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1966-04-22 第51回国会 衆議院 本会議 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十二日(金曜日)     —————————————  昭和四十一年四月二十二日   午後二時 本会議     ————————————— ○本日の会議に付した案件  昨二十一日の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部   を改正する法律案趣旨説明に対する質疑に   ついての答弁及び再質疑  春闘に関する緊急質問横路節雄提出)  雇用対策法案内閣提出)の趣旨説明及び質疑    午後二時八分開議
  2. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これより会議開きます。      ————◇—————  昨二十一日の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案趣旨説明に対する質疑についての答弁及び再質疑
  3. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) この際、昨日の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案趣旨説明に対する楢崎弥之助君の質疑について、内閣総理大臣答弁を求めます。内閣総理大臣佐藤榮作君。   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  4. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 楢崎君にお答えいたします。  昨日は私、所用のために、お尋ねを直接聞いてお答えすることができなくて、たいへん申しわけございません。きょうあらためてお答えをする次第であります。お尋ねになりました点を、速記その他について検討いたし、また、事前に質疑項目等について御提出になりましたそれらの点でお答えをいたしますので、あるいは一部違っておりますか、そういう点がありましたら、御了承いただきたいと思います。  まず第一に、最近に外務省においていろいろ発表しておる日米安全保障条約あるいはわが国国防基本についての考え方でございますが、これは外務省が公式に発表いたしておりますので、政府におきましてももちろん責任を持つものであります。その観点に立ちましてお尋ねが発展しておると、かように思いますが、その第一は、三次防計画実施中には、いわゆる一九七〇年が来る。この一九七〇年が来れば安全保障条約期限が到来するのではないか、そこで問題があるのだ、こういうお尋ねでございますが、この期限到来ということばについては、いろいろ誤解を招くおそれがある。私はかように考えるのであります。これは安全保障条約の第十条の規定を十分読んでいただけばわかりますが、十年たてば締約国の一国はこれを廃棄する通告ができる。そういうような状態になるのでありまして、いわゆる期限が来た、こういうことは誤解を招きやすいと思いますので、その通告がなければ安全保障条約は続くものだ、かように御了承いただきたい。何にも両方で意見を述べないと、そのまま続いていくのだ、もしも廃棄の通告をすれば、その後一年たってこれが廃棄される。こういうことでありますから、その点は楢崎君は誤解を持たれないと思いますけれども国民の一部では、この話を聞きますと、十年たったら期限が来るじゃないか、すぐかように考えますので、この点は誤解のないようにいたしたい、かように思います。したがいまして、今日からどういうような処理をするか、これはまだ先の問題でありますので、その処理方法につきましては十分考えていきたいと思います。私ども、また外務省も申しておりますのは、ただいまの状態に重大なる変更のない限り、安全保障条約があることは望ましい、かように申しておるのでありまして、それをどんな形で継続さすか、これはまた別個の問題であります。これは十分時間のあることですから考えてまいるつもりでおります。  次のお尋ねは、現行安全保障条約は、すなわち、核安全保障条約ではないか、こういうことでありますが、核安全保障条約ということばは、どういう意味か、私はちょっと解しかねますけれども、私が昨年ジョンソン大統領と会いました際には、ジョンソン大統領は、日本に対する外部からのいかなる侵略に対しても日本防衛する、かように申しております。これは通常兵器によると、あるいは核兵器近代的兵器によると、そういう区別なしに日本防衛する、かように申しておるのであります。かような意味で、もしも核攻撃に対して日本が守られる、これが核安全保障条約だ、かように言われるなら、そのとおりお考えになっていいと思います。しかし、アメリカ安全保障条約日本を守る、それはどんな場合でも守る、かように申しておりますことと、日本自身核兵器持ち込みを許すか、あるいは核基地を提供するかということとは、これは全然別の問題であります。私どもは、しばしば申し上げましたように、日本核基地は提供もしませんし、核基地は持たない、核の持ち込みはお断わりします、かように申しておるのでありますから、これまた誤解のないようにお願いしておきます。  それで、ただいまのように私ども持ち込みあるいは基地を提供しませんが、そこで、いわゆるアメリカの核のかさというような議論がしばしば出るわけでございます。このアメリカの核のかさに入っておる限り、日本主張は非常に弱いのではないか、また、そういう意味では国民をだまし、そのうち必ず核武装することになるのではないか、こういうような疑念を持たれるようでありますが、私は、これにつきまして、現実の問題と同時に理想の問題、われわれの理想として目標にするものとは区別して考えていただきたいと思います。私は、ただいま申し上げますように、日本核兵器持ち込み、核の基地は提供いたしませんけれども、しかし、同時に、この核攻撃に対しまして、日本の安全は守られなければならない。その意味におきまして、アメリカとの間の日米安全保障条約は役立つ、かように考えておりますし、また、今後もそういう状態だと思います。核兵器がある限り、持たないわが国としては、この核兵器からも日本の安全を保障するというか、守り抜く、こういう態度でなければならない、かように私は考えております。  次に、この点で、いわゆる国会決議核武装を絶対にしないという、そういうことをしないか、あるいはまた、アジア太平洋地域非核武装地帯を設置してはどうか。さらにまた、核抑止政策を徹底的に批判し、いかなる場合でも、核抑止政策には加担しない、また協力しない、こういうことを誓え、こういうたいへん強い御主張であったかと速記を読んで感ずるのであります。私は、しばしば政府といたしまして申し上げますように、核兵器持ち込みは絶対にしない、核基地は絶対に提供しない。政府が何度も繰り返して申し上げておるこの点を、国民の皆さまも御了承いただき、またこの程度で御了承いただいて、私は、ただいまのように決議云々まではしなくてもいいのじゃないか、かように思います。同時にまた、非核武装地帯をつくれ、こういう御意見に対してでありますが、非核武装地帯をつくる、こういう場合には、その所要地帯における各国が全部参加しなければ意味をなさないし、また、その地域において核保有国があっては、これは意味をなさない。私はかように考えますので、ただいまのせっかくの御提案でございますが、さらに十分その必要等を重ねて検討する必要がある、かように私は思っております。  次に、最近のアメリカの対中共政策につきまして、いわゆる十項目というものが掲げられておりますが、これをいかに思うか、どういうように考えるか、こういうお尋ねであります。大事なことは、日本政府中共に対するいかなる政策をとるかということだと思います。私は、しばしば申し上げておりますように、自主的に独立した中共対策を立てます、かように印しておりますので、自主的な立場において日本外交政策を遂行しておる、これをよく御理解をいただきたい。アメリカの十項目そのものを私は今日批判することは適当でない、かように考えております。  また、ベトナム戦乱やあるいは中共核武装等の問題があるが、今後の第三次防衛計画には所要の修正をするかどうか、こういうお尋ねであります。私は、ただいままでのアジアにおける各種の変動は、わが国国防基本的問題を変更する何ものでもない、かように思いますので、従前同様の安全確保方針を堅持し、これの充実をはかっていく考えでございます。別に新しいものをつけ加える考えはございません。  次に、起こり得べき脅威に対し有効な防衛力、こういうことをいつも言っておるが、これは一体どういうことなのか。同時にまた、その具体性といいますか、そういうものが現実に起こる危険性等について説明しろ、こういうお話であります。私は、わが国の安全を確保する、こういうことが最も大事な場合でありますし、総理といたしましては、安全確保についての全責任を持っておる。かように考えておりますので、あらゆる場合に対処してわが国防衛力を整備する、こういう考え方でございます。いわゆる起こり得べき脅威、これは起こり得べき脅威、かようにお考えをいただきたいと思います。  最後に、防衛庁を省にする考えありや、また、この国会提出する考えがあるかということでございますが、省昇格の問題については、私はただいま検討中でございます。  お答えといたします。(拍手
