題も解決しなければならぬ。同時に、流通機構の改善、また労働の流動性、そういう当面の問題も解決する、そういうあらゆる努力をしてとにかく五・五%に下げる、こういうことを申し上げているのです。非常に具体的に申し上げているわけであります。
  110. 小松幹

    ○小松委員 あなたは具体的とおっしゃいますけれども、その具体的がわれわれには納得できないのです。やはり抽象論にしか聞こえないのです。あなたは、それじゃ去年もやはり物価を下げるということは言ったと思いますが、去年の物価対策費を見てみますと、予算をかなり出したと思うのです。——かなりというか、少々ですね。野菜の団地形成のためにどれだけ出したとか、あるいはタマネギをどうするのに七千万円出したとか、そういう対策をするのに何億円出した。予算は出しましたよ。去年も出した。ところがどうですか、きょうの段階でどれほど改善になり、どれほど物価が下がったか、何も下がっていないじゃないですか。実際何も野菜というのは下がってはいない。こういう点を考えて、ことしも予算をまたつけたでしょう。つけて、それがはたして予算どおりに下がるのか下がらぬのか、この二つを考えたとき、あなたはこういうような使い方をすれば絶対下がるのだという、それを説明してもらいたい。
  111. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今度は、農林省の予算でも、畜産も食肉を増産するというようなことを考えております。これは需給要因で物価が上がる要因を消すわけであります。私は非常に有効に働いてくると思う。また東京なんかの近傍に農作物の指定生産制をとる。これもその指定地に助成を施して、近代化された生産が行なわれる、またそれを都市に運搬する、その運搬の流通にも改善を加える、これも現実には物価値下がりという方向に働いてくる。たとえばまた通産省の面におきましては、今度国民公庫から床屋というような環境衛生施設に対して低利、長期の融資をする。これはその設備が改善されるわけであります。したがいまして、料金の値上げを抑制できる力を持つ。一つ一つ申し上げれば、それが何ほど響くか、これはちょっと申し上げることもできませんけれども、そういうこまかい努力が大きく結集する、そこで私は安定の効果が出てくる、かように思います。  しかし、根本的には、先ほど申し上げておりますが、そういう需給の問題ばかりじゃない。構造的問題があるわけでありまして、これは長い問題である。農村、中小企業の近代化をする、これはねばり強く、力強く取り組んでいかなければならない。しかし、時間がかかることもまた予期しておかなければならぬ、かように考える次第であります。
  112. 小松幹

    ○小松委員 総理にお尋ねしますが、いま大蔵大臣は二つの道をやると言われた。あなたもおそらく二つの道をやるんだと言うだろうけれども、一番国民がいま毎日の生計にひっかかっているのは、物価問題だと思うのです。だから、いま長い目でやりますとか、構造改善は長い目でやるんだとか、あるいは環境衛生施設に予算を出したから、近代化ができたから散髪屋の料金が下がるだろうという、そうなったら散髪屋から料金値上げは起こらないはずです。しかし、三五%ぐらいな値上げ要求がもう起こりかけているじゃございませんか。そういう迂遠なことも必要かもしれませんよ。ないとは言わないけれども、それならば、やはりほんとうに物価をいまの段階で——政治というものは、私に言わせれば、女を男に変えるか、あるいは死んだ者を生かす以外のことは、たいてい権力者というものはできるはずだ、指揮権も発動ができるはずなんだ。それならば、物価を下げるだけの指揮権を発動できないかどうか、ショック的な一つの政策というものができるはずだと思うのです。外国あたりでも、これとこれとこれだけについては絶対に物価を下げるという一つの確信のもとに下げておる例は幾多あるはずです。ショック的に下げる方法はあると思うのです。それをやらないのかやるのか、やらないで、気長い話で、そのうちに何とかなるだろう、この何とかなるだろう式の考え方しか持たないのかどうか、総理にお伺いいたします。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの消費者物価の問題、あるいは一般物価というような問題、これはいろいろあると思います。ここで私、いまこうしてお話ししているが、こういうようなものは現に生産性が非常に上がって、だんだん値段は安くなった、かように思います。私ども物価の問題と取り組む場合に、やはり消費者、同時に生産者、両者の間にあって、両者が満足のいくようなことであってほしいと思うのです。ただいま野菜の例をとられました。なるほど都市にいる消費者から見れば、野菜が安く買えればこんなうれしいことはないでしょう。しかし農村の生産者は一体それでどうなるのか、やはり生産者も守ってやらないと、消費の健全というものも保持することはできないでしょう。やはり生産者と消費者との中に立って、政府がその間をあっせんしていく。価格のあり方は今日まで何に一番困っているかといえば、暴落、暴騰、これに困っている。生産者がせっかくつくったけれども暴落した、これはたいへんなことなんだ。またその価格がどえらい値段になった、そうすると消費者が非常に困る。だから、この生産者、消費者の中間にあって、そうして暴騰、暴落がしないように、そこらで一つの値幅というものが非常に小さくなる、そういうことがこのねらいだと思います。だから、ただいまの野菜なら野菜にいたしましても、貯蔵のできるような野菜については貯蔵の方法をとって、供給の安定化をはかっていく、そのために、私どもは今回の予算でもそういう意味のものをずいぶん計上したと思います。必ずしもこれは安くするばかりというものではないので、ただいまのような安定した供給、同時にまた外国の品物まで入れる。輸入政策もあるだろうし、関税政策もあって、そして物価を安定さす、また豊富に供給する、豊富というよりも結局安定した流通機構、これを整備するということが大事なんだと思います。だから、ただいま御指摘になりまして、とにかく物価がどうして上がるのか、こういうお尋ねから、ただいまのように、どんどん上がるじゃないか、政治は一体どこをねらっているか、こういうお話でありますが、私はただいまお話をいたしますように、生産者、消費者双方において納得のいくような価格であってほしい、またそれが政治の目標だ、かように申し上げておきます。
  114. 小松幹

    ○小松委員 佐藤総理は、物価の暴騰と暴落との中間で安定した価格をねらっておるのだ。それじゃいまは暴騰ですか、暴落ですか。暴騰じゃありませんか。それなら暴騰を押える政策をすべきでしょう。その暴騰のときに、暴騰と暴落の中間で安定するなんと言ったって、聞こえませんと言いたくなるでしょう。ちょうどいいときならちょうどいいときだ、上がっておるときなら下げるほうの政策をとるというのが政治じゃないですか。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま全部が暴騰の状況だというようなことは私は当たらないと思う。つい最近卵が非常に暴落した、養鶏農家は手を上げた、だからやはり卵の価格を安定させなければならない。これはキャベツ、白菜、それぞれみんなある。だから、そういうことを十分御理解いただけると思います。私がこの程度知っているのだから、小松君は農村の方だし、私より以上にこういうことは詳しい知識を持っていらっしゃる、かように思います。
  116. 小松幹

    ○小松委員 私は下がっている物価を下げろとは言いません。上がっている物価を下げなさいと言っているのです。だから、下がっておるのはありますよ。いま佐藤内閣になって値が下がったのは、砂糖の値段が下がった。(笑声)あとみんな上がった。下がったのは砂糖だけ、あとはみんな上がったのです。そのうちの多く上がったやつをつかまえて、それを下げなさいと言っているので、下がったやつを下げろなんて言ってやしませんよ。だから卵の値は下がった。そして最近上がったが、卵のことは私は言っていませんでしょう。卵のことは言っておりませんよ。上がっているやつを下げなさいと言っている。下がっているのは砂糖だけだといわれている。佐藤内閣になってから物価が下がったのは砂糖だけだ。確かに佐藤は下がった、佐藤株は下がったことは事家なんだ。(笑声)それは何かというと、物価が上がったからだ。物価が上がったから佐藤株が下がったということになるわけだ。(笑声)  そこで、私は総理にお伺いしますが、先般官房長官から、物価安定推進本部というようなでかでかしい名前で行政機構をつくってやるのだ、こういうことをなにで拝見をしましたが、これは閣議できまったそうでございますが、それはどうなんでございましょうか。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 経済企画庁、藤山君のところで物価問題、これとひとつ取り組むのだ、そこでいわゆる学者や特殊な団体等の声を聞くよりも、ほんとうに市井の間の町の声を聞く、こういうことで物価問題懇談会を開く。たいへんけっこうなことで、その案には私も賛成もし、そして、これを藤山君が中心になってやっておるわけであります。どうもいままで政府が聞いたのは片寄った考え方のようだ、だから今度のこの懇談会では、ほんとうに市井の声が聞ける、組合の諸君の要望どもこの場で聞けるようになっております。そこで今度は、経済企画庁でやるが、各省に関係することが多いので、総合的な施策をとらなければいけない、こういう意味で、そこで内閣に置いたほうがいいのではないか、こういうような議論が出たわけであります。しかし、経済企画庁中心になって、経済企画庁が各省を動員することもできるのですから、しいて内閣の形をとらなくても、現に聞いておられるその場所でやられることがより実際的ではないか、こういうので、内閣に推進本部を置くという、これはまだ最終的な決定は見ておりません。ただいま経済企画庁中心にして、そして各省がこれに協力する、その体制を整えて物価問題と取り組んでまいるつもりであります。
  118. 小松幹

    ○小松委員 なかなか官房長官はうまいことを発表して、花火は打ち上げたが、いま話を聞けば中身は何にもない。特に藤山経済企画庁長官は、この物価安定推進本部なる行政機構には、きわめて警戒的であり、消極的であるというように報告されておるが、これは物価対策に対して消極的なのか、手がないから、当たらぬハジには負けないということばがあるが、なるたけ遠慮しておったほうが罪をかぶらぬでいいというのか、どちらか。藤山長官、どちらなんです。
  119. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価に対して政府一体となってこれに取り組んでいくということは必要でございまして、われわれは物価の方向なりあるいは政策なりを出しますけれども一実質的には各省でやっていただいているわけです。今日まででも、次官クラスを中心にして、企画庁の次官が中心になりまして、各省との打ち合わせ会をずっと開いてきております。したがって、それをさらに拡大していまの閣僚クラスの物価問題の推進本部というものを置くかどうかという問題については、いま検討をして、それを置くことが必要であれば置くにやぶさかではございません。そうしてわれわれは推進していくつもりなんでございますが、現在までそういう状況でやってまいっておりますから、したがって、官房長官がそういう発言をされて、われわれもその点は了といたしますが、そのやり方についてさらに一応検討してみるということであったわけであります。
  120. 小松幹

    ○小松委員 いまのようなていたらくなことで物価が下がろうなんと思っているのが間違いなんです。物価を下げますと口だけでは言うけれどもほんとう国民は信用しませんよ。第一、いま藤山さんが言ったが、各省の次官を集めて話をする。各省の役人が集まったときの物価問題は、物価引き上げのほうが多いじゃないですか。カルテルをつくれとか、公取委員会がカルテルを少しでもつぶそうと思えば、何だというような意見がある。各省みなそれぞれかかえた業界の代表者みたいな形になっておる傾向が多いのです。だから、生産者代表だけ集めて物価懇談会を開いて、何で消費者物価が下がりますか。そんなことを物価長官は思っていますか。そんななまやさしい問題でこの消費者物価が下がろうと思っていますか。もっと強力な、ほんとうに政治というものはかくも力があるものかとして見せるためには、ほんとうに推進本部なりをつくって、総理なりあるいは副総理なりが率先してやって、初めてこの物価を、各省の次官クラスを押えなければならぬところが出てくるのです。あとで私はカルテルの問題に入っていきますけれども、実際問題として農林省に行けば、きのう私、農林省を呼んでみたら、やはり生産者のことも考えますし消費者のことも考えますから、もう私たちはどうしていいかわからぬ、というようなことになるのです。それであったら、それでいけば、ずるずるいけば、言わぬほうがいいということになる。そんなことは考えぬほうがいい。だから、しまいに結論として、いままで企画庁でやっているから、そのままイージーゴーイングにやったらこれでいいのですという、きわめて退嬰的な政策しか出てこない。ほんとうにやろうと思うならば、いままでの企画庁だけの範囲だったらだめだ、各省の次官を集めたってだめだ、経済閣僚だけ集めたってだめだ。ほんとうに市民の声を集めて、具体的に権力を持ち、権限を持たせなければだめです。権力を持たせなければ、物価というものは水の流れみたようなものなんですからね。それは肉牛一頭をとっても、家畜商が九州の果てから茨城県のほうまで運んで、それをまた鳥取県に持っていって、神戸に持っていって神戸牛にする、こういう流通機構がある間は、相当の権力を持ってやらなければ、二十万円の牛は絶対に下がりませんよ。そのことを考えたら、相当強い一つの発言権と、そとをセーブする力のある安定本部というものをつくるならおつくりなさい、熱意があるならつくりなさい。その辺はどうなんですか。そういう熱意はございませんか、佐藤総理
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小松君からいろいろ教えられたようですが、しかし、私はいまの総合的な施策というそのことを考えてみますと、すべてがそれぞれの関係を持つのであります。たとえば、あるいは道路建設は交通という立場からのみ見ていらっしゃるかわかりませんが、道路が整備されることが物価に重大なる影響のあること、これはだれでもおわかりだろう、かように思います。そこで、いわゆる総合的な施策というものが必要なのでありまして、問題は、各省の大臣が、物価問題は今日この内閣に課せられた政治的な大課題だ、かように認識をし、そうしてあらゆる機会にこの方向で物価の鎮静に成果があがるような施策をする、こういうことになれば、ただいまのような問題は、心配は実はないのです。私はこの口でこそ総合的な施策だという非常にわかり切った話を平静に話をしております。また小松君のように卓をたたいてまで大きな声はいたしませんけれども、しかし、この物価問題と取り組んでおる政府態度は、これは十分御信頼になってけっこうであります。間違えるとか、その期待にそむくようなことはございません。
  122. 小松幹

    ○小松委員 その熱意は卓をたたかぬでも出るでしょう。しかし、熱意だけじゃ、国民は、これは物価が下がらない限りは何にもならぬのです。あなたが幾らここでその熱意を披瀝したって、それは意味がないのです。結局、いつ下げるか、そのためにどういう機構を持つか、その規模をどういう施策でやるのか、それはっくる意思がございませんか、つくる意思がないのかあるのか、はっきりしませんでしたから伺っておる。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 具体的な提案で、先ほどこういうことをやれとおっしゃったが、これは十分私のほうで研究もいたしてみます。したがって、ただいまこれを実施するとかしないとか、かような返事はいたしません。これは、物価問題はどこのだれからの声でも十分効果があがる、こういうことであればそのとおり実施するつもりでございます。  また、物価の性向、行き方と申しますか、趨勢と申しますか、これは五・五%、ここにとどまるように最善の努力を払う。目標は実ははっきりいたしておるわけであります。
  124. 小松幹

    ○小松委員 その物価が大体あなたのことばを使えば安定するとき、これは安定しようにも、公共料金をどんどん引き上げて、矢つぎばやに鉄砲をぶつ放すのですから、安定するわけはないのですけれども、安定すると言うなら、いつ安定するのか、そのおよその時期をひとつ国民の前に知らしていただきたいのです。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 五・五%は四十一年度の目標でございます。これははっきりさように御理解をいただきたい。ただいま公共料金はそれぞれのものを御審議をいただいております。それぞれ上げざるを得ないような状態であることはまことに残念に思いますが、しかし、今回のこの改正によりまして、今後はしばらくはまた重ねて上げるというようなことはない。ただいま言われるように、公共料金をどんどん、どんどん上げていく、矢つぎばやに上げていく、こういうものでは実はないのでありますから、一応ここでストップがかかる、かように御了承をいただきたいと思います。
  126. 小松幹

    ○小松委員 公共料金に一応ここでストップがかかる、こう思ってください、こう言いましたですね。そうすると、どこまででストップですか、何まででストップを考えているのですか、はっきり言ってください。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま鉄道の運賃の御審議をいただいておりますが、その次に郵便料金ということを考えている。また医療費等においても、これがひとつ考えがある、これは御審議をいただくことになっています。米はもうことしすでにやりましたので、その他たばこの話が出て。おりますが、これは考えておりません。まだたばこはただいま目標にはなっておらない。
  128. 小松幹

    ○小松委員 厚生大臣はおりますか。——入浴料とか散髪料とか、環境衛生のものは、いま総理は言わなかった。これは上げないという方針ですね。間違いないですかか。そうですか。ここで終わりだ、こう言ったのです。郵便料金までで終わりだと言った。
  129. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 サービス料金につきましては、公衆浴場料金につきましては、これは、御承知のように物価統制令で都道府県知事にその料金の許可をおまかせしてあるわけであります。都道府県知事は、その公衆浴場料金をきめます場合には、専門家の委員会の意見を十分徴しまして、適正にこれを決定するということになっております。  その他のサービス料金につきましては、制度的にこれを規制いたしておりません。しかし、政府といたしましては、できるだけこれを近代化なり合理化なりを通じて、サービス料金の値上がりを抑制するような方向で指導してまいる方針でございます。
  130. 小松幹

    ○小松委員 公共料金の、特に厚生省関係の値上がりについては抑制するというわけですね。そういう方針ですね。その方針で指導すると……。  電報代は上げますか、上げませんか、関係大臣
  131. 郡祐一

    ○郡国務大臣 ただいまのところ、御承知のように、調査会が意見の答申等をいたしておりますが、公社において検討はいたしておりますけれども、公社の検討を経ました上で考えますので、四十一年度におきましては、御承知のように現状のままの予算を組んでおる状態でございます。
  132. 小松幹

    ○小松委員 電報代は来年度は上げないという方針ですか。はっきり、持たせたようなことを言わないで……。
  133. 郡祐一

    ○郡国務大臣 これにつきましては、十分公社自身が検討いたしております。それを受けまして政府において十分検討いたします。
  134. 小松幹

    ○小松委員 かくあげてくると、総理国民生活に一つ一つ関係のあるやつが矢つぎばやにほんとうは上がってきそうなんです。国民は実際は不安なんです。この公共料金に対し、あるいは他の物価に対して、上がることを防がねばならぬとするならば、ここに強力なる一つの物価対策を推進するところのいわゆる木部というものを置いて、強力なる指導なり干渉なりをしていく段階が来ておる。そういうなまはんかな考え方では——結局あれでしょう。総理自身が全部責任をかぶって、上げねばならなければ、ずるずるに上げてしまう、こういうことになるのじゃないか。私ども社会党は、今国会に物価安定基本法を出したいと思っているのです。そうして、この物価安定基本法に基づく一つの行政機関としての物価安定委員会を組織していただきたい。そうして、それには行政権もあるし、一つの査察権も持たせる。公正取引委員会のような一つの組織にして、この物価を総ざらいにしてひとつ物価抑制に取り組んでいきたい、こういうふうに考えておるものでございますが、この考えはあながち政府与党としても受け入れられない筋のものではないと私は思う。こういう点について総理の所信をお伺いしたい。幸い私がこう言う前に、官房長官のほうからそれらしきものを提示されましたから、やはり人間の考えることは与党も野党も同じことを考えておるのだな、こういうように思ったところが、与党のほうはすっと消えてしまったことを残念に思うわけです。私は、総理のいま一たびの奮起と決意を承りたい。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見ですが、物価安定法、これを提案したいということでございます。先ほど来私がお答えいたしておりますように、物価問題はこれという一つの手で片づくようなものではない、総合的な施策を必要とするものでありますし、また、各界各層の御協力を得ないと、これは十分成果はあがらないと思います。ただいまも御指摘がありましたが、与野党ともに、また、消費者も生産者も、また、各界各層もこれに協力するということでないと成果があがらないと思います。そういう意味で、ただいまの御指摘になります点、社会党自身も物価と真剣に取り組んで、安くする、安定さす、この努力をすると言われることは、私どものかねてから言っております各界各層の協力、これが大事なことなんだという点とぴったり合っておりますので、私も非常にうれしく思います。そうして、ただいまの安定法そのものが、いま小松君からわずかの時間にお話をいただいたので、どういうような組織になっておるか、十分これはよく検討しないと、研究しないと、ただいま結論を申すわけにはいきません。ことに公正取引委員会等の機能もすでにあるのでありますから、そういうものとどういうような関係になるとか、あるいは経済企画庁がどういうような関係になるとか、いろいろあると思います。十分その検討をする、研究に値する御提案だと実はかように思いますので、政府におきましても、十分検討してまいるつもりでございます。大事なことは、何よりも各界各層の国民協力を得ない限り、この物価問題は簡単に片づかないということであります。
  136. 小松幹

