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1966-03-24 第51回国会 衆議院 本会議 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十四日(木曜日)     —————————————  議事日程 第十八号   昭和四十一年三月二十四日    午後二時開議  第一 所得税法の一部を改正する法律案内閣   提出)  第二 法人税法の一部を改正する法律案内閣   提出)  第三 相続税法の一部を改正する法律案内閣   提出)  第四 関税定率法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  第五 関税暫定措置法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第六 関税法等の一部を改正する法律案内閣   提出)  第七 関税法等の一部を改正する法律施行に   伴う関係法律整備等に関する法律案内閣   提出)  第八 住宅金融公庫法及び産業労働者住宅資金   融通法の一部を改正する法律案内閣提出)  第九 日本住宅公団法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第十 踏切道改良促進法の一部を改正する法律   案(内閣提出)  第十一 海外移住事業団法の一部を改正する法   律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議員請暇の件  日程第一 所得税法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第二 法人税法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第三 相続税法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第四 関税定率法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第五 関税暫定措置法の一部を改正する法   律案内閣提出)  日程第六 関税法等の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第七 関税法等の一部を改正する法律の施   行に伴う関係法律整備等に関する法律案   (内閣提出)  日程第十 踏切道改良促進法の一部を改正する   法律案内閣提出)  日程第十一 海外移住事業団法の一部を改正す   る法律案(内閣提出)  国民年金法の一部を改正する法律案(内閣提   出)  の趣旨説明及び質疑  住宅建設計画法案(内閣提出)の趣旨説明及び質  疑    午後二時八分開議
  2. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  議員請暇の件
  3. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) おはかりいたします。  議員松田竹千代君から、海外旅行のため、四月五日から五月四日まで三十日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ————◇—————  日程第一 所得税法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第二 法人税法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第三 相続税法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第四 関税定率法の一部を改正する法律   案(内閣提出)  日程第五 関税暫定措置法の一部を改正する   法律案内閣提出)  日程第六 関税法等の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第七 関税法等の一部を改正する法律の   施行に伴う関係法律整備等に関する法律   案(内閣提出
  5. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 日程第一、所得税法の一部を改正する法律案日程第二、法人税法の一部を改正する法律案日程第三、相続税法の一部を改正する法律案日程第四、関税定率法の一部を改正する法律案日程第五、関税暫定措置法の一部を改正する法律案日程第六、関税法等の一部を改正する法律案日程第七、関税法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案、右七案を一括して議題といたします。     —————————————  所得税法の一部を改正する法律案  法人税法の一部を改正する法律案  相続税法の一部を改正する法律案  関税定率法の一部を改正する法律案  関税暫定措置法の一部を改正する法律案  関税法等の一部を改正する法律案  関税法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案     —————————————
  6. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 委員長報告を求めます。大蔵委員長三池信君。     —————————————   〔報告書は本号(二)に掲載〕     —————————————   〔三池信登壇
  7. 三池信

    三池信君 ただいま議題となりました七法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  初めに、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案のおもな内容は次のとおりであります。  まず第一に、中小所得者を中心とする所得税負担軽減をはかることといたしております。すなわち、基礎控除及び配偶者控除をそれぞれ一万円引き上げて、十四万円及び十三万円とするほか、扶養控除に関する年齢区分を廃止して、一律六万円とするとともに、給与所得者に適用される給与所得控除については、定額控除を一万円引き上げて四万円とし、また、二〇%または一〇%の控除率を適用する限度額をそれぞれ十万円引き上げ、かつ給与所得控除最高限度額を三万円引き上げて十八万円とすることといたし、さらに中小企業等に適用される専従者控除控除限度額については、青色申告者の場合には年齢のいかんにかかわらず一律二十四万円に、白色申告者の場合には十五万円に、それぞれ引き上げることといたしております。  次に、所得税税率につきましては、課税所得三百万円以下の階層に適用される税率緩和して、中堅所得者負担軽減をはかることといたしております。  また、生命保険料控除については、全額が控除される保険料限度額を五千円引き上げて二万五千円とするほか、寄付金控除控除対象限度額を、所得の二〇%から三〇%に引き上げることといたしております。  第二に、所得税法整備合理化をはかることといたしております。すなわち、通勤手当について一般の通勤に必要であると認められる金額を非課税とするとともに、勤労学生控除及び寄付金控除対象範囲拡大予定納税を要しない予定納税基準額限度額引き上げ、並びに更正請求期間延長を行なうなど、所要規定整備をはかることといたしております。  続いて、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案のおもな内容は次のとおりであります。  まず第一に、法人税率の引き下げを行なうことといたしております。すなわち、普通法人留保分に対する税率を三七%から三五%に引き下げるとともに、特に資本金一億円以下の法人については、所得金額のうち年三百万円以下の部分に対する税率を三一%から二八%に引き下げるほか、これに見合って、協同組合等留保分に対する税率及び清算所得に対する税率も引き下げることといたしております。  第二に、同族会社留保所得課税についての控除額引き上げることといたしております。すなわち、同族会社留保所得を計算する場合の控除額は、現在、所得金額の二五%または年百万円のうちいずれか大きい金額とされているのでありますが、これを所得金額の三〇%または年百五十万円のうちいずれか大きい金額引き上げることといたしております。  第三に、法人税法整備合理化をはかることといたしております。すなわち、損金に算入できる寄付金範囲更正請求期間及び税額の還付について所要改正を行なうことといたしております。  続いて、相続税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案のおもな内容は次のとおりであります。  まず第一に、相続税負担軽減をはかることといたしております。すなわち、遺産にかかる基礎控除を、被相続人については二百五十万円から四百万円に、法定相続人一人については五十万円から八十万円に、それぞれ引き上げるとともに、相続人のうちに、婚姻期間が十五年をこえる配偶者がある場合には、遺産額から十五年をこえる年数一年につき二十万円、最高二百万円の特別控除を行なう制度を新たに設けることといたしております。  また、相続税税率につきましては、中小財産階層税負担軽減重点を貫きつつ、最低税率の一〇%から最高税率の七〇%の全般にわたり、その累進度緩和をはかることといたしております。  第二に、贈与税負担軽減をはかることといたしております。すなわち、さきに述べました相続税税率緩和と関連して、課税価格千五百万円以下の贈与財産階層に適用される税率を引き下げるとともに、婚姻期間が二十五年以上の夫婦周において居住用財産贈与が行なわれた場合には、二百万円まで課税が生じないよう新たに配偶者控除制度を設けることといたしております。  以上の三法律案につきましては、去る一日それぞれ政府より提案理由説明を聴取し、自来、慎重な審査を行ないました。  おもなる論議の内容は、所得税課税最低限基準生計費物価上昇減税給与所得者に対する課税退職金課税企業減税所得減税企業組合に対する課税配偶者控除専従者控除、銀行の既経過未収利息取り扱い等でありましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  かくて、一昨二十二日、質疑を終了し、三案を一括して討論に入りましたところ、日本社会党を代表して平林剛君は、各案に反対の旨を、民主社会党を代表して竹本孫一君は、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案反対相続税法の一部を改正する法律案に賛成の旨を、それぞれ述べられました。  次いで、各案について採決いたしましたところ、いずれも多数をもって原案のとおり可決となりました。  なお、所得税法の一部を改正する法律案に対しましては、全会一致をもって附帯決議を付すべきものと決しました。  附帯決議の要旨は、政府は今後とも各税にわたる減税、ことに所得税重点を置いた減税を積極的に行なうべきであるというものでありまして、これに対して稲田大蔵大臣より、御趣旨の線に沿って努力するとの発言がありました。  続いて、関税定率法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、次の諸点について改正を行なうことといたしております。  すなわち、まず第一は、関税率表における物品分類のための品目表に関する条約に加入するため、関税定率法別表を同条約品目表に適合するよう全面改正を行なうことでありますが、税率については原則として変更を加えないことといたしております。  第二は、最近における経済情勢変化に対応して、ノリ、コール酸等品目については現行税率を引き下げるとともに、砂糖については、その国際価格が高騰した場合に、関税軽減または免除を行なうことができることといたしております。  第三は、輸出振興対策の一環として、保税工場利用促進をはかるため、保税工場におけるスポット輸出の場合の振りかえ免税制度を創設することであります。  第四は、関税について申告納税制度を採用することに伴い、関税課税価格規定につき、申告納税方式に適合したものに改めることといたしております。  第五は、無条件免税対象品目として輸出品に張りつけるため輸入する品質保証ラベル等を追加するとともに、関税の再輸入免税及び再輸出免税制度について税関長所要期間延長を認め得ることとする等、規定整備をはかることとしております。  続いて、関税暫定措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、最近における経済情勢変化に対応して所要改正を行なおうとするものでありまして、  まず第一は、関税暫定税率につきまして、本年度末にその適用期限が到来する百十品目のうち、九十五品目につき適用期限延長をはかるほか、新たに十八品目について暫定税率を設けることといたしております。  第二は、今年度末に期限の到来する重要機械類免税肥料製造用揮発油等にかかる関税還付等十四の関税暫定免除、及び還付制度適用期限をさらに一カ年延長することといたしております。  第三は、都市ガス製造用揮発油について関税還付制度を新設することといたしております。  第四は、関税率表における物品分類のための品目表に関する条約への加入に伴う関税定率法別表全面改正とあわせ別表全面改正を行なうこととしております。  続いて、関税法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、最近における貿易量の増大に対処し、輸入貨物通関事務促進等をはかるため、所要改正を行なおうとするものでありまして、  まず第一は、関税について申告納税制度を採用することといたしております。すなわち、入国者携帯品外国郵便物に対する関税等、特殊なものを除き、関税について現行賦課課税制度申告納税制度に改めることであります。  第二は、保税制度につき全面的な簡素合理化をはかることといたしております。  第三は、最近における外国貿易の実情に顧み、新たに苫小牧港、直江津港、田子の浦港、蒲郡港、尾鷲港、福山港、三田尻中関港、高松港及び八代港の九港を開港に、名古屋空港及び奄美空港税関空港に追加することといたしております。  第四は、とん税及び特別とん税につきましても、申告納税制度を採用し、規定整備をはかることといたしております。  終わりに、関税法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、関税法等改正に関連して所要規定改正をしようとするものでありまして、  まず第一は、関税法改正案において、新たに関税について申告納税制度を採用することに伴い、輸入する物品に対する内国消費税につきましても、従来の賦課課税方式を改めて申告納税制度を採用することといたしております。  第二は、税関における事務処理簡素合理化をはかるため、輸入品に対する内国消費税についての申告輸入申告にあわせて行ない、適用法令課税物件の確定の時期についても、関税の場合と同一にする等、輸入品に対する関税内国消費税の徴収の手続等の一元化をはかることといたしております。  第三は、関税法及び関税定率法改正において予定しております保税工場制度改善策に対応して、保税工場制度利用促進をはかるため、内国消費税に関する法律改正を行なうことといたしております。  以上の関税関係法律案につきましては、昨二十三日、質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、いずれも全会一致をもって原案のとおり可決となりました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  8. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 七案中、日程第一ないし第三の三案につき討論の通告があります。これを許します。平岡忠次郎君。   〔平岡忠次郎登壇
  9. 平岡忠次郎

