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1966-04-19 第51回国会 衆議院 法務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十九日(火曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 田村 良平君 理事 濱田 幸雄君    理事 細迫 兼光君       鍛冶 良作君    唐澤 俊樹君       佐伯 宗義君    四宮 久吉君       千葉 三郎君    中垣 國男君       濱野 清吾君    森下 元晴君       田中 武夫君    横山 利秋君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         中小企業庁長官 山本 重信君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    加治木俊道君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 四月十九日  委員早川崇君及び山田長司辞任につき、その  補欠として鍛冶良作君及び田中武夫君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員鍛冶良作君及び田中武夫辞任につき、そ  の補欠として早川崇君及び山田長司君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  商法の一部を改正する法律案内閣提出第一二  七号)      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭に関する件についておはかりいたします。すなわち、先ほどの理事会で申し合わせましたとおり、ただいま審査中の借地法等の一部を改正する法律案について参考人出頭を求め、その意見を聴取することとし、日時は来たる二十八日午前十時半とし、人選等委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大久保武雄

    大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 大久保武雄

    大久保委員長 この際発言を求められておりますので、これを許します。横山利秋君。
  5. 横山利秋

    横山委員 政府側にお願いをしておきたいのですが、先ほど理事会において発言をいたしまして、同僚諸君の御了承を得た点でございます。それは先般本委員会でも私政府側善処要望いたしまして、本年度予算で多少の善処があった法務局における登記事務の問題であります。つい二、三日前私たまたま名古屋法務局へ行きまして、つぶさにこの実情を調査いたしましたところ、次のような欠陥が非常に目立ったわけであります。その第一は、職員諸君がたばこを吸うひまもなく働いておるのですけれども、ほかの役所に比べまして非常に不便きわまるものがある、そう痛感されました。それはたとえば閲覧をするのにすわるところもない。そしてお茶を飲む設備もない狭い場所にごった返しておる。聞けば一日に約千人近い人があそこへ申請をしておって、おそらく半数近い人が出入りしているでありましょうに、全く何ともならぬという状況です。  それからその次に痛感されましたことは、機械化が非常に不足している。ゼロックス一台、宝のように持っておりますが、これが朝から晩まで回り続けておって、効果があがらない。そういう機械化の不足が目立つ。それから仕事が、きりきり舞いしておってもおそい。事務が渋滞しておる。名古屋市の区役所を見ますと、オートメーションによってずっと流れ作業になって、機械もずっと設置されておる。それに比較いたしますと、見るもむざんなほど事務が渋滞している。それから司法書士の人が役所仕事を手助けしている。その手助けの限界というものは一体節度がないのではないか。局長は、いまそれはきちんとしてありますと言いますけれども、やはり仕事が忙しいものですから、どうしても民間人である司法書士申請の約五割から六割までくらいを担当している。そして役所の中に入って仕事を手助けしておるという状態は、ちょっと問題があるような気がします。  そこで、理事会としては来月一ぺん東京都内現地調査をしていただくことになりましたが、それまでに資料をいただきたいのであります。  第一は、いまそういうような事務業務量はどのくらいであるか、全国、特に大都市中心だと思いますから、大都市業務量状況を知りたいと思います。  その次にはそれに対する人員状況、一人当たりの業務量といいますか、むずかしいかもしれませんけれども、私どもにわかりやすい何か業務量状況が知りたいと思います。  それからその次には、超過勤務がどのくらい行なわれておるか。私の拝見しましたところ、一週間に一回、木曜日でございますか、全員超勤ということになっている。それがノーマルな状況で毎週続けられておる。つまり、一人だけが居残ってもどうにもならぬからというわけで、毎週木曜日なり水曜日は全職員が居残って、六時から七時ごろまでやる。大体超勤というものの性格上、こういうことはおかしい。超勤状況並びに超過勤務予算とのつり合いはどうなっておるか。  そのほか、司法書士業務との関係でありますけれども司法書士手数料、これは認可事項だと思いますから、どのくらいだか知りませんが、ああいう状況ではみんな司法書士のところに行くだろう。もう少し設備を改善し、閲覧室をつくり、そして市民諸君がさっと来てさっとやれるようなくふうはできないものかということが痛感されるのですが、司法書士仕事状況手数料状況はどうか。  最後には、その他参考になることをいただきたいのでありますが、感想として、こういう登記事務大都市に集中しておるわけですが、人員アンバランスがあるのじゃなかろうか。農村においてはそんなに仕事はふえていないと思うが、都市において格別増加しておると思われます。人員アンバランスはどういうふうに考えるべきかという点について何か資料がありましたら伺いたいと思います。  その資料提出並びに調査に基づきまして、追って政府側の御意見を伺いたいと思います。
  6. 新谷正夫

    新谷政府委員 横山委員からいろいろお尋ねあるいは資料の御要望がございました。ただいまお述べになりましたことは、まことにこれは法務局の現状の一番むずかしくもあり、最も重要な点を御指摘になったわけでございます。施設の不十分な点、あるいは機械化が不十分ではないか。事務が渋帯しておる。それに関連して外部の応援がかなりある。私ども毎年こういった点を、法務局の機構、執務体制の改善ということの最重点として頭に置いてやってきておるわけであります。確かに御説のような点につきまして不備な点もあろうかと思います。今後の問題といたしましてなお十分に努力いたしたい考えでございます。  なお、いろいろの資料の御要望がございました。司法書士関係の問題につきましては、実は御承知のように司法書士法によりまして法務省に監督権がございませんので、十分なところまで資料が得られるかどうかわかりませんけれども、できるだけ協力を求めまして、御要望に沿い得るような資料をつくってみたいと思います。  その他の点につきましても資料を作成することは可能でございますので、できるだけ早目に用意いたしまして差し上げたいと思います。   〔「司法書士法務局が監督しておるじゃない   か。」と呼ぶ者あり〕
  7. 横山利秋

    横山委員 懲罰権はあるのでしょう。
  8. 新谷正夫

    新谷政府委員 懲罰権だけでございまして、一般の行政監督権はございません。
  9. 横山利秋

    横山委員 どこにあるのですか。
  10. 新谷正夫

    新谷政府委員 これは司法書士会が自主的にやるというたてまえになっております。      ————◇—————
  11. 大久保武雄

    大久保委員長 次に、商法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。上村千一郎君。
  12. 上村千一郎

    上村委員 商法の一部を改正する法律案につきまして、いろいろと同僚委員方々から有益な質問が取りかわされたわけでございます。この質疑を通じまして、特にこの際政府側の御見解を明白にいたしておいていただくのが、本法案成立後のいろいろの疑問点を解決するに役立つかと思いまして、特に従来の質疑を通じまして問題になった三点につきまして、これが結論的な御見解を承りたい、こう思う次第であります。  まず第一に、譲渡制限のある株式について、買い取り引き受けができるかどうかという点が論議一つ中心になったわけであります。次に、株式譲渡制限に関する第三百四十八条の、定款変更決議におきまして議決権の不統一行使が行なわれる場合、同条の総株主過半数をどのように計算するか、この点を中心にしましていろいろと質疑がかわされた。次に、商法二百八十条ノ二の二項の特別に有利な発行価額というのは、一体具体的にどの辺のものをいうであろうか。その他有益な御質疑がいろいろかわされておるわけでございますが、この際この三点にしぼりまして、結論的な御意見を承りたい、こう思いまして御質問をいたす次第であります。  まず第一点でございますが、この譲渡制限のある株式について、買い取り引き受けができるかどうか。従来の質疑過程におきまして、政府側とされましては、これはできるんだという返答であります。それは取締役会におきまして、その買い取り引き受け証券会社引き受けさせるという過程におきましては、その過程におきまして買い取り引き受けをしました証券会社新株引き受けて、それを希望者分売をするという過程をも通常含むわけでございますので、取締役会でそれを承認をしていくということにおいて可能である。これは従来の商法理論から言いましても可能であると思うのでありますが、その証券会社買い取り引き受けをさせる際に、特に取締役会決議において、その希望者証券会社がそれを分売をすることを承認するというような決議を特にいたしておくことが必要であるかどうか。あるいはそういうことをしなくても、当然取締役会において、証券会社がこれを分け売りすることについて、賢い取り引き受けをさせる段階においても当然含んでおると解釈するのかどうか。今度は逆に、買い取り引き受けはさしたけれども、特定な分け売りをする場合には一々取締役会のほうの承認を要するというような特殊な、要するに条件つき決議というものを取締役会でできるのかどうか、この点につきましてお尋ねをしておきたいと思います。
  13. 新谷正夫

    新谷政府委員 譲渡制限のある株式につきまして、買い取り引き受けが行なわれます場合の取締役会承認の問題と承ったわけでございますが、買い取り引き受けは、証券会社新株引き受けまして、これを希望者分売するわけでございまして、希望者新株株主になることが当然の前提となっておるわけであります。したがいまして、株式譲渡につきまして取締役会承認を要するという定款定めがあります株式会社におきまして、買い取り引き受け方法によって新株を発行する場合には、証券会社希望者株式分売することを発行会社取締役会において承認することがもちろん必要でございます。この場合に、当然に取締役会承認があったものと見るべきか、あるいは個々に承認をすべきか、あるいは一括して承認できるか、さらにまた条件つきでそういう承認があったものというふうに見るべきかという点に、御質問中心があるように伺ったわけであります。  取締役会承認を要するということになっておりますので、取締役会の何らかの形における承認が必要であることは、申し上げるまでもございません。このような承認をすることがもちろん可能であることは当然でございます。譲渡制限定めのある株式会社におきましても、そういう承認前提にいたしまして買い取り引き受け方法によって新株を発行することができる、このように解釈するわけでございます。ただ、買い取り引き受けが行なわれます場合に、当然に承認のあったものと見ていいかどうかということにつきましては、若干の疑問がございます。取締役会承認が必要であるという法律要件になっておりますので、一応一括して承認するか、あるいは個別的に分売段階承認するか、これはそれぞれのケースによってきまる問題でございましょうけれども、いずれにしましても取締役会承認が必要であるということは、法律上の要件であると理解せざるを得ないものと考えます。しかし、譲渡制限定めがあります株式会社取締役会におきまして右のような承認をいたしますことは、普通の場合におきましてはないのではあるまいか、このような株式会社につきまして買い取り引き受けの行なわれるということは、一般的にはないだろう、このように考えられるわけでございます。しかし、確かに譲渡制限定めがございましても、買い取り引き受け法律上もちろん差しつかえないということでございます。
  14. 上村千一郎

    上村委員 私も大体、いまお答えのような考え方を持っておるわけでございまして、私自身としましては納得のいくお答えかと存ずるわけでございます。  次に、株式譲渡制限に関する第三百四十八条の、定款変更決議におきまして議決権の不統一行使が行なわれた場合、同条の総株主過半数をどのようにして計算するか、これは各委員の方からいろいろの質問も出、どうもそこにはっきり割り切れないような、またお答えのようなふうでもやむを得ない、あるいはそうかなという感じを持ちながらも、ちょっと割り切れない空気が各委員方々におありかと思うのでございます。これは初めてのことでございましょうし、従来の商法のいろいろな各規定から出されておりますところのひとつの商法理念と申しましょうか、理論の中におきましては、新しいものを提起しておる関係でございますから、当委員会におきましていろいろと質疑がかわされておることはもっともなことだと思うわけでございます。でございますが、この総株主という株主は、株主名簿記載されておる株主の数である。これは一貫しておるようでございますし、またそうあるべきものだと私も信じておるわけでございます。その場合の過半数という問題につきましては、従来局長お答えにはなっておる数を見るというと、要は、その不統一行使をする場合において、Aという株主——大体証券会社がなる場合が多いと思いますが、それが賛成反対両方議決権を不統一行使したという場合に、賛成のほうにも一人、反対のほうにも一人ということになる。だから、数としましては、人数株主の数よりもふえる関係になる。これが審議の過程において、いろいろと割り切れない感じを当委員会においても感じさせられておった点であろうと思うのであります。  それで、そのAという、不統一行使をする株主が一人であるということ、それが総株主の数の単位になっておるということはわかるわけです。ところが、不統一行使をしたときの頭数におきましては、要するに過半数という数の際におきましては一つふえるわけですね。賛成反対というように頭数がふえる。この際ふえた人数が、その株主が一人ふえたというふうには考えられない。何とならば、総株主の数ということで限定をされておるわけですから、不統一行使したために株主がそこで一人ふえるということは考えられない。ただ計数上において、そこに一人というものがふえたことになる。しかし、たとえば頭の中で考えますれば、一人というものが二人になっておる。要するに、賛成議決権行使した株主も、なるほどそれは株主であることには間違いない。それから反対議決権行使をした人間株主であることに間違いない。そういうことであると、一人の株主が二人の株主ということになるけれども、あくまでも商法上の総株主という株主の中には少なくとも入らない概念であることに間違いない。その概念構成をどうするかということで、当委員会におきましても、各委員の方から質問も出ているし、またそこに、従来、商法でなかったようなひとつの概念構成ということが考えられるということになるのだから、十分論議をされてしかるべきものだと思いますし、ここで確かめておきませんというと、将来にもいろいろと議論になってくる。ただ、実際問題としましては、両方に一名一名になってきますから、その過半数ということ、に小株主利益保護という、そういう法の趣旨、目的からいいますれば、この点はたいした問題にはならぬかもしれませんが、しかしながら、一つ理論構成という問題につきましては、大きな問題をひとつここに与えるということになると思うわけであります。それで、従来局長もいろいろとお答えになっておる経過を見ますると、その際の頭数というものは、賛成のほうへ議決権行使した人間も一人、反対のほうに議決権行使したのも一人ということで、頭数としては一人一人というふうに人数の中に入れていくという一貫した御見解を述べているわけでありますが、しかし、それは要するに総株主株主数という意味じゃない、こういう御見解と了承するのであります。それで、そのもの考え方というものにつきましても、私自身も理解し得る点もあるわけであります。しかしながら、総株主の中に入っていなくて過半数を算定するときには、いまの設例からいえば、一人ふえるという人数のものが入ってくるという結果になる。要するに、これをどういうふうにその議事の中にあらわしていくかということが当面必要であろうと思う。この混乱を避ける意味におきまして、要するに、その株主総会の様子というものをあらわさないといまのようなことにおきまして、混乱を招く。要するに総株主の数と議決権行使したところの頭数というものが食い違ってくるのですから、これは当然どこかで明白にしておかなければならぬ問題かと思うのであります。これをどこで明白にするかという問題に相なるかと思うのでありますが、現行商法二百四十四条におきましては、総会議事録規定がございます。そうしてその第一項には、「総会議事ニ付テハ議事録作ルコトヲ要ス」ということに規定しておりますし、二項としまして「議事録ニハ議事経過要領及其ノ結果ヲ記載シ議長並ニ出席シタル取締役ニ署名スルコトヲ要ス」という規定がございます。少なくともいまの不統一行使をした場合におきましては、もちろん総会議事録にそのことは当然記載される性質のものであろうと思います。いまのような、一つ混乱といえば混乱といいましょうか、疑問といえば疑問と申しましょうか、いろいろの問題点をはっきりさせる意味におきましては、二百四十四条の議事録にいかに記載するかという問題にあらわれてくるかと思うのであります。議事録に、総株主が何名、それで議決権を不統一行使した場合の頭数が何名いるか、人の人数が出てきて、もはやそこで食い違ってしまうということになる。そうすると、この記載をうまくやっておかないとおよそ混乱を招くであろうと思うのであります。それで、どういうふうなお考えを持っているのか、いまの論議というものにつきましては、もう何回も当委員会論議をされ、局長もたびたびお答えになっているが、この点につきまして最終的な統一的な御見解を伺っておくということが今後のためになる、こう思いますので、統一的な結論的な結果をひとつお答えを賜わりたいと思うわけであります。
  15. 新谷正夫

    新谷政府委員 株式譲渡制限に関しまする株主総会定款変更のときの議決権の不統一行使が行なわれました場合に、新しい商法の三百四十八条の総株主過半数というものをどのようにして計算するか、さらに議決権の不統一行使をいたしました者の頭数はどのように考えるべきかという御質問でございますが、第三百四十八条の定款変更決議におきましては、総株主過半数であって、かつ発行済み株式総数の三分の二以上の賛成を得るということを必要といたしておるわけであります。この決議におきまして、総株主過半数賛成を要求いたしましたのは、少数の株式を有する株主の意向をも十分に反映いたしますために、譲渡制限賛成する株主員数が、それ以外の株主員数よりも多いということを要求したものでございます。要するに賛成した者の数が、そうでないものよりも多いのだということがこのねらいでございます。言いかえますと、総株主過半数と申しますのは、譲渡制限賛成する株主員数が、これに反対する株主及び欠席した株主員数を合計したものよりも多いということになるわけでございます。議決権の不統一行使を行ないました株主は、賛成すると同時に反対もしているわけでございますので、そのものの数は賛成株主の数にも当然算入されることが必要でありますが、賛成反対を比較いたします関係上、反対の側にこれを算入しないわけにもまいりません。したがいまして、反対株主の数にも算入しまして、両者を比較いたすわけでございます。その比較した結果、賛成株主の数のほうがそうでない株主よりも多いということになりますれば、この総株主過半数要件を満たす、このように考えるわけでございます。このことを議事録の上にどのようにあらわすかという重ねての御質問でございますが、議事経過要領と結果を議事録にあらわすわけでございますので、総株主としては何名、さらに議決権行使した株主が何名、そのうち不統一行使をした株主が何名おるか、これはどうしてもあらわす必要がございます。賛成した者とそうでない者との比較上の問題でございますので、賛成した株主の数とさらに反対した株主の数もまたこれに書かなければなりません。それだけ書いておきますれば、総株主はもちろん株主名簿記載された株主の数でございますけれども、現実に議決権行使いたしました段階において、不統一行使をした者が何名かということが明白でございますれば、それが賛成議決権行使をした者が幾らで、そうでない議決権行使をした者が幾らということがおのずからわかるわけでございますので、議事録にその旨をとどめておけば混乱を生ずるというようなことはない、このように考えております。要するに両方に算入すると申しますけれども、これはどちらが多いか少ないかということを比較するための計算上の問題でございまして、賛成者のほうが多いということであれば、これで三百四十八条の議決要件は充足される、このように解釈しておるわけでございます。
  16. 上村千一郎