    ○小松委員 この物価問題については、物価あるいはそういう価格の問題については、公正取引委員会という、独禁法に基づく一つの査察制度というものがあって、それで監視をし、あるいはその認可もしております。しかし、独禁法以外の物価のいわゆるコスト形成、あるいはそういうものについての研究なり、あるいは突っ込んだ物価対策までしていくところがないわけです。企画庁が言っているのは——ほんとうは、経済企画庁は物価だとか、そういう行動性まで持っておるスタッフもなければ、エコノミスト官僚が集まって数字をはじいたり、そういうようなところでしかないと思っているのです。経済企画庁にそこまで重荷を負担さしたって、それはスタッフもそろっていないし、実際手足がない。各省に行って手もみして、通産省あたりに行って手もみして頼まなければならない。かえってかち合うようなことになるわけです。同時に消費者行政という面もございますけれども、それは別として、やはり総理、これは置くことをひとつ真剣に考えて——社会党もそういう気がまえでおるわけでございますから、そのつもりをしておいていただきたいと思うのでございます。  そこで、通産大臣はちょっと出かけるそうでございますから——こういうことをちょっと新聞で見たんです。公正取引委員会がセメントや製粉の独占禁止法違反の疑いで手を少し入れた。ところが通産省の佐橋事務次官は、この公正取引委員会やり方法律違反を取り締まるのはよいけれども、物価対策など考えるのはもってのほかだ、一戦交えるというようなふうに通産官僚が言ったそうでございます。大臣、先ほど私が言っているのは、通産省というのは生産者代表だ、こう言っているのはここだと思うのです。公正取引委員会は何も好きこのんでそういうことをやったのじゃない。独禁法の法律に、いまは国民が価格形成のことについてやかましいから、いままで眠っておった公正取引委員会がやっと目をさまして飛びついたのがこの製粉とセメントだったかもしれません。しかし、それは法律違反ならともかくも、物価で文句を言うのは間違いだというようなことを言っているが、これは通産大臣、あなたはそういう指導をなさるのですか。
  137. 三木武夫

    ○三木国務大臣 公正取引委員会は、独禁法の規定によって厳重に職務を果たす権限を持っておるし、責任があるわけです。ただしかし、物価政策全般ということは、そういう記事を私も読んでおりませんが、これは物価政策全般を公取がやるというわけではない。独禁法の規定に従って、厳重にその見地から公取委員会としては活躍をするということが本来のもので、佐橋君の言をまつまでもなく、公取委員会が物価政策全般をやる役所だとはわれわれも思っていない。しかし独禁法の規定に従って、厳重にその権限を履行することは当然の責務だと考えて、われわれが文句を言う余地はないのであります。
  138. 小松幹

    ○小松委員 大臣は事務次官をカバーしておるかもしれぬけれども、事務次官ともあろう者が、公取が物価政策全般をやろうなんて考えているあほうがどこにいったらありますか。役人の飯を三日食えば、そのくらいの常識は出てきますよ。公正取引委員会といっても、物価政策全般をやろうなんという大それた考え方は、これから先もないでしょう。それを物価政策ならば一戦やろうかという気がまえというものは、通産省自体が物価政策、消費者物価にほんとうに取り組んでいないということをあらわしている。何か生産者の代表みたいなことを言っている。公正取引委員会が物価対策でやっているのじゃないのです。小麦粉の問題、小麦粉は上げるなと言ったでしょう。セメントの問題あたりでも、セメントはいままで不況だったけれども政府からそら行けというかけ声がかかったから、セメントの一つのカルテルみたいなものをつくりかけて、そして利潤を上げようという。だから出鼻をくじかれた。そういうことを公正取引委員会がするのはあたりまえじゃないか。しないのが間違っておる。それを、何か物価対策ならというえらい横柄な言い方をしたらしいのですけれども、これは通産大臣、どうなのか。通産省というのは、大体がそういうことを考えているのですか。
  139. 三木武夫

    ○三木国務大臣 通産省は、小松議員御承知のように、日本経済の全般の均衡のある発展を指導するわけでありますから、生産者と同時に消費者の立場についても当然に考えなければならぬ。生産者の代表ではない。やはり消費者行政についてもわれわれの重要な職務の一つだと考えておりますから、単に生産者の立場に立って通産行政をしておるものではないことは明らかにいたしておきたい。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕
  140. 小松幹

    ○小松委員 まあ言うことはきわめてやすいですけれども、どうも通産省は生産者代表の考え方だけ考えておる。第一、今日不況カルテルをつくったり、——あるいはカルテルの結成などについても、私ちょっと質問をしますが、どんな考え方を持っておるのかということなんです。カルテルを結成する場合に、その産業はそれで助かるかもしれませんね。しかし関連する産業はたいへん困る場合があるのじゃないですか。関連するもの、下請、たとえたならば、いま紙、半紙と紙器業界とがカルテルをつぶせとか存続とかもめておるでしょう。いわゆる白ボールとかあるいはチップというような業界は、今度この月末でカルテルが切れるのでしょう。その場合に、実際問題としてまだ存続をしたいと言う。ところが下請の紙屋さんというか、紙器屋さんは、これはたいへんな値上げだと言っているのです。もうすでにキロ四十五円から五十五円に上がっておって、今度はその上に一〇%建て値が引き上がる。建て値ということばが第一、鉄鋼建て値とか、この建て値というのがそもそも私は問題があると思うのです。紙屋さんにも建て値があるのかと思う。建て値が一〇%引き上がるといったら、いわゆる下請の産業というものは、波及してたいへんな物価高に悩むわけなんです。そういうことになって、これは公取の部類になるかもしれませんよ。カルテルを認めるか認めないかというのは問題がありましょうけれども、通産省はどういう指導をしますか。その辺はどうなんですか。
  141. 三木武夫

    ○三木国務大臣 カルテルの結成については、きわめて厳重な規定を持っておることは御承知のとおりでございます。公取委員会から主務大臣に協議があって、われわれも、単に業界のみならず、関連産業、消費者の立場、こういうものを考えてカルテルを許すべきかどうかということに対してわれわれの意見を述べるわけで、きわめて厳重な制約のもとでなければカルテルは結成できないわけであります。しかもカルテルについては、生産コストを割った場合でなければ、ある程度の適正な利潤を持っておるような企業が、カルテルをつくって値段をつり上げるというようなことでカルテルは許されるべき性質のものではないのであります。平均の生産費を大部分の企業が割って、そのままに放置すれば企業は次々に倒産していく、こういう事態でなければ不況カルテルの結成は認めない、そういうことでありますから、むろん下請その他関連産業に影響がないとは言いませんが、しかし大企業がそのような状態で次々に倒産するというような事態では、もう少し長い目で見て、関連産業というものがそういう形において健全な発達を遂げられるとは私は思わない。やはり適正な生産費、また適正な利潤というものを得て、企業が安定して経営のできるように日本の産業を指導するのは当然のことであって、そういう意味から、関連産業への影響はできるだけわれわれとしてそれを緩和して、影響を少なくするような努力をいろいろ払ってきておるわけであります。しかし全然ないとは言い切れない、したがって、そういう事態が改善できれば、不況カルテルのごときものはいつまでも無制限に許すべき性質のものではない、かような指導を行なっておるわけでございます。
  142. 小松幹

    ○小松委員 いまあなたがおっしゃったところを見ても、下請なり関連産業なりはたいへん犠牲を受けるときもある、その末端の国民消費者はさらに大きな犠牲を受けるわけなんです。そういうときになっても、なおかつあなたは企業がつぶれないようにしたいと言う。カルテルを結成しなければ企業というものはつぶれるものでございますか。あるいは不況カルテルがなかったら、企業というものは、それはつぶれるものもあるかもしれないけれども、そこをつぶさないようにするたった一つの手は、カルテルの結成以外にはないとあなたはお思いでございますか。その辺のところを……。もう一つ、その企業のグループの中でさえも不況カルテルはいやだと言っているのに、あなたのほうは無理に押えつけているというのは、一体そこまでして不況カルテルをつくっておきたいのですか。どうなんです。
  143. 三木武夫

    ○三木国務大臣 大部分の企業がコストを割ってもほっておいたところでいいではないかというお話ですが、そういうことになれば、非常にコストを割るような事態があっても、金融との関係においてある程度支えていけるような企業、それは持ちこたえるでしょう。しかし、そうでないものは持ちこたえられなくなって、非常に悪い形の弱肉強食という形が私は出てくると思う。そういうふうな日本の産業の発展のしかたというものが、日本の産業の発展の形として好ましいとは思わない。何かやはり背後に金融機関の応援を受ける企業だけがやっていけて、そうでないものはつぶれる、つぶれるものはつぶれろ、こういう考え方は資本主義の悪い形である。したがって、そういうコストを割るような事態に対しては、緊急避難的な不況カルテルを認める、そして、それが正常な状態に返ればその不況カルテルはやめる、こういうことで、日本の産業が、そういう極端な弱肉強食の形をとらないで、日本の産業が発展をするように指導するととが通産行政として必要だと思うのであります。そういう考えで私どもはやっておるわけであります。
  144. 小松幹

    ○小松委員 その考えは私はいいと思いますけれども、独禁法が出て不況カルテルを認められてから今日まで十四年間かかっておりますが、その中には九百件くらいなカルテルができていますけれども、半分は、長いのは十四年間カルテルを結成する、短いので五年間、五年から十年も不況カルテルを結成するなんというばかな話がどこにありますか。そういうところを通産省はなぜ指導しませんか。十四年間あぐらをかいているような産業、これはカルテルであぐらをかいている。二年とか三年とかの時限、あるいは一年というならば話がわかりますけれども、十四年間も不況カルテルの上にあぐらをかいておって、それをなおというのは、いまの理屈では通りませんが、どうなんですか。
  145. 三木武夫

    ○三木国務大臣 前回の御質問の中に、いやだいやだと言うのを不況カルテルをつくらすといっても、これは、やはり業界全体が不況カルテルをつくることに同意しなければ、いかにわれわれが指導しても、全部がそろって不況カルテルをつくるという事態にならなければつくれないのですから、やはりこれは、行政指導はあっても、企業の自主性というものをわれわれはこわすわけにはいかない。だから、いやだいやだという業界の声があれば、不況カルテルはむろんわれわれがそれをつくらすというようなことは、不況カルテルをつくる前提条件をそういう考え方で指導することはよくない。みながいやだと言えばつくることはできない。  それから、いま九百件あるというのは、不況カルテルは十七件、合理化カルテルが十七件、いま小松委員の御指摘になりましたのは中小企業団体法、それから協同組合等の調整事業でありますが、これは、生産あるいは設備、出荷などに対して商工組合が共同事業を行なえることにしてあるわけで、価格の協定というのはほとんど輸出関係であります。むろん例外はありますけれども、大部分は、中小企業団体法は輸出に対しての価格のカルテルであります。これは貿易の秩序を維持するためにダンピングなどをしてはいけないということで、そういうふうな意味で、これを独禁法の例外規定として認めてあるわけであります。また一方は、そういう調整事業を生産とか設備、出荷に認めたのは、何ぶんにも中小企業というものが基盤も弱体でありますから、過当競争をやって、そのために中小企業がばたばたと倒れてくるというような事態もよくない。中小企業の経営の安定、過当競争の防止というところで認めたのでありますが、これに対してはむろんわれわれとしても監督をいたしておりますし、ことに協同組合の、簡単にもう届け出だけでできる、価格の協定が結べるようなことについては、三十日以内に事前届け出にして、そうして弊害のあるものに対しては、これに対して行政指導をして、消費者の利益を守っていきたいということで、われわれとしては決してそういうカルテル論者ではないので、むしろ経済は最終的には消費者に奉仕しなければならぬわけでありますので、そういう中小企業団体法あるいはまた協同組合法によるカルテルの結成についても、できるだけ、御注意にありましたように、われわれとしてもこれを監視していきたいと考えております。
  146. 小松幹

    ○小松委員 次は、再販売価格維持契約制度についてお伺いします。  二十八年に再販売価格維持契約ができましてから現在まで、これが相当拡大してきております。小売り販売は大体九兆円くらいある中で、この再販売が二兆円ぐらいな実績を持ってきております。だから、われもわれもと、押すな押すなで、この再販売価格維持契約の中へ繰り込もうとする動きが最近出てきておる。これは、自然的に縦の系統を通しての価格の維持政策であって、当然原価が下がって下がるような品物までもつり上げておく制度でございます。これは、国民にたいへんな被害を及ぼしている。これは公正取引委員会の関係になるかと思いますが、現在、医薬品、それに家庭用品とか化粧品、キャラメルなどが入って、これはたいへんな額になっておりますが、ただいまどういう実績があって、これを今後どうしようという考えに立っておるか御説明願いたい。
  147. 北島武雄

    ○北島政府委員 お答え申し上げます。  独占禁止法上の再販売価格維持契約は、著作物とそのほかには公正取引委員会の指定した商品と、こういうことになっておりまして、ただいま推定いたしますと、これはいろいろ推定数字があるわけでございますが、小売りの価格全体、八兆円とも九兆円とも申します。そのうちで著作物関係が、私どもの推定では、大ざっぱに申しまして約三千億、それから公正取引委員会の指定する商品については約二千億、大ざっぱに申して五千億がただいま実際に行なわれておる法律上の再販売価格維持契約の小売り価格の数字かと一応推定いたしております。ただし、そのほかに、お話のように、実際公正取引委員会の指定する商品でなくて、それ以外のもので、やみで再販売価格維持行為が行なわれておると思われるものが相当ございます。こういうものにつきましては、なかなか実態がわからないのでありますが、四十一年度におきまして、これを実際に洗ってみていぎだい。そして、いやしくもそれが独占禁止法に触れるものならば、独占禁止法違反として処断したい、こういうふうに考えております。
  148. 小松幹

    ○小松委員 これは化粧品だったら資生堂です。まず資生堂がやり玉に上げられると思うのですが、これは実績も古いし、長いし、資生堂は再販維持契約をとったときの昭和二十五年はわずかでありましたが、現在ではたいへんな売り上げ高、九百四十億という売り上げ高になっておる。片一方の西方のほうは、医薬品で大正製薬がこれまた膨大な利益を持って一ここにおられるからあまり言うちゃ悪いと思いますけれども、これははっきりしているから言ってもいいと思います。こういう大きなメーカーが、再販売価格のいわゆる独占価格維持の上に乗っかって、十年間営々と実績を重ねてきたために、市場価格の三分の一かあるいは四分の一くらいは占めておる。同時に、他の業界も押すな押すなで、この再販維持契約の−不況カルテルではないけれども、これに類する契約を取りつけにあせっておるのが実態なんであります。実際、医薬品にしても、化粧品にしても、雑誌にしても、あるいはキャラメルにしても、これはスイスあたりから新鋭機械を入れてキャラメルをやれば、チョコレートなどはどんどんオートメーションのお菓子をこしらえておるから、価格は年々下がっていいはず、卸価格は下がっていいはず、それなのに、末端価格だけは厳として守らせるような、こういういわゆる再販維持契約という価格の維持契約というものは庶民のためにはよくない。国民のためにはありがた迷惑なところである。全部が全部とはいわない。けれども、慢性化しては私は問題があると思う。こういう問題が公然と、しかもみなやみ取引ですよ。実際薬屋に行ってみなさい。定価二百円のものが、何かコネのある人か医者を通じると、百六十円で手に入る。ところが、しろうとがちょっと行ったら定価どおりぴしゃっととられる。そこに、もう小売り価格の間にたい  へんなハンディがついている。こういう販売を公々然と法律をもってやらせておるというようなことが国民のためになるのかならぬのか、こういうことを考えると、私は再販売価格維持制度の問題を抜本的に一つ考える段階にきたと思っている。あるいは、これの取り締まりについても十二分に配慮しなければならぬときがきた、かように考えますが、総理、いかなるお考えを持っておりますか。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりましたが、これはずいぶん、時に弊害をかもし出しているようですが、よく検討してみたいと思います。
  150. 小松幹

    ○小松委員 検討してみますだけでは、これはどうも安心がならない。あなたの熱意のほども出ておらぬから。熱がまだ出てない。本気でどうしますか、もう一回。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 十分検討する、私が検討するわけじゃありませんが、そのそれぞれのところで十分検討させて、そして弊害が出ておるというようなことなら、これを直してまいります。
  152. 小松幹

    ○小松委員 公正取引委員会はどういう考えか、その意思を明確にしてもらいたい。
  153. 北島武雄

    ○北島政府委員 再販売価格維持契約というものは、確かに独占禁止法には異質なものであります。これは、しかし世界各国、独占禁止法のある国におきまして、歴史的に認められております。その考え方は、先般の当委員会においても御説明申し上げましたが、メーカーののれんを守るという考え方でありまして、たとえば末端の小売りでもってあるメーカー品が売られている。それはメーカーののれんが売られているんだ。こういう考え方のもとに、もしそれが乱売、おとり廉売などに使われると、メーカーの信用を損するということが一つ。それからもう一つは、それによって小売り店間の不当な廉売が行なわれる、不公正な競争が行なわれる危険性もあるということで、世界各国認められているわけでありますが、しかし、これに対しては物価関係からも相当問題がございまして、実は英国は非常に再販売価格維持契約の盛んな国でございましたが、一昨年再販売価格維持契約を原則として禁止いたしまして、ただし特定の場合にこれを適用除外するということで、昨年の二月にたしか届け出を締め切りましたが、四百九十ぐらいの品目についていま届けられておるという様子でございます。ドイツはまた相当数が多い。幸いに日本は数が少ないのでございますが、現在の物価の事情にかんがみまして、その性質については、やはり十分再検討する必要がある、こう私は考えております。  それで、ただいまの処置といたしまして、従来からございました九品目のうち、とりあえず、ほとんど行なわれておらなかった三品目についてまず指定を取り消し、一品目につきましては、これをきわめて範囲を縮小いたしまして、とりあえず今後それについて再販売価格維持契約が行なわれる道を防止いたしたのでございますが、これではきわめて不完全でございまして、来年度におきまして十分実態を調査の上、再販売価格維持契約に対する態度を十分ひとつ根本的に考えたいと思っております。  お答え申し上げます。
  154. 小松幹

    ○小松委員 総理閣僚の中に、いま私があげた会社の社長さんもおられるようでございますので、ことばとしては非常に差しつかえがございますけれども、これはいま公取が言ったように、再販売価格維持契約については、世界的にこれは行き詰まったというか、あるいは反省の色が出て、いま言うたように、英国あたりももう廃止しようかという運動になるし、フランスあたりでも、これに対して大きなチェックをしておる。だから、おそくできた日本でも、ここまでくれば、この再販売価格維持契約については、内閣としても、ほんとうに考え直す時期が世界じゆうにきているのですから、日本もあながちイージーゴーイングにこれを続けるということも考えなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。  次に、国鉄の問題でございますが、運輸大臣にお尋ねしますけれども、三十九年度の決算額を見ると三百億の赤字になっておりますが、内容を見ると、いままでなかった減価償却が、制度を変えたのかと思うのですが、修理費とか取りかえの資産というような——取りかえ資産も三十九年度から減価償却に繰り込んでおる。それから新規の資産は毎年翌年から減価償却に入っておったのが、今月新規資産が出たら来月から減価償却に繰り込んでいくようなかっこうに決算をしてしまって、そして赤字が出た、こういうふうに言っているのですが、これはどういう意味でございますか、減価償却をするということはわかけれども、三十九年度の決算はどういうことになっているのですか。
  155. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 国鉄のほうからお答えさせます。
  156. 原山亮三

    ○原山政府委員 三十九年度三百億の赤字が出たわけでございますが、減価償却の制度につきまして、三十九年度からとりかえ資産の半額法の問題と、それから即時償却、いままでは即時償却をやっておりませんので、即時償却を実施した、そういう制度の変更をやっております。
  157. 小松幹

    ○小松委員 そうすると、即時償却と、それから減価償却の範囲を広げたのでございましょう。そうすると、これはいままでどおりの決算でしたら、実際は三百三十四億の黒字になるはずです。三十九年度の決算は。減価償却をいま言うように法律で何か切りかえて、今月新しい資産ができたらすぐ来月から減価償却に回すという制度をとったために、赤字が三百億出ている。そうなれば、私は、これは三百何十億のとんとんでもかまいはせぬと思うのです。そうなれば、三十九年度決算は、国鉄に関する限りは健在な決算である、こういうふうに見る。値上げする必要なしと見るのですが、いかがでございますか。
  158. 原山亮三

    ○原山政府委員 償却は、従来の償却をいたしましても五十八億の赤字になります。
  159. 小松幹

    ○小松委員 違うでしょう。私が調べたところによると、大体二つの、翌月償却と買いかえ償却で三百三十四億の償却が繰り込まれておるのじゃないですか。
  160. 原山亮三

    ○原山政府委員 償却の額以外に、除却費の減がございまして、その関係で五十八億の赤字が出るわけでございます。
  161. 小松幹

    ○小松委員 そういう赤字があれば別ですけれども、大体私は、三十九年度の国鉄の経理についてはとんとんの決算になっておると思うのです。減価償却をそういう見方にすれば、きょういすを買うたから、来月からそれがすぐ減価償却に入ってくるという、即時償却をしていけば赤字が三百億出る。だから国鉄の料金を上げてほしい、こういう理由はちょっと早計だ。大体とんとんにいけば無理に値上げする必要はないと私は見ている。ところが、四十年度の決算はまだわからないけれども、それは国鉄新幹線などをつくったから、私は案外黒字になるのじゃないかと思うのですが、これはどうなんですか。四十年度の決算はやはり赤字ですか。新幹線ができてもやはり赤字ですか。
  162. 原山亮三