    平岡忠次郎君 私は、ただいま上程されております所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党を代表して反対討論を行なわんとするものであります。(拍手)  政府は、従来毎年度減税案を策定するにあたりまして、税制調査会答申した減税額を値切ることをもってそのしきたりとしてきたのでありますが、珍しくも今回は、答申を九九%以上のんだ上に、自民党の要望をも上乗せして、平年度国税三千六十九億円、地方税を含めると三千六百二十一億円の減税を行なうことといたしております。確かに福田蔵相の言うとおり、その規模においては戦後最大であり、これまでにない積極減税の意図をうかがうことができます。しかし、減税財源の配分及びその効果という観点から見ますと、質量ともに画期的な大減税といううたい文句を額面どおり歓迎するわけにはいかないのであります。  さて、四十一年度減税案の画期的な特徴は、まず第一に、従来ならば減税に要する財源を税の自然増収に求めることが可能であったし、また減税はその範囲内でのみ行なってきたのでありますが、三十九年以来の経済の停滞に伴い、四十一年度における自然増収はわずか一千百九十億円しか見込めない状況となったので、国債発行によってこれを補うこととした点であります。  第二に、四十一年度の場合は、これまでになく減税による経済的効果が重視されている点であります。すなわち、当面の不況を乗り切るためには、財政面からのてこ入れ策が重視されておりますが、その方法は、単に歳出をふやして有効需要をふやすということだけではなく、減税そのものにも需要喚起不況退治役割りを演じさせることをそのたてまえとしている点であります。  第三に、企業が払う税金を減らすようにしたこと、つまり企業減税にひそかに政府が力を入れた点も今回の減税案の特色の一つとなっておるのであります。すなわち、国税減税総額は、冒頭にも申し上げたとおり、平年度三千六十九億円でありますが、このうち所得減税は千五百五億円、企業減税は千七十七億円と接近して、その比率はおおむね六対四であり、所得税減税第一主義たれという世論に抵抗するという政府の強いかまえがここに見受けられるのであります。  租税負担軽減が、ひとり所得税減税のみにとどまらず、企業減税にも及ぶべきことを一応認めるといたしましても、はたしてこれによって政府が期待しているように景気浮揚力がつくでありましょうか。企業減税による利益の増加は、波及効果の高い投資に向かうべくもないので、内部留保や借入金の返済に充てられることが多くなるのではありますまいか。そうだとすると、結果は需要喚起にはおよそ縁遠いものとなり終わるのであります。  福田大蔵大臣は、所得の源泉である企業減税も必要であるという観点からものを言っておられますが、政府が真に減税需要喚起効果を期待するのであれば、現在の経済情勢のもとであまり効果のない企業減税をやるよりも、その分を直截に所得税のほうに回すべきであると主張せざるを得ないのであります。(拍手)  いま、わが国の経済は完全に危険な曲がりかどに立っています。一昨年来の不況の要因を考えた場合、今後は、過去数カ年間に見られたような、実質一三%というがごとき高い成長を望むことはもはや全く不可能でありますし、また、不況の原因がデフレギャップ、すなわち供給過剰にある以上、それを必要ともしません。そこで、政府のいう財政主導型とは、企業設備拡大よりも消費需要喚起を、生産よりも生活をという消費主導型のパターンを前面に立てて計画されなければなりますまい。  右の観点から、私は、以下、改正案ごとにその反対理由を明らかにしてまいりたいと存じます。  まず、所得税法の一部を改正する法律案に対する反対趣旨を申し述べます。  所得税減税は、世論に押され、なるほど各種控除引き上げ等によって、夫婦子供三人の標準世帯における課税最低限は、現行の五十六万四千円から、初年度六十一万三千円、平年度で六十三万一千円に引き上げられることになりましたし、また、昨年の税調答申に含まれながら財源難理由で見送られた年収三百万円以下の、いわゆる中堅所得層に対する税率緩和も実現されることにはなりました。  では、はたしてこれでよいでしょうか。例を標準世帯のサラリーマンで年収百万円の者にとってみますと、この世帯主が四十一年分として納める税金は、今度の改正によって、現在の四万九千二百十五円から三万七千九百十円に減額されますが、これは月にして九百四十二円、つまり一日分にして三十一円、ピース一個分にも満たない減税額であります。これでは福田大蔵大臣の期待する、ゆとりある家計にはほど遠いのではありませんか。  国民注視物価は依然として騰勢を続け、四十年度の当初見通しにおいて四・五%であった消費者物価上昇率は、昨年末に行なわれた経済企画庁の発表によっても七・七%となっており、これが年度末には八%近くになるであろうことはもはや周知の事実であります。しかもこの騰勢は、引き続き四十一年度においても鈍化しそうもありません。本年一月一日から、すでに米価が八・六%、同じく十九日から私鉄が二〇%、地下鉄が二六・二%上がっており、二月に入ってからは、都の水道料金が三五・四%、三月には、国鉄運賃について、貨物が一二・三%、旅客が三一・二%値上げとなっております。さらに四月からは、国民健康保険本人負担分が、政府計画では二倍にはね上がることになっておりますし、七月からは、封書が五〇%、はがきが四〇%等々、どれもこれも生活費にびしびしはね返ってくるものが、メジロ押しに並んで自分たちの出番を待っているではありませんか。  こう見てくると、はたして政府見通しどおり、来年度物価上界率が五・五%で落ちつくかどうかもはなはだ疑わしくなってくるのであります。かかる物価上昇の展望のもとにおいて、右に述べた程度所得税減税では、すべて減税額物価上昇に食われてしまい、たかだか物価調整減税にすぎないものとなって、物価上昇に対する消極的な防衛効果さえも疑問となってくるのであります。(拍手)  政府は、社会党が主張するごとく、所得税の超大幅減税によって個人の可処分所得をふやし、国民需要の中で五三%の高率を占める個人消費をさらに伸ばすこと、特に減税需要としてはねかえる度合いは低額所得階層において一そう強いということはきわめて明白なところでありますから、なかんずく、この階層減税を集中して消費を伸ばし、これが最終需要増加となって景気を刺激するということに深く思いをいたすべきであります。そしてその方法としては、わが党の主張するがごとく、独身者課税最低限政府改正案の二十二万五千円程度から三十万円程度に、かつ、標準世帯課税最低限を八十万円ないし百万円程度にまで早急に引き上げるべきであります。こうすることは、同時にまた、二千六十五万人に及ぶ所得税納税者の数を約千三百万人に減少させ、徴税事務合理化促進するということにもつながるのであります。  次に、法人税法の一部を改正する法律案に対する反対趣旨を申し述べます。  本改正案内容に関する限り、たとえば中小法人留保所得のうち、年三百万円以下の部分に対する法人税率を三%引き下げて二八%にすることであるとか、同族会社留保所得課税軽減をはかることとしておる等、本改正案内容そのものには、おおむね個別的には反対する理由もないのでありますが、別途提案されている租税特別措置拡大強化の傾向をも含めて検討するならば、所得税軽減政府の掲げる羊頭であって、企業減税重視政府の姿勢がなお依然として抜きがたい習性となっており、現下の国民経済的危機脱却の要請をよそに、スポンサー本位の階級的な小乗的態度にとどまっている政府態度をきびしく糾弾しないわけにはまいりません。(拍手)この点については、最後に総括的な結びとして申し述べることといたします。  次に、第三の、相続税法の一部を改正する法律案に対する反対趣旨を申し述べます。  まず、結論を先に申し上げれば、この相続税減税に振り向けた財源こそ、所得税の一そうの軽減に充てられるべきではなかったかと考えるのであります。すなわち、今回の相続税減税は、初年度こそ五十億円でありますが、平年度化すれば百五十億円となり、決して少ない額ではありません。つまり、現行法による四十一年度相続税収入見込み額は四百八十億円でありますが、これを平年度において百五十億円減額するということは、三分の一を切り取るわけでありますから相当大きな減税であります。  今回新たに設けられることになりました銀婚式お祝い減税ともいうべき二百万円を含めて、標準的な相続、すなわち、配偶者以下相続人五人の場合における課税最低限は、現行の五百万円から一躍一千万円に引き上げられることとなるわけであります。二十五年、よくも四分の一世紀もがまんしてきたということから、銀婚式突入夫婦がまん賞を提供することは、それ自身意味なしとはしますまいが、全体との均衡であるとか、優先順序という点からすれば、これは若干飛躍し過ぎているとも思われるのであります。やはり資産にかかわりの深い相続税贈与税の減税よりも、まず所得税減税を、ということで一貫すべきでありましょう。  以上、三法律案に対する反対趣旨を申し述べましたが、これを要するに、当面する景気対策には、所得拡大と、これと一連の所得税減税を主座に赴く税制を多く使うという最近の国際的傾向に、政府はもっと大きく目を見開いて見習らべきであるということであります。経団連と自民党・政府のいわゆる所得政策と所得税減税軽視は全く近視眼的であります。  さらにこの際、もっと言いたいことを言わしてもらえば、税制はそのときどきの支配権力の具体的表現でありますから、現在の自由民主党の政府のもとでは、租税公平の原則という倫理的規範によるところの攻め手は、現実には壁にぶつかるばかりであって、おのずから限界があるということを私ども野党はいやというほど思い知らされてきたのであります。そこで私は、むしろこの実情認識の上に立っていま議論を進めるべきだと考えておるのであります。  幸か不幸か、政府は追い詰められて、現在、国債を抱いた財政政策への転換を余儀なくされております。その行きつくところ、インフレ激化となり、危機感は深いのであります。これは支配階層をすら道連れとする将棋倒しの危険を内蔵するものであり、この将棋倒しを免れるためには、階級的、小乗的視点に立つことはもはや許されなくなってきておるのであります。したがって、大乗的な国民経済的視野に政府自身が立ち戻る必要があるのであります。  租税政策について具体的にいえば、一群の租税特別措置というスポンサー向けの減税政策から、いまこそ脱却する勇断が政府に要請されているという認識に立つべきであります。ここに御留意を願いたいことは、昭和四十一年度における租税特別措置による国税の減収見込み額は二千二百二十億円の巨額であって、このらち八割強相当額は、大企業関連の高額所得階層の配当所得、利子所得減税をも含めて、広義の意味での大企業偏向減税であります。しかりとすれば、先ほど私の言及した改正案における所得減税企業減税の千五百五億円対千七十七億円の比率、すなわち六対四の所得税減税の優先性は空のものでありまして、内実は企業減税六、所得減税三と、企業減税の断然たる優先性が確保されているのであって、所得税減税を重しとすべき日本経済の客観的要請に対して、政府がいまなお主客を転倒する誤りをおかしていることを強調しなければならないのであります。(拍手)  国民経済の上から見た税制における右の危険性を強く政府に向かって指摘し、私の反対討論を終わることといたします。(拍手
  10. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、日程第一及び第二の両案を一括して採決いたします。  両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  11. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第三につき採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  12. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第四ないし第七の四案を一括して採決いたします。  四案の委員長報告はいずれも可決であります。四案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  13. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 起立多数。よって、四案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  14. 海部俊樹

