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1966-05-24 第51回国会 衆議院 法務委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月二十四日(火曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小島 徹三君 理事 田村 良平君    理事 濱田 幸雄君 理事 井伊 誠一君    理事 細迫 兼光君       鍛冶 良作君    唐澤 俊樹君       佐伯 宗義君    四宮 久吉君       田中伊三次君    竹内 黎一君       千葉 三郎君    中垣 國男君       早川  崇君    毛利 松平君       神近 市子君    山口シヅエ君       横山 利秋君    田中織之進君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 鹽野 宜慶君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局民事局         長)      菅野 啓藏君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 五月十八日  委員濱野清吾辞任につき、その補欠として船  田中君が議長指名委員選任された。 同日  委員船田中辞任につき、その補欠として濱野  清吾君が議長指名委員選任された。 同月二十四日  委員馬場元治君、濱野清吾君及び森下元晴君辞  任につき、その補欠として鍛冶良作君、竹内黎  一君及び毛利松平君が議長指名委員選任  された。 同日  委員鍛冶良作君、竹内黎一君及び毛利松平君辞  任につき、その補欠として馬場元治君、濱野清  吾君及び森下元晴君が議長指名委員選任  された。 五月十六日  神戸拘置所尼崎支所田近野地区移転反対に関  する請願山下榮二紹介)(第四四九二号)  同外十九件(山口丈太郎紹介)(第四五一八  号) 同月二十日  印章法制定に関する請願亀山孝一紹介)(  第四八五六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  執行官法案内閣提出第一四九号)      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  執行官法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 まず基本的な問題について一点お伺いいたしたいと思うのでありますが、執行吏制度の基本的な改正は、執行吏を完全な国家公務員として、裁判所の一員としてその職務執行させることが一番完全な改正であるということは申し上げるまでもないわけでありまして、当局におかれても、その方向で改正考えられたようでありますが、いろいろな点で一気にそこまで持っていくことはできないということで、みずからも言っていられるように中途はんぱの今度の改正になったということであるわけでありまして、それで、どうして一気にそこまで改正できなかったかということの理由につきましては、執行官法案説明書にその一部が載っているわけでありまして、そこには「現在執行吏の取り扱っている専務が他の一般の司法事務または行政事務とは著しく異なる特殊性困難性を有すること、」それからまた給制のもとでは現行手数料制下におけるよりもかなり多数の職員が必要となることを覚悟しなければならない」云々と書いてあるわけでありますが、この「著しく異なる特殊性困難性」、非常に抽象的でありますが、これを説明していただきたいこと、それから「俸給制のもとでは現行手数料制下におけるよりもかなり多数の職員が必要となる」という説明をされておりますが、これも具体的に、一体それならどのくらいな職員その他をふやせばいいことになるのか、それらについてまず御説明をいただきたいと思います。
  4. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 執行吏職務困難性とはいかなるものであるかということと、それから俸給制執行官に切りかえると多数必要だということであるが、その数はどのようなものであろうかという二点のお尋ねと心得ますので、最初にまず仕事内容特殊性困難性ということにつきまして御説明申し上げます。  御承知のとおり、執行吏の取り扱っております職務強制執行でございまして、これは御承知のとおり外へ出ていって仕事をする、強制執行をするということでありまして、債務者の自宅など、裁判所以外の場所に出かけていって行なうのでございます。しかも御承知のとおり執行吏独任制機関でございますので、その際上司の監督指導あるいは同僚の助言を求めるいとまもなく、自分の全責任で、その場においてとっさの判断をして、適正な執行をしなければならないというところに普通の公務員と違った職務性質があるわけでございます。それから、さらに強制執行の現場において執行する際には、債権者債務者利害がそこで激突するわけでございまして、その際に債務者側からいろいろ恨みを言われ、あるいはののしられるというような場合もございます。さような利害が激突している場面でございますので、その間に処してこれを円滑にしかも適正に事務を処理していくということは非常にむずかしい。普通の公務員のいわゆるデスクワークとはかなり違った性格があるわけでございます。それから、強制執行性質から申しまして、普通のデスクワークでございますと、ある限度の仕事自分の裁量で順順に片づけていくということができるわけでございますが、強制執行の場合には、一ぺんに仕事がまいりますと、これをなるべく早い機会にすべてを処理してやるということが要請されるわけでございまして、自分判断で繁閑をならして仕事をしていくということが非常に困難な仕事なのでございます。さような次第で、いわゆる普通の公務員のやっております仕事と、外へ出かけていって強制執行という仕事をやります執行吏仕事とは、かなり違ったものがあるように考えられるわけでございます。これを私ども職務の「特殊性」あるいは「困難性」ということで表現いたした次第でございます。  それから、俸給制執行官に切りかえます場合に相当多数の職員が必要であるということでございますが、これは実際にはこまかく事務の分量をさらに分析いたしてまいりませんと、正確な数をはじくことは現段階では困難なのでございます。従来諸外国におきましても、このような手数料制がいいのか、俸給制がいいのかということについて、いろいろ議論され、検討されてきているようでございます。ドイツあたりでこの問題が検討されました場合に、手数料制から俸給制に切りかえるということになれば、おそらく従来の三倍ほどの職員が必要であろう、こういうふうにいわれているわけでございます。これを日本に当てはめてまいりますと、現在執行吏が三百数十名おります。それから問題の執行吏代理でございますが、これが二百数十名、合計して約六百名の者が強制執行仕事に当たっているわけでございます。これをかりに三倍程度というふうに見ますと、千五百から二千くらいという数になるわけでございまして、この点につきましては、法務省の法制審議会でもいろいろ論議されたのでございますが、やはり完全俸給制に切りかえるということになりますれば、その程度の人員は考えなければなるまいというふうな考慮になっておる次第でございます。
  5. 大竹太郎