    ○原山政府委員 現在の予想では一千億近い赤字が出る見込みでございます。
  163. 小松幹

    ○小松委員 私は一千億くらいな赤字ならば、大国鉄、しかも裏に国が控えている国鉄であるならば、金を借りればいい。いま地方も金を借りるし、市町村も県も金を借りるし、国も金を借りるのだから、国鉄も思い切って金を借りればいい。そういう意味で料金を値上げするということは、いまの段階では私は全くはしにも棒にもかからぬとは計数的には言いこなさないけれども、しんぼうすれば値上げをせぬでもいいという答えが決算上の面から出るわけであります。千億くらいな赤字ならば、これは鉄道利用債か何かを利用することも必要だ、こういうように考えますが、運輸大臣の御答弁をお願いします。
  164. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 今日非常に交通が逼迫しております事情で、この交通事情を緩和しまして、国民の交通事情にある程度の満足をさせていくような施設をいたしますためには、第三次長期計画を実施するようにいたしておるのでございますが、そういう計画等々にらみ合わせまして、やはり運賃にある程度の負担をしてもらわなければならぬという事情でございますので、御審議を願っておる次第でございます。
  165. 小松幹

    ○小松委員 私は、決算上から見てそういう判断を下したのでございますが、次に、決算ではなくして、この運賃の値上げが産業諸物価に非常にはね上がって波及してくるということを非常におそれております。単に運賃値上げをした、そのことだけでなくして、いろいろな産業物資に影響する、それがやがては物価騰貴になる、こういう意味で非常におそれておる。さなきだに国民は、運賃が上がった直接の被害をこうむった上に、波及したいろいろな諸物価のはね上がり分までも引き受けねばならぬということは——こういうものはたいへん産業と関係があると思うのです。そこで運輸省あるいは企画庁は産業物資に対して、この運賃値上げの二五%というものが関連産業にどういう数字であらわれておるのか、ひとつ数字的に御説明を願いたい。
  166. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 貨物運賃の値上げは一二・三%になっております。そこで、貨物運賃そのものがどれだけ個々の物資に影響してくるかということは、非常に広い物資にわたりますので、それを積算する方法がございません。したがいまして、そういう数字を得ることはむずかしいのでございます。ただ、いま申し上げましたような一二・三%程度の貨物運賃の値上げでございますれば、個々の物資についての影響というものは比較的軽微である、こうわれわれは考えております。
  167. 小松幹

    ○小松委員 そういう比較的軽微などという抽象論を私はお尋ねしているのではない。企画庁には、あるいは運輸省にも——運輸省にはあるいは資料があるかもしれない。いま企画庁にはエコノミストがたくさんおるのですから、産業連関モデルを使うならば、およそどのくらいな原価の波及があるということは数字的に出ると私は思うのです。農産物についてはどのくらいな数字の波及になっているか、工業産物についてはどのような数字の波及になっているか。
  168. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 農産物その他生活に非常に大きな影響を与えるようなものにつきましては、できるだけ運賃の引き上げ率を上げないような配慮をいたしておる次第でございますが、詳しいことは政府委員からお答えいたさせます。
  169. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 旅客につきましては〇・三という数字がはっきり出ております。しかし、いまの貨物につきましては、正確な数字を得られないのでございます。ただ、連関表でもって試算をしてみれば、正確な数字といえませんけれども、〇・五くらいということにはなりますけれども、これは正確度がはっきりいたしておりませんので、われわれも必ずしもそれをよしとするわけではございません。
  170. 小松幹

    ○小松委員 私が、小さいようでありますけれども、その数字を承っておるのは、運賃値上げというものが、ほかのところのいわゆる料金ならば、それは私の胸算用でもできます。ところが、石炭の運送あるいはセメントの運送、それがあらゆるものに波及してくれば、産業上計数的にどういう波及効果が出てくるかということを、まず通産省が一番先にそろばんを入れねばならぬはずなんです。農産物は、扱っている農林省が一番先に扱わんならぬ。農林大臣、農産物は、さっき午前中に牛の話が出たが、牛にはどれだけ波及してくるのかと、そうしたらさっき言ったように、いいですか、九州の牛が流れ流れて茨城県に来て、また鳥取に返って神戸牛になる、その過程ではどれだけこの牛の値段が交通費で上がるか、運輸費で上がるかということを考えたら、これは牛の値下げにはなりませんよ、実際の話が。たいへんな牛の値上げになりますよ。そういうことを考えたら、農林省はまず第一に貨物運賃が上がったことによって、農産物の輸送が何%上がるかということを考えなければならぬ。これを運輸省にしゃべらせたんじゃしょうがないでしょう。運輸省は値段を上げたいほうなんです。だから、これをなるたけ低く言う。しかし、通産省と農林省はなるたけ高く計算をしてみぬと、これはあとでたいへんな大問題が起こりますよ。どうなっているんですか、数字は。
  171. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  172. 堀武夫

    ○堀政府委員 農産物だけについて、農産物全般についてどれくらい上がるかというような計算はいたしておりませんが、ここに物資別に、このたびの改定によってどれくらい上がるかというのがございますので、それを若干例をあげて申し上げます。  農産物で申しますと、バレイショが、たとえば富良野から岡山へ持っていくものについてみますと二〇・二%、それからミカン、これは海南から東京市場に持ってくるものについてみますと六・三%、それからしょうゆ、これは銚子から福島に行くものを見ますと二四%、それから農機具、これは熊本から加古川に持ってくる場合について見ますと三・二%、それから削り節、伊予市から秋葉原に持っていく場合を見ますと、これは一二%下がるというかっこうになります。それからバター、苗穂から梅田までに行く場合を見ますと二三・一%上がる、こういうようなかっこうになっております。
  173. 小松幹

    ○小松委員 鉱業産物は。
  174. 堀武夫

    ○堀政府委員 物資別に価格にどれだけ響くかということは、いまここにちょっと計算した資料を持っておりません。
  175. 小松幹

    ○小松委員 運輸省のほうにもそれは計算が出ておりませんか。いま言うたのは、たいへん個々の品物まで言っていただいてありがたかったのですけれども、二三%上がるというのは、波及効果ですから、そういう上がり方はしないと思うのです。もう少し低いけれども、数字が出ると思うのです。たとえば農産物価格は、ちょっと消費者物価が上がるようなかっこうの上がり方が出てくると思うのです。私は産業関連モデルによって試算をしてみておるが、これはいろいろとり方はあると思いますけれども、原価でたくして購入者が購入する、もっと言えば庭先渡しみたようなものとお考えになれば、農産物価格で三・三六%、工業製品では約三%くらい上がるわけでございます。これが非常に上がってくると、今度はいわゆる各産業の原価がそれだけ上がってくると、相当これは被害が大きくなります。これは乗数効果でたいへんな被害になってまいります。一番問題になるのは、例をあげますと石炭、亜炭、これはたいへんな上がりようになります。鉄鉱石、それから非鉄、原油、天然ガス、それからその他の鉄鋼、石炭製品、それからセメントとか塩業、こういうものが相当上がってくる。化学繊維等もたいへん上がって、家具なども輸送費が上がってまいります。だから、これを今度はどういうように消費者にぶっかぶせるのか、生産者が合理化の中で吸収するのかという問題が当然出てくると思うのです。そうなった場合に、いま三・何%とかいうのを入れますと、これははっきり消費者価格がその分だけ上がってくると思うのです。これは目に見えた大問題になってきておると思うのです。これによってセメント業界などは、私が大手のセメントの人の意見を聞いてみますと、年間で何億円という、輸送賃だけで手をあげますよ、こう言って、結局これは消費者にぶっかぶせる。いま政府が住宅の建築をすすめているから、あるいは公共投資をやっているから、いよいよ私たちの出番になりましたから、この鉄道運賃のはね返りは消費者にかぶせますからというようなことを言っている。そうなったら、これはもう明らかにかぶるのは家を建てる人であり、橋をかけるいわゆる国であり、地方である。もう鉄道の運賃の値上げというものは、産業物資の個々に及ぼす率というのはたいへんなものなんです。それが、今度はやがてもう一つ関連して生活に響いたときにはどうなるか。これは企画庁でも何だかえらい安く見積もっていますけれども、企画庁、ありますか、それがやがてわれわれの日常の生活に及んだときはどうなるか。
  176. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、消費者物価、CPIに対する影響というのは、こまかいそれぞれの物資を積み上げていくので、なかなか計算ができません。しかし、いまお話しのように連関表で試算をしてみますと、CPIに対して〇五%くらいな影響でございますが、これも正確に自信を持って言える数字でございませんので差し控えておったわけでございますが、〇・五%くらいと御承知願いたいと思います。
  177. 小松幹

    ○小松委員 〇・五%ないしは〇・八%と踏んでもいいのじゃないかと思うのです。そうなると、今度は、いま国鉄の貨物運賃をとってみましたけれども、今度は私鉄の運賃を加えていきます。そういうようなかっこうにしますと、われわれの消費者物価というのは、私鉄、国鉄込みにして、乗客、貨物一緒にしてわれわれの生活物資に大体二%産業から響いてくる問題。われわれがじかに鉄道に乗って響いてくる問題、こういうのを国鉄、私鉄合わせてみると、もはや数字の上で、物価指数の上で二%くらいははねかかってくる。国鉄と私鉄だけでそのくらいな負担をしいられるわけでございます。そうなったら、これは物価値上げをしないとか物価を押えるとかいっても、もうたいへんな誤りを犯しているわけでございます。ただ授業料が値が上がったというならば、直接に親に響いてきますけれども、国鉄運賃というものはたいへん波及のしかたが大きいわけでございます。だから私は、この問題については慎重ならざるを得ない。いま日本は不況期じゃありませんか、総理。この不況期に、何とかして赤字公債なりあるいは公債なりを出して、借金をしてでも何とか不況を脱出しようとするときに、国鉄だけがぬくぬくと運賃値上げをやって、そのはね返りをすべての産業にぶっかける、われわれの国民生活にぶっかけてくるというならば、これは政策の矛盾じゃありませんか。総理、どうなんですか。あなたが、いま不況を打開することが国民よ先決だ、物価を押えることが先決だというならば、まず先決のとおりに、国鉄も先決のように従ってもらわなければならぬ。それでなければしり抜けになる。幾ら不況克服というても、しりから抜けてくると思うのです。国鉄、私鉄の運賃から。総理、どうお考えですか。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨年国鉄の運賃を押えましたのも、その間に合理化をしてどういう経営の姿になるだろうか、こういうことで実は一年押えてみたのであります。しかしながら、もうすでに合理化等について努力をしておりますので、この一年ストップをさせたことは、今後の経営上の非常に負担になる、こういうことが実ははっきりしてまいったのであります。そこで、全般に及ぼす影響などを十分勘案いたしまして、そして今回やむを得ない値上げというものを実は考えたのであります。ただいま言われますごとく、一部的に見れば、全体の不況克服あるいは物価の安定をする、その際に公共料金、ことにまた公共性の非常に強い、至るところに影響を持つこの事業の料金を上げることは、一見矛盾するかのようにも見えますけれども、これは総体のために結局かくすることのほうが経済の安定成長への道だ、かように私は判断をいたしたのであります。
  179. 小松幹

    ○小松委員 やはり国鉄の赤字がたいへん出て、どうにもこうにも、にっちもさっらもいかぬというならしようがありませんが、三十九年度というと去年でしょう。去年の三十九年度の決算から見て、表面三百億の赤字は出ておりますけれども、減価償却を臨時につけ加えているから、赤字がない、三十九年度はとんとんである、こういうような経営であるならば、私はしいて運賃値上げをして、さらに不況の上にいやが上に積み重ねをする必要はない。そういう政治こそ不必要である。それよりも、それこそ私は借金をしてでもいいから国鉄をカバーしていけばいいのじゃないか。借金政策が悪いというなら借金政策をやめればいい。ところが公債を出す、あるいは政保債を出す、もうどこもここも借金だらけなんでしょう。縁故債を出すという、方々、企業も借金、地方も借金、町村も借金、国も借金、借金しないところはないのですから、国鉄だけ借金せぬでいい——まあ、借金もありまし上うけれども、とにかく決算がとんとんになっていけば、国鉄にもひとつ借金していけないかということなんです。そこなんです。
  180. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 国鉄といたしまして、あらゆる合理化等をやってみましても、——この上第三次の長期計画等をやっていきます上に金利が非常にかさんでまいりますので、その金利の圧迫が国鉄経営を非常に不安な状態におとしいれるというような結果になりますので、好ましいこととは思いませんけれども、やむを得ず運賃によって自己資産をふやしていこうという態度をとっておるのでございます。
  181. 小松幹

    ○小松委員 大蔵大臣、どう思いますか、いま私が説明したのは。三十九年度決算で大かたとんとんにいったら、借金してもいいんじゃないかという、それ、どうなんです。
  182. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国鉄といたしましては、収支の問題、損益の問題もあるわけです。しかし同時に、これから国民要望にこたえて輸送力を充実しなければならぬ、こういう問題もあるわけでありまして、そういう両々を考えましてみまするときには、借り入れ金だけではとうていやっていけない。ことに長期計画がいま進行中でありますので、無利子の資金を充実しておきたい。もしかりにこれを押えておく、二、三年後にこれをやらなければならぬということになると、断層的に高い改定をしなければならぬ。これこそ私は経済の正常の運営に非常に大きな支障があるだろう、まあいまのうちにひとつ処置をしておくほうがよかろう、こういうふうに考える次第でございます。
  183. 小松幹

    ○小松委員 大蔵大臣、あなたはことしの政策は税金をまけます。借金はします。こういう政策でしょう。それだったら、この次いつか断層がきて、たいへんな目にあうように思っているのですか。国鉄が借金して、将来、あと断層がきて、ぽこっと運賃を三倍も上げられたら困る、そういうお考えなら、あなたの政治もそうでしょう。一般会計だって、税金をまけます。借金をします。今度二、二年だったらばこつと税金を上げられるのじゃないかという心配がくるでしょう。それと同じじゃ、ないですか。経済の原理というのは同じだ、借金したことは。あなたが借金したときはそんなことはない、だらだらと償還も借りかえもできますよという、そうしたら、国鉄だけ三年先にだあんと値上げがくるなんて、それは論理が合わぬじゃないですか。どうなんです。
  184. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府におきましては今回借金もいたします。いたしますが、この借金政策の結果、国をささえておる企業も繁栄し、国民の生活も楽になる、租税収入が自然に上がってくるわけであります。これで、将来は逐次国債を償還することができる、こういうふうに考えるわけであります。国鉄の場合は、独立採算制のたてまえをとっておる、これは御承知のとおりでございますが、そのたてまえからいいますると、どうしても今日の長期計画を遂行する上において、また収支を維持する上におきまして不足が生ずるわけであります。この不足を借金でまかなっていくということになりますると、どうしても運賃改定の幅というものが将来において大きくなる。これはもう避けられないところじゃないかと思うのであります。それを私はおそれ、そういうことにならない前に今回やっておこう、しかも今回やれば、もう数カ年間国鉄問題について問題が起こらない。そういうことも今後の物価対策上有効であろう、かように考えておるわけであります。
  185. 小松幹

    ○小松委員 それはおかしいですよ。国鉄だって、合理化し、近代化し、お客を誘致し、そうしてどんどん——現状のままで借金すれば悪いでしょう。しかし、国鉄だって借金した以上は、設備投資をし、お客を誘致し、あなたが言うように私企業のような独立採算性で、そろばんをはじいてどんどんやれば、これはもう目を詰めてやりますよ。いままでみたいに放らつな経営をしておらぬです。ぼこぼこ四、五年ごとに運賃を上げてやるから、適当な運営をして、鉄道というものが締まらない。レールの上は締まっているけれども、運営は締まっていない。それはもうみんなそういう乱脈な——過去何回か乱脈な経営の上に立って、やかましゅういわれて、そうしてそのたびに運賃を上げてきたんです。だから、国が将来ぼこっと上げるようになれば——それは国鉄だって営業収入が減ってくれば別ですよ。減ってくれば別だけれども、そういうふうに電化をし、そうして復線化にし、あるいは新幹線を岡山までつけ、九州までつけたら、それはお客さんも余計乗るようになるし、一晩でどっと東京まで行くようになれば乗り手も多うなる。そうしたら、上がってくれば償却というものもどんどんできるでしょう。それを見越さないのなら何のために国鉄はやっているのか、それだったら一般会計から出しなさい。そうでしょう。企業としていわゆる独立採算を与えた以上、借金をしたからそれでもって打ち抜けぬというようなことはないわけです。国でさえ借金をして打ち抜いていこうというのですから。論理は、私は同じことだと思う。その点、将来に問題を残すからというならば、それは国でもそうですよ。あなたがことし七千億の公債を発行しても、あなたが大蔵大臣をやめて、将来十年も七年先までもやはり償還がきます。借りかえすれば十五年も先にきますよ。将来に問題を残すことは、国鉄であろうが、あなたであろうが、同じことなんです。あなただけは借金をしてまるまるやって、国鉄だけは絶対借金することはならぬ、運賃値上げしょうというのは、政治としてもおかしいと思うのです。これはもう一番の基本の産業でしょう。産業の一番基本でしょう。まあ大学の入学料がどうだこうだという問題もありますけれども、それは波及するところも大きいでしょうけれども、国鉄というのは、いま経済の一番の底なんですから、動脈なんですから、その動脈が上がらぬということになったら、二千億くらいな借金はできるはずだ。利用債の二千億くらい出し得ませんかどうか。  そこで、出し得るか出し得ないかの景気の問題に触れてみなければならぬと思うのですが、あなたは景気の問題を言うときに非常に簡単にいままで言うてきた。いままでは、去年の夏私が質問をしたときは、秋からはつま先上がりだ、それからその次に聞いたら、今度は財政の上で非常に繰り上げ支出をやり、あるいは財政投融資をふやし、それからさらに追加投資をしたから景気は上がるでしょう、こういうような言い方をしたのです。で、四十年度は相当財政投融資も千億ふやしたし、それから繰り上げ支出もしたし、それから補正予算も組んでやったんだけれども、どうなんでしょう、最近の景気はようなっておりますか、あまりょうなっておりませんか。
  186. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昨年中はどう見ても横ばいという状態だったと思うのです。しかし、昨年の暮れごろから、ことしの正月、今月にかけまして、まあ諸指標を見ましても、悪い諸指標は出てまいりませんです。これは、まあ無常に微弱ではございますが、みんないいほうへ向かっておる。私は今後の景気——どうせ小松さんがお聞きになると思いますからお答え申しておきますが、今後の国民消費の動きは、まずまずことしのような状態は今後一年くらいは続いていくんじゃないか輸出は鈍化するけれども、相当の伸びを示すであろう。逆に設備投資が依然としてふるわない状態だ、こう見ておるわけであります。これはおそらく横ばいという状態であろう、そういう状態を総合しますと、経済にやはり成長というものがない。しかし、もうこれ以上経済が停滞状態だったら、所得の根源である企業が非常に重大な局面に直面する。そういうことから財政がいよいよ出動する。それで今度は大幅な予算を組んだわけです。その結果、大体昭和四十一年度におきましては、七・五%の経済成長を達成しよう、こういう考え方にいまなっておるわけです。ところが、七・五%の経済成長というのは、もうすでに始まらなければならぬわけです。そういう動きへ向かって、堅実な歩みというものが始まらなければならぬ。これは、かりに秋景気がよくなるのだ、下半期に七・五%の経済成長を達成しようとすれば、これは端的に言えば一五%になるわけですから、そういうことをやってはならぬし、またやろうとしてもできることではない。もう四月から上り坂にかからなければならない。たまたま今日の状態を見てみますると、四十年度の予算というのが幸か不幸か非常に支出がおくれてまいりまして、下半期に集中しているのです。ことに十二月、一月、二月、三月、これに殺到すると思う。これは経済に相当の影響を持ってくるだろうと思うのです。すでに十二月あたりの諸指標も出ておりますが、そういうものにそれが出てきておるのだ、こういうふうに私は見ておるのです。その動きが四十一年度に乗らなければならぬ。そういうことを考えまするときには、景気の主導役をなす財政が、またことしのように下半期に集中するというのであってはならぬというので、上期に支出を促進する、こういう政策をいまとりつつあるわけです。私は、これからだんだんと上昇過程に移っていく、かように見ておるのであります。
  187. 小松幹

