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1966-02-22 第51回国会 衆議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十二日(火曜日)     —————————————  議事日程 第十号   昭和四十一年二月二十二日    午後二時開議  第一 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案  (内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  私学振興に関する緊急質問佐藤觀次郎提出)  日程第一 国有鉄道運賃法の一部を改正する法   律案内閣提出)  昭和四十年度衆議院予備金支出の件(承諾を求   めるの件)    午後二時六分開議
  2. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  私学振興に関する緊急質問佐藤觀次郎君提   出)
  3. 海部俊樹

    海部俊樹君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  この際、佐藤観次郎提出私学振興に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  4. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  私学振興に関する緊急質問を許可いたします。佐藤觀次郎君。   〔佐藤觀次郎登壇
  6. 佐藤觀次郎

    佐藤觀次郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題になりました私学振興に対し、佐藤総理福田蔵相中村文相に対し、若干の質問をいたしたいと思います。(拍手)  昨年、慶応で激しい学生ストがあり、今日また早大が空前の大紛糾をいたしております。入学試験を前にして、今日たいへんな騒ぎとなり、大きな社会問題となっております。  先日予算委員会において、同僚の山中委員質問に対し、また、昨日参議院において、鈴木君の質問に対しまして、佐藤総理大臣は他人事のような冷たい答弁をされております。これは国立大学はしかたがないが、私学は適当に当事者でやるべきだというような無慈悲な答弁でございました。一国の総理は、教育の問題については、それが国立であれ、私立であろうとも、一視同仁で考えるべきであります。これはいささか無責任のそしりを免れません。  現在、一例をあげてみますと、大学生の場合、国立に対しましては八十万円、私立学生はたった一人五千円という国庫補助になっております。教育政府が行なうべきであるのに、私学がその七割を背負っておる現状において、総理大臣はどのように考えておられますか、まず、総理大臣私学に対する姿勢をお伺いしたいと思います。  現在、私学のこの状態を捨てておきますと、来年は明治大学、次いで法政、立教というような六大学は、東大を除いて、毎年このような学校騒動が起きることは必至であり、いまや私学危機が到来していると言っても過言ではありません。(拍手)この私学紛糾が毎年起こるということは、それ自体偶然なことではありません。戦前の供金制度がなくなり、私学戦災復興からその整備拡張まで一切自力で解決してきました。この間、政府財政援助がないので、自然市中銀行援助を受け、現在は銀行からの借金で四苦八苦をしておるのが現状でございます。これに対して首相蔵相はどのように考えておられますか、お伺いしたいと思います。  現在、早大事件中心をなしております授業料値上げの問題は、これは学生に非常に痛いことでありますけれども、しかし、現在の私学では、その半分がこの授業料でまかなわれております。他の二割は銀行借金であります。早大は三年間値上げをしなかったということで、今度六割の値上げを決定しまして、新しい学生に押しつけようとしております。  私学財政難は、このような構造的なもので、もはや一私学経営者の問題ではありません。文部大臣が出られました法政大学もこの中の一つで、おそらく大きな問題だと思いますが、中村文部大臣は、文部官僚大蔵官僚の近視眼的なプランをうのみにして、何ら具体的な解決策を持っておりません。(拍手)前の愛知文部大臣は、さすがは大蔵省の出身だけありまして、具体的な解決の曙光を見出したようでありますけれども、いまは私学調査会という問題でお茶を濁しております。私は、総理にお伺いいたしますが、文部大臣のような地位は、一年おきにかわるようなことでは絶対に解決はできませんので、一体どのように文相地位考えておられるか、お伺いしたいと思います。  私は、数年前にロンドンに行きまして、イギリス私学研究をしてまいりました。有名なケンブリッジやオックスフォードのような大学は、その伝統も古いのでありますが、国が八割の援助をしております。イギリス私学が、今日長い歴史を持って、伝統ある学校といわれておるのは、このゆえんであります。しかし、援助はすれども干渉はしない。これがイギリス私学のモットーであります。(拍手)こういうような国柄であればこそ、イギリス私立大学はすばらしいものでございます。アメリカでも、私学に対しましては四割の国庫補助がありまして、エール大学とかコロンビア大学などのりっぱな私学が今日盛大をきわめております。私学助成ということでは、これは憲法の中に多少の疑義がありますけれども、これは一部の憲法学者意見でありまして、これを実行するという意思があれば、私はどんなことでもできると思いますので、この問題について中村文相あるいは福田蔵相はどのような意見を持っておられるか、お伺いしたいと思います。  わが国文部官僚の中には、私学助成するということになりますと、すぐ学内人事干渉したり、また、その方面に自己の立場を考えるような前時代的な感覚を持った人がおります。かかる考え方を打破しなければ、私は今度の問題は解決しないと思いますが、今度大学急増対策の問題につきまして、国はわずか二万三千人の入学増加をするのに対しまして、私学は三倍近い六万という膨大な収容を余儀なくされております。この費用が、また学生授業料にはね返ってきております。大学理工系学部を持っておる学校では、設備の向上のために多くの資金が必要となり、内容充実よりは、外形上の充実をしようとしております。