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横山委員 今回この
刑法の審査に入ります前に、一言申し上げておきたい点がございます。それは、今回この
衆議院が非常に
混乱状態に入っておるのであります。私
どもはこの
混乱の原因が、一年前に
衆議院議長のあっせんによって三党の
約束があって、その
約束が完全に履行されない限りにおいては
ILO条約の
国内法の施行は待つべきである、こう主張をしておったにかかわむませず、
政府・
与党はその
約束をじゅうりんをいたしまして、この
国会の運営をしようとしておるのであります。私
どもは
国会の秩序というものは
政党と
政党との信義、
約束というものは履行しなければならない。それが先決問題であって、わが
法務委員会における
審議は
——ただ
激務委員会のみならずすべての
委員会の
審議は、その
約束の履行が先決であると主張してまいりました。したがいまして、円滑な
審議のルールにのせるためには、このことの解決をしなければならないと主張いたしまして、本
委員会の
開会については、
委員長をはじめ
与党の
諸君に深甚な
注意を促し、その
反省を求め、
与党内部、また
政府内部において十分にその
審議を尽くして、われらの理解を求めるべきことを主張してきたわけであります。しかるところ、
先般来何としても
委員会を強行するというようなお話でありまして、まことにこれは遺憾千万なことだと思うのであります。したがいまして、私
どもも本日の
理事会におきまして、ことばをきわめてこの
開会を阻止をすべく、また
与党並びに
政府諸君の
反省を求めたのでありますが、遺憾ながらこれを承知をいたしません。われわれとしては、ここにこの
刑法の
審議というきわめて重大な問題について基本的な見解を持っておりますけれ
ども、まずもってこの
委員会の
開会に至ったこと、並びにここに、よって生ずべき幾多の問題につきましては
政府・
与党の
責任であるということを強く指摘をしておきたいと思うのであります。こういう
やり方によって
法律案が
制定をされ、
基礎法であります
刑法が短時間の間にもしも成立をするようなことがありましたならば、きわめてこれは重大なことでありますから、もうわれわれとしては、あらゆる慎重な
審議をもってここに対抗すべきことを申し上げておきたいと思うのであります。
私はその
意味におきましてまず
資料の
要求をいたしたいと思います。
ここ数日前、
最高裁料所はこの
刑法の
改正に関します重大な
判決をいたしました。それはかって西武鉄道で起こった問題でありますが、終電車におりた
酔っぱらいが存在しておったことを確認をしなかったということで、
駅務係が
業務上
過失傷害の罪に問われて、そして
最高裁まで進んだわけであります。
最高裁はこの事案に対しまして過重な
注意義務を
駅長並びに
従業員に負わせることは妥当でないと
判決をいたしました。まさにこれこそは、私
どもが
刑法の問題について議論をいたします最も焦点となるべき問題であります。この
駅長並びに
従業員並びにすべての
交通従業員の
業務上
過失事故が三年以下の禁錮でありましたのを、いま
刑法の
改正草案の中に五年以下の懲役にいたそうとするゆえんのものは、過当な
注意義務、
業務上
注意義務が過重に課ぜられている
状況でありますから、私
どもこれに反対しておったわけでありますが、いみじくも
最高裁がこの
判決をいたしましたことは、きわめて
審議に重大な影響があるのでありますから、まず第一に
資料として先般の
最高裁の
判決の写しを本
委員会に
提出されるように要望したいのであります。
第二番目には、
各国の
刑法草案の
事例についてであります。この
刑法のような重大な
改正につきまして、
政府の口頭で
説明をいたしましたような
酔っぱらい運転、無
免許運転、
スピード違反、これが多いから今回の
改正をしたいというのでありますが、
法律には
酔っぱらいだとか、
スピードだとか、無
免許ということは書いてありません。それにもかかわりませず、この
改正法が施行されますならば、利益を得るといなとにかかわらず、職業であるといなとにかかわらず、すべて生活上反復しておる行為は
業務上
過失とされるのでありますから、
政府の口で言っておることと、実際に適用される範囲というものは全く月とスッポンの相違があると考えられるのであります。外国におきます
刑法の
事例の中にはいろいろな点について具体的にいっておるのでありまして、私が見ております一九六二年
ドイツ刑法草案を見ましても、第三百四十五条に「
アルコール飲料、またはその他の
麻酔薬を用いているため、または精神、または身体に欠陥があるため、
乗物を安全に操縦できないにもかかわらず、
乗物を操縦し、」というように具体的にこの種の問題、
政府がいっております諸問題に
具体胸にずばりと触れて法で
制定されておるのであります。したがいまして、私
どもが
刑法でこれを規定すべきでなくて、むしろ今日においては
道路交通法の
改正によるべきが理論としては妥当ではないかといっておるのでありますが、
各国におきましてこの種の「
アルコール飲料またはその他の
麻酔薬を用いているため」等々の、具体的に法制をいたしております
各国の
法律事例について
資料を提供してもらいたいのであります。
それから第三番目には、
交通災害で死んでおります者の
統計を見ますと、もしも
事故があったその場で適当な
措置歩行なおれているとするならば、全国の死八のうちの三分の一は助かるであろう。これは
厚生省の
統計に出ておるのであります。私
どもはこの
事故が起こったときの
責任ばかりを
政府が追及しておりますことについて非常な不満を持っておるのでありますが、
交通事故が起こった場合における
緊急措置という点についての
資料がない。その
意味におきまして一つの
事例としてはまことに恐縮でありますが、愛知県におきまして
交通災害コントロールセンターというものが
財団法人で設立されました。しかしながら、この
民間から起こり、
県市が一緒になって
財団法人を設立いたしました
コントロールセンターに対する
政府の補助はきわめて乏しいのであります。
厚生省はこのような
民間からわき上がって、その場でテレメーターで
傷害を受けた者を診断し、直ちにそこへ
応急手術ないしは具体的な
手術までできます自動車を派遣して、その場で手当てをいたしますような
やり方につきまして、一体どう考えておるのか、どういうふうな
予算措置を今後しようとするのか、この点につきまして
政府の今日までとってまいりました
交通災害コントロールセンターに対する
措置、ものの考え方、今後の方針を、書面をもって
提出をせられたいと思うのであります。
その次は、いま国の
予算の中で、交通安全の
確保についてまちまちであります。
建設省は
建設省、運輸省は運輸省まちまちでありまして、われわれが交通安全を
論議をいたします際に、全貌の把握がきわめて困難であります。したがいまして、この際
資料として、
交通安全確保に関する
政府の
措置並びにその
予算の
状況、それを統一約に把握し得る
資料を
提出をしてもらいたいのであります。
最後には、
政府が開いております
国民交通安全会議でありますか、すでに二年にわたる歳月をもたらしておるのでありますが、言うばっかりで一向何らの実をあげていないと私
どもは考えております。
一体交通安全会議というものはどういう
論議が行なわれ、
政府は意見の出たものに対しましてどういう
措置をしておるのか、昨年並びに本年もあったそちでありますが、二回にわたる
会議の経過並びにそれに対する
措置を文書として
提出をしてもらいたいのであります。
私
どもの
質問は、以上の
資料の提供がございませんと
質問に入りにくいのでありますから、
資料の
提出を待って本
委員会を開くことにして、本日はこれにて散会されんことを要望して、私の
資料要求を終わります。