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1966-03-03 第51回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月三日(木曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小島 徹三君 理事 田村 良平君    理事 濱田 幸雄君 理事 細迫 兼光君       鍛冶 良作君    唐澤 俊樹君       佐伯 宗義君    田中伊三次君       中垣 國男君    濱野 清吾君       神近 市子君    山田 長司君       田中織之進君  出席政府委員         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 鹽野 宜慶君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      矢崎 憲正君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 二月二十八日  委員山田長司辞任につき、その補欠として中  澤茂一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中澤茂一辞任につき、その補欠として山  田長司君が議長指名委員に選任された。 三月三日  委員賀屋興宜君辞任につき、その補欠として鍛  冶良作君が議長指名委員に選任された。 同日  委員鍛冶良作辞任につき、その補欠として賀  屋興宜君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十三日  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第九二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正す  る法律案内閣提出第八一号)  最高裁判所裁判官退職手当特例法案内閣提出  第八二号)  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第九二号)      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 大久保武雄

  4. 山本利壽

    山本(利)政府委員 訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案について、その趣旨説明いたします。  この法律案は、第一に、民事訴訟及び刑事訴訟証人等宿泊料最高額増加するため、訴訟費用等臨時措置法について所要改正を行ない、第二に、一部低額執行吏恩給を増額する等のため、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律昭和二十四年法律第五十五号について所要改正を行なおうとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  まず、民事訴訟における当事者、証人鑑定人通事等止宿料刑事訴訟における証人鑑定人通訳人等宿泊料並び執行吏宿泊料の額につきましては、国家公務員が出張した場合に支給する宿泊料の額に準じて、現在その最高額を特別区の存する地、京都市、大阪市、名古屋市、神戸市及び横浜市においては千五百円、その他の地においては千二百円と定めているのであります。このたび政府におきましては、国家公務員旅行実情等にかんがみ、内国旅行における宿泊料等の定額を引き上げる必要を認め、別途今国会国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしましたが、証人宿泊料等につきましても、これに準じて、その最高額を引き上げる必要があると考えられますので、今回、これを特別区の存する地等においては二千円、その他の地においては千六百円に改めようとするものであります。  次に、執行吏は、一般公務員の場合と同様に恩給を受けることになっておりますが、政府におきましては、一般退職公務員について、低額恩給を改善する等の必要を認め、今国会恩給法等の一部を改正する法律案を別途提出いたしておりますことは御承知のとおりでありまして、執行吏恩給につきましても、これに準じて、一部退職執行吏低額恩給を改善する等の必要があると考えられますので、その年額が六万円未満のものについては、その年額を六万円とする等所要措置を講じようとするものであります。  以上が訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
  5. 大久保武雄

    大久保委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  6. 大久保武雄

    大久保委員長 裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案最高裁判所裁判官退職手当特例法案、及び訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案、以上三件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、まずこの裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案のほうから御質問をいたしたいと思うわけでありますが、裁判所法改正につきましては、新たに地方裁判所調査官を置くという点でございますが、この提案理由説明をお聞きいたしますと、最近地方裁判所におきましては、工業所有権に関する事件、また租税、税法に関する事件が非常にふえてきて、これは特別の知識を要する事件であるから、現在の裁判官知識、そういう面から見て非常に審理がおくれておるという理由であるようでありますが、資料等も出ておりますけれども、この最近の地方裁判所におけるこれらの事件増加実態、また審理期間長期化をしている実態というものをまず簡単に御説明をいただきたいと思います。
  8. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 工業所有権に関する事件租税に関する事件審理状況、それから数等についてのお尋ねでございますが、その詳細につきましては最高裁判所から御説明願うのが相当かと存じますが、お手元に差し上げてございます資料の中に一部統計が掲げてございますので、これをまず御説明いたします。  差し上げてございます資料は「裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案参考資料」でございまして、そのうちの一番最後の表、十三表でございます。これは統計にあらわれております最近の昭和三十八年、三十九年における地方裁判所租税民事刑事事件及び工業所有権の新受、既済、未済の数を一覧表に示したものでございます。租税関係民事につきましては、三十八年に新受は百三十五件でございましたものが、三十九年には三百三十件というふうに増加いたしております。それから同じく租税刑事事件につきましては、昭和三十八年に六百五十五件でございましたものが、三十九年には千二十六件というふうに増加いたしております。このように増加いたしておりますので、したがいまして未済事件もかなり増加している状況が見られるわけでございます。  それから工業所有権関係は、三十八年の新受は二百五十四件、三十九年になりますとこれが二百八十一件、かようなことになっております。これは未済状況を見ますと、三十八年の未済が三百十三件であったものが、三十九年には四百十件というふうに未済増加しているというような状況でございます。
  9. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 先ほど大竹委員からお尋ねのございましたうち、件数増加の点につきましてはいま鹽野調査部長からお話のあったとおりでございまして、そういうふうに増加しておるわけでございますが、審理期間の点につきまして、実は本法案の性質上、当然に資料としてお手元におつけすべきであったわけでございますが、大体の審理期間から申し上げますと、租税につきましても工業所有権につきましても、普通の事件に比べましてかなり長期化している感じが見受けられるわけでございます。いま昭和三十九年におきまする審理期間について簡単に申し上げますと、普通の民事訴訟事でございますと、大体一審では十一・九カ月、まあ十二カ月程度で終わっておるのでございますが、これに比べまして工業所有権関係事件は、統計によりますと十三・六カ月、つまり十三カ月半、一年以上要する、こういうことでございますし、それから行政事件一般長期化することは、一般行政事件でもそのとおりでございますけれども、特に租税関係事件につきましては、たとえば東京地裁では三十八・六カ月、三年ほどを要する。大阪地裁のごときは四十カ月以上、つまり四年近くも要する、こういう状態になっておるわけでございます。それから、なお刑事事件のほうでございますが、刑事事件の普通の事件でございますと、大体六カ月くらい、つまり半年くらいで処理されておる実情でございますが、それに対しまして租税事件は一年以上を要する、一年半近いものもある、こういうようなことが統計的な数字でも出ておりますし、また、私どもが実際に事件を扱っております勘といたしましても、ほかの事件に比べてどうも長期化する傾向にあるという感じがいたしておる、こういう実情にあるわけでございます。
  10. 大竹太郎

    大竹委員 次にお尋ねをしたいのでありますが、こういうような工業所有権とか、あるいは租税に関する事件に関してでありますので、調査官を置くといたしますと、特殊な専門的な知識、または経験というものが必要になると思うわけでありますが、この調査官を任命するについて、どういう人をどういうところから採用するかということが一番問題になると思うのでありますが、その点をひとつ。
  11. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 お尋ねの点、まことにごもっともでございますが、臨時司法制度調査会特殊事件調査官を置くべきであるという意見を発表せられまして、私どももかねて検討いたしておった問題でございますので、早急にその実現にと考えたわけでございますが、その際に一番問題になりますのがこれの給源ということであったわけでございます。これは、結局ある意味では待遇問題と相関関係に立つわけでございまして、待遇さえ十分にすればある程度の人が来てもらえる、しかし待遇が悪いとやはりなかなか来てもらえない、こういう関係でございますので、大蔵省と予算折衝をいたします段階でも、できる限り給与定数と申しますか、等級を高いところに格づけしてもらいたいということをいろいろ折衝いたしまして、その結果大体二等級ということで入れていただいたわけでございます。二等級は簡単に申しますと本省の課長クラスということでございまして、これは一般職員としては相当高い格づけということになるかと思います。そういうことでございまして、結局専門的知識でございますので、工業所有権関係では、自然特許庁関係方々が主たる給源になるであろう、そういう場合に、たとえば、審判長であるとか、審判官というような方々で、一等級の方もおありのようでございますが、二等級だとか、またさらにその下のほうにある三等級、四等級の方もおいでになるようでございまして、そういう点で必ずしも交流は困難ではないというふうに考えておるわけでございます。  次に租税関係ございますが、これはいまの特許事件に比べますとかなり間口として広うございますし、給源も広いわけでございます。むろん国税庁関係方々も相当有力な給源でございましょうが、たとえば公認会計士というような方々も一つの給源でございましょうし、その他そういう会計関係仕事の方の中から選べるということで、このほうは比較的給源にめぐまれておるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  12. 大竹太郎

