○楢崎弥之助君 ただいま
趣旨説明のありました防衛
関係二法の
改正案は、法案自体としましてはきわめて簡単なものでありますが、私は、この際、国の安全保障に関する基本姿勢と、その
内容について、
日本社会党を代表し、若干の
質問をいたしたいと存じます。(
拍手)
佐藤
内閣の安全保障問題に関する見解は、国会論議でも明らかなように、しばしば混迷し、矛盾し、統一を欠いているのであります。
最近、外務省は、「日米安保条約の問題点」という統一見解を公表いたしました。それに続いて、下田外務次官が弁解の付言をいたしました。さらに昨日は、外務省が同問題に対する追加発表をいたしました。一体これでは、
政府としての定見があるのかどうか、まことに目まぐるしいほどの動揺を示しているのであります。
本来、かかる安全保障という国の基本に関するこの種の重要問題は、当然
政府の責任において公式発表をすべきであると思うのでありますが、それにもかかわらず、まず出先の外務省に発表させておいて、われわれや
国民の反応を見ようなどという魂胆は、まことに、こうかつ、無責任きわまる態度といわねばなりません。(
拍手)
総理は、この外務省の見解をどう思われましょうか。
政府の公式見解として責任を持たれるでありましょうか、まず、この点をお伺いいたします。
安保条約
改定以来、内外の情勢には、多くの基本的な変動がありました。米ソ
関係、中ソ
関係の変化、アメリカの極東における核戦略体制の質的な強化、ベトナム戦乱、中国の核実験など
一連の激動が続いております。日本を取り巻くこのような諸情勢の激動をどのように評価し、どのように把握するかは、国の安全保障を考える場合の最も
基礎的な問題であります。
安全保障は、すぐれて相対的なものであり、このように激動しておる世界とアジアの情勢の中において、日本が平和と安全を求める道は、決して固定的なものであってはなりません。脅威に対する軍事偏重の対決は、相手方にも必ず同様の反応を起こし、脅威の実体は自動的に膨張するという悪循環を繰り返さざるを得ないのであります。みずからが、まず平和的な対話の姿勢をとり、対立緩和の条件をつくり上げる努力をすること、これが安全保障外交の基本ではないかと思うのであります。
しかるに、日本
政府は外務省見解にも見られるとおり、激動し、発展する諸情勢に見合って、長期の展望を持ち、平和外交を積極的に展開しようとする意欲は全く見られず、日本の安全保障を単に軍事的視野の中だけで対応しようとし、日米安保体制を不動のものとして固定化し、沖縄の同胞を見放し、日本
国民を戦争の危険にさらす対米従属の姿勢を依然として続けようとしておるのであります。
かくして、日本の自衛隊は、一次防から二次防、三次防へと、質量ともに増強され、今日では、往時の帝国陸海軍をはるかにしのぐ戦力となっているのであります。
そこで、国防
会議の
議長として三軍の最高指揮官である
総理にお伺いをいたしますが、御承知のとおり、防衛庁では、二次防に引き続いて三次防
原案ができ上がっております。ところが、三次防
計画実施中に
現行日米安保条約の期限である一九七〇年がまいります。したがって、その安保条約がどうなるかは、三次防にとっても重要な影響があるはずであります。外務省見解では、そのまま存続させることが必要であるといい、また、自民党の安全保障調査会は、
現行内君のまま十
年間の期間延長をきめられたようであります。
総理は一体どのようなお考えでありましょうか。新しく期限、条件等を付して特別安保条約の形に再
改定し、長期固定化の方向をとられるのか。それとも、全然条約には手を触れずに、一片の日米共同声明などの形で自動延長し、無期限化の方向をとられるのか、この際明確にしていただきたいのであります。(
拍手)
政府は、ついに、わが党の追及により、
現行の安保体制がアメリカの核戦力の抑止力によって保持されている事実、すなわち、アメリカの核のかさで守られている日本の現実を顕在化し、認知されたわけでありますが、
総理は、