    ○小松委員 あなたがいまおっしゃられたことの中から、三つほどの点を私はあなたのことばの中から感じとった。いまは悪い。それはそのとおりです。悪いのです。中小企業金融公庫が調べた中小企業のアンケート、これは五千九十三社のアンケートをとってみましても、生産、受注、売り上げ増加見込みなし。経済の好転は望むべくもない。とんとんというのが最近の調査です。それから関西方面の生産動向を調べてみましても、それは鉱工業方面の、特に電力がどのように動いているかと電力のほうを調べてみたら、これもさっぱり上がっていません。電力会社の電力の需用量から見た鉱工業の動きを見ておると、今日もう三月がこようかという段階においてもさっぱり上がらないということは、あなたが昭和四十年度にやった財政政策は失敗だったということがまず言われる。とにかく去年四十年に、かけ足かけ足でやらせたのでしょう。追加投資もやったのでしょう。補正予算も組んだのでしょう。組んだけれども、ことしはどうにもならない。それならあなたが言うように、来年の四月からぼこっと上がります。あなたはそういうような言い方をしたが、経済というものは、ことしの三月までずっと横ばいでいっておって、四月になりましたからといってぽんと上がる、経済のことは、実際はそんなことはありませんよ。ないのです。ということと、もう一つは、いかにあなたが財政資金を出して、地方にかけ声して、地方行政何とか推進本部というものをこしらえて、予算が通ったら早うやる、四月、五月には六〇%の工事量でやるのだからと言って、馬に乗ってむちを入れておりますけれども、地方がそんなにたやすく動かないということは、ことしの例を見てもわかるでしょう。ことしあなた、かけ声をかけぬだったですか。追加投資や補正予算まで組んで、千億まで追加してやったけれども、何ともならぬでしょう。ぬかの中にくぎを打ち込んだようなことになってしまった。ことしもあなたはかけ声はかけたはずです。ところが、財政ではどうにもならぬで、今日こういう状態になっておるのです。それならば、来年あなたがかけ声かけたからといって、四月、五月からぽんとできるかというと、そんなものじゃないのです。それはぽつぽつでしょうね。それはいま横ばいですから、横ばいが斜めにいっても、そんなにぼこっと上がるわけではない。六〇%の工事量なんというのは四月、五月、来上四半期にそんなことを言ったってナンセンスですよ。実際の話、地方行政を知らない者の言うことだ。それができるなら、ことしできておるはずです。いいですか、追加投資したやつを、私は年末に県あたり見ましたところが、なかなかこの入札をするのでも手間どりますよ。早くやろうと思うけれども、もう、一つのある土建屋は道路のほうを受けている。もう手ぱい受けておる。そこへもってきて農林省から、今度はこんなのが入札だといって、追い込みだといってくる。そうすると、自分はもう三月までぎりぎりの工事量を持っておるものが、また指名に入る。また入札をとる。だから、もう最初から覚悟の前です。道路は年末までやる。会計検査が五月だから、五月までにあと何ぽかやっておけばかっこうだけつく。罰金出せばいいんだ。ちょっと工事がおくれたのは罰金出せぱいいのだ、こういうのがいまの地方の実態なんですよ。いまは一つのものが何ぽでもばこうておる。ばこうというとことばは悪いけれども、道路も入札をとっておる、こっちもとっておる、港湾もとっておる、もう幾らでもとっておるわけですね。だから、そういうことで地方はなかなか進まないのです。そういうようにして、どうしてもおくれます。だが、待っておるものはあります。しかし、土建屋でぽかっと口をあけて、いま三月を待っておるやつはつぶれる会社です。いまごろ、この三月追い込みに、ことしの財政投融資もないのに三月を待っておるというのは。ほとんどが追い込み工事をとっておるはずです。どこか民間か、とっておるはずです。とらないで、いまごろ口をあけて、手をあけて四月になるのを待っておるものはありませんよ。そんな土建屋なんてあったら、その土建屋は余裕しゃくしゃくです。三月のぎりぎり一ぱいまで四十年の仕事をして、そうして次の工事をまたとらなければならぬ、これは一年つながなければならぬから。特に断層があったのでは経営が成り立たぬ。だから、これはいまやりおっても、三切れ食いというのがありますが、こう食いおっても、手に一本持っておって、あとにらんでおる。これが三切れ食いです。だから、その三切れ食われる間に工事は延びるのです。これは、いなかの子は、口にくわえておるが、手に持っておってあとのものをにらんでおる、次の番までにらんでおる。だから、工事は自然とおくれます。六〇%工事をということはなかなかむずかしいのです。それはかけ声はいいのですよ。あなたのかけ声は私はたいへん賛成だ。いいからそれは大いにやりなさい。私はこれは否定しません。大いにやりなさい。しかし隘路はそこにある。あるから、景気がそんなにもううまたらしく、調子よく、あなたが言うようにはならない。財政というのはひまが要るのですよ。ことしでもわかっているでしょうが、ひまが要るのです。だから、景気というものはいつごろよくなりますか、これはどうですか。
  188. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま申し上げましたので尽きると思うのでございますが、どうしても財政が景気の推進力にならざる限り、景気に上向きの動きが出てこない、こういうふうに見ておるわけです。財政の動きはどうかというと、この暮れから年度末にかけて非常に集中的な支出が行なわれる、これが経済に実質的な影響を与える、こういうふうに見ておるわけです。したがいまして、ただいま申し上げましたように、相当の多数の指標をとっていますけれども、悪い傾向の指標というのはもうないのです。ですから、今日もうすでにつま先上がりではありますが、上昇過程に踏み入りつつある、こういうふうに私は見る。それが繰り上げ支出下の昭和四十一年度財政に指導されるわが国の経済の傾向につながっている。いま小松さんは、断層的に四月に飛び上がるというふうにおっしゃいましたが、私は全然そんなことは考えておりません。経済というものはそうとっぴに動くものではありません。これはなだらかに連続性をもって動いていくものだ、こういう見方をいたしておるわけであります。  それから地方のことをたいへん御心配のようでありますが、私も地方が国と並んで仕事をやっていく。これはなみなみならぬ努力を要することはよく承知しています。しかし昨年は、これはもうこういうことはないというくらいな特殊事情であります。つまり年度途中で地方財政の財源が枯渇した。しかも、その対策がおくれにおくれて、ことしの一月になってやっとできた、こういうふうになりますから、支障がこないというのがおかしいのであります。ことしはそういう事情はありませんから、努力をいたしますれば必ず順調に歩み得る、かように確信をいたしております。
  189. 小松幹

    ○小松委員 ことしのいわゆる構造問題からくるデフレギャップがあるわけでございますが、私は試算的にまあ三兆円以上と考えておるのですが、ことしの地方あるいは中央を通じて、あなたが言う有効需要の造出の追加、去年よりも追加した分というものを乗数効果ではじいてみても——乗数効果の取り方もありましょうけれども、はじいても、私は三兆円のデフレギャップは埋まらないと思うのです。その辺はどうなんですか。埋まらないということは、この数字的な置きかえでございますが、結局あなたがやっておる減税、それから大幅な国債をとっての財政支出でも、今日のデフレギャップは追いつかない。だから、需要をそれだけ喚起できる。それは、それだけ埋まることは埋まりますよ。喚起はできるけれども、完全に今日の構造のデフレギャップというものを埋め尽くせない。だから景気は、私はあなたが期待するようなものではないと見ておるのでございますが、デフレギャップは埋まってくるのかどうか、その辺はどうなんです。
  190. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 デフレギャップということにつきましては、あるいは三兆円と言う人もあります。あるいは二兆五千億円と言う人もありますが、これはなかなか捕捉困難な問題です。しかし私の直感するところでは、その程度のものじゃない、もっとはるかに大きいギャップがあるのだろうと思う。つまり今日の生産設備を見てみると、これもしっかりした統計がないので申しわけないのですが、おも立ったところをピックアップしてみる。そうすると、大体平均して三割ぐらいは遊んでおるような状態でございます。この三割の遊びをどこまで埋めるかということでございますが、まあ八五%の埋めになればまあまあギャップは埋まった、いいところだ、こういうような見方が多いようです。あるいは九〇%になれば非常にいいのだと言って期待している人もありますが、八五%に埋めるにいたしましても、七〇%のいま経済需要でございましょう。これを今度の予算を通じて需要を喚起する、それは八五%までの充足はとてもできません。これはもうお話しのように、デフレギャップというものを埋めるに私は二、三年はどうしてもかかると思うのです。しかしそれでいい。つまりデフレギャップの解消に向かって経済が堅実に動き出した。まあかりにいま供給力が七〇%だ。それに今度は七・五%の成長をするわけですから、それだけ供給力はふえるわけでありますが、八五%ないし九〇%の稼働率に向かって堅実に経済が動き出したのだということが私は景気がよくなるのだ、回復だ、そういうことをもって景気回復というふうに観念して施策することが堅実な行き方である、こういうふうに考えております。
  191. 小松幹

    ○小松委員 ことしは外貨債の発行が二千万ドルの開銀債の発行だけしかできないで、あとは全部打ち切らざるを得ないわけなんでございますが、そうなった場合、産業投資特別会計から財投に繰り込んでおった財投資金は何でまかなうのか、それが一つと、その場合の会計操作上の処置はどうなるのかということで、私はあなたにちょっとお伺いしたいのですが……。
  192. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 外債が予定より発行が少ないという場合におきましては、資金運用部の資金が回ってくるとか、財政投融資計画の中において操作が行なわれるわけであります。それで支障はないわけであります。
  193. 小松幹

    ○小松委員 支障がないでしょう、どこかよそから持ってくれば。そこで、会計上の操作はどうなるのか。これは、外債が打ちどめでゼロになったら補正予算を出すべきじゃないか。今度の機会に補正予算を出さなければならぬと思うのですが、どうですか。
  194. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政策委員から答弁いたさせます。
  195. 中尾博之

    ○中尾政府委員 今年度の、昭和四十年度の計画はまだ実行中でございます。しかし、お話しのように、外債の見込みは必ずしもかんばしくございません。産業投資特別会計の外国国債、これが出ません場合には、予定いたしておりました事業に対する資金の融通ができませんので、資金運用部の資金をもちましてそれにかえまして融資をする、こういうことになります。問題は、そういうことであります。したがって、産業投資特別会計のほうの予算で出しまする分の予算は実行ができない、こういうことでございます。そのかわり、資金運用部の運用といたしまして資金の供給がなされる。このほうは資金運用部の資金の運用でございますから、手続的に申しますと予算には関係がないということになります。
  196. 小松幹

    ○小松委員 最後に税金の問題をお伺いしたいと思いますが、政府は、大幅な減税をしている、こういうふうに言っておりますが、二十八年の一兆円予算のときでも、平年度で千四百億の減税でございました。一兆円予算のときに千億以上でございますから、大幅減税なら、このたびは四兆円の中で四千億ぐらいしたってかまわない、こう思うのですが、大幅減税の幅というのが一兆円予算のときよりも割合は低いわけなんです。もっと減税はできなかったのか。
  197. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 減税の幅につきましては、慎重に考えたわけでありますが、何と申しましても、今後の財政の大体のあり方というものを頭に置かなければならぬわけであります。減税と公債の発行が直接結びついておるわけじゃございませんけれども、これは間接に関連してくるわけであります。公債をどこまでも出していいんだということであるならば、これは何をか言わんやでありますけれども、近い将来における財政の見通し等を考えました場合に、どうしても国税において三千億、こういうのが限度である、こういうふうに考えたわけであります。従来よりも大幅にいたしましたのは、今日の経済の情勢から見まして、あるいは所得税、あるいは物品税の減税を行なって購買力の喚起を行なうということと同時に、この際、企業にも個人にも蓄積を与える、資産を与えるということを考えていかなければならぬ、そういうふうなことを考えて企業減税、また相続税の減税も行なう、かような考え方をとったわけでございます。
  198. 小松幹

    ○小松委員 あなたの財政政策というものは多岐にわたっておると思いますけれども、どこか筋が一本通っていないところがあるように私は思う。というのは、有効需要をつけて不況から抜け出すとさつき言ったでしょう。そういう意味で言ったのならば、私はほんとうに減税を考えたならば、いま言うたように企業減税というのは触れるべきじゃないと思うのです。企業減税をやったからといって、これは有効需要の造出にはならない。おそらく借金を返すだけにしかならない。金繰りが幾らかよくなるという程度にしかならない。ほんとうに前向きの産業に向かっていく姿の取り組みにはならぬとするならば、むしろ私は企業には、そういう税金でいろいろするというよりも、早くその環境をつくって資金が集まるようにしてやる。あるいは消費が、物が売れるような環境をつくってやる。いうならば借金を返す金をやるよりも、物が売れる金をつけるということならば、有効需要の造出に真一文字に取り組むべきである。そのためには所得税の減税を大幅にすべきだ。これは資本家であろうが何であろうが、企業であろうが会社の社長であろうが、配当を受ける者であろうが、すべてに影響する。国民全部に影響するこの国民所得の、いわゆる所得税の減税を大幅にすべきである。しかも小手先を使わないで、下のほうのいわゆる控除というものをずっと上げるか、あるいは税率をうんと下げるかして思い切った処置をするということのほうが、いわゆる現段階における税の扱いとしては、私は所得減税一本にして大幅減税をとったほうが、ほんとうに政策効果があらわれると思う。企業減税をやったからといって、政策効果がゼロとは言いませんよ。しかし、いまのデフレギャップをほんとうに埋めていこうというかまえがあって、不況から早く抜け出したいというならば、大幅なる所得減税をすべきである。しかも基礎控除をぐっと上げるか、税率をすぽっと切り落とすか、そういうような断固たる処置を減税ですべきであった、こう思うのでございますが、有効需要の造出はどうなんですか。その辺から御返答願いたい。
  199. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 どうも先ほどから伺っておりますると、非常な一本調子といいますか、今日の経済をデフレ一本と片づけられてみたり、あるいはインフレ的と片づけられてみたりされておりますが、私はそうは思わない。今日の経済は非常に複雑である。したがってわれわれが当面しておる問題は、ひとりデフレの態度という問題だけじゃないのであります。デフレの態度と同時に物価の上昇を何とかして押える、そして安定成長政策を進める、この二つに同時に取り組んでおるわけでありまして、税制改正におきましてもこの二つの面を考えておる。なるほどお話しのように、需要を喚起するという面からいいますれば所得課税、これは非常に有効だと思います。また物品税も響いてくると思います。企業課税のほうはそれに比べますと間接的である、また相続税も間接的である、そういうふうに思いますが、しかし、いま有効需要を喚起して経済の不況を脱出しなければならぬと同時に、この不況から脱出する過程を通じまして、この資本の乏しい企業を底の厚い状態にしなければならぬ、過程にもそういうような配慮をしなければならぬということを考えますときに、この所得税一本だけではいけない。この機会に税制だけで達成できるとは考えておりません。これは、企業がそういう気持ちにならなければだめでありますが、その気持ちになる企業に対しましては、税制でも何らかの刺激を与えてやろう、こういう意味合いをもちまして、企業減税も加味する。同時にこういう不況の状態でありますから、この不況が長く続く、一番その迷惑をこうむるのは、困窮するのは中小企業であります。この中小企業を何とかして特別措置を講じなければならぬ。今度の減税におきましても、中小企業に七百五十億円の割り当てをしておる。こういうようなことで、やはり所得税には重点は置きましたけれども、そういうようないろいろな複雑な要因を満たさなければならぬというので、多岐な内容となっておる。こういうことでございます。
  200. 小松幹

    ○小松委員 多岐な内容はわかりますけれども、あなたは、物価を言えば不況があるから、不況を言えば別なものがあるから…−。政策というものに重点的な配慮をしていくならば、少なくとももっときちっと折り目を正して政治をやるとするならば、私がさっき言ったように、物価と不況を脱出するんだということを車の両輪だというようなふうに言ったから、私はさっき、物価のときには物価をやりなさい、今度は、不況を脱するためには有効需要の造出のためにしっかりやりなさいと言えば、ほかのものもあるから……。そうだったら、ばらばらになって、いわゆるばらばら事件になってしまうわけです。あなたのその考えというのは、非常に斬新なようにあって古めかしい。だからいろいろな批評家も言っているでしょう。あなたは政策としては公債政策を言って、非常にフィスカルポリシーのニュー政策を入れた、けれども、大体やっていること、その中の考えていることは古めかしい、オールドライトだなんて言われている。ということは、筋がぱっと新しいなら新しいで、ぴしっと一本通っていない。何か割り切れぬものがごちゃごちゃになって、説明もそういう意味の説明。たとえば税金の問題にしても、あなたは企業減税のところで、租税特別措置法で、こういうところを考えておるのですね。内部保留をしたり借金を返したりしたものは、一%したものは二%の税金を下げてやる、三%したものは四%のお返しをやるという税金、これはたいへん悪いことじゃないでしょう。悪いことじゃないけれども、企業というものは自分の借金を返すことや、内部保留をして社内蓄積をするのが企業の生命である。それであるのに、それを税金の対象にして、あめ玉やるからこうやりなさい、もう一つあめ玉をやるからこうしなさいという減税政策というのは悪法の最たるものである。そういうことでなければ減税をし切らないのか、それだったらもう少しオーソドックスな減税のしかたがあるじゃないか、まず門口からいった減税のしかたがあるはずだ。たとえばいまいなかでこういうことがありますね。いなかの、農村のおやじが、むすこに都会に出て行かれちゃ困るから単車を買うてやるからどうかうちを継いでくれ、単車を買うてやったら、今度嫁さんもろうてやるからどうか落ちつけというのと同じで、中小企業なり、あるいはこれは一億円以上の資本家のものです。これに一%の借金を払うたら二%の減税をしてやるぞよ、二%の社内保留金をふやしたら三%の減税をしてやる、こういう減税のしかたはとるべきではない。それよりも、ほんとうにいま企業が資本の比率が低いのならば、なぜ資本の比率を上げるような、一つの玄関からいった政策をとらないか。たとえたならば、社内保留金をしたものは、これは決算上は全部何もならぬでしょう。ところが銀行から借り入れた金は損失にぽんとなるでしょう。だから、銀行から金を借りるのがはやったわけです。これは税金上ちゃんとなっているからだ。それならばそういうことをやらないで、らゃんと増資の道をあけてやる、社債の取り口の道をあけてやる、あるいは借り入れのいわゆる方途をあけてやる、こういうように、中小企業には窓をあけてやる必要がある。そういう政策はやらないで、増資はできぬ、社債発行はできぬ、金は借りたいほど借りておる、こういうようなかっこうに、前も横も戸を締めておって、そうして窓の外からあめ玉をやって、ちょっとあめ玉投げて何とかしろ、こういう政治になっておる。いまのいわゆる租税特別措置法というのは、私はそういう意味に感ずる。ほんとうならば、それをやるほどならば、企業減税の幅をもっとぱっとふやしたほうがよい。私は、そういう企業内部をいろいろおせっかいをするやつは、ほんとうは何か別な政治でやるべきだ、税金がそこまで立ち入る、門先まではいいでしょうけれども、門の中に行って、おまえ方借金を払え、これしよう、こういうような税金の取り組みは悪いと思うのです。これは租税特別措置法においてたいへん悪い制度だと思います。  以上で私は終わりたいと思いますが、大蔵大臣の所見を承りたい。
  201. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今日わが国の経済が当面しておる大きな問題の一つは、企業の内部資本を充実させる、こういうことだろうと思います。そういうためには、一つの政策じゃとてもやっていけないと思うのです。いま配当軽課とか、そういうようなことをやっておる。これは相当の効果をあげたわけですが、そういうことだけじゃ、もうとてもそういう問題は解決できないような惨たんたる状態なんです。そこで、あれやこれやと考えた末が、ただいまお話のような特別措置なんでありまするが、まあお話もとくと承りましたから、なおよく検討していきたい、かように考えます。
  202. 小松幹

    ○小松委員 終わります。
  203. 福田一

    福田委員長 これにて小松君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、多賀谷真稔君。
  204. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず総理にお尋ねいたしたいわけですが、本予算委員会において沖繩の祖国復帰に関連をいたしまして、春日委員……   〔発言する者あり〕
  205. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  206. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 並びに高田委員から、わが国は国際連合に加盟しておるのであるから、国連憲章の七十八条の適用を受けて沖繩は信託統治になり得ないのではないか、ついては平和条約第三条は失効するのではないか、こういう意味の質問があったわけであります。それに対しまして法制局長官は次のように述べております。「国連憲章七十八条は、ある地域が独立をして国連加盟国となった場合に、同地域には信託統治制度を適用しないという趣旨である、その七十八条が、国連加盟国の領域の一部が信託統治制度下に置かれることを排除するものでない。私が申し上げましたほうが、好むと好まないかは別といたしまして、これは国際法学上の定説でございます。」とういう答弁がなされておるわけですが、総理大臣もこのようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  207. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事実として、法制局長官が答たとおりのように考えております。
  208. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国際法学上の定説というのは、一体何ですか。
  209. 高辻正巳