    大竹委員 それでお尋ねしたいのでありますが、この調査官制度地裁としては初めてでありますが、高等裁判所あるいは最高裁においては、いままでもあったわけでございます。もちろん工業所有権、あるいは租税に関する特別の知識を持っている人から採用するということはわかるのでありますが、私は、同時にやはり裁判関係する調査その他をやるわけでありますので、何といいますか、いわゆる法律に関する基本的な知識とでも申しますか、そういうものは非常に私は大事だと思うのでありまするが、そういう面の教育とでも申しますが、その点はどういうふうにお考ですか。
  13. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま大竹委員お尋ねの点につきまましては、私どもとしてはかように考えておるわけでございます。私ども特殊事件調査官をお願いいたしますのは、結局、そういう特殊の分野における基礎的な知識が、必ずしも裁判所職員、特に裁判官に十分でないという意味で、そういう点での補助をしていただくということが主眼でございますので、何よりもまずそういう特殊の方面の、化学であるとか、あるいは電気であるとか、機械であるとか、そういう特殊の知識にほんとうにすぐれておる方に来ていただいて、そうして補佐してもらう、こういうことを考えておるわけでございます。しかしながら、もとよりいま大竹委員から御指摘のございましたような、裁判所職員である以上一般的な法律的な素養というものが全然なくていいわけでもございませんので、そういう面は、将来入りましてから種々の方法で研修その他指導をして、一般的な、基礎的な法律知識は与えるようにいたしたいと考えておるのでありまするが、しかしながら、主眼といたしましては、やはり法律的知識は、これはいわば裁判所における裁判官も書記官も十分すぐれておるという自負を持っておるわけでありまして、その特殊の方面での知識補助をしていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  14. 大竹太郎

    大竹委員 いままで高等裁判所、それから最高裁等では調査官制度があったわけでございますが、どう言ってお聞きしたらいいのかちょっとわからぬわけでありますが、率直に言いまして、相当実績があがっているかどうかということを念のためにお聞かせいただきたい。
  15. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいまのお尋ねの点につきましては、あるいは最高裁判所調査官関係と、高等裁判所調査官とを分けて申し上げたほうがいいのかと存ずるわけでございますが、最高裁判所調査官は、御承知のとおり実際上は大部分の者がいわゆる裁判官の有資格者でございます。そうして、何と申しますか、最高裁判所裁判官の持っていない知識を補充するという面はあまりないわけで、ただ、要するに下ごしらえ、準備をする。つまり法律家としては圧倒的に最高裁裁判官のすぐれておられることは言うまでもないわけでございますが、何と申しましても現在の最高裁では非常に多くの事件を能率的に処理しなければならない、しかもその中には、機械的に処理して足りるのではないかと考えられる点が相当あるわけでございまして、そういうものについていわば補助的な仕事調査官にやらせておるわけでございます。そうしてこれが能率をあげておりますことは、大審院当時の処理件数最高裁になりましてからの処理件数と比較いたしましても明らかであろうと思いまするし、また、いろいろ学界等から判例について御批判を受ける際におきましても、大審院判例の場合には、間々前の判例と抵触するのではないか、前の判例を見落としておるのではないかというような非難を受ける面がないでもなかったようでございますが、最高裁になりましてからは、結論の当否はともかくといたしまして、少なくとも調査不十分だというような印象を与えていない。この点は弁護士会でもお認めになっているんじゃないかと思いますが、従来どういう判例があったかということについて完全な調査をして、その上で判決がなされておる。この点は、やはり調査官の活動というものが非常にあずかって力がある、かように考えておるわけであります。  それから、高等裁判所調査官特殊事件調査官であります。これは、まさに今度お願いいたしております。地方裁判所調査官と同じ性格のものでございます。わずかに東京高等裁判所に数名いる程度でございます。しかしながら、これは特許庁からまいりますいわゆる審決に対する抗告というような、非常に裁判官としてはめんどうな事件をやっておるわけでございまして、その際に各種の専門的知識補助してもらっておるということで、現在高等裁判所には特許部というのがございますが、それの裁判官等に聞きますと、現在の件数を処理できているのは、やはりその調査官の協力が非常に力がある、こういうふうに申しておるような状況でございまして、相当な成果をあげておる、かように考えておるわけでございます。
  16. 大竹太郎

    大竹委員 次に、お伺いしたいのでありますが、地方裁判所には、今度は六人か採用をするということになっておるわけでありますが、法律の面から見ますと、「各地方裁判所裁判所調査官を置く。」というように、規定の上ではなっているわけでありますが、六人ということになりますと、主として東京とか大阪のように特殊事件の多いところに配置されると思うのであります。その配置先の問題、それからその運用方法というようなものについてお伺いしたいと思います。
  17. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いま大竹委員お話のございました点について、実は私ども折衝でこの予算が通りましてから、いろいろ各方面から、どうも裁判所のやることは非常に消極的で、六名じゃだめじゃないかというような激励を受けた面も多々あるわけでございまして、そういう点ではまことにどうも不十分であったかなという感じを持っておるわけでございます。しかし、何と申しましても、地方裁判所では初めての制度として、いわば制度の第一歩を踏み出すということで、あまり大ぶろしきを広げるのもいかがかというような気持ちから、かようなことになったわけでございます。そこでその六名が、しかもさらに租税関係特許関係と、この二つに分かれますと、自然それは三名ずつというようなことになりますし、なおまたこの特許関係では、化学機械電気というものは、相互に何と申しますか流用と申しますか、一人の人で二つのことをやるということもむずかしいようでございます。そうしますと自然特許関係化学機械電気、一人ずつというようなことになるわけでございます。また租税関係でも、民、刑、一応一人ずつというようなことになってまいりますと、東京地方裁判所だけでも最小限五人は要するというようなことでございまして、今回の場合は東京地方裁判所を中心に配置し、なお一人か二人はあるいは大阪地方裁判所にでも置くことができようか、かような程度の心づもりでございます。  その運用といたしましては、これは先ほど調査部長からお話がございました、この統計からまいりましても、特に工業所有権等につきましては、やはり圧倒的に東京件数も多いし、また事件もむずかしいわけでございますので、東京に配置することによって、従来のいろいろ不自由な点は相当大幅に改善されるであろう、かように考えておるわけでございます。しかしながら、そのほかの都市の裁判所にも、むろん特許事件がないわけではございませんので、そういう場合には必要に応じてしかるべく応援方法を考えてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  18. 大竹太郎

    大竹委員 いまの御説明にもありましたように、六人じゃ、卑近なことばで言うとなかなかはかがいかない、というお話であったわけであります。それで私のほうでお聞きしたいのは、いままでももちろんこういう事件があったわけでありまして、こういう調査官を置いて調査させるということは、わかっているのでありますが、そんならいままでは一体どうしておったのか、そしてまたこの手の回らぬところは、一点こういう事件に対してはどうして処理するのかということをお聞きいたしたいと思います。
  19. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まことにごもっともなお話でございますが、いままでどうしておったかということになりますと、結局は裁判官が非常に苦労をし、苦心をして処理していた、端的にいえばそういうことになろうかと考えるわけでございまして、たまたまここに参っております給与課長も、東京高裁特許事件をかなり担当しておられたわけでございますが、いろいろお話を伺いましても、専門参考書とかいうようなものを相当準備いたしまして、そうしてこれらを勉強する、こういうことのようでございます。しかもその勉強が、きょう化学勉強をすると、来週はまた機械勉強だというようなことで、それぞれまた特殊性がございまして、そういうことが非常にひまがかかる。これは勉強といっても、裁判官としても比較的そういうものに関心もあり、能力もあるような方がなっておられる場合が多いわけでありますが、それでもなおその勉強相当骨が折れる。そういう一から勉強しなければならぬことを、いろいろアシストしてもらえば、勉強がよほどスムーズにいく、こういうことが私どもの率直なねらいであるわけであります。今後はそういうことで、この調査官の置かれます地方に関しましては、そういうことは相当スムーズにいくのじゃないかと考えております。それ以外の地方につきましては、先ほど申し上げましたように、どうしても必要な事件の場合には、あるいは応援に行なってもらって補助してもらうというような場合も考えなければならないと考えておりますが、将来東京地裁における実績をも十分検討いたしまして、給源等をもにらみ合わせながら、増員等の点についても慎重に検討してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  20. 大竹太郎