    大竹委員 次に、執行吏が今度執行官になるわけでありますが、それについての説明によりますと、「この法律施行の際現に執行吏任命されている者は、別に辞令が発せられないときは、執行官任命され、かつ、現にその者の属する裁判所勤務することを命ぜられたものとみなす」というように説明されているわけでありますが、別に辞令が発せられないときはいいのでありますが、この御説明によると、別に辞令が発せられる者もあるというふうに考えられるわけでありますが、現在の執行吏の中で執行官任命されない者が一体どの程度あるのか、その関係は一体どうなるのか、まず御説明いただきたいと思います。
  6. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 この附則の六条によりまして、現在の執行吏はこの法律施行とともに新しい制度執行官任命せられたものとみなされるわけでございますが、その任命されたものとみなされる者につきまして、勤務場所も現在のところでつとめる、そういう執行官任命されたものとみなされる。それで別に辞令が発せられない場合はこういうふうになるわけでございますが、それでは辞令を出しまして現在つとめております場所以外のところにそういう人を任命がえいたすということがあるかというお尋ねでございますが、私どもこの法律実施庁といたしましては、その点は考えておりません。すべて現在つとめております場所で、その場所におきまして執行官に新しく任命されたものとみなしまして、そうしてそこに勤務すべきものとしていくつもりでおります。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 私は、辞令によってよその裁判所勤務といいますか働くというものよりも、現在執行吏である者は全員執行官になるのだ、なる資格があるのだ、そう解釈してよろしいのですか。
  8. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 それならば、今度新しく——仕事内容は似たものでありますが、執行吏から執行官になった者の全員については、その待遇といいますか、年額六十二万二千円ですかの保証と申しますか、それは国ですることになるのでありますか。そう解釈してよろしいですか。
  10. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 現在の執行吏が、ただいまの附則の六条によりまして別に辞令が発せられない場合、これが新しい制度のもとにおける執行官任命されたものとみなされるわけでございますが、補助金関係におきましては、新しい制度のもとで新しい任命資格、すなわち今度この法律が通りますれば、私ども考えております新しい任命規則裁判所規則でございますが、これによって新たに任命された者だけが、予算上認められております補助金額としての六十二万二千円の補助金を受ける。ただ先ほど申しました附則六条によって任命されたものとみなされる者につきましては、その任命資格が、旧法と申しますか、現行法のもとにおける任命資格によって任命されたものでございますので、その者につきましては二十六万四千円の補助金を認められるわけでございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 そういたしますと、今度この新しい、改正した法律によって任命された者は全部六十二万二千円ですか、そうなり、それから、いままでの執行吏から執行官任命された者の待遇は、いままでどおりの二十何万ですか、全部がそうなるのでありますか。その辺はいかがですか。
  12. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 新しい制度のもとで、新しい任命資格のもとで任命された者につきましては六十二万二千円、現行執行吏、これが附則六条によって執行官任命されたものとみなされた者につきましては二十六万四千円——二十六万四千円は、ただいまの現行補助金に関する政令では二十四万二千円であったものを、この法律が通りました後に補助金に関する政令改正いたしまして、二十六万まで引き上げるというつもりでおりますが、結局今度の法律施行されました後におきましては、補助金の面におきまして六十二万二千円の者と二十六万四千円の者の二本立てになるという姿が出てまいるわけでございます。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 次にお聞きしたいのでありますが、今度の改正の一番の重点として考えられる、いままで執行吏執行吏役場裁判所から別に持って、そして執務をしておったというのを、今度は裁判所の中で執務をするということにしたわけでありますが、私、まだそう全国執達吏役場事情その他がよくわからないのでありますけれども、相当裁判所の外に役場を持っておったというのがあるように聞いておるわけであります。裁判所の現在の施設そのものも非常に古く、狭いというようなものも多いわけでありまして、今後おつくりになるものは、もちろんいまの執達吏役場その他の点も考えておつくりになると思うわけでありますけれども、従来の施設においてもこの執行官役場までもその中へ取り入れるということは、実際問題としてなかなかむずかしい問題であり、できない場合も相当あると思うわけでありますが、それらについての実情をお聞かせ願いたいと思います。
  14. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 現在、全国執行吏役場は二百三十カ所ございます。別に出張所が三十四カ所ございます。そのうちで、裁判所庁舎外役場があるものが六十七でございます。裁判所の数にいたしますれば五十七でございますが、同じ裁判所の中で甲、乙、丙という執行吏がおりまして、おのおの役場を持っておるものもございますので、役場の数といたしますれば庁舎外にあるものが六十七ということになっております。  そこで、今後役場を廃しまして、執行吏はすべて裁判所の中で勤務するという体制をとらなければならなくなるわけでございます。いろいろの関係もございまして、この法律施行されると同時に、すべての役場裁判所の庁内に取り入れるということは、私ども調査いたしましたところによりますと、いま直ちには実現できませんけれども庁外にあります六十七のうち、裁判所関係として七庁、役場関係としまして十の役場というものが、いろいろの関係ですぐには庁内に役場を移すことが困難でございますけれども、ほかの五十数庁につきましては、裁判所の中にスペースがあるのでございますけれども執行吏希望によりまして、役場を外に置いておったというようなところもございますし、執行吏執務すべきスペース裁判所の中にあるのでありまするけれども執行吏の数が非常に少ないというようなところもございまして、そういうようなところは、今後新しい制度になりますれば、庁内に役場を移すことが可能でございますので、ただいま申しましたように、十の役場、七つの裁判所におきましてはいますぐということがちょっと困難でございますけれども、ほかは裁判所の中に事務所を取り入れるということが可能でございます。  それからさらに、昨年四月からことしの三月までの間におきまして、これはまあ法律施行前でございまするけれども裁判所におきまして、役場はやはり裁判所の中に置くべきだという考えから、だんだんに裁判所の中に役場を取り入れてまいりまして、その数は全国で、昨年一年の間で十ばかりの役場がございます。なお、裁判所の中の役場で非常に設備の悪かったものもございましたので、これはたとえば大阪でございますが、昨年プレハブの仮設建築ではございますけれども、四、五十坪程度事務所を新しく建築いたしました。
  15. 大竹太郎

    大竹委員 そこでお聞きしたいのでありますが、もちろんこの執行官ということで裁判所の中で執務されることは私非常に大切なことだと思うのでありますが、執行吏役場は御承知のように執行吏だけで仕事ができないわけでありまして、場所によっては執行吏代理もおれば事務員もおるということでありますが、これは新たな制度になったからというわけでもないのでありますけれども、そういうことを考えますと、執行官だけがやはりこの裁判所の中で早い話が机を持っておるということになっても、一体大ぜいの事務員とか代理とかいうものが裁判所の中へごちゃごちゃ入ってくるということが、今度の新しい制度になってはよけいそういうことになると思うのでありますが、それらの監督とかそういうようなことは一体どうお考えになっておりますか。
  16. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 今度の新しい制度になりますと、執行吏役場というものが廃止になりますので、裁判所の外に執行官勤務いたす場所があることはこれは法律に合わないことになるわけでございます。そこで、少なくとも執行吏裁判所の中に事務室を持っていなければならない。ところが、ただいま申しましたように、現状といたしまして直ちに執行吏裁判所の中に入ってくるということが、全部について可能ではございません。そこで執行吏が、裁判所の外にやむを得ずある程度設備を持つと申しますか、そういうことは現在のところやむを得ないかと思いますけれども、しかしながら少なくとも執行吏役場の中に机一つは持つという形はつくり出さないと、法律に反することになります。先ほど申しました面らに庁舎の中に役場を移せないというところもあるわけでございますけれども、しかしそれにつきましても、執行官の机だけは裁判所の中に持つ、あと記録を保存しておく場所であるとか、あるいは事務員が実際の事務をとるスペースというものが、どうしても裁判所の中でとれないというところにつきましては、しばらく裁判所外でそういう施設を持つことは認めなければならないかと思いますが、その庁も先ほど申しましたように全国のうちで十庁程度でございますので、今後裁判所が新営される場合はもちろんでございますが、新営されない場合におきましても、そういう設備裁判所の中に整えていく財政的な措置をとってまいりたいと思っております。
  17. 大竹太郎

