○兒玉末男君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました
野菜生産出荷安定法案につきまして、佐藤
総理及び
関係各
大臣に質問を行ないたいと思います。
本
法案は「野菜農業の健全な発展と
国民消費生活の安定に資する」とありますが、まずもって、今日この
法案を出すに至った背景、すなわち、戦後の
日本経済の高度成長過程において消費者物価の上昇と野菜価格がどのような
関係にあるかを
検討してみる必要があります。
消費者物価は、いまさら申し上げるまでもなく、歴代
政府の失政によって上昇の一途をたどり、いまや
国民の日常生活に重大な脅威を与えているのであります。これを数字で申し上げますと、
昭和三十五年を一〇〇として、総合で、
昭和四十年末においては一三七%に至っております。特に、消費者物価の上昇に対して最も深い
関係を持っている食料品が全体の物価騰貴に対して占める寄与率は、毎年実に五〇%に及んでいるのであります。中でも野菜は、
昭和三十八年を除いて、対前年度価格上昇率、寄与率ともに一〇%をこし、食料品の価格上昇の割合から見ますと、その中の最高にあり、魚介類とともにその双壁をなしております。
わが国は、フランス等と並んで、世界でも有数の野菜消費国であり、一人
当たりの
年間野菜消費量は実に百二十キロに及んでおります。この膨大な野菜を日常必要とする
日本の実情から見まして、野菜の価格が
国民生活に与える影響がいかに大きいかがうかがい知られるのであります。にもかかわらず、今日まで野菜の価格に対する
対策が放置され、そのために、主要野菜の消費量はあまり変化がないにもかかわらず、価格につきましては、
昭和三十五年を一〇〇とした場合、一九六・六%、実に二倍も高い上昇率を示しているのであります。このことは、現在まで野菜に関しては全く政治的配慮が払われず、
国民生活に最も影響の大きい問題に
政府がきわめて冷淡であったことを物語っております。(
拍手)
総理は、
国民が求めるものは勇気をもって実行すると言われておりますが、この重大な問題を現在まで放置されましたことは、重大な政治
責任があると
考えます。これらの情勢の中におきまして、ようやく本
法案が
提出されたのでありますが、
総理は、この重要
案件を現在まで放置した
責任をどのように
考えておられるか、まず基本的な政治姿勢について
総理の御答弁をいただきたいのであります。(
拍手)
以下、本
法案の
問題点について順次質問いたします。
まず農林
大臣にお伺いしたいのでありますが、第一は、本
法案の
目的は「野菜農業の健全な発展と
国民消費生活の安定に資する」とありますが、現況は、野菜価格が高いにもかかわらず生産農家の手取り額はきわめて低く、価格高騰の主因は流通経費の拡大にあります。たとえば、中部管区行政監察局の野菜価格の追跡調査の結果にもあらわれておりますように、小売り価格を一〇〇として、生産農家の手取りはわずか二二・六%にとどまり、小売りマージンの三二・七から六六・二%を筆頭に、中間マージンが実に七七・四%を占めておりまして、農家から小売りまでの価格の倍率は、実に二倍から五倍にも達しております。
これらの
実態から
考えますと、生産農家の手取り価格を引き上げ、消費者価格を引き上げるという本
法案の
目的達成のためには、中間マージンを少なくすることが先決であるが、
大臣は、このことを
法案に
規定せず、ただ単に野菜の産地指定と計画出荷のみで本
法案の主
目的が
達成されるとお
考えになっておるのかどうか。(
拍手)
第二は、消費者価格の安定をはかるためには、生産と需要の均衡をはかることが大切であるが、この関連をどのような形で把握し、消費者価格の高騰を防ごうとされるのか。
第三点は、野菜は天候の変化に大きく支配されます。今日まで、豊作貧乏ということばが示すとおり、豊作のときは価格の暴落で農民を泣かせ、凶作のときは価格の高騰で消費者を苦しめてまいりました。このようなことをなくするための、生産者から消費者に至る過程での市場への出荷調整などはどのように
処理をされるのか。
第四点は、産地指定はどのような基準とどのような条件によって行なうのか。また、
対象品目が限定かつ大型化されているので、強力な価格保障がなければ生産の拡大と安定した供給が不可能だと
考えますが、価格保障をどのようにお
考えなのか。あわせて、大型産地の安定策についてお伺いしますが、品種の統合、産地を構成する個々の農家の
技術の標準化など、早急に
改善のむずかしい問題の
処理をいかにされるのか。産地の大型化に伴って、基幹施設である共同選果場、共同防除、かん水施設などの建設が必要であるが、これらの諸施設に対してはどのようにお
考えであるか。
第五に、現在の出荷系統の実情をその販売量で見ます場合に、農協
関係三割、青果団体二割、商人とその団体二割、個人三割となっております。これを共同出荷という形にする場合には横の調整がとれるかどうかという懸念が生じますが、ただ単なる勧告措置だけで十分の効果を期待できるのかどうか。
第六に、指定消費地域について、これを四大消費都市地区に限定したことに関して伺いたいのであります。物価安定のための総合政策におきましても、人口十五万以上の都市に中央市場を設けることを法的に規制しているにもかかわらず、現実にはこれが十分に
整備されていない状況であります。このような状況において指定消費地域を限定した場合、地方都市地域では効果が期待できず、特に指定産地地域では需要と供給のバランスがこわれ、生産地周辺において野菜の価格が高騰するという現象が出てくる可能性が濃厚であります。これらの懸念はどのように解消されるのか、また、地方都市の価格安定については確信がおありなのかどうか。