    ○海部俊樹君 日程第八及び第九は延期されんことを望みます。
  15. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程第八及び第九は延期するに決しました。      ————◇—————  日程第十 踏切道改良促進法の一部を改正する法律案内閣提出
  17. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 日程第十、踏切道改良促進法の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————
  18. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 委員長報告を求めます。運輸委員長古川丈吉君。     —————————————   〔報告書は本号(二)に掲載〕     —————————————   〔古川丈吉君登壇
  19. 古川丈吉

    ○古川丈吉君 ただいま議題となりました踏切道改良促進法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、本法案の趣旨を簡単に申し上げますと、最近における陸上交通事故の防止と、その円滑化をはかるためには、踏切対策の推進がきわめて重要でありまして、御承知のごとく、すでに昭和三十六年度より、踏切道改良促進法が実施され、今日逐次踏切道の整備がなされておるのでありますが、踏切道の現状は、残念ながら、いまだ必ずしも十分でない実情であります。したがいまして、本案は、現在の踏切道改良促進の措置をさらに五カ年間延長できるよう、踏切道改良促進法によって改良すべき踏切道を指定することができる期限の四十年度末を、五カ年間延長するとともに、その対象を拡大して、同法の施行された昭和三十六年十一月以降に新設された踏切道についても、同法の規定により、改良の指定を行なうことができることといたそうとするものであります。  本法案は、去る二月二十二日本委員会に付託され、次いで、三月九日政府より提案理由説明を聴取し、同月十六日、十八日、二士三日、質疑を行ないましたが、その内容会議録によって御承知願います。  かくて、三月二十三日、質疑を終了し、討論を省略して、採決の結果、本法案は全会一致をもって政府原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  20. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  21. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第十一 海外移住事業団法の一部を改正する法律案内閣提出
  22. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 日程第十一、海外移住事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————     …………………………………      理 由  海外移住の振興を図るため、移住者に対する渡航費の貸付けを昭和四十一年度以降支給に改めるとともに、海外移住事業団に対する政府の既往の貸付けに係る債権を免除する等の必要がある。これが、この法律案提出する理由である。     —————————————
  23. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 委員長報告を求めます。外務委員会理事永田亮一君。     —————————————   〔報告書は本号(二)に掲載〕     —————————————   〔永田亮一君登壇
  24. 永田亮一

    ○永田亮一君 ただいま議題となりました海外移住事業団法の一部を改正する法律案につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、海外移住の振興をはかるため、移住者に対する渡航費の貸し付けについての規定改正しようとするものでありまして、おもなる改正点は、移住者に対する渡航費の貸し付けを支給に改め、政府はこのため必要な資金を事業団に交付すること、事業団に対する政府の既往の貸し付けにかかる債権を免除すること、海外移住事業団に対する移住者渡航費貸付条件に関する法律を廃止すること、事業団の監事が直接外務大臣に意見を提出することができること、事業団の役員の欠格条項を改め、国会議員及び地方公共団体の議会の議員が事業団の役員となることができることとすること、事業団の余裕金の運用方法に金銭信託を加えること等であります。  本案は、二月二十三日本委員会に付託されましたので、政府から提案理由説明を聞き、質疑を行ない、なお、事業団の職員を参考人として招致し、意見の聴取を行なうなど、慎重審議をいたしましたが、詳細は会議録により御了承願います。  かくて、三月二十三日、本案に対する質疑を終了し、討論を省略して採決を行ないましたところ、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  25. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  26. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  27. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 内閣提出国民年金法の一部を改正する法律案について、議院運営委員会の決定により、趣旨説明を求めます。厚生大臣鈴木善幸君。   〔国務大臣鈴木善幸君登壇
  28. 鈴木善幸