    高辻政府委員 国連憲章の七十八条の問題につきましては、今回の予算委員会におきましても、実は二度それに触れましてお答えしたことがございます。いまの御指摘のもその一つでございますが、大体国連憲章の規定をよく御引用になりまして、これについてどうかという御質疑がしばしばあるわけでございますが、沖繩の施政権の返還は、歴代内閣の重要な政策の一つでありまして、沖繩が米国の信託統治のもとに置かれることは、われわれの予想の外にあることでもあり、それが信託統治に置かれる場合を予想して憲章との関係を説明することはいかにも心苦しいところでございます。したがいまして、御質疑があります際には、そういうお考えもあり得ることについて私も申し上げたことがございますけれども、さらに重ねての御質問で、いま七十八条なるものは、沖繩の、国連の加盟国になりましたその地域の一部についても、信託統治の制度に置かれることではないのだ、それが通説であるという御質疑がさらにございましたものですから、それは実は私の知っているところと違う。国際法学者の説といたしましては、私が申しておるように、ある地域があげて国連加盟国になった場合に、その地域については信託統治の制度のもとには置かれない。これは前にも申しましたが、レバノン、シリアの例等に照らして、この条文が置かれたものであるということとあわせて、私もむろんとこに立って法制上の責任者として申し上げるわけでございますから、当然内外の学者の学説等をよく調べております。一々申してよければ申し上げますが、私の知る限りでは、私がかつてお話をしたほうが通説である。定説というのは少しオーバーな言い方かもしれません。私の知る限りの学者の学説はすべてそうであるという意味で申し上げたわけでございます。もし一つ一つどうであるかということであれば、さらに中に入って申し上げたいと思います。
  210. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 法制局長官は、少なくとも法律の解釈については政府を代表するものである、政治的な判断は別として、純然たる法理論に立っては、私は政府を代表するものであると思う。そうして先般もこういうことを言われておる。「私は不肖にして国際法学者のいろいろな資料によって知ることができませんでした。」すなわち春日並びに高田委員の主張、沖繩には七十八条条約が適用あるわけですから、ですから平和条約の三条は失効するのではないかという説ですね。それを私の知るところでは、国際法学者のいろいろな資料では知ることができない。ただ、しばしば国会の質疑における論議として私は承知しておる。こうおっしゃる。そしていまもまた、私の知るところでは、すべての学者は私の説を支持しておる、こうおつしゃっておる。しかも内外の学者とおっしゃる。一体どういう勉強を法制局長官はしておるか。私はいまからその学説を披露したい。この国会で、私は国際法学者のいろいろな資料では知ることはできぬ、こう言っておる。ところが、現実に日本字で書いてある書類でも、そういうことは幾らでも出ておるのですよ。私は一つ一つ紹介したいと思う。まずレファレンスといって、これは国会図書館が出しておる。現在国学院大学の助教授をして国際法を教えておる関野昭一君が「国際連合加盟国の権利義務」として「日本が加盟した場合の法的関係」という中で「自国領域に信託統治制度を適用されない権利」というのを述べている。これが七十八条は適用をされるという理論を展開をしておる。これはわれわれのところに全部配られておる。さらに東大の教授の高野雄一さんが、次のような説があるということを「日本の領土」という本で紹介をしておる。この説はもとの九州大学の教授で、学習院大学の教授であった国際法の権威者の大沢章さんの説であります。さらに最近出た本で「現代法と国際社会」という岩波から出しておる書物の中に東京大学の寺沢一教授と法政大学の講師をしております杉山茂雄さんが書いた本にもそれは述べてある。一体内外の国際法学者は全然そういう説をとっていない、私が知る限りすべてそういう表現を使っておる。そこで私はその最も顕著な一つの説を紹介をしておきたいと思う。これは国の領土に関する問題ですからね。施政権に関する問題、それをあなたが、いまや国際法学の定説である、こう言っておる。そうして自分の知るところでは、国際法学者はそういう説をとっていない。たまたま国会で野党の諸君が論議をしておるから、私はそれで承知をしておる。こういう実は事実に反することを国会で堂々述べておる。しかも政治的判断でなくて、法的判断をしている。私は、これは国をあやまつものだと思う。しかも総理自身があやまっておるでしょう。法制局長官が言ったとおりです。こう言っておる。大沢章博士は「まずかつて国際連盟の時代に委任統治制度があり、これを今日の国際連合は継承をしておる。すなわち未だ自立することのできない人民に対する国際法による後見の制度であると考える」、「そういう未発達の段階にある人民の福祉と発達とを計ることを、連盟は」国際連盟のことです。「文明の神聖な使命であると考え、その使命を遂行するための保障の制度を連盟規約の中に設けたのである。そうして、国際連合もまた、その憲章の中において、信託統治制度を設けて、未だ独立と自治とを実現していない住民と地域とに対して、国際的の後見の制度を設け、その制度の下におかれる住民と地域とに対して、施政と監督とを行なうことを目的とした。」こういうように述べておるわけです。さらに彼は、「すでに完全に独立と自治とを享有していた主権国家の領域とその住民とを、未だ独立と自治とを享有していない人民と地域と同視して、それらに対してのみ、みとめられている国際的な後見としての信託統治制度の下に独立国家の国民と領域との一部をおくということは、法的には全く不可能なことである。」要するに、全部ならできないけれども一部ならできるということは、これは法的には不可能なことだといわれておるわけです。さらにいま問題になっております。「国際連合の加盟国となれる地域」に対しては、信託統治制度は適用されるべきでない規定を設けたことは、主権平等の原則が平等者の間に支配の関係をみとめえないことを意味するものであり、国際法における国家の領域の不可分性と全一性とについての原則から見ても、法的に平等である国家の間に国際的の後見の制度をみとめることは不可能であると考える外はない。それは、ある国の全部の領域としても、または沖繩の場合のように、日本の一部の領域としても、そうである。それゆえ、平等な国家の領域の全部を信託統治制度の下におくことは法的に許されないが、領域の一部ならば許されるという主張は」——これはあなたの主張ですね。法制局長官の主張、また歴代政府がとった主張ですね。「領域の一部ならば許されるという主張は、政治的にはどうあれ、法的には全く根拠のない詭弁にすぎない。上述の衆議院の外務委員会において小坂国務大臣は、国際連合の成員となった国家であっても、その領域の一部を信託統治制度の下におくことができると主張している。これは、法的には全く支持しがたい謬論であると評する外はない。かつ論理的にも、誤謬をふくんでいる。なぜならば、「加盟国になった地域」というのは、加入した国家の領域を意味するからである。そういう主権国家は、国際法において主権平等の原則の上に立って、相互関係をもつ法主体である。従って、法的には、平等者の間には支配はありえない。」こう言っておるわけです。でありますから、国際的な後見としての信託統治というのは、これは平等である主権国家の間にはないんだ、こういうことを堂々とおっしゃっておるのですよ。しかもそのことをさらに、先ほど引用いたしました「現代法と国際社会」の中では支持しておる。高野さんは、必ずしもそれを表からは支持してないけれども、理由のないことではないと言われておる。それから先ほど紹介しました関野さんの学説は、きめこまかく、その関連である七十六条あるいは七十七条、さらに第二条、さらに百三条、百七条の規定を全部列記して、そして沖繩は七十八条が適用される、こういうことを言っておるわけですね。あなたは一体何を読んでおるのですか。内外の学者の学説にはそういう学説はないと言っておるじゃないですか。
  211. 高辻正巳

    高辻政府委員 お答え申し上げますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、定説であるというのは、これはオーバーな言い方であったということをお答え申し上げましたが、いま御指摘の文章等については、これは私も勉強させていただきますが、事実私の不行き届きでございまして、それらのいま御指摘の御本は、私はよく承知しておりません。しかし、私の知る限りにおいて申し上げますが、たとえばケルゼン、それから安井郁さん、それからこれは皆さんのうちには御存じかもしれませんが、三十三年にたしか衆議院の外務委員会で国際法学者三名をお呼びになってお聞きになったことがございますが、これは一又さん、それから入江さん、それから田村さん、この方々の御意見は、実は私が申し上げたような見解でございます。したがって、私が主としてそのことを申し上げましたのは、実は私の申し上げることでないほうが通説であるというお話があったものですから、そのときに、それを通説というわけにはいかぬだろうと申し上げたわけでございます。したがって、これはどちらが通説であるかということを、実は争ってもせんないことだと私は思います。御指摘のように、七十八条、七十七条、七十六条等の諸規定から演繹をいたされまして、そういう御結論になる向きもあることを承知しておりますが、そうでなしに、たとえば七十七条の一項でございましたか、国連加盟国になったものを排除する趣旨とは思いませんが、一国がその地域を信託統治のもとに置くことができるという規定もございます。そういうことから見ますと、いまの御結論のようなことになりますと、七十七条の一項Cあたりは、実は存在することができなくなるようなことでもございます。まあ論理的にもいろいろ議論もございますし、それから学説上も、いま御指摘の点を私は誤っているとは申し上げませんが、その点は不勉強でまことに申しわけないと思いますが、私が申し上げるような説、これもまたきわめて有力にあるということを少なくも申し上げられるだろうと思います。
  212. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、通説であるかどうかを聞いているのじゃないですよ。あなたは、国際法学者の定説である、そうして自分はそういうことを書いた学者の資料を知らない、こう言っている。いまも内外のすべての学者はそういうことを言っていないと、こう言っているでしょう。いまの速記録でもありますよ。これほど重大な問題が、しかも私が並べておるように、こんなにあるわけだ。それを、しかも私は、通説とか多数説とか言っているのじゃないですよ。あなたは定説だと、こう言っている。きわめて有権的な解釈ですよ、定説なんというのは。しかも、すべての学者はそういう資料がない、社会党は国会で論議をするから、私はそれでその説を承知したんだ、そういうものの言い方が一体ありますか。だから私は、そのことを総理大臣に聞いた。ところが総理大臣も、そう思うている、あなたが言うから。法制局長官の言うとおりか、そうですと、こう言っている。しかも、好むと好まざるとは別として、国際法学上の定説であります。こう言っているでしょう。こういう言い方がありますか。こういう法制局長官を置いたら、国が誤ると思うのですよ。これは重大問題でしょう。祖国復帰の問題ですよ。施政権の問題ですよ。百万の同胞が分断されている問題でしょう。それを私は、政治的判断を聞いているのではないですよ。法制的な判断を聞いておる。判断はいいですよ。しかし、すべての学者は、内外の資料を見てもそういう説はないという、私は言語道断だと思う。一体総理、この法制局長官をどうするつもりですか。
  213. 高辻正巳

    高辻政府委員 お答えを申し上げます。  最初に申し上げましたように、定説というのは、これはオーバーな言い方であった、まことに申しわけないと思います。ただ、その定説と言ったのは申しわけないと思いますが、速記録をごらんになればわかると思いますけれども、そうでない説のほうを通説だというふうにおっしゃったものですから、それは必ずしも通説ではない、私の知る限りではそうでないほうが通説だと思うという趣旨のことを申し上げたつもりでございます。  重ねて申し上げますが、いま御指摘のその本につきましては、さらに勉強さしていただきますが、それを承知しておらなかったことは、私、前に申し上げましたとおりに、まことに不肖でございまして、この点は申しわけないと思います。ただ、間違いのないことは、先ほどあげましたケルゼンとか、安井郁さんとか、田村幸策さんとか、入江さんとか、一又さんとか、そういうそうそうたる国際法学者は、私が申しているような趣旨における御説を持っておられます。そのことを申し上げるのが本来の趣旨であったわけでございます。何とぞよろしくお願いいたします。
  214. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、どこかの大学の先先が講義をして、それが講義録に載っておるとかというような、そういう資料なら言いませんよ。しかし国会で、国会議員にレファレンスとして配られておる資料でしょう。そうして東大の国際法の主任教授である高野さんが「日本の領土」という本を出しておるでしょう。その中に引用しておるわけですね、大沢さんの説を。しかも最近、岩波から出た「現代法と国際社会」という本にもちゃんと書いてあるのですよ。そういうきわめて重大な文献を全然知らなかった。しかも非常に思い上がった発言をしておるでしょう。国際法学者のいろいろな資料によって知ることができませんで、国会で知った、こう言う。先ほどもまた、私の知るところでは、すべての内外の学者はそういう説をとっていない。これはひとつ全面的に取り消してもらいたい。しかも私は通説であるかどうか聞いているのじゃないですよ。あなたは定説であると、こう言っている。国際法のこの解釈を定説なんというのは、国際連合か何かでそういう事実がはっきりして、各国がそれを認めたときです。こういうような場合以外には定説なんということを言うべきじゃないですよ。少なくとも日本で裁判所の有権の解釈というのは、最高裁判所で判決がくだったときでしょう。これははっきり全面的に取り消してもらいたい。この二月九日のあなたの発言、並びに本日のすべての学者はそういう学説をとっていないということは、取り消してもらいたい。
  215. 高辻正巳

    高辻政府委員 定説と申し上げた点は、実は再三申し上げたつもりでございますが、これは実は御質疑のほうに通説というようなことがありましたので、ややオーバーな言い方をいたしました。これはまことに申しわけございません。これは誤りでございますので、これは取り消さしていただきます。
  216. 野原覺

    ○野原(覺)委員 関連して。二月九日に私どもの高田委員が沖繩の問題で質問をいたしまして、それに対する答弁は、ただいまこの委員会で多賀谷委員が指摘したとおりであります。そこで、私どもは当時法制局長官答弁に大きな疑義を持ちながらも、なおしかし正確な論拠を調べなければならぬというので、本日多賀谷委員に立っていただいたのでございますが、総理お聞きのとおり、法制局長官答弁は間違っておるのであります。私の知る限り、内外の法学者はそのような意見を持っていない、こういう意味の答弁をされておりますが、いま多賀谷委員が指摘いたしておりますように、多賀谷委員があげた人だけでも、大沢さんあり、寺沢さんあり、権威ある国際法学者です。杉山さん、関野さんあり、同時に国会図書館がレファレンスで私ども国会議員に文献として指示しておるのであります。そういう確かな論拠があるにもかかわらず、そういう見解は私の知るところではない、それは定説ということはオーバーだと長官は申されますけれども、たとえそれが通説であっても問題だ。いま法制局長官が指摘いたしたものは、ケルゼンとか安井、あるいは一又、入江さん等を指摘されましたが、一又さんや入江さんはあなたが文献によって調べたのじゃなしに、衆議院のいつかの委員会に来てそういうような発言をしたかのような記憶があるということなんです。そうなれば、これは全くあなたの答弁政府を惑わし、国会を惑わしておるんだ。あなたは法制局長官なんです。なるほど佐藤内閣は沖繩を信託統治としてアメリカに提供いたしておりますから、政治的には法制局長官のような見解でいかなければロジックが合わないと思いますけれども、しかし、あなたは法律的な見解を国会において証言しなければならぬ法制局長官なんだ。あなたは政府の番頭じゃない。あなたは政府から雇われた法制局長官じゃない。国家の法制局長官だ。私どもはあなたに法律的な疑義をただして、そうしていつもあなたの見解によって私ども審議を進めておるにかかわらず、故意に法制局長官ともあろう者がこのような間違った見解を述べるということは、断じて承服できない。ただ、定説はオーバーでございますから、定説だけを取り消すといったような思い上がったことはやめてもらいたい。全面的に取り消すかどうか。全面的に取り消さなければ、このまま審議は続けられませんよ。全面的に取り消すかどうか。これは総理も責任があると思う。総理はこのような重大なことをオウム返しに、私も法制局長官と同じでございますとは何事でございますか。全面的に取り消しを要求いたします。
  217. 高辻正巳

    高辻政府委員 どうも私が申し上げたことで、まことに時間をとりまして、まことに申しわけございません。  定説だと申しましたことについて弁解はいたしませんが、先ほどのような経緯があって申し上げたわけでございますが、これはまことに誤りであって申しわけない、これは取り消させていただきます。  それからほかの、たとえばいま申し上げたケルゼン、安井郁さん等の御説、これはもう事実として、学説として存在するものでございますので、これを私は取り消すわけにはまいりませんので、これはひとつごかんべんを願いたいと思います。申し上げます。ただいま多賀谷委員が御指摘になりました事実に反する点については、全面的に取り消さしていただきます。
  218. 福田一

    福田委員長 ただいま法制局長官が発言いたしました内容の趣旨に沿って、委員長は、速記録を取り調べた上、必要な部分はこれを削除することにいたします。
  219. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、法制旧長官はやはり法律的な純粋な解釈をされないと、総理大臣、すなわち日本国をあやまつことになるのですよ。これは国際問題ですからね。日本国の利害の問題ですから、そのときそのときで解釈をされておりますと、あとたいへんなことになると思います。これはひとつ御注意を願いたい。総理からひとつ見解をお述べ願いたい。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御注意もいただきましたので、将来十分注意してまいります。
  221. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この国連憲章の規定の解釈は、第一次的には当該の加盟国です。それから最終的紛争については、規定はありませんけれども、それは国際連合のいろいろな場で解釈されるものだと思う。ですから、加盟国である日本が第一次解釈権を持つわけですから、私は、こういう点は、ことにこれは領土の問題、民族の問題、非常に大きな問題でありますから、十分御注意を願いたい、かように思うわけです。  そこで私は、総理は昨年沖繩訪問に行かれましたので、主として沖繩の民生関係についてお尋ねをしたいと思います。私が沖繩に参りまして、この前本会議でもちょっと質問をいたしましたけれども、とにかく生活程度が非常に低い。なかんずく、社会保障のおくれが非常に著しい、かように考えるわけです。  そこで、日本の本土におれば当然適用を受ける問題、しかもそれは日本国と一緒に日本の施政下にあって起きた事由による問題、たとえば原爆の被害等については、私は何も沖繩県の人々を本土にまで連れてきて治療をしなくても、医療手当ももらえるし、また治療もできる、こういう方策を考えてもいいんじゃないかと思うのです。御存じのように、恩給等につきましては、すでに沖繩の県民も適用を受けることになっておるわけですから、いわば戦争という事由によって、同じような統治下において行なわれた事由によって被害を受けた、これは私は、当然、法理論は別としても、政治的には解決してやるべき性格のものじゃないか、こういうように思いますが、総理、どういうようにお考えですか。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまおあげになりました原爆の罹災者、被災者、そういうものの事後の処置等ももちろんでありますが、社会保障の面で、この医療保険なりあるいは年金制度等々、よほどおくれておるように思います。もちろんこれは一度に全部の改善もなかなかできかねますけれども、この予算に計上いたしまして、ことし大幅な援助計画をいたしましたのも、かような点に思いをいたしたからであります。日本政府が沖繩の同胞に対しましてやり得る事柄、そういう意味の民生の向上、これの努力をいたしておるのであります。  なお、その詳細につきましては、総務長官からお答えいたさせます。
  223. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 続いて、時間の節約の意味において質問をいたしたいと思いますが、いま申しました原子爆弾の被爆者医療の問題並びに生活保護につきましても、実質的には、厚生大臣はどういうように見られたかわかりませんが、半分ぐらいじゃないかと思うのです。三級地なら三級地と比べてみましても、それは金額でいいますと六〇ないし七〇%程度でありますけれども、勤労控除というものが沖繩ではない。ですから、本土の場合でありますと、働いた分ある程度それは自分の収入になる、収入認定から引かれないという制度がありますが、これがない。あるいは高等学校入学者、こういうものについても非常に問題がある。あるいは母子加算、こういうように考えますと、同じくらいの級地で大体半分くらいの程度ではないか、こういうように思うわけです。  それから医療制度、これは全く医療保険というものは皆無であります。本年の七月から発足することになっておりますが、これも残念ながら、五人以上の企業の労働者、そうしてこれは日本本土の場合と違って、現物給付でないのです。ですから一応自分が全額、金を払わなければならぬ。そうしてあとそれを保険に請求をするという仕組みになっておる。これは事実上保険制度の恩恵を受けられないのではないか、まず本人に現金がなければならぬわけですから。そうして中小企業、農民あるいは零細企業の労働者はワク外である。さらにお医者さんの足らないことは御存じのとおり、また医療費が非常に高いことも御存じのとおり、それから公務員の退職年金もやっとこの七月から発足することになりますけれども、一番多くの人数を占める軍の労働者には適用がない。一般労働者はもちろん適用がない。ですから、わが国でいう厚生年金的なものはない。共済組合的なものはあるけれども、厚生年金的なものはない。もちろん国民年金的なものはない。そこで少なくともいま本土の政府でやっております。たとえば保険料を取らないで支給しております福祉年金、——老人の福祉年金あるいは母子の福祉年金あるいは障害者の福祉年金、こういったものを私は当然見てやる必要があるのじゃないかと思うのです。この程度の交渉ができないのかどうか。とにかく二十年も放置をしておったわけでしょう。私ども行きましたら、こう言われましたよ。沖繩が九州であったら、一体九州の諸君はどうするだろうか、遠く離れておる沖繩だから二十年もほうっておかれたのだ、自分たちが九州だったらとても本土はほうっておかないだろう、こう言う。私どもは顔を上げることができなかったほどでありましたけれども一体これらの問題についてどう考えられておるか、ひとつ政府から御答弁を願いたい。的確な答弁を願いたい。
  224. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 昨年私も総理と同行いたしまして、沖繩の実情、特に社会保障の施設を中心に十分現地に触れ、いろいろな実態を調査をし、またいろいろな要望を聞いてまいったのであります。多賀谷さんが御指摘のとおり、社会保障は全般に本土と比べまして非常に立ちおくれておりますことは御指摘のとおりでございます。  そこで、いまお話がございました原爆被爆者の医療援護の問題でございますが、現在沖繩には百七十二名の被爆者がおります。この重い方につきましては、内地に呼びまして、これを病院に収容して治療する等の措置を講じてきたのでありますが、これでは不十分であるということで、昭和四十一年度から、直接原爆被爆者に対する援護の法律は適用いたしませんけれども、その趣旨に沿いまして、家質的には内地と同様にあらゆる医療援護をやることにいたそうと、予算措置もいたしておるわけであります。  それから、第二に御指摘になりました生活保護基準の問題でございますが、これも御指摘のとおり、まだ不十分でございます。そこで、昭和四十一年度におきましては、約九千七百万円程度、一億に近い補助をいたしまして、さらに保護基準の引き上げ、給付内容の充実をはかってまいるようにいたそうとしております。  さらに、年金の問題につきましては、ただいま公務員の関係の方々のみにつきまして七月から始めようといたしておるのでありますが、その制度が住民全般に及ぶように、今後も長期計画でいろいろな計画を策定をいたしております。それに対しまして、日本政府として適切な助言、指導、いろいろの援助を今後も続けていきたい。その間福祉年金を適用したらどうか、こういう御意見でございます。多賀谷さんも御承知のように、福祉年金は国民年金保険の拠出年金の制度、これが将来二十年後になって初めて給付されることになるのでありますので、経過的な補完的な措置としてこの福祉年金制度というのがあるわけでございますので、福祉年金だけを取り上げて、これを適用するということにつきましては、なお今後研究してみる必要がある、こう考えまして、むしろ沖繩で始めようとしておりまする年金制度の今後の育成、全面的にこの制度を住民全体に及ぼすという制度の育成に向かってできるだけの援助をしていくということに力をいたしてまいりたい、かように考えております。  また、医療保障の問題につきましては、ただいま、いろいろな医療機関の整備でありますとか、あるいは無医地区に対する医者の派遣でありますとか、いろいろの援助をいたしておるのでございますが、さらに医療保険制度につきましても、この十月から実施することに相なっておりますので、こういう面につきましてはあらゆる面で援助をいたしまして、早くこの医療保険制度が沖繩にも全面的に実施されるようにいたしたい、このように考えております。
  225. 安井謙