    大竹委員 先ほどもちょっとお話がございましたが、この調査官制度というのは、臨時司法制度調査会意見によったというお話でございますが、この調査会意見書を拝見いたしますと、工業所有権、それから租税に関する事件というほかに、たしか会社更生事件等計算事件についてもというような意見が入っておりますが、将来会社更生法関係事件等についても置かれる意思があるのか、それからまた数もいま六人じゃなかなかはかがいかないというお話なので、相当数増員される御意思があるのかどうか、あわせてお聞きいたしておきたいと思います。
  21. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 ただいま御指摘のとおり、臨時司法制度調査会意見の中におきましては、特殊事件といたしまして、工業所有権関係事件租税関係事件とともに、会社更生事件をあげているわけでございます。ところが、会社更生事件につきましては御承知のとおり、会社更生法の中で必要な場合には調査員を置くことができるというふうな規定も一応ございます。それから実は会社更生法につきましては、法務省におきましても、これは改正する必要があるのじゃないかという考慮のもとに、ただいま法制審議会において検討中でございます。したがいまして今回は、調査官給源の問題ともにらみ合わせまして、さしあたって最も必要と考えられております工業所有権事件租税事件について、地方裁判所調査官を置くことにいたしまして、会社更生事件につきましては将来の検討ということに譲った次第でございます。  それから、いまひとつ御質問のございました将来の増員の問題でございますが、これは給源等関係もございまして、今回は六名ということにいたしてあるわけございます。将来その必要を勘案し、また給源を勘案いたしまして、必要に応じて増員の手配もいたしたいというふうに考えております。
  22. 大竹太郎

    大竹委員 次にお伺いしたいのでありますが、これは主として弁護士会あたり意見等にあるのであります。調査官制度というものを活用していただくことはもちろん非常にけっこうなのでありますが、先ほど来御説明にもありましたように、こういういわゆる法律勉強した裁判官が、率直に言えば基礎的知識もない工業所有権等の問題について調査官制度を活用するということになると、ともすると、あまり活用し過ぎると裁判の公正というものが害されるのではないかというような心配が弁護士会その他にないわけではないと思うのです。これらについてどうお考えになっております。
  23. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 ただいま御指摘の点は、非常に重要な問題でございます。実は臨時司法制度調査会におきまして、この地方裁判所における裁判所調査官の問題が審議されました際にも、一般事件についての裁判所調査官を置くかどうかということについてただいま御指摘のような問題が検討の対象になったように承っております。そこで、その結果一般事件につきましての地方裁判所調査官につきましても、やはり第一審の事実審として、いわばなまの事実認定をしていくというような、地方裁判所におきましては、やはりこのような種類の調査は本来陪席の判事補がこれをやるのが適当である、あるいはまた書記官の調査補助の権限によってある程度まかなえるのではないかというような御意見が出まして、結局一般事件についての地方裁判所調査官というものは検討問題ということにとどまったわけでございます。それに対しまして、特殊事件についての調査官は、現在裁判官がこの種の事件を担当いたします場合に、その特殊事件を審判するための特殊専門分野についての知識を得るために、非常な努力を重ねているというのが実情でございます。その点、いま寺田総務局長からも御説明のあったとおりでございます。これは新しい知識を得るために本もたくさん読まなければならぬ、文献をさがすということだけでもたいへんな努力だということは察するにかたくないのであります。そういう面から申しまして、やはり地方裁判所にも専門知識を補充するという意味裁判所調査官というものを置くのは、きわめて適切であるというふうな御判断のもとに、先ほど来申しております特別の種類の事件につきましては、地方裁判所調査官を置くのが相当であるという御意見が出ているわけでございます。そこで、私どもといたしましては一般事件につきましては、先ほど指摘のような問題もございますし、臨時司法制度調査会の御意見もございますので、なお今後の研究問題ということで検討を続けたいと考えます。さしあたり工業所有権関係事件租税事件に関する専門分野における裁判所調査官というものを地方裁判所に置こうということを考えたわけでございます。この専門分野における知識を補充するということでございますので、この専門分野の知識裁判官がかりに全部新しく設けられました裁判所調査官にまかせ切ってしまうというようなことにでもなりますれば、ただいま御指摘のような問題が起こるおそれもなきにしもあらずというふうに考えられるわけでございます。先ほど来申しましたように、現在では裁判官が非常な努力をしてその知識を習得している。そのためにおのずから勉強の期間もかかり、審理期間が延びてくるということも実情であろうと思いますので、その知識を従来よりも比較的容易に補充し吸収するということができるようにするための地方裁判所調査官でございますので、御指摘のようないわゆる調査官裁判というふうな弊害は、この種の調査官制度については心配はないというふうに考えている次第でございます。
  24. 大竹太郎

    大竹委員 いまの御説明でわからぬわけではないのでありますが、先ほども申しましたように、とにかくほとんどの裁判官法律を専攻した人であるわけでありますので、租税のほうは別といたしましても、工業所有権関係の問題については、簡単にいえばしろうとであるわけでありますので、専門的な知識のある調査官意見をうのみにするということになりがちだと思うわけであります。結論としてはこの五十七条の「事件審理及び裁判に関して必要な調査を掌る。」という、この規定運用に当たると思うわけでありますが、結局資料だけを出してあとの結論は裁判官の判断にまかせるということになればいいのじゃないかと思うのでありますが、具体的にこの規定をもう少し説明していただきたいと思うわけであります。
  25. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 大竹委員お話し重々ごもっとものことばかりでございます。結論的には、先ほど鹽野調査部長から御説明申し上げましたとおりでございまして、私どもも全くそういう趣旨でお願いしておるわけでございますが、少し砕いて御説明をさせていただきますれば、これは要するに運用にあるということになろうと思うわけでございます。いやしくも裁判が多少でも公正を疑われるということでは、裁判としては致命的なものでございます。私どもとしては真に公正であるばかりでなしに、公正であるということの信頼感を受けるということがきわめて大事であると常々考えておるわけでございます。したがいまして、こういう調査官のような制度運用にあたりましては、特にその点に戒心してまいりたいと考えておるわけでございますが、少し具体的なことを申し上げさしていただきますれば、要するにこれはたとえば重要な争点に関するというような問題は、当然その関係その他の法廷で公に出して討論して、そうしてその中から結論が出るようにやってまいる。これは従来ともやっておるわけでございますし、今後もやるわけでございます。その点で、たとえば先ほどちょっと申し上げました特許庁から参ります事件というようなものは、相当いわゆるそういう鑑定的な資料というものがすでに特許庁で準備されておるわけでございまして、また地方裁判所の一審でやりました事件の控訴事件特許関係のものにつきましても、これは地方裁判所で十分鑑定いたしておりますから、高裁ではすでに鑑定の必要がない程度に、そういう意味での資料は熟しておるわけでございます。しかしながら、そういう特許庁資料であるとか、あるいは鑑定書であるとか、そういうものをまず理解するについて、その基礎的なところでいろいろことばもわからない問題がある。これは実は私自身が非常に特許のほうに弱うございますので、例さえなかなかあげにくいのでございますが、ある裁判官はこういうたとえでお話になったのです。われわれ法律家の間では推定するということとみなすということなら、どういう意味の違いがあるかということは、だれに聞いても同じ返事が返ってくるはずなんです。ところが、だれに聞いても同じ返事が返ってくるものでも、特許関係のことではわからない。そういういわゆる公理と申しますか、争いのないような明白なことでも、専門的なことはやはり専門的な用語もあれば、専門的な使い方もあるそういうことでも補充してもらうことが非常に役に立つ。むしろそういう意味ではおそらく国語の先生が推定とみなすということがわからない場合に、法律家にちょっと聞けばわかることでも、それを本を読んでさすがとなれば、なかなか手間がかかるというふうな、そういうふうな意味合いがあるということを、高等裁判所のある裁判官の方が言っておられまして、なるほど私もそういうことかということを感じましたわけでございますので申し上げたわけでございますが、そういう要するに争点に重要な関係がある、それによって勝負がきまってしまうということではなくして、そこまでに行きますところのそのことばの説明とか、そういうようなものについて十分補助してまいる。そして、しかもそういうことは、できる限り外から見てそういう誤解を受けないように、公正に明朗にやってもらいたい。今後運用にあたりましては、十分その点について各裁判官のほうにお願いするつもりでおるわけでございます。
  26. 大竹太郎