    ○国務大臣(鈴木善幸君) 国民年金法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  国民年金制度昭和二十四年に創設され、同年十一月から福祉年金の支給を開始し、昭和三十六年から木制度の中心である拠出年金の実施に入り、現在では被保険者数約二千万人、拠出年金受給者約六万人、福祉年金受給者約三百万人を擁する規模に成長しており、被用者を対象とする厚生年金保険と相並んでわが国公的年金の二大支柱を形成する制度であります。  しかしながら、現行の体系につきましては、昭和三十六年及び昭和三十七年の両年にわたって拠出制年金の実施を軌道に乗せるための改正が行なわれた後は、逐年福祉年金を主体とした改正が行なわれたのみでありまして、拠出年金の給付水準は、この数年間の著しい経済成長に伴う生活水準の大幅な上昇に取り残され、老後の生活を保障するものとしては不十分な状態に置かれているのであります。  一方、最近の人口構造の著しい老齢化現象、生活水準の向上などの事態に際して、老後の生活保障施策はますますその重要性を増しているのでありまして、このため昨年の厚生年金保険の大幅改正に引き続き、国民年金につきましても、本年が財政再計算期であるところから、これを機会に、今日までの生活水準の向上に即し、その大幅な改正を提案することとした次第であります。  以下、改正法案のおもな内容につきまして、順次御説明申し上げます。  まず、拠出制年金に関する事項について申し上げます。  第一に、年金額引き上げについてであります。  老齢年金の額につきましては、現行保険料納付済み期間一年につき、拠出期間二十年までは九百円、二十年をこえる期間は一千二百円で計算しておりますのを、一年につき二千四百円に、現行保険料免除期間一年につき三百五十円で計算しておりますのを八百円に引き上げて計算することといたしております。この結果、二十五年拠出の標準的な老齢年金の額は、現行の二万四千円から六万円に、月額にして二千円から五千円に引き上げられることになり、全期間四十年拠出の場合は現行の四万二千円から九万六千円に、月額にして三千五百円から八千円に引き上げられることになるのであります。月額五千円という水準は、従前二十五年拠出の老齢年金額が厚生年金の基本年金額のうち定額部分に一致していたように、今回の改正により改正後の厚生年金保険の定額部分と適合することとなり、これによって夫婦で月額一万円の年金を実現しようというものであります。  通算老齢年金につきましても、その年金額は老齢年金と同様に計算いたすこととしております。  障害年金の額につきましても、老齢年金と同様の計算により算出することといたしております。また、二級障害年金及び子二人を扶養する場合の母子年金と準母子年金につきましては、現行の最低保障額二万四千円を六万円に、月額にして二千出を五千円に引き上げるとともに、一級障害年金の加算額も現行の六千円から一万二千円に、月額にして五百円から一千円に引き上げをはかっているのであります。これらの最低保障額は、従前かり二十五年拠出の老齢年金の額に最低保障額を合わせていた経緯にかんがみ、今回も老齢年金が六万円、月額にして五千円に引き上げられるのでこれに合わせたものであります。  遺児年金の額も、同様の計算により最低保障額は、現行の一万二千円から三万円に、月額にして一千円から二千五百円に改めることといたしております。  第二に、給付の支給要件の緩和でございますか、第一点といたしましては、障害の範囲拡大であります。現行法におきましては、循環器系の障害等につきましては障害年金が支給されないのでありますが、この障害の範囲拡大しまして、すべての障害について障害年金の受給機会を与えようとするものであります。母子年金、準母子年金及び遺児年金の対象となる子等につきましては、通常は十八歳まで、障害児に限り二十歳まで年金が支給されるのでありますが、この障害児の範囲につきましても、障害年金と同様に、すべての障害を対象とすることといたしております。  第二点といたしましては、障害年金の資格要件の緩和であります。現行法では、病気にかかり三年目において障害の軽度である者には、その後いかに重症となっても障害年金は支給されません。今後はこのような事後重症となった者にも年金を支給しようというものであります。  第三に、保険料の額の改正について申し上げます。今回のように給付水準を大幅に引き上げますと、これをまかなう保険料についても、当然相当額に引き上げの必要があるわけでありますが、今回はさしあたり百円の引き上げにとどめ、三十五歳以上の者の保険料は月額二百五十円、三十五歳未満の者は二百円とし、以後段階的に引き上げ昭和四十四年一月分からは五十円の増額としているのであります。  次に、福祉年金に関する事項について御説明申し上げます。  第一に、年金額引き上げについてでありますが、昨年の引き上げに引き続き、本年度も老齢福祉年金は現行の一万五千六百円を一万八千円に、障害福祉年金は二万四千円を二万六千四百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金は一万八千円を二万四百円に、それぞれ二千四百円、月額にして二百円の引き上げをはかることといたしております。  第二に、支給要件の緩和について申し上げます。  第一点は、障害福祉年金の対象となる障害の範囲と母子福祉年金及び準母子福祉年金の支給対象となる子等の障害の範囲は、拠出年金の場合と同様に、循環器系障害等のすべての障害にまで拡大いたしております。  第二点として、障害福祉年金は事後重症者についても、障害年金の場合と同様に支給対象といたしております。  第三に、支給制限の緩和について申し上げます。  第一点といたしましては、福祉年金受給者本人の所得による支給制限の緩和であります。市町村民税の老年者、障害者及び寡婦についての非課税限度額引き上げられますので、これに合わせて現行限度額二十二万円を二十四万円に引き上げることといたしております。  第二点といたしましては、障害福祉年金について、その受給者の配偶者所得による支給制限を廃止し、扶養義務者の所得による支給制限に吸収させる緩和措置を講じております。  第三点に、福祉年金受給者を扶養している扶養義務者の所得による支給制限でありますが、標準世帯の場合を例にとりますと、現行限度額約七十二万円を約八十二万円に緩和をはかることといたしております。  第四点としては、夫婦の一方が障害福祉年金を受け、他方が老齢福祉年金を受ける場合の老齢福祉年金の三千円停止の措置を廃止することといたしております。  次に、経過措置について申し上げます。  第一に、現に、年金受給中の既裁定年金の額についても、本則の改正と同様に引き上げることといたしております。これによって、老齢年金の受給者がまだ出ない現段階においても、障害年金及び母子年金等について大幅な引き上げが実現することとなるわけであります。  第二に、旧陸海軍工廠の工員などの旧令共済組合員であった期間を国民年金の老齢年金の資格期間に算入いたしております。  最後に、実施の時期につきましては、諸般の準備等もあり、主たる部分については昭和四十二年一月分からといたしております。  以上をもって改正法律案趣旨説明を終わります。(拍手)      ————◇—————  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  29. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。これを許します。八木一男君。   〔議長退席、副議長着席〕   〔八木一男君登壇
  30. 八木一男