    安井国務大臣 いま厚生大臣のお話のとおり、沖繩における社会福祉の制度が非常におくれておるということは御指摘のとおりでございます。しかし、そうでございまするから、われわれ一刻も早くこれを日本並みにやるように努力をいたしております。  まず第一に大事なことは、一番沖繩の住民の要望の強かった教育制度でございます。この義務教育制度は完全に国庫負担あるいは教科書の無償配付、そういったものがこの四十一年度からは日本並みに実施できるようにまずやったわけであります。  その次に、引き続きましていま五ヵ年計画をもちまして、この社会保障制度といったものにつきましても、今後逐次日本並みに大いに上げていくという努力を続けておる次第でございます。
  226. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はことばじりをとるわけじゃありませんが、日本並み、日本並みとあまり言われますと、沖繩だって日本ですよ。ですから、もう少しことばを注意していただきたい。  そこで、厚生大臣は、沖繩から帰られて、羽田空港で記者会見をされておる。その中で、経済的な援助だけでは住民は満足しない、幾ら経済的援助や社会福祉の向上などをやっても、祖国復帰が実現しない限り沖繩の同胞を満足させることはできない、こうおっしゃって、アジアの情勢が緊迫しておるから、極東の安全の見通しがついてからというような態度では彼らを納得さぜることはできない、幾ら善政を施しても満足しないであろう、ですから祖国復帰を政府として真剣に考えなきゃならぬ、こういう談話を発表されておる。ところが、そのあなたが、福祉年金というのは補完的なものだ、だから切り離して福祉年金だけを沖繩に、法律の適用じゃありませんが、実質的にその趣旨を適用することはどうかと思う、こういう答弁をされるというのはおかしいじゃないですか。あなた何年かかって沖繩が祖国復帰ができると思っておるのですか。せめて福祉年金だけでも早く実質的に適用さすべきじゃないですか。ですから、福祉年金というのは拠出金をその保険者から取っていないのですから、少なくとも福祉年金だけは政府が一般会計から出しておるのですから、それは適用さすべきじゃないですか。どうですか。
  227. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私が沖繩から帰りまして、羽田空港で記者会見をいたしましたのは、私の実感を率直に申し述べたものでありまして、これは、総理の沖繩の祖国復帰が実現しない限り戦後は終わらない、こういう気持ちと相通ずるものでございます。  さらにそれに関連いたしまして、そういう気持ちであるのになぜ福祉年金の問題についていま直ちにやらぬか、こういう重ねての御質問でございますが、これは福祉年金の制度そのものにつきまして私先ほど申し上げたのでありまして、今後この適用につきましては検討を要する問題だということを御答弁申し上げた次第でございます。否定的に申し上げたのではございません。
  228. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはむしろ沖繩にも本土並みにやってやるというのが趣旨だろうと思うのです。政府の姿勢だろうと思うのです。ですから福祉年金だけは先行してよろしいのじゃないか。何も、福祉年金は国民年金の経過的な措置だなんという理屈をつけなくてもいいでしょう。そのうちに復帰をする、そのときは国民年金の適用があるのですから、経過措置だからやったらいいじゃないですか。
  229. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私は、国民年金の中における福祉年金の性格というものをまず最初に御説明を申し上げまして、そこで、これは拠出年金制度の補完的、経過的な措置であるので、直ちにこれを適用することは法律のたてまえからいってむずかしいけれども、これを検討してみますということをお答えを申し上げた次第でございます。  なお、国民年金法の改正法案をこの国会で御審議をお願いすることにいたしておりますが、その中で、沖繩はじめ日本本土外に居住されております日本人の方が内地に帰ってまいりました際には直ちに国民年金の制度を適用する、給付を始めるという改正は、今度の年金法の改正の際に行なうつもりでございます。  なお、多賀谷さんが御指摘の、沖繩におる方々に対しても福祉年金やなにを直ちに適用すべきであるという御提案に対しましては、今後十分検討してみたいと存じます。
  230. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理はいらっしゃらぬけれども、これはいままで二十年も放置しておったわけですから、一般会計から全部出る金額ですから、拠出していないわけですから、こういったものこそ、理屈を言わないで適用すべきじゃないか、こう言うわけですよ。年金が取ってないから、金がないからという理由にならぬわけですからね。どうも、ものの考え方が逆になっておりゃせぬかと思うのです。いや、沖繩の諸君がかわいくなきゃ別ですよ。それは、そんな理屈をつけてやるまいとすればいいわけですから。ですから、いまでもおくれている。もうすでに福祉年金が始まってから五年以上おくれている。ですから、総理、御存じのように、福祉年金は今度千五百円になる。少なくともあれだけでも早く、法律そのものの適用はないでしょうけれども、その趣旨を生かして実施できるようにされたらどうか。いま厚生大臣は検討いたしますと、こういうわけですけれども、ひとつ総理から、勇断を持って実施するように話をすると、こうおっしゃっていただきたい。
  231. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答弁まできめられているようですが、とにかくこの社会福祉関係、医療保険にいたしましても、全然いままで手がついておりません。したがいまして、どういう点から先にやるべきか、実施すべきか、まあ今回はこちらのほうからそういうこともだんだん上げていきたいというので、援助費をふやしてまいりました。大体昨年に比べて倍額にいたしておりますが、これらの具体的の実施方法、これはどれが一番いいか、ただいま言われるのも一案だと思いますので、十分検討させていただきたい。
  232. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 やはり先の短い年寄りからやるのですよ。いま沖繩の老人は、あの戦争中から戦後にかけて非常に苦労したでしょう。ですから、彼らは、彼らが生きておる間に本土に復帰できるかどうか、いまの状態ではわからぬでしまう。ですから、少なくともそういう方々に早く、福祉年金だけでも本土並みに出すということが政治じゃないですか。これは、あなたが現実に見てこられたわけですからね。そうして、老人の諸君に会われて、老人の諸君は感激したでしょう。ですから早くこれを実施してやる。少なくともこの程度は一般会計から出ておるんですからね。何にも本人から拠出を願っているわけじゃないですから。どうですか、総理、これだけでも早くおやりにならぬですか。
  233. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府自身にもいろいろ計画があるようですから、よく相談したいと思います。
  234. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ぼくは、厚生大臣の検討するという含みの中には、かなり前向きで検討されるものであると期待をしておきます。  そこで、これもやはりかなり老齢者に関係があるわけです。戦後二十年、戦前の郵便貯金が支払われてないですね。こういつたことがいまだに解決していないというのは、私は非常に思いやりがないと思うのですよ。ことに沖繩は、御存じのようにああいう島ですから、おそらく銀行も、那覇やその他以外にはあまりなかったんじゃないか。みんな郵便局に預けておるんですからね。当時、終戦時におけるこの郵便貯金の額は八千九百十三万、こういう金額ですね。その当時、昭和二十年十月当時に、沖繩において各人が所持しておった金額は六千七百万ですよ。ですから、各人の家庭にあった全部の通貨よりも郵便貯金のほうが多かったわけですね。その郵便貯金が封鎖されておるわけですよ。いまだに全然その返済をされてない。それは貨幣価値の換算の問題もあるでしょうけれども、こういうことぐらいが解決できないのですか。郵便貯金があって、そうして預けたけれども、いまだにもらえないと言って、どんどん年寄りは死んでいっているんですよ。一体これを政府はどういうように処置されるつもりであるか。
  235. 郡祐一

    ○郡国務大臣 御指摘のように、現在郵便貯金で利子を加えまして約七千九百方、その後内地で支払いましたもの等を除きまして七千九百万、現在あると思います。これは多賀谷さん御指摘のように、問題点は、一円一ドルの換算を要求されております。これは郵便貯金法のたてまえから申しましても、現に内地においても、定額の年金の問題等も同じようなものであります。これはどうも法律上スライドすることができない。それで、現在当方から三十六年に提示をいたしました見舞い金と謝金——民法上の遅延利息から郵便貯金の三分六厘の利息を差し引いたものを見舞い金として出し、それから、琉球政府には取り扱いの手数料として諸謝金を出す。この案を提示いたしまして、先方からの返事を得ておりません。ただ、私は私見といたしまして、これは先方と交渉いたします際に、おっしゃるように、二十年間その貯金というものはそのままになっておったわけでございます。定額貯金の一番高い利息あたりで見舞い金の算出をいたすとかというような、先方が交渉に乗ってまいりますれば、何とか見舞い金なり諸謝金の点で先方と話がつきますように、せっかく努力をいたしたいと思っております。
  236. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 物価は四百倍になっておるのですよ。ドル換算でも相当になっておるんですよ、沖繩でも。ですから、こんなしゃくし定木なことを言っておったんじゃ解決しませんよ。しかも、任意に引き出せたのを引き出さなかったというのじゃないのですからね。全然引き出せないんですから。ですから、本人の意思と関係ないわけでしょう。それを遅延利息であるとか、それからその利息計算をするとか、そういったことでは、そういうセンス、姿勢では解決できない。そんなものをもらって、各個人に渡って幾らですか。二十年と言っても、物価はその四百倍になっておる。利息はおそらくどんなに高くても、七分何ぼでも十年に倍でしょう。二十年に四倍ぐらいでしょう。二十年で四倍ぐらいですよ。七分何厘でも四倍ぐらい。それはそれほどの利息じゃないですね、郵便貯金ですから。そんなこと言ったらおこりますよ、そんな金を返せば。だれだって解決しないことはわかるでしょう。切手だって上がっていますよ。それならば、切手をやればいいですよ。当時の切手に換算して、そうしていまの切手をやるわけですよ。そうして日本政府が買い上げればいいでしょう、通用しないから。何か方法を考えたらどうですか。これは何度もあるケースじゃありませんよ、このケースは。今後こういうケースがあったら困るんですよ。日本の歴史の中に一回しかないケースでしょう。尾を引くことはないですよ。ですから、いま言うように、当時の切手に換算をして、その切手をいまの切手に直して、その切手を各人に交付したことによって、その切手が通用できないのだから、日本政府が買い上げて、金にすればいい。そのくらいのことがどうしてできないのですか。知恵がないのですか、そんなことぐらい。それは会計は別でしょう。切手の場合と貯金の場合は別でしょう。しかし、そんな理屈を言っておったのじゃ、これは解決しませんよ。ですから、ひとつ総理、どういうようにお考えですか。総理が指示しなければだめですよ。役人が幾ら考えても、知恵は出ないんですよ。政治ですよ、これは。官吏じゃできないのですよ。
  237. 郡祐一

    ○郡国務大臣 おっしゃるように、事情はまことに特殊なものであります。それでありまするから、ささやかなことではありまするけれども、年賀はがきで集まりました寄付金によりまして、できる限り沖繩の関係に出しておりまするとか、あらゆる郵政の会計でできまする努力はいたしております。それで、どこまでもやはり先方が早く話に乗ってもらいまして、そして郵便貯金法というたてまえをとにかく持っておりますから、その法律の中で現に不可抗力の場合の弁済等につきましても、いろいろと法律がございますので、その法律の許容されます範囲、したがいまして、私はおそらく見舞い金のところをどのくらい見るかというところで、話をこれから進めていくことだと思います。先方が話に乗ってまいります場合、現在のところ、御指摘になったように、一円一ドルでどうにも動かずにおりますから、これをともかく動き出すことができるようにいたしますれば、あらゆる努力は、早く解決いたしますように、これは私のほうも非常に希望いたしておるところでございますから、精一ぱいいたします。
  238. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 所管大臣じゃとてもできませんよ。これは総理大臣の決意ですよ。法律法律と言うが、法律国会で直すのですから、必要ならば特別立法をつくってもいいですよ。その沖繩の戦前における支払いについての法律をつくればいいわけです。そして私は、他に非常に影響があるなら、これはまた考慮しなければならぬけれども、これは特殊ですよ。敗戦という特殊事情、しかもアメリカが占領しておるという事実。ですから、このことぐらいができない、そうして一般会計に迷惑がかかるかもしれないという、それは国民は納得しますよ。そのぐらいのことはどうですか、総理大臣
  239. 郡祐一

    ○郡国務大臣 ちょっと、総理大臣がお答えになりますが、ついでに、ほかのことも申してしまいます。  テレビの問題とかマイクロの問題とか、あらゆる問題を、あとう限り御満足をいただく方法をすべてあわせて考えまして、そうして二十年の御苦労に報いるように考えまするし、それから特別立法等の点につきましても、これは何と申しましても、先方との話しの土台がつきまして、先方のほうと話を進めまして、そうしてどういうぐあいにまた国会にお願いをするかというようなことを考えさせていただこうと思います。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨年私参りまして、現地で郵便貯金の問題も陳情というかいろいろ折衝いたしたのであります。ただいま郵政大臣からお答えいたしましたように、政府自身がこれをほうっておく、その気持ちはございません。どうしてもこれは解決するということでいろいろ努力しておるのでございますから、私ども必ずその誠意も通じ、また沖繩同胞の諸君の実情にも触れたように話し合いができるだろう、これを期待しておるような次第でございます。私自身、これを別に解決をとめておるとか、あるいは解決を望んでおらないとか、かような状態ではございませんから、また、ただいまの社会党を代表しての御意見も聞かしていただいておりますので、これの解決については、まあ国会全体、超党派とでも申しますか、そういうように沖繩同胞のめんどうを十分見よう、こういうような気持ちでございますので、解決のめどが全然ないとか、見込みがないとか、かように私は思いません。それぞれの立場においての意見もありましょうけれども、よく実情を話し合えば必ず解決する、かように思っております。
  241. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、現地と話し合って解決をするのには、政府の姿勢、態度提案を改めなければだめだ、こういうように思います。私は、総理大臣が消極的であるとかなんとか全然言いません。養う少し積極的になってくれ、こう言っておる。そこで私は前向きにひとつ解決をしてもらいたいと思います。  そこで総理、いま国会では超党派的に考えられておる、こうおっしゃいますから、お聞かせ願いたいと思うのですが、これは総理大臣というよりも白斑党総裁として、衆議院、参議院で沖繩特別委員会の設置を盛んに言われておるが、一向できないですよ。要するに自民党の態度がはっきりしない。はっきりしないじゃない、むしろノーですよ、今日までできないところを見ると。しかし、いま超党派でと、こうおっしゃいますから、ひとつ沖繩対策委員会を自民党総裁としてはいい、ぜひ設置をしたい、こういうように御答弁願いたい。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま委員会の問題は、いろいろ国会内で検討をされておるようでございますので、こういうような答弁までお指図を受けるというわけにはまいりません。
  243. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも総理がお話しになるとき、だんだん後退をしますね、あなたの答弁は。少し前向きかと思って、それを引き出そうとすると、すうっと逃げていって、きわめて消極的になって、質問をしなければよかったという感じですよ。最終的には。ですから私は、先ほど超党派でせっかく沖繩問題は真剣にとおっしゃるから、そんなら委員会をつくりなさい、われわれは要望しておるじゃないか、こう言うけれども、それは国会の問題だという。ですから私は、総理大臣として聞いておるのではない、自局党総裁として、せっかくの機会だから御答弁を願いたいと、こう言っておる。もう一度御答弁願いたい。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま答えたとおりであります。
  245. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、沖繩問題は幾多の問題があるわけですから、委員会も各委員会ばらばらで審議をしておっても、あるいは総理府の関係であるからといって、内閣でやっておりましても、とても多くの問題を解決することができないと思う。ですから、国会においてやはり特別委員会でもつくって、総合的に幾多の問題を検討する必要があると思うのです。ですから私はそのことを強く要望しておきます。  続いて私はエネルギーについて質問をしたいと思います。時間がだいぶたちましたから、簡潔に問題点をしぼって質問いたしたいと思いますが、エネルギーの伸びとか、いろいろ聞きたいわけですけれども、いま当面差しかかっております非常に大きな問題になっております。古くしてしかも新しい問題ですが、石炭について質問したいと思います。  総理は、第二次有澤答申後に石炭特別委員会において、石炭の生産については五千五百万トンは不動の方針である、こういうように御答弁になりましたが、いまもそれにお変わりありませんか。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第二回目の答申を受けた当時、ただいまのように五千五百万トン、またぜひともそうしたい、こういうことを強く申しました。しかし、今日の実情を見ますると、これを維持することはなかなか困難なようですし、またいろいろの問題があるようですから、ただいま本格的な調査をしておりますので、その調査の報告を待つというのが現在においての私の心境でございます。
  247. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし、政府としては五千五百万トンというのは変えていないでしょう。中間答申にしても、あるいは第一次答申あるいは第二次答申を受けても、五千五百万トンという数字は政府としては変えていないでしょう。
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいままでのところは変えていない、かように思います。しかし、ただいま申しますように、本格的な調査をしている、これは六月か七月か、その時分になると答申が出るだろうと思う、私はそれを待っておる、かように申しました。
  249. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 第二次答申、第一次答申はもちろんですが、さらに中間答申とありまして、政府はその中間答申を尊重する、こういう態度できておりますから、私は、五千五百万トンという数字は、目標としては変わっていない、こう判断するのですが、そのとおりですか、通産大臣
  250. 三木武夫

    ○三木国務大臣 多賀谷君御承知のように、第二次調査団のときには、五千五百万トンを目標とするけれども、当分五千二百万トンくらいになるだろうというようなことが現実になるだろうということが書かれておるわけです。したがって、出炭量については、幸いいまエネルギー調査会等において、日本のエネルギーの全般について、たとえば石炭の位置づけ等毛検討を加えておりますから、あわせてこの五千五百万トンという出炭数量なども検討されるものとわれわれは期待をいたしておるわけでございます。
  251. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 政府としてはどう考えておるのですか。ただみんな白紙で調査会にまかせているのですか。政府としての方針はどうなんですか。
  252. 三木武夫