    上村委員 いまの点の御説明よりなかなか説明はつくまいと思うのです。ただそこでいつも問題になりますのは計数上の点ということになるけれども、しかし要はいかに計数上でも、一名の株主というものはそこに存在しておるわけです。要するに不統一行使をする株主というものは、計数上とは別個に株主というのが一人そこにおることは確かだ。それがどうなっていくかということが、要するに各委員方々も御質問された場合の一つ問題点になっている。ただここで問題になるのは不統一行使をした場合に一人のからだが半々にいくようなかっこうになってしまう。それを一人前の一人として見るのはおかしいじゃないかという考え方が根本にあるわけです。だからそれでは両方なしかというと、不統一行使をする株主が一人あることだけは、いまの設例においてはあるのですから、これを無視するわけにはいかない。そうかといってその株主両方行使したのですから、半々の立場にあるとしても、それは株主であるに間違いはない。そういう場合をどう理論構成をするかというところに従来の質疑中心があったわけです。だからいまのようなお話で大体わかるけれども、しかし、それをもっと掘り下げておかないというと、いまここで委員の方からも出ているように、ちょっとわかりかねるぞということばが出てくるわけです。と申しますのは、不統一行使をする株主というのは一人ある、それはなくなったりせぬのですから。ただし行使をした場合におきましての計数上の問題として、それは頭数に入れるか入れないかという問題、入れるとすればどういう概念に入るのかという問題になってくる。要するに私は、不統一行使をした場合においても計数に入れざるを得まい、またそれを一つ頭数に入れざるを得まい、またそれが、完全な株主であるかないかは別としても、株主であることには間違いない。しかしながら従来の株主名簿にある株主とは員数においてはっきり違う。だからその問題が非常に微妙であるけれども、いまの御答弁において、結果的には法の趣旨に反するものではなかろう。だからそれを議事録記載をする際にそこで解決をしておきさえすれば、私は今後の法解釈、あるいは理論構成において、なお疑問点を解決し得るものであるというふうに考える。  それで二百四十四条の議事録でどういうような記載方法をするかということに相なると思うのであります。ですから、この法律の施行過程におきましても、その点の混乱のないようにひとつよく御配慮を賜わりたい、またそういうふうにすべきものではなかろうか。そうしますれば、いま局長が言われておることは大体なるほどと思われる点で、しかしながら、そこに何となくはっきりせぬ点があるのじゃないかという感じが流れる、それを現実に解決するには、現在の段階としては二百四十四条の議事録記載の点において明白に指導をしますれば、また方針をきめていきますれば、私は解決し得るものだというふうな感じをいたしまして、了承をするわけであります。  それから第三点でございます。これは、二百八十条ノ二の二項の特別に有利な発行価額というものは一体具体的にどういう点をいうのであろうか。この趣旨は大体了承できる。要するに新株発行価額についてどういう価額にするのだということは、これは非常にむずかしい問題である。何となれば、発行を有利にしていく、しやすくするということは、これは企業の資本力をどういうふうに集めていくかという問題におきまして、集めやすいほうがいいにきまっておる。しかし、集めやすいということと——あるいは企業自体の資本充実を阻害するという集め方では、集めやすくても、これはかえってまずい。また既存株主に対しましても新株の発行がしやすいというだけで適当な標準がないとなれば、かえって株主に対して保護が十分でないという問題、その点、発行価額というものをどこら辺に置くか、またどういうような規制をするかということは、これは重要な問題であると思うのであります。だから二百八十条ノ二の二項に、特に有利な発行価額の場合におきまして特別決議が必要だということ、だからここでひとつ歯どめをしておくわけです。それはよくわかるが、しかしながら、特に有利な発行価額というものは一体具体的にどこら辺をさすものであろうかという、一つの大体の考え方、基準というものも、審議の過程において明白にしていく必要がある。だからこそ、この委員会におきましてもいろいろと質疑がかわされてきておる。これはもっともだと思う。ですから、これもまたひとつ統一的な、またいわば最終的な御見解というものを承っておく必要がある、こう思うわけでございます。その点ひとつお答えを賜わりたい。
  17. 新谷正夫

    新谷政府委員 改正法の商法第二百八十条ノ二の第二項に掲げてございます「特ニ有利ナル発行価額」という点でございますが、この特に有利な発行価額と申しますのは、一口に申し上げますと、通常新株を発行いたしますものとすれば、その新株発行価額となるべき価額に比べて特に低い価額ということになるわけでございます。きわめて抽象的なお答えになるわけでございますけれども、一般の場合に発行する場合の発行価額考えられるものよりも特別に安い発行価額ということでございます。通常新株発行価額は、払い込み期日の相当以前に定められることを要するのでございますが、払い込み期日におきましても、発行価額が時価を上回るような結果になりましては、新株について株金の払い込みを期待することはできないことになるわけであります。したがいまして新株発行にあたりましては、発行すべき新株のすべてが引き受けられてこれが成功するようにその発行価額定めなければなりませんが、他方におきまして、株主の不利益になってはなりません。株主の不利益にならないように、発行価額をきめるについても十分配慮しなければならないわけでございます。このために、新株発行価額の決定につきましては、株式の相場のほかに新株発行会社の財産状況とか、あるいは発行する株式の数、その株価の収益性、市場の見通し等を考慮いたしまして、取引上これが相当だと認められる価額をもって定められるべきであります。また現にそのように定められておるものと考えられるわけであります。もしもこの価額よりも特に低い価額を定めました場合には、これが特に有利な発行価額ということになるわけであります。したがいまして、株式の相場よりどの程度低ければ特に有利な発行価額となるかということは、個々の新株ごとに、以上の諸条件を勘案して決定しなければならないわけでございます。従来の実際の例を調べてみますと、決定日前日の株式の相場よりも一割ないし一割五分ぐらい低いものを発行価額としている例が多いのであります。これは将来の見込み等もございまして、決定日前日の株価そのままでは新株発行が成功しないということも考えられますので、一割ないし一割五分程度の幅は持たしておくということになるわけでございます。したがいまして、一般論といたしましては、この程度でありますれば特に有利な発行価額とはいえないものと解釈すべきものと考えるわけであります。したがいまして、この一割あるいは一割五分という通常の発行価額の額をさらに特別に下回るというふうな場合になりますと、特別に低い価額を、特に有利な発行価額というふうに理解すべきものと考えるわけであります。具体的に何割安かったから特に有利なものかということを、一般論として決定的に申し上げることはできませんが、ただいま申し上げましたように、実際の新株発行の例を考えて、それを成功させるためにこの程度の低い価額を定めることが必要だということも頭に置きまして、これを基準にして特に有利であるかどうかということを考えるべきものと考えております。
  18. 上村千一郎

    上村委員 もう一つだけお尋ねしまして、私の質問を終わりたいと思いますが、いまの御説明の中に時価という問題がございます。ほかの点につきましては、比較的客観的な条件もあるわけでありますが、この時価というものは、非常に明白なようであって明白でない。と申しますのは、上場株式などは、時価というものはほぼ明白です。ところが非上場株、あるいは特殊な同族的な色彩のものというようなものは、時価というのはどういうふうなことで算定するのか。これも先ほど言ったように、財産状態とかいろいろなものをずっと計算的にやって、時価というのか、そのときのある一定の取引価格を時価としているのか。この点はどういうふうにお考えですか。通常の上場株や何かにおいて、時価ということは、上場取引の価格が発表されておりますから、これは基本的にはよくわかる。ただそれを平均的に、前後どのくらいの期間の平均価格をもって時価とするか、これは比較的資料がはっきり出ていますから、そうむずかしい問題じゃないが、そうでない非上場の株というものについての時価というものは、どういうふうにお考えになっておるか。またどういうふうに具体的にきめ得るのかという点について、最後にお尋ねをしておきたいと思います。
  19. 新谷正夫

    新谷政府委員 上場株につきましては、一般の時価ということが明らかになるわけでございますが、そうでない株式につきましては、確かにその株式の時価というものをどのように定めるかということは、非常にむずかしい問題でございます。これも常時取引されておるものもございましょうし、そうでないものもあろうと思います。この株の価格を定めますのは、その会社の資産状況、あるいは収益の状況、そういったものの過去何カ年かの実情、あるいは発行しております株式の数、その取引の度合い、そういうものを勘案しましてきめらるべきものでございます。なかなかむずかしい問題でございますけれども、上場株とは違って、個別的にこれは幾らかということを定めるわけでございまして、むずかしい問題ではございますけれども、ただいま申し上げましたような諸条件を勘案いたしまして、この時価というものを定める、このように考えております。
  20. 上村千一郎

    上村委員 私の問題はこれで終わりたいと思います。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 関連して、この際片づけておいたほうがいいと思いますので、質問します。  いまの点からいうと、それはなるほど上場しておらぬ株は、株の値段はできませんから、普通、株はこれをもって価格と認めますということで、おそらく重役や何かが説明してやることだろうと思いますが、そこで、そういうことでかりに通ったとしましょう。ところがあとで計算してみると、重役から出た株の価格は不当であった、そうすると、決議の土台が間違っておるのだ、こういうことでその決議の無効を訴え出すことができるわけですね。
  22. 新谷正夫

    新谷政府委員 もしもそういうふうに、取締役がある一定の金額をもって時価ときめて、それに基づいて発行価額定めたという場合におきまして、これが不当であるということになりますれば、商法二百八十条ノ十の規定によりまして、株主のほうから発行差しとめの請求ができます。そのために、そういうことをわかりやすくするために、現行法には規定はございませんけれども、今回の改正に際しまして、特に二百八十条ノ三ノ二という規定を置きまして、払い込み期日の二週間前に新株の額面、無額面の別、あるいは種類、数、発行価額、そういったものを公告し、さらに株主にこれを通知しなければならないということにいたしております。もしこの通知を欠くようなことがございますと、これは手続が違法になりますので、そこで決議の無効、あるいは取り消しという問題が起きてくるかもしれませんが、この手続が踏まれますならば、いまの差しとめ請求によって株主は保護される、こういうことになると思います。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは理論上そうならざるを得ないと思うが、そうなると、争いのもとが残ることになりますから、その点をわれわれは憂えるのです。何かそういう内容にでもしておかぬと種々争いごとが起きる。これは特にお考えを願いましょう。われわれも考えます。  その次に、先ほどから議論になった不統一行使ですが、この三百四十八条の「定款ヲ変更シテ株式譲渡ニ付取締役会承認ヲ要スル旨ノ定ヲ設クル場合ニ於テハ其ノ決議ハ第三百四十三条ノ規定ニ拘ラズ総株主過半数ニシテ」とある前段の「総株主過半数」は、先ほどの御説明でわかります。一人出ていっておるから。その次なんです。「発行済株式ノ総数ノ三分ノ二以上ニ当ル多数ヲ以テ之ヲ為ス」、この三分の二以上に当たるか当たらぬかというときに、不統一行使をしたら、賛成にも投票をし、不賛成にも投票した、こういうふうに記録に載せる、こうおっしゃいましたね。そうなりますと、理論上どうも肯定できないのだ。一人の人間を二つに割ったということになります。しかもここには、代理人は一人でなければいけない、こうなっておるのですからね。よろしゅうございますか、出席株主は一人でそれを行使したときに、それが二つに割れた、そういうふうに記録に残す。そうなれば、一人の人間を二つに割ったということになるのだが、それは理論上許されますか。いかがですか。私はそういうことは理論上許されぬと思う。この点まず承りたい。
  24. 新谷正夫

    新谷政府委員 「総株主過半数」という問題と、「発行済株式ノ総数ノ三分ノ二以上ニ当ル多数」という二つの要件がございます。先ほど申し上げましたのは、前段の「総株主過半数」の問題でございます。これは同一の株主、一人の株主を二つに割った、こういうふうに考えるのじゃございません。もちろん、株主名簿に書いてある株主総数が基礎になるわけでございますけれども賛成した頭数がそうでない者より多ければそれでよろしいわけでございます。そういう趣旨を「総株主過半数」ということばであらわしておるわけでございます。それから、そのあとのほうの「発行済株式ノ総数ノ三分ノ二以上」と申しますのは、これは議決権の数でございます。前のほうは株主の数でございますが、三分の二以上と申しますのは議決権の数でございます。したがいまして、これは議決権の数が発行済み株式総数の三分の二以上に当たればそれでよろしい、これだけの意味でございまして、ただいま仰せのように頭数を二つに割るということはここでは出てまいらないわけでございます。
  25. 大久保武雄

    大久保委員長 鍛冶委員に申し上げますが、関連質問ですから簡単に願います。
  26. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはもっと考えてみると、一人の者が不統一行使をしたら二人でやったものとみなす、こういうような規定でもあれば議論がないと思うんだが、そうでないと、そういう議論が出てくると思うのです。さもなかったら、不統一行使両方をやろうとするときには二人の代理人を出す、こういうふうにすれば文句はないと思うのですが、この点はあなたのほうでどうお考えになりますか。お返事いただきたい。
  27. 新谷正夫

    新谷政府委員 不統一行使の際に、二人の代理人を出さなければならないというふうなことは考えていないわけでございます。これは会社の代表者が株主総会に出まして——会社と申しますのは、ただいまの投資信託の場合なんかは受託会社の代表者でございます。これが一人出て議決権行使すればよろしいわけでありまして、しいて代理人を二人にする必要性はないと考えます。  不統一行使を認めます以上は、一人の者が賛成反対の票を分けて行使すればよろしいわけでございます。しいてこれを二人の代理人にやらせる必要はないと思います。  また、同一人が二人分の働きをするというふうに見るべきじゃないかという御意見のようでございますけれども、これは賛成者がそうでない者より多いか少ないかということを比較する計算上の問題でございます。したがいまして、賛成者のほうが多ければこれは過半数に当然なるわけでございまして、そうかといって反対の側には全然算入しないで計算上は無視するということはできません。双方を入れまして比較する数の上で両方に一人ずつ加えて計算比較をする、これだけの問題であります。比較計算上の問題でございまして、総株主頭数には関係ない、こういうふうに御理解いただけばよろしいのではないかと思います。
  28. 鍛冶良作

    鍛冶委員 きょうはこの程度にしておきましょう。
  29. 大久保武雄

  30. 田中武夫

    田中(武)委員 商法の改正につきまして若干の質問をいたしたいと思うのですが、法務委員会は法学博士だとか弁護士さんだとか法律の専門家ばかりがそろっておられるところで、しろうとの私の質問ですから、きわめて幼稚なあるいは愚問を発するかもわかりませんが、その点あらかじめお断わりいたしておきます。  そこで、まず第一点としてお伺いいたしたいのですが、株式というのはその本質は何ですか。株式引き受けという行為は法律的にどんな行為なんですか。
  31. 新谷正夫

    新谷政府委員 株式と申しますのは、株式会社の構成員である株主株主たるべき地位を表徴するものであります。それを株式といっております。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 それを取得するのが引き受けだね。
  33. 新谷正夫

    新谷政府委員 株式を発行いたします際に、自分がその株主になりたいという場合に、その株式引き受けということをいたすわけであります。これは会社とその引き受け人との関係でございますが、引き受けがございますと、株式の所定の株金を払い込んでそこで初めて株主になる、こういうことになるわけでございます。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、あなたは株式社員権説をとられるわけですね。株式には、社員権説と社員権否定説とか、持ち分説とか、あるいは債権説とかありますね。あなたはそのうちの社員権説をとられるわけですね。間違いありませんか。
  35. 新谷正夫

    新谷政府委員 株主の地位につきまして、確かにお説のように社員権説であるとかいろいろの説がございまして、学説上の問題といたしましては非常に論議の多いところでございます。特に株主というものの地位を社員権として見なければならないかどうかということをわれわれ考えておるわけではございません。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 ただ単純に申し上げまして、株式会社の構成員である株主の地位が株式というものによってあらわされておる、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 私がなぜ最初にそういうことを申し上げるかといえば、その基本的な態度をきめなければあとが出てこないと思うのです。たとえば、あなたは株式はその会社の社員たる身分を取得する、こういうことですが、それじゃ会社更生法においては、株主は一般債権者と同じ地位に置かれておるでしょう。これなんかどう説明しますか。もっと具体的に言いましょうか。会社更生法では、株主と債権者がともに関係人として更生債権者になるでしょう。また今度のこの改正に関連する会社更生法の改正は、なおこれを裏づけているでしょう。それから転換社債の転換だとか、あるいはまたこの譲渡とか交付とかいう問題、あとで逐次触れますが、これを社員権説というか、社員としての身分を取得する行為だということに解するなら、それでもけっこうですが、あとであなたの答弁に食い違いが出てくることをあらかじめ予告しておきます。会社更生法ではどうなんです。
  37. 新谷正夫