    ○八木一男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のございました国民年金法の一部を改正する法律案について、内閣総理大臣、厚生大臣、大蔵大臣に対して質問を行なうものでございます。(拍手)  国民年金制度の重要性及びその大幅急速な改善の必要性については、すでに自明のことでございまするので、それに詳しく触れることは省略いたしまして、直ちに本案に対するわが党の批判的意見を明らかにしつつ、具体的な質問に入ることにいたします。  ただいまの趣旨説明にありましたように、夫婦一万円年金の名で政府が宣伝をしておられる拠出制の改善は、現行法に比べれば相当程度の改善であり、最近の生活水準の向上に見合って、妥当な改善をしようとするもののように一応見えるのではございまするが、よく検討いたしてみますと、そのもとにある重大な欠陥をおおい隠しているわけであります。  昭和三十四年提案されました政府提案の国民年金法案自体が、同時に提案された日本社会党国民年金法案の、十分にして、社会保障の理念に徹したものとはたいへん違っておりました。内容の貧弱な、かつ、その組み立てにおいても、曲がった部分の多いものでございました。その後数回の改正はございましたが、何ら本格的な改善をしていない現行法を、五年目の大改定期にあたって改定する際、その後の生活水準の向上に見合って改善するだけでは、最初のスタートの悪さが長期間解消されないおそれが濃厚になるわけでありまして、国民年金制度の将来まさに憂うべきものがございます。  政府は、昨年の厚生年金保険法改正の際の、年金額増大率約二・五倍に合わせれば、それで相当の努力をしたよう考えておられるようでございますが、今度の改正金額で、厚生年金のほぼ半額、しかも、給付開始年齢に五年の差があることを考えに入れて検討されたのかどうか、疑わざるを得ないのでございます。ことに、当然引き上げられるべき国庫負担率の増率はこれを見送り、したがって、苛酷な保険料値上げの計画が近い将来さらに加重される危険を包含していることなど、まことに本制度の発展と円滑な運用を忘れ去った内容であり、また、社会保障の精神に従った組み立ての改革にはほとんど見るべきものもなく、さらにスライド制、積み立て金運用について、何らの前進の提案がなされていないことなど、拠出制年金に対する真剣な取り組みを故意に怠っていると断言しても決して過言ではないと信じます。(拍手)  さらに、福祉年金の改定に至っては、衆参両院社会労働委員会の連続の附帯決議、社会保障制度審議会の答申等で、特に、直ちに実現すべき旨を明確に示された条項の実現を怠り、物価の続騰にやっとあとから追いつく程度内容の改定しか考えておらず、しかも、福祉年金額改定は明年一月、その支給は明年五月であり、すなわち、本年度予算では全然関係がないということでは、全くあきれ果ててものも言えない内容でありまして、政府の猛省を促さなければならないと存じます。(拍手)  以上の観点に立って、逐次具体的な質問をいたしてまいりまするので、総理はじめ各大臣より、ごまかしでない明確な御答弁を求めるものでございます。  まず最初に、拠出年金につき御質問申し上げます。  第一に、年金額並びに開始年齢に関してでございます。  二十五年払い込み済みの人の六十五歳からの年金額が、月額五千円にしかならないわけでございまするが、このような金額で一体十分な老齢保障と言えるとお考えでありましょうか。本年度生活保護基準が、一級地、標準四人世帯の一人平均をとりますと五千百三十二円でございます。健康で文化的な最低限度の水準をはるかに下回っていることが明らかな現在の保護基準と同じ金額である。このような少ない年金が、二十五年間の保険料払い込みの後、五年待たされて六十五歳から支給されるというのでは、全く所得保障の名に値しないものでございます。何ゆえにこの重大な改定期にこのような低い金額を設定されたか。なぜ、金額においても、年金支給開始年齢においても、厚生年金と合わせることを考えられなかったのか。近い将来に、この年金額、開始年齢の両方を、どんなに控え目に考えても、そのいずれか一方を合わせることをしなければ、所得保障の前進あるいは国民平等の方向に相反することになると思われまするが、総理大臣並びに厚生大臣の御答弁を求めます。  第二に、国庫負担率の問題であります。  厚生省の原案が、保険料と同額、すなわち、給付に対して二分の一であったことは明らかでございます。国民年金の給付内容の大幅改善の緊要性と、国民年金被保険者の保険料負担能力を考えるとき、国庫負担率増率は絶対に必要なことであり、社会保障制度審議会、国民年金審議会の両答申もこのことを強調いたしており、さらに、昨年厚生年金の国庫負担率増率のあったことをあわせ考えれば、何ゆえにこの増率を取りやめたか、まことに理解に苦しむものであり、心から憤激にたえないところであります。少なくとも明年度より保険料と同額の国庫負担を実施すべきものと思いますが、総理大臣、厚生大臣、大蔵大臣、各大臣の前向きの御答弁を要求いたします。  特に、この際、前もって申し上げておきますが、厚生年金の国庫負担が二割、国民年金のそれが三分の一だから、このままでよいのだというようなおざなりの答弁はなさっていただきたくはないのであります。厚生年金と国民年金改正案との比較では、両制度の給付する年金実額に対する国庫負担額の割合は、年金額、開始年齢を換算して比較いたしますと、表面的な率の多寡とは逆に、国民年金のほうが少なく、厚生年金の二分の一ということに相なることを念頭に入れられて、前向きの御答弁をいただきたく存じます。  第三点は、保険料に関してであります。  本案は、昭和四十二年一月から現行の月百円、百五十円をおのおの百円ずつ引き上げ、四十三年からさらに五十円ずつ引き上げることに相なっております。最初の引き上げ率でも、昨年行なわれた厚生年金保険料引き上げ率五割七分増よりも高い七割六分増になり、二度目の引き上げを加えると、実に十一割四分増に相なるわけであります。私は、厚生年金の引き上げ率ももっと軽減すべきものと考えるわけでございますが、使用主負担のない国民年金の保険料がこのような率で引き上げられることは、物価高や不況の影響を受け、生活にあえいでいる被保険者の多い本制度において、まことに過酷きわまるものであると信じます。国庫負担率の大幅増率を行ない、さらに修正賦課方式をいま少し取り入れて、保険料の値上げを取りやめるべきであると考えるものであります。被保険者の保険料負担の困難性を直視し、将来の分をも含めて値上げを取りやめ、あるいは値上げ幅縮小に努力されることが緊要だと思いますが、厚生大臣の明確な御答弁を求めます。  第四点は、本制度の仕組み、組み立てに関してであります。  衆参両院社労委の決議は、社会保障の精神に従った内容の改革を指示いたしておりますが、今回、ごくわずかな障害関係以外何らこの種改善に手をつけていないことは、全く怠慢きわまるものでございます。今回の改正案において免除を受けた者の年金額は、保険料納入者の三分の一にいたしておりますることは従前のとおりでございます。元来、保険料を払いにくい貧困な人たちが老齢あるいは障害の状態になった場合、またはその人の遺族が年金を必要とする度合いは、保険料を払い得る人たちよりもはるかに多いのであります。所得保障が必要な度合いの多い人に多い年金が支給される、これが社会保障の本義であります。保険料を払いにくい人の年金が、他の人の三分の一ということでは、全くの保険主義であり、社会保障の精神をじゅうりんしたものといわなくてはならないのでございまして、免除者の年金額を少なくとも納入者と同額にすることが、至急に実現されなくてはならないと信じます。衆院社労委の決議もこの問題の解決を指示いたしているわけでございまするのに、何ゆえこの方向の改正をしなかったか、次の問題とあわせて答弁を求めます。  次に、拠出年金制度の障害年金の受給者の中に、二十歳以前に障害者になった者をなぜ含めないのか。今回の改定案では、一級障害者の最低保障額が年間七万二千円、月額六千円に相なっておりますが、障害福祉年金では月二千二百円、しかも所得制限がつく内容であります。二十一歳以後に障害を受けた者は、比較的高い年金を無条件で受け、二十歳以前に障害を受けた者は、その四割以下の年金額の支給を受けるのに所得制限があるような制度の欠陥を、このまま放置してよいものかどうか。二十歳以前は被保険者ではなく、したがって、その時点の障害は保険事故ではないというような、非常に狭い考えの保険学者の俗説に惑わされて、この制度が強制加入であり、いわゆる逆選択の危険がないことを忘れ果て、社会保障の本義にもとるやり方をしてきたことに対して、なぜ反省をして是正の措置をとられなかったか、お伺いいたしたいと思います。  以上の二点につき、総理大臣から大筋の考え方、厚生大臣から具体的なお答えを求める次第でございます。社会保障の精神にのっとった前向きの努力の方向を明らかにされることを要望いたしておきます。  第五に、スライドについてであります。  昨年の厚生年金保険法改正の際に、早急に各年金制度のスライド制の具体的方法について確立する確約がなされたわけでございまするが、なぜ今回本法案提出時に間に合わせようという積極的な態度をとられなかったか、その後の準備はどのように進行しているか、厚生大臣に伺いたいと存じます。  第六に、積み立て金の運用に関してであります。  すでに二千億をこえようとする国民年金の積み立て金の問題は、厚生年金と同様、重大な問題であります。元来、積み立て金は被保険者並びに遺族に年金を支給するために積み立てられた金であり、被保険者のものといってもあえて間違いのない性質の金であります。したがって、その全額について被保険者が権利を持つべきものであり、新納入保険料の四分の一だけしか還元融資に回されていないことは、まことに言語道断でございます。還元融資の率を大幅に引き上げること、管理運用の権利を被保険者代表が過半数を占める機関に移すべきものと思いますが、総理、厚生、大蔵各大臣の深い反省の上での御答弁を要求いたします。  次に、福祉年金に関して御質問申し上げます。  まず第一に、なぜもっと大幅な年金額引き上げを行なわないか。政府の著しく熱意を欠いた改正案に対して、私は、国民の立場に立って全く憤激にたえないのであります。現在の老人、障害者、母子家庭に十分なる対処をすることなくして、何の国民年金制度かといわなくてはならないと存じます。(拍手)  現在の老人は、今日のこの社会の基礎を労々として築いてくれた先輩であります。あの苦しかった戦中戦後の時代を、社会の責任あるにない手としてわれわれを支えてくれた人たちであります。しかも過去の蓄積を悪性インフレのため失ってしまっております。家族制度の実質的な変革によって、心細い思いをしておる人たちでございます。将来の年金計画も大切ではございますが、それ以上に、現在の福祉年金の飛躍的充実こそ、所得保障の精神より見て最も緊要なものであることは明らかでございます。  しかるに、老齢福祉年金は月一千円のスズメの涙ほどの金額をもって発足以来、何らの本格的増額がなされておりません。月一千百円、月一千三百円と二回の改定があり、今回月千五百円に改定しようとするものでございますが、これは、その間の物価の値上がりにおくればせに追いついているのみであって、何らの積極的な意味を持つものではないのであります。政府は、何ゆえに月少なくとも五千円なり四千円なりに増額をして、いま少しでも社会的な親孝行をしようとしないのか。拠出年金を二倍半にしたならば、政府の通常のやり方でも現行月一千三百円の二倍半、すなわち、月三千二百五十円に引き上げることが自然であります。どんなに少なくとも、発足当時の月一千円の二倍半、すなわち、月二千五百円まで引き上げをしなければ、発足当時から過酷であった拠出年金額に対する福祉年金額の比率すら守られないことになり、その名に値しない貧弱な現時点の親孝行が、その度合いをさらに低くすることに相なるわけであります。なぜこのような貧弱きわまる改定案しか出されなかったか、明年にでも各福祉年金額の大幅改正の意思を持っておられるのかどうか、総理、厚生、大蔵三大臣より明確な答弁を要求いたします。  次に、老齢福祉年金支給開始年齢についてであります。  厚生年金の開始年齢が六十歳であり、拠出制国民年令の開始年齢が六十五歳であるときに、老齢福祉年金が七十歳であるということは、いかにしても不合理なことであり、解決しなければならない問題であります。しかも、現在の六十歳代の人たちは、戦中戦後の苦難時に遭遇し、将来の六十歳代の人たちよりも、お気の毒なことにはるかに老齢化の度合いが激しいのであります。これらの点から見て、私たちは当然六十歳支給開始が妥当と考えているわけでございますが、現内閣においても、せめて六十五歳開始にこの際踏み切らなければ、為政者としての責任を果たしたことにならないと信じます。ことに、年金制度の不可欠的な欠点である、比較的楽な暮らしをして長生きをした者が比較的長い期間給付を受け、苦しい生活をして前者より短命な者がその給付の恩恵に浴さないということを少しでも緩和するためにも、老齢福祉年金の開始年齢引き下げは絶対必要であり、衆参社労委の附帯決議、社会保障制度審議会の答申趣旨もそこにあるわけであります。政府は何ゆえにこの問題を取り上げられなかったか、せめて一年ごとに一歳ずつでも、開始年齢を段階的に引き下げることくらいでも考えることができなかったか、総理及び厚生大臣の答弁を要求いたします。  次に、配偶者所得制限の撤廃の問題であります。  世にもまれなるこの奇怪な所得制限を、この際どうして撤廃しなかったのか。この改正案によれば、両親に孝養を尽くすむすこに六十六万の収入があったときに、その七十歳以上の両親の老齢福祉年金が支給されるのに、むすこや嫁を失い、残された孫を七十歳以上の老夫婦が養わなければならないために、おじいさんが老骨にむち打って四十一万円の収入があった場合には、おじいさんはもちろん、おばあさんにまで年金が支給されないことになっているわけであります。この配偶者所得制限という、無意味にして過酷な所得制限の矛盾を、内閣総理大臣は一体どうお考えになるか、お伺いいたしたいと思います。(拍手)  配偶者所得制限の撤廃が衆参社労委で決議され、社会保障制度審議会で答申されたのに従って、そのことの実現のために要求されたわずか四十一年度一億五千万円、平年度二億円の予算要求が予算在庫で削られ、わずかに障害福祉年金の配偶君所得制限撤廃三千万円が認められたのみであります。その事情を内閣総理大臣は知っておられたのかどうか、もし知っておられなかったなら、大蔵省の査定がいかにこの種のものにきびしいか、厚生省がいかに弱腰であるかについて再認識されて、これを即時是正さるべきものと思いますが、総理大臣の所見を伺いたいと思います。  なお、同様の経過を持つ夫婦受給制限の全面撤廃を提案しなかったことにつき、厚生大臣の深い反省の上の答弁を求めます。  時間の関係上、以上で質問を終わるわけでございますが、お聞き及びのとおり、私は、国民年金制度、社会保障制度の改善、確立を要望する国民の立場から、建設的に具体的な問題を提起する気持ちをもって御質問申し上げたわけでございまするので、内閣総理大臣はじめ厚生大臣、大蔵大臣も、政府原案を防衛するという狭い立場から離れて、国民の立場から社会保障前進という観点に立って答弁していただくことを期待申し上げる次第でございます。もし不幸にして、不誠意、かつ一方的な御答弁があった際は、今後徹底的に追及する決心を明らかにいたしまして、御質問を終わる次第でございます。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  31. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  社会保障制度を充実してそして国民の福祉を増進するということ、これは政治の大きい目標でありますし、近代国家としてはすべてそれをねらっておるわけであります。いわゆる福祉国家の建設ということに非常な努力を払っておるわけであります。その社会保障のうちでも、ただいま問題になります所得保障、その所得保障の中核をなすところの年金制度、これについては、政府は非常な関心を持ってそうしてこれの充実強化に力をいたしておるわけであります。  御承知のように、昨年は厚生年金について改正を行ないました。ことしは国民年金について、いわゆる夫婦一万円、こういう年金制度を実現しようとするのであります。この点について、どうもその金は少額ではないか、こういうようなお話でございます。この点はもちろん公的年金でありますから、最低限はこれを保障しなければならない。それから今度は、上になるその額はいかにあるべきかといえば、その負担力も十分考えなければなりません。その負担が非常に過重——ことに国民年金の場合は低所得層が非常に多いのでありますから、そういう意味におきましても、負担が重くなった、こういうような印象を与えては目的を達するわけにいかない、かように思います。したがいまして、いわゆる国庫負担率、これも引き上げろ、こういうようなこともいわれておりますが、この保険制度、これはやはり被保険者の負担力をひとつ考えなければならない。今回も、被保険者の保険料引き上げるについて、国庫の負担率をいかにするか、こういう問題があったと思います。しかし、国民年金制度は、もうすでに他の施策に比べまして国庫の援助の面におきましては有利な立場にありますので、今回は国庫負担率を引き上げるということはいたしませんでしたけれども、しかしながら、実額は保険料引き上げに見合って非常に増額されるわけであります。四十一年は二十一億でありますが、四十二年になると九十一億になる、こういうことであります。したがいまして、実額がふえるのだからこれはごしんぼういただきたい、かように思っております。しかし、私はこれで満足するのではございません。もちろん、今後いろいろの変化がありますし、また、国の財政も豊かになってくる、そういう場合におきましては、もちろんこれを充実していくことにおいてやぶさかでございませんから、絶えず、本来の福祉国家の建設、そういう意味においての充実をはかってまいるつもりでございます。  また、その運用等についていろいろの御注文もあるようでございます。ただいま、積み立て金の運用等については、これがその性格上安全確実でなければならぬことは、もうそのとおりでありますが、さらに有利な貸し付けをする、しかも国民の福祉を増進するような意味においてこれが運用される、こういうことでただいま積み立て金の運用にも意を注いでおるわけであります。しかし、これについて加入者の代表等を入れたらどうかというようなお話もあるようでございますが、いずれにいたしましても、資金運用の審議会等におきまして、いかにあるべきかということを十分審議していただきたいと思います。  また、ただいまお話しになりました福祉年金、この制度につきましてどうも金額が少ない、かような御批判でございます。確かに、この福祉年金の各年金につきましては種々の問題があると思います。そういう意味でさらに検討し、そうして納得のいくような制度に充実していかなければならないと思います。そういう意味の研究課題をただいま提起された、かように私は思います。ことに、配偶者所得のあり方、これの見方などは最も検討をすべきものだ、ただいまある程度緩和はしておるようでありますが、緩和程度ではどうも満足がいかない、かように私も考えますので、さらにこの点では検討を続けていくことにいたしたいものだと思います。  その他の問題につきましては、厚生大臣から具体的にお答えすることにいたしたいと思います。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  32. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  第一は、国庫負担率を引き上ぐべきだ、こういう御意見でございます。私から申し上げるまでもなく、三分の一という国庫負担率は、わが国の年金諸制度の中できわめて高い率である、こういうことになっておると思います。今回一万円年金の実現、また、それに伴いまして財政方式の変更、また保険料引き上げ等を行ないますが、それらによりまして、この財政は円滑に運営されるものであります。そういう高い補助率を出しておりますので、これを引き上げることにつきましては賛成いたしかねます。  第二点は、還元融資の二五%を拡大すべきだ、こういうような御意見でございますが、私は、むしろ二五%というような率にとらわれず、残りの七五%全部を含めまして国民福祉に還元されるようにつとめることこそが、この正しい運営のあり方である、かように考えます。  また第三点は、配偶者所得制限、これを撤廃すべしとの御意見でございます。そもそも福祉年金は、これは全部無拠出でございます。低所得者のみを対象とする。したがって、所得制限があることは当然であります。夫婦は一体の関係にある、そういう関係下におきまして、配偶者控除、これがあるのも自然かと思うのでございます。しかし、介護に当たる配偶者、そういうような特別の場合がありますので、そういう特殊の場合につきましては特別な考え方をしなければならぬ、かように考えます。  また、福祉年金全体といたしまして、年金支給額を引き上げろ、その他いろいろ御意見がありましたが、これは財政の状況あるいは国民経済の進捗の状況、それらを総合的に勘案いたしまして前向きに善処していくべきもの、さように考えます。(拍手)   〔国務大臣鈴木善幸君登壇
  33. 鈴木善幸