    ○三木国務大臣 現実には五千五百万トンいってないわけですから、したがって、現実の問題としては、五千五百万トンきっちりということではなく、やはり現実に即応して出炭量というものも再検討をしていいと私は思っております。
  253. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは現実の姿も必要ですが、長期の見通しというものが必要なんですよ。一九八〇年代のエネルギーの需給関係は、一九六〇年代、二十年前にきまるのですよ。すなわち、今日の政策は一九八〇年代の石炭の政策になるのです。石炭というのは、掘れといってすぐ掘れるわけではないのです。やはり二十年ぐらいのロングの見通しを持たないとできないのです。ですから、現実、なるほどいろいろな問題で出炭できないでしょう。そこまで出ないでしょう。しかしながら、日本のエネルギーとしては一体どうあるべきか。こういうのはやはり政府が定見を持たないと私はできないと思うのです。あなたのほうで、すぐ審議会にかけておると、こう言う。現実、審議会の運営を見てごらんなさい。みんな役人が書いておるのです。いままで、第一次答申、第二次答申、あるいは中間答申と来て、第一次答申、第二次答申がわりあいに尊重された。政府は実施してくれました。しかし、これが画期的なものではなかった、抜本策でなかったゆえんは、役人が左右をしておるからです。初めから、大蔵省と話をして、大体できるような答申ができておるのです。ですから、どうしてもそこに飛躍がない。飛躍がないものですから、つくったときにはもう時期がずれておるのです。ですから私は、審議会に全部責任を転嫁していままでやってきたところに問題があると思うのです。審議会にかけるのなら、全部審議会にまかせてしまえばよい。現実はそうでないでしょう。現実は、大蔵省と話をして、この字句がいかぬとか、このトン数では大蔵省が困るとか、もう予算計算までしてやっておるのです。ですから、飛躍的な答申が出ないから、今日、答申を出して実施しようとしたときにはもうくずれておる。ですから私は、政府は政策をあずかっておるのですから、少なくとも、政府はこう思うがどうかというくらいの抜本策を政府みずからが持っておる必要があるのじゃないか、こういうように思います。それについて御答弁願いたい。
  254. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今度の場合は、御承知のように、エネルギー調査会にしても、民間の学識経験者多数が加入いたしまして、これは日本の総合エネルギーに対して、少なくとも長期にわたって、その答申というものが実施できるような答申を期待しておりますし、石炭に対しても抜本的な対策をこの機会に講じたい。ただ、その場、その場を過ごしていくような政策には、一つの限界が来ておるということでやっておりますから、今回の答申というものについては、従来のようなお茶を濁すような答申ではないことを期待しておるのと、政府は特に五千五百万トンという目標を、これは変えてはいないわけです。これを現実と即して再検討しょうということで、われわれは五千五百万トンを四千万トンにしようというふうな考えではない。その目標は変えないけれども、いろいろと現実的な条件が、生産条件に変化がありますから、そういうものを頭に入れて再検討しょうという考えでございます。
  255. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 エネルギーの見通しについていろいろ質問したいのですが、時間がございませんから、私は、次に、石炭が私企業としてはたして成り立っていくのかどうかということについて、私自身が非常に不安を持っている。ですから、それを、ことにかつて通産大臣でありました総理大臣に聞きたいのですが、とにかく、いまのままでいきますと、炭鉱は退職金も払えないでのたれ死にするという状態になる。すでに、あなたが通産大臣のときに非常に御努力願った大正炭鉱は、とにかく一年半かかって、やっと去年の暮れに社内預金、未払い賃金、退職金の八%もらいました。閉山をしたのはその前の年の夏ですね。そうしていろいろ計算してみるけれども、一四%もらえそうもない。結局、炭鉱はだんだん、だんだんつぶれていって、一社一山になりますと退職金ももらえない。少なくとも鉱害のある筑豊炭田、佐賀炭田の労働者は退職金をもらえない。大正炭鉱でも、政府から交付された交付金が四億、鉱害賠償額が二十八億ですよ。とってもできないでしょう。ですから、結局、最後まで山に残っておる労働者というのは、退職金ももらえないで終わるのじゃないか。ですから私は、全国の山を見ますると、この山はいつごろ終わって、そこの労働者は退職金をもらえないで、結局ほうり出されるという労働者の顔がまぶたに浮かびますよ。大体わかる。こういう状態になっておるのですよ。いま社内預金が約三百億あるでしょう。そのうちで退職者の退職金が、まだ社内預金にあるのが大体百五十億ある。退職者がその退職金を引き出したら、炭鉱は、大きな炭鉱でも取りつけにあうのですよ。大会社が第二会社にするでしょう。第二会社にしたときに通帳をやるだけなんです。金を預っておるという通帳をやるだけです。そうして退職金を払っていないのですよ。だからそれだけの社内預金がある。ところが、その社内預金を取りに行っても現実に払えないのですよ。そこまできておる。ですから、いまのままでいけば、これで最後までやっていく者が一番ばかを見るのじゃないかという気がする。ですから、いまの閣僚では、はなはだ失礼ですが、総理大臣が一番よく経過をずっと御存じですからね。しかも責任者ですよね。ただ総理大臣は、私は、責任を追及するという意味じゃないけれども、現実どうにもならぬだろうと思うのですよね。しかも、私の言うのは、中小炭鉱とか零細炭鉱の話をしているのじゃないのですよ。零細炭鉱も中小炭鉱もなおひどいけれども、大手十七社の中に、もう私の頭の中で大体判断できる炭鉱がかなりある。一体総理はどういうようにお考えですか、これをお聞かせ願いたい。
  256. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 所管している通産大臣からお答えするのが本筋でございますが、特に名ざしでございますから、私が大体の方向だけでもお答えしたいと思います。  今回のエネルギー調査団がこの調査に取り組む、この問題は、基本的な問題と申しますか、非常に広範にわたっての石炭産業のあり方という意味でひとつ調査に取り組んでみる。そういう場合に、廃山後の鉱害等の復旧事業、こういうようなことまで全部その調査の中に織り込んでみる、また退職金の支払いなどももちろん十分考えてみる、こういうようなことで調査に乗り出すということであります。ちょうど予算編成中の昨年の暮れにおきましても、すでに一部非常な困った状態が出ておりますが、暮れに対しては、ほんの中間的な報告だ、こういうことで中間報告をしたのですが、全体はとにかく本調査をする六月あるいは七月までぜひ待ってほしい、こういうことでございます。そして今日までのところはいわゆる経営形態におきましても、国有国営ということを一部ではいわれますが、この調査団が取り組んだのは私企業としてのあり方、私企業としたらどういうようにあるべきか、いかにすべきか、こういう私企業としての立場で調査をしておる、かような状態である、かように思っております。  御承知のように、私どもはこういう問題について、経営形態を国有国営とまでは、どうも考え方がよほど飛躍しないと出てこないのでありますので、在来どおりの私企業としてまずその答申を得て、しかる後に、さらにそれだけで行き詰まるものか、どうしても別な方向に行かなければならないのか、そういうようなことをも検討して政府態度をきめたい、かように私は思っております。  なお、通産大臣からただいまの調査団の編成なり作業等についてもお話があるだろうと思いますので、お聞き取りをいただきたいと思います。
  257. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、退職金の確保についても答申を願っておるわけですね。含んで答申をされることを期待されておるわけですね。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまそういう点も一応、鉱害復旧、それから退職金等を十分その報告では出していただきたい、かように思っております。
  259. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私の顔を見れば、国有国管というような方向は出ないと、もう何か私の質問を前提にして前からお話しになっておりますけれども、この前私の質問に対しても、本会議で、あるいはその前の八木昇君の質問に対しましても、もうすでに国管というのは経験済みだ、こういうようにお話しになりましたが、どういう経験と考えられておるのですか。
  260. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これからの国有国営、それはいろいろ新しい構想もあるだろうと思いますが、かつての炭鉱国管、こういうことを実は頭に描きながら考えたのでございます。
  261. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは総理みずからどういうように評価されているのですか。
  262. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過去の炭鉱国管は、私はあまりいい成績はあげたとは思わないのです。
  263. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは率直に言いますと、私は評価できないのですよ。というのは、国管をつくったときと事情が急変しておるのですね。すなわち戦争中からありました配炭公団は別としても、それらを含めて評価してもなかなか評価しにくい。私も質問するについて、二十年間の政府の石炭の政策をずっと追ってみました。ところが、なかなかその評価がしにくい、というのは、国管といわれる臨時石炭鉱業管理法ができたのは、二十二年十二月八日、公布は二十三年十二月二十日です。ところがその主導権をとっておりました片山内閣は二十三年二月十日崩壊をしておるわけです。そうして、これによってかなりその実施がおくれておる。そのうちに御存じのように傾斜生産によって非常に増産になってきておる。ところが一方、二十三年十一月には三原則が出、さらに十二月には九原則が出て、ドッジ・ラインによって景気は急に後退をしておるのですよ。石炭のほうは増産をしておるものですから、増産体制でずっといっておる。景気のほうは急に一般景気が後退したのですよ。そこで貯炭が余った。五百万トンから配炭公団は貯炭をかかえた。ところが、もう片山内閣が瓦解したから、業者のほうはやがて自由になるんだという期待がある。そこで、やたら粗悪炭を出しておるのですね。そうして粗悪炭を出して——これは当時の自由党にも責任があるのだけれども、粗悪炭を出して、かなりカロリーの低いのが配炭公団に納まっておる。五百万トンからの貯炭になっておる。そうして業者のほうは、中小企業あたりが盛んに疑獄まで起こして、国管反対をしたけれども、国管がなくなって、配炭公団がなくなってみたら、値段が三割も下がった、中小企業の低品位の石炭は。それから大手のほうの高級カロリーのものは、逆に値段が上がっておるわけです。そこで国管が終わって、そうして配炭公団がなくなったところが、いままで一生懸命廃止を推進しておった業者のほうは、三割も値段が下がるし、それから大手のほうは逆に値段が上がっておるのですよ。こういう状態の中で貯炭をかかえて苦しんでおったところが、朝鮮戦争が起こっておるわけです。ですから、その貯炭が一度にふき上がって、また二千円ほど炭価は上がってきた。こういうような状態で、率直に言って、なかなか評価はむずかしいのですよ。  そこで、こういう立法というのは、とにかく内閣がかわるかもしれぬという、そういう状態ではなかなかむずかしいでしょう。そのことはわかる。しかし、このことを評価するというのは、社会党とか自民党とか自由党とか民主党という立場を離れても今日非常にむずかしいのですよ。ですから、少なくとも傾斜生産によって三千万トンを突破し、あるいは四千二百万トンを目標にして相当石炭が増産されたということは、私は評価していいのじゃないかと思うのですよ。そうして、これはどんどん、どんどん補給金を炭鉱にだけ出したのではなくて、重点産業については非常に安く売っておるのですよ。要するに一般の産業以外に、重点産業というのには非常に炭価を安く売っておる。そうして他の産業の育成につとめたという歴史があるのですね。ですから、簡単によくなかったとか総理大臣評価されておりますが、この評価というものは私は簡単に評価できないのではないかと思う。あなた方が当時の自由党で反対されておるのと逆に出ておるのですよ。逆、逆に出ておる、こういうことになっておる。ですから私は、このことによって今後の問題を律するわけにはいかない、かように思わけです。  そこで、一体千二百億に上る交付公債という話が出ておりますが、やはり債務の肩がわりということは考えられておるのですか、これは通産大臣
  264. 三木武夫

    ○三木国務大臣 先般の中間答申にも、急速な合理化に伴う異常債務は財政的肩がわりを必要とするというのが答申の骨子でありますから、当然にこういう考え方を尊重しながら石炭の抜本策を講じたいというのがわれわれの考えでございます。
  265. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、いまのままで債務の肩がわりだけでは、日本の炭鉱というのは再建できないのではないかと思う。一体、あなたのほうは日産とプリンスを合併をさしたり、あるいは海運においても、三井銀行関係の三井船舶と住友銀行系の大阪商船とが一緒になるということはだれも考えなかった。しかし、それの合併ができた。こういう再編成は何のためにするのですか。これはひとつ運輸大臣でもあるいは通産大臣でもお聞かせ願いたい。
  266. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のような開放経済下にあって、日本の経済は国際競争をやらなければならぬ。その場合に、日本の大企業といわれるものでも欧米諸国に比べたら中小企業であります。大企業というものの持っておる競争上の利点というものは、国際経済競争においてこれは評価しなければならない。日本はいろいろな企業が乱立して、そのことからくる過当競争の面もありますし、また企業の経営の規模が小さいことからくる競争上の弱さもある。こういうことで、日本の企業の態勢が、できるだけ企業の単位を大きくしていこうということは、当然の経済政策だとわれわれは考えて、そういう指導をいたしておるわけであります。
  267. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 海運の面におきましても、国際競争に耐え得るように、さらに国内海運の健全な姿を確立するために、集約化というような形で合併が進められたものでございます。
  268. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣は、ことに総理大臣はどういうようにお考えであるかわかりませんけれども、英国の炭鉱の国有にしても、フランスの公社にしても、私は鉱区問題だと思うのです。根本は鉱区問題から起こっておるのですよ。英米法は、御存じのように、鉱物は土地所有権者が持っておる。ですから、地下何千尺の鉱物は、土地所有権者が本来持っているのです。日本は違う。大陸法とは違うのです。英国の炭鉱というのは、土地所有権者から許可を得なければ、鉱物を掘ることができないのです。そこで、英国は、非常に小さな鉱区が群小してあったわけです。そうしてどうしても能率がよくならないから、鉱区の統合の意味において、鉱区をとにかく統合する。そのためには、結局国有化以外にないと踏み切ったのです。それは労働党がやったけれども、その前三十年も前から答申が行なわれておるわけです。それは結局鉱区統合なんです。フランスの公社はやはり鉱区の再編成なんです。結局八つのブロックに分けて、そうして炭鉱をつくって、鉱区の統合をやったのです。そして国有にして、経営は公社にしたのです。これも鉱区の統合なんです。現在炭鉱の根本的な対策というなら、鉱区問題です。現実そうでしょう。農林大臣、農地の問題だってそうでしょう。農林大臣、あなたのほうで機械化する、協同化するというのは、結局機械を入れても、農地がばらばらである、あるいは小さい、あるいは区画整理その他の問題で、とにかく基盤整備をやらなければならぬでしょう。炭鉱の場合もそれと同じですよ。立て坑を一本掘るについても、最も活用をしなければならぬ。それにはフィールドがどのくらい要るかということが必要なんです。それを全然解決しないで、いま私企業のままで幾ら金を注ぎ込んでも、これは過当競争になるか、あるいは資源を死蔵するだけです。現実志免炭鉱の場合でもそうです。志免と勝田の国有のときに、勝田は非常に成績がいいけれども、志免は悪いなんて、代表的に言った。現実はどうかというと、志免のほうが後まで残った。そうしてどちらが能率がいいとは言えない。そうして、結局どういうことになったかというと、御存じのように、志免炭鉱を三菱がほしがったでしょう。そんな悪い炭鉱なら、ほしがるわけないですよ。三菱がなぜほしがったかというと、勝田の鉱区であって、自分の鉱区であって、しかも断層があって、勝田のほうからは掘れないのです。志免のほうからは掘れるのです。その死蔵された鉱区が三百万トン以上ある。結局両方がつぶれましたから、永久にこれは一千万トン以上の石炭が日本の地上に出ることはできなくなった。もう永久に掘ることはできません。いまから立て坑を掘り出したってたいへんです。いま水がつかっておるから、全然できない。ですから、こういうきわめて重要な資源をかようにばらばらにしているから、資源の活用も何もできないんです。ですから、問題は、炭鉱の場合は鉱区だということです。ですから、合併をするといいますけれども、簡単にできませんよ。三井と三菱を合併しても何にもならない、炭鉱はばらばらにあるのですから。海運のように船を持ってくるわけにいかないのです。  ですから問題は、炭田別の合併という問題がある。ところが、炭田別の合併をすると、小さく分けると逆になる。筑豊炭田、唐津炭田、あるいは石狩を二つに分けるといたしますと、いいところと悪いところと格差はものすごくつくでしょう。ですから、悪いところの炭鉱は、もうお手上げです。ですから、これはフィールドを大きくして、九州なら九州に一つ、北海道に一つ、こういうふうにしたらいい。現実に困っておるでしょう。通産省が一生懸命各企業者を呼んで折衝された。常磐炭田一社化の問題はついにできなかった。それは会社は会社の事情があるから、できませんよ。ことに労働者、職員をどうするかという問題があるから、簡単にできぬです。ですから、国が政策として平等にやる以外にない。Aという企業とBという企業を合併するというようなことはできませんよ。  ですから、私は、この問題を解決せずして、幾ら論議をしてもだめだと思う。農地のときにはこれを言い、どうして炭鉱のときにはそれを言わぬのですか。常磐炭田においても同じですよ。いま、中部空知炭田というか、北空知炭田というか、すなわち、砂川、歌志内、空知、赤平、赤間、豊里、それから茂尻、芦別、この地区でも同じですよ。立て坑を打った、掘る炭石もないですよ。よその炭鉱にわけてもらわなければならぬ。そうしてみんなよその鉱区に入らなければならぬようになっておるんです。そうして九百メートルも立て坑を打って、しかもよその鉱区をわけてもらわなければ炭量がないなんて、そんなばかなことが  一体ありますか。こういうことを放置しておって、私は債務の肩がわりに反対をしないけれども、それをするには、まず先に問題がある、こう言っておるわけです。そうしなければ、私は日本の炭鉱は絶対に救えない。だから、どこも経験しているから、英国も国有になっておる、フランスも公社になっておる。そうしてオランダは国有にして、経営は民営でやっている。欧州が純然たる私企業でやっているのはドイツだけですよ。しかし、ドイツは垂直的な結合があるんです。すなわち、鉄鋼会社が石炭を経営しておる。その石炭会社が電力を売っておるんですよ。日本はどうですか。日本は、鉄鋼は日本製鉄株式会社というので、三菱からも、三井からも離れたでしょう。電力は日本発送電で離れていったでしょう。国鉄は国有鉄道で離れていったでしょう。三井といえども、三菱といえども、要するに、資本主義で強靱でない。炭鉱だけが私企業で残っておる。きわめてその結合体がない。だからこれは資本主義で一番脆弱ですよ。ですから、こういう問題を根本的にメスを入れないで、形態は動かすことができぬ、私企業という形態を動かしてはならぬというなら、答申のしょうがないでしょう。総理一体どういうようにお考えなんですか。総理はわかっておって言っておるのであろう。日本の炭鉱の全体がわからなければ、通産大臣はつとまらない。二年間も通産大臣をやっておる。だれもこういうことを教えてくれないのですか。
  269. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、これは全部調査団まかせというわけでもありませんが、調査団がただいまいろいろ審議し、調査の報告をしよう、かような状態でございますから、その報告を待っておる状況でございます。
  270. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 報告にもいろいろあるのですね。日本が、石炭協会と政府でフランスのコンサルタントのソフレミンという調査団を雇って調査してもらった。膨大なソフレミン報告が出た。このときに条件をつけたんですね。日本政府及び石炭協会は、絶対に企業形態については言うてくれるなという条件をつけて呼んできておる。そんな条件をつけられたんじゃ何も抜本的な対策はできませんよ。それでも、日本の企業は自由主義過剰だということを端々に書いておる、遠慮しながらね。石炭について、一体自由競争でいいところがありますか。普通の産業なら私はあえて否定しないですよ。事石炭に関して、自由競争でいいところは一つもないですよ。これはどこがいいですか。
  271. 三木武夫