    大竹委員 ただ、そこでくどいようですけれども申し上げたいのですが、そういたしますと、もちろん机一つは持っていなければならぬと思うのですが、一体この執行吏は今度は、普通の役所なら出勤簿もあれば出勤退庁の時間も大体はっきりしているわけですが、今度は机を一つ持って役所の中で勤務するということになっても、一体この出勤退庁とかの監督その他はどうなるのか、いまのような場合には、結局机一つあるけれども、そこへ一口に一度顔を出すけれども、実際の事務はよそで、悪く言えば二重の事務所を持って、そうしてほとんどの事務は外でやるのだ。机一つだけは役所に置いて一度顔を出すけれども、実際は別の隠れた事務所のほうに行って事務をやっているということになるのではないかというおそれがあるわけですが、その点についての監督その他はどうなっておりますか。
  18. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 執行吏勤務体制というものにつきまして、現行法律の上では普通の公務員と違いまして、何時から何時までという定めはないのでございます。今後私どもこの法律施行されました後におきましては、執行吏性格公務員性がさらに強化されるわけでございますので、やはり出勤時間というものを規則の上できめたい、こう思っております。  ところで、御指摘のように執行吏勤務と申しますのは外勤が主でございまして、外へ出て働くということが多いわけでございますが、問題はその留守中のことなんでございます。それでとかく事件の申し立てをしたところが執行吏がおらぬというような非難もございましたので、今後この法律施行されました後はいわゆる代行書記官制度を活用いたしまして、執行吏が複数あって留守番が置けるような場所ならよろしゅうございますけれども執行吏が一人であるというようなところには、すべて代行書記官指名いたしまして配置しておきたい、そういう体制をとるつもりでおります。  ただ、御指摘のように机一つということで、執行吏事務員等がいわゆる庁外場所執務をいたしますことにつきましては、これは先ほど申しましたように、財政的な措置裁判所の庁内にすみやかにスペースをとって、この中に取り入れていく努力をするつもりでおりますけれども、そのしばらくの間におきましても事務員等に対する監督ということをおろそかにすることもできませんので、従来事務員の面はいわば野放しの状態にあったわけですが、今後事務処理規程を改めまして、事務員についての裁判所監督ができるような規定を設けて、事務員に対する監督ということもやってまいりたいと思っております。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 次に、この改正の大きな点は、いままでは依頼する人が自分の好きな執行官のところへ委任をしておったのを、いわゆる国家機関としての執行官に申し立て、そうして事件配分とでも申しますか、それについては裁判所がこれをやるということが大きな点だ、こう言われておるわけでありますが、そういたしますと、特にこの配分についての規定はないようでありますが、それでは配分は、たとえば三人いたとすれば、事件が来れば甲、乙、丙とやって、四番目の事件はまた前へ戻って甲に配分する、そういうような配分裁判所としてはされるというふうに了解してよろしいのでしょうか。その点はいかがですか。
  20. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 今度の法律で申し立て制になりまして、委任制を廃し、そうして事務分配裁判所がするということになったわけでございます。これは委任制というものがとかくの誤解を生み、そうして過当競争を惹起し、そこに弊害があるという点からの改正でございますが、しからば、今後事件分配は、裁判所がするといって、どうするのかということでございますが、ただいま申しましたように、過当競争排除ということが第一の目的でございまするので、原則的には事件平等分配ということに相なろうかと思うのでございます。  しかしながら、同時に、手数料制をとっているというゆえんは、やはり能率的で、そして働く者にはそれだけのむくいがあるというところがなければならないわけでございます。そこで平等分配による過当競争排除とそういう能率制との均衡を保てるようなぐあいに事務分配しなければならないというところにむづかしさがあるわけなのでございます。現状を見ますと、やはり人によって多少の格差がございます。それですから、むずかしい事件には腕のいい人が出ていかなければならぬというわけでございますので、原則平等分配ではあるけれども、他方における手数料制のいいところも生かさなければならないのでございます。  それで、各合同役場によって非常に事情が違うわけでございます。そこで裁判所といたしましては、その土地土地に応じて、そこに働いている執行史というものをよく見まして、そうしてどういうふうに事件を分けたら最も合理的であるかということを見定めまして、そこで事件配分していくということなのでございまするが、そのためには執行吏同士の間におきまして、事件分配に関する規約をつくらせて、そうしてそれの合理制について裁判所判断をいたしまして、それならばよろしいということであれば、そういう規約を認可してまいるということによって、抽象的な事件分配方法がきまるわけでございます。これは各場所場所によって違いまするので、一がいにこういう方法ということで申せませんけれども、その場所場所に応じた、そしてそこに働いている執行吏素質というものを見まして、そして具体的に妥当なところで事件分配をしてまいりたい。将来は新しい執行官が新しい任命規則のもとに選ばれて、素質が均一化してくれば、事件を平等に分けるという原則のほうにだんだん近づけてまいりたい、かように考えております。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 そこでちょっとお伺いしたいのですが、第二条の二項に、裁判特定執行官が取り扱うべきものとされた場合は、その特定執行官が取り扱うということになっているのでありますが、この裁判特定執行官が取り扱うべきものとされた場合というのは、一体具体的にはどういう場合でありますか。
  22. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 具体的に申しますれば、裁判執行官にある命令がされるという場合に、たとえば仮処分等におきまして、だれだれの執行吏保管に付するという命令があった場合でございます。普通は執行吏保管に付するということで、抽象的に命令がされまするので、特定執行吏保管という場合は少なかろうかと思います。  なお、不動産の強制管理の場合等におきまして、その執行吏が適任だと思われる執行吏裁判所命令する場合があろうかと思います。
  23. 大竹太郎

    大竹委員 そこで希望と申しますか、意見を申し上げておきたいことは、もちろんこれはいままでのように依頼者執行吏という特殊な関係からいろいろな弊害が出ているということからこの配分裁判所でやることになったんだろうと思います。これは理論としては私は非常にけっこうだと思いますが、裁判所がおやりになり、そしてできるだけ平等に事件を分けるということになりますと、さっき私が申し上げましたように、執行吏の間で配分の申し合わせをつくって、裁判所がこれを認可をするというふうにさっきおっしゃったんですが、これは実際私はなかなかうまくいかぬだろうと思います。また裁判所として、それほど執行吏の手腕力量というものはなかなか見定めがたい点があると思います。しかし、ほんとうに申し立て人の利害そのものをよく考えるということになれば、事件によっては練達たんのうな執行官を向けなければならぬ場合がある、またかけ出しの人が行ったんではうまくやれないという場合も、実際問題としては私は相当あると思います。その点先ほどの裁判所のお考えそのものは私はそれでけっこうだと思いますが、実際の運用の面においてよほどうまくやっていかぬと、執行吏選任が当を得ないということで執行がうまくいかないというような場合も出てこないとは保しがたいと思うわけでありまして、そういうような面で、私は、よほどよく考えてやっていただきたいと思うわけであります。  それで、いままでの委任と申し立てでありますが、そういたしますと、いままでの執行吏委任者との関係は、これはもちろん委任関係だと思うのでありますが、今度は、執行官と申し立て人との関係は一体どういうことになるのでありますか。いままでの関係との相違は、一体どういうふうに考えたらよろしいでしょうか。
  24. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 従来は事件委任ということが法律の文字に出ておりました。しかしこの解釈につきまして、委任とは書いてあるけれども、いわゆる民法上の委任とは違うのだ、いわば公法上の委任ということになればやはり申し立てに近いんじゃないかというような解釈もされておったように聞いております。しかし今度は、はっきり「申立て」ということになりました。そういたしますると、当事者との関係はどうなんだというお尋ねでございまするが、それじゃ申し立てば一体だれにするのかということから考えてみますると、これは特定執行官個人に対する申し立てではなくなってまいりまして、抽象的な執行官というものに申し立てるということにいわれるわけでございますが、もう少しくだいて申し上げれば、行政庁としての裁判所がどういう性格のものかということは法律上もむずかしい点でございまするけれども、常識的には裁判所執行してくれということを申し立てるということになりまして、その裁判所機関としての執行吏事件を扱うという関係になるわけでございまして、これはいまの訴訟を起こす場合に、抽象的な裁判所に申し立てるということなんでございましょうけれども、要するに裁判所に申し立てまして、そこで事件配分というものが裁判所の内部規律できまりまして、ある裁判官に事件配分されるというと、そこで国家機関としての裁判所裁判をやるという関係と同様の関係——今度の執行吏に対する申し立て、執行吏のそれに対する処置というものは、裁判の場合と同様の関係になると思います。
  25. 大竹太郎

    大竹委員 その点私、非常に不勉強で申しわけないのでありますが、先ほどのお話で、それならいままでの執行吏が、何か不都合があって依頼者に対して損害を与えたという場合には、さきのお話だと国家賠償の対象になったのでありますか、ならなかったのでありますか、その点をお聞きしたい。
  26. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 ただいまのところでも、つまり申し立て人、債権者執行吏との間に委任関係があると考えられております現行法のもとにおきましても、執行吏に不都合があった——不都合というのはいろいろの場合がございましょうけれども執行の途中におきまして、いわゆる公権力の行使によりまして不都合を生じたという場合に、ちょっと条文をど忘れいたしましたが、五百三十条でしたか、第一次的責任は前には執行吏にあったのでございますけれども、その条文が削除されまして以来は、国が第一次的な責任を国家賠償法によって負うということに、いまの慣例と申しますか、裁判の上でもそういうふうに扱われております。これは今度の改正によりますれば、一そうそういう公務性が強化される、国家機関としての公権力の行使としての性格が直接打ち出されますので、その関係は従来と変わらない、国家賠償をしなければならないと思います。
  27. 大竹太郎