  5. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 楢崎弥之助君から再質疑の申し出があります。これを許します。楢崎弥之助君。   〔楢崎弥之助登壇
  6. 楢崎弥之助

    楢崎弥之助君 特に議長のお許しを得まして、五分間を限って再質問をいたしたいと存じます。  昨日も申し上げましたとおり、現在の佐藤内閣安保問題に対する見解は非常に混迷をいたしております。そして、独断があり、ドグマがあります。たとえば、いまも一九七〇年の安保期限の問題について、もし、あと四、五年あるから十分どうするかは考えたいとおっしゃるのなら、どうして最初から、現行安保条約はずっと必要だというような断定を先に下されるのか、それを私どもは言いたい。安保問題は、昨日も申しましたとおり、非常に相対的なものでありますから、固定的にものを考えてはいけないのではないかということを、われわれは指摘いたしておるのでございます。  さらにまた、昨日も外務大臣が言われましたが、核戦略体制の中に日本が組み込まれておることは認められております。核戦略体制の中に組み込まれておりながら、核戦略には参加しない、これはどういうことなんでしょう。そこに矛盾があると言っておるのです。そして、矛盾がないとおっしゃるならば、そういう断定だけではなしに、なぜ矛盾がないのかの説明をする必要があろうと私は思う。(拍手)そうすることなしには、国民に対する説得にはなりません。私が断定であり、ドグマであるというのは、そういう点であります。その点の矛盾をひとつ十分解明をし、説明をしていただきたい。矛盾がないならば説明をしていただきたい。これを申し上げておるわけであります。  さらにまた、私は、脅威実体はあるのかということを聞いておる、また、脅威可能性はあるのかということを聞いておるのです。二次防の前文にはそれがちゃんと書いてある。そうして、たとえば中国の核保有可能性というものについて、総理は、これを日本に対する脅威実体とお考えになるかどうかということをお尋ねしたのです。具体的にお答えをいただきたいと存じます。  以上です。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  7. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 楢崎君にお答えいたします。  私どもは、積極的に軍備について説明をしたことはございません。社会党諸君からいろいろ尋ねられる、それで私どもは答えた、こういう経過でございます。だから、積極的にこちらから発表した、こういう状況ではなくて、皆さん方からお尋ねになるから、そこで私ども実情を御説明申し上げた。ただいまの問題にいたしましても、四年先の問題だ、したがって、どういう形でこの安全保障条約を存続さすかということはよく考えたい。ただいまの状態で変化がない限り、日本安全確保のためには、安全保障条約があるし、存続さす必要があるのだ、こういうことを申しておるのであります。私は、これは非常にはっきりしたことで、国民大多数の方もおわかりだと思います。そうして、これは政府が特別な意図をもって先制攻撃を下した、かようなことは、社会党諸君お尋ねになっていて、そういうことを言われるのは、私はたいへんふに落ちない。この点では私はたいへんおかしく思います。  次に、日本核戦略体制の中に組み入れられておる、こういうお話でございます。先ほど来お答えいたしましたように、日米安全保障条約では、アメリカ自身は、日本外部から受ける攻撃、それがいかなる攻撃であろうとも、日米安全保障条約によって日本を守る義務がある。こういう意味で、アメリカ自身は、核兵器による攻撃に対してもこれを守るのだ、こういうことを申しております。しかし、私どもがしばしば申し上げるように、日米安全保障条約なるものは防衛的なものであって、攻撃的なものでは絶対にございません。したがいまして、いわゆる核戦略体制一員だ、こういう御指摘でありますが、核戦略体制一員防御的体制であるならば、とやかくは言われぬだろう、もしも攻撃的なものである場合において楢崎君の非難も当たるだろうと、私、かように思うのです。しかし、日米安全保障条約はさような攻撃的な意味を持たないのだ、したがいまして、日本核戦略の中に入ったと、かように私は思いません。防衛されるという、核攻撃に対しても日本が守られる。それが核戦略体制だと、こうおっしゃるが、私は、この実情から申しまして危険なものではないのだ、こういうことが御了承いくのじゃないかと思います。  また、現実の問題と理想目標とは、これはたいへんな開きがありますから、私どももしばしば申しますように、核兵器が一切なくなること、完全軍縮が私どもの悲願であります。私ども理想であります。しかしながら、現実の問題は、ここに核兵器もあり、あらゆる軍備がなされておる。そういう状態のもとにおいて日本の安全を確保する、そのために必要なのは日米安全保障条約だ、かような結論にならざるを得ない、かように思います。(拍手)別に矛盾ではございません。  次に、脅威実体について説明しろというお話であります。これは防衛庁長官からお答えしたと思いますが、中共核兵器を持ったということ、それ自身は、日本防衛にも影響があるということ、これは私はだれも否定するものではないだろうと思います。確かに、中共自身がこの核兵器を持ったということは、日本防衛に対しましても影響がある、かように私は考えております。しかし、私は、今日の状態のもとにおきましても、日本在来考え方には変わりはないのだ、申しますならば、日本防衛的な自衛力は持ちますけれども攻撃的な戦力は一切持たない。この考え方には徹しておりますし、さらにまた、私どもは、日本自身核兵器は持たない、核兵器持ち込みは許さない、この考え方も従前同様でありますから、中共核兵器を持ったということは、影響のあることはだれびとも否定はしないと思いますけれども、私どもは、在来国防基本方針を変えるものではないということを重ねて御説明いたします。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫登壇
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昨日答弁を留保した点がありますので、お答えを申し上げます。  つまり、去る二月十八日の予算委員会におきまして、楢崎さんから御質問がありまして、防衛庁予算の中で不当のあるいは不正の使用があるのではないか、かようなことであります。それに対しまして、会計検査院から再検査するという言明をいたしておるのであるが、その再検査の結果いかんと、かようなことでございます。私は、きのうすぐ会計検査院について報告を求めたのでありまするが、会計検査院の報告するところによりますと、すぐ調査をしてみた。そうすると、若干不当な支出をしていることが発見された、かようなことでございます。  その不当の内容は、予算に定められた目を他の予算にきめられておる目の目的のために使用しておるものが若干ある、こういうことでございまして、検査院は直ちに防衛庁に対しまして、今後かかることが再び起こらないように厳重に注意するとともに、防衛庁におきましてもさような措置をする、かように申しておる、こういうことでございます。  右、答弁いたした次第でございます。(拍手
  9. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  春闘に関する緊急質問横路節雄提出
  10. 海部俊樹

    海部俊樹君 緊急質問許可に関する動議提出いたします。  すなわち、この際、横路節雄提出春闘に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  11. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。  春闘に関する緊急質問を許可いたします。横路節雄君。   〔議長退席、副議長着席〕   〔横路節雄登壇
  13. 横路節雄

