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1966-05-14 第51回国会 衆議院 本会議 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十四日(土曜日)     —————————————   昭和四十一年五月十四日    午後二時 本会議     ————————————— ○本日の会議に付した案件  佐藤内閣不信任決議案(佐々木更三君外三名提   出)    午後二時五分開議
  2. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  佐藤内閣不信任決議案(佐々木更三君外三名提出)           (委員会審査省略要求案件
  3. 海部俊樹

    海部俊樹君 議案上程に関する緊急動議提出いたします。  すなわち、佐々木更正君外三名提出佐藤内閣不信任決議案は、提出者要求のとおり委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  4. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。  佐藤内閣不信任決議案議題といたします。     —————————————
  6. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 提出者趣旨弁明を許します。河野密君。   〔河野密登壇
  7. 河野密

    河野密君 私は、日本社会党代表して、佐藤内閣に対する不信任案提案趣旨説明をいたしたいと存じます。(拍手)  まず、主文を朗読いたします。   本院は、佐藤内閣を信任せず。    右決議する。   〔拍手〕  不信任案提案の第一の理由は、佐藤内閣経済政策失敗であります。  佐藤総理は、本年一月の施政演説において、国民生活を守り、これを向上させることは、国民に奉仕する政府の任務であり、政治の眼目であると述べております。しかしながら、その佐藤内閣のもとで、国民生活を脅かす消費者物価上昇が著しく、中小企業倒産は増加し、国民生活はますます苦しくなるばかりであるということは、何という皮肉でありましょうか。(拍手)  佐藤内閣の発足は一昨年の十一月であります。その年の十二月、政府は、四十年度の消費者物価は四・五%の上昇という経済見通しを発表いたしました。しかるに、最近発表された政府統計によれば、四十年度の消費者物価上昇は、実に七・四%に達し、政府見通しを大きく上回って、過去十年間の最高を示したのであります。(拍手)このため、同じく総理府統計局家計調査報告によれば、昭和四十年における都市勤労者世帯実質所得は、前年を〇・三%下回るという結果になっております。これは、この調査が開始された昭和二十六年以降初めてのことといわれ、われわれは、佐藤内閣のもとで勤労者世帯実質所得が初めて低下したという事実を重視せずにはおられないのであります。(拍手)  そもそも、物価騰貴原因は何でありましょうか。われわれの見るところによれば、今日の物価騰貴原因は四つあると考えます。  第一は、政府のとりつつあるインフレ政策の結果であります。四兆三千百四十億円の膨大な予算、二兆二百七十三億円の財政投融資、一兆三千八百八十七億円に及ぶ政府関係機関貸し出し計画、加うるに七千三百億円の実質的な赤字公債発行など、歯どめのないインフレ政策のおおばんぶるまいと申すほかはありません。(拍手)最近における物価高騰の根本的な原因はこのインフレ政策にあるのであります。  第二は、公共料金引き上げによる波及的効果であります。鉄道運賃水道料金私鉄運賃バス料金など軒並みに引き上げられました。近く郵便料金も上げられようとしております。政府は、これらの料金引き上げ影響をつとめて過小に評価し、物価へのはね返りをことさらに否定しようとしておりますが、その波及的効果値上げムードに対する影響は重大だと申さなければなりません。(拍手)  第三は、流通機構不備であります。青森県でメーカーの手を五円で離れたリンゴが、東京へ来て四十円、五十円で市販されている事実、九州の港で漁民から一尾十円で買い取られる魚が、東京ではその数倍で売られているという事実、これはいずれも流通機構の複雑と不備によるものであり、これが消費者物価を不当につり上げている原因でもあります。  第四は、独占企業管理価格による物価上昇であります。いわゆる不況カルテルの名のもとに、最近まで十七のカルテルがあり、現在においてもなお十三のカルテルが認められ、当然下がるべき物価のてこ入れをしておるのであります。最近卸売り物価上昇の傾向が顕著になってきたのは、もっぱら独占企業管理価格によるものと申さなければなりません。(拍手)  佐藤首相は、口を開けば物価問題と真剣に取り組むと公言してまいりましたが、これらの原因のはたしてどの点と真剣に取り組んでいるのでありましょうか。(拍手佐藤内閣の宣伝する物価対策費は、総額にして百五十七億円、実に総予算の〇・四%にしかすぎません。しかも、それがどこに計上してありますか。総理をはじめ与党の各位はみずから突きとめてみたことがありましょうか。(拍手)顕微鏡をもってのぞかなければならぬくらいにこま切れにされた額が、主として農林省予算に、そうしてその他の各省予算に散在しておるにすぎません。これが物価対策と言えるでありましょうか。(拍手)それよりも私の指摘したいのは公共料金であります。政府の力でどうにでもなるのが公共料金であります。政府の力で左右することのできる公共料金をすら抑えることのできない政府物価問題を語る資格なしといわざるを待ないのであります。(拍手)  最近、政府は、みずからの経済政策の貧困を糊塗するために、不況底入れ説をしきりに放送し、景気上昇を宣伝しております。はたしてそう言えるでありましょうか。政府は、景気回復を宣伝する理由として、第一に、株価の値上がりとこれに伴う証券業界の活況の取り戻し、第二に、在庫の減退と生産上向き、第三に、セメント、鉄鋼等に見られる操短の緩和、第四に、中小企業中心とする倒産の減少、などなどをあげております。しかし、はたして政府が言うがごとく楽観することができるでありましょうか。私は多くのことは申し上げません。最も端的に不況を立証する中小企業倒産について見ましょうか。  政府中小企業白書によれば、昭和四十年の中小企業倒産件数は六千百四十一件にのぼり、前年を四五・八%も上回る空前の数となっておるのであります。しからば、本年に入ってからはどうでありましょう。四月末までの累計で、すでに一千八百七十三件、負債の総額が一千三百三億円にのぼっているのであり、昨年並みのハイペースであります。これは、言うまでもなく、高度経済成長政策の破綻による過剰生産不況のもとで大企業中心の合併とカルテルによる産業再編成が進められ、中小企業には、下請系列の整理、取引条件の引き下げなど、弱小企業切り捨てのしわ寄せが行なわれ、当然大企業が負うべき責任中小企業に転嫁し、いわば代理倒産犠牲が押しつけられた結果であるといわなければなりません。(拍手)  かくのごとく、不況は、底入れどころか、一そう悪質な内攻状態に入っております。しかも、政府施策は、フィスカルポリシーの名のもとに、単なる財政の膨張と金融緩和方策に終始しているにすぎません。公債政策を導入した大型予算を組み、これによって景気人為的刺激策をとり、目前の効果のみを期待しておるのが政府態度であります。  この結果はどうなるでありましょう。さきに申し上げましたように、第一には物価へのはね返りであります。第二に憂慮せられるのは国際収支悪化であります。すでに昭和四十年度の実績において国際収支政府の予想を裏切り、総合収支二億ドルの黒字を期待したのが、結局五千六百万ドルの黒字にすぎないことが明らかとなりました。貿易において十四億七千万ドルの黒字をあげながら、国際情勢から資本収支悪化した結果で、いまのような数字になりました。これによって見れば、四十一年度においては国際収支はさらに悪化するものと予想せざるを得ず、万一赤字となった場合に、政府はいかなる対策をとられようとするのでありましょうか。少なくとも、大きく政策転換を必要とすることは明らかであります。過去において数回繰り返してきた金融引き締めは、再び必至となってまいりましょう。ゆるめては締め、締めてはゆるめる、これを英国の労働党はゴー・ストップ経済政策と申しておりますが、これによって苦しめられるものは国民であり、勤労者であり、中小企業者であることを忘れてはならないのであります。(拍手)  佐藤内閣の無責任なるインフレ政策の終着駅を今日において予想できるわれわれは、一日もすみやかなるその退陣を要求せざるを得ないのであります。(拍手)  不信任案提案の第二の理由は、佐藤内閣外交政策における失敗であります。  佐藤総理は、口を開けば平和に徹することを外交基本方針とすると繰り返しております。しかし、佐藤内閣現実に進めてきた外交が、はたして平和に徹する外交と言えるでありましょうか。  