    大竹委員 次に今度の改正の大事な点は、金銭の保管について、いままで執行吏保管しておったものを裁判所保管することになるということで、これはいままでのいろいろな問題が起こる余地がなくなってけっこうなことだと思うのであります。ただ最高裁判所が当分の間別段の定めができるということが附則第十条にあるわけでありますが、別段の定めということは、こう書いてあるけれども、結局従来どおりでいいということなのでありますか。そして、一体いつになればこういうことでなく裁判所保管するということになるのでありますか。その点をお聞きしたい。
  28. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 当分の間は別段の定めで裁判所保管をするという規定は直ちに適用しないということは、仰せのとおり別段の定めで従来どおり当分の間執行官が金銭の保管に当たるという、そういう規則をつくっていくつもりでおります。しからば、いつまでそうやっておくのかというお尋ねであろうかと思いますので、お答えいたしますが、金銭の保管事務裁判所で取り扱うということにいたしますれば、やはりそれだけの人員を必要といたしますので、これは予算的な措置を要するわけでございます。本年度の予算におきましてその点も要求したのでございまするが、遺憾ながら認められませんで、補助金の増額等しか認められなかったわけであります。しかしこの法律が通りますれば、この人員要求の予算要求というものを本年度からやってまいりたいと思います。もちろん一気には、これは補充源の問題もございまして、直ちに実現も不可能かと思いますけれども、ただいまのところ、ほんの試算でございますが、これに要する人員は七、八十名であると考えております。それとほかの関係の人員要求もいたさなければならないので一気にもできませんから、三年計画くらいでこの関係の人員を要求してまいりたい、こう思っております。
  29. 大竹太郎

    大竹委員 こまかいことで恐縮でありますが、いまの問題についてですが、結局この金を預かる仕事をする職員がいない、補充をしなければやれないということだと思うのであります。もちろん執達吏の金を預かるだけの、ほんのそれだけの、仕事としては、変な話でありますが、これは一人前の仕事では私はないと思うのですが、その点は一体どういう関係になるのでありますか、その仕事内容等についてちょっとお聞かせをいただきたい。
  30. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、この執行官の金銭の保管裁判所がやる場合に、必ずそれのために人員を一人ふやさなければならねということはないと思います。これは裁判所職員にすでに会計関係の歳入歳出外の現金を取り扱う係がございますので、この事務量が増してくるわけであります。先ほど申し上げました、この制度を実施すれば全国で七、八十人の人員を要するであろうと申し述べましたのは、大体私どもの計算では、保管金の受け払い等が年に四千回以上ありますと、それについて人員を一人要するというような計算になっておりますので、そういう計算に基づきまして算定いたしました数が、今度金銭の保管をやるということになった場合に要する人員として算出したものでございます。  なお、でありますから、現在すでに会計の職員がおって、その会計の職員が、先ほど申しました基準に達するだけの事件をやっていないいなかのほうのひまな場所では、人員の増加なしに金銭の保管というものを直ちにやっていくことができるところもあると思っております。
  31. 大竹太郎

    大竹委員 次に、手数料と費用に関しては最高裁判所でそれに関する規則をつくるということになっておるわけでありますが、この規則はもうできておるものでありますれば資料としていただきたいのでありますし、またいままでの執達吏手数料規則でございますか、これと相当違うものでありますかどうですか、その点御説明をいただきたいと思います。
  32. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 今回の法律で手数料の額及び費用の額は最高裁判所規則で定めるということに改正していただくわけでございます。昨年、手数料の額につきましては、相当大幅の増額を認めていただきまして、今年また手数料を直ちに引き上げるという必要性をまだ現在のところ認めておりませんので、今度この法律に基づく規則をつくるにつきましても、現行の手数料規則及び訴訟費用という一項によって定まっております金額というものを、原則といたしましていま直ちに改めるつもりはございません。ただこまかいところで、実は規則の上で改正しようと考えておりますところが二、三点ございますので、その点を申し上げますと、文書送達の手数料がただいま一件について六十円でございますが、これを八十円程度に上げたいということが一つ。それから告知催告の費用、これが六十円でありますのを百円程度にしたいということと、それから書記料が現行では半枚について二十円であったのを、一枚につき四十円に改めるという程度の値上げをしたいと思っておりますのと、それから現行法のもとにおきましては、差し押えをする、あるいは仮差し押えをする場合の、いわゆる点検の手数料というものにつきまして規定がございませんので、これについて差し押え手数料の区別に従って、その半額ぐらいを認めていただくという規定を置きたいということと、それから商法等による財産の調査等に関する援助、立ち会いあるいは抵当証券の支払いのない旨の証明、こういうものにつきまして、従来規定がございませんので、類似の手数料というようなことでまかなってまいったのでございまするけれども、これについて千円程度の手数料の規定を設けたいということと、それから執行取り消しによる物の引き渡し、取り消しになった場合に、差し押えを解除しました場合にもとに戻すという場合の手数料の規定がございませんでしたので、それを差し押え手数料の区別に従って三割程度認めるというような規定を置くことと、それからなお、夜間、休日の執行行為につきましては、割り増しの規定がございませんでしたので、これを設けたいというような程度改正規則の上でいたしたいと思っております。  規則はいまできておるのかというお尋ねでございますが、もちろん事務局としての案はございまするけれども、しかしこれはやはり規則制定の手続がございまして、その議を経ませんと規則として成立いたしませんので、事務局として考えている素案程度のもの、要綱は資料としてこの次にでもお出しいたしたいと思っております。
  33. 大竹太郎