    横路節雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、現在進行中の三公社現業労働者賃金要求を中心として、政府所信お尋ねいたします。(拍手)  私は具体的に質問をいたしますから、政府においても具体的にお答えを願いたいと存じます。  昨年の物価について、当初、政府は、上昇率を四・二%と見込み、途中手直しして四・五%といたしましたが、この三月末には、実に七・六%の上昇となったのであります。しかも、四十一年の物価上昇の見込みは五・五%となっておりますが、これまた、総額三千五百億円にのぼる公共料金大幅値上げによって、八%をこえるものと予想されるのであります。このため、労働者生活水準は切り下げられ、大多数の家庭にあっては、主婦が内職をしてかろうじて家計を維持している現状であります。  一体、政府には総合的な物価対策があるのかどうか、まことに疑わしいといわねばならないと思います。(拍手アメリカでは、ベトナム軍需景気で四・二%の物価が上がっても、インフレインフレと大騒ぎをしています。これに比べれば、わが国の七・六%という上昇は、きわめて異常であります。  佐藤総理、あなたは、三十九年六月の自民党総裁立候補にあたり、次のような所信を披瀝されたことを御記憶のごとと思います。すなわち、あなたは、池田内閣所得倍増計画を痛烈に批判し、所得倍増政策の結果、消費者物価上昇、相次ぐ中小企業倒産農漁村市民生活の不安など、社会に大きなひずみが生じたと指摘されたのであります。特に、物価値上がりについて、政府が、経済の拡大のためには当然だとか、中小企業倒産放漫経営のせいだなどと説明しているのは、とんでもないことだ。物価値上がり倒産は、所得倍増政策の本質的な欠陥を示すもので、あたたかい人間尊重の姿勢がないなどと、池田内閣政策矛盾を率直に暴露、批判されました。私は、この批判はたいへん正しいと考えているのであります。(拍手)  ところが、総理、そのあなたが池田内閣にかわって内閣を組織して以来、物価はただいま申し上げたように異常な上昇を示しております。朝日新聞が今月行なった全国世論調査によれば、佐藤内閣支持率は、前回の三七%からさらに低下して、三〇%になったのであります。(拍手)支持しない理由の三分の一が、「物価が上がり生活が苦しい」となっていることは、いかに現在の政治庶民生活を圧迫しているかの端的な証明であります。特に、台所を預かる婦人の支持率が、三二%から二二%に大幅に減っていることは、注目すべき現象であります。(拍手)  佐藤総理、あなたは、御自身池田内閣所得倍増計画を批判されたあの人間尊重政治観点からして、この現実をどうお考えになるのか、また、総合的に物価対策をどう進めるつもりか、具体的にお聞かせを願いたいのであります。  佐藤総理、あなたは、国会答弁の中で、日本エンゲル係数は、物価上昇にもかかわらず、上がっていない、これはイギリス、フランス並みで、イタリアよりも低い、だから、物価上昇家計に及ぼす圧力はそれほどでもないと言われております。この発言の根拠になったものは、総理府統計局による親子四人の標準世帯を例にとってエンゲル係数三六・二%をはじいたのでありますが、刑務所並みの献立で有名なあの大蔵省メニュー、一人一日当たり食費百八十六円八十七銭でも、エンゲル係数は四二%となるはずであります。また、生活協同組合や栄養研究所でやったところでは、最低でも一人平均二百二十円かかっており、これでいけばエンゲル係数は五五%となります。  このように見てまいりますと、政府賃金、税金の算定の基礎ははなはだあいまいで、かつ、現実とかけ離れていると考えざるを得ません。所得の低い層ほど食料費値上がりに悩まされ、苦しい生活に追い込まれているのが現実の姿であります。一体、総理は、庶民生活現実と遊離した賃金算定がなされている実態をどうお考えになるのか、はっきりと御意見を伺わせていただきたいのであります。(拍手)  さて、現行公労法によりますと、公共企業体等当局労働組合は、各種労働条件団体交渉によって決定することを基本とすることは、すでに御存じのとおりであります。それにもかかわらず、公労法が施行された昭和二十四年以来、事賃金問題については、労使の直接交渉によって自主的に解決した例はただの一度もございません。私は、その理由が、まず第一に、政府の低賃金政策に由来するものであり、第二には、予算上、資金上の支出を必要とする協約について、三公社現業当局にいわゆる当事者能力がないところにあると考えるのであります。このため、公共企業体労働者賃金紛争が、毎年、団体交渉調停、あっせんと、長期間にわたり空転を続け、結局は仲裁に持ち込まれてきたのであります。  しかし、公労法はあくまでも労働協約の締結を否定しているものではありません。問題は、政府態度そのものにあるのであります。すなわち、協力であろうと調停であろうと、予算上、資金上困難とするものについては、国会の承認を求めればよいのであります。それを、あたかも仲裁裁定でなければ国会審議権を侵害するかのような立場をとってきたことは、労働者をはじめ、国民を欺瞞する以外の何ものでもありません。(拍手政府が常に公労法十六条をたてにとって自主解決を妨げてきた責任たるや、まことに重大であります。  私は、この際、政府に対し一つの提案をいたしてみたいと思います。すなわち、政府においてもし真に労使双方自主的解決を求めるとするならば、現在の公労法の適用によっても可能だということであります。なぜならば、調停段階において自主的解決ができないのは、予算総則において給与総額が定められ、仲裁裁定実施の際のみ、予算移流用予備費使用によって総額変更を認めることになっているからであります。したがいまして、この総則の条文に、協定も仲裁裁定同様に移流用を認めることを入れれば、問題は直ちに解決いたします。政府にやる気があれば、当事者能力についても直ちに解決ができるのであります。これについてなぜおやりにならないのか、総理大臣の御答弁を願いたいのであります。  次に、御承知のとおり、三公社現業におきましては、その賃金は、公務員、民間などを考慮して決定することになっております。今日すでに、民間賃金の回答を見ましても、昨年を一割五分ないし二割程度上回ることが予想されています。したがいまして、物価上昇によって、昨年の三公社現業の六・二五%の賃上げは食われてしまい、実質賃金はむしろ一%から二%低下しているのでありますから、物価上昇分だけ見ましても、最低七・二五%から八・二五%の賃上げは当然であります。しかも、民間賃金と比較いたしましても、今日の時点においてなお引当の開きがあり、三公社現業が手数百円低いことは、公社当局がすでに認めているところであります。  こうした実態からしまして、当然、政府調停段階で問題の解決をはかろうとするならば、これらを考慮したものが裁定の基準とならねばなりません。総理は、この点についていかなるお考えをお持ちか、また、何を根拠に公労協の賃上げをすべきか、御見解を承りたいのであります。  政府は、さきに経済の見通しによりましても、四十一年度の勤労所得の伸びは、一人当たり八%を見込んでおるのであります。政府自体、その経済成長を達成するためにも、最低限これに見合った賃上げは必要であると考えるのでありますが、大蔵大臣の御答弁を願いたいのであります。  次に、私は現行公労法についてお尋ねしたいと思います。  すでに指摘しましたように、公労法第十六条をたてにとって、労使による自主解決を妨げてきたのは政府であります。そうして、一方では、公労法第十七条によって、一方的に労働者のストライキ権を剥奪し、劣悪な労働条件を押しつけてきたのであります。ストライキ禁止の根拠として、口を開けば、事業の社会性、公共性、独占性を指摘してきたのでありますが、一体国鉄と私鉄はどこがどう違うのでしょうか。電電公社と国際電電はどこが違うのでしょうか。総理、あなたは明確にお答えになれますか。ぜひひとつお答えをいただきたいと思うのであります。(拍手)  いまさら申し上げるまでもなく、公労法の持つ制度上の不合理性については、憲法第二十八条に違反する疑いが濃いことは、幾つかの判例が示すところであります。ILOにおいても、これまでたびたび日本政府に注意を喚起しているのでありますが、昨年発表されましたドライヤー報告によりましても、ストライキ権の全面的、絶対的禁止の不合理と代償機能の不備を指摘し、政府に対して強くその改善を求めているのであります。総理は、公労法の持つこうした欠陥をお認めになるのか、さらには、今後の公労協との労使関係をいかなる方向で改善しようとお考えになるのか、あわせて御答弁をお聞きしたいと思います。  なお、労働大臣にお尋ねしますが、労働大臣は、たびたび、三公社現業については調停段階で自主的に解決をはかると言っているが、どういう解決をはかるのか、本日のこの段階で具体的にお示しをいただきたいと思うのであります。