    大竹委員 最後にお聞きしておきたいのですが、この問題を承っていろいろ考えるわけでありますが、そういたしますと、調査官が採用される場合においては、やはり相当のそのほうの知識があるということ、また一面相当の経験も必要であるというふうに考えられるわけでありますが、そういたしますと、先ほどもちょっと御説明がありましたように、待遇の面において相当厚くしないと、いま言ったような適当な人が見つからぬということになると思うのであります。さっきの御説明だと、たしか二等級待遇というお話でございますが、二等級といわれてもちょっとわからぬのですが、金額にして具体的にどのくらいになるのでございますか。
  27. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、二等級ということでございまして、大体金額にいたしますと六万円から九万円くらいだということでございます。なおそれに若干の手当もつくことになるわけでございます。そこで、六万円から九万円と申し上げますこと自体が、必ずしもまた議員の先生方にはぴんとまいらない面があろうかと存じますが、先ほどちょっと申し上げました、要するに本省の課長クラスということでございますし、それからなお特許庁なんかに比較いたしますと、審判官が大体その辺のところにおられるということでございますので、金額が六万円でどうかというお話もあろうかと思いますが、公務員としては相当な待遇であるということは御了解いただけるかと考えるわけでございます。
  28. 大竹太郎

    大竹委員 そうすると、判事さんにするとどの程度になるのですか。
  29. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 判事の一番下のところが大体九万円を少しこえるくらいのところでございますから、十年間たって、つまり判事補を十年やりまして判事になりますときに、大体九万幾らというようなことでございます。したがいまして、判事補よりは上、判事よりは下というふうなくらいになろうかと思います。
  30. 鍛冶良作