    大竹委員 手数料に関して陳情を受けているのでちょっとお欄きしておきたいのですが、いまのお話の中になかったからおそらく今度の規則でもないと思うのですが、従来刑事事件とか少年保護事件の書類の送達にあたっては、この手数料の規定を適用しないということで手数料がなかったのでありますが、これに対して執行吏のほうから、手数料が必要であるが何とかならぬものかという陳情その他を相当受けているわけでありますが、いまのお話の中にはたしかなかったと思うのでありますが、これについてのお考えはいかがですか。
  34. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 刑事送達の手数料につきまして、現行法規定では、執達吏規則の十六条によりまして、手数料を支給しないということになっております。なお、今回の改正におきましても、その規則におきましても、当分の間刑事送達の手数料を支払わないということにいたしましたのは、この点に関する執達吏の要望というものにも無理からぬところがあるのでございまして、明治二十三年にできました執達吏規則の当時におきましては、執達吏も公務員であるし、当事者の負担になるような費用が出るなら格別、結局国の負担になるような刑事送達の手数料等は、公務員としてがまんしろということでもよかったのかもしれません。しかし、無料でもって労務を提供させるということは、ただいまの時世におきましてはいかがかと思われるのでございまして、そういう意味におきまして、執行吏の要望というものも私どもとして十分これを考えておるわけなのでございまするが、ここに非常に困難な問題が実はあるのでございまして、理論上の問題といたしまして、刑事送達の費用というものが、いまの制度では国の負担になるわけなのでございまするけれども、これを一体刑事訴訟法における訴訟費用として、公訴の費用として被告人に負担させるという制度がとり得るかどうか、とり得るとすれば、それによって執行吏にもそういうところから手数料を支払う材料というものが出てくるという、そういう問題点が一つ。それから刑事送達の多くの場合は、刑務所あるいは拘置所等に一括して送達するという場合が多いのでございます。これにつきまして、一件ごとにいまの手数料規則で定まっておる送達の手数料を払ってもいいものかどうかという問題があるわけでございます。それから実際上の問題といたしましては、刑事送達による収入というものが執行吏役場の収入としては、役場の形態によって違いますけれども、相当の収入になっているところがあるわけです。これは旅費が払われますので、定額の旅費と実費の差額というものが、手数料はなくても収入になるわけでございます。そういう意味におきまして、ある役場では、送達のそういう旅費というものが実際上の収入源となっておるところがあるわけでございますが、これがもし手数料をとる、六十円程度の手数料が出るということになりますると、手数料と旅費と合わせますると、郵便料よりか高くなります。それで実際は事件が減ってくる、まあ執行吏が、手数料を上げてくれ上げてくれ、こう言っておりますけれども、上げればかえって利用がされなくなって、収入が減るという面も私どもとしては考えておるわけでございまして、どっちが執行吏にとって損か得かというような点も実際問題としてあるわけでございます。  それからなお、一体執行吏仕事として送達というものを最後まで残しておくべきかどうかという点も問題でございます。いますぐこれをやめるということは、御承知のように執行吏代理の多くの者は送達の仕事をしているわけです。今度執行吏代理制度としてはなくなりまするけれども、しかしすぐそういう人の職を失わせるわけにいきませんので、当分の間はやはり執行吏代理という資格の人が残っていくわけでございますが、これがやはり送達という仕事をしていくわけでございます。しかしながら、先ほど申しましたような送達という一項を執行官仕事として残すべきかどうかという問題もございまするので、この刑事送達の手数料の問題は、そういういろいろの問題を解決いたしまして後に合理的なものを考えませんと、いま直ちに手数料規則で認められている程度の手数料を出すということは問題があるものでございますから、それで法律では当分の間は従来どおりということにいたしたわけでございますが、将来検討してまいりたいと思います。
  35. 大竹太郎

    大竹委員 次に、十九条には、他の執行官の援助の規定、それから二十条には書記官の執行官事務代行の問題が出ているわけでありますが、私はこの第十九条の他の執行官の援助というのは裁判所書記官の援助も必要なんじゃないか。それから二十条の場合には書記官でない他の執行官事務代行の規定もあったほうがいいんじゃないか、こう思うわけです。なぜかと申しますと、一人の執行官しかいないところにおきましては、よそのところから執行官の援助を求めるより、そこの裁判所にいる書記官に頼んだほうが仕事は早いのでありますし、また二十条の書記官の事務代行の場合にも、執行官がたくさんいるときには、何も書記官に代行してもらわなくても他の執行官で代行するほうがよほどうまくいく場合もあると思うのでありますが、これは、援助は他の執行官でなければだめだし、代行は裁判所の書記官でなければならぬという趣旨なんですか、その点を御説明願いたい。
  36. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 援助の点と書記官の代行の問題、そのまた関連の問題につきましての御質問でございますが、援助の点につきましては先般の補足説明等でも御説明いたしましたところでございますが、従来は執行吏強制執行等に出かけます場合に、一人ですべての分野に目を通して執行を完了してくるというたてまえであったわけでございますが、実際問題といたしましては、強制執行あるいは仮処分の執行というような場合には、非常に大がかりな大規模な執行行為があるわけでございまして、その場合に、一人の執行吏が全部について目を通していくということが非常に困難な場合が考えられるわけでございます。そこで、さような場合には、今回の法案の十九条によりまして、「他の執行官の援助を求めることができる。」ということにいたしまして、大規模な強制執行のような場合には、裁判所の許可を受けまして、他の執行官に援助してもらう、こういう手続をひとつ認めたわけでございます。  その点につきまして、そういう場合には書記官の代行ではどうかという問題でございますが、これは法律規定といたしましては二十条に書記官の執行官職務の代行が規定されております。「裁判所書記官に執行官職務の全部又は一部を行なわせることができる。」と規定されておりますので、その限度では執行官と同じ資格を持つわけでございます。したがいまして、執行官がかりに一つの場所に一人しかいない、しかも大規模の強制執行が行なわれるというような場合には、その執行官が代行の書記官に援助を求めまして、書記官が執行官代行といたしまして援助に出かけていくということは、法律上当然認められるわけでございまして、ただいま仰せのような御疑念はこの規定の形からはごもっともなのでございますけれども法律の解釈としてはそのような場合も許される、できるというふうに考えているわけでございます。
  37. 大竹太郎

    大竹委員 それから二十条の場合は、事務の代行というものは他の執行官に代行される——代行といいますか、そのことばは語弊がありますが、他の執行官にやらせてもいいというふうに解釈してよろしいですか。
  38. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 書記官の執行官代行の問題でございますが、この制度は御承知のとおり現在でもあるわけでございまして、現在では裁判所書記官がやはり執行吏事務を代行できるということになっております。ただ今回の執行官法の二十条と現行と違っておりますのは、代行を認め得る場合が多少違っているということでございまして、現在の執達吏規則におきましては、その地に執行吏がいない場合にだけ代行を命ずることができるということになっております。それを今回は二十条にございますように「執行官の事故その他の理由により必要があるとき」ということで範囲を広めたわけでございます。こういうふうに裁判所の裁量と申しますか、それをなぜ広めたかと申しますと、現在ございますように執行官がその地にいない場合に代行を認めるということが必要であることはもちろんでございますが、それ以外にたとえば執行官が一人はいる、しかしながら、その管轄区域が非常に広くて、一度強制執行に出かけますと当分——当分と申しますか、その日のうちに帰ってこられないというような場合があるわけでございまして、一晩泊まりがけで出かけているという場合に、新しい強制執行の申し立てがあって、緊急を要するというような場合には、出かけていっている執行官が帰ってくるまで待つということになってしまいますので、さような場合には、やはり従来の裁判所書記官の代行の範囲を広めまして、臨時的な手当てができるようにその場合の範囲を広めたわけでございます。  それから先ほど最高裁判所のほうから御説明ございましたように、そういうふうに執行官が出払っている場合に事件を受け付けて担当することもできないというようなことがあっては非常に不自由でございますので、執行官が一人しかいなくてある程度仕事が忙しいというような場合には、書記官の代行を一人置いておきまして随時事務の受け付けができるような態勢をとりたいというふうに最高裁判所ではお考えになっておられるようでございます。もしもさようなことにいたしますれば、裁判所事務分配は、本来の執行官と書記官の執行官代行の両方を使い分けまして、適宜に事務分配をいたしまして執行を円滑に実施していきたい、こういう考え方をしているわけでございます。
  39. 大竹太郎