昨年二月七日、アメリカは、北ベトナムにまで爆撃を広げ、南ベトナム米軍軍事顧問団から正規軍に変えて増派し、二十万の米軍を投入して、面接戦闘に介入させました。しかも、ナパーム爆弾や毒ガス、毒性化学薬品など、非人道的な兵器を使用して、非戦闘員にまで無差別爆撃を行ない、南ベトナムをまさに不毛の砂漠に化そうとしております。このアメリカの残酷な戦争行為は、全世界のきびしい非難の的となっており、すでにアメリカ国内においてすら、徴兵拒否反戦署名などの運動が広がりつつあります。  しかるに、佐藤内閣は、アメリカ北爆を続けた一年有余の間に、アメリカに対して北爆停止要求を出したでありましょうか。非人道的な行動を抑制せよと、一度でも要望したことがあるでありましょうか。逆に、アメリカ北爆を是認し、アメリカ原子力潜水艦寄港を八回にわたって許し、日韓条約を強行させ、医療物資などをアメリカ政府の要請で南ベトナムに送り、軍需物資生産と輸送に協力し、北爆のための補給基地として、沖縄本土各地軍事基地の使用を認めてきたのであります。(拍手)  しかも、佐藤内閣は、口ではベトナム和平を唱え、去る一月、椎名外相の訪ソにあたり、ソ連に、北ベトナム南ベトナム民族解放戦線への和平説得を依頼し、たちどころに拒絶されるという失態を演じております。(拍手)あたかも、椎名外相が訪ソするちょうどそのころから、わが国ベトナム特需は急激にふえ、軍服、軍用トラック軍事基地建設用資材の調達をはじめ、戦闘機や艦艇の修理契約までがふえております。また、二月末から三月にかけて行なわれたアメリカ上院軍事委員会秘密聴聞会において、マクナマラ国防長官は、日本憲法上南ベトナム軍隊を出せないが、五千五百万ドルの経済援助、六人の医療班、二万台のラジオ、二十五台の病院車を提供し、全部で九十人の日本人がベトナム援助計画で現地に送られていると報告しております。このような戦争協力を行ないながら、いかに日本ベトナム平和解決に努力すると宣伝しても、世界のどこの国が信用するでありましょうか。(拍手)  ユーゴのタンユグ通信は、日本行動ベトナム問題を目的としている限り、初めから方向を間違っている、その方向は、ワシントンからモスクワヘでなくて、東京からワシントンヘと向かうべきだった、日本は、アメリカ態度を改めさせるよう、その影響力を行使すべきだと批判しております。佐藤内閣ベトナム和平工作目的としてわざわざ派遣した横山特使が、北ベトナムの打診さえ行なえず、完全に失敗に終わったことも、佐藤内閣の誤った外交姿勢の結果であけます。(拍手わが国のなすべきことは、アメリカ下請和平工作を行なうことでなく、沖縄からB52の発着を即時やめさせることであるのであります。(拍手)  また、佐藤総理は、一昨年、総理就任後初めての記者会見において、中国との関係前進させると言明しながら、その後の姿勢は、逆に中国敵視姿勢を強め、中国人民外交学会代表の訪日を不当にも拒否し、さらに、中国の国連代表権問題については、みずから進んで重要事項指定方式を提唱しようとするなど、日中関係前進どころか、後退悪化を進めようとしておるのであります。(拍手)  アジアにおいて、七億の人口を持つ中国と、すぐれた工業国である日本国交を回復し、日中がともに戦わないことを約束することこそが、ベトナム情勢をめぐる米中衝突の危険を確実に回避し、アジアに平和をもたらす道であると信じます。しかるに、佐藤内閣は、かえって日中の関係悪化させ、進んでベトナム戦争日本が加担する方向を強めようとしております。  さらにまた、南ベトナムに一万五千の軍隊を送り、空軍派遣まで行なおうとしている韓国が、明らかに反共軍事同盟を目ざして提唱しているアジア外相会議佐藤内閣は参加を決定し、準備会議政府代表を出席させております。これに参加している韓国、フィリピン、タイ、オーストラリア、台湾、マレーシア、ニュージーランドなどの国々が、いずれも南ベトナムの残酷な戦争軍隊を送るか、あるいは緊密なる戦争協力を行なっている国であることを思うとき、佐藤内閣は、平和に徹し、戦争解決に努力するのでなく、戦争を行なう一方の側に加担し、日本戦争に巻き込む危険な道を歩もうとしていることは明らかであると存じます。(拍手)  昨日の外電は、米空軍中国の領域を侵犯し、中国戦闘機を撃墜したと報道しております。かねて北爆にあたり爆撃に聖域なしと声明していたアメリカが、新たなる戦争拡大に一歩を踏み出したものというべきであります。ベトナム戦争米中戦争である。少なくともアメリカ米中戦争の一環と考えていることが如実に立証されたものであります。アメリカ方針に従って戦争が次々に拡大されていく姿を、佐藤内閣は何と考えておるのでありましょうか。日本戦争に巻き込む危険性はこれまた数歩を進めたと申すべきであります。(拍手)  かつてアジアにおいて太平洋戦争を引き起こして幾多の同胞アジア人の血を流した日本は、その反省のもとに生まれた平和憲法を守り、中国とも北朝鮮とも、またビルマ、カンボジア、北ベトナム、ラオス、インドネシア、インド、パキスタン、セイロンなど、アジアのすべての国々平和友好外交を進めるべきであります。われわれは、日本をますます戦争の危険に近づけようとする佐藤外交を、これ以上容認することはできないのであります。(拍手)  不信任案提案の第三の理由は、佐藤内閣の内政、外交の両面にわたる反動化であります。  最近、佐藤内閣は、自衛隊海外派兵問題をはじめ、核のかさ安保条約期限等の諸問題について活発なる発言を行ない、軍事問題を前面に押し出して、防衛力の増強、対米協力に積極的な姿勢をとろうとしております。  自衛隊海外派兵問題については、さき衆議院予算委員会において、同僚の野原覺議員の追及に対し、政府は、自衛隊海外派兵憲法で禁止せられている、いかなる名称たるとを問わず、自衛隊派兵は断わると言明したのでありますが、その後においても、執拗に派兵への突破口を開こうとし、派兵派遣とは異なるという詭弁的な解釈をとろうとしたり、あるいはアメリカ施政下に置かれ、米軍行動について日本側に一片の発言権もない沖縄への派兵を正当化しようとするなど、佐藤総理みずからが、好みて憲法第九条の精神をゆがめようとする態度がいよいよ露骨であります。  沖縄同胞を見殺しにしない唯一の正しい道は、沖縄祖国復帰実現し、核基地を撤去させる以外にはないのであります。(拍手)このような要求を一度も行なったことがなく、しかも、沖縄訪問の際、同胞代表と会うことを避けた佐藤首相が、沖縄への派兵を正当化しようとする意思は、決して同胞のためとは考えられません。アメリカ要求による軍事協力にこたえようとするものであると言われても、おそらく反論できないと信じます。(拍手)  また、佐藤内閣は、最近、政府統一見解として、日本も一般的な意味における核のかさのもとにあることは否定することはできないと確認し、みずから積極的にアメリカ太平洋核戦略体制に協力し、中国封じ込めに一役を果たそうとする本質を明らかにいたしました。さらにまた、佐藤総理は、日米安保条約期限十年が経過した後の措置として、方法はともかく、これをさらに長期間固定化させる必要があるとの所信を明らかにしました。これら一連佐藤内閣の言動は、核兵器持ち込みは許さないとか、自衛隊核武装しないなどと国民を欺きながら、一方において、原子力潜水艦原子力空母寄港を認め、さらに自衛隊海外派兵アメリカ核兵器持ち込み公然化などなど、自前の核武装に向かって着々と既成事実を積み上げ、平和憲法をじゅうりんし、平和憲法改悪への道を開こうとするものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  すでに佐藤内閣は、第二次防衛計画の二倍をこえる二兆数千億円の予算を必要とする第三次防衛計画の作成に着手し、防衛産業の育成をはがるとともに、今国会には防衛庁設置法及び自衛隊法の  一部改正案をはじめとする一連防衛関係法案提出しております。また、これと並行して、紀元節を復活させ、軍国主義への逆コースを進ませようとする祝日法案などの反動法案提出し、大幅なる会期延長を行なってまでも成立させようと意図しております。このような佐藤内閣政治姿勢は、佐藤総理の口にする調和と前進政治ではなく、戦争へ向こう反動化政治であるといわざるを得ません。(拍手)  戦後二十年を経た今日においても、戦争で父を失い、夫を奪われた数多くの犠牲者の傷あとはいえてはおりません。われわれは、このあまりにも大きな戦争のあやまちを再び繰り返すまいとのかたい決意のもとに平和憲法を持ったのであります。われわれは、平和を熱望する日本国民の悲願を代表して、佐藤内閣憲法をじゅうりんする反動化を強く糾弾するものであります。(拍手)  最後に、私は佐藤総理に率直に申し上げたいと存じます。  佐藤内閣成立以来、ちまたの道義はとみに退廃が月立ってまいりました。官界の綱紀も弛緩しております。これは一体なぜでありましょうか。佐藤総理政治に対するきびしい反省が足らず、政治道義と考えず、政治を技術と考えておるからではないでしょうか。(拍手佐藤総理政治誠心誠意であります。真実一路であります。佐藤総理もわれわれと同じく、昭和六年の満州事変に始まる十余年間の暗い戦争の時代を生きてこられたはずであります。この間、二百数十万人にのぼるとうとい同胞の生命が戦争で失われ、多くの人々が空襲で家を焼かれ、家財を失った悲惨な状況をまのあたりに体験されたはずであります。また、戦争中の赤字公債発行悪性インフレを生んで、いかに国民大衆生活を苦しめたかも御存じのはずであります。  佐藤総理にもし政治的良心があるならば、平和憲法精神を冷静に反省し、佐藤内閣のおかしたあやまちを率直に認め、本不信任案提案を見るまでもなく、すみやかに善処せらるべきだと存じます。(拍手戦争反対こそが佐藤総理の言われる人間尊重政治の真の精神であることを強調して、本提案趣旨説明を終わる次第であります。(拍手)     —————————————