少なくともこういうような急増対策の問題については、国立に与える援助金をもっと私学に与えて、そうして善処をされるのが当然ではないかと私は考えておりますが、総理大臣文部大臣はどのような意見を持っておられますか、お伺いしたいと思います。  いまや、わが国では、私学紛争は毎年の年中行事となって、日本教育問題と並んで私学充実ということが大きな問題になってまいりました。いまや深刻な社会問題化し、表面にあらわれてきております。これに対して文部大臣はどのような対策を持っておられますか、お伺いしたいと思います。(拍手)  一つの例をあげますと、いま私学負債は一千億に達する膨大なものであり、この利息だけでも年間七、八十億といわれております。四十一年度において、このごろ文部省が三十億の肩がわりをすると言っていばっておりますけれども、これはほんのカンフルにすぎません。一千億の借金に三十億のカンフル注射では、そんな苦悩が取り除かれるようなことはないと思います。この私大の危急な問題について、文部大臣は一体どのように考えておられるのか。私は、現在三十億くらいの融資でこの問題が片づくとは考えておりませんけれども文部大臣大蔵大臣はどのように考えておられるか。特に福田さんは、むすこが早稲田におられるそうでありますが、どのようにお考えになっておられますか、お伺いしたいと思います。(拍手)  今日大学問題は、幾多の矛盾した内容を包含しておりますが、今回の早大事件は、表面に出た氷山一角にすぎません。すでに大学生の進出に対して、政治があまりにおくれておることを痛感いたしますが、総理大臣はどのように考えておられますか。  かつて政府・自民党は、救済する金がないと言っておりますけれども、旧地主の農地報償と称して、膨大な報償金を国で出しました。(拍手)また、この間山一証券の負債に対して、これは経済界混乱をするということで、たった二十二億の担保で二百八十二億の金を貸しております。(拍手)しかるに、日本教育の七割を持っておるところの私学に対しまして、一体どのような助成をしたのか、どのようなあたたかい手を伸ばしたかをお伺いしたいと思います。これは早大当局が七百名の教授を擁しながら、いま早稲田に三万六千の学生がおりますが、あたたかい手を伸ばされないことが今日の混乱一つの原因をなしておりますが、私は、いまの日本佐藤首相あるいは蔵相及び文相が、どういうようなあたたかい手を差し伸べるのかどうかということをお伺いしたいと思います。  それから、今日私学対策についていろいろ意見がございます。しかし、一千億の負債に対し、わずかの投融資対策をしたくらいでは、この苦境を救うことはできないと思います。かつて池田内閣のときに、造船利子補給をして、造船界の悲境を救ったことは事実であります。かかる教育の重大なときにおいて、私は、この一千億の負債に対して、政府利子補給をするのが当然でないかと考えますが、大蔵大臣はどのように考えておられますか。(拍手)また、いま私学振興会から要求されておる五割の経常費国庫補助について、どのような考えを持っておられますか、蔵相並びに文相に伺いたいと思います。  今日、大学経営の中に一番大きな問題をなしておりますのは、私たちの学生のころには二百名、三百名の講座でありましたけれども、いまは六百名、七百名というマスプロの教育をするために、学生教授の間に大きな問題がはぐくまれております。それが学生各自を刺激して、今日大きな学生運動としてあらわれておりますが、この学生運動の拠点は早大であり、東大であります。したがって、今度の大学騒動は、昨年行なわれた慶応紛糾と違いまして、よりむずかしい困難性があります。そうして、大学を破局に追い込んでおる理由もここにあります。早稲田大学当局は、今日の学費値上げ反対は一部の学化反対だけだと言っておりますが、これは認識不足であって、あれだけの早稲田の盛り上がりがあるということは、学校当局の無能にも原因しております。今日六割というべらぼうな学費を上げて、この値上げでは、もはや中産階級の子供が大学にいくようなことはできません。しかも、学生の月謝で大学経営をまかせられる限り、こうした悪循環が繰返される。佐藤総理は、口を開けば青少年のことを言っておられますが、明日を背負う学校教育に対してどのような見解を持っておられますか。佐藤内閣は、すでに一年有半の政権を担当しております。しかるに、いろいろな宣伝をしておっても、そのやったことは、値上げムードをつくったり、ベトナム戦争や韓国や台湾の問題ばかりをやっておりますが、明日の世代をつくります日本学生に対して、もう少しあたたかい目を向けるべきじゃないかと思いますが、総理意見はいかがでございますか。(拍手)  いまや私学危機は、日本の七割の教育を担当しておるわが国教育行政にその根本的な対策が要求されております。早大事件の深刻な大学当局学生不信感は、いまや不法な警察力で、学内警察を入れて、そうしていろいろなことをやっておりますけれども、これは根本解決策ではございません。もう明後日に入学試験の問題がありますけれども、いまや大学の問題は長期的な様相を示しております。問題は、そのきっかけとなりました学費値上げの問題、それが大きな問題となっております。政府は、この危急に対して、おざなりの政策でごまかそうとしても、それがわが国政治中心に大きなひずみを与えるような情勢に追い込まれていくと思うのであります。早大紛糾日本社会氷山一角であります。もっともっと社会考えて、この私学問題について十分なる研究をしてもらいたいと思いますが、総理大臣大蔵大臣文部大臣所見はいかがでありますか。(拍手)  最後に、早大問題を中心として、いまや私学の問題は日本社会をゆり動かす大きな政治問題となりつつあります。一国の政治は、青年によってその運命が決定されます。わが国のような特殊な国で、大学生は大きな社会推進力をになっております。かつての安保闘争や、また過日の日韓闘争などの高圧的なやり方ばかりやっておらないで、そのほかにいまアメリカベトナムでベトコンに苦しめられておりますが、そういう点で、政府はこういうような問題についてもっと十分なる検討をしていただきたいと思います。私は最後に、総理大臣大蔵大臣文部大臣が、このいまの私大問題に対しまして、どのような所見を持っておられるか、御答弁をお願いして、最後の御質問にするわけであります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  7. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  私が申し上げるまでもなく、わが教育界において私学が果たしておる役割りは、たいへん大きいのでございます。