    大竹委員 次に一番問題になります執行官代理でありますが、附則十一条でございますか、執行官は当分の間に限り裁判所の許可を受けて一定の資格のある者に「臨時にその職務を代行させることができる。」とあるのでありますが、この「当分の間」というのは一体どういうようにお考えになっているかということ、それから一定の資格のある者ということはどういう資格のことをいわれるのか、その二点を……。
  40. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 執行吏代理制度として廃止いたしまするけれども、現に執行吏代理職務に携わっている人が二百四、五十人あるわけでございまして、こういう人たちの職務をすぐになくすというわけにはまいらないのでございます。そこで、裁判所としては、どういうふうにその点を考えておるかという点でございますが、実は執行吏代理を廃止いたしますると執行官の数をふやさなければならないわけでございまして、これもどういう計画を立てておるかということを申し上げますると、ただいまの執行吏事務量等を勘案いたしまして、ただいまは三百二十五人の執行吏がおりまするが、これを約百名程度はふやさなければならない。ただ、それには一つの前提がございまして、ただいまの執行吏代理でもっぱら送達だけを行なっておるような人はそのまま残してまいりまして、いわゆる執行吏代理はやめてしまうということにいたしまするにつきまして、ただいま申しました三百二十五人に約百名を増負いたす必要があるといたしまして、これを三年計画でやってまいりたいと思うわけでございます。しかしながら、三年の後になりましても官名程度は送達代理というものはまだ残ってまいります。この送達代理をどうするかということにつきましては、一体執行官仕事として送達を残しておくかどうかということにも関連をいたしまするので、この送達の代理がいつなくなるかということにつきましては、ただいまのところまだ私どもは見通しを立てておりませんけれども、要するに三年間で執行代理はなくそうということでございます。そういたしますると約二百名の方の将来の身分がどうなるかということが問題になるわけでございまするが、従来の経過に見ますると、毎年自然減というものが十五名ないし二十名ございまするので、三年間では約五、六十名が自然減として減少していく。あと百四、五十名をどうするかという問題があるわけでございます。で、この執行吏代理の現職の人の職分につきましての規定が、法律の表面には出ておりませんけれども、裏を見ていただきますると、それに対する私ども考えというものを見ていただけると思うのでございますが、それは一つには、裁判所の中に受付の事務であるとか、会計の事務というものを取り入れます、それにつきまして人員が必要であるということになりますれば、その代理の中で最も優秀な人は新しい執行官に採用されるでありましょうし、そうでない人も、この事務官に採用できる資格の人が、資格としては大部分でありますので、できる限りこの中に吸収していきたいというつもりでおります。もちろん、全員裁判所事務官の中に吸収できるかできないかということにつきましては、すべてをこの中に吸収できるということは申し上げかねまするけれども、多くの人はこの中に取り入れることが可能なのではなかろうかという見通しを立てております。  それから、この当分の間認めていきます執行吏代理資格につきましては、執達吏規則十一条の規定によって資格を認められておる者を、これをその資格の者として適当な者かどうかということをこの法律附則の十一条で裁判所のほうで認定していきまして、こういう資格があって、しかも相当であると認められる者につきましては、先ほど申しました当分の間、まあ三年間代理として認めるということでございます。
  41. 大竹太郎

    大竹委員 最後にお聞きしたいのでありますが、いままではこの執行吏は非常に年寄りの人が多い。それにもかかわらず、希望者が年々減ってきておる。したがって、執達、執行吏の数もむしろ減る傾向にあった。これがまあ一番の悩みでなかったかと私は思うわけでありますが、今度の法改正によりまして、先ほど来お伺いしますと、国の補助額が二十六万四千円ですか、それから六十二万二千円になったということだけの違い、まあ名前は吏が官になったという違いはありますが、そのほか、まあ特に待遇そのものについては、私は変わりはないと思うのであります。それで、いままでのように希望者がないということでは、まあ幾ら改正しても実はあがらぬと思うのでありますが、今度の改正でいままでのように希望者がないというようなことはない、どんどん希望者があり、そして非常に若い者で仕事の能率をあげていくという方向へいくお見込みですか。まあそういうお見込みはないのだという御答弁はないと思うわけでありますが、その点についてはどうお考えになっておりますか。
  42. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 将来の見込みのことでございますから、きっぱりとはっきりしたことは申し上げられませんけれども、しかし私どもといたしましては、そういう見通しなくしてはこの法案をお願いできないわけでありまして、補助金が六十二万二千円に上がったことによりまして、必ずや相当の人を相当の人数集めることが可能であろうという見込みを持っておるのでございます。なぜかと申しますると、私どもこれから新執行官として採用してまいりたいと思っている人は、資格の上では三十五歳というように規則の上で書きたいと思っておりますけれども、実際問題として四等級相当の人は、普通に昇進いたしますれば、裁判所などで例を見ますると、四十二、三歳、二十二、三歳で裁判所に入りまして、まあ二十年つとめて恩給がついた、あるいは共済年金の資格がついたという人が来てくれるのではなかろうかと思っておるわけでございます。私がかりにそういう四等級の書記官で四十二、三歳になった場合に、執行官にならぬかと勧誘されたといたしましたときに、二十年つとめますると、退職手当が約二百万、それからこの二十年書記官としてつとめてまいりました恩給なり共済年金なりが、年額にいたしまして三十万程度、月にすると三万程度のものがもらえるわけでございます。それから執行吏を十七年つとめまして、執行吏としての恩給というものが、六十二万二千円の補助基準額を基準といたしますると約二十万でございまして、月額にして二万円足らず、合計いたしますると、年金の額というものが書記官の年金と執行官の年金とを合わせますると月額約五万ということになりまするので、それで六十過ぎてそれだけの年金というものが得られるということになりますれば、四十二、三歳で四等級という人のうち、若干の人をこれに勧誘して執行官になってもらうことが可能であるというふうに見たわけでございます。もちろん書記官として六十も六十五歳までもつとめて順調に昇進いたしますれば、二等級くらいまでにもなる。そういたしますれば、相当の退職金もあり、年金も相当になるわけでございまするけれども、しかしながら、すべての人がそういうふうな昇進をするわけではないのでございまして、書記官の全定員というものは六千人ございまするけれども、五十一歳以上になりますればもう〇%、六百人に減っております。ということは、途中でやめていく人が多いわけでございます。必ずしもみんなが六十歳まで、一、二等級になれるというわけでもございませんので、そういう点も将来の見通しを立てて、執行吏になったほうが有利であるというふうにお考えになる人が、先ほど申しました三年計画で年五十人という補充を得るのに全然見込みがないというわけではないというふうに考えておるわけでございます。
  43. 大竹太郎

    大竹委員 質問を終わります。
  44. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと議事進行について委員長にお願いがあるのですけれども。承れば、きょう大臣は売春防止法制定十周年記念式典にお出かけになったそうです。まことに意義ある会合にお出かけになったそうでございますが、そこで大臣がどういうことをおっしゃったか、ひとつ大臣の式辞を次会にもらいたいのです。といいますのは、先般理事会でたいへん話題の中心になりましたが、兵庫県の何がしというところにおきまして清潔、明朗なる売春が行なわれておるよしであります。週刊文春によりますと、そういうよしでありまして、警察署長はじめ関係者が、その売春が清潔、明朗に行なわれるように保護しておるかのごとき話であります。まことに言語道断と言われるべきものでありますが、この時期において法務大臣が売春防止法制定十周年記念式に出られてどういうことをおっしゃっておるか。まことにこれは私どもは関心ただならざるものがございますから、金曜日の一般質問の日に、この全国から集まられた式典の直後に売春問題を討議することは有意義であると思いますから、きょう法務大臣がごあいさつになりました要旨を、ひとつ本委員会に提出されるよう要望いたします。
  45. 大久保武雄