    鍛冶委員 関連して。先ほどから聞いておるが、どうもまだわからぬところがある。どういうことをさせるのだね。もっと簡単に、むずかしいことでなくて、率直に、具体的に判断が足らぬものだからその判断を補充してくれという意味なのか、何か個々の問題が出たら、それについてこういうことを調べてくれ、こういうことを調べてくれというので、そういう資料を出すのか、それとも大きな知識裁判官へ与えることをつとめるのか、何かあなたのほうの頭にあるだろうと思うのだが、その点ひとつ聞かしてもらいたい。
  31. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 どうも私の説明が非常にまずくて、御理解いただけないのははなはだ恐縮でございますが、いま鍛冶委員お話の中の判断の補充かというお話、これは毛頭そういうことはございません。判断を少しでもさせようという気は毛頭ないわけでございます。結局その一番のねらいは、たとえば鑑定書なら鑑定書——その前に、そもそも訴状が出てまいります。その訴状に使っておりますことばそのものの意味が、すぐわかるというわけにまいらないのが実情のようでございます。これはどういう意味なのか、そのことは、実は先ほどちょっと申し上げましたように、だれに聞いても、たとえば化学専門家なら同じ答えをしてもらえる。たとえばこの本のどこに書いてある、しかし特定の本の一カ所だけに書いてあるという場合もあろうと思いますが、この本とこの本とを総合して理解すると、こういうことになるという、そういう若干の差異はあろうかと思いますが、結局そこに書いてあること自体の意味を理解することについても非常に苦労をして、いろいろな本を調べて勉強していく。そのときに、たとえばこの本を読めばわかるとか、あるいはこれはこういうことであるとかは、化学専門家ならはっきりしていることだ。この現在のあれからいって、こういう推理になるということはもう自明の理として出てくる、そういうような問題がそれぞれの分野にあるわけでございます。そういうことで、そういうことをそばにいていろいろ教えてもらうと申しますか補助してもらう、説明してもらって、そしてまず訴状を納得する、それから答弁書を納得する。それからその訴状、答弁書をいろいろ手控えその他を整理するにつきましても、普通の事件ならば、たとえば判事補の人に整理してもらうことも簡単でございますし、あるいは書記官にやってもらう場合もあり得ようと思いますが、すでにそういう表をつくったり何かしますこと自体が普通の裁判所職員ではできませんので、そういう表をつくってもらう、そしてそれによって理解しやすくしていく、こういうような、いろいろかゆいところに手の届くようなことで補助してもらいたい、こういうことでございまして、実際に私この種の事件はあまり多く扱っておりませんので、具体的な説明がまことにまずくて恐縮でございますが、いろいろ実地にやっております裁判官から聞きますと、そういうことになるわけでございます。判断そのものは、これは従来から、かりに鑑定書が出ておる場合でも、それはわからないならわからないなりに、といっては語弊がございますが、とにかく鑑定の結果を、どちらが正しい、あるいは鑑定の中のこの部分とこの部分が正しいと判断するその判断そのものは、あくまで従来とも、また今後とも、裁判官が自己の良心に従ってやるわけでございます。そこまでまいりますまでのひとつの事務的な、いろいろなことばその他の補助、こういう考えであります。
  32. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、裁判に関する判断は絶対にない。判断の資料とまでいかぬので、その中にあらわれておる専門的の知識を補充してもらうために用いるもの、こう考えてよろしゅうございますか。
  33. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 大体端的に申せば、お話のとおりでございます。
  34. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その次に、給源ですが、この間から特許法改正に関する問題が出ておりましたので、われわれも相当勉強させられた。そのときに、特許庁で一番言うのは一いま問題になっておるのは、特許庁でもって事件がふえたのだから、もっと人間をふやして、それでもっと丁寧に審査すればいいのだと言ったら、それは不可能だと言う。人を得られません、こういうことを明瞭に答えておりますよ。その特許庁からあなた方のところへもらおうというのは、これは不可能なことだと思うのですがどうですか。何か話でもして、大丈夫見当ついたのですか。大竹君も一緒なんだが、この間の特許庁の答弁からいうと、これ以上ふやすということは不可能だ、こう言っているが、いわんやよそへ人を分けてあげるなんということは考えられないのだが、それはどうなんです。
  35. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 そういうお話をいただきますと非常に恐縮するわけでございますが、ただこれもいろいろそのようなことがあろうと思います。たとえば現在裁判官が非常に不足しておる。弁護士からおいでいただけばというのに、むしろ裁判官からやめて弁護士におなりになる。弁護士から裁判官においでいただけばといっても、なかなかおいでいただけないということと少し話は違いましょうが、現在でもたとえば高等裁判所特許庁から若干おいでいただいておるわけでございます。これはおいでいただいておるという表現があるいは妥当でないかもしれませんが、特許庁育ちの方で、東京高等裁判所調査官におなりになっていただいているお方があるわけであります。これはあるいは特許庁からいわせれば、ああいう裁判所のようなところへ人を出さなければ、それだけの人数が向こうで確保できるというお話になろうかとも思いますけれども、これはまた御本人にすれば、特許庁より裁判所のほうが働きいいということかもしれませんし、そこはお互いによく話し合いまして、そして足らないものを分け合っていくよりしようがないと思いますが、現在、現実に数名はそういう方が高等裁判所におられるわけでございます。これを三人くらいふやすということは、それほど困難ではないのではないか。そこで、本来私どものほうとしては、あるいは大阪に赴任してもらえば六人もほしいわけですが、はたして大阪に赴任していただけるかとか、その人がやれるかということもあって、そういうことを勘案しながらこの制度を進めてまいりたいというようなところが本音でございます。三人くらいということばは妥当ではございませんが、三人おいでいただくことについては可能ではないかと考えておるわけでございます。なお、特許庁だけが、あるいは特許庁御出身の方だけが給源と考えておるわけでもございませんので、あるいは大学等で、大学のほうはやめて裁判所へ入ってみようかとお考えになっていただく方があれば、これは大いに歓迎するところでありまして、何とかくふうしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  36. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それからもっと根本問題ですが、なるほど裁判官として持たない知識を補充してもらう、これは必要でございましょう。かようなことを考えますと、たいへん広い方面に頭が向くのです。工業所有権、税法、その次に考えられるのは医学に関する問題、これはおそらくなかろう、これらはどうされるのか。その次に考えられるのは交通事故に関する問題しかも鉄道、汽船、自動車、進んでは飛行機、この間の全日空事件のごときものは、ちょっとそこらの人を頼んできて説明を聞いたぐらいではいかぬものだ。そういうふうに考えてみると、いまあなた方が考えておられるようなことで、知識を補充しなければならぬものだとするならば、今後もっと補給しなければ裁判ができないという問題が多々出る。そういうことになったら、裁判をやめますか。それともどういう方法裁判をやられますか、大問題だろうと思うが、いかがですか。
  37. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 制度の問題に入ってまいりますので、裁判所のほうでお答えしていいのかどうかも疑問でございますが、私どもの考えとして申し上げますれば、これは理論的に一体、たとえば交通事故の問題、あるいは医学の問題と特許とどっちがより専門的であり、より理解困難かというお尋ねを受けても、それを理論的に説明することはなかなかむずかしゅうございますし、どういうふうに申し上げていいのか考えるわけでございますが、ただ私どもが実際実務に当たっております場合に、医学の場合にいたしましても、交通事故の場合はなおそうでございますが、医学のほうは交通事故の場合よりはやや専門的かと思いますけれども、しかしその医学のことばそのものが、全然理解できないということは比較的少ない、これもないと申し上げては僣越になろうかと思いますし、むろん鑑定その他をやっておりますが、鑑定をやってもらって、その鑑定書そのものさえ理解できないということのケースが、少なくとも特許なんかよりは少ないような感じを受けるのが実感でございます。しかしながら、そう申し上げましても、将来ますます医学は専門化するわけでございましょうし、その他すべての科学が分化して専門化していくわけでございますから、その分化した、専門化したもののそれぞれについて、知識の補充を要しないかというおしかりを受ければ、あるいは将来ともそういうことを全然不要だとまでは断言できないわけでございますが、現在の段階で私どもが痛切に感じておりますものは、やはり工業所有権事件が第一でございまして、これは実感でございますし、おそらく裁判所はそういうことをみんな考えておるのではないか、それはあるいは事件数等とも関連があるかと思います。非常にそういう事件がふえてまいると、この種の事件についてもなかなかたいへんだという実感を受けるようになることもあるかもしれませんが、現在の実感としては、私ども工業所有権事件が一番理解が困難なものが多いような印象を受けておるわけでございますし、そういうところが臨時司法制度調査会意見書等にもあらわれたきっかけではないか、これでお答えになっておるかどうかわかりませんが、さように考えるわけでございます。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは、事件の多いのはそうだが、補充してもらわなければならぬ知識を要求するものは、私は、先ほど言ったように、飛行機などの事故がたいへんだろうと思う。事件が多いから——そこがわれわれのほうで注意してお聞きしたいところなんですが、事件が多いものだから、早く片づけるのにそれを手伝ってもらうのだということになると、これは考えなければならぬ。そうじゃない、知識がないから、こう言われるので、それではやむを得ぬ。事件を早く片づけるようにするというんだったら、裁判を手伝ってもらったらいい。それを私は注意して申し上げている。なるほど、幾ら裁判官といえども全知全能でないんだから、そういうことはないと言われるかもしれないが、それよりも私は根本的には、やむを得なければ補充を得なければならぬし、鑑定も得なければならぬが、いやしくも裁判官となった以上は、裁判所にあらわれてくる事件に対して、裁判所では必ず専門知識を持っておるんだ、このプライドを裁判官に持たせることが一番じゃないかと思う。よそから引っぱってくる、これはやむを得ないから引っぱってくる。だから今後はひとつ裁判所においても、こういう事件が出てくる以上は、裁判官全部にこんな知識は持ってもらう必要はなかろうけれども、特に興味のある人、特に研究心の強い人に特別の研究をしてもらったりして、なるべくこういうものはよそから連れてこぬことが根本だと思うが、これはどうですか。
  39. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まことに鍛冶委員お話のとおりでございますし、また事実私どもも従来ある程度のそういう努力もしてまいっておる面があるわけであります。現に東京高等裁判所東京地方裁判所特許部裁判官の方、ことにそれを数年やられた方は、かなり特許庁の人なりその他と対等でものが言える程度まで専門的知識をお持ちになるまでに至っておるわけであります。ところが、そうなるまでに非常な努力もされ、年数もかかり、それがひいては——御本人の努力なり骨折りだけならばかまいませんけれども、かまわないといえるわけでございましょうけれども、そのことがひいては、その努力をする間にやはり事件処理の遅延、それもほんとうに争うべき争点のために遅延したのではなくて、裁判官勉強するために遅延する。それであれば、もう少し手っとり早く勉強する方法がないであろうか。こういうようなことも一つの観点でお考えいただきたいわけであります。先ほども申し上げましたように、従来はいろいろ書物を研究したわけでございます。今後も書物の研究を、全然不要というわけにはまいらないと思いますが、書物を研究するについて、それを補助してもらえば、その研究がよほど容易になるであろう、こういうことでございます。そういう意味でございますから、あるいはこういうふうに申し上げれば一番おわかりいただきやすいかと思いますが、極端に申し上げますれば、特定の事件に全然関係なしに、およそ通常出てくるであろう一つの方式といいますか、専門的なものについて、これはこういうことであるという一般的な公理を、平生説明しなくてもいいというところまで、現在の特許部裁判官の数名の方は達しておられるわけでありますが、その達する期間を少しでも早くしたい、こういうところもねらいになっておるわけでありまして、先ほど指摘の点は私どもまことにそのとおりと思うわけであります。どんな事件がこようと、常に裁判所は受けて立つという自負を持って臨みたい、そういうつもりで、これは一つはそういうことについての補助的手段と考えておるわけであります。
  40. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこで最後に申し上げたいのは、先ほど末申しましたように、裁判補助するのではありませんよ。裁判所に来て専門知識の講演をするとか、専門知識資料を出しておるだけであって、決して裁判をやるものじゃない。裁判補助もやるものじゃない。われわれは先ほどからこう念を押しておるのです。事件が多いから連れてきて、早く裁判を片づける手伝いをしてもらうということになると、だいぶ話が違ってくる。私は、そういうことでないことをまずだめを押しておきます。  そこで申し上げたいのは、これはこの前から私は言うんだが、往々にして、裁判所に入ってきますと、裁判所に五年おったんだから、これは裁判官にしてくれ、裁判の経験があるから裁判官にならなければならぬ、これはいままでの経験上出てくる。われわれは、どうしてこういうものが出るんだろうと思うのに、裁判所がこれに賛成したり、法務省がこの提案をせられたりするのだが、このたびはそういうことのないことを私は念を押すのですが、どうですか。そういうことがあるのなら、ここで私は考えなければならぬが、いかがですか。
  41. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますとおり、今回新設される地方裁判所調査官は、法律の分野の専門家ではないわけでございまして、機械電気等の専門家ないしは簿記、会計の専門家というものでございまして、この面の知識を活用しようというために、この調査官制度を設けるわけでございます。したがいまして、この調査官になります人たちは、そういう分野の専門家でございまして、決して裁判専門家ではないわけでございます。もちろん長年裁判所調査官をつとめてまいりますれば、おのずからある程度裁判についての知識を得ると思いますけれども、何ぶんにも法律知識ではないわけでございます。この新設される調査官制度は、専門分野の調査官がすぐ裁判官になるような道を開く、かようなことはただいま考えておりません。
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どこまでもこれは技術家として入られるのですから、技術家としての尊重は必要だと思います。したがいまして、昇給も必要であろうし、やらなければならぬ。そして非常に働いてもらわなければならぬと思うが、長くおれば裁判官になれるものだという考えだけは、ここであなた方も持ってもらってはいかぬし、われわれもそういうことならば、これはやめてもらわなければならぬと思いますが、そういうことのないよう、ここで念を押しておきます。私は何も入ってくる人に、特別の考えを持って言うのじゃありません。われわれは、いやしくも法律家というものは、ローヤーというものは、そういうものじゃないのだ。ローヤーはローヤーとしての進み方があるのだと思うのに、どうもよそから入ってきて変なことをして、せっかくの秩序を乱すようなことが多々あるものですから、この点だけはよく申しておきます。そういうことのないようにひとつ記録の上にしっかりとどめておいていただきたいと思います。
  43. 大竹太郎