(拍手)  最後に、私は、最低賃金制度について政府見解を伺いたいと存じます。  わが国には、今日、月額二万円以下という低賃金労働者が約九百万人以上存在しております。確かに、わが国にも最低賃金法なる法律はあります。しかし、それは、わが党が当初より非難してきたごとく、本来最低賃金制度が具備しなければならない条件を全く欠いているのであります。そのため、ILO二十六号条約に違反していることは、政府自身が認めているところでありましょう。  そこで、私は、一つの実例として、総理をはじめ関係閣僚に申し上げたいのでありますが、国有林に働く常用の労働者が、国が最低生活基準をきめた生活保護にも満たない低賃金で働いている事実を御存じでありましょうか。これについて一体どのようにお考えになるか、率直な御感想をお聞かせ願いたいのであります。これが正真正銘の国家公務員であるということに、私は激しい憤りを感ずるのであります。これは、尽きるところ、政府賃金政策の不在を物語る以外の何ものでもありません。(拍手)  社会党は、こうした事態を一日でも早く解決するために、すでに全国一律の最低賃金法を提案しております。労働大臣もまた、中央最低賃金審議会に、抜本的改善をはかるべく諮問をしているようでありますが、今後いかなる方法で改善をはかるおつもりなのか、お伺いいたします。また、労働者側との交渉において、全国一律制についても考えるとの言明をしておられるようでありますが、あわせて、総理からも積極的な御答弁をお願いいたしたいと思います。  以上数点にわたり、総理並びに関係閣僚から、納得いきます答弁を期待いたしまして、私の緊急質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  14. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  最近の経済情勢、また賃金のあり方等から見て、今日春闘が盛んになっておるのは、これは当然だというようなお話でございます。私どもは、昨年がいわゆる不況に明け不況に募れたという、たいへん経済界におきましてもむずかしい状態であった、かように思いますので、ことしの佐藤内閣に課せられた政治課題は、不況の克服と物価の安定にありと、かように申しまして、特に力を注いでまいったのであります。予算編成にあたりましても、随所にこの経済の不況克服並びに物価安定についての施策が出ておったと思います。十分皆さま方の御審議をいただいたのでございます。私は、いわゆる高度経済成長は、それなりに効果をおさめたものだ、かように考えておりますし、ことに、産業が高度化したとか、あるいは国民生活が非常に向上したとか、こういう点では、何といってもこの高度経済成長の成果だ、かように思いますが、同時にまた、この高度経済成長がもたらした経済界のひずみというか、そういうものも見のがすことはできない。これがいわゆる企業の経営の悪化を来たしたものだとか、あるいは物価上昇を来たした、あるいはまた生産性の相違による格差の拡大を来たした、中小企業や農業が非常に取り残されたとか、こういうような点も見のがしてはならないと思います。こういう、高度経済成長のいい点があると同時に悪い点があり、それがいわゆる経済のひずみとして指摘された。同時に、これが経済の構造上に影響をもたらして、いわゆる不況がたいへん長い期間かかっても克服できなかった、こういうような実情にあったと思います。しかし、昨年の秋以来の政府の施策、また、ことしの予算編成並びに国民の協力によりまして、徐々ではありますが、不況の克服については明るい見通しを持ったようでございます。(拍手)  また、物価そのものにつきましても、いろいろの御批判はございます。いろいろの御批判はございますが、私どもは、四十年の物価のあり方については大体七・七の上昇だろう、こういう予想を立てましたが、その後だんだんこれを詰めてみますと、七・四あるいはよほど悪く見ましても七・五の程度にとどまるのではないか。すでに物価安定への一つの布石もなされた、かように私は感じておるのであります。(拍手)しかし、これは何といいましても、国民各界、各方面の御協力がなければ、物価の安定は期すべくもないのであります。今後とも、政府の施策と同時に、御協力を心から願ってやまない次第であります。  私は、ただいまの私の政治姿勢についての御批判は、ただいまのようにお答えすることによりまして御了承を得たい、かように思う次第であります。  次に、公労協の当事者能力についてのお尋ねお答えをいたします。この点では、お話のように十分のものがございません。しかし、政府といたしましては、当事者能力を何とかして付与しようということで努力いたしておりますので、近く有額回答もされる、これを期待してよろしいのでございます。しかし、ただいまのお話にありましたが、公務員制度審議会で基本的な態度を打ち出すまでにおきましても、いまの制度をできるだけ活用いたしまして、ただいまのような有額回答をするとか、また、御提案になりましたような、予算総則を改正するとかいうようなことも検討はいたしております。しかしながら、私は、予算総則の改正はそう簡単にはいかないと、かように思っておりますので、この点は、御提案をお預かりして、政府におきましても研究することにさしていただきたいと思います。  次に、なぜこういうことが問題になるのか。申すまでもなく、公共企業として片一方で予算の審議をいただいております。また、その事業計画等につきましても、詳細に国会の意思が反映して、そうして、運営を管理者にまかしたというよりも、その方向において信頼をされておる、こういう立場でございますから、ただいまのように、予算上あるいは資金上重大なる変化のあるような支出につきまして、国会の御審議あるいは御賛成を経なければならない、これは私は当然のことだと思います。  国鉄と私鉄、電電公社と国際電電、この区別をひとつはっきり言え、こういうお話でございますが、これは同じようにひとしく公共事業でございます。しかしながら、公共事業ではあるが、その影響するところが全国的な立場にあるのか、あるいはまたそれが一部のものであるか、こういうところに問題があると思います。したがいまして、私鉄について許されたことも、国鉄においては許されない、また、国際電電において許されることも、電電公社において、全国的なものでございますから、これは許されない、こういうことがあろうと思います。この点は明らかに区別されてしかるべきだ、かように私は思います。  次に、最低賃金制についてのお尋ねでございますが、私も、最低賃金制というものはもっと徹底されなければならないと思います。ただいま中央最低賃金審議会におきましていろいろ審議をお願いしておる。これは労働大臣からお願いしておるということでありますが、政府におきましても重大な関心を持っておるわけであります。三十四年に最低賃金審議会の答申が出まして、政府は完全雇用という方向でいろいろ努力をした。また、これを充実するということは、いわゆる低賃金労働者に対する対策、こういうばかりではございません。ことに、わが国の産業構造から見まして、中小企業の従業者の賃金を確保する、こういう意味からも、最低賃金が適正であること、これは最も望ましい方法であります。これはどうしてもやらなければならない。しかしながら、なかなか業種が限定されている、こういうようなことでありまして、過去における実情は必ずしも満足すべきものではない。われわれは、今後とも、この制度の拡充と申しますか、あるいは拡大と同時に、内容の充実について一そう努力をしなければならない、かように思います。  ドライヤーの勧告等についての問題でございますが、これは、ただいま公務員制度審議会におきまして十分審議されつつある際でございますから、私見をこの際述べることは穏当でない、かように考えますので、答申が出てくるのを待って、答申が出てまいりましたら、十分これを尊重して対処するつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣小平久雄君登壇
