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1966-06-03 第51回国会 衆議院 法務委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月三日(金曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田村 良平君 理事 濱田 幸雄君    理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君       賀屋 興宣君    鍛冶 良作君       唐澤 俊樹君    四宮 久吉君       田中伊三次君    千葉 三郎君       濱野 清吾君    早川  崇君       横山 利秋君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      佐藤 千速君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 六月三日  委員馬場元治君及び森下元晴君辞任につき、そ  の補欠として賀屋興宣君及び鍛冶良作君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員賀屋興宣君及び鍛冶良作辞任につき、そ  の補欠として馬場元治君及び森下元晴君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件、並びに、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。坂本泰良君。
  3. 坂本泰良

    坂本委員 私は、去る五月十二日の当委員会におきまして、熊本三名市の市長選挙に関連いたしまして、買収選挙が行なわれ、その額が法定費用の数倍にも達する、そういうような選挙違反摘発中でありまして、このような選挙は徹底的にこの際糾明していただかなければ、近く行なわれましょう総選挙、あるいは来年の統一地方選挙に際しましても、買収によってその当落がきまる、そういうようなことがあることは、一番選挙の公正を乱し、堕落選挙におちいるものであり、ひいては、政策によって行なわれるべき選挙が不正な買収によって行なわれますと、したがいまして、国会におけるところの、正しい、国民のための政治が行なわれない。そういう結果になるのでありまするから、口に公明選挙を叫びながら、その陰では買収悪質選挙をやっておる、これを徹底的に糾明してもらうための警察検察庁に対する激励の意味を含めました選挙違反の急速なる摘発を要望しておいたわけであります。  しかるに、その後あらわれました事実を見ますと、五月二十三日の読売新聞の報ずるところによりますと、「良識奪った札タバ、百三十六人検挙、まず有権者の再教育」、こういう大きい見出しで、この三名市長選挙に対して「“明正選挙都市”が泣く」、こういうふうに出ておるのであります。さらにまた五月三十一日の毎日新聞によりますと、「くさり切った三名市長選」、こういう毎日新聞熊本支局長評論が出ておる。  こういうことを見ますときに、困難な選挙違反摘発ではありますが、警察並びに検察庁は徹底的にこれを糾明してもらいたい。かっての東京都における都会議員汚職問題、ひいてはこの前の東・東京都知事選挙にまつわるいろいろな不正選挙、こういう点も考え合わせますときに、さらに本日質問を申し上げて、その徹底的糾明を期してもらいたい、かように存ずる次第であります。  そこで、この毎日新聞熊本支局長評論によりますと、「違反のないようにいっておいたが、私の不徳から多数の違反者を出した。このつぐないは私の政治への姿勢を正しくすることだ」こう当選いたしました「川原弘海三名市長は深く頭をたれる。“ハイ、よろしく”と、私たちがいうことを聞くとでも思っているのだろうか。“いっておいて”も“やらせなかった”市長に、市政をあずかる責任が果たせるかどうか。“やるな”と“いっておいた”のに汚職がでたり“つくれ”と“いっておいた”のに、なにもできなかったり……。三名市民は、いったい“違反市長”を迎えて、なにを期待し、なんのために税金を支払うのだろうか。三名市長選は三月十九日にスタートした。四選をねらう橋本二郎市長、県議をやめ自民党の公認で出た川原弘海市長が名乗りをあげた。二十九日投票、即日開票で、川原市長が」わずか二十八票の差で勝った。ところがその投票から十日もたたない四月の八日に川原派から多数の逮捕者を出し、橋本派から一名の逮捕者を出した。そこでこの選挙違反状況を見ますと、三名署と熊本地方検察庁三名支部に逮捕された二十二人のうち二十一人は川原市長運動員、一人が橋本二郎派検挙された百三十六人のうち百二十五人が大浜町の有権者でほとんど農漁業川原派法定選挙費用は五十四万九千二百円だったが、同地区で——この大浜地区で動いた金は裏づけがとれただけでも六十万円、今後検挙予定者十人前後、これが三名署の猿渡刑事課長選挙メモである。さらにこの選挙に際しましては、すでに二十二人の逮捕者のうち二十一人が当選した川原派運動員であり、一名が落選された橋本二郎派違反である。したがって総数は熊本地検三名支部検挙された者は百六十一件、百三十六人、このうち逮捕されたのが、いま申し上げました二十一人と橋本派が一人、こういうよごれた選挙になっておるわけであります。しかもこの川原派選挙違反の金というのはどこから出たか。これは医療法人三名病院から出た疑いがあって、すでに会計事務員二名が逮捕され、その選挙責任者というのは東京方面に逃げておる。こういうようなうわさが立っておるわけでありますが、この点も前回質問の際に申し上げておきましたが、その後の検挙状態その他はどういうふうになっておりますか。警察検察庁からお伺いいたしたいと思うのであります。
  4. 日原正雄

    日原政府委員 前回多少数字で申し上げたのでございますが、その後ふえましたのであらためて数字を申し上げたいと思います。  この事件川原派違反として二百四名になりますが、そのうち被供応額の零細な者等を七十一名除きまして百四十件、百三十三名立件送致をいたしました。いずれも買収ということでございます。その百三十三名のうち、ただいま御説明の数字と一名だけ食い違いますが、私どもの報告を受けておりますのは、逮捕した者二十名、不拘束が百十三名、これを立件送致いたしております。それからお話の中にありますように、三名病院事務員二名は逮捕いたしております者の中に入っております。そのほかに、この買収資金の出所については追及中でございますが、それに関連をして、お話のとおり一名手配中でございます。それから橋本派違反につきましては、お話しのように一名を逮捕いたしております。前回と違いました数字の点は以上のとおりであります。
  5. 津田實

    津田政府委員 ただいまのお尋ねの三名市長選挙におきます川原派公職選挙法違反につきましては、熊本地方検察庁三名支部において六月二日までに三名会議員竹下行男外百八十六名を受理いたしております。そのうち、右の竹下外十四名、合計十五名を公判請求をいたしておりますが、その他につきましては目下鋭意捜査中でございます。
  6. 坂本泰良

    坂本委員 この三名市民の現在の状況は、「朝、新聞を広げるのがこわい」「家の中が暗くなった」、こういう率直な声があるわけであります。「よしんば、市長が“政治姿勢”について一片の声明を出したとしても、なんともむなしいカラ鉄砲の響きしかあるまい。政治生命をかけて、政治姿勢を正すなら、あすの三名市の構図を考える前に、市長みずからの進退を決めるべきだろう。」こういうような熊本支局長論評もありまするが、さらに申し上げますと、大浜町で先ほど申し上げましたように、買収検挙によって裏づけされたのが六十万といえば、これは五十四万九千二百円の法定費用をすでにオーバーしていることになる、こういうようなことであります。こういう姿勢で新市長市政構図が考えられるかどうか、そういうことをする前に市長はみずから進退をきめるべきである。市会の情勢は、そういう市長のもとにおいては正しい三名市民のための市政をやることはできない、これは市議会においても辞職を勧告すべきである、こういうようなことが三名市議会の中にはいわれておるということを聞いておりますが、ぜひお願いしたいのは、前回にもこの選挙違反捜査は非常に困難である、しかし早くやらなければならない、これはやはりこの逮捕者の口から出てさらにまたこの自白によらなければならないのが選挙違反状況ですから、早くやってもらわなければならぬ。しかもそのした者が一人は逃げておる、こういうような状態であっては、証拠隠滅その他が行なわれるとますます困難になるだろうと思うのです。ですから、この点は検察庁においてもいろいろとその証拠書類を出して捜査を願っており、警察にも出しておる、そういうような状態です。現在の検察庁のあり方というのは、警察捜査をして、そうして警察から上がったものについてのみやる、こういうような大体の方式がとられておるように考えられるわけですが、それではやはり急速な検挙と公正な捜査は困難ではなかろうかと思うのです。やはり検察庁警察一本となってその捜査に当たってもらいたい、こういうふうに思うのです。どうも検察庁のほうは第二次的のような状態にあるわけですが、その点についての御所見を承って、今後急速に、さらにまた大浜地区だけでなくて、石貫地区豊水地区それから中央地区築山地区梅林地区、こういうふうにたくさん違反がある、買収がある、こういうふうにいわれておるわけですが、ただに大浜地区だけでなくて、さらに小田地区、三ッ川地区、八嘉地区伊倉地区というのもありますが、そういう方面についても捜査をやってもらいたい。またその地区についての捜査に協力するため純真な市政刷新会と申しますか、そういう方面からは違反資料警察に提出してあり、さらに検察庁にも提出してある、こういうふうに聞いておりますが、その点についてはいかがなものでしょうか。
  7. 日原正雄

    日原政府委員 選挙違反につきましては、私どもも、早く処理する関係と適正な処理という意味から、検察庁十分連絡をとってやっておるわけでございます。それからほかの地区にも同様な違反があることも考えられるわけでございます。お話に何か資料を提出してあるということでございますが、その点私どもは聞いておりません。もし証拠となるような資料があれば捜査に当然着手すべきものと思いますけれども、どのような資料が提出されておるのか全然聞いておりません。なお調べてみたいと思います。
  8. 津田實

    津田政府委員 ただいま警察庁のほうからお話がありましたように、こういうような事件につきましては、もちろん警察と緊密な連絡をとって捜査をいたしておるわけでございますし、検事自体といたしましても、検察官認知事件本件にはございますので、このような意味におきまして検察庁独自の捜査もいたしておるわけでございます。なお本庁からは検事、副検事数名が応援に当たっておるわけでございまして、かような事件の性質から当然急速にやるべきものと考えます。また捜査の端緒を得られたものにつきましては、当然捜査をすべきものであるというふうに考えております。
  9. 坂本泰良