    大竹委員 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、まず最初に基本的な問題を一点だけお尋ねしておきたいと思うのであります。  この臨時司法制度調査会意見書を拝見いたしますと、ちょっと読み上げますと、「裁判官増員については、わが国の法曹人口が少ないところから、その給源には限界があるのみならず、裁判官の質をできる限り高いものとすることを理想とする以上は、無条件に増員を推進しようとすることには問題がある。したがって、訴訟遅延の原因となっているといわれる裁判官の負担過重の解消のためには、直ちに裁判官増員という方策にたよることなく、まず他の適切な施策を講じた上、必要な裁判官増員を考慮するのが望ましいと考えられる。」というふうに指摘しておるわけであります。もちろん先ほど来問題になっております調査官制度のごときは、まずその一つのあらわれであると思うわけでありますが、そのほかいろいろ裁判官の負担の軽減、あるいは裁判の促進というものにはいろいろな手段があると思うのでありますが、それらについて具体的にひとつ御説明を願いたいと思うのであります。
  44. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 裁判所自体の問題でございますので、便宜まず裁判所のほうから意見を述べさせていただきたいと思うわけでございます。  いま大竹委員の御指摘のとおり、臨時司法制度調査会意見書には、御指摘のような説明がございますし、おそらく私どもも従来、この法務委員会でもそういうようなことを申し上げたこともあるのではないかと考えておるわけでございますが、私ども自身が、やはりこれは臨司でも申し上げたことでございますが、裁判官増員というものが一番最初の方法であるということは問題ではないか、むしろ、少し極端な言い方をすれば、最後の問題である。他にいろいろな方法をとって、それでもなおかつ負担が軽減されないというときに、裁判官増員を考えるべきではないかというふうな考えを持っておるわけでございます。と申し上げますのは、先ほども御指摘のありましたとおり、給源の問題もございますし、待遇その他の問題もあるわけでございます。そこで、定員をふやしていただいても、すぐ実員がふえるものでもございませんので、そういういろいろな点から、施策を考えてまいりたいというわけでございますし、現に、先ほど大竹委員から御指摘のありましたすぐあとに、臨司の意見としては、こういう点を考えるべきだという具体的な提案もあるわけでございます。しかしながら、それらの問題について、一部のものはすでに国会で御審議をいただき、認めていただいたものもございますが、必ずしも十分にまいっておらない面もあるわけでございます。しかしながら、まず、いまの補助機構の問題につきましては、これは先般来いろいろ増員もしていただいておりますし、また、今回のこの法案にも掲げていただいておるわけでございます。なお、裁判所以外のこととしては、いろいろ弁護士会等の問題についても提案が出ておりまして、そういう点で、最近では弁護士会とも話し合いの機会を持って、いろいろ前向きに検討しておるわけでございます。  それからなお、物的面につきましては、これは大竹委員つとに御承知のように、昨年の国会でいわゆる研究庁費というものを認めていただきまして、そのために、一度東京地方裁判所の刑事部にでもおいでいただければよくおわかりいただけると思いますが、各裁判官室に、ある程度の調度品も入れていただき、また、図書も相当に充実させていただいたわけでございます。そこで、いわゆる宅調廃止という面からいいましても、現在では相当な程度までこの廃止の方向に進みつつあるわけでございまして、そういういろいろな合理化の問題につきましては、いま御審議いただいております予算案においても、相当に計上していただいておるわけでございます。  ただ、若干おくれておりますのが、いわゆる制度面の改革でございまして、たとえば簡易裁判所の事物管轄の拡張の問題であるとか、あるいは裁判所の配置の適正化の問題であるとか、こういう問題については、何ぶん事柄が非常に重大でもございますし、各方面の御意見を十分伺ってまいらなければならないというような面から、若干おくれでおる面はござましょうが、しかし、その間にありましても、先ほどちょっと申し上げましたように、たとえば特殊事件の集約的処理という面では、立法化も、いまいろいろ法務省とも相談はいたしておりますけれども、立法化というのはなかなか検討すべき問題をたくさん含んでおりますので、その前段階として、事実上の特殊部というものを各裁判所に相当大幅につくりまして、そういうところで、いわば専門的な処理をするという方向には、運用面として進んでおるわけでございます。  その他、たとえばいろいろ協議会等で手続面の運用上の改革についてもいろいろ検討し、また、施策が行なわれておるわけでございまして、そういう意味におきまして、臨司で提案されております事項は、制度面の問題は、やや検討の段階にあるわけでございますけれども一般的には相当に施策が進んでまいり、そのおかげで、裁判所の事務の処理も、従来よりはかなり円滑にいく面が出てまいっておりまして、そういうことによって、増員の必要数というものをある程度少なくてとどめることができるというような面も出てまいっておるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  45. 大竹太郎

    大竹委員 次にお尋ねしたいのでありますが、今度の改正は、高等裁判所において判事二十七名、それから書記二十七名を増員しようということになっておりますが、資料も出ておりますけれども高等裁判所事件の処理状況をこの資料によってひとつ簡単に御説明をしていただきたいと思います。
  46. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 お手元に差しあげてございます法律案参考資料でございますが、そのうちの高等裁判所関係は六表、八ページでございます。  八ページの第六表に、高等裁判所民事、刑事の新受、既済、未済件数を、昭和三十二年と三十六年と三十九年、三年間について並べて、その状況の変化を明らかにしているわけでございます。簡単に御説明いたしますと、まず訴訟事件が最も問題になると存じますが、民事につきまして、訴訟事件昭和三十二年には合計で八千八百六十七件が新受、それが三十六年になりますと九千四百五、それからさらにそれが三十九年になりますと一万四十一というふうに増加いたしているわけでございます。この増加状況にならいまして事件未済も三十二年には一万一千七十五でございましたものが、四年後の三十六年には一万三千五百四十六ということになりまして、さらに三十九年には一万四千六百二十七というような状況になっているわけでございます。  それから、下の欄に刑事が掲げてございますが、刑事のほうも、増加状況は多少ないようでございますが、訴訟の点を見ますと三十二年の新受の一万二千四百五十件、それが一万二千六百九十九と三十六年に上がりまし、それから三十九年は一万二千四十六と多少下降しているわけでございます。これに対して、未済の点が、訴訟につきまして四千六十六が三十二年でございました。これが三十六年には五千四百二十三となり、三十九年には五千六百十三というふうに増加しておるというような状況でございます。  それから、審理期間状況でございますが、これは同じ資料の十二ページの第十表をごらんいただきたいと思います。これも民事、刑事の通常訴訟の既済事件につきまして、前と同じく三十二年と三十六年と三十九年の三年間を対比したものでございます。各高等裁判所ごとに東京から高松まで掲げてございますが、一番下の全国平均をごらんいただきますと、昭和三十二年の全国平均の民事の既済事件の平均審理期間が十三・四カ月ということでございます。それが三十六年には十六・四カ月に長くなっている。それから、三十九年にはさらに十七・五カ月というふうに、さらに長期を要するものとなっているわけでございます。これに対しまして、刑事関係は全国平均、三十二年で五・〇カ月、これが三十六年になりますと、五・三カ月、三十九年になりますと六・三カ月ということで、民事も刑事も数年間の間にかなり審議期間が長期化しているという状況が見られるわけでございます。
  47. 大竹太郎