  15. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 私に対する御質問は、ただいまの公労協の賃上げ問題について調停段階解決したいと言っておるが、具体的にどうするかというお尋ねでございますが、私は、労働大臣という立場からいたしまして、労使間の問題、特に賃金問題等は、原則としては労使間の団体交渉によって決せらるべきものである。しかるに、公労協に関する賃金問題は、いまや調停段階に御承知のとおりあるわけでございまするから、でき得ればこの調停段階解決ができるように、労使双方とも十分努力をいたすべきである、こういうことを私は申しておるのであります。御指摘のように、従来仲裁までいっておるわけでございますが、それは最後の段階でございますから、この調停段階でも、労使両者が最善の努力を払い、誠意を払って、ここで解決ができるように努力をいたすべきだ、こういうことを私は期待いたしております、こういうことを申し上げておるわけでございます。  ただいま総理からお話がありましたとおり、三公社現業の当局は、困難な事情のもとで近く有額回答もいたそう、こうして具体的に御検討いただいておるようでございますから、ここで相当の誠意がやはり示されるものだと私は思います。組合側においてもまた、諸般の事情をよく勘案されて、十分ひとつお話し合いを願いたい、かように思っておるわけでございます。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫登壇
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回の公労協の賃金決定にあたって、その基準はどういうふうにするのか、こういうことでございますが、これは、申し上げるまでもない、いま横路さんからもお話がありましたが、労使双方の団体協約によってきまる、こういうことでございます。ただ、その団体協約を行なうにあたりまして、企業体当局のほうでは予算上、資金上の制約がある。これは総理からも申し上げましたが、公共企業体であるということから当然のことかと思います。そういう限度におきまして、当事者能力というのはそれだけ制約を受ける、こういうことになりますが、そういう状態のもとにおいて、この大事な労働協約がうまくいくだろうかという問題がある。そこで政府といたしましては、公務員制度審議会にもはかって根本的な検討をしてみたい、こういうのでありますが、そういう過程において今日の問題が起こってきておるのであります。しかし、そういう過程中の問題ではございますけれども、まあともかく当事者能力というものは、今日の制度上、慣行上の制約はありますけれども、その制約の中においても、できる限りこれを付与していきたい、そういう考え方のもとで具体的な検討が行なわれておる。つまり企業体それぞれが自主的に交渉をする。その交渉にあたりまして、財政問題でありますれば、私のところにも相談がありましょう。私は、それに対して意見を述べるつもりでございまするが、ともかくなるべく自主的に交渉に当たるというのを、一定の制度のもとにおいてでありまするけれども、実現していきたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)      ————◇—————  雇用対策法案内閣提出)の趣旨説明
  17. 園田直

    ○副議長(園田直君) 内閣提出雇用対策法案について、議院運営委員会の決定により、趣旨説明を求めます。労働大臣小平久雄君。   〔国務大臣小平久雄君登壇
  18. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 雇用対策法案について、その趣旨を御説明申し上げます。  近年わが国の雇用失業情勢は、ときには停滞の時期もありましたが、全体としては、雇用の大幅な増加、失業の減少等かなりの改善が見られたところであります。  今後の情勢を概観いたしますと、本春を頂点として新規学校卒業者を中心とする若年労働力の急激な減少及びその学歴構成の変化、平均寿命の伸長による人口構成の高齢化の傾向に加え、技術革新の進展、生産工程の変化等に伴って、技能労働者等生産部門に従事する労働者の不足が一そう激化することとなる反面、中高年齢者等の再就職問題などが懸念されるところであります。したがいまして、このままでは、わが国経済の基調が人手不足へ移行する過程において、年齢、職種、産業等によって、労働力需給の不均衡が顕著になり、その結果、労働者が安定した職場でその能力を有効に発揮できるようにし、これを通じてその経済的社会的地位の向上をはかることに対して大きな障害となるものと考えられます。  このような事態に対処するため、今後の産業及び労働面における構造的変化等に伴う雇用に関する政策について昭和三十九年二月内閣総理大臣から雇用審議会に諮問したところ、同審議会におきまして二年近くにわたり慎重な審議が行なわれ、昨年末これに関しての答申をいただきました。労働省におきましても、かねてから今後の情勢に即応する雇用対策の方向について検討を加えてきていたところでありますが、この答申の趣旨を十分に体し、そこに述べられております「すべての労働者の能力が十分に発揮されて、経済の発展と労働者の福祉の向上を実現していくために」「職業能力、職種を中心とする近代的労働市場の形成」「労働力の適応性と流動性の向上」「技術者、技能者の養成と職業指導の充実」等必要な施策を総合的に展開することを内容とする雇用対策の大綱を取りまとめたのであります。  この大綱は、何ぶんにも、雇用対策に関する重要事項でありますので、重ねて雇用審議会にはかり、その御意見を全面的に取り入れて、成案を固め、ここに雇用対策法案として提案した次第であります。  次に、その内容の概略を御説明申し上げます。  第一に、この法律は、国が雇用に関しその政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上をはかるとともに、国民経済の均衡ある発展と完全雇用の達成とに資することを目的とするものであります。なお、当然のことではありますが、この法律の運用にあたっては、労働者の職業選択の自由及び事業主の雇用の管理についての自主性を尊重しなければならないこととしているのであります。また、国はこの目的を達成するため、職業指導及び職業紹介の事業、技能に関する訓練及び検定の事業、労働者の福祉の増進に必要な施設、労働者の職業の転換、地域間の移動、職場への適応等を援助するために必要な措置、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策その他労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な施策を充実すること、及びこれらの施策を総合的に講じなければならないこととしております。  さらに、これらの施策及びその関連施策を講ずるに際しましては、国民経済の健全な発展、それに即応する企業経営基盤の改善、国土の均衡ある開発等の諸施策と相まって、雇用機会の着実な増大及び地域間における就業機会の不均衡の是正をはかるとともに、労働者がその能力を有効に発揮することの妨げとなっている雇用慣行の是正を期するように配慮しなければならないことを明示しているのであります。  第二に、国は雇用対策基本計画を策定しなければならないこととし、その中で、雇用の動向を明らかにするとともに、さきに申し述べました労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な施策の基本となるべき事項を定めることとしておりますが、この場合に、職種、技能の程度その他労働力の質的側面を十分考慮しなければならず、かつ、特定の職種、中小規模の事業等に関して特別の配慮を加えることができることとしております。  また、その策定にあたっては、労働大臣が、広く関係行政機関の長と緊密な連携を保って案を作成し、雇用審議会の意見を聞き、かつ、都道府県知事の意見を求めた上閣議で決定しなければならないこととし、さらに、計画の策定または実施に関し、労働大臣が関係行政機関の長に対して、所要の要請をすることができることとして、必要な施策の総合的な実施及びその実効性を確保することといたしております。  第三に、労働者がその能力に適合する職業につくことができるようにし、また、企業がその必要とする人材の確保ができるようにするため、雇用に関する諸情報の提供とこれに基づく指導援助を充実することといたしております。このため、労働大臣は、労働力の需給の状況、求人、求職の条件その他必要な雇用情報を迅速かつ的確に収集、整理するとともに、今後の技術革新の進展や産業構造の変化等に即応して職業の現況及び動向、職業に関する適性、適応性の増大等職業に関する基礎的事項について調査研究をし、これらの雇用情報、調査研究の成果等を職業指導、職業紹介等を行なうに際して活用させるとともに、広く関係者が利用し得るよう配慮することといたしております。さらに、職業紹介機関は、これらの雇用情報、調査研究の成果等を提供して、求職者に対しては、その適性、能力、経験、技能の程度等にふさわしい職業を選択することができるよう、また、求人者に対しても、職務に適合する労働者を雇い入れることができるよう必要な指導、援助をすることといたしております。  