    坂本委員 ぜひひとつそういうふうにお願いしたいと思いますが、最後に、毎日新聞熊本支局長論評を見ますと、少し前置きがありますが、「三年前の東京都知事選挙のとき、演説の上手な革新候補に対して、ひどい妨害があった。戸籍のない同姓同名の男まであらわれた。しかし東現知事が大差で勝った。その結果はどうだったろう。オーバーないい方をすれば水キキンという“天のムチ”があり、東京はサバクと化した。あげくの果ては、都議会議長選挙をめぐる汚職で、議員が多数摘発され、法によって都議会は解散した。前でなく、あらためて選挙した結果、野党が過半数を占め」、「人口四万五千余、有明海にのぞむ地方の小都市は、いまやこの腐敗選挙国会でもとりあげられ、ハジを日本中にさらした。私たち県民としてこんな不名誉なことはない。清新な市政を説き、人間尊重をうたう川原三名市長は、いますぐなにをなすべきか。来年は三名市議選もある。川原三名市長さん、あなたは、いまここでなにをいい、なにを訴え、このよごれた選挙の収拾をどうつけるのか、私はとっくりと聞いてみたい。」すなわちこれは市議会においても、そういうような買収選挙、不公正な選挙で当選した市長辞任すべきだ、こういう動きが出ているようなわけであります。したがってこの選挙違反は、聞くところによると、もう相当期日もたった、捜査打ち切りだ、こういうようなことも聞くわけでありますが、私はそうであってはならないと思うのです。ことに一番悪いのは、新潟県知事選挙においてもあの二十万円の事件が不起訴になった。その不起訴になった理由について大きく三つに分けて刑事局長はここに発表されましたけれでも、やはりそういうことが全国にわたる腐敗堕落選挙を来たすのである。検察庁の不起訴理由三つは、これは悪質買収選挙を擁護するような三つの問題である。これは厳に慎しんでやるべきである。もっと決断をもってやるべきだった。やはりそういうのが小版として三名市長選挙にもあらわれて出ておる。ですからこの際はやはりこの点を省みてもう少し徹底的にこの捜査摘発をやって、そうしてかりそめにも逃がすことのないようなことをやってもらわないと、選挙違反はやっていても、見つかったものが不幸だ、逃げていてわからないのは得だ、こういうことで日本選挙買収選挙が非常に行なわれておるわけです。熊本県は、私なんかも昭和二十四年から選挙をやっておりますが、大体昔から政争が盛んなところで、政争が盛んなところというのは買収の盛んなところと言いかえてもいいくらいなところなんです。これは松野鶴平安達謙藏大麻唯男、こういう人の時代からやられたのがいまもまだ残っておるわけです。われわれは幸いにして使う金がないから使わずに、選挙に出ておるわけですけれども、ことに地方選挙においてはやはり金を持っておる、持っていないが、当落のかぎである、こういうふうに言われておりますから、この点を省みまするときに、やはりこれを突破口として徹底的に捜査し、糾明してもらって、のがれる者がないように、ことに大きい違反をやっているその中心となる人物が逃げておる。それをそのままに放てきする、こういうようなことがあっては、これはやはり真実は市民が知っておりますから、いかに摘発が公正である。峻厳であるといっても、そういう大きい抜けたところがあると、やはりこの捜査も公正でない、わかった者が不幸だ、こういうようなことになるわけでございますから、そういうようなことで長年やってきておりますから、やはりそれを個々に粛正しないことには、ほんとうの公明選挙というのはできないと思いますから、捜査打ち切りなどせずに、逃げた者はさらに逮捕して、そうしてぜひ徹底的の糾明をひとつ要望いたしまして、質問打ち切ります。
  10. 大久保武雄

  11. 志賀義雄

    志賀(義)委員 委員長を通じまして資料を請求いたします。  今国会では、ずっと国士舘大学の問題を当法務委員会質問しておりましたが、先日国士舘大学学生が酔っぱらって器物損壊をした上に、警官暴行を加えた事件がありました。これについて、その事実がどうであったかという問題と、もう一つは、その学生がから手部の部員であると言っていることに対して、学校当局はから手部は存在してないと言っております。事実は存在しております。しかも先日、工藤という学生かばんを奪われて、その中の人権擁護局に持っていく書類を奪われております。学校当局は、新聞に発表したところによれば、中身を点検さしてもらったと言っているのに、後日、告訴が起こったときには、かばんの中のものを取ったことはない、こういうことを言っておりますが、これと同じように、から手部が存在しておりながらそれを否定しております。これはことに警官暴行を受けて、重傷一ヵ月とかいうことでありますが、一体どういうことなのか、その事実といまのから手部のことについて、特にこれは警官暴行を受けたことでありますから、警察庁ではこれについてどういう調査をされたか、その資料委員長を通じてここへ提出されたい。きょうはそのほうの係の警察の方はおられませんね。日原さんに聞くと、私はそのほうの係ではありませんとまた逃げられるから、委員長を通じて資料を請求いたします。  もう一つは、最高裁人事に関する問題を委員長を通じて申し入れておきます。これはいずれ質問いたしますが、最高裁人事について、満州閥とか日野閥あるいは生成の家のグループとか、いろいろなことが言われておりますが、旧満州国官吏出身裁判所関係に勤務しておられる方について、これは文書に書いて出しますから、一々詳しくは申しませんが、それを知らせていただきたい。  それから第二に、各家庭裁判所ごと調査官、家事及び少年に関してですが、調査官補のそれぞれの人数、それから調査官補になってからの平均年数、その他を調べていただきたい。  第三は、少年調査官取り扱い件数。  第四は、少年調査官の任務とその身分について。裁判官との関係について。  第五は、調査官及び官補の俸給及び諸手当の現況について。  こういうことを伺いたいと思います。これは一つには、少年院送りにならない者をいろいろと民間に預けておりますが、それについて非常に不祥な事件がいろいろあるように思います。そこでは暴行も行なわれておりますし、現にどういう暴行が行なわれておるか。ここでテープレコーダーにとった資料もありますので、そういう点について質問する準備のために右の資料をお願いします。
  12. 大久保武雄

    大久保委員長 ただいまの志賀委員の発言は、委員長において善処いたします。  横山利秋君。
  13. 横山利秋

    横山委員 すでに一年有余にわたりまして大臣にただしてまいりました朝鮮系プラント輸出に伴う朝鮮技術者入国問題は、いまや単なる日本商社北朝鮮との貿易という問題から形が変わってまいりまして、韓国内政干渉という新しい問題に発展をしてまいりました。御存じのように、このアクリル繊維プラントは、仮契約が一九六四年の二月二十八日、そして納期は一九六六年三月末まで、総金額百五十億円、購買者朝鮮企業設備輸入商社販売者東工物産株式会社、そうして製造者東邦ベスロン並びに呉造船日本技術輸出株式会社正式契約の締結として一九六四年八月末までに正式契約を締結するものとして、それ以前に技術的調査並びに打ち合わせのために朝鮮側が派遣する技術者日本入国について日本政府の承認を得ること、というのが契約内容でありました。しかるところ、日本政府はこの技術者入国につきまして累次の公式ないしは非公式の私どもの照会に際しまして、総理大臣から官房長官並びに法務大臣、いや外務大臣に至りますまで、好意ある取り扱いを約し、またその時間につきましても、いまはだめだけれども、ある時期、ある時点、あることが済んだらという予測を与えてまいりましたことは、これはもういなみがたい事実であります。  しかるに先般、新聞にこの報道が漏れまするや、韓国はこの商談に対しまして猛烈な妨害を加えてまいりました。すでにわかりましたものでも、四月二十八日金大使下田外務次官に申し入れをし、四月二十九日には与党共和党は対策を考慮中であると声明し、また五月に至りまして、十日には金大使橋本官房長官椎名外務大臣に再度申し入れ、十二日には李東元外務大臣木村駐韓大使を二回にわたって招いて抗議、十三日には金大使総理大臣をたずねて丁一権総理の親書を手交、十六日には張基栄総理経済企画院長官佐藤首相経済協力について会談、あわせて北朝鮮からの入国を認めないよう要望。二十六日には丁一権総理は台湾からの帰途日本に寄り、佐藤総理と会談してそれに言及。かくしてさらに韓国民間業者に対する妨害に全面的に乗り出しまして、わかりましただけでも、五月十六日、金駐日大使から石川島播磨首脳部に対し、呉造船北朝鮮との取引を中止させるよう電話をし、五月二十日に至って東芝の土光社長、これは前石川島播磨社長でありますが、土光社長韓国大使館に招致をし、同所において金大使より直接、呉造船関係する北朝鮮との取引を中止させるよう要請され、三井物産もまた韓国大使館の意を受け、東邦レーヨンに対して、東邦ベスロン社北朝鮮との取引を中止させねば、現在韓国向けに販売されているベスロン製品取引を中止する旨を申し入れ、五月二十日に至り東京銀行頭取原氏は、韓国大使館に招かれ、同所において金大使より、東工物産が現在商談中の北朝鮮とのプラント取引を中止させるよう協力してもらいたいという要求があり、このいま申し上げました以外におきましても、韓国大使館があらゆる術策を講じまして日本経済界あるいは金融界に対しまして猛烈な妨害をいたしておりますことは、いまや明白な状況となってまいりました。  私はこの事実につきまして法務大臣注意を喚起し、また政務次官に対しましても事情を調査して注意を喚起しておいたわけでありますが、法務大臣調査の模様をまず伺いたいと思います。
  14. 石井光次郎