    大竹委員 次にお尋ねしたいのでありますが、この表を拝見いたしますと、現在、判事の欠員が三十三人、判事補が二十九人、簡易裁判所判事が七名、これはたしか二月一日現在でそういうことになっておるわけでありまして、相当の欠員があるわけでありますが、今度二十七人をふやすということになりますと、この給源がいつものように非常に問題になると思うのでありますが、これは見通しはついておるのですか、どうですか。
  48. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 毎度、裁判官の欠員補充のことについては、法務委員会でも御心配をいただいておるわけでございまして、私どもが大蔵省と予算折衝いたします際に、最も問題になりますのはその給源の点であるわけであります。ただ本年に関しましては、これは私どももいわば相当大きな顔をして説明させていただけるというわけでございまして、と申し上げますのは、判事補から判事になるべき人がいま相当大ぜい待機しておる状況でございます。そういうことが予算折衝にもさらに迫力を持ちまして、二十七人認めてもらうことができたというのもそこら辺に関係があるわけでございます。いま御審議いただいておりますこの法案で二十七名増加していただきますれば、現在ありますところの欠員が三十三名で、これと合わせますと六十名ということでございますが、さらに若干はこの表をつくりました以後にも定年退官者等がございまして、大体七十名程度のものを、四月一日に補充するという見通しを立てておるわけでございますが、ちょうど判事補から判事になります者が七十名ほどあるわけでございます。そういう意味で。ちょうどぴったり判事補から判事になる人でこれが埋まるということであるわけであります。なお若干は弁護士からおいでいただける方もあるようでございますが、これらは四月中にもさらに定年退官者等があったりいたしまして、そういうところへ埋めていくというような関係にもなってまいるような見通しになっておるわけでございます。そこで判事のほうはそういうふうな形で、ことしは給源については非常に安心できる状態でございますが、さらにそれに基づきまして、今度は判事補に相当欠員ができてくる、ひいては簡易裁判所の判事がどういうことになるかということになってまいろうかと思うのであります。  ついでにその点も御説明さしていただきますれば、判事補と簡裁判事は、定員上はある程度流用、ことばは妥当でありませんけれども、判事補から簡裁判事になってもらったり、また簡裁判事から判事補になってもらったり、これは地裁、簡裁がいろいろ関係があるわけでありますので、両者を総合いたしまして欠員として考えてごらんいただけばいいかと思うわけであります。そういたしますと、この法務省から出していただきました表では、判事補と簡裁判事と合わせまして三十六人の欠員、こういうことになっております。そこへいま申し上げました七十人程度のものが判事になるということになりますと、それを加えますと大体百名余りの欠員が判事補と簡裁判事の面でできるということになるわけでございます。そしていま司法研修所におります修習生で判事を志願いたしますもので、大体採用が可能であろうと一応見通しとして考えられておりますのが七十数名あるわけでございます。この数字はむろん確定的なものでございませんので、途中であきらめる人もありましょうし、またやはり判事になりたいという人もあろうかと思いますので、ぴったりした数字で申し上げられませんが、大体七十数名は固いという数字でござます。そうしますとあと二十数名が全体としての欠員になるわけでございますが、これは判事の定年退官者、あるいは特任の試験の合格者あるいはその他そういうような人々で簡裁判事の面を補充してまいるということで、大体これも補充の見通しはついておるわけであります。そういう見通しでございますので、判事、判事補につきましてはもう全然心配がないし、簡裁のほうはいろいろ本人の資格その他もございますので、今後の問題がございますけれども、そういう形で考えてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  49. 大竹太郎

    大竹委員 次に、判事のほかの職員についてでありますが、これもこの表によりますと、裁判所の書記官百二十四名、家裁の調査官は二十三名が欠員、それから裁判所調査官が十五人というふうになっているわけでありますが、今度の増員関係からいたしまして、やはり補給源についてのお見込みはいかがですか。
  50. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 御指摘の書記官の点につきましては、この表に出ております百二十四名と、それから二十七名増員いたしていただきますれば百五十名、それにさらにこのあとでも若干の欠員の伸びというものを全体を見通しまして百五十名ないし二百名近い欠員になるわけでございますが、これはちょうどこの春、書記官研修所の一部と二部を卒業いたしますもので大体埋まる、こういう見通しでざいます。それから次に、家裁の調査官は、いま二十三名の欠員でございまして、これに今度二十五人増員いたしていただきますれば、五十人足らずの欠員になるわけでございますが、これまた、ちょうどこの春、家庭裁判所調査官研修所を五十名程度卒業いたしますので、これで補充できる、こういうことで大体の補充の見通しを立てておるわけでございます。
  51. 大竹太郎

    大竹委員 次に、家裁の調査官についてお尋ねしたいのでありますが、家裁の調査官はこれで二十五人ふやすということになっておりまして、この理由としては、少年の保護事件が最近ふえたということが理由になっておるわけでありますが、これも資料は出ておるようでありますけれども、簡単にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  52. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 少年の保護事件につきましても、資料はお手元の参考資料の十一ページ、第九表でございます。これは家庭裁判所の家事事件と少年事件の新受の状況を記載したものでございまして、家事審判事件につきまして、先に申し上げますと、三十七年、三十八年、三十九年の状況が出ております。合計数で、三十七年が三十万七千二十九、それが三十八年になりますと、二十八万五千七百九十、三十九年には、二十八万千四百七十五、こういう状況でございます、これに対しまして、少年保護事件のほうは非常に激増いたしております。少年関係のうちの一番上の欄が少年保護事件でございます。三十七年が九十七万四千六百五十、それから三十八年が九十七万三千八百四、それから三十九年になりますと、百四万五千七百三というふうな数になっておるわけでございます。これは御承知のとおり、いわゆる道交事件、道路交通法違反事件が含まれているわけでございます。これを除きまして、その他の刑法犯、特別法犯というものだけを抜きまして、この表に書いてございませんけれども、概数を申し上げますと、三十七年には二十一万程度でございました。それが三十八年には約二十二万五千というふうになりまして、三十九年には二十四万ということで、三十七年の二十一万から二年後の三十九年には二十四万というふうに増加しております。こういう状況で、少年事件につきましては御承知のとおり非常な増加状況にあるわけでございます。
  53. 大竹太郎