第四に、国は、若年層の能力の開発向上及び中高年層の職業への適応性の増進をはかるため、職業訓練施設の整備、職業訓練の内容の充実及び方法の研究開発、職業訓練指導員の養成確保及び資質の向上等職業訓練を充実するための施策を積極的に講ずるものとし、また、公共の職業訓練機関が行なう職業訓練と産業界が行なう職業訓練とが相互に密接な関連のもとで行なわれ、有為な技能労働者の養成確保がなされるようはかるべきことを明らかにいたしております。また、技能を軽視しがちな雇用慣行を改善し、労働者の技能の向上と技能労働者の地位の向上をはかり、能力を中心とする労働市場の形成を促進するため、技術の進歩等の状況を考慮して技能評価のための適正な基準を設定し、これに準拠した技能検定制度を確立し、かつ、その拡充、普及をはかることといたしております。  第五に、産業構造の変化等の過程において生ずる職業転換を円滑にする等、労働者がその能力に適合する職業につくことを容易にし、及び促進するため、職業転換給付金制度を創設し、関係給付の充実をはかることといたしております。  これは、従来、特定の失業者に対して支給してきた就職指導手当、職業訓練諸手当、職場適応訓練費及び就職のための移転費について必要な充実をはかるほか、その支給対象を拡大するとともに、特定職種訓練受講奨励金、広域求職活動費、訓練受講のための移転費、帰省旅費を新たに加え、制度的に確立しようとするものであります。  第六に、中高年齢者または身体障害者の雇用を促進するため、国が、別に法律で定めるところにより、雇用率を定め、これが達成されるよう必要な施策を講ずるものとし、これと並んでこれらの者の適職を選定し公表するとともに、その就職の促進につとめ、また、事業主その他の関係者に対し、その雇い入れを容易にするための援助を行なうことといたしました。  雇用率に関しましては、現在、身体障害者については身体障害者雇用促進法に必要な規定を設け、その推進をはかってきているところでありますが、中高年齢者につきましても、事業主は、労働大臣が適職に応じて定める雇用率を達成するようその雇い入れにつとめなければならないこと、及び労働大臣が常時百人以上の労働者使用する事業所であって中高年齢者の雇用に著しい困難を伴わないものに対し、雇用率の達成のために必要な要請ができることを職業安定法に規定するよう措置しているところであります。  第七に、労働大臣は、身体に障害のある者、新たに職業につこうとする者、中高年齢の失業者その他職業につくことについて特別の配慮を必要とする者に対して行なわれる職業紹介及び職業指導の実施に関し必要な基準を定めることができることとし、また、労働者募集に関し、過当な求人競争による弊害を除去するために労働大臣が募集時期について規制することができるようにする等職業安定法に若干の改正を加えているところであります。  第八に、建設業その他事業の実施が季節の制約を受ける業種の労働者が年間を通じて雇用されることを促進するため、事業主に対し、これに必要な設備の設置または整備に要する資金の貸し付けを行なう業務を雇用促進事業団の業務に追加することといたしております。  以上のほか、この法律案において、大量の雇用量の変動についての事業主の届け出義務等必要な規定を設け、また、その附則において関係法律について所要の整備をいたしております。  なお、この法律案の作成にあたって、雇用審議会のほか、中央職業安定審議会及び中央職業訓練審議会にはかり、その意見を十分尊重しているところでありますが、今後とも、この法律の施行上の重要事項につきましては、これらの関係審議会に意見を求めるとともに、その施策の実施にあたり関係行政機関とも緊密な連携を保ちつつ、今後の情勢に即応して積極的な雇用対策を展開し、すべての労働者がその有する能力を有効に発揮することができるよう万全を期する所存でおります。  以上が雇用対策法案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  雇用対策法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  19. 園田直

    ○副議長(園田直君) ただいまの趣旨説明に対して質疑通告があります。これを許します。足鹿覺君。   〔足鹿覺君登壇
  20. 足鹿覺

    ○足鹿覺君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました雇用対策法案につき、内閣総理大臣並びに関係閣僚に対し若干の質問を行なわんとするものであります。  今日、わが国政治国民に対して解決をはからなければならない中心的な課題の一つは、物価値上がりと経済不況によって深まっている生活の不安を具体的に解消することにあると考えるのであります。(拍手政府は、昭和三十五年以来、国民所得倍増計画に基づく高度成長政策を推進してまいられたのでありますが、政府の見通しとはうらはらに、物価所得の伸びを上回る急激な高騰を示し、大企業と中小企業との格差をはじめ、社会、経済全面にわたる二重構造の矛盾は深まり、不完全就業あるいは不安定雇用の問題や住宅問題は今日なお深刻な状態にあるのであります。この国民所得倍増計画の破綻に際し、政府は、安定成長への手直しを行なうため、昭和三十九年秋、中期経済計画を策定したのでありますが、本年一月には、この計画もまた破棄せざるを得ない事態に立ち至ったのであります。このように経済計画をしばしば変更するということは、政府に確固たる国民経済に対する基本的な姿勢が確立されていないことをみずから物語るものといわねばならぬと存ずるのであります。(拍手)  このため、政府の統計によりましても、昭和四十年の勤労者世帯の実収入は物価上昇によってマイナスに転じ、勤労階級の生活はいよいよ困難の度を増しているのであります。一方、雇用の面におきましても、昨年の企業倒産は六千百四十一件の多きにのぼっていること、本年一月現在における失業保険の受給者が実に七十二万を数え、また、臨時日雇いという不安定雇用労働者昭和三十九年にすでに二百六十万人に達しているなど、きわめて憂うべき情勢にあることがわかるのであります。  さらに、農業基本法体制による農民切り捨て政策の結果は、百万に及ぶ出かせぎ農民を生み出しているのでありますが、これは、わが国の農業と農民の家庭生活を破壊へ追いやるものとして、農業政策上の重要課題であるばかりでなく、低賃金と長時間労働あるいは労働環境の劣悪さと無権利状態といった点から、労働政策上の重要課題でもあるのであります。(拍手)  また、今日全国で八十四万人に及ぶ家内労働者が安い工賃で長時間労働を余儀なくされていることは、出かせぎ農民の問題とともに、労働政策上の緊急課題として把握しなければならないと思うのであります。  このような不安定な労働情勢は、歴代自民党政府の経済政策及び労働政策労働者中小企業を圧迫する方向で推し進められてきたことに基因するといわなければなりません。(拍手)  私は、以上述べましたような事実認識の上に立って、まず最初に総理大臣にお伺いいたしたい。  その第一は、失業はもとよりとして、私がいま申しましたような不安定雇用、不完全就業をいかなる具体的政策をもって解消しようとされておられるのか、その構想について伺いたいのであります。すなわち、昭和三十四年、雇用審議会が、完全雇用に関する答申、いわゆる第二号答申において、政府がとるべき雇用政策の方向並びに施策について明らかにしておりますが、政府は、今日まで国民所得倍増計画及び中期経済計画の展開にあたってこの答申の内容をいかなる形で具体化されてきたのか、また、今後この答申を十分に尊重し、これが実現のため努力する強い決意をお持ちであるかどうか、お伺いいたしたいのであります。  第二に、雇用政策に関するILO百二十二号条約並びに勧告についてお伺いいたしたい。申すまでもなく、この百二十二号条約並びに勧告の基礎をなしているものは、ILOのフィラデルフィア宣言において明らかにされているとおり、「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」という原則、並びに世界人権宣言における、「何人も、労働し、職業を自由に選択し、公正且つ有利な労働条件を得、及び、失業に対する保護を受ける権利を有する。」という原則であります。この雇用に関する国際通念として確立された百二十二号条約について、わが国政府は、この条約が採択された一九六四年のILO第四十八回総会において賛成したにもかかわらず、今日まで批准を行なっていないのであります。このことは国際信義にもとる行為といわなければなりませんが、何ゆえ今日まで批准がなされなかったのか、その理由を明らかにすると同時に、総理は、この条約をすみやかに批准し、勧告を含めてこの条約の趣旨を国内法に反映させる決意をお持ちであるかどうか、お伺い申し上げたいのであります。(拍手)  次に、経済企画庁長官並びに通産大臣にお伺いいたしたい。  