    新谷政府委員 田中委員は会社更生法の非常にお詳しい方でございますが、会社更生法のほうでは、これは従来の破産とかいうふうなものとは違いまして、私から申し上げるまでもないことでございますけれども、会社の企業を更生させるというところにねらいがあるわけでございます。そのために債権者の利害を調整しなければなりませんが、同時に会社そのものが更生していく方法考えるわけでございます。そういう意味で一般の債権者、あるいは更生担保権者、あるいは株主、それぞれの立場におきまして、会社の更生をはかるにはどうしたらいいかということを、それぞれの組をつくってきめていくわけでございます。株主株主の立場において会社をどうしたらいいかということを考えなければなりません。そういう意味におきまして、債権者と同列にこれを考えるわけにはいかないだろうと思います。株主はあくまで株主としてこの更生手続に参加するわけでございます。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 会社更生法では更生債権者として債権者と同じ地位において参加することは、今度の改正でもそういっておるでしょう。ここで学説の争いはいたしません。しかし社債の発行も、新株の発行も、ともに会社資金の調達という点で一緒です。だからこそ今度転換社債の転換についても特別の規定が入るのでしょう。  そこで私ははっきりと私の態度を申し上げておきます。私は債権説をとって、その上に立って自後の質問を続けていきます。そうでなかったらあとのほうで、社員権説をとるなら食い違いが出てきますから。  次に、株式の本質として投下資本の回収、これは株式から出てくる当然の権利なんです。したがって、譲渡禁止の場合等には特別の規定を設けていますね。  そこで、企業局長にお伺いいたしますが、特殊法人に対する民間の出資——特殊法人はもちろん商法は真正面には適用ありませんが、特別法人の設置の関係法律によって、たとえば役員の承認だとかあるいは商法の制限以外に優先株を発行できるとかいうようなことはあります。しかしその他は全部商法をかぶっておると思うのです。そこで、特殊法人に民間が出資した場合に、この株は自由に譲渡できますか、いかがですか。ことに具体的な例で言ったら、帝石が一時あぶなくなったというか、問題があったときに、SK、石油資源開発株式会社に出資しているやつを引き揚げたい、こういう希望を持ったことがありますね。それができなかったでしょう。特殊法人に対する民間出資については、投入資本の回収についてどのように考えておりますか。
  39. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 自由にできると思います。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 自由に売買できるのですね。譲渡できるのですね。はっきりしてください。
  41. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 どうも専門でないものですから、恐縮でございますが……
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 これは専門はどこか。企業局だろう。
  43. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 自由にできると思っておりますす。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 これは専門はどこなんですか。——それでは具体的に通産省所管の法律でいきましょうか。特殊法人SKに対する帝石の出資を引き揚げたいといったときに、どういう措置をとりましたか。
  45. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 制限の規定はございません。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 制限の規定がないのに、実際させなかったのでしょう。それでは、特殊法人についての民間出資の、いわゆる株券が出ているわけなんですが、これは譲渡自由でございますという通達を出しますか。発表しますか。法律的には制限ありません。しかし実際に民間が引き揚げたいといったときに許したことはないでしょう。そういうこともあまりないようですが、あのときは、出資したところが倒れそうになったのです。法務大臣、法務大臣という資格か国務大臣という資格か知りませんが、ひとつ明確な政治的答弁を願います。引き揚げ自由なら引き揚げ自由と声明しなさい。
  47. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 法律的には制限はございませんけれども、その設立の趣旨から、やたらに引き揚げることは困るのです。そういう問題から実際には引き揚げておらぬ、こういうことであります。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 法律規定がないのに、だれが困るのですか。法律以上のものがあるのですか。憲法ででもきめているのですか。——時間がないようですから、お預けしておきましょう。あらためてやります。  それから、先ほどの民事局長の答弁ですが、これは会社設立行為のときの引き受けと、そうでないときの、いわゆる譲渡せられたものの引き受け新株の発行とはちょっと違うと思う、社員説をとった場合に。それだけ申し上げて次にまいります。  次に株式譲渡制限についてお伺いしたいと思うのですが、この改正は昭和二十五年の改正の逆なんですね。ともかく株券は自由に流通するというアメリカ的な考え方、そして場合によれば制限し得るという日本的な考え方、この考え方が、ミックスせられたのが今回の法改正だと思う。そこで、たぶん会社荒らしか乗っ取りと答えられると思うのですが、株式譲渡制限という規定をあらためてここで入れられた理由、並びにその緊急性についてお伺いいたします。乗っ取りとか荒らしとかいうことだけじゃ通らぬ。
  49. 新谷正夫

    新谷政府委員 昭和二十五年までは、株式譲渡につきまして、制限あるいは禁止することができるように定款定められるようになっておったわけでございます。その当時株式会社の総数の八〇%以上が、この譲渡制限規定を設けておったように承知いたしておるわけであります。その後、二十五年の改正によりまして、株式譲渡というものは完全に自由にすべきであるということから、現行法のような形になったわけでございます。ところが、小さな会社等におきましては、株式を自由に譲渡できるようにしたのでは、会社の経営上安定性を害するというふうなこともございまして、何とかこれを、譲渡をある程度制限できるようにしてもらいたい、こういう要望が出たわけでございます。そこで今回の改正になったわけでございますが、これは譲渡制限と申しましても、完全に譲渡を禁止する趣旨ではございません。要するに、取締役会におきましてその相手方を指定し得るというだけのことでございまして、投下資本を回収できないようにすることは、これは株主の利益のためになりませんので、必ず投下資本の回収はできるようにいたしております。しかし、その相手方いかんによりましては、その会社の利害にも非常に影響いたしますので、その点を取締役会において承認にかけるということにいたしたわけでございまして、完全な意味での譲渡の制限とか禁止という趣旨ではないわけでございます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 今度の改正で、株式譲渡の場合は交付をもって足る、あるいは株主名簿閉鎖期間でも転換社債の転換を許す、こういう開放体制のほうに片や向いておるわけですね。一方は制限ができるという、相矛盾した二つの思想がここに入っておるのです。これは認めますね。片やアメリカ的であり、片や日本的とでも申しますか、相矛盾した二つの考え方が入ってきておる。しかも、おっしゃるように、そういう制限をしなくちゃならない。これはおそらく中小企業じゃないかと思うのです。そこで、巨大産業というか、巨大会社と同族会社あるいは中小企業、これは本質的に閉鎖的な体質を持っておりますが、そういうのとは、これはおのずから区別する必要があるのじゃないかと思うのです。同じ商法というもので一本立てでいくというところに、相矛盾した思想が同居せねばならぬと思うのです。これは相矛盾した思想であることを認めた上で同居させたところの改正案であるのかどうか。さらに私は、一面アメリカ的な開放的な改正、これを外国資本、ことにアメリカ人の投資に対して有利な方向の改正だ、この一ように考えますが、肯定しますか。
  51. 新谷正夫

    新谷政府委員 株式譲渡制限は、小さな同族的な会社に主として行なわれるであろうと私ども考えております。そうかといって、大きな会社については、これを制限すべきでないという御意見も確かにわかるのでございますけれども、大会社といえどもやはり同族的なものもございますし、これはその会社のそれぞれの立場において、定款でそこのところを定めればよろしいわけでございます。必要があれば定款定める、こういうことになるわけでございます。  それから、転換社債の今回の改正等は、株主名簿閉鎖期間に転換請求ができるということは、要するに外国資本を有利に扱うということじゃないか、その点がいまの譲渡制限規定と相矛盾するものじゃないかという御質問でございます。私どもは必ずしもそのようには考えていないわけでありまして、譲渡制限は、要するにそういった同族的な閉鎖的な会社のために、こういうことが必要であるということをねらっておるわけでございます。両者が矛盾するというふうには考えていないわけでございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 民事局長は、同族的な、あるいは中小企業がおそらく多いであろう、したがって矛盾をしない、こういう答弁ですが、思想的には矛盾しています。  そこで、山本さんにお伺いしますが、この株式譲渡制限と中小企業政策の関係をお伺いします。  たとえば、中小企業投資育成会社のねらいは何ですか。これは言うまでもなく、御存じのとおり、資金の、いわゆる出資者がないといいますか、増資が困難なものであって、それを中小企業投資育成会社、すなわち特殊法人であるこの会社が優先株を取得することによって出資する、あるいは転換社債を受けることによって融資をする、そうして、ねらいは、その中小企業が第二市場でも何でもいいのですが、上場になるようなところまで指導するというのが中小企業投資育成会社の精神じゃありませんか。それと今回のこの改正は、中小企業の根本的な——あとで近促法あるいは機械工業振興臨時措置法等の各項目にわたってお伺いしますが、まず第一に、中小企業投資育成会社の考え方、言うならば中小企業を開放体制に持っていこうとする、これとはまつ正面相反する思想になっておりますが、この点について、中小企業庁長官はどう考えますか。
  53. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 結論を申し上げますと、今回の商法改正によりまして株式譲渡制限が可能になりますと、投資育成会社の運用の方針につきましては、検討を要する点が出てまいります。これは先生御指摘のとおりでございまして、これは早急に検討して、実情に合うようにしなければならないと思います。  投資育成会社の設立の基本的な考え方、目的は、お話しのように、従来どっちかといえば同族会社的な閉鎖的なものを、なるべく開放的、公開的なものにして、その資本の調達を容易にしていこう、この橋渡しをしようということにあるわけであります。その最も端的なあらわれが、いま各投資育成会社が持っております事業規程の運用基準の中に、はっきり出ておるのでありまして、相手方が将来その株式を証券市場に公開する意向を有していることというのを、実は条件にいたしておるのであります。今後この譲渡制限定款が可能になりました場合に、そういう定款を持っている会社がはたして上場できるかどうかにつきましては、大蔵省のほうでもいま検討中のようでありますが、上場できなくなる可能性がかなり大きいように聞いております。  そこで、譲渡制限の中にもまたいろいろあると思うのでありまして、ほとんど同族会社的なあり方をそのまま持続せんがために、いわば全面的な譲渡制限をかぶせるような場合と、それから、本来は開放的なほうに持っていくのですけれども、過渡的に譲渡制限するとか、あるいは最小限度乗っ取りを防止するための制限を付すとか、こういうようなものがあると思うのです。そういうものにつきまして、では投資育成会社はどういう態度をとるべきかといいますと、同族的な形態のままでまだ当分いこうというところには、投資育成会社はなかなか手が及びきれないわけであります。しかし、最小限度の制限を付することによってある程度公開的な方向に進んでいこうというものにつきまして、現在の運用基準ではそれが対象になり得ないわけでありますが、これは十分に検討いたしまして、でき得ればその辺まで投資育成会社が活動できるようにすべきではないかというふうに考えておるのでございます。この点はなお大蔵省の上場基準との関係もございますので、政府内部で検討いたしまして、実情に合うように処理いたしたいと考えております。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、この商法の改正によって、中小企業政策の一角を変えるということになりますね。それは認めますね。——では、そういうことについて、この法改正作業において、通産省から法務省へ中小企業投資育成会社というのはこういうことだというような意見を言ったことがありますか。また、そういうことについて法務省は考慮したことがありますか。
  55. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 中小企業政策の基本的な方向といたしましては、できるだけ同族会社的なものが開放的な体制に移っていくことを今後も指導し、奨励してまいりたい、その一線は全然変わらないのでございます。しかし一方におきまして、相当多数の同族会社的なものが現存することもまた事実でございますし、また最小限度、乗っ取り防止的なバッファーをつくるということは、必ずしも開放的な方向に進むことと相矛盾しない運用の方法でもあろうかと思うのでございまして、その点につきましては、特にこの中小企業政策を現状維持的なものでいいのだ、こういうふうに変更するものとは考えていないのでございます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、そう言っているが、実際はそうなんだよ。あなたじゃないですが、前任者が、中小企業投資育成会社法を審議したときに、どういう答弁をしたか、どういう趣旨を述べておるか、もう一度議事録を読んでください。そうしてあらためてこの問題をやりましょう。  そういうことで商法が改正になる、——なるほど商法は基本六法の一つです。だから改正になれば、それに合わせるようにしなくちゃならないけれども、しかし何も急いでこれの改正をしなければならぬ必要はない。ことにその適用があれば、それをそう運用するのは、同族会社なり中小企業だということであれば——そういう見通しは、民事局長持っているわけです。それとも東芝がそんなことができますか。それならやはり中小企業政策の一角をくずされた、こういうことになります。さらに中小企業近代化促進法の八条、機械工業振興臨時措置法の十二条の二、この間商工委員会でやったところです。これは合併について課税の特別な規定がありますね。このこと自体は、中小企業を合併さす、共同さす、このことを奨励している規定でしょう。またそういう法律案でしょう。また中小企業の基本からいっても、中小企業をできるだけ経済力の強いものにするためには共同化さすんだ、こう言っているときに、このような法律が出ることは、その共同化、すなわち具体的な会社の合併ということについて大きな支障になるんです。ならないというのならば、伺いたいのですが、なることは明らかでしょう。そういう一連の中小企業政策と商法の改正について考えたことがありますか。民事局長、法務省は法務省の管轄の法律だけを考えておったらいいという考え方なんですか。法務省がそうであれば、やむを得ないということで中小企業政策を根本的に検討し直すのですか。中小企業庁ないし通産省はいかがですか。
  57. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 今回の改正によります譲渡制限は、こういうことが可能であるということでございますので、その運用が非常に大事になってまいると思います。中小企業庁といたしましては、従来の路線をそのままさらに押し進めていく考えでございまして、これは悪い意味で消極的な方向に悪用されないように、できるだけ前向きで開放的な資本調達の道に行くように指導してまいりたいと思います。その点は、確かに運用が非常に大事な点でございますので、十分に注意してまいりたいと思います。
  58. 新谷正夫

    新谷政府委員 今回の商法二百四条の改正は、原則としては譲渡を自由にいたしておりますが、その会社の必要に応じまして定款規定によってそういう制限をし得るということでございます。もちろん中小企業対策としていろいろ問題もございましょうが、それに対して特に商法の面から干渉するという意図は毛頭ないわけでございます。個々の会社について必要がある場合にこういうことができるということにとどまるわけでございまして、特段に中小企業対策に対して私どものほうから干渉しようとか、従来の方針を改めるといいますか、そういうことを考えているわけではございません。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 干渉しようとしているとは言っていないんですよ。こういう改正を立案する過程において、中小企業関係法がどうなっているのか、あるいは中小企業政策の実態が何だかということを考えてみたことがありますかと言ったんですよ。
  60. 新谷正夫

    新谷政府委員 この法律案を改正するにつきましては、法制審議会で審議を経ましてこの結論が出たわけでございます。法制審議会におきまして、もちろん関係省庁の方も御参画いただいて、その場で審議されたのでございます。そういうことも頭に置いてこの条文の審議がなされたものと私は了解しているわけでございます。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 山本長官、それでいいのですね。
  62. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 この条文につきましては、通産省として企業局のほうでまとめて当方の意見を出して取り扱ってもらっているわけでありまして、この内容自体につきましては、いま申し上げましたように、運用の問題はございますけれども、これは一つの手段でございますので、従来の中小企業政策を遂行するのに特にこれが支障になるとは考えない次第であります。  それから、先ほど申し上げました投資育成会社の問題でございますが、これはたまたま従来の選定基準が若干きびし過ぎる点がございまして、前回も田中先生から御指摘をいただいている点もございますので、今回それにあわせまして実情に合うように検討いたしたい、そういたしますれば、特にそれによって支障を生ずるようなことはないというように考えます。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 中小企業政策と商法改正の問題は、あらためて商工委員会の場でやりましょう。  そこで、証券局の加治木さんに伺いますが、上場会社が譲渡禁止をした場合は、証券取引はどういたしますか。あるいはそのことがないとは言えない。したがって、上場規程といいますか、それをあらかじめ改正しておく必要があるかとも思いますが、そういうことについて証券局はどう考えておりますか。
  64. 加治木俊道

    ○加治木説明員 この問題については、まだ結論を出しておりませんけれども、取引所方面の意見は、大体譲渡制限のあるものについては、公開の場での取引の安全というものを必ずしも確保しがたいという見地から、上場基準を再検討いたしまして、譲渡制限のあるものについては上場させない、また一たん上場されたもので譲渡制限を付するようなことになった場合には、これは上場を廃止するということが適当ではないかというふうに考えておりますので、これからなお一度検討いたしますが、いまの段階ではそういう方向で考えております。われわれのほうもそうでございます。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 現在上場しないで流通している会社が、譲渡禁止をきめた場合は混乱が起こると思うんですよ。あらかじめ検討しておく必要がある。そこで、上場規程とか基準を改正する、こう理解してよろしいですね。
  66. 加治木俊道

    ○加治木説明員 上場基準を取引所のほうで定めることになっておりますが、取引所のほうでそういう意見を持っておりますので、この法律が実施になるまでの間に結論を出しまして、適当な措置をとりたい、かように考えております。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、そういうことで混乱が起こらないような措置は十分とる、こういうことで理解します。いいですね。  次に、新株の場合の相場のことを、先ほど鍛冶さんが聞いておりましたが、この閉鎖会社の株券の相場というのはどうするのです。どうしてきめるのですか。
  68. 新谷正夫

    新谷政府委員 閉鎖会社の株式の株価の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、いろいろの要素を考えてきめられるべきものであろうと考えております。会社の資産状況が非常に悪い。あるいは営業成績が上向きになっておるとか下向きになっておるというふうなことも、もちろん考慮しなければなりませんし、また発行しておる株式がどの程度のものであるか。また、むろん閉鎖会社でございますから、そう極端な流通はいたしませんけれども、一般に取引されておる場合に、それがどの程度の価格で取引されておるかというふうな実情、そういったいろいろな要素を勘案いたしまして、株価というものはきめられるべきものであろう、このように考えておるわけでございます。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 だが、そこでいわゆる譲渡禁止に反対株主は、それを買い取ってくれ、そういうことで投下資本の回収については別に規定をつくりましたね。がたがた書いてあるけれども、計算すると四十四日経て初めて裁判所に行くわけですね。最終的には裁判所がきめるわけですね。その間に経済的な変動、経済情勢の変動、四十四日の間にいろいろあると思うのです。結局、裁判所がきめるのでしょうか。これは買い取ってくれ、こう言ったとき、そこに相場の起点があるのです。それからがたがたやって最小四十四日かかるのですね、あの規定を計算すると。そうしますと、経済の変動期、ことに昨今のような状態なら、普通上場株なら大いに変わる可能性があります。その場合は、判決当時にやるのですか。それも裁判所がきめるのですか。一体相場の立てる時期はいつですか。請求をしたときなのか。結局は判決を出したときなのか。
  70. 新谷正夫