教育の発展、充実のためには、私学の存在を忘れるわけにはまいりません。かような意味におきまして、私学についての特にその振興策は、政府ももちろん十分考えておる次第でございます。御承知のように、私学振興会制度がありまして、低利長期にわたる資金融資をするとか、あるいはまた理科設備、あるいは研究設備等助成をするとか、あるいはまた学資金の十分ない生徒に対しての育英資金等におきましても、官立、私学の区別をなくした扱い方をするとか、あらゆる面におきましてくふうをこらしておるのであります。  しかしながら、ただいま御指摘になりますように、今日私学が当面しております問題は、この程度ではなかなか解決されないまことに重大なものがございます。しかし、わが国学校設立法は、設立者責任におきまして経営管理をするというのが、本来のたてまえであります。さような意味で、ただいまロンドン——イギリスの学制など御紹介になりましたが、英国では、私立大学の数が非常に少ない。日本と雲泥の相違がございます。また、私立大学を設立します場合に、その条件その他はまことに厳格であります。かような状態にあるイギリスわが国との間の相違、これは十分考えなければなりませんが、今日、私学が当面しております問題を解決するためには、私立学校振興方策調査会なるものが、ただいまちょうど調査を始めておる最中であります。ただいま御紹介のありました英国制度も、また、学校管理に関する方策も、経営あり方につきましても、また、授業料の多寡等つきましても、融資その他につきましても、この振興方策調査会におきまして、真剣に取り組んでまいるつもりでございます。政府は、その調査会結論を得まして、そうして真剣に取り組んでまいる考えでございます。  また最後に、ただいま当面しておる、学生をいかに見るか、いかに把握するか、かようなお尋ねでございますが、私が申し上げるまでもなく、次代を背負う青年こそわが国の宝だ、かような意味において、これの育成については格段の留意をいたすべきだということをいつも申しております。その多くの場合が、いわゆる学生として、学校において、教育の場、これを通じまして人間形成がなされるのであります。かように考えてまいりますと、学校教育の場はまことに重大なものでございますから、一そうその点で政府私学振興努力するつもりであります。  また同時に、学生諸君も、一部におきましては、現在学生についていろいろの批判があります。たとえば、知育、徳育、体育、この三拍子がなかなかそろわないとか、あるいは、ことに機械文明の時代になってから、どうも人間が機械的になるとか、あるいはまた非常に困ることは、いまの教育試験勉強に終始するように学生がなっておるとか、あるいはまた就職の場であるとか、そういうところで非常に片寄った勉強をしておるとか、こういうような批判もございます。これらの批判は、必ずしもゆえなきにあらずと思いますが、真剣に、また熱意を持って、人間形成の場としての学究、勉学にいそしんでおる学生諸君も非常に多いのでございます。私どもは、これらの学生諸君にもこたえ、また幾多の弊害を除去する、かような意味で、わが教育方針につきましても、力をもって前進してまいりたい、かように考えておる次第であります。(拍手)   〔国務大臣中村梅吉登壇
  8. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) ただいま佐藤さんから、私学振興問題を中心にした御質問がございました。この機会に、私の私学振興に対する考え方と、現在の処置について申し上げて、御答弁といたしたいと思います。  私学振興重要性は、私自身も痛切に感じておるところでございます。現在、お話のとおり、全私学を通じますと約一千億の負債をになっております。その一千億の中で約四百億近くは、私学振興会を通しての国の低利融資でございますが、いずれにいたしましても、そういう多額の負債をかかえて、今日各私学が非常に困難をいたしております現状、並びに私学のになっております教育重要性というものから見て、われわれとしては、私学振興に一そう熱意を傾けて努力すべきものであると考えております。  そこで、昨年の国会で、御承知のとおり、制度として私学振興方策調査会設置がきまりまして、自来、この調査会が  このメンバーには私立大学関係者も入っておりますし、多数の学識経験者委員になりまして、鋭意検討努力を続けておるわけでありますが、この結論が出るということは根本対策でありまして、この根本対策である結論の出るのをじんぜん待っておるわけにはまいりません。  そこで、さしあたりどうすればいいかということにつきましては、四十一年度予算編成に際しましても、私どもとしては大いに意を注いだところでございます。その結果の現状を申しますと、四十一年度におきましては、私学振興会運用資金私学に対する援助資金を大体二百四十二億円確保することができたわけでございます。この中で、なお私学現状から見て、高利借金をになっておるものがありますので、この高利債は何とかある程度、相当程度借りかえの道を講じてあげたいということで、いろいろ大蔵当局とも相談をしてまいりました結果、ごく最近結論を得まして、いろいろ高利債内容等調査いたしました結果、三年間に約百億円だけは低利資金に借りかえの道を講ずることにしようということで、さしあたり昭和四十一年度は三十億円ということにきまったわけであります。もちろん、私どもはこれで十分とは思っておりませんが、私学振興方策調査会の答申の出るまでの応急の措置として、こうした高利債の借りかえ、及び私学振興会を通しての資金の分量を昨年の倍額にふやしまして、二百四十二億円の確保をいたした、こういうような次第でございます。  なお、佐藤さんからは、こういう負債に対して利子補給等をしたらどうか、あるいはもっと経常費に対して国が補助する道を講じたらどうか、こういう御意見もございましたが、これらにつきましては、私学の発達をしてきた伝統、あるいは私学に対して助成をするとするならば、それと関連してどういう問題点があるか、こういうことをやはり掘り下げて検討をした結論を得なければなりませんので、これらを含めて一括して、目下設けられております調査会で、私学関係意見も聞きつつ、すでに具体的な検討に入っておる次第でございます。できるだけ私どもはこの調査会調査検討を促進いたしまして、できるだけ早い機会結論を得て、根本対策を講じてまいりたい、かように考えておるような次第でございます。  