    ○大久保委員長 しかるべく取り計らいます。次に、上村千一郎君。
  46. 上村千一郎

    ○上村委員 実は時間がもう非常になくなりましたので、重要と思われる点につきまして、簡単に二、三お尋ねをいたしておきたいと思います。  実はこの執行吏制度という問題は、従来過去におきまする国会におきましても非常に論議の対象になっておる。またそれに関連するところの附帯決議も行なわれてきておる。こういう点は、法のいわば最終的な実現という問題につきまして、特に民事に関連しますが、国民の実生活におきまする一番最先端としまして実現をしていく、こういう過程におきます問題でございますので、非常に論議の的になっておる。またこれが基本的な一つの改革案というものを急速に検討し、また実施してほしいというような要望というものは、過去におきますところの国会並びに当法務委員会におきまして、執行吏の処遇改善に関連いたしまして、たびたび論議をされておるわけでございます。きわめてむずかしい点もあるでございましょうから、まだ今国会におきまして、ただいまの法案におきまして抜本的な御構想、それに基づくところの法案というものが出ていない。これは残念ではございまするが、しかし非常にむずかしい諸問題を含んでおりまするから、いわば今国会におきましての法案としては、漸進的な、あるいは緊急、必要だと思われる点などにおきまする応急処置的な点が、法案に盛られておるというふうに感じられるわけでございます。なお、この法案の理由の中にも、執行吏に関する現行の法制は著しく不備であるというふうに述べられておる点から見ましても、これは明白だと思うのであります。  それで、従来この執行吏制度というものについて、どういう問題が論点になったかと言いますと、要するに先ほどの御答弁の中にもありましたが、執行吏職務特殊性と言いますか、困難性と言いますしょうか、非常に問題があるということ、また重要性ということにつきましては、これはだれも異存を持っていない。そうすると、これがなり手が少ない、補充が欠けてくるというふうな問題、いろいろな問題が出ておりまするが、要するに制度上の問題と、この制度を運用するところの人の問題というふうに分けて論ずることができるかと思うのであります。それで今回の改正案を拝見しますというと、一つの大きな姿勢の問題につきましては、執行官というふうな制度に新発足していくというふうな問題、あるいは役場というふうな問題につきまして、これを裁判所の内部に置いて、しかも裁判所職員としてこの執行官というものを位置づけるという大きな姿勢の問題につきましては、これは大きな進歩だろうと思いますが、要するに予算あるいは金という部面につきましては、はなはだこれは行き届いていないわけです。ですから、要するに予算面におきましてはセーブしながらいっておる。それが証拠には、執行官になる従来の執行吏の方々の収入源というものは、手数料というような制度におきまして、依然として旧来のままを踏襲しておる。あるいは人員の増加というふうな問題につきましても、これは暫定的にやっていくということに相なっておる。ですから、いわば金がかからぬ部面において姿勢を正していくというふうな応急的な線になっておるように承知いたします。この点は現在の段階としてはやむを得ない問題であろう。けれども、従来非常に大きな諸問題を含んでおる問題でございますので、その問題につきまして基本的な点をお尋ねしておきたいと思います。  従来執行吏制度といたしましては、もちろん刑事裁判執行と違いまして、当事者処分権主義が大きな立場を占めておる。民事の問題でございますから、だから法のいわば末端の実現としましての執行の部面におきまして、当事者処分権主義が入ってくることは当然でございます。ですから、そこで現実に執行していく場合におきましても、債権者あるいは債務者の間で任意に合意が成立しますれば、そこで打ち切られていきますし、また債権者の意向というものを大幅に取り入れていくということに相なります。ですから、要するに執行吏仕事としましては、その実現する当面の、いわば最終段階におきましても、常にその人の意思と執行吏の意思というものが非常に大きく発現しておるという場面におきまして、人の問題というものも非常に大きな問題になります。ただ昭和三十一年におきます法制審議会強制執行部会の小委員会で、現行執行吏制度を廃止して、固定俸給制裁判所職員たる執行官制度に改めるという大きな方針を打ち出しております。それから実は経過すること十年になっておる。十年になっておりましても、なかなかこの基本的な考え方に沿うためにどうするかという問題につきましては、非常に問題点があるから延びておるわけです。固定給制裁判所職員たる執行官にしていく。としますというと、一つのしゃくし定木にはまっていくおそれがある。そうするというと、この執行仕事、ある意味におきましては法の実現という最先端の処理のことでございますから、しゃくし定木にやりますというと、また従来の能率化、それがうまくいかぬようになってくる。制度はできたけれどもが非能率に相なる、こういうおそれが来たしやしないか。それを解決するためにはどうしてもその人を得なければならぬ。要するにこの執行官に人を得ないとなりますというと、今度は制度を改めたために非能率化に相なってくるおそれが私は出てきやしないかと思う。しかもその人員の補充ということが遅々として進まないということになりますと、かえたけれどもかえって事務は渋滞した、要するに裁判所執行をお願いした、けれどもいっかな終末点へ来たさぬというような問題。この問題は、たとえば現在国会におきまして特許法の制度改正案が出ておる。これもみな事務の渋滞になる。あるいは裁判所裁判事務促進という問題もからんでくる。ですから、この問題点につきましてその人を得ていくという問題。だから、単に執行官というものが人数だけそこに確保されればいいという問題とはだいぶ違ってきて、今度は中途はんぱに改めたために事務はきわめて渋滞をするというようなおそれなしとしない。この点につきましてはどんなお考えをお持ちになっておられるか、ひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  47. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 執行の重大性ということにつきましては仰せのとおりでございます。そうして仕事困難性ということも仰せのとおりでございます。制度ができましても人を得なければ結局執行がうまくいかなくて、司法としての権威を失墜するということに相なりまするので、私どもといたしましては、この新しい制度のもとにおける執行官といたしまして、その人を得るために最大の努力をいたしたいと思っております。  これは一つには経済的な処遇の問題もございまするけれども、もっと重要な点は、従来にも増して執行官というものに、その仕事の上に誇りを持たせる。そして誇りのある仕事であるという感じを執行官に持たせるように、裁判所全体としての空気といたしましても、従来よりも執行官というものは内部の職員であり、非常に重要な仕事をする人であるという裁判所の内部における気風というものを醸成していかなければならないと思っております。これが名前を改めたという点にも一つには出ておると思うのでございます。執行吏というものを執行官に改めた実態はないじゃないかという御批判もございました。しかしながら、その一つは執行吏というものの従来の観念を一てきいたしまして、執行官というものは先ほど来お話のございました重要な司法の一翼をになう重責を負っておるんだという誇りを持たせるような裁判所全体の空気というものを醸成してまいりたい、かように思っておるわけでございます。  経済的な処遇の点につきましては、私どもの予算要求に対する努力というものは十分に実りませんでしたけれども、ともかくも従来の三倍程度補助金、そして恩給の基準額というものが定まりました。しかし、それに伴いましてまた任用資格というものも高められたわけでございます。四等級で三十五歳以上、従来の七等級で二十歳以上というのとは格段の差ができたわけでございます。こういう三十五歳以上——実際の運用の面におきましては四十歳から四十二、三歳の人で、社会常識にたけた最も働き盛りの人を裁判所職員を主たる給源といたしまして、その他の方面に求めまして、りっぱな人をここに補充してまいりたい、そういう覚悟でありまするし、その見込みもないではないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
  48. 上村千一郎