現行の安保体制がすでに完全に核安保体制であることを率直にお認めになりますか、あわせてお伺いをいたします。
冒頭にも申し上げましたとおり、佐藤
内閣の核安保問題に関する見解は全く混乱していると思うのであります。さきの外務省見解は、その混乱、矛盾をまさに代表するものといわなければなりません。結論として、佐藤
内閣の安全保障に関する論理構造は次のとおりになるようであります。すなわち、日本の防衛は最終的にはアメリカの武力にたよることが必要かつ現実的である。アメリカの武力は、その巨大な核戦略兵器を根幹としている。したがって、日本の防衛にとって、核兵器は現実に必要であるということに尽きるようであります。この点ではまことに論理明快であります。ところが、その次がごまかしになってまいるのであります。すなわち、アメリカの核のかさに入りながら、核兵器は持ち込まないというのであります。核のかさに進んで入りながら、核兵器の持ち込みを拒否するということは明らかに論理の矛盾であり、現実もまた、その矛盾を明白に証明しているのであります。一方において、安保体制を維持、発展させ、アメリカの核のかさにたよっていく政策と、他方で、核のかさに庇護を求めるのは甘い考えだとして、大国に核軍縮を訴えていこうという政策とは、はたして実際にはどう結びつくのでありましょうか。また、この二つの政策のギャップをどう埋めていくつもりでありましょうか。この点をひとつはっきりしていただきたいと思うのであります。
さらに
政府は、たびたび国会において、科学技術の発達により、自衛の目的と限度に沿ったものができるようになれば、理論的には、そのような核兵器保持は憲法違反にはならないという見解をあらかじめ明らかにしておいて、いざ核武装というときの口実と抜け道らしいものをちゃんと用意しているのであります。まことに周到といわねばなりません。一体、自衛の目的と限度に沿った核兵器とはどんなものでありましょうか。このような
政府の姿勢からすれば、三次防で採用を予定されておりますナイキハーキュリーズあるいはターターなどは、核弾頭、通常弾頭を併用できるミサイルでありますから、非常に重要な意味を持ってくると思うのであります。
かくして、
政府は、日本の防衛に核兵器は必要であるし、核兵器の導入は自衛のためなら違憲ではないことをあらかじめ明白にしながらも、いまのところは核兵器を公然と持ち込み得ないでいるわけであります。憲法九条を平然と踏みにじる
政府が、では、なぜ公然と持ち込み得ないでいるのでありましょうか。それは、広島、長崎、ビキニの悲惨な体験を持つ日本
国民の、原水爆は絶対にいやだという感情と世論が、その持ち込みを頑強に拒否しているからであります。(
拍手)したがって、その
国民感情がついえ去ったら、核兵器持ち込みの唯一の歯どめはなくなるわけであります。ここに目をつけた日米両国
政府が、いまやっきになって努力しているのが、核に対する日本人の体質的な恐怖感をじわじわと麻痺させていく方法であります。たび重なる原子力潜水艦寄港などが、そうした日本人の核アレルギー体質に対する予防接種の役割りを果たしているのを見れば、その方向はまことにはっきりしているのであります。全く
国民をごまかし、愚弄するもはなはだしいといわなければなりません。(
拍手)しかし、事は国の命運にかかわる重大な安全保障問題であります。この安保問題で
政府独特のなしくずし的処理は絶対に許されません。もし以上の見解が間違っていないとするならば、いま日本は何をなすべきか、また何をなし得るかを真剣に考えるときがきたのではないかと思うのであります。たとえば、一つ、核抑止政策を徹底的に批判し、いかなる核抑止政策にも加担しないこと、また協力しないこと、二つ、核兵器持ち込みを単に
政府見解だけでなく、国会で議決すること、三つ、核拡散防止条約をめぐって、最近非同盟八カ国が米ソの妥協案として
提案し、すでに
可決されました決議案の最後の項目にも取り上げられているところでありますが、アジア・太平洋地域における非核武装地帯設置に努力する旨全世界に宣言すること。以上のような具体的措置は、