なお、理科教育等充実についてのお話があったかと思いますが、これは国公立の大学につきましては、もちろん今度大学生急増対策一つとして、学部学科増等をいたしましたが、主として理工科系学科に重点を置き、なお、私学にもある程度この促進をはかる必要がございますので、昭和四十一年度といたしましては、私立大学理科設備特別助成費として約五十一億円を計上いたしまして、こういう経費による援助も具体的に講じてまいりたい、かように存じておるような次第でございます。  なお、当面いたしておりまする早稲田大学紛争につきましては、私どもまことに遺憾しごくに思っている次第でございます。しかしながら、現状制度としては、政府なり文部省が、こういう紛争に対して干渉がましいことを言う、あるいは指導、指示をするような制度もございませんし、また紛争現状から見て、そういうことは好ましくもないし、つとめて自主的な解決を見ることを心から願っておる次第であります。  幸い佐藤さんも重要なメンバーとして——国会には多数の早大出身者がおりまして、稲門会方々がほんとうに心配をして努力をしていただいておりますので、当初から私どもは、この稲門会のごあっせんによるなめらかな結論を得ることを衷心期待し、一、二の方々には懇請もいたしたような次第でございますが、稲門会方々の御尽力にもかかわらず、事態はまだ紛糾を続けておりまして、終息を告げる状況になっておらないことを、まことに残念に思うのでございます。  ただ、新入学の、早稲田大学で学問を学びたいという志望者が十万人以上もあるというのが現状でありまして、これらの学生入学試験を待機し、また学生だけではない、父兄も地方から同行して、東京に泊まり込んで心配をしておるという、切実な問題を目の前にしておるのでございますから、大学側も、また学生側も、ことに学生にしてみれば、新しく入ろうとする人に対しては先輩であります。これらの先輩学生及び大学当局も、紛争紛争として、何とかこの十万に余る新入学を希望しての受験生に対しては、円満、平穏に受験のできるように考えてもらいたい。(拍手)これを私は切に望んでおる次第でございます。  なお、この機会に、議場を通しまして、稲門会方々の御尽力に感謝を申し上げますと同時に、今後ともお骨折りを賜わりまして、しかるべき結論を得るようにお願いをしてやまない次第でございます。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫登壇
  9. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答えをいたします。  第一点は、私学に対しまして利子補給をする必要があるのじゃないか、また、一般に財政援助をどういうふうに考えるかというお話でございます。実は私のせがれも早稲田大学に在学中でございまして、最近、特にきのう、きょうの事態に対しましては深憂にたえないところでございます。私学に対する財政援助につきましては、私はこういうふうに考えるべきものであると思う。つまり、私学経営責任は、第一義的には経営者にある。しかし、私学が行なっていることは、次の世代をになう青少年を育成するという大事な仕事であります。この二つの問題をどういうふうに調和するかというところに、財政との交錯の問題の要点がある。さような見地から、従来とも、国が教育、特に私学に対して要請する理化学の振興等につきましては補助をいたしてきておるのであります。また、私学振興会を通じまして融資等をしてきておるのであります。しかし今後、さような私学の重大な使命を思うときに、さらにこの方向を強化しなければならぬ。ただいま文部大臣からお話がありましたけれども、ことしは特に政府のほうから財政投融資資金百九十億円、また政府の出資を十二億円出しまして、お話のありましたような三十億、三年間で百億円の低利借りかえもできるようなことになってきておるのであります。しかし、私は、今回の早稲田大学事件等を顧みてみまして、私学振興あり方というもの——私学振興方策調査会もいま審議中であります。そういう結論等も見ながら、さらに合理的に進めていきたい、かように考えておる次第でございます。  なお、佐藤議員から、私学に対する寄付は全部免税にすべしというお話でございます。私学に限らず、ただいま慈善事業等につきまして、一部の税の減税を行なう、免除を行なうという制度になっておるのであります。これを全額免除すべしという議論がずいぶんあるのでありまするが、一体そういうようなことにしますと、国の財政、つまり国民全体の負担において、寄付する人が、たとえば私立大学、それに対して大きな顔をきかすという事態に相なるのであります。私は、この免税問題というものは、国民全体の財政の視野において考えなければならぬ問題である、かように考えます。佐藤さんは財政の大家でございまするから、そのくらいのことは御承知かと思いますが、しかし、その理屈一点ばりばかりではいけない。実情に即した考え方も取り入れなければならぬというので、一部免除の制度もあるわけでありまするが、昭和四十年度におきましても、その改正が行なわれております。また、昭和四十一年度、これから御審議をお願いいたしまする税法の改正におきましても、その免税基準を緩和するなどの措置を講じていくのでありまするが、今後とも、私学経営につきましては、私は、財政の見地から、調査会の答申等を待ちまして、根本的に考えていく、かようにお答えを申す次第でございます。(拍手)      ————◇—————  日程第一 国有鉄道運賃法の一部を改正する   法律案内閣提出
  10. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 日程第一、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————   国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案  右  国会提出する。   昭和四十年十二月二十一日          内閣総理大臣 佐藤 榮作     —————————————    国有鉄道運賃法の一部を改正する法律  国有鉄道運賃法昭和二十三年法律第百十二号)の一部を次のように改正する。  第三条第一号中「三百キロメートル」を「四百キロメートル」に、「二円七十五銭」を三円六十五銭」に、「一円三十五銭」を「一円八十銭」に改める。  別表第一及び別表第二を次のように改める。     …………………………………      理 由  日本国有鉄道の経営を改善し、輸送力の増強及び保安施設の整備を図るため、日本国有鉄道の運賃を改定する必要がある。これが、この法律案提出する理由である。     —————————————