    ○上村委員 私はきわめて納得のいく御答弁だと思うわけでございますが、要するに待遇をよくする、それとともに、執行官というのはお名前は裁判官というように——私は小さい裁判官みたいなものだと思う。小さいと言ってはいけませんかもしれませんけれども、日本のものの考え方としましては、大学においても、大学の研究部門におる人が、実際上教育を担当し一線に立っていくような人より何となく高いような立場、重要な偉い人のような立場にある。もちろんそれぞれの立場はあるでありましょうけれども、何となくそういう風潮がある。だから、裁判所裁判をしていく、これはきわめて必要なこと。けれどもが法を具体化する者の考え方としては、裁判官と執行官は、一つの法を具体化し、しかも実現していく意味におきましては相通ずるものが実際ある。逆に言いますれば、その実現面が正確であるという信頼度がありますれば、これは諸先進国にあるように裁判しただけでそれに全部従っていきまして、そうして執行部面はなくなってくる。その執行が正確に国民の信頼度をかち得ておるということの実証があれば、裁判で言い渡されれば、それに全部従ってくるということに相なる。ところがそうでないと、いかに適切な裁判が行なわれた場合でも最終の執行の段階でどうでもなるんだというような観念がありますれば、結局いつまでたっても裁判の適正を期するわけにはいかない。しかも非能率化されていくということに相なるわけでありまするから、一つの大きな姿勢の変化を来たすところのこの改正法案といたしましては、先ほど局長が御答弁になられたように、待遇をよくするとともに、ある一種の使命観と申しましょうか、裁判所内部の執行官に対する高い一つの観念というものを持たせるということが必要である。一つの制度としまして大きな前進であるというふうに思うとともに、単なる一つの職員というような立場で部署が単にふえたというような観念でいかれると、これは優秀な執行官を得るわけにいかないでありましょうし、しかもいやがる、またつらい一つの職域でありますから、いま気分を変えるときでございますから、その点につきまして最高裁判所におきましてもひとつ大きな御決意を持っていただくならば非常に大きな効果を発生するのではないか。さもなくて単にそれを裁判所職員に吸収したというような程度であるならば、これは将来事務の渋滞、非能率化を来たすであろうというような感じが私はいたしまするからお尋ねをしたわけでございます。  それから、現実の問題としまして、現在の執行吏の方が執行官としてなる。それとともに執行吏代理の方の処遇という問題につきまして、先ほど局長いろいろと具体的な御答弁があって、現実においては、いまはっきりは言えないでしょうが、かつていわゆる代行書記官というのがありました。それを書記官のほうに組みかえていくということで、予算と並行しながらこの問題を御解決されている、そういうような過去の問題から考えますれば、現在の執行吏代理の方々の現実的な処遇の問題、処理の問題というものにつきましてはおおよそ先ほどの御答弁で私は了承をするものでございまするが、要は、この執行の問題につきましては、世の中の経験とかあるいはその他いろいろな世情といいますか、そういうものに具体的に接したりした経験というものが相当ものをいうと思うのであります。何とならば、先ほども御答弁の中にありましたように、執行をする場合におきましては債権者債務者利害が極端に対立して、しかもその執行場所がきわめて気の毒だと思われる家庭内部で行なわれていく場合が多いのでございます。そういう場合の処理のしかたというものは、単にしゃくし定木の処理のしかたでなくて、人情の機微に通じたところの処理というものが必要であります。要は、法というものは国民が納得しなければならぬのであります。正しいことをやったからといって、相手が納得しなければかえって反感を持つだけになって真の効果なり使命を発生するものではない。そういう際におきましては、どうしても人生の機微とか人情の機微とかいうようなものを推察しながら、そこで一つの意思決定をしていくということになる。しかも、それが現実に力というものの発現の場所になるわけでございますから、これは単なる事務的なものというものとは違うというふうに思うのでございます。そういうことも考えながら人の処遇——あるいは使命感、あるいは補充というようなことをよく御留意を賜りたい、こういうふうに思っておるわけでございます。そうしますれば、執行吏代理というような人もあるいは見聞きしながら相当の、いわば知識経験というものを持っておられる方もあるのではなかろうか。そうしますれば、将来の執行官の供給源と申しましょうか、そういうようなものにも相なるのである。全部が全部というわけではございませんが、そういうふうなことをひとつ御留意を願いたいと思います。その点についてひとつ御意見を賜りたいと思います。
  49. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 執行官が単に法律だけの事務屋であってはならず、人情の機微に十分通じた人で、判断力を備えた人でなければならないということは仰せのとおりでありまして、そういう人を得るために私どもは努力するわけでございますが、現に執行吏代理仕事をしておる人の中にも、そういう資格を持っておる人が相当あろうかと思っております。形の上ではいわゆる四等級の経歴を持っておらない人も、任用資格の上では、原則は四等級ということにいたしますけれども、これに準ずる者というものも新しい執行官になるための資格の一つとして認めまして、そうしてその準ずるということにつきましては、たとえば六等級の経験しかない人でありましても、その後執行吏代理として数年の経験を経たというような人、そして社会経験を積んできたというような人は、これはいわゆる四等級に準ずるものとして新執行官の任用資格を認めてまいりたい、そういう意味での任用規則というものも定めてまいりたいというふうに思っております。
  50. 上村千一郎

    ○上村委員 もう一つ、実はいろいろと時間的に急がれておりますから、従来の執行吏制度につきましては過去長い間非常に大きな問題を含んでおりますから、そのたびに私も過去におきましてもう数回本案以外にもいろいろ問題の提起を申し上げておるわけでありますが、きょうは時間もございませんので一点だけお尋ねをしまして終わりたいと思いますが、要するにこの執行吏制度の際におきまして、執行屋とか、あるいは立ち会い屋とか、いわゆる事件屋というようなものが介入しやすい。それが一つの執行吏制度におきましての問題点ともなり、多くの疑惑をも提起し、また国民の信頼をも傷つけておるということは事実でございます。これを除去する意味におきまして、裁判所の一つの監督の強化という問題が起きてくる。従来の執行吏の場合よりも、執行官の今回の新しい改正によりますれば裁判所監督の強化ということはこれは当然起きてくると思うのでございます。だとしたところが個々のやり方でございます。悪い弊害の面につきましてはどんどん強化しなければなりませんが、これをしゃくし定木に強化しますというと、今度は現実に一線に出た執行官が、執行を適正に迅速に能率的に執行する際に、うしろばかり見ておって処理をするということになってしまいまして、あやまちなからぬことだけ——あやまちがあってはかないませんけれども、とにかくお役大事という一点ばりでまいりますと事務の渋滞になってしまいます。普通につとめさえしていれば適当に俸給もとれるというようなことになってくると、これは現在の国家公務員全体に対する諸問題と同じような問題がここに出てくるということになると思うのであります。それで、この裁判所監督の強化、あるいは競売などの実施の方法というような問題につきまして、従来の弊風というものは改めなければならぬこともございましょうし、またその意味におきましては非常に改善をされた、前進をした改正案だと私は思うわけです。しかし一歩誤りますと、かえって新しい問題を提起してくるおそれがある、こういう意味でございますので、要するに裁判所監督の強化、競売実施の方法というような問題につきまして、どんなふうな心組みでやられておるか、こまかいいろいろな点につきましては大竹委員から質問を申し上げておりますから、これはきわめて限られておる時間の際、重複的なことあるいは大体推測のできることは差し控えておくのが適切かと思いますので、大きな点だけを私はいまお尋ねをしておるわけであります。その点につきましてお心がまえ、お考えのしかたというものだけお尋ねをしておきたい、こう思います。
  51. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 従来執行方法、特に競売等につきましていろいろ問題がありました。この競売の方法等につきまして、このたび直接の改正条文が出ておりませんけれども、しかしながら執行を厳正にして、世の批評を受けないための一つの手段としてはいわゆる申し立て制をとって、債権者との妙なつながりということの疑いを避けたわけでございます。それから会計の面をガラス張りにいたしまして、従来とかくの風評がありましたそういう点も排除いたしてまいりたいと思っておるわけでございますが、最初に申し上げましたように、競売の方法そのものにつきましては、今回は改正案をお出しするまでに至らなかったわけでございますけれども、これは改めるべき点があるのでございますから、制度としての執行官制度ができまして、その上にこの手続の改正ということを法務省にお願いいたしまして、そして厳正な競売というものができるように、さらに厳正な競売の手続ができるようにしていきたいと思っております。なお、あまり厳重にし過ぎてはかえって能率を失うのではないかという御懸念も、私どももそういうことがあり得るということを十分に考えておりますので、そういう点も十分に含んだ上で、手続面の改正ということを法務省のほうにお願いいたしたい、かように思っております。
  52. 上村千一郎

    ○上村委員 以上をもちまして私の質問を終わります。
  53. 大久保武雄

    ○大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は、明後二十六日に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十二分散会