    ○国務大臣(鈴木善幸君) 御質問が相当広範にわたっておりますので、各点につきまして基本的な考え方を申し述べて、細部にわたりましては委員会で御審議をわずらわしたいと思います。  御質問の第一点は、年金額の問題についてでございます。農民や自営業者の実態に即しまして、十分その立場を考えまして、また一面、厚生年金との均衡をはかる点を考慮に入れまして、今回の改正をいたしたのでありますが、国民生活の水準の向上に見合って、法の趣旨に沿うように今後とも努力してまいる所存でございます。  第二点の国庫負担の問題につきましては、被保険者の実情、所得の低い方が多いという現況にかんがみまして、現行制度中でも最も有利な率になっておるわけであります。年金財政は長期的な観点でこれを考察しなければならないのでありまして、その引き上げにつきましては、今後の制度の推移を十分考慮いたしまして、検討いたしてまいりたいと存じます。  第三点の保険料の問題につきましては、被保険者の急激な負担増を避けますために、今回は最小限度の引き上げにとどめることに配慮をいたしました。また、低所得階層につきましては、御承知の保険料免除制度がございますから、この弾力的な運用によって措置してまいりたいと存じます。  第四点の社会保障の理念の問題につきましては、先ほど総理からお話がございましたが、私ども、今後とも、この社会保障を充実する、国民生活を守っていくという方向で一そうの努力を傾ける所存でございます。  第五点の年金額のスライド制の問題でございますが、これは年金制度の重要な問題点でありまして、目下関係の審議会で御検討をいただいておるのでありまして、その御答申を見まして、十分善処するようにいたしたいと考えております。  第六点の年金積み立て金の運用につきましては、従来より被保険者の福祉の増進に役立つように努力してまいったところでございますが、還元融資以外の分の運用につきましても、ただいま大蔵大臣からお話がありましたように、国民の福祉にこれを還元する、寄与するという方向で努力いたしたいと存じます。  第七点の福祉年金の問題につきましては、三百万人に及ぶ受給者の福祉に影響することが非常に大きいのでございまして、今回も財政事情の許す限りの改善をはかった次第でございます。支給開始年限の引き下げ等の問題につきましても、今後とも引き続き努力してまいりたいと存じます。(拍手
  34. 園田直

    ○副議長(園田直君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  住宅建設計画法案内閣提出)の趣旨説明
  35. 園田直