    石井国務大臣 そのお話は承りまして、私どもが直接関与する問題というよりは、外務大臣のほうに伝えるべき問題だと思って、外務大臣のほうに伝えておきました。外務大臣からは、昨日参議院において亀田君の質問に対しまして答弁をいたしましたような処置をとったようでございます。私は、昨日その答弁を聞いて、その処置を承知した程度でございます。
  15. 横山利秋

    横山委員 参議院における外務大臣答弁を要約いたしますと、干渉がましい話があったとすれば、できるだけ控えてほしいと事務当局から韓国大使館注意を喚起しておいた、つまり政府筋としても、このような韓国大使館内政干渉がましいことはよくないことだ、こういう判断外務大臣はされておるのでありますが、法務大臣についても同意見でありますか。
  16. 石井光次郎

    石井国務大臣 どの程度の話がどうされておるか、私は承知いたさないので、横山君から聞いた程度でございます。きのう答弁のあった程度でご、ざいます。  あまり国内の問題に外国の大使が関与されることは好ましくないことは、当然のことだと思います。外務大臣注意をしたのは当然だと思っております。
  17. 横山利秋

    横山委員 本件に関しましては、すでに私は累次の質問において申し上げておるのでありますが、自由諸国圏であれ、社会主義国圏であれ、入国問題に関しましては法務大臣政治的また法律的に最終的な判断をされる所管大臣であると考えておりますが、間違いございませんね。
  18. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えします。  入国関係は大体において法務大臣責任をとり、出国関係外務大臣責任をとるというのは、大体の考え方であります。しかし、これは御承知のように政府の決定でございまするから、問題の大事なものにつきましては、政府全体の問題として話をまとめる必要があることは当然のことでございます。  特に、ここまでお答えしていいかどうかわかりませんが、御質問以上に進み過ぎるかもわかりませんが、条約を結んでない国から入ってくる人たちの問題につきますると、これは私のところだけで技術的にいいとか悪いとか簡単にきめられない問題が非常に多いのでございます。これは外務省その他の関係の向き向きと特に相談いたしまして、政府の態度はどうであるというふうにきめる方向をとっておるのであります。
  19. 横山利秋

    横山委員 私の申し上げるのもあなたと同じような意味でありますが、法務大臣は単に技術的書類審査だけに終わるのではないであろう、通産大臣なりあるいは外務大臣なり、その意見を聞くことは当然であろう、しかし、その総合的な上に立って、所管大臣としてあなたが最終的な判断をされるのではあるまいか、こう言っておるわけであります。合議という立場ではないのでありますよ。決してあなたは書類に不備な点があるかどうかを念査するだけの大臣ではないでしょう。通産大臣官房長官やあるいは外務大臣がいろいろと外交上商業上の意見を言う、それを聞いて、しかもなお最終的にあなたが法律上の責任を負う、こういう立場でしょうなと言っているわけです。
  20. 石井光次郎

    石井国務大臣 大体においてそのとおりでございます。
  21. 横山利秋

    横山委員 そうであるということでありますから、私はあえて申し上げるのでありますが、公式、非公式に法務大臣の決意は従前から私なりに承知をしておるわけであります。それで、その意味から申しますと、いまやじんぜん日をむなしゅうしておる——と言うと語弊があるようでありますけれども内政干渉のような段階に到達をいたしましたとき、大臣としてもう決断をなさるべき段階ではないか、もしもこのまま日をむなしゅういたしますならば、私は二つのことをおそれるのであります。一つは、すでに御存じのように、これは東工物産でありますが、もう一つの新日本工機は、ついに圧力に屈して自分で辞退をしたのであります。これは明白な事実で、御存じのとおりであります。東工物産までいま傍系あるいは金融機関、親会社あるいは取引先、あらゆるところにその圧力が加わっておるのでありますから、あなたの判断がきまらないうちに、ついに東工物産が圧力に屈するということが、私はないと信じておりますが、かりに生じたといたしますならば、まさにこれは国辱ものだと私は思っています。  それから次に心配をいたしますのは、あなたが判断をされたときには、いま言ったようにもう事実がなくなってしまう。政府は承認をした、しかし事実はもう空中分解してしまった、そうすると政府は一体どういうことになるのか、もう事実がないから、承認をしようにもないと言うてお逃げになるつもりであろうか。私の心配が杞憂であればいい。しかしながら、この契約にもございますように、本来納期は本年の三月末までであります。技術者入国は、契約内容によりますと一九六四年、つまり二年前の八月末までに入国をさしてほしいということであります。しかしながら、膨大な契約であり、しかも何ら日本政府の絶対拒否ということでもないために、この契約内容に多少抵触するけれども日本政府の好意ある態度というものを期して今日まで延びてきておる。しかるところ、このような状況に対しまして、ヨーロッパの諸国から北朝鮮に対しまして、それならばおれのほうでやろうという引き合いが殺到いたしまして、現に東ドイツあるいはヨーロッパの国の一部で、北朝鮮に対して商談を盛んに進めておるわけであります。でありますから、これまたこの面におきましてタイミングというものがあり、もはやこのような状況が続きますれば、この膨大な契約、ひいてはこれを窓口にいたしまして、今後進み得べき日本北朝鮮との貿易はここで非常な打撃を受ける、こういう状況にあるのであります。つまりタイミングというものがいまや迫っておる。他方では内政干渉、他方ではヨーロッパ諸国からの引き合いという状況にありますから、いまやあまり日をむなしゅうしてはいかぬと思うのでありますが、その点、大臣の御意見を伺いたい。
  22. 石井光次郎

    石井国務大臣 まことにこの問題が起こってから二年からの時がたってしまっておるわけであります。昨年あたりからこの話を聞いておって、私も同情をいたしておるわけでございます。この問題は私が取り上げて、貿易問題とスポーツ関係、文化交流というようなもの、あるいは学術関係政治関係のないようなものは、その来る人たち政治関係なければ、まずケース・バイ・ケースにおいて考慮しようという考えで、いままではほとんど絶対的にノーと言っておったものを、今後はできるだけそういうふうな方向で考えてしかるべきじゃないかということにしたわけでございます。私、その方向へ進んでいくつもりでおります。これから先もそういうつもりであります。  この問題は、何とかしてこの問題の解決をしてあげるような情勢になることを期待して今日まで来たわけでございます。しかし、この問題がここまで来て、なおかつきまらないということは御同情は申し上げまするが、私どもこの問題に対しまして、政府内におきまして完全に一致してこれを許すということの線を出す段階にまだ至ってないということに、関係者の間の話がいまではなっておるわけでございます。要するに、もう一つこれをことばにあらわすと、よく私が言うことでまたかというおことばになりますが、慎重に考えておる。何年慎重に考えておるかといってひやかされるようなことでございますが、慎重に考えておるという状態。それではいつまで考えるのだというと、それはわからないわけでございます。何とかしたいという心持ちはありまするが、それは国内の情勢でございまして、ほかのいろいろな、たとえば、いまお話のありました、韓国大使がこう動いたからどうとか、それだから圧迫されてどうとかということで動く問題では絶対にありません。日本の立場、日本政府の立場としてすべては考慮される問題であることは間違いないのでございます。そういう意味から考えまして、またそういう結論が出ないということははなはだお気の毒でございますが、ことばで言えばまだ熟慮中だということになるわけでございます。
  23. 横山利秋

    横山委員 このあなたの御答弁を聞いておりますおそらくすべてのこの部屋の人たちが考えますことは、あなたが韓国大使館なり韓国政府の圧力によってこういう熟慮の最中ではない、事実日本政府の内部の問題だ、こうおっしゃいますけれども、客観的事実は、残念ながら、あなたの御答弁のような判断ができない。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 これほど猛烈に韓国大使館並びに韓国本部から内政干渉だ、外務大臣が行き過ぎがあると注意を喚起したほどの事実があらわれてきて、そうして政府内部で意見が調整できないということは、明らかに韓国内政干渉によってぐらついたということをだれでも感じますよ。私は、大臣が日ごろ考えておられる、私どもとしては、まだ多少ベースは違いますけれども、貿易や文化や、あるいはスポーツという、それらの点については自分としては認めたい。かねがね伺っておりましたその所信を実行にあらわしてもらいたい。先ほどあなたがおっしゃったように、少なくとも手続大臣ではなくて、総合的な判断から、法律上、政治上の責任を負う法務大臣であれば、ここでひとつ所信を曲げないで実行にあらわしてもらいたい、これを切に要望すると同時に、私はあえて苦情を申し上げる。このまま推移いたしましたならば、内政干渉のために、日本政府はみすみす節を屈したといわれますよ。あなたのかねての原則がここで乱れるということになる。ひいては今後の韓国との貿易の交渉、あるいは外交上の交渉の上においても日本の利益にはならない。主張すべきは主張し、自分たちのやらねばならぬことはやるのだ。あれはあれ、これはこれという、日本政府の立場というものがそこでく、ずされる、こう痛感するのであります。重ねて御意見を承りたい。
  24. 石井光次郎