    新谷政府委員 売り渡しの請求をいたしますと、そこで売買契約が成立いたします。したがいまして、その時点における時価を算定することになります。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 一方的行為として成立するが、相場といいますか、時価がきまらない。そこで何カ月か後に裁判所できめるけれども、ここに遡及する、そういうことですね。そうしますと、現在自由に流通しておる、こういうことで私は株を買った。ところがそれが禁止になった。譲渡禁止をした。このときには、少なくともいつでも売れる期待権といいますか、あるいは既存の権利とでもいいますか、既得権といいますか、こういうものとの衝突が起こりますが、これはどういたしますか。既得権ですね。
  72. 新谷正夫

    新谷政府委員 株式譲渡制限定めをいたしますにつきましては、非常に慎重に配慮をいたしておるわけでございまして、先ほどいろいろ御設問ございましたように、譲渡制限定款定めを設けますにつきましても、特別の要件定めますと同時に、その譲渡制限に関する株主総会決議反対いたします株主がもしありますなら、その株主は会社に対しまして、その自分の有する株式を、決議がなかったとすれば有すべかりし公正な価格をもって買い取れということを請求することができるようにいたしております。これは三百四十九条の新設規定であります。これによりまして反対株主の不利益を防止できるような措置を講じてありますので、特別に従来の株主の利益を害するということにはなるまいかと考えます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 証券会社へ持っていけばいつでも売れる、そういうことで貯蓄のつもりで買って持っている。それが禁止になった。あなたがおっしゃるようなことで、資本回収についての特別の配慮はなるほどなされております。しかし、最小四十四日以上かかるのでしょう。今日の裁判所の機能をもってすれば、それくらいかからなければ決定が出ないのだ。きょうあす手術しなければならない、あるいはこれがなくてはどうにもならぬというときにはどうします。そういうときにはどういう救済をします。四十四日かかって、それぞれの手続をふんで裁判所までいって、裁判所の決定を待っておったのでは手術をする人が死んでしまいますよ。どうしますか。
  74. 新谷正夫

    新谷政府委員 裁判所でこの価格を決定をいたしますのは、最終的な保障でございます。どうにも当事者の間で価格がきまらない場合に、最終的にきめようがないのでは困りますので、裁判所に持ち出してきめてもらう。そのきめる時点は、買い取りの請求のあった時点が売買の成立した時期でありますから、その時点の価格を裁判所できめることになります。しかし、すべて、裁判所の決定がありますまでの四十四日という長い時間放置されるのかといいますと、そうではございません。これは手続の過程におきまして、いろいろこまかいことを書いてございますけれども、その間にその売買価格が当事者の間で話し合いがつきますればそれでよろしいわけであります。すべてをこの手続にのせる必要はないわけであります。最終保障としてこういう必要があるというので、裁判できめるようにいたすわけであります。したがいまして、その間において取引価格がきまりますれば、四十四日もかからないで処理はつくわけでございます。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 話し合いできまることを問題にするのじゃないのですよ。少なくとも審議にあたっては、理論的可能性については追及しなければいけない。したがって、ここで問題にするのは四十四日以上かかるということを前提にしなければいけないのです。その場合に、きょうあすに手術しなければ死んでしまうというときに金が入る方法はありませんかということを聞いているのです。そういう規定を設けない限り、どこかでたとい半額でも出してやる、こういう規定を設けなければ——これから発行する、そうして株券に譲渡禁止の旨が記載してあるものはいいですが、現に流通しているものに対してはどうなるのです。それではあまりにいざの場合の間に合わぬでしょう。投下資本の回収についての規定がこまごまと書いてあるならば、なぜそこまで気をつけて考えなかったか。少なくとも額面の何ぼまでは会社のほうで一時立てかえ払いをするとか、そういうことの必要はないと思いますか。どうです。これはあくまでも自由に流通する、そのことの上に立って買っているのですよ。それが自分の意思とは違って禁止になるのですよ。普通なら二、三日で換金できる、あるいはその日に換金できる。ところが四十四日かかったときには、事と次第によっては人命に関する、こういうことがあり得るのですよ。それについてどう考えますか。話し合いがつけばいつでも売れる、それは当然です。契約の原則からいって、どんなものがあったってなくたって、公序良俗に反しない限りは、話し合いさえつけばすぐできますよ。そんなことは言っていない。四十四日間待つことができないときにはどうするのか、そういう緊急の場合についての配慮はなぜしなかったのか。
  76. 新谷正夫

    新谷政府委員 一般に第三者に株式譲渡しようといたしますときには、二百四条ノ二、二百四条ノ三の規定によって手続を踏んでまいるわけでございまして、配当自体というものは、一定の金額を供託して、さらにその手続を進めるということになるわけであります。また三百四十九条の場合には当該の発行会社に対して買い取るべき旨を請求するわけです。発行会社といたしましては、反対株主に対しては当然応ずべきものでございます。この場合には個人間の売買の場合と違いまして、発行会社として公正なる価格をもってこれは買い取るという法律関係が形成されますので、当然会社としてはそれを支払う義務が生ずるわけです。したがいまして、その債権を反対株主は取得するわけでございます。その債権を処分することによって資金調達の道も開かれるということも考えられるわけです。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 話し合いがつけばいつでも売買できるのですよ。つかないときには、そのことを予想していろいろと手続を書いておるのでしょう。いざというときに間に合わないのですよ。そういうときに限って安くたたかれる。これに対する緊急措置というものを考えていないかということなんです。考えてないでしょう。これは不親切とは思いませんか。それとも法務省はそういうことを考えずに商法を改正していいと考えているのですか。お金持ちがそろっているから、とらの子の証券を、株券を金にかえなくても子供の緊急な手術ができるとおっしゃるのですか。なぜそこまで配慮しなかったのか。少なくとも何項かにわたって投下資本の回収についてきめておるのでしょう。きめておりながら何です、これは。緊急の場合に間に合いますか。合わないでしょう。第三者の買い取りのときにも会社の承認が要るんでしょう。そんな手続きをしなくても、きょう持っていけばすぐ金にかわるということで、転々として譲渡しているのですよ。その権利、先ほどから言っておるような既得権あるいは期待権これを踏みにじっておるじゃないですか。そうじゃないですか。そうじゃないとおっしゃるならば理由を言ってください。法務大臣、政治的答弁を求めます。そういう規定を入れて出し直すかどうか。
  78. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 さっきから話し合いを、承っておるのでありますが、裁判所の決定を待つには四十四日もかかる、その間にどうでもこうでも金が要る場合どうするのだ、話し合いができればいいじゃないかというのが政府側の答弁でございます。まあ私は聞きながら、自分のほうが出しておるのに言うのはおかしいようですが、こういう問題で、どうにもこうにも金が要るというような状態になってきたら、私は当時者間において売買価格の話し合いができないことはないだろう、こういうふうに思うのです。あなたは、できないからどうするのだ、それを考えておかないのは不親切じゃないかと言われますが、そういう道があって、それがどうしてもきかないという場合には裁判所が、四十四日またかかるかしらぬが、裁判所で決定するほかないのだということをきめておるわけでございます。できれば、そういうふうな状態になっておるのはみなお困りに違いないのだから、早く話し合いをつけてもらうというのが主眼なんでありますから、話し合いをつけるべきものであって、その間につかなかったらどうするのだというようなことを言っておると、もうきりがない問題じゃないでしょうか。なかなかこれは、ごもっともだと思いますけれども、私はまあこういうふうなところじゃないか、こう思うのです。出す者として弁解がましくなりまするけれども、私はそういうふうに思います。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 話し合いがつくものならば、がたがた数項目にわたっての規定は要らぬのですよ。話し合いがつかないであろうという前提に立ってやっておるのでしょう。ならば、こんな場合はどうするかという緊急措置は考えるべきですよ。立法上おかしい。不親切です。いま大臣の答弁は、つくだろうと言う。つくだろうということであるならば、なぜ資金回収についてのごたごたした、そろばんでも持ってこなければはじけないようなものを書いてあるのか、そんなものは削除しなさい。つかないであろうということがわかる、あらかじめ予見できるからこそでしょう。そして緊急な措置が——それは十人に一人か百人に一人か知らぬ、しかし法は、政治は、そういう人を救うべきじゃないですか。この法案は不親切きわまる。出し直しを要求します。
  80. 新谷正夫

    新谷政府委員 話し合いがつかないであろうということを前提としてというお話でございますけれども、そうではございませんで、多くの場合はむしろ話し合いがつくだろうとわれわれは思っておるわけでございます。万一話し合いがつかない場合の最後の保障として、そういう裁判によってきめるという手続がどうしても必要でございますので、この規定を置いたわけでございまして、それにつきましては通知をしたり申し込みをしたりするのにかなりの猶予期間も置かなければなりません。最小限度ぎりぎりのところこれだけはやはりやりませんと、それぞれの立場の人の都合もございますので、うまくまいらないということもありますから、こういうふうに、それぞれの場合におきまして一定の期間を定めたわけであります。これは話がつかない場合の最後の保障という趣旨でございまして、多くの場合はこういう手続を踏まなくても話し合いはつき得るというふうに考えての措置でございます。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 立法にあたっては、理論的に可能な場合をすべて考えてやるのじゃないですか。なるほど十のうち九までは話がつくだろう。しかしあとの一人の救済のために二項から九項までですか、八つにわたっての保護規定というか、投下資本回収に関する規定があるわけです。そこまでいくのならば、もう一つそのあとで、そういう緊急事態については、たとえば会社は額面の何割とか何%まではあらかじめ前渡ししろとか、何かそういう必要はないと思いますか。あなたの答弁は、大体話がつくだろうと言うけれども、話し合いですべてがいくのなら法律は要らぬのだ、そうでしょう。商法とか民法とか、ことに民法の契約なんというのはそうじゃないですか。話し合いがつかない場合、このことについて理論的に可能な場合を並べておるのじゃないですか。法務省の民事局長、そんな頭でもって商法の改正を出したのですか。話し合いがつくであろうということであるならば、こんな二項から九項まで削りなさい。二項から九項までを置くのならば、なぜそこまでの配慮をしなかったのか、それを検討して出し直す、いずれかにしてください。
  82. 新谷正夫

    新谷政府委員 先ほどから申し上げておりますように、多くの場合には話し合いがつくであろう、これは最後の保障という趣旨でございます。いま田中委員が仰せになりましたが、代金を、仮払いのような形にしてでも先に払え、そういう措置はとれないかということでございますが、そういうことも不可能ではございませんけれども、逆に株券の提供が、今度は反対の義務として生ずるわけであります。代金だけ払ってもらって株券を提供しなかったらどうなるかというような問題も、法律問題としては考えなければなりません。そこでこの手続は、代金の供託と株券の供託をいたしまして、双方の売買が円滑に履行されるような措置を講じたわけでありまして、そのためにはどうしてもこれだけの立法が必要になってくるわけでございます。一方だけ認めて一方の確保をしないということも、これは片手落ちになると思います。双方の義務が完全に履行されるようにしますためには、こういったこまかい規定ではございますけれども、どうしてもこのような措置をとらざるを得なかった、こういうことでございまして、私どもこの規定が最後の保障のための規定だということで、これはこれなりに十分に意義があるものと考えておるわけであります。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 それが最後の保障になっていないから言っておるのだ。株券の提供、今度のこれでいくなら交付になるのか知らぬが、そういうことにしたら別なきめ方ができるでしょう。そんなことで私は答弁になると思わないです。すでにそういう自由に流通するものだという上に立って、いつでも管理できるんだ、こういう上に立って、取得した人に対する期待権あるいは既得権、これをどうするかということです。しかもこれが緊急事態の場合です。緊急事態についてはいろいろ法律だって規定があるでしょう。緊急事態なら人を殺したって——殺すということばは当たらぬかもしれないが、相手が死んだって刑法によって無罪でしょう。罰とならずでしょう。そういうことまで法律は考慮しておるのじゃないですか。なぜそこまで考慮しなかったのか、承服できません。委員長、取り扱いをきめてください。
  84. 大久保武雄

    大久保委員長 法務省からさらに御答弁願います。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 同じことを答弁したって答弁にならぬよ。そんなことは私は承服できませんよ。万分の一でもいい、千分の一でもいい、可能なことを考えてきめるのが法律じゃないか。そうじゃないのか。それとも、くろうとはそうだが、しろうとの私が言うのが間違っておるなら間違っておると言ってくれ。
  86. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 どうも同じことを繰り返すようでございますが、田中君と私の認識の差とでも申しますか、私はあえてむやみにこれにこだわって言っておるわけではありませんが、私は大体これでいいじゃないか、第三者的に見たっておかしくないような心持ちがするのです。というのは、話し合いができないからできないからとしきりにおっしゃいますが、私はそういうふうな苦しい状態になってきたときにおいて大体話し合いができるものだ、そういうふうな苦しい場合だからこそ話し合いができるのだと思うのであります。そしてそれも、話し合いがつかないならしかたないから裁判所の決定を待つんだ、その最後の救いのようなものでありまして、四十四日が長い長いとおっしゃるのは、私どももそれは短いとは思っておりません。しかしそこには最後の保障の手があるんだという段階でございます。その間に、私は大部分のものは片づいてしまうんだ、こういうふうに思うのでございまして、これで御了承願いたい、こう思うのでございます。それから先になりますと同じことを繰り返すだけになりますから、認識の差になってはなはだ残念でございます。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 これは認識の差じゃありません。世界観の違いとか思想の違いではありません。大体話し合いがつくであろうが、つかない場合を想定して、数項目にわたっての資金回収についてのこまやかな規定をしたのでしょう。それでは究極的に救済できない場合、結局裁判所において最後は保障する、しかしそれを待っておったら人命に関するようなこともあり得るのです。あるいは大学の入学金あたりでも、何日も納めなかったら、ばあになるのですよ。この株があるから、これを売って子供の大学の入学金にしようと考えておったものがこういうことになった場合はどうします。これは認識の差じゃありません。認識の差で片づけられるというのなら私は容赦はしません。あくまでも法律論です。あらゆる可能性を考えて手を打つのが立法じゃないんですか、いかがなんです。こんな法律を出して、これで万足れりと考えておるのですか。ともかくこれでは私は了承できないので、ひとつ委員長において取りはからいを願います。数項目の改正のうちで、まず一番最初の譲渡禁止の項目だけやっているのですから……。
  88. 大久保武雄

    大久保委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  89. 大久保武雄

    大久保委員長 速記を始めて。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの問題については、政府において検討の結果、本案処理までに明確な答弁をしてもらう、そういうことで委員長におまかせします。
  91. 大久保武雄

    大久保委員長 それではただいまの田中委員からの質問の点につきましては、さらに政府から詳細なる答弁を要請いたしておきます。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 それから譲渡禁止をやる場合は、定款でやる場合、株主総会における特別決議が必要なんですね。
  93. 新谷正夫

    新谷政府委員 さようでございます。
  94. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば東芝の株主総数は四十万人、八幡製鉄は四十万五千人といわれている。先ほどのあなたの答弁の不統一行使についての頭数の読み方については、私はその項のところで触れます。しかし総株主のおよそ過半数が主席するということが可能ですか。二十万人ですよ。どこでやるのです。国立競技場ででもやるのですか、それでも入りませんよ。どこで株主総会をやるのです。
  95. 新谷正夫

    新谷政府委員 譲渡制限に関します定款の変更につきましては、三百四十八条に規定を置くわけでございますが、これはただ三百四十三条の現在の特別決議の特例として新たに三百四十八条の規定を置いたわけでございまして、これは「総株主過半数ニシテ発行済株式ノ総数ノ三分ノ二以上ニ当ル多数ヲ以テ之ヲ為ス」こう定めてございます。したがいまして、総株主過半数の者の定足数をきめたものではございません。出席は要しません。現実にその者の出席を要するという意味じゃございません。代理権に基づいて議決権行使することもむろん可能でございます。要するに賛成者の数が半数以上であればよろしい、こういう趣旨でございます。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 そうなると、不統一行使のところで触れたいと思っておったところの答弁に関連するのです。あなたの答弁は、不統一行使のときに述べておったのは、いわゆる投票した中の過半数だ、こういう答弁でしょう。反対賛成とどっちが多いのか、賛成のほうが多ければ過半数だ、こう言っておったのです。この「総株主」というのはどういう意味なんです。
  97. 新谷正夫

    新谷政府委員 「総株主」といいますのは、株主名簿記載されております株主の総数でございます。その中で、賛成した者の頭数が半数以上であればそれでよろしい、こういう趣旨でございますので、ただいまの御質問のような問題はないと思います。
  98. 田中武夫

    田中(武)委員 おかしいですよ。三百四十八条の「総株主」ということばは、そんなに読めますか。「第三百四十三条ノ規定二拘ラズ」ということは構成要件ではない。これは了承しましょう。しかし「総株主」というのは、同じ商法の中で違った意味に使うことばが出てくるのですか。あなたの言っているように、株主名簿記載された者が「総株主」だったら、四十万ですよ。その中で出席して投票した者が過半数ということなら、そう書きなさいよ。これは、「総株主」というのは、そういう意味と違うのでしょう。
  99. 新谷正夫