  8. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。江崎真澄君。   〔江崎真澄登壇
  9. 江崎真澄

    江崎真澄君 私は、ただいま議題となりました佐藤内閣不信任決議案に対し、自由民主党を代表して、反対討論を行なわんとするものであります。(拍手)  社会党内閣不信任案は、国会末期において人為的にことさら対立感を盛り上げようとする定期的行事と化した感があります。(拍手)そのことは、国会審議を通じての理論構成弱体ぶりをおおい隠そうとするものであるというそしりを免れません。(拍手)二大政党のもとにおける内閣不信任決議案は、みずから直ちに政権を担当し得る能力と資格のある責任感に徹した政党によって提案されてこそ、はじめて意義のあるものと言えるのであります。(拍手世界の大勢とわが国の実情を極端に無視し、とうてい実現のできない日米安保体制の破棄あるいは空洞化といい、非武装中立といい、社会主義経済、進んでは階級独裁政権の樹立などを十年一日のごとく主張し、非現実的にして無責任政策を掲げる政党が、もっぱら党略の具としてもてあそぶ内閣不信任案のごときは、ただいたずらにみずからの権威と面目を失墜するものであるといわざるを得ないのであります。(拍手)私は、社会党不信任案をもって挑戦をされる前に、まずみずからを謙虚に反省し、国民の信頼を得るに足る現実的政党に脱皮することこそ先決であると思うのであります。(拍手)  私がこの内閣不信任決議案反対する第一の理由はここにあるのであります。(拍手)  佐藤内閣成立以来まだ一年有半でありまするが、その間、数々の成果をおさめております。  日韓国交正常化と諸懸案解決、またILO八十七号条約の批准と関係国内法成立など、長年にわたる重大懸案解決を行なってまいったのであります。(拍手)ことに、足かけ十五年間という長期にわたって難航を続けました日韓交渉を妥結させ、戦後二十年余にして両国間の国交正常化実現を見ましたことは、単に両国繁栄と平和のためのみならず、アジアの安定と世界の平和にも大きく寄与したものであります。(拍手)その功績は、後世長くわが国の歴史に書きとめられることでありましょう。  さらに私は、財政政策前進大幅減税とを取り上げたいと思います。公債政策を取り入れ、積極的政策実現をはかった昭和四十一年度予算と、平年度三千六百億円に達する大幅減税こそは、すでに着々と効果をあらわし、わが国経済安定成長方向前進しつつあるのであります。(拍手佐藤内閣成立当時の困難な経済事情と、現在の上向き経済情勢とを思い比べてみまするとき、経済閣僚中心とした勇気ある財政政策が、いかに適切に作用しつつあるかを有力に物語っておると思うのであります。(拍手)私は、このような財政経済政策躍進発展が、今後のわが国繁栄国民生活向上を確実に約束づけるものであることを確信するものであります。  社会党内閣不信任決議案は、このような自民党内閣功績にはことさら目をおおい、一時的、きわめて部分的な現象を誇張して取り上げ、国民を欺瞞せんとするものであります。(拍手)  私がこの不信任決議案反対する第二の現出はここにあるのであります。(拍手)  次に、内閣不信任理由一つ物価問題を取り上げられました。社会党は好んでこの問題を政府及びわが党攻撃の材料とされるのであります。わが党も、近年の消費者物価上昇が、高度経済成長に伴うひずみの一つであるとして、その安定に長期的な施策を強く推進しておることは御承知のとおりであります。しかし、消費者物価上昇は、中小企業製品農水畜産物及びサービス料金がその八割程度を占めておるのであります。これらの価格料金が大幅に上昇しましたことは、流通過程の隘路もさることながら、これらの職場に働く勤労者の待遇が改善されてきたことを示しておるものであります。(拍手)従来きわめて低かった所得が是正されてきたことは、二面、まことに喜ばしく力強いものがあります。  このように、現下の消費者物価問題は賃金問題と不可分の関係にありまするが、特に問題となるのは、大企業先進産業に働く労働者諸君賃上げ要求であります。すなわち、賃金引き上げ生産性向上の範囲内にとどめ、生産性向上成果の一部を消費者にも還元する態度でなければ、賃金物価の悪循環を断ち切ることはとうていできないのであります。(拍手)  社会党の支持する総評においては、生産性向上のための企業合理化には反対をし、賃金は、生産性にかかわりなく、毎年常識を逸脱した大幅な引き上げ要求し、ときには国民大衆の利益を無視してストを強行するのであります。しかも、一方においては、公共料金値上げ反対物価値上げ反対を叫んでおるのであります。このような総評の態度に対し何らの反省を求めることなく、むしろ無条件でこれを支持し、奉仕しているのが社会党の諸君であるといわなければなりません。(拍手消費者物価上昇公共料金上昇責任の一半は、まさに総評とこれを支持する社会党が負うべきであると断言してはばからないのであります。(拍手)  私は、社会党の諸君がほんとうに消費者物価の安定と勤労者の恒久的な生活向上を希望せられるならば、進んで企業合理化と労使の協調と生産性向上に協力するとともに、生産性を無視したところの賃上げ要求は押える努力をなすべきだと思うのであります。(拍手)こうした努力をなさずして、ただいたずらに政府だけを攻撃することは、責任ある公党のとるべき態度ではありません。  いまや、わが国の経済は着実に安定成長の路線に入りつつあるのであります。本年度百億ドルに近づくと予想される輸出の好調、順調な財政支出の促進、大幅な減税、在庫投資の拡大等から見て、今後の経済の見通しはようやくここにきて明るいのであります。この上向き経済情勢を巧みに誘導し、安定した成長繁栄国民生活向上をはかろうとするものであります。(拍手)  私は、経済政策に関する内閣不信任理由は何ら根拠なきものであり、これは必ず近い将来事実が立証することを申し上げて反論といたしたいのであります。(拍手)  次に、外交政策における内閣不信任理由も、はなはだ見当違いといわざるを得ません。  外交政策は、防衛政策とともに国家の存亡にも関するものであります。責任ある政府としては、世界の大勢をよく洞察し、わが国の地位と立場に即し、賢明かつ安全にして、しかも現実的な道を進まなければならないのであります。政府及びわが党は、このような考え方に立って外交政策を展開し、今日の国際的地位の向上と、国家の安全と、経済の繁栄とをもたらしてまいったのであります。(拍手)さらに当面のアジアの緊張緩和と安定のためには、わが国としてなし得る限りの努力を傾けておるのであります。  われわれは、社会党の主張せられるような反米容共の外交政策のきわめて教条的なあり方、日米安保体制の破棄ないし空洞化、あるいは非武装中立政策等では、わが国の独立と安全を保障し、国民経済の繁栄を確保することは断じてできないと思うものであります。(拍手)隣国の中共政府が、世界人類の悲願を無視して原水爆の実験、開発を進めている段階においては、日米安全保障体制の維持がいよいよ必要であることを確信するものであります。(拍手)  わが国が、外交政策において、与野党の間に百八十度の隔たりがありますことは、まさに不幸なことであります。このことが強力、適切な外交の展開を阻害している事実は否定できないのであります。わが党においては、共産圏である隣国中共との間においても、内政不干渉の原則に立って国交を開こうとし、いわゆる積み上げ方式による外交関係の展開をはかっておるのであります。また、ソ連邦との外交におきましても、椎名外務大臣の訪ソに続き、グロムイコ外相の訪日予定があり、佐藤総理大臣言明のとおり、外相の相互訪問実現後には、両国首相の相互訪問も行なおうといたしておるのであります。(拍手)  私は、この際特に社会党反省を求めたいのは、外交政策をことさらに党略の具に供して、国論の分裂をはかるようなことは、天下の公党として避けられたいということであります。(拍手)お互いに国益を守る立場から、現実の上に立って外交問題に対処していきたいものであります。  また、社会党の諸君は反動立法ということをあげておられるのでありまするが、これまたきわめて理由薄弱な議論であります。