第七点は、農産物の流通統計調査について伺いますが、野菜指定産地と主要市場との流通についての緊急集計や、産地別の出荷計画量の把握はきわめて重要と
考えますが、これについてどのような措置をとられようとしているのか。野菜生産量の調査に関連し、本
法案対象の六品目だけでなく、広範な作柄概況調査が重要であると
考えますが、調査規模の
拡充などについてどのような
対策があるのか。
第八に、価格補てん
制度の問題についてお伺いします。現在、タマネギ、キャベツについては価格の補償がなされておりますが、これも、
現行制度では
検討の余地があり、完全でないことは御承知のとおりであります。本
法案に盛られました補てん
制度は、単にこれを法制化したにすぎないと
考えますが、これが拡大年次計画等はつくられているのかどうか。これに関連しまして、出荷調整、いわゆる計画出荷がなされるような組織が
整備されれば、価格は安定し、価格補てん
制度はさほど重視しなくてもよいとも
考えますが、ただ、豊凶作の差の激しい野菜について、もし生産過剰という
事態が生じ、これを廃棄処分にした場合には、当然価格の補償がなさるべきであると
考えますが、この点どのようにお
考えか。
さらに、価格補てんについては、中央市場を通されるものだけに適用されると聞き及んでおりますが、流通の
簡素化をはかり、消費者に安定価格で野菜の提供を行なおうとするものについては価格補てんが行なわれない点を、どうも納得ができないのであります。たとえば、学校給食や工場給食などの大口需要者が計画的な直接取引を行なう場合など、当然その
対象とすべきだと思いますが、いかがですか。
第九点は、この
法案については国からの財政援助が明記されておりませんが、財政的にはめんどうを見るのか見ないのか、この点を明らかにしていただきたい。
最後に、野菜価格は、各市場間において、出荷量の多寡、あるいは扱い品目等によって価格に相違が生ずる場合があると
考えますが、市場相互の均衡を保つためには、適正な価格基準をどのようにされるお
考えか、下落最低基準等を設けられる
考えがあるのか、お伺いしたいのであります。
次に、経済企画庁
長官にお伺いいたします。
物価安定の方策として、ボランタリーチェーン、すなわち、生産者と直結した小売り連鎖店、並びにそのための卸売り総合センターを大都市周辺につくり、国が指導や金融あっせん等を行なうという構想をどのようにお
考えになっているのか。
第二に、現在の野菜の価格は、生産者価格と小売り価格に非常に大きな格差があります。最近の実例を申し上げましても、大根の場合等では約四倍から五倍、キャベツの場合においても一キロ
当たり約四倍の高値であります。せっかくつくられる生産出荷安定の
施策も、生産並びに出荷の調整と需要との
関係を正常にする方策に加え、輸送、貯蔵、加工等の全般にわたる、いわゆる生産から小売りまでの流通
機構のすべてに及ぶ改革がなされない限り、所期の
目的は
達成できないと
考えます。経企庁としては、この機会に生鮮食品等に関する流通
機構を完全なものに改革すべきだと
考えますが、これに対する
長官の御答弁を求めます。
第三に、外国の農産物で果実、野菜及びその加工品の輸入が増大の傾向にあり、このことが国内の生産者並びに中小企業を圧迫し、ここにも自由化がもたらした弊害があらわれておりますが、外国産農産物の
日本市場への大幅進出に対してどのように対処されるつもりか、その方策をお伺いします。
次に、運輸
大臣にお伺いいたします。
生鮮食品、特に野菜は、御承知のごとく、長
期間これを同じ
状態で保存することがむずかしく、そのためには輸送時間を短くすることが要求されるわけでありますが、輸送時間の短縮とあわせて、品質の低下を防ぐための冷蔵庫などの新・改造など、生鮮食料品の輸送
体制の改良にはどのような
施策をお持ちであるか、お伺いいたします。
次に、
科学技術庁
長官にお伺いいたします。
コールドチェーンの構想は、冷蔵船輸送とともに、今後の生鮮食品、中でも野菜類、肉類の安定した供給の方策として注目を浴びているのでありますが、聞くところによりますと、これを
民間資本をもってする計画もあるといわれておりますが、この種の計画は、本来国の力で行なってこそ初めてその真価が発揮できるものであり、営利企業として行なうべきではないと
考えるのでありますが、このことも含めて、コールドチェーンの一連の構想並びにその将来について、お
考えを明らかにしていただきたい。あわせて、貯蔵、加工部門の構想も承りたいのであります。
以上、十五項目の
問題点を提起いたしましたが、いまや、日を追って上昇する物価と、その抑制、安定を怠った
政府並びにその
政府の
施策に対し、
国民のすべてが激しい憤りを持っていることに思いをはせるべきであります。わが党が従前より主張しているとおり、安定した生産を確保するための生産農民の
保護、流通
機構の改革、卸売り、小売り業界の再編成など、いまに至っては時期おそしの感もありますが、これらの強力な
施策がなされない限り、生鮮食品を中心とする物価の安定は期待できないのであります。
この観点から、
総理並びに各
大臣は、この
法案を野菜に関する限り所期の
目的を完全に達し得る
法律となすべく、そのためのあらゆる行政措置、指導を行なわれるよう強く要望いたしまして、私の党を代表しての質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣佐藤榮作君
登壇〕