    新谷政府委員 「総株主」は、株主名簿に書いてございます株主の総数でございます。その半数以上の者が賛成をすればよろしいという意味でございます。したがいまして、それが出席しなければならないという意味ではございません。要するに株主名簿に書いてございます総株主の半数以上の者が賛成議決権行使される結果になればそれでいい、こういう意味でございます。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 「総株主過半数ニシテ」続くのですね。「総株主過半数ニシテ」というのは、株主名簿に載っておる東芝にすれば四十万、その過半数と読むのですよ。あなたの言うように、投票した者の過半数だとは読めません。もしそうだとおっしゃるなら、法律の専門家を呼んできてもらって、その意見を聞きたい。なんだったら松田二郎さんでも呼んでもらいましょうか。参考人に専門家を呼んでもらって、そう読めるかどうかを伺いたいと思います。
  101. 新谷正夫

    新谷政府委員 これは「総株主過半数ニシテ発行済株式ノ総数ノ三分ノ二以上ニ当ル多数ヲ以テ之ヲ為ス」とございます。したがいまして、要件といたしましては、「発行済株式ノ総数ノ三分ノ二以上」、株式の数から見れば三分二以上の多数が必要である。同時に株主頭数から見た場合には、その過半数の者が多数として賛成すればそれでいい、こういう意味でございます。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 いまあなたの言った説明の「その」とは何ですか。
  103. 新谷正夫

    新谷政府委員 総株主の数のその多数でございます。総株主の数の中で賛成者のほうがそれ以外の者より多ければ、それが当然過半数になるわけであります。したがいまして、より多くの者が賛成議決権行使すれば、総株主過半数ということになるわけでございます。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 それは違います。「総株主過半数ニシテ発行済株式ノ総数ノ三分ノ二」というこの「三分ノ二」は、「発行済株式」にかかるのです。そうしたら、「総株主」というのは日本語では独立して読むのですよ。それをあなたが言うように、総株主のうちで出席した者の、言いかえれば投票した者のうちの過半数だ、こう読むということになれば、私は納得できません。
  105. 新谷正夫

    新谷政府委員 そう申し上げておるのではございません。総株主過半数の者が賛成をすればよろしい。総株主過半数が出席して、そのうちの云々というのじゃございません。総株主の数というものはきまっております。その半数以上の者が賛成議決権行使すればよろしい、こう申し上げておるのでありまして、半数以上の者が出席しなければならないという意味ではございません。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 だから構成要件ではない、もう一つの特別決議のところとここが違うということはわかる。しかし「総株主」ということばは同じ意味に使ってあるのですよ。こういう条文で私は民事局長のおっしゃるようには読めません。これは法制局あるいは商法のだれか専門の人を読んできてもらいましょう。そうしてその人の意見を聞きます。そうは読めません。それであるなら、同じ商法の中に「総株主」ということが二重の意味に出てきます。用語の統一ができません。松田二郎さんにでも来てもらいましょう。そうすると、あなたの社員権説に債権説で対立しておる学者ですから。委員長、どうしてもらえますか。私にはそうは読めません。法務省の専門家にはそう読めても、一般の人にも読めるようにしなければいかぬでしょう。だから法解釈論からいってそう読めるかどうか、解釈論についての権威者を呼んでもらいましょう。
  107. 新谷正夫

    新谷政府委員 繰り返しになりますけれども、「総株主過半数ニシテ発行済株式ノ総数ノ三分ノ二以上ニ当ル多数」と申しますのは、「総株主」と申しますのが株主名簿に書いてあります株主の数でございます。その中の半数以上の者の多数で議決されることが一つ要件でございまして、加えまして、発行済み株式の数から申しますれば、その株数の三分の二以上の多数も要する、この二つの要件が必要でございます。総株主の数は名簿によってきまっております。その過半数賛成が必要であるということが第一の要件であります。さらに加えまして「発行済株式ノ総数ノ三分ノ二以上」の多数が必要である、こういう意味でございます。
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 その場合は委任を含む、これはわかります。「総株主ノ」というところから「過半数」にかかってくるのが出席を要求した規定でないことはわかります。たぶんそういうことであるので、商法のいわゆるいままでの特別決議と違った書き方をしていると思うのです。それはわかるのだが、たとえば東芝四十万のうち三十九万五千の者が委任状を出した、そうするとあとの五千人によってやるわけでしょう。その場合に、委任を受けた者が、委任状はそれぞれ一人として勘定するわけですか。
  109. 新谷正夫

    新谷政府委員 四十万人の株主のうち三十九万が委任状を出して議決権行使いたしますと、それは「総株主過半数」に当たります。四十万のうちの三十九万でございますから。それはいまの「総株主過半数」という要件を満たすわけでございます。極端な場合を申しますと、一人の者が代理人になって議決権行使しましても同じでございまして、要するに総株主の数について考えますと、過半数以上の者が賛成議決権行使しておるということであればよろしいわけでございます。
  110. 田中武夫

    田中(武)委員 これは委任を含めた場合に、その委任も、たとえば一人委任する場合もある。しかし実際こういうことであるなら形式的に流れてしまって、ほんとうの意味の——少なくともこれは特別決議、現在までの観念の特別決議とは違うけれども、しかし過半数以上の、いわゆる普通の議決以上の要件規定しておるのでしょう。少なくともこれは普通の総会よりか重く見ておる規定でしょう。そうした場合にいまおっしゃるようなことだったら、ほんとうに形式的に終わるのじゃないですか。実質的に意味のある採決ができますか。
  111. 新谷正夫

    新谷政府委員 この規定を置きますことによりまして株主総会決議が形式的なものになるとは考えていないわけでございます。株主総会決議が形式的なものじゃないかという見方も確かにあるわけでございますけれども、従来の三百四十三条の規定による特別決議と今回の三百四十八条の特別決議、これが株主総会決議というものを特別に形式的なものになる原因であるというふうにはわれわれは考えておらないわけであります。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 この「第三百四十三条ノ規定ニ拘ラズ」ということは、それはいま言っておるような気持ちはわかるのですよ。三百四十三条の特別決議には過半数の出席、そこまで要求することはいかぬという……。しかしこの規定は一般決議よりか重く見ておるのでしょう。そうするなら、もっと慎重な態度が望ましいのじゃないですか。
  113. 新谷正夫

    新谷政府委員 三百四十三条の特別決議よりも三百四十八条のほうを重く見ておるということはお説のとおりでございます。三百四十三条におきましては「発行済株式ノ総数ノ過半数ニ当ル株式ヲ有スル株主出席シ」、こうございます。したがいまして、この場合にも株主の出席の定足数が定められておるわけでございます。今回の三百四十八条の場合にはその定足数ではございません。逆に頭数を見た場合に、総株主過半数の者が賛成をすればよろしい、こういうふうにいったわけであります。従来の三百四十三条の「発行済株式ノ総数ノ過半数ニ当ル株式ヲ有スル株主」になりますと、これは非常に大きな大株主がおりますときには、これは株式頭数から見ますと、ごくわずかでも発行済み株式総数過半数に当たる場合がございますが、それでは小さな株主と申しますか、一般の株主の意向を反映しなくともこの特別決議は可能になるわけでありますので、それよりももっと慎重にやりますためには、やはり株主の大小を問わず株主の多数の者がこれに賛成しなければいけないという形をとったわけでございます。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 いわゆる大衆株主といいますか、これはそうなると あなたの最初のなにが違ってくるのですが、社員権取得ということでなくて、やはり株によって貯蓄するとか、あるいはそれによって投機的な気持ちもあるでしょう。そこで一般の業務についてはあまり関心を持たない。しかし先ほど来私が言っておるように、譲渡禁止ということなら、自分の持っているわずかの株がどうなるかということに関連するわけです。だから特別な規定といいますか、特別決議と普通決議とのまん中にくるような規定を置いたのだと思う。しかしこの場合、やってみないとわからぬですが、自分の持っている株が流通禁止だ、自由に流通できないということなら、どっと委任をせずに出てくるという可能性もある。だから理論的可能性からいえば、二十万寄るということを考えなければならない、そうでしょう。東芝の場合は二十万人の人が寄ることもあるのでしょう。平生のときは、東芝の運営にはわれ関せず、ただ配当をもらう、あるいは値が出たときに売る、これでいいんだ。しかし流通禁止でしょう、その場合には自分の持っているのがどうなるか、先ほど来私が言っているように、既得権の侵害とでもいいますか、既得権に関連があるのですから、私も出る私も出るというという可能性はあるのです。その場合のことを考慮に入れてもなおこの規定で十分でしょうか。
  115. 新谷正夫

    新谷政府委員 株主の利害に非常に影響することでございますので、この譲渡制限定款定めをすることにつきましては、確かに仰せのように株主としては非常に重大な関心を持っていることと思います。しかし現在の株式会社総会の実情を見ますと、たとえば合併の場合でありましても、あるいはその他の重要な定款の変更の場合にも、ほとんど大部分は委任によって代理行使をしておるのが実態でございます。この譲渡制限の場合に限って株主がみずから出席することになりはしないかという御懸念でございますけれども、そこまでは私ども考えていないわけでありまして、代理人によって議決権行使いたします際にも、その議案について賛成反対かということを明示して委任いたすわけでありますから、それによって株主の意向が十分反映し得るわけであります。ことに全国に散在しております大きな会社の株主が一党に集まるということは事実上不可能なことでございましょうし、との規定を置くことによって、こぞってそれに出席するようになるというふうには考えられないのであります。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 たまたま会社合併とか営業譲渡の話が出ましたが、商法は二百四十五条ノ二とか四百八条ノ三で、その合併あるいは営業譲渡反対の者には買い取り請求権を認めておる。あなたの言うように、あまり関心を持たないだろうということなら、こんな規定は要らないでしょう。しかし、あり得る可能性の上に立ってこんな規定も置いておるのでしょう。だから先ほどから私の言っているこの問題についても、あり得る可能性というものを考えなければならない、おそらくやそうであろう。いままでもそうであった。商法はすでになぜ合併とか営業譲渡反対者の株式買い取り請求権を二百四十五条ノ二とか四百八条ノ三で認めておるのか、やはり可能性について考えているのでしょう。そうじゃないですか。
  117. 新谷正夫

    新谷政府委員 合併とか営業譲渡反対する株主の買い取り請求権を認めたということと、株主総会株主が出席するかしないかということは、私は別問題だと思うのでございます。買い取り請求を認めたから現実の出席が少なくなるというものではございません。買い取り請求権を認めたのは、あくまでも反対株主の利益を擁護するためにその措置をとったわけでございます。株主総会に出席するかしないかという問題とはこれは別問題だと私は考えます。
  118. 田中武夫

    田中(武)委員 私の言っているのは、あり得る可能性についてこれは規定しておるのでしょう。それは譲渡禁止の場合にも、さあたいへんだというので押しかける可能性もあるわけだ。あらゆる可能性について考えながら立案していくのが立法じゃないですか。しかも先ほど来私が申しておるように、この三百四十八条の字句についてはまだ疑問が残ります。しかしまたあらためてこの前のネックになっておる問題等も質問する機会がありますから、そのときに譲りまして、次にまいりたいと思います。  次は、無額面株式の転換について規定を書いております。現在無額面の株券を発行しておるのは三社でしょう。三菱倉庫と住友金属と富士観光だけでしょう。ほかにも小さいところがあるのかどうか知りませんが、そのような、三社かその程度のものしか発行していないことについて、特にいまこういう規定を置くということの根拠、置かねばならないという緊急性、及びこの規定を置くことによって将来どのようになるのかという見通しをお伺いいたします。
  119. 新谷正夫

    新谷政府委員 無額面株式を発行しております会社は、仰せのように確かに現在のところ三社でございます。したがいまして会社の数から申しますれば確かにこれは少ないのでありまして、その少ない三社のためにこの法律の改正をするのじゃないかという御疑問、確かにおありだろうと思います。しかし、これは資料を差し上げてございますが、三社の株式は六億株以上におそらくなるだろうと思います。したがいましてその株主の数も非常に多いわけでありまして、こういった株主が額面株式と無額面株式の両者を併有するという現状になっております。ところが、こまかい株式を併合して株券の数を少なくしていきたいというふうな場合にも、粗面、無額面の両者が出ておりましたのでは、これはできないわけでございます。したがいまして株主の立場からしましても、これを双方変更できる規定を設けることが望ましいわけであります。また会社の側からいたしましても、両方の株券を発行いたしておりますと、株式事務の取り扱い上非常に複雑なことになってまいるわけであります。したがいましてこの無額面株式がいい悪いという問題は別といたしまして、現在この両者が発行されております限りにおいては、このどちらかに変更できる道を開くということは、株主のためにも、会社のためにも有利ではあるまいかというところにこの改正の根拠があるわけであります。これを改正いたしました結果、無額面株式を発行する会社が多くなるかどうかという見通しにつきましては、これは確たることは申し上げられませんけれども、こういうふうにしたほうがいいのであるということで改正いたすのでございますから、もしこの改正が実現いたしますならば、さらに無額面株式の発行ということもこの三社以外にも起きてくるだろう、こういうふうに考えております。
  120. 田中武夫

    田中(武)委員 その転換は記名、無記名、いずれでもいいですね。
  121. 新谷正夫

    新谷政府委員 差しつかえございません。
  122. 田中武夫

    田中(武)委員 この一つのねらいは、あなたのいまの答弁の中にも若干出ておりましたが、いわゆる膨大な数にのぼる株券といいますか、株数といいますか、これを若干整理というか、少なくしていこうというのが一つのねらいだとするならば、たとえば現在五十円だというのを、戦前とはだいぶん貨幣価置が違っておりますね、したがってその金額の引き上げとか、あるいは現在五百株、千株が出ています。それをもっと大きな、たとえば五千株とか一万株というものをつくる。そうなると、今度は、持っているものの一部を売り払いたいというようなときにも支障がくるだろうと思います。しかし無額面を額面式に切りかえるということが、そういった膨大な数を少なくするということに理由があるとするならば、額面額の引き上げあるいは株券の大型化ということも考えられると思うのですが、むしろそのほうが急務じゃないか、いかがでしょう。
  123. 新谷正夫

    新谷政府委員 その点は確かに田中委員の仰せのとおりだと思います。商法の二十五年の改正以前におきましては、五十円が単位になっておったわけであります。改正によりまして額面五百円ということになったわけでございます。しかし従来の五十円株を強制的に五百円株あるいはそれ以上の大型の株に切りかえますことは、実際問題としてこれは非常に困難が伴うわけであります。ことに少数の端株のようなものを持っております人の権利の救済の道が必ずしも講じ得ないということ、さらに発行会社の側からいたしますと、この株券の整理ということは非常に経費のかかる問題のようでございます。そういうことで、徐々には株券を併合しまして大型の株券にするような方向に動いておるように思うのでございますけれども、一挙にこれを法律的な措置によって、一株券を百株券、千株分にまとめてしまうということは、実際問題としてなかなかむずかしいことであろうと思います。これは実際界の実情も十分考えながら、今後の問題として検討に値する問題ではございますけれども、いま直ちにこれを実施できるかという問題につきましては、非常に大きな問題でございますので、さらに慎重に検討いたしたいと思っております。
  124. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣いいですか、私は当初に、今回の改正は二十五年の改正から言うなら、百八十度の転換をするところの改正だということを申し上げました。そこでいまの転換の問題等もあわせて考えた場合に、なるほどわずかな株主を保護する必要はある。しかしいわゆる安定株主といいますか、こういう人もおるわけです。したがって希望によって——強制的じゃない、希望によって五千株、一万株を発行できる、こういうようにして、むしろ二十五年改正以前に戻って、株数を少なくするというか、株券を少なくする。しかしそれは強制すると、先ほど来私言っておるような零細な人に関係があるから、そうはいきません。しかし希望によって大型化の発行、こういうことは考えていいのじゃないですか。と同時にそういうものに対しては二十五年改正前に戻って届け出印鑑によるというような制度をとってもいいじゃないか。こういう点については少なくとも無額面から額面式にかえる、これは自由の意思を尊重しておると思うのです。ならば、そういうことについて、株券の少数化、安定株主のためにといいますか、希望によってそういうことができ得るという道を開いてもいいのではないか。そういう届け出のあったものについては、二十五年改正以前に戻って、いわゆる交付でいいということを制限する、こういう考え方は成り立つと思うのです。これは立法論として、政治論として、大臣いかがでしょう。
  125. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 その問題は確かに一つ意見だと思います。私もそれに似たようなことも考えたのでありますが、法制審議会におきましてもその問題は取り上げられて考究されたようでございますが、結局的には結論に到達することができなかったというのが実際問題というようなわけで、これは引き続き研究すべき問題であると私は思っております。ただ今回のこういう問題があるが、ちょうどこの機会にやったらどうかというのにはちょっと間に合わなかったというか、今度は取り上げることができなかった。やがてはそういう問題も取り上げるような行き方に持っていくということを考えなければならぬというふうに思っております。
  126. 田中武夫

    田中(武)委員 何もいま直ちにと言っておるわけではないのですが、私はむしろそのほうが、無額面を額面だけに転換するのと同様必要じゃなかろうかと思うので、先ほど私がお預けいたしましたものが、かりに修正でもするならば、そのときに考えることにいたしましょう。  次に株式の裏書き譲渡制の廃止です。いままでは裏書きまたは譲渡証書、これでやっておったのが、今度は交付でもって足る、こういうことになるのですが、これは流通面からいけばまことに便利です。便利ですが、株券、現物の引き渡しによって——当事者間はわかりますが、第三者に対する対抗要件もあるのだということなら、動産と同じように一応考えるわけですね、そうですね、そうしたら今度会社に対する対抗要件はどういうことになりますか。いわゆる当事者間においては株券の交付をもって売買は成立する。しかし第三者対抗要件としてはどういうことになるか。会社に対してはどうなるのか。
  127. 新谷正夫