  11. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 委員長の報告を求めます。運輸委員長古川丈吉君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔古川丈吉君登壇
  12. 古川丈吉

    ○古川丈吉君 ただいま議題となりました国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、本法案の趣旨を簡単に申し上げますと、御承知のとおり、国鉄は、国民すべての要望にこたえるべく、大都市付近の通勤輸送の改善、主要幹線輸送力の増強による過密ダイヤの緩和及び保安対策の強化の三つを主眼とする第三次長期計画を策定し、おおむね二兆九千億円の投資規模をもって、昭和四十年度より期間七カ年で実施に入っておりますが、一方、国鉄財政現状は、三十九年度においてすでに三百億円の欠損を生じ、四十年度では一千億円に近い欠損が見込まれている実情でありまして、国鉄経営におけるこの収支の悪化と工事資金の調達の問題が当面緊急解決を要する重大問題となっているのであります。本案は、この事態に対処して、国鉄の健全な経営を維持し、第三次長期計画の円滑な遂行を期するため、必要最小限度の運賃改定を行なおうとするものであります。  その内容を簡単に申し上げますと、旅客運賃については、現行の遠距離逓減制を、理論的に見て妥当と考えられる距離比例制に近づけるため、二地帯制の境界を百キロメートル引き伸ばして四百キロメートルとし、第一地帯の賃率を三円六十五銭に、第二地帯の賃率を一円八十銭に改定いたし、航路運賃においても鉄道と同程度の引き上げを行なっております。また、貨物運賃については、最近の輸送構造の変化に即応して、貨物等級を、従来の従価等級制度から、平均的な運送費用に対応した単一賃率を採用する方向で四つの等級にまとめ、等級間賃率の上下の幅を縮めるとともに、賃率をおおむね一七%引き上げることといたしており、旅客、貨物を合わせまして昭和四十一年度において一千六百三十億円、増収率二五%の運賃改定を行なおうとするものであります。  さて、本法案は、昨年十二月二十八日本委員会に付託され、次いで、本年一月十七日政府より提案理由の説明を聴取し、自来、質疑を重ねること十回、三月十七日には参考人を招致してその意見を徴し、また、翌十八日には物価問題等に関する特別委員会と連合審査を行なう等、慎重に審査いたしました。  本法案審査にあたりましては、運賃値上げの物価に及ぼす影響いかん、便乗値上げをいかにして抑制するか、国鉄の独立採算制と公共性との調和をどうはかるのか、また、第三次長期計画の工事資金は国が出資すべきではないか、国鉄の公共負担について国家補償をすべきでないか、国鉄の財政悪化をどう改善していくのか、国鉄経営の合理化をどう進めていくのか、等の諸点に関し熱心な質疑応答が行なわれましたが、詳細は会議録により御承知願います。  かくて、二月十九日質疑を終了し、田邉國男君外三名より、本案に対し、その施行期日を「公布の日の翌日」からに改める修正案が提出され、討論に入り、日本社会党を代表して肥田次郎君より反対、民主社会党を代表して内海清君より反対意見が述べられ、採決の結果、本法案は多数をもって修正議決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————   〔参照〕    国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に    対する修正案        (委員会修正)  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  附則中「昭和四十一年二月十五日」を「公布の日の翌日」に改める。     —————————————
  13. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。小川三男君。   〔小川三男君登壇
  14. 小川三男

    ○小川三男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま上程されました国鉄運賃法の一部を改正する法律案反対の討論を行ないます。(拍手)  まず第一に、政府・自民党は、財政法第三条及び財政法第三条に関する特例法が国鉄と郵便の料金決定を国会にゆだねている重大な使命と、その責任をみずから放棄している点を追及しなければなりません。この二つが国会の決定をまたなければならないのは、国鉄運賃と郵便料金とが国民大衆の日常生活にとって切り離すことのできない大きな役割りを持つからである。ところが、政府は、運輸審議会に対して、みずから慎重審議を求めておきながら、その答申案の出るに先立って、国鉄運賃の値上げを発表し、これを既定の事実として押しつけるがごとき無責任きわまる態度で臨んできたのである。この態度こそ、みずから審議会を無視するものであると同時に、政府は、運輸大臣は、左の手で運賃値上げを運輸審議会に諮問しつつ、右の手で自民党と閣議はその値上げ決定を行なってきたのである。これは、私鉄運賃の場合も、米価値上げの場合も、審議会がみずから公聴会を開き、いまだ審議しているさなかに値上げ発表を行なってきたことと同じである。こうした政府の審議会無視の態度は、直ちに国民大衆を無視するの態度といわざるを得ない。このゆえにこそ、経済企画庁の国民生活審議会が、政府の物価政策は作文にしかすぎないと、怒りを込めて指摘しているのであります。(拍手)  その第二は、去る十九日の運輸委員会における審議打ち切りの強行である。国鉄運賃問題は、物価の天井知らずの暴騰に苦悩する国民にとって重要な問題であるがゆえに、日本社会党は九名、民主社会党は二名の質疑通告を提出したのである。それにもかかわらず、約半数の質疑者を残して、わが党の久保委員質問中に、突如として質疑打ち切りの動議をもってその言論を封殺し、国会正常化を守らねばならないみずからの使命をみずから放棄して、あえてこの暴挙を行なったのである。(拍手国会における審議の公正と言論の自由はどこにあるというのか。この事実は、全く許すことのできない議会政治に対する背反である。  その第三は、今回の国鉄運賃法の改定を前面に押し出した国鉄第三次長期計画の内容である。