国民の祝日に建国記念の日を加えることを反動というならば、それは祖国の尊厳、ありがたさというものを忘れて、いたずらに祖国を卑下し、伝統を軽視するものであるといわなければなりません。(拍手)  最後に、社会党の諸君は、佐藤内閣政策は、日本憲法が示す絶対平和と民主主義の徹底を期することに反していると申されるのでありまするが、これは詭弁もはなはだしいといわざるを得ません。社会党の諸君は、口を開けば憲法擁護を唱えられるのでありまするが、その党としての言動は、諸君こそ憲法をはなはだ粗末に扱っておられるのであります。たとえば、憲法擁護の運動は社会主義憲法制定への手段であると言い放ったり、そのことを忘れては護憲運動の意味がないときめつけた社会新報の論文は、まだ私たちの記憶にきわめて新たなところであります。(拍手)また、憲法九十八条は、最高法規であることを明示するとともに、日本国が締結した条約及び国際法規は、これを誠実に順守することを必要とすると規定いたしておるのであります。日米安全保障条約に基づき、成規の手続を経て貸与しておる基地に原潜が寄港するといえば、社会党の諸君は、実力でこれを阻止すると言います。そうして、実力阻止の先頭に立たれるなどは、憲法を守る熱意は残念ながら疑わしいといわざるを得ません。(拍手)まさに社会党憲法擁護議論は、御都合主義の憲法擁護議論であると断じたいのであります。  内外の情勢はきわめて重大であります。わが党及び内閣に寄せる国民の期待と信頼はいよいよ切実なものがあります。政府は、強い決意と勇気をもって政策を着実に実行し、経済の繁栄、民生の向上アジアの安定と世界平和の確保に大いに邁進せられたいのであります。  私は、何らの理由も何らの意義も見出し得ない社会党による内閣不信任決議案に断固として反対をし、討論を終わるものであります。(拍手
  10. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 赤松勇君。   〔赤松勇君登壇
  11. 赤松勇

    ○赤松勇君 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま提案されました佐藤内閣不信任案に賛成の討論をいたすものであります。(拍手)  第一に、私は、佐藤内閣の経済財政政策が、はなはだしく国民生活を窮迫せしめていることを指摘したいのであります。  池田内閣から佐藤内閣に交代してすでに一年半の月日がたちました。この一年半の期間、日本の経済はどういう状況であったかといえば、深刻な恐慌的性格を持った経済不況が継続いたしました。中小企業倒産は、先ほどわが党の河野さんが申し上げましたように、はなはだしく増加してまいりまして、東京商工興信所の調査によりましても、その負債額一千万円以上の倒産は、昭和三十八年に千七百三十八件でありましたが、三十九年は四千二百十二件、四十年は六千百四十一件に激増いたしました。三十八年に比べて、四十年は実に三倍半の激増であります。これに対して佐藤内閣は一体何をしたでありましょう。何ら中小企業救済の手を打たずに、倒れるままに放任しておるのが佐藤内閣の実体であります。(拍手)そればかりではありません。むしろ、この際、大企業の独占体制を強化させるために、カルテル、集中合併、選別融資体制を進め、それによって、中小企業倒産を一そう拍車をかける政策をとっておるのであります。  また、国民生活にとってさらに重大なことは、不況の中で物価上昇しておるということであります。このたび明らかになったところでは、昭和四十一年度の消費者物価指数の上昇は七・四%に達しております。これは、かつて佐藤榮作氏が「池田内閣の政策は人間を尊重していない」と批判した、その池田内閣時代の最高の物価上昇率をも上回るものであります。不況の中で勤労大衆の所得は伸び悩み、しかも、このような物価の大幅上昇が続いたために、政府総理府統計局の調査でも、昨年の勤労者の実質家計収入の水準が、ここ十数年来初めて低下したことを総理府みずからが認めておるではありませんか。(拍手)これに対して佐藤内閣は一体何をしたでありましょうか。佐藤内閣のしたことは、物価安定に関する抽象的作文を何回か作成したにすぎません。昭和四十一年度の予算でも、物価対策に直接間接につながる諸項目をかき集めて総計してみても、わずかに百五十七億円にしかすぎません。焼け石に水とはまさにこのことを言うのです。  その反面、佐藤内閣は一体何をしたか。やったのは、消費者米価、国鉄、私鉄運賃郵便料金、各種健康保険の掛け金、こういう公共料金引き上げただけであります。これら一連公共料金引き上げによって、国民の負担は年に三千億円以上の負担増となって、わずか一千三百億の本年度の所得税減税を帳消しにするばかりでなく、これがまた一般消費者物価上昇を誘発することは言うまでもありません。(拍手)さらにまた、佐藤内閣は、不況を名とする大企業カルテル生産制限を奨励し、独占管理価格の維持、つり上げを促進したのであります。このため、日銀の調査によりますと、卸売り物価指数は昭和四十年度に三%の値上がりとなりました。かつて、池田前首相は、「消費者物価が上がっても卸売り物価が横ばい安定しておれば問題はない」こういうことを何度か言いました。いまや佐藤内閣施策のもとにおいては、消費者物価と卸売り物価がともにからみ合って上昇しつつあるのであります。まさに佐藤内閣物価対策は、池田前内閣に比べてさえ落第であるといわなければなりません。(拍手)  また、この際特に糾弾しなければならないのは、佐藤内閣の国債発行であります。佐藤内閣は、初めは、国債の発行はしませんと、何度もあなたは公約しながら、四十年度補正予算で二千五百九十億円の歳入補てんの国債を発行し、続いて四十一年度の予算では、七千三百億円の建設国債の発行を決定しました。この国債は、いずれも歳入と歳出のギャップを埋める赤字国債であり、具体的な償還計画のない点では、まさに財政法違反といわなければなりません。しかも、佐藤内閣は、これを市中消化するとは称しておりますけれども、民間金融機関の手を経て結局日銀の担保または買いオペの対象となって、通貨増発とインフレを悪性化させることは避けられない方向にあります。このインフレを通じて、佐藤内閣が、大企業の従来の設備投資の借り入れ金の負担を軽減させることをねらっておることは明白でありますが、逆に国民は、その血と汗の結晶である預貯金の価値を減らされ、老後の命の綱である年金、退職金の価値を減らされることになるのであります。(拍手)また、国債の財源によって、佐藤内閣は、大企業には気前のよい企業減税を行なっておりますけれども、国民は、将来の国債元利の償還のために、大幅な増税を負担させられることになるのであります。まさに大衆の犠牲において大企業独占資本の利益に奉仕するものは、すなわち佐藤内閣であるといわなければなりません。(拍手)  私は、いまの江崎君の御意見に対しまして、一言反論しておきます。江崎君は、賃金上昇物価値上げの原因だと言っている。ところが、労働省の短月勤労統計の数字によれば、昭和三十年から三十九年まで、労働者の実質賃金は、物価上昇に比べてわずかに三・五%より上がっておりません。断じて労働者の賃上げが物価上昇原因でないということは、労働省みずから認めておるじゃありませんか。(拍手)  私は、この際、佐藤総理に特に言っておきたいことがある。あなたは、いやな新聞はお読みにならぬそうでありますけれども、しかし、あなたの目に触れたでしょう。ある新聞社が実施いたしました全国世論調査によりますと、現在の佐藤内閣政策で今後の暮らしは楽になると思うか、苦しくなると思うか、こう聞きましたところ、楽になると答えた者はわずかに六%です。これに対して、苦しくなると答えた者は実に四六%であります。(拍手)いかに佐藤内閣や自民党の諸君が強弁いたしましょうとも、この世論調査の結果が、ここに佐藤内閣の経済財政政策に対する不信任を明白にあらわしておるのであります。(拍手発言する者あり)朝日新聞だ。朝日新聞ぐらい読んでおきなさい。  第二に、私は、佐藤内閣外交政策をこの際問題にしたいのであります。  佐藤内閣外交政策は、これを一言にして言えば、アメリカ中国封じ込めの極東戦略に対する追随協力であります。その最も特徴的なあらわれがベトナム戦争への協力であります。佐藤内閣は、アメリカベトナム侵略に積極的に協力し、沖縄及び日本本土の基地の使用を認め、そのほか、アメリカベトナムで使用する軍需物資の製造、輸送に協力しております。  私は、この際、佐藤内閣ベトナムにおけるアメリカの軍事行動に協力しておる具体的な事実を一点だけ明らかにしておきましょう。五月九日、入国管理事務所が明らかにしたデータによりますと、本年一月から四月の末日まで、羽田空港から日本へ入国したアメリカの軍人軍属は一万七千百十三人で、前年同期の四千十九人に比べると、実に四・二五倍であります。昭和三十五年にはその数は年間三千人でありましたが、ベトナム戦争が激化した三十九年には一万六千四百人に急増している。