    新谷政府委員 譲渡方式を改めるのみでございまして、交付によって株式譲渡することにいたしましても、株主名簿記載の変更は必要でございます。会社に対抗いたしますには、もちろんその株券を提示いたしまして株主名簿の変更をいたす、これがございませんと会社には対抗できない、したがって第三者に対しても、もちろん株主としての主張ができない、このように思います。
  128. 田中武夫

    田中(武)委員 それはあくまでも当者事間ですね。売り主と買い主の間において、交付をもって売買の要件が満たされる、こう理解していいですね。
  129. 新谷正夫

    新谷政府委員 売買の当事者の間で株券の交付が行なわれるわけでございまして、その株券の交付というのは、もちろん売買の当事者間の問題でございます。
  130. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、それは無記名も記名式も一緒ですね。ということは、むしろこの交付方式ということで記名債券の無記名化といいますか、そういうようなことが考えられると思うのですね。さらに、一番最初私の投げかけた議論になりますが、交付をもって足るというこの考え方は、社員権取得、こういうあなたの最初置いた大前提としてどうです。これはやはり一つの債権を表徴するところの株券だ、こういうように理解しない限り、こういう規定は出てこないのじゃないですか。
  131. 新谷正夫

    新谷政府委員 債権化ということとは別といたしまして、株式というものが、現在の株式会社の特性といたしまして、転々譲渡されるという一つの特異性を持っておるわけでございます。そこで、株式譲渡いたします際に、株券の譲渡、言いかえれば株券の裏書き譲渡という形によって現在株式譲渡されておる実態があるわけでありますけれども、これが現行法のもとにおきましては、書きということがあまり意味がないというふうな実態になっておりますので、そこの譲渡の方式だけを今回改めようという趣旨でございます。特に株式の性格にこれによって変更を生ずるというふうには考えておりません。
  132. 田中武夫

    田中(武)委員 会社に対する、あるいは第三者に対する対抗要件はいままでどおり。そうした場合、株券を紛失した、あるいは盗難を受けた、こういうことが会社へ届け出られておる場合、現実に株券を提示した場合に会社はどのような扱いをいたしますか、あるいは会社はどのような扱いをすればいいのですか。
  133. 新谷正夫

    新谷政府委員 これは現行法におきましても同じ問題があるわけでございます。裏書きの場合におきましても、裏書きが偽造だということで会社に届け出いたしますと、会社はその株券を提示されて名義書きかえを求められました場合に、十分な慎重な調査をいたしまして、それに応じておるようでございます。その点は今回の場合も同じでございます。ただ裏書きがないというだけのことでございます。したがって、もしも盗まれたものが会社に届け出がありますと、会社としましては、その株券について名義書きかえの請求がございますと、従来と同じように調査をいたして、それに応ずるかどうかということをきめていくことになろうと思います。
  134. 田中武夫

    田中(武)委員 裏書きの場合の偽造もあるし、飛び越える場合もあると思うのです。少なくとも株券の動いたあとは探ることはできるのですね、裏書き譲渡の場合。ところがこの場合は、現実に持っている人が、法の上ではまず所有者であるとみなされるのでしょう。そこに混乱は起こりませんか。  それからもう一つ、いわゆる失念株ですね。いままでだったら、そういうことでやらなかったので、かりに前の株主に配当がいったときでも、わかっているから調整できるわけですね。この失念株のような場合の取り扱いはどうしますか。株主名簿の書きかえのときについうっかりしておった、この失念株の配当とかその他の権利、これはどうしますか。
  135. 新谷正夫

    新谷政府委員 株主名簿記載をしなかったために配当ができなかったというふうなことがあるかないかという問題でございます。これは、この譲渡方式を変更いたしましても、いたさなくても、やはり同じ問題があり得るわけであります。特に譲渡方式の問題ではなくて、名簿に記載してそれを株主として扱ったか扱わなかったかという問題であると思うのでございます。  それで、問題を先にさかのぼりますが、従来の場合であれば、株式が転々とした形跡を追及できる、しかるに今回の改正では所持しておる者が株主と推定されるのだから、その中間の過程の追跡ができなくなるのじゃないか、こういう御懸念でございます。しかし、現行法の裏書き制度のもとにおきましても、これは白地裏書きというのが非常にたくさん行なわれておりまして、一度判だけ押せば、それが転々流通しておるのが実態であります。したがいまして、その間何びとの手を経て最終の名義書きかえを請求した者の手に渡ったかということは、これはわかりません。それと同じことになるわけでありまして、特段に現行法の裏書き制度のもとにおける大多数の例と異なる結果になるものではないというふうに私は考えております。
  136. 田中武夫

    田中(武)委員 失念株の場合も同じことになりますかね。これは株主名簿書きかえの停止期間ですね、これはあとで転換社債の場合は、その閉鎖期間中でもというわけだけれども株主の場合はやっぱり停止期間はあるのでしょう。そうすると、この失念株が起こるわけですね。しかも、その推定というか、裁判になった場合の挙証責任の所在が違ってくるのじゃないですか、裏書き制度の場合と交付をもって足るという場合。少なくとも紛失したとか盗まれたとかということについては、まず第一次的に株主であると認定せられるのは、現実にその株を持っておる人なんですね。それがそうでないということをやる場合に、挙証責任のあり方というようなことが違ってきやしませんか。
  137. 新谷正夫

    新谷政府委員 挙証責任の問題になりますと、株券を所持しておる、占有しておるということを立証しなければなりません。したがって、現実に自分が株式を取得したという者が、一応立証するわけでございます。しかし、二百五条の二項の規定によりまして、株券の占有者はこれを適法の所持人と推定する、資格授与的効力ですね、これを規定しておりますので、一応、持っておれば権利者という推定は受けるわけであります。発行会社のほうにいたしますれば、それがそうでないということを確認できますれば、そちらのほうからの反証をあげてそれをくつがえすことは、むろん可能でございます。しかし、所持しておるということによって適法の所持人という推定は受けるわけであります。それから、裏高きの場合は、裏響きによって所持しておる、裏書きを受けたという、その裏書きの連続がございますれば、これによって適法の所持人と推定されるわけであります。これも所持と裏書きというものが形の上で変わるだけでございまして、資格授与的効力がどうなるかという問題は、よりどころが裏書きから所持というものに変わったというところの差異だけでございます。
  138. 田中武夫

    田中(武)委員 失念株については……。
  139. 新谷正夫

    新谷政府委員 株主名簿の閉鎖期間内に譲渡いたしますと、その名義書きかえは、むろんできないわけであります。これはこの法律改正後も同じでございまして、現行法と変わりございません。そこで、その間に譲渡いたしますと、名簿に載っておりますのは従前の株主でございます。従前の株主に利益配当の手続がとられまして、従前の株主に配当金が渡されるわけであります。しかしその従前の株主と新しい株主との関係におきましては、これは新しい株主がこの株式を取得しておるわけでございます。新しい取得者が従前の株主に対してそれの返還の請求ができる、こういうふうに考えます。
  140. 田中武夫

    田中(武)委員 裏書きの場合は、転々とした場合そのあとが追求できる。実際は白紙裏書きというか、それで回っておるといいますが、しかし交付で足るというときに失念株の場合と同じというふうに言えますか。その裏書きのあとをたどって調査ができると思うのですね。ところが、交付で足るという場合には、途中はわからないのですね。そして転々と回ったときに、いわゆる配当金の決定はいつか。いわゆる株主として会社に配当金を請求する権利はいつ発生するのですか。
  141. 新谷正夫

    新谷政府委員 配当金を支給するのはいつの時点における株主かということでございますが、これは株主総会で配当決議をいたします、その時点において株主名簿記載されておる株主ということになると思っております。
  142. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、そのときにはもう所有者は変わっているわけですね。しかもそれが転々としておる場合ですね。そこではたして売り渡し人と買い取り人の間の権利の調整はいままでと同じでしょうか。
  143. 新谷正夫

    新谷政府委員 これは同じだろうと思います。従来の株主名簿記載されております者が配当金を受けるわけでございますが、その間に転々いたします際には、あるいはその前の株主から配当金の交付を受ける場合もございましょうし、またそれを考慮に入れて譲渡代金をきめるというふうな場合もあり得ると思いますので、それはその間の当事者の間でおのずからわかることでございます。したがって、特別にこの譲渡方式を変えることによって、そういった転々譲渡の場合に混乱が生ずるというふうには考えられないと思います。
  144. 田中武夫

    田中(武)委員 会社に対して配当金を請求する権利の発生は、株券を手にしたときなのか、株主総会において今期幾ら幾ら配当するということがきまったときなのか。それは、具体的債権の内容の確定はそのときでしょう。しかし会社に対して配当金を請求する権利というのは、株券の交付によって取得をしたときじゃないのですか。
  145. 新谷正夫

    新谷政府委員 当事者間におきましては、譲渡契約に基づいて株券を交付いたしますと、新しい取得者がそこでできるわけであります。しかし、これは株主名簿にその名義の変更をいたしませんと、会社に対して株主という主張はできません。したがいまして、従来株主名簿記載されております者が、配当決議の時点において配当請求権を取得するわけであります。そのあとで株式が転々いたしました場合には、これはその当事者の問題として解決すべきものであろうと思います。
  146. 田中武夫

    田中(武)委員 私が株を紛失したか、盗難にあった。Aに渡った。そして株主総会のときはBが持っておった。そのときの名簿は私であった。配当金が私に来た場合、Bは私に請求するのですね。その場合、私はこれは失ったりとられたものだから返す必要はない、こう言った場合どうなります。いわゆるとった者あるいは拾った者そのものでなく、それから第三者に渡った場合、それはどうなりますか。
  147. 新谷正夫

    新谷政府委員 株主総会決議によりまして配当決議が行なわれ、その前後にわたりまして株券が盗まれて善意取得者が出た、こういう場合でございましょうが、善意の取得者がこれを取得いたしますと、善意取得でございますから、実質的にはその善意取得者のほうに株式が移るわけでございます。ただこれが株主名簿上は名義の変更をいたしておりませんので、従前の株主が依然として株主名簿上は株主である。したがいまして、利益の配当は、一応会社といたしましては従前の株主に配当手続をいたしまして、従前の株主に配当金が渡るわけであります。しかし実質的に善意取得者が出ておりますと、それは当事者間で善意取得者に返還する、こういう法律関係になると思います。これは盗まれた場合に限りませんで、たとえば従前の株主が自分の意思によって第三者に譲渡した場合をお考えになっても同じだろうと思います。その場合には新しく取得した者が実質上の株主でございます。したがいまして、その者に配当金は返還する、こういうことにならざるを得ないと思います。
  148. 田中武夫

    田中(武)委員 動産の場合、これは落としたりなにしても、現実に引き渡しによって第三者の対抗要件ができる。この場合あなたは当事者間だけの要件だと言ったですね。そうでしょう。そうしたら、私は、甲は落とし、とられた。Aは拾った、とった、それがBに渡ったときに、この交付要件というのはAB間において有効なんでしょう。動産の場合はそうでなくて、善意の第三者に対する対抗要件を取得するわけですよ。そしてそれが公開の市場で売られたときには代金を支払えとかなんとかいう規定がありますね。だからこの交付というのは動産の現実の受け渡しと違うのか違わないのか。あなたは違うという答えだった。そうした場合には甲が落とした、とられた。Bが拾った、とった。Cに渡った。この場合に違ってくるのですよ。そうでしょう。同じでしょうか。甲によって売買が成立するという場合、動産の場合と同じですか。違うでしょう。
  149. 新谷正夫

    新谷政府委員 ただいまの株券を盗まれあるいは紛失した場合の善意取得の問題、これは株券を交付するという行為は喪失者にはございません。ございませんが、善意の第三者が、現実に株券を持っておる者の占有を信頼してこれが株券を取得するという場合の保護の規定でございます。これは動産の占有の場合と同じでございまして、もとの株主からの株券の交付という行為はございませんけれども、むしろこの株券の特殊性にかんがみて、特に動的安全を保護するという考え方から、民法の動産の善意取得以上の保護を与えるというのが商法規定なんでございます。したがって、交付行為がそこにはございませんけれども、拾った者から善意で取得した者につきましては、これを保護するという特別の規定によって善意取得者が保護されることになるわけでございます。
  150. 田中武夫

    田中(武)委員 それならばあなたの最初の答弁と違うじゃないですか。私がまず、交付によって第三者対抗要件ができるのか、こう聞いたときには、あなたは当事者間だ、こう言ったのですね。動産は、もちろんいろいろな規定がありますけれども、この現実の事態をもってすれば第三者の対抗要件ができるのですよ。あなたの言っているのは、会社に対しての対抗要件株主名簿というものに書きかえなければならない。しかし、会社以外の第三者に対しては動産と同じじゃないですか。あなたの答弁は、あるいはそれ以上に保護されておる、こういうことでしょう。それなら、当事者間で交付によって売買が成立する、こういうお答えは間違っていましたね。私の言っているのは、動産の現実の受け渡しと株券の交付と、どう違うのですか、こう言っておるのですよ。
  151. 新谷正夫

    新谷政府委員 一般の動産の場合におきましては、動産の売買契約という基本契約がございまして、それに伴って占有を移すということが対抗要件になるわけでございます。この株券の場合には、譲渡契約はむろんでございます。譲渡契約はございますが、従来の裏書きという形式を踏まないで株券を交付するということを、一つ要件にいたしたわけでございます。そういう意味で、その当事者間に株式譲渡する方式としまして、株券の交付を必要とする、こういうことにいたしておるわけであります。そういう意味で、一般の動産の占有を移して対抗要件を与えるという意味ではございません。これは従来の裏書き譲渡という方式を、株券の交付という形に変えるという意味でございます。
  152. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、会社に対する対抗要件株主名簿記載。しかし、会社を除く第三者に対しては、交付によって対抗要件ができるんじゃないですか。当事者間だけで交付によって成立するんだ、こういうことであるなら、Aが拾い、とって、B、Cに渡ったときに、所有者甲とBあるいはCとの関係においては、違ったことになりますよ。
  153. 新谷正夫

    新谷政府委員 当事者間の譲渡におきましては、株券の交付ということが一つ要件でございます。会社に対する関係におきましては、株主名簿を書きかえることが必要でございます。書きかえて初めてその取得者が、株主に名実ともになるわけでございます。そういたしませんと、会社に対して株主だということは言えないわけでございます。ところが、一般の第三者に対して自分は株主だと主張しますのは、やはり会社に対して株主であるということを主張できるものでなくてはいけません。そういう意味で、名義の書きかえをいたしませんと、第三者に向かっても株主であるということが主張できないわけでございます。
  154. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、交付でAからBにいくでしょう。それからCにいくでしょう。その次にDといく。まだ株主名簿を書きかえていないんですよ。そうしたら、第三者に対する対抗要件を持たないものを持っていくわけですね。それから、C、D、Eとずっと渡ったときに、一々そういうことになるんですか。それは違うでしょう。交付をもって足るということとは違うでしょう。
  155. 新谷正夫

    新谷政府委員 甲、乙、丙と株券が転々されました場合に、株券の交付という行為が伴うわけでございますが、その交付が即第三者対抗要件であるというふうには言えないわけであります。先ほど申し上げましたように、株主名簿記載いたしませんと、それは株主に名実ともになることはできません。権利を取得したということを第三者に向かって主張する、自分が株主であるということを主張するにも、株主名簿の書きかえがなければいけません。こういうことを申し上げたわけであります。
  156. 田中武夫

    田中(武)委員 Aの名義であるのを、BがAから交付を受けた、しかし株主名簿は変わっていないんですよ。そうすると、Cに対して、自分が正当なる株主であるという主張はできないんですか。これは要件を備えてないですね。そうすると、株主名簿が善きかえになれば価値ある所有者ですか。そうなるとまた変わってきますよ。  委員長、もう一時半過ぎましたので、どうでしょう、休憩しますか。そうして、その間にもっと勉強してもらいましょう。
  157. 大久保武雄

    大久保委員長 速記をやめて。   〔速記中止〕
  158. 大久保武雄

    大久保委員長 速記を始めて。  本会議散会後委員会を再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時三十六分休憩      ————◇—————    午後四時二分開議
  159. 大久保武雄

    大久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  商法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。鍛冶良作君。
  160. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほど質問いたしましたのに引き続いて、三百四十八条ですが、不統一行使をやった場合に、先ほど来言っているように、不統一行使をする人は一人と数えられますね。そこであとは一人を分割して、そうでない株主数できまる、こうおっしゃったが、一体不統一行使というと現実どういうことでやるのですか。かりに千株持っている株主が出たといたします。半分ずつ不統一行使をしようと思ったら、実際にいうとどういう手続があるのですか。
  161. 新谷正夫

    新谷政府委員 不統一行使をしようといたしますときには、三日前に自分は信託上の、名義上の株主であるから不統一行使をいたしますということを会社に通知いたします。総会の席で現実にどのようにこれが行なわれるかと申しますと、千株持っておる株主が、五百株については議案に対して賛成、五百株については反対、こういう議決権行使をやるわけでございます。
  162. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その五百株というのはただ口で言うだけですか、それとも何か——具体的な方法をお聞きしたい。
  163. 新谷正夫

    新谷政府委員 議決権行使の具体的な事情、手続でございますが、総会の席上におきまして、自分は千株持っておる、千株の株主であるが、そのうちの五百株について賛成ということをまずやります。それから反対議決権行使する者はどうなっておるかという場合に、やはり残りの五百株につきまして反対議決権行使する、こういうことでございます。ですから、五百株は賛成という議決権行使をまずやりまして、それから残りにつきましては反対、こういう議決権行使になるわけでございます。
  164. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは前にも聞いたのですが、あなにもう一ぺんお聞きしますが、どうしてそういうことをしなければならぬことになったのですか。まずそれだけ聞きましょう。
  165. 新谷正夫