本法案においては、労働力の需給を均衡させるため、雇用対策基本計画を策定することとなっております。この計画の内容いかんは労働者の死活の運命を握ることは言うまでもありませんが、本法案では、この基本計画と経済計画との関連について、単に調和をはかるというにとどめられておるのであります。いやしくも雇用対策の基本計画を樹立するからには、労働者の職業の安定、生活水準の向上を基本として、これを基礎に国の経済計画全体が確立されるべきであり、経済計画に従属して雇用計画が策定されるようなことが絶対にあってはならないと考えておるのであります。(拍手)しかるに、現在、中期経済計画が廃止され、これにかわる経済計画はいまだ策定されておらず、膨大な赤字公債の発行、公共投資の繰り上げ実施などといった場当たり的な政策が、長期的な見通しに立った経済計画との関連性がないままに進められているのであります。一体、経済計画がない現状において、雇用対策基本計画と経済計画の関連を具体的にどのようにして処理されるつもりでありますのか、また、現在策定中といわれる新経済計画において、雇用計画の目標をどのように設定されておるのか、これを明らかにせられたいのであります。  次に、政府は、地域格差の解消を目的として、いわゆる新産業都市法を制定したのでありますが、との法律の基礎となった国民所得倍増計画の破綻とともに、新産業都市計画もまた完全に行き詰まりを来たしておることは周知の事実であります。この結果、今日、わが国工業の大半は依然として太平洋沿岸ベルト地帯に集中し、地域格差はさらに拡大する傾向にあるのであります。政府は、新経済計画の中で、地域格差解消の具体策をいかに考え、また、産業と雇用の適正配置についてどのような政策をお持ちであるのか、御所見を承っておきたいのであります。(拍手)  最後に、労働大臣にお伺いいたしたい。  今後の雇用情勢の推移について見まするに、わが国の出生率は、昭和三十八年において、人口千人に対し十七・三人であり、フランスの十八・二人をも下回っているのであります。この出生率の低下によって、新規学卒の若年労働力は急激に不足する反面、人口構成の高齢化と技術革新の進展、産業構造の変化に伴い、いわゆる合理化解雇が進行し、一面不足、一面過剰という錯綜した情勢が予想されるのであります。しかるに、現在の若年労働力の不足状態の中にあっても、中学卒業者を見ると、大企業の充足率は求人の五割以上が確保されておるにもかかわらず、中小企業は二割程度にとどまっているのであります。  そこで、第一点として伺いたい。このような大企業への若年労働力の集中は、若年低賃金労働力の大企業による独占への道であり、したがって、中小企業における新規学卒労働力の確保を困難ならしめるとともに、大企業から排除される中高年齢労働力を低賃金によって中小企業へと下向移動させる結果となっているのであります。この二つの問題を解消するための具体的施策を用意しないままに本法案が施行されるならば、大企業と中小企業の格差拡大と中高年齢労働者の雇用不安は一そう拍車をかけられることとなると思われますが、政府は問題解決の具体的施策を用意されておるかどうか、この際明確にしていただきたいのであります。(拍手)  第二点として、雇用安定のための総合的施策についてお伺いしたい。冒頭に申し述べましたような一般的な雇用不安が存在するとともに、当面する緊急の問題として、炭鉱、駐留軍、林野、建設、港湾などの各産業における不安定雇用をいかにして解決するか、その具体案が急がれなければなりません。政府が本法案によって真に完全雇用を達成するというならば、かねてからわが党が主張しておる最低賃金制の確立、児童手当法及び家内労働法の制定、失業保障の抜本的改善、低家賃公営住宅の拡充、さらには農業政策及び中小企業政策の転換が必要であると思うのでありますが、これらの諸点についてどのような施策を考えておられるか、お伺いいたしたいのであります。(拍手)  第三点としてお伺いいたしたい点は、いやしくも雇用政策考える場合、政策の対象となる労働者意見が最大限に尊重されなければならないのでありますが、今日すでに多くの労働団体より本法案に対して反対の意見が表明されているのであります。一体、政府は、雇用審議会その他の機会において表明されておる労働者意見をどのような形で本法案に織り込まれているのか、この際明らかにしていただきたいのであります。  第四点としてお伺いいたしたいのは、労働行政のあり方との関連についてであります。われわれのなまなましい記憶によりましても、最近とみに、航空機事故、炭鉱災害、ダム現場等の災害など多くの労働災害が発生しておりますし、さらに、近くは日産・プリンスの合併の例に見られるように、労働者の団結権の侵害のため直接警察権力が介入しております。このように、合理化が進行する中で労働災害の多発、団結権の侵害、あるいは労働基準法をはじめ労働者保護の法律の空洞化が進んでいることは、われわれのまことに遺憾に存ずるところでございます。(拍手)いかに政府が雇用計画を策定されようとも、労働者の安全と権利を守る立場を明らかにした政策と行政を行なわない限り、真の雇用安定はあり得ないと思うのでありますが、労働大臣の所見を明らかにしていただきたいと存ずるのであります。(拍手)  要するに、以上の質問を通じて明らかにしましたように、本法案は、経済計画との関連において不十分であるばかりでなく、従来窓口規制の強化等によって行なわれてきた強権的行政措置に法的根拠を与えんとする立法となるおそれが多分にあり、本法をもってしては、完全雇用の達成はおろか、むしろ不完全就業の再生産を意味するものでしかないとの観点から、私は、政府が本法案を撤回し、真に完全雇用を達成する具体的施策を伴った立法として出直すべきであることを強く要求し、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  21. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  いつの時代でも、勤労階級の生活の向上をはかり、またこれの安定を期さないような政治では、これは成功をおさめません。したがいまして、ただいま、三十四年に雇用審議会が答申いたしました完全雇用についての答申の扱い方の問題でありますが、その後池田内閣におきましては、御承知のように、所得倍増計画、いわゆる経済を振興することによって完全雇用の実をあげようとし、また、それによって勤労階級の条件の整備と申しますか、向上をはかってまいったわけであります。したがいまして、所得倍増計画の進行中におきましては、雇用の問題はたいへんスムーズにいっておったと思います。そして勤労階級の生活の向上もあった、また、労働条件の改善も行なわれた、かように思うのであります。したがいまして、この雇用問題についての論議は昨年来の問題だ、あるいは昨年、一昨年程度の問題だ、かように私考えますので、足鹿君の、ただいま、多年にわたる保守党の政策が間違っていた、かような御指摘については、大いに私は異論があるのでありまして、ただいま申し上げますように、所得倍増計画はこの意味においてはたいへん役立った、この点を十分御理解いただきたいと思います。今日も、この経済を安定さす、不況を克服さす、これはひとり経済だけ立ち直るということではなくて、これこそは、国民全体の生活を守り、生活を向上さすゆえんだ、かように私は考えて経済問題と真剣に取り組んでおるのでありまして、ぜひとも安定成長への御協力を心からお願いする次第であります。  ただいまの雇用審議会におきまして種々の答申が出ておりますが、これを実現するためにも、今回の雇用対策のこの法案はぜひ必要なんでありまして、十分内容等について御審議をいただいて、御協力のもとに成立を見るようにしたいと思います。  次に、ILO百二十二号条約並びに一九六四年に採択された勧告についてのお尋ねでございますが、この百二十二号条約は、その趣旨におきましてはおおむね私どもも妥当なものだと、かように考えております。しかし、これの批准手続の問題になると、やはりわが国の国情に合うかどうか、これを十分検討して、そしてその処置をとるべきものだ、かように思いますので、いましばらく検討さしていただきたいと思います。  しかして、今回提案して御審議をいただこうというものは、この百二十二号条約にも関連し、また、その採択を見ました勧告の趣旨にも沿うものだ、かように私は考えておりますので、どうかこの法案の成立に御協力を願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 経済見通しをつくります場合に、当然経済発展の一つの要因としての労働政策が十分に織り込まれなければならぬことはもちろんでございまして、その意味において、私どもは、今後見通しをつくります場合に、今回の雇用対策法等につきまして十分にその趣旨に応じ、経済の実態と調和しながら見通しをつくってまいるつもりでございます。  