この数字に符節を合わせるように、民間飛行機の姿をした米軍輸送機関のチャーター機が、昨年一年間に八百四十機だったのが、本年は一月から三月までのわずか三カ月間で三百四十一機にふえ、このままのペースでは本年中には千機以上に達するといわれております。これらの軍人軍属及び米軍輸送機関のチャーター機は、いずれも安保条約に基づく日米行政協定第五条及び日米地位協定によって日本じゅうどこの空港も自由に使える上、空港側に支払う着陸料も免除され、フリーパスで公然と出入りをしておるのであります。言うまでもなく、これらの輸送機は、沖縄の嘉手納飛行場をはじめ、ベトナム戦争の要請するすべての基地で行動しておるのであります。軍需物資生産、輸送への協力、ベトナムからの一時帰休兵と傷病兵の受け入れなど、いまやベトナム戦争は、遠い他国で行なわれているのではなく、日本国内にも波及し、日本は、明らかに佐藤内閣の手によって、ベトナム戦争の後方基地、兵たん基地となって、戦争に巻き込まれておるのであります。(拍手佐藤内閣は、この事実を国民の目からそらすために、椎名外相をソ連に派遣して、アメリカのペテン平和外交の手先をつとめようとしましたが、ソ連から全然相手にされませんでした。そこで、横山特使を各国に派遣しましたが、これまた、問題にもされないで、日本外交の実体と恥を全世界にさらしたのであります。(拍手)  自民党の安保調査会は、憲法改悪、秘密保護法の制定、自衛軍保持の明確化、日米間に軍事的性格の協議機関を設けるとか、核兵器持ち込みなど、多面的な軍国主義化を急いでおります。また、防衛庁は、七千百億円の兵器の国産化のために動き出しております。いまや軍需生産を軸として、戦前に見られたような軍国的政治経済一体化が進められつつあります。これは佐藤総理の考え方と無関係のものではありません。佐藤総理の腹の底に隠された、日本を戦前の状態に引き戻そうとする軍国主義思想のあらわれであるといわなければなりません。(拍手)戦後、保守反動内閣が続きましたが、佐藤内閣ほど露骨で反動的な政府は、いまだかってなかったというべきでありましょう。(拍手)  そればかりではありません。佐藤榮作氏は、あなたが政権につく以前に、少なくとも口先だけでは、対中国政策に対して前向きの政策をとると公約しておったにもかかわらず、一たび政権の座につくや、その態度をたちまち豹変して、中国敵視態度を露骨にあらわしてまいりました。すなわち、貿易におきましては、アメリカ、台湾の圧力に屈して、吉田書簡を固執し、ニチボー・プラント、日立造船の船舶その他の多数の対中国輸出契約を中断に追い込みました。中国の国連代表権を妨害するために、重要事項指定方式提案国となりました。日韓条約の締結によって、中国、北朝鮮を敵視する事実上の東北アジア軍事同盟の体制を推進しております。いざというときに、中国を核攻撃しようとしているアメリカ原子力潜水艦寄港を受け入れております。また、日中の人事の往来を妨害し、彭真北京市長や、中国人民外交学会代表団の入国を拒否いたしました。  そもそも、かつての太平洋戦争において、日本が最大の被害を与えたのは中国であります。しかるに、その中国といまだに国交を結ばず、中国の七億の民衆から見放された台湾の蒋政権をかってに中国代表政府と認めることにより、事実上、二つの中国方向を進め、あまつさえ、アメリカに協力して、中国の軍事的、政治的、経済的封じ込めをはかる、こうした佐藤内閣外交政策こそ、アジアの緊張と混乱を生み出している最大の原因であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)そうして、アジア人アジア人を戦わせようとするアメリカの指示のもとに、アジアの反共連盟の結成に奉仕しています。この佐藤内閣の姿は、全世界からまさに黄色いアメリカ人という軽べつを招いておるのであります。  われわれは、いまこそ全世界に向かって国論を一つにして、アメリカベトナム侵略の停止、ベトナムからの撤退を要求すべきであります。そして、日本中国がともにアジアの一員として正式な国交を回復し、お互いに侵略せず、戦争しないことを約束し、友好と協力の関係を結ぶこと、そして日中が力を合わせて朝鮮及びベトナムの平和的、自主的統一に協力する、これこそアジアの平和と安定の道であり、日本が真に世界の諸国民から信頼され、尊敬されるただ一つの道であると思うのであります。(拍手)すべての国民はこの道を望んでおります。この観点から見るならば、佐藤内閣外交政策は、とうてい国民の信任を得ることができないものであるといわなければなりません。(拍手)  第三に、私は、佐藤内閣のファッショ的反動性を指摘しなければなりません。  佐藤内閣成立以来の実績を振り返ってみますと、まずやったことは、あのうしろ向き逆コースとして悪評の高い旧地主補償であります。続いてやったことは、韓国の朴かいらい政権をてこ入れするための日韓条約の強行批准であります。これによって佐藤内閣は、アメリカの極東戦略に協力するとともに、日本独占資本みずからが韓国を支配するという、夢よもう一度の野望を実現しようとしております。しかも、佐藤内閣は、日韓条約の批准にあたっては、当時の船田、田中の正副議長を捨て石に使って、質疑の打ち切り、討論採決の成規の手続をすべてじゅうりんして、わずか一、二分の与党議員の万歳で事を済ませるという前例のないファッショ的国会運営をやってのけたのであります。(拍手)  そればかりではありません。本年に入ってからは、佐藤内閣軍国主義の性格は、その言動を通じていよいよ露骨に示されてまいりました。たとえば、佐藤内閣は、一連の核問題についての発言を通じて、日本アメリカの核のかさのもとにあることを公然と認め、今後も核戦略についてアメリカと一体の協力を推進するとの態度をとっております。アメリカ原子力潜水艦原子力空母の入港を認めていること、アメリカ原潜と海上自衛隊の合同演習を行なうことを公言していること、あるいは第三次防衛力整備計画で核弾頭を装備できるミサイル兵器の導入を進めようとしていること等々がその事実を示しております。  また、佐藤内閣は、いろいろの口実を用いて自衛隊海外派兵の道を開こうとしております。国連への協力、あるいはもし沖縄が攻撃を受けたらという想定は、いずれも自衛隊海外派兵のための口実にすぎません。  ここで、この際明らかにしておく必要があることは、一体、沖縄が攻撃を受ける危険がどこから生まれてくるかということであります。それは、沖縄が現在国連憲章第七十八条に違反して、不法不当にもアメリカに占領され、アメリカの原水爆基地にされ、アメリカ軍はこの沖縄からベトナムへ出撃し、また中国へ攻撃をかけようとしております。そのことの結果として、沖縄が一朝有事の際には報復攻撃を受ける危険にさらされるのであります。したがいまして、沖縄の安全を確保するただ一つの最善の道は、沖縄の施政権日本に取り返し、アメリカの基地を一掃し、沖縄を平和の島にすること以外にありません。(拍手佐藤内閣が、この沖縄同胞日本本土国民の一致した要求に耳をふさぎ、沖縄アメリカの不法占領にゆだねている、その責任こそまさに国民の名において糾弾されなければならぬのであります。(拍手)  さらにまた、佐藤内閣は、一九七〇年の段階において、再び安保条約を長期固定化することを公言しております。最近のアジア情勢の経過を通じて、わが国民の大部分は、日米安保条約日本の安全のためのものではなく、かえって日本戦争の危険をもたらすものであることを理解しております。このような条約を一九七〇年からさらにまた十年も二十年も長期固定化しようとするがごときは、これこそまさに日本の国益をいけにえにして、アメリカ帝国主義の国益に奉仕しようとするものであり、国民の断じて認めることのできないところであります。(拍手)  しかも、佐藤内閣は、以上のような核安保体制、自衛隊海外派兵安保条約長期固定化等の措置を通じて、窮極的には憲法の改悪をやり遂げようとしております。これこそまさに世間のいわゆる自民党内極右翼反動派の目ざすコースであり、これをもし許すならば、日本は再びファシズムと軍国主義へ逆戻りしてしまうでありましょう。  だが、佐藤総理にこの際申し上げたいことは、今日の日本国民は、かつての満州事変や、日華事変のころの日本国民とは違うのであります。国内において民主主義や大衆生活を守るには、国外に対する侵略的軍事政策を防止しなければならないことを、今日の日本国民は十分に承知しております。そうしてその証拠には、昨年以来の選挙の結果を見てみましょう。佐藤内閣のもとで行なわれた昨年の参議院選挙では、自民党は改選議員議席数を四議席失いました。地方区の得票率は前回の四七%から四四%に後退をしております。ことに佐藤総理、非常なショックを受けられたあの東京都における参議院地方区の選挙におきましては、自民党の公認候補は二名ともあわれにもまくらを並べて落選をいたしました。(拍手)この選挙を通じて見れば、自民党は地方区で一千六百六十四万七千二百五十六票、これに対して社会党、公明党、民社党、共産党の、各野党の得票数は一千九百十六万七千三十七票で、佐藤内閣国民の半数の支持を得ていないばかりでなく、事実上不信任をされておるのであります。