昭和四十年から四十六年までの間に総額二兆九千七百二十億円を投じて過密ダイヤの解消を最大の主眼とすると称する反面で、この資金の約半額に当たる一兆七千七百四十四億円を自己資金でまかなうという名目のもとに、これを利用者の肩に押しつけてきたのであります。このことは、国有鉄道が当然政府資金をもって行なうべき事業を、利用者からの収奪、大衆収奪によって強行しようとするものであって、断固として反対せざるを得ません。(拍手)  国鉄当局は、前回、前々回の値上げと同様に、今回の運賃値上げに対しても、輸送増強のためには設備投資が必要であり、その資金は運賃によるほかないと言っている。企業に対する資本負担を行なわせる場合、企業は当然負担者に権利を与えなければならない。現在のように、国民を無権の出資者として、それを当然としている政府並びに国鉄当局の態度こそ問題である。しかも、続出する公共料金の値上げの中で最大の比重を占める国鉄運賃の値上げが、他の一般物価に及ぼす影響と公債発行によるインフレの懸念との相乗作用をもって国民大衆の生活にのしかかってくることの重大性について、政府当局はこれをいかに考慮したであろうか。しかも、国民大衆を無権の出資者とする一方で、さらに、今日の輸送の実情を政府当局は正確に把握しているのであろうか。戦国乱世の時代なら知らず、いまの世に、押し込み、はぎ取りなどが通常のことばとなり、しかも事実これが行なわれているのは、世界の全交通機関の中で、わが日本の国有鉄道のみである。人間人間とも思わない詰め込みと、一瞬を誤れば大惨事を引き起こす過密ダイヤに苦しむ国民大衆の上に、さらに運賃値上げの重圧を加えるに至って、これがどこをさせば政治といえるのか。交通政策といえるのか。これはまさに暴政であり、弾圧であるといわざるを得ない。政府は、すみやかにこの法案を撤回すべきである。  次に、以上の実情を打開するために、わが社会党は、日本国有鉄道整備緊急措置法案を去る十二月二十八日の衆議院本会議提出しました。これは、運賃値上げ、過密ダイヤ、通勤ラッシュなどをすみやかにかつ計画的に整備して、利用者サービスをはかることを骨子とし、一、幹線輸送の増強、通勤輸送の緩和などに必要な路線の増設、車両の整備。二、整備事業は昭和四十一年度を初年度とする十カ年間計画、運輸大臣はこの計画について閣議決定を求めるものとし、政府も計画完遂に責任を持つ。三、財源については、所要経費の三分の一の一兆一千億円を政府出資とする。以上が法案の大要であるが、わが党のこの計画によって、国鉄本来の公共性である陸上輸送の根幹として、大量の乗客、貨物を安全、正確、迅速に輸送することができ、しかも、国家財政の出資によって、利用者負担の運賃値上げは避けられる。しかるに、政府は、この提案に対して何ら誠意ある対策を示すことなく、今回の値上げ法案を強行することにただきゅうきゅうとしていたにすぎない。  国民大衆の値上げ反対の強烈な願望を無視してこれを実施するならば、一般旅客は、当局がいかに家計を圧迫する値上げではないと説明しようと、実際に駅の窓口に行って自分の支払うべき料金を知ったとき、どんなにか驚き、失望し、かつ怒るであろうか。さらに、これが農民、中小企業者への影響の大きさについても、関係当局はこれを調査したであろうか。農民の場合、日雇い通勤の多い兼業者は、わずかの賃金から定期外旅客としての高運賃を取られる反面に、農産物の運賃値上げによって、いまの市場取引、荷受け組織と小売り組織から、農民の手取り価格は相対的に低下する。消費者価格は高くなって、その生活は苦しくなるばかりである。これと同じように、原料費の値上がりと輸送コスト高を他に転嫁すべき手段を持たない中小企業者は、みずからこれを負担せざるを得ません。もしこれを負担することができなければ、そこに待っているものは必然に倒産である。このことは去る十八日の物価問題連合審査会において、わが党委員より計数をあげて強く指摘したところである。したがって、この国鉄運賃の値上げは、値上げエスカレーションの口火となって、さらに重大な結果を招くことは、火を見るよりも明らかである。(拍手)よって、政府は、直ちにこの悪法を撤回し、わが党が提案している日本国有鉄道整備緊急措置法を採用して、輸送の増強と安全をはかり、国民の期待にこたえるべきであろう。  日本社会党は、全国民大衆とともに、佐藤首相と自民党の諸君にその果たすべき責任の道を示して、ここに私の反対討論を終わります。(拍手
  15. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 壽原正一君。   〔壽原正一君登壇
  16. 壽原正一

    ○壽原正一君 私は、自由民主党を代表して、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対し賛成の討論を行なわんとするものであります。(拍手)  本法案は、国鉄経営基盤の安定化をはかり、資金調達の円滑化を促進し、第三次長期七カ年計画を完成せしめるために必要欠くべからざる運賃の是正でございます。このために私は賛成の意を表するものでございます。  ことに、運賃是正の内容は、物価の安定に寄与するために、国民の日常生活の必需品に対しては、特別の考慮を払い、米麦、鮮魚、蔬菜、肥料、その他生活必需品については最低の値上げにとどめ、その他六十九品目についても特別の割り引きを認める等、まことにきめのこまかい配慮をいたしておるのでございます。(拍手)したがいまして、今回の運賃是正の物価に及ぼす影響は、わずかに〇・三四%であり、これを輸送増強計画実現の暁におけるサービスの向上に比べれば、問題にならぬといわざるを得ません。物価安定の名のもとに、極度に低い国鉄運賃をさらに引き続き抑制せんとするがごときは、料金、物価の均衡を失い、物価安定に寄与するところとはならないのであります。  昭和十一年度の物価に比較して、現在の国鉄運賃は、その指数、旅客においてわずかに百六十一倍、貨物において二百十七倍であり、物価指数の平均三百六十倍程度に比較して、あまりにも低廉でございます。公共料金の名のもとに、国鉄運賃のみを不当に抑制せんとするがごときは、物価政策の貧困を物語る以外の何ものでもございません。大幅なる賃金値上げを主張しながら、反面、極度に低い運賃是正に反対するがごときは、矛盾もはなはだしきものといわざるを得ず、反対せんがための反対と断ぜざるを得ません。(拍手)  今回の運賃値上げによって得る増収のみを財源として第三次長期計画を実施するがごとき誤った宣伝をなし、あるいは、はなはだしき一例をあげれば、八百屋が店舗を増築するための資金をつくるために商品の値上げをするにひとしいなどと言う者がございまするが、これは詭弁と申すほかはございません。