    ○三木国務大臣 多賀谷君の石炭に対する国有国営あるいは国家管理、そういう立場はあり得ると私は思う。これは否定をしない。今日の段階では、そういう立場に立ってこの問題を解決しようという立場があることはわれわれも承認をいたします。しかし、われわれとしては、これを私企業という範囲で解決したいというのが、この内閣の基本方針であります。いろいろな私企業としての利点、何があるか、こういうわけですけれども、それは全般に通ずることでありますけれども、やはり私企業としての責任とかあるいは企業家の自主的な創意とか、いろいろ一つの私企業として持っている長所は石炭といえども否定できない、私企業としての長所を持っている。しかし、それなら私企業として他の産業のように何でも自分でやれるかというと、なかなかやれない段階にきておるので、政府はこの異常債務などに対して財政的な肩がわり等も考えて、これを私企業として立て直してみたい、企業形態を国有国営とかいっても、非常に国有国営の弊害もありましょう。いろいろな面で、国鉄のようなものと違って、ああいうような形の石炭産業が国有国営とかいうものになれば、非常な弊害の面も私はあると思う。しかし、われわれとしては、そういう利害得失というものをいろいろ考えながら、やはり日本になじんでおる私企業として、この石炭を今後抜本的な対策を講じて、石炭の保護政策を講じたいというのが方針でございます。これは、立場によっていろいろな議論はあり得る、私は、それは否定しません。
  272. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そのドイツもいよいよ困ってきたのです。私企業であった唯一のドイツが。しかし、ドイツはもとから販売は一社なんですからね、言っておきますが。日本のように販売で競争して、角逐してない。一社のカルテルなんです。販売はもとからドイツは一社なんですからね。ただ地産のほうが私企業なんです。ところが、そのドイツも最近経営者の中から、一社にせいと、こう言っている。国有とは言わない。ルール炭田を一社にせい、それはもと石炭鉱業界のスポークスマンであって、そうしていまライン鉄鋼株式会社の社長である、取締役会長であるゼーンゲンという人が提案をしておる。もちろんこれは個人の意見であるが、そういう状態です。とにかく集約採炭をしなければならぬ。それにはどうしてもルール炭田を一社にしなければだめだと、こう言っておるのですよ。私企業でいく以上は一社にしなければだめだと、こう言っておる。ですから、私は、やはり国有ということを別にしても、これは何らかしなければ、とてもばらばら会社があって、しかも今度は大型機械を入れるわけですよ。人の鉱区を当てにして機械を入れるなんということがありますか。現実そういう状態になっておるのですよ。そうして、いまの日本においては、一社にしてみてもたいした会社じゃないですよ。大体五千万トンにして、四千円に高く見積もっても、年間二千億でしょう。半期に千億ですよ。半期に千億の会社といえば、日本鋼管あるいは日産自動車、東芝よりなお少ないですよ。大手十七社だけを集めましても、大手十七社の四十年度の大体の決算の見込みが千三百二十九億です。ですから、大手十何社全部集めても、半期が六百六十億でしょう。これは日立の二分の一であり、東京電力の二分の一、中部電力くらいの売り上げ金しかないんですよ。ですから、それは会社としてもたいした会社でないのです。小さな企業だ。しかも、日産にはとても対抗できぬからプリンスとやれと、こういうんでしょう。日本の全国の炭鉱を集めても、売り上げ金が日産だけないのですからね。とても管理のできないような方法じゃないですよ、いまの炭鉱というのは。それは昔の炭鉱、三井から始まって三菱と、昔はほかの産業がウエートが小さいから、それはたいしたものだ。この会社全部集めてみても、いまは問題にならないですよ。ですから、なぜこんな会社を一ぱいつくって、そうして鉱区はばらばらにして、投資をしようにも、立て抗をつくろうにも立て坑はできないのですよ。たとえば、いままで相当失敗しているのですよ。名前をあげてもいいけれども、明治の庶路炭鉱、二十億投資したけれども、全然だめですね。これが今日の明治鑛業を非常に企業的に弱くしておるゆえんです。あるいは住友だって昭嘉炭鉱に二十億投資したけれども、全然だめだった。いま一つの企業で投資をしますと、一体投資の量が幾ら要るか。もし失敗をした場合には、その本体は倒れるわけですよ。もう時間がないから、私は簡単に言いますがね、いまの私企業で新鉱開発ができますか。私がちょっと計算してもこうでしょう。百万トンの炭鉱をつくるには百五十億要りますよ。とにかく年産一トンの炭鉱をつくるのに一万五千円要るわけだ。その百万トンの炭鉱をつくるには七年から八年かかるのですよ。その資金の懐妊期間というものは実に長いのです。そして百万トンつくって、いまの年間売り上げは、四千円ですから四十億ですよ。半期が二十億で、百五十億も投資をして、七、八年もかかる、こんなばかな投資の方法はないと思うのですよ。しかもうまくいっての話です。途中で水が出て水没をしたら終わりでしょう。ですから、幾らスクラップ・アンド・ビルドといっても、ビルドなんかしないですよ。どこの炭鉱もみなスクラップ・アンド・スクラップだ。だから、そんな炭鉱企業にいまから金を出すなんというおめでたい人間はいないですよ。一体これはどうするのか、通産大臣、お聞かせ願いたい。
  273. 三木武夫

    ○三木国務大臣 既往の炭鉱は老朽化していくし、新鉱の開発はやらなければならぬ。しかし、お説のように、なかなかこれは金もかかるし、年限もかかる。政府昭和四十年度から新鉱開発に対する基金を設け、今年度は融資の比率を五〇%に上げたわけですが、これでは私、やはり十分でないと思います。新鉱開発には、やはり新しいくふうを要すべき段階にきておる。この点はわれわれも認めるわけです。いろいろな改善を加えたけれども、これでも十分でないと思っています。これは、やはり根本的に検討しなければならぬ問題だと考えております。
  274. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 販売にしても、ほんとうに電力会社とよく調整をとるなら、日本の火力発電所というのは、西は姫路なら姫路まででいいんですよ。そうして、東のほうは千葉までなら千葉まででよろしい。輸送費のかかる中部地方に持ってくることは要らないんですよ。そうして、企業内の合理化というのは、もうこれ以上は限度がある。労働者はだんだん年齢が高くなっていっておるんですからね。ですから、企業外の合理化をしなければならぬ。鉄道運賃も上げるわけでしょう。そうすると、だんだん高くなっていくから、輸送費を節約しなければならぬ。ところが現実には、北海道の石炭が八幡まで行っておるわけです。あるいは関西まで行っておるわけでしょう。ですから、そういうように日本経済全体としてこれを見ない以上は、この問題は解決しないですよ。ですから、私はひとつ抜本的対策における抜本的な政府の決意を聞きたいと思うのですね。
  275. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いろいろお話のある点、傾聴すべき議論が私は非常に多いと思います。石炭問題は、これは日本としても地域経済全般にも影響があるし、またエネルギーの安全確保とかいう意味においても、石炭の現在の地位を否定することはできません。そういうことで、今回はわれわれとしても、答申に全部責任を転嫁するという意味ではない、しかし、こういう重大な問題でありますから、相当な財政的な資金も必要とするのでありますから、国民的にみな知恵をしぼって石炭問題の解決に当たることが適当だと考えますので、こういう調査会とか、あるいは石炭鉱業の審議会等の意見も徴し、また政府自体としても真剣に検討を加えて、来たるべき答申の出る時期には政府としての基本的な態度をきめたいという覚悟でございます。
  276. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 少し政府がイデオロギーにこだわっておられると、ほんとうにどろ沼に落ちていく。一番かわいそうなのはだれかというと、労働者ですよ。退職金のもらえない会社に、一生を棒に振るようになる。いま何社の何炭鉱があるから、ごまかして次から次へ、山をつぶしてはその借金を次のほかの炭鉱にかけていっておるのですが、率直に言って、最後の炭鉱というのはもうどうにもならないのですよ。ですから、労働大臣は、労働者の退職金を一体どうして確保してやるのか。  それから問題になっております炭鉱の特別年金の問題ですね。これは厚生大臣ですが、これは、答申が出たのが三十九年十二月ですよ。御存じのように、一生つとめる炭鉱というのは少ないですからね。いまの日本の終身雇用制のもとで、一生つとめられる職場でないところにだれが若い者が行きますか。これは行かないんですよ。ですから、若い労働力は炭鉱に来ない。それは一生つとめられる職場でないからでしょう。ですから、これを一体どうするのか。この問題が提起されてからすでに長いですよ。もういまさら怠慢を私は追及しませんけれども、いまからどうするのか、具体的にどういう作業をするのか、どういう委員会をつくって諮問するのか、これらをひとつお聞かせ願いたい。
  277. 小平久雄

    小平国務大臣 炭鉱関係の未払い賃金は、昨年九月で大体四億四千万円程度になっております。これもだんだん減ってまいってそこまできたのでありますが、この未払い賃金の大部分は退職金、こういうことに相なっております。そこで、労働省といたしましては、これが円満に支払われるように、いわゆる監督指導も十分やってまいってきておるわけでございますが、特に昨年末におきましては、石炭合理化事業団等の交付金も若干出おくれておったようでありますので、通産省のほうにも御依頼を申し上げて、その御協力のもとに一億数千万円の未払いを解消した、こういうようなことでございます。もちろんこの問題は、石炭鉱業自体の安定化と申しますか、業態が健全化されるということが根本であろう。それに大いにわれわれも期待いたしておるわけでございますが、労働省の立場から言えば、十分監督なり指導なりをいたしまして、労働者に確実に渡るように、そういうふうに今後とも十分注意をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  278. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 石炭労務者に対する特別年金制度の創設の問題でございますが、これは厚生省が厚生年金、国民年金を扱っておるということで、特に関係があるわけでございますけれども、やはり現在石炭産業が大きな転機に立っておるので、石炭産業に対する対策の一環としてこれを取り上げておるのでございますから、通産省、労働省等と緊密に連絡をとりまして、ただいま三省間で検討を進めておる段階でございます。いまも申し上げましたように、今後石炭産業でどれだけの労働者数を確保し、またその年齢構造等はどうなるか、こういう年金の基礎的な資料をまず的確に把握、整備しなければならない。こういう点につきましては通産省にお願いいたしまして、その基礎的資料の調査を急いでおるということでございます。私ども審議会の答申の趣旨を尊重いたしまして、できるだけ早くこの制度を確立いたしまして、そして石炭労務者の確保ができますように対処していきたい、かように考えております。
  279. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この問題は、早くやらないとどうにもならない問題であるし、また労働大臣は、ただ督励をするとか監督するとかいうことで解決するわけではないでしょう。たとえば退職金の問題なら、社内に幾ら積み立てておってもとてもだめだから、あるいは社外の別の機関に積み立てて退職金だけは確保するとか、何か制度的のものを考えられないと、とても解決できないですよ。ただ督励をするとかいうようなことは、大臣から答弁を得なくても、だれでもやりますよ。督励したって監督したって、金がないのですから、これは初めから退職金に見合うものを社内に積み立てないで社外に積み立てて、政府が介入するとか、制度的にものを考えないと私はできないと思います。ですから、そういう問題をひとつ検討願いたい。  それから厚生大臣、特別年金とただ口で言われてもだめですよ。厚生省は本来逃げ腰ですから、これは労使関係の関係者を集めて、大臣のもとに審議会なら審議会等々をつくって、通産あるいは労働、厚生  これは厚生省がイニシアチブをとってやったらどうですか。第一、今度の予算だって、あなたのところは、調査費の二百万円を忌避しているでしょう。調査員が通産省のほうの予算に入っているでしょう。本来、厚生省の担当であるのに厚生省は忌避してしまって、通産省のほうに入っている。そんな逃げ腰で一体できますか。
  280. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 この年金の問題につきましては、炭鉱労務者の厚生年金につきましては、特に重視をいたしまして、多賀谷さんも御承知のとおり、厚生年金におきましては、この資格の面におきましても、他の一般の労働者は二十年でやるところを十五年にいたしております。それから開始も五十五歳でありまして、一般が六十歳である。また国庫からの負担も、一般が二〇%であるのを二五%、こういうぐあいに、厚生省といたしましては、厚生年金制度におきましても石炭労働者のことを重視いたしておるのであります。ところがこの特別年金制度の問題は、転機に立つ石炭産業の一つの大きな政策として取り上げた問題でございますから、これは厚生省だけでなしに、むしろ石炭産業を担当する通産省等の御協力を得まして、そうして、先ほど申し上げたように、今後将来に向かってどれだけの労働者数が必要であるのか、その年齢構造等がどうなるのか、そういう年金制度の基礎的な資料を整備しなければできないのでありまして、その点を通産省にお願いして、せっかくその基礎的な調査を急いでおる。できるだけ審議会の御趣旨に沿うように、私ども今後も一そう努力をしたいと考えております。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この石炭調査団、今回の調査団は、これはもう最終的なものだろう、こういう意味で、よほど画期的な報告が出るんじゃないか、またそれを実は期待しておる。先ほど来五千五百万トンというところからスタートして、それは大体目標という程度にまではゆとりがあるようなお話になったように思えますけれども、私は、そういうような問題でなしに、石炭産業のあり方、これはもうほんとうに画期的な調査報告が出てくるものだ、かように実は期待しておるのでありまして、ただいま言われるような退職金の問題だとか、あるいは産炭地振興の問題だとか、あるいは鉱害復旧の問題だとか等々全部をひっくるめて、そうしてこの対策を立てるべきそのときにきておる、かように私は思っておりますので、あえて先ほど来あまり私見は申し述べませんでしたが、一に調査団の報告を待っておる。そうして、これと真剣に取り組んで、石炭産業というものに対する、これならば安心だというような長期的な観点に立っての対策を立てたい、かように思っておる次第でございます。
  282. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に、時間がありませんから、私は「産炭地の教師は訴える」これは小冊子でありますが、先生方の記録です。これをあとで読んでいただきたい。とてもこの記録を読みますと、涙なくしては読まれぬ。非常な悲惨な家庭の児童の非行化をたどっていく過程が、その記録になって載っておる。これをあとから総理大臣外関係大臣にぜひ読んでいただきたいと思います。  そこで、とにかく最近は集団非行化の状態にある。そして、児童がみな暗い家庭から逃避せんとする。ですから、たとえば中学卒業生が就職をいたしましても、名古屋なら名古屋に行っても、最初の就職口はわかるわけです。すぐもうほかの会社に行っている。しかし、親には通知しない。要するに、家庭の暗い環境が子供を追っていく状態は見るに忍びないわけです。なるべく家庭から離れて、親にも居どころを告げない、こういう状態になってきておる。そうして、実に一教室の中で七〇%ぐらい生活保護の子供がおる。一つの教室の中で七〇%生活保護と準要保護児童の子供がおれば、率直に言いますと、子供だって、家庭がそういうような貧困でありますから、十分な教育ができないでしょう。ですから、先生はたいへんです。七〇%、五五%の高率の学級が相当多いのですよ、一つ教室の中に。ちょっと想像に絶するような状態ですよ。そこで、いまある中学校、たとえば福岡県田川郡の糸田中学校で八百八十名生徒がおる。ところが、生活保護者の子供が三百七十名、準要保護児童が百十三名、合わして四百八十三名、八百八十名のうちで生活保護及び準要保護児童が五五%いるわけです。そこで、結局教育扶助費、就学奨励金を校長先生が生活保護法の特例によって一括して受けるわけです。そうして三百七十二万程度の金を受けて各学級に配る。そうして担任の先生方は、みな一人ずつ個人預金をさせる。個人預金をして、そして子供の学用品がいま何がなくなっておるかということを毎日観察しながら買い出しに行くのです。その品物が一人ずつ違うのですから、この手間というのはたいへんな状態ですね。ところが、どうもそれは生活保護の本旨に反する、本来家庭が金をもらうべきだ、こういう議論もあって、ある中学校で家庭に直接金を配付した。ところが山田市のある中学校では、いままでは先生方のところに預けて、そうして学用品を買ってもらっておった。その生徒は新聞配達をしておる。ある日、お父さんに学用品を買ってくれと言ったら、そんな金はないと言った。そこで、親子けんかとなり、少年は悲観をしてとうとう鉄道自殺をしました。去年の盆前ですよ。結局、学校も一応家庭に配付してみたけれども、自殺者も出たというので、またあわてて学校で扱わなければならぬということになったわけであります。こういう実に悲惨な状態になっておるわけです。この前も、筑豊で学校の警備員が殺された。警備員が殺されたというので、約千数百名のいままで非行の経歴のあった少年を全部調べた。そのため毎日のように学校の先生は警察に行ったわけです。この状態では授業も何もできない。そうして、結局先生もみな警察の下請になっておる。一体こういう状態で教育というものができるか。親だけのスクラップではないですよ、子供のスクラップですよ。これは非常に大きな問題ですね。そこで、文部大臣、いま正確には補導教員というものはありません。私は、やはりこういう地域には、ある一定期間を限って、五年なら五年試験的に補導教員制度というものを確立したらどうかと思う。いま県のほうでいろいろ充て指導主事等で若干現場に配置してやっておりますけれども、みな家庭にまで行って相談することができない。親は昼はおらぬですからね。そういう家庭の親は、夜しか帰らぬでしょう。とても補導とかカウンセラーの役目はつとまらない。警察にもらい下げに行くばかりです。それから事務職員も、こういう特殊な状態ですから、生活保護及び準要保護児童の数が全生徒の五〇%以上、あるいは三〇%以上——これははなはだ失礼な基準だと思いますけれども、事実は基準がありませんからやむを得ないと思う、そういう基準に従って事務職員を増したらどうか、こういう二つの提案をいたしたいと思うのです。これについて御答弁を願いたい。
  283. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 お答えをいたします。  確かに産炭地の学校につきましては、いろいろむずかしい問題がございまして、これは産炭地政策全体とも関連はあると思いますが、とりあえず文部省としましては、たとえば福岡県で見ますと、一学級の定員四十七名として計算をしまして、一定の標準がありますが、その標準をできるだけ緩和をしまして、福岡県だけで約四百人くらいはほかの県の比率よりは教員が多くなるような検討を、目下いたしておるような次第であります。  また、充て指導主事等も、他の県よりは率を多く配置するような配慮をいたしておりますが、ただいま御指摘のありました、家庭指導をいたしまする制度を新しくつくったらどうか、こういう御質疑がございましたが、これはできますことならば、私どもとしてはそういう人員等についてはできるだけの配慮はいたしますが、県あるいは市町村等で、そうした余剰の教職員を家庭指導等に充てていただくようなくふうをしていただいたらどうか、こう思っておるような次第でございます。  事務職員につきましては、目下具体的な考え方はございませんが、これは、本来は福祉事務所の仕事でございますので、そのほうとの関係において今後研究をしてまいりたいと思っております。
  284. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いまの福岡県に特別と、こうおっしゃいますが、これは限度政令内の経過処置でしょう、人口が急激に減ったというので。何も福岡県が特別にやっているのじゃないのですよ。そういうところがあれば、どこでもやるのですよ。そういう法律のたてまえになっているのですよ。それを何か余分に渡してあるような——冗談じゃないですよ、そういうことを言ってはいけませんよ。事実を曲げるです。それはいまの限度政令内で、人口が減って生徒が減るから、その処置として行なっておる。ですから、問題は、補導教員というものをそうして位置づけて——これは永久といえば問題があるから、社会教育ですからね、暫定期間を置いて特別処置をして、そして法律の改正が必要ならば——法律はおそらく要らぬ、省令でいいと思うのです。ですから、私はそういう制度を確立したらどうか、こう言うのです。  それから、問題は確かに福祉事務所の問題であるけれども、いま申しましたように、福祉事務所あるいは家庭にそのまま金を落とすと、いまのような状態になるのですよ。やはり先生が毎日見て、この子供はいま何がなくなっておる、あるいはシャツがないといって、全部先生が見てやらなければだめなんですよ。もう家庭が破壊されているのですからね。どうです。大蔵大臣
  285. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 文部大臣とよく相談いたしまして、善処いたします。
  286. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理大臣、どうですかね。これは将来については非常に大きな問題です。いま金額から見ればたいしたことはないのですよ。将来の日本の問題としては、非常に大きな問題です。ことにいま産業の誘致をいろいろやってみても、こういう将来の労働力になる青少度がこういう状態のところへ、幾ら企業を持ってきてもだめですよ。ですから、一番大事な労働力が破壊されつつある、しかも若い労働力が、いまからの労働力が。そういう諸君が定着しているのですよ。親も定着しておるし、子供も定着しておる。ですから、ある地域が全部人間的にスラム街になりつつある、こういうことですね。ひとつ総理大臣から決意をお聞かせ願いたい。
  287. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま実情について詳細にお話しがございました。大蔵大臣、また文部大臣等がお答えをいたしております。私も、こういう事柄は、ただいま聞いただけでなく、また実情に応じた処置をとるべきだと、かように考えております。ただいま言われる補導教員という、そういう職がいいのか、先生御自身もこれはたいへんなことだと思いますが、先生が便宜的に学校でただいまのように管理し、お世話するというのが一番いいという、そういうことにもし結論がなれば、先生にも、やはり本来の仕事じゃないけれども、御協力願いたいと思いますが、実際にどういう仕組みが一番よろしいのか、よく考えて、そうして対策を立てるべきだ、かように思います。
  288. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もう一つ、今度地方交付税が、国勢調査によって普通交付税の算定基準が変わるわけですが、五年間に人口が非常に激減している市町村が多い。とにかく四割くらいになっているのですよ、五年間に。山田市という市があるのですが、これは昭和三十五年は三万百四十名が二万二百三十五。ですから、市が一万台になろうとしておる。人口が九千九百減っている。あるいはまた宮田町というのがありますが、これは五万一千が三万七千、一万三千減っている。稲築町というのは、四万二千ありましたのが二万六千、一万五千減っている。庄内町というのは、一万七千九百おりましたのが八千三百六十になっている。これは九千五百減っている。こういう人口が四割、五割以下になっている町村が相当多いのですね。ところが、支出はどうかというと、御存じのように税収は入らないのに、支出は多い。ですから、これについて一体自治省としてはどういうようにされるつもりであるのか。普通交付税の算定の基準を変えられるつもりであるか。これはとても特別交付税なんというのじゃ間に合いませんよ。
  289. 永山忠則

    ○永山国務大臣 人口急減の補正をいたしまして、次の国勢調査までの間現在とほぼ同じような交付税が交付できるような改正案を、いま提案をいたすよう用意いたしております。
  290. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 終わります。
  291. 福田一

    福田委員長 これにて多賀谷君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  292. 福田一

    福田委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  明十七日午前の質疑の際に、前臨時行政調査会会長佐藤喜一郎君を参考人として本委員会に出頭を求めたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  293. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  次会は明十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十六分散会