(拍手)続いて行なわれた東京都議会選挙でも、自民党は議席で三十一、得票率で一八%を失い、いままでの絶対多数勢力から三分の一勢力に転落をいたしました。自民党はあれほど金による買収供応と権力による利益誘導をやっても、まさにこの始末であります。  第四に、佐藤総理は、東京都議会汚職事件の直後、えりを正して政治を浄化すると言われました。  ところが、吹原産業事件へ東京都議会の汚職事件をはじめ、小林章、岡村文四郎両君の未曾有の選挙違反、参議院重政元副議長秘書の暴力団へのピストル密売事件、新潟、香川両県知事の汚職買収事件、兵庫県議会の選挙違反による大量検挙、松山市議会の汚職など、数え上げれば切りのないほど刑事事件が続発しております。これらの事件関係者はひとしく自民党の党員であります。あなたは、えりを正すとおっしゃいましたが、あなたのえりは、あしたに正し、夕べには乱れておる状態であります。(拍手)もはや国民は、佐藤内閣のもとでは政治の浄化は断じて行ない得ない、期待できないのみならず、自民党政府の続く限り、佐藤内閣の続く限り、政治の黒い霧はますます深まることを国民は真剣に憂慮しておるのであります。(拍手)  最近の新聞社——これは朝日新聞です。新聞社の全国世論調査では、佐藤内閣の支持率はわずかに三〇%で、昭和二十九年の五月、吉田内閣が造船汚職で指揮権発動を行なった当時の支持率は二三%、同じく三十四年二月に岸内閣が警職法を国会に上程した当時の支持率は二六%、同じく三十五年一月、安保条約を調印した当時の岸内閣の支持率は二八%、同年五月、安保条約の強行採決を行っなた当時の支持率はわずかに一二%を除けば、戦後歴代保守党内閣の最低の支持しか受けていないのが現内閣の実体であるのであります。(拍手)あなたは、国民の三〇%の支持でどうしてこの難局を切り抜けようとするのですか。ことに注目すべきことは、自民党支持層の中にすら佐藤内閣を見限っていることを世論調査は明らかにしておるのであります。佐藤内閣は、池田政権を受け継いだ総選挙の洗礼を受けていないたらい回しの政権です。総選挙の洗礼を受けていないたらい回しの政権だ。池田内閣の借り衣装をつけた国民の認知しないところの私生児だ。(拍手佐藤総理は、池田内閣から政権のたらい回しを受けるや、自前の佐藤体制をつくる、こう言いながら、今日まで便々と総選挙を回避してまいりました。その回避の理由として、政治の空白を避けるためと言っております。だが、この態度こそ、政治ルールを無視した政権かじりつきの延命策以外の何ものでもないのであります。(拍手)  これらの事実を総合いたしまして、要するに、佐藤内閣国民の信任を失っておることはいまや明らかであります。  天の命あらたまるときは為政者が交代するというのが古代中国の思想であります。天の命とは、すなわち国民に信任であります。国民の信任を失った佐藤内閣は、この際いさぎよく退陣すべきであります。そして、引き続いて構成される野党第一党の選挙管理内閣のもとにおいて、衆議院解散、総選挙を断行し、国民の新しい審判のもとに、政治、経済「外交政策方向を一新すべきであります。これこそまさに天の声といわなければなりません。(拍手)  以上の理由により、私は佐藤内閣の即時総辞職、退陣を要求して、内閣不信任案に対し賛成の討論を終わります。(拍手
  12. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 門司亮君。   〔門司亮君登壇
  13. 門司亮

    ○門司亮君 私は、民主社会党代表いたしまして、ただいま提案されておりまする佐藤内閣不信任案に対して、若干の理由を申し述べて賛成の意を表するものでございます。(拍手)  私がその理由を申し上げます前に、先ほどこの不信任案に対して自民党を代表して江崎君から反対理由が申し述べられたのでございますが、その中で私どもが看過することのできない問題は、内閣の不信任案は、政権を担当する資格のある政党においてこそ初めてなし得るものであるという暴言でございます。民主主義の政治の道程の中で最も重要なものは、政治に対する絶えざる反省と改革でなければなりません。(拍手)この思い上がった言論は、明らかに反省を求めない、改革を求めない、多数にあぐらをかいた独善的思想であるといわなければなりません。(拍手)私は、この一事は民主政治を行なう上においてきわめて危険な思想と申し上げなければならないと存ずるのでございます。(拍手)  佐藤内閣は、先ほども話のございましたように、一年有半を過ぎておりまするが、いまだ総選挙による国民の信頼を問うていないのでございます。民主主義の政治は、主権者である国民の信頼によってのみ初めて成立するものであると申し上げなければなりません。しかるに、その国民に対し何ら信任を問わない内閣の今日の居すわりというものは、およそ民主主義のルールに反するものであると申し上げましても決して私は過言でないと存ずるのでございます。(拍手)  民主主義の東洋における父といわれておりまする孫文は、一九一四年の中国第一革命の際に、民意によって国興り、民意にさからえば国滅ぶという有名な詩を残しておることは皆さんも御存じと思います。民主主義の政治が、あくまでも民意によらなければならないものであるとするならば、佐藤内閣はいさぎよく退陣をして、民意にそのよりどころを問うという謙虚な態度を、私は要求しなければならないと存ずるのでございます。(拍手)  同時に、こうした関係の中にあって、今日まで佐藤内閣がとってまいりましたこの姿勢自体に対する問題が一つと、さらに次に考えられなければなりませんことは、国民生活に直結したわが国経済の問題に対して、ほんとうに佐藤さんは責任をとられたかどうかということについては、国民のきびしい批判がなければならないかと存ずるのでございます。  内閣が今日までとってまいりました経済政策に対しては、池田さんのあの不幸な事実のあとに、その池田さんがとってまいりました高度成長政策のひずみを直して、そうして国民所得の格差の非常にはなはだしい今日の農村、中小企業あるいは労働者の生活というものが、ゆがめられた高度成長政策から、ややこれが均衡化して、国民生活が安定するものであるかのごとき、国民佐藤内閣に十分なる期待を持っておったことも、またいなめない事実ではないかと私は考える。しかるに、その後の佐藤内閣経済政策は、この池田内閣の高度成長政策、これを是正するというのでなくして、言いかえまするならば、むしろこれに拍車をかけた経済政策が、大企業中心とする財政投融資であり、その結果は多くの中小企業の破産、倒産が雄弁に物語っており、農村における離農者の数がだんだんふえて、今日わが国の食糧政策さえ危機に瀕しておるといわれるような状態をかもし出したことは、明らかに佐藤内閣財政政策失敗であるといわなければなりません。(拍手)  しかも、このことについて佐藤さんはどう言われておりますか。三十九年の六月二十八日の朝日新聞を、いまここで思い起こしてまいりまするならば、このいわゆる総裁選挙に対する抱負の中で、佐藤さんはこう申されております。「大企業中小企業生産量は五対四ぐらいだが、投資額は四対一だ。これなど、思い切った中小企業の世話をするのが愛情ある政治だ。物価の値上がりは経済の拡大のためには当然だとか、中小企業倒産は放漫経営のせいなどと政府は説明しているが、物価が値上りする前にどうして対策を講じないのか。また、倒産しないうちに、どうしてあたたかい気持でこれを救おうとしないのか。これが本質的な問題だ。」と言われておるのでございます。これは佐藤さんが、総裁選挙のときに言われたことばでございます。私は、佐藤さんは、よもやこのおことばをお忘れになったとは考えません。ところが、その後の佐藤さんの政策は、これと全くうらはらで現実の姿があらわれてきておるということは、諸君も御承知のとおりであります。(拍手)私は、この一つの事実を見てまいりましても、佐藤さんは、国民に対して大きな食言をされておる。その食言は、国民の期待と希望を大きく裏切るものであるといわなければなりません。私は、佐藤内閣は、こうした問題に対して当然責任を負って、ひとつ退陣をしていただきたいということでございます。  その結果は、それなら一体どうなっておるか。今日物価上昇は、もうすでに私どもが申し上げるまでもなく、日々高騰を来たしておって、しかも公共料金は、長い間の政府の抑制政策から、この抑制がとうとうきかなくなって、いやおうなしに公共料金を上げなければならない段階に差し迫っておる。また、そういう事実が行なわれておる。と同時に、今日のわが国中小企業倒産の率というものは、史上最大の倒産の状態をかもし出しておることは、御承知のとおりであります。一体、佐藤内閣は、大企業がかわいいのか、あるいはすべての国民がかわいいのか、私は、政治の要諦は、あくまでも、佐藤さんがしばしば言われておりまする国民生活の安定でなければならない。