(拍手)すなわち、国鉄七カ年計画中に含まれる総経費は四兆一千億であり、そのうち運賃値上げによるものは二一%の八千五百億円であって、残りの三兆円余りは、財政融資その他利用債、特別債等でございます。第三次七カ年計画の設備投資額に匹敵するものでございまして、八百屋の増築費は、値上げによるものではなく、借り入れ金であるということになります。運賃を値上げした財源によって長期七カ年計画を実施するから値上げ反対だと称するがごときは、右の事実すら知らざる者か、あるいは、ことさらに反対せんがために偽りの宣伝をしているとしか考えられません。  また、海陸運賃の調整の立場からも、国鉄運賃は是正しなければならないのであります。元来、海上運賃は国鉄運賃よりも低いのが常識でございます。しかるに、現在の国鉄運賃が格安のために、海上輸送であるべき物資までが国鉄に依存するがごとき変則状態を来たしておるのでございます。あまりにも低廉な国鉄運賃にたよる貨物が国鉄に蝟集し、かくては、国鉄が今後いかに施設を増強し輸送力を強化しても、なお足りないことになる道理でございます。この変則状態を解消し、正常な運送分野を確立するためにも、今回の運賃是正は重要性が含まれておるのでございます。  海運、鉄道、自動車等の輸送体系を調整し、むだを省くための輸送秩序の確立がいまもって実現せず、交通体系の整備をはばんでおるものは、国鉄運賃のあまりにも低廉であることが最大の原因であるといわなければなりません。(拍手)このことは、交通学者並びに運輸関係に携わる為政者のひとしく認めるところであり、一致した定説でございます。  社会党その他本法案に反対の諸君は、今回の運賃是正を取りやめ、そのかわり財源を国の一般会計からの出資によるべしと言っておるのでございまするが、何ら鉄道に恵まれず、国鉄を利用せざる国民の血税をもって一部国鉄利用者の負担の軽減をはかるがごときは、暴論と称すべきであって、われわれの断じて承服せざるところでございます。(拍手)本案に対する反対論者は、値上げによる負担増加の点のみを強調して、国鉄第三次長期計画が国民経済の発展と民生の安定に寄与する重要なる面をことさらに隠そうとしているのでございます。  国鉄の安全性の確保と迅速なる輸送の完成のためには今回の運賃是正は必要欠くべからざるものであることを重ねて強調し、最後に、困難な情勢下に第三次長期計画を完成させなければならない国鉄の任務は重かつ大と考えておりますので、関係各位におかれては、目的達成のため最大の努力を払わんことを望みます。  私の賛成の討論をこれにて終局さしていただきます。(拍手
  17. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 山下榮二君。   〔山下榮二君登壇
  18. 山下榮二

    ○山下榮二君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について反対の討論を行なわんとするものでございます。(拍手)  そもそも、国鉄はわが国の交通産業の根幹をなすものでございます。したがいまして、国鉄運賃の値上げは、ひとり交通産業の各種料金だけではなく、一般諸物価の値上がりに深刻なる影響を及ぼすことはきわめて明瞭でございます。(拍手)すなわち、昨年秋、国鉄運賃の値上げが問題になるや、直ちに陸続として私鉄、私バス、都電、市電等、一切の交通料金の値上げが申請され、本年一月二十日に、政府は、勤労国民があげて反対したにもかかわらず、私鉄大手十四社に対し、平均二〇・二%という大幅値上げを認めたのでございます。なお、一般諸物価への影響は、さらに重大かつ深刻なものがあると申さなければなりません。貨物運賃の値上げは、直ちに農水産物、ことに生鮮食料品及び木材、各種燃料、鉱工業製品等、あらゆる生活必需品並びに生産資材の値上がりに直結するものであることは、いまや国民のすべてが、すなわち生産者も消費者も深く憂えるところでございます。  そこで、これに関し、国鉄基本問題懇談会では、その意見書の中で、運賃値上げの実施に際しては、その影響のあまりにも広範囲であることを考え、その時期及び引き上げ率については、物価政策全体の立場から慎重に決定する必要があると述べているのであります。政府もこのことはよく御承知のはずでございます。しかるに、今国会における総理並びに大蔵大臣、経済企画庁長官の施政演説を見ましても、その後の政策的措置を見てみましても、何ら抜本的な総合的なかつ長期的な物価政策が確立されていないことは、国民ひとしくきわめて不信の念を抱かざるを得ないのであります。このような物価政策の不在の中で、この時期に平均二五%の大幅値上げをすることは、この意見書にまっこうから反対する施策であると断ぜざるを得ないのであります。消費者物価がとどまるところを知らずウナギ登りに上昇しつつある今日、断じて国鉄運賃の値上げは行なうべきではないとわが党は信ずる次第でございます。(拍手)  さらに、国有鉄道の経営は、日本国有鉄道法によって、独立採算制が原則となっているのでありますが、一方、同法第一条に、能率的な運営により、これを発展せしめ、もって公共の福祉を増進することを目的とすると明記されてあるのでございます。日本国有鉄道は、その公益性、公共性という基本性格を有していることは明らかでございます。したがいまして、政府は、国鉄の経営に対して、国鉄が支出をいたしております公共負担額については国庫から財政支出をするのが当然のことといわなければなりません。たとえば、昭和三十九年度における国鉄公共負担額は八百六十八億円、四十年度には九百億円に達し、四十一年度には一千百億円の巨額になると見込まれておるのでございます。これが国鉄経営の悪化のきわめて大きな原因となっておることは論をまたないのであります。国有鉄道法第五条に明記され、かつまた国鉄基本問題懇談会の意見書においても、第三次長期計画の資金確保に関しては政府支出の検討を要求しておることは、皆さん御承知のとおりであります。したがいまして、責任ある政府の立場といたしましては、当然、運賃値上げという国民化活に重大な影響を及ぼす処置をとる前に、政府は国鉄に大幅な財政支出を行ない、国鉄の公共性、公益性を政府責任において増進することとしなければなりません。利用者たる国民の負担において不足資金を確保するがごとき安易かつ不当な処置は、断固これを撤回すべきであると考える次第でございます。  