    新谷政府委員 最も顕著な例といたしましては、国内におきましては投資信託がございます。この場合に証券会社が信託会社あるいは銀行に金を寄託しましてこれによって株の売買が行なわれるわけであります。売買しました株の株主は、その銀行が株主になるわけでございます。銀行が株主になります。したがいまして、株主名簿の上にもその銀行が株主として登録されております。ところが寄託いたしました証券会社は、甲、乙、丙というふうに三つの会社があるといたしますと、それぞれ会社が百株、五十株、二十株、それぞれその銀行に委託して株を取得してもらっておるという関係がなり立つわけであります。そういたしますと、甲の証券会社は百株について議案について賛成だという意向を持っております。乙の会社は五十株について反対だという意向を持っております。丙の会社は二十株について賛成だという意向を持っておりますという場合に、合計百七十株でございますが、銀行が議決権行使いたします際には、その賛成の百株と二十株を合わせた百二十株、これについては賛成議決権行使ができるわけでございます。乙の会社が反対しておりますので、その乙の会社の意向を受けましてその議決権行使をしようとすれば、五十株について反対議決権行使をしなければなりません。したがいまして、議決権行使いたしますのはあくまでも名義人であるその銀行でございます。しかし、実質上は寄託者である証券会社の意向を尊重しまして、それに従って議決権行使する必要があるわけでございます。ただいま申し上げましたように、銀行としましては百二十株と五十株に分けて議決権行使する必要が出てくる、こういうことでございます。
  166. 鍛冶良作

    鍛冶委員 いまの御説明を聞きますと、要するに名義上は一人になっておっても実質上は二人及び三人である。したがって実質上の株主の権利行使をその株主の意思に従ってやらせよう、こういうところからきているだろうと思われるのです。そうしてみますと千株持っておる者は、五百株を賛成し、五百株を反対した、実質において賛成株主ははたして五百株であるのか、反対株主ははたして五百株であるのか、これは会社ではわかりませんね。そうすると、出てくる者の意のままになるわけです。その点から言うと、いま言われたような目的は実際において果たされない実質があると思うが、この点はやむを得ないですか、いかがです。
  167. 新谷正夫

    新谷政府委員 これは名義上の株主である銀行と、実質的に株主としての利益を受けます証券会社との関係でございます。これはむろんそういう信託関係という関係が成り立っておりますので、名義上の株主は実質上利益を受ける株主に相当する証券会社の意向に従ってやるわけでございまして、その相互の関係というのはこれはあくまでも契約に基づく信頼関係でございます。したがいまして、誠実に銀行のほうで寄託者の意向を尊重してやるということは当然のことでございますが、万が一計算を間違えたり、あるいはその他の事由によりまして実質上の株主の意向どおりに行なわれないということも、これは絶無とは申し上げません。しかし、これはあくまで相互の信頼関係に基づいて議決権行使すべきものでありますので、かりに実質上の株主の意向に反するような結果が出ましても、議決権行使そのものは無効にはならないわけであります。極端な場合を申し上げますと、今回の改正におきまして、信託関係のない場合でも議決権行使は許すということになっております。ただ会社の側で、特に他人のために株式を有するものでないということが明白な場合には、いつまでもそれを拒むことができるわけでございますけれども、拒まなくてもよろしいわけでございます。拒まなくても、信託関係のない個人が議決権行使をいたします場合に、百株の株主が議場に臨みますまでは、五十株、五十株と思っておりましても、議案の説明を聞いてみますと、八十株、二十株くらいのウエートだなと思いますと、それに従って議決権行使してもよろしいわけでございます。信託関係がございます場合には、委託者と受託者との間の信頼関係に基づいて行使すべきものであるということは申し上げられますけれども、そのとおり行なわれないからといって、直ちにそれが無効になるものではございませんし、またそういうことも絶無とは申し上げません。もともと不統一行使というものを認めます以上、そういうことも考えておかなければならないわけでございます。しかしただいま例にあげました信託関係のような場合には、あくまでも相互の信頼関係に基づいてこれは行なわれるものである、かように考えておるわけでございます。
  168. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そういう忠実なものということでつくられたのでありましょうが、世の中にはそういうことがないともいわれない。そうすると、せっかくこういうものをおつくりになったのだが、株主の意思に反する決議がなされぬとも限らない。それに対しての救済方法はありませんか。
  169. 新谷正夫

    新谷政府委員 その意向に反して議決権行使された場合に、それをあるべき姿に戻すというふうなことはむろん特別に規定にはございません。そのことによりまして、実質的に株主としての利益を受ける者が万一損害でも受けたというようなことがございますれば、これは名義上の株主との関係において損害賠償その他の方法で解決されるべき問題でございまして、議決権行使そのものにつきまして不統一行使を認めます以上、その面における救済ということは考えていないわけでございます。
  170. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その点どうも趣旨と相反することなきにしもあらずということになるわけですね。  その次は、三百四十三条と変えましたね。「三百四十三条ノ規定ニ拘ラズ」というのを入れた。これは要するに、三百四十三条というと、株数によってきめることですね。しかるにこの三百四十八条は、人数によってきめることですね。その点が違っておるようです。ところが、どうも先ほどから聞いておると、一人の株主が信託されて出ていった。三人の株主のものを持って総会に臨んだ。実質は三人ですね。しかるに先ほどから言われるように、一人より数えられない。この点からいっても、そういう場合には、わざわざ三百四十八条に「三百四十三条ノ規定ニ拘ラズ」と入れたものと相反するように思いますが、その点はどうですか。
  171. 新谷正夫

    新谷政府委員 三百四十八条におきまして、「総株主過半数の者が議案に賛成しなければいけない、こう書いてございますが、このこととただいまの議決権の不統一行使の問題がどう結びつくかということでございまして、実質的に株主としての利益を受ける者が三人おるにもかかわらず、その三人を過半数の数の中に入れることをしないのはおかしいじゃないか、こういう御質問でございます。これはあくまでも、ここで申します「総株主過半数」と申しますのは、法律上の株主でございます。法律上の株主は、先ほどの例で申し上げますと信託会社、つまり銀行が法律上の株主でごいます。その株主議決権行使するわけでございます。背後におります実質上株主と同じ利益を受ける証券会社、これは法律的には株主ではございません。したがいまして、三百四十八条の運用上「総株主過半数」といいます場合には、あくまでも法律上の株主、さらに言いかえれば株主名簿記載されております株主でございますから、その場合には、ただいまの例で申しますれば、信託会社なり銀行が株主として議決権行使するわけでございます。その株主の数を賛成の数に算入するかどうかということは考えられるわけでございますが、その背後におります者の数までも取り上げるということは、これは実際の問題としても不可能なことでございます。名簿にも書いてないわけでございますし、常にそういった背後の株主の数というものは変動しておるということも考えられます。株主総会決議要件としまして「総株主過半数」と申しましたのは、名簿上的確に把握できる法律上の株主の多数がこれに賛成するかどうかということによってきめるべきものではないか、かように考えます。
  172. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはわかっておりますが、私の言うのは、三百四十三条は株式の数で決しようとする、三百四十八条は株主数で決しようとする。しかるに、こういう不統一行使を認めてやるということになると、この認めた趣旨に反することになりはせぬか、こう言うのです。そうでしょう。株主数できめようとする三百四十八条であるのに、三人の実際の株主がおるけれども、一人だけで名前が載っておるからといってやるということは、この条文をつくった趣旨と相反しようが。私の言うのはこういうことです。
  173. 新谷正夫

    新谷政府委員 お気持ちは確かに、実質上の株主というところに非常に重点を置いてお考えになっておりますので、実質上の株主がかりに三人おれば、その三人の頭数というものも三百四十八条の「総株主過半数」の中で考えるべきではないかということであろうと思います。これはお気持ちはよくわかりますけれども議決権行使ということになりますと、法律株主である者が議決権行使すべきものでありまして、会社に対して株主になっていない背後の者が、これが実質上株主としての利益を受けましょうとも、それを法律上の株主として扱うわけにはまいりません。したがいまして、「総株主過半数」という場合には、あくまでも名簿に記載されておる者を基準にいたしまして、それらの者の多数の者の頭数で決しようということでいたしたわけでございます。「信託」「其ノ他他人ノ為ニ株式ヲ有スル」というその「他人」というものがいかほどあるかということは、会社にはとうていわからないことでございます。そういうことからいたしましても、実質上の株主の数をこの「総株主過半数」の中に算入するかどうかということは、法律上の問題としましてはちょっと考えることはむずかしいのではないか、かように考えております。
  174. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも、あなた方こういうことにしたからそう言われるので、私はこういうことをすることがいいか悪いかを言っておるのです。第一、不統一行使というものを認めることがいいか悪いかになってくる。実質上三人あるのに、賛否両方のものを持たせて一人の者にやらせる、そういうことをきめたからこういうことになっているのですよ。ですから私は、そういうことをきめることがいいか悪いかをいま言うておるので、確かにそういう矛盾が出てまいります。それは間違いございません。法律上は、株主が一人でもあれば、その株主の数で勝負しようとしておるのに、その三つを一つに勝負しようと出るのですから、これは私はどうしてもその点に矛盾があると思う。そうなると、根本は不統一行使ということがいいかどうか、何人でもそういう意思の違った者を一人で持って出ることがいいか悪いか、こういうことになると思いますので、その点の議論の分かれることだけを明瞭にしておきましょう。  その次は、根本論として譲渡の問題は、先ほどから聞いておりましてもどうもまだわれわれは納得のいかぬことがあるから、ひとつごめんどうでも商法から私は答弁を得たいと思う。どうして証券のやりとりだけで権利が移るということにしようと考えられたのですか。その点からまずお聞きしたい。
  175. 新谷正夫

    新谷政府委員 現行法におきましては株式譲渡は株券に裏書きして交付する方式と、それから株券とは別に譲渡証書というものをつくりまして、それを譲渡人から譲り受け人に株券と一緒に交付する、こういう形をとっております。問題は裏書き譲渡の場合でございますが、裏書きの場合におきましては、昔は会社に届け出ました印鑑と裏書きに使われます印鑑が一致しなければならないというたてまえになっておりました。ところが昭和二十五年の改正によりまして、そこまでの要件ははずされたわけであります。記名と捺印は必要でございますけれども、そこでなされる捺印は、会社に届けてあります印鑑と同一のものでなくても差しつかえないわけでございます。そういうことになりましたのも、これは株式というものの流通性に着眼されて、できるだけ取引を円滑にしようというところにそのねらいがあったものと思うのでございます。ところがだんだんと取引が行なわれております実態をながめてみますと、現実には会社に届け出してある印鑑と違ってもよろしいのでございますので、どんな判こでも譲り渡そうとする者が自分の判だとして押した判であればよろしいことになるわけでございます。極端な場合には、本来自分が持っている判でなくても、あり合わせの判を使って、これが自分の判であるということで裏書きにそれを使用するという場合も考えられるわけでございます。また実際の取引界の実情を聞いてみますと、証券会社に多量の株券を預けてあります。その場合に一々自分の判こを証券会社に渡しておるのではございません。これはそれぞれの株主がすべて保管しておるわけであります。いざ株券の受け渡しをしようという段階になりますと、株主のほうでは簡単にその捺印によって裏書きをするということがなかなかむずかしいわけであります。そこで聞くところによりますと、極端な場合かもしれませんけれども証券会社のほうで株主の同意を得まして判こを調製して、それを押して、了解のもとで裏書きをしておるということがかなり多数行なわれているように聞いておるわけであります。そこまでまいりますと、捺印をするということの実質上の意味がもうほとんどないのではないか。ただ捺印のために株式譲渡が手数のみを重ねるというふうなことになりますので、それならばもう思い切って記名捺印をやめて、従来の裏書き交付という要式行為の中の裏書きというものを廃止して、交付だけにするということでよろしいのではあるまいか、こういうところから、今回の譲渡方式の改正をすることになったわけでございます。
  176. 鍛冶良作

    鍛冶委員 なるほど、印鑑にそれほど重きを置かぬようになったかもしれませんが、いままでは意思を無視したわけじゃないでしょう。幾ら証券会社が判こを預かってやったからといって、それは、おまえそういうことをしてもいいという意思表示があったればこそやり得るので、それがなかったらやれなかったろう。幾ら三文判だといっても、ほんとうの判こがないからこれでやろうというのでやったからいいので、三文判でやるのだからなくてもいい、こういうものじゃないと思う。要するに、そこに現在の株主が、株主権を離そうという意思表示がなかったら譲渡はなかろうと思います。しかるに、いまどうも便利だからといって、いまのはただ証券のなにさえあればいいという。その点はこの間から言うように一番問題は、盗まれた場合にはどうなるかということです。それでも一応は向こうへ権利が移る。善意であれば正当にとったものと推定される。実際においてはどう考えるか知りませんが、われわれ法律家としてはたいへんな区別があると思うのですが、その点を、そこまで乗り越えていいという理由はわれわれにはわからぬのですが、どうですか。
  177. 新谷正夫

    新谷政府委員 確かに裏書きの方式をとりますと、記名なり捺印をすることによりまして譲渡の意思がそこにあらわされるということはございます。しかし、今回の改正によりましても、単純に株券を交付することだけが譲渡要件ではございません。譲渡契約というものはあくまで必要でございます。裏書き方式をとっております際に、かってに人の名前を使い、かってに捺印をしてやれば、これは譲渡人の意思に沿わないものであります。これは裏書きの効果もないわけでございます。それと同様に、今回の改正後におきましても譲渡の意思表示は必要でございます。ただその際に株券を交付するということを一つ要件として加えてあるわけでありまして、やはり譲渡する者の意思がなければ株式譲渡はできないわけでございます。その点は変わりがないわけであります。要するに、前の制度と今回の制度の違いと申しますのは、株券の上に名前を書いて捺印をして渡すということのかわりに、名前を書いて捺印をするということを省略して株券を交付する。同時にそれは譲渡行為という意思表示を伴ったものでなければならないのは当然であります。その両者相まって株式譲渡が行なわれるわけであります。意思表示もしないで、ただ単に事実上株券を甲から乙に引き渡したということによって株式譲渡が行なわれるものとは解していないわけでありまして、あくまで譲渡譲渡でございますから、譲渡の意思表示は必要でございます。それに要件として加えましたのが株券の交付というものでございます。
  178. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは今後の取引にたいへん影響のあることです。その点は私はいままでずいぶん訴訟上取り扱ったことがあります。なるほどそうでなければならぬと思うが、もしそういうことで意思表示がなかったら譲渡になりませんね。  そこで問題は、意志表示がないのに転々して善意の第三者がこれを受け取った。そのときの救済方法について、具体的にあなたのほうから、こうすれば救済できるということを言ってもらいたい。意思表示はないのですよ。盗まれたか預けておいたかは別として、なかったにもかかわらず、転々して、持っておる者は善意だ。善意の者は正当にとったものと推定される。別に意思表示はないのですから権利は離れない。それを具体的にどうしたら救済されますか。
  179. 新谷正夫

    新谷政府委員 これは現行法のもとにおきましても全く同じことが起きるわけでございます。裏書きを偽造しまして、偽造した者がさらに裏書きして転々と株券が流通過程に置かれる場合、これと、今回の譲渡方式を改めましたのちに、裏書きこそいたしませんけれども譲渡契約と株券の交付という行為をとらないで、自分の意思に反して株券が占有から離れて新しく取得した者が新しい今回の譲渡方式に従って転々と株式譲渡したという場合、これは法律的には結果は全く同じでございます。善意取得者を保護するということは、動産の場合の民法の規定以上に商法規定で従来善意取得者が保護されているわけでありまして、今回の譲渡方式が変わることによりまして、そこの点に何らの変更はございません。したがいまして、自分の意思に反して株券が流通過程に置かれたといたしましても、善意取得ということが起きました以上は、その善意取得者を保護するということにおいては、改正前も改正後も全く同様でございます。しからば、盗まれた者がどういう救済を受けるかということになりますと、これもまた改正前と同様でありまして、盗んだ者に対して損害賠償の請求をするという方法で解決するほかはないと思います。これは、この法律を改正することによって特別に新しい損害が生じるという性質のものではございません。従来とその点は全く変わりございません。
  180. 鍛冶良作

    鍛冶委員 民法百九十三条だったと思いますが、盗品・遺失物の特則ですね。これはどうですか。
  181. 新谷正夫

    新谷政府委員 民法百九十三条は百九十二条の規定を受けた規定でございまして、一般の動産の場合の即時取得の百九十二条が働きます場合に、百九十三条が働いてまいるわけであります。株式の場合におきましては、一般の動産の規定の適用はございません。商法規定による善意取得者の保護の規定がございますので、それに乗っていくわけでございます。したがいまして民法の百九十三条は株券の盗難の場合には適用がない、こういうふうに考えています。
  182. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それでは商法によってどういう救済がありますか。百九十三条にかわるような救済はどういうことなんですか。
  183. 新谷正夫