その国民生活の安定が忘れられて指向されておりまする現在佐藤内閣は、国民に対しましても当然責任を負って、退陣されることが、私は、民主主義の政治の上では、これをいなむことはできないものだと考えるのでございます。  さらに、こうした問題を中心にして、今日の国内情勢は一体それならどうなっておるか。非行少年が非常に多い、あるいは交通禍による災害は非常に大きくのぼっておる、至るところに犯罪のはんらんと不正の事実が暴露されつつありまする今日の状態は、全く政治の中に国民不在と申し上げましても、私は決して過言ではないと考えておる。(拍手)思想的に申し上げてまいりましても、現実的に申し上げてまいりましても、日本の将来は一体どこに持っていくのか、私は、こういうことを考えてまいりまするときに、一日もすみやかに佐藤内閣の退陣を要求するということが国民の声であり、また国民の要望であると申し上げても差しつかえないと存ずるのでございます。(拍手)  さらにまた、私どもはもう一つの問題として佐藤内閣要求いたしたいと思いますことは、経済の行き詰まりからくる国民生活の破綻と、政策の食い違いであります。すなわち、従来保守党がとってまいりました絶対健全政策、国の予算の九五%ないし九八%までは租税でまかなうという超均衡国家予算がついに破れて、数千億の国債を発行しなければならない段階に差し迫ったことは、木四十一年度の予算が明確にこれを物語っておりましょう。七千三百億のこの公債は何であるか。この公債は、いまの佐藤さんがこれの支払いをすることは困難でございましょう。また、お互い同僚が、この借金を支払うまでここにいられるかどうか。考えなければならないことは、公債というものは、後世の住民に対し、その負担と義務をしいるものであるということを政治家はよく知らなければならないのでございます。(拍手)安易な経済政策によって借金を残していくことは、われわれの子孫に対し負債を残していくことであって、健全なる経済政策ではあり得ないということを十分われわれは知らなければならないのでございます。公債政策を佐藤さんはおとりになっておりまするが、この政策は、従来から保守党がとってまいりました超健全な均衡財政にまっこうから反対する政策であるといたしまするならば、この公債政策をおとりになるについても、その信を国民に問われる必要があったということは、申し上げても決して差しつかえはないかと存ずるのでございます。(拍手)  こういうことで、国内における今日の経済政策は、どこから申し上げてまいりましても、結局は佐藤さんの退陣を要求するたくさんの要素があるということを、謙虚に反省をしていただきたい。  さらに私は、外交の問題にいたしましてもいろいろ問題はございますが、すでに提案者あるいは赤松議員等からいろいろ申し上げられておりまするので、省略して、できるだけ簡単に申し上げようと思いまするが、第一の問題は、わが国の自主、性でございます。  佐藤内閣は、安保条約のさらに無条件の継続を意図されておるやにわれわれは聞いておりまするが、このことは一体何を物語るか。そもそも、他国の軍隊によってその国が守られ、他国の軍隊によってみずからの安易な道を歩こうとするものの考え方は、いやおうなしにその国に隷属する心理状態をかもし出すものであるということを、お互いは知らなければならないのでございます。(拍手)今日、米国従属の外交と悪口をいわれております原因はここにあるのである。私は、少なくとも今日の情勢において、安保条約をそのまま継続するというようなことでなぐ、米軍の駐留を排除し、しこうしてわが国の健全なる憲法を守っていくという、真に佐藤さんがしばしば言われておりまする平和に徹する政策を、今日要求しなければなりません。  ことに私が遺憾に考えておりますることは、沖縄の状態である。沖縄は、百万の日本民族であります。この沖縄は、あの大東亜戦争中において軍靴にじゅうりんせられて、無棄の住民十数万の人間があの戦禍を受けた。この沖縄に対し、戦後二十年、いまだ異民族の支配に呻吟しておる沖縄同胞のことを諸君はどうして考えないか。(拍手)一国の消長は民族の消長である。その民族の、百万の民族が異国の支配を受けながら今日呻吟しているこの事実に対し、何ら解決する方策の具体的事実を示さない佐藤内閣こそ、国民の名において、民族の名において、われわれは退陣を要求せざるを得ないのでございます。(拍手)  さらに私は、こうした問題の中にあって、今日の世界の情勢をながめてまいりまするときに、ベトナム中心とするアジアの戦雲はきわめて急を告げておる。しかもこのアジアの戦雲が、いつ世界の動乱に転化しないとは限らないのである。いまこそアジアの民族は、いまこそアジアの諸国は、このベトナム平和解決に最大の努力をいたさなければなりません。常日ごろ、アジアの大国であり、アジアの先進国であり、アジアの兄貴分であるかのごとき言辞を弄しておりまする佐藤内閣は、いまこそほんとうに、真剣にベトナム問題の解決に取り組むということが、佐藤さんの唱えられる平和に徹する問題でないかと私は痛感するものでございます。(拍手)  こうした問題に対し、佐藤内閣が今日までとってまいりましたことは、一面わが国をして再び戦争に巻き込まれるというような危険性国民に与えながら、内政問題に対しては、国民生活の不安は、国民不在の政治であるというような、政治国民とが離れるというようなことこそ、ほんとうに政治の課題といたしましては、きわめて重大な問題といわなければなりません。  与えられた時間もございますので、これ以上申し上げることはいかがかと思いますが、われわれは、少なくとも今日の時点において、佐藤内閣の退陣こそ、わが国政治の安定と、国民生活の安定と、さらに世界の平和に寄与するものであるということをここに申し上げて、この不信任案に賛成の意を表する次第でございます。(拍手
  14. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これにて討論は終局いたしました。  佐藤内閣不信任決議案につき採決いたします。  この採決は記名投票をもって行ないます。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。——閉鎖。   〔議場閉鎖〕
  15. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 氏名点呼を命じます。   〔参事氏名を点呼〕   〔各員投票〕
  16. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。——開鎖。   〔議場開鎖〕
  17. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 投票を計算いたさせます。   〔参事投票を計算〕
  18. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。   〔事務総長報告〕  投票総数 三百七十   可とする者(白票)       百四十四   〔拍手〕   否とする者(青票)      二百二十六   〔拍手
  19. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 右の結果、佐藤内閣不信任決議案は否決されました。(拍手)     —————————————  佐々木更三君外三名提出佐藤内閣不信任決議案を可とする議員の氏名       赤路 友藏君    赤松  勇君       茜ケ久保重光君    秋山 徳雄君       足鹿  覺君    淡谷 悠藏君       安宅 常彦君    井伊 誠一君       井岡 大治君    井谷 正吉君       井手 以誠君    伊藤よし子君       石田 宥全君    石野 久男君       石橋 政嗣君    板川 正吾君       稻村 隆一君    江田 三郎君       小川 三男君    大出  俊君       大柴 滋夫君    大原  亨君       大村 邦夫君    岡  良一君       岡田 春夫君    岡本 隆一君       落合 寛茂君    加賀田 進君       加藤 清二君    片島  港君       勝澤 芳雄君    金丸 徳重君       神近 市子君    川崎 寛治君       川俣 清音君    川村 継義君       河野  正君    久保 三郎君       久保田鶴松君    栗原 俊夫君       栗林 三郎君    黒田 寿男君       小林  進君    兒玉 末男君       五島 虎雄君    河野  密君       佐々木更三君    佐藤觀次郎君       佐野 憲治君    阪上安太郎君       桜井 茂尚君    沢田 政治君       重盛 壽治君    實川 清之君       島上善五郎君    島口重次郎君       下平 正一君    東海林 稔君       鈴木茂三郎君    田口 誠治君       田中 武夫君    田原 春次君       