また、国鉄当局においても、親方日の丸的な安易な経営感覚を完全に払拭して、独立採算制の原則に立って、近代的な経営方針のもとに一そうの合理化を強力に実行し、経費の節減等に努力を傾注すべきであると思うのであります。一例を経営方針の合理化にとってみましても、新幹線のごとき目新しい事業に対しましては経営の全力を傾注する一方、勤労国民が朝夕通勤の混雑に貴重なエネルギーをすり減らしながら、一日も早くその緩和を切望している東京、大阪等大都市近郊の通勤ラッシュ等に対しては何ら見るべき改善の対策を講じていない実情は、もって遺憾とせざるを得ないのであります。(拍手)  かかる実態を見ましても、国鉄当局が、輸送の改善と合理化、能率化を進め、公共の福祉を増進するという国鉄本来の使命に対していかに怠慢であるかが明瞭であると考えるのであります。  さらに、佐藤内閣は、組閣以来、高度経済成長政策のひずみを是正し、調和のとれた安定成長政策に切りかえることを国民に公約されたのであります。そのためには、公共料金の値上げをストップする、人間尊重、愛情ある政治を国民に約束されたことは、決して世間の人は忘れていないのであります。しかるに、内閣発足以来、国民に対する公約とはおよそ反対の物価値上げの政策が行なわれ、本年一月消費者米価の値上げをはじめとして、今回の国鉄運賃の値上げ、さらに七月からは郵便料金の大幅値上げ、なお、電信電話料金の値上げ等、一連の公共料金の値上げを次々に意図されておることは、皆さん御承知のとおりであります。物価値上げに一そう拍車をかけており、歴代内閣史上まれに見る物価値上げ内閣、公約違反内閣であると申し上げましても、断じて過言ではないと存ずるのであります。(拍手)  わが党は、かかる政府の態度に対し、きびしい反省を求めるとともに、この際、あらゆる物価の全面的上昇の導火線となる国鉄運賃値上げ案については、佐藤総理みずから、一切の行きがかりにとらわれず、断固これを撤回され、国民に公約をされたとおり、安定成長路線の経済政策を推し進められるべきであると存ずるのであります。  たとえば、フランスのドゴール大統領は、物価上昇に対しましてストップ令を発し、物価安定の道をはかられました。あるいは、先月アメリカのジョンソン大統領は、アルミニウムの値上がりに対しまして、国有アルミニウムの放出によって価格安定政策の道をとられましたことは、皆さん御承知のとおりであります。  以上申し上げますがごとく、諸外国の政府は、物価安定施策のためにあらゆる努力を傾注されておるのであります。わが国における物価の上昇は、年々五%ないしは一〇%にも達しているにもかかわらず、佐藤内閣は、物価安定政策について何ら抜本的施策をとっていないことは、無責任もはなはだしいと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  わが党は、この際、政府関係にかかる国鉄運賃をはじめ、電信、電話、郵便、たばこ、塩、アルコール等、一連の公共料金の値上げストップ令を断行し、諸物価安定の基本施策を確立されることを強く要求いたすのであります。  かかる観点から、わが党は、ここに国有鉄道運賃法の一部改正案に対し断固反対の意を表明するものでございます。  以上をもちまして私の反対討論を終わります。(拍手
  19. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。  本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  20. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。      ————◇—————  昭和四十年度衆議院予備金支出の件   (承諾を求めるの件)
  21. 海部俊樹

    海部俊樹君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  この際、昭和四十年度衆議院予備金支出の件を議題となし、議院運営委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  22. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  昭和四十年度衆議院予備金支出の件を議題といたします。     —————————————     報告書  一、昭和四十年度衆議院予備金支出の件  右件につき本院の承諾を求めるため報告する。   昭和四十一年二月二十二日         議院運営委員長 塚原 俊郎    衆議院議長 山口喜久一郎殿     —————————————     —————————————
  24. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 議院運営委員長の報告を求めます。議院運営委員長塚原俊郎君。   〔塚原俊郎君登壇
  25. 塚原俊郎

    ○塚原俊郎君 ただいま議題に供せられました昭和四十年度衆議院予備金支出の件について御報告申し上げます。  今回御承諾をお願いいたしますのは、昭和三十九年十二月二十一日から昭和四十年十二月十九日までの間に本院で支出した予備金七百万円であります。その所属年度は全額昭和四十年度分でありまして、使途は、すべて在職中なくなられました議員の遺族に賜った弔慰金であります。  これらの支出については、そのつど議院運営委員会の承認を経たものでありますから、御承諾くださいますようお願いいたします。(拍手)     —————————————
  26. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 採決いたします。  本件は承諾を与えるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、承諾を与えるに決しました。      ————◇—————
  28. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 本日は、これにて散会いたします。    午後三時二十八分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         運 輸 大 臣 中村 寅太君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君      ————◇—————