    新谷政府委員 これは民法と商法のそこが違いであろうと思いますが、商法におきましては、株券というものの流通性というものを非常に重く見まして、特別に善意取得者を保護しよう、その反面、従来の株主の保護ということは、それだけ薄くなるかもしれません。しかし、商法そのものが従来そのような法制ででき上がっておりますので、一般の動産の場合のような規定商法にはございません。おっしゃるように、確かに、従来の株主の保護に薄い点があると言われますれば、そうかもしれませんけれども、これは制度の立て方が前からそういうふうに立っておりますので、民法百九十三条の適用の問題は、株券についてはないということだと思います。
  184. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこがどうもわれわれのこの法律改正に対する疑問の重点なんです。意思表示のない権利者を保護しなければならぬというのが法のたてまえですね。法は原則としてしかあるべきものだと思う。それを取引上の安全という意味でなくしてしまうことになってしまう、その点がいいか悪いかということになるわけです。そこで、それならこういう法律がいいか悪いかという根本論になってくるわけです。第一は、ここで考えなければならぬのは、いま占有移転するだけで権利が移る、こうなりまして、これは百九十二条と同じ考え方でいっておるのだ。株券を普通の動産と同じように考えられておる。だからそういうことになったんだ。そこで問題は、一体普通の動産と同じように株式を見ていいものか、しかも株券をそれと同じようなものに見ていいのかという根本論に来ると思うのです。先ほどから議論があったが、物権か債権かと言っておったけれども、私は株券というものは、株主権を表示したものだと思うのです。この株主権というものは、そんな紙の上に乗って動いて歩くものじゃない。ここから私は出てくるのです。先ほどから出てくる三百四十八条の規定にしても何にしましても、根本はそこから出てくるので、株主権というものは株主に固有して出ておるのです。かってに動かしていいものだとわれわれは思わぬのだが、あなた方、その点はそうしてもいいものだ、——株主というものは、当該会社の事業に参画しようというので株主になっておるのです。その会社が、よほど自分でもうこれは見込みがないとか、また特にやむを得ないからとか、何かがないと、紙切れで渡していいと考えるものでないという、この根本論から出てくる。いやそんなことは要らない、これはどこから出るのですか。あれば、ひとつ聞かしてもらいたい。
  185. 新谷正夫

    新谷政府委員 鍛冶先生のかねてからの御持論でございまして、私どもはその点は承知しておるつもりでございますが、株主の地位をあらわしております株券、またその地位を、株式と申しますか、これはそもそも転々譲渡されるのはおかしいじゃないかという御趣旨から出発しておるように伺います。しかし、商法規定をごらんになりましてもおわかりだと思いますけれども、もともと株式というものは転々流通するものである、これは有価証券でございまして、流通するという前提に立って法律ができ上がっております。ことに一般の動産以上に流通の保護をはかるということで、ただいまの即時取得の規定にいたしましても、民法の規定よりははるかに善意者を保護するような形になっておるわけでございます。根本の考え方が、これは株主という地位をあらわすものであるから、本来他人にかってに譲渡される筋合いのものではない、こうおっしゃればそれまでのことでございますけれども法律のたてまえは、そういうものをあらわした株券というものは転々と譲渡される、それによって株式の地位もまた譲渡されるということが前提になって、この法律というものはできておるわけであります。根本の考え方が、その点は鍛冶先生と私どもは違っておりますので、御意見はもちろんわかりますけれども、現在の商法のたてまえ、また株式会社というものの本質、また株式の性質というふうなものを考えました場合に、やはりこれは譲渡性を前提にして考えなければならないというふうに考えておるわけであります。
  186. 鍛冶良作

    鍛冶委員 だいぶ、議論が分かれてはっきりしてきましたが、もう少し申し上げます。  株式譲渡できるものでなければいけない、そこまではいいが、金もうけの目的で転々して歩くのが株式の本質だと言われることがわれわれはうなずけない。そんなものじゃない。株主は当該会社の事業に参画するということにあるので、株を動かすことにおいてもうかるものだと思われたら、それはたいへんだ。そこの違いです。私はそういうことはないと思うが、譲渡できるということは、これはなければいけませんよ。その意味において、あなたの言われる譲渡性のあるということは認めるが、譲渡することが本質だったら、売ったり買ったりしてもうけることが本質だ、こういうことになる。それはそうじゃない、私はこう断言いたしますが、いかがですか。
  187. 新谷正夫

    新谷政府委員 株式譲渡するためにつくったものだと申し上げるわけじゃございません。もちろん、いまおっしゃいましたように、株主の地位をあらわすものでございますけれども、それを本来譲渡の目的でつくったという極端なことを申し上げているわけではございません。投資を回収するためには、株主になりましてもこれを譲渡する必要がございます。さらにまた、一般の経済界の状況あるいは会社の状況、こういうものを測定いたします上においても、現在の株式取引ということが非常に重要な作用をいたしておるわけでありまして、こういう面にも反映し得る。したがって有利な会社の株式であれば、これが転々譲渡されるということももちろん考えられるわけでありまして、そういう意味において株式というものは譲渡性があるということを申し上げるわけであります。そのために株式というものをつくってあるという意味ではもちろんございません。本来これは株主の地位をあらわすものでございますけれども、そうかといって譲渡を禁止する性質のものでもないし、また投資を回収するためには株式譲渡を認めなければなりません。また現在の実際の経済界の動きを見ましても、株式が一般の動産以上に転々譲渡されておるのが実態でございます。そこをつかまえて商法がそれに対する手当てをしておる、こういうことでございます。
  188. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、私の意見と一緒なんです。私は譲渡は否認せぬ。譲渡性はなくてはいかぬけれども譲渡することが本質だと言われるから、私はそんなことはない、むしろその人にくっついておるのが本質だが、事情によっては譲渡してもいいものだ、こうだと思っている。そうでなければいかぬと思うのです。その点はそういうものだといたしますと、先ほどから言うようにものを表示した倉荷証券、金を表示した紙幣、小切手、そういうものと株券とは根本的に違いはありませんな——それをどうも同じようにやられることに出てくるのですが、いかがですか。
  189. 新谷正夫

    新谷政府委員 ものを表示しました倉荷証券とかあるいはものの価値を測定するためにつくられた紙幣とか、こういうのとは性質は違います。おっしゃるように確かに性質は違うわけであります。これは会社の企業に参画する株主という地位をあらわすものでありまして、一般の債権的なものと同列に考えることは、これは無理だろうと思うのであります。そうはいいましても、そういった株券にあらわされました株主の地位というものは、これはやはりその株式会社の性質、株式というものの性質上そうあるべきだということで、その譲渡性を前提にして法律、制度というものができておるわけであります。したがいまして、一般の債権と同視することはむろんできません。その意味では確かに株主権あるいは株券というものは一般の債権と同一には見られませんけれども、しかしあくまでも譲渡されるものだという前提でできておるということだけは言えるのであろうと思います。
  190. 鍛冶良作

    鍛冶委員 譲渡されるということと、そこから動いて歩けば権利が移るものと一緒にされることが問題なんですよ。  そこでもう一つ聞きますが、今度は株券を有せない株主も認めますね。私は転々できないような株を持たなければほんとうの株主でないのだと思うのですが、それは特に株券を要求してやらなければいかぬ、先ほどからあなたの御説明を聞いていると、転々としていつでも飛んで歩くということがほんとうだ、——その点はどうですか。
  191. 新谷正夫

    新谷政府委員 これは株式譲渡を容易にいたしました半面、安定株主の立場からいたしますれば、常にその株式譲渡するということを考えてないわけでありまして、自分でそれを保管する煩を避けるために、またその危険性を避けるために、株主の要求がありますれば、それを会社に申し入れて発行しないという制度を考えたわけであります。これは株主利益保護のためを考えまして、当該の株主の要求があればそういうこともできるということでございます。もしもそれを譲渡したいということであれば、あらためて株券の発行を求めて、それを譲渡するわけでありまして、そのこととただいまの譲渡方式を改めたということは必ずしも矛盾しない問題でありまして、むしろ不発行制度を設けることによって、今回の改正に伴う不安を少しでもなくしようということでございます。
  192. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほどからあなたの説明を聞いておると、転々することは株式の本質だ、こう言われるのに、転々しないことが前提で、転々するためには特別な手続をやらなければならぬ。そうしてみると、そういう株主を認めたことがいいとか悪いとかいうことを言うんじゃないですが、そういう株主は例外株主ですね。本質的ではない株主でございますね。それはいかがです。
  193. 新谷正夫

    新谷政府委員 株券の不発行を求めたりあるいは寄託する株主というものは、これは本質的に株主でないとはちょっと言い切れないと思うのであります。ただ、株券というものを自分が保管するかわりに、一応会社に預けるなり、あるいは自分が取引に使うまでの間は株券の発行はしてもらわなくてもよろしい、それまでは株券を持たない株主でありたいという場合に、こういう制度が活用されるわけであります。したがいまして、本質的に株券を発行しない株主があるのだから、これは先ほど来のお説で言うような本来の株主とは矛盾するという性質のものではございません。本来は株券を持って、それを譲渡しようと思えば譲渡できるのが株主の立場でございますけれども、特にその株主の希望によって、自分が所持したくないという株主がありますれば、その者の便宜を考えて不発行制度というものを認めよう、これだけのことでございます。これが株主あるいは株式の本質的な問題とつながるものではございません。
  194. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あなた方、この法律をこしらえられたときには、そういう株券不発行の株主はこれは場違い的の株主であって、はなはだ迷惑する株主なんですか、それともこういう株主はいいと思われますか、そのどっちですか。
  195. 新谷正夫

    新谷政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますが、特にこれがいい株主であるとか悪い株主であるとかいうことは考えておりません。ただ、その株主の都合によりまして、自分が株券を所持したくないという希望がございますれば、ただそれを受けて、会社がその株主に対して株券を発行しないというだけのことでございますので、株主なり株式の本質の問題というふうに考える必要はないであろうと思います。
  196. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ただいま安定株主、安定株主ということばがありましたね。これはその株券を取らぬでもいいというのをさして言うておられたと私は思うのです。それがあなたの先ほどからの説明からいうと、どうも安定株主でない、場違い株主なんだということなんですね。私はそういう株主がいいのだ、必要があれば売るかもしれぬけれどもおれはめったに売らないんだぞ、そういうのが株主の本質だと思うのですが、あなた方は、そこら売り歩いておるのが本質で、売らぬものが場違いだ。——そうすると、この間から伺っておる安定株主とはどうもあなた方の考え方と違うことばになりますが、どうですか。
  197. 新谷正夫

    新谷政府委員 株式というものは転々流通されるものでございますけれども株主によりましてはそういうことを希望しない株主もむろんあります。先祖伝来の株券を大事に保存して、株主としての権利をずっと引き続いて行使する、またその利益を受けるという株主もかなりあるわけであります。そういう株主があるからといって株式譲渡性を否定するものではむろんございません。譲渡するか、しないかは、むろん株主の自由でございますので、その範囲内で譲渡しようと思わないで、永久に自分がこの株主でありたいと思う者はそのまま保有すればよろしいわけでございます。そういう株主のためにはいまの不発行制度なり寄託制度というものが非常に役立つであろう、こういう考えでございます。安定株主と申しますのは、先ほど申しましたように、自分が株主としてその権利を行使し、利益を受けようということであって、投機的な利益をねらわない株主を安定株主と一般にいわれております。しかしそのことがあるからといって、株式譲渡性は否定されません。
  198. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これ以上議論したってしょうがないが、議論の分かればわかりました。会社としてはそういう株主が一番いいのですよ。そんな転々として株でもうけようとしておる者が来てもらっては、ほんとうは困るのです。交付する以上は何してやるわけじゃないが、会社のほうから見ればそういう株主がほんとうだ。それであなた方は安定株主ということばを使っておられる。しかるに、どうも安定株主なんというものは場違いのものだ。——どうもそれは違うと思う。それはこの程度にしておきます。まだあなた何かあるなら答えられてもいいです。  もう一つ、あなた言われなかったが、ここに書いてある、取引の現状から一々裏書きして歩くようではたいへんなんだ、——これは取引を中心にして言われる。一日何千万株、そうなるとたいへんなことだ、こういうことをここにも書いてあるが、その点もそうせられた一つの理由でございましょう。
  199. 新谷正夫

    新谷政府委員 まず安定株主の問題、繰り返して恐縮でございますけれども株主というものは、その株式譲渡するかしないかということはむろん自由でございます。投機的にこれを使う向きもございますし、そうでなくて、先祖伝来のものを大切に守って、自分が株主として会社の事業に参画して、その利益を受けようという人もございます。これは各株主の自由でございます。したがいまして、転々譲渡することを希望する人は譲渡をいたしましょうし、そうでなくて、ずっと株主でありたいと思う人は、いわゆる安定株主として、株主としての利益を受けるというだけの違いでございまして、安定株主があるから株式譲渡性を否定されるものではない、かように考えます。  それから、譲渡方式の改正の動機でございますが、これは証券会社の利益を考えたのではないかという御趣旨でございますが、そういうことも確かに便利になるわけでございます。発行会社の側といたしましても、これはたいへんな手数でございます。一々名義書きかえの請求がございました際に、記名だけ抜かしまして、捺印だけしてくるという例がかなりあるようでございます。その場合に、その記名部分が欠けておるのをどう見るか。見ようによりましては、これは裏書きが完成していないというふうに見られる場合もございます。また、その記名のない部分の補充権を委任したというふうにも見られる場合もございまして、発行会社としては、その扱いが非常にめんどうなことになるわけでございます。したがって、こういったただ手数のみかかるというふうなことであれば、むしろそういった裏書き制度というものを廃止して、株券を持ってくれば、それによって株主名簿の書きかえを認めるというふうにしたほうが便利ではあるまいかということが考えられるわけであります。そのことがまた、ひるがえって申しますれば、株主にとりましても、名義書きかえの際に非常に事務が簡易化するわけでございますので、株主にとりましても、これは便利であるということは申し上げられるわけであります。ただ証券会社の利益のみをはかったというわけのものではございません。
  200. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほどの株式の本質論についての議論でも、あなたそう言われた。私の言うのは、いやしくも株主にはそれは二通りありましょう。公募したやつを一々区別するわけにいかぬから、転々してもうけようという人もいる。この株はいい会社だから持ってやろうという人もおる。この持ってやろうというものを安定株主というのだと思う。したがって、法律をもって株主を保護しようとするときには、転々として歩くものを中心にしてやるべきものでなくて、安定株主中心にして行なわなければならぬ、法律もそれを中心としてやられなければいかぬというのがわれわれの主張なんです。その意味で、そういう動揺しやすいようなことはよほど考えてもらわなければならぬ。こういう意味ですから、これはどれだけ議論しておってもしようがありませんから、この程度にして、またいずれ考えていただきたい。  いまのは、なるほど大会社で取引以外に株の転々としておるときには、株券が多くて困っておるようですが、それならば、こんなことをせぬでもやる方法がある。先ほどから出ておった株券の額をふやしたらどうですか。私は子供のときに覚えておるが、私のおやじは、町の銀行の株を二株持っておりました。これはいまから考えるとおかしいようなものだが、一株持って株主だといっていばっておった。それは明治時代ですからね。それがやっぱり一株五十円なんです。そういうところから考えると、今日ミサイルが飛ぶ、原子力でやって歩くという時代に、明治時代と同じ一株五十円ということが、あなたどうかな。考えて、そこらに考えつかなかったのかね。これは私、明治時代の五十円は今日五万円にしてもまだ安いだろうと思うのです。五十万円でもいいのじゃないですか。それだから、二株持っておってやっぱりいばるわけだ。今日から考えるとおかしくてかなわぬが、これは時代おくれですよ。そういう時代おくれのものを押えておって、そうしてこれではどうも取引が不便だから——これはどうもそっちのほうが時代おくれのような気がするが、どうですか。
  201. 新谷正夫

    新谷政府委員 この問題は先ほど田中委員からも御質問のあった点でございまして、確かに現在五十円株というものが非常に多いわけであります。しかし、現在の商法では、一株の金額は五百円ということになっております。できるだけそのような五百円ということで株券を発行するということが望ましいわけでありますが、現実は必ずしも五百円の株券が発行されていないようであります。いまでもなお五十円株というものがどんどん発行されておるわけであります。これはどういうところにそういう理由があるのか、いろいろの事情があることと思いますけれども、確かに株式事務が非常に繁雑になってきた一つの原因として考えられますのは、お説のように、零細な額面の株券がたくさんあるということに原因があると思われます。これは間違いないと思うのでございます。五十円というふうな額面の株を千株券あるいは五千株券に一まとめにしたらどうかということも、当然考えられる事柄であります。これは現在でも、株主の要求がございますれば、会社のほうではそういうふうな株券の併合を認めております。五十円株を百株券にまとめ、あるいは千株券に集中するということをいたしておるわけであります。ところが、すべての株主がいつもそれを希望するわけじゃございません。また、百株とか五百株とかまとまった株を持っておる株主のみとは限らないわけでありまして、端数のついた株式を持っておる人もございます。こういった株主株式を一挙に百株券に相当する株に直したり、あるいは千株券のものに直すということ、これは実際問題として非常にむずかしい問題でございます。なかなか一挙にそれを踏み切って、株券の額面価額を法律的に強制して引き上げるというところまで踏み込んでいくには、まだまだいろいろの問題がございます。法制審議会におきましても、この点につきましてはいろいろと論議されたようでございます。将来どうするかということは、確かに一つの大きな問題でございます。そういうこともむろん頭に入れて、今後の問題を検討する必要がありますが、さしあたっていますぐそれでは五十円株をなくしてしまえるかと申しますと、これは実際問題として非常にむずかしい問題でございます。今後の問題として十分検討いたさなければならない、このように考えておるわけであります。
  202. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この程度にしておきますが、私は、取引のためにとか、そういう会社の都合などということを考えるならば、こういうことを考えるよりか一株の価格をずっと上げるということを考えられたほうがよかったと思います。その点に思いつかないでこういうことをやられたことは遺憾だ、こう申し上げておきます。  まだやれば切りがないが、きょうはこの程度にしておきます。
  203. 大久保武雄

    大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は、明後二十一日午前十時より理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会