○只
松祐治君
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
委員長報告のありました
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案、及び
物品税法の一部を
改正する
法律案に
反対の
討論を行ないます。(
拍手)
政治の要諦が
予算の編成とその行使にあることは申すまでもないことでございます。したがいまして、
予算委員会は国会の
代表的存在としての討議がなされます。しかし、その
予算がいかに重大であろうとも、その
予算は税収の裏づけがあって初めて
予算たり得るものでございます。具体的には、いわゆる税の
調査、
課税、徴収がいかに行なわれているかということであると申せましょう。したがって、またこれを演繹いたしますならば、
税制とその
税務行政がいかなる姿にあるか、民主的であり近代的であるかどうかということが、直ちにその国の
政治が民主的であり近代的であるかどうかということにも通じるといっても過言ではありません。(
拍手)逆に、
税例とその
行政が非民主的、非近代的であること、すなわち、
近代税制、
税務行政の基本である公平、応能、
法定をはじめ、
実質課税、
権利確定主義、信義誠実などの原則がほとんど貫かれず、踏みにじられてしまっていれば、いかに声を大にして
政治の
民主化、
近代化を訴え、愛情ある
政治を、など幾百回唱えようとも、それは
国民のための
政治からほど遠いものといわざるを得ません。(
拍手)
私が
討論しようとする
租税特別措置法は、まさにそのとおりであり、大
資本擁護、山林、
配当所得を持つ
大金持ち中心の、全く非民主的、非合理的、非近代的なものであります。(
拍手)
税金が、
支配者と被
支配者の、
強者と弱者の
権力争奪の象徴的なものであり、現在のわが国が
独占資本を
中心とする
資本家階級の
支配下にあることをいかほど私たちが認めようと、一九六六年の現在、それはあまりにも極端なものであり、
強者の専横のそしりを免れることはできません。希代の悪法でございます。さすがに、
政府の
影響力の強い税調でさえ、
現行特別措置法にたまりかねて、たびたびその改廃を要望し、昨年度の
長期税制報告では、強くその整理と縮小を勧告してまいっております。ところが、これらの勧告や強い
国民の
反対世論には馬耳東風、いや、
馬耳無風でございましょう。
昭和二十五年に
措置法が
改正されてから年々増大の一途をたどり、ついに現在四十六
項目にも達し、本年度さらに
経済危機克服を
理由に九
項目の新設を行なおうとしているのでございます。盗人たけだけしいと言おうか、横暴と言おうか、全くむちゃくちゃでございます。(
拍手)本年新設しようとしている
措置のおもなものは、みずから招いた
経済の失敗を、
経済危機克服の名のもとに全
国民の責任に転嫁しようとするもので、昨年の
株式配当の
分離課税とともに、悪質きわまりないのでございます。
すなわち、その一つは、
資本金一億円以上の大会社が自己
資本を一%以上
向上させた場合には、その
向上割合に応じて、一%から一〇%の間、その適用
事業年度の
法人税の額に乗じて計算した金額を控除しようとするものであり、この金額は九十六億円にのぼります。その二は、セメント、紙パルプ、織物機など、特定の
産業のみの
スクラップ化に対し、その
スクラップ化を行なった機械のスクラップではなく、取得した当時の価額の一〇%もの金額を
所得税額または
法人税額から控除するもので、この金額は二十九億円。さらに悪質なものは、
企業が二年以内に
合併した場合、その後三年間
法人税額を、また
登録税、引っ越し不動産税などをそれぞれ引き下げようとするものであり、その金額は三十億円であります。このように、大
法人にはかゆいところに手の届く、全く至れり尽くせりの減税でございます。
さらに、現在
資本金一億円以上の
法人で欠損申告をしているものが千三百社に及んでおります。これらの大
企業は交際費だけでも五千三百億円を支出しており、税金のがれに利用されておる額は多大であります。これらの交際費の整理、
政治献金、寄付金等の整理も断行せず、
特別措置をますます
拡大することはもってのほかでございます。(
拍手)
高度
経済政策の失敗とその被害は、何も大会社、大
資本家のみではありません。むしろ、弱い
中小企業者がさらに強く被害を受けており、
国民大衆個々の家計は、相次ぐ物価の上昇によって全く破綻に瀕しているのでございます。もし
特別措置の新設を必要とすれば、それはまず第一に勤労
国民であり、次いで中小零細
企業者であり、これらを顧みることなく大
法人のみ行なうとは、本末転倒もはなはだしいものでございます。(
拍手)
このように不法な結果、本年の
特別措置による滅免税、すなわち、合法的な脱税とでも申して差しつかえない金額は、国税で二千二百二十億円、この国税の地方税へのはね返り大言三十九億円、地方税独自の
特別措置七百五十六億円、合計何と三千六百十五億円ものばく大な額に達するのでございます。
昭和二十五年以来、国税関係の単純合計は一兆八千八百四十九億円であり、地方税関係を総合計すると三兆円にも及び、さらに、インフレの進行による貨幣価値の下落指数をかけるならば数兆円にも達することになりましょう。一方、エンゲル係数四七にも達し、低賃金にあえぐ勤労