多賀谷真稔君    高田 富之君       滝井 義高君    楯 兼次郎君       千葉 七郎君    辻原 弘市君       戸叶 里子君    堂森 芳夫君       泊谷 裕夫君    中井徳次郎君       中嶋 英夫君    中村 重光君       中村 高一君    永井勝次郎君       楢崎弥之助君    成田 知巳君       二宮 武夫君    西宮  弘君       野口 忠夫君    野原  覺君       野間千代三君    芳賀  貢君       長谷川正三君    長谷川 保君       畑   和君    華山 親義君       原   彪君    日野 吉夫君       肥田 次郎君    平岡忠次郎君       平林  剛君    藤田 高敏君       帆足  計君    穗積 七郎君       細迫 兼光君    細谷 治嘉君       堀  昌雄君    前田榮之助君       松井 政吉君    松浦 定義君       松平 忠久君    松原喜之次君       武藤 山治君    村山 喜一君       森  義視君    森本  靖君       八木 一男君    八木  昇君       矢尾喜三郎君    安井 吉典君       柳田 秀一君    山内  広君       山口シヅエ君    山口丈太郎君       山崎 始男君    山田 長司君       山田 耻目君    山中 吾郎君       山中日露史君    山花 秀雄君       山本 幸一君    湯山  勇君       米内山義一郎君    横路 節雄君       横山 利秋君    吉村 吉雄君       麻生 良方君    伊藤卯四郎君       今澄  勇君    受田 新吉君       鈴木  一君    玉置 一徳君       西村 榮一君    門司  亮君       本島百合子君    吉川 兼光君       吉田 賢一君    川上 貫一君       谷口善太郎君    林  百郎君       志賀 義雄君    田中織之進君  否とする議員の氏名       相川 勝六君    逢澤  寛君       愛知 揆一君    赤城 宗徳君       赤澤 正道君    秋田 大助君       天野 公義君    天野 光晴君       荒舩清十郎君    有田 喜一君       安藤  覺君    井出一太郎君       井原 岸高君    井村 重雄君       伊東 正義君    伊東 隆治君       伊能繁次郎君    岩動 道行君       池田 清志君    石井光次郎君       石田 博英君    一萬田尚登君       稻葉  修君    今松 治郎君       宇都宮徳馬君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    植木庚子郎君       臼井 莊一君    内田 常雄君       内海 安吉君    浦野 幸男君       江崎 真澄君    遠藤 三郎君       小川 平二君    小沢佐重喜君       小渕 恵三君    大石 八治君       大石 武一君    大泉 寛三君       大倉 三郎君    大竹 太郎君       大坪 保雄君    大西 正男君       大橋 武夫君    大平 正芳君       岡崎 英城君    奥野 誠亮君       押谷 富三君    加藤 高藏君       加藤常太郎君    賀屋 興宣君       鍛冶 良作君    海部 俊樹君       金子 一平君    金子 岩三君       金丸  信君    上林山榮吉君       神田  博君    亀山 孝一君       鴨田 宗一君    唐澤 俊樹君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       川島正次郎君    川野 芳滿君       菅野和太郎君    木部 佳昭君       木村 剛輔君    木村 俊夫君       菊池 義郎君    岸  信介君       吉川 久衛君    清瀬 一郎君       久野 忠治君    久保田円次君       草野一郎平君    鯨岡 兵輔君       倉石 忠雄君    倉成  正君       小泉 純也君    小枝 一雄君       小金 義照君    小坂善太郎君       小平 久雄君    小宮山重四郎君       小山 長規君    小山 省二君       河本 敏夫君    纐纈 彌三君       佐伯 宗義君    佐々木秀世君       佐々木義武君    佐藤 榮作君       佐藤 孝行君    佐藤洋之助君       齋藤 邦吉君    坂田 英一君       坂田 道太君    坂村 吉正君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       四宮 久吉君    志賀健次郎君       始関 伊平君    椎名悦三郎君       重政 誠之君    篠田 弘作君       澁谷 直藏君    島村 一郎君       正示啓次郎君    白浜 仁吉君       壽原 正一君    鈴木 善幸君       砂田 重民君    瀬戸山三男君       關谷 勝利君    園田  直君       田川 誠一君    田口長治郎君       田澤 吉郎君    田中伊三次君       田中 榮一君    田中 角榮君       田中 正巳君    田中 六助君       田邉 國男君    田村  元君       田村 良平君    高瀬  傳君       高橋清一郎君    高見 三郎君       竹内 黎一君    竹下  登君       舘林三喜男君    谷垣 專一君       谷川 和穗君    千葉 三郎君       地崎宇三郎君    中馬 辰猪君       塚田  徹君    塚原 俊郎君       辻  寛一君    坪川 信三君       渡海元三郎君    登坂重次郎君       徳安 實藏君    床次 徳二君       内藤  隆君    中川 一郎君       中川 俊思君    中島 茂喜君       中野 四郎君    中村 梅吉君       中村 寅太君    中村庸一郎君       中山 榮一君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    二階堂 進君       丹羽喬四郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    西村 直己君       野田 武夫君    野原 正勝君       野呂 恭一君    羽田武嗣郎君       馬場 元治君    橋本登美三郎君       橋本龍太郎君    長谷川四郎君       長谷川 峻君    濱田 幸雄君       濱野 清吾君    早川  崇君       原 健三郎君    原田  憲君       廣瀬 正雄君    福田 赳夫君       福田 篤泰君    福田  一君       福永 一臣君    福永 健司君       藤枝 泉介君    藤尾 正行君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       藤山愛一郎君    船田  中君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保科善四郎君    細田 吉藏君       堀内 一雄君    本名  武君       前尾繁三郎君    前田 正男君       益谷 秀次君    増田甲子七君       松田 鐵藏君    松野 頼三君       松山千惠子君    三木 武夫君       三原 朝雄君    水田三喜男君       湊  徹郎君    南好  雄君       村上  勇君    毛利 松平君       粟山  秀君    森   清君       森下 國雄君    森下 元晴君       森山 欽司君    八木 徹雄君       山田 彌一君    山手 滿男君       山中 貞則君    山村新治郎君       山本 勝市君    山本 幸雄君       吉田 重延君    和爾俊二郎君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君      ————◇—————
  20. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十一分散会