    大竹委員 この家裁の調査官はいろいろ問題があるわけでありますが、申し上げるまでもなくこの家裁の調査官は、たとえば医学であるとか心理学であるとか、いろいろ各方面知識が必要だろうと思うわけでありまして、さきの地裁調査官と同じことで、人を得るということが非常にむずかしいわけであります。これはもちろん待遇にも見合う問題でございますけれども、非常にその人を得ることが大事である一面、また人を得ることがむずかしいというふうに考えられるわけであります。  それで、ことしの二月十六日の朝日新聞をごらんになったかどうかわかりませんが、家裁の調査官の人が新聞の投書欄に出しておるわけであります。これはまあ実務に当たっている人でありますので、非常に調査官実情というものを短い文章でありますけれどもよく表現しているのではないかと思いますので、へたな質問をするよりこれを読んでこれについてお答えいただいたほうがやりいいと思いますので、短い文章だから読んで見ますので、お聞きいただきたいと思います。「石井法相の発言が、きっかけとなって、またもや少年法改正問題が論議されるようになった。しかし相変らず「刑罰主義」「保護主義」という抽象的な言葉で法務省と最高裁が争っているという印象を受けることは、少年法の実務の第一線で働いているわれわれとしては悲しいことである。少年法改正問題は検事、判事など司法関係者だけのものではない。学校の補導担任の教師、少年係の警察官、保護司、少年院の教官、家裁調査官など多くの現場職員が少年問題にたずさわっている。そしてそのどれもが、その職場では日の当らない片すみで仕事をしている。少年院、鑑別所、観察所などの現場職員は、法務省の他の機関(たとえば検察庁)に多くの予算をとられ、貧弱な人的、物的設備のもとで働いている。最高裁でも伝統的な地裁優先主義のため家裁はあらゆる面で、しわよせを受けている。そこでは少年審判の多くは、少年といくらも年の隔たりのない地裁兼任の判事補の手に委ねられ少年、保護者の納得をうる審判というには程遠いものがあるというのが現実である。そのため心理学、社会学等の専門的な面で、少年問題解決に協力しようと少年院、鑑別所、観察所、家庭裁判所に就職した専門家達のなかには、無力感におそわれ他に転職するものが少なくない。検事さん、判事さん、あなた方の下で少年やその家族と日夜接触し、なだめたり、すかしたり、時には自分でもどうしたらよいかわからなくなって、何もかも投げだしたくなるのを、じっと我慢しながらがんばっている現場の職員の悩みに、もっと耳を傾けてほしいと思います。」という、これは名前まで書いて、家裁調査官、三十九歳というのがあります。これを簡単に言いますと、結局裁判所は、いわゆる地裁中心主義で、家裁というものに悪い面のしわ寄せがされているということ。それから一面はまた、調査官というものはあらゆる面で現場で一番苦労しているんだけれども、一番目の当たらない仕事をさせられているということだろうと思うわけですが、これらについて、調査官待遇その他、それからまた、したがって調査官の採用その他についてもお考えがあると思いますが……。
  54. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 先般、私どもの家庭局で少年問題についての資料を発表いたしましたことに関連して、いろいろジャーナリズムで取り上げられ、二、三裁判所職員の投書等もあったように存ずるわけでございますが、いま大竹委員の御指摘の投書は、その中の一つであろうと存ずるわけでございます。私も当時それを読んだ記憶を持っておるわけでございます。  まず、家裁の調査官待遇の問題でございますが、これは先般、予算委員会等でもいろいろお尋ねも受けたわけでございますけれども、現在の家庭裁判所調査官待遇は、一般公務員としては、これは相当高い待遇というふうに申し上げていいのではないかというふうに考えておるわけでございます。調査官補は別といたしまして、調査官になりますれば、もうすでに、すべて五等級ということになるわけでございます。なおその後主任調査官ということになりますと、四等級から三等級、二等級というところまで行けるということになっておるわけでございます。この点を、試みに同じ補助職員であります書記官と比較いたしましても、書記官の場合は、たとえば六等級というような者もあるわけでございますが、調査官はすべて五等級以上ということでございますし、また主任の関係におきましても、主任書記官は、三等級から五等級ぐらいまであるわけでございますが、調査官では、むしろ二等級から四等級というようなことで、少し高い。一番高い首席調査官なんかについて見ますと、これは一等級ということで、本省の局長クラスという待遇になるわけでございます。首席書記官にはそういうものはないわけでございますので、そういうような比較におきましても、部内でも家庭裁判所調査官を冷遇しているというようなことは、この待遇問題自体から、決してないわけでございます。  ただ、しかし、おそらく調査官の諸君が待遇について不満を持たれるとしますれば、これはそういう自己の収入の問題よりも——それもございましょうけれども、それよりも、何と申しましても家庭裁判所というものは、裁判所の中における新しい店でございます。地方裁判所はしにせでございます。そういたしますと、これは私どもとしていろいろ努力もし、やっておりますけれども、実際問題として、やはりしにせのほうが何となく高いような印象を受けるという面がどうしてもないわけではありません。これは私どもだけではございませんで、端的なことを申し上げて恐縮でございますけれども、どうも地方裁判所長のほうが家庭裁判所長よりも上だというようなことを世間でいう、こういうようなことが全体に何となく家庭裁判所というものが冷遇されておるような印象を与えるわけでございます。しかしながら、実際の中における職務から見ますると、これは決して書記官が低いとか、調査官が高いとかいうことを申し上げるわけではございませんけれども、書記官は何と申しましても裁判官の法廷における活動について、補助事務といいますか、調書作成というところが主でございますけれども、同じ補助事務と申しましても、家庭裁判所調査官の活動する分野というものは相当広いわけでございますから、そういう点ではむしろ大いにプライドを持って仕事をしていただけるような職場であろうと私どもは考えておりますし、また多くの調査官諸君は、そう考えてやってくれておるのではないかというふうに考えるわけでございます。ただ、何ぶんにも、御承知のとおり裁判所の建物は全国的に見ますと非常に古いものもたくさんございますので、そういう場合に、家庭裁判所調査官の諸君に十分な仕事をするカンファタブルな部屋を与えるという面では、おそらく不十分な面が多々あろうと思いますが、これも最近では、たとえば東京家庭裁判所が落成をすることに近々なっておりますので、そうなりますれば、調査官の諸君も相当いい部屋に入って仕事ができる、そういうふうに逐次改善してまいりたいと考えておりますし、なお、先ほどちょっとお話の出ました中に、判事補の諸君が少年事件をやっておるという面につきましても、これは私どももかねてからその点を痛感しておりまして、現在の法律では、少年事件は、修習生から判事補になりますと、すぐにでも処理できる、法律の上ではそうなっておりますけれども、こういうことは妥当ではございませんので、一定期間は実際上家庭裁判所に配置しないという方針をとりまして、その方針で、まだ若干、従来からもうすでにおいでになっておる方の中に、若い諸君もおられますが、逐次転任等の際には、ほんとうに若い諸君は、家庭裁判所のほうには配置しないという方針で進んでおりますので、そういう点でも逐次改善してまいるというふうに考えておるわけでございます。  いろいろ御指摘の点ごもっともな点、も多々ございますが、そういうことを参考にさせていただいて、将来施策してまいりたい、かように考えるわけでございます。
  55. 大竹太郎

    大竹委員 いまお聞きしてよくわかったわけであります。これは民間の会社なんかでもよくあることでありますが、幹部のほうではいろいろ考えているわけだけれども、なかなか末端まで、その考えが浸透しないということで、第一線にいる人々が不平を持つ。したがって、その仕事がうまくいかないということは、よくあるわけであります。もちろん具体的に、設備をよくするとか、待遇をよくするとかいうようなこともできるだけやらなければなりませんけれども、やはり気持ちの上の疎通とか徹底ということは、もっと心がけることが必要だというようなことを投書において知らされるわけでありますが、そういうようなことをぜひ考えていただきたいと思います。  それから、時間がございませんから、最後に一つだけお聞きして終わりたいと思いますが、この家裁の調査官制度で、最高裁の事務総局でいろいろ改正その他についてお考えになっているやにお聞きするわけでありますが、何かお考えになっておることがございましたら伺いたいと思います。
  56. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 先ほど大竹委員お話の点は重々心に込めまして、今後とも施策してまいりたいと存じますが、それと関連いたしまして、あとの話の調査官の進路という問題があるわけであろうと考えるわけでございます。私どもとしては、いわば現在の待遇としては、少なくとも物的面については十分とは申せないまでも、公務員としてはまずこのくらいのものであろうというぎりぎりの待遇をしているように考えておるわけでございますが、今後の進路というような点につきましては、これはいろいろ問題があろうと思います。私どものほうで、つとに研究いたしておりますのは、御承知のアメリカ等にございますレフェリーというような制度は取り入れられないものであろうかというようなことが中心でございまして、これにつきましては、数年前にも、また数年前以来最高裁の事務総局の中に研修会等を設けまして、具体的に検討もし、立案と申しますか、そういうような段階まで進んだこともあったわけでございます。これは端的に申しますれば、少年事件につきましても、家事事件につきましても、きわめて形式的に処理できる簡単な事件もございます。また全国にこういう家庭裁判所を配置します関係で、僻遠の地にも家庭裁判所の支部ないし出張所を置かなければならない。そういうようなところから、それをすべて有資格のすぐれた裁判官を配置していくということには限度がある。そういう場合にアメリカのレフェリー等でございますと、一応裁判官指示等に従いまして、そのレフェリーというものが事件を処理する。そうして当事者にその結論を——判決というと妥当でございませんでしょうが、何らかの指示をする。それで当事者がそれに納得すれば、それが裁判の効果を持つ。しかし裁判官が、それは妥当でないと思えば、裁判官のほうから訂正ができる。しかし裁判官も、それから当事者も、それを納得すれば、それでいい。しかしもし当事者に不満があれば正式に裁判官裁判が受けられる、大まかにいってこういうような制度のようでございますが、そういうものを取り入れて調査官をそのレフェリーに当ててはということで、相当研究もやっておるわけでございますが、いろいろ憲法問題等との関連もございまして、具体的に日本の制度としてどう取り入れたらいいかということで、いまのところまだ結論を得ない状態でございます。  今後ある程度の結論を得ますれば、法務省のほうとも十分お話し合いいたしまして、そのように待遇改善と申しますか、進路の問題についても進めてまいりたい、かように考えるわけでございます。
  57. 大久保武雄

    大久保委員長 次会は明四日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十一分散会