    石井国務大臣 いまの横山君の説には全然賛成です。日本政府といたしましては、日本独自の立場において行動すべきものであるということを考えております。したがいまして、私どもはどういう問題にぶつかりましても、いろいろな情勢は十分考慮いたしますけれども、最後に決定する場合においては、どんな弱い国でも、どんな強い国でも、それによって支配されて行動するようなことがあってはその職責を全うすることができないというつもりでございます。そういうことで話もだんだん進めていきます。
  25. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、私が申し上げている原則とあわせて、タイミングを失わないでもらいたい。タイミングを失えば、何のために議論してきたのかわからなくなる、こう申し上げていることを含めて、タイミングを失わないように御決断くださる、こう理解してよろしゅうございますか。
  26. 石井光次郎

    石井国務大臣 私は、さっきあなたのおっしゃったこういう問題についての主管大臣であるという立場であるから、おまえの考えておる方向にどんどん進め、そうしたら初めておまえの職責を全うするのだ、おまえのかねての考えどおりやって、ほかのものは多少の意見の相違があってもどんどんやれというお説だと思います。しかし、政府といたしますと、いろいろな関係の向き向きの仕事は、その関係大臣の意向を十分聞き、その大臣の意見を尊重し、そうして政府全体としてどうやっていくがいいかということについて話し合いをして、これが政府の考え方だ——特に、さっきから申し上げましたように、こういうふうな条約を結んでない国との折衝ごとというような問題は、事、ささいな問題でも、それからだんだんいろいろなものが初めて広げられていくような問題にもなるのでありますから、非常に大事に扱っておる。ほかから見ると、いかにもまどろこしい、何をぐずぐずしておるかとお思いになるようなことも多いと思うのでありますが、各省間の話し合いというものが熟しきらないと、なかなかこれは一人だけ走っていくというわけにはいかない。だから政府として、ここいらがふん切るところだというところに来ることが大事なことである。右に行くにしても、左に行くにしても、まっすぐ行くにしても、いずれにいたしましても話し合いを——もっともっと情勢が、いろいろと世の中というものは変わっていくような場合もあります。変わらない場合もありますが、その情勢下においてどうするかということを十分話し合って、それによってしっかりした態度で進んでいきたい、こう思っております。
  27. 横山利秋

    横山委員 伝わるところによりますと、韓国政府は、六月にソウルで開かれるアジア太平洋地域外相会議でもこの問題を日本側と論じ、韓国側の立場を貫徹させる方針であると、李長官が韓国国会で言うておるわけであります。したがいまして、今度は、どこそこの会議、今度は何々の予定がある、そういう理屈をつけようといたしますならば、私どもが心配しておりますように、どんどん日にちはたつばかりであります。大臣のお考えはわからないではございませんけれども、結局、またあれの時期、またこれの時期、私どもはもうこれで二年有余にわたって、日韓の前の当委員会でも、日韓の委員会でも、あなたは、私に語気鋭く、おれがうそを言うと思うのかというほどの、逆に私が迫られたような状況、それから当委員会におきましても、何回もこの問題についてあなたの所信を承りました。いやというほどあなたの所信を私は承っておるわけであります。それにもかかわりませず、いまここに最後的な韓国内政干渉に類するような事実というものが、最も大きな壁として、しかも法務大臣としてあなたは試練の焦点におられると私は思います。もしもこれが入国は認めない、あるいはまた、もしも認めても事実は空中分解して実益がないということになりましたら、どんなに御弁解をなさろうと、これは法務大臣としての職責をおっとめにならなかった、こう感ずるより私はしかたがないし、日本政府が、韓国内政干渉のもとに、圧力にくずれたと世間はまたいうでありましょう。繰り返すようでありますけれども、タイミングをはずさないように御決断を願いたい、最後的に御返事を伺って本件質問を終わりたいと思います。
  28. 石井光次郎

    石井国務大臣 御意見はよく承っておきます。
  29. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 関連質問を許します。志賀君。
  30. 志賀義雄

    志賀(義)委員 ただいま横山委員から質問のありました朝鮮民主主義人民共和国からの専門技術家の入国問題についてでありますが、昨年当法務委員会において横山委員から質問がありましたときに、横山委員から質問がないのに関連して石井法務大臣のほうから、先ほど言われたように、今後はいろいろと一定の目的をもって、差しつかえない場合は入国を許すということを言われたので、横山委員も、意外の答弁でありましたので念を押されたのです。そのときに私も、法務大臣はそのように何か成算があって言われる、それで質問されないことでもつい自分から進んで言われたと見受けられるが、どうもこういう場合にはあと必ずしりすぼみになります、それで結局それが実現しないことになりますが、そのおそれはありませんかと念を押したときに、だいじょうぶでございます。こういうふうに言われておったのでありますが、ただいまのお話を伺いますと、どうもそういうことになっているようでございます。石井法務大臣は、自分はそのつもりはあるが、どうも他の閣僚なり当局なりのほうで文句が出たようなお話でございますが、それを今後突破して、昨年当法務委員会で言明されたようになさる御決意でありますかどうか、その点をもう一度重ねて伺いたいと思います。昨年のその法務委員会での速記録をお読みになったら、石井法務大臣も面はゆいものがあるのじゃないかと思いますので、その点を伺いたいと思います。
  31. 石井光次郎

    石井国務大臣 そのときの様子はよく記憶いたしております。あなたのおっしゃったとおりの経過であったと思います。あなたもそうおっしゃった。ことばはどうか知りませんが、似たようなことをおっしゃいました。私は大体そういうことを言っております。またそうあるべきだと思っております。というのは、私は何でもかんでも許すとはひとつもそのとき言っておりません。ケース・バイ・ケースで考えていくと言っております。だからそれは非常にむずかしい問題がある、無から出発するのですから。無から有に入るというときはむずかしい問題であって、いろいろな困難があることは当然のことだと思います。この前参議院で、たとえば北鮮のほうに日本からお墓参りにいく人をいままで一つも許さない。それを昨年の暮れ、一、二の人を許した、こんなわずかな人を許してどうするのだという話でありましたが、ゼロから始まるので、ゼロの次は一にきまっているじゃないか、一の次は二だ。それからだんだんそのときの情勢で許されるだろうけれども、許すからといってその次は百だ、その次は千だというわけにはいかないというようなもので、だんだんと進んでいくものもあるし、いろいろなそのときの情勢というものがあるのだと私も参議院でそのときお答えし、説明したと思います。私はこの問題も何でもかんでも許すというのじゃありませんが、この問題は二年前から引っかかっておるので、非常に同情いたしております。何とか許されるような情勢下になったならば許していいようなものだと私は考えておりましたが、いまの情勢下ではなかなかむずかしい情勢になって今日まできておるわけであります。(志賀(義)委員「見通しはいかがですか」と呼ぶ)これを何とかして許せるような情勢になることを私どもは期待いたしておるわけでございます。その努力を政府もいろいろやっておる状態でございます。それで、それができなかったらおまえはうそっきだと言われたら、私はこれはいつまでもうそっきになるかどうか知りませんが、いままでにおいてはできなかったという点においておしかりは受けます。しかし努力はいたしております。
  32. 横山利秋

    横山委員 次に、安西事件について法務省並びに最高裁の御意見を聞きたいと思うのであります。  安西事件と申しますのは、昭和三十三年四月、郵政省は、全逓の中央執行委員長以下本部三役を含む七名の組合役員を、同年の春闘において全逓が行なった勤務時間内二時間の職場大会を計画指導との理由によって、公労法十八条による解雇を発令したことであります。郵政省は、解雇役員を再選することは公労法四条三項に公然と違反する決定を行なったことであり、そのことによって法外組合となるとして、団体交渉を全逓に対して拒否をいたしておる。全逓本部はこれに対してあらゆる努力をいたしまして、その団体交渉再開を要求をする。他方においてILO八十七号条約の批准を、国内外に運動を展開する、こういう状況である。それが発展をいたしまして今日の国会におけるILO八十七号条約の批准という段階になったことまた各位御存じのとおりであります。  昭和三十三年四月に解雇が発令され、十二月ごろ全逓の静岡地区本部は、その全国大会の決定によりまして三十六条無協定による時間外労働の拒否を最低線として、職場の抵抗闘争を中央本部の指令のもとに行ないました。そのころ全逓に日ごろから敵意を持っておりました安西郵便局長伊藤淳平は、当時静岡市内における特定郵便局長会の部会長をしており、郵政当局の指示を受けて、職場における組合との話し合いを一切拒否するばかりか、部会長の肩書きを利用して全逓組合員の脱退工作をしたのであります。それに対しまして、全逓の地区の諸君は本部の指示によりまして点検闘争を行ないました。  そこで点検闘争で大谷局並びに安西局の、点検闘争をいたしましたが、大谷局におきましてはきわめて平穏無事に点検が済みまして、安西局に参りましたのが午前十二時十五分ごろ、そこで入室を拒否され、局長の事務処理が終わるのを待って話し合いに入り、「勤務指定表が局内に掲示されていない」「休暇の付与状況調査するため出勤簿の提示を求める」「超過勤務手当の支給状況を監査するため超勤整理簿の提示を求める」ことなどを局長に要求したのでありますが、局長がこれに応じない上、無言の行という挑発的態度をとりましたために、話し合いが進まず、そのために点検班と多少のトラブルが生じたのであります。  この事案は、いわゆる傷害事犯は全然ございませんし、またその前に行ないました大谷局におきましては、きわめて平穏無事に行なわれたのであります。しかるところ、年を越えて三十四年の一月の二十日ごろ、一カ月半も経過したころに、静岡地検の直接指揮によって静岡地区本部役員五名と支部役員二名が逮捕され、これが裁判へと発展をいたしまして、地方裁判所は四人の被告に懲役二カ月、執行猶予一年を言い渡しました。これに対しまして高裁に発展をいたしましたが、高等裁判所におきましては、一審判決を破棄して独自の悪意ある判断に基づいて、罪となる事実は、検察側の公訴事実と同一であるから、ここにこれを引用するとして、一方的予断のもとに、検察官の主張のみを取り入れて、被告全員に懲役三カ月という実刑を言い渡しました。労働運動におきまして実刑がありましたのは、私の記憶によりますれば、三井三池の際に、宮川事件といいまして、スト中に会社の職制がスパイするために写真をとっていたのを、組合幹部が追いかけて暴行によって、傷害があった、この事件のみだと私は承知をいたしております。しかるところ、安西事件にはいわゆる傷害の事実は一切なく、同じ点検闘争をいたしましても、同じような事案で行なわれた大谷局は平穏無事、そして入室を拒否し、そして一切の点検に応じないというこの安西事件の判決は、驚くべき実刑三カ月という戦後初めての判決と私は考えるのでありますが、そういう結果となりました。  果然このことは労働運動の中に非常な衝撃を与えまして、いま最高裁における審理の段階になったのでありますが、影響するところきわめて甚大なのであります。私は裁判の判決、その内容自体に逐一ここで議論を重ねるつもりはありませんけれども、影響するところがきわめて多いことと、高等裁判所における審理のあり方に多大の疑問なしとしない、また労働運動に対する判断に多大の疑問なしとしないと考えますがゆえに、二、三の点につきまして政府並びに最高裁の御意見を伺いたい。  まず最高裁には、この最高裁の審理の模様はどういうことになっておるのか、承りたいと思うのであります。
  33. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 御指摘のごとき経過をたどりまして、上告審に係属いたしましたのが昭和四十年の一月三十日でございます。現在第三小法廷に係属中でございまして、同法廷におきまして審査が行なわれている、かような状況でございます。
  34. 横山利秋