    ○副議長(園田直君) 内閣提出住宅建設計画法案について、議院運営委員会の決定により、趣旨説明を求めます。建設大臣瀬戸山三男君。   〔国務大臣瀬戸山三男君登壇
  36. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 住宅建設計画法案について、その趣旨を御説明申し上げます。  およそ住宅は国民生活の基盤をなすものでありまして、住生活の安定なくしては、円満な家庭生活はもちろん、十分な社会活動を行なうことも望めませんが、近年著しく改善された衣や食に比べ、住宅事情は、はなはだしい立ちおくれを示していることは御承知のとおりであります。もとより、政府は、従来から住宅問題の解決に真剣に取り組んでまいったのでありますが、著しい人口の都市集中、世帯の細分化等により、住宅需要は増大の一途をたどり、依然として住宅難が解消されるに至っていないのが現状であります。  このような現状にかんがみ、政府としましては、住宅対策を今後一段と拡充強化し、国民の要望にこたえるため、昭和四十五年度までに国民の待望する一世帯一住宅の実現をはかるとともに、さらに、その後においても、国民の住生活の改善向上をはかるため、五年ごとを区切って総合的な計画を樹立し、この計画に基づいて国、地方公共団体及び国民が相協力して住宅建設の適切な実施をはかる必要があると考え、この法律案提出することといたした次第であります。  次に、この法律案の主要な点について御説明申し上げます。  まず第一に、国及び地方公共団体は、住宅の需要及び供給に関する長期見通しに即し、かつ住宅事情の実態に応じて、住宅に関する施策を講ずるようにつとめなければならないとの国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、住宅の建設を計画的に推進するため、国、地方を通じ、住宅の建設に関する長期計画を策定することといたしました。  第二に、国全体の長期計画として、建設大臣は、昭和四十一年度以降の毎五カ年を各一期とする住宅建設五カ年計画の案を作成し、閣議の決定を経ることといたしました。この住宅建設五カ年計画には、五カ年間における住宅の建設の目標を定めることとし、あわせて、公的資金による住宅の建設の事業の量を明らかにすることといたしました。  第三に、それぞれ地方の住宅事情の実態に即応した住宅対策を推進するため、国全体の長期計画に即して地方における長期計画を策定することとし、建設大臣が地方ごとの住宅建設五カ年計画を、都道府県が都道府県ごとの住宅建設五カ年計画を策定することといたしました。  窮四に、これらの五カ年計画の実施を確実にするため、国及び地方公共団体の講ずべき措置について規定いたしました。  なお、五カ年計画制度の新設に伴い、現行の公営住宅三カ年計画制度を廃止することとし、公営住宅法に関し所要改正を行なうことといたしました。  以上が、住宅建設計画法案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  住宅建設計画法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  37. 園田直

    ○副議長(園田直君) ただいまの主旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。三木喜夫君。   〔三木喜夫君登壇
  38. 三木喜夫

    ○三木喜夫君 ただいま住宅建設計画法案について趣旨説明がありましたが、この機会に、私は、政府の住宅政策と本法案の内容をなす基本的な問題点について、日本社会党を代表し、総理はじめ関係閣僚に質問いたします。(拍手)  政府は、国民待望の一世帯一住宅を実現しようとして、昭和四十一年から昭和四十五年まで五カ年間に、公営住宅、公団住宅、公庫住宅及び民間住宅その他で六百七十万戸の建設を計画し、さらに、その裏づけとして本法律案提出してまいりました。なお、予算面では、昭和四十一年度住宅関係費は、一般会計、財政投融資合わせて三千百六十億円で、昭和四十年度の約五割増と、かなり大型の予算を組んでその熱意を示しておるわけであります。しかし、このような住宅計画も、宅地の問題を考えなければ、いまのように地価が高騰にまかせられておるようなことでは、はたしてこの計画が十全に行なわれ、国民の切なる願いである一世帯一住宅が実現可能なのか、まことに心もとないものがありますし、こうした住宅を実際に建設する地方自治体の財政や、また個人のふところが非常に心配でならないのであります。  そこで、まず総理大臣にお伺いいたしたい。  今回の住宅建設計画は、総理の主張する社会開発にこたえる具体的施策とし、さらには景気刺激策として、住宅建設を促進することによって有効需要喚起しようとしております。しかし、一方では、「土地政策不在の住宅対策で心もとない社会開発の行くえ」という酷評があります。なぜこのような批判があると思われますか。宅地開発公団の構想がつぶれたことや、土地収用法の手直しの手ぬるさに対する不満もあろうと思いますが、その可否はしばらくおいて、この際要求せられるものは、佐藤内閣の全体的な見通しと、さらには、住宅難、宅地難を解消しようとするところの決断が少ないことにあると思われます。  地価高騰の状況は、わが党の調査によりますと、この十年間に、六大都市では一〇八二%、全国市街地では七六八%のはね上がりで、大土地所有者の投機思惑売買の野放しによって、宅地の価格は危機的様相を呈しておることは御存じのとおりであります。昨年地価対策閣僚協議会をせっかく設けておきながら、なぜ抜本的対策を立てないのですか。結局、取り組む姿勢を見せただけで、わずか土地収用法改正案ぐらいが前進したにとどまったことは、全く遺憾のきわみです。西ドイツは、いまから六年前、連邦建築法を制定し、公共投資により生じた地価の値上がりの利益は地主だけに帰属すべきものでなく社会に還元すべきもの、土地の所有権は公共の福祉に役立てるものであるという、この二つの原則を打ち立て、ごね得や投機的思惑を封じております。西ドイツのやったことはたいへん骨の折れる仕事であったに違いないが、口ではしきりに社会開発と言っている佐藤内閣が、はたしてこの程度の思い切ったことをやるだけの決意があるかどうか、まことに心細いのであります。(拍手)土地収用法を手直ししたくらいで安心して、根本的な仕事に取り組むことをおそれるようなら、社会開発優先のコマーシャルなんか引っ込めなさいと、宅地審議会の委員の一人でさえ言っておる状況でありまして、私も全く同感でございます。  前国会に新市街地法案が準備され、これによると、公共施設に必要な用地確保ができ、地主の利益も、還元譲渡方式がとられて、あまり脅かされない、こういうぐあいに言っております。この法案のよいか悪いかということはしばらくおきましても、宅地審議会は、この法案を実行するために、二度まで、これくらいのものはさっさと実行するようにということを勧告しておるのに、佐藤内閣はそのふん切りをつけていないのです。このようでは、土地政策がほんとうにあって、そのために立ち上がろうとする勇気があるのかどうかということが疑われてしかるべきであろうと思うわけであります。(拍手)佐藤内閣が、地価抑制の根本的対策をいまにして立て得なかったら、この住宅建設五カ年計画も画餅に終わってしまうと思うが、今後地価高騰抑制に対して強い法規制と施策を行なう決意を持っておられるかどうかをお伺いしたいと思うわけであります。総理は所用でおられませんが、後の機会でもけっこうですし、閣僚の中でおかわりいただいて御答弁いただきましてもけっこうでございます。(拍手)  第二は、大蔵大臣にお伺いいたします。  総理に対する質問でも触れましたように、地価高騰の中で住宅建設に力点を置こうとしているのでございますから、それに相応したところの予算措置がなければなりません。今回の住宅建設についても、建設省の用意いたしました用地単価は五四%増を要求しておるのに対して、たった一四・六%に押えたのは、あまりにも大きな違いではありますまいか。理由を私は大蔵大臣にお聞きしたいと思います。東京都では、公営住宅建設用地単価三倍であるために、一戸当たり百万円の赤字になっているといわれております。  さらに、建設省が出した七百六十万戸の五カ年計画を六百七十万戸に削減された理由も承りたいのであります。初年度からこのような状態では、五カ年計画が非常に危ぶまれてなりません。根本的対策である地価を押えるやり方をしなくて、予算だけを押えるようなやり方は、これによって被害を受けるものは国民であるということを御銘記願いたいのであります。(拍手)  これに関連しまして、厚生大臣にお伺いいたします。  厚生年金住宅にも単価の低い関係が出てくるであろうと思います。年金住宅をどうするか、厚生年金の積み立て金還元融資のワクは現在二五%でありますが、そのワクを拡大して被保険者の福祉を増進するお考えはいかがでございましょうか。  第三は、地価対策が抜本的に打ち立てられていなければ、幾ら到達目標六百七十万戸の計画を立てても、今後の削減が余儀なくされるわけであります。本年度計画と来年度以降の見通しを建設大臣より承りたいと思います。  次に、「土地は商品でない」というのは、けだし名言で、これを言われる建設大臣は、有効な地価対策をお考えと思いますが、お示し願いたい。  地価対策とともに、遊閑地の調査と有効利用方法が望ましいのであります。さきにも申しましたように、施策の一つとして土地センサスを行ない、世評「東京には土地はたくさんある」という声にこたえてほしい。各省占有の遊閑地はないか、あわせてお伺いしたいのであります。さらに、この五カ年計画で一億七千万坪という大量の宅地を必要としますが、どのようにして確保されるのか、その手だてをお伺いしたいわけであります。今回の住宅計画においては民間に対する依存度が非常に高いのですが、民間が住宅を建てやすいような施策こそ望ましいわけでございます。  第四は、自治大臣にお伺いいたします。  住宅建設五カ年計画ができても、地方財政赤字のおりから、地方公共団体の超過負担をどうするか、県や市は、政府施策住宅の基準単価と実際の価格の差額負担に悲鳴を上げている現状で、昭和四十一年度予算で多少は手直しされても追っつかないものがあります。本法律案では、都道府県は住宅建設計画をつくることを義務づけられておりますが、この様子では机上プランにならないかということをおそれるわけであります。長期見通しをお聞かせ願いたいと思います。  第五は、労働大臣にお伺いいたします。  今日の住宅難で最も苦しんでいるのは労働者でありますが、今日、労働者は、みずからの額に汗を流して得たその結晶を少しずつ積み立てて、労働者住宅全国協議会に集まり、自分たちの力で象を建てようとしております。ILOの勧告にもありますように、給与住宅は労働者の身分を縛るものでありますが、今年度は、企業主による雇用者の持ち家をつくる制度をつくろうとしております。ILOの精神を生かし、労働者や労働組合による住宅建設の意欲を、大臣はどのように育てようとしておられるか、そのお考えを承りたいと思います。そうして、労働者の真の住宅政策を実現する立場からお考えいただきたいのでございます。  以上、私の質問は多岐にわたりましたが、かつては所得倍増のバラ色の夢を、いままた一世帯一住宅の庶民の願いをかき立てるこの計画が、真に国民の支持を受ける実現性があるものとして、砂上の楼閣に終わらないように祈りつつ、各大臣の見通しのある御答弁をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手
  39. 園田直