生活者、すなわち、月給、日給月給、完全日給者などからは、一銭ものがすことなく一〇〇%の事前徴収の源泉
所得税を取り上げ、さらに、その低賃金を補う主婦の零細な家庭内職までも徴税を強行しているではありませんか。中小零細な
事業所得者に対しても同じようなことが言えます。
また、同じ
法人税でも、大
法人は、山陽特殊鋼に見られるように、商法上は、利益
法人として一割から一割二分の配当をし、税法上は、欠損
法人として六年間も納税しないというように、粗雑な
調査の上に、さらにこのように多くの
特別措置の恩恵を受けるが、中小
法人、特に
事業所得税のきびしさに耐えかねて形式上
法人化をしている、とうちゃんが社長、かあちゃんが専務、じいちゃんが常務の、三ちゃん農業ならぬ三ちゃん会社の同族会社は、きびしい
調査と厳格な
課税をしいられながら、ほとんど
特別措置の適用を受けることができない状態でございます。
このような結果、
昭和三十六年度の
法人実効税率を見ますと——これはなかなか新しいものを出さないのです。十億円の所得
法人は三一・一五%、一千万円の所得者は三二・四四%、五百万円で三一・七七%という、大
法人より中小
法人がより多くの税金を納めるという、腹立たしいというよりも、ナンセンスな事態を生じ、大
法人と中小
法人との税率が多少緩和されてまいりました今日でも、十億円もうかっておる会社も、一千万円の所得の会社でも、その実効税率はほとんど大差のない、せいぜい一、二%でしかないという状態でございます。アメリカでは二二・五%対五七・五%、英国では三八・七九%対五三・五%という中小
法人対大
法人の適正なる格差は、わが国においては見ることができないのでございます。
さて、自局党
政府は、口を開けば、わが国は世界で一番高度成長を遂げている国であるとか、あるいは、世界の
資本主義国の三本の柱の一つであるとかPRにつとめております。わが党は、それならば、当然に、あるいは国勢に対応して、わが国の
行政のすべての点において他の
資本主義国家に見合う施策を行なうべきであり、この
租税特別措置法も、さきの米英の
法人の実効税率の引例にも見られるように、少なくとも他の
資本主義国家並みに引き戻すことが緊要であるにかかわらず、引き戻すどころか、ますます
拡大しようとしているのであります。われわれは、ここに、冒頭に申し述べましたように、
税制を通じて、明らかに自民党
政府、佐藤
内閣の反動性の実体を見出すことができるのでございます。(
拍手)
しかし、人間は永久に眠り続けるものではございません。急騰する物価問題で、
政治に無関心だった御婦人や、いわゆる中間層の人々もまた、急速に
政治への関心を示してきていることは御存じのとおりでございます。
課税の重圧、徴税のきびしさにたまりかねた
中小企業者も、徐々に税への関心を示してきております。天引きされて、ほとんど無関心というより、その慣習になれて気づきさえしなかった労働者も、重税
反対のスローガンを掲げるようになってまいりました。いつまでもかかる無謀な
特別措置、専横な租税体系が続けられると思い上がっていたならば、それは
資本主義陣営の大きな誤算となってあらわれるでありましょう。
私は、このことを強く警告し、本年度の新設法に
反対し、
租税特別措置法のすみやかなる改廃を強く求めてやみません。(
拍手)
第二に、
物品税法の
改正について
反対の意見を申し述べます。
間接税は、直接税に比べて
国民の負担感の鈍い、したがって取りやすいものでございます。朝起きて、電気、ガスをつければ電気ガス税、たばこをのむ、マッチをつけると専売益金、
物品税、通勤にバスに乗るとガソリン税、コーヒーを飲むと
物品税、砂糖
消費税、夜一ぱいやると酒税、全く寝てもさめても税金でございます。しかし、
国民はほとんど気づいておりません。これらの間接税のほとんどがまた、億万長者も日雇い労務者も保護家庭の者も同じ負担率であり、いわば所得に対する逆進性のきわめて強いものであります。したがって、この間接税の逆進は、応能、公平、累進という租税原則にもとるものでありますので、先進諸国家では順次直接税
中心の
課税体系へ移行してまいっております。このことは、当然に
課税の新設、改廃にあたっては十分なる考慮がなされなければならないのであります。
本年度
改正されようとしている
物品税は、その引き下げと廃止であり、部分的には賛意を表するものもありますが、前述の観点からするならば、貴金属、奢侈品などにはもっと高額を適用し、マッチ、
清涼飲料水、普通化粧品など、
国民が日常使用しているものなどはすなおに廃止すべきであります。また、世界一高いビールや酒の酒税、たばこの専売益金なども、今日のように大幅な
物品税の改廃を行なうときには、現在までの
大蔵委員会におけるたびたびの
政府の答弁から見られますように、何らかの考慮が払われるのが当然であるにかかわらず、何一つその方向さえあらわれていないことは、わが党のきわめて遺憾とするところであります。(
拍手)
労働者、農民、
中小企業者など、広く勤労
国民大衆の立場に立つわが党といたしましては、すみやかに一般
生活必需の
物品税の
軽減と撤廃を強く要求いたしまして、私の
反対討論を終わります。(
拍手)