    横山委員 差しつかえなくば、審理の見通しといいますか、時期的な見通しはまだわかりませんか。
  35. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 私どもは、実は裁判係属中の事件のことでありまして、そういうような見通しにつきましては何とも申し上げかねる次第でございます。   〔大竹委員長代理退席、小島委員長代理着席〕
  36. 横山利秋

    横山委員 この高裁における証拠調べの段階におきまして、弁護人が申請した十四人の証人申請に対して、たった一人のみを許可した。それに比べますと、検察側に対しましては、五人の申請者のうち四名を許可するという証人採用をいたしました。それは裁判長の判断によるものとはいいながら、十四名の証人申請に対してたった一人ということによって、被告人たち並びに客観的に判断をいたします際に、きわめて重要な問題が出てきておる今日、最高裁に提出をされようとしております安西郵便局長等の不当労働行為の事実並びに組合機関としてのこれに対する組織行動に関する上申書、新証拠としての記録ノート並びにその解説等々の内容は、おそらく十四名の証人申請を受理をし、そしてその証人の判断、証言の内容を聞きました場合においては、このような問題、このような私の質問も起こらないのではあるまいか、こう考えるのでありますが、十四名の証人申請のうちたった一人のみ許可をするというのはどういう判断であったのでありましょうか。どういう場合にこの証人申請を拒否するのでありますか。
  37. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 私どももその記録を見ているわけでもございませんし、また証拠の取捨選択ということは、当該具体的事件におきます裁判所判断行為でございまするので、御質問に対しましては何とも申し上げかねる次第でご、ざいます。
  38. 横山利秋

    横山委員 あなたにそういう点についてお伺いをすることが、多少問題があることは百も承知の上ではありますけれども、しかしながらこの安西事件が、このような戦後初めての判決を、このような軽微な労働運動に実刑を科するという判断をする過程に、この種の十四名のうち一人しか採用しないというところに私は問題があると思っておるわけであります。高裁の判決の中にこういう文章がございます。「当時、全逓静岡地区本部役員であった被告人らは、全逓の組合活動の盛上りを期待していた年末闘争の折柄、全逓脱退の続出による分裂、組織弱体化をおそれるあまり、脱退派の者に対する憎悪の念を深めると共に、それらの者はいづれも自己の自由意志によらず、その直属上司である特定局長がその地位を利用して脱退を唆かしているものと独断し、単にこれらの者に対する報復的感情から、多数共同して、全逓脱退派の中心人物と目される島崎茂元、石川正雄らと、同人に同調せる島崎とめ、伊藤君枝ほかの局員の所属局の局長であり茂元の父、とめの夫である島崎清(大谷局長)、伊藤君枝の夫である伊藤淳平(安西局長)を威迫し、同人らに嫌がらせを加えることを当面かつ本来の目的とし、名を点検にかり、相たずさえて右局に押しかけ、以って全逓脱退を封殺する効果を狙ったものである。」とあるのであります。これらは検察陣が主張をしてきたものを全面的に採用したと見られる節があります。  法務省の刑事局長に聞きたいと思うのでありますけれども、あなたのほうとして、「特定局長がその地位を利用して脱退を唆かしているものと独断し、」とあるのであります。つまりやってもいないものをやったと考えておると独断しといっておる。十四人の証人申請があるならば、事実不当労働行為をやっておるという事実というものが十分表面に浮かび上がってくる内容のものでありまして、検察陣としてはこの不当労働行為がないと判断をして告発し、また裁判法廷で争ったのであります。その点を伺いたい。
  39. 津田實

    津田政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますけれども本件は少なくとも住居侵入とそれから共同して暴行脅迫を加えたという暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の事実があるわけであります。その前提のいろいろな事情といたしましては、いろいろ背景的な事情はございますことは当然であります。しかしながら、それに対しまして検察官が具体的にどういう主張をし、どういう立証をしたかは、私いまここにつまびらかにしておりませんが、要しまするに、本件犯罪の中心たる行為はただいま申し上げたような行為であるわけであります。いかなる場合におきましても、さような暴力行為あるいは住居侵入行為というものについてのそれを阻却する理由がなければ当然許されないことでありまして、その前提をもちまして検察官は公訴を提起し公訴を維持しているものというふうに考えておる次第であります。
  40. 横山利秋

    横山委員 先ほど申しましたように、大谷局と安西局二つの局で点検闘争が行なわれている。大谷局においてはいわゆるその点検闘争は平穏無事に同一人によって行なわれ、そして安西局においては、入局を一たん拒否したけれども、事務をやっている間待っておってそして点検闘争が行なわれた。そういう点だからこそ地方裁判所がこれは住居侵入には該当しないという判断をした。事実、そうでなくとも大谷局では平穏無事に行なわれたのです。それに住居侵入ということについて私はいかがと思うのです。どうです。
  41. 津田實

    津田政府委員 他の局におきましていかなる事情のもとにいかなる判断をもってなされたかはわかりませんが、少なくとも本件におきまして控訴審判決のはき理由といたしましては、立ち入りの目的は、局長に対し暴力脅迫をすることにあり、点検は名目にすぎなかったというふうに考えられる。それから、立ち入りの手段は、正当な組合活動としての限界を逸脱しておる。それから、点検に関する協約は当時失効しておって、これを名目にする立ち入りを拒否することは当然である。大体こういう趣旨の判断がなされておると思うのであります。したがいまして、点検に関して他の局でいかなる態度を管理者がとったかということにつきましては、もちろんその局の管理者の判断によることでありますので、その判断をいかにしたかということは私どもにはわかりませんが、要するに、本件につきましては、点検闘争についてはさような関係にあるというふうに私どもは承知しておるわけであります。
  42. 横山利秋

    横山委員 ほかの局がどうだったか知らぬけれども、こっちはいかぬことはいかぬのだということ自身がおかしい。同一人が二つの局を点検闘争を行なって、片一方は平穏無事に行なわれた。片一方の安西局はそれに対して不法な抵抗をした。それによってトラブルが生じた。また、地方裁判所はこう言っている。点検闘争に付随する役員の局舎内立ち入り権についても次のように述べて全面的に認めている。「我国における労組は、多く企業別労働組合の形態をとり、従って労使間の交渉も多くが企業施設内で行われ、全逓の場合も当該管理者との接触、交渉の殆んどが事業施設内で行われていたものと推認されるので、このような事情の下では全逓の執行機関が、労働組合として必要当然視される組合活動をなす場合その目的達成のため必要な範囲内において、事業施設を利用するためこれに立入ることはその態様、手段が社会通念上容認される程度を超えない限り最大限に許さるべきことである。」と判断をしておる。「組合執行機関が右のように、相当な態様、手段により目的上妥当な範囲において、事業施設を利用するため立入ることは、当該事業施設管理者が特にこれを拒否しない限り、本来自由になしうることであるというべきである。」「組合が右のような限界を守る限りにおいては、当該管理者としてもその立入行為が正当な理由のない限り、単に恣意的な考慮からこれを拒否することは許されないものというべきである。」と判断をしておる。まさに安西局長は恣意的な考慮からこれを拒否した。しかも一たん、仕事をやっているからというので待っておって、それから点検に入った。したがいまして、いわゆる局舎内立ち入り権につきましては——私どもはその経験者でありますが、普通、あらゆる労働組合がその会社の施設内においていろいろな仕事をしておるのであります。これを安西局長のように、まっこうからその立ち入り権がないという判断、あるいは高等裁判所のとっておりますように、立ち入り権が存在していないかのごとき判断、それを私は痛難ずるわけであります。どうですか。
  43. 津田實