    ○副議長(園田直君) 内閣総理大臣の答弁は適当な機会に願うことといたします。   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  40. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  大蔵省が住宅対策に対して消極的であるというようなお話でございますが、三木さんもただいま御承認相なりましたように、昭和四十一年度の住宅予算は、四十年度に比べまして実に五〇%の増加なのです。これは私は、非常な飛躍的な措置である、かように考えております。きわめて積極的な態度で私どもは住宅問題に取り組んでおるような次第でございます。  土地の購入の単価を、建設省が五四%と出したのを一四・六%に削減しておる、けしからぬというお話でございまするが、これは、年々、土地の増価に対しまして、土地買い入れ単価の改定を行なっておるのであります。これは日本不動産研究所の調査を基本にいたしております。本年度も、甘木不動産研究所の調査を参考といたしまして、これに基準を貫きまして一四・六%ときめたものでございます。  なお、建設省が一世帯一住宅という建設の戸数を七百六十万戸と要求したのを、六百七十万戸と査定したのはどういうわけか、こういうことでございまするが、これは、人口の増加、それからもう一つは世帯の分化の傾向と、この二つを見なければなりません。人口の増加につきましては、建設省も大蔵省も別に異論はないのでありまするが、この世帯の分化の傾向をどういうふうに見るかという点につきまして、建設省の要求では、昭和四十五年度、つまり一世帯一住宅の完成する時期におきましては、一世帯当たり三・七人くらいに細分化されるであろう、こういうのでありましたが、大蔵省は、高度成長期、いままでの趨勢よりは世帯細分化の傾向がやや鈍化するであろう。それで相談をいたしまして三・八人ときめたわけなのです。これが戸数が六百七十万戸となった根拠であります。  住宅に対しましては、重ねて申し上げますが、私どもは、きわめて積極的な姿勢で建設省と協力していきたい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣瀬戸山三男君登壇
  41. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) お答えいたします。  まず最初に、住宅政策に対する基本的態度を申し上げておきます。  なるほど、いま三木さんもお話しになりました、あるいは世間でも、今度の六百七十万戸の住宅計画について、ややそれが信用になるのか、こういう御批判をいただいておることをよく承知いたしております。しかし、私どもは、人間の安住の地が確立しなければその国はよくならない、こういう重大な決意をいたしております。今日までの施策が必ずしも十分であったとは考えておりません。その反省の上に立って必ずこの六百七十万戸の住宅計画を完成しようというのが佐藤内閣の異常な決意であるということを、先ほどの大蔵大臣の御答弁とあわせて御信用願いたいと思います。また、御協力をお願いいたします。こまかいことはまた委員会でいろいろ御審議を願います。  六百七十万戸の計画のこまかい内容は、この法律に御賛成願ったあとで計画いたしますが、昭和四十一年度の規模あるいは予算については、やや御了解願ったようなお話がありましたから申し上げません。四十二年ないし四十五年の残余の五百六十五万余戸、これについては、大体平均一二・五%でまいりますと、これを完成する。この伸び率は非常に低く見た伸び率でありまして、これが完成できないということは絶対にないということを、ここで申し上げておきたいと思います。ただ、問題は、お話のとおり、どうしても土地がなければ明らかな空中楼閣になること、これは当然でございます。一番の大切な土地の問題に、これは申し上げるまでもなく苦慮いたしております。この点に私どもは一番の努力をしなければならない。先ほどお話しになりましたが、この計画を立てますについては、いろいろな総合計画をあわせて行なわなければならない。その中に、現にある住宅の建てかえ、あるいは既存の住宅の利用、あるいは土地の高度利用、こういうことをあわせましていろいろ推算いたしますと、この六百七十万戸の計画の中で、新規に宅地をつくって提供しなければならない、あるいは使わなければならない、これが大体二百九十万戸分、五十坪平均にいたしまして、先ほど一億七千万坪と言われましたが、これはまあどちらでもよろしゅうございます。大体一億四千万坪ないし五千万坪を要する、こういうことでありますから、これに私どもは、公団あるいは公庫の融資あるいは造成、地方公共団体の造成、いわゆる公的な宅地の供給に最大の力をいたしたい。  宅地開発公団の成立ができなかったということの御批判がありましたが、甘んじて受けます。必ず来年度はこれをつくりたいと思っております。ただ、今年度は、七千億以上の借金をして、いわゆる公債政策をとるときである。こういう際に部局を広げるとかいうことは、国民の皆さんに対してもいかがであろうか、こういう点もありますし、さらに、機構をいじって半年もおくらすというよりは、御承知のとおりに、早く仕事に着手して、そして実効をあげようというので、ことしの場合は一年見送ろうということであります。御了解を願いたいと思います。  さらに、地価対策については、これは申し上げると長くなります。おっしゃるとおり、私の「土地は商品ではない」ということについて御賛成を願っておるようでありますが、この国土というものは、国民生活、あるいは活動の舞台である。そういう基本的な考え方で、まず国民の公的な利用、公の利用ということが最優先すべきものであるという立場で、地価対策あるいは土地政策、こういうことを進めていきたい。土地収用法の改正、税制の改正等は、今国会にお願いいたします。ただ、基本的な土地利用計画は、そう半年ぐらいでできませんので、できるだけすみやかにこれを確立して、御協力を願いたい、かように考えておるわけでございます。(拍手)   〔国務大臣鈴木善幸君登壇
  42. 鈴木善幸

    ○国務大臣(鈴木善幸君) 厚生年金の還元融資のワクが二五%でありますことは、御指摘のとおりでございますが、最近資金運用部に対しますところのこの預託金の増加額が非常に大幅にふえておりまして、昭和四十一年度におきましても、従来の住宅等のほかに、新たに融資の対象を、特別地方債の中におきまして、簡易水道あるいは下水道等を追加いたしておるのであります。政府といたしましては、今後におきましても、この融資対象の事業を拡大する、また融資の条件を緩和する、改善するというような方向で努力をいたしますと同時に、還元融資のワク以外の分につきましても、国民の福祉に寄与できますように運用につとめてまいりたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣小平久雄君登壇
  43. 小平久雄

    ○国務大臣(小平久雄君) 私へのお尋ねは、労働者の組合等による自主的な労働者住宅の建設問題でございますが、労働者の住宅を建設するという問題は、申し上げるまでもなく、労働者の生活安定なりあるいは福利の向上なりのために最も望ましい政策の一つであると私どもも考えております。御指摘のありました労働者住宅に関するILOの勧告が述べておりますところの、労働者の自主的な組織を通じてその住宅の建設をはかっていくということも、これも私どもは望ましいことであると考えております。政府といたしましても、この趣旨から、御承知のとおり、日本労働者住宅協会あるいは生活協同組合等に、住宅金融公庫あるいは年金福祉事業団等から融資をはかって、これを促進してまいったところでございますが、今後におきましても、ILOの勧告の精神を体しまして、できるだけ助長をはかってまいりたい、かように考えております。(拍手
  44. 永山忠則

    ○国務大臣(永山忠則君) 四十一年度の住宅対策費の中で地方負担は二百九十六億でございまして、うち超過負担の解消額は六十五億でございます。すなわち、本年度の予算で国庫補助金の基準単価の引き上げが、中高層の耐火建築で六・八%、木造平家建てで一一・八%、宅地で一五%でございます。しかし、今後五カ年間、これが実施にあたりましては、超過負担が完全に解消するように努力をいたし、各関係省と相談をいたしまして、完全に消化するように、机上プランに終わらぬようにいたしたいと存じます。(拍手
  45. 園田直

    ○副議長(園田直君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  46. 園田直

    ○副議長(園田直君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時七分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         自治省財政局長 柴田  護君      ————◇—————