政府がやる気になれば直ちにできる措置であります。これらの点に関する
総理の御見解はいかがでしょうか。
以上が、三次防と一九七〇年に関する
質問であります。
第二に、最近公表されたラスク米国務長官の対中国政策十項目に対する
総理の評価をお伺いいたします。
第三に、ベトナム戦乱、特に中国の核保有等、アジアの新しい情勢に関連して、三次防では従来の日本防衛に関する基本構想に何か新しい修正なりあるいは特別の措置を考えられておるかどうか、これをお伺いいたします。
第四に、二次防の前文は、その中で「わが国に対し起こりうべき脅威に対処して、有効な防衛力」云々と述べているのであります。対処するからにはその実体がなければなりません。また「起こりうべき」とあるからには、その可能性がなくてはなりません。一体脅威の実体とは何であるのか、また脅威の可能性ははたしてあるのかどうか、これを明確にしていただきたいのであります。この点と関連し、中国の核保有はわが国に対し脅威の実体となるのかどうか、あるいは脅威の可能性となるのかどうか、あわせてお伺いをいたします。
第五は、防衛庁の省昇格問題についての御見解をお伺いいたします。
以上が
総理に対する
質問であります。
次は、防衛庁長官にお尊ねいたします。
第一は、三次防の新構想と特徴点についてであります。長官は過ぐる国会の
答弁で、中国の核保有の可能性に対し、三次防では何か特別の措置を考えなければならないであろうという意味の言明をされているのでありますが、特別の措置の
内容はどのようなものでありましょうか、三次防の新構想と関連をして、まずこれをお伺いいたします。
次は、三次防の
予算でありますが、二兆七千億と二次防の倍増が予定されているようであります。長官は、三次防最終年度の
国民総生産、総所得をどう想定され、防衛費はその何%になるのか、これを明らかにしてほしいと思います。
次は、三次防の特徴点でありますが、特に考えられる新兵器、たとえばナイキハーキュリーズあるいは次期戦闘機FX、次期ジェット練習機TX、次期輸送機CXなどの機種決定についてお伺いをいたします。
第二は、米国防総省ブリック調査団の来日とも関連して、バーターによるベトナム特需構想の結末はどうなったのでありましょうか。
第三に、陸の自衛官の定数を、三次防では、二次防に引き続き十八万にされるようでありますが、二次防では、十八万の定数充足をあきらめ、十七万一千五百名に減らしているのであります。それでも、長官御承知のとおり、その充足率は八割程度であります。はたして、十八万の定数をどのような
計画と方法で確保されようとするのか、長官にその自信がおありかどうか、これをお伺いいたします。
次は、通産大臣にお尋ねいたします。
アメリカのMAP打ち切りに伴い、兵器導入国産化の要請が防衛産業界から猛然と起こっております。かつての死の商人の
ごとく、防衛庁に圧力をかけ、ひしめき、激しい売り込みに狂奔しているのであります。そしてその間、例によっていろいろの黒いうわさが流れているのであります。大臣は、三次防と防衛産業の関連並びにそのコントロールをどのようにお考えになっているのか、これをお伺いいたします。
次に大蔵大臣にお尋ねいたします。
三次防では、総額二兆七千億の
予算が見込まれておりますが、公債との
関係はどうなりましょうか、これをお伺いいたします。
最後に、実は会計検査院長にお伺いをしたいところでありますが、本
会議答弁ができないそうでありますので、大蔵大臣にかわって
答弁をしていただきます。過ぐる二月十八日の
予算委員会において、私は、航空自衛隊の竜作戦に関連し、自衛隊の不正、不当な
予算の流用、乱脈きわまりない
予算執行について、会計検査院の再調査を要請したのであります。調査の結果は、はたして私が指摘したとおりであったかどうか、その御
報告をお願い申し上げまして、私の
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔国務大臣椎名悦三郎君
登壇〕