    津田政府委員 これは第一審と第二審と、具体的事実に関する——大筋はもちろん変わりはありませんが、こまかい事情については、やはり事実について私どもは認定の違いがあると思うのであります。と同時に、その事実の認定の違いと、さらにその住居侵入について違法阻却を正当とする事由があるかどうかという点の法律上の判断につきましては、原審と第二審とは非常に違っている。原審の判断に対しましては、検察官としては相当でないという判断をいたしたわけでありまして、それによりまして検察官は控訴をいたしておるわけであります。したがって、それに基づく控訴に対して高等裁判所のなした判断というものは、その事実及び法律の判断が正しいものというふうに私どもは考えております。
  44. 横山利秋

    横山委員 私はいま判決それ自身を批判し云々することをなるべく避けて、事実行為についての法律的判断をあなたに求めようとしておるのでありますから、あなたも、高裁がこう言っているから、地裁がこう言っているからと言わないで、なるべく事実行為に対するあなたの解釈、法務省の解釈、検察陣の解釈を伺いたいと思っているわけであります。  点検活動の問題でありますが、労働組合が、使用者側が不当労働行為をしていないだろうか、あるいは超過勤務が確実に払われているだろうか、そういうことに本来的な注意義務を持ち、そして組合員の利益を守る任務にあることはいうまでもないことであります。ですから、点検闘争というものは本質的に組合機関あるいは組合役員の行なわねばならないところである、この判断については、あなたはどうお考えですか。
  45. 津田實

    津田政府委員 この点検につきましては、かつては協約があったわけであります。したがいまして、この協約に基づいてなされる限りにおきまして、使用者側においてももちろんこれを認容しているわけであります。しかしながら、本質的にさような調査権と申しますが、調査活動をすることは当然組合側で考えられることでありますけれども調査活動の方法の範囲におきましては、やはりいろいろ問題があります。この調査方法も、調査ができる、調査をすべき地位にあるから直ちにいかなる方法をもって調査してもよろしいということにはならぬと私どもは考えておるわけでございます。
  46. 横山利秋

    横山委員 ところが、高裁の判決の趣旨は、「局舎立入権、書類の閲覧権は組合側には存在せず、立入りについての拒否権は庁舎管理権の建前から当然局長が有している。」という点を繰り返し主張しておるのであります。しかしこれはあなたに判決の批判を求めるのは無理でありますから、あなたもおっしゃるように、局舎立ち入り権、書類閲覧権については限界を侵さざる限りにおいては本来的に組合が有しておるものとお考えならば、それでけっこうでございます。  次に、先ほど申しました十四名のうち一人しか証人申請が許されなかったために、この実刑——それだけではもちろんございませんけれども、事実が十分に高裁の判決に反映をしなかったということに対しまして、当時、理事者側の圧力をおそれて十分に主張をしなかった人あるいは証人申請に委託されなかったために行かなかった人たちが、非常に心配をいたしまして、進んで当時の記録を最高裁判所に見てもらいたいということで、ここに、手元に上申書が十九通あります。試みにその一つ、二つを引用してみますと、    上申書(十八)   安西郵便局点検斗争について十二月六日の朝、全逓地区本部に電話をしたことについて上申致します。   昭和三十三年十二月六日(土曜日)朝、八時三十分少し前に私は静岡城北郵便局に出勤すると、仲谷さんや、八木さんの様子で「今日何処の局え点検斗争に行くらしい」事を知りました。それなら種々、問題の多い安西局え行って貰いたいと思い。とっさの思いつきで一軒おいて隣りの藤山さんの家の電話をかり、地区本部え電話をしました。私はもと安西局に勤務して居り栗田さん、杉山さんと共に仕事をして居りましたが暗い職場で毎日、いやなことばかりが多く城北局え転勤してあまりの違いに驚いていました。   九時少し前、地区本部え電話をしました。「今日は何処かの局え点検斗争に行く様ですが安西の局え是非行って下さい。種々問題が多い局ですから」という事を話しました。私は今まで何回かこのことを云うか、云わまいかで迷い、一審の公判でも云いませんでした。その理由は、事件があまりにも大きく新聞にものりましたので自分のかけた電話で事件がおきたと感違いし、局長さん達が恐がったのです。又時間中に電話をかけたことが何かとがめられるのではないかと思い迷っていました。電話をかけたことは間違いありません。   昭和四〇年四月二五日    住所 静岡市城東町四番地の九    氏名 久保田広子マル印    年令 二十九才     …………………………………   上申書(十九)   安西郵便局長(伊藤淳平氏)から組合のことでしかられたことについて上申致します。   私達は昭和三十三年十二月七日夜、支部役員の榎田さん、中谷さんの二人が自宅に来て組合の話しをされました。いろいろ話を聞いて全逓に残る事に決め確認書を書きました。   十二月八日、安西局に出勤すると局長さんから昨晩、全逓の役員が家え行かないかと聞かれたが榎田さん達から局長に云うと又、うるさいからだまっていた方がよいと云はれていたので「来ません」と返事をしました。   十二月九日、安西局で夕方、石川さんが来たので帰り際に外え呼んで「私たち二人は全逓に残る」と云ってそのまま家え帰りました。   十二月十日、安西局で昼前に局長さんから「局長に恥をかかせる気か」、「若し全逓に残るならば全逓の連中と同じ様に警察え訴えてやる」等のあまりにもひどい言葉を云われて私達二人はくやしくて其のままその場で泣いてしまいました。   今まで私たちは一審の公判で申し上げませんでしたが、それも局長さんに気兼ねしたり何だか恐い気持ちがあったからです。   昭和四〇年四月二五日    住所 静岡市中島二五六三    氏名 栗田ヨシ江マル印    年令 三十一才    住所 静岡市上足洗七一七の三番地    氏名 杉山悦子マル印    年令三十二才   最高裁判所裁判長殿  この種の上申書を読みますと、実に安西局長がいろいろなことをやっておるということがあるのでありますが、その一端の竜宮会談、     …………………………………    上申書(五)   静岡市内の特定局長会が昭和三十三年十月頃から全逓の点検斗争や組織改編による組合活動の活発になることをおそれ、市内特定郵便局の全逓組合員を脱退させる動きをしていたことについて上申致します。   静岡市駅前の松坂屋裏にある竜宮旅館で脱退工作をした事実がありますが私たちは通称この会談を竜宮会談と呼んでおります。   昭和三十三年十一月二十九日(土曜日)午后三時頃と思いますが自宅に居りますと、特定局の仲間の大谷局の島崎君、井ノ宮局の牧野君、手越局の沢村君(現在免職)、安西局の石川君の四名で自転車にて来ました。私は何んな用件にて来ましたか解りませんでした。用件に付いて聴きますと全逓を脱退するための工作話しとの事でした。   私も突然の事でびっくりした事を現在でもはっきり覚えて居ります。なぜ、全逓を脱退するか私には解りませんでした。   その事について松坂屋の裏の竜宮と云う料理屋で局長連中が四、五名と全特定の遠藤さん等と色々と相談をしているから来て貰いたい、織田君も集るとの事でした。局長は新通局長八木さん、安西局長伊藤さん、東稲川局長設楽さん、鷹匠局長増田さん、伝馬局長山下さんと聞きました。   私は全逓を退く事はいやなため諸君にさそわれましたが出席をこばみましたので竜宮にいる局長さんの顔は見ていません。   島崎君以下の諸氏は色々と話しも出ましたが二〇分か三〇分后にあきらめて帰りました。   昭和四十年五月六日     静岡市東若松町一丁目一八           森下 正男  これは枚挙にいとまがありませんが、要するにこの上申書の十九通並びに当時メモをしておった人の手帳を全部提出をいたしたのでありますが、これらを見ますと、高裁の判決によります、要するにその不当労働行為がないにかかわらず、全逓の役員があったと独断をして、報復したやり方をしたというものの考え方が高裁の判決に貫かれておるのであります。不当労働行為がないにかかわらず、不当労働行為があったものと独断してその報復にやってきた、こういう思想が高裁の判決の中心をなしておる。したがってもし十四名の人々がこの証人申請が許可されて、そしてこの種の竜宮会談やあらゆる問題がこの俎上に上がりますならば、当然高等裁判所の裁判官の判断というものは私は違ってくるものだ、こう考えられるのであります。  そこで、最高裁に対しまして、この「安西郵便局事件当時における安西郵便局長等の不当労働行為の事実並に組合機関としてのこれに対する組織行動に関する上申書、新証拠としての記録ノート及びこれの解説。」等を提出をすると言っておりましたが、最高裁においては受理がされておりますか、御存じでございますか。
  47. 小島徹三

    ○小島委員長代理 横山君、何か承っておると、これはいま問題になっておる事件らしいのですが……。
  48. 横山利秋

    横山委員 事務的に伺っておるのですから。十分注意をしていますから、もうしばらく……。
  49. 小島徹三

    ○小島委員長代理 裁判官のいろいろな判断等について批判をすることは、少し遠慮してください。
  50. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 ただいま御質問の点につきましては、これは受理されたかどうかというようなことは私どもは何も存じません。
  51. 横山利秋

    横山委員 私は安西事件の事情について、あなたのほうにきょう説明を求めると言っておいたのでありますから、この種の上申書がきたかどうかくらいのことはあなたも御調査をなさってきたのではないですか。
  52. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 横山委員が非常に御心配になっておられるということはかねがね承知しているわけでございます。ただいま御質問のような資料がはたして受理されたかどうか(横山委員「提出をされたかどうかです」と呼ぶ)提出されたかどうかという点については、実は、つまり提出とおっしゃいます意味は正式に訴訟手続の問題として最高裁判所へ受理されたかどうかということの意味だと存ずるのでございますが、その点についてはそういうふうには何も聞いていないということでございます。  なお、立ったついでに言わしていただきますならば、この事件は四十年の一月三十日に受理されておりまして、現在までに一年余りの期間を経過しているわけでございます。最高裁判所の審理期間等から見ますならば、決して短い期間ではないわけでございます。つまりこの一年余りの期間というもの最高裁判所が慎重に審査しているのだということであろうと私は推測している次第であります。
  53. 横山利秋

    横山委員 時間がお約束の時間をだいぶ過ぎましたから、少し最高裁並びに法務省に、委員長の御注意もありますから、私の意見を申し上げて、ひとつ十分聞いておいていただきたいと思うのであります。  私も戦後十年ばかり労働運動をいたしまして、そしてその体験も数々してまいりました。いまこの安西事件の詳細を自分で調査する機会がございまして調査をいたしましたが、この安西事件それ自身は、何と申しますか、労働運動の段階におきましては、日常茶飯事生ずる問題だと私は考えます。つまり先ほども申しましたように、労働組合の役員であれば、あるいは執行部であれば、当然常になさなければならない主要な任務の一つなのであります。理事者側は常にできれば不当労働行為のようなことをしたいと思う。組合が力が少なくなればよろしい、できれば第二組合があればよろしい、御用組合が成ればよろしい、そういうような心理を常に使用者としては持ちがちなものであります。そして組合役員、組合機関は、常に労働者の利益を守り、地位を向上させるために不断の努力をしなければなりません。いわんや本件の最も中心となりました根本原因は、本国会におきましても最大の問題ともなっておりますILO八十七号条約に違反する公労法の四条三項によって生じたものであります。私もまたその一人でありまして、解雇の通告を受けて、そしてこの安西事件の基礎となりました解雇役員である私が再選をされたために、団体交渉を拒否された経験を持っております。このようなことが憲法に違反し、ILO八十七号に抵触をするという立場は、いまや日本のすべての労働者のみならず、あるいは学者のみならず、あるいはまた世界じゅうの資本家やあるいは政府やあるいはすべての労働者が、日本政府に十五たびにわたって公労法の四条三項の非合理性を指摘をしたために、今日国会において八十七号条約の批准となりました。したがいまして、この郵政省のとりました態度につきましては、方針につきましては、根本的に間違いがある。その間違いをおかしながら、なおかの間違いをそのまま糊塗せんがために、下部の郵便局長の全国的にさらに全逓を脱退しろ、そして第二組合をつくれというような不当労働行為をいたした者に対しまして、不当労働行為の摘発をすること、それから、それによって行なわれておりました超過勤務の問題だとか、いろいろな問題の点検をするという正当な行為をいたす。しかも安西に起こりました事案というものは、別に三井三池にありましたような傷害が起こったわけではない。突き落としたとか、手指をふるったとか、あるいは肩にさわったとかいうことだけの問題であります。それにもかかわりませず、これが実刑三カ月、戦後初めての実刑三カ月ということになりますれば、私は、自分の体験上からいいましても、労働運動のあり方ということにまで大きな影響をもたらすと心配をいたし、また検察陣のこれに対する追及のあり方につきましても、あるいはまた裁判所証拠調査の方法につきましても、ひいては判決の結果につきましても、非常な問題を残しておると思います。したがいまして、いま佐藤刑事局長お話によれば、最高裁判所が慎重な態度でこの事案に取り組んでおるという御報告でありますが、これは単にこの最高裁判所ばかりでなくて、検察陣におきましても、この種の事案にどうしてそこまで追及をしなければならぬのか。またそれに匹敵する問題であろうかという点につきましても、安西事件を契機にして十分にひとつ反省をしてもらわなければならぬ、こう考えるわけであります。いまや八十七号条約の批准並びにその国内法の措置につきましては、国会におきまして与野党並びに政府の非常な問題点でありますだけに、この際あらためて十分注意を喚起し、善処されんことを要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  54. 小島徹三

    ○小島委員長代理 坂本君。
  55. 坂本泰良

    坂本委員 ただいまの安西事件に対する事実関係要望等については、ただいま横山委員の言われたとおり。そこで私はその上に立って一、二点お伺いいたしたい。  先ほどから、一審判決は無罪の判決であった、二審判決は有罪の判決、しかもこういう軽微な事件に対して懲役三ヵ月という実刑の判決をくだした、ここに問題があるわけでありまして、われわれは憲法三十一条の「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」こういう憲法の規定があるわけですが、一審に無罪であった判決が、控訴になりまして、控訴裁判所のその裁判の運用において、控訴人側の検察官の申請の証人は五名でありました。そのうちの四名を許可しておるわけです。被告弁護人側の申請の証人は十四名であります。そのうちたった一名を許可した。この証拠調べによって無罪の判決が有罪になり、有罪がしかも実刑である。この点が憲法三十一条の違反である、こう考えるわけでありまして、旧憲法時代でも、一審で無罪の判決に対して控訴審で有罪の判決を言い渡たす場合は、少なくとも一審の証拠調べに対して十分な証拠調べをなして、そうしてその新しい証拠の上に立ってのみ有罪の判決を言い渡すべきだ、これはわれわれ大学生の刑法の講義からさらに弁護士になりまして刑事弁護人をやっておる当時においても、林頼三郎博士その他の刑法学者は、新しい事実が出なければ一審の事実そのものをもって無罪を有罪にひっくり返す判決はできない、こういうことを言われておるのを承知しておるわけです。そこで、この安西事件におきましては、東京高等裁判所は一名の証人調べだけで、いわゆる被告弁護人側の申請の十四名のうちの一名の証人を許しただけで、そうして新事実があるから有罪だ、しかも実刑だ、こういう裁判の運用、裁判の取り扱いについては非常な異論があるわけです。少なくとも新しい事実を発見したならば、それで有罪にしなければならない。この判決を見ますと、大体この判決は、証拠は一審の判決をとっておるわけです。そうして、先ほど来御答弁がありましたように、ただ労働運動のあり方そのものが根拠になりまして、多少住居侵入とかあるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律の、結論を申しますと、見解の相違で有罪判決にやっておる。これは私は裁判官として、裁判所として重大に考えなければならない問題だ、その点をわれわれはついておるのでありまして、これは司法権の独立ではない。やはり、ことに新憲法によっては、その罪は証拠によってやらなければならない。その証拠は一審と大体同じである。それを無罪を有罪にひっくり返す、しかも実刑にしておる。こういうようなこの判決、裁判所の行き方であっては、これは労働運動に対するところのことは何もできない、こういうことになる。これが次に質問したいいわゆる労働運動事件を公安事件として取り扱う、そういう問題に関連することでありまして、いままでにないこの判決であるわけでありますから、そういう裁判の取り扱いについての所見をまず伺っておきたいと思います。
  56. 小島徹三

    ○小島委員長代理 坂本君に申し上げますが、承りますと、どうもそれは裁判の指揮権だとか、(坂本委員「運用ですよ」と呼ぶ)証拠判断とかいうことに関連しておるようで、そういうことを直接行政官に聞くことは、私は論点を承ることはいいですが、質問としては、答弁をすることは無理だと思います。どうぞ質問を願います。
  57. 坂本泰良

    坂本委員 それは法務行政として大問題だから持ち出しておるわけです。小島委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  58. 小島徹三

    ○小島委員長代理 速記を始めて。  坂本君、次の質問を願います。
  59. 坂本泰良

    坂本委員 そういうことは憲法第三十一条の国民の自由な裁判を侵害しているのです。
  60. 濱野清吾

    ○濱野委員 関連して。——私はこう思っているのですが、ただいま坂本君も、見解の相違ではあるかもしらぬ、こうおっしゃっておりますが、第一審の判決と第二審の判決とは事実の認定に相違がある、こうだと思うのです。(坂本委員証拠だ」と呼ぶ)証拠じゃない。事実の認定だ。私は先ほどから聞いているのでありますが、労働組合運動だとか、労働組合法による争議行為という事態に立ち入れば、組合の執行部が何をやっても自由である、許されるという(坂本委員「そんなことはない、そんなことは言っていない」と呼ぶ)いや、あるんです。大体そのとおりなんです。そこでそういうようなことも私どもは承知しております。しかし、労働争議とか労働組合運動とかならば何でも許されるという、免罪符のように考えることは、これは大きな間違いである。この間違いをおかしているところに、君の言う日常茶飯事のようにこの紛争ができている。  そこで、私はいろいろな経験を持っているのですが、そういう考え方は間違っているのじゃないか。ことに家宅侵入とか暴力行為等処罰に関スル法律の適用について、その前提となる事実の判定というようなもの、これは裁判所の独自の立場から判定すべきものであって、たとえ国会であっても、ここで解決できるものではない。司法権の独立を侵害して立法権がむやみに立ち入るというようなこともこの場合は考えなければならぬし、もし横山委員やあるいはまた質疑続行中のお方がそういうことに不満があるとするならば、あくまでも日本の法律の条章に従って裁判所において闘争を開始すべきである。私はこの場合、ただいま質疑中の問題につきましては、国会では遠慮すべき問題である、これはわれわれが法治国家としてやはり分を守る、立場を守っていかなければならぬものだと思いますから、委員長において善処してもらいたい。
  61. 小島徹三

    ○小島委員長代理 坂本君、御質問を願います。
  62. 坂本泰良

    坂本委員 私の質問しているのは、一審での無罪の判決に対して二審で有罪の判決を下すについては、一審に出なかった新しい証拠が出た場合にのみやることであって、新しい証拠が出ていないのに、しかもまた高等裁判所の裁判の運用として、被告人側の十五名もの申請に対して一人しか証人を許さずに、検察側の証人申請五名に対して四名を許す、そこに裁判の運用に……
  63. 小島徹三

    ○小島委員長代理 あなたの御意見、おっしゃることはけっこうですけれども質問を願います。
  64. 坂本泰良

    坂本委員 だから、労働運動に関することを公安事件として裁判するという、暴力化したような問題で弾圧をするからいけない、そういうことをすべきじゃないというのは、これは立法権の国政調査権の当然のことなのです。
  65. 小島徹三

    ○小島委員長代理 それはあなたの御意見はけっこうです。だけれども質問を続けてください。
  66. 坂本泰良

    坂本委員 だからそのことについての答弁を求めている。
  67. 小島徹三

    ○小島委員長代理 坂本君、質問を願います。
  68. 坂本泰良

    坂本委員 だから質問をしている。
  69. 小島徹三

    ○小島委員長代理 私はただいまの発言は質問とは認めません。
  70. 坂本泰良

    坂本委員 どうしてですか。
  71. 小島徹三

    ○小島委員長代理 裁判の指揮権とか証拠判断等についての御質問だと思いますが、それは行政官に求めるのは無理です。坂本君、質問を続けてください。
  72. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、こういう判決をするような裁判所になっては裁判所自体が信用をなくするわけです。あくまでも証拠に基づく裁判をしなければならぬ、新しい証拠によって裁判をしていないのだ、そういう裁判はやるべきじゃないと思うがどうかというのが質問なのです。  さらに、時間がありませんからあわせて。——こういうような裁判をするから労働運動の団体権、団体交渉権を弾圧するものであり、破壊するものであるといわれるし、さらに検察当局がこのごろ労働事件に関して公安事件として暴力行為等処罰に関スル法律というのを、わずかな傷害があるから、あるいは暴行があるからというので起訴するところにこの弾圧があるから、そういうことはやるべきじゃないと思うが、その所見は検察庁刑事局長いかがですか、承っておきたい。
  73. 津田實

    津田政府委員 憲法第二十八条あるいは労働組合法第一条第二項等の規定によりまして、勤労者の正当な組合活動が当然認められていることは申すまでもないところでありますが、正当な組合活動の範囲を逸脱した違法行為につきましては、これは一般刑事事件とひとしく、その罪質なり情状を考えまして、起訴すべきものは起訴するというのは当然でありまして、これが労働事件であるからどうだというふうに特異の扱いをしているわけではございません。
  74. 坂本泰良

    坂本委員 本件は、先ほど横山委員も申されましたように、ああいう事実関係なんですね、そういう事実を暴力行為等処罰ニ関スル法律違反として起訴するところにあやまちがあると思う。労働事件に対して、公安事件としてこの労働運動を弾圧するということがこのごろ非常に顕著になってきた。そういう点は十分慎まなければならぬと思うのです。この安西事件については、一審では無罪になって二審では有罪になって、いま最高裁に行っているわけですが、それでも検察庁は、これは暴力行為等処罰ニ関スル法律違反であるとして起訴したから維持するのだ——それでなくて、一般的に、このごろの労働事件は、きのうの執行官法でも言ったように、大体裁判所は労働者の地位保全の仮処分というようなことについては二年も三年もかかっておる、首切られた労働者はめしが食っていかれない、そういうふうにしながら、この暴力行為等処罰ニ関スル法律にかかるか、かからないか、わからないようなのをどんどん起訴するということは、われわれの国政運用上やるべきじゃない、こういうふうに考えるわけですが、その点についての御所見はいかがですか。
  75. 津田實

    津田政府委員 ただいまの事件は、一審で全然無罪であったわけではなく、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反は一審でも認められておる。問題は、住居侵入罪について有罪か無罪かという点が問題になっておるわけであります。  そこで、先ほど申し上げましたように、この労働事件につきまして正当な組合活動が許されることはもちろんでありますし、これを尊重することは当然でありまするけれども、しかしながら正当な組合活動の範囲を逸脱した行為につきましては、これは、法秩序維持の上において当然なすべきことはしなければ、むしろ検察庁としての職務の違背であるというふうに考える。ただそれが、全般的に見まして事実はあるが起訴猶予すべき事件かどうかということは、一般の標準に従って考慮すべき問題でございますけれども、違法行為を、正当な組合活動を逸脱した違法の労働関係事件を放置することは、私どもとしては許されないところであるというふうに考えております。
  76. 坂本泰良

    坂本委員 この事件は住居侵入、建造物侵入、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反として検察官は起訴したわけですね。それが一審で審理の結果、暴力行為等処罰の罰則にももちろん該当しない、住居侵入にもならないというので無罪の判決になっておるわけです。ですから、検察官として、労働事件のこういうように無罪になるような事件に対して起訴を乱発するということが、現在の労働事件を公安事件として取り扱って、そして労働運動を弾圧することになる、そうやるべきじゃないのじゃないかということを私は質問しているわけです。  さらに、裁判所は、現在は、戦前の旧憲法時代と違って、証拠による裁判でなければならない。その証拠が、一審でやってさらに二審で有罪にひっくり返すようならば、もう少し慎重に新しい証拠を検証すべく裁判公判を進めなければならぬ。それを公判を進めないでいるところにこういう間違った判決が出てくる。いわゆる裁判所の傾向が——これはわれわれ、裁判所というのは最後のとりでであって、警察が弾圧をする、さらにまた検察庁も時の行政権によって弾圧をする、それに対して裁判所がき然として判決をする、いかに行政権の圧迫があろうとも断じてそれに屈することなく証拠に基づいて有罪無罪の判決をする、これが司法権の独立だと思うのです。現在の裁判官はその点に欠けることがある、最高裁判所の裁判官もやはりそのそしりを免れ得ないと私は思うのです。ですから、近く最高裁判所の長官の定年も来ておるから、十分慎重な、行政権に屈しない、権力に屈しない裁判をやってもらいたい、これがわれわれの要望なのです。少なくともこの安西事件における裁判官はその資格がないじゃないかということを考えますから、その御所見を承っておる。
  77. 小島徹三

    ○小島委員長代理 やはりこれは現実の裁判官の訴訟指揮とか証拠判断とかいうものに対して答弁を求められることになりますから、それについての答弁を求めることは無理です。   〔発言する者あり〕
  78. 横山利秋

    横山委員 先ほど来、元副議長、元委員長、元政務次官の同僚諸君三人からどうも異議が出ておるようでありますから、私もひとつ意見を——これは意見であります。質問じゃありませんが、きょう質問をいたしました気持ちを同僚諸君にぜひ……(「気持ちはわかる」と呼ぶ者あり)わかるでしょう。わかるなら簡単に言うけれども、要するに私の言いたいことはこういうことなのだ。この根っこにある問題は、いまILO八十七号条約で違憲だと主張され、国際的に十五回も指摘された問題だ。つまり、その時においては、いいか悪いかは別として、法律としてあったのだが、しかし、いまとなってはあれは悪かったのだ、ああいう法律はよくなかったのだというところに問題の根本がある。それで、首を切られた、その首切られた者が組合役員であるうちは団体交渉をしないと言われた。そこにかてて加えて不当労働行為が全国で続出した。不当労働行為というのは、第二組合に入れ、全逓を脱退しろという運動を特定局長がずっとやった。それに対する防衛手段としての意味もあるし、それからもう一つは、現実に超過勤務が支払われていないとか、局長が悪いことをやっておるとか、そういう意味において点検闘争が行なわれた。そこが、私の言うように公労法四条三項の問題と不当労働行為の問題と点検闘争の問題と三つずっと並んでいくならいいのだけれども、不当労働行為をやったということが表に出てない。そして高裁は、不当労働行為がないにもかかわらず、不当労働行為があったと独断をして、点検闘争をやったのはけしからぬと、こう言っておる。それで私は、いや、不当労働行為があったのだ、あった証拠は十五名の人を呼んでくれさえすれば、不当労働行為が表に出るのだ、本来不当労働行為なかりせば、点検闘争はなかったかもしれぬのだから。だから、不当労働行為があったにかかわらず、ないものと独断をして報復憎悪の念だけでこの問題が起きたと判断をしたのは、これこそまさに独断であるということを私は諸君によく知ってもらいたい。それが同僚諸君によくわかってもらえればいいので、あなたの言うように、労働組合は何でもやればいい、そんなことはちょっと言い過ぎだね。
  79. 小島徹三

    ○小島委員長代理 御意見は承りました。
  80. 坂本泰良

    坂本委員 私のいまの質問は重大な質問なのです。ですから、委員長答弁を許さない点について私非常に不満がある。しかしこの点については、もう少し法律的にも憲法的にも検討をいたしますから……。
  81. 小島徹三

    ○小島委員長代理 当法務委員会で、現在係属中の事件についての証拠判断とか、あるいは訴訟指揮とかについて質問することは、司法権独立を尊重する意味において遠慮しようといういままでの例ですから……。
  82. 坂本泰良

    坂本委員 だから、いまの委員長のその処置についてわれわれは不満があるのです。その点は……。
  83. 小島徹三

    ○小島委員長代理 承っておきます。
  84. 坂本泰良

    坂本委員 時をあらためてやりますから、本日はこれで打ち切ります。
  85. 小島徹三

    ○小島委員長代理 それでは、次会は来たる六月七日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会