なお、わが国の将来にわたります労働力の完全雇用という問題につきましては、やはり企業がそれぞれの位置におきまして正当な発達を遂げてまいりますことによって達せられる道が開かれると思います。したがいまして、われわれ安定成長を庶幾しております者から申せば、企業間の格差あるいは業種問の格差による賃金の平準化によりまして、就職の機会が平等に与えられることによって就職問題の流動性が起こってき得ると思いますし、流動の転換を容易にすると思います。そうしてその裏づけとして住宅問題が非常に重大な問題になろうかと思います。そうした問題について、経済見通し等におきましても十分検討の上、それらの方向をとってまいりたい、こう考えております。  なお、地域開発の問題につきまして、現在でもなお新産業都市の実行が進んでいないというお話でございました。残念ながら、今日地域間における生産、所得の格差は、三十五年からやはり相変わらず、むしろ開いてまいります。これは新産業都市あるいは低開発地の工業開発法、その他諸般の地域開発政策をやっておりましても、いまだ十分だと申すわけにいかない点がございます。ただしかし、今日取り行なわれております新産業都市の建設計画は、そのものにつきましては順調な進み方をしているのでございますけれども、たとえば、基本計画につきまして、工業出荷額を年増加率一三%ないし一六%と見ておりましたが、ほぼその域に達しておりますし、そうした点については必ずしもおくれているわけではございません。ただしかし、地域開発問題はもっと力を入れてやってまいらなければ、地域所得格差その他の是正というわけにまいらぬと思います。われわれとしては、新しい経済見通し等につきましても、これらの問題について十分重点を置いて考えてまいりたい、こう存じております。(拍手)   〔国務大臣三木武夫君登壇
  23. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 足鹿君の私に対する御質問は二点ございますが、一つは、工場の適正配置ということに対してどうするかということでございます。  現在、工場立地調査法という法律、これを持っている。また、土地造成あるいは工業用水に補助しておりますし、あるいはまた、地方工業開発指導員という誘導政策をここに持っておるわけであります。さらに、所得倍増計画の時代に、工業の適正配置構想というのがあったわけでありますが、事情が違ってまいりましたので、目下これに再検討を加えておる。こういう適正配置に対しての立法あるいは誘導政策、さらに、基本的な構想に再検討を加えて、産業の地方分散、雇用の適正配置を今後積極的に進めてまいりたい所存でございます。  第二には、大企業と中小企業の格差についての御質問でありましたが、このためには、中小企業それ自体の対策というものも、大企業と異なった対策が要るのであります。税制、金融あるいはその他の助成の面において中小企業自体の対策を講ずるとともに、大企業と中小企業との中にある生産性の格差が、これが根本の問題であります。現在、格差はだいぶん縮まりつつあるといっても、大企業に比べて五十数%の程度であります。労働賃金は大企業と変わらないようになりながら、生産性はこんなに低い、こういうことが中小企業の経営を非常にむずかしくするのであります。そのために、生産性の格差を是正することが、大企業と中小企業との格差是正の根本の問題である。そのために設備の近代化、経営の合理化、技術の革新、あるいはまた企業の規模の拡大、こういうことに向かって、これを全体ひっくるめて言えば、中小企業の近代化、これに全力を尽くす以外に、大企業と中小企業の格差是正の道はない、こういうことで努力をいたしておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣小平久雄君登壇
  24. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 私に対する御質問の第一点は、中小企業における若年労働力の問題でございますが、若年労働者を含めまして、中小企業における労働力の確保につきましては、その労働条件及び労働環境の整備によって、中小企業が魅力のある職場となるととが基本的要件でございまして、このためには、まず中小企業の近代化と生産性の向上をはかることが肝要であると考えます。労働省といたしましては、従来から、中小企業における労働力確保のため、集団求人方式の推進、事業内職業訓練の助成等による労働力の充足につとめるとともに、労働条件、労務管理の改善、福祉施設の充実等を通じて、中小企業が魅力ある職場となるようにつとめてまいったところでございます。この雇用対策法案におきましては、国が雇用対策基本計画を作成することとし、その中で、中小企業労働者の確保、その職業の安定と地位の向上等について特別の配慮を加えることを規定しておりますので、その趣旨に沿って、総合的に必要な施策をより積極的に推進してまいりたいと考えております。  第二の問題は、いわゆる不安定雇用の解消策いかんということでございますが、雇用対策法案におきましては、雇用審議会の答申の趣旨に基づきまして、不安定な雇用状態の是正をはかるため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策、これを講ずることを国の責務として規定しているところでありますので、労働省といたしましては、御指摘のような業種について、不安定な雇用を解消するため、就労形態などの適正化、労働条件の改善、労働災害の防止等につきまして、今後一そう総合的な施策を講じてまいる所存でございます。  質問の第三点は、総評などが、雇用審議会等におきまして、今回の法案について反対の意見を述べたが、それをどう取り入れたかという点でございます。本法案の当初案に対しましては、雇用審議会における審議の過程等を通じて、労働者側委員から、そのねらいが労務調達にあるのではないか、あるいはまた、完全雇用を達成するために必要な総合的な施策に欠けるものがあり、労働者の福祉の増進にとって好ましくない結果となるおそれがあるなど、種々御意見が出されたところでございます。政府といたしましては、このような意見を含め、慎重な審議を経て去る三月二十二日提出されました雇用審議会の第八号答申を全面的に尊重し、前述のような懸念のないよう修正の上、本法案を作成したのでございます。元来、本法案は、労務調達的意図を持ったものでは絶対にないのでありますが、一部に、いま述べましたような御懸念もございましたので、そういう心配のないように、今回の法案中にこれを明記いたしたのでございます。  その修正のおもなる点は、まず第一に、完全雇用の達成を国の政策目標として宣明いたしますとともに、本法案が、労働者の職業の安定と経済的、社会的地位の向上をはかることを目的としていることを明確にしたこと、第二に、不安定な雇用状態の是正をはかるため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実することを国の措置すべき施策として明記いたしましたこと、第三には、中小企業労働者がその能力を有効に発揮することができるよう特別の配慮を加え、その職業の安定と経済的、社会的地位の向上をはかることを明らかにしたこと、第四には、中高年齢者の雇用の促進をはかるために、国が労使双方に資料の提供その他のサービスをいたすことを義務づけたこと、このようなことでございますので、ただいま御指摘のような、労働組合の御指摘がありました点につきましては、十分これを取り入れたつもりでございます。  なお、最後に、労働問題について警察が介入することがあるとか、あるいは災害が多いとか、こういうぐあいで、労働保護法が厳正に守られなければ、雇用安定法ができてもだめではないかということでございますが、この両者の間には密接な関連のあることは当然でございます。われわれは、一方におきましては、労働者保護法の十分な施行と相まちまして、この法案を十分また活用して、その所期の目的を達成いたしたいと考えております。(拍手
  25. 園田直

    ○副議長(園田直君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  26. 園田直

    ○副議長(園田直君) 本日は、これにて散会いたします。    午後三時四十八分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  三木 武夫君         